約 632,050 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/323.html
昼。 仕事を終えて家に帰る。 鍵を開けようとしたところ、もう開いていた。 泥棒かと思って中に入れば、ゆっくりがいた。 「ゆっ! おにーさん! ここはまりさたちがみつけたおうちだよ! ゆっくりでていってね!」 「「「でていってね!」」」 数えて四匹のゆっくりまりさがそこにいた。 何をしているかと思えば、食料庫に置いておいた食べ物を全部食われている。 ご丁寧に貴重な胡椒や塩もだ。 しかし、俺はこいつ等を無視して台所へ向かう。 台所も荒らされており、鍋やらヤカンやらが散乱していた。 俺はそれをかき分けて椅子に座る。 そこで近所の子から貰った昼飯の握り飯を頬張った。 「ゆ! なにしてるのおにーさん! はやくでていってね!」 台所にいる俺を見つけて親まりさがぷくっと膨れて怒る。 子供たちも真似するように小さく膨らんだ。 「別にお前達の邪魔をしてないからいいだろう、ここはお前達の家なんだから俺は家具だとでも思えばいいさ」 俺はそう言って飯を食らう。 まりさ達はそれが気に食わない様子だった。 「いいかげんにしてよ! ばかなの? おにーさん!?」 「ばかなの?」 「しぬの?」 非難を浴びるが、俺は冷静に返す。 「ああ、馬鹿だよ」 その言葉に、俺が自分達より格下だと判断したらしくまりさは調子に乗る。 「さすがばかだね! ここがだれのいえかわからないなんて! いきてるかちないんじゃないの!?」 普通、並みの精神の人間だったらここでどうしていただろうか。 間違いなく引きちぎって殺していたに違いない。 「そうかもな」 「ゆふん! ばかなおにーさんはここでのたれじんでね!」 俺をせせら笑ってまりさ達は自分達がいた部屋へ向かった。 飯を食い終えた俺は、取り合えず眠りにつく事にした。 夜。 目が覚めるとゆっくり達がぷるぷると震えていた。 饅頭らしくおしくら饅頭をして暖を取っているようだ。 春になったばかりの夜はとてつもなく寒い。 「ゆうぅ……ここでさむさをしのごうね!」 「あったかいよおかーさん!」 「だいじょうぶだよ!」 「ぬくぬくだよ!」 まりさ達はみんな親を心配させないように言う。 家族愛って奴だろうか。 俺は台所にしまってある毛布を使い、それを服の中に仕込んだ。 そのまま掛けて寝れば、ゆっくり達に奪われるかもしれない。 多少動きづらかったが、晩御飯の準備をした。 今日は鹿のスープだ。 言い忘れていたが俺の職業は狩人で、山の近くで暮らしている。 そんな事はともかく、作業に移る。 調味料は食われていたため、お湯の中に山菜と鹿の茹でた肉が入ったような質素なものとなった。 しかし、それでもうまそうな匂いがするらしく、まりさ達が俺の元へやってくる。 「ばかなおにーさん! それをまりさによこしてね!」 無視。 するともう一度まりさが叫ぶ。 「おにーさん! それをまりさによ・こ・し・て・ね!」 よこせを強調するが、無視。 俺は体当たりされてスープを零されてはたまらないので、一気に飲み干す。 「どうしてくれないの!? なんで? いいかげんしんでよ!」 「俺はお前の家の一部で家具だ、家具はお前のためにご飯を作らないしあげもしない。それにお前はゆっくりだろ、自分で狩りくらいできるだろ」 その言葉にぐっと歯を食いしばるまりさ。 確かにその通りである。 まりさはゆっくりの中では知能があるほうで、狩りは得意なはずだ。 「おかーさん、おなかすいたよ……」 さむそうにしていた子まりさの一匹が親に言う。 親は憎しみの表情を浮かべて俺を睨んだ。 だが、無視。 「まぬけなおにーさんがごはんをくれなくてごめんね! あしたたくさんごはんをとってきてあげるからね!」 子供達は不服そうだったが、やがて親に従った。 (あの様子だと食料庫の中身全部なくなってるわけか) 俺はそう考える。 まりさ達的にはもう春が来ているようで、ご飯を溜め込むなんて事はしなくなる。 食べられるだけ食べる、というのがゆっくりの習性だ。 俺は早めに家を出る事にした。 朝。 俺が目を覚まし居間へ行くと、寒さに震えながらもすやすやと眠っているまりさ達がいた。 起こさないように猟銃を持ってすべての部屋の鍵を閉める。 そして俺は狩りへ向かった。 お昼ほどになって、俺は狩りをやめる。 そして、食料を調達するために里へ向かった。 里は相変わらずにぎやかだった。 そこで俺はあるお店を見つける。 店の名前はゆっくり屋という名前だった。 中に入ってみると、ゆっくりれみりゃがお迎えをする。 「ごんでぢわ! おぎゃぐざまはなんべーざまでづが!?」 鼻にかかる声で人数を聞かれたので俺は一人だと答える。 すると、ゆっくりれみりゃが少しほっとしたような顔をした。 「あ、いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!」 後から店員がやってきて、俺を席へ案内する。 メニューを渡されて、俺は目を通してみた。 ゆっくりれみりゃの腕のハンバーグ。 子れみりゃの肉まん。 奇形子れみりゃの踊り食い。 ゆっくりれみりゃの足の丸焼き。 等と書かれていた。 俺はとりあえずハンバーグと肉まんを頼んでみる事にした。 数分経ってから、店員とれみりゃが俺の前にやってくる。 しかし、料理はなかった。 「いまからお客様の前でれみりゃの調理をします、ごゆっくりとお楽しみください。ほら、やれ」 店員が言うと、泣きべそをかいているれみりゃが自分の腕を台の上に置いた。 そして、あろうことが自分の腕を引きちぎったではないか。 「う゛ぐぎぎぎぎぎぎぎ!! い゛だい゛ー! ざぐやー! ざぐぐぇっ!?」 泣き叫ぼうとしたところ、店員に殴られるれみりゃ。 さらに指示されると、自分のもう片方の腕で腕を叩き潰した。 いい感じに余計な肉汁がこぼれる。 店員は満足そうな顔をしてそれを焼いた。 「はい、お待ちどうさまです」 「どうも」 俺はそれをいただく。 餃子の中身を食っているような味がした。 たしかにハンバーグといえばハンバーグだが。 次に用意されたのは踊ってやってきたれみりゃだった。 その上にはぱたぱたと子れみりゃがいる。 「う~☆ れみりゃのこどぼがわいいでそ~?」 俺がああ、と答えると腰に手を当てて尻を振る。 ダンスのつもりなのだろうか。 はたから見れば挑発してるようにしか見えない。 「いまですお客様、尻をはがしてください」 店員が言うので、俺はとっさにれみりゃのスカートを引っ張り、尻を丸出しにする。 別に子供と変わりないような尻だった。 かといって欲情したりしないが。 「う゛~なにするどぉー! れみりゃのぷりでーなおしりっがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 行ってる途中で悲鳴を上げる。 なにせ店員がナイフで尻の皮を切っているからだ。 一定の大きさに切り終えると、今度は親の前で子を叩き潰す。 「う゛ぎゅ!?」 「ぶぎゃっ」 間抜けな悲鳴がしたあと、台の上に肉の塊があった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! れ゛み゛り゛ゃのあがぢゃん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」 それを無視して切り取った尻の皮に先程の子れみりゃの残骸をつめ、蒸篭に入れた。 しばらくたって、ほかほかと湯気が立ち上る蒸篭を開けるとなんと肉まんが完成しているではないか。 とても不思議だ。 そして何より吃驚したのがこれだ。 「ぅー ぅー」 小さな声だが、小刻みに震えながら声を出す肉まん。 かろうじて生きていた子れみりゃが再生し始めていたので、こんな風になるらしい。 よくかんで食べれば腹の中で再生することはないらしい。 俺はそれを美味しくいただき、勘定を払って店を出た。 また夜。 返ってくると瀕死のまりさがいた。 やせ細っていて、今にも死にそうである。 一日半食べなければ餓死するのか。 「おに、さん……ごは、ん、ちょうだ、いね……」 弱弱しい声を出すが、俺は無視する。 「このまま、じゃ、まりさたち……しんじゃう、よ……?」 「だから?」 俺は買ってきた物で料理を作る。 匂いに釣られて子供達もやってきた。 「それ、ちょ……だい」 「……」 俺は無視して飯を食う。 まりさたちは血眼になってそれを見ていた。 「お前達は自分で狩りができるんだろ? なら必要ないじゃないか、あと食料庫から食べればいいだろう」 鍵を閉めたのは俺だなんて眠っていたこいつらには分からない。 ただ、部屋から出られず、ただ衰弱していった。 「おかーさん……おなか、すいたよー……」 その言葉にまりさも限界が来たらしい。 歯を食いしばり、俺に飛び掛ってきた。 「えざよごぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 俺は銃を取り出し、飛び掛ってくるまりさの口に突っ込んだ。 「別にいいぞ、黒胡椒の飴を食わせてやってもいい」 黒胡椒の飴、つまり弾丸の事だ。 まぁ胡椒は発火に使うものだが。 「ゆぎぎぎ! よごぜ! よごぜぇ!」 喚くまりさを無視して、俺は飯を食い終える。 そして毛布を服に仕込んで寝た。 最初は、喚きたてるゆっくりがうるさかったが、段々と静かになる。 朝。 起きると、一家は死んでいた。 餓死と凍死だろう。 皆、死への恐怖に目を見開いている。 俺は、一匹を釘で指して壁に張り、ゆっくりが来ないようにする。 さすがに何度も来られては、こっちの身ももたない。 そして残った方は、今日の昼飯となった。 別に殺そうと思えば殺せる。 だが、こいつらのために体力を消耗したり、貴重な弾丸を無駄にしたくはなかった。 ゆっくりなど、所詮閉じ込めてしまえばいずれ死ぬ。 だから、余計な手は加えない。 俺はそう考えている。 居座ったゆっくりなど無視して生活すれば勝手に死ぬのだ。 俺は鹿を狙い打って、今日の晩御飯を手に入れた。 あとがき 皇国の守護者のパロディでもやろうかと思ったけど辞めた。 サーベルタイガーにでも食わせるかな? 新城ォォッ! このアフォが書いた作品 霊夢の怒らせ方 ゆっくりデッドライジング1~3 霊夢のバイト 慧音先生とゆっくり ゆっくりCUBE 書いた猟師:神社バイト このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/333.html
ゆっくりの思い込み 「ゆ・・・、このたべものおいしいね!!!」 「ゆ!むーしゃ♪むーしゃ♪」 「「しあわせー♪」」 一仕事終わって帰宅した時僕の家は二匹のゆっくりに荒らされていた。 お菓子、ジュース、挙句の果てには僕が育てた野菜まで食い散らされ、部屋中食べカスで散らかっていた。 他にも家具はぼろぼろ、枕も綿を全部抜かれていた。 一匹はゆっくりまりさ、もう一匹はゆっくりれいむだった。 どちらももう少しで大人、バレーボール位の大きさだった。 僕は少し頭にきたがそれを抑え、一応ゆっくり達に話しかけてみた。 「・・・なにをしてるんだい」 僕は口だけで笑いゆっくりに問いかけた。 「ゆ!?おじさん!ここはれいむとまりさのおうちだよ!さっさとでてってね!!!」 「おじさん!でていくまえにたべものちょうだいね!!!」 答えを返さない上に自分の家から出て行けとまで言われた。 普通ならここですぐに蹴飛ばすでもして潰しにかかるだろう。 しかしここですぐ殺してもむなしくなるしもっと苛立つに違いない。 ここは抑えてゆっくり虐めるのがベスト。 そう考えた僕はゆっくり達を1階に残したまま二階へあがる。 「ゆ!?おじさん!!!はなしをきいてなかったの!?ばかなの!?」 「ここはまりさとれいむのおうちなんだからしらないおじさんはさっさとでてってね!」 2つの饅頭ご立腹。 僕は無視して階段を登る。 2段目辺りでゆっくりが体当たりしてきたが3段目を登る時蹴落としてやった。 二匹ともピーピー喚いていたけど聞き取らなかった。 少しして僕は1階へと戻ってきた。 ちょっと用意するものがあったから。 それを持って1階へ戻ると・・・ゆっくり達の姿が無い。 食料が尽きたからだろうか。さっさと出て行ったのか。 しかし移動スピードは名前どおりゆっくり。ドアを開けると「ゆ”っ!!!」と泣き声がした、ドアの手前にいたんだろう。 「れ”い”む”!?霊夢"にな”にずるのぉおお”ぉ”お”!!」 ゆっくりまりさが僕に体当たりしてきたがそれをつまんで吹っ飛んだれいむも脇に抱えて再び家の中へ。 二匹を部屋につれてきた。部屋の大きさは6m×6m×4mくらいかな? 「「に”ゅっ!!!」」 部屋に入れまずは軽く蹴り飛ばす。 二匹とも壁にぶつかり餡を少し噴きだした。 「ゆぅ・・・おじさん!なんでげるの!!!ばかなの!!!」 「おじさんはゆっくりできないんだね!ゆっくりできないならさっさとれいむとまりさのおうちがらででってね!!!」 「おじさんのばーか!」 「ばーか!!!」 2匹はよろよろ体制を立て直しギャーギャー騒いだ。 それが原因で虐められるのを理解できないのか?頭が可哀そうだ。 人間の子供以下だな、子供だってこんな生意気言わないぞ。 「まあ落ち着け、今日からここの部屋はお前達の部屋だ」 「っゆ・・・?」 二匹とも呆気に取られたようだ。しかしすぐに顔を膨らませる。 「ちがうよ!まりさとれいむはここのおうちのもちぬしなんだよ!ここのへやだけじゃないよ!!!」 「でもおにいさんがかわいそうだからここのへやはおにいさんにあげるよ!!!だからでてってね!!!」 どっちだよ。 とりあえず僕は両者無視して2階から持ってきたブツを二匹の前においてやる。 「・・・ゅっ!!!???」 「ゆ・・・ゆぎゃああぁぁああ!!!!」 2匹は泣きながら後ろへ後ずさる。 無理も無い。そのブツとはゆっくりれみりゃだから。 いや、正確にはそのぬいぐるみなんだけれど。 但し質感はそれそのもの。しかもそれは・・・ 『うー♪たーべちゃーうぞー♪』 「ゆうぅぅううぅ”う”ぅうう!!!!」 喋る。 中に何通りかの声を出す機械が内臓されている。 さすが河童印。いいもんを作ってくれる。 二匹はすっかり怯え部屋の隅っこでがたがた震えていた。 「ごめんな”ざいいぃいいいぃいいぃぃ・・・!!!」 「ごごのおべや”でいいがらだづげでええぃい・・・!!!」 ぬいぐるみ相手に怯える様子を見るのはとても楽しい。だからもう少しぬいぐるみを近づける。 「い”や”あぁぁあああ”あああ!!!どぼじでだづげでぐれなびのぉおぉおぉぉぉお!!!!」 「おじざんなんがゆ”っぐるぃぢね!!!!」 「・・・まだ立場が分かってないんだね、おじさんに死ねなんて言うとこうなるよ?」 そう言うと更にじりじり近づける。2m1m50cm・・・ 「う"ぁがりまぢだごめんざいごめんざいぃいい”ぃ”ぃいい”!!!!」 「ぼじざんわでいむだぢよりうえでづぅうううぅう!!!!」 ようやく分かったところでぬいぐるみを持ち上げる。このぬいぐるみも「うー♪うー♪」鳴いて煩い。 「じゃあ確認するぞ?おじさんとれいむたちつよくてえらいのはどっち?」 「おぢだんのぼうがづよいでづう”ぇらいでづぅううう!!!」 「びるじでぇえええぇぇええ!!!!」 「分かったようだね、でもこのにんぎょうは置いておくよ。」 「びゃめでぇええええぇえ・・・・ゆ?」 「ゅ・・・にんぎょう・・・?」 2匹とも硬直する。笑いをこらえるのが必死だよ。 「これ、ぬいぐるみだよ?何に怯えてたの?」 すると二匹は段々元に戻っていき、 「おじさんひどいよ!!れいむたちをだますようなおじさんはゆっくりしね!!」 「おじさんのばぐぉんっ!!!」 あまりにも煩いのでもう一度軽く蹴り飛ばす。 「えらくてつよいのはどっち?」 「おぢざんでづぅううぅううう!!!!!」 「わがっだがらまりざをげらないでぇえええぇえぇええ!!!」 これだからゆっくりは・・・すぐにつけあがる。 もう声も聞きたくないのでちゃちゃっと説明して切り上げよう。 「じゃあちょっとやってほしいことがある。なに、簡単なトレーニングだよ。」 「ゅ・・・?とれーにんぐ?なにそれ?」 「簡単に言うとこのぬいぐるみをこてんぱんにやっつければゆっくりれみりゃよりも強くなったことになるんだよ。ゆっくりゃより強くなりたいだろう?」 二匹は少し間をおいて目を輝かせ、 「うん!ゆっくりれみりゃよりもつよくなりたい!」 「そうだろう?だからこのぬいぐるみを倒して強くなってごらん。勿論ごはんはあげるよ」 「おじさんやさしいんだね!!ありがとう!!」 「まりさにおいしいごはんちょうだいね!!!」 「じゃあ、がんばってね。」 さっきやられたこと全然覚えてない気がするよ。 あとまりさの発言に腹が立ったので部屋を出る前に軽く蹴飛ばしておいた。 部屋に鍵を掛けた僕は近くの森に出かけた。 「おじさん!はやくごはんちょうだいよ!!!」 それから数日がたった。2匹のゆっくりは結構成長した。 バレーボールからビーチボールより少し大きいくらいだろうか。毎日4食与えてやったんだし当然か。 それに態度も一変、再びつけあがるようになった。 「おじさん!こんなおやさいじゃゆっくりできないよ!!!もっとあまいものをもってきてね!!!」 「まりさのぶんはれいむよりもおおくもってきてね!!!」 数日前にされたことをすっかり忘れているようだ。 まあ、そろそろ丁度いいころだろうし、今くらいは聞いてやるか。 「ごめんね、お野菜じゃ物足りないよね。じゃあこれ、ケーキをあげよう」 こう見えても僕は料理やお菓子を作るのが好きだからこのくらいは朝飯前だ、それをゆっくりに与えるのは気に食わないが仕方ない。 「ゆ!おいしい!!けーきおいしいよおじさん!!!」 「でもまだまだだね!!こんなのじゃまりさまんぞくできないよ!!!」 ケーキ作り6年続けてる僕のケーキがまだまだとな。 さすがに少しムカついたから足で頬の先端を踏み潰す。 「い"だ"い"だい”ぃ”いいいぃ”い”い!!!」 「ごめんごめん、足が勝手に」 「からだがふじゆうなおじさんはゆっくりけーきをもってきてね!」 ある程度すっきりした僕はそろそろかと思い部屋を出て籠を持ってくる。 「ゆ?おじさんそれなあに?けーき?」 僕は笑顔で 「ゆっくりれみりゃだよ」 少し2匹の動きが止まるが、少しすると二匹はすぐに元通りになった。 「なんだ!ゆっくりれみりゃなられいむもうたおせるよ!!」 「まりさもつよくなったよ!!ゆっくりれみりゃなんていちころだよ!!!」 そう。 二匹の部屋に置いたゆっくりゃの人形がかなりぼろぼろになっている。 それで二匹は強くなったつもりなのだろう。 にんぎょうよりはつよいだろうけどね 「ゆっくり!?トレーニングの成果を見せる時だよ!!ゆっくりれみりゃをゆっくり倒してね!!」 「らくしょうだよおじさん!!!れいむがいちころだよ!!」 「もうこわくないよ!!!れみりゃよわいもん!!!」 よし、準備OKだ。 そして僕はゆっくりと・・・籠を開ける。 「「う~♪たーべちゃーうぞー♪」」 そこには二匹のゆっくりゃがお腹を空かして待っていた。 しかしぬいぐるみ効果ですっかり強気になったゆっくり二匹。 「れみりゃはよわいよ!まりさがゆっくりたおしていくからね!!!」 そう言い終わるとまりさは勢い良くゆっくりゃに飛び掛る。 しかし 「ガブッ!!!」 「ぎゅっ!!??」 ゆっくりゃはそれを待っていたかのように上を向いてまりさの足に噛み付いた。 そして噛み千切る。 「い"だい"よぼぉぉおおぉぉぉおお!!!!」 「まりさ!!!??れみりゃはよわいのになにやってるの!!!??まりさはよわかったんだね!!まりさのよわむし!!!よわむしまりさはゆっくりしんでいってね!!!」 「どぼじでぞんぎゅぉっ!!!!!!」 『どうしてそんなこというの?』 そう言い終るまでゆっくりゃは待ってくれない。ゆっくりゃは数秒でまりさを帽子だけ残して完食してしまった。 「あーあ、まりさは食べられちゃったね。でもれいむはつよいから二匹相手でもどうってことないよね?」 「もちろんだよ!!まりさはよわいけどれいむはつよいもん!!れみりゃなんかいちころだよ!!!!」 そう言うとれいむはゆっくりゃに体当たりを・・・当てられなかった。ゆっくりゃが素早く避けたのだ(素早くとは言ってもゆっくりの中でだが)。 勢い余って壁に激突したれいむは頭から餡子が少しもれてしまった。 「どおじで・・・どおじでよげるのぉお"ぉお"ぉおお!!!」 「う~♪う~♪たーべちゃーうぞー♪」 「ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・どごじどおじじゅ」 れいむも同じく数秒でリボンを残し食べられてしまった。 そう、相手は人形であって実際の生き物ではなかった。 ゆっくりの頭ではその程度のことも分からなかったようだ。 「う~♪う~♪」 さて・・・残りのゆっくりゃがうるさくなってきた・・・ 丁度食料が少なくなってきたところだ。今日の昼食は肉まんにすることにしよう。 そして僕は残ったゆっくりゃを丸かじりして今日の昼食を終えた。 その時余った1匹にかじられたので蹴り飛ばしてしまい食べれなくしてしまったのは内緒だ ____________________________________________________________ あとがき ゆっくりを強く・・・ではなく強いと思わせてみました。 しかし思っただけでは強くなることは出来ません。 ちなみに思い込みで強くなるパターン、すなわちれみりゃに勝つというパターンも考えたのですがれみりゃが嫌いな僕は最後自分の手でゆっくりゃに止めを刺したかったのです。 ゆっくりにさせるなんて言語道断。恥を知れゆっくり。 最後に、ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。 あとこれを読んだ方、出来ればゆっくりゃを全力で虐めたSSを書いてくれるとうれしいです。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1564.html
「まりざー、ももとっできだどー」 「ありがとう。れみりゃ、ゆっくりおいてね」 「うっうー、わがっだどー」 「アリス、おだんごつくるのてつだってくれないかしら」 「いいわよ。とかいはのアリスがてつだってあげるわ」 「むきゅー、たすかるわ」 「おかあしゃん、おなかちゅいたー」 「もうすこしまってね。いま、アリスたちがおだんごつくってるから」 「うん、れみりゃおねえしゃんとあそんでるね」 「うー、れいむのあかちゃん、おそらをいっしょにおさんぽだどー」 「わー、おちょらをとんでるみたい」 「とんでるんだどー、あぶないからゆっくりしてだどー」 「何これ」 てゐは凄く不快そうに部屋を見渡す。 「何って楽園よ」 永琳は至極当たり前のように答える。 「ら、楽園・・・」 「みんな楽しそうでしょ?」 「れみりゃがゆっくりれいむを持って飛んでるんだけど」 「散歩かしら?よくやってあげてるのよ。空のお散歩」 「は、吐き気がする」 「・・・あなた、本当にゆっくりが嫌いなのね」 「嫌いってわけじゃないんですけどね」 気分が悪そうにてゐは部屋を出て行く、入れ替わりに鈴仙が入ってくる。 第一声は「わぁ、素敵」だった。 「いいでしょ?」 「はい、とっても。あ、れみりゃもみんなと仲良くしてるんですね」 「ご飯はどんなのがあるんですか?」 「木を見なさい。桃よ。皮が柔らかいからゆっくりでも剥けるわ。それとオレンジジュースはあそこの噴水から」 「オレンジジュースの噴水?メルヘンチックですね」 「あとは花もあの子達が好きな蜜の多い種類を選んでいるわ。芝生もまるでベッドみたいでしょ」 「あ、柔らかい・・・寝転んでも」 「いいわよ」 「わーい」 子どもみたいに芝生に寝転ぶ鈴仙、その声に気付いたのか、 ゆっくり達が鈴仙に近寄ってくる。 「おねーさん、ゆっくりしていってね」 「ええ、ゆっくりさせてもらうわ」 「まりさたちのゆっくりプレイスにようこそ」 「ゆっくりじでいぐどいいどー」 「とかいはのアリスがあんないしてあげるわよ」 「むきゅー、わからないことがあったらなんでもきいてね」 「凄いですね。師匠、みんな良い子です」 「ええ、みんな良い子よ。私は別の部屋を見てるからここをしばらくお願いね」 「はい」 永琳は部屋を出て行く。 「で?」 「詳細ね。いいわ。こっちよ」 部屋を出てすぐにてゐに話しかけられる。 まるであの楽園に種や仕掛けがあって、あるなら早く教えてくれと言わんばかりだ。 永琳はてゐを隣の部屋に案内する。 がらんとした部屋だ。玩具と餌箱とクッション、あるのはそれぐらいだ。 「残念ながら、あの子達はここで私が育てただけの子達よ」 「?」 「ただ普通に、悪い事をすれば叱り、良い事をすれば褒めた子よ」 「??」 「あなたが思ってるような薬物投与やロボトミーに近い手術は行っていないわ」 「???」 「ゆっくりは無能で浅ましく、卑しい生き物だと思っているけど。それはちゃんと教育するものがいないからよ」 「じゃあ、あの部屋の・・・」 永琳が壁のボタンを押すと、隣の部屋が見えるようになる。 鈴仙と一緒に歌っているゆっくり達の姿が見える。こっちからは見れて向こうからは見えない不思議なガラスだ。 「確かに栄養管理はしたいた。ゆっくりれみりゃも空腹になればよく他のゆっくりを食べようとするから。でも、今は空腹でも仲間を襲ったりはしないでしょうね」 「幼い頃から育てれば仲間意識も芽生える?」 「そうよ。加工工場に相談したんだけど、あれならペットとしても十分に価値がつくはず。ですって」 「まさか・・・」 「そのまさかよーん」 てゐは振り向く、そこにはプカプカと浮かぶ八雲紫の姿があった。 「幻想郷はゆっくりを受け入れるわ」 紫は笑う。 「巫女は?巫女は認めてるんですか?」 てゐは聞いてみる。 「博麗の巫女にも認めさせたわ」 紫は不思議なガラスの向こうのゆっくりを見て笑う。 「まさか、こうまでも変わるものとはね。教育って凄いわ」 「テキストを作って、人間や妖怪にも躾をできるようにしましょ。上白沢に言えば寺子屋を貸してくれるでしょう」 「妖怪は・・・守矢の神社を借りましょう。あそこの風祝はゆっくりが好きだから」 嬉しそうに紫が言う。 妖精たちにも教えたいわ。などと永琳は笑う。 「大人のゆっくりはもうダメなのかしら?」 残念そうに紫は言うが、大丈夫よと永琳は答える。 「今、大人のゆっくりに対する再教育の実験もやっているの。かなり極端な子じゃない限り再教育は可能よ」 「凄いわね。ねえ、私にも教えて」 「いいわよ。てゐ、あなたもどう?・・・てゐ?」 「あ、あんなのゆっぐりじゃない!!!」 てゐは部屋を飛び出すと、自分の部屋に駆け込んだ。 一番デカい引き出しを開けると、チェーンソーがしまってある。 「うーおー、あんなのゆっぐりじゃねぇー!!」 チェーンソーを構えると、そのまま楽園と呼ばれた部屋になだれ込んだ。 「そいや!!」 轟音を上げ、回転し始めるチェーンソーの刃、鈴仙を突き飛ばして、それをゆっくりパチュリーに当てる。 一瞬で生クリームの花になるゆっくりパチュリー、次に桃の木を切り倒す。 倒れた木にゆっくりまりさが巻き込まれ潰れる。抗議するゆっくりれいむは何か言っていたが、すぐに回転する刃に切り刻まれる。 「おかーしゃん」声を上げてしまったゆっくりれいむの赤ちゃんは、それによっててゐに気付かれ、その辺に落ちていた木の枝を投げつけられる。 枝はゆっくりれいむの赤ちゃんの目を貫通し、あとは死を待つだけとなった。 ゆっくりれみりゃは空を飛んでいるからチェーンソーが届かない。チェーンソーのエンジンを切ると辺りに何か投げるものがないか探す。 あった。ゆっくりアリスの髪の毛を強引に掴む。「やめて、とかいはのかみが」ゆっくりれみりゃに投げつける。 顔面に当たり、ゆっくりれみりゃとゆっくりアリスが落ちてくる。もうつぶれたゆっくりれみりゃとゆっくりアリスを何度も踏み潰す。 つるん、肉汁で滑ったのかカスタードクリームで滑ったのか、てゐは頭をぶつけ気絶する。 「・・・ゐ、てゐ」 「ん、あー、おはようウサ」 「何言ってるの。もうお昼よ」 永琳に起こされ、てゐは時計を確認する。 「んー、そうか、寝てたんだ」 「ところで、話の続きなんだけど。あなた、ああいうゆっくりが好きなのよね」 ゆっくりまりさが我が侭を言って、ゆっくりれいむを困らせる。 ゆっくりアリスは都会派を鼻にかけているが、ゆっくりパチュリーはそれをどこか馬鹿にしている。 「なーんか、ああいう性格の悪さが見ていて安心する。人間らしくも妖怪らしくもあるような感じで」 「そう、ま、いいわ。あの話は頓挫しちゃったし。鈴仙に謝っておきなさい。突き飛ばされて痛かったって言ってたわよ」 「・・・」 てゐの額に嫌な汗が流れる。 「あの・・・その・・・楽園は?」 「あの部屋以外にも実験的に導入した森があるんだけど、人間や妖怪に尽く全滅させられて、紫と話し合って白紙に戻すことにしたわ」 嫌な汗が背中にまで。 「みんな、どこかああいう優等生みたいな性格は嫌うみたいね」 「教育をすればゆっくり性格が改善されるって話は夢じゃ・・・」 「まだ寝ぼけてるの?それとも頭を強く打ったのがいけないのかしら?後で資料読む?夢なわけないでしょ」 てゐはまた気を失いかけそうになった。 ~あとがき~ 例えば歯車で動いている時計。その歯車に何かしら棒を突っ込んでやれば時計は止まります。 時計が止まっても時間は進むのだから、時計は狂って行きますね。 そういう破壊衝動はなかなか止められませんね。楽園実験の部屋にいたのは少しですが、 森にいたのはもっと多いでしょう。楽しく仲良く暮らしていたのに、人間や妖怪に難癖付けられて全滅。 他の部屋で実験されていた教育済みのゆっくりも紫と永琳が白紙を決定したら、焼却炉か別の実験に使われるか、 元々自然界に存在しない特殊なゆっくりだから、他の実験には使えませんね。焼却炉ですかね。 そうやって考えるとまたたまらなく面白いのです。 by118
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3985.html
『豆れみりゃ』 突然変異により生まれたと思われる、捕食種・れみりゃの亜種。 性質は通常のれみりゃと変わらず、ただ大きさが異なるのみである。 通常1m弱のれみりゃ種(胴付き)だが、豆れみりゃ(胴付き)は10cm前後。 手のひらサイズであるため器物や人畜へ被害をもたらす危険が少なく、初心者にも飼いやすいとされる。 野生の豆れみりゃ by 十京院 典明 (旧名 ”ゆ虐の友”従業員) 豆れみりゃはこーまかんで目を覚ました。まぶしい朝の光が全身を包んでいて気分がいい。 「うっうー!」 両手を高く上げ、誰にともなく威嚇のポーズをとる。 こーまかんとはれみりゃ種の自らの住居に対する呼称である。ちなみにこの豆れみりゃのこーまかんは一本の若木だ。 お気に入りのべっどである、根本に近いところに生えている葉から身を起こすと、朝のだんすを踊る。 おぜうさまたるもの、常にだんすの練習はおこたらないのだ。 「うっうーうあうあ!」 だんすが終わると、茎にしがみついて地上へと降りていく。 うっうー!きょうもいいてんきだどぉ!ぷっでぃんたべたいどぉ! おぜうさまはぁ、とってもぐるめなのぉ~。 えれがんとなぷっでぃんじゃなきゃいやなの~。 地面に降り立った豆れみりゃは、ぷっでぃんを求めてあたりをうろつきはじめる。 「うーうー!ぷっでぃんどこぉ~」 今までで一番おいしかったぷっでぃんは、道端に落ちていた黒くて甘い餡子。 「わせいすいーつだどぉー!」と喜んで食べた。 次においしかったぷっでぃんは、ひらひらの綺麗なちょうちょ。 「とってもえれがんとだどぉ~!」と、そのよろこびを踊りで表現した。 普段は地面から生えている雑草や、地面をうごめく虫を食べている。 「へるしーなさらだだどぉー!」 だけど、実はあんまりえれがんとじゃない。 おいしくないし、ちくちくのむしさんはおぜうさまのおはだを傷付けることもある。 だから、れみりゃは常にぷっでぃんを求めているのだ。 できれば黒くて甘いすいーつ(一度しか食べたことはないが)、それが駄目ならちょうちょを食べたい。 「うっう~うあうあ~」 上機嫌で鼻唄など歌いつつ、豆れみりゃは草むらを行く。 * * * * この日は幸運なことに、ちょうちょさんを見つけることが出来た。 「うっうー!たーべちゃーうどー!」 ぎゃおーと威嚇のポーズを取り、ちょうちょに向かって飛ぶ。 「とったどぉー!」 ひらひらのちょうちょさんは、こーまかんのおぜうさまにふさわしいえれがんとな味わいだった。 夕刻になって、豆れみりゃは道に迷うことなく自分のこーまかんに戻ってくることができた。 沢山食べて沢山踊って、今日はとってもいい一日だった。 「おやすみにはまだはやいどぉ~!うー!」 葉っぱの上でうあうあと踊る。 その時、額にむずむずとした感触が走った。 「あう?」 短い手を額に当てるが、むずむずは治まらない。 「へんだどぉ~どうしちゃったんだどぉ~」 しばらく気にしていたれみりゃだったが、やがてやってきた睡魔にあっけなく降伏した。 * * * * 次の日豆れみりゃが目を醒ますと、額からゆ木(ぼく)が伸びていた。その先にはゆっくりのつぼみがついている。 「おぜうさまにあがちゃんできたどぉ~!」 豆れみりゃは喜んだ。 充分に育ったれみりゃ種は、とてもゆっくりした環境におかれることでその身に子供を宿す。豆れみりゃも例外ではない。 ”せーじゅくしたおとなのみりょく”を持ち、”とってもえれがんとな(安全な環境にいる=子供を育てるのに適した)” ゆっくりれみりゃだけが子供を持つことができるのだ。 おそらく、かなりの好日であった昨日のうちに”えれがんとさ”が溜まり、そのために子供ができたのだろう。 「う~!おぜうさまはまんまぁになったどぉ~うれちいどぉ~」 れみりゃがぼよんぼよんと踊るたびに、額の上でゆ木が揺れる。その嬉しさで、またゆ木が育ったように思えた。 れみりゃはぷっでぃんさがしに出かけた。いつでもごきげんなれみりゃだが、今日はいっそうごきげんだ。 誇らしい気持ちと、親になったという責任感が原動力となり、れみりゃは力強く空を飛ぶ。 「おちびちゃん~♪おいちいぷっでぃんいっぱいたべさせてあげるど~♪」 * * * * 「ゆっきゅちちていってね!ゆっきゅちちていってね!」 「あう?」 割れるような大声が聞こえて、豆れみりゃは誘われるようにそちらへと向かった。 しばらく飛んでいくと、やがて草をかきわけて幼いゆっくりれいむが姿を現す。 「あうー?」 この豆れみりゃが他のゆっくりを見るのは初めてのことだった。子ゆっくりとはいえ、豆れみりゃの何倍も大きい。 豆れみりゃの狭い生活圏には他のゆっくりは存在していなかったのだが、今日のれみりゃは子供を得てテンションが上がっている。 そのため、普段の行動範囲よりも遠くまで来てしまっていたのだ。 相手の大きさに一瞬ひるんだ豆れみりゃだが、肉饅に刻まれた記憶が「この相手は自分達の獲物だ」と告げている。 いつか食べた黒くて甘いものがこの中に入っていると、れみりゃ種の本能で理解する。 「ぎゃーおー!たーべちゃーうぞー!」 いつものようにまず両手を上げて威嚇し、それから相手に向かって飛ぶ。 相手もこちらを認識したようで、こちらに顔を向けてくる。 「ゆゆ?!ゆっきゅりちていってね!むしさんれいみゅにたべられてね!」 当の子れいむはとてもゆっくりした表情で動きもしない。 「おいちいあまあまだどーー♪」 豆れみりゃは子れいむの腹部にうー!と突っ込んだ。 しかし、 「あうーーーー!!??」 「ゆ?」 もっちりとして弾力のある肌に弾かれて大きく跳ね返ったのは豆れみりゃの方だ。 「ゆゆゆ!!ぽんぽんがくしゅぐったいよ!ゆっくりやめてね!」 「うう……?」 状況がよく理解できないものの、襲撃が失敗に終わったことだけは理解する豆れみりゃ。 プライドを傷付けられた豆れみりゃは再び突撃する。 「うっうー!」 しかし、やはり効果は望めない。 「むしさんゆっくりやめてね!れいみゅはむしさんとはすーりすーりしないよ!」 「あううううう!!??どーじでたべられないんだどーー!!」 その言葉を子れいむが聞きとがめる。 「ゆゆ?これからゆっくりたべるよ?むしさんれいむのぽんぽんでゆっくりしていってね!」 「ぢがうどーー!おぜうざまがおまえをたーべちゃーうのー!!」 その時、まったくかみ合わない会話に割り込むように黒い影がよぎった。 起こった風に豆れみりゃは吹き飛ばされそうになる。 「おぢびぢゃーーーん!!!ゆっぐりにげでぇぇぇぇーーー!!」 影は、親れいむだった。 豆れみりゃからは見上げるような大きさと地鳴りのような声。 さしものれみりゃも恐怖に凍りつく。 親れいむの巨大な体が、恐ろしい速度でこちらへと迫ってきてれみりゃは目を回しかけた、が―― 「おねがいでずぅぅぅぅぅ!!!!がわいいでいぶとおちびぢゃんをみのがしてくだざいぃぃぃぃぃ!!」 それは親れいむの渾身の土下座(?)だった。 れみりゃ種の脅威を知る親れいむの態度に、豆れみりゃは俄然活気付く。 「おぜうさまはえらいんだどぉー!」 「わがっでまずぅぅぅぅ!!ゆっぐりりがいじでまずぅぅぅぅ!!」 「わかればいいんだどぉ~。おちびちゃんもいるんだどぉ~♪おぜうさまのおちびちゃん、かわいいどぉ~」 その時、ゆ木が大きく揺れた。 自分よりもずっと大きい親れいむを屈服させたことによる充足感で、またもゆ木の生長が促進されたのだ。 「う゛…う゛…う゛まれるどぉぉぉぉ!!!!!」 ゆ木の先のつぼみがぐむぐむとふくらみ、 「うーうー?」 子れみりゃが産声を上げた。 初めての子れみりゃの声に、豆れみりゃは感激する。 「すっごいどぉぉ~~!!まんまぁだどぉ~!まんまぁがまんまぁだどぉ~!」 自分の額を見上げるようにして、夢中で子れみりゃに言葉を浴びせ続ける。 「……ゆ!」 親れいむはこれを好機と悟った。 「ゆゆ!おちびちゃん、ゆっくりにげるよ!」 親れいむが子れいむを促すが、子れいむはわけがわからないといった表情。 「ゆぅ?れいみゅむしさんたべたいよ?」 「どぼじでわがっでぐれないのぉぉぉぉ!!??れみりゃはゆっくりできないんだよぉぉぉぉ!!??」 「おまえたち、なにしてるんだど?」 「ゆひぃぃぃぃ!!!!!」 言い争っているうちに豆れみりゃが気づいてしまう。 「だがらいっだのにぃぃぃぃぃ!!!!」 大きな瞳から滂沱の涙を流す親れいむ。そんなれいむに豆れみりゃは言った。 「うっうー! きょうはとくべつなひだからぁ、いのちだけはたすけてあげるど♪」 額の子れみりゃをみせびらかすように胸を張り、豆れみりゃは尊大に言い放った。 「ゆゆぅぅーーーん!!ありがどうございまずぅぅぅぅぅ!!!!」 「そのかわりぃ、そのおりぼんちょうだいだどぉ♪おちびちゃんへのしゅっさんいわいだどぉ♪」 「ゆうっ!?」 多くのゆっくりに見られる傾向として、自身の装飾品を大切にするという習性がある。 このれいむもその口のようで、結局のところ豆れみりゃの要求のレベルはほとんど変わらない。 「ゆぐぅぅ……それだけはゆるじでぐだざい……」 歯を食いしばり、体を左右にねじっていやいやをする親れいむ。 「だめだどぉ♪おりぼんでこーまかんをもっとえれがんとにするんだどぉ♪とっととよこすどぉ♪」 「ゆああああ……!」 そのとき、額の子れみりゃが笑う。 「うーうー!」 「しゅっごいどぉ!またわらったどぉーー!!」 豆れみりゃは、額にぶら下がってなかなか視界に入らない子れみりゃを見上げ―― べこん * * * * 気がつくと、地面にめり込んでいた。 「うっうーいだいどぉ……どーじたんだどぉ……?」 何とか身を起こし、すると眼前には二匹のれいむがいる。 「あう!そーだどぉ! とっととおりぼん……」 しゅるん、と子れいむの舌が伸びてきて、豆れみりゃの二枚の翼を絡め取る。 豆れみりゃは痛みに絶叫した。 「あ゛う゛ー!!はなぜぇぇぇーー!!」 親れいむがずいと這い寄ってくる。 「よくもいままでれいむをおどかしたね!」 先ほどまでと全く違う、怒りと攻撃性に満ちた顔が、動けない豆れみりゃを見下ろしている。 「ゆゆん!れいみゅのゆーとおりだったでちょ!むしさんはこわくなんかにゃいんだよ!」 「ゆぅぅ……さすがはれいむのおちびちゃんだね!とってもゆっくりしてるね!」 先ほど豆れみりゃを地面に叩き付けたのは、子れいむの舌による一撃だった。 その一撃で豆れみりゃは地面にめりこんで昏倒し――親れいむの”思い込み”が解けてゆく。 今、我が子の舌で地面に撃ち落された相手はあの恐ろしいれみりゃではない。 あるいは、れみりゃであっても見るからに小さく、取るに足らない存在である。 そう認識してしまえば、恐れが怒りへと変わるのは一瞬だった。 * * * * 親れいむは回想する。 「おぢびぢゃぁぁぁぁぁぁんんん!!!!ゆっぐりぢでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「うっうーうあうあ☆もっとにげるんだっどぉ~♪」 親れいむの一匹目の赤ちゃんは、れみりゃに狩り殺されていた。 偶然が味方し自らの命は取り留めたものの、ひどく傷付けられた初児は二度と還らなかった。 あまりにも天敵は強大で、逃げることさえもかなわないそれは、通常種のゆっくりにとって命の行き止まり―― れみりゃに意地悪く追い回された数十分間の記憶は、いまだに親れいむの餡子に大きな傷跡を残している。 れいむは豆れみりゃを見下ろしている。 あの時の自分と同じ思いを、こいつにも味わわせてやる。 * * * * 豆れみりゃは翼を拘束されたままこーまかんへの道のりを案内させられていた。 「うっうーおぜうさまのこーまかんはりっぱなんだどぉー!」 「……」 やがて二匹のれいむと豆れみりゃはこーまかんにたどり着く。 「じゃん☆これがおぜうさまのこーまかんだどぉー! こっちがべっどでぇ、こっちがだんすほーる……」 まだ自分の立場を理解していない豆れみりゃは、二匹のれいむに熱っぽくこーまかんの美点を語る。 二匹のれいむはこーまかんの方を向いている。大きな塊が覆いかぶさっているので豆れみりゃにはこーまかんが見えない。 「あうー!おぜうさまのおかえりだどぉー!」 豆れみりゃは二匹れいむの間を割って、こーまかんへと向かおうとした。 この二匹にこーまかんのすばらしさを見せてやるのだ。 だが次の瞬間、豆れみりゃは我が目を疑った。 「むーしゃ、むーしゃ……それなりー」 「ふつうのくささんだにぇ!」 ずっと暮らしてきた、世界一立派な自分のこーまかんが二匹のれいむに食べ散らかされている。 巨大な二匹のゆっくりは、すでにれみりゃのこーまかんであった若木を根本近くまで食べてしまっていた。 「ぎゃぉぉぉぉぉ!!!だめだどぉぉぉぉぉーーー!!」 おぜうさまの大事なこーまかんが。これからおちびちゃんが暮らす大切な住処がなくなってしまった。 それどころか二匹のれいむはあたりの草花をも食べ進んでいく。 親れいむは思う。 (れいむもだいじなおうちをこわされたんだよ。そのせいでゆっくりできなくなったんだよ) 「ゆーん!あんまりゆっくちできなかったよ!」 「おぜうざまのごーまがんがぁーーー!!!」 不満をかこつ子れいむをぺーろぺーろしながら、泣きじゃくる豆れみりゃに目を向ける。 「うー!おまえらゆるざないどぉー!!」 舌でべちん。 「いだいぃぃぃぃぃぃ!!!」 「おかーさんれいみゅむしさんたべたいよ!」 「ゆ~、おちびちゃんもうちょっとまってね」 この段になって、ついに豆れみりゃも格の違いを思い知る。 「も、もうでびりゃをゆるじでほしいんだっど?」 舌でべちん。 「いだいのやだぁぁぁぁぁ!!!!」 「ゆくく、じぶんのことよりおちびちゃんのしんぱいをしたほうがいいよ」 親れいむは残酷に言い放った。 「あう?……おぢびぢゃん?」 激変した状況から来るプレッシャーか、子れみりゃの成長に欠かせない”えれがんとさ”が減ってしまった結果か。 まだゆ木から切り離されていない子れみりゃは目を閉じて、ぐったりとしている。 「おぢびぢゃんしっかりするどぉーー!まんまぁがいまだんすをおどってあげるどぉー!」 「ゆくくく……せいぜいやってみるといいよ、にげたらべちんだよ」 「ゆー!おかーさんおにゃかすいたよー!」 「うっうー、うあ☆うあ」 「ばかなの?しぬの?」 「ゆっくちちんでにぇ!」 豆れみりゃは子れみりゃを励まそうと必死に体を動かす。 しかし、前と後ろに陣取る二匹から常に罵声が浴びせられ、子れみりゃはどんどん生気を失っていく。 「れみ☆りゃ☆うー!」 「ばかじゃね」 「つまんにぇ」 「ううううーーーー!!!じゃまずるのなしだどぉーー!!」 豆れみりゃが怒るが、一瞬の後「べちん」の恐怖に身をすくめる。 だが「べちん」は飛んでこなかった。その代わりに親れいむは澄まして言う。 「ゆゆゆ?れいむはゆっくりしてるだけだよ?」 「しょうだよ!はやくむしさんがちんだらもっとゆっきゅりできるよ!」 「ぐやじいどぉぉぉぉーー!!おぢびぢゃんんーー!おぢびぢゃんんーー!」 どうすることもできない豆れみりゃを尻目に、二匹のゆっくりはいつものアレをはじめた。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆゆ!おかーしゃんゆっくちちていってにぇ!」 「じょうずだよおちびちゃん!ゆっくりしていってね!」 「ゆゆーん!ゆっくりちていってにぇ!」 「うるざいどぉぉぉぉーーー!!おぢびぢゃんがじんぢゃうどぉぉぉぉぉーー!!」 「ゆっくりしんでね!」 「ゆっくりちんでにぇ!」 「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!おぢびぢゃんんんんーーーー!!!」 ゆ木がしなびて顔の前に落ちて来た。 豆れみりゃの、草の実のように小さなおちびちゃんはもはや息も絶え絶えだ。 「うー……まんまぁ~……まんまぁ~……」 「おぢびぢゃん!!??おぢびぢゃん!!??」 「まんま……」 「「ゆ っ く り し て い っ て ね !」」 そのか弱い声をかき消すようなゆっくりしていってねが最後の一押しになったのか、 「まん……まぁ……」 子れみりゃはついにその短い生涯を終えた。 「ううううううーーーーー!!!!」 「ゆっゆっゆっゆ!」 「むしさんたべたいよ!もうがまんできないよ!」 「そうだね、もうおかーさんもゆっくりできたよ!ゆっくりむーしゃむーしゃするよ!」 悲嘆に暮れながらも、豆れみりゃは自らの命の最終通告を聞きわけた。 散り散りになった思考でも、その意味するところを理解する。 とってもえれがんとなおちびちゃんは、この大きな存在に苛められて殺された。 そして悲劇はこれで終わりではなく、これからわが身へと降りかかってくるところなのだ。 「うわあああああああ!!」 豆れみりゃは半狂乱になって飛んだ。 「うーうー!ざぐやー!ごあいどぉー!!おぜうざまはまだじにだぐないどぉぉぉぉーー!!」 こーまかんを失った悔しさも子れみりゃの無念も忘れて、死から逃れようと力いっぱいにもがく。 「だずげでぇぇぇぇぇ!!!!ざぐやーー!ざぐやーー!」 火事場の馬鹿力――生命の危機を前にした潜在能力で、豆れみりゃは今までで最高のスピードで飛ぶ。 「ざぐや……!」 しかし、その足に子れいむの舌が難なく巻きついて、豆れみりゃを地面に引きずり下ろした。 END
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/127.html
ゆっくりという種族が幻想郷に突如蔓延して、どのくらい経っただろうか。 畑を荒らす害獣として駆除されたり、加工所というところでお菓子にされたりするくらいには、既に浸透していると思う。 中には俺のように、ペットして飼うものも少なからず存在していた。 「今帰ったぞ~」 「ゆっ!」 仕事が終わり、帰宅して扉を空けると、部屋の真ん中に鎮座していた生首が声を上げて駆け寄ってきた。 赤いリボンが特徴的な、ゆっくり種の中でも一番数が多いとされるゆっくり霊夢だ。 博麗の巫女によく似た顔で(と言うと、霊夢さんは怒るかもしれないが)、性格は基本的に温和で純粋無垢。 それ故にトラブルを起こすことも多々あるのだが……まぁ、その話はもうちょっと後で。 「ゆっくりしていってね!」 仕事で疲れてる俺に対する労いの言葉――ではなく、単にこいつらの口癖なのだが、兎にも角にも癒される。 可愛いなぁ、くそ。 俺の友人たちはよくこいつを買って食べているが、正直薄目に見れば人の顔そのものであるこいつらによく噛み付けるものだ。 しかも食う時に痛々しい叫び声上げるんだぜ? 悲痛すぎて言葉が出ない。 友人曰く、「お前もその内分かるようになる」らしいんだが……そういう日が来ないことを願う。 「待ってな、今晩飯作るから」 「ゆっくり待ってるね!」 ぴょんぴょん飛び跳ねて晩飯を心待ちにしていることをアピールするゆっくり霊夢。 うぅん、ぷりちー。 気持ち悪がる人もいるが、俺にとっては可愛いペットだ。 晩飯を食べ終わると、読書タイムとなる。 最近友人になったパチュリーさんから借りた本を読みながら、まったりとした時間を過ごす。 ゆっくり霊夢は何をするでもなくぼーっと、たまにぴょんぴょん部屋を飛び跳ねて、「ゆっくりしてるね!」と言っていた。 ゆっくりの声には癒し効果でもあるのか、意識を阻害されることなく読書に集中出来る。 やがて切りのいいところで本を片付け、ゆっくり霊夢と遊ぶことにした。 「ほら、取って来い!」 「ゆ! ゆ!」 フリスビーを家の壁に穴を開けない程度に軽く投げ、ゆっくり霊夢に取って来させる。 ゆっくり種はその口癖と名前から勘違いされがちだが、飛び跳ねたり、野原を駆け回ったりと意外とアクティブな存在だ。 だから運動不足にならないよう、こうして遊んであげる必要がある。 俺が仕事に行ってる間に外に出してもいいんだが、もし野生のゆっくりアリスやゆっくりれみりゃと遭遇したときのことを考えると……駄目だ、放し飼いは認められない。 「取ってきたよ!」 口にフリスビーを加えたゆっくり霊夢が戻ってくる。 「おう、偉い偉い」 ゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は嬉しそうな顔をした。 その顔を見ていると、こっちの頬まで緩んでくる。 ……それと同時に、ある感覚が心の内より現れた。 「っ……」 「?」 不思議そうにこっちを見つめるゆっくり霊夢になんでもない、と首を振り、もう一度フリスビーを投げる。 せっせと追いかけるゆっくり霊夢を見つめながら、湧き上がる感情に戸惑いを覚える。 ――ゆっくり霊夢をいじめたい。 別に虐待をしたいわけではない。可愛いペットにそんな真似をしたくはない。 しかし、こう、なんというか……ううん、説明出来ない。 「ゆっくり取ってきたよ!」 再び戻って来るゆっくり霊夢。 俺は心のもやもやを打ち払うようにゆっくり霊夢の頭を撫で、そして振動させた。 「ゆっ!?」 小刻みにバイブレーション。 最初は驚いて逃げようとしたゆっくり霊夢の顔が、少しずつ赤らんでくる。 「ゆゆゆ、ゆー!! ゆー!!!」 甲高い声。時間の経過と共に、ゆっくり霊夢はどんどん発情していく。 荒んだ心を癒してくれる礼として、こうしてゆっくり霊夢に快感を与えてあげることは毎日の日課だった。 「……」 だが、今日の俺はなんとなく、手を止めてしまった。 中途半端なところで快感をストップされたゆっくり霊夢は慌てたように俺の手に擦り寄って、 「ゆ、ゆっくりして! もっとゆっくりしていって!」 潤んだ瞳で俺を見上げるゆっくり霊夢。 その視線を浴びて、 「……!」 何故か身体がゾクゾクする。 もっと見たい。 もっとこの目で見つめられたい。 「ゆー!!! ゆー!!! ゆー!!!」 だが、それと同時に可哀想だという感情も浮かび上がってくる。 俺は手をもう一度律動させ、ゆっくり霊夢を絶頂へと導いてやった。 未知の感覚に戸惑いながら、一週間が経過した。 臨時教師として慧音さんの手伝いをした俺は彼女と彼女の友人である妹紅さんと一緒にまったりとお茶を飲みながら歓談し、上機嫌だった。 「おーう、今帰ったぞー!」 扉を開ける。 ――瞬間、先程までの高揚した気分が嘘のように蒸発した。 俺はゆっくり霊夢に、家の中はどこをうろついてもいいから絶対に机の上には乗るなと言い聞かせてあった。 机の上には俺の大事なものがたくさん置いてある。 ゆっくり霊夢はそのことを理解したかどうかは知らないが、厳しく言っておいたので飼い始めてから三ヶ月、ずっと机の上に乗ることはなかった。 だが。 帰宅した俺を待ち受けていたのは机の上に鎮座してゆっくりと眠っているゆっくり霊夢の姿だった。 「……」 俺は机に近寄って、その惨状を目撃した。 綺麗に整頓されていた机の上は見事に荒らされ、物体のほとんどが破壊されていた。 アリスさんがくれた人形も、 妖夢ちゃんが作ってくれた剣神像も、 てゐから珍しく受け取った四葉のクローバーも、 幽香さんから頂戴した花も、 にとりさんと協力して発明したトランシーバーの試作機も、 みんなみんな、見るも無残に破壊され尽くされていた。 「……」 俺はどろどろとした心のまま、ゆっくり霊夢を起こした。 「ゆ……?」 とろんとした目を開け、俺が目の前に立っているのを認識するや否や、 「ゆっくりお帰りなさい!」 いつもの挨拶。 だが、俺の心はいつものように癒されはしない。 「なぁ、ゆっくり霊夢」 「どうしたの?」 「お前、なんで、机の上に乗ってるんだ……?」 「……ゆ!?」 俺の怒りのオーラを感じ取り、ようやく約束を思い出したのか、ゆっくり霊夢は慌てたように頭を下げた。 「ご、ご、ごめんなさいだよ!」 「謝るのは後でいい、理由を説明しろ」 「あのね、蝶々がね……」 ゆっくり霊夢が言うことには昼頃、窓の隙間から現れた蝶々を捕まえようと四苦八苦し、ようやく机の上で捕まえて食べ、そのまま眠ってしまったらしい。 あまりにも夢中で、俺との約束など「うっかり」忘れてしまっていたようだった。 うっかり。 それだけの理由で、俺の大切なものは破壊され、二度と元には戻らない。 俺はゆっくり霊夢を叩こうと腕を振り上げ、 「ゆーっ!!!」 目を閉じ、ぶるぶると震える姿を見て、静かに下ろした。 とんでもないことをしたとはいえ、三ヶ月間ずっと一緒に暮らしてきたペットだ。 暴力を振るうことは、俺には出来ない。 溜息をつき、ゆっくり霊夢を持ち上げ、そっと床に降ろした。 「ゆ……?」 「晩御飯にしようか」 ぱぁ、とゆっくり霊夢の顔が明るくなった。 「ゆっくり用意してね!」 先程の殊勝さが嘘のように、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを露にする。 「ふぅ……」 甘いな。 まったく甘い。 俺は、許してやるなんて一言も言ってない。 その日から、俺は帰りにある場所へ寄るようになった。 必然的に帰りは遅くなり、ゆっくり霊夢と遊ぶ時間はなくなる。 更に意識して朝飯と晩飯の量を減らしたので、ゆっくり霊夢は少しずつ文句を言うようになった。 「早く帰ってきてね!」 「たくさん遊んでね!」 「もっと食べたい!」 だが、俺はその声を悉く無視した。 少し胸は痛んだが、それでもこいつにはやったことの重大さを分からせてやらねばならない。 でないと、俺の怒りが収まらない。 俺のただならぬ様子を見かねた鈴仙さんから貰った精神鎮静剤を飲みながら、俺は準備が整うのを待った。 そして――三日後。 全ての準備は整ったのだった。 ゆっくり霊夢はまどろみの中にいた。 最近は自分の主人があまりゆっくりしてくれなくなり、寂しい思いをしていた。 だが昨日の夜、寝る前に彼は言ってくれたのだ。 「ここのところ、遊んでやれなくてすまなかったな」 「一週間の休暇を取ってきたから、ずっとゆっくり過ごそう」 「ご飯も今まで少なかったけど、豪華にするぞ」 「さ、今日は一緒の布団で寝ようか」 感激したゆっくり霊夢は、わくわくした気持ちのまま眠りに付いた。 一週間も、優しい主人とゆっくり出来る! だから、早く起きないと。 ゆっくり霊夢は寝返りを打とうとして――打てない。 「……?」 身体が動かない。 自分は今だ夢の中にいるのだろうか? なんだか息苦しい…… ゆっくり霊夢は静かに目を開いた。 「……!?」 そして映った光景に飛び上が――ることが出来ず、身体を震わせた。 自分の身体は、四角い箱の中に閉じ込められていた。 『んん゛っん゛ん゛ん゛ん゛……んん゛!?』 ゆっくりしていってね! 種族反射的にそう言おうとして、言えなかった。 自分の口に猿轡が噛まされており、更にその上からガムテープを貼られている。 周りは暗い。しかし自分の視点の場所だけ小さく四角い穴が開けられており、そこから外の様子が映し出されている。 そこには―― 「すぅ……すぅ……」 「ゆ……ゆっく……」 布団で眠っている、見慣れた主人と、ゆっくり霊夢の姿があった。 『ゆ!? ゆゆゆ!!?」』 混乱して喚くゆっくり霊夢、突然の事態に理解が追いつかない。 何故自分はこんなところにいる? 主人と一緒に眠っているゆっくり霊夢は何者だ? 「うぅん……」 と、その時。 主人が眠りから目を覚まし、起き上がった。 目をこすり、横で一緒に眠っていたゆっくり霊夢を見て―― ――惚れ惚れするような太陽の笑顔で、 「ほら、起きろゆっくり霊夢、いい朝だぞ」 『ちがうよ! そいつは偽者だよ!!!』 叫びたい。 しかし、その声は届かない。 やがて偽者のゆっくり霊夢が目を開き、開口一番、 「ゆっくりしていってね!」 「おう、ゆっくり朝飯にするか。昨日の約束通り豪華にいくぞ」 「ゆっくり作ってね!」 『待って! 気付いて!!!』 ゆっくり霊夢は泣きながら、自分と偽者が入れ替わっていることに気付いてくれと願う。 だが無情にも、主人はふんふんと鼻息を歌いながら台所に向かっていった。 『あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!』 絶望が心を支配する。 だが、気付いていないのはゆっくり霊夢のほうだった。 これはまだ、始まりにすぎないのだと。 (見ているか、ゆっくり霊夢?) 俺は料理を作りながら、心の中でほくそ笑んだ。 一緒にいたのが偽者だということくらい、先刻承知している。 何故なら二人のゆっくり霊夢を入れ替えたのも、本物のゆっくり霊夢を閉じ込めたのも、全部俺だからだ。 (それがお前への制裁だ。ゆっくり楽しんでくれ) ぞくぞくするような背徳感を感じながら、意識して本物のゆっくり霊夢が閉じ込められている箱を見ないように努める。 ゆっくり霊夢は現在、透明の四角い箱に入れられ、更にその四方と天井をダンボールの壁で一枚一枚覆っている。 そんな面倒なことしなくてもそのままダンボールを被せればいいじゃないか、と思う奴もいるかもしれないが、まぁこれにはちゃんとした理由がある。 その理由は後ほど語るとして、偽者のほうを説明しておこう。 こっちのゆっくり霊夢は三日前、ゆっくり加工所に行って手に入れたゆっくりだ。 所員に事情を説明し、余っている預かり部屋を利用して仲良くなった。 こいつには一週間、俺の家で一緒に暮らせると伝えてある。 何か変なことを言い出さないかだけ少し心配だったが、流石ゆっくり、あまり深くは考えない性質のようだ。 俺は今から、この偽者ゆっくり霊夢を最大限にもてなす。 そしてその様子を、本物のゆっくり霊夢に見せ付けるのだ。 本来なら自分が得られたはずの待遇が、突然現れた自分の偽者に奪われる。 しかもその様子をまざまざと見せ付けられ、自分は食べることも、遊ぶことも許されない。 お仕置きとして、これ以上のものはそうそうないだろう。 さぁ、ゆっくり霊夢。 お前がどれだけのことをしでかしたのか、分かってくれよ? 『う゛わ゛あ゛あああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』 ゆっくり霊夢は絶望の淵にいた。 どれだけ暴れても、どれだけ祈っても、自分の置かれている状況はこれっぽっちも変化しない。 朝食は豪華な豚カツだった。自分は何も食べていない。 昼飯までの間、二人はゆっくり過ごしていた。自分はきつい箱の中で息苦しかった。 昼飯は二人でどこかに出かけていた。孤独感が自分を押し潰すようだった。 夕食まで、二人はずっと遊んでいた。自分はただ身体が痒いのを我慢しているだけだった。 夕食は今まで食べてきた中で一番美味しかったお寿司だった。でも、やはり自分は食べられなかった。 そして、 「ゆー……ゆゆゆゆゆ……」 偽者のゆっくり霊夢は現在、主人の手によって振動を与えられていた。 「どうだ? ゆっくりしてるか?」 「ゆ……ゆっくりぃ……してるよぉ……♪」 『ゆっくりしてない!!! れいむは全然ゆっくりしてないよぉ!!!』 ゆっくり霊夢は快感を与えられている偽者の姿を滝の涙を流して見ていた。 滂沱のごとく流れ出る溢れ出る涙。何故、自分がこんな仕打ちを受けないといけないのか? ゆっくり霊夢の頭の中に、既に約束を破ったことは残っていない。 「んほおおおおおおおおおお!」 偽者ゆっくり霊夢が絶頂を迎えた嬌声を聞きながら、本物ゆっくり霊夢はこれがいつまで続くのだろうと考えていた。 それから太陽が昇り、また沈み、そして再び昇った三日目の朝。 空腹で朦朧とした意識を抱えながら、ゆっくり霊夢をうっすらと目を開いた。 映る光景は変わらず、静かに眠る主人と、そして主人の腕を枕に眠る偽者。 ようやく暴れたり叫んだりして体力を消費することが愚かだと気付いたゆっくり霊夢は、呆とした意識のまま、事態が変わることを待っていた。 がさ……がさ…… (……?) ふと気付く。壁の右側から何か音がする。 一体何だろうか? 確かめようにも、壁があって何も見えない。 やがて偽者ゆっくり霊夢が起き出し、ぴょんぴょん飛び跳ねて主人を起こす。 「ゆっくり起きてね!」 「む……もう朝か……」 ふわぁ、と欠伸をする主人。まだ眠り足りないようだった。 「ゆっくりご飯作ってね!」 「おう……だけどその前に」 「ゆ?」 「待ってる間暇だろ? いい遊び道具があるんだ」 そう言って。 主人はゆっくりと、自分の方向へ近寄ってきた。 『!!!』 これは千載一遇のチャンスかもしれない。 ゆっくり霊夢はありったけの力で出来る限り身体を震わせ、自分がここにいることをアピールする。 『れいむはここだよ! ゆっくり探してね!』 やがて映るのは主人の足のドアップ。そして、頭上から声。 「えーと、これだこれだ」 得心したような声。 同時に、ゆっくり霊夢の右側の闇が、突如として払われた。 『……!?』 どうやら、右側の壁が取っ払られたらしい。 もしかしたら脱出の糸口になるかもと、ゆっくり霊夢は明るくなった右側を、 見た。 「――――――ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」 声にならない悲鳴。 閉じ込められたときよりも大きい、今までで一番の驚愕。 「ほら、蛙さんの人形だぞ」「ゆっくり楽しむね!」という主人たちの声も聞こえない。 何故なら。 そこにいたのは。 『うー♪』 『だずけ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 自分と同じく箱詰めにされ、自分と同じゆっくり霊夢を食べている途中の、ゆっくりれみりゃの姿だった。 (気付いたかな……) 俺は朝食の準備に取り掛かりながら、昨夜のことを思い出していた。 ゆっくり霊夢の起床・睡眠時間は、永淋さんに頼んで作ってもらった気体状睡眠薬で周到に設定してある。 それをゆっくり霊夢の死角から呼吸用に空けておいた穴に流し込んで、眠気を調節するのだ。 だからゆっくり霊夢が起きる前に俺は起床し、加工所で買ったゆっくりれみりゃを入れた透明の箱を隣にセット。 同じく加工所で購入したゆっくり霊夢を中に入れ、準備は万端というわけだ。 箱の大きさはゆっくり霊夢に使った二倍、ちゃんと食べられるスペースはある。 ちなみに都合上ゆっくりれみりゃの口は防げないので、こちらの箱は少し値段の張る防音処理だ。 更にその上に右側――いや、ゆっくりれみりゃから見れば左側か、そこだけ空けた箱を被せてある。 偽者のゆっくり霊夢がゆっくりれみりゃに気付いて怯えたりしたら計画が台無しだからな。 そして全てを終えた俺は先程まで眠っていたフリをしていたわけだ。 自分の天敵がすぐ傍にいる恐怖。更にそいつは自分と同じ顔のゆっくりを目の前で食べているのだ。それも、毎日。 それがどれだけの恐怖か、俺には分からない。 俺の都合上、ゆっくりれみりゃは一日一匹のゆっくり霊夢しか食べられないので、かりかりして目の前のゆっくり霊夢をどうにかして食べようと躍起になるだろう。 それが更に、ゆっくり霊夢を襲う辛苦となる。 ゆっくり霊夢はどうするだろうか。 怯えてぶるぶる震えるだろうか。 我を忘れて泣き叫ぶだろうか。 それを想像するだけで、俺は――たまらない高揚感を得る。 あれから何日経過しただろうか。 ゆっくり霊夢には、もう時間の感覚が存在していなかった。 毎日毎日、自分が過ごすはずだった幸福の日々を目の前で見せ付けられる苦痛。 自分を食べようと、いらいらした様子で飛び回っているゆっくりれみりゃの恐怖。 それが何も口にしていない空腹と身動きが取れないことの不快感とごちゃ混ぜになり、混沌と化していた。 『ゆっくり……したい……』 考えることはもはやそれだけ。 些事を考える余裕など、今のゆっくり霊夢にあるはずもなかった。 「美味しかったなぁ、ゆっくり霊夢!」 「ゆっくり美味しかったね!」 ゆっくり霊夢が食べたことのない、ブ厚いステーキを食べ終わって、主人と偽者ゆっくり霊夢は満足した様子だった。 ステーキ。幾度となく食べたいと主人に言い、その度にあしらわれて食べる機会のなかったステーキ。 本来なら自分が食べていたはずの、ステーキ。 ゆっくり霊夢の中に偽者への憎悪が込み上げ、だがすぐに虚脱感に襲われ萎んでしまう。 もう、何をする気にもなれなかった。 右側には未だにゆっくりれみりゃが自分を食べようと、ぱたぱた飛び回っている。 壁がある限り襲ってこないとは分かっていても、本能的な恐怖は拭い去れない。 もう、ゆっくり霊夢の精神はボロボロだった。 「さて、遊ぶか」 「ゆっくり遊んでいってね!」 「そうだ、今日は面白い玩具があるぞ」 「本当!?」 「おう。ちょっと目隠しするぞ、楽しみにしておけ」 「ゆっくりわくわくするね!」 食事の片付けが終わった主人は、偽者ゆっくり霊夢に目を布で縛っていた。 そして、本物ゆっくり霊夢の方向に歩み寄る。 『……!』 主人が自分の方に近付くのは、どれだけ久しいことか。 ゆっくり霊夢の中に、淡い希望が芽生えた。 もう身体を震わせる体力は残っていない。 ただ、主人が自分を見つけてくれることを祈るだけだ。 「えーと、何処だったかな……」 しかし、主人は期待も空しく、ゆっくり霊夢の死角へと移動してしまった。 希望が潰える。しかし、落胆する体力すらない。 自分の左側からがそごそという音。 結構時間がかかっている。 「お、あったぞ!」 ようやく主人が喜びの声を上げた。 と、同時。 いつかのときと同じく、ゆっくり霊夢の左側の壁が取っ払わらわれた。 反射的に、視線がそちらへ泳ぐ。 そして。 また、いた。 『れ、れれ゛い゛むぅぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ううぅ゛ぅ゛!!!』 『ゆ゛! ゆ、ゆゆゆゆ゛っく゛り゛し゛て゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 発情し、顔は真っ赤にして目を血走らせたゆっくりアリスと。 そのアリスに襲われ、世にも恐ろしい顔で絶叫を上げる同種のゆっくり霊夢の姿があった。 『…………!!!』 世にも恐ろしい光景に、悲鳴を上げることも出来ず、咄嗟に目を逸らすゆっくり霊夢。 だが逸らした先には、 『うー!!!』 空腹で般若の表情をしたゆっくりれみりゃが、自分を食べようと壁をかりかり引っ掻いている。 『……!! …………!!!』 まさに前門の虎、後門の狼。 ゆっくり霊夢はただ、この状況をなんとかしてくれと願いしかない。 やがてゆっくりアリスが交尾を終えると、ゆっくり霊夢は黒く朽ち果てるのと同時に蔦を伸ばし、子供を生む。 ゆっくりれみりゃの箱より更に四倍は大きい箱の中で、小さな赤ちゃんゆっくり霊夢がぽんぽんと生まれた。 『ゆっくりしていってね!』 『ゆっくりしていってね!』 『れ、れいむ……れ゛い゛む゛ぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!』 だが、その瞬間。 発情が収まらないゆっくりアリスが、なんと赤ちゃんゆっくり霊夢に襲い掛かった。 『ゆ゛!? ゆ゛ゆ゛っ!?』 赤ちゃんゆっくり霊夢は突然の出来事に暴れるが、成人したゆっくりアリスに力で適うはずもなく。 他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、怯えて隅に固まる。 そして交尾は終わるが、赤ちゃんゆっくりは黒ずんだだけで、子供を生むことはなかった。 ゆっくりアリスはその様子はじっと見つめた後、 ぎらり、とその視線を他の赤ちゃんゆっくりたちに移した。 その顔は、未だ発情したまま留まっており。 始まる、地獄絵図。 ゆっくり霊夢が覚えているのは、ここまでだった。 ついにゆっくり霊夢は意識を失い、失神してしまった。 冷たい、空気。 ゆっくり霊夢が目を開くと、そこは今まで暮らしていた部屋の中だった。 「……ゆっく!?」 吃驚して声を上げる。 声が、出る。 ゆっくり霊夢はもう猿轡をしておらず、狭い箱の中にも閉じ込められていなかった。 何が起こっているのか。 周囲を見渡すが、左右にゆっくりれみりゃやゆっくりアリスの姿は見当たらない。 あるのは、激しい空腹感だけ。 「ゆ、ゆっくりー!!!」 とにかく、理由は分からないが助かったことだけは分かり、ゆっくり霊夢は歓喜の声を上げた。 と、そこに、 「おう、起きたか?」 台所で朝食の支度をしていた主人が、ゆっくり霊夢の方を振り向いた。 「ゆっ……」 その顔を見た瞬間、今までの監禁生活で押さえ込んでいた様々な感情が溢れ出し。 ゆっくり霊夢は号泣しながら、主人の足元に飛びついた。 「う゛わ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ゛ん゛!!!」 「おいおい、どうしたんだよ?」 主人は優しくゆっくり霊夢の身体を抱きかかえ、その涙を拭ってやる。 「ゆ、ゆ゛っく゛りて゛きる″! ゆっくりできるよぉぉぉ!!!」 「あぁん、お前何言ってるんだ……?」 わけが分からん、といった具合に主人は首を捻った。 だがその顔が笑いを堪えていることに、果たしてゆっくり霊夢は気付いているのだろうか? 「まぁいいや、朝食にするぞ」 「ゆ! 朝ごはん!?」 とにかくお腹が空いていた。寿司、ステーキ、自分が食べられなかった数々の豪華な食事を思い出し、思わず涎がこぼれそうになる。 激しい期待を込めて、調理中の料理を覗き込むゆっくり霊夢。 「……ゆ?」 だが、そこにあったのは、人参、椎茸などの普通の野菜ばかり。 しかもその量はかなり少なく、この空腹を満足させられる代物だとは到底思えなかった。 「も、もっといっぱい欲しいよ!」 「あー、悪い。今まで一週間贅沢したツケでな。今日から一ヶ月くらいこれで我慢してくれ」 「ゆっくり!?」 嘘だ、とばかりにゆっくり霊夢は絶叫を上げた。 「やだ! 食べたい!! れいむもステーキとかゆっくり食べたい!!!」 「お前、あんだけ食べてまだ足りないのか? 少しは限度ってもんがあるだろ」 「食べてない! れいむは食べてないよ!!」 「嘘をつくなよ!」 主人の厳しい叱責。びくりとゆっくり霊夢の身体が震える。 主人にとって、あの偽者が本物だったのだ。 あまりの理不尽に、ゆっくり霊夢は涙を流して訴える。 「違うの! 今までのれいむは偽者だったんだよ!! だかられいむは食べてないの!!!」 「いい加減にしろ!」 主人はがっしりとゆっくり霊夢の頬を掴み、言い聞かせるように耳元に囁いた。 「これ以上文句を言うなら、『ゆっくり出来ないようにする』ぞ」 「――!!!」 ゆっくり、できないように、する。 その一言は、ゆっくり霊夢のトラウマを蘇らせた。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 絶叫。涙の奔流が止め処なく溢れ出る。 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 その言葉を聞いた瞬間、俺は今までの人生で味わったことのない幸福感に包まれていた。 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、謝罪の言葉を口にするゆっくり霊夢。 その哀れな表情が……この上なく、俺の快感となる。 「じゃあ、文句は言わないな?」 「うん……」 「よーし、いい子だ。早苗さんから貰った野菜だぞ、ゆっくり味わって食べろよ?」 「ゆっくり食べるよ……」 消沈した様子のゆっくり霊夢。 それを見て、愛しさが込み上げてきた。 「ああもぅ、可愛いなぁお前は!」 ゆっくり霊夢を抱きしめて頬ずりする。 やっぱりこいつは最高のペットだ! 酷いことしたと思うって? でもそれって俺の愛なんだ! 愛ならしょうがないよね!!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/706.html
歳末の大宴会も終わり、今年も残すところあと二日となった。後は年越し宴会を待つのみだ。 まどろっこしいからいっそのこと三日連続正月含めてぶっ通しで宴会やろうよ、というアル中チ ビ鬼の提案は一蹴されている。開催会場の設営者が直々に「いやよ」の一言と見事な三白眼で断っ たのだ。そりゃ当然だ。一週間も延々騒ぎ通した挙句、博霊神社には何の見返りも無いのだから。 しかし、年越し宴会の開催は、皆の熱心な説得により開催される運びとなった。これには鬼も喜 んでいたので、ある程度の満足は得られたのだろう。博霊の巫女による最大限の譲歩だったのだろ うが、彼女は宴会の開催決定にうんざりした表情をしていた。 俺は、その年越し宴会のための鋭気を養うため、早々に帰路についている。今頃は三次会になだ れ込むところなのだろう。しかし、俺は年越し宴会で倒れるわけにはいかないのだ。しっかりと体 力を戻さねば、新年を昏倒した状態で迎えることになる。そんな一生の汚点を抱え込むわけにはい くまい。かなりの人数に引き止められたものの、必死に断りの文句を並べ立て、何とか解放しても らえたのだ。年越し宴会ではひどい目に遭わされそうだという確信もこのとき生まれた。そうなれ ば、酔った勢いを装って、あのチビ鬼の瓢箪を踏み割ってやろう。いっぺん泣きを見せてやらねば ならないのだ。もっとも、そういいながら実行に踏み切ることは無いだろう。 酔いを醒ますように、涼やかな夜風が吹く。今日は幸運なことに雪は降っていない。地面にはし っかりと根雪が積もり足場は悪いが、横殴りの雪が降るよりはましだ。酔いがさめる所の話ではな くなってしまう。 確かな足取りを保ちながら、家路を急ぐ。酔いが醒めてくるとともに、冬の寒さが身体の節から 沁みてくる。これは早く家について焼酎かなにかで寝酒に興じるのがよいだろう。もう一度身体を 暖めてからのほうが、俺の場合寝付きが良くなるのだ。 我が家への道のりもあと少しとなってくるころには、自然と俺の歩みは速くなる。寝酒を夢見な がら歩を進めていくうち、俺は妙な違和感に気づいた。 ――家に、灯かりが付いている。 俺は、まだ酔っているのかと自分に呆れながら、もう一度我が家の窓を見る。 ――台所の方が、やはり、明るくなっている。 再度、括目する。 ――居間の窓が割れていた。 三度、括目する。 ――何かが、室内で蠢いている。影が上下に揺れていた。 「不味いだろ……」 自然と呟きが漏れ、嫌な予感が脳裏を過ぎる。何者かが、俺の家の中でなにかをしている。この 状況を楽観視できる人間がいるなら、俺はすぐさまそいつをどこかの滝壺に突き落とそうじゃない か。骨は、白狼天狗の椛ちゃんが拾ってくれるだろう。 とりあえず、俺は現実から目を背けてはいけない。家の中に居るのが、喩え夜盗だろうと妖怪だ ろうと、立ち向かわねばならないのだ。我が家を守るには一所懸命。それ相応の努力労力を惜しん ではいけないのだ。 俺は深呼吸を何度もし――それでも心臓は落ち着きを取り戻さなかった――、決心を固め、玄関 の戸を、音を立てぬように引いた。 土間を通り過ぎ、静かに下足を脱ぐ。扉の隙間から、薄暗い居間で何かが飛び跳ねているのがわ かった。新種の妖怪だろうか。それとも気の狂った盗人だろうか。そのどちらとも判別は付かなかった。 意を決し、居間の扉を蹴り開けて、直ぐ脇にある電気のスイッチを入れた。 卓袱台の上に何かが在る――否、居る。“そいつ”は、跳躍運動をするように飛び跳ねながら、 百八十度反転し此方を向いた。 「――ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」 どこかで見たような面をした饅頭のような柔らかさをもった生首が、気色の悪い顔でそう言った。 実に愉しそうな動きで、そう言った。 俺は、“そいつ”から視線を外さぬように後退し、再び居間の扉を閉めた。 ○ 居間からは、まだゆっくりコールが聞こえてくる。拍子抜けしてしまった士気をもう一度上げる ために、深呼吸をした。 噂に聞いたことはあったが、実際に見るのは初めてであった。 『ゆっくりれいむ』 それが、居間に居座っていた饅頭に付けられた名前だ。 博霊の巫女の顔とよく似てはいるが、巫女本人とは何の縁も関係も無いとのことだ。 完全に生首であるその全貌。そこはかとない苛立ちを覚えさせるその表情。その視線に捕らえた ら、人妖問わずゆっくりしていくことを望むという奇怪な習性。中身は餡子などが詰まっていると いう、まさに饅頭そのもののような性質を持っているのが、先ほど相見えたゆっくりれいむである 。他にも、『ゆっくりまりさ』、『ゆっくりれみりゃ』、『ゆっくりふらん』といったように、幻 想郷に住む妖怪や魔法使いなど、よく似た饅頭状の生物、通称“ゆっくり”の存在が明らかになっ てきている。台所の方でも何かが蠢いていたことから、どうやら他の“ゆっくり”も乱入している ようだ。 多くの評判に拠ると、ちらりと見たくらいの内は、そのもちもちとした顔つきと目が可愛らしく て庇護欲が沸いてくるものの、じっと見つめているうちにその半開きの口と表情の全体的なバラン スに腹が立ってくる、とのことだった。中身にたっぷりと詰まっているのは、大半が餡子であり、 これがなかなかの美味らしい。そのための加工所まで出来たという。 確かに、俺も今一瞬見た限りでは、ぽよんぽよんと楽しそうに跳ねている様子は見ていても可愛 いと言えるかもしれないし、和んでしまうかもしれない。 だが、同時に我が家の居間に広がっていた“惨状”もしっかりと視界に捉えた俺は。ひとつの確かな結論を導いた。 間違いない。 間違いなく、今、こいつらは―― ――調子に乗っている。 外にある納屋から得物を持ってきた俺は居間に通じる戸の前に一口大の饅頭を置き、ゆっくりれ いむの横幅と同じくらいに開放した。饅頭は、貰い物として近所から受け取ったものだが、生憎俺 は和菓子系統の甘いものがあまり好きな方ではないのでそのまま放っておいたものだ。はっきり言 って、食べられる状況ではない。辛うじてカビがあまり生えていないものを選んでおいた。 「ゆ! おまんじゅうさん、そこでゆっくりしていてね! れいむがたべてあげるよ!」 居間から嬉しそうな声が聞こえた。間もなくして、グシャ、ビリッという音も聞こえてきた。先 ほどは“ゆっくり”にだけ視線を取られたが、恐らく卓袱台に置き放してあった食器や本の類が壊 されていたのだろう。やはり、こいつらは調子に乗っている。 やってくる。ゆっくりとした動きで影が近づいてきた。 ――勝負は一瞬で決まる。 気色の悪い顔の半分が引き戸から見えた瞬間、反動をつけて引き戸を一気に閉めた。 「ゆっ!?」 『プビュッ』 扉に腹立たしいほどにやわらかい感触が伝わる。ゆっくりの身体がぶにょっ、と形を変え、口は 火男(ひょっとこ)のような形になった。同時に口から中身の餡子が少し飛び出した。扉を完全に 引き開けると、ゆっくりれいむは床に力なく転がった。しかし飛び出した餡子は全体の三パーセン トほどだろう。これくらいで死ぬとは思っていないが、死なれては困る。俺はゴム手袋をつけて気 絶したゆっくりれいむを捕まえると、こぼれた餡子を中に入れてから丁度いい大きさの水槽に逆さ まにぶち込んだ。蓋は強力なテープで幾重にも貼り止め、ダンボールで周囲を覆った。 興味本位で、ゆっくりれいむから飛び出した餡を回収する。甘ったるい香り。指先に乗った分だ け味見してみると、意外なことに、甘味の嫌いな俺でもおいしいと思えた。なるほど、餡菓子の元 になり人気を博すのも理解できる。 ○ ゆっくりれいむと“遊んであげたい”欲望には打ち勝ちがたいものがある。玄関の下駄箱の上に 水槽ごと放っておいたが、早くも目を覚ましたゆっくりれいむは何やら叫んでいる。出してほしい ようだが、そうはいかない。コーヒーセットなどが入った食器棚の中身をひっくり返しておいて、 生きて住処に帰れると思っていただいては困ると言うものだ。これだけの食器を集めるまでに、何 度香霖堂に通ったと思っているのだろうか。ゆっくりれいむとは数年間を懸けて償ってもらうとす る。ゆっくりたちに住処はあるのか気になるところでもある。あるならば、一度足を運んでみたい ものだ。その理由は、ここで語る必要はないだろう。 さて、今、俺の目の前の床下に居るのは、頭を(全身を、のほうが正確なのだろうか)ぺしゃん こにし、餡子をだらしなく零して、ピクリとも動かなくなったゆっくりまりさである。もはや、こ れは数分前まで飛び跳ねるように動き、「ゆっくりしていってね!」と気色悪い顔で言っていたと は思えない状態になっていた。 唐突にストーリーが動いたため、動揺している方がいらっしゃるであろうことも加味し、今起こ ったことを詳細に告げるべきだろうと思う。 居間から台所に続く扉を開けた瞬間、扉を弾き飛ばすような勢いで身体を突っ込んできた者がい た。それが、ゆっくりまりさだった。 「ゆっくりしていってね!」 心にも思っていない言葉を投げかけると、ゆっくりまりさは俺の足にへばり付く様に飛び跳ねな がら、「ゆっくいひへいっへへ!!」と御決まりの文句をのたまった。 先ほどのゆっくりれいむと比較しても、このゆっくりまりさは随分と挑発的な顔つきに見える。 上目を見ているからなのかもしれないが、見ようによっては偉そうに踏ん反り返っているようだ。 しかも唇の端がやたらと上がっている。ゆっくりの中には、まあ可愛らしい(と言われているがそ れほどでもない)顔つきのものと、完全に人間をバカにしているような表情をしているものがいる らしい。このゆっくりは後者のゆっくりなのだろう。 ただ、ゆっくりの多くは、自分が入った家に住んでいたもの概要がそのときに誰も居なかったか らという理由で自分のものだと言い張るらしい。このゆっくりまりさにその兆候は見られないが、 しかし、その下膨れの頬はさらに膨らみ、滑舌も非常に悪かった。何かを口に含んで話しているの がすぐに判った。 「ま、まって! まいさにらにしゅるの!! ゆっくいしてね!! あなひへへ!! ゆっくいへ きないならどっかきえへね!!」 何も訊いていないはずなのだが、ゆっくりまりさを捕まえた瞬間、そいつはそう言った。これは 何かをやっていたに違いないと思い、ゴム手をつけた右手を口に突っ込んでかき回した。 「ゆ、ゆっふりやっへね!」 訳の判らないことを言ったので左手でぶん殴った。その感触はあまりに柔らかく、全身に戦慄の ようなものが走った。そして、右手にゆっくりには有り得るはずのない固い感触があったので、そ れを捕まえて取り出した。猶もやかましいゆっくりは、向かい側の壁に投げつけた。ゆっ、と言い ながら床に伏せた。というか、転がった。 手の中にあるのは桃の缶詰めだった。顔面饅頭は缶詰の蓋を開けることは出来ないため、缶をそ のまま飲み込んで味わっていたようだ。これでも美味しかったのだろうか。氷精並に頭も弱いらし い。いや、チルノでも缶切りくらいは使えるだろう。というか、使えていてほしいものだ。 気持ちの悪い体液に塗れた桃缶をゆっくりまりさに投げつけた。 「ゆっ!」 ぼぅよん、と身体を震わせながら痛みに耐えているらしく、その醜い目は次第に潤み始める。缶 詰は眉間に当たったのだが、この饅頭にも痛覚はあるのだと実感した。 「おじさんなにするの!! それはまりさのものだよ!! どうしてかってにとるの!! どろぼ うはよくないよ!!」 何を言うのだろうかと思えば、逆切れだった。そして、ついに自分のもの発言、いいようによ っては“ジャイアニズム発動”と相成ったわけだ。何を言ってやってもこの不細工バカ饅頭には理 解できないと決定づけた俺は、一跳びにゆっくりまりさの転がっているところへ走った。そして、 俺の全然ゆっくりでない動きに怯んだところを捕まえ、小刻みに震わせるように揺すった。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 最初は混乱したような表情を浮かべていたが、次第に熱を帯びたように逆上せた視線を揺らし、 頬を赤く染まりはじめる。小刻みに揺することで発情するということは、広く公にされて久しい情 報である。 ――感じさせてどうするのか? これは、あくまでも“餌”に過ぎない。 「ゆゆゆふふぅ、ゆゆゆゆうぅ……、ゆっ!!?」 生意気にも、随分と感じていただいたようなので、ゆっくりまりさを床に強く放り捨てる。快感 に身を委ねすぎていたせいか、耐性を立て直せずにまりさは顔面から床に衝突した。すぐさま、ゆ ゆゆといいながら俺を見上げる。 「もっとゆっくりしていってよー!」 もっとしてほしかったのだろうか、俺の足元で顔を真っ赤にして飛び跳ねている。物足りないあ たりで止めておいたのだ、その反応は当然と言える。 しかし、このときゆっくりまりさは、自分の欲望に正直になり過ぎであり、俺の右手に握られて いる納屋から引きずってきた得物の一つである棘付き鉛バットの存在を失念していたことで、自ら の死期を大幅に近くした。 「もっとゆっく……、ゆゆ!? ゆゆゆゆゆべべっ!!?」 我が家に轟音が響いた。 飛び跳ねた瞬間を見計らって、渾身の力を振り絞って鉛製の棍棒を振り下ろした。棍棒が床に接 触したとみるや、床は木っ端微塵に弾けた。ガリガリと床を削りながら棍棒を床に引き上げると、 その下では最初のような状況になっていたというわけである。総重量七十キロだ。饅頭如きがこの 重さに耐え切れるわけが無い。 しかし、こうしてしまってから俺は気づいてしまった。後処理が非常に面倒だ。このままにして いては、床下に夥しい黴が繁殖してしまう。いくら床を修理しようが、黴なんぞの生命力は末恐ろ しいもので、俺は数年後にアレルギー症状を起こしながらくたばってしまう。 「……嗚呼」 何のことは無い。 ――後でゆっくりれいむに処理してもらおう。共食いなんて容易いことだろう。 ○ 最後の砦になってくれるのだろうか、この台所の扉。 ゆっくりまりさが腐り始めるまえに台所の異変を解決しなくてはならないが、どうもその気がし ない。完全にやる気がしないわけでは無いのだが、あの気色の悪い饅頭のさらに気色の悪い屍を見 た後だからだろう、俺はゆっくりたちとの関わりあいを持ちたくないのかもしれない。 しかし、先ほどから「うー、うー」という妙に愉しそうな奇声が、扉を閉めているのに聞こえて くる。その奥にゆっくり何某が居るのは間違いなく、きっと台所をめちゃめちゃにして楽しんでい るのだろう。そもそも、台所から撤退して貰わないと、俺は飢え死にしかねない。 俺は指向を変え、裏の勝手口から潜入することにした。先ほどの“地響き”のために、もしかす ると居間側の扉近くには居ないかもしれない。奇襲をかけてみるのも、ひとつの方法だ。 俺は勢いよく勝手口を開いた。 ――その瞬間。 「うー!?」 扉に柔らかい感触があった。それに気づく間もなく叫び声が聞こえ、反対側の壁に何かがぶつか った。ぶつかったのは実際には見ていない。だが、その方角にある食器棚のガラスの引き戸が割れ る音が聞こえた。 中を見る。俺は絶句するしかなかった。 最惨劇は台所で起きていた。 水は出しっぱなし。冷蔵庫は開けっぱなし。中身はぐちゃぐちゃ。食器はすべて粉々。鍋やフラ イパンの類は辺り一面に散らかり、俺が暇さえあれば読んでいた料理本はビリビリに引き裂かれて いた。そのすべてに、よだれのような体液がこびりついていた。 ――犯人は誰だ? 食器棚の陰でうーうー唸っているゆっくりの正体を見るため、そっと近づいた。 「うー……!」 ゆっくりれみりゃだった。 頭から本人そっくりな羽を生やし、本人そっくりにカリスマ性の無さそうな顔をしている。しか し、こいつは、紅魔館付近で見られるゆっくりれみりゃと違って顔がやたら大きいものだった。別 の見方をすれば、胴体がまだ成熟しきっていないともいえる。恐らく、まだ幼体なのだろう。背中 の黒い翼は、おまけと言ってもいいくらいに小さい。これでは、この豚まんの身体を支えながら飛 行することは不可能だろう。 「おにーしゃん!! れみりゃにょぶっでぃーんは!? ぶっでぃーんはやくちゃべちゃいどー! !」 いきなり阿呆丸出しなことを言う。 んなもんねえよ。俺は洋菓子の甘味がこの世で一番嫌いなんだ。 俺の胸の中は、あっというまに、殺意で満たされた。 今日の宴会で、実は俺とレミリア・スカーレットは少々揉めていた。以前から鼻持ちならなかっ たのだが、ここにきて不満が爆発してしまったのだ。 理由は単(ひとえ)に、レミリアの傍若無人ぶりだった。 いつもは咲夜にすべての世話を遣らせるくせに、今日に限って、レミリアは咲夜を制し仕事をさ せなかった。年末だから、いつも甲斐甲斐しく世話をしてくれるメイド長を休ませてあげようと考 えていたのだろう。 その心意気は、買ってあげてもよい。そう思う。 だが、その代りに、平時咲夜がすべき仕事のすべてを俺に押し付ける、そういう道理は存在しな いのにも関わらず、それを俺に遣らせるのは理解できなかった。酒を注げ。料理を取れ。肩を揉め 。宴会芸をしろ。 最初のうちは、俺も然程厭ではなかったのだが、一時間以上も常識知らずの“お嬢様”の面倒を 見ていると腹が立って来るのは自明だ。主従関係、眷族関係のどちらでもない者が、延々を終わる こと無い命令に従っていられるはずが無いのだ。 途中俺を可哀想に思ったのか、咲夜はレミリアを止めようとしたのだが、そんなことで考えを変 更するほどの一般常識をレミリアは持たない。あれは、どれだけ自分にカリスマがあると《勘違い 》しているのだろうか。そもそも、十六夜咲夜がレミリアを持ち上げるから、あいつの傍若無人ぶ りには拍車を掛かっているのだが、咲夜には《そちらの感情》があるためその自覚はないのだろう。 酒も入り、普段は有り得ないのだが、完全に自我を失ったように激高した俺はレミリアと少々の 口喧嘩をしてきたのだ。 これだけは覚えている。俺はしっかりと言ったことばがある。 『《妹の出涸らし》の癖に調子に乗ってるんじゃねぇよ』 その一言で、レミリアは最初からゼロのカリスマ性をマイナスにした。 最後には咲夜や霊夢に宥められ、何とか事なきを得たものの、苛立ちが完全に霧散することは無い。 そんな折に、現れたゆっくりれみりゃは、実に運が無かったといえる。脳内で厳かな合掌をする。 「うー!! うー!! にゃんにもないけじょ、ここはおもちりょいかりゃ、れみりゃのべっそう にしちぇあげりゅんだどー!」 楽しそうにぽよぽよとジャンプするように踊ると、背中の薄汚い羽根で飛び始めた。といっても “Fly”ではなく“Jump”だ。椅子、机と順々に上がりながら飛び跳ねる。がしゃんと音を立てて 台所の照明が割れ、俺の足もとに飛び散った。 何が別荘だ。お前には洞窟で充分だ。ゆっくりふらんにでも襲われてしまえ、《妹の出涸らし》の癖に。 「う゛ー!?」 俺は、むんずとゆっくりれみりゃを鷲掴みにした。勿論、こめかみあたりに青筋を浮かべそうに なるのを必死になって抑え込み、笑顔で。だが、ただならぬ黒い思惟を見たのか、それでもゆっく りれみりゃは戦慄したようだ。 「君はゆっくりれみりゃだったよね。ゆっくりしていくのかい?」 テーブルにれみりゃを置きながら優しく聞く。敢えて。 そうすると、ゆっくりれみりゃは気色の悪い笑顔でうーうーと言い始めた。そしてにんまりと笑 って黙り込んだ。この次に、こいつが言うことは一つだけだ。そして俺が次に取る行動も一つだけ だ。 「う」 「――ゆっくり死ね!!」 俺は『うー、うー、うあうあ』と喜ぼうとしたゆっくりれみりゃの顔面(こいつには小さいなが らも身体があるからこの表記で大丈夫だろう)に鉄拳を捻じ込む。ゆっくりれみりゃの背中には、 先ほど自分でぶつかり落としたガラス製照明器具がある。それが刺さるように深く、深く。 三十秒はそのままの状態を保つ。 解放してやると、しばらく無表情を保ったゆっくりれみりゃだったが、堤が決壊したように瞳が 潤みだす。背中の方からも、肉汁と思しき液体が染み出した。 「……! ……!!」 声も立てずに無様な表情で涙を流しながら、身体をびくびくと震わせはじめた 。 「……!!?」 腹立たしい表情ゆえに、俺は我慢することを辞めた。ゆっくりれみりゃの頬に手を当てる。摘む 。徐々に力を込め、摘んだ部分が白色になったあたりでれみりゃの表情が歪みはじめ、涙が滝のよ うに流れはじめた。こいつのどこにそこまでの水分があり、涙腺がどこにあるか、などは関係ない 。朽ちはて腐り逝くまで弄り倒してやろうじゃないか。 ちぎれそうなのだろう。ゆっくりれみりゃは必死に逃れようとするが、そんな行動は到底無駄な もので、こんな腐れ饅頭なんぞの力が人間様に敵うはずがないのだ。 しかし、それにしても。 ――よく伸びる。 搗き立ての生餅のようによく伸びる。手を放したら元に戻るのか、と思っていたら、餅と同様に 伸びたままだった。 今度は頬の端を引っ張っていた右手を顎あたりに、左手をこめかみ付近にあてがい、再び伸ばす 。 「おお~、伸びる伸びる」 だんだん楽しくなってきた。もっちりと伸びていくれみりゃの皮の心地よさと、そのたびに泣き 喚くれみりゃの泣き声に、すっかり己を忘却してしまった。気がつけばゆっくりれみりゃの顔はス ライムのように原型をなくしていた。 「……!」 満面の笑みで見つめてやると、れみりゃは、何ということだろうか、俺を睨みつけてきた。恨み をこめた穢れた目で、俺を睨み付けて来た。 完全に、堪忍袋の緒は切れていたと思っていたが、俺の腸の中にはもうひとつ堪忍袋があったよ うで、今度はそちらが爆発した。下等畜生のくせに何たるザマだ。 俺はゆっくりれみりゃの頬を強烈に抓ったままで大手を振りながら風呂場へ向かう。伸びきった ゴムのような身体は扱いにくかったが、途中でわざとらしく、れみりゃの眉間を机の角に強打させ た。道中、聞き苦しい声で「あ゛―――!! ざぐや~、ざぐや~!!」と、訳のわからないこと を叫び始めた。あまりにも喧しく憎たらしかったので、流し台の下から包丁をだし、れみりゃの目 の前で光らせた。殺される、とゆっくりブレインでも理解できたのか、その瞬間は静かになった。 見るからに凶器であるそれに戦慄したのだろうが、別にゆっくりなんぞは包丁を餡で汚さずとも殺 めることは可能だ。 風呂場に入り、湯を浴槽に張る。河童のにとりから貰った『のび~る上水管・ボイラー付きバー ジョン』のおかげで、あっというまに浴槽いっぱいに水が張った。いつも俺がアイディアを提供す れば数週間でそれを具現してくれるからたいしたものだ。にとりも俺の持つ大量のアイディアには 感謝しているようだから、“Give Take”は成立しているようだ。次の機会には、ゆっくりを痛 めつけるためだけのアイテムを嘆願しようか。アイディアは全て、青狸が暗躍する漫画からの拝借 だが。 俺はれみりゃを浴槽にぶち込んだ。ただし全体を入れると死んでしまうのでそれは避けておいた 。そして、水の中で先ほど伸ばしていた皮をちぎった。 「う゛あ゛~~~!!! う゛あ゛~~~!!!」 赤い肉汁が浴槽にあっという間に広がっていく。子供だから生焼けなのだろうか。れみりゃは予 想通りに泣き喚く。ゆっくりたちは、俺の予想していたのとほとんど変わらない反応を見せてくれ るので面白い。非常に虐待甲斐がある。 ここで俺は再び納屋に向かった。れみりゃは力の限りを使って喚いていたためか、水の中から逃 げ出す様子は無かった。ただ、水から顔を辛うじて出しながら喘いでいた。 納屋から二つ目の水槽を出してきて玄関に置き、風呂場へ戻る。肉汁を垂れ流しながら泣いてい るれみりゃを引き上げ、そのままの足で再び玄関に向かった。肉汁を垂れ流し、これ以上家を汚さ れては叶わないので、風呂場横に置いてあった残飯入れ用のゴミ袋を取り出し、それに入れた。 ふとその脇を見れば、蕎麦打ち用の麺棒が置いてあった。ひとつ閃きが舞い降りてきた。 袋の中で手負いの身体を必死に捩って抜け出そうとしているれみりゃの頭であろう辺りを強烈に 殴り飛ばす。怯んだのか気絶したのか判じ切れないものの、動きが止まる。触診のように胴体の位 置を確認すると、麺棒を押し付けて転がした。 「むぎゃああああああああああ!! ざぐ、ざぐ、ざぐううううう!!」 変な声が響く。 粗方遣り終えると、もう一枚ゴミ袋を取り出して中身をそちらに移し変え、先ほどよりもギュウ ギュウに縛った。れみりゃは痙攣するのが精一杯のようで、袋は微細動だけを繰り返している。 玄関の扉を開けると、黄色い、かつ気色の悪い声が響き渡る。 「おにいさん! はやくだして! おうちかえる!!」 ゆっくりれいむが必死に救出を願っている。ダンボールで水槽ごと目隠しをされその中で逆さま になったままで、涙を頭の天辺へと垂らしているのだろう。れみりゃの泣き顔のように汚く、気持 ち悪いのが容易に予想できる。 ところで、こいつの言う処の《おうち》とはなんだろうか。もしかしたら、此処、つまりは俺の 家のことを言っているのかもしれない。だとしたら、こいつの命は無い。というか、俺の家なら既 にこのゆっくりれいむは帰宅しているではないか。 先ほどのゆっくりれみりゃを袋ごとぶち込み、再び蓋を閉める。少し落ち着いて《ゆっくりした 》ところで、遠巻きにゆっくりれいむの入った水槽を見つめる。 凄まじい。凄まじいまでの光景だ。 ガラスの表面にへばりつく様なゆっくりの皮。もちもちとした丸みを帯びた身体は、巣層の輪郭 に合わせるように角張っている。 ここでゆっくりれいむにとって幸運ともいえることは、ゆっくりれみりゃが、自分の後ろの水槽 に居るものが何であるのか把握できていないことだった。ゆっくりれみりゃは、他のゆっくり―― と雖も自分より弱い立場のものだけ――を食べる習性があると言う。ガキ大将宜しく、レミリアそ っくりだ。そんなところまで似なくてもいいのでは、とも思う。しかし、今その天敵は黒いゴミ袋 に入れられて、しかも深い傷を負っていてほとんど叫ぶ力もない。 「ぅ……。うう? う”―――!! ざぐやあああああ!!」 目が覚めたのだろうか。黒いゴミ袋から、ゆっくりれみりゃの絶叫が漏れ出てくる。れいむのほ うに目を遣ると、顔色――もとい、皮色が悪くなって行く瞬間だった。 「お、おに”ーさん! そのだかぢはいっでるどっでだでぃ!!?」 鼻づまりのような聞き苦しい声が震えている。『その中に入ってるのって何?』と、確認のため に訊いて来たのだろうから、俺は懇切丁寧な解説を送ってやる。この反応から察するところ、れい むとれみりゃには面識が無いのだろう。 「ああ。この中に入っているのは、ゆっくりれみりゃの子供だよ。子供って言ってもそんなに小さ くはないから、……そうだね、君くらいなら軽く、ペロリとやっちゃうんじゃないのかな?」 「ゆ”――!! ゆっぐりじだい、ゆっぐりじだいどに゛――!! でぇ、おに゛いざん、だずげ でよ――!!」 冗談である。身体を潰され衰弱しているチビれみりゃがゆっくりれいむを食べることなど、出来 るようには思えない。だが、れいむは、袋の中身はゆっくれれみりゃであることしか知らず、それ が大人であるのか子供であるのかの判断は、まあ出来ないだろう。 逆さの状態で泣き喚く様は、実に愉快なものだ。ゆっくりは横柄な性格ながら、命に危険が迫る のを確認すると、途端に猛烈な勢いで命乞いをすると聞く。それはかなり凄絶なものだ。絶望の度 合いが大きくなれば大きくなるほど、必死になる。自己中心の志向を持つものには、そう言う傾向 がある。 「おに゛―ざん、おでがいだがら!! でいぶはばだだべだでだぐだいどでぃ!!」 すげえ必死。もはや笑える。そもそも、何と言っているのやら。自分の名前も巧く発音できてい ない。でいぶって、デーブ大久保か? ただ日がな一日飛び跳ねて、隙あらば人ン家に忍び込んで好きなだけ食い物を食い荒らし家財装 具をめちゃめちゃにする、生産性の欠片も無い下らない一生に何の未練があるのやら。それはゆっ くりになってみないと分からないのかもしれないが、人間とゆっくりの間には決して越えることの できない壁のような立場の差が存在している。そんなことは不可能だ。 ゆっくりは、人間に虐げられる。ただそれだけのために、生を受けし者だ。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/459.html
ティガれみりゃ その4 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ3』の後編になります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 本家東方のキャラの性格口調、壊れ気味です すみません、まだ続きます。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 4、誇りをかけた試練(後編) 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪」 歌いながら森を往く2匹のゆっくり。 よったよったどたどた歩く、巨大ゆっくり・ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃの頭の上に乗っている、通常サイズのゆっくりゃザウルス。 全長20メートルの、くてくてだぼだぼのヌイグルミ風恐竜。 大きく開かれた口から覗く、れみりゃ種特有の下ぶくれスマイル。 その大きな顔の上の、恐竜の頭部の上では、 ゆっくりゃザウルスが、腹ばいになって、ティガれみりゃにしがみついている。 ゲスまりさに襲われて千切られた手足と尻尾は、もう殆ど回復しきっている。 ニコニコ笑いながら、体全体を左右に揺らしながらリズムをとっている。 『うっう~うぁうぁ~♪』 「うっう~うぁうぁ~♪」 ゆっくりゃザウルス……先だって子供を失った親れみりゃは、 その悲しみを払拭するかの如く、楽しげに歌う。 親れみりゃにとって、ティガれみりゃの存在は、 まさに希望であり、憧れであり、救世主であった。 このティガれみりゃと一緒なら、どんな困難も悲しみも乗り越えられる。 親れみりゃは、巨大なティガれみりゃに揺られながら、かつてない安心と勇気を感じていた。 ティガれみりゃもまた、親れみりゃのことを、 親友のように、妹のように、娘のように愛おしく感じていた。 その巨体故に、他の生物から常に避けられ続けるティガれみりゃにとって、 自分をこの上なく慕ってくれる親れみりゃの存在が、嬉しくて楽しくてたまらなかった。 この温かい気持ちをどう言えばいいのだろう? この胸にこみ上げる幸せをどう表現すればよいのだろう? そんな時、不器用なれみりゃ種がとる行動は一つ。 嬉しい時も、悲しい時も、わき上がる思いをあらわにして。 (歌っちゃおう♪) (踊っちゃおう♪) 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 決まったぁー♪ 渾身の「れみりゃ☆うー」が決まり、 ますます幸福感に包まれる2人のれみりゃ。 そんな2人の前に、1人の少女が現れた。 「やぁ! ずいぶんと御機嫌だねぇ~」 少女は空を飛んでいた。 知識のあるゆっくりならば、その時点でその少女が人間ではないこと。 恐い人間よりもさらに恐ろしい、妖怪と呼ばれる存在であることに気付いただろう。 しかし、そんな知識、れみりゃ種に求めるのは酷である。 『うっうー♪ れみりゃはいつでも御機嫌だどぉー♪』 「うー♪ おねぇーさんだぁーれだどぉ?」 屈託無い笑顔で少女とのコミュニケーションに応じる2人のれみりゃ。 「……ふふ、まぁ名乗るほどのものじゃないさ」 そう言って口の端を歪める少女。 『う~? おねぇーさんの角、とぉ~~ってもかっこいいどぉ~~♪』 そう言って、目を輝かせるティガれみりゃ。 角。 そう、少女の頭には、二本の角が生えていた。 れみりゃ達が知るよしも無いが、この少女こそ、 既に幻想郷からは姿を消したといわれていた伝説の種族・"鬼"の一角、 小さな百鬼夜行、伊吹萃香であった。 「それより聞きたいんだけどさ……」 『う~、なんでもきくがいいどぉ♪』 「ゆっくりれみりゃってのは、おまえ達のことであってる?」 『「うーっ♪」』 嬉しそうに反応する、2人のれみりゃ。 『そうだどぉー! れみりゃは~~♪ ティガれみりゃだどぉ~~~♪』 ティガれみりゃは、両手を頭の横に持ち上げ、うぁうぁとリズムを取り出す。 『「うっうーうぁうぁ♪ うっうーうぁぅぁ♪」』 最高に上機嫌なれみりゃ達。 そんなれみりゃ達に、萃香の真意など図れるわけがなかった。 「そりゃよかったよ。おまえ達をさがしていたんだ」 『「う~~?」』 不思議そうに首を傾げる、れみりゃ達。 「そう、おまえ達がほしいんだ」 笑顔のまま屈託なく告げる萃香。 一方、れみりゃ達は、いっぱく置いた後、 両手を自分の頬に充てて、身をよじりだした。 『きゃーきゃー♪ おねぇーさんだいたんなんだどぉーー♪』 「すとれーとなあいのこくはくだどぉーーー♪」 頬を赤くして、きゃーきゃー騒ぐ、れみりゃ達。 れみりゃ達は、萃香の言葉を、プロポーズと勘違いしていた。 「ま、というわけでね、どっちか一人でいいんで、私についてきて欲しいだ」 空高くを指さす萃香。 『「う?」』 意味を理解しかねる、れみりゃ達。 萃香は、山の上の天上の地で、大宴会を開こうとしていた。 しかし、天上の地にあるツマミといえば桃くらいのもの。 やはりここは塩味のもの、お腹にたまるものも欲しい。 腹が減っては夜通しどんちゃん騒ぎもできぬ。である。 そこで、萃香はかねてから噂に聞いていた珍味。 ゆっくりれみりゃの肉まんを探していたのだ。 それも、ただのれみりゃ肉まんではない。 一層珍しく、美味しいとされる、ゆっくりゃザウルスの肉まんをだ。 そんな折、巨大な肉まん……もとい巨大なゆっくりゃザウルスがやって来るのを見つけたのだった。 話に聞いていたのとは、ずいぶんサイズが違うが、 まぁ本人達がれみりゃだと言っているのだから、そうなのだろう。 萃香は納得し、ティガれみりゃ達を連れ去ろうとする。 しかし、それに異を唱えたのは、他ならぬれみりゃ達だった。 「う~~~! イヤだどぉ~~~! れみりゃはもうおうちにかえりたいんだどぉ~~~!」 『う~~~、そうだどぉ~~~! れみりゃたちはおねぇーさんとはいけないんだどぉ』 ティガれみりゃは、親れみりゃをお家(紅魔館)に送り届ける途中であった。 もっとも、2人とも紅魔館の場所など知らず、適当に歌って踊って歩いているだけであったが。 「ふーんそっかぁ……それは困ったな」 ちっとも困った風じゃない顔をして、萃香は腕組みをして考えるフリをする。 「……よし! じゃあこうしよう! 私と勝負して勝った方が負けた方の言うことを聞く!」 明らかに強引な論法。 だが、れみりゃ相手には、このムチャクチャな単純さが功をそうした。 『う~~~、わかったどぉ♪ れみりゃがあいてになるどぉ♪』 「おっ、話がわかるじゃないか! デカイの!」 『そんなに褒められると、さすがに照れてしまうどぉ~~♪』 もじもじと体をよじるティガれみりゃ。 "デカイ"というのは、褒め言葉として捉えるらしい。 『う~♪ れみりゃが勝ったら、おねぇーさんの角が欲しいどぉ♪ それがあれば、れみりゃはさらにぱーふぇくとなれでぃーになれるどぉ♪』 「はいはい」 適当に流す萃香。 「きゃーっ! ティガれみりゃがさらにかっこよくなっちゃうどぉー!」 興奮する親れみりゃ。 ティガれみりゃは、そんな親れみりゃを手に乗せ、少し離れた場所の地面に降ろす。 『あぶないがらぁ~ちっちゃいれみりゃはそこで見ててぇ~♪』 「わかったどぉ! ティガれみりゃ~がんばるんだどぉ♪」 『う~♪ まかせるんだどぉ♪ ちっちゃいれみりゃもおうえんじでねぇ~ん♪』 「うー! まかせとけだどぉ♪」 「やれやれ……そろそろいいかい?」 待ちくたびれて、肩をまわす萃香。 『うーっ、準備おっけぇーだどぉ♪ おねぇーさんなんかイチコロだどぉー!』 「ふーん、はたしてそうかな♪」 萃香は笑みをこぼし、スペルカードを使用する。 鬼神"ミッシングパープルパワー" 『「ううううう~~~~っ!?」』 目を丸くして驚く、ティガれみりゃと親れみりゃ。 小さな人間の少女でしかなかった萃香が、みるみる間に大きくなり、 いまやティガれみりゃと同等か、それより一回り大きい姿になっていた。 『うー♪ おねぇーさんおっききぃどぉー』 自分より一回り多くなった萃香を見上げるティガれみりゃ。 「それじゃ、勝負開始といこうか!」 『うっうー! いっくどぉー♪』 ぎゃぉー! と叫びながら、ティガれみりゃが萃香に突進する。 いや、正しくは、それは突進などと呼べるシロモノではなかった。 どたばたどたばた。 短い手足を振り回しながら、えっちらおっちらやって来るティガれみりゃ。 (……お、遅っ) 萃香は、逆の意味で驚きつつ、 わけもなくティガれみりゃの突進をかわす。 『うっ?』 ドターン。 勢いそのままに前のめりに倒れるティガれみりゃ。 普通のれみりゃ種ならば、ここで泣き叫ぶところだが……。 『う~、ゆだんしちゃったどぉ♪』 ティガれみりゃは、笑顔のまま立ち上がる。 この点こそが、ティガれみりゃ最大の強点であった。 体の大きさや防御力ではない、言わば痛みを痛みとして認識しない超鈍感力。 根拠無きポジティブシンキングと思いこみ、そして実際に鈍い五感と思考の速度。 その自身が置かれた状況に対する"鈍さ"が、痛みや苦しみを和らげ、 いいこと・たのしいことだけを考えさせる。 そんな鈍感力こそが、ティガれみりゃの得た、ゆっくりするための切り札といえる。 『おねぇーさんはつよいからぁー、れみりゃもとっておきを披露するどぉ♪』 「ふーん、とっておきねぇ」 『くらっておどろくどぉ♪』 ティガれみりゃは、萃香に背を向けると、 両手を腰にあて、おしりと尻尾を左右に振り出した。 『ティガれみりゃの~、の☆う☆さ☆つ☆しっぽふりふりぃ~~だどぉ♪』 「きゃぁ~~~! しぇくしぃーーーすぎるどぉ♪」 ティガれみりゃの勇姿を見て、地上の親れみりゃが興奮する。 あんなセクシーな姿を見せられては、 どんな相手もメロメロになってしまわずにはいられない! 顔を紅潮させて叫ぶ親れみりゃは、本気でそう信じていた。 『うっふぅ~~~ん♪ 尻尾ふ~りぃふりぃ~~♪』 尻尾を左右に振りながら、徐々に萃香に近寄っていくティガれみりゃ。 だが、萃香は溜息をつくと、その尻尾をむんずと掴んだ。 『うっ?』 「そぉーら!」 『ううううっ!?』 萃香は尻尾を綱引きのように引っ張り、ティガれみりゃを引き寄せる。 ティガれみりゃは抗おうとジタバタするが、結局萃香の目の前まで引っ張られ、 「う~♪」と反転して萃香の方を向いた瞬間、両脇を掴まれ、空中に持ち上げられてしまった。 『うっうー♪ つかまっちゃったどぉ♪』 まだ余裕なティガれみりゃ。 『う~~~♪ たかいたかぁ~い♪』 いつも以上に高い位置からの眺めに、ご満悦だ。 「すっごいどぉー! ティガれみりゃがおそらをとんでるどぉーー!」 そんなティガれみりゃを見て、興奮する親れみりゃ。 「……はぁ」 ただ一人、萃香だけがテンションを下げていた。 『うー、おねぇーさんはつよくてやさしぃんだどぉ♪ れみりゃのめしつかいにしてあげるどぉ♪』 萃香が自分のために高い高いをしてくれているものと信じるティガれみりゃ。 観戦している親れみりゃにしても、萃香がティガれみりゃの力に恐れをなして、 "こうさんです~あなたがいちばんです~"とあがめているのだと勝手に思いこんでいる。 (もういっか。宴会に遅れてもなんだし) れみりゃ種のペースに巻き込まれているのがバカらしくなった萃香は、 さっさと勝負を決めることにする。 「そりゃ!」 『うっ!?』 抱え上げたティガれみりゃを、背中から地面に叩きつける萃香。 ドシーンと、土煙が舞い上がる。 『う~~~♪ おねぇーさんつよいどぉ♪』 地面に大の字になったまま、萃香を見上げるティガれみりゃ。 思い切り叩きつけたにもかかわらず、まだ笑顔でいるティガれみりゃを見て、 鈍さだけは大したものだと呆れる萃香。 萃香は、ティガれみりゃの上に馬乗りになり、 大の字に広げられたティガれみりゃの腕を両手で押さえつけて固定する。 『うぅ~~♪ おねぇーさんのえっちぃ~~♪』 「きゃー! あかちゃんたぢには、みぜられないどぉー!」 勝手に興奮するティガれみりゃと親れみりゃ。 それに対し、萃香は冷静にティガれみりゃの体を眺めて、吟味する。 こんなやつが本当に絶品珍味なのだろうか? だんだんと不安になってくる萃香。 ゆっくりが出没しはじめたのは最近のことなので、 鬼にしてもゆっくりに関する知識は殆ど持ちあわせていたなかった。 「うーん……いちおう味見してみようかな」 萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔に、そっと顔を近づける。 そして、舌をのばして、ほっぺたを舐め上げた。 『くしゅぐったぁーい♪』 照れるティガれみりゃ。 一方、萃香は口の中に、たしかに肉汁が広がっていくのを感じていた。 (へぇー! こいつの汗、肉汁なんだ!) 妙に感心した萃香は、引き続きティガれみりゃの顔を舐め回す。 最初は嬉し恥ずかし状態だったティガれみりゃだったが、 次第に嫌悪感をあらわにしだす。 『う~~~~、う~~~~』 レロレロレロレロレロレロ。 『うぁ、うぁぁ、うぁうぁうぁ~~~~』 なめ回されていくうちに、奇妙な感覚を覚えるティガれみりゃ。 肉まんの皮がふやけていくのと同時に、顔に適度に振動を与え続けられたことで、 なんともむずかゆい気持にさせられてしまっていた。 そして萃香は、とうとう一つの決断をする。 「う~~ん、思い切って食べてみるか」 肉汁はうまいし、これだけデカければちょっとくらいつまみ食いしても大丈夫だろう。 いや、むしろ宴会の幹事としてはツマミの味を確認しないわけにはいくまい。 萃香はそう己を納得させ、 口角を歪めて、牙をひからせる。 『う~~? れみりゃ、おねぇーさんにたべられちゃうどぉー♪』 顔を紅潮させ、 かぶりを振って、イヤイヤ♪とするティガれみりゃ。 だが、その顔は相変わらずの満面しもぶくれスマイルのままで、むしろ嬉しそうでさえある。 「さっすがティガれみりゃだどぉ♪ あんなにつよいおねぇーさんを、もぉーとりこにしちゃったどぉ♪」 親れみりゃも、何を勘違いしたか興奮気味。 変なところで耳年増なのか、2人のれみりゃは、萃香の「食べちゃう」発言を、 これからいっしょに「すっきりぃ~♪」しようという誘いに受け取ったらしい。 『れみりゃはじめてだからぁ~♪ やさしくしてねぇ~~ん♪』 どこで覚えたのか、恥じらいの台詞を口にするティガれみりゃ。 ちなみに、本当に「すっきり」するのが初めてかどうかは定かでない。 「はいはい、やさしくなっと」 萃香はティガれみりゃの勘違いを軽く受け流すと、 にぃーっと笑った後、徐々に口を開いていき、鬼の牙を煌めかせた。 次の瞬間。 ぱくり。 萃香の小さな(?)口が、 ティガれみりゃの下ぶくれ顔の端にかぶりつき、そのまま一部をえぐりとった。 『「う?」』 何が起こったかわからず、硬直するティガれみりゃと親れみりゃ。 構わずむしゃむしゃ租借し、モチモチとした皮と、上質な肉餡を舌の上で堪能する萃香。 口内にじゅわぁーと肉汁がひろがっていくのにつれて、萃香の顔が輝いていく。 「おっ、おいしぃー!」 パァーと輝く萃香の笑顔。 その笑顔と言葉で、超鈍感力の持ち主たるティガれみりゃも、ようやく事態に気付いた。 おそるおそる、視線を下に向けると、自慢のふくよかな顔の一部が、えぐれていた。 『いっ!』 認識した瞬間、痛みが一気に広がった。 『いだぃぃぃぃぃ!』 泣き出し、ジタバタと体を動かすティガれみりゃ。 だが、ティガれみりりゃの動きは、馬乗りになった萃香によって封じられ、 その場から逃げ出すことは出来ない。 『うぁぁぁぁぁっっ! うぁぁぁぁぁぁっっ!!』 ティガれみりゃは、唯一動かせる顔だけを左右に揺らし、わめき散らす。 『しゃくやぁー! はやくぎでぇぇ! ごぁいひどがいるぅぅぅぅっっ!!』 「ん~? 咲夜ならこないぞ。 今頃は山の上じゃないか?」 『うぞづくなどぉぉぉ! しゃくやはでみりゃが呼べばぎでぐれるどぉぉぉ! でみりゃはおぜうさまだからえらいんだどぉーー! そしたらおまえなんがぁっ!!』 「そりゃお前がアノ吸血鬼だったらそうかもしれないけどねぇ。お前は違うだろ、恐竜さん♪」 『うぞだどぉー! うぞだどぉーー! ぎゃおーーっ! ぎゃおーーーっ!!』 自分が紅魔館のお嬢様でないはずがない! れみりゃ種特有の絶対的矜持を揺るがされ、必死に抵抗するティガれみりゃ。 恐竜と言われて否定するつもりが、「ぎゃおー!」とやってしまうあたりが、 れみりゃ種の限界らしく、それはティガれみりゃといえど例外ではなかった。 一方、そんな苦しむティガれみりゃの姿を見た親れみりゃ。 当初は下ぶくれスマイルのままだった彼女も、 次第に冷や汗がうかびだし、顔が徐々に青くなり、いまではガクガクと小刻みに震えだしている。 親れみりゃは、ティガれみりゃを崇拝し、信じ切っていた。 その崇拝と信頼は、如何にティガれみりゃが劣勢に立たされても揺らぐことはなかった。 萃香に捕まれようと、持ち上げられようと、投げられようと。 ティガれみりゃにとっては何の問題もない。そう期待していた。 現に、ティガれみりゃは笑顔のまま立ち上がったではないか。 やっぱり凄い、きっと自分だったら最初に転んだ時に泣き出してしまっていただろう。 すごい、ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃとそっくりな自分も、きっといつかあんな風に……。 そう、思っていた。 だが、しかし。 今のティガれみりゃの姿は。 動きを封じられ、なすすべなく助けを呼ぶ光景は。 まるで、さきほどゲスまりさに食べられそうになった自分そっくりで……。 崇拝と信頼と憧れで栓をしていた、恐怖と不安がどっと湧き出てきて、 親れみりゃを混乱させる。 「うぁ、うぁ……」 笑顔は自然と消え、 目からは涙が流れ出す。 だめ! ティガれみりゃは負けちゃだめ! じゃないと! じゃないと! 私まで! 「ううううーっ! ティガでみりゃぁぁぁ!! だづんだどぉぉ!! がんばっでだどぉぉぉぉっっ!!!」 号泣し、ろれつの回らないまま叫び続ける親れみりゃ。 けれど、そんな親れみりゃの応援むなしく、 ティガれみりゃは、萃香に食べられ続ける。 『うあぁぁぁぁっっ!! うあぁぁぁぁぁっ! おねがぃぃぃぼぉうやべでぇぇぇぇっっ!!!』 耳を貸さず、萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔をパクパク食べ続ける。 「う~ん、こんなうまい肉まん初めてだよ♪」 「うっ!!」 "肉まん" その単語を聞いて、親れみりゃはビクッと体を硬直させる。 ちがう、ちがう、ちがう! れみりゃは、れみりゃは! 「ちがうどぉぉーーっ!! でみりゃはにぐまんじゃないどぉぉぉぉーーーっ!!」 まるで自分のことのように叫ぶ親れみりゃ。 だが、叫んだその刹那。 暴れるティガれみりゃから飛散した肉まんの小さな欠片が、 大口を開いた親れみりゃの口の中へスッポリと収まった。 「うっぎゃぁ!! ティガでみりゃのおかおぉぉ!!」 嫌悪し、吐き出そうとする親れみりゃ。 ほんの小さな破片とはいえ、崇拝対象の顔を口の中に入れてしまうなんて。 「うーっ! うーっ! ………ううっ!?」 吐き出そうと咳き込むその時、 親れみりゃは、誤ってティガれみりゃの欠片を噛んでしまった。 じゅわぁ~~~と口内に広がるアツアツの肉汁。 「う、うーっ!!?」 そのあまりの肉汁の美味しさに、 親れみりゃは反射的に、ティガれみりゃの欠片を租借しだす。 噛めば噛むほど味が染み出る肉餡の美味しさに、もはや罪悪感もなんのその、 親れみりゃは食べるのを止めることができなくなっていた。 ごっくん。 ティガれみりゃの欠片を堪能し、飲み込む親れみりゃ。 「う~♪ しあわせぇ~~だどぉ~~~♪ こんなにおいじぃにぐまんははじめてだどぉ~~~♪」 そして。 思わず、言ってしまった。 ぷっでぃんとも甲乙つけがたいその美味しさに、 親れみりゃは決して言ってはならないことを言ってしまったのだ。 そのことに、数秒後に気付き、 親れみりゃは震えが止まらなくなった。 ティガれみりゃ、食べちゃった。 とっても美味しかった。 美味しいなんだった? ぷっでぃん?おまんじゅう? ううん、ちがう。 おいしぃおいしぃにくまんさん。 あれ。 ティガれみりゃはおいしぃにくまん? それじゃ、れみりゃは? れみりゃはこーまかんの? おぜうさ? にく? れみりゃは……。 にくま。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」 親れみりゃの中で、決定的な何かが壊れた。 小さな体であげたその悲痛な叫びは、巨大なティガれみりゃと萃香がたてる音によってかき消されていった…。 数分後。 『た、たしゅげでぇぇ……』 既に下ぶくれ顔の三分の一近くを失ったティガれみりゃは、 ブクブクと泡を吹き、白目を向いて、ぴくぴくと体を痙攣させていた。 「……うっ、しまったな」 萃香はハタと我に返り、立ち上がる。 眼下で苦しむティガれみりゃを見つめて苦笑いする萃香。 「調子にのって食べ過ぎた。こんな食べ残しを土産にしちゃ悪いかな…」 とはいえ、この素晴らしい肉まんの味は、是非他の連中にも味わってもらいたいのだけど。 う~ん。と、しばし考える萃香。 すると。 「おや?」 ふと眼下の森をを見ると、そこには目の前でノビている恐竜そっくりな、小さいヤツがいるではないか。 その小さな恐竜は、逃げるでも戦うでもなく、ぼぉーとその場に突っ立ているように見えた。 「そういえばいたな。 あれって、おまえの子供?」 ティガれみりゃに話しかける萃香。 ティガれみりゃは、ずりずりと地面を這いつくばりながら萃香から逃げ出そうとしていた。 「なぁ、ちょっと!」 『は、はぃぃぃ!』 萃香に呼び止められたティガれみりゃは、 這うのを止め、両手で頭を抱えて、ブルブルと震え出す。 『う~~~~っ! う~~~~~~っ!』 やれやれと肩で息を吐く萃香。 この様子では聞くだけ無駄か。 「なぁ、お前…」 『ごめなざぃぃぃぃ!! あなだのかぢですぅぅぅぅう!!』 何を勘違いしたか、ティガれみりゃは萃香の方を向き、 へへぇー、へへぇーと、何度も両手をついて土下座を繰り返し始めた。 「お前、もういいよ。さっさとどっかへ行きなよ」 『は、はぃぃぃぃっ! ありがどぉぉございまずぅぅぅぅ!!』 ティガれみりゃは涙を流し、 そのままずりずりと地面を這い出す。 『うぅ~~~~~~、うぅ~~~~~』 痛くて、辛くて、悲しくて、悔しくて、恐くて、惨めで、 ただただ泣きながら、逃げ去っていくティガれみりゃ。 その後ろ姿を溜息で見送った後、 萃香は元の人間の少女大のサイズに戻り、 森で呆然と立つゆっくりゃザウルス……即ち、 先ほどティガれみりゃの欠片を食べてしまった親れみりゃの下へ降りる。 「あばっ、あぶあっ、あばばばばばばば……!」 親れみりゃの様子は、既に正常を失っていた。 目の焦点を失い、口から泡を吹き、足下に肉汁の水たまりを作って、 よれよれと体を左右に揺らし続けている。 「おい、おまえ!」 萃香が呼ぶと、親れみりゃは、反射的に体を強張らせる。 「はいぃぃっっ! なんでじょぉぉ!?」 じぃーと親れみりゃを眺める萃香。 やはり、先ほどの大きいヤツの子供なのだろうか? そんなことを考えつつ、口を開く。 「おまえも、あのデカイ奴みたいに食べられるんだよね?」 すると、親れみりゃは、 実にストレートな答えを返した。 「そうでずぅぅ! でびりゃばおいじぃにぐまんでずぅぅぅぅぅぅっっっっ!!」 口角から肉汁を飛ばしながら喋る親れみりゃ。 「にぐまんいっばいうむがらぁぁぁ! いじべないでぇぐだじゃいぃぃぃぃぃっっ!!!」 その顔は満面笑顔だが、笑ったままの目尻から大量の涙を流し続けている。 「ふーん、じゃ鬼らしくさらわせてもらおうかな」 よくよく考えれば、こいつ一体いればツマミの肉まんとしては充分すぎる量かもしれない。 そう考えた萃香は、しばらく親れみりゃを物色した後、 ひょいっと親れみりゃを抱え上げ、その場を後にした。 無機物のように抱え上げられた親れみりゃ。 移動中、その顔は常に笑顔であり、ずっと歌を口ずさみ続けていた。 「うぁ~~うぁ~~♪ あばばぁ~~♪ でびりゃばおいじぃ~にぐまんだどぉ~~~♪」 ……数時間後。 『ティ…ガ…ティガ…ティガ……』 息も絶え絶えに地面を這い続けるティガれみりゃ。 萃香に食べられた下ぶくれ顔は、既にかなりの部分が再生している。 だが、いくら表面的な体の傷がなおっても、 再生に栄養をまわしたぶん、体力の消耗は激しかった。 それに、深く心にえぐられた傷はそうそう治るものでもない。 『ティガ…れみ…りゃ……うぅ……』 少しでも気を紛らわせようと、弱々しく口を開くティガれみりゃ。 しかし、いくら歌を歌っても、 その気持は、痛みは、苦しみは、ちっとも晴れはしなかった。 おかしいな。 そうティガれみりゃは感じていた。 ついさっきまで、あんなに楽しく歌ったり踊ったりしていたのに。 あれ、そういえば、誰かといっしょにいたような? おかしいな、だれだっけ? とってもやさしくて、おうたもダンスもじょうずな子だったような。 思い出せないけど、きっとあの子は今頃たのしくおうたをうたっているんだろうな。 また、いっしょにおどりたい、な。 『うぅー…うぅー…うぁ…うぁ……』 森のはずれの湖のほとり。 そこでティガれみりゃは意識を失った。 『…………ZZZ』 それから、どれくらいの時間がたっただろうか? たまたま湖を訪れ休憩する、ゆっくりの一団がいた。 「むっ、むっきゅーーーーーっ!!??」 昏睡するティガれみりゃを見つけて叫んだのは、 かつてティガれみりゃによって、群れを壊滅させられた、あの胴体付きぱちゅりーだった……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ5・さらばティガれみりゃ(予定)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第4回です。 今回は、『ティガれみりゃ3』から直接続くエピソードになります。 どうにも肉体的な虐め描写は苦手なのですが、 苦手ゆえに、敢えてこの前後編で挑戦してみました。 如何だったでしょうか? ……それにしても、ただの一発ネタのはずのティガれみりゃも、 随分書いた気がします。とりあえず次回で一区切りつける……予定です。 byティガれみりゃの人 (これって自分で名乗るものなんでしょうか?) ============================ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4207.html
注意 何十匹のゆっくりをれみりゃが虐待するSSです。 れいむ、まりさ好き、義務教育中の児童および生徒 には絶対に見せないでください。 また、このSSは、 ゆっくりいじめに当たります。 ゆっくりを嫌う者 AG(ゆゆ様の桜は散った) 「うー☆」 「うっうー☆」 いつもと変わらないれみりゃの家族。 子れみりゃの手には、 餡子が付いていた。 どうやら、ゆっくりを虐待したのだろう。 「まぁまぁー!これあまあまだぞぉー☆」 手についた餡子をなめるれみりゃ。 あまあまと言っている。 赤ゆっくりの餡子だろう。 「うー!あまあまー!」 れみりゃの家族は、 皆満足。 プリンよりも甘いものが手に入ったからだ。 「それは、君達がさっき狩った奴から手に入るよ」 「うー?おじさんだれだどぉー?」 れみりゃの家族の目の前には、 とある男がいた。 「あのね、このあまあまは、さっき、君達が狩った奴から手に入るんだよ」 「うー?だれぇからてにはいるぅのぉー?」 「あの赤いリボンの奴と、黒い帽子の奴さ」 「うー☆あいつらかー☆」 れみりゃには、分かるのだ。 何匹も狩っているからだ 「僕と一緒にあまあまを手に入れないか?」 「うー☆あのあまあまほしーからやるどぉー☆」 れみりゃは即答した。 満足気味だからだ。 あんなおいしいものが手に入るなんて。 男の準備が完了したら、 そくさまれみりゃ10匹をつれて、 森の中に入った。 奥に進むと、 ゆっくりの家族がいた。 「ゆ!ごはんごはん!」 「ゆ!ほちいよ!」 「ゆ!おちびちゃん、いまからゆっくりあげるよ!」 どうやら食事中のようだ。 食事が終わったら攻め込もうと、 小声でれみりゃ達に言った。 10分後 ようやくゆっくりは食事を終えた。 「よし!今だ!」 「うー!とつげきだどぉー☆」 男とれみりゃは、突撃した。 「ゆ!なんなんだぜ!」 「ゆ!おじさんだ!」 「むきゅ!れみりゃもいるわよ!」 「なんでいなかもののれみりゃがいるの?」 「わからないよー、わからないよー」 ゆっくりは混乱した。 何故人間にれみりゃがたてついているのか。 「うー☆」 「ゆ?ゆ゙あああああああああああ!!!」 「れ、れいむううううううううう!!!」 「おかーしゃああああああん!!」 「うー☆回収だどぉー☆」 れみりゃは、おやであるゆっくりれいむを裁き、 中の餡子を袋につめた。 「ゆ!ひどいよ!なんでれいむをころすの!?」 「わからないよー!わからないよー!」 「こんなのとかいはじゃないわ!」 「むきゅ!そうよ!にんげんはでていきなさい!」 「いけ、れみりゃ」 「りょうかいだどぉー☆」 「むきゅ?むきゅううううううううううう!!!」 「ぱ、ぱちゅりいいいい!!!」 ぱちゅりーも殺された。 「うー?くろいあまあまじゃないどぉー?」 「これは種類が違うからね、黒い帽子の奴と、赤いリボンの奴を殺してね」 「りょうかいだどぉー☆」 「やめてええええええええ!!!」 「おかーしゃあああああああああああん!!!!!!」 れみりゃは、 赤子も殺していった。 餡子を回収しつつ。 残りはありすとちぇん 「ごん゙な゙の゙どがい゙ば゙じゃ゙な゙い゙わ゙!!!!」 「わからないよー!」 しかし、れみりゃは、 ありすとちぇんも殺した。 しかし、飛び散ったカスタードとチョコは、 男が回収した。 「これでよしっと」 「うー☆やったどぉー☆」 「じゃあ、その餡子を持って巣に帰ってね」 「りょうかいだどぉー☆」 れみりゃは仲良く帰っていった。 「さて・・・・今度はどのれみりゃを利用して、ゆっくりを虐待しようか・・・フフフフ」 と男はつぶやいた。 そして、男は消えた。 おしまい あとがき これは、れみりゃがゆっくりを虐待する。 いわいるゆっくりを狩りです。 次回作は、登場した男が復活する予定です。 では byゆっくりを嫌う者 AG(ゆゆ様の桜散る) このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/334.html
注意 初作です ゆっくりは捕食種しか出ません 鬼威惨がカオスです 俺設定あり 幻想郷のどこかです れみりゃがウザめです 以上の要素が大丈夫な方はゆっくりしていってね! ある日、ゆっくりれみりゃの巣に悲鳴が響き渡った。 「どうしたんだどー?だいじょうぶかどー?」 りぃだーの胴付きれみりゃはそう言った。 しかし、返ってくる返事は聞こえない。 「いいかげんにしないとおこるどー!」 やはり肉まん脳。仲間がいたずらしたと思っているだろう。 そんなりぃだーれみりゃの予想とはやはり違い、 「おざぁぁだずげ.. もっどゆぐり....!!」 りぃだーれみりゃは悟った。 (ぐぞにんげんがおぞっでぎだど!ぜいっざいだどぉ!) そして、れみりゃの死臭だらけの道を抜けたりぃだーれみりゃだが、その奥には巣に戻っているゆっくりふらんが一匹いる。 「そこのげすふらん!このかりすまりぃだーがせいっさいするんだどー!」 だが、考えてほしい。ふらんたった一匹でほぼ群れが全滅したことを。 この群れの総戦力は、虐待お兄さんでさえ恐れているのだ。 そんな群れを一匹であんな状態にしたふらんはりぃだーれみりゃではまず勝てない。 なぜなら、このふらんも胴付きなのだ。更に武器(針)も持っているのだから恐怖しかないだろう。 「このりぃだーれみりゃはおまえみたいなげすはせいっさいするってきめたんだよ!」 「ユックリシネェェ!!!!」 「いぢゃいぃぃぃ!!ざぐやぁぁぁっ!!!!」 「いや、おちつくどぉー!こんなんだとざこなんだどー!」 ちなみにこのりぃだーれみりゃ、少し賢かった。 「ユックリシネェェェェェェ!!!!!!!!!」 「....たからものさんでつぶすどー!」 グシャ..ドロォ... 「ユッ...クリ...シネ...ェ」 「かったどぉー!くそふらんをつぶしたどぉ!」と大声で叫んだ。 しかし、これではにとある鬼威惨のおうち方面に丸聞こえだ。 そう、あのふらんは鬼威惨の飼いゆだったのだ。 そのため、このりぃだーれみりゃは...... その後.... (台詞のみでお楽しみください) 「お前のせいでふらんが死んだ。わかるか?糞だらけの長擬き」 「''あのばかからやったんだど''!でびりゃばばどぅぐぬあいどぉ!」 「....やれ。ありす」 「んほおおおおっ!!れみりゃかわいいわぁっ!!どかいはよっ!!」 「いやぁぁぁ!!ずっぎりやだぁぁぁ!!」 「このいなかもののありずう'ううぅ''!!」 「おい、ありす。さすがに気持ち悪いから潰すぞ?」 「おにいさんもづんでれなn」 「よし...俺がやるか。」 「だずげでぇぇっ!! ...あぁぁぁ!!でびりゃのししさんがぁぁっ」 「お前があの時死んどけばよかったんじゃねえの?」 「だまりぇぇ!!くそじj」 「おおいえあええあいおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ(どおしてしゃべれないのおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ)」 「やだぁっ!!ざ'ぁぎゅやゃぁぁぁぁっ''!!!!」 (しゃべりにくいぃぃ!!ざぐやぁぁぁぁぁぁ....ぁぁ.......) その後、肉まんのいい臭いがする夜はゆっくりの亡霊が出ると噂になったという。 まぁ、本当は体中から汁の垂れたりぃだーれみりゃだったモノを鬼威惨が設置するだけなのが。 おまけ れみりゃで釣ってみた 「俺は虐待お兄さん。説明は名前そのままだ。」 「今回はれみりゃで5回釣りをしたぞ!」 結果 1 コイが釣れた。 2 にとりが釣れてしまった。絶滅危惧希少種は潰せないらしい。 3 れてぃが舌で食った。その後もちろん... 4 れてぃの死骸で釣るとカエルが釣れた。(ちょっと引いた) 5 カエルで釣ると魚が釣れた。 あとがき 字の並べ方が汚い ..... おまけはカオスすぎてすみません。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/450.html
ここは、広大なゆっくり平原。 ゆっくり名所である池や、川、森、山など、ゆっくりたちが思う存分絶頂にゆっくりできる場所。 そんなゆっくり平原の辺境の森で、ゆっくり霊夢は空を飛んでいた。 もちろん自力ではない。 自力で飛べるゆっくりなど、捕食種であるゆっくりれみりゃとゆっくりふらんだけだったのだ。 ゆえにゆっくり霊夢は夢見心地だった。まさか空を飛べる日が来るだなんて。 頬が風を切って進む感覚。 ぐんぐんと流れていく景色。 徐々に、だが確実に遠くなっていく地面。 視界は広がり、遥か彼方まで見渡せる。 生まれてから死ぬまでに見ることなど、絶対に叶わない素敵な光景。 ゆっくり霊夢の小さな胸は感動でいっぱいだ。 それもこれも、みんなこの「うーぱっく」のおかげだった。 「わぁい!おそらをとんでるみたい!」 「ばかだぜれいむ!まりさたちはおそらをとんでるんだぜ!」 「うー!」 「とんでる!とんでるよ!!うわぁ~♪とりさんよりはやいや!」 「う~♪」 ゆっくり霊夢はご満悦の表情で、自分とゆっくり魔理沙を乗せて飛んでいる二匹のゆっくり種を 見ながらついさっきのことに思いを馳せた。 うーぱっく。 外見はゆっくりれみりゃを直方体にしたものだが、性質はそこまで強暴ではない。 なぜなら、出会い頭に襲撃してこなかったから。 いや、たしかに急に近づいてきたから、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の二匹は思わず死を覚悟した。 自分たちも、今までにいた他の仲間と同じようにゆっくりれみりゃに食われるのだと思った。 だが、目を瞑り震えながら身を固めていた二匹に聞こえたのは「うーうー!」という人懐っこい声だった。 恐る恐る目を開くと目前にぱたぱたと浮遊しているそれ。 「ゆぎぃっ!」 恐怖の声をあげる二匹。 しかし覚悟した苦痛はいつまでもやってこない。 よく見るとそれは一つの動作を繰り返している。しかもにこにこ笑顔で、だ。 顎を上げるようにしているそれをゆっくり霊夢はこう解釈した。 「ゆぅ……?なぁに?の、のせてくれるの?」 「うー♪」 いかにも!と言うように返答する。 「だっ、だめだぜれいむ!あぶないぜ!それはれみりゃだぜ!!」 ゆっくり魔理沙が警告する。多少見た目が違い、少し人懐っこいからといってそれはゆっくりれみりゃに 違いないのだ。どんなに懐いていたとしても、それが猛獣だと忘れてしまったら危険な事故が起こる。 自分たちより圧倒的に強い相手には、警戒はいくらしてもしすぎると言うことは無い。 だが、ゆっくり霊夢はそれの誘いに乗った。 すでに死んだ身だという気持ちだったからだろうか? 「ゆっくりはいるよ!」 言って飛び跳ねると、ゆっくり霊夢の体はそれの頭頂部に開いている窪みに収まった。 「ゆ?ゆ、ゆ、ゆゆゆ?」 徐々に浮かび上がってくる。飛んでいるのだ。 目線が高くなる恐怖にいくらか震えていたが、ゆっくり霊夢はすぐに慣れてしまった。 それがゆっくりと静かに飛翔していることも関係しているだろう。 「まりさー!すごいよ!おそらをとんでるみたい!」 「れいむ、うらやましいんだぜ!はやくかわるんだぜ!!まりさによこすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、それに乗ってくるくると飛んでいるゆっくり霊夢を見て顔をゆがめていた。 「ねぇねぇ、れいむはいいからまりさをのせてあげて!ゆっくりおねがい!」 しかしそれはゆっくり霊夢の言うことに反応しない。ただ「うー」と鳴くだけだった。 もどかしげに身を震わせ、声を張り上げる。 「ねぇ!ゆっくりきいてるの?まりさとかわってあげてよ!ゆっくりしていってね!」 「うーうー!!」 それをかき消すかのような大きな声でそれは鳴いた。 「ゆっ!?」 するとどこからともなく同じような泣き声が聞こえてくるではないか!やがて、いくらもしないうちに もう一匹のそれが姿を現した。 「うーうー」 「うー」 「うっうー」 「うぅ~」 何らかの意思の疎通。そして後から現れたそれはすぐにゆっくり魔理沙へと降下していった。 「ゆぅ?のせてくれるのか?だぜ」 「う~♪」 「ゆゆゆぅ~~~!」 感極まったような高めの声で慌てて飛び乗るゆっくり魔理沙。 どっしりと座ったようなそのおさまり具合は、まるでそれが自分のために存在しているかのような 錯覚をゆっくり魔理沙に与えた。 素晴らしい一体感。 これを覚えてしまえばゆっくりアリスの強制すっきりなど物の数ではない。 「すごいぜ!ゆっくりとんでるんだぜぇ!!」 「まりさ!まりさぁああぁ!!」 「れいむぅううぅぅううぅぅぅ!」 二匹はランデブーするかのようにお互いの周りを旋回し、揃って空を飛ぶ幸運を堪能し始めた。 並んで飛行し、川を越え、枝を飛び越えて流れるように飛んでいく。 地面を飛び跳ねているだけでは、決して味わえない愉悦。ゆっくり霊夢たちは今、幸せの絶頂にいると 思った。自分たちはなんて幸せなんだろう!そして、この出会いに感謝したくなった。 「ゆ?そうだ!おなまえをゆっくりおしえてね!」 「うー?」 「おなまえだよ、お・な・ま・え。れいむはゆっくりれいむっていうんだよ!れいむってよんでね!」 「うー……ぱっく……」 とまどいがちに伝えるそれ。 うーぱっく。 ゆっくり霊夢はそれを聞くと目を輝かせて 「うーぱっくっていうんだね!ゆっくりしようね!うーぱっく!」 と頬を紅潮させて言った。 「まりさも!ゆっくりするぜ!ゆっくりまりさっていうんだぜ!」 二匹のうーぱっくはゆっくり霊夢たちを乗せて何処までもいつまでも飛んでいた。 木に成っている実を貪り食べていた二匹は、いつのまにか日が傾いていることに気づいた。 空は茜色に染まっていて、吹く風も冷ややかになり、鴉の鳴き声がどこか哀愁を誘う。 沈む夕日を今までに無い高みから望んで、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は思わず涙ぐんだ。 圧倒的な情景。 空を翔る鳥たちは、いつもこんなものを見ているのか。 髪を撫でて耳を抜けて過ぎ去る風は、こんなにも冷たく、もの悲しいものだったか。 二匹に去来する思い。 それがなんなのか理解できないし、言葉にもできない。だが、ただ「そこにある」と感じることは出来た。 二匹はなんだか無性におうちに帰りたくなっていた。 「ねぇうーぱっく!ゆっくりかえりたいよ!ゆっくりかえしてね!」 「う、うー!」 うーぱっくは一声鳴くと、もと来た空を引き返し始めた。 ゆったりとしたその飛行は、余計に「帰る」ということを意識させ、二匹の心は逸っていく。 大地が近づき、森の深緑に包まれる。 木と土の匂い。慣れ親しんだそれが二匹の鼻孔をつくと、言い知れぬ安心感がにじんだ。 ゆっくり霊夢はおうちに帰ったら家族に今日のことを言って聞かせてあげようと考えていた。 うーぱっくとの出会い、初めて大地から離れたこと。 風を切って飛ぶ感覚。 大空の青。流れ往く雲の白。夕焼けの茜色。 お日様が沈んでいくと、風が寂しく聞こえること。 きっと妹たちは羨ましがるに違いない。母はそれは凄い体験だったね!とまるで我が事のように 喜んでくれるだろう。そうだ、明日は妹達も誘ってうーぱっくとも遊ぼう!ゆっくりしたいい考えだね! ゆっくり霊夢は自然と表情が緩んでいった。 「れいむ!れいむ!!」 「ゆ?」 そんな物思いに耽っていたゆっくり霊夢を、親友のゆっくり魔理沙は緊張したような声で必死に呼びかけていた。 「どうしたの、まりさ」 見ればゆっくり魔理沙はどこか緊張した面持ちで、やや汗ばんで見える。 「かおいろがわるいよ、まりさ。ぽんぽんとらぶる?」 「ちがうよぅ!まえをみるんだぜ!!」 「?」 ゆっくり魔理沙の必死の訴えに、きょろきょろと見回すゆっくり霊夢。 「ゆゆっ!?」 そこは見たことのない場所だった。 森の中でも他に類を見ないほどに木々が鬱蒼と茂っており、空のように広がっている木の葉のせいか どこか音が遠くにあるもののように聞こえてくる。 夕暮れではあるが、ここは特に暮色が濃い。夕闇の彼方から何か得体の知れないものがひっそりと 這いずり出てきてもおかしくないと思えるほどだった。 「ここどこぉおぉおお~~~っ!?」 「うー!うー!」 「ゆっくりかえしてほしんだぜ!おうちにかえすんだぜ!」 「うっう~~!」 ゆっくり霊夢たちの叫びに声を返すうーぱっく。しかしそこに意思の疎通は皆無だ。 「うー!うー~~~!!」 誰かに呼びかけるような嘶き。 するとどうだろう、周りの森林から唱和するように同じ泣き声が聞こえてくるではないか! そしてがさがさと枝葉を揺らして現れるのは五匹のゆっくりれみりゃだ。 「ひぃっ!!」 五匹は悲鳴をあげたゆっくり魔理沙を、そのにこにことした笑顔の目のままでねめつけると 二匹のうーぱっくを取り囲むようにして羽ばたき、進み始めた。 その先には洞穴があった。 そこは巣だ。 ゆっくりれみりゃの巣窟なのだ。 「うーうー!」 「ぎゃおーーーー」 わずかに漏れ出てくる泣き声が、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙を心胆寒からしめた。 二匹は恭しく運ばれる供物のような態で奥へ奥へと連れて行かれる。お互いを見詰め合うが どちらも涙目で震えていて歯の根があっていない。 うっすらと月光のような冷たく柔らかな光を皓々と発する岩々が過ぎ去り、湿った空気が まるでからみつくように流れている。しっとりとした天井の岩肌からは、時折水滴が落下しており 水の弾ける音がこだましている。 平常であれば、涼しくて水滴の音も耳に心地よいこの洞穴は、とてもゆっくり出来る場所であろうが すでにゆっくりれみりゃの巣になっており、それ以上に二匹はうーぱっくに連れられゆっくりれみりゃに 囲まれているのが現状だ。とてもゆっくりする暇などない。 唯一できることは、ゆっくりと死の覚悟をすることだけだろう。 どれほど進んだろうか?先にはまばゆく光るものがある。 巣の広間なのだろう、今までになく明るいそこにはたくさんのゆっくりれみりゃがいた。 体のないやつ、あるやつ、小さいやつ、大きいやつ、うーぱっく。 さまざまだ。 さまざまだが、それぞれが思う存分ゆっくりしていた。 ゆっくりと、していた。 左に目をやれば、そのゆっくりれみりゃはうーぱっくと五匹ほどで小さなゆっくりぱちゅりーを空中で キャッチボールのようにして遊んでいる。地面には親と思しきゆっくりぱちゅりーが声を上げて、弱い体を なんとか飛び跳ねさせているが、空中のそれらには決して届くことはない。 「むっぎゅぅ~~!むっぎゅぅうううぅぅ!!」 「……むきゅっ!……みきゅぅうぅ!!」 弄ばれている子ゆっくりぱちゅりーは生来の脆弱さもあいまって、すでに半分以上死に体だ。 投げ飛ばされ受け止められているので、ゆっくりれみりゃの牙で帽子はずたずたになり髪もぼろぼろ、 肌に至っては蒼白を通り越して蝋のように白くなっている。見れば右目が飛び出てぶら下がっている のがわかるだろう。 しかしそのゆっくりれみりゃたちは気にしない。玩具だからだ。下で必死に取り返そうと飛び跳ねている 親ゆっくりぱちゅりーが、とうとう口から紫色をしたクリーム状のものを吐き出していても相も変わらず にこにこ笑顔で放り投げ、受け止めて別のゆっくりれみりゃに放り投げていた。 右を見れば、そこには大きなゆっくり魔理沙がいた。 本当に大きい。1メートルくらいはあるだろうか。それに3匹のゆっくりれみりゃが群がっていた。 それらは胴体が生えていて、ぷにぷにとした手足もしっかりと動いていた。 「いいこえでなくんだどぉ~!」 「もっとだどぉ~~~!」 「そんなんじゃまんぞくできないんだっどぉ~♪」 一言ごとに平手や拳、蹴りを叩き込んでいる。その一撃ごとに大きなゆっくり魔理沙は 「ゆぐっふ!ぶぎゅぎゅっ!だべっ!やべでよぉおっ!やべっでゅんだぜ!!ぶめぎゃっ!?」 と声を上げていた。見れば皮は裂け、目は片方が飛び出しており、ところどころに餡子が滲み出ている。 「へたくそなんだぞぉ~」 「いぎゃっ!」 一匹が口に手を差し込み、歯をへし折ったのだ。これでゆっくり魔理沙の口の中には歯がなくなってしまった。 「まりゅしゃしゃみゃに……きょんなこちょしちぇ、ひぃ、たぢゃでしゅむとおみょうにゃ!だじぇ!!」 怒りと復讐心を湛えた燃えるような目。それに見つめられても三匹はにこにこ笑顔を崩さなかった。 むしろ、嘲笑の色が混じっていた。 「う~♪おまえのむれはもうないんだっどぉ~~」 「わすれたのか?どぅー」 「みんなみんな、れみりゃたちでくってやったんだどぉ~~~♪」 「なかなかうんまかったんだどぉ~☆」 「ほめてやるんだどぉ~~」 「ゆっ!?」 そうだ。そうだった。 大きなゆっくり魔理沙の脳裏にあの光景がよみがえる。 このゆっくり魔理沙は運が良いゆっくりだった。幼い頃、家族が獣に襲われたときもそれに跳ね飛ばされて すぐ側の茂みに転がり込んだことで一匹だけ助かった。その後、仲間と狩りをしていて二手に分かれたバッタ を追いかけたときも、相棒のゆっくり霊夢が追いかけた先には蜂の巣があって死んだのだった。 それから大きくなり、自分が支配する群れを持ったときまでその運の良さは発揮されていた。さらに言えば 体が大きくなったことで、自身を脅かすものが比較的少なくなっていたことも災いした。 脅威を、自分たちゆっくりは弱い立場であり、それを脅かすものが存在するということを、失念していたのだった。 それが致命的だった。 夜に、ゆっくりれみりゃの襲撃があったのだ。 自分を頂点に、おおよそ50匹はいた群れ。そのほとんど全てがたった3匹の、今目の前にいるゆっくり れみりゃによって屠られてしまった。群れには自分に及ばないまでもそれなりに大きなゆっくりもいたというのに、 まるで手も足も出なかった。 虐殺と蹂躙の限りを尽くした3匹は自分を含めた何匹かのゆっくりをこの場所に運び入れて、 自身の群れの餌や玩具としてゆっくり魔理沙たちを扱った。 それから続いた地獄の毎日がその恐るべき夜の記憶を薄めたのだった。 「これをみるがいいどぉ~~~」 一匹が飛び上がり、もたもたと上昇してゆっくり魔理沙の帽子をひっぺがした。 「ゆ゛っ!」 帽子を剥がされるという、今まで感じたことのない刺激に、思わず声を上げてしまう。 頭頂部は露出し、うっすらと餡子が滲み出て甘い匂いが漂い始めた。 すると、あたりのゆっくりれみりゃたちの目がこちらに向く。だが、その3匹はそれらを無視して 剥がしたものをゆっくり魔理沙の眼前で広げたのだ。 「ゆげぇえぇえぇえぇぇぇんっ!?!?」 帽子から、剥がれた髪の毛が垂れているが、問題はそれではない。 そこには苦悶の表情を浮かべたゆっくりたちの顔の皮がいくつも貼り付けられていたのだ。 どれもこれも苦痛と怨讐に満ちており、まるで見ているゆっくり魔理沙を恨みぬいているようであった。 自分は今までこんなものを頭にくっつけていたのか!? 「こっちはおまえのこどもなんだどぉ~~!さいごまでおとーさんおとーさんやかましかったんだどぉ~~~」 「これはれいむだどぉ~」 ゆっくりれみりゃは憤怒の形相で歪んでいる顔の皮を指す。 「こいつはぁ、こどもをまもろうとしてとびかかってきたから、ひっぱたいたらすぐしんだんだどぉ~」 「あれはもろかったんだどぉ~!わらえたんだどぉ~~~☆」 「こどものさけびが、すっごくたのしかったんだどぉ~☆」 「なかみがよじれてしぬかとおもったんだどぉ~~♪」 「ゆっぐっぐぐぐ!!!」 ゆっくり魔理沙は目の前に広げられた家族のデスマスクに悲しみの嗚咽を上げていた。 やがてその様子に飽きたのか、三匹のゆっくりれみりゃはそれを放り投げると、周りで様子を伺っていたほかの ゆっくりれみりゃたちに向かって 「こいつはもういらないんだどぉ~☆」 「すきにするんだどぅ~~♪」 「ちゃんととどめはさすんだどお~~~」 と言い放った。 「ゆっ!?ゆっぎゅりだずげでね!?」 「おまえはもうあきたんだどぉ~~」 「もっとおもしろいこといえ!」 「うっうー!うあうあ♪」 「いやあぁあぁあああぁぁぁ!!」 たくさんの爛々と輝く瞳。それらが一斉に大きなゆっくり魔理沙に向かって飛び掛っていった。 楽しそうな声に混じり、痛みをうったえ命乞いをする声が聞こえ、さらに大きいゆっくり魔理沙の皮を引き裂き 肉をかき混ぜ、引きちぎり、咀嚼する音によって覆い隠されてしまった。 また別のほうを見れば、そこにはうーぱっくやゆっくりれみりゃに餌をやっている胴体付きのゆっくりれみりゃがいた。 子ゆっくり霊夢を思い切り放り投げて、それを口で咥えて捕るというゲームじみたものだった。 「やめちぇぇええぇっ!!たちゅけちぇぇえぇぇえええぇぇ!」 「いじわりゅしにゃいでゅぇぇえええぇぇ!」 「おかあちゃあぁあぁあああぁぁぁん!!」 「うるさいんだっどぉ~、おかあちゃんならあれだどぅ~☆」 ゆっくりれみりゃの指差す先には、ただの肉塊があるだけだった。あたりに餡子を撒き散らし、わずかに見える リボンの赤が、それをゆっくり霊夢だと理解させるただひとつのものだった。 おそらく頬を左右に引っ張ったのだろう、顎下あたりから無残に二つに裂けている。 「おかぁちゃぁああぁああぁぁぁん!!!」 「いっぱいたべるんだどぉ~、たっくさんあるんだっどぉ~~♪」 「うー!うー!」 「うっう~~!」 「うぁー!うあー!」 何処もかしこもそんな様相だ。 これがゆっくりれみりゃの食事なのだった。 ゆっくりれみりゃにとって、ゆっくり霊夢やゆっくり魔理沙などのゆっくりは、餌であり玩具なのだった。 だから軽々しく弄び、蹂躙する。壊れてしまうなんて構いやしない。 壊れてしまえば捨てればいいのだ。 玩具はそこらじゅうにたくさんあるのだから。 「それはなんだどぅ~?」 大きなゆっくり魔理沙を虐めていたゆっくりれみりゃが一匹、うーぱっくのほうへとやってきた。 そのふわふわとした浮遊は、とても飛んでいるといえる速度ではなかったが、それでも囚われたゆっくり霊夢と ゆっくり魔理沙の二匹にとって脅威であることに変わりはなかった。 「うー!うあ~!」 「うあー♪うっうあ~♪」 うーぱっくが何を言っているかはわからない。しかしひょっとしたら自分たちは食べられないかもしれない。 ゆっくり霊夢たちはそんな淡い希望めいたものを抱いた。 「まりさをたすけてほしいんだぜ!!はやくはなすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙も身をよじりながら必死に訴えかけている。だがゆっくりれみりゃはそれらを無視して うーぱっくの言葉に耳を傾けている。 「ごはんをじぶんでとるなんて、えっらいんだっどぉ~~☆」 「うあ~~☆」 「どおじでぞんなごどい゙ゔの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉぉぉっ!!!」 「たべちゃだべだんだぜええぇぇっっ!!おいじくないんだぜえええええ!!!」 「う~?」 「おどもだぢっ!ぜっがぐれいぶだぢど、おどもだぢになれだどおぼっだのにぃいぃいぃぃぃっ」 「あじだはがぞぐどいっぢょにもっどゆっぎゅりじだがっだのにぃぃいいいい!!」 「なんでだばじだの?どおじで!?どおじでぇえええええぇぇぇぇっ!!??」 涙をだくだくと流しながら絶叫するゆっくり霊夢。 しかしうーぱっくは意に介さず、ただ一言 「うー!」 とだけ鳴いた。 「あっぁつぁつっ!!へんだよぉっ!!れいむぅっ!!へんなんだぜぇ!」 ゆっくり魔理沙が声を上げる。今までにない声色に、ゆっくり霊夢は嗚咽を上げながらも振り向いた。 「どうしたの、まりさ」 「なんかからだがへんなんだぜ!おかしいんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、自身に襲い掛かりつつある異変に気づいた。体が崩れ始めているのだ。 「と、とけてるううぅうううぅぅぅ!!!まりざのかりゃだがどげでりゅんだじぇぇえええぇぇぇ!!!」 左右に体を暴れさせるゆっくり魔理沙。しかしその体はにちゃにちゃとした粘液が付着し、とろとろの 液状になり流れ始めていた。 これがうーぱっくの最大の特徴だ。 うーぱっくはゆっくりれみりゃの変種である。つまり捕食種なのだ。しかしうーぱっくは成長すると 経口摂食をしないようになり、このようにゆっくりを自身に乗せてじょじょに溶かしていってしまうのだ。 何故かはわからない。 しかし自然界にも似たような生き物が存在するのだから、それほど不思議なことでもなかった。 「うわあああぁあぁああぁぁっっ!!まりゅいざをだじゅげでぇええぇぇっ!!おねがいいぃい!!」 「うー?」 「ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」 よくわからないと言うように唸るうーぱっくに、ゆっくり魔理沙の絶叫は続く。 「まりざああああぁぁぁっ!!ま゛ぁり゛ざあああああぁぁぁぁっ!!!!」 さらにゆっくり霊夢の絶叫も重なる。思わず聞きほれたくなるほど甘美なる合唱。 そこにゆっくりれみりゃが声をかけた。 「すのばしょをいえばたすけてやるんだどぅ~」 「ゆっ!?」 「さっきかぞくっていったんだど~~~♪」 「えらぶんだどぉ~~~★」 「いっ、いやだよ!!かぞくはだいじだもん!」 「どっちでもいいんだっどぅ~~☆」 いつのまにか、うーぱっくの周りにはあの三匹のゆっくりれみりゃが集まっていた。 「おねぇしゃんおしょいね?」 ちっちゃなゆっくり霊夢は巣の中で不安そうに母ゆっくり霊夢に話しかけた。 「だいじょうぶだよ!まりさといっしょだったし、きっとまりさのすでゆっくりしてるんだよ!」 「ゆっ!きっとしょうだにぇ!うりゃやましいよ!」 母ゆっくり霊夢の言うことを素直に聞き、よそのおうちにお泊りをする姉を羨ましがる妹。 よくある家族像だった。 このゆっくり霊夢の家族は母ゆっくり霊夢に、ゆっくり霊夢、妹ゆっくり霊夢の三匹だった。 出産環境が劣悪だったせいか、母体になったつがいのゆっくり霊夢から生えた蔦には未熟な実がいくつか 成ったが、しっかりと生れ落ちたのは二匹だけだったのだ。それでも片方は未熟児だったが。 しかし朽ちたゆっくり霊夢の黒ずんだ死骸は二匹の子の最初の栄養となり、その血肉のなかに脈打っている。 母ゆっくり霊夢は、つがいのゆっくり霊夢の、文字通り化身とも言える二匹の姉妹をとてもゆっくりと大事に 育て上げていた。ゆっくり霊夢は健康そのもので、すくすくと育ち元気に野原を駆け巡り、今では母と一緒に 十分な餌をとれるほどになった。 もしかすると巣を出るなどと言い出すかもしれないが、それもまたひとつの生き方だ。そのときは祝福して しっかりと送り出してやろうと、母ゆっくり霊夢は考えていた。 思えば自分も若い頃は親の庇護から飛び出し、この平原で将来つがいになるゆっくり霊夢と出会ったのだ。 愛し子であるゆっくり霊夢にゆっくりした未来がありますように。 そうして母ゆっくり霊夢は、もうひとつの愛し子、目の前でゆぅゆぅとしている妹ゆっくり霊夢を見る。 生まれたのはゆっくり霊夢と一緒だったが、こちらは未熟児ゆえに発育が悪いのだ。もうしばらくゆっくりと 母ゆっくり霊夢が育てる必要があった。 外は夜の帳も落ち、そろそろゆっくり眠る時間だ。妹ゆっくり霊夢を巣穴の入り口から守るように身を寄せる。 お互い肌をすり合わせて、眠気を誘う心地よい震えが全身をゆっくりと包み始めた。 「ゆぅ~~、ゆぅぅ~~~」 妹ゆっくり霊夢はすでに半分眠っていた。母ゆっくり霊夢はそのゆっくりとした様子を微笑みながら優しい眼差し で見つめ続けて、体を揺らしていた。 やがて母ゆっくり霊夢にも眠気がやってきた頃に、それは来た。 「う~、おまえのすのばしょはまりさがはいたんだどぅ~♪」 「!?」 ゆっくり霊夢はじめじめとした狭い場所に押し込められていた。ここはゆっくりれみりゃの食料庫で 岩肌にあいた穴にそれぞれさまざまなゆっくりたちが無理やり押し込められていた。 ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙、ゆっくりぱちゅりー、ゆっくりさくや、ゆっくりめーりん。他にも ゆっくりみょんや、ゆっくりちぇんと、種類も大きさもまちまちなゆっくりたちが穴に納まっている。 特筆すべきは、そのどれもが生きているということ。 ゆっくりれみりゃは、食事と遊戯を一緒に行う傾向があるのだ。さんざん弄び、傷つけ、恐怖を植えつけ、 自身の暴力を味わわせた後に、ゆっくりとそれらを食す。 餌を壊す感触と、耳を振るわせる悲鳴と嗚咽、傷つく皮とそこから噴出す餡子が目を楽しませ、ゆっくり れみりゃの食事をより一層味わい深いものにするのだった。 「ど、どおいうごどぉおおおおぉぉぉっ!!!」 「たすけてやるかわりにいわせたんだっどぉ~~」 このゆっくり霊夢はうーぱっくに食べられる運命にあった。 だがしかし、絶叫と共に飛び出た「家族」という言葉がそれを変えた。ゆっくりれみりゃがその家族ごと 食べてやろうと考えたのだ。 しかし一向に巣の場所を言おうとしないので、この場所に安置しておいたのだ。 「あのまりさはとけるより、おまえをうるほうをえらんだっどぅ~~~♪」 「ゆぅううぅぅ」 「ばかなやづだっどぉぉお☆」 「ゆあぁあぁあぁああぁぁぁっ!!!」 「いまごろまりさはかぞくとゆっくりしてるんだどぉ~~」 「ゆぎゅううううう」 「おまえはかぞくとここでくわれるんだど~~~☆」 「ゆぐぁああぁああぁあ!!まりざあああぁああああああ!!!」 「かぞくがそろったら、いっしょにくってやるんだどぅ~~♪」 そう言うと、ゆっくりれみりゃは近くの窪みにはまっているゆっくりみょんを掴み取った。 「ち、ちんぽ~~~」 「こうやってくってやるんだど~~」 「きょせいっ!?」 そのままがぶりとやった。ゆっくりみょんは白眼を剥いて痙攣している。それを二口で食べてしまった。 「ああ、あああ、あああああ!!!」 「おもしろいかおなんだどぅ~!ゆかいだどぉ~~~♪うっう~、うあ♪うあぁ♪」 やがて、家族がそろったのかゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに引き摺られてあの広間へと来ていた。 「ゆっくりはなしてね!」 「ゆっきゅりはなちちぇにぇ!!」 そこには案の定、ゆっくり霊夢の家族がいた。 羽ばたいているゆっくりれみりゃに咥えられていて、うかつに暴れようものなら地面へと落下してしまう。 二匹には抵抗のしようがなかった。 だがそれだけではなかった。 その場所には他にもゆっくり魔理沙の家族もいたのだ。 「ゆっくりおろしてほしいんだぜ!まりさはおいしくないんだぜ!!!」 「ゆっきゅりおろしゅんだじぇ!」 「ゆぅううぅぅっ!?どうじでなんだぜ!?どおじでまりさのすをおしえたんだぜ!れいむううぅぅぅぅっ!」 その叫びはゆっくり霊夢のお友達のゆっくり魔理沙のものだ。 「まりさがさいしょにうらぎったんでしょ!!れいむはしってるんだよ!れいむのすをおしえたって!!!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、怒りをあらわにしてゆっくり霊夢は声を荒げた。 「まりさなんかとけちゃえばよかったんだよ!!どおじでれいむのすをしゃべったの!?」 「し、しらないんだぜ!まりさはなにもいってないんだぜ!!」 「じゃぁどおじでれいむのかぞくがこんなどごろにいるのおぉぉおっ!!!」 「れいむがまりざのずをしゃべるからだぜえええぇええぅ!!!」 ゆっくり霊夢の追求に、ゆっくり魔理沙の絶叫が重なる。 「ぞんなのまでぃざがれいびゅのじゅをじゃべるがらでじょおおおおおお!!じがえじだよっ!!」 「だからじららいっでいっでるんだぜえええええっ!!!ひどいんだぜぇぇ!!」 泣きながら言い争う二匹を、周りのゆっくりれみりゃたちはにやにやと笑いながら眺めていた。 ゆっくりれみりゃはこの二匹をはめたのだった。 お互いがお互いを裏切ったと思い、復讐に お互いの巣の位置を喋ったのは、ゆっくりれみりゃたちにとって愉快の種だった。 「じゃぁどおじでれいびゅのかじょくがごごにいりゅのぉおおっ!?」 「れみりゃが、れいみゅがまでぃじゃのじゅのばじょをいっだっでいっだんだぜ!!」 「まりしゃがれいびゅのしゅをおしえたっでぎいだよぉお!!」 「うーうー!」 そんな言い争う二匹をよそに、うーぱっくがゆっくりれみりゃになにかをうったえた。 「う~!そろそろでなーだどー!」 「うーうー!うあうあ~~~♪」 「うーぱっくはれいむとまりさをたべるといいどぉ~」 「れみりゃはちっちゃいまりさをいただくんだっどーー☆」 「じゃぁれみりゃはおっきなれいむをたべちゃうぞ~~~♪」 「やめちぇね!おいちくないちょ!!やめてっていっちぇるにょにぃ!!」 「こっちはおいちくないいだじぇ!まりしゃはどくなんだじぇ!!ちんじゃうんだじぇ!!」 「やべでええぇえぇっ!!そのこがなにじだっていうのぉおおぉぉっぉっ!!」 妹ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに握り締められて、中身を漏らした。ゆっくりれみりゃはそこから ゆっくりと中身を吸い上げていく。じゅるじゅると音を立てて萎んでいく妹ゆっくり霊夢。 中身と一緒に元気を吸い取られているようだった。 母ゆっくり霊夢は叩かれ殴られ、千切られて止むことのない悲鳴をあげ続けて食われた。少しでも声を 上げることをやめると苦痛を与えられるのだ、最期には口の下あたりが自然と裂けていた。 ゆっくり魔理沙の家族たちも体中を弄ばれて、痛めつけられながら食べられている。 「れいむのばがああぁぁぁつ!!おまえがうーぱっくなんがにのるがら゛っ!!」 「ぶぎゃっ!までぃざだってのっだでっじょっ!?!?」 うーぱっくに乗せられてもなお、罵声を浴びせあっている二匹。 その体はぐずぐずに蕩けていてもう満足に動くことは出来やしない。 もはや眼と口を動かしてその意識を失うまで緩慢な痛みに身を委ねるしかない状態になってしまった。 二匹にとって幸いなのは、傷みがほとんどないことだろう。 きっといつ自分が死んだのかもわからないほどゆっくりと食べられるに違いなかった。 ここは、広大なゆっくり平原。 森に行けば優しい風が木々を揺らし、耳ざわりの良い音楽を葉が奏でるゆっくり名所のひとつだ。 そんな心地よい音に混じって声が聞こえてくる。 どこか畏れを含んだような、何かを知りたがっているような、そんな声。 「うー♪」 「ゆゆ?……乗せて、くれりゅの?」 「うぅ~~♪」 「ふわっ!しゅごいしゅご~~~い!!おしょりゃをとんでゅぇりゅにょぉおおお~~♪」 終わり。 後半失速してしまった。 狩りの時、うーぱっくは体付きのゆっくりゃを乗せて自由に空を駆けます。 ガンダムのドダイやゲターみたいな感じなのですw 飛行速度:ゆっくりふらん≧ゆっくりれみりゃ>うーぱっく>ゆっくりれみりゃ(体つき) 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける