約 1,399,112 件
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呼称 りっちゃん、お姉ちゃん、姉さん 主な活動 使用キャラ カリン 転職へ向けLv上げ・ギルメンのクエスト手伝い など 所有 NPC フリード Lv62 アンジェラ Lv70 コピュア Lv50 シャルロット Lv1 アイリーン Lv50 レイチェル Lv42 加奈子 Lv37 サシャ Lv1 ナキラー Lv1 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (.jpg) 星にした NPC リン ニース クリフ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (.jpg) その他CG
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【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part13【アリクリ】 332 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2013/08/13(火) 00 17 45.70 ID Vx4e/Dh6O ――私、一体何をしているんだろう? いつもの私らしくない、 扉の陰で、身体を縮こまらせ、息を潜めて。 …こっそりクリフトの横顔を見ているなんて。 いつものようにクリフトを探しに教会に来て。 いつものようにクリフトの横顔を見つけて。 そしていつものように「何してるの、クリフト」 って声をかけるつもりだったのに。 だけど仕方がないと思う、だってクリフトの横顔がいつものようじゃなかったんだから。 教会の奥の部屋で見つけたクリフトは、本を読んでいるようだった。 でもページをめくる指は動かずただ一つのページだけを開いていて。 クリフトはそのページに真っ直ぐ視線を注いでいた。 その顔を目にした瞬間、何故だか私は息を呑み込んで、 ついでにかけるはずの声も呑み込んで、気づけば扉の陰に潜り込んでしまっていた。 癒しの呪文を唱えている時のように真剣で、 でもミーちゃんを撫でている時のように優しげで、 優勝おめでとうございます、って私に言ってくれた時の嬉しそうな顔に近いのに、 お城のみんなが居なくなった時の悲しそうな顔を少し思い出す、 そんな不思議で、複雑なクリフトの顔。 そしてそれはシンシアの事を話す時のソロの顔や お母様の事を語る時のお父様の顔にもとてもよく似ていた。 どうしてそんな顔をしているの? 一体その本の何があなたにそんな顔をさせているの? 問いかけの言葉はぐるぐると頭の中を回るのに、 私は扉の陰で一歩も動けないでいた。 一言でも声を出したり一歩でも歩いたりしたら心臓が破れてしまうような気がしていたから。 もっとも、クリフトがページを見つめていた時間はあまり長くはなかった。 遠くでクリフトを呼ぶ声が響いたから。 「早く姫様を探すんじゃ、クリフト」って。 ブライがまた私が抜け出した事に気づいたんだろう。 クリフトは返事を返しながら慌てて本を書架に戻すと、そのまま早足で部屋から出て行った。 はあ、と思わず漏れた溜め息は、きっと鈍いクリフトに呆れたからだ。 「……私の気配も感じ取れないんじゃ戦士として失格だわ!」 ――だから、そうよ、これは、お仕置き。 ちょっとプライバシーを覗かれる位、優しいものよね。 そんな理由を作ってから、私は書架からそっとクリフトの戻した本を抜き出した。 「ええと、確か、この辺りのページを見てたはずよね…」 ―――そしてページをめくる私の指が止まった。
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クリフトとアリーナの想いはPart7 652 :小ネタ 1/3 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/08/23(木) 15 06 50 ID qTz+eA9B0 木陰で読書をしていたクリフトに、アリーナがためらいがちに近づいた。 「ねえ、クリフト…。」 「はい?」 「私…私ね…。」 うつむくアリーナ。 しばらくもじもじしていたが、 「やっぱり、なんでもない!」 クリフトに背を向けて走り去って行った。 しばらく後。アリーナがおずおずと戻ってきた。 「クリフト…。」 「何でしょう、姫様?」 「…だめ、かな。」 アリーナは、クリフトをじっと見つめた。 その目は、心なしか潤んでいるようだ。 クリフトは、ため息をついて読んでいた本を閉じると、立ち上がってアリーナに向き直った。 「姫様…。私とて、姫様のお気持ちは…分かっております。」 「クリフト!それじゃ…!」 嬉しそうに頬を染めて、クリフトを見上げるアリーナ。 「しかし、いけません、姫様。」 「!!」 「この世の中には、越えてはいけない壁というものがあるのですよ…。」 悲しげに言うクリフトに、アリーナはがっくりと肩を落とした。 とぼとぼと歩み去るアリーナを見つめるクリフトの背後から、2つの憤然とした声が上がった。 「おい!クリフト!なんだ今のは!お前って奴は、見損なったぞ!」 「そうよ、クリフト!女性があそこまで勇気出してるっていうのに…! あんたなんて、男の風上にも置けないわ!」 クリフトは、またか、とうつむき片手を眉間に当てると、ゆっくりと振り向いた。 「…ソロさん、マーニャさん。人の話を立ち聞きするのは行儀が悪い、と 何度も申し上げたはずですが…。」 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!何であんた、あの子にあんなひどいこと言うのよ!」 「そうだよ、お前、いい加減にしろよな。」 食ってかかるマーニャと、その横でうなずく勇者を、クリフトは不思議そうな顔で見返した。 「だって、じゃあ、お2人は、モンスターの子供を飼うことに賛成なんですか?」 「「……モンスター?」」 「私だって、親に置き去りにされたことは可哀想だとは思いますが、いくら子供だといっても、 モンスターはモンスター。人間との間には、越えられない壁があると思いますが。」 そもそも旅の最中だというのに、モンスターなんか飼えると思いますか?と問うクリフトに、 勇者がおそるおそる尋ねた。 「…ちょっと、ごめん、クリフト。さっきのアリーナの話から、どうやったら、 モンスターの子供が出てくるんだ?」 クリフトは呆れたように勇者を見た。 「そんなもの、姫様の様子を見ていれば一目瞭然じゃないですか。」 「…。」 「…あんた、分かった…?」 「いや…マーニャは?」 「分かるわけないじゃない。…でも、アリーナも、話は通じてる前提で話してたわよね…。」 「こいつらの会話って、ほとんど熟年夫婦のノリじゃねーの。」 「…熟年夫婦だって、こうはいかないわよ…。」 ボソボソと囁き合う2人に、クリフトはキッとした目を向けた。 「と・に・か・く!ソロさんもマーニャさんも、今後、人のプライバシーを覗き見 するようなマネは、絶対にやめてくださいね!」 ブツブツいう2人を追い払うと、クリフトは、やれやれと木の下に再び腰を下ろした。 そして、読みかけの本を開いたが、その目は、文字を追わずにいつしか宙をさまよっていた。 ―――越えられない壁…それは、人間とモンスターの間だけではなく…。 「姫様…。」 クリフトは、切なそうにつぶやくと、何かを思い切るように首を振り、 読書に集中すべく、本に目を戻したのだった。
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 861 : 【そこに居るという事】1/6:2006/04/09(日) 23 36 48 ID omMVSeXl0 ザッザザザザ・・・・ 草を掻き分け走る二つの影。 一人は蒼髪に緑色の神官服をまとった青年 もう一人は栗色の髪の女性、しかし彼女がはためかせている青いマントは 無残にも切り裂かれ、彼女自身の背中にも深々とした傷を付けていた。 突然のモンスターの襲撃にパーティーは分裂させられ、アリーナは深手を負った。 一時撤退をし状況を立て直そうにも、後ろから追ってくる複数の影を引き離せずに居た。 アリーナの顔には焦りが浮かんでいた。 幾ら不意打ちとはいえ、魔物に遅れをとった上に一矢報えることもなく撤退。 別れ離れになった仲間も気になる。それに未だに追っ手を引き離せずにいる。 とうとうアリーナは痺れを切らせた。 「クリフト!応戦するわよ!」 「姫!?無茶です!!」 クリフトが止めるのも聞かず、ザっと振り返り身構えた。 最初に追いついて来た一匹目の魔物の爪を体をひねって避け、 そのまま廻し蹴りを喰らわし吹っ飛ばす! 着地と同時に踏み込み前に跳び敵をキラーピアスで引き裂いた。 しかし決定打には成らなかったらしく、鋭い爪のついた腕を振り下ろしてきた、 慌てて体を反らして避けようとしたが、ズキッと背中が痛み反応が鈍った。 「ッツ!」 避け切れなかった爪は服を破り胸に赤い線を刻んだ。 「こっのぉ~!!」 怒りに任せてトドメを討ったが、すぐ傍から殺気を感じた。 (まずい!ヤラれる!!) しかしその瞬間、魔物の足元から紫色の煙が立ち昇った。 クリフトが放った死の魔法『ザラキ』だ。 一瞬にして敵の息の根を止める事が出来る魔法だが、あっけなく振り払われてしまった。 だが敵の動きを止めるには十分な時間だった。 銀色の閃光が走り、クリフトの剣が魔物の体を貫いていた。 体勢を整え後続の敵に飛び込んで行こうとするアリーナを抱きかかえ静止する。 「離して!大丈夫まだやれるわ!!」 額に脂汗を浮かべながら言い放すアリーナを見て思わずクリフトは声を荒げた。 「勇気と無謀は違います!今の状況がわからないのですか!!」 普段声を荒げる事のないクリフトに驚き、アリーナは幾分冷静さを取り戻せた。 クリフトはすぐさま次の詠唱に入り追い付いてくる奴らにマヌーサを掛けてから走り始めた。 ッチッチチチ・・・ピュイピュイ・・・・ やけに近くからの鳥のさえずりでアリーナは目を覚ました。 まだボーとする頭で胸の辺りを擦ってみる。 昨日切り裂かれたはずなのに破れ目が見つからない。 不思議に思い視線を移すと、クリフトのいつもの服が着せてあった。 それにもう傷も痛まない。 今思えばあの傷で魔物と戦うのはやっぱり無茶だった気がする。 クリフトが止めてくれて良かった。それにこの上着のお礼も言わないといけない。 なんだかちょっと嬉しくなってキュっとクリフトの上着に顔を埋めた。 それから頭だけを動かして近くに居る筈のクリフトの姿を探す。 見当たらない。 「・・・クリフト?」 不安になって彼の名を口にしながら体を起こした。 それでも彼の返事は返っては来ない。 不安がむくむくを大きくなる。 昨日はいつココに来て眠りについた? 思いだせない。 いつから記憶が無い? クリフトがあたしを支えながら走っていた。 傍らで終始何か唱えていた・・・ そうだ、あれは回復呪文だった。 走りながらあたしを癒してくれてた。 それから、それから・・・・・・どうなったの? そこであたしの記憶はプッツリと途切れていた。 もしかして魔物を撒けなかったの? ザァっと全身の血が引くのが判った。 最悪な事態が頭をよぎった。 クリフトはあたしをココに置いて、囮になりにいったの? うそ・・・・ アリーナは両手で顔を覆った。 あたしのせいだ、あの時痺れを切らせて敵に飛び込んだから。 そしたら余計な傷を受けずに逃げ切れたかもしれない。 全部あたしのせいだ・・・ 零れ落ちそうになる涙を唇を噛締めてなんとか飲み込む。 こんな所で泣き崩れるわけには行かない。クリフトを探しに行かなくては。 きっとどこかで動けなくなってるだけだ。助けに行かなくちゃ。 腕で目じりをぬぐい立ち上がった。 「お目覚めになられましたか、姫さま」 後ろから声を掛けられ振り向くと、そこにはケロっとした顔をしたクリフトが立っていた。 カァーーっと顔が赤くなる。 「どこ行ってたのよ!勝手に居なくならないでよ!!」 勝手に心配してたあたしがバカみたいじゃない! クリフトに詰め寄り胸ぐらあたりを拳をにぎりドンドンと叩く、 「ホントに・・・本当に心配したんだから・・・」 そこまで言うと緊張の糸が切れてしまった。 クリフトの胸に顔を埋め溢れる涙を止めることが出来なかった。 それまで黙って叩かれてたクリフトが遠慮がちに背中に手を回してきた。 「申し訳ございません、目が覚めるまでお傍に居るべきでした。」 クリフトの温もりが伝わってくる、クリフトの匂いがする。夢でも幻でもなく、 今ココにクリフトが居てくれる。すごく気持ちが安らいでいく。 「・・・みんなは大丈夫かな?」 「は、はい。先ほど様子を探りに行ってきましたが、周辺から邪気は消えてます。 たぶん勇者さん達が倒されたんだと思います。」 クリフトがそう言ってくれると、みんな無事だと信じることができた。 あたしの足りない所はクリフトが補ってくれる。 クリフトが後ろから支えてくれるからあたしは前に進めるんだ。 もっとクリフトを感じたくて背中に手を回してくっついた。 「もう勝手に、居なくなったら許さないんだから」 「そうですね、離れてしまったら姫さまは何をするか判りませんから、 嫌と申されましてもお傍に居ますよ。」 軽く冗談を交えながら優しく微笑んでくれた。 「クリフト・・・一生一緒に居てくれる?」 「ええ、一生お仕えします。」 顔をあげクリフトを見つめ 「じゃぁ、誓いのキスして」 クリフトの心拍数が跳ね上がるのを聴きながらあたしは目をつぶったのであった。 ~ FIN ~
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献祭斩击(サクリファイス•スラッシュ) 颜色 卡片类型 类型/限定 等级 限界 费用 成长费用 力量 标记 黑色 魔法 乌莉丝限定 - - 黑3 - - ※ 能力: 将你的1只SIGNI驱逐。这样做了的场合,将对战对手的1只SIGNI驱逐。 【※】:将对战对手的1只SIGNI驱逐。 收录情况: 卡包 编号 罕贵度 卡图画师 个性文字 Stirred Selector WX02-045 R ヤマグチトモ 有終の儀。 【THE一灭寂】补充包第2弹《Stirred Selector》中文卡表 FAQ Q:发动这张卡并选择了要驱逐的SIGNI之后,那只SIGNI在【魔法切入】时点被其他卡的效果驱逐了,这个场合如何处理? A:这个场合,这张卡的效果完全不处理。
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 675 :お題【偽姫登場!?】1/6 ◆VmkRIFTnuM :2006/03/22(水) 23 01 14 ID KkhTtr900 「本当にひさしぶり。元気にしてた?」 サランの街に姿を見せた旅芸人は、フレノールであたしを騙ってた一行。 あのときよりもずっと人数も増えて、人気の一座になってるみたい。 「お姫様、あのときはごめんなさい。迷惑かけちゃって」 「ううん、いいのよ。メイさんが無事でよかった」 大きな荷物を宿に運んで、ようやくひと段落。 宿の食堂で、あたしとメイさん、クリフトが思い出話に花を咲かせる。 「今度の演目はね、お姫様と伝説の勇者さまたちをモチーフにしたものなのよ」 「へえ、それは面白そうですね」 うわあ、あたしがお芝居に出てくるの? なんかちょっと恥ずかしい。 「でもね、まだいい結末が浮かばなくて……」 そう言ってメイさんは、テーブルに身を乗り出した。 「直接、お姫様に話を聞きたかったの。旅をしててどうだったか、って」 ああ、なるほどねぇ。 旅の話なら何日かかっても話し切れないくらい、たくさんあるんだから。 「早速なんだけど、旅の途中で何かロマンスは生まれなかったの?」 「……え?」 あたしとクリフトの間抜けな声が、重なる。 「だって、恋するお年頃の人が多かったんでしょ? その中でロマンスが無いなんてありえないじゃない!」 メイさんの瞳はきらきらと輝いて、まるで子どもみたい。 「ありませんよ。あんな危険な旅の最中に、そんなこと考える時間なんてありませんでしたから」 少し早口でクリフトが言った。確かに、あたしもそんなこと考えたことなかったもんなぁ。 「ほら、例えば、伝説の勇者さまとお姫様の間に芽生える禁断の愛……」 「それは絶対にありませんから!!」 クリフトの大声に、一座のみんながぎょっとして振り返った。 顔を真っ赤にして、クリフトは小さな声で、すみませんと繰り返した。 「……ごめんなさい。ふふっ」 そんなクリフトを見て、メイさんは何か閃いたような表情を見せた。 ロマンスかあ。もしかしたら、あたし以外にはあったのかもしれないなあ。 あたし、そういうのって鈍いから全然判らないもんね……。 数日後、メイさんたちから招待状が届いた。 サランの街の広場に作られた舞台で、いよいよ演目を始めるから、ぜひ見に来てね、と。 あたしは喜んで、クリフトを誘って初日の舞台に足を運んだ。 用意された席は、いちばん前。 街のみんなも集まって、陽が落ちて、篝火が焚かれたころに、演目が始まった。 うわあ。凄い。 みんな、別人みたいに真剣な表情。凄い迫力。 お芝居だって判ってるのに、ドキドキする。 あっ、あの人がソロの役なんだ。本物よりずっとかっこいいね。 メイさんはもちろんあたしの役。なんか照れくさいなあ。 あれ、クリフト? やだあ、あんなに背高くないのにね。 ブライはずっと若い! 髪の毛ふさふさしてるよ! 見せたら喜ぶだろうなあ。 マーニャとミネア。えっ、双子なのかな? そっくり! ライアンはずいぶん小柄。でも剣の腕は本物より凄いかも! トルネコが一番本物そっくり。思わず笑っちゃうくらい。 思わず、旅の途中の思い出が蘇る。 怖かったけど、不安だったけど、今思えばとても楽しかったあの旅……。 ふとクリフトを見ると、とても真剣な表情で舞台に夢中。 ずいぶん長いようで、短い時間はあっという間に過ぎて、舞台の上の世界にも平和が戻る。 お父様たちが戻ってきたのかどうか、ドキドキしながら帰ってきたあのときを思い出す。 そういえばあのとき、クリフトはあたしの手をしっかりと握っていてくれたっけ……。 舞台の上のサントハイムも、賑やかさを取り戻す。 あたしとクリフトが手を取り合って笑ってる。 隣から鼻をすする音。ちらりとクリフトを見ると、目が赤い。 そのとき、舞台からあたしとクリフトが降りてきた。 そして、あたしたちに手を差し伸べる。 「……え?」 訳が判らず戸惑うあたしたちの手を強引に取ったふたりは、そのまま舞台へとあたしたちを導く。 篝火が熱くて、観客席の方をちらりと向いた。 ──うわあ。凄い人。これだけの人々が、あたしたちに注目してるんだ。 クリフト役の人が、クリフトに何か耳打ちする。 メイさんもあたしに、そっと耳打ちした。 「ねえ、お芝居、やってみない?」 「え!?」 クリフトの大声。クリフトもあたしと同じこと言われてるのかな……? 「そ、そんな」 再び、耳打ち。何だろう、気になるなあ。 クリフト役の人が、クリフトをぐいっとあたしの前に押し出した。 それに合わせて、メイさんがあたしをクリフトの前に押し出した。 観客席が、しんと静まり返る。 「あ、あの……」 真っ赤な顔をしたクリフトが、ゆっくりと口を開いた。 「この、闘いが、終わったら、言おうと、決めて、いました。わ、私は、姫様のことを」 それだけ言うとクリフトは、振り返ってクリフト役の人に何かを訴える。 でも、クリフト役の人はくすくすと笑うだけ。 今、言いかけた言葉は、なあに……? 背中をばんと叩かれて、クリフトはもう一度あたしの前に押し出される。 「あ、あの、わ、私は、ひ、姫様、姫様のことを……」 クリフトの目から、涙が零れる。 なんだろう、あたしの胸にも何かがこみ上げる。 お芝居。これは、お芝居。それなのに。 「──愛して、います……っ」 そう言うとクリフトは、顔を両手で隠しながら、クリフト役の人の元へ走る。 残されたあたしは、ただ呆然とその姿を見つめていた──。 「お姫様」 メイさんの言葉に、はっと我に返る。 そうだ、これは、お芝居。それなら、あたしにも台詞があるはず。 「結末は、あなたが、決めてね」 ぽんと背中を押されて、あたしは舞台の真ん中へとよろけて進む。 あたしが……? 決める……? 観客が固唾を呑んで、あたしの台詞を待っていた──。 「え、えっと」 さっきのクリフトの台詞を思い出す。クリフトは、あたしを。 ……あたしを。あたしを……? 「あ、ありがとう。嬉しい」 これは、お芝居。お芝居。クリフトの言葉は、ただの台詞。それなのに。 ──それなのに。心に焼き付いて離れない。その言葉が嬉しくてたまらない。 こんなに心に響く台詞を、あたしは今まで聞いたことが無かった。 「あ、あたしも。愛してる、クリフト。あ、ありがとう……」 これは──お芝居? 台詞? それなのに、なんであたしは泣いてるんだろう……。 わあっと、大きな歓声が起こった。 あたしとクリフトは役者たちに胴上げされて、楽団が輝かしい音楽を奏でる。 「やっぱり、本当の言葉には、敵わないわね。まだまだ頑張らなきゃ」 舞台に足を下ろしたあたしの耳元で、メイさんが囁いた。 「ステキな結末を、ありがとう」 このお芝居は、ずっとずっと長い間、いろんな街で公演を重ねることになった。 真実の、お話として。
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クリフトのアリーナの想いはPart12 128 名前 恋をしては……恋をしても…… 中編 1/12 Mail sage 投稿日 2011/05/04(水) 05 38 25.90 ID X/MX6nGM0 教会はとっても静か。聞こえるのはおふとんのこすれる音とクリフトの息づかいだけ。 今はクリフトとふたりっきりなんだなー。 「えへへ、なつかしいね。小さい頃もこうやってよくいっしょに寝てたよね」 「ね、寝てませんよ」 「えー」 「そんなに寝てません」 「寝てたわよー。うん、寝てたわよ」 私はいっしょうけんめい思い出す。小さい頃の私。小さい頃のクリフト。 「だって、私たち小さい頃は私のお母さまとクリフトのお母さまとみんなで遊んだりお昼寝したりしてたんでしょ? いっしょに寝てたってことじゃない」 「そ、それは赤子の時の話ではありませんか。第一それは正確には「寝ていた」ではなく「寝かされていた」です。 私たちにはなーんの意思も働いてません」 「なによその言い方」 「まだ働いてません」 「なんで二回言うのよ」 クリフトと目が合った。両者にらみ合い!じゃなくて、見つめ合い?あんまり顔が近くってふたりで笑っちゃった。 クリフトはゆっくりと上を向く。 「私たちは、幼なじみと呼ぶにはあまりに離れた期間が長すぎましたね」 「えーそう?私はいっつもクリフトといっしょにいた気がするわ。だって毎日教会に遊びに行ってたもの」 「それは神父様に会いに行かれていたのですよ」 「ちがうわよクリフトもいたわよ。だって」 私はいっしょうけんめい思い出す。教会に行くといっつもあわてて振り返るクリフト。お説教を言うクリフト。 「だって、扉は静かに開けてください、教会では騒がないでくださいって言ってたのクリフトでしょ?」 「それはまあ私ですが……って姫さま、いつの話をされているのですか?」 「えー?えーと、ちっちゃいころ!」 「………………」 「私がここに赴任してからのことをおっしゃっているのですか?それともこことサランの教会を混同されて…?」 「サランー?どうしてそこでサランの教会が出てくるのよ」 「……ですから以前申し上げたではありませんか。私は幼い頃サランの教会で神の道を教えていただいたのです。 そして神学校へと進みました。姫さまもこちらの神父様とご一緒に定期的にサランへいらしていたはずですよ」 え?……え!?……えーと。……えーーと……。私はもう一度頭の中を整理する。 「そっか!あれはサランの教会だったのね!」 「姫さま……」 「だってしょうがないじゃない。いっつもクリフトといっしょにいた記憶しかなかったんだから」 「……それは、それだけ私のことを……」 「え?」 「い、いえ……。思い出していただけて光栄です」 「むー」 また始まった。最後まではっきり言わないクリフト。でも、そっか。クリフトがお城にいない時期があったんだ。 クリフトがいきなりサランに行っちゃって神父さまと呼びに行った時のことは覚えてる。でもその前はずっといなかった…? どうして覚えてないんだろう。私の記憶もあいまいだなあ。 でもあわてて振り返ってお説教を言うクリフトはお城にいてもサランにいてもおんなじだわ。今でも変わらないしね。 そのあとも私はクリフトと小さい頃のお話をした。思えばいろんなことがあったわ。 「クリフトったら私がおぼれてるってかんちがいして海に飛びこんでクリフトがおぼれたことあったわよね」 「あ、ああ……。そんなこともありましたっけ」 「私あの時おぼれてたんじゃないのよ。海の底がどうなってるのか知りたくていっしょうけんめいもぐってたのよ」 「ええ、それは何度も聞きましたとも。ですがあの時私には姫さまが助けを求めているようにしか見えなかったのです」 「クリフトの早とちりー」 「何とでも言ってください……」 「でも無事でよかったわ。あの時クリフトすっごくふるえてたものね」 「それはあの……情けない話なので忘れてください……」 「あとあと、私がお勉強をずる休みした時クリフトったら木の上まで呼びに来ていっしょに落っこちたこともあったわよね」 「…………」 「あの時クリフトったらぜんぜん起きなくってほんとにこわかったわ。 私ばかだったわよねー、気絶してるだけですから時間がたてば起きますよって神父さま何回も言ってくれてたのに 私ったらクリフトが死んじゃうっておおさわぎして……今思えば恥ずかしかったなー」 「………………」 「クリフトが元気になったら上手な木の飛び降り方教えようと思ってたのにクリフトったらいきなりサランに行っちゃうんだもん。 神父さまが連れてってくれなかったらしばらく会えないとこだったわ。本当につまらなかったんだから」 「……………………」 「クリフト?」 クリフトはずっと黙ってる。さっきまで普通にお話してたのに。なんでだろ。 「クリフトー?」 「あ、はい、申し訳ありません」 「眠いの?」 「いえ、その……」 「ん?」 「あまり私の苦手な話題で攻めないでください…」 「あ、そっか。ごめん」 「い、いえ…」 そう、クリフトは海で泳ぐのも高いとこに登るのも苦手。私は大好きなのになー。でもそれでクリフトは黙ってたのね。 「そういえば神父さま遅いわね。やっぱりお手洗いがうっかり大きなほうになっちゃったのかしら」 「ひ、姫さま……」 「なによ」 クリフトが少しだけせきばらいした。 「神父様が本当に手洗いに行かれたかどうかはわかりませんが、あの方は城内の様子を見に行かれたのだと思いますよ」 「え?」 「姫さま、こちらにいらした際兵士たちとは会いませんでしたか?」 うっ 「……怒る?」 「いえ」 「ほんとに…?」 「はい」 「うー……」 「もし怒るとしたら、姫さまがこちらにいらした時点ですでに怒っていますよ。ですから大丈夫です。怒りませんよ」 「……うん……」 「ほんとはね、みんなに見つかっちゃったからみね打ちしてきたの……」 「……そうですか」 「神父さまにはみんないなかったってうそついちゃった……」 「神父様も怒らないと思いますよ。あの方もおっしゃっていたではありませんか。大切な家族だと」 「うん……」 「神父さまが戻ってくるまで起きてる……。戻ってきたらちゃんと謝る……」 「……そうですね」 なんだか悔しい。悔しいけど、クリフトがいっしょにいてくれてほっとしてる自分がいる。クリフトの腕まくらに安心してる。 でもそれは私が弱いからじゃなくて、クリフトの体があったかいせい。小さい頃のお父さまとお母さまを思い出させるせい。 「ところで姫さま、みね打ちという言葉をどのような意味でとらえていらっしゃいますか?」 「え?みね打ち?えーと、致命傷を与えないで、気絶させる程度の攻撃を言うんでしょ?必殺のキックとみね打ちのキック!」 「…………」 しーん。ん?なにか間違ったかな。 「なるほど、そういう使い方もありかもしれませんね」 「なによそれ、どういうこと?」 「い、いえ……。私もまだまだ知らない言葉がたくさんあるもので、一つ勉強になったと申し上げたかったのですよ」 「むー」 なんだか気になる言い方だったんだけど。まあいっか、それよりもっと気になることがあるの。 「ねえ、さっき罪って言ってたの、なんだったの? あとあと、神父さまが神を求めよとかなんとかって言ってたのもね、ほんとはよくわからなかったの」 「………………」 また黙っちゃった。なんなのよー。もしかして聞いちゃいけなかったのかな。これも苦手なことだったとか……。 「ごめん、無理には聞かないから……」 「いえ、その……。なんとご説明すればよいか言葉が浮かばないだけでして」 「そうなの…?」 「こちらこそお役に立てず申し訳ありません」 「やだ謝らないでよ」 何かあるとすぐ謝るのはクリフトの悪いくせ。でも言いにくいこと聞いたんじゃなくてよかった。 「あの、ですが神父さまの言葉でしたらご説明できます」 「え、そうなの?教えて教えて」 「神を求めよ。さらば信仰は与えられん。これは、神のみ言葉に耳を傾けよ、その恩恵に身を委ねよ、ということ。 極端に言えば、何も求めるな、現状に従え、ということです」 「何も求めるなですって?求めよって言ってるのに?」 「姫さま、話を最後まで聞いてください……」 「あ、うん」 「そうして欲や願望を取り払い無心にかえることで、物事を客観視する力や決断する勇気が与えられ、正しき道……いえ、 進むべき道へと導いていただけるのですよ。神を求めるとは、結果としてはそういった前へ進む力を求めるということですね」 「むー」 なんだか難しくてよくわかんない。 「でもでも、結局やることは何も求めるなってことなんでしょ?」 「まあ、はい。極端に言えばですが、そういうことですね」 「そんなのつまんないじゃない」 「一つの考え方ですから姫さまは姫さまの思うようにすればいいのですよ」 「そんなの、だってそんなの……」 したいことをがまんして周りの言うことだけ聞いてる人生なんて、私はそんなのぜったいにいや! どうして神父さまはクリフトにそんなこと言ったんだろう……。よし!神父さまが戻ってきたら問い詰めよう! 「姫さま……」 「なに?」 「その……」 「ん?」 「……申し訳ありませんでした……」 「え?」 さっきよりもしずんだクリフトの声。ちょっとドキッとした。 「だから謝らないでったら。さっきのこと?それならもうぜんぜん気にしてないわ」 「いえ、先ほどのこともありますが、それに関係して、その……今回の一件のことです」 「一件?」 「王のご病気は無事治せたものの、私は……結局何のお力にもなれませんでした。ただ面倒を重ねただけで……」 「えっと……あ、さえずりの蜜のこと?さっきとぜんぜん関係ないじゃない。 私はクリフトに感謝してるわ。だって、もしあのままさえずりの蜜を持ち帰ってたら窃盗になってたんだから」 「…………」 「あの時は……言葉が何一つ出てこなくて……姫さまをお止めしただけの責任を私は何一つ果たせていません。 おふたりの力がなければエルフたちを説得させることはできなかったでしょう……」 「っもう、なにいってるのよ。お父さまのご病気は無事治ったんだから、過ぎたことはもういいじゃない」 「そう言えるのはさえずりの蜜が手に入ったからでしょう。もしあの時、もとよりエルフたちが戻ってこなかったら……」 「クリフト……」 どうして今さらそんなこと……。エルフたちは戻ってきたんだから戻ってこなかったときのこと考えたって……。 時々クリフトのことがわからなくなる。クリフトだってがんばってくれてたのに。あんなに大声で叫んでくれてたのに。 ほんとは高いところが苦手だったのに……。 「もしさえずりの蜜が手に入らなかったら、またみんなで違う方法を探すまでよ。だから大丈夫!ね?」 私は力強く言ってにっこり笑ってみせた。いいこと言えたかな。これでクリフトの気持ち、少しは晴れてくれるかな。 「どうして……」 「え?」 ――どうしてあなたは、そんなに強くいられるのでしょうか……―― 私を見つめるクリフトの目はなんだか寂しげだった。なんだろう。なんでだろう。 私が強いのは日課のトレーニングを欠かさないからとか兵士といっしょに特訓してるからとか?ううん、そうじゃなくて、 もっと違うなにかを聞いてるんだってこと、なんとなくわかった。でも、そんなこと聞かれたって、私だって…… 「ねえ、それよりもさ、明日からはエンドールよ!すっごく楽しみだわ!」 私は強引に話をそらした。だってなんか……なんかクリフトが変なんだもん。 「姫さま……」 「んー?」 「本当に申し訳ありません……」 う。 「っもう、クリフトったらさっきから謝りすぎ。クリフトはなんにも悪くないんだからねっ」 「……はい」 「ん!」 「姫さま」 「んー?」 「今、こうして落ち着いたから申し上げられることなのですが」 「え、なに?」 クリフトが少しだけ目をそらした。 「正直に白状いたしますと、本当にエンドールに行けるとは思っていなかったのです」 「なによそれー。私だったらぜったい優勝するって言ってくれたのクリフトじゃない」 「姫さま……覚えていてくださったのですね……」 「え?」 「い、いえ……」 「それはもちろん本心からです。ひとたび武術大会に参加したとあれば、姫さまに敵う者などどこにもいないでしょう。 ただ、武術大会に参加できたらという仮定の話と、実際に参加できるかという現実の話は別問題ですから」 「またそうやって難しい話するー」 「い、いえ、その……」 「ありませんか?叶わないとわかっているからこそ願ってしまうという、この矛盾した心理が……」 叶わないとわかってるから願ってしまう……? 「うーん、確かに叶わないことってのはあるかもしれないけど……。でも私、願いごとは叶えるために努力するもん」 「…………」 「叶えるためにがんばるもん。神父さまだっておっしゃったじゃない。神さまはがんばる人の味方だって。 がんばってればいつかきっと願いは叶うのよ」 「………………」 「そうですね。姫さまでしたらきっとどんな願いでも叶えられると思います」 「クリフトだって叶えられるわよ。だって、クリフトだって言ってくれたんじゃない。道は誰の前にも開かれてるって。 私あの時本当に嬉しかったんだから」 なんでだろ。ちょっとだけ泣きそうになっちゃった。なんとかこらえる。 「………………」 「クリフト…?」 「…………」 クリフトはずっと遠くを見てる。それから少しだけ上を向いた。 「……よいのでしょうか……」 「え?」 「……………………」 ――……をしても、よいのでしょうか―― クリフト…?クリフトが私を見た。なんだろう。クリフトの目……切ない。苦しい。胸がぎゅって締めつけられた。 もどかしい。はがゆい。なんでだろう。もしかして、クリフトも泣きそうになってた…?前にもこんなことあった気がする。 クリフトから目が離せない。 「姫さま……」 「ん……」 「今の私と姫さまは、どういう関係なのでしょうか」 「ん…?」 「ここは城内でありながら、私たちは同じ部屋で、その、同じベッドに寝ています。今の私たちの関係は……」 クリフトがまた少しだけ目をそらす。今の私たちの関係……。 「うーん。旅人!」 「旅人、ですか」 「そう、明日からまたいっしょに旅をする旅人!あ、幼なじみでもいいわ」 「…………」 クリフトはまた私のほうを向いた。なんでだろう。クリフトの目……なんでだろう。なんか変。 「立場は、対等というわけですか?」 「そう!幼なじみの旅人!」 「………………」 私……私どうして…… どうしてこんなにおちゃらけたふりしてるんだろう。今度は私が目をそらしちゃった。真剣な顔したクリフトは苦手なの。 昼間は大丈夫だったのに……。 そしたらクリフトはもう一度上を向いたみたい。少しほっとした。 「私は以前、申し上げましたね。 もし、姫と従者、いえ、神官という立場すらなくして申し上げてよいなら、そのように考慮していただけるなら」 「だーかーらー、姫あつかいしないでっていつも言ってるじゃない」 「抱いてしまいますよ…?」 「んーいいよー」 「っ……姫さまそれ、意味がわかっておっしゃってますか……?」 「んー?」 「姫さま……」 「大丈夫ー。私はクリフトのこと変態扱いしないからー」 「…………っ」 クリフトが私をぎゅってしてきた。思わずドキッとしちゃった。だってさっきと違ってちょっと強引だったから。 クリフトの手が腰に回る。少しだけ引き寄せられた。やだ、ちょっと、なんか恥ずかしい。さっきもぎゅってしてたはずなのに。 思わず目までぎゅって閉じちゃった。 「………………」 「…………」 「……………………」 うん、でも、ほら、大丈夫……。ほら大丈夫、大丈夫よ、なんともないわ。私はクリフトを変態扱いしない。うん、大丈夫。 そう思ったらだんだん落ち着いてきた。クリフトあったかいなー。ぎゅってされるとすっごく安心する。これならぐっすり眠れそう。 私もクリフトの背中に手を回してぎゅってした。クリフトは少しだけびくってなったけどもう一度、今度は優しくぎゅってしてくれた。 肩の力が一気に抜ける。今度はゆったり目を閉じた。 「……あなたは先ほど、私がいきなりサランに帰ってしまったとおっしゃいましたね……」 「んー」 「なぜだか、わかりますか?」 「んー…?」 クリフトが何かしゃべってるー……。あれ、変だな。クリフトの声が聞こえたり聞こえなかったりするの。 「あの時からですよ。私があなたに……あなたを……」 「んー……」 「………………」 ほんとにクリフトの声が遠い。あれー?あれー……? 「……姫さま……」 「…………」 「……………………」 あれー…………? 「……姫さま……?」 「………………」 「……………………」 …………。 「………………」 「………………姫、さま…………」 「…………」 「…………………………………………」 ――あなたは罪な方です―― クリフトにもう一度抱きしめられたような気がした。 ふと目が覚めて寝てたんだってことに気づいた。あっクリフト!……はとなりで寝てた。なぜかほっとした。 私にくっついて寝てる。やだ、手が腰に回ったまんまじゃない。っもう、きっとクリフトなりに守ってるつもりなのね。 いつの間にか明かりは消えてた。外はまだ真っ暗。 月の光でほのかに明るいけどちょうどかげになっててクリフトの寝顔はよくわかんない。呼吸は落ち着いてる。 そういえばクリフトの寝てるとこ初めて見るんだ。なんだか勝ったような気持ちになった。しばらくクリフトをじっと見る。 静かに寝てるクリフト。無防備だなあ。いたずらするなら今のうちってことね。ほっぺつんつん。つんつんつん。 「ん……」 あーあ、でも私も寝ちゃったんだなー。クリフトなんて言ってたんだっけ。うーん、明日もっかい聞いてみよっか。 クリフトまだ腕まくらしてる。さすがに疲れちゃうわよね。私は腕をどかして持ってきたまくらに頭を乗っけた。 クリフトは少しだけ体を動かしたけど起きなかった。 そういえば神父さまは!?あわてて周りをさがしてみた。そしたら足元のほう、扉の近くに神父さまぽい人がいた。 神父さまぽいっていうか神父さまだわ。戻ってきてたのね。いすに座って腕組んでじっとしてる。眠ってるのかな。 でも着替えたままだ。ぼうしもかぶってる。まだ起きてるのかな……。私はしばらく神父さまを見てた。 「そんなに見つめられてはドキドキしてしまいますよ」 「あっごめんなさいっ」 神父さま起きてたのね。 「申し訳ありません、先ほど物音を立ててしまったのです。起こしてしまいましたか?」 「ううん、ぜんぜん気づかなかったわ」 「そうですか」 私はいいこと考えた。 「ねえ、神父さまもいっしょに寝ましょうよ」 「おや、突然どうしましたか?」 「いいじゃない、いっしょに寝ましょ?」 「明日からまた遠出をするのですからおふたりでゆっくり休みなさい」 あっさり断られちゃった。 「やあだ、神父さまもいっしょに寝るのー」 「第一」 「え?」 「このせまいベッドに3人は入りませんよ。たまには物理的に考えてみましょう」 「えー入るわよー。ほらこんなに空いてるじゃない」 「ん、あ……」 「あ、クリフト」 「ん……」 クリフトは私をぎゅってした。なんだかやけに甘えてくるわね。けどまた静かになった。 「……起きないわ」 「そうでしょうね、今さっき寝ついたばかりですから。今まで相当無理をしてきたのでしょう、寝つきがやけに早かった」 「そうなの……」 また無理してたのね、ばかクリフト……。ほんとにばか。ばかばかばか。私がクリフトを守るって言ってるのに。 私はクリフトの頭をそっとなでた。乱れた髪も整える。でもクリフトはやっぱり起きない。きっと今、ぐっすり眠ってるのね。 そうよね、クリフトだってほんとはこうやって普通に寝るのよね。今までずっと起きてたのは、お城の外に出てたから。 頼んでもいないのにお部屋の前で見張ってて、呼んでもいないのに何かあるとすぐ飛んできて、本当におせっかいのばか神官。 でも、結局そんな生活に慣れちゃったから、もうクリフトがいないとつまんなくなってるのもわかってる。だから…… ゆっくり休んで。今まで起きてた分もしっかり休んで。明日からまたいっしょに旅に出るんだからね。 ――これからもよろしくね、クリフト―― 私はもう一度クリフトの頭をそっとなでた。 「それはそうと、神父さまもいっしょに寝ましょうよー」 「これは……こまりましたね……。以前申し上げたことがございませんか?座って寝るのは私の得意技なのですよ」 「えーそんな得意技いいわよ。あ、クリフトが座って寝るのは神父さま譲りなのね?」 「おや、クリフトも座って寝るのですか」 「っもう、どんどん寝るわよ。サランでもテンペでもフレノールでも!いっつも私のお部屋の前で見張りとか言って座って寝てるの」 「そうですか。なるほど。それはきっと、姫さまをお守りしたいからでしょうね」 「ちがうわ。私が外に出ないように見張ってるのよ」 「おや、そうですか。ですがそれもまた、姫さまのおそばにずっといたいという心の表れでしょうね」 「むー」 「むー?」 「神父さまーいっしょに寝ましょうよー」 「…………」 「おねがーい」 「……こまりました、私は寝ぼすけなのですよ。今から床についたら次はいつ起きられるかわかりません」 「じゃあじゃあ私は起こしてあげるわ」 「姫さまが?」 「うん!」 「………………」 「ちゃんと起こすから。ねえ神父さま寝ましょうよー。ね?ね?」 「…………そうですね…………」 ではお願いしますよ、そう言って神父さまはあっちに行っちゃった。え、どこ行っちゃうの?ぼうしを外してる。あ、着替えか。 着替え?うそ、ほんとに?やった!やった!また白い服になった神父さまがベッドに近づいてきた。私の前で片ひざをつく。 「失礼しますよ、姫さま」 「うん!」 やっと神父さまがおふとんに入ってくれた。やったやった!思わず神父さまの手をぎゅってする。指をからませてぎゅっ 「ん、姫さま……」 「こうするととっても安心するの」 「……そうですね。私もとっても安心します」 「神父さまも?」 「ええ。何だかつながっているという気がしますね」 「うん!つながってるー」 神父さまも私の手をぎゅってしてくれた。
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クリフトのアリーナの想いはPart12 89 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2011/04/13(水) 21 14 41.18 ID vmvDuqdlO 風邪をひいてしまった。 野宿、連戦続きだったからだって、仲間たちは言ってくれたけど、情けなくてたまらない。 私が熱を出したせいで、今日は街に戻って、きちんと宿をとった。 しかもゆっくり休めるようになんて、一人部屋。 相部屋にして、風邪をうつすよりはずっといいけれど、自分の情けなさが身にしみた。 「クリフト、部屋に戻って。大丈夫だから」 「でも…まだ熱が下がりませんし」 宿について、私はさっさと風邪を治そうと、早々に床に就いた。 でも…なんで隣に、クリフトがいるんだろう。 クリフトは、体温計とにらめっこしなから、渋い顔をしている。 看病のためなんだろうけど、私より体が弱いくせにうつったら大変じゃない。 「また倒れたらどうするのよ」 「大丈夫ですよ」 ほらでた。お得意の「大丈夫」。 クリフトの大丈夫ほど、信用出来ないものってないと思う。そうやって「大丈夫、大丈夫」って自分を追い詰めて、気づかないうちに病気になっちゃうんだから。 「大丈夫って言いながら、ミントスのときは駄目だったじゃない。 また倒れられても、迷惑なのよ!」 「迷惑」という言葉に、クリフトはちょっとしゅんとしてしまった。 そして小さな声で、「申し訳ありません」と言った。 少し後悔する。 どうして、私はこんな言い方しかできないのだろう。 そもそも今、体調を崩しているのは、私なのに。 あの時、クリフトが倒れたのは、私のために無理を重ねたからだ。 確かに体はあまり強くないけど、体調の自己管理が出来ないほど、駄目な奴じゃない。 旅が始まってからは、いつも私を真っ先に心配して、自分のことなんか、後回しで…。 なんてバカなクリフト。 でもそうやって無理をしてたクリフトに気づけなかった、私は、もっとバカだ。 私がクリフトに言わなきゃいけないのは「迷惑」とかそんな言葉じゃない。 本当は「ありがとう」って言わなきゃならないのに。 そういえば、クリフトだって、喜んでくれるに、違いないのに。 「もういい。私が他の部屋にいくわ」 やっぱり、クリフトに無理をさせるわけには行かない。 きっとクリフトのことだから、夜通し看病したりしちゃうに決まってる。 私はクリフトの制止を振り切って、立ち上がった。 「あっ…」 「姫様!」 でも、いざ立ってみると、視界がグルグル回って、上手く立っていられなくなった。 体が重くて、倒れかけた瞬間、私はクリフトに抱きとめられた。 「……」 端から見れば、抱きしめられているような体勢。 こんな風になったのは、子供の頃ふざけて抱きついたとき以来だった。 クリフトの体は意外と、がっしりしてて、ちゃんと「男の人」の体だった。 子供の頃と違くて、「男の人」と意識した瞬間に、私は胸の鼓動が高鳴るのを感じた。 いったいどうして。 「す、すみません!」 なんで、クリフトが謝るのよ… そう言いたいのに、うまく言葉が紡げない。 頭がぼーっとして、顔が熱かった。 熱が上がっちゃったのかな。 クリフトは、真っ赤になって慌てながらも、もう一度私を寝台に寝かしてくれた。 「その…すみません」 顔色が平常通りに戻った頃、クリフトは、片手で顔を覆って、懺悔するような声で言った。 何回でも、謝りたくてたまらないらしい。 「いいの。私が悪いんだから」 私の胸の高鳴りはすでにおさまっていた。 いったい何だったのかな。 大丈夫、と言って立ち上がった手前、倒れかけたのが、情けなかった。 私の病状は、自分で思っていた以上に悪かったみたい。 もうクリフトの「大丈夫」が信用出来ない、なんて言えないね。 「姫様、ご心配してくださって、ありがとうございます。 ですが、大丈夫です。ミントスの時のような病にはなりません。 だから看病させてください」 「本当に?」 「本当です」 「根拠は?」 予想外の質問だったのかクリフトが、たじろぐ。 そして一呼吸おいたあと、苦し紛れといった感じで、つぶやいた。 「気合い…です」 私は思わず声を上げて笑ってしまった。 だってあまりにも、らしくない回答だったから。 クリフトは、恥ずかしそうに、少し顔を赤くしている。 気合いで風邪をひかないなら、私は気合い不足なの? そう聞きたくなったが、可哀想だから言わないであげた。 「はいはい、わかりました。看病していいよ」 、きっとクリフトは、何があっても引き下がらないだろう。 しょうがないから、もう許してあげる。 クリフトは、私がどんなに怒ったって、他人を優先しちゃう、そういう奴だから。 でも私は、クリフトのそういう優しいところが、正直嫌いじゃない。 「うつっちゃったら、どうしよう?」 「ちゃんと、うがいしますから」 さて、それはどの程度の効果があるのかしら。 私には、それこそ根拠がわからないので、あまり安心材料にはならなかった。 「もし、うつったら、二度と看病させないからね」 「え!? そ…そんな」 ちょっとだけ意地悪言ってみる。 これから言う言葉の、ちょっとした照れ隠しだ。 「でも、もしうつっちゃったら…私が看病してあげても、いいよ」 ちょっと恥ずかしいから、クリフトの顔は見なかった。 お布団に顔をうずめて。 今のは、普段言えない「ありがとう」のかわり。 自分より他人を優先しちゃうお馬鹿さんへの、労いだ。 「ありがとうございます」 チラリと目だけで振り返ると、クリフトは微笑んでいた。 ちょっと困った感じで。 いつもならなんてこともない表情なのに、少しドキドキしちゃうのは、何でなんだろう。 「さぁそろそろ眠ってください。眠らないと治りませんから」 そう言って、クリフトは、私の額に冷たいタオルを乗せてくれた。 熱かった額が冷やされて、急激に睡魔が襲ってきた。 胸の高鳴りの原因を考える前に、私は眠りに落ちっていった。 いつもありがとう、クリフト。 いつかきっと、ちゃんと言うから――。
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クリフトのアリーナの想いはPart11 422 名前 従者の心主知らず 砂漠のバザー編 1/11 Mail sage 投稿日 2010/11/21(日) 23 57 27 ID 3GeiDYf70 最近クリフトが独り言を教えてくれなくなって、ちゃんと聞こうと決めたのはお城を出てからのこと。 今まででわかったことは、 独り言の内容は、立場や身分、町の構造について?みたいなやっぱり難しいことだったってことと、 教えてくれない理由は、なんて言えば私に一度で伝わるかすぐに浮かばないからなんだって。 確かにクリフトってたんたんとしゃべるときは難しい言葉を使いがちだけど。 でも私なんか思ったことはぽんぽん言っちゃうのにクリフトは気をつかいすぎなのよ。ほんとそう思うわ。 でも私は今別のことで頭がいっぱい。やっと来たわよ砂漠のバザー! 「来たわ来たわ!ここが砂漠のバザーね。うっわー面白そう!」 「にぎやかですね!どこからこれだけの人が砂漠のまん中に集まったのか」 クリフトもまわりをきょろきょろしてる。それもそのはず、砂漠にテントやお店、人や物であふれてたんだもの。 ブライはちょっと疲れてるみたい。なんにも言わないわ。 「すっかりおそくなっちゃったわ。今からぜんぶのお店を見物するわよ!いいでしょ?ねっねっ」 「やれやれ、遅くなったのは姫さまがほこらへ寄り道するからでしょうに……」 やっとブライがしゃべったと思ったらお説教だった。でもほんとに疲れた声だったから無視できなかった。 「だってだって、もしエンドールにこっそり通してくれるようならバザーのあと行こうと思ったんだもんっ」 「ほー。しかし優秀な衛兵のおかげでそうはいきませんでしたなあ」 「うー。じいのいじわるっ」 そう、私たちはここに来る前にエンドールに続くらしい旅の扉があるほこらに寄ってきたの。 というより、私が道を間違えちゃって偶然たどりついただけなんだけど。 いつだったか誰かが言ってた旅の扉がここなんだと知って、思わず喜んだのをじいはよく思ってなかったのね。 ほこらにはお城の兵士がいて結局通してもらえなかった。 肝心のクリフトは、あれが旅の扉、なんと神秘的な!みたいなこと言っててぜんぜんこっち見てくれないし。 こういうときこそその難しい話で兵士を説得させてくれればいいのよ。 でもお父さまの命令なら仕方ないわ。 お城の外には出てもいいってお許しをくれたんだもの、今度エンドールにも行きたいってお願いしてみよう。 兵士をみね打ちしてこっそり通るのはそれからでも遅くないわ。 どうせ旅するならこっそりじゃなくて堂々と行きたいものね。 そんなことがあって、ほんとうなら午後のティータイムには着くはずの砂漠に夕方近くにたどり着いたわけなの。 「姫さま、もし店を回るのでしたら急ぎませんと。片付けているところもありますよ」 「えっうそっ」 クリフトの視線の先を追ってみると、お店の人が売り物にシートをかけたり片付け始めたりしてた。 「ほんとだ!何よー、夜はお店は開いてないの?つまらないわねー」 「おー残念ですな。寄り道した報いですかな?砂漠のバザーはもう終わり!ささ、帰りましょう」 「やだ、帰らないもんっ」 そこでひらめいたの。すぐ先に見えた宿屋の看板! 「決めたわ、今日はあそこで泊まりましょ?それで明日めいっぱいバザーを楽しむの!ねっねっ」 私はふたりに振り返る! 「……まあ、夜に外を歩くよりは無難でしょうね」 「わたしは静かな所でないとよく寝つけないと以前申し上げたはずですのにのう……」 「ちょっと、なんでふたりとも元気ないのよ」 「い、いえ、元気がないわけでは……ともかく、宿をのぞいてみましょうか」 「うん!」 クリフトの言葉で私たちは宿屋のテントをくぐった。 「うわーすごーい」 中に入ったら砂の上にシートがひいてあって、もう何人かの人が荷物をまとめたり寝転んだりしてた。 「こんばんは。旅人の宿屋へようこそ。3名様でいらっしゃいますか?」 「……ええ」 宿をとるのはクリフトにお願いして私はシートの一つをさわってみた。編みこんである。うすーい。 あそっか、砂がやわらかいから厚いおふとんにする必要がないのね。でも編みこんであるのは? 「ブライブライー。どうしてこんなに編みこんであるおふとん使うのー?」 「これ姫さま、声が大きい」 「あ、ごめんなさいっ」 私は思わずまわりを見た。そういえば他の人もいるんだったわね。 「旅の方、砂漠は初めてかね?」 となりで荷物をまとめてた人がにこにこしながら話しかけてきた。白い変てこなぼうしをかぶってる。 「ええ、そうなの。うるさくしてごめんなさい」 「いいっていいって。まだ寝る時間じゃないしねえ」 「すまんのう」 話しかけてきた人は優しい人だった。怒ってなくてよかったー。 その人は行商人で、バザーのこととか砂漠のこととかエンドールの武術大会のことまで話してくれた。 そうそう、編みこんであるおふとんを使うのは強度を重視したためなんだって。 うすいのは持ち運びを楽にするためでもあるんだって。 それからこの宿ではみんなで並んで寝るんだって。外で星を眺めながら寝る人もいるみたい。 私たちのことも聞かれたけど、じいがかわいい孫ふたりと気ままな旅をしてるんじゃってごまかした。 あれ、私クリフトの妹ってことになっちゃったのね。でも確かにそんな感じかも。 もうすぐ夕食だからといってその人が宿を出ていくとき、私はお礼を言うのを忘れなかった。 お部屋も仕切りもない。たった今出会ったばかりの旅人たちが、みんなで並んで寝転んで夜を明かす。 そこでさっきみたいに情報を交わし合ったり仲よくなったりするんだわ。ああ、これこそ旅って感じじゃない? やっぱり旅って、冒険って、最っ高!!!あーあ、やっぱりメイとももう少し話がしてみたかったな。 クリフトがお支払いをすませたみたいでこっちに来た。気づいたらまわりに人はいなくて三人だけだった。 わくわくする私とは正反対にクリフトはかたまってた。 「予測はしていました。していたのですが、いざ目の当たりにしますと……」 「クリフトどうしたの?何を予測してたの?」 「……この宿の構造です」 クリフトは青ざめた顔してる。青ざめたというか、表情はそんな雰囲気なんだけど、顔自体は赤いの。 クリフトってほんと赤くなったり青くなったり器用よね。 宿の構造かー。あ。そういえば。そういえばそうじゃない!そうよそうよ!私はにこにこしてクリフトに言った。 「クリフトー、今日は見張りをしなくていいわよね。部屋も分かれてないし仕切りもないし」 「……………………」 「じいも、今日はいっしょに寝るわけよね」 「……まあ、そうなりますな」 「じゃあじゃあ、今日は姫とか教育係とか家来とか、そういうのぜんぶ抜きにして三人並んで旅人しましょっ」 「とんでもないことですっ」 ひっくり返った声を出したのはクリフトだった。 「な、なによ、なんでよー」 「た、ただでさえ仕切りがないというのにまして、ひ、ひ、姫さまと隣り合わせで眠るだなんてそんなっ」 「?」 クリフトは壁のほうを向いてぶつぶつ言い始めた。あ、いつもの独り言だ。 「神よ、これは日頃の善行に対する恩恵なのでしょうか、それとも日頃の悪行に対する試練なのでしょうか。 不肖クリフト、今日ほどあなたの存在を遠くに感じたことは……」 「ちょっとクリフト、どうしちゃったのよ。いきなり神学のお勉強始めないで」 クリフトの独り言は止まらない。やけに神よ神よって言ってる。 なんだろう。ただでさえ仕切りはないのに、いっしょに寝るなんてそんな……なに?神さまが遠いってなに? クリフトは、私といっしょに寝るのいやなのかな。あ、寝相が悪いからかな。 でもちっちゃなころはいっしょに寝たことだってあったはずなのにな。いっしょに。そう、いっしょに……。 しばらくぶつぶつ言ってたクリフトがやっとこっちを向いた。さっきよりはもとに戻った顔色で言う。 「やはり私は警備をさせていただきます」 「だめよ、今日は三人で旅人するの。クリフトが見張りをするんだったら私も見張りする!」 「なにをおっしゃいますか、姫さまはどうかお休みください」 「いやよ、私が寝るんだったらクリフトも寝るの!」 「姫さま……っ」 「今日はみんないっしょなのっ!」 なんで私こんなに必死になってるんだろ。なんでちょっとだけ泣きそうになってるんだろ。わかんない……。 「……クリフト、姫さまに寝ずの番をさせるつもりはあるまい?今回は引き下がれい」 そこにじいが。じいが……。 「そうよそうよ!引き下がれーいっ」 「そ、そんな……」 じいのまねして私も口をとがらせた。じいが言ってくれれば絶対よ!だって2対1でクリフトの負けだもの! クリフトは諦めたようにがっくりと下を向いた。私はちょっとだけ胸がちくっとした。クリフトがゆっくりと顔を上げる。 「あの、ブライさま……ではせめて、中央にいてくださいますか……」 「むぅ?」 「あっダメっ。中央は私が寝るの。だってふたりを守るには真ん中にいたほうがいいでしょ?」 「姫さま……いえ、視界にはふたりが同時に入ったほうが一瞬の隙を突かれた際には」 「おぬしら、さっきから何を口論しておるんじゃ。わしゃ疲れた。腰も痛いしのう。この場所はもらうぞ」 「あ、うん。ごめんなさい」 「は、申し訳ありません……」 じいは一番はじっこにおふとんを用意してねっころがった。 「クリフト」 「はい!」 「隣人にはおぬしらは兄妹ということになっておる。おぬしに限ってそんなことはないとは思うが、くれぐれも わしの目を覚まさせるまねはするでないぞ」 「……はい……」 クリフトは返事をしながら口に手を当てた。難しい顔してる。でも私はじいの言葉が気になって。 「じい、それどういうこと?」 「んん?そうさの、姫さまの素性を知られぬよう兄妹らしい振る舞いを心がけよと言ったんじゃよ」 「ふーん、そういうこと……」 気づいたらクリフトはあっちを向いてた。視線の先を追ってみると他の人たちの荷物とかおふとんとか。 なに見てるの?って聞こうと思ったらクリフトのほうが先にしゃべった。 「姫さま、今夜はやはり、中央でお休みになっていただけますか……」 「え?う、うん……」 クリフトはまた口に手を当てて考えごとしてる。きっと難しいこと考えてるんだろうな。 ふたりを守るには真ん中にいたほうがいいと思ったんだけど、それもちがったのかなあ……。 でも宿の人が戻ってきたせいもあって結局聞けなかった。 夜。 もう一つの大きなテントで夕食をすませてオアシスの水で体を流して歯みがきして。 見たことのない料理、何もかも初めてのことで楽しいはずなのに、なんでか気分はすぐれなかった。 早く三人で休みたい。早く三人でいっしょにごろんてなりたい。私はそのことばっかり考えてた。 宿に戻るともう寝てる人もいた。あの行商人さんももう横になってた。羊を数えてるみたい。声が聞こえた。 「さて、わしらも休みますかの」 「うん」 私はおふとんにごろんてなってブランケットにくるまった。けっこうあったかい。 砂漠の夜は冷えるって聞いたけどこれならぐっすり眠れそう。 「これこれ姫さま、お祈りを忘れてはなりませんぞ」 「……はーい」 私は起き上がって両手をぎゅっとした。私たちの国では朝晩のお祈りはおつとめとして日課になってるの。 お祈りを簡単にすませて私はまたブランケットにくるまった。 となりを見るとブライが上着をたたんでた。反対側を見たらクリフトもぼうしをとって上着を脱ぎ始めてた。 よく考えたら、旅に出てからふたりが着替えてるの初めて見るかも。 だって今までは私が寝るまでふたりは起きてたし私が起きたときにはふたりはもう着替えてたから。 なんか、新鮮だなー。そう思ったら自分が今パジャマになってるのがちょっと恥ずかしくなった。 「では姫さま、おやすみなさいませ」 「うん、おやすみ、じい」 じいもお祈りを終えたみたいでブランケットにくるまった。私はちょっとだけほっとした。 でもクリフトはまだ起きてた。手を胸に当ててぎゅっとしてる。それから両手をぎゅっとして目を閉じた。 たいまつの火でほのかに見える顔は、何か考えごとをしてるみたいにも見えた。長い……。 「……クリフト?」 「……………………」 思わず声をかけちゃったけど返事はなかった。私はずっとクリフトを見てた。 ずいぶん長いこと待ったと思う。やっとクリフトが目を開けた。ゆっくり私のほうを見る。 「姫さま、申し訳ありません。なんでしょうか」 「ううん、ごめんなさい。お祈りのじゃましちゃったのね」 「いえ、そんなことは……少々長すぎましたね」 それだけ言うとクリフトは前を向いた。 「普段はそうでもないのですが、心に迷いや戸惑いがあるとどうしても長くなってしまうのですよ」 苦笑いするクリフト。でも私はぜんぜん笑えなくて。 「……心に迷いや戸惑いがあるの?」 聞いちゃった。クリフトはしばらく黙ってたけど、前を向いたまま言ったの。 「……そうですね。旅に出てからいろいろなことがありすぎまして、未熟な自分を思い知らされる毎日ですよ」 「……そう」 「寝ましょうか」 そう言ってクリフトも横になった。ブランケットを胸もとまであげて、両手を胸に置く。 まるで寝ててもお祈りしてるみたい。 宿の人が来てたいまつの火を消してった。一瞬真っ暗になって、そのうちあたりがぼんやりしてきた。 「お休みなさいませ、姫さま」 「うん、おやすみ」 まわりで寝てるのは知らない人たち。砂漠ではみんなでいっしょに夜を過ごす。 普通の家に生まれてたらきっと何でもないことだったんだろうな。 でも、今は私もいっしょよね。姫とか関係なく普通の旅人として、じいとクリフトといっしょに寝てるのよね。 私今、自由なんだよね。ねえクリフト……。 ふと目が覚めてとなりを見るとクリフトがいなかった。あわてて反対側を見たらじいはいた。寝てる。 なぜかほっとした。クリフト、お手洗いにでも行ってるのかな。どうしよう、私も外に出ようかな。 うん、そうしよう。私が外に出るときクリフトはついてきたんだから、今度は私がクリフトについていこう。 外に出たら少しだけ風がふいてた。月や星がきらきらしてて思ったより明るかった。 だからオアシスのそばでクリフトが座ってるのもすぐわかった。今夜はぼうしのかぶってないクリフト。 「クリフト」 「ひ、姫さま!どうかなさったのですか?」 「どうかなさったじゃないわよ。クリフトがいなかったからさがしに来たんじゃない」 「そ、そのようなこと……」 「っもう、心配させないでよね。ほんとにびっくりしたんだから」 「……申し訳ありません……」 私はクリフトのとなりに座った。クリフトは少しだけ後ずさりしたけど、私は気にしないふりをした。 「夜になると砂漠もずいぶんすずしいわ。風がきもちいい……」 「……そうですね。熱を吸収しやすく放出しやすい、この地表や気候のなせる業だそうですよ」 「ふーん、そうなの」 普通に話はしてるけど、何だかよそよそしい気がする。もう気にしないふりは無理。私は思い切って聞いた。 「ねえクリフトー」 「……なんでしょうか」 「私といっしょに寝るの、いやだった?」 「え?」 「クリフトが今起きてるのって、私のせい?」 「そ、そのようなことは……」 「でも、ここについたときからクリフトずっと変。いっしょに寝ようって言ったときもすっごく反対してたし」 「……………………」 私はまっすぐクリフトを見た。でもクリフトは私から目をそらした。前を見たまま難しい顔してる。 やっぱり、いつもと違う……今までと違う……。ねえ、昨日の笑ってたクリフトはどこ……? 「立場を、考えますから」 「………………」 「お忍びの旅とはいえ、姫さまは姫さまであり、私は一従者に過ぎません」 「…………」 「教育係のブライさまならまだしも、私のような身分の者が姫さまの寝所までお供をするなど」 「だから、今日はそういうの抜きにしてって言ったじゃない」 「……………………」 「私は今日はクリフトの妹なの。じいは私たちのおじいちゃんなの。家族がいっしょに寝ることってあるでしょ? ちっちゃなころはいっしょに寝たことだってあるのに、なんでそんなに立場立場って」 「それが、以前申し上げた絶対的称号だからです」 クリフトの言葉がやけに冷たく響いた。なんで……。なんで私、泣きそうになってるんだろう。 「…………っ」 「ひ、姫さま……?」 クリフトが私を見たのがわかった。 「だから、だからそういうの抜きにしてって言ってるじゃない!!難しい話なんか聞きたくない!!! そんなこと言って、ほんとは私のこときらいなんでしょ!?」 「ち、ちがいます!断じてそのようなことはっ!!」 「じゃあなんで、なんで今日はいっしょに寝てくれないのよ!他の人たちはみんないっしょに寝てるのにっ!! なんで私だけ、みんなと違うのよっ!!!」 「姫さま……」 「なんでっ……」 私に自由を教えてくれたのはクリフト。でも、その自由を奪うのもクリフト……? 私きっと、ショックだったのね。クリフトはいっつも私の意見に賛成してくれる、そう思ってたから。 力強く反対されたことが、まるで私のこと否定されたみたいで、ショックだったのね……。 「姫さま……」 私は返事ができなかった。早く、宿に戻ろう。早くじいといっしょに寝ちゃおう。そう思って立ち上がろうとした。 「姫さま……もしも……もしもの話です」 クリフトが話し始めた。やけに低い声。そう、昨日のフレノールのときみたいに。 私は立ち上がるのをやめて少しだけ顔を上げた。クリフトは、今度はちゃんと私を見てた。 「仮定の条件を持ち出すことは現実性に欠ける話題であり、身にそぐわぬものとすら思っていましたが…… もし、姫と従者、いえ、神官という立場すらなくして申し上げてよいのなら、そのように考慮していただけるのなら、 私の答えには、その……もう一つ、あります……」 「う、うん……」 「このような場に相応しからぬ発言を、お許しいただけますか……?」 「いいわよ、なんでも話して」 そうは言ったものの、少しこわかった。クリフトからまた否定されるようなことを言われたら……。 でも私は次の言葉を待った。きっと、それでもクリフトは私に賛成してくれるって、心のどこかで期待してるのね。 クリフトはやけにまわりをきょろきょろしてた。かと思ったらオアシスのほうをじっと見たりして。なんでだろう? しばらくたってやっと、遠慮がちに小さくぼそっとつぶやいた。 「……私も、男なんです」 「え?」 私はクリフトの言っていることがよくわからなかった。 「男なんですよ……。ですからその、あまりに目の前に無防備な女性が横たわっていますと、その……」 「………………」 「だ、だきしめたくなったりするんです……」 「…………」 えっと……。私はいっしょうけんめい頭の中を整理した。これは難しい話?かんたんな話? 「い、いえ、だからといって別に好きだからとか姫さまだからとかそういうわけではなく、その……っ あ、あるんですよっ!男にはそういう……衝動が……っ」 「えっと、じゃあじゃあ、じゃあさ、クリフトの向こうに寝てた女の人も、おんなじように抱きしめたくなっちゃうの?」 「いえ、それは……いや、あの……ああもう、なんと申し上げればよいかっ」 手で顔を隠すクリフト。余裕のない感じが昨日のフレノールと重なる。子どもみたいなクリフト。 「…………あるいは、そういうこともありえるという話です…………」 顔を隠したままクリフトは小さく答えた。そっか。あるんだ。……そっか。そうなんだ……。そうなんだ! そうよね、私はともかく知らない女の人を抱きしめちゃったら失礼だものね。ううん、変態だわ。痴漢だわ。 だからそうならないようにクリフトは外に出てたのね。 そうか、だから人は宿をとるとき男の人と女の人で別れるのね。確かにお城でも寝るときはみんな別々だったわ。 なーんだ、そういうことだったのかー。そう思ってふと一つの結論にたどりついた。 「クリフトのエッチ!」 クリフトは手で顔を隠したまま小さくため息をついた。 「……ええ、ええ、私は未熟者です……」 やけにがっくりしてるクリフト。さっきまでの冷たい雰囲気はどこへやら。私はもう少しからかいたくなった。 「うふふ、クリフトのえっちー」 「ひ、姫さま……?」 「えっちー」 「……………………」 「クリフトって、ああいう大人の女の人がいいのね。クリフトのへんたーい」 「そ、そんな……もう、勘弁してください……」 「ふふふ。へんたーい」 「でも安心した。私ね、クリフトは私のことほんとにきらいなんだって思ってたの」 「そんなわけありませんよ」 「うん、よかったー」 「私はむしろ、姫さまのほうが……」 「え?」 「その…………寛大さに救われました……」 「え、なんのこと?」 「いえ……私も姫さまへの誤解がとけて安心しましたということです」 やっとクリフトが笑った。もうよそよそしくない。冷たい雰囲気もない。昨日の笑ってたクリフトだ。よかった……。 今夜も月がきれい。星がよく見える。 クリフトが外に出たのはもう一つ理由があって、このきれいな景色を眺めるためなんだって。 さっきまで数えて理由が三つじゃない?やっぱりクリフトって難しいこと考えすぎだわ。 でもオアシスを眺めながらため息をついてまったりしてるクリフトを見ると、ほんとにそうなんだなって思う。 「……私が、姫さまを嫌いになどなるはずがないのです」 「え?」 「毎晩、こうして景色を眺める度に思わずにはいられません」 「…………」 「特にこんな、星のきれいな夜には……」 言いながらクリフトは遠い夜空を眺めた。私もなんとなくいっしょに眺めてみる。 「夜には……なあに?」 「いえ、その、ふるさとや……ふるさとが……い、いえっきれいな星ですね!」 「?う、うん、そうだね」 …………ぷ。 「もうー、クリフトったらー」 「な、なんでしょうか」 「こういうの、昨日もなかったー?いい夜とか、きれいな星とか。でも別に私にわかるようにっていっしょうけんめい かんたんな言葉に変えてくれなくっていいよー」 「は…………」 「夜にはふるさとのことを思うんでしょ?そうよね、お城を出てからもうずいぶんたつものね」 「は、はい……そうですね」 「お父さまも大臣も、神父さんもあのネコも、みんな元気にしてるかなぁ」 「……便りがないのは元気な証拠。皆さま元気にしていらっしゃると思いますよ」 「うん、そうよね」 「私にはあの星はこれから会うはずの強いライバルたちの顔に見えるわ」 「ライバルですか。数え切れないではありませんか」 「その数え切れないライバルたちをどんどん打ち負かしていくのよ!」 「なるほど。そして姫さまがあの夜空の一番星になるのですね」 「そう!私がいちばん輝くの!」 クリフトが笑ってる。よかった。あのとき宿に戻っちゃわないでほんとうによかった。よかったー。 「姫さま、宿に戻りましょうか」 「え?クリフトは大丈夫?」 「ええ、あれはただの衝動ですから。今はもう大丈夫です」 「そっか。わかったー」 「ご迷惑をおかけいたしました……」 「ううん、いいのよ。もしクリフトがあの女の人を抱きしめそうになったら私がみね打ちしてあげるから安心して」 「そ、それはたのもしいですね…」 肩の力が一気に抜けた。クリフトといっしょに宿に戻ってまたごろんとなる。今度はぐっすり眠れそう。 きっとクリフトは、いちばん言いにくいことを言ってくれたのね。男の子の秘密。 私だって、女の子の秘密を話すのはちょっと恥ずかしいもの。 でも、そうやってちっちゃなころみたいに何でも話してくれればいいのよ。あんまり難しく考えないで。 幼なじみなんだから。ねえクリフト……。 「私もあのくらいたくさん買い物したいわ!いいでしょ?いいでしょ?」 「強欲なる者はやがて地獄におちると言いますな。姫さまもゆめゆめ買いすぎることのないように」 「わかってるって。私はささやかな物でいいの。強い武器があればそれで。防具はいいの。武器があれば。 だってやられる前にやっつけちゃえばいいんだから」 「やれやれ。強欲なのやら強情なのやら」 「さすがは姫さまですね」 「さあさ、めずらしいツボはいかが?見るだけでも見てってちょうだい」 ふと女の人に声をかけられた。 「めずらしいツボ?ふつうのツボに見えるけど。どこが違うのかしら?」 「だまされてはなりません。めずらしかろうとツボはツボ。必要のないものは買わないことです」 「ブ、ブライさま、聞こえていますよっ」 「ふふふ。まあまあそう言わずにダンディーなおじいさん、見るだけ見てってちょうだいな」 「な、なぬっ」 「ねえねえクリフト、今の人、昨日クリフトの向こうで寝てた女の人よ。抱きしめちゃう?」 「だ、抱きしめませんっ」 「ふふふ」 南の砂漠のバザー。世界中を旅してるからこの砂漠でバザーを開くのはひさしぶりなんだって。 そんな偶然に出会えるなんて、私はきっと運がいいのね。やっぱり旅って最高だわ。 「フー、しかし暑い暑い。こう暑いと頭がぼーっとしてきますな」 「少しどこかで休みましょうか」 「ねえねえ。私ね、お昼のメニューはもう決まってるの。昨日のご飯のときメニューを見て決めておいたのよ。 休むならあそこにしましょ?ねっねっ」 「そういえばもうすぐ昼時ですね」 「日陰ならどこでもええわい。とりあえず一杯の水が飲みたいのう」 「じゃあ決まり!ほら、あそこのおっきなテント!行きましょ!行きましょ!」 「あ!姫さま探しましたぞ!すぐにお城にお戻りください!王様が、王様が大変なのです!」 「え……?」 突然私たちを呼び止めたのはお城の兵士。楽しく過ごすはずの時間が、音を立てて崩れ始めた。
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クリフトとアリーナの想いはPart8 65 :胸騒ぎの髭剃り 1/4 ◆e.sLpeggy2 :2007/11/26(月) 20 47 49 ID ZW5/e2s90 「うーん、やっぱり川で顔を洗うのって、最高!!」 アリーナは、川辺でぶるぶると顔を振ると、思い切り伸びをした。 ここは、サランからやや離れた森の中。 城を飛び出したアリーナは、クリフト、ブライとともに3人で旅をしていた。 アリーナにとっては何もかもが新鮮で、毎日が驚きと喜びの連続であった。 アリーナは顔を洗った後、そのまま川沿いを歩いていたが、 下流の方向に、やはり川辺で顔を洗っているクリフトを見つけた。 ―――へえ、クリフトが顔を洗ってるところなんて初めて見たわ…。 何となく興味を持って眺めていると、クリフトは丁寧にタオルで顔を拭いた後、 なにやら顔を撫で回し、腰の袋からキラリと光るものを出した。 「―――!」 クリフトが手にしたものを見て、アリーナは息を飲んだ。 それは、鋭い刃を持った小さなナイフ。 ―――何を…クリフト―――!? クリフトが、ナイフの刃をゆっくりと喉元に押し当てた。 「―――クリフト!!」 アリーナは叫ぶと同時に前に飛び出していた。 「は?ひめさ…ふごぉっ!!!」 アリーナの声に振り向いたクリフトの顔面に、アリーナの鉄拳がめり込んだ。 「がはっ、げほっ、な、何をなされるのですか、姫様!!!」 タオルで顔を抑えながら、クリフトが涙目でアリーナを見た。 「それはこっちのセリフよ!!クリフト、あなた今何をしようとしたの!?」 「…は?」 クリフトがぽかんとした顔で、顔からタオルを離す。 そこには、痛々しい鉄拳の跡がくっきりと残っていた。 「何って…髭を剃ろうとしていたのですが…?」 一瞬、アリーナの頭の中が、真っ白になった。 「ひ…げ…?」 「はぁ…それが、何か?」 クリフトは、アリーナを怪訝そうに見上げた。 アリーナは、かすれた声でクリフトに尋ねた。 「ク、クリフト…って、髭、生えてるの…?」 クリフトは少し傷ついたような顔をした。 「それは、私だって一応男ですから、髭くらい生えます。」 ―――オトコ デスカラ…。 「―――!!」 アリーナは、ふいに、自分の心臓が跳ね上がったような気がした。 「姫様…?」 言葉無く立ち尽くすアリーナに、クリフトは心配そうに眉をひそめた。 「大丈夫ですか…なにやら、お顔が赤いような…。お熱でもおありですか?」 クリフトがそっとアリーナの額に手を伸ばした。 「わわわわわわわ!!!」 アリーナは、真っ赤な顔をして飛び退った。 「姫様!?」 「だ、大丈夫、熱なんかないから!今日は涼しいし!晴れてるし!!」 アリーナは意味不明の言葉を口走ると、くるりと向きを変えて走り出した。 「……一体、何だったんだ……?」 後には、膝立ちのまま、疑問符で頭をいっぱいにしたクリフトが残された。 「姫様?どうなされましたのじゃ?」 弾丸のように木立から飛び出すと、テントの側で髭を梳っていたブライが アリーナを見て目を丸くした。 「ブライ…。」 アリーナは立ち止まると、ブライをまじまじと見つめた。 「ブライにも、髭があるのよね…。」 アリーナの言葉に、ブライは、ほ、と口を丸めると嬉しそうにうなずいた。 「ようやく姫様もお気づき召されたか。 『ブライの白髭』と言えば、城ではちょっとしたものなんですぞ。」 自慢気に髭をなでるブライを見ながら、アリーナは考えた。 ―――ブライだけじゃない、お父様も大臣も、男の人は、皆、髭を生やしてるわ…。 いままで、そんなこと、気にもとめなかったのに。 当然のこととして受け止めてきていたのに。 ―――私だって一応は男ですから――― ふと、クリフトの先ほどの言葉が蘇る。 再び胸が騒いで、アリーナは思わず胸元をきつく握りしめた。 ―――…どうして、クリフトだと、こんなにヘンな気持ちになるのかしら。 「まあ聞いてくだされ、この輝くような白さと艶やかさを保つのが大変でしてな…。」 胸を張りながら髭の手入れ方法を話すブライの言葉を適当に聞き流しながら、 朝日差し込む森で、いつまでもアリーナは首を傾げていた。 オマケ** 「あっれー?髭剃り見つかんねーな。クリフト、お前の貸してくんない?」 「!!…ソロも、髭生えてるんだ…。」 「何だよアリーナ、馬鹿にするなよな。俺だって立派な大人だぜっ!」 「…立派な大人なら、自分の持ち物くらいきちんと管理してくださいね。 はいどうぞ、ソロさん。」 「おお、クリフト、サンキュー!」 2人を見ながら、アリーナはここでも首を傾げていた。 ―――…ソロが髭生えてるって聞いても、びっくりはするけど、やっぱり クリフトのときみたいにはドキドキしないんだ…ヘンなの…。