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南太平洋 ガタマ環礁 スポット案内 南太平洋 ガタマ環礁ガタマ環礁エントランス・スクエア ドルフィンズ・アイランド ドーナッツ・リーフ スプリング・ガーデン ブルー・クリフ トラフィックス プライベート・リーフの入り口 ディープ・ホールの入り口 ミニスポット ディープ・ホールグレート・コロシアム マウス・オブ・トゥルース ボトム・ドーム ミニスポット プライベート・リーフ ガタマ環礁 ミクロネシアのバオウル共和国付近に位置する美しい環礁。 ガタマは現地語で「母の宝物」を意味している。 バオウル共和国自体が架空の国であるため、明確な位置は不明だが、 Googleマップで言うとこの辺りがモデルと思われる。 エントランス・スクエア A-1周辺 初めに行く場所。小さな魚がたくさんいる。 ドルフィンズ・アイランド B-4周辺 マイルカ、マンタなどが見られるエリア。 ドーナッツ・リーフ G-2周辺 マナティが見られるエリア。 ちなみに基本的に南太平洋に生息する海牛類はジュゴンなのだが、 ガタマにはなぜかマナティが生息しているらしい。 (大人の都合とか言ってはいけない) スプリング・ガーデン C-6周辺 ザトウクジラの親子やアオウミガメなどが見られるエリア。 ブルー・クリフ A-7周辺 外洋へと繋がる断崖。 トラフィックス F-7周辺 オサガメが見られるエリア。 プライベート・リーフの入り口 H-6の東端 コガネシマアジやキイロハギが多いことから、イエローゾーンとも呼ばれる。 ディープ・ホールの入り口 E-8の南端 ナポレオンフィシュが優雅に泳いでいる。 ミニスポット ケーキ岩D-4周辺カリフォルニアアシカやキイロハギの群れなどが見られるエリア。 ガタマのへそD-5周辺ナポレオンフィッシュが見られるエリア。ジンベエザメの周回コースでもある。 静寂の洞窟A-7断崖北面、水深20m付近 バードアイランド(ミニスポット表示なし)F-5の小島。オセアンヌのガイドによるとそういう名前らしい。海中を飛ぶ海鳥たちが見られるエリア。 ディープ・ホール ガタマ環礁の南にある海底縦穴。 最深部は水深35m。 グレート・コロシアム ディープホールを中心に広がる円形の地形。 昼間はトビエイ、カマイルカ、マンボウなどが見られるが、 夜に行くとまさにコロシアムとなるエリア。 マウス・オブ・トゥルース グレート・コロシアムの中心に開いた穴 タマカイなどが見られる。 ボトム・ドーム ディープ・ホール最下層 あるイベント後にはコマッコウが見られるようになる。 ミニスポット ケルプの回廊グレートコロシアムに続く水路。ズームポイントにはリーフィーシードラゴンが生息。 精霊の岩屋第2層B-3南西側の穴 魔神の岩屋第2層B-3南東側の穴。ハナヒゲウツボがいる。 修行者の岩屋ボトムドーム北側の洞窟 プライベート・リーフ 詳細は別ページプライベートリーフを参照。
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クリフトとアリーナの想いはPart7 262 :ザオリク1/7 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/04/11(水) 11 32 12 ID B8WosjmC0 クリフトと勇者がザオラルを覚えてしばらく経った。 旅はますます厳しさを増し、出会う魔物の強さも日に日に上がって来る。 それに伴い、好むと好まざるとにかかわらず、2人が蘇生呪文を使用する場面も増えてきた。 しかし、蘇生呪文といっても、ザオラルの生還率は50%に過ぎない。 「ねえクリフト、あんたさ、この際、ザオリク覚えちゃってくれない?」 なので、ある日の夕食時、マーニャが口にした要望はもっともしごくであった。 しかし、クリフトは首を横に振った。 「ザオリクは特殊な呪文ですから…。フィールドで使うのは無理なんですよ。」 「へー、そうなの?単にザオラルの強力版だと思ってたわ。」 意外そうな顔をするアリーナに、クリフトは解説を始めた。 「ザオラルもザオリクも、死者の魂の呼び戻しと言う点は共通しているんですが、 その方法が根本的に違うんですよ。」 「どういうこと?」 「ザオラルは、人間が、自らの清浄な気と意志の力を高めて、それによって発動する呪文で 呼び戻しを行なうんですが、ザオリクは、その場に神の御力そのものを呼び奉ることによって、 それを行なうんです。…ザオリクは、呪文と言うより、むしろ儀式に近いですね。」 「…うーん。難しくて、よく分からない…。」 眉間に皺を寄せるアリーナ。 「要するに、ザオラルは人間の力だけど、ザオリクは神の力ってことですかしら。」 ミネアが首をかしげた。 「そのとおりです、ミネアさん。故に、ザオリクは100%の蘇生が可能なんです。 ただ、神の御力を呼び奉るには、聖域が必要になります。例えば教会などがそうですね。 逆にそういう場所であれば、術者自身の能力はそれほど必要ないんですよ。」 「そういや、教会とかではフツーの神父さんが軽々と蘇生させてるもんな。 あれは、教会が聖域だからできるってことなのか。」 と勇者がうなずき、マーニャは口を尖らせた。 「そうすると、つまり、フィールドじゃ聖域がないから、ザオリクは無理ってこと?」 「そうですね、教会と同レベルの聖域を、一人の人間が無から作り出すと言うのは、 まず不可能に近いと思います。…物の本には、遥か昔に勇者と旅をした賢者が、 フィールドでザオリクを使ったなんて話もありますが、伝説の域を出ないですね。」 クリフトの話に、皆、感心したようにほーともへーともつかない声を出した。 「そもそも、私の場合…。」 クリフトは、そこでふと口をつぐんだ。 「クリフト?どうしたの?」 アリーナの問いにクリフトは、なんでもありませんと首を振ると、心の中でつぶやいた。 ―――闇を身の内に飼う私が、神の御力を呼び奉るなんて話、問題外だ…。 数日後、一行は、ゴッドサイドに向かうことになった。 クリフトは、目的地に近づくにつれ、難しい顔をして考え込む時間が増えていた。 勇者もまた、ゴッドサイドの南にそびえる天空の塔を眺めながら、 いつになく物思いにふけっているようだった。 魔物に最も敏感な2人が、他に気を取られていたせいかもしれない。 気がついた時には、一行は、強力な魔物達の群れに囲まれていた。 非常事態として全員で戦闘を開始したが、この周辺の魔物は手ごわかった。 しばらく戦っているうちに、トルネコ、ミネアは倒れたまま動けなくなった。 ブライもマーニャも魔法力を使い果たして、膝をつき、肩で息をしている。 ライアンは、満身創痍ながらもやつざきアニマルの群れに切り込み、1頭を切って捨てたが、 これをすかさずブラックマージが蘇生させた。 「こしゃくな奴らめ!…魔物の癖に、蘇生呪文を使うとは!」 「魔物には魔物なりの神様がいるってことかしらね!」 マーニャは歯を食いしばって立ち上がると、鉄扇を手にライアンの助太刀に駆け寄った。 勇者とアリーナ、クリフトは、背中を互いに預けながら、健闘していた。 しかし、クリフトのベホマで回復しながらも、3人の体力もそろそろ限界だった。 繰り出した剣をかわされ、勇者の足がよろめいた。 その瞬間、横からオーガーが鉄球を振り上げ、痛恨の一撃が勇者を直撃した。 「がはっ!」 勇者は、後ろで闘っていたクリフトともども吹き飛ばされ、2人は岩壁に叩きつけられた。 「クリフト!ソロ!」 アリーナが顔色を変えて叫んだ。 「げほ、げほ…。ソ、ソロ、さん、大丈夫、です、か?」 クリフトは、咳き込みながら口中の血を吐き出すと、そばに倒れている勇者ににじり寄った。 回復呪文をかけようと勇者に手を触れた瞬間、クリフトの背筋がヒヤリとした。 勇者は、息をしていなかった。 「ソロさんっ!?」 そのとき、アリーナの悲鳴が聞こえた。 「きゃあぁ!」 クリフトが振り向くと、アリーナが、じごくのもんばんの鎌に右肩を切り裂かれ、鮮血に染まっていた。 「姫様!!」 ベホマの詠唱を始めたクリフトに、アリーナが絶叫した。 「だめっ!!だめよ!クリフト!先に、ソロにザオラルして!」 「…っ!」 確かに、ここでアリーナを回復させても、残りの仲間の状態でこの魔物達を倒すのは困難だろう。 ベホマズンを使える勇者を蘇生させれば、勝算はある。 しかし、勇者蘇生の確率は半々だ。 クリフトに、ザオラル2回分の魔法力は残っていなかった。 1発で勇者が生き返らなければ、全滅である。 ―――ならば、姫様だけでも…。あるだけの魔法力で回復させて、スカラを使えば、姫様なら逃げ切れる…! 回復呪文のため、再びアリーナに向けて右手を挙げたクリフトを、アリーナの強い声が引き止めた。 「クリフト!」 アリーナはクリフトに向かって首を振ると、苦痛に息を切らせながらも、にこりと微笑んでみせた。 ―――大丈夫。クリフトのこと、信じているから。 アリーナの笑顔がそう言っていた。 ―――クリフトなら、ソロのこと、必ず生き返らせてくれる。 敵は、こちらの戦力が尽きかけているのを知って、獲物をいたぶって遊ぶことに決めたらしい。 それ以上の攻撃はして来ずに、のんびりとこちらを伺っていた。 クリフトは、魔物達を横目で見ながら唇を噛んだ。 ―――ここで、蘇生呪文を成功させなければ、姫様も皆も、おしまいだ。 しかし、姫様は、自分を信じて、全てを託してくれた。 その姫様の信頼に応えられなければ、自分は一体、何のためにここにいるのか。 クリフトの目に、強い決意が浮かんだ。 クリフトは、胸のクルスをつかむと目を瞑り、全身全霊を込めて祈った。 神よ、私自身は、あなたの加護を求めるに値しない者ですが、今だけ、力をお貸しください。 姫様のために――誰よりも、気高く清らかな心を持ったあの方を、助けるために―――。 どうか、神よ―――! クリフトは、必死に神へ祈りながら気を込めて勇者に手をかざした。 と、クリフトの右手から白い光が溢れ、勇者とクリフトを包み込んだ。 魔物達が、その光の眩しさに目を覆って悲鳴を上げる。 その悲鳴に、闘っていたマーニャ、ライアンが振り向き、倒れていた者達も顔を上げた。 周囲に漂う魔物達の瘴気を吹き払い、そこに出現したのは、紛れもない清浄な空間。 一同は、信じられないという顔をして、光とクリフトを見つめていた。 「これは…まさか…。」 震えるクリフトの目の前で、白い光が一点に集約し始める。 次の瞬間。 まばゆい閃光が辺り一面にはじけ散ると同時に、凄まじいエネルギーの爆発が起きた。 「きゃあ!!」「うわっ!」 皆の悲鳴が上がるなか、クリフトは、崩れ折れた。 閃光が徐々に収まり、周囲の風景に輪郭が蘇ってきたとき、勇者が、呻きながら体を起こした。 「…な、んだ?今のは…。」 「ソロ!」 アリーナは喜びの声を上げたが、同時に、クリフトが倒れていることに気づき、息を飲む。 勇者も、自分の横で動かないクリフトに気づき、慌ててその体を引き上げた。 「おい、クリフト!大丈夫か!」 揺さぶられて、クリフトは、うっすらと目を開けた。 「…ああ、ソロさん、生き返って…良かった。…大丈夫です、目が眩んだだけ…。」 そして、クリフトはアリーナを振り返って右手を上げると、 「姫様、すいません…。もう、魔法力が、これしか…。」 アリーナに向かってホイミを詠唱した。 「…よく分からないけど、助けられたみたいだな、クリフト。」 勇者は立ち上がりながら魔物達を睨みつけた。魔物達は、今の不可解な出来事に怯えたように後じさる。 「おかげで、体力も魔法力も満タンだぜ。」 勇者は両手を上げると、ベホマズンを唱えた。 強烈な回復の光が皆を包む。 倒れていたトルネコ、ミネア、膝を付いていたブライが、ゆっくりと起き上がった。 マーニャとライアンが、光に包まれながら、不敵な笑みを交わす。 蒼白い顔をして、ぐったりと岩壁に寄りかかっていたクリフトの頬にも赤みが差した。 アリーナが立ち上がって、クリフトに駆け寄った。 勇者の手の中で雷が音を立て始めた。 「…お前ら、覚悟しろよ…!ギガデイン!」 聖なる雷の爆音が、その場に響き渡った。 その後、体力を回復した勇者一行が、混乱した魔物達を殲滅するのに、さほど時間はかからなかった。 戦闘後、薬草を使って皆の怪我の手当てをしていたクリフトに、勇者が尋ねた。 「クリフト。さっき俺を蘇生させたとき、いったい何があったんだ? なんかいつもと違って、全身にものすごい力がみなぎって…、爆発しそうな感じだったぜ。」 「私も、…自分では受け止めきれないほどに大きな…そして聖なる力を感じました…。」 考え込みながら、クリフトが答えた。 「あれは…。もしかして、ザオリク、だったのではないかと…。」 「…え?で、でも、クリフト。ザオリクはフィールドで使えないんじゃ…?」 驚愕の表情の勇者に、クリフトは困ったように首を傾げた。 「はい…そのはず、なのですが…。」 横で話を聞いていたアリーナが、うれしそうに両手をぱちんと打ち合わせた。 「クリフト、すごいじゃない!それって、クリフトが自分で聖域を作り出したってことよね!」 伝説の賢者様と同じよ!と目をきらきらさせるアリーナを、クリフトは、眩しそうに見つめた。 ―――聖域を作り出したのは、自分の力ではない。 アリーナが、自分を信じてくれたから…アリーナの信じる力こそが、聖域を生み出したのだ。 「クリフト?泣きそうな顔してどうしたの?」 アリーナが不思議そうにクリフトの顔を覗き込む。 「…いいえ、姫様。なんでもありません。」 神の愛は、もはや望めない自分だと思っていた。 それでもいいと、仕方ないことだと、思っていた。 しかし、アリーナが信じてくれれば、自分は、奇跡さえ起こすことができる。 ―――姫様。あなたが信じてくださる限り…私は、神の赦しを求めても…よいのでしょうか? クリフトは、胸に手をあてて空を見上げると、そっと目を瞑った。
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クリフトのアリーナの想いはPart11 397 名前 従者の心主知らず フレノール編 1/11 Mail sage 投稿日 2010/11/16(火) 06 35 50 ID kcgnFnNt0 最近クリフトが独り言を教えてくれなくなって、ちゃんと聞こうと決めたのはお城を出てからのこと。 でも気づいたの。 私が知りたいのは独り言の内容もあるけど、どうしてクリフトが独り言を教えてくれなくなったかってことなのよ。 ちっちゃなころは私の後ばっかりついてきて何でもお話してくれたのに。 お説教も多かったけど。 でも私は今別のことで頭がいっぱい。フレノールでメイを助けた後ご褒美と言わんばかりのビッグニュース! 「バザー?砂漠?面白そう!行きましょ!」 「世界各地をめぐるバザーのことは聞いたことがありますが実物は。ちょっと興味がありますね。南の砂漠か。ふむ……」 「でしょでしょ?」 「クソガキめまたもやよけいな事を……。話しかける村人はよーく選ばないといけませんな。老人アホ詩人クソガキ以外の……」 「南の砂漠のバザー!すてきなひびきよね。さっ早く行きましょう!」 「…………。…………」 「どしたのクリフト?なにこっち見てんのよ」 「い、いえその、砂漠は気温も高く体調を崩しがちですので、姫さまはだいじょうぶだろうかと……」 あれ、今回はすんなり教えてくれた。変なの。 「なにいってんのよ!だいじょーぶだいじょーぶ!」 「まーったくクソいまいましい村人め!どうしてこう次から次へといらんことをふきこむか!砂漠がどうした!バザーが何だ! 城へ戻るのがまたおくれるではないか!?」 ブライの何かに火がついたみたい。 「姫っ!!」 「はいっ」 ま、まけないわ。私負けない。 「い、いいじゃない!おくれるだけで帰らないわけじゃないのよ!?だったらいいじゃない!!私ぜったい行くもんっ!!!」 「いーや今日という今日は言わせてもらいますぞ!!だいたい姫さまは危機感というものが足りなさすぎるのですじゃっ!!!」 両者にらみ合い!! 「あ、の……おふたりとも……」 隣でクリフトがおろおろしてるのがわかる。 クリフト邪魔しないで。ここに私の一生がかかってるの。 「……はあ。まったくもって、嘆かわしい……」 先に目をそらしたのはブライのほう。つまり私、勝ったのね?勝ったのね??じいに勝ったわっ!! クリフトがため息をついたのがわかった。ため息っていうか、ほっとしたのね。たぶん。 「……ブライさま、非常に備えて買い出しと情報収集をしてまいります。事件が落ち着いて再開した店もありますし」 「……ああよい、わしも行こう。黄金の腕輪に関しても少し話を聞きたいしの」 「えー早くバザーに行きましょうよー!」 じいがまた私をにらんだ。ふ、ふーんだ、勝負は私の勝ちだもんねっ 「姫さま、砂漠は今までとは比べものにならない過酷な環境のようです。準備をしっかり整えてから参りませんと……」 クリフトが口をはさんできた。今度はクリフトのお説教が始まりそう。 「あーもう、わかったわよー」 フレノールは相変わらずおおさわぎ。にせの姫メイを私たちが助けたって話題でもちきりなんだって。 あれ、そういえば私もお供をふたり連れてるけど、誰も私が姫って気づかないのね。 「それはまあ……しもじもの者にはアリーナ姫の気品など感じとれないのでしょう」 「そうですとも!にせ者がいなくなってまったくせいせいしましたぞ!あー空気がうまいっ」 ふーん、そういうものなのかな。 ふふ、本物のお姫さまもここにいるって知ったらもっとおおさわぎになるんだろうな。 正体バラしちゃう?って言ったらクリフトとじいふたりに止められた。ちぇっ。 お買い物をすませたあと、ふと気がつくとクリフトが足を止めてぼーっとしてた。 「クリフト、どうしたの?」 「いえ、少し景色を……落ちついて見るとなかなか美しい町ではありませんか」 「んーそういえばそうねー」 クリフトは噴水のほうを向くとやっぱりぼーっとしてる。手を胸に当ててぎゅっとした。あれ、くせなのかな。 「なにクリフト、噴水に何かあるの?」 「い、いえ、何でもありません!」 出た、クリフトの何でもありません。なーにが何でもありませんよ、あるくせに。今日っこそは聞きだしてやるわ。 「ねえクリフト、前からずっと気になってたんだけど、なんでそうやって思ったことはっきり言わないの?」 「そ、それは……口に出すまでもないささいなことだからです……」 「でも今まではなんでも聞けば教えてくれたじゃない」 「それは……」 なんでクリフトが困ってるのよ。今までみたいに教えてもらえなくって困ってるのはこっちなのに。 「姫さま、クリフトの考えることなぞ姫さまには難しいかおもしろくないかのどちらかでしかありませんぞ」 ブライが口をはさんできた。 むう、そうかもしれないけど、気になるじゃない。こういうの、なんかもやもやしていやなのよ。 そしたらクリフトが私を見て言ったの。やけにまじめな顔で。 「姫さま、申し訳ありません。その……以前のように二重のご説明にならぬよう適切な言葉を選ぼうと思うのですが、 未熟な私ではなかなかすぐに対処できないものでして……」 「…………」 「先ほどは確かに噴水を眺めていたのです。このような美しい町並みに整えるにはどのような過程を踏んでいるかなど」 「だったらそう言えばいいじゃない。わからなかったらもう一度聞くからいいわよ」 「……申し訳ありません……」 「っもう、だから謝らないでって言ってるじゃない。別にクリフトのこと責めてるわけじゃないのよ?」 「…………申し訳ありません……」 「だーかーらー」 「フン。このアホタレめ」 結論。クリフトはほんっとにまじめでかたくって、難しいことばっか考えてるってことで。 でも、きらいじゃないのはなんでだろう。かたい人ってキライなはずなのにな。 そうこうしてるうちにお昼を回っちゃって、少し日が傾いてきちゃったの。今から行くと今日中に砂漠に着かないんだって。 私はそれでも行きたかったんだけど、野宿って聞いたらまたじいが騒ぎ出して。テンペのときでたくさんって。 クリフトはなんにも言わなかったけど、結局付近を散策しただけでまたフレノールに泊まることになっちゃった。 夜。 あーあ。つまんなーい。眠れなーい。早く明日にならないかなー。 早く明日にするには寝ればいいってわかってるんだけど、全然眠くないの。 そうだ。今からこっそり出かけちゃえばいいのよ。目が覚めてるうちに。 あ、でも。 私はなんとなく扉に向かって声をかけてみた。 「クリフトー、いるー?」 「…………なんでしょうか」 やっぱり返事が返ってきた。返事がないのを期待してたのに。私は思わず飛び起きて扉のほうまでずんずん歩いた。 「ちょっと、なんでいるのよっ」 「なんでって、呼んでおいてそれはあんまりです」 「だから普段みたいにお部屋で休んでって言ってるじゃない!」 「ですから12時までとお約束したではありませんか」 「そんな約束してないもんっ」 「姫さま、少し声のトーンを……ブライさまに聞こえてしまいます」 「……約束なんかしてないもん」 そう、クリフトは旅に出てからずっと夜は私の部屋の前で見張ってるの。 サランでもテンペでもこのフレノールでもっ 私はもともと一人で旅に出るつもりだったのに、いやんなっちゃう。 「……第一、この宿は造りがよすぎるんです」 …………は? 「宿の造りがいいのとクリフトが見張ってるのと何の関係があるのよ!」 「床も扉もきしみません。足音も扉の音も聞こえにくいんです」 「………………」 「それに今回の一件は非常口を逆手に取られたわけですし、もしまた同じことが起こってはこのクリフト……」 「…………」 「いえ、ともかく、せめて周囲が寝静まる時間までは警備を」 「そんなこと言って、どうせまた私が一人で抜け出さないよう見張ってるんでしょ?」 「……………………」 クリフトは返事をしない。なんで返事しないのよ……。 「やっぱりそうなんじゃないっ!」 「違います!姫さまがお一人で宿を出られるなど想定の範囲外でした!私はただ…………おそばに……」 私は黙って着替えを始めた。なんだか無性に外に出たいの。 今外に出てもバザーには行けないのわかってるけど、ここにはどうしてもいたくないの。 「姫さま……?」 「…………」 「姫さま、何をなさって……まさか、今から外出されるおつもりですか?!」 当然じゃない。これ以上クリフトに見張られるのはいや。勘が鋭いのもいや。もういやなのよ……。 そう、私はサランで宿に泊まったとき、どうしても一人で冒険したくてこっそり抜け出したことがあった。 今度こそうまくいくと思ったのに、やっぱりクリフトに見つかっちゃったの。 ブライも起きてきて、あのときはさんざんしかられた。 お城の外に出ても私は自由じゃなかった。 ブライにお説教されて、クリフトに見張られて、結局お城にいるのとおんなじ。 私に自由なんてなかった。 クリフトは頭がいいから、私はいっつも難しい話でよくわからないうちに説得させられちゃうの。 こないだ話したときはわかり合えたと思ったのに。 クリフトだけは、私のことわかってくれてるって思ったのに……っ ――自由って、なに?―― 「姫さま、外出されるのなら私も行きます!」 いやよ、こないで。 「お願いです、どうかおそばにいさせてください!」 なんでよ。私のことなんかほっといてよ。 「お願いです……っ」 「………………」 「姫さまっっ」 なんで……。 私は扉を開けた。そしたらすぐ目の前でクリフトが両手をぎゅっとしてた。背が低いのは膝立ちしてるせい。 暗くてもわかった。泣きそうな顔してる。でも私を見たらぱっと明るくなって。 「姫さまっ」 「…………」 「ああ、お召し替えをなさって……やはり外出されるおつもりだったのですね。 今夜は雲一つない空なんです。きっと月や星がきれいですよ。さあ、早く行きましょう」 「………………」 なんで……。 クリフトは軽い足取りで非常口の扉を開けた。 結局私はクリフトと一緒に外に出た。クリフトは黙って私のあとをついてくる。 きっと私が少しでも町の外に出ようものなら引き止めるために。難しい話で説得させるために。 バザーに行けないのなら他に行くとこなんかなくて、なんとなく明るいほうに向かってたら噴水に出た。 クリフトといっしょに歩くのがいやで、台に座ったら少しひんやりした。クリフトは私の前で片膝をつく。 「姫さま、眠れなかったのですか…?」 「………………」 「少し風がありますね、寒くはありませんか?」 「…………」 「姫さま……」 クリフトが私を見てるのがわかったけど私は見なかった。見たくもなかった。 でも、あれこれ考えたり悩んだりするのもいや。だから思い切って聞いた。 「……クリフトは、いやじゃないの?」 「?なにがでしょうか」 「クリフトは、仕事が好きなの?」 「??姫さま??」 「だって、家来じゃなかったらこんなとこまで来なくていいし、眠いの我慢して私を見張ることもないし」 「………………」 「好きな本だっていっぱい読めるし、それに今だって、私のわがままに付き合ってここまで来なくても…っ」 なんでだろ、最後のほう泣きそうになっちゃった。言葉が続かない。 「私はいやよ。決められた人生なんて、死んでるのとおんなじ。姫なんてちっともうらやましくなんかないっ」 「姫さま……」 私はクリフトを見た。クリフトはきっとお説教を言うんだ。きっとまた難しい顔してるんだ。 そう思ってたのに、なんで……?クリフトはまた泣きそうな顔してた。泣きたいのはこっちなのに。 なんで……。 「…………もし、私が……」 クリフトが話し始めた。やけに低い声。 「もし私が、仕事が好きで、家来という立場に忠実だったなら、今ここに、私と姫さまはいません」 「………………」 「サランにもテンペにも行くことはなかったでしょうし、そもそも姫さまが城を出ることなどなかったでしょう。 力ずくででも城にお連れするか、それが叶わなければ王様に申し上げて兵を出させたかもしれません」 「…………」 「ですからこれは、私の意志なのです。私がそうしたくてしていることなのです。 ですから、今こうして姫さまとご一緒しているのも、私が望んでしたことなのです」 やけにゆっくりしゃべるクリフト。いつもみたいにお説教モードじゃない。 言ってることはきっと難しいことなのに、今日はやけに耳に入ってくる。 でも……。 「そんなのうそよ」 「うそではありません」 「私が外に出るってわかったから仕方なくついてきてくれたんでしょ?」 「違います、私も外に出たかったんです」 「でも、私が外に出なければクリフトも外には出なかったでしょ?」 「当たり前です」 …………。 「やっぱり外に出たいんじゃないんじゃない」 「いえ、私は……私は姫さまと外に出たかったんですっ」 「…………え?」 「っ…………」 「なんで……なんで私と外に出たいのよっ」 「それは…………その…………」 「ほらやっぱり。なんでそうやって、最後まではっきり言わないのよっ」 「……………………」 口ごもるクリフト。また泣きそうな顔してる。やっぱり今日はいつもみたいにお説教モードにならない。 なんで……。それもわかんない。もうクリフトのこと、わかんない。 私はクリフトをにらんだ。でもクリフトは……さっきとは全然違う顔をしてたの。 泣きそうな顔じゃなくて、難しい顔でもなくて、なんだかもどかしくなるような、寂しそうな顔……。 何かを訴えるような、助けを求めるような…………私は…………クリフトから目が離せなくなった。 「姫さま……お願いです……」 「……………………」 「私を、置いていかないで下さい……っ」 言いながらクリフトは下を向いた。手で胸をぎゅっとしてる。 苦しそう。声が震えて……クリフト、泣いてるの……? 「クリフト……」 いっつも難しいことばっか考えてて、私が何かする度に飛んできてお説教と手当てして。 いつの間にか大人になって、背もぐんと伸びて、お仕事の話をするようになって、遠い人になって。 でも、たまにちっちゃなころみたいによわっちいことを言うから。 やっぱり私の知ってるクリフトだって、私が守ってあげなきゃなって、そう思わせてくれるから。 ああ、だからだ。だから私、クリフトのこときらいにならなかったんだ。 「あ、あの……ブライさまも、です……」 …………ぷ。 なんだか必死になってるクリフトに笑っちゃった。 クリフトは上目遣いで私を見上げてくる。やっぱり泣いてた。 ちっちゃなころと重なる。弱虫クリフト……。 「もう、いいわよ。わかったわよ。しょうがないから連れてってあげる」 「ひ、姫さま……」 「もちろんじいもね」 「あ、ああ、ひめさまぁ……」 「ちょっとクリフト、なんて情けない顔してるのよ」 「はっ申し訳ありませんっ」 「ふふふ」 肩の力が一気に抜けた。さっきまで悩んでたことも、どうでもよくなっちゃった。 夜のフレノール。 「このまま帰るのもなんだし、散歩でもしよっか」 「え?あ……はいっ!」 大げさに返事するクリフト。もう、子どもなんだから。ほんとにあのころに戻ったみたい。 「静かね……。これがふつうなのかな?」 「でしょうね。王家の、それも姫君がこのような遠方の地を訪れることなどまずございませんから、 昨日まではそれほどのさわぎだったのですよ」 「ふーん、そんなもんなのかな」 「そんなもんですよ」 ふと気がつくとクリフトはやっぱり噴水を見てた。よっぽど噴水が好きなのね。 「クリフトー、そんなに噴水が好きならずっと見てていいのよ。私はもうちょっと散歩してくるからー」 「ひ、姫さまお待ちください!私も行きます、行きますからっ!」 「ふふふ、まーったくクリフトはー。いいわよ、噴水でもう一回休みましょ」 「えっあっ」 私は噴水の台に座った。クリフトはまた片膝をつこうとしたから隣に座りなさいって言って座らせた。 何か言うたびにあわてるクリフトを見てなぜかほっとする。いつもだったらいらいらするのにね。 風がふいてる。少しだけ水しぶきがかかった。なんだかきもちいーい。 明日は南の砂漠のバザー。それからエンドールの武術大会。それから……。 いつまででも旅していたい。お城なんかなくなっちゃえばいい。 だって、一度でもお城に戻っちゃったらもう二度と外には出られないような気がするから。 そう思って、ふとクリフトを見た。クリフトは……両手を膝に乗っけてかたまってた。 「ちょっとクリフト、そんなにかたくならないでいいのよ」 「は、はいっ」 「っもう、もっと普通に座ってよ。なんだか私がお説教してるみたいじゃない」 「も、申し訳ありません……」 「んもうー」 「ねえクリフトー」 「……なんでしょうか」 「クリフトはだいじょうぶなの?」 「…………なにがでしょうか」 「お城を抜け出しちゃってさ。お仕事はだいじょうぶ?神父さん心配してない?」 クリフトは私を見た。驚いた顔してる。 「だって、私はともかくクリフトは今までずっとお仕事してたわけだし、まじめだし、みんなに期待されてるし。 あんまり長い間外に出てたらお咎めを受けたりしない?」 「姫さま……」 クリフトは目をそらした。あ、難しい顔してる。大人のクリフトに戻っちゃった。 「姫さま……」 「なあに?」 「これはずっと黙っていたことなのですが……」 「え、なに?」 「姫さまが外に出られたこと、王様は黙認していらっしゃいます。姫さまにも私にもお咎めはございません」 「え?」 「王様もやはり本心では姫さまに外にでてほしくないようです。ですが、あのまま自由を奪うよりはと。 他の大陸には渡らないという条件付きだそうですが、大陸中は好きに回ってよいそうですよ」 「…………」 「黙認というより、なかば公認のようなものですね。私もつい先日ブライさまからうかがったばかりですが」 「ブライが?」 「ええ。その話をされていたのは姫さまがお城を出られるときだそうですよ。 王様も甘いとこぼされていましたが、ブライさまも今回のことは認めていらっしゃるのですよ」 「うそ……」 「ですから姫さまに城に戻るよう厳しくおっしゃるのは、心から姫さまのことを心配されてのことなのです」 「うそよ……」 「うそではありません。その証拠に、今日ここまで来られて明日は南の砂漠に行くではありませんか。 今朝口論となった際、あまり長引かせずにブライさまのほうから切り上げた、それが何よりの証拠ですよ」 「…………」 「認めていらっしゃいますよ、王様もブライさまも」 「………………」 お父さまもじいも、私が外に出たこと認めてるの?許してくれてるの…? 「クリフトぉ……」 「はい」 「私、外に出ても、いいの…?」 「はい」 「っ…………」 やだ、泣きそう。 「アリーナ姫さま、姫さまの人生は決められてなどいません。道は誰の前にも開かれています。 神は、乗り越えられない試練をお与えにはなりません。ですからどうか、姫さまの思うままに……」 「ばか」 「姫さま?」 「ばか……」 クリフトのばか。ばかクリフト。クリフトのくせに。そういうこといわないで。ほんとに泣いちゃうから。 「…………よかった…………よかったぁ……っ」 「はい…………私は幸せ者です…………」 「クリフトも?あそっか、クリフトも強くなりたいって言ってたものね」 「え?あ、ああ、そんなふうに言っていたこともありましたね」 「ちょっと、忘れてるってどういうことよ。いっしょに強くなるんだからね?」 「はい、姫さま」 「うん!」 クリフトは少しだけ緊張がとけたみたい。やっと普通に座ってくれた。手で水をすくってる。 クリフトの手から水がこぼれ落ちた。きらきら光ってる。きれいだなー。クリフトは大きくため息をついた。 「クリフト?」 「い、いえ、その…………今夜はとても、その……………………いい夜ですね」 「?うん、そうだね」 「クリフトクリフトー!」 「どうしました?」 「おじいさんがね!おじいさんがね!」 「はい」 「あんなおじいさんも見たことがあるなんて!エンドールの武術大会!出たーい!見たーい!エンドールに行きたーい!」 「エンドールですか。これはまた険しい道ですね」 「えへへ」 クリフトが笑いながら言うから私もつられて笑っちゃった。 お城の外に出てもいい。お父さまからお許しが出た。 もしかしたら、もしかしたら、エンドールの武術大会にだって行けるんじゃないかって気になってきた。 クリフトったらもっと早く言ってくれればよかったのに。 でもいいわ、しょうがないから今回だけは許してあげる。 ――心の中で、ありがと―― 「やはり一国の姫君がおしのびで旅するなど危険すぎる……。なんとかしてお城に戻っていただかなくては!」 「やだブライ、まだ言ってるの?」 「ええもちろんですとも。アリーナ姫さま。そろそろお城へ戻る決心をなさいませ。フレノールでの一件もありましたし これ以上旅を続けるのは危険です」 「何言ってるのよ。私またぐーんと強くなったのよ!ブライもクリフトもちゃんと守ってあげるわ。心配しないで」 「ま、まもっ?……ふう、やれやれ。どうあっても聞かないとおっしゃるのですな?」 「もちろんよ!」 ブライはまた大きなため息をついた。 「まったくもって、姫と旅をしていると命がいくつあってもたりませんわい」 「ふふふ」 ブライも認めてくれてる。やっぱりクリフトの言ったことはほんとうかも。 ねえクリフト。私はクリフトのほうを見た。 「日やけ止め……熱さましとえーと水筒も持ったし……。さあアリーナ姫!準備は万全です。何でも言ってくださいね!」 「うん!」 さあ、今日は砂漠のバザー!
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クリフトのアリーナの想いはPart12 89 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2011/04/13(水) 21 14 41.18 ID vmvDuqdlO 風邪をひいてしまった。 野宿、連戦続きだったからだって、仲間たちは言ってくれたけど、情けなくてたまらない。 私が熱を出したせいで、今日は街に戻って、きちんと宿をとった。 しかもゆっくり休めるようになんて、一人部屋。 相部屋にして、風邪をうつすよりはずっといいけれど、自分の情けなさが身にしみた。 「クリフト、部屋に戻って。大丈夫だから」 「でも…まだ熱が下がりませんし」 宿について、私はさっさと風邪を治そうと、早々に床に就いた。 でも…なんで隣に、クリフトがいるんだろう。 クリフトは、体温計とにらめっこしなから、渋い顔をしている。 看病のためなんだろうけど、私より体が弱いくせにうつったら大変じゃない。 「また倒れたらどうするのよ」 「大丈夫ですよ」 ほらでた。お得意の「大丈夫」。 クリフトの大丈夫ほど、信用出来ないものってないと思う。そうやって「大丈夫、大丈夫」って自分を追い詰めて、気づかないうちに病気になっちゃうんだから。 「大丈夫って言いながら、ミントスのときは駄目だったじゃない。 また倒れられても、迷惑なのよ!」 「迷惑」という言葉に、クリフトはちょっとしゅんとしてしまった。 そして小さな声で、「申し訳ありません」と言った。 少し後悔する。 どうして、私はこんな言い方しかできないのだろう。 そもそも今、体調を崩しているのは、私なのに。 あの時、クリフトが倒れたのは、私のために無理を重ねたからだ。 確かに体はあまり強くないけど、体調の自己管理が出来ないほど、駄目な奴じゃない。 旅が始まってからは、いつも私を真っ先に心配して、自分のことなんか、後回しで…。 なんてバカなクリフト。 でもそうやって無理をしてたクリフトに気づけなかった、私は、もっとバカだ。 私がクリフトに言わなきゃいけないのは「迷惑」とかそんな言葉じゃない。 本当は「ありがとう」って言わなきゃならないのに。 そういえば、クリフトだって、喜んでくれるに、違いないのに。 「もういい。私が他の部屋にいくわ」 やっぱり、クリフトに無理をさせるわけには行かない。 きっとクリフトのことだから、夜通し看病したりしちゃうに決まってる。 私はクリフトの制止を振り切って、立ち上がった。 「あっ…」 「姫様!」 でも、いざ立ってみると、視界がグルグル回って、上手く立っていられなくなった。 体が重くて、倒れかけた瞬間、私はクリフトに抱きとめられた。 「……」 端から見れば、抱きしめられているような体勢。 こんな風になったのは、子供の頃ふざけて抱きついたとき以来だった。 クリフトの体は意外と、がっしりしてて、ちゃんと「男の人」の体だった。 子供の頃と違くて、「男の人」と意識した瞬間に、私は胸の鼓動が高鳴るのを感じた。 いったいどうして。 「す、すみません!」 なんで、クリフトが謝るのよ… そう言いたいのに、うまく言葉が紡げない。 頭がぼーっとして、顔が熱かった。 熱が上がっちゃったのかな。 クリフトは、真っ赤になって慌てながらも、もう一度私を寝台に寝かしてくれた。 「その…すみません」 顔色が平常通りに戻った頃、クリフトは、片手で顔を覆って、懺悔するような声で言った。 何回でも、謝りたくてたまらないらしい。 「いいの。私が悪いんだから」 私の胸の高鳴りはすでにおさまっていた。 いったい何だったのかな。 大丈夫、と言って立ち上がった手前、倒れかけたのが、情けなかった。 私の病状は、自分で思っていた以上に悪かったみたい。 もうクリフトの「大丈夫」が信用出来ない、なんて言えないね。 「姫様、ご心配してくださって、ありがとうございます。 ですが、大丈夫です。ミントスの時のような病にはなりません。 だから看病させてください」 「本当に?」 「本当です」 「根拠は?」 予想外の質問だったのかクリフトが、たじろぐ。 そして一呼吸おいたあと、苦し紛れといった感じで、つぶやいた。 「気合い…です」 私は思わず声を上げて笑ってしまった。 だってあまりにも、らしくない回答だったから。 クリフトは、恥ずかしそうに、少し顔を赤くしている。 気合いで風邪をひかないなら、私は気合い不足なの? そう聞きたくなったが、可哀想だから言わないであげた。 「はいはい、わかりました。看病していいよ」 、きっとクリフトは、何があっても引き下がらないだろう。 しょうがないから、もう許してあげる。 クリフトは、私がどんなに怒ったって、他人を優先しちゃう、そういう奴だから。 でも私は、クリフトのそういう優しいところが、正直嫌いじゃない。 「うつっちゃったら、どうしよう?」 「ちゃんと、うがいしますから」 さて、それはどの程度の効果があるのかしら。 私には、それこそ根拠がわからないので、あまり安心材料にはならなかった。 「もし、うつったら、二度と看病させないからね」 「え!? そ…そんな」 ちょっとだけ意地悪言ってみる。 これから言う言葉の、ちょっとした照れ隠しだ。 「でも、もしうつっちゃったら…私が看病してあげても、いいよ」 ちょっと恥ずかしいから、クリフトの顔は見なかった。 お布団に顔をうずめて。 今のは、普段言えない「ありがとう」のかわり。 自分より他人を優先しちゃうお馬鹿さんへの、労いだ。 「ありがとうございます」 チラリと目だけで振り返ると、クリフトは微笑んでいた。 ちょっと困った感じで。 いつもならなんてこともない表情なのに、少しドキドキしちゃうのは、何でなんだろう。 「さぁそろそろ眠ってください。眠らないと治りませんから」 そう言って、クリフトは、私の額に冷たいタオルを乗せてくれた。 熱かった額が冷やされて、急激に睡魔が襲ってきた。 胸の高鳴りの原因を考える前に、私は眠りに落ちっていった。 いつもありがとう、クリフト。 いつかきっと、ちゃんと言うから――。
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クリフトのアリーナの想いはPart12.5 94 名前 1/6 Mail sage 投稿日 2012/01/21(土) 02 06 32.41 ID qaQC8ELG0 81ですがGJありがとうございました! また書いたので投下します。 ---------- 「好みじゃないわ」 そういって書類から目を逸らす。目の前ではブライが怒ってる。 「姫様。いい加減にしてください」 「だってヒョロヒョロして、全然強そうじゃないじゃない。 なあに、これ。趣味はチェスだって。つまんない」 私はうんざりしていた。 毎日毎日、ブライはお見合いのことばかり。 求婚されるってのは正直悪い気はしないけど、私はまだ結婚なんてする気はないし、 何よりどの男も弱そうなこと! 「姫様、あなたより強い男などこの世におりません」 「別に、私より強くなきゃダメなんて言ってないわ。 でも、勉強しか出来ないようなタイプは絶対嫌」 「…夫婦揃って脳みそまで筋肉じゃ、サントハイムの将来は暗いですな」 「どういう意味よ」 「姫様。強いのはあなた一人で十分です。夫となる者には、姫様に無い部分を 補える、聡明なものを選ばないと」 「…じゃあそういう人を連れてきなさいよ」 「…いればとっくに紹介しています」 ブライの言いたいことも分かる。だって、私はあまり勉強が得意じゃないし、 お父様の仕事を毎日横で見ているけれど、難しくてよく分からないことも多い。 「強くて頭も良い人かあ…」誰かいたっけ。 … 「うわぁ!」 「わっ!驚かさないでください姫様」 「ご、ごめん」 「姫様?顔が赤いようですが…?熱でもありましたかな?」 「そ、そうかも。悪いけど今日はもう出てって」 ブライは私の部屋を後にした。 ああびっくりした。だって。 いきなりクリフトの顔が思い浮かんだんだもの。 「…」 確かに、クリフトは、けっこう強くなったし、頭もすごくいい。 神官学校は首席で卒業したとか聞いたことあるし、魔法だって一杯知ってるし 私の知らないことを沢山知ってる…けど。 「でも私別にクリフトのことなんて」 ああどうしよう。顔が熱い。 参った。 あれから。クリフトのことばかり考えてしまっている。 難しい書類。クリフトに聞けば分かるかな? クリフトなら、組み手の相手もしてくれるかな? 特訓で怪我してもすぐに治してくれるよね。 ああもう。なんでこんな。 「クリフトのバカ。いきなり頭の中に出てくるから」 「…お呼びですか?」 「ひゃあ!」 急に廊下の角からクリフトが出てきたものだから、私は大声を出してしまった。 「な、何よいきなり!バカ!」 「え、あ、驚かせてしまってすみません…」 うなだれるクリフト。ああもう、そんなつもりじゃ。 「ご、ごめん。違うの。それよりどうしたの、こんなところで」 「ああはい、今朝バザーに用事がありまして出かけたのですが、 異国の焼き菓子を売っているのを見つけまして。 姫様のお好みに合うかと思いまして、いくつか買ってきたのですが」 「お菓子!?」 なにそれ、外国のお菓子?ちょっと気になる。 「もしお時間がありましたら、いらっしゃいませんか?お茶をご用意いたしますので」 「うん!じゃあおやつの時間になったら行く!」 うれしい。どんなお菓子だろう! 「おいしそう」 色とりどりのかわいらしいお菓子を前に、私は目を輝かせた。 「紅茶でよろしいですか?」 「うん」 「マカロン、と言うらしいです。アーモンドで出来たお菓子だそうですよ」 「へえ」 「サランの子どもたちをバザーに連れて行く約束をしたもので。 久しぶりでしたね、姫様たちと行って以来ですので」 「いいなー。私も行きたい」 「では、そのうち行きましょうか」 ドキっとする。それってデートのお誘い? 「2人で行くの?」 「誰か誘っても構いませんよ?」 「…」 そうじゃなくて。何聞いてんだろう私。 「どうぞ」 急に黙った私に疑問を抱く様子もなく、クリフトがお茶を出してくれた。 「ありがとう。じゃ、いただきまーす!」 わ、甘い。美味しい。お茶を一口。 「おいしい!」 「それは良かったです」 クリフトはニコニコしている。 「その赤いのは、フランボワーズで、茶色いのはチョコ、緑はピスタチオ…だそうです」 「わーどれもおいしそう。全部食べていい?」 「どうぞ」 美味しい。嬉しい。お茶もおいしい。しあわせ。 「あ、そういえばさ」 「なんでしょう」 「この間ね、若い女の子たちが集まって、アフタヌーンティ?だかをしたんだけど」 「はい」空のコップにおかわりを注ぎながらクリフトが答える。 「肝心のお茶があんまり好みじゃなかった」 今日のお茶はおいしい、そんなことを思いながら。 「甘いお菓子だと伺っていたので。少し濃い目に淹れてあります。 茶葉も、姫様が確か前に好きだと仰っていた物を」 「あ、そうなんだ。さすが」 感心して答える。 「今までどれだけ姫様にお茶を淹れてきたと思ってるんですか」 クリフトが微笑んで言う。 うわ。なんか。 「…」 私のことよく分かってるみたいな。いや、分かってるんだけど。 「あ、濃すぎました?」 「ううん、ちょうどいいよ」 赤くなった顔を見られたくなくて、下を向いたまま答えた。 それ以来、私は一層クリフトのことが頭から離れなくなってしまった。 幸か不幸か、クリフトは忙しいらしくお城の方に来ることも無い。 私もブライのもってくるお見合い写真を眺めるのに忙しかった。 クリフトのほうがかっこいいとか、 クリフトの方が強そうとか。 クリフトのほうが優しそうとか。 頭に浮かぶのはそんな言葉ばかり。 もうなんでこんなにクリフトのことばっかり! 「もういい加減にして!」 「いい加減にして欲しいのはこっちです」目の前のブライが言った。 ああ忘れてた、ブライ居たんだった。 「そろそろ一人くらいお会いしても良いのではないですかな!」 「…」 だって。そんな時間あるならクリフトに会いに行けるのに。 「ブライ…私やっぱりお見合いなんてしたくないわ」 「そうは言いましても姫様。もうそろそろ結婚していただかないと」 そうだけど。だって。今はこんなに 「クリフトのことばっかり考えちゃうんだもん」 「はっ!?」 「クリフトといるほうが楽しいに決まってるのに、お見合い相手なんかと会いたくない」 「姫様…クリフトと何かあったんですかな」 怒るかと思ったけど、ブライは優しい目をして聞いてきた。 「何も無いよ、別に。ただ私が、勝手にクリフトのことばっかり考えてるだけ」 ブライに何言ってるんだろう私。でもお見合いとかもう真っ平。 「…私どうしちゃったんだろう…」 ほんと、どうしちゃったんだか。 「…それは、クリフトに聞くのが一番ではありませんか?」 「クリフトに?」 「本人にそのまま伝えて来なされ」 ブライは呆れたような、笑ってるような…複雑な顔をして言うと、ブライは部屋を出て行ってしまった。 クリフトに…直接聞く? 「急にどうしたんですか?」 夜、クリフトの部屋を訪れた。随分驚いているようだった。 「ちょっと、聞きたいことがあって」 どうしよう。緊張してきた。 「…どうぞ。」 もうクリフトは寝巻きを着ていて、「こんな格好ですみません」とガウンを羽織った。 「何かありましたか」 何かっていうか。なんて言うか。 「…」 そのまま伝えろと、ブライは言ったけど。 なんていえばいいんだろう。 朝から晩までクリフトのことばかり考えてしまうんだけどなんだろう?って言えばいいの? ダメダメそんなの恥ずかしすぎる! 「…よっぽど深刻なのですね?」 「いや、深刻ってわけじゃ…えと…」 どうしよう…あ、そうだ! 「あ、あのね。ある人のことをね」 「はい」 「あ、ある人ってのはよく知ってる人なんだけど…なんだかその人のことばかり 朝から晩まで考えてしまって!ドキドキして、顔が熱くなっちゃって…」 クリフトの顔が見れない。 「わたし、ど、どうすればいいのかな…?」 そうっと、顔を上げてみる。クリフトが一瞬目を見開いた気がした。 次の瞬間、優しく微笑むと、「そうですか」と答えた。 「その方は幸せですね」 そ、そうなの?ていうかクリフトなんだけど。 「姫様は、その方のことが好きなんですね」 …え? 「きっとそれは恋ですよ、姫様。」 恋…恋!?これが恋!? 顔が赤くなるのがわかる。 クリフトのことばかり考えて、会いたくて、お見合いなんてどうでもよくなっちゃって。 恋。そっか、言われてみれば。 「ク、クリフトは!」 「はい」 「クリフトは恋、してるの…?」 言ってしまって後悔した。どうしよう。怖い。 「私は…そうですね。ずっとお慕いしてる方がいらっしゃいました」 …え。 「ですが、私は神官ですから。そういった感情はもう持たないと決めたのです」 …それは。どういう。 「今後また恋をすることは無いでしょうね」 「そ、そうなんだ」 どうしよう、声が震える。 「あああ、あの、ありがとう、その、教えてくれて。 じゃあ私、もう行くね!」 言い終わると部屋を飛び出した。 そっか、私恋してたんだ。でも、クリフトは。 自分の部屋に飛び込むと、ベッドに突っ伏した。涙があふれてきた。 「クリフト…」 朝が来てるのはわかったけど、気にせず寝ていたら、ブライの怒鳴り声が聞こえた。 「姫様!!!公務をサボる気ですか!!!」 ドアの開く音がして、ドンドン、と大きな足音を鳴らしてブライが入ってきた。 「いい加減にしてください。何時だとお思いで…」 「なによう」 むくりと起きた私の顔を見てブライが絶句した。 「なんですかその顔は」 一晩泣きはらしていたから、きっと目がはれて酷い顔なんだろう。 「ああもう、お客様が見えるというのに…」 「今日は何もしたくない…」 「何を仰いますか!姫様、一体どうしたって言うんです」 どうしたって。 「クリフトが…」 また思い出して、涙があふれてきた。 「クリフトは私のこと好きじゃないの」 「はい?」 「クリフトは私じゃない人が好きで…でも神官だから一生恋もしないの」 最後の方は涙声でグズグズだった。 「そんなアホな」らしくない口調でブライが言う。 「だって、言ってたもん~~~」 涙が止まらなくて大声で泣き続けた。 顔をあげるとブライがいなくなっていた。 「…」 考えてみたら、私、ブライにクリフトが好きだって打ち明けたようなもんだよね。恥ずかしい。 「はあ」 私はこんなおてんばで、クリフトに今までいっぱい迷惑かけてきて。 そうだよね。クリフトが私のこと好きなわけない。 その瞬間、ドアが勢い良く開いて、ブライに蹴飛ばされてクリフトが転がり込んできた。 「もう一度ちゃんと話をしなされ!」 ブライはそう言うとドアを閉めて出て行ってしまった。 え?なに?え? 「ひ、姫様…」 クリフトが起き上がって、真っ赤な顔でこっちを見てる。クリフトの目は腫れあがっていた。 「…な、何?」 クリフトに会えたのは嬉しいけどつらい。 「あ、あのですね…姫様…」 「まったく、世話の焼ける」 扉の向こうから、ブライの声が小さく聞こえた。 .
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成田伸子:ゴエゴエ道中 バクチてんこ盛り(パートナーデッキ) 攻略 合計40枚+00枚 上級02枚 ブローバック・ドラゴン×2 下級17枚 アステカの石像×2 一撃必殺侍×3(お気に入り) 黒蠍-罠はずしのクリフ×2 地雷蜘蛛×2 ツインバレル・ドラゴン×2 ドラゴンフライ×2 首領・ザルーグ×2 不幸を告げる黒猫×2 魔法13枚 サイクロン×2 収縮×3 セカンド・チャンス×3 戦士の生還×2 増援 突進×2 罠08枚 宮廷のしきたり×2 聖なるバリア-ミラーフォース- 魔宮の賄賂×2 モンスターBOX×3(お気に入り)(D) エクストラ00枚
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本当はクリアリが好き 204 名前: 198(SS新人) 投稿日: 02/05/22 20 21 ID ??? ~これはアリーナ、クリフト、ブライの3人がデスピサロを倒す旅を終えて、 サントハイムに戻って来てからのお話~ サントハイムの城に国王を始め城のみんなが戻って来て、城の復興も日を追 うごとにすすんでいきました。 旅から戻った3人も、以前の生活に戻っていきました。 変わった事といえば、旅を終えて強くなってしまった姫の手合わせがまとも にできる兵士が一人もいなくなってしまい、手合わせの相手が教会の仕事を 終えたクリフトになってしまったことくらいでしょうか。 城が落ち着きを取り戻すと、次なる課題としてサントハイム王室にのしかかって来た問題は、 「アリーナ姫の結婚相手探し」となるのでした。 王にとっては実に頭の痛い問題だったのでした。 クリフトが密かに姫に想いを寄せている事にうすうす勘づいていたのでなお さらなのでした。 旅に出る前なら、仮にもアリーナはサントハイム王室の王女、クリフトは一 介の神官に過ぎない、ということでこの二人の仲を認めない、ということは 簡単だったのですが、旅が終わってクリフトが「デスピサロを倒した勇者の 仲間の一人だった」ということになると話が変わってしまうのでした。 しかも勇者自身がクリフトについて「普段頼りにならないんだけど、いざと いうときになるとクリフトほど頼りになる仲間もいなかった」と語っていた のですから問題は更に難しく…。 サントハイム国王、「世界をすくった一人」という肩書きがあっても、一介 の神官であるクリフトとアリーナの仲は認めたくなかったのです。 サントハイム国王にとっては、一つだけ救いがありました。 それは、今のところ二人の関係はクリフトの片想いであるということ、そし てクリフトは自分が一介 の神官であるということからその想いを内に秘めていた事、でした。 そして2人と旅をともにしたブライから、 「どうもクリフトは姫がいずれはよその王室の王子あたりと結婚する事にな るだろう、それならそれでもいいと思っているらしい」、 という話を聞いていました。 が、今はそうでも、いずれどうなるか解らない。いつの間にかクリフトはサ ントハイム国王にとって扱いにくい人物になっていたのでした。 ならば早めに手を打っておこう、と国王は決断しました。 その決断とは、クリフトをサントハイム城内の教会から他の教会に行かせて しまおう、ということでした。クリフトは若いながら神官としての能力はか なりのものでしたから、他の国からもクリフトは引く手あまたの存在となっ ていたので、引き抜きの話もいくつか来ていましたから、その話の一つに乗 ってクリフトがいなくなったあとはゆっくりとアリーナの縁談を進めれば… と画策したのでした。 もちろん、クリフトにとっては「栄転」になるような行き先を選んで…。 数カ月後、クリフトが次の赴任地へ旅立つ事にきまりました。クリフトは 「このままサントハイムにいたところで姫への想いはかないそうにないし」 と割りに冷静でしたし、アリーナはアリーナで「淋しくなるけど幼馴染みと 別れる事になる。けどまたいつか会えるし」位にしか思っていなかったので すが、クリフトがサントハイムを離れる日が近付くにつれて、アリーナの気 持ちは少しづつ揺れてくるのでした。 そして…、クリフトがサントハイムを離れるその日…、アリーナは呆然と彼 を見送るのでした。 クリフトを見送ったあと…、自分の部屋に戻るとアリーナはベッドにもぐっ てしまいました。 「なんでこんな気持ちになるのよぉ!なんでこんな心の中がからっぽになっ たような感じになるのよぉ!」 そんなアリーナ姫の様子についてへ、サントハイム城内の人たちは、「急に 幼馴染みと別れる事になって淋しいんだ」くらいに思っていたのですが…。 もちろん、アリーナ本人も…。 クリフトが去ったあとのサントハイム城は、これまでと変わらないように見 えました。 ただ、アリーナの様子が、何か無理しているような感じである事を除いて。 今日もアリーナは一人でぼんやりと部屋で考え事をしていました。 「もしかして…、私…、クリフトの事を…?」 それはクリフトが原因不明の病で倒れたとき、ふっと一瞬頭をもたげた感情 でした。そのときは勇者たちが持って来たパデキアの根っこのおかげでクリ フトが回復し、それ以来忘れていた感情だったのですが…。 その感情は日を追うごとに強くなっていき、アリーナは部屋にこもる事が多 くなりました。 そんなアリーナを見てサントハイム国王も心配しだしました。 城下の人々も同じでした。いつもの元気なアリーナ姫が見られない…。 皆心配しだしたのでした。 ある晩のこと 「私、クリフトの事、好きだったんだ…」 すでにその気持ちはアリーナの中で揺るぎないものになっていました。 思えば、クリフトは、自分が幼少の頃からいつも必ずそばにいた… 私が危ない目にあうと、いつもクリフトが助けてくれた… デスピサロを倒す旅をしているときもそうだった… いつもは頼りないのに、いざというときに助けてくれたのがクリフトだっ た…。 あまり身近すぎる存在だったので、一人の異性として考えた事なかったっ け…。 もうクリフトはこの城を離れて遠くの国の教会でお勤めを果たしているんだ ろうな…。 今頃クリフト、どうしているんだろ…。 会いたい…けど、いつ会えるんだろう…。もしかするとこのまま会えないの かな…。 ……あの頃に戻りたいよ…。 アリーナは月明かりだけに照らされた自分の部屋でひとり涙するのでした。 アリーナの部屋の窓からは、サントハイム城の裏手にある、頂上に1本の木 が立つ丘が見えました。 そこは昔、アリーナとクリフトがよく遊びにいっていた丘…。 私はその木にに登って…、高い所が苦手なクリフトはおろおろしながら下か ら眺めてたっけ… 何度か私ってば、その木から落っこちてケガしたりして、一緒にいっていた クリフトがよく怒られてたっけ… 楽しかったな……あの頃は…… そんな事を考えながらベッドに寝そべりながら窓の外をぼんやり眺めていた のですが、 「……………!」 はっとしてベッドから起き上がると、とるものもとりあえずアリーナは部屋 から飛び出していきました。 丘の上に人影らしきものを見たのでした。 それも見覚えのある… 「クリフトっ!!」 丘の上にいたクリフトははっとして声のした方を振り向いた瞬間、猛然と走 って来たアリーナの勢いに押されてそのまま後ろにひっくり返されました。 「あ…、え…、ひ…姫?」 「…クリフト…、会いたかったよ…」 クリフトは何が起きたのか頭の中の整理がつかないままでした。 …少しして、アリーナが落ち着きをとりもどすと、 「…どうして、クリフトが…、ここに…?」 クリフトは自分が何をしていたかを口にだすのがちょっとためらわれたので すが、ひと呼吸置いてこう言いました。 「気になったのです…、姫様のことが…。私がサントハイムを去るとき姫様 の様子がおかしかったものですから…。異動してからずっと気になって仕方 がなくて、意を決して今日の勤めを終えたあとルーラで飛んできて様子を見 にきたのです…。この丘からなら少しは姫様の様子が解るかもしれないと思 って…。すみません、迷惑でしたよね、すぐ帰ります…」 「待って…!私、クリフトにいっておきたい事が…」 「……………」 「……………」 「……………」 二人の間には永遠とも思えるような長い時間が流れました…。そしてアリー ナがその沈黙を破ってとぎれとぎれに… 「……………私……、クリフトと……、離ればなれに……なって……、 気が……ついたの……。私……、クリフトの事が……」 「待って下さい!」 アリーナが次の言葉を発しようとしたその時、クリフトは次の言葉を言 わせまいとアリーナの口を手でおさえました。 「んぐ…。な、何するのよクリフト!」 「…そこから先は…、…私から言わせて下さい…。」 その少しあと、月明かりに照らされた丘の上の二つの影が一つになるのを 見つめる視線がサントハイム城にあるのでした。 その人物は、一人でこう呟くのでした。 ああ、結局あの二人はおさまる所におさまったか…儂は喜んでいいんだか 困った方がいいんだか… 二人が幼少の頃から面倒をみてきて、あの旅のとき生死をともにした者とし ては喜んでいいんじゃろうな…。
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クリフトのアリーナの想いはPart12 105 名前 恋をしては……恋をしても…… 1/12 Mail sage 投稿日 2011/04/29(金) 23 51 31.06 ID XkHOuB/z0 いっちに、さんし……よし、整理体操終わりー。日課のトレーニングもやったしお風呂も入ったし、あとは寝るだけ! 私はフカフカのベッドにもぐった。今までいろんな宿に泊まってきたけどやっぱり自分のおうちのベッドがいちばんだわ。 そう、私は今お城に戻ってきてる。 どうしても旅に出たくて一度はお城を飛び出したんだけど、お父さまがご病気にかかってしまったからあわてて帰ってきたの。 でもお父さまののどのご病気も無事治って、そしたら今度は世界を旅していいってお許しをくれて、明日から旅を再開するところ。 そう、明日からはエンドール!また新しい世界に旅立つんだわ。 ううん、エンドールだけじゃない、これからはどこへでも好きなように旅ができるんだわ。なんていい気分! まずはエンドールで武術大会に優勝して……次はどこに行こうかな? 明日からのことを考えるとわくわくが止まらない。今夜は眠れそうにないなー。 小さい頃、眠れない時はいっつもお父さまとお母さまがいっしょに寝てくれた。 昼でも夜でも、楽しい時も寂しい時も、ずっといっしょにいてくれた。 お母さまのこと、もうおぼろげにしか覚えてないけど、でも思い出すお母さまはずっと笑顔だった。 お父さまもきっと、笑顔だった…? 私はぼんやりとお母さまの肖像画に目を向ける。記憶の中とおんなじの、ずっと笑顔のお母さま……。 お母さまがお亡くなりになってお父さまは変わってしまった。 礼儀作法に厳しくなって、お外に出るときは見張りを何人もつけるようになって、じいとそろって勉強勉強って言うようになって…… お父さまは本当に変わってしまった。 私はお勉強がいやでいっつも教会に逃げ込んでたっけ。いつからかお父さまもじいも教会にまではどなりこんでこなくなったから。 教会には神父さまとクリフトがいて、神父さまはにこにこしてこんにちはって言ってくれるのにクリフトはいっつもお説教を言うの。 今は作法の時間ではありませんか?歴史の時間ではありませんか?文学の時間ではありませんか?扉は静かに開けてください。 でも結局誰かが呼びに来るまでは教会にいさせてくれるの。あきれるくらいいつものパターン。 そうだ。久しぶりに教会に泊めてもらおう。なつかしいなー。あの頃はクリフトともよく寝たっけ。 いっしょに寝るって言うとすっごくさわぐクリフトだけど、いざいっしょに寝るとなると笑っちゃうくらい静かになるの。うん、行こう! パジャマだけじゃ寒いかもしれないから上着を羽織ってまくらを持って。くつは音がするからはかないほうがいいわね。 よし、行こう!教会! 私は静かにお部屋を出てお父さまのお部屋の前を通った。お父さまはもうお休みの時間かな。 お父さまはいっつも扉に鍵をかけちゃうから中に入ろうと思っても入れないの。そういえば鍵、お部屋に置いてきちゃったわ。 いっしゅんお父さまといっしょに寝ることも考えたけど想像したらなんだか恥ずかしくなった。やっぱり教会に行こう。そうしよう。 お父さまのお部屋を通り過ぎて階段を静かに下りる。さすがにこんな時間じゃじいも大臣もいないわね。 兵士も見当たらない。よし、今のうち! 「姫さま?どうされました!」 きゃっ見つかった!ど、どうしよう。お手洗い?同じ階にあるじゃない。散歩!まくらを持って?ええい、みね打ち! 「ごふっ……ひ、め……さっ」 倒れる兵士。急いで抱き上げて壁に寄りかからせた。ごめんなさいごめんなさい。ちゃんと見張りをしててあなたは優秀だわ。 もしじいや大臣がこんなところでうたた寝してってしかっても私は全力であなたの味方をするからね。だから今日はごめんなさい。 「何者!ぐはっ」 「ひ、姫さまいけません、そのようなお姿で……がはっ」 よし!やっと教会まで来た!ふうー、長かったわこの道のり。みんなごめんなさい。今日はたまたま悪い夢を見てたのよ。 私はゆっくり教会の扉を開けた。誰もいない。神父さまもクリフトも奥の部屋にいるのね。私は静かに扉のところまで進んだ。 「……どなたですか」 きゃっ。扉のすぐ向こうで声がした。もしかして気づかれてたのかな。忍び足で歩いてたはずなのに……。 声が小さくてだれが言ったのかまではわからなかった。神父さま?クリフト?私は耳をすましながら答えた。 「あの……アリーナです……」 「…………」 返事はなかった。うーん、そのうちあるわよね。待ってみた。そしたらずいぶんたって返事じゃなくって扉が開いた。 お部屋から明かりが漏れる。扉を開けたのは神父さまだった。ぼうしのかぶってない神父さま。白っぽい服着てる。 「姫さま……」 「こんばんは、神父さま」 「なぜ……どうしてここに……」 「えっと、眠れなくって……」 「兵は。見張りはどうしたのです」 「えーと、ちょうどみんないなかったの」 「そんなばかな」 「それより神父さまー、私ここで寝ちゃだめ?」 「…………」 神父さまは答えない。お部屋の中は明るいけどちょうどかげになっててお顔が見えないの。今どんなお顔をしてるの? 「……いけません」 「えー」 「……いけません……」 「寂しくって眠れないの。お願い神父さま。明日からまたお城を離れるんだし、ねえお願い」 「………………」 はんぶんうそだけどはんぶんはほんと。私は神父さまをまっすぐ見つめた。でも神父さまは答えない。 「神父様、どなたかいらしたのですか?」 奥で声がした。クリフトだ。中をのぞくとベッドから下りようとしてるクリフトが見えた。やっぱりぼうしのかぶってないクリフト。 寝てたみたい。そんなに大きな声で話してたわけじゃないのに起きちゃったのね。クリフトも私って気づいたみたい。 「姫、さま…?」 「うん。こんばんは、クリフト」 「な、なぜここにっ」 「眠れなくって。ねえクリフト、いっしょに寝よ?」 「な、なにをおっしゃるのですか!神父様!」 「神父さまーお願い」 「……………………」 私は神父さまを見た。クリフトもたぶん見てた。でも神父さまは答えない。そしたら手でお顔を隠した。息が乱れて…… 「どうして、どうしてあなたは」 「神父さま…?」 「あなたはいつも……」 「…………」 「こまります、今夜は……」 「神父様……」 「今夜は…………」 「…………」 言いながら神父さまは壁に寄りかかった。私の目の前が空いた。クリフトがよく見える。驚いて神父さまと私を見るクリフト。 神父さまは手でお顔を隠したまんま。困ってる。でも道は空けてくれた。私が来て困ってるのに、道は空けてくれた……。 「神父さま、私……中に入っていいの……?」 「……………………」 神父さまはしばらく黙ってたけど寄りかかったまま言ったの。 「今の私にそれを許可する資格はございません。ですが、無理を推してここまで訪れたあなたを拒否する理由もございません。 ですからどうか、すべてはあなたの望むままに……」 「神父様……」 「………………」 私は中に入って扉を閉めた。あわてるクリフト。神父さまは手をほどいて私を見た。その手を胸に当ててゆっくりおじぎをする。 「このような姿で失礼、わが教会へようこそ」 顔を上げた神父さまはもういつものお顔をしてた。いつものお声。 「先ほどは申し訳ありません、少々取り乱してしまいました」 「ううん……」 神父さま笑ってる。さっきまで困ってたのに。いっつもそう。お城の神父さまは不思議な人。 「足音を立てずに歩くためには止むをえなかったのでしょうが、そのままでは足を痛めてしまいます。さあ、こちらへ」 神父さまが私を奥にすすめてくれた。私はそばにあったいすに座る。ベッドには足を抱え込んでかたまってるクリフト。 一度ベッドから下りようとしたんだけど神父さまに止められてそのままかたまっちゃったみたい。神父さまは戸棚のほうへ。 「クリフト」 「はい!」 「このような夜更けにわが教会をおとずれてくださった大切な家族です。ごあいさつを」 「も、申し訳ありませんっ」 クリフトが私を見た。 「こ、こんばんは、姫さま……」 「あ、うん。起こしちゃってごめんね」 「そんなことは……」 「小さい頃のこと思い出してたらどうしてもここに来たくなっちゃって」 「…………」 「姫さま、少し失礼しますよ」 神父さまが私の前にかがんだ。白い布を持ってる。そのままで、そう言って足をきれいに拭いてくれた。 ぬらしてあったみたいで足が少しひんやりしたけどそのうちあったかくなってきた。 「足がぽかぽかしてきたわ」 「そうですか。それはよかった」 「さて、今夜はこちらでお休みになるとのことですが」 言って神父さまはベッドを見る。あ、クリフトを見たのかな。クリフトも神父さまを見てるし。少しして神父さまが私に向き直った。 「あいにくベッドはまだひとつしかないのですよ。クリフトとお休みになるにはもうおふたりともずいぶん大きくなりましたし」 「いいわよ。私はぜんぜん気にしないわ」 「そうですか?」 「うん。ね、クリフト!」 「ひ、姫さま…っ」 私はクリフトににっこり笑ってみせた。でもクリフトはなんだかこわばってる気がする。まだかたまってるし。なんだかなー。 「さてクリフト、あなたは」 神父さまがもう一度クリフトを見る。クリフトは今度は神父さまを見なかった。少しだけ間があったのは気のせい? 「……クリフト、今夜は姫さまとご一緒してさしあげなさい」 「そ、そんな神父様!」 さすが神父さま。話のわかる人だわ。 「そうよクリフト、ごいっしょしなさーい」 「ひ、姫さま!そんなっ」 「おや、嫌なのですか?」 「そ、そういう問題ではっ」 「え、クリフトいやなの?」 「そ……」 クリフトったら今度はたじたじになってる。いいのかいやなのかはっきりしないし。なんかもやもやするなあ。 「ふむ、クリフト……」 神父さまももやもやしてるのかな。ちょっと首をかしげてるような気がする。 「ならば求めよ。さらば与えられん」 ぴた。クリフトが止まった。下を向いて黙ってる。 「あなたが今求めるものは、己が望みか、彼女の望みか、それとも?」 「神父様……。ですが、しかし、わ、私は……」 「迷うのならば神を求めよ。さらば信仰は与えられん」 「………………」 クリフト黙っちゃった。神父さまも黙っちゃった。なんでだろ、私も黙ってみた。しーん。ど、どうしよう。 「どれでも構いませんよ。いずれにせよ、今あなたがたに与えられるものは解釈が異なるだけの同じもののようです」 あ、やっと神父さまがしゃべってくれた。私を見る。 「姫さま、今夜はクリフトとお休みになってください」 「そ…っ」 「え?あ、うん!じゃなくてはい!」 私はあわてて返事した。神父さまは笑顔で返してくれた。 うーん、私たちに与えられるものは同じものってどういうことだろう。求めよさらば与えられんって聞いたことはあるけど…… もしかして私がここで寝たいって求めたからここで寝ていいってお許しが与えられたってことなのかな。そういうことなのかな。 神父さま笑ってる。うん、どっちにしても私はここで寝ていいってことなのよね。 そう思ったらわくわくしてきた。だってほんとに久しぶりのお泊まりだもの。もしクリフトが反対したって2対1でクリフトの負けー。 私はにこにこしてクリフトに言う。 「クリフト、となり入るわよ」 「そ、そんな姫さま!いけません!やっぱりだめですっっ神父様!」 もう聞こえなーい。 「あ、おふとんの中あったかーい」 「ああああひめさまちかすぎますっっ」 「クリフト逃げないのっ」 クリフトとってもあわててる。子どもみたいなクリフト。なつかしくなって思わずぎゅって抱きしめちゃった。 「ああっ」 クリフトはおとなしくなった。ふふ、やっぱり。クリフトはいざ寝るとなるとすっごく静かになるの。 でも体が震えてる。寒いのかな。とりあえずそのままいっしょに横になっておふとんをかぶった。 「あ、ひめさま、そんな…っ」 クリフトの体おっきいな。いつの間にこんなにおっきくなったんだろう。なんだか悔しいな。男の子と女の子の違い。 クリフト、いい匂いがする。 「あっ…っ」 「おふたりとも、私は少し席を外しますよ。留守番をよろしくお願いします」 振り返ったら神父さまがお着替えをしてた。 「えー神父さまどこ行くのー?」 「お手洗いですよ。年を取るとどうにも近くなっていけません」 「お手洗いに行くのに着替えていくの?」 「ええ、私は見栄っ張りなんです。着替えないと恥ずかしくて外に出られないのですよ」 「えー神父さま早く帰ってきてー」 「そうですね。この時間なら混んでないでしょうし、うっかり大きなほうにならなければすぐ戻りますよ」 「やだ神父さまったら」 「神父様、私も行きます!やはり私には無理です!どうかふたりだけにしないでください!」 え…?今、なんて? 「私、私、何をしてしまうか……」 「クリフト…?」 「私は城に仕える身で……神に捧げた身で……!」 「…………」 「私は……!」 クリフト……? 「このままでは私、罪……っ」 「…………」 「罪を…っ!」 「………………」 え、なに、どうしたの?どうしてクリフトはこんなに取り乱してるの?どうして? 神父さまは背中を向けたまま黙ってる。クリフトは泣きそうな顔してて……。 「……クリフト」 「神父様っ……」 「………………」 少しして神父さまが振り返った。クリフトの前まで来てかがむ。神父さまは……優しいお顔をしてた。 「罪悪と捉えるから衝動に駆られるのです。 われわれに課せられた戒律のすべては、罰するためにあるのではありません。神はすべての罪をお許しになります。 この意味がわかりますか?」 「……っ…………っ……」 「…………」 私はわからなかった。すべての罪を許すんだったらどうして戒律があるの?そもそもどうして罪のお話になんて…… クリフトが何か罪を犯したの…? 「神父さまー、それどういう意味?」 「おや、あなたが聞いてしまいますか」 神父さまが私を見た。優しいお顔。優しいお声。いつもの神父さまだ。 「そうですねえ……」 少しだけ考えるしぐさをする。しばらくして神父さまは遠くのほうを見ながら話し始めた。 「私たちは生きていく上で、たくさんの道の中から一つの道を選び進んでいきます。 そこで多くのことを学び、そこからまた新たな道を選び進んでいきます。 例えばあなたが、城でずっと過ごすより、外の世界を旅する道を選んだように。 また、旅をずっと続けるより、一度城に戻り異変を解決する道を選んだように」 あ。神父さま、やっぱりお父さまのご病気のこと知ってたのかな。神父さまは言葉を続ける。 「そうして道を選び前に進もうとする私たちを、優しく見守り後押ししてくださるのが神なのです。 果たしてその道が、正しかったか、間違っていたか、そこは大した問題ではないのです」 「っ……」 クリフトが少しだけこわばったような気がした。 「戒律とは一つの道しるべに過ぎません。 その戒律に触れることは、学ぶべきことがあまりにたくさんある険しい道ですから、進むときは気をつけて進みなさい、という 神からのお告げに過ぎないのですよ」 「…………」 お告げ……。 「じゃあじゃあ、戒律を破っても神さまは怒らないの?」 「ええ怒りませんよ。罰することもありません。むしろ応援してくださるでしょう。 険しい道をあえて進もうとがんばるわけですから、それはもう神様もがんばってよき方向へと導いてくださるでしょう」 神父さま笑ってる。そうなんだ……。そうなんだ! 「つまり神さまは、がんばる人の味方ってことね!」 「そう、そういうことです。さすがは姫さま、うまくまとめてくださいましたね」 「えへへ」 神父さまに褒められちゃった。私、神父さまの難しい話を解き明かしたんだわ。 「クリフト」 「………………」 神父さまはクリフトに向き直る。 「身の内に起こる感情もまた、神が与えたもうた貴重な賜物です。 偽ってはなりません。法に囚われ本質を見失うことは、大変もったいないことです。 己が感情を正直に受け止めなさい。まっすぐに見つめてみなさい。そこから学べること、得られることがたくさんあります。 そうすることでまた進むべき道も見つかることでしょう」 ――神の愛は無限です―― 「学校ではこうは教えないかもしれませんが、そういうものだと私は思いますよ」 「…………」 クリフト……。クリフトは下を向いたままずっと黙ってる。 「安心して眠りなさい。神はいつでも私たちをあたたかく見守っていてくださいます」 そう言って神父さまは扉のほうに歩いてった。 「ああ、それと……」 背中を向けたまま話す。 「ここは教会です。王も大臣も姫も従者も、神の前では皆平等ですよ」 「……………………」 では留守番をお願いします、そう言って神父さまは出ていった。お部屋がいっしゅんしんとなる。 「……クリフト」 「………………」 …………。 クリフトは何か罪を犯してしまって、でも神さまはがんばる人の味方だから、がんばってるクリフトはなんにも悪くない。 だからそれは大丈夫。 じゃあ、どうしてクリフトは何もしゃべってくれないんだろう……。 私はさっきまでの流れをもう一度思い出しながらクリフトにかけられる言葉を探した。 でも、そうして思い出されたのはクリフトの「ふたりだけにしないでください」っていう言葉。 私……私は…… 「クリフトー……」 「…………」 「……クリフトは、私とふたりっきりになるの、いやだった…?」 「ち、ちがいます!そんなわけありません!」 「ん……」 やっとクリフトがしゃべってくれた。ちがうって。そんなわけないって……。 「……むしろ逆です。嬉しいんです。とても嬉しいんです…!姫さまとこんなに近くにいられることが、私には…っ!」 「クリフト……」 「姫、さま……」 やっとクリフトが私を見てくれた。切なそうな、何かを訴えるような、もどかしい目をしてる。前にも見たことあるような目……。 クリフトが私に手を伸ばしてきた。ゆっくり。でも今度はつかむようでつかまない手じゃない、そのまま私をぎゅってした。 「ん…」 「…………」 クリフトは何度も何度も確かめるみたいに私をぎゅってしてきた。なんだろう。なんでだろう……。 「あ、男の子の衝動だ」 クリフトがいっしゅん止まったような気がした。 「……はい、申し訳ありません……」 やっぱりそうだったんだ。砂漠のバザーで夜話してたとき打ち明けてくれた男の子の秘密。女の人を抱きしめたくなる衝動。 あ、つまり私も女の人として見られてるってことなのね。私は女の人じゃなくっておてんば姫なのに、クリフトったら変なの。 「ううん、いいよー」 「姫さま……」 「私だったらいいよ。大丈夫、クリフトを変態扱いしないから」 「……そうですか……。それは助かります……」 クリフトが少しだけ笑った。 「横に、なりましょうか」 「うん」 「姫さま……姫さま」 「なにー?」 「その……腕まくらをさせていただけませんか?」 「え?」 「その、どうか……」 腕まくらー?そんな言葉今まで聞いたことないってくらい使わない言葉だわ。クリフトは今度はもごもごしてる。変なクリフト。 「えーと、私がクリフトに腕まくらすればいいのね?」 「い、いえ、私が姫さまに腕まくらをしたいのです」 「えー腕が疲れちゃうじゃない」 「したいんです」 むう。今日はやけに食い下がってくるじゃない。ますます変なクリフト。 「ふーん変なの。いいよー」 私は持ってきたまくらをはじに置いた。言われるままクリフトの腕に頭を乗っける。思ったよりおっきくてがっしりしてるクリフトの腕。 寝心地いいのか心配だったけどそんなに気にならなくて、クリフトの腕はあったかかった。 すき間を作らないようにクリフトにくっつく。クリフトはちょっとびっくりしたみたいだけど笑っておふとんをかけ直してくれた。
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クリフトとアリーナへの想いはPart.9 934 名前 737  Mail sage 投稿日 2009/04/26(日) 13 46 45 ID zl3V/Yqy0 この喧嘩ネタは時の砂をオチに使いたかったのですが、 ケンカに発展しなくて止めたバージョンがあります。 ↓分岐ということで読んでください。 「なんでそこで勇者の名前が出てくるのよ? 勇者は関係ないじゃない!」 「いいえ!関係ありますともっ!!」 「何の関係があるって言うのよ!?」 「姫様は無神経すぎるんですっ! 私の気持ちなんてちっとも分かって下さらない!!」 「クリフトの気持ちって何よ!?」 「私が姫様のことを愛しているということですっ!!」 クリフトはハッとする。アリーナはその大きな瞳をさらに丸々とさせていた。 アリーナは頬を紅く染めることは全くなく、 完全に脳裏にない不意打ちの言葉をくらったような表情であった。 クリフトは自らの発言が時期尚早であったと嘆いた。 「……………………………。」 アリーナのその表情と微妙な沈黙に耐え切れなくなったクリフトは 思わず先ほど手に入れた“時の砂”を振りかざした。 砂がさらさらと舞い、時がぐるぐると巻き戻されてゆく。 「平気よ。クリフトはマーニャの心配でもしてればいいじゃない!」 アリーナが先ほどと全く同じ言葉を紡ぐ。 クリフトは時が戻ったのだと自覚した。 言葉を選んでから口を開く。 「………いいえ。私はアリーナ姫が一番心配なのです。」 「何よ、さっきはマーニャと二人で楽しそうに―――――」 アリーナはクリフトを見る。 少し悲しそうな憂いを含んだクリフトの瞳にアリーナは言葉を失った。 「…………………………。」 二人は無言で見つめ合う。 「うーん……。クリフトが反論しないからケンカにならないわねぇ。」 少し離れたところで二人の様子を見ているマーニャが呟いた。 「ま、アリーナが一応嫉妬らしき態度を見せたし、まぁいっか。」 「ちっともよくねぇよ。」 マーニャの側にいた勇者が反論した。 「あのさぁ、こういう命賭けてる場所では もうちょっと真面目にやってくれない?」 「あら、あたしはいたって真面目よ。 “真面目に不真面目”なのがあたしのモットーなの!」 「下らない屁理屈言ってんじゃねーよ!」 勇者とマーニャは火花を散らして睨みあう。 無言で見つめ合うクリフトとアリーナ。 その神妙な雰囲気にアリーナは耐えきれなくなったのか、 アリーナが沈黙を破った。 「ま、まぁ海賊の宝も無事見つけたし、一件落着ね! 勇者、もう帰りましょう!」 アリーナは勇者とマーニャの元へ駆けていった。 その後姿をクリフトはじっと眺める。 勇者と会話をするアリーナ。 二人には身分など関係なく、いたって自然体であった。 自分も勇者のようにアリーナと出会えていたら、 あのように対等に接することが出来ていたんだろうか。 クリフトは悲しくなった。 「おーい、クリフト!リレミトで帰るぞ~!」 うつむいた顔を上げると、勇者が笑顔でこちらを見ていた。 クリフトが駆け寄ると、勇者はつい先ほど手に入れたはぐれメタルの剣を差し出した。 「クリフト、これお前が使えよ。ずっとマグマの杖じゃ飽きるだろ?」 「勇者さんはいいのですか?」 「オレはほら、天空の剣 待ちだから。」 勇者からはぐれメタルの剣を受け取る。最強の攻撃力の剣だ。 クリフトはなんだかこれが勇者からのエールのような気がした。 「ありがとうございます…………頑張ります。」 (これで少しは肉弾戦がマシになって、ザラキの頻度が減ればいいけど……。) 勇者の本心をクリフトは知る由もなかった――――。 《おわり》