約 440,039 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/430.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 二つの月に照らされた、夜のトリステイン魔法学院。 その光が、宝物庫の外壁を歩く人影を浮かび上がらせる。 「ふん。物理攻撃が弱点、とはよく言ったものだわ。」 強力な『錬金』で全てを土くれに変える、というその手口から 土くれのフーケと名づけられた、メイジにして大怪盗。 「かかってるのは固定化だけみたいだけど、この厚さは私のゴーレムでも無理ね…」 苦労して手に入れた情報も、決定的なものではなかったということか。 「さて、一体どうしたものかね。」 考えながら外壁を降りるフーケ。 瞬きする間に、土くれのフーケはその存在を消し去っていた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師10~ 錬金術の勉強を始めたルイズ達は、心持ち以前より良好な関係になっていた。 「何をしてるの?」 「あ、ヴァリエール。いや、ちょっと魔法の練習をね。」 ほんの少し、魔法に関するものごとを除いては、だが。 「…」 たしかにルイズに対して侮蔑の感情をあらわにすることはなくなったが、そのかわり、 キュルケの言葉にあわれみのようなものが混じるようになったことが気に入らない。 実に気に入らない。 「私もやる。」 「でも。」 「やるって言ったでしょ。」 ルイズの固い決意を読み取ったキュルケは、諦めたように両手を腰に当てる。 「しょーがないわねえ。じゃ、とりあえず空にファイヤーボールでも飛ばしてみる?」 「…やるわ。」 杖を構え、ファイヤーボールのルーンをよどみなく詠唱するルイズ。 「ヴァリエール。強力なファイヤーボールが飛ぶ所を心に強く思い浮かべるのよ。」 今度こそ。何百度目かのルイズ渾身のファイヤーボールを天に向かって放った、のだが。 なぜか、脇の宝物庫が大爆発を起こす。 ルイズ達の周りに重苦しい空気が漂う。 中庭の植え込みで、その一部始終を見ていた者がいる。フーケだ。 ルイズの魔法で宝物庫の壁にヒビが入った。一体あの呪文は何だろうか? 疑問が浮かぶが、ともあれ今がチャンス。 フーケは長い詠唱を完成させ、地面に向けて杖を振る。 轟音を立てて、巨大なゴーレムが立ち上がった。 「ゴーレム!?」 最初に気付いたのはルイズ。 ゴーレムは一目散に宝物庫へ向かい、巨大な拳で宝物庫を攻撃する。 「ちょ、ちょっと、何これ!?」 キュルケが思わず頓狂な声を上げると、ゴーレムがこちらの頭上に足を持ち上げた。 間一髪、タバサの使い魔、ウィンドドラゴンが滑り込み、 キュルケ、ルイズ、最後にタバサをつかんで、ゴーレムと足の間をすり抜ける。 「ふふ、頑張ってね…」 既に目的は達したのか、フーケは何かのルーンを呟くと、どこかに飛び去った。 (…ラート、ヴィオラート…!) 「ルイズちゃん?」 溶鉱炉の内部で仕上げに取り掛かっていたヴィオラートは、 ルイズの声を聞いた気がして我に返る。ルーンが光り、 ゴーレムに襲われるルイズ、という光景が眼前に飛び込んできた。 「ルイズちゃん!」 フライングボードに飛び乗り、宝物庫に急行する。 すぐに、巨大な土のゴーレムを確認したヴィオラートは三叉の音叉を取り出し、 フライングボードの勢いを生かしたまま、ゴーレムの頭に思い切り撃ちつけた。 あたりに澄み切った重低音がこだまする。 三叉音叉が、ヴィオラートの額のルーンと同じ色の輝きに包まれ、光が溢れ… 土のゴーレムは跡形も無く崩れ去った。 「大丈夫だった?ルイズちゃん!」 そう言ったヴィオラートの顔は汚れ放題で、服は土まみれ。 でもルイズはそんなヴィオラートの姿を認めた瞬間、何かが溢れそうだったので かわりに、微笑んだ。 翌朝。魔法学院では、朝から蜂の巣をつついたような騒ぎが続いていた。 巨大なゴーレムで壁を破壊する、などという派手な方法で「破壊の像」が盗まれたのだ。当然である。 破壊された宝物庫の周りには学院中の教師が集まりざわめいていた。 壁には、土くれのフーケの犯行声明が描かれている。 「破壊の像、確かに領収いたしました。土くれのフーケ。」 教師達は好き勝手に責任を擦り合っているようだ。 「土くれのフーケ!ついに我が学院にも現れたか!」 「衛兵は一体何をしていたんだね!」」 「平民など当てにならん!それより当直の貴族はどうしていたんだね」 「当直など、誰も真面目にやってなかったではないか!」 (なんで、こんなみっともない貴族ばかりなの!ヴィオラートに、貴族のこんな姿を見せたくない…) ルイズはふがいない貴族の実態に憤りを感じ、せめて自分だけは貴族たらんと決意を新たにする。 「さて」 教師達が集まりきるのを待っていたのか、オスマン氏が悠々と姿をあらわした。 「犯行の現場を見ていたというのは、君達かね?」 「は、はい!」 ルイズ、キュルケ、タバサ。そしてヴィオラート。 「ふむ、君達か。」 オスマン氏は興味深そうにヴィオラートを見つめた。 「詳しく説明したまえ。」 ルイズが進み出て、見たままを述べる。 「あの、大きなゴーレムが、ここの壁を壊して…たぶん「破壊の像」を、盗み出したんです。」 「それで…肩に乗ってたメイジはゴーレムを飛び越えて、そのままどこかに…」 「ゴーレムは、ヴィオラートが破壊しました…」 「ふむ。後を追おうにも、手がかりはなしか…」 「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」 「それがその…朝から姿が見えませんで…」 「この非常時に、どこに言ったんじゃ?」 「どこなんでしょう」 そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。 「申し訳ありません、朝から、急いで調査をしておりまして。」 「調査?」 「ええ。土くれのフーケの情報を。」 「仕事が速いの。で、結果は?」 「はい、フーケの居所がわかりました。」 「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル。」 「はい。近所の農民からの情報です。森の廃屋に、黒いローブの男が入って行くところを見たと。」 ルイズが叫ぶ。 「黒いローブ?フーケです!間違いありません!」 オスマン氏は目を鋭くして、ミス・ロングビルにたずねた。 「そこは近いのかね?」 「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか。」 「ふむ…」 周囲が、オスマン氏の次の言葉を待つ。 「では、捜索隊を編成する。我と思うものは、杖を掲げよ。」 周囲が、静まり返る。 「おらんのか?」 教師達は静まり返り、誰一人としてオスマン氏に向き合おうとすらしない。 ルイズはうつむいていたが、すっと杖を顔の前に掲げた。 「ミス・ヴァリエール。君は生徒じゃないか。」 「誰も掲げないじゃないですか。」 ルイズはまっすぐな目で、オスマン氏を見返す。 ルイズが杖を掲げているのを見て、キュルケも杖を上げた。 「ふふ、ヴァリエールには負けられませんわ。」 それを見て、タバサも杖を掲げた。 「タバサ。あんたはいいのよ?」 そう言ったキュルケに、タバサは 「心配」 とだけ告げ、ちらりとルイズを見る。 キュルケは嬉しそうに、タバサを見つめた。 ルイズも感動した面持ちで、タバサにお礼を言った。 「ありがとう…タバサ…」 そんな三人の様子を見て、オスマン氏は破顔する。 「そうか。では、頼むとしようか。ミス・ロングビル、案内役を頼む。」 「はい」 そう命じられたミス・ロングビルの顔には、場違いなほど妖艶な笑みが浮かんでいた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/945.html
前ページ次ページゼロのアトリエ トリステインの王宮は、物々しい雰囲気に包まれていた。 隣国アルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』がトリステインに侵攻してくる、 という噂がまことしやかに流れていたからだ。 よって王宮の上空は幻獣、船を問わず飛行禁止令が出され、衛士隊の警戒は最高潮であった。 そんな時だったから、王宮の上に一体の風竜が現れた時、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。 当直のマンティコア隊衛士が一斉に飛び上がり、警告を発する。 しかし、風竜はその警告を無視して中庭に降り立ち、 さらに風竜の影から板、そしてホウキに乗ったメイジが姿を現した。 風竜に乗っているのは金髪の少年と燃えるような赤毛の女、そしてメガネをかけた小さな女の子。 ホウキに乗っていたのは桃色の髪の美少女であり、 少し気まずそうに板を小脇に抱えているのは茶色の髪をした妙齢の女性。 ラ・ロシェールから直接王宮に向かった、ヴィオラートたちご一行であった。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師25~ マンティコアに跨った隊員たちが、5人を取り囲んだ。 腰からレイピアのような形状をした杖を引き抜き、一斉に掲げる。 いつでも呪文が詠唱できるような姿勢をとると、髭面の隊長が大声で怪しい侵入者達に命令した。 「杖を捨てろ!」 一瞬、侵入者達はむっとした表情を浮かべたが、青い髪の小柄な少女が首を振って言う。 「宮廷」 一向は仕方なくといった面持ちでその言葉に頷き、命令されたとおりに杖を地面に捨てる。 「今現在、王宮の上空は飛行禁止だ。ふれを知らんのか?」 その問いに、ホウキを持った桃色の髪の少女が進み出て、毅然とした声で名乗りをあげた。 「私はラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。姫殿下にお取次ぎ願いたいわ」 隊長は口ひげをひねって少女を見た。ラ・ヴァリエール公爵夫妻なら知っている。高名な貴族だ。 「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」 「いかにも」 ルイズは、胸を張って隊長の目を真っ直ぐに見据える。 「なるほど、見れば目元が母君そっくりだ。して、用件を伺おうか」 「それは言えません。密命なのです」 「では取り次ぐわけにはゆかぬ。用件もなしに取り次いではこちらの首が飛ぶ」 困った声で、隊長が言う。 ルイズも困って、思わずヴィオラートのほうに視線を泳がす。 ヴィオラートは少し考えて、良さそうな回答をひねり出した。 「ルイズちゃん、『水のルビー』があるじゃない」 「あ、そうね」 ルイズは懐を探り、預かりものの『水のルビー』を取り出す。 「姫殿下より、身の証にとお預かりした『水のルビー』です」 そう言って水のルビーを指に嵌め、輝きを見せ付けた。 沈黙して水のルビーを見つめる衛士たちに、 ようやく納得してもらえたかと一息ついたヴィオラートたちだったが、事態は予想外の展開を見せる。 「…失礼かと思いますが、我々の中にその真贋を見分けられる者がおりませぬ」 そう言った隊長の言葉に、とぼけた顔で頷きあう隊員たち。 ルイズ達は思わずあっけに取られ、ヴィオラートの笑顔が笑顔のまま、動きを止める。 「…真贋の見分けがつかないなら、とりあえず『ルイズ・フランソワーズが来た』と伝えて頂ければ…」 「そのような連絡は受けておりませんし、曖昧な用件で取り次ぐわけにはまいりません」 隊長に直接提案したヴィオラートに、衛士たちが一斉に警戒の視線を向ける。 そして隊長はヴィオラートをあえて避け、ルイズに言い放った。 「素性のわからないお連れがいらっしゃるなら、尚更です」 ヴィオラートの笑顔が、『敵意のないことを表現する』微笑へと進化を遂げた。 それを見たルイズはヴィオラート本人以上に焦り、言わなくて良い事を口に出してしまう。 「わ、ワルドの裏切りについて、至急報告しないといけないの!だから、はやく姫殿下にお取次ぎを…」 その言葉を聞いて、隊長は目を丸くした。 ワルド?ワルドというのは、あのグリフォン隊のワルド子爵のことだろうか? そのワルドが、裏切り?どういう意味だ? 隊長は、ワルドとルイズたちを天秤にかけ…隊長なりに、結論を下す。 同じ場所で働き、知己もあったワルドと、実際に会うのは初めてのルイズ。 隊長がその決断、間違った決断を下したのも、まさに当然と言ったところであったのだろう。 「貴様ら何者だ?とにかく、殿下に取り次ぐわけにはいかぬ」 隊長は杖を構えなおし、硬い調子で言った。話がややこしくなりそうだった。 「あの、あたしたちは杖を捨てたわけですし、お姫様もそんな少しの手間を惜しむような人じゃ…」 最後まで和解の道を探ろうとするヴィオラートの言葉に、しかし隊長は目配せを交わす。 一行を取り囲んだ魔法衛士隊が、再び杖を構えた。 「連中を捕縛せよ!」 隊長の命令で、隊員たちが一斉に呪文を唱え始める。 「ヴィ…ヴィオラート?」 「大丈夫…お城は、傷つけないから」 不安げなルイズの視線にヴィオラートが素早く答え、バッグから…青く冷たく光る何かを取り出そうとした時。 「お待ちなさい」 けして大きくはなく、しかし良く通る声が中庭を通り抜ける。 ルイズの帰りを今か今かと待ちわびる、アンリエッタその人であった。 キュルケとタバサ、そしてギーシュを謁見待合室に残し、 アンリエッタはヴィオラートとルイズを自分の部屋に入れた。 小さいながらも精巧なレリーフがかたどられた椅子に座り、アンリエッタは机にひじをつく。 ルイズは、アンリエッタに事の次第を報告した。 道中、キュルケたちが合流した事。 フーケに襲われた事。 アルビオンに向かう船に乗ったら、空賊に遭遇した事。 その空賊が、ウェールズ皇太子だった事。 ウェールズ皇太子に亡命を勧めたが、断られた事。 そして…ワルドと結婚式を挙げるために、脱出船に乗らなかった事。 結婚式の直前、ヴィオラートがワルドの裏切りを暴き、追い払った事。 しかし、無事手紙は取り返してきた。ゲルマニアとの同盟は、守られたのだ… そこまで聞いたアンリエッタは、深い悲しみを滲ませて、思わず呟きを漏らす。 「あの子爵が…まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて…」 姫はすっと立ち上がり、ヴィオラートの手をとって…泣いた。 「本当に…本当にありがとうございます、ヴィオラートさん。貴女は裏切り者を使者に選んだわたくしを、 この愚かなわたくしを、ウェールズ様の殺害という罪から救ってくださいました…」 はらはらと涙を落とすアンリエッタに、ヴィオラートは首を振る。 「王子様は…元から死ぬつもりでした。もう、今頃は…」 「それでも…それでも、何回感謝してもし足りるという事がありません…」 しばし、王女のすすり泣く声だけが部屋に響く。 熱い湯が冷水になるほどの時間が経ち、ようやくアンリエッタは落ち着きを取り戻した。 「皇太子は…ウェールズ様は、何と仰っていましたか?」 ヴィオラートは一字一句違えることなく、淀みなくウェールズからの伝言を伝える。 「ウェールズは最後まで勇敢に戦って死んだと。そう伝えてくれと」 寂しそうに、アンリエッタは微笑んだ。薔薇のように綺麗な王女がそうしていると、 空気まで沈鬱に沈むようだった。ルイズは哀しくなった。 「…姫様、これ、お返しします。」 ルイズはポケットから、いったんしまった水のルビーを取り出す。 「それは貴女が持っていなさいな。せめてものお礼です」 「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」 「…ルイズ・フランソワーズ」 アンリエッタは哀しそうに、小さな声を絞り出して言葉を放つ。 「それは、ウェールズ殿下との約束の証なのです」 ルイズはもう、それ以上何も言えなかったので。 だから無言で、貰った水のルビーを、ポケットに戻した。 王宮から魔法学院に向かう空の上、ルイズは黙りっぱなしだった。 キュルケが何やかや話しかけてきたが、ヴィオラートも喋らない。 「なあに、教えてくれないの?あの子爵が裏切り者とか、わけわかんないじゃない?」 そう言って、ヴィオラートに気だるい視線を送る。 「でも、ヴィオラートがやっつけたのよね?」 「うん。でも、逃げられたし…」 「それでも凄いわ!ねえ、一体どんな任務だったの?」 「うーん…」 ヴィオラートはにんじんを頭に当てて考える。ルイズが黙っている以上、話すわけにはいかない。 その様子を見たキュルケは、つまらなそうに嘆息し、挑発した。 「ルイズ、ゼロのルイズ!なんであたしには教えてくれないの!ねえタバサ、バカにされてると思わない?」 キュルケは、本を読んでいるタバサを揺さぶった。タバサの首が、がくがくと揺れる。 ルイズはそれを見て、ようやく求める答えを少しキュルケたちに与えた。 「…大体予想はついてるんでしょ?」 それだけで、キュルケと…タバサは大方の事情を悟る。 「まあ予想はつくけど。じゃあやっぱりその手紙ってのは、アレね」 「うん、そのアレかな」 ヴィオラートの肯定に満足したキュルケは、「そっか」と呟いただけで、静かになった。 その静寂に取り残されたギーシュは、急に静かになった女性陣をきょろきょろ見渡した後、 今がチャンスとばかりに自らの疑問を口に出す。 「その…ミス・プラターネ?」 あらたまった口調で…とりあえず、一番話しやすそうなヴィオラートに問いかける。 「姫殿下は、その、何か僕のことを噂しなかったかね?」 ヴィオラートはちょっとギーシュがかわいそうになった。 今の暗黙の了解を一人だけ理解できていないというのもそうだが、 アンリエッタはギーシュの『ギ』の字も話題に上らせなかったからだ。 「頼もしいとか、やるではないですかとか、追って恩賞の沙汰があるとか…」 「ギーシュくんは、頑張ったよね」 それだけ答えると、ヴィオラートはいつもの笑顔に戻って、黙り込んだ。 「その、何か噂しなかったかね?」 「…」 「その、姫殿下は、ぼくのことをなんと評価してたかね?」 ヴィオラートは笑顔のままわずかに首を傾げ、答礼を返す。 「もしかして密会の約束をことづかってある、とか…」 今度は逆側に、首を傾げた。 ぽかぽかと太陽が照らす中、二人のやりとりは魔法学院にたどりつくまで続いたという。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4478.html
前ページ次ページゼロのエルクゥ アルビオンの朝は、楓の目には不思議な風景が広がる。 空は明るくなってくるけれど、陽は昇っていない……元の世界なら明け方に束の間垣間見えるような光景が、空が真っ青に染まるまで続く。 アルビオンが、ハルケギニアの大地より遥か上空に浮かぶ浮遊大陸だから、という事だが、それは、夜に浮かび上がる双子の月と並んで、ここが異世界であると楓に実感させてくれるものだった。 「んん……ぅ」 楓が目を覚ましたのは、太陽が姿を見せはじめてからだった。 前日に慣れないワインを嗜んだせいか、心なし頭が重い。 「はふ……」 上半身だけを起き上がらせ、その重さを吐き出すように息をつく。 幸い、痛みというほどの物でもなかった。ティファニアから借りている寝巻きを脱ぎ、洗濯しておいたセーラー服に着替える。 ……その寝巻きの胸の部分だけがダボダボなのには、未だに慣れない。スタイルにあまり興味のない自分は違和感だけで済んでいるが、これが千鶴姉さんや梓姉さんだったら、きっと落ち込むか暴れるかしていたであろう、と楓は何気に酷い事を考えていた。 「マチルダ姉ちゃーん! 山作ってよ、山!」 「やまー!」 「やれやれ、お前達も好きだねぇ」 ベッドに座って、何をするでもなく窓の外に目を向けると、薪束に腰を下ろしたマチルダが子供達とじゃれ合っていた。 マチルダが苦笑しながら、少々わざとらしく面倒そうな素振りを見せて、杖を振る。 すると、もりもりと地面が盛り上がり、小学校の校庭にあるような土の小山が現れる。子供達がはしゃいだ顔でそれに駆け上ったり、滑り降りたりを始めた。どこの世界も子供というのは変わらないらしい、微笑ましい光景だった。 「魔法……魔法学院、か」 昨日聞いた事が、脳裏に思い出される。 『あんた……"エルクゥ"かい?』 ティファニアが楓を『サモン・サーヴァント』で呼んでしまった事を話し、自己紹介を終え、マチルダが数秒固まった後に言ったのは、そんな言葉だった。 思わず身構えてしまって、座っていた椅子を壊しそうになったのはご愛嬌だ。 『なに、カマかけたのはこっちだから気におしでないよ。あんたのいい人は、トリステイン魔法学院ってところにいる。生徒の一人に使い魔として呼ばれたのさ。……はは、なに照れてんだい。こんなところまで男追っかけてくるなんざ、丸分かりもいいところじゃないか』 続けて言われたそれは、その前以上の衝撃だった。 一番知りたかった事がいきなり転がり込んでくるなんて、どんな偶然なのか。思わず、『ドッキリ』とか書かれたプラカードが出てこないかと心配になったぐらいだ。 マチルダは、この間までその魔法学院の学院長秘書をしており、使い魔として人が呼び出された珍しいケースの調査をしたから覚えていた、という事情だそうだ。 ……しかし、いい人、などと言われて思わず赤面してしまったのは不覚だった。 歳も、学校も、住んでいるところも違うから、姉妹以外に冷やかされる事など皆無であり、耐性がなかったのだ。 もし、耕一と自分が同じ学校の同級生であったりしたら、こんな事が日常であったりしたのだろうか―――。 そんな事を考えて、楓は熱を持った頭をふるふると振った。 『コーイチ君も元の場所に帰ろうと努力はしてたみたいだけどね。残念ながら、使い魔を送り返す魔法なんてのは存在しないんだ。まだ向こうで使い魔やってるんじゃないかい?』 それは、出来すぎなんじゃないかと思うぐらいの希望と―――落胆だった。 耕一に会える可能性は飛躍的に高まったが、帰る事が出来ないのでは片手落ちにも程がある。 「……ふぅ」 とりあえずは耕一と会わなければ。元々帰れるかどうかわからない状態だったのだから、マチルダの情報は大きな前進と言っていい。 それに……帰る方法なら、ほんの少しだけ、手がかりを見つけた事だし。 「……うん」 行こう。トリステイン魔法学院へ。 § 「そう、行くのかい」 「はい。明日の朝、出発しようと思います」 夕飯が終わり、子供達がそれぞれの家へと帰った後、楓が切り出すと、二人は対照的な表情を浮かべた。 「ありがとうございます、マチルダさん」 「はン、どうせ誰に言ったって信じてもらえないような話さ。売れない情報なんかに興味はないさね」 そう嘯くマチルダの頬はかすかに赤く、楓は薄く微笑んだ。 「ティファニアさんも、ありがとう。どうもお世話になりました」 「あ、う、うん……」 俯くティファニアの顔は暗く、何かを考え込んでいるようでもあった。 「テファ、どうかしたのかい?」 「う、ううん! なんでもないの。あの、恋人さんの手掛かりが掴めて良かったですね、カエデさん!」 「……?」 慌てたように、ティファニアは笑顔を作る。 ―――はーン。なるほどねえ。 不思議そうに首を傾げる楓の横で、マチルダが下世話な―――しかし確かな慈愛を感じさせるような、妙齢の女性の強かさが滲み出る笑みを浮かべていた。 「テファ」 「な、なに? マチルダ姉さん」 「言いたい事があるなら今の内に言っときな。もう会えないかもしれないと思ってるなら、特にね」 「…………でも」 「もう会えないから言ってもしょうがない、てんなら、所詮その程度の関係さ。でも、そこから一歩踏み出したいなら……もう会えないからこそ、その時点での全てを相手に伝えるんだよ」 「…………」 「全てはそこからさ」 楓には意味のわからないマチルダの言葉に、ティファニアは再び俯いてしまう。 「やっぱり、姉さんにはわかっちゃうんだね」 「はン、いくつの時からあんたを見てると思ってんだい。マチルダ姉さんにはね、何でもわかっちまうのさ」 「……うん。そうだね、やってみる」 はにかむような微笑みを浮かべて、ティファニアは楓に向き直った。 その顔は、何か困難に立ち向かっていくかのように精悍なものであった。 「あ、あの、カエデさんっ!」 「は、はい」 語気には勢いが付き過ぎており、楓は少し気圧されてしまった。 ティファニアは、荒ぶる何かを抑えるように一つ深呼吸をすると、かっと目を見開いて口を開いた。 「わ、私と、おともだちになってくれませんかっ!?」 「……えっ?」 楓が目をぱちくりさせる。 ティファニアは口を引き結んで真面目な顔のままだ。 マチルダはこりゃたまらんといった風に失笑していたが、何も言わずに事態を見守っている。 「…………」 楓は、言葉の意味を理解しようと頭を回転させ始めて……途中でやめた。 彼女、ティファニアの性格は、この数日間でかなり掴めている。一言で言えば……『純粋培養』。妹の初音をもう少し煮詰めた感じだ。 つまり、言葉に裏はない。本当に文字通りの意味しかないのだろう。 「……『サモン・サーヴァント』ね、本当は、おともだちが欲しくて唱えてみたものなの。人は私を怖がるけど、動物ならもしかしたらって。そしたらあんな事になって……カエデさん、優しくて、強くて、賢くて、私なんかじゃおともだちになれないかもしれないけど……」 へにょん、と、ティファニアの釣り上がっていた眉毛がハの字に下がる。 楓は困ってしまった。 妙に過大評価されてしまっている事もそうだが、普通に比べて人付き合いの苦手な楓でも、友達というのは、なりませんかなりましょうという言葉ひとつでなるものではないという事ぐらい知っている。 もっとこう、自然にというか。 ……いや、たぶん、そういう事もわからないのだろう。ここはファンタジー世界の隠れ里で、彼女は敵対種族とのハーフだ。昨日聞いた話では、小さい頃もずっと家に匿われていたということだし、環境が特殊すぎる。 楓は頭を切り替えた。どうせ自分も彼女に何か言えるほど交友関係が広いわけでもないのだ。彼女のまっすぐな問いに、同じように答えればいい。 そして、どう答えるかは……数日間寝食を共にしたこの優しい少女を前にして、考えるまでもなかった。 「……いいえ。そんな事はありません。私でよければ、喜んで」 「い、いいの?」 「はい。これから私とあなたは"おともだち"です」 言葉に出すと、正直とても恥ずかしいものだった。ある意味、告白より恥ずかしいかもしれない。 「あ、ありがとう、カエデさん!」 「お礼を言うものではありません。……"おともだち"でしょう?」 「う、うん!」 頬を染めながら微笑みあう二人の少女を、マチルダは満足げに見守っていた。 前ページ次ページゼロのエルクゥ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/476.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 学院長室で、オスマン氏は戻った四人の報告を聞いていた。 「ふむ、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな。」 「一体、どこで採用されたんですか?」 脇に控えたコルベールが問いかける。 「町の居酒屋じゃ。彼女は給仕をしとっとのじゃがな、この手がついっと、その、尻を。」 「で?」 コルベールが先を促す。 「それでも怒らなかったんじゃよ。だからつい、秘書にならないかと言ってしまった。」 「なぜです?」 本当に理解できないといった表情でコルベールが言った。 「うむ、今思えばあれもフーケの手じゃったに違いない。全く、女は魔物とはよく言ったものじゃのう。」 コルベールはその時、今更ながらフーケのその手にやられ、宝物庫の弱点について語った事に思い至った。 「そ、そうですな!美人はそれだけで、いけない魔法使いですな!」 あの一件は自分の胸だけに秘めておこうと思いつつ、オスマン氏に調子を合わせる。 「その通りじゃ!君はうまいことを言うな!コルベール君!」 ヴィオラートとルイズ、タバサとキュルケの四人は呆れ返ってそんな二人の様子を見つめていた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師12~ 生徒達の冷たい視線に気付くと、オスマン氏はことさらに厳しい顔を作って見せた。 「フーケは捕らえ、破壊の像は無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ。」 オスマン氏は、一人ずつ頭を撫でる。 「君達三人の『シュヴァリエ』の爵位と、ミス・タバサの『精霊勲章』の授与を宮廷に申請しておいた。」 ルイズ・キュルケ・タバサ、三人の顔がぱあっと輝いた。 「本当ですか?」 キュルケが、驚いた声で言った。 「本当じゃ。君達はそれぐらいのことをした、当然の結果じゃよ。」 ヴィオラートが、怪訝な顔で尋ねる。 「それって、あたしもですか?」 「うむ、見事な魔法でフーケを捕らえたという功績があれば、何も問題あるまい。」 そういうと、オスマン氏はウインクをして見せた。 「なあに、駄目だとぬかしよったらこの私がねじこんでやるわい。」 何というかごめんなさいだった。 「さてと。今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。」 キュルケの顔の輝きが、さらに強くなった気がする。 「そうでしたわ!フーケの騒ぎですっかり忘れておりました!」 「今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ。」 三人は、礼をするとドアに向かう。 ヴィオラートだけが、微動だにせずオスマン氏に視線を送る。 「先に行ってていいよ。」 ヴィオラートは言った。三人は心配そうに見つめていたが、頷いて部屋を出て行く。 「なにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな。」 オスマン氏は、コルベールに退室を促す。 わくわくしながらヴィオラートの話を待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。 「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう。」 コルベールの退室を見届けた後、ヴィオラートが口を開く。 「あの、『破壊の像』は、あたしが元いた世界の道具です。」 オスマン氏の目が光った。 「ふむ、元いた世界とは?」 「あたしは、こっちの世界の人間じゃないんです。」 「本当かね?」 「本当です。あたしは、ルイズちゃんの『召喚』でこっちに呼ばれたんです」 「なるほど、そうじゃったか…」 「あの、破壊の像…あれをここに持ってきたのは、誰なんですか?」 オスマン氏は目を細めた。 「もう…何年も昔の話じゃ」 「森を探索していた私は、ワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのがその「破壊の像」の持ち主じゃ。」 「彼は、ワイバーンの最後の一撃で怪我を負い、それがもとで命を落とした…」 「死んでしまったんですか?」 オスマン氏は頷いた。 「フィンデン王国に帰りたい、元の世界に帰りたいと繰り返してな。彼は君と同じ世界から来たんじゃろう。」 「俺の不幸な人生を、考えさせる…そう言い残して彼はこの世を去った…」 オスマン氏は虚空を見つめる。珍しく澄み切った瞳で、しばし黙考し。 オスマン氏は、次にヴィオラートの額を見つめた。 「おぬしのこのルーン…」 「はい、これについても聞きたかったんです。」 オスマン氏は、話そうかどうかしばらく悩んでから、口を開いた。 「これなら知っておるよ。ミョズニトニルンの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ。」 「伝説の使い魔のしるし?」 「そうじゃ。その使い魔はあらゆる『魔法の道具』を使いこなしたそうじゃ。」 ヴィオラートは、首をかしげた。 「どうして、あたしがその伝説の使い魔なんかに?」 「…わからん。」 「…そうですか。」 「おぬしがどういう理屈でこの世界にやってきたのか、私なりに調べようと思う。しかし。」 「わかるとは限らない。とくに初めてのことなら、手がかりなんてあるわけがない。」 ヴィオラートの指摘に、オスマン氏は驚愕の表情を浮かべる。 「だから、帰る手段は、あたし自身で創り出そうって。そう思います。」 「おぬしは…」 オスマン氏はヴィオラートをしばし見つめると、万感の思いを込めて言葉を贈る。 「うむ。おぬしならきっといつの日か、帰る手段を見つけ出せるであろうよ。」 ヴィオラートはぺこりと頭を下げ、退室する。 「神の頭脳、か。やはり、それに相応しいものに与えられた、ということじゃろうか…」 オスマン氏はヴィオラートの消えた扉の先を、いつまでも見つめていた。 食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会の会場である。 ヴィオラートはバルコニーの枠にもたれ、バッグに溜め込んだ料理を粛々と平らげていた。 「ここにいたの。」 「あ、ルイズちゃん。」 いつもの服のままのルイズが、近寄ってきた。 「ヴィオラート、あなた魔法が使えること隠してたのね。しかもあんな強力な、先住魔法」 非難するように問いかける。 「え、べつに隠してたわけじゃ…」 「隠してた。」 頬を膨らませたルイズが、ヴィオラートに詰め寄る。 「でもでも、あたしのいた世界だと、珍しい事じゃないし…」 「そうなの?」 「うん。皆一つくらいは、不思議な特技が使えるから。」 「変わってるのね。まあ、私は信じてあげる。皆は、そうは行かないだろうけど。」 強力な魔法を使い、フーケを撃退した。それは既に周知のものとなっている。 「だから人前では、杖を使うふりくらいしなさい。じゃないとエルフだって勘違いされちゃうからね。」 「エルフ?それは、さすがにまずい、かな。」 とりあえず、明日からは杖の素振りでも始めないとダメかな? ヴィオラートがちょっとブルーになったその時、 「あ、いたいた。」 ようやくノルマ…『つきあっている』男性の相手を終えたキュルケと、 何かに満足した顔のタバサが顔を出した。 「こんな所にいたのね、準備、できてるわよ。」 「…入場。」 「え?え?」 ヴィオラートはキュルケとタバサに腕をつかまれ、連れ出された。 その後を、ルイズがしてやったりの笑顔で追いかけていく。 ホールの壮麗な扉が、音を立てて開いた。 「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢!」 「そしてその使い魔、ヴィオラート・プラターネ嬢の、おな~~り~~~」 会場の喧騒が途切れる。 ルイズは長い桃色掛かった髪をバレッタにまとめ、ホワイトのパーティードレスに身を包んでいる。 肘までの白い手袋が、ルイズの高貴さをいやになるぐらい演出し、 胸元の開いたドレスがつくりの小さい顔を、宝石のように輝かせていた。 ヴィオラートは基本的にルイズに合わせた服装、ただし胸元が強調され、 七色に輝く不思議なアンクが首筋を彩っている。そして、キュルケに施された薄化粧が、 普段のヴィオラートからは想像もつかないような美しさを見事に引き出していた。 主役が全員揃ったことを確認した楽師たちが、小さく、流れるように音楽を奏で始めた。 ルイズとヴィオラートの周りには、その姿と美貌に驚いた男達が集まり、盛んにダンスを申し込んでいた。 今までゼロのルイズとからかい、また土まみれの田舎娘と馬鹿にしていたノーマークの女の子の美貌に気付き、 いち早く唾を付けておこうというのだろう。 「ど、どうしよう、ルイズちゃん~!」 ヴィオラートが困った顔で、珍しくルイズを頼った。 「あなたのそんな顔が見れただけで、私の見立てたこの服の倍の価値はあるわね。」 ルイズがニヤニヤしながら、ヴィオラートの困窮顔を鑑賞する。 見かねたキュルケが、老婆心ながらの忠告をヴィオラートに与えた。 「大丈夫、適当にエスコートしてもらえばいいの。身元も割れてるから安全よ。」 それだけ言うと、キュルケは人の波の向こうに消える。 仕方ない、覚悟を決めたヴィオラートがおそるおそる発言し… 「え、えーと、ダンスとか、あんまり得意じゃないんだけど…いいかな?」 男達の何かの回路に、盛大に放火してしまった。 「ぜひ僕と!」 「いやいや、初々しいレディのエスコートにはこのギーシュ・ド・グラモンこそが相応しい!」 「僕にだって権利はあるはずだ!」 「マリコルヌは自重しろよ!」 「どうかこの僕にお慈悲を!」 ブリギットあたりなら、さっさと相手を選んで華麗に踊るところなんだろうなあ。 そんなことを考えながら、誰を選べばいいのかヴィオラートは悩んで、天を仰いだ。 そんな様子をバルコニーから眺めていたデルフリンガーがこっそりと呟く。 「おでれーた!」 二つの月の光がロウソクのそれと溶け合い、ホールの中に幻想的な雰囲気を作りあげる。 「相棒、てーしたもんだ!」 踊る相棒とその主人を眺めながら、デルフリンガーは、おでれーた!と繰り返した。 「ご主人様と一緒に舞踏会の主役を張る使い魔なんて、始めて見たぜ!」 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3524.html
前ページ次ページゼロの夢幻竜 アルヴィーズの食堂の上には大きなホールがある。 フリッグの舞踏会はそこで催されていた。 着飾った生徒や教師達が豪華な料理が並べられたテーブルの周りで歓談している。 その様子を人間形態のラティアスがバルコニーから眠たげに見つめていた。 眠たいのには理由がある。 学院長室から出て直ぐにラティアスはシエスタ経由で厨房からお呼ばれがかかったのだ。 何でも『猫の手も借りたいほど忙しい』との事で、もし時間と主人からの許可があれば来て欲しいとの事だった。 時間なら幾らでもあるし、ご主人様は恐らく二つ返事で了承してくれるだろう。 そう思ったラティアスはルイズの元に飛んだ。 ルイズは『死ぬほど忙しくなるんじゃないの?』と不安そうだったが一応許可は出してくれた。 そしてルイズが心配した通り、舞踏会が始まる頃にはラティアスは完全にのびていた。 今はそこまでではないものの、ともすれば立ちながら眠ってしまわないかと思うほどだ。 そんなものだから、気を紛らわせる為にシエスタが持ってきた料理を口にしている。 シエスタはおいしいからと言ってワインも持ってきてくれたが、ラティアスは一口飲んだだけでその場に倒れてしまいそうだったのでそれを持っているだけに留めた。 「嬢ちゃんはあそこには行かねえのかい?着飾ったら誘いの一つや二つは来るんじゃねえの?」 「一度体に覚えこませた幻術を一部でも変えるって結構大変なのよ。それに、私踊りの踊り方なんて知らないもん。」 「教えてもらってないから知らない……ってえ言葉は進歩の無い奴がするもんだぜ?出来ない事ってのは誰かの見よう見真似でも、相手に合わせる形でも次第に出来ていくもんだ。 最初からその可能性を投げ出してるんじゃ、出来るものだって何時まで経っても出来ねえぞ?」 「そうだけど……」 バルコニーの枠にはフーケ逮捕の陰の立役者、デルフが抜き身の状態で立てかけられている。 別にこの場所に持ってくるつもりは無かったし、デルフ自身が行かせててくれと言った訳でもない。 ただ、主人以外あまり親密になって話せる相手がいないラティアスにとっては丁度いい話し相手だったからだ。 眠気も紛れるし孤独感に襲われる事もないのが何より良い。 そんな折、彼女は『こころのしずく』に触れた時の事をふと思い出していた。 あの時自分の技の力は確かに上がった。 それは誰かから聞いた事があったから、取り立てて驚いたり騒いだりするほどの事ではない。 しかし肝心な事はそんな事ではない。 何か、正確には誰かの声が自分の心の内奥に聞こえてきた。 一体あれは誰の声だったのだろうか? そして最後には自分の声まで聞こえてきた。 兄様と叫んでいたが自分には兄でもいるのだろうか? よくよく考えてみれば、自分はこの世界に召喚される以前の事はよく覚えていない。 ルイズに話したような元いた世界の常識的な事はすらすらと出てくる。 しかし、ごく個人的な事、例えば両親や兄弟がいたのかといった事は雲がかった様に思い出せない。 学院長は褒美なら何が良いと訊いてきたが、今にして思えばきちんと『こころのしずく』と答えておけば良かったとラティアスは思った。 まあ、正直にそう言ったところで彼が首を縦に振ってくれるとは思えないが。 そんな事を思っているとホール奥の壮麗な扉が開いた。 「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢の、おなあありいぃ!!」 扉の近くに控えていた衛士がありったけの大声でルイズの到着を告げた。 主人の名が聞こえたので、扉の方を見たラティアスは驚いた。 そこにいるのは可愛らしさと高貴さの両方を存分に引き出したドレスを身に纏った一人の淑女だったからだ。 やがてホール内に楽士が紡ぐゆったりとした舞曲の旋律が満ちていく。 ルイズの美しさに見惚れた男子学生達が挙って彼女をダンスの相手にと誘うが、当の彼女は彼らを毛ほども気にかけはしない。 いつも、ゼロだ、ゼロだって馬鹿にしてるからでしょ、とラティアスはぼんやりと思いつつ料理を口に運ぶ。 するとルイズは誰にも何にも目をくれる事なく、真っ直ぐにラティアスの元にやって来た。 「服、やっぱり駄目だった?」 「すみませんご主人様。色々頑張ったんですけど無理でした……。」 開口一番聞かれるのは身なりの事。 変身できる事を悟られた時から言われる度に耳が痛い事だったが、こればかりはどうしようもない。 簡素なメイド服と、宝石の様な輝きを持つパーティードレスじゃ一緒にあるだけで不釣合いにも程がある。 おまけに他の者達は皆異性の相手がいるというのに、女同士で踊ったらおかしい事この上ない。 口調と表情から察するに、どうやらルイズは舞踏会で上手く相手を見つけて踊れているのかが気がかりだった様だ。 「はあ。そうよね。そんな直ぐ簡単にどうにかなるものじゃないわよね……」 落胆するルイズの声が消えない内にラティアスは呼びかけた。 「ご主人様!踊りましょうっ!」 「えっ?だっ、ダメよ!女同士で服もつり合わないのにどう考えたって変じゃない!第一、あなた踊った事あるの?」 「無い……です。」 「それじゃやっぱりダメじゃない!」 「でも!何とかしてみせます!ご主人様の真似でも何でもしますからご主人様に合わせます!」 「でも……」 ルイズはつい口ごもってしまう。 そんな時、バルコニーのデルフが口を開いた。 「娘っ子。嬢ちゃんは嬢ちゃんなりに頑張ろうとしてんだ。ご主人のお前さんがそれを無碍にしてどうするんだい?」 「五月蝿いわね。余計なお世話よ。」 「おほっ。こりゃ強気だねぇ。けどよ嬢ちゃんは真剣だぜ。やってる事が真っ当で当人が真剣にやってりゃ体裁が悪くったって笑われないものなんだよ。見てる連中にそれ以上の何かを訴えるからな。」 「何かって何よ?」 「さあ。その答えは実際踊ってみりゃ分かるんじゃねえのか?」 いまいち要領を得ないデルフの言葉に首を傾げるルイズ。 そしてラティアスは今だ!とばかりにルイズの手を引きホールの中央に進んだ。 そしてそれと全く同時に流れている音楽が軽快な物へと変化する。 場の空気に呑まれたルイズは何とも言えない表情でラティアスの手を取る。 「仕方ないわね……ほら、最初は右足、次は左足……」 「ええと、最初は右足、次が……」 「痛ッ!……ちょっと足踏んでるわよ!」 「あっ、すみません。」 「落ち着いて。リズムに合わせればその内慣れるわ。もう一度いくわよ。せーの……」 繰り返されるぎこちないステップ。 周りの者達はその様子に含み笑いをしていた。そしてそれと同時に軽い驚きも持った。 あの『貴族のプライドが服を着て歩いている』ようなルイズがあんなちぐはぐな事をやるだなんて! ……そんな感じだ。 だが二人の踊りが息の合った軽やかな物になるにつれて、その含み笑いは収まっていった。 実際ラティアスはただ踊っている訳ではない。 ルイズのステップに合わせながら、どうやったら上手く見えるか他の者の足運びを見て真似しているのだ。 始め、唐突な調子の変化に戸惑ったルイズだったが、今は上手く合わせられていた。 気づけばホールにいる大半は彼女達を見ていた。 何かを食べる者も、歓談する者もいない。 その様子を見ていたバルコニーのデルフはぼそっと呟く。 「良かったな。上手くいって。ダンスのお相手を使い魔がやるのもだが、あれだけ早く覚えこむのも……おでれーた。本気でおでれーたよ……」 空では二つの月が寄り添うようにして地上を照らし続ける。 そしてホールに立てられた幾つもの蝋燭の光は、月光と溶け合い幻想的な空気を醸し出す。 泡沫とも言える饗宴は始まったばかりだった。 前ページ次ページゼロの夢幻竜
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/25954.html
Blu-ray 劇場版名探偵コナン ゼロの執行人 豪華盤 発売日:10月3日・12月18日 封入特典 1. 三方背ケース(新規描き下ろしイラスト) 2. 新規描き下ろしを含むアートボード25枚 3. ムービーマークステッカー 4. 青山先生原画ポストカード ここを編集 2018年4月公開。~から紅の恋歌に続く第22作。23作に~紺青の拳がある。 http //www.conan-movie.jp/ 監督 立川譲 原作 青山剛昌 脚本 櫻井武晴 ストーリーエディター 飯岡順一 絵コンテ 立川譲 絵コンテ協力 寺岡巌、金井次朗、菅井嘉浩、許平康 演出 立川譲、菅井嘉浩、平向智子、許平康、宇根信也、鎌仲史陽、重原克也 キャラクターデザイン・総作画監督 須藤昌朋 作画監督 野武洋行、清水義治、堀内博之、岩井伸之、高橋成之、吉見京子、井元愛夕、とみながまり アクション作画監督 金井次朗、寺岡巌、小澤和則 作画監督補佐 本吉晃子、新谷憲、大高美奈、小野可奈子、佐々木恵子、三浦雅子、中島里恵、岩佐裕子 デザインワークス 小川浩 美術監修 石垣努 美術監督 佐藤勝、福島孝喜 美術設定 寺岡巌 3D背景モデリング 長谷川弘行 美術ボード 福島孝喜、佐藤勝、長谷川弘行、政木香里 イメージボード loundraw 色彩設計 加藤里恵 撮影監督・メインタイトルCGアニメーション 西山仁 CG監督 松倉大樹、小岩寛満 特殊効果 林好美 Monitor Works sankaku、わたなべしゅんすけ、中小原明典 グラフィックスデザイナー 志村泰央 編集 岡田輝満 HD編集 藤田育代 HD編集アシスタント 倉田しおり 音響監督 浦上靖夫、浦上慶子 ミキサー 田中章喜、田口信孝 音響効果 横山正和、横山亜紀、山田香織 アシスタントミキサー 小沼則義、鶴巻慶典 音楽 大野克夫 文芸担当 小宅由貴恵 アニメーション制作 TMS/V1 Studio ■関連タイトル Blu-ray 劇場版名探偵コナン から紅の恋歌 劇場版名探偵コナン ゼロの執行人 原画・設定資料集 劇場版 名探偵コナン 新価格版Blu-ray 10巻まとめて購入特典付き 劇場版 名探偵コナン 20周年記念 Blu-ray BOX【2007-2016】 名探偵コナン 安室透/バーボン/降谷零シークレットアーカイブスPLUS 劇場版『ゼロの執行人』ガイド 名探偵コナン 赤井秀一 安室透 シークレットアーカイブス 少年サンデーグラフィック 名探偵コナン 「ゼロの執行人」 オリジナル・サウンドトラック 名探偵コナン ゼロの日常 1 サンデーコミックス 劇場版名探偵コナン ゼロの執行人 上 小学館ジュニアシネマ文庫 名探偵コナン ゼロの執行人 名探偵コナン テーマ曲集4~THE BEST OF DETECTIVE CONAN 5~ 初回限定DVD付 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Blu-ray 魔女見習いをさがして Blu-ray「どうにかなる日々」Blu-ray Happy-Go-Lucky Edition 初回限定生産 Blu-rayDisc付き 『ラブライブ! スーパースター!!』「始まりは君の空」【みんなで叶える物語盤】 BEM~BECOME HUMAN~豪華版Blu-ray Blu-ray 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 10th Anniversary Compact Collection Blu-ray ぐらぶるっ! Blu-ray 映画クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 Blu-ray CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda Millennial Fair FINAL at NAKANO SUNPLAZA 2020 ゴブリンスレイヤー Blu-ray BOX 初回生産限定 グリザイア ファントムトリガー THE ANIMATION 03[Blu-ray] 特装版 ラブライブ! サンシャイン!! Saint Snow 1st GIG 〜Welcome to Dazzling White Town〜 Blu-ray Memorial BOX ゾンビランドサガ Blu-ray BOX 初回生産限定盤 Blu-ray 思い、思われ、ふり、ふられ 完全生産限定版 Blu-ray Fate/Grand Carnival 1st Season 完全生産限定版 Blu-ray Fate/Grand Carnival 2nd Season 完全生産限定版 Blu-ray ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかIII OVA Blu-ray 映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日 BD特装版 Blu-ray アズールレーン 三笠大先輩と学ぶ世界の艦船 ぶるーれい Blu-ray 水瀬いのり Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 22 OVA同梱版 呪術廻戦 公式ファンブック よつばと! 15 監修 庵野秀明・樋口真嗣など 夢のかけら 東宝特撮映画篇 パラレルパラダイス 13 特装版 アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 9 オリジナルCD付き限定版 美樹本晴彦マクロス画集 軌 わだち― 夜ノみつき 10th EUSHULLY WORKS しらこ画集 ILLUSTRATION MAKING VISUAL BOOK カズアキ画集 Kazuaki game artworks ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~ 公式ビジュアルコレクション ぼくたちは勉強ができない 第21巻 音声ドラマ ミニ画集付き同梱版 あいきょう 荻pote作品集 ヒョーゴノスケ流 イラストの描き方 TVアニメ『くまクマ熊ベアー』オフィシャルファンブック 押井守原作・総監督 西村純二監督作品 『ぶらどらぶ』 解体新書公式コンプリートガイド OCTOPATH TRAVELER Design Works THE ART OF OCTOPATH 2016-2020 おそ松さん 3rd season SPECIAL BOOK 描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方 YMO1978-2043 「小冊子・YMO全トラックリスト2021 Amazon限定表紙版」付き To LOVEる -とらぶる- ダークネス FIGURE PHOTOGRAPHY COLLECTION 斉藤朱夏 CALENDAR 2021.4-2022.3 ラブライブ! サンシャイン!! Aqours DOME TOUR COMIC ILLUSTRATION BOOK ラブライブ! サンシャイン!! Aqours COMIC ILLUSTRATION BOOK 2020 Winter イジらないで、長瀞さん 10 特装版 「はたらく細胞」公式アニメ完全ガイド リスアニ! Vol.43.2「アイドルマスター」音楽大全 永久保存版VII アイドルマスター シャイニーカラーズ 3 CD付き特装版 ウルトラマンマックス 15年目の証言録 ウルトラマンZ特写写真集 じじぃ 人生は深いな 冴えない彼女の育てかた 深崎暮人画集 上 Flat. ぷよぷよ アートワークコレクション 古谷静佳1st写真集 re START THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER COLLABORATION! Great Journey ウルトラマンゼロ Blu-ray BOX クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Blu-ray BOX 初回生産限定版 小林さんちのメイドラゴンBlu-ray BOX ゆゆ式Blu-ray BOX スペシャルプライス版 とーとつにエジプト神 Blu-ray 直球表題ロボットアニメ 全話いっき見ブルーレイ 未来ロボ ダルタニアス 一挙見Blu-ray VOL.1 シュヴァルツェスマーケン 全話見Blu-ray ワールドトリガー一挙見Blu‐ray VOL.1 異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 魔王プレイボックス 初回生産限定 トータル・イクリプス 全話見Blu-ray Blu-ray Cutie Honey Universe Complete Edition 夜ノヤッターマン 全話いっき見ブルーレイ こみっくがーるず Blu-ray BOX 初回生産限定 Blu-ray 幼女社長 むじなカンパニーセット 初回生産限定 ログ・ホライズン 円卓崩壊 Blu-ray BOX 七つの大罪 憤怒の審判 Blu-ray BOX I Blu-ray 水樹奈々 NANA ACOUSTIC ONLINE 『Dr.STONE』2nd SEASON Blu-ray BOX【初回生産限定版】 魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編 Blu‐ray BOX 今井麻美 Winter Live「Flow of time」 - 2019.12.26 at EX THEATER ROPPONGI - Blu-ray盤 Blu-ray 仮面ライダーゼロワン ショートアニメ EVERYONE'S DAILY LIFE 仮面ライダー一挙見Blu-ray 1号 2号・V3編 仮面ライダー一挙見Blu-ray X・アマゾン・ストロンガー編 スーパー戦隊一挙見Blu-ray 1975-1981 スーパー戦隊一挙見Blu-ray 1982-1986 半妖の夜叉姫 Blu-ray Disc BOX 1 完全生産限定版 裏世界ピクニック Blu-ray BOX上巻 初回生産限定 Levius レビウス Blu-ray BOX【期間限定版】 スーパー戦隊 学研の図鑑 江口寿史美人画集 彼女 アニメディスクガイド80's レコード針の音が聴こえる necomi画集 PHONOGRAPHIC フルーツバスケット アニメ2nd season 高屋奈月 Illustrations 2 彼女、お借りします TVアニメ第1期 公式設定資料集 ドラゴンボール 超戦士シールウエハースZ 超シールガイド ガンダムアーカイヴス『ガンダムビルドシリーズ』編 Angel Beats! 天使画集 Angel Diary PANZER FRAULEIN 野上武志画集 【陸編】 Angel's cage るび様画集 Sweet Dream はすね画集 画集 制服Girl's▼コレクション もりょ作品集 異世界ファンタジーのキャラクターコレクション 劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」公式ビジュアルBOOK アイドルマスター シャイニーカラーズ イラストレーション ワークス VOL.2 Blu-rayDisc付き 八十亀ちゃんかんさつにっき 10 特装版 あんさんぶるスターズ! Ready For Star 2巻 缶バッジ付 Switch エーペックスレジェンズ チャンピオンエディション New ポケモンスナップ -Switch 【PS4】BIOHAZARD VILLAGE PLAMAX 聖戦士ダンバイン サーバイン ノンスケール PS製 組み立て式プラスチックモデル スーパーミニプラ 無敵ロボ トライダーG7 3個入りBOX 魔道祖師 前塵編 完全生産限定版 HGUC 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ Ξガンダム MG 機動戦士ガンダムSEED モビルジン 1/100スケール カンチ 青 ノンスケール ABS&ダイキャスト製 塗装済み完成品 ☆赤ver 魔女の旅々17 ドラマCD付き特装版 クリストファー・ノーランの世界 メイキング・オブ・インターステラー BEYOND TIME AND SPACE 時空を超えて るるぶアズールレーン からかい上手の高木さん15からかいカレンダーカード付き特別版 「武装神姫」原案イラスト集 ALLSTARS 機動戦士ガンダム サンダーボルト 17 キャラクターブック付き限定版 とある科学の超電磁砲T OFFICIAL VISUAL BOOK Aqours 5周年記念アニメーションPV付きシングル「smile smile ship Start!」【BD付】
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/372.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 心配そうに二人を見守るヴェルダンデ。 そこから正三角形を描くように対峙するギーシュと、ヴィオラート。 ルイズがヴェルダンデの鳴き声に気付いた時には、既に周りを生徒達が取り囲んでいた。 「ヴィオラート!」 ルイズの声に反応し、人垣が通路を作る。 「何で、あんた決闘なんか…ギーシュも、女の子と決闘なんて何考えてんの!?」 「ミス・ヴァリエール。男には絶対に引けない時ってものがあるのさ。」 「ルイズちゃん…ごめんね。あたし、努力しないで後悔するのは嫌だから。」 二人はそれだけ答えると、ルイズの到着を合図にしていたかのように動き始める。 「ああもう! 使い魔のくせに、ちっとも私の思うとおりに動かないんだから!」 ルイズは、諦めの言葉を吐いた。 ヴィオラートなら何とかするだろう、そう思ったから。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師7~ 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 創り出した『ワルキューレ』の後方で、自信満々に宣言するギーシュ。 だが、ヴィオラートの反応はギーシュの、いや集まったギャラリー全員にとって予想外のものだった。 「かわいいゴーレムだね。」 「なっ…!! このうえ、僕のワルキューレを愚弄するか!」 かわいいゴーレムと言い放ったヴィオラートの言葉に、周囲の空気が変わる。 数々の石人ゴーレムや、鉄人ゴーレム…金剛ゴーレムまで屠ってきたヴィオラートにしてみれば、実に自然な、むしろ好意的な評価であったのだが…ギーシュ達が、その事実を知るよしもない。 「かわいそうだが、痛い目にあわないと理解できない性分のようだね。」 ヴィオラートに向けてそう言い放つと、ギーシュはワルキューレを突進させる。 「あたしは、錬金術師だから。」 ヴィオラートはバッグからトゲだらけの何かを取り出し、ワルキューレに狙いを定める。 「錬金術師の戦いを、見せてあげるね。」 ヴィオラートの額のルーンが、輝きを放ち始めていた。 所変わって、ここは学院長室。コルベールの長い長い説明が、ようやく山場を迎えたようだ。 「つまり、あの使い魔は、始祖ブリミルの…何じゃったかな?」 「『ミョズニトニルン』です! このルーンはミョズニトニルンの証に他なりません!」 コルベールは、禿頭に光る汗を拭きながらまくし立てた。 「ふむ、確かにルーンは同じじゃ。しかし、それだけで決め付けるのも早計かもしれん。」 「それは…そうですが。」 コルベールもようやくオスマンとの温度差を感じたのか、学院長室に微妙な空気が流れる。 ちょうどその時、ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン。」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「ヴェストリの広場で、決闘している生徒がいるようです。」 「全く、暇な貴族ほど性質の悪い生き物はおらんな。で、誰が暴れておるんだね。」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あのバカ息子か。親に似て女好きな奴じゃ、どうせ女の取り合いじゃろ。相手は誰じゃ?」 「それが、メイジではなく…ミス・ヴァリエールの使い魔だという話で…」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師達は、決闘を止める為に『眠りの鐘』の使用許可を求めています。」 オスマン氏の目が、鷹の様に鋭く光った。 「ふん、子供のけんかじゃ。放っておけと伝えよ。」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 「オールド・オスマン。」 「うむ。」 オスマン氏が杖を振ると、壁の鏡にヴェストリ広場の様子が映し出された。 ヴィオラートは驚いていた。ウニを持った瞬間、ウニの成分・能力・産地までもが手に取るように判った。 そしてまるで、ウニが体の一部、手の延長にでもなったかのような一体感。 「うにー!!」 ヴィオラートの叫びが、ヴェストリの広場に響き渡った。 (栗だ) (栗だよな) (くり。) (それは栗だ) (どう見ても栗だ) (どちらかといえば栗だな) その瞬間、ギャラリーの心が一つになる。 ウニと名づけられた何かが、迫るワルキューレに接触したその瞬間――― ウニは、ワルキューレを巻き込んで大爆発し、ワルキューレごと粉みじんになった。 (ウニって、こんなに強かったっけ…) ヴィオラートは、額のルーンに関係あるのかな? と、ほんの少し考えを巡らせた。 「ば、爆弾!? どこからそんなものを手に入れ…いや、決闘に爆弾を使うなど、卑怯…」 ギーシュの発言は、そこで止まった。ヴィオラートがほんの少し、真剣な顔に変わったから。 「言ったでしょ?あたしは錬金術師。これはあたしが自分のために、自分の力で用意したんだよ?」 ヴィオラートが一歩前に出る。ギーシュが一歩下がる。 「ギーシュくんも、冷静になって、ちゃんとお話できれば、誤解だってわかると思うんだけどなあ。」 ヴィオラートは歩を止め、あくまでも穏やかな笑顔でギーシュに語りかける。努力のあとは認められるが、意識して穏やかな笑顔を作っているというのがまるわかりな、威圧感たっぷりの笑顔で。 「ね? お話を聞いて?」 「く、来るな!」 ギーシュは慌てて薔薇を振る。花びらが舞い、新たなゴーレムが六体あらわれる。 「どうして、わかってくれないのかな…」 ヴィオラートは哀しげにそう呟き、バッグの中から渦巻状のハーモニカを取り出す。 「あんまりはりきりすぎると、こうなるんだよ…ギーシュくん。」 額のルーンが輝きを増し、渦巻状のハーモニカが不思議な旋律を奏でる。 「あ…れ…? こんな、ちかりゃが、はいらにゃ…」 まるで心そのものを削られたかのように、ギーシュは脱力し、地面に倒れ伏す。 広場に、歓声が轟いた。 オスマン氏とコルベールは、遠見の鏡で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。 「オールド・オスマン。」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが。」 「うむ」 「見ましたよね!? 不思議な道具を使いこなす、これぞミョズニトニルンの証ではありませんか!」 「うむむ…」 「オールド・オスマン! 早速王室に報告して、指示を仰がないことには…」 「それには及ばん」 オスマン氏は、重々しく頷いた。白いひげが、厳しく揺れた。 「どうしてですか!? これは世紀の大発見ですよ? 現代に蘇ったミョズニトニルン!」 「ミスタ・コルベール。大発見だからこそ、慎重にならねばならん。」 「はあ」 「王室のボンクラどもに過分の力を与えて、どうしようというのだね? 戦争でもしようと言うのか?」 「そ、それは…」 「そしてまあ、間違いの可能性もまだ無いとはいえん。報告するにしても、拙速に過ぎる。」 「ははあ。学院長の深謀遠慮には恐れ入ります。」 「この件はわしが預かる。他言は無用じゃ。」 「は、はい! かしこまりました!」 オスマン氏は杖を握ると窓際へと向かった。歴史の彼方へと、思いを馳せる。 「伝説の使い魔『ミョズニトニルン』か。どんな姿をしておったのかのう…」 夢見るように、そう呟いた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1494.html
前ページ次ページゼロのイチコ 「ちょっとタバサを驚かそうと思っただけだったんだけどね、ごめんなさい」 と笑顔で謝るキュルケとその横に立っているタバサ。キュルケのその態度はあまり反省してるように見えなかった。 三者三様、それぞれに非のある事もあったため。部屋の穴の修理費は三等分になった。 私の部屋の香水やランプなども被害にあったが、あまりツェルプトーに金を出してもらうのも癪であったため断った。 タバサも自分の部屋の修理は自分で金をだすらしい。 「ごめんなさい」 とタバサが頭を下げる。 「いいのよ、あなたはどちらかというと被害者だし」 今回の元凶はキュルケで、実行犯がイチコになる。 イチコは部屋の隅で足を折りたたんで座る、彼女が言うには「正座」という座り方、をしている。 昨夜にみっちり叱りつけたので反省しているようだ。 今日は虚無の日、授業は休みなのでみんな思い思いに過ごす日だ。 私はと言うと普段は部屋で本を読んだり、郊外で魔法の練習をしたりするのだけれど。 部屋の修理のため今日は部屋にいるわけにもいかない。 それに香水とランプを買いに街までいかないといけない。 私はイチコを連れて街に出かけることにした。 トリステインの城下町は今日も大勢の人間でごった返していた。 ここは貴族も平民も入り乱れ生活している。さすがに位の高い貴族はこんなところには来ないが、家名の低い貴族は平民と変わらない生活をしている者たちもいる。 「あの、ご主人様……」 「あによ?」 「なんだか、周りから見られているように思うのですが」 「そりゃ、杖も持ってない変な格好の人間が浮いてたら不信に思うわよ」 ふと間違えればエルフが街に紛れたと思う――慌て者はさすがに居ないにしても、さすがに不審者には見えると思う。 だからと言って、使い魔を留守番させてては意味が無い。常に主人のそばを付き従うのが使い魔だ。 別にやましい事をしているわけじゃないのだから、堂々としてれば良いのだ。 仮に兵士がやってきたとしても説明すれば分かってくれる、と思う。たぶん。 「やっぱり、わたし歩きましょうか?」 「周りの目なんか気にしなくて良いわよ、浮いてたほうが楽なんでしょう?」 歩くことはできる、というよりは足を動かして歩いている振りが出来るのだ。 だけれども、そんな事をしたらせっかくゴーストを使い魔として従えてるのに普通の人間を呼び出したみたいで嫌だ。 ほとんど見得なのだけれど、初めて成功した魔法なのだ。このぐらいは誇示したいと思う。 「あら、おかしいわね。ランプ屋は確か……」 この通りにあると聞いたのだけれども見当たらない、見過ごしたのだろうか。 キョロキョロと見回す。イチコも少し浮き上がって周囲を見渡している。 そこでピンと思いついた。 せっかく召喚した使い魔を使わないでおく事は無い。 「イチコ、あなた飛べるのだからランプ屋と香水を売ってる店を探してきなさい」 「あ、はい。分かりました」 ふわふわと浮き上がるイチコ、まる見えになる純白のパンツ。 「待ちなさい!」 「はい? どうしました」 「やっぱり二人で探しましょう」 「は、はぁ?」 主人の恥は使い魔の恥、逆もまたしかり。 イチコに無闇に高く浮き上がらないように言いながら街の散策を続ける。 その後、ランプ屋は簡単に見つかったのだが香水がなかなか見つからない。 いや、香水自体は露天などにも売っているのだが。普段使っているモノが見つからない。 家に居た頃は買い物などは使用人の仕事であったし、学院にも定期的に必要な雑貨は送られてくる。 今回のような事故など起こらなければわざわざ買い物など来なかったのだが。 一瞬学院のメイドに頼もうかと思ったが、あれの雇い主は学院長のオスマン氏となっている。 学生としての領分を越えた頼みは出来ない。 たまに無茶を頼む学生もいるとは聞くが…… 「おい、そこの嬢ちゃん。どうだ、何か買っていかねぇか?」 歩き疲れた頃、そう声をかけられた。 振り返るとそこは武器店だった。姿は見えないが中から声はする。 「おいっ! デル公、勝手に喋るなっつってるだろ!」 と奥から店主らしき男が出てきた。 その男はこちらに気づくと 「これは貴族様、とんだ失礼を」 と似合いもしない笑顔をこちらに向けた。 それよりも最初にわたしたちに声をかけた人間の姿が見えない。 イチコを見ると、彼女もわたしのほうを向いた。よく状況が分からないといった顔だ。 「おう、ココだココ。どうだ、貴族っつっても剣が使えて損はねぇぞ」 よく聞くとその声は無造作に木桶につっこまれた剣の一つから発せられていた。 なるほど、インテリジェンスソードだったのか。 「こらっ、黙ってろっつっただろ。大体お前みたいな大剣を扱えるわけ無いだろ!」 確かに護身用よりは実戦用の大きな剣だった。 女性に扱えるようには見えない。 「商売ベタのオマエさんの変わりに客引きしてやってるんじゃねぇか。どうせヒマなんだろ」 確かに店内はガランとしてる。といっても戦争が無い時期は普通こういうものなんじゃないだろうか。 「ぇええ?! 剣が喋ってます、お化け?!」 「お化けはアンタでしょ!」 イチコが随分と反応遅れて驚いていた。 「へぇ、お化けに取り憑かれている貴族様とは珍しいな」 と、その剣は失礼なことを言った。 「この子はわたしの使い魔よ」 「あ、でも憑いてるというのもあながち間違ってない気がしますね。幽霊になって日も浅いですからうっかりご主人様を呪い殺してしまわないかと最近不安で不安で」 何か恐ろしいことを言っている。だがこの底抜けに明るい幽霊が呪いとか言ってもまるで緊張感が無かった。 「どうも、はじめまして。わたくし高島一子と申しまして。訳あって幽霊しながらご主人様の使い魔などをさせてもらっています」 「おぅ、俺の名前はデルフリンガー。デルフとでも呼んでくれや」 「はい、デルフさん」 幽霊と剣が目の前で交友を深めている。シュールだった。 ふと目を逸らすと店主と目が合った。 「それで貴族様、剣などのご入用はございませんでしょうか? いえ、もちろん魔法があれば剣など入用では無いかもしれませんが……」 魔法があれば、という所が引っかかる。だがわざわざ自分から魔法が使えないとも言えない。 店主は装飾として杖としての剣も取り揃えている、などとと熱心に説明をしている。 しかし私は剣を買う気など毛頭無かった。 「そうです、いかがですか使い魔の方にも剣を持たせると見栄えが上がりますよ」 「悪いけどあの子幽霊だからモノが持てな――」 「本当に重いですね、う、腕が……」 「ま、お嬢ちゃんの手には余るわなぁ……って嬢ちゃん使い手か?」 モノが持てないはずのイチコが剣を持ち上げていた。 あまりの出来事に言葉を失くす、武器屋の主人はそんな私を首をかしげて見ていた。 「……イチコ」 「は、はい。ななんで、しょう。ご、しゅじんさ、ま」 インテリジェンスソードが重いのか、プルプルと震えながら話す。 「取りあえずソレを置きなさい」 「は、はぃ」 元の木桶の中に剣を戻す。そして改めて向き直った。 「なんでしょう、ご主人様?」 「アンタ、なんで剣が持てるの?」 「いえいえ、あれは重くて重くて持てるものではありませんでした。やっぱり少しは鍛えないといけませんねぇ」 「そうじゃなくて、なんで生き物じゃないものが触れるのよ」 「……あれ?」 振り返って手じかにあった棚を触ろうとする、しかし手がすり抜ける。剣を取ろうと手を伸ばすが突き抜ける。 順々に触れるものは無いかと探って横移動、何をしてるのかと呆然としていた店主に行き当たって握手をする。何をしているのか。 そうして店を一周して再びインテリジェンスソードの所まで戻った。 柄に触れるが突き抜けない、そのままガシリと持つと不安定ながらも持ち上げた。 「えぇ?! なんで持てるんですか? はっ、もしや私ついに幽霊としてパワーアップを成し遂げたのでしょうか? しかし、そうなるといよいよご主人様を呪い殺してしまわないか心配になってきますね。でもでも、触れるようになったのは大変喜ばしいことですし。 なにより、ご主人様のお世話が出来るようになるかもしれませんし」 う~ん、と悩みはじめるイチコ。 幽霊としてパワーアップ? そうじゃないと思う、だったら他の剣にも触れるようになって無いとおかしい。 さっき私は「生き物ではない」と言った。 しかしインテリジェンスソードは無生物だろうか、それとも生き物だろうか。 もしかしてインテリジェンスソードは生き物だから触れたのではないだろうか。 「ねぇ、この店にあるインテリジェンスソードはあれ一本なの?」 「へ、へぇ。すいやせん。インテリジェンスソード自体が希少なもので」 それもそうだ、実際剣が喋っても得なことなどほとんど無いのだ。 実験的に作られはしたものの需要が少なくほとんど量産されなかったのだ。 この機会を逃せばインテリジェンスソードなんてほぼ見つからない。 「分かった。それじゃ、あの剣を買うわ」 使い魔は主人を守るもの。 せっかく使える武器を見つけたのだから買っておいて損は無い。 重さに問題がありそうだけど、練習次第でどうにかなるだろう。 「へぇ、まいどありがとうございます」 もともと腰が低かった店主の腰がさらに低くなった。 さっさと支払いをすませると私は背中に剣を背負って、まだ悩んでるイチコを伴って外に出た。 ちなみにやっぱり重かった。肩が痛い。 「す、すいませんご主人様。一子はご主人様を呪い殺してしまうかもしれません」 「アンタまだそこで思考が止まってたの」 馬を駈けて街を出てからやっと悩んでいたイチコが出した台詞がこれだった。 この暴走思考はきっと頭をすげかえでもしない限り治らないのだろうと思う。 「アンタ用の剣を買っておいたから、せめて振れるようにしておきなさいよ」 「はい? 剣ですか?」 まさかとは思ったけれど、剣を買った事すら気がついていなかった。 「おぅ、よろしくな相棒」 「デルフさん。なぜそのような所に?」 「いいかげん店の中飽きたんで適当な奴に買ってもらおうかと考えてたが、使い手に出会えるたぁ俺も運がいいねぇ」 とこの喋る剣はよく分からない事を口にした。 「あの、ご主人様」 「なによ?」 「香水は買ったんですか?」 「あ……」 馬の頭を反転させた。 前ページ次ページゼロのイチコ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5478.html
前ページ次ページゼロの工作員 図書館で許可証と名簿を記入し、いつも奥の席に座っている、 顔なじみとなった青く見える黒髪を持つ少女、タバサに話しかける。 「こんにちわ」 「・・・うん」 フリーダはオスマン達から正式に異世界の人間であると認められ、この世界の教育を受けている。 講師となるのは『雪風』の二つ名を持つ、眼鏡をかけた十代の小さなメイジだ。 齢は14歳、背は140cmほどで、魔法学院2年。無言、無表情。 発育が遅れ、背が小さく大人しいために12歳ほどに見える。 生徒の中では特別優秀な存在らしく、<トライアングル>の称号を貰っていた。 フリーダはタバサの元へ通い詰め、文字や文章の読み方といった基本的なものや、 地理政治文化、歴史といったものまで、ハルケギニアについて様々な知識を学んでいる。 魔法や魔道具などの異世界の知識は、物語の中に居るようで彼女にとって面白かった。 映画や小説の設定資料や使われた道具を生で目にするようなものだ。 彼女は真綿に水を染み込ませるように知識を吸収していった。 「問題、正式名称は「王立魔法研究所」。トリステインの王都トリスタニアにあって…」 「通称アカデミーね」 「正解」 タバサは非常に無口なものの、聞けばちゃんと答えてくれる。 教えてもらう代わりに、フリーダはトリステインでは未発達と思われる自然科学や数学の知識を教えていた。 レベルの低い学院の授業に半ば飽きていたのでタバサにとっても有意義な時間であった。 「tanθ = sinθ / …」 「飲み込みが速いわね、なら…」 古風な紙媒体の本を使い、鉛筆で紙に書き取り、覚える。 脳に埋め込んだ 記憶領域 経由で覚えてきたフリーダにとって、 手で覚えるのは古臭く非効率極まりないことである。 それでも彼女は嫌いではなかった。 図書室の壁に掛けてある時計を見ると、とっくに夕食の時間は過ぎていた。 熱が入りすぎて夕食を抜かしてしまったようだ。 一段落したのでタバサと一緒に休んでいると、 いつものようにキュルケが林檎やサンドイッチの入ったバスケットを持ってきた。 タバサと図書館に夜遅くまで入り浸るようになって以来、毎晩彼女は差し入れを持って来てくれるのだ。 彼女はタバサの体調が心配だから持ってきているのだそうだ。 服や男はだらしないように見えて、実はマメで世話焼きなのかもしれない。 「それにしても、たった一週間でずいぶん懐いたわね。タバサ」 「・・・・たぶん、違う」 タバサの頬が微妙に動いた。 表情が乏しいので判りづらい、多分喜んでいるのかもしれない。 「林檎。食べる」 タバサがバスケットから林檎とナイフを取り出し皮を剥く。 危なっかしい手付きで皮ごと身を剥ぐ。 角ばった林檎が出来そうだったので。 「貸して」 不器用な姿にフリーダは見ていられなくなり、手を貸した。 慣れた手で林檎の皮を剥く。 「へえ、上手いわね」 皿の上には林檎の兎が乗っていた。 遊び心で、瞳や毛の細工を無駄に凝ってみた。 「刃物の扱い、慣れてるの?」 「ええ、昔レストランで働いてたから」 「・・・そう」 キュルケは林檎の兎を頭から食べた。シャクシャクと子気味よい音がする。 「・・・もったいない」 タバサは残念そうに兎を食べる。 無表情に見えて、可愛いもの好きなのかもしれない。 「・・・・・・」 タバサがじっとフリーダの顔を見ている。 視線は眼鏡に注がれている。 放っておいたら黙っていつまでも見つめていそうなので、問いかける。 「…掛けたいの?」 「うん」 フリーダは眼鏡を外し、渡した。 タバサは歪みのないレンズの向こうでどんな世界を見ているのだろうか。 付けた心の仮面が外れそうで、ぎこちない微笑みを返した。 「・・・度が入っていない」 「レンズを一枚通したら、世界が綺麗になって見える気がするの」 彼女はレンズと同じ、薄っぺらい『自分』に対して苦笑いする。 「今週の休み、みんなで一緒に街にいかない?」 「あたしとタバサとルイズつれてさ、買い物に行くの。案内したげるわよ」 「そうね。この国を知るいい機会かもね」 「・・・シルフィード」 「どうして私がツェルプストーなんかと」 ビルの2階ほどの大きさがある羽を広げた蒼い竜の背で、 ルイズがぶつぶつ小声で文句を言っている。 三人はタバサの使い魔、シェルフィードの背に乗り、 ハルケゲニアの王都トリスタニアへ向かっていた。 タバサが魔法で風の障壁を張るおかげで、 高度にも関わらず生身で外に出ても快適である。 ルイズはフリーダとの付き合い方を考えていた。 朝はルイズが着替えるのを手伝った後、洗濯に行き、 ルイズの授業がある昼間は平民のシエスタと共に雑用、 食事も別で、授業後はタバサと勉強、忌々しいツェルプストーとも仲がいい。 其処まで考え、気付く。自分は存在感がゼロのルイズではないのかと。 会話する暇がないじゃない! そういえば、まだ学校から貰ったフリーダの下着の替えや 制服以外の服は用意していなかったなと思い出した。 先日、ツェルプストーがフリーダと一緒に買い物に行こうと粉をかけていた。 先祖代々寝取られてきたツェルプストー家に使い魔まで取られては堪らない。 焦ったルイズは主人の懐の深さと、偉大さを示すため、 街で物でも買い与えようかと思っていた。 その矢先の出来事であった。 「壮観な光景ね」 上空のシルフィードから街を見下ろす。 街の中央に聳え立つ、白い石造りの尖塔。 王城を中心に整備がなされた街路は巨大な人口を抱える都市にも関わらず、 一様に入り組み細く狭い。 街を二部する巨大な河を隔て、街と城に分かれている。 どうして街路を広くとらないのか彼女は不思議に思った。 旅なれた彼女には一目で判る。 こうした不自然な景色は、たいてい設立初期に戦争があったためだ。 「トリステインの王都よ。ここらじゃ一番大きな町なんだから。特産品は…」 ルイズが誇らしげに説明している。 だが、フリーダの冷静な目に映るそれは、ただの街だ。 そして人殺しの専門家、暗殺者であるである彼女は、 無価値なものを美しく飾ろうとするすべてが嫌いだった。 トリスタニアの大通りを歩く。 休日の通りには露天が出展し、元々5mほどしかない道を更に狭くしていた。 「狭いわね。これでも大通りなの?」 ルイズが怪訝な顔をする。 「アンタどんなとこに住んでたのよ」 「私の住んでいた街はこれの3倍はあったわ」 「ゲルマニアでもそんなものないわよ」 「…そう」 トリステインの王都、トリスタニア。 街の中央には、王城を始め石造りの白い美しい建物が立ち並び、多くの貴族が暮らす。、 街一番のブルドンネ通りの路地には色とりどりの安物の衣服や帽子をずらりと並べた露店や、 手製の首飾りや指輪を売る立ち売りの商人や、タライや包丁フライパンを置いた金物屋、 箱売りしている果物やザルに無造作に詰まれた野菜を売る露天商、 試験管に入った妖しい色の秘薬を売る屋台が立ち並ぶ。 肉を焼く臭いや、店主と客の競り合う声が聞こえ市場は騒々しい。 商品を搬入する台車や、忙しそうな買出し業者、子供連れの夫婦や学生、 空には風竜やグリフォン、ヒポグリフなどの使い魔や風船が飛び交い、混雑を通り越し猥雑だ。 「ほら、そんなに物珍しげにしてると、スリに狙われるわよ!」 フリーダはルイズに注意されるも、街の姿に気もそぞろだった。 様々な星の、街を見てきた彼女であったが、 本の中でしかなかった街の光景が現実のものとなっているのだ。 本好きな彼女としては実に魅惑的だ。 「アンタの服を買いに来たんだからね!」 今日の予定は学院から出て、街へフリーダの服を買いに行くことになっていた。 召還時の服はボロボロで替えの服や下着がなかった為だ。 当初はキュルケがフリーダの服の金を出すといっていたのだが、 ルイズが使い魔の面倒を見るのは主人の務めと首を縦に振らなかったため 全額、ルイズ持ちとなっている。 「摺られて私に恥をかかせないでよ!」 財布は金貨が一杯に詰まっていて、重い。 スリが嫌なら私に財布を持たせるなとつきかえそうと思ったが、面倒なので止める。 ルイズの言葉に一々反応していたのでは日が暮れるから。 「いいじゃないの。楽しんでるんだから」 隣に歩いているキュルケがフォローを入れた。 「ルイズだって初めて街に来たとき同じだったでしょうが」 自分の身長ほどもある長い杖を抱え物静かに歩くタバサが首を縦に振った。 「あ、あれは子供のころの話しで」 ルイズがキュルケにからかわれている。いつもの通りだ。 そのうちルイズが一方的に興奮しだして杖を抜いて爆発させるだろう。 ほら、予想通り爆発させた。 それをキュルケが軽くあしらい、タバサが無言で被害が広がるのを抑える。 三人の日常風景だ。 服を大量に買いすぎたルイズがキュルケに 「シェルフィードじゃそんなに持ってけないわよ」 と諭されたり、ご主人様と使い魔の関係に気の大きくなったルイズが アクセサリーを大人買いしようとしたのを 「・・・無謀」 とタバサに止められたり、彼女オススメのハシバミ味のアイスを食べて 「に、苦っ」 とルイズが悶絶したりと三人は買い物を楽しんでいる。 フリーダは目をそらし、眼鏡を直す。 はしゃぐ彼女達の中にいるのが、たまらなく場違いで、恥ずかしくなる。 「少し、辺りを見てきていいかしら?」 アイスを食べて一人を除き全員で悶絶した後、フリーダが切り出した。 「いいわよ。私達は店で待ってるから」 「待ってる」 「苦あいいい」 三人から離れ路地を歩く、中央通りから一本離れただけで街の本来の姿が見えた。 表通りとは反した整然と並んだ店舗は店主やその他の人々が数人、寒々と店番をしている。 客や騒々しい商品の搬入は少なく静かで活気のない市場。 早々と店仕舞いする店主や無人の店舗が所々に見える、 中には一区画丸ごと無人の地域もあった。 「…いろんなお店があるのね」 「どう?楽しかった」 ルイズは好物のクックベリーパイを口いっぱいに頬張っている。 「……………ええ」 「それにしてもフリーダって意外よね。何でも知ってるくせに何にも知らないもの」 タバサもキュルケに同意する。 「・・・アカデミーでも教えられる知識を持っているのに、普通のことで珍しがる」 からかわれているようだからフリーダは訓練して身に付けた不自然でない笑顔を作る。 「…………私の国ではこんな光景、なかったから」 「フリーダの国に私も行ってみたいわ」 ルイズの『フリーダの国』の言葉は彼女を不機嫌な現実へ引き戻す。 「無理をして外に出る必要もないわ。……ここは、平和だもの」 彼女は思う。少女達はこのトリステインという国が病んでいることを知らないのだろう。 同じ街で、同じ空気を吸いながら、彼女達は違う世界を生きている。 ここも、フリーダの居場所ではないのだ。 トリステインは彼女の故郷だ。 メイジと平民に見放され徐々に寂れつつあるけど、ルイズにとって守りたい場所である。 乱立する店の隙間から王宮の尖塔が見える。 その下には綺麗な白い石造りで出来た貴族達の屋敷と平民たちの街が広がっていた。 街は雑多で敷き詰まっていて、汚い。 それでも彼女は街が好きだった。 「落ち着いた街ね」 「もっと派手なのがいいわ。トリスタニアは地味すぎるわよ。」 ツェルプストーはゲルマニア生まれで派手好きだからトリステインの愚痴ばかりこぼす。 伝統と格式を守ってこその貴族なのに。 フリーダがじっと短剣を付けた平民の腰元を見ている。 完璧で、何事にも無関心に見えた外国の少女。 そんな彼女にも人間らしいところがあるのがわかって嬉しい。 「危うく忘れるとこだったわ」 「服も靴も下着もお菓子も買ったわよ」 まだ買うつもりかとツェルプストーが非難する。 いいじゃない。私だって久しぶりに街に来たんだから。 本当はまだまだ買いたかったが、シェルフィードが運べないのなら仕方がない。 「・・・武器」 タバサが店を指差した。 前ページ次ページゼロの工作員
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4373.html
303 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/11/27(月) 21 31 38 ID Fbj3A6iz アメリカンジョーク風ゼロの使い魔 ある朝、いつものように大好きな使い魔のサイトをつれて 授業を受けに行こうと部屋を出たルイズは、少し離れたところにある モンモランシーの部屋からギーシュとモンモランシーが出てくるのを目撃した。 見ると、ギーシュはなんとモンモランシーにお出かけのキスをしているではないか。 羨ましくなったルイズは傍らのサイトに真っ赤な顔を悟らせないよう言う。 「ね、ねぇ、ギーシュは出かける前にモンモランシーにチチチ、チュ−してるわよ・・・ あああ、あなたはなんで同じことしないの?」 「は?だって俺、出掛けにキスするほどモンモンと親しくないし」 その日一日、悲鳴が途切れることはなかった・・・・・・ 終わり