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前ページ次ページご立派な使い魔 翌日は何事もなく過ぎた。 てっきり、ワルドがマーラに決闘を挑むかと思っていたルイズには肩透かしである。 「準備が必要だからね。僕は無謀な戦いを挑むつもりはない」 「準備? 一体どうするつもりなの、ワルド」 「まずもっと精力をつけないといけない。それからは……後のお楽しみさ」 そう言って、とにかく精の付きそうな料理ばかりを食べているのだ。 これにはルイズもがっかりしたが、しかし考え方を変えれば、それだけワルドが真剣ということにもなる。 「マーラとの戦いそのものは行うの……?」 「ああ。君の期待に応えてみせるさ、なんとしてでもね」 まだ見放されていない。 その事実に、ルイズはなんとか胸を撫で下ろした。 「せめてこちらの旦那が使い手だったらな。俺も手助けできたのによ」 「……それって、アレを斬るってこと? この間は嫌がってたのに」 「そりゃ俺だって覚悟は決めるよ。娘ッ子のひょろひょろ剣じゃどうせ斬れねーし、パスしたけどさ。 こちらの旦那だったらな、そりゃ、やれるかもって思うじゃねーか」 「そう……よね。ワルドなら、ワルドならきっと……」 「ああ、畜生。ほんと使い手だったらよ」 「……ところで使い手って何よ? なんか前にも言ってた気がするけど」 「え? ……あれ? 俺んなこと言ってたっけ?」 「……いいわよ、もう。貴方にはそういうの、期待してないし」 「ひでーや!」 剣としてはあまり役には立たなかったけれど。 これでも、ルイズはデルフリンガーに感謝しているのだ。 一人では耐え切れなかった、この生活。もし彼がいなかったらきっと自分も、ギーシュなどのように…… ルイズは首を振った。まだ、終わった訳じゃない。 「ワルドが勝ったら、その時は……デルフ、きっとわたし、貴方を使うのに相応しい使い魔を召喚してあげるから」 「お? おいおい、なんだよ気味悪りーな」 「ううん……なんでもない」 ルイズは、ただ、静かに待ち続ける。 一日暇だったわりに、夜になってもマーラを中心にしてギーシュとキュルケが盛り上がっていた。 一応、タバサもいるが、話には加わらず隅で本を読んでいる。まあ、いつも通りらしい。 それにしても聞こえてくる単語がいかにもな単語ばかりなので、ルイズは素通りしようと思ったが。 けれども、言わなければならないこともあると思いとどまる。 「マーラ。貴方に言わなきゃいけないことがあるわ」 「ほう。なんじゃな」 「わたし、ワルドと結婚するわ」 すると、マーラの様子はいつもとさして変わらなかったが、横のギーシュとキュルケが目を丸くした。 タバサも、本から顔を上げる。 「おめでとうミス・ヴァリエール! お似合いだよ!」 「そうね。どう見ても、あなたには不釣合いなくらいだけれど」 「……おめでとう」 級友はいずれも率直に祝福してくれる。まあキュルケはいつも通りだ。 「やはり、昨日の一夜で虜になったのかい? 衛士隊長のテクニックは大したものだな」 「いくら婚約者って言ったって、たった一晩でルイズを夢中にさせちゃうなんてね。 魔法衛士隊ってそんなとこまで鍛えられてるのね」 セクハラまがいのことを言うこの二人も、最近としてはいつも通りだ。 ……だからルイズも拳を握り締めてプルプルと震えさせたが。我慢である。 「めでたいわな。小娘が望むならば、女の妙技を伝授してくれようぞ」 こやつがこうなのもいつも通り。 ルイズは、叫びたい気分を堪えて話を続け…… 「まあ、殿方はそんなものまでご存知なの!? ぜひ、あたしにも教えて頂けませんこと?」 「グワッハッハ。なに、お主のレベルではとうに習熟していようが、小娘は初心であろうからのう。 それに対する程度のモノよ。お主が期待するような高度な技については、自力で学ぶ方が良い具合であろう」 「それもそうですわね。まあルイズのレベルでは……」 「ツェルプストーほんっきで自重しなさいよぉ!」 我慢したかったのだがつい声が出た。 (いけないわ。そうやってこいつらのペースに乗せられるからいつもおかしくなっちゃう。 ここはクールにならなきゃ……クールになるの、頑張れわたし) なんとか呑み込んで、ルイズは本題を告げる。 「でも結婚する前にね、ひとつ条件を出したの」 「条件? 一体全体、それは何なんだい?」 「あらまあ贅沢ねルイズ。そうやってお高くとまってると、お子様体型なのに行き遅れちゃうわよ」 「だからぁぁぁ……だ、だから、貴方達は黙ってて。 マーラ。……その条件は貴方に関わるわ」 ルイズの視線が、マーラと交錯する。 刃と刃を打ち合わせたような冷たい緊張感が場を支配した。 「ほほう。あやつとの結婚にワシが関わるとな?」 「貴方を倒したら結婚する……そう、約束したわ」 「なんだ。ミス・ヴァリエール、それじゃあ君は結婚する気がないんじゃないか」 「体のいい断り方ね。男殺しよね」 今注目すべきは、マーラのみだ。 ギーシュとキュルケはとりあえず放置しても問題ない。 そのマーラの反応は……ニヤリ、と笑ったように見えた。 「面白いわな。小娘の旦那として相応しきモノを持つかどうか見極めてくれようぞ」 「じゃあ……受けるのね?」 「小娘は我が主であろうに。ならば小娘の決めたことに従うまでよ」 「そ、そう……物分りのいい使い魔を持って、わたしは果報者な主人だわ……」 ワルドは……勝てるのだろうか。 いや。勝てるはずだ。きっと、勝つ。 ルイズはそう信じる。信じなければ、ならないのだ。 「何時になるかはまだ決まってないけど……きっと、近いうちになるはずよ」 「うむうむ、ならばワシも己をいきり立たせて待つとするかのう」 賽は投げられた。 ルイズは、ワルドの勝利を祈るしかない。 夜半になっても、これといって事件は起こらなかった。 襲撃など受けそうな気もしていたのだが……どうなったのやら、である。 「結局、あの賊はただの物取りだったようですね」 「らしいな。あるいは事情でも出来たのかもしれない。 例えば、強敵との戦いが控えているので、無駄に体力、魔力を消耗できないだとか…… 遍在ひとつの魔力も無駄に出来ないような感じで」 「随分と具体的な例ですね?」 「いやなに。賊の心境というのを慮っただけだよ」 相変わらず、ワルドは物を食べている。 今食べているのは爬虫類か何かの干物のようだが、妙な代物だ。 それを見るギーシュは、確かあれは絶倫の妙薬と言われるトカゲだったか、と記憶をめぐらせる。 「子爵、どうしたのです? そんなに精ばかりつけて」 「……君も聞いたのだろう? 僕はいよいよあれと決闘する訳だがね」 ワルドは、陰のある笑いを見せた。 その笑いにギーシュは感じるところがある。あの笑いは、そう。 いつかの自分と同じなのだ。 「お気持ちは理解できますよ。僕もあの方と一度、杖を交えたことがありますからね」 「それはなんとも……随分と勇ましいな、ギーシュくん」 「若気の至りですよ。しかし貴重な経験でもありました」 さて、それにしても何故ギーシュがワルドと語らっているのだろうか。 それはまさに、今のギーシュの言葉にこそ理由がある。 「経験者として忠告しますが、あの方に小細工を使っても無意味ですよ」 「だろうね。アレとは正々堂々と戦わなくてはいけない。それくらいは理解できるさ」 マーラと対峙したことのある一人としての、助言であるのだ。 ギーシュは今やマーラを師と仰ぐ人物である。 しかし、師を越えようとしない弟子など、そうはいない。 自らもご立派の道を究め、いつかはマーラ以上になろうと、そんな野心はギーシュにもある。 だからこそ、こうしてマーラに挑もうとするワルドに、言葉をかけにも来るのだろう。 「安心していてくれよ、ギーシュくん。僕とて勝算がなくて決闘を受けた訳ではない。 それに勝てた時に得られるものを思えば、この勝負、賭けのしがいもあるってものだろう」 「なるほど……流石は子爵」 ワルドは、干物を食べ終わると次にヘビが漬け込まれた酒瓶をあけた。 つくづく精力尽くしである。 「このままなら、恐らくは目的地で雌雄を決することになるだろう。 つまり明日、明後日ということになるかな…… 姫殿下からの依頼とルイズからの願い、この二つを同時に果たすという訳だ。光栄すぎて身が引き締まるよ」 「男冥利に尽きるというものですね」 「まったくだな……」 いかにも強烈そうな匂いのする酒を、ワルドはぐびぐびと飲み干す。 これにはギーシュも目を剥いた。ここまでやるとは。 「勝つよ、僕は。そうでなければ今後、胸を張って男でいられる自信がないからね。 ……はは、すまないなギーシュくん。君のような少年にまで心配されるとは」 「子爵。無理はなさらないように」 「心得よう」 窓の外に目をやる。 そこには一瞬、フードの人物がいたように見えたが…… すぐに、消えてしまった。 翌朝、枝が伸びる桟橋から、つつがなく船は出港する。 硫黄を運ぶ船に同乗する形なった訳だが、まあ、このご時世、客船などはそう出ていないものだ。 貨物船でも出られるだけマシだろうと、それは諦めることにする。 「なんだか、順調すぎて怖いくらいだね」 「まったくね。てっきり昨夜あたり、襲撃でもあるかと思ってたのに」 ギーシュとキュルケは呑気にそんなことを言っていた。 ただ、これはタバサも不思議そうな顔をしているから、この二人だけの認識ではないらしい。 「うん……いや、確かに本来ならば昨夜に…… ……まあ貴族派にも色々と事情があるのだろうね」 「そうなの、ワルド?」 「あ、ああ。やっぱりこう、なんだね。大変だ」 意味のない笑いを浮かべてワルドがぶつぶつと呟く。 その目がはっきりと充血しているのを見て、ルイズは少しいたたまれない気持ちになった。 「眠れなかったの?」 「まあその、色々緊張することも多いからね。 ……ニューカッスル。あそこへ行って、そこで……決着をつけるだろう」 「そう……」 両手で、ルイズはワルドの右手を握り締める。 「ルイズ?」 「頑張ってとしか言えないのが、もどかしいけど……頑張って、ワルド」 「……はは。一万人の味方を得た気分だよ」 こけた頬のまま、それでも目つきだけはギラギラとさせながらワルドが微笑んでみせる。 その微笑に、不意に影がさした。 何も、ワルドの表情が曇ったというのではない。 「な、なんだ……」 船員達が慌てている。 これは、どうやら…… 黒くタールを塗られた船が、じわじわと近づいてきている。 船員達は最初、貴族派の船と思った様子で、それはルイズも変わらなかったのだが…… 轟音とともに砲弾が飛んでくると、まったく違うことに気づく。 「まずいな。空賊か」 船員達は不安そうに黒船を見ている。 改めて周囲を見渡すに、空中で戦えそうなのは、まずワルド。 それからタバサもいるし、キュルケも炎を飛ばせばそれなりに戦えるだろう。 ギーシュは、まあ、砲弾の盾でも作らせておけばいい。 後は…… 「……マーラ、あんた空の相手に戦えるの?」 「温い温い。やろうと思えば容易きことよ」 「でも……」 今まで肉弾戦しかしていなかったのではないだろうか。 ルイズは不安を覚えたが、しかし、どうしたものか。 「戦えないことはない。しかし……あまり騒ぎを起こしたくもないな。 貴族派に目をつけられては困ったことになる」 ワルドの逡巡は、しかし、長くは続かなかった。 予想外に黒船の動きは早く、たちまち隣接されてしまったのだ。 ここから砲弾の雨を受ければ、嬉しくない結果が待っていることだろう。 「仕方ない、ここはワルキューレを……」 ギーシュがそう言って薔薇を振りかけたが、ワルドが静止する。 更にキュルケ、タバサにも、目線を送って動きを止めさせた。 「騒ぎすぎてもしょうがない。ここは交渉に賭けるしかないだろう」 この船の船員達も、ワルドに頷く。 貴族が五人、更に立派な使い魔がいるのだ。 彼らの指示に従った方が、結果として損害は少なくなるだろう。 そう思っての行動であった。 やがて空賊達が乗り込んでくる。 頭らしき、粗野な男が真っ先に進み出てきて、ルイズ達と船長をにらみつけた。 「船長はどこでえ」 「わ、わたしだが」 震える船長に、男は威圧を込めて問う。 「船の名前と、積荷は?」 「マ、マリー・ガラント号。積荷は、硫黄だ」 硫黄と聞いて、賊達はため息を漏らす。 「そ、それから……」 船長がルイズ達を見た。 積荷という訳でもないのだが、客であるし。判断に迷っての行動だろう。 しかしその船長の目線を男が追った時に、変化が起こった。 「ん、なんだ、貴族かよ……って」 ルイズ、ワルド、キュルケ、ギーシュ、タバサと眺めて……そして。 「お……おい、アレも積荷か?」 「あ、あれは、お偉い貴族様の……」 男がよろよろと近づいてくる。 ルイズは、咄嗟に声を張り上げた。 「下がりなさい、下郎!」 「下郎……確かにシモだが……」 その言葉にルイズはまた頬を赤く染める。 またかよ。最近このパターン多いな、と。 「……あんたは」 「ワシは魔王マーラなり。この小娘の使い魔なるぞ」 ああ……どうせきっと。この後はアレなんだ。 ルイズは泣きたくなった。 ご立派ご立派ってなんでそんな大きさにこだわるんだろう。誰も彼も。 「ワルド……わたし、泣きたい……」 「いや、泣く必要はないかもしれないよ」 優しく言うワルドの声に驚かされて、ルイズはもう一度男を見た。 すると。 「……なるほど。これは失礼した」 男が、頭に手をやると、その髪が剥がれ落ちる。 コルベールがつけそうな代物、つまりカツラだったようだ。 更にヒゲまで外す。 粗野だった男が見る見るうちに姿を変えて、金髪の美男子になってしまった。 「ど、どういうこと……?」 「貴方の評判はアルビオンにも伝わっている。『ご立派なルイズ』…… トリステインに並ぶもののない魔法使いとね」 「……違うわよぉ」 そして男は、静かに敬礼する。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官。 ……アルビオン王国皇太子。ウェールズ・テューダーだ」 「え……ええ?」 物凄い展開の速さである。 ルイズも、目を丸くするばかりだ。 「あ、あの……え? 皇太子さま?」 「そうだよ、ミス・ヴァリエール。噂どおりにご立派な方だな」 「いや、あの、それは……違いますけど……」 ウェールズは、改めてマーラを眺めた。 「やはり……噂どおり、いや、噂以上だ。 皆、見るがいい。この方を」 空賊達は、直立不動になってマーラに目を向けている。 「この方のこの姿。貴族派のようなモノどもでは、到底得られない滾りがあるとは思わないか。 最早疑うまでもなく、我らの味方だろう」 「確かに……」 「間違いありませんな」 話が早くて助かるが、それでいいんだろうか。 「歓迎するよ。ミス・ヴァリエール。 ……で、何の用事でアルビオンに?」 そっちを先に聞けよ! 嘆くルイズ。やっぱりこんなんばっかか。 ワルドはああ言ったが、でも泣きたい気分は変わらないルイズである。 前ページ次ページご立派な使い魔
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被害者ラーメン(♀)
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「kore.mii」とは コロナによる影響で作品発表の場を失った数多くのクリエイター、アーティスト、作家の救済企画。 クリエイターの情報を集めた冊子となります。 https //www.koremii.com/ kore.mii vol.3 WINTER にSnakerNakajimaも掲載させていただきました。 掲載作家数75名の大ボリュームの冊子で2021年10月15日発行となります。 https //www.koremii.com/?page_id=992 サイトのSnakerNakajima紹介 https //www.koremii.com/?p=1315 ‐オンライン展示会に参加-‐ 【展示会場】 https //www.koremii.com/?page_id=1103 https //www.koremii.com/?page_id=992 【展示作品】 【好きな人と繋がりたい】 ずっと一緒。
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ついっぷるん http //twipple.jp 2017/11/30知恵ノートサービス終了のお知らせ ディープエンジン ダークウェブ オニオンリング 1603便 チャウシェスクの墓しろたまさかげ 北室南苑 wiki-journey ぐぬん ( • ㅿ• ) おそ松さんカップヘッド ペトログラード水先案内ん 「知恵ノート」は終了いたしました 平素よりYahoo!知恵袋をご利用いただきありがとうございます。 2017年11月30日をもちまして、「知恵ノート」機能の提供を終了いたしました。 これまでご利用いただきました皆様にはご迷惑をおかけすることとなり、誠に申し訳ございません。 長年のご愛顧、心よりお礼申しあげます。 引き続き、Yahoo!知恵袋の「Q A」機能をご利用ください。 Yahoo!知恵袋トップ 知恵ノートサービス終了のお知らせ https //m.chiebukuro.yahoo.co.jp/note_thanks/ 嘘ついたら無許可で映画祭のレッドカーペット横切らせる。 指きった。 嘘ついたら何か注つ。指きった。 これやってます? りーでぃんぐいのべーしょん このサイトのどこが違法なのか教えて下さい https //summary.fc2.com/summary.php?... 回答して下さい https //detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1017... 頭痛に苛まれ、喉も痛く咳もでていて、口内も乾ききっている状態で発表しろとか言.... 最近20数年前位に最後に会った人達がその時から20数年経年変化した顔して俺の.... 女性に質問ですが、例えば高校生以下、60歳以上の男なら、セクハラされても平気で.... 未来レーザーっていうサイトは安全ですか。 for BA alert setting 回答確認、ベストアンサー選択のタイミングを逃さない。「知恵袋アラート」を設定。 /for BA alert setting END premium 「プレミアム会員」なら、知恵コインなしで「匿名」で質問! 嘘ついたら無許可で映画祭のレッドカーペット横切らせる。 指きった。 嘘ついたら何か注つ。指きった。 これやってます? りーでぃんぐいのべーしょん このサイトのどこが違法なのか教えて下さい https //summary.fc2.com/summary.php?... 回答して下さい https //detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1017... 頭痛に苛まれ、喉も痛く咳もでていて、口内も乾ききっている状態で発表しろとか言.... 最近20数年前位に最後に会った人達がその時から20数年経年変化した顔して俺の.... 女性に質問ですが、例えば高校生以下、60歳以上の男なら、セクハラされても平気で.... 未来レーザーっていうサイトは安全ですか。 ピクシブのユーザー「変態スターマン」はキャラ崩壊魔なのか? そもそもあいつ馬鹿なんだろうか? ついっぷる ▼共通ナビ▼ トレンド ▲共通ナビ▲ ▼ページナビ a href= /help.html target= _blank ヘルプ /a ▲ページナビ▲ ▲ヘッダ入力エリア▲ ついっぷる - サービスは終了しました。 「ついっぷる」は 2017年10月31日 をもちましてサービス提供を終了いたしました。 2009年12月のサービス開始より8年近くもの間、沢山の皆さまにご愛用いただきましたことを心よりお礼申し上げます。 「ついっぷるフォト」サービスおよび画像一括ダウンロードは 2017年11月30日 13 00 を以って終了いたしました。 旬の話題を楽しめる「ついっぷるトレンド」は引き続きご利用頂けます。 長らく「ついっぷる」をご愛用頂きまして誠にありがとうございました。 今後とも、BIGLOBEをご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 BIGLOBEのサービス一覧 ビッグローブ株式会社 Life Hacks Experiments 3 * * Tommy Eicher * * Masaharu Aono 9 * * KY. Hori 1 * * SwimmingBird941 3 * * Aden Films 3 * * xokan999 1 * * 大林拓郎 1 * * STEC project 1 * * 西郷せんせーでかバンブーP王瀧の旅鉄マスター 2 * * Wralth Chardice * チャンネル一覧 * * YouTube ムービー * パソコン用のウェブサイトにリダイレクトされています。モバイル用の YouTube に戻る ja_goodpro あなたにいうw 1)質問入力する 2)確認のところでラジオボタンで選択する。 そのときに自動選択肢の中に「ラジオボタン」がある。 そこで えちぜん鉄道 新幹線になる! 巛巛 『きたぐに』 • 視聴回数 456 回 11 48 あいの風鉄道 富山駅 春・夏バージョン 自動放送・発車メロディ hakutaka 8000 • 視聴回数 1,300 回 14 27 JR福井駅新自動放送、メロディー集 ケヨポコ チャンネル • 視聴回数 1.3万 回 30 07 福井駅4・5番のりば 自動放送・発車メロディ hakutaka 8000 • 視聴回数 842 回 7 50 【高音質】新しくなった福井駅の接近放送 発車メロディー SnowRabbit683 鉄動画ちゃんねる! • 視聴回数 1,000 回 2 31 あいの風とやま鉄道 富山駅発車メロディー〈夏〉 ケヨポコ チャンネル • 視聴回数 1,600 回 19 25 Super Mario 64 2D Trailer | Mario Maker demake BRICK 101 • 視聴回数 10.7万 回 1 33 JR広島駅 新放送集(2017/09/10〜) HreePro • 視聴回数 2.5万 回 14 36 【ゆうの迷列車でいこう。】〜パイロット〜デビューしてからすぐに消えた車両 3選 Train club channel • 視聴回数 3,300 回 3 50
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前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第59話 平和と出会いと流れ星 宇宙怪獣 ザランガ 登場! ルイズたちの旅も、そろそろ前半が終わろうとしていた。 内戦状態のアルビオン大陸も、戦場以外では治安はなかなかよく、盗賊だのなんのには会わずに、 目的地であるウェストウッド村まであと一時間ほどの距離まで来ていた。 「内乱中だっていうから用心してたのに、結局平和なもんだったな」 「そーだな、俺っちも出番あるかもと思ってわくわくしてたのに、期待はずれだったわ、つまんね」 才人とデルフが仲良く髀肉の嘆を囲っている。馬車の旅というのも慣れれば退屈なもので、ラジオや カーステレオがあるわけでもなく、豊かな自然も逆に変化がなくて飽きが早い。カードゲームをしたり 本を読もうかと思ったりもしたが、馬車はけっこう揺れてカードが飛び散るし、この際こっちの文字にも 慣れようかとタバサに借りた本を開いたが、すぐに酔ってしまってやめた。 ルイズやキュルケなどは例によって先祖の誰彼がどうだとか、よく飽きもせずに言い争いを続けているが、 寝疲れてもしまった以上、退屈は最高の敵だった。仕方がないので御者をしているロングビルといっしょに 行き先を眺めた。街道は、旅人や商人が行きかい、こちらも平和そのものだった。 「この調子だと、予定より早く着きそうですね」 「そうですね……うーん」 「? どうかしたんですか」 予定が早くなりそうなのに、なぜか納得のいかない顔をしているロングビルに、才人は不思議そうに 尋ねると、彼女は首をかしげながら答えた。 「いやね。いくらなんでも平和すぎるなって、普段なら一、二度は盗賊に、特にこんな女子供ばっかりの 一行なんてすぐにでも襲われると警戒してたんだけどね」 「そりゃ物騒な。けど、王党派ってのが治安維持に力を入れてるって聞きましたが」 「かといっても、内戦中にそんなに兵力を裂けるはずがないんだけど」 「なるほど、でも襲われるよりは襲われないほうがましでしょ」 才人としても、悪人とはいえあまり人は斬りたくない。だからといって宇宙人や怪獣は殺してもいいのか といわれると困るが、更正の余地があるなら生きてもらいたい。もっとも、「こらしめてやりなさい」の パターンでギッタギタにしてやりたいとは、是非願うところだが。 そうしてまた一〇分ほど馬車を進めていくと、街道の先に槍や剣を持った一団がたむろしているのを 見つけた。最初は盗賊かと思ったが、身なりを見ると役人のようだ。彼らは一〇名ほどで、道端に 転がっている汚い身なりの男たちを縛り上げている。どうやら盗賊の一団が捕まっているようで、 街道を一時的に封鎖されることになった一行は、馬車から降りて役人の一人に話しかけて事の 次第を聞くことにした。 「実は、ここのところあちらこちらで盗賊集団が次々と壊滅させられていて、我々が通報を受けたときには すでに全員気絶させられて見つかるんです。おかげで、ここ最近は盗賊の被害が以前の一〇分の一 くらいに減りましたよ」 こちらが貴族の一行だとわかったようで、役人の対応はていねいなものだった。 「盗賊が次々と? どういうことですの」 「それが、盗賊たちの供述では一人旅をしている女を襲ったら、これがめっぽう強くて気がついたら 気絶させられて捕まった後だったとか」 「たった一人で!? そんな凄腕のメイジがいるんですか」 「いいえ、それが魔法は一切使わずに、盗賊のメイジも体術だけで片付けてしまったとか。もうアルビオンの 全土で数百人の盗賊や傭兵くずれが半殺しで捕縛されています。平民たちの間では、『黒服の盗賊狩り』と 呼ばれてもっぱらの噂になってるくらいですよ」 「『黒服の盗賊狩り』……体術だけでメイジを含む盗賊団を壊滅させるなんて、サイトみたいな人がほかにも いるものねえ」 ルイズは世の中は広いものだと、しみじみ思った。自分の母である『烈風』カリンもしかり、世の中には いくらでもすごい人がいるものだ。 なお、この噂の人物の正体は旅を続けているジュリなのであるが、別に好き好んで盗賊狩りをしている わけではない。若い女性があんまり無防備に一人旅をしているものだから、身の程を知らない盗賊たちが 喜んで集まってきて、その挙句返り討ちにあっているというわけである。この盗賊団にしても、昨日 似たような行為をしたあげく、丸一日野外に放置されて、気がついたときには縛り上げられていたのだが、 この時点では当然ルイズたちがそれを知るよしはない。 顔をボコボコにされて肋骨を二、三本はへし折られたいかつい男たちは、いったい自分たちに何が起こった のかわからないまま、役人に連行されていった。傷の手当てもろくにされずに、この酷暑の中を歩かされて いくのは死ぬような思いだろうが、所詮は盗賊働きをしようとしての自業自得なので同情には値しない。 「失礼しました。どうぞお通りください」 役人たちの事後処理が終わって、馬車は再び走り出した。役人は去り際に、この近辺の盗賊団はこいつらで ほぼ一掃されました。ごゆるりと、旅をお続けくださいと、まるで自分の手柄のように言っていたが、それもまた 彼の顔といっしょに忘却の沼地への直行となった。 一行を乗せた馬車は、それから街道の本筋を離れた森の中の脇道に入っていった。こちらに入ると、 本道のにぎやかさも嘘の様で、自分たち以外にはほとんど人とすれ違うこともなかった。木々の張った枝は 広く、昼間だというのに小さな道は木漏れ日がわずかに射すだけで薄暗い。しかしその分涼しくはあり、 これでやぶ蚊さえいなければ天国といえた。 馬車は、そんな木々のトンネルの中をわだちの跡をたどりながら進んでいく。 「つきましたわよ」 ロングビルに言われて馬車から身を乗り出したとき、一行はそこに村があるのかすらすぐにはわからなかった。 よくよく見てみれば、森の中に数件の小屋と、畑らしきものが見え隠れしている。 その後、ロングビルの言う村の中央に馬車を停め、一行はようやく到着したウェストウッド村を見渡した。 本当に、村というよりは山小屋の集まりといったほうがいい。家々は、この森の中ではたいした存在感を持たず、 畑も自給自足というレベルに達しているのかどうかすら疑わしい。 「ここが、ウェストウッド村……ね」 自分自身に確認する意味も込めて、ルイズは村の名前を復唱した。はっきり言えば、タルブ村より少し小さい 程度を想像していたのだが、その予測は完全に裏切られた。これでは村という呼び方すら過大に見えてしまう。 産業などある気配はまったくなく、ロングビルの仕送りがなければあっという間に森に飲み込まれてしまうのは 疑いようもない。ただ、村の裏手の森が台風に合ったみたいに広範囲に渡ってなぎ倒され、中途半端な平地に なっているのには、前はこんなことはなかったのにとロングビルも合わせて不思議に思ったが、とにかくも 村であるなら住人がいるはずである。 「テファー! 今帰ったわよーっ!」 そうロングビルが、目の前の一軒の丸木の家に向かって叫ぶと、数秒待ってから樫の木作りのドアが 内側から開き、中から緑色の簡素な服と、幅広の帽子をかぶった少女が飛び出してきた。 「マチルダ姉さん!」 「ただいま、テファ」 ティファニアと、マチルダと呼ばれたロングビルはおよそ一年近くになる再会を手を取り合って喜び合った。 けれど、ティファニアと初対面となるルイズ、才人たち一同は感動の再会を見て素直にお涙頂戴とは いかなかった。ティファニアが、ロングビルから聞いていた以上の、妖精という表現をそのまま使える、 美の女神の寵愛を一身に受けたような美少女だったから、というのもあるが、最大の、そう最大の問題は 彼女の胸部の二つの膨らみにあったのだ。 「バ、バストレヴォリューション!?」 と、平静であれば本人でさえ自己嫌悪したと思える頭の悪い台詞を、才人が呆然としてつぶやいたとき、 残った女性一同の中で、その台詞に怒りを覚える者はいても、否定できる者は誰一人としていなかったのだ。 「な……なに、アレ?」 「た、多分……胸」 と、ルイズとシエスタ。 「ね、ねえタバサ、わたし夢を見てるの?」 「現実……」 青ざめて絶句しているキュルケをタバサがなだめている。唯一、年長者たちが何に驚いているのか わからずにアイだけがきょとんとしている。まぁ、阿呆な思春期真っ盛りな一同の気持ちを代弁するとすれば、 ティファニアの胸が彼らの常識を逸して大きかった。それで男の子の才人は思わず見とれてしまい、女子 一同の場合は、胸に自信のないルイズは逆立ちしても勝てない相手に絶望感を味わわされ、バストサイズに 優越感を抱いていたキュルケとシエスタは、完全に自信を打ち砕かれて天から地へ打ち落とされ、タバサは 一見平静を保っているように見えたが、内心では勝ち目〇パーセントの相手に、冷静な判断力を持って 敗北を認めていた。ただし、一時の激情も過ぎれば、それを埋めるための代償行為を要求する。 「このエロ犬! あんた何に見とれてんのよ!」 と、才人に蹴りを入れたルイズなどはその際たるものだろう。ほかの者たちも、小さくても形がよければ とかなんとかぶつぶつと言っているが、現実逃避以外の何者でもない。 けれど、いくら現実を拒否しても時間の流れを停止も逆流させることもできない。ロングビルと再会を 喜んでいたティファニアが、いっしょに付いてきた奇妙な一団に気づいて尋ねてくると、言葉尻を震わせながら 自己紹介をせざるを得なくなった。 「ト、トリステイン魔法学院二年生の、る、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。あ、 あなたのお姉さんには、い、いつもお世話になってるわっ!」 他の者たちもだいたいはこんな調子である。ティファニア本人は、何故この客人たちが動揺しているのか さっぱりわからなかったが、自分も陽光のように明るく無邪気な笑みを浮かべて、自分の名を名乗った。 そうして、一同はそれぞれ大まかなことを語り合った。ロングビルの名前が偽名であることはフーケ事件の 時から一同は察しをつけていたが、本名はマチルダといい、ずっとティファニアのために仕送りをしていたこと、 ティファニアも今はマチルダが魔法学院で秘書をしており、その縁で仲良くなった生徒たちだと聞かされた。 むろん、土くれのフーケについては一言も触れられてはいない。 それから、マチルダはアイを前に出して、この子を預かってほしいと頼んだ。すると、ティファニアは 自分の腰ほどの身長しかない少女の視線にまで腰を下ろして。 「はじめまして、アイちゃん。小さなところでがっかりしちゃったかな」 ティファニアは、「今日からここがあなたの家よ」などと押し付けがましいことは言わなかった。元々、 子供の育成に理想的な環境などではないことくらい彼女も承知している。来るものは拒まないが、 いくら幼かろうと相手の意思を無視してはいけない。しかし、ティファニアの懸念は無用のものとなった。 「いいえ、これからよろしくお願いします。テファお姉さん」 はつらつとアイは答えた。よき親を持った子供はよく育つ、ロングビルが育ての親となって暮らした この数ヶ月、純粋な子供は水と日差しを貪欲に得て伸びる朝顔のように成長していた。単に自由に育てたり、 勉強を押し付けたりするだけが教育ではなく、人はそれを躾といい、ティファニアに快い初印象を与えていた。 「こちらこそよろしくね。よーし、じゃあみんな出ておいで!」 ティファニアがドアを開けっ放しだった家に向かって手を振ると、中からいっせいに歓声をあげて 子供たちが飛び出てきて、一行に群がっていった。 「わっ、こ、こんなにいたのか!?」 才人たちは、この村の住人にとってちょっと久しぶりの歓迎すべき客人になる者たちを、喜んで 出迎えてくる十数人の子供たちに囲まれて、またもうろたえていた。どの子たちも、身なりこそみすぼらしいが、 瞳は明るく強く輝いている。むしろ大人に近いはずの才人たちのほうが力負けしてしまいそうな勢いだった。 「こらこらあなたたち、お客さんを困らせるんじゃないの。それじゃあ皆さん、狭いところですけど、自分の家だと 思ってくつろいでください」 はしゃぐ子供たちを落ち着かせて、ティファニアは困惑する一同を、家の中に誘った。まだまだ話したい ことは山ほどあるが、とりあえず立ち話もなんであった。時間はまだたっぷりとある。こうして、夏休み旅行の 本番は、小さいながらもいろいろハプニングの種がありそうな村で、革命的な胸の持ち主の美少女との 出会いによって始まったのだった。 それから、場所を室内に移して、子供たちにまかれながらいろいろと話し合った結果、一行はこの数ヶ月分の 驚きをいっぺんに使い果たすくらいの驚愕を味わうことになった。 「エ、エルフぅぅっ!?」 と、ルイズとキュルケとシエスタの絶叫が響いたのが、その際たるものだっただろう。ティファニアの正体が エルフであることは、ロングビルが隠す必要がないと言ったおかげで早々に明かされることになったのだが、 ティファニアは驚く三人におびえた様子を見せていたが、一時の興奮が収まると。 「なにを怯えてるんだお前ら、アホか?」 白けた口調でつぶやいた才人の声もあり、落ち着きを取り戻していった。けれども、エルフがハルケギニアの 人間にとって恐怖の対象だということは変わりない。以前ジュリと話したときもティファニアは怯えていたが、 ジュリはエルフなど、文字通り星の数ほどいる宇宙生物の一つとしか思っていなかったために、すぐに 打ち解けられていた。また、才人は地球人であるために、エルフとはゲームの中で出てくる人間以外の 種族という印象しかない。けれど今回はあからさまな恐怖を向けられて、彼女は自分が大勢の人から 見たら忌まわしいものなのではと、泣きそうになっていたが、子供たちが怒りの声で糾弾をはじめた。 「テファおねえちゃんをいじめるな!」 その数々の声が、ルイズたちを攻め立て、ティファニアは慌てて子供たちを止めようとしたが、それより 早くルイズが謝罪した。 「ご、ごめんなさい。あんまり突然だったものだから驚いてしまって、失礼したわ」 キュルケとシエスタもルイズに次いで謝罪した。冷静になると、どう見ても弱い者いじめをしているようにしか 見えないし、才人の侮蔑するような視線が痛かった。むしろティファニアに「やっぱり、エルフは怖いですよね」 と、涙ながらに言われると、罪悪感ばかりが湧いてくる。 「いえ、悪かったのはわたしたちよ。エルフなんて見たことないから、怪物みたいなものかと先入観を 持ってたけど、案外人間とさして変わらないのね。けれど、なんでエルフがアルビオンに?」 ティファニアは、訥々と自分の素性についてルイズたちに語った。自分の母はエルフで、東の地から来て、 父は昔はこのサウスゴータ地方一帯を治める大公だったが、ある日エルフをかこっていたことが王政府に ばれて、追われる身となり、両親をその混乱で失い。親戚筋で、彼女を幼い頃から可愛がっていた マチルダにかくまわれてこの森で過ごしていることなどを、途中何度かロングビルの助けを借りながら 話しきった。 「ハーフエルフ……可能性だけは聞いていたけど、本当に可能だったのね」 「母が、なぜアルビオンに来て、父と結ばれたのかは何も語ってはくれませんでした。それでも、母は わたしが生まれてからずっと、国政に関わることもなく、隠遁生活を続けていました」 何故ティファニアの母がアルビオンにやってきたについては、結局娘であるティファニア本人にも わからないということだった。話し終わると、ぐっとティファニアは喉をつまらせた。ルイズたちは、悪いことを 思い出させてしまったと後悔したが、彼女に悪いものは感じられずに、ちょっと無理をして微笑んだ。 「顔を上げて、ミス・ティファニア、あなたが悪に属するものではないということはよくわかりました。 夏の間の短い期間ですけど、しばらくよろしくお願いするわ。そうでしょ、キュルケ」 「ちょっとルイズ、あたしが言おうとしてたこともっていかないでよね。ま、いいわ。休暇の間、仲良く やりましょう。友達としてね……ある意味ライバルだけど」 「わ、わたしも負けませんよって、なに言ってるんだろうわたし!? と、とにかく人間……いえ、エルフも 人間も中身で勝負です! よろしくお願いします、ティファニアさん」 ルイズ、キュルケ、シエスタがそれぞれ、自らの内にあった偏見との別れを告げるべく、強く、そして 親愛を込めて笑いかけると、落ち込んでいたティファニアの顔に紅がさした。 「わ、わたしこそよろしくお願いします。それではわたしのことも、テファと呼んでください。マチルダ 姉さんのお友達なら、わたしにとってもお友達です!」 一同の間に、春の陽気のような暖かな空気が流れた。先程まで恐怖と警戒心を向けていたルイズたちと ティファニアは、仲良く手を取り合って旧知のように笑いあっている。それを静かに眺め見ていたロングビルは、 にこりと微笑んだ。 「よかったわね、テファ」 「姉さん、ありがとう。今までで最高の贈り物よ」 いきなりこんなに大勢の友達を得れて、ティファニアは今さっきとは別の意味を持つ涙を流していた。 元々、ルイズもシエスタもキュルケも、陰より陽に属する性格の持ち主なのである。それは怒りも憎しみも 存在するが、いわれもなく他者を貶めることに快楽を求めたことはない。しかし、そんな様子を同じように 見ていて、後一歩で飛び出そうかと思っていた才人はロングビルに軽く耳打ちした。 「ちょっと、無用心じゃないですか? もし、誰かが激発して彼女に危害を加えたり、秘密を漏らしたり するようなことがあっちゃ、大変じゃないですか?」 「大丈夫よ、オスマンのセクハラじじいのところに入って後悔したときから、人を見る目は磨いてきた つもりなの、じゃあ逆に聞くけどこの面子の中に一人でも恐怖や偏見に従って裏切るような人がいるの?」 そう言われると、ルイズやキュルケが裏切りなどという貴族の誇りを真っ向から否定する行為に手を 染める姿は想像できないし、シエスタも人一倍友愛や人情には厚いタイプだ。一度決めた友情を、 自分から裏切るようなことは絶対にするまい。ただ、三人の誰もまったく全然、どうしようもなく敵わない 二つの巨峰の持ち主に、冷たくすれば返って敗北を認めることになるという、負け惜しみの悪あがきに 近い屈折した感情があったのも事実であるが、それでも彼女たちは宇宙人とでも親交を持った稀有な 経験の持ち主である。エルフであるということを回避すれば、仲良くしない理由のかけらも存在しなかった。 「それでも、秘密を知る者は少ないに越したことはないでしょ」 なぜ、そんなリスクを犯してまでと聞く才人に、ロングビルは古びた木製のワイングラスから一口すすると、 自嘲げに才人に話した。 「実を言うとね。そろそろ私一人でこの子たちを守っていくのが限界になってきてたんだよ。子供はいずれ 大人になるものだしね。いつまでもこの森に隠しておけるはずもないし、今のうちに信頼できる味方を 与えてやりたいと思ったのさ。本来こんなことを頼めた義理じゃないかもしれないが、あの子の力に なってやってくれないか?」 「そういうことすか……でも、さっきのあなたの台詞を借りれば、おれたちが万一にも断ると思ってたんですか?」 才人は、投げられた変化球を同じ形でロングビルのミットにめがけて投げ返した。エルフの血を引く少女と たくさんの子供たち、自分の力だけではどうにもならず、多分ルイズやキュルケたちの地位や財力を頼る ことにもなるかと思うが、できるだけのことはしてやろうと彼は思った。 「まっ、ティファニアくらい可愛い子だったら、守って腐るほどおつりがくるわな」 「サイトくん、嫁にはあげないわよ」 「そういうとこだけは親バカですね。ま、無関心よりゃずっといいか」 親バカなロングビルというのもなかなか親しみが持てると、才人は苦笑しながらも、タバサを巻き込んで 輪に入っていった。 それから、一行は薄暗くなってきた外に合わせるように、夕食の準備を始め、最終的にティファニアの家で 二十人以上が一つの卓を囲んでの大宴会をおこなって、終わる頃にはもうなんらの屈託もなくティファニアや 子供たちと交流できていた。 やがて夜も更けて、子供たちはそれぞれの家に帰って早めの就寝についた。アイは、早めにこの村に 慣れるためということで、エマという子といっしょの家で寝ることになった。 さて、子供たちが大人しくなると、今度は夜更かし大好きな少女たちの時間である。ルイズたちは ティファニアと女同士の話し合い、というか、どうすればどこが大きくなるかという重要会議を始めて、 男性である才人は外に追い出されて、同じように外で涼をとりながら酔いを醒ましていたロングビルと、 ぽつりぽつりと話し合っていた。 「やれやれ、雁首揃えて何を話し合ってんだか」 今、ランプの明かりをこうこうと照らした室内では、”ティファニア嬢との親交と友愛を深めるための会談” が、おこなわれているはずであったが、実際に中から聞こえてくるのは、何を食べているのかとか、 普段どういう運動をしているのかとか、根掘り葉掘りティファニアに尋問する言葉ばかり聞こえてきて、 持たざる者の哀愁を感じざるを得ない。特にルイズは、今後成長期が奇跡的にめぐってきたとしても ティファニアを超えることは物理的に不可能なので、なおさら哀れを感じてしまう。あれはあれでいいもの なのだが…… 「サイトくんには、胸の小さな子の悩みはわからないのかしら?」 「正直あんまりわかりません。けど、やたら大きけりゃいいってもんじゃないと思うがなあ。誰も彼も大きければ 個性がねえし……それよりも、ロングビル……えーっと、マチルダさん」 「どっちでもいいわよ。どのみち帰ったらロングビルで通すんだし。それで、私に何か用?」 ロングビルも、久々の里帰りで機嫌がよいようだ。 「じゃあロングビルさん。あの連中、ほっといていいんですか? どーもテファの教育上よくない気がするんすが」 「なあに、いずれ外で暮らすようになれば嫌でもそういうことは関わっていくことになるから、予行演習には ちょうどいいわ。あの子はちょっと純粋すぎるところがあるからね」 要は、無菌室で育てはしないということか、それに比べて、世の大人には子供にはいつまでも天使の ように純粋でいてほしいと、子供の一挙一頭足まで厳しく制限する親がいるが、それは子供への愛ではなく 自らの妄想が作り出した理想の子供像への執着に過ぎない。そして、親の幻想を押し付けられる子供には かえって有害でしかない。悪魔どもが天使を陥れようと跋扈するのが世の中なのだから。 「純粋すぎますか。けど、テファがあいつらに感化されたらそれはそれで問題な気がしますが」 「……」 誇り高く尊大で暴力的なテファ、お色気ムンムンで男あさりをするテファ、妄想爆発でイケナイ子なテファ、 果ては無口で本ばかり読んでいるテファ、思わず想像してみた二人はぞっとするものを感じた。 「ま、まあそのことは、あとでテファに注意しておきましょう……」 朱に染まれば赤くなるというが、あの連中の個性は朱というよりカレーのしみのようなものだ。一度 ついてしまえば洗っても落ちない。ロングビルは、この際積もる話もあるということで寝る前に悪い影響を 受けてはいないかと確認することにした。 だが、先程の話ではあえて出さなかったが、アルビオンにいるエルフということで、才人は一つ心当たりを つけていた。けれど、それを直接ティファニアに聞くことははばかられたので、ロングビルにそれとなく 話を振ってみようと思っていたのだが、せっかくの再開で機嫌がいいときにそんなときに話を振って よいものかと、才人は今更ながら少々迷っていた。 「ところで、ロングビルさん」 「なに?」 「実は……えーっと」 やはり、いざとなると簡単には踏ん切りがつかなかった。それに、エルフであるからと迫害されてきた ティファニアの素性のことを思うと、聞きたくないという気持ちも同じくらいある。しかし、彼の心境を読んで 先手を取ったのはロングビルのほうだった。 「まあ、言わなくてもだいたいの予測はつくけどね。あの子の母親のことでしょ?」 「えっ!? あ、はい」 こういうところは、さすが元盗賊だなと才人はロングビルの読心術に感心した。とはいえ、そうなれば 話は早い。才人は、覚悟を決めると一気に疑問を口にした。 「タルブ村で聞いた、アルビオンに旅立ったエルフの少女、もしかしてテファのお母さんは……」 「察しがいいわね。私も、タルブでその話を聞いたときは驚いたけど、間違いないわ。あの子の母は、 三〇年前にタルブを訪れたエルフの少女、ティリーよ」 やっぱり、と、才人は予測が当たったことに心中で喝采したが。 「なんで、あのときにすぐおっしゃってくれなかったんですか?」 「時期を見て、順にと思っただけよ。あのとき全部話したら、あなたたちパニックになったでしょう」 「まあ、そりゃそうですね」 才人はロングビルの気遣いに感謝した。けれど、才人の目的はティリーではなく、彼女といっしょに アルビオンに旅立ったもう一人のほうだ。 「ですが、こうなったらもう単刀直入に聞きます。ティリーさんといっしょに、ここにはもう一人、異世界からの 来訪者、アスカ・シンさんがいたはずです。彼がこちらに来てからどうしたのか、知っていたら教えてください」 誠心誠意を込めて、才人はぐっと頭を下げた。しかし、ロングビルから帰ってきた答えは、彼の期待には 副えないものだった。 「ごめんなさい、残念だけど何もわからないの」 「そんな……」 「知っていたら教えてあげたいわ。けれど、何分私はティリーさんと会ったことは何度もあるけど、私が あの人と会ったころに、アスカさんはすでにいませんでしたし、私の実家が没落する際に彼女に関する ものは全て消失してしまって、今となっては……」 「そうですか……わかりました」 残念だが、三〇年も昔であれば仕方がない。だが、才人は同時に運命というもののめぐり合わせの奇妙さに ついて、思いをはせずにはいられなかった。 「それにしても、まさかと思ったけど……こんな簡単に出会えるとはなあ」 元々、アルビオンについた後は可能な限りアスカの、ダイナの足跡を探そうと決意していたが、あんまりの あっけなさには怒る気も湧いてこない。しかし才人は絶望はしていなかった。以前、完全に消息不明と オスマン学院長に言われたアスカの足跡が、今回はこんな簡単に見つかっている。今は途切れてしまったが、 運命というものがあるのだとすれば、その歩調は時代の流れと比例して停滞から速歩、疾走へと進んでいる のかもしれない。ならば、次のステップに進めるのも、そう遠い話ではないかもしれないと、才人は自分に 言い聞かせた。 「さあ、そろそろ子供は寝る時間よ」 「へーい」 気づいてみたら夜も更けて、月は天頂に今日は赤い光を輝かせている。室内では、飽きもせずに女子 五人がわいわいとやっていたが、ロングビルに一喝されてベッドの準備を始めた。この村にいる間は 貴族といえども自分のことは自分でやるというのが、最初にルールで決められていた。でなければ、 子供たちの見本にはならない。 「おやすみなさーい!」 一斉にした合図とともに、一行は昼間の疲れも重なって急速に眠りの世界へと落ちていった。後には、 鈴虫の鳴き声と、風の音だけが夏の夜の平穏さを彩り、朝までの安らかな天国を約束していた。 ただ、約一名、いや一匹、理不尽な不幸に身を焦がす者が存在していた。 「きゅーい! おなかすいたのねーっ!!」 村の上空をグルグルと旋回しながら、シルフィードは朝からずっと悲鳴を上げ続けている胃袋の叫びに 呼応して、自分にまったく声をかけようとしない主人に抗議していた。 「まさかお姉さま、シルフィのこと忘れてる? そんなの嫌なのねーっ!」 ここにも、バストレヴォリューションの犠牲者が一人……タバサがティファニアにショックを受けて、 シルフィードにエサをやるのをすっかり忘れていたのだ。けれども、空の上で月を囲んで回りながら叫んでも、 タバサはとっくにすやすやと安眠モードに入っていて、朝まではてこでも動かないだろう。 そんなとき、悲しげに空を見上げたシルフィードの目に、月のそばを横切るように飛んでいく小さな光が 見えてきた。 「きゅい? 流れ星?」 光り輝く小さな点は、夜空を横切って次第に遠ざかっていく。シルフィードは、しばしぼおっとその流れ星を 眺めていたが、ふと前にタバサから流れ星が消える前に願い事を言うとかなうという言い伝えを聞かされたのを 思い出して、前足を合わせて祈るようにつぶやいた。 「おなかいっぱいお肉が食べられますように、おなかいっぱいお魚が食べられますように、おなかいっぱい ごちそうが食べられますように」 なんともはや、自分の欲求にストレートなことである。けれども、シルフィードがたとえば「世界が平和に なりますように」とか願っても、みんな気持ち悪がるだけだろう。シルフィードの幼さもまた、シルフィードの 個性であり魅力でもある。ルイズにしたって「胸が大きくなりますように」と願ったに違いないのだから。 「きゅーい、お星様、シルフィのお願い聞いてなのね……ね?」 そのとき、シルフィードは自分の目をこすって、見えているものを確かめた。なんと、どういうわけか いつの間に流れ星の傍に、もう一つ小さな流れ星が寄り添うようにして飛んでいるではないか。 「きゅいーっ、お星様のお母さんと子供なのね。これなら、シルフィのお願いもよく聞いてくれるかもね。きゅいきゅい」 シルフィードは、このときだけは空腹を忘れて空の上ではしゃいでいた。 だが、残念ながらシルフィードの願いは届くことはないだろう。なぜなら、シルフィードから見て流れ星に見えたのは、 この星の大気圏ギリギリを高速で飛んでいく怪獣の姿だったからだ。 その正体は、宇宙のかなたからやってきた、丸っこい体つきをした、カモノハシとイタチとカエルの あいの子のようなユーモラスな姿の怪獣、ザランガだった。そしてそのかたわらには、ひとまわり小さな ピンク色の怪獣が元気に飛び回り、ときたま前に飛び出ていっていたが、やがて疲れて後ろに下がって休み、 大きなほうは、小さなほうが遅れないようにその間速度を緩めてゆっくりといっしょに飛んで、疲れが癒えたら、 また一生懸命飛び回っていた。そう、それはザランガの子供だった。 ザランガの一族は、この広大な宇宙を時が来れば長い年月をかけて旅をして子供を生み、また元の場所へと 親子で帰っていく渡りの性質を持っている。彼らも今から何年も前に、ここからはるかに離れたある星で親子になり、 子育てをするための元の星へと帰る途中だった。その彼らがこの星に寄ったのも、この惑星が今は宇宙の果ての 水と自然にあふれたその星によく似ていたからかもしれない。 やがて親子は、旅の間のわずかな寄り道にきりをつけて、また宇宙のかなたへと飛び去っていった。 もしかしたら、何百年か先にこの子供か、別のザランガがこの星を訪れるかもしれない。けれども、 ザランガは美しい水が大量にある星でしか子供を生めない。果たしてそのとき、この星はザランガが安心して 子供を生める平和な星であり続けられるのか。流れ星に願いがかけられるように、流れ星もまた願いを かけていた。 ずっと平和でありますように、と。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
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前ページ次ページゼロの黒魔道士 お、ようこそようこそ!いらっしゃいませお客様! ――えぇ、そうでございますよ! 以前は武器屋だったそうでござんすね、こちらは。 ところが以前の店主様が「口うるさい剣が売れちまった」とかでやる気を無くされたのと、 ――ほれ、ありましたでしょ?例の『虹の氾濫事件』でございまさぁ! 話によると、ここいらも全壊とはいかずとも大分やられてたそうで…… で、以前の店主さんは引退しなすったと伺っておりやす。えぇ。 まぁ、寂しい話ではござんすが…… そのお陰で手前もこうしてトリステインの御膝元、トリスタニアに店を格安で構えられたってなもんでさぁ! ――えぇ、そのとおりで。御察しのとおり、手前はご当地出身じゃぁござんせん。 元々ゲルマニアはヴィンドボナを主な根城としておりやしたんで、えぇ。 そりゃぁもう!『虹の氾濫事件』はあちらでもね! 手前も銀ピカのトカゲ野郎に店を綺麗さっぱりぶっ潰されて! えぇ、えぇ!おまけに修理費を請求できる先も無いと来たもので! しかしまぁ、ピンチはチャンスってなことも申しまして……心機一転!取って置きの品を担いでこちらに出て参りまして…… あぁ、どうぞごゆっくりご覧なすってください! 手前共は古物商でしてね!古今東西の珍品名品貴重品をご覧のように取り揃えてございまさぁ! ここだけの話――いやね、お客の悪口ぁ言いたかないですが…… ゲルマニアのお客は、珍しけりゃなんでも良い!ってな方が多くて…… えぇ、えぇ!本当に!正直、商売する側としちゃ楽で良いんですがね?張り合いってぇもんがありませんや! ちょいとしたガラクタを言い値で買ってくださんのはありがたいんですが…… やっぱりお客の厳しい目に晒されやせんと、えぇ、えぇ!こちとらも鍛えられやせんや! そこいくと、トリステインのお客様は目が流石に肥えてらっしゃってて…… こちらもとっておきの一級品ばっかりを棚に並べにゃならないってなもので! なぁに、こちらとしても目端の利き具合ってぇもんを存分にご披露できるんってぇもんでさぁ! どうです?こちら?これはかの『イーヴァルディの勇者』がお供にしていたという、幸運の鳥の羽で…… ――お!流石にお目が高いっ!そいつにお気づきになるとは、いやはや流石はトリステインのお客だぁ! どうぞどうぞ、開いてご覧なってください……こりゃぁねぇ、中々出ない品でござんすよぉ? こいつはですねぇ、お客さん……声を大きくしちゃ言えないんですがね? そう、御察しのとおりの宝の地図でさぁ……かの冒険王と名高いアルシド王も捜し求めたって噂の! それをなんと、手前共、偶然にもこれが見つけてしまいまして!えぇ、えぇ! 惜しいっちゃ惜しいんですがぁね、これは是非分かる方にお売りするのが一番だと! 流石にお宝の価値ぁ掘ってみにゃぁ分からないんで、そこはそれ勉強させて頂きましてぇの、5枚1組でお値段が…… ――へ?え、な、なんです?落書き?この地図が、でござんすか? 馬鹿言っちゃぁ……『ショコグラフ』? タルブ?……あ、えーと……お客さん、まさかタルブの?あご出身…… ……はぁ~、そうでござんしたか…… い、いえいえいえいえいえいえいえ!!そんなそんな!滅相もござんせん! 騙すなんざぁ気持ちぁこれっぽっちも……コイツは正真正銘『宝の地図』でさぁ! いやそんな王宮に突き出すとか、物騒なことぁおっしゃらないでくださいませ!? ――ふむ、「以前貴族に調べてもらったときには」?ほうほう?「こんな地形は無いと断定された」? なるほどなるほど?「大昔の人の落書きにすぎないから、壁紙用のお土産として売っていた」?ほほ~…… するってぇと、何でございますかね?ご実家の?えぇ、タルブの皆様方におかれましちゃ? この『宝の地図』を『落書き』だと? ……ほっほぉ~……そりゃぁまた…… い、いえいえ別にニヤニヤしてなんか…… あぁっ!?もう、呼ばないでくださいませよ!?銃士隊なんざ危なっかしい方々を…… あぁ~、もうしょうが無いでござんすねぇ……ここだけの話をいたしやすから、それで勘弁していただけませんかね? いえいえ、下らない話なんかじゃござんせんよ?むしろお代を貰っても話したく無いことで…… まぁ、余った分はお客さんへの貸しってなことでお願いしたいですな、今後ともに御贔屓に…… ――あぁ、もうせっかちなお客さんだぁ!こういうのぁ順を追わねぇと…… よろしいでござんすか?こちらの『宝の地図』…… ……はいはい『落書き』でも結構ですよ?でも手前の話を聞いてからで良ござんしょ?ね? 手前はこいつを『5枚1組』で売らせていただいておりやす。 えぇ、ここがポイントでね……そこが『宝の地図』と『落書き』を分ける胆ってなわけで…… おっとぉ、適当に5枚ってぇわけじゃねぇんござんすよ?きっちり選ばさせていただいてまさぁ。 どうやって、ってそこはそれ、商売上の機密ってもんで……流石にそれはご勘弁を…… さて、ここにありまする選ばれし『5枚』……こいつをでござんすねぇ…… はいはい、参りやすぞぉぉ!そーれ、ひとーつ!ふたーつ、みっつ!よつのいつーつっ! ――お?顔が変わりやしたね?御明察。流石トリステインのお客様だぁ…… よろしければ、重ねたまんまをそちらの窓で……あぁ、ランプの方がよろしいですか? へいへい、少々お待ちを……いや実はお客さん、こちらのランプも曰くがありやして…… あぁ、それはよろしいですか、へいどうも。 ……はいはい、これでどうでござんす? 丁度紙の具合でねぇ、そちらの線が透けて、こちらは隠れたりして…… よぉく考えられたもんでござんしょ、ねぇ? ――『5枚1組』。 重ねるってぇと『落書き』が『宝の地図』に早変わりってぇ寸法でさぁ…… なかなかおもしろいでござんしょ?お客さん?お安くしておきやすぜ? ゼロの黒魔道士 Another Note ~第壱篇~ Just A Zero ―持たざる者― 白い鳥が、飛んでいた。 『5枚1組』の地図。その×印の真上だ。 海岸線を示す青い線が、赤い線の尾根に囲まれるようにある場所。 鳥の視線が動くと、その全貌がよりはっきりする。 切り立つ崖、打ち付ける白い波。 山々に追い立てられたように、ごく僅かな地面が顔を覗かせる。 陸の孤島。その言葉がこれほど合う場所も無いだろう。 海から崖の頂上まではなかなかの距離がある。 落ちた場合は人生を五、六回はゆうに振り返られる高さだ。 これを絶景と呼ぶのはやぶさかではないが、 よっぽどの度胸が無ければ、強い海風と足下の頼り無さから近寄ろうとすら思わないだろう。 「あおーい空 ひろーい海……」 どうやら、その『よっぽどの度胸の持ち主』がいたようだ。 丁度、海まで人生が三回程度振り返れそうな位置、そこから男が景色を満喫していた。 「こんなにいい気分にひたっているオレを……」 地図の×印の真下。 崖の中腹、ぽっかりと空いた横穴。 海風に煽られ、時折獣のような唸り声が法螺笛の要領で奏でられる。 そこに、男は立っていた。 赤い髪、血のように燃える色だ。 だがそれよりも特徴的なのは、男の腕。 腕組みをしながら、万歳をするように伸びをすることができる、その腕だ。 ――腕4本。 亜人だろうか。少なくともハルケギニアでは見ない類の者だ。 「邪魔するのは・・・だれだー!!」 亜人が吠える。何が不満だと言うのか、 海に向かって『バカヤロー!!』と叫ぶかのごとく吠えた。 ビリッと空気が揺れる。 その唐突な空気の振動に驚いたのか、男の視界の端で白い影が細い目を丸くした。 「いや、俺だが……邪魔なら放っておくぞ?」 「す、スンマセンでした師匠っ!?」 その白い影……こちらも奇妙な形であった。 大きさは丁度子供の膝丈ほど。 全体で言えばぬいぐるみのような白い暖かな毛玉。 そいつが頭に巻いた黄色いバンダナの中から、 真っ赤なリンゴのような突起物を生やしている。 羽で飛んでいることと合わせると、妖精の類なのかもしれない。 言葉を解する妖精なのだから、それなりに高位の。 「いや俺は構わないぞ?お前がここで朽ち果てようがどうしようが……」 「そんなこと言わないで師匠ぉ~っ!?師匠が居なきゃオレどうしようもぉぉ~!!」 だが、この口の悪さを鑑みるに、メルヘン世界の住人というわけでもないようだ。 この毛玉からは、幾つもの困難をスレスレで切り抜けてきた凄味というものが感じられる。 「ったく……崖の上に結わえといたからよ。とりあえず昇れ。 いつまでも『次元の狭間』に繋がってる場所にいるわけにゃいかんだろ」 「うっす師匠!恩に着まっす!!」 横穴の、奥深く。そこには闇が蠢いていた。 深い深い闇だ。星々が生まれる前のような、そんな闇。 丁度、『悪魔の門』の最奥、『虚空への門』と同じような闇だ。 この者達はそこから来たというのだろうか。 すなわち、ハルケギニアとは全く違う別の世界から。 「――いい加減、その『師匠』っての止めないか?俺にも、スティルツキンって名前が……」 「いやぁ、師匠は師匠っすから!オレ、すごい冒険家である師匠を尊敬してますからっ!!」 ギシギシとロープが軋む。 4本腕は崖昇りには相当役立つらしい。 危なげなく男はロープを手繰りながらスティルツキンと言うらしい毛玉に尊敬の念を語る。 「まぁ……いいんだけどよぉ……別に冒険家志望ってわけでも無いんだろ?」 「うっす!どでかい男に!いつか有名になるのがオレの夢ですっ!!」 スティルツキンは、ふぅと溜息をついた。 可愛らしい見た目に似合わぬ歳はそれなりに食っているつもりだ。 それゆえ、この若造のホワホワとした夢見がちな言動はどうもハラハラする。 他人のことは言えないが、根なし草特有の浮ついた空気。 こう、地に足のつかぬような、そんな雰囲気が。 「まぁ……頑張れ。勝手に」 「あぁっ!?師匠ツレないっ!?オレの相棒よりツレないっ!?」 この男自身の説明によると、 このアホたれは相棒にどこかにトンズラされてしまったらしい。 しかも、探していた宝剣と一緒にどこかへ。 その上この男は行き先不明で行き倒れていたというわけで…… よりにもよって異世界へと繋がる穴倉の真っただ中で転がっていやがったのだ。 正直、放っておいても良かったが、自分とて旅先では何度となく助けられた身。 たまにはお返しぐらいしなくてはと思って助けてしまったところ、異様なほど懐かれた。 少々今までの旅の話をすれば「師匠!!」と呼んで懐いてくる始末。 「……やれやれ」 野良猫だってもっと節操を弁えているだろうにとため息をつかざるを得ない。 「も、もうすぐ頂上っすか?結構腕に来ますねコレ……」 「……上に着いたら、俺のリュック持てよ。せめて」 オマケにこの男はとんだ臆病者と来たものだ。 少々剣は扱えるようだが、イザ強そうな敵に会うとすぐ逃げやがる。 それだけなら、まだ慎重な分使いようはあるが、 ミエを張りたがるし、ドジで、トロくて……という両手に余りある欠点をこの男は持ち合わせている。 必要な物を持たざる身のくせして、余計な物ばっかり持っている。 ロープもナイフも入って無い癖に香水や楽器を詰め込んだ冒険者鞄みたいなもんだ。 お陰で、『次元の狭間』で舐めてかかった敵に殺されかけて気絶したコイツを、 ヨタヨタと背負いながら逃げ通すハメになってしまった。 あまり旅のお供として有能とは言い難い。 せめて健康な内は荷物持ちにでもなってもらい、 適当なところで別れようと、スティルツキンはそう思っていた。 「あぁ、しかし良い景色っすねぇ……空は青いし、白いくも……雲?」 あと1手で頂上、というところで男の手が止まった。 青い空、白い雲、そして白い雲とは違う、白い何か。 その何かが視界に入ったからだ。 「……」 「えーとー……」 白い、布。 そこから二本ばかり柔らくて透き通るような色合いの細い脚が伸びている。 その周囲をふんわりとしたまた別の布が覆っている。 「……ぃ……」 「あ、あははは……か、かわいこちゃん、良い天気だね?」 そのさらに上の方、可愛らしい顔がじとりと、こっちを睨みつけている。 白い髪に白い肌、まるで雪で作った人形細工のような女の子だ。 と、いうことは、男が見た白い布というのは、この女の子の…… その透き通るような顔に、どんどん紅が差す。 羞恥に気付いた茜色。 「……ぃゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!?!?」 「わわわっ!?」 金切り声。 そりゃ下着を覗かれて良い気のする女の子なんてのも早々いやしない。 マンドラゴラもかくやという絹を裂くような叫び声。 それに煽られるように、男は体を反らせた。 ――あろうことか、腕四本共をロープから離して。 「へ!?」 スティルツキンは、呆れたように「あ」と声を漏らした。 やっぱりこの男、地に足がついていない。 「わわわわわわわわっ、わあああああああぁぁぁぁぁァァアァァァァァァ……」 「……しょうがねぇな、あの野郎……」 「だ、大丈夫ですかっ!?」 下着見られて叫んでしまったはいいが、 それが殺人になってしまえば寝覚めも悪かろう。 スティルツキンと一緒になって少女が崖下を見やる。 「ゥがばゥ ガボォ ぶくゥ・・・・・・だずけ……」 青い空、広い海、白く湧き立つ波紋の真ん中で見事に溺れてやがる。 よくもまぁ無事だったものだ、悪運強い野郎だ、とも言えるが、 悪運が強ければそもそも落ちなくて済んだだろうに…… そう考えた辺りでスティルツキンは、何度目かの溜息をついた。 妙な相方を持ってしまった自分の運の無さを呪って。 前ページ次ページゼロの黒魔道士
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ギーシュが『アンパンマン』より黒バラ女王を召喚 part-01 ギーシュくん が ふういんされた くろバラじょおう を しょうかん してしまいます。 part-02 くろバラじょおう の ふういん が とけてしまいました。 part-03 じゆう に なった くろバラじょおう は みんな を くろく してしまいます。 part-04 ギーシュくん たち は がくいん の なか に とじこめ られてしまいました。 part-05 とじこめられた ギーシュくん たち を オスマンがくいんちょう が たすけてくれました。 part-06 ギーシュくん たち は がくいん から だっしゅつ しようとします。いっぽう、そのころ トリステインおうこく では・・・ part-07 オスマンがくいんちょう の おかげで みんな は そと に でること が できました。だけど、その せいで・・・ part-08 そと に でた みんな は くろバラじょおう から にげだします。 part-09 がくいん の みんな は つぎつぎと くろバラじょおう に つかまって しまいます。だけど、コルベールせんせい が とっさに きてん を きかせて・・・ part-10 ギーシュくん は そら を とべない ルイズちゃん を せおい ながら にげていました。 part-11 ギーシュくん たち の まえ に あらわれた くろバラじょおう は みんな に ひどいこと を させようとします。 part-12 いじわる な くろバラじょおう は みんな から やさしいこころ を うばおうとします。 part-13 ルイズちゃん は ゆうき を だして くろバラじょおう に たちむかいました。だけど、ルイズちゃん の まほう は くろバラじょおう には きかなくて・・・ part-14 ~ルイズちゃん の まほう で くろバラじょおう を やっつけること が できました。だけど じつは……~ part-15 ~ギーシュくん は ルイズちゃん に とりついた くろバラじょおう と けっとう を することになりました~ 注)アニメ本編だと身長が登場する話によってかなり違います。 なので、今までに黒バラ女王をちょこっと見かけたことがある人は 「黒バラ女王の身長設定おかしくないか? でかすぎwww」 と思うかもしれません。 アニメ本編では、20mくらいの身長のときもあれば、山よりでかいなんてときもありました。
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前ページ次ページT-0 オールド・オスマンの部屋を目指して、『炎蛇』の2つ名を持つメイジことコルベールは走っていた。 肩が揺さぶられ、服が着崩れ寸前になっている事も、体力にはそこそこ自信があるにもかかわらず、 息が切れ掛かっている事もお構いなしだ。 それほど大事な、2つの報告があった。 それも、片方は下手をすれば国を揺るがすほど重大かも知れない、機密的な報告が。 だからコルベールは走っていた。この事実をオスマンに、恩師に「伝えなくては」と。 いよいよオスマンのいる学院長室の扉が見えたとき、彼はいつも何気なく通る道が果てなく思えた。 ここは、実はコレほど長いものだったのか? という錯覚すら覚えていた。 ターミネーターは足を少し上げると、ほぼ歩く要領でワルキューレを顔から踏み潰した。 薄っぺらく変形した青銅が地面に落ち、持っていたハンマーが手からずり落ちた。 目の前で起きたことが信じられないのは、何も対峙しているギーシュだけではない。 彼らを囲う見物人たちも、開いた眼や口が閉じそうに無い者が大勢いる。 てっきり、一方的な弱者暴虐が見れるとばかりに心を躍らしていた彼らは、 しきりに隣近所のやつと顔を見合わせたりして、これがリアルである事を確かめ合っていた。 そして、一寸遅れた後に、彼らはざわざわと騒ぎ始め、事実を認めたくない何人かのお調子者どもは 矢継ぎ早にギーシュを冷やかし始めた。 「おいおいおいギーシュ? 本気出せ――っ!!」 「さすがにお優しいな――ッ、ギ・ー・シュ・さ・ま……ハハハハハッ!!」 「真面目にやれ――っ!!」 ヒートアップしてきた彼らの口からは、 とても貴族様のお言葉とは思えないほどの汚さと醜さに満ちた言葉が吐き出される。 「くそっ……」 別にそのヤジに乗せられた訳ではないが、 ギーシュは焦りの中で杖を構え直し、今度は造花の花弁を2枚振り落とした。 出てくるのはやはり、甲冑の女性像ワルキューレ。 ただ、今度の2体はそれぞれ青銅で練り固められた剣を握っている。 だが、その2体も使い魔の男に傷一つつけることなく、 剣を振りかぶった一瞬に、男が無造作に払った右腕によってゴミクズのように空を舞った。 殴打された部分がグシャグシャに潰れ、特に片方は腰をやられていたせいか、 上半身と下半身の真っ二つに引き千切れていた。 男は地面に横たわるワルキューレの残骸を興味深そうに一瞥したが、 さして興味を誘わなかったのだろう、くっと目を先に上げて、ゆっくりと視線をギーシュに戻した。 「くっ!」 視線の交わりに気圧されかけたギーシュは思わずしりもちを付きそうになったが そこは持ち前のプライドと意地で何とか堪えた。 男は黙ってギーシュを見ていたが、それに飽きたのか、はたまた様子見が終わったのか、 唐突に首を少し傾けるとゆったりと身体を動かし、永い眠りから目覚めたばかりの獣のように緩やかに歩き出した。 「報告があります、オールド・オスマン! ノックもしない無礼はこの際お許しください」 うまくロレツ回らない舌で早口言葉のように言い切ると、勢いまかせに扉を開けた。 目の先に、長い白髭を十分に蓄えた偉大な魔法使いが…… ――眼鏡の似合う理知的な女性に踏みつけられ、床に這いずっていた。 「……何してらっしゃるんでしょうか……?」 床に四散している書類を踏まないように気をつけ、オスマンの目の前まで移動した。 恩師の無様な姿に思わず言葉を失いそうになったが、力を振り絞ってみれば震える口から何とか言葉を出す。 コルベールを見上げていたオスマンはきょとんとした顔になり、飄々とした態度で白髭を撫でた。 「『何』って……ミス・ロングビルに腰のマッサージしてもらっとったんじゃが……?」 最後に「のう?」と付け加え、真上に見える女性に同意を求める。 オスマンを踏みつけている女性――ミス・ロングビルはクスクス笑いながら、言った。 「ええ。何か誤解をされてるようですが、オールドオスマンの仰った通りですが?」 「そ、そうでしたか。ミス・ロングビルが仰るならその通りなのでしょうな! いや、全く……」 てっきり、『また』セクハラしたオスマンに怒ったロングビルが、折檻しているところなのではないか? とそれに近い事を言いかけたが、なんだかロングビルの笑顔が怖い上、怪しく光(っているように見え)る目が これ以上何も言うなと語っていたので言わぬが吉だと判断を下した。 ところでどうでもいい話だが、このミス・ロングビルはオールド・オスマンの秘書であり、コルベールから見て女性の理想に近い。 無駄の無いすらりとした体系に、整った顔立ち。 ややきつめの印象がある目の上にかけられた眼鏡が知的な色気に加え、デキる女である事を見るものに思わせる。 しかも見てくれだけでなく、実際仕事ができるために、ロングビルという高嶺の花はコルベールには一層眩しく遠くに見えていた。 まぁ、要するにコルベールは、42にもなって片思いというやつをしているのだった。 「あ――で、何のようじゃったかのうミスタ・コルベール? 最近物忘れがちと激しくての……」 「まだ何も言ってませんよ、オールド・オスマン」 なんだか終わりそうに無い漫才となりそうなので、 コルベールは咳払いを一つして気持ちを切り替えると、真剣な表情でオスマンを見据えた。 まだミス・ロングビルがいるが、彼女は信用できる。まぁ、言っても差し支えは無いだろう―――― グシャ…… ターミネーターが無情にもワルキューレの残骸たちを踏みつけ、また一歩ギーシュへと近づいた。 その足取りは相変わらずゆっくりなのだが、確実に近づいてくる分その遅さが逆に恐怖を煽る。 ギーシュは後ずさりしながらだんだんと追い詰められ、とうとう硬い壁に背中を預ける形となっていた。 もう、後には引けない。 既にワルキューレは全7体を出し切り、今ギーシュの前に立っているのは武器も持たない2体だけだ。 残りの5体――後に出した2体は一撃でオシャカにされた――は皆地面に崩れ落ち、ターミネーターに踏み潰されている。 予想の斜め上を行く――……『平民』と『貴族』というものの本来の優劣が逆転した構図にも見えるこれは、 それまでまだお気楽な見世物見物の気分だった周囲の貴族達、及び偶然居合わせた何人かの使用人(平民)たちの言葉を奪い、 彼らの胸中に不安と期待を植え込ませた。 それは主人のルイズも例外ではなく――――彼女は3割の不安と2割の期待、そして5割の好奇心を混ぜ合わせた瞳で事の経過を見守っていた。 彼女の脳裏を同時進行を促す記憶は、ターミネーターの台詞とあの悪夢の事――。 自分がターミネーターに対し負けろと言った事など、驚愕したのを機に脳の片隅へと押しこめて、 とっくに忘れていたことだった。 突如として現れた人形は青銅で出来たものであり、ターミネーターではなかった。 初めて出現したときは、その製造工程からメモリにあるT-1000の姿とダブって見えもしたが、 壊してみれば所詮単純なつくりで、しかも出来の悪い青銅人形だった。 青銅よりはるかに硬度に、そして精密に造られた自分自身――T-800――の敵ではない。 案の定、それらは手を振るわせただけで簡単に潰れ、攻撃すれば自身が潰れるという体たらく。 ターミネーターはこの戦いにおける勝率を、ゆるぎなく99・9パーセントと定めた。 赤い前方表記越しに見える人間の子供の顔は、断定は出来ないが恐怖か哀しみかのどちらかに染まっていると判断できる。 そして、子供と、ターミネーターを遮るように立つあの青銅の人形は、これ以上出してこないことから見て、 どうやらあれらが最後の2体である可能性が高い。それとも、無駄だと悟って出してないのかも知れないが、この際別にどっちでもよかった。 それよりも、気になる問題は先程から身体機能に生じる、『妙な負荷』だ。 あの人形を破壊する直前、刹那の間に等しい一瞬電子機能がハッキングされたように白く弾け、 次に前方表記画面が元に戻ったときには、運動及び行動をつかさどる一連の機能が過負荷を起こしたようにうねりを上げ、 設計されている耐久以上の過負荷を事実として全身に轟かせていた。 通常なら望まない過負荷が掛かった場合、この時点でCPUが警告を発して運動機能を一時的に停止させるはずなのだが、 今、ターミネーターの前方表記には警告の文字が一つとして見られなかった。 計算される負荷は確かに限界地を超え、通常のT-800モデル以上のパワーを生み出しているはずなのにだ。 一応自己検査を行ったのだが、何度やっても結果は問題無と表示されるだけで原因は不明なまま。 計算計器が狂っている事も含めて検査を続けるも、相変わらず異常無と問題無が表示されるだけに終わった。 そういえば、文字を刻まれたと聞いた左手から、 ちりちりと焼けるような痛みが時々するのだが、果たして関係あることなのだろうか? 死刑台に足を乗せているような心境だった。とてもじゃないが『生きている心地』というものが感じられない。 まさか、平民だと愚弄し、タンカを切った相手がここまで怖いとは思いもしなかった。 ワルキューレを紙くずのように引き千切ったパワーに、青銅の一撃で全く傷つかない防御力。 ギーシュは思った。 あの平民の男は本当に平民……いや、それ以前に人間なのか? と。 ともかく、わかっている事は使い魔の繰り出すあの一撃をまともに受けては、華奢な自分などどうなる事かということ。 ……想像しただけで吐き気を催した。 いやだ! まだこんなところで死にたくは無い! バッ、と花びらの散って丸ハゲになった杖をターミネーターに向ける。しかし、気力だけ。 ギーシュはまだ知る由も無いが、恐怖や恐れの無いターミネーターにそんな脅しが通用するはずも無かった。 「と、止まれ! 止まらないともっと痛い魔法をお見舞いするぞ!!」 上ずった声で叫びとおす。しかし、言葉の意味が解からない――仮に解っていたとしても――ターミネーターの足は止まらない。 慌てふためいてバランスを崩し、背後の壁にもたれ掛かった。迫りくる恐怖を前に、ギーシュはある種の絶望をかみ締める。 (パニくって考えなしにワルキューレを生産したのがまずかったな……もう、殆ど魔法を繰り出せる精神力が残っていないや……) 考えろ。 頭の中でもう一人の、プライドが高く諦めの悪い面の自分が叫んだ。 ココで諦めてはいけない。この判断こそが、自分の命だけでなく、家名や……愛する者まで傷つけてしまいかねない。 考えろ! あせりと恐怖に飲まれそうになるのを、息を整えて落ち着く事で阻んだ。 最善の方法を今ココで、この状況で判断するんだ、見つけ出すんだ…………。 だが、現実は甘いものではない。 考えを張り巡らせ、可能性を導き出すほど今が本当に『どうにもならない状況』だという事が身に染み渡った。 虚ろになって空を見上げる。もうだめだ……そう思ったのと同時に、身体の力がずるりと抜けた。 見上げた際に重心が後ろになり、これでほぼ全体重が壁にもたれ掛かることとなる。 (この壁みたいに、僕が強くて逞しかったらな~……) 自分を支える壁を横目を通してちらりと見やる。 太く大きな石で固められた、くすんだベージュ色の壁は何も答えてはくれなかった。 (ん? 壁…………!!!) ギーシュは飛び上がって振り返った。 見物客がそれを見て高らかな歓声と悲鳴をあげたが、今のギーシュには届いていない。 彼はひたすら壁の存在を確かめるように撫でまわし、叩き、蹴った。 ――ふっ! 先程までとは打って変わり、やたらときびきびした動きに戻ったギーシュは意気揚々と踵を返し、 今まさにワルキューレたちに手をかけようとしていたターミネーターを指差した。 その奇行に、驚いたわけではないがターミネーターは動きを止めた。 「君を倒す算段がついた!!」 ギーシュは自身を秘めた大声で叫んだ。 「決闘は僕の勝利で終わらせてもらう!!」 決意の篭った強い声が広場全体に響き渡ると、広場の雰囲気ががらりと変わった。 お調子者たちは拍手喝采。全員総立ちでギーシュの人知れぬ自信に期待を寄せる。 無論、ターミネーターには関係ないが。 表情を変えぬまま彼が足を再び動かそうとしたとき、それよりも先にギーシュは大げさに杖を振るった。 前ページ次ページT-0
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サモン・サーヴァントを行ったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、この上なく困惑していた。 数度の爆発を経て召喚に成功したものの、現れた物は、この世界にある物とはかけ離れた物だったからだ。 「なに…?これ」 目の前に現れたのは80メイルはあろうかという巨大な緑色の物体。 だが、その巨体の半分以上を焼け焦がせ異臭を放ち、所々からは火花が巻き上がっている。 「これ…ゴーレム?」 脚は付いていない。ならば飛ぶのかとも思ったが、全く動く気配は無い。 初めはその巨体に驚いていた他の生徒達も、動かない物を召喚したルイズを笑い始めた。 「さすが『ゼロ』だな!壊れたゴーレムを召喚するなんて!」 「ミスタ・コルベール…あの!もう一度召喚させてください!」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール。春の使い魔召喚の儀式は神聖なものだ。好む好まざるに関わらず、これを使い魔にするしかないのだよ」 そうは言うが、コルベールの気は重い。 不名誉極まりない『ゼロ』という二つ名を持つ彼女が数度の爆発を経て召喚に成功したのだが、物が物だけに困っていた。 個人的には再召喚させてもいいという心情だったが、公平を期すためにはそれはできない。 「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール…例外は認められない。これは…」 そう言って、その物体を指差すが、改めて息を呑む。 表面をかなりの高熱で焼かれたらしく、気泡が現れている部分もある。 こんな大質量の金属をどうやって焼いたのだろうかと、興味を持ったが、すぐに目の前の落ち込んでいる少女の事を考えて自己嫌悪に陥りかけた。 「…今は動かないかもしれないが、呼び出された以上、君の使い魔にならなくてはならない」 「そんなぁ…」 がっくりと肩を落としたルイズが『それ』に近付いたが、契約するにもどこにやればいいのかサッパリ分からない。 これが動いてくれれば、文句無しに喜んで契約するとこなのだが… とりあえず、『フライ』を使ったコルベールに掴まり、頭らしき方に近付いたのだが その時、沈黙していた頭部から一条の光が放たれた。 「あれは…目か?どうやらまだ動くようだね」 一つ目という特異な目だったが、動く事にほんの少し安堵した。 だが、安堵したのも束の間、頭部が後退し、すぐ下の部分が様々な動きを見せ内部が開け放たれた。 「…ミスタ・コルベール。あそこにいるのは一体…」 「私にもよく分からん…だが、怪我をしているようだ」 中に居たのは、妙なスーツで全身を覆った人。 だが、腹部から血を流していた。 (いいか…一人でも突破し…アクシズ艦隊へたどり着くのだ!) 周囲に浮かぶ、様々な巨人に向け言葉を放ち続ける男が一人。 (我々の真実の戦いを、後の世に伝えるために!) その言葉を合図として、周りの巨人が加速し一直線に突き進む。 ただ、ひたすらに、居並ぶ敵艦隊の向こうに存在するはずのアクシズ艦隊を目指して。 (我々が尽きようとも、いつの日か、貴様らに牙を剥くものが現れる!それを忘れるな!!) 壁というべき艦隊と突き抜け、周囲を見渡すが、すでに周りには自分しか存在していなかった。 (最後の…一人か…) そう思うと、声にならない叫びをあげ目の前の艦へと突き進む。 迷いなどあろうはずもない。成すべき事を成し、後に続く者が現れる事を信じて機を推し進めた。 視界が赤く染まり、全ての音が途切れる。 だが、その赤く染まっていた視界が再び開かれ、ぼやけた視界に入った物は…緑色の長い髪だった。 ミス・ロングビル。オールド・オスマンによって採用された秘書であり、理知的で物静かな姿勢から一部生徒達からも人気がある人だ。 もっぱらの悩みの種は、そのオスマンによるセクハラであるのだが 『ゼロ』の二つ名を持つルイズが召喚した大破したゴーレムの中の人の様子を見るようにとオスマンに言われて医務室にやってきている。 「まったく…こんな事する暇があるなら、宝物庫の事でも調べときたいんだけどね」 秘書にあるまじき言葉ではあるが、本職が秘書でないのだから仕方ない。 とりあえずは異常なしとして、戻る事にしたのだが、背後から恐ろしいまでの殺意と咆哮を受け固まった。 「シーマ!?貴様ァーーーーーーーーーー!!!閣下を殺害しておきながら、よく私の前にその姿を晒せたなッ!!」 なに?シーマ?誰?てか何で!? そう思うまもなく一気に組み伏せられる。早い。杖を抜く暇すら無かった。 「お、落ち着いてください!ここはトリステイン魔法学校で…」 必死こいて後ろへと顔を向ける。 長く纏められた銀髪が印象的だったが、おっそろしい程に怒り猛っている。 しばらく視線が交錯したが、手の力が少し緩んだ。 目覚めたてで、思考が鈍っており、そこに仇敵であるシーマ・ガラハウを彷彿とさせる緑の長い髪が目に入ったからなのだが よくよく考えてみれば、サラミスに特攻したはずの自分を、シーマが拾うはずもないと思い、とりあえず状況を掴む事にした。 あの状況で命があったとすれば、十中八九ここは連邦の艦だからだ。 「シーマではないようだが…捕虜というわけか?」 捕虜であるにしろ、このまま黙っているわけにはいかない。 このまま事が進めは、宇宙の晒し者になる事は確実なのだ。 最悪、目の前の女を人質にMSなり戦闘機なりを強奪する気でいた。 「一先ず、話を聞いてください。ここはトリステイン魔法学校で、あなたは捕虜などではありませんから」 「トリステイン…?艦の名か…?いや待て、学校だと。という事はコロニーか?だが、サイド3にもサイド6にもそのようなコロニーは無かったはずだが」 サイド1.2.4.5の修復されたコロニーのどれかとも思ったが、少なくとも、そんな名のコロニーは無い。 それ以前に『魔法』という単語も聞こえたのだが、あえて無視する。 もちろん、状況が掴めない以上は、離す気は無い。 連邦の勢力下だとして、星の屑の中心人物である『ソロモンの悪夢』を、そう簡単に逃がすはずは無いと判断した。 そうしていると、扉が開いて、明らかに軍人ではないような桃色の髪の少女が入ってきた。 「……この…!ミス・ロングビルになにやってんのよ!バカーーーーーー!!」 叫びと共に放たれる蹴り。 だが、間合いも遠い上に、素人の蹴りだ。 不意を付かれでもしない限り本職の軍人が食らうようなものではない。 軽くいなすと支えている脚を払い転倒させた。 「…ロングビルと言ったな。一つだけ聞こう。ここは連邦の勢力下か?」 「連邦…?少なくともトリステインは王国ですが」 「王国だと?ふざけた事を」 そう思うのも無理は無い。 地球の全域は、アフリカなどが影響が弱いぐらいで、全てが連邦の勢力下だ。 宇宙にしても、サイド3のジオン共和国。月のフォン・ブラウンとグラナダ。中立であるサイド6のリーア。そして遠く離れたアクシズ。 少なくとも王国などというものは一切無い。 「とにかく…離していただかない事には話もできませんので…できれば」 倒れて目を回している少女とロングビルと呼ばれる女を一瞥する。 少なくとも、軍関係の者ではないようなので、一先ず離す事にした。 そこで自分の状態に気付く。 無いのだ。ノーマルスーツの上半身部分が。 バイザーが砕けかかったヘルメットは側にあったが、上半身部分が綺麗に切り取られたかのように無くなっている。 そして、銃創と破片によって受けた傷も無い。 「怪我をされていて、着ていたものが脱がせず治療できないとのことでしたので、切り取らせていただきました」 訝しげにしていた様子に気付いたのか、ロングビルが答えるが、切り取ったというとこに納得がいかない。 宇宙にしろ地球にしろ、少なくとも医療関係者がノーマルスーツの着脱法を知らないはずが無い。 さすがに、妙だと思っていると、目を回していた少女が目を覚まし、起きるや否や叫んだ。 「へ、平民が…使い魔が…主人にいきなりなにすんのよ!!」 平民?使い魔?そんな疑問が浮かんだが、状況がサッパリ掴めない。 「名前は!?平民でも名前ぐらいあるんでしょ?」 そう聞かれたが、この規律の塊とも言うべき男からすれば、まず第一に口の利き方がなってない。 「人に名を聞くときは、聞くほうが先に名乗るべきだが」 ぐぅ!と言葉に詰まる。相手は平民だが正論だ。おまけに妙に威圧感がある。 「…ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「アナベル・ガトーだ」 「アナベル?女みたいな名前」 アナベルが男の名前でなにが悪いんだ!俺は男だよ!! 最も信頼する部下の声でそんな言葉が聞こえたが多分幻聴か何かだろう。 少なくとも、名前関係で人と揉め事を起こした事は無い。 一応の自己紹介が済んだが、最も大事な事に気付いた。 「…ノイエ・ジールはどうなった」 どうも今一、記憶がハッキリしない。アクシズ艦隊目指し、追撃艦隊に突入したところまでは覚えているのだが。 「ノイエ・ジール?緑色の大っきいやつ?それなら、草原に転がってるけど、なんなのよあれ」 「馬鹿な!宙間戦闘用MAが転がっているだと!?」 草原というからには、ここが艦ではないという事は分かった。 ならば、コロニーという事になるのだが、転がっているというのは理解しがたい事だ。 漂流したのならば、少なくともノイエ・ジールはコロニーの外にあるのだから。 ルイズに案内され外に出たが、ここがコロニーではないという事を目にする。 コロニーにあるべき物が全く無いからである。 上空に見える地面も無ければ、河も無い。 そして、草原に転がっている半壊状態のノイエ・ジール。 さらに、その上を浮いている人。 「なん…だと!?」 さすがの、ソロモンの悪夢も、その光景には言葉が出ない。 まだ05が飛んでいるといった方が信じられるだろう。重力に囚われたような環境で人が飛ぶなどとは。 「おお、気が付いたのかね。三日も意識が無かったから、どうしたものかと思っていたのだが、無事なようでよかった」 上空から声がかけられたが、返事ができない。 「一体これは、なんなのかね!表面を見た事も無い金属で覆っている!実に興味深い!」 「…まずは、それから離れてもらおう」 ノイエ・ジールはアクシズから寄与された試作MAである。軍事機密の塊と言ってもいい。 ノーマルスーツの腰に付けられている拳銃を抜くと、その銃口を向けた。 だが、拳銃を向けても離れようとはしない。これが武器であるかとも分からないかのように。 一発、上空に向けトリガーを引く。威嚇だが、これで次は無い。 「うわ!な、なんの音だ!」 「次は無いと思え」 「銃…なのかね?それは」 至近距離で銃声を聞いた、ルイズが耳を押さえているが。関係無い。 不承不承の体でコルベールが降りてきたが、それに銃口を向ける。 「私を回収してくれた事には一応感謝しておく。だが…どういうわけだ?」 「きみは、そこのミス・ヴァリエールの使い魔として召喚されたのだよ。手に使い魔のルーンが刻まれているだろう?」 左手を見るが、確かになにやら文字のようなものが刻まれている。 おまけに、なにやら光っている。 さすがにこれは反応せざるを得ない。 「貴様…!私に何をした!」 改めて銃口を向け、手に力を込める。 MSで敵を撃破するか。生身で人を撃つか。形に違いはあれど失われる命に違いは無い。 この男が敵であり、なにか妙な事を施したとでもいうのであれば、トリガーを引くのに躊躇はしないだろう。 コルベールもそれに気付いたのか、幾分か緊張した面持ちになる。 メイジではないが、雰囲気から、この使い魔がどこかの国の軍人であると判断した。 平民が軍人になれる国…それは隣国『ゲルマニア』しかない。 基本的に、実力主義で戦果さえ挙げれば一平卒でも将官への昇進が連邦よりも容易なジオン公国軍。 実力と才能で稼いだ金で地位を買う事のできるゲルマニア。 まぁ似たようなとこはある。 「とりあえず、銃を降ろしたまえ。我々はきみの敵というわけではないよ」 なるべく穏やかに言ったが、ガトーは鋭い目をコルベールに向けたままだが、ゆっくりと銃をホルスターに仕舞った。 「まず、話をしよう。ここはトリステインだ。きみはどこから来たのか聞かせて欲しい」 そう問われたが、ぶっちゃけあまり聞いていない。 「ジオン公国」 短く答えたが、考えが纏まらない。 コロニーで無いなら、ここはどこになるという事だが、常識で考えれば地球しかない。 だが、それなら、ノイエ・ジールがこんなとこに転がっているはずもない。 八方塞というやつだ。 「ジオン公国…聞いた事が無いな」 ジオン公国を聞いた事が無い。 そんなはずはない。U.C0083に生きる人間にとって、ジオン公国は前大戦の主役の片割れを担っていたと言ってもいい存在だ。 ジャブローの原住民でも、ジオン公国という名前ぐらいは知っているはずだ。 埒があかないので、こちらから質問してみる事にした。 「先程、飛んでいたが…どういう技術だ?」 「『フライ』かね?魔法だが…知らないはずはないだろう?」 『魔法』その単語を聞いて、少し頭が痛くなったが、現実だ。 「…魔法学院とか言っていたな」 「そのとおりだ。ここは、貴族が魔法を学ぶための施設で、君はミス・ヴァリエールの使い魔となったのだ」 「使い魔?どういう事かは知らぬが、私は、そのようなものになった覚えは無い」 「そのルーンが何よりの証拠だ。コントラクト・サーヴァントは君が気を失っている間に済ませてしまったようだが」 話は変わるが、基本的にジオン軍人は、軍人より武人に近いと言われている。 宇宙攻撃軍だけにしても猛将と揶揄されるドズル・ザビ中将を筆頭に、白狼『シン・マツナガ』といった武人気質の人間が非常に多い。 もちろん、そのドズル中将麾下の302哨戒中隊を率いていたガトーも例外では無い。 そんな人間に、気を失っている間に契約しておいたから、使い魔になれ。と、一方的な事を言えばどうなるか。 ただでさえ、多大な圧力を掛けてくる地球連邦に反発し1/30以下の国力がありながら独立戦争を仕掛けたのだ。 当然、次の瞬間には銃を抜いていた。 「動くな。動けば即座に撃つ」 「な、何を…!」 「確か…ルイズと言ったな…私を元居た場所に戻してもらおう」 会話に付いていけず、半ば呆然としていたが、コルベールに銃を突きつけ、そう言ってきた事でやっと我に返った。 「へ…?ああ、無理ね。『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元に戻す呪文なんて存在しないわ」 「っく…!ふざけるな!」 「わたしだって、あんたみたいな平民が使い魔なんてイヤよ!大体、大怪我してて、治癒の魔法の秘薬の代金だってわたしが出したんだから!」 「ぬう…」 先にも言ったが、アナベル・ガトーは武人気質の人間で、行動理念の大半は義だ。 確かに、コウ・ウラキに撃たれた傷は塞がっている。 つまりは、命を拾われたという事になるのだが…どうもいま一つ納得しがたい。 「確かめたい事がある。どういう理屈か知らんが、私をノイエ・ジールのコクピットまで運んでもらおうか」 「それは…構わないが、銃をだね…」 指示をしつつ、ノイエ・ジールのコクピットに運んで貰う。 ルイズも付いてきたので中に三人入る事になった。いかに巨大MAノイエ・ジールとはいえ狭い。 おまけに、倒れているため、非常に操作し辛い。これが宇宙なら関係無いのだが。 各部チェックを行うが、武装関係はほぼ全滅でIフィールドも働いていない。 ジェネレーター出力も辛うじて作動していると言っていいLvだ。 それでも、システムを動かすだけなら何とかなる範囲。 ハッチを閉じると、モノアイを通して外の風景が映し出される。 「なにこれ!閉まってるのに外が見える!」 「戦闘記録データ…U.C0083.11/13/00・34・38…このあたりか」 コンソールを動かし操作するとモニターが外の風景から漆黒の宇宙へと切り替わる。 そこに移るのは、大きく輝く地球と周りに浮かぶ、06.09.21などのMSだ。 何かを合図としたかのように、それが艦隊へと向け突き進んだが、映し出されるのは、ミサイルや機銃。護衛のジムの攻撃により次々と脱落していく姿。 しばらくすると、一隻の艦がモニターに映し出され、それが大きくなると、爆発に巻き込まれ画像が途絶えた。 コルベールは黙って見ていたが、ルイズはビームやミサイルがかすめる度に大声を上げている。 そして、ハッチを開け放つと核融合炉を停止させた。 地上である以上役には立たないし、この損傷だ。暴走して爆発でもしたら洒落にもならない。 ガトーが無言でノイエ・ジールの装甲の上に立つ。 「生き恥を晒したというわけではないだろうが…お前に拾われた命だ。好きにするがいい」 「君はいったい…どこから、いや、あれは一体…」 その問いには答えない。というより答える余裕が無い。 日が沈みかけ、ハルケギニアにソロモンの悪夢が降り立ってからの三日目が終わろうとしていた。
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