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クリフトのアリーナへの想いはPart5 261 :【世界の均衡】1/9 ◆cbox66Yxk6 :2006/05/19(金) 21 28 55 ID lYbCMOsv0 スタンシアラ王は玉座に腰掛けながら、眉間にしわを寄せた。 「せっかく世界が平和になったというのに・・・」 魔族の脅威が去り、毎日笑い暮らしている予定だったにも拘らず、スタンシアラ王の心中は穏やかではなかった。 原因はわかっている。それは、世界の不均衡さだ。 世界を平和に導いた者、勇者ソロ、王宮の戦士ライアン、エンドールの大商人トルネコ、モンバーバラの美しき舞姫マーニャ、神秘の占い師ミネア、サントハイム王女アリーナ、サントハイムの重鎮ブライ、神官クリフト。そして独自の情報網で得た極秘情報によれば、ロザリーヒルというところにピサロというとてつもなく強い者がいるという。 そう、スタンシアラ王が気を揉んでいるのは、この者たちの偏りだ。 勇者ソロはブランカ、ライアンはバトランド、トルネコがエンドール、マーニャとミネアがキングレオ、ピサロは小さな連合国が集うロザリーヒル周辺。と、ここまではよい。 問題は、自国スタンシアラに導かれし者がいない上に、親交深いサントハイムに3人という事態。 スタンシアラ王は玉座から立ち上がると、握りこぶしを作り、ぎりりと歯軋りをした。 「ずるいぞ、サンちゃん!!」 遠くサントハイムの城でのんびりと過ごしているであろう友人を思い、スタンシアラ王・通称スタン君は、娘があきれ返るほどしつこく「ずるい」を連呼していた。 「ほう、スタンシアラから親書、とな?」 「御意」 恭しく差し出された親書を取り上げ、目を通していたサントハイム王だったが、顔色を変えるとわなわなと玉座から立ち上がった。 「な、なんということだ!!」 その切羽詰った様子に、年若い近習は首をすくめ、ブライは眉をひそめた。 「陛下」 どうされました? 言外に訊いてくるブライに、目線だけで指し示しながらサントハイム王が促す。 立ち上がったときに取り落とした親書を拾い上げ、すばやく目を通したブライは低い声で唸った。 「これは・・・」 困ったことになりそうですな。 そこに書かれていたこと、それは・・・スタンシアラの王女とクリフトの縁談であった。 「なるほど、そういうことですか」 内密の話があると告げられ連れてこられた王の私室で、事の次第を告げられたクリフトは顔色も変えずそう答えた。 てっきり慌てふためくものと思っていた王とブライはお互いに顔を見合わせ、不審そうな顔をした。 「それだけ、か?」 他に何か反応は? そうおずおずと切り出したブライに、クリフトはきっぱりと言い切る。 「まぁ、予想の範疇でしたから」 別段驚くようなことでもないですね。 平然と言ってのけるクリフトに、サントハイム王の目がやや細まった。 「ほう、予想の範疇とな」 で、どうする気じゃ? 王の言葉に、クリフトは少し意地悪げな表情をみせる。 「私を、スタンシアラに差し出すわけにはいかないのでしょう?」 でなければ、内密にする必要もないでしょうし。 クリフトは口の端をほんの少しだけあげる。 「でしたら、そうならないようにするだけですよ」 アリーナと接している時には滅多にみせない不敵な笑い。それは老練な政治家を思わせるしたたかな笑い。 (こやつ、いつの間に) こんな表情をするようになったのか、とブライが内心で驚いていると、いつもどおりの穏やかな雰囲気に戻ったクリフトが、明日の天気のことでも話すかのようにのんびりと口を開いた。 「では、スタンシアラへ行ってまいります。どうかこのことは姫様にはご内密に・・・」 それだけ言い終えると、静かに部屋をあとにした。 残された王とブライは狐につままれたような顔をしていたが、扉の閉まる音で我に返った。 しばらく奇妙な沈黙が部屋を満たしていたが、やがてサントハイム王がぽつりと呟いた。 「のう、何とかなるような問題であったか?」 「さぁ、しかし・・・姫様が絡んでおりますからな」 多分、大丈夫であろうか、と。 そう返したブライであったが、さすがに事が外交問題なだけに完璧に不安を拭い去ることはできなかった。 実のところを言うと、この問題を事前に封じ込める手立てがなかったわけではない。 ブライは自室の椅子に座りながら、思考の海に身を委ねていた。 机の上に置かれたお茶がすがしい香りを運んでくる。その香りを堪能しながらブライは蒼い髪の青年を思う。 この事態を防ぐ事前の策、それは、クリフトとアリーナを婚約させてしまうことであった。 そうすれば、クリフトという重要な人物が国外に流れることも防げる上、何より好きあったふたりが結ばれるという非常に喜ばしいことであったからだ。ただ、それを許さないのが身分の壁。 アリーナに兄弟があれば別だったのかもしれないが、アリーナはいま唯一の王位継承者といってよい立場にある。それ故、外交問題上その相手が一介の神官であるわけにいかず、クリフトの官位がそれ相応になるまでは話を進めるわけにはいかなかったのだ。もちろん、クリフトをただのお飾りとしてまつりあげることは可能かもしれないが、それではアリーナひとりに外交の負担がかかり過ぎてしまう上、クリフトの高い外交能力すら押し殺してしまうこととなる。それはサントハイムにとって痛手であり、それくらいならば有能な臣下として政務に関わらせたほうが有益であるとも言える。そう、クリフト自身が問題なのではない。サントハイム国内でクリフトのことを悪く言うものはおそらくほとんどいないであろうし、彼自身言わせないだろう。何といっても彼には『ザ』から始まる素敵な最終兵器があるから。だが、国外ともなればそうはいかない。 神官の身分のまま王族の仲間入りをしたとて、格式を重んじる伝統国家から疎んじられるのは目に見えている。表立って事を荒立てなくとも、水面下で貶められるのは必定だ。それ故、アリーナの婿は、諸外国から文句の付けようのない身分を持っていることが条件ともいえる。だからといって、官位制度をまげてクリフトに高い身分を与えることも反発を呼ぶのが必至であり、クリフト当人だけでなく、クリフトを密かに応援するものたちの頭を悩ませてきた。 それはサントハイム王も承知していて、数々数々数々の嫌がらせはしていたものの、一応はクリフトとアリーナの仲を認めていたのだ。これはクリフト自身もわかっているらしく、だからこそ悲観することなく日々精進していたのだが・・・。 ブライはすっかり冷めてしまったお茶をすすりながら、深々とため息をつく。 「こんなことになるくらいなら、無理矢理にでも婚約させておくのだった・・・」 サントハイムでは問題になることでも、お国が違えば事情も違う。 王女が何人も存在するスタンシアラでは、クリフトが平民であろうが全くといってよいほど問題にならない。むしろ、一神官が王女と結婚するということは民衆にとって喜ばしいことでもあり、王家にとっても民衆の受けを良くするに、絶好の機会とも言える。しかも、クリフトはただの平民ではなくサントハイム王宮付神官というしっかりとした身分を持っている上、あの『導かれし者』のひとりなのである。これで、歓迎されない謂れはない。 正直言って非常にまずい状態なのである。 進退窮まるという言葉があるが、まさにこのことを言うのであろう。 現時点でアリーナとの婚約がなされていない以上、今更それを行えば、「サントハイムに不穏の動きあり」と近隣諸国にいらぬ疑いを招くことになりかねない。それは平和に向かって躍進している世界の調和を乱すこととなるし、万が一主要国の首脳会談の折に、勢力均衡を唱えられでもしたら、クリフトとアリーナは永遠に結ばれることはないだろう。それでも強引に推し進めれば他国までもを敵に回しかねないのである。 「どうしたものかのう・・・」 王と丸一日考え続けて、それでも何一つ打開案が見つからず、クリフトに相談したものの、だからと言ってどうにかなるとは思っていなかった。 「どうなるんじゃろ・・・」 「ただいま戻りました」 スタンシアラ王の書簡を携えてクリフトが現れたのは、3日後のことであった。 その間、アリーナにクリフトの所在を聞かれては肝を冷やしてきたふたりは、クリフトの姿をみてほっと息をつき、同時に不安で胸がいっぱいになった。 それは、クリフトが難しい顔をしていたから。 (やはりだめだったのかのう?) ブライと顔を見合わせ、内心嘆息したものの、とりあえずはことの経過を知るしかなく、サントハイム王は恐る恐る訊ねた。 「して、どのように?」 これに対して、クリフトは深々とため息をついてみせると、「大変なことになりました」とだけ言い、書簡を差し出した。 サントハイム王は、このとても心臓に悪そうな書簡を自らが受け取るべきか迷った末、ブライに書簡を開かせると目を通すように促した。 (陛下、ずるいですぞ) わしだって命は惜しい。 心のうちで、そう呟いたものの命令に逆らえず、ブライはしぶしぶ書簡に目を落とした。 瞬間、ブライは目が零れ落ちんほどに見開き、絶句した。 「なんじゃ?」 ・・・まさか『ザ○キ』とか書いてないだろうな。 サントハイム王がただ事でない雰囲気に恐怖を感じたものの、ブライからの返答が得られないので、仕方なく書簡を手にし文字を追った。 と、顎がはずれんばかりに口を開き、クリフトに視線を送った。 スタンシアラ王の書簡には、非常に簡潔に以下のことが書かれていた。 サントハイム神官クリフトをわが養子として迎える。詳しいことは後ほど正式な書簡にて。 スタンシアラ王 「ということです」 何だか大変なことになってしまいましたね。 事も無げに言い切ったクリフトに、ブライが掴みがからんばかりの勢いで詰め寄る。 「おぬし、どうやったのじゃ?」 今にも血管が切れそうなほど興奮しているブライを落ち着かせると、クリフトはにっこりと微笑んだ。 「娘婿と親子の絆、どちらが堅固でしょう?」 ただ一言だったが、ブライはクリフトの言わんとするところを正確に悟った。 つまりクリフトはスタンシアラ王にこう言ったのである。 万が一そちらの王女とうまく行かず、離婚にでも至れば、私との縁は悪縁となりますよ。 でも、養子という形を取れば簡単には縁は切れません。 どちらを望まれますか?と。 「おぬし・・・」 言うべき言葉が見つからず、口をつぐんだサントハイム王に向き直ると、クリフトは改めて礼をとった。 「正式な発表はもう少し先になるかとは思いますが、このように事態を収めましたことご報告申し上げます」 ・・・いろいろと忙しくなりそうですね、お義父上。 クリフトはサントハイム王へまっすぐに視線を向け、含みのある微笑を浮かべた。 その微笑の意図するところに気づいたサントハイム王は、赤くなったり青くなったりと目まぐるしく顔色を変えた。 そう、クリフトはスタンシアラ王にもうひとつ話を持ちかけていたのだ。 もし私とアリーナ姫が結婚し子供に恵まれますれば、『導かれし者』同士の間に生まれた子供になりますね。そして、私を養子に迎えてくださった陛下は、その祖父・・・。 これほどまでにスタンシアラ王の心を揺さぶるものがあったであろうか?自分の娘との間の子では導かれし者の血は半分に。しかしクリフトを養子に迎え、アリーナ姫との婚姻を結べば・・・。 そしてその子供と自分の国の後継者を娶わせれば・・・。 「スタンシアラ王が非常に『聡明』な方で助かりました」 クリフトはそれだけ述べると辞意を示し、愛しの姫君に会うために静かに部屋を出て行った。 「あ、クリフト。おかえりー」 どこいってたの~? クリフトの姿を見つけたアリーナの嬉しそうな声が扉の向こう側から響き、それにやんわりと答えるクリフトの声が重なった。 「姫様、子供は何人欲しいですか?」 「まぁ、その・・・」 よかったですな、大事に至らなくて。 ブライに言葉に、王はふん、と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。 確かに、優秀な人材が国外に流出するのも防げた上、今まで懸念していたアリーナの結婚話まで一気に解決した事態は歓迎すべきものなのかもしれない。しかも、それがクリフトの機転によってなされたのであれば、彼を心底褒めてやるべきなのかもしれない。 しかし、とサントハイム王は思う。 (なんじゃ、この胸に広がる敗北感は!) 妙に腹立たしさを感じた王は、傍らに控えるブライに八つ当たりをする。 「なんとまぁ、かわいげのない性格に育ったものよな」 そちの育て方が悪かったのだ! 王にそう責められ、ブライは表面上畏まったように見せたものの、心のうちではこう叫んでいた。 (わしの人生において一番の失策は、陛下、あなたを育てたことかもしれませんぞ) 「かわいげのない息子は、いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ・・・」 子供のように癇癪を起こし手足をジタバタとさせ、あげくしくしくと泣き出した王の傍らでブライはため息を禁じえなかった。 子供の頃から目をかけていたクリフト。 教育係として仕えたアリーナ。 そしてこのサントハイム王・・・。 ブライの教育の賜物といえる三人を思い浮かべ、己の力のなさを痛切に感じ落胆したブライは、この日、本気で宮廷を辞すことを考えたという。 スタンシアラの王女は妙に上機嫌な父王の姿に、少しだけ哀れみを感じていた。 「なんと見事にはめられたのでしょう・・・」 昔から、突拍子もなくて「お馬鹿」な父親だとは思っていたが、ここまでとは・・・。 先の魔軍戦争の折のしかめ面はどこへやら、顔の筋肉が緩みっぱなしの王は娘の目から見ても少々情けない。 王女は言葉巧みに父王を丸め込んでいった得体の知れない青年を思い出し、ため息をついた。 彼が提示した案は確かに悪くはない。だが、父王は肝心なことを忘れている。 「結局、スタンシアラ在住の『導かれし者』は手に入らなかったわね」 如雨露を片手に花に水をやり始めた父王の背中を見つめ、王女はそっと目頭を押さえた。 「アリーナ姫とクリフトさんの子供が成人するのはいつかしら・・・」 長生きしてね、お父様。 娘の心も露知らず。 小躍りを続けたスタンシアラ王はその日、お城のバルコニーから水路へ、2回宙返り1回捻りの見事な飛び込みを披露した。 この時、この王の勇気ある挑戦にひどく心を打たれたスタンシアラの国民は、王の雄姿を大いに褒め讃え、子々孫々にまで言い伝えた。 そしてその偉業はこの後、おめでたい行事の折に欠かさず行われこととなるスタンシアラ名物『王様ダイブ』と呼ばれる危険極まりない余興へと進化を遂げ、国民の間で大流行が起こった。 だが、ある文献によれば、スタンシアラ暦582年スタンシアラ王14世の御世に、そのけが人の多さから飛び込み禁止令がだされ、一時下火となったという。 それでも昔を懐かしみダイブする者は後を絶たず、スタンシアラ王国も水路の整備や浄化・危険物の排除といった手段をとり、暗黙のうちに容認していくこととなる。これは王命が民意に負けたという意味で非常に稀有で画期的な事例となるが、それはまた別の話である。 (終)
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クリフトのアリーナへの想いはPart5 長編2/12 1へ2006.03.09 73 :1/11(前スレ506):2006/04/26(水) 17 53 37 ID TnpmGh+k0 暖かな日差しが降り注ぐテラスで、アリーナはそば仕えのメイドと向かい合って座っている。ふたりの間の小さな丸テーブルの上には小瓶がいくつか置いてある。アリーナは右手をメイドのほうに差し出し、少し退屈そうな様子だ。 今日は午後からエンドールの使者がサントハイムを訪れるとのことで、冒険の間していた格好とまではいかないが、普段から動きやすい服装のアリーナも今日はドレスを身に着けている。ただでさえ好んで着ようとはしないドレスを着さされているだけでなく、爪の手入れもするように命ぜられ、アリーナは少々不機嫌そうである。 「ねぇ、まだ?」 「まだですよ、姫様。今は爪の形を整えているだけですから。これから色をつけていくんですもの」 「爪なんてどうでもいいのに」 「もう少し、辛抱してくださいな」 アリーナが小さいころからの長い付き合いになるメイド、メロは彼女の扱いというものを熟知している。退屈でたまらない様子のアリーナを優しくなだめ、今度は左手を出すようにと促した。 こうなってはあたりの様子を観察するくらいしかすることがない。さすがにエンドールからの公的な客人とあってか、城内の様子もいつもよりあわただしく感じられる。兵士たちがいつもより大勢警備につき、通路に飾っている色とりどりの花の手入れをメイドたちが行っている。 「あれ…?」 兵士長と共になにやら話をしているのは、神官服を身にまとった見慣れた彼だ。城内は吹き抜けになっているため、アリーナのいる2階のテラスから大通路の様子はよく見える。城の入り口の警備についてだろう、最後のチェックをしているらしい。しばらく兵士長と話した後、クリフトは頭を下げ足早に通路を歩いて行く。そう言えば数日前に会ったとき、忙しいと言っていたような気がする。 次にクリフトはアリーナもよく知っている年配メイドと話をし始めた。 クリフトは自分の存在には気がついていないらしい。アリーナは少し楽しい気分になってきた。クリフトの行動を盗み見しているのは悪いことかもしれないが、クリフトの表情やちょっとした仕草がいかにも彼らしくて、少し笑えてさえしまうのだ。 年配メイドとの打ち合わせも終わった様子で、次に目的とする場所へと歩いて行くクリフト。そこへひとりの小柄なメイドが小走りでやってきた。 「あ」 先日、そのあたり一面を真っ白に変えてしまったあのメイドだった。何か話をしているようだが、当然その会話の内容まではアリーナのところに届くはずもなく、ふたりの様子がなぜか気になるアリーナはそわそわとしてしまう。心なしか彼女の頬は染まって見える。クリフトはというと、いつものやさしい笑みで対応している。 「ねぇ、メロ」 「はい?」 アリーナの声にメロは手を止めて顔を上げる。 「……クリフトって、女の子に人気あるの?」 てっきり『まだ?』と尋ねられると思っていたメロは言葉に詰まる。アリーナの視線の先を見遣れば、クリフトがひとりのメイドと向かい合っている様子があった。 「クリフト様は、とにかくお優しいですから。私たち使用人どものことも、気にかけてくださいますし…」 「ふぅん……」 「それに、見た目も素敵ですし。整ったお顔立ちをされていますから、メイドたちの間では憧れの存在ですよ。私も独身のころは気になっていましたわ」 メロは少し冗談めかしたようにそう言った。そしてまたアリーナの手元に視線を戻し、爪に淡い色を重ねて行く。 「そうなんだ。知らなかった」 クリフトはメイドと別れ、教会のほうへと向かい歩いて行った。メイドはクリフトの背中をしばらく見送った後、どこかへと行ってしまった。アリーナが最後に見た彼女の表情は何とも言えぬうれしそうなものだった。 どういうわけか、アリーナの胸の中はざわついている。ざわつきの原因を把握できないアリーナは、妙なもやもやとした感情を抱え表情を曇らせる。自分の知らなかったクリフトの一面を見てしまったようで、先ほどの楽しい気持ちが一変、どうしていいのかわからない複雑な気持ちになってしまった。 「どうして、そんなことをお尋ねになるのです?」 終わりましたよ、と言う言葉の後にメロはそう続けた。 「どうしてって……、なんとなく」 アリーナはきれいに整えられ上品な色をつけられた自分の手を眺めながら曖昧に返事をした。 「姫様がそんな質問をするなんて、初めてです。私、少し驚きました」 「そうかな?」 「ええ。姫様も、男性に興味をもたれるようになられたのかな、と」 「そんなんじゃないわ! だってクリフトは、ずっと前から一緒だから…違うの」 何が『違う』のかよくわからないまま、ただ否定だけをしたくてアリーナはそう言う。 ずっとずっと昔から、アリーナが物心ついたときにはすでにクリフトがいた。サランの教会で育った彼は勉学が非常に優秀であり、神父の勧めと国王の希望もあって、神学校に通いながら城にも出入りするようになった。 アリーナの勉強の面倒を見、時には勉強以外の面倒を見るハメにもなった彼と、世界中を旅したのはもう1年以上も前になる。世界が平和になりサントハイムにも人々が戻り、アリーナにはまた退屈なお姫様暮らしが始まった。それまで毎日一緒にいたクリフトは、冒険の間アリーナを補佐したという功績を認められ、城の庶務を任されることが増えた。もちろん、神官としての勤めも果たしているのだから、なかなか忙しい立場になったとは聞いている。 今になってアリーナは気づく。旅に出る前のほうが、旅をしているときのほうが、クリフトが近くにいてくれたような気がすると。 「絶対に、違うの」 焦ったように言うアリーナにメロは小さく笑う。そして立ち上がるように促すとアリーナの背後に回りドレスの襟を整える。座っている間に形の崩れてしまった背中で結えられているリボンもしっかりとその形を直して行く。 「今日お見えになる方、姫様のお気に召されるとよろしいですね」 「え? なんのこと?」 自分の言葉にまったく何のことかわからないという、きょとんとした表情のアリーナを見て、逆にメロが驚かされる。 「姫様? お聞きになっていないんですか?」 「だから、何が?」 「今日エンドールから来られるお方は、姫様のお見合い相手だと私たちは大臣様から言われているんですけど……」 「そ、そんなこと聞いてないわ!」 ドレスを身に着けるよう言われ、さらには爪の手入れまで。大臣からは『エンドールからの使者が来る』とだけしか聞いていない。無論、父王からも何も聞いてはいない。今朝会ったブライも『失礼のないように』としか言わなかった。 「大臣の奴、だましたわね!!」 こうなってしまうとアリーナには手がつけられない。 もちろん、アリーナも冒険後は彼女なりに姫として勤めを果たしてきた。 お見合いを大臣がしきりに勧めてくるのも、何のためであるかはわかっている。それでもとてもそんな風な気にはまだなれないと大臣には何度も伝えてきた。それなのに自分に嘘をつき見合いを強引に押し進めるやり方がアリーナは気に入らない。 いっそ城から抜け出してお見合いをすっぽかしてやろうと思ったが、今日は警備の兵士が多い上に動きにくいドレスを着ている。アリーナにとって不利な状況ばかりが重なってしまっている中で、できることはと言えば立てこもりしかない。 「姫!もうお時間ですぞ!」 「出てきてくださいませ、アリーナ姫様!」 数名のメイドと大臣がアリーナの部屋の前でしきりに呼びかけている。 扉には鍵がかかっていて開かないうえに、アリーナが中から鏡台やベッドを扉の前に寄せてしまっているため強行突破もできない状況だ。 「姫!聞こえておられるのですか?」 「聞こえてるわ!でも、お見合いなんて話は聞いてないの!」 「お相手はもうお待ちになっておられるのですぞ?」 「だから聞いてないって言ってるの!だますなんて許せないわ!」 「姫!」 騒ぎを聞きつけたブライもメイドとともにアリーナの部屋の前にやってきた。アリーナの部屋の前には大臣をはじめ、数名のメイドに兵士まで集まっていてちょっとした人だかりができてしまっている。 「困ったもんじゃのぅ…だからワシは反対じゃと言うたのに……」 ブライは髭を触りながら深いため息をついた。 「……奴を呼んでまいれ」 こんな状況になればお呼びがかかるのはクリフトだ。 アリーナがなかなか来ないこと、大臣もメイドに呼ばれどこかへと行ってしまって戻らないことを不審に思えども、大臣からエンドールご一行の接待を任されてしまっては様子を見に行くこともできない。そろそろ接待のためのネタも尽きてきて、アリーナがいまだ姿を見せないことに対する言い訳も苦しくなってきた頃。 「申し訳ありません、アリーナ姫は少し気分が優れず……」 大臣が戻ってきてクリフトが何度も繰り返した言い訳を、また今更のように先方に申し訳なさそうに言い始めた。 「大臣殿?」 「クリフト、交代じゃ」 「は?」 メイドに耳打ちをされ、ようやくこの事態の原因を知ったクリフトは、先方に向けて愛想笑いをして一旦その場を離れることにした。向かう先は当然、アリーナの部屋だ。先ほど上の階でなにやら物音がすると思ったが、メイドからあらかたのことを聞きクリフトはすべてを把握した。物音はアリーナがバリケードを作っていたときのもの。このお見合いをアリーナが聞いていなかったと知り『やりかねないな』とクリフトは思った。 階段を上がりしばらく廊下を歩けばすぐに人だかりが見えた。メイドたちが必死に呼びかける声と、それに反抗するアリーナの声。 「ブライ様」 人だかりからは少し離れたところに佇み事態を見守っていたブライにクリフトは近づいて行った。 「待っておったぞ」 「はぁ…」 「この状況じゃ。お前に任せたからの」 そう言うとブライは『やれやれ』と腰をさすりながら下の階へと向かっていった。おそらくはもうこれ以上間が持たないであろう大臣に代わり、接待をするためだろう。 「すみません、ちょっと失礼します」 ブライを見送ったあとクリフトは、人だかりをかき分けてアリーナの部屋の扉の前に立った。ドアノブに手をかけるも鍵のせいで抵抗があり開かない。 クリフトはひとつ息をついた後、ドアをノックした。 「姫さま」 応答はない。あたりのメイドや兵士たちも、静かにアリーナの返事を待った。 「姫さま、私です」 「……クリフト?」 「はい。下で皆さんがお待ちです。出てきてください」 「イヤよ」 「姫さま」 「イヤったらイヤなの! わたし、お見合いだなんて知らないわ!」 アリーナの言葉はかたくなな気持ちを表している。今回は手強そうだとクリフトは苦笑いを浮かべそうになった。 いつだったかもこんなことがあった。あれは何かの行事だったか、習い事だったか。アリーナがどうしても嫌だと駄々を捏ね、クリフトが説得に入ったのだ。まだ子供だったその当時のことを思い出すと、アリーナが立てこもった理由はかわいらしいもので、今は理由が『お見合い』と言う、クリフトにとってもなんとも言えない深刻なものだからたちが悪い。 「姫さま。そうおっしゃらず……。大臣殿も、姫さまのことをお考えになってのことですから」 「わたしに何にも言ってくれなかったのに、何でわたしのためなの? お見合い、クリフトから断っておいて!」 「そんな無茶をおっしゃらないでください」 「絶対にイヤ!」 クリフトはため息をついた。アリーナの言っていることももっともだ。 だがもう既にエンドールから客人がはるばるやってきており、しかもそう短くはない間待たせているのだ。アリーナにはかわいそうだが、これ以上待たせるのは当然失礼に当たる上、国家同士の関係にもヒビを入れかねない。 「姫さま。これ以上わがままをおっしゃるのであれば、私も怒らなければなりません」 「………」 「今回のこと、姫さまは詳しいことをお聞きになっていなかったと。私も今メイドより聞きました。大臣殿が勝手に決めたことだと姫さまがお怒りになる気持ちもわかります。ですが、もうエンドールからお越しになられているのです。お迎えする側として、失礼に当たることだと姫さまもおわかりになるでしょう?」 扉の向こう側で、少し語気の強くなったクリフトの声にアリーナは何も言えなくなってしまう。クリフトの言っていることが揺ぎ無く正しいからだ。それはアリーナもわかっている。 「わかってるわ。でも!」 「でも、じゃありません!」 きっぱりと言うクリフトに、アリーナは泣きたい気持ちになってしまう。 勝手に話を進めたのは大臣だ。自分は何も悪くないのに。 「姫さま、出てきてください。ひとまずは出てきて、お会いになってください。王様も大臣殿も心配しておいでですよ」 「………」 「この度のこと、大臣殿には私からよく申し上げておきます。姫さまのお気持ちを無視してお見合いの話を進めたこと、王様にもお話しておきます。 代わりにと言っては何ですが、姫様に数日どこかお出かけできるようにして差し上げてくださいと、頼んでみます」 クリフトの声はいつの間にか、いつもの優しいそれになっていた。 「……お願いですから、姫さま」 そう言うとクリフトも黙った。アリーナが怒るのは当然で、もちろんクリフトもアリーナの肩をもってあげたい。それなのに、傷ついているアリーナを説得し、お見合い相手に引き合わせなくてはならないとは、情けなくもあり、悔しくもあり。 しばらくの間あたりは静まり返り、妙な緊張感に包まれた。 そうしてもうどのくらいか経った後、部屋の中からガタガタと物音がして扉が開いた。 「姫さま!」 そこにはふくれっ面のアリーナが立っていた。クリフトの説得に応じる気になったのだろうが、やっぱり納得がいかず面白くないからであろう。 不機嫌さを隠すことなく見事に表している。 「上手に言い訳してよね!」 アリーナは少しきつめの口調でそう言うとクリフトを睨んだ。 その様子にクリフトはほっとした様子で微笑むと『はい』と返した。 そしてアリーナは不意にクリフトに向かって手を伸ばした。立てこもりを決行したことで、せっかくきれいにした爪も無残なことになってしまっている。 「連れて行って。ひとりで行くのはイヤだから」 突然のことにクリフトは少々戸惑いの表情を浮かべるも、少し間をおいて意を決したようにうなずくと、アリーナの手を取った。 アリーナの手は小さい。アリーナの手を取ることなど、旅の間もそうあることではなかった。自分の手が汗ばんではいないか、おかしな緊張感を覚えながらその手を引いて歩いて行く。 あの階段を下りてしまえば、アリーナはお見合い相手と対面することになる。本音を言えばそんなことはさせたくもなくて、ずっとずっと、この手を握り続けていたい。 「クリフト、痛いわ」 「あっ、申し訳ありません」 物思いにふけるあまりに、つい手に力が入ってしまったようだ。慌ててクリフトは力を緩める。それに対しアリーナはにっこりと笑って無言の返 事をした。切なくなる気持ちを抑え、クリフトも笑顔でそれに応えると、ゆっくりと階段を下り始める。 「さぁ、皆さんがお待ちですよ」 END. 前2006.03.09 続き2006.05.01
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クリフトとアリーナへの想いはPart.9 928 名前 737  Mail sage 投稿日 2009/04/22(水) 21 36 01 ID 4xxo+MHp0 【喧嘩】 勇者一行は今宵休息する街に着き、馬車で全員自由解散になった。 マーニャは勇者に声をかける。 「ねぇ、明日のスタメン、あたしと勇者とアリーナとクリフトでしょ? 二人でちょっかい出して、アリーナとクリフトをそそのかそうよ! 嫉妬させちゃったりしてさ!面白そうじゃない?」 マーニャは悪戯っぽく微笑った。勇者は呆れて目を細める。 「やだよ。クリフトに嫉妬されるとめんどくさいし。 ……やるんなら勝手にやって。」 勇者はそっけなかった。 「それに、明日のクリフトの作戦、ずっと“めいれいさせろ”にして ザラキ使わせないようにするんだから。機嫌が悪くなったらやりづらいんだよ。」 「あ、そ。じゃーいいわよ。あたし一人でやるから。」 「でもさ、仮にお前が何かクリフトにけしかけてアリーナが嫉妬したとしても 所詮、友達におもちゃを貸せない子供の感覚と一緒で アリーナ自身が変わらなきゃ何の意味もないと思うけど。」 勇者は淡々と正論を述べた。 その饒舌でナマイキな口ぶりがマーニャの癪に障る。 「ふん、なにさ。分かったような口きいちゃって! あんたなんか恋愛の“れ”の字も知らないガキのくせに!!」 「あぁ?お前こそ、年増が若さに嫉妬してんじゃねーよ!」 「なんですってぇええ!?このガキ、ガキ、ガキ!!」 「うるせー!この年増、年増、年増!!」 お互いそこまで“ガキ”でも“年増”でもない二人が醜い争いをしていると そこにアリーナが通りかかった。 「二人ともケンカしてるの!?」 アリーナの目はキラキラと輝いていた。 「「……は?」」 「いいなぁ、私、そういう対等な口げんか誰ともしたことないのよ!」 「え~~、クリフトとはあるでしょ?」 マーニャが尋ねる。 「クリフトとは………ケンカというかお説教だし。」 マーニャはにんまりと笑う。 勇者は我関せずといった様子で自分の荷物を片付け始めた。 「ね、アリーナ。クリフトとケンカしてみたい?」 「え?………まぁ、そうね。」 「ふ~~~~~~ん、そぉ。」 勇者は先に街へと行ってしまった。 次の日。 滝の流れる洞窟に潜入した勇者一行。 メンバーは予定通り、勇者・アリーナ・クリフト・マーニャである。 さっそくマーニャは作戦を実行し始めた。 マーニャはくねくねしながらクリフトに迫る。 「クリフトぉ~!すりむいちゃったわぁ。ホイミしてぇ!」 「あ、はい。」 クリフトはマーニャにホイミをかける。 勇者は冷ややかな目でマーニャを見ていた。 アリーナは特に気にしている様子はない。 さらに洞窟の奥へと進んでゆく。 マーニャは事あるごとに、クリフトの体に触れたり絡んだりしていた。 クリフトはいちいちウブく反応していたが、 アリーナは全くの無反応であった。 そして、滝の見晴らしのいい場所に出ると マーニャは大げさに両手を広げる。 「わぁ~~っきれいねぇ!!」 マーニャはいきなり、滝を背に鍾乳石の柱をポールと見立て 腰をくねらせてセクシーなポールダンスを踊り始めた。 「ねぇねぇん、クリフトも一緒にど~お?」 「…………………。」 これにはさすがに勇者も痺れを切らした。 「マーニャ、不思議な踊りは止めろ!オレのMPが減る!!」 「なっ………んですってえぇぇええ!!?」 「お前、バカじゃないのか!? ちょっとは場所と状況を考えろ!」 勇者とマーニャはギャーギャーと言い争っている。 アリーナとクリフトは唖然としていた。 戦闘の合間にクリフトは勇者に声をかける。 作戦の都合上、二人は声の届く範囲にいるのだ。 「勇者さんはマーニャさんとケンカしてるんですね。」 「ん?あぁ……、まぁな。」 「なんだかうらやましい。」 「………何が?」 「そうやって、ケンカできるところがです。 私は誰ともそういう口ゲンカをしたことがない。」 「アリーナも同じようなこと言ってたぞ。」 「姫様が……ですか?」 「アリーナとケンカしてみたら? 思ってることを正直に言えばいいんだよ。」 洞窟の最深部でついに“はぐれメタルの剣”を手に入れた。 「わぁーっ!これが最強の攻撃力の剣なのね!!」 アリーナが剣を振り回してはしゃぐ。 「姫様、危ないですよ!」 クリフトがアリーナを制しようとする。 するとアリーナはその手を振り払った。 「平気よ。クリフトはマーニャの心配でもしてればいいじゃない!」 マーニャと勇者は驚いて目を見張る。 無反応かと思っていたアリーナが嫉妬していた。 これが“おもちゃを貸せない子供の心理”なのか “女としての心理”なのかはよく判らないが。 「一体何をおっしゃってるんですか!?」 「私のケガより、マーニャのこと優先して回復してたじゃないの! 何よ、二人で楽しそうにしちゃって!」 「あれは、マーニャさんが絡んでくるから仕方なく――――」 「言い訳なんか聞きたくないわっ!!」 クリフトはいつもの条件反射で謝ろうとしたその時だった。 頭の中で先ほどの勇者の言葉が反芻される。 “思ってることを正直に言えばいいんだよ” クリフトは一瞬迷ったが、重い口を開き、絞り出すように声を発した。 「…………姫様だって、いつも勇者さんと 仲良く はしゃいでるじゃないですかっ!!」 勇者はぎょっとする。少し罰の悪い表情になった。マーニャは瞳を輝かせる。 アリーナはクリフトの反論に少し驚いた表情を見せたが、すぐに眉をひそめた。 「なんでそこで勇者の名前が出てくるのよ? 勇者は関係ないじゃない!」 「いいえ!関係ありますともっ!!」 「何の関係があるって言うのよ!?」 「姫様は無神経すぎるんですっ! 私の気持ちなんてちっとも分かって下さらない!!」 「クリフトの気持ちって何よ!?」 「!」クリフトはグッと怯む。 「それは…………!その……………………、 …………………………………申し上げられません。」 マーニャはがくっとなった。 「ちょっとぉおお…!そこで言わないでどーすんのよっ……!!」 小声でぼやき、もどかしそうに指を動かした。 「ねえ、勇者!あんたもそう思わない!?」 マーニャが勇者の方を見る。 とんだとばっちりを受けた勇者は苦虫を噛んだような表情をしていた。 「お前のやることは、いっつもトラブルの元なんだよ。」 「あら、随分な言いがかりねぇ?」 「事実だろ。」 勇者とマーニャは火花を散らして睨みあう。 アリーナとクリフトもギャーギャーとしばらく言い争っていた。 「おかえりなさい!海賊の宝は見つかりました?」 ミネアが出迎える。 「………あぁ。」勇者が答える。 しかし4人とも不機嫌そうな表情で雰囲気はギスギスとしていた。 「………?」 ミネアは唖然とする。 「……姉さん、何かあったの?」 マーニャは大げさに手振りをした。 「そりゃあもう、いろいろとね!!」 《おわり》
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クリフトとアリーナへの想いはPart9 698 名前 無限ループ ◆YISOKD5/z2  Mail sage 投稿日 2009/01/15(木) 15 26 45 ID MHR+25Gp0 ミントスで病に倒れたクリフトだったが、勇者一行との幸運なめぐり合わせにより、 一命を取り留めた。 命の恩人ともいうべき彼らは、何やら部屋の外で詩人と話し込んでいる。 ただ一人、主君であるアリーナ姫だけが、ベッドの傍ら、クリフトの顔を覗き込んでいた。 「ねえクリフト、パデキアまだ残ってる?」 「えーと…全部飲み干してしま…っ…」 言い終わる前に、クリフトの唇は塞がれていた。 「…ひ、姫…?」 熱がぶりかえしたような、ぼうっとした顔で、クリフトは呟いた。 アリーナはというと、舌をチロリとしては、苦いようで顔をしかめている。 「私にも病気がうつったかもしれないから、クリフトから薬を分けてもらったのよ」 「ええっ…!? し、しかしそれでしたら、新しいものをすぐに用意いたしますから! 何もそんな方法で…」 アリーナはプイッと顔を反らした。 「冗談よ」 そう小さく呟いて、再びクリフトの唇に軽くキスをした。 病み上がりなうえに強烈な先制攻撃を受けたクリフトは、完全にパニック状態だった。 「じょ、冗談でこんなことをなさるなんて…! クリフトをからかっておいでなのですか…!?」 「違うわ。 パデキアを分けてもらうっていうのが冗談ってことよ」 「…そ…それは…どういう…」 もう一度、今度は少し乱暴なキスだった。 「わかってもらえるまでキスするわ」
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■ ほぼクリアな【配信ゲーム】作品 【気分はもうクリアのゲーム】 ※順不同 ▼【おーちゃんのお絵かきロジック】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? サンソフト ピクロス SS 約10時間 感想 へべれけキャラ総出演なロジックパズル。ルールも知らない自分にピクロスの遊び方を教えてくれた功績は褒めたい所だが、なぜ「画面スクロールピクロス」などという糞仕様ハードモードを入れてしまったのか。ここから先、ゲーム後半は全部この糞仕様ピクロスのようなのでもう続行は不可能。十分楽しさも辛さも味わえたので満足。 ▼【RAYMAN レイマン】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? UBIソフト 2Dアクション SS 約20時間 感想 難しいけど面白い、アクションゲーマー向きな高難度洋モノアクション。2Dアクションとしての完成度は文句無し。妖精救出を適当にやってたら最終面が登場しなかった。最初から妖精100%集めなきゃいけない仕様だとわかっていればなぁ…。妖精出現条件も謎だし、中途半端に発見している妖精を探索する気力も沸かなかった。多少は心残りだが、人生諦めも肝心。 ▼【グリッドランナー】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? ヴァージン 2Dアクション SS 約10時間 感想 敵も味方もリスポンが速過ぎの鬼ごっこゲー。ゲームとしては色々粗い作りが目立つが、難しいながらも頑張れる塩梅でバランス調整はなかなかのもの、ただし最終面以外は。一回やり直して主人公完全強化で進むも、最終面の女王様が驚異の強さで、無念さは残るがやる気も起きないのでとりあえず満足。「最終面PASS:→CX→→B↑CY↑」 ▼【未踏峰への挑戦 アルプス編】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? NETYOU クライミング PS 約10時間 感想 山登りロッククライミングゲー。人間というかもはや蜘蛛のような奇怪な精密動作は動かしてるだけで笑える。ゲームとしても地味ながら悪くない出来とは思う。それなりに気に入ってはいたけど、画面が変わり映えしない上に長過ぎる「神々の山嶺」への挑戦は想像以上に過酷で命には代えられないので下山。飽きるわこんなもん。 ▼【エイリアン トリロジー】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? アクレイムジャパン FPS SS 約2時間 感想 エイリアン3がベースのFPS。酔って断念シリーズ。画面も綺麗だしいけるかなと思ったが縦揺れが吐く。洋ゲーお得意のチート使用で最終面のエイリアンクイーンをハメ殺して一応クリア。流石にインチキ過ぎるのでここに眠る。 ▼【ブレインバトルQ】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? クリフ クイズRPG SS 約4時間 感想 クイズRPGというジャンルがそそるサターンの謎クイズ。リアル連動で賞金・商品プレゼントクイズゲーは当時流行っていたのだろうか?そしてこれのどこにRPG要素があるのだろうか?単調で異常なまでの問題数を解かせるエグいクイズ形式(決勝は計300問勝負)には西武の1万円相当の商品を絶対にあげないという固い決意を感じた。決勝で惨敗。 ▼【カレーハウスCoCo壱番屋 今日も元気だカレーがうまい!!】 番号 メーカー ジャンル ハード プレイ時間 No.? ドラス ブラックバイト PS2 約5時間 感想 カレーのココイチでタダ働きできるカレーアクション。まさか吉野家を超えるワンオペバイトがあるとは僥倖だった。2人プレイ前提で作られた難易度は運任せの要素も邪魔してか過労死待ったなし。もはや邪魔にしかなってないCPU相棒のココミがカス過ぎるのでクリアまでリアルココイチ封印を約束にバイト生活から逃亡。10面までクリア。 ※ほぼラストまで進むも諸々でクリアしてないゲーム。
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条件:アズにつなぐ橋クリア ランダムで1体のみ 敵 HP LV 種族 隊列 火 水 風 地 聖 邪 雷 スタン 止 毒 痺 眠 盲 菌 石 死 特殊 ジャヴァウォック 可変 PTLv 魔獣 後列 0 0 0 0 0 -1 ○ 遠隔/常時毒状態? フレスベルグ 可変 PTLv 竜族 飛行 0 0 +1 -1 0 0 ○ ○ ○ ○ 両面宿儺 可変 PTLv 幻妖 後列 0 -1 0 0 -1 ○ ○ ○ 遠隔/高避 ヨナルデパズトリ 可変 PTLv 魔人 後列 0 -1 0 +1 -1 ○ ○ ○ 魔攻/反撃/魔反/遠隔 ドロップ アイテム名 種類 攻撃 防御 魔攻 魔防 価値 備考 ジャヴァウォック おしゃれゆで卵 食品 0 0 0 0 5000 体力アップ! ※ジャヴァウォック 怒めきずる腕 腕甲 20 10 0 5 15000 即死防御 フレスベルグ 天頂の雨水 食品 0 0 0 0 5000 ベースHPアップ! ※フレスベルグ グランクニーヴ 短剣 60 0 0 20 15000 魔回避能力 両面宿儺 朴葉 食品 0 0 0 0 5000 素早さアップ! ※両面宿儺 両面宿儺の弓 弓 78 0 0 0 15000 ヨナルデパズトリ プルケ 食品 0 0 0 0 5000 魔力アップ! ※ヨナルデパズトリ 黒き煙の翼 扇 49 6 66 0 15000 邪属性 ※はレア コマンド ジャヴァウォック ジャヴァ《列・魔・※》 ※ランダムでスタン・ショック・睡眠・麻痺・石化・盲目・毒・菌・即死のどれかが付加される フレスベルク 始原の風+1《列・魔・風》 テスティモニー《全・魔・吸》 両面宿儺 マイトスマッシュ《単・物》 ベントムーア《※》 鬼変化《単・物 → 単・物》 ※ランダムで真空かまいたち《列・物》・絡みつくヒース《単・物・スタン》・荒涼砂塵雲《単・物・止》・渇地裂衝《2・物・スタン》のいずれかが発動 ヨナルデパズトリ フロムダスク+1→ティルドーン+1《3・魔・邪→3・魔・邪》 夜の声《全・死or眠》
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クリフトとアリーナへの想いはPart9 46 名前 1/4 ◆ByK7Tencho  Mail sage 投稿日 2008/05/01(木) 05 31 26 ID XAZWpdsi0 長かった人と魔族との争いに終止符が打たれて、はや数年。 ここサントハイムでも、人々が平和を享受し、日々穏やかな生活を営んでいた。 「…残念ですが、これらは全て却下せざるを得ません」 「なんでダメなの?わたしなりに一生懸命頑張って考えたのに~」 とある日の昼下がり、サントハイム城の二階にある一室で そうきっぱりと告げたのは、この城に仕える若き神官、クリフト。 持ち前の聡明さと、世界を救った英雄の一人として名を馳せた彼は、 かつてない異例の早さで大聖堂の長へと抜擢された、この国が誇る自慢の逸材。 一方、細工の施された小さな机でふてくされているのは、 その活発さから、親しみを込めて『おてんば姫』と呼ばれるこの城の王女、アリーナ。 弱きを助け、強きをくじく、正義感あふれる美しくも勇敢な女傑。 クリフトと同様、八人の英雄の一員として世界にその名を轟かせている。 二人はつい先日、国中の祝福を受け、質素ながらも厳かに婚姻の儀を終えた。 その後、慌しかった結婚式も終わり、宮廷魔術師のブライを連れての 外遊へと出かけた国王の名代として、王女であるアリーナが国務を担うこととなった。 もちろん、婿となったクリフトの手助けを借りるのを大前提として。 「ご努力には敬意を表します。しかしながら、このような内容ばかりでは、 施行どころか陛下やブライ様の審議をお受けになること自体、もってのほかです」 「これのどこがいけないっていうの?ちゃんと説明してほしいわ」 クリフトは、乱雑に置かれた書類の山を集め、丁寧にまとめていく。 片付け終わった書類を一瞥すると、深い青の瞳を閉じてため息をこぼした。 どうにも納得のいかない表情のアリーナは、机を叩いて抗議し、 困惑しているのは自分だといわんばかりに、夫君の端整な顔を睨みつける。 「まず、兵士の皆さんの武器を全て鉄の爪にすること…これはあまりに無謀すぎます。 鉄の爪は接近戦用の武器。槍などの長手の武器に慣れ親しんだ方々に、 いきなり持ち替えろとおっしゃるのは、酷な話でしょう」 「それと、神学生の授業の半数を武術にするという案も、同意できかねますね。 わが国の神学校は、魔法王国の名に恥じぬよう、相当の授業時間数を設けております。 新たな科目を組み込む余裕など、今の履修過程ではとてもございません。 それから……」 淡々と理由を述べるクリフトの声が子守唄代わりになったのか、 アリーナは静かな寝息を立てて舟をこぎ始めた。 こみあげる笑いを抑えつつ、クリフトは鍛え抜かれた身体には似合わぬ 新妻の華奢な肩に優しく手を触れ、軽く揺さぶった。 「聞いておられるのですか、姫さま―――」 クリフトの最後の文言を聞き取った瞬間、アリーナは閉じていた目を開いた。 素早く机から身体を起こし、上目づかいでクリフトの顔を見つめる。 しまった、謀られた。 状況を察知したクリフトはあわてて口を押さえたが、すでに遅かった。 言葉の末尾は、澄んだ川のごとく緩やかに空気と溶け込んでいく。 「ねえクリフト。今わたしのこと『姫さま』って呼んだでしょ?」 「いえ。わ、私は別に…あの…その…」 「あら、とぼけたってダメよ。この耳でちゃーんと聞いたんだから」 「そ、そうでしたか。申し訳ありません、たしかにお呼びしました…」 アリーナに詰め寄られたクリフトの顔は、一気に赤みを増した。 細身の身体は硬直し、無機質な長椅子と同化しているようにも見える。 冷静沈着な彼らしからぬ反応を見せるのには、ある理由があった。 晴れて結婚が決まった時、二人はある一つの約束事を交わした。 それは、敬称をつけずに名前だけでお互いを呼び合うこと。 もちろん、公の場ではそれにふさわしい呼称を使うべきだが、 『家族になるんだから、名前で呼ぶのは当然』という、 アリーナたっての希望により実現した。 普通の夫婦の間では造作のない、ごく当たり前のことである。 しかし、アリーナの臣下として仕えてきたクリフトは、長年彼女のことを 敬称で呼んでいたため、今までの習慣から抜け出すのは容易ではなかった。 自分とは立場が違っていた関係上、仕方がないのかもしれない。 さすがのアリーナも譲歩し、しばらくの間は二人きりの時だけ、という条件を附した。 さて、図らずもアリーナとの『約束』を破ってしまったクリフト。 果たせなかった約束は、何らかの埋め合わせをするのが世の常識である。 アリーナは席から離れ、クリフトに何かをせがむ素振りを見せた。 「い、い、いけません。だ、誰かに見られでもしたらどうするんです?」 「ここはわたしたち二人の部屋よ。他の誰かなんているわけないじゃない」 「そう言われれば、そのとおりなのですが…」 「でしょう?だったら…お・ね・が・い」 早く早くといわんばかりに、アリーナは満面の笑みでクリフトの腕にしがみつく。 公私の別が厳格で有名な聖職者も、女神の笑顔にはめっぽう弱かった。 泣き所をつかれた彼に、もはや選択の余地など残っていない。 覚悟を決めたのか、クリフトは椅子から立ち上がろうとした。 だが、腰を少し上げたところでアリーナに止められてしまう。 「座ってる位置の方がいいわ。背伸びするのって、結構疲れちゃうのよね」 「は、はあ。承知いたしました。で、では、目を閉じてください」 クリフトは、アリーナの首筋に絡まった赤い髪を肩へと流し、 一文字に結んだ唇をアリーナの唇にぎこちなく重ね合わせる。 小さな部屋は、一瞬にして甘美な空気に包まれた。 かといって、いつまでも脱線しているわけにはいかない。 アリーナの髪の色に負けないくらい赤くなってしまった頬を、 神官帽子のつばで隠したクリフトは、再び書類の束に目を通し始めた。 「コホン。さて、それでは本題に戻りましょうか。次はですね…」 「え~、まだあるの~?もういいわよ、いいかげん聞き飽きたわ」 「いいえ、いけません。ひ…アリーナ様…は、我が国の次期女王となられる御方。 これくらいのことで音を上げられては、先が思いやられます」 名前の後ろに『様』が付けられ、アリーナの整った眉根が片方だけ高々と上がる。 クリフトもその様子に気がつき、しばしたじろいだ。 しかし、その後は両腕で頬づえをついてはいるが、静かに話を聞き流している。 助かった。今回は気付かれずにすんだようだ。 ほっ、と安堵の表情を見せたクリフトは、冷や汗を手で拭い、進行役に徹した。 (さすがにかわいそうだから、今のは特別に許してあげようかな。うふふ…) 大の苦手なお説教にもかかわらず、楽しそうに顔をほころばせるアリーナ。 それもそのはず。クリフトの『埋め合わせ』は、先ほどので五回目になるからだ。 もちろん、今日一日での話である。 さらに話を進めながら、クリフトはある言葉を思い出していた。 婚約が発表された時、長年自分とアリーナの行く末を 陰ながら見守ってくれていたブライから、直々に賜ったこの祝詞。 『お主はうぶな男じゃから、一生尻に敷かれることになるじゃろうな』 そう断言されたクリフトは、ただ黙って耳を傾けるだけだったが、 今から思えば、人生の大先輩たる老師の言葉は、的確に的を射ていたようだ。 松かさよりも年かさ。亀の甲より年の功。 さすがはブライ様。あの方にかかれば、自分はまだまだ青二才の若輩者。 だから、この罪作りな約束に翻弄される状況を、実は内心楽しんでいるのも とっくにお見通しなのだろう。 クリフトは、そう心の中でつぶやき、同時に苦笑した。
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 484 :煩悩神官が現れた! ◆cbox66Yxk6 :2006/03/08(水) 17 21 15 ID UIJWwCO+0 クリフトとアリーナの仲を邪魔したいサントハイム王は、今日も玉座で唸っていた。 「う~む、何かいい方法は・・・」 サントハイム王は閃いた! (そうじゃ、そうじゃ、その手があったか!) 自分の考えが気に入ったのか、妙に上機嫌でブライを呼び寄せる。 「近日中に武闘会を開くぞ。そして優勝したものにはアリーナとのデート権を与える!!」 「ねぇ、クリフト、武闘会の話、聞いた?」 書庫で調べ物をしているクリフトを見つけ、アリーナが嬉しそうに駆け寄ってきた。 「もちろん、クリフトも参加するわよね?」 今にも飛び掛らんばかりのアリーナを警戒してか、クリフトは貴重な書籍をそっと奥へやった。 「えぇ、今朝方伺いました。でも、私は参加しませんよ」 予想外の返答にアリーナは目を丸くする。 「どうしてよ?」 アリーナの問いに間髪いれず答える。 「その日は朝からフレノールで仕事です」 王命ですから。 クリフトは事も無げに、話す。 アリーナは愕然とした。アリーナとしてはクリフトが参加するのは当然のこと、優勝すら疑っていなかったのだから、その衝撃たるやかなりのものであった。 (お、お父様、謀ったわね~) 妙に機嫌がよかった父王の顔を思い出し、アリーナは唇を噛む。 (だから、今回は『男性限定』なんて念を押してきたのね) 無性に腹が立ってきた。 「ねぇ、クリフト。抗議しに行きましょう。こんなのフェアじゃないわ」 憤りもあらわに、アリーナはクリフトに詰め寄る。 クリフトはため息をつきつつも、アリーナを椅子に座らせ、落ち着くように言った。 そして、アリーナの柔らかな髪を撫でた。 「姫様。今回の武闘会の趣旨をご存知ですか? これは姫様とボンモールの王子のちょっとした“お見合い”ですよ。非公式なので“出会い”と申し上げた方がよいかもしれませんが」 そこで言葉を切ると、クリフトは少し寂しげに微笑んだ。 「もし私が武闘会に参加することが出来たとしても、私の立場でボンモールの王子を倒すことは外交的に無理ですね」 ですから、参加してもしなくても、結果は同じです。 すべてを諦観したような穏やかな口ぶりに、アリーナは失望する。 「私ね、あなたならどんな状況でも私のために闘ってくれると思ってた。でも、思い過ごしだったみたいね」 アリーナは席を立つと、後ろを振り返ることなく走り去っていった。 瞳の端に光るものが見えたのは気のせいだろうか。 クリフトはアリーナの後姿を眺めつつ、重い気持ちになった。 (姫様、私だって本当は・・・) 口に出すことも出来ないこの思い。出したところで自分の立場は何一つ変わらない。 (本当はあなたのために闘いたい。闘って・・・あなたと) 愛する人が、他の誰かとデートするなんて・・・気が狂いそうだ。 しかし、その一言を伝えられないが故に、彼女を傷つけてしまった。 クリフトは、ゆらりと立ち上がると、口の端に暗い笑みを浮かべた。 たかがデート、されどデート。 「陛下、この代償は高くつきますよ」 武闘会当日、アリーナは思いっきり不機嫌な顔で椅子に腰掛けていた。 横で、警護というよりアリーナの見張り役にあたっているブライが、そっと耳打ちをする。 「姫様、もう少しにこやかにしてくだされ」 無理な相談であろうことはわかっていた。 だが、ここでボンモールの王子の機嫌を損ねるようなことになれば、潔く身を引いたクリフトが哀れというものである。 アリーナは一国の姫であり、その影響力は国内外を問わず大きい。 たとえ、どんなに馬鹿馬鹿しくても、一度決まってしまったならば、よほどのことがない限り相手の顔を潰すことだけは避けなくてはならない。 それが外交である。 ブライの言葉に、アリーナはむっとした様子で頷いた。 「わかってるわよ。にこやかにしていればいいんでしょ。にこやかに」 それでにこやかだというなら、暴れ牛鳥のほうがよっぽど愛嬌があるというもの。 ブライは心のうちで、苦いため息を吐いた。 「おぉ、皆のもの、揃っているようじゃな」 ウキウキとしたようすを隠すことなく、サントハイム王が臨席する。 「それでは、そろそろ始めるとするかの。ブライ。挑戦者の名を読み上げてくれ」 「御意」 王の命令に、ブライは名簿に目を落とす。そして次の瞬間、目を見開いた。 (あやつ・・・) ブライは大声を上げて笑いたい気持ちになった。 (食えないやつだとは思っていたが、ここまでやるとは) ブライが見たもの、それは――― 「どうしたのじゃ、ブライ?」 なかなか読み上げないブライを不審に思ったか、サントハイム王が問う。 ブライは王に一礼すると、声高に読み上げ始めた。 「挑戦者を発表する。サントハイム近衛騎士団小隊長・・・」 続々と名前があがり、その中には今回の優勝者となるべき者の名前も告げられた。 そして最後の一人になったとき、ブライは僅かに息を呑み瞑目した。 この名を告げるには、ある意味非常に勇気が要った。 「デスピサロ!・・・以上」 その一言にサントハイム王は目を剥き、熱気に溢れていた会場が一気に静まりかえった。 そう、クリフトは怒っていた。これ以上ないほどに。 サントハイム王のつまらない画策により、愛する人を傷つけてしまったことに、とてつもない憤りを感じていた。 だから、卑怯を承知で、手を打った。 王子という立場に何一つ遠慮することのない身分のものを参加させる。 勇者ならそれも可能だったかもしれない。しかしそれでは武闘会自体は開かれることとなり、結局ソロが優勝するにせよ、多少なりの遺恨が残ってしまう。 ならば、武闘会自体を潰してしまえる存在をぶつければよい。それならば、王子の面目も保て、サントハイムにも非が及ばない。 それにうってつけの者、それがデスピサロ。 魔族の『王』という肩書き、そして圧倒的な戦闘力。この名を聞いて闘いたいと思う物好きはおそらくほとんどいないであろう。 だから、アリーナを傷つけてしまったその足で、クリフトはロザリーヒルへ赴いた。 ピサロに参加してもらうために。 もちろん、ピサロはああいう性格であるため、普通にお願いして引っ張り出すのは大変である。 しかし、クリフトは彼の泣き所を知っていた。だから、迷わずに彼女に相談を持ちかけた。 案の定、心優しい彼女はピサロを説得してくれ、今に至る。 ブライの声が響き渡った瞬間、アリーナは群衆の中で圧倒的な威圧感を放つピサロに目を向けた。彼は顔色一つ変えず、泰然と構えていた。 「お、おい、デスピサロって・・・。ちょっとまずいんじゃないか?」 軽い気持ちで参加していた者たちが、青ざめる。そして、出場の辞退を申し出るために列を成した。 会場はいまや大混乱である。 サントハイム王は、この事態をどう受け止めたのか。 深々とため息をつくと、傍らに立つ腹心に武闘会の中止を申し付けた。 「ピサロ!」 アリーナが名を呼ぶと、魔族の王はゆっくりと振り返った。 「久しいな」 ぶっきらぼうな物言いが、妙に似合っている。 アリーナは複雑な顔をして尋ねる。 「どうしてここに?」 すると、ピサロは口の端を僅かにあげて笑った。 その珍しい表情にアリーナは戸惑う。 「やつは、かなりお前にいれこんでいるらしいな」 答えになっているような、いないような。 アリーナが重ねて尋ねようとする前に、ピサロはさっと踵を返す。 そして、呪文の詠唱に入ると、僅かに目を細めた。 「ロザリーがお前にも会いたがっていた」 今度はふたりで来るがいい。いや、3人か・・・。 ぼそぼそと呟かれた言葉がアリーナの耳に届いた時には、目の前にピサロの姿はなかった。 「ブライよ。あやつは大人げないのう」 たかが、デート権でここまでするか? サントハイム王は眉間を揉みながら、ため息混じりに呟いた。 そう、今回の目的はあくまで嫌がらせ。仲のよすぎるふたりにちょっかいをかけたかっただけ。 デート権をちらつかせたからといってクリフトが職務を放棄できるはずもなく、それは王の計算のうちだった。ただ、アリーナより仕事を優先したということで、アリーナ自身が、クリフトに少しでも不信感を持ってくれれば・・・いや、ほんのちょっとでも喧嘩してくれたらいいなぁ、と考えていたのだ。それなのにとんだ事態になるとは。 クリフトのやつは心が狭いのう。 ブライは王の呟きを耳にして、頭を抱えた。 「陛下。デート権だったからこそ、この程度で済んだのですぞ」 これが『結婚』だったら、どんな手段をつかってきたやら。 考えるだけで頭が痛い。 ブライは自分の大人げのなさを棚に上げ、クリフトの狭量さを責める王に呆れる。 (陛下、お願いですから、これ以上あやつを怒らせないで下され) 心臓がいくつあっても足りない。 胸のうちでそうぼやきながらも、心のどこかでこの事態を愉快と感じている自分を認めていた。 (恋馬鹿もここまで極めれば立派なもの) まさか『デスピサロ』を引っ張り出してくるとは、侮れない判断力だ。 (意外と、あやつは大物になるやもしれんな) アリーナに振り回され、鼻血ばっかりふいていた青年の姿が浮かぶ。 だが、それは遠い過去のことなのかもしれない。時間の流れに思いを馳せながら、ブライは複雑な顔をする。 彼の成長を見るのは、息子のいないブライにとっての喜びでもある。次々と障害を乗り越えていくクリフトを見るのは正直嬉しい。 しかし・・・。 (おぬしの選んだ道は険しいぞ) ブライの忠告もどこ吹く風。 また新たなる策を練りだした王を見つめ、ブライは本日何度目かのため息をついた。 「というわけで、武闘会は潰れたわ」 フレノールでの仕事を終え、自室に戻ってきたクリフトにアリーナはそう告げた。 クリフトは、こんな夜分に男の部屋にいらっしゃるなんて非常識ですよ、と苦い表情をしたが、アリーナが頑として動かないので、仕方なく席を勧めた。 「ねぇ、どうしてピサロは参加しようと思ったのかな?」 アリーナの質問に答えながら、クリフトは紅茶を入れる。 「腕試しじゃないですか?」 何にしても、よかったじゃないですか。デートのお話は消えたのでしょう? いつもと変わらないその穏やかな様子に、アリーナは眉をひそめる。 アリーナとて馬鹿ではない。 導かれし者が一人も出ないような大会に、ピサロがわざわざ出るはずもない。 それくらいのことはわかっている。 となれば、誰かが彼に出てもらうために画策したとしか思えない。そしてそれを行ったのはたぶん、目の前にいる人物。 アリーナは湯気を立てる紅茶を冷ましながら、ちらりとクリフトを見やる。 (諦めたわけじゃなかったんだ) 実のところ今回、アリーナは半分諦めていたのだ。 クリフトの言葉を聞いた時は正直腹も立ったけれど、冷静に考えてみれば、たかが『デート権』。 結婚というわけでもなし、デートというなら何とでもなる。ただ、相手の顔を潰さなければそれでいいわけだし、そんなに重く受け止めてはいなかった。 もちろん、クリフトが参加できないのは辛いし、よそよそしい態度をとられたのはショックだったけど。 でも、それも彼の立場を考えればしかたがないと、自分に言い聞かせていたのだ。 それなのに、彼は動いてくれた。 アリーナの視線に気がついたのか、クリフトがこちらを向く。 目と目が合った。 アリーナは極上の微笑を浮かべた。クリフトの頬が僅かに赤くなる。 「姫様?どうかなされましたか?」 彼が冷静に振舞おうとすればするほど、アリーナはおかしくてたまらない。 (意外と、やきもち焼きだったのね) アリーナはカップを机に戻すと、おもむろに立ち上がりクリフトの横に立った。 そしてすばやく身をかがめると、耳元に囁く。 「クリフト、大好き」 やきもちやきでも、ちょっと腹黒くても、アリーナにとっての一番はやっぱりクリフト。 アリーナはますます赤くなったクリフトの首に手を回すと、頬にそっと口付けた。 (終)
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クリフトとアリーナへの想いはPart.9 818 名前 737  Mail sage 投稿日 2009/03/20(金) 02 58 44 ID XdA0jXSi0 【アイデンティティ】 勇者は宿のベッドに寝そべり、暗闇の中、目を開けて佇んでいた。 今日、魔族の皇子ピサロが仲間になった。 あの宿敵“デスピサロ”だった男だ。 あいつは俺の父さんと母さん、シンシア、 それに村の人たちを皆殺しにした男だ。 恋人を殺されて修羅に堕ちたという 同情の余地があるのは分かる。 でも、俺にとってはただの憎き殺人鬼でしかない。 マーニャとアリーナとトルネコは親しげに話しかけていたけど・・・。 正直、俺はあいつを仲間としてわだかまりなく接する自信はない。 月明かりが部屋に射し込み、ぼうっと部屋の中が見える。 宿の大部屋にはライアン、トルネコ、ブライ、クリフトと 自分の5人が泊まっている。ピサロは別の部屋だ。 トルネコのいびきが部屋に響いていた。 (やれやれ・・・今夜は眠れそうにないな。) 隣のベッドでクリフトが何度も寝返りをしている。 「・・・クリフト?もしかして起きてるのか?」 「あ!・・・・はい。」クリフトは上半身を起こした。 「少し外で話さないか?」 勇者とクリフトは寝巻きのまま外へ出た。 クリフトは神官服に着替えようとしていたが、 煩わしいので無理矢理そのままの姿でひっぱり出した。 クリフトは周りをキョロキョロ見回している。 「何?」勇者は尋ねる。 「あ、いえ。こんな はしたない姿を姫様に見られやしないかと・・・。」 「プッ。お前、いっつもアリーナのことで頭がいっぱいなんだな。」 クリフトの顔が赤くなる。 「そうですともっ!!私は姫様をお守りするために旅をしているんです!」 しかし途端にクリフトの顔が暗くなる。 「でも、もう私は必要ないかもしれない・・・・。」 「え、なんで?」 「あのピサロという男!ベホマにベホマラーにザオリクに、それにザラキの上位呪文の ザラキーマまで使えるんです!もう私のいる意味がありません・・・・!!」 クリフトは頭を抱えてうつむいてしまった。 「お、おい、そんなことないだろ?ほら、いくらピサロがザラキーマ使えたって、 お前のザラキほど唱えてくれないよ!」 「いささか言葉にトゲを感じるのですが。」 クリフトはこういう時はやけに鋭い。 「いやいや!お前がいなかったらアリーナは誰が守るんだよ。 ピサロはお前みたいに、誰よりも何よりも最優先にアリーナを援護なんかしないぞ!」 クリフトは顔をあげた。 「そうでしょうか?」 「そうだよ。アリーナはイノシシみたいに敵陣に突っ込むしか策がないんだから、 お前が守ってやらなきゃダメだよ!」 クリフトの顔がパッと明るくなった。 「ありがとうございますっ!!勇者さんに話さなければ このまま一人で思い詰めているところでした!」 「・・・・もしかして、お前の眠れなかった理由ってそれなの?」 「はい。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」 なんて単純なんだ。 オレが悩んでるのがバカバカしくなる。 ―――ピサロは黒幕を倒すまで共に戦うと誓ってくれた。 あれこれ深く考えず、とりあえず信じてみてもいいのかもしれない。 「勇者さん?」 「・・・なんか、お前に癒されたよ。」 勇者は目を細め微笑んだ。 「さ、もう帰って寝ようぜ!トルネコのイビキが止んでたらいいんだけど。」 《おわり》
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クリフトとアリーナの想いはPart10 976 名前 はつゆめ 番外編 Mail sage 投稿日 2010/01/13(水) 17 04 49 ID xDXVbZ4K0 アリーナ「忘れもしない、私のキズを癒した筋肉隆々の腕‥ その屈強なタフガイは野太い声で私にこう呟くの 「ホイミ」って。 思わず私はこう言うの 「勝負しろ」って。 もちろん、その後はめくるめく拳と拳の語り合いをして、お互いを 認め合うの。ステキだと思わない?」 977 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2010/01/13(水) 17 40 05 ID xDXVbZ4K0 クリフト「やはり姫さまは遠い存在なようです‥」 978 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2010/01/13(水) 17 57 02 ID 3W2iHKtL0 次の日、必死に 力の種を食べまくるクフリフトの姿が! 982 名前 クリフト、特訓する。part1 Mail sage 投稿日 2010/01/14(木) 22 53 28 ID DwOzVe+60 勝手に 978さんの言動に便乗してしまったよ。 。 やっぱりネタなのは気にしないで欲しいです・・・ 『クリフト、特訓する。』 皆が、初夢についての話題に触れてから何日か経った後のこと。 クリフト「ソロさん、お話があるのですがいいでしょうか」 ソロ「ん?なんだクリフト。アリーナ関係のこと以外滅多に口を開かないお前が、珍しい・・・」 クリフト「力の種って・・・まだ道具袋の中に残ってますよね?」 ソロ「ん?あぁ。確かに袋に何個かは入っているかと思うが・・・お前」 ソロは少し、目を疑った。クリフトは、あまり肉弾戦には向いていない。 本人が神官ということもあり、血を流すような戦闘は嫌っていた。その為に、彼は死の呪文を唱えるのだと言っていた。 魔物であろうと、この世界に生きているという命であることには変わりない。 だから彼は、武具でもって魔物を傷付けることを嫌ったのだ。 その彼が自らの筋肉を増強させる効果のある力の種を? ソロは思い付いたかのようにふぅとため息をついた。 ソロ「・・・分かった。この間のアリーナの言ったことが気になってるんだな」 クリフト「うぐっ・・・!ち、違いますよ!私はただもっと姫様や皆さんのお力になりとうございまして・・・」 ソロ「・・・じゃあなんだよ、その右手に巻いてる包帯は・・・」 クリフト「!・・・これはっ」 ソロに指摘され、素早く包帯巻きの右手を背に隠すクリフト。 しかし、もはや隠しようがない。 ソロ「これは・・・なんだよ。お前、最近夕食後にライアンとよく手合わせをしてるって話じゃないか。それも、剣の稽古とかじゃなく・・・素手で」 クリフト「ど!どうしてソロさんがそのことを・・・」 ソロ「どうしてって、ライアンが俺に言ったんだよ。最近クリフトが自ら怪我をしてまで稽古してくれと頼む、どうかしてくれないかってな」 クリフト「うぅ・・・皆さんにはご内密にしてほしいと言ったのに・・・」 ソロ「勘違いするなよ、ライアンはお前のこと思って俺に相談したに違いないよ。無理な稽古を続けてアリーナとの旅が困難になったら、困るだろう」 クリフト「!・・・ど、どうしてそこで姫様の御名前がっ!」 「うふふ・・・」 そんな二人の会話を、聞いていた影が1つ。 マーニャ「面白いこと聞いちゃった~」 とにかく、面白いことを思い付くのじっとしていられないのがマーニャ。 噂を耳にするなり、アリーナの教育係ブライのもとへ向かった。 マーニャ「ねーねーおじいちゃん。お姫様は何処かなぁ」 ブライ「姫様ならばトレーニングと仰って出ていかれたわい。 全く・・・こんな寒いというのにレディが外でトレーニングなどと・・・わしは恥ずかしくてかなわん」 マーニャ「外ね!おじいちゃん、ありがと~」 マーニャはブライからアリーナの行方を聞いた後、あれこれと支度をしてから一応防寒対策の為やすらぎのローブを羽織ると外に出た。 辺りはすっかり雪景色。 マーニャ「寒っ!・・・ん~もうなんでこんなに雪が積もってんのよ~。全く冗談じゃ・・・あ!アリーナちゃ~ん!」 アリーナの姿は、思ったより早く見つかった。彼女は何故か、せっせと雪を積み上げていた。 アリーナ「マーニャ、どうしたの?」 マーニャ「あ、アンタこんなトコで何やってるのよ」 アリーナ「何って・・・トレーニングに決まってるじゃない。こうやって雪を積み上げてね・・・」 アリーナは少し下がり、助走をつけると・・・ アリーナ「たぁーっ!」 積み上げた雪の塊を粉々に砕いた。 アリーナ「うふふ!重い雪の塊を積み上げるの筋力と、必殺パンチで雪を砕く力と、両方が鍛えられるのよ♪ 我ながらいいトレーニングの方法を思いついちゃったなって思ったわ」 マーニャ「あ、はは。アンタのトレーニングにはいつも度肝抜かれるわ・・・。 ところでさぁ、これからケーキ作りをしようって思ってるんだけど・・・一緒にどう?」 アリーナ「ケーキ・・・?うんやりたい♪だけど・・・いいの?あたし、お料理とか、お裁縫とかそういうの点でダメなんだけど」 マーニャ「あら!いいわよ!!だったらついでに教えたげるから!アタシ、ミネア程じゃないけど二人っきりの姉妹で生きてきたのだものそこらへんは自信あるから♪」 アリーナ「本当!?嬉しいな♪ あたし、お料理とかって女の人のお仕事だから出来ないって、てっきり恥ずかしいことだと思ってた。 だってクリフトは男の人なのにお料理上手なんだもん、教えてなんて言えなかったよ」 マーニャ「愛のこもった手料理って美味しいものよ。 クリフトもそういうのアンタに食べて欲しいって思ってたんじゃない?愛妻弁当の男女逆バージョン!みたいな」 アリーナ「?・・・どういうこと」 マーニャ「ま、いいわ♪早いトコ始めちゃいましょ!」 マーニャは、アリーナを台所まで連れ込み道具を用意し出した。 ソロ「ま、お前がそこまで必死なんだってことはよく分かったし・・・いいだろう。 下手に稽古で大怪我負われた日には・・・困るしな」 クリフト「ほ、本当に!?」 ソロ「道具袋は確か・・・馬車の中に置きっぱだったな。取りに行こうぜ」 クリフトはソロに導かれるまま馬車へと戻った。 余りに冷え込んでいたのでパトリシアの為を思いソロは村の村民に納屋を貸し出して貰っていたのだ。 それからソロは馬車の荷台をそそくさと探し始めた。 しかし・・・ クリフト「・・・ソロさん、まだ見当たりませんか?」 ソロ「おかしいな。確かに荷台に積んだような気がしたんだが・・・ 見当たらないな」 クリフト「えぇっ!盗難ですか!?一体誰がそんなことを・・・」 ソロ「盗難なんて言い方すんなよ。多分誰かが忘れ物でもして、持ってったんだろう」 クリフト「それにしても・・・困りましたね。 もし、力の種を誰かが先に使ってしまったら・・・あぁ、私はもう」 ソロ「大丈夫。力の種を欲しがるのはライアンとアリーナとトルネコぐらいだし、みんな勝手に持ち出して使ったりしないよ」 クリフト「そうでしょうか・・・。 だといいんですけど」 ソロ「それにしても勝手に持ち出すなんてあんまりだよなぁ。 一声くらい掛けてくれればいいのに」 パトリシア「ヒヒーン」 パトリシアはボディランゲージで必死に真実を訴えかけようとするが、二人に理解出来るはずもない・・・