約 1,871,778 件
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4164.html
246 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 15 29 ID pNbIqfGW 「ん……ふあぁ……あ」 いつもと変わらない日差しと、いつもと同じような朝独特の身を切るような冷たさが、 身体を起こした才人の顔を撫でる。 ぶるる、と身震いを一つ。 隣に寝ているはずのルイズを起こすために横をむこうとして、初めて才人は日常とかけ 離れた情景を目の当たりにすることになった。 確かにルイズは隣にいた。しかし、その隣にタバサまですやすやと寝息を立てていたの だった。 反対側には才人に近い順にシエスタとティファニアが。 そして全員何もつけていない。 そもそも全員ベッドにすら寝ていなかった。 基本的に床に雑魚寝である。才人が風邪をひかなかったのが不思議なくらいだった。 「あーそっか。そういや昨日……っうおお、身体がっ………!」 ちなみにその寝ていた床にはおびただしいほどの酒瓶やら何やらが散乱している。 なぜルイズの部屋がこんな惨状にになっているのか。 話は先日の夕方にさかのぼる―――――――。 247 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 16 15 ID pNbIqfGW 「は? くりすます? なにそれ」 事の始めは才人が中庭で日課の素振りをしていた時、ルイズが大量の荷物を持って寮へ 走っていくのを見かけて、こっちにもクリスマスみたいな行事があるのか? と聞いたこ とが原因だった。 当然のことながらハルケギニアに「クリスマス」などというものは存在しない。 よってルイズの反応は当然のものであった。 つまり、ルイズが次に起こす行動も至極当然のもので。 「何よ、「くりすます」って。面白そうじゃない」 「ん〜、起源やらなにやらは全く詳しくねぇんだけど……自分のいた世界だとな」 才人は日本における才人にとっては忌むべき行事とも言える内容をかいつまんでルイズ に説明した。 「ふ〜ん。要するに家族とかこ、ここ、恋人同士とかでドンちゃん騒ぎをする日なのね」 「本来としてはだいぶ誤解があるような気がしないでもないけど、まぁそんなとこかな」 ルイズはしばらく逡巡していたと思うと、その場に荷物を置き詰め寄るように才人に接 近する。 その顔が赤いのは恐らく寒さのせいだけではないのだろう。 「じゃ、じゃあ!! きょ、今日がその、くりすますってことにしない?」 「はぁ?」 「――――――っ! だから! きょ、今日はその、くりすますだからっ! い、いい、 い、いいい、一緒に過ごすの!」 「いや、いつも一緒……」 「うるさい! とにかく今日は二人っきりで過ごすんだかんねっ! どこにも出掛けない 事! いいわね!?」 「あ、ああ」 才人の返事を聞いていたのかいないのか、ルイズはさっさと寮へと戻っていった。 248 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 17 17 ID pNbIqfGW さ、才人と、ふ、ふふ、二人きりで……! ま、まずは身体を洗って、それからそれか ら、ブ、ブリミル様にお許しを貰って……ってわ、私は別にそんな事したくないのよ?! で、でも、あのバカエロ犬が迫ってきたら逃げられないっていうか、仕方ないっていうか! …もしも! もしもの為なんだから! 「……さっきから何をニヤニヤぶつぶつやってんですか、ミス・ヴァリエール」 「……はっ! シ、シエスタ?! い、いつの間に?」 「いつの間にも何も最初からいましたよ」 ルイズが後ろを振り向くとシエスタが洗濯物をたたんでいた。 ルイズが入ってくるなり服を選び始めたり、ベッドを整頓し始めたりとなんだか面白か ったので、黙ってみていたのだ。 「で、またなんか企んでるんですね?」 「な、なんのことかしらぁ?!」 「声が裏返ってますよ、ミス・ヴァリエール。さあ、洗いざらい話していただきます」 ルイズの野望、早くも崩れる。 「へぇ…くりすます、ですか」 「才人の世界の話らしいんだけど……」 「ひいおじいちゃんからはそういうのは何にも聞いていませんね…」 「あら、そうなの」 「ええ。そんなに昔からのものではないのかもしれませんね。…そんなことより、面白そ うですし、早く支度しちゃいましょ」 シエスタは言いながらささっと洗濯物をたたみ終わると、すくっと立ち上がった。 「とりあえず料理が必要ですね。ワインとチキン、ケーキでしたっけ?」 「え、ええ。サイトはそう言ってたけど……」 「なら、とっとと厨房からくすねてきちゃいましょ♪」 249 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 17 59 ID pNbIqfGW 所変わって、ここはモンモランシーの部屋。 「よし、今度こそは……! これをギーシュに飲ませれば、きっと……」 性懲りも無く惚れ薬を作っているようだった。 出来上がった、青みがかった緑という幻想的な色をした薬をビンに入れ、モンモランシ ーは外に出て行った。 「ったく……荷物置いていっちまったじゃねぇかルイズの奴」 ブツブツ言いながらも才人は荷物を抱え上げ女子寮の方へと荷物を届けることにする。 「よっと……お、意外と重いな」 言ってくれりゃあ運んだのに。と才人は思いつつ、両手抱えで荷物を運んでいく。 意外と多い荷物で視界が塞がれていたせいで、向こうから走ってくる人影には気付かな かった。 「ギーシュは何処に――――っきゃあっ!?」 「おわっ、わ、わりい! …っと、だ、大丈夫か? モンモン」 才人とモンモランシーは女子寮の前で交錯する。 その弾みでモンモランシーの持っていた惚れ薬がすっ飛んでいき、中身が中庭にぶちま けられてしまった。 水銀のような液体が土にしみこまずにプルプルとゆれている。 「モンモンって呼ぶな!! いったー……あ、あれ? 薬は?」 「薬? 何のことだ?」 「あ、ううん! なんでもないの! ……あ〜あ、もう一回つくりなおしかなぁ…」 そういうと、モンモランシーはとぼとぼと女子寮の方へと戻っていった。 「な、なんだったんだ?」 まぁいいか、と才人も荷物を抱えなおして、寮へと消えていく。 そこに、トコトコと一羽の鶏が歩いてきた。 草をついばみながら、こぼれた薬のところへと近づいていく。 興味を持ったのだろう。鶏はプルプルとゆれている薬を何度か啄ばみ、もと来た方へと戻っていった。 調理場のほうへと。 250 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 18 40 ID pNbIqfGW 「さて、まずはチキンの方を何とかしましょうか」 「何とかって何処にあるのよ?」 「今から捕まえに行くんです。あ、ミス・ヴァリエールはここでお待ち下さい」 そう言うとシエスタは厨房から姿を消した。 そうなるとルイズは一気に手持ち無沙汰である。 「詰まんないの」 ルイズは暇を持て余して、厨房の外で日向ぼっこをしていた。 「……ル……ミス・ヴァリエール!!」 「ふにゃ?!」 「まったく何寝てるんですか。料理、全部作っちゃいましたよ」 「え? も、もう? チ、チキンは?!」 「丁度厨房の近くにいましたから、そいつを使わせていただきました。多分脱走でもした んでしょうね。さ、運びますよ」 「…ん、うん」 二人でいくつかの料理を運んで女子寮へと戻っていく。 「なんだ、二人とも何処行ってたんだよ」 「み、ん、な、でパーティをしようと、ミス・ヴァリエールが」 シエスタはやたらと皆の部分を強調し、それに反応したルイズが睨むが、シエスタはそ んなの何処吹く風だ。 言いながらてきぱきと料理を机の上に並べていく。 「クリスマスパーティか……懐かしいな」 才人がしみじみとしていると、不意に扉がノックされた。 「ん? 誰だ?」 「あ、あの、あたし、だけど……」 「なんだテファか。入ってきなよ」 ゆっくりとドアが開き、エルフの耳をした少女、ティファニアが入ってくる。 「う、うん。珍しい果物見つけたから……って、何でこんなに料理が?」 「ん? ああ、今からパーティやるんだとさ」 「へぇ…」 テファはこういうのしたこと無いのかもな…。とシエスタの作ったご馳走を目の前にし て感嘆の声を漏らしているティファニアを見て、才人は思った。 「どう、一緒に?」 「「んなぁ?!」」 寝耳に水と、ルイズとシエスタは才人のほうに勢いよく振り向いた。 「いいの?」 「大勢でやった方が楽しいしさ。……ついでにタバサもどう?」 才人のその一言に才人以外の三人はドアのほうに向き直る。すると、小さい身体には不 釣合いなほど大きな杖をもったタバサが手に数冊の本を持って立っていた。 「……………」 返事こそしなかったものの、こくんと小さくうなずいて部屋の中に入ってきた。 そして本をベッドに置くと自分もその隣にちょこんと座った。 「……ったく、あ、ああ、あ、あのバカ犬がぁぁぁあああああああ……!」 「まあまあ。もうこうなったら仕方が無いじゃないですか」 乗馬用の鞭を握り締めて震えているルイズをシエスタがなだめ、椅子に座らせる。 ともあれ、パーティは始まった。 251 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 19 51 ID pNbIqfGW 一時間ほどたって、ほぼ全ての料理とワインが片付き終わっていた。 「ふぅ……意外と楽しかったんじゃない? ひっく」 「飲みすぎだぞ〜ルイズ。顔真っ赤じゃないか」 既に椅子は隅に片付けられ、花見のように床に座っての宴会の様相を呈していた。 それぞれ多かれ少なかれ酒が入っているようで、皆薄っすらと頬に朱がさしていた。 「えへへぇ……サーイトォ」 その中でも特に赤くなっているルイズが、才人の腕にまとわり付いてきた。 「おわっあんまりくっつくなよ、ルイズ」 「や〜らぁ、はなれらくらいのぉ……」 ん? ルイズって酔っ払うとこんなんだっけか? いや、何かこの感じはどっかで見た ような…。と才人がいぶかしんでいると、ルイズが突然抱きついてきた。 急のことにバランスを崩した才人はルイズもろとも後ろに倒れる。 「どわあ!? な、なんなんだよ、いきな……んむ?!」 「ん〜ちゅっ…ん、ふぁっ…サイト、だーいしゅきぃ……」 才人が身体を起こそうとするとルイズが唇を合わせてきて起き上がらせない。 「あぁ〜、ミス・ヴァリエールばっかずるい〜」 「サイトォ……なんか、身体が熱いよう…あう〜」 そうしているうちに、シエスタとティファニアも才人ににじり寄ってくる。 分かった! これ惚れ薬だ! でもなんで……と思考をめぐらせるが一向に答えは出てこなかった。 「ま、待てって……って、ちょタバサ?! なにして…!」 「………サイトの」 ルイズに押さえ込まれ、脇からシエスタとティファニアにまで抱きつかれて身動きが取 れなくなっているところに、タバサが器用にズボンを下げ、才人の一物を引きずり出して いた。 「サイトの……匂い…あむ、れろ、ちゅっ……」 「うわお! タバサ、やめっ…」 タバサは取り出した一物をためらいも無く口に含むと、満遍なく舐り始めた。 「すごっ……うっ、くあっ」 伝わってくる刺激に、最初は小さかった怒張もすぐに大きくなり、高く屹立するように なった。 「んぶっ…ふあ、サイト…こんなに…大きく…口、の、なか、はいんなっ……」 252 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 21 06 ID pNbIqfGW 「サイトさん……私も、もう、我慢できません…」 シエスタもタバサに乗せられるように才人の手をとって自分の秘所に擦り付け始めた。 既にそこは弄る必要が無いほどに蜜を溢れさせていて、才人の手を擦り付けるたびにぐ ちゅぐちゅといやらしい音を奏でる。 「んっ、はぁっ、あんっ、んあぁ……サイトさんの、手、気持ち、いいですぅ…ふぁっ」 「シエスタさん…気持ちよさそう……サイト、あたしも……いい?」 口調こそ質問調であったが、全く返事を待たずに、ティファニアもシエスタと同じ行動をとり始めた。 左右から淫靡な声が聞こえる中ずっと唇を貪っていたルイズもようやく口を離し、才人と瞳をあわせた。 が、その顔はどこか不機嫌なように見えた。 「ル、ルイズ? な、なんだよ……おうぅ」 「ずるい……」 「は?」 「皆ばっか気持ちよくなって、ずるい。ねぇ犬? こういうときはご主人様を一番始めに 気持ちよくさせるものなんじゃないの?」 んな、理不尽な。と言おうとした才人の口にルイズの下半身が突然覆いかぶさってきた。 「ほらぁ、サイトぉ……早く、ご主人様を気持ちよくさせなさいよお…」 ここで、才人の理性が切れた。いや、むしろ才人にしては良くもった方なのだろうか。 そもそも、少なからず才人も薬の影響があるはずなのだ。 「じゃ、じゃあ…れろ、んん……なんだ、もうべちょべちょじゃん」 「や、やぁっ…しゃべんないでぇ…ひあぁ! やっ、そんなとこっ……きゃうぅうんっ」 才人は舌をルイズの秘裂にもぐりこませ、ルイズの中を味わう様に嘗め回す。 両の手をたくみに使い、シエスタとティファニアが一番声高に鳴くところを探り当てて いく。 先ほどから、銜えられている怒張は、自ら腰を動かし、タバサの口の中を勝手気ままに 蹂躙する。 253 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 21 50 ID pNbIqfGW 「くっあぁ、タ、バサッ…そろそろ…出るっ……!」 「出して」 一言だけそういうと、タバサも暴れている肉棒を更に激しくしごいていく。 「もう、だめだっ……くああああっ!」 「――――――――――!!」 タバサが一番深いところまで銜え込むと同時に、才人の怒張が白濁した欲望を大量に放出する。 「ん…んん?! ん〜〜…んくっ、こくっ…ふあっ」 タバサがずるりと口の中から怒張を引き抜くと唇と鈴口に白いアーチがかかった。 「サイトの……味……」 タバサは座り込んで口の中に残った白濁液を味わっている。 すると、顔の上に乗っかっていたルイズが先ほどまでタバサがいた場所に移動してきた。 「さ、タバサ終わったなら、どいて。次は、ご主人様の番なんだからねっ」 ルイズは言葉遣いは厳しいものの表情は酷く蕩けた表情をしていた。 「えへへ…まだ、こんなにおっきいまんま……」 ルイズは自分の涎をたらしている秘所にあてがったまま、才人の怒張を弄ぶ。 しばらく弄っていたが、やがてゆっくりとクレパスに埋め込んでいく。 「こんなの、入れたら…」 「あかちゃん、出来ちゃうかもねっ……!」 ルイズの大事な部分に、才人の象徴がしっかりと埋まった。 254 名前: 聖夜? いいえケフィアです ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 15 22 31 ID pNbIqfGW ――――そして現在。 「そ、そういや、急に変なことになって…いつつ」 結局あの後全員と三ラウンドづつほどこなし、全員が疲れ果てたところで泥のように眠 ったのだった。 「ったく、誰の仕業だ……」 才人がブツブツ言っていると、ルイズがむくりと身体を起こした。 「お、ルイズ、目ぇ覚めたか」 「んん〜、サイトォ……もっとぉ……」 「え゛」 それを合図にしたかのようにシエスタが、ティファニアが、タバサが、目を覚まして、才人へとにじり寄ってきた。 「もっと、たくさん……ね?」 ルイズの部屋からは一日中嬌声と断末魔の叫び声がしたとかしてないとか……。 おしまい
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4034.html
671 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/09/07(木) 00 18 29 ID DRWoRaxL 無理に埋めるよりリレーしようよ。あと5KBだけど。 シエスタと談笑しながらいつものように食事をしていると、ふと彼女が言いました。 「あっ、スープが顔に付いちゃってますよ」 「うあっ。マジ?」 サイトが慌てて顔を拭おうとした瞬間、柔らかな人差し指が彼の頬をなぞったかと思うと そのままシエスタの口の中へと吸い込まれました。 「なっ、な、ななななな・・・・・・」 「えへっ、舐めちゃいました」 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/09/07(木) 01 01 53 ID JXKAwJlz 前スレ671の頭悪い続きを考えたんだが…。 「ほほおおおおおう」 背後からドス黒い声がする。それは毎日聞き飽きるほど聞いた例の声。 「犬はメイドに舐められて喜ぶワケ…?」 「わ…わん?」 振り向くと、果たしてそこには、完全無欠絶壁少女、才人のご主人様のルイズが仁王立ちに鳴っていた。 ああ、ご主人様。今日も仁王立ちがオニアイで…。 絶望に喰われた才人は覚悟を決めた。 しかし、今日のルイズは一味違った。 机の上からスープ皿を奪い取ると、ちょこん、と床に正座し、温くなったスープを太股の間に垂らしたのだ。 「な、舐めなさい、犬」 続きません(何 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/09/07(木) 07 14 32 ID E66DNf3R 15 で、「そ、そんな事サイトさんがする必要ありません!」とシエスタがサイトの頭を抱き寄せ、 ルイズ様がますます激昂なさるわけですかw
https://w.atwiki.jp/07th-umineko/pages/14.html
ア行 愛があっても(楼座×絵羽) 或る姉妹の戯れ(雛ベアト×姉ベアト) 愛しの我が主 所謂、三倍返し クッキー編 所謂、三倍返し マシュマロ編 ヴィィィィィイイイン!!ヴィィィィィイイイイン!!! おかしい子 お師匠様といっしょ 乙女のひみつ 檻の戦人 カ行 家具ですから 奇跡の娘 きんぞー☆の頑張り物語 紅に滲む(絵羽×戦人) 幻肢 傲慢の果て 傲慢の末路 傲慢の未来 サ行 咲いて、散った恋の残滓 惨劇がくる予兆(マリア×ローザ) シアワセのカケラ 幸せの魔女(縁寿×戦人) シエスタの子宮 シエスタの子宮 2 シエスタの子宮 戦果報告 純潔の証明 タ行 チョコレート・ロスト 妻はサンタクロース 手を繋いで とどかない声 ドラ様が見てる(ドラエリ) ナ行 名前を呼んで(嘉音?×朱志香) 姉さんといっしょ ハ行 戦人専用家具 ~シャノカノ~ 戦人の逆襲(バトベア) 花に酔って 跪いて魔女様のお御足をお舐め ひまつぶしBコース 夫婦ですから 夫婦ですから 後編 ベアト弄り マ行 魔女だらけの戦闘空間 前編 魔女だらけの戦闘空間 後編 魔女とヘタレとチョコレート 魔女のお茶会 魔女の娘 真里亞の頑張り物語 見回り日和 ミルク色に染まる月 夢幻の魔女 名探偵の末路 名探偵のワンダフルな日常 名探偵は散っていく メルトダウン ヤ行 山羊さん達の頑張り物語 歪んだ顔をして 夢の朱志香 ワ行 わたしの、わたしだけの(絵羽×夏妃) A-Z A Sweet Nightmare Another EP4(山羊×戦人♀) Before breakfast(戦人×ベアト) distance EP1絵羽→夏妃 Happy diary for next stage(戦人?×縁寿) Reversal of the golden witch under the rose ????:俺のウィンチェスター☆が火を噴くぜっ!! 無題 無題(縁マモ) 戦人×縁寿 縁寿×エヴァ 金蔵×ベアト 無題(バトジェシバト) 真里亞x戦人 戦人×ベアトリーチェ リンク名
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1739.html
急いでいかねばならぬところがある、と王大人は言った。 なぜあんたがこんなところに、と問う桃とJに、わざと焦点をすこしずらした返事が返ってくる。 桃たちが聞きたかったのは、何故王大人がハルケギニアにいるのか、ということだ。 しかし、王大人の目を見た桃は、その問いを発することができなかった。 強い光を放つその目は、その問いを拒絶していた。 ようやく驚きから立ち直ったタバサは、王大人に一つ尋ねることにした。 「どこへ向かっているの?」 「ニューカッスルなる場所だ。」 その返答にキュルケとタバサは少し目を丸める。 彼らが向かう場所もまた、王党派に残された最後の拠点、ニューカッスルなのであった。 「でも、ニューカッスルは貴族派に囲まれて、今は入れないわよ。」 キュルケが問う。 王大人はにやりと笑って答えた。 「中国四千年をなめるでない。あてならある。」 そう言って懐から書物を取り出した。 そこには、ニューカッスルの抜け道が記されていた。 「きゅいきゅい。人って片手でも空を飛べるなんてすごいのねー。」 シルフィードは、頭上で棍を回しながら書物を取り出す王大人に、心の底から感心していた。 朝になった。 シエスタは歯噛みしていた。 彼女が撤収の準備をしている隙を突いて、ワルドがルイズを連れ出したのだ。 朝に弱いルイズ様のことだ。きっと寝ぼけ眼で付いていったに違いない。 そう確信したシエスタは、慌てて捜索を開始していた。 すぐに行く手を突き止めたシエスタであったが、そこで行動を止めざるを得なかった。 己の唇をかみ締めたシエスタの視線の先には、礼拝堂があった 虎丸とギーシュは、正装を着て、礼拝堂に座っていた。もちろん虎丸の正装は学ランだ。 二人には嫌な予感がしていた。 しかし、それを表情に出したりはしない。 ただ、いざという時に動けるようにだけはしていた。 ウェールズは皇太子の礼装に身を包み、新郎新婦を待っていた。 自分の人生の終わりに、予想外の晴れ舞台ができたことに嬉しさを感じながら。 既に死ぬことを決めていたウェールズは意図的に無視していた。 自分に危険が迫っているという勘を。 ルイズは戸惑っていた。 朝早くいきなりワルドに起こされて、気がついたら礼拝堂にいたのだ。 昨日ずいぶんと泣いたため疲れていたのかしら?とルイズは思う。 でも今は、 そうして思考をようやく整えたルイズは、今の出来事に対処することにした。 礼拝堂での結婚式は既に始まっていたのだ。 ウェールズが祝詞をあげる。 それに、ワルドが一言、誓います、と告げた。 次はルイズの番だ。ウェールズの視線がルイズを指した。 「今は、わたしはこの結婚式を望みません。」 ルイズははっきりと言い切った。 ルイズは考えていた。親友のアンのことを。 もし自分がこの場で好きな相手と結婚を挙げるなら、きっと彼女は喜んでくれるだろう。 それは間違いない。でも、 そこまで考えたルイズは、愕然としているワルドをチラリと見た。 この神聖な場で、最後のアルビオンの地で、流されて結婚したならば、彼女はとても悲しむだろう。 ルイズのことを攻めはしないかもしれない。しかし、 (わたしは、きっと自分を許せないわ。) そこまで考えたルイズは、自分に詰め寄るワルドに対して、毅然として対峙した。 ウェールズは、そのルイズの表情に驚いていた。 意志の強い少女であることは知っていた。だが、この目は (アンリエッタ。君が何か決意した時の目にそっくりだよ。) ウェールズはひどく優しい気持ちになっていた。 自分が司祭役をつとめる結婚式が台無しになったにも関わらずだ。 そうしてウェールズはワルドに、結婚式の取りやめの声をかけることにした。 しかし、ワルドは止まらない。 なおもルイズに言い続ける。 「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる!そのためにきみが必要なんだ。」 その言葉にルイズは、己の中のワルド像が崩壊したのを感じた。 この旅の途中、どこかワルドの様子が変に思えていたが、ようやく納得したのだ。 彼が、もはや昔の優しいワルドではないことを。 そのことに、少し悲しみを覚えたルイズ。 だが、彼女は言葉にして告げることにした。自分の今の思いを。 「わたし、世界なんていらないもの!」 ルイズが欲しいのは世界なんてありふれたものではない。 望まぬ結婚を強いられ、自分の思いさえも封じ込めたアンリエッタの悲しげな表情が頭に浮かぶ。 アンリエッタが、家族が、シエスタが、学友達が、使い魔たちがみな幸せに暮らせる日常が欲しい。 強く、とても強くそう思っていた。 その言葉に一瞬能面のようになったワルドが告げる。 「残念だよ。」 その言葉に不吉なものを感じたウェールズに虎丸、ギーシュは慌てて飛び出そうとするが、時既に遅し。 ワルドは、素早く当身をルイズにくれると、意識を失ったルイズを抱え、後方に飛び去っていた。 一方そのころ、学院にいた一号生達は、全員新男根寮の前に集まっていた。 みな顔が一様に張り詰めている。 その表情に田沢は確信を持った。誰かが危機に陥っていることを。 彼らはみな、同じ釜の飯を食べた仲間だ。共に命を預けた仲間だ。 その仲間の危機がわからないハズがない。 今ここで彼らにできることはただ一つ。 大鐘音のエールを切ることだけである。 秀麻呂が塾旗をあげる体勢に入ろうとする。 そこへ 「それは僕にあげさせてくれ!」 マリコルヌが割り込んできた。 マリコルヌは嫌な予感がしていた。 ギーシュが危ない!直感的にそう思ったマリコルヌは、思わず新男根寮の前までやってきてしまったのだ。 そこでマリコルヌは見たのだ。残ったものが、己ができる方法で闘おうとしていることを。 ならば自分も勇気をだそう。 その友を思う姿に、秀麻呂は黙って旗手を譲った。 「貴様!何が目的だ!」 ウェールズの怒声が飛ぶ。その手には既に杖が握られていた。 それに恐れる様子もなくワルドは答えた。 「一つはルイズ。一つはアンリエッタの手紙。そして最後は……」 「貴様の命だ!プリンス・オブ・ウェールズ覚悟ぉ!」 まさしく閃光のごとき詠唱速度で唱えられたライトニング・クラウドがウェールズを襲う。 「殿下!危ない!」 間一髪ギーシュに突き飛ばされたウェールズは、なんとか命を拾うことに成功した。 素早く体勢を立て直すと、ワルドに向かい魔法を唱えようとする。しかし、 「卑怯な!」 ワルドがルイズを巧妙に盾にしていた。 その様子に、ワルドが歪んだ笑いを浮かべた。そこへ 「ワルド子爵。あなたはレコンキスタということで間違いないですね。」 落ち着き払った声でギーシュが声をかけてきた。 あまりに場違いなその様子に、ワルドは思わず返事を返してしまう。 「それが、どうしたというのかね?」 「いえ。ただ確認したかっただけです。ということだ。やれヴェルダンテ!」 その瞬間ワルドの足元が爆発した。 そうして土の中から一頭のジャイアントモールが飛び出てきた。 不意打ちのアッパーをなんとかかわすことに成功したワルドは、 冷静に右手に杖を、左手にルイズを抱えなおし対処しようとする。 ヴェルダンテの不意打ちは不発に終わった。 多少の隙はできたとはいえ、その隙を突くには虎丸たちは遠すぎたのだ。 しかし、シエスタには十分であった。 「がっ!」 ワルドが短い悲鳴を挙げてルイズを取り落とす。 その左手には、槍の穂先のようなモノが刺さっていた。 大豪院流気功闘法繰条錘である。 その穂先は、まるで意志を持つかのようにワルドの手から抜けると、シエスタの手と穂先を結ぶ針金をルイズに巻きつけた。 ルイズが空を飛ぶ。それを無事受け止めると、シエスタは叫んだ。 正直限界であった。この技を使うには、気の絶対量がまだ足りなかったのだ。 しかし、それでも 「ルイズ様はお任せください!」 女の意地があった。 その台詞に三人は、弾かれたように突撃を開始した。 この卑劣漢を倒すために。 ルイズを奪い返されたワルドだが、それでも余裕の表情を崩さない。 (皆殺しにすればいいだけのこと。) そう考えたワルドは、彼らに告げた。 「さて、ではこちらも本気を出そう!何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう! ユピキタス・デル・ウインデ……。」 呪文が完成したとき、そこには五人のワルドがたたずんでいた。 ワルドの必殺、風の遍在である。 二体がウェールズに、二体が虎丸とギーシュに、一体がシエスタに襲い掛かった。 うおおおおおお! マリコルヌの雄叫びが上がるが、幻の大塾旗はピクリとも動かない。 重さは軽く三百キロを超える、まさしく大塾旗だ。 人間の力で挙がる代物ではない。 そのことを塾生達はわかっている。 それでも、誰一人としてマリコルヌを手伝おうとはしない。 これは、彼が一人で挙げねばならぬのだ。 一人で挙げねば、真の大鐘音は完成しないのだ。 そのことを知っている男達は、血が出るほど拳を握り締めると、それぞれの準備に入った。 マリコルヌがあげる事を信じて。 マリコルヌの心に、これを説明してくれたときの秀麻呂の声が響く。 (これは体力であげるものじゃない。友を思う気持ちであげるものだ。 だからマリコルヌ、お前ならあげられるさ!) マリコルヌはその思いに応えねばならない。 しかし、現実は非情である。 ピクリとも動かない大塾旗に、マリコルヌの心は砕けそうになる。 (ぼくでは無理なの?こんなぼくでは……) そこへ秀麻呂の怒声が飛ぶ。 その檄に、マリコルヌが秀麻呂を見ると、そこには男達が並んでいた。 静かにマリコルヌを見つめていた。そこには、信頼があった。 彼らは、マリコルヌが幻の大塾旗をあげきると信じているのだ。 「一世一代の根性、見せてみろ!」 秀麻呂が叫ぶ。 マリコルヌの鼻から血が噴出す。また、力を入れすぎたこめかみからも血が流れ出る。 それでも大塾旗は上がらない。 さらに力を込める。筋肉が限界を超えて盛り上がり始める。 それでも大塾旗は上がらない。 そして、 雄たけびを挙げたマリコルヌの服が弾け飛ぶ! ついに幻の大塾旗があがり始めた。 それを見届けた秀麻呂は、自分も大鐘音に加わり始めた。 (これからが本当の命がけだぜマリコルヌ!) 彼らの体に刻まれたルーンが静かに光りだしていた。 本性を現したワルドは恐るべき敵であった。 ワルドが作り出した遍在は、一体一体が魔法を使い、その体術の腕前も恐るべきがものがあった。 (やべえ!これじゃあジリ貧だ!) 虎丸はそう思う。自分達には、ワルドの魔法を防ぐ方法がほとんどない。 今はギーシュのゴーレムがなんとか魔法を代わりに受けてくれているが、直に限界が来るだろう。 (どうにかしないとな。) 虎丸はそう考えつつもワルドに猛虎流の拳打を放っていた。 しかし、良い案は浮かびそうになかった。 シエスタは焦っていた。遍在が一体とは言え、その大元は閃光と異名を取る程のメイジである。 今のシエスタには一体といえど、難しい相手には違いがなかった。 (でも!) シエスタは思う。他はもっと不利な戦いを強いられているのだ。 せめてこの一体だけでも自分が倒さねばならない。 だが、杖による攻撃と魔法を巧みに組み合わせてくる相手に、攻撃をする暇がない。 シエスタは覚悟を決めた。 「はぁっ!」 左手を盾にして『エア・ニードル』を受け止める。 杖そのものに貫通力を帯びさせたその魔法があだとなった。 シエスタの左手の筋肉が、その杖を絡みとり離さない。 一瞬、遍在が杖を離すべきか逡巡する。 その一瞬が命取りとなった。 激痛がシエスタを襲う。だが、シエスタは痛みを無視すると裂帛の一撃を込めた。 「大豪院流!真空殲風衝!」 その風についに遍在の一体が砕け散った。 それを確認したところでシエスタの意識は途切れた。 その瞬間、全てのワルドが、思わず驚愕の表情を浮かべていた。 その隙を逃すほど、ウェールズは落ちぶれてはいない。 遍在の一体を風で切り裂くと、残りのワルドに向き合った。 虎丸とギーシュもまた、その隙を逃さなかった。慌ててライトニング・クラウドを唱える。 流石は閃光と名乗るだけのことはある。 詠唱が遅れたにも関わらず、その一撃は虎丸の一撃よりも早かった。 そうしてライトニング・クラウドが虎丸に走る。 「ぼくを忘れてもらっては困る!」 ギーシュが最後の力を振り絞ってゴーレムを作り出す。 そのゴーレムは虎丸の全身を覆いつくすと、ライトニングクラウドの身代わりとなって消えた。 うおおおおおおお! ついに虎丸の渾身の拳が遍在の一体を捉えた。 残すは本体と遍在のみである。 その時、ウェールズの目は、予想外の事態を捉えていた。 他の者は気づいていない。 ならば! 「ライトニング・クラウド!」 シエスタ達の方から声が聞こえる。 慌てて虎丸が振り返ると、その視線の先で、ウェールズがゆっくりと崩れ落ちていった。 「切り札とは最後まで取っておくものだよ。」 最後の一人、気を失ったシエスタを始末しようとしたワルドが、 本体のワルドが姿を表していた。 虎丸が吼える。 ウェールズは、こんなところで薄汚い暗殺者などに殺されていい人間ではなかったのだ。 その勢いに不意を突かれたワルドが振り向く。 そこの虎丸の鉄拳が飛んだ。 ガキィーン ワルドが杖を盾にガードするが、大きく後ろに吹き飛ばされた。 「くっ!このバカ力が!食らえ必殺!「「ライトニング・クラウド!」」」 三方向からのイカヅチが虎丸を襲う。 直撃を受けた虎丸は、ついに倒れこんだ。 「三点同時のライトニング・クラウドをくらってまだ生きがあるとは、貴様本当に人間か?」 その台詞に、かろうじて意識の残っていた虎丸は、悪口で返す。 「てめぇみてぇな外道にこたえることは、何一つねえよ。」 「まだ、喋れるとはな。ここは確実に止めを刺させてもらうとしよう。」 三体のワルドがゆっくりと近寄ってくる。 その手には、『エア・ニードル』を発動させた杖があった。 一号生達の大鐘音は止まらない。 だが、マリコルヌが限界を迎え始めていた。 徐々に大塾旗が下がり始める。 男たちが声をかけるが、マリコルヌの薄れ始めた意識には届かない。 その時 「「わたしも闘います(闘うわよ)!」 ケティとモンモランシーが姿を表した。 悪い予感がした二人は、己の直感の赴くまま行動し、ギーシュの不在を知った。 そして、同じようにギーシュの危機を感じたマリコルヌが何かしているのを知って、慌てて追いかけたのだ。 二人は、旗の下に座り込むと一心不乱に祈り始めた。 その光景に場の時間が止まる。 再び動かしたのは秀麻呂だった。 「あの姿が見えるか、マリコルヌ!見えるならば、無様をさらすな! 最後のバカ力、振り絞ってみろ!」 マリコルヌの声にならぬ雄たけびがあがる。 再び大塾旗が高く、高く舞う。 そうして真の大鐘音が完成した。 主のために!友のために! ルイズはようやく目を覚ました。 自分を守るように立ったまま意識を失ったシエスタ。同じく意識を失っているギーシュ。 傷だらけで倒れて、それでもまだ闘志衰えない虎丸。 ゆっくりと崩れ落ちたウェールズ。 彼が最後に誇らしげに微笑んだような気がした。 その時、ルイズは全てを悟った。 そうして思う。あの男だけは許してはいけない。 さらに、 ルイズは己の中に、熱い、熱い何かが流れ込んでくるのを感じていた。 かつて、シエスタとギーシュの決闘で感じたときと同じものを。 しかし、もっと純度の高い別のものが。 その思いを言葉に乗せる! 呪文は何でも良かった。どうせ結果は同じなのだから。 「ファイアーボール!」 ルイズのファイアーボールが炸裂した。 少しの間ギーシュは意識を失っていた。 ふと、マリコルヌにケティ、そしてモンモランシーの声が聞こえた気がしたギーシュは、意識を取り戻すことに成功した。 そうして見た。 ワルドが虎丸に止めを誘うとしているのを。 だからギーシュは、最後の力を振り絞ってゴーレムを作った。 「行け!ワルキューレ!」 シエスタは不思議なだった。 こんなに離れているのに、あの大鐘音の声が聞こえているのだ。 ならば、きっともう一撃だけなら、加えられるはず。 誇り高い祖父の技を受け継いだ自分が、こんな声援を受けて這い蹲っているわけにはいかない! だから、 「大豪院流奥義!真空殲風衝!」 正真正銘最後の一撃を放った。 そこからのワルドの反応は芸術的ですらあった。 二人の遍在が風で障壁を作り、ルイズとシエスタの攻撃を防ぎきる。 そして本体が、『エア・ニードル』をかけた杖でワルキューレを切り裂く。 神業的な集中力と反応であった。 おそらく、ワルドにも二度とはできないであろう。 だが、 「くっ!」 その反動から、ワルドの膝が一瞬落ちた。 虎丸は考えていた。 ワルドを倒すためには、遍在を含めた全員を倒さなければならない。 (Jとか卍丸なら、こういう相手も得意そうなんだけどなあ。) 虎丸にはそういう手札がない。 しかし、ルイズが、シエスタが、ギーシュが死力を振り絞った一撃が、ついにワルドの膝を折ることに成功する。 ならば、 (あれこれ考えるのは俺らしくねぇ!今はこれだ!) 応えるのが虎丸龍次というものだ。 「食らえ!大放屁火炎放射!」 あたり一面が炎に包まれる。そう、屁は燃えるものなのだ。 そんな中、虎丸のルーンが静かに光っていた。 「うぬおーーーー!目が!目がーー!」 ワルドは思わず顔を抑えていた。 爆風にのまれて遍在は姿を消していた。 必死で魔法をかけて、己の顔の火を消す。 左目が潰れたその顔には、かつての色男など、かけらも残っていなかった。 なんとか、応急処置を完了したワルドは、虎丸を睨もうとする。 「貴様!男子の面体に屁などかますとは!」 そこでワルドは気がついた。 虎丸が既に動いていることに。 「どこをお探しだい?俺はここだぜ!」 既に懐近く入り込んでいた。 虎丸は久しぶりの感触に驚いていた。これはまさしく大鐘音だ。 力尽きたはずの自分なのに、力が湧いてくるのがわかる。 他の一号生達からは今の自分の様子などわかるはずもない。 それでも、今この時に大鐘音をしてくれる仲間に、虎丸は深く感謝の念を込めると 「お前なんざぁ、屁とこれで十分じゃあ!」 渾身の頭突きをワルドに食らわした。 ワルドの顔面が大きく陥没した。 「終わったのね。」 ルイズがそう呟いたその時! 「貴様ら、許さん!」 声が響く。ワルドがまだ生きていたのだ。 顔を焼かれ、片目を潰され、そして鼻の部分は陥没し跡形もなくなっている。 それでもまだ、生きていた。 流石はスクウェアクラス魔術師、閃光のワルドである。 しつこい! そう思って魔法を唱えようとしたルイズは気がついた。 ワルドは、怒り狂っていてために、気づくのに遅れた。 それが命取りとなった。 「心眼剣、一之太刀!」 シルフィードから飛び降りた桃の一閃に、ワルドの左腕が落ちた。 「遅いわよ!」 ルイズの一声が飛ぶ! その目は涙でにじんでいた。 すまんな、とだけ桃は返した。 キュルケにタバサ、J、王大人もそこにいた。 ワルドは、かすれる意識の中で、グリフォンを呼び出すと逃走した。 これほどの屈辱はなかった。 傷ついた一同を、王大人が簡単に見てまわる。 最後にウェールズ王子を見ると、眉をしかめた。 その様子に不安を覚えたルイズは尋ねる。 「ねぇ。ウェールズ王子は大丈夫なの?」 しかし、王大人は無情にも首を横に振ると、短く答えた。 「死亡確認」 と。 その言葉に、一同静まり返る。 大体の事情をギーシュから聞いたキュルケやタバサもまた、悲しそうな顔をしていた。 その時、外が騒がしくなってきたのが聞こえた。 どうやら、貴族派の兵士たちがここまで攻め込んできたようだ。 もはや、脱出までに許された時間の猶予はほとんどない。 最後にルイズは、ウェールズの手から、風のルビーを抜き取った。 アンリエッタに形見として渡そうと考えたのだ。 そして、 「ウェールズの遺体はわしが埋めよう。」 その亡骸は王大人が背負って脱出することになった。 その時、Jが立ち止まると、先に行けと指示を出した。 間に合わなくなる、というルイズに、下で待っていろとだけ言うと、Jは後ろを振り向いた。 Jが殿を務めようとしているとしていることに気がついたルイズは、立ち止まろうとする。 しかし、立ち止まったところを、虎丸に抱えられてしまった。 「虎丸!あんたJのことが心配じゃないの!」 泣きそうな顔でルイズが言い募る。 これ以上、知り合いに死人がでて欲しくないのだ。 その言葉に虎丸がニヤリと笑って返す。 「あのかっこつけが、そんな殊勝なことするかよ!それに、」 そう言って桃の方を見つめる。 「ああ!Jは『下』で待っていろと言っていただろう。ならば『下』で待っていようじゃないか!」 桃もまた、不敵に微笑んでいた。 Jは一人礼拝堂に立っていた。 「いいかげん姿を現したらどうだ?」 その台詞に反応して、上空から計三十二人の男達が落ちてきた。 リーダー各の男が感心したように話し出す。 「ほう!良くぞ我々の殺気に気がついたな! 我々こそは!」 その名乗りを遮るかのように、Jが声を重ねる。 「貴様らの名乗りなどいらん! 今のオレは機嫌が悪い。とっとと立ち去るかここでぶちのめされるか選べ!」 その台詞にリーダー各の男の眉間が細まる。 「この人数に勝てると思っているのか!」 「そうか。」 そうとだけ呟いたJの右手が異様に膨れ上がる。 まさしく異形そのものの姿に、男達の腰が引ける。 あれで殴られたならば、そういう想像が頭をよぎるのだ。 Jは高く、高く跳躍すると、その右手を地面に打ち込んだ。 ピシリ。 その様子に、呆気に取られていた男達がわれにかえる。 ピシリ。ピシリ。 こけおどしをしやがって!そう口々に罵り男達はJに近づいていく。 ピシリ。ピシリ。ピシリ。ピシリ。 「フライング・クラッシュ・メガトン・パンチ」 Jが短くそう告げたその瞬間、地面が崩壊した! アルビオンの一角が崩壊する。 礼拝堂は、大陸の一部ごと粉々になって、地面へと落ちていく。 そんな中、Jは慌てる様子もなくこういった。 「You're Not My Match!(相手が悪かったな)」 Jの視界には、自分の下を悠々と飛ぶ風竜の姿が捉えられていた。 男達の使い魔 第十話 完 NGシーン 雷電「あ、あの術はまさか!」 虎丸「知っているのか雷電!」 雷電「あれぞまさしく古代中国において最強の暗殺術と恐れられた辺坐威(へんざい)!」 遍在、風のメイジが好んで使用する術であり、その知名度は高い。 しかし、実はその起源が古代中国に由来するものであることを知るものは少ない。 秦の時代、辺坐威という集団があった。 彼らは、己の秘術で持って、五つ子以上を好んで産んでいたという。 こうしてこの世に生を受けた彼らは、時には一人の影武者として、 時には暗殺者のアリバイを立証するために八面六臂の活躍をしたという。 五つ子として生を受けた彼らにとって、兄弟に成り代わるのは難しくなかったのだ。 そんな彼らがハルケギニアに渡った後、風のメイジとして遍在を編み出したであろうことは想像に難くない。 ~曙蓬莱武術協会副会長平賀氏と風のメイジマリコルヌ氏の談話より引用
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/6825.html
ちーぷとりっく【登録タグ CDち ギンCD CD】 前作 本作 次作 - ちーぷ・とりっく - ギン 発売:2009年09月06日 価格:¥500(税込) 流通:即売会、自家通販 サークル:シルバーラビッツ CD紹介 THE VOC@LOiD M@STER 9にて頒布された初アルバム。 ニコニコ動画投稿曲6曲、新録4曲の全10曲。 動画版に入っていた声ネタは削られている。 表ジャケットは津賀マサ(妹様)、裏ジャケットはネコばかによるもの。 曲目 スマイルコロコロ タイガー&ドラゴン エターナルラヴァー シエスタ・シエスタ リピティション・ミュージック モノクローム ランダムワード インターバル ウツロイシーズン サクラサクコロ。 リンク ギンの雑食ブログ(作者ブログ) コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/737.html
発芽! 花開く明日のために 「ジョータロー。……今日の授業後、ヴェストリ広場に来てくれ。 君ともう一度決闘がしたい。受けてくれるかな?」 昼食時、承太郎がいつものように厨房で食事をしていると、ギーシュが先日のように同席してきて、食後の一服中に頼んできた。 彼の言葉を聞いたシエスタは、驚いて下げに来たお皿を落としてしまい、割れる寸前で承太郎のスタープラチナがお皿をキャッチしシエスタの手に戻す。 「……どういうつもりだ? ギーシュ」 承太郎は静かに問い返した。ギーシュは真剣な面持ちだった。 「……別に。ただ、最近よく荒れ事に巻き込まれるからね。 だから模擬戦をしたいというのが本音さ。僕は実戦経験がほとんど無いからね」 「なるほど……だが俺は『スタンド使い』だ。 俺と戦ったところで、メイジとの戦いの参考にはなりゃしねーぜ」 「いいんだ。強い相手と戦って、自分の実力を知りたいだけだからね」 「…………いいだろうギーシュ。その決闘、受けて立つ」 いつかの食堂の時と違い、あまりにも穏やかに決闘の約束をする二人を見て、シエスタはいったい何がどうなっているのかよく解らなくなった。 「和やか」 テーブルの下に隠れていたタバサは、 タバサ特性はしばみ茶五号(略してタバ茶五号)を飲みながらそう呟いた。 「てめー、また潜り込んでやがったのか」 承太郎にも気づかれずにテーブルの下に忍び込み、タバ茶を飲ませようと隙を虎視眈々と狙うとは、このタバサ只者ではない。 今日の授業が終わり、後は夕食の時間までのんびりくつろごうという時間。 夕陽が紅に染めるヴェストリ広場に二人の男が対峙していた。 夕陽が紅に染めるヴェストリ広場に二人の女が観戦していた。 「さあ、ジョータロー。勝負だ!」 「……それより……何でシエスタとタバサがここにいるんだ」 承太郎はヴェストリ広場の隅にサンドイッチの入ったバスケットを広げ、かつ水筒まで用意して「二人の決闘見ながら食べよう」という気満々の二人を見た。 シエスタ曰く。 「だって、いきなり決闘だなんて……私、気になっちゃって」 タバサ曰く。 「偵察」 追い払うべきか放置すべきか。 即断できるはずのこの問題を、承太郎は「呆れ果てる」という感情で遅らせてしまった。 その間にギーシュが薔薇の杖を抜く。 「まあタバサなら何かアドバイスとか気づきそうだし、見ていてもらおう」 「…………」 まあギーシュの目的は自分と戦って強さを磨く事だし、優れたメイジに見てもらって意見をもらうのも悪くないだろう。 それにギーシュ相手ならば本気を見せる必要もない。 「やれやれ、いいだろう。かかってきな、ギーシュ」 「ではまず試させてもらおう……僕が学んだ新たな戦法を。舞えよ紅薔薇!」 ギーシュの周囲に突如現れた紅い花びらが宙を舞い空を彩る。 夕陽を浴びてさらに赤みを増したそれは、承太郎へ向かって舞い落ちた。 「何を企んでいるかは知らんが、花びらを浴びてやる理由はねーぜ」 承太郎の身体から浮き出た屈強の戦士が無数の拳で天を突く。 「オラオラオラオラオラオラオラ!」 花びらは呆気なく承太郎の周囲へと撃ち落とされた。 彼の身体には一枚たりとも花びらはついていない。だが――。 承太郎は気づいた。自分の周囲に花びらが落ちている、それはいい。 だがなぜ、自分の周りに円を描くように落ちた花びらから、ギーシュに向かって花びらの線が伸びているのだろうか? まるで、導火線のように。 (お手並み拝見だ。やってみな、ギーシュ) 承太郎はあえてギーシュの成長を見るためにその場から動かなかった。 だがギーシュは、それを自分の作戦に気づいていないと勘違いしてしまう。 「今だ!」 ギーシュは自分の足元まで伸びる花びらに杖を向けルーンを唱えた。 (あの詠唱は……確か錬金だったな。とするとこの花びらは……) 「錬金! 油になれ!」 途端に地面に落ちた花びらすべてが油に変わり地面に染み込む。 それを見ていたシエスタは、承太郎が動かない事に不安を覚えた。 「み、ミス・タバサ。ジョータローさんは大丈夫なんでしょうか?」 「大丈夫」 タバサは小さく答える。 「続いて、僕の足元まで伸びたこの油を『着火』する!」 ギーシュは土のドットメイジであるため、ファイヤーボールなどは使えない。 できるのはせいぜい着火の魔法程度だ。 だから自分の足元まで伸ばした花びらを見下ろして――。 地面が爆ぜる音にギーシュは視線を跳ね上げる。 わずかな土煙を残して承太郎の姿が消えていた。 「えっ!?」 承太郎が油の中にいないのでは、着火しても意味は無い。 どこに!? 承太郎はどこに消えたのかッ! ギーシュは承太郎がゴーレムの上のフーケに向かって跳躍した事を思い出した。 即座に青空を見上げる。 しかし、承太郎の目立つ学ランの色は空のどこにも存在しない。 「ば、馬鹿なッ! 承太郎はどこに――」 慌てて視線を下ろし周囲を見回す。 上じゃないなら、どこにいるのか。 「上だ」 ハンデとばかりに居場所を教える承太郎。 その声を聞き、ギーシュは再び空を見る。 自分と太陽の間に承太郎がいた。 「太陽に、隠れて――」 虚を突かれたギーシュは、目の前に承太郎が着地するのを呆然と見ているだけだった。 「どうした……? てめーの実力はその程度か」 「ハッ! わ、ワルキューレ!」 咄嗟に後ろに向かって跳んで逃げつつ杖を振るい、ワルキューレを六体出し壁を作る。 ワルキューレはいっせいにスピアを承太郎に向けた。 だが微塵も臆する事なく承太郎はワルキューレの後ろにいるギーシュを見据える。 「わ、わっ、ジョータローさんの前にいっぱいゴーレムが!」 またもや承太郎が危ないと勘違いしたシエスタが慌てる。 だがタバサはのん気にサンドイッチを食べていた。 シエスタに頼んではしばみ草を入れてもらったサンドイッチは、彼女の味覚では非常に美味であったが、これをそのまま承太郎に食べさせてもまた吐き出されるだけだろうと思うと、タバサはちょっぴりさみしかった。 承太郎が一歩前に出ると、ワルキューレ達は一歩後ろに下がる。 「どうした……かかってこないのか?」 「くっ……ジョータロー。こうなったら僕の切り札を、お見せしよう」 「ほう、そいつは楽しみだ。やってみな」 「チェェェンジ! ワルキュゥゥゥレ!」 そう叫んでギーシュは薔薇の杖を振った、ワルキューレ達の後ろで。 ギーシュの猛りを見て、タバサは目を細めた。 呆れたのだ。力に力で対抗しても、勝つのはより大きな力だというのに。 もうフーケのゴーレムに踏み潰された事を忘れたのだろうか? 承太郎はフーケのゴーレムよりパワーもスピードも上だというのに。 ――が、タバサは気づいた。なるほど、そういう事か、と。 そして承太郎は気づいていないらしい。 当然だ、ギーシュはワルキューレ達の後ろに隠れているのだから。 承太郎の前で、三体のワルキューレが肩を組んだ。 いったい何が始まるのかと承太郎は冷静に観察する。 その三体のワルキューレの上に二体のワルキューレが飛び乗った。 さらにその上に最後の一体がよじ登る。 そしてアイスクリームのようにドロドロに溶けたワルキューレは、互いの身体の隙間を埋めていき、背後にいるギーシュの姿を完全に隠した。 承太郎はというと、目の前でグニョグニョと融合する青銅の塊を見上げている。 その青銅の塊は次第に人の形を成していった。 身長三メイルという巨人にして戦士。 「クイーン! ワルッ! キューッ! レェェェッ!!」 ギーシュが叫ぶと、クイーン・ワルキューレは巨大なスピアを頭上で旋回させた後、承太郎に穂先を向けてかざしポーズを取った。 ジャッキィィ―――――z______ン 感心した様子でクイーン・ワルキューレを見る承太郎。 ギーシュはクイーン・ワルキューレの後ろから横に数歩移動し、薔薇の杖を口元に向けキザったらしいポーズを取る。 「待たせたねジョータロー。これこそ僕を守護する『レディ・オブ・レディ』……。 気高く大地に立つ薔薇の結晶、天を突く拳と槍をその手に握る戦乙女。 青銅の鼓動を聞け! 明日の勝利を掴むため、挑め空前絶後の大一番ッ! クイーン・ワルキューレ! これが! これがッ! これがァッ!! 僕のォ! 新しいィ! 魔法のォオッ……力だァァァァァァーッ!!」 「スタープラチナ」 オラ オラ オラ オラ オラ オラ 巨大になっても所詮青銅は青銅。 鉄に錬金されたフーケのゴーレムすら破壊したスタープラチナの拳を受けて、防げる理由など何ひとつとして存在しなかった。 哀れ、クイーン・ワルキューレはボコボコにされた挙句、空に向かって殴り飛ばされた。 「ゲェーッ! まさか、クイーン・ワルキューレをあんなに高く殴り飛ばすなんて!」 「やれやれ、正直期待はずれだったぜ。こんなくだらねーものが切り札とはな」 呆れながら承太郎はギーシュに向かって歩き出した。 「や、やりました! よく解らないけど、ギーシュ様のゴーレムをやっつけました!」 スタンドは見えずとも、それが承太郎が言っていたスタンドの力だろうと思い、シエスタは承太郎の勝利を今になってようやく確信した。 だが、最初から今この瞬間まで承太郎の勝利を確信しているタバサは小さな声で言う。 「まだ」 タバサの視線は承太郎でもギーシュでもなく、 上空に殴り飛ばされたクイーン・ワルキューレに向けられていた。 どうやらシエスタはクイーン・ワルキューレの派手さと承太郎に目を奪われ、ギーシュの切り札には気づいていないらしい。 それほど注意深く見なくとも、この角度からなら丸解りの手段なのに。 そして。 「来る」 タバサが呟いた。 クイーン・ワルキューレが落下する。 もう決着はついたばかりに、承太郎の背後へ。 クイーン・ワルキューレが落下する。 その背にワルキューレを乗せて。 クイーン・ワルキューレが落下する。 その背中を踏み台にして七体目のワルキューレが承太郎に襲い掛かる。 これが、ギーシュの策だった。 クイーン・ワルキューレで承太郎の注意を引き、 その背後で七体目のワルキューレを作り、クイーンワルキューレの背中に掴まらせる。 後は承太郎がクイーン・ワルキューレと戦っている隙に、七体目のワルキューレで奇襲をかけるという手筈。 一瞬でクイーン・ワルキューレを殴り飛ばされた時は失敗かと思った。 事実クイーン・ワルキューレが後ろに吹っ飛ばされていては七体目の出番は無かった。 だが幸いにも吹っ飛ばされた方向は上。 ワルキューレはクイーンの身体を盾に! 隠れ蓑に! 絶好の好機を得た! (頼む――成功してくれ!) 肉薄するワルキューレの槍が承太郎の背中を狙う。 それに気づいた素振りを見せず、承太郎は真っ直ぐギーシュに向かって歩いている。 (勝ったッ! 決闘敗北イベント完!) 「オラァッ!」 バッゴ―――――z______ン!! それは一瞬の出来事だった。 その間にギーシュは勝利の確信を敗北の確信へと変える。 承太郎は振り返りもせずスタープラチナを出現させ、後ろ目掛けて拳を振り下ろす。 拳がワルキューレの頭を潰し首までめり込ませた挙句、ワルキューレの身体を地面に叩きつけた。 「おめーはワルキューレを『七体』出せるのに、なぜか『六体』しか出さなかった。 だから……『七体目』に警戒するのは当然の事だぜ。ゲームセットだ」 両手をポケットに突っ込んだままの承太郎は、ギーシュの前まで行き勝利宣言をした。 最早ギーシュに残された手段は無く、ガクリと地面に膝をつける。 「ま……負けた。またしても完全敗北だ」 「そうでもねーぜ」 えっ? と思い、ギーシュは承太郎を見上げた。彼の頬に赤い線が一筋。 「そ、その傷は……?」 「ワルキューレを殴る時、スタープラチナの頬を槍がかすめた。それだけさ……」 それを聞いて、ギーシュはスタープラチナへのダメージ=承太郎へのダメージという、とても重要な事をスルーして、とにかく承太郎にとてもとても小さな一矢を報いた事を、両手を握りしめて空に掲げて歓声を上げるほどに喜んだ。 「やった! やったぞッ! あのジョータローに、一矢報いた! やったぁっ!」 「やれやれ、舐めときゃ治るような傷ひとつでそんなに喜ぶんじゃねー」 承太郎は頬の傷から血が垂れないよう軽く拭い、観戦していたシエスタに声をかけた。 「シエスタ、すまねーが傷の手当てをしたい。薬はあるか?」 「あ、はい。今お持ちしますね」 シエスタが救急箱を取りにヴェストリ広場を去った後、 タバサが承太郎に近づき学ランを引っ張ると、小声で訊ねてきた。 「それ、わざと?」 ギーシュの自信をつけるため、わざと傷をつけられたのか。という意味だ。 「……さあな…………。ただひとつ言えるのは、七体目の動きはなかなかよかったって事だ」 「そう。お疲れ様」 タバサがねぎらいの言葉をかける、というとんでもない行動を取ったが、承太郎はそれが罠である事を知っていたから、 一緒に差し出されたバスケットと水筒に目もくれなかった。 「……サンドイッチとお茶」 まだあきらめきれないらしくタバサは言う。 「どーせまたはしばみ草が入ってるんだろ。こっそり食わせようとするんじゃねーッ」 こうしてはしばみ草サンドイッチとタバサ特製はしばみ茶五号を回避する承太郎。 はしばみ草をめぐる不毛な戦いはまだ終わりそうになかった。 その後、ギーシュは善戦したお祝いとしてタバサからの差し入れをもらった。 すると大空に吹っ飛んで、五分後に落下してきて気を失った。原理は不明だ。 ちなみに一緒に観戦していたシエスタは承太郎の身を案じてばかりで、一切サンドイッチにも水筒の中身――タバ茶五号も口にしていなかった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5188.html
前ページ次ページ蒼い使い魔 翌朝、ルイズは眼をこすりながらゆっくりと起床する、 ここ最近、バージルは朝、ルイズを目覚めさせる仕事すら放棄しているため 自分自身で目覚めなければならないのだった。 ルイズははっとしたように部屋の中を見渡す、そこにはバージルの姿は見えなかった 昨日のバージルの言葉が脳裏をよぎる、 ―俺は魔界へ行く 脳内でその言葉が再生された瞬間ルイズは跳ねるように飛び起きた。 「どこっ!?バージル!どこに行っちゃったの!?」 ルイズはパニック状態になり部屋の中を引っかき回し己が使い魔の名を呼びながら探す、 眼に涙を溜めながらクローゼットの中からベッドの下まで覗き込む、 心臓が早鐘のように高鳴る、呼吸が荒くなるほど胸が苦しい、 「バージルッ…どこよ…どこにいっちゃったのよ…」 部屋の中を散乱させ、部屋の中で崩れ落ちるように座り込む、目から涙がこぼれおちた。 その時、部屋のドアが無遠慮にガチャと音を立てて開かれた、ルイズが驚きその方向をみると、 水桶をもったバージルが姿を現した。 バージルは散らかった部屋の中と半泣きのルイズを何も言わず一瞥し…、小さく溜息を吐くと洗面器へと向かった。 「バージル!!」 ルイズが声を上げバージルのところまで駆け寄り、背中にしがみつく。 「何だ鬱陶しい…」 「何だじゃないわよ!どこに行ってたのよ!心配させてっ!!」 「水を汲みに行っていただけだ。いつものことだろう」 淡々と返すバージルにルイズも冷静さを取り戻す。 水汲みはバージルが自ら行っている数少ない仕事だ、自身の顔を洗うためのついで、ということだが。 そこまで考えがいたった瞬間、ルイズの顔がボンッと音を立てるように真っ赤になり、 跳ねるようにバージルから離れた、 「なっなっなによ!別にあんたがいなくなったことを心配したんじゃないんだから!!」 「朝くらい静かにしろ」 湯気がでるんじゃないかというほど顔を真っ赤にし、喚き散らすルイズに取り合うこともせずさらりと受け流す。 顔を真っ赤にしながらも顔はバージルが戻ってきたという安心感で思わずにやけてしまう。 「…何をニヤけている…気色悪い」 半泣き状態でニヤけるルイズをみて辛辣な感想をバージルが呟く 「何よバカ!あんたのせいでしょ!罰として部屋の片づけをしなさい!いいわね!」 そう言いながら、急いで顔を洗う、冷たい水が涙を洗い流し、火照った顔を冷やす、だが顔は綻んだままだった。 朝、バージルの姿が見えなかっただけでこんなにも取り乱している自分がいる。 なんでこんなにも取り乱したんだろう、アイツとの関係は主人と使い魔…それだけなのに…。 使い魔だから?そうだ…きっとそう…、使い魔なんだから一緒にいてもらわないと困る、私だけの… 顔を拭き、そう思いながらベッドに戻りシーツのカーテンを引き着替えを始める、 着替え終わり、カーテンを開けバージルに話しかける。 「昨日言ってた魔界へ行くって話だけど…私、絶対認めないからね…」 「何故だ?俺が消えて困る奴など居まい、お前とは『一応』使い魔契約をしているが、 俺がこの世界から切り離されればそれも消える筈。お前は新しい使い魔を呼べばいい、それだけのことだろう」 その言葉にルイズの心がズキリと音を立てて痛み出した。 「俺とお前の関係などそんなものだ」 「違う!」 バージル本人の口から出た先ほど頭の中で思っていた主人と使い魔という関係を必死に否定する。 「違うなら、では…何だ?」 「それはっ…!!」 バージルが静かにルイズを見据える、 ルイズは言葉に詰まる、自分で主人と使い魔と思っておきながら それをバージルに言われ必死に否定してしまった。 「とっ!とにかく認めないから!!絶対認めないから!!」 「まだ方法もかかる時間も、分からんというのに…」 再び顔を赤くし喚くルイズを見て、呆れたように小さく溜息を吐くと部屋から出て行ってしまった。 「あいつ…私のこと…そのくらいにしか見てくれてないんだ…」 ルイズは思わず自分の口から出た本心にブンブンと首を振り、バージルを追うように部屋を後にした。 ルイズは朝食を取った後、授業へと出席する、バージルは図書館へ行き、今日も教室にはいない。 そしていつもどおり授業を受けていると、オールド・オスマンからの呼び出しを受けた、 なにか問題でもあったのだろうか?そうハラハラしつつ学院長室の前まで来ていた。 「失礼します」 ルイズは意を決し学園長室の扉をこんこんと叩いた。 「鍵はかかっておらぬ。入ってきなさい」 その言葉とともに、軽く深呼吸しドアをあける、 「私をお呼びとお聞きしました」 そんなルイズに緊張を見てとったのかオスマン氏は両手を広げて、立ち上がる。 歓迎の意を体全体を使って表したのだ。 「おお、ミス・ヴァリエール。旅の疲れはいやせたかな?思い返すだけでつらかろう。 だが、おぬしたちの活躍で同盟が無事締結され、トリステインの危機は去ったのだ」 優しい声でいわれて、ルイズの気持ちは幾分か落ち着いた。 「来月にはゲルマニアで無事王女と、ゲルマニア皇帝との結婚式が執り行われることが決定した。きみたちのおかげじゃ。胸を張りなさい」 しかし、その言葉に対しては、あまり胸を張れなかった。 アンリエッタとウェールズが愛し合っていたのだと知っている今、姫の望まぬ結婚は素直に喜べない。 「そしてその件なんじゃがの」 オスマンはそう言いながら、一冊の本を手渡す、 「これは……?」 「始祖の祈祷書じゃ」 「始祖の祈祷書?これが……ですか?」 名前ならルイズも聞いた事がある。王室に伝わる伝説の書物である。 といっても、この手の伝説の品によくあるように偽者もいっぱいある。 そして偽者を持つ貴族やら司祭やら王室関係者は誰もが「私の物こそ本物だ!」と主張している。 そんなこんなでトリステイン王国に伝わる始祖の祈祷書も本物かどうか怪しいものだ。 が、それでも国宝である事に代わりはなく、とても大切な物である。 何故そんなものをルイズに渡すのか。オスマンは説明を始めた。 「トリステイン王室の伝統での、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意せねばらなんのじゃ。 選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠みあげる習わしになっておる」 「は、はぁ(そうなんだ…)」 「そして姫は、その巫女にミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」 「姫さまが私に?」 オスマン氏が頷く。 「その通りじゃ。巫女は式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠みあげる詔を考えねばならぬ」 「えっ!?それじゃ、その…わ、わたしが詔を考えるのですか?」 「そうじゃ。もちろん、ある程度の草案は宮中の連中が推敲するから安心しなさい。 伝統はちとめんどくさいもんじゃな。だがな、姫はミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ。 これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」 姫様の頼みを断るなんて絶対無理!ということでルイズは観念するように頷く、 「わかりました。謹んで拝命いたします」 ルイズは、オスマン氏の手から『始祖の祈祷書』を受け取った。オスマン氏は笑みを浮かべて、ルイズを見つめた。 「引き受けてくれるか。よかったよかった。姫も喜ぶじゃろうて」 一方バージルは学院の庭の隅のベンチで、これもまた図書館から拝借してきた本を読んでいた。 禁書エリアにまで堂々と入り込み、ブリミルの目指した聖地の奥の地獄門についての文献を漁り片っ端から読んでいるのだ。 「地獄門についてはどれも記されていない… 手掛かりがあるとするならば聖地の遥か東、ロバ・アル・カリイエという名称だけ…か」 バージルが本を読みながらつまらなそうに呟く。 「禁書といってもそんなもんさ、ブリミルは聖地から東のことについてはあまり触れなかったらしいからな」 ベンチに立てかけてあるデルフが声をかける。 「お前が覚えてればすべて解決なんだがな…」 「ハハハ、わりぃ、こればっかりはどうやっても思い出せねーんだ、あんま興味なかったんでな」 ジト目で睨むバージルにカチカチとデルフが音をたてて笑った。 チッっと軽く舌打ちをし、次のページをめくろうとした時に不意に声がかけられた、 「あの、バージルさん」 その声の主は学院のメイド、シエスタであった、手にはトレーを持っている。 「……」 シエスタに視線を向けることなく本を読み続ける、 「えと、何をお読みになってるんですか?」 そういいながら本の中身を覗き込む、その内容をみたシエスタが思い出したように話を切り出した、 「聖地の本ですか、そういえば東方のロバ・アル・カリイエから運ばれたって言われる『お茶』っていう飲み物が届いたんですよ! 今日はそれを御馳走しようと思って持ってきたんです!」 モット伯邸の悪魔達から自分を助け出してくれたバージルに対し、恩義以上のものを感じているシエスタは これがチャンスといわんばかりに、バージルに声をかけてきたのだった。 何しろ、これから声をかけようとしていた矢先にルイズやキュルケ、タバサ達と共にどこかへ外出してしまっていたのだ、 ここで巻き返すためにバージルが一人になる瞬間を狙っていたのかもしれない。 ロバ・アル・カリイエ、その言葉を聞いたバージルが反応し、シエスタの持ってきたトレーに目をやる、 「その…よかったら……飲んでくれますか?」 シエスタはトレーをベンチに置いて、手をもじもじしている。 「頂いておく」 特に気にするでもなく、返事をする。 すると、シエスタの顔がパーッと明るくなる。カップにお茶を入れてバージルに手渡す。 カップの中を見るとそれは深い緑色をしていた。 元は彼の世界にある日本茶である。バージルはそれを口にしてみる… 変わった香りだが悪くない、素朴だが味わい深い渋み、バージルはいたくこの『お茶』を気に入ったようだった。 「どうですか?おいしいですか?」 シエスタがおずおずと聞いてくる、 「悪くない」 そう言いながらカップを差し出す、二杯目が注がれ、またそれを口にする。 「そのロバ・アル・カリイエについて」 バージルが口を開く、 「何か知っていることはあるか?」 「ロバ・アル・カリイエですか?うーん…そうですねぇ…」 シエスタが手を顎にあてて考えるような仕草をとる。 「ブリミル様が最終的に目指したと言われる場所ですよね、 変わったものがたくさんあるって話ですよ、中には異世界につながっているなんて噂も… エルフたちとの行商が細々と行われている…くらいしか…」 「そうか…(やはり、手がかりがあるとすればそこか…)」 そう言いながらバージルは本をパタンと閉じ、空になったカップをシエスタに渡し、立ち上がる。 「また頼む」 「はいっ!」 シエスタの顔が輝く、お茶がバージルのお気に召したようで安心したようだ。 そうにこやかに返事をし、立ち去るバージルを見送った。 バージルが部屋に戻ると、ルイズがベッドの上で寝息を立てていた。 最初は気がつかなかったが、何やら古そうな本を抱えているのが見える、 眠っているルイズの腕から引きはがしそれを手に取り開く、 「………」 部屋の中にページをめくる乾いた音が響く、 「うぅーん…ふぁぁ…あれ?もどってきてたんだ…?」 ルイズが目をこすりながら起きる、 「ふぁ~あ、あ…あれ?始祖の祈祷書は!?」 持っていたはずの本がなくなりルイズは慌てる、国宝の本だ、無くしたらとんでもないことになる。 探しものはバージルが持っていた、静かにページをめくっている、よかった、と安心したその時 バージルが無言で読んでいた本を投げ捨てた、後ろ手で放り投げたにもかかわらず きれいな放物線を描き、ゴミ箱へ吸い込まれていった。 「ばっバカーーーー!!!なにやってんのよー!!!」 「終におかしくなったか?白紙の本に価値はない」 「だからって国宝をゴミ箱に叩き込む奴がいるかーーーーっ!!」 ルイズが絶叫し急ぎゴミ箱から始祖の祈祷書を回収する、よかった、どこも破れてはいない。 「白紙の本が国宝か。作った奴もだが、それを国宝と認定する連中もどうかしているな」 「仕方ないじゃない!これを肌身離さずにっていわれたんだもん!」 そういいながら結婚式の巫女に選ばれ始祖の祈祷書を持ち詔を考えてる事をバージルに説明した。 「でも…あんたの言う通り、国宝としては最悪ね、白紙だなんて…、偽物も多いけど胡散臭さはその中でもダントツよ、きっと」 ルイズが呆れたように言いながらバージルに視線を向ける、バージルは窓の外の二つの月を眺めていた。 「あんたってホント…月を眺めるのが好きね、なにが面白いんだか…」 そう言いながらバージルの横に立ち、月を見上げる、蒼い月と赤い月、二つの月が静かに光を放っていた。 「ねぇ、あの月…」 「………」 「まるであんたとダンテみたいね」 ルイズのその一言にバージルが少し驚いたような表情でルイズを見る。 「…そうだな…」 この世界の二つの月にどこか惹かれていたのは…考えながら二つの月に視線を戻す。 同じだが違う、違うが同じ、時に交錯し時に離れる、二つの月をどこか自分たちに重ねていたのかもしれない。 「こうして月を眺めるのも結構いいかもね…二つの月がどんな闇も祓ってくれる感じがするわ」 ルイズが静かに言う、バージルがフッと静かに笑った。 「お前にしては、気の利いたセリフだな」 「何よ、馬鹿にして…別にいいじゃない」 そう言いながらルイズが頬を膨らませる。 「でも…今日は特別に許してあげるわ」 そう呟きながらルイズはベッドに戻ってゆく、バージルは静かに月を眺め続けていた。 その日、ルイズは夢を見た、 バージルとダンテが共に力を合わせ、醜悪な姿をした悪魔と戦う夢だ。 その悪魔は強大な力を抑えきれず暴走し、二人に襲い掛かる。 ルイズはそれを見ても不思議と怖いとは感じなかった、力を合わせた二人の前に敵などいない、そう思えてしまう。 二人が息を合わせて戦う姿に思わず笑みがこぼれる。 悪魔の体に閻魔刀とリベリオンを打ち込み体内で交錯させ、貫通させる、 バージルがリベリオンを、ダンテが閻魔刀を振い悪魔を斬りつける。 ついに限界が訪れたのか、悪魔が苦しみ出した、 ダンテとバージルが銃を構え、悪魔に狙いをつけた。 「今回だけお前に付き合ってやる」 「"決めゼリフ"を覚えてるか?」 二人がニヤリと笑う 「「JACK POT!」」 二人の魔力が込められた弾丸が放たれ――悪魔を貫く―― ――悪魔は断末魔の悲鳴を残し、消えて―― そこでルイズの夢がさめる。 「なんだ…やっぱり仲良かったんじゃない…。」 少し笑いながらそう呟き、椅子に座り目をつむるバージルを見つめた。 昼休み、ルイズが広場のベンチに腰かけ始祖の祈祷書を開き、詔を考えていたが一向にまとまらず頭を抱えていた。 そこにキュルケが通りかかりルイズに話しかける、 「ハァイ、ルイズ、何やってるの?白紙の本なんか広げちゃって…」 「姫様の結婚式の詔を考えてるのよ、全然考えがまとまらなくって困ってるの」 「へぇ…よくわからないけど、大変そうなのはわかるわ、まぁ、それはそれでおいといて、面白いものを持ってきたわよ」 「面白いもの?」 怪訝な顔をするルイズの前に数枚の地図を広げるキュルケ 「なに?この地図、この本より胡散臭いわよ」 「ずいぶんな言いようねぇ、お宝の地図って話よ、ギーシュが持ってきたの」 「宝の地図?さらに胡散臭くなったわ…」 「まぁまぁ、そんなつれないこと言わないの、面白そうじゃない、ね、探しに行かない?」 「でも詔を…」 「いーのいーの!頭をかかえてたっていい文章は思い浮かばないわよ!気分転換にちょうどいいわ、きっと」 「そうね、じゃあ、ちょっと探してみましょうか」 キュルケの言う通りかもしれない、ここ最近はこれのことで悩みっぱなしだ、きっといいリフレッシュになるだろう。 「決まりね、とタバサも連れて行きましょう、あの子の風竜なら移動も楽だと思うわ、 後、役に立つか分からないけどギーシュも、これ持ってきてくれたのアイツだしね」 「そうね、じゃ、探しに行きましょ、多分図書館かしらね?」 そう言いながら立ち上がり二人は本塔へと向かった。 「おかしいわね、図書館にいると思ったのに、あの子ったらどこにいったのかしら?」 本塔から出てきた二人は首をかしげながら歩いていた、どうやら探し人はいなかったようだ、 さてどこにいるのだろう、と考えながらあたりを見渡す、すると視界に見知った姿が入り込んだ 二人の探し人、タバサだった。 「あ、こんなところにいたのねタバッ…!?」 声を掛けようとするルイズをキュルケが物陰に引っ張り込む 「ちょっと!何するのよ!」 「いいから静かに!ほら!タバサが他の誰かと一緒にいるのよ!こんなの珍しすぎるわ!」 キュルケがいつになく興奮した様子で小声でまくしたてる。 テーブルを挟むようにタバサともう一人が椅子に座り何やら本を読んでいる。 「確かに…タバサがあんた意外と二人きりなんて見たことないわ…」 そう言いながら二人は物陰からそっとその場を覗き込む、 そして思わず言葉を失った。 タバサと仲良く(?)本を読んでいたのはルイズの使い魔のバージルだった。 「ああああああああの馬鹿犬ぅぅぅぅ!!!私をほったらかしてなんでタバサなんかとぉぉぉぉ!!!」 「ちょっと落ち付きなさい!たまたま一緒にいるだけって可能性もあるでしょ!? 特に会話もしてないみたいだし!」 怒りの形相で飛び出さんとするルイズを必死にキュルケが抑え込む、 その言葉に少しだけ冷静さを取り戻したのか荒い息を押さえこむ。 「そ、そうよね…偶然かもしれないわ…」 そう言いながら再び見つからないように二人の様子を覗き込み耳を澄ます。 すると二人の会話が聞こえてきた。 「タバサ」 バージルがタバサに声をかける、 「何?」 タバサが本から目線をバージルに合わせる。 「聖地について何か知っていることはあるか?」 「…ごめんなさい、多分あなたの知っていること以上のことは知らない」 「そうか…ならいい」 「そう…」 はたから見れば何のこともない普段の会話、だがバージルがどういう人物かよく分かっているルイズにとって、 そしてタバサがどんな人物なのかよく知っているキュルケにとって、驚愕するに値する会話であった。 「(なんで名前で呼んでるの!?私なんてまだ一度しかバージルに名前呼んでもらったことないのに!!!)」 「(あの子が読書中に答えた!?普段ならあまり答えないのに!答えたとしても本から目を離さないわよ!?)」 二人が唖然とその様子を眺めていると、別な声が聞こえてくる。 「バージルさん!」 二人がその方向へ視線をやると、一人のメイド、シエスタが近づいてきていた。 どうやら先日バージルが気に入ったというお茶を持ってきたらしい。 「………お前か」「(やっぱり名前で呼んでない!!)」 「お茶がはいりましたよ」 「そこに置いておけ」 シエスタが二人分のお茶を入れバージルとタバサに差し出す。 それを手に取るとバージルが一口飲む、 「おいしいですか?」 その様子を横に立ち笑顔でシエスタが尋ねる 「あぁ…」 「そうですか、よかった」 そう言いながらシエスタは立ち去る気配を見せない 妙に険悪な雰囲気が場を支配する。 「(邪魔)」 「(はい、邪魔をさせていただきます、ミス・タバサだけズルいです)」 タバサとシエスタから妙なオーラが立ち上る。 悪魔すら裸足で逃げ出しかねない状況に遠目で眺めていたキュルケが思わず後ずさりする。 隣を見ればそれ以上のドス黒いオーラがルイズから立ち上っていた。 当のバージルはそんな雰囲気などどこ吹く風とお茶をすすりながら本を読んでいる。 「そういえば、バージルさん、先日"二人きり"で話した聖地のことですけど、思い出したことがあるんです」 妙に"二人きり"という言葉を強調するシエスタ、タバサがピクと反応しバージルを見る、 ルイズに至っては既に真魔人になりかけているらしい。 「…何だ?」 「私のひいおじいちゃんが遥か東から、空を飛んできたらしいんです、『竜の羽衣』って呼ばれてます」 その言葉にバージルが反応した。 「何だと?その『竜の羽衣』とやらについて詳しく聞かせろ」 「はい、私の村…タルブっていうんですけど、そこに『竜の羽衣』が残ってますよ、と言ってももう飛べないらしいですけどね」 「………」 バージルが腕を組み目をつむる、東から?空を飛んできた?そう考えているとシエスタがポンと手をたたいた。 「そうだ!今度私の村に来てみませんか!?他にもおいしい郷土料理があります!歓迎しますよ!」 空を飛び、東から『竜の羽衣』に乗りやってきたというシエスタの曽祖父、もしかしたら東へ行くための手がかりになる… そう考え、バージルは頷く。 「そうだな、では案内してもらおう」 その言葉を聞いたシエスタの顔が輝いた、すると横で本を読んでいたタバサが声をかける。 「タルブは遠い」 「うっ…」 シエスタが言葉に詰まる、結構痛いところを突かれた、タバサがさらに追い打ちをかける。 「シルフィードならすぐ」 「そうか、タバサ、頼めるか?」 「いい」 「礼を言う」 深く考えずバージルがさらりとタバサも同行させることを決定した、シエスタが膝を抱え 「(二人で遠乗りの予定が…)」 とぶつぶつ呟いていたが、突如聞こえてきた叫び声によってかき消されることとなる 「こぉぉぉぉぉぉぉぉの馬鹿犬ぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 そう叫びながら凄まじい速度でルイズが走ってくる。 ルイズはそのままの勢いを利用しバージル目掛けレインボウを放つ。 全体重を乗せた見事なとび蹴りがバージルの顔面にヒット…するはずもなく、右手で足を取られ 空中高く放り投げられる。ルイズはそのまま地面に墜落、すると思われたが どこにそんな運動神経があるのかと問いただしたくなるほどの動きで空中で体勢を立て直し、 きれいに地面に着地する。 「この馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!なにタバサに尻尾振ってるのよぉぉぉぉぉ!!!」 そう言いながら拳を振りまわしバージルを殴ろうとするが、片手で頭を押えられ近づけなくされていた。 そんなルイズを後ろからキュルケが必死に抑える 「お、落ち着いてルイズ!お願いだから!」 「離しなさいよ!キュルケッ!こいつに今日こそ自分の立場ってものを叩きこんでやるんだからぁ!!」 「と、とにかく落ち着きなさいってば!」 無表情だが妙に勝ち誇った表情を浮かべるタバサにさらに怒りのボルテージを上昇させる。 なぜルイズが怒り狂っているのか理解できていないバージルは呆れたような眼でルイズを見て尋ねる。 「何の用だ?」 「この期に及んで何の用だじゃないでしょあんたはぁぁぁぁぁーーーー!」 「あ、あのね、ギーシュが宝の地図をもってきたから私たちで宝探しをしようっていう話になったのよ それでタバサを探しに来たの」 怒り狂い話をすることが出来ないルイズに変わりキュルケが説明する 「そんなことやってる場合じゃないわよ!あんた達タルブへ行くんでしょ!? 私も行くわ!使い魔が行くんだもん!当然よ!特にそこのメイド!勝手に人の使い魔に手を出さないで! あんたもよバージル!!ってアイツは!?」 喚き散らしていたルイズはいつの間にかバージルの姿が見えないことに気がついた 「帰った、付き合いきれんって」 タバサが本を読みながらさらりと言う 「あんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!!」 ルイズの悪魔の咆哮はいつまでも学院に響き渡っていた。 一方のシエスタは 「うぅ…なんでこんな…ひどいです…」 と膝を抱え地面にのの字を書いていじけてしまっていた。 かくしてルイズ達はシエスタの故郷、タルブへと向かうことになったのであった。 前ページ次ページ蒼い使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/347.html
康一達が全てのケーキを配り終えた頃、騒ぎを聞きつけたルイズが康一に詰め寄ってきた。 「あんた! 何してんのよ!」 「何って、ケーキを配ってたんだけど……」 ルイズは康一の胸倉を掴んで、ガクガクと揺さぶった。 「そうじゃなくて、なんで勝手に決闘なんか約束したのか聞いてんのよ!」 「僕が約束したわけじゃあないよ」 康一は、胸倉を掴んでいたルイズの手を払いのける。 乱れた服を元に戻し、真っ直ぐな目でルイズを見つめた。 「それに、僕は間違ったことを言っちゃあいない」 ルイズはため息をついて、やれやれと肩をすくめた。 「謝っちゃいなさいよ」 「なんで? 悪いのは彼の方じゃあないか」 「怪我をしたくなかったら、謝ってきなさい。 今なら許してくれるかもしれないわ」 そう言って、ルイズは康一を説得しようとする。 しかし、当然のことだが、康一は謝る気など全くない。 「嫌だね」 「いいから」 「嫌だって言ってるんだ」 「わからずや!」 「わからずやなのはそっちだろう!」 「絶対に勝てないし、あんたは怪我をするわ。 いや、怪我済んだら運がいいわよ!」 頑として引かないルイズと康一。 その様子を見ていたシエスタが心配そうにしながら、話に割り込んできた。 「コーイチさん、私のことはいいんです。どうか、私なんかの為に決闘なんてしようとしないで下さい……」 「そうよ! 第一、メイジに平民は絶対に勝てないの!」 そう言って、康一の肩を掴んで何とか止めさせようとする。 しかし、康一の考えは変わらない。例えシエスタが許しても、康一は許せなかった。 康一はルイズの手を振り払い、周りで見ていたギャラリーに聞いた。 「ねえ、ヴェストリの広場ってどこにあるの?」 「こっちだ。平民」 康一達のやり取りを見ていた一人が、ヴェストリの広場まで案内した。 ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある中庭であった。 西側にある広場で、日中でも日があまり差さない。決闘にはうってつけの場所である。 普段は閑散とした広場であるが、今この場は、噂を聞きつけた生徒達で溢れかえっていた。 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げた。広場に大きな歓声が響き渡る。 「ギーシュが決闘をするぞ! 相手はルイズの平民だ!」 ギーシュは腕を振って、歓声にこたえている。 一方、康一の方はそんな歓声など気にする様子もなく、じっとギーシュを睨んでいた。 「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」 ギーシュは薔薇の花を弄りながら、余裕の笑みをうかべて言った。 「時間も惜しい、早いとこ始めるとしよう」 ギーシュは、弄っていた薔薇の花を振った。 花びらが一枚、宙に舞ったかと思うと、甲冑を着た女戦士の人形になった。 身長は人間と同じぐらいだが、体は硬い金属で出来ているようだった。 淡い太陽の光を受けて、甲冑がきらめいている。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 康一は、女戦士の人形をちらりと見てから、ギーシュに言った。 「……文句なんてないさ。むしろ感謝したいくらいだよ。これで僕も本気で戦えるってことだからね」 「ふん、強がりを……」 ギーシュは薔薇を振って、女戦士の人形を康一の前まで移動させた。 「おっと、言い忘れたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 女戦士の形をしたゴーレムが、康一に向かって突進してきた。 康一目掛けて、右の拳を振り下ろす。 その拳が康一の腹に命中する寸前、ゴーレムが突然、地面にめり込んだ。 ズンッと、地面の揺れと共に大きな窪みができ、ゴーレムは地面に突っ伏したまま立ち上がらなくなる。 「な……!? ど、どうしたんだ、ワルキューレ!!」 ギーシュは突然のことに驚き、半ば焦りながら、懸命に薔薇を振る。 しかし、ゴーレムは動かない。動かないというよりも、動けないといった感じで、もがき苦しんでいる。 ゴーレムが動けない理由はたった一つ。 康一が、ACT3のFREEZE攻撃を、ゴーレムに命中させていたからだ。 「くそ、どういうことだ……」 まさか、魔法を使ったのでは? と思って康一を睨みつけるが、そんなふうには見えない。 第一、杖を持っていない。杖を持ってないのに、魔法を唱えられるはずがない。 そもそも、あいつはメイジじゃなく、ただの平民じゃないか。 きっと、油断して魔法を失敗してしまったに違いない。そうに決まってる。 そう思って、ギーシュは平静を保とうとする。 そんなギーシュの様子を見てか、康一が挑発するように言った。 「キミの魔法ってのは、この程度なの?」 「なんだとッ!」 ギーシュは憤り、大きく薔薇を振った。 花びらが舞い、新たなゴーレムが六体現れる。 その全てが、康一を取り囲むようにして動き始めた。 「くっ……!」 康一は、思わず言葉を詰まらせた。 一体や二体ならば、ACT3で難なく対処できる。 しかし、既に動けなくしているのを合わせ七体ともなると、かなり分が悪かった。 現在、ACT3で動けなくできる対象は最大二体までなので、残り五体は生身で相手にしなければならないことになる。 「やれ、ワルキューレ!」 ギーシュのかけ声と共に、一斉に飛び掛るゴーレム達。 康一は、真っ先に攻撃してきたゴーレムを、ACT3のFREEZE攻撃で動けなくする。 二体目が康一に攻撃をする。ACT3でガードし、二体目の攻撃はなんとか防ぐことができた。 そうしてるうちに、三体目が康一の背中を目掛けて攻撃する。反応し切れなかった康一は、きりもみしながら吹っ飛ばされた。 「がふっ!」 康一は、うめきながら地面に叩きつけられた。 不幸中の幸いか、背中の骨は折れてはいないようだった。 しかし、生身の康一には充分すぎるほど、背中のダメージは大きかった。 「どうした平民。さっきまでの勢いは」 ギーシュが余裕の笑みを浮かべながら薔薇を弄っている。 康一はなんとか立ち上がろうとするが、背中のダメージが大きく、なかなか立ち上がれない。 そんな康一を、七体のゴーレムが悠然と見下ろした。 さっき、FREEZE攻撃で動けなくしたゴーレムも、射程距離から外れてしまったために復活していたのだった。 康一はなんとかACT3で攻撃しようとするが、七対一では為す術がなかった。 何とか立ち上がった康一の腹に、ゴーレムの重い衝撃が走る。 「がはっ!」 続けて、他のゴーレムが康一の顔面に向けて拳を振り下ろす。 「がふっ!」 さらに、背中、わき腹、足、腕と、拷問をするように、康一を攻撃するゴーレム達。 頃合いを見計らい、ギーシュが薔薇を掲げてゴーレム達を制止する。 ギーシュは薄く笑みを浮かべながら、ヨロヨロと立ち上がる康一に言った。 「さあ、謝れ。謝って命乞いすれば、助けてやる」 康一は右腕を押さえながら、ギーシュを睨みつける。 「誰が……謝るものか……」 そう言った瞬間、一体のゴーレムが康一の腹に向かって拳を振り下ろした。 康一は、うめき声をあげながら地面に崩れる。 「謝れ」 「誰が……お前なんかに……」 「……強情な奴だ。その根性だけは認めてやるよ」 薔薇を振り、ギーシュはゴーレムに攻撃を命じる。 その時、ルイズが人ごみの中から飛び出して、康一のそばに駆け寄った。 「いい加減にして! これ以上やったら……」 「ルイズ、邪魔しないでもらいたいな」 ルイズは、ギーシュを睨みつけながら怒鳴った。 「自分の使い魔が、みすみす怪我するのを、黙って見ていられるわけないじゃない!」 「この程度……怪我の内に入るもんか……」 「コーイチ!」 フラフラになりながら立ち上がった康一を見て、ルイズが悲鳴のような声で名前を呼んだ。 「やっと、僕の事を名前で呼んでくれたね……」 ルイズは震えながら、康一に向かって怒鳴る。 「もうわかったでしょう? 平民は、絶対にメイジに勝てないのよ!」 「まだ……負けたって決まったわけじゃあない……」 康一は覚束ない足取りで、ギーシュに向かって歩き出す。 ルイズがその後を追いかけ、康一の肩を掴む。 「寝てなさいよ! これ以上やったら死んじゃうわよ!」 康一は、ルイズの手を振り払った。 「ムカつくんだ」 「ムカつく? メイジに負けたって、恥でも何でもないのよ!」 康一はよろよろと歩き、ギーシュに一歩、また一歩と近づいていく。 「メイジや貴族って……そんなに偉いのかい?」 「え?」 「一生懸命働いてるシエスタさんは、見下されて……。 メイジや貴族ってだけでエバってるあいつが偉いなんて……。 『逆』じゃあないか? どうしてあいつが悪いのにシエスタさんが悪く言われなくちゃいけないんだ?」 ギーシュは、馬鹿馬鹿しいと言った表情で、康一の話を聞いている。 「言いたいことはそれだけかい?」 「……まだだ」 康一は、ギーシュを挑発するように、ゴーレムを指差して言った。 「お前の……『ワルキューレ』だっけ? ハッキリ言わせてもらうけど、全ッ然ッ弱いねッ! パワーも大したことないし、スピードだって、てんで大したことないよ。『何このガラクタ?』って感じだねッ!」 ギーシュの顔から笑みが消えた。ギリッと歯が軋む音がする。 「お前なんかより、全然凄い能力を持ってる人を、僕は知ってる。 それに比べたら、お前のワルキューレなんて『カメよりスロー』だッ!あくびがでそうだよ。 何がメイジだ! お前なんか、こんなガラクタに頼らなきゃ何も出来ない臆病者じゃあないか!」 ギーシュが体を震わせ、鋭い眼差しで、康一を睨みつける。 ゴーレムの右手が飛んで、康一の顔面を襲う。続けて腹に一発浴びせ、再び顔面に一発攻撃した。 康一は吹っ飛び、鼻が折れ、奥歯が一本抜け落ちた。 さきほどとは比較にならないくらいの一撃だった。 「もう一度……言ってみろ……」 康一は、地面に手をつきながら、やっとのことで体を立ち上がらせる。 「全ッ然ッ……効いてないぞ……ヘッポコワルキューレの攻撃なんて……!」 「貴様ァァァァアアアアア!!!」 自分の魔法をバカにされたギーシュは、怒り狂った。 ゴーレム七体が康一を取り囲み、一斉に攻撃をする。 誰もがギーシュの勝利を確信した、その時だった。 『ドッグォン』という音と共に、七対のワルキューレが全て吹っ飛ばされた。 「な!?」 勝利を確信していたギーシュは、目を疑った。 自慢の魔法でもある、ワルキューレが四方八方に吹っ飛ばされたからだ。 「うわあぁぁあああ!」 爆風と共に飛ばされてきた一体のワルキューレが、ギーシュに命中した。 ギーシュは、ワルキューレと共に、地面を転がる。 その様子を見ていた康一は、ニヤニヤと笑いながら、転げまわるギーシュを見ていた。 「ざ、ざまーみろッ!」 康一は、自分張り付いていた『ドグォン』という文字を回収して、地面にへたり込む。 「く、くそぉぉおおおお!」 ACT2の攻撃は物理的なダメージは殆どない。 そのため、ゴーレムには殆どダメージを与えていなかった。 しかしギーシュは、自分の自慢のワルキューレが傷つけられたと思い、完全に我を忘れていた。 「平民如きがぁぁぁあああー―――ッ!」 再度体勢を立て直したゴーレム達が、一斉に康一に特攻する。 康一は再びACT2で、自分に文字を貼り付けようとする。 しかし、既に体がボロボロになっているため、思うようにいかない。 「まずい……ッ! 体が言うことをきか……」 目の前に迫るワルキューレ。 間に合わない――。康一がそう思った瞬間だった。 「康一さん……!」 「えッ!?」 「なッ!?」 康一の目の前に、シエスタが盾になるように立ち塞がった。 ギーシュは、ワルキューレの攻撃を止めようとするが、その前にワルキューレの拳が、シエスタの体に命中していた。 「シエスタさんッ!!」 康一が、大きな声で叫び、シエスタの元に駆け寄った。 「シエスタさん、しっかりして下さい! シエスタさんッ!」 康一がシエスタを抱きかかえ、何度も呼びかけるが、返事はない。 ACT1で、心音の音を確認する。ドクンドクンと、正常な心音が聞こえた。 どうやら気絶しているだけのようだった。一先ず安心し、シエスタを安全なところに運んだ。 「ち、違うッ! あいつが勝手に飛び出してきたんだ! 僕のせいじゃないッ!!」 シエスタを攻撃したギーシュは、必死に言い訳をしていた。 「よくもシエスタさんを……許さない……」 ザワザワと髪の毛を逆立て、康一はギーシュを睨み付けた。 その時……。康一の左手に刻まれたルーン文字が、光りだした。 To Be Continued →
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4111.html
「怖い恋愛物?」 こくり、とタバサがうなずく。慣れないとわかりにくいが、視線には期待の色が濃い。ルイズも女集団がサイトを囲んでいるのに上機嫌だ。 王都で上演された芝居の影響で、平民から貴族まで、女達の間では今、「少し怖い恋愛物」が流行なのだという。タバサは例によって今世に出ている作品を読み尽くし、その大方はクラス中の女子で回し読みされた。そこで新作に飢えた女たちが思いついたのは東方からの異邦人、というわけだ。ルイズも今回は女たちに邪心が見えなかった上に「私の使い魔」を自慢したくなったというわけだ。 特等席である正面にはルイズが笑顔で座り、隣りにはタバサが筆記の準備。その後ろにはサイトも名前すら覚えていない女子達が座り、最後部にはシエスタが控えという名目で座って小さく手を振っている。 サイトは記憶を辿り、幾つかおぼろげな筋を思い出し、少しずつ脚色しながら語り始めた。 「『ダンスのお礼は何が欲しい?』『愛する彼の首を』」 一斉に女たちが身震いする。サイトも興が乗って話続ける。 「そこでサロメは、真紅に染まった2つの月を背に生首にキスをすると、首を抱えながら踊るんだ」 ふとルイズと視線が絡む。妙に浮かされたような目をしていると思う。 一つ終わったが、さらにとせがまれたので別な話を始める。 「オシチは思った。『もう一度大火事があれば逢える』。オシチは王都に火を放ち、火事を知らせる鐘を必死で打ち鳴らした」 キュルケがぼんやりと手の中で火の玉を弄ぶ。口元が「炎蛇…」と動く。気付いたモンモランシーは慌ててキュルケの脇をつついた。 キュルケとルイズの動きにさすがのサイトも不安を感じて話を終えることにした。だがまだ大勢はアンコールをする。やむなくサイトはもう一つ語った。 「モリドオにケサは、夜に寝静まったら寝室を教えるから夫を殺せ、と言った」 さすがに不倫だと身近に思えないのか、女子達が緩くなる。サイトは話を続けた。 「誤って夫の代わりにケサを殺してしまったモリドオは、ケサの首を持って山へ山へと落ち延びた」 ルイズは少し呼吸が荒くなっている。シエスタが今までにない視線でルイズを睨んでいた。 学院全体が寝静まった頃、ルイズはサイトの向こうで眠るシエスタすら気付かないほど静かに起き上がった。彼女はためらわずデルフを掴む。 「やめときな嬢ちゃん」 ルイズは慌てて少し手をひいた。デルフは続ける。 「あんた、普通に幸せだってあり得るだろ」 ルイズは呟く。 「でも、敵多いし」 言いつつもルイズは頭を抱えながら剣から手をひく。シエスタもサイトも眠るばかりだ。月を見上げてルイズは呟く。 「サイトが首だけなら」 2つの満月はルイズのやるせない拳に光を降らせていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4205.html
前ページ次ページゼロの使い魔はメイド キュルケとの軽い悶着後。 ルイズはシャーリーを伴い、いざ朝餉におもむかんと食堂に行ったのだが。 (しまった……) と、ルイズは無駄に豪華な朝食を前にしばし考えていた。 (この子の食事、どうしよう?) 普通使い魔の食事は学院が用意してくれるが、シャーリーは平民とはいえ、れっきとした人間である。 まさか他の使い魔連中と同じように扱うわけにいかぬ。 かといって、同じ席で同じものを食べさせるというわけにいかない。 貴族と平民は違うのだ。 ルイズはちらりと後ろに立っているシャーリーを見る。 ちょこんと横にひかえたシャーリー、ごく普通にしていた。 空腹でないわけではないだろうが、自分がルイズと同じ席で同じものを食べるなどという発想は最初からないようだ。 それがここハルケギニアでは普通なのだが。 もしもこれが、もっと別の時代の、別の時代の国の少年なんかであれば、自分もご相伴に預かれると思い込み、はしゃぎまわっていたかもしれぬが。 (後で、メイドにでも頼んでおけばいいかな?) そう考えてから、始祖ブリミルへの感謝をささげた後、ルイズは朝食をとる。 朝食後、シャーリーの入れてくれたお茶を飲んで、ほっと息を吐いてから、 「ちょっと、あなた」 近くを通る黒髪のメイドに声をかけた。 「はい、なんでしょうか?」 メイドはルイズを振り返った後、シャーリーを見て、あらという顔をする。 もう顔を知っているのだろうか? シャーリーを見ると、 「お洗濯の時に……」 なら、話は早い。 ルイズはふむとうなずき、 「ちょっと頼みたいんだけど――」 ルイズはシャーリーの食事をシエスタに頼むと、席を立ち上がった。 「シャーリー、あなた朝ごはんまだでしょ? 今のうちに食べてきなさい。終わったら教室にくるのよ。場所はそのメイドにでも聞いて。それから……」 と、ルイズはシャーリーの服装を見て、 「ついでにメイド服に着替えてきなさい」 「――はい」 メイド服、という言葉にシャーリーはかすかに反応したようだった。 (? まあいいわ) 「それじゃ、後よろしく」 そうシエスタに言って、ルイズはすたすたと食堂を出て行った。 「なんだ、シエスタその娘っこは?」 厨房に連れて行かれたシャーリーを出迎えたのは、コック長の怪訝そうな声だった。 「あの、この子はミス・ヴァリエールの……」 「おおう、平民の使い魔ってのは、この子か?」 コック長のマルトーはシャーリーを見ながら、 「まだ子供じゃねえか、こんな子を……。ったく、これだからメイジってやつらは……」 不機嫌そうに鼻を鳴らすマルトーに、シャーリーは脅えたように表情を暗くする。 それに気づいたマルトーはあわてたように振って、 「おっと、別にお前さんに怒ってるわけじゃあねえんだ。気にしねえでくれ。朝飯がまだ? そうか、簡単な賄いしかねえが、食ってきな」 「ありがとうございます」 シャーリーが礼を言うと、 「なぁに、いいってことよ」 マルトーは照れたように笑ってみせた。 「何か困ったことがあったら、俺でもいい、シエスタでもいい。いつでも相談しな」 「はい」 シャーリーは安心したように、かすかに微笑んだ。 簡素な食事をすませた後、シャーリーはシエスタにある部屋に案内される。 シエスタが他のメイドと一緒に使っている寝室。 「あらあら、かわいらしいこと」 シエスタは楽しそうに笑った。 部屋に設置された大きな鏡の中、メイド服に着替えたシャーリーが映っている。 「ちょうどサイズが合うのがあってよかったわ。ここではあなたくらいの年のメイドっていなかったから、服あるかなって思ってたんだけど」 シエスタはシャーリーの肩に手を置いて、鏡の中の小さなメイドを見る。 「……」 シャーリーは鏡をじっと見ている。 緊張したように表情は少ないが、嬉しそうな様子だった。 「それじゃ、ちょっと替えの服持ってくるわね」 「……」 シエスタが出て行った後も、シャーリーはしばしぼうっとしていたが、 「……」 おもむろに、くるりと体を回転させた。 スカートが、ふわりと舞う。 「………」 シャーリーはスカートを見下ろして、表情を一変させた。 花のような笑顔とは、このことであろうか。 さらに、もう一度。 じーん。 そんな擬音が聞こえてきそうな表情だった。 かすかに紅潮した頬が、少女の感動の強烈さを物語っているようだった。 シャーリーは何度もくるりと舞ったり、スカートの裾をつまんだりしていた。 すっかり夢中になっているところに、 「シャーリー、お待たせ……」 シエスタが予備のメイド服を手に戻ってきた。 「……」 鏡の前、裾をつまんでポーズをとっていたシャーリー。 立ち尽くすシエスタ。 THE WORLD 数秒経過。 そして、時は動き出す。 「……すみません。その、スカートがぶわっと……。こういうのに憧れてたので……」 「そ、そうなの」 シエスタは内心、 (そんなことが、あそこまで嬉しいなんて……) 暗い過去を背負っていそうだなあ。 照れまくるシャーリーを見て思った。 と、 ドンと、どこかで何かが爆発したような音が響いた。 「今の……」 驚くシャーリーに、 「多分ミス・ヴァリエールね……」 シエスタは苦笑した。 シャーリーが教えられた教室へと向かってみると、中はもうメッチャクチャだった。 教室の中で爆弾でも使用したかのような惨状。 ルイズはその中に一人で立ち、黙然としていた。 「あ、あの……」 何か近寄りがたい雰囲気ながら、シャーリーは思い切って声をかける。 「シャーリー」 ルイズは振り返らずに言った。 声が、ひどく硬い。 「はい」 「教室の中を片づけるの、手伝って」 「はい」 シャーリーはそれ以上何も言わず、掃除をはじめる。 器用な手つきで、ゴミを片づけ、床をはいていく。 広い教室なのでそうそうすぐには終わらないが、それでもシャーリーは手早く掃除を行っていく。 「何も聞かないの?」 のろのろと机をふいたりしていたルイズは、やはりシャーリーの顔を見ずに言った。 「……」 「私、どんな魔法を使っても爆発させちゃうの……。今日もそれで、この有様」 と、ルイズは教室を見る。 「おかしいわよね。魔法の使えない貴族なんて。召喚魔法は、サモン・サーヴァントやコントラクト・サーヴァントが成功したのに…………」 「……」 「……そっか。あんたは、魔法のないとこからきたんだっけ?」 「はい」 「シャーリー」 かすかに震える声で、ルイズは言った。 「はい」 「しばらく、私のほう見ないでね」 小さな声でルイズは懇願した。 背中を向けたその表情はシャーリーには見えない。 ただ、その肩はかすかに震えていた。 「はい」 シャーリーは、静かにうなずいた。 「シャーリー」 またしばらくして、ルイズはシャーリーを呼んだ。 「はい」 「ありがとね……」 「……いいえ」 ようやく片づけが終わった頃、時刻はもう昼にさしかかっていた。 少しばかり目を赤くしたルイズは、シャーリーと一緒に食堂へやってきた。 そして、朝と同じく何事もなかったような顔で食事を取り始める。 シャーリーは朝と違ってメイド服なのでひかえている姿はまったく違和感がない。 食事も終盤に差し掛かる頃、デザートが配られ始める。 色々と種類があって好きなものを選べるようになっているらしく、メイドたちがそれぞれ学生たちに言われるものを配っていく。 「何をお取りしましょう?」 お茶を入れてから、シャーリーはルイズに尋ねる。 「クックベリーパイ持ってきて」 「はい。ただ今」 シャーリーはデザートを配っているメイドたちのほうへ歩いていく。 と、その途中で談笑している少年が、ポケットから小壜が落ちるのが見えた。 「あの、落とされましたよ?」 シャーリーは拾って少年に渡そうとする。 「あ、ああ。ありがとう」 少年は一瞬ぎくりとした顔になるが、すぐに何食わぬ顔で受け取った小壜を素早くポケットにしまいこむ。 が、まわりの仲間は目ざとくそれを見とがめて、 「おい、今のはモンモランシーの香水じゃないか?」 「ああ、そうだが――。しかし、誤解のないように言っておくけれど……」 少年は何やら弁解しようとするが仲間は怒涛の勢いで、 「あの鮮やかな紫は、モンモランシーが自分のためだけに特別に調合する香水だ。間違いない」 ちょっと小太りの男子が大声で言った。 鈍重そうな容姿のわりに、変なところに目がきくらしい。 「そうだ! ということはだ。お前は今モンモランシーと付き合っている、とこういうわけだな?」 他の連中も面白そうに囃し立てる。 「違う。だから、彼女の名誉のためにも言っておくが……」 少年はなおも言い募ろうとするが、もはや周囲は聞く耳持たない。 と、そこに一人の少女が青い顔で近づいてくる。 「ギーシュさま、やっぱり……ミス・モンモランシーと」 「いや、これは。その、誤解だ」 「その香水が何よりも証拠です」 「違うよ、ケティ僕の心の中にいるのは君だけ……」 ぱぁん。 小気味のいい音が響く。 少女の手のひらが、少年の頬を張ったのだ。 「さようなら!」 少女は泣き顔で叫び、走り出してしまった。 「邪魔よ!!」 八つ当たり気味に、シャーリーを突き飛ばして。 よろけるシャーリーだが、どうにか踏ん張って持ちこたえる。 だが、そこに金の巻き毛が特徴的な少女がずかずかと近づいてきた。 「邪魔よ、どきなさい!」 巻き毛はシャーリーを押しのけてギーシュの前に立ちはだかる。 「やっぱり、あの一年生に手を出してたのね……?」 「待ってくれ、モンモランシー……これはだね」 少年はきざだが必死な様子で花の浮くような台詞を並べるが、巻き毛は何も言わずにテーブルのワインをひっつかみ、少年の頭に洗礼を与えるがごとくふりかける。 「この、うそつき!」 一声叫んで巻き毛の少女は行ってしまった。 去り際に、浮気な交際相手に張り手の贈りものをして。 見事なまでの醜態をさらした後も、少年はハンカチで顔を拭きながら、 「彼女らは、薔薇の存在意義を理解していないようだ」 などと、ほざいていた。 シャーリーは動揺しながらも、そそくさとその場を離れようとする。 あまりお近づきにはならないほうがよさそうだと判断して。 「待ちたまえ」 「は、はい」 少年に呼び止められ、シャーリーはぎくりとして足を止める。 「君、君が軽率に壜を拾っておかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね」 「え……」 まさか、こんな風に言われるとは思わなかった。 「……も、申し訳ありません」 理不尽である。 だが、シャーリーのような少女に学生とはいえ魔法使いで貴族という相手に反抗できる術などあるわけもない。 謝るしかなかった。 がたん。 その様子を見ていたルイズは、顔をしかめて椅子から立ち上がった。 (しまった……) しばらくは傲然とシャーリーを見ていた少年だが、いくらか冷静になると我がことが省みられるようになってきたのか、ばつの悪そうな顔になってくる。 そこに。 「ちょっとギーシュ、何言いがかりつけてるのよ!!」 ルイズが大声で怒鳴り、シャーリーをかばい少年――ギーシュの前に立ちふさがる。 「さっきから聞いてれば、二股かけたあんたが悪いんじゃないの! か弱いメイドに八つ当たりするなんて最低よ!!」 「う……!」 その言い様にムカッとくるギーシュだが、ルイズの後ろで青くなっているシャーリーを見ると、事実を素直に認めるしかない。 女好きで軽薄ともいえる性格ではあるものの、理不尽に暴力を振るうこと好む気性ではない。 相手が少女なら、なおさらだ。 「うっ。そ、その通りだ」 ギーシュは頭をさげた。 負けるが勝ち。 そんな言葉が彼の脳裏を走ったかどうかは定かではないが。 「さっきの暴言は海に流してくれたまえ」 ギーシュはシャーリーに向かって謝罪する。 「完璧に僕が悪かった。どうか、びっくりするぐらい許してくれ」 しかし、いつもの調子は出ずに、何ともおかしな言い回しをしてしまった。 「い、いいえ……」 シャーリーはそう答えるのが、精一杯だった。 横でそれをハラハラと見ていたメイドたちもほっとした様子だった。 前ページ次ページゼロの使い魔はメイド