約 630,977 件
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/2165.html
※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方 ※捕食種設定を不快に感じる方 ※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方 ※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方 ※素晴らしい小説を求めている方 は、この小説に合いません。 申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。 それでも良ければどうぞ ふらんとの激闘があった日の翌日…2匹のゆっくりが森の中を歩いていた。 「う~…おなかすいたぁ~…」 ピンクの洋服を纏い、お腹を抑えながら歩いているのは胴付きれみりゃのミリィ。 「ミリィもいもむしさんやくささんをゆっくりたべたらよかったんだぜ!」 もう1匹は金色の髪に黒い三角帽子を付けた胴なしまりさのマーサだ。 「あんなのたべものじゃないぞぉ~…ミリィはあまあまをたべたいのぉ~!」 「ゆっ…マーサもあまあまさんたべたいんだじぇ~!」 突然あまあまへの愛を叫ぶ2匹。 ミリィは甘味以外は食べることが出来ない。 そして、ふらんと戦った場所のような豊富な餌場はこの魔法の森にも早々あるものではない。 ミリィのお腹は『ぐるるるる~』と大きな声で鳴いていたのだった。 そんな2匹の前に… 「おお、胴付き胴付き」 ,、 /ハ\ _/-─-i‐ヘ- ..,,_ ,.. '"´ └──'─' `' .、 _ノ´ヽ. ノ`;/ / ! '; `ヽ; ヽ.-‐''"´ ハ i / ;' / ハ ! ! i '; ', ;; / | /;! | /メ!_| /!/|-‐ァ ;ハ ト、 ;;_!⌒ヽレ' | / ! ;ハ 7__,.ハ|/ 、!__ハく! ! / |`ヽ / | / r八 /| i`(ヒ_] ヒ_ン)| / ! くソ ;' ! | / レ'ヽ;ハ| 7" ,___, / ! / ;ハ ! /| ;' |/| ム /; > ヽ _ン ";'; / / レ'i /| / レ' _ノ´ ヽ、, | / / '_,r'レ'! レ' ´  ̄/´ `>ー-一'レi /' ´ レ' レ'"´ ル"レ 黒い髪に赤い小さな帽子を乗せ、黒い翼を付けた胴なしのしゃめい丸が2匹の前に現れた。 ミリィのゆっくり冒険記 第六話 「ゆあああああきめぇまるだあああああ」 「う~…おなかへったのぉ…」 基本種にとってのきめぇ丸種はれみりゃ種やふらん種と共に捕食種として恐れられている。 目の前に突然現れたら怯えるのも仕方ないだろう。 一方、ミリィは目の前のしゃめい丸のことなど気付いていないかのように自身のお腹をさすっている。 「きめぇ丸とは失礼な!私は清く正しいしゃめい丸でございます」 「うああっ!だれなんだぞぉ!いつのまにそこにいたんだぞぉ!」 しゃめい丸の叫びにミリィは両手を挙げてオーバーリアクションで驚く。 ミリィは本当に気付いていなかったようだ。 「清く正しいしゃめい丸でございます」 自己紹介を繰り返すしゃめい丸。 傍から見ていたらアホのようだが、この場では気にする者はいない。 「ミリィはミリィなのぉ♪よろしくだぞぉ♪」 「マーサなんだぜ!しゃめいまるはきめぇまるとはちがうんだぜ?」 きめぇ丸とはしゃめい丸をにやつかせた顔…一言で言えばキモイ顔をしたしゃめい丸だ。 元々はしゃめい丸の亜種だったが、きめぇ丸の数が増えてきたことで認知度がすっかり逆転してしまった。 ちなみにしゃめい丸種はきめぇ丸種を容認してはおらず、この2種は元々同じものから派生したと言うのに犬猿の仲となっているのが現状である。 「違います!金・輪・際!きめぇ丸とは呼ばないでください!」 「う~…それでしゃめいまるはミリィたちになにかようなのぉ?」 しゃめい丸は興奮していたようだが、気を取り直したように咳払いを一つ。 「いえ、貴方達が空腹だと言うのなら私の家でご飯を食べて行きませんか?あまあまもありますよ?」 と、あまりにもミリィ達にとって都合が良すぎる提案をしてきた。 当然、2匹は驚く。 「マーサはあまあまたべたいんだぜ!」 マーサはしゃめい丸の言う事をすっかり信じてしまっているようだ。 あまあまという言葉にすっかり喜んでしまっている。 「う~…」 一方、訝しげにしゃめい丸を見つめているのはミリィ。 ミリィはあまあまと聞いてあの出来事を思い出してしまう。 質問することに躊躇はしたが、マーサを二度もあんな目に遭わせる訳にもいかない、とミリィは決意を固める。 「う~…あまあまってゆっくりのこと…?」 「ゆっ…!」 その言葉を聞いてマーサは怯える。 もしかしたら、自分達の家族と似たような状況のゆっくりがいるかもしれないのだ。 マーサはそこまで考えが回っていなかった。 辺りに緊張感が走る。 ぐるるるるるるるるぅぅぅぅぅぅぅぅ 緊張感を叩き壊すように地鳴りのような音が木霊した。 勿論、発生源はミリィのお腹だ。 しゃめい丸はマーサを一瞥する。 このしゃめい丸にとって、その時のマーサはどのように見えたのか。 すぐにミリィの方へ向き直る。 「あまあまというのは木の実や花の蜜のことですから大丈夫ですよ」 しゃめい丸種もれみりゃ種やふらん種同様ゆっくりを食べる捕食種ではあるが、捕食種の中には条件が揃えばゆっくりを食べる必要がない『饅頭断ち』をした捕食種も現れる。 どのような条件かと言うと、甘い食べ物が豊富にある環境…つまり、咲夜が料理を作ってくれる紅魔館等がそれに当たる。 ゆっくりを食べるのは甘味を欲しがっているということになるが、他の餌で補えればゆっくりを食べる必要はない。 このしゃめい丸が住んでいる巣の周りには昨日ふらんとミリィが戦った場所のように、甘い木の実や花の蜜が豊富であった為、しゃめい丸はわざわざゆっくりを探す必要がなかった。 一方、基本種のゆっくりもわざわざ捕食種のしゃめい丸のテリトリーに近寄ったりはしなかった。 故に、このしゃめい丸も結果的に饅頭断ちをすることになったのである。 最も、一度饅頭断ちをしたところで、それが続くかどうかはその捕食種の理性や環境の変化(例えば、餌が常に豊富にあること)などにも左右されるのだが…。 人間で言う煙草の禁煙のようなものといえばわかりやすいかもしれない。 尚、ふらん種はゆっくりをいたぶることでゆっくり出来るという性質を持っているので、饅頭断ちするふらんはまずいないと言っていいだろう。 マーサはしゃめい丸の言葉を聞いて安心する。 「ゆっ!ゆっ!マーサははやくいきたいんだぜ!あまあまたべたいんだぜ!」 「う~…マーサがそこまでいうんだったらしかたないぞぉ~♪」 嫌そうに言うミリィだが、滝のように口から出る涎を見る限りは説得力なんてものは無かった。 その声に合わせて、ミリィのお腹も『ぐるるる~♪』と嬉しそうに(?)鳴いている。 「ではこちらです。ゆっくりついてきてください」 「「ゆっくりしていくんだぞぉ~♪(だぜ~♪)」 こうして、ミリィとマーサの2匹はしゃめい丸にホイホイお持ち帰りされてしまったのだ。 「あまあま~♪しあわせ~♪」 「ゆっ!ミリィ!マーサのぶんまでたべちゃだめなんだぜ!」 「沢山ありますからゆっくり食べてください」 しゃめい丸の巣は木の上にあり、鳥の巣を思わせるような作りだった。 その木の下で3匹の食事が始まった。 「う~♪もうおなかいっぱいなのぉ♪ごちそうさまだぞぉ♪」 「ゆっ!ゆっ!あまあまたべてゆっくりできたんだぜ!」 食べてすぐ寝転がるマーサに、手を合わせて『ごちそうさま』をするミリィ。 「しゃめいまるありがとうだぞぉ~♪ミリィたちはとってもゆっくりできたんだぞぉ~♪おれいにミリィのかりすま☆だんすでしゃめいまるをゆっくりさせてあげるんだぞぉ♪」 立ち上がりダンスの構えをとるミリィ。 一見不格好な踊りではあるのだが、ミリィにとっては最大限のお礼であった。 「いえいえ…それよりミリィさんに少しお話を聞かせていただきたいのですが」 「う~…ミリィの?」 ミリィは自信を持っていた踊りを見せられないことは残念ではあったが、目的はしゃめい丸にゆっくりしてもらうことだった。 断る理由は無かった。 「しゃめいまるがゆっくりできるのならミリィはそれでいいぞぉ♪」 「ありがとうございます。それでは、ミリィさんはどうやって胴付きになれたのですか?」 「う~…?どうつき~…?」 しゃめい丸の質問に、ミリィはしばらく考える。 自分はいつこの胴体を手に入れたのか。 しかし、思い出そうとしても霧のようなモヤモヤとした感覚に囚われる。 そして、それはとてもゆっくり出来ないものであることはわかった。 「う~…ごめんなさいだぞぉ…わかんないぞぉ…」 申し訳なさそうに謝るミリィ。 それを聞いたしゃめい丸も残念そうにしているので、ミリィはますます落ち込んでしまう。 「そうですか…おお、無念無念…」 「で、でも!まんまぁといっしょにいたときはまだミリィはどうなしだったのぉ!…う?」 しゃめい丸を失望させたくない、という一心で必死に過去を思い出そうとするミリィ。 だが、自分の記憶に違和感を覚えた。 自分は胴付きになれた、しかしまんまぁはいつの間にかいなくなってしまっていた。 そして、いつか見た光景。 何かが胴なしれみりゃを殴り、そして紅い槍に貫かれる光景。 …自分はそれをどこから見ていたのだろうか? それを考えた瞬間、ミリィは意識を失った。 ミリィは夢を見ていた。 それは確かにどこかで見た光景。 「ミリィおそとにでてみたいぞぉ~…」 ミリィはまだ自分が胴なしで母親が健在だった頃、紅魔館の中で咲夜とまんまぁにそのようなことを言ったことがあることを思い出した。 ミリィはまんまぁから外でのお話を聞いて以来、出たことのない外に憧れをもっていたのだ。 しかし、咲夜が「外はミリィ様を食べようとする妖怪がいて危険です」と言って紅魔館の外には決して出してもらえなかった。 しかし、ある日、咲夜とまんまぁの隙を見て紅魔館の外に思い切って出てみたのだ。 そこには紅魔館の中ではわからないほどの広さの世界があった。 広くて青い空にどこまでも続いているような地平線。 そこにはミリィが求めていたものが確かにあった。 ふとミリィが下を見てみると、何か黒い物が飛び跳ねているのが見えた。 それに好奇心を持ったミリィは翼を羽ばたかせる速度を変え、高度を下げて行った。 高度を下げたミリィが見たものは「れ、れみりゃだあああああああああああああ!!!!」と叫ぶ黒い髪に赤いリボンを付けたゆっくりれいむだった。 このゆっくりれいむは捕食種であるれみりゃ種のことを知っていたので逃げようとしたのだが、恐怖でその場から動けなかった。 一方、ミリィの方はゆっくりれいむどころかまんまぁ以外のゆっくりを見たのは初めてだった。 しかも紅魔館で大事に大事に育てられてきたので、本来野生の動物に備わっているはずの警戒心というものが全くなかった。 まだ赤ちゃん故の好奇心を発揮したミリィは、固まっているゆっくりれいむにいつもまんまぁとやっているす~りす~りをやり始めた。 これに戸惑ったのがれいむの方だ。 れいむは「れみりゃにみつかったらゆっくりできなくなるからゆっくりにげてね!」と言われていたので、れみりゃにす~りす~りされている現状が認識できなかった。 その餡子の脳で考えた結果、『このれみりゃはゆっくりできる』という結論に達した。 こんなに温かくてゆっくり出来る子が自分を食べるはずがない、そう確信して。 れいむはミリィに叫ぶ。 「ゆっくりしていってね!」 それに答えるようにミリィも叫ぶ。 「ゆっくりしていってほしいんだぞぉ~♪」 ここに、ミリィの初めての友達が出来たのであった。 「う~…」 ミリィが目を開け、辺りを見渡す。 心配そうにミリィを見ているマーサとしゃめい丸の姿が見えた。 「だいじょうぶなんだぜ?」 と心配そうに聞いてくるマーサに 「だいじょ~ぶなんだぞぉ♪」 と無理矢理な笑顔で答える。 今回の夢は悪い夢ではなかったはずなのに、どこか不安を感じていた。 ミリィにはそれが何故なのかわからなかった。 そんなことを考えていたミリィに 「お疲れだったのですね…すみません…」 と謝るしゃめい丸。 しゃめい丸は疲れていたミリィに無理をさせたと考え、申し訳ないと思っていた。 しゃめい丸種は基本的に知能が高い。 だからミリィが倒れる原因を遠回しとはいえ作ってしまった(と思われる)自分に腹が立っていた。 ミリィはそのようなしゃめい丸を見て倒れる前の状況を思い出す。 「ミリィがわるいんだぞぉ…おはなしのとちゅうでねちゃってごめんだぞぉ…」 とこちらも申し訳なさそうに頭を下げた。 「しゃめいまるもどうつきになりたかったらいっしょにくるといいんだぜ!」 2匹の間を暗い雰囲気が通る中…マーサの明るい声だけが響く。 勿論、その発言には根拠はなかった。 この言葉に驚くしゃめい丸。 話を聞くだけのつもりだったので、同行するなんて考えは持ち合わせていなかった。 「そうだぞぉ♪しゃめいまるもいっしょいっしょなんだぞぉ♪」 ミリィもマーサの言葉にすっかり賛同しているようだった。 「あ…いえ…しかし…ミリィさん達はどこに向かっているのですか?」 確かにしゃめい丸は胴付きになりたかったが、この魔法の森には餌が豊富にあった。。 ミリィ達がどこに行くのかはまだ知らないが、どちらにせよこの魔法の森からは離れることになるだろう。 それはしゃめい丸にとってリスクが高かった。 「ミリィたちはさくやをさがしてこーまかんにいくのぉ♪」 「こーまかんはゆっくりぷれいすなんだぜぇ♪」 マーサは紅魔館に行ったことはないのだが、ミリィの話を聞いて紅魔館を自身のゆっくりプレイスだと決めつけてしまっていた。 しゃめい丸は考える。 確かにミリィ達に付いて行けば胴付きになれる可能性はあるのかもしれない。 しかし、それは当然のことながら確実ではないし、そもそも胴付きになれる方法もわかってはいない。 そして、付いて行けばこの巣を失う事になってしまう。 さらに、紅魔館とは一体どのような場所なのだろうか。 メリットとデメリット。 その間で考えを巡らせるしゃめい丸の耳に 「見つけたあああああ!!!!おねえさまああああああ!!!!!」 空間を切り裂くような叫び声が聞こえた。 後書き 射命丸って頭はかなりいいと思うのですよ。 新聞を書くということは並大抵の知能、知識ではできないと思います。 そんな私は自分の語彙の少なさに絶望しております…。 普段からの勉強って本当に大事ですね。 また、次回は再びヤンデレ要素が入ります。 ご注意を。 しゃめい丸って捕食種だったっけ? -- 名無しさん (2011-02-10 16 56 50) でもこのしゃめい丸って微妙に口調がきめぇ丸っぽいよねw -- 名無しさん (2011-09-01 15 21 54) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1805.html
(前) 一家がこの群れにきてから一週間ほど経っただろうか。 親まりさと親ありすはヘトヘトになりながらも、毎日狩りに精を出していた。 土地にも段々と慣れてきて、群れを抜けるための食料も少しずつ溜まり始めたその深夜、事件は起こった。 「むきゅ、たいへん!さっさとここをでるのよ!」 赤ありす部屋に突如、教育係のゆっくりぱちゅりーが乱入してくる。 「ゆ……どうちたの……」 「ありしゅ、ねむちゃいよ……」 「ゆっくりしないで、わたしについてくるのよ!」 部屋の中にいる何十匹もの赤ありすが、ぞろぞろとぱちゅりーに連れられて部屋を出る。 そのまましばらく歩いていくと、成体ありす達が集められている所があった。 その中には親まりさの妻である親ありすはもちろん、リーダーまりさの姿もあった。 「あれれ、おかーしゃん!?」 「ありしゅ、あいたかったよー!」 「ゆ!ありすのあかちゃんたち!げんきにしてた!?」 再開を喜ぶゆっくりアリス達を尻目に、ぱちゅりーとリーダーまりさは密談する。 「まりさ、これでぜんいんよ」 「よし、じゃあみんなきいてね!これからすこしのあいだ、ここでゆっくりしててね! ちゃんとここにいたら、ごほうびがあるよ!」 「「「「ご、ごほうび!?」」」」 色めきたつゆっくりアリス達。 この群れに来てから全くいい思いをしていない彼女達にとって、それは魅力的な申し出だった。 たちまち話の輪が広がる。美味しいご飯だろうか、若いありすは可愛いまりさかとも騒いでいる。 会話に夢中な彼女達は、いつの間にかリーダーまりさとぱちゅりーの姿が消えていることに気付かなかった。 それから数分ほど経っただろうか。 集められたゆっくりアリス達の耳に、バサバサという音が聞こえた。 何事かとそちらを向いてみると、そこにいたのはあの捕食種、ゆっくりれみりゃが10匹ほど。 「うっう~。おいしそ~なまんじゅうなんだどぉ~☆」 「たいりょうなんだどぉ~☆」 「れ、れみりゃ!あかちゃんたち、はやくにげてね!」 「れみりゃ、こわいよおおおおお!!!!!!」 蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出すゆっくりアリス達。 親ありすも5匹の赤ありすに、慌てて自分について逃げるように言う。 しかし、その場はありす達で埋め尽くされており、なかなか赤ありす達は親ありすの元へ辿り着けない。 親ありすも逃げ出したい気持ちをこらえ、震えながら赤ありす達の到着を待つ。 少し後、ついに4匹の赤ありすが親ありすの元へ辿り着くも、1匹がれみりゃに捕まった。 「ちっちゃいのつかまえたんだどぉ~☆」 「たちゅけてえええええ!」 「あ、ありしゅのいもーとがあああ!」 愛するまりさとの間に出来た、何よりも大切な自分の子。 それが今目の前で食べられようとしている。そんなことは当然許したくはなかった。 だが、親ありすは知っていた。自分ではれみりゃには太刀打ちできないということを。 そして赤ありすを助けようとしても、返り討ちに会うだけだということも。 「あかちゃん……ごめんねええええ!!!!!」 「おかーしゃん!なんでえええええ!!!!」 親ありすは断腸の思いで赤ありすを見捨て、他の4匹を口に含み逃げ出した。 この群れに入ってから随分辛い目に遭ってきたが、家族だけが唯一の支えだった。 しかしその家族が、ついに一人失われてしまった。親ありすは涙をこらえることができなかった。 れみりゃ達に蹂躙される自分の子や他のありす達を背に、ひたすら逃げ続けた。 そして何とかれみりゃ達から逃げ切ることに成功した。親ありすはひとしきり泣き続けた後、泣き疲れ眠った。 翌日になると、れみりゃ襲撃の件は親まりさの耳にも伝わった。 この親まりさは、昨晩は他のゆっくりの指導のもと、避難場所に隠れてれみりゃをやり過ごしていた。 そして、1匹の赤ありすの命が失われたことも知らされた。 「なんで……ありすばかりこんなめに……」 「……いままでも、たまにあったんだよ」 涙を流す親まりさにれいむが言う。 「ときどき、れみりゃがこのむれをおそいにくるんだよ。 そのときいつも……ありすをおとりにして、ほかのゆっくりはあんぜんなばしょにかくれるんだ」 「ひどい……」 2匹の耳に、他のゆっくり達の会話が聞こえてくる。 「やっぱりきのうのは、れみりゃらしいよ」 「おお、こわいこわい」 「またありすをおとりにしたんだね、わかるよー」 「ありすだって、かわいいれいむのためにしねたんだからまんぞくだよね!」 「そうなんだぜ!ありすのいのちなんて、ごみみたいなものなんだぜ!」 「「「「「ゆっゆっゆ!」」」」」 下品に笑い合うゆっくり達。 親まりさはそんなゆっくり達を睨むことしかできなかった。 ちなみにその朝ありす達にはごほうびとして、雀の涙ほどの食料が与えられた。 さらに一週間ほど経った日のこと。 1匹赤ありすを失い悲しみに暮れる親まりさと親ありすであったが、まだ6匹も子供達はいる。 その子達のためにも沈んでいるわけにはいかないと、再び狩りに精を出し始めた。 そして赤ありす達には他の赤ゆっくり達と遊ぶことも許された。 カチューシャが無いため攻撃されることもあるが、群れのありすは攻撃しないよう教えられていたため、そのような赤ゆっくりは他の野生個体に比べればかなり少ない。 「ゆっくちちていっちぇね!」 「ふちゃりでゆっくちちようね!」 そして、親ありすの子である赤ありすのうちの1匹と、特に親しくなった1匹の赤れいむがいた。 カチューシャが無いにもかかわらず、この赤れいむは赤ありすと仲良く遊んでいた。 赤ありすは悪との教育を受けてはいるが、赤れいむにはこの赤ありすはゆっくりできると何となくわかっているようだ。 この2匹の周りを見ると、カチューシャの無い赤ありす達を虐める赤ゆっくりも多い。 しかし、この2匹はとてもゆっくりしており、数日前に始めて出会ってから喧嘩の一つもない。 今日も追いかけっこをして遊んでいる。 「こっちだよ~」 「れいみゅ、まっちぇよぅ~」 「ゆっくちおいかけちぇね……ぴゅ!いちゃいよおおお!!!!」 赤れいむが転んでしまい、ケガをしたようだ。 幸い大ケガではないようだが、痛みはそれなりにある。 泣く赤れいむに、赤ありすは心配そうに声をかけた。 「だ、だいじょうぶ、れいみゅ!」 「いちゃいけど……がまんすりゅよ……」 「ゆゆ!れいみゅはちゅよいね!」 ケガをしたため、体を動かして遊ぶのはやりづらい。 だからお話をしたり歌を歌ったりして、二人でゆっくりした。 日が暮れてそれぞれの住処に別れても、二人とも明日も同じようにゆっくりできると信じていた。 明日もれいむとゆっくりしよう。そう思い、赤ありすは眠りについた。 翌朝。 「たいへんだよまりさ!いそいでひろばにいって!」 というれいむの声で親まりさは起こされた。 何事かと広場へ行ってみると、大勢のゆっくりがそこに集まっていた。 親ありすや2匹の赤まりさ、そして3匹の赤ありすの姿もある。 残る1匹の赤ありすはというと、集団の中心の切り株の上にいた。 そのすぐ手前では、1匹のゆっくり霊夢が大声でわめいている。 「このありすは、れいむのかわいいあかちゃんに、けがをさせたんだよ! こんなあぶないゆっくり、しぬべきだよ!」 「おかーしゃん、れいみゅはきにちてないよ……」 「あかちゃんはだまっててね!」 親まりさは、このれいむが何を言っているか分からなかった。 赤ゆっくり同士での遊びにケガなど珍しいことではない。 そしてある時は謝ったり、ある時は喧嘩をしたりして成長していくものである。 それをケガをさせたから殺せなど、お話にならない。 「やめてえええ!ありすのあかちゃんをかえしてえええ!」 「ゆ!あなたがこのありすのおやだね!やっぱりこどもににて、ぶっさいくなありすだね!」 切り株の上でガタガタ震える赤ゆっくりを見ていたたまれなくなったのか、親ありすが懇願する。 しかしその願いは受け入れられることはなかった。リーダーまりさが宣言する。 「みんなきいて!このあかちゃんありすは、あかちゃんれいむにけがをさせたわるいゆっくりだよ! まりさはこんなゆっくり、しぬべきだとおもうんだけど、みんなはどう!?」 たちまち沸き起こる、「ころせー!」の声。 親まりさや親ありすの必死の「やめてええ!!!」という声は他のゆっくりの耳には入らなかった。 「ありすたち、しっかりみててね! ありすのくせにほかのゆっくりにけがなんかさせたら、こういうめにあうんだよ!」 リーダーまりさが跳ね、赤ありすの上に落ちる。 赤ありすは悲鳴をあげる間もなく、べちゃっと潰れた。 「まりさのあかぢゃんがあああああ!!!!!!」 「ありすのあかぢゃんがあああああ!!!!!!」 「「まりちゃのいもーちょがああああ!!!!!!」」 「「「ありしゅのいもーちょがああああ!!!!!!」」」 「これでわるいありすはしんだよ!みんな、もちばにもどってね!」 ぞろぞろと帰っていくゆっくり達。 気の毒そうに思っている顔のゆっくりは、ほとんどいなかった。 「やっぱりありすって、さいていのゆっくりだね!」 「ありすとはゆっくりできないんちーんぽ!」 「それにしても、みにくいあかちゃんありすだったんだぜ」 「おお、おぞましいおぞましい」 もはや親まりさも親ありすも、怒りを覚えることすらできない。 ただただ、涙を流すのみだった。 翌日、さらに1匹の赤ありすの命が失われた。 処刑された赤ありすの姉だということで、ゲス赤まりさ達に虐め殺されたのだ。 親まりさも親ありすも厳罰を要求したが、リーダーまりさの判決はその日の昼食抜きというだけのものだった。 それもこのゲス赤まりさ達が、ありす種から生まれたゆっくりではないからだった。 それ以後、残った2匹の赤まりさは多種と極力関わらないようになった。 一家がこの群れに来てから一ヶ月が経過した。 赤ゆっくり達も成長し、成体にはまだ達しないものの、子ゆっくりと呼べる大きさに成長した。 当初は赤まりさ2匹、赤ありす5匹という家族構成も3匹の赤ありすが死に、残る子は4匹のみ。 これ以上この群れにいたら、残る子達もどうなるか分からない。 そう思った親まりさも親ありすも、死にもの狂いで群れから抜けるための食料を毎日集め続けた。 育ち盛りの子達に食べさせながら余分な食料を集めるのは並大抵の苦労ではない。 それでも2匹は再び昔のゆっくりした生活を取り戻すため、疲れるのも忘れてひたすら食料を集めた。 そして親まりさと親ありすは、今リーダーまりさの目の前に集めてきた食料を置いた。 ボロボロの体に似つかぬ大きな声で、2匹は宣言する。 「これでむれからぬけるためのごはんはあつめたよ!」 「わたしたちはこのむれをでていくわ!わたしとこどもたちのかちゅーしゃをかえしてね!」 リーダーまりさも、その周りにいる取り巻きのゆっくり達もこれには驚いた。 規定の食料はかなり多めの設定だったのだが、この2匹は見事に一ヶ月で集めきったのだ。 条件を満たしている以上、これで自分達は解放されるはずだと2匹は信じていた。 しかし、リーダーまりさはすぐに表情を嘲るような笑いに変える。 「ゆゆ!これじゃあたりないね」 「なんで!?ちゃんといわれたようにあつめたよ!」 「さいしょにせつめいしたるーる、もういちどおもいだしてね」 「「ゆ?」」 リーダーまりさが再びルールの説明を始める。 そしてリーダーまりさは、そのルールのある一点を満たさないと言う。 そのルールとは、 『群れを抜けたい場合は、決められた量の食料を群れに提供しなければならない。 その量は、一家における成体ゆっくりの数に比例する』 という点であった。 「わかってるよ!だからまりさとありすのぶん、ちゃんとあつめたでしょ!」 「ふたりぶんあるわよ!はやくかちゅーしゃをかえして、このむれをぬけさせなさい!」 この一家の成体ゆっくりは、親まりさと親ありすの2匹。 もちろんそれは彼女達も分かっており、だから2匹分の食料を集め、提供したのだ。何も問題はないはずである。 しかし、リーダーまりさの不適な笑みは浮かばない。 そして取り巻きのゆっくりの中の1匹に指示をした。 「このまりさとありすのこどもたちをよんできてね」 数分後、2匹ずつとなった子まりさ達と子ありす達が到着する。 リーダーまりさは、親まりさと親ありす達に言い放った。 「このこたちは、もうりっぱなおとなだよ! だからむれからぬけたいなら、このこたちのぶんのごはんもあつめてね!」 その場にいた全員がびっくりする。 確かに赤ゆっくりとはもう呼べない大きさだが、成体にはまだ達しないのは誰の目から見ても明らかだ。 「なにいってるの!このこたちはまだこどもだよ!」 「そうよ!へんなこといわないでね!」 「そうかな?じゃあみんなにきいてみるよ」 リーダーまりさは、周りの取り巻き達の方へ向き直した。 「みんな!このこたちは、もうりっぱなおとなだよね!?」 しばらく取り巻きゆっくり達は唖然としている。明らかに成体ではないのだから。 しかし少ししたら皆、下卑た笑いを浮かべ始めた。 「……そうだね、このこたちはおとなだよ」 「おお、おとなおとな」 「おとななんだね、わかるよー」 「むきゅ、おとなね」 「おとなだちーんぽ!」 一家の顔が青ざめた。 2匹分集めるだけでも死にそうな苦労をしたのだ。子供達が成体と認定されれば、成体ゆっくりは6匹。 実に今まで集めた3倍もの食料を、新たに集めなければならない。 「そういうわけで、そのこたちはおとなだよ!ろくにんぶんのごはんをあつめてね!」 「むきゅ、あとおとなだから、そのこたちもきょうからかりにさんかしなさい!」 「かわいいれいむたちのために、せいぜいがんばってね!」 「さからったら、むれのみんなでせいさいしてやるんだぜ!」 「まぁ、こどもをおいてって、ふたりだけでぬけてもいいんだぜ?」 「「「「「ゆっくりがんばってね!」」」」」 一家全員が理解した。 もう、自分達はゆっくりできることはないのだと。 子ゆっくり達が狩りに参加し始めてから、二週間ほど経った。 親まりさと親ありすは既に体力の限界だったのだろう、食料集めのペースは落ち、群れを抜けるための食料はおろか、その日を食いつなぐのが精一杯だった。 子ゆっくり達も、狩りの方法も教わっていないので満足に食料を集められない。 特に子ありすはカチューシャがないので、いつ群れの外のゆっくりと出会うかと思い、震えながらの狩りだった。 群れの様子は相変わらずである。 「にがしてえええ!!!ありすはまりさとすっきりしたかっただけなのにいいいい!!!!」 「このむれのために、しぬまではたらいてね!」 「むきゅ、だからありすはわるいゆっくりなのよ」 「「「「ありしゅ、わりゅくないよおおおお!!!!!」」」」 「このあかちゃんありすは、まりさのあかちゃんを、くいころそうとしたんだぜ!」 「ありしゅ、すりすりしただけだよおおお!!!!」 「うるさいよ!りーだー、はんけつは!?」 「ゆっ!もちろんしけいだよ!ゆっくりしね!」 「ありすのあかちゃんをころさないでえええ!!!!!!」 「くうものがなくなったありすが、にんげんのたべものをぬすもうとして、ころされたらしいぜ」 「おお、わらいわらい」 ある晩、他のゆっくり達が寝静まった頃、親まりさは一家を集めた。 本来親と子供は自由に会えないのだが、この子ゆっくり達は『成体』と認定されたので会うことができる。 「これいじょうここにいたら、しぬまでゆっくりできないよ。このむれをぬけるよ」 「ゆ……でもどうすればいいの?わたしもこどもたちも、かちゅーしゃがないのよ」 「まりさにかんがえがあるよ。いい、よくきいてね」 親まりさが皆に説明を始める。 ひとしきり説明を終わると、夜だというのに親ありすは大声を出した。 「だ、だめよ!そんなのきけんすぎるわ!」 「しっ!しずかにしてね!」 「ご、ごめんなさい……」 「おとーさん、そんなあぶないことやめてね!」 「そうだよ!やめようね!」 「……みんな。ありがとう。でもまりさは、もうけっしんしたんだよ」 親まりさは優しい目で、愛する伴侶、愛する子供達を見た。 「まりさは、しぬかもしれない。でも、ここにいたらえいえんにゆっくりできない。 だから……まりさのぶんまで、みんなにゆっくりしてほしいんだよ」 親ありすも子ゆっくり達も、まだ簡単には引き下がらなかった。 しかし親まりさの懸命な説得により、作戦を受け入れることにした。 「まりさ……ぜったいいきて、いっしょにゆっくりするのよ!」 「……もちろんだよ!」 そして再び食料集めの日々に戻った。 親まりさは世話になったれいむにだけ、親ありすは俗に言うレイパーありすではない、信頼できるありす達にだけ作戦を打ち明けた。 皆が賛同してくれ、あとは結構の機会を待つのみ。 彼女達の作戦に気付くゆっくりは、一匹もいなかった。 「ねぇりーだー、さいきんあのまりさ、おとなしいね」 「むきゅん、むれをぬけるためのごはんも、あつめなくなったし」 「ついにあきらめたってこと?」 「まあ、しょせんありすなんかと、こどもをつくるゆっくりだってことだよ」 「「「「ゆっゆっゆ!」」」」 そして一週間後の深夜、ついにその時が来た。 続く あとがき 当初の予定では食料3倍集めろと言ったところで終わりの、前後編だけのものでした。 書いているうちに一家の反撃も書きたくなったので、前中後編と分量が増えてしまいました。 次回できっちり終わらせます。 過去作 ゆっくり鉄骨渡り ゆっくりアトラクション(前) ゆっくりアトラクション(後) ありすに厳しい群れ(前).txt
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2929.html
徹夜明け筋肉痛のアレな状態で作った作品です… 虐待要素、ほぼ0 しかし虐スレ仕様のゆっくりが出ます。 無駄に長いです。 ザッピングあり。 最近のゆっくり2~最後の砦~ 「ゆ…ゆっぐぃ…ぢでいっでね…」 「…おう」 秋姉妹もレティの目覚めを察して山奥に引篭もろうとする頃、虐待志向でも愛護志向でもない、ごく普通のお兄さん宅の庭。 そこに単身入ってきた成体サイズのまりさは、明らかに衰弱していた。 まりさ種の特徴であり、自慢でもある黒い帽子はぼろぼろ。 まりさ自身も致命傷こそない物の、左目を失うなどの負傷を負っていた。 助けを求めてきたのだろうか、とお兄さんが腰を浮かせた時、まりさは胸、いや顎を逸らした。 「おに”ーざん…ここは…まりざのおうぢだよ…ゆっぐぃ…ゆっぐぃでていっでね…」 「…は?」 「だがら…なんどもいわぜないでね…ごこは、まりざのゆっぐぃぶれいずだよ…おじざんはででいっでね……」 「おぃおぃ、ちょっと待てよ」 お兄さんは流石に面食らった。 こんな棺おけに片足突っ込んだような饅頭にまで、おうち宣言を喰らうとは誰も想像するまい。 お兄さんの家は森に近く、これまでもゆっくりの襲撃を受ける事は少なくは無かったが、 その10割が家族連れか、健全かつゲスな奴か、そうでなくても皆健康体だった。 負傷したゆっくりも来る事はあったが、そういうものは皆捕食種に追われてとか、怪我を治して欲しくて来たとかだ。 「おじざんは…ゆっぐぃじだがったら、まりざをなおじでね…ぞれがら、ででいっでね…」 「いや、お前、ちょっと訊いていいか?」 「なに…ゆっぐぃじないでざっざどじでね…」 「お前、そんな状態で人の家乗っ取ろうっていうのか?そんな怪我じゃれみりゃにだって瞬殺されるだろ」 「…まりざは、づよいがらだいじょうぶだよ…れみりゃもにんげんも、いぢごろだよ…」 「…ありえねーよ」 お兄さんは思った。このまりさは正気を失っている、と。 この怪我だ。余程の事に見舞われて家族を失い、その精神的苦痛から逃れる為に理性を放棄してしまったのだろう。 「…なあ、まりさ。以前のお前がどれだけ強かったか知らんが、今のお前はただのぼろぼろの饅頭だ。」 「………」 「れみりゃにだって、まして人間相手に勝てる可能性は全く無い。」 「………」 「まりさ、お前は疲れているんだ。ほら、怪我を治してやるから、こっちに…」 「…わがっでるよ」 「?」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「…わがっでるよ」 「?」 手を差し伸べてきた目の前の人間さんが、不思議そうに首を傾げた。 そんな人間さんを、まりさは残された眼に涙を浮かべながら見上げた。 「わがっでるよ、ぞんなごと。まりざはよわいいぎものだっでごとぐらい」 「…まりさ?」 「まりざはむれでいぢばんづよがったよ。はつじょうしだありずがら、れいぶをまもっだごどだってあるよ… ぞれでも…でびりゃにはがなわながったよ…」 「………」 森の中にあったまりさの群れ。集落の場所は人里からも遠く、 長のぱちゅりーとそれを補佐するまりさの父である親まりさが皆に知識を伝えた。 すっきりのし過ぎで子を間引く事も、若い世代が長達に反発する事も無い、平和な群れだった。 まりさはその群れで一番の跳躍力と戦闘のセンスを持ち、喧嘩でも向かう所敵無しだった。 そんなまりさの番には、群れ一番の美ゆっくりのれいむ。 まりさはれいむをとても大事にして、集落の外れの丘に良く一緒に遊びに行った。 れいむの為に花冠を作ろうと離れていた時、偶然通りかかった流れのありすにれいむが襲われたりもした。 しかし、まりさはすぐに駆けつけて、ありすをこてんぱんにした。 まりさは自分の力に自信を持ち、それを誇りに思っていた。しかし… 「まりざはじっでるよ…でびりゃはづよいじ、おおぎぐなっだでびりゃはもっどづよい。 ぞれに、にんげんざんはそれよりももっどもっどづよいっで」 長のパチュリーは何時も言っていた。 にんげんはとてもつよい。つよくてかしこい。おおきなおうちをつくったり、たべものをかんたんにてにいれられる。 れみりゃはとてもつよい。そらをとんできて、かみついてくる。まりさでも、かてるあいてではない。 おおきなれみりゃはとてもつよい。てとあしをもっていて、なぐられたらみんなしんでしまう。 れみりゃに襲われて人間さんの家まで逃げたというちぇんが言っていた。 わかるよー。にんげんさんはいっぱつでれみりゃをたたきおとして、おいはらってくれたんだよー。 けがもなおしてくれたんだよー。ごはんはくれなかったけどねー。 まりさは聞いた事があった。 遠く離れた所で、「れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と叫ぶ声を。それはとても悲しげで、絶望に満ちていた。 駆けつけたまりさは、茂み越しに見た。 身体付きのれみりゃが、狩りに出ていた群れの仲間を守ろうとした、自分の父親から餡子を吸い上げていたのを。 まりさは戦った。父親を守ろうと。 そして、あっさりと返り討ちにあった。その手で叩かれただけで、まりさは痛みの余り餡子を吐き出す程の負傷を負った。 満腹になったのだろう、れみりゃは父まりさを皮だけにすると、そのまま飛び去った。 まりさは泣いた。何も出来なかった自分に不甲斐無さを覚えて。 長パチュリーは、気にする事は無い、勝てるはずが無いのだ、と言っていた。 その言葉は、父の死を受け入れきれないまりさの心を抉った。群れで一番というプライドなど、既に無かった。 「でびりゃはまりざのむれをおぞっで、みんなごろじゃっだよ… まりざはなにもできながっだよ…」 まりさは絶望した。集落を襲ってきた胴無しれみりゃ達に。 傷の癒えたまりさは、群れの仲間を一匹でも逃がそうと立ち向かった。 だが、れみりゃは一匹が翻弄する様に空からちょっかいをかけてくるばかり。 その間に仲間が襲われる。助けようと駆けつけると、動けなくなった仲間だけを残してれみりゃは逃げていく。 それが繰り返される。何時の間にか、残っていたのはまりさ、そして番のれいむだけだった。 れいむの頭には子の付いた蔓。赤ゆっくりは新鮮な餡子を親から与えられている為、とても美味しい。最後に残すつもりだったのだろう。 まりさは必死に戦った。だが、かなう相手ではない。自由の利かないれいむは、少しずつれみりゃに噛み千切られ、やがて力尽きた。 れいむの餡子を吸い尽くしたれみりゃ達は、赤子を弄る様に突付き回す。 初めて瞳を開けた赤子達は、れみりゃに弄られる絶望の中で食われていった。 まりさは他のれみりゃ達に左目を奪われ、帽子を噛み千切られ、散々に玩ばれ、 最後には逃げようとしたところを崖から転がり落ちてしまった。結果的には、このまりさが唯一の生存者だった。 「まりざばよわいよ…むれでいぢばんづよいげど、よわいゆっぐぃだよ…」 まりさは自問した。自分は何の為に生きてきたのか、と。 強い筈の自分、だが、負けてはいけない戦いで負け続けた。自分はれみりゃよりも弱いのだ。 幸せになるはずだった自分、だが、その幸せは全て失われた。群れも番のれいむも、もう居ない。 何の為に自分は存在するのか?自分は何なのか?ただのだめなゆっくりなのか? れみりゃの餌にされるだけの生き物なのか? ……そんなのは嫌だ、絶対に嫌だ。 まりさはとても偉いんだ、だからゆっくり出来るはずなんだ。 まりさが今ゆっくりできないのはおかしいんだ、だからゆっくりしに行くんだ。 どこに?…そうだ、人間さんのうちに行こう。そこでゆっくりするんだ…! 「でも…ぞれならなんでばりざだぢばうばれでぎだの!? ゆっぐぃされなぐなるだめにうばれでぎだの!?」 「まりさ…」 人間さんが、気の毒そうな視線を向けてくる。 その視線がとても苦痛だった。哀れみをかけられるのがとても嫌だった。死ぬほど嫌だった。 「ばりざはゆっぐぃずるんだ!でびりゃもにんげんざんもばりざをゆっぐぃざぜるんだ! ……そう、じんじなぎゃ、づらぐでいぎでいげないんだ!!」 「まりさ」 「ぞんなめでみるな!ゆっぐぃでぎないよ! もっどばりざをゆっぐぃざぜろ!!」 もうどうでも良かった。 まりさは無我夢中でお兄さんにぶつかって行った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ぞんなめでみるな!ゆっぐぃでぎないよ! もっどばりざをゆっぐぃざぜろ!!」 突然、まりさが体当たりしてきた。 ぼふん、と力ない音と衝撃を受け止める。最早まりさに、戦う力など微塵もないのだ。 「まりさ、もう止せ」 「ばがにずるな!ゆっぐぃでぎない!ゆっぐげぇ!?!?」 体当たりの衝撃で、まりさの左の眼窩から餡子が飛び出している。 更に、無理に身体を動かしたせいで餡子を吐いてしまった。 それでも、まりさは暴れるのを止めようとしない。 「ゆっぐぃずるんだ!ゆっぐぃざぜろ!!じじぃはざっざどででいげー!!!」 最早跳ねる事も這う事もできない。転がって、玩具をねだる子供のようにじたばたするばかり。 落ち着かせようとお兄さんが抱き上げるが、餡子と悲痛な叫びを吐き出しながら、もがき続けた。 治療しようと台所まで行こうとしたが、間に合う事は無かった。 まりさは最期に、一際多く餡子を吐き出して。 「もっど…ゆっぐぃ……じだがっだ…」 ゆっくりと息を引き取った。 その死に顔は、ゆっくりできているとは言い難い、凄惨な物だった。 「まりさ…」 お兄さんはその死に顔を複雑な顔で見ていた。 ゆっくり達は大抵、自分達がとても優れている、ゆっくりした生き物だと自負する事が多い。 他の生き物は皆、自分達がゆっくりする為にやってくるのだとも思っている。(捕食種やありすは例外として…だが) 子供のゆっくりは人間と同じ様に純真とされているが、親を攻撃する者があればかなう筈もないのにぶつかっていこうとする。 そして、大人になっていくにつれ増長していく。 だが。お兄さんは思った。 その不相応に高いプライドは、四肢も無く、多くの外敵に無力な自分に対する劣等感・コンプレックスを認めたくないがための、 精神を守る手段としての役割も持っているのではないか、と。 捕食種や野犬等の危険な外敵や、四肢を持ち、高速で移動する野生の動物達、そして人間。 皆、基本的スペックが違いすぎる。口でしか物を扱えず、ゆっくりとしか移動する事が出来ない。 餡子と言う、自然では異質な物質で出来ている為か、襲ってこない種も少なくなかったが、襲われれば殆どが餌食となった。 そして、生き残った者は己の無力感と恐怖に苛まされる。 そんな悲劇と苦痛の連鎖を、餡子に眠る記憶として遺伝されてきたゆっくり達は、 自分達が無力な存在である、と言う事を忘れたいが為に、過剰に増長し、思い込みを強めるのではないだろうか? 中には、本気で己が強いと思う者も多いだろう、むしろそれが大半だろう。 だが、初めから自分の分を弁えている者は、それでも自分を押し通す事で己の絶望と戦っているのではないか? お兄さんには、そんな風にしか思えなくなっていた。 「ゆっくりしていってね!!!」 只管にポジティブで、能天気で、我侭な生き物、ゆっくり。 だが、その心の奥底には、深い闇が覆っている…の、かもしれない。 終 ああ、支離滅裂な気がする。 ゆっくりにもコンプレックスあるんじゃね?むしろコンプレックスの塊じゃね? そんな事を仕事中に構想して、戻ってから書き上げました。 他の作品にも早く手を付けたい…。 By ゆっくりらいぜーしょん(多分執筆中)の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5023.html
WARNIG!! 人間をバカにしています 死なないゆっくりもいます 頭脳戦その一 「え~……」 黒服の声が響く。彼の前には、多数のゆっくり。れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ありす、れみりゃ、ふらん、さくや、ちぇん、らん、ようむ、かぐや、けいね、ゆかり等が居た。ゆっくり達はいきなり、集められた為、混乱したり、うろついたりしている者がいる。 「……君達ゆっくりは、ここで、頭脳戦をしてもらう」 大声を出したので、ゆっくりが動きを止め、そちらを見た。 「クズな人間……クズなゆっくり……共に等しいはずだ。我々は能力を持つ者を分け隔てなく、愛す……」 「ゆゆっ!? いみがわからないよ!! もっとかんたんに……」 「ブチ殺すぞ……貴様のような役立たずはいらん……おい!」 黒服がゆっくり達の後ろに居た黒服に声をかける。黒服がやって来て、そのれいむを持ち上げた……。 「ゆゆっ!! おそらをごっばべぎぃああああ!!??」 ボガッ!! ボガッ!! 何度も、黒服はれいむを殴る。死なない程度に……正に地獄……。 「ゆ……もっどべっ! ぐじじだがっばああ!!」 黒服の拳がれいむを貫通し、れいむは息絶えた。それを見て、れいむ、まりさ、れみりゃ、ちぇん、ようむ等が悲鳴を上げる。ぱちゅりー、ありす、さくや、らんは一部が悲鳴を上げ、ふらん、けいね、ゆかりは冷静にそれを受け止めた。かぐやは失神している。 「う、うーー!!」 一体のれみりゃが錯乱し、まりさに飛び掛るが、光線が飛び、れみりゃが塵と化す。 「うああああ!!??」 「……そう言うことだ。騒ぐ者、他の奴に邪魔をする者、そいつらは殺す!! 周りを見ろ、柵があるだろう? 上を見ろ、金属網がある。下を見ろ、コンクリートだ……つまり、貴様等は逃げられん!!」 「やだああああ!! じにだぐだいよおおおお!」 ゆっくり達が叫ぶ。黒服は取り出した銃を腰に収め、話を続けた。 「静かに!! ……大丈夫だ。貴様等には『知恵比べ』をしてもらう。簡単なことだ。ここでは、アトラクションが有り、そこで、貴様等の頭の良さを競う。勝てばいくつかのバッヂが貰える。そして、バッヂが五つ貰えられれば、『とてもゆっくり出来る』物が貰える」 みんなが一斉に目を見開いた。 「……もちろんだが、貰えるバッヂが多いほど、難しいアトラクションになる……。 では、いくつか、ルールを紹介したい。 一、私が初め! と言ったら、試合開始だ。 二、アトラクションの事を話すな、聞くな。 三、他のゆっくりを殺すな。 ……以上だ」 ゆっくり達は、静かにそれを聞いた。そして…… 「初め!!」 ゆっくり達が動き出す。アトラクションを探しに行く者、脱出を試みる者……。 「ゆゆっ!! ちゃんと、はなしをきけば、ころさないみたいだね!!」 「しょうだにぇ!! がんばりぇば、ぜったいゆっきゅりできりゅね!!」 れいむの親子が話している……。 「このさくは、てつでできているみたいね……」 「がっはぁ!!?? いだいよお!!」 ゆかりが調べている横で、まりさは柵に突進し、めり込んで、皮が裂け、餡子を漏らす。れみりゃが寄って行き、餡子を食べ始めた。 「ゆぎゃああああ!!?? いっだあはああ!!」 「うー!! あまくておいしいど~♪ ……う? が、うがああああ!!??」 黒服がれみりゃに近づくと、れみりゃを蹴飛ばした。れみりゃの首が吹っ飛び、黒服はれみりゃの身体を銃で貫いた。身体は再生を止め、地面に落ちた。しかし、ゆっくり達はそれに近づかなかった。 「……おい!! 早く行け!」 何故か、ゆかり、らん、けいね、半分程のぱちゅりー、かぐや、四分の一程のありす、さくやがそこに残っているのだ。やがて、他のゆっくりがいなくなった……。黒服達は、彼女等にバッヂを一つ付けてやった。 「……正解……! そう、あの声は、俺の物ではない……。後ろから、かつ、遠くからの別人の物……。そう、まだ、ゲームは始まっていない……。そして……アトラクションに失敗した場合、貴様等には傷を負ってもらう……。いいな?」 「むきゅ! がんばるよ!」 「ふん、わたしにはらくしょうですわ」 「とかいはのありすならできるにきまってるよ」 「ゆっくりすてきなわたしにはぞうさないわ」 「まだ、ここでしぬわけにはいかないからな」 「あいするこがまっているんだ……」 「ぐや! がんばるよ!」 各々が決意の言葉を放ち、散った。 「……なかなかやるな?」 黒服が仲間に話し掛ける。 「ああ、腐りきった人間よりよっぽど、情熱のある眼差しだ……」 戦いが始まる。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/948.html
前 あるところに一匹のドスまりさがいた。 群れを出て行った、老ドスまりさである。 「ゆゆ~、これでやっとゆっくりできるよ」 老ドスまりさがいるのは、若ドスまりさが生まれ育った深い森の中であった。 老ドスまりさは若ドスまりさが歩いた痕跡を辿り、ここに辿り着いたのである。 あれだけ愚かなゆっくりが、ドス級になるまで育つことの出来るような場所だ。少なくとも安全には違いないと当たりをつけていた。 そう──老ドスまりさは、若ドスまりさの精神の未熟さを、正確に把握していた。 その上で、若ドスまりさにあの群れを譲ったのである。 正直なところ、老ドスまりさは人生に疲れていた。 毎日毎日、愚かなゆっくりの相手をして過ごすことに、意味を見出せなくなってしまったのだ。 そこにちょうどあの若ドスまりさが来たので、老ドスまりさは群れに対して一つのテストを行った。 つまり、若ドスまりさに演説を行わせ、それに対し群れがどのように反応するかを試したのである。 結果は明白。ゆっくり達は若ドスまりさの根拠のない自信を全面的に信用し、さっさと鞍替えしてしまった。 あれほど人間は強く怖ろしいものだという老ドスまりさは教えていたのに、群れのゆっくり達は反省した様子もなかった。 中には家族を人間に殺されたものもいたのに、である。 ゆっくり達が自分の髪から躊躇なくリボンを解き、付け替えるのを目の当たりにするに至って、とうとう老ドスまりさは群れそのものを見限った。 そして、群れを捨てる自分についてきてくれるパチュリーとアリス、子れいむ、れいむ一家とまりさ一家だけを連れて、老ドスまりさは旅立った。 そこには微塵の後悔もない。 あの若ドスまりさも、群れ自体も、もう知ったことではなかった。老ドスまりさは、ゆっくりという存在そのものについて諦めを抱いていた。 そう思ったから、若ドスまりさに『協定』のことも教えなかった。 「どす、ながいあいだおつかれさま。これからはここでずっとゆっくりしていってね!」 帽子から降りたありすが、老ドスまりさにそう言ってくれた。 「ありがとうありす。でも私はもうドスでもなんでもないよ。これからはただのまりさと呼んでね」 「むきゅ! わかったわ、まりさ!」 ぱちゅりーの言葉に、老ドスまりさは目を細めた。 ああ──これで本当にゆっくりできる。 群れを捨てた立場であるというのに、こんな良いゆっくりが側にいてくれて、なんと自分は幸せなのだろうか。 思えば自分の人生は、幸運によって導かれてきた。 幼少期、家族がれみりゃに襲われて自分だけ生き残ったのも幸運だったし、その後ぱちゅりーに拾われ育てられたのも幸運だった。 色々と苦難に塗れた時代もあったが、ドス級に至るまで大きくなれたのも、ひとえに幸運の賜物であろう。 つがいになってくれるゆっくりと、リーダーを務めた群れには、生憎と恵まれなかったが。 それでもこうしてようやくゆっくりできる時間が持てたのだから、自分は幸せなのだろう。 「…………♪」 「「「じゃお~……じゃお~……」」」 少し離れた場所では、さっそくゆうかが新しい畑作りに取り組んでいるし、めーりん一家は木陰で眠っていた。 子れいむはれいむ一家やまりさ一家の子供達と遊んでいる。とても微笑ましい光景だ。 ここにどれくらいの餌があるか分からないが、しばらく食べ物に困ることはないだろう。 老ドスまりさの帽子の中には、巣から持ち出してきた食糧が目一杯に詰め込まれていた。 その量は、若ドスまりさにお祝いとして出した量の倍ほどもある。節約して生活すれば、かなり長いこともつだろう。 「ゆっくりしていってね!」 老ドスまりさは、長らく心からは口にすることのなかったその言葉を、高らかに謳いあげた。 もはや動くものとてない森の奥に、一匹のドスまりさが放置されている。 あの若ドスまりさであった。 若ドスまりさは、どうしてこのようなことになっているのか、理解できなかった。 若ドスまりさは、自分の人生が幸運によって導かれてきたと思っている。 あの森で暮らしていたとき、自分だけ生き延びたのも幸運なら、ドス級に至れるほどの豊富な食糧に恵まれたのも幸運だった。 そして森を出てみれば、すぐに群れが自分のものとなる幸運にも恵まれた。 これからもそのような生活が続くのだと、無条件に信じていた。 その結果が、今の姿である。 ……若ドスまりさは、確かに幸運であった。生き延びることが幸運と言うなら、確かに幸運であり続けた。 だが若ドスまりさは、その幸運をひたすら無条件に享受し続けるだけであった。 努力をしない者には、いつしか幸運の女神も愛想をつかすのだ。 それを、若ドスまりさは今も理解していない。 「……まだ生きてるな」 そんな愚かなドスまりさに、声をかけるものがあった。一人の人間の男であった。 「ゆぃいぃい……!! やべでぇええ、ぶだないでぇえええ……!!」 散々殴られた恐怖から、ドスまりさは人間というだけで無条件に怯えた。 男はドスまりさの言葉を無視し、言った。 「お前、ドスまりさじゃないな?」 「ゆ゛?」 「最近までここにいたドスまりさじゃないだろ。お前、違うドスまりさだろ?」 「……ゆっ!」 ドスまりさは希望を見出した。ああ、やっと自分の言葉を聞いてくれる人がいてくれた。 これで誤解は解ける。人間達も、あのドスまりさと自分が違うことを分かってくれる。 事情を知らなかったわけだから、自分のことも赦してくれるだろう。そう思った。 ドスまりさは必死に気力を振り絞って、目の前の人間に訴えかけた。 「ゆっ! そうなんだぜ! まりさはあのどすじゃないなぜ! だからたす「ウルセェエエエエエエエエエエ!!!!!」」 「ぎゃっびぇ!!!???」 男の豪腕が、ドスまりさの肉体を一撃で揺らした。 ドスまりさが何が起きたのか理解する前に、さらに拳が飛ぶ。 「お前のせいでっ! お前のせいでっ! お前のせいでっ! 何もかもが滅茶苦茶なんだよォォォォ!!! よくも俺の獲物を逃がしてくれやがってよォォォォ!!! あのドスはっ!!! 俺が長いこと目ぇつけてたやつなんだよ!!! いつか虐待してやるって心に決めてたやつなんだよ!!! 俺のっ、俺だけのっ、俺だけが虐めていいはずのっ!!! ドスまりさだったんだよォォォォォ!!! それをっ! それをッ!!! そ れ を ッ ッ ! ! ! ! ! 全部ブチ壊しにしてくれやがってェェェェェェエ!!!!! ナメやがってっ、ナメやがってッ!!! 一体どんだけ俺をコケにすりゃ気がすむんだ、この…… 腐 れ 餡 脳 ミ ソ が ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! ! ! ! 」 「ゆっげびゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 秒間十二発の拳の猛打が、容赦なくドスまりさを痛めつける。 男は筋金入りの虐待お兄さんであった。その証拠に、あれだけ殴られておきながら、ドスまりさの顔は全く破れていなかった。 「……ゆ……ゆ……」 「フーッ、フーッ……フゥゥゥゥゥゥゥ」 最早反応を返さなくなったドスまりさを前に、ようやく虐待お兄さんは息を整えた。そして、 「……ま、いっか」 ケロッとした表情で笑った。 「ドスを逃がしたのは残念だけど、代わりに今回の騒動でたくさんゆっくりを捕まえられたしな。 あんだけいればしばらく楽しめそうだ。久しぶりだから、殺さないよう加減するのがちょっと難しいけど。 ま、そういうわけだからさ、お前のことなんかもうどーでもよくなったわ」 そう言って虐待お兄さんは踵を返した。 良かった、とドスまりさは思った。何がどうなったか分からないが、ひとまず生き長らえたようだ。 あとはどうにかしてこの縄を解き、逃げ出すだけだ。逃げ出せたら、故郷の森へ帰ろう。外は怖いことばかりだ。 そうしたら、あとはずっとゆっくりし続けるのだ……そう心に決めていた。 だが去っていく男の、無慈悲な言葉がドスまりさに突き刺さる。 「お前の処刑は、あのれみりゃとふらんがやってくれる! じゃあね、クソ饅頭」 男がひらひらと手を振るのに答えるように、森の闇の中から、幾つもの飛行する影がドスまりさめがけて迫ってきていた。 「「「「うー! うー!」」」」 「ゆあ゛……あ゛あ゛あああああ……!!!」 このドスまりさは、今夜のれみりゃとふらんのディナーとなるだろう。 しかし体力に恵まれたドスまりさは、幸運にも、今夜を生き長らえることだろう。 そしてゆっくりゆっくり数日かけて、その命全てをれみりゃ達に奪われていくのだ…… 「もっどゆっぐりじだがっだああああああ…………!!!」 あとがき どんだけ面倒見のいい人でも、度を過ぎれば愛想つかすよねという話。 前回(復讐のゆっくりまりさ)では、まだ若さの抜けきらないドスを書いたので、今回は老輩と若輩のドスまりさをそれぞれ書きました。 ……書いたつもりです。 自分は、ドスにもピンキリいると思います。 そして実際、もしドスまりさが人間ほどの知能を身に着けていたら、さっさと他のゆっくりなんか見限って山に引きこもってると思います。 人の面倒を好んでみるというのは、そこに利益があったり、単純に人が良かったり、支配する快感が得るためだったり、そういう理由がないと大変ですから。 二匹のドスの設定は↓のような感じでした。 ・老ドスまりさ:(ゆっくりとしては)凄く長く生きてる苦労人。いい加減人生に疲れている。 それでも根が真面目なので、いきなり群れをほっぽりだすとかできなかった。 話の開始時点で既に怒りが有頂天寸前。漢字をたくさん使って喋る。 ・若ドスまりさ:図体がでかいだけで中身はただのゲスまりさ。 豊富な栄養事情に支えられドス級に至るが、世間知らずなため傲岸不遜。しかも痛みに弱い。平仮名で喋る。 今回は短い話のつもりで、かなり色んな部分を削ったんですが(老ドスの苦労話とか若ドスの馬鹿っぷりとか)それでもこの長さに…… wiki編集者の方にはご迷惑をかけますが、適当なところで切ってくださると助かります。 それでは、また。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 復讐のゆっくりまりさ(中) 復讐のゆっくりまりさ(後) by 土下座衛門 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/258.html
これは投棄場の ゆっくりの歴史 森のゆっくり編 の続きです。 歴史と言いながら俺設定、パロディが満載です。 そして投棄してるからには虐待が皆無です。 それが気に入らない人はお戻りください。 ちなみに今回は大概のSSで死んだゆっくりの帽子をかぶると 「おまえとはゆっくりできないよ!ゆっくりしね!」 とほざき始めるので、その理由の脳内保管を文章化した感じです。 さて、続きだ。「水辺のゆっくり」と銘を打たれていたが、川のゆっくりと言ったほうが正確か。 幻想郷に海はない。紅魔館のほとりにいれば某知恵足らずの妖精やカリスマならぬカリデカな館の主に駆逐されてしまうだろう。 ゆっくりも学習能力はある。 { 水辺に棲むゆっくりのもっとも恐怖したもの、それは辻斬りだった。 事実、辻斬りは毎年現れ、ゆっくりが駆逐されるまで続いた。 初めに辻斬りを始めたのはみょん種だった。 「ゆっくりしていってね!!!」と大声で叫んで近くのゆっくりを足止めし(地上のゆっくりには「ゆっくりしていってね!!!」というと本能的に挨拶を返す習性がある)ゆっくりとは思えない速さで真っ二つに切り裂く。人間のいう辻斬りそのものであった。 彼(もともと人間に家族を殺された父親役のゆっくりであったそうだ)は自分に勲章として死臭のついた髪飾りをはぎ取り、カチューシャにしていたようだ。 川辺のゆっくり達は死臭を感じると出来る限りの避難をした。 しかし無駄だった。本能に従い叫んで殺された。 辻斬りのみょんは天寿を全うした。その年の11月のことだった。} へえ、祖父が言ってた「死臭がするゆっくりは殺される」というのはここから来てるのか。 しかし毎年ってことは模倣犯がいたのか。 {その後は模倣犯が大量に現れた。 共通するのは「群れではゆっくりできなかったゆっくり」というところである。 最初に模倣したのは「おれまりさ」というまりさ種の変種であった。 一人称が「俺」であるがために偽物扱いされて爪弾きを受けていた。 (後述するが、最初に地上に降りたまりさの一人称は「俺」である。普通の地上まりさが偽物) 私怨が強かったらしく、周辺のまりさ、れいむをすべて虐殺した。 その際命と引き換えに放った「ゆっくり奥義 ますたーすぱーく」はおれまりさを怒らせるとこうなるということで現場にいたゆっくりに畏怖の念を感じさせた。 その後、おれまりさは仲良くなる…と思いきやありす種の提案で殲滅された。 不憫である。 後にふらん種、れみりゃ種、ありす種が毎年川辺で辻斬りの模倣をしては殺された。 そしてこれが地上のゆっくりが言っていた「死臭のするゆっくりはゆっくりできなくなるから殺す」という本能に従っての行動に繋がったのだろう。 (ちなみに私の先代は地上のゆっくりの解剖本を出していたのだが、その51Pにこんな記述があった。 「地上のゆっくりに死んだゆっくりの飾りの臭いを嗅がせると、餡幹部(人間でいう脳幹のようなもの)が沸騰する」 沸騰を続けると餡幹が融けて死ぬ=ゆっくりできなくなるということだろうか。 先代の本ではそこは解明されていなかった。) さて、次章は私たち山の上のゆっくりの歴史を紹介する前に、私たちと地上のゆっくり、及び人間との戦いを紹介しようと思う。} なるほど。地上のゆっくりは自己中心的だから殺してしまうのか。 ぱちゅりーさんたちは大丈夫なのだろうか。 それにしても水辺のありすは許せない。 全部川に落ちて死ねばいいのに。 それと・・・ゆっくりとゆっくりの戦い?聞いたこともないが。 そう思ってページを進める俺であった。 あとがき---------- 今回短くてすいません。 水辺のゆっくりはほとんど人間に屠殺された先行があるから 事件一つしか書けなかった。 このシリーズはあと上のゆっくりや人間との戦い、山のゆっくりの歴史、あと何かもう一ネタとエピローグの 1~3回で締めくくられると思います。 あ~家族のPCだからリビングにあるから 頭の中にあるゆっくり大虐殺の文が 書き表せない。 書いたら確実にパソ禁食らう。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1478.html
※fuku2428.txtの続編です ※人間、妖怪等は出てきません ※俺設定あります まりさは緑に覆われた山を歩いていた。 人間にとってはそれほどでもない坂道も、ゆっくりにとってはとても険しい斜面である。 だがまりさは特に息も荒げずに進んでいる。 このまりさは餡子遺伝子が突然変異し、進化したゆっくりであった。 そのため、普通のゆっくりよりも体力があるのだ。 今日も今日とてゆっくりプレイスを探し、当てのない旅を続けている。 「ゆっ! ゆっ! もうすぐはんぶんだね!」 丁度山の五合目ほど。木々が無くなり、辺りを展望できるような場所があった。 あそこから眺めればゆっくりプレイスを見つけられるかもしれない。 そう思ったまりさは歩くスピードを速めた。 「…ゆ?」 と、そこであること気づいた。 まりさが目指しているその場所から何匹かのゆっくりの声が聞こえてきたのだ。 一体なんだろうと思い、まりさは静かに近くに寄って行った。 「ほら! めーりん! さっさととびおりなよ!」 「くずなめーりんはそうやってまりさたちをたのしませるぐらいしかできないんだぜ!」 「はやくしなさいよ! とかいはのありすたちがみててあげるのよ! ありがたいとおもわないの!?」 「じゃ、じゃおおおおん…」 見ると、一匹のゆっくりが三匹のゆっくりに虐められていた。 切り立った崖を背に、涙を浮かべているのはゆっくりめーりん。 そしてめーりんを逃がさないように取り囲んでいる三匹は、れいむ、まりさ、ありすのお決まりトリオである。 特に珍しくもないが、まりさにとっては初めて見る光景だった。 自分が生き残るための戦いや喧嘩なら仕方がない。だが目の前の光景はどう見ても一方的な弱い者いじめだった。 助けなければ! そう思ったまりさは四匹の前へ姿を現した。 「そんなことしちゃだめだよ! そのこないてるじゃない!」 「ゆっ!? なんなんだぜおまえは!」 突然現れたまりさに、三匹の中のまりさ――ややこしいのでだぜまりさとする――が警戒した。 「よわいものいじめはだめでしょ!! そんなこともおそわらなかったの!?」 どうらやこの現われたまりさはめーりんをたすけるつもりらしい。 そう理解しただぜまりさはゲラゲラと笑った。つられて周りにいるれいむとありすも笑い始める。 「なにいってるんだぜ! くずめーりんなんかいくらいじめてもかまわないんだぜ! しょせんくずなんだぜ!」 「それはわるいことだよ!」 「うるさいんだぜ! くずのみかたするやつもくずなんだぜ! れいむ! ありす! いっしょにこのくずをやっつけるんだぜ!」 だぜまりさの号令で三匹はまりさへと襲いかかった。しかし、まりさは次々に攻撃してきた彼女らを難なく跳ね飛ばす。 何度攻撃しても返り討ちにされ、三匹が焦り始める。 「ゆゆっ! こいつつよいよ!」 「さんにんがかりでもかてないなんて…!」 「こ、こうなったら…!」 だぜまりさは背中を向け、一気にまりさとは逆方向へと走り出した。 「にげるんだぜーーーー!」 「あっ! まっ、まってよまりさー!」 れいむとありすもだぜまりさに続いてその場から逃亡する。 そして三匹の姿が完全に見えなくなった後、まりさは虐められていためーりんと向き合った。 相手を安心させる為に笑顔を浮かべ、まりさはめーりんに優しく言う。 「もうだいじょうぶだよ! わるいゆっくりたちはおいはらったからね!」 良い事をした後は気持ちがいい。きっとこのゆっくりも安心しているだろう。 だがそのめーりんの反応は、まりさが全く想像していなかった物だった。 「けっ! よけいなことするんじゃねーお!」 先程まで涙を潤わせていた両目は冷やかに据わり、まりさを睨んでいる。 あまりの予想外の返事に対処できないまりさに、めーりんはきつい口調で言った。 「おまえのせいで、せっかくのえさがにげちまったじゃねーかお!」 実はゆっくりめーりんは二種類存在する。 まず"ノーマル型"と呼ばれる心優しいゆっくりめーりん。 このタイプは自然や他のゆっくりを愛し、他の通常種のゆっくりと同じ様に木の実や昆虫を食べる。 だが悲しい事に「じゃおおおん」としか喋ることができず、他のゆっくり達と意思疎通が出来ない。 そのため、性格の悪いゆっくり達に虐められることがしばしばある。 そしてもう片方は"ちゅうごく型"という種類のゆっくりめーりんである。 こちらはノーマル型と違い、きちんと言葉を話すことが可能だ。 しかしその性格は悪く、何より他のゆっくりを食べてしまうという恐ろしい特徴があった。 現在まりさの目の前にいるめーりんはこの"ちゅうごく型"である。 ノーマル型めーりんを装い、自分を虐めにやってきたゆっくり共を捕食するというずる賢い性格だった。 「ったく! よけいなことしてくれるお!」 助けてあげたのに罵倒される。 この理不尽な状況にまりさは思わず声を荒げた。 「ゆっ! そんないいかたないじゃない!」 「うるせーお! こうなったらおまえをたべてやるお!」 言い終わるや否や、めーりんはまりさの頭に齧りついた。 顎に力を入れ、そのまままりさの頭皮を金髪と共に噛み千切る。 「ゆぎゃ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 激痛にまりさは顔を歪めた。 一体何なんだ。折角助けてあげたのに、どうしてこのゆっくりはこんなことをするんだ。 混乱するまりさの前で、めーりんはむしゃむしゃとまりさの皮を食べている。 そしてそれを飲み込むと、顔を輝かせた。 「じゃお!! これめちゃくちゃうめーお! もっとくわせるんだお!」 再びまりさに齧りつこうと、めーりんはまりさへ突進する。 だが黙って食べられるようなまりさではない。すぐに身を整え、反撃に出た。 「ゆゆっ!!」 「じゃおん!?」 めーりんの攻撃のタイミングに合わせ、体当たりで反撃する。 ドカッと二匹がぶつかる音が周囲に響いた。 突然変異し、餡子の質が向上したまりさは力も強い。 あの捕食種である体無しれみりゃでさえも打ち負かす事が出来るほどだ。 それに以前、れみりゃを二匹倒したことによって、まりさはゆっくりの力に大きく関係する"自信"をつけていた。 自分と同じ大きさのゆっくりになら例え捕食種相手でも負けることはないだろう。 そう思っていたこともあり、まりさは衝突後に少し油断してしまった。 めーりんは自分の攻撃によって遠くまで跳ね飛ばされると思っていたからだ。 しかし、その予想は外れた。 「じゃおじゃおじゃお! いたくもかゆくもねーお!」 「!?」 そんな馬鹿な、とまりさは困惑した。 めーりんが跳ね飛ばされるどころか、まるでダメージなど無いかのように笑っていたからだ。 その原因はめーりんの皮膚だった。 めーりん種はゆっくりの中でも比較的皮が分厚い。 だから刺されたり切られたりするならまだしも、ただの打撲等の衝撃なら大抵は吸収してしまうのだ。 そんな事は全く知らないまりさの混乱をよそに、めーりんは再びまりさに噛みついた。 今度はまりさの右顔面に齧りつき――目玉ごと噛み千切った。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 右側の視界が黒く染まり、同時に激しい痛みが走る。 残った左目には自分の目玉を美味しそうに食べるめーりんの姿が映った。 「じゃお! こりこりとはごたえがあってうめーお!」 暫く噛み続けた後、めーりんはゴクンと飲み込んだ。 まりさはただその様子を痛みに耐えながら見ていることしかできなかった。 というより痛みに耐えるので精一杯で、他の事は何も考えることが出来ない。 左目から涙を流し、苦悶の表情を浮かべるまりさを見て、めーりんはニマリと笑う。 「のこったほうのめもたべるお! おとなしくしてるんだお!」 口を大きく開け、めーりんはまりさへと近づく。 とっさにまりさは近くにあった小さな石を口に咥え、そして一気に自分に迫るめーりんめがけて噴き出した。 運よく石の尖った部分がめーりんの皮膚を貫いた。 石が皮に食い込み、めーりんはチクリとした痛みに足を止める。 「じゃおおおおおおん!! なまいきだお! これでもくらうがいいお!」 そう言ってめーりんは口を尖らせると、その口内から勢いよく赤い液体が噴き出し、それがまりさの残った左目に直撃した。 「ゆぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!? いだいぃっ! からい゛いぃぃぃ!! めがみえ゛ない゛!」 吐き出された赤い液体、その正体はめーりんの中身である激辛チリソースだった。 刺激物である中身を相手に吐き出し、怯ませる。これがめーりん種の奥の手だ。 今のように目にかければ、相手は視界を失う。 その隙に逃げるなり捕食するなりするのだった。 「じゃおじゃおじゃお! それじゃあいただきますだお!」 めーりんの大きく開けた口がまりさの顔面へと近づいてゆく。 とその時、緊迫したこの場にふさわしくない呑気な、けれどもゆっくりにとってはとても恐ろしい声が聞こえた。 「うー! たーべちゃうぞぉー!」 パタパタと羽をはばたかせながら、ニコニコ笑顔の体無しれみりゃがやってきた。 目は見えないが、まりさにはその恐ろしい姿が鮮明に脳裏に浮かぶ。 先程の逃げたゆっくり三匹を食べてきたのか、口の周りには餡子やカスタード、リボンの欠片、そして金色の髪が少量ついていた。 まりさと、そしてめーりんにも戦慄が走る。 「げっ!? れ、れみりゃだお! これはまずいお!」 れみりゃは殆どのゆっくりにとって脅威である。それはめーりん種も例外ではない。 いくら皮膚が衝撃を吸収するほど分厚いとはいえ、れみりゃの鋭い牙の前ではただの厚みのある皮である。 チリソース噴射も、体無しれみりゃのスピードなら楽々とかわす事が出来るだろう。 それほどまでに、れみりゃの力はゆっくり達に対して圧倒的なのだ。 「さ、さっさとこのばからにげたほうがよさそうだお!」 めーりんは焦ってその場から逃げ出そうとする。 だがまりさがそれを許さなかった。 がっちりとめーりんの髪を口で掴み、動きを封じる。 善意を踏みにじったどころか、自分を食べようとまでしためーりんをまりさは許そうとは思わなかった。 例え命が無くなっても、このゆっくりだけは許さない。 「は、はなすんだお! まじやべーんだお!!」 「ぜったい゛にはなずもんがあああぁぁぁぁぁ!!」 とその時、二匹のいる崖の端部分に亀裂が入り、そして崩れ始めた。 一度崩壊が始まった足場は、ガラガラと音を立てて崩れていく。 「ゆ゛ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」 「じゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!?」 それぞれ悲鳴を上げながら、二匹は崖から落下した。 しばらく後、まりさは目を覚ました。 どうやら自分は気絶していたようだと理解したまりさは妙な感触に気が付いた。 「……ゆ?」 何か柔らかいものが足元でぶにぶにとしている。 一体なんだろう、とまりさはうつむき――。 「ひっ!?」 ぺっちゃんこになっためーりんの死体を見た。ぶにぶにとした物はめーりんの皮膚だったのだ。 思わずその場からまりさは跳びのいた。 どうやらめーりんは顔から撃墜したらしい。 その顔は墜落の衝撃で完全に潰れ、周囲の地面がチリソースで赤く染まっている。 運よくめーりんの上に乗っかっていたことで、まりさへの落下時の衝撃は和らいでいたのだ。 とそこでまりさはある事に気が付いた。 (ゆ…? みぎめがみえる…?) さっきまでは完全な暗闇だった右の視界に、若干ぼやけてはいるが周りの景色が映っている。 めーりんに食い千切られたはずの右目。信じられないことに、それが新たに再生されてた。 捕食種、それも希少種のゆっくり以外は無くなった器官が再生する事はあり得ない。 だがこの変異まりさは例外なようだ。 両目が元に戻ったまりさは早くこの場から立ち去ろうと歩き始めた。 しかし。 (ゆぅ…からだがうごかない…) いくらめーりんの分厚い皮で落下時の衝撃がやわらいだとはいえ、崖から落ちて無事なわけがない。 ほとんど動かない体を引きずりながら、しばらく進んだところでまりさの意識はだんだんと薄れていった。 ガサゴソという物音でまりさの意識が覚醒した。 どうやら自分は再び気絶してしまったようだ。状況を理解したまりさは、ぼやける視界で周囲を見回す。 と、そこで何か丸い影が自分へ近づいてくるのが見えた。 だんだん視界が鮮明になっていく。両目が完全に機能したとき、その影はまりさに声をかけてきた。 「むきゅ、きがついたのね」 「…!!」 それは非常に美しいゆっくりぱちゅりーだった。 体はとてもふっくらとしており、綺麗な紫色をした髪はつやつやと輝いている。 「だいじょうぶ? どこかいたいところはないかしら?」 「…えっ!? ああ! うん! だいじょうぶだよ!」 ぱちゅりーの美しさに見とれていたまりさは その様子が可笑しかったのか、ぱちゅりーはふふっと微笑んだ。 これもまた魅力的な笑顔であった。 「それにしてもおどろいたわ! おさんぽをしていたらきずだらけのまりさがたおれているんだもの! いったいどうしたの?」 「ゆ…それが…」 まりさは崖から落ちた出来事について説明した。 ぱちゅりーはそれを全て聞き終わるり、なるほどねと納得した様子だ。 ちなみにまりさの体の傷は既にほぼ完全に回復していた。 「たすけてくれてありがとう! でもどうしてぱちゅりーはこんなところにいるの?」 見たところこのぱちゅりーは一人暮らしのようだ。 巣の外は静寂に包まれており、他のゆっくり達がいる気配もないから群れの中でもないのだろう。 そう思ったまりさはぱちゅりーに聞いたのである。 「むきゅ、そうね…あまり楽しい話じゃないけど――」 次はぱちゅりーが話し始めた。 このゆっくりぱちゅりーは元々人間に飼われていたゆっくりだった。 まだ赤ん坊のころに家族をれみりゃに殺され、人里へと迷い込んだところを保護された。 それからしばらく、ぱちゅりーは人間に飼われることとなり、良い物を食べてすくすくと美しく成長した。 だがある日、飼い主が新しい赤ちゃんゆっくりを飼い始め、もう育ちきったぱちゅりーはいらないと捨てられてしまったのだった。 成長期に人間に育てられたゆっくりが野生で生きていくのは難しい。価値観の違いから群れに所属することも出来ない。 それでもぱちゅりーは何とか生き延びた。最初は不味いとしか感じられなかった雑草や昆虫も克服した。 「ゆ…、そうなんだ、たいへんだったんだね。ごめんね、へんなこときいちゃって」 「むきゅ、べつにいいわよ。かこのことだし、このせいかつにもなれたしね」 まりさは"にんげん"という生き物がどんなものかは知らなかったが、ゆっくりをそんな風に扱うということは 自分達ではどうあがいても勝てない存在なのだろうという事は理解した。 また、自分を助けてくれたぱちゅりーに恩返しがしたいと思った。 ぱちゅりーはたった一匹で、厳しい自然を乗り越えてきた、精神肉体共に強いゆっくりだ。 だがいくら他に比べて強いとはいえ、ぱちゅりー種の体力では餌集めは中々に難しい。 さらにこれから越冬の為の備蓄の食べ物も必要である。 群れに所属していないぱちゅりー一匹だけでは餌集めは不可能に近い。 だからまりさは申し出た。 「ゆ! たすけてくれたおれいにまりさもごはんをあつめるのをてつだうよ!」 一瞬ぱちゅりーは驚いた顔になったが、少し考えてからまりさの提案を受け入れた。 確かに自分だけでは冬に備えるのはとても苦労するだろう。 どうやらこのまりさは悪いゆっくりではないようである。ならば手伝ってもらった方が良いに決まっている。 「むきゅ。それじゃあおねがいするわ! よろしくね!」 「うん! まかせてよ!」 次の日からまりさとぱちゅりーは二匹で野をかけた。 一緒に走り回り、一緒に休憩をし、一緒に食べ物を持ち帰り、一緒に眠った。 そんな二匹が深い仲になるのはそれほど時間がかからなかった。 お互い家族を亡くした身、色々共感するところもあったのだろう。 そしてとある夜、まりさとぱちゅりーはゆっくりと巣の中で愛を確かめ合った。 秋も本番。森が赤色に染まり、風も涼しくなってくる季節。 そんな中、まりさは家族のために忙しく餌を集めていた。 せっせとキノコや木の実を集める姿は忙しそうだが、その顔は幸せに満ち溢れている。 「ふぅ、こんなものかな!」 頬にたっぷりと食べ物を詰め込み、まりさは巣へと帰った。 「ただいま! ゆっくりかえったよ!」 「むきゅ! おかえり、まりさ!」 「「「「まりしゃおかーしゃん、おきゃえりなしゃい!」」」」 出迎えてくれたのはぱちゅりーと、そして十数匹の赤ちゃんゆっくり達だ。 あの夜の行為の後、ぱちゅりーは植物型にんっしんっをし、元気な子供を沢山生んだのだった。 その為まりさは今まで以上に餌集めに走り回らなければならなかったが、そんな事は家族を持った喜びに比べれば些細なことだ。 「はい! これがきょうのごはんだよ! ゆっくりたべてね!」 「「「ゆっくちたべりゅよ!」」」 まりさが口から取り出した木の実や花を赤ちゃん達はおいしそうに食べ始めた。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 「むきゅ~、とってもおいちいわ!」 その様子をまりさとぱちゅりーは笑顔を浮かべながら眺める。 あともう少しすれば赤ちゃん達も大きくなり、一緒に冬越しの為の食べ物を集めることが出来るだろう。 皆で集めれば冬も怖くない。 それから春になったら家族皆でゆっくりとお散歩に出かけよう。 自分も春はどんな物か体験した事がないが、かつて母から聞いたことがある。ぽかぽかと暖かく、とてもゆっくりできる季節らしい。 きっと家族揃ってのお散歩はとっても気持ちいいはずだ。 と、目の前の可愛い我が子達を見ていると、これからの生活が次々と浮かんでくる。 まりさはとても幸せだった。 季節は過ぎ、あっというまに冬となった。まりさ達一家は巣の中でゆっくりしていた。 入り口も塞いだし、食料もたくさんある。子供達もちゃんと物事を考えられるぐらいに育った。 まりさの生まれて初めての越冬はぱちゅりーの知識もあり、完璧だった。 「ゆー、はやくふゆがおわらないかなぁ」 「きっともうすこしだよ! みんなでゆっくりまとうね!」 まりさが子供達とじゃれあうのをぱちゅりーは優しく微笑んで見つめている。 ほのぼのとした一家団欒。家族が幸せにゆっくりと過ごしている。 だがその時、巣の入口がガタガタと大きく音をたてた。 それを聞いたまりさとぱちゅりーは顔を険しくし、子供達を避難させる。 「ゆっ! ぱちぇ、こどもたちをたのんだよ!」 「ええ、きをつけてねまりさ!」 まりさはゆっくり慎重に入り口へと近づいてゆく。 入り口には雪や寒気が入ってこないよう、石や枝で厳重に補強した扉が作ってある。ちょっとやそっとの風では壊れはしない。 それが音を立てて震えているということは何かしらの危険が迫っている可能性がある。 そしてまりさがあと一歩で辿り着くという時、それは起きた。 扉が割れる轟音と共に、何者かが勢いよく巣の中へと侵入した。 まりさはそれに跳ね飛ばされ、巣の壁へと叩きつけられる。 意識が飛びそうなほどの衝撃。 だが直後に聞こえてきた声がまりさを現実へと留まらせた。 「むきゅぅぅぅぅぅ!! たすけてぇぇおかぁぁさぁぁぁぁぁん!!」 それは子供の悲鳴だった。 見ると、一匹の子ぱちゅりーが侵入してきた物に捕まっている。 そこでまりさは初めて侵入者の姿を見た。 それはとても長くて細いぬめぬめとしたモノだった。 先端が丸く、その異様な長さを除けばまるで生き物の舌のような形をしている。 (…べろ!?) そう思って巣の入り口を見たまりさの背中に悪寒が走った。 雪が吹雪く光景が見える筈のその場所には大きな口があったからだ。 唇を上下に開き、その奥から長い舌を巣の中へ挿入させている。 まりさは知らないことだが、その舌の持ち主はゆっくりれてぃという。 ゆっくりれてぃは元々個体数が少なく、春から秋にかけては森や山の遥か奥地で眠っていることが多い。 そのため、野生では滅多に見ることができない。 体長は1mを超える、大型のゆっくりだ。 非常に動きが鈍いが、こう見えてゆっくりれてぃは捕食種である。 活動期間は冬。ほとんどのゆっくりが巣の中から動けない時期に、れてぃは活発に動き始める。 たとえ猛吹雪であろうが、めーりん以上の分厚い皮を持っているため、どれだけ寒くても平気なのだ。 れてぃの標的は主に巣内で越冬中のゆっくり。その長く強靭な舌を活かし、巣の入り口を破壊して中のゆっくり達を絡めとる。 丁度今のように。 「み、みんな! ゆっくりしないでおくにひなんしてね!」 まりさが急いで指示し、ぱちゅりーが子供達を連れて巣の奥へと移動していく。 だがゆっくりの巣はそれほど広くはない。どこへ避難しようがれてぃの長い舌からは逃げられない。 少し逃げるのが遅れた子まりさに、れてぃの舌から分泌された唾液が垂れた。 「べどべどずるう゛ううぅぅぅぅ!! きぼぢわるい゛よ゛おぉぉぉぉぉぉ!!」 れてぃの唾液は非常に粘着性が高い。 成体ゆっくりでもそれを浴びれば動きがとても鈍くなる。 まして非力な子ゆっくりなら完全にその場から身動きできない。 舌に直にひっつけばどんなゆっくりでも二度と自力では離れることはできないであろう。 巣の中の獲物の数が多い時は、アリクイのようにその唾液を分泌した舌でゆっくり達をひっつけて捕食するのだ。 「から゛だがうごかな゛いよ゛おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 涙を流しながら、れてぃの唾液を何とか払い除けようとする子まりさ。 だがあがけばあがくほど、余計にべっとりと体に纏わり付く。 その様子を見て、愚かにも避難していた子まりさが一匹、姉妹の元へと駆け寄った。 「ゆ! おねぇちゃん! あそんでないでさっさとこっちにきてね! まりさがてつだってあげるから!」 「むきゅぅぅぅ!? そっちにいっちゃだめえぇぇぇ!!」 母であるぱちゅりーの制止も聞かず、妹まりさは姉の体に付いている液体に触れてしまった。 「ゆゆっ!? なに゛ごれ゛えぇぇぇ!!」 今の今まで唾液の粘着性を理解していなかった妹まりさは漸く身をもってその恐ろしさを知った。 姉の体に付いていた唾液が妹にもからみつき、二匹を身動きできなくする。 「い゛や゛あぁぁぁ!! ゆ゛っくり゛できない゛ぃぃぃ!!」 「どおじでごんな゛に゛べだべだずるの゛おぉぉぉぉ!!」 唾液が糊となってくっ付いた姉妹は悲鳴を上げる。 そんな二匹をれてぃの舌が捕らえた。 「「も゛っどゆっぐりじだかっだよ゛おおぉぉぉぉぉぉ!!」」 同じ叫び声を上げながら、まりさ姉妹はれてぃの口内へと収まっていく。 少しの間をおいて、再び巣内へ侵入してきたれてぃの舌が縦横無尽に巣の中を動き回った。 「むぎゅうっ!?」 「だずげでえぇぇぇぇぇ!!」 「ぞんな゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 舌にひっつき、捕えられた子ゆっくり達は次々と食べられていく。 ゆっくりだけではない。巣に貯蓄されていた越冬用の食料も全てれてぃに食べられてしまっていた。 まりさも必死に子供達を助けようとするが努力空しく、素早く動き回る舌に翻弄されっぱなしだった。 やがて震える子供達を背に守っていたぱちゅりーが標的とされた。 勢いよくぱちゅりーへと迫るれてぃの舌。 何とかそれを避けようとするが、悲しい事にゆっくりの中でもひ弱なぱちゅりーではれてぃのスピードには敵わない。 あっけなく、残った子供と共にべったりとした舌に捕らえられ、ぱちゅりーはれてぃの口内へと連れて行かれる。 「むきゅぅぅぅぅ!! まり゛さああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 パートナーの名前を叫びながら、ぱちゅりーは完全にれてぃの体内へ収まった。 「ぱぢゅり゛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 まりさも叫び、伴侶が消えていった巣の入り口へと近づく。 そしてある程度れてぃの口へと近づくと、まりさの耳に妙な音が聞こえてきた。 それはとても小さな、聞き逃してしまうかもしれない音。 だが一度意識するとそれははっきりと耳に入って来た。 「ゅ゛ぅ゛ぅぅぅ……」 それはゆっくりの苦痛の声のように聞こえる。 一体何なんだろうと、まりさは警戒しながられてぃの口内に視線を這わせる。 そしてまりさは後悔した。見なければ良かったと。 それはまさにゆっくりにとって悪夢のような光景。 「…ゅ゛っ…ゅ゛っ………」 「ゅ゛っぐり……でぎ…な…」 「……も゛っ…ゅっぐ……がっだ…」 れてぃの口内。 そこには大量のゆっくりが所狭しとひしめいていた。 どのゆっくりも目の焦点があっておらず、中には体の半分が溶けてなくなっているゆっくりもいた。 ゆっくりれてぃの口からは『黒幕液』という唾液とは別の液体が分泌されている。 これは捕らえたゆっくりを長期間保存しておくためのものだった。冬の間に蓄えた大量のゆっくりが、春から秋の間のれてぃの食料となる。 黒幕液に触れたゆっくりは意識がほとんど削がれ、身体能力も奪われ、体を強制的に凝縮させられる。 生きているとは言えず、かと言って死んでもない状態のゆっくり達は意識を保ちながら一年かけてじわじわと溶け、れてぃの養分となるのだ。 そのあまりの光景にまりさの体がガクガクと震えた。 愛するぱちゅりーや子供達はあの地獄の中に入っていったのか。 そう思うとどんどんと体の震えが強くなってゆく。 と、そんな無防備なまりさをれてぃの舌が捕らえた。 ねっとりとした粘着性の高い唾液がまりさを覆う。 「こっ、こんなも゛の゛おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「くろろっ!?」 まりさが自分の体に絡みつくれてぃの舌に噛みついた。 思わぬ痛みにれてぃは長い舌を巣の中で暴れさせる。 壁、天井、床…かつて家族を守るものであったそれらにまりさは何度も何度も叩きつけられた。 体のあちこちに痣ができ、破れた個所から餡子が漏れ出すが、それでもまりさはれてぃの舌に必死に噛み付いていた。 かつてゆゆこの吸い込みにも耐えることのできた顎の力。それががっちりとれてぃの舌を捕える。 思わずれてぃは舌からも少量の黒幕液を分泌し、噛む力の弱まったまりさを弾いた。 「ゆぐっぅ!!」 巣の壁に激突し、口から勢いよく餡子を吐きだす。 だがそれでもまりさは立ち上がり、ボロボロの体でれてぃを睨みつけた。 その目は怒りに燃えている。 「はぁ…はぁ、どうしたの? まりさひとりたべられないの!? よわっちいね!!」 以前れみりゃにそうしたように、まりさはれてぃを挑発した。 だが今回はそれも無駄に終わることとなる。 ゆっくりれてぃは体内に詰まっている餡子が多いせいか、ゆっくりの中では比較的頭が良く、冷静だ。 普通のゆっくりなら意地を張り、何が何でもまりさを捕食しよう――つまり目的を達成しようと思うだろうが、れてぃはここで退くことにした。 別にこのまりさにこだわらなくても、まだまだ越冬で巣に籠っているゆっくりは沢山いるからだ。 簡単なそちらを捕らえればいい。 そう判断したれてぃは舌を口内へと戻し、その場を後にした。 まりさだけが残された巣の中に凄まじい寒気が入り込む。 つい先程までの温かな光景が嘘だったかのように、巣の中は荒れ果てていた。 十数匹いたゆっくり達はまりさを残し、すべてれてぃに食べられた。 掃除がいきとどいていた床や壁も唾液でべとべとになり、綺麗な石のような調度品も壊れたガラクタとなっている。 「う゛う゛…まて…までええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 傷ついた体を引きずり、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、まりさはれてぃの後を追いかけた。 外は吹雪だがそんなことは関係ない。 怒りと絶望に顔を歪ませながら、まりさは白き狩人に向かって叫ぶ。 「がえ゛ぜえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ぱぢゅりーをがえぜ!! こども゛だちをがえぜ!! ま゛り゛さのかぞくをがえ゛ぜええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 だがれてぃは聞く耳持たず、雪の中へと姿を消してゆく。 吹雪吹き荒れる中、まりさの絶叫が寂しく周囲に木霊した。 やがてじわじわとまりさの体が寒気によって凍り始める。だがそれでもまりさは叫び続けた。 家族を返せ、幸せな生活を返せ、と。 れてぃの姿が完全に見えなくなる頃、まりさの体は完全に凍りついていた。 時は流れ、春が訪れた。 辺りに積っていた雪も溶けだし、森の木々にも緑が生い茂る。 そんな中、まりさは地面に倒れていた。 その体はまだ凍りついたままだったが、しばらくすると春の日差しで徐々に解凍され始めた。 「……ゆぅ?」 完全に氷が溶け、意識が戻ったまりさは辺りを見回す。 気が付けば周囲は春の陽気に包まれていた。 一体何故だろうとまりさは記憶を辿り――。 「…ゆっ!!」 全てを思い出した。 突然おうちに侵入してきたゆっくりにぱちゅりーが、子供達が食べられてしまったこと。 そのれてぃを追いかけ、冬の寒さに体が凍りついたということを。 「うぅっ…ぱちゅりー……こどもたち…ごめんね…」 まりさは数ヶ月越しの涙を流した。 再び家族を喪失してしまった。 どうしていつも自分だけ生き残るのだろう、どうして一人だけ取り残されてしまうのだろう。 脳裏に浮かぶのは優しい母や可愛い妹達、美しい妻に愛しの子供達。 皆死んでしまった。なのに自分はのうのうと生き残っている。 悔しさで涙が止まらない。 体中の水分が無くなるのではないかと思われるほど泣いたあと、まりさはお腹がすいているのに気が付いた。 本能の欲求には逆らえず、とりあえず食べ物がないかと周囲を探し始める。 「ゆぅ…ひどい…」 惨劇の爪跡、とでも言おうか。 この周辺に点々と存在していたゆっくりの巣は全て破壊されていた。 おそらくあのれてぃに襲われたのだろう、ゆっくりの姿はどこにもないし、どの巣の中も滅茶苦茶に荒らされている。 そして食べ物もどこにも見つからない。空腹でまりさは倒れそうになった。 と、そこでついに発見した。 大きな木の根元に禍々しい色をしたキノコが生えていたのだ。 今まで見たことないキノコだったが、まりさはそれを躊躇なく食べた。 美味しい! と感じたのも束の間、次の瞬間にはまりさの意識は闇に堕ちた。 まりさは夢を見た。 死んだはずの最愛のぱちゅりーと交尾する夢を。ねちゃねちゃと淫靡な音を立てて頬を擦り合わせた。 現実の事ではないとはいえ、それはとても気持ち良く感じた。 「…ゆぅ?」 次に気が付いた時、何とまりさの頭から蔦が生えていた。その蔦には幾つかのゆっくりの実がなっている。 原因はまりさが食べたキノコだった。 あのキノコには幻覚作用があり、そのせいでまりさはにんっしんっしたのだった。 とは言っても実際に餡子種のやりとりをしたわけではないので、生えている子供は全てまりさ種だった。 交配によって生まれたものではない、まりさの餡子遺伝子と全く同じ物で構成されている、いわば分身のようなものである。 よくわからないが自分は再び母になったらしい。そう理解すると、まりさの頬を涙が伝った。 今度は悲しみではなく喜びの涙。 「ゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪」 まりさは歌う。かつて自分がまだ実だった頃に聞いた母が歌っていた歌を。 毎日毎日優しく歌ってくれた、記憶の奥に刻まれていた歌を。 「ゆゆ~♪ ゆっくりしたあかちゃんがうまれてね~♪」 とその時、実の一つがぷるぷると震えた。 しばらくするとその実がポトリと蔦から離れ、地面に落ちる。 少しの間もぞもぞと動き、生まれ落ちた赤ちゃんまりさは大きな目をぱっちりと開けた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 まりさの時と同じく、生まれてきた赤ちゃんまりさも活舌良く喋った。 それから次々と赤ちゃんが生まれ、可愛い目を開いてゆく。 「まりさがおちびちゃんたちのおかあさんだよ! ゆっくりしていってね!」 「「「「ゆっくりしていってね!」」」」 と、そこで一番最初に生まれた赤ちゃんまりさがあることに気づいた。 「ゆ? おかーさん、ないてるの? なにかいやなことがあったの?」 「ううん! みんながうまれてきてくれて、とってもうれしいんだよ!」 まりさにとって三度目の家族。 今度こそは家族皆で幸せに生きようと子供達に優しく頬摺りしながらまりさは固く決心した。 続く あとがき まりさ不幸ってレベルじゃねーぞと書きながら思いましたがまあいいか。 下手に生命力強いと逆に辛いよね。 まだ続くのかよという気もしますが、一応次で完結予定です。 今まで書いたもの それいけ! ゆっくり仮面 ゆっくり仮面の憂鬱~邪悪な心~ お兄さんの逆襲 前後編 ゆっくりれいむの悪夢 あるゆっくりまりさの一生 前、中-1編 by.ダイナマイト横町 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1708.html
ゆっくりとは謎の多い食べ物だ、跳ねて這い食べて飲んで繁殖してそして死ぬ。 食べ物がそれだけ多くの事をする不思議は、研究者の地道で熱心な研究や、偶然の発見によって少しずつ解明されていった。 しかし分からない事がある、何故ゆっくりはあれだけ脆弱なのにどの時代にも大量にいて、そして一種たりとも絶滅しないかだ。 ゆっくりの種類は多い、それだけ多いのにゆっくりの種類は増える事はあっても減ることは一切ないのだ。 そしてにんっしんっ!による繁殖以外ではゆっくりは何処からともなく現れる事が多い。 街にも山にも森にもゆっくりは存在し、どんな小さな島にも一匹や二匹はゆっくりが暮らしている。 巷ではゆっくりとは何処にでもいる、"そういう食べ物"だとされているが、この問題には一つの答えがある。 ゆっくりが何処にでも大量にいてそして一種たりとも絶えない理由、それは無限に続く並行世界をゆっくりが無意識に旅をしているからなんだよ!! えっ、頭おかしいんじゃないだって?このSSの中じゃそうなんだよ!ゆっくりわかってね! ゆっくりは容易に次元の壁を超越できるんだよ! とりあえず一つの例を見てみよう、ここは1169番目の並行世界だ。 一匹のゆっくりぱちゅりーがいる、生後378日体重は800グラムの絵に描いたような一般的なぱちゅりーだ。 「むきゅ~、ここらへんはゆっくりがいないのね」 予断だがぱちゅりーは一日前、69番目の並行世界から1169番目の並行世界にやって来たばかりだ。 そもそも69番目の並行世界で成体となったぱちゅりーは自分の群れから出て、新しい群れを探しに森を彷徨っていた。 ゆっくりのそれも病弱なぱちゅりー種だ、家族と涙の別れを済ました後、100メートル程進んで休むの2回だけ繰り返し。 群れから少し離れた場所にちょうどいい木の洞を見つけて眠ったのだった。 その時ぱちゅりーは新しい群れをゆっくり探すよ!と思いながら眠りについたため。 ぱちゅりーの寝た木の洞に酷似した木の洞がある1169番目の並行世界に、寝ている間にワープしたのだ。 そもそもこうしたゆっくりが意識していない、異世界へのワープ能力がなければこれほどゆっくりは増えなかっただろう。 ゆっくりは繁殖能力だけでなく、こうして異世界に渡る能力で生息範囲を広げているのだ。 もしもゲスの多い地域で純粋無垢なゆっくりや、単純な言葉しか喋らない超初期型ゆっくりを見つけたならば、それは別の世界からやって来たゆっくりかもしれない。 とは言っても、森から街のゆっくりプレイスに降りるまでは、それなりの運があればぱちゅりー種でも十分に可能だ。 勿論ゆっくりの中には野を超え山を越え時には海も越え、長い距離を旅する猛者もいる。 しかし大抵のどうやってここまで来たのかあやふやな記憶しかないゆっくりは、異世界へのワープで全く別の世界からやって来るのだ。 「むきゅきゅ!みたことないおはなさん!きゅ~♪ゆっくりおいしいわ!」 「むきゅ~……でもひとりはさびしいわ」 花を食べてご満悦なぱちゅりーだが、ゆっくりは寂しがり屋だ。 一匹で落ち込むぱちゅりー……。 「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」 「むきゅ!ゆっくりしていってね」 しかし、しょんぼりしたぱちゅりーに声をかけるゆっくりがいたまりさだ! 下膨れた顔のどこにでもいるまりさだが、ゆっくりの感性から言えばなかなかゆっくりしているイケメンなのだ。 「むきゅ~……ぱちゅりーよ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!ゆゆ~すてきなゆっくりプレイスだね!」 「きのうからすみはじめたの……まりさもゆっくりしていってね」 「ゆっ!まりさもここでゆっくりすることにきめたよ!よろしくね!ぱちゅりー!」 「むきゅ~、ぱちゅでいいわ///」 都合良すぎである、寂しいぱちゅりーがイケメンまりさと知り合い、一緒に住むことになった。 これにもゆっくり特有の並行世界を移動する能力が深くかかわって来る。 ぱちゅりーは花を食べている時に寂しいと思い、他のゆっくりを求めた。 そのゆっくりを求める感情は393番目の並行世界に届いた。 そして新しいゆっくりプレイスを目指し、住み慣れた森から出て行こうとするまりさがその感情を受信したのだ。 新しいゆっくりプレイスを求めるまりさ、友達を求めるぱりゅりーの思いが重なって、まりさはぱちゅりーのいる世界に呼びこまれたのだ。 ぱちゅりーとまりさが暮らす森には、事あるごとにゆっくりが増えていった。 何処からかやって来たれいむ、らんしゃまを探すちぇん、子供を連れてやって来たありす。 多くのゆっくりが森にやって来て、森が気に入り住み着く者も、しばらく足を休めてゆっくりしてから旅立つ者もいた。 そうしたゆっくり達の半分は異世界からやって来たゆっくりだった。 さて一月が過ぎ、まりさとぱちゅりーしかいなかった森は随分にぎやかになった。 成体のゆっくりが17匹、子ゆと赤ゆが6匹が一つの森で暮らしている、新しいゆっくりの群れが出来たのだ。 そしてこの23匹のゆっくりが住む群れに、新しいゆっくりが加わろうとしていた。 「ゆ~ふ……ゆ~ふ……ゆ~ん」 「がんばるのぜ!がんばるのぜ!れいむ!」 「あかちゃんゆっくりうまれてきてね!」 群れのれいむの一匹がにんっしんっ!をしたのだ。 一生懸命なれいむを夫のまりさと子れいむが励ます。 まりさの帽子は既にいつ赤ゆが生まれてもいいように、れいむのすぐ前に置かれている。 そしてここ数分間力んでいたれいむの顔が緩む、いよいよ出産の時間だ。 「ゆゆっ、ゆっ……!」 ぽん!と軽い音を立ててれいむのお腹から赤れいむが飛び出した。 「ゆっくりしていっちぇね!」 「ゆっ、ゆー!すてきなあかちゃんゆっくりしていくのぜ!!」 「れいむのいもうとゆっくりしていってね!」 「あかちゃんゆっくりしていってね!」 「みんなゆっくりしていっちぇね!」 巣の外で心配そうにしていた群れのゆっくり達が、中から聞こえるゆっくりした声に歓声を上げる。 「ゆゆ~!ゆっくりうまれたね!」 「ゆっくりよかったね!」 「きょうはおいわいだよ~わかるよ~」 騒ぐゆっくり達の前に、生まれたばかりの赤ゆが親まりさの帽子に乗って出てくる。 その後ろには赤ゆを生んだばかりの親れいむと子れいむがついてくる。 「ゆっくりうまれてよかったね!」 「とってもゆっくりしたこだよ!」 「れいむ!いもうとができてゆっくりだね!」 新しい赤ゆが生まれて群れ全体が喜びに包まれる。 どのゆっくりも幸せそうなゆっくりした表情をしている。 特に喜んでいるのは69番目の並行世界からやって来たぱちゅりーだ。 「ゆっくりしたこがうまれてとってもよかったわ!」 「おさ、ありがとう!れいむはゆっくりしあわせ~だよ!」 ぱちゅりーは他のゆっくりよりいくらか知恵があり、一番最初に森に住み始めたゆっくりだったので自然と群れの長となっていた。 そしてその傍らにはぱちゅりーが最初にあったイケメンまりさがいる、二匹は同じ巣で暮らしていた。 「むきゅきゅ♪かわいいあかちゃんゆっくりしていってね」 「ゆゆ~ん、ゆっくりしゅるよ!」 「とってもゆっくりしてるねぱちゅりー」 「きっとおさとまりさのあかちゃんもゆっくりしてるのぜ!」 「むきゅきゅ!そ、そんな、むきゅ~///」 「ゆっくりてれるよ///」 親まりさに赤ちゃんの事を言われてボンッ!と顔を真っ赤にするぱちゅりーとまりさ。 二匹は一緒に住み始めて一週間が過ぎていたが、いまだに寝る前のほっぺにチューとすりすりしかしていない。 ぱちゅりーもまりさも奥手で、二匹をこの手の話題でからかうのは親まりさの何よりの娯楽だった。 「ゆゆー!またおさをからかってゆっくりしてないよ!ぷく~!」 「してにゃいよ!ぷくく~!」 「ゆがーん!れいむもあかちゃんもひどいのぜ~!」 また群れのみんなが笑う、外敵もおらずゆっくりとしたこの森では、強い敵対の意思を表すぷく~でさえ、冗談の一つになっていた。 毎日ゆっくりして森の草や木の実花に虫を食べ、みんなで集まって仲良く遊ぶ、理想的なゆっくりプレイスがそこにはあった。 この森に来て、住み着かずに出て行ったゆっくり達も、元からこの世界にいたゆっくりも別の並行世界からやって来たゆっくりも、 とても素敵なゆっくりプレイスだと感心していた。 ぱちゅりーのゆっくりプレイスには元からこの並行世界にいたゆっくりも、別の世界から来たゆっくりもいたがみんなが仲良くゆっくりできていた。 この幸せなゆっくりプレイスにはこれからたくさんのゆっくりがやって来るのかもしれない。 可愛いちぇんを探すらんや、新しい巣を探すまりさとありすのカップル、もしかしたら優しくて賢いドスまりさだって来たかもしれない。 並行世界からやって来るものが常に恵みをもたらすとは限らないのだ……。 89398番目の並行世界のある森にゆっくりの一家がいた。 親ゆが一匹、その子ゆが二匹、つい先日生まれた赤ゆが三匹、そして従者のようにつき従うゆっくりが一匹。 「うー……おなかへったどぉ~」 「まんまぁ、あまあまたべたいどぉ~」 「ゆっくりできてないどぉ~」 「おじょうさま、やはりふきんのゆっくりはあらかたかりつくしてもういませんわ」 「う~、ざんねんだどぉ~、このこーまかんともそろそろおわかれだどぉ~」 ゆっくりを食べるゆっくりとして有名なれみりゃ種と、れみりゃ種に仕える事を至上の喜びとする希少種ゆっくりさくやだ。 れみりゃの一家がこうまかんと呼んでいる大きな巣穴。 ここは元々はこの森に大小12あった群れの長が集まり、餌の事や群れの事を相談する会議場だった場所だ。 ほんの一月前にはこの巣穴にはいろいろなゆっくりがいた。 勇気のあるまりさ、都会から持ち帰ったまどうしょ(スーパーの半額チラシ)を持っているぱちゅりー。 一番大きな群れの長だったれいむと、彼女の後継になるはずだった小さなまりさ、他にもいろいろな種類のゆっくりの群れ長達。 勇気のあるまりさは大きな巣穴に柔らかい綿入れを持ちこみ、ゆっくり達の椅子にした。 いつも薬草を集めているぱちゅりーからは薬草の香りが漂い、自然と巣穴にそれが残っていた。 そしてこの大きな巣穴を提供したのはれいむで、彼女の子ゆ達は常に巣穴を奇麗にしていた。 そんな大きな巣穴は主を変えて様変わりしていた。 群れ長達に大切に使われていた綿入れは遊び道具と化し、所々に噛み傷が出来て綿が飛び出ていた。 かつて巣穴を満たしていた薬草の香りとゆっくりのゆっくりした声は、餡子の甘い匂いとどこからか聞こえる少数の生き残りが発するうめき声となっていた。 そして何より、巣穴の中には切り裂かれ噛みちぎられたゆっくりの皮やおかざり、飛び散った餡子がそのままにされていた。 森にあるゆっくりの巣は半分くらいが、この大きな巣穴と同じような惨状を呈していた。 なぜなら大小合わせて12の群れ、452匹のゆっくりが暮らしていたこの森は一月前に5組のれみりゃの家族に襲われていたからだ。 元からこの世界にいたれみりゃの家族が2組、あとは自分の暮らす森のゆっくりが減り、新天地を求めていた3組が並行世界を移動して森にやって来た。 森のゆっくりは食われて食われて食われた、れいむもまりさも関係ない、れみりゃに捕まり裂かれ噛まれ真っ暗な口の中に押し込まれて死んでいった。 そして逃げのびたゆっくりの中には並行世界への移動で命を長らえたゆっくりは皆無だった。 ゆっくりは容易に並行世界へ移動することは出来るが、その事に気づいていない、そして気づけたとしても並行世界への移動はコントロールできない。 何よりれみりゃの"餌を求める"感情がれみりゃをこの並行世界に引きずり込んだのだ、れみりゃの近くにいる以上ゆっくりはその影響を受けてしまう。 万が一れみりゃに捕まり噛みつかれそうになったれいむが並行世界に移動したとしても、そこはれみりゃの巣であったり、あるいはふらんの巣であったりするだろう。 五組のれみりゃとその忠実にして優秀な従者であるさくやに、12の群れがどう立ち向かい敗れ、そして殺されていったかは悲惨の一語であったとだけ言っておこう。 さてそうして五組のれみりゃは森の中でゆっくりを見つけて食べ遊び、ゆっくりした時間を楽しんだが、何事にも終わりはある。 一組のれみりゃ家族がもっと素敵なこうまかんを探しに行くと去っていき、食糧となるゆっくりが少なくなった森から3組のれみりゃ家族が出て行った。 大きな巣穴で暮らしているれみりゃはこの森に最後に残ったれみりゃの家族だった。 「うっう~♪れみぃのおちびちゃんたちあたらしいこうまかんをさがしにいくどぉ~♪」 「う~まぁま!ひろいこうまかんでゆっくりしたいどぉ~!」 「うっう~!」 「う~……さくやぁたすけてどぉ~♪」 「かしこまりましたおじょうさま」 れみりゃは美味しいプディンが詰まった、しんのれでぃに仕えるに相応しい教養と知性を持つ小さな従者に全幅の信頼を置いていた。 さくやはどうやってこしらえたのか、大きな巣穴に秘密の食糧庫を掘っていた。 中には底部を切り裂かれた数匹の子ゆっくりがぷるぷると震えている、さっきから聞こえていたうめき声はこの子ゆ達が発するものだった。 さくやがれみりゃ達の面倒を見る合間を縫ってゆっくりを狩り、親れみりゃと子れみりゃが狩りに言っている間に連れ込んでいたのだ。 なお赤れみりゃには自身のぷでぃんに睡眠薬を混ぜたものを少量呑ませ、眠らせていた。 「ちっちゃいおじょうさまがた、おいしいあまあまがございますわ、これをたべてげんきをつけてからたびにでましょう」 「やめてね!こないでね!ゆっくりやめてよ!」 「う~♪さくやがいうならしかたないどぉ~♪」 「たしゅけてぇ!れいむをたしゅけてー!!」 「ゆふふ……おそらをとんでるみた~い」 「おねえちゃんしっかりしてね!おねえちゃん!おねえちゃん!」 「しかたないどぉ~♪」 「まぁま♪あまあまいっしょにたべるどぉ~☆」 「たべるどぉ~♪さくやありがとぉ~だどぉ~♪さすがれみりゃのさくやだどぉ~♪」 「ありがとうございます」 「やべでぇえええ!!たべないでぇええ!!!」 主であるれみりゃの賛辞に、言葉少なく応じるさくやの表情は恍惚として緩みきっている。 れみりゃの10の喜びはさくやにとって1000の喜び、れみりゃの10悲しみはさくやにとって1000の悲しみなのだ。 れみりゃが幸せであれば、子ゆの悲鳴はオーケストラの奏でる旋律に、顔にかかる餡子は神聖な何かに思えるのだった。 子ゆと赤ゆがお腹いっぱいになり、親れみりゃはさくやを抱きしめて大きな巣穴から這い出て空を飛んだ。 ふわふわとゆっくり漂うような飛び方で、お月さまの出ている方に向かって飛んでいく。 「うっう~♪まんまるおつきさまきれいだどぉ~☆」 「きれいなおつきさまゆっくりだどぉ~♪」 「うっう~♪ゆっくりだどぉ~♪」 れみりゃ達は賑やかに空を飛んでいく、さくやはれみりゃの手の中で真っ白に燃え尽きていた、れみりゃの抱擁はさくやにはあまりに刺激が強すぎた。 そしてれみりゃ達はその日のうちに森を抜け川を越え、お日様がそろそろ登って来る時間になったため地面を降りた。 そしてしばらく当たりを探索し長い事使われていない様子のゆっくりの巣穴を見つけ、そこで夕方までゆっくり眠る事にした。 そして眠るっているれみりゃ一家の、たくさんのゆっくりを食べられる森に行きたいという願望は並行世界の壁を突き破った。 そして89398番目の並行世界から、どの世界に行けばれみりゃの願いが叶うかが選ばれる。 普通な世界、まだ恐竜のいる世界、れいむが多い世界、まりさが多い世界いろいろな世界があった。 その無限大の並行世界の中から一つの世界が選ばれた、1169番目の並行世界だ。 れみりゃの願いは次元の壁を超えてそこに根付き、れみりゃ達家族をその世界に引きずり込んだ、勿論さくやも一緒に。 「ううう~♪……おっきいこーまかんだどぉ~☆~……むにゃむにゃ……」 「うっ~、さくやぷでぃん……おっきいぷでぃん~、う~……」 「ゆゆ……おじょうさま……それはぐんぐにるではなくきのぼうですわ……ぅ……」 れみりゃとさくやは次元の壁を越えた事には気付かず、2時間ほどゆっくりと眠りを貪った。 そして最初に目覚めた親れみりゃはゆっくりと伸びをし、人間ならば鼻のあるあたりをぴくぴく動かし、ゆっくりの臭いを探った。 近くに少なく見積もっても20はあまあまがいる、でぃなーの時間だ。 「うっう~☆れみぃのちびちゃんおきるど、あまあまでぃなーがちかくにあるどぉ~♪」 「うっ!あまあまがあるどぉ?たべにいくどぉ♪」 「いくどぉ~♪」 れみりゃは高い再生力を維持するため、必要とする栄養の量も他のゆっくりよりも多いのだ。 特に赤れみりゃや子れみりゃは常に腹ペコで小さな体に似合わず、際限なく食べる事ができる。 子れみりゃや赤れみりゃも、20匹も食べればしばらくはゆっくりできるだろう。 親れみりゃはさくやを抱え子供たちを連れて、ゆっくりの臭いをたどりながらのんびりとでぃなーの場に向かうのであった。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1666.html
近頃近所で物騒な事件が流行っている。 なんと、ゆっくりを飼っている人が飼いゆっくりと散歩をしていると、 突然凶暴な野良のゆっくりが現れて飼いゆっくりを襲う、というものだ。 その野良ゆっくりは相当悪質らしく、この間も僕の友達の飼いゆっくりのれいむが、 ほっぺたを噛みちぎられて、今も病院に通っているらしい。 僕はうちのペットのゆっくりに餌をやりながら、ぼんやりと考えていた。 あぁ、うちのかわいいかわいいこの子が、襲われなきゃいいんだけど… くしゃくしゃとさらさらの髪の毛をなでてやると、嬉しそうに目を細めて、僕にじゃれついてくる。 あぁもう、可愛いなぁ。 僕は仕事の都合上、散歩の時間は限られてくるので、いつも夜遅くになってしまっていた。 なので悪い噂がささやかれるたびに、うすら寒い思いをしながら、周りに注意をしながら散歩をしていた。 今日も、うちの子が襲われないか回りに気をつけながら、慎重に夜の道を散歩していた。 すると突然、目の前に薄汚いまりさが現れた。 まりさはうすら笑いを浮かべながら、僕たちの方をみている。 暗い道なので、お互いの細かい部分までは把握できない。 まりさの後ろから、なにか羽をはばたかせるような変な音が聞こえていた。 「いくんだぜっ!」 突如まりさが声をあげる、それと同時に、まりさの後ろから素早く、黒い塊がこちらに飛んできた。 「うーーーー!!!」 それはゆっくりれみりゃだった、れみりゃはものすごい勢いで僕の横にいたうちの子に突進をしかける。 「!?」 僕が突然のことに驚いていると、すでにまりさはどこかにいってしまっていた。 そしてどんっ音を立ててうちの子とれみりゃがぶつかった。 すると… 「うわぁぁあぁあああああああ!!!!!!」 突然大きな悲鳴をあげて、れみりゃが勢いよく夜の闇に消えていった。 全くわけがわからない、今のは一体なんだったんだろう。 一瞬例の通り魔事件の犯人かと思ったが、うちの子には傷一つないようだ。 「いったいなんだったんだろうな、なぁ、ふらん」 「う~?」 僕の可愛い可愛い飼いゆっくりのふらんちゃんも、僕と一緒に首をかしげた。 それからも、通り魔ゆっくり事件はやむことがなかった。 けれど、どうしてだろう、僕とふらんちゃんはあの変な事件以来一度も襲われていない。 ま、いいか、ふらんちゃんに危険が迫るようだったら、僕が絶対やっつけてあげるからね! ふらんちゃんは餌箱に顔を突っ込んで、おいしそうにご飯を食べている。 「じゃ、散歩いこっか」 「う~☆」 僕たちの夜の散歩は、今日も平和だった。 「ど、どーしたんだぜせんせー、やっちゃってくださいなんだぜー」 「うー…ふらんやだぁーーーーーー……」 おしまい
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1881.html
331 :名無したんはエロカワイイ:2008/07/31(木) 10 59 58 ID fukPI9hM0 あー、ゆっくりで塊魂プレイしたい . . . . . . . . . . (なーなな ななーなーなーな なーなーななーな ずんずくずずんず どぅんどぅくどぅんどぅん) ---ゆっくりで塊魂--- 「……なんだこりゃあ」 魔法の森の近くをの小道を急ぎ足で歩いていた俺は、目を剥いた。 路上にゆっくりれいむが、ひと群れ。それ自体は珍しくもない。 おかしいのは、そいつらがベタベタとくっつきあって固まっていることだった。 「おまえらナニやってんの?」 「ゆっ、ゆぐぅぅう~」 「わかんないよ、くっついちゃったよ!」 「おにいさん、ゆっくり助けてね!」 バレーボール台のゆっくりれいむに、ピンポン玉ぐらいのやつがうじゃうじゃと八つか九つもくっついている。 たぶん家族だろう。母れいむはしきりに体をもぞつかせて子供たちを振り落とそうとするが、下手に動くと下側 の子れいむを潰してしまいそうなためか、思うように動けないらしい。 「ゆっ! ゆっ! んゅっッ! よーっはッとッ! へっぷほ!」 「おがあざぁぁん、おもいおもい!」 「つぶれるよ、ゆっくりうごかないでね!」 「……ぷっ」 その場で一人相撲をしているようなアホくさい母れいむの姿に、俺はふきだした。 「ぷっははははははは、ばっかじゃねーのおめーら、饅頭のお前らがそんなんなっちゃったら生きていかれねー だろ。ちょっとは考えて生きろよ!」 「そんなこと言わないでねぇぇぇぇ!」 母れいむは涙目でぶくぶく膨れる。ほっぺたの下のやつが潰されて悲鳴を上げる。 あー……。 陽気がすごいからなア。 おおかた家族でゆうゆうもたれあっているうちに、この猛暑で溶けてくっちいちゃったんだろう。 これは俺のせいじゃないからな。ゆっくりが勝手に苦労してるだけだ。 そばで眺めていたって、なんら罪ではない。 俺は、困り果ててぶるんぶるん回っているゆっくりれいむを、しばらく見物した。 ……十分ほどで飽きた。 「しゃーねえなあ、恨まれても寝覚めが悪いから、助けてやるよ」 「ゆっ、ほんとう?」 「さっさと助けてね! ふんふん!」 ナマイキなことをぬかしやがる母れいむを無視して、俺はそいつの頬に触れてやった。 ころん 「あれっ?」 母は後ろへ一回転する。「ゆべっ!」「うぎっ!?」と悲鳴を上げて子供たちがぺちゃんとつぶれ、母の肌に 張り付いた。 「何してんのお前、娘つぶれちゃったじゃん!」 「ゆぐぅぅぅぅ!? れいむの子どもがぁぁぁ!」 「じっとしてろよ、残った娘、殺したくないだろ?」 そう言って俺は、また手を伸ばした。 額に触れる。 ころんころんころん 「ゆぐぐぐぅ!」 母れいむは三回転した。その途中で石やら草やらも貼り付けてなんだか汚くなった。 「あっれぇ……」 俺は不思議に思った。 こいつ、ちょっと触っただけで、ボーリングの玉みたいにスムーズに転がりやがる。 なんか変なことになってんじゃないか……? ゆっぐゆっぐともがいている母れいむに歩み寄って、さらに押した。 ころころ、ごろろんっ 「ゆっぐりやめでねぇぇぇ!?」 「あは」 俺は笑った。 こいつ、坂を上ったぞ? しかも小枝や葉っぱをくっつけてさらに汚くなった。 ……これは面白い。 俺は母れいむの苦情を無視して、道なりにそいつを転がし始めた。 ころころん ころころん ころころころころん 一回押すたびに、五メートルほど転がって路肩で止まる。そのたびにそこら辺のものを吸いつけて、雪だるま のように大きくなる。 子供のころ、石蹴りってやったじゃん。 学校から家まで、これって決めた石をずっと蹴って歩いた。 別に石自体が好きなわけではないが、最初に決めたから、そいつを蹴り飛ばさなければならなかった。 そんな感じで、俺は目的地までひたすらころころと母を転がし始めた。 「やめでぇぇ!」 「ゆっくちちたいよぉぉ!」 おお、まだ子れいむも生きてんのか? 石やなんかでゴマ団子みたいにデコボコになった、五十センチほどの ゆっくり塊の中を覗き込むと、ちょうど他のものの隙間にハマったらしく、小さな赤いリボンの頭がぴょこぴょ こ動いていた。 「おまえ、運が良かったなあ。そこならずっと潰れないよ」 「はやくやめちぇねえぇぇぇ!」 「悪い、まだ二、三キロあるんだ」 母娘一匹ずつの悲鳴をBGMに転がし続けた。 少しいくと、面白いことが起こった。 川沿いに日光浴をしていた白黒のゆっくりまりさ家族。俺たちが近づくと振り向いて挨拶する。 「ゆっくりしていってね!!!」 「していってね!」 「しちぇっちぇね!」 次の瞬間、そばを通ったゆっくり塊に、そいつらは吸い寄せられた。 ひゅうん ぽぽぽぽむっ 「ゆっ!?」 「ゆっくりくっついたよ?」 「ゆっくりはなちてね!! はなちてっ! はなちぇはなちぇー!」 「ほう……」 俺は感心してあごを撫でた。 なるほど。 これではっきりした。ただの自然現象じゃない。母れいむは辺りのものを吸い寄せる力を身につけてしまった らしい。よく見れば外側の石やら木やらは、別段刺さってもいないのにくっついている。 俺がくっつかないのは謎だが、まあそんな細かいことはどうでもいい。 ひとつ、これがどこまで続くか試してみようか。 「よし、みんないっくぞー☆」 「やめでえぇぇぇぇぇぇ!?」 進めば進むほど、塊は大きくなった。道端にいたれいむ家族、木のうろから顔を出したぱちゅりー家族、通り すがりのちぇんやらん、近くを飛んでいたゆっくりゃやフランまで引き寄せた。八十センチ、一メートル、一メ ートル半。ゆっくり塊はどんどん大きくなった。 ひゅうん ぽむっ ひゅうん ぽむっ 「ゆっくりはなしてぇぇ!」 「はっはっは、そりゃ☆無理だ」 意味もなくハイテンションに笑いながら俺は答える。 これ、大きくなっても全然重さが増えない。 ころころと軽いままなのだ。不思議きわまる。 そして楽しい! 鼻歌を歌いながら俺は押して行き、目的地のアリス邸にたどりついた。 「ちわーっす、郵便です」 ああうん、言い忘れていたけど、俺配達人。肩掛けの郵袋も、これこの通り。いまどき徒歩で運ぶなんてレト ロだろう。 「あら、どうもありがとう」 玄関に出てきたアリスさんが微笑んだ。うむ美人だ。美人だらけの幻想郷の中でもこの人は群を抜いている。 いろいろ怪しい噂もあるが、そんなところも俺は好きだ。 そんなアリスさんが、俺の背後の塊を見てギョッとした。 「って、それは何!?」 無理もない。ゆっくり塊の大きさは、今では四メートルを越えている。 「ゆっくりはなしてね!」 「つぶれて顔がいたいよぉぉ!」 「いやっいやああぁぁ、れみり゛ゃぎらいーー!」 「うっうー! れみりゃを早くはなすんだどぉー!?」 数百のゆっくりがてんで勝手に悲鳴を上げている。驚かないほうがどうかしている。 「いやまぁ、なんといいますか、ただの拾いもんです」 俺はあいまいに答えた。 アリスさんは顔を引きつり気味にして、後ずさろうとした。 「な、なんだかわからないけれど、あんまり係わり合いになりたくないわね……きゃあっ!?」 ひゅうん ぽむっ 「おおお?」 俺は驚愕した。アリスさんまで塊に吸い寄せられ、くっついてしまったのだ。 「ちょっと、何するの! 離して、離しなさいよ!」 叫んどる叫んどる。美少女が拘束されて悲鳴を上げとる。 実にいい景色だ。――とか言ってる場合ではないか。 「すみません、それ外れないんですよ」 「なんですって?」 「俺が作ったんじゃないもんですから」 答えながら、俺はあることに気づいていた。 アリスさんのような有名妖怪まで引き付ける力があるのか、この塊は。 ということは―― もしかして、やりたい放題じゃないか!? 「……なーなな ななーなーなーな なーなーななーな ずんずくずずんず どぅんどぅくどぅんどぅん」 「なっ、なにを鼻歌なんか歌ってるの? 早くなんとか――」 「すんません。俺、ハジけます!」 「えっ? ってきゃあああああああ」 すってんころころ すってんころころ すってんころころ すってんころころ 俺は両手を使って勢いよく塊を押し始めた。 霧雨魔理沙、ゲット。 博麗霊夢、ゲット。 紅美鈴、ゲット。 「おいおいなんなんだこれはー! 霊夢、これなんだよ!」 「知らないわよ私だって、アリス、アリスー?」 「私は被害者よー!」 「離して、離してってば! 仕事中なのよ私は、このぉっ……ふんッ!」 「きゃあああああ!」 「ちょっこらっやめっ!」 「気功を使うなぁぁぁ!」 おーおーお、なんかビリビリしてえらい騒ぎになっとる。 そして当然―― 「ゆぎいいぃぃぃぃぃ!」 「いだいよぉおぉぉぉぉ!」 「皮がびりびりするよぉぉ!」 「んおおぉぉっ、んほっ、ほおぉぉぉぉ!」 ゆっくりたちも涙目で大騒ぎしている。中にはキモチよさそうなのもいるが。 ゆっくり魂の直径は六メートルになった。それでも止まらず、俺は幻想郷を駆け巡る。 「むぎゅぅぅ、苦しい……」 「咲夜、咲夜! 早く何とかして!」 「はっはい、ただいまっ! ふッ! ……時間を止めても外れない!?」 「ぴーっ、アタイこんなの趣味じゃないいぃ!」 なんか館の一部ごと飲み込んで、三十メートル。 「らんしゃま助けてぇぇぇ!?」 「ちぇぇぇん! くそっ、紫さま、紫さまぁぁ!?」 なんかよくわからないお屋敷みたいなものを巻き込んで五十メートル。 「うわあぁっ!? ちょっ、ちょっと今実験中よ!?」 「なんだこの……ハッ!」 「あちゃちゃダメです火はやめてください火は!」 「あっれー、これもしかして私が仕掛けたやつか?」 竹やぶと京屋敷みたいなもんをまるごと飲み込んで、百メートルつまり二十五階建てのビルぐらいになった塊 をころんころんと転がしていると、俺の目の前に来た兎耳の女の子が、ほっぺたポリポリかきながら言った。 おお、この人は。 「てゐさんじゃないスか。これ、あんたが?」 「昨日、ゆっくりに、いろんなものがくっついちゃう悪戯をして放り出しといたんだけど……」 「魔法の森の入り口あたりだったら、多分それっす」 「やっぱりかー」 「これ、どうしたら外れるんですか」 「それはねぇ……」 言いかけたとき、ぴゅうと風が吹いて塊がころころと転がった。 あ、あー……てゐさん、上のほうへ行っちゃったよ。 次いつ来るかわからんな。 というか、これがバラバラになったら、なんかただ事ではすまん気がする。 「ゆっくりさせでぇぇぇ!!」 「私もっ、私もゆっくりしたいわよッ!」 「このっ、もう我慢できない――マスタースパーク!」 「ゆぎゅぁぁぁ!」 「あっつぅぅぅこらっ魔理沙魔理沙!」 「ゆっぐぅうぅ、ゆぐぅぅぅぅ!!」 もう人間もゆっくりも関係ない。ひとつに丸まった人と妖怪と饅頭とガラクタの混合物が、もざもざわさわさ と動いて、悲鳴を上げたり、ビームを出したり、弾幕を放ったりしている。 「俺です」なんつったら、殺されるな、これは。 となると――。 「行けるところまで行くか!」 俺はさらにころころころころとゆっくり塊を転がし、幻想郷の森も川も山も湖も突っ切って駆け回った。ゆっ くり塊はどんどんどんどん成長して妖怪とゆっくりと人間を飲み込み、ついには直径一キロを越えててっぺんは 妖怪の山の頂上を越えた。 そのころ、とうとうゆっくり塊は浮上した。上のほうについた天狗やら虫やら何やらが、逃げようとして飛ん だためだろう。 「あー……」 空を飛んでしまったら、もう俺には手が届かない。 俺は若干の寂しさとともに、数ヵ月をともに過ごした巨大なゆっくり塊を見送ったのだった。 「達者でなあ。元気でなあー……」 それ以来、夜空に星がひとつ増えた。 オリオン座のあたりにまぶしく輝く「ゆっくり星」を見るたびに、俺はかつて幻想郷をにぎやかしていた美少 女たちとゆっくりたちを思い起こし、懐かしむのだった。 ====================================================================== YT このSSに感想を付ける