約 632,044 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4756.html
いままで書いたもの とかいはコーディネイター 植物型ゆっくり 魔理沙とゆっくり~邂逅篇~ 取替えられた子 お前なんかドスじゃない ばーさすちれーでん ねるねるねるゆ ゆっくりを飼うって難しい ゆっくり分身 れいぱー 「ふぅ……ここが凍凶か」 通行人で溢れかえる餓野駅の前で、明らかに田舎臭いいでたちで僕は そう呟いた。 僕の家は農家であったが、親の後を継ぐ事が決められた人生に嫌気が さし、料理人を目指して情熱の赴くままここ東京まで修行に来たのだ。 「よーし、まずは働ける場所と治安のいい公園を探すぞー」 しかし、傍から見ればいくらなんでも無計画すぎであった。 と、そう意気込んでいる僕の視界の端に、それがふらふらふわふわと 舞い込んできた。 「うー! うー!」 それは一匹の胴なしゆっくりれみりゃであった。田舎にいた時はさん ざん料理の材料として使ったものだ。 なかなかウマそうだと思って見ていると、一人の幼女がそのれみりゃ に向かってとてとてと駆け寄った。 「あ、れみりゃだー。可愛いー」 瞳をキラキラと輝かせながられみりゃを見る幼女。便宜上、仮にオリ 江ちゃんと名づけよう。オリキャラなので。 「おいでおいでー」 オリ江ちゃんは中空のれみりゃに向かって手招きをした。 「うー♪」 するとれみりゃは何の警戒心もなくオリ江ちゃんの下へと舞い降りて そのぷにぷにした細腕の中にしまいこまれてしまった。 「ふかふかー♪」 「うー♪ うー♪」 れみりゃはオリ江ちゃんに抱きしめられ、えらくご満悦のようで楽し げに声を上げる。 オリ江ちゃんは、そんなれみりゃのほっぺとむにむにとつまみながら 笑顔で一言。 「それにおいしそう……」 「う、うー?」 その言葉に違和感を感じたのか、れみりゃが不安げな顔でオリ江ちゃ んの顔を見上げた、 オリ江ちゃんの口の端からは滝のようにだらだらとヨダレが垂れ流さ れていた。 「いただきまーす」 そして、食べやすいように90度ほど横に回転させられ、オリ江ちゃ んの未熟でチャーミングな犬歯に噛み千切られるれみりゃのほっぺ。 「う゛ー?!」 身が裂かれる痛みに、れみりゃは涙を流しながら苦悶の声を漏らす。 しかしオリ江ちゃんはそんなれみりゃなど全く気にせずに声を上げた。 「おいし~いっ!! おいしいお汁が「ピュピュ」って出てくる!!」 れみりゃのほっぺから勢い良くあふれ出る熱々の肉汁。それはまるで 水鉄砲のような勢いでオリ江ちゃんの顔を汚していく。しかもその量 はまるで汁もののエロゲの汁のように、れみりゃの小さな体から出て きたとは思えないほど明らかに異常な量である。 僕はその光景を目の当たりにして、ビビッと第六感がサタデーナイト フィーバーした。 「そうだ、僕がやりたかったのはこれだったんだ。僕は幼女の顔に熱 いお汁をピュピュっとかけたかったんだ!」 それは世の全ての人間が目指す一つの到達点。いわゆる悟りの境地で あった。僕はれみりゃの肉汁によって、悟りの境地に達したのだ。 と、僕が達した快感の余韻に浸っていると道の向こうからばたばたと おそろいの服を着た屈強な男達が現れた。 「いたぞ!」 「逃がすな!」 「取り押さえろ!」 その屈強な男達はオリ絵ちゃんに向かって勢い良く飛びかかると、 「うー?!」 その手に握られていたほっぺのかけたれみりゃを手際よく地面に引き ずり倒した。同時に、引きずり倒した男から確保という声が響いた。 その男達は警官だったのだ。 警官たちは呆然と立ちすくむオリ江ちゃんを見ると、悲壮な顔で叫ん だ。 「あぁっ! 見ろこの子の顔を! 濁った体液でどろどろだ!」 「くそっ! なんて卑猥なんだ! 許せん!」 「ゆっくりれみりあ! 貴様を公然猥褻の現行犯で逮捕する!」 「う゛、う゛ーーーーー?!」 細かい話は理解できていないようだが、言葉の難しさと警官の態度か らそれがゆっくりできない事だとは理解できたれみりゃが泣き声のよ うな叫びを上げた。 「う゛ー! う゛ー!」 瞳から頬の痛みが原因ではない涙を滝のように流しながら必死に警官 に向かって声を上げるれみりゃ。 警官はそんなれみりゃをきっと睨みつけると、こう言い放った。 「犯罪者は皆そう言うんだ! 言い訳は署で聞く! さっさと来い!」 同時に仰々しい護送車が現れ、中から現れた屈強な男達が慎重にれみ りゃを護送車の中に引きずり込む。 「う゛ぁ゛ーーーーーー!!」 れみりゃは最後にそう叫び声を上げると、署内胸毛ランキング1位か ら10位が勢揃いといった風体の男達と共にその護送車の中に閉じ込 められ、厳重に3重ロックをかけられてしまった。きっとれみりゃは あの中でもかもかされてしまうんだろう。 ブロロロロという重厚なエンジン音を残して去っていく護送車を眺め ながら、僕はぼそっと呟いた。 「そうか……熱いお汁をかけるのは駄目なのか……じゃあ料理人にな んかならなくていいや。実家継ごう」 そして僕は餓野駅で田舎に向かう新幹線の切符を買った。 おわり このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/724.html
前 さて。 小一時間ほど休憩したところで、俺はゆっくり魔理沙へのお仕置きを再開することにした。 残る赤ちゃんゆっくり霊夢は四匹。 赤ちゃんゆっくりアリスを喰らって空腹感を満足させた姉妹たちは、家族が殺されたにも関わらずに箱の真ん中でのんびりと昼寝をしていた。 やれやれ、自分たちの立場が分かっているのかね? ゆっくり魔理沙は相変わらず大きさに合わない小さな箱に圧縮されて息苦しそうにしながら、殺された姉妹のことを思い出しているのか、現在の状況を振り返っているのか、ゆぐゆぐと嗚咽を洩らしていた。 その表情、たまらん。 俺の愛するゆっくり霊夢は猿轡を噛まされながら沈んでいる様子だった。 もうちょっとだけ我慢してほしい。 すぐ終わるからさ。 「おーい、起きろー」 俺は姉妹の箱を両手で持ち、がたがた揺らした。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちは驚いて跳ね起き、混乱した頭で四方八方に飛び回る。 「ゆっ、じしんだよ!?」 「ゆゆゆ、すごいゆれてるよ!」 「ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっくりさせてえええええぇぇぇ!!!」 ああっいい! いいよその表情! 悲鳴! ゾクゾクする! 俺は悦に浸りながら振動を止め、ゆーゆー泣き出した姉妹たちににっこりと笑いかけた。 「やぁ、起きたかい?」 「ゆっ、おにいさん!?」 「いまのはおにいさんがやったの!?」 「れいむたちのおひるねのじゃましないでね!」 「おにいさんとはゆっくりできないよ!」 相変わらず自分たちの立場を理解していない上から目線。 こいつらにもう少し知能があれば、第二のペットにしてやるのに…… とりあえず怒りの矛先が俺に向けられるのは何となく申し訳ない気分になってしまうので、責任を転嫁させてもらうことにしよう。 「悪いね。君たちのお母さんに、君たちをゆっくりさせるなと頼まれたんでね」 「ゆっ!?」 姉妹たちが母親を見る。 ゆっくり魔理沙は寝耳に水の衝撃発言に呆気に取られて反応が遅れる。 そりゃそうだろう。いきなり自分の名を出され、しかも事実無根の罪を被せられたのだから。 いやまぁ、事実無根の罪を被せるのは今に始まったことではないけど。 当然のように、ゆっくり魔理沙は否定の言葉を口にしようとする。 「うそだよ! まりさはそんなこと言わないよ!」 「って、言ってるけど、信じる?」 普通のゆっくり家族なら、母親を信じ、俺をなじる。 だが、この家族は既に普通の家族ではない。 俺がそうした。 「うそいってるのはおかあさんのほうだよ!」 「れいむたちをゆっくりさせないなんてひどいおやだね!」 「もうおやじゃないよ! おねえちゃんたちをころしたわるいゆっくりだよ!」 「わるいゆっくりはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!! ゆっくりしね!!!」」」 もう何度目になるか分からない、ゆっくりしねコール。 憤怒と憎悪が込められたそれは、本来決して母親に向けられるべきものではない。 しかしこの赤ちゃんゆっくりたちにとって、目の前のゆっくり魔理沙が既に母親でもなんでもなかった。 姉妹を見殺し。 食事を独り占め。 昼寝すら邪魔をする。 果たして、こんな自分たちをゆっくりさせないゆっくりが存在していいのだろうか。 否。 母と呼んだ存在はもう記憶の彼方に抹消した。 目の前にいるのは『敵』だ。 自分たちのゆっくりを脅かす敵なのだ。 ――なんと素晴らしい、明後日の方向に捻じ曲がってしまった的外れの怒りか! 俺は感動の涙と笑いが同時に来てしまい、思わず顔を背けてしまった。 こいつら面白すぎる。 「ゆっくりしね!」 「ゆっくりせずにしね!」 「おにいさん、あのまりさをころしてよ!」 「そうだよ! れいむたちがゆっくりできるようにまりさをころして!!!」 おおぅ、とうとう俺にまでお願いし始めた。 いかなる手段を用いても、目の前に鎮座して姉妹たちをいじめては喜んでいる(そう赤ちゃんゆっくりたちには見えている)ゆっくり魔理沙を排除したいのだろう。 で。 その対象、極めて冤罪(いや罪はあるか)を多くかけられているゆっくり魔理沙はというと、 「な゛んでぞんな゛ごどい゛う゛の゛おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 やっぱり咽び泣いていた。 休憩を挟んだおかげで、体力や気力は少し持ち直したらしい。廃人……いや廃ゆっくりにはまだならずに済みそうだ。 いいねいいねー。 泣くゆっくりはやっぱり可愛いな! 涙を流して必死な表情のゆっくりだけを集めた家に住めたら俺死んでもいい。 管理が大変なんで自分ではやらないけどさ。 これでも現実は見ているつもりである。 「では、準備があるので少々お待ちを」 俺は牙を剥いて(比喩)ゆっくり魔理沙を威嚇している姉妹たちを置いて一旦外に出た。 太陽はまだ昇ったばかりで、気温はまだまだ涼しいとは言い難いが、それでも日中の熱気に比べれば大分緩やかだ。 なんか濃密な時間を過ごしたせいで、もう昼間になってた気がしていたんだが……まだ八時といったところか。 俺は加工所で購入した二つの箱のうち、赤ちゃんゆっくりアリスが入っていたほうではないもう一つの大きな箱を手に取った。 大きいといってもサッカーボールが収納出来る程度の大きさである。 木造の箱は中身が暴れているせいか、ごとごと揺れていた。 活きがいいな、これなら期待出来そうだ。 俺は箱を持って家に戻ると、わざと音を立てて床に箱を置いた。 予想通り、好奇心旺盛な赤ちゃんゆっくり霊夢たちが先程までの怒りをすぐに消し、興味津々に眺めだす。 「ゆっ、なにそれ?」 「ゆっくりできるの?」 「ゆっくりしていってね!」 うむ、ではご期待に添えようじゃないか。 俺は全員の注目が集まっていることを確認すると、勢いよく箱の蓋を開いた。 途端、 「うー!」 中からゆっくりれみりゃが飛び出し、家の中を羽ばたきだした。 赤ちゃんだったゆっくりアリスとは違い、こちらはちゃんと成人(成ゆっくり?)したサイズである。 無論、赤ちゃんゆっくり霊夢など一口で食い殺してしまうだろう。 突然の捕食種の登場に、赤ちゃんゆっくりたちは目に見えて怯えだし、固まってぶるぶる震えだした。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れ、れみりゃだ、こわいよー!」 「ゆっくりできないよ、たすけてーっ!!!」 「れいむたちはおいしくないよぉぉぉ!!?」 ゆーゆー泣き出す姉妹たち。 くはっ、萌え狂う! っと、鼻血を出している場合ではない。 「れ、れみりゃはあっち行ってね! まりさたちに近付かないでね!」 ゆっくり魔理沙は身動き出来ないながらも、必死にれみりゃを追っ払おうと睨みつけている。 ゆっくりれみりゃを怖がるのは何も赤ちゃんだけではないからな。 俺のマイスウィートラブリーエンジェル・ゆっくり霊夢も怯えて固まってしまった。 ああごめんよ、我慢してね。 俺はゆっくりれみりゃが入っていた箱の底からスプレー型の小瓶を取り出すと、ゆっくり霊夢の箱に小瓶の中身をしゅっと吹きかけた。 「う、うぁー!?」 卑しくもこの中で一番丸々太っていて美味しそうなゆっくり霊夢の周囲を旋回していたゆっくりれみりゃは、霧状の粉末がゆっくり霊夢の箱に飛び散るのと同時に慌てて離れだした。 あぅ、泣き顔のれみりゃもかわええのぉ。 でも胴体付きは駄目だ。流石の俺もあれだけは可愛がれねぇ。 紅魔館の周囲にはあの豚どもがうようよ生息してるのか……あまり想像したくない光景だな。 そういえば咲夜さんも駆除が追いつかないって俺に愚痴を洩らしていたな……って、今はそんなことどうでもいいか。 「えー、注目。このスプレーはゆっくりれみりゃが嫌がる香りを吹き付ける優れものです。これがあればゆっくりれみりゃには襲われません」 「ゆっ!? じゃあはやくれいむたちにちょうだい!」 「ゆっくりしないでいそいでかけてね!」 スプレーの説明をすると案の定、助かりたい一心の赤ちゃんゆっくりたちが騒ぎ出す。 俺はそれを無視して、ゆっくり魔理沙を入れた箱にスプレーを吹きかけた。 「あ、あかちゃんたちも助けてあげてね!」 ゆっくり魔理沙は子供に責められてボロボロになりながらも、それでも子供たちを助けてやってくれと哀願してくる。 うーん、ゆっくり魔理沙にしているのが勿体無いくらい家族思いのやつだ。 二週間前、仲間が殺されたのをケロっと忘れたゆっくりと同一人物とは思えんぞ。 まぁ、箱の中にいる限りスプレーがあろうとなかろうと助かるって分かってない辺りが、ゆっくりのゆっくりたる所以なのかもしれないが。 ああでも香りが付けばゆっくりれみりゃが近寄らなくなるので、その分心労は減るかもな。 「さて、最後はこれだな」 俺は姉妹たちの箱にスプレーを吹きかけた。 途端、安心したようで赤ちゃんゆっくり霊夢たちは大はしゃぎする。 「ゆー♪ これでもうあんしんだね!」 「れみりゃをこわがらなくてすむね!」 「やーいやーい、れみりゃのばーか!」 中にはゆっくりれみりゃを小馬鹿にした顔で貶すゆっくりまで出る始末。 ゆっくりれみりゃは悔しそうに、だけど近づけないのでうーうー遠くから唸っていた。 このうーうーってやつ可愛い。 「とりあえず、これで箱は全て安全地帯となったわけですが」 自分自身にもスプレーを吹きかけ、俺は姉妹たちの箱の前に立つ。 「でも、君たちにスプレーが直接かかったわけじゃないから、箱の外に出ると安全ではなくなるわけです」 「……ゆ?」 「そ・こ・で」 俺は邪悪……もとい天使の微笑みを浮かべて、 「君たちのうち、三匹をそこから出してあげます」 「ゆ、ゆーっ!?」 赤ちゃんゆっくりたちはにわかに騒ぎ出した。 「や、やめてね! れいむたちをここからださないでね!」 「え、なんで? あれだけ出たいって言ってたじゃないか、良かったね!」 「よ、よくないよーっ!?」 「そとにでたられみりゃにたべられちゃうよ!」 「おにいさん、れいむたちをそとにだすまえにれみりゃをゆっくりなんとかしてね!」 「ごめんね! お兄さんじゃゆっくりれみりゃには勝てないんだよ!」 激嘘。 「でも大丈夫! 君たちにはチャンスがあるよ!」 「な、なに!?」 「ゆっくりしないでいってね!」 「今からゆっくり魔理沙に問題を出します。君たちがゆっくりれみりゃに捕まる前に回答することが出来たら、君たちを解放してあげるよ!」 つまりは今までと同じである。 当然、 「ゆっ、それはだめだよ!」 「おかあさんはれいむたちをころそうとしてるもん!」 「おかあさんじゃゆっくりできないよ!」 「おかあさんはころしていいかられいむたちをたすけてね!」 反発が起こる。 今まで助ける機会がありながらも問題に答えず、姉妹たちを見殺しにしてきた母。 今更そんなゆっくりを信用出来るはずがない。 「ぞん゛な゛ごどな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!! ま゛り゛ざはぢゃんどれ゛い゛むだぢを゛だずげる゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして、こちらは信頼を裏切り続けるゆっくり魔理沙。 答えられるはずもない無理難題を押し付けられ、逆恨みを買いまくっているあまりにもゆっくり出来ない哀れな存在。 激しく嗜虐心をそそります、はい。 ぶっちゃけ、そろそろ子供たちを見捨ててもいいと思うんだ。 愛しているのに、その愛が全然、まったく、これっぽっちも伝わらない悲しさ。 同情を買う? いいえ、滑稽です。 「残念ながらルールの変更は認められません。精々、ゆっくり魔理沙が回答に辿り着けることを祈っていてください」 「そんなのしんじられないよ!」 「どうせおかあさんじゃこたえられないよ!」 赤ちゃんゆっくり霊夢たちが発言するたびにゆっくり魔理沙の心がザクザク傷付けられていく。 最っ高! 「何を言っても駄目でーす。それではゲーム、スタート!」 「「「「ゆ、ゆっくりしていってよー!?」」」 「お、おねえちゃーん!!!」 俺は四匹のうち、末っ子だけを残して、三匹を外に出した。 するとすぐに、空腹でイライラと部屋中を飛び回っていたゆっくりれみりゃが、歓喜の表情で突撃してきた。 「ぎゃおー! たーべちゃうぞー♪」 「や、やだぁー!!!」 「ゆっくりやめてね!!!」 「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛お゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくりたちは涙目ながらも生存本能からか高速で散開。勢いを止められず、ゆっくりれみりゃは先程まで三匹がいた床に激突する。 「う、うわぁー!!!」 泣き出すゆっくりれみりゃ。 か、かわえぇ! っと、見とれている場合ではない。 このままでは不公平だしな。 俺はゆっくり魔理沙に向き直った。 「では問題です」 「は、はやく出してね!」 「いやいや、遠慮すんな。いつも通りゆっくり答えろよ」 「ゆっくりできないよ!!! はやくもんだい出してね!!!」 俺の後ろでゆっくりれみりゃに捕獲されないよう、必死に逃げ惑う子供たちの姿が見えているのだろう、ゆっくり魔理沙が俺を急かす。 やれやれ、仕方無いな。 「では問題です。『れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!』これを千回言ったら子供たちを助けてあげるよ」 あ、『問題』じゃねーやこれ。 まぁいいか。 ゆっくり魔理沙は驚いて目を見開いていた。 「そ、そんなこと言えないよ!」 「じゃあ、赤ちゃんをゆっくりれみりゃに食われるのを黙って見てるんだな」 「そ、それはだめだよ!」 「じゃあ言うんだ。途中でつっかえたりしたら、もう一度初めからやり直しだからな」 「ゆっ……」 諦めたように瞼を閉じ、ゆっくり魔理沙は息を吐き出した。 言いたくない台詞を言わなくてはいけない葛藤。 だが、それでも親の愛が勝るのだろう。 ゆっくり魔理沙は大声を上げた。 「れ……れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「おーいお前ら、お母さんがこんなこと言ってるぞー!」 「ゆっ!?」 突然赤ちゃんたちに話を振る俺に驚くゆっくり魔理沙。 ブランコや滑り台などの遊具を使って必死に逃げ惑っている赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、突然の母の暴言にまたも怒りを曝け出す。 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 「やっばり゛おがあ゛ざん゛じゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ち、ちがうよ! おかあさんはれいむたちをたすけようと」 「はいアウトー! 規定の台詞以外の言葉をしゃべったのでもう一度最初からね!」 「ゆっくり!?」 そう、これはどれだけなじられようともゆっくりれみりゃに自分の子供を差し出す台詞を言い続けなければならない拷問。 今頃それに気付いたのか、ゆっくり魔理沙の瞳から涙が止め処なく溢れ出した。 「ひ、ひどいよぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざだぢがな゛に゛をじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「シチュー落っことしたじゃねーか」 もう忘れたのかよ。 「ほら、早く言わないと千回言い終わる前に子供たちが全員食べられちまうぞ?」 「ゆ……」 再びの葛藤。 だがやらないと子供は助からない。 ゆっくり魔理沙は泣き顔で、もう一度言葉を繰り返し始めた。 「れ、れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「れ゛み゛りゃはまりざのあがぢゃんをゆっぐりだべでいっでね! れ゛み゛り゛ゃはま゛り゛ざの゛あがぢゃん゛をゆ゛っぐり゛だべでい゛っでね゛っ゛!!」 糾弾され、涙声になっても、今度は言葉を止めずに言い続けるゆっくり魔理沙。 この全てに絶望したような顔、素晴らしい! これだからゆっくりいぢりは止められないのだ。 さて、ではそろそろ赤ちゃんゆっくり霊夢たちのほうに視線を移してみよう。 「うー! うー!!」 「こっちにこないでねぇぇぇ!!?」 「れいむっ、こっちだよ、はやく!」 「ゆっ、ありがとうおねえちゃん!」 成体のゆっくりれみりゃじゃ潜り抜けられないようなブランコや滑り台の小さな隙間を使い、上手く攻撃をかわしている。 なかなかやるなぁ。もしかしたらペット用ゆっくりになれる素質の持ち主かも。 対するゆっくりれみりゃはかなりご機嫌斜めのようだった。 自分より格下の存在であるゆっくり霊夢、しかも赤ん坊をなかなか捕食出来ないのだから当然だろう。 しかも加工所からここまで、何も食べていないのだ。空腹も怒りに拍車をかけている。 考えなしに広い場所へ行かず、真っ先にこの場所へ陣取った姉妹たちの作戦勝ちといったところかな。 ……まぁ、実はゆっくりれみりゃが嫌がる香りを浴びた箱にぴったりくっついていれば、このゲーム楽に勝てたりするんだけどね。 そこに気付かない辺りは、やはりゆっくりといったところだろう。 「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね……れみりゃは……」 呪詛のようにぶつぶつ呟き続けるゆっくり魔理沙。 その声は、ここにいる全てのゆっくりに聞こえている。 逃げ惑うゆっくり姉妹たちはゆっくりれみりゃの攻撃を避けながら、ずっとその言葉を聞き続けていた。 母でありながら自分たちの死を願う、その言葉を。 何度も、何度も。 そして。 ついに一匹の赤ちゃんゆっくり霊夢が、キレた。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!! う゛る゛ざぐでゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 リボンの番号を見るに三女か、赤ちゃんゆっくり霊夢3が怒りに頬を膨らませてゆっくり魔理沙の元へ走り出した。 どうにかしてゆっくり出来ない声を止めようと考えたのだろう。 しかしそれは、なんという自殺行為。 「うー♪」 「おね゛え゛ぢゃん、に゛げでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「……ゆっ!?」 周囲に障害物はない。 身を隠す場所は、何も無い。 ゆっくりれみりゃはこの上なく無邪気な笑顔を浮かべ、何も遮るもののない赤ちゃんゆっくり霊夢3までの距離を、高速で飛翔し零とした。 妹の悲鳴に赤ちゃんゆっくり霊夢3が振り向けば、そこには眼前にドアップで迫るゆっくりれみりゃの姿。 「うー!」 「ゆゆゆ、ゆっくりまっ……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 頭上へと昇ったゆっくりれみりゃは、その身体を急降下させて赤ちゃんゆっくり霊夢3を押し潰した。 飛び散る餡子。 平べったくなった饅頭の肉体。 「れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ゛……ゆ゛べっ……」 姉の悲痛な悲鳴。 それに身体を弱々しく震えさせながら、反応する赤ちゃんゆっくり霊夢3。 大量の餡子を吐き出しながら、それでも赤ちゃんゆっくり霊夢3は生きていた。苦しそうに呻きながら、必死に現在の状況から逃げ出そうともがいている。 無論、それを見逃すほど、ゆっくりれみりゃは捕食種としてお人好しではない。 「うっうー♪ たべちゃうぞー♪」 「ゆびゅぅ!? れ、れ゛い゛む゛のがら゛だをだべな゛い゛でねっ!?」 赤ちゃんゆっくり霊夢3の頬に齧りつくゆっくりれみりゃ。そのまま少しずつ、ゆっくりと味わうように咀嚼していく。 皮が千切れ、餡子が溢れ出る都度、赤ちゃんゆっくり霊夢3は絹を裂くような悲鳴を上げる。 「や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「うー♪」 しかしその悲鳴も、ゆっくりれみりゃにとっては食事を彩る調味料としかならない。 いや、それとも、ゆっくりの悲鳴など鼻から耳に届いていないのか。 兎にも角にもゆっくりれみりゃは上機嫌で、赤ちゃんゆっくり霊夢3の身体を全て完食してしまったのだった。 「ま゛、ま゛り゛ざのあがぢゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!」 ゆっくり魔理沙は耐え切れず、慟哭の涙を流した。 自分の言葉のせいで、子供が死んでしまった。 その嘆きは如何ほどのものなのだろうか。 ……まぁ、それはそれとして。 「はいアウトー。指定された言葉以外の発言をしたからもっかい最初からねー」 「ゆっぐ!?」 ゆっくり魔理沙はしまった、といった風に目を見開いた。 そう、これは子供が食べられてしまっても、自制しなければならない罠でもあるのだ。 ゆっくり魔理沙は少し先のことも考えずに本能のまま行動してしまった結果、ただでさえ少ない救出の確率を更に下げてしまったのだ。 慌てて再び「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言うが、もう遅い。 先程までの70回くらいは全てパーだ。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは口の周りに餡子を付けながら、上機嫌に羽根を広げて舞い上がる。 そして先程残してきた姉妹、残り二匹の元へと向かった。 「お゛ね゛えぢゃんがぁぁぁ……」 「ゆっ!? ゆっくりしてたらたべられちゃうよ! ここからはなれようね!」 ゆっくりれみりゃの接近に気付いた赤ちゃんゆっくり霊夢1は姉の死にぐずぐず泣き崩れる妹のリボンを加えて、滑り台の下へと引っ張る。 間一髪。ゆっくりれみりゃの牙は赤ちゃんゆっくり霊夢5を傷付けることなく、逆に超スピード(といってもあくまでもゆっくり基準なのだが)のまま滑り台に激突し、顔面の激痛で大粒の涙を零した。 「う、うぁー! うぁー!!」 顔を真っ赤にして泣き叫ぶゆっくりれみりゃ。頬ずりしたい。 姉妹はその様子を確認すると、今度はブランコの方に移動を開始した。 気付いたゆっくりれみりゃも、ふらふらと後を追う。 「ゆっ、おいかけてきたよ!」 「だいじょうぶだよ! ゆっくりまかせてね!」 心配そうな妹の声に力強く頷き、赤ちゃんゆっくり霊夢1は前方にぶら下がったブランコを口に加えてずりずりと後退し、限界まで引っ張ると口を離した。 勢いよく吹き飛んだブランコは、無防備に近付いてきたゆっくりれみりゃへと一直線に激突する。 ばしん、という思わず目を背けてしまう光景と音。 「うぁーーー!!!」 余程痛かったのだろう、弾き飛ばされたゆっくりれみりゃは、地面にへばりついてわんわんと泣き出してしまった。 萌ゑる。 一方、捕食種への反撃が見事に決まった姉妹たちは、大喜びで飛び跳ねていた。 「ゆっゆっゆー♪ おねえちゃん、すごーい!」 「ゆゆーん♪ ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでいってね!」 二匹して勝利のダンス。箱に取り残されている末っ子ゆっくりも遠目に見える姉妹の活躍にはしゃいでいた。 しかし、勝利の美酒に酔いしれる三匹の餡子脳は、まだ死神が遠のいていないことに気付いていなかった。 突如。 頬をすり合わせて喜びを表現していた姉妹の片方、赤ちゃんゆっくり霊夢3が、赤ちゃんゆっくり霊夢1の眼前から一瞬で消失した。 「…………ゆ?」 赤ちゃんゆっくり霊夢1は何が起こったのか、一瞬では理解出来ない。 妹は何処へ行った。 と。 視界の端に、引っかかるものがあった。 黒い、点々とした影。 それが、何処かへと続いている。 赤ちゃんゆっくり霊夢1は無意識に、その黒い影の先へ視線を移した。 そして。 妹は、そこにいた。 「……」 物言わぬ亡骸となって。 大量の餡子を撒き散らしながら。 「ど、どお゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 泣きながら妹に駆け寄ろうとする赤ちゃんゆっくり霊夢1。 刹那、 ごぅん! 一迅の風が舞う。 赤ちゃんゆっくり霊夢1の頬をかすめ、ブランコが眼前を通り過ぎ、また戻っていった。 餡子を少量、付着させて。 ――つまり、なんだ。 妹は、ブランコとぶつかって、死んだ。 ブランコを動かしたのは自分。 だから。 妹を殺したのは。 「あ……ああぁ……あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛あああ゛あああ゛あ゛あぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢1はこれでもかというくらいの大声量で悲鳴を上げた。 生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきた妹。 それが、死んだ。 自分が殺してしまった。 ゆっくり出来なくしてしまった! 赤ちゃんゆっくり霊夢1は半狂乱になり、しっちゃかめっちゃかに周囲を飛び跳ね、奇声を上げながら床に自分の身体をぶつけ始める。 身体の痛みで、心の痛みを少しでも和らげようとしているのだろうか。 だけど、そんな余裕でいいのかな? 「うー!!!」 ようやく泣き止んだゆっくりれみりゃが、逆襲のために赤ちゃんゆっくり霊夢1の下へと向かう。 悲嘆に暮れて自傷を繰り返す赤ちゃんゆっくり霊夢1は、それに気付かない。 箱の赤ちゃんゆっくり霊夢7は立て続けに姉を失い、泣き叫んでいたため反応が遅れる。 ゆっくり魔理沙は目を瞑って同じ言葉を繰り返す機械のようになってしまっているため、既に見えていない。 「あ゛ぁあ゛あぁ゛ぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛ああ゛……ゆ゛っぐり゛ぃ!?」 「うっうー!!!」 ゆっくりれみりゃは飛び跳ねる赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭を見事にキャッチすると、加速を付けたまま壁に投げつける。 思ってもみなかった突然の激痛に、赤ちゃんゆっくり霊夢1は正気を取り戻して悲鳴を上げた。 「い、い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!!」 口から餡子を吐き出しながら苦しみ悶える。 ゆっくりれみりゃはそんな赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭上に陣取り、赤ちゃんと比較して三倍以上もある大きさの身体でプレス攻撃を仕掛けた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 絶叫。 ゆっくりれみりゃはその声に満足した様子で、またプレス攻撃をする。 何度も、何度も。 「や゛めでぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 明らかに殺すことが目的ではない手加減した攻撃。 食べるためではなく、苦しめるためだけの攻撃に、赤ちゃんゆっくり霊夢1はただひたすら泣き叫ぶ。 苦しい。 痛い。 助けて。 そういった感情が、見ている俺のほうにも伝わってくるようだ。 だけど、ゆっくりれみりゃは攻撃の手を休めない。 もうそろそろ死ぬ、といったところでプレス攻撃を止め、赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭に齧り付き、中の餡子を吸い上げ始める。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃ!!! や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! れ゛いむ゛のあ゛ん゛ごずわな゛いでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 身体の中身がどんどん失われていく感覚。 段々と、赤ちゃんゆっくり霊夢1の顔から生気が抜け落ちていく。 しかし後ちょっと、というところで、ゆっくりれみりゃはまた動きを止めた。 今度は赤ちゃんゆっくり霊夢1の身体に自分の身体を押し付け、直にそのまま押し潰そうとする。 先刻のプレス攻撃と比べて、一瞬の激痛が何度も往復するのとは違う、永劫に感じられる苦しみが続く拷問。 激しい圧迫感、赤ちゃんゆっくり霊夢1は瀕死で朦朧としているが、痛みにびくんびくんと身体を震わせる。 もう悲鳴を上げる元気もないのだろう。 ただ、掠れた呻き声を上げながら、苦痛の涙でぐしょぐしょになった顔を激痛で更に歪ませるだけ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢1は耐えられる限界を超え、身体のあちこちから餡子を撒き散らせながらぷちっと潰れ、絶命した。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは大勝利、とばかりに軽快に飛び回る。 復讐を完遂させて満足なのだろう。 幸せそうな笑顔で、飛び散ったゆっくりの死体をぱくぱくと食べ始めた。 「うー♪ うまうまー♪」 「お゛ね゛ぇぢゃん゛だぢがぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ぁぁ!!!」 その光景を見て、滂沱の涙を流すのは箱に閉じ込められ、唯一死亡を免れた姉妹の末っ子。 その泣き顔にクるものを感じながら、俺は未だに「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言い続けているゆっくり魔理沙の箱を蹴り、言ってやった。 「おい、もういいぞ」 「……ゆっ?」 「もう全員死んだ。良かったな、お前の言ったとおり食べて貰えて」 「……う゛わ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」 ああ、いい。 何度聞いても、ゆっくりの絶望の悲鳴というものはいいものだ。 その後、俺はゆっくりれみりゃを捕まえ、元々入っていた箱に再び閉じ込めた。 こいつにはまだ用がある。後でまた出してやるからな。 で。 七匹もいた赤ちゃんゆっくりたちも、ついに残すところ一匹だけとなってしまった。 可哀想なのでこいつだけ森に返してやろう……なんて気はない。 だが、そろそろゆっくり魔理沙も精神が限界に来ている。 さっきから「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」みたいな感じでボケーっとしている姿は、誰が見ても廃人一歩手前だ。 壊れると、楽しみがなくなってしまうからな。 なので、いい加減子供と再会させてあげることにした。 ゆっくり魔理沙と赤ちゃんゆっくり霊夢7を箱から出してやる。 感動の親子の再会だ(いや、ずっと顔は見えていたが)。 「れ……れいむ……れいむぅぅぅ!!!」 子供の姿が手に届く場所にあると認識したゆっくり魔理沙は、もう離さないとばかりに赤ちゃんゆっくり霊夢7に駆け寄った。 色々辛いこともあったが、これからは二人仲良くゆっくりしていこう! そんな感じで喜色満面の笑顔を浮かべている。 だが。 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆっぐりぃぃぃぃ!!?」 突然、娘に腹の部分(?)を噛み付かれ、悲鳴を上げた。 「な、な゛にずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 所詮プチトマト程度である大きさの赤ちゃんゆっくりに噛み付かれた程度、成長してバレーボール程度になった成人ゆっくりにとって箪笥の角に小指をぶつけたくたいの痛みでしかない。 だが、相手が自分の娘というのなら話は別だ。 身体の痛みより、心の痛みのほうが何倍も自分を傷付けることだろう。 「う゛る”ざい゛! ゆっぐりじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!! や、やめてねっ!!! お母さんのからだを食べないでねっ!!!」 「お゛まえな゛んが、お゛があざんじゃな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!!」 痛みにぶんぶん身体を捩じらせ、振りほどこうとするゆっくり魔理沙。 だが怒りに濡れる瞳の赤ちゃんゆっくり霊夢7は、死んでも離さないとばかりに噛み付くのを止めない。 そこにいるのはゆっくりすることなどもはや眼中にない、憎悪の塊。 自分の姉妹全員を悉く皆殺しにして悦に浸っている母を抹殺しようとする怒りの権化。 俺が誘導したとはいえ、なんという勘違い。なんという思い込み! 感動しすぎてちょっと涙が出てきた。 「ぢがう゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! お゛があざんはれ゛い゛むだぢを゛だずげよ゛う゛どじだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「う゛ぞづぎま゛りざはゆ゛っぐり゛じな゛いでじねぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「い゛だぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁっ!!? い、い゛……い゛い゛がげんに゛゛じでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛べぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!?」 お、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ゆっくり魔理沙が怒声を上げた。 力強く跳躍して自分の皮ごと強引に娘を吹き飛ばすと、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、赤ちゃんゆっくり霊夢7に体当たりを仕掛ける。 「ま、ま、まりざがどれだけくろうしたのか、分かってるのぉぉぉ!!?」 「ゆぎぃぃぃぃぃ!!?」 「それなのに、み、みんなでゆっくりしねって……そんなのひどすぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「やめでぇぇぇぇ!!! れ゛いむのあん゛ごはみでぢゃうよ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「まりざ、もっどゆっぐりじだがっっだのにぃぃぃぃ!!! れいむだぢがぁぁぁぁぁ!!!」 「いだいよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!! ごめ゛んなざい゛ずる゛がらゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 何度も何度も体当たりされて吹き飛ばされる赤ちゃんゆっくり霊夢7は、もう自力で動けないくらい重傷だ。 だが、涙で視界がぼやけ、更に怒りでいっぱいいっぱいのゆっくり魔理沙は、そのことに気付かない。 「おがあざんはおがあざんなんだよぉぉぉ!!! ちゃんどわがっでるのぉぉぉぉぉぉ!!?」 「わ、わがっ……ゆぴっ……も、もう……ぴげぇっ」 「だいへんなのはれ゛いむ゛だぢだけじゃないんだよぉぉぉ!!? ま゛りざだっでゆ゛っぐりでぎながっだんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「ゆっ……じだ……だよ……」 「う゛わ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あぁあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛ぁ゛ぁあ゛ぁっ!!!」 「……」 「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!」 「ストップ、そこまでだ」 事の成り行きを見守っていた俺は、事態が終わったことに気付いてゆっくり魔理沙の身体を持ち上げた。 未だ興奮冷めやらず、といった様子でふーふー荒い息をついているゆっくり魔理沙は、逃れようとじたばたもがく。 「は、はなしてねっ! まりさはまだ……」 「下をよく見ろ」 「……ゆっ?」 言われて、はっと気付いたようにゆっくり魔理沙は視線を下に移す。 そこには、 「……」 物言わぬ亡骸と化した潰れ饅頭が転がっていた。 「ゆ゛、ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」 「いやー、すごい殺しっぷりだったな! 自分が気に入らないなら子供だって簡単に殺す! 酷いゆっくりだな、お前は!」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!! ま゛りざはぢがう゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「えー、どう違うんだよ。今さっき自分で殺したんじゃないか。自分の子供を。助けてって言ってたのに!」 「う……う、う゛る゛ざぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁい゛!!! も゛どはお゛兄ざん゛がゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ひとだがら゛い゛げな゛い゛ん゛でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「はぁ? 何言ってるんだ、俺はちゃんとお前にも答えられる問題を出してやったぞ。それをゆっくりしすぎて答えられなかったんだから、お前が悪いに決まってるだろ」 勿論生死に関わる状況に追い込んだのは俺だから俺が悪い。 だけど子供を殺したばかりの罪悪感の塊であるゆっくり魔理沙は、俺の言葉を鵜呑みにしてしまう。 元々、悪いことをしたという負い目はあったのだ。 箱に詰められたときに、それに気付いていた。 そのまま全員殺されていてもおかしくはなかった。 でも、生き延びることを許された。 そして、助かるチャンスはいくらでもあった。 どれもこれも、無理難題――例えば変形してみせろとか、大空を舞ってみろとか、赤ちゃんを全員食えとか――ではなかった。 ゆっくりせずにちゃんと考えれば、答えられていたはずなのだ。 だけど、答えられなかった。 何故? それは。 自分が、ゆっくりしていた、から。 赤ちゃんを助けるために、真に全力ではなかった、から。 それに気付いた時、ゆっくり魔理沙の瞳から涙がぽろりと零れた。 今までのように騒いだりしない。 ただ、何かを悟ったような、そんな憑き物が落ちたような顔だった。 「……ころして」 「なに?」 「まりさをころしてね……赤ちゃんたちがいないなら、もうゆっくりできないよ……」 俺は驚いた。 まさかゆっくりが自分の殺害を依頼するなんて。 それ程までに、自分の子供が大切だったのだろう。 仲間のことはすぐ忘れたというのに。 過去に何かあったのだろうか。 ……まぁ、興味ないけど。 「殺して欲しいのか?」 「うん……ゆっくりせずにころしてね……」 「だが断る」 「……ゆっ!?」 ゆっくり魔理沙が驚愕の表情で俺を見上げる。 俺はニコリと、天使のような慈愛の表情を浮かべた。 「俺は自分の手で何者かの命を奪うのは大嫌いなんだ。だから、お前は殺さない」 だって、殺すと反応がなくなってつまらないから。 「もっと苦しんでもらうよ、ゆっくり魔理沙」 続く。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/931.html
※体付きのゆっくりれみりゃとゆっくりパチュリーが出ます。 嫌な人は見ない事をオススメします。 「もっと・・・そう、丹念にね。歯なんか立ててみなさい。無い首へし折るわよ」 紅魔館のメイド長十六夜咲夜は一匹のゆっくりれみりゃを飼っている。 別に深い意味は無い。主に辞めるように言われればすぐにでもこの子を捨てただろう。 しかし、主は咲夜の部屋から連れ出さないという条件のみで飼う事を許した。 「もう、とろいわね。もっと音を立てて、そう」 ゆっくりれみりゃは珍しい体付きと呼ばれる個体だった。 紅魔館周辺にはたまにいるらしいが、人里では滅多にお目にかかれないらしい。 そんな貴重な個体だったが、十六夜咲夜にとってはただのラブドールでしかなかった。 ゆっくりれみりゃは言われた通り、丹念に咲夜の足を舐る。 それも紅魔館を一日中歩き回り、汗で蒸れた靴下ごと。 最初の頃は嫌がっていた。プライドからか汗の臭いが不快だったのかは知らない。 しかし、二度ほど足を根元からへし折ってやるとそうも言わなくなった。 今はその方法では無理だ。手の掛かる子になってしまったと咲夜は嘆いていた。 「よくできたわね。ご褒美を上げる」 「うー、うー、ごほうびぃだどぉー」 ゆっくりれみりゃはニコニコしながら咲夜の前に立つ。 咲屋はしゃがみこみ、ゆっくりれみりゃと視線を同じ高さに持ってくる。 そして、パチンと乾いた音が部屋に響く。 「いだぁいどー、もっとぉー」 涙を流しながらもゆっくりれみりゃは笑顔だ。 ご褒美とはこのビンタの事、ある程度痛めつけた頃から起こった変化。 それはゆっくりれみりゃが被虐を快楽と感じるようになったことだ。 「まだ足りない?」 「うー、もっどごほうびぃほしぃどぉー」 「じゃ、脱いでベッドに上がりなさい」 服を少し恥ずかしそうに脱ぐゆっくりれみりゃ。 マジックテープで前だけ止めてある簡単な服、ゆっくりれみりゃも何度も練習すればするりと脱げるようになる。 それでももじもじと脱ぐのは気恥ずかしさからだろうか、のろのろやっていればぶたれるという打算からだろうか、 見かねた咲夜が手伝おうとするが、 「うー!れみりゃ、ひどりでぇできぃるもーん」 「じゃあ、もたもたしないで頂戴。このグズ、何一つ自分でできないくせに」 のろのろとビリビリ音をさせながら前を外し、右手、左手とのそのそ服を脱ぐ。 パンツ一枚になると、すぐに咲夜に押し倒される。 右の頬を抓られ、左腕は咲夜の左手でがっちり掴まれており、その左手は次第に力を込めていく。 「いだいいだい!!うー!!うー!!」 暴れるゆっくりれみりゃ。しかし、その顔は言動とは裏腹に笑顔だった。 「うるさいわね。静かにできないの!!」 鈍い音と共に左腕を本来曲がらない角度にまで曲げてやる。 「ふふ、今度はどこを曲げてやろうかしら」 ゆっくりれみりゃは嬉しそうにうーうーと鳴いた。 「咲夜さん、すっかりSMに凝っちゃって・・・」 図書館の地下倉庫、小悪魔は一生懸命縄を吊り上げる。 「これぐらいかな・・・咲夜さんを見てるとサディストのSはサービスのSって言われるのがよく分かります」 「むぎゅー、やめでー、いだいー!!!」 「あはっ、そんなに痛いなら今すぐにでも死ねば良いのに。それは怖いんでしょ?無様ねぇ」 小悪魔は一本鞭を取り出し、ヒュンヒュンと空を切る。 「私の場合は性的嗜好からじゃないから、正確にはサディストではないのですけれど。分かります?」 「むきゅ?!わがらない!!いだいがらはやぐおろじで!!!」 体付きのゆっくりれみりゃより珍しい体付きのゆっくりパチュリー。 人里の愛好家の元に持って行けば、一年は金に困らない生活ができるほどの額が提示されるが、 そんなもの小悪魔には何の魅力も無かった。 ゆっくりパチュリーの手に釘を打ち込み、それに縄をくくり吊るし上げる。 万歳したまま宙に浮いているという、なんとも間抜けな格好をしていた。 「分からないんですか・・・」 小悪魔が鞭でゆっくりパチュリーを叩く。 「私は心からお前達が大嫌いなんですよ。分かります?大好きな主の名前を名乗ってるお前達が本当に大嫌いだからこんな事をして差し上げてるんです」 今度は頬を鞭で叩く。頬が腫れ、抗議の声をあげるが、小悪魔はただ微笑むばかりだ。 「私もこんな事はしたくないんです。こんな破廉恥な事。でも、ただ中身を抉り出してだけでは私の気が一向に治まらないもので」 また鞭で叩く。また、また。何度も何度も叩く。 「むぎゅん・・・もやめで、パチュリーがわるがっだです。ごめんなざい。ゆるじでぇ・・・」 「あらあら、謝罪なんかよろしいのに。別に謝罪で許されるとかどうとかの問題ではありませんので」 鞭が唸り、ゆっくりパチュリーの身体をついには切る。傷口は生クリームが漏れ出す。 「延々と泣き喚いてください。その方が私にはよっぽど謝罪になります」 小悪魔は鞭を置き、獲物をフランベルジェに持ち変える。 「まだこういった物は咲夜さんが必要としませんから。私が自由に使えるんですよ」 自慢するかのように波打つ刀身をゆっくりパチュリーに見せ付ける 「やめで、またいだいごとずるのね。むぎゅ!!!」 「せいかーい」 吊るされている腕にフランベルジェは深々と刺さり、抜かれる。 細い刀身のせいで腕は完全には切られていない。 しかし、ゆっくりパチュリーの重さで繋がっている腕の一部が裂け始める。 「むぎゅー!!ぢぎれるぅ!!」 「だったら軽くして差し上げますよ」 今度は刀を振りぬく。 ゆっくりパチュリーの両足が地面に転がる。 切られた足の断面からだらだらと生クリームが流れ出る。 「それではあなたが絶命するあと数分間、私は何もせずゆっくりする事にします」 小悪魔は古ぼけた木箱に腰掛けると本を読み始めた。 「はぁ・・・はぁ・・・」 ゆっくりれみりゃはすっかり気を失っている。 両腕は折られ、翼は毟り取られ、片方の足が無い。 咲夜は肩で息をしながら、共有のシャワー室まで歩く。 「最悪・・・ベタベタじゃない」 身体についた油のぬるぬるを入念に洗う。 「あれ、咲夜さんも今頃シャワーですか?」 「え?えぇ・・・あなたも?司書の仕事も大変ね」 「ふふ、仕事が大変なのはお互い様ですよ」 小悪魔は鼻歌交じりにスポンジを泡立てる。 「あら、自前の石鹸?凝ってるのね」 「ええ、油汚れもバッチリ落とせます」 「いいわね。少し貸してくれない?」 「いいですよ」 そうして、二人は肉汁と生クリームの汚れを落とした。 ~あとがき~ 体付きだと虐待方法に幅は広がるけど、人間にやるそれの応用ですね そうすると「ゆっくり虐待」としてのオリジナリティが・・・難しいです by118 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/174.html
ここはゆっくり加工所内の実験室。哀れな実験体が今日も運び込まれる。 今回の実験体はゆっくりれみりゃ。 希少種と言われているが、紅魔館周辺に比較的多く生息しているため 定期的に加工所職員が捕獲している。 今のところ数が減ったという兆候はない。 さっそくゆっくりれみりゃが、30cm四方程度の狭苦しい透明ケースに入れられて 運び込まれてきた。 「ぅー、ぅー・・・」 ゆっくり種に効くという加工所特製の催眠ガスで眠らされているようだ。 左右に生えた翼で顔を押さえ、静かに寝息を立てている。 「ミーティングの通り、今日の実験内容は ゆっくり種間の餡の移植と、それによって起こる外的・内的変化の観察だ」 そこへケースに入れられたゆっくりれいむが、やはり睡眠状態で運び込まれてくる。 「主任、こちらも準備できました。」 「うむ、では始めよう。まずはゆっくりれいむの頭頂部を切開する」 と言っても全身が頭のようなものだが、主任は慣れた手つきで ゆっくり霊夢の髪(体毛?)に結えてあるリボンを取ると、体を両手で掴み ぼてっと実験台へ置いた。 「ゅ・・・ ゅ・・・」 これから何が始まるかも解らず、間抜けにヨダレのような粘液を 半笑いの口から出して眠っているゆっくりれいむ。 カミソリを手にした主任が片手で饅頭を固定し、おもむろにゆっくり霊夢の髪を剃り始めた。 ジョリ、ジョリ・・・ ものの数分でゆっくりれいむの髪は全て剃られ、ツルツルとなった。 「ゅぅぅ・・・ ゅぅ・・・」 それでも饅頭は起きない。 「今回はお前がやってみろ」 主任が部下Aに命じると、部下Aはメスを取り出し、部下Bが押さえつける ゆっくりれいむの頭頂部にメスを入れた。 スーッと簡単に皮を切り裂いたメスは円を描いて一周し、丸い切り跡を残した。 丸く切られた皮をペリペリと丁寧に剥がす。 皮を剥がすと中から甘い臭いが漂ってくる。ゆっくりれいむの中身である餡が露わになった。 ちなみに餡は粒餡であった。 「よし、ここからは手早く行くぞ」 主任の言葉と共に、部下Bがヘラを使い中の餡を外のボウルに移し替える。 「・・・ゅっ ・・ゆっゆっ」 ゆっくりれいむは自分の体から餡が取り出されるたびに、寝ながら譫言のように呟いている。 半分ほど取りだしたところで、ボウルに入った粒餡をハンドミキサーでかき混ぜ、漉し餡にする。 その音のせいか、頭頂部にぽっかり穴を空けたゆっくりれいむの目がゆっくりと開き始めた。 「ゅ・・・ゆ? ゆゆ?? ・・・ゆ゙! ゆ゙ゆ゙ゆ゙!!!」 ゆっくりれいむは中身の餡を半分も取り出されたせいか、意識ももうろうで、体も痙攣している。 ただ目を充血させ、だらしなく開いた口からヨダレを垂れ流し、うめき声を上げるのみであった。 「起きたか、しかし何もできまい。放っておけ」 意に介さず、今度はゆっくりれみりゃを別の実験台へと置く主任。 部下Bがボウルのこしあんを30cmほどの長さの太い注射器で吸い上げると、 おもむろにその注射器をゆっくりれみりゃの後頭部にぶすっと刺す。 「ゔ!!」 反射的に翼を広げ、カッと目を見開き、歯を剥き出し、声を上げるゆっくりれみりゃ。 すっかり目が冷めたようだが、意に介さず注射器の中の餡を注入する。 「ゔゔゔゔゔゔ!!!」 普段は口腔から他のゆっくり種を摂取するゆっくりれみりゃだが、直接他種の餡を 注入されたことで、れみりゃの中身である挽肉と直に混じり合い拒否反応が出ているようだった。 「ふむ、まあ予想通りの反応だな。もうすこし注入してみろ」 指示通り、注射器の中身を全て注入し、再び餡を詰め、注射する。 「ゔゔゔゔゔう!!!ゔゔゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!! ぁ゙・・・・・・・!!!」 翼をピンと伸ばし、鬼気迫る絶叫と形相のまま、ゆっくりれみりゃは固まってしまった。 「どうした。死んだか?」 主任が手を触れようとすると、みるみる黒ずんでいくゆっくりれみりゃの体。 そして頭の帽子を突き破って蔦が伸びてきた。 「・・・これは・・・そのまま動かすな。とりあえず休憩にしよう」 「主任、こっちはどうしますか」 部下が変わり果てた姿のゆっくりれいむを指さす。 「ゅ・・・ゅ・・・」と呟くのみで白目を剥いたまま何の反応もない。 「そいつはもういらん。硫酸で処理しとけ」 「わかりました」 30分後。 ゆっくりれみりゃは黒炭のように朽ち果て、伸びた蔦の枝からは 紅白の饅頭と、羽のようなものが生えかかった饅頭が合わせて5つほど実っていた。 「これは思わぬ収穫だったな。もう紅魔館に近づく必要もない。すばらしい実験結果だった。」 携わった職員達は達成感を胸に白衣を脱ぎ、今日の業務を終了した。 これで臨時のボーナスは間違いないだろう。 胸躍る主任は、帰り道に出会ったゆっくりれいむ家族から赤ちゃんれいむを2匹奪い、 1匹を丸かじりし、もう1匹を片手で握りつぶし、上機嫌のまま帰路についた。 選択肢 投票 しあわせー! (20) それなりー (7) つぎにきたいするよ! (27) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1352.html
前 さて。 小一時間ほど休憩したところで、俺はゆっくり魔理沙へのお仕置きを再開することにした。 残る赤ちゃんゆっくり霊夢は四匹。 赤ちゃんゆっくりアリスを喰らって空腹感を満足させた姉妹たちは、家族が殺されたにも関わらずに箱の真ん中でのんびりと昼寝をしていた。 やれやれ、自分たちの立場が分かっているのかね? ゆっくり魔理沙は相変わらず大きさに合わない小さな箱に圧縮されて息苦しそうにしながら、殺された姉妹のことを思い出しているのか、現在の状況を振り返っているのか、ゆぐゆぐと嗚咽を洩らしていた。 その表情、たまらん。 俺の愛するゆっくり霊夢は猿轡を噛まされながら沈んでいる様子だった。 もうちょっとだけ我慢してほしい。 すぐ終わるからさ。 「おーい、起きろー」 俺は姉妹の箱を両手で持ち、がたがた揺らした。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちは驚いて跳ね起き、混乱した頭で四方八方に飛び回る。 「ゆっ、じしんだよ!?」 「ゆゆゆ、すごいゆれてるよ!」 「ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっくりさせてえええええぇぇぇ!!!」 ああっいい! いいよその表情! 悲鳴! ゾクゾクする! 俺は悦に浸りながら振動を止め、ゆーゆー泣き出した姉妹たちににっこりと笑いかけた。 「やぁ、起きたかい?」 「ゆっ、おにいさん!?」 「いまのはおにいさんがやったの!?」 「れいむたちのおひるねのじゃましないでね!」 「おにいさんとはゆっくりできないよ!」 相変わらず自分たちの立場を理解していない上から目線。 こいつらにもう少し知能があれば、第二のペットにしてやるのに…… とりあえず怒りの矛先が俺に向けられるのは何となく申し訳ない気分になってしまうので、責任を転嫁させてもらうことにしよう。 「悪いね。君たちのお母さんに、君たちをゆっくりさせるなと頼まれたんでね」 「ゆっ!?」 姉妹たちが母親を見る。 ゆっくり魔理沙は寝耳に水の衝撃発言に呆気に取られて反応が遅れる。 そりゃそうだろう。いきなり自分の名を出され、しかも事実無根の罪を被せられたのだから。 いやまぁ、事実無根の罪を被せるのは今に始まったことではないけど。 当然のように、ゆっくり魔理沙は否定の言葉を口にしようとする。 「うそだよ! まりさはそんなこと言わないよ!」 「って、言ってるけど、信じる?」 普通のゆっくり家族なら、母親を信じ、俺をなじる。 だが、この家族は既に普通の家族ではない。 俺がそうした。 「うそいってるのはおかあさんのほうだよ!」 「れいむたちをゆっくりさせないなんてひどいおやだね!」 「もうおやじゃないよ! おねえちゃんたちをころしたわるいゆっくりだよ!」 「わるいゆっくりはゆっくりしね!」 「「「ゆっくりしね!! ゆっくりしね!!!」」」 もう何度目になるか分からない、ゆっくりしねコール。 憤怒と憎悪が込められたそれは、本来決して母親に向けられるべきものではない。 しかしこの赤ちゃんゆっくりたちにとって、目の前のゆっくり魔理沙が既に母親でもなんでもなかった。 姉妹を見殺し。 食事を独り占め。 昼寝すら邪魔をする。 果たして、こんな自分たちをゆっくりさせないゆっくりが存在していいのだろうか。 否。 母と呼んだ存在はもう記憶の彼方に抹消した。 目の前にいるのは『敵』だ。 自分たちのゆっくりを脅かす敵なのだ。 ――なんと素晴らしい、明後日の方向に捻じ曲がってしまった的外れの怒りか! 俺は感動の涙と笑いが同時に来てしまい、思わず顔を背けてしまった。 こいつら面白すぎる。 「ゆっくりしね!」 「ゆっくりせずにしね!」 「おにいさん、あのまりさをころしてよ!」 「そうだよ! れいむたちがゆっくりできるようにまりさをころして!!!」 おおぅ、とうとう俺にまでお願いし始めた。 いかなる手段を用いても、目の前に鎮座して姉妹たちをいじめては喜んでいる(そう赤ちゃんゆっくりたちには見えている)ゆっくり魔理沙を排除したいのだろう。 で。 その対象、極めて冤罪(いや罪はあるか)を多くかけられているゆっくり魔理沙はというと、 「な゛んでぞんな゛ごどい゛う゛の゛おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 やっぱり咽び泣いていた。 休憩を挟んだおかげで、体力や気力は少し持ち直したらしい。廃人……いや廃ゆっくりにはまだならずに済みそうだ。 いいねいいねー。 泣くゆっくりはやっぱり可愛いな! 涙を流して必死な表情のゆっくりだけを集めた家に住めたら俺死んでもいい。 管理が大変なんで自分ではやらないけどさ。 これでも現実は見ているつもりである。 「では、準備があるので少々お待ちを」 俺は牙を剥いて(比喩)ゆっくり魔理沙を威嚇している姉妹たちを置いて一旦外に出た。 太陽はまだ昇ったばかりで、気温はまだまだ涼しいとは言い難いが、それでも日中の熱気に比べれば大分緩やかだ。 なんか濃密な時間を過ごしたせいで、もう昼間になってた気がしていたんだが……まだ八時といったところか。 俺は加工所で購入した二つの箱のうち、赤ちゃんゆっくりアリスが入っていたほうではないもう一つの大きな箱を手に取った。 大きいといってもサッカーボールが収納出来る程度の大きさである。 木造の箱は中身が暴れているせいか、ごとごと揺れていた。 活きがいいな、これなら期待出来そうだ。 俺は箱を持って家に戻ると、わざと音を立てて床に箱を置いた。 予想通り、好奇心旺盛な赤ちゃんゆっくり霊夢たちが先程までの怒りをすぐに消し、興味津々に眺めだす。 「ゆっ、なにそれ?」 「ゆっくりできるの?」 「ゆっくりしていってね!」 うむ、ではご期待に添えようじゃないか。 俺は全員の注目が集まっていることを確認すると、勢いよく箱の蓋を開いた。 途端、 「うー!」 中からゆっくりれみりゃが飛び出し、家の中を羽ばたきだした。 赤ちゃんだったゆっくりアリスとは違い、こちらはちゃんと成人(成ゆっくり?)したサイズである。 無論、赤ちゃんゆっくり霊夢など一口で食い殺してしまうだろう。 突然の捕食種の登場に、赤ちゃんゆっくりたちは目に見えて怯えだし、固まってぶるぶる震えだした。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れ、れみりゃだ、こわいよー!」 「ゆっくりできないよ、たすけてーっ!!!」 「れいむたちはおいしくないよぉぉぉ!!?」 ゆーゆー泣き出す姉妹たち。 くはっ、萌え狂う! っと、鼻血を出している場合ではない。 「れ、れみりゃはあっち行ってね! まりさたちに近付かないでね!」 ゆっくり魔理沙は身動き出来ないながらも、必死にれみりゃを追っ払おうと睨みつけている。 ゆっくりれみりゃを怖がるのは何も赤ちゃんだけではないからな。 俺のマイスウィートラブリーエンジェル・ゆっくり霊夢も怯えて固まってしまった。 ああごめんよ、我慢してね。 俺はゆっくりれみりゃが入っていた箱の底からスプレー型の小瓶を取り出すと、ゆっくり霊夢の箱に小瓶の中身をしゅっと吹きかけた。 「う、うぁー!?」 卑しくもこの中で一番丸々太っていて美味しそうなゆっくり霊夢の周囲を旋回していたゆっくりれみりゃは、霧状の粉末がゆっくり霊夢の箱に飛び散るのと同時に慌てて離れだした。 あぅ、泣き顔のれみりゃもかわええのぉ。 でも胴体付きは駄目だ。流石の俺もあれだけは可愛がれねぇ。 紅魔館の周囲にはあの豚どもがうようよ生息してるのか……あまり想像したくない光景だな。 そういえば咲夜さんも駆除が追いつかないって俺に愚痴を洩らしていたな……って、今はそんなことどうでもいいか。 「えー、注目。このスプレーはゆっくりれみりゃが嫌がる香りを吹き付ける優れものです。これがあればゆっくりれみりゃには襲われません」 「ゆっ!? じゃあはやくれいむたちにちょうだい!」 「ゆっくりしないでいそいでかけてね!」 スプレーの説明をすると案の定、助かりたい一心の赤ちゃんゆっくりたちが騒ぎ出す。 俺はそれを無視して、ゆっくり魔理沙を入れた箱にスプレーを吹きかけた。 「あ、あかちゃんたちも助けてあげてね!」 ゆっくり魔理沙は子供に責められてボロボロになりながらも、それでも子供たちを助けてやってくれと哀願してくる。 うーん、ゆっくり魔理沙にしているのが勿体無いくらい家族思いのやつだ。 二週間前、仲間が殺されたのをケロっと忘れたゆっくりと同一人物とは思えんぞ。 まぁ、箱の中にいる限りスプレーがあろうとなかろうと助かるって分かってない辺りが、ゆっくりのゆっくりたる所以なのかもしれないが。 ああでも香りが付けばゆっくりれみりゃが近寄らなくなるので、その分心労は減るかもな。 「さて、最後はこれだな」 俺は姉妹たちの箱にスプレーを吹きかけた。 途端、安心したようで赤ちゃんゆっくり霊夢たちは大はしゃぎする。 「ゆー♪ これでもうあんしんだね!」 「れみりゃをこわがらなくてすむね!」 「やーいやーい、れみりゃのばーか!」 中にはゆっくりれみりゃを小馬鹿にした顔で貶すゆっくりまで出る始末。 ゆっくりれみりゃは悔しそうに、だけど近づけないのでうーうー遠くから唸っていた。 このうーうーってやつ可愛い。 「とりあえず、これで箱は全て安全地帯となったわけですが」 自分自身にもスプレーを吹きかけ、俺は姉妹たちの箱の前に立つ。 「でも、君たちにスプレーが直接かかったわけじゃないから、箱の外に出ると安全ではなくなるわけです」 「……ゆ?」 「そ・こ・で」 俺は邪悪……もとい天使の微笑みを浮かべて、 「君たちのうち、三匹をそこから出してあげます」 「ゆ、ゆーっ!?」 赤ちゃんゆっくりたちはにわかに騒ぎ出した。 「や、やめてね! れいむたちをここからださないでね!」 「え、なんで? あれだけ出たいって言ってたじゃないか、良かったね!」 「よ、よくないよーっ!?」 「そとにでたられみりゃにたべられちゃうよ!」 「おにいさん、れいむたちをそとにだすまえにれみりゃをゆっくりなんとかしてね!」 「ごめんね! お兄さんじゃゆっくりれみりゃには勝てないんだよ!」 激嘘。 「でも大丈夫! 君たちにはチャンスがあるよ!」 「な、なに!?」 「ゆっくりしないでいってね!」 「今からゆっくり魔理沙に問題を出します。君たちがゆっくりれみりゃに捕まる前に回答することが出来たら、君たちを解放してあげるよ!」 つまりは今までと同じである。 当然、 「ゆっ、それはだめだよ!」 「おかあさんはれいむたちをころそうとしてるもん!」 「おかあさんじゃゆっくりできないよ!」 「おかあさんはころしていいかられいむたちをたすけてね!」 反発が起こる。 今まで助ける機会がありながらも問題に答えず、姉妹たちを見殺しにしてきた母。 今更そんなゆっくりを信用出来るはずがない。 「ぞん゛な゛ごどな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!! ま゛り゛ざはぢゃんどれ゛い゛むだぢを゛だずげる゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして、こちらは信頼を裏切り続けるゆっくり魔理沙。 答えられるはずもない無理難題を押し付けられ、逆恨みを買いまくっているあまりにもゆっくり出来ない哀れな存在。 激しく嗜虐心をそそります、はい。 ぶっちゃけ、そろそろ子供たちを見捨ててもいいと思うんだ。 愛しているのに、その愛が全然、まったく、これっぽっちも伝わらない悲しさ。 同情を買う? いいえ、滑稽です。 「残念ながらルールの変更は認められません。精々、ゆっくり魔理沙が回答に辿り着けることを祈っていてください」 「そんなのしんじられないよ!」 「どうせおかあさんじゃこたえられないよ!」 赤ちゃんゆっくり霊夢たちが発言するたびにゆっくり魔理沙の心がザクザク傷付けられていく。 最っ高! 「何を言っても駄目でーす。それではゲーム、スタート!」 「「「「ゆ、ゆっくりしていってよー!?」」」 「お、おねえちゃーん!!!」 俺は四匹のうち、末っ子だけを残して、三匹を外に出した。 するとすぐに、空腹でイライラと部屋中を飛び回っていたゆっくりれみりゃが、歓喜の表情で突撃してきた。 「ぎゃおー! たーべちゃうぞー♪」 「や、やだぁー!!!」 「ゆっくりやめてね!!!」 「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛お゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくりたちは涙目ながらも生存本能からか高速で散開。勢いを止められず、ゆっくりれみりゃは先程まで三匹がいた床に激突する。 「う、うわぁー!!!」 泣き出すゆっくりれみりゃ。 か、かわえぇ! っと、見とれている場合ではない。 このままでは不公平だしな。 俺はゆっくり魔理沙に向き直った。 「では問題です」 「は、はやく出してね!」 「いやいや、遠慮すんな。いつも通りゆっくり答えろよ」 「ゆっくりできないよ!!! はやくもんだい出してね!!!」 俺の後ろでゆっくりれみりゃに捕獲されないよう、必死に逃げ惑う子供たちの姿が見えているのだろう、ゆっくり魔理沙が俺を急かす。 やれやれ、仕方無いな。 「では問題です。『れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!』これを千回言ったら子供たちを助けてあげるよ」 あ、『問題』じゃねーやこれ。 まぁいいか。 ゆっくり魔理沙は驚いて目を見開いていた。 「そ、そんなこと言えないよ!」 「じゃあ、赤ちゃんをゆっくりれみりゃに食われるのを黙って見てるんだな」 「そ、それはだめだよ!」 「じゃあ言うんだ。途中でつっかえたりしたら、もう一度初めからやり直しだからな」 「ゆっ……」 諦めたように瞼を閉じ、ゆっくり魔理沙は息を吐き出した。 言いたくない台詞を言わなくてはいけない葛藤。 だが、それでも親の愛が勝るのだろう。 ゆっくり魔理沙は大声を上げた。 「れ……れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「おーいお前ら、お母さんがこんなこと言ってるぞー!」 「ゆっ!?」 突然赤ちゃんたちに話を振る俺に驚くゆっくり魔理沙。 ブランコや滑り台などの遊具を使って必死に逃げ惑っている赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、突然の母の暴言にまたも怒りを曝け出す。 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 「やっばり゛おがあ゛ざん゛じゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ち、ちがうよ! おかあさんはれいむたちをたすけようと」 「はいアウトー! 規定の台詞以外の言葉をしゃべったのでもう一度最初からね!」 「ゆっくり!?」 そう、これはどれだけなじられようともゆっくりれみりゃに自分の子供を差し出す台詞を言い続けなければならない拷問。 今頃それに気付いたのか、ゆっくり魔理沙の瞳から涙が止め処なく溢れ出した。 「ひ、ひどいよぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざだぢがな゛に゛をじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「シチュー落っことしたじゃねーか」 もう忘れたのかよ。 「ほら、早く言わないと千回言い終わる前に子供たちが全員食べられちまうぞ?」 「ゆ……」 再びの葛藤。 だがやらないと子供は助からない。 ゆっくり魔理沙は泣き顔で、もう一度言葉を繰り返し始めた。 「れ、れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「れ゛み゛りゃはまりざのあがぢゃんをゆっぐりだべでいっでね! れ゛み゛り゛ゃはま゛り゛ざの゛あがぢゃん゛をゆ゛っぐり゛だべでい゛っでね゛っ゛!!」 糾弾され、涙声になっても、今度は言葉を止めずに言い続けるゆっくり魔理沙。 この全てに絶望したような顔、素晴らしい! これだからゆっくりいぢりは止められないのだ。 さて、ではそろそろ赤ちゃんゆっくり霊夢たちのほうに視線を移してみよう。 「うー! うー!!」 「こっちにこないでねぇぇぇ!!?」 「れいむっ、こっちだよ、はやく!」 「ゆっ、ありがとうおねえちゃん!」 成体のゆっくりれみりゃじゃ潜り抜けられないようなブランコや滑り台の小さな隙間を使い、上手く攻撃をかわしている。 なかなかやるなぁ。もしかしたらペット用ゆっくりになれる素質の持ち主かも。 対するゆっくりれみりゃはかなりご機嫌斜めのようだった。 自分より格下の存在であるゆっくり霊夢、しかも赤ん坊をなかなか捕食出来ないのだから当然だろう。 しかも加工所からここまで、何も食べていないのだ。空腹も怒りに拍車をかけている。 考えなしに広い場所へ行かず、真っ先にこの場所へ陣取った姉妹たちの作戦勝ちといったところかな。 ……まぁ、実はゆっくりれみりゃが嫌がる香りを浴びた箱にぴったりくっついていれば、このゲーム楽に勝てたりするんだけどね。 そこに気付かない辺りは、やはりゆっくりといったところだろう。 「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね……れみりゃは……」 呪詛のようにぶつぶつ呟き続けるゆっくり魔理沙。 その声は、ここにいる全てのゆっくりに聞こえている。 逃げ惑うゆっくり姉妹たちはゆっくりれみりゃの攻撃を避けながら、ずっとその言葉を聞き続けていた。 母でありながら自分たちの死を願う、その言葉を。 何度も、何度も。 そして。 ついに一匹の赤ちゃんゆっくり霊夢が、キレた。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!! う゛る゛ざぐでゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 リボンの番号を見るに三女か、赤ちゃんゆっくり霊夢3が怒りに頬を膨らませてゆっくり魔理沙の元へ走り出した。 どうにかしてゆっくり出来ない声を止めようと考えたのだろう。 しかしそれは、なんという自殺行為。 「うー♪」 「おね゛え゛ぢゃん、に゛げでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「……ゆっ!?」 周囲に障害物はない。 身を隠す場所は、何も無い。 ゆっくりれみりゃはこの上なく無邪気な笑顔を浮かべ、何も遮るもののない赤ちゃんゆっくり霊夢3までの距離を、高速で飛翔し零とした。 妹の悲鳴に赤ちゃんゆっくり霊夢3が振り向けば、そこには眼前にドアップで迫るゆっくりれみりゃの姿。 「うー!」 「ゆゆゆ、ゆっくりまっ……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 頭上へと昇ったゆっくりれみりゃは、その身体を急降下させて赤ちゃんゆっくり霊夢3を押し潰した。 飛び散る餡子。 平べったくなった饅頭の肉体。 「れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ゛……ゆ゛べっ……」 姉の悲痛な悲鳴。 それに身体を弱々しく震えさせながら、反応する赤ちゃんゆっくり霊夢3。 大量の餡子を吐き出しながら、それでも赤ちゃんゆっくり霊夢3は生きていた。苦しそうに呻きながら、必死に現在の状況から逃げ出そうともがいている。 無論、それを見逃すほど、ゆっくりれみりゃは捕食種としてお人好しではない。 「うっうー♪ たべちゃうぞー♪」 「ゆびゅぅ!? れ、れ゛い゛む゛のがら゛だをだべな゛い゛でねっ!?」 赤ちゃんゆっくり霊夢3の頬に齧りつくゆっくりれみりゃ。そのまま少しずつ、ゆっくりと味わうように咀嚼していく。 皮が千切れ、餡子が溢れ出る都度、赤ちゃんゆっくり霊夢3は絹を裂くような悲鳴を上げる。 「や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「うー♪」 しかしその悲鳴も、ゆっくりれみりゃにとっては食事を彩る調味料としかならない。 いや、それとも、ゆっくりの悲鳴など鼻から耳に届いていないのか。 兎にも角にもゆっくりれみりゃは上機嫌で、赤ちゃんゆっくり霊夢3の身体を全て完食してしまったのだった。 「ま゛、ま゛り゛ざのあがぢゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!」 ゆっくり魔理沙は耐え切れず、慟哭の涙を流した。 自分の言葉のせいで、子供が死んでしまった。 その嘆きは如何ほどのものなのだろうか。 ……まぁ、それはそれとして。 「はいアウトー。指定された言葉以外の発言をしたからもっかい最初からねー」 「ゆっぐ!?」 ゆっくり魔理沙はしまった、といった風に目を見開いた。 そう、これは子供が食べられてしまっても、自制しなければならない罠でもあるのだ。 ゆっくり魔理沙は少し先のことも考えずに本能のまま行動してしまった結果、ただでさえ少ない救出の確率を更に下げてしまったのだ。 慌てて再び「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言うが、もう遅い。 先程までの70回くらいは全てパーだ。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは口の周りに餡子を付けながら、上機嫌に羽根を広げて舞い上がる。 そして先程残してきた姉妹、残り二匹の元へと向かった。 「お゛ね゛えぢゃんがぁぁぁ……」 「ゆっ!? ゆっくりしてたらたべられちゃうよ! ここからはなれようね!」 ゆっくりれみりゃの接近に気付いた赤ちゃんゆっくり霊夢1は姉の死にぐずぐず泣き崩れる妹のリボンを加えて、滑り台の下へと引っ張る。 間一髪。ゆっくりれみりゃの牙は赤ちゃんゆっくり霊夢5を傷付けることなく、逆に超スピード(といってもあくまでもゆっくり基準なのだが)のまま滑り台に激突し、顔面の激痛で大粒の涙を零した。 「う、うぁー! うぁー!!」 顔を真っ赤にして泣き叫ぶゆっくりれみりゃ。頬ずりしたい。 姉妹はその様子を確認すると、今度はブランコの方に移動を開始した。 気付いたゆっくりれみりゃも、ふらふらと後を追う。 「ゆっ、おいかけてきたよ!」 「だいじょうぶだよ! ゆっくりまかせてね!」 心配そうな妹の声に力強く頷き、赤ちゃんゆっくり霊夢1は前方にぶら下がったブランコを口に加えてずりずりと後退し、限界まで引っ張ると口を離した。 勢いよく吹き飛んだブランコは、無防備に近付いてきたゆっくりれみりゃへと一直線に激突する。 ばしん、という思わず目を背けてしまう光景と音。 「うぁーーー!!!」 余程痛かったのだろう、弾き飛ばされたゆっくりれみりゃは、地面にへばりついてわんわんと泣き出してしまった。 萌ゑる。 一方、捕食種への反撃が見事に決まった姉妹たちは、大喜びで飛び跳ねていた。 「ゆっゆっゆー♪ おねえちゃん、すごーい!」 「ゆゆーん♪ ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでいってね!」 二匹して勝利のダンス。箱に取り残されている末っ子ゆっくりも遠目に見える姉妹の活躍にはしゃいでいた。 しかし、勝利の美酒に酔いしれる三匹の餡子脳は、まだ死神が遠のいていないことに気付いていなかった。 突如。 頬をすり合わせて喜びを表現していた姉妹の片方、赤ちゃんゆっくり霊夢3が、赤ちゃんゆっくり霊夢1の眼前から一瞬で消失した。 「…………ゆ?」 赤ちゃんゆっくり霊夢1は何が起こったのか、一瞬では理解出来ない。 妹は何処へ行った。 と。 視界の端に、引っかかるものがあった。 黒い、点々とした影。 それが、何処かへと続いている。 赤ちゃんゆっくり霊夢1は無意識に、その黒い影の先へ視線を移した。 そして。 妹は、そこにいた。 「……」 物言わぬ亡骸となって。 大量の餡子を撒き散らしながら。 「ど、どお゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 泣きながら妹に駆け寄ろうとする赤ちゃんゆっくり霊夢1。 刹那、 ごぅん! 一迅の風が舞う。 赤ちゃんゆっくり霊夢1の頬をかすめ、ブランコが眼前を通り過ぎ、また戻っていった。 餡子を少量、付着させて。 ――つまり、なんだ。 妹は、ブランコとぶつかって、死んだ。 ブランコを動かしたのは自分。 だから。 妹を殺したのは。 「あ……ああぁ……あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛あああ゛あああ゛あ゛あぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢1はこれでもかというくらいの大声量で悲鳴を上げた。 生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきた妹。 それが、死んだ。 自分が殺してしまった。 ゆっくり出来なくしてしまった! 赤ちゃんゆっくり霊夢1は半狂乱になり、しっちゃかめっちゃかに周囲を飛び跳ね、奇声を上げながら床に自分の身体をぶつけ始める。 身体の痛みで、心の痛みを少しでも和らげようとしているのだろうか。 だけど、そんな余裕でいいのかな? 「うー!!!」 ようやく泣き止んだゆっくりれみりゃが、逆襲のために赤ちゃんゆっくり霊夢1の下へと向かう。 悲嘆に暮れて自傷を繰り返す赤ちゃんゆっくり霊夢1は、それに気付かない。 箱の赤ちゃんゆっくり霊夢7は立て続けに姉を失い、泣き叫んでいたため反応が遅れる。 ゆっくり魔理沙は目を瞑って同じ言葉を繰り返す機械のようになってしまっているため、既に見えていない。 「あ゛ぁあ゛あぁ゛ぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛ああ゛……ゆ゛っぐり゛ぃ!?」 「うっうー!!!」 ゆっくりれみりゃは飛び跳ねる赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭を見事にキャッチすると、加速を付けたまま壁に投げつける。 思ってもみなかった突然の激痛に、赤ちゃんゆっくり霊夢1は正気を取り戻して悲鳴を上げた。 「い、い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!!」 口から餡子を吐き出しながら苦しみ悶える。 ゆっくりれみりゃはそんな赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭上に陣取り、赤ちゃんと比較して三倍以上もある大きさの身体でプレス攻撃を仕掛けた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 絶叫。 ゆっくりれみりゃはその声に満足した様子で、またプレス攻撃をする。 何度も、何度も。 「や゛めでぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」 明らかに殺すことが目的ではない手加減した攻撃。 食べるためではなく、苦しめるためだけの攻撃に、赤ちゃんゆっくり霊夢1はただひたすら泣き叫ぶ。 苦しい。 痛い。 助けて。 そういった感情が、見ている俺のほうにも伝わってくるようだ。 だけど、ゆっくりれみりゃは攻撃の手を休めない。 もうそろそろ死ぬ、といったところでプレス攻撃を止め、赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭に齧り付き、中の餡子を吸い上げ始める。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃ!!! や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! れ゛いむ゛のあ゛ん゛ごずわな゛いでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 身体の中身がどんどん失われていく感覚。 段々と、赤ちゃんゆっくり霊夢1の顔から生気が抜け落ちていく。 しかし後ちょっと、というところで、ゆっくりれみりゃはまた動きを止めた。 今度は赤ちゃんゆっくり霊夢1の身体に自分の身体を押し付け、直にそのまま押し潰そうとする。 先刻のプレス攻撃と比べて、一瞬の激痛が何度も往復するのとは違う、永劫に感じられる苦しみが続く拷問。 激しい圧迫感、赤ちゃんゆっくり霊夢1は瀕死で朦朧としているが、痛みにびくんびくんと身体を震わせる。 もう悲鳴を上げる元気もないのだろう。 ただ、掠れた呻き声を上げながら、苦痛の涙でぐしょぐしょになった顔を激痛で更に歪ませるだけ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢1は耐えられる限界を超え、身体のあちこちから餡子を撒き散らせながらぷちっと潰れ、絶命した。 「うっうー♪」 ゆっくりれみりゃは大勝利、とばかりに軽快に飛び回る。 復讐を完遂させて満足なのだろう。 幸せそうな笑顔で、飛び散ったゆっくりの死体をぱくぱくと食べ始めた。 「うー♪ うまうまー♪」 「お゛ね゛ぇぢゃん゛だぢがぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ぁぁ!!!」 その光景を見て、滂沱の涙を流すのは箱に閉じ込められ、唯一死亡を免れた姉妹の末っ子。 その泣き顔にクるものを感じながら、俺は未だに「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言い続けているゆっくり魔理沙の箱を蹴り、言ってやった。 「おい、もういいぞ」 「……ゆっ?」 「もう全員死んだ。良かったな、お前の言ったとおり食べて貰えて」 「……う゛わ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」 ああ、いい。 何度聞いても、ゆっくりの絶望の悲鳴というものはいいものだ。 その後、俺はゆっくりれみりゃを捕まえ、元々入っていた箱に再び閉じ込めた。 こいつにはまだ用がある。後でまた出してやるからな。 で。 七匹もいた赤ちゃんゆっくりたちも、ついに残すところ一匹だけとなってしまった。 可哀想なのでこいつだけ森に返してやろう……なんて気はない。 だが、そろそろゆっくり魔理沙も精神が限界に来ている。 さっきから「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」みたいな感じでボケーっとしている姿は、誰が見ても廃人一歩手前だ。 壊れると、楽しみがなくなってしまうからな。 なので、いい加減子供と再会させてあげることにした。 ゆっくり魔理沙と赤ちゃんゆっくり霊夢7を箱から出してやる。 感動の親子の再会だ(いや、ずっと顔は見えていたが)。 「れ……れいむ……れいむぅぅぅ!!!」 子供の姿が手に届く場所にあると認識したゆっくり魔理沙は、もう離さないとばかりに赤ちゃんゆっくり霊夢7に駆け寄った。 色々辛いこともあったが、これからは二人仲良くゆっくりしていこう! そんな感じで喜色満面の笑顔を浮かべている。 だが。 「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆっぐりぃぃぃぃ!!?」 突然、娘に腹の部分(?)を噛み付かれ、悲鳴を上げた。 「な、な゛にずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」 所詮プチトマト程度である大きさの赤ちゃんゆっくりに噛み付かれた程度、成長してバレーボール程度になった成人ゆっくりにとって箪笥の角に小指をぶつけたくたいの痛みでしかない。 だが、相手が自分の娘というのなら話は別だ。 身体の痛みより、心の痛みのほうが何倍も自分を傷付けることだろう。 「う゛る”ざい゛! ゆっぐりじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!!! や、やめてねっ!!! お母さんのからだを食べないでねっ!!!」 「お゛まえな゛んが、お゛があざんじゃな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!!」 痛みにぶんぶん身体を捩じらせ、振りほどこうとするゆっくり魔理沙。 だが怒りに濡れる瞳の赤ちゃんゆっくり霊夢7は、死んでも離さないとばかりに噛み付くのを止めない。 そこにいるのはゆっくりすることなどもはや眼中にない、憎悪の塊。 自分の姉妹全員を悉く皆殺しにして悦に浸っている母を抹殺しようとする怒りの権化。 俺が誘導したとはいえ、なんという勘違い。なんという思い込み! 感動しすぎてちょっと涙が出てきた。 「ぢがう゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! お゛があざんはれ゛い゛むだぢを゛だずげよ゛う゛どじだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」 「う゛ぞづぎま゛りざはゆ゛っぐり゛じな゛いでじねぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「い゛だぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁっ!!? い、い゛……い゛い゛がげんに゛゛じでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛べぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!?」 お、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ゆっくり魔理沙が怒声を上げた。 力強く跳躍して自分の皮ごと強引に娘を吹き飛ばすと、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、赤ちゃんゆっくり霊夢7に体当たりを仕掛ける。 「ま、ま、まりざがどれだけくろうしたのか、分かってるのぉぉぉ!!?」 「ゆぎぃぃぃぃぃ!!?」 「それなのに、み、みんなでゆっくりしねって……そんなのひどすぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「やめでぇぇぇぇ!!! れ゛いむのあん゛ごはみでぢゃうよ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「まりざ、もっどゆっぐりじだがっっだのにぃぃぃぃ!!! れいむだぢがぁぁぁぁぁ!!!」 「いだいよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!! ごめ゛んなざい゛ずる゛がらゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 何度も何度も体当たりされて吹き飛ばされる赤ちゃんゆっくり霊夢7は、もう自力で動けないくらい重傷だ。 だが、涙で視界がぼやけ、更に怒りでいっぱいいっぱいのゆっくり魔理沙は、そのことに気付かない。 「おがあざんはおがあざんなんだよぉぉぉ!!! ちゃんどわがっでるのぉぉぉぉぉぉ!!?」 「わ、わがっ……ゆぴっ……も、もう……ぴげぇっ」 「だいへんなのはれ゛いむ゛だぢだけじゃないんだよぉぉぉ!!? ま゛りざだっでゆ゛っぐりでぎながっだんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「ゆっ……じだ……だよ……」 「う゛わ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あぁあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛ぁ゛ぁあ゛ぁっ!!!」 「……」 「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!」 「ストップ、そこまでだ」 事の成り行きを見守っていた俺は、事態が終わったことに気付いてゆっくり魔理沙の身体を持ち上げた。 未だ興奮冷めやらず、といった様子でふーふー荒い息をついているゆっくり魔理沙は、逃れようとじたばたもがく。 「は、はなしてねっ! まりさはまだ……」 「下をよく見ろ」 「……ゆっ?」 言われて、はっと気付いたようにゆっくり魔理沙は視線を下に移す。 そこには、 「……」 物言わぬ亡骸と化した潰れ饅頭が転がっていた。 「ゆ゛、ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」 「いやー、すごい殺しっぷりだったな! 自分が気に入らないなら子供だって簡単に殺す! 酷いゆっくりだな、お前は!」 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!! ま゛りざはぢがう゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 「えー、どう違うんだよ。今さっき自分で殺したんじゃないか。自分の子供を。助けてって言ってたのに!」 「う……う、う゛る゛ざぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁい゛!!! も゛どはお゛兄ざん゛がゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ひとだがら゛い゛げな゛い゛ん゛でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「はぁ? 何言ってるんだ、俺はちゃんとお前にも答えられる問題を出してやったぞ。それをゆっくりしすぎて答えられなかったんだから、お前が悪いに決まってるだろ」 勿論生死に関わる状況に追い込んだのは俺だから俺が悪い。 だけど子供を殺したばかりの罪悪感の塊であるゆっくり魔理沙は、俺の言葉を鵜呑みにしてしまう。 元々、悪いことをしたという負い目はあったのだ。 箱に詰められたときに、それに気付いていた。 そのまま全員殺されていてもおかしくはなかった。 でも、生き延びることを許された。 そして、助かるチャンスはいくらでもあった。 どれもこれも、無理難題――例えば変形してみせろとか、大空を舞ってみろとか、赤ちゃんを全員食えとか――ではなかった。 ゆっくりせずにちゃんと考えれば、答えられていたはずなのだ。 だけど、答えられなかった。 何故? それは。 自分が、ゆっくりしていた、から。 赤ちゃんを助けるために、真に全力ではなかった、から。 それに気付いた時、ゆっくり魔理沙の瞳から涙がぽろりと零れた。 今までのように騒いだりしない。 ただ、何かを悟ったような、そんな憑き物が落ちたような顔だった。 「……ころして」 「なに?」 「まりさをころしてね……赤ちゃんたちがいないなら、もうゆっくりできないよ……」 俺は驚いた。 まさかゆっくりが自分の殺害を依頼するなんて。 それ程までに、自分の子供が大切だったのだろう。 仲間のことはすぐ忘れたというのに。 過去に何かあったのだろうか。 ……まぁ、興味ないけど。 「殺して欲しいのか?」 「うん……ゆっくりせずにころしてね……」 「だが断る」 「……ゆっ!?」 ゆっくり魔理沙が驚愕の表情で俺を見上げる。 俺はニコリと、天使のような慈愛の表情を浮かべた。 「俺は自分の手で何者かの命を奪うのは大嫌いなんだ。だから、お前は殺さない」 だって、殺すと反応がなくなってつまらないから。 「もっと苦しんでもらうよ、ゆっくり魔理沙」 続く。? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/527.html
「「ゆ゛っ!」」 私はいつものように、ゆっくりまりさとゆっくりありすの頬を引きちぎる。 何度やっても肉体が引きちぎられる痛みに慣れることはないのだろう。ゆっくり達は思わず声を出し涙目になる。しかしこのゆっくり達は、それ以上泣きわめく事は無い。 その後、私は2人のゆっくりに豪華な食事を出してやる。そんな少し奇妙な関係が2年ほど続いていた。 私はゆっくり加工場の研究室に勤務している。 2年前、ゆっくり加工場の新商品開発に向けての研究素材として、加工場からいただいてきたのが、このゆっくりまりさとゆっくりありすだ。 ゆっくりまりさとゆっくりありすは、他の野生のゆっくり達と同様、山にいる所を職員に捕まって加工場まで連れられてきたそうだ。 捕まったゆっくり達の中から数匹を研究用素材として拝借して良いという話になった。そこで、あえて私は研究や実験に協力する意思があるゆっくりを募ることにしてみた。その際、研究と実験に伴って様々な危害を加える事も、はっきりと明言した上で、である。 とはいっても、自分勝手なゆっくり達である。 わざわざ立候補する者はでないであろうと私は考えていた。 ゆっくり達を加工する前に、恐怖を与えると餡子の甘みが増すという話を実際に試してみるためのハッタリだったのである。 立候補者がいなかろうが、強引に2匹のゆっくりを引っ張りあげるだけの話なのである。 しかし、私の予想は裏切られた。 「俺がいくんだぜ!」 少し震えながら独特の口調で、ゆっくりまりさが名乗り出た。 「……わたしもいってあげる」 かなり震えながら、大人しそうなゆっくりありすも名乗り出た。 私は意外な展開に首を傾げながらも、このゆっくり達を私の研究素材として我が家に迎え入れることになったわけだ。 このゆっくり達はいずれにせよ加工場に捕まった時点で死を覚悟したのであろう。少しでも長く生きる可能性に賭けたのかな、程度に私は考えていた。しかし、実際のところ、理由は他にあった。 この2人のゆっくりは加工場の檻の中で、他のゆっくり達に囲まれた中でさえも、孤独だったのである。 ゆっくりまりさはいわゆる、俺まりさと言われる種別のようだ。一人称が「俺」。語尾には「だぜ」。この口調が原因で、出会うゆっくり達すべてに偽者の烙印を押され、弾劾を受けながら生きてきたそうだ。 ゆっくりありすに至っては、ゆっくりありすであるというだけでまわりのゆっくり達から蔑まれてきたという。特に近くに住んでいたゆっくりれいむ一家からの扱いはひどかったそうだ。恐らくその家族は過去に他のゆっくりありすによって、大変な被害を被ったのだと察するが、それにしても残酷な話である。 そんな2人が加工場で研究素材に立候補した理由は共通していた。 自分のことはどうでもいいから、他のゆっくり達は最後まで仲良く一緒にいさせてあげたい、というのだ。 長年、孤独に生きてきたからこその、悲しい発想である。 ちなみに私の研究の内容は、主に食事と餡子(およびクリーム)の関係性についてである。手順は基本的に以下の流れで行った。 1:1週間同じ食物を与え続ける。 2:1週間後、両頬をちぎって、味を確かめ、成分を分析する。 3:だいたい2~3日で頬が完全に回復する。 以下、再度1~繰り返す。 この研究から、様々な味の餡子の商品化に着手しようというわけだ。 1年ほどすると2人のゆっくり達は良い仲になっていた。朝になると頭から子ゆっくりのついた蔦を生やすこともあった。残念ながら、これも研究に活用させていただくのではあるが。 それなりに太い蔦を根っこから折り、赤ちゃんゆっくり達の味と成分を調べる。 「な゛んでぞんな゛ごどずるのお゛お゛お゛お゛」 「あ゛り゛ずのあ゛がぢゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛」 最初の頃は相当抵抗された。当然といえば当然の反応ではある。そこで私はゆっくり達に言い聞かせた。この研究が進めば、もしかしたら他のゆっくり達を無駄に捕まえる必要がなくなり、ゆっくりさせられるかもしれないと。 それが効いたのか、最近では「「ゆ゛っ!」」と一言だけ声を漏らし、目に涙をためてなんとか堪えている。私が心情的に搾取しやすいようにという配慮のようだ。あいにくと私はそんな感情を持ち合わせてないつもりだが、それでもこのゆっくり達の配慮は少しうれしい。せめてもの情けで、先にも記したように頬を搾取したり、子を搾取した後には、いつもより豪華な食事を出すようにした。 そんな生活が2年ほど続いた。 2人のゆっくりも慣れたようで、搾取の事を踏まえた上でも、2人なりにゆっくりできているようだった。時には2人を連れて山に散歩にいったり、川で遊んだりもした。 その中で気づいたことがある。 本当にゆっくりできているゆっくりの餡子は甘さこそ控えめなのだが、深みのある味わいを持つのである。特に年配の方に好まれる味で、この事は早速研究所に報告した。3人による研究成果の1つである。 とある夏の日。 得意先の古物商から花火という物を頂いた。私は早速花火を家に持ち替えり、その晩に3人で楽しむことにした。ゆっくり達が特に気に入ったのが線香花火とねずみ花火という物だった。 2本の線香花火に火をつける。 左手に持つのがまりさの分、右手に持つのがありすの分。 どちらの花火が最後まで残るか競争のはじまりである。 「ゆっくり落ちないでね!!」 まりさは騒がしく跳ねながら、自分の線香花火を応援する。 「……ゆー……」 ありすは祈るようにじっと線香花火を見つめている。 結果、まりさの線香花火が先に落ちた。まりさは実力勝負で負けたわけでも無いのに、異常に悔しがっていた。それほど勝負事に真剣なのであろう。 一方のありすは今までに無いような無邪気で晴れやかな表情を見せていた。 ねずみ花火に火をつけて地面に放す。ねずみ花火はもの凄い勢いで庭中を駆け巡った。 まりさは目を輝かせ、わざわざ花火に向かっていっては、跳ねて飛び越えるなんていう遊びをしている。 一方のありすは怖がって隅っこでじっとしている。そこにねずみ花火が迫ってくると、途端にらしくないほどの大声できゃーきゃーと叫びながら、全速力で逃げていった。 他の花火も綺麗な物ばかりで、3人の楽しい時間を過ごすことができた。 一通り花火を楽しんで、後片付けをしていると、2人のゆっくりは庭に出て体を寄せ合っていた。どうやら花火で楽しんだこともあり、良い雰囲気になったようだ。独身男の私にはやや目の毒である。2人のことは放っておいて、風呂に入ることにした。今度子供が生まれたら、育てさせて良いかな、などと考えながら私は湯船に浸かってゆっくりとしていた。 風呂から上がった私は庭の異変に気がついた。2人のゆっくりの声が聞こえてこないのだ。 庭の方にでてみると、2人の姿は無かった。 ただ1匹のコウモリのような羽をつけた豚まんが浮かんでいるだけであった。 ……地面にはまりさの帽子とありすのヘアバンドが落ちていた。 「うー♪ うー♪ もっち、もっち」 私は絶句した。 なぜ? なぜここに、ゆっくりれみりゃがいるのか。 私はその時になって、初めて自身の認識違いに気づかされた。 あの2人は私にとって、もはやただの研究素材や家畜ではなかったのだ。 しかし、家族とも少し違う。言うなれば、戦友だったのである。 それを失ってしまった事実に、私は一瞬へたれこんだ。 考えてみれば私だって、あのゆっくり達と同じ孤独の身ではないか。 早くに両親を無くし、職場でも必要最低限の会話しかしない。 だからこそ、2人に共感を覚えたのだろう。 だからこそ、2人をなるべくゆっくりさせたい気持ちがあったのだろう。 家畜であるはずのゆっくりにそんな感情を抱くのは研究者失格ということか。 それをゆっくりれみりゃは私に教えてくれたというのか。 たしかに……たしかに少しゆっくりに流されすぎていたのかもしれない。 私が家畜を家畜として扱っていれば、こんな虚脱感に襲われることも無かったのであろう。間違っていたのは私なのかもしれない。 そう、家畜は家畜として扱わなければいけなかったのだ。 そんな事が頭をぐるぐると回っている中でもなお、我が家の庭ではコウモリ豚まんが食後の余韻に浸っていた。 ゆっくりれみりゃには希少種と呼ばれる胴つきの種類がいるのだが、私の目の前にいるのは頭と羽のみのそれであった。胴つきのそれであったら、街外れの豪邸に住んでいる変態爺に高値で売りつけてやったのだが…… しかし胴つきは紅魔館に保護されているという噂も聞く。胴つきのゆっくりれみりゃにひどい事をした人間は、紅魔館のメイド長によって、凄惨な最期を迎えるという噂も聞く。そういう意味では胴つきでないことは不幸中の幸いである。 心置きなく、このゆっくりれみりゃを新たな家畜にできるのだから。 私は食事に満足しきっているゆっくりれみりゃの背後から近づき、両方の羽に手をかけ、左右に一気に引っ張った。羽を失った豚まんが、庭に下りるための小さな石段の上に落下し、顎にあたる部分を思いっきり強打した。 ……すぐには反応はない。鈍感なのであろうか。 3秒ほどしてからようやく羽を失った豚まんが泣き出した。 「う”あ”あ”あ”あ”あ”」 叫び声が煩わしい。近所迷惑にならないように、手際よくゆっくりれみりゃの口を紐で縫い付け、風呂敷に包んだ。翌日から加工場で、家畜とはなんたるかを、このゆっくりれみりゃとともに実践していこうと、私は考えたのだ。 その後、自宅の庭にゆっくりまりさとゆっくりありすの墓を仲良く並べて作ることにした。遺品は帽子とヘアバンドのみだが、一緒に小銭を入れてやった。小銭に気を良くした三途の渡しの死神が、川を渡る間だけでも、一緒にゆっくりしてくれるかもしれないではないか。 ゆっくりれみりゃという研究素材は、それまでの研究素材と戦友を同時に失った私の心を埋めてくれた。というより、私が無理やり埋めさせてもらったと言った方が正しいのだが。 私が注目したのは、ゆっくりれみりゃの羽である。 肉体をちぎると再生に時間がかかるのだが、羽だけであれば、ものの10分程度で生え変わるのだ。これを利用しない手は無いであろう。私は以前のゆっくり達と同様に、食事と羽の味わいの関連性について研究することにした。 研究所に運んだばかりのゆっくりれみりゃは、食事に対する好き嫌いがとにかくひどかった。基本的に甘い物しか食べず、それ以外の食べ物は吐き捨てるのである。仕方がないので、ひとまず飴やクッキーなどのお菓子を中心にした餌を与える事にした。甘い物を与えた時の変化もいずれ研究するつもりだったのだし、順番が変わっただけであろう。 「うー♪ うー♪ むしゃむしゃ♪」 ゆっくりれみりゃは、これ以上ない幸福の表情でお菓子を食べる。 そして食べ終わった直後、余韻に浸ろうかというところで…… ゆっくりれみりゃから羽をもぎ取る。 幸福の瞬間を掻き消す痛みが豚まんボディにかけめぐり、ゆっくりれみりゃは泣き出すのだが、私はそれどころではない。迅速に羽の成分を調べる必要があるのだから。その後も10分毎に羽を採取して、これを調査した。 その度に「う”あ”あ”あ”あ”あ”」「う”あ”あ”あ”あ”あ”」と泣き叫ぶのがうるさいが、家畜に鳴き声は付き物である。 しかし、ゆっくりれみりゃの10分毎の鳴き声に近隣の部署から苦情がきた。私は仕方なく、食事時以外はゆっくりれみりゃの口を紐で縫い付けることにした。 食事の際には紐をはずしてやるのだが、採取のスケジュールもあるためあわてて多少強引にはずすことになる。そんな時はゆっくりれみりゃの唇がひどいことになってしまうのだが、食事を与えればすぐに鳴きやむため、さほど問題は無かった。 お目当ての研究結果はというと……甘い物を与えれば甘い羽になる。 なんともお粗末だが、わかりやすい結果となった。 さらに残念ながら、甘い羽は商品としては成り立たないのである。 この羽にはそれなりの硬度があり、そのまま食すには適さない。 そこで主な用途にと考えていたのが、スルメとダシである。 スルメ同様に加工すれば、独特の歯ごたえがあり、酒のつまみにもってこいの食材となる。また、水につけて30分ほど置けばエキスが抽出されて汁物のダシの役割を期待できるのである。 そして、そのどちらの用途も、お菓子のような甘みが求められるような物ではないのである。このため、私はゆっくりれみりゃの餌にお菓子を出すことをその日限りで打ち切った。このゆっくりれみりゃが甘い物を口にすることは未来永劫無いであろう。 翌日から、唐辛子などの辛い物を与えるようにした。 もちろん、ゆっくりれみりゃは嫌がって吐き出すのだが、諦めずに口に餌をぶちこんでやり、強引に口を縫い付けることにした。こうして10分も経てば、ゆっくりれみりゃがのたうちまわる拍子に飲み込んでくれるのだ。 口を縫いつけた紐をはずす際に失敗して、ゆっくりれみりゃの唇を引き裂いてしまったときは、さすがに食事がつらそうだった。が、餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無い。私は泣く泣く唐辛子スープを口に流し込んでやり、その後再び口を縫い付けてやった。 その翌日はゆっくりれみりゃの唇がひどいことになっていた。 避けた唇を再生する際に、縫いつけていた紐を中にいれたまま再生してしまったらしく、皮の向こうに紐が入ってしまっている。私は仕方なく、包丁を持ってきて、強引に口を作ってやった。以前より多少下方に移動してしまった感もあるが、問題無いであろう。餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無いのだから。 辛い物ばかりを与えて取れるようになった辛い羽は、これ以上無いほど酒のつまみに最適であった。これは商品化すべきである。ダシとしても悪い素材では無いが、用途が限られそうであった。 翌日からはゆっくりれみりゃがもっとも嫌がっていた、野菜を餌に出す事にした。ゆっくりれみりゃは口を閉じて抵抗するのだが、餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無い。 私は仕方なく、口は縫い付けたまま、包丁で頬を切り開き、餌のくず野菜をぶち込んで頬を縫い付けてやることにした。やはり10分もすれば、何かの拍子に飲み込んでくれる。その瞬間の顔のしかめっぷりは、なかなか見ものでもあった。 一応、ゆっくりれみりゃが自ら食してくれるように工夫は凝らした。 ゆっくりれみりゃの好物である、プリンという物に似せて作った野菜汁たっぷりの寒天である。アクもとっていないので苦味やシブ味、エグ味も強烈であろうが、どっちにしろ野菜味は嫌われるのであるから同じであろう。これを出した時のゆっくりれみりゃの顔が、期待から絶望に変わる瞬間は、なかなか見ものであった。無理やり口に突っ込んだら案の定吐き出しそうになったが、いつもどおり、口を紐で縫い付けてやった。餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無いのだ。 こうしてできた野菜成分たっぷりの羽は、体に良いつまみとして、また栄養満点なダシとして、商品化が見込める物であった。 ここまでの研究で、ゆっくりれみりゃの羽を商品化するめどはついた。 後はいかにして量産するかである。 1匹のゆっくりれみりゃから、10分毎に2枚。これだけではさすがに量産性に問題があると言わざるを得まい。用途が用途だけに、安価にして数を多く出荷したいのだ。 となると、必然的に次にやることは決まっていた。 繁殖である。 幸いなことに、このゆっくりれみりゃは研究期間を経て充分な栄養を得て育ち、繁殖に耐えうる程度には成体していた。 その日からゆっくりれみりゃは10分毎に断続的に羽をもがれる地獄から開放された。変わりに、毎日毎日、発情した繁殖用ゆっくりの大群を相手にすることになったのだ。普通のゆっくりでは強引な繁殖はその身を滅ぼすだけだが、ゆっくりれみりゃには再生機能があるから大丈夫であろう。 これからは1時間毎にすっきりできるのだから、天国のようなものだ。 人間であれば、見知らぬ他人、しかも複数に襲われるなど、おぞましいことこの上無いのであるが、相手は家畜である。 「うあ”っ! うあ”っ! うあ”っ!」 行為中、ゆっくりれみりゃは泣き叫んでいたが、それが産みの苦しみというやつだろう。 その後誕生した子ゆっくりれみりゃと他種の子の割合は大体半々だった。 他種の子ゆっくりは隣の部署に差し上げることにした。 1ヵ月もすると、生まれた子供達も大きくなっていた。丁度、私があの時に自宅の庭で見たあのゆっくりれみりゃと同じ位の大きさになっている。 すなわち、羽のもぎ取り時である。 これらのゆっくりれみりゃ達には2通りの運命がある。 野菜味担当となるか。唐辛子味担当となるか。 この日から新たに10数匹のゆっくりれみりゃ達の、10分毎に羽をもがれる生活が始まるのである。 いずれ成体したら、今度はこの子供達が新たなゆっくりれみりゃを生み出す機械となるのだ。相手はおそらく、生き別れの他種ゆっくり達となる。 なぜなら、私が他種の子ゆっくり達をあずけた隣の部署は、繁殖用ゆっくりの育成機関だからである。他種の子ゆっくり達はそこでエリート性教育を受けるのだ。 最初のゆっくりれみりゃは、今日も元気に子作りに励んでいる。 いや、励んでいるのは相手のゆっくり達だけのようにも見えなくもないが。 しかし、心配はいらない。もうしばらくすれば、子供達もそこに行くのだから。 もし不測の事態により子供が生めなくなっても行き先はある。 加工場内で育成している、ゆっくりふらんの遊び相手となるのだ。 こうして、あの日私の庭に迷い込んだゆっくりれみりゃは、加工場の中で大家族を形成し、その全てを加工場のために捧げている。 このゆっくりれみりゃこそ、まさに家畜の鑑であると言えよう。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/982.html
ティガれみりゃ ======================== ≪はじめに≫ 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 ややパロディネタが多めかもしれません。 自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 続きものです。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 1、絶対強者 「うーうー!」 小高い山を越え、うーぱっくの群れが空を飛ぶ。 その数は30を越え、それぞれ背中にゆっくり達を載せている。 自慢のダンボールは、パンパンに膨れあがっており、 うーぱっくは、汗らしきものを浮かべて、「うぅーうぅー」と肩(?)で息をしている。 ダンボールの中には、人間達から盗んだ大量の野菜や、お菓子がつめられていた。 「ゆゆっ! しかっりしてよね、うーぱっく!」 「そうだぜ! はやくしないと、まりさ達がドスに怒られちゃうんだぜ!」 自分達は何もせず、うーぱっくに注文を出す、ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 人間から盗みを働いた首謀者達だ。 「う~っ!」 力を振り絞り、岩山を越えていくうーぱっく。 すると、岩山の向こうには、直径500mほどの窪地が広がり、 無数のゆっくり達が、ゆっくりしていた。 「う~♪」 すごい! うーぱっく達は感心した。 これだけの数のゆっくりが、ゆっくりできる場所は、そうそう無い。 岩山の中の窪地は、緑こそ少ないものの、 適度に草花がはえ、岩の隙間からは清水が湧き出ている。 また、岩と岩の間には無数の洞窟があり、そこに入れば雨風も防げそうだ。 なにより、山間のこの窪地は、教えて貰わなければちょっと発見できそうにない。 他の捕食種とよばれるゆっくりや、野生の動物からも容易に身を隠せるだろう。 「うっうー♪」 れいむを背中に乗せ、先頭を飛ぶうーぱっくが、 後ろを飛ぶうーぱっく達にかけ声を飛ばす。 目的地が見え、「うーっ♪」と応えてテンションを上げる、うーぱっく達 これだけの群れに、これだけの量の食料を運ぶのは、 うーぱっく達にとっても初めてのことだった。 "頼まれ物を運んで、お礼をもらう" この習性を、自分達にしかできない大事な仕事だと考えるうーぱっく達にとって、 今回の依頼は、大変きわまりなかいものだが、それでも充実感を覚えていた。 「ゆっ! ドスまりさだ!」 嬉しそうに叫ぶれいむ。 うーぱっくが下を見ると、巨大なゆっくりまりさと、 その傍らにベッタリよりそっている、これまた巨大なゆっくりアリスがいた。 まりさは全長3メートルほど、 アリスもまりさほどではないが、ゆっくりとしては破格の2メートル級の体を持っていた。 俗に言う、"ドス種"。 ドスまりさと、クィーンアリスだ。 「おいっ、うーぱっく! ぐずぐずしないで早く下りるんだぜ!」 ドスまりさの所へ下りるよう催促する、まりさ。 余談だが、このまりさはまりさ種の中でも、タチが悪いとされている"ダゼまりさ"だった。 しかし、心優しいうーぱっく達は、まりさの横柄を気にとめず、 ドスまりさの前に、ゆっくりと着陸する。 『ゆゆっ! おかえり~! 食べ物は集まったの?』 巨大なドスまりさが口を開く。 「もちろんだよ、ドスまりさ!」 「そうだぜ! まりさ達の華麗な仕事っぷりを見せてやりたかったぜ!」 うーぱっくの背中からピョンと飛び降り、ドスの前で胸(?)を張る、れいむとまりさ。 実際、いちばん苦労したのはうーぱっく達なのだが、 このれいむ達にとって、そんなことは関係無い。 「もう! なにしてるの、うーぱっく! はやくれいむ達のご飯を、ドスに見せてね」 「うー!」 うーぱっく達は、ガサゴソとダンボールの蓋を開き、 中に押し込められていた大量の食べ物を地面に下ろしていく。 『ゆぅ~っ! すごぉ~い!』 『それでこそ、とかいはのアリスとまりさの子供達よ!』 感嘆の声を上げるドスまりさと、クィーンアリス。 ちなみに、れいむもまりさもクィーンアリスの子供ではないのだが、 どうやらアリスの中では、愛しのドスまりさとの間にできた子供…という設定が完成しているらしい。 勝手な思いこみに違いなかったが、ドスまりさ自身、クィーンアリスには好意を持っていたし、 他のゆっくり達にとっても、強大なクィーンアリスに愛されることは、損ではなかった。 「さっそくみんなで食べようよ、ドスまりさ!」 れいむがピョンピョン跳ねて、ドスまりさを急かす。 そこに、体付きのゆっくりぱちゅりーが現れ、ワガママなれいむを戒めた。 「むきゅ! だめよれいむ。これは冬を越えるための大事な食料なんだから」 このぱちゅりーと、ドスまりさ、クィーンアリスは、子供の頃からの付き合いで、 3人で協力してこの場所をみつけ、この一大ゆっくりコロニーを築きあげたのだった。 ぱちゅりーは体が弱く、ドスまりさやクィーンアリスのように力は無かったが、 そのぶん知恵がまわり、この群れの参謀役を務めていた。 「ったく、ぱちゅりーはいつもケチケチだぜ!」 悪態をつく、まりさ。 『まぁまぁ、れいむやまりさも疲れているだろうし、一口だけ食べようよ? それで残りは冬支度に回す……ぱちゅりーもそれでいいよね?』 「……むきゅー。ドスまりさがそう言うなら」 「わーい! だからドスまりさ大好きぃー!」 喜ぶ、れいむとまりさ。 「なになに~ごちそう?」 「わかるよー。みんなで食べるよぉー」 「ちぃーんぽ!」 すると、いつの間にかこの窪地に住む他のゆっくり達も集まりだしていた。 皆、この御馳走のご相伴にあずかろうという腹づもりだ。 「むきゅ!そんなに食べたら……」 『も~しょうがないなぁ。みんな一口だけだよ?』 止めようとするぱちゅりーを遮り、 群れのリーダーであるドスまりさが、許可を出してしまう。 「「「「いっただきまぁ~す!」」」」 言うや否や、何十匹ものゆっくりが、いっせいに食べ物にむしゃぶりつく。 「むーしゃむーしゃ♪」 「なにこれ、めっちゃうめぇ!」 「しあわせぇ~♪」 ゆっくり達は、人間達から盗んできた御馳走を貪り食っていく。 既に"一口だけ"の約束が忘れ去られてしまっていることに、気を揉むぱちゅりー。 そして、気を揉む存在がこちらにも。 「「「うーうー!」」」 うーぱっく達だ。 食事に夢中なゆっくり達を囲み、催促するように鳴き声をあげる。 うーぱっく達は、頼まれた物を頼まれた場所に届け、 その御礼として食べ物を分けて貰うことで生態を成り立たせている。 これだけの量の食べ物を運んだのだから、相応の御礼を貰わなければつりあわない。 「ゆっ?」 「なんだぜ、うーぱっく! せっかくまりさ達が御馳走を食べてるのに!」 面倒くさそうに食べるを止め、小うるさそうにうーぱっく達を見る、れいむとまりさ。 「うーっ!うーっ!」 うーぱっくは、羽をパタパタと動かし、ゆっくり達が食べる御馳走を指差す。 うーぱっく達にもわけて~というアピールだ。 だが、そんなうーぱっく達に対し、れいむとまりさはバカにしたように目を細める 「見ろよれいむ、たかだか運び屋のぶんざいで、まりさ達の御馳走をねだってやがるぜ」 「おお、あさましいあさましい」 そう言うと、れいむとまりさは人間の家から盗みだしたお菓子をくわえ、 うーぱっく達の目の前で「むーしゃむーしゃ」と食べ始めた。 「「「うー!?」」」 驚くうーぱっく達。 目こそいつものニコニコ目だが、互いの顔を見合わせ少なからず動揺を露わにする。 そして、ゆっくりの中では、かなり頭の良い部類に入るうーぱっく達は、一つの結論を導き出す。 すなわち、このゆっくり達は、最初から自分達をいいように利用して騙すつもりだったのだと。 「「「うーっ!」」」 一同、抗議の声を上げるうーぱっく達。 温厚なうーぱっく達だが、契約不履行の不届き者には、相応の態度を見せる。 羽を動かし、ペチペチとれいむとまりさの頬を叩き、驚いた隙に食べ物を奪い去る。 「ゆゆっ! なにするの!」 「やめるんだぜ! それはまりさ達のものだぜ!」 「「「うーうー!」」」 構わず、同じようにペチペチとゆっくり達の頬を叩いては、食べ物を奪っていくうーぱっく。 ニコニコと笑ったままのその顔が、逆に恐ろしい。 「ゆっくりやめてね!」 「それはとかいはのアリスのものよ! いなかもの!」 「わからないよー!」 「ゆっくりできないうーぱっくは、ゆっくりいなくなってね!」 うーぱっく達の正当な抗議に、不満を叫び出すゆっくり達。 だが、空を飛び、しかも団体行動になれているうーぱっく達の連携に、 食べ物は次々奪われていく。 「「「ゆぅぅ~~! ドスまりさぁ~~!!」」」 たまらずドスまりさを呼ぶ、ゆっくり達。 そのドスまりさといえば、クィーンアリスとともに自分の食事をするのに夢中であった。 『……ゆぅ~~~? どうしたのみんなぁ?』 言われるまで気づかないというのが、いかにもゆっくりらしい。 ドスまりさは、しばらく間を置いてから、ようやくゆっくり達に呼ばれていることに気が付いた。 『ゆゆぅぅぅっ! なにしてるのうーぱっく!!』 その光景を見て、驚くドスまりさ。 自分の群れのゆっくり達が、うーぱっくに虐められ、 苦労して集めた御馳走を横取りされているではないか! ……と、ドスまりさのゆっくり脳は瞬時に都合良く解釈した。 しかし、いかなゆっくり脳の持ち主とはいえ、 くさっても巨体と長寿を誇るドスまりさ。 こうなると群れを率いるリーダーとして、都合良く燃え出すのであった。 『ゆぅぅぅっっ!』 「う~?……うぎゃ!」 ドスまりさは、ぐにょんと体を下に押し込めたかと思うと、反動をつけて前方にとび跳ねる。 そして、目の前にいたうーぱっくに体当たりをしかけ、窪地の周囲の岩壁に叩きつけた。 「「うーっ!?」」 驚いたのは、うーぱっく達。 通常、ドスまりさは巨体に見合った経験と知識も併せ持っており、 今回の件の非がどちらにあるかは、自ずとわかってもらえると期待していたのだ。 『うーぱっく! まりさの仲間を一方的にいじめるなんて、絶対にゆるさないよ!』 「「ううーーー!??」」 全然、期待通りにはいかなかった。 戸惑い、慌てるうーぱっく達。 「むきゅ! まりさ、うーぱっく達は……」 『ぱちゅりーは黙っていてね! まりさはみんなを守るよ!』 うーぱっく達の抗議の理由を知るぱちゅりーが、ドスまりさを止めようとするが、 変な使命感のスイッチが入ってしまったドスまりさは止まらない。 このドスまりさは、確かに長い時間を生き、ドスの名にふさわしい巨体と力を得ていた。 だが、本来一人で生きて得るはずの知識や思慮を幼なじみのぱちゅりーの頼りっぱなしにしてきたため、 どうにも考えの足りないドスまりさになってしまっていた。 「「うーっ!」」 だが、うーぱっく達は、そんなことは知らない。 羽を動かし、自分達が運んできた食料を指す、うーぱっく。 なんとか自分達の誤解をといて、わかってもらおうとする。 『……わかったよ、うーぱっく』 「「うー♪」」 『うーぱっく達は、まりさ達を騙して食べ物を横取りするつもりだったんだね!』 「「うううーっ!???」」 全然わかってなぁーい! うーぱっく達は、全員が同時に心の中でツッコミの声をあげる。 『まりさ達をゆっくりさせないうーぱっくは、ゆっぐりじねぇぇぇぇぇっっ!』 ドスまりは天高く舞い上がり、その巨体を地面に叩きつける。 何匹かのうーぱっくが、その巨体の犠牲となる。 「「ううーっ!」」 これ以上ここにいてはいけない! うーぱっく達は身の危険を感じ、一目散に空高くへ舞い上がる。 「「うわぁぁーん! ドスまりさなんてきらいぃぃー!」」 自分達の誇り高い仕事が失敗に終わったこと、 つらい時も楽しい時も一緒だった、大事な仲間を失ったこと、 うーぱっく達は、目から涙を流して飛び去っていく。 だが。 『逃がさないよ!うーぱっく!……ひぃぃ~~~~っさつ!』 ドスまりさは、大きな口を思い切り開く。 すると口の中から淡い光がもれはじめ、瞬く間にまぶしい程の輝きを放ち始める。 「ゆゆっ!出るよ、ドスまりさの必殺技!」 「やっちゃうんだぜドスまりさ! バカなうーぱっくどもに身の程わからせてやるんだぜ!」 『すてきよぉぉまりさぁぁぁ!』 「む、むきゅう~!だ、だめよぉ、まりさぁ!」 事情を理解しているぱちゅりーを除いて、俄然もりあがるゆっくり達。 クィーンアリスに至っては、ドスまりさの勇姿に目をトロ~ンとさせている。 『ひっさつ!ドスパァァァーク!!』 「う、ううぅぅぅぅぅーーーっ!」 叫ぶと同時にドスまりさの口からレーザーが発射される。 そのレーザーは空を切り裂き、泣きながら逃げ去るうーぱっく達を直撃した。 超高温のレーザーは、ダンボールでできたうーぱっくの体を一瞬で焼き尽くし、 そらからは燃えかすとなったうーぱっく達がボトボトと地面に落ちていく。 「「「ゆぅぅぅ! すごぉぉぉーい!」」」 その圧倒的な威力に、群れ全体から感嘆の声があがる。 ドスまりさは群れのゆっくり達にむき直り、誇らしげに胸(?)をはった。 『みんなのことはまりさが守るよ! だから安心してゆっくりしてね!』 「「「ゆっくりぃぃ~~~♪」」」 喜びの声をあげるゆっくり達。 ただ一人、ぱちゅりーだけが浮かない顔して、岩の隙間の洞窟へと入っていく。 「むきゅう……」 今回の件の非は、あきらかにこちらにある。 なにか悪いことが起きなければよいけれど……。 その不安からか、ぱちゅりーは体に疲れを覚え、洞窟の奥で眠りについた。 けれど、このぱちゅりーの予感は、すぐに当たることになってしまう。 数時間後。 空には満月が登り、本来ならばゆっくり達も眠りにつく頃。 だが、山間の窪地では、いまなお多くのゆっくり達が食べや歌えやで大騒ぎをしている。 「ゆっゆっゆっ~~♪」 「だぜだぜだぜぇ~~♪」 『すごぉーい! みんなお歌が上手だねぇ!』 『さすがとかいはのアリスの子! 良いセンスをしてるわぁ!』 昼間の一件で、すっかりテンションの上がってしまったドスまりさの群れは、 あれからずぅ~と宴会を開いていた。 もはや、ぱちゅりーとの"冬の支度のために食べ物をとっておく"という約束は、頭の中になかった。 ゆっくり食べてはゆっくり踊り、ゆっくり食べてはゆっくり歌う。 「ゆゆゆ~~ゆゆゆ~~♪」 「だぜだぜ~~だぜだぜ~~♪」 「……ティ~ガティガティガ♪」 『ゆっ?』 ドスまりさは疑問に思った。 今、群れのれいむ達の歌に混じって、何か聞こえたような? 「ゆゆゆゆ~ゆゆゆゆ~ゆっゆっゆっ~~~♪」 「だぜぜ~だぜぜ~だっぜっぜぇ~~~♪」 「……ティ~ガティガティガ♪」 『ゆゆっ!?』 「「「ゆゆゆっ!?」」」 やはりだ。 気のせいじゃない。 今度はドスまりさだけじゃなく、他のゆっくり達にも聞こえたようだ。 ゆっくり達は、ひとまずバカさわぎを止め、あたりを見回す。 だが、本来夜の間は寝るのが"殆どの"ゆっくり達の生態のため、 ゆっくりの中で夜目が効く者はほとんどいない。 が、それにも関わらず。 ソレの存在はゆっくり達にもハッキリ視認できた。 『あれは、ゆっくりゃザウルス!!』 一番最初にみつけたクィーンアリスが叫び、それに呼応して他のゆっくり達もそちらを見る。 ゆっくり達の視線の先。数百メートルは離れた位置。 そこには、よたよたドタドタ踊るようにステップを踏み、ゆっくり達に近づいてくる不思議な生物がいた。 長生きをしていたクィーンアリスと、ドスまりさは、己の経験に基づきその生物をこう認定した。 あれは、ゆっくりゃザウルスだと。 ゆっくりゃザウルス。 それは、代表的な捕食種・ゆっくりれみりゃの亜種である。 亜種という意味では、昼間ドスパークの餌食になったうーぱっく達もそうだが、 近年比較的多く見かけるようになったうーぱっく達と異なり、 ゆっくりゃザウルスは、非常に見かけるのが希な亜種……即ち希少種であった。 その姿は、人間からみれば愛らしくも映る。 体つきのゆっくりれみりゃが、ダボダボくたくたの恐竜の着ぐるみを纏ったような姿。 それが、ゆっくりゃザウルスの特徴だった。 ずいぶんとディフォルメされた緑色の恐竜の、大きく開かれた口から、 れみりゃ種特有の「うーうー♪」という下ぶくれ気味の笑顔が覗いている。 体は筋肉質とは程遠く、まるでクッションかヌイグルミのような柔らかさで、 お腹のあたりに、有袋類…といえば聞こえが良いが、どう見ても縫いつけたような大きなポケットがある。 「ゆゆゆゆ~!大変だよ!れみりゃだよ!」 あれが、自分達を食べる捕食種の一種だと知り、慌てるれいむ。 「ま、まりさはおいしくないぜ! たべるなられいむの方がおいしいんだぜ!」 「どぉじでぞんなごどいうのぉぉぉーーっ!?」 にわかに群れに広がるパニック。 だが、ドスまりさがそれを鎮める。 『大丈夫! 安心してよみんな!』 「ゆゆっ?」 「わかるよ~! こっちにはドスまりさがいるんだよ~!」 『まりさとアリスにとって、ゆっくりゃザウルスなんて敵じゃないよ!』 そう言って笑顔を向けるドスまりさ。 「なんて頼もしいんだ!」群れのゆっくり達は、ドスの笑顔に安心して落ち着きを取り戻す。 『まりさとアリスは、もっと小さき時に……それこそみんなと同じくらいの時に、 ゆっくりゃザウルスを倒したことがあるんだよ♪』 「「「すっごぉ~~~い!」」」 再びあがる感嘆の声。 それを誇らしげに受け止めるドスまりさ。 ドスまりさの言ったことは確かに事実であった。 ……もっとも、ゆっくりゃザウルスのことを良く知るものが聞けば、 それが大した自慢にならないこともわかるのだが。 ゆっくりゃザウルスは、確かに希少種だ。 だが、希少なのには理由がある。 すなわち、ゆっくりゃザウルスは、れみりゃ種の中でも"最も弱い"種類だからだ。 亜種の多い、ゆっくりれみりゃだが、一応それぞれに進化と思われる特徴を持っている。 体が無く、耳のあたりに羽をつけているタイプは、れみりゃ種の中でも最もバランスが良い。 飛行能力も高く、蝙蝠やイルカにも似たエコーロケーション能力を持っており、 暗い場所でも自由自在に動くことができる。 うーぱっくは、敏捷性や攻撃能力では上記のれみりゃに劣るものの、 そのぶん他の物(者)を上に載せて飛ぶ能力にすぐれている。 また、協調性に優れ、ゆっくり達の運送屋さんとしての地位を確立することで、 自然界の中で主立った敵を作らず、共生関係を築き上げていた。 胴体と四肢のついたれみりゃは、紅魔館のすぐそばでよく見かけられる。 重たい体がついたのが逆効果となり、飛行能力・運動能力は明らかに低くなっているが、 それでも(極めて不器用ではあるが)手足が使えるメリットは大きいし、 なにより紅魔館の主の姿と似ているために、館のメイド達から寵愛を受けられるという面もある。 ……では、ゆっくりゃザウルスはどうか? 悲しいかな、これといって優れた点が無いのだ。 背中から羽は失われ、空を飛ぶことはできない。 手足や指先は恐竜のヌイグルミ状になっているため、細かい作業も全くできない。 ずんぐりむっくりした体は重たく、生きる上で極めて燃費効率が悪く、すぐ疲れてしまう。 おまけに、なまじ体が重くなったぶん、本人は強くなったと勘違いし、無駄に気が大きくなる傾向がある。 では、なぜそんなにも不都合だらけのゆっくりゃザウルスへと姿を変える必要があるのか。 それは、ゆっくりの研究者達の間でもまだ解明されていない。 いずれにせよ、そんなゆっくりゃザウルスであるが故に、 本来獲物であるはずのゆっくり達に、逆に返り討ちにあってしまうこともままあるのだ。 まして、ドスまりさとクィーンアリスからみれば、 逆に向こうから美味しい肉まんがやって来たようなものだ。 「ティ~ガティガティガ♪」 歌いながら、えっちらおっちら満面の笑顔で歩いていくるゆっくりゃザウルス。 その声が、徐々にはっきり聞こえてくる。 『ゆぅ~♪ みんな、今日はおいしい肉まんがたべられるよ♪』 「「「わぁ~~い♪」」」 余裕のゆっくり達。 しかし、その余裕がゆっくり達に、本来気付くべき疑念を忘れさせてしまっていた。 なぜ、数100メートルも先のゆっくりゃザウルスを、夜目の効かないゆっくり達が見えているか。 なぜ、まだまだ遠くにいるはずのゆっくりゃザウルスの歌が、こんなにもハッキリ聞こえるのか。 そして、なぜゆっくりゃザウルスが近づいてくるたびに、地面がドシンドシンと揺れるのか。 数秒後、ゆっくり達は嫌がおうにも、その理由をわからされることになる。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 「「「『ゆげぇっ! お、おおきぃぃぃぃっっっ!!??』」」」 目の前まで来て足を止めたソレを見上げ、一同に驚愕の叫びをあげるゆっくり達。 ドスまりさとクィーンアリスさえ、呆気にとられてソレを見上げている。 身長はゆうに10メートルを越え、尻尾の部分をあわせた全長は20メートルにも届かんほどだ。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ソレは、自らがれみりゃ種であることを示すように、自らの存在を知らしめるように、 両手を顔の横に上げ、れみりゃ種特有の"れみりゃダンス"を行った。 「「「ゆゆゆゆっ!」」」 ソレがダンスのステップを踏む度、地響きが起こり、小さなゆっくり達を震えさせる。 『や、やめてよね!ゆっくりゃザウルスのくせに、まりさ達をおどかさないでね!』 ぷく~と頬を膨らませ、見上げるソイツに告げるまりさ。 一方、そのれみりゃは不思議そうに、首をひねった。 『う~? ゆっくりゃザウルス?』 『そうだよ! おまえのことだよ! 自分のこともわからないなんて、ゆっくりゃザウルスは本当にバカなんだね!』 『うーうー! れみりゃはぁー、ゆっくりゃザウルスじゃないどぉー♪』 『え?』 『れみりゃはぁ~♪』 にぱぁ~☆と満面の笑顔を浮かぶ。 『ティガれみりゃだどぉー♪』 そう、この巨大なれみりゃは、ゆっくりゃザウルスではなかった。 圧倒的な巨体と力を持つ、ドス種を越える超巨大・突然変異ゆっくり、ティガれみりゃだったのだ! 『……ティ、ティガれみりゃだなんて知らないよ! バカなれみりゃはおとなしくまりさ達に食べられてね!』 巨体にプレッシャーを感じつつ、あくまで虚勢を張るドスまりさ。 他のゆっくり達も、ドスまりさなら負けるハズないと、徐々に落ち着きを取り戻していく。 「そうだよ! ばかなれみりゃはゆっくり死んでね!」 「ドスが、おまえなんかに負けるわけないんだぜ!」 ゆっくり達が、わーわーと騒ぎ立てる。 それ見回してニコニコするティガれみりゃ。 『うー♪ おいしそうなおまんじゅうがいっぱいだどぉー♪』 そう言うと、ティガれみりゃはクィーンアリスを片手で掴み上げ、口の前へと運ぶ。 『ゆぅ!?』 「クィーンアリスが!」 「おとなしくアリスを離すんだぜ!」 あっさりつかまってしまった群れのナンバー2に、ざわめくドスまりさとゆっくり達。 当のクィーンアリスは、頬を膨らませて、ティガれみりゃを罵っている。 『これだからマナーを知らないいなかものは! とかいはのアリスにこんなことしてただですむと思わないでね!』 そんなアリスをじぃ~っと見つめて観察するティガれみりゃ。 『うぅ~♪ よくみるとぶさいくなおまんじゅうだどぉ』 『ゆぎぎぎぃぃぃぃぃっ! とかいはのアリスに向かってよくもぉぉぉっ!』 逆上するクィーンアリス。 対するティガれみりゃは…… 『うー♪ うるさいおまんじゅうだどぉ♪』 と言ってから、そのまま「あ~~ん」と大口を開け、クィーンアリスにかぶりついた。 『ゆげぇぇぇぇぇえ!』 『あ、アリスゥゥゥッッッ!!』 たまらず断末魔を上げるクィーンアリスと、ドスまりさ。 クィーンアリスの体はたった一口で半分がえぐりとられ、その生命活動を停止させた。 『う~♪ がじがじ~♪』 そのまま美味しそうにクィーンアリスの残骸を食べ続けるティガれみりゃ。 2メートルあった、クィーンアリスの体も、数秒で消滅してしまった。 『うっうー♪ おいしかったどぉー♪』 舌をペロリと回し、口の周りについたクリームを舐めとるティガれみりゃ。 その光景を見ていたドスまりさの怒りは、既に限界を遙かに超えていた。 『ゆぎぎぎぎぎぎぎ……ゆ、ゆるさないっ、ぜぇったいにゆるさないぃぃぃぃっ!!!!!』 『う~?』 『ゆっぐりじないでじねぇぇぇぇぇぇ!!!!!』 「で、でるぜ! ドスの必殺技!」 『ドスパァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーク!!!!!!!』 ドスまりさは口を開け、高温のレーザーを放つ。 怒りにまかせて全ての力を結集したそれは、昼間うーぱっくを仕留めたのとは比較にならない程の出力となる。 夜の闇を、貫くドスパークの光。 これを受けて無事なゆっくりなどいるはずがない。 いや、人間はおろか妖精や妖怪とてただでは済むまい。 『……うぅぅぅぅぅ! アリスぅぅぅぅ、かたきはとったよぉぉぉぉぉ!』 嗚咽混じりで天に吠えるドスまりさ。 誰よりキレイだったクィーンアリス、彼女はお空のお星様になってしまったんだ。 ドスまりさとゆっくり達はそう思い、ドスパークの衝撃で巻き起こった土煙の先、 クィーンアリスのお星様を見ようと、夜空を見上げようとする。が。 『う~? なんかあったかいどぉ~…なんだか汗かいちゃったどぉ~♪』 「「「『ゆ、ゆげぇぇ!?』」」」 見えるハズのお星様が見えず、 見上げた先には、変わらずティガれみりゃが立っていた。 その体には傷一つなく、下ぶくれの笑顔に少し汗をかいているだけだった。 『どぉじでぇぇ! なんでドスパークがぎがないのぉぉぉぉぉっ!!??』 『う~、汗かいたら、またおなかすいちゃったどぉ~♪』 ティガれみりゃは、おなかのあたりをおさえ、少し頬を紅潮させた。 "こーまかんのれでぃーである"という自負からなのか、 食べてすぐ、またおなかをすかせることが恥ずかしいようだ。 とはいえ、そこはゆっくり。 恥じらいよりも、まずは欲求に従う。 そこはティガれみりゃといえど、変わらなかった。 『ぎゃぉー♪ いっただきまぁーす♪』 『ゆべぇ!!?? 、は、はなじてぇぇぇぇ!!!』 「「「どどどど、ドス!?」」」 足下ではねまわるドスまりさを難なく掴み上げると、口の前に運ぶティガれみりゃ。 『がじ、がじ、がじぃ~♪』 『ゆべっ!うげぇ!ゆぶぁ!!』 みるみるドスまりさの体は小さくなっていき、 10秒もたたずに、全てティガれみりゃの口の中に消えていった。 『う~、おいしぃ~♪』 「「「…………」」」 あまりにも信じられないことが起きた時、人は一切の思考が働かなくなる。 それは、ゆっくり達にもあてはまるらしい。 なすすべ無く食べられるドスまりさを目の当たりにした無数のゆっくり達は、 ただ無言のまま固まってしまっていた。 一方、ティガれみりゃはというと、お腹についたポケットの中に手をつっこみ、 何かをゴソゴソと取り出した。 『うっう~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる~♪』 まるで、22世紀の猫型ロボットが便利道具を取り出すように、 ティガれみりゃはポケットから、引き抜かれた立ち枯れの木を取り出し、天に掲げた。 「「「ゆゆゆゆ!?」」」 誇らしげなティガれみりゃの様子に、本能的に身の危険を感じるゆっくり達。 金縛りをといて、それぞれ四方八方に逃げだそうとする。 『ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪』 「「「ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁっっっ!」」」 ゆっくりプレイスだったハズの山間の窪地は、あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 『れみりゃのおだんごぉー♪ とぉーってもおいしぃーどぉー♪』 ティガれみりゃは口ずさみながら、比較的大きめのゆっくりを摘むと、それを次々枯れ木に刺していく。 「「「ゆげぇ」」」 鳴りやまないゆっくり達の悲鳴。 あるゆっくりは岩陰や洞窟に逃げ込もうとするが、 ティガれみりゃは「うー、岩いらなーい!ぽいぽいぽぉーーい♪」と、 岩そのものを持ち上げどけて、隠れていたゆっくり達をつまみだした。 『うー、すごいどぉー! れみりゃは狩りの天才だどぉー♪』 やがて、そこそこ育って美味しそうなゆっくりを全て枯れ木に刺して、 ゆっくりだんごを完成させたれみりゃは、満足そうに自分を讃えた。 自分達は助かったのか? そう思った残りのゆっくり達は、おそるおそる隠れていた場所から外へでる。 『う~~~う~~~♪』 しかし、ティガれみりゃがリズムを刻みだしたのを見て、ゆっくり達は己の軽率さを憎み、 そして、短いゆっくり人生の終わりを実感するのだった。 『うっうーうぁうぁー♪ うっうーうぁうぁー♪』 どっすんどっすんと、喜びのダンスを踊るティガれみりゃ。 なんとかゆっくりだんごを逃れたゆっくり達も、あるものは踊るティガれみりゃの足や尻尾に潰され、 あるものは、ティガれみりゃのステップの影響で岩や土が崩落し、その餌食となった。 ゆっくり達の理想郷は、こうして壊滅した。 ……そう、一人の目撃者を除いて。 翌日。 ティガれみりゃの襲来をやりすごした目撃者。 その生き残りは、ティガれみりゃへの恐怖と、震えたまま動けなかった自分を呪い、 洞窟の奥から出ることが出来ずにいた。 「む、むきゅぅぅぅ……」 その生き残りの正体は、洞窟の最奥、もっとも地盤の安定した箇所に隠れていたぱちゅりーだった。 群れの全滅を嘆き、幼なじみのドスまりさとクィーンアリスの死を悲しみ、泣き続けるぱちゅりー。 昨夜、先に寝ていたぱちゅりーは、外が騒がしいのに気付き、一度は目を覚ました。 だが、外へ出ようとしたその刹那、ドスまりさがティガれみりゃに食べられるのを目撃してしまったのだ。 どうするべきか全くわからなくなってしまったぱちゅりーは、唯一残された生物としての本能、 すなわち"生き残る"という目的にのみ従って、こうして群れが全滅してティガれみりゃが去るまでの間、 隠れ続けていたのだ。 「むきゅぅぅぅぅ! むきゅうううううう!」 思い出しては、こみ上げる感情に逆らえず泣き崩れるぱちゅりー。 それから、また一日がすぎた。 朝日が山間の窪地を照らす中、ぱちゅりーは外へ出た。 その目に決意の炎を宿して。 二日近く考え抜いたぱちゅりー。 彼女は、ドスまりさ達の死を無駄にしてはいけないと考えた。 そして、生き残った自分だからこそ出来ることがあるはずだと結論づけた。 そう、他の群れにティガれみりゃという脅威を報せ、 ともに戦わなければならないと。 一方その頃、どこかの森で。 今日もティガれみりゃの歌が聞こえていた。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ2・異常震域』 ============================ (あとがき) 休日出社中、上司の机に『モンハン』のティガレックスのフィギュアが置いてありまして、 気付いたらこんなものを書き始めていました。……二次設定のSS書くの何年ぶりだろう(汗 「ゆっくり好き」+「れみりゃ好き」+「怪獣好き」+「モンハン好き」 そんな作者の妄執が具現化したようなSSですが、もし楽しんでいただけましたら幸いです。 ちなみに、言う必要も無いかもですが、ティガれみりゃの歌はアノ映画の歌が原型ですw ============================ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/510.html
「う~う~♪」 俺が散歩にと道端を歩いているとそんな声が聞こえた。 「ゆっ、やめてね、まりさは食べないでね!」 見ると、ゆっくりれみりゃがゆっくりまりさを食べようとしているところだった。 周りを見るとゆっくりれいむの髪飾りやそれよりも小さい飾りや帽子が落ちていた。 なるほど、ゆっくり一家を食べつくしたか、れみりゃにしては大戦果だ。 「ゆっ、ゆっ! あ、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 まりさがこちらに気がついた。なんだかうざい声でぴーちくと助けを求めてくる。 なんでれみりゃはさっさと食べないんだ。 「う~おながいっばい~♪」 なるほどな。 もう少しお腹に余裕ができるまでまりさをキープしてるのか、 それともまりさをいたぶっているのか、ゆっくりゃのくせに生意気だ。 そこである考えが思いつく、れみりゃがいたぶっているのを見ていたら俺もしたくなった。 「やぁ、れみりゃ、そんな食べ飽きたものは捨ててぷっでぃ~ん食べたくないかい?」 「う~♪ れみりゃぷっでぃ~んも食べる、もっでぎでー♪」 最初は甘言で連れて行こうとしたが早くも面倒くさくなった。 何故俺がゆっくりゃなどにない頭を割いてまで考えねばならないのか。 と、言うわけで優しくれみりゃに近づき、羽をもぐ。 「うっっがっぎゃゃー! ざ、ざくやー!!」 とたんにすさまじく泣きだし、暴れる、うるさいので殴る。 「うぎゃー!」 「お兄さんありがとう! ゆっくりれみりゃはゆっくりしんでねっ!」 その隙にまりさが逃げようとする、それも捕まえる。 「ゆっ、なにするのお兄さん、ゆっくりれみりゃと同じ場所ではゆっくりできないよ! ゆっくりはなしてねっ!」 そう言って媚びた笑いを向けてくる、こいつは俺を味方と思っているんだろう、うざいので殴る。 「どぉじでごんなごどずるのー! だべるなられいむからだべでー!」 食べないし。それにお前が身代わりにしようとした家族はもういないよ。 俺は泣き叫ぶれみりゃとまりさを両脇に抱えて家へと帰った。 家に帰ってきた俺はさっそくれみりゃをゆっくりれみりゃ用透明ケースに詰め、まりさは適当に籠に閉じ込めた。 (まずは腹を空かせてもらわないとな) れみりゃは今、満腹なはずなので少し時間を置くことにする。 次の日、再び様子を見に来た。 「ざくやー! れみりゃおながずいだー!」 れみりゃを見る、よし、再生してるな。 しかしなんという燃費の悪さ、昨日はあんなに満腹だったのに。 「ゆ、ここじゃゆっくりできないよ、ゆっくりだしてね!」 まりさは昨日のことは覚えてないようだ、とりあえず籠から出してやる。 一瞬れみりゃに怯えるが、動けなそうなところを見ると揚々とこちらに近づいてきた。 「ゆっくりおなかへったよ! ゆっくりごはんだしてね! 出さないのならはやく出て行ってね!」 ぴょんぴょんと俺の目の前で跳ねる、うざい。 「あぁ、まりさ、ご飯だけどな」 「ゆっくりはやくだしてね!」 「まりさには餓死してもらうから、ないんだ」 軽く言う、実際どうでもいい。 「ゆっ?」 意味がわかってないんだろうか、まりさは少し考え。 「どおじでぞんなごどいうのー!」 泣き出した、うざいので殴った。 まあ、まりさいじめは今回は置いておこう、今回の主役はれみりゃなのだから。 早速れみりゃをケースから取り出してまりさを渡してあげる。 「う~♪ う~♪ れみりゃの御飯だぞー♪」 お腹がすいていたのか、今度はすぐにまりさを食べようとするれみりゃ。 まりさは痛みとショックで固まってる。 もちろん、俺もれみりゃにご飯を食べさせる気はない。 まりさがれみりゃの口に入るその直前、れみりゃをぶん殴り、まりさを救出する。 「うあっー、ざくやー! どおじでー!」 そう、俺の考えとはれみりゃのゆっくりを食べるをやめさせることだった。 もちろん、いやがらせの意味で。 とりあえず、同じことを朝昼晩三回繰り返す。 次の日、部屋に入ると 「「おながずいたのー!」」 ゆっくり二重奏だ、これは耳障りな音楽だ。 しかしこいつらには昨日のことは忘れてしまったのか、取り合えずまりさを取り出す。 「おにいざん、ばやぐごばんもっでぎでー!」 「駄目だよ、もう二度とまりさはご飯を口に入れられないんだよ」 「どぼじでぞっ!?」 話の途中で面倒なのでまりさの口をホッチキスで止める、伝統的ゆっくり口封じである。 「うっーうっー」 はは、なんだかまりさ、れみりゃみたいだぞ。 さて、つぎはれみりゃだ、っと。 「うぎゃー!」 れみりゃの髪を引っ張ってケースから出す、こいつ重くて出すのも面倒になってきた。 でも、出しとかないとまりさ奪還失敗するかもしれないしなぁ。 もうちょい広いケース買えばよかったか。 「ほーら、れみりゃ、ご飯だぞー」 「う~♪ う~♪ れみりゃのごはん~♪」 こいつ昨日と同じセリフはいてやがる、もちろん、食べる前に殴る。 「なんで~なんでれみりゃにごばんだべざぜてぐれないのー!」 「それはね、れみりゃがゆっくりを食べるからだよ」 「れみりゃのごはんー!」 「ちがうよ、れみりゃのごはんはゆっくりじゃないんだよ」 「う~?」 じゃあ、何を食べるんだろう、俺も問答の答えは用意してなかった。 ぷりんか、いやいや、そういえば雑食じゃないか、なんでも食うのか。 ならばべつにゆっくりにこだわる必要ないのか、まりさいらなかったな… まりさを踏む。うーうー唸っている。 これはこれでいいか。折角だ、続けてみよう。 一週間後、今日も同じようにれみりゃを取り出す。 髪をつかみ続けたせいで10円禿ができてしまった。 まりさのほうはもう、ほとんど動かない、死の目の前だ。 「ざくやー、ざくやー」 「はいはい、ごはんですよー」 まりさを渡す、れみりゃは少し考える、空腹で目の前のゆっくりを食べたい、でも絶対阻止される。 でも食べたい、でも絶対殴られる、食べられない上に殴られる? れみりゃは気がついた、もうこれは食べられない。 「いや゙ぁぁぁぁ! もうゆっくりだべだぐないのぉぉ!」 そう言ってまりさを投げ捨てる。 ここにきてようやくわかってくれたか、うんうん。 ピクピクしてるまりさ、気分がいいので口を破って(癒着してた)あげる。 「ゆ……ゆ…」 「まりさ、よろこべ、ご飯をやるぞー」 「ゆ…?」 そう言って一週間前のれみりゃの羽をあげる。 「ゆ…ゆ…」 はじめはゆっくりと食べていたまりさだったが、徐々にスピードを上げて羽にがっつく。 「むしゃむしゃむしゃむしゃ!」 そしてフィニッシュにゆっくり味わうまりさ。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」 「それはよかった」 うん、どうやら体力も大体回復したみたいだな。 「おにいさんもっとごはぴぐ!?」 そしてまたホチキスで止める。 「最後の晩餐、楽しんでもらえてよかった」 そう言ってまりさをかごに押し込む、必要もないので、もう二度と出さないだろう。 「れみりゃにもご褒美上げないとなー、はい、ピーマン」 「う~ざぐやー!」 お気に召さないようだ、一週間も食べてないのにすごい根性だ。 「あ、そ、じゃあ、いらないね」 「う~だべる~」 「あげない」 目標は達成したし面倒になってきた。 れみりゃは割と好きだし、ひと思いに殺してあげよう。 「う~! ざくやー! このおじさんごろじでー!」 やっぱりれみりゃはなぶるように殴る蹴る。 「やっぱり死なないなぁ」 れみりゃは再生能力が高いのだ、面倒なので、ケースに詰めておくことにした。 「だ、だずげ…」 「れみりゃ、やっぱり君もそのまま餓死ね」 そのまま俺は部屋を出て行く。 「だずけでーざくやー! い゙や゙ぁぁぁ!!」 れみりゃは次の日に死んでいた。 まりさの方も三日と持たなかった、やはり体力が落ちていたか。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2158.html
これは私が消しました。さいこぉぉぉ!!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1355.html
「「ゆ゛っ!」」 私はいつものように、ゆっくりまりさとゆっくりありすの頬を引きちぎる。 何度やっても肉体が引きちぎられる痛みに慣れることはないのだろう。ゆっくり達は思わず声を出し涙目になる。しかしこのゆっくり達は、それ以上泣きわめく事は無い。 その後、私は2人のゆっくりに豪華な食事を出してやる。そんな少し奇妙な関係が2年ほど続いていた。 私はゆっくり加工場の研究室に勤務している。 2年前、ゆっくり加工場の新商品開発に向けての研究素材として、加工場からいただいてきたのが、このゆっくりまりさとゆっくりありすだ。 ゆっくりまりさとゆっくりありすは、他の野生のゆっくり達と同様、山にいる所を職員に捕まって加工場まで連れられてきたそうだ。 捕まったゆっくり達の中から数匹を研究用素材として拝借して良いという話になった。そこで、あえて私は研究や実験に協力する意思があるゆっくりを募ることにしてみた。その際、研究と実験に伴って様々な危害を加える事も、はっきりと明言した上で、である。 とはいっても、自分勝手なゆっくり達である。 わざわざ立候補する者はでないであろうと私は考えていた。 ゆっくり達を加工する前に、恐怖を与えると餡子の甘みが増すという話を実際に試してみるためのハッタリだったのである。 立候補者がいなかろうが、強引に2匹のゆっくりを引っ張りあげるだけの話なのである。 しかし、私の予想は裏切られた。 「俺がいくんだぜ!」 少し震えながら独特の口調で、ゆっくりまりさが名乗り出た。 「……わたしもいってあげる」 かなり震えながら、大人しそうなゆっくりありすも名乗り出た。 私は意外な展開に首を傾げながらも、このゆっくり達を私の研究素材として我が家に迎え入れることになったわけだ。 このゆっくり達はいずれにせよ加工場に捕まった時点で死を覚悟したのであろう。少しでも長く生きる可能性に賭けたのかな、程度に私は考えていた。しかし、実際のところ、理由は他にあった。 この2人のゆっくりは加工場の檻の中で、他のゆっくり達に囲まれた中でさえも、孤独だったのである。 ゆっくりまりさはいわゆる、俺まりさと言われる種別のようだ。一人称が「俺」。語尾には「だぜ」。この口調が原因で、出会うゆっくり達すべてに偽者の烙印を押され、弾劾を受けながら生きてきたそうだ。 ゆっくりありすに至っては、ゆっくりありすであるというだけでまわりのゆっくり達から蔑まれてきたという。特に近くに住んでいたゆっくりれいむ一家からの扱いはひどかったそうだ。恐らくその家族は過去に他のゆっくりありすによって、大変な被害を被ったのだと察するが、それにしても残酷な話である。 そんな2人が加工場で研究素材に立候補した理由は共通していた。 自分のことはどうでもいいから、他のゆっくり達は最後まで仲良く一緒にいさせてあげたい、というのだ。 長年、孤独に生きてきたからこその、悲しい発想である。 ちなみに私の研究の内容は、主に食事と餡子(およびクリーム)の関係性についてである。手順は基本的に以下の流れで行った。 1:1週間同じ食物を与え続ける。 2:1週間後、両頬をちぎって、味を確かめ、成分を分析する。 3:だいたい2~3日で頬が完全に回復する。 以下、再度1~繰り返す。 この研究から、様々な味の餡子の商品化に着手しようというわけだ。 1年ほどすると2人のゆっくり達は良い仲になっていた。朝になると頭から子ゆっくりのついた蔦を生やすこともあった。残念ながら、これも研究に活用させていただくのではあるが。 それなりに太い蔦を根っこから折り、赤ちゃんゆっくり達の味と成分を調べる。 「な゛んでぞんな゛ごどずるのお゛お゛お゛お゛」 「あ゛り゛ずのあ゛がぢゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛」 最初の頃は相当抵抗された。当然といえば当然の反応ではある。そこで私はゆっくり達に言い聞かせた。この研究が進めば、もしかしたら他のゆっくり達を無駄に捕まえる必要がなくなり、ゆっくりさせられるかもしれないと。 それが効いたのか、最近では「「ゆ゛っ!」」と一言だけ声を漏らし、目に涙をためてなんとか堪えている。私が心情的に搾取しやすいようにという配慮のようだ。あいにくと私はそんな感情を持ち合わせてないつもりだが、それでもこのゆっくり達の配慮は少しうれしい。せめてもの情けで、先にも記したように頬を搾取したり、子を搾取した後には、いつもより豪華な食事を出すようにした。 そんな生活が2年ほど続いた。 2人のゆっくりも慣れたようで、搾取の事を踏まえた上でも、2人なりにゆっくりできているようだった。時には2人を連れて山に散歩にいったり、川で遊んだりもした。 その中で気づいたことがある。 本当にゆっくりできているゆっくりの餡子は甘さこそ控えめなのだが、深みのある味わいを持つのである。特に年配の方に好まれる味で、この事は早速研究所に報告した。3人による研究成果の1つである。 とある夏の日。 得意先の古物商から花火という物を頂いた。私は早速花火を家に持ち替えり、その晩に3人で楽しむことにした。ゆっくり達が特に気に入ったのが線香花火とねずみ花火という物だった。 2本の線香花火に火をつける。 左手に持つのがまりさの分、右手に持つのがありすの分。 どちらの花火が最後まで残るか競争のはじまりである。 「ゆっくり落ちないでね!!」 まりさは騒がしく跳ねながら、自分の線香花火を応援する。 「……ゆー……」 ありすは祈るようにじっと線香花火を見つめている。 結果、まりさの線香花火が先に落ちた。まりさは実力勝負で負けたわけでも無いのに、異常に悔しがっていた。それほど勝負事に真剣なのであろう。 一方のありすは今までに無いような無邪気で晴れやかな表情を見せていた。 ねずみ花火に火をつけて地面に放す。ねずみ花火はもの凄い勢いで庭中を駆け巡った。 まりさは目を輝かせ、わざわざ花火に向かっていっては、跳ねて飛び越えるなんていう遊びをしている。 一方のありすは怖がって隅っこでじっとしている。そこにねずみ花火が迫ってくると、途端にらしくないほどの大声できゃーきゃーと叫びながら、全速力で逃げていった。 他の花火も綺麗な物ばかりで、3人の楽しい時間を過ごすことができた。 一通り花火を楽しんで、後片付けをしていると、2人のゆっくりは庭に出て体を寄せ合っていた。どうやら花火で楽しんだこともあり、良い雰囲気になったようだ。独身男の私にはやや目の毒である。2人のことは放っておいて、風呂に入ることにした。今度子供が生まれたら、育てさせて良いかな、などと考えながら私は湯船に浸かってゆっくりとしていた。 風呂から上がった私は庭の異変に気がついた。2人のゆっくりの声が聞こえてこないのだ。 庭の方にでてみると、2人の姿は無かった。 ただ1匹のコウモリのような羽をつけた豚まんが浮かんでいるだけであった。 ……地面にはまりさの帽子とありすのヘアバンドが落ちていた。 「うー♪ うー♪ もっち、もっち」 私は絶句した。 なぜ? なぜここに、ゆっくりれみりゃがいるのか。 私はその時になって、初めて自身の認識違いに気づかされた。 あの2人は私にとって、もはやただの研究素材や家畜ではなかったのだ。 しかし、家族とも少し違う。言うなれば、戦友だったのである。 それを失ってしまった事実に、私は一瞬へたれこんだ。 考えてみれば私だって、あのゆっくり達と同じ孤独の身ではないか。 早くに両親を無くし、職場でも必要最低限の会話しかしない。 だからこそ、2人に共感を覚えたのだろう。 だからこそ、2人をなるべくゆっくりさせたい気持ちがあったのだろう。 家畜であるはずのゆっくりにそんな感情を抱くのは研究者失格ということか。 それをゆっくりれみりゃは私に教えてくれたというのか。 たしかに……たしかに少しゆっくりに流されすぎていたのかもしれない。 私が家畜を家畜として扱っていれば、こんな虚脱感に襲われることも無かったのであろう。間違っていたのは私なのかもしれない。 そう、家畜は家畜として扱わなければいけなかったのだ。 そんな事が頭をぐるぐると回っている中でもなお、我が家の庭ではコウモリ豚まんが食後の余韻に浸っていた。 ゆっくりれみりゃには希少種と呼ばれる胴つきの種類がいるのだが、私の目の前にいるのは頭と羽のみのそれであった。胴つきのそれであったら、街外れの豪邸に住んでいる変態爺に高値で売りつけてやったのだが…… しかし胴つきは紅魔館に保護されているという噂も聞く。胴つきのゆっくりれみりゃにひどい事をした人間は、紅魔館のメイド長によって、凄惨な最期を迎えるという噂も聞く。そういう意味では胴つきでないことは不幸中の幸いである。 心置きなく、このゆっくりれみりゃを新たな家畜にできるのだから。 私は食事に満足しきっているゆっくりれみりゃの背後から近づき、両方の羽に手をかけ、左右に一気に引っ張った。羽を失った豚まんが、庭に下りるための小さな石段の上に落下し、顎にあたる部分を思いっきり強打した。 ……すぐには反応はない。鈍感なのであろうか。 3秒ほどしてからようやく羽を失った豚まんが泣き出した。 「う”あ”あ”あ”あ”あ”」 叫び声が煩わしい。近所迷惑にならないように、手際よくゆっくりれみりゃの口を紐で縫い付け、風呂敷に包んだ。翌日から加工場で、家畜とはなんたるかを、このゆっくりれみりゃとともに実践していこうと、私は考えたのだ。 その後、自宅の庭にゆっくりまりさとゆっくりありすの墓を仲良く並べて作ることにした。遺品は帽子とヘアバンドのみだが、一緒に小銭を入れてやった。小銭に気を良くした三途の渡しの死神が、川を渡る間だけでも、一緒にゆっくりしてくれるかもしれないではないか。 ゆっくりれみりゃという研究素材は、それまでの研究素材と戦友を同時に失った私の心を埋めてくれた。というより、私が無理やり埋めさせてもらったと言った方が正しいのだが。 私が注目したのは、ゆっくりれみりゃの羽である。 肉体をちぎると再生に時間がかかるのだが、羽だけであれば、ものの10分程度で生え変わるのだ。これを利用しない手は無いであろう。私は以前のゆっくり達と同様に、食事と羽の味わいの関連性について研究することにした。 研究所に運んだばかりのゆっくりれみりゃは、食事に対する好き嫌いがとにかくひどかった。基本的に甘い物しか食べず、それ以外の食べ物は吐き捨てるのである。仕方がないので、ひとまず飴やクッキーなどのお菓子を中心にした餌を与える事にした。甘い物を与えた時の変化もいずれ研究するつもりだったのだし、順番が変わっただけであろう。 「うー♪ うー♪ むしゃむしゃ♪」 ゆっくりれみりゃは、これ以上ない幸福の表情でお菓子を食べる。 そして食べ終わった直後、余韻に浸ろうかというところで…… ゆっくりれみりゃから羽をもぎ取る。 幸福の瞬間を掻き消す痛みが豚まんボディにかけめぐり、ゆっくりれみりゃは泣き出すのだが、私はそれどころではない。迅速に羽の成分を調べる必要があるのだから。その後も10分毎に羽を採取して、これを調査した。 その度に「う”あ”あ”あ”あ”あ”」「う”あ”あ”あ”あ”あ”」と泣き叫ぶのがうるさいが、家畜に鳴き声は付き物である。 しかし、ゆっくりれみりゃの10分毎の鳴き声に近隣の部署から苦情がきた。私は仕方なく、食事時以外はゆっくりれみりゃの口を紐で縫い付けることにした。 食事の際には紐をはずしてやるのだが、採取のスケジュールもあるためあわてて多少強引にはずすことになる。そんな時はゆっくりれみりゃの唇がひどいことになってしまうのだが、食事を与えればすぐに鳴きやむため、さほど問題は無かった。 お目当ての研究結果はというと……甘い物を与えれば甘い羽になる。 なんともお粗末だが、わかりやすい結果となった。 さらに残念ながら、甘い羽は商品としては成り立たないのである。 この羽にはそれなりの硬度があり、そのまま食すには適さない。 そこで主な用途にと考えていたのが、スルメとダシである。 スルメ同様に加工すれば、独特の歯ごたえがあり、酒のつまみにもってこいの食材となる。また、水につけて30分ほど置けばエキスが抽出されて汁物のダシの役割を期待できるのである。 そして、そのどちらの用途も、お菓子のような甘みが求められるような物ではないのである。このため、私はゆっくりれみりゃの餌にお菓子を出すことをその日限りで打ち切った。このゆっくりれみりゃが甘い物を口にすることは未来永劫無いであろう。 翌日から、唐辛子などの辛い物を与えるようにした。 もちろん、ゆっくりれみりゃは嫌がって吐き出すのだが、諦めずに口に餌をぶちこんでやり、強引に口を縫い付けることにした。こうして10分も経てば、ゆっくりれみりゃがのたうちまわる拍子に飲み込んでくれるのだ。 口を縫いつけた紐をはずす際に失敗して、ゆっくりれみりゃの唇を引き裂いてしまったときは、さすがに食事がつらそうだった。が、餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無い。私は泣く泣く唐辛子スープを口に流し込んでやり、その後再び口を縫い付けてやった。 その翌日はゆっくりれみりゃの唇がひどいことになっていた。 避けた唇を再生する際に、縫いつけていた紐を中にいれたまま再生してしまったらしく、皮の向こうに紐が入ってしまっている。私は仕方なく、包丁を持ってきて、強引に口を作ってやった。以前より多少下方に移動してしまった感もあるが、問題無いであろう。餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無いのだから。 辛い物ばかりを与えて取れるようになった辛い羽は、これ以上無いほど酒のつまみに最適であった。これは商品化すべきである。ダシとしても悪い素材では無いが、用途が限られそうであった。 翌日からはゆっくりれみりゃがもっとも嫌がっていた、野菜を餌に出す事にした。ゆっくりれみりゃは口を閉じて抵抗するのだが、餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無い。 私は仕方なく、口は縫い付けたまま、包丁で頬を切り開き、餌のくず野菜をぶち込んで頬を縫い付けてやることにした。やはり10分もすれば、何かの拍子に飲み込んでくれる。その瞬間の顔のしかめっぷりは、なかなか見ものでもあった。 一応、ゆっくりれみりゃが自ら食してくれるように工夫は凝らした。 ゆっくりれみりゃの好物である、プリンという物に似せて作った野菜汁たっぷりの寒天である。アクもとっていないので苦味やシブ味、エグ味も強烈であろうが、どっちにしろ野菜味は嫌われるのであるから同じであろう。これを出した時のゆっくりれみりゃの顔が、期待から絶望に変わる瞬間は、なかなか見ものであった。無理やり口に突っ込んだら案の定吐き出しそうになったが、いつもどおり、口を紐で縫い付けてやった。餌をやらずに死なれてしまっては元も子も無いのだ。 こうしてできた野菜成分たっぷりの羽は、体に良いつまみとして、また栄養満点なダシとして、商品化が見込める物であった。 ここまでの研究で、ゆっくりれみりゃの羽を商品化するめどはついた。 後はいかにして量産するかである。 1匹のゆっくりれみりゃから、10分毎に2枚。これだけではさすがに量産性に問題があると言わざるを得まい。用途が用途だけに、安価にして数を多く出荷したいのだ。 となると、必然的に次にやることは決まっていた。 繁殖である。 幸いなことに、このゆっくりれみりゃは研究期間を経て充分な栄養を得て育ち、繁殖に耐えうる程度には成体していた。 その日からゆっくりれみりゃは10分毎に断続的に羽をもがれる地獄から開放された。変わりに、毎日毎日、発情した繁殖用ゆっくりの大群を相手にすることになったのだ。普通のゆっくりでは強引な繁殖はその身を滅ぼすだけだが、ゆっくりれみりゃには再生機能があるから大丈夫であろう。 これからは1時間毎にすっきりできるのだから、天国のようなものだ。 人間であれば、見知らぬ他人、しかも複数に襲われるなど、おぞましいことこの上無いのであるが、相手は家畜である。 「うあ”っ! うあ”っ! うあ”っ!」 行為中、ゆっくりれみりゃは泣き叫んでいたが、それが産みの苦しみというやつだろう。 その後誕生した子ゆっくりれみりゃと他種の子の割合は大体半々だった。 他種の子ゆっくりは隣の部署に差し上げることにした。 1ヵ月もすると、生まれた子供達も大きくなっていた。丁度、私があの時に自宅の庭で見たあのゆっくりれみりゃと同じ位の大きさになっている。 すなわち、羽のもぎ取り時である。 これらのゆっくりれみりゃ達には2通りの運命がある。 野菜味担当となるか。唐辛子味担当となるか。 この日から新たに10数匹のゆっくりれみりゃ達の、10分毎に羽をもがれる生活が始まるのである。 いずれ成体したら、今度はこの子供達が新たなゆっくりれみりゃを生み出す機械となるのだ。相手はおそらく、生き別れの他種ゆっくり達となる。 なぜなら、私が他種の子ゆっくり達をあずけた隣の部署は、繁殖用ゆっくりの育成機関だからである。他種の子ゆっくり達はそこでエリート性教育を受けるのだ。 最初のゆっくりれみりゃは、今日も元気に子作りに励んでいる。 いや、励んでいるのは相手のゆっくり達だけのようにも見えなくもないが。 しかし、心配はいらない。もうしばらくすれば、子供達もそこに行くのだから。 もし不測の事態により子供が生めなくなっても行き先はある。 加工場内で育成している、ゆっくりふらんの遊び相手となるのだ。 こうして、あの日私の庭に迷い込んだゆっくりれみりゃは、加工場の中で大家族を形成し、その全てを加工場のために捧げている。 このゆっくりれみりゃこそ、まさに家畜の鑑であると言えよう。 このSSに感想を付ける