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真夜中学園放浪記 「それいけ、男だらけの肝試し大会ー」 「やめれ、気が散る」 「そうだ、やめたまえ。今は危険な潜入調査中なんだからね」 草木も眠るミノ三つ刻。校庭のフェンスの南京錠前に三人の少年が群がっていた。 一人はカモシカのマダラ。その長身をウンコ座りに折りたたみ、ポケットから煙草を出しては しまい直す。 一人はヒト。フェンスの扉にかかった南京錠に針金を入れてなにやら動かしている。 十二分に不審人物。とは言えここまでだったら「不良が夜の校舎で支配からの卒業」の範疇 だったろう。問題は最後の一人だった。 もこもことしたスェットスーツだった。いや、服のせいではない。着ている者の体型のせい でもない。着ている者の体毛のせいだった。 ミステリー同好会会長、クリフ。 長毛種の例に外れずタイトなファッションが致命的に似合わない。 「夜の学校に忍び込む程度で潜入調査なら、まあそうなんだろうけどな」 「カルロ君、君はこの調査の重要性をまだ理解してないようだね」 「あんな与太話を真に受けるアンタの怖さを今理解しかかってるけどな」 「そういえばさ」 カルロとクリフの会話にサトルが口を挟んだ。 「ここまできといなんだけど、俺はまだ詳しい話聞いてないんだけども」 「あれ、そうだっけか」 カルロが答えるとほぼ同時、かちゃりと音を立てて南京錠が開く。サトルはそのままよどみなく スプレーのサビ取り剤を閂と蝶番にかけ、静かにフェンスの扉を開いた。 「さあ、ここからは慎重に行くよ。いったいどんな警備が敷かれているか不明だからね」 「……自分が普段通っている学校に、何を期待してるのか聞いて良いか?」 某ゲームのかくれんぼ親父並みに低い姿勢で侵入していく自称名探偵に、鍵を開けた現行犯が 呆れた声で聞く。代わりにめんどくさそうに答えたのはカルロだった。 「巨大ロボだとさ」 「……は?」 「巨大ロボ」 突飛な単語を聞いたサトルの動きが止まる。たっぷり一分考えた後、可能な限り常識的な解釈を ひねり出したらしい。 「それはタコのミーナ先生が工作準備室に堂々と飾っているマスターグレードガンダムのことか?」 「いや、プールの底から巨大ロボが出てくるという噂があって、それの裏付け調査だってさ」 サトルが夜空を仰ぐ。晴れ渡る空は月明かりを皎々と投げかけてくれる。 「……新聞部の仕事だろ。しかもラスキ班の」 「そこから頼まれたんだ、イヌ同士のよしみで。新聞部長としてみりゃ名探偵が何かやらかしても OKなんだろ」 カルロも夜空を仰ぐ。夏の星座が瞬く。天気予報通り雨は降らないらしい。 「彼は売られたのかなあ」 「言葉にしないことが優しさって事もあるだろ」 先行する秘密工作員には二人の言葉が届いていなかったらしい。 それが救いである事を、二人の男は月に祈った。 * * * 「さて、ここからが本番だよ。いよいよ敵の本拠地だからね」 「プールの更衣室前で盛り上がるテンションは、涼しさとエロスの2種類だけだと思ってた……」 「水泳選手って人種も含めりゃ3種類だろ」 珍しく冷静なツッコミに徹するカルロと途中で帰らなかった事を後悔しているサトルを率い、 スネークなクリフはプールの更衣室の扉に近づいていく。そして、当然の事ながら鍵のかかっている 扉で手詰まり、ハンドサインでサトルを呼んだ。 (今の一連の流れを動画に撮っておいて彼女に匿名で送りつけてやれば良かったかなー) そんな事を考えながら鍵穴に針金を突っ込む。指の感覚だけを頼りに数十秒動かすと、またしても 簡単にかちゃりと開く。 「見事な手際だね。流石、錠前破りのサトル君」 「そんな二つ名手に入れた覚えはない」 「……つーか、こんなに簡単に開くもんなんだな。鍵って」 「南京錠とかこの手の古い鍵ならな。最近の住居は対策されてるから心配すんな」 そんな事を言いつつも三人は更衣室建家に入り、そして女子更衣室に向かい掛けたスネークが 両肩を掴まれて止められた。 『まて』 「な、なんだい?」 まさか二人同時に止められるとは思っていなかったのか。クリフが動揺を見せた。 「……いや、アンタはそう言うキャラじゃないと思ってたんだけど」 「つーかよ、誰も入ってない更衣室に何を期待してるんだ」 「ちょっと待ってくれたまえ。もしかして君たちは僕が性欲をもてあまして女子更衣室に向かった と思っているのかい?」 他になんかあるんかい。という共通見解を喉元で押しとどめ、二人は視線で続きを促す。 「僕がこの調査依頼を受けたのは、同族のよしみと犯罪への憎悪だけじゃない。予防の為だ」 「……予防?」 「ああ、もしかしたらこの女子更衣室に仕掛けられているかも知れない隠しカメラを調査する事も 目的の一つなのさ。ミツキ君もこのプールを使うわけだからね」 そう言ってクリフは懐からラジオのような機械を取り出した。 「なんだそりゃ?」 「アマチュア無線用の受信機さ。電波盗撮ならこの方法で見つけられる」 そう言って、何かの魔よけのようにリグを振り回し続ける探偵をサトルは冷めた目で見守る。 「なあ、カルロ。見つかると思うか?」 「あるかどうかはともかくとして、見つからなけりゃその方がいいんじゃねえか?」 「なんでまた」 「出歯亀程度で死人がでるのは流石に不味いだろ……ん?」 何かに気付いたようにカルロが壁のポスターに近づく。学校制作の「目指せ!インターハイ」の スローガンと健康的な水着イラストがかかれたそれの端を、テープをはがしてめくる。つられて サトルもその手元をのぞき込み、二人はほぼ同時に硬直した。 ポスターの黒の部分。それが、黒い半透明フィルムになっていた。 そしてその黒フィルムの下になる部分の 壁 に レ ン ズ が埋め込まれていた。 (覗きかよ!) (こんな堂々と!) (建築段階から仕込まないと無理だろこのレンズ!) (リグに引っかからないのは有線だからか!) (このポスターも学校制作じゃねえか!) 即座にそれだけのツッコミを心の中で入れてカルロがポスターを戻す。 権力者の長くて黒い腕の気配を感じたサトルも、何も言わず壁に背を向けた。 「なあ、サトル。見つかると思うか?」 「やだなあ、覗きなんてエロビデオのやらせじゃねえんだから」 * * * 「さて、そろそろ本番だよ。夜な夜なプールに出現する謎の巨大ロボットの調査はこれからだ」 「巨大ロボットという単語を聞く度に帰りたくなるんだけど……」 「いや、お前がいないと鍵が閉められないし」 テンションの落差をものともせず、三人の男がプールサイドに立つ。 当然のように、そこは静寂に満ちていた。 「ふうむ、それでは手分けして怪しい所を探そうか。君たちはそちらに側からぐるっとプールサイド を回ってみてくれ。僕は逆側から回る」 「ああ」 気のない返事をかえして二人はクリフを見送る。地面にはいつくばるように虫眼鏡で観察を始める 探偵を視界から外してほてほてと歩く。 「なんで、こんな与太話であんなに真剣に捜査行為が出来んのかなあ」 「捜査ができればそれで良いんだろ。多分」 「あー、なるほど。手段が目的と」 「というわけで目的のない俺達はテキトーに回って終わりって事で」 「だな。てか、カルロ。お前はなんでこんな事に協力してんだ?メリット無いだろ」 「いや、ラスキから山猫亭のランチタダ券もらったから」 「……てめえ、俺にもよこせ」 「えー?」 「えー、じゃねえだろ!何不思議そうな顔してんだ!」 「バーロー!ペアチケット一枚しかないんだぞ!」 「理由になるかボケ!俺だってもらう権利あるだろ!」 「んなもんラスキに言えよ」 「……むう、それはそうか。ただ、そう言う話ならお前からも頼めよ」 「あーまーそれぐらいはなー」 だらだらとだべりながら緊張感のない見回りは続く。二人がプールを1/4周ほどしたとき その声は聞こえた。 「くっくっくっくっく……、ようこそ我輩の実験場へ」 ぷわーん みよーん ゆやゆよーん 気の抜ける電子音と共に投げかけられたその声の方に振り向くと、果たして其処には怪人がいた。 明らかに二十歳過ぎてるのに白いスクール水着着て更にその上に直接白衣を着て、更衣室の建物の上で テルミンを弾く片眼鏡の兎耳の怪女。その圧倒的な存在感を感じた二人は即断した。 「帰りがけ、なんか喰ってかえらね?」 「ファミレスか牛丼屋しか開いてないだろ、今の時間」 見なかった事にした。 だが、それが出来ない男もいた。 「くっ!何者だ!」 ちょうどプールの対岸。聞かなきゃ良いのに聞く男がいた。 「ふははははははははは!愚昧!愚劣!痴愚神礼賛!!人に名前を聞く時には、まず自分が名乗るもの ではないかな、ミスターヒーロー?」 「ふっ、紳士たる僕が忘れていたよ。僕の名前はクリフ=ヴァレンタイン。……名探偵だ!」 「すげえ。自分の事、名探偵だって迷い無く言い切ったぞ」 「ツッこむなよ。それよりこの辺からならフェンス越えれそうだぞ」 「なるほど探偵か。ならば我輩も名乗ろう。我輩はプロフェッサー=キャルコパイライト!! 職業はマッドネクシャリスト(総合学者)だ!!」 「マッドネクシャリストだと!?まさかこのプールを巨大ロボットの実験場にするつもりか!!」 「巨大ロボット?そんな少年のロマンは知らないな。我輩の目的はただ一つ!新魔法の実験だ!」 「新魔法……だと……」 「その通り、我輩の新魔法『鰻大量召喚』!!それを行う為に大量の水が必要なのだよ……」 「なんだって、そんな事をしたらプールが鰻風呂になってしまう。そんなところにミツキ君が入ったら ……そんなうれ、じゃない危険な事はさせないぞ!!」 テンションの高い方の二人は、対決姿勢を強め。 「鰻かー。そういや最近食べてないなー」 「スーパーからも姿消したしなー」 テンションの低い方の二人は、既にフェンスを乗り越えて帰ろうとしている。 そんなコントラスト深まる夜のプールに、更に新しい声が響いた。 『そんなことはさせない!!』 何時の間に現われたのか、月光をバックに木の上に立つ5人の人影。その中央の赤い人物がなにやら ポーズを取った。 「学園のプールに鰻を放つなど……中等部男子の授業のときだけにやるべきだ!スピアーレッド!!」 それに続けて残りの四人もポーズを取りながら自己紹介らしきものを進める。 「部活で使うんだから変なことしないで!フィストブルー!!」 「誇りあるもの、尊きものとなる為にッ!炸・裂・推・参!!ナックルイエロー!!」 「そんな実験、鰻の養殖場でやれよ!リボルバーグリーン!!」 「誇りあるもの尊いものになります為に、今宵この時この地に推参。ニードルピンク!!」 『五人揃って――スクールファイヴ!!』 どおん!とポーズを決めた5人の背後で爆発が起きる。 CGもバンクシーンも使わない、アナログな職人の魂がこもった登場シーンだった。 「……ふたりほどまともな事言ったな」 「まあそういう奴も必要だろ」 「むうっ。またしても我輩の邪魔をするかスクールデイズ……じゃなかった、スクールファイヴ! ならば行くがいい、オモチャ獣バイブジャガー。今週こそ奴らを倒すのだ!!」 「みんな、いくぞ!」 『おう!』 「微力ながら、この名探偵も力を貸すよ!」 かくて、宿命のライバル達の戦いが始まる。この戦いに参加できるのは熱い魂を持った者達だけ。 よって、熱い魂の持ち合わせのないサトルとカルロは家路についた。 * * * 後日の話になるが、学園の掲示板にあたらしい学内新聞が貼られた。 見出しは『プールに現われた毒蛇の群れ。逃げ出した軍の生物兵器――――か?』 その記事は三日ほど生徒達の与太話のネタになり、四日目には忘れ去られたという。
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成田剣 出演作品 TV 新くまのプーさん(ネズミ) チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ(ベルチ(#9))※新録版 リトル・マーメイド 実写 ザ・グリード(マムーリ【クリフ・カーティス】)※テレビ朝日版 ジャッジ・ドレッド ※フジテレビ版 ジャングル・ブック* ※テレビ朝日版 ダンク・ブラザース 脱線ファンにご用心(ラーチ、本人【ディオン・サンダース】) 天才マックスの世界(建築家) ハービー 機械じかけのキューピッド* パール・ハーバー(ビリー・トンプソン)※ソフト版 パウダー*(スカイ) ホーカスポーカス(ジェイ)
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クリフトとアリーナへの想いはPart.9 818 名前 737  Mail sage 投稿日 2009/03/20(金) 02 58 44 ID XdA0jXSi0 【アイデンティティ】 勇者は宿のベッドに寝そべり、暗闇の中、目を開けて佇んでいた。 今日、魔族の皇子ピサロが仲間になった。 あの宿敵“デスピサロ”だった男だ。 あいつは俺の父さんと母さん、シンシア、 それに村の人たちを皆殺しにした男だ。 恋人を殺されて修羅に堕ちたという 同情の余地があるのは分かる。 でも、俺にとってはただの憎き殺人鬼でしかない。 マーニャとアリーナとトルネコは親しげに話しかけていたけど・・・。 正直、俺はあいつを仲間としてわだかまりなく接する自信はない。 月明かりが部屋に射し込み、ぼうっと部屋の中が見える。 宿の大部屋にはライアン、トルネコ、ブライ、クリフトと 自分の5人が泊まっている。ピサロは別の部屋だ。 トルネコのいびきが部屋に響いていた。 (やれやれ・・・今夜は眠れそうにないな。) 隣のベッドでクリフトが何度も寝返りをしている。 「・・・クリフト?もしかして起きてるのか?」 「あ!・・・・はい。」クリフトは上半身を起こした。 「少し外で話さないか?」 勇者とクリフトは寝巻きのまま外へ出た。 クリフトは神官服に着替えようとしていたが、 煩わしいので無理矢理そのままの姿でひっぱり出した。 クリフトは周りをキョロキョロ見回している。 「何?」勇者は尋ねる。 「あ、いえ。こんな はしたない姿を姫様に見られやしないかと・・・。」 「プッ。お前、いっつもアリーナのことで頭がいっぱいなんだな。」 クリフトの顔が赤くなる。 「そうですともっ!!私は姫様をお守りするために旅をしているんです!」 しかし途端にクリフトの顔が暗くなる。 「でも、もう私は必要ないかもしれない・・・・。」 「え、なんで?」 「あのピサロという男!ベホマにベホマラーにザオリクに、それにザラキの上位呪文の ザラキーマまで使えるんです!もう私のいる意味がありません・・・・!!」 クリフトは頭を抱えてうつむいてしまった。 「お、おい、そんなことないだろ?ほら、いくらピサロがザラキーマ使えたって、 お前のザラキほど唱えてくれないよ!」 「いささか言葉にトゲを感じるのですが。」 クリフトはこういう時はやけに鋭い。 「いやいや!お前がいなかったらアリーナは誰が守るんだよ。 ピサロはお前みたいに、誰よりも何よりも最優先にアリーナを援護なんかしないぞ!」 クリフトは顔をあげた。 「そうでしょうか?」 「そうだよ。アリーナはイノシシみたいに敵陣に突っ込むしか策がないんだから、 お前が守ってやらなきゃダメだよ!」 クリフトの顔がパッと明るくなった。 「ありがとうございますっ!!勇者さんに話さなければ このまま一人で思い詰めているところでした!」 「・・・・もしかして、お前の眠れなかった理由ってそれなの?」 「はい。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」 なんて単純なんだ。 オレが悩んでるのがバカバカしくなる。 ―――ピサロは黒幕を倒すまで共に戦うと誓ってくれた。 あれこれ深く考えず、とりあえず信じてみてもいいのかもしれない。 「勇者さん?」 「・・・なんか、お前に癒されたよ。」 勇者は目を細め微笑んだ。 「さ、もう帰って寝ようぜ!トルネコのイビキが止んでたらいいんだけど。」 《おわり》
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クリフトのアリーナへの想いは 809 :名前が無い@ただの名無しのようだ:03/05/09 21 09 ID MI9isdmO その日は朝から何故か腹部がしくしくと痛んだ。それでもいつものように朝食を食べ、今日は勇者を相手に稽古を取って(マーニャ以外の相手にはここしばらく負け無しだった。開始直後のメラゾーマで不覚を取ったその朝、この辺でその鼻へし折っとかないとアンタどんどん調子に乗るからね、と彼女は欠伸をしながら寝床へ戻っていった)、勇者を引っ張るようにして旅の歩みを進めた。痛みの理由が分かったのはもう日も暮れ、今日の寝床を探そうかという時だった。薄暗がりの中から現れた魔物の群を文字通り一蹴し、ふうと息をついて皆の方を振り返った。 「アリーナ」 マーニャが眉をひそめて、太ももの、露出した褐色の肌がなめらかな曲線を描いている辺りをとんとんと指で叩くのでアリーナは下方に目をやった。 濃い色のストッキングで目立たないが、赤い染みが確かに広がっている。一度気づけば、もっと奥の部分のぬるりとした感触も明らかに感じられるのだった。 ・・・ああ、また。 アリーナはマーニャにひらと手を振って馬車を目指した。そこには彼女の分身の、占い師がいる。 「ミネア」 果たしてミネアは馬車の中、戦いから戻ったライアンに回復魔法をかけていた。顔を上げたミネアは(こうして見ると姉妹同士本当によく似ている)、無骨な戦士の手前どうにも言葉の続きを出せないでいるアリーナを見ると心得顔で、ごめんなさいちょっと待ってて、と微笑んだ。その対応の仕方にかすかな安堵を覚え、アリーナも曖昧な笑顔で返事をした。 脚がこんなことになっている以上、ぺたりと座り込むわけにもいかない。ぎこちない動きで足を上げ、床に上がると隅の方で所在無さげに棒と立つことになる。馬車の天井は低く、一行ではブライの次に背の低いアリーナでも帽子を被ればわずかに前傾姿勢を取らざるを得なくなる。下腹部に気を使いながら、アリーナは壁にもたれた。それにしても、こんなになるまで気づかなかった辺りなんとかならなかった ものか。鬱々と考えているうちに妙な形に口を曲げているアリーナを見て、ミネアがくすりと笑った。 ライアンがそそくさと馬車を出て行ったのは、女二人の微妙な空気に居辛さを感じたのだろう。その背中を苦笑して見送った後、さて、とミネアは荷袋の口を開けた。アリーナはおずおずと彼女の方に歩み寄るが、その動きも油の切れた機械のようである。 「次の街では買い足さなければね」 言いながら、ミネアは袋の奥から目的のものを取り出した。はいと渡されてアリーナは萎縮する。赤の染みを初めて見たのは3年前。 普通の事だと城の者には教わった。ミネアもマーニャも、何をそんなに嫌な顔をするのだと言う。一方で、処理に必要なものも自分で持っておけ、それならそんな顔をして受け取ることもないだろうとも。しかし何故だか、いやそのわけは自分で先刻承知済みではあるが、その白いふわふわしたものを手元に置いておくのは気が咎めたのだった。 ありがとうと小さな声で言って、アリーナは外へ出た。白いものは服の下に隠して、仲間に見られず事を済ませられる場所を探した。ストッキングも、後で替えなければ。意識するほどにぬめぬめと現実味を帯びてくる感触に、アリーナはひどく惨めな気分になった。 次の朝には、腹部の痛みは重しとなって腹部に響いた。クリフトに肩を叩かれても、ミネアに揺すられても、トルネコのくだらないダジャレで一行全員が固まってしまってもアリーナは起き上がらなかった。毎年痛みが酷くなってくるのよねとぼやいていたのはマーニャだったか。でもそれなら、もう少し段階を踏んで酷くなってくれればいいのにこの突然の鈍痛は。 結局、アリーナ抜きいう珍しい状態で一行が移動を始めた馬車の中、アリーナは毛布にきつくくるまり痛みに耐えた。 これは女だけにある現象なのだという。子供を生むための準備なのだと。いつ生まれてくるか分からない子供のために、一月毎にこんな不快に耐えなければならないとは、子供を生むとはそんなに価値のあることなのだろうか。男ってずるい。自分は痛い思いなんてしないんでしょう?せっくすとかいうものの時だって、痛いのは女だけで、男は自分だけで気持ちよくなれるんだって、そんな私はせっくすなんてしないけれど、絶対しないけれど、何だかすごく不公平な感じがしてならない。それに、そうそれだけじゃなくて、身体のつくりだって。 そう、身体だって。つまりはそこなのだ。 クリフトだって。 夕方ミネアが作ってくれた飲み物は温かく甘い味がして、茶渋に満ちたような身体をよくほぐしてくれた。おそらく一向に回復の兆しを見せないアリーナを見かねて、なにがしかの薬草を使って淹れてくれたのだろう。ようやく食事が出来る程度に回復したのは一行が既に野営の準備に入った頃だった。身体を起こすと腰骨がきしんで、アリーナは顔をしかめた。どうやら今日は魔物のパレードだったらしい。馬車からのそりと顔を出したアリーナを見て、随分と泥にまみれた面々が一斉に振り向いた。 「あ・・・ごめん」 不可視の力に押し戻されるように身を引いたアリーナに、各々慌てて場を取り繕う。真っ先に駆け寄って来たのはクリフトである。 アリーナ様、アリーナ様御身体の方は大丈夫なのですか申し訳御座いませんこのクリフト、本来ならば何をおいても姫様の御傍に控え御身体の御具合を考えなければならなかったところをおめおめと醜態を晒し、いやそんな賤身の言い訳よりも姫様御身体の御具合は、なんと下半身の鈍痛でいらっしゃる、ならば遅ればせながらこのクリフトめが今すぐ薬を、はあ、ミネアさんが、しかし姫様、急いては事を仕損ずるいやいや用心に越したことなし怖れながら・・・ 「大丈夫だから、心配しないで」 軽い頭痛を覚えてアリーナは言った。そんな事を言って、クリフトは何も分かっていないのだ。今のアリーナの状態にしたって、風邪か何かとでも考えているに違いない。風邪でこの状態ならそりゃあさぞかし重い風邪でしょうよ。それにクリフトには、結局私の痛みなんて分かるはずがないんだから。男のクリフトには。 そうですか、と言ってクリフトは引き下がった。さっきまでの勢いはどこへやら、しゅんと頭を垂れてぐちぐちと焚き火をつつき始める。頭痛は治まりそうになかった。 風に当たってくると言ってアリーナは馬車を離れた。頭は今や鐘になったようで、しかも鐘は火事だか何だかとにかく危険らしきものを知らせているらしく内側からがんがんと力任せに叩かれている。ひとつの原因は下腹部の痛み。 もうひとつは脚の付け根の生暖かいぬめり。最後はさっきから後ろにくっついて来るクリフトである。 「姫様」 足元は膝まである硬い植物で覆われていて、寝起きの格好のまま足早に歩を進めるアリーナのふくらはぎに引っ掛かっては赤い爪あとを残していく。そのまま行くと崖だから気をつけてと勇者が言っていた。走っていってまっすぐ落ちればこの痛みもなくなるだろうか? 「姫様」 それもできない。クリフトが後ろにいるから。このまま進めばこの男はやがて姫様そっちは崖ですよ落ちるんですよとか分かりきった事をぐだぐだと述べて、ああそうクリフトだ。全部クリフトが悪いんだ。クリフトは小さい頃からずっと私にくっついてきて、その頃から私より背が高くて、でもそれはクリフトのほうがふたつも年が上だからだと思っていたのに、いつか追いつけると思っていたのに、そう喧嘩になれば私の方が昔から一度も負けたことなかったけど(だってクリフトってば一発で泣いちゃうんだもん)、背丈とか手の大きさとかだけはずっと私が負けたまんまで、私の方が強いのに私の方が小さくて、それは姫様が女性で私が男だからですよなんて笑って言って、私の方が強いのに、私が男だったら絶対クリフトより大きいのに、クリフトなんて私よりよっぽど女っぽいんだから私が男でクリフトが女だったら良かったんだわ。 それなら何も問題無かったし、こんな痛い思いしなくても良かったし、きっともっともっと強くなれたし、そりゃあ今だってこのパーティーじゃ私に勝てる奴なんていないけど(マーニャのあれは不意打ち)、でもきっと、もっと、もっと。 「姫・・・」 「うるさいっ!」 小さな風が起きる程の勢いで振り返り、アリーナは一喝した。クリフトはびくりと身体を震わせたが、一瞬目を閉じて(どうやら心を落ち着けようとしたのだろう)姿勢を正すとアリーナに一歩歩み寄った。 「そちらは崖です、落ちたら怪我ではすみませんよ」 アリーナはため息をついた。頭の鐘は、もうひび割れそうになりながらひたすらがなりたてている。 「そんなことしない」 「脚も傷だらけになってしまわれて・・・アリーナ様も女性なんですから、」 もっとご自分の御身体を大切に、と続くはずだった言葉は口から出なかった。 本日初めてのアリーナの回し蹴りは、がんがんと鳴り響く頭痛にも影響されること無く的確にクリフトの脇腹を捉えた。不意打ちを食らったクリフトは、受身も取れずに背中を強打して転がった。そのままうずくまって呻き声を漏らす。醜い。 アリーナは心中でそう吐き捨てて、未だ悶絶しているクリフトにつかつかと歩み寄った。 私の方が、もっと。 「立って」 冷たく言い放つと、クリフトはよろよろと立ち上がり、痩せた身体を折り屈めてアリーナを見た。 「だったら私は男でいいわ。クリフトが女になればいいじゃない」 「姫・・・」 「女だってベホマもスクルトも唱えられるし、剣だって使えるでしょう?別に男でなくてもいいよね」 脇腹を押さえるクリフトの左手を取り、その手首をあらん限りの力を込めて握り締める。痛みにきっと叫び声を上げるだろうと思われたクリフトは、しかし口の形のみをひめ、と僅かに動かしただけで何も言わなかった。 「男じゃなくても、いいでしょう?いらないでしょう?ちゃんと使えやしないでしょう?男の、」 私だって。 「身体」 きっと。 「いらないなら、私にくれればいいじゃない。使えないなら、私ならもっとずっと有効に使ってあげられるのに、代わりに私の身体をあげる。クリフトにあげる、あげる、こんな、」 握った手を、アリーナは自分の乳房に導いて乱暴に押し付けた。今度こそ、クリフトは呻き声を上げた。それは痛みによるものではなかったが、そんなことはどうでも良かった。 「こんな身体、あげるからねえ、私に、その身体を、ちょうだいよ・・・」 抱いてとアリーナは言った。どう言えば良いのか知らなかったから、多分伝わるだろうと思った言葉を吐き出した。クリフトは小さく身体を震わせ、アリーナの乳房に押し当てられた手を引き戻そうとしたが、アリーナがそれを許さなかった。 ひめ、さま。 クリフトの上ずった声を遠く聞く。アリーナの頭痛はもう痛みを越えて、吹きすさぶ風のような一連の音となって頭蓋骨から項を渡り、指先までを痺れさせていた。その痺れは指が掴むクリフトの手首に行き着いて、発光すらしそうな熱となって放出されていた。 アリーナは掴んだクリフトの手をぐいと引いて、自分の身体もろとも木の根元に倒れこんだ。もう一度、同じ言葉を。クリフトがふるふると首を横に振るが、構うものか。世間では、男はこうなったら激情に負けて突っ走ってしまうということだから、別にそれで構わない。 己ではそうと知らずに眉を歪めて、抱いてよともう一度。今度は強く。自分の上に被さって、いつの間にやら昇っていた月を背後に負ったクリフトの瞳を射抜くように見る。いつもの神官帽は取ってやった。ベルトも外してやらねば駄目だろうか?情けない。 世間では、こうゆう行為の事を交わるとか、ひとつになるとかゆうのだと聞く。それなら、交わってひとつに溶けた魂が、またふたつに分かれる時、強く願えば帰り道を外れて、相手の身体に入ることも可能ではないか?情事とそれに続く眠りの後、目覚めたら目の前に自分がいて、そういう自分の心はクリフトの身体の中にある・・・そんな馬鹿げた絵が、今のアリーナにはある程度以上の真実味を帯びて語りかけてくるのだ。 ふうと息をついて目を閉じた瞬間、強い力で身体を引き起こされた。 同時に意識も現実へ引き戻され、きょとんとクリフトを見つめてしまう。月の光に揺らいでいたはずのクリフトの眼は、迷いを残しながらも力をもってアリーナを捉えていた。 「あ、アリーナ様は、ご自分が女性であられることに、苦痛を感じておいでですか」 毅然とした口調になるよう努めているのだろうが、どうにも吃ってしまう。 アリーナは半ば反射的にこくりと頷いた。クリフトの眉がきゅっと歪んだ。 「しかし、しかし私は、こう思います。アリーナ様が、女性でありながら男にも勝る類稀な才を神からお授かりになってお生まれになったのは、きっと何かの意味のあることだと。同じく、私が男であり、マーニャさんやミネアさんが女性であることにもです」 アリーナの肩を掴んで支えるその手が、ぶるぶると震えている。 「アリーナ様は確かに、女性であられることに不便を感じていらっしゃるようです。ですがきっと、それは、なんと言うか、間違いではありませんが、その」 「間違・・・」 自分の苦痛を否定する言葉に反応しかけたアリーナの唇を、クリフトは口付けで塞いだ。やがて離れたその頬が赤く燃えているのは、月明かりに照らされてはっきり浮かび上がってしまっていた。 「ア、あアリーナ様」 吃りがさっきより酷くなっている。 「お男と女は、こうゆう風にするものです。ささ先ほどアリーナ様が私に命じられたようなことも、するものです。あ、いや、お女同士とか男同士とかそういったことは、また個人の自由ではありますが」 今そんなことはどうでもいいだろうというような事を、クリフトはしどろもどろになって言い繕っている。半ば放心しながらそれを客観的に観察して、クリフトらしいと苦笑する自分をアリーナは自覚していた。 「ですからええと、私は、アリーナ様が、自分が女性であられることを良かったと、少しでも、か感じていただければと思います。そのために、男である私が、・・・助けになれるのなら」 最後の言葉はほとんど聞き取れなかった。 「・・・クリフト」 「は、はい?」 「何言ってるのかよくわからない」 一気に脱力したように見えたクリフトの髪にアリーナは手をやった。昼間の戦いで、随分苦労したのだろう。泥と、血にまみれている。頬も、顎も、首も。疲労はほぼ極限に達していた。それはクリフトも同じではないだろうか。それでも、アリーナは笑顔を向けた。多分、泣き顔のように見えただろう。 「でも、わかったことにする。するから」 女であることが嫌だった。それは駄目だとクリフトは言う。クリフトとこんな風になることを望んではいなかった。 けれど、クリフトはとても優しいので。 彼女の名を呼ぶので。 クリフトの手や、服や、全てがみるみる赤く染まっていくのを見てアリーナは泣いた。流れて落ちる涙をせき止めるために、必死でクリフトの身体にしがみつかねばならなかった。自分より一回り大きな手のひらが髪を梳く。 涙はどうしても止まらなかった。 クリフトが、彼女の名を呼ぶので。何度も。 何度も。 ぐったりと横たわった身体で、アリーナは仰向けに空を仰いでいた。月の光が照らすのは彼女自身である。結局、魂は入れ代わったりなどしなかった。アリーナはアリーナのままで、何も変わりはしなかった。 横ではクリフトが、じっと眼を閉じている。寝ているわけではなさそうだ。 脚に絡みつくどろどろとしたものは、きっと目にすれば赤いのだろう。起き上がってなんとかしなければと思いはしたが、不思議と不快感は無かった。頭の中で唸っていた風は、いつしか静かになっている。
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クリフォート・ゲニウス(OCG) リンク・効果モンスター リンク2/地属性/機械族/攻1800 【リンクマーカー:左下/右下】 機械族モンスター2体 (1):リンク召喚したこのカードは魔法・罠カードの効果を受けず このカード以外のリンクモンスターが発動した効果も受けない。 (2):1ターンに1度、このカード以外の、 自分及び相手フィールドの表側表示のカードを1枚ずつ対象として発動できる。 そのカード2枚の効果をターン終了時まで無効にする。 (3):このカードのリンク先にモンスター2体が同時に特殊召喚された時に発動できる。 デッキからレベル5以上の機械族モンスター1体を手札に加える。 クリフォート デッキサーチ モンスター効果無効 モンスター効果耐性 リンクモンスター 地属性 機械族 機械族補助 罠無効 罠耐性 魔法無効 魔法耐性
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【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part13【アリクリ】 142 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2013/06/01(土) 23 01 10.47 ID ad8IA2MI0 山麓です。解除祝いの『クリフト、ザオリクを唱える』 初ザオリクはこんな感じかと思った。 「姫様!!」 嫌な音と共にブライの小さな体が地面に叩きつけられた。それは一瞬の出来事だった。 対峙している魔物に珍しく苦闘していたアリーナは、珍しく背後からの新手の魔物の攻撃に気づいていなかった。その魔物の攻撃がアリーナに振り下ろされる瞬間、ブライがアリーナを庇うように魔物との間に入り、その攻撃を己の体を盾に受け止めた結果だった。 「ブライ様!!」 「ブライィーーーーー!!」 魔物を仕留めたアリーナは背後の異様な気配に振り返った。そしてアリーナの目に映ったのは、見るも無残な姿になった老魔術師の姿だった。 「いやぁ! 」 いつものアリーナとは違った悲鳴のような声と、震えるように立ち尽くし、子供のようにイヤイヤする姿に、クリフトは居ても立ってもいられず、馬車を飛び出した。 「姫様」 飛び出し、手土産と言わんばかりに、ブライを叩きつけた魔物を切り捨て、地面に縫い止めると、アリーナに駆け寄った。 「ブライが……、ブライが…… 」 パーン メダパニを受け、子供が泣きじゃくるように、錯乱し荒れ狂っているアリーナの頬をクリフトは叩いた後、強く抱きしめた。 「落ち着いて下さい姫様。姫様は一国の姫、忠臣の犠牲に動揺してはなりません。そしてブライ様は私が生き還らせます故に……、信じて下さい」 「ク…‥リ…フ…ト…」 何が起きたか分からない様子のアリーナだったが、クリフトの最後の「信じて下さい」の言葉に己を取り戻した。 (ザオラルでは厳しい。ザオラルの上位ザオリク……) クリフトはブライの肉体を検分し、厳しい状況である事はすぐ分かった。 (この私に……、出来るのか。ザオリクが……) 思案の果てに目を瞑り、開けた視線がアリーナの不安な瞳とぶつかった。その瞳を見た瞬間、クリフトは腹を決めた。 「聖水を下さい。場を清めます」 「あっ、はい」 慌てて馬車にから、トルネコが聖水を持って来て、クリフトに渡した。クリフトはその中身をブライの周囲に振りまいた。 「陰府より向かえし魂よ、こちらへお戻り下さい。ザオリク」 ロザリオを握りしめて、クリフトは祈りを捧げた。 (あっ、引きずられる) クリフトは普段のより奪われる精気に一瞬よろめきそうになった。しかし背後から抱きしめられる感触を感じとどまった。 「クリフト、信じてるから――」 (姫様……) ブライの瞼が開いたのは、それからまもなくだった。
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クリフトとアリーナの想いはPart8 561 :ゴッドサイド 1/3:2008/02/05(火) 15 23 51 ID yjPzvYs/0 夕食までの自由時間、少し街を見て歩くことにした。 このところ野宿が続いたから、賑やかな町並みをみて歩くのは楽しい。 おまけに巡礼者の多いこの街はおもしろそうな土産物屋がたくさんある。 綺麗な石のついたお守りやら、アクセサリーやら。 「あ、見てみて。クリフト!」 ある店先にちょっと素敵なペンダントを見つけて、隣の緑の腕をひっぱった。 「は?」 「え?」 いつものように見上げた先には...クリフトとは似ても似つかぬゴツイ顔のおじさん。 「すっすみません。人違いです。」 愛想笑いでその場を離れる。 あ~びっくりした。同じような服でもぜんぜん違って見えるのね。 そういえば土地柄か神官服姿の人が多い。 いけないいけない。気をつけないと。 それにしてもクリフトは... きょろきょろと見回すと隣の店先に見慣れた神官服が。 でも、待って。 また違うかもしれないから、よく確かめてないと... うん。大丈夫。今度は本物...って、え? 飛びつこうとした瞬間振り返った人物はクリフトよりもっとわかい少年だった。 だんだん不安になってくる。 みんな似たような服を着て、みんなクリフトのマネマネみたい。 もしかして私は悪い夢を見ていて、本物はどこにもいないんじゃ... あたりまえのように近くにいた大切な人がいなくなる。 無人のサントハイム城が頭に浮かんだ。 ぶんぶん!悪い考えを吹き飛ばすように首を振る。 「~~~クリフト!!」 「はい!」 すぐ近くで即答。 って、ええー??? ほんとにすぐ近くで「どうしました?」と笑顔のクリフト。 隣にはじいもいる。 なによ~!すぐ近くにいたんじゃない。 ほっとしたら、なんだか腹が立ってきた。 一瞬感じた不安がばかみたいで、照れくさくて。 耳まで赤く染まってるのを隠すように、クリフトの腕にしがみついた。 「ひ...姫さま??」 おたおたおた。 クリフトがあわててるのが布越しにわかる。 「クリフトみたいな人が たくさん いるわね。間違えないようにしなきゃ!」 だから。この街ではこうしてるわ。 そう続けて、私はクリフトの腕を取って人混みの中を歩き出した。
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登録日:2010/06/15(火) 22 36 37 更新日:2024/01/16 Tue 18 49 34NEW! 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 D OG SRW あまり報われない ギュネイ ジョシュア・ラドクリフ ジョッシュ スパロボ スパロボ主人公 スーパーロボット大戦 バンプレストオリジナル 中村悠一 主人公 兄貴 分の悪い賭けをするつもりはない 助手 第2次OG 義兄 苦労人 鉄也 鏡俊也 青髪 分の悪い賭けをする気はない! ここは、確実に仕留める!! スーパーロボット大戦Dの男主人公。愛称はジョッシュ。 CV 中村悠一(第2次OG以降 BGM:Desire(通常)、Drumfire(必殺技) 年齢は18歳。青みがかった髪と、無愛想に見える表情が特徴の青年。 南極の遺跡を研究する集団、リ・テクノロジストの一人で、南極で父親のフェリオと義理の妹のクリアーナ・リムスカヤ(リム)と一緒に遺跡を研究し、そのデータから作られたロボットでインベーダーと戦っていた。 しかし父親がリムを実験台にしたことに反発し、リムを連れて傭兵稼業をしていた。 クリフォード・ガイギャクスに呼ばれて南極に戻った日にインベーダーが襲来し、遺跡が揺れだす。 そこから彼の運命は変わっていく… 【性格】 18歳の割には非常に老成した性格。よく言えば落ち着いており、悪く言えばジジ臭い。 ちなみに、同年代の主人公としてはマサキ・アンドーやリュウセイ・ダテなどがいるが、彼らと比べるとかなり大人びている。 項目冒頭の台詞から某賭博師との対比で語られることもあるが、行動パターンは同じく突撃型。 むしろ自爆する基地に突撃したりと分の悪さではこっちに軍配が上がる。 自分のことをあまり顧みない面もあり、自分から苦労を背負いこんでしまう事もある。生まれついての苦労性なのだろう。 とはいえ、彼も最初から落ち着いていた訳ではなく、かつては酷く荒れていた時期もあったらしい。 リム以外のあらゆる人間に敵意を向けていたらしいので、相当な物だったのだろう。 ……もっとも、親父がアレでは無理がない気もするが。 そんな冷静な彼だが、鉄也に叱咤するなど、熱血な面もある。 また、家族絡みになると冷静さを失ったり意地になったりするなど、年相応と言える部分も存在する。 ラキとの絡みがあるので忘れがちだが、リムへの対応はぶっちゃけシスコン気味である。 D地上ルートではリムと再会した嬉しさで紹介して回ったら鉄也に「お前がそんなに嬉しそう顔してるのを初めて見た」と突っ込まれ、 ラキのフラグが立っていない場合は「リム…お前に会いたい」とか心の中でぶっちゃけちゃう。 立ち絵が出たときは、見た目で「普通すぎる」だの「クール系」だの言われていた。あと、顔グラでは「死んだ魚のような目」と言われたり。 (見た目が似ていることや、富野節めいた台詞回しを多用するためか『ブレンパワード』の伊佐未勇ともよく比較される) 性格設定も人付き合いが苦手だというものだったが、実際は面倒見がよく優しいお兄さん的なキャラ。 版権キャラとの絡みはオリジナルのキャラの中ではトップクラスであり、作中のほぼ全員の版権キャラと関わりを持ち、中々絡みにくいガンダムW勢とも絡んでしまう兄貴的なキャラクターである。 版権キャラの中でも絡みにくい部類のギュネイ・ガスや剣鉄也でさえ親友と言える関係を築く辺り、彼の人となりがうかがえる。 プロギュネ。 俺のケツにグレートブースターを(ry また傭兵稼業をしていたため顔が広く、リガ・ミリティアもタワーもガンダムWチームも顔見知り。 インベーダーとの戦いでかなりの死線を潜ってきた為、機動兵器の操縦技能も非常に高い。 ガムリン木崎をもってして、「ジョシュア程のパイロット」と語らせる程の腕を持つ。 妹のリムは天才型だが、彼は努力の人なのだろう。 『D』自体あまりメジャーとは言い難い作品だが、従来の未熟さが目立つ主人公達とは一味違った彼のキャラクターを好むファンは地味に多い。 版権キャラを押しのけるほど出しゃばらず、空気になるほど目立たないわけでもないバランスの良さはオリジナル主人公の理想像に最も近いと評価されている。 また、相方のグラキエースもかなりコアなファン層を持つ。 【経歴(『D』本編)】 インベーダーと戦いながら各地を転々としていたが、本編開始時にクリフォード・ガイギャクスに呼ばれ南極へ赴く。 そこで父フェリオがファブラ・フォレースと呼ばれる「異世界の門」を開いてしまった事でルイーナが現出。 父の犯した過ちに苦悩しつつも、ジョッシュはルイーナ達と戦っていく事になる。 戦いの中で、ルイーナの幹部メリオルエッセの一人グラキエース(ラキ)と出会い、機体のシステムの暴走で彼女と感覚を共有することになる。 彼女を理解するうちに助けようと奮闘し、ブルースウェアの一員として共に戦う道を選択する。 尚、ラキを仲間にするには「説得」が必要なので、問答無用で撃墜する事も可能。その場合は話が変わってくる。 (ジェアンやデアの場合はリムがパワーアップ無しの機体のまま戦わされるので、ラキを仲間にしない理由はない。 だが、フォルテギガスを使用する場合、リムとの二人乗りにした方が強力…が、そんな非道は行わないのが正義のヒーローというものだ) ルイーナの長ペルフェクティオが父フェリオの身体を利用している事を知って思い悩むが、ジョッシュは地球を守る為、ラキの居るべき場所を作る為、そして父を解放する為に戦う事を決意。 激しい戦いの末、ペルフェクティオを撃破する事に成功した。 エピローグでは、反抗していた父への想いがジョッシュの口から語られる。 また、遺伝子の欠陥の為に余命3年と宣告されたグラキエースとは、彼女の命が尽きる時まで一緒に過ごすと約束した。最後まで報われない苦労性な男である。 まぁ、3年あれば子どもの1人や2r(ry いずれ愛する者に先立たれる事を宿命づけられた彼が、本当に救われる日は果たして訪れるのだろうか… 【OGシリーズ】 元々熟練パイロットだったDとは異なり、フェリオの要望でテストパイロットを務めているという設定に変更。南極の騒動で乗らざるをえなかったとジョッシュも語っている。 絡みのあるキャラがヒューゴ、エクセレン、カイ、レフィーナなど彼より年長者が多く、とりわけ同時期に教導隊預かりになるヒューゴとは絡みが多い。 第2次OGではカリカリしているイメージが強かったが、OGMDでは後輩としてトーヤが加入したことで、先輩分として上手くサポートしたり、 復讐に囚われていたカルヴィナに対してもリム特製ココアを上手く使って抑え込んだり、Dの頃に近い面倒見の良さを発揮している。 (イルムからも「お前さんは良いカウンセラーになれる」と太鼓判を押された) ◇搭乗機(カッコ内は物語後半の機体) ●エール・シュヴァリアー(ジェアン・シュヴァリアー) ●ブランシュネージュ(デア・ブランシュネージュ) ●ガナドゥール(フォルテギガス) ●ストレーガ(フォルテギガス) イメージ的には青のエルシュバやガナドゥールに乗せる人が多い。 ステータスはリムと比べ格闘と防御に優れているので特別な思い入れが無い限りはエルシュバかストレーガを選ぶと良いだろう。 白雪姫は後継機までコンボが持ち腐れになるのであまりおすすめできない。 ちなみにジョシュアとギュネイの名シーンがこちら。 「チッ、貴様までアムロアムロかよ」 「見てたのか。怒るなよ、ギュネイ。あんたはオレの命の恩人で、頼りになるパイロットだと思っている。友人ともな。それじゃいけないのか?」 「…あの異変以来、全てが狂いっぱなしなんだ。クェスが来るまではずっと1人でやってきたし、研究所出身って事で他の連中にはやっかまれてな。俺は、別にそれでもよかった。研究所で強化してもらって、俺は他と違うからな。それが、いまじゃめちゃくちゃだ」 「焦ってんだ」 「何?」 「オレと同じさ。どうしたらいいか、何をしたらいいか、わからなくて、焦ってる。状況の変化に対応できてない」 「…俺は、ニュータイプだ」 「ニュータイプも人ってことだろ?」 なんという名カウンセラー。 彼なら某カテゴリーFも某変態仮面も某ミストさんもなだめてしまえそうである。 【台詞】 「パターンは読めた。ならさ!」 「人間は、死ぬのが怖い。誰だって、死にたくないんだ。お前にも…いつかわかる」 「オレが…作る。君の…」 「親父…いま解放してやる。奪われたあんたの体、オレが消してやる!」 「オレは…君につきあうよ。ずっと」 「そんなにオレやウッソたちが信用できないのか?戦いにのめりこんでない人間は、頼りにならないのか?自分たちだけで戦っているような面しやがって!」 「ゲッター線の亡者め・・・これ以上汚染などさせない!」 分の悪い編集をする気はない!ここは、確実に追記修正する!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] OG発売のずっと前から普通に評価高かったし項目もこんなんだったよ というかD発売当初からをギュネイを親友にしたりウッソとオデロをさり気なく仲直りするように立ち回ったりと結構話題になったし、むしろOGでそういう描写が目立たなくなったことを残念に思ってる人すらいるよ -- 名無しさん (2013-12-27 10 21 10) Dでは歳の割に達観した苦労人って感じだったけど、OGは歳相応の少しひねた少年って感じだったな。リムとかラキ関連のイベントじゃギャグ顔もしてるし、D時代のクールすぎるイメージは若干薄まった。 -- 名無しさん (2013-12-27 10 39 39) ラングレンの方のジョシュアはちょっと弟子入りしてみたらいいんじゃないかな?(適当) -- 名無しさん (2013-12-27 11 34 54) ↑ウザイけどあっちはあっちでいい子だろうが! ウザイけど。 -- 名無しさん (2013-12-27 11 52 55) 言い回しがいちいちトミノっぽいのが癖になる -- 名無しさん (2014-01-17 12 43 42) ↑×4 Dのあれだけ切羽詰まった余裕のない世界観じゃああなっても仕方がない。OGは基本的にあそこまで危機的状況じゃなかったもん。つか声が同じこともあってか最近某ギャルゲー主人公に見えて仕方がない。 -- 名無しさん (2014-03-09 21 23 26) 俺の妹が二重人格な訳がない -- 名無しさん (2014-07-18 19 37 31) ↑実際違う。2つの魂が1つの肉体に宿ってるから心が分裂した二重人格とは別物・・・ジョッシュは面倒だから単に戦争のショックで二重人格になったで済ませてるが。 -- 名無しさん (2014-07-18 20 25 42) ↑4ならさ!とかな -- 名無しさん (2014-08-05 20 26 02) スパロボオリキャラで一番好きです。 いつも周りに気を遣いながらも、静かに燃える熱い魂を持つ漢。 -- 名無しさん (2014-08-12 01 18 08) 親友とシャワーシーンとは腐ランカがビビデバビデブーになるな -- 名無しさん (2014-10-31 07 41 24) OG参戦までよく「CV白鳥哲」と言われてた人、と言うか今も聞く -- 名無しさん (2015-07-14 18 43 51) Jが参戦するって事はステイシスヘッドがあるから、今回のジョッシュはガチで「遥かな時に、すべてをかけて」ENDになる可能性あるよな… -- 名無しさん (2016-02-12 22 38 58) MDで続投するからよき兄貴分な描写あるかもね -- 名無しさん (2016-06-07 16 45 09) 繧キ繝・繝ウ繝代ユ繧」繧「縺後し繧、繝医Ο繝ウ縺ョ邁。逡・蛹悶さ繝斐?蜩√→縺九け繝ュ繧ケ繧ェ繝シ繝舌?縺ォ繧らィ九′譛峨k縺槭が繧、繧」竅会ク -- 名無しさん (2016-07-04 23 06 00) MDで不可能と思われた○○の破壊に成功したことでラキの寿命の問題も前向きに考えられるようになったな -- 名無しさん (2016-07-05 13 51 42) 今回MDでラースエイレムの設定を見直したせいでステイシスベッドの設定がなくなった模様、でも最後の出来事で前向きになれたのは良い事だ -- 名無しさん (2016-07-05 14 04 49) 今回はトーヤの兄貴分な感じだったな。カルヴィナとの絡みでもカウンセラーっぷりが光ってた -- 名無しさん (2016-07-14 14 00 36) この人、カウンセラーどころか精神評論家になってもおかしくないくらいMDでフォローが上手くなってたよ。ていうか年が10代っていうのがマジで信じられん。スタッフ最初の設定で、年を間違えたんじゃねえだろうな? -- 名無しさん (2016-08-07 11 33 47) OG(も相当っちゃ相当だが)はともかく、Dの地球はゲッター線汚染してインベーダーが闊歩してリガ・ミリティアとベスパが争い合ってる世界だからね。そんな世界で親父のアレっぷりに絶望して南極を飛び出し、妹を養うために愛機だけを頼りに傭兵をやっているというのがD開始時点のジョッシュなのでああなってしまったのも仕方ないと思えるところがある -- 名無しさん (2017-02-09 12 07 41) めちゃくちゃな環境って社会レベルでは無条件に悪いことだけど個人レベルでは成熟が促されることもあるそうなので多分ジョッシュはそういうタイプ -- 名無しさん (2017-05-01 17 24 44) イルムも言ってたが、カウンセラーは絶対天職だよなぁ…w -- 名無しさん (2017-08-19 09 25 23) ジョシュアの人や状況への感性は富野由悠季氏の描写する人物像に通じる。ゆえに、よく馴染む -- 名無しさん (2019-02-25 16 55 25) ニュータイプも人ってことだろ、ってセリフは全ての強化人間、ニュータイプの心を溶かすんじゃないだろうか。 -- 名無しさん (2020-06-16 11 07 48) なんだかシーブックみたい。宇宙世紀のネームドキャラって拗らせた人が多いから(でも社会情勢が酷いからしょうがないのよ)、こういう人がいるとほっとする -- 名無しさん (2021-05-08 23 54 03) 名前 コメント
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【脳筋】クリフトとアリーナの想いは3【ヘタレ】 79 :1/5:05/02/27 02 42 34 ID /lqs+HkT 薄暗い部屋の中。 髪を撫でられる感触がして、アリーナは重たげに目を開けた。 どうやら少し眠ってしまっていたらしい。 まだ夜中であると判り、ほっとする。外は、満月。 部屋にはカーテン越しに優しい月の光が入ってきている。 視線を移すと、そこには最愛の人の顔があった。 「クリフト…」 「姫様」 視線が重なる。 そして、唇に優しい感触。 ――こんな日が、本当に来るなんて。 半年前、初めて想いを伝えたあの日も、今日と同じ満月だった。 冒険か終わり、消えていた人々がこのサントハイムの城に戻ってきて間もない頃。 意を決して扉をノックした、あの日。 ――クリフト…私、あなたのことが好き。 旅のさなか、彼が倒れたときに気付いた自分の本当の気持ち。 それだけを言うのに、どれだけの勇気を要しただろう。 ――私もです。ずっとお慕い申しておりました。愛しております、アリーナ様。 彼はそういって、優しく抱きしめてくれた。恐れや不安を打ち消すように。 そして、初めてのキス。 それ以上、言葉は要らなかった。 それ以来、月に一度はこうして人目を忍んで逢瀬を重ねている。 朝が来れば、また王女と臣下に戻らなければならない。 恋人同士でいられるのは、夜明けまでのわずかな時間だけ。 こうして過ごす時間が、クリフトとの時間がいとおしい。 「ずっとこうしていられればいいのにな」 言ってしまって、はっとなる。 初めて意識してしまった。今まで触れないようにしてきた可能性を。 彼と二度とこうして会うことすらできなくなるかも知れないということを。 一国の王女である以上、彼と結ばれることは許されないこと。 この恋が知られてしまえば、たちどころに引き裂かれてしまうだろう。 クリフトとの永久の断絶…想像したくはないが、脳裏を過ぎってしまう。 アリーナの顔に影が差したのを、彼は見逃さなかった。 「どうなさいました、姫様」 「…ううん、なんでもないから気にしないで」 「いえ、私に話してください。どんなことでもいいんです」 彼は目の前の恋人を真っ直ぐに見つめながら言った。 この瞳に、嘘はつけない。 「…本当にたいしたことではないの。ただ…その… 私って、王女として生まれてこなかったほうがよかったのかな、と思って。 だってほら、私が王女なんかじゃなければ、クリフトだって私のために こんなに苦労しなくたってよかったわけじゃない。 それに…王族とかじゃなきゃもしこのことが他の誰かに知られてしまっても そのことであなたと会えなくなったりはしないじゃない…」 いつの間にか泣いてしまっていたらしい。クリフトがが涙をそっと拭いてくれた。 「…私は、神に感謝しております。このような運命を私に与えてくださったことを。 あなたが王女様だったからこそ、私は姫様とめぐり合うことができたのです。 そのうえ、今こうして思いを通じ合わせることまでできたのです。 …私はこれ以上、何も望んではおりません」 「でも…クリフトは怖くないの?」 「姫様…」 「私…クリフトを失うのが怖い。 もし今クリフトと引き離されてしまったら、と思うと…」 不意に、クリフトはアリーナを強く抱きしめた。 「姫様…正直、私も怖いのです。しかしこれだけは約束させてください。 たとえどのような時であっても、私は姫様のお傍にいるということを…」 そっとささやく。その一言が不安が瞬く間に溶かしていく。 これがクリフトの強さ。この強さに、今までずっと守られてきたんだと思う。 「クリフト…」 アリーナもクリフトの背中に手を回す。 「好き」 「私もです、姫様」 腕に力が込められる。優しく、それでいてしっかりと。 全身にクリフトの暖かさが伝わってくる。 夜が明けるまで、この温もりに身を委ねていたい…せめて今夜だけは。 いつしか不安は完全にかき消えていた。
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クリフトとアリーナの想いはPart10 66 名前 くちぶえ 1/4  Mail sage 投稿日 2009/06/14(日) 23 43 56 ID Pc3ZinwL0 「うーん……、次の町に向かうには時間的に中途半端だな。 よし、あとは夕方まで適当に敵と戦ってお金でも稼ぐか」 とある平原で勇者一行は戦陣を立て、ずっと戦闘に励んでいた。 「全員作戦変更!『ガンガンいこうぜ』!!」 勇者(男)の声が草原に響きわたる。 そんな勇者達の様子を馬車の中から不機嫌そうな表情で 恨めしそうに眺めている少女がいた。 「……いいなぁ、全員で『ガンガンいこうぜ』だなんて」 サントハイムの王女アリーナである。 「まぁまぁ、イメージトレーニングも立派なトレーニングの内の一つですよ」 同じく馬車の中で待機中のクリフトがアリーナを優しくなだめた。 アリーナはぷーっと頬をふくらます。 「戦闘に関しては、実戦に勝るものはないわよ」 馬車の中にいるのはアリーナ、クリフト、ブライ、それに恒例のトルネコである。 ブライは隅の方で横たわって昼寝をし、トルネコは道具の手入れをしていた。 アリーナはすくっと立ち上がる。 「あぁっもう!何で今日に限って私が馬車なのかしら!? 今日はずっと実戦だったのに!!腕がなまっちゃうじゃないっ」 アリーナは狭い馬車内でパンチやキックの素振りを始めた。 華麗な回し蹴りを披露すると、 足先が所狭しと立てかけてある武器に当たってしまった。 「あっ」 ドミノ式に次々と武器が倒れていく。 最後に、眠っているブライの頭をめがけてバトルアックスが豪快に倒れていった。 「ぶぎゃっ!!」 ブライは潰されたような、情けない悲鳴をあげた。 「なっ、なっ!?何事ですじゃ!!」 事態を把握しようと慌ててバトルアックスを跳ね除け、身体を起こす。 アリーナとクリフトは罰の悪そうな、強張った表情でブライを見つめていた。 「じ、じい………その、大丈夫?」 「ブライ様、良かったですね。刃の部分でなくて」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 気まずい沈黙。 ブライは鋭い眼力でアリーナを睨みつけた。 「……姫様の仕業じゃな?」 安眠を妨害されたブライは酷く不機嫌であった。 アリーナはブライにくどくど説教を受けていた。 クリフトはただ黙ってその様子を見ている。 よほど理不尽な時でないと、クリフトは仲裁に入ってくれないのだ。 (…………今日は厄日だわ) 「あっ、勇者!」 馬車の外から手を伸ばして道具袋からアイテムを取り出そうとする勇者に アリーナはすかさず声をかけた。 「姫!まだ話は終わっておりませぬぞ!!」 ブライを無視してアリーナは小声で勇者に詰め寄る。 「「ねえ、よりによってどうしてこのメンツで馬車なのよ!?」」 「「なんで?たまにはいいだろ。チーム・サントハイムIN馬車! まぁ、トルネコもいるけど……」」 「「ちっともよくないわよ!! ブライにお小言 言われるし、クリフトは助けてくれないし……」」 「「まぁそれも修行の一貫だろ。がんばれ」」 勇者は笑顔でさらりとかわした。 アリーナが異議を申し立てようとすると、勇者の声で遮られた。 「あ、そうだ。トルネコ!“くちぶえ”でモンスター呼んでくれない?」 「はいはい、いいですよ」 トルネコは立ち上がり、荷台の先頭に立って口笛を吹いた。 なんとも奇妙な音色である。 すると、どこからともなくモンスターが現れた。 「ありがとう、トルネコ! よし、みんな敵だぞー!」 勇者は戦闘に出て行った。 「………いいわね、それ。」 アリーナは目を光らせる。 「自分から出向かなくても敵が来てくれるなんて最高じゃない! ねえトルネコ、私にもそれ教えて!!」 「いいですよ」 「コラ!!このむさくるしいメタボが!姫様に余計なことを教えるでない!!」 ブライの怒号が飛ぶ。 「も~~うるさいわね。ブライは黙ってなさい!!」 アリーナは目下に転がっていたまどろみの剣を手に取り、くるくると回す。 ブライはころっと眠りについてしまった。 「………目覚めた後で余計に叱られませんか?」 クリフトが心配そうに声をかける。 「大丈夫よ。絶対逃げ切るから」 トルネコの妙技“くちぶえ”講座が始まった。 「ええと、まず、 アリーナさんは口笛吹けます?」 アリーナは黙って首を横に振った。 「ありゃりゃ。じゃあまずはそれからですね」 と、その時 馬車の外から勇者の声がした。 「トルネコー!もう一回頼むー!」 「はい、ただいまー!」 トルネコが外でくちぶえを吹いている間、アリーナはクリフトに声をかけた。 「クリフトは口笛吹ける?」 「はい。一応は」 「ずるい!ぬけがけじゃない」 「ぬけがけだなんて、そんな」 「私が口笛練習しようとすると、お城のみんなが怒って止めたのよ。 『そんなの出来るようになる必要ない』って…… クリフトが良くて私がダメなんておかしいわ」 「それは私と姫様では……………」 (身分が違いますから) そう言おうとしたが、なんとなくこの旅の最中だけは 『身分』ということを意識したくなくて言葉を途中で切ってしまった。 「まぁいいわ。ね、クリフト吹いてみて!」 クリフトは口笛を吹いた。 昔一緒に歌った、賛美歌のメロディだ。 あの頃はクリフトの声も高くて、同じパートを歌っていた。 二人の脳内には同じ情景が甦っていた。 アリーナも一緒に口笛を吹こうと 唇を突き立ててみる。 「……………プッ」クリフトは吹き出した。 「ちょっと!なんで笑うの!」 アリーナの不器用に唇を突き出す姿があまりにも 可愛らしくて、いじらしくて、思わず笑みがこぼれてしまった。 「いえ、申し訳ありません……」 クリフトは口笛を続けた。 アリーナもクリフトのメロディに合わせようと 何度も挑戦するが、フーフーとしか音が出ない。 「全然音が出ないわ」アリーナは落胆する。 「姫様、口の形が違うんですよ。 こうするんです」 「え、こう?」 「違います。もっと、こうです」 「こう?」 「いえ、こうです」 アリーナの大きな瞳にクリフトが映る。 クリフトの瞳にもアリーナが映っている。 二人は、向かい合って見つめ合って、それなりの至近距離で 唇を突き出しあっていた。なんとも奇妙な絵図である。 「んーー、こう?」 二人の距離がさらに近づいた時に、クリフトの後頭部に衝撃が走った。 「クリフトっ!!このアホーめがっ!! 我がサントハイムの姫君に一体何をしとるんじゃ!!」 ブライが杖で殴ったのだった。 無理もない。 まどろみの剣の効果が切れ、たった今 目を覚ましたブライには 前後経緯が分かるはずもなく、二人のその様子はただの不純異性行為に見て取れたのだ。 クリフトは一瞬よろめいたが気は失わなかった。 「ご、誤解ですブライ様!私はただ、 姫様に口笛の仕方を教えていただけで………っ!!」 顔を真っ赤にしてクリフトは弁解する。 「おぬしら二人は最近、他の若い連中に感化され過ぎなんじゃ!! 特にクリフト!色気づきおってからに!!」 先のものを遥かに凌駕したブライの怒号に 外のメンバーも気づいて、馬車の中を覗き込む。 アリーナとクリフトは正座をさせられ、ブライの説教を受けていた。 「クリフトさんまで怒られるなんて珍しいですねぇ」 トルネコが目を丸くさせ、口髭をいじりながら呟いた。 「うーん……チーム・サントハイムは身近というか身内すぎて、 狭い空間でずっと待機とかは難しいのかもな」 勇者が腕を組んで思索する。 「確かに。あまり親し過ぎない方がお互いに気を遣いますな」 と、ライアン。モンバーバラの姉妹も彼に続く。 「私の占いだと、このお説教は日没まで続くわ」 「あらら、可哀相ー。このマーニャちゃんが助け舟をだしてあげよっかな。 ねぇ勇者。あたしとブライでメンバーチェンジなんてどう?」 「却下。マーニャはただ自分が休みたいだけだろ」 「チッ、バレたか」 マーニャは小さく舌打ちした。 ―――結局、ブライのお説教は日没まで続いたのだった。 終わる頃には二人の足は痺れきってしまい、しばらく馬車から動けなかった。 宿への戻りが遅れたのをマーニャに意味深に捉えられて ひやかされてしまったのは言うまでもない。 おわり