約 632,044 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1581.html
幻想郷味巡り・にくまん編 ======================== ≪はじめに≫ ※一応「にくまんだどぉ♪」の続きになります。 虐めと愛で、半々くらいです(精神的な虐め?) 一部、やや悪ふざけ気味にパロディネタがあります。 以上、ご理解・ご容赦お願い致します。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== ゆっくりのブリーダーなんてワリにあわない商売だ。 俺は、ここ数日でそれを確信しつつあった。 自分のことを「おいちぃにぐまんだどぉ♪」などと言い張る、 そんな奇特なれみりゃを預かり出して、既に10日が経とうとしていた。 れみりゃにとっては、当たり前の本能である、 "れみりゃは紅魔館のおぜうさまなんだ"というのを教えるのが俺に与えられた仕事だ。 ゆっくりの中でも、ひときわ頭が悪く、欲望に忠実で、泣き虫で甘えん坊。 そんなれみりゃ種に、"おぜうさまらしくワガママに生きろ"と教えるという、何とも奇妙な仕事。 当初はチョロイ仕事だと甘く見ていた……。 俺が預かった、このれみりゃ。 誰に教えられたかは知らないが、一通り躾けもされており、 あくまでれみりゃ種としてはだが、それなりに知恵も回る。 しかし。 いや、だからこそか。 自分は肉まん!おししく食べられたい! その信条は予想外に強く、その点に関してはおそろしく頑なだった。 紅魔館からの預かり物ということで、 乱暴な手を使うわけにもいかず、俺はちょっとした壁にぶちあたっていた。 今日も今日とて、納期を延ばしてもらうべく、 直接の依頼主である加工場支店長の下へおもむき、 さんざ嫌味を浴びせられながら卑屈に頭を下げてきたところだ。 疲れた。 家が恋しい。 狭いながらも愛しい我が家。 早く帰って、のんびりくつろぎたいものだ。 だが、家の扉を開けた瞬間、 その期待が淡い幻想であることを思い知らされる。 「うっう~うぁうぁ~♪」 玄関を開けた先、廊下の奥で、 件のれみりゃがダンスを踊っていた。 ……我が家に安息は無い。 むしろ、これからが骨の折れる仕事の始まりだ。 「う?」 俺が帰宅したことに気付き、れみりゃは踊るのを止める。 「うー♪ おかえりなさぁ~い!」 トテトテと、おぼつかない足取りで、廊下を小走りにやってくる。 人間からすればイラつく遅さだが、ゆっくりからすれば全力疾走に近いのだろう。 「うぶっ!」 俺を目の前にして、バタンと前のめりに倒れる、れみりゃ。 「うーー! れみりゃのおかおがいたいどぉー!」 れみりゃは、鼻の上を赤くして、目尻に涙を浮かべながら立ち上がる。 "さくやぁぁー!"と泣き出さないだけ、れみりゃ種としては上出来だろう。 やがて、れみりゃは、ピンク色のおべべで目をゴシゴシとこすった後、 俺を見上げて笑顔を浮かべる。 「おかえりなしゃ~~い♪」 「ああ、ただいま…」 「うー! きょうもいじょうありませんでしたぁー♪ れみりゃはいいこでおるすばんしてたどぉ♪」 どこで覚えたのか、片手をおでこにあてて、敬礼の真似事をするれみりゃ。 「……ああ、ごくろうさん」 靴を脱ぎ、俺は廊下を歩いて居間へ向かう。 その後ろをくっついて来る、れみりゃ。 「うーとね、うーとね、れみりゃはきょうもとぉーってもゆっくりしてたどぉ♪ それからそれからぁ~♪ あたらしいおうたをうたってぇ~おどってぇ~……」 れみりゃは俺にかまってもらいたいらしく、 部屋着に着替える俺のまわりを、ぴょんぴょんとはね回る。 「はぁ…」 溜息が自然ともれる。 よっこいしょと座椅子に腰を下ろす俺。 直後に、よっこいしょと言ってしまった自分に後悔する。 「うー? おにぃーさんげんきないどぉ……だいじょーぶぅ?」 れみりゃが、ぬぅ~と俺の顔をのぞき込んでくる。 誰のせいでこんな苦労を……。 下ぶくれ顔のどアップに、俺の中の嗜虐心がくすぐられる。 が、こいつはビジネス。わりきらなければならない。 「ああ、問題ない」 素っ気なく答える俺。 「うー……おにぃさん、ゆっくりできてないどぉ?」 だから、それをお前が。 と、言いかけそうになって、唾を飲み込む。 「心配するな。それより、腹はってるだろ? 台所に紅魔館のおぜうさまのためにプリンがあるぞ」 「う~~~☆ ぷっでぃ~~~んたべたぁ~~~い♪」 笑顔で大口を開く、れみりゃ。 その口から肉汁の唾が飛ぶ。 「うわっ、ばか」 至近距離でれみりゃの唾を浴びる俺。 口の中にまで入ってしまう。 「げっ、飲んじまっ……んっ!?」 偶然にも口にしたれみりゃの肉汁。 その味を受けて、俺の体に電流走る。 (ちょっと待て……この味は……もしかして?) 日々の疲れも忘れ、俺の脳がある計画を組み立てていく。 少しばかり面倒で、乱暴な手も使うことになるかもしれないが……しかし。 (いける! この手ならば!) 「うっ!?」 俺が、ビジネスを解決へ導くアイディアを絞りだしている時、 一度は台所へ向かおうとしたれみりゃが、何かに気付いた様子で足を止め、こちらへ戻ってきた。 その顔は、ぷくぅーと膨らんで、いつも以上の下ぶくれ顔になっている。 「ん、どうした?」 「なんどいったらわかるどぉー! れみりゃはおぜうさまなんかじゃないのぉー!」 手をジタバタ上下に動かし、不満を口にするれみりゃ。 「うー♪ そうだどぉー♪」 れみりゃは、座ってい俺の膝の上に「うーしょ♪うーしょ♪」とよじのぼって、 ちょこんと座る。 「どうした?」 「いいこと思いついたどぉ♪ れみりゃはやっぱり天才だどぉ♪」 「?」 「つかれたときにはぁ~♪ おいちぃ~~~にっぐまんがいっちばんだどぉ~~♪」 れみりゃは、自分から帽子を取り、下ぶくれスマイルを俺に向ける。 「れみりゃのおかお~♪ おいちくたべてねぇ~~ん♪」 れみりゃは頬をポッと赤く染めて、 俺の体にしがみつき、もじもじ服をひっぱった。 もう何度目かもわからない。 おいしぃ肉まんを食べてくださいコールだ。 俺は、それに対していつも通りのリアクションを返す。 「いや、食わねーから」 その後の展開もまた、いつも通り。 れみりゃは、"どぉーーじでだべでぐれないんだどぉーーーー!!"と泣きわめき、 やがて泣き疲れてそのまま寝てしまうのだった。 ここ10日ばかり、繰り返されてきた日常。 だが……。 「ふふふ……。れみりゃ、ゆっくり数日後を楽しみにしているがいい!」 俺はぐーすか眠るれみりゃに、ゆっくり用の毛布をかけながら、笑みをこぼした。 * * * 「うーーっ☆ しゅーーっごいどぉーーーー!!」 目の前の光景を見て、れみりゃが感嘆の声をあげた。 「すごいだろ? お前のために用意したんだぞ?」 俺とれみりゃの前には、簡易的な屋台が設置されていた。 のれんには、「おいしぃ肉まん」という文字と、れみりゃの下ぶくれ顔の絵が描かれている。 ……というか、俺が描いた。 今日の計画のため、中古の屋台を譲り受けて、日曜大工で改修したのだ。 「うあ~~~~っ♪ うあうあ~~~~~っ♪」 れみりゃは、屋台の周りを跳ね回りながら、赤い目を開いてキラキラ輝かせている。 「ほら、そこに登ってみろよ」 「うー♪」 れみりゃは、俺が取り付けたれみりゃ用の階段をのぼり、屋台の店主側の位置に立つ。 「いいみはらしだどぉ♪」 御機嫌のれみりゃ。 その様子を見て、これから起こるであろう展開を想像しながら、笑いをこらえる俺。 「どうだ? 気に入ってもらえたか?」 「う~~っ! しゃいこぉーだどぉー!」 「そりゃ良かった。じゃ、頑張って肉まんを売ってみようか?」 「まぁ~~かせとけぇ~だどぉ♪」 胸を張って、その胸を自分の拳で叩くれみりゃ。 そう、俺がれみりゃに用意したのは、れみりゃ自身が肉まんを売るための屋台だった。 "そんなに肉まんの味に自信があるなら、みんなに少しずつ食べてもらわないか?" 数日前、俺がそう言うと、れみりゃは喜んでその話にくいついてきた。 そして、今日がその実行日。 俺とれみりゃは、人の少ない町はずれの街道に店をだしていた。 ちなみに町中でないのには理由がある。 あくまでこれはれみりゃに"思い知らせる"ためのデモンストレーションだ。 本当に肉まんを売って稼ごうというわけじゃない。 お客も、あらかじめ俺が招待した知人や、かつての依頼主たち。 言わばサクラを事前に仕込んでいた。 もっとも、彼等には「れみりゃの肉まんを食べさせるので来て欲しい」と言ってあるだけだ。 へたに素人演技をさせるより、より生の反応を見せた方が、れみりゃも理解しやすいだろう。 俺は、自分の計画の成功を信じて口の端を上げる。 れみりゃは、そんな俺を見て、自分の晴れ姿を喜んでいるとでも思ったか、 満面の笑顔で俺に礼を言ってきた。 「おにぃさんのきたいにこたえられるよう、れみりゃがんばるどぉ♪」 「ああ、がんばれ。……あっ、そうそうこれを忘れるところだった。」 俺は、鞄から一着のエプロンを取り出し、れみりゃに見せる 「ほら、両手をあげてバンザイして」 「うっ?」 「店員さんといえばこれだからな」 「うーーー♪」 俺の意図を理解したのか、両手をあげてバンザイの姿勢になるれみりゃ。 俺は、そんなれみりゃにエプロンをつけてやる。 エプロンは、れみりゃのピンクの色のおべべの上からでも、ぴったりフィットした。 「かぁ~~~いいどぉ~~~♪」 自分の姿を見て、惚れ惚れするれみりゃ。 そりゃ似合うハズだと、内心ほくそ笑む俺。 そのエプロンは、ちょっとした遊び心で、加工場の支店長に作ってもらったものだった。 原材料は……ずばり、加工場で処分され余った、れみりゃ達の服だ。 そんなこと、目の前のれみりゃは全く気付いてないようで、至ってご満悦だ。 「うっうー♪ れみりゃはげんそーぎょういぢのにぐまんやさんだどぉー♪」 これだけハイテンションで喜ぶれみりゃを見たのは、 ブリーダー業をやりだしてから始めてかもしれない。 少し心が痛んだが、これもビジネス。 俺は公私を使い分ける主義だ。 そうこうしているうちに、俺が呼によせた最初の客がやって来たようだ。 「ほら、れみりゃ。どうやらお客さんみたいだぞ?」 「うっ?」 屋台へ向かって、30代前半の夫婦らしき男女が歩いてくる。 男は黒っぽい服装をだらしなく着込み、反対に女はしっかりとした服装で茶色の髪を背中まで伸ばしている。 「うーー♪ いらっしゃいまぜぇぇぇ~~~♪」 喜びいさんで、客を招き入れるれみりゃ。 俺は、少し離れてその様子を観察することにする。 「ここか? 例の肉まん屋っていうのは?」 「ええ、どうやらそうみたいよ……あら、れみりゃが店員をやっているのね」 「れみりゃのぉ~、お~いじぃ~~~にぐまん♪ たべでっでくだちゃ~~い♪」 「そうか。じゃ、肉まんを二つ頼むよ」 言って、夫婦らしき男女は屋台の前に置かれた椅子に座る。 「かしこまりましたどぉー♪」 れみりゃは、笑顔で応える。 そして、俺の教えた通り、皿を人数分取り出すと、 自らの頬をつねり、ひっぱりだした。 「うーっ、うーっ!」 かなりの痛みがあるのだろう。 こらえるように、口元を結び、目からは涙を流している。 やがて、ぶちんとれみりゃの下ぶくれ顔の一部がちぎれる 「うっぎゃぁ!」 叫ぶれみりゃ。 自らちぎった顔の一部を、皿の上にのせると、続いてもう片方の頬をつねって引っ張りだす。 「いーっだぃどぉ!」 ぶちん。 またしてもちぎれる下ぶくれ顔の一部。 れみりゃは、叫びながらも、自らの顔の一部を皿の上にのせる。 「……うぅーーー、おまだぜぢまじだぁ~! おいぢぃにぐまんたべでくだしゃーい♪」 目にはうっすらと涙の粒を浮かべたまま、 肉まん……すなわち自分の顔だったものがのった皿を男女にさしだす、れみりゃ。 その顔は、辛そうだったが、同時に充実感に満ちた微笑みを浮かべていた。 (うーん、まさに涙ぐましい接客とでも言うべきか?) そんなことを考えながら、様子を眺める俺。 夫婦らしき男女は、互いに顔を見合わせた後、ゆっくりと肉まんを口にする。 もぐもぐ租借する男女を見て、れみりゃの胸は期待でいっぱいになる。 "ああ、ついに食べてもらえた!" "はやく感想が聞きたいなぁ~♪" "あんまりおいしくて、もしかして泣いちゃうかも?" "おかわりたのまれたら、痛いけどせいいっぱいがんばるぞー♪" 「う~う~うぁうぁ~♪」 期待で胸が熱くなって、れみりゃは思わず口ずさまずにはいられなかった。 だが。 夫婦らしき男女は、一口だけ肉まんを食べたのち、それを皿の上に戻した。 そして、男はさも不満そうに。女は残念そうに口を開く。 「この肉まんはダメだ。食べられないよ」 「うっ?」 「舌の上でシャッキリポンとはじけないわ…」 「ううっ!?」 予想外の反応に、困惑するれみりゃ。 ガタッと席を立つ男女を、呼び止めようとする。 「ま、まってほしいどぉー! そんないじわるいっちゃイヤイヤなんだどぉ♪」 だが、男女はれみりゃを見ようともせず、立ち去っていく。 だんだんと小さくなる後ろ姿を見ながら、れみりゃの目には自然と大粒の涙がたまっていく。 「うぅぅぅ~~~~~っ」 れみりゃは、泣き叫びこそしなかったが、 必死にこらえるように、嗚咽をもらしだす。 その様子を見て、心の中で"しめしめ"と呟く俺。 そう、数日前、偶然れみりゃの肉汁を飲んでしまった時に気付いたのだが、 このれみりゃ、はっきり言って不味いのだ! だが、よくよく考えれば、その理由も頷ける。 ゆっくりの基本的な特徴の一つに、恐怖や絶望やストレスによって、より味が高まるというのがある。 だが、このれみりゃは、自らが食べられることで恐怖も絶望も一切感じていない、。 なまじ、聞き分けが良いために、おそらく余計なストレスも抱え込んでいないのだろう。 故に、このれみりゃは、れみりゃの願いや主張とは裏腹に、不味い。 それに気付いた俺は、敢えてれみりゃに肉まん屋をやらせて、 客のリアクションでその事実を思い知らせてやろうと考えたのだ。 そう、二度と自分は美味しい肉まんなどと言えないほどに。 俺は、目の前で落ち込んでいるれみりゃを見て、 自分の計画が間違っていなかったことを確信する。 * * * そうこうしている間に、次の客がやってきた。 紫色の和装に身をつつんだ、気むずかしそうな初老の男性。 その傍らには、従者らしき中年の男を従えている。 彼らは、かつてとあるゆっくり災害の解決を俺のところへ持ち込んだ、下・依頼主達だ。 そう言えば、このれみりゃが我が家にやって来た初日、 れみりゃが台所から取り出してきた大皿を焼いたのが、この初老の男だった。 よくは知らないが、その道では高名な陶芸家で、 他にも書や茶にも通じる、いわゆる文化人というヤツらしい。 正直なところ、俺は苦手なタイプだったが、 彼には信奉者も多く、その作品にはかなりの高値がつくという。 そして、そんな彼が料理にも精通し、厳しい評価を下すことを俺は知っていた。 だからこそ、今回の計画を思いついた時、彼には是非参加してもらいたかった。 ……そんな俺の思惑など知らぬれみりゃは、ぐしぐしと涙を拭き取り、 笑顔で接客につとめようとする。 「うぅ~~~♪ いらっじゃいまぜぇ~~♪」 初老の男は、汚らしそうにれみりゃを一瞥した後、背後の従者に声をかける。 「私は肉まんなどという下卑た食べ物のことはよくわからん。本当にこの店で良いのか?」 「はい、先生。あの男が言うには、確かにこの場所のはずです」 「ふんっ!」 初老の男は、偉そうに席に座ると、早速れみりゃを怒鳴りつける。 「なにをボーとしている! さっさと肉まんをださんか!」 「うっ、うーっ! わ、わがりまじだぁー!」 男の怒鳴り声にビクっと体を震わせる、れみりゃ。 れみりゃは、さっそく皿を用意し、その上に先ほどと同じように肉まんをのせようとする。 「うー?」 だが、自分の下ぶくれ顔を掴もうとして、 れみりゃは、既にそこが千切れていることに気付く。 「うーーー……」 困惑し、眉根を寄せるれみりゃ。 一方、短気な初老の男は、あからさまにイラついている。 今にも怒鳴り出しそうな不機嫌顔に、れみりゃはビクつきながらウロウロしている。 「きさま! なにをしている! やる気はあるのか!」 「は、はぃぃぃっっ! れみりゃがんばりまずぅぅ! もうずこじまっででくだざいぃぃ!」 頭を叩かれると思ったのか、れみりゃは怯えて"う~~"と頭を抱えながら、初老の男に応える。 「うっ! そうだどぉー♪」 れみりゃは、何かを思いついたらしく、 パァーと目を輝かせて、顔をあげる。 「う~~っ!」 れみりゃは、ゆっくりらしからぬスピードで、エプロンやご自慢のおべべを脱ぎ散らかしていく。 「うっふ~~~んだどぉ♪」 いつぞやと同じく、ドロワーズいっちょうの姿になった、れみりゃ。 屋台の机の上に立ち、初老の男の前まで歩いていく。 「ぎゃぉー♪ たべられちゃうぞぉー♪」 れみりゃは、手を両手に上げ、初老の男に笑いかける。 それを不快極まりない表情で見下す、初老の男。 従者は、いつ初老の男の怒りが爆発するか、ヒヤヒヤしているようだった。 「おまたぜじまじたぁ~! おいちぃ~おいちぃ~れみりゃのにぐまん~♪ めしあがれぇ~♪」 れみりゃは、仰向けに寝っ転がり、両手両足をピタっと体にくっつけて微笑む。 「……おい、中川」 「は、はい、なんでしょう先生!」 ……どうやら、あの従者の名前は中川というらしい。 どうでもいいことを頭にとめつつ、俺はこみあげてくる笑いを必死でこらえる。 「これはいったいどう食えばいいんだ!」 「はっ、その、そのまま口を近づけ、お好きな箇所にかぶりつけばよろしいかと…」 「ふん! 食い方まで下卑ている!」 初老の男は憤慨するも、食への探求心は真摯なようで、 れみりゃのポテっと膨らんだお腹を手で押さえつけると、そこへ口を近づけていく。 「うー♪ くしゅぐったいどぉー♪」 嬉し恥ずかしそうに笑みをこぼし続ける、れみりゃ。 だが、次の瞬間。 「いっだいぃぃぃーーっ!」 がぶり。 初老の男が、れみりゃの腹にかじり付き、一口ぶん食いちぎったのだ。 「うぅぅぅぅ~~~~っ! れみりゃのにぐまん、どうでずがぁ~~?」 れみりゃは、痛みで涙を浮かべながら、男の感想を心待ちにする。 初老の男は、無言のまま口を動かし続け、ゴクンと咽を動かした。 「……肉まんのような下卑た食べ物を美味いだの不味いだの言っても仕方ないから、それは言うまい」 「う~?」 静かに切り出す初老の男。 が、次の瞬間。 くわっと目を見開き、怒声をあげる。 「が! ひとつだけ言っておこう! これは人の食うようなものではないわっ!」 「う~~~~っ!?」 初老の男のリアクションに、れみりゃは明らかにショックを受けている。 遠くから見ていてもはっきりわかる。あれだけ紅潮させていた顔が、いまは薄っすらと青ざめはじめているほどだ。 「ど、どぉぉじでだどぉぉ!! なんでぞんないじわるいうんだだどぉぉーー!!」 「だまれ! いやしい豚め!」 初老の男は、平手でれみりゃの頬を叩く。 「ぶぎゃん!」 まだ塞がっていない傷から肉餡を飛び散らせて、 れみりゃは痛みで"あぅあぅ"と叫んで、身をもだえさせる。 「ふん! 見ろ中川! こんなものを食べたせいで手が汚れてしまったではないか!」 「はっ、す、すみません先生…」 「これだから私は食事に呼ばれるのが嫌いなんだ! 人を招いておいてこんなものを食わせるとは!」 「は、はい、先生のおっしゃる通りでございます…」 「ふんっ、時間を無駄にした。行くぞ!」 男は立ち上がり、踵を返そうとする。 そんな初老の男を、れみりゃが呼び止める。 「だべぇぇ! かえっちゃだべなのぉぉ!!」 口から肉汁を飛ばすれみりゃ。 運悪く、その肉汁が初老の男の高そうな着物に染みついてしまう。 見る間に機嫌を悪くする、初老の男。 「えぇーーーい! 言ってもわからぬ豚めぇ! 女将を呼べぇ!」 怒髪天をつき、なにやらワケのわからぬことを口走る男。 バチーンバチーンと何度もれみりゃを叩き、しまいには屋台の机を持って、それを力任せにひっくり返そうとする。 「だべぇぇぇえl! れみりゃのおびせがぁぁぁぁぁ!!!」 あ、壊れる。 俺がそう思ったのと同時に、中古の屋台は摩耗した接合部がはずれ、ガラガラ崩れ出す。 「うああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」 悲しみと驚きの叫びを同時にあげつつ、 れみりゃは崩れる屋台に巻き込まれ、その下敷きになっていまう。 (うわ、さすがに止めないとマズイか?) まさか、あの初老の男がここまでキレるとは思わなかった。 このままでは、怒りに任せて、れみりゃを殺しかねない。 俺は、40cm四方桐の箱を持って、屋台に近づいていく。 「うあぁぁぁぁ! れみりゃのあんよがぁぁぁ! あんよがいたいどぉぉぉっ!」 近づいてみると、とりあえずれみりゃは無事なようだった。 だが、腰から下が崩れた屋台の下敷きになって、動けないようだ。 「ふん! 思い知ったか醜い豚め!」 「うーっ! れみりゃは、みにくくないもぉん! 豚じゃないもぉーん! れみりゃはおいじぃにぐまんだもぉーーん!」 涙をだぁだぁ流しながら、抗議するれみりゃ。 「このっ! まだ言うか!」 初老の男が腕を振り上げる。 「うぁぁん! ざぐやぁぁぁ! おにぃざぁぁぁん! こあいひどがいるよぉぉぉ!!!」 「はい、そこまで!」 俺は初老の男が拳を振り下ろす直前、男とれみりゃの間に割って入った。 「ううーーーーっ! おにぃざぁぁぁぁぁん!」 俺を救世主とでも思ったか、れみりゃは俺を見て泣き顔を晴らした。 「ぬぅ~~~貴様か! ちょうどいい! 文句を言ってやろうと思っていたところだ!」 「はぁ……文句ですか?」 「よくもいけしゃあしゃあと! こんなゲテモノを食わせてくれたな!」 男は、怒りの対象を俺に変え、叫び続ける。 「う~~~っ! れみりゃゲテモノじゃないどぉ~~~っ!」 ……と、れみりゃが茶々を入れてきたが、ややこしくなるので無視しておく。 「そうですか……やはりお口にあわなかったですか」 「当たり前だ! こんなマズイれみりゃは初めてだ!」 「うっ!?」 改めて、自分がマズイということを、 それも同族のれみりゃ達の中でもマズイということを、 男の口から告げられるれみりゃ。 "う~~~~~う~~~~~~"と動揺する姿に、 俺は自分のプランが順調なことを知る。 「そうですか。それではお口直しといってはなんですが……こちらをどうぞ」 「ぬぅ?」 「うー?」 持っていた桐の箱を開ける俺。 その中身を見て、同時に疑問の声を上げる、れみりゃと初老の男。 「ゆっくり食べていってね!」 箱を開けた瞬間、中身が口を開いた。 そう、桐の箱の中身は、一体のゆっくりれいむだった。 「きさま…なんのつもりだ?」 「うー…そうだどぉ…そんなぶちゃいくなおまんじゅうたべるくらいなら……もういちどれみりゃを……」 不満の声をあげる2人を無視して、 俺は、れいむの頬の当たりをブチっと千切る。 「ゆっ!」 れいむは一瞬だけ痛そうな声を上げたが、今は平然としている。 俺は千切ったれいむの欠片を、初老の男に差し出した。 「だまされたと思って食べてみてください」 「ぬぅ……」 れいむの欠片を口にする、初老の男。 その様子を見て、れいむが誇らしげに胸を張った。 「ゆっへん! どう? れいむのおあじは!」 「ぬ、ぬぅ~~~! な、なんだこのあじはぁ~~~!」 くわっと目を見開く男。 その様子を見たれみりゃは、男がれいむに対して怒り出すと思い、ざまぁみろと鼻で笑う。 「ぶぁ~~かぶぁ~~か! れみりゃでもだめだったのに、ぶちゃいくなおまんじゅうなんかが……」 「う、うまい!!」 「うーーーっ!?」 それぞれ異なる意味で、驚愕の叫びを上げる、れみりゃと初老の男。 「な、なんだこの甘みは……ほのかに香る果実の甘酸っぱさ……苔桃でもない……スグリでもない……木苺でもない……」 初老の男はブツブツと呪文のように呟き出す。 なにごともガチな人って恐いなぁ~と、一歩引く俺。 「……そうか! 桑の実か! そうだな!?」 「ええ、さすがですね。ご名答です」 営業スマイルで応える俺。 このれいむは加工場の試作品で、 桑の実を主食としたことで格段に上品な甘さを実現したものだった。 まだどこにも売ってないものなのだから、当然食通のこの男も初めて食べた味に違いない。 「ぬぅ……こしゃくな……この私を試そうとは」 「ご満足いただけたようで、何よりです」 「ふん、今度そのれいむを私の屋敷に送るように!」 「はい、加工場に伝えておきます」 口ではぶつくさ言っているが、初老の男性の顔には柔和な笑みが浮かんでいる。 どんだツンデレじーさんだと思いつつ、俺はこの元・依頼主を途中まで送っていくことにする。 「あ、そうそう、キミはここでれみりゃとお留守番しててね」 「ゆっ! わかったよ! このぶさいくな豚さんと一緒に、ゆっくり待ってるよ!」 「う~~っ! れみちゃぶちゃいくなんかじゃないどぉー! おまんじゅうのくせになまいきだどぉー!」 屋台の下敷きになったままの体をジタバタ動かそうとする、れみりゃ。 俺は、れみりゃが動けないことを確認すると、れみりゃのすぐ側に、れいむを置く。 「それじゃ、ちょっとだけ待っててくれな」 そう言って、俺は初老の男性を送りに行く。 ……もっとも、これは単なる口実。 れみりゃの、"肉まん"としてのプライドを傷つけるための芝居にすぎない。 俺は、適当に男を見送ると、すぐに屋台の場所へ戻り、 れみりゃ達に見つからないよう影から様子を観察する。 そこには予想通りの光景があった。 温室育ちで絶対的な自信を持つれいむが、 たったいまプライドも体も見事に潰されてしまったれみりゃをイジめていたのだ。 「う~~! ぼさっとしてなでれみりゃをたすけるんだどぉ~!」 「おお、こわいこわい」 普段は比較的行儀の良いれみりゃだったが、 どうやらエサであるゆっくりに対しての態度は、普通のれみりゃと大差無いらしい。 対して、れいむは、"こわいこわい"という言葉とは裏腹に、完全にれみりゃをバカにしている。 れみりゃが動けないことを理解しているのだろう。 「ぶさいくな豚さんはゆっくり静かにしてね!」 「う~! れみりゃはぶちゃいくじゃないどぉ~!」 「なにいってるの? じぶんのかおをみたことないの? バカなの?」 「う~~~~っ!」 「おお、なみだめなみだめ♪」 れみりゃは、悔しさで目に涙をためる。 だが、ただでさえ体のあちこちを食べられ、初老の男に叩かれ、おまけに屋台の下敷きになっているのだ。 動くことはおろか、たまに嫌がらせで体当たりをしてくるれいむに、反撃することもできない。 「う~~! おまえなんか~~おまえなんかぁ~~!」 「口のききからに気をつけてね豚さん! れいむは"えりぃ~と"なゆっくりなんだよ!」 「れみりゃはぶたじゃないどぉー! れみりゃはおいちぃにぐまんだどぉー!」 「ゆ? 豚さんは肉まんなの?」 れいむは、肉まんという言葉に興味を覚えたようで、動けないれみりゃの体をパクパクついばんでいく。 「うぎぃ、うぎゃ、い、いだいどぉ! やめでぇ!」 「ゆぎぃぃぃ! なにごのあじぃぃぃ!! まずすぎるぅぅぅぅぅ!!!」 ぺっぺと、れみりゃの欠片を吐き出すれいむ。 「豚さんは、ゆっくりできない肉まんなんだね! れいむにこんなもの食べさせるなんて!」 自分で痛がるれみりゃを無理矢理ついばんでおいて、さも正義は我にあらんと怒るれいむ。 加工場の最新技術で生み出されたゆっくりとはいえ、しょせんはゆっくりなのだ。 「ゆぅ~~~! なにかくちなおしに食べられるものは……ゆっ!?」 れいむは、崩れた屋台の一角に、見なれないものを発見する。 「ゆゆっ、みたことないものがあるよ?」 それは、俺がれみりゃにあげたエプロンだった。 れいむは、ピョンピョン跳ねてエプロンの下へ行く。 「うっ?」 れいむが自分のエプロンを狙っていることに気付き、れみりゃは叫び出す。 「だめだどぉぉ! それはれみりゃがおにぃさんからもらっだものなんだどぉぉ!!」 「ゆ? にんげんのお兄さんから?」 人間がくれたもの。 加工場で箱入りで育てられたれいむは、それだけで無条件に何か良い物なのだろうと考える。 「あれはれいむがゆっくりもらってあげるよ。だからぶたさんはだまっていてね!」 「だぁぁめぇぇぇ! ぎゃおー! ぎゃおー!」 叫び、何とかれいむを近づけまいとする、れみりゃ。 だが、抵抗むなしく、れいむはエプロンの下まで辿り着き、それをむしゃむしゃ食べ始める。 「むーしゃむーしゃ」 「な、なにずるんだどぉぉぉぉっっ!!! やめるんだどぉぉぉぉっっっ!!!」 れみりゃは半狂乱で泣き叫び、れいむがエプロンを食べるのを止めようとする。 だが、れいむはそんな叫びを軽く受け流し、あっという間にエプロンをたいらげてしまう。 「うあぁぁぁっ! ざぐやぁーーーー! おにぃざぁーーーん! だずげでぇーーーー!」 大好きなお兄さんからもらった、大事な宝物。 誇らしかった、幸せだった、希望に満ちていた、その象徴。 それが無惨に食べ尽くされ、消えてしまった。 「……ゆぅー、あんまりおいしくなかったよ。 れいむにはもっとおいしいものを食べさせてね!」 平らげておいて、プンプンと頬を膨らませるれいむ。 だが、それ以上に、れみりゃは怒りをあらわにする。 「うわぁぁぁ! やっづげでやるどぉ! おまえなんがぁ! れみりゃがででいっでやっづげでやるどぉー!!」 「おお、おろかおろか♪ おばかな豚さんはだまってれいむがゆっくりするのを手伝ってね!」 「ちがうどぉー! れみりゃはーー!」 「そうだったね! まじゅ~~い肉まんさん! れいむはとってもおいしぃおまんじゅうだから、肉まんさんよりエライんだよ!」 そう言って、えっへんと胸を張るれいむ。 れみりゃは、ブンブンと首を左右に振る。 「ちがうどぉー! おまえなんがよりもれみりゃの方がえらいんだどぉー!」 「ゆ? なにいってるの? まずい肉まんさんがエライわけないでしょ!」 「ちがうどぉー! ちがうどぉー! れみりゃはとってもえらいんだどぉー!」 物陰で観察を続けていた俺は、れみりゃの言葉に固唾を飲む。 (そうだ、その続きを言え! 自分は偉い何なのか、自ら口にするがいい!) 「れみりゃはー! れみりゃはーーーっ!」 だが、れみりゃはその続きを言おうとしない。 言葉につまり、そのまま泣き出してつっぷしてしまうのだった。 「うぅぅうぅ~~~~~っ! おにぃざんだじゅげでぇぇぇ~~~! もうおうちがえるぅぅ~~!」 * * * ……結局その日、れみりゃが"れみりゃはこうまかんのおぜうさまだどぉー!"と言うことはなかった。 そういう意味では、俺の計画は不完全に終わったといえる。 だが、勝ち筋は見えてきた。 肉まんとしてのプライドをズタズタに切り裂き、 おいそれと自分が美味しい肉まんなどとは口にできないようにする。 そして、あと一歩。 あと一押しで、このれみりゃは"自分が肉まんだ"などという認識を捨てることだろう。 俺は、ビジネスの成功を夢見ながら、次なる計画を練りはじめる。 が、その時。 ばぶぅー。 派手な音とともに、水面に大きな泡が立ち、俺は現実に引き戻される。 鼻を押さえながら、苦々しく口を開く俺。 「……れみりゃ、おまえなぁ!」 「う~~♪ でちゃったどぉ~~♪」 俺のすぐ目の前にある、大きな下ぶくれ顔。 恥ずかしそうに頬を染めながら、ニコニコ笑っている。 ここは我が家の湯船。 れみりゃに屋台をやらせてから数日後、 俺は傷の癒えたれみりゃを湯船に入れ、体を洗ってやっていた。 「う~~、おにぃざぁん♪」 「なんだ?」 「れみりゃはぁ~♪ おにぃざんのことがだいしゅきだどぉ~♪」 「はいはい」 俺は苦笑し、受け流す。 そんなに好きなら、さっさと"肉まん"主張をやめ、俺の仕事を終わらせてくれ。 心中で呟きながらも、俺はどこか余裕だった。 ……次のれみりゃの言葉を聞くまでは。 「だからぁ~れみりゃはぁ~♪ だいずぎなおにぃざんのためにぃ~♪ がんばっでおいちぃにぐまんになるどぉ~☆」 「…………」 ……あー、そーですかぁー。 がっくりと肩を落とす俺。 どうやら、れみりゃは、この新たな決意を俺に告げるために、 しばらく"自分は美味しい肉まんである"という主張を自重していたらしい。 「うっう~~うぁうぁ~~♪」 湯船の中ではしゃぐれみりゃを見て、俺は改めて思う。 まったく、ゆっくりのブリーダーなんてワリにあわない商売だと。 ======================== ≪あとがき≫ すみません。 いきおいだけで書いてしまいました…。 美味しんぼが幻想入りしているのかは定かではありません(汗 by ティガれみりゃの人 ======================== このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1304.html
注;人間がゆっくりに対して性的行為を行なう描写あり 読む このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1857.html
ゆっくりいじめ系808 ティガれみりゃ制捕 ゆっくりいじめ系817 ティガれみりゃ2虐環捕 ゆっくりいじめ系821 ティガれみりゃ3制家捕 ゆっくりいじめ系842 ティガれみりゃ4虐 ゆっくりいじめ系1038 たっぷりしていってね!_01 ゆっくりいじめ系1039 たっぷりしていってね!_02 ゆっくりいじめ系1465 こぜうさまとさくや ゆっくりいじめ系1546 ご家庭で出来る☆れーばてぃん ゆっくりいじめ系1603 奇跡を信じて ゆっくりいじめ系1686 適者生存 ゆっくりいじめ系1714 アイドルのオシゴト ゆっくりいじめ系1799 おはなしの国 ゆっくりいじめ系1860 ゆーふぉー旅行の悲劇 ゆっくりいじめ系1909 孤独のゆっくり ゆっくりいじめ系2113 べじたりあん ゆっくりいじめ系2208 お目覚めはゆっくりと ゆっくりいじめ系2266 誰にでもは出来ない仕事 ゆっくりいじめ系2353 通りすがりの人間だ ゆっくりいじめ系2440 いいつけてやる! ゆっくりいじめ系2644 どろっ☆わーずぅ ゆっくりいじめ系2764 しまわないで!虐巨強希ゆ幻 ゆっくりれみりゃ系いじめ44 にくまんだどぉ♪? ゆっくりれみりゃ系いじめ45 幻想郷味巡り・にくまん編? ゆっくりれみりゃ系いじめ47 でびりゃまん (その1)? ゆっくりれみりゃ系いじめ48 ゆっくりゃタイフーン? ゆっくりれみりゃ系いじめ54 かりしゅま対決? ゆっくりれみりゃ系いじめ55 うーせんおじさん? ゆっくりれみりゃ系いじめ57 ぶーぶー!ってやつかわいい? ゆっくりれみりゃ系いじめ60 ブログの女王? ゆっくりフラン×ゆっくりれみりゃ系4 スクうーター? ゆっくりいじめ小ネタ206 れみりゃはともだち?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/218.html
「れみりゃの帽子」 まりさは逃げていた。森の中を、ゆっくりらしからぬスピードで逃げていた。 後ろを見る余裕などないのに、後ろを見ずにはいられない。 何度も何度も自分の後ろから追いかけてくる“それ”の姿を確認した。 「がおー♪たーべちゃーうぞー♪」 胴体のあるゆっくりれみりゃがご機嫌そうな顔で、まりさを捕食しようと追いかけてくる。 顔だけなら、まりさの全身と同じバレーボール大なのだが、胴体付きとなるとその威圧感はまりさにとっては この上ない脅威だ。 目の前で群れの仲間をれみりゃに食べられたという経験も、まりさの恐怖を増幅させる。 「ま、まりさはおいしくないよ!!ゆっくりたべないでね!!」 「ぎゃおー!おいしいまんじゅうだーべぢゃーうぞー♪♪」 まりさは草を掻き分け、木々の間を抜け、橋を渡り、獣道を駆け上り、とにかく逃げ続けた。 なのに、後ろを振り返るたびにれみりゃが近づいてきているように感じる。 迫り来るニコニコ顔のれみりゃは、まりさにとって恐怖の対象でしかない。 その声は、もう耳元でささやいているぐらい近く感じられた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっくりついてこないでね!!」 出かけるときに、お母さんは後頭部に赤い綺麗なリボンを結んでくれた。 何事もなく、無事に帰ってこられるように…というおまじないだった。 だからまりさは信じている。自分は絶対に帰り着いて…お母さん達とゆっくりできる、と。 このまま逃げ切って、自分のおうちにたどり着いて、お母さんに精一杯甘えながらゆっくりしたい。 赤いリボンを大きく揺らしながら、一刻も早く日常に戻るためにまりさは逃げ続ける。 「うー♪もーすこしでおいつくどー♪」 すぐ後ろに、れみりゃの気配を感じていた。ちょっとでも気を抜いたら…捕まる。 そうしたらどうなるか、まりさはよく分かっている。だから、何が何でも逃げるのだ。 今がゆっくり出来なくても、いつかきっとゆっくりできるようになると信じて。 そして… まりさが木の根を飛び越えた瞬間。 「がおー!づーがまーえぶぎゅえ!!??」 「だべないでええええぇぇぇぇえっぇええ!!!」 木の根につまづいたれみりゃは、華麗に宙返りし…地面に強く叩きつけられた。 死を覚悟したまりさはそのまま目をつぶってしまい、勢いあまって正面の木に激突した。 「ぶぎゃ!!」 痛みに涙を滲ませながら、後ろを振り向くと… そこには、全身の痛みにのた打ち回るれみりゃの姿があった。 「ぶー!!れびりゃのぶりでぃーなあじがー!!!ざぐやー!!ざーぐやああぁぁぁっぁっぁあ!!!!」 れみりゃの両脚は、膝のところで明らかにおかしな方向に折れ曲がっていた。 「びゃー!!れみりゃのうでがー!!ぶーてぃほーふぇいすがああぁぁぁぁ!!ざぐやどごおおおぉぉ!!?」 両腕もぐしゃぐしゃに折れ曲がり、顔は地面と擦ったことによって平らになり、ところどころ肉がはみ出ている。 胴の部分からも肉汁が染み出している。とくに腰辺りからの流出は多く、水溜りを作るほどだった。 死に物狂いで暴れるのだが、もはや膝や肘から先はれみりゃの意思どおりに動かずぶら下がっているだけ。 結局その場から数センチも動けなかったれみりゃは、疲れて暴れるのを止めた。 「ゆ……ゆっくりしていくの?」 まりさは、状況を把握できずにいる。 先ほどまで自分を追いかけていた天敵が、目の前に倒れている。 動かない?…いや、ちがう。大怪我で動けないのだ。 …ならば、やることはひとつである。 「…まりさたちをたべるれみりゃは、ゆっくりしんでね!!」 「ぎゃお?やめでええぇぇ!!やめないどだーべぢゃーぶべっ!!??」 一瞬で立場が逆転した。 れみりゃが動けないと分かったまりさは、れみりゃの全身を思い切り踏み潰していく。 全力でジャンプし、れみりゃの体の上で着地する。 ひたすら恨みをこめて。かつてれみりゃに食べられていった仲間の顔を思い浮かべながら… 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 「ぶぎゃ!!やめぶへ!!ざぐぎゃ!!どぼ!!」 最初は脚、次は腰、次は腹、次は腕、最後は顔面。という具合にジャンプと着地を繰り返す。 まりさが着地するたびに、れみりゃは奇妙な声を上げる。 悪路を舗装するように、れみりゃの身体が薄く平らに均されていく。 「ゆっゆっ…ゆっくりしねえええぇぇえぇぇっぇえ!!!!」 「ざああああぐうううううやああああぁぁぁぁぁぁぁぶぎゅえ゛え゛え゛っ!!!」 最後の一撃はれみりゃの顔面に炸裂した。“顔のようなもの”が肉とかいろいろ吐き出した。 そこにいるのは、すでにれみりゃではなかった。もうれみりゃの原形をとどめていない。 どこが脚で、どこが腕で、どこが胴だかわからない。ここまで来るとれみりゃ種でも回復不可能だ。 「ゆぅ………ゆっくりたおしたよ!!」 今まで何匹もの仲間がれみりゃに食べられてきた。 恐怖を忘れて復讐を遂げたまりさの顔は、すっきりしていた。 れみりゃの残骸を食べながらしばらくゆっくりしていたまりさだったが…あることに気づいた。 「…ゆ!?まりさのぼうしどこ!?」 さっきまではれみりゃを倒すのに必死で気づかなかったが、まりさの帽子はいつの間にか脱げていた。 命と同じぐらい大事な帽子を失くしたら一大事である。後頭部に赤いリボンがあるが、それでは不十分だ。 まりさはすぐに探し始め…すぐに見つけた。帽子は、ついさっき自分が木と正面衝突したところに落ちていた。 「ゆっくりみつけたよ!!」 安心したまりさは、嬉しそうに跳びはねて帽子をかぶろうとするが…そこでまた異変に気づく。 「ゆ゛っ!?まりさのぼうしがやぶれてるよ!!なんでええええぇぇぇ!?」 木にぶつかった時の衝撃によって、まりさの帽子は酷く破れていた。 もう少し引っ張れば真っ二つに千切れてしまうというくらい、その帽子は破れている。 頭の後ろに結んである赤いリボンが切れていないのが、唯一の救いであるが… これでは、まりさはこの帽子をかぶることができない。 「どうじで!!どうじでまりざのぼうじやぶれでるの!?これじゃかぶれない゛い゛いいいぃぃぃぃぃ!!」 ゆっくりたちは、通常自分の髪飾りや帽子を自力で直すことは出来ない。 このまりさも例に漏れず、帽子を自分の力で直すことなど不可能だった。 帽子をかぶれない、ゆっくりできないと知ったまりさは、復讐を遂げた幸福感から一転、絶望の底に 叩き落された。 しかし… 「まりざのぼうしがあああああああぁぁぁぁ……ゆゆ!?」 そこには、もうひとつ帽子が落ちていた。 それは、まりさの執念の復讐により絶命した…ゆっくりれみりゃのピンク色の帽子。 壮絶な攻撃にもかかわらず、帽子だけは無傷でその場に残っていた。 この状況で迷うほど、ゆっくりの餡子脳は精巧に作られていない。 まりさは迷わず、ぴったりサイズのれみりゃの帽子をかぶってこう宣言した。 「ゆゆ!!きょうからこれがまりさのぼうしだよ!!」 巣への帰り道。 自分より上位種であるゆっくりれみりゃを、運を味方につけて倒したまりさ。その顔は自信に満ち溢れていた。 帽子が破れて被れなくなるというトラブルはあったが、代わりにれみりゃの帽子を被ることで解決した。 おうちに帰ったら、お母さんや妹達に自慢しよう。きっと褒めてくれるに違いない。 そう思うと、まりさの跳ねるペースは自然に速まっていく。 そんな帰り道。別のゆっくりが通りかかった。 「まりさ!ゆっくりしていってね!!」 目の前に現れたのは、ゆっくりありすだった。 このありすは発情期に我を忘れて交尾するタイプではないが、ことあるごとにまりさにくっついて、 『とかいはのありすが、いっしょにゆっくりしてあげるね!!』 などと押し付けがましいことを言いながら、頬をすり寄せてくるのだ。 まりさとしては妹達や他の友達とゆっくりするほうが楽しいので、どちらかと言うとこのありすが嫌いだった。 とは言っても、遊んであげないと木の陰に隠れてこちらをじっと見つめるという奇行に走るので、 いつも仕方なく遊んであげているのだが…今回は様子が違った。 「ま、まりさ…そこでゆっくりしててね!!こっちにこないでね!!」 「ゆ?ありす?ゆっくりどうしたの!?」 ありすの様子がおかしいということは、まりさにもすぐに分かった。 いつもだったら、2人きりなら一目散に飛びついてきてすり寄ってくるはずなのに… そんな疑問を抱きながら、一歩前に出た。 「ゆぎゃああぁあぁぁあ!!!ごっぢごないでね!!ずっとそこでゆっぐりじででね゛!!」 都会派らしくないありすの動揺に、まりさはさらに疑問を深めた。 目には涙を浮かべて、こっちをじっと見てがくがく震えている。 一体何をそんなに怖がっているのか…と考えているうちに、ありすは勢いよく跳びはねて帰ってしまった。 「……ゆっ!まりさつよくなったからね!!ありすはまりさよりよわいから、にげたんだね!!」 餡子脳は、当然の帰結として都合のいい解釈をする。 まりさは更に自身をつけて、森の奥の集落にある自分の巣へと向かった。 巣の入り口の前まで来ると、そこでは母れいむと妹ゆっくり達が楽しそうに遊んでいた。 妹ゆっくり達が作った花の冠を、母れいむは嬉しそうにかぶっている。 赤いリボンに黄色い花。まりさの目には、母れいむがいつもより綺麗に見えた。 「ゆっくりただいま!!」 まりさの声に一家は振り向く。 いつもなら、この後みんなで巣に戻って美味しいご飯を食べるのだが…やはり、いつもとは様子が違った。 「ゆ!!ゆっくりこっちにこないでね!!そこでゆっくりしててね!!」 まずは母れいむが警戒心を示す。周りの妹達も、不安そうな顔をして母れいむの後ろに隠れた。 やはりいつもと違う。まりさは、ありすに会った時と同じような疑問を頭に浮かべていた。 「どうしたの?まりさかえってきたよ!!いっしょにごはんたべようね!!」 「い、いいからそこにいてね!!そこからうごかないでね゛!!」 母れいむは恐怖に耐えながら、必死に言葉を紡ぐ。 まるで…捕食種であるゆっくりれみりゃと対峙している時のように。 その表情、その行動、全てがまりさには理解できなかった。 「みんな!!おかーさんのおくちのなかにはいってね!!ここならあんぜんだよ!!」 「ゆ!!ゆっくちはいるよ!!」「おがーざん!!ごわいよお゛ー!!」 母れいむの呼びかけに従って、合計7匹の妹ゆっくりが母の口の中に収まる。 すると、母れいむはまりさに背を向けて一目散に逃げ出した。 「そこでずっとゆっくりしててね!!こっちにこないでね!!」 「ゆ゛っ!!ゆっくりまってね!!まりさもいっしょにいくよ゛!!」 家族に置いて行かれると思ったまりさは、全力で母まりさの後を追いかける。 「ゆっくりおいてかないで!!まりさもいっしょにゆっくりしたいよ゛ぉ!!」 「ついてこないでね!!いっしょにゆっくりできないよっ!!」 しかし、母れいむも全力で逃げる。それはもう、ゆっくりれみりゃに追いかけられているかのように。 まりさはかなり成長したとは言え、母れいむと比べればまだ子供だ。 体格差を考えれば、全力で逃げる母れいむに追いつけるわけがなく… 数分追いかけ続けたが、結局母れいむには追いつけず完全に姿が見えなくなってしまった。 「どぼじでええぇぇぇぇ!!おがーざんどいっじょにゆっぐりじだいのにいいいいぃぃぃぃ!!」 何故? どうして自分は、家族に置いていかれるのか。お母さんはどうして自分を置いていくのか。 家族だけではない、よく考えたらありすも同じだ。どうして皆…自分から逃げるのか。自分を避けるのか。 まりさは餡子脳で必死に考えたが、答えらしきものはまったく思い浮かばなかった。 とぼとぼと、誰も居ない巣に帰りついたまりさ。 まりさは、逃げていった一家が帰ってくるのを一人で待ち続けた。 日が沈んで空が赤らみ、そして更に日が落ちて黒い空に綺麗な星々が輝く時間になっても…帰ってこない。 「ゆっくりぃ…」 一人さびしく呟くまりさ。 空腹に耐えかねて、母れいむが昼間に集めたであろうご飯を、一人ぼっちで口に運ぶ。 「むーしゃ…むーしゃ…」 ご飯は美味しかった。お母さんが頑張って取ってきてくれたものだから。 でも…幸せじゃなかった。お母さんと、妹達と、皆で食べないと楽しくない。幸せじゃない。 『ごはんおいしーね♪』『まりさもっとたべるよ!!』『れいむもたべるよ!!』 『ゆ!!れいむはじゃましないでね!!』『まりさこそじゃましないでね!!』 『みんなけんかしないでね!!ごはんはたくさんあるからね!!』 そんな団欒の声も、今は聞こえてこない。 そういえばご飯の時間は、いつもひとつ下の妹れいむとご飯の取り合いで喧嘩になったっけ。 お母さんは、そんな自分達を仲裁して…お母さんの分のご飯も分けてくれた。 いろんなことがあったけど、いつもご飯の時間は楽しかった。 でも、今はそこには誰もいない。自分ひとりだけだ。 「…いっしょにゆっくりたべたいよぅ!」 まりさの言葉は、巣の中に響いたと思うとすぐに消える。 誰の耳にも届かず、減衰して…消えうせるのだ。 夜。ゆっくりが眠りにつく時間は早い。 「ゆっくりねむくなってきたよ…」 まりさは、自分以外誰も居ない巣の中で…静かに眠りについた。 早朝。 夜早い分、やはり目覚める時間も早い。 が、れみりゃの帽子をかぶっているまりさはいつも以上に早く目覚めた。外が異様に騒がしかったからだ。 「ゆ?…ゆっくりしていってね!!」 目が覚めたまりさは、他の家族を起こす意味もこめて声を張り上げた。 「……ゆぅ」 しかし、反応は返ってこない。それもそのはず、家族は昨日の夕方から行方不明なのだから。 自分の姿を見るや否や、一家揃って逃げていってしまった母親と妹達。 起きた直後はご機嫌だったまりさだが、昨日の事を思い出して憂鬱になってしまう。 「ゆっくりぃ…どこにいったの?」 その問いに答えるゆっくりは、どこにもいない。 まりさはすっかり意気消沈してしまい、丸みのある身体が脱力して潰れた饅頭のような形になった。 朝になっても家族は帰ってこない。もしかして自分は捨てられてしまったのではないか… どんどんネガティブな方向に思考が進んでしまい、いつしかまりさの目には涙が浮かんでいた。 「ゆっぐりー!!…いっじょにゆっぐりじだいよ゛!!」 …そのときだった。 「「「…っくり………てね!!!」」」 巣の外からの、声。 まりさはこの声によって目覚めたのだったが、まりさはそのことに気づいていなかった。 「ゆ!?だれかゆっくりしてるの!?」 「「「ゆっく………ね!!!!」」」 その声は、大勢のゆっくりが一斉に発しているように聞こえた。 巣の中に居るせいか、内容がよく聞き取れない。 だが、巣の外に仲間がたくさんいる…その事実だけで、まりさの憂鬱な気分は吹き飛んだ。 家族はどこかに行ってしまったけど、まだ集落の仲間がいる。 もしかしたら、お母さんや妹達もすぐそこに戻ってきているのかも… まりさは晴れやかな笑顔で、巣の外に飛び出した。 待ち構えていたのは、総勢数十匹のゆっくり。皆同じ集落の仲間だ。 まりさたちの巣の入り口を取り囲むように、半円を描いて並んでいる。 よかった、やっと皆とゆっくりできる! まりさは、本能に刻み込まれたあの言葉を 「「「ゆっくりしんでいってね!!!!」」」」 …発する前に、飲み込んでしまった。 数十匹のゆっくりの魂が篭った声は、すさまじい音圧となってまりさの身体を揺さぶる。 その声に吹き飛ばされそうになりながらも、まりさは何とかその場に留まった。 「い、いまなんていったの!?へんだよ!!まりさのききまちがいだよね!!」 聞き間違いに違いない。集落の仲間が“ゆっくりしんでいってね!”なんて自分に言うわけがない。 そう信じて疑わないまりさは、仲間の言葉を疑う代わりに自分の耳を疑った。 「みんな!!いっしょにゆっくりしていってね!!」 「「「……………」」」 普通なら元気な返事が返ってくるはずなのに、目の前の仲間達は誰一人として返事をしない。 癒されるはずだった孤独感は、仲間の殺意に近い視線を浴びることによって…さらに膨れ上がっていく。 「「「ゆっくりしんでね!!!!」」」 「ゆ゛!!ひどいいいいぃぃぃぃ!!!どうじでそんなごどいうのお゛お゛おおお゛ぉぉぉ!!??」 …聞き間違いではなかった。仲間は確かに“しね”と言っている。 どうして?どうして?昨日まで共に仲良く過ごしてきた仲間なのに、どうしてそんなことを言うの? 「みんなゆっぐりじようよお゛おお゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 どんなに呼びかけても、返事は返ってこない。冷たい目でまりさを見つめているだけだ。 いや、ただ見ているだけではない。仲間達は少しずつ…まりさの方へにじり寄ってきている。 恐怖と、憎しみと、殺意と、狂気を帯びた、冷ややかな視線。 まりさはこの場から逃げ出したかったが、四方を囲まれているためそれも叶わない。 「ゆっぐりだずげでええぇぇぇぇええぇえ!!ゆッぐりじだいよ゛お゛おおお゛おぉぉぉおお!!!!」 「…ゆっ!!」 その声に反応して群れから飛び出してきたのは、昨日の夕方姿を消した母れいむだった。 真剣な表情で、まりさをじっと見つめている。まりさは目の前の母の姿を見て、泣き叫びながら飛びついた。 「おがーじゃああぁぁぁん!!どごいっでだの!?ざびじがっだお゛おお゛お゛ぉぉぉぉ!!! もうどごにもいがないで!!いっじょにゆっぐりしようね゛えええぇぇぇ!!!」 “まりさはあまえんぼさんだね!”と言われてもいい。とにかく母に甘えたい。 誰も居ない巣の中で、一人寂しく眠った昨日の夜…もう二度とあんな思いはしたくない。 だから、このまま母れいむを捕まえたら絶対に放さない、そのつもりだった…が。 「…ゆっぐりしねっ!!」 「ぶぎゅあ!!?」 予想に反する位置からの、予想に反する攻撃。 その衝撃で、まりさは地面に叩きつけられ…少量の餡子を吐き出した。 まりさは自分の耳を疑い、今度は目を疑った。 自分を攻撃したのは…正面に居る母れいむだったのだ。 ショックのあまり動けずいるまりさは、母れいむの目を見てあることに気づく。 “目”が同じだったのだ。他の群れの仲間と。 まるで親の敵を見るような、冷たく攻撃的な目。どう考えても、子供を見る目ではなかった。 「みんな!!このれみりゃはちいさいから、きょうりょくすればたおせるよ!!」 群れ全体に呼びかける母れいむ。まりさは、何がなんだか分からなかった。 「れみりゃ?そんなのどこにいるの?ここにいるのはまりさだよ!!」 「みえみえのうそをつかないでね!!れみりゃがまりさなわけないよっ!!」 言い放つ母れいむ。周りのゆっくりたちも“そうだそうだ!”と同意する。 「どうじで!?まりざはまりざだよ゛!!れびりゃじゃないよ゛!!!」 「まだうそをついてるよ!!うそつきれみりゃはみんなでころそうね!!」 その母れいむの言葉が、合図となった。 一斉にまりさに襲い掛かる、数十匹のゆっくりの群れ。 すでに成体に近い体格とはいえ、たった一匹で数十匹の成体ゆっくりに勝てるわけがなかった。 「びぎゃああぁぁぁぁあぁ!!やめで!!ゆっぐりでぎいなおおrてお!!?」 「れいむたちをたべるれみりゃは、ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 四方から押し寄せるゆっくりの群れに、まりさは全身を蹂躙される。 目玉を押しつぶされ、口は無様に引き裂かれ、頬は痛々しく噛み千切られ… 「いだい!!いだいよ゛!!まりざにら゛んぼうずるのやめでぇえ゛ぇぇぇ!!」 「れみりゃは、とかいはのありすのこどもをたべたよね!!ぜったいゆるさないよ!!ゆっくりしねえ゛ぇぇえ゛!!!」 「まりさのともだちもれみりゃにたべられたよ!!ゆっくりあのよではんせいしてね゛!!」 家族を、友達を、れみりゃに奪われた…群れの仲間達。 心にぽっかり空いたままの空洞…その痛みが、嫌と言うほど伝わってくる。 まりさは教えたかった。そのれみりゃを自分は倒したんだ、と自慢したかった。そして褒められたかった。 でもできない。させてくれない。絶え間ない暴力が、まりさを徹底的に甚振り続けるから… 喋る間も、泣く間も、許しを請う間も与えられず、ただひたすら嬲られる。 全身隙間なく打ちのめされる。裂けた傷から中身を引き出される。 黒い餡子が自分の周りにばら撒かれるたびに…まりさは、何か大切なものを失っていくような気がした。 「やべでね!!まりじゃじんざうお゛!!ながみ゛!!ながみ゛どらないでえ゛え゛ぇぇぇぇえ!!!」 「れみりゃはゆっぐりじねえぇぇぇ!!」「わるいれみりゃはしね!じね!じね゛!!」 「ありずのごどもをがえぜ!!がえじで!!がえじでよおおおおおおぉおぉぉぉお!!!」 「みんなの゛!!みんなのどもだじもがえじで!!もっどいっじょにゆっぐりじだがったのに゛!!」 被食種であるが故の悲しみと憎しみ。それらを全て、まりさにぶつける群れの仲間。 その深い感情が、まりさの心と身体を深く傷つける。 どうして…どうしてこんなことになったのだろうか? 自分はただ、皆とゆっくりしたかっただけなのに。家族と一緒にゆっくりしたかっただけなのに。 なのに皆は、一緒にゆっくりさせてくれない。もっと…もっともっとゆっくりしたかったのに。 こんなことなら…一人で出かけないで皆と一緒にゆっくりしていればよかった… 「ゆ゛っ!!ゆっぐでぃじだぎゃあdっだあよおおおえおええおおぉtっげろがおp!!!」 「ゆ゛ッぐりじねえ゛えぇえ゛え゛ぇえ゛ぇぇぇぇ!!!!」 母れいむの最後の一撃。 まりさが最後の餡子を吐き出したのは、その直後だった。 「ゆっ!!ゆっくりたおしたよ!!」 母れいむの宣言に、歓声が沸き起こる。 「やったね!!ちいさなれみりゃをたおしたよ!!」 「これでゆっくりできるよ!!」「みんなでゆっくりしようね!!」 「これならおおきいれみりゃにもまけないよ!!」 大勢で跳びはねて、喜びをかみ締めるゆっくりたち。 今までたくさんの家族や仲間をれみりゃに食べられ、そのたびに悲しみのどん底に突き落とされてきた。 そんな日々は、今日を境に変わるだろう。 何故なら群れの仲間達は、自分達の力を合わせることでれみりゃを倒せることを知ったのだから。 だが、母れいむだけは何故か浮かない顔をしていた。 「ゆぅ…まりさがかえってこないよ!どこにいったの?」 まりさというのは、母れいむの一番上の子まりさのことである。 昨日の昼に出かけたきり、帰ってきていない…普段なら晩御飯の時間には帰ってくるのに。 もしかして、別のれみりゃに食べられたのでは…! そうでないなら、道に迷ったのかもしれない。だとしたら今頃お腹を空かして泣いているだろう。 「ゆ!!れいむはまりさをさがしてく…る………よ?」 ぴょんと一回跳ねて、森のほうへ自分の子供を探しに行こうとする母れいむ。 「………ゆぅ?」 ふとその視界に…先ほど撃退したれみりゃの残骸が入った。 ズタズタに引き裂かれた皮から漏れ出す餡子。何かがおかしいと感じた。 …れみりゃの中身って、餡子だっけ? そういえば餡子だったかもしれない。いや、餡子に違いない。 結論付けた母れいむ。しかし、違和感は他にもあった。 餡子に隠れて目立たないが…そこには金色の髪の毛が残っている。何かがおかしいと感じた。 …れみりゃの髪って、金色だっけ? そういえば金色だったかもしれない。いや、金色に違いない。 母れいむの頭の中には、中身が餡子で金髪のれみりゃがでっち上げられていた。 よく見ると、れみりゃの帽子は脱げて地面に落ちている。 帽子を被っていないれみりゃの残骸を見て、母れいむはそれが何かに似ているような気がした。 つい最近、どこかで見たような…気のせいだろうか? などと考えながら適当に跳ね回っていると、母れいむはれみりゃの残骸に埋もれたあるものを見つけた。 それは、赤いリボンだった。 昨日の昼、自分が子まりさの頭の後ろに結んであげた、赤い綺麗なリボン。 何事もなく、無事に帰ってこられるように…そんな願いをこめてまりさに結んであげた、赤いリボン。 …そんなリボンと同じ色で、同じ形。 瞬間、母れいむは今まで自分がしたことの本当の意味を理解した。 昨日から今日にかけての出来事を、ゆっくりと思い出す母れいむ。 小さなれみりゃから逃げ出した後、群れの仲間に相談してれみりゃを倒す作戦を立てた。 ちょうど自分の巣にれみりゃが忍び込むのを見ていたので、作戦を立てるのは容易だった。 朝になって、れみりゃが出てきたところを…袋叩きにした。 小さなれみりゃなら、数十人でかかれば倒せる。すべては作戦通りだった。 突如侵入してきた外敵を排除するためと思ってやってきたこと全ての結果。それが目の前にある。 「おかーしゃん!!ゆっくちしようね!!」「ゆっきゅりー!!」 「あれー?まりしゃおねーちゃんはー?」 「まりさおねーちゃんといっしょにゆっくりしたいよ!!」 子供たちの声に、母れいむは何も答えない。 「ゆ?おかーしゃんどうしたの?げんきないよ!!」 「げんきだちてね!!ゆっくりげんきだしてね!!」 「いっしょにゆっくちすればげんきになるよ!!」 「…………」 無言のまま、子供たちのほうを向く。 母れいむの目に映るのは、無邪気な子ゆっくりたち。 自分がやってしまったこと。自分が殺したものの正体。自分が子供たちから何を奪ったか。 母れいむは、それらをゆっくりとゆっくりと理解した。 だから、母れいむは…考えるのを止めた。 何もかもを、考えるのを止めた。 悲しみの声を上げることも、絶望の涙を流すこともせず。 ただ、考えることを放棄した… ビュウッと強い風が、木々の間を駆け抜ける。 赤くて綺麗なリボンは、高く舞い上がって…どこかへ消えてしまった。 (終) あとがき 最初は軽快なのを書こうと思ってたのに…おかしいなぁ。 悪いことしたゆっくりがIKEMENお兄さんの制裁を受ける、そんな王道を今度は書きたい。 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/281.html
濃い霧に覆われた湖、その畔には豪奢な館がひとつ建っている。 その深紅の西洋建築は周囲の景色を忘れさせるほどに異彩を放っており、絶対にぬぐい切れない異質感を漂わせている。 それは紅魔館。幻想郷のなかでも群を抜いて禍々しい、悪魔の館だ。 燦々と太陽が照っている昼日中、その門へと続く道に動くものが見える。 背筋をぴんと伸ばし、足取りは恐れを知らぬかのように強い。 物腰は穏やかに見えて傲慢。その姿を見たものは例外なく畏怖を抱いてしまう、そんな威容だった。 まさに悪魔の館と畏れられる紅魔館の主にふさわしい。 などと、足りないおつむで考えているかはわからないが、ゆっくりれみりゃはもたもたと歩いていた。 よたよたと心もとない足取りは、まるで牛の歩みのようにのろく、どたばたと鳴る足音は品性のかけらも感じさせない。 しかも日傘を両手で抱えるように差しているので、やや猫背ぎみになっている。 何が楽しいのか、いつもと変わらぬバカ面であった。 「うー!うあうあーうー!」 両手で握り締めた傘の手元をくるくる回す。 紅魔館前の舗装された地面は平らで歩きやすい。 小さな石ころでも躓いて転んでしまうれみりゃだから、しっかりと歩けることがうれしいのだろう。 ゆっくりと歩いていくゆっくりれみりゃ。 ゆっくりれみりゃはなぜか紅魔館の周辺で見かけることが多いが、胴体の生えたゆっくりれみりゃは分不相応にも紅魔館が自分の住処だと認識しているのだ。 首だけの時は木に留まっているのに、胴体が生えるとそうなる。ゆっくり七不思議のひとつと言えよう。 ふとゆっくりれみりゃが足を止めた。 その目の先には門の前で横になっている人影がある。 紅魔館の門番・紅美鈴だ。 暢気にシエスタをしている。邪魔をしてはいけない。 それを認めた瞬間、ゆっくりれみりゃの動きに慎重さが加わった。 抜き足差し足でさらにもたもたと門に近づく。 あと三歩。二歩。半歩。 今まさに侵入を果たそうとした瞬間、引き摺り倒されるゆっくりれみりゃ。 その体は紅魔館の敷地を侵すことは出来なかった。 「うーっ!」 地べたを這いずって痛いのか、怒りながら四つんばいになって起き上がるゆっくりれみりゃ。 振り向くと足に何かが絡まっている。美鈴の足だ。器用に蟹ばさみをして引き倒したらしい。 ゆっくりれみりゃはそこから足を抜こうとするが、抜けない。焦るゆっくりれみりゃ。 「うー!うぅー!」 足を振り回すようにすると、ようやく戒めから解放された。うー!と喜色満面で声を上げるゆっくりれみりゃ。 そこではっとする。美鈴を起こしたのではないだろうか? だが、美鈴はいまだ寝ていた。安らかな寝息は規則正しい。 安心したのか、再び侵攻を開始するゆっくりれみりゃ。だがやはりあと半歩というところで引きずられてしまう。 しかも二度目だからか、今度は蹴り飛ばされてしまった。 寝ている美鈴の驚愕の足技だ。 「うあーっ!!」 痛みに泣きながらも怒ったのか、傘を拾って閉じると、顔を真っ赤にしてそのまま美鈴に殴りかかる。 ばしばしと音がするが、それは美鈴の体にはまったく触れることが出来ずに地面を叩き続けている。 美鈴は寝返りで迫り来る傘をかわしていた。本当に寝ているのかと疑いたくなる光景だ。 「うー!うあーうあー!ううぅーー!うあっーーー!!!」 ゆっくりれみりゃが全力で叩いても傘は折れていない。 このままでは埒が明かないと思ったのか、仰向けに寝ている美鈴の右足首をまたぐ。 ゆっくりれみりゃは傘を反対にし、握りなおすと美鈴の顔を見た。 とても満たされたような幸せな顔をしていた。いい夢を見ているのだろう。肉まんを腹いっぱい食べているとか。 そんな幸福な顔がどう変わるかを想像したのか、ゆっくりれみりゃもどことなく嬉しそうな顔で傘の石突を美鈴の足に突き刺そうと振り下ろした! 衝撃が全身を貫く!! 「う゛あ゛ぁーーーーーー!!!!」 股の間をつま先で抉られ、たまらぬ叫びをあげるゆっくりれみりゃ。 けっこうな力が込められていたのか、そのまま宙を舞う。 落下したところをさらに美鈴に蹴り上げられ、さらに開脚旋回を始める美鈴がお手玉のようにゆっくりれみりゃを蹴り上げ続けていく。 「ぶっぶぇっー!ぶぇーー!う゛ぁ~~~んっ!う゛ぁーーーっ!」 いまだ眠っているとは思えないほどの完璧な身体操作に、ぼこぼこと蹴られていたゆっくりれみりゃはとうとう大声で泣き出した。 さらにそのまま足先でゆっくりれみりゃの首を挟むと、倒立する美鈴。空にまっすぐ突き上げられたつま先は、太陽を穿つかのようだ。 そしてめくれ落ちるスカート。肉付きのよい脚線美があらわになる。どこからか黄色い歓声が沸き起こった。 そのまま弧を描くようにゆっくりれみりゃを脳天から地面に叩きつける! 「う゛ぐぅぇっ……!!」 ぐしゃりと音を立てて鼻から上がつぶれた。飛び散る肉汁、散らばる肉片、ネギが見え隠れしている。 そのままゆっくりれみりゃを解放し、大の字になり寝ッ転がる美鈴。規則正しい寝息は微塵も乱れていない。 しばらくすると、ゆっくりれみりゃがその強靭な生命力で再生し、犬神家の一族状態から元に戻る。 「うーーー!」 べそをかきながら傘を持ち、こりずに美鈴に叩きつけようとする。が、すっ転んだ。美鈴が足を払ったのだ。 もたもたと立ち上がり、何度も叩こうとするがそのたびになす術もなく転ばされてしまう。 「うううううーーーー!」 地団太を踏むゆっくりれみりゃ。しばらく美鈴のまわりをうろちょろする。 やがて何かに気が付いたのか、泣き顔が一転晴れやかな笑顔になる。 「うー!うー!うまうまー!」 美鈴の頭のほうで喜びを踊りに表している。そう、足元で叩こうとするから転ばされるのだ。ならば頭を叩けばいい。 「うぅ~~」 ゆっくりと傘を頭上に掲げるゆっくりれみりゃ。 「うあっ!!!」 そのまま全力で叩きつける! 満面の笑みを浮かべるが、そこには美鈴の影も形もなかった。 戸惑い、「う~?」と首をかしげるゆっくりれみりゃ。瞬間、世界がぐるりと回転する。 「う゛えっ」 いつの間にかゆっくりれみりゃはうつ伏せになっていた。何が起こったか理解できないゆっくりれみりゃ。 さらに上には美鈴が座っていた。ただ座っていただけではない。キャメルクラッチの体勢だ。 ゆっくりと引き上げられ、えびぞっていくゆっくりれみりゃ。 「うー!うー!」 手を振り回して抵抗するが、なんの効果もない。 やがて限界に近づいてきたのか、ゆっくりれみりゃの胸元あたりからみちみちという音が聞こえてきた。 手の動きが激しくなる。声も大きくなり、涙は滝のように溢れ出ている。 「う゛あーーうあぁあぁあぁん!!う゛う゛ぅー!う゛ぅうぅうぅぅーーーッ!!」 ゆっくりれみりゃの服に染みが広がっていく。もれ始めた肉汁が汚しているのだ。 ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり。 「ぶぇえーーっ!しゃくやー!しゃくやぁああああ!」 すると現れる十六夜咲夜。救いをもとめる声に応えるのだろうか? いや、違う!美鈴のキャメルクラッチを見た瞬間、顔を強張らせた咲夜は、右手を鈴仙が弾幕を放つときのような拳銃の形にして差し出したのだ! どこから出てきたのか、それを見た妖精メイドたちは一斉にどよめく。 じつはこの門前でのゆっくりれみりゃと、シエスタ中の美鈴との小競り合いは一週間に一度は起きていることなのだ。 紅魔館の妖精メイドたちはこれを一種の娯楽としてみているようだ。 確かに寝ているはずなのに微塵も乱れぬ剽悍な動きは、一流の見物として妖精メイドたちからの人気も高い。 「な、なにあの手の形は!?」 「あれはシュートサインよ」 「シュートサイン?」 「技が脱出不可能なくらいパーフェクトに決まっていることを示すサインのことよ!」 事情通の妖精メイドが解説をしている。 美鈴は門前に腕試しにくる人間たちとも試合をしている。それもまた見物として人気が高い。 特に紅魔館の主であるレミリア・スカーレットはよくそれを観戦している。 咲夜はそのときに審判をやらされたりもするのだ。手の形はその癖のようなものだろう。 相手が人間であれば、シュートサインが出た時点で決着なのだが、今の相手はゆっくりれみりゃ。 しかも美鈴は寝ている。徐々に技は進み、ゆっくりれみりゃの腹は裂けていた。 「うあー!う゛ー!う゛あ゛ーーっ!うぎゃぁあぁああぁあぁあああああっっ!!!」 腹から肉まんの中身がはみ出ていく。ほこほことしたそれは、肉汁を滴らせ地面に水溜りを作る。美味しそうな匂いがあたりに立ち込めていく。 その匂いに誘われたのか、美鈴の腹がたしかに鳴った。と、ぱちりと目を見開く。 目の前には右手を拳銃のかたちにしてこちらを指差す十六夜咲夜の姿が。 「うわっ!違いますよ?サボってませんよ?」 「いいから、それをどうにかしなさい」 「それ?ああ」 今気づいたのか、胴体が半分ちぎれたゆっくりれみりゃを門から遠ざけるように放り投げた。 ゆっくりれみりゃは痛みにもがき苦しんでいたが、持ち前の生命力で回復すると泣きながらも立ち上がり、そのまま美鈴のほうへと向かっていく。 どうしても一矢報いたいようだがそれはかなわない。 よたよたと駆け寄ってくるゆっくりれみりゃのふところに瞬時にもぐりこむと、美鈴は鳩尾あたりをめがけて掌底を放つ。 攻撃されたゆっくりれみりゃは痛みを感じていないのか、そのまま美鈴を殴ろうと手を上げる。 ゆっくりれみりゃの背中が爆ぜた。 「う゛え?」 頭と手足以外の中身が背中を突き破ってブチ撒けられたのだ。吹き飛んだ中身は音を立てて地面へと落ちていく。 同時に胴体の支えをなくしたゆっくりれみりゃもその場にへちゃりと崩れてしまった。 さしものゆっくりれみりゃも、ここまで損傷が大きくなると再生も滞るのか、傷がふさがる気配もない。 それを無視して門前へと戻る美鈴。その顔は一仕事終えたような表情だ。 「う゛え~~~~っ!う゛ぇえぇぇ~~~~ッッ!!!」 臭いと泣き声を聞きつけたのか、どこからかやってきた黒い塊に飲み込まれるゆっくりれみりゃ。 その中からは、あいも変わらずの泣き声と咀嚼音が聞こえてくる。 やがて泣き声がなくなるとその黒い球体はどこぞへと飛んでいってしまった。 地面には染みだけが残っていた。 終わり。 これがアニメだったら、ラーメンにしてるところですよ! とは美鈴の談。 著:Hey!胡乱
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1065.html
昔々、ある所にお婆さんゆっくりれいむとお婆さんゆっくりまりさが住んでいました。 お婆さんゆっくりれいむは山へエサ取りに、お婆さんゆっくりまりさは川へ帽子の洗濯に行きました。 お婆さんゆっくりまりさが帽子を洗っていると、川上の方から大きな桃が「ゆっくらこ、ゆっくらこ」と流れてきました。 「おおきいももだ!!もってかえればゆっくりたべられるね!!」 そう叫ぶとお婆さんゆっくりまりさはどうにかこうにか桃を岸に上げ、必死こいて家まで持って帰りました。 帽子は桃の代わりに川に流されました。 「ただいまれいむ!!ゆっくりしていってね!!!」 「おかえりまりさ!!ゆっくりしていっt……ゆゆ!ももだあ!!おっきなももだ!!!」 「おみやげだよ!!ゆっくりたべようね!!!」 「はんぶんこしようね!!!ゆっくりわけるよ!!!」 お婆さんゆっくりれいむはそう叫ぶと、目を閉じて精神を集中し始めました。 数分後、カッ!という擬音がぴったりな勢いで目を開けると、 「岩山!両斬波ぁ!!」 婆れいむがいかつい成人男性のような声でそう叫び頭につけたリボンを振り回すと、桃は綺麗に真っ二つに分かれていました。 「ゆっくりわかれたよ!!!」 「ゆっくりわけられたね!!」 「おい、やめろ馬鹿。このSSは早くも終了ですね」 早速桃に噛り付こうとしていた二匹でしたが、謎の声が聞こえると同時に固まってしまいました。 よく見ると、割れた桃の中にはゆっくりが入っているではありませんか。 「お前ら勝手に食われそうになってる奴の気持ち考えたことありますか?」 そんな事を呟きながら桃の中から這い出てくるゆっくり。頭に小さな桃を二つ付けているのが特徴的です。 「ゆゆ!あなただあれ!?ここはれいむとまりさのおうちだよ!!!」 「そのももはまりさとれいむのなんだよ!!!かえして!!はやくかえしてね!!!」 別に桃を横取りされた訳ではないのですが、ゆっくりにはそんな事は関係ないようです。 「なんだおまえら?ズタズタに引き裂いてやってもいいんだぞ。 あまり調子こくとリアルで痛い目を見て工場で蒸かし小豆を食べる事になる」 「ゆ、ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりやめてね!!!ももをわったのはれいむだよ!!!」 ゆっくりにしては珍しい流暢(?)な言葉に妙な迫力を感じたのか、二匹の先程までの勢いが消えて怯え始めました。 このまま名無しでは不便なので、桃から出てきたゆっくりは仮に『ゆっくりてんこ』と呼ぶ事にします。 そのゆっくりてんこは二匹をじろじろと睨み付けた後、何処か満足気に自分が入っていた桃を食べ始めました。 このままでは大事なご飯が食べられてしまいます!焦った二匹は勇気を出してゆっくりてんこに体当たりを仕掛けました。 「ゆっくりたべないでね!!それはれいむとまりさのごはんだから!!」 「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさとれいむのおうちなんだから!!」 殴られながらもゆっくりてんこは冷静に、しかし怒りを隠せない様子で 「お前らは一級饅頭のわたしの足元にも及ばない貧弱一般饅頭。 その一般饅頭どもが一級饅頭のわたしに対してナメタ言葉を使うことでわたしの怒りが有頂天になった。この怒りはしばらくおさまる事を知らない」 そう宣言しました。これがアニメなら間違いなく名シーンとして人気が出るのは確定的に明らかです。 しかし殴られた事より『ナメタ言葉』を使われた事に怒る辺り、このゆっくりてんこは中々プライドが高いようです。 その漲る自信と正体不明の迫力に押されたのか、二匹は先程のように萎縮して部屋の隅の方へ移動しました。 再び桃を食べ始めるゆっくりてんこ。こうして、三匹の謎の共同生活がスタートしたのです。 それからというもの、婆れいむと婆まりさはいちいち横柄なゆっくりてんこに事あるごとに喧嘩を仕掛けますが、 その度にあの妙に迫力のある言葉遣いで黙らされてしまうのでした。 とは言っても別にゆっくりてんこは二匹に直接危害を加える事はありませんし、自分でエサを取らずに怠けるなんて事もありません。 自分で取ってきたエサは全て自分だけで食べ、時々二匹のエサを横取りする事はありましたが概ね平和に暮らしていたのでした。 そんな日々が数週間も続いた頃、近所に住むゆっくりぱちゅりーが傷だらけになって三匹の家に飛び込んできました。 「ゆゆぅ!どうしたのぱちゅりー!!ゆっくりできる!!?」 「ヘァ゛ッ……へァ゛ッ……れ゛、れ゛み゛り゛ゃがあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛……」 「れ、れみりゃ!!?れみりゃはゆっくりできないよ!!!ゆっくりたべられちゃうよ!!!」 「む゛……む゛ぎゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ん゛ん゛……」 ゆっくりぱちゅりーは深く深く息を吐くと、そのまま二度と動く事はありませんでした。 婆れいむと婆まりさは焦った様子で相談します。 「どどど、どうしようまりさ!!れみりゃがきたらたたた、たべられちゃうよぉ!!!」 「にに、にげようよれいむ!!てんこをおいていけばれみりゃからおそわれたりもしないよ!!!」 サラっと酷い事を提案する婆まりさ。それに対してゆっくりてんこは特に何も言いません。が、 「これやったの絶対れみりゃだろ……汚いなさすがれみりゃ汚い」 今言われたばかりの事なのですが、それは気にしてはいけません。ゆっくりてんこ独特の言い回しなのです。 要するに、このゆっくりてんこはれみりゃに対して怒りを抱いているのです。 「そそそそうだけど、どうするの!!!れみりゃはゆっくりたべちゃうんだよ!!れいむたちもたべられちゃうんだよ!!!」 「わたしパンチングマシンで100とか普通に出すし」 「ゆゆ!そんなにだせるの!!だったられみりゃをやっつけられるね!!ゆっくりいってきてね!!!」 どうやらゆっくりてんこがれみりゃをやっつけに行く事に決まったようです。 一体いつパンチングマシン等やったのかは謎です。突っ込んではいけません。 「これはおみやげだよ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!!」 「⑨個でいい」 ゆっくりてんこは虫やら雑草やらを丸めて作ったお団子を持たされ、家を出発しました。 何処にれみりゃが居るのか知っているのかはともかく頼もしい感じです。 適当に歩いていると、ゆっくりちぇんに会いました。 「にゃにゃ!わかるわかるよー」 「それほどでもない」 これらのやり取りを分かりやすく説明すると、 『ああ、貴女はあの恐ろしいゆっくりれみりゃを退治しに行こうとする勇敢なお方ですね』 『いやいやそんな勇敢だなんて事はありませんよ。単に両親に恩返ししたいだけです』 という事です。ゆっくり語は奥が深過ぎですね。 「わかりたいよわかりたいよー」 「同じ時代を生きただけのことはあるなー」 どうやら虫団子をゆっくりちぇんにあげる代わりに、ゆっくりちぇんがれみりゃ退治を手伝う事になったようです。 もうはっきり言ってこんな会話やってられないのでちょっと割愛します。 こんな調子でゆっくりてんこは仲間を増やしていきました。 どこからともなくモフモフしたゆっくりらんしゃまを呼び出すゆっくりちぇん。 「うんうんわかるわかるよー」 素早さと体の何処かに隠し持っているドスが武器のゆっくりみょん。 「ちーんぽっ!」 ゆっくり随一の凶暴性と戦闘力を誇るゆっくりフラン。 「ゆっくりしね!!!」 こんな頼もしい仲間と共に、ゆっくりてんこはれみりゃヶ島に渡りました。 れみりゃヶ島は紅い霧に包まれており、ありとあらゆるものが紅く染まった不気味な島です。 ゆっくりフランは妙に生き生きとしていますが、他の二匹の仲間は緊張しているようです。 ちなみにゆっくりてんこはそんな些細な事は全く気にならないようです。 「うー!うー!」 島のどこからかそんな声が聞こえてきます。この島にゆっくりれみりゃがいるのは間違いありません。 ZUNZUN島の奥へと進んでいくと、居ました。ゆっくりれみりゃです。それも凄い数です。数十匹は居ます。 ゆっくりフラン以外の三匹はいっせーのせ、で襲い掛かろうとしますが、ゆっくりフランは構わず突っ込みました。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 「う゛あ゛ー!う゛あ゛ー!!」 三匹はポカンとしています。無理もありません。 あの恐ろしいゆっくりれみりゃの群れが、たった一匹のゆっくりフランによって蹂躙されているのですから。 見る見るうちにゆっくりれみりゃはおぞましい悲鳴と共にその数を減らしていきます。もう他の三匹は帰ってもいいんじゃないでしょうか。 いや、そんな事はありません。勇敢なゆっくりれみりゃが三匹、ゆっくりフランの背後から一斉に飛び掛りました。 「ゆっくりしねぇ!!ゆっくりしねぇぇぇ!!」 「たべちゃうぞー!!」「ぎゃーおー!!」「うー!!うああー!!」 それに乗じて残りのゆっくりれみりゃが一斉にゆっくりフランに飛び掛ります。 ボケっとしていた三匹はゆっくりフランを助けに突撃します。 「お前らどうやらボコボコにされたいらしいなさっきも言ったがわたしはリアル天人属性だから手加減できないし最悪の場合永遠亭に行くことになる」 「わかって!わかってよぉー!!」 「ちちちちーんぽっぽ!!」 ゆっくりフランに気を取られて気付かなかったのか、ゆっくりれみりゃ達は乱入してきた三匹によって激しく混乱に陥りました。 体勢を立て直したゆっくりフランは再びその猛威を振るいます。ゆっくりれみりゃ虐殺ショー、ラウンド2です。 数分間この世の地獄が再現された後、ゆっくりれみりゃの群れは全滅しました。ほぼゆっくりフランの一人勝ちです。 ちなみにスコアはゆっくりフランが三十二匹、ゆっくりちぇんとゆっくりみょんが協力して二匹、ゆっくりてんこが無しです。 これだとゆっくりてんこは働いてないじゃないか、と思われるかも知れませんがそんな事はありません。 ゆっくりてんこは四六時中あの自信ありげで大胆な発言を繰り返す事でゆっくりれみりゃの恐怖と混乱を煽っていたのです。 何はともあれゆっくりれみりゃは退治され、島を多う霧も晴れました。もうゆっくり達が襲われる事も無いでしょう。 勇者なゆっくり一行は一人一匹ずつ、半死半生で生き残っているゆっくりれみりゃを持ってそれぞれの家路へつきました。 家を出て一週間後、ゆっくりれみりゃを退治したゆっくりてんこが家に帰ってきました。 あの婆ゆっくりれいむと婆ゆっくりまりさが出迎えてくれるかと思っていたゆっくりてんこでしたが、そんな事はありませんでした。 二匹は、家の中で頭から蔓を伸ばして黒ずみ朽ち果てていました。 蔓には、まだ目覚めぬ小さな小さなゆっくり達が実っています。 ゆっくりてんこがとりあえず持ち帰ったゆっくりれみりゃ(上半身しか無い)を床に放り投げると、ちびゆっくり達が目を覚ましました。 「ゆっくりちていってね!!」「おねえちゃんだあれ!!?」「ゆっくいちようね!!」 そんな風に思い思いの事を元気よく叫ぶちびゆっくり達。そんな様子を眺めていたゆっくりてんこは突然、 「想像を絶する悲しみがゆっくりてんこを襲った!お前らにゆっくりてんこの悲しみの何がわかるってんだよ!!」 生まれて初めて、涙を流しながら大声を張り上げました。 驚いて黙るちびゆっくり達。ただただ涙を流し続けるゆっくりてんこ。 その小さな家の中に、いつまでもいつまでもゆっくりてんこの啜り泣きが木霊していました。 Buront END ゆっくりてんこがゆっくりれみりゃ退治から帰って三日が経ちました。 ちびゆっくり達は見る見る大きく育っていき、子育てに励むゆっくりてんこは毎日忙しそうです。 そんな賑やか家族の住む家に三人組の人間が近付いていました。 三人とも薄い水色の作業服を着ており、それぞれ手には籠と細長く、先端に輪の付いた棒を持っています。 彼らはゆっくりてんこら一家の喧騒を聞きながら、気付かれないようゆっくりと家の前まで近付いていきます。 その数週間後、人間達の里で商売する大手和菓子屋が「ゆっくり天子饅頭」なる新製品を発売しました。 桃色で桃風味のこしあんと皮が新鮮だとして、人々に大層喜ばれたそうです。 めでたしめでたし
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/434.html
「れみりゃの帽子」 まりさは逃げていた。森の中を、ゆっくりらしからぬスピードで逃げていた。 後ろを見る余裕などないのに、後ろを見ずにはいられない。 何度も何度も自分の後ろから追いかけてくる“それ”の姿を確認した。 「がおー♪たーべちゃーうぞー♪」 胴体のあるゆっくりれみりゃがご機嫌そうな顔で、まりさを捕食しようと追いかけてくる。 顔だけなら、まりさの全身と同じバレーボール大なのだが、胴体付きとなるとその威圧感はまりさにとっては この上ない脅威だ。 目の前で群れの仲間をれみりゃに食べられたという経験も、まりさの恐怖を増幅させる。 「ま、まりさはおいしくないよ!!ゆっくりたべないでね!!」 「ぎゃおー!おいしいまんじゅうだーべぢゃーうぞー♪♪」 まりさは草を掻き分け、木々の間を抜け、橋を渡り、獣道を駆け上り、とにかく逃げ続けた。 なのに、後ろを振り返るたびにれみりゃが近づいてきているように感じる。 迫り来るニコニコ顔のれみりゃは、まりさにとって恐怖の対象でしかない。 その声は、もう耳元でささやいているぐらい近く感じられた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっくりついてこないでね!!」 出かけるときに、お母さんは後頭部に赤い綺麗なリボンを結んでくれた。 何事もなく、無事に帰ってこられるように…というおまじないだった。 だからまりさは信じている。自分は絶対に帰り着いて…お母さん達とゆっくりできる、と。 このまま逃げ切って、自分のおうちにたどり着いて、お母さんに精一杯甘えながらゆっくりしたい。 赤いリボンを大きく揺らしながら、一刻も早く日常に戻るためにまりさは逃げ続ける。 「うー♪もーすこしでおいつくどー♪」 すぐ後ろに、れみりゃの気配を感じていた。ちょっとでも気を抜いたら…捕まる。 そうしたらどうなるか、まりさはよく分かっている。だから、何が何でも逃げるのだ。 今がゆっくり出来なくても、いつかきっとゆっくりできるようになると信じて。 そして… まりさが木の根を飛び越えた瞬間。 「がおー!づーがまーえぶぎゅえ!!??」 「だべないでええええぇぇぇぇえっぇええ!!!」 木の根につまづいたれみりゃは、華麗に宙返りし…地面に強く叩きつけられた。 死を覚悟したまりさはそのまま目をつぶってしまい、勢いあまって正面の木に激突した。 「ぶぎゃ!!」 痛みに涙を滲ませながら、後ろを振り向くと… そこには、全身の痛みにのた打ち回るれみりゃの姿があった。 「ぶー!!れびりゃのぶりでぃーなあじがー!!!ざぐやー!!ざーぐやああぁぁぁっぁっぁあ!!!!」 れみりゃの両脚は、膝のところで明らかにおかしな方向に折れ曲がっていた。 「びゃー!!れみりゃのうでがー!!ぶーてぃほーふぇいすがああぁぁぁぁ!!ざぐやどごおおおぉぉ!!?」 両腕もぐしゃぐしゃに折れ曲がり、顔は地面と擦ったことによって平らになり、ところどころ肉がはみ出ている。 胴の部分からも肉汁が染み出している。とくに腰辺りからの流出は多く、水溜りを作るほどだった。 死に物狂いで暴れるのだが、もはや膝や肘から先はれみりゃの意思どおりに動かずぶら下がっているだけ。 結局その場から数センチも動けなかったれみりゃは、疲れて暴れるのを止めた。 「ゆ……ゆっくりしていくの?」 まりさは、状況を把握できずにいる。 先ほどまで自分を追いかけていた天敵が、目の前に倒れている。 動かない?…いや、ちがう。大怪我で動けないのだ。 …ならば、やることはひとつである。 「…まりさたちをたべるれみりゃは、ゆっくりしんでね!!」 「ぎゃお?やめでええぇぇ!!やめないどだーべぢゃーぶべっ!!??」 一瞬で立場が逆転した。 れみりゃが動けないと分かったまりさは、れみりゃの全身を思い切り踏み潰していく。 全力でジャンプし、れみりゃの体の上で着地する。 ひたすら恨みをこめて。かつてれみりゃに食べられていった仲間の顔を思い浮かべながら… 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 「ぶぎゃ!!やめぶへ!!ざぐぎゃ!!どぼ!!」 最初は脚、次は腰、次は腹、次は腕、最後は顔面。という具合にジャンプと着地を繰り返す。 まりさが着地するたびに、れみりゃは奇妙な声を上げる。 悪路を舗装するように、れみりゃの身体が薄く平らに均されていく。 「ゆっゆっ…ゆっくりしねえええぇぇえぇぇっぇえ!!!!」 「ざああああぐうううううやああああぁぁぁぁぁぁぁぶぎゅえ゛え゛え゛っ!!!」 最後の一撃はれみりゃの顔面に炸裂した。“顔のようなもの”が肉とかいろいろ吐き出した。 そこにいるのは、すでにれみりゃではなかった。もうれみりゃの原形をとどめていない。 どこが脚で、どこが腕で、どこが胴だかわからない。ここまで来るとれみりゃ種でも回復不可能だ。 「ゆぅ………ゆっくりたおしたよ!!」 今まで何匹もの仲間がれみりゃに食べられてきた。 恐怖を忘れて復讐を遂げたまりさの顔は、すっきりしていた。 れみりゃの残骸を食べながらしばらくゆっくりしていたまりさだったが…あることに気づいた。 「…ゆ!?まりさのぼうしどこ!?」 さっきまではれみりゃを倒すのに必死で気づかなかったが、まりさの帽子はいつの間にか脱げていた。 命と同じぐらい大事な帽子を失くしたら一大事である。後頭部に赤いリボンがあるが、それでは不十分だ。 まりさはすぐに探し始め…すぐに見つけた。帽子は、ついさっき自分が木と正面衝突したところに落ちていた。 「ゆっくりみつけたよ!!」 安心したまりさは、嬉しそうに跳びはねて帽子をかぶろうとするが…そこでまた異変に気づく。 「ゆ゛っ!?まりさのぼうしがやぶれてるよ!!なんでええええぇぇぇ!?」 木にぶつかった時の衝撃によって、まりさの帽子は酷く破れていた。 もう少し引っ張れば真っ二つに千切れてしまうというくらい、その帽子は破れている。 頭の後ろに結んである赤いリボンが切れていないのが、唯一の救いであるが… これでは、まりさはこの帽子をかぶることができない。 「どうじで!!どうじでまりざのぼうじやぶれでるの!?これじゃかぶれない゛い゛いいいぃぃぃぃぃ!!」 ゆっくりたちは、通常自分の髪飾りや帽子を自力で直すことは出来ない。 このまりさも例に漏れず、帽子を自分の力で直すことなど不可能だった。 帽子をかぶれない、ゆっくりできないと知ったまりさは、復讐を遂げた幸福感から一転、絶望の底に 叩き落された。 しかし… 「まりざのぼうしがあああああああぁぁぁぁ……ゆゆ!?」 そこには、もうひとつ帽子が落ちていた。 それは、まりさの執念の復讐により絶命した…ゆっくりれみりゃのピンク色の帽子。 壮絶な攻撃にもかかわらず、帽子だけは無傷でその場に残っていた。 この状況で迷うほど、ゆっくりの餡子脳は精巧に作られていない。 まりさは迷わず、ぴったりサイズのれみりゃの帽子をかぶってこう宣言した。 「ゆゆ!!きょうからこれがまりさのぼうしだよ!!」 巣への帰り道。 自分より上位種であるゆっくりれみりゃを、運を味方につけて倒したまりさ。その顔は自信に満ち溢れていた。 帽子が破れて被れなくなるというトラブルはあったが、代わりにれみりゃの帽子を被ることで解決した。 おうちに帰ったら、お母さんや妹達に自慢しよう。きっと褒めてくれるに違いない。 そう思うと、まりさの跳ねるペースは自然に速まっていく。 そんな帰り道。別のゆっくりが通りかかった。 「まりさ!ゆっくりしていってね!!」 目の前に現れたのは、ゆっくりありすだった。 このありすは発情期に我を忘れて交尾するタイプではないが、ことあるごとにまりさにくっついて、 『とかいはのありすが、いっしょにゆっくりしてあげるね!!』 などと押し付けがましいことを言いながら、頬をすり寄せてくるのだ。 まりさとしては妹達や他の友達とゆっくりするほうが楽しいので、どちらかと言うとこのありすが嫌いだった。 とは言っても、遊んであげないと木の陰に隠れてこちらをじっと見つめるという奇行に走るので、 いつも仕方なく遊んであげているのだが…今回は様子が違った。 「ま、まりさ…そこでゆっくりしててね!!こっちにこないでね!!」 「ゆ?ありす?ゆっくりどうしたの!?」 ありすの様子がおかしいということは、まりさにもすぐに分かった。 いつもだったら、2人きりなら一目散に飛びついてきてすり寄ってくるはずなのに… そんな疑問を抱きながら、一歩前に出た。 「ゆぎゃああぁあぁぁあ!!!ごっぢごないでね!!ずっとそこでゆっぐりじででね゛!!」 都会派らしくないありすの動揺に、まりさはさらに疑問を深めた。 目には涙を浮かべて、こっちをじっと見てがくがく震えている。 一体何をそんなに怖がっているのか…と考えているうちに、ありすは勢いよく跳びはねて帰ってしまった。 「……ゆっ!まりさつよくなったからね!!ありすはまりさよりよわいから、にげたんだね!!」 餡子脳は、当然の帰結として都合のいい解釈をする。 まりさは更に自身をつけて、森の奥の集落にある自分の巣へと向かった。 巣の入り口の前まで来ると、そこでは母れいむと妹ゆっくり達が楽しそうに遊んでいた。 妹ゆっくり達が作った花の冠を、母れいむは嬉しそうにかぶっている。 赤いリボンに黄色い花。まりさの目には、母れいむがいつもより綺麗に見えた。 「ゆっくりただいま!!」 まりさの声に一家は振り向く。 いつもなら、この後みんなで巣に戻って美味しいご飯を食べるのだが…やはり、いつもとは様子が違った。 「ゆ!!ゆっくりこっちにこないでね!!そこでゆっくりしててね!!」 まずは母れいむが警戒心を示す。周りの妹達も、不安そうな顔をして母れいむの後ろに隠れた。 やはりいつもと違う。まりさは、ありすに会った時と同じような疑問を頭に浮かべていた。 「どうしたの?まりさかえってきたよ!!いっしょにごはんたべようね!!」 「い、いいからそこにいてね!!そこからうごかないでね゛!!」 母れいむは恐怖に耐えながら、必死に言葉を紡ぐ。 まるで…捕食種であるゆっくりれみりゃと対峙している時のように。 その表情、その行動、全てがまりさには理解できなかった。 「みんな!!おかーさんのおくちのなかにはいってね!!ここならあんぜんだよ!!」 「ゆ!!ゆっくちはいるよ!!」「おがーざん!!ごわいよお゛ー!!」 母れいむの呼びかけに従って、合計7匹の妹ゆっくりが母の口の中に収まる。 すると、母れいむはまりさに背を向けて一目散に逃げ出した。 「そこでずっとゆっくりしててね!!こっちにこないでね!!」 「ゆ゛っ!!ゆっくりまってね!!まりさもいっしょにいくよ゛!!」 家族に置いて行かれると思ったまりさは、全力で母まりさの後を追いかける。 「ゆっくりおいてかないで!!まりさもいっしょにゆっくりしたいよ゛ぉ!!」 「ついてこないでね!!いっしょにゆっくりできないよっ!!」 しかし、母れいむも全力で逃げる。それはもう、ゆっくりれみりゃに追いかけられているかのように。 まりさはかなり成長したとは言え、母れいむと比べればまだ子供だ。 体格差を考えれば、全力で逃げる母れいむに追いつけるわけがなく… 数分追いかけ続けたが、結局母れいむには追いつけず完全に姿が見えなくなってしまった。 「どぼじでええぇぇぇぇ!!おがーざんどいっじょにゆっぐりじだいのにいいいいぃぃぃぃ!!」 何故? どうして自分は、家族に置いていかれるのか。お母さんはどうして自分を置いていくのか。 家族だけではない、よく考えたらありすも同じだ。どうして皆…自分から逃げるのか。自分を避けるのか。 まりさは餡子脳で必死に考えたが、答えらしきものはまったく思い浮かばなかった。 とぼとぼと、誰も居ない巣に帰りついたまりさ。 まりさは、逃げていった一家が帰ってくるのを一人で待ち続けた。 日が沈んで空が赤らみ、そして更に日が落ちて黒い空に綺麗な星々が輝く時間になっても…帰ってこない。 「ゆっくりぃ…」 一人さびしく呟くまりさ。 空腹に耐えかねて、母れいむが昼間に集めたであろうご飯を、一人ぼっちで口に運ぶ。 「むーしゃ…むーしゃ…」 ご飯は美味しかった。お母さんが頑張って取ってきてくれたものだから。 でも…幸せじゃなかった。お母さんと、妹達と、皆で食べないと楽しくない。幸せじゃない。 『ごはんおいしーね♪』『まりさもっとたべるよ!!』『れいむもたべるよ!!』 『ゆ!!れいむはじゃましないでね!!』『まりさこそじゃましないでね!!』 『みんなけんかしないでね!!ごはんはたくさんあるからね!!』 そんな団欒の声も、今は聞こえてこない。 そういえばご飯の時間は、いつもひとつ下の妹れいむとご飯の取り合いで喧嘩になったっけ。 お母さんは、そんな自分達を仲裁して…お母さんの分のご飯も分けてくれた。 いろんなことがあったけど、いつもご飯の時間は楽しかった。 でも、今はそこには誰もいない。自分ひとりだけだ。 「…いっしょにゆっくりたべたいよぅ!」 まりさの言葉は、巣の中に響いたと思うとすぐに消える。 誰の耳にも届かず、減衰して…消えうせるのだ。 夜。ゆっくりが眠りにつく時間は早い。 「ゆっくりねむくなってきたよ…」 まりさは、自分以外誰も居ない巣の中で…静かに眠りについた。 早朝。 夜早い分、やはり目覚める時間も早い。 が、れみりゃの帽子をかぶっているまりさはいつも以上に早く目覚めた。外が異様に騒がしかったからだ。 「ゆ?…ゆっくりしていってね!!」 目が覚めたまりさは、他の家族を起こす意味もこめて声を張り上げた。 「……ゆぅ」 しかし、反応は返ってこない。それもそのはず、家族は昨日の夕方から行方不明なのだから。 自分の姿を見るや否や、一家揃って逃げていってしまった母親と妹達。 起きた直後はご機嫌だったまりさだが、昨日の事を思い出して憂鬱になってしまう。 「ゆっくりぃ…どこにいったの?」 その問いに答えるゆっくりは、どこにもいない。 まりさはすっかり意気消沈してしまい、丸みのある身体が脱力して潰れた饅頭のような形になった。 朝になっても家族は帰ってこない。もしかして自分は捨てられてしまったのではないか… どんどんネガティブな方向に思考が進んでしまい、いつしかまりさの目には涙が浮かんでいた。 「ゆっぐりー!!…いっじょにゆっぐりじだいよ゛!!」 …そのときだった。 「「「…っくり………てね!!!」」」 巣の外からの、声。 まりさはこの声によって目覚めたのだったが、まりさはそのことに気づいていなかった。 「ゆ!?だれかゆっくりしてるの!?」 「「「ゆっく………ね!!!!」」」 その声は、大勢のゆっくりが一斉に発しているように聞こえた。 巣の中に居るせいか、内容がよく聞き取れない。 だが、巣の外に仲間がたくさんいる…その事実だけで、まりさの憂鬱な気分は吹き飛んだ。 家族はどこかに行ってしまったけど、まだ集落の仲間がいる。 もしかしたら、お母さんや妹達もすぐそこに戻ってきているのかも… まりさは晴れやかな笑顔で、巣の外に飛び出した。 待ち構えていたのは、総勢数十匹のゆっくり。皆同じ集落の仲間だ。 まりさたちの巣の入り口を取り囲むように、半円を描いて並んでいる。 よかった、やっと皆とゆっくりできる! まりさは、本能に刻み込まれたあの言葉を 「「「ゆっくりしんでいってね!!!!」」」」 …発する前に、飲み込んでしまった。 数十匹のゆっくりの魂が篭った声は、すさまじい音圧となってまりさの身体を揺さぶる。 その声に吹き飛ばされそうになりながらも、まりさは何とかその場に留まった。 「い、いまなんていったの!?へんだよ!!まりさのききまちがいだよね!!」 聞き間違いに違いない。集落の仲間が“ゆっくりしんでいってね!”なんて自分に言うわけがない。 そう信じて疑わないまりさは、仲間の言葉を疑う代わりに自分の耳を疑った。 「みんな!!いっしょにゆっくりしていってね!!」 「「「……………」」」 普通なら元気な返事が返ってくるはずなのに、目の前の仲間達は誰一人として返事をしない。 癒されるはずだった孤独感は、仲間の殺意に近い視線を浴びることによって…さらに膨れ上がっていく。 「「「ゆっくりしんでね!!!!」」」 「ゆ゛!!ひどいいいいぃぃぃぃ!!!どうじでそんなごどいうのお゛お゛おおお゛ぉぉぉ!!??」 …聞き間違いではなかった。仲間は確かに“しね”と言っている。 どうして?どうして?昨日まで共に仲良く過ごしてきた仲間なのに、どうしてそんなことを言うの? 「みんなゆっぐりじようよお゛おお゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」 どんなに呼びかけても、返事は返ってこない。冷たい目でまりさを見つめているだけだ。 いや、ただ見ているだけではない。仲間達は少しずつ…まりさの方へにじり寄ってきている。 恐怖と、憎しみと、殺意と、狂気を帯びた、冷ややかな視線。 まりさはこの場から逃げ出したかったが、四方を囲まれているためそれも叶わない。 「ゆっぐりだずげでええぇぇぇぇええぇえ!!ゆッぐりじだいよ゛お゛おおお゛おぉぉぉおお!!!!」 「…ゆっ!!」 その声に反応して群れから飛び出してきたのは、昨日の夕方姿を消した母れいむだった。 真剣な表情で、まりさをじっと見つめている。まりさは目の前の母の姿を見て、泣き叫びながら飛びついた。 「おがーじゃああぁぁぁん!!どごいっでだの!?ざびじがっだお゛おお゛お゛ぉぉぉぉ!!! もうどごにもいがないで!!いっじょにゆっぐりしようね゛えええぇぇぇ!!!」 “まりさはあまえんぼさんだね!”と言われてもいい。とにかく母に甘えたい。 誰も居ない巣の中で、一人寂しく眠った昨日の夜…もう二度とあんな思いはしたくない。 だから、このまま母れいむを捕まえたら絶対に放さない、そのつもりだった…が。 「…ゆっぐりしねっ!!」 「ぶぎゅあ!!?」 予想に反する位置からの、予想に反する攻撃。 その衝撃で、まりさは地面に叩きつけられ…少量の餡子を吐き出した。 まりさは自分の耳を疑い、今度は目を疑った。 自分を攻撃したのは…正面に居る母れいむだったのだ。 ショックのあまり動けずいるまりさは、母れいむの目を見てあることに気づく。 “目”が同じだったのだ。他の群れの仲間と。 まるで親の敵を見るような、冷たく攻撃的な目。どう考えても、子供を見る目ではなかった。 「みんな!!このれみりゃはちいさいから、きょうりょくすればたおせるよ!!」 群れ全体に呼びかける母れいむ。まりさは、何がなんだか分からなかった。 「れみりゃ?そんなのどこにいるの?ここにいるのはまりさだよ!!」 「みえみえのうそをつかないでね!!れみりゃがまりさなわけないよっ!!」 言い放つ母れいむ。周りのゆっくりたちも“そうだそうだ!”と同意する。 「どうじで!?まりざはまりざだよ゛!!れびりゃじゃないよ゛!!!」 「まだうそをついてるよ!!うそつきれみりゃはみんなでころそうね!!」 その母れいむの言葉が、合図となった。 一斉にまりさに襲い掛かる、数十匹のゆっくりの群れ。 すでに成体に近い体格とはいえ、たった一匹で数十匹の成体ゆっくりに勝てるわけがなかった。 「びぎゃああぁぁぁぁあぁ!!やめで!!ゆっぐりでぎいなおおrてお!!?」 「れいむたちをたべるれみりゃは、ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 四方から押し寄せるゆっくりの群れに、まりさは全身を蹂躙される。 目玉を押しつぶされ、口は無様に引き裂かれ、頬は痛々しく噛み千切られ… 「いだい!!いだいよ゛!!まりざにら゛んぼうずるのやめでぇえ゛ぇぇぇ!!」 「れみりゃは、とかいはのありすのこどもをたべたよね!!ぜったいゆるさないよ!!ゆっくりしねえ゛ぇぇえ゛!!!」 「まりさのともだちもれみりゃにたべられたよ!!ゆっくりあのよではんせいしてね゛!!」 家族を、友達を、れみりゃに奪われた…群れの仲間達。 心にぽっかり空いたままの空洞…その痛みが、嫌と言うほど伝わってくる。 まりさは教えたかった。そのれみりゃを自分は倒したんだ、と自慢したかった。そして褒められたかった。 でもできない。させてくれない。絶え間ない暴力が、まりさを徹底的に甚振り続けるから… 喋る間も、泣く間も、許しを請う間も与えられず、ただひたすら嬲られる。 全身隙間なく打ちのめされる。裂けた傷から中身を引き出される。 黒い餡子が自分の周りにばら撒かれるたびに…まりさは、何か大切なものを失っていくような気がした。 「やべでね!!まりじゃじんざうお゛!!ながみ゛!!ながみ゛どらないでえ゛え゛ぇぇぇぇえ!!!」 「れみりゃはゆっぐりじねえぇぇぇ!!」「わるいれみりゃはしね!じね!じね゛!!」 「ありずのごどもをがえぜ!!がえじで!!がえじでよおおおおおおぉおぉぉぉお!!!」 「みんなの゛!!みんなのどもだじもがえじで!!もっどいっじょにゆっぐりじだがったのに゛!!」 被食種であるが故の悲しみと憎しみ。それらを全て、まりさにぶつける群れの仲間。 その深い感情が、まりさの心と身体を深く傷つける。 どうして…どうしてこんなことになったのだろうか? 自分はただ、皆とゆっくりしたかっただけなのに。家族と一緒にゆっくりしたかっただけなのに。 なのに皆は、一緒にゆっくりさせてくれない。もっと…もっともっとゆっくりしたかったのに。 こんなことなら…一人で出かけないで皆と一緒にゆっくりしていればよかった… 「ゆ゛っ!!ゆっぐでぃじだぎゃあdっだあよおおおえおええおおぉtっげろがおp!!!」 「ゆ゛ッぐりじねえ゛えぇえ゛え゛ぇえ゛ぇぇぇぇ!!!!」 母れいむの最後の一撃。 まりさが最後の餡子を吐き出したのは、その直後だった。 「ゆっ!!ゆっくりたおしたよ!!」 母れいむの宣言に、歓声が沸き起こる。 「やったね!!ちいさなれみりゃをたおしたよ!!」 「これでゆっくりできるよ!!」「みんなでゆっくりしようね!!」 「これならおおきいれみりゃにもまけないよ!!」 大勢で跳びはねて、喜びをかみ締めるゆっくりたち。 今までたくさんの家族や仲間をれみりゃに食べられ、そのたびに悲しみのどん底に突き落とされてきた。 そんな日々は、今日を境に変わるだろう。 何故なら群れの仲間達は、自分達の力を合わせることでれみりゃを倒せることを知ったのだから。 だが、母れいむだけは何故か浮かない顔をしていた。 「ゆぅ…まりさがかえってこないよ!どこにいったの?」 まりさというのは、母れいむの一番上の子まりさのことである。 昨日の昼に出かけたきり、帰ってきていない…普段なら晩御飯の時間には帰ってくるのに。 もしかして、別のれみりゃに食べられたのでは…! そうでないなら、道に迷ったのかもしれない。だとしたら今頃お腹を空かして泣いているだろう。 「ゆ!!れいむはまりさをさがしてく…る………よ?」 ぴょんと一回跳ねて、森のほうへ自分の子供を探しに行こうとする母れいむ。 「………ゆぅ?」 ふとその視界に…先ほど撃退したれみりゃの残骸が入った。 ズタズタに引き裂かれた皮から漏れ出す餡子。何かがおかしいと感じた。 …れみりゃの中身って、餡子だっけ? そういえば餡子だったかもしれない。いや、餡子に違いない。 結論付けた母れいむ。しかし、違和感は他にもあった。 餡子に隠れて目立たないが…そこには金色の髪の毛が残っている。何かがおかしいと感じた。 …れみりゃの髪って、金色だっけ? そういえば金色だったかもしれない。いや、金色に違いない。 母れいむの頭の中には、中身が餡子で金髪のれみりゃがでっち上げられていた。 よく見ると、れみりゃの帽子は脱げて地面に落ちている。 帽子を被っていないれみりゃの残骸を見て、母れいむはそれが何かに似ているような気がした。 つい最近、どこかで見たような…気のせいだろうか? などと考えながら適当に跳ね回っていると、母れいむはれみりゃの残骸に埋もれたあるものを見つけた。 それは、赤いリボンだった。 昨日の昼、自分が子まりさの頭の後ろに結んであげた、赤い綺麗なリボン。 何事もなく、無事に帰ってこられるように…そんな願いをこめてまりさに結んであげた、赤いリボン。 …そんなリボンと同じ色で、同じ形。 瞬間、母れいむは今まで自分がしたことの本当の意味を理解した。 昨日から今日にかけての出来事を、ゆっくりと思い出す母れいむ。 小さなれみりゃから逃げ出した後、群れの仲間に相談してれみりゃを倒す作戦を立てた。 ちょうど自分の巣にれみりゃが忍び込むのを見ていたので、作戦を立てるのは容易だった。 朝になって、れみりゃが出てきたところを…袋叩きにした。 小さなれみりゃなら、数十人でかかれば倒せる。すべては作戦通りだった。 突如侵入してきた外敵を排除するためと思ってやってきたこと全ての結果。それが目の前にある。 「おかーしゃん!!ゆっくちしようね!!」「ゆっきゅりー!!」 「あれー?まりしゃおねーちゃんはー?」 「まりさおねーちゃんといっしょにゆっくりしたいよ!!」 子供たちの声に、母れいむは何も答えない。 「ゆ?おかーしゃんどうしたの?げんきないよ!!」 「げんきだちてね!!ゆっくりげんきだしてね!!」 「いっしょにゆっくちすればげんきになるよ!!」 「…………」 無言のまま、子供たちのほうを向く。 母れいむの目に映るのは、無邪気な子ゆっくりたち。 自分がやってしまったこと。自分が殺したものの正体。自分が子供たちから何を奪ったか。 母れいむは、それらをゆっくりとゆっくりと理解した。 だから、母れいむは…考えるのを止めた。 何もかもを、考えるのを止めた。 悲しみの声を上げることも、絶望の涙を流すこともせず。 ただ、考えることを放棄した… ビュウッと強い風が、木々の間を駆け抜ける。 赤くて綺麗なリボンは、高く舞い上がって…どこかへ消えてしまった。 (終) あとがき 最初は軽快なのを書こうと思ってたのに…おかしいなぁ。 悪いことしたゆっくりがIKEMENお兄さんの制裁を受ける、そんな王道を今度は書きたい。 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1552.html
前 そこは、さきほどの加工室の半分ほどの広さだった。 しかしそこにいる人間の数は圧倒的に少ない。5,6人程度だ。そのどれもが緊迫した顔で ゆっくりれみりゃを加工している。 「ゆっくりれみりゃは、今のところ胴体付の個体しか加工していません」 「なぜです?」 「通常のものは、どうにも加工しづらいのです。 数も一定量から増えませんし、他のゆっくりとは 格が違うと思い知らせてくれますよ。 ゆっくりふらんなどはもっと扱いづらいですしね」 「さすがは希少種、ということですね」 「そういうところですね。 頭の痛いことです」 「あはは~れみりゃだー。 ぷぷっ」 「れぇみりゃ、だ、どぉ~☆ あははは」 子供達は愉快げにガラスにかじりつき、見下ろしている。 その視線の先には先ほどの加工室と似たような光景が広がっていた。 「うっう~。 れ☆み☆りゃ☆だっどぉ~~♪ にっぱぁ~~~☆」 このゆっくりれみりゃも何不自由なく育てられ、とても素晴らしい肌のはりと色艶をしていた。 皮も滑らかで、羽の動きも滞りがない。 「れみ☆りゃ☆うぅ~~~♪」 野生でこれほど上質のゆっくりれみりゃは、おそらく100匹に1匹いればいいほうだろう。 「うっう? ぷっでぃんはぁ? おなかへったどぉ。 らんちもっでぎでぇ~~ん」 男は意に介さず、きびきびとゆっくりれみりゃの四肢を拘束していく。 大の字に固定されたゆっくりれみりゃは、頬をぷっくりと膨らませて、可愛らしく不機嫌さを アピールしていた。だが、それを可愛らしいと思うのは同じゆっくりれみりゃだけに違いない。 むしろ、そのにこにこ笑顔で全てがぶち壊しになっていて、とてもちぐはぐな印象を受ける。 「れみりゃはおこるってるど! でっもぉ~、あやまればぁゆるしてやるんだどぉ~?」 男はかまわずに、道具を取り出していく。 「ぷっでぃんふたぁっつもってくればぁ、いいこいいこしてあげるんだどぉ~♪」 男はかまわずに、作業着を整えて口元をマスクで覆う。 「とぉってもありがたいことなんだどぉ? めったにないことなんだがらぁん」 男はかまわずに、ゆっくりれみりゃを見据えた。 「なんでだまってるんだどぉ! あやまるんだどぉ! あやまるんだどぉお!!」 男は黙ってメスを取り出すと、ためらわずに腹を切り裂いた。男の鼻孔にひき肉と油の匂いが侵入する。 「うぎゃぁあぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 への字に良く似たにこにこ笑顔を崩して、目を根限り見開いて絶叫するゆっくりれみりゃ。 その羽は痛みを紛らわすためだろうか、ばっさばっさと激しく小刻みに動き続けている。 「れみりゃのおながいだいどぉお~~~!! なにずるんだどぉーーーーーーーー!!!」 男はうんざりしたような表情を見せると、そのままゆっくりれみりゃの中身をかき出し始めた。 「うぎゃぅぅ! う゛あ゛っ! う゛あ゛あ゛っ! う゛あ゛あ゛あ゛っ!!」 胴体付とはいえ、ゆっくりれみりゃの中枢は他のゆっくりと同じように頭部にあるので、胴体部分 をどれだけ無遠慮にかき回しても、生命維持にはまったく問題が無い。 「やめでーーーーーー! やめでーーーーーーー!! やめでーーーーーーーーー!!!」 さらに言えば、他のゆっくりにはない異常な再生力のおかげで、ぐちゃぐちゃになっても放置して おけば、数時間(部位によっては数秒から数分)でものの見事に復元してしまうのだ。 この超回復こそが、ゆっくりれみりゃを希少種たらしめている点であり、業者の頭を痛めている 最大の要因でもあった。 時間をかけて技巧をこらすことができないのだ。 ゆえに、ゆっくりれみりゃの場合は、すでに組み立て済みのメカニズムを埋め込むことになる。 だが、それでは微妙に職人気質のある者たちが納得しなかった。 他のゆっくり時計との差別化を図ろう!! ということで一味違うギミックを拵えたのだった。 「うあーーー! う゛あ゛ーーーーーーー! れみりゃのながみだじぢゃだめだどぉ~~~っ!!」 男は中身を抜き、程よい隙間を空けるとそこに円形の物体を埋め込んだ。 それはもちろん時計だ。 しっかりと固定させると、今度はその時計に棒状のものをつなげていく。 「いぃだあぁ~~あぁぃいい!!! ながみがぁ! れみりゃのおうごんのながみがぁぁああ!!!」 その黒くしなやかな金属棒は、ぐにぐにと曲がり、自在に湾曲するのだ。 「う゛あ゛べるんだどぉおお! や゛べるんだおぉ!! う゛あ゛ーー! う゛あ゛~~~!!」 それを時計に接続し、四肢に手早く埋め込んでいく。 「う゛ぎゃぁあぁ!! れみりゃのおででがへんなんだどおぉ! ぎれいなおででになにがはいっでるぅうぅ!?」 涙と唾らしきものが男の顔にかかるが、気にせず作業を続ける。 ぐりぐりとねじ込んでいくと、末端の皮膚に突き当たる。 次々にそれを埋め込んでいくと、そのたびにゆっくりれみりゃの絶叫があがる。 「れみりゃのあんよがぐるじいどぉ~!! かわい゛い゛あんよがみっぢみぢだどぉおおぉぉっ!!!」 いつのまにか、男は顔をゆがめていた。笑顔になっている。 最後に、歯車などの金属片が露出した一際太い棒を刺し込んで、時計と頭部とをつなげてしまった。 「ぶぎゅぅ!? あ゛だま゛がいだいどぉ~! わ゛れぞうだどぉ~! とるんだどぉ! はずすんだどぉおお!!」 これでゆっくりれみりゃの頭と四肢は、時計と骨組みで繋がっていることになる。 「う゛あ゛~~~。 う゛あ゛~~~~~。 やべるんだどぉ~~~。 いだいんだどぉ~~~」 すっかり脱力し、元気を失ったゆっくりれみりゃ。 「がぢがぢいっでるんだどぉ~! うるさいんだどぉ。 やがまじいんだどぉ~」 だが、男が拘束を解くと、とたんにぐりぐりと動き始めた。 いつものもたもたとした乱雑な踊りと違い、とてもゆっくりれみりゃらしくない身のこなしだ。 「うっうあ? う゛あ゛ああ!? うわぁあ!!?」 戸惑うゆっくりれみりゃ。 腹から露出している文字盤の針がかちかちと動くたびに、あわせるようにくりくりと四肢と頭が不規則に動く。 「う゛あ゛ーーーー! うあーーーーーーーッ!!」 まるでロボットダンスのように、ぐねぐねかくかくと動いているゆっくりれみりゃ。 「おがしいどぉ! へっへんなんだどぉ!! とまるんだどぉ~!! とっとまれどぉ~~~!!!」 自分の意思とは無関係に動く体に、戸惑いつつもそれを止めようと全身に力を込める。 「うぎゃーーー!! いだいぃ!! うあ~~~! とまらないどぉ! どうじでだどぉおお~~!!!」 いくら動きを止めようとしても、体の中の骨組みが動いているのだ、やすやすと止まるものではない。 「どまらないどぉーーーー!! どーぢでぇえええ~~~~~!? どまるんだどぉーーーー!!!」 それどころか、無理に動かないでいると、皮膚が中身と共につっぱり、かき回されて痛みが走る。 「うあーーー! いたいどぉ~! づがれるどぅ~~!! やだどぅ~! いやなんだどぉ~~!!」 泣き叫びながら、体はぐりんぐりんと奇妙な踊りを続けている。 ゆっくりれみりゃは死ぬまでその動きをし続けなければいけないのだった。 「ごわいどぅ~~! れみりゃおがぢぐなっちゃったどぉ~~! う゛あ゛ぁぁ~~~ん゛!!」 「あははははは!! れみりゃのかお、おっもしれえ~~~!」 「ぶはっ! バカまるだしぃ~! へんなのーー!」 ゆっくりれみりゃの動きを見ていた子供達は一気に爆笑の渦へと巻き込まれた。 それほどまでに、ゆっくりれみりゃは滑稽だったのだろう。 「あれでは、持ち主のあずかり知らぬ場所まで勝手に動いていってしまうのでは?」 慧音は疑問をぶつけた。 四肢の戒めもなく、自分の意思に従わないとはいえ、自由に動き回るのだ。当然の疑問と言えよう。 「それは大丈夫です。 販売の際には台座を合わせてますから」 「なるほど」 「他に何かご質問はありますか?」 しばし考え込む慧音。 「そういえば、さきほどのゆっくりたちも、このゆっくりれみりゃも、普通に機械部品を埋め込んで いましたが、それはゆっくりの体に悪影響はないのですか?」 「ええ。 あれらに使用されているのは、全てゆっくりの死骸から特殊加工したものでして、ゆっくりには まったく悪影響はありません。 それゆえにゆっくりの生体との適合性も極めて高く、縫合せずとも癒着します。 そこはさまざまな機関が協力を申し出てくれたので、落ち度は無いはずです。それぞれの面子にも関わる でしょうしね」 「……なるほど」 さまざまな機関。 永遠亭や河童だろうか。 少なくとも慧音には、それくらいしか思い当たる節はなかった。 「それに、弾力性もあるので、ゆっくりが死なない程度の衝撃では故障もしませんよ」 「ほう。 それは凄いですね」 「もし故障しても、格安で修理を引き受けています。 といっても、今まで修理に来た人はいませんけどね」 そのままからからと笑う男。 きっと目覚まし機能を止めるついでにぶち壊す者が大半なのだろう。慧音はそう思った。 「さて、加工室はここまでですが、このままでは製品としてはなりたちません」 男は手を数回打ち合わせ、子供達の注目を集めると、歩きながら説明を始めた。 「時計機能はついていますが、まだ時計としての振る舞いを知らないからです。そこで今度は調律室で 調整をしなければなりません。ここです」 そこは今までとは違い、薄暗く、どんよりとした区画だった。 暗室を想起させる雰囲気だ。 ここも今までと同じくガラス張りで見下ろすことが出来る。 「うわ!」 子供達が驚きの声をあげる。当然だ。彼らの目線の先には、とても大きなゆっくりがいたのだから。 「でっけ~!」 「なにあれ、キモい!!」 「! あれはもしや」 「さすがは上白沢女史。 お気づきになられるとは。 そう、あれはドスまりさです」 部屋の三分の一を占める巨体。その天辺は天井にあたりそうなほどだ。 腹にすえられた文字盤も大きく、見ただけでアンティークだとわかる。マニアが見れば垂涎ものだろう。 「まさか、実在していたとは……。 ん? あの表情、どこかで見覚えがあるような……?」 慧音は何処で見たのだろう?と記憶を探る。つい最近のはずだ。 「あ!」 そう。あの顔は最初の廊下に飾ってあった写真のゆっくりにそっくりだ。 「あのドスまりさは、写真のゆっくり魔理沙と同じ個体なのですか?」 「写真……? ああ、廊下の創業者の写真ですね。 ええ、その通りです。 あれがうちで一番古い時計ですよ ドスまりさですが、我々は"大時計まりさ"と呼んでます」 調律室の中では、一際大きなドスまりさ時計がちくたくと呟く中で、泣き声、悲鳴、怨嗟が響き、さらに ドスまりさ時計と同じようにちくたく奏でているゆっくり時計がたくさん置いてあった。 ここでドスまりさ時計から、時計としての振る舞いを学ぶのだ。 いや、刷り込まれるというほうが正しいだろう。 ドスまりさ時計が部屋中に響く大声で「ちくたくちくたく」言っているのに唱和し、 「ゆ! ゆ! ゆ! ゆぅうぅん!! おおどけいまりさが、ゆっくり3じをおしらせするよ!」 と時報を奏でれば、それぞれの種類に適した物言いになるという差はあるが、その文句を告げる。 たとえばゆっくりアリス時計は 「と、とと、とかいはのありすが、しかたないから3じをおしらせしてあげるわ!」 というようになる。 中でも面白いのがゆっくりれみりゃで、 「うっうっ、うあ、うあ~☆ れみりゃがぁ、かわゆぐ3じをおしらせするどぉ~! おやづもっでぎでぇ~ん♪」 などと独自性がでたりするのだ。 朝、昼、晩の時間になると、それが「あさごはん」「らんち」「でなぁ」になったりするので、 数が少なく、かつ踊るギミックで値段も張るというのに、なぜか大人気なのだった。 もちろん、これらは調整が終わったゆっくり時計であり、調整の済んでいないゆっくり時計は見るに耐えない。 どれもが苦痛にあえぎ、泣き、恨みつらみを吐いたり、体内の時計の音にいらいらしているからだ。 個体差があるものの、それらが完全に治まるのがおおよそ20時間が経過したころで、そうなると、それらは ドスまりさ時計の一際大きい音を聞き続けることになる。 するとどうだろう、次々に「ちくたくちくたく」口ずさむものが現れるのだ。 さらに40時間がたつ頃には、ドスまりさ時計にならって、時報を言い始める。 ゆっくり時計たちが目覚し機能まで習得するには、分単位での認識が必要なので、さらにそこから60時間が 必要だ。そのころには人間に対する敵愾心も消えており、なぜか時計としての扱いに不満も持たないようになる。 計上すると約120時間、実に5日間の調整期間を経て、ゆっくりたちは立派なゆっくり時計として 出荷されていくのだ。 ゆっくり時計の寿命はまちまちで、1~2年で壊す持ち主がいたりすることから短命だと思われがちだが、 その実手荒な扱いをしなければ5年10年は楽に使えるのだ。 しかも、時計部品もゆっくりの生体に近いつくりになっているため、ゆっくり自身が大きくなるにつれて 共に成長するのだ。中には市販のゆっくり時計を使い続け、ゆっくり大時計にしてしまう好事家もいるらしい。 「ははぁ。 物好きがいるものなのですね」 「かく言う私も、自宅ではゆっくりありす時計を使っていますよ。 もう3年になりますかな」 「そういえばゆっくり時計の動力は何なのでしょうか?」 慧音ははたと思いついたふうに言った。 「ああ、これは説明が足りませんでしたな。 あれらの動力は足です」 「足、ですか?」 「ええ、あれらが体を跳ねさせたり、引き摺ったりして移動することはご存知ですね」 「はい」 「その移動するために使っている部分にバネを当てて、時計部分の動力に変換・利用しているのです」 「なんと! そんなことが」 「ですから、ゆっくりれみりゃ時計以外は基本的に置時計になり、あれらが生きている限り時を刻み続けるのです」 「するとやはり、ゆっくり時計にも餌を与えなければいけないのですか?」 「長持ちさせたいのなら、必要でしょうね。 それもメンテナンスのうちですから」 「ああ、やはりそうなのですか」 「ただ、それは思い出したときにしていただければ十分長持ちします。 クズ野菜やほんのちょっとの水で十分です」 「虫とかは~?」 慧音と男の会話を聞いていた少女が質問する。 「もちろん虫でも大丈夫ですよ。 霧吹きでしゅっと潤わせるだけでも大丈夫なんですよ」 「へ~」 「いやはや、すごいですね」 やがて一堂は元いたホールに戻ってきた。 壁に立てかけてある写真も、あの大時計まりさを見た後では別の感慨が生まれるだろう。 「さて、ここまでで私の役目は終わりです。 他にもいろいろと展示品がありますので、よろしければ そちらもご覧になってください。 体験教室もありますよ」 「本日はどうもありがとうございました。」 「ありがろうございました~!」 「ましたー!」 慧音や子供達の声に送られ、男は次の仕事へ行ってしまった。 「さて」 慧音は呟くと、壁にかけられた柱時計を見た。 そのゆっくり時計は、顎が外れんばかりに開かれた口に文字盤がはめ込まれ、その下に繋がれた振り子の 先には小さなゆっくりがくくりつけられていた。 親子を加工したに違いない。 その振り子ゆっくりは振られるたびに 「ゆ゛っ ゆ゛っ ゆ゛っ ゆ゛っ」 と漏らし、同時に時計部分のゆっくりはその度に目を白黒させていた。 その時計は11時半を指していた。 程好い時間。 今日は天気もいいし、中庭でお弁当というのもいい考えだ。 午後は、体験教室というのもやってみよう。 子供たちのなかから、将来職人が生まれるかもしれないのだ。 こういうものは幼いころに触れたほうが良い。 慧音はそう思いながら、子供達に向かって口を開いた。 終わり。 かわいいれーむがゆっくり6じをお知らせするよ!!!のAAを見て思いついた。 きっと分針とかいじくって回すと、面白い声を上げてくれるはずです。 踊るゆっくりれみりゃ時計は、フラワーロックを想像してみてください。 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/144.html
ここはゆっくり加工所内の実験室。哀れな実験体が今日も運び込まれる。 今回の実験体はゆっくりれみりゃ。 希少種と言われているが、紅魔館周辺に比較的多く生息しているため 定期的に加工所職員が捕獲している。 今のところ数が減ったという兆候はない。 さっそくゆっくりれみりゃが、30cm四方程度の狭苦しい透明ケースに入れられて 運び込まれてきた。 「ぅー、ぅー・・・」 ゆっくり種に効くという加工所特製の催眠ガスで眠らされているようだ。 左右に生えた翼で顔を押さえ、静かに寝息を立てている。 「ミーティングの通り、今日の実験内容は ゆっくり種間の餡の移植と、それによって起こる外的・内的変化の観察だ」 そこへケースに入れられたゆっくりれいむが、やはり睡眠状態で運び込まれてくる。 「主任、こちらも準備できました。」 「うむ、では始めよう。まずはゆっくりれいむの頭頂部を切開する」 と言っても全身が頭のようなものだが、主任は慣れた手つきで ゆっくり霊夢の髪(体毛?)に結えてあるリボンを取ると、体を両手で掴み ぼてっと実験台へ置いた。 「ゅ・・・ ゅ・・・」 これから何が始まるかも解らず、間抜けにヨダレのような粘液を 半笑いの口から出して眠っているゆっくりれいむ。 カミソリを手にした主任が片手で饅頭を固定し、おもむろにゆっくり霊夢の髪を剃り始めた。 ジョリ、ジョリ・・・ ものの数分でゆっくりれいむの髪は全て剃られ、ツルツルとなった。 「ゅぅぅ・・・ ゅぅ・・・」 それでも饅頭は起きない。 「今回はお前がやってみろ」 主任が部下Aに命じると、部下Aはメスを取り出し、部下Bが押さえつける ゆっくりれいむの頭頂部にメスを入れた。 スーッと簡単に皮を切り裂いたメスは円を描いて一周し、丸い切り跡を残した。 丸く切られた皮をペリペリと丁寧に剥がす。 皮を剥がすと中から甘い臭いが漂ってくる。ゆっくりれいむの中身である餡が露わになった。 ちなみに餡は粒餡であった。 「よし、ここからは手早く行くぞ」 主任の言葉と共に、部下Bがヘラを使い中の餡を外のボウルに移し替える。 「・・・ゅっ ・・ゆっゆっ」 ゆっくりれいむは自分の体から餡が取り出されるたびに、寝ながら譫言のように呟いている。 半分ほど取りだしたところで、ボウルに入った粒餡をハンドミキサーでかき混ぜ、漉し餡にする。 その音のせいか、頭頂部にぽっかり穴を空けたゆっくりれいむの目がゆっくりと開き始めた。 「ゅ・・・ゆ? ゆゆ?? ・・・ゆ゙! ゆ゙ゆ゙ゆ゙!!!」 ゆっくりれいむは中身の餡を半分も取り出されたせいか、意識ももうろうで、体も痙攣している。 ただ目を充血させ、だらしなく開いた口からヨダレを垂れ流し、うめき声を上げるのみであった。 「起きたか、しかし何もできまい。放っておけ」 意に介さず、今度はゆっくりれみりゃを別の実験台へと置く主任。 部下Bがボウルのこしあんを30cmほどの長さの太い注射器で吸い上げると、 おもむろにその注射器をゆっくりれみりゃの後頭部にぶすっと刺す。 「ゔ!!」 反射的に翼を広げ、カッと目を見開き、歯を剥き出し、声を上げるゆっくりれみりゃ。 すっかり目が冷めたようだが、意に介さず注射器の中の餡を注入する。 「ゔゔゔゔゔゔ!!!」 普段は口腔から他のゆっくり種を摂取するゆっくりれみりゃだが、直接他種の餡を 注入されたことで、れみりゃの中身である挽肉と直に混じり合い拒否反応が出ているようだった。 「ふむ、まあ予想通りの反応だな。もうすこし注入してみろ」 指示通り、注射器の中身を全て注入し、再び餡を詰め、注射する。 「ゔゔゔゔゔう!!!ゔゔゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!! ぁ゙・・・・・・・!!!」 翼をピンと伸ばし、鬼気迫る絶叫と形相のまま、ゆっくりれみりゃは固まってしまった。 「どうした。死んだか?」 主任が手を触れようとすると、みるみる黒ずんでいくゆっくりれみりゃの体。 そして頭の帽子を突き破って蔦が伸びてきた。 「・・・これは・・・そのまま動かすな。とりあえず休憩にしよう」 「主任、こっちはどうしますか」 部下が変わり果てた姿のゆっくりれいむを指さす。 「ゅ・・・ゅ・・・」と呟くのみで白目を剥いたまま何の反応もない。 「そいつはもういらん。硫酸で処理しとけ」 「わかりました」 30分後。 ゆっくりれみりゃは黒炭のように朽ち果て、伸びた蔦の枝からは 紅白の饅頭と、羽のようなものが生えかかった饅頭が合わせて5つほど実っていた。 「これは思わぬ収穫だったな。もう紅魔館に近づく必要もない。すばらしい実験結果だった。」 携わった職員達は達成感を胸に白衣を脱ぎ、今日の業務を終了した。 これで臨時のボーナスは間違いないだろう。 胸躍る主任は、帰り道に出会ったゆっくりれいむ家族から赤ちゃんれいむを2匹奪い、 1匹を丸かじりし、もう1匹を片手で握りつぶし、上機嫌のまま帰路についた。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3157.html
れみりゃの悲劇 グロ注意 ゆっくりれみりゃ。それはゆっくり界の捕食種と呼ばれる強力なゆっくり。 大体のゆっくりはれみりゃには勝てない。 しかしこのゆっくり国には、れみりゃ退治専門のゆっくりたち通称「れみりゃばすたーず」という組織がある。彼らはれみりゃからの襲撃を守るための特別なゆっくりたちのことである。そして今回は、そんなことを1mmも知らない野良れみりゃとそのおチビの話である 「うわぁー!れみりゃだぁー!」「う~♪食べちゃうぞ~♪」「う~♪」 グシャッ… 「う~…あんまり美味しくないどー…」「たしかにまずいんだど〜。ぷりんが食べたいんだど〜」そんなことを言いながらも食べ続けるれみりゃ親子、しかしその目の前に謎のゆっくりが現れた。「う~♪新しいゆっくりが来たんだど〜♪」「う~♪食べちゃうぞ♪」 「……」謎のゆっくりは黙ったままだ。 「う~?こいつ、ずっと黙ったままだど〜…」れみりゃは思った。もしかして、恐ろし過ぎて気絶しているのではないのかと、しかしその予想は、おチビの悲鳴とともに消え去った。「うー!!!いだいー!!!ざぐやぁぁぁばやぐだずげろぉ!!!……も…もっじょ…ゆっぐ…じ…」「うー!!おちびぃ!!まざがおばえがやっだのがぁぁ!だべでやるぅぅ!!!」「……誰を食べるのぜ」「おばえにぎまっでるだろぉぉぉ!!」「……お前ごときにまりさは食われないのぜ」何を言っているんだこのゆっくりは、れみりゃはそう思った。お前も他のまりさと一緒だから食えないはずはないと。 「う~♪ないにってるの?お前は今までのまりさとぜぜん変わってるところはないんだど〜♪」そして、れみりゃが攻撃しようと牙を出す。このゆっくりがおちびを殺したことはもう覚えていないのかものすごく強気の態度だ。しかし次の瞬間…… ザクッ 何かを切り刻む音がした。そして急に頭がいたきた。 そう、このゆっくりはれみりゃの頭を木の棒でぶっ刺したのだ。「ぅぅぁー!!!おぼにあだまがいだいんだどぉ!!!」「だから行ったのぜ。お前ごときにまりさは食われないのぜ。」「どぼじでぇ!!!ただのゆっぐりのぐぜにぃぃ!!!」ピクッまりさの動きが止まった。「まりさがただのゆっくりに見えるのぜ?一体どこまでばかなのぜ?」「どごがらどうみでもだだのまりざでしょぉぉ!!!」「はぁ…仕方ないのぜ。ばかなれみりゃのためにも名乗って上げるのぜ…いいか、まりさは対れみりゃ業者、通称れみりゃばすたーずなのぜ」「れみりゃばずだーず…ぞんなのじらないんだどぉぉ!!」「まあもうすぐ死ぬお前には関係のない話なのぜ…それじゃあさよならだぜ」 「じょっどまでぇぇぇ!!!それならこの上の棒を……も…っどゆっぐ…り………」「……本部、聞こえるのかぜ…ああ、ターゲット無事死亡したのぜ…今から帰るのぜ……」 こうして、このゆっくり国の平和は守られたのであった。 終わり あとがき おっすおっす1だそ〜わかれよ。 ということで鉄壁の軍人まりさの作者(タクアンとでも呼んでくれ)です 記念すべき大2作目! ネタは寝てたら思いつくいや〜最高やな。 ということでイカヨロシクー! 以上!閉廷!