約 632,045 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/834.html
前 「おかあさん、だいすき!」 ――ああ、これは娘の声だ。 目の前をぴょんぴょん飛び跳ねている赤ちゃんゆっくり霊夢は、目の中に入れても痛くないほど可愛い存在だ。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 それが、七人。 皆、元気があって、頭も良くて、何よりすごくゆっくりしている。 まりさは、それだけが嬉しかった。 まりさは五人姉妹の末っ子として誕生した。 父はゆっくり魔理沙、母はゆっくり霊夢。 自分以外の姉妹の種族はゆっくり霊夢種。 自分だけがゆっくり魔理沙種。 だけど、家族皆仲の良い、本当にゆっくりした家族だった。 だが、その生活は一変する。 おうちが胴体付きのゆっくりれみりゃに襲われたのだ。 すると父親であるゆっくり魔理沙は、家族を犠牲にして逃げ出した。 最低のゴミクズだった。 幸いにも、ゆっくりれみりゃはまりさたちを無視し、家族の中で一番太っていて美味しそうなゆっくり魔理沙を追いかけていった。 家族は全滅の危機を逃れた。 ゆっくり魔理沙がどうなったかは、誰も知らない。 ただ、近くで帽子だけが見つかったから、きっと死んだのだろう。 もし生きてまりさたちの前に現れたとしても、帽子がないから父親だと認識出来なかっただろうが。 そんなことがあって以来、まりさは姉妹たちにいじめられるようになった。 まりさが家族を捨てて逃げ出したゆっくり魔理沙と同じ種族だから、理由はそれだけだった。 母はそれに気付いていたようだったが、止めることはしなかった。 それどころか、あからさまに食事の量を減らされるようになった。 少ないと文句を言うと、末っ子で一番身体が小さいんだから我慢しろと逆に怒られた。 なんでまりさがこんな目に合わなくちゃいけないの? まりさは酷く悲しかった。 そして、もし自分が親になることがあれば、絶対に、何があろうとも、家族だけは守ろう。 そう誓った。 目の前を、七人のゆっくりが飛び跳ねている。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 そのうちの一匹が、突然眼前から姿を消した。 「……ゆっ!?」 慌てて周囲を見渡す。すると、遠く離れたところに、黒い霧のようなものの中に引っ張り込まれている赤ちゃんの姿があった。 「おかあさん、たすけてー!」 赤ちゃんが泣いている。 急いで助けないと。 だって、まりさはお母さんなんだから。 あのゴミクズの父親とは違う、ちゃんと子供を守るお母さんなんだから…… でも、あと一歩というところで、黒い霧は子供をすっぽりと飲み込んでしまい、そのまま掻き消えてしまった。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 まりさは悲しくて咽び泣いた。 ふと、気配を感じて後ろを振り向く。 するとそこには、残り六人になった姉妹たちが、感情のない目でまりさを見上げていた。 「み、みんな……」 「どうしてころしたの?」 一人のゆっくりが、ぽつりと呟いた。 「ま、まりさはころしてないよ!?」 「うそだよ。ほら、うしろをみて」 背後を振り向く。 するとそこには、先程消えてなくなってしまった赤ちゃんの無残な死体が転がっていた。 「あ、あがぢゃぁぁぁぁぁぁん!!?」 「れいむたちのいもうとをころすなんてひどいおやだね」 「ゆっくりできないよ」 「ゆっくりできないおかあさんはゆっくりしんでね」 「や゛めでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛ないでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!!」 可愛い子供に罵られ、まりさは慟哭の声を上げた。 違う。 まりさはやっていない。 やったのは、あの黒い霧だ。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは…… 「この後に及んで、まだ言い訳か」 突然、どこからかそんな声が聞こえた。 そして、まりさの意識は薄れていった。 「ねえ、お兄さん……」 「ん? どうした?」 最後の赤ちゃんゆっくり霊夢が死んで、数時間が経った。 未だに夏の暑さが続く気怠い昼を迎え、少しでもスタミナが付くようにと知人の夜雀が経営している屋台で購入したまま保存してあった八目鰻を食べていると、ペットのゆっくり霊夢がおずおずといった様子で話しかけてきた。 「まりさ、そろそろ許してあげてほしいよ……」 「なんだ、またその話か」 おかずの野菜を食みつつ、俺はぴしゃりとゆっくり霊夢の進言を跳ね除けた。 「駄目だ駄目だ。許してやるわけにはいかん」 「でも……」 「あのな、ゆっくり霊夢」 箸の先をぴしっとゆっくり霊夢に突き付ける。 「悪いことしちゃいけないってのは、知ってるだろ?」 「知ってるけど……」 「俺はな、人間や妖怪、ゆっくりに関わらず、悪いことしたやつは大嫌いなんだ。悪いことをするやつには当然、裁きが与えられる」 「ゆ……」 「あのゆっくり魔理沙たちは悪いことをした。だから、あんな仕打ちにあった。当然の結果だ」 ゆっくり霊夢は納得しかねる、といった顔をする。 言いたいことは分かるがやりすぎだ、そう言いたいのだろう。 だけど俺は気付かなかったフリをして、食事を進めることにした。 確かにあれは、どう考えてもやりすぎだった。 何故なら、八割以上が俺の趣味だったから。 『涙目で必死なゆっくりが見たい』 そのために、俺はあらゆる手段を尽くした。 そして、目論見は成功したと言って良い。 あの時間は夢のような時間だった。願わくば、もっかいやってみたい、とも。 ただ、そのためにはまた悪いゆっくりを捕まえなければならない。 流石に善良なゆっくりをいじめて悦に浸れるほど、罪悪感の欠片も持っていない人間ではないんだ、俺は。 いじめというのはやってはいけない行為。 それをやるからには、正当な理由が必要とされる。 だから俺は、悪いゆっくりしかいじめない。 元々、ゆっくりは可愛いと思ってる人間だ。 あいつらがきちんと礼儀良くしていたのなら、俺は大層歓迎していたことだろう。 だから、悪いのはあっち。 俺は悪くない、うん。 偽善者なのは分かってるよ。 きっと地獄行きだろうね。 でもゆっくりいじりは止めない俺。 「ゆっくり霊夢も悪いことするなよ。もし悪いことしたら、『ゆっくり出来ないようにする』からな」 「ゆっ!?」 ゆっくり出来ないようにする。 それはゆっくり霊夢のトラウマを抉る禁句だ。 かつて悪いことをしたせいで、地獄のような苦しみを体験した一週間。 それを思い出し、ゆっくり霊夢はぶるぶる震えだした。 「れ、れいむは悪いことなんてしないよ! きちんとゆっくりしてるよ!?」 「分かってるよ。可愛いなぁ、ゆっくり霊夢は」 優しくゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は複雑そうに微笑んだ。 ゆっくり魔理沙は目を覚ました。 だが、目を覚ましたという表現が正しいのかどうか、ゆっくり魔理沙には判断がつかない。 そこは暗かった。 星明りも届かぬ夜の世界、それよりも更に深い暗闇が身を包んでいる。 そして、今までゆっくり魔理沙が味わっていた圧迫感が続いていた。 自分はまた閉じ込められたようだ。 ここはどこだろう。 確か、自分はお兄さんに、自分を殺して欲しいと頼んで…… そこからの記憶が定かではない。 あの後、自分はどうしたんだっけ? 「……」 思い出そうとして、面倒になったので止めた。 もう、どうでもいい。 大好きだった赤ちゃんを守れなかった。 原因は、自分自身。 自分が赤ちゃんを殺したのも同然。 これから先、例え生きて森に帰れたとしても、心の底からゆっくりすることなんて出来ないだろう。 なら、もういい。 ゆっくりしないまま、死が訪れるのを待つだけだ…… ―――― 「?」 右隣から、何者かの息遣いが聞こえる。 生きることに億劫になったゆっくり魔理沙だったが、疑問に無関心になったわけではない。 純粋な興味につられ、右を振り向こうとして、 「……ゆ……」 振り向けない。 思ったより自分を包む箱(?)は狭く、身動きが取れなかった。 ようやく気付いたが、息苦しさも今までより遥かにキツい。 仕方なく、ゆっくり魔理沙は唯一自由に動かせる視線だけを右に移した。 するとそこには、 「……ぅー……ぅー……」 「!!?」 眠りこけるゆっくりれみりゃの姿があった。 先刻、自分の子供を無惨に殺害したゆっくりれみりゃと同種と認識。 だが復讐の炎が燃え上がることはなく、逆に本能的な恐怖が瞬時に湧き上がり、ゆっくり魔理沙は先程まで死が訪れるのを待っていた自分を忘れて悲鳴を上げた。 か細い声が風に乗って耳まで届いたので、俺は腰を上げた。 ようやくゆっくり魔理沙がお目覚めらしい。 妙に元気の無くなってしまったゆっくり霊夢を残し、玄関から庭に出る。 縁側なんて洒落たものは存在しない。 そもそもこの家自体借金して建ててもらったもので、未だ返済は終わっていない。 返済するためには働く必要がある。 働けば時間がなくなり、ゆっくりをいぢる機会が減ってしまう。 これでは俺の心が満たされない。 この幻想郷の何処かには日々の全てをゆっくりいじめに費やしている人間がいるらしいが、どうやって彼らは日々の時間と生活費を同時に捻出しているのだろうか。 俺も噂に聞いた幸せを呼ぶチェンジリングのゆっくりでも探してみようかねぇ…… などと取り留めの無いことを考えているうちに庭に到着。 そこには、地面に不自然に刺さった竹が一本、異様な存在感を放っていた。 俺はその竹の真上に陣取り、竹穴に耳を近づけた。 すると、 「いだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざをだべな゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 待ちわびたゆっくり魔理沙の悲鳴が。 俺が想像していた通り、ゆっくりれみりゃに身体を齧られたようだな。 俺はにやにや笑いを隠すことなく、竹の中に声を響かせる。 「おーい、ゆっくり魔理沙ー」 「ゆ゛っ!?」 ギクリと身を強張らせたような声。 だがすぐに痛みが戻って来たのか、穴から涙声が返ってきた。 「おね゛がい゛じまずっ、ま゛りざをだじでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃ!!!」 「死にたいんじゃなかったのか?」 「い゛だいのや゛だぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!! ごろ゛ずん゛な゛ら゛はやぐごろ゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「そんなこと言わずに、ゆっくりしていけよ」 「ごれじゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 顔が見れないのは少々残念だが、簡単に想像は付くのでまずは満足。 装置は完全に機能しているようだ。 俺は二つの透明な箱を用意し、片方にゆっくり魔理沙、片方にゆっくりれみりゃを入れた。 二つの箱は、少し位置がずれるように連結。ゆっくりれみりゃの口が丁度ゆっくり魔理沙の頬の部分に当たっている。 そして、その部分の壁に穴を開け、排除。 ゆっくりれみりゃの入っている箱は大きくてゆとりがあるが、ゆっくり魔理沙の入っている箱はかなり狭いので、どうしても隙間である穴から頬が押し出てしまう。 つまり、頬がゆっくりれみりゃの口の部分に侵入する。 だから、ゆっくりれみりゃはゆっくり魔理沙の頬『だけ』を齧ることが出来、完全に食べることは出来ない。 そしてゆっくり魔理沙を入れた箱の天井に更に穴を開け、そこに空気穴兼言語伝達用の竹(デカい)をセット。 ちなみにゆっくり魔理沙はこの竹穴が丁度口の部分になるよう位置を調節してある。人間でいうなら仰向けの状態だ。 口の部分は不用意に閉じられないよう、鉤で広げたまま固定。 これで全ての準備は完了。 俺はこの装置を重力で餡子が漏れ出ない程度に斜めにして地中に埋め、二匹が起きるのを待っていたのだった。 「は、はやぐごろじでよぉぉぉぉ……はやぐ、てんごくのあがぢゃんだぢのどごろに……」 ゆっくり魔理沙が少し落ち着いた様子で懇願してくる。 どうやら、食べられる部分の頬を全て齧りとられてしまったようだった。 今頃、ご飯が全然足りないゆっくりれみりゃが不満気にうーうー唸っているのだろう。 「まぁまぁ、その前に食事と行こうじゃないか」 俺は懐に用意してあったオレンジジュースを取り出し、竹の中に流し込んだ。 ただのオレンジジュースではない。 永淋さん特性のゆっくり回復促進剤を混ぜられたジュースだ。 「ゆぐぐぐっ!!?」 突然振ってきた液体に驚いた様子のゆっくり魔理沙の声。 だが口は開かれたまま固定してあるので、零れることなく口の中へと収まっていく。 「ご、ごーくごーく…………ゆ!? 痛いのがおさまってきた……よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 流石永遠亭特性の妖しい薬、効果は抜群のようだ。 オレンジジュースを飲んだゆっくり魔理沙の傷は瞬時に癒える。 癒えた身体は箱の質量を超え、ゆっくりれみりゃ側の箱にはみ出る。 それを嬉々としてゆっくりれみりゃが食べる。 ゆっくり魔理沙はまた激痛を感じる。 これが俺の考えた『強制無限激痛発生装置』だ。 後は適当に飢えないよう餌をやりつつオレンジジュースを飲ませればいい。 雨が降っても大丈夫なように、傘を作る必要もあるな。 俺が飽きるまで、この拷問は永遠に続く。 暗い闇の中、何も変化のない世界で、ただゆっくりれみりゃに食べ続けられるだけの毎日。 それは一体、どんな苦しみなのだろうか。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐりじだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛っ!!!」 これ以上ないくらいの、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 俺は胸の中から溢れて垂れ流さんばかりの快感に包まれ、ひとしきり笑い続けるのだった。 ゆっくり霊夢は全てを見ていた。 ゆっくり魔理沙の家族が死んでいく様を、ずっと見てきた。 いつも優しく、自分をゆっくりさせてくれる主人。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちを嬉々として殺害していった主人。 どちらが本当の主人なのだろうか。 分からない。 ほんのちょっと遊んだだけの仲だったが、ゆっくり魔理沙は友達だった。 加工所から引き取られ、主人の家でずっと暮らしてきたゆっくり霊夢には、友達と呼べる存在はいなかった。 だから初めて友達が出来て、とても嬉しかった。 でも、その友達は…… 主人はゆっくり魔理沙が悪い、だから罰を与えている、と言った。 でも、あそこまでやられるほど、悪いことをしたのだろうか。 それとも、自分が無知なだけで、あれくらい普通なのだろうか。 自分も悪いことをすると、あんなことをされるのだろうか…… 以前の『お仕置き』を思い出して、ゆっくり霊夢はギュっと目を瞑る。 ゆっくり魔理沙。 きっと、数日もすれば、顔も思い出せなくなってしまうのだろう。 何故なら、自分たちゆっくりは、そういう風に出来ているのだから。 余程の強い刺激がない限り、ありとあらゆる物事を忘却してしまう。 主人に感じた『恐怖』も忘れ去り、また主人との楽しい日々に戻るのだろうか。 ゆっくり霊夢は生まれて初めて、自分がゆっくりであることを呪ったのだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1341.html
「う~う~♪」 俺が散歩にと道端を歩いているとそんな声が聞こえた。 「ゆっ、やめてね、まりさは食べないでね!」 見ると、ゆっくりれみりゃがゆっくりまりさを食べようとしているところだった。 周りを見るとゆっくりれいむの髪飾りやそれよりも小さい飾りや帽子が落ちていた。 なるほど、ゆっくり一家を食べつくしたか、れみりゃにしては大戦果だ。 「ゆっ、ゆっ! あ、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 まりさがこちらに気がついた。なんだかうざい声でぴーちくと助けを求めてくる。 なんでれみりゃはさっさと食べないんだ。 「う~おながいっばい~♪」 なるほどな。 もう少しお腹に余裕ができるまでまりさをキープしてるのか、 それともまりさをいたぶっているのか、ゆっくりゃのくせに生意気だ。 そこである考えが思いつく、れみりゃがいたぶっているのを見ていたら俺もしたくなった。 「やぁ、れみりゃ、そんな食べ飽きたものは捨ててぷっでぃ~ん食べたくないかい?」 「う~♪ れみりゃぷっでぃ~んも食べる、もっでぎでー♪」 最初は甘言で連れて行こうとしたが早くも面倒くさくなった。 何故俺がゆっくりゃなどにない頭を割いてまで考えねばならないのか。 と、言うわけで優しくれみりゃに近づき、羽をもぐ。 「うっっがっぎゃゃー! ざ、ざくやー!!」 とたんにすさまじく泣きだし、暴れる、うるさいので殴る。 「うぎゃー!」 「お兄さんありがとう! ゆっくりれみりゃはゆっくりしんでねっ!」 その隙にまりさが逃げようとする、それも捕まえる。 「ゆっ、なにするのお兄さん、ゆっくりれみりゃと同じ場所ではゆっくりできないよ! ゆっくりはなしてねっ!」 そう言って媚びた笑いを向けてくる、こいつは俺を味方と思っているんだろう、うざいので殴る。 「どぉじでごんなごどずるのー! だべるなられいむからだべでー!」 食べないし。それにお前が身代わりにしようとした家族はもういないよ。 俺は泣き叫ぶれみりゃとまりさを両脇に抱えて家へと帰った。 家に帰ってきた俺はさっそくれみりゃをゆっくりれみりゃ用透明ケースに詰め、まりさは適当に籠に閉じ込めた。 (まずは腹を空かせてもらわないとな) れみりゃは今、満腹なはずなので少し時間を置くことにする。 次の日、再び様子を見に来た。 「ざくやー! れみりゃおながずいだー!」 れみりゃを見る、よし、再生してるな。 しかしなんという燃費の悪さ、昨日はあんなに満腹だったのに。 「ゆ、ここじゃゆっくりできないよ、ゆっくりだしてね!」 まりさは昨日のことは覚えてないようだ、とりあえず籠から出してやる。 一瞬れみりゃに怯えるが、動けなそうなところを見ると揚々とこちらに近づいてきた。 「ゆっくりおなかへったよ! ゆっくりごはんだしてね! 出さないのならはやく出て行ってね!」 ぴょんぴょんと俺の目の前で跳ねる、うざい。 「あぁ、まりさ、ご飯だけどな」 「ゆっくりはやくだしてね!」 「まりさには餓死してもらうから、ないんだ」 軽く言う、実際どうでもいい。 「ゆっ?」 意味がわかってないんだろうか、まりさは少し考え。 「どおじでぞんなごどいうのー!」 泣き出した、うざいので殴った。 まあ、まりさいじめは今回は置いておこう、今回の主役はれみりゃなのだから。 早速れみりゃをケースから取り出してまりさを渡してあげる。 「う~♪ う~♪ れみりゃの御飯だぞー♪」 お腹がすいていたのか、今度はすぐにまりさを食べようとするれみりゃ。 まりさは痛みとショックで固まってる。 もちろん、俺もれみりゃにご飯を食べさせる気はない。 まりさがれみりゃの口に入るその直前、れみりゃをぶん殴り、まりさを救出する。 「うあっー、ざくやー! どおじでー!」 そう、俺の考えとはれみりゃのゆっくりを食べるをやめさせることだった。 もちろん、いやがらせの意味で。 とりあえず、同じことを朝昼晩三回繰り返す。 次の日、部屋に入ると 「「おながずいたのー!」」 ゆっくり二重奏だ、これは耳障りな音楽だ。 しかしこいつらには昨日のことは忘れてしまったのか、取り合えずまりさを取り出す。 「おにいざん、ばやぐごばんもっでぎでー!」 「駄目だよ、もう二度とまりさはご飯を口に入れられないんだよ」 「どぼじでぞっ!?」 話の途中で面倒なのでまりさの口をホッチキスで止める、伝統的ゆっくり口封じである。 「うっーうっー」 はは、なんだかまりさ、れみりゃみたいだぞ。 さて、つぎはれみりゃだ、っと。 「うぎゃー!」 れみりゃの髪を引っ張ってケースから出す、こいつ重くて出すのも面倒になってきた。 でも、出しとかないとまりさ奪還失敗するかもしれないしなぁ。 もうちょい広いケース買えばよかったか。 「ほーら、れみりゃ、ご飯だぞー」 「う~♪ う~♪ れみりゃのごはん~♪」 こいつ昨日と同じセリフはいてやがる、もちろん、食べる前に殴る。 「なんで~なんでれみりゃにごばんだべざぜてぐれないのー!」 「それはね、れみりゃがゆっくりを食べるからだよ」 「れみりゃのごはんー!」 「ちがうよ、れみりゃのごはんはゆっくりじゃないんだよ」 「う~?」 じゃあ、何を食べるんだろう、俺も問答の答えは用意してなかった。 ぷりんか、いやいや、そういえば雑食じゃないか、なんでも食うのか。 ならばべつにゆっくりにこだわる必要ないのか、まりさいらなかったな… まりさを踏む。うーうー唸っている。 これはこれでいいか。折角だ、続けてみよう。 一週間後、今日も同じようにれみりゃを取り出す。 髪をつかみ続けたせいで10円禿ができてしまった。 まりさのほうはもう、ほとんど動かない、死の目の前だ。 「ざくやー、ざくやー」 「はいはい、ごはんですよー」 まりさを渡す、れみりゃは少し考える、空腹で目の前のゆっくりを食べたい、でも絶対阻止される。 でも食べたい、でも絶対殴られる、食べられない上に殴られる? れみりゃは気がついた、もうこれは食べられない。 「いや゙ぁぁぁぁ! もうゆっくりだべだぐないのぉぉ!」 そう言ってまりさを投げ捨てる。 ここにきてようやくわかってくれたか、うんうん。 ピクピクしてるまりさ、気分がいいので口を破って(癒着してた)あげる。 「ゆ……ゆ…」 「まりさ、よろこべ、ご飯をやるぞー」 「ゆ…?」 そう言って一週間前のれみりゃの羽をあげる。 「ゆ…ゆ…」 はじめはゆっくりと食べていたまりさだったが、徐々にスピードを上げて羽にがっつく。 「むしゃむしゃむしゃむしゃ!」 そしてフィニッシュにゆっくり味わうまりさ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」 「それはよかった」 うん、どうやら体力も大体回復したみたいだな。 「おにいさんもっとごはぴぐ!?」 そしてまたホチキスで止める。 「最後の晩餐、楽しんでもらえてよかった」 そう言ってまりさをかごに押し込む、必要もないので、もう二度と出さないだろう。 「れみりゃにもご褒美上げないとなー、はい、ピーマン」 「う~ざぐやー!」 お気に召さないようだ、一週間も食べてないのにすごい根性だ。 「あ、そ、じゃあ、いらないね」 「う~だべる~」 「あげない」 目標は達成したし面倒になってきた。 れみりゃは割と好きだし、ひと思いに殺してあげよう。 「う~! ざくやー! このおじさんごろじでー!」 やっぱりれみりゃはなぶるように殴る蹴る。 「やっぱり死なないなぁ」 れみりゃは再生能力が高いのだ、面倒なので、ケースに詰めておくことにした。 「だ、だずげ…」 「れみりゃ、やっぱり君もそのまま餓死ね」 そのまま俺は部屋を出て行く。 「だずけでーざくやー! い゙や゙ぁぁぁ!!」 れみりゃは次の日に死んでいた。 まりさの方も三日と持たなかった、やはり体力が落ちていたか。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/40.html
ゆっくりれみりゃ「うー♪ゆっぐでぃじでいっでね!!」 ゆっくりれいむ「ゆっくりしていってね!」 そう言って二匹は俺の家にやってきて土下座に相当する動きでお願いしてきた。 どうやら縁側でゆっくりしたいそうだ。俺は縁側を掃除する条件付きで許した。 れみ&れい「「ありがとうおにいさん!せいちんせーいがんばどぅね!」」 と泣きながら感謝しだす。黙々と雑巾がけを済ませた二匹は縁側でゆっくりするという。 ゆっくりれみりゃ「・・・」 ゆっくりれいむ「・・・」 ・・・本当にゆっくりしている。というか何もしていない。 ゆっくりれみりゃ「・・・」 ゆっくりれいむ「・・・」 縁側に回ってみてみると二匹はぽえぽえ~とした表情でぼーっとしている。 これがゆっくりするということなのだろうか。 夜が明けもうすぐ日が暮れかかっている所、ず~~~~~~~っとゆっくりしていたゆっくりれいむと ゆっくりれみりゃ。途中で俺が話しかけても 「ぶ~!ゆっぐりさせでぐれでありがどぅ!」 「ゆっくりさせてくれてお兄さんやさしいね!ありがとうね!」 としばし踊りを披露してくれたりもしたが、それでもほとんどの時間縁側に座りっぱなしで ず~~~~~~~~~~~っとゆっくりしていた。夜中に除いて見ると 「ゆ~・・・ゅゆ~・・・」 「ぅう~、ぅ~、フゴッ・・・・・・・・・・・・ぅう~、ぅ~、・・・・」 とすやすやと気持ちよさそうにゆっくりしていた。 朝には俺より早く起きて朝ごはんを用意してくれていたのか、 食卓の上には炊き立てのご飯と味噌汁、焼き鮭に漬物も添えてあった。 「ぅ~!でみでゃだぢはゆっぐでぃじでだだげだよ♪」 「ゅ!ゅ!きっと座敷童子がいたずらしたんだね~♪」 と自分達がやったわけではなさそうにしている。顔はほんのり赤く、 食べてる途中に縁側に座ってる二匹の様子を見ると顔を見合わせて耳打ちしてゅゅ~と笑いあってる。 あぁ、あいつらが本当は用意してくれたんだな。俺は感慨深くなって二匹を抱きしめた。 「ゆ”!?おにいざんぐるじいよ!・・・でもうれしいよ♪」 「ぅ~、ぅ~・・・♪あったかいね♪」 二匹は昼過ぎになると出て行った。もう時間だからという。 「だのじがっだよおおおおおおお!おにいざんありがどおおお!!」 「あでぃがどぅね”ぇ~!!!!う”~!」 俺達はは泣きながら抱き合い、別れを惜しんだ。 二匹を見送った後、俺は無性に悲しくなり泣いた。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1050.html
ゆっくりフランとゆっくりれみりゃを同じ箱に入れて飼いたい。 勿論ゆフランがゆっくりゃを襲わないように透明な壁で仕切っておく。 始めのうちはゆフランに怯えまくるゆっくりゃだが、その内安全だと気付き落ち着く。 更にゆフランには餌を碌に与えず、ゆっくりゃには美味い餌を与え、適度に外で遊ばせてやりたい。 この安全かつ明らかにゆフランよりも恵まれた環境に調子付き、 飢えた目で見つめるゆフランに見せ付けるように食事するゆっくりゃ。その目は優越感で満ちている。 ゆフランのフラストレーションが限界に達した頃を見計らって食事中にいきなり仕切りを取っ払ってやりたい。 そしてその一連の出来事を全て観察させられる別のゆっくりゃ達。 次の生贄は一体誰なのか怯えるゆっくりゃ可愛いよゆっくりれみりゃ。
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/55.html
「う~♪う~♪」 どこからともなくゆっくりれみりゃがやって来る。ゆっくりれみりゃの体にはダンボールがくくりつけられている。 ゆっくりサービス【う―ぱっく】だ。 人間が友達のゆっくりに仕送りをしたいときや、逆にゆっくりからの仕送りを受け取るときにやってくる。 ゆっくり同士は言うまでもない。 「う~♪ゆっくり~♪」 ゆっくりれみりゃはゆっくりれいむとゆっくりまりさの群れに向かってダンボールを置いていった。 そのまま飛び去ろうとするので、れいむとまりさは 「あ、おとどけものだ!」 「ゆっくりまっててね!」 慌ててれみりゃにお礼の果物を渡す。そうしないとすねたれみりゃに次から届けてもらえなくなる。 そのくせれみりゃは荷物を届けたらすぐに飛び去ろうとする忘れっぽさがあるから困り者だ。 「なにかな?なにかな?」 「ゆゅぅ!なかでゆっくりうごいてるよ!!」「ゆっくりあけてね!」 うきうきとダンボールの中を空けてみせる。その中にはゆっくりれいむの赤ちゃんが入っていた。 「ゆっくりしてる~!!」 「なかま、なかま!」「あかちゃんがきたよ!」 「かわいいね~♪」「ぷにぷに!ぷにぷに!」 赤ちゃんはよたよたと擦り寄ってくる。まだ体が固まっていないためか、感触は他のゆっくり達に比べてぷにぷにと柔らかそうだ。 体の下の方が地面の硬さに負けてぺたりとつぶれていた。 「ゆっくりちていってね!!」 舌足らずな声で産声を上げる。なぜかその顔は自信満々だ。何の根拠があるのだろう。 ゆっくりは妖精のように自然発生するため、どこからともなくいきなり生まれる。しかし生まれたての赤ちゃんでは危ないので、 ゆっくりれみりゃが届けてくるのだ。れみりゃが届けて、お礼の果物を渡し、れいむたちが育てる。共生関係が出来上がっていた。 「いっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくり~♪」 「ゆっくりちていってね!ゆっくりちていってね!」 そして今日もゆっくりする。ゆっくりたちはさびしがりや。ゆっくり達は友達と一緒にゆっくりすることで生きていくエネルギーを得る。 仲間は多いほうがにぎやかで楽しい。 「「「ゆっくりしていってね!!「ちていってね!」」」」 うーぱっくによる繁殖だと生々しくなくていいなw -- 名無しさん (2010-09-15 17 57 52) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1394.html
「うー♪うー♪うま♪うま♪」 「ゆ゛っぐい゛、ざぜでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!!」 今まさにゆっくり親子が、ゆっくり食種であるゆっくりれみりゃに食べられていた。 頭に食らいつき、口の周りを汚し周囲を散らかしながらそれは下品に貪り食われていた。 「おいちー♪」 「ゆ゛っ……ゆ゛っ……」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!おがあ゛ざんをがえじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 食われて意識を失っていく母ゆっくりを、逃げる事すら考えられずにただ眺め続ける子ゆっくり。 そんな食物連鎖の場に、新たな闖入者が現れた。 食物連鎖のピラミッドにおいて、ゆっくりれみりゃの更に上に位置するゆっくり。 ゆっくりフランである。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 上空2メートルから急降下して、ゆっくりれみりゃに気付かれる間もなく、 ゆっくりれみりゃの手から食いかけの母ゆっくりれいむを手ごと奪い取り、近くの木に叩き付ける。 「う゛あ゛ー!い゛だい゛よ゛ー!!ざぐや゛ー!!ざぐや゛ー!!」 「ぎゃはははははははははははは!!ゆっくりしね♪ゆっくりしね♪」 手と食事を闖入者に奪われて、地面に足を投げ出して号泣するゆっくりれみりゃ。 ちなみに「ざぐや゛」とはゆっくりれみりゃが何か都合の悪い出来事に遭遇した際に上げる鳴き声である。 何かしら意味があると考える者も居るが、特に何の意味も無いとする意見が大半を占める。 先程までただ母親が食われる様子を眺めるだけだった子ゆっくりは、 「おかあさーん!!おねえちゃんたすけてくれてありがとう!!」 と、母親にトドメを刺した者に対して暢気に礼を言っていた。これにはゆっくりフランも苦笑い。 子ゆっくりれいむを優しく抱き上げ、目の前に掲げる。 「ゆっゆっ!だっこだっこー!!たかいよたかいよ!!ゆっくりできるよ!!」 もう既に母親は助かったものとして忘れているらしい。ゆっくりの中でも稀に見る愚鈍さである。 そんな愚鈍をとりあえず泣き喚くゆっくりれみりゃに向けて投げつけるゆっくりフラン。 「びゅっ!!」 「い゛だい゛よ゛ー!う゛ー!い゛じめ゛る゛ど、ざぐや゛に゛い゛い゛づげぢゃう゛ぞー!!」 べそをかきながらもたもた立ち上がって威嚇するゆっくりれみりゃ。 涙と涎で顔と胴体がべしゃべしゃなので、迫力は全く無い。一方子ゆっくりれいむは地面で泣き喚いていた。 「どお゛ぢでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ね゛え゛ざん!!ゆ゛っぐい゛ざぜでぐえ゛る゛んでじょお゛お゛お゛お゛!!!」 どうやら子ゆっくりれいむのブレインは、ゆっくりフランは自分にとって都合のいい存在であると結論付けているらしい。 そんな子ゆっくりれいむを拾い上げ、再び大きく振りかぶって…… 「ゆっくりとんでけ!!」 ゆっくりれみりゃに向けて全力投ゆっくり。顔面にめり込ませた。 「ん゛ー!!ん゛ー!!」 「ゆっくりさせてええええええよおおおおおおおお!!!ここからだしでよおおおおおおおお!!!」 「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 偶々顔が外向きになった子ゆっくりれいむは物凄い声で泣き叫ぶ。 ゆっくりフランはそんな間抜けな二匹を見て腹を抱えて笑い転げている。 「ゆっくりしね♪!!」 いたぶるのも気が済んだのか、めり込んだ子ゆっくりごとゆっくりれみりゃの顔に噛り付くゆっくりフラン。 食われ所が悪かったのか、二匹とも声も出せずに絶命した。 後は特に何も起こらない。ただ時々笑い声を上げながら残骸を食らい尽くすゆっくりフランが居るだけだった。 ゆっくりれみりゃを食べつくして満腹になったゆっくりフランの元に、一人の少女が現れた。 どうやら夜の散歩の途中だったようだ。 「あら、これはゆっくりフラン…珍しいなぁこんな所にいるなんて」 少女に気付くいたゆっくりフランは、あろう事か牙をむき出しにして飛び掛った。狙いは少女の首! 「ゆっくりしねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ほっ」 一直線に首に向かって飛び掛ってきたゆっくりフランを事も無く叩き落す少女。 ゆっくりフランは地面にめり込んで伸びている。 「へぇ…ゆっくりフランってゆっくり以外にも襲い掛かるんだ。やっぱり根本的におバカなんだなぁ」 そんな感想を吐きながらゆっくりフランの羽を持って自宅へ持ち帰る少女。 「丁度先代のコキンが死んじゃった所だし……これを29代目コキンにしようっと」 チャイナ服の裾を靡かせて颯爽と紅魔館の宿舎に帰る門番・紅美鈴。 ちらりと見える生脚が月光を浴びて美しく輝き、世の男達の煩悩をこれでもかと刺激しまくっていた。 「ぐう…?ゆ、ゆっぐり!!?」 「ああ起きた?おはようコキン29世。よく眠れた?」 ゆっくりフランことコキン=トウ29世ことコキンが目を覚ましたのは、美鈴がコキンを自室に持ち帰ってすぐだった。 「ゆ、ゆっくりしね!!」 起きてすぐ美鈴に飛び掛るコキン。だが美鈴にゆっくりフランに過ぎないコキンが敵う筈も無く、 「えい」 あっさりと蹴り飛ばされた。蹴られる瞬間コキンは一瞬この世の至宝を視界に捉えたが、コキンにとってはどうでもいいものだった。 「ぐぐぐぐぐ……」 壁に打ち付けた後頭部を押さえて悶絶するコキン。よく見れば後頭部が平らになっているのが分かる。 「大丈夫よ。あんたたちゆっくりフランはその程度じゃ死にやしないから。すぐ直るよ」 「ぐー?」 美鈴を涙目のまま見上げて首を傾げるコキン。何故、自分を殺さないのか。そんな事を言いたげだ。 そんな涙目コキンにギュンギュンきている美鈴だったが、そんな事は顔の血色以外には表わす事も無く、 「あんたは私のペットになったのよ。あんたの名前は今日からコキン=トウ29世。通称コキン」 「ぐおー!!ゆっくりしね!!」 どうや某共和国国家主席から戴いた名は全くお気に召さなかったようである。 物凄い形相で美鈴に飛び掛った。今なら顔だけでどんな愚鈍なゆっくりでもショック死させられる。 「そうそうもっと刃向かってね」 言いながらコキンの両目に指を突き立てる美鈴。指が根元まで刺さってしまっている。 「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!め゛!!めがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 指にぶら下がったままで狂ったように暴れまわすコキン。動けば動く程痛いという事にパニックで気付いていない。 「ほーれほれ。ここかーここがええのんかーなんちゃって」 「ぎい゛ぃい゛い゛ぃぃぃっぃい゛ぃぃぃぃっ!!!ごああぁあぁぁあぁあっぁぁあぁぁぁ!!!」 美鈴が指を曲げ伸ばしする度に、顔の中身を掻き回されて大暴れするコキン。 見えないままで美鈴の手を掴み、顔を引き抜こうとする。だが、 「あぁ駄目よ抜いちゃあ。まだまだお楽しみはこれからでしょう?」 ブツッ 「っっっっいぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 美鈴の手を掴んだ両手をむしり取られたコキン。 その間も美鈴の指はかのゴールドフィンガーばりに中を掻き回し、この世の物とは思えない絶叫を上げる。 「ふふふふ、元気で何より。あぁたまらん。どうせ見えてないし、今日はこのまましちゃおうかなっ」 「ぐっ!ぼぉえ゛っ!!ぉえ゛っ!!え゛っえ゛っ!!ごはっ!!」 あまりの苦痛に吐き気を催したのか、激しくえずくゆっくりフランを恍惚とした顔で眺めながら、 美鈴は左手をそっと動かし、 【これ以上は色々危険なので美鈴の描写はあえて行わない。想像力を逞しくすれば必ず見える筈である。】 刺している指を今度は左右交互にゆっくりと出し入れされるコキン。 指が抜けたスペース分はすぐさま回復し、再び指で抉られるという苦痛のループに耐え切れず失神してしまう。 が、気を操る美鈴にかかれば失神した者を起こす事など朝飯前である。 頭の中に直に電流を流されたかのような痛みに全身を痙攣させて起きる。 「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「そうそう。そうやっていい声でもっと私を愉しませてねっ……」 何としてもこの地獄から抜け出そうと、羽で全身のバランスをとって美鈴の右手を掴んで脱出を試みる。 が、だめっ……! 両脚を薬指と小指と親指で器用に掴まれ圧搾される。中の肉がうじゅうじゅと動く感触に身震いする美鈴。 「ッがあああああああああのおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!」 再生してきた両手で懸命に両脚の拘束を解こうとするコキン。 その生えたてほやほやの両手は美鈴の足の指でがっちりホールドされ、今度は肩から引きちぎられた。 「~~~~~~ッッッ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 傷口からぶしゅぶしゅと肉汁と餡をこぼしながら全身を激しく揺さぶるコキン。 その拍子に両脚も膝からちぎれてしまった。 「う゛ぇお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 ぼたぼたと床に染みが広がり、部屋中にすえた香りと肉の芳醇な香りが漂う。 残った膝までの脚と羽をこれでもかと暴れさせて苦しみ、もがき、泣き、叫ぶコキンの狂乱は、 見る者をこの上ない高みへと連れて行った。 「全くあんなに汚しちゃって。悪い子だね今度のコキンは」 「い゛っっっぎい゛ぃぃ!!」 部屋を掃除し終えてからぼやきつつコキンの両羽を根元からもぎ取る美鈴。 その、ゆっくりにしてはかなり硬質な羽を無造作にコキンの両手の平に突き刺す。 「がっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!はっ!!はな゛ぜっえ゛っえ゛っえ゛え゛え゛!!」 直った両目にこの上ない憎悪を漲らせて美鈴を睨みつけるコキンを、 壁にかけられたコルクボードに串刺しにする。 無数にある餡や肉汁を拭き取った跡がコキンを恐怖させる。 磔刑にされたコキンは、両手を何とか引き剥がそうとするが、手が羽の軸をスライドしただけだった。 やがて背中の羽が再生し、再びそれを根元からもぎ、今度はそれを両脚の甲に刺して串刺す。 「ゆぐあ゛っ!!お゛、お゛ろ゛ぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「駄目よコキン。そこがコキンのお家なんだから。我が家に帰ってきたんだから、ゆっくりできるでしょう?」 どんな男も一撃で失明させられる程眩しい笑顔で言い放つ美鈴。 その言葉で、コキンの顔は完全に色を失った。それでも痛みは感じるらしく。 頬を千切って食べられた時には全身を激しく揺さぶってもがき叫んだ。真下の床には早くも大きな肉汁の染みができている。 「じゃ、私は明日も仕事があるから寝るわよ。ほら、今日の夕食。これ食べてあんたも寝なさい」 「や゛め゛でや゛め゛でや゛め゛で!!たべな゛い゛でよ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 頬に開けられた穴からゆっくりまりさの子供が押し込められる。どうやら部屋で飼育しているものらしい。 痛みをこらえながらゆっくりと咀嚼するコキンの姿は、常の凶暴さを微塵も感じさせなかった。 しばらくの間部屋に食われる餌の絶叫だけが響く。 「ごちそうさまは?」 「ご、ごぢぞう……さま゛」 「よくできました。じゃおやすみなさいコキン」 「はい゛……おやずびなざい゛」 翌朝 美鈴が目を覚まして壁に目をやると、コルクボードに大きな肉汁の染みが広がっていた。 何事かと思い近付いて確認すると、コキンの首から上が完全に潰れており、既に絶命していた。 よく見ると両手と両足が羽軸の中ほどにまで移動している。 どうやら、痛みをこらえてここまで体を壁から離し、全力でコルクボードに頭突きして自害したものと思われる。 何度も何度も試したのか、コルクボードには百以上の窪みがある。 「そうかぁ……ゆっくりも自殺する事なんて、あるんだぁ……ふふ、ふふふふ」 美鈴はそれらの事実に気付くと、顔に満面の笑みを浮かべた。 「そっかそっか。私の攻めはそこまで良かったのかぁ……ふ、ふふふっ」 全身を笑いで揺すりながらコキンの死体を持って餌用ゆっくりの檻に放り込む。 ゆっくり達が普段以上に怯えた様子で美鈴を見ている。 「それにしても、まさか自殺するなんて……ゆっくりフランは初めてだったけど、まさかこんな事をするとは…… これは面白い事実ね。最も凶暴な捕食種が一晩いたぶられたら自殺。ふふっ何この皮肉。面白すぎるわ。ふふふふ」 檻の中のゆっくり達が美鈴の様子を伺いながら恐る恐る食事している間中、部屋に不気味な笑い声は響き続けた。 「んーっ、さてと!じゃあ今日もお仕事頑張りますか!」 掃除を終えて着替え終わる頃にはいつもの門番さんが出来上がっていた。 その豹変ぶりもまた、檻の中のゆっくり達の恐怖を煽っていた。 部屋を出る間際、おやつ用のゆっくりを無造作に胸元にしまい込む。 世の男性からすれば羨ましいが、そのゆっくりにしてみれば今日食われる事が確定した事になる。 「ゆ゛っぐい゛じだい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「黙りなさい」 軽く胸を寄せ上げて中のゆっくりを圧迫しながら脅す。一言で黙るゆっくり。 と、そこに美鈴の上司が通りかかった。 「おはよう美鈴。何そのポーズは。新しい朝の挨拶かしら?」 「わわ!咲夜さん!お、おはようございます!!これは別にその、ちょっとした体操ですよ!」 「ふぅん?てっきり私に対する宣戦布告かと思ったけど」 「ちちちち違いますよそんな!咲夜さんに宣戦布告だなんてその……は、恥ずかしいです!!」 「……?貴女大丈夫?今日は別の者に仕事を代わって貰った方がいいんじゃない?」 「そんな事はありません、私はいつも元気です!!健康です!!」 「そう。ならいいわ。さっさと食事を済ませなさい。早くしないと……」 「わ、分かってます!分かってますからナイフはしまってくださーい!」 慌てて食堂に向かう美鈴。咲夜はどこか満足げに見送って、今日の仕事に取り掛かる。 今日も何事も無く紅魔館の一日が始まった。 SUICIDE END... 作:ミコスリ=ハン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/456.html
ティガれみりゃ ======================== ≪はじめに≫ 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 ややパロディネタが多めかもしれません。 自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 続きものです。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 1、絶対強者 「うーうー!」 小高い山を越え、うーぱっくの群れが空を飛ぶ。 その数は30を越え、それぞれ背中にゆっくり達を載せている。 自慢のダンボールは、パンパンに膨れあがっており、 うーぱっくは、汗らしきものを浮かべて、「うぅーうぅー」と肩(?)で息をしている。 ダンボールの中には、人間達から盗んだ大量の野菜や、お菓子がつめられていた。 「ゆゆっ! しかっりしてよね、うーぱっく!」 「そうだぜ! はやくしないと、まりさ達がドスに怒られちゃうんだぜ!」 自分達は何もせず、うーぱっくに注文を出す、ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 人間から盗みを働いた首謀者達だ。 「う~っ!」 力を振り絞り、岩山を越えていくうーぱっく。 すると、岩山の向こうには、直径500mほどの窪地が広がり、 無数のゆっくり達が、ゆっくりしていた。 「う~♪」 すごい! うーぱっく達は感心した。 これだけの数のゆっくりが、ゆっくりできる場所は、そうそう無い。 岩山の中の窪地は、緑こそ少ないものの、 適度に草花がはえ、岩の隙間からは清水が湧き出ている。 また、岩と岩の間には無数の洞窟があり、そこに入れば雨風も防げそうだ。 なにより、山間のこの窪地は、教えて貰わなければちょっと発見できそうにない。 他の捕食種とよばれるゆっくりや、野生の動物からも容易に身を隠せるだろう。 「うっうー♪」 れいむを背中に乗せ、先頭を飛ぶうーぱっくが、 後ろを飛ぶうーぱっく達にかけ声を飛ばす。 目的地が見え、「うーっ♪」と応えてテンションを上げる、うーぱっく達 これだけの群れに、これだけの量の食料を運ぶのは、 うーぱっく達にとっても初めてのことだった。 "頼まれ物を運んで、お礼をもらう" この習性を、自分達にしかできない大事な仕事だと考えるうーぱっく達にとって、 今回の依頼は、大変きわまりなかいものだが、それでも充実感を覚えていた。 「ゆっ! ドスまりさだ!」 嬉しそうに叫ぶれいむ。 うーぱっくが下を見ると、巨大なゆっくりまりさと、 その傍らにベッタリよりそっている、これまた巨大なゆっくりアリスがいた。 まりさは全長3メートルほど、 アリスもまりさほどではないが、ゆっくりとしては破格の2メートル級の体を持っていた。 俗に言う、"ドス種"。 ドスまりさと、クィーンアリスだ。 「おいっ、うーぱっく! ぐずぐずしないで早く下りるんだぜ!」 ドスまりさの所へ下りるよう催促する、まりさ。 余談だが、このまりさはまりさ種の中でも、タチが悪いとされている"ダゼまりさ"だった。 しかし、心優しいうーぱっく達は、まりさの横柄を気にとめず、 ドスまりさの前に、ゆっくりと着陸する。 『ゆゆっ! おかえり~! 食べ物は集まったの?』 巨大なドスまりさが口を開く。 「もちろんだよ、ドスまりさ!」 「そうだぜ! まりさ達の華麗な仕事っぷりを見せてやりたかったぜ!」 うーぱっくの背中からピョンと飛び降り、ドスの前で胸(?)を張る、れいむとまりさ。 実際、いちばん苦労したのはうーぱっく達なのだが、 このれいむ達にとって、そんなことは関係無い。 「もう! なにしてるの、うーぱっく! はやくれいむ達のご飯を、ドスに見せてね」 「うー!」 うーぱっく達は、ガサゴソとダンボールの蓋を開き、 中に押し込められていた大量の食べ物を地面に下ろしていく。 『ゆぅ~っ! すごぉ~い!』 『それでこそ、とかいはのアリスとまりさの子供達よ!』 感嘆の声を上げるドスまりさと、クィーンアリス。 ちなみに、れいむもまりさもクィーンアリスの子供ではないのだが、 どうやらアリスの中では、愛しのドスまりさとの間にできた子供…という設定が完成しているらしい。 勝手な思いこみに違いなかったが、ドスまりさ自身、クィーンアリスには好意を持っていたし、 他のゆっくり達にとっても、強大なクィーンアリスに愛されることは、損ではなかった。 「さっそくみんなで食べようよ、ドスまりさ!」 れいむがピョンピョン跳ねて、ドスまりさを急かす。 そこに、体付きのゆっくりぱちゅりーが現れ、ワガママなれいむを戒めた。 「むきゅ! だめよれいむ。これは冬を越えるための大事な食料なんだから」 このぱちゅりーと、ドスまりさ、クィーンアリスは、子供の頃からの付き合いで、 3人で協力してこの場所をみつけ、この一大ゆっくりコロニーを築きあげたのだった。 ぱちゅりーは体が弱く、ドスまりさやクィーンアリスのように力は無かったが、 そのぶん知恵がまわり、この群れの参謀役を務めていた。 「ったく、ぱちゅりーはいつもケチケチだぜ!」 悪態をつく、まりさ。 『まぁまぁ、れいむやまりさも疲れているだろうし、一口だけ食べようよ? それで残りは冬支度に回す……ぱちゅりーもそれでいいよね?』 「……むきゅー。ドスまりさがそう言うなら」 「わーい! だからドスまりさ大好きぃー!」 喜ぶ、れいむとまりさ。 「なになに~ごちそう?」 「わかるよー。みんなで食べるよぉー」 「ちぃーんぽ!」 すると、いつの間にかこの窪地に住む他のゆっくり達も集まりだしていた。 皆、この御馳走のご相伴にあずかろうという腹づもりだ。 「むきゅ!そんなに食べたら……」 『も~しょうがないなぁ。みんな一口だけだよ?』 止めようとするぱちゅりーを遮り、 群れのリーダーであるドスまりさが、許可を出してしまう。 「「「「いっただきまぁ~す!」」」」 言うや否や、何十匹ものゆっくりが、いっせいに食べ物にむしゃぶりつく。 「むーしゃむーしゃ♪」 「なにこれ、めっちゃうめぇ!」 「しあわせぇ~♪」 ゆっくり達は、人間達から盗んできた御馳走を貪り食っていく。 既に"一口だけ"の約束が忘れ去られてしまっていることに、気を揉むぱちゅりー。 そして、気を揉む存在がこちらにも。 「「「うーうー!」」」 うーぱっく達だ。 食事に夢中なゆっくり達を囲み、催促するように鳴き声をあげる。 うーぱっく達は、頼まれた物を頼まれた場所に届け、 その御礼として食べ物を分けて貰うことで生態を成り立たせている。 これだけの量の食べ物を運んだのだから、相応の御礼を貰わなければつりあわない。 「ゆっ?」 「なんだぜ、うーぱっく! せっかくまりさ達が御馳走を食べてるのに!」 面倒くさそうに食べるを止め、小うるさそうにうーぱっく達を見る、れいむとまりさ。 「うーっ!うーっ!」 うーぱっくは、羽をパタパタと動かし、ゆっくり達が食べる御馳走を指差す。 うーぱっく達にもわけて~というアピールだ。 だが、そんなうーぱっく達に対し、れいむとまりさはバカにしたように目を細める 「見ろよれいむ、たかだか運び屋のぶんざいで、まりさ達の御馳走をねだってやがるぜ」 「おお、あさましいあさましい」 そう言うと、れいむとまりさは人間の家から盗みだしたお菓子をくわえ、 うーぱっく達の目の前で「むーしゃむーしゃ」と食べ始めた。 「「「うー!?」」」 驚くうーぱっく達。 目こそいつものニコニコ目だが、互いの顔を見合わせ少なからず動揺を露わにする。 そして、ゆっくりの中では、かなり頭の良い部類に入るうーぱっく達は、一つの結論を導き出す。 すなわち、このゆっくり達は、最初から自分達をいいように利用して騙すつもりだったのだと。 「「「うーっ!」」」 一同、抗議の声を上げるうーぱっく達。 温厚なうーぱっく達だが、契約不履行の不届き者には、相応の態度を見せる。 羽を動かし、ペチペチとれいむとまりさの頬を叩き、驚いた隙に食べ物を奪い去る。 「ゆゆっ! なにするの!」 「やめるんだぜ! それはまりさ達のものだぜ!」 「「「うーうー!」」」 構わず、同じようにペチペチとゆっくり達の頬を叩いては、食べ物を奪っていくうーぱっく。 ニコニコと笑ったままのその顔が、逆に恐ろしい。 「ゆっくりやめてね!」 「それはとかいはのアリスのものよ! いなかもの!」 「わからないよー!」 「ゆっくりできないうーぱっくは、ゆっくりいなくなってね!」 うーぱっく達の正当な抗議に、不満を叫び出すゆっくり達。 だが、空を飛び、しかも団体行動になれているうーぱっく達の連携に、 食べ物は次々奪われていく。 「「「ゆぅぅ~~! ドスまりさぁ~~!!」」」 たまらずドスまりさを呼ぶ、ゆっくり達。 そのドスまりさといえば、クィーンアリスとともに自分の食事をするのに夢中であった。 『……ゆぅ~~~? どうしたのみんなぁ?』 言われるまで気づかないというのが、いかにもゆっくりらしい。 ドスまりさは、しばらく間を置いてから、ようやくゆっくり達に呼ばれていることに気が付いた。 『ゆゆぅぅぅっ! なにしてるのうーぱっく!!』 その光景を見て、驚くドスまりさ。 自分の群れのゆっくり達が、うーぱっくに虐められ、 苦労して集めた御馳走を横取りされているではないか! ……と、ドスまりさのゆっくり脳は瞬時に都合良く解釈した。 しかし、いかなゆっくり脳の持ち主とはいえ、 くさっても巨体と長寿を誇るドスまりさ。 こうなると群れを率いるリーダーとして、都合良く燃え出すのであった。 『ゆぅぅぅっっ!』 「う~?……うぎゃ!」 ドスまりさは、ぐにょんと体を下に押し込めたかと思うと、反動をつけて前方にとび跳ねる。 そして、目の前にいたうーぱっくに体当たりをしかけ、窪地の周囲の岩壁に叩きつけた。 「「うーっ!?」」 驚いたのは、うーぱっく達。 通常、ドスまりさは巨体に見合った経験と知識も併せ持っており、 今回の件の非がどちらにあるかは、自ずとわかってもらえると期待していたのだ。 『うーぱっく! まりさの仲間を一方的にいじめるなんて、絶対にゆるさないよ!』 「「ううーーー!??」」 全然、期待通りにはいかなかった。 戸惑い、慌てるうーぱっく達。 「むきゅ! まりさ、うーぱっく達は……」 『ぱちゅりーは黙っていてね! まりさはみんなを守るよ!』 うーぱっく達の抗議の理由を知るぱちゅりーが、ドスまりさを止めようとするが、 変な使命感のスイッチが入ってしまったドスまりさは止まらない。 このドスまりさは、確かに長い時間を生き、ドスの名にふさわしい巨体と力を得ていた。 だが、本来一人で生きて得るはずの知識や思慮を幼なじみのぱちゅりーの頼りっぱなしにしてきたため、 どうにも考えの足りないドスまりさになってしまっていた。 「「うーっ!」」 だが、うーぱっく達は、そんなことは知らない。 羽を動かし、自分達が運んできた食料を指す、うーぱっく。 なんとか自分達の誤解をといて、わかってもらおうとする。 『……わかったよ、うーぱっく』 「「うー♪」」 『うーぱっく達は、まりさ達を騙して食べ物を横取りするつもりだったんだね!』 「「うううーっ!???」」 全然わかってなぁーい! うーぱっく達は、全員が同時に心の中でツッコミの声をあげる。 『まりさ達をゆっくりさせないうーぱっくは、ゆっぐりじねぇぇぇぇぇっっ!』 ドスまりは天高く舞い上がり、その巨体を地面に叩きつける。 何匹かのうーぱっくが、その巨体の犠牲となる。 「「ううーっ!」」 これ以上ここにいてはいけない! うーぱっく達は身の危険を感じ、一目散に空高くへ舞い上がる。 「「うわぁぁーん! ドスまりさなんてきらいぃぃー!」」 自分達の誇り高い仕事が失敗に終わったこと、 つらい時も楽しい時も一緒だった、大事な仲間を失ったこと、 うーぱっく達は、目から涙を流して飛び去っていく。 だが。 『逃がさないよ!うーぱっく!……ひぃぃ~~~~っさつ!』 ドスまりさは、大きな口を思い切り開く。 すると口の中から淡い光がもれはじめ、瞬く間にまぶしい程の輝きを放ち始める。 「ゆゆっ!出るよ、ドスまりさの必殺技!」 「やっちゃうんだぜドスまりさ! バカなうーぱっくどもに身の程わからせてやるんだぜ!」 『すてきよぉぉまりさぁぁぁ!』 「む、むきゅう~!だ、だめよぉ、まりさぁ!」 事情を理解しているぱちゅりーを除いて、俄然もりあがるゆっくり達。 クィーンアリスに至っては、ドスまりさの勇姿に目をトロ~ンとさせている。 『ひっさつ!ドスパァァァーク!!』 「う、ううぅぅぅぅぅーーーっ!」 叫ぶと同時にドスまりさの口からレーザーが発射される。 そのレーザーは空を切り裂き、泣きながら逃げ去るうーぱっく達を直撃した。 超高温のレーザーは、ダンボールでできたうーぱっくの体を一瞬で焼き尽くし、 そらからは燃えかすとなったうーぱっく達がボトボトと地面に落ちていく。 「「「ゆぅぅぅ! すごぉぉぉーい!」」」 その圧倒的な威力に、群れ全体から感嘆の声があがる。 ドスまりさは群れのゆっくり達にむき直り、誇らしげに胸(?)をはった。 『みんなのことはまりさが守るよ! だから安心してゆっくりしてね!』 「「「ゆっくりぃぃ~~~♪」」」 喜びの声をあげるゆっくり達。 ただ一人、ぱちゅりーだけが浮かない顔して、岩の隙間の洞窟へと入っていく。 「むきゅう……」 今回の件の非は、あきらかにこちらにある。 なにか悪いことが起きなければよいけれど……。 その不安からか、ぱちゅりーは体に疲れを覚え、洞窟の奥で眠りについた。 けれど、このぱちゅりーの予感は、すぐに当たることになってしまう。 数時間後。 空には満月が登り、本来ならばゆっくり達も眠りにつく頃。 だが、山間の窪地では、いまなお多くのゆっくり達が食べや歌えやで大騒ぎをしている。 「ゆっゆっゆっ~~♪」 「だぜだぜだぜぇ~~♪」 『すごぉーい! みんなお歌が上手だねぇ!』 『さすがとかいはのアリスの子! 良いセンスをしてるわぁ!』 昼間の一件で、すっかりテンションの上がってしまったドスまりさの群れは、 あれからずぅ~と宴会を開いていた。 もはや、ぱちゅりーとの"冬の支度のために食べ物をとっておく"という約束は、頭の中になかった。 ゆっくり食べてはゆっくり踊り、ゆっくり食べてはゆっくり歌う。 「ゆゆゆ~~ゆゆゆ~~♪」 「だぜだぜ~~だぜだぜ~~♪」 「……ティ~ガティガティガ♪」 『ゆっ?』 ドスまりさは疑問に思った。 今、群れのれいむ達の歌に混じって、何か聞こえたような? 「ゆゆゆゆ~ゆゆゆゆ~ゆっゆっゆっ~~~♪」 「だぜぜ~だぜぜ~だっぜっぜぇ~~~♪」 「……ティ~ガティガティガ♪」 『ゆゆっ!?』 「「「ゆゆゆっ!?」」」 やはりだ。 気のせいじゃない。 今度はドスまりさだけじゃなく、他のゆっくり達にも聞こえたようだ。 ゆっくり達は、ひとまずバカさわぎを止め、あたりを見回す。 だが、本来夜の間は寝るのが"殆どの"ゆっくり達の生態のため、 ゆっくりの中で夜目が効く者はほとんどいない。 が、それにも関わらず。 ソレの存在はゆっくり達にもハッキリ視認できた。 『あれは、ゆっくりゃザウルス!!』 一番最初にみつけたクィーンアリスが叫び、それに呼応して他のゆっくり達もそちらを見る。 ゆっくり達の視線の先。数百メートルは離れた位置。 そこには、よたよたドタドタ踊るようにステップを踏み、ゆっくり達に近づいてくる不思議な生物がいた。 長生きをしていたクィーンアリスと、ドスまりさは、己の経験に基づきその生物をこう認定した。 あれは、ゆっくりゃザウルスだと。 ゆっくりゃザウルス。 それは、代表的な捕食種・ゆっくりれみりゃの亜種である。 亜種という意味では、昼間ドスパークの餌食になったうーぱっく達もそうだが、 近年比較的多く見かけるようになったうーぱっく達と異なり、 ゆっくりゃザウルスは、非常に見かけるのが希な亜種……即ち希少種であった。 その姿は、人間からみれば愛らしくも映る。 体つきのゆっくりれみりゃが、ダボダボくたくたの恐竜の着ぐるみを纏ったような姿。 それが、ゆっくりゃザウルスの特徴だった。 ずいぶんとディフォルメされた緑色の恐竜の、大きく開かれた口から、 れみりゃ種特有の「うーうー♪」という下ぶくれ気味の笑顔が覗いている。 体は筋肉質とは程遠く、まるでクッションかヌイグルミのような柔らかさで、 お腹のあたりに、有袋類…といえば聞こえが良いが、どう見ても縫いつけたような大きなポケットがある。 「ゆゆゆゆ~!大変だよ!れみりゃだよ!」 あれが、自分達を食べる捕食種の一種だと知り、慌てるれいむ。 「ま、まりさはおいしくないぜ! たべるなられいむの方がおいしいんだぜ!」 「どぉじでぞんなごどいうのぉぉぉーーっ!?」 にわかに群れに広がるパニック。 だが、ドスまりさがそれを鎮める。 『大丈夫! 安心してよみんな!』 「ゆゆっ?」 「わかるよ~! こっちにはドスまりさがいるんだよ~!」 『まりさとアリスにとって、ゆっくりゃザウルスなんて敵じゃないよ!』 そう言って笑顔を向けるドスまりさ。 「なんて頼もしいんだ!」群れのゆっくり達は、ドスの笑顔に安心して落ち着きを取り戻す。 『まりさとアリスは、もっと小さき時に……それこそみんなと同じくらいの時に、 ゆっくりゃザウルスを倒したことがあるんだよ♪』 「「「すっごぉ~~~い!」」」 再びあがる感嘆の声。 それを誇らしげに受け止めるドスまりさ。 ドスまりさの言ったことは確かに事実であった。 ……もっとも、ゆっくりゃザウルスのことを良く知るものが聞けば、 それが大した自慢にならないこともわかるのだが。 ゆっくりゃザウルスは、確かに希少種だ。 だが、希少なのには理由がある。 すなわち、ゆっくりゃザウルスは、れみりゃ種の中でも"最も弱い"種類だからだ。 亜種の多い、ゆっくりれみりゃだが、一応それぞれに進化と思われる特徴を持っている。 体が無く、耳のあたりに羽をつけているタイプは、れみりゃ種の中でも最もバランスが良い。 飛行能力も高く、蝙蝠やイルカにも似たエコーロケーション能力を持っており、 暗い場所でも自由自在に動くことができる。 うーぱっくは、敏捷性や攻撃能力では上記のれみりゃに劣るものの、 そのぶん他の物(者)を上に載せて飛ぶ能力にすぐれている。 また、協調性に優れ、ゆっくり達の運送屋さんとしての地位を確立することで、 自然界の中で主立った敵を作らず、共生関係を築き上げていた。 胴体と四肢のついたれみりゃは、紅魔館のすぐそばでよく見かけられる。 重たい体がついたのが逆効果となり、飛行能力・運動能力は明らかに低くなっているが、 それでも(極めて不器用ではあるが)手足が使えるメリットは大きいし、 なにより紅魔館の主の姿と似ているために、館のメイド達から寵愛を受けられるという面もある。 ……では、ゆっくりゃザウルスはどうか? 悲しいかな、これといって優れた点が無いのだ。 背中から羽は失われ、空を飛ぶことはできない。 手足や指先は恐竜のヌイグルミ状になっているため、細かい作業も全くできない。 ずんぐりむっくりした体は重たく、生きる上で極めて燃費効率が悪く、すぐ疲れてしまう。 おまけに、なまじ体が重くなったぶん、本人は強くなったと勘違いし、無駄に気が大きくなる傾向がある。 では、なぜそんなにも不都合だらけのゆっくりゃザウルスへと姿を変える必要があるのか。 それは、ゆっくりの研究者達の間でもまだ解明されていない。 いずれにせよ、そんなゆっくりゃザウルスであるが故に、 本来獲物であるはずのゆっくり達に、逆に返り討ちにあってしまうこともままあるのだ。 まして、ドスまりさとクィーンアリスからみれば、 逆に向こうから美味しい肉まんがやって来たようなものだ。 「ティ~ガティガティガ♪」 歌いながら、えっちらおっちら満面の笑顔で歩いていくるゆっくりゃザウルス。 その声が、徐々にはっきり聞こえてくる。 『ゆぅ~♪ みんな、今日はおいしい肉まんがたべられるよ♪』 「「「わぁ~~い♪」」」 余裕のゆっくり達。 しかし、その余裕がゆっくり達に、本来気付くべき疑念を忘れさせてしまっていた。 なぜ、数100メートルも先のゆっくりゃザウルスを、夜目の効かないゆっくり達が見えているか。 なぜ、まだまだ遠くにいるはずのゆっくりゃザウルスの歌が、こんなにもハッキリ聞こえるのか。 そして、なぜゆっくりゃザウルスが近づいてくるたびに、地面がドシンドシンと揺れるのか。 数秒後、ゆっくり達は嫌がおうにも、その理由をわからされることになる。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 「「「『ゆげぇっ! お、おおきぃぃぃぃっっっ!!??』」」」 目の前まで来て足を止めたソレを見上げ、一同に驚愕の叫びをあげるゆっくり達。 ドスまりさとクィーンアリスさえ、呆気にとられてソレを見上げている。 身長はゆうに10メートルを越え、尻尾の部分をあわせた全長は20メートルにも届かんほどだ。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ソレは、自らがれみりゃ種であることを示すように、自らの存在を知らしめるように、 両手を顔の横に上げ、れみりゃ種特有の"れみりゃダンス"を行った。 「「「ゆゆゆゆっ!」」」 ソレがダンスのステップを踏む度、地響きが起こり、小さなゆっくり達を震えさせる。 『や、やめてよね!ゆっくりゃザウルスのくせに、まりさ達をおどかさないでね!』 ぷく~と頬を膨らませ、見上げるソイツに告げるまりさ。 一方、そのれみりゃは不思議そうに、首をひねった。 『う~? ゆっくりゃザウルス?』 『そうだよ! おまえのことだよ! 自分のこともわからないなんて、ゆっくりゃザウルスは本当にバカなんだね!』 『うーうー! れみりゃはぁー、ゆっくりゃザウルスじゃないどぉー♪』 『え?』 『れみりゃはぁ~♪』 にぱぁ~☆と満面の笑顔を浮かぶ。 『ティガれみりゃだどぉー♪』 そう、この巨大なれみりゃは、ゆっくりゃザウルスではなかった。 圧倒的な巨体と力を持つ、ドス種を越える超巨大・突然変異ゆっくり、ティガれみりゃだったのだ! 『……ティ、ティガれみりゃだなんて知らないよ! バカなれみりゃはおとなしくまりさ達に食べられてね!』 巨体にプレッシャーを感じつつ、あくまで虚勢を張るドスまりさ。 他のゆっくり達も、ドスまりさなら負けるハズないと、徐々に落ち着きを取り戻していく。 「そうだよ! ばかなれみりゃはゆっくり死んでね!」 「ドスが、おまえなんかに負けるわけないんだぜ!」 ゆっくり達が、わーわーと騒ぎ立てる。 それ見回してニコニコするティガれみりゃ。 『うー♪ おいしそうなおまんじゅうがいっぱいだどぉー♪』 そう言うと、ティガれみりゃはクィーンアリスを片手で掴み上げ、口の前へと運ぶ。 『ゆぅ!?』 「クィーンアリスが!」 「おとなしくアリスを離すんだぜ!」 あっさりつかまってしまった群れのナンバー2に、ざわめくドスまりさとゆっくり達。 当のクィーンアリスは、頬を膨らませて、ティガれみりゃを罵っている。 『これだからマナーを知らないいなかものは! とかいはのアリスにこんなことしてただですむと思わないでね!』 そんなアリスをじぃ~っと見つめて観察するティガれみりゃ。 『うぅ~♪ よくみるとぶさいくなおまんじゅうだどぉ』 『ゆぎぎぎぃぃぃぃぃっ! とかいはのアリスに向かってよくもぉぉぉっ!』 逆上するクィーンアリス。 対するティガれみりゃは…… 『うー♪ うるさいおまんじゅうだどぉ♪』 と言ってから、そのまま「あ~~ん」と大口を開け、クィーンアリスにかぶりついた。 『ゆげぇぇぇぇぇえ!』 『あ、アリスゥゥゥッッッ!!』 たまらず断末魔を上げるクィーンアリスと、ドスまりさ。 クィーンアリスの体はたった一口で半分がえぐりとられ、その生命活動を停止させた。 『う~♪ がじがじ~♪』 そのまま美味しそうにクィーンアリスの残骸を食べ続けるティガれみりゃ。 2メートルあった、クィーンアリスの体も、数秒で消滅してしまった。 『うっうー♪ おいしかったどぉー♪』 舌をペロリと回し、口の周りについたクリームを舐めとるティガれみりゃ。 その光景を見ていたドスまりさの怒りは、既に限界を遙かに超えていた。 『ゆぎぎぎぎぎぎぎ……ゆ、ゆるさないっ、ぜぇったいにゆるさないぃぃぃぃっ!!!!!』 『う~?』 『ゆっぐりじないでじねぇぇぇぇぇぇ!!!!!』 「で、でるぜ! ドスの必殺技!」 『ドスパァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーク!!!!!!!』 ドスまりさは口を開け、高温のレーザーを放つ。 怒りにまかせて全ての力を結集したそれは、昼間うーぱっくを仕留めたのとは比較にならない程の出力となる。 夜の闇を、貫くドスパークの光。 これを受けて無事なゆっくりなどいるはずがない。 いや、人間はおろか妖精や妖怪とてただでは済むまい。 『……うぅぅぅぅぅ! アリスぅぅぅぅ、かたきはとったよぉぉぉぉぉ!』 嗚咽混じりで天に吠えるドスまりさ。 誰よりキレイだったクィーンアリス、彼女はお空のお星様になってしまったんだ。 ドスまりさとゆっくり達はそう思い、ドスパークの衝撃で巻き起こった土煙の先、 クィーンアリスのお星様を見ようと、夜空を見上げようとする。が。 『う~? なんかあったかいどぉ~…なんだか汗かいちゃったどぉ~♪』 「「「『ゆ、ゆげぇぇ!?』」」」 見えるハズのお星様が見えず、 見上げた先には、変わらずティガれみりゃが立っていた。 その体には傷一つなく、下ぶくれの笑顔に少し汗をかいているだけだった。 『どぉじでぇぇ! なんでドスパークがぎがないのぉぉぉぉぉっ!!??』 『う~、汗かいたら、またおなかすいちゃったどぉ~♪』 ティガれみりゃは、おなかのあたりをおさえ、少し頬を紅潮させた。 "こーまかんのれでぃーである"という自負からなのか、 食べてすぐ、またおなかをすかせることが恥ずかしいようだ。 とはいえ、そこはゆっくり。 恥じらいよりも、まずは欲求に従う。 そこはティガれみりゃといえど、変わらなかった。 『ぎゃぉー♪ いっただきまぁーす♪』 『ゆべぇ!!?? 、は、はなじてぇぇぇぇ!!!』 「「「どどどど、ドス!?」」」 足下ではねまわるドスまりさを難なく掴み上げると、口の前に運ぶティガれみりゃ。 『がじ、がじ、がじぃ~♪』 『ゆべっ!うげぇ!ゆぶぁ!!』 みるみるドスまりさの体は小さくなっていき、 10秒もたたずに、全てティガれみりゃの口の中に消えていった。 『う~、おいしぃ~♪』 「「「…………」」」 あまりにも信じられないことが起きた時、人は一切の思考が働かなくなる。 それは、ゆっくり達にもあてはまるらしい。 なすすべ無く食べられるドスまりさを目の当たりにした無数のゆっくり達は、 ただ無言のまま固まってしまっていた。 一方、ティガれみりゃはというと、お腹についたポケットの中に手をつっこみ、 何かをゴソゴソと取り出した。 『うっう~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる~♪』 まるで、22世紀の猫型ロボットが便利道具を取り出すように、 ティガれみりゃはポケットから、引き抜かれた立ち枯れの木を取り出し、天に掲げた。 「「「ゆゆゆゆ!?」」」 誇らしげなティガれみりゃの様子に、本能的に身の危険を感じるゆっくり達。 金縛りをといて、それぞれ四方八方に逃げだそうとする。 『ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪』 「「「ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁっっっ!」」」 ゆっくりプレイスだったハズの山間の窪地は、あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 『れみりゃのおだんごぉー♪ とぉーってもおいしぃーどぉー♪』 ティガれみりゃは口ずさみながら、比較的大きめのゆっくりを摘むと、それを次々枯れ木に刺していく。 「「「ゆげぇ」」」 鳴りやまないゆっくり達の悲鳴。 あるゆっくりは岩陰や洞窟に逃げ込もうとするが、 ティガれみりゃは「うー、岩いらなーい!ぽいぽいぽぉーーい♪」と、 岩そのものを持ち上げどけて、隠れていたゆっくり達をつまみだした。 『うー、すごいどぉー! れみりゃは狩りの天才だどぉー♪』 やがて、そこそこ育って美味しそうなゆっくりを全て枯れ木に刺して、 ゆっくりだんごを完成させたれみりゃは、満足そうに自分を讃えた。 自分達は助かったのか? そう思った残りのゆっくり達は、おそるおそる隠れていた場所から外へでる。 『う~~~う~~~♪』 しかし、ティガれみりゃがリズムを刻みだしたのを見て、ゆっくり達は己の軽率さを憎み、 そして、短いゆっくり人生の終わりを実感するのだった。 『うっうーうぁうぁー♪ うっうーうぁうぁー♪』 どっすんどっすんと、喜びのダンスを踊るティガれみりゃ。 なんとかゆっくりだんごを逃れたゆっくり達も、あるものは踊るティガれみりゃの足や尻尾に潰され、 あるものは、ティガれみりゃのステップの影響で岩や土が崩落し、その餌食となった。 ゆっくり達の理想郷は、こうして壊滅した。 ……そう、一人の目撃者を除いて。 翌日。 ティガれみりゃの襲来をやりすごした目撃者。 その生き残りは、ティガれみりゃへの恐怖と、震えたまま動けなかった自分を呪い、 洞窟の奥から出ることが出来ずにいた。 「む、むきゅぅぅぅ……」 その生き残りの正体は、洞窟の最奥、もっとも地盤の安定した箇所に隠れていたぱちゅりーだった。 群れの全滅を嘆き、幼なじみのドスまりさとクィーンアリスの死を悲しみ、泣き続けるぱちゅりー。 昨夜、先に寝ていたぱちゅりーは、外が騒がしいのに気付き、一度は目を覚ました。 だが、外へ出ようとしたその刹那、ドスまりさがティガれみりゃに食べられるのを目撃してしまったのだ。 どうするべきか全くわからなくなってしまったぱちゅりーは、唯一残された生物としての本能、 すなわち"生き残る"という目的にのみ従って、こうして群れが全滅してティガれみりゃが去るまでの間、 隠れ続けていたのだ。 「むきゅぅぅぅぅ! むきゅうううううう!」 思い出しては、こみ上げる感情に逆らえず泣き崩れるぱちゅりー。 それから、また一日がすぎた。 朝日が山間の窪地を照らす中、ぱちゅりーは外へ出た。 その目に決意の炎を宿して。 二日近く考え抜いたぱちゅりー。 彼女は、ドスまりさ達の死を無駄にしてはいけないと考えた。 そして、生き残った自分だからこそ出来ることがあるはずだと結論づけた。 そう、他の群れにティガれみりゃという脅威を報せ、 ともに戦わなければならないと。 一方その頃、どこかの森で。 今日もティガれみりゃの歌が聞こえていた。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ2・異常震域』 ============================ (あとがき) 休日出社中、上司の机に『モンハン』のティガレックスのフィギュアが置いてありまして、 気付いたらこんなものを書き始めていました。……二次設定のSS書くの何年ぶりだろう(汗 「ゆっくり好き」+「れみりゃ好き」+「怪獣好き」+「モンハン好き」 そんな作者の妄執が具現化したようなSSですが、もし楽しんでいただけましたら幸いです。 ちなみに、言う必要も無いかもですが、ティガれみりゃの歌はアノ映画の歌が原型ですw ============================ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/458.html
~ゆっくり魔理沙の生涯『子育て編』~ 前書き このSSは時間軸的には私の3つ目の作品「ゆっくりれみりゃの生涯」のその後にあたります。 前作を読んでいなくても内容は理解できるのでご安心下さい。 また、原作キャラが登場します。嫌いな方はUターンをオススメします。 本編 「ゆ~ゆゆ~ゆゆ~♪」 魔法の森のとある場所、1匹のゆっくり魔理沙が木陰でゆっくりしている。 このゆっくり魔理沙は子育ての上手な母霊夢と父魔理沙の間に生まれ、ゆっくりと大切に育てられた。 そして今では立派に独り立ちをして自分の巣を持ちゆっくり暮らしている。 「ゆ!ちょうちょさんだ、まりさにゆっくりたべられてね。」 蝶を見つけたゆっくり魔理沙はゆっくりするのを中止して狩りを開始した。・・・ゆっくりしてないじゃん。 蝶を追いかけてどんどん森の奥へ進んでいく。 普段なら簡単に捕まえられる蝶であったが、この日に限ってなかなか口に収まらない。 「ぷんぷん!ちょうちょさんのくせになまいきだね!はやくまりさにたべられてね!」 蝶が低空飛行を始めたところをここぞとばかりに飛び掛る。・・・しかし。 「ゆ゛!・・・。」 ゆっくり魔理沙は木に激突し気絶した。 蝶に夢中で目の前に大きな木があることに気付かなかったため、そのまま木とディープキスをする事になった。 もちろん蝶は華麗にゆっくり魔理沙を避け無事である。 日も傾きかけた頃、ようやくゆっくり魔理沙は目を覚ました。 「・・・ゆ・・・ゆ!もうすぐゆっくりできないじかんになっちゃうよ!」 ゆっくりできない時間、それは捕食種が活動を始める夜のことである。 急いで自分の巣に戻ろうとする。・・・しかし。 「ゆゆ?ここ・・・どこ・・・?」 蝶を追うのに夢中で森の奥まで来てしまった事にようやく気が付く。 「ゆゆゆゆゆ!ゆっくできないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 今自分が刻一刻と危険に晒され始めていると気づき、ゆっくり魔理沙は錯乱状態に陥った。 「おうぢどこぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !くらいのはいやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !・・・・・ゆ?」 錯乱状態のゆっくり魔理沙は突如平常心に戻った。 そして茂みの方角を見詰める。 「あまくておいしそうなにおいがするよ!」 さすがゆっくりブレイン、危機的状況にあるにも関わらず三大欲求の一つにあっという間に思考を乗っ取られてしま った。 ゆっくり魔理沙はもうすぐ夜になるという事も忘れ、能天気に茂みの中へ跳ねていく。 「ゆ♪おかしだぁ♪」 茂みの奥は少し開けた場所になっており、その中央にクッキーやチョコレートが置かれていた。 「これはまりさがみつけたからまりさのものだね!いっただっきま~す♪」 ゆっくり魔理沙は目を輝かせお菓子に飛び・・・つけなかった。 確かにゆっくり魔理沙はお菓子目掛けて飛んだ。 しかしお菓子に口が届くと思ったその直後、ゆっくり魔理沙は透明な箱に入れられ身動きが取れないまま、知らない 人間に抱えられ運ばれていた。 「ゆ、どうして!?なんで!?ここからだして ぇ ぇ ぇ !」 ゆっくり魔理沙は何とかして脱出しようと体を動かそうとする。 しかし箱はジャストサイズであるため、ゆっくり魔理沙は今自分を運んでいる人間の顔を見る事さえできなかった。 「だせえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !まりさをここからだせ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 ゆっくり魔理沙は己の出せる限界の大きな声を上げた。・・・しかし次の瞬間! 「いだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!いだいよお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」 ゆっくり魔理沙の体に1本のナイフが刺さっていた。 もちろん透明な箱は開けられていない。 ゆっくり魔理沙が叫んだその直後にナイフが体に刺さっていたのだ。 何がどうなっているのかわからないゆっくり魔理沙はただ喚き散らす事しかできない。 「静かになさい、次に騒いだら・・・死ぬわよ。」 ゆっくり魔理沙の耳(の機能を果たす部分)に自分を運んでいるであろう人間の声が入ってくる。 その声を聞いて本能的に悟る。・・・騒いだら本当に殺されると。 ゆっくり魔理沙は体に刺さっているナイフの痛みに耐え口を噤(つぐ)んだ。 しばらくすると紅い建物が現れ、ゆっくり魔理沙はその建物の一室に運ばれた。 「・・・ゅ・・・お姉さん、おねがいします。まりさをだしてください。」 弱々しく自分を運んだ人間に助けを請う。 「ゆ!?」 ゆっくり魔理沙は突如金網のゲージの中に入れられていた。 「なんでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !どうなってるのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 何が起こったのかわからないゆっくり魔理沙は発狂しだした。 「うー♪うー♪」 どこかで聞いた事のある泣き声を聞き、ゆっくり魔理沙は正気に戻ると恐る恐る泣き声のする後ろへ振り返った。 「う~?」 「れ、れ、れ!れみりゃ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 ゆっくり魔理沙は体を金網にめり込ませながら必死にゆっくりれみりゃから逃げようと暴れだす。 「落ち着きなさい、それはまだ赤ちゃんよ?あなたを襲ったりはしないわ。」 その言葉を聞くとゆっくりと暴れるのを止め、再び後ろへ振り向いた。 「うー?うー♪うー♪」 1匹のプチれみりゃが無邪気に鳴き声を上げていた。 目の前にいるれみりゃは自分を襲わないと理解するとゆっくり魔理沙は下膨れの顔を弛(たる)ませて安堵した。 「ふん、あかちゃんのくせにまりさをおどかすなんてゆるさないよ!ゆっくりし・・・いだあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 プチれみりゃに襲い掛かろうとした次の瞬間、ゆっくり魔理沙の体に再び1本のナイフが突き刺さった。 「いだいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !だずげでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 なぜ体にナイフが刺さっているのか理解できないゆっくり魔理沙は悲鳴をあげ助けを請う。 「静かになさい・・・死にたいの?」 どこか冷たく殺意のこもった言葉を聞くとゆっくり魔理沙はすぐに口を噤んだ。 「よく聞きなさい、私の言うことを素直に聞けば命までは取らないわ。理解できる?」 「ゆ、ゆっくりりかいしたよ!」 ゆっくり魔理沙の返事を聞くと人間は話を続ける。 「今あなたと一緒にゲージに入っているのはゆっくりれみりゃの赤ちゃんよ、その赤ちゃんをあなたが育てなさい。」 「ゆゆゆゆゆ!そんなのむり・・・いだあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 ゆっくり魔理沙の体に(ry 「さっき言ったわよね?素直に聞けば命までは取らないって・・・聞かないなら殺すまでよ。」 「ごべんなざい、ごべんなざい!なんでもいうことききますからころさないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 ゆっくり魔理沙は涙を流しながら必死に助けを請う。 追い詰められ魔理沙種特有の傲慢な態度は見る影もなかった。 「・・・・・なら続けるわよ。エサは毎日届けるわ、あなたが赤ちゃんに食べやすいように咀嚼して与えなさい。 ちなみにあなたに与えるエサと赤ちゃんのエサは別よ、赤ちゃんのエサを横取りしたら・・・わかるわね?」 「わかります、わかります!よこどりしません!」 「あと赤ちゃんが清潔でいられるように身の回りの世話もしなさい。もし赤ちゃんが死んだらあなたも死ぬ、2週間世 話を続けられたら外に放してあげるわ。」 「にしゅうかん?」 「お日様が14回昇るまでよ。」 「ゆっくりりかいしたよ!このこはまりさがそだてるよ!」 こうして通常種と捕食種の奇妙な同居生活が始まった。 次の日の早朝、ゆっくり魔理沙の目にはクマができていた。 ゆっくりれみりゃは夜行性であるため、夜中中「うー♪うー♪」鳴きながらゆっくり魔理沙にじゃれついていたのだ。 ゆっくり魔理沙にとって少し力を出せばプチれみりゃを潰すことなど造作もないことであったが、 『 プチれみりゃの死 = 自分の死 』 であるためどうする事もできず、置物のようにプチれみりゃが飽きるのを待つしかなかった。 そして朝日が昇る頃、ようやくプチれみりゃは眠り、ゆっくり魔理沙は開放された。 「ようやくゆっくりできるよぉ・・・。」 ゆっくり魔理沙はようやく眠りにつく事ができた。 日が落ちる頃、ゆっくり魔理沙はプチれみりゃの鳴き声によって目覚めた。 「うー!うー!」 プチれみりゃは機嫌が悪いようで怒った様な鳴き声を上げていた。 ゆっくり魔理沙がどうしたらいいのか悩んでいると部屋の隅にある扉が開き見覚えのある人間が入って来た。 「ようやく起きたみたいね。これが今日の分のエサよ、3食分あるから分配は自分で考えなさい。」 人間は金網のゲージを開けるとゆっくり魔理沙の前にクズ野菜とおいしそうな洋菓子を置いた。 「うわぁ~おいしそう!おねえさんありがとう!いっただっきま~・・・あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 洋菓子を食べようとしたゆっくり魔理沙の体に(ry 「あなたのご飯はこの野菜、そのお菓子は赤ちゃんのご飯よ。・・・わかるわよね?」 「わがりまず!わがりまじだ!ゆるじでぐだざい!」 ゆっくり魔理沙の言葉を聞くと人間は部屋から出て行った。 「うー!うー!うぅぅぅ!」 「・・・・・ふん!まぬけだね!いまならまりさがおかしをたべてもばれないね!」 ご飯を強請(ねだ)るプチれみりゃを無視してゆっくり魔理沙は洋菓子目掛けて大きな口をあけた。 「いっただっき・・・いぎゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! !」 今だ嘗てない苦痛に悶(もだ)え悲鳴を上げるゆっくり魔理沙にはナイフが刺さっていた。 ただ、今までとわけが違う。・・・左目に突き刺さっていた。 「いだい!いだいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !まりざのおめめがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!だれがだずげ・・・。」 「言ったわよね?赤ちゃんのエサを横取りしたら・・・わかるわよね?って。」 扉から入って来た訳でもないのに金網のゲージの前にはあの人間が立っていた。 その姿を残っている右目で確認するとゆっくり魔理沙は硬直した。 「あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 「どうしたの?赤ちゃんのエサを横取りしたって事は死にたいって事よね?」 人間は笑顔でゆっくり魔理沙に話しかける。 「まりざがわるかっだでず!まりざがわるかっだでず!おねがいでずゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 ナイフの刺さっている左目から中身の餡子を流しながら必死に謝る。 「・・・本当に反省した?」 その言葉はゆっくり魔理沙にとって救いの一言であった。 「はんぜいじまじだ!はんぜいじまじだあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ!」 「・・・そう、ならもう一度だけチャンスをあげるわ。ただし、次は目が無くなるだけじゃ済まないわよ。」 ゆっくり魔理沙は自分の食事を後回しにしてお菓子を食べやすいように咀嚼してプチれみりゃに与え始めた。 その様子を見ていた人間は無言で部屋から出て行った。 「うー♪うー♪うー♪」 与えられたお菓子の三分の一程を食べるとプチれみりゃはお腹がいっぱいになり笑顔で鳴き声を上げた。 プチれみりゃが満足したのを確認するとゆっくり魔理沙はクズ野菜を食べ始める。 「・・・むーしゃ・・・むーしゃ・・・。」 クズ野菜は先ほど口に含んだ際のお菓子とは比べる事ができないほど不味かった。 ゆっくり魔理沙は空腹を満たすためだけにクズ野菜を貪った。 「・・・ごちそうさま・・・。」 お腹がいっぱいになり、狭いゲージの中では他にすることもないので置物の様にボーっとしていた。 「うー♪うーー♪」 プチれみりゃは遊んで欲しいのかゆっくり魔理沙にじゃれついていた。 昨日とは違い眠気が襲ってこないため、しかたなく体を舐めてやったり、帽子の上に乗せたりして遊んでやった。 「うー♪」 プチれみりゃは楽しそうに鳴き声を上げた。 無邪気なプチれみりゃの姿を見てゆっくり魔理沙は純粋に可愛いと感じ、世話をするのも悪くないと考えるようにな っていた。 その後、2匹は遊び続け朝日が昇る頃仲良く眠りについた。 「うー♪うーー♪うーーー♪」 「くふふふふ、くすぐったいよ。」 次の日、ゆっくり魔理沙はプチれみりゃを可愛がっていた。 与えられたエサはきちんと与え、積極的に体を舐めて清潔にしてあげる。 餡子は繋がってはいなくても親子そのもの、ゆっくり魔理沙はお母さん魔理沙となっていた。 通常種が捕食種の母親役になるという極めて稀な世界がゲージの中に出来上がっていた。 10日後、プチれみりゃは成体にはまだ及ばないものの、もうプチとは呼べないほど大きく成長していた。 「うー♪がおーたべちゃうぞー♪」 「そんなことばしゃべっちゃだめだよ!」 ゆっくりれみりゃはある程度の言葉が話せるようになり、エサもお母さん魔理沙に咀嚼してもらわなくても食べられ るまでに成長していた。 十日間、お母さん魔理沙の体には一度もナイフが刺さることはなかった。 それほどまでにお母さん魔理沙はプチれみりゃを可愛がり育てていた。 「うー♪うー♪」 今夜もゆっくりれみりゃはお母さん魔理沙にじゃれついていた。・・・しかし 「いたいよ!かんじゃだめだよ!おかあさんがけがしちゃうよ!」 プチれみりゃだった頃はまだ顎と歯が発達していなかったため、じゃれついた際に噛み付いてもお母さん魔理沙はく すぐったいくらいにしか感じていなかった。 しかし今では成体の捕食種には敵わないものの、ある程度の通常種ならば捕食できるほどまでに成長していた。 「おかあさんはたべものじゃな・・・・・ゆ!」 ある不安がお母さん魔理沙の脳裏に浮かんだ。・・・いつか食べられてしまうのではないかと。 次の日からお母さん魔理沙はゆっくりれみりゃと一定の距離を置くようになった。 「うぅぅぅぅぅ!」 「もうれみりゃはおとなだよ!いつまでもおかあさんにあまえてちゃだめだよ!」 13日目、あと一日で外に出られるという日に事件が起こった。 「どうしてごはんがこないのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 いつも決まった時間に運ばれてくるご飯が今日は届かなかった。 「うー!うー!うーーー!」 空腹でゆっくりれみりゃの機嫌はかなり悪い。 「おねえさん!はやくごはんをもってきてえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 お母さん魔理沙の叫びが人間に届くことはなかった。 空腹のゆっくりれみりゃは本能に支配され、目の前にいるお母さん魔理沙はエサにしか見えていなかった。 「ゆゆゆゆゆ!こ、こっちにこないでね!ももも、もうすぐごはんあげるから!」 にじり寄るゆっくりれみりゃを必死に説得しようとするが、本能に支配された捕食種には届くことはない。 「がおー!たべちゃうぞー!」 「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! ! ! 」 14日目、ゲージの中にはスヤスヤと眠るゆっくりれみりゃとお母さん魔理沙の帽子だけが残されていた。 「あら、予想通り今まで育ててくれた母親を食べちゃったのね。殺す手間も省けたし丁度いいわ。」 人間の声を聞くとゆっくりれみりゃは目を覚ました。 「うー♪がおーたべちゃうぞー♪」 どうやらエサがもらえると思っているらしい。 「ちょうどいいサイズね、これならお嬢様も納得してくださるはずだわ。」 無邪気に笑っていたゆっくりれみりゃは気が付くと白い板の上に置かれていた。 ※補足 Q:登場した人間は例のメイドさんですか? A:その通り!十六夜 咲夜、紅魔館のPA・・・メイド長です。 東方を知らない人のために更に補足すると、彼女の持っている能力は「時間を操る程度の能力」です。 簡単に言えば時を止めてその間に自分だけ動くことができるという事です。 Q:ゆっくり魔理沙はなんであんなに虐めたくなる性格なの? A:今回登場したゆっくり魔理沙は幼い頃から何不自由なく育てられ、狩りも上手であったため、失敗、挫折という ものを知りません。そのためこんな憎たらしい性格になってしまったと考えられます。 Q:ゆっくり魔理沙は善いゆっくり?悪いゆっくり? A:咲夜さんに捕まった段階ではまだ人に被害を与えるような事はしていないので善いゆっくりであったと言えるか もそれません。 ただあの性格です、いずれは何らかの悪事を働いたことでしょう。 Q:ゆっくり魔理沙の見つけたお菓子は何? A:咲夜さん特製ゆっくりれみりゃホイホイです。 肉まん料理の気に入ったお嬢様のために定期的に罠を仕掛けてはゆっくりれみりゃを捕まえています。 今回はたまたま仕掛けた直後にゆっくり魔理沙がエサに飛びつこうとしたため、時を止めてそのまま捕獲しまし た。 Q:ゆっくり魔理沙は何度もナイフで刺されていたけどよく死にませんでしたね。 A:刺したナイフはある程度時間が経過したら咲夜さんが時を止めて回収しています。 また、その際に多少の応急手当もしてあげているので死ぬ事はないのです。 Q:プチれみりゃはどこから連れてこられたの? A:咲夜さんが以前料理したゆっくりれみりゃの子供です。 Q:どうして咲夜さんはゆっくり魔理沙を持ち帰ったの? A:通常種が恐怖により中身の甘みが増すのに対し、ゆっくりれみりゃは愛情を持って育てることにより、中身の肉 の旨味が増すのです。また、通常種を食べさせることにより更に旨味が増すと言われています。 また、恐怖を与えることにより肉が引き締まって弾力のあるおいしい肉まんともなるため、甘やかして育て、恐 怖を与えて調理するのが一般的なゆっくりれみりゃの調理方法です。(私の設定です。) 以上の理由により、咲夜さん自身はメイドの仕事で忙しいため、ゆっくり魔理沙を使って子育てをさせたのです。 Q:このSSの設定、どこかで読んだことがある気が・・・。 A:このSSは星 新一という方の短編小説を参考にしてい書きました。(結構前に読んだので題名忘れた><) その小説では、ある国のスパイが捕まり子ライオンと同じ檻に入れられ、子ライオンが死んだらお前も殺すと言 われます。どうする事もできないまま月日は流れ子ライオンは大人に成長します。ある日、監視員が檻の中を覗 くと肉片が飛び散りライオンの姿だけが残っていました。その後そのライオンはすぐに野生に放されます。 誰もいなくなったところでライオンの中からスパイが現れます。スパイはライオンを殺しその皮を被っていたの です。訓練中、素手でライオンを殺す訓練を受けていたため助かったのです。 たしかこんな内容だったと思います。 今回のSSでは普通に食べられてしまうんですけどねw Q:最後にゆっくりれみりゃが置かれた白い板って何? A:まな板です。その後どうなったかはわかりますよね? ~ゆっくり魔理沙の生涯『子育て編』~ END 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでくださった方々にまずはお礼を申し上げます。 ゆっくり達の生涯シリーズ第9弾『ゆっくり魔理沙の生涯「子育て編」』はいかがだったでしょうか? お盆休みも数日で終わり、忙しい日が続いているため短編SSながら時間がかかってしまいました(泣 ちなみに私の中の設定では咲夜さんにとって大切なのはお嬢様ただ一人であり、ゆっくりれみりゃは大嫌いです。 次回のSSはなかなか虐められないゆっくりレティに登場してしもらおうかなぁと思っています。 ただ、皮が厚く水に強い、捕食種の中ではトップクラスの強さ、デカイ、こんなゆっくりをどうやって虐めたらいい ものか悩んでいます。 どうしてもつまったら、例の着物を着た少女に出演していただく予定です。 ちなみに、使いたい方がいるのかはわかりませんが、私の書いたSSの設定を使っていただくのは全然かまいません。 むしろ嬉しいくらいです。 先日も「ゆっくりえーきの生涯」を参考にえーきの中身を鶯餡にしました。 という後書きを見てとても嬉しかったです。 しかしSS書くスピードUPをなんとかしてしないとまずいなぁ・・・(泣 おまけ(という名のゆっくりの考察報告書1(続く?)) ※注意 考察という名のもとに私の中での設定を書きまくっています。 いくつかのSSのゆっくりの繁殖とは結びつかないものもありますが、あくまで私の中での設定ですご了承下さい。 ○○年○○月○○日 2ちゃんねる ゆっくり虐待スレ 虐待お兄さん 様 2ちゃんねる ゆっくり虐待スレ ロウ ゆっくりの繁殖についての考察(報告) 1.繁殖の型 虐待スレの皆様ならご存知の通りゆっくりには植物型と胎内妊娠型の2種類の繁殖方法が存在します。 植物型については厳密に述べると二種類存在すると考える事ができます。 (1)植物型(母親が朽ち果てる場合) この繁殖は成体ではないゆっくりが他のゆっくりと「すっきり」して母親役になった場合起こります。 朽ち果てる理由は、頭から伸びる蔓に栄養を取られてしまうためだと考えられています。 この繁殖において興味深い点は、朽ち果てたゆっくり種と同じゆっくり種が生まれるという事です。 詳しいメカニズムなどは解明されていませんが、ゆっくりは繁殖力が旺盛で、頻繁に子供を生むことができます。 しかし、自分が死ぬという事はこれ以上自分の子孫を残すことができないことを意味しています。 自らの子孫を少しでも多く残そうとする種としての本能が自分と同じ種のみを実らせているのではないかと考えら れます。 ゆっくりアリスが強姦魔であるにもかかわらず、ゆっくりアリスが大繁殖しないのは上記の事が原因の一つではな いかと考えています。 また、この手法により加工場では目的のゆっくりを効率よく生産しているようです。 (2)植物型(両親共に生き残る場合) この繁殖は成体のゆっくり同士が「すっきり」した場合に起こります。 成体のゆっくりは十分な餡子を体内に持っているため、蔓に栄養を取られて朽ちることはありません。 この繁殖において興味深い点は、霊夢種がパートナーである場合9割以上のつがいの母親役が霊夢種になるという 事です。 なぜこのような事になるのかはあくまで推測の段階ですが、力の強弱が関係しているのではないかと考えています。 基本的に母親役は子供の面倒を見て狩には参加しません。 そのため、父親役がエサを集めます。つまり力の強いゆっくりが父親役になる事で一家の生存率を高めているので はないかと考える事ができます。 力の強弱によって父母が決まると考えると、強姦魔であるゆっくりアリスが「すっきり」しても自分の頭には蔓が 生えないという事も納得することができます。 (3)胎内妊娠型 この繁殖方法は成体のゆっくりがさらに成長し、それらがつがいになった場合に起こります。 胎内妊娠型において母親役になると身動きが取れなくなってしまうため、人目のつかない巣穴を見つけ、食料を大 量に蓄えた後、つがいは「すっきり」します。 (たまに後先考えずに「すっきり」して悲惨な末路を迎えるゆっくりを目撃します。) この繁殖において興味深い点は、ある程度成長したゆっくりを生むことができるという点です。植物型の繁殖は大 量にプチゆっくりが生まれるものの、その大多数が親の目の届かないところでの不慮の事故や、他の動物に捕食さ れたり、親子ゆっくりを虐待するのが大好きな虐待お兄さんに捕まり命を落としてしまうのです。 出産型ならば、母親の胎内にいるうちからある程度の意識があるため親子の絆が強くなり、母親の餡がある程度赤 ちゃんに受け継がれるため植物型のプチゆっくりに比べると知識も持っており、自然と生存率も上がると考えられ ています。 ただ、出産型の欠点は平均して3匹程度しか生むことができないということです。 また、母体となるゆっくりにかなりの負荷がかかるため、体の弱いパチュリー種などは出産と同時に死んでしまう ことがよくあります。 2.繁殖方法 ゆっくりはどのようにして身篭るのか? ゆっくりの中身は基本食材であり、生殖器官などまったく見当たりません。 ゆっくりの中には「ぺにぺに」「まむまむ」と言っているゆっくりがいるものの、それらの器官が実際に見つかっ たという報告は上がっていません。 しかし、ある興味深い報告がありました。それは幻覚を見せられたゆっくり霊夢が幻覚のゆっくり魔理沙と交尾を して植物型で繁殖したというものです。 この報告を聞き、私はある一つの仮説を立てました。 「ゆっくりは1匹でも繁殖する能力を持っているが、他のゆっくりとすっきりしたという事実がないと身篭らない。」 この仮説の通りならば幻覚によってゆっくり霊夢が身篭ったことは説明がつきます。 また、ほぼすべてのゆっくりが1匹で「すっきり」しても快楽を得るだけで体に大きな変化がないのに対し、他のゆ っくりと一緒に「すっきり」した直後にはどちらかのゆっくりの体に変化が訪れるという点についても説明がつきま す。 また、ゆっくりに手術を施して子供を産めなくするという事が可能であるため、ゆっくりの体内には何らかの器官を 司る餡の部位が存在すると考えられます。 3.今後の方針 今回述べたものの殆どが仮説の段階なので今後も虐待スレのゆっくりの観察を続け、仮説を定義にしたいと考えてい ます。 また、最近では木ゆっくりなどというのも現れだし、ゆっくりの生態について更なる研究(虐待)が進むことに期待 したいと思います。 おまけの後書き 以上のおまけがゆっくりの繁殖方法について私が考えているものです。 これらの設定を基に出産シーンが登場するSSを書いております。 (魅力的な設定が出たら改変するかもしれないけどねw) ちなみに、「ぺにぺに」「まむまむ」という設定は非常に面白いと思います。 ただ、私はその・・・生々しいものはあまり好きではないので、今回のおまけではそんな器官は存在しないと書かせ ていただきました。 冒頭部分は加工場の人の「ゆっくりいじめ系260 ほほえみの村(永琳の報告書)」の書き方の一部を参考にさせてい ただいております。 最後に、これは私の中の設定です。他の職人様の設定を批判するつもりはまったくありません。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/286.html
「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「や゛べでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!だずげでれ゛ーむ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 「こらー!!またアンタか!!うちの子を虐めるなって言ってんでしょこんダラズがぁ!!」 怒りの雄叫びを上げつつ、生首を追いかけ回す童女に踵落としを浴びせる巫女は博霊霊夢。 蹴り飛ばされた童女はゆっくりれみりゃ。一見人間の子供だがその実肉まんである。 ゆっくりれみりゃから解放され、すかさず霊夢の控えめな胸に飛び込んで勝ち誇っているのはゆっくりれいむ。 人間の生首によく似た姿であるが饅頭である。 幻想郷全域に突如として大発生し、田畑を荒らし民家に侵入するなど多くの被害を齎しているゆっくりだが、 人々の中にはこの霊夢の様にゆっくりを愛玩する者も少なからず居た。 「う゛あ゛ー!!ざぐや゛だずげでよ゛ー!ごあ゛い゛ひどがい゛じめ゛る゛よ゛ー!!」 「何よ!虐めてたのはアンタでしょう!来なさい!!」 そう言ってゆっくりれみりゃの首根っこを引っつかんで足音荒く神社の階段を下りていく。 行き先は勿論このゆっくりれみりゃの飼い主が住む紅魔館である。 「あ、こんにちはー。ははぁ、またやらかしたんですか小さいお嬢様は」 「そうよ!分かってるならさっさと通しなさい。素っ首落とすわよ」 「びゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ぢゅう゛ごぐー!!だずげでー!!」 「はいはい分かりましたよ。…これで何度目でしたっけ」 「二十二回目。アンタも、外から来る奴だけじゃなくて中から出て行く奴も止めてくれればいいんだけど」 「どお゛ぢでだずげでぐえ゛な゛い゛の゛ー!!ぢゅう゛ごぐの゛ばがー!!う゛あ゛ーう゛あ゛ー!!」 「それはお嬢様に言って下さいよ。私はお嬢様の御命令で外敵を防いでいるんですから」 「融通の利かない奴ね。まあいいわ。ほら、グズグズ泣いてないでとっとと来なさい」 「ぶあ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!ぶえ゛え゛え゛え゛ん゛!!ざぐや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 来いと言いつつずんずん首根っこを掴んだまま引きずる霊夢。 その目前にいきなりメイド服の少女が現れた。 彼女の名は十六夜咲夜。紅魔館のメイド長を務めるロリコン少女である。 「ちゅーっす!お疲れ様でゅーっす!」 挨拶と同時にハリネズミならぬナイフネズミになる門番。合掌。 「出たわねロリコンメイド。ちょっと、アンタの肉まんがまた私のゆっくり虐めてたわよ!!」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ざぐや゛ー!ごあ゛い゛よ゛ー!だずげでー!!」 霊夢は咲夜に向かってゆっくりれみりゃを放り投げる。 すかさず胸部のふくよかなクッション(本物)で受け止める咲夜。瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒!!! 「あ゛どひど!!あ゛どひどがれ゛み゛り゛ゃ゛を゛い゛じめ゛る゛よ゛ー!!」 「虐めてないわよ!!虐めてんのはアンタの方でしょこの馬鹿肉まん!!」 「この子が悪いのは分かったけど、何も引きずってここまで来る事ないでしょ!足先が磨り減って無くなっちゃってるじゃない!」 「そんな事知らないわよ!うちの子なんて餡子はみ出たのよ!!すぐ再生するそいつと一緒にしないで!!」 「う゛え゛え゛え゛え゛え゛ん゛!!う゛え゛え゛え゛え゛゛え゛ん゛!!」 まるで子供の喧嘩にしゃしゃり出てきた親同士のようなやり取りである。 一応断っておくとここは紅魔館の門前である。断じて紅魔幼稚園などではない。 「……とにかく、この子には後できちんと言い聞かせますから、今日の所はお引き取り下さい」 「はいはい分かりましたよ。その台詞もいい加減暗誦できる位聞いたけど。……言っておくけど、次は無いからね」 「分かりました。今日こそはよーく言い聞かせておきますよ」 「ばーがばーが!!ごんどいじべだらざぐや゛に゛やっづげでも゛ら゛う゛んだがら゛ー!!」 涙で顔をふやかしつつ歪んだ笑顔で咲夜の胸(偽物ではない)から勝利宣言を浴びせるゆっくりれみりゃ。 顔が一瞬般若になるも、強引に精神を鎮めて帰宅する霊夢。 「さあ小さいおぜうさま。おやつの時間です。今日のおやつは世界の亀田製菓が誇るハッピーターンですよ」 「や゛だや゛だや゛だ!!ぎょうはぬ゛ーぼーがい゛い゛の゛!!ぬ゛ーぼーじゃな゛ぎゃや゛な゛の゛!!」 「はい分かりました。ぬーぼーですね。直ぐに用意いたしますのでお部屋で待ってて下さいね」 「うー♪うー♪ぬーぼ!ぬーぼ!たしろ!うっうー♪」 途端に上機嫌になり、咲夜の胸(パッドじゃない)から飛び降りてもたもたと踊りながら館内に行くゆっくりれみりゃ。 既に目を覚ましていた妖怪ナイフネズミは、 「はあ。言い聞かせるんじゃなかったんですか?」 と呆れてものも言えない様子で進言。言えるのか言えないのかどっちなんだろう。 「仕方ないでしょう。あの子はまだ小さいのよ。大事なのは言葉より愛よ、愛」 「そうでしょうか……ま、私は子育てなんてした事ないですからよく分かりませんけどね」 そう言って誤魔化しつつも、その表情(ナイフ塗れ)は咲夜の溺愛っぷりに心底呆れ果てている事を語っている。 「そんな経験は私だって無いけれどね。さ、ぬーぼーを用意しないと」 「…………優先順位は間違えないで下さいよ」 「ん?何か言ったかしら?」 「いえ何も」 果たして今のメイド長の中での優先順位の一番は本当に主なのだろうか。 一抹の不安を覚えつつ、門番業務を続行する紅美鈴であった。ナイフ塗れで。 翌日の博霊神社。前日と何ら変わらない光景が境内で繰り広げられていた。 「ゆっくりたすけてね!!ゆっくりたすけてね!!れーむー!!」 「ぎゃおー!たーべちゃ「またッッッ!!!」 閻魔より恐ろしい表情でゆっくりれみりゃに迫る霊夢。被告人は笑顔のままで硬直している。 硬直している被告人の胸倉を掴み上げるサイバンチョ。今なら視線だけで蓬莱人すら殺せる。 「ざぐや゛だずげでー!ま゛だごわ゛い゛ひどがい゛る゛よ゛ー!!」 「あの閻魔風に言うなら、アンタは少し調子に乗り過ぎた。博霊審判においてアンタの地獄行きが決定したわ」 いつもの様に紅魔館に連れて行かれず、静かに何事かを宣告されてきょとんとするゆっくりれみりゃ。 胸倉を掴まれたままで何処かへ運ばれる途中で漸く意味が理解できたのか、激しく泣き叫びだす。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!も゛う゛じまぜん゛!!も゛う゛じま゛ぜん゛!!!」 「今更何を言ってるの?もうしません、って。何が悪いのかも分かってないんでしょ?」 「ゆっくりしんでいってね!!ゆっくりしんでいってね!!」 「ゆっくり、あなたは部屋に戻っててね。これの処理は私が一人でやるから」 「ゆっ…わかったよ!!れいむおるすばんしてるよ!!ゆっくりがんばってね!!」 「ありがとうゆっくり。……さて、始めましょうか」 「ごべん゛だざい゛!!ごべん゛だざい゛!!ぼうじだい゛がら゛ゆ゛ゆ゛じでぐだざい゛い゛い゛い゛!!」 「何をしないって?聞いてあげるから答えなさい。あなたは、何を、しないと、言ってるの?」 「ひっぐ……!う゛……う゛ー!う゛ー!!」 途端に黙り込み、媚びる様な笑顔を向けるゆっくりれみりゃ。それ見たことかと言わんばかりに霊夢は言う。 「何よその不細工な顔。媚びてんの?やっぱり何一つ分かってないんじゃない。 ……咲夜は教育者には向いてないわね。ひょっとしてアンタあいつに一度も叱られた事無いんじゃないの?」 「ざぐや゛の゛ごどを゛わ゛る゛ぐゆ゛う゛な゛!!わ゛る゛も゛の゛!!ぶー!ぶー!」 「へぇ。咲夜の事となると随分調子が良いじゃない。そんなに甘やかされてたの?」 「ざぐや゛はいづも゛や゛ざじい゛ぼん!!れ゛み゛り゛ゃのゆ゛う゛ごどだん゛でぼぎい゛でぐれ゛る゛ぼん!!」 「相当ね。これじゃ他の奴らは大変でしょうねぇ。咲夜は悲しむかもしれないけど、他の奴らからは感謝されたりして」 呆れながら、土蔵の中にゆっくりれみりゃを放り込み、自身も中に入って扉を閉める。 土蔵の隅から縄を拾い上げ、床に足を投げ出して泣き喚くれみりゃを手早く縛り上げる。 「う゛ー!!う゛あ゛ー!!うごげな゛い゛よ゛ー!!ほどいで!ほどいでよ゛ー!!」 「アンタの背中に生えてるのは何かしら。私には羽に見えるんだけど、違うの?」 「う!」 今思い出したかの様に羽を羽ばたかせて霊夢の目線の高さにまで飛び上がるゆっくりれみりゃ。 「うー♪うっうー♪れみりゃはとべるんだぞー!ぎゃーおー!」 先程までの狂態が嘘のように上機嫌になるゆっくりれみりゃ。霊夢はそんなれみりゃの羽を掴み、一瞬で引きちぎる。 「う゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!い゛だい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 地面に転がって悶絶するゆっくりれみりゃ。足で転がされ、うつ伏せにされて膝で押さえつけられる。 その背中の傷口からは早くも羽が再生しようとしていた。そこに霊夢お手製の御札を貼り付け、再生を阻害される。 「う゛?いだぐない!いだぐないよ!!うー♪うー♪れみりゃつよいこ!うっうーうあうあ♪」 再生が完全にストップしている事を確認すると、霊夢はゆっくりれみりゃを転がしたまま土蔵を出る。 「お゛い゛でがな゛い゛で!!れ゛み゛り゛ゃもづれ゛でっでよ゛ー!!」 「嫌よ。今日からそこがアンタの家よ。いい家でしょ?食べ物も無いし壊せる家具だって無い。 外敵もいなければ、アンタを猫又もドン引きする位猫可愛がりするメイドだって居ない。アンタ一人だけの場所」 「や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だじでだじでだじでえええええ!!!」 「さようならレプリカな肉まん。そこで死ぬまで反省すると良いわ」 外に出て扉を閉め、ゆっくりの待つ居間へ向かう霊夢。 その表情は先程のアブないものとは一変して晴れやかで、歳相応の可愛らしさに満ちている。 「ゆっ!!おかえりなさいれーむ!!ゆっくりしてきた!!?」 「ただいまゆっくり。あの肉まんをゆっくりさせてきた所よ」 「ゆっ!?あのひとゆっくりさせたの!!?だめだよれーむ!!こわいよ!!」 「大丈夫よ。もうあの肉まんはあそこから出られないから。ゆっくりはずっと安心してゆっくりできるわ」 「やった!!ありがとうれーむ!!またいっしょにゆっくりできるね!!」 「ええ、本当に……あら、誰かと思ったら美鈴じゃない。珍しいわねあんたが門を離れるなんて。クビ?」 「違うわよ。ちょっと休憩を戴いたの。……あの小さいお嬢様は?」 「さあ何の事かしら。私は知らないわ」 「あぁ、あの土蔵か。……それで、もうあそこからは出さないのね?」 「分かってるならいちいち聞かないでよ面倒臭い。ええ、出さないわよ。あの土蔵は当分封印」 「そう。あの耳障りな気配が突然消えたんでまさかとは思ったけど。あーあ、咲夜さんを宥めるのが大変そうだなぁ」 「ってあんた。連れ戻しに来たんじゃないの?」 「違うわよ。正直私もパチュリー様もお嬢様も、アレにはほとほと困り果ててたのよ。 仕事は邪魔するしシエスタは邪魔するし花壇は何度言っても荒らす。 パチュリー様も何冊本を駄目にされたか。魔道書を開いたらクレヨンで落書きされてて気を失った事まであるのよ」 「はあ、やっぱりあんたら皆迷惑してたのね。咲夜の悪趣味も困ったものね」 「あれさえ無ければ素敵なんだけ……ゲフンゲフン」 「?どうしたのよ。美鈴の癖に風邪?」 「私の癖にって何よ紅白の癖に。まあいいや。ちょっとしたお礼代わりにお参りでもさせてもらうわ」 「うわ、異変だわ。異変が目の前に」 「失礼な。私のような美人を捕まえて」 「さっさと有り金全部素敵なお賽銭箱に入れて帰りなさいよ」 「何という貧乏巫女」 そうしてお参りを済ませ、走って帰っていく門番。 その間ずっと土蔵からは小さく悲鳴が聞こえていたが、気にする者はいなかった。 何日も聞こえ続けた土蔵からの悲鳴が漸く聞こえなくなった頃、 紅魔館のメイド長が今度はゆっくりフランを飼いだしたという噂が霊夢の耳に届いた。 紅魔館の面々がメイド長の悪癖に振り回される日々はまだまだ続くようである。 LOLITA COMPLEX MAID-LEADER RESTART 作:ミコスリ=ハン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1353.html
前 「おかあさん、だいすき!」 ――ああ、これは娘の声だ。 目の前をぴょんぴょん飛び跳ねている赤ちゃんゆっくり霊夢は、目の中に入れても痛くないほど可愛い存在だ。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 それが、七人。 皆、元気があって、頭も良くて、何よりすごくゆっくりしている。 まりさは、それだけが嬉しかった。 まりさは五人姉妹の末っ子として誕生した。 父はゆっくり魔理沙、母はゆっくり霊夢。 自分以外の姉妹の種族はゆっくり霊夢種。 自分だけがゆっくり魔理沙種。 だけど、家族皆仲の良い、本当にゆっくりした家族だった。 だが、その生活は一変する。 おうちが胴体付きのゆっくりれみりゃに襲われたのだ。 すると父親であるゆっくり魔理沙は、家族を犠牲にして逃げ出した。 最低のゴミクズだった。 幸いにも、ゆっくりれみりゃはまりさたちを無視し、家族の中で一番太っていて美味しそうなゆっくり魔理沙を追いかけていった。 家族は全滅の危機を逃れた。 ゆっくり魔理沙がどうなったかは、誰も知らない。 ただ、近くで帽子だけが見つかったから、きっと死んだのだろう。 もし生きてまりさたちの前に現れたとしても、帽子がないから父親だと認識出来なかっただろうが。 そんなことがあって以来、まりさは姉妹たちにいじめられるようになった。 まりさが家族を捨てて逃げ出したゆっくり魔理沙と同じ種族だから、理由はそれだけだった。 母はそれに気付いていたようだったが、止めることはしなかった。 それどころか、あからさまに食事の量を減らされるようになった。 少ないと文句を言うと、末っ子で一番身体が小さいんだから我慢しろと逆に怒られた。 なんでまりさがこんな目に合わなくちゃいけないの? まりさは酷く悲しかった。 そして、もし自分が親になることがあれば、絶対に、何があろうとも、家族だけは守ろう。 そう誓った。 目の前を、七人のゆっくりが飛び跳ねている。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 そのうちの一匹が、突然眼前から姿を消した。 「……ゆっ!?」 慌てて周囲を見渡す。すると、遠く離れたところに、黒い霧のようなものの中に引っ張り込まれている赤ちゃんの姿があった。 「おかあさん、たすけてー!」 赤ちゃんが泣いている。 急いで助けないと。 だって、まりさはお母さんなんだから。 あのゴミクズの父親とは違う、ちゃんと子供を守るお母さんなんだから…… でも、あと一歩というところで、黒い霧は子供をすっぽりと飲み込んでしまい、そのまま掻き消えてしまった。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 まりさは悲しくて咽び泣いた。 ふと、気配を感じて後ろを振り向く。 するとそこには、残り六人になった姉妹たちが、感情のない目でまりさを見上げていた。 「み、みんな……」 「どうしてころしたの?」 一人のゆっくりが、ぽつりと呟いた。 「ま、まりさはころしてないよ!?」 「うそだよ。ほら、うしろをみて」 背後を振り向く。 するとそこには、先程消えてなくなってしまった赤ちゃんの無残な死体が転がっていた。 「あ、あがぢゃぁぁぁぁぁぁん!!?」 「れいむたちのいもうとをころすなんてひどいおやだね」 「ゆっくりできないよ」 「ゆっくりできないおかあさんはゆっくりしんでね」 「や゛めでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛ないでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!!」 可愛い子供に罵られ、まりさは慟哭の声を上げた。 違う。 まりさはやっていない。 やったのは、あの黒い霧だ。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは…… 「この後に及んで、まだ言い訳か」 突然、どこからかそんな声が聞こえた。 そして、まりさの意識は薄れていった。 「ねえ、お兄さん……」 「ん? どうした?」 最後の赤ちゃんゆっくり霊夢が死んで、数時間が経った。 未だに夏の暑さが続く気怠い昼を迎え、少しでもスタミナが付くようにと知人の夜雀が経営している屋台で購入したまま保存してあった八目鰻を食べていると、ペットのゆっくり霊夢がおずおずといった様子で話しかけてきた。 「まりさ、そろそろ許してあげてほしいよ……」 「なんだ、またその話か」 おかずの野菜を食みつつ、俺はぴしゃりとゆっくり霊夢の進言を跳ね除けた。 「駄目だ駄目だ。許してやるわけにはいかん」 「でも……」 「あのな、ゆっくり霊夢」 箸の先をぴしっとゆっくり霊夢に突き付ける。 「悪いことしちゃいけないってのは、知ってるだろ?」 「知ってるけど……」 「俺はな、人間や妖怪、ゆっくりに関わらず、悪いことしたやつは大嫌いなんだ。悪いことをするやつには当然、裁きが与えられる」 「ゆ……」 「あのゆっくり魔理沙たちは悪いことをした。だから、あんな仕打ちにあった。当然の結果だ」 ゆっくり霊夢は納得しかねる、といった顔をする。 言いたいことは分かるがやりすぎだ、そう言いたいのだろう。 だけど俺は気付かなかったフリをして、食事を進めることにした。 確かにあれは、どう考えてもやりすぎだった。 何故なら、八割以上が俺の趣味だったから。 『涙目で必死なゆっくりが見たい』 そのために、俺はあらゆる手段を尽くした。 そして、目論見は成功したと言って良い。 あの時間は夢のような時間だった。願わくば、もっかいやってみたい、とも。 ただ、そのためにはまた悪いゆっくりを捕まえなければならない。 流石に善良なゆっくりをいじめて悦に浸れるほど、罪悪感の欠片も持っていない人間ではないんだ、俺は。 いじめというのはやってはいけない行為。 それをやるからには、正当な理由が必要とされる。 だから俺は、悪いゆっくりしかいじめない。 元々、ゆっくりは可愛いと思ってる人間だ。 あいつらがきちんと礼儀良くしていたのなら、俺は大層歓迎していたことだろう。 だから、悪いのはあっち。 俺は悪くない、うん。 偽善者なのは分かってるよ。 きっと地獄行きだろうね。 でもゆっくりいじりは止めない俺。 「ゆっくり霊夢も悪いことするなよ。もし悪いことしたら、『ゆっくり出来ないようにする』からな」 「ゆっ!?」 ゆっくり出来ないようにする。 それはゆっくり霊夢のトラウマを抉る禁句だ。 かつて悪いことをしたせいで、地獄のような苦しみを体験した一週間。 それを思い出し、ゆっくり霊夢はぶるぶる震えだした。 「れ、れいむは悪いことなんてしないよ! きちんとゆっくりしてるよ!?」 「分かってるよ。可愛いなぁ、ゆっくり霊夢は」 優しくゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は複雑そうに微笑んだ。 ゆっくり魔理沙は目を覚ました。 だが、目を覚ましたという表現が正しいのかどうか、ゆっくり魔理沙には判断がつかない。 そこは暗かった。 星明りも届かぬ夜の世界、それよりも更に深い暗闇が身を包んでいる。 そして、今までゆっくり魔理沙が味わっていた圧迫感が続いていた。 自分はまた閉じ込められたようだ。 ここはどこだろう。 確か、自分はお兄さんに、自分を殺して欲しいと頼んで…… そこからの記憶が定かではない。 あの後、自分はどうしたんだっけ? 「……」 思い出そうとして、面倒になったので止めた。 もう、どうでもいい。 大好きだった赤ちゃんを守れなかった。 原因は、自分自身。 自分が赤ちゃんを殺したのも同然。 これから先、例え生きて森に帰れたとしても、心の底からゆっくりすることなんて出来ないだろう。 なら、もういい。 ゆっくりしないまま、死が訪れるのを待つだけだ…… ―――― 「?」 右隣から、何者かの息遣いが聞こえる。 生きることに億劫になったゆっくり魔理沙だったが、疑問に無関心になったわけではない。 純粋な興味につられ、右を振り向こうとして、 「……ゆ……」 振り向けない。 思ったより自分を包む箱(?)は狭く、身動きが取れなかった。 ようやく気付いたが、息苦しさも今までより遥かにキツい。 仕方なく、ゆっくり魔理沙は唯一自由に動かせる視線だけを右に移した。 するとそこには、 「……ぅー……ぅー……」 「!!?」 眠りこけるゆっくりれみりゃの姿があった。 先刻、自分の子供を無惨に殺害したゆっくりれみりゃと同種と認識。 だが復讐の炎が燃え上がることはなく、逆に本能的な恐怖が瞬時に湧き上がり、ゆっくり魔理沙は先程まで死が訪れるのを待っていた自分を忘れて悲鳴を上げた。 か細い声が風に乗って耳まで届いたので、俺は腰を上げた。 ようやくゆっくり魔理沙がお目覚めらしい。 妙に元気の無くなってしまったゆっくり霊夢を残し、玄関から庭に出る。 縁側なんて洒落たものは存在しない。 そもそもこの家自体借金して建ててもらったもので、未だ返済は終わっていない。 返済するためには働く必要がある。 働けば時間がなくなり、ゆっくりをいぢる機会が減ってしまう。 これでは俺の心が満たされない。 この幻想郷の何処かには日々の全てをゆっくりいじめに費やしている人間がいるらしいが、どうやって彼らは日々の時間と生活費を同時に捻出しているのだろうか。 俺も噂に聞いた幸せを呼ぶチェンジリングのゆっくりでも探してみようかねぇ…… などと取り留めの無いことを考えているうちに庭に到着。 そこには、地面に不自然に刺さった竹が一本、異様な存在感を放っていた。 俺はその竹の真上に陣取り、竹穴に耳を近づけた。 すると、 「いだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざをだべな゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 待ちわびたゆっくり魔理沙の悲鳴が。 俺が想像していた通り、ゆっくりれみりゃに身体を齧られたようだな。 俺はにやにや笑いを隠すことなく、竹の中に声を響かせる。 「おーい、ゆっくり魔理沙ー」 「ゆ゛っ!?」 ギクリと身を強張らせたような声。 だがすぐに痛みが戻って来たのか、穴から涙声が返ってきた。 「おね゛がい゛じまずっ、ま゛りざをだじでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃ!!!」 「死にたいんじゃなかったのか?」 「い゛だいのや゛だぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!! ごろ゛ずん゛な゛ら゛はやぐごろ゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「そんなこと言わずに、ゆっくりしていけよ」 「ごれじゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 顔が見れないのは少々残念だが、簡単に想像は付くのでまずは満足。 装置は完全に機能しているようだ。 俺は二つの透明な箱を用意し、片方にゆっくり魔理沙、片方にゆっくりれみりゃを入れた。 二つの箱は、少し位置がずれるように連結。ゆっくりれみりゃの口が丁度ゆっくり魔理沙の頬の部分に当たっている。 そして、その部分の壁に穴を開け、排除。 ゆっくりれみりゃの入っている箱は大きくてゆとりがあるが、ゆっくり魔理沙の入っている箱はかなり狭いので、どうしても隙間である穴から頬が押し出てしまう。 つまり、頬がゆっくりれみりゃの口の部分に侵入する。 だから、ゆっくりれみりゃはゆっくり魔理沙の頬『だけ』を齧ることが出来、完全に食べることは出来ない。 そしてゆっくり魔理沙を入れた箱の天井に更に穴を開け、そこに空気穴兼言語伝達用の竹(デカい)をセット。 ちなみにゆっくり魔理沙はこの竹穴が丁度口の部分になるよう位置を調節してある。人間でいうなら仰向けの状態だ。 口の部分は不用意に閉じられないよう、鉤で広げたまま固定。 これで全ての準備は完了。 俺はこの装置を重力で餡子が漏れ出ない程度に斜めにして地中に埋め、二匹が起きるのを待っていたのだった。 「は、はやぐごろじでよぉぉぉぉ……はやぐ、てんごくのあがぢゃんだぢのどごろに……」 ゆっくり魔理沙が少し落ち着いた様子で懇願してくる。 どうやら、食べられる部分の頬を全て齧りとられてしまったようだった。 今頃、ご飯が全然足りないゆっくりれみりゃが不満気にうーうー唸っているのだろう。 「まぁまぁ、その前に食事と行こうじゃないか」 俺は懐に用意してあったオレンジジュースを取り出し、竹の中に流し込んだ。 ただのオレンジジュースではない。 永淋さん特性のゆっくり回復促進剤を混ぜられたジュースだ。 「ゆぐぐぐっ!!?」 突然振ってきた液体に驚いた様子のゆっくり魔理沙の声。 だが口は開かれたまま固定してあるので、零れることなく口の中へと収まっていく。 「ご、ごーくごーく…………ゆ!? 痛いのがおさまってきた……よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 流石永遠亭特性の妖しい薬、効果は抜群のようだ。 オレンジジュースを飲んだゆっくり魔理沙の傷は瞬時に癒える。 癒えた身体は箱の質量を超え、ゆっくりれみりゃ側の箱にはみ出る。 それを嬉々としてゆっくりれみりゃが食べる。 ゆっくり魔理沙はまた激痛を感じる。 これが俺の考えた『強制無限激痛発生装置』だ。 後は適当に飢えないよう餌をやりつつオレンジジュースを飲ませればいい。 雨が降っても大丈夫なように、傘を作る必要もあるな。 俺が飽きるまで、この拷問は永遠に続く。 暗い闇の中、何も変化のない世界で、ただゆっくりれみりゃに食べ続けられるだけの毎日。 それは一体、どんな苦しみなのだろうか。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐりじだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛っ!!!」 これ以上ないくらいの、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 俺は胸の中から溢れて垂れ流さんばかりの快感に包まれ、ひとしきり笑い続けるのだった。 ゆっくり霊夢は全てを見ていた。 ゆっくり魔理沙の家族が死んでいく様を、ずっと見てきた。 いつも優しく、自分をゆっくりさせてくれる主人。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちを嬉々として殺害していった主人。 どちらが本当の主人なのだろうか。 分からない。 ほんのちょっと遊んだだけの仲だったが、ゆっくり魔理沙は友達だった。 加工所から引き取られ、主人の家でずっと暮らしてきたゆっくり霊夢には、友達と呼べる存在はいなかった。 だから初めて友達が出来て、とても嬉しかった。 でも、その友達は…… 主人はゆっくり魔理沙が悪い、だから罰を与えている、と言った。 でも、あそこまでやられるほど、悪いことをしたのだろうか。 それとも、自分が無知なだけで、あれくらい普通なのだろうか。 自分も悪いことをすると、あんなことをされるのだろうか…… 以前の『お仕置き』を思い出して、ゆっくり霊夢はギュっと目を瞑る。 ゆっくり魔理沙。 きっと、数日もすれば、顔も思い出せなくなってしまうのだろう。 何故なら、自分たちゆっくりは、そういう風に出来ているのだから。 余程の強い刺激がない限り、ありとあらゆる物事を忘却してしまう。 主人に感じた『恐怖』も忘れ去り、また主人との楽しい日々に戻るのだろうか。 ゆっくり霊夢は生まれて初めて、自分がゆっくりであることを呪ったのだった。 このSSに感想を付ける