約 2,478,531 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8759.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第十二話『~幕間~人形と主』 ___ガリア王国首都リュティス トリステインには正統なる始祖ブリミルの血を祖とする三つの王家が存在する。 『トリステイン』『アルビオン』そして『ガリア』 現在ガリアの首都リュティスにある王の住まう宮殿グラントロワの一室にて、とある重大な話し合いが行われようとしていた。 国にとって?…………いえいえ。 貴族にとって?…………そんなまさか? そう…それは隣接する異世界にとっても無関係とは言い切れぬ程この世界を揺るがす大事な大事なお話… 今その玉座の間に一人の人物が通された… 「ミョズニトニルン、ジョゼフ様の忠実なる僕シェフィールド参りました。」 恭しく言って名乗りを上げた女、シェフィールドは上質な絨毯の敷かれた床に膝を突くと顔を覆う様に被っていたフードを外す。 燭台の明かりに照らされて現れたのは妖艶でありながら何処か退廃的な…そう、どこか人間味の薄い独特の雰囲気を持つ黒がよく似合う美女。 「待っておったぞ俺のミューズ。アルビオンに出向いて貰って居る最中にわざわざすまぬな。しかしどうしてもお前の力が必要そうなのだ許せ。」 玉座にゆったりと腰を落とした青い髪の美丈夫がさも上機嫌な様子で豪快に笑い、薄暗い王の間へと出頭してきた全身に怪しげで黒いタイトな法衣を纏った女性シェフィールドを歓迎する。 「ジョゼフ様がお呼びであるならば私は例え地の果て、地獄の底であろうと駆けつけます。 それこそが我が使命、我が喜びでございます。」 「所でアルビオンはどうだ?あの男少しは上手くやっているのか?…あぁやはりそれはどうでも良い、早く本題へと移るとしよう。おい、ビダーシャル!」 逸る気持ちを隠しきれない様にジョゼフがそう言うとジョゼフが腰掛ける玉座の影から一人の長身の男が姿を現した。 それはまるで物語に登場する英雄譚を詠う吟遊詩人の様な出で立ちでジョゼフの様な男性らしさというよりは中性的な印象を与える美丈夫… 「ビダーシャル…」 シェフィールドがその姿を認めて嫌悪する様に小さく呟く。 「待ったぞ、ミョズニトニルン。」 男は被っていた羽根付き帽子を取ると流麗な動きでシェフィールドに会釈して見せた。 男の流れる様な金の長髪の隙間からは長く尖った耳が覗いている。 それはハルケギニアの全ての人間が畏怖し、忌み嫌う最悪の亜人族『エルフ』の証 「実は貴様の能力でこれを鑑定して貰いたいのだ。」 ビダーシャルは懐から慎重に小さな虹色に輝く宝石を取り出しシェフィールドに手渡す。 ジョゼフはその光景を実に満足そうに眺めている。 「これは…」 宝石を手にした瞬間、シェフィールドの額に熱が走り使い魔のルーン『ミョズニトニルン』が淡い光を放ちながら浮かび上がる。 「それは聖地の最奥、シャイターンの門から呪いの様に溢れ出てくる魔力を我等エルフが総力を挙げ凝固させ作り上げたマジックアイテムだ。 最早二度と作れぬであろうそれを我等は『運命の滴』と名付けた。シャイターンの門から溢れる魔力を制御する鍵としてな…が、一つ問題があってな…尋常ならざる強大な魔力を有するそれを我等エルフには扱えぬのだそれが…」 ビダーシャルがそんな説明をしている間にシェフィールドは使い魔のルーンの力によってその運命の滴の力を理解し驚愕した。 それはまさに力の結晶。 時の流れる力、光が照らす力、命が鳴動する力、闇が蠢く力、そして滴が零れる力… 純粋なる力の結晶、その至高の魔宝の残滓から生まれた一欠片の力の結晶。 かつての在りし時の力から比べればその手に納められた結晶などまさに絞りかす同然ではあるが… 「シャイターンの門はかつてブリミルが目指した地…俺ならばあるいはともエルフ共も思った様だがどうやら俺にはそれを御する事は出来んらしい。 そういった訳でな、ミューズよそなたならばと思って呼んだわけだ。」 どうだ?と言外に付け加える視線でジョゼフはシェフィールドを見つめる。 シェフィールドはチラリとビダーシャルへと視線を向けると言いよどむ様な少し難しげな表情をジョゼフに向け直した。ジョゼフはそれだけでシェフィールドの真意を読み取る。 シェフィールドはその運命の滴の力を理解したため出来ればその力は主であるジョゼフのみに伝えたかった。現在は協力関係にあるとはいえ自分達とビダーシャルは本質的には対立しているのだから。 …だが 「フム…ミューズよ構わん、それがどの様な物であろうと包み隠さずこの場で言ってみろ。」 ジョゼフはそれでも一向に構わぬとェフィールドの言葉を促す。 「では申し上げます…これはビダーシャルの申した通り魔力の結晶体の様です。あらゆる力の流れに干渉する事すら可能な万能の秘宝… 私の力ならばこれを我が内に取り込む事で完全にとはいかずとも一応は制御し扱えるかと…」 「そうか…ならば運命の滴はお前に預けるとしよう。構わんなビダーシャル?」 「…致し方あるまい。」 しばし悩んだビダーシャルの返答にジョゼフは玉座に肘を突いたまま満足げに薄く微笑みを浮かべる。まるで端からそうなると予測していた様に。 「では…」 言ってシェフィールドが運命の滴を両手で包む様にして祈りを捧げると運命の滴はあっという間に宝石状のその形を光へと溶かし、紫電を走らせながらシェフィールドの身体へと溶け込んでいく。 「(これは何だ?記憶…?神になろうとした男の?)ぐっ…ぁぁぁあぁぁっ!!」 運命の滴と同化したシェフィールドの額に再び強烈な痛みと熱が走り、膨大な魔力と共にかつて新世界の神になろうとしたとある一人の偉大な魔法使いの記憶の一部が流れ込む… そのあまりの苦痛にシェフィールドは額に玉の様な汗を浮かべながら呻き声を必死に堪えた。 「ヴァ…レン…」 しばらくの間続いた苦痛もようやくも安定し、乱れた心拍が落ち着きを取り戻すとシェフィールドは朦朧とする頭で無意識にその名を呼んだ… 「ほぅ…どうやら上手くいった様だな?」 ジョゼフの問いに正気に戻ったシェフィールドは慌てて乱れた髪を整えて膝を突く。 「はっ、この力素晴らしいの一言でございますジョゼフ様。そして我が力は全てジョゼフ様の為にあります、今後とも何とぞ私をお役立て下さい。」 「あれ程の魔力をその身に取り込むとは…随分と無茶をするなミョズニトニルン。 運命の滴を飲んだのであれば近くシャイターンの門にもご足労願うであろう。アレを封ぜよと精霊達も訴え求めているのでな。」 恭しく跪くシェフィールドにそう言ったビダーシャルをシェフィールドは敵意を孕んだ視線で睨み付ける。 「私に命令できるのは我が主ジョゼフ様のみ。貴様の命令などでは動くつもりは無いわ。 …………そして私はたった今知った、我が身に宿った新たなる力は運命の滴でもシャイターン等という名でも無い…」 究極の至宝の模造品〈レプリカ〉にして代替品〈オルタ〉 「これぞ彼の地に眠る最大最強のエイオンの遺産『デュープリズム』。」 まるで己の役割に縛られた人形の様に無感情な声でシェフィールドはその名を口にした。 ___同時刻アルビオン大陸ウエストウッドの森 ここでは現在沢山の子供達に見守られながら今一人の少女が使い魔の召喚の儀式を行っていた。 少女の名はティファニア…複雑な生い立ちを持ち孤児達と共に森の奥で隠れて暮らすハーフエルフの少女。 その少女が長く留守にしている姉の代わりの心の支えと狩りなどの助けとして今使い魔を召喚する事を決意していたのだ。 「この世の何処かに居る私の使い魔さん。お願いしますどうか私の声に応えて下さい。」 まるで歌う様な呪文の声に子供達から期待の視線が集まる。 何処かの公爵令嬢とは正反対な控えめな呪文を唱えてティファニアは杖を振るう。 まともに使える魔法は一つだけ、系統魔法が使えない自分の使い魔に無茶は求めない。 目の前に現れた銀の鏡から出てくるとすればテファニアは小鳥やリス等の小動物だろうと思っていた。贅沢を言えば狐の様な狩りが上手な使い魔だと実益もあって嬉しい。 そんな風に思っていたティファニアであったからこそ召喚ゲートをくぐって現れた己の使い魔を見た時には心底驚いた… それはどう見ても人間の男だったからだ。 「ここはどこだ?…私は死んだ筈では?」 黒と茶の毒蛾を連想させる様な毒々しい色合いの甲冑と法衣を纏う仮面の男。男はまず空を見上げた後周囲を見渡しそう呟いた。 男の纏う独特の強張った雰囲気と底知れぬ威圧感にティファニアを含め、周囲の子供達は思わず本能的に恐怖し固まってしまっている。中には泣いている子供も居た。 「あの…」 戸惑いながらもティファニアは勇気を振り絞り何かを思案している男へと声を掛け様とする…すると。 「そこの小娘、解るならば答えろ。ここはどこだ?私はどうしてこの様な所に居る?」 男はティファニアに問い掛けながら害意を見せぬ様注意しながら軽く手を差し出す。 「あ…あの、私が使い魔を召喚しようとして、そうしたらあなたが…」 「何、使い魔だと…?」 ティファニアのその一言に男の纏っていた空気に緊張が走った。 「まさかこの私を下等な使い魔等にする為に呼び寄せたとでも言うのか!?…ふざけるなっ!!私は私達は最早誰の人形でも道具でも無い!!」 使い魔と言う言葉が男の逆鱗に触れたのか男がその腕を振るうと唯それだけで熱風の様な力の波動が足下の草を激しく揺さぶる。 「ひっ…ごめんなさい。本当はペットになってくれる動物さんを呼び出したかったんですっ。それにまだコントラクトサーヴァントはまだ…」 そのせいでますます少女は男に怯えながらも自分の後ろに居た孤児達を男から守る為に抱く様にして震える声で答えた… そこで男はようやく状況を冷静に理解する。 成る程、確かに己の自我ははっきりと確立している。何か魔術的な干渉を受けた形跡も無い。自分が目の前の少女の使い魔になっているかと問われれば確かにそれは否だ。 先程まで確かに自分はヴァレンの聖域の最深部にいた。 そこで自分に人形としてではなく一人の意思を持つ人としての生き方を示してくれた弟を救う為に力を振り絞り自らにとっての神とも言える創造主へと反逆し処刑、否処分された… そこまでは間違いない… そして今男は生前の状態で見た事も無い場所で少女の前に立っている。そして少女は男を召喚したと言っていた… 「ククク……ハハハハ……」 現状を認めて男はある考えへと至ると思わず笑いを堪えきれず高らかに笑った。 「成る程な…原理は解らんがどうやら私はお前に救われたらしい。気が付けば見ず知らずの女に救われていたか…ククク、まるでルウではないか。」 「あの…?」 思わずティファニアは訝しげに首を捻る。男が急に怒り出したと思えば突然考え込み今度は突然笑い出したのだ。 そうしていると男はティファニアへと向き直りその瞳を真っ直ぐに見つめた。 「ふん…良い機会だ小娘よ、私は私という存在を確立する為にも貴様の使い魔にはなれん。だが行く宛も無い身だ。故に望むならば共に居てやる事は出来るだろう、どうする?」 男のその仮面に隠れた表情が何故かとても晴れやかで、自分を見つめる視線がどこまでも真っ直ぐながら寂しげででティファニアは何故か男の提案を拒もうとは一切思わなかった。 「私の名前はティファニアです。ようこそウエストウッド村へ。」 少女ティファニアはそう言って若干おずおずとした様子で男へお辞儀する。 「私の名はドー………」 ティファニアに対し自分も名前を名乗ろうとした途中で男は思う所があり瞳を閉じてかぶりを振るとゆっくりと自らの顔を隠す仮面を外した。 (キリエル…ナーシアス…カーウィン…私も再び名乗ろう。私が私の意思で歩く為に。) 男は瞼の裏に焼き付いた己の忠臣達を思い浮かべて瞳を開いた。 最早男には自らを道具としての使命に縛り付ける為の偽りの名など不要なのだ。 「私の名はルシアンだ。さっきは怖がらせてすまなかったティファニア。」 「はい、よろしくお願いしますルシアンさん。」 ティファニアがルシアンと名乗った男に微笑むとルシアンもまたぎこちなく微笑みを返す。 それはかつて捨て去った男の本当の名前… ヴァレンの人形としての使命を果たす為非道を行い、道具であり続けようとしその果てにルウとミントに破れた男の名前。 果たして目の前の少女がルウに生きる意味と強い意志を与えたクレアの様に自分を変えてくれるかは解らないがルシアンはこの数奇な巡り合わせに今はただ感謝する事にした。 そしてルシアンの額では輝きを失った筈のデュープリズムの欠片が静かに淡く輝いた… 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/psparchives/pages/419.html
PSで一番大好きなゲーム 結構おすすめ -- (名無しさん) 2010-06-26 21 19 47 片や姉を生き返らせるため、片や世界征服の為、『遺産』デュープリズムを求める。 1つの編のクリア辺りの時間も短く手軽にプレイできるはず。 登場キャラクターは個性的で憎めないキャラが多く、選んだ主人公によってストーリーの雰囲気ががらっと変わる二面性が面白い。 ゲームシステムは単純なアクションRPG ムービーシーンは無く、全てフルポリゴン。カメラワークが練られた意欲作。 全体的に評価が高く、デュープリズム2を望む声が発売から10年以上経って未だにある程。 名作だと胸を張って言える作品。個人的にはルゥ→ミントの順番にプレイするのがオススメ -- (名無しさん) 2010-06-28 10 23 26 ファンシーな世界観のARPG。コミカルなキャラが多く、 そういうノリが好きな人にはお勧め。ライバルハンターやロリババアなど、 良いサブキャラが揃っている。難易度は低め。 -- (彩女好き) 2010-06-30 22 27 52 ミント→ルウでやってる。 ストーリー的にはこっちの方が良いかも。少し慣れるまで大変だけど。 -- (名無しさん) 2010-07-14 16 44 11 このソフトは知る人「は」知る往年のスクエア屈指のアクションRPGですが、 もっと売れて良かっただろうという出来となっており、システムとしてはレベル制ではなく、 ダメージを受けるほどHP上限があがり、魔法を使えば使うほどMP上限が上がるという、 同社の大作RPGの初期の名作、FF2のような成長システムですが、さらに2つあるストーリーの内、 ルウ編はモンスターに変身でき、ミント編は魔法を使用することが出来るという大きな差があり、 ある意味で2つの別のゲームを同じ世界観で表現したと言っても良いほど、それぞれのストーリー ごとに大きな特徴の差があり、大人しい少年ルウ編のシリアスな展開と、いまだに一部で人気のある、 我がままで自信家でキャラが立ちまくってる少女ミント編のコミカルな展開の差も手伝って、 実質同じステージの使いまわしに過ぎない2人の物語を、両方やってもあまり飽きずにプレーでき、 唯一欠点を上げるなら、操作性として反応が若干鈍い事と、視点が微妙なせいで何度もジャンプに 失敗するような部分があることでしょうか。 あと、自分は過去に一度全クリしてるんで、好きな方選んでミント編からやってますが、 初回プレーの場合にはルウ編からやった方がやりやすいかもですね。 ルウ編は遠い過去にクリアして以来やってないので正確なところは覚えていませんが、 ミント編に比べればいくらかバランス良く戦えたと思うのですが、逆にミント編は序盤は弱く、 話が進んで魔法がそろって来ると格段に強くなってくるのですが、最終的には大半のボスすら 数発で倒せるような超火力魔法まで覚えてしまうなど、割と極端なバランスになっており、 どちらかというと後回しにした方が遊びやすいのではないかと思います。 -- (名無しさん) 2010-07-14 20 06 29 一つの町を舞台にした、箱庭的世界観が特徴のARPG。フルポリゴン。 【遺産】と呼ばれる極めて強力な古代の魔法アイテムを、 「ルウ」と「ミント」2人の主人公が探し求めていく、といったストーリー。 選んだ主人公によって雰囲気が大きく変わってくる。 PS時代だけあってポリゴンは汚いが、 それを補う音楽や演出面が秀逸で、短めながらストーリー面の評価は高い。 また、町の面々や雑魚のチンピラなどといった脇役も個性的で、 プレイを終える頃には舞台の町を離れがたくなっていること間違いなし。 発売当初はほぼ無名だったが、口コミや評判でじわじわ売上を伸ばし、 レジェンダリー・ヒッツに選ばれたり、サントラが再販したりしている。 その世界観に惹かれたファンは未だ多く(自分含む)、 Twitterでのリクエストからアーカイブ配信が実現した。ありがとうスクエニ!!! ただしアクション部分はジャンプがやや癖のある判定だったり、 一部のステージでカメラが理不尽だったりするので注意。 基本的には優しめのバランスだが、 本編にあまり関係の無いミニゲーム的ステージがやたら難しかったりもする。 個人的にはPS時代を代表する名作、否超名作だと思っているのだが、 支持されている理由が音楽や世界観といった個人の好みによる部分が大きいため、 誰にでも無条件に勧められる、というわけではない。 しかし、一度この世界観にハマってしまえば「もっとこの世界に浸っていたい」と 何周も何周もプレイを重ねるファンの心情も理解できるだろう。 是非色々な方にプレイして頂きたい、「心に残る佳作」である。 ちなみに、他の方も挙げられている推奨プレイ順だが 「ミント→ルウ」を個人的にはお勧めしたい。 ルウの方がシリアスなシナリオで、この順番の方が感情移入しやすいこと、 また両主人公をクリアした際に見られるエピローグの都合などからである。 ミントの魔法はやや使い難いかもしれないが、 ぶっちゃけ魔法よりもジャンプ攻撃である飛び蹴りの性能が凄まじいので それだけで殆どの敵はなぎ倒していけることを覚えておけば問題ない。 2は……2はまだか……。 -- (ミント様万歳) 2010-10-08 09 40 53 武蔵伝も似た感じですがね。こう、同時期(?)に出たというか。 あと、アマゾンにどうしようもないコメントをしている人がいますが、放っておきますか。 ちなみにスタッフロールにおけるテストプレイヤーの数がハンパないです。 普通のゲームでもあまり記述を見かけませんから…。 何か理由があるのかな。 -- (ほめぞう) 2010-11-02 16 02 11 容量はベイグラに匹敵する軽さにも関わらず、内容は満足のいくレベル。 ただ、やりこみを求める奴には物足りないかもしれない。 -- (名無しさん) 2010-11-07 20 36 49 ここのレビューを見てプレイしました。 世界観やキャラクタ、音楽は確かに文句のない出来ですが、その分、操作性の悪さが際立ちます。 ボタンのレスポンスや足場の着地判定がシビアで、スリップもしやすく、 アクションや謎解きそのものはシンプルでも、荒さが難易度を上げている・・・というより、アクションの成功率を下げています。 難易度が高ければ納得もできますし、達成感もあるのですが、成功率が低いだけなのでストレスが溜まるだけです。 詰まった方は落ち着いて冷静に、根気強くやるべきでしょう。 ゲームの世界観に没入できるなら、それに見合う面白さがあると思います。 ふと思い出したのがPS2のボクと魔王。 これも同様に世界観等は抜群で操作性やゲームバランスが残念、そして2が熱望されています。 こういうゲームこそ新世代機でシステム周りを改善してリメイクするべきだと思いますが・・・ -- (名無しさん) 2010-12-11 22 26 49 ↑ なんだかんだこのタイトルも発売当時からワゴンセール行きだったから・・・。 発売元がおしいタイトルを売れなかっただけで放置してきたからね。 本当にもったいない。 -- (名無しさん) 2010-12-14 14 43 24 ロールプレイングに分類されてますが、アクションです。 横スクロールアクションの面もあります。 アクションなのに操作性が悪いというのはゲームとしては致命的な汚点。 あと魔法がもうちょっと使いやすければなぁ...と言った所。 ミントの飛び蹴り無双状態。 逆に言えば、操作性さえ良ければPSソフトの中でも屈指の名作だと思う。 グラフィックもPSとしては中々クオリティの高いものだし、 ボイスがまるで無いのはちょっと寂しいけどキャラクターのモーションが凝っててボイスが無い分を補ってる。 音楽も古き良き(?)PS音楽と言った感じ。風のクロノアっぽい。 -- (名無しさん) 2010-12-20 18 38 37 普段やっているゲームとどうしても比べてしまうので、 序盤はグラフィックに違和感がありますがそれもすぐに慣れます。 1番の難点はやはりアクション部分。 戦闘はそこまででもないのですが、足場を順に渡るスイッチや、 シビアな狭い足場がかなりあり、ストレスが溜まります。 すでにもう書かれている通り、ストーリーや掛け合い、終盤の盛り上がりは今のゲームと比べても遜色がない、 思うので、是非最後までやってほしいと思います。 投げたくなったら1日置いてみるといいかも。 -- (名無しさん) 2011-03-19 15 51 23 確かにアクション部分の出来が粗い。 だがストーリーなんかは良い。 どこを評価するかで賛否分かれると思うが 個人的に心に残るゲームだった。 つーか本当にもったいない…。 -- (名無しさん) 2011-04-08 17 43 07 同社の武蔵伝を思わせる3Dアクション。 しかし声がないことを始めとして、演出面は非常に地味になっている。 武蔵伝と共通する問題として、 見づらい視点で固定されたままアスレチックをやらされるステージが非常にきつい。 ちゃんと足場に乗っているようにしか見えないのに落ちたりする。 しかもそういうステージが武蔵伝より多い。 アクションもわりと大味。 たとえば魔法タイプのはずの女主人公はひたすらジャンプキックしてるほうが強い、など。 -- (名無しさん) 2011-04-25 20 32 32 単にジャンプして点々とした足場を渡るステージでストレスが溜まる。 まだ序盤だが、足場からツルッとすべるだけで何回死んだかわからない。 今後はもっと難しいアクションステージがあると思うと、憂鬱になる。 ストーリーも、序盤には引き込まれる要素がない。 これを乗り越えたらいいことあるんでしょうか?? -- (名無しさん) 2011-08-14 11 03 01 1つしかない町を拠点に同じようなダンジョンに行ったり来たりする構成なので、 全編を通してそんなに劇的な変化はない。ゲーム的にもストーリー的にも。 なので、ある程度やって合わなければあんまり期待しないほうがいいかもしれない。 足場の判定があいまいなせいで落ちまくるのはこのゲームではよくあること。 -- (名無しさん) 2011-08-17 08 20 13 アクション部分は当時でも時代遅れな作り。 時オカやトゥームレイダーなどで確立された3Dアクションの基本形が取り込まれていない。 そのためキャラクターの立ち位置や攻撃射程を明確に把握しにくい。 -- (名無しさん) 2011-08-28 10 55 04 アクションうんぬんは前のコメントを見た通り。 割とイラッとくる場面も多し。 ただその全てを覆す所か むしろこのゲームの最大の特徴と言ってもいいのが これが究極のキャラゲーであるという事。 出てくるキャラ全員が愛すべき存在で シナリオは割と平凡だが キャラクターが非常に面白いので やり取りを見るだけでも購入する価値あり。 多分二人のシナリオをやり終える頃には 出てくる奴ら全員忘れられなくなる。 と、その位キャラ重視のゲームと個人的には思ってる。 -- (名無しさん) 2012-02-08 01 56 20 これ操作性悪かったかなあ? 当時かなり面白かった覚えがあるけど。 スーマリ2が許せる人ならまったく問題ないと思うよ。 -- (名無しさん) 2012-08-17 00 36 26 「どこが足場かわからない」「どう見ても乗れてるのに落ちる」 「敵に当たってるのか当たってないのかわからない」 というアクションゲームとしての基本的なレベルで問題のある作品。 そしてそれを埋め合わせるような長所も無い。 武蔵伝から演出とボイスとキャラの魅力と爽快感をなくして、 全編プチスチームウッドにしたような内容。 名作スーパーマリオブラザーズ2などとは全然違うので、比べるのも失礼。 あちらはプレイ自体にストレスを感じさせる要素はなく、 プレイヤーの思い通りに操作させてくれた上での難しさだった。 だから失敗するのも成功するのもプレイヤーの責任。 対してこちらはプレイ自体にストレスがたまる。 「見づらい」「見えない」「何で死んだのかわからん」。 マリオでこんなことはない。 -- (名無しさん) 2012-08-17 07 36 01 そんなにアクションに問題あるかな? 逆にそこまで低評価を繰り返されるとアンチのネガキャンに思える。 死にやすいのは否定しないけどコイン(コンティニューに必要なアイテム)も 結構手に入るからトントンじゃないかなぁ ジャンプ中もある程度は制御できるし、アトランティスの謎みたいな変な慣性も無いから 何回かやればクリアできると思うんだけどね -- (名無しさん) 2012-08-20 20 38 00 PSP-3000初プレイ。途中から攻略サイトありでルゥ編9時間→ミント編8時間。 アクション部分だけで評価するなら、ルゥ編30点、ミント編50点。 他の方も書かれているとおり、快感や面白みが薄く、ストレスが目立つ。 難易度自体は高くないが、操作性の難や曖昧さのせいで 細かなイライラがつのってくる。足場やジャンプだけでなく全般に大味で雑。 あやふやな当たり判定、ピタッといかない制動、誤爆する自動ロックオン、 ザコに押されての落下、起き攻めコンボ、単調で理不尽なボス戦、などなど。 コンティニュー回数有限、イベントスキップ不可なこともあって、 詰まれば詰まるほど倦怠感が増してくる。興ざめしてくる。 ダンジョンのギミックも面倒なだけで、解く楽しみや達成感につながらない。 アクション、ARPGとして購入を考えている人は覚悟が必要。期待は不要。 しかし、キャラや演出はほんとうに良かった。鮮やかな色づかい、 華のあるデフォルメ、コミカルでテンポのいいセリフまわしに引き込まれた。 イベント中のカット割りやモーションもとても丁寧で、 各シーンがいきいき展開する。おつかいの報告程度ですら楽しみになるほど。 それぞれの人物がどこかしら個性的で憎めず、爽やかな印象も多かった。 乱暴なたとえをすると、「暴れん坊プリンセス」や 「ラジアータストーリーズ」が好きだという人は絶対やるべき、そんな1本。 難はあるけれど、それを覆しうる「このゲームだけの空気」を持ってる。 いくつものキャラクターが強烈に記憶に残る。 -- (名無しさん) 2012-08-28 09 39 36 ↑ >アクション部分だけで評価するなら、ルゥ編30点、ミント編50点。 またお前か。ネガキャンもいい加減にしろ。 >他の方も書かれているとおり、快感や面白みが薄く、ストレスが目立つ。 何が「他の方も書かれている」だ。全部お前が書いたんだろうが。 隠れた名作として有名なこの作品をこぞって低評価かとかありえないわ。 明らかにアンチのネガキャン。 -- (名無しさん) 2012-10-10 13 54 32 ミント編しかクリアしてない人間が通りますよ。 良い所。キャラであり、セリフ。 主人公の一人ミントは常に台風の様なテンション上がってる子。 そのわがままっぷりは「自分勝手」ではなく「自由」といった感じで嫌味はない。 時折見せる打算的な言葉や心の内も腹黒い感じはなくそういう性格として楽しく見ていられる。 エレナの天然もあざとい感じはなくて「可愛い」ではなく「面白い」という印象。弟が居たというのは非常に面白かった。 ただしそういう明るい面が在るからこそ劇を見てるような一面も在る。 シリアスな場面や、敵を倒した後の展開なども軽い印象を受ける。 そして一つ上の人はアンチのネガキャンと仰るかもしれないが私もアクション部分に関しては低評価である。 まず位置の把握が難しい、これはプレイすれば解るが落下しまくる。敵に押し出されたり動きが制御出来ず自ら落下する事もかなりある。 ボス戦で落ちる場所があると余計に酷い。落下ダメージがメインになるほどに落ちるのはストレスが溜まる。 もう少し奥行きのあるキャラからの3D視点で、カメラを自由に動かせたなら印象は代わっていたのが勿体無い。 私的に物足りないのは町。NPCが多いわけでなく、町が広い訳でもないのに一つしかない。 ダンジョンに行くのも選択肢で一っ飛びして世界観を楽しむ事も出来ないのが酷く残念。 総評としては良くも悪くもキャラゲーであり、軽いシナリオを求めるならプレイしてもいい。 ただアクション部分はお世辞にも良かったとは言えず、アクションゲームとして求めてはいけない。 -- (名無しさん) 2012-10-28 14 18 41 酔うから気をつけろ。 -- (名無しさん) 2012-11-18 00 41 56 アーカイブ版じゃないPS版当時の感想なのでちょっとあやふやですが。 シリアスなルゥ編、コミカルなミント編とあり、操作性も異なります。 ストーリーは別視点というよりはパラレルワールドですが、 どちらも最終的には暖かな気持ちでエンディングを迎えられる作りで一押しです。 Wizardryやアトリエシリーズのような、特定の拠点からあちこちへ探索に行くお話なので、 世界規模の変化はありませんが、拠点となる町は狭いながらも、 シナリオ進行にあわせて動き回るNPCや、そっと物陰に配置されるコインが楽しみでした。 美味しそうとは形容しがたい料理も含め、 シナリオに直接関係しないところも楽しめるのも評価を受けている一因かと思います。 ↑で問題になっている操作性ですが、自分も慣れが必要かと思います。 ルゥ編でタイガーになって何度もジャンプと転落を繰り返し、斧で攻撃してスカるのは日常茶飯事。 クリアの仕方が分かっているのに手間が掛かるせいで、ミント編の周回数ばかりが増えています。 シナリオはルゥ編の方が好きなのですが、やっぱり操作性が・・・。 変身するモンスターも、ミントの魔法みたいに保存か、せめて一部LOCKが出来れば・・・。 自分はミント編であまり苦労した覚えがないのですが、ジャンプ→攻撃と操作すると ジャンプ→静止→蹴り→落下といった独特な感じだったような気が・・・。 でも攻撃魔法が豊富で、状況に合わせて攻撃を方法を選べるので、 あまり気にならないかと思いますし、爽快感もあります。 自分の結論としては、 トゥームレイダーほど理不尽な死に方はしませんし、(あれは理不尽な死に方を楽しむゲームです;ω;) マリオ2のように足指の先っちょだけで崖に立ったりもしません(当たり判定が四角いだけじゃないか・ω・`) アクションの難易度が高いと感じる方は、ミント編から始めるか、 マリオ64だと思って余裕を持って歩きましょう。 -- (名無しさん) 2012-12-03 22 21 15 評価を見て購入したが合わなかった なんとかミント編を一周して放置 ほとんどの方も言われてるように、もっさりかつ全体的に単調でアクション部分はあまり褒められたものではない 魔法はとりあえず白のサテライトつけておけばステージ中のザコもボス戦も苦戦することはない 使い道がよくわからない魔法もいっぱいあるし、魔法がなくても攻撃ボタンの連打でいける 敵の攻撃を受けることより、ステージの構造上の落下ダメージが多かった 大量にリトライ用コインが手に入るためゴリ押しに拍車がかかる ボスもロッドを除き動きが単調かつ弱い 動きが単調の割にクジラのボスは攻撃を与えられないパターンが15回くらい連続したので もう単純に作り込み不足と感じた シナリオはミント編をプレイした限りでは 登場人物のキャラが立ってて、ミントとのやりとりも軽妙で嫌味っぽさがなく 悪くはないと思ったが、世界観の練り込みが大したことないのであまり引き込まれることはなかった 良くも悪くも今の時代でこれなら600円程度かなぁ、という感想 -- (名無しさん) 2014-08-01 21 46 30
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8751.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第十一話『カノンオーブ』 ルイズはミントから預けられた紅蓮の宝珠の収められた箱を抱いてシルフィードの背中から森の中に潜んで居るであろうフーケをタバサ、キュルケと共に探していた。 「おい、嬢ちゃん見てみろよ、相棒の奴すげぇ事やってくれてるぜ!!」 「何よ?て言うかあんたもフーケ探しなさいよ。」 フーケの捜索に集中していたルイズの背中でついでに回収していたミントが使用を放棄したデルフリンガーがカチカチと鍔を鳴らす。 デルフリンガーの声にルイズはゴーレムと対峙しているミントへと視線を向けた。 「えっ?」 その視線の先にはミントは居なかった… 厳密にはルイズには見つける事が出来なかったのだ。 ミントの仕業なのかいつの間にかゴーレムの足下は真っ黒な煙の様な物で埋め尽くされ、 ゴーレムはその煙の中に残った右腕を突っ込んで闇雲にミントを探している様だった。 ミントはひたすら『ダークブレス』の魔法を撃ち出しながらゴーレムの周囲を走り回る。 紫電を帯びた暗黒の吐息はゴーレムの足下とその周囲を広く埋め尽くすとミントの姿をフーケから隠し、同時にそれ自体がことゴーレムに対して凶悪な攻撃手段になる。 そしてそれは直ぐに目に見える形で効果を現した。 『ドスン!!』 「何?」 衝撃音が響くと同時に足下が悪いのかゴーレムがバランスを崩す。 何が起きたのか分からないままにフーケはとにかくゴーレムで足下の煙をかき回す。 ついさっきまでゴーレムの足は足首の辺りまでしかダークブレスに隠れていなかったが今はすねから下までが煙に捲かれている状態だ。 「ゴーレムが縮んだ…?」 上空から見ていたルイズが呟く… 「ちっ、闇雲じゃキリが無いね!!」 忌々しそうに言って異変に気付かぬままフーケはゴーレムでミントを踏みつぶす為、ゴーレムの足を大きく持ち上げさせた。 「何……だって…………」 フーケはそこでようやく気が付いた、ゴーレムの足首から先がまるで風化し朽ちたかの様にボロボロになって崩れ落ちてしまっている事に。 その瞬間また一段、ゴーレムの足下は崩れていった… 「やっぱり土や岩にはこれよね~。」 ミントはダークブレスに身を隠したまま意地悪くほくそ笑む。 『黒』の魔法の本質は破壊、それも無機物に対して特化した物… ダークブレスはそれを広範囲に拡散させる魔法であり、爆発力や瞬間火力は無いがじわじわと浸食する様に対象を破壊する。 正直ここまで広範囲にダークブレスを展開する事が出来るとは思わなかった。偏にそれは泥まみれにされた事への恨みと左手のルーンの力でもある。 そしてこれはフーケのゴーレムにとって最悪に相性が悪い魔法だ。 慌ててゴーレムはダークブレスの中から抜け出そうと歩を進めるが、巨大なゴーレムの重量とその足にかかる負担は凄まじい。 蝕まれた足は自重を支える事も出来ず歩く事もままならない、それどころか下手に動かせばそこから崩れる始末。 ゴーレムの足を再構成しようにも既に周囲の土そのものがとてもゴーレムの材料に使える強度を維持していない。新たに練金などしようにもそれを実行すれば最早フーケの精神力ではそれ以外何も出来ない状態になりかねない。 もはや完全に詰みだ。 ゴーレムの膝から下が完全に崩れ落ち、そのままバランスを保てずゴーレムは前のめりに倒れ込む。 見えないとはいえ流石の質量にミントも危なかった。 「フフン…このミント様に挑もうなんて百万年早いわ。」 勝利の余韻に緋色の髪をミントは掻き上げる。 立ち上がろうとする度そこから崩れて行く為ゴーレムはもはや為す術無くそのままジタバタと藻掻きながらミントのダークブレスに分解されて行った。 「すごい……」 土煙と共に崩れ落ちるゴーレムの姿を見つめながら思わずルイズはそう呟いた。 完全にゴーレムが崩れ落ちたのを確認しシルフィードを下降させながら同じくキュルケとタバサも思わずその光景に言葉を飲む。 徐々に煙が晴れていくそんな中、ミントはゴーレムの残骸の上でまだ怒りが治まっていないのか地団駄を踏んでいる。 「ミント!!」 「呆れるわね、あなた結局あのゴーレムを一人で倒しちゃうなんて。」 そんなミントにルイズとキュルケが駆け寄り、タバサは周囲に警戒を続ける。 「まぁね~、それよりフーケは居たの?」 「ごめんミント、見つけられなかったわ。」 申し訳なさそうに言ってルイズが項垂れる。 「多分、フーケもゴーレム壊されたから今頃逃げ出してるでしょうね。」 キュルケは周囲を一度見回して溜息混じりに言う 「皆さん、ご無事ですか?」 と、がさがさと草木を掻き分け森の中からロングビルが姿を見せると息を切らせながら駆け寄る。 「皆さん申し訳ありません……私巨大なゴーレムが現れてから恐ろしくて恐ろしくて隠れている事しか出来ませんでした。まさかアレをお一人で倒してしまうとは…所でミス・ヴァリエールが持たれている小箱。その中に紅蓮の宝珠が?」 「はいその通りですミス・ロングビル、フーケは取り逃がしたかも知れませんが紅蓮の宝珠は確かに取り戻しました!」 ルイズがそう言って胸を張ってロングビルに箱を差し出す。 「それは素晴らしい。では…」 ロングビルは微笑みながらルイズから箱を受け取ると同時にルイズの手を強引に引き、自分の元へと乱暴に引き寄せる。 『ルイズッ!!』 三人の声が重なる。 「全員杖を捨てて腕を頭の上に乗せな!!」 ロングビルは今までの態度を一変させルイズの喉元にナイフを突きつけてみせるとミント達を鋭く睨んで言い放った。 「ミス・ロングビル何故あなたが…」 杖を手放しながらキュルケがロングビルに問いかける。 「彼女がフーケ。」 「フフフ…ご名答その通りだよ。」 フーケはニヤリと笑いながらタバサとミントが杖とデュアルハーロウ手放したのを確認する。 「で、そのフーケが何でまたこんな手の込んだ真似したわけ?とっととお宝持って逃げれば良かったのに。」 「まぁ確かにそうなんだけどね…ミント、あんた馬車の中で紅蓮の宝珠について何か知ってる様な感じだったわね?紅蓮の宝珠を盗んだは良いものの使い方やそれが何なのか分からないと高く売る事が出来そうに無いからね…教えてもらえるかい?でないと…」 フーケは三人に見せつける様にルイズの喉元にナイフを押し当てる。 「………知ってるわ。」 ミントはしばらく思案した後、両手を広げお手上げのジェスチャーをしてみせる。 そしてミントの返答にタバサとキュルケは思わず驚いた。 「そいつは紅蓮の宝珠なんて名前じゃ無いわ。そいつはカノンオーブっていうアイテムであたしも前に必要だったから持ってた事あるわ。」 「ほう、そいつは興味深いね。こいつは異国の品って訳かい…で、肝心の効果と使用方法は?」 一応ミントは学園の内部や周囲には異国のメイジとして通してある。 「待ちなさい、その前にルイズを解放しなさい!!」 キュルケが一歩前に出る。しかしミントは構わず言葉を続ける。 「カノンオーブは魔法機関の動力よ。」 「待ちなさいミント!!喋っちゃ…!!」」 今度はルイズがミントを止めようと勇気を振り絞り訴えたが今度はそれはフーケに阻まれる。 「おっとお嬢ちゃんは黙ってて貰えるかい?続けな。」 「分かってるわよ。そいつを埋め込んだゴーレムはカノンオーブからエネルギーを吸収して動ける様に成る。 今みたいにわざわざ魔力や精神力を使う必要が無くなるのよ。」 ミントは簡単ながら包み隠さず素直にカノンオーブがどの様な物かを説明した。 その説明にフーケは少々訝しんだがどうやらミントが嘘をついているとも思えないし何より手元には人質が居る限りミント達も下手な真似はしてこない筈だ。 「へ~あたしにとっては随分と魅力的なマジックアイテムの様だね~。さてそれじゃあ悪いけどこのままあたしは失礼させて貰うよ。追いかけてこない限りはヴァリエールのお嬢ちゃんは適当な所で解放してやるから安心しな。」 「くっ…」 ミント以外の三人が苦い表情を浮かべる。そしてミントはだけはフーケに対して今までとまるで変わらない様子で対応する。 「分かってるわよ、人質が居る以上こっちだってて…あ、空飛ぶカボチャっ!!」 と、突然会話の途中でミントが大声を上げて上空のあらぬ方向を指さす。 「えっ??」 当然その場の全員の視線がミントが指さした方向へと反射的に向けられた。 その一瞬の隙を見逃さずミントの瞳がキラリと光る… 「チャンス!」 「え……」 叫んだと同時にミントが跳ぶ… フーケが空飛ぶカボチャ等という分けの分からない物に気をそらしていたのは本当に僅かな時間でしかなかったがそれでもミントの必殺の跳び蹴りが叩き込まれるには十分過ぎる時間だった。 そうしてフーケの顔面に強烈な衝撃が走る…眼鏡を事前に外していたのはフーケにとって不幸中の幸いと言えただろう。 「うわぁぁっ!!」 ルイズが解放されフーケはギーシュと同じく…いや、それ以上の強烈な勢いで吹っ飛ばされ地面に数度叩き付けられるとそのまま気を失ったらしく動かなくなった。 「よし、悪は滅びた!」 ガッツポーズを取って勝利を確信するミントに最早三人には言葉も無かった… ___魔法学園学院長室 フーケを捕らえてから学園に戻ったルイズ達は今まさにオスマンへと事態の顛末を報告していた。 報告を聞き終えたオスマンは実に苦しそうな表情で髭を摩る。 「まさかミス・ロングビルが怪盗フーケだったとはのぅ…あいやよくぞ紅蓮の宝珠を取り戻してくれたご苦労じゃったな。 それにしても紅蓮の宝珠がゴーレムの動力じゃったとは予想だにせんかったわい。 ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーには儂の方から王宮にシュバリエの勲章をミス・タバサには精霊十字勲章を申請しておこう。」 「まぁ!!シュヴァリエ!?」 「あの…オールド・オスマン、ミントには何かして上げる事は出来ないのでしょうか? 先程の報告の通り最も今回の事件で活躍したのはミントです。」 ルイズは意を決した様に訴える。ミントが爵位に興味があるとは思えないが自分よりはミントがシュバリエを賜るのに相応しいとルイズは思う。 「しかしのうミス・ヴァリエール、彼女は使い魔じゃ…使い魔の手柄はメイジの物として扱われる。それではいかんかの?」 「先程申し上げた通り今回の件、私は何一つ役には立てずあまつさえフーケに人質にされました。そんな私にはシュバリエを承る資格はございません。」 ルイズは真っ直ぐに問い掛けてきたオスマンを見つめてはっきりと言った。 そのルイズの言葉にさっきまでシュバリエの話に乗り気だったキュルケが一歩前にでてチラリとルイズに視線を送ると高飛車に微笑んだ。 「では私もシュバリエのお話、辞退させて頂きますわ。元々私はルイズが行くと言ったから参加した訳です…私だけとは行きませんわ。」 「同じく。」 タバサもキュルケに便乗して小さく言う。 「なんと、君達もかね…?」 オスマンはルイズに続いて二人に驚愕し、目を見開いた後で心底満足そうな表情を浮かべる。 「あい、分かった。その素晴らしい高潔な精神を持つ君達こそ真の貴族じゃ。さて、それでは今夜はフリッグの舞踏会、フーケを見事捕らえた君達の手柄皆に聞かせるとしよう。今夜の主役は君達じゃ。」 オスマンが言って話を終わらせると人一倍舞踏会を楽しみにしていたキュルケは「そう言えば!おめかししなきゃ!!」と思い出した様に言ってタバサの手を引き学院長室を慌てて出て行った。 「それじゃあミント私達も行きましょう。」 ルイズはミントに声を掛け、学院長室のソファから立ち上がろうとしたがミントは立ち上がろうとする気配も無くオスマンと机の上に安置されたカノンオーブに対して何やら胡散臭げな視線を送っていた。 「ミント?」 「ねぇじいさん、ちょっと聞きたいんだけどさ紅蓮の宝珠…ていうかカノンオーブ、あれどこで手に入れたの?あれはあたしの世界のマジックアイテムよ、ハルケギニアに同じ物があるとは思えないわ。」 ミントの言にオスマンは興味深げに髭を摩る。 「あたしの国故郷では無く世界とな?」 「あの…オールド・オスマン実は…」 ここでルイズはミントの同意の下、オスマンにミントの正体と召喚されてからの経緯を説明した。 「…成る程のぅ…ふむ分かった送還方法については儂の方でも調べておこう。しかしまさか異国の王女殿下じゃったとは世の中何が起こるかわからん物じゃのう…」 「すいません!!」 話を聞き終えたオスマンは流石に頭を抱えた…その向かいの席でルイズは心底申し訳なさそうにオスマンに頭を下げる。 「で、カノンオーブはどこで手に入れたの?」 「おぉ、そうじゃったな。あれは十数年前に儂が偶然ふらりと立ち寄ったある村で貰ったんじゃよ。 村の守り神の石像に固定化を掛けて欲しいと請われたので引き受けたのじゃがその礼にと依頼主の老人が儂に寄越したのじゃよ。 曰く世に二つと無い炎の宝玉だと言ってな…成る程、異世界のマジックアイテムならば確かに唯一無二じゃて…」 オスマンは懐かしむ様に言って手の上に乗せたカノンオーブを見つめた。 ミントはオスマンの話に表情を渋くする。 今度はカノンオーブを差し出した老人がどの様な経緯でそれを手にしたのかが分からない。そもそも価値が分かっていたならそうホイホイ他人には譲らない筈だろう… しばらく考えたがそれも取り敢えずは意味が無い事だと結論づけてミントは一つ溜息をついた… この後ミントはオスマンから左手のルーン『ガンダールブ』についての簡単な説明と帰る方法が見つかるまでの間ルイズと共に居て欲しいという話を聞かされた。 是非も無い…ミントの帰還にはデュープリズムとルイズの力は絶対に必要なのだ。 ミントはそんな事はおくびにもにも出さず交換条件として遺産もしくはそれに準ずる物の情報提供をオスマンに要求して学院長室から離れた。 「あ~…疲れた。今日は早く寝よっと…」 ルイズと共に部屋への通路を歩きながら疲れた様子でミントはそう漏らす。 「はぁ?今日はフリッグの舞踏会よ。あんたも主役なんだから絶対参加。ほら急いで!」 「えぇ~…」 ルイズに手を引かれながらミントは露骨に顔をしかめた後、花の様なルイズの笑顔に観念したかの様にぎこちない笑顔で共に走り出した… 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8821.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第二十二話 『帰還~邂逅』 ____ 魔法学園 中庭 『やめろっやめろ~!!やめっ!!!ギャアァァァァ~~~……………………!!!!』 魔法学園の平和な昼下がり…静寂を引き裂いて響き渡ったのは男の絶叫と一発の落雷の轟音。 「別に吸収出来るんなら良いじゃ無い。…で、実体を伴った衝撃までは消しきれないみたいだけど電撃何かは問題なしね。 これであたしの魔法も一通り試したけどあんた意外とやるじゃない。」 アルビオンでその真の姿を見せたデルフリンガー…ミントはその力をこの数日で試していた。友人となった他のメイジの魔法、自分の魔法。全て例外なくデルフリンガーは吸収してみせる。 相変わらず記憶は曖昧な為ブリミルや生きた古の情報は得られなかったが… 「褒めてくれるのは嬉しいがよ相棒。お前さんほんとやる事が無茶苦茶だぜ。何て言ったっけか?あの黒い大球『グラビトン』か…あれは流石の俺様もへし折れるかと思ったぜ。」 「何言ってんの、折れてないんだから良いじゃ無い。」 「ひでぇぜ相棒。」 「あ、居た居た。ミント~!!」 地面に突き立てられたデルフリンガーを引き抜きながらミントが満足そうに笑っていると少し離れた所からミントの名を呼びながら誰かが連れだって中庭へと歩いてくる。 「ん?キュルケとタバサじゃない。どしたの?」 「へっへ~、面白い物手に入れたからあんたに見せに来たのよ。きっとあんたこういうの好きだと思ってさ。」 言ってキュルケは近くに備え付けられたテーブルへと腰を落として手にした羊皮紙の束をミントに見せつけるようにひらひらと遊ばせる。 その直ぐ隣に腰掛けてタバサはいつもの如く本の世界へと意識を落とす。 「地図?」 「そっ、実家の息が掛かった商人から買い取ったお宝の地図。」 「お宝っ!?」 ルイズ、ミントがアルビオンでの任務を終えて魔法学園に帰還して一週間が経った。 あの後無事に帰還を果たしたルイズとミントはアンリエッタにはラ・ロシェールまでの道中からアルビオンで起きた全てを報告した。 アンリエッタは残酷な事実とウェールズの死に悲しみに暮れるように泣いたが既にレコンキスタの薄暗い陰謀が迫る以上事態はそれを許しはしない。嫌が応にもこの危機に立ち向かわなくてはならない。 「アンリエッタ…あたしがウェールズから貰ってた風のルビー、あんたにあげるわ。 その代わりと言っちゃ難だけど『遺産』『ヴァレン』『エイオン』『デュープリズム』これ等について調べて貰える? それとあたしが帰る為に貴女の力が必要な時は協力してもらいたいの…」 「勿論です。ミントさんはわたくしの為に危険を冒してまで尽力して下さった大切なお友達。今度はわたくしが手を貸す番です!!」 「アン…」 「ミントさん…」 そんなやり取りの結果ミントは当初の目論見通り、王女の全幅の信頼を手に入れた。望めば始祖の秘宝すら借り受ける事も可能だろう。 おまけに抜け目ないミントはアンリエッタに一筆を書かせることにも成功した。 【 この書を持つ女性ミントは王女アンリエッタ・ド・トリステインの盟友にして大恩ある恩人であり、その身は王家とヴァリエール家にて保証をする物也。 故に王女の権限においてこの書を持つ女性の活動に対し諸貴族は最大限の便宜を図るようお願いする物也。 アンリエッタ・ド・トリステイン 】 そんな常識外れな書を背中の鞄に収めてミントは今キュルケの手にした宝の地図に瞳を輝かせて注目する。 「タバサと何日か授業サボって宝探し行こうと思うんだけど、どうするミント?」 キュルケはミントの返答がわかりきった事を聞きながら悪戯に口角をつり上げた。 「行くにきまってるじゃない!!このあたしに掛かれば宝探しなんてどうってことないわ~!!」 「フフフ…だと思ったわ。やっぱり声かけて正解だったわね。」 「ルイズの許可は?」 揃ってノリノリで握り拳を天に振り上げたミントとキュルケにタバサがぽつりと呟くように問い掛ける。 「あ~そんなのいい、いい。そりゃ一声位はかけるけどあたしが行くって言ったらそれはもう決定なの。 ルイズ自身は腕の怪我もあるし何よりアンリエッタの結婚式の祝詞っての考えなきゃいけないからどうせあの子は図書館や自分の部屋に缶詰よ。あたしには関係ないわ。」 ___ ルイズ自室 「あ~…もうっ!!全ッ々思い浮かばないわっ!!」 備え付けのテーブルに座って白紙の書物と向かい合い、ルイズは降って湧いた名誉でありながらも厄介な事案に嘆きながら自慢のピンクブロンドの髪を掻き毟って項垂れる。 と言うのも数日前、ゲルマニアとの軍事同盟締結の為、アンリエッタ王女と皇帝アルブレヒト3世との結婚式がおよそ一月後に行われる事に決まった。 だが、アンリエッタからの直々の依頼によって伝統である祝詞の巫女にルイズが選ばれた。 それは良い、しかしオスマンを通じて渡された秘宝【始祖の祈祷書】は表紙以外は全て白紙という驚愕の仕様で秘宝と言う事で食いついたミントも一目でガラクタと断じた代物だ。 本番ではルイズは祈祷書を手に、あたかもそこに祝詞が記されているかのように自分で考えた詩を読み上げなければいけない。 そして、ルイズには残念ながらそう言った詩を謡う才能が決定的に無かったのである。 「うぅ…誰か助けて…」 ルイズは一人自室で誰とも無く恨めしげに助けを求めて深く溜息を溢す。因みにミントはルイズに対してはっきりと面倒だから手伝う気は無いと伝えていた。 ___ 中庭 「で、他には?あたし達だけなの?」 「一人メイドを連れて行くわ。偶然お宝の隠し場所の近くに実家がある子が居たから連れて行く事にしたわ。聞いてみたら地理にも明るいみたいだし、私達の食事の世話もして貰わないといけないしね。」 「へ~それは助かるわね。あ、それとそういう雑用なら一人連れて行きたい奴がいるんだけど大丈夫かしら?」 旅慣れているのかキュルケの以外に周到な段取りにミントは感心する。そしてミントの頭に一人お供として連れて行くのに最適な人物の顔が思い浮かんでいた。 「美少女に囲まれて冒険の旅だなんて…きっとあいつ泣いて喜ぶわよ~。」 ミントは言いながらにんまりと意地悪く微笑みを浮かべて食堂脇のテラスを見やる。 そこにはやはりというかこの後訪れる不幸などつゆ知らず、恋人であるモンモランシーと談笑しながら優雅に午後のティータイムを楽しむ男子生徒の姿があった。 「…少しだけ同情するかも…」 キュルケはそんなミントの視線の先に居るギーシュ(生け贄)のこの先の苦労を思うと思わず苦笑いを浮かべた。 ___ ウェストウッドの森 所変わってここはアルビオン大陸、サウスゴーダの街の外れにあるウェストウッドの森…今、この木々生い茂る深い森をローブを纏った一人の人物が歩いていた。 「ハァ~…ようやく戻ってこれたよ。ティファは元気にしてるかね~。」 独り言を呟きながら歩くのはかつてミス・ロングビルと呼ばれ、土くれのフーケを名乗り、マチルダ・オブ・サウスゴーダの名を隠した年…妙齢の女性。 「まっ、ラ・ロシェールの闘いであたしもレコンキスタから上手い事抜けられたしね、あのガキ共にしてやられたのは癪だけど御陰でこうやってここに戻って来れたってんだからあれも結果オーライって所だね…」 思い出すのはラ・ロシェールでのキュルケ、タバサ、ギーシュの三人を相手取ったあの夜の闘い…作り出した巨大ゴーレムは尽く氷と落とし穴の嫌がらせや足止めに会い、雇った傭兵は気づけば全滅。 マチルダの精神力が底を尽き始めた辺りで熱疲労と油の練金の合わせ技によってゴーレムを一気に崩され、最終的には意表を突いて風龍の背から飛び降りるように勢いを乗せて放たれたタバサのドロップキックでゴーレムの肩からぶっ飛ばされてしまった… 「あ~~~~っ!!!…思い出すだけで腹が立つ!!」 マチルダがそこまで思い出して一人森の中でストレスを発散するように叫んでいると不意に森の奥から人の気配を感じとり足を止める。 マチルダが今目指しているウェストウッド村はまだまだこの先でそこの住人というか子供達はこんな森の入り口付近にまで一人で出ては来ないよう教育されている。 「そこに居るのは誰だい!?出てきな!!」 マチルダは言ってタクト状の杖を抜いて油断無く構える。すると進行方向に生えていた桃林檎の木の陰から一人の男が静かに、だが堂々と姿を現した。 「(仮面?怪しい奴だね…)何者だい?」 マチルダの行く手を阻むように現れた男は主に目鼻を隠すような黒い仮面を付けていた。マチルダはつい最近共に仕事をしたあのいけ好かない白い仮面のメイジを思い出して警戒心をむき出しにする。 「悪いが名乗るつもりは無い。小娘、私はこれより先にはお前を進ませる訳にはいかん。 悪い事は言わん、このまま立ち去るならばそれで良し。立ち去る気が無いのならばこちらも少々強引な手をとらせて貰う。」 男の言葉にマチルダの表情は強張った… マチルダには自分がティファニアの元に帰る事を邪魔しようとする人物が居る事に心当たりがある。脱走まがいに抜けたレコンキスタの追っ手か…フーケ時代の追っ手か…それとも直接ハーフエルフのティファニアを狙う人物か。 マチルダは知らなかったがこの仮面の男こそは先日ティファニアが召喚した人物、ルシアンだ。そしてルシアン自身もマチルダの名前こそティファから聞いていたが目の前の怪しい女がそうとは知らない。 いわばこれは不幸なすれ違いによる事故なのだ。 「引く気は……無さそうだな。よかろう…」 マチルダの様子に引く気が無い事を悟り、ゆらりと流れるような動きでルシアンは戦闘態勢に移行して軽く足を肩幅に開き半身を前にだす。 (こいつ…強い!!) マチルダはその一動作だけでルシアンから発せられるプレッシャーを感じ、一瞬でルシアンの力を感じ取る。 伊達に荒事に身を置いていた訳では無いが杖すら持たずただ立っているだけでこれ程の威圧感を感じるなど尋常では無い。これが盗みの仕事なら逃げている所だ。だが、マチルダにはここで引く訳にはいかない理由がある。 次の瞬間、杖を振るったマチルダの足下の土は一気に隆起し、巨大な人型を形作りマチルダを肩に乗せた。これこそがマチルダの十八番の巨大ゴーレムだ。 ルシアンはマチルダのゴーレムが完成するまでの時間その様子を興味深げにただじっと見つめる。 「悪いけど、私の邪魔をするなら潰れて貰うよ!」 マチルダの意思に呼応してゴーレムがその豪腕を振り上げてルシアンへと一気に振り下ろす。しかし、ルシアンはそれに対して回避等の行動は一切行わなかった。 「わが魔力に挑むとは……無謀の極みだな。」 その代わり、ただ一言言って自らの左手をゴーレムの拳に向けて突き出し、手の平に魔力を集中させる。次の瞬間、それだけでゴーレムの拳はまるで何かに阻まれるようにルシアンの眼前でピタリと止まった。 「嘘、そんなっ…バカな!!一体何がっ!?」 どれだけ魔力を送り込んでもピクリとも動かなくなったゴーレムの上でマチルダは驚愕の声を上げる。ルシアンは杖すら持っていないし一言も呪文を唱えていない。ただ手を翳しているだけだ。 理解出来ないその現状にマチルダが混乱していると不意にゴーレムを押さえつけていた強力な力が消え去り、そのまま慣性に従いゴーレムは地面に拳を突き立てる。 予期せぬゴーレムの動きにマチルダの視界は揺れ、一瞬自分の足下だけを映す事になる。 ルシアンがどうなったかも分からず、まずは状況を確認しようと慌ててマチルダが再び顔を持ち上げ前を向くとそこにはマチルダにとって信じられない光景が映り込んでいた。 「これまでだ。」 目の前には杖も詠唱も無く、纏った甲冑法衣の飾り帯を毒蛾の羽のようにたなびかせて浮遊するルシアンの姿。 (あぁ…こんどこそ私もお終いね…ごめんねティファ…) そうしてルシアンの掌が閃光を発したと思った瞬間、マチルダの意識はまさに手も足も出ないまま衝撃と共に途切れたのだった。 「…う…ぅ~…ん…」 「あ、ティファ姉ちゃんマチルダお姉ちゃん目を覚ましそうだよ。」 一人のまだまだ幼い少女が簡素な木製ベッドに横たわるマチルダが僅かに声を上げた事に気が付いてティファニアを呼ぶ。 「ん…ここは…」 ようやく意識を取り戻したマチルダはぼんやりとした意識のまま見慣れた天井を認識し、上半身をベッドから起こす。と、そこに突然暖かく柔らかな衝撃がマチルダを襲い再びその身体をベッドに押し倒す。 「マチルダ姉さん!!」 しばらく耳にしていなかったその最愛の妹の声にマチルダの意識は一気に覚醒した。先程森の中で怪しい男に敗れ、気を失ったというのに目覚めれば自分の目指した目的地に辿り着いているのだから意味が分からない。 「ティファ…」 それでもマチルダは甘えるように自分に抱きついてきたティファを強く抱きしめ返し、絹糸のような金髪を優しく撫でてやる。その感触は間違いなく今が夢幻であるという事を否定していた。 「どうやら目を覚ましたようだな。」 そんな水入らずのやり取りを行っていた二人に部屋の扉の側から声がかけられる。 その声の主は仮面を外し素顔を晒したルシアンであり複数の子供達に法衣の裾を握りしめられている。その姿を認めたマチルダは分からない事ばかりだと無意識に表情で語る。 「先程は知らぬとはいえ悪い事をした、素直に謝罪させて貰おう。手荒い真似をしてすまなかった。」 「いや…え?あんたは一体何者だい?」 「姉さんこの人は……………」 マチルダの当然の疑問、それに答えたのはティファニアだった。 召喚の儀式から村の一員になるまでの経緯、狩りや子供達への教育、悪意を持って森に入り込んだ部外者を捕まえてはティファの元に連れてきたりと様々な面でウェストウッド村を助けてくれていると言う事。 そして人間では無いと言う事も… 「成る程ね…」 ティファの説明にマチルダは頷いて納得する。 今更亜人の類いだから等で差別をする気も無いし周りのルシアンに対する態度を見れば不器用ながらティファや子供達に対してどれだけ真摯に誠実に相対してきたかは覗える。 「分かったよ。これからこの国も物騒になりそうだからね、あんたみたいな強い男が側に居るなら私も安心だからね。よろしく頼むよルシアン。」 「あぁ、こちらこそよろしく頼む。マチルダ。」 言ってぎこちなく笑ったルシアンと優しくも厳しい姉然としたマチルダは堅く握手を交わす。 こうしてルシアンとマチルダはこの仮面を必要としない平和な村で互いにティファニアと子供達を守るという理念の元、少々のすれ違いを経て邂逅を果たしたのだった… 「所で……ルシアン、あんたティファに手を出したらぶっ殺すからね…」 「いらぬ心配だな…だが、心得ておくことにしよう。」 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8775.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第十五話『ワルドのプロポーズ』 「止めて下さい!!死んでしまいます!!」 「痛い!!痛い!!」 「ありがとうございます。ありがとうございます!!」 すっかり日の暮れたラ・ロシェールへの街道沿いの崖の上に男達の悲痛な悲鳴と嬌声が響き渡る… 「ほら、ほらっ!だったら!素直に吐いて!!楽になりなさいよ!!何であたし達を襲ったのよ!?」 タバサ達と合流したミントは今先程捕らえた盗賊達を綺麗に横一列に並べ、自分達への襲撃について尋問を行っていた。 平手打ちにデュアルハーロウによる殴打、男の泣き所への容赦の無い蹴り… 既に何人かは泡を吹いて意識を手放していたり恍惚の表情でぼんやりとしていたりする。 「ハァ…ハァ…こいつら意外と口が堅いわね。」 ちょっと面白そうだからと言う理由でミントと同じく盗賊達を片っ端から平手でひっぱたいていたキュルケが盗賊の一人の顔をヒールで踏みながら顔を少し紅潮させ、舌で唇を艶やかになぞりながら呟いた… そう……この少女達はドSなのである。 「ん?あれは…」 そんな盗賊達への尋問を男として直視出来ず周囲の警戒を行っていたギーシュは上空に見覚えのある幻獣を発見した。 それは紛れも無く自分達を放って先を進んでいたワルドのグリフォンだった。 「………あんた達一体何してるの?」 崖の上に降り立ったルイズが周囲の様子を見回してミントに訪ねる…何故キュルケ達が居るのかというよりもこの盗賊達の死屍累々の光景が余りに意味不明だ。 ギーシュも何故か内股で怯える子犬の様に縮こまってしまっている様に感じるし… 何が行われていたのかは何となく察しが付く為、ルイズは若干引いていた…平行世界では嬉々として恋人に鞭を振るっていた癖にである。 「襲撃を受けたのよ。明らかに待ち伏せしてたみたいだから万が一もあるしちょっと尋問してたの。」 不機嫌そうなミントの言にワルドの表情が一瞬強張る…それはこの凄惨な光景から男として感じ取る部分があったというだけでは無い。 「ミント君、それは結構な事だが我々は先を急ぐ身だ。唯の物取りなど捨て置こう。そしてそちらの二名の淑女は誰なのかね?」 「あら、素敵なお髭の貴族様、ねぇ情熱はご存じかしら?」 「ツェルプストー!!ワルド様から離れなさい!!」 早速キュルケがワルドの腕に抱きつき、その豊満な胸を押し当てそのキュルケを引きはがそうとルイズがヒステリックに叫んでワルドの身体はガクガクと揺さぶられた。 「二人ともルイズとギーシュの友達よ、朝出て行く所見られてて付いて来たみたい。 信用は十分に出来るしあたし達の馬も逃げちゃったからラ・ロシェールって街まではこの子の使い魔に送って貰う事にするわ。」 ミントはそんなワルドに気を遣う様子も無く、そう簡単に説明して暗がりにも関わらず本のページをめくり続けるタバサを指さす。 「どうやらその様だな…仕方あるまい。さぁ、先を急ごう。それとミス・ツェルプストー婚約者の前なので誤解を招きたくは無い。済まないが離れて頂けるか…」 言いながらワルドはやんわりとキュルケの身体を自分から引きはがすと全員に出発を促した… 「オッケー…分かったわ。でもその前に…」 ミントは出発を促すワルドに肯定してどす黒いオーラを放ちながら再びゆっくりと盗賊達の前に仁王立ちする。 「最後のチャンス位はあげないとね。」 纏うオーラに反して猫なで声でそう言って笑うミント。それだけで盗賊達の表情はまさに恐怖に染まって引きつってしまう… 「ちょっ…待って!!本当に唯の物取りでぶべっ!!」 「も、もう勘弁してほしいっす!俺達はラ・ロシェールで雇われただけなんす!アルビオンの貴族派の仮面を付けた男…」 隣の同僚が失神し、遂にミントの尋問に耐えられなくなり本当の事を白状し始めた男、しかしその男は証言の途中で言葉を永遠に失う事になる… 「ひぃっ!!」 悲鳴をあげたのはその盗賊の仲間達、見れば証言を始めた男の喉は鋭利な刃物で深く切りつけられた様にパックリと裂けていた。 ミントの目の前で血しぶきを上げて痙攣しながらドサリと崩れ落ちた男の死体の向こうには感情のこもらない様な冷徹な目をしてレイピア状の杖を構えたワルド。 「危ない所だったね、その男ナイフか何かを使って縄を抜けていた様だ。最もらしい話で君の注意を引いて隙を狙っていたのだろう…本当に危なかったね。」 確かにワルドの言う通り男を拘束していた縄も改めて確認すると鋭利な刃物に切断されている様にほどけてしまっている。 まるで男の喉を掻き切った鋭い風の刃で切ったかの様に… 「……………………殺す必要は無かったんじゃないの?」 男の死体から目をそらし、ミントが不機嫌そうに言う… 「生かしておく理由もまた無いさ。彼等はどうせ縛り首になる。さて、後は憲兵の仕事だよ、そして僕たちは僕たちの仕事をしよう。……………それとミント君、あんなやり方じゃ引き出した情報も信憑性に欠けてしまう、尋問から抜ける為にありもしない話を作るかも知れない…何よりあのような尋問など女性のする事では無いな。」 そう最もらしい事を言って半ば苦笑い気味に微笑むとワルドはその場の全員に出発を促しルイズと共にグリフォンで飛び立った… ミントはそのワルドの背中を見つめ、先程の自分を説得して来た時と盗賊を殺害した時のワルドの目を思い返す… (誰かに似てる目ね…何か嫌な感じ…誰だったかしら?) 漠然とした記憶を手繰りながらワルドから感じた奇妙な感覚にミントはモヤモヤとしたもの感じながらも考えていても仕方ないと気持ちを切り替え、タバサ達と一緒にシルフィードの背中に乗り込んだ… 多少トラブルには見舞われたが予定どおりもうじきラ・ロシェールにたどり着けるだろう… ラ・ロシェールに辿り着いた一行は町の外の森にシルフィードを待機させ町一番の高級宿女神の杵邸のレストランにてルイズとワルドを除き食事と休息をとっていた。 因みにキュルケとタバサはついでとばかりに深く旅の目的は聞かずミント達に同行をしている。ミント達が無事この町を出るまでは観光でもしていくとはキュルケの談… 本来ならばルイズの婚約者であるワルドを誘惑してやろうと思っていたがキュルケはワルドにどこか酷く冷たい印象を受けてその興味をほぼ失っていたのだ。 「すまない、やはり船は明後日のスヴェルの夜までは出ないらしい。」 アルビオンへの船の手配にルイズと共に行っていたワルドがミント、ギーシュ、キュルケ、タバサの四人の元に戻って来るとお手上げだといった様子で肩をすくませる。 「迂闊だったわ…明後日がスヴェルの夜だったなんて…」 本来ならばこのままアルビオンへの定期船に乗って進みたかったのだが空を漂うアルビオン大陸がトリステインに最も近づくのはスヴェルの夜であり、基本的にその前後は燃料である風石の無駄になる為飛行船は出る事はまず無い。 「間抜けな話よね~…何の為にあたしとギーシュはあんなに急いで馬を走らせたのかしら。」 テーブルの上でへばるギーシュをちらりと見てミントはワルドに批難めいた視線を向けて嫌味をこぼす。 散々人を走らせておいた挙げ句の不手際の足止めである上、護衛の筈でありながら自分達が盗賊に襲われた時居なかった事も、その後の盗賊達への対応の事もあってはっきりいってミントはワルドに対しての評価を大幅に下方修正していた。 「それについては僕からはを謝罪するしか無い。本当に申し訳ないとは思う。さて、部屋の割り振りだが三部屋を確保できたからね。僕とギーシュ君、ルイズとミント君、キュルケ君とタバサ君の組み合わせになるが構わないかな?」 テーブルの上に鍵束を置いてワルドがその場の全員に尋ねると全員「OK」という素直な返事を返した。 「ただルイズ、君とは後で二人きりでゆっくりと大事な話をしたい。後で僕の部屋に来てくれ。」 「…わ…分かったわ。」 そう言って真剣な表情でワルドはルイズを見つめる。ルイズはその台詞と真剣な眼差しに顔を真っ赤に染め、小さく返事をしてただ頷くと俯いてしまった。 ワルドとしてはルイズと同室が望ましかったがルイズの使い魔であるミントは仮にも女の子であり一応VIPだ。ここでギーシュと相部屋で…等と言えば全員からかなりの批判を受けるのは自明の理である。それはワルドとしては避けたかった。 それ以前にそんな提案をしていたらミントの跳び蹴りが炸裂していただろうが… 「それで…大事な話って何、ワルド?」 ルイズは約束通り一人でワルドの部屋を訪ね、テーブルを挟んで向かい合う様にしてワルドと再会を祝した乾杯を交わしワイングラスを傾ける… 「君と僕のことさ…そして君の使い魔の事もね。」 意味深な表情でワルドは言ってルイズに微笑むとまるで子供におとぎ話でも聞かせるかの様な語り口調で話を始めた。 「君は始祖ブリミルの物語を知っているね?」 ルイズはえぇ。と答えて話の続きを促す。 「かつて始祖は四人の使い魔と共に東の砂漠へと聖地を目指して旅立った。そう、四匹では無く、四人のだ。 僕は君の使い魔が人であると噂で聞いた時、果たしてそんな事があり得るのかと興味を抱いてね、様々な資料を調べ直したんだ。そして今日君の使い魔のミント殿下を実際に見て確信を抱いた…」 ワルドは一層熱のこもった視線でルイズを見つめる。 「彼女のルーン…あれは間違いなくガンダールブのルーン、かつての始祖の使い魔の一角を担った伝説の存在だよ。 ルイズ、君は道中僕に自分は魔法が未だ成功しない落ちこぼれだと言ったね?僕が保証しようルイズ。 使い魔がメイジの格を示すなら君には素晴らしい才能が眠っているはずだ!きっと始祖ブリミルの様に歴史に名を残すだろう。」 熱く語るワルドの様子にルイズは正直困惑していた。悲しいかなコンプレックスの塊であるルイズがここまで他人に褒められ、ここまでの期待を掛けられた事は無いのだから。 「でも私は…」 ワルドはここで一度困惑した様子のルイズが落ち着くのを待って手を取って再び話を再開する。 「ルイズ、この任務が終わったら結婚しよう。」 「えっ?」 「忙しさにかまけてずっと君を放っていた僕だが君を想う気持ちはずっとあの頃のままだ。 僕はこのまま魔法衛士隊の隊長だけに治まるつもりは無い、いずれは国さえも動かす様な力を手に入れるつもりだ。」 ワルドは言ってルイズの身体を当然の様に抱き寄せ、唇を寄せた。だが顔を真っ赤にしたルイズはワルドの口づけを拒む様に身体を強張らせたままだった… 「あ、あの!ワルド様…結婚のお話嬉しいのですがあまりに急な話で私……それに私はミントを元の世界に戻すという約束も果たさなくては…」 やっとの思い出絞り出した様に慌てて早口にまくし立てたルイズにワルドは少し困った様な表情を浮かべるとルイズの腰に廻していた手を放した。 「ハハッ…急がないよ、僕は…」 そう言って優しくルイズに微笑むワルドは内心で歯がみした… ___女神の杵邸_修練場 ラ・ロシェールで一夜を過ごしたミントは翌朝朝一でワルドに呼び出されて女神の杵邸の中庭にある古い修練場に来ていた。 ワルドの用件はガンダールブとミントの魔法の力を実際に体験してみたいという事とアルビオンでの任務遂行の為の戦力の把握の為という名目での果たし合いだった。 そんな事は面倒くさいと普段のミントならば一蹴していただろうが思う所あってミントはワルドの誘いに乗る事とした。 既に一行は全員この場に居る。ルイズは話を聞いてこの場に来た時は何とかして果たし合いを止めようとしていたが当人達(主にワルド)に押し切られる形になっていた。 「無礼を承知で任務を確実に成功させる為、是非君の力を見せて欲しい。それじゃあ準備は良いかなミント君?」 ワルドは静かに風を切り裂く様にレイピア状の杖を抜き、ミントにその切っ先を向けると一分の隙も無い戦士の風格を纏った。 対してミントはワルドに向き直ると臆した様子も無くデュアルハーロウを構えるといつもの様に力む事無く構えをとる。 「いつでも良いわ。レッツバトルってね!」 その緊張感に思い出すのはあの年中金欠の赤毛の武器職人の戦士ロッド、思い起こせばカローナの街に居た時は随分と世話になった。(主に資金調達に。) 「…始め。」 立ち会いとしてその場に居たタバサの合図で二人の戦いは火ぶたを切って落とされる… 結果だけを言えばそう時間も掛からず決着は付いた。 ミントのバルカンを巧みなステップで回避し、一瞬の隙を突いたワルドの放ったエアハンマーの直撃を受けたミントが高く積まれた空箱等に叩き付けられ所で周囲が待ったを掛けたのだ。 「子爵、いくら何でも女の子のミントに対してやり過ぎですわ。大丈夫?しっかりしてミント?」 魔法が直撃し頭を打ったのかその場にフラフラと倒れ込んだミントを膝枕で支えるとキュルケがワルドを叱責する様に責め立てる。 「やり過ぎ…」 「子爵、僕も流石に味方内でこれはどうかと思います。」 そんなキュルケに便乗したのはタバサとギーシュ… そんなに強烈な魔法では無かった筈なのだがワルドは三人にミントを不当に傷付けた大人げない鬼畜貴族の烙印を押されてしまった。その為思わずたじろぎルイズへと助けを求める様に視線を送る。 「ミント!!大丈夫!?酷いわワルド!!」 だがルイズは目を回したミントに駆け寄るとワルドを批難する様な怒気を含んだ視線を向けていた… 「ち、違うんだルイズ、僕はただ…」 ワルド自身ミントに戦いを挑んだ理由は表向きな物とは別にルイズの気を引く為に使い魔よりも自分の方が強く、あてになると示したかったからである。 それが今回完全に裏目に出てしまった…フーケを容易く捕らえたと聞き及んでいたにも関わらず予想を遙かに超えるワンサイドゲーム、これでは弱い者苛めだ。 「子爵…ここは私達でミントを介抱致します。あなたは一旦ここをお離れになってはいかがですか?お互い冷静になるまで、その方がお互いの為ですわ。」 キュルケの冷たい口調の提案にワルドはミントの余りの手応えの無さに困惑しながら思わず唸る… 「分かった…済まない、ミント君が目を覚ましたら教えてくれ。」 だが今ここで空気を読まず、ルイズに自分の実力をアピール等してしまっては逆に嫌われるだけだろう。そこまで考えてワルドはミントの介抱をキュルケに頼むと足早に宿の外へと出て行った。 次いでルイズが宿の人間に水を用意させる為修練場からかけだしていく。 「行った?」 ここでついさっきまで意識を失っていたミントがなんの問題も無い様にぱっちりと目を開いて軽やかに飛び起きると髪を掻き上げてキュルケに訪ねる。 「行ったわよ。ていうか何でわざわざこんな芝居をうった訳?」 溜息混じりに答えたキュルケは特にミントが目覚めた事に疑問をもったりはしない。 何故ならばワルドから果たし合いの申し込みがあった後ミントはこの一連の流れを作る事を事前にキュルケ達にお願いしていたのだった。 「下手に勝ったりして王宮の人間なんて碌でもない奴らにあんまり目を付けられたくないのよ。それにしてもあいつ言うだけあって中々やるわね…」 ミントは悪巧みをする様に口元を歪めて言った。それは暗に本気ならば負ける通りは無いと言っている様でこの場に残った三人は思わず呆れてしまう。 「はぁ…全くワルド子爵には申し訳ない事をしてしまったね…」 (それによりにもよってあんな目をした奴に手の内見せる程あたしはお人好しじゃ無いのよ…) 昨夜ミントはルイズからワルドにプロポ-ズされたという話を聞きベッドの中でワルドに感じた既視感の様な物の正体を思い出していた。 ミントにはそもそもルイズなんかを望んで嫁に迎えよう等という考えが正気とは思えない。特殊な性癖でも無い限り必ず何か裏があるはずだ!! かつて東天王国の宮廷魔術師として三人の腹心を抱え国政から遺産管理、その他あらゆる面から妹マヤの側近として行動していた男がいた。名を『ドールマスター』 そう…ミントがワルドから時折感じ取れる冷たく嫌な印象はデュープリズムを自らの使命の為に復活させようと主君であるマヤを裏切った彼から感じた物に非常に酷似していたのだった。 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8724.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第二話『ルイズとミント』 「うぅ・・・カボチャが・・・はっ!!」 いつも何か嫌な目に遭うとミントは決まって大嫌いなカボチャに囲まれる夢を見る。 そうして思い出すのはあの陰険で陰湿なクソ生意気な妹マヤの姿。 「ここは・・・?」 最悪な目覚めの中意識を覚醒させたミントは自分がベッドで寝ていた事に気が付いた。 それは家出をしてからは久しく味わっていなかった天蓋付きの随分と上等なベッドである。 「気が付いたみたいね、ここはあたしの部屋よ。あんたが広場で倒れてから大変だったんだから、あの憎いツェルプストーにも借りを作っちゃうし・・・」 意識が戻ったミントの直ぐ横、ベッドに腰掛ける形でルイズは不機嫌そうに言う。 「・・・あんたがあたしを介抱してくれたわけ?」 「フンッ、使い魔の管理は主の役目だからね、当然よ。」 ルイズの口から出てきた『使い魔』という言葉に自分が気を失う直前のやり取りとルイズの唇の感触をを思い出したミントは眉をひそめて自分の左手を見た。 既に痛みも違和感も無い、あの痛みと熱さは一体何だったのか? (あれはノーカン。ノーカン。早く忘れましょっと。) 「で、その使い魔ってのは何な訳?いきなり呼び出されて訳も分からない内にこんな事になって。こっちは良い迷惑よ。きっちり説明して貰えるんでしょうね?」 ミントのその貴族への敬いなど一切感じられぬ言葉使いにルイズも一瞬眉をひそませるもそこは公爵家の娘として寛大な心で流すことにする。 「分かってるわよ、まずは昼間聞きそびれちゃったからね・・・あなた、名前は?」 「・・・人に名前尋ねる時は自分から名乗るもんよ。常識よ?」 「なっ!?」 思わぬ、だがもっともなミントの切り返しにルイズの言葉が詰まる。 まぁミントの事をよく知る人物がこの場に居ればミントの語る常識という言葉に耳を疑っただろう。 「分かったわよ、名乗ってあげるわ心して聞きなさい。 私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール トリステイン王国ヴァリエール公爵家の娘よ。」 腰に手を当て胸を張り、高らかに名乗ったルイズ。 (ふふふ・・・この使い魔私の名前聞いてさぞ驚くわよ。) しかしミントの反応はルイズの考えた物とは全く違った。 「ふーん、何かわかんないけどあんたそこそこ良い所のお嬢様なのね? 私はミント。『可愛くて格好いいミント様』でも『薔薇の様に美しいミント様』でも 何なら気軽に『ミント様』だけでも良いわよ。」 あろう事かヴァリエール公爵家の名前におののくどころか自分の事を様付けで呼べと言ってきた。 (え?何この平民?・・・え?) ルイズが僅かな時間思考を停止させている間にミントが言葉を繋げる。 「で、早速だけどルイズ、あたしにはやる事があるからあたしを元の場所に戻してくれる? 今回はそれで昼間の事も許してあげないでも無いわ。呼び出したのがあんたならそれ位 出来るんでしょ?」 「あぁ・・・それ無理。呼び出す魔法はあっても送り返す魔法は存在しないの。」 事も無げに言うミントに合わせてルイズも又さも当然のごとく軽く答える。 「なっ」 「なっ・・・」 「なぬ~っっっ!!」 二つの月に照らされた魔法学園の女子寮に一人の可憐な乙女の絶叫が響いた。 「無理ってどういうことよ!!ふざけた事言ってるとマジで跳び蹴りかまして泣かすわよ!!」 「無理な物は無理なのよ!!それよりあんたはもう私の使い魔なの!!諦めてさっさと ご主人様であるこの私に相応の態度をとりなさい!!これから誰があんたの食事や寝床を与えると思ってんのよ!!」 『『ワーワーギャーギャー!』』 ミントとルイズ、二人は言い争いを続けながら顔を寄せ合いうなる様に怒りの形相で互いを睨み付ける・・・ 二人の美少女が月明かりの中ベッドの上で触れ合いそうな程に紅潮した顔を寄せ合う。 だが不思議な事に何とも色気や情緒の無い光景である。 「もういいわ!!女の子なんだから特別にベッドで寝かせてあげようと思ったけど あんたは床よ!!床で寝なさい!!」 「嫌よっ!!何で王女のあたしが床で寝なきゃいけないのよ!!このベッドはあたしが貰った~!!」 「させるか!!この馬鹿使い魔!!」 熱い口論を繰り広げつつミントがベッドに勢いよくダイブし、ルイズも自分の寝床を奪われぬ様慌ててミントを布団から引きはがそうとする。 ミントの蹴りがルイズをベッドから叩き出せば、ルイズは毛布を力いっぱい引いてミントをベッドの上から引きずり落とす。 『『このヤロー!!』』 まさにくんずほぐれつ、二人の美少女が一つのベッドの上で夢中で息を荒げ、互いの身体に触れ合いその欲望をぶつけ合う・・・ なんと色気の無い事か・・・ そんなこんなでお互い途中で疲れて眠ってしまったのか気が付けば二人は仲良く 乱れたベッドの上で朝を迎えていた。 「完全に寝坊じゃないっ!あんたのせいよミント!!」 ベッドから飛び起きたネグリジェ姿のルイズは慌てた様子で怒鳴りながら鏡台の前で クシャクシャになった自慢のピンクブロンドの髪を櫛でとき身だしなみを整える。 「て言うかあんたがいつ頃起きるか何てそもそもあたしは知らないわよ。」 対してミントは慌てたそぶりも無く肩を窄めた。 着の身着のままハルケギニアに飛ばされたのだから仕方ない。 「服。」 「着てるじゃ無い?」 「そこの机の上に出してる奴!!取りなさいって事よ!!」 「分かってるわよ、冗談の通じない奴ね。」 ミントはまぁこれくらいの我が儘位は聞いてやるかとテーブルの上のブラウスとスカートをルイズに手渡す。 そして服を受け取ったルイズはミントを少々苛立たしげにじっと見つめて少し考えた後受け取った衣服をミントに押し返す。 「ミント、着替えるの手伝いなさい。」 これにはミントの細くてヨレヨレの頼りない堪忍袋の緒が切れる。 「あんた何寝ぼけた事言ってんの?嫌に決まってるでしょ?・・・あたしがそんな事するとでも思ったわけ?」 「使用人や使い魔が居る場合貴族は着替えはそいつ等にやらせる物なの。いいから早く。」 「ハァ・・・付き合ってらんない。あたし部屋の外で待ってるわ。」 ルイズとのやりとりに呆れた様に溜息一つ吐いてミントはすたすたとルイズの部屋から出て行こうとする。 「ちょっと!!待ちなさいよ!!」 「・・・一つ言っとくわよルイズ。時間が押してるんなら無駄な努力の前に 早く一人で着替えれる様になった方が良いわ。なぜならあたしは絶対にあん たの着替えなんか手伝わないから。」 嫌味たっぷりにそう言い残してバタンと音を立てて扉が閉まりミントの姿が廊下へ消える。 「・・・・・・あの馬鹿使い魔泣いて謝るまでご飯抜きだわ。・・・・・・絶対よ。」 ~廊下~ 「な・ん・な・の・よ!!あの子は!!」 一方ルイズの部屋の外、怒り心頭のミントが思い切り怒りをぶつける様に地面を足蹴にする。 「生意気で、我が儘で、捻くれてて、おまけに何なのよあのプライドの高さ!! ある意味マヤよりタチ悪いじゃ無いの!!同じピンクの髪ならエレナがどれだけ良い子 か・・・ほんとに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ。」 これまた自分の事を棚に上げた事をこの美少女は口走る・・・ 「エレナ心配してんだろうな~・・・」 ふと頭をよぎるのはクラウスの娘エレナの事、常に全力で走り続けるミントを尊敬し常に裏表無く屈託の無い笑顔を絶やす事の無いごく普通の平凡な女の子 そんな事をぼんやりと考えているとミントの視界の先、ルイズの部屋の隣の扉が開いた。 「あら、あなたはルイズの使い魔の・・・」 開いた扉から出てきたのはルイズの部屋のお隣さんの女である。 真っ赤な髪に健康的な小麦色の肌、ルイズやミントと比べて随分と妖艶な色香を放つワガママボディー、が特徴の女・・・ 当然のごとくミントと女は互いの姿を見留め、ごく自然に好奇心に駆られた女の方から興味深げにミントへと接触を図った。 「(でっかい乳ね~・・・)悪いけどあたしは使い魔なんて名前かじゃないわ。 ミント様って名前があるもの。」 ミントとて誰彼構わず喧嘩を売るわけでは無い、少々使い魔呼ばわりは不服であったが軽い挨拶程度には女に答える。 「それもそうね、失礼したわ。私はキュルケ。キュルケ・フォン・ツェルプストー、微熱のキュルケよ。よろしくミント。」 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8732.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第六話『東天王国第一王女』 「だったらあたしも魔法を使うわ。」 決闘を見守っていたルイズは我が耳を疑った… ミントがそう言った瞬間、握られていた二つのリングはその手を離れ その場でそのまま宙に浮くとミントの左手の掌を軸に不思議な事に高速で回転を始めた。 そしてその中心はあらゆる色の光が複雑に、又絶妙に混合された様な輝きが螺旋を描く様に蠢きながらミントの手に収束していく。 それを見てギーシュが、ルイズが、キュルケが、オスマンが…ミントの姿を見ていた誰もが共通した認識を抱く。 『あれは決して始祖の授けた系統魔法では無く全く異なる魔法だ。』…と そうして高速回転するデュアルハーロウを媒介にミントの手元の魔力の螺旋から光り輝く 『白い』魔力の弾丸がまるで弓矢を射る様にして連続して打ち出された。 白色の魔法タイプノーマル『バルカン』 ミントの魔法は元と成る各色の魔力に撃ち出す型を組み合わせて形作られる。 例えるならば弓とその番える矢をそれぞれ状況や目的によって切り替えるのだ。 今まさにミントがワルキューレに放った物はミントの扱う魔法の基礎の基礎、純粋な魔力の塊を弾丸にして射出しただけでである。 弾丸はゴーレムに衝突するとそのままその身をえぐり弾ける様に消滅した。 (貫通はしてないって事はほぼ青銅と相殺か…軽く撃ってこれってのはやっぱり異常ね…) ミントは崩れ落ちたワルキューレの残骸が動かなくなった事を確認し、やはり身体が軽いだけで無く魔法の威力まで上昇している事を確信していた。 どうやら今のでギーシュも混乱したらしく向かって来ていた6体のワルキューレも動きを止めている 「な…何だ…今の魔法は!?いや、それは魔法なのか?!」 ギーシュが我に帰ってワルキューレを散開させると、再びミントが魔法を放つ為魔力を集中させ始める。 魔力の螺旋の中心の輝きは今度は美しい『緑』 「さっき魔法って言ったじゃん。」 「おのれ、だがワルキューレはまだまだ健在だ。四方からの攻撃、今の魔法では対処出来まい!!」 ギーシュは冷静にさっきの魔法バルカンを思い起こし2体のワルキューレを自らの防御に回すと残りの4体のワルキューレを散開状態から一気に攻めへと転じさせた。 緑色の魔法タイプスーパー『インパルス』 四方から迫るワルキューレを十分に引き寄せ、引いた右手で魔法のトリガーを引く。 瞬間、魔力を帯びた風の刃がミントを中心に放射状に三度放たれた。 吹き抜けた風は圧倒的な切れ味を持って、迫り来るワルキューレ達の胴と足とを幾つにも切断し、その余波を持ってワルキューレを弾き飛ばすと周囲の野次馬の直前で霧散する。 「あんたさーわざわざ攻め手を宣言してどうすんのよ?」 その様に周囲の観客は信じられない物を見る様に一斉に沸き立つ。 「嘘!今あの子エアカッターを使ったわよ。」 キュルケもまた驚きながら隣に座ったままのタバサの肩を揺らして声をかけていた。 「似ているけどあれは違う…。」 風の優秀なメイジであるタバサは僅かに感じたミントの撃ち出した風の刃の違和感に戸惑いながらも分析を行う為ここでようやく視線を本から決闘の場へと移す事にした。 「ば、馬鹿な僕のワルキューレが…」 ミントの周りに転がる五体のワルキューレの残骸を見てギーシュは無意識に一歩後ずさる、最早ギーシュに余力は無い。 (あれだけの魔法、詠唱を行っていない様だったがどんなメイジも次の魔法を放つには僅かにでも時間が必要な筈。ならば…) ギーシュは残された2体の内1体に操作を集中させるとミントへと一気に接近させる。 それなりに冷静な分析を行っての咄嗟の判断。 悪くは無い、だが甘かった… 剣を振りかぶったワルキューレはいとも容易くミントのデュアルハーロウの殴打でその剣を何処かに弾き飛ばされると次いで繰り出された必殺の飛び蹴りで再び地面を転がされる事になる。 デュアルハーロウの中心で光が『赤く』煌めく… 赤色の魔法タイプワイド『バレット』 倒れたワルキューレはミントの追撃に放った地面で燃え上がる火柱に焼き尽くされ土へと還る… 「これでラスト!!」 そして間を置かずだめ押しとばかりにミントは叫ぶともう一発魔法を撃ち出す。 黄色の魔法タイプパワー『ボルト』 魔力の解放と耳をつんざく轟音と共にギーシュの直衛に付いていた最後のワルキューレの頭上に降り注いだ一発の強烈な落雷。 ミントの扱う魔法の中でも最大級の威力を持つ雷を一切の容赦なく放たれたのだ。 当然の如く最後のワルキューレも一瞬の内に焼き尽くされ崩れ落ちる。 (嘘…) ルイズはその光景を未だ信じられなかった。 自分の召喚した生意気な平民の少女が今目の前で魔法を行使しあの青銅のギーシュを圧倒しているのだ。 そしてミントの扱った魔法は正体不明な物と風、火、雷の三つの四種。 少なくとも雷の魔法は風のメイジの中でもスクウェアクラスで無くては扱えない筈、使用した魔法がインパルスとボルト、その二つだけであったならミントは実は風のスクウェアメイジだったと言う事で話は纏まるというのにますますルイズの頭は混乱していた。 「まだやる?」 「……あ…」 デュアルハーロウを構え魔力を集中させたままミントは絶句して目の前のワルキューレの残骸を見つめるギーシュに問いかける。 最早その場に居る誰が見てもギーシュの敗北は明らかだった。 「ま…参った。僕の負けだ…」 力なく膝を折ってそう宣言したギーシュに決着を認めた周囲の生徒達から歓声が起きる。 そうしてやっとデュアルハーロウを手放してミントはゆっくりとギーシュに歩み寄り、 その肩を優しく叩いた。 「さ、立ちなさい。あたしに魔法使わせたんだからあんた大したもんよ。ほら、立ってしゃんとしなさい!」 その健闘を讃える様なミントの優しい言葉にギーシュは顔を上げて促されるままに立ち上がった。 「あぁ、ありがとうミス・ミントこの決闘僕の完敗だよ。 そして先程までの君への暴言を全て撤回させて頂く。みんなこの決闘僕の負けだ!!」 いっそ清々しいまでの敗北にギーシュは吹っ切れた様に高らかに薔薇を掲げて自らの敗北を観衆の中で宣言した。 敗北を受け入れるのもまた決闘に敗れた貴族の誇り、そんなギーシュを表だって貶す人間はそこには居なかった。 そうしてここにヴェストリの広場の決闘は決着を迎えたのだが… ミントはそんなに甘くはなかった。 今の間にいつの間にか歩いてギーシュから10メイル程距離を取っていたミントが惜しみない拍手に包まれているギーシュに向かって突然大きな声で呼びかける。 「ギーシュ・ド・グラモン!歯を食いしばりなさいっ!!」 「えっ?」 何事かと静まり返る広場、振り返りミントを見ようとしたギーシュ、全速力の勢いを乗せて跳躍したミント… 次の瞬間ギーシュの視界に映ったのはやはりミントの靴の裏だった。 「ぶへぇぇぇっっ!!!!!」 鈍い音と共にワルキューレもかくやと言う程にボコボコになったギーシュがヴェストリの広場に転がる 「…な…何で…」 辛うじて訪ねた後静かに事切れたギーシュに再び歩み寄るミント 「決着は勝者が降参を認めた場合って決まりでしょ?あたしまだあんたの降参認めて無いじゃん。」 肩を窄めてそう平然と言ってのけるミントに周囲の生徒達の顔から血の気が引く… それは周りのルイズも同じだった。それはいくら何でもひどすぎる。 「ちょっと待ちなさーい!!」 ここで決闘が始まってから沈黙を守っていたルイズが必死の形相でミントに駆け寄りその胸ぐらを掴み上げる。 「いくら何でもやり過ぎよ!!この馬鹿!!」 「別に良いじゃない?こいつだって唯じゃ済まさないって言ってたんだからこれ位覚悟の上よ。」 「とっくに降参してたでしょうが~!!」 「ルールとしては問題なかったわ。」 ギャンギャン吠えるルイズに開き直りのミント二人の口論が続く中、ギーシュは友人達とモンモランシーに引きずられる様にして医務室へと運ばれていった。 ___学院長室 「勝ちおったのう。それもあっさりと…どう見る?ミスタ・コルベール。」 オールド・オスマンは再び遠見の鏡に布を被せて椅子に深く腰掛けるとコルベールに意見を求めた。 「あの見た事も無い魔法、彼女がかなりの実力をもったメイジであると言う事は覗えました…」 コルベールは頭を捻りながらミントの魔法を思い返す。 「うむ。しかしガンダールブはかつて武具を操ったと伝え聞く… 確かにあのリングの様な武器でゴーレムを打ち据えはしたが殆ど魔法で仕留めよった。 分からん事が多すぎるのぅ…これは近い内直接訪ねる事になるかのぅ?それにしても…」 「えぇ全く…」 『とんでもない少女じゃわい(ですな)。』 ___ルイズの部屋 決闘騒ぎの直ぐ後、ミントは強引にルイズの手によって部屋へと引きずり込まれると 周囲の反応などから覚悟はしていたがやはり質問攻めの憂き目に遭っていた。 ルイズとしては問いただしたい事は山の様にある。だが、先ずは確認しなければならないのはミントが何処かの貴族の娘であった場合の処遇だ。 これが他所の国の有力者の娘なら最悪の場合国際問題になってしまう。それはまずい。 「ミント、先ずは確認するけどあんた魔法が使えるって事はまさか貴族なの?」 なるべく平静を装いながらルイズはテーブルの向かいに座るミントに問いただす。 「あぁ魔法が使える=貴族のトリステインの感覚で言えばあたしは少し違うわね。」 ミントの返事にルイズは露骨に慎ましい胸をほっと撫で下ろす。 「なんだ…メイジだけど貴族じゃ無いなら私の使い魔で居て貰う「あたし王女だからね。」」 ルイズの言葉を遮りここに来て初めてミントははっきりとルイズに自分の身分を明かした。 「はぇっ?」 「あたしは魔法国家東天王国の第一王女だからそうね…やっぱり王族になるかしらね。ここもトリステイン王国って名前なら王族が統治してたりするんでしょ?」 「えっ?…えっ?王族?王女って…えっ?」 ミントの発言のありえなさに混乱しルイズは呆然となる。 「まぁあたしもトリステインなんて名前聞いた事も無かった事だし多分相当にここと東天王国は離れてるんだと思うのよね。 あ、それと一応あたし家出中の身で面倒な事になったら困るからあんまり王女だって言い触らさないでね。 ってルイズ、聞いてんの?」 「ええぇぇぇぇっっ~~~~~~~~~~!!!」 驚愕によるルイズの絶叫は唯々女子寮塔に響き渡った。 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8824.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第二十三話『タルブと土鍋と時々カボチャ』 「うわぁぁぁぁ~~~~~っ!!!助っ!助けてくれっ~!!」 今ギーシュは情けない悲鳴をあげながら全力で木々が生い茂る森の中を走っていた………そう、三匹のオーク鬼を引きつれて。 「何で僕がこんな……目にぃっ!?」 そもそもこんな事になった理由はキュルケがミントを宝探しに誘い、そのミントがギーシュを半ば無理矢理拉致するかのように宝探しに連れ出したのだ。 ギーシュは魔法学園の中でもミントとは付き合いの深い方に入るしルイズとオスマンを除けばミントが異世界の王女だと知る唯一の人物だ。だが、だからこそミントが良い笑顔で自分を誘った時嫌な予感しかしなかった。 無論、拒否と抵抗を行ったがミントに通用する筈も無く問答無用で連れてこられ、今は宝が眠る寺院からオーク鬼を誘い出す為の囮をやらされている… 死にものぐるいで予定地点に辿り着いたギーシュが落とし穴の目印をなんとか飛び越えるとそれを追っていたオーク鬼達は次々とヴェルダンデによって掘られ、タバサの水魔法によって沼と化した落とし穴に下半身を飲まれた。 「お疲れ様です、ミスタ・グラモン大丈夫ですか?」 肩で息をするギーシュにハンカチを差し出し、労いの優しい言葉を掛けるのは身の回りの世話とガイドとして付いて来たシエスタ。 「あ…あぁ、何とかね…後は…」 ヘトヘトになりながらもギーシュは何とか呼吸を整え、自分のやり遂げた仕事の成果を確認する為、沼の落とし穴に填まったオーク鬼に視線を向ける。 藻掻きながら落とし穴を抜けようとするオーク鬼の眼前にミントとキュルケが木の枝の上から飛び降り、ようやくその姿を現した。 「フレイムボール。」「フレア。」 二人の手によってそれぞれ同時に放たれた二つの大火球が身動きが取れないオーク鬼を無慈悲に焼き尽くす。 ___ 寺院内部 「で…結局見つけたお宝は…」 「銀のコイン一枚と古いだけのネックレス…」 批難めいたジト目でキュルケを見つめるミントにタバサが本を手放さぬままポツリと答える。 既に7カ所も巡ったというのにこれといった成果が無い事に露骨に項垂れる一行、因みに今更ながら一行の内訳はミント、キュルケ、タバサ、ギーシュ、シエスタ、後は三人のそれぞれの使い魔である。 「んもうっ、分かってるってば!!次よ次で最後だから。次こそ本命なの!その名も『巨人の土鍋』これに関しては実在が確認されてるのよ!!ね、シエスタ!!」 と成果の上がらない今回の冒険の立案者であるキュルケは些か勢いでバツの悪さを押し切り、夕食の鍋をお玉でゆっくり丁寧にかき回していたシエスタへと話を振る。 「あ、はい。ミス・ツェルプストーの仰る通り巨人の土鍋は私の田舎のタルブ村の祠に祀られています。村のみんなは土鍋様って呼んでますけど…アレはお宝って言うよりは変な石像って感じの物で、価値があるようにはとても…」 言ってシエスタは苦笑いを浮かべる。その言葉にミントとキュルケのテンションがグッと下がった。 「あっ、ですがタルブは上質なワインが名産でとても喉かな良い所なので立ち寄られるならば折角です精一杯お持て成ししますので、ゆっくりしていって下さい。」 屈託無く微笑むシエスタに一同は「まぁ、観光みたいだけどそれも良いか。」と軽い気持ちでタルブ村へと向かう事に決めた。 ちなみにギーシュはこの間疲れ果てて眠っており、寝言で「もう帰りたい。モンモランシーに会いたい、帰りたい…」と魘されるように繰り返していた… ___ タルブ村 「皆さん、こっちでーす。」 向日葵の様な明るい笑顔のシエスタが村の入り口、門の下で大きく手を振って一行を呼ぶ。シエスタの案内を受けてようやく一行はタルブの村へと到着した。 「まぁ予想はしてたけど、何て言うか牧歌的というか…はっきり言って超が付く田舎ね。」 「…君はそういう事を本当にばっさり言うね。」 「まぁ良いじゃ無い。それに確かに田舎だけど村自体は豊かそうだわ。良い領主に恵まれてるのかしらね…」 シエスタに案内されつつそれぞれ好き勝手な事を良いながら村の中をミント達は歩いて行く。 「はい、領主様の統治の御陰もありますが実はタルブには他には無い名産品があってそれが村の生活を支えているんです。」 「名産ってワインでしょ?何、そんなに珍しいワインなの?」 「僕の舌を唸らせるワインならば是非買って帰りたいね。」 鼻高々自慢げに語るシエスタにワインに目が無いキュルケとギーシュが瞳を輝かせて食いつく。 「いえ、ワインも確かにそうなんですがもっと変わった物ですよ♪あ、ほらあの右手の畑に見える…「ひぃっ!!!!」」 話を続けていたシエスタが右手の民家の畑を指し示した所、ミントの今まで誰もが聞いた事の無い様な情けない悲鳴でシエスタの言葉を遮った。 「カ……カボチャ…」 ミントは完全に忘れていた… 確かに聞いていた…以前シエスタと初めて顔を合わせた時にシエスタ自身から故郷のタルブの名産がミントがこの世で最も嫌いなカボチャであるという事を… ミントは手で口元を押さえて怖じ気づいたように二、三歩後ずさり必死に思考を巡らせる。 (何で!?何でよりにもよってアレが名産なの?ていうかアレ、間違いなくアレよね…) 目にしたカボチャが唯のカボチャならミントも此処までうろたえる事は無かっただろう。しかし、目の前に見える畑で丸々と実った巨大なカボチャはどう見てもミントには馴染み深いこの世界にあるはずの無いカボチャに見えた。 「あ…あの、ミントさん?」 明らかに様子がおかしいミントを心配そうに見つめるシエスタに対し、キュルケ、ギーシュ、果てはタバサまでが今まで見た事も無い大きさのカボチャに興味を引かれその足を畑へと向ける。 「うわっ、でっかーい!!何これ…手?」 「可愛い…」 「驚いたね…この大きさなら名産にもなるよ。しかしこのカボチャの模様なんだか顔と口みたいだね。」 ギーシュ達が注目したのはその大きさとカボチャの模様、オレンジの外皮に浮かんでいるその黒い模様はどう見ても口と目にしか見えなかった。おまけに非常に小さい申し訳程度に手の様な形に外皮が両脇に伸びている。 「その子達はお化けカボチャって名前でそういう風に顔がくっきり浮かぶと食べ頃なんですよー。でも、収穫せずに放っておくと畑から逃げていっちゃうんですよ~。」 「逃げるって…まさかこれ生き物なの?」 シエスタの説明にキュルケが驚いた様子で足下のカボチャを見つめる。 「一応そうでは無いんですが…私は種を遠くへ運ぶ為に頑張ってるんじゃ無いかって父から聞きました。」 「成る程…変なカボチャね。」 「何で…アレがここにあるのよ…」 シエスタ達が色々と会話に花を咲かせていた間、ガックリと四つん這いの姿勢で項垂れていたミントは目の前のカボチャをよ~く知っていた。 何故ならこのカボチャは間違いなくミントの世界で『パンプキン』と呼ばれる品種だったからである。 「おや、君達は?何故ここに…」 と、そんな一行の背後に突然学園で聞き慣れた、人の良さそうな男性の声が掛けられる。 『ミスタ・コルベール!?』 その声に振り返れば太陽の光を反射する眩しい頭が全員の目を眩ませる。そこに立っていたのは紛れも無く学園の教師コルベールだった。 ミント達は授業をサボっていた件について叱責を受けながらもコルベールとお互い何故タルブに居るのかを聞いてみる。するとコルベールも巨人の土鍋の噂を聞いてこの村を訪れていたのだと言う。 その日ミント達は村中の暖かい歓迎を受け、シエスタの実家に宿泊し翌朝巨人の土鍋こと『土鍋様』が祀られてい祠へと向かう事となった。 シエスタの家は村の中でも大きく、聞けばお化けカボチャを育てだしたのはシエスタの曾祖父らしく土鍋様も一応その家系の所有物に当たるそうでそこそこに裕福な家庭であった。 ミント以外はそこで名物のワインとカボチャのフルコースに舌鼓を打ち、それでもミントは頑なにそれらを口に運ぶ事を拒み続けた。 折角の料理を食べて貰う事が出来なかった事をシエスタは残念に思ったがミントのカボチャ嫌いっぷりはそれはもう凄まじい物であった。 ___ タルブの祠 翌朝、一行はやはりシエスタの案内の元にタルブの祠を訪れていた。それは祠といっても鍵の付いた独特の設計をした唯の木造の倉庫の様だった。 「これが、土鍋様の祠です。何でも私の曾おじいさんがお化けカボチャの種を持って土鍋様に乗って遠くの国からやって来たそうです。」 「ほう、やはり噂で聞いた通り巨人の土鍋は人を乗せて稼働していたのかね?」 コルベールはシエスタの説明に興味深そうに訪ねる。コルベールは趣味の域を超えてそういった動力機関などの研究を行っている。 最も周囲の反応は冷ややかな物であるが… 「はい、今はもう動かす事は出来ないのでそれが本当かどうかは判りません。でも土鍋様は今はこの村の守り神みたいな物ですから大切に祀られていて凄いメイジの方に固定化も掛けて貰っているんですよ。…お待たせして申し訳ありません、開きました。」 誇らしげにそう話しながらシエスタが扉の鍵を外し、その重たい扉を開いていく。 しん、と静まり返った薄暗い祠の中に太陽の光が入り込む。 露わになった安置されていた土鍋様の巨体に男のロマンを感じ取り、コルベールとギーシュはそれに子供の様に瞳を輝かせながらかけだしていく。 土鍋と評されるに相応しいずんぐりとした亀の甲羅の様なボディ、そこから前方に伸びる蛇腹の多節状の一対の腕、 後方にはプロペラに良く似た形状の足が、そして亀っぽい頭部には大きな水晶がモノアイの瞳らしき場所にはめ込まれている。 そして普段ならばコルベール達同様テンションを上げるであろうミントはその姿に色々と考えてしまう事がありすぎて珍しく呆然としてしまい、その場から直ぐには一歩も動く事が出来なかった。 「これは………むむむ………何と!!…素晴らしい…」 「何だ、この材質は!?土?岩?だがこの硬度はなんだ?」 ギーシュとコルベールは早速土鍋様に触れ、その未知の材質や構造に驚嘆し続ける。ただの石像などでは無い事がこの二人には判るのだ。 「何アレ?唯の石像じゃ無いの…いい年したおっさんがはしゃいじゃって。ごめんねミント、タバサ、付き合って貰ったのに結局全部大ハズレだったわね。…ってミントどうしたの??」 そんな二人の少年の心を露わにする二人に呆れながら溜息を溢したキュルケはふと隣に立つミントの様子がおかしい事に気が付いた…よく見ればその身体はワナワナと震えている。 「……大ハズレ?…いいえ…大当たりよ、キュルケ!!」 言ってミントは地面を蹴って飛び上がると華麗に土鍋様の背中に着地する。そしてその足下に刻まれているルーンと何かが以前填め込まれていただろうくぼみを確認して全てを確信した。 オスマンがかつてある村で石像に固定化をかけた際、カノンオーブを渡されたと言っていたがその話の舞台は間違いなくこのタルブ村で、パンプキンをこの村に持ち込んだシエスタの曾祖父は間違いなくミントと同郷なのだ。 そこまで考えてミントは決めた。 「シエスタ。」 「はい、何でしょうミントさん?」 「この巨人の土鍋!いいえ、この『ヘクサゴン』きっと動かせるわよ。あたしに寄越しなさい!!」 ビシリとシエスタを指さしてそう宣告するとミントは不敵に笑う。 『ヘクサゴン?』 同時にその場に居た全員がミントの口から出た謎の名称に首を捻った。 かつてベルとデュークによって使用されミントを苦しめた魔法兵器『ヘクサゴン』。 タルブの物はその二人が使用していた物とは別物の様であったがミントにとってこれはとてつもなく大きな意味を持った代物だ。 (ベル…デューク…) まさかハルケギニアに来てまでベルとデュークの事を思い出す事になろうとはミントも思っていなかったが不思議と今はそれも悪い気はしなかった。 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8725.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第三話『朝食を求めて』 「そう、よろしくキュルケ。ところで何?その微熱って。風邪引いてるんなら部屋でおとなしく寝てる事をお勧めするわよ。」 「え?・・・アハハ、違う違う微熱ってのはメイジの二つ名よ。私は炎のトライアングルだからね、どう驚いた?すごいでしょ?」 ミントの的外れな言葉にケラケラとキュルケが笑っているとキュルケの部屋から大型の赤い体表をしたモンスターがのそのそと表れ、キュルケの足下に寄り添う様に伏せる。 「何それ?モンスターみたいだけどあんたのペット?」 現れたヒトカゲに対してミントは敵意を感じる事も無い為腰を落として軽く頭を撫でてやるとヒトカゲも気持ちよさそうに目を細めた。 「あら?ペット呼ばわりはひどいんじゃ無い?一応あなたの同類なんだから。」 ミントの疑問にクスクスと笑ってキュルケは少々意地悪く切り返す 「同類?」 「そうよ、紹介するわね。私の使い魔のフレイムよ。」 キュルケに紹介されたフレイムは軽く上体を起こして口から炎をこぼし出した。 「メイジの実力を見たければ使い魔を見ろって言われるのよ。 でも驚いたわ~ゼロのルイズが呼び出したのがあなたみたいな平民だったんだから。」 (・・・って事はあのルイズって子相当な実力のメイジって事かしら?そうは見えないけど。) キュルケとミントがとりとめの無い会話を交わし親交をを深めているとようやく着替えが終わったルイズが苛立たしげな表情で廊下へと出てきてミントとキュルケを睨み付ける。 「あら、おはようヴァリエール。」 「おはようツェルプストー。」 お互い努めて冷ややかに朝の挨拶を交わす。 (ふーん・・・この二人馬が合わなさそうね。) 直感でそう感じたミントだったがまぁそんな事は自分には関係ないので知らんぷりである。 「じゃあねミント。私先に行ってるわ。」 「ん、じゃあね~。」 微笑みを浮かべながらミントに手を軽く振ってキュルケはフレイムと共に長い廊下の向こうへと歩いて消えていった。 「どういう事よっ!!」 キュルケが視界から消えた瞬間、ルイズはミントに怒鳴ると同時にその胸ぐらへと掴み掛かる。 「あの女はね、ツェルプストーはヴァリエール家にとって御先祖代々からの仇敵なの!! 怨敵なの!!それが少し目を離したら私の使い魔がへらへらと・・・どういう事よ!?」 ルイズのただならぬ剣幕にミントは少し呆れながらさして苦も無くその手をふりほどく。 流石にここまで一方的に来られると逆に冷静にもなる。 「はいはい、あんたの家庭の事情なんてそんなのあたしが知るわけ無いでしょう? それにお互い軽く挨拶してただけじゃん。あんたどんだけ余裕が無いのよ? 朝ご飯でも食べれば少しは冷静になるんじゃない?」 「くっ・・・食堂に行くわ。付いて来なさい。」 ルイズは俯きながらミントへの怒りにプルプルと肩を震わせながらマントを翻し食堂までの道を先導して歩く。 (何よ・・・何なのよこいつ!!) 対してミントは軽い足取りに何食わぬ顔で平然とルイズの後を付いて来ていた。 (ご飯♪ご飯♪そういえばカローナの街で食べたグドンの肝おいしかったのよねー・・・ でも流石にフレイムを捌いて食べるのはまずいか。) 『__!!??!』 「??・・・どうしたのフレイムいきなり震えて。」 唐突に襲いかかった何か得たいの知れぬ不安にフレイムがまさに肝を冷やしていたのは本蜥蜴以外誰も知らない。 ~アルヴィーズの食堂~ 「おー中々豪華な食堂ね。それに並んでる料理の質も量も良いじゃ無い! うん、あたしが食事をとるのには相応しいわ。」 大きなホール場の食堂に入った途端ミントは上機嫌に口元に両手を寄せて軽やかにステップで喜びを表現する。 「本来は貴族しか入れないんだけどあんたは私の使い魔だからね・・・ こっちよ、付いて来て。」 ルイズはミントとは対照的に無表情、抑制無く言ってずらりと並んだテーブルの間をずんずんと歩いて行く。 ルイズとミントは寝坊したため既に他の生徒の食事は始まっている。 ある程度進んだ所でおもむろにルイズは一つのテーブルへと馴れた様子で腰を落とした。 ミントもルイズに習って付近のテーブルに着こうとした、だがその周囲にはどう見ても空いている席は他には無い。 そうして空いている席が無いかミントが周囲を見回しているとルイズは一人でさっさと二言三言始祖への感謝とお祈りを捧げてミントを放置したまま食事を始める。 そのルイズの様子にミントはもしや・・・と思いルイズへと自分の中の疑問を一つずつ確認する事にした。 「ねぇルイズ、あたしはどこに座れば良いのかしら?」 「床にでも座ってれば?」 「ねぇルイズ、あたしの分のご飯はどこにあるの?」 「そんな物は無いわ。」 「ねぇルイズ、あんた昨日あたしの食事は面倒見るって言ってなかったっけ?」 「朝御主人様より遅く起きて、着替えの手伝いもせず、よりにもよって朝からツェルプストーなんかと仲良くへらへらお話してる様な使い魔に、私は食事を与える気は無いわ。 どうしてもというのなら今ここで今までの非礼をしっかり詫びてこれからの・・・「話にならないわね。」」 ルイズの言葉を遮り、ミントは大げさに肩を窄める。 「こんなに胸くその悪い経験させてくれたのマヤ以外にはあんたが初めてだわ。 いいわ、食事は自分で何とかする。それじゃあまた後でねご・主・人・様。」 つまらない物でも見るかの様なジト目でしばらくミントはスープを口に運ぶルイズの背中を見つめて食堂の裏口へと歩いて行く。 途中可愛らしく腹の虫は鳴ったが今はそんな事は関係ない。 力ずくでルイズを地獄巡りのボッコボコにするのははっきり言って簡単だしむしろ普段なら恐らく既にそうしている。 口より先に手が出る筈のミントさまが辛辣な言葉は口から出てくるがどうにも拳が前に出ていかない。 「ハァ~・・・」 食堂の外壁に背中を預けてミントは自分の中のモヤモヤとした違和感と空腹に盛大な溜息一つを溢した。 「ハァ~・・・」 ルイズは溜息と共にスプーンを手放して食事を早々に終了させる。 (私は悪くない。悪いのはあの身の程知らずな使い魔なのよ。) 自分に言い聞かせるも先程のミントの冷たい言葉に胸が苦しくなって何とも言えず、正直憂鬱になる自分が居る。 (折角使い魔の召喚に成功したのに・・・何なのよ。) ミントに対してキュルケに勝るとも劣らず腹が立つ事は間違いなかった。 だが正直認めたくは無かったが昨日の夜のベッドの取り合いや歯に衣着せない口論はアンリエッタとかつて過ごした御転婆な子供の頃を思い出す様で楽しかった。 それがまた悔しくてルイズは掴んだパンに一口、モヤモヤを吹っ切る様に行儀悪く噛みついた。 ~厨房~ 「いや~、おいしかったわありがとうシエスタ。マルトーさん。」 「良い食いっぷりだったよミント。そんだけ旨そうに食って貰えるんならこっちだって嬉しいぜ。まぁお前さんも貴族様の使い魔なんてこれから大変だろう、頑張れよ。」 「またいつでも来て下さい。困った時はお互い様ですから。」 厨房の中の一角にあるテーブル、その上に積まれた空の皿を前にミントは満足げにお腹をさすっていた。 事の経緯はこうである。 食堂裏口の辺りで項垂れていたミントにメイドのシエスタが声をかけ、空腹である事を伝えたミントをシエスタが厨房連れ込み、 ミントの口から語られる掻い摘んだ聞くも涙語るも涙の冒険の話からのルイズの極悪な扱い(盛りまくり)にコック長のマルトーが同情して今に至るわけだ。 「ま、多分食事関係じゃしばらく世話になると思うわ。あ、そうそうあたしの食事にはカボチャだけは絶対入れないでね。」 ミントがこの世で最も嫌いな食べ物がカボチャである。 元々食事の味付けにはうるさく、好き嫌いも多い方だがカボチャだけは別格で筋金入りだ、 何せ以前実家のシェフがカボチャ料理を食卓に出した際、ミントはそのシェフを本気で首にしようとしていた程である。 「ミントさんカボチャ苦手なんですか?私の故郷のタルブ村じゃワインと並ぶ名産なんですけど・・・」 「げっ、シエスタあたしあんたの故郷には絶対行かないわ。」 「わはは、ミント好き嫌いいってっとシエスタみたいに大きく成れねぇぞ?色々とよ。」 マルトーのセクハラ発言にシエスタは慌てて両手で胸を隠して顔を赤らめた。 「良いのよ、その辺も含めてエイオンの遺産を手に入れちゃえば万事解決ってね。 それよりセクハラは感心しないわよおっさん。んじゃ、あたし行くわ。 何かルイズはこの後は授業があってあたしも一緒に来る様に言ってたからね。 乗り気じゃ無いけどしばらくはここで情報集めたりしないと戻る事も難しそうだしね。 ごちそうさま。」 「おう。」 そう言い残しミントは椅子から立ち上がるとおいしい食事で元気を取り戻したのか走り出した。 「何だか変わった人ですね、ミントさんって。」 「だな。」 未だ気分の晴れぬままルイズは一人教室への廊下を歩いていた。 朝食の後は授業が有ってミントにも自分に付き添う様事前に言ってあったがミントが食堂から出て行った後はルイズはその辺で待っている物だと考えていたがそうでは無かったらしい。 勝手にどこかに消えてミントがどこに行って今何をしているかなど知らないし知りたくも無い!! 廊下ですれ違う他の殆どの生徒・・・その傍らにはそれぞれの使い魔が寄り添っている。 何だか魔法が使えないという事以上に今は自分の隣に使い魔が居ない事が惨めに感じてしまう。 「・・・まぁ居たら居たで腹立つんだろうけど・・・」 一人呟いて既に始業まで時間の無い廊下をルイズは歩いた。 「やっと来たわね、遅いわよルイズ。」 「・・・何でここに居るの?」 ルイズが自分の教室の前にたどり着くと意外にもそこには何故か既にミントが仁王立ちで待っていた。 「偶然出会ったキュルケに案内して貰ったわ。」 「どっか行ったんじゃ無かったの?」 うつむき加減に拗ねた様にルイズが言うとコツンッと何かが自分の額を叩いた。 それはいつもミントのリュックに引っかかっている二対の金のリング『デュアルハーロゥ』だった。 「何言ってんのよ、ちゃんと後でねって言ったじゃ無い?」 どうやらルイズは自分とのさっきの険悪なやり取りで少し落ち込んでいたらしい・・・ だからあえてミントはわざとらしい位にまるで一緒に居るのが当たり前だと言う様に振る舞ってやる。 「ふんっ!とにかくもう授業が始まるわ、とりあえず付いて来なさい。」 「へいへい・・・このミント様も丸くなったものだわ・・・」 「ミント、早く来なさいよ。」 少しだけ気持ちが軽くなったルイズが胸を張り教室へと入っていくのを見留てその後をミントは露骨にめんどくさそうに追いかけて行く。 この生意気な自称ご主人様は本当に憎たらしくて腹が立つ。 本当に。 (そういえばプリマの奴も最初はすっごい生意気だったっけ・・・) ふと、思い出すのは魔道師に作られた人形の少年の生意気な笑顔だった。 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8803.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第十九話『裏切りのワルド』 昨夜ルイズと喧嘩別れをしたままミントはニューカッスル城からの脱出準備の為城の中を駆け回っていた。 そう、火事場泥棒だ。 脱出船が出発する時間まではまだまだ余裕がある。それまでにありったけのお宝を回収しなければならないのだ。 (今頃結婚式始めてるのかしらね………風のルビーはルイズがウェールズから預けられるだろうし…ワルドが何か企んでるっぽいのは気になるけど。) 多少気にはなるが今は時間が無い…今はお宝だ。 ___礼拝堂 ルイズは戸惑っていた、今朝方早くにいきなりワルドに起こされ、ここまで連れてこられたのであった。 昨夜のミントの言葉と滅びる王家のショックもあり殆ど眠れていなかったルイズはワルドにこれから結婚式を挙げよう等と突然言われて戸惑い、混乱したまま状況に流されて此処まで来てしまった。 ウェールズの好意で貸し与えられ、ワルドの手によって頭に乗せられたアルビオンの秘宝の一つ『白の花冠』は白の大陸アルビオンを形容する様に魔法の力で瑞々しく咲いた白い花で作られたそれは美しい物だった。いつも身に付けていた黒いマントも今は純白のマントで着飾り、簡易的ではあるがその姿はまさに花嫁以外の何物でも無い… ヴァージンロードの先には荘厳なステンドグラスと神々しく聳える始祖ブリミルの像があり、その袂には皇太子としての礼服に身を包んだウェールズが心から祝福しているのだろう…ルイズを暖かく見守っていた。 「さぁ、ルイズ。僕の花嫁。」 そう優しく言ってワルドがルイズの手を優しく引き寄せウェールズと始祖の像へと一礼を行う。 それを確認してウェールズはにっこりと微笑むと祝詞の記された書を朗々と読み上げ始める。 「これより結婚式を始める。子爵、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名においてこの者を敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか?」 「誓います。」 ワルドの迷い無い誓いの言葉にウェールズは満足そうに笑みを浮かべる。 「新婦ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、汝は始祖ブリミルの名においてこの者を敬い、愛し、そして夫とすることを誓いますか?」 そのウェールズの問いにルイズはようやく自分が今結婚式を挙げているのだと言う事を理解した。 今自分を見つめている隣のワルドと自分は結婚する…それはイヤでは無い。もともと婚約者でもあるしずっと憧れていた子爵様なのだむしろ嬉しい…だがルイズ自身は今全くどこかこの結婚に納得がいっていないのだ。 戸惑いの中ルイズはつい後ろを振り返る…当然ながら礼拝堂には誰も居ない。 ここ最近ずっと自分の側に居てくれていたミントは一足先にアルビオンを発っているとワルドから聞いていた…それでも無意識にミントの姿を探してしまった自分は何なのだろうかとルイズは自問自答する。 「新婦?」 ウェールズの声に思考に沈んでいた頭を覚醒させてルイズは慌てて顔を起こす。 「緊張しているのかい?大丈夫さ、君は僕を信じてくれれば。」 ルイズの様子がおかしいと感じたのかワルドが爽やかに言う。 (そうよ…ワルド様を信じれば…) ワルドの言葉にそこまで流される様に考えたルイズだったが不意に昨夜のミントの言葉が頭をよぎった。 『あんたさ~…ちょっと甘えてんじゃないの?』 途端にルイズは混乱していた自分の思考がクリアになるのを感じる。 確かにここでこのままワルドと結婚すれば後は幸せで安泰な人生がまっているだろう。 だが、それは何かが違う。ルイズ・フランソワーズはまだ自分の力で誰も見返してはいないし何よりミントを元の世界に戻すという責任を果たしていない。 結局このままでは『ルイズ・フランソワーズ』というメイジの存在は否定され『フランシス・ド・ワルドの妻』という人物が生まれるだけだ… そんな事、認める訳にはいかない…結局自分の貫く生き方だけは自分で決めねばならないのだ。 心を決めたルイズは先程までの戸惑いを浮かべた表情を一変させてウェールズへと視線を真っ直ぐ向けた。 「誓えません。」 「なっ!?ルイズ??」 「何と?新婦はこの結婚を望まぬか?」 「はい。そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません。」 ルイズの予想外の答えにワルドは戸惑いを隠せないままルイズへと詰めよりその手を握る。 「どうしたね? ルイズ、気分でも悪いのかい?そうだろ?」 「違うの、ごめんなさい……」 「あぁそうか!!日が悪いなら、改めて……」 「そうじゃない、そうじゃないの。ごめんなさい、今のままの私じゃワルド、あなたとは結婚できない。」 そう伏し目がちに言って首を振るルイズ… 「何故だ!?言ったじゃ無いか、いつか君は素晴らしいメイジになる。そう、世界だ!!君の力があれば世界を手にする事だって!!」 激昂した様にワルドはルイズの両肩を強く掴む…そのワルドの豹変ぶりにルイズは驚くと同時にまるで悪い夢でも見ている様な強い恐怖を感じた。 「わ…私は世界なんて欲しくない!痛いわ、離してワルド。」 常日頃から世界征服等という世迷い事をルイズはミントの口から夢なのだと語られている。その大それた夢を語るミントの瞳は今思えば希望に輝き、その野望は聞いている方が元気を貰える様な物だ… しかしワルドの瞳が映しているのは邪な欲望だ…ルイズは世界を手に入れると声高に語ったそのワルドの瞳を見て確信する。 「ルイズ!!僕の物になるんだっ!!」 叫ぶワルド…それは最早誰が聞いても恫喝の声にしか聞こえぬ恐ろしい声。 「嫌よっ!ワルド、今解ったわ。あなたは私を愛してなんかいない…あなたが欲しがっているのは私の中にあるなんて思ってる在りもしない才能……こんな侮辱初めてよ!!」 「子爵!!ヴァリエール嬢を離したまえ。彼女は君との婚姻を望まぬと言い、今はっきりと君を拒んだではないか?残念だがこれ以上は私も見過ごす訳に行かん。」 ルイズがワルドを拒むのと同時にウェールズがワルドの背中に声をかける… ウェールズもミントとワルドそれぞれが語る『世界』の意味の違いを感じたのだろうか、その片手は自然と腰に下げていた杖に伸ばされていた。 ワルドはその様な状況になってようやくルイズの肩を掴んでいた両手を離す… あまりに想定外の事態に些か取り乱してしまった様だ…ルイズから向けられる侮蔑と恐怖の込められた視線を受けながらワルドは残念そうに微笑みを取り繕う…… 「こうまで言っても駄目かい?残念だよ…ルイズ。」 「当たり前よ…」 「それでは仕方ない…君の事を手に入れるのは諦めるとしよう。これでも道中君を籠絡させる為に色々と手を回していたんだがね、本当に残念だ。だが、だからこそあと二つの僕の目的は達成させなければ成らない。」 「二つの目的?」 その不気味な物言いにルイズはワルドが何を言っているのかが解らず頭に疑問符を浮かべる… 「一つは君の持つ王女の手紙の回収さ…尤も君とは依頼主が違うがね。」 そう言った次の瞬間、不穏な気配を感じ取ったウェールズが杖を抜き。だがそれよりも早く風の魔力を纏い光を放つワルドの杖による神速の突きがウェールズの胸を正確に貫いていた… 「子…爵…貴様…」 「もう一つは彼の命だよ…ルイズ。」 「ワルド……まさか……あなた………」 ルイズは目の前の崩れ落ちるウェールズとその胸から杖を引き抜くワルドというその衝撃的な光景を信じる事が出来ず震える様に言葉を紡ぐ… 「あぁ、そうだよルイズ。…僕はレコンキスタだ……」 そう言って口元を歪めたワルドを前にしてルイズは懐から杖を抜いてワルドへとその先端を咄嗟に向けた… 唱える魔法等何でも良い…ルイズは目の前の『敵』へと精神を集中させる。 「フラ「エアハンマー。」」 ルイズが呪文を唱え始めると同時にワルドも呪文を詠唱する。 それは決定的なメイジとしての力量の差だった。ルイズのコモンマジックがワンスペルで在るにも関わらずワルドの詠唱の完了の方が尚早かった… 瞬間、ルイズの杖を掴んだ右手に凄まじい衝撃が襲いかかる… 杖はその手を離れ遙か後方へと吹き飛ばされていく… そして… ルイズの右腕は肘から先が本来ならば曲がるはずの無い方向へと不自然に曲げられていた… 「いっ……ぁ……ぃゃ…ああぁぁぁぁ!!!…ぅぁ…」 自身にとって初めて感じるであろう形容しがたい激痛にルイズは思わず悲鳴をあげ、折れた腕を押さえる様に反射的に踞る。 (痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!) 「フッ…言っただろうルイズ、君には間違いなく素晴らしい才能があるんだ。だから君の爆発の魔法を僕は評価している。しかしだからこそ君に魔法を使わせる訳にはいかないんだ。」 ワルドの声も上手く理解出来ぬ程ルイズの思考は今痛覚によって乱されている。それでも今現在ワルドが自分に止めを刺そうとしているのは何となく理解はできた。 「い、嫌っ…助けて…」 「命乞いかい?だけど残念だ、僕はこれから君を殺す。」 ワルドはそう言って邪悪に笑う。 「助けてよっ…ミントッ!!!」 絶体絶命の窮地の最中、ルイズは無意識に叫んだ。己の使い魔の名前を… ___ニューカッスル城 今、ミントは息が乱れるのも構わず一心不乱に走っていた。 遡る事数分前。 粗方城内に残されていたお宝を回収し終え、ミント主観で価値の高そうなお宝の詰まった荷袋を担いで脱出の為に停留していたイーグル号の乗り込もうとそのタラップに足をかけた瞬間、ミントは自分の左目が妙な光景を映し始めた事に気が付いたのだ… (何よこれ……此処は礼拝堂?…ワルドもウェールズも一緒って事はこれもしかしてルイズの見てる光景なの?) ミントも使い魔と主の視角共有の話は以前ルイズに聞いていた。しかし、問題はそこでは無い。ミントの視界に映るワルドの鬼気迫る表情は明らかにただ事では無く、ルイズの感じている恐怖心なのだろうかミントの胸に言いようのない不快感が襲いかかる。 「まずいっ!!」 あれこれ考えるよりも早くミントはデュアルハーロウを握りしめると礼拝堂に向けてその場から疾風の如く走り出した。 後ろ髪を引かれる思いではあるが回収した金銀宝石類が詰まった荷袋はイーグル号の甲板へ乱暴に放り投げる… 「どうしたよ相棒?急に走り出して、お前さんあの船に乗らなきゃ帰れないんじゃねぇのか?……はは~ん、さてはお前さんもよおし「そぉいっ!!」」 「……………悪かった…」 ミントの全力の投擲によって進行方向にある壁面に深々と突き刺さったデルフリンガーを走り抜ける様に引き抜いてミントは更にひた走る。感情の高ぶりが力を与えているのかそのスピードとスタミナは野生のディグレであろうと悠々と振り払えるであろう程の領域だ。 そして、左目の視界に映るワルドがどこか影を孕んで優しく微笑む… ミントは通路の窓から大きく跳躍し、柔らかな花壇をクッションに飛び降りると現在地から礼拝堂までの直線を繋ぐ庭園を突き抜ける… 視界に映るワルドが突然に杖を抜いた… ミントは目の前に聳える邪魔な城壁を睨み『ドリル』の魔法を発動させる…漆黒の螺旋はいとも容易く固定化のかけられた前方の強固な壁に大穴を開けた… 相変わらず左目は見たくも無い嫌な光景を映し続ける……ミントはギリッと唇を噛んだ… 胸を貫かれたウェールズの身体が力無く崩れ落ちる… 目の前に礼拝堂が見えた… 次いで左目が映したのは歪に曲がった華奢な右腕…それは間違いなくルイズの物だった… 『助けてよっ…ミントッ!!!』 そうして礼拝堂の大扉を前にしたミント耳にルイズの自分を呼ぶ声が届く… 「ワルドォッ~~~~~~~~~~~~!!!!!!」 暴走した様に早鐘を打つ心臓でミントは跳び蹴りで大扉を蹴破ると同時に怒りの雄叫びを上げた。 前ページ次ページデュープリズムゼロ