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『お目覚めはゆっくりと』 ※現代にゆっくりがいる設定です 東京近県の衛星都市。 比較的地価の安いこの地域は、学生やフリーター、若手の新入社員達が多く住んでいる。 だから、専門学校を卒業して間もないような人間でも、 このあたりで部屋を借りつつ、"ゆっくり"と暮らすのも可能だった。 * * * 8畳フローリング・ロフト付き。 そんな間取りの部屋の中央で、1匹のゆっくりれみりゃが座っていた。 その傍らには、クレヨンや画用紙や積み木といったものが散乱している。 れみりゃは、大好きな玩具に囲まれながら、 幸せそうにだらしのない下ぶくれスマイルを浮かべていた。 「うー♪ ぷっでぃーん♪」 自然と口から漏れるのは、大好きな言葉。 れみりゃは、この部屋の主の人間とともに暮らし、実にゆっくりとしていた。 その証拠に、れみりゃの体は標準的なものに比べて、はるかに"ふとましかった" ふくよかな四肢ははちきれんばかりにプヨプヨしており、 お腹はぷっくら膨らみ、下ぶくれ顔にはさらに二重顎のおまけがついている。 「うー♪ ぽかぽかしてきたどぉー♪ そろそろだどぉー♪」 太陽から差し込む温かい光。 ポカポカの陽気を受け、部屋の中はエアコン無しでも温かい。 れみりゃは、その気温と太陽の光を確認してから"うーしょ、うーしょ"と重たそうに立ち上がり、 小さな黒い羽をパタパタ動かして、重たい体を浮き上がらせた。 「ぱたぱた~♪ う~☆」 れみりゃが、ご機嫌で飛んでいく先、 そこは部屋の角にあるベッドの上だった。 「おねぇーさーん♪ あさだっどぉー♪」 ベッドの上には、部屋の主である人間が眠っている。 れみりゃには、この部屋で"ゆっくりする"ためにいくつかの対価……すなわち勤めが課されていた。 朝になったら起こすというのも、比較的夜行性のれみりゃの役目の一つだ。 「……ん、うん……すぅ……すぅ……」 ベッドで寝ている人間は、わずかなリアクションだけをして、また健やかなな寝息をたてはじめてしまう。 その寝顔に下ぶくれ顔を近づけ、ぬぼぉーっと覗くれみりゃ。 れみりゃは、起きない人間のために、次なる手段をとることに決めた。 「しょーがいなどぉー♪ とくべつさーびすだっどぅ♪」 人間を踏まないように、れみりゃはよいしょとベッドの上に着地する。 短くて柔らかい足は、ちょうと人間の首を中心にして、左右に置かれていた。 れみりゃは、それからドスンと、まるで尻餅をつくように尻から座り込む。 大きなお尻の下には、ちょうど人間の顔があった。 「……うぷっ」 それまで定期的な寝息を立てていた人間の口から、反射的な吐息が漏れた。 それから、れみりゃは尻を顔に乗せたまま、左右に尻を振るように体重を移動する。 それはまるで、尻を顔に擦りつけるような所作だ。 「でびぃーのかわいいおじりぃー♪ あさから、くんかくんか☆できるなんてしあわせもんだどぉー♪」 ご機嫌満悦の微笑みを浮かべる、れみりゃ。 "うーうー"とリズムを刻みながら、お尻を揺らしていく。 「……うぁ?」 ふと、れみりゃはお尻のあたりがムズムズしているのを感じた。 れみりゃは、そのムズムズに促されるように、少しだけいきむ。 「あーぅあぅー♪ でび☆りゃ☆ぶぅーーー♪」 "ばっぶぅーーーー!" 豪快な音をたてて、れみりゃの尻から黄色いガスが勢いよく放出された。 「うー♪ でちゃったどぉー♪」 れみりゃは、照れながら、それでいてどこか得意そうに、顔を赤らめて笑う。 その直後、れみりゃの体はゴロンと前転して、布団の上に着地した。 「うー!」 驚き、目を見開くれみりゃ。 何が起きたかわからず左右をきょろきょろしてから、 れみりゃは背後へ振り向いて元気に叫んだ。 「うっうー☆おはようさんだどぉー♪」 そこには、気だるそうに上半身を起こして、片手で頭を押さえている部屋の主がいた。 「……おはよう、れみりゃ」 "自分のおかげで、今日も部屋の主が起きられた" そう考えているれみりゃは、どこか誇らしげだ。 大好きな人間に構っても追うと、朝の支度を始める人間のまわりをピョコピョコついて回る。 一方の当の人間はというと、れみりゃを適当にあしらいながら、洗顔に着替えにと、テキパキすませていく。 「……物騒な事件が続くなぁ」 人間は、新聞を開いて、ジャムを塗ったパンと野菜ジュースを口にする。 "未確認ゆっくりまた出現!" "未確認ゆっくり第4号、第21号と交戦" "ゆっくりと人間の共存は可能なのか?" "鏡の中に現れたゆっくりが人間を襲う!?" 記事を流し読みで済ませて、オートマティックな所作で朝食を終える人間。 テキパキ食器を洗い終えて、ふと一息。 この後、温かいコーヒーを一杯飲んで家を出るのが、この人間の毎日だった。 コーヒーに、ふーふー息を吹きかけて、人間は今の時間を確かめようと机の上へ視線を移す。 「……あれ、時計は?」 そこには、置いてあるはずの時計が無かった。 いわゆる電波時計という奴で、仮にれみりゃが起床役を忘れていても、きちんとアラームが鳴る代物だ。 量販店で買った安物ではあったが、あるはずのものが無くなっているというのは何とも気持ち悪い。 コーヒーを冷ますのをやめて、人間はあたりを探し始めた。 すると、人間の様子から事態を察したのだろう。 れみりゃが、机の上に立ち、人間の前にバンザーイと両手を上げた。 「う~~♪ あのゆっくりできないジリジリは、でびぃーがぽぉーいしといてあげたどぉ♪」 "ぽぉーい♪" その言葉を聞いて、人間は溜息をついた。ああ、またやってしまったのかと……。 人間は肩を落として、ゴミ箱の蓋を開ける。 すると、中には探していた電波時計が確かに入っていた。 「あれもぽぉーい☆これもぽぉーい♪ ゆっくりできないものはみんなぽいするのぉー♪ ぽぉーい♪」 「ぽーいぽーい♪」と物を投げ捨てるジェスチャーを織り交ぜながら、 "うぁうぁ"楽しげに踊り出す、れみりゃ。 それとは対照的に、人間は電波時計と一緒に捨てられていたものを見つけて、顔を青くした。 「ああっ、ボクのケータイ!!」 人間は、最近買い換えたばかりの携帯電話が乱雑に捨てられていたのを見て、慌ててそれを取り出す。 液晶をオンにすると、待ち受け画像と今日の日付、それにアラームが鳴っていた履歴が表示された。 どうやら、れみりゃはアラームが鳴ったものをまとめて、"ぽーい"してしまったらしかった。 壊れていないことにほっと胸を撫で下ろしてから、人間はケータイ電話をポケットに移す。 れみりゃはといえば、相変わらず誇らしげに胸をはり、人間の足下でニコニコしている。 どうやら頑張ったご褒美を欲しがっているらしい。柔らかくて短い手で、人間の服の裾を引っ張っている。 「でびぃーがんばってぽぉーいしたどぉー♪ ごほうびに、ぷっでぃ~ん☆ふたちょもってきてぇ~ん♪」 れみりゃからすれば、全くの善意の行動だったのだろう。 怒られるという不安は全く感じていないようだった。 本来ならば、しっかりここで教えておくべきなのだが、 ケータイに表示された予想外の時刻の前では、そんな余裕は無かった。 人間は冷蔵庫を開けてプリンを取り出すと、それをれみりゃに手渡す。 れみりゃはプリンを掲げて喜び、部屋の中央に座ってプリンを開ける。 「はぁ……いってきます……」 「うーうー♪ ゆっくりおつとめしてくるがいいどぉー♪」 プリンをがっつきながら、れみりゃは靴を掃き終えた人間に手を振った。 そうして、プリンを食べ終わると、れみりゃはパタパタ飛んで、ロフトの上に向かう。 ロフトの上には、収納用の段ボール箱と、ゆっくり用のおもちゃ箱、 そして人間の赤ん坊用のベビーベッドが置かれていた。 ベビーベッドには、ひも付きの札がひっかけてあり、 そこには汚い平仮名で大きく"こーまかん"と書かれていた。 「でびぃーはこれからおねむするどぉー♪ おやすみだっどぉー♪」 れみりゃはそのベビーベッドで横になり、目を瞑る。 それから、うぴーうぴーと鼻提灯を出しながら眠り始めるのに、さして時間はかからなかった。 * * * それから、数時間が経った。 れみりゃはタオルケットにくるまりながら、相変わらず寝息を立てている。 幸せそうにヨダレを垂らしているれみりゃ。 その顔に、突如"こぶし"がめり込んだ。 「ゆっくりしね☆」 「う、うびぃー!?」 いきなりの痛みに、れみりゃは起きあがり、 赤くなってヒリヒリジンジン痛む顔に手をあてる。 「うぁ~~! でびぃーのえれがんとなおかおがぁ~~~!」 目が覚めるとともにより明確になる痛みに、れみりゃは涙を浮かべて叫んだ。 「うー! おねぇーさま、ようやくおきた! おそい!」 「う、うぁ!?」 涙でにじむ視界の中、れみりゃの視線の先には、ゆっくりフランがいた。 このフランもまた、れみりゃとともにこの部屋に住んでいるゆっくりであった。 「うー! おねぇーさまをいぢめるふらんは、でびぃーがやっづげでやるどぉー!」 れみりゃはグシグシ涙とヨダレををぬぐってベビーベッドから出ると、 その手をぐるぐる振り回して、フランの下へドタバタかけていく。 だが、フランはそんなれみりゃの姿を見て、 キランと目を輝かせたかと思うと、手に持った棒で逆にれみりゃを殴り飛ばした。 「くりゃえ~☆ れ~ばてぃん☆」 「!!??」 "れーばてぃん"の直撃を受けたれみりゃは、叫ぶことさえできずに、床に倒されてしまう。 フランはそんなれみりゃの上に馬乗りになると、べしべしその頭をたたき出す。 「うーー! ふらんちゃん、やべでぇーー!」 「うー☆しねしね! ゆっくりしね!」 れみりゃの戦意は、あっという間に粉砕されてしまった。 だぁーだぁー泣き叫び、フランに許しを請うのが精一杯だ。 「うー! もぉーぶただいでぇー! でびぃーは、ゆっぐりおねむしてただけだどぉー!」 一方、フランは電波時計をれみりゃの前にドンと置いて指を指す。 時刻は午後4時。ちなみにれみりゃの起床時間は、午後3時と決められていた。 「もうおきるじかん! おねぇーさま、ゆっくりおきる! そしてしぬ☆」 「ぷんぎゃー!」 フランは最後に大きな一発をれみりゃにお見舞いすると、 "うー☆"という天使の笑顔に戻って、"こーまかん"と名付けられたベビーべッドへ上る。 「う、うぁ、うぁぁ……」 れみりゃは、痛む体を何とか起こして、 ベビーベッドでタオルケットをかけるフランに抗議の叫びをあげた。 「う、うー! そこはでびぃーのこーまかんだどぉー! ふらんちゃんはつかっちゃだめだどぉー!」 「うー、ゆっくりねる……つぎのしごとまで、しえすた……」 れみりゃの我が侭などどこ吹く風。 フランは涼しい顔を浮かべたまま、健やかな眠りに入っていく。 れみりゃは、何とか"こーまかん"を取り戻して再び眠ろうと考えたが、 先ほどまでの攻防の後では、フランに逆らうほどの勇気も無かった。 「さくやぁー! さくやぁどこぉーー! ふらんちゃんがいぢめるどぉーー!!」 れみりゃに残された手は、泣いて助けを呼ぶことだった。 なお、この部屋を借りている主、すなわち現在働きに出ている人間の名前は"さくや"ではない。 無償の愛で自分に尽くしてくれる存在、さくや。 れみりゃ種にとって、その名前を叫ぶことは本能的なものであった。 故に、仕方の無い側面もあるのだが、これから眠ろうとするフランからすれば、その騒音はたまったものではない。 それに、あまり五月蠅くしては、アパートを借りている人間にも迷惑がかかる。 困り者の姉が我が侭を言った時、ブレーキ役となるのが自分の役目だと、フランは考えていた。 故に、フランはベビーベッドから出て、 前のめりでわんわん泣いているれみりゃの尻を蹴飛ばした。 「ゆっくりしね☆」 「ぶひぃー!」 フランのその考え自体は間違っていないのだが、 そのやり方は少々過激で、主の人間からも度々注意はされていた……。 しかし、れみりゃに対して過激な言動に出てしまうのは、 れみりゃがさくやを呼ぶのと同じく、フラン種にとっての本能だ。 れみりゃへの愛情・愛着・信頼があったとしても、 あるいは、そういった感情があればこそ、フランはれみりゃに対して過激な行動に出てしまう。 「うぁぁーー! うぁぁー! でびぃーのぷりてぃーなおじりがぁーー!!」 「おねぇーさまもちゃんとしごとする……そうじとせんたくしなきゃだめ」 両手で尻をさするれみりゃに対し、冷静に告げるフラン。 それに対し、れみりゃは仰向けになると、泣きながらダバダバ手足を振り回し始める。 「でびぃーはおぜうさまだからいいんだもぉーん! そんなのさくやがやってくれるもぉーん♪」 フランは、大きく息をはいた。 しかし、それは残念だからでは無い。 聞き分けの無い姉に対して、今日もこれから"姉妹水入らずの肉体的コミュニケーション"を行える喜びからだ。 「う、うぁ!?」 キラーン☆と光るフランのルビー色の瞳に、れみりゃは反射的にビクっと体を震わせた。 「かぞくのるーるをまもれないやつは、ゆっくりしね!」 フランはそう叫ぶと、段ボール箱の中に入っていた小さな"あまあま"のヌイグルミを、れみりゃの口に押し込んだ。 口を塞がれ、"んーーんーー"とさくやの名を呼ぶこともできないれみりゃ。 その様子を確認して、うんうんと頷くフラン。 そうしてフランは、背中をゾワゾワ走る愉悦に身を任せるのだった。 * * * 薄暮の空の下、れみりゃ達の主の人間は、自転車を横に歩いていた。 自転車のカゴの中には、近所のスーパーで買った食品や日常雑貨が入っている。 「まいったなぁー、もう遅刻できないよ……やっぱり分担を変えるしか……」 主の人間は、結局今朝遅刻してしまい、上司からたっぷりしぼられてしまった。 元々、この人間は朝に弱く、遅刻をしがちだった。 より確実に起きられるよう、れみりゃにお願いをしたが、どうにも成果は上がらない。 妹のフランに頼めばより確実なのだが、 フランは、昼頃まで夜~朝シフトのバイトに出ており、それは難しい。 バイトといっても、いかがわしいものではなく、深夜のラジオ出演や雑誌関係の仕事が殆どだ。 いわゆる、タレントペットならぬ、タレントゆっくりなのだ。 その出演料は意外とバカにならず、"共同生活"を行う上で大いに助かっている。 実のところ、仕事が忙しい月に関して言えば、この人間の正規の月収さえ上回ることもあった。 そんな折、一人だけ働くフランに負い目を感じてか、それとも姉としてのプライドがあってか、 れみりゃにも家事という名の仕事を与えてみたが、なかなか上手くはいかない。 予想はしていたが、目覚まし係というのも向いていなかった。 「……うん?」 ふと、とある光景が目に止まり、人間は足を止めた。 自転車をアパート共有の駐輪場に置いてから、小走りでその現場へと向かう。 その現場は、アパートの目の前の電柱だった。 そこに、数人の小学生らしき子ども達が集まっている。 思い思いのバッグを持っていることからすると、学校帰りというよかは、塾帰りなのかもしれない。 そして、彼らの中心には、縄跳びのロープで電信柱に巻き付けられた、ゆっくりれみりゃがいた。 れみりゃの体はしっかり固定されており、うびーうびーと濁った寝息を立てている。 そのふとましい姿、何かあった時のため帽子に刺繍したアップリケ型の飼育証明を見て、 "間違いなく我が家のお嬢様だ"と主の人間は確信した。 「おい、こいつなんだよ?」 「こいつ、ゆっくりだろ? どっかのペットかな?」 「これ見てみろよ! 眠っていたらつねって起こせってさ」 少年が指差した先、電柱に一枚のメモが貼り付けられている。 そこには、平仮名で"ねてたらつねっておこす。それいがいしたらゆっくりしね"と書かれていた。 その文字を見て、主の人間には察しがついた。 姉妹喧嘩……というには一方的な、フランの制裁が行われているのだと。 そんなことを知らない少年の一人が、むぎゅーとれみりゃの頬を引っ張った。 その痛みには、寝ぼけ眼でれみりゃが目を覚ます。 「う~~! でびぃーのきゅ~どなほっぺがじんじんするどぉ~~!」 赤く腫れた頬をさすろうとするが、手はロープで固定されているため動けない。 しばらく"うーうー"難儀した後、れみりゃは痛みから逃げるように目を瞑って浅い眠りへ落ちていく。 「おっ、起きたぞ」 「でも、また寝ちゃったぞ?」 「なんか面白いな、こいつ♪」 少年達は、次々にれみりゃの頬を抓ったり、引っ張ったり、叩いたりしていく。 見ると、れみりゃの頬にはあちこちに赤く腫れた後がある。 おそらく、この少年達の前にも、同じようなことをした人がいたのだろう。 最初はおそるおそるだった少年達も、 起きてはまたすぐ寝てしまうれみりゃに対し、徐々に警戒感を無くして力を入れていく。 「うぁぁー! やめるんだどぉーー! さくやぁぁーーー!!」 れみりゃはとうとう泣き叫びだし、目の前の少年達へ敵意をあらわにしだした。 れみりゃのボリュームの大きな声に、びくっと後退する少年達。 少年達は、れみりゃが動けないのを再確認してから、れみりゃへ文句を言い始めた。 「なんだよ、このデブ! ここに起こせって書いてあったから起こしてやったんだぞ!」 「うー! でびぃーはおでぶさんなんかじゃないどぉー! こういうのは"ふとましい"っていうんだどぉー♪ これだから、ものをしらないしょみんはいやなんだどぉー♪」 説明してやれば美的感覚の無い少年達も、自分の凄さを認めるに違いない。 そして、あふれだすエレンガントさとカリスマにひれ伏して、ぷっでぃ~んを持ってくるに違いない。 れみりゃはそうとでも考えたのか、余裕の笑みを浮かべはじめた。 しかし、そんな事が起こるはずもなく。 少年の一人が、怒りの形相でれみりゃへ向かい、拳を振り上げる。 ここに来て、ようやく危険を感じ取ったれみりゃは、本能に従って絶叫した。 「なんだと、この!」 「さくやぁぁーー! たすけてぇぇーーー!! ああああーーー!!」 さすがにこれはやりすぎだ。 距離を置いて見ていた主の人間は、そう判断して、すたすたとれみりゃ達の下へ歩いていく。 その際、主の人間は、物陰に隠れているフランの姿を見つけた。 おそらく、ひどいめにあっている姉の姿を楽しみつつも、適度なところで助けに入るつもりだったのだろう。 主の人間は、やれやれと心中で肩をすくめた。 フランは頭の良いゆっくりであり、事実その能力もゆっくりとしては最上級のものだが、 自分の力を過信しすぎてしまうのが困ったところだ。 本当の危険が迫った時には、いかにフランといえどどうすることも出来ないのだ。 現に、この少年3人の前にフランが現れたとしても、いざ喧嘩になってしまえばフランに勝ち目は無い。 後でちゃんと話そう。 主の人間がそう決めたと同時に、れみりゃが主を発見して希望の声をあげた。 「う、うぁ! お、おねぇーさんだどぉー♪」 泣き叫んでいたのも忘れ、あっという間に喜色満面になるれみりゃ。 一方、驚いたのは少年達だ。 「「「え?」」」 少年達は、れみりゃに接していたのとは異なり、すっかり萎縮してしまっている。 少年達にも、れみりゃが飼いゆっくりであるのは何となく理解できていた。 もし自分たちがいじめていたのを見られていたら。 もし、さらに電柱に巻き付けたのまで自分たちだと思われたら……。 目の前のお姉さんに、親に、先生に、しかられる光景……。 いやそれ以上に、せっかく勉強したのに受験に影響するかもしれない、 損害倍賞の裁判を起こされ支払いを命じられてしまうかもしれない……。 なまじさかしかったが故に、少年達は最悪のケースを連想して震え上がっていた。 「え、あの、ご、ごめんなさい」 「こいつ……じゃない、このゆっくり、お姉さんのものなんですか?」 萎縮する少年達に無かって、主の人間は微笑んだ。 ただし、目だけは笑わずに。冷たく見下ろす視線を心がけて。 「うん、確かに。そのれみりゃはボクの家族だよ」 少年達は、目の前の女の冷たい目と威圧感、それに"家族"という言葉に恐怖した。 そこから、どれだけ自分たちへ怒りを持っているかを察し、 このまま見過ごしてはくれないだろうことを覚悟した。 「うー♪ ばかなしょみんも、これでゆっくりわかったどぉー♪ でびぃーをこあいめにあわせたぶん、たっぷりおねぇーさんにいぢめられるがいいどぉー♪」 一方、れみりゃはすっかり調子に乗っていた。 「うー♪ これでようやくぐっすりできるどぉー♪」 フランに少年達に、自分を襲った理不尽な恐怖は取り払われた。 これでもう安心だと、れみりゃはすっかり気を抜いていた。 だから、突如お尻に走ったムズムズ感を押さえることもできなかった。 "ばっぶぅーーーー!" 驚いて少年達が振り向き、さらに一様に鼻を押さえる。 れみりゃは、豪快な放屁を放って、恥ずかしそうに赤面した。 「う~~♪ あんしんしたら、でちゃったどぉ~~♪」 どこか誇らしげな、れみりゃの笑顔。 その笑顔を見ているうちに、主の人間の中にふと芽生える感情があった。 「……ねぇ、みんな。最近このれみりゃ運動不足なんだ。良かったらもう少し遊んであげて」 何気なく放たれた、主の人間の言葉。 少年達は目を丸くし、れみりゃは耳を疑いながら冷たい肉汁の汗をダラダラ流した。 「う、うー?」 「でも、ひどいことしたらダメだよ! ボクの大切な家族なんだからね!」 主の人間は、それだけ言うと、れみりゃに背を向けてアパートの方へ歩いていく。 「お、おねぇーさん? おねぇーさんまつんだどぉー!!」 れみりゃは必死に叫ぶが、それが聞き入れられることはない。 主の人間の姿は、そのままアパートの自室へ消えていった。 その代わりに、れみりゃの視界に入ってきたのは、ニヤニヤと不気味に笑う少年達だった。 * * * 「うー、おねぇーさま、だいじょぶ?」 人間が部屋に入ると、窓からフランが入ってきた。 仕掛け人の割には、姉のれみりゃのことを心配してソワソワしている。 「大丈夫だよ。それより仕事までちゃんと寝といた方がいいよ?」 「うー、わかった」 人間は、フランの頭を撫でてやり、それから冷蔵庫を開けた。 そこからプリンを3個と、オレンジジュースの入ったペットボトルを取り出す。 それから風呂場へ行き、桶を持って出ると、 そこに冷蔵庫から取り出したものとタオルも入れ、短い廊下を歩いて玄関へ向かった。 扉の外からは、れみりゃの声が今も聞こえていた。 "おねぇーさんたすげでぇーー! ごぁいひとがいぢめるよぉぉーー!!" ああ、この声だったらきっと自分もすぐ起きられるんだろうな。 主の人間は、そんなことを思いつつ、玄関のドアを開けた。 おしまい。 ============================ 自分の憧れのライフスタイル(?)を書いてしまった結果がコレだよ! まぁ近所の子どもにいじめられていたら助けると思いますが。 たぶん、子ども相手に大人げなくマジギレしちゃうかもです; あと一部に特撮ネタが無駄に入っていますが、ご容赦を。 『仮面ライダーゆケイド』とか妄想してました。 by ティガれみりゃの人 ============================
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ふぁいたーれみりゃの苦悩 5KB いじめ ギャグ 小ネタ 思いやり いたづら 日常模様 捕食種 希少種 創作亜種 独自設定 日本語って難しい 「ふぁいたーれみりゃの苦悩」 羽付きあき ・超小ネタ ・希少種いじめ注意 ・独自設定のゆっくりが登場しますご注意を ・・・とある公園で私はジュースを飲んでいた。 近くにちょうどいいくぼみに腰かける。 暫くすると、凄まじいオーラを纏ったれみりゃが私の横にどっかりと座った。 暫く目も合わずに座っていた私とそのれみりゃであったが、目を合わせずにれみりゃが声をかけた。 「そこの人間・・・ちょっとれみりゃの話を聞いてほしいんだど」 「何でしょうか?」 「この間、ソフトクリームを買ったんだど」 「・・・」 「で、同じように"アイスクリーム"が売られてたわけだけど、それを見てふと考えたんだど・・・」 れみりゃが手をぐっと握りしめた。 目の前ではどこからともなく現れたゆっくりこがさが傘を振り上げて必死に何かを叫んでいる。 「う~ら~め~し~や~!」 それを見ていた私とれみりゃは、暫く言葉を交わさず沈黙の時間が流れた。 こがさは必死に傘を振り上げて驚かそうと悪戦苦闘している様だ。 「おどろいたでしょ~!もういっかい!う~ら~め~し~や~!」 再びれみりゃと私が激論を交わす。 「"ソフトクリーム"と言う言葉の反対後を"アイスクリーム"と定義するなら"ハードクリーム"がただしいんじゃないかど!?」 「・・・いや"ハードクリーム"ってなんかハンドクリームの強い版見たいで食べ物っぽくないでしょ」 「そうかど・・・じゃあ、"ショートケーキ"はどうかど?あれって1ホールでも"ショート"だど。1ホールのショートケーキは"ロングケーキ"じゃないかど!?」 れみりゃがそう言った。 その双眸には闘志の炎が宿っている。理不尽な世の中に対する挑戦の様に・・・ 「いや"ロングケーキ"って言ったら普通は"ロールケーキ"になっちゃうでしょ」 私が言葉を紡いだ瞬間。れみりゃが目を開いて愕然と項垂れた。 目の前でこがさが視界に入る様に傘を振り回している 「おどろいてよー!ほらほら!もういっかい!う~ら~め~し~や~!」 「・・・そんな考えがあったのかど・・・れみりゃの考えが足りなかったど・・・」 「誰だって間違いはありますよ。気を落とさないでください。所で朝焼けと夕焼けっていう言葉がありますよね」 「・・・」 「何で"昼焼け"ってないんでしょうか?あった方が自然ですよね?」 「いや、そうは思わないど」 項垂れたれみりゃが再び顔を上げる。 そして力強くこう言った。 「そもそも朝焼けとか夕焼けと言うのは、オレンジ色で焼けている様に見えたからついたとかんがえるのが順当だど。でも昼は焼けた様に見えないど!それに」 「それに・・・」 れみりゃが立ち上がった。壁にドスンと拳を付けて力の限り叫ぶ。 こがさが驚いてひっくり返ってしまった。 「ひゃっ・・・!」 「"昼焼け"って"日焼け"じゃないかど!?」 私はジュースを飲み干すと空を見上げて呟く。 「・・・確かに君の言う通りだ・・・世の中っていうのは理不尽なことだらけだな・・・」 「その理不尽に打ち勝っていく事こそが人生を生きると言う事じゃないかど?それこそ"克己"というものだど」 目の前ではこがさが涙目になりながらこちらに何かを話している 「おどろいてよ~・・・わちきをむししないでよ~・・・」 それを見ていたれみりゃが再びポツリポツリと話を始める 「"うらめしや"で思い出しんで聞いてほしいんだど、れみりゃは闘ゆっくりなんだど。それで得意技は"裏投げ"と言う技なんだど」 こがさの顔が明るくなる。すぐさま傘を持ち直してれみりゃの前で傘を振る 「これは"うらなげ"じゃないよ~!おどろいたでしょ!」 それを見ていたれみりゃが再び静かに言葉を紡ぎ出す。 「これで幾多の強豪に勝ってきたわけだけど、悩みがあるんだど」 「それは?」 「なんかいつの間にかれみりゃの得意技は"バックドロップ"になってるんだど」 「一緒じゃないのかい?」 「厳密にいえば似てはいるけど結構細かい所が違うんだど。どっちも凄い技には変わりないんだど。でも細部を見ていくと実はブリとハマチ位違いがあるんだど」 その言葉を聞いたこがさが叫んだ 「これはぶりでもはまちでもないよ~・・・!」 私はそれをみながられみりゃに話しかける 「じゃあ、勝った後のマイクパフォーマンスで"裏投げ"って事を強調すればいいじゃないか」 「いや、なんかそれ恥ずかしいど。"バックドロップじゃねぇ!裏投げだコノヤロー!"とか公衆の面前で言うのは恥ずかしいんだど」 「でも恥ずかしいからと言って間違いを正すのがカッコいいってものでしょ。むしろそんな事で恥ずかしいって言ってる方が恥ずかしい様に思えますよ」 「う~ん・・・それもそうだど・・・」 「いっその事バックドロップと裏投げを両方使ってみたらどうですか?」 「それを使いこなしてるとどっちがどっちか分からなくなっていってなんか混乱してくるど~・・・」 れみりゃが頭を抱えた。 それを見てこがさがはしゃぎながら傘を振る 「こんらんしたでしょ~!もっとこんらんしてね~!う~ら~め~し~や~!」 それを見ていた私とれみりゃが互いに言葉を交わす。 「じゃあ、裏投げと書いてバックドロップとルビを振るとかどうでしょうか?」 「いやそれじゃ、同じ技ってことになるど」 「じゃあ、裏投げとバックドロップの違いを説明したパンフレットを配るとか」 「いちいち回りくどいからダメなような気がするど・・・」 「どうすればいいんでしょうかねぇ・・・」 「あ~・・・!どうすればいいんだど~!」 こがさがさらに勢いよく傘を振る。 どうやらこのれみりゃがあまりの恐怖のあまりしゃがみガードをしていると感じたようだ。 「う~ら~め~し~や~!ほらほら!もっとわちきにおどろいてね!」 私は、拳を握りしめて静かにこう言った。 「でもこのまま間違いを正さなかったらずっとバックドロップって勘違いされますよ」 それを聞いた途端にれみりゃが顔をバッと上げた。 こちらの方へ向いてこう切り出す 「・・・やっぱり間違いを正してみんなに1から説明してみるど」 そう言って帽子をかぶり直すと立ち上がる。 私もゴミ箱に空き缶を入れると立ち上がった。 「「ところで・・・そこのこがさはさっきからなにしてるん(だど)ですか?」」 それを聞いた途端にぴたりとこがさの動きが止まった。 プルプルと震えると、砂糖水の涙を流してどこかへ去っていった。 「・・・うわーーーーんっ!うーらーめーしーやーっ!」 ~完~
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「うー?ここはどこなんだどぉー♪さくやーはやぐプディングもってくるどぉー♪」 「うー!うー!まんまー!」 「うっうー!」 親れみりゃと子れみりゃ、そして胴なしれみりゃは目が覚めると全く知らない場所にいた。 周りを見渡す。ピカピカ光って、豪華な装飾品がいっぱいあった。暖かそうなベッドもある。 もしやここは伝説の『こうまかん』なのかも知れない。 元気そうな赤ちゃんの方を見る。すると子れみりゃの様子がおかしなことを言ってきた。 「みゃんま~。お腹がちょっといたいんだどぉ~なでなでしてだど~」 親れみりゃは一生懸命なで☆なでする。胴なしもすりすりしているようだ。 と、何か足音としゃべり声が聞こえてくる。この声には聞き覚えがあった。これはれみりゃたちの大好きな物。 「れみりゃだあああああああ!!!」 「「れみりゃはゆっくちできないよぉぉお!!!」」 籠に入ったゆっくりれいむの親子ははそう叫んだ!親1、赤2である。 「あまあまだどぉ~れみりゃたちはおなかがすいたんだどぉ~」 「まんじゅうほしいどお~」 そう言ってれいむに近づくれみりゃ。しかし・・・ 「ハァ。俺の前でキモいことすんなよ・・・」 そう言って目の前に現れた男によってそれは阻止された。頭を掴まれた二匹はそのまま近くの段ボールの上に座らされた。 「うー!なにすんだどぉ~。れみりゃはこうまかんのあるじなんだどぉ~♪さっさとあまあまわたすんだどぉ~」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 奇妙なダンスを椅子の上で踊るれみりゃ二匹。胴なしも「うー!うー!」言いながら左右に顔をふる。 「まあなんでもいいけどよ。お前ら今どんな状況かわかっては、いや。分かる訳ないよな。」 男は心底疲れ切ったような顔で溜息をついた。 「しかしまあ・・・。」 男はゆっくり達を連れて歩く男。れみりゃ達はお菓子が貰えると聞いて意気揚々と付いてきている。 広い廊下を歩いた先に、食堂があった。派手さはないが立派なのは一目でわかる。 男はゆっくり達に約束通り飴玉をあげた。 「むーしゃーむーしゃ、しあわせー!」 「う~!う~!」 「「れみ☆りあ☆う~☆にぱー」」 それぞれ喜びを表現していた。すると食堂に人がやってきた。 その人数は7人。いづれも一癖も二癖もあるような人物である。 「金田二。全員集めたぞ。本当に犯人がわかったのか!」 「ああ、本当だぜオッサン。鬼意 山士朗さんと愛出 太郎さんをを殺害した犯人。くろまくれてぃはアンタだ!」 「な・・・何をバカな事を言い出すんだね金田二君。だいたい私は彼が殺害された時には、君たちと一緒に 緋想天をしていたじゃないか!どうやって私が殺したと言うんだ!」 「ああそうだ、確かにあんたは殺害できる状況じゃなかった。・・・もし本当にあの時殺害されていればね。」 「な、なんだtt(ry」 人間が何か話しているようだがれみりゃ達には関係ない。れみりゃ親子は、目の前の饅頭をどうにか食べようと 箱をブンブン降っていた。 「やめてね!ブンブンふらないでね!きもぢわるいからね!」 「おかーしゃんきもちわる・・・・うぷ。おげえええええええ!!!」 赤れいむたちは餡子を吐いてしまった。赤ん坊が餡子を吐くのは大人より危険だ。少量でも死の危険性がある。 「あかちゃんしっかりしてね!おかーさんがせなかをすりすりしてあげるよ!・・・いいかげんやめてね! ぶさいくなれみりゃはとっとと消えてね!」 そういってれみりゃに唾をはくれいむ。 「れみりゃのかおにつばをはくなどおぉぉ~。饅頭のくせに生意気なんだどぉ~」 「まんまのかおにひどいことするなどぉ~!ゆっくりたべちゃうぞ~」 と、その時。さっきの男が子れみりゃのを摘みあげた。 「なにしてるんだどぉ~れみりゃのぷりちぃなあがちゃんに、きたないてでさわるなだど~」 「れみりゃはもうおそらをとべるんだどぉ~すごいんだぉ~」 そんな声も無視される。 男は話始めた。 「アンタが凶器の毒ビンを隠した場所・・・それはここだ!」 そういうやいなや、男は子れみりゃの腹を包丁で引き裂いた。そしてそこに手袋をした手を突っ込む。 「いだいどぉお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!みゃんばー!!!いぼうどでぼいいがらだすけるどぉぉぉぉ!!!」 感じたことのない痛みに苦悶の表情を浮かべる子れみりゃ。かまわず男は腹を探る。そして・・・ 「これだ!」男が腹から勢いよく何かを取り出した。それは茶色のビンだった。中に何か粉末状の物が入っている。 「これが毒殺に使ったビンだ!これを虐待用に冷凍保管していたれみりゃの口に無理やり押し込んだのさ。」 鬼意 山士朗さんの虐待用ゆっくりに手をつける人はこの屋敷にはいない。おそらく頃合いを見計らって回収しようとしてたんだろう。 ビンの指紋と中の粉末を調べれば全て判明するぜ!これでもまだしらを切るつもりかい!」 犯人の男は床に手をつきながら倒れた。 「うう・・・ううう。兄さんが悪いんだ!俺のさきゅや(ゆっくりさくや)を弄んだ挙句に自殺に追い込むから・・・だから!!!」 オッサンが言った。 「それじゃあ愛出さんを殺したのはやはり」 「ああ、あの男。俺が犯人だってことに気づいて、俺に虐待派撲滅のために親父の遺産を寄こせと言ってきたんだ。冗談じゃない!・・・ !あの遺産を手に入れたらさきゅやのピラミッドを作るつもりだったんだ!」 一方、れみりゃ達もクライマックスだった。子ゆっくりの中からあふれ出す肉汁。それによって皮膚がふやける。そしてさらに肉汁洩れる 悪循環に陥っていた。親れみりゃは一生懸命傷口を押える。 「れみりゃのあがちゃん~。がんばるんだどぉ~」 泣きながら傷口を押える親れみりゃ。胴なしも心配そうに見つめている。 「にくじるがとまらないんだってさ」 「おお、ぶじゃまぶじゃま」嘲笑うれいむ一家。 さきほどの一件を恨んでいるのだろう。 一方人間の方は 「だがもういいさ。もう復讐は果たしたんだ。この毒薬で・・・」 「馬鹿野郎!そんなんで天国のさきゅやが喜ぶと思ってんのか!」 またまた視点変更 「とまらないどぉおおおおお!!!!ざぐやぁあ゛あ゛あ゛!!!れみりゃのあがちゃんをだづけでえ゛え゛え゛え゛!!!」 徐々に冷たくなる子れみりゃ。そして 「う・・・うっ・・・もっとおぜうさまらしくゆっくりしたか・・たどぉ・・・」 ついに動かなくなった。わが子が自分の手の中で死んでいったことに気づいたれみりゃ。 「うわああああああんんん!!!れみりゃのあがぢゃんがあ゛あ゛あ゛!!!」 「う゛ー!う゛ー!」 「れみりゃにてるね!きもいあかちゃんだったね!しんだほうがよかったね!」 「よきゃったね!」 「うるざいんだどおおおお!あんまんはだまっでるんだどおおおお!」 箱に体当たりをするれみりゃ。しかしれいむ達も馬鹿ではない。 「ゆゆ!れみりゃの力じゃこれはこわせないんだよ!ばかなの?しぬの!」 「おかあちゃんのきゅちにはいったからあんぜんだよ!ばかなれみりゃはゆっきゅりしんでね!」 ゲラゲラと笑うれいむたち。それを無視してひたすら箱かられいむを取り出そうとするれみりゃ。 また人間パート 犯人はパトカーにのって行ってしまった。 「嫌な事件だったなオッサン。いくら愛するゆっくりのためだからって、やっぱり殺人は駄目なんだよ・・・」 「ああそうだな・・・金田二。虐待だろうが愛護だろうが・・・な。」 「あの・・・みなさま方。」 そういったのは屋敷のメイド長だった。 「もう朝ですし・・・最後にみなさまで朝食でもお食べになりませんか?私が責任をもって作りますので」 「そうだな金田二。腹減ってきたし食うか!」「わかってるじゃないのオッサン。」 そういってメイド長は近くにいた胴なしれみりゃを掴む。 「うー?うー?」何をされたかわかってないれみりゃを掴んだまま、台所に立つ。そしてれみりゃを水洗いする。 「うー!うー!」そのれみりゃに塩をパッパと振り、蒸し器にいれる。スイッチオン。 「うーうーうー!う?うー!うー!うー!」 しばらくしたら立派な肉まんの完成である。 さて、他の食材たちも取ってこなければ。メイド長は急ぎ食堂へ戻った。 待ち時間の間に他に連中は食堂で座っていた。横ではれみりゃが五月蠅かったが誰も気にしない。 「しかし、結局遺産の鍵の場所がわからなかったなあ・・・100億なんだろう?」 「ああそれ。・・・実はもう鍵の場所は検討ついてるんだよね。」 「ほんですか!」「どこにあるんや!」一斉に騒ぎ出す脇役共。 「おそらくあの人はこの屋敷に来た時に気づいたのさ。だからこそ毒薬の隠し場所に選んだ。」 金田二は箱に入っていたれいむを取り出した。 「ゆゆ!おそらをとんでるみたいー」 そうしてテーブルに置かれるれいむ。 「ゆゆ!ここはいいところだね!れいむたちがここに住むからにんげんはとっとどでていって・・・」 「っておい金田二!まさかそれって」 「ああ、遺産の鍵の隠し場所・・・それはここだあ!」 メメタァ!!! 「ゆべえええ!!」 突如れいむの頭を潰す金田二。そして潰れたれいむの頭からなんと甘い匂いの鍵が出てきた。 金田二達は何かいってるが、れいむにもう聞こえない。薄れ行く意識の中、れいむは思った。 「ごべんねえ・・・あかちゃん・・・おかーさんもっとゆっくり・・・」 そのままこと切れてた。 「おかーしゃあああああああんんん!!!」 「ちんじゃいやああああああああ!!!」 泣き叫ぶ子供たち。そのせいで気づいてない。箱が浮いていることに。 「ゆっ・・・ゆゆ・・・ゆゆっゆ・・・あれ?おしょらをとんでるよー。しゅごーいー」 「しゅごいねーおねーしゃん。おかーしゃんといっしょにとびたっかねえー」 もう気にしてないようだ。そのままキッチンへ向かう二匹。残り少ない人生を楽しく生きてほしい。 「れ・・・れみりゃのあがしゃんが・・・」 ついに死んでしまったあかちゃんの前で泣き続ける親れみりゃ。胴なしが消えたことには気づいてないようだ。 すると 「刑事!これも回収した方がいいですよねやっぱ。」 「当たり前だバカ者!これは凶器を隠した重要な証拠だぞ!冷凍保存だ!」 そう言われた下っ端は『証拠品』である子れみりゃを袋に詰める。 「うっうー!なにするんだどぉ!れみりゃのあがしゃんをはなずんだどぉ!!」 その行動に怒り出すれみりゃ。必死に下っ端に体当たりや噛みついてくる。すると 「はいはい、貴方もこっちに行きましょうねー。貴方の子供も甘い饅頭と一緒に待ってるわよ~」 メイド長が華麗に参上。れみりゃの胴体を掴むとそのまま運び出す。 「う?れみりゃのあかじゃんもいるのー?う~!!ぷっでぃーん!!はやぐぷっでぃーんもっできてー!!!」 急に上機嫌になるれみりゃ。もう一人の子を思い出し、いっしょにゆっくりしようと思ったらしい。 「そうですよー。行きましょうねおじょうさま~」 「うっうー☆れみ☆りあ☆うー!」 意気揚揚と運ばれるれみりゃ。その十分後。 「ざぐやあ゛あ゛あ゛!!!だづけでえええええええ!!!れみりゃのあじがあああああああ!!!!」 そのまま30後 「うんめ~!この胴なしの肉まんうまいっすね!!」 「そうだな!金田二!このれみりゃサンドなんか最高だぞ!」 「ありがとうございます。・・・旦那様も若旦那さまも居なくなってお屋敷はずいぶん広くなりましたが。 私は若旦那様が帰ってくるまでこの子たちと待っていようと思います」 眩しいほどに照りつける朝日と、爽やかな風。夏の夜に起きた事件は見事解決された。 めでたしめでたし このSSに感想を付ける
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ゆっくりClose Air Supportしてね! ※※※前フリ長くて申し訳ない※※※ 「きょうもゆっくりしようね!」「ここはさいこうのゆっくりポイントだね!」 ゆっくりがゆっくりできるかどうか以外にはさほど関心を持たないのはよく知られている。 ここにいるゆっくりの大群もまったくその通りで、食料がたくさん存在し天敵がいないこの地に満足し、ゆっくりしていた。 この群れはもともと数は多くなく、5匹ほどのゆっくりのグループが数を増やして形成したという経緯がある。 3ヶ月前、この地にやってきた5匹は昨日まで住んでいた森とは様子が違う木々に初めは戸惑っていたものの、 ゆっくりするのに十分以上の条件が整っていることが分かるとここを安住の地とし爆発的に数を増やした。 ゆっくり達は、時々仲間が消えるものの(川に落ちたんだろうと考えた)天敵のいないこの地におおむね満足し、最高のゆっくりポイントとした。 これからこの地はゆっくりの楽園となるだろう、そうゆっくり達は各々考えていたのだが… よく晴れた朝、ゆっくりれいむはここに住むようになってから妙にふやけるようになった皮を揺らしつつ、 朝食を求めて背の低い木を掻き分けていた。 「ゆっくりーとまっててねー♪」 やっと見つけた朝食候補に喜びをあげるれいむは舌をゆっくりと伸ばして捕食を試みる。 故郷の森では見たことが無い蝶だったが空腹の前にはそんなことはどうでも良かった。 と、そのとき。爆発音が響き木々を揺らす。 「ゆっ゛!?」 反射的に音源へと警戒態勢を取った。(といっても体を向けるだけだが) 近くで物体が動いたことに気が付いた蝶は当然逃げてしまう。 「ゆぅぅぅぅ…」 今日初めての食事は昼食になりそうだという事に残念がるれいむ。 気を取り直して音源のほうを見ると「鳥」が緑の中へと吸い込まれていくところだった。 ゆっくりれみりゃやゆっくりフラン、つまり自分達に危害を加える飛行物体には注意を払うゆっくりだが、 そうでない飛行物体、すなわち鳥や蝙蝠に普通は関心を持たない。 だが、れいむは自分の食事が台無しにされた事に腹を立てており、その抗議をしてあわよくば食料を手に入れるため、「鳥」が落ちたほうへと向かっていった。 さきほどの爆発音で同じ方向を見ていたゆっくりたちが、れいむの行動を不思議がって後を付いてくるのに気が付かずに。 幸か不幸か目的地は川のこちら側だった。(向こう側なら早々に諦めていつもの生活に戻れただろう。) 「鳥」が落ちたと思われる場所に到着したことでれいむ達の生活は永遠に変わってしまった。 生まれつきの警戒心があるれいむは、いきなり目的地(ちょうど木の密度が薄くなって広場のようだった)に出て行くことはせず、茂みを通してその場所を観察した。 そこにいたのはニンゲンだった。 見たことも無い妙な服を着ていたが体つきや顔からして間違いなくニンゲンだった。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 れいむは故郷で何度か人間に殺されそうな目に合わされていたが、生物としての自己防衛反応のためかその事をすっかり忘れており、 食事の落とし前をどうしてくれようという気持ちで茂みから飛び出していった。 その割には第一声がまったくその気持ちを感じさせない物だったが。 だが、そのニンゲンは全く無反応だった。 れいむの自己に都合の良い記憶によればこのセリフを聞いたニンゲン何らかの反応を示すはずだが、 目の前の疲れきった顔の男は二つの目でれいむを注視するだけだった。 「ゆっくりしていってね!!」 今度はゆっくりの模範ともいえる声と顔で挨拶をするれいむ。 だが、男はやはり無反応だった。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 三回目の挨拶は偶然にも合唱となった。 れいむを追いかけてきたゆっくりたちがこの段階で追いつき、いっせいに挨拶をしたのだった。 「いっしょにゆっくりしようね!」「このひとはいっしょにゆっくりできる?」 「あさごはんたべようね!」「ゆっくりしたいよ!」「にんげんだ!にんげんだ!」 「いいからかえってゆっくりしようね!」「ここでゆっくりしたいよ!」 れいむと他のゆっくり達が一斉に会話を始めて広場は騒然とする。 男は相変わらずれいむを見ていた。 ウィルソン・フォード中尉は混乱していた。 ちょっとしたミスから十字軍の名が付いた愛機を落とされ、かろうじて脱出してここに降り立ったがパラシュートが木に絡まって動けず何とか切り離す、 そこまでは自分が知っている知識の範疇の出来事だった。 ──だが、こんなに妙な丸っこい生命体が生息しているなんて聞いてないぞ! 最初の丸いのが茂みから飛び出してきたとき敵かと思い拳銃を構えたが、少なくとも敵ではないと分かり今は下ろしていた。 あまりの驚きからその場所で固まった彼は、後からどんどん増える丸い物体のお仲間に圧倒されて動くに動けないでいた。 こんな生き物が生息する地域に入ったらどんな目に遭うか分かったものではなかった。 幸いにもここは友軍基地に近く、救援はすぐに来ると思われたので何とかなるだろうという目論見もあった。 そこまで考えたところで丸い連中がいよいよ騒がしくなってきた。 「YUKKURISITENE!!」「YUKKURISITEITTENE!!」 やはり意味は分からない。響きから日本語かと思ったが(日本に駐留した事がある友人のおかげだ)彼には日本語に関する語学能力は無かった。 あまりに騒がしいとそれで敵がやって来るのは明白なので、彼は丸い連中を黙らせようと試みた。 「君達、少し静かにしてくれるかな?」 「YU?」「WAKARANAII WAKARANAIYOO!」「YUKKURISHABETTENE!!」「TIIIINPO!」 当然だが通じなかった。 こんな妙な物体と会話を試みた自分の頭が心配になってきた彼は、ここにいるとそろそろ本格的に危険だと考え、友軍基地の方角を確かめて歩き始めた。 「STOP! PLEASE!STOP! DANGER!」 「ゆっくりあるいてね!」「いっしょにゆっくりしようよ!!」 なるべく単語を減らして意思の疎通をこころみる男の努力も空しく、 意味が理解できない言語を投げかけられたゆっくりたちはますます彼に興味を持って後をつけるようになった。 彼は追跡者を振り切ろうと足を速めるが、障害物が多いため思うように進めない。 男とゆっくりの珍道中はしばらく続いた。 いい加減ウンザリしてきた中尉は怒鳴りつけて追い払おうと丸い連中のほうを振り返った。 何か相手をしてくれるのかと期待に満ちた目を向けてくる連中の向こうで何かが動いた。 ついに恐れていたほうの追跡者が来たのだ。 「クソッ!!」 もはや形振りかまっていられない為、直ちに全速力で逃走に移る。 それを丸い連中も何匹か脱落させつつ全力で声を上げつつ追いかけ始め、恐ろしいほうの追跡者がそれを追いかけるという形になった。 「YU!!…」「YUGUEEE!」 脱落したヤツが踏まれて断末魔を上げているのが聞こえたが、それにかまわず彼は走り続けた。 「おい!こっちだ!速く来い!」 「いいぞ、もう少しだ!頑張れ!」 目の前に現れた友軍の救出部隊が射撃しつつ声を張り上げる。もう少しだ。 そして、ついに友軍の後ろへと飛び込む。 「良く頑張った!フォード中尉! 悪いがもう少し待ってくれ!連中を片付け…なにっ!?」 労いの言葉を掛けてきた隊長と思しき人物が、こちらに全速力で向かってくる丸い連中と追跡者を見て途中で発音をやめる。 途中で丸い連中を踏んで混乱し、さらには銃撃を受けたためかかなり距離が離れていた。 背の低い丸い連中には弾が当たらず、弾幕の下でまごまごしているのが見えた。 突然の出来事で混乱しているのだろう。 こっちに来いと声を上げてみたが、意思の疎通はやはり不可能でやっぱりまごまごしていた。 『こちらスワローテイル。派手にパーティ中らしいからウェイターを連れてきたぞ。』 通信機から声が漏れていた。航空支援で追跡者を吹き飛ばすのだろう。 『お客の位置を知らせてくれ、でないと注文を取りにいけん。』 「俺達より北の連中だ!いま発炎筒を投げる!」 前線航空統制官の要請に隊長が答える。 直ちに指示が出され、赤い煙を上げる棒状の物体が追跡者のほうへと投げられた。 危険を感じ取った追跡者が撃たれながらも無理に接近しようとするが、丸い連中が邪魔で思うように進めなかった。 「赤い煙の辺りだ!派手にブチかませ!」 『了解した。 …確認した、今ウェイターを送る。コールサインはヴァイパーだ。』 『こちらヴァイパーリード。お客は確認した、今から料理を送るぜ!』 統制官の返答の後、パイロットが今度は答えた。 音が辺りに響き始め、あっというまに木々を揺らさんばかりの轟音となる。 ターボ・ジェットの音が耳を破壊するかどうかというほど大きくなったとき、上空を影が通過した。 ニンゲンは恐ろしい。れいむはそう思い始めていた。 あの妙なニンゲンに付いていったら仲間が次々と踏まれ、初めは100を越えようかという勢いだったゆっくりは50以下にまで減っていた。 「わ゛た゛し゛のあか゛ち゛ゃんか゛あ゛ああ!!」「おちついてゆっくりしてね!!」 「まりさ゛あ゛ああな゛んて゛え゛えええぇぇ」「そんなと゛こ゛ろて゛ゆっくりし゛ないて゛ええぇぇ!」 地球と同化した仲間や家族のほうを見たゆっくりが泣き叫んでいる。 今のところニンゲン同士で争っているみたいだから安全だけど、いつ矛先がこちらに向くか分からない。 そこまで考えたれいむは逃げ出すタイミングを伺っていた。 冷静に考えればゆっくりの身体なら這いずって逃げれば弾など頭の上を通過していくだけなのに、 小豆ペーストの脳ではそこまで思い至らないのは流石ゆっくりといったところだろうか。 そうこうしているうちに轟音が聞こえてきた。あの「鳥」がいると聞こえる音だが、いつもとは大きさが段違いだ。 何だろう?そう思ったれいむが音のほうを見ると、空中に丸い物体が浮かんでいるのが見えた。 その物体が何か考える間も無く、れいむの一生は幕を閉じた。 群れから脱落しつつ幸運にも踏まれること無くいたゆっくりまりさは恐ろしい物を見てしまった。 絶え絶えの息を整えつつ、先行した仲間達のほうを見るとちょうど轟音が聞こえてきた。 続いて何かが風を切るような高い音。 れいむと同じように疑問に思ったまりさは音のほうを観察する。 その瞬間、れいむ達と追跡者のニンゲンのあたりで爆発が起きた。 ニンゲンだったものやゆっくりだったものが高く放り上げられ、こちらにもそれが飛んできた。 あまりの事態に口をあんぐりと開けていたまりさだったが、その口にチビれいむが飛び込んできた。 あわてて吐き出すまりさ。チビれいむだけでも助かって良かったと思い始め、仰向けに寝転がる彼女をゆすりだす。 「ゆ゛っ!ゆ゛っ!おき゛て゛よ!いっし゛ょにゆっく゛りし゛ようよ!」 いくらゆすっても起きないのでより強くゆするまりさ。 その拍子にチビれいむがごろんと転がる。 「ゆ゛っ!ゆ゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛!!な゛んて゛え゛え゛え゛ええ!!!」 チビれいむの後頭部は存在しなかった。代わりに残り少ない餡子が露出しており、顔の裏側が一部露出していた。 そういえば魔理沙の額にくっ付いている物体、これはこの子の一部じゃないのか。 「ゆふ゛ェッ゛!オ゛ェッ゛! ケ゛ヒ゛ュう゛!」 あまりにショッキングな事態にまりさは餡子を吐き始めた。 良く知られているように、餡子を吐き始めたゆっくりはまず助からないといわれる。 自制心が少ない生物の為、とちゅうで体調を持ち直して吐くのをやめる前に体内の餡子を出し切って絶命してしまうゆっくりが非常に多いためだ。 このゆっくりまりさも死へのマラソンをひた走り始めた。 だが、恐ろしい光景はこれで終わりではなかった。 爆弾の破片が体中に刺さって絶命寸前、仲良くぐったりと寝転ぶゆっくりとニンゲンの上からさらに何か落ちてきたのだ。 今度の物体は空中で何か液体を撒き散らしながら落下、液体はただちに発火してかろうじて生き残った生物を焼き始めた。 「やめ゛へ゛フ゛ッ!! にけ゛ヘ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!!」 こんな状態だというのに仲間達を気遣うまりさ。 真にたたえられるべき仲間意識だったがそれは全くの無駄に終わった。 まりさの悲鳴といってよい警告に気づいた何匹かのゆっくりが地面を転がって消火しようとしたが、ナパームの特性上それは無意味な行為だった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 火達磨になったゆっくりたちが断末魔を上げながらもてる力を持って走り回る。 体中のナパーム燃料を撒き散らしながらのため、周り中の木という木に火が燃え移り、典型的な地獄を現出させていった。 ゆっくりは一匹、また一匹と力尽きていき残ったのは炎を上げる黒い炭素の塊だけだった。 「エヘ゛ッ゛!エヘ゛ッ゛!エ゛ヘ゛ッ゛」 火が静まる頃にはまりさもとうとう吐ける物を吐きつくして妙な空気音を上げる塊と化していた。 最後に「ゆっく゛り゛…」と呟いてまりさは動かなくなった。 「いい腕してるな、流石だ。全部きれいに吹き飛んだぞ!」 『ありがとう、悪い気はしないぜ!それじゃこっちはカンバンなんで帰るな!ヴァイパーリード、オーバー。』 『こちらスワローテイル。迎えが来るまでは上をカバーしておこう。いつでもモニターしてるから、何かあったら呼んでくれ。』 ターボ・ジェットの音が遠ざかっていき、後に残ったのは微かに聞こえるプロペラの回転音となった。 このようにしてれいむについて行ったゆっくりが悉く帰らなかった為、楽園のゆっくりは激減してしまった。 だが、残されたゆっくり達は連中のことをすぐに忘れ、減った分を穴埋めするかのように繁殖に勤しんだ。 食料は十分で天敵に怯える事が無く、仲間がたくさんいる生活をゆっくりたちは楽しんだ。 ここは楽園などではない事を知らずに… フォード中尉は無事に原隊復帰できたが、ジャングルで出くわした日本語のような言語を操る謎の生命体の事を話しても誰も真に受けなかった。 そのうち彼自身もその事を忘れ、ヴェトナムで任務に精励し続けた。 ある日、彼は妙な命令を受けて飛んだ。 「ジャングルのこれこれこういう地点を空軍と共同して爆撃せよ」という命令だったが、 その地点にはヴェトコンなど明らかにおらず、戦略的価値も無かった。 強いていえば野生のバナナなど「食料」が多いぐらいだが軍事的な意味は到底あるとは思えなかった。 彼は任務に忠実な軍人であるので命令に従って愛機を駆った。 やがて迫り来る爆撃目標地点で彼が見たものは… ────────────────────────────────────────────────── B-52で爆撃するつもりがF-105で航空支援してた\(^o^)/ おまけに虐待でも制裁でもなくてごめんなさい。 by sdkfz251
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※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方 ※捕食種設定を不快に感じる方 ※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方 ※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方 ※素晴らしい小説を求めている方 は、この小説に合いません。 申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。 それでも良ければどうぞ ミリィのゆっくり冒険記 第十二話 「ひさしぶりのあまあま~♪おいしいぞぉ~♪」 「やめてよね!れみりゃはれいむをたべないでね!」 「おちびちゃんのまえでおのこしなんておげひんなまねはしないぞぉ~♪」 「ゆっ…ゆっ…もっと…ゆっくりしたかった…」 ミリィには目の前で何が起きているのか理解できない。 まさか自分の母親が… 友達を食べるとは… ミリィには思いつきもしなかった… 「う~♪おいしかったぞぉ~♪おちびちゃんありがとうだぞぉ~♪」 そこには、れいむの皮だけが残される。 ミリィには信じられない。 目の前のぺらぺらとした皮が さっきまで一緒にゆっくりしていた れいむだなんて… 「う…うあああああああああああああ!!」 「お、おちびちゃん!?どうしたのぉ!?」 友達…まんまぁ…れいむ…食べる… 怒り、悲しみ、憎しみ…ミリィの中で色々な感情が渦巻く。 「あつい…あついのぉぉぉぉ!!」 ミリィは自身の体の変調に耐えきれず叫ぶ。 「う…あ…あ…」 あつい にくい くるしい ゆるせない たすけて れいむを まんまぁ かえして 「うあああああああああ!!」 行き場の無い感情。 ミリィの中で走り回る。 「う~!おちびちゃん!おちびちゃああああん!さくや~!さくやああ!たすけてぇ~!」 ミリィの意識はそこで途切れた。 場面が変わる ここがどこかは自分にはわからない そこで眠っているゆっくりできていないゆっくりを見つけた 自分にはそれだけで十分だった 「おちびちゃん…ふりゃあん…う~…う~…」 そのゆっくりできていないゆっくりは幸せそうに寝言を言っている。 目の前のゆっくりが誰なのかは知らない。 しかし… 目の前のゆっくりがゆっくりできていないということだけはわかった。 そのゆっくりに『せいっさい』を加える。 ゆっくりできていないのだから。 なんだか少し動きづらかったが仕方ない。 目の前の眠っているゆっくりに向かって右腕を動かす。 「う…うぁ!?」 ゆっくりできていないゆっくりが目を覚ましたようだ。 驚きの表情でこちらを見ている。 「お、おちびちゃん…!?」 黙れ 黙れ お前なんか… 「ゆっくりしねぇっ!」 その呪いの言葉と共に目の前のゆっくりに向かって腕を動かす。 目の前のゆっくりは逃げようともしない。 好都合だ。 「い…いたいぞぉ!やめてぇ~!!」 「ゆっくりしねぇっ!ゆっくりしねぇっ!ゆっくりしねぇっ!ゆっくりしねぇっ!」 なんだか楽しくなってきた。 目の前のゆっくりは最初は叫んでいたが、だんだん動かなくなってきた。 つまらない。 そろそろとどめを刺そう。 右手を空中に掲げる。 右手を掲げたことで何が起きるかなんてことはわからない。 ただ、何かが起こるという確信だけはあった。 体だけが覚えているかのように。 右手が紅く光る。 右手から紅く光る槍が現れた。 その槍を構える。 目の前のゆっくりを貫けるように。 「お…ちび…ちゃん…ふ…りゃん…」 目の前のゆっくりが何かをつぶやいているが気にしない。 狙いはターゲットの中心部分。 「ゆっくり…」 「ふ…りゃ…ん…」 「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」 そして、槍は放たれた。 そこでミリィの目が覚めた。 ミリィは全身に冷や汗をかいている。 今の夢は一体…。 いやだ…まさか…そんな… そう思いながらも、ミリィは確信を持っていた。 ミリィは自分の両手を見る。 自分は。 この手で。 母親を。 周辺を見回してみると、3匹のゆっくりが眠っているのが見えた。 辺りはもう暗かったので見えにくかったが、マーサ・レイン・メイシャで間違いなかった。 3匹を起こさないよう、慎重にその場を後にする。 今は1人になりたい気分だった。 「まんまぁ…」 ミリィは思い出す。 記憶の中にある母親との思い出を。 それはとってもゆっくり出来る思い出。 記憶にある限り、母親はずっと自分を大切にしてくれた。 自分にとっても大切な母親だったことは間違いない。 しかし、れいむを食べたことは受け入れ難かった。 同時に、自分がやってしまったことも。 捕食種と基本種。 どうしてこのような関係が生まれてしまったのだろうか。 皆でゆっくり出来ればよかったのに。 どうして同じゆっくり同士で。 どうして…。 ミリィの中でぐるぐると色々な思いが駆け巡る。 その時 「ぎゃお~♪たべちゃうぞぉ♪」 「れみりゃはゆっくりできないよ!こっちこないでね!」 「こにゃいでね!」 3種類の声がミリィの耳に届いた。 声が聞こえた方向を見てみると、胴なしれみりゃが胴なしれいむの親子を追いかけているのが見えた。 ミリィは無言のまま3匹のいる方へと歩く。 その顔は無表情のまま。 「うっう~♪…う?おっきなれみりゃ、どうしたのぉ?」 胴なしれみりゃが不思議そうな顔でミリィを見ている。 無邪気な笑顔。 しかし、その笑顔のまま親子れいむの命を奪うのだろう。 当然、ミリィにもそれは予想できた。 「れ、れみりゃがにひきぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 「にひきぃぃぃぃぃ!!!」 一方で絶望的な表情をしているれいむ親子。 すっかり混乱状態に陥っていた。 ミリィは胴なしれみりゃへ無表情のまま話しかける。 その深紅の瞳には何が映っていたのか。 誰にもわからなかった。 「やめるんだぞぉ…ゆっくりを食べるゆっくりはゆっくり出来ないんだぞぉ…」 「う…?おっきなれみりゃはなにをいっているのぉ?ゆっくりをたべなきゃゆっくりできないぞぉ…」 胴なしれみりゃにはミリィの言っていることはわからない。 今までゆっくりを食べて生きてきたのだから。 ゆっくりと食べることでゆっくりしてきたのだから。 突然『お前はゆっくり出来ない』と言われても、困惑するだけだ。 自分が全否定された感覚に陥る。 れいむの親子はその場から動くことが出来ない。 2匹のれみりゃへの恐怖によってすっかり体がすくんでしまったようだ。 「他に食べられる物だってあるぞぉ…あまあまなら木の実だってあるぞぉ…」 「…う?あまあまなきのみ?」 胴なしれみりゃはその言葉に辺りを見渡す。 あまあまなれいむの親子と謎の胴付きれみりゃ、そしてどこにでもある木と草むら。 胴なしれみりゃの深紅の瞳にはそれしか映らなかった。 「ここにはあまあまなきのみなんかないぞぉ!!ゆっくりをたべなきゃゆっくりできないぞぉ!!」 胴なしれみりゃは憤慨する。 危うく目の前の胴付きれみりゃに騙されるところであった、と。 「おっきなれみりゃは…れみぃからそのゆっくりをよこどりするつもりなんだぞぉ!」 胴なしれみりゃの笑顔が怒りへと変わる。 目の前の胴付きれみりゃは、自身の獲物を横取りする敵だ。 胴なしれみりゃはそのように結論を出した。 ミリィは胴なしれみりゃを見て溜息をつく。 何故こんなことが分からないのか。 何故ゆっくりを食べるのか。 何故こんなに愚かなのか。 ミリィは完全に目の前の胴なしれみりゃを見下していた。 「う~!!」 胴なしれみりゃがミリィに体当たりを仕掛ける。 自身の体当たりに自信を持っていた胴なしれみりゃ。 何故なら、この体当たりで数々の獲物を仕留めてきたのだから。 相手が胴付きれみりゃだろうと、この体当たりなら絶対に勝てる。 そう疑うことはなかった。 実際に体当たりを仕掛けるまでは。 しかし、手ごたえはなかった。 いや、それどころか胴なしれみりゃは動けなくなってしまった。 何故なら、胴なしれみりゃの翼はミリィの手に掴まれていたからだ。 「う、うごけないんだぞぉ!?」 「…単純な動きだもの」 ほっそりとした胴体に、白くすらっとした綺麗な四肢。 顔も小さくなっており、満面の笑顔はなく深紅の瞳だけが光っている。 そしてその深紅の光は非常に鋭い。 まさに深紅の槍のようだった。 「ゆっくり出来なくなりたくなければ、ゆっくりせずにこの場から去れ」 その姿は、まさにミリィがおねーさんと慕うレミリア・スカーレットに瓜二つであった。 「う…う…う…?」 胴なしれみりゃは混乱する。 目の前の胴付きれみりゃは一体何なのか。 そう考えていると、自身の身体が解放される。 ミリィが胴なしれみりゃを掴んでいた手を離したのだ。 動ける。 飛べる。 今度こそ体当たりを仕掛けなければ。 胴なしれみりゃはあまりの混乱ぶりに判断能力を失っていた。 目の前の胴付きれみりゃがどのような存在か。 自分が勝てる相手なのか。 この胴なしれみりゃも幾つもの修羅場を潜り抜けてきたはずなのに。 無謀にも。 「う~!!」 再び体当たりを仕掛けた。 「…愚かな」 胴なしれみりゃの耳元で鋭い声が聞こえた。 「私の名前は…ミリィ」 視界に広がる深紅の槍状の光。 「ゆっくり出来ないゆっくりは排除する」 刺さるととっても痛そう。 「ゆっくり出来ない愚かなゆっくりよ」 その深紅の光は自身の目の前にある。 「去れ。三度は言わない」 今にもこっちに向かって来そう。 「もし去らないのならば…」 もしあれがこっちに少しでも向かってくれば 「ここで…」 自分は 「しね」 死ぬ。 「うっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」 胴なしれみりゃは悲鳴を上げながら、漆黒の空へ逃げていく。 土壇場で自身の野生の本能を思い出した。 あの胴付きれみりゃには絶対に勝てない。 もしあと一秒でもあの場に留まっていれば自身は死んでいた。 最早それを疑っていなかった。 いや、そもそもあれは本当にれみりゃなのか。 胴なしれみりゃには最早何が何だか分からなかった。 とにかくこの場を離れてゆっくりしたかった。 「…ふん…」 ミリィは逃げて行くその後ろ姿にすでに興味を持っていなかった。 右手の中にある、胴なしれみりゃの眼前に突きつけていた深紅の光を消失させる。 その深紅の光はロンギヌス。 かつて自身の母親を突き刺した罪深い槍だ。 ミリィは改めてれいむ親子へ向き直る。 その顔は先程までの無表情のままだ。 しかし、この瞬間のミリィは間違いなくゆっくり出来ていた。 醜悪な捕食種の牙から今度こそれいむを守れた。 今度こそ。 そう、今度こそだ。 ミリィはその想いと達成感を胸にこの上なくゆっくり出来ていた。 「「ゆっ…!!!」」 胴なしれいむはその深紅の視線を感じて怯える。 目の前にいるのは、姿はすっかり違うがれみりゃで間違いない…はずなのだから。 れいむ親子にとってはどのれみりゃも同じだ。 自身の姿を見つければ、一直線に牙を剥いて襲いかかってくる。 それは目の前のれみりゃも変わらない。 そう思っていた。 「…れいむ」 ミリィの鋭い声が静寂に響く。 「ひゃ…っひゃい!!」 れいむはあまりの恐怖に上手く言葉にならない。 しかし、自分に対して声をかけていることはわかったので、返事だけは返す。 ミリィとしては、別に脅すつもりはなかったのだが。 「さっさと巣へ逃げなさい…もしかしたら他にも貴方を食べようとするれみりゃがいるかもしれない」 そう言うとミリィは微かに笑う。 親れいむから見れば理解不能な出来事でしかなかった。 自分達を食べないれみりゃが存在するとは思わなかったからだ。 が、これはれいむにとって千歳一隅のチャンスであることには変わりない。 「あ、ありがとう!!…え、え~と、おちびちゃん!ゆっくりせずににげるよ!!」 「ゆっくりわかっちゃよ!!」 ミリィのいる方向とは逆の方向に逃げだす。 必死に跳ねる。 あのれみりゃの気が変わったら自分達は食べられてしまうかもしれない。 親れいむはミリィの言葉を完全に信じたわけではなかった。 だから必死に逃げていた。 「れいむの…子供の方!!」 離れて行く必死に跳ねる後頭部を見据えながらミリィは叫ぶ。 「ゆっ…?」 「おちびちゃん!はやくにげるよ!」 子れいむがその声に振り返る。 親れいむが子れいむに跳ねるよう促すが、子れいむはミリィへと視線を向けたままだった。 「ママ…いえ、お母さんを大事にしてあげなさい」 ミリィは出来るだけ優しく語りかける。 やはり怯えられるのはあまりゆっくり出来ることではなかった。 子れいむは一瞬呆然とする。 何を言われたのかわからなかったようだ。 「…ゆっきゅりりょうかいしたよ!!」 子れいむは満面の笑みを浮かべてその言葉に応える。 その表情にミリィも満足げに微笑する。 「さ、おちびちゃん!ゆっくりせずににげるよ!」 「ゆっきゅりりょうかいしたよ!!」 れいむ親子の姿が段々小さくなって行く。 ミリィの瞳は、れいむ親子が見えなくなるまで視線を逸らさなかった。 れいむ親子が去るとミリィは再び一匹になった。 身体の中を駆け回る感情。 「まだだ…まだ全然足りない…」 満たされない。 ミリィの心の中はその言葉が支配していた。 そう、ミリィは満たされていなかった。 砂漠の中で遭難したかのように。 渇いていた。 心が。 「…ふふ…」 ミリィは笑う。 暗く。 静かに。 今の自分なら何でも出来る。 全ての基本種のゆっくりを救うことだって。 絶対に出来る。 そう疑っていなかった。 れいむを救うことが出来る。 まりさも救うことが出来る。 自分のやりたいことは何でも出来る。 さあ、早くこの渇きを潤しに行きたい。 ミリィの心は渇きと歓喜に震えていた。 そして、静かに笑うミリィの後ろ姿に忍び寄る3匹のゆっくりの影。 「…お姉様?」 「ミリィ…なのぜ?」 「これは…一体…?」 それはレイン・マーサ・メイシャだった。 先程の胴なしれみりゃの叫びにより起きてしまったのだった。 ミリィは振り返り、深紅の視界に3匹の姿を認める。 「…お久しぶり…で良いのかしら?」 微かに笑った。 「お、お姉様…で、いいのよね?その姿…どうしたの?」 レインが戸惑うのも無理はない。 起きたらミリィがいなくなっていて、やっと見つけたと思ったら全く違う姿に変わっていたのだから。 しばしミリィとレインは互いに見つめ合っていた。 いや、見つめ合った…と言えば語弊があった。 ミリィは明らかに睨んでいたのだから。 やがてミリィが視線を外し、ふ、と微かに笑いながら口を開く。 「私は…弱い自分を捨てたの…」 「弱い自分…?」 その言葉に食いつくメイシャ。 弱い自分とは何のことを指すのか? マーサもミリィに何かがあったことを察する。 言いようのない不安に駆られたが、相手がミリィだということを自分に言い聞かせ、勇気を持って話しかけた。 レインやメイシャにも自身の気持ちを分かってもらえたのだから。 ミリィにだって。 そう信じて。 「ミリィ…何があったのぜ?」 「…別に…いえ、貴方達にも話しておくべきなのかもしれない…」 ミリィは一瞬拒絶を仕掛けるが、思い留まる。 目の前のゆっくり達はわずかな期間とはいえ一緒に過ごしたゆっくり達だ。 話くらいはしておくべきなのだと考え直したのだ。 「愚かなゆっくり達がいたことを…」 自嘲の声が混じっていた。 「あれはまだ私が胴なしの時だった…私はママと咲夜とお姉さんと他の人達と一緒に紅魔館でゆっくりしていた…」 ミリィが淡々と話し始める。 「ある日、私は外に出たいと咲夜やママにお願いした。聞き入れてもらえなかったけどね」 一言一言、思い出すように。 「だけどそれでも出てみたかった。ママから外のお話を何度も聞いていたから」 懐かしげに。 「だから私は無理矢理外に出ることにした。ママにも咲夜にも告げずにね」 愛おしげに。 「気持ちよかった…。紅魔館の外にはこんなに広い世界が広がっているなんて思いもしなかった」 悲しそうに。 「しばらく風を感じながら飛んでいた時、地面で動く物体を見つけた」 苦しそうに。 「それが私の一番最初のゆっくりのお友達。ゆっくりれいむだった」 マーサ・メイシャ・レインの3匹は聞き入っている。 「れいむと一緒にいるととってもゆっくり出来た。初めてのお友達だったから」 ミリィの一言一言を 「しばらくゆっくりしていたら…私のママが迎えに来てくれた。私がこっそり外に出てしまったことがばれてしまったんでしょうね」 決して 「ママが来てくれたことが嬉しかった私は…ママにお友達であるれいむを紹介しようとした。ミリィの初めてのお友達だよ、ってね」 聞き漏らさぬように。 「でもね…でもね…ママは…」 ミリィが震えだす。 「ママは…」 それは怒りか、悲しみか、苦しみか。 「ママは…れいむを食べちゃった…」 ミリィ自身にもわからなかった。 メイシャは納得がいった。 ミリィが何故ゆっくりを食べることを頑なに拒むのかを。 レインは思った。 仮に自身がミリィの母親だったら、自分もそのれいむを食べていたんだろうな、と。 マーサは同情した。 そのれいむは運が悪かったんだろうな、と。 「でもね…でもね…話はこれで終わりじゃないの」 ミリィは自身の両手を見る。 ほっそりとした白い手。 「私は急に体が熱くなって…気が付いたら紅魔館にいたの。多分、咲夜か美鈴が運んでくれたんでしょうね」 ミリィの遠くを見据えているかのような瞳。 今のミリィの瞳にはそこに何が映っているのか。 何を見据えているのか。 「私は胴付きになっていた。そして、私の目の前にはママが寝ていた。多分、寝ずに見守っていてくれたんでしょうね」 「それで胴付きに?まさか…感情…?」 胴付きという言葉にメイシャが反応する。 一匹でぼそぼそと呟き始める。 ミリィはメイシャを無視して話を続ける。 「でもね…私はママが憎かった。そう、憎かった…はず…」 ここでミリィは言葉を濁す。 ミリィの中に迷いが生じたのだ。 「…うん、憎かったんだ。止まれなかった。許せなかった。お友達であるれいむを食べたママを」 レインとマーサが息を呑む。 「私は紅い槍…そう、ロンギヌスを出してね…」 ミリィは苦しそうに息を吐き出す。 「ママを…」 思い出すことさえもつらそうに。 「ママを…ロンギヌスで…」 必死に吐き出す。 「永遠にゆっくり出来なくさせてしまったの…」 ミリィの言葉に辺りが静まり返る。 マーサも。 レインも。 メイシャも。 誰も動けなかった。 それを予想していたのか、ミリィは自嘲気味にふ、と軽く笑う。 「私とママは…ゆっくり出来るゆっくりをゆっくり出来なくさせてしまった…」 ミリィの瞳に決意の色が宿る。 「だから…私は決めたの…」 ミリィは感情の全てを吐きだすかのように叫ぶ。 「ゆっくり出来るゆっくりをゆっくりさせてあげるとね!!」 ロンギヌス?・・・グングニルじゃないの? -- 名無しさん (2011-03-17 17 19 12) 突然カリスマが出てきたな。口調もゆっくりっぽく無くなったし。 しかしゆっくりさくやを探すという目的はどうなったのだろう? -- 名無しさん (2011-09-01 16 24 58) 名前 コメント
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投稿されたSSを更新順に纏めたページです。 下に行くほど新しい作品です。 作品の後ろにある文字はジャンルマークです。 1.アリス×ゆっくり魔理沙 性 悪戯 東 2.森のゆっくり 野生 3.ゆっくりちぇんとゆっくりらんしゃま 野生 人 4.家のゆっくり 気楽 現 人 6.ゆっくりとゆっくりするわたし 気楽 幻 人 7.もちもちゆっくり 気楽 人 8.ゆっくりのいる生活 気楽 現 人 9.ゆっくりと老人 悪戯 幻 人 東 10.アリス×ゆっくり魔理沙3 その他 幻 東 11.アリス×ゆっくり魔理沙4 気楽 12.ゆっくりれみりゃのおかしな友達 上 鬱 シリアス 13.ゆっくりれみりゃのおかしな友達 下 鬱 激 シリアス 14.魔理沙×ゆっくり魔理沙 気楽 15.アリス×ゆっくり魔理沙5 気楽 16.魔理沙のゆっくりな日々 悪戯 幻 東 17.ゆっくりれみりゃと仲良しゆっくり 気楽 18.アリス×ゆっくり魔理沙6 気楽 19.アリス×ゆっくり魔理沙7 その他 20.かぜひきゆっくり その他 21.ゆっくりれいむとゆっくりポイント 哀愁 22.変身 ~グレゴール・マリサ~ 気楽 23.変身2 気楽 24.ゆっくりアパートメント その他 25.理想郷 鬱 その他 26.風のゆっくり オマ 幻 人 東 27.胸ポケット 哀愁 人 28.新・アリス×ゆっくり魔理沙 気楽 29.慧音とゆっちゅりー 野生 幻 東 30.新・アリス×ゆっくり魔理沙2 ~銘菓 ゆっくり大福編~ 気楽 31.新・アリス×ゆっくり魔理沙3 気楽 32.家のゆっくり2 気楽 33.ゆっくりれいむと人間の体 哀愁 34.ゆっくりの産卵 性 鬱 野生 家 35.俺を虐待 気楽 幻 来 36.ほんめーりん×ゆっちゅりー 甘甘時計責め 性 悪戯 37.家のゆっくり3 気楽 38.ゆちゅりーの性質 悪 野生 39.ゆちゅりーの仲裁 悪 野生 40.今日は土用丑の日 気楽 41.まて 悪戯 幻 東 42.真夏の夜の霊夢 第一章 ~博麗脅迫!人形遣いの逆襲~ ついで 気楽 43.ゆっくりの帰るところ 鬱 激 野生 幻 人 44.暖かな日差し 哀愁 幻 東 45.ゆーピット 気楽 46.人間とゆっくりの境界1 鬱 野生 幻 家 人 47.人間とゆっくりの境界2 気楽 48.氷精と餡子 哀愁 49.ゆっくり姉妹 前編 鬱 激 シリアス 50.ゆっくり姉妹 中篇 鬱 激 シリアス 51.ゆっくり姉妹 後篇 鬱 激 シリアス 52.人間とゆっくりの境界3 気楽 53.ゆっくりお留守番 気楽 幻 東 54.しあわせのゆっくり 気楽 55.決戦! 幽々子VSゆっくり 激 気楽 56.決戦! 幽々子VSゆっくり 続き 激 気楽 57.決戦! 幽々子VSゆっくり 舞台裏 気楽 58.ぱちゅりーとかいだん 気楽 59.レアゆっくりハンターMARISA 野生 幻 家 東 60.ゆっくりアパートメント_れいむ親子 その他 家 61.普通の魔法使い魔理沙ちゃん 第一話 気楽 62.雛饅頭 気楽 63.わからない橙、わかりたい橙 前編 シリアス 人 64.わからない橙、わかりたい橙 後編 シリアス 人 幻 65.人間とゆっくりの境界4 気楽 66.人間とゆっくりの境界5 気楽 67.ルーミアとゆっくり 気楽 幻 東 69.本当にやりたかったこと 鬱 激 野生 幻 動 東 70.聖者の途 前編 鬱 激 シリアス 幻 家 人 東 71.聖者の途 後編 鬱 激 シリアス 幻 家 人 東 72.ご当地ゆっくり! 気楽 73.愛でスレ的ゆっくり加工場 鬱 シリアス 人 74.ゆっくりもこ 鬱 シリアス 幻 東 75.ゆっくり観察記 気楽 幻 東 76.ゆっくりショートショート集『稗田ゆっくり録』 気楽 77.ちびゆっくりをゆうかいしてゆっくりさせないはなし 気楽 現 人 78.続、愛でスレ的ゆっくり加工場 鬱 シリアス 79.ねことれいむ 鬱 気楽 動 80.ひとりぼっち? 鬱 野生 動 人 81.人間とゆっくりの境界6 気楽 82.ご当地ゆっくり! 広島?編 気楽 83.世界樹のゆっくり 気楽 昔 人 84.フリーダムゆっくり 気楽 人 85.彼岸誘い オマ 86.バカなゆっくり 野生 87.ゆっくり大サーカス 気楽 88.ゆっくりを飼うときに気をつけること その他 89.salary 1 気楽 現 人 90.ゆっくりらんど 気楽 幻 人 91.あるれいむの話 哀愁 現 人 92.予防接種 気楽 現 人 93.ゆっくりのお医者さん 鬱 シリアス 94.恐怖の館 気楽 幻 人 95.salary 2 気楽 現 人 97.ゆっくりわらし 気楽 現 人 98.魔理沙の小さな暴走 気楽 幻 東 99.ゆっくり信仰していってね!!! 気楽 幻 東 100.~ゆっくりの出産~ 性 鬱 野生 家 101.第一話『きもんげジュニアのショーバイ☆しょーばい!』 気楽 102.ゆっくり新聞 気楽 103.『ゆっくりとテレビ』 気楽 104.第二話 『現れた影!!きもんげJrの商売大作戦!!』 気楽 105.博麗神社とゆっくりかんぬし 気楽 幻 東 106.愛でスレ的ゆっくり加工場 ~番外編「幸せのかたち」 鬱 シリアス 107.ゆっくりのお医者さん ~出会い編~ 鬱 シリアス 108.ゆっくりパークの春夏秋冬part1 野生 109.travianでゆっくり その他 110.ゆっくりパークの春夏秋冬part2 激 野生 111.ゆっくりパークの春夏秋冬part3 激 野生 112.不思議な絆 哀愁 113.ゆっくりパークの春夏秋冬part4 野生 114.眠れぬ夜のゆっくり シリアス 幻 東 115.秋の憂鬱 野生 人 116.『何かがやって来た日』 恐怖 117.新・アリス×ゆっくり魔理沙4 その他 118.ゆっくりパークの春夏秋冬part5 その他 119.新・アリス×ゆっくり魔理沙5 その他 120.ゆっくりちるのの飼育日誌1 気楽 121.ゆっくりちるのの飼育日誌2 気楽 122.9発でよい 気楽 幻 東 123.そらを夢見て 鬱 哀愁 124.ゆっくりスの翼 ――妖立宇宙軍―― 哀愁 125.ゆっくり住み着いたよ! 気楽 126.お代 その他 127.episode01 気楽 幻 人 128.episode02 気楽 現 人 129.『すりすり』 気楽 130.『ゆっくりりぐる』 野生 131.『始めの一歩』 野生 132.レミリアの気まぐれ レミリア編 気楽 幻 家 東 133.レミリアの気まぐれ パチュリー編 気楽 幻 家 東 134.ゆっくリハビリの夏 (前編) 性 鬱 激 シリアス 家 人 135.ゆっくリハビリの夏 (後編) 性 鬱 野生 家 人 136.おやまのヒミツ 気楽 137.ある男の悲劇 気楽 幻 東 138.四方山話 その他 139.お手伝いするどぉ♪ 気楽 幻 東 140.きずな①~出会い~ 鬱 悪 シリアス 141.れみりゃの一日 激 野生 142.捕食種とよばれていたものたち その他 143.ゆっくりの赤ちゃんってマジ可愛いよね 気楽 幻 家 東 144.らばうる 哀愁 145.悲しみの連鎖 哀愁 幻 東 146.アリスとゆっくりありすの生活 シリアス 幻 家 東 147.take 鬱 激 気楽 現 人 148.ビグ・れいむ オマ 幻 人 149.きずな②~触れ合い~ 鬱 シリアス 150.あなたが笑うまで・上 激 シリアス 151.あなたが笑うまで・下 激 シリアス 152.アリスとゆっくりありすの生活 その2 気楽 幻 家 東 153.逃げるな戦え、いややっぱ逃げるんだちぇん 気楽 現 家 人 154.ゆっくりのいる一日 気楽 現 人 155.人間とゆっくりの境界7 気楽 156.『だれもしらない。』 哀愁 157.ゆっくり怪談「ゆっくり坊」 恐怖 158.『れみりゃと俺』 気楽 159.きずな③~難関~ 鬱 シリアス 160.普通のまりさ 悪戯 幻 東 161.『はさんでもいいのよ?』 気楽 162.『ゆっくり住み着いてるよ!』 気楽 163.『空を飛ぶ』 野生 164.『その頃のありす』 気楽 165.『ゆっくりプレイス』 気楽 166.乱れ舞う麝香 その他 167.きずな④~陽~ 鬱 シリアス 168.バニーゆっくり オマ 169.うーちえん・上 鬱 激 野生 家 170.うーちえん・下 鬱 激 野生 家 171.ちるのの変 気楽 172.ゆっくりちぇんを飼ってみた 気楽 人 173.てんこと永江さん オマ 幻 東 174.『不確定名:やわらかいがんめん』 気楽 175.『ちびとの遭遇』 気楽 176.『がちゃがちゃ』 気楽 177.『秋色のおりきゃら姉妹』 気楽 178.きずな⑤~過去~前半 鬱 シリアス 179.ゆっくりの愚痴 その他 人 180.にとりとぱちゅりーと妖怪の子とそしてれみりゃ1(前編) 気楽 181.にとりとぱちゅりーと妖怪の子とそしてれみりゃ1(後編) 気楽 182.ようこそ!ゆっくり図書館へ! 気楽 183.きずな⑤~過去~後半 鬱 シリアス 184.静緩飛行 気楽 185.『とある忙しい日の午後』 気楽 家 人 186.白石さん 気楽 187.『ありす・いん・ほーむ』 気楽 188.『れみぃとあそぼ!!○S』 気楽 189.がんばれ赤さくや 野生 家 人 190.『友と繰り返した日々』 哀愁 191.『わいるどまりさ』 気楽 192.『ゆっくりの戯れ』 気楽 193.―君といつまでも その他 194.ゆっくりの寿命は短い 前編 野生 家 195.ゆっくりの寿命は短い 後編 性 野生 家 196.アリスとゆっくりありすの生活 その3 気楽 幻 家 東 197.きずな⑥~陰~ 鬱 シリアス 198.ホットケーキを食べる日 前編 鬱 激 シリアス 199.ホットケーキを食べる日 後編 鬱 激 シリアス 200.実は2日遅れていたスィー 気楽 201.ゆっくりパークの春夏秋冬part6 その他 202.ゆっくりパークの春夏秋冬part7 その他 203.参上!メカまりさ 哀愁 家 人 204.激闘!真ゆっくり四天王 気楽 205.『ぬくぬくのてーぶる』 気楽 206.永遠な二人 気楽 幻 東 207.きずな⑦~友達~前半 鬱 シリアス 208.あややと私 オマ 209.『むきゅむきゅな一日』 気楽 210.社会科見学 気楽 幻 東 211.耳無しれーせん 激 悪 シリアス 東 212.木曜の 晩には誰も だいぶせず その他 現 人 213.ボックスまりさ 気楽 214.『よいどれみりゃの世界』 気楽 215.ゆっくりあやと文 その他 幻 東 216.おりんりんランド 気楽 家 東 217.らんしゃま観察日記 気楽 家 人 218.軽く外れたタガ シリアス 219.ゆっくり寝ようね 気楽 220.きずな⑦~友達~後半 鬱 シリアス 223.彼岸の小町エンジェル 性 その他 幻 東 224.美鈴の休日 激突!めーりん対ゆーぎ!! 激 その他 幻 人 東 225.美鈴の休日 神様の暇潰し 激 その他 幻 東 226.プロローグ?的な何か。 気楽 227.ちぇんの一日・要約編。 気楽 228.永遠な二人 第二夜 気楽 幻 東 229.空飛ぶ不思議な饅頭 気楽 230.帰郷 気楽 231.おやすみパーティ 哀愁 232.大衆浴場まるゆ 性 気楽 233.お日様が輝いていた日のお話 気楽 家 234.進化 気楽 235.きめぇ丸と自転車 気楽 236.美鈴の休日 類は友を呼ぶ 気楽 幻 東 237.世界で一番☆おぜうさま 哀愁 238.旅は道連れ 世は情け シリアス 幻 東 239.ラオめーりん1 激 悪 野生 幻 家 240.永遠亭のゆっくり研究施設取材 気楽 幻 東 241.ラオめーりん2 悪 野生 幻 家 242.ぱちぇの冬 性 野生 243.ずっと 続く フェイント 激 悪 その他 244.帰郷2 気楽 245.ゆっくりあたためるね! 激 悪 その他 246.『おかしな辞書』 気楽 247.『未確認ゆっくりシンドローム』 気楽 248.さくやとめーりん 気楽 249.『ゆーびぃとの出会い』 野生 250.ゆっくりと手品師 気楽 幻 人 創発板移転に伴い旧ジャンルマークは取り外しました。新ジャンルマーク設置に御協力下さい。 旧ページはSS一覧 更新順として保管しています。
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注意 出てくるゆっくりはみんな最終的に死にます。 おれの好きなゆっくりが死ぬなど許せんッ!!!という方はご遠慮ください。 「ホーホー」 鳴き声を上げ、木の上で一羽の梟が獲物がかかるのを待ち続ける。 梟は肉食で鼠等を捕食する一流のハンターだ。 そんな彼等が今狙っているのは鼠ではない。 鼠よりも大きく、それでいてそれに匹敵する繁殖力を持つナマモノ“ゆっくり” だった。 「ホー…ホー…」 この梟は幻想郷に住む梟の中で古参であり、あまりにも膨大な時間を生きている 為に妖怪になりかけていた。 その為知能もよく回り、餌には困らなかった。 「どうじでうごげないのおおおおおおッ!!?」 下では“撒き餌”が騒がしい。 木から梟が見るのは二匹のゆっくりまりさとゆっくりれいむの番だ。 しかもれいむは奴らの言い方からすればにんっしんしていた。 頭の茎を揺らしながらまりさに寄り添っている。 どうしてこんな事になってしまったのだろうか? れいむはもう何度したかわからない自問自答をした。 自分達はただ巣の中でゆっくりしていただけだった。 かわいい赤ちゃんとかっこいいまりさといっしょにゆっくりしていただけだった 。 だけどいきなり恐い鳥さんがやって来てまりさを連れていってそしてれいむも… 。 その時の出来事を思い出しガタガタとれいむは震え出す。 彼女達は動かない。いや、動けないのだ。 身体のあんよにあたる部分を鳥に啄まれてしまったからだ。 だから暗い夜の森の中で寄り添っているしか出来ない。 ゆっくりは捕食種でもない限り夜中は出歩かない。 夜は危険がいっぱいだからだ。だから巣の中に閉じこもっている。 それでも安全とは言い難いがそちらの方が助かる確率が高かった。 しかし今は森のど真ん中にいる。 身動きもとれない。 動物に襲われたらひとたまりもない。 そんな恐怖に終わりが来た…最悪の形で。 「うーうー☆」 「れみりゃだああああああああッ!!!」 まりさの絶叫が響き渡る。 ぎゃあぎゃあと騒いでいたせいで見つかってしまったのだ。 「う~♪あまあまみつけたど~☆」 そこに現れたのは胴なしれみりゃだ。 大きさ的には成体よりは小さいといった感じだ。 おそらく親と狩りに来たのだろう。 獲物としては十二分だ。 妖怪や野犬だったら返り討ちになりかねない。 梟は仕掛けが功を奏した為ほくそ笑む。 しかし油断はしない。 長生きの秘訣は焦らない事だと自分に言い聞かす。 「やだこっちこないでええええええッ!!?」 れいむが涙を流しながら叫ぶ。 「うるさいど~♪ あまあまはえれがんとなおぜうさまのでざーどになるのがしあわせなんだど~♪ 」 「そんなのぜんぜんじあわぜじゃないよー!!」 泣き叫ぶれいむに対して胴なしれみりゃは今にも襲い掛かろうとしている。 「おちびじゃんすごいんだど~!!」 そんな言葉と共に胴ありのれみりゃがやって来る。 おそらく親なのだろう。 胴なしれみりゃが襲い掛からなかったのは親を待っていたんだろう。 まあ動いたら襲い掛かるつもりだったんだろうけどれいむ達は底部を啄まれてい るから身動きとれなかったから動かなかったのだろうけど。 「う~、おねえちゃんすごいんだど~!」 「さすがはれみりゃのじまんのいもうとなんだど~☆」 他にも三匹胴なしれみりゃが跳ねをパタパタさせてやって来る。 思ったよりも大量だ。 梟の目的はれみりゃ等肉の身体を持つ生物の捕獲だった。 梟は肉食だ。ゆっくりのような餡子饅頭は好まない。少なくともこの梟はそうだ った。 ゆっくりは数が多く、巣が見つけやすく、ゆっくり自体捕まえやすい。 梟の体躯にはゆっくりの巣はちょうどよく潜り込める広さなのだ。 個人的には好みではないが捕まえやすい獲物…それを使えば他の獲物も捕まえや すくなるんじゃないか?とこの梟は考えた。 そして考えついた手段がこれだった。 今れみりゃ達は皿におかれたディナーとなったのだ。 警戒が強ければ不自然に思うかもしれないが残念ながらこのれみりゃ達にそこま で考える知能はなかった。 「きょうはおちびちゃんがぷっでぃんのつぎにすごいごちそうをみつけたんだど ~♪すごいど~♪」 親れみりゃは胴なしの子れみりゃの頭をなでなでする。 れみりゃは頭のいい個体ではない為捕まえた獲物はその場で食べてしまう。 そしてその間は本来ならば周囲を警戒しなければならないのによくわからない“ こうまかんのおぜうさま”としてのプライドとやらがある為でディナーは優雅に 食べるそうだ。傍目にも優雅にはカケラも見えないが。 しかも中身はほかほかの肉まん。 肉食のこの梟にとってまさにうってつけのカモだった。 「いただきますだど~♪」 親れみりゃの許可を得て子れみりゃがまりさに襲い掛かる。 「こないでね!たべるなられいむにぎゃあああああああッ!!!」 三方向から中身を吸われ絶叫するまりさ。 みるみる内にぺらぺな皮になっていく。 「うー!うー!」 一匹あぶれた子れみりゃが物欲しそうに見ている。 「だめなんだどー☆ おねえちゃんはいもうどにさきをゆずってあげるんだどー♪」 「う~…」 どうやら我慢しているのはこの中で一番上の姉のようだ。 サイズは大した違いは無いから時間的にはあまり差はないだろうが。 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…」 皮だけに等しい状態になったまりさが痙攣している。 既に意識は無いだろう。 「ばりさぁッ!!しっかりじでぇッ!!」 れいむが泣き叫ぶ。 見捨てられたのを聞いていなかったのか今もまりさを慕っていた。 だがそんな想い等ここでは糞の役にも立たない。 「めいんでぃっしゅをいただくんだど~♪」 そう言って親れみりゃはれいむの頭に生えた茎を折った。 「「「「ゆぎゃああああああああああああああああああッ!!!」」」」 すやすやと希望に満ち溢れた未来が待っていた筈の赤ゆっくり達が目を見開き絶 叫を上げる。 中途半端に成長して自我が芽生えていたのが不幸だった。 「ゆっくちしていってね!」と親に告げる筈の口は、「ゆ…ゆ…」と絶叫と嗚咽 を漏らすだけだった。 「でいぶのあがじゃんがあああああああああッ!!!」 れいむが喧しく泣き叫ぶ。 遠くにいるこちらからでも五月蝿いのだ、れみりゃからすれば苦痛だろう。 「うー、うるさいどー!!」 「ゆげ!?」 親れみりゃがれいむを蹴り飛ばす。 そのままころころと転がり、止まる。 それに満足したのか親れみりゃは、 「うー、おちびちゃんおまたせしたんだどー♪」 そう言った親れみりゃの言葉と共に我慢していた子れみりゃがれいむに襲い掛か る。 「やめてね!れいむおいしくないかぎゃあああああああああ!!」 「うー!」 れいむの中身がどんどん吸い出されていく。 「やだあ!れいむじにだくない! まりさとあかちゃんとゆっくりずるのぉッ!!! いっしょにおうたうたったりおさんぽしたりしてずっとゆっくりするのぉッ!! 」 れいむは足掻くが子れみりゃの牙はがっちりとはまり、抜けない。 最期の最後、れいむはどうしてこんな目に遭うのかと思っていた。 れいむは幸せだった。 ゆっくりしてかっこいいまりさと一緒にゆっくりして赤ちゃんが出来て、ゆっく りした幸せな未来が続くと信じて疑ってなかった。 なのに現実はまりさや赤ちゃんを殺され、自分もれみりゃに食われている。 どうしてこんな事になったのか? そうだ…あのこわいとりさんがれいむたちのゆっくりプレイスにきたからだ。 れいむの脳裏に丸い狩人の双眸がフラッシュバックする。 どうして…れいむなにもわるいことしてないのに…。 れみりゃに中の餡子を吸われいく中、最後まで自分の幸福を奪った梟を脳裏に浮 かべながられいむは事切れた。 れいむが完全な皮のみになった頃、梟はようやく羽根を広げる。 生物は食事を終えた後は動きが鈍くなる。 それはゆっくりにも同じ事だった。 さて、あちらの食事は終わった。次はこちらの食事だ。 そう梟は言いたげに音も無く飛び立った。 「うー、でざーとなんだどー♪」 そう言って親れみりゃは茎に生えている赤ゆっくりをちぎり子れみりゃに投げ与 えた。 「うー!とってもでりしゃすなんだどー♪」 赤ゆっくりはれみりゃ達にとって御馳走だ。 赤ゆっくりがいる間は親のゆっくりが巣から出ないからだ。 とても美味しいでざーとに子れみりゃは舌鼓を打つ。 「う~、れみりゃもほしいんだど~♪」 れいむを吸い付くした子れみりゃも親れみりゃのいる方へ羽根をパタパタとさせ て近づこうとし、 「う!?」 音も無く消え去った。 それはあまりにも迅速で、赤ゆっくりを食べて幸せな子れみりゃとそれを配って いた親れみりゃが気付く事もなく、一番上の子れみりゃは梟に連れ去られたのだ った。 『う~!?』 叫び声を上げて逃げ出そうとするが梟の脚の爪ががっちりとくわえ込み、そのど ちらも出来ない。 そしてそのまま木に梟は着地する。 『うげぇ!?』 身体が圧迫される痛みが走るが致命傷にはならなかった。 距離はさして離れていない。 子れみりゃから親れみりゃの姿も見える。 『まんま~!?』 れみりゃは必死に親に助けを求めるが声も出せない状況では気付く訳もない。 『う~!?ざくや、だずげで~!?』 本能に刻まれたさくやという存在に助けを求めるがそれは無駄な行動でしかない 。 梟も悠長にしていれば他の獲物が逃げてしまう為一匹に時間をかける訳にはいか ない。 逃げられないように手早く羽根をむしり取る。 『うぎゃー!?いたいどー!!』 バタバタといっそう激しく暴れるが食い込んだ爪から逃れられない。 羽根がなくなったから飛んで逃げることも出来ない。 そして邪魔な帽子を捨て、啄みはじめる。 『もうやだどー!!れみりゃおうちにかえるー!!ぷぎゃ!うぎ!』 自分の中身が瞬く間に食われていく。 先程れいむにした事を身を持って味わっていく。 鋭い嘴によって生まれる鋭い痛みに子れみりゃの身体に生まれてから一度も味わ った事のない痛みが何度も襲い来る。 皮は破れ、中からほかほかの肉まんの湯気を立ち上らせながら必死に助けを求め るが既に口にあたる部分は破壊されて声が出ない。 『ま…んま……ざ…ぐや…』 目玉を啄まれ、残った片目で幸せそうな親れみりゃを見つめる。 親れみりゃはようやく一匹足りない事に気付くが、隠れんぼか何かと思い、「お ちびちゃんどこなんだど~?」と明るい口調で言っていた。 『たず…』 必死に懇願する子れみりゃ。 だがその願は絶対に届かない。 残った片目も梟に啄まれる。 必死に瞼を閉じるが、その瞼も食われ、剥き出しの目が前方を向く。 そこには、かつてれいむが死に際に思い浮かべたものと同じ丸い狩猟者の双眸。 それが子れみりゃの見た最後の光景だった。 目をえぐられ、視覚を完全に奪われる。 『だれ…たず…』 薄れいく意識の中、あの双眸を脳裏に浮かべながらあてもなく誰かに救いを求め 、子れみりゃは髪の毛と皮を残し、梟の腹の中に収まった。 皮肉にも、この子れみりゃが最後に浮かべた光景と死に方は先程喰らったれいむ とほぼ同じものだった。 「おちびちゃんかくれてないででてくるんだど~!」 一方、親れみりゃは赤ゆっくりがついた茎を片手に子れみりゃを捜す。 二つ程赤ゆっくりが残っているのはいなくなった子れみりゃの分だろう。 「う~、でてこないとでざーとたべちゃうんだど~!」 親れみりゃはいつまで経っても出て来ない子れみりゃに対して告げるが反応が返 って来ない。 れみりゃは幸福だった。 初めての一緒の狩りでおちびちゃんがすごい御馳走を見つけた事がとても嬉しか ったのだ。 はじめてのかりでこんなでりしゃすなあまあまをとれるなんてさすがおぜうさま のおちびちゃんたちだどー!と思っていた。 これから先自分を超えるカリスマ溢れるおぜうさまに相応しき存在になると信じ て疑わなかった。 こうまかんにかえったらなでなでしてあげるんだどー♪と思っていたらいつの間 にかおちびちゃんがいなくなっていたのだ。 最初はかくれんぼだと思っていたがいつまでも出て来ないので不安になってくる 。 だがおぜうさまのおちびちゃんがやられるわけないんだどーという何処にも保証 のない結論を信じて疑ってなかった。 そしてその想いは裏切られる事になる。最悪の形で…。 親れみりゃは見つけた。 子れみりゃの成れの果てを…。 それは子れみりゃの髪と皮、羽根、そして帽子だった。 無残に食い散らかされたそれは紛れも無く“死”を物語っていた。 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」 親れみりゃは絶叫する。 さっきまでかわいらしく笑っていた子れみりゃが今は醜い残骸に成り果てている 。 いずれえれがんとなおぜうさまになってこうまかんをひきいると親れみりゃが思 っていた妹思いな子れみりゃはもうどこにもいない。 かわいらしくてえれがんとな「う~☆」という鳴き声も聞けないのだ。 ショックのあまり持っていた茎を落としてしまう。 「おちびちゃんじっがりずるんだど~!!」 親れみりゃは子れみりゃの残骸をかき集める。 目尻には大粒の涙が流れていた。 ついさっき死んだれいむのように輝かしい未来が待っていた筈のれみりゃ達に突 然訪れた悪夢。 「う゛っ…う゛っ…おちびぢゃん…」 子れみりゃの残骸を抱きしめ落涙する親れみりゃ。 「まんまぁ~…げんきだすんだど~…」 そんな親れみりゃに今一番上となった二番目の子れみりゃが慰める。 「おねぇちゃんはきっとてんごくでしあわせにしてるんだど~」 自分だって家族で唯一の姉を失って辛いはずなのに一生懸命親れみりゃを慰めて いる。 「まんまぁ~ないちゃったらてんごくのおねえちゃんもかなしくなっちゃうんだ ど~」 「げんきだしてほしいど~」 そうだ…まだこのこたちがいるんだどー。 親れみりゃは三匹の子供達を見つめる。 一番上のお姉さんはいなくなってしまったけどまだこの子達がいる。 残念だけどいなくなった子の分まで仲良く幸福に暮らしていこう。 そう思い、両手に抱えていた子れみりゃの残骸を一旦地面にそっと置き、れみり ゃは落とした茎を拾う。 「みんなでこのでざーとをたべておねえちゃんのぶんまでこうまかんのあるじに ふさわしいおぜうさまになるんだどー♪」 「「「う~、わかったど~♪」」」 笑顔に戻ってくれた親れみりゃを見て子れみりゃも微笑む。 家族の死を乗り越えて彼女達は成長したのだ。 だが彼女達は気付いていない。 悪夢はまだ…終わっていないと…。 それは疾風のようだった。 親れみりゃが一番上の子れみりゃにあげる筈だった赤ゆっくりを二番目の子れみ りゃにあげようとしたその時、 「う゛ぁ!?」 一番下の子れみりゃが変な声を上げ、親れみりゃがそちらの方を向いた時には一 番下の子れみりゃの姿が何処にもなくなっていた。 「うぎゃあああああああッ!!?」 そして子れみりゃの絶叫が響き渡る。 「おちびちゃん!?」 さっきの悪夢が再び蘇る。 また突然いなくなってしまった子供に親れみりゃは蒼白しながら辺りを見回す。 今度はすぐに見つかった。 「う゛…う゛…」 一番下の子れみりゃは木の枝に突き刺され、肉汁を垂らし、痙攣していた。 まるで百舌鳥のはやにえだ。 急所を外してあるからまだ生きていた。 「おちびちゃん!!いまたすけるんだどー!!」 そう言ってれみりゃが羽ばたいて子れみりゃを助けようと飛ぶ。 もう子供を失うのは嫌だ。 そんな親として純真な思いでれみりゃは向かった。 だが、 「うがぁ!?」 突然れみりゃは現れた何かに弾き飛ばされた。 かつてれいむを蹴り飛ばした時のようにれみりゃは転がる。 「ううう…」 身体に激痛が走る。 だけど早く助けないと子供が死んでしまう。 そう思い立ち上がる。 これがハリウッド映画だったら涙を浮かべる名シーンになっただろう。 だがこれはハリウッド映画じゃない。 親れみりゃの子を思う気持ちなど全く意味の無いものだった。 「まんまぁ~!?たずげでだど~!!」 親れみりゃの眼前にはさっき自分を慰めてくれた二番目の子れみりゃが鳥に踏ま れていた。 丸い二つの無垢そうな双眸をした鳥。 無垢故に残酷さが込められている感じがする。 親れみりゃは理解した。 こいつがおちびちゃんを殺した奴だと。 「おちびちゃんをはなすんだど~!!!」 親れみりゃは叫ぶ。 今にも飛び掛かりたいのだが身体が痛くて上手く動けないのだ。 だから出来るのは精一杯の威嚇。 「まんまぁー!たずげでー! れみりゃまだじにだぐないんだどー!!」 泣き叫ぶ子れみりゃ。 逃げ出そうにも子れみりゃに食い込んだ爪は深く、梟の重量を跳ね退ける力も無 い。 姉の死に悲しみながらも親を一生懸命慰めてくれた心優しい(親れみりゃ基準) 子の顔が恐怖に歪んでいる。 唯一無事な子れみりゃはがたがたと震えている。 そして梟はさりげなく、あまりにも自然に子れみりゃの帽子をひきちぎった。 頭の一部分を含めて。 「うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」 突如頭に走る激痛に絶叫するしかない子れみりゃ。 帽子と髪は剥げ、右目の周囲は剥き出しの肉まんの中身が見える。 人間でいうなら骨が見えているようなものだ。 親れみりゃはその光景に唖然とする。 こうまかんのおぜうさまにふさわしいかわいらしくてかりすまあふれるおかおが …。 そこからは親れみりゃは何も言えなかった。 目を背けたくなるような光景(親れみりゃにとって)が広がっていたからだ。 しかし、自分達が危機的状況なのは変わらない。 梟はれみりゃが上手く動けないのを把握していた。 だから手早く羽根を毟り取り、吐き捨てる。 れみりゃの再生能力は高く、ゆっくりの中でも愚鈍な知能を補うかのように身体 能力は優れていた。あくまでゆっくりとしてだが…。だから羽根が毟られてもし ばらくすれば生えてくるのだ。 今この場で梟がやっているのは逃亡の防止。 この時点になると既に梟から逃げる方法は皆無になる。 他のゆっくりと違って羽根というアドバンテージを持つれみりゃだがその分跳ね るのが不向きなのだ。 羽根のない胴なしれみりゃはかつて獲物であった披捕食種にすら敗れる始末なの だ。 その為に他のゆっくりと比べて体付きに進化しやすいのかもしれない。 先程一匹を囮にして親れみりゃに不意打ちをし、痛烈なダメージを与えた。 囮を使わないでそのまま突っ込んでもよかったのだがこの梟は徹底して慎重だっ た。 もしも先にれみりゃが近付いてくるのに気付かれたら逃げられるのではないか? 手足がなく動きが鈍いれみりゃの方を攻撃しても牙にさえ気を付けていれば反撃 を受けることはない。 それ故の行動だった。 難点は悲鳴が喧しく、他の動物や妖怪をおびき寄せる可能性もあるが数だけは多 いゆっくりの悲鳴等森の中では日常茶飯事だ。 獣達が気にする事はない。 梟は安心して食事を進める。 と言ってもゆっくりのようにのんびりとしている訳ではない。 迅速に子れみりゃを喰らっていく。 「ざぎゅ!…だずげ…」 瞬く間に子れみりゃの身体が梟の腹に入っていく。 きっと中で姉妹と再会出来て先に食べられた子れみりゃも喜んでいるだろう。 「やめるんだどー!!!」 親れみりゃが身体の痛みを我慢して体当たりして来る。 子を思う気持ちが痛みを凌駕したのだ。 だがその程度で切り抜けるならこのような状況に陥らない。 梟は一旦食事を止め、軽く飛んでれみりゃの背後にまわって親れみりゃを地面に 叩きつけた。 時を軽く遡り、親れみりゃが梟に体当たりをかけたその時、 「ま…んまぁ…」 助けに来てくれた…。 中身が少なくなり思考が乏しくなった子れみりゃでもそれは理解出来た。 やっぱりまんまはさいきょーのきゅうけつきなんだどー。 こんなとりなんかあっというまにたべちゃうんだどー。 等と勝利を確信した子れみりゃ。 親れみりゃが木に突き刺さった子れみりゃを助けようとして梟に叩き落とされた 事など覚えていない。 だがこのれみりゃは知らない。 安易な希望は絶望を倍加させると。 自分にのしかかってた梟の重みが無くなる。 だが動けない。 子れみりゃは気付いていないがもう完全に助からない量まで啄まれてしまった。 もし親れみりゃの体当たりが成功し、もし梟に勝利した場合…それでも天文学的 確率の話だがそうなったとしても子れみりゃは死ぬ。それは絶対だった。 だが現実の悪夢は別の方向へと続く。 梟は難無くれみりゃの背後にまわり、地面に叩き付けた。 そう、子れみりゃがいる地面に。 それを子れみりゃはスローモーションのようにゆっくり感じた。 『まんまぁ~♪ こわかったんだど~☆』 カリスマ溢れる母の姿に恐れをなして梟が逃げ出したと本気で思っている子れみ りゃは自分を抱きしめてくれると思っていた。 だがそれは違う。 親れみりゃの背後にまわり、上から地面に押し付けているのだ。 『まんまぁ~いたがったんだど~!!』 死に際なせいか周囲の動きがゆっくりと感じられる。 五感が鋭敏にでもなったのだろうか。 親れみりゃと子れみりゃが触れ合う。 愛しい母の抱擁に痛みを忘れて子れみりゃは幸せな気持ちになる。 だが、 『まんま…すこしいたいんだど…』 親れみりゃの抱擁が強くなる。 そもそも子れみりゃが勘違いしているだけで抱擁ですらないのだから。 だんだんと自身が圧迫されていくのがわかる。 『まんまぁー!いたいんだど!はなれてほしいんだど!』 もはや母の抱擁などと生易しいものではない。 確実に殺すのしかかりだ。 『いだいいだいおうぢがえどぅー!!』 勿論もう家には帰れない。 死神が歩きから全力疾走に変わっただけだ。 『ごべんなざいわるいごどじだのならあやまるからやめてだどー!!』 子れみりゃは必死に声に出ない命乞いをするがだれにも聞こえない。 そのまま子れみりゃの身体がひしゃげていく。 『ごべんなざいもうわがままいわないからあまあまをポイッとかじないがらまん まのいうごどちゃんとぎぐがらやめでぐだざいだどー!!』 そんな命乞いなど誰の耳にも届かないのに必死で言い続ける。 『つびゅ…れる…』 じんわりと子れみりゃに痛みが走り、目が圧迫されて飛び出す。 一瞬にして子れみりゃの視界は暗闇に包まれる。 自分の身体が破壊されていくのがわかってくる。 『やだやだやだやだやだやだやだやだじにたぐないじにだくないじにたくないじ にたくない!!』 五感が鋭敏になり、時間の流れがスローモーションのようになったのが災いした 。子れみりゃは本来なら一瞬ですむ痛みと恐怖をゆっくりと味わう羽目になった 。 目玉が飛んでいく。 そこから肉汁が溢れる 口から残った肉まんが飛び出そうとする。 その結果口いっぱいに広がる自身の味。 子れみりゃは口を閉じて耐えるがすぐに決壊し、口から流れでる。 『れみりゃのながみでてきちゃだめだどー!!』 口を強く閉じて流出を止めようとする子れみりゃ。 しかし上からの圧力ですぐに口自体が破壊され流出の中に歯が含まれ出す。 口だけではない。圧力で子れみりゃの中身は穴という穴から飛び出してくる。 『ざ…ぐ…や…だず…』 子れみりゃは母ではなくさくやに救いを求めたのだった。 そして長い痛みの中、子れみりゃは愛しい母の胸の中でようやく死ぬ事が出来た のだった。 親れみりゃは自身の身体の下からダイレクトに子れみりゃの潰れる感触を感じた 。 「う゛あ゛、う゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ッ!!!」 もはやえれがんとやかりすまのカケラもなく泣き喚く親れみりゃ。 親れみりゃが泣き喚いているのを尻目に梟はある事に気付いた。 それは迅速に行動しなければならない事だった。 それを済ませ、梟はさっさと獲物を確保して巣に戻る事にした。 「う゛、う゛う゛~…」 濁流のような涙を流す親れみりゃを尻目に梟は親れみりゃの羽根をひきちぎる。 「うぎゃー!!!?」 激痛に親れみりゃがのけ反るが梟には関係ない。 そのまま羽根を今まで子れみりゃにやったようにそこら辺に吐き捨て、脚を啄み 機動力を奪う。 これでもう親れみりゃは満足に動けない。 「やだー!!もうおうちがえるー!!!」 もう親としての威厳もへったくれもない。 ぶざまに命乞いをする親れみりゃ。 すると、すっと上にのしかかっていた梟がどいたのだ。 「う゛?」 突然の事に戸惑いを隠せない親れみりゃ。 そんな親れみりゃを尻目に梟は飛び立つ。 「うー!だすがったどー! れみりゃのかりすまにびびってにげだしたにちがいないどー!!」 そのまま森の中に飛んでいく梟を見ながら歓喜の踊りと称する手足ばたばたをす る。 「う゛~!?なんでうごけないんだどー!?」 親れみりゃは脚を啄まれて動けない事をすっかりと忘れていた。 自分の怪我すら忘れてるのだ、枝に突き刺さっている虫の息の子れみりゃも忘却 の彼方だ。 それと同時に周囲に誰もいない事を気付かなかった…。 自身の子供が何処にもいない事に気付かなかった。 そして、 「う~しね!」 新たに現れた驚異にも気付かなかった。 (後編?へ)
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「ゆっくりしていってね!」 お馴染みの掛け声と共に、三匹は笑いながら跳ね回る。 れいむとまりさとぱちゅりー。この三匹は何時も一緒だった。 皆早くに両親を亡くしてしまったために、協力し合って生きてきたのだ。 「あのれみりゃばかだったねー」 「たべちゃうぞー、だってさ。おお、こわいこわい」 「むきゅ。ぱちゅりーたちにかてるわけないのに、むちはつみね」 そしてこの三匹はご機嫌だった。 あの天敵であるれみりゃを倒したからだ。 ぱちゅりーの策によってれみりゃを誘導し、木の枝にぶつけてやった。 当然その程度でれみりゃは死なないが、痛みでのたうち回って三匹を追うどころではない。 そこを体当たりで散々甚振り、満足気に帰路についたのだ。 「れいむたちにかかればにんげんだってらくしょうだね!」 「むれのおさはばかだぜ。にんげんにはかてない、なーんてまぬけなこというんだぜ」 「しかたないのよ。いまのそうだんやくのぱちゅりーがばかなんだから」 そして調子に乗った三匹は現実を直視してない発言を繰り返す。 三匹は人間など見た事もないのだが、三匹の中では自分たち以下になっている。 「そうだよ、いまのそうだんやくのぱちゅりーはばかだよ!」 「ならそいつをころしてぱちゅりーがそうだいやくをやればいいんだぜ。 ばかなゆっくりなんてひゃくがいあっていちりなしだぜ」 「そうね。わたしももうおとなになったし、そろそろあのばかをおいだすべきかしら」 通常ゆっくりの群れには長を補佐する相談役がいる。 相談役は大抵周囲に認められたぱちゅりー種が就き、群れのために知恵を絞るのだ。 が、ぱちゅりー種は病弱であり、中には自分で餌も満足に取れない固体も存在する。 だから群れがぱちゅりーに餌を分ける事になるのだが、それに良い顔をするゆっくりは多くはない。 そういった理由で群れには相談役と副相談役、そして後継者である数匹の子どもしかぱちゅりー種は存在していない。 今三匹が属している群れには存在するぱちゅりー種は五匹。 群れ全体でゆっくりが三百匹ほど居る事を考えると、かなり少ない数だ。 「ぱちゅりーならぜったいかてるよ! はやくあのばかをおいだしてやって!」 「いまのそうだんやくはまりさたちにいちいちうるさいぜ。 ぬすみぐいするなとか、まりさたちはそだちだかりなんだからしかたないんだぜ」 「じぶんがたべようとしてたからおこるのよ。まったく、やくにたたないくせにくいじだけはいちにんまえね」 通常、相談役が死亡した場合を除いて代替わりが起こる事はない。 だが、群れの皆を説得すれば追い出せる筈。三匹はそう信じて疑わなかった。 「いまかえったよ、ゆっくりごはんちょうだいね!」 「まりさたちはおなかぺこぺこだぜ。たくさんほしいんだぜ!」 「むきゅー、かしこいわたしたちがおおくたべるのはとうぜんよ」 そうこうしているうちに群れの食料庫までたどりつき、見張りのゆっくりれいむに餌を強請る。 遊びに夢中で三匹は今日の分の餌を取るのを忘れたからだ。 「ばかいわないでね! このしょくりょうはみんなのものなんだよ!」 この食料庫は通常怪我をして動けないゆっくりや、緊急時のための食料を溜めるためのものだ。 現相談役のぱちゅりーの進言によって作られ、多くのゆっくりたちを助けてきたものだ。 間違っても遊びほうけていた三匹のためのものではない。 だが三匹はここのところこの食料庫から餌をもらっている。 狩りが下手なゆっくりにも食料を分け与えているので、三匹はそう言えば餌を貰えると分かっていた。 が、今回は事情が違う。 三匹の行動に頭を悩ませている長まりさから、餌を渡すなと見張りれいむは言い付けられているのだ。 「みんなのだかられいむがもらうのもとうぜんだよ!」 「おお、こわいこわい。わたしたちだってその『みんな』のなかにはいってるんだぜ」 「むきゅ、そういうことよ。わかったらさっさとだしなさい」 三匹の反撃に、見張りれいむは臆してしまう。 逆らったら攻撃されてしまいそうだし、なるべくなら痛い思いはしたくない。 だがあげてしまえば自分が罰を受ける。 見張りれいむが迷っていたその時、まりさが何者かに吹き飛ばされた。 「ばかいわないわないでね! さんにんはゆっくりはんせいしてね!」 突然の乱入者、長まりさの登場で三匹は後ずさる。 長まりさは体付きれみりゃほど大きく、バスケットボールほどしかない通常種など簡単に潰されてしまう。 三匹も戦って敵わないことは薄々分かっている。 「それにぱちゅりーはどうしてじゅぎょうさぼったの! べんきょうしないといいゆっくりになれないよ!」 「むきゅ、あんなばかにおそわることなんてなにもないのよ! じかんのむだでしかないわ!」 そういうとぱちゅりーは憎らしく舌を出し、まりさの上に飛び乗る。 そうして三匹は長まりさの話も聞かず、一目散に逃げ出した。 それを見て長まりさは溜息を吐く。どうしてこんな事になってしまったのか。 あの三匹の親は立派だった。群れのために命を投げ出し、見事群れを救ったのだ。 だからこそあの三匹は大切に育てられ、多少の悪事も目を瞑ってきた。 それがいけなかったのか、今では手が付けられなくなっている。 長の言う事は聞かないし、自分たちが群れで一番偉いと思っている節もある。 溜息を吐きながら長まりさは相談役も下へ向かった。 今は後継者の育成で忙しい時期なのだが、三匹を何とかする知恵を貸してもらいたい。 三匹の親は長まりさの友人でもあったために、殺したり追放するのは忍びないのだ。 「ぱちゅりー、なにかいい方法ない?」 「……むりよ。おさだってほんとはわかってるんでしょ? あのこたちはもうずっとまえからおべんきょうもおてつだいもしてない」 「……もう、だめなのかな?」 「むきゅー……つらいのはわかるわ。けど、どうしようもないのよ……」 ぱちゅりー種は生まれた時から知識があるわけではない。 親や周囲のゆっくりから教えられ、少しずつ知識を蓄えていくのだ。 だが肝心のぱちゅりーは大切に育てられたためか、仲間と居るのが楽しかったからか。 普通のぱちゅりー種よりも体が強く、何時も三匹で遊び回っていた。 当然受け継ぐべく知識は手に入らず、ぱちゅりーが知ってるのは挑発による誘導法くらいなものだ。 後は石の使い方も、餌のある場所も、家の作り方や入り口の塞ぎ方も何も知らない。 真面目に勉強してきた後継者候補たちとの差は天と地ほどもあるだろう。 そして間違いなく後継者には選ばれず、群れから去る事になる。 そして餌も取れずにのたれ死ぬか、周囲に生息するれみりゃや動物に食われるか―― 群れに戻ろうとして殺されるか。 遅かれ早かれ、結局はそうなるのだ。 そして二匹は黙り込んでしまった。 三匹の親には長や相談役だけでなく、群れの大人ゆっくりの大半は世話になっている。 だからこそ、群れに三匹の追放を伝えるのは気が重い。 自分たちが育て方が間違った事を後悔しながら、二匹は溜息を吐いた。 「まったく、しつれいしちゃうね!」 「そうだぜ。まりさたちがれみりゃをたいじしなかったらどうなってたことか」 「むれがぜんめつしたかのうせいもあるのに。えいゆうをたたえないなんてばかね」 三匹は長から逃げ出したあと、家の周りの花畑で愚痴っていた。 その花畑は三匹が来る前は群れの皆の憩いの場だったのだが、今では三匹専用になっている。 三匹が強引に占拠し、他のゆっくりを追い払ったからだ。 もっとも、三匹が食い荒らして無残になった花畑になど誰も来ないだろうが。 「もうがまんのげんかいだよ、くーでたーをおこすよ!」 「そのとおりだぜれいむ! まりさたちのあつかいがわるすぎるよ!」 「ばかにひきいられたむれにまっているのはしよ。そうなるまえになんとかしないと」 今まで何を我慢してきたのか、三匹は話している内にどんどんヒートアップしていく。 そうだ、間抜けどもを排除して自分たちが指導者となる。それこそがむれのためだ。 そんな幸せな考えを持って、三匹は遂に決心した。 もう追放だなんて甘ったるい事など言ってられない。 100%の私怨の逆恨みだが、長を殺す事が群れのためになると三匹は決め付けた。 「じゃあれいむはあっちのいえのこをさそってくるね!」 「なかまはおおいほうがいいんだぜ! まりさはあっちのほうにこえをかけてくる!」 「ぱちゅりーはばかどもをまとめてしまつするさくせんをかんがえておくわ」 互いにやるべき事を確認し、三匹はゆっくりと頷く。 そして散り散りの方向へ走り出し、群れを乗っ取るべく動き出した。 群れの親世代には三匹は好かれていないが、反面子世代の中では英雄だ。 家から離れられず、群れのために毎日勉強や狩りをしている子どもたちにとって、自由な三匹は憧れる存在なのだ。 そして三匹から実際の百倍ほど誇張された自慢話を信じ、ますます憧れを増していく。 三匹曰く今日は多くの人間を戦っただの、百匹のれみりゃと全て殺してきたなど。 そんな作り話を信じているからこそ、今の長には不満を覚えてしまうのだ。 長にはまりさこそが、相談役にはぱちゅりーこそが相応しい。群れにもそういった考えを持つゆっくりは少なくはないのだ。 そして全ての準備が終わったあと、疲れ果てて眠る三匹は共通の夢を見た。 新しい長にまりさがつき、相談役にはぱちゅりーが。そしてれいむと一緒に喜び合う、そんな夢を。 翌朝、クーデター軍は行動を開始した。 クーデター軍の数は群れの八割にものぼる。 普段から厳しい規則を押し付ける長たちに対し、皆鬱憤が溜まっていたのだ。 作戦は日の出と共に作戦開始の筈だったが、三匹が寝坊したため作戦は大幅に遅れた。 もっとも、作戦など長と相談役と副相談役を殺すといった事しか決まっていないが。 しかし決行が遅れたのがよかったのか、長が一匹でいるところを強襲することができた。 長は三匹のところを訪ねるつもりだったらしいが、クーデーター軍からすれば鴨ねぎだ。 「どお゛じで゛ご゛ん゛な゛ごどす゛る゛の゛お゛」 そして長まりさを散々痛め付け、三匹はニヤニヤと笑っていた。 体の大きい長まりさととは言え、集団で攻撃されれば文字通り手も足もでない。 「りゆうがわからないなんてやっぱりばかだね!」 「じぶんのむねにてをあててかんがえてみるといいんだぜ」 「ぱちゅりーたちをそまつにあつかったむくいよ。くるしんでしになさい」 痛みと絶望で泣き喚く長まりさに対し、三匹は嬲る様に体当たりを加える。 体の弱いパチュリーも、反撃できない相手に対しては容赦なく攻撃する。 「こんなきたないぼうしはいらないよね! れいむがふんであげるね!」 「まりさはおさのことすきだぜ。だからきずぐちにほおずりしてやるぜ!」 「むきゅー、あんまりおいしくないわね。せめてしょくりょうとしてやくにたちなさいよ」 既に長まりさは体中のあちこちから餡子を垂れ流し、もう長くは持たないだろう。 それでも三匹は長踏み付け、体当たりして、少しずつ食らっていく。 「そうだよ、おさはばかだよ!」 「なにもしてないのにえらそうにしすぎだぜ!」 「むれのきそくがきびしすぎるんだねー、わかるよー」 そうして長まりさは次々とクーデター軍から罵声を浴びせれる。 三匹を英雄視するクーデター軍からすれば、長などただの役立たず。 人間を何十人も殺したと言っていた三匹の方が強くて頼りになる。 そう判断しての行動だ。 「ぞん゛なんじゃゆ゛っぐり゛でぎな゛いよ!」 「うるさいよ! だまってゆっくりしんでね!」 「そうだぜ! ゆっくりしね!」 れいむとまりさにとどめを刺される長まりさを見て、ぱちゅりーは満足気に頷く。 既に別働隊から他のぱちゅりー種を皆殺しにしたと報告がった。 これで群れは三匹のものだと確信し、ぱちゅりーはクーデターの成功を宣言した。 「これでようやくゆっくりできるね!」 「あたらしいおさがいればにんげんだってこわくないよ!」 「ぱちゅりーがそうだんやくならどんなことがあってもだいじょうだぜ!」 そして新たな長の誕生に、クーデター軍は沸きあがった。 これでずっとゆっくりできると。毎日自由に遊び回れると。 「これからまいにちゆっくりできるね!」 「まりさがおさになったからにはにんげんたちからおいしいものをいただきにいくぜ!」 「むきゅー、ごほんもいっしょにうばうのよ! やっとごほんがよめるのよ!」 だがゆっくりたちは知らない。 長は直ぐそこにまで迫っている冬を越すために、皆に餌を集める様に言ってた事を。 餌を奪おうとした人間の里はここから五km以上離れた場所にあることを。 人間たちはとっくの昔にゆっくり対策を済ませている事を。 長はその巨体を持って周囲のれみりゃたちを退治していた事を。 そして何より、自分たちの行く末を知らなかった。 あとがき タイトルに反して三匹が死んでないや このSSに感想を付ける
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体つきれみりゃが「うー!うー♪」と羽ばたいてきてる。 何かお菓子を探してるようだ れみりゃ「あっまあーまおーかしぃはどーこだー♪」 家の前まで来たのでクッキーを少しやる。 れみりゃ「うー♪ぐっぎーだどー♪あまあま♪あまあま♪」 そう言ってむしゃむしゃと大事に食べるれみりゃ。指についたクッキーの粉も ぺロッと舐めて取る。もう一個あげると れみりゃ「ぐっぎーあげいんだ♪おにいさんあでぃがどぅ!あまあま♪」 と食べようとしたが手がちっちゃいので地面に落としてしまった。 れみりゃは涙目になって落ちたクッキーと俺を交互に見て、泣き出した。 れみりゃ「う”っ・・・ひっぐ・・・おにいざんのぐれたぐっぎぃ・・・」 ああかわいい!と俺はれみりゃを抱きしめそのまま自宅で存分にゆっぐりさせた。 落として3秒以内ならOK -- 名無しさん (2011-04-28 13 44 11) 名前 コメント
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「奇形ゆっくり」 雪もだいぶ解けた頃。 草原には、越冬したゆっくりの姿が現れ始める時期だ。 森の中を歩き続ける僕。 僕は、ある条件を満たすゆっくりを探している。 探しているのは、単体のゆっくりではなく、子供を連れたゆっくり一家でもなく、発情したゆっくりありす でもなく、ゆっくりれみりゃなどの捕食種でもない。 僕が探しているのは、お互いを愛し合ったカップルのゆっくりだ。 それも、既に交尾を済ませて妊娠初期の…そう、そのタイミングが一番“いい”。 越冬後の初春になると、冬を生きて越すことができた安心感のためか、それとも家族計画を考えているのか、 多くのゆっくりが交尾を行う。 草原には結構な数のゆっくりが顔を出し始めているから、そろそろだと思うのだが… 「ゆっ!?おにーさん、ゆっくりしていってね!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 すれ違うゆっくりには適当に返事を返しておいて、巣のありそうなところを手当たり次第に探していると… 「ゆぅ!!ゆっくりそだっていってね!!」 「ゆっくりいいこになってね!!」 狭い入り口から中を覗くと、ゆっくりれいむとゆっくりまりさのカップルがお互い寄り添っていた。 れいむの頭には3本の蔓が生えている。妊娠初期なのだろう、つぼみは固く閉じていてまだ子ゆっくりの 原型すら出来ていなかった。 ふむ…こいつらは、丁度よさそうだな。よし、こいつらにしよう。 そう決めると僕はこいつらを連れて帰るべく、ゆっくりに声をかけた。 「やぁ、ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!!」 本能に刻まれた言葉を僕に返す2匹のゆっくり。 「お、れいむは妊娠してるのかな?」 「そうだよ!!もうすぐのれいむのあかちゃんがうまれるよ!!」 「まりさのかわいいあかちゃんがうまれるよ!!」 どうやら、ちゃんと望まれて生まれようとしている子供のようだ。 ひとまず安心した。そうでなくてはこれからの計画も、意味がなくなるからだ。 「よし、これから赤ちゃんが生まれる二人のために、すっごくゆっくり出来るところを用意してあげたよ」 「ゆゆっ!?ゆっくりできるところ!?」 「おにーさん!!ゆっくりあんないしてね!!」 これから親になるというのに、この馬鹿っぷりはいかがなものか。 毎度のことだが、こいつらが絶滅しない納得のいく説明がほしい。 「よし!!じゃあお兄さんについてきてね!!」 息が上がらない程度のペースで、家へと続く道を走る僕。 家まではそれほど遠くない。ジョギングのペースで走って10分ほどだ。 だから僕にとっては軽い運動でしかないのだが…どうやら、2匹のゆっくりにとっては違うようだ。 「おにーさん!!もっとゆっくりしていってね!!」 「おいてかないで!!もっとゆっくりあんないしてね!!」 普通のゆっくりなら決してついてこれないペースではないのだが、妊娠しているれいむは頭に生えた蔓が折 れないように注意しながら跳ねなければならない。 「れいむ!!ゆっくりいそいでね!!」 ペースの遅いれいむに付き添うまりさも、同様である。 「そんなにゆっくりしてると、ゆっくり出来るところがなくなっちゃうぞー!!」 「ゆゆーっ!!??いやだよ!!ゆっくりしたいよ!!」 「ゆっくりいくからまっててね!!れいむ!!もっとゆっくりはやくしてね!!」 どんなに急かしても、こいつらは一定のペース以上速くはならない。 これは…何か別の方法を考える必要があるな。 ちょっとばかり考えて、思いついたのは… 「おーい、まりさ!」 「ゆっ!?」 「まりさがれいむを後ろから押して手伝ってあげれば、早くゆっくりできるぞー!」 「ゆゆ!!おにーさん、あたまいいね!!まりさゆっくりてつだうよ!!」 さっきから2匹の様子を見てわかったのだが、れいむは蔓が折れないように注意してペースを落としている のに対し、まりさは単純にれいむに付き添っているだけ。蔓に注意を払っているわけではない。 つまり、まりさはれいむがゆっくりしている理由がわからないのだ。 ゆっくり出来るところがなくなる、という僕の言葉に焦りを感じるとともに、ペースを上げようとしない れいむに苛立ちを感じはじめるまりさ。 だから…後ろから押して手伝ってやれ、という指示にも簡単に従う。 「れいむ!!もっとゆっくりいそいでね!!」 「ゆぎゅううう!!まりさあああああああああやめてよねええええええ゛え゛え゛え゛!!!!!」 ぐいぐいと後ろから押していくまりさ。それでもペースを上げるわけにはいかず、必死に抵抗するれいむ。 だが、身重の体ではまりさを押し返すことは出来ない。 そのまままりさの力に押し負けて、ペースを上げることになってしまった。 「やだあああああああああ!!あがぢゃんできなぐなっぢゃううううううう!!!!」 「れいむ!!はやくゆっくりできるところでゆっくりしようね!!」 まりさはれいむの悲鳴を聞いてないのだろうか? これから生まれる赤ん坊すら気遣わないあたり、やっぱり頭の中が餡子なんだなぁ。 しばらくして、もう少しで家に着くというところに差し掛かると… 「まりざやめでよおおおおおお!!!…ゆぎゅ!?」 まりさに押されてハイペースで跳ねていたれいむが石につまづき、顔面から倒れ伏してしまった。 あ、これはヤバい、と思った。その角度と、そのスピードが。 ボキッ!! 3本の蔓のうち、一番細かった1本が折れてしまったのだ。 「ゆぎゃああああああああ!!!れいむのおおおおおお!!あがぢゃんがああああああああ!!!」 ゆっくりらしからぬ速さで起き上がって、折れた蔓のもとへ駆け寄るれいむ。 その後を、まりさがゆっくり追いかけた。 れいむは、滝のように涙を流しながら萎えた蔓を見下ろしている。 その後ろのまりさは、ばつの悪そうな顔をしていた。 最初は悲しみの震え…そして、その震えは怒りに変わった。 「ゆぐぐぐぐぐぐぐ!!!!まりざのせいだよ!!まりざがうしろからおしたからだよ!!」 「ゆぎゅ!?まりさはわるくないよ!!れいむがゆっくりしすぎたのがだめなんだよ!!」 へぇ、ゆっくりも夫婦喧嘩するんだぁ。 「あかちゃんがああああああ!!!れいむのあがぢゃんがあああああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「ゆっ…れ、れいむのせいだよ!れいむがころんだから――― 「はい、そこまで!」 このまま見ていても面白そうだったのだが、殺し合いに発展する気配を感じたので仲裁に入る。 「今のはどっちも悪くないよ。たまたま、その蔓が細すぎたんだ。たぶん折れなかったとしても赤ちゃんは できなかったよ」 「ゆっ!?そうなの!?」 「そうだよ。だから、残りの2本を大事にすれば良いのさ」 「ゆゆ!!わかったよ!!れいむのあかちゃんだいじにするね!!」 「まりさのあかちゃんゆっくりさせてあげるね!!」 あー、⑨でよかった。 2匹の仲直りは済んだので、すぐそこの自分の家に案内する。 玄関から入っていく2匹は、終始寄り添ったまま離れようとしなかった。 2匹を専用の部屋に案内し、準備を済ませると僕も2匹と同じ部屋に向かった。 僕が抱えているのは、最近幻想入りしたという毒入りギョーザと、2リットルペットボトルに入った廃油だ。 「おーい、ゆっくりしてるかい?」 「ゆっくりしてるよ!!おにーさんもゆっくりしていってね!!」 先に与えておいたお菓子を食べつくして、2匹は文字通りゆっくりしていた。 れいむが妊娠している以上、昔のように跳び回って遊ぶことは出来ない。 2匹にとっても、今までのように跳びはねるより、寄り添いあってゆっくりしてる方が満足できるのだろう。 ギョーザとペットボトルが視界に入るやいなや、跳ね寄ってくる2匹。 「ゆゆ!?それはなに!?」 「ゆっくりできるもの?ゆっくりできるならまりさにちょうだいね!!」 おお、食いついてきた。そうでなくちゃ困る。 「これはね、栄養価の高い食べ物だよ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるれいむに食べてもらおうと思ってね。 これを食べれば、元気でいい子な赤ちゃんがたくさん生まれるよ!」 餡子脳にも理解できるように、説明は怠らない。 すると、期待通りれいむが食いついてきた。もう期待通り過ぎて怖いぐらいだ。 「ゆゆ!!れいむたべるよ!!さっさとそれをゆっくりちょうだいね!!」 「わかったわかった。まりさも食べるか?」 「まりさはいらないよ!!ゆっくりれいむにあげてね!!」 さっきのことを少しは反省しているのだろうか、それとも夫(?)としての自覚が芽生えてきたのか。 僕としてはれいむが食べてくれさえすればかまわないので、ギョーザを適当に床に置いて、大きい器に廃油 を移し替えた。 「むーしゃむーしゃ、しあわ…せ…?」 一口食べて、早速異変に気づいたらしいれいむ。 「おにーさん!!これすっごくまずいよ!!こんなのたべられないよ!! こんなものをたべさせるおにーさんとはゆっくりできないよ!!」 「わがまま言うなよ。元気な赤ちゃんが生まれなくてもいいのかい?」 「ゆぎゅ……がまんしてたべるよ…!」 赤ちゃんのため、って言っておけば大抵のことは我慢できそうだな、このれいむ。 眉間にしわを寄せて、いかにも不味そうな顔をしながら、ギョーザをちびちびとかじっている。 ダイオキシンとか、タリウムとか、メタミドホスとか、かなりヤバイ代物らしいんだが、体調には変化はな さそうだ。 実は、毒に対してはかなり耐性があるのだろうか? 「れいむ!!ゆっくりがんばってね!!あかちゃんのためにがんばってね!!」 毒入りギョーザを栄養食か何かと勘違いしている2匹。 まりさは、不味そうにギョーザを食べているれいむを応援している。 そのあと、いろいろヤバそうなものが浮いてる廃油にもれいむは口をつけた。 「ゆぎゅ、まずい……でもあかちゃんのためにがんばってのむよ!」 「ゆゆゆ!まりさもてつだってあげるね!!」 何を思ったのか、自らも廃油を飲みだすまりさ。 お前が飲んだら意味ねーだろ(笑) 目の前の不味い飲み物がなくなればいいとでも思っているのだろうか? さすが餡子脳。僕の予想の斜め上を常にキープしている。 そんなこんなで、3日間。 蔓には、少しずつ子ゆっくりの原型らしきものが現れ始める。 僕はすでにその異変に気づいていたのだが、2匹のゆっくりは気づかない。 出産自体初めてなのだろう、こういうものなんだ、と納得しているようだ。 そして。 いろいろヤバいものを体内に取り込んでいったれいむだったが、ついに…その時が来た。 出産のときである。 部屋の真ん中に陣取ったれいむ。 それを少し離れた所から、不安そうに見守るまりさ。 2匹の数週間の愛の結晶、そして僕の“3日間の努力”の結果が…今、目の前にその姿を現そうとしている。 小刻みに震えだしたれいむ。その時が近づいているのだろう。 最初は堪えていた声も、だんだん我慢できなくなってきたらしい。 「ゆ……ゆ…ゆゆゆゆ…!!」 プチッ! ぽとっ 一匹目のゆっくりの誕生である。 「ま、まりさのあがちゃんがうまれたよおおおおお!!!」 「れいむのっ、れいむのがわいいあがちゃんんんんんんんんんん!!!!」 遠くから見守ると決めていたまりさも我慢できなかったらしい。 赤ちゃんが生まれた嬉しさのあまり、すぐに生まれたての赤ん坊のもとへと跳ねてきた。 その時点で、2匹は初めて“異変”に気づいた。 「ゆ゛……ゆ゛ぐり゛……ぢででね゛……!!」 「なんなの!!このごおがしいよ!!!おがしいよおおおお!!??」 「ゆぎゃあああああああああああ!!??へんだよっ!!へんながおだよおおおおお!!!!」 このゆっくりには、口と呼べるものがなかった。 正確には、口のなり損ないのような…上唇と下唇がところどころ途切れながら癒着しているのだ。 だから、言葉を発しようとしても『ゆっくりちていってね!!』とはならない。 プチッ! ぽとっ 二匹目の誕生。れいむ種である。 今度こそまともな子供が生まれてほしい…そう願うれいむとまりさ。 しかし、そんな願いは無残にも打ち砕かれた。 「ゆっくりぃちていってにぇ……ありぇ?うごけないよ?!」 二匹目の赤ちゃんは、言葉は比較的しっかりとしていた。 しかし、この赤ちゃんには致命的な欠陥があった。 饅頭らしい弾力性が殆どなく、中身が液体のようにドロドロしているのである。 簡単に言えば…そう、やわらかすぎるのだ。 これでは、自由に弾力性を利用して跳ね回ることは出来ない …この赤ちゃんは、一生自力では動けないだろう。 「ゆっゆっ!!ゆっくりうごいてね!!ゆっくりはねてね!!」 異常に気づいたまりさが赤ん坊を手伝おうとするが、無駄なことだった。 「ゆっ…ゆっ…うぅ、うごけないよおおおおお!!うわああああああんん!!!」 「ゆぅ!!ゆっくりしていってねええええええ!!!」 自力で動けないことに絶望する赤ちゃんゆっくり。 そんな子供を目の前にして、どうしたら良いのか分からず泣き喚くまりさ。 それを遠くから見ているれいむの顔には、疲れの色が見え始めた。 プチッ!! ぽとっ 三匹目。 「ゆっくりちていってね!!…ゆゆっ!?くらいよ!?おかーさんどこおおおお!!??」 駆け寄ったまりさは絶望した。 その赤ちゃんゆっくりには…目がなかったのだ。 「おかーさんはここにいるよ!!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ!?みえないよおおおおお!!まっぎゅらだよおおおおおおおお!! おがーざあああああ゛あ゛ん゛ん゛ん゛!!!!ゆッぐりじゃぜでよおおおおお゛お゛お゛!!!」 大声で泣き叫ぶ赤ちゃんゆっくりを宥めようと、まりさが頬を摺り寄せるが… 「ゆぎゃ?!なに!?なにかぶつきゃったよ!?なんなの!?わがらないよおおおおお!! ごわいよおおおおおおおおお!!だじげでよおおおおおおおおおお!!??」 「こ、こわくないよ!!おかーさんだよ!!ゆっくりなかないでね!!!」 どんなに宥めようとしても、赤ちゃんゆっくりは泣き止まない。 そして、四匹目、五匹目…と順番に生まれていく。 生まれつき音の聞こえないもの。 硬すぎて跳ねることのできないもの。 「ぎょぎょぎょ」と気持ち悪い声を発しながら、芋虫のように這うもの。 目を覚ましても蔓から離れられず、終いには頭が破れてしまうもの。 十匹生まれれば十通りの奇形ゆっくりが生まれた。 赤ちゃんゆっくりにならずに、緑色の実のままの状態で落ちたものの方が幸運だろう。 その幸運すら、この一家にはなかった。 さっきまで、生まれてきた子ゆっくりと思う存分ゆっくりすることを思い描いていた親ゆっくり。 皆で草原をお散歩したり、水辺でゆっくりしたり、巣の中で固まって眠ったり… 畑のものを食べたらゆっくりできないよ、と教えてあげたり… いろんなことをしたかった。いろんなゆっくりをしたかった。 でも、それができない。この一家は、できないのだ。 そして、そんな一家を見てると僕は性的興奮に似た絶頂を覚えるのだ。 「さて、と…」 僕は次の準備に取り掛かる。 奇形赤ちゃんゆっくりに囲まれ、未だ泣き止まない親2匹に声をかける。 「やあ、赤ちゃんはかわいいかい?」 「ゆぐっ…へんだよおおおおおお…がわいぐないよおおおおおお……!!」 そりゃあな、僕だって見てて気持ち悪いもん。 でも、自分の赤ちゃんを“かわいくない”なんて言うなんて、困った親だなあ。 「そうかそうか、かわいくないか。じゃあ捨てちゃおう」 そう言って、目のない赤ちゃんゆっくりをピンセットでつまみあげる。 目の見えないゆっくりにとっては、その浮遊感は恐怖にしか繋がらないらしい。 「なに!?へんだよ゛!?ういでるよおおお!!??ごわいよおおおおお゛お゛お゛お゛!!!」 「おにーさんなにするの!?あかちゃんをゆっくりはなしてね!!」 まりさが僕に体当たりしてくるが、さすがゆっくり、全然効果がない。 むしろ、その弾力が気持ちいいくらいだ。 「だってかわいくないんだろう?だったら捨てちゃおうよ!」 「やめでよおおおおおお!!!がわいぐなぐでもまりざのあがぢゃんなのおおおお゛お゛お゛!!」 “かわいくない”ってところは否定しないのかよ(笑) 「かわいくないなら捨てちゃうよ!!ポイ!!」 鼻をかんだティッシュを捨てるように、赤ちゃんゆっくりをゴミ箱に放り込んだ。 ゆうううぅぅぅ、と悲鳴を上げながらゴミ箱の底に落ちていく、盲目ゆっくり。 底に溜めてある熱湯に突っ込んだそいつは… 「ゆぎゃあああああああ、あづいよおおおおおおおお!!!!みえないよおおおおおお゛!!!! ゆっぐりできないよおお゛お゛お゛お゛お゛!!!あがーぢゃんだじげでええええええ!!!!」 そんな悲鳴も、十数秒すると熱湯の中へ消えた。 「さーて、次はどいつにしようかな♪」 「もうやめでよおおおおおお!!!あがぢゃんずでないでええええええ!!!」 「えー、だってかわいくないんだろー?」 「おねがいじまずううううううううううう!!! れいむのあがぢゃんだずげでぐださいいいいいいいいいいい!!!」 子ゆっくりを片っ端から捨てるのも楽しいが、そこまで頼まれたらしょうがない。 僕は妥協案を提示することにした。 「…わかった。じゃあこうしよう!」 「ゆっ!?」 期待に目を輝かせる、親ゆっくり。 しかし、その期待はすぐに打ち砕かれる。 「れいむとまりさが赤ちゃんを一匹だけ選んでね!!その子だけは助けてあげるよ!」 「ゆううううぎゃああああああどおじでえええええええ!!??」 「どおじでそんなごといいうのおおおおおおおおおお!!??」 「選ばないと、全員捨てちゃうよ!!ゆっくりしないで選んでね!!」 「ゆぐっ!?」 選ばないと…子供が全員殺される。 それだけは避けようと、2匹は唯一の生き残りとする赤ちゃんを選ぶべく、辺りを見回す。 「おがーちゃん!!まりしゃをえらんでね!!」 「れいむしゅてられたくないよ!!ほかのこをすててね!!」 「ちにだぐないよおおおお!!おがーぢゃあああああん!!」 喋ることのできるものは、その言葉で親の気を引こうとする。 言葉を発せないものは、その目で親に訴えかける。 精神すらまともでないものは、何が起きているかも感知していない。 「早く選ばないと、全員捨てちゃうよ!!」 「ゆゆっ!!やめてね!!すぐえらぶからね!!」 そして、2匹の親ゆっくりが選んだのは…二匹目に生まれた、動けないゆっくり子れいむだった。 「どおじでええええええ!!??」 「なんでそのごなのおおおおお!!??」 「そのごはうごげないごだよ!?うごげるれいむをえらんでね゛!!」 選ばれなかった子ゆっくりは、たまったものではないだろう。 自由に動けるものは必死に母ゆっくりにすがろうとするが… 「ごめんね!!あのよでずっとゆっくりしてね…!!」 れいむは涙ながらに駆け寄った奇形子ゆっくりを跳ね飛ばした。 うまい具合に僕の足元に転がってきたので、そのままピンセットでつまみあげる。 「ゆぎゃあああああ!!!はなじでよおおおおお!!!」 「ごめんねー。でもお母さん達が、君たちの事かわいくないって言うからさー」 「ゆゆぅ!?れいむかわいいよおおおお!!!かわいいからすてないでねええ゛え゛え゛え゛!!」 そんな叫びも、ゴミ箱の中へ吸い込まれていった。 2匹の親ゆっくりは、自分達が選んだ一匹の子れいむを挟み込んで守っている。 悲しみと絶望に震えながら、唯一生き残るであろう子れいむを、しっかりと守っている。 「はーい、じゃあ君達はゴミ箱行きでーす!恨むならお母さんたちを恨んでくださいねー!」 「いぎゃああああああああああああああああ!!!!」 ぽいぽいとゴミ箱に放りながら、全体に聞こえるように呟く。 「あーあ、お母さんが、あんな毒入りギョーザと食べちゃったから」 「ゆっ!?」 「お母さんが、あんな汚いものを飲んだから、赤ちゃん皆かわいくなくなっちゃったよ!」 「なにをいっでるのおおおおおおおおおお!?」 「お母さんのせいで、皆気持ち悪くて汚い赤ちゃんになっちゃったよ!」 「おかしいよ!!ゆっくりせつめいしてね!!」 「ギョーザと飲み物にはね、危ないものが入ってたんだよ!!本当は食べちゃダメだったんだよ!」 そこまで説明して、やっと理解したらしい。 母体であるれいむは…自ら汚染物質を体内に取り込んだ。 それは子ゆっくりにも蓄積されていき、結果として奇形ゆっくりが生まれた。 やっと。やっと理解したのだ。 親ゆっくりも…そして、子ゆっくりも理解した。 自分がこんな酷い目にあっているのは、母親であるれいむのせいであるということに。 僕は心無い言葉を子ゆっくりに浴びせながら、次々とゴミ箱に放り込んでいく。 「おがーぢゃんのせいだあああああああああ!!!!だずげでええええええ!!!」 「はーい、お母さんがあの子を選んだので、皆あの世行きでーす!」 「おがーぢゃんなんがしんじゃえええええええええ!!!」 「その前に死ぬのはお前らでーす!!あの世でゆっくりしていってね!!」 「おがーだんだじげで!!みでないでだずげでよおおおおおおおお!!!!」 「お母さんはあの子を選んだので、君は助けてもらえません!!ゆっくり死んでね!!」 母ゆっくりを罵倒しながら、ゴミ箱の中へと消えていく子ゆっくりたち。 その言葉の暴力に、れいむとまりさは震えながら耐えている。 「ごめんね!!……あのよでゆっくりしてね…!!」 そして、選ばれた子ゆっくりを除くすべての奇形ゆっくりが…ゴミ箱の中でお汁粉に変わった。 一旦ゴミ箱を片付け、再び部屋に戻ってくる。 親子3匹がいるほうを見ると、どうやら最後の生き残りである子れいむが、両親を罵倒しているらしい。 「おがーぢゃんのせいでじぇんじぇんうごけないよ!!ゆっくりあやまってねええええ゛え゛え゛!!」 本当はすぐに飛び掛って噛り付きたいのだろうが、やわらかすぎて動けないので、それもできない。 その上、2匹の親ゆっくりの返答も酷いものだった。 「お、おかーさんは悪くないよ!!おかーさんはわるいものたべてないよ!!」 「そうだよ!!かわいくうまれてこなかったれいむがわるいんだよ!!」 「ゆぎゅううううう!!?どおじでぞんなごどいうのおおおお゛お゛お゛!!??」 生後10分で親子喧嘩か。すごいもんだな、ゆっくりって。 「はーい、そこまで!」 この前と同じように仲裁に入る。 「いいことを教えてあげるよ。二人の親のどっちかが死んで子れいむの食べ物になれば、子れいむは動ける ようになるよ!」 「ゆぎゅ!?ほ、ほんとうなの!!?」 それは親ゆっくり2匹にとって、衝撃であろう。 どちらかが犠牲にならなければ、目の前の子は一生動けないままゆっくりしなければならない。 親2匹は…どちらが犠牲になるか、選ぶことが出来るだろうか? 「どっちが食べ物になるか、ゆっくりしないで決めてね。ゆっくりしてると、手遅れになるよ!」 「ゆぎゅ!?それじゃれいむがあかちゃんのたべものになってね!!まりさはしにたくないよ!!」 急かされたせいか、焦ったまりさが思わず本音を漏らしてしまった。 となれば、二人の“ジョーカーの押し付け合い”はもう止まらない。 「どうして!?まりさがたべものになればいいよ!!れいむはあかちゃんうんだんだよ!?」 「れいむはあかちゃんうむだけで、ぜんぜんたべものとってこなかったよ!! やくたたずのれいむは、ゆっくりたべものになってね!!」 「おがーぢゃん!!げんがはやめでよおおおおおおおおお!!!!」 これが人間だったら恐ろしい会話だが、ゆっくりの場合だと笑えてくるから不思議だ。 さて…そろそろフィニッシュといこうかな。 「そうか、どっちも食べ物にならないなら…赤ちゃんが死ねばいいよね!!」 そう言って拳を振り上げ… 「やめでえええええええええええええええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「あがぢゃんにげでねええええええええええええ゛え゛え゛え゛!!!」 親2匹の絶叫とともに… グシャッ! 最後の奇形ゆっくりは、ただの潰れた饅頭になった。 「どっちも食べ物になってくれないなら、赤ちゃんは死ぬしかないよね!! だって、動けないままゆっくり生きていけるわけないもんね!!」 2匹は震えている。 「どうしたの?助けたかったの?でも食べ物になるほうを決めなかったよね。 助けたかったのに早く決めなかった二人が悪いんだよ!!」 それを聞いた2匹の、震えが…止まった。 そして… 「がああああああああああああ!!!???れいむのぜいだああああああああ!!!」 「まりざのぜいでじょおおおおおおお!!?まりざがたべものにならないがらああああ!!!」 2匹は、鬼のような形相で責任の押し付け合いを始めた。 「れいむのぜい!!ぜんぶれいぶがわるいの!!!ばかなれいむはゆっくりしね!!」 「ゆぎゅうううううう!!まりざがあがぢゃんだずげながったのがわるいの!!ゆっくりしんでね!!」 「ごろじでやるっ!!おおばがれいむなんがゆっぐりじね!!」 「まぬけなあほまりざは、ゆっぐりあのよであがぢゃんにあやまってね!!」 僕は外に通じるドアを開けておき、2匹を放っておいて自室に戻ることにする。 2匹の騒ぐ音がうるさいので、音楽を大音量で流してくつろぐことにした。 翌日。 2匹がいたはずの部屋を覗いてみると… そこにはゆっくり一匹分の餡子が、部屋を中心として放射状にブチまけられていた。 原形をまったく留めておらず、毛髪や飾りも残っていないので、れいむとまりさのどちらなのかわからない。 僕としては…できれば、れいむのほうに生き残っていてほしい。 あいつがまた子供を作れば、また奇形が生まれるに違いないからだ。 できれば、そうあってほしいな。 だってその方が、ロマンティックだろう? (終) 続く あとがき 虐待スレ10の 340前後を見て、勢いで書いた! まともに読み返してないので、誤字とかあるかも!! 後悔はしてな・・・・・・いや、半分ぐらい後悔してる! でも、自分が読みたいものが書けたからOK! ゆっくり読んでくれてありがとう!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける