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青い太陽。 手を揺り動かすと、からんころん、小気味よい音がして太陽は二つになった。 小さく深呼吸。両手で持ったガラス瓶を唇に押し当てる。ビー玉が落ちるまで傾けると、 炭酸水がとくとく流れ込んできて、渇いた口の中にまんべんなく染み渡る。 舌を痺れさせる刺激は、軽くて滑るような甘さに緩和された。 そして喉を通り過ぎるとき、むず痒かったのも束の間、潤いに満たされた。 不意に肩を叩かれた。首をひねって振り向こうとしたら、頬になにかがつっかかって動けない。 よく見てみると、原因は誰かの指だった。見覚えのある人差し指。 昨日もトランプを慣れた手つきで切り混ぜていた、あの手の一部。 それの持ち主である彼女と向き合おうと、今度は逆に振り向いたときだった。ぷに。 「はうっ」 うしろで噛み殺したような笑い声が聞こえた。 やっぱり彼女だと確信したとたん、なんだか嬉しくなる。緩んだ口から話したいことが次々と溢れ出してくる。 早く言葉をかけたくてかけたくて仕方がなかった。 それなのに、頬に指先が埋まったままだ。これじゃあ目を見て話せない。 「み、魅ぃちゃん、どうしたのかな?」 遠くにあったゴミ山が消えた。正確には人影に隠された。 魅ぃちゃんが私の前に回りこんだんだ。なにをするんだろ。 ぼうっと眺めていると、両頬を包む感じで手が添えられた。 そして、ふにふにとつまむのを繰り返していたけど、しばらくして外側に引っ張られる。 反射的に「痛いよ」とこぼした。私の頬は解放される。 「いやー、ごめんごめん。柔らかくて気持ちよかったからさ、つい、ね。つい…」 屈託のない笑みを浮かべて私の横に腰かける。 私は傍らにラムネを置くと、膝をついて体ごと彼女に対峙した。 「どったの、レナ?」 「魅ぃちゃんだけずるいんだよ、だよ」 無防備な頬を今度は私がいじめる側になる。 痛くないように、力を加減して掴んだ。引っ張る。にらめっこのときみたいな変な顔。 思わず吹き出して、魅ぃちゃんをむっとさせてしまった。それは怒るというより小さな子が拗ねるような表情。 「むにむにのほっぺた、かぁいいよ~」 「れ、れにゃ……ひっはりすぎ…」 「魅ぃちゃんおっもちかえりいいいいぃぃ!!」 かぁいいモードの私に頬をこねくりまわしされているといっても、魅ぃちゃんが大人しくやられてるはずもなくて、 すぐに反撃を受けた。脇腹のあたりを指が探ってくる。くすぐり攻撃だ。形勢逆転。 でも私だって引き下がるわけにはいかない。部活のせいか、おかげか、負けず嫌いになりつつあった。 ゲームじゃ魅ぃちゃんには適わないけど、こういうのは私の方が強いことにも最近気づいた。 いたずらをしかける。おなかの底から笑う。そんなじゃれあいが続いた。 今思えば、部活以外で彼女と遊ぶのは久しぶりだ。ふたりっきりになるのも、そうかもしれない。 転校してきた頃は、魅ぃちゃんがずっと隣にいた気がする。圭一くんが来てから減ったんだっけ。 ちょっとだけ寂しいな。 「はぁ、暴れたらのどが渇いたね」 呼吸を乱した魅ぃちゃんはネクタイを緩めていた。シャツが肌に張りついてるのが、この位置だとよくわかる。 私はついさっきまで宝探しの休憩をとっていたからまだ余裕があるけど、魅ぃちゃんは違うのかもしれない。 思い出してみると、魅ぃちゃんが来る前に走るときの足音が聞こえた気がする。 なにかの用事だったのかな。バイトとか。 掌でうちわのように扇ぐ彼女にラムネを差し出した。 「はい、飲んでいいよ」 「ん、ありがと。それじゃ一口…」 「全部あげる。でも、ビー玉はレナがおもちかえりするからだめなんだよ」 そう言うと、苦笑しながらも受け取ってくれた。 中身は瓶の半分より少ないくらいが残ってる。さっき私が飲んだからだ。 つまり、これって── 「今なんか言った?」 「う、ううん……間接キス、になるのかな…って…思っただけ…」 最後まで呟いて、自分が変なことを考えていたのを知った。慌てて口を塞ぐ。 あのね、いやなわけじゃないんだよ、だよだよ。ただ意識したら恥ずかしくなっただけなんだよ。 それに、こんなの初めてじゃない。 お昼時間、魅ぃちゃんのおかずをもらうとき、あーんってするのも間接キスだもん。 と、余計に考えてしまって顔が熱くなった。 「へ……ああ、うん…そうかもね、あはは」 心なしか魅ぃちゃんの顔も赤くなったような感じがするけど、たぶん私の勘違いだ。 ラムネ瓶が唇の上で傾く。それから飲み干すまで、ずっと見ていた自分がいて、何気なく視線を逸らした。 「ぷはーっ、こののどごしっ!たまらないねぇ」 彼女の言葉や仕草があまりにも自然だったから笑ってしまう。 「魅ぃちゃん、おじさんみたい」 「間接キス意識しちゃう可愛いレナに言われたら、認めるしかないなぁ」 「はぅ……いじわる」 いじけていると、手首を掴まれた。抵抗する理由もないから、じっとしていると掌になにかが乗せられた。 冷たくて、丸くて、甘い匂いがする。綺麗に透きとおっているから肌色に見えた。 「ビー玉かぁいいよぅ」 指で転がすたびに手相が大きくなって映る。それが地味だけどおもしろくて、少しのあいだビー玉で遊んでいた。 ふと、思い出す。 「魅ぃちゃん、これからバイトなのかな?かな?」 「あ……そっか。なんか忘れてると思った。あぶないあぶない」 魅ぃちゃんは立ち上がって、スカートについたゴミを払った。私に向かって謝るように両手を合わせる。 「というわけでバイト行ってくるわ」 「うんっ。がんばってね」 私も腰を上げてビー玉をポケットに押しこんだ。宝物が埋まる山へ駆け出そうとしたとき、名前を呼ばれて立ち止まる。 魅ぃちゃんが近づいてきて、私の頭を撫でると思ったら前髪を掻き上げ、その、あの…………うん。 「あ、えと、いってきますのキスをね…、ん……」 柔らかい感触が額でしたのはたしかだった。頬なんかとは比べものにならないくらい柔らかい。それに温かかった。 「れなっ、あのさ、ここは…かぁいいとか言ってふざけてくれないと……」 「ご、ごめんね、魅ぃちゃん。…かぁいいよ……」 次の瞬間、魅ぃちゃんは茹でタコになってしまった。声をかける暇もなかった。手を振る前に走り去って行く。 おかえりのキスも、必要なのかな?
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<前編> ヤンデレレナ レナ。 竜宮レナ。 名前が思考の中で飛び交う。 急き立てるように頭を叩くお湯。両耳を、絶え間なくノイズが走り抜けている。視界にまとまる湯の塊で、見えるものが少なくなっていた。秒数を刻むよりずっと早く、次々に足元に落ちる様子は、まるで世界が崩れていくような感覚を起こさせる。しかし、そんな中にもレナだけは居た。翳る瞳。その過程を俺は理解できなかった。一体何が、レナの暗い感情を引き出し瞳に宿しているのか。一瞬で、そう、何をと思う間もなく俺はいつも息を呑んでいる。底抜けに明るかったり、底も見えず無表情だったり。好意というには抵抗がある。 ……誰かに、相談したほうがいいだろうか。 シャワーを浴びている間ずっと考えていた。レナは今せっせと夕食を準備しているのだろう。もしかして、扉越しに突きつけていたかもしれない包丁を片手に。好きなメロディーでも奏でながら。 髪の毛でも詰まっているのか、身体の汚れを流した湯に両足が少しずつ浸されていく。崩れ行く世界が目の前にあるのなら、それは残骸だった。縋りつきたかった。実際に膝をついて、そこここの波紋で歪む水面を見つめた。背中に当たるお湯が冷たさと痛みを誘う。レナにつけられた傷だ。 「……」 排水溝を開けゴミを取り除く。シャワーも止めた。 深刻に考えすぎだ、と頭を振る。今ここにある現実は、気が滅入るほどに酷いものではない。雛見沢に来る直前に俺が身をおいていたものと比べれば……。そこでふと思いつく。話してみようか。俺がなぜ都会を離れることになったのか。親父の仕事で、というには、画家の肩書きは一般的な知見からすると謎めいていて都合がいいのかもしれない。寂れつつある雛見沢にあって、都会から田舎へという構図も案外あっさりと受け入れられる。しかし親父がたびたび家を空けることを皆知っている。都会に住んでいたほうがよかったのではないか、と思わない人はいないだろう。 体を拭いていく。シャワーで済ますと体の冷えは早かった。後ろ髪から垂れる水滴に、背中が震えそうになる。 忘れたい過去のはずだった。人を、それも幼い子どもを傷つけて爽快感を得ようとした。溜まるばかりだったストレスのはけ口を人として最低なところに求めた。俺が犯人だと知ったときの、両親の驚きと怒りと悲しみと軽蔑を今もはっきり覚えている。何をどう思って俺がそんな行動に出たのか。要求されて話したら理解をしてくれたが、仮に親以外の第三者に話そうとしたのなら、ほとんど客観的事実を並べるだけになる。そうして、俺は完全に嫌われる自信があった。だから、封印していた。ずっと。仲間と呼べる者たちと出会ってから。 懺悔のつもりだろうか。許しを得たいのだろうか。しかしそんなことは自己満足に過ぎない上、レナに話したところで十字架が軽くなるはずもない。ならばどうして。どうして今更になって、俺はほとんど思いつきに近い形で過去を曝け出そうと思ったのか。わかっている。 わかっていた。俺は、レナに軽蔑されたかった。そうして遠ざけたかった。俺から距離をとることができないのなら、レナの意思でその行動をとってくれればいい。そう考えたんだ。 ただ、日々の楽しさに埋もれていたはずの過去の露呈が、今の俺にどこまでの影響を与えるかは想像もつかない。平静を保とうと努めても、受け止めきれない反応がレナからくるかもしれない。そう思うと怯える。 結局どっちつかずの考えを胸に抱えたまま、俺は食卓についた。 「圭一くんって子どもは男の子がいい? それとも女の子?」 どきりとした。思わず動作を止めてしまい、箸の先端のご飯粒が離れがたそうに落ちる。残りを口に含み咀嚼した。そのたびに溶けて舌に馴染み、粘り気をもっていく。レナの激しいキスを思い出し急いで飲み込んだ。やはり昨日の行為のことを指して聞いているのだろうか。そう考え答えようも無く沈黙していると、レナのほうが口を開いた。 「レナはね。男の子がいいかなぁ」 「……どうして」 「だって、女の子だったらパパに恋しちゃうかもでしょ?」 微笑みながら、俺が掬うより半分以上も少ない白飯を口に運ぶ。 「そしたら、レナ困っちゃうなーと思って」 俺は昨日の行為を指して質問されているのかと考えて、内心で焦っていた。しかしレナの口ぶりと態度は、そんなこととは関係なくただ純粋に話題として出しただけのようだった。……それもそうか。昨夜のことはお互いに一言も触れていないのだから。だがそうであるなら余計に気になることがあった。 何で、そんなに心から困ったように溜息をつくんだ? その答えはすぐに返された。 「圭一くんはレナのものだから」 「――ッ」 自然だった。その一言まで。レナは俺が料理に向かうフリをして視線を合わそうとしないことに何も言わず、ろくな返答がなくても止めた箸をすぐに動かしたり俺のコップにお茶を注いだりと、途切れそうな間を辛うじて繋げていた。一方で、俺が顔を上げたときは下を向く。そうして交わらない視線の応酬が続いていた。しかし――。 「とても、困るよ」 今は俺を捉えている。瞼の重量感に震える。鉛のような瞳孔。それが沈まぬようにと、俺を焦点から外さぬようにと必死に支えているのが瞼だった。なのに瞳は一瞬たりとも揺らぐことなく、鈍い光を携えてただ俺を凝視していた。瞬きもしない。無意識に腰が浮きかけた。 この態度の豹変は何を意味している? さっきまではお互いに探り探りでコミュニケーションをとっていたはず。手当てをしたときのぎこちない空気はそれを暗に証明するものだろう。 一歩、さらに一歩と踏み込むような行動はなかった。しかしここにきて。レナは無遠慮に俺を見据え、激情というにはあまりに静かすぎる感情の奔流を、臆すことなく向けている。そのせいか食卓の空気は完全に凍り付いてしまった。食事など続けられる雰囲気ではない。こうなることは分かっていたんじゃないのか? 分かっていた上であえてそんな目で俺を見るのなら――。 この先レナがどんな行動をとっても不思議ではなかった。 「俺っ、が……レナのもの、だって……?」 針を持つ手がわかりやすく震えるように、その言葉は怯えと警戒とをあっさりレナに伝えてしまっていた。それに対してレナは何も言わなかった。ああ、さっき手当てをした際の、レナの気持ちがよく分かる。沈黙は、耐え難いほどの圧力を俺の肩に乗せている。あの後レナは何事もなかったように笑顔になっていたが、俺にはとてもできそうにない。――沈黙は肯定。そう無理やり納得させられるほど、レナの箸をすすめる所作は自然だった。 「おかしい、ん…じゃないのか……?」 よせばいいのに、言葉を紡ぐ。 レナの肩がぴくりと動いたのを、沈黙の裂け目だと勝手に解し、俺はかすかに声を荒げて続ける。 「だいたい子どもなんてっ。存在すらしていない者にッ――!」 抱く、おそらく嫉妬。異常だ。そうなじろうとして俺はある事実に気づく。簡潔だった。単純明快。俺は今のレナを理解している。異常な嫉妬。であるならば、なぜ学校では普通に振舞えているんだ? あまりにも普通な日常こそが違和感の元だった。魅音や沙都子や梨花ちゃんと、俺は変わらず同じ態度で接することができている。それは、レナがそうだったから。ところが今はどうだ。心臓が針の筵にされるような、焼けた鉄に両足を置くような、反射的に逃げ出したくてたまらなくなる感情が、際立って目に映る。それは二人でいるときだけ。 『存在すらしていない者にッ――!』 たった今発した言葉が頭の中に響いていた。 正確に言うならば。あの電話があってから、だ。 『うん。誰か、知らない女の人』 そうレナが形容した電話の相手。不自然に女という単語が強調されていた。それに、女の子だったら困るというあの一言。魅音たちと笑いあうレナ。俺が、レナ以外と過剰に接することになっていても、そのときどきでまるっきりレナらしいと思える反応をしていた。……こう言うと何か思惑があってわざとそう振舞っていたようにも感じられるが、そうは見えなくて、本当に自然だった。 『暗闇の中で感じるのって、自分だけなんだ。見えないもの触れないもの聞けないものを信じることなんて、できっこないよね?』 昨晩のレナの言葉が脳裏を過ぎる。混乱していた頭でもちゃんと聞き取れていたようだ。 容易に推測できた。レナが何より恐れているのは、存在しない誰かだと。赤ん坊の話はそういうことだろう。電話の相手は厳密に言えばどこかに生きているが、ただ声を聞いただけだ。 俺ならすぐに忘れるだろう。間違い電話ならなおさらそうだ。しかし、レナの心にはいつまでも引っかかっているのかもしれない。 「……」 俺から目を離さないレナ。もしも今、再びコール音に空間が震えたならば――。 はっ、と短い息を吐きそれ以上に吸い込んでしまった酸素に肺が悲鳴を上げかけた。 ――考えてみればいい。人間と霊というものを。どちらを恐れるかということを。確実に存在を感じられる者と存在があやふやな物。大半が後者を選択するはずだ。俺とレナはまだ子どもで人生経験もほとんど積めていない。きっとそう選択する。なぜなら。 はっきり分かる形で存在さえしていれば。 どうにだってなるだろうから。どうということはないだろうから。 つまりレナは。 俺と魅音たちとの間に何かあったとしても、どうにでもなるし、できると考えている……? 瞬間、背筋をざわりと覆うものを感じた。その気配は流れる冷や汗を、速度に合わせてじぃっと凝視しているかのようだった。 「座ろうよ、圭一くん」 「……ぁ」 芽生えた疑問があまりにも恐ろしく、その恐怖のままにレナを見たからかもしれない。そんな気配、感じるはずもないのに。レナの声は穏やかだった。少なくとも、俺の創りだした幻影が醸し出す雰囲気よりは。 ふっと足の力が抜けた。椅子の冷たさがジャージ越しに伝わる。レナの言葉で初めて気づいたが、俺はいつからか立ち上がっていたらしい。小声で謝りつつ箸をとった。夕食は、まだ半分以上も残っている。腹は一杯だった。それも料理の匂いすら留める空きがないほどで、一体何にここまで満たされたのかと思う。 しかし満腹からくるものではない脱力感が肩から脚にかけてあった。ほぼ普段と同じ生活様式で衣食住を行っているにも関わらず、常に気を張っている。そのせいで色々考えてしまう。 そうしなければ変わらず心安らげる一日であったろうに、足元に線引かれている境界から目が離せない。すぐ目の前に日常があるという認識が、帰りたいというもどかしさと何故こっちにいるんだという恨めしさを生んでいる。 端的に言うなら俺は疲れ始めていた。だからだろうか。 「レナは……俺のこと、好きなのか?」 独り言のように、気がつけばそんなことを聞いてしまっていた。表面上、紛れもなく平和な日々を再現している今に縋りつこうとしたのか。それともただ単に諦めただけなのか。声にどんな感情を込めたのか自分でも計りかねた俺は、喉の震えの余韻だけを静かに感じていた。 「……」 レナはきょとんとした表情で俺を見ていた。 だがすぐに頬が緩む。色づき始めの花のように控えめで未成熟な笑みは、それが照れを表しているものだと、少しして気づく。目を伏せて一度大きく頷くと。 「うんっ、大好きだよっ!」 と元気に叫んだ。その後はしおしおと肩を窄め、子犬のような鳴き声を時折小さく発しながら、飯をつついていた。俺はしばし呆然とする。何より純粋、想いの全てがその一言に込められていたような気がして、レナは本当に恋をしているだけなのだと思わざるを得なかったからだ。体裁も生活も何も気にしないでいい、相手と自分さえ居れば成り立つこの瞬間。俺たちはそんな時代を生きているのだと。……しかしだからこそ、子どもでもあるんだろう。 少しだけ腹の空きを感じた俺は、再び料理に手を出した。 レナはなかなか帰ろうとしなかった。もう夜の九時を回ろうという時間なのに、何かと理由をつけては俺の言葉をのらりくらりとかわしている。茶碗を洗いたいから、という。宿題を見てほしいから、という。そして今度は。 「ねぇ圭一くん。お風呂お借りしてもいいかな、かな?」 「わざわざうちで入ることはないだろ」 テレビのチャンネルを変えながら、きっぱりと言う。身構えることなく片手間で拒絶できるほどに、そのお願いへの俺の態度ははっきりしていた。後ろにいるレナもそれ以上は何も言ってこない。 「本当に……そろそろ帰らないとまずいだろう、レナ」 「うん……うん」 「……レナ」 諭すように言う。 「あ、あのね圭一くん、今日、その……泊まっちゃ、ダメかな……」 「……」 風呂に入りたいといった時点で、ある程度は予想していたことだった。そのときは遠まわしに体の関係を望んでいるのだと、瞬時に思い浮かんだ。が、必ずしもそうと断定できない、考えてみるべき他の可能性が、風呂に入るといった行為くらいならいくらでもあると思ったので、特に意に介していない素振りをすることができた。しかし一泊するということなら話は別だった。 「圭一くんのこと、大好きだよ」 俺が口を開こうとするのに被せてレナは言った。 「好きかって聞いてくれて嬉しかった。当たり前のことだけど、確認し合うって大事だよね。でもレナ謝らなくちゃいけない。そう確認したのは、圭一くんが不安になっていたってことだもんね」 思惑が筒抜けであることを理解し、その前提で喋っているように見える。さらには俺の意思がレナのそれと合致しているものだと、勝手に思い込んでいる節もある。だからさっきまでのようなこちらの言い分に気を遣う様子は一切感じられない。別人だ。まるで俺に好きだと伝えることがレナにとっての魔法であったかのように。 「……不安?」 俺は訊き返す。 「やっぱり嘘はだめだなぁ、あはは。圭一くんにはすぐバレちゃうよね。分かっていたことなのに、レナって本当馬鹿だよね」 嘘。その不吉な響きのせいかレナの声に冷たさを覚え始めた。本人は嬉々として喋っているように見えるのに。聴覚だけが異常を察したのだろうか。 「電話、男の人からだったんだよ。圭一くんが心配するかと思って嘘ついたんだ。関係ないことだけど、女の人からだって嘘つくだけでレナは少し恐くなっちゃった」 前髪から覗く瞳一杯に俺を映してレナが近づいてくる。 わけが分からなかった。心配? そんな要素は電話にはない。いつだってお前に向いていたんだ。曝け出したい本音はしかしその意に沿わず、端から見れば俺は大人しくレナの言葉を待っているだけの情けない男に違いない。 「大丈夫だよ、レナが一番好きなのは圭一くんだけだから。心配しないで、ね? 他の誰より、何より一番だよ。圭一くんにならどんなことをされてもいいと思ってる。壊されたって構わない。圭一くんのもので喉を乱暴に突かれて声が出なくなっても、きっと好きって言えるよ」 「何を、言っているんだ……」 「だってレナは圭一くんのものだから。そして……圭一くんもレナのものだよ」 語尾は囁くようだった。それで十分だったのだ。何故なら既に目の前にいるのだから。 もうそれは声よりも吐息のほうが強く感じられて、半ば強制的に脳内へと染み込んでくる。 「してみようよ。昨日はレナばっかりがしちゃったから。今日は圭一くんの好きなようにしてほしいよ。邪魔は入らないから。ね?」 「……」 レナが俺に覆いかぶさる形で、二人ソファーに寝る。昨晩と全く同じ状況なのにも関わらず俺はあまり警戒していない。部屋が明るいからだろうか。レナが破壊的ともいえる女の行動を起こしてこないからだろうか。またそうしない保証がされたからだろうか。所詮、俺も雄。身の安全に重きを置きながらも、同級生からの一線を越えた甘美な誘惑に動かされないはずがなかった。昨晩の記憶には快感だけしかなかったと都合よく解釈し始めて、いよいよ思考はひどく感情的な性欲のみによって埋め尽くされていこうとする。 そのときになって周囲の有様を強く感じたのは、その本能の侵蝕を、辛うじて危険だと判断できたからかもしれない。だがそれもすぐに掻き消える。俺は鋭敏になった五感覚にただ身を奮わせていただけだった。 テレビの音量は、気づかぬうちにほとんど聴き取れない程度に調整されており、轟く秒針の足音は時が進むことの重さを部屋に刻み込む。どこまでも冷静でいながら心の奥底はつかみどころのない炎に燻っていた。いつ燃え上がってもその果てに燃え尽きてもおかしくなかった。 そんな感覚でレナを見る。 たくし上げられたスリットの奥で、俺以外の男には秘められた熱が宿り始めている。それが感じられたのは、布を数枚隔てたところで男と女の象徴が触れ合っていた、から。何を求めているのか頭で理解せずとも、体が率先して動いた。凍り付いたようだった四肢は嘘のように流動し、体勢を整えていく。半身を起こした俺の目の前に、レナの胸があった。薄い紫のリボが左右均等に見事な蝶を作っており、まるで俺のために設えられたかのように映る。丁重に扱えということでもないだろう。壊してもいい、とレナは言うのだから。乱暴に剥ぎ取り、その勢いでスリットの裂け目まで通り道を作るのもいいかもしれない。さすがにまずいだろうか、そう思ってレナを仰ぎ見たが本人もそれを望んでいるようだった。期待に満ちた表情が、俺の手元を見つめている。 「……」 右手を、腰からお尻にかけた敏感なラインに絡ませる。そのままぐいっと僅かに力を入れて引き寄せた。猛る性器とさらに密着度が高まると、レナが喉奥から小さな声を漏らした。空いた左手でリボンを緩めた。はらりと床に落ちる。ひらけた胸元から、一気に女の匂いが溢れてきた。その白く滑らかな肌に顔を埋める。下着の覆わない双丘の膨らみ始めを、舌先で幾度も昇り降りする。もどかしそうな嬌声が押し損ねた鍵盤から発せられるような控えめさで、頭上から降ってくる。舌を休めぬままふと見ると、乳房の大きさに比して下着のそれが合っていないように思った。成長途上であるのだろう。そのとおりレナの体はまだ熟し始めだが、ここから息が長そうな、男を虜にする魔性の魅力を放っていた。 「圭一、くんぅ…」 肩にレナの重さを感じて、胸から口を離した。香りよい茶髪のさざ波に頬を撫ぜられながらしばし乱れる吐息に耳を傾けていた。その最中、看過できない匂いのあることに気づく。ガーゼだった。手当てをした頭の怪我。つんと鼻を刺激する。勘違いかもそれないが、かすかに血の匂いも混じっていたような気がする。ほぼ同時に、背中の傷が疼いた。 「……」 ぐっと目を閉じる。 それから無言でレナを引き剥がし、今度は俺が上になるように寝かせた。情欲のうねりは留まることを知らず、あとは丸ごと吐き出すだけのはずだったのに。 「レナ、聞いてくれるか」 「なんでも、聞くよ」 躊躇いのない返答に一瞬だけ気後れしたが、決心が鈍るほどではなかった。 「……俺は、雛見沢に引っ越してきた」 姿勢は変えないまま話し始める。最初はゆっくりと、徐々にペースを上げて。 俺がモデルガンを遊びのおもちゃにしていたこと。そのおもちゃで幼い女の子を傷つけたこと。罪は社会的にはお金で許され、事件は解決をみたこと。ただのストレス解消というには大仰すぎたその事件名も、ただの馬鹿ガキだった俺と世間との認識の違いを示すため、話に出した。とにかく迷惑をかけた。謝罪してもしきれないほど。それなのに、俺はまるで逃げるようにして都会を離れた……。 「……」 割と冷静に話せた。第三者の視点からそうしたからだろう。もしも過去を追体験するよう振り返っていたのなら話はまったく進まず、レナにとっては訳の分からない状況になっていたに違いない。しかし話の途中で目を合わせることは、終ぞできなかった。レナは一片も身じろぎをせず、ずっと耳を傾けていたようだった。反応があったとしても困ったが、逆に何もないのも嫌だった。……自己中心的だ。だから所々同情を引くように語った部分も、多分あった。 本当に、情けない。軽蔑に値するほど。小さい人間だ。 唇を噛む。喉が渇いていた。普通に会話をするのとは違う後味が口の中に残っている。もしかしたらと思ったがやはり、すっきりとした感覚もありはしなかった。一生消えることはない、それはこういうことなのだろう。 「圭一くん」 拒絶された、と反射的に思った俺は、上半身をずっと支えていた両腕から力を抜きすぐにレナと距離をとる。とはいってもソファーの端による、といった程度のものだったが。恐るおそるにレナを見た。 瞳は――暗かった。 ……当然だろう。一体何を期待していたというのか。汚い部分を曝け出してもなお俺を好きといってくれるなら、と悲劇の主人公にでもなったつもりだったのか? 百人居れば百人とも、俺を蔑視するに決まっている。くそっ……。そう考えている癖に、ほんの少しでも落胆の色を隠せていない自分に心底腹が立つ。次に投げかけられる言葉はどんなものだろうか。仲間に裏切られたという感情が言葉に乗れば、相当にきついものに違いない。俺はそれを待った。 「その女の子が悪いんだよね?」 「え?」 一瞬、呆ける。 「圭一くんは悪くないよ」 「いや……俺が、悪いんだよ……」 「こんなに苦しんで……。レナ、許せないよ……」 頬が優しく包まれた。人肌のぬくもりが、無条件に安らぎを与えようとする。しかしレナの瞳は俺に向けられたものではなくて、違和感を覚えた。 一体誰に? 考えるともなく脳をついた答えに、俺は恐ろしく震えた。 「違うっ。悪いのは俺だっ。俺が傷つけてしまったんだっ」 「本当に? 傷つけられる理由があったんじゃないのかな? 圭一くんは悪くないよ」 「……っ! 話聞いてたのかよっ!? 原因は全部俺なんだよ! 女の子もその家族も、不幸にしたのは俺なんだよっ!」 「……じゃあ、悪いのは、……ご両親なのかな?」 瞬間、俺の中で何かが弾けた。心臓の半分ずつがそれぞれ別々の火打石のように。痛いほど鋭く音を立て炎を上げた。すぐに頭に血が昇った俺は、右手に添えられたレナの手を思い切り振りほどいていた。 「違うって言ってるだろ!」 声が反響する。 「そうかな? 圭一くんがストレスで苦しんだのはそういうことじゃないのかな」 「なっ……」 「だいたいおかしいよ。昨日も今日も圭一くんを一人残して。レナならずっと一緒にいるのに。だから圭一くん、悪くないよ。自分を責めないでね?」 「……誰が、悪いっていうんだよ……」 半ば脱力しかけた状態で俺は立ち上がり、レナを見下ろす。 「圭一くんじゃない誰か」 首を傾げてにっこり笑う。我なんてとっくに忘れていた。脱力したのはこれから爆発させる感情に、体を備えるため。じりじりと背を焼くような我慢をしながら、俺は声を絞り出した。 「それ、なら……。俺が悪いっていうんじゃないのなら……っ!」 近づいてこようとするレナを睨んで。 「レナが悪いんだろっ!」 「え……?」 「そうだろっ!? 俺が悪いに決まってるっ! なのに悪くないなんて言う、レナが悪いんだろっ!? だいたい……一体なんなんだよ昨日から! いい加減にしてくれよ!」 「圭一、くん?」 喉が張り裂けそうなほどに叫んだ。 俺の怒号を受けたレナは、茫然自失とした表情で固まり俺が息を落ち着ける頃になってわなわなと震えだした。心底怯えた様子だった。みるみるうちに涙が溜まっていき、瞳の頼りなさに信じられない者を見る色を掴んだが、なおそれに縋り付こうと手を伸ばしてもくる。 「もう帰れよ!」 「ど、どうしたの……? 圭一くん、どうして、どうしてそんなひどいこと……?」 「帰れって言ってる!」 「圭一くん…圭一くん……圭一くん……。そんなひどいこと言わないで。お願いだから…レナ謝るから……圭一くんのこと大好きだから……」 やり切れない思いを抱える。 俺は足音荒く自室に向かった。 レナのむせび泣きが背に聞こえたが拒絶した。 もう一度、帰れと叫ぶことによって。 寝てしまおう。胸糞の悪さを寝て忘れよう。 俺は敷きっぱなしの布団にもぐりこんだ。 目覚めたら朝、ということにはならなかった。時計は深夜二時を指している。同時に空腹を感じた。ふらつきながら歩く。一階に下りてもレナはいなかった。冷蔵庫を開けると、見慣れぬ皿に盛られたデザートのようなものが目に入った。その下に挟んであった掌ほどの紙切れが開けた拍子に一度揺らいだ。 手に取る。 『明日の朝、食べてね。 レナ』 可愛らしい文字でそう書き記してあった。 不意に、目頭が熱くなった。抑えた指がじわりと濡れる。 意識が覚醒していく。これは夕食と一緒に作ったものを予め入れておいたのだろうか。それとも、帰る直前に作ったものだろうか。分からない。どちらにしろ、俺はレナに対して罪悪感で一杯になるのを防ぎようがなかった。 嗚咽が漏れる。 どうしてこんなことになってしまったのか。これ以上、一人でどうにかするなんて考えられなかった。俺とレナの問題なのだろうが、それほどに俺は参っていた。 「相談、しよう……」 しばらくその場で泣いてから、呟いた。 真っ先に浮かんだのは、雛見沢分校の委員長にして俺たちの部長、魅音だった。 <続く>
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「勘だ――――」 たった三文字の言葉なのに、私の心は大きく揺れ動いていた。 少し前まで組んでいたはずの腕も、いつの間にか離れていて、前原圭一は私の目をえぐるような視線で対峙している。 親族でさえ私と姉こと魅音の区別を明確にすることはできない。 幼い頃から『入れ替わることを茶飯事に行っていた私たち』なのだから、癖だとか仕草さえ同一なはずなのだ。 確かに私は二年弱の牢獄ばり学園生活――実体験からの比喩だから笑えてくる――を送ったし、魅音と言えば鬼婆のもとで、次期頭首としての教育を受けたのだろうから、空白の時間が生まれているのも事実だ。 だからと言って、雛見沢に戻ってきてからの一年間で、入れ替わりがバレたことは一度もないのに加え、この圭一と言う男はまだココにきて一ヶ月と言っていなかったか。 ある意味強固な自信とさえなっていた姉との入れ替わりが、『勘』なんて言う不明確な理由で看破されたことに、私はただうろたえるしかない。 ぎりっ、と歯ぎしりの音が頭に響く。 扉一枚の向こうには、この男に病みつきとなっている姉が居るのだ。今の前原圭一が存在する以上、姉は前原圭一のことだけを考えるようになるだろう。 口先八丁で、妙に仲間を強調し、部活の罰ゲーム常連のこの男に、姉は一層のめり込むだろう。 それを私は許してはいけない。 魅音と詩音が限りなく近い存在だからこそ、ミオンとシオンに狂いがあってはいけないのだ。 今回の場合正しいのは明らかに私。悟史くんはずっと雛見沢に住んでいるのに対し、都会から来た余所者に魅音が恋心を抱くのは困る。 周囲の人……、それは園崎家を含めてだが、私まで彼に恋愛の感情を抱いていると勘違いされかねない。 絶対に崩れていけない牙城を守るためなら、私は前原圭一を排除することさえ躊躇わない。絶対に。何が起きようとも。 圭一は不思議そうな表情を浮かべて、黙りこくった私を見つめていた。 くそ、これもだ。 この悟史くんと共通するような仕草の一つ一つが、私の感情を逆撫でにする。 何も知らないくせにすべてを知っているような行動。 知ったかぶりなら否定できるからまだしも、本当に知らないのだからタチが悪い。やり場のない怒りとはこのことだ。 とりあえず私は、姉に前原圭一が魅音と詩音の区別をつけることが出来る、なんて最高級の好材料を提供するわけにはいかない。 元々このぬいぐるみを買ってほしい、なんてのは話の流れで生まれたものだ。 スルーしたって圭一に問題が生じるわけではないだろう。 「へぇ……、圭ちゃんがそんなシックスセンスを持ってるなんて知りませんでした。私もおちおち圭ちゃんの前で、悪いことは出来ませんねぇ」 ぬいぐるみが並ぶショーウィンドウから離れつつ歩き出す。 圭一にとって『魅音と詩音の区別』は、それほど大きな事項であることに気づいていない。 会話に引き入れつつ無かったことにするのが得策だと判断した。 「おい、詩音。お前まさか魅音になりすまして、とんでもないことしてないだろうなぁ」 圭一は苦笑するような口調で私に返答する。きっとダム戦争時代の凶行がバレているのだ。 あの時は確かに姉を頻繁に使わせてもらった。 今でもそんなことをされては、圭一もおちおちと…………。 あれ……、私は今どう言う思考をしようとしたのだろう。 落ち着いて……冷静に……クールになって、いつもの詩音になって考える。 圭ちゃんは、詩音と魅音が違っては何か困ることがあるのか? 圭ちゃんが、詩音と魅音で対応の仕方が違うのか? こんなにも似ていて、同じと言ってもおかしくないほどの双子なのに、前原圭一はシオンとミオンを別個にする必要がある? 疑心暗鬼の渦がうごめいているのがわかる。 頭の中で前原圭一と園崎魅音が浮かび、消え、浮かび、消える。 腹立たしかったのは浮かぶのも消えるのも、常に二人は一緒だったことだった。 六月二十二日。教室には空いた席が四つ存在していた。 都会に居た頃とは比べものにならない濃密な時間。 俺にとって都会で過ごした十数年よりも、はるかにこの一ヶ月が重要な役割を占めるに違いない。 そしてその時間を作ってくれた大切な部活仲間(メンバー)。 その一人たりともこの教室には居なかった。 クラスの中心となっていたあいつらが居なくて、綿流しから数日経っていない、と言う事情。 この二つで充分、もう彼女らに会えないことが分かってしまう。 クラス中の子供たちが時々すすり泣くのも、当然これが原因であろう。 だが――――、俺にはまだかすかな希望を信じて、決して泣くことはしない。 まだ俗に言う『鬼隠し』など認めてたまるものか。 鬼に隠されたのなら、その鬼から何が何でも連れ戻してきてやる。 またあの『日常』を取り返すのだ。 スリルなどいらない。 変調も厭だ。 事件にも拒否権を行使する。 この『オヤシロ様』と言う盾を使った、すべてにケリをつけてやる。 終業のベルが鳴った。いつもなら隣にレナと魅音が居て、校門の所で沙都子と梨花ちゃんに別れを告げる。 他愛もないことで会話が盛り上がり、水車小屋で魅音と別れる。 週一ぐらいでレナの宝探しに付き合い、どちらにしろ夜となる前に帰宅する。 もう教室を離れたときから『日常』と乖離している。剥がれたモノはまたくっつけるんだ。 隣に誰も居ないまま俺は園崎家の正門に来た。 『日常』に帰られる方法があると言うなら、唯一ここに居る筈の鬼が知っているだろう。 しかし鬼に隠された……か。 魅音の字を指で手の平に書いてみる。 確か魅音のばあさんは『お魎』と言うらしいから、園崎には鬼がつきやすいのだろうか。 だけど詩音には鬼の字が入っていないし……。 帰ってきたら魅音に聞いてみよう。帰ってきた後のことを考えるのは希望になるってもんだ。 覚悟を決めた俺は呼び鈴を押す。俺の耳にも響くような大きな音が、門の奥から聞こえてくる。 砂利を踏みしめる静かな音が大きくなってきた。 一歩一歩踏みしめるかのように、ゆっくりと音が近づく。 そして音が止み、代わりに蝶番を外す音。 息を大きく吸って、門が開く様子を俺は直視した。 「前原圭一さんですね……」 想像していたのとは違う、落ち着いた声が耳に届いた。 門から現れたのも、俺の記憶にはない園崎家の人。 でも母親と言う割には、魅音や詩音との類似が見当たらないし、お魎とか言うばあさんにしては、若すぎる。 加え、俺みたいな若造に敬語を使うあたりも、失礼になるが園崎家にあり得ないように思えた。 「こちらへどうぞ」 俺の返答も聞かず、その女性は俺に付いてくるよう促す。 広い敷地内を歩く間、魅音はばあさんと二人暮らしをしていることを思い出し、使用人がいるとも言っていた。 思い出して改めて見ると、確かにあの落ち着いた様や、丁重な振る舞いにも納得がいく。 「そうなると、魅音は俺が来ることを……」 その思考に到達した所で、使用人の女性はある部屋の前で止まり、正座で正対しながら静かにふすまを開けた。 開けて本人は入らず、俺に一礼をし、俺の横を通り過ぎ戻っていく。 ここに魅音が居ることは、いかに鈍感と呼ばれる俺でも理解できる。 もう深呼吸する必要はない。覚悟は既に決め、腹もくくっている。 開かれているふすまを更に開けて、俺は部屋へと入った。 想像通り、緑色の髪を後ろでくくった魅音がそこに居た。 部屋にあるのは布団だけ。その布団の中で魅音は静かに眠っていた。 眠っている魅音に近づき、膝をついて魅音を眺める。 本当に静かだ。正直いびきのひとつでもするもんだと思っていたが、明らかにこの魅音は園崎家次期頭首の顔。 その顔に俺は指をそえる。こめかみからゆっくりと頬へ移動させ、細い顎のカーブを描き、唇で指を止める。 瞬間――――、ぴしっと俺の頭を電流が駆け巡った。 根拠がない。理由がない。原因も見当たらない。 それでも――――、俺は確信した。 静かに瞼を開ける…………『園崎詩音』を俺は見つめる。 「悟史くん…………?」 悲しい韻と共に、静かな崩壊が始まったのを俺は直感したのだった。 「あぁ、そうだよ、詩音」 魅音であるように振る舞う詩音。悟史のように振る舞う俺。 お互いに擬態している二人の目線が一致する。 俺はレナや梨花ちゃんから聞いた悟史の記憶を掘り起こし、詩音の頭をそっとなでてやる。 詩音の口から息が漏れて、耳たぶまで顔が紅潮した。恥ずかしいからなのか開いたはずの目も閉じられている。 構うこともなく、だがあくまでも優しく詩音の頭をなで回す。 さすがに恥ずかしさの限界に達したらしく、俺の腕を掴んで引きはがそうとする。 引き……はがそう……と…………? 万力にかけられたように腕に痛みが走った。両の腕でがっちりと掴まれた俺の腕を、詩音は離そうとしない。 圧迫して押しつぶすかの如く、詩音の手から痛みがダイレクトに伝わる。 必死に俺の方から脱出を試みる。それでも同年代の女の子に、俺は完全に力で主導権を握られていた。 予感がした時には、もう遅かった。 詩音の目は 完全に イカれていた。 「オマエ ハ サトシクン ジャ ナイ」 断定をこめた――――違う、断罪をこめた音声が脳を揺るがした。 揺れ動いた脳がピンボールにでもなったのか、急に視界が暗闇に染まる。 だが、その暗闇も一瞬のこと。すぐに意識が、痛みによって引き戻された。 バキッと派手な音を立てて、手首の方向が明らかに異常な方向を向いている。 「あああああああっっ!」 躊躇もなく俺の手首は破壊され、万力から解放されたのを感じ、俺は畳を転げ回った。 右の手が全く動かない。 いつもなら動くはずの『自分自身』が動かないと言うのは、なんとももどかしい感覚だ。 どうあがいても収まらない痛み。転げ回っていた目線の先に、白い靴下が映る。 鬼……。名前など所詮は人の決めること。園崎に流れる血には、やはり鬼が存在するのだろう。 瞳は絶対零度まで下がってるかのように、俺と言う存在を視線で否定する。 その目が――――、俺のすべてを否定する。 「圭ちゃんかぁ――――、うくくくくく、どうしたんですか、こんな要塞みたいな所に来て」 詩音が俺の横っ腹に蹴りを入れる。ためらいもない攻撃は体に大きく響く。 「寝て、いる、わた、しに、なに、しようと、したん、だ」 同じ場所を何度も何度も蹴り上げる。逃げようにも後ろは壁だ。 右手が使えないため、片手でカバーするにはあまりにも蹴られる場所が多すぎる。 ただただ攻撃を喰らい続けるだけの、あまりに試合にならない格闘技戦だ。 「やめ……ろ……詩音……、お……おねっ……お願いだ」 蹴られるたびに俺の懇願も遮られる。何度も何度も同じ言葉を俺は繰り返す。 何度も何度も何度も何度も何度も何度も俺は謝罪し、許しを乞う。 「寝取る……って言うんでしたっけ。 無理矢理寝ている子をレイプするのって。 不法侵入に、嘘ついて、強姦ですか。――――最低だよ、圭ちゃん」 違う、俺は違う。 ここに本当は魅音が居るはずで、その魅音を問いただして、レナの居場所を吐かせるつもりだったんだ。 なのに――――、なんでこんなことに…………。 詩音が俺に攻撃するのをやめて、俺と顔を近づけるようにしゃがみこむ。 強引に胸ぐらを掴まれて、鼻先が触れ合う距離まで顔を近づけられる。 度重なる蹴りの応酬で、俺の息が途切れ途切れになるまで疲弊していた。 「ほら、お望みのものですよ」 混乱の渦を巻く頭に、また新しい渦が追加された。 何が何だか分からないうちに、俺の顎を指でつねるように詩音は固定した。 そして隙間が数センチしかなかった俺の唇と詩音の唇を乱暴にくっつける。 「――――――――っ!」 唐突すぎる詩音の行動に、俺の思考は一気にフリーズした。 歯と歯がぶつかり合い、詩音の舌が俺の口腔を咀嚼しようと侵入してくる。 この状況の打破が最重要とした俺は、どうにか動く右腕の肘で、詩音を突き飛ばした。 俺の右腕は動かないもの、と詩音は思っていたのか、肘撃ちが綺麗にヒットする。 それによって俺と詩音には、一メートル弱のスペースがまた生まれた。 逃げることも考えたはずだが、俺の冷静じゃない頭は詩音との会話を優先させた。 「詩音――――、お前」 「気安く呼ぶな、畜生は黙ってろ」 刹那の間しか、詩音は俺に許さなかった。 たった一メートル弱。その隙間とすら言い換えても良い、距離を詩音は全力で突進してきた。 壁に俺の首を狙って打ち付け、そして肘鉄を加えた俺の右手首を、今度は横方向に捻りあげた。 「うぐああああぁぁぁっ!」 首を抑えられているのだから、酸素は少しでも大事に使うべきなのだろう。 だからと言ってこれ以上ない痛みだと思っていた痛みに、更に以上があったのだから叫ぶしかない。 「ねぇ、もしさぁ、もしもだよ? ある子にはだーい好きな男の子が居て、 だーい好きな男の子が、ある子にとってだーい嫌いな女の子に犯されていたら、 しかもその最中を録音でもされて聞かされたら、その子はどう思うのかなぁ」 何が何だか…………分からない…………。 「蹂躙されて咀嚼されて破壊されて、その子は…………み、お、ん、は、どう思うのかなぁ」 詩音の声はひどく嬉しそうだ。とても快楽に満ちている恍惚とした表情。 それでいて、まだこれから楽しみがあるかのような口元で、俺の首を締め上げる。 締め上げる首から上に酸素が届かない俺は、再び視界がフェードバックする。 詩音は俺をこのまま絞め殺す気はなかったらしい。 反応のない俺を見るや、俺を解放した。 手首の痛みもさることながら、息を長時間吸えなかったことから頭痛も激しい。 当然気管をふさがれるほどの圧迫を受けた首も、鈍痛が激しかった。 「ねぇ……、ど、う、思うんだろうね」 どう思う、って何をだ……? 録音……、犯されて……、魅音……。 魅音は……、俺のことが好きだった…………? 「あくまでも、も、し、も、の、話だよ、圭ちゃん。くけけけけけけけけ」 哄笑の表現がぴったりな詩音の笑い声。もう鬼としての詩音の姿すらそこになかった。 今度は後頭部を掴まれて、唇を触れさせられる。 触れ合った瞬間から、詩音の舌が俺の口内へ入ってきた。 淫靡な音が部屋中に響くのが分かる。 がっちりとホールドされている俺の顔は、ただ目をつぶり、目の前の光景が過ぎるのを待つしかなかった。 どれほどの時間が経ったか分からない。 俺の舌をぐるりとなめ回してから、詩音は俺から顔を離した。 荒い息づかいの俺とは違い、詩音の顔はひどく冷静だ。 口からこぼれた糸を指でぬぐい、俺のワイシャツへと手をかける。 一気に引きちぎられると思ったが、開いていた第一と第二ボタンの下、第三ボタンからゆっくり外していく。 その目の前で行われていることに、「犯す」と言われていながら、俺は鼓動が高鳴ってしまった。 まるで恋人との行為でするような作業に、俺は黙りこくって見つめてしまう。 「私、分かったんです」 第四ボタンに手をかけた所で、詩音は口を開いた。 この数分の間聞くことのできなかった、ひどく落ち着いた声。 「飴と鞭ってありますけど、鞭よりも飴の方が残酷なんじゃないかって」 言い終わって俺のワイシャツが脱がされる。 脇腹には蹴りのダメージを物語る、青みがかった赤色へと染色されていた。 「古手の巫女様はどう拷問しても命乞いしなかった。 ゴミ山に通い詰める変態は爪を剥がしても歯をもいでも、笑っていた。 どちらも最後まで見せたはずなのに、悟史くんの疫病神でさえ私に啖呵を切りやがった」 詩音の言ったことが何も分からない。 詩音のやったことが何も分からない。 「あの気弱な沙都子でもそうなんだ。 仮にも鬼婆のもとで鍛錬された魅音に、鞭だけじゃ絶望を与えられない」 悟史くんを失った私の痛みは教えられない。人間は飴を奪われた方が絶望する。 そう続けた所で、詩音はしゃべるのをやめた。 舌を出しながらゆっくりと俺の腹へと接近して、腫れ上がった部位を舐め回す。 傷口である場所を触られたことによる痛みと、女性に地肌を舐められると言う情報の交錯。 頭の中でそれは快感に置き換えられて、俺の拳……、左の拳にだけ力が入る。 舐めるだけでなく、口づけするように横腹へ吸い付く詩音の唇。 吸い付く度に響く音が、一層俺の思考を遮断する。 『録音』と、確かに詩音は言った。そして魅音に聞かせる……? 詩音の企んでいることを俺はようやく理解した。 そしてその謀略を俺は阻止するチャンスがある。 詩音の話ではレナと沙都子、そして梨花ちゃんは殺されてしまったのだろう。 その事実をさらりと宣言されたことで、俺は完璧に打ちひしがれた。 絶望の底に突き落とされたとさえ思えた。 だが――――、まだ救える仲間が居る。魅音はまだ詩音に殺されちゃいないんだ。 ならば俺はまだ落ちるわけにはいかない。 わらにすがってでも、魅音を救い出してみせる。 詩音からの仕打ちに覚悟を決めた俺は、口を一文字に結んで全身に力を入れた。 目をつぶって、少しでも眼前で行われている快楽に屈しないように集中する。 「うああぁっ?」 そう思ったのも束の間。舐められる部分が胸へと移ったことにより、無様に声を出してしまった。 反応しないことが俺に出来る抵抗――――――――――――っ! 左手で自分の口をふさぎ、少しでもあるかもしれない録音機に音を拾われないよう努力する。 その様を見たからか、詩音は執拗に俺の胸、そして敏感に反応せざるを得ない場所に接吻した。 固くなった乳首を舌で転がされ、もう片方の乳首も指で弄ばれる。 俺は経験がない以上、次に何をされるかもよく分からない。 快感がこれほど、覚悟を挫けさせようとするものだとは思わなかった。 だが声を漏らそうものなら、魅音を救うことなどできない。 少なくともこの手段での魅音による拷問は避けられるはずだ。 絶対に詩音の思惑通りに運ばせてたまるものか……。 「体が敏感な割には我慢しますねぇ、圭ちゃん」 冷酷な断罪の声とは違う、甘ったるい誘惑する声で詩音は耳元で囁いた。 その声にも俺は何も反応しない。意識しないことだけを考えて詩音の言葉攻めに耐える。 ふふ、と笑った声が聞こえてすぐ、一際大きい音がした。まるで脳に直接響いたような音。 耳の中に舌が侵入したのに気づくのは、少しだけ時間がかかった。 口と手で塞いでるのにも関わらず、息が漏れてしまう。 体勢がいつの間にか、後ろから抱きしめられている形に変わっていた。 逃げることを考えたが、詩音の足が俺の腹の前で交差されて、ロックしている感覚がある。 執拗に左耳を舐め、噛み、囁き、俺は溶けるような感覚さえ覚えた。 恐らくそこに油断があったんだと思う。 誘発された油断につけ込むように詩音は、俺の股間を布越しから掴んだ。 既にキスをされた時から反り立っていた俺の一物は、ずっと求めていた刺激に大きな快感を脳に伝える。 「っつぁ!」 遂に大きく声を漏らした俺を、詩音は休むことなく攻め続ける。 股間を手で刺激し続けるのに加えての、舌や指による愛撫。 たった数分で俺の覚悟は屈してしまい、詩音の手の上で文字通り遊ばれる格好になった。 いけないとは思いつつも、今まで実感したことがない快感に、声が漏れる。 ズボンのジッパーを下ろされても、何も抗わなかった。 快感が欲しい。これ以上の気持ちよさを味わいたい。 欲求に支配された雄に、成り下がった瞬間であったと思う。 それを理性が理解しつつも、脳が下す命令は性への欲求だった。 外気に触れて、俺の剛直はびくびくと痙攣する。 最初は自慰のように手でしごかれていたのが、また舌による攻撃へと移っていき、指も亀頭を中心に弄び始めた。 俺の体で一番敏感な部分を、ダイレクトに詩音は攻め続けた。 絶頂に達するかと思い始めると、詩音は俺から離れてじっと視姦だけを行う。 幸運か不運か、落ち着き始めた頃にまた詩音は、俺のモノへと手をかけて、快感を供給する。 その延々と続く刺激の繰り返しに、俺の頭は欲求のみで満たされて、耐えることを完全に忘れてしまった。 だらしなく漏れる声と唾液。少しでも欲求を満たそうと自ら腰を振り、詩音の愛撫や口淫に身を委ねた。 「フィナーレですよ、圭、ちゃん」 俺が目を開けると、詩音の下半身には既に衣服はなかった。 都会に居た頃見たビデオでは、モザイクがかかっていた部分。 そこはきらきら光っていて、陰毛の奥には桃色の陰部が俺の視線を釘付けにする。 ただでさえ敏感になっているのに、あのナカへ入れたら、どうなるんだろう。 雄としての思考が広がり、いっぱいになっていた唾液を俺は飲み込む。 詩音は俺のモノを抑えて、ゆっくりと自らの腰を下ろしていく。 先端が毛先に当たったもどかしさを感じた瞬間、一気に俺は詩音のナカへと入っていった。 「――――――――あああああぁぁぁっ」 フェラチオとは違う種類の快感。何よりも熱が俺の頭を更にかき乱す。 熱い熱い熱い――――――――! 陰茎に沿って広がるような詩音の膣。 腰を振る度に起こる、自慰の数倍の快感。 確か騎乗位とか言った名前の体位で、俺は詩音の快感に酔う。 少しでもこの時間を味わいたい――――――――! さっきとは違う、理性からかけ離れた理由で俺は必死に快感から耐えた。 次第と快感に慣れて、俺は詩音を瞳に映す。 どれほど淫らな姿に詩音はなっているのだろう。 そんな下劣な好奇心で、俺は目を開ける。 そこに居たのは、俺が求めた雌としての園崎詩音ではなく、鬼の姿になっていたソノザキシオンだった。 「さっさと、イっちゃいましょう? 圭ちゃん」 詩音の右手に握られていた包丁が、俺の首の付け根に突き刺さる。 骨のすぐ側を通った包丁は、きっと畳まで達して貫通したんだと思う。 致命傷となったその包丁で、俺はすべてのものから解放された。 耐えていたことからも解放されて、防波堤を失った精液は、詩音の膣の中で爆ぜた。 痛さも熱さも引いていった俺の頭。 死が目前に迫っていることを感じながら、詩音の最後の哄笑を俺は聞いていた。 「最っ高だよ、圭ちゃん! コレ見せたら魅音はどうなるかなぁ! 楽しみだなぁ! これで魅音も狂って崩れて壊れちゃうよねぇ! くきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ――――――――…………」
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■昼の非日常:前原 圭一 1. ――部活メンバーみんなで川へ遊びに行こう。そう最初に言いだしたのは、魅音だった。 ここ最近急激に高まってきた暑さで、普通の部活をやる気力も削がれてしまっていた俺は、その提案に迷うことなく即賛成。他のメンバーらも、たまには変わったことをやりたいからと、全員賛成。結果、その週の日曜に早速行くこととなった。 そして当日。午後に入ってから学校に全員集合して、今まさにその川への道を歩んでいるところである。 「……あぢぃ。おい魅音、川はまだなのか? いい加減、歩き疲れたぞ……」 正面に大きく広がっている山と、辺りにある無数の田んぼ以外、周囲には何も無いあぜ道。そこを延々と歩くという作業に嫌気がさし、俺は汗だくになりながら魅音に文句を投げた。学校から出発して、もう二十分は歩きっぱなしだ。 いくら川へ涼みに行くと言っても、その道中までもが涼しくなる訳ではない。頭上に大きく浮かぶ灼熱の太陽。最近の雨で湿った空気や、土の匂い。更に、自身が流した汗で濡れた衣服。それらが実に見事な不協和音を奏で、嫌がらせかと思うほどの不快感を全身に塗りつけてくる。せめて周囲に木々でもあれば、その陰でこの不快感もいくらか緩和できるだろうが、困ったことにそういう類の遮蔽物は皆無で、この場は正に太陽の独擅場と言えた。 「ま、まだだよ。も、もう少し山の中に入らないと……」 魅音は、少しどもりながら言った。相変わらずのその様子に、俺は多少の訝しさを覚える。 何故か今日の魅音はずっとこうだった。午後に集合した時からやけに緊張した様子で、口を開けばいちいちどもり、目をこちらへ合わせようともしない。強引にこちらから詰めよれば、赤面して黙りこくってしまうといった具合で、明らかにいつもと様子がおかしい。 あの天下無敵の魅音がここまで変だと、心配な上にこちらの調子まで狂うので、途中でレナにそのことをこっそり相談したのだが、レナもよくわからないらしい。梨花ちゃんからは、何故か意味深な笑みを貰った。沙都子は、風邪なのでは? と魅音を心配していたが、特に辛そうな訳でもないので違うだろう。 どうも約一名から煙に巻かれた気がしたが、俺には理由を探りようがない。だから、とりあえず何か起こるまで魅音は放っておこうと自分の中で既に結論していた。 よって、何事もなかったかのように俺は会話を続ける。 「山って、正面にあるアレか? おいおい、後どれだけ歩くんだよ……」 「ん、ん~、い、一時間ちょいかなぁ」 「……溶けちまう」 だらしなく舌を出しながら、俺は膝を付いて項垂れた。 「をーほっほっほ! 圭一さんは本当にだらしないですわねぇ」 そんな俺に、この炎天下上にも関わらず平気な面をした沙都子が、いつも通りの挑発をする。だが、俺にいつも通りの反応をする気力は残っていない。 同じ状況に置かれた同じ人間で、何故こうも様子が違うのか。 「……はぅ、圭一くん大丈夫なのかな、かな?」 「みー。圭一はなんじゃくものなのです☆」 ……いや、沙都子だけではなかった。この場を歩く俺以外の人間全員が、太陽の直射日光に対して涼しい顔をしている。魅音も様子こそはおかしいが、それはこの暑さから来たものではないようで、汗の一筋も垂らしていない。どうやら、生粋の田舎育ちと都会のもやしっ子では、こうも体力に差がつくらしい。 「圭一くん、一旦休憩する?」 レナが、心配の色で濡れた瞳をこちらに向けながら言う。が、俺はそれを断った。メンバー中唯一の男子であるこの俺が、こんなことでギブアップしていては格好が付かないからだ。それに、途中で休憩したことに対する罰ゲームを魅音から吹っかけられる可能性も……と思ったが、今日の魅音の様子だとそれはないのかもしれない。 ともかく、俺は気合を入れ直して、再び川へ通ずる道を歩み始めた。 「ところでよぉ……、その川ってのは、こんな思いをしてまで行く価値のある場所なのか?」 しばらく歩いて、俺は疑るように今みんなで向かっている川について聞いた。回答者は特に指定しなかった。何故なら、別に純粋にそのことが聞きたかった訳ではなく、暑さから気を紛わすための会話のネタ振りに過ぎなかったからだ。……まぁ、要は単なる愚痴に過ぎないのだが。 「うん。去年の夏休みくらいにも魅ぃちゃん達と行ったけど、奇麗で涼しくて、本当に良いところなんだよ、だよ」 隣を歩いているレナが、笑顔で言った。続いて、沙都子と梨花ちゃんも、レナと同様の意見を述べる。行った当時の事を思い出しているのか、みんなとても楽しみな様子だ。 「ま、まぁ、圭ちゃん。み、みんなが言う通り良い所だから、もう少し我慢しなって」 そして、最後に魅音が相変わらずのどもり口調で閉めた。 「……そうするかな」 本当に楽しそうなみんなの様子を見て、暑さで消えかけていた俺の気力は、少し回復していた。 俺は、今までの人生の大半が都会暮らしな上、ほとんど旅行にも行かなかったため、いわゆる大自然の名所という物を体験した事が無い。だから、そういう未知の領域がこの先にあるらしいという事に、好奇心と期待感が高まってきたのだ。 最初は軽いネタ振りのつもりで出した話題だったが、俺への影響は大きかった。気づけば、足取りは嘘のように軽くなり、いつの間にか山の入口が目の前に見えてきた。 入り組んだ山道を進み、どんどん奥へ入ってゆく。周囲からミンミンゼミの鳴き声が忙しなく聞こえる。山の中だけあって道は木々に覆われていた。それが盾のように太陽の直射日光を防いでいるため、暑さは先ほどと比べてかなり和らいでいる。それどころか、流れてくる風が冷たくて心地よい。微かに、水が流れる音も聞こえる。もう、目的の川はすぐそこのようだった。 そしてしばらく歩き、――視界が一気に開けた。 「さぁ、着いたよ。圭一くん」 横を歩いていたレナがそう言い、ここが俺たちの目的地であることを理解する。学校から歩いて一時間半ほど。遊び場への移動時間としては少々長すぎる気もするが、ようやく到着したのだ。 だが、俺はその達成感を味わう余裕も無かった。疲労が原因ではない。……何というか、目の前の光景に圧倒されていた。これが、大自然の力という物なのだろうか。 山の中の川と言えば、狭くて浅いというイメージがあったが、岩に囲まれたその川は横幅が学校のプール程に広く、深さも人間が泳げるほどにはあるようだった。流れる水は、濁りがほとんどなく、硝子のように透き通っている。周囲には、何本もの背の高い広葉樹が、この場を空から覆い隠すが如く生い茂っており、その枝々の隙間から淡い太陽の光がスポットライトのように射しこんでいた。そして、それが透き通った川の水で水晶のように輝き、ここがまるで現世離れした場所であるかのように錯覚させる。 「良い所だな……」 感じた通りの言葉が、思わず口から零れる。レナたちは、そんな俺を見て笑った。自分たちのお気に入りの場所が、別の土地の人間である俺に受け入れられて、嬉しかったのかもしれない。 「それじゃ、早速水着に着替えますわよっ!」 突然そんな声が聞こえたと思えば、沙都子が着ている服を脱ぎ始めた。 「へ? ……んぁ? ちょっ?!」 俺は一瞬の思考の後、目の前で起きているとんでもない事象を理解し、一気に混乱に陥る。思わず沙都子から目を背けるが、視線を投げた先ではレナや梨花ちゃん、魅音も自らの衣服に手をかけていた。 「お……、お前ら何をっ……?」 部活メンバーらのあまりにも大胆すぎる行動に、俺は顔から蒸気を発しながら素っ頓狂な声を上げた。が、そうこうしている内にもみんなはどんどん服を脱ぎ、その中身が露出されてゆく。 こいつらには羞恥心って物が無いのか? それとも、田舎の女の子ってのはこれがデフォルトなのか? そんな疑問を次々と頭の中に浮かばせながら、俺は思わず目を瞑った。いくら何でも、これは健全な思春期の少年である俺には刺激が強すぎる。 しかし、本当に健全な思春期の少年であるからこそ、目の前で繰り広げられていると思われる未知の光景――楽園ともいう――に、底知れぬ興味が湧くのも事実だった。そもそも、俺は女の子の一糸纏わぬ姿なんて、ブラウン管を通じてしか鑑賞したことが無い。それも、大事な部分に非道なモザイク処理がされた中途半端な物だ。まやかしと言っても良い。だが、目の前にあると思われる光景はどうか。下着を付けたまま水着を着る愚か者などいない。つまり、男なら誰もが思いを馳せる胸の突起物のみならず、モザイク処理を乗り越えた向こう側の世界、女性の神秘が目の前で待っているのだ。これをわざわざ見逃すのは、馬鹿がすることではないのか――? 二つの考えが頭の中に同居し、ぶつかり合う。数秒間が数時間に思える葛藤の末、頭の中に生き残ったのは、男子として極めて健全的な考えの方だった。 俺は、ゆっくりと目を開ける。瞬間、眩い光と共に、服を全て脱ぎ終わったみんなの姿が飛び込んできた。 「……あれ?」 だが、そこにあったのは、俺が期待していたのとは全く別の光景だった。紺色の布。つまり、何故かみんな既にスクール水着に着替え終わっているのだ。まぁ、これもある意味では悪くない光景だが……。 「……? 圭一さん、目を瞑ってましたけど、どうしたんですの?」 茫然としている所に、沙都子の声が耳に入り、何となく事実を察する。要は、みんな予め服の下に水着を着て来たのだろう。こんな更衣室も無い場所で泳ぐのだから、当然と言えば当然だ。 「……あ、いや、何でもない。ちょっと目にゴミが入っただけさ。お、……俺、下に水着着てないから、ちょっと向こうで着替えてくるわ。ははは」 そう言いながら、俺は大きな茂みを指さして歩き始めた。 「け、圭一くんこんな所で着替えるの?」 「全く、はしたないですわねぇ……」 「うるせぇ……。忘れてたんだから仕方ないだろ」 悪態を付きながら、さっきの恥ずかしい思い違いをレナたちが気付いていないことに、俺は安堵した。背後から梨花ちゃんの満面の笑みを感じる気がするが、多分気のせいだろう。 俺は茂みの中で用意してきた学校用水着に手早く着替えると、すぐにみんなの元へ戻った。 2へ続く
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夕昏 俺は、一日中呆けていた。 今日は魅音が居なくなってはじめての登校だった。 そう、魅音は今、高校生になるための準備をしている。 高校に本家から登校するために、原付の免許を取るんだとか。 ヘリの操縦も出来るようなやつが今から原付かよ、と突っ込みたいところだが、 その相手が今は居ない。 「圭一くん、さびしいね」 「ああ」 お互い、気の抜けた炭酸飲料みたいになっていた俺たち。 梨花ちゃんも、沙都子も同じだった。 部活が無い、魅音が居ない一日が、こんなにも寂しくて退屈なものだったとは、 思いもしなかった。昔、馬鹿みたいに勉強していた自分を、ちょっと尊敬する。 「でも、ずっとこんなのじゃダメだよね?魅ぃちゃんい笑われちゃうよね?」 「ああ」 俺に精一杯元気を出してもらおうと、 精一杯の笑顔を、レナは俺にくれた。 それでも俺は、それに返事さえ出来ない俺は、 気まずさで一杯で、生意気にもため息までついてしまった。 「レナは……すごいな」 「なんで?」 「いや、俺……なんつーか、笑ってたんじゃなくて、笑わせてもらってたんだなって、 今思ったんだ。俺さ、昔……本当、笑い方も知らねえんじゃねえかっていうような奴だったから。 笑う意味を考えてたんだぜ?」 はは、と苦笑いをする俺に、あ、圭一くんも笑った、とレナはつぶやいた。 「レナも、圭一くんすごいなって思う時があるよ。勉強だって一番だし、 面白いこと一杯言うし。圭一くんだったら、村ごと操れそうな気がするよ」 「俺が村ごと? はは、いいなそれ、俺園崎家の次期頭首にでもなってみるか?」 「はぅ、それって、魅ぃちゃんのところに、お婿さんに行くってことなのかな? かな?」 俺の冗談でレナを笑わせるのも、ほぼ一日ぶりだった。 「……圭一くん、レナが、もし……もしね、お嫁さんに行くなら、 どんな人のところかな? 私が決めることなんだろうけど」 「レナがお嫁さんに行くところ? そりゃあ、レナが望めばどこにだっていけるだろ。 家事全般うまいし、いざって時は男の俺だって負けちまうその戦闘力。 レナの旦那さんは、安心して働きにいけるだろうよ」 「戦闘力って、圭一くんひどい」 一緒に笑って、ずっといたかった。でも、一呼吸でそれは止まってしまった。 息を止めてその時間が得られるなら、死ぬ直前まで止めてやる。そう思っていたのに。 「あのね、レナは……皆を引っ張ってくれる人がいいかな」 「魅音みたいにか?」 「ううん。魅ぃちゃんとはちょっと違うかなぁ。魅ぃちゃんはね、 すでに出来上がってる大きな人の集まりの中だったら、 いいリーダーになると思うけど…… そんなのじゃなくて、自分の周りだけでもいいから、引っ張ってくれる人。 火をつけるための火種みたいな人。そんな人が……いいかな」 「ふーん、お、俺と正反対みたいなやつだな。どっちかという、レナみたいな。」 「レナと圭一くん、正反対かな? かな?」 レナが、少しだけうつむいた。その顔を上げるために、とっておきの冗談を言う。 「レナ、顔を上げてくれよ。」 ここで、芝居がかった声に。 「お前の笑顔が好きなんだ、だから、顔をあげて笑ってくれよ、あははは」 さすがに最後は恥ずかしくなって、思わず自分で笑ってしまう。 「それは、冗談なの? 圭一くん?」 「んー、ごめん、つまらなかったか」 「そうじゃなくて……その、レナの笑顔が好きだっていうのは、本当なのかな?」 もう一度、かな? と言わずに、レナは俺の顔を見て…… 自分の顔を赤くしていた。それは、西日の赤のせいじゃない。 レナの中の血が、レナの顔を赤くしている。 「ああ、それは本当だぜ」 俺も、顔に血液が集まって、じんじんとしてきた。 鏡を見たらレナみたいに赤くなっているのが見れたのかもしれない。 こんな冗談言うんじゃなかった。 気まずい。 「よかった。冗談じゃなかったんだね」 「レナのこと、好き?」 「き、嫌いじゃないな」 しまった、嫌いじゃないとか、すげえ微妙なことを言ってしまった。 「嫌いじゃない……かぁ」 「あ、ああ、いや、好きだぜ」 「本当に?」 ああ、なんでこんな会話になっちまったんだ。 と、今さら後悔しても遅い。俺だって……レナは異性として好きだ。 むしろ、大好きだ。それでもいえない。言ったら…… 言って相手が自分ほど好きじゃなかったら、どうなる? 嫌いとは言わないかもしれない。 でも、ごめんなさいなんていわれたら……俺はどうなってしまうだろう。 もうレナどころか、皆とも顔を合わせられない。 そうなれば昔に逆戻りだ。 あんなこの世の地獄に、もう一度戻ってしまうなんて、俺は絶対嫌だった。 「あ、あのさ、レナ……まだ日没まで時間があるだろ? ちょっとだけ宝探しに行かないか?」 苦肉の策だ。俺はレナを自分から宝探しに誘ってみることにした。 「うん、いいよ」 レナは案外普通に、宝探しに行くことを承諾してくれた。 話を逸らされて機嫌が悪くなってしまうんじゃないかと、ヒヤヒヤしたが。 俺たちはそれぞれの家にいったん帰って、いつもの場所で待ち合わせすることにした。 レナは……いつもと違う、体操服に身を包んでいた。動きやすいように、ということらしい。 「ちょっと……変かな?」 「え……お、俺はいいと思うな、はは」 とりあえず誤魔化しておく。 なんとか日が傾く前に、俺たちはゴミ捨て場にたどり着いた。 レナは早速、ゴミ山を登っていっている。 さっきの話なんかは、まるで覚えていないように。 「よーし、俺もいっちょやるか」 俺が自前のスコップを肩にやり、ゴミ山を登ろうとしたときに、レナの声が聞こえた。 「圭一くーん、ちょっと重いものがあったから、こっちに来てー」 「おーう、ちょっと待ってくれ」 ゴミ山の向こう側、丁度谷になっているところから、レナの声が聞こえる。 崩れる山をなんとか登り、 レナがどこにいるかわからないから、山を必要以上崩さないように慎重に降りていく。 あまり急に動くと、崩れたものがレナにぶつかるかもしれない。 「圭一くーん、こっちこっちー」 レナの姿は見えないのに、確かに声が聞こえてきた。 谷の底にはゴミしか見えない。 でも、確かにそこから聞こえてきた。 とにかく俺は、谷を降りることにした。 「どこだ? レナ? 俺からは見えないんだけど……」 「ここだよ、圭一くん」 ゴミの中から、レナの手が伸びてくる。 「うぉ、びっくりした……」 良く見るとそれは、ゴミでコーティングされた車だった。 ゴミといっても、あんまり汚くないものが選別されていた。 それでも迷彩としては立派なもので、一目見たぐらいじゃ…… いや、近づいたってなかなかわからないだろう。 俺が入った後に、スライド式のドアがレナによって閉められた。 中は車である必要はないからか、車として必要でも、中に居るには邪魔なもの…… ハンドルなどは取り払われていた。 そのせいか、ここは車の中ということを感じさせない。 一つの部屋のようだった。 「で、レナ、一体どこにその重い物があるんだ?」 「嘘、だよ。だよ……」 「嘘? 何でそんな」 「さっきの話の続き、いいかな?」 「さっきって……何の話だよ?」 「その……圭一くんが、私のこと、好きかどうかって……そういうこと」 レナの怖いくらいの真剣な目で、冗談でもなんでもないことはすぐに分かった。 「ああ……その事か」 俺は、言ってはいけない冗談を言ってしまったんだろう。 本当に俺は馬鹿な奴だ。 「ごめん……レナは、卑怯だよね? こんなところに、圭一くんを追い込んで。 この服だって、動きやすいからじゃないんだよ? 圭一くんが……こんな服のほうが好きだとか、そんなことを思って…… 着たんだよ? それに、私は……魅ぃちゃんが居なくなったから、落ち込んでたんじゃないの。 圭一くんが、魅ぃちゃんのことばっかり考えてたから…… 今こんなこと話してるのも、きっと打算の上。 こうしたら嘘の罪がすこしでも薄れるんじゃないかって。 嘘だって圭一くんが気付いたときに、少しでも嫌われないようにって……」 「好きだよ」 俺は、腹を決めることにした。 もう関係が壊れるとか、壊れないとか、そんな段階じゃない。 「きっと」レナが俺のことを好きなら、それだけでいい。 俺だってつらかった。 レナのことを考えるのが、つらかったんだ。 好きな人を、本気で好きな人のことを考えるのが、 こんなにつらかったなんて、思いもしなかった。 「それは、愛してる……って取ってもいいのかな? 友達として、じゃなくて、その、あの……恋人……として、取っていいのかな?」 「……ああ、俺は、レナが好きだ。その、恋人として」 「じゃあ、その証……くれるかな?」 「あ、証?」 心臓が鼓動する音が、自分にも聞こえる。 どくん、どくん。そのたびに、俺の顔が赤くなっていくのが、自分でもはっきりわかった。 「証……だよ。新郎新婦が、神父様の前でする……証、だよ」 「レ、レナ、その、そういうのは、ちょっと早いんじゃないかな? かな?」 俺はちょっと混乱していた。 まさか、いきなりキスを要求されとは、思ってもいなかった。 突然、レナの顔だけではなく、今の状況の全てを意識してしまう。 こんな密閉された空間で、体操服姿のレナと一緒で、キスを要求されている。 「あ、レ、レナ、ぱんつはみ出してる」 「え? え?」 レナが下を見た隙に、俺はドアに手をかけた。 が、空かない。 「ムダだよ、圭一くん。中からは開かないの。 レナがちょっと細工をしたんだよ……用意周到でしょう? こんな女の子でも……圭一くん、好きって言ってくれるかな?」 レナは、じゃらじゃらと鎖を掴みあげた。 その鎖は天井から下がっており、おそらく外に貫通してこの車を一周ぐるりと取り囲んで、 レナの手元の南京錠で結束されている。 つまり、鎖を切断するか南京錠を開けない限り、この車からは出られない。 「レナ……本当に、いいのか?」 「圭一くんも……いいの?」 レナが少し怖い。 でも、俺はうれしかった。 レナは、それだけ俺のことが好きだったから。 俺も、それぐらいレナが好きだったから。 「俺だって、レナが好きだった。 こんなこと出来たなら、俺だってやってたよ。 本当にやるところがレナらしいけどな」 俺は笑って、レナは赤面する。 よかった、いつものレナだ。 「どういう意味かな? かな?」 「レナ、俺に勇気をくれてありがとう。 じゃ、じゃあ、その、歯磨きとか、してないけど……いいか?」 「いいよ。圭一くん……して」 夕昏(レナ×圭一) 後編
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前のお話 夢への掛け橋(後編) 貴方は"伊勢正三"という人の『22才の別れ』という曲をご存知だろうか? 優しい声と物哀しいメロディーで紡がれる、悲しい歌詞のフォーク・ソングである。 平成二年 五月某日 午後七時 私はカセットデッキで、この曲を聞きながら車でレナの家に向かっていた。 私は高校を卒業後、親類の経営する商社に事務員として就職した。 婆っちゃはまだ健在だ。だから私はまだ頭首代行であり働かなくては自由になる金は無い。 働き始めて中古だが鬼ローンを組んで買った、赤い『セリカXX』のシャコタンが私の愛車である。 仕事が終わると愛車を駆って雛見沢への道を急ぐ。レナの家の前に着くと、レナが待っていた。 「レナ!お待たせ!仕事終わりにごめんね~!さあ乗って!行こうか!」 レナに相談事があってドライブに誘ったのだ。実は私は現在、人生の岐路に立っているのである。 そう、私は人生で数える程しか無いであろうと思われる、重大な決断をしなくてはならない立場になったのだ。 ~一時間後~ 私はレナと談笑しながら、車を岐阜県の高山市方面に向けて走らせていた。 「はう・・・。やっぱり魅ぃちゃんの車は何度乗っても、お尻が痛くなっちゃうよ・・・」 レナは高校卒業後、興宮の給食センターで働いている。料理好きなレナにはピッタリな仕事だと思う。 「まあ私も22才だしね。もうシャコタンは卒業かな?」 途中から国道41号線に乗って高山市内を名古屋方面に向けて走り、目的地である『匠の森』と書かれた看板を見つけ交差点を曲がる。 緩やかな坂道を登り、頂上にある狭い砂利の駐車場に車を停めて、車外に二人で出た。 「うわ~♪星が凄い綺麗だよ☆村でも見れるけど、ここも綺麗に見れるね☆」 ここは私と圭ちゃんのお気に入りの場所だ。 雛見沢から程よい距離の場所だし人も来ない。その気になればカーセックスだってできる。 「ところで魅ぃちゃん。相談って何かな?圭一君と喧嘩でもしたの?」 私はマイクロ・ミニのポケットから、クシャクシャになったセブンスターを取り出しZIPPOで火を付け一吸いした後、口を開く。 「昨日、圭ちゃんに・・・プロポーズされたよ」 そう言い煙草を吸って紫煙を吐きだす。 「おめでとう!魅ぃちゃん!良かったね♪でも何で、それが相談事なの?悩む必要なんて無いんじゃないかな?かな?」 自分の事の様に喜んでくれるレナを見て嬉しくなる。 そりゃ私だってプロポーズされて嬉しかった。すぐにOKしたかった。でも・・・。 「私と結婚するって事は圭ちゃんには園崎家頭首の旦那として、婿に来て貰うって事になるんだよ」 「そうすると前原家を継ぐ人が居ない。圭ちゃんの御両親はそれでも良いって言ってくれたけどね」 「でも、やっぱりそこが引っ掛かって、まだ返事して無いんだよね・・・」 途中、煙草を吸いつつ、そう何回かに区切って話した。 「う~ん・・・。別に悩む必要は無いと思うよ?同じ村の中で住むんだから、気を使わなくて良いんじゃないかな?」 レナは、ここに来る途中にコンビニで買ったコーヒーのプルタブを開けながら言う。 「昔みたいに家同士の繋がりの為に結婚する訳じゃ無いんだし、圭一君も気にしないと思うかな!かな!」 そう少し困った様な顔でレナは言った後、コーヒーを飲み始めた。 レナに話したことで心の中が楽になった気がする。 確かに冷静になって考えたら、レナの言う通りである。 私は何を思い詰めていたのだろうか? 体面を気にするより、心を大事にしようと昔、圭ちゃんに身を持って教わったのに・・・。 大人になった私は古い固定概念に捕らわれ思考停止して、初心を忘れてた。馬鹿らしい・・・。 そう。結婚とは好き合った者同士がするものなのだ。家の為にする訳じゃない。 さっきまでの自分が恥ずかしくなった。 「レナの言う通りだわ。私、思考停止していたよ。馬鹿馬鹿しい」 私は煙草の火を携帯灰皿で消して、照れ隠しに笑いながら言った。 するとレナが「でも、思考停止する程嬉しかった。て事じゃないかな?そして不安になって余計な事を考えちゃっただけだと思うんだよ?だよ?」と言ってくれた。 「あははは!違いない!レナごめんね?取り越し苦労だったよ!でも相談に乗ってくれてありがとう・・・。」 「ううん!親友の悩みを聞くのは当り前だよ。あ~あ私も圭一君みたいな良い人と付き合いたいよ。魅ぃちゃんが羨ましいかな?かな?」 「いつかレナにも見つかるよ、『この人に一生ついて行こう!』って想える人がさ・・・」 「そうかな?私も出会えるかな?何か不安だよ・・・」 「大丈夫だって!レナは綺麗だし、すぐに出会えるよ!それに女は度胸!だよ。良い人が居たら、自分から勇気を出してアプローチしてみなよ?」 「あはは☆考えておくよ。魅ぃちゃん帰ろう?明日も仕事でしょ?」 とレナが言う。 明日は土曜日。レナは土日は休みだが、私は土曜も仕事がある。 「だね。じゃあ帰ろうか!」 そう言って私達は車に乗込む。『レナありがとう。私頑張るよ。』そう心の中で呟きながらエンジンを始動して岐路に着いた。 レナを家に送った後、家に帰った私は遅い夕食を食べ、風呂に入った後、自分の部屋で写真を見ていた。 高校一年の時の綿流しのお祭で二人で一つの綿菓子を食べている写真。 高校二年の夏、圭ちゃんの運転するバイクに乗って行った海で撮った写真。 高校三年のクリスマス、圭ちゃんの頬にキスする私の写真。 働き出した私が車を買って二人で初ドライブに行った時の写真。 浴衣姿の20才の私に圭ちゃんが抱き付いている写真。 去年、圭ちゃんと旅行に行き撮った楽しげな顔の二人の写真。 アルバムに貼られた、そんな私達の歴史を見た後、決心した。 『明日圭ちゃんにプロポーズの返事をしよう』 私は煙草を咥え火を付ける。 付き合い始めて七年が経った。 数えきれないくらい喧嘩もして、その数だけ仲直りした。休みのたびにデートを重ねて、その回数だけ私は抱かれた。 私は圭ちゃん以外の『男』を知らない。知りたくも無い。 この身体は圭ちゃんに調教された、圭ちゃん専用だ。他の男に見せるなんて考えた事すら無い。 圭ちゃんを悦ばせる為に私は色々なテクを覚えたし、恥ずかしかったけどお尻のセカンドバージンまで捧げた。 でも、それも無駄にはならなかったんだよね? 淫婦の様な身体に調教されても、私の想いは15才の頃と変わっていない。圭ちゃんに飼われた御主人様と幸せになりたい甘えん坊の兎なのだ。 七年越しの夢が叶う時が来たのだ。 今までの『私』に別れを告げ、これからは圭ちゃんの妻としての『私』になるのだ。 どんな辛い事だって二人でなら半分にして乗り越えられる。そして喜びは倍にして感じれるのだ。 圭ちゃんは私の色々な『しがらみ』を忘れさせてくれた。村の因習を吹き飛ばしてくれた。 これからもそうなれば良いな・・・。 短くなった煙草を灰皿で消して私は眠りについた。 翌日、仕事が終わった私は圭ちゃんを古手神社に電話で呼び出した。 圭ちゃんは現在、興宮でサラリーマンをしている。 てっきり大学に進学すると思っていたが「勉強はもうしたくない」と卒業後、就職したのだ。 私は境内にある集会所の前で梨花ちゃんと世間話をしながら圭ちゃんを待つ。 ちなみに、梨花ちゃんと沙都子は今年高校を卒業した。梨花ちゃんは正式に古手家頭首になったし、沙都子は県内の短大に進学した。 「ねえ魅音。貴女、圭一にプロポーズされたそうね?レナに聞いたわ」 と梨花ちゃんが聞いてくる。 昔からは想像も出来ない大人びた梨花ちゃんを見ていると『私も年を取る筈だわ』と思う。 「ん・・・。まだ返事はして無いけどね。まあ今からするんだけどさ」と私は教えた。 「魅音。圭一は村や私達の運命を変えた男。そんな彼に求婚されるなんて、貴女は幸せ者ね」 と梨花ちゃんが言った後、拗ねた様な顔でさらに口を開く。 「レナ、沙都子、私、そして貴女。皆、圭一の事が好きだった」「でも結局は貴女の一人勝ち。いや勝負にすら持込めなかった。嫉妬してしまうわ?」 そして私を見て「おめでとう!魅音!・・・圭一と御幸せにね?」 そう微笑みながら言って梨花ちゃんは「さて、羽入相手に自棄酒でも飲もうかしら?フフフ♪」と何処かへ行ってしまった。 ああ。羽入は梨花ちゃんの補佐として巫女さんをしている。 さて、プロポーズの返事の為に場所を変えるか。 私は村を見渡せる高台まで行き、圭ちゃんを待つ。三十分程して急いで来たのか、汗だくになった圭ちゃんがやって来た。 「悪い。急いで仕事終わらせたんだが遅くなっちまった・・・。待ったか?」 私はハンカチを圭ちゃんに渡して言った。 「ううん。大丈夫だよ。私も来てから五分位しか経って無いし」 もちろん嘘だ。だが、こういう嘘なら付いても良いよね? それはともかく私は圭ちゃんに語りかける。 「圭ちゃん。プロポーズの返事についてなんだけど・・・。その前に話聞いて貰って良いかな?」 「・・・ああ」 圭ちゃんが緊張した顔になる。 「私ね。この村が好き。圭ちゃんは雛見沢は好き?」 「好きだぜ。なんせ魅音と出会えたんだからな」 と圭ちゃんが言う。 「ありがとう。ねえ?雛見沢って何も無い村だよね?そんな雛見沢を発展させるのが、園崎家次期頭首としての私の夢なんだ。」 私は柵まで歩いて行って、圭ちゃんに手招きする。 圭ちゃんが私の横に来たのを確認して、私は話を続ける。 「圭ちゃんに私と一緒に、それを手伝って欲しい。園崎圭一として」 私は圭ちゃんの目を見て更に続ける。 「ここからはプロポーズの返事だよ?笑わないで聞いて・・・?」 「笑わないさ。」 圭ちゃんが真面目な顔で言ってくれたので、私は安心して口を開く。 「うん。実は次期頭首の仮面を脱いだ本当の『私』は、圭ちゃんに幸せにして貰いたいと願っているんだよ」 感きわまって涙が出そうになる。 「昔、言ったよね?私は【兎】だって。『私』は寂しがり屋で甘えん坊なの。一人だと寂しいよ・・・」 駄目だ。泣いちゃいけない。 「私を今まで以上に、いっぱい愛してください!私に毎日、貴方の笑顔をください!」 そして私は圭ちゃんに抱き付き、堪えきれなくなって泣きながら言ったのだ「グス・・・。わ、私を!ひっく!圭ちゃんの・・・お嫁さんにっ!ひっく!・・・してください!」と。 圭ちゃんが泣きじゃくる私を抱き締めて「ありがとう魅音。絶対幸せにしてやるからな!」と言って、手で私の頭を撫でてくれた。 その暖かさが・・・優しさが嬉しくて私は涙が止まらない。 私は圭ちゃんの胸の中で泣いた。 しばらくして私は泣きやんだ。 「ごめん。スーツをベチャベチャにしちゃったね」 「気にするな。それより魅音。」そう言って圭ちゃんが私の左手を取った。 「安物だけどさ・・・。俺の気持ちだ」 そして私の薬指に指輪を填めてくれる。 「ありがとう。大事にするよ。」 私は填めてくれた指輪を見た後そう言い、圭ちゃんのスーツの端を握って口を開く。 「・・・今日は家に帰りたくないな。ドライブにでも行こう?」 「ああ。そうだな。でも家に連絡しなくて良いのか?」 私はポツリと言った。 「実は、もう婆っちゃには今日は帰らないって言ってあるんだよ。だから大丈夫・・・」 「用意周到な事で・・・。じゃあ行くか!ってもバイクで来ちまったから、車取って来ないとな」 と圭ちゃんが笑いながら言ったが 「私はセリカとお別れがしたい。私の車でドライブしよう?」 と言って古手神社を後にした。 圭ちゃんは家に帰って、バイクを置きにガレージに向かった。 私は圭ちゃんの家の前に車を停めて、ステアリングを手で撫でて「セリカ。ごめんね?もう少ししたらサヨナラだよ。だから最後に一緒に走ろう?」と言った。結婚するのを期にセリカを手放す決心をしたのである。 その後、鹿骨市まで行き市内を一望できる山の上で夜景を見ていた。 「ねえ、圭ちゃん。明日さ・・・お互いの親に結婚の挨拶しに行こう?」 「おう。それに明日から結婚の準備もしないとな」 二人でこれからの事を色々と話した。 数時間後、山の麓にあるラブホテルに私達は泊まる事にした。 部屋に着き、風呂に湯を張った。 「圭ちゃん・・・。お風呂入ろ?」 圭ちゃんと手を握って脱衣所に向かい、お互いの服を脱がし合って浴室に入った。 二人で身体を洗い合った後、湯船で戯れ合った。 そして脱衣所で身体を拭いている時だった。 「魅音・・・。もう我慢できない!」 そう言って圭ちゃんが私をお姫様抱っこして部屋に走っていく。 「け、圭ちゃん!ちょ!怖い!は、走らないで!」 私は圭ちゃんにしがみついて叫ぶ。 ベッドの上に優しく降ろされ。私は圭ちゃんに言った。 「ビックリしたよ!あんな事したら駄目だよ!」 圭ちゃんが笑いながら「悪い!悪い!けど、楽しかっただろ?」 と言いながら頬を手で撫でた。 「ん・・・。まあね。ジェットコースターみたいだったよ」 と私も笑いながら言った。 圭ちゃんに「ねえ?キスして?」とおねだりする。 「ん・・・。ちゅっ。んん・・・」 圭ちゃんに優しく押し倒されキスされる・・・。私は初めて圭ちゃんに抱かれた15才の私に戻る。 初めての時と同じ、初々しい気分。幸せな気分で身体が蕩けそうになる。 私は圭ちゃんの口の中を舌で蹂躙する。 「あむっ。ちゅぱ・・・。ちゅく」 負けじと圭ちゃんが私の舌を吸って、舌を絡ませる。 「くちゅくちゅ・・・」 頭がボーッとしてきて全身が熱くなってきた。 圭ちゃんが急に口を離す。「あ・・・」完全にスイッチが入った私は名残惜しそうな声が出てしまい恥ずかしくなる。 「本当にキスが好きだな?目がトロンとしてるぞ?」 そう言いながら、指で私の唇を撫でる。私はその指を口に含んで舌を這わせた。 「あふ・・・。ちゅぱちゅぱ・・・」 心行くまで指を舐めた後、口から圭ちゃんの指を出した。 次に圭ちゃんは胸を揉みしだきながら、私の手を自分の股間に持って行き「勃たせてくれ」と言った。 言われたとおり、両手でオットセイを揉んで海綿体に血を送り込む。手の中でオットセイが硬くなっていく。そして根本を少し強めに握って小刻みに動かした。 「はあはあ・・・。ふうっ・・・。何か圭ちゃんのおちん〇ん、いつもより硬くなってる」 いつの間にか乳首に吸い付いていた圭ちゃんに息も絶え絶えに、そう言うと「魅音だって同じだぜ。いつも以上にやらしい・・・」と言って私の陰部をまさぐる。 ぐちゅぐちゅ!指二本を挿入して強めに掻き回されて大きな音が出た。 「やっ・・・!恥ずかしいよ・・・。あっ!駄目!そこ擦らないで!!あうっ!」 膣の上壁を擦られ、圭ちゃんの腕を思わず押さえるが、耳を舐められて力が抜ける。 膀胱が刺激され尿意が私を襲う。 「らめぇ!圭ちゃん!お、おしっこ出ちゃうっ!!・・・え?」 あと少しでイキそうな所で指がピタッと止まり、思わず驚きの声が出てしまった。 「ああ、どうしたんだ魅音?急に変な声なんか出して?」 ニヤニヤしながら圭ちゃんが聞いてきた。 お預けを食らった私は「な、何でも無いっ!!」と言って平然を装うが、身体が快楽を求めているのだろうか?腰が勝手に動く。 「おいおい、どうしたんだよ?腰がクネクネしてるぞ?」と圭ちゃんが指をゆっくり動かし、親指でクリトリスを転がす。もどかしい刺激に発狂しそうになる。 「ふぅっ!は、ああ・・・」 「魅音~。どうして欲しいか詳しく教えてくれないと、俺は分からないんだよなあ~」 「早くイキたい・・・!イカせてよぉ!」 意地悪されて悔しくて涙を流しながら叫ぶ! 「んん~?全然分かんねぇな~?イキたいなら、詳しくどうされたいか言えよ。くっくっく!」 身体がゾクゾクする・・・。マゾとして調教された身体が疼いて、圭ちゃんの言葉だけで軽く絶頂に達する。 「ふぁ!お、おま〇こを指でいっぱい掻き回してぇ・・・クリちゃんを指でクリクリしてくだ!さいっ!!」 ボーッとする頭で何とか言葉を搾り出してお願いした。これ以上、焦らされるのは嫌だ。 「よっしゃあ!してやるからイッちまえよ!」 ぐちゅぐちゅぐちゅ!! 先程と同じ様に激しい愛撫が再開し、私は身体をのけ反らせて快楽に悶える。 「んあっあっ!!らめぇ!!ひぃっ!あっ!あふっ!!」 ぷしゃあっ!! 絶頂に達する瞬間、圭ちゃんは素早く指を引き抜いて三本の指の腹全体で秘部を撫で回して刺激を与える。 私は潮を噴いてイッた。 「は・・・。あっ」 イッた後も優しく手の平で愛撫してくれたので長いあいだ余韻を味わう事ができた。 余韻から覚め、圭ちゃんのオットセイを見て 「圭ちゃん。おちん〇ん苦しそうだね?先に一回出しとく?」 そう人差し指と親指で輪を作って上下に動かす真似をしながら聞いた。 「頼む。我慢も限界だ」 仕方無いなあ☆私は両手をオットセイの根本に軽く添えて、舌で全体をねぶる。開いている両手の親指と中指で陰嚢を揉んであげるのも忘れない。 「じゅっ・・・。ちゅる。ん。ぴちゃぴちゃ」 舌を小刻みに動かして亀頭全体を刺激する。 「・・・凄。我慢汁がたくさん出て来る」 舌の先で我慢汁を舐めとりながら言う。さっきの御返しだ。ギリギリまで口の中ではしてあげない。 うわあ~。すっごい苦しそう。仕方無いな~。 「しゃぶ・・・。ジュポジュポ。んっんっ。んぐっんぐっ」 切なそうな圭ちゃんを見てると可哀相になったので、口の中でイカせてあげる事にした。覚えているテクを駆使して、喉の奥まで使ってオットセイをしゃぶりあげる。 圭ちゃんに徹底的に仕込まれた技で、ただのフェラチオではなく、膣に挿入している様な気持ち良さだと圭ちゃんが褒めてくれた事もある。 頑張ったら、また褒めてくれるかもしれない。 私はペースアップして頭を動かし始めた。 「じゅっ!ぐぽぐぽ!じゅぷぷ!」 激しく責め立てると圭ちゃんが音を上げる。 「み、魅音!そんな激しくしたらっ・・・!で、出ちまう!」 そう言ったのを聞いて、私は指を一本圭ちゃんのお尻の穴に挿入して軽めに腸壁を擦る。口の中でオットセイが更に大きくなり暴れた。 「っ!うあっ!」 圭ちゃんがが私の頭を両手で押さえ込み、口内射精される。ビクンビクンとオットセイが口の中跳ねるたびに大量の精液が吐き出される。 「ん。ん・・・。ゴクッ。ちゅぷちゅぷ。じゅっ!」 喉を鳴らしながら精液を飲み込み、お尻に挿入した指を軽めに動かしつつ、尿道に残った精液まで吸い出し、そのまま綺麗にするため口の中で舌を絶え間なく動かす。 「うあ・・・。ああ・・・」 身体を震わせて圭ちゃんが喘ぐ。 私はオットセイから口を離して、お尻から指を引き抜きティッシュで綺麗に拭いた。 「いっぱい出たね。気持ち良かった?」 今の惚けた顔の圭ちゃんを見れば分かる。だが私はあえて聞いてみた。 「凄い良かったぞ。ありがとう魅音」 そう言って圭ちゃんが頭を優しく撫でて褒めてくれる。 身体の力を抜き、御褒美を堪能する。私は頭を撫でられるのが大好きだ。 数分して圭ちゃんが私の頭から手を離して「魅音。入れてもいいか?」と言って私の秘部を愛撫してくる。 「ん。良いよ?・・・入れて?」 私は寝転がり足を開く。避妊具を着けようと圭ちゃんが手を伸ばすのを私は手で止めた。 「私達。結婚するんだよね?・・・だから今日から生でして良いよ?」 私は今まで避妊具無しを許さなかった。いくら大好きな圭ちゃんの頼みでも、これだけは拒み続けて来た。 もし妊娠したら・・・。そして皆に産むのを反対されたら・・・。授かった赤ちゃんの命を奪ってしまう事になるかも知れない。 そんなのは嫌だ。そんな事は堪えられない。 だが、結婚すると決まった今なら大丈夫だろう。皆が祝福してくれて、産まれた子供も幸せになれるだろう。 私達姉妹みたいに辛い想いはさせたくないから。 「良いのか?別に無理しなくて良いんだぞ?」 そう圭ちゃんが気遣ってくれるが、私の決意は変わらない。 「うん。圭ちゃん?」 私は圭ちゃんを抱き寄せて言う。 「今日から子作りしよっ?今まで我慢させてゴメンね。大丈夫だから・・・して?」 「み、魅音っ!」 圭ちゃんがオットセイを秘部にあてがい、ゆっくり挿入してくる。 じゅぷぷ・・・。 「ふあっ!熱い・・・」 初めて直に感じる、圭ちゃんのオットセイの熱さに陰部が溶けてしまいそうな感覚になる。 「魅音の中、すげぇ・・・。吸い付いてくるし、暖かい。気持ち、良いぞ・・・」 と圭ちゃんが言って、腰を上下に動かし始める。 ぐちゅぐちゅ! いやらしい水音が出てその度に頭をビリビリ痺れさせる快感が私の中を走る。 「んあっ!あっ!あっ!ん!け、圭ちゃんギュッてしてぇ!あっ!おちん〇んが奥に当たって気持ち良いよぉ!!」 背中に手を回して、足を腰に絡ませる。 離したくない。そんな想いから力を入れて圭ちゃんに甘える。 「ふああっ!!中でぇ!また大きくなったよ!!らめぇ!!あっ!おま〇こが壊れちゃうよ!もっと優しくしてっ!!」 圭ちゃんが私の後頭部に手を潜り込ませ、抱きかかえて言う。 「無茶言うなよ!気持ち良すぎて!腰が勝手に動くんだ!」 とキスをしてくれた。 「んあっ!んむっ!んく!ちゅっ!」 軽い酸欠状態になり唇を離す。 「プハッ!」 「魅音!子供はどっちが欲しい?男か女か!?」 腰を動かしながら圭ちゃんが聞いてきた。 「はあはあ!来年の事を言うと鬼が笑うよ?んはっ・・・元気な子だったら、どっちでも良いよっ!あんっ!!」子供は可愛い。ましてや自分のお腹を痛めて産んだ子なら、目に入れても痛くないくらい可愛いに違いない。 「そうだな!・・・魅音、俺もうイキそうだ!」 そう言って腰を速く動かす。 「ん!ふっ!私もイキそう・・・!だからあと少し頑張って!!」 そう、あと少しだけ。この甘い気分に浸っていたい。 五分程経ち「け、圭ちゃんっ!良いよっ!はあんっ!一緒にイこうっ!!あっ!!あっ!!ふあ!ああっっ~~~~!!!!」 「うっ!!魅音!出る!出る!うあっ!!!」 ビュルッ! ビュプっ! 私の膣内に二回目とは思えない量の精液が注ぎ込まれ、その熱さと膣内射精という初めての刺激で私も絶頂に達する。 私の中でオットセイが元気良く何回も跳ね回った後、やっと射精が終わる。圭ちゃんがオットセイを抜くと、精液が零れ出てくるのを感じる。 圭ちゃんが私の横に倒れて肩で息をしている。 もちろん私も息があがっている。呼吸を落ち着かせようと深呼吸をした後、圭ちゃんに抱き付いた。 圭ちゃんの首筋に鼻を押し付けて匂いを嗅いだ。 私の大好きな情事の後の一時である。何才になっても私は匂いフェチの変態マゾ女なのだ。まあ圭ちゃん以外に欲情する訳では無いから良いでしょ? こんな姿の私を受け止めてくれるのは圭ちゃんだけで良い。 ひとしきり匂いを嗅いだ後、私は圭ちゃんの上に俯せに寝て胸に頬を擦り付けた。 私は今日の事を一生忘れない。 すごく幸せだ。何時までもこの時間が続けば良いのに・・・。 「魅音。俺達結婚して一緒に暮らしだしたら、寝不足になるかもな?」 ああ、そうか。まだ幸せな時は続くんだよね?むしろ始まったと言う方が正しいかもね? 「当り前じゃん!赤ちゃんが出来るまで頑張って貰うよ♪くっくっく!」 「了解しました。頑張れ俺・・・」 「フフフ♪ねえ?もう寝よ?明日は忙しくなるよ?」 明日から楽しみだ。とりあえず月曜になったら会社に辞表を出そう。 「ああ、おやすみ。魅音。」 私は部屋の電気を消して眠りについた。 「圭ちゃん、おやすみ☆」 翌日、私達はお互いの両親に結婚の挨拶をして快諾された。 そして私は会社を辞め、セリカを売った。 あっと言う間に一ヶ月が経ち私達は、その日を迎えた。 平成二年六月上旬 「はうっ!み、魅ぃちゃん!かぁいいよぉ~☆お持ち帰りしていい?」 レナが久々にかぁいいモードを発動させそうになったのを沙都子が止める。 「レナさん!落ち着きなさいまし。魅音さんが困ってらっしゃいますわよ!」 相変わらず変な言葉使いは変わらないが、沙都子は短大生になって綺麗になったと思う。 「ま、まあこの格好も疲れちゃうから、早く着替えたいんだよね。皆手伝ってくれないかな?」 私と圭ちゃんは先程、古手神社で祝言をあげた。 梨花ちゃんが祝詞をあげてくれ、羽入が盃に入れてくれた酒を二人で飲んで夫婦の契りを交わした。 次は祝いの宴なので、私服に着替ようとした所、梨花ちゃんと羽入以外の女性陣が押し寄せて今に到る。 「そうですよレナさん?お姉は早く愛しの圭ちゃんの所に行きたいんですよ~☆ねぇ?お姉?」 と今は入江診療所のナースになった詩音が私をからかう。 「そりゃ・・・。まあそうなんだけど・・・」 私は赤い顔でボソボソと呟く。 「恥かしそうな魅ぃちゃん、かあいいよぉ!おっ持ち帰りぃ~っ!!」 暴走したレナを皆が何とか止めてくれ、私は私服に着替えた。 私達は幸せの絶頂にいた。 圭ちゃんは明日から園崎本家で一緒に暮らす事になった。 婆っちゃは『頭首になるまで二人で暮らしたらいいんね』と言ってくれたが、やっぱり私は婆っちゃが心配な訳で・・・。 それはともかく、皆に祝福され宴が終わり、私は圭ちゃんと古手神社を出て、雛見沢分校へと歩いて行った。 全ての始まりの場所。流石に夜なので中には入れないが、私達は感慨に浸った。 あの教室で秘め事をしていた頃の自分が、今の私達を見たらどんな反応をするのだろう。そう圭ちゃんに聞いてみた。 「くっくっく!顔真っ赤にして鼻血を出してブッ倒れると思うぞ?」 まあ、間違い無くそうだろう。 私はポケットからセリカのキーに付けていたオーナメントを取り出す。 それを圭ちゃんに渡して、屋根の上に乗る様に投げて貰った。 『22才の別れ』の歌詞とは違うが、ともかく今までの『私』とバイバイする。そんな22才の私の『別れ』。 今日から私達の新しい時間が始まる。 「圭ちゃん!私を死ぬまで離さないでね!」私は圭ちゃんに笑顔で言った。 「大好きだよ!!」ってね。 <終わり> Tips『卒業』 あれは高校二年の時。 圭ちゃんと学校帰り、エンジェル・モートに寄るため駐輪場に二人でバイクを停めた時である。 目の前の道を青いセリカXXが颯爽と走っていった。私は一瞬で心を奪われた。車に興味を持った瞬間だった。 『免許を取ったらセリカXXに乗る!』そう圭ちゃんに興奮気味に話したのを覚えている。 働き出して、赤いセリカXXを買った。乗るうちに改造したくなり、一通り手を加えて公認車検を取った。 色々な所へ私達を連れて行ってくれたセリカ。 いっぱい思い出が詰まったセリカを手放すのは辛いが結婚するのだから改造車に乗っている訳にはいかない。 そう。今までの私からの卒業、そして新しい生活への第一歩なのだ。 あと少ししたら業者が車を引き取りに来る。 綺麗に洗車したセリカのドアミラーを触って言う。 ありがとうセリカ。今まで楽しかったよ? サヨナラ。セリカ・・・。 ~エピローグ ~ 平成二年 十月 新婚二ヶ月目を過ぎた頃、私の妊娠が判明した。 出産予定日から見て、プロポーズの返事をした日に出来たのだろう。 赤ちゃんが出来てから夜の営みは無くなったが、出来る範囲で圭ちゃんを慰めている。でもやっぱり物足りないと思ってるだろう。あと少し待ってて欲しい。 私は幸せ者だ。 圭ちゃんは頑張って働いて、私を養ってくれているし。おはようのキスからおやすみの抱擁まで忘れずにしてくれている。 ちなみに今、私は手紙を書いている。 来年の三月に誕生する、我が子へ宛てた手紙だ。 意外と私は少女趣味というかロマンチストなところがあるのだ。 現にノリノリで書いている。 まあ内容はこんな感じだ。 【お母さんから愛しいあなたへ はじめまして。あなたはお母さんの中で元気に育ってくれていますか? あなたがお母さんの中で住み初めて五ヶ月経ちましたね。 お父さんとお母さんはあなたに早く会いたくて仕方ありません。 あと五ヶ月したら、あなたに会えるかと思うと幸せな気持ちになってしまいます。 お父さんは毎日、お仕事から帰るとお母さんのお腹を撫でてくれています。 そうそう。お父さんは凄く優しくて頼り甲斐のある人です。お母さんはずっとお父さんに引っ張って貰って、今の幸せな時間を過ごせています。 そう。嫌な事も忘れてしまう位、お母さんはお父さんと居て楽しいのです。 きっとあなたも気に入ってくれると思います。 あなたが元気に産まれて来てくれる事を願っています。 あなたとお母さんとお父さんで仲良く暮らしましょう。 そして、あなたが大きくなって、好きな人が出来たら教えてあげる。 お父さんが、どれだけお母さんを愛してくれたか。 お母さんが、どんなに幸せだったか。 それを聞いたあなたはどう思うか分からないけど、絶対後悔はしないはずです。 こんなに皆から祝福されて誕生した事を知るのですから。 ではまた三月に会いましょう。 あなたのお母さん 園崎魅音より】 Fin.
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2. トクンと、心臓が高鳴る。この距離ならば、その音は常識的にあいつには聞こえないはず。だが、あいつに見つからないように全身が緊張で満たされている今だけは、その物理法則が通じないような気がして、ますますに心臓の動きが早まってゆく。そして、その音が更に俺の心を焦らせる。所謂、悪循環を繰り返していた。 俺たちは今、ゾンビ鬼をやっている。そう、部活だ。着替えが終わった後、みんなの元へ戻ると、早速何かをやろうという話になり、紆余曲折を経てゾンビ鬼をやろうと決まったのだ。ちなみに、普通に泳いで遊ぶという選択肢は初めから無かった。戦い無くして我らが部活は存在しないということなのだろう。 ルールはいつも通り。鬼が他の人に触るとその人も鬼になり、最終的に全員を鬼にすれば鬼の勝ち。逃げる側は、あらかじめ決められた制限時間いっぱい逃げ切れば勝ちといった具合だ。もちろん、負けた側には罰ゲームが下される。内容は、一回だけ勝った側の言う事を何でも聞くという、オーソドックスながらも何をされるかわからないという点では一番怖いものだ。 正直、こんな川に来てまで何でゾンビ鬼をと最初は思った。だが、いざ始めてみればこれが中々面白い。学校のグラウンドとは広さが大きく違い、木や岩など隠れる場所がたくさんあり、また、音で居場所を知られないために、川を移動する場合は慎重に動かなければならず、所々でかなり神経を使う。もはや、鬼ごっこではなくかくれんぼに近かった。特に俺の場合は、この地形であいつらから走って逃げ切るのは、身体能力的な面で無理だと言って良い。つまり、見つかればそこで終わりなのだ。 そして今、俺が隠れている大木の向こう側にレナがいる。レナは鬼だ。他の人間なら、まずそいつが鬼かどうかを判断しないといけないが、レナの場合は最初のジャンケンで決まったので、絶対に鬼だと確信できる。 隠れている大木にピッタリと張り付き、陰からそっとレナの様子を伺う。レナは慎重に辺りを見回していた。鬼の行動開始から八分程度という時間を考えて、まだ獲物の索敵中だと予想する。この状態で不用意に動けばすぐに見つかってしまうだろう。 だが、このままここでやり過ごすというのもどうかと思った。レナは二分くらい前からあの場所にいて、ここを動くのがいつになるかわからない。それに、精神的なプレッシャーもあるが、何かの偶然でこちらの存在を気付かれるのを防ぐためにも、鬼の近くで長い間待機しているのは避けたかった。 何とか上手くこの場から逃げ出せないだろうか。そんなことを考えながら、体を木から少しだけ離した時、腰の方で木の枝の折れる音が小さく鳴った。 「……ぁ」 ――しまった! 大木に体を張り付けた時、水着に枝が引っ掛かってしまったのだ! それを理解した時には、既にレナがこちらへ足を進め始めていた。枝が折れる音自体は小さかったが、神経が過敏になっている今のレナにとっては、鐘の音のように大きく聞こえたのかもしれない。一歩一歩こちらへ近づいてくる足音には、その先に獲物がいるという確信が込められているように感じる。 ドクドクと心臓が更に脈を打ち始めた。あれやこれやと回避策を考えようとするが、レナがこちらの存在に感づいたという事実が、冷静な思考を妨害する。そして、考えている間にもレナの足音がどんどん近付いてくる。既に、大木の側面にまで足を進めたようだった。もう、三、四歩でこちらに辿り着く……! 「…………ッ!?」 その時、目の前にある茂みから突然何かが飛び出した。小さくて、丸い……石か? それが、大木の横をすり抜けて勢いよく飛んでゆく。そして、さっきレナが待機していた辺りの茂みに落ちたのか、俺が隠れている大木の向こう側でガサっと大きな音を鳴らした。 何が起こったのかわからずに、呆然としていると、すぐ横まで来ていたレナの足音が急に止まった。そして、間を置かずに今度は逆の方向へ慌てるように走りだす足音が聞こえる。つまり、何故かレナは俺から離れていったのだ。 一体どうして……? と、頭の中に疑問が浮かぶ。しかし、少し考えたらその疑問は解消された。 恐らく、レナは俺の目の前の茂みから石のような物が飛び出す瞬間を見ていないのだ。そして、そのせいで、大木の向こう側で鳴った音を、自分の狙っていた獲物が逃げ出した音だと勘違いしてしまったのだろう。要するに、ひとまず俺は助かったらしい。 しかし、そうなると頭にもう一つ当然の疑問が浮かぶ。一体誰がこんな俺を助けるような真似を? が、その疑問は、俺が考える間もなく解消された。 「み、魅音……!?」 目の前の、石が飛び出した茂みから、音を立てて姿を現したのは魅音だった。意外過ぎる人物の登場に、俺は声を出して驚く。 「な、何でおま……」 「こっち来て……!」 続いて浮かんだ疑問を魅音に投げかけようとしたが、言い終わる前に魅音が俺の手を掴んだ。掴まれる直前に、もしかしてこいつも鬼なのか? という考えが浮かんだが、どうやら違うらしい。魅音は掴んだ俺の手を引っ張り、何処かへ連れて行こうとしているようだった。 「お、おい何処に連れて行く気だよ?」 引っ張る魅音に抵抗するように、俺はその場で踏み留まる。 「こっちに、良い隠れ場所があるのっ!」 そんな場所が? と俺が驚いている間に、魅音は腕に更に力を加え、無理やりこちら引っ張ってくる。それによって俺は少しバランスを崩し、右足に履いていたサンダルが脱げてしまった。 「おいちょっと魅音、サンダルが」 魅音にそう言うが、耳にこちらの声が入っていないのか、反応すらしない。やけに力を込めて俺を引っ張り、ただ黙々と良い隠れ場所とやらへ歩を進めている。魅音の力は抵抗するのが無理な程で、俺は成されるがままに足を動かし、せめて魅音の言う場所が本当に良い隠れ場所であると信じるしかなかった。 「……ここ」 さっきの場所から三分ほど歩いたところで、魅音はようやく口を開いた。 「ここって……、何もないじゃねぇか」 辺りを見回してみても、木々が疎らに生えているだけで、とても隠れる場所があるようには見えない。 「一体、何処に隠れるって言うんだ?」 僅かの不満を込めながらそう言うと、魅音は掴んだままの俺の手を再び引っ張り、歩き始めた。こっちへ来いという意味らしい。 だが、魅音の進む方向に道は開けてない。行き止まりだ。あるのは、周りにある木より一回りだけ大きく、枝が少し変な形に曲がっていて、自身の大きな葉っぱが地面に付いている木だけだった。 「おい、まさかその木が良い隠れ場所って言うんじゃないだろうな?」 そう問いかけるが、魅音は何も言わない。ひたすら、それだけしか頭に無いかのように、足を進めているだけだ。 「……ほら、ここだよ」 魅音は急に足を止め、指をさす。俺はその指の方向に目を向け、驚いた。 「これは、……鍾乳洞か?」 そこには、成人男性一人分程度の大きさの縦穴が、ぽっかりと口を開けていた。奥の方は真っ暗で、結構な深さがあるように見える。 俺は狐に化かされたような気分になった。なぜなら、こんな穴、さっきは全く見えなかったからだ。これだけの大きさの穴が堂々と開いているというのに、さっき魅音が一旦足を止めた場所からは、全然わからなかったのだ。 一体どうして? 自分が妙な錯覚を起こしていなかったか確かめるために、俺はもう一度さっきの場所へ走った。すると、呆れるほどに単純なトリックがすぐに明かされた。 何の事は無い。周りより一回り大きいあの木が、妙な形をした枝から生えた葉っぱで、鍾乳洞の入口を隠していただけだったのだ。 だが、その単純かつ自然なトリック故に、隠ぺい能力はかなり高い。ここからではどう見ても、行き止まりと木があるくらいにしか見えないのだ。余程に注意力が高い者でなければ、こんな鍾乳洞があるとは思いもせずに、素通りしてしまうだろう。 俺は、大自然が作った要塞と言っても良いこの驚異に、ただただ唖然とするしかなかった。 「魅音、こんな場所いつ知ったんだ?」 鍾乳洞の前に戻り、俺はそこで待っていた魅音に聞いた。 「小学生くらいの頃、婆っちゃから聞いたんだ。元々は、戦時中にこの辺りに住んでいる村民の防空壕として使われていたみたい。戦争が終わってからは、ずっと放置されたままらしいけど」 「なるほど。こんだけ上手く隠れているんだから、当時は相当役に立ってんじゃないか?」 「さぁ、その辺りの話まではよく聞いてないから、わからない。でも、隠れる場所としての機能は私が保証するよ。去年みんなとここに遊びに来た時も、今日と似たような遊びをやっていて、私はここに隠れてたんだけど、最後まで鬼には見つからなかった」 「去年もこんな事やってたのか」 「うん。……あ、でも」 「どうした?」 「……う、ううん、何でもない。さ、さぁ、早く中には入ろ」 急かすような魅音の態度に、少々の訝しさを覚えるが、こんな所に突っ立っていたせいで鬼に見つかるのも馬鹿馬鹿しいので、魅音に続いて俺も鍾乳洞の中へ入って行った。 中の様子は、典型的な鍾乳洞そのものだった。入口の広さよりも内部は二倍程に広く、天井にはつららのような石灰岩が所々から垂れており、また地面には、タケノコのように盛り上がっている石が辺りに点々としている。耳に入ってくる音は、俺達の足音と、定期的に鳴る水滴が落ちるような音以外に何も無く、少し不気味だ。 十メートルも足を進めると、入口からの光が届かなくなり、辺りは完全に闇に覆われた。だが、用意の良い事に、魅音が手に収まるほどの大きさの懐中電灯を持っていたため、問題なく前へ進むことが出来た。何だか、洞窟の探検隊になったような気分だ。 さっきと同様に会話は無い。ただ、黙々と先へ進む。 そうして一分半程度歩いたところで、魅音の懐中電灯から放たれている光が、前方の壁に突き刺さった。辺りを見ると、これまで歩いてきた道よりも更に広く、丸い袋状の、広さにして六畳程の部屋になっているようだった。 もう、先に進めるような道は見当たらない。どうやら、この鍾乳洞の最深部に到達したらしい。長さは、大体八十メートル程度か。 魅音は行き止まりを確認すると、懐中電灯を地面に立て、その場に腰を下ろす。ここで待機をするという事なのだろう。それを確認して、俺も地面に腰を落ち着けた。サンダルが脱げたせいで、右足の底が少し痛かったので、この休憩はありがたかった。 傍らに立てられた懐中電灯は、その身に不釣り合いなくらい強い光を出していて、この袋状の部屋全体をぼんやりと照らすには十分だった。ひょっとしたら、魅音が改造を施してあるのかもしれない。 「懐中電灯の光、外に漏れたりしないか?」 俺は、懐中電灯を指さして、魅音に聞いた。確かに明るいのは良いのだが、それが仇にならないか少し心配だったのだ。 「大丈夫。この鍾乳洞、中で少し折れ曲がっているから、外には届かないよ」 「そうなのか。気づかなかった」 俺は納得した。 そして、洞窟内は静寂に包まれる。当然だ。そこで会話は完全に途切れてしまったのだから。 魅音はそれ以降、じっと洞窟の壁のただ一点を見つめていた。何か、考え事をしているのだろうか。何も喋ろうとしない。 魅音に聞きたい事はたくさんあった。これからどうするのか。このまま時間まで待機するのか。何故、俺にここを教えたのか。いや、そもそもどうして俺を助けたのか。 だが、今の魅音の様子に、奇妙な違和感を覚えてしまい、ただそれだけの事を喋るのにも躊躇してしまう。 いや、今だけじゃない。さっき俺を助けた時からだ。その時から、どうも魅音の様子に違和感を覚えていたのだ。だが、その後の状況に流されたせいで、しばらくその違和感を忘れていた。それが今こうやって落ち着いて、再び浮き彫りになっただけなのだ。 違和感と言えば、確かに今日の魅音は最初から変だ。だが、今の違和感は、それとはまた別の種類に思える。それが何なのかはわからない。が、ともかく俺を助けてからの魅音は、いつもと明らかに何かが違っていた。 静寂が、ひたすら空間を支配する。淡い闇が、永遠にこの時間が続くように錯覚させる。沈黙の闇に覆われた俺たちに時の刻みを教えてくれるのは、窟内に定期的に響く、水滴の音だけだった。 だが、この闇だっていつかは鍾乳洞の陥没と共に無くなる。この世に永遠なんて無いの だ。 「……ねぇ、圭ちゃん」 それを証明するかのように、静寂が魅音によって破られた。俺は突然来たその瞬間に、何故か少しの緊張を感じる。 「……ん?」 だが、沈黙で渇いていた俺は、その緊張を抑えつつ魅音の声に反応することが出来た。 「……圭ちゃんって、私のこと、……その、どういう風に思ってる?」 「え?」 つい、素っ頓狂な声を出す。 「どういう風って……、何が?」 質問の意味が少し理解できず、俺は魅音に聞き返した。だが、魅音はそれ以上何も喋らない。ただ、手で膝を抱えて俯いていた。まるで、今の言葉だけで真意を理解する事を望んでいるように。 しかし、懐中電灯の淡い光で照らされたその真剣な顔は、決してこれが不真面目な問いかけ出ない事を、十二分にこちらへ伝えてくる。真剣と言っても、勝負に勝つという真剣さではない。何か、とても大事な事を決心したような、そんな真剣さを魅音の瞳の奥から感じる。 それは、この部活の場にはひどく不釣り合いで、俺はどう反応すれば良いのかわからず、なかなか返答ができなかった。下手な事を言ってしまい、魅音を傷付けるような事はしたくなかったのだ。 しばらくの思考。魅音は微塵も動かない。俺の答えを待っているのだ。俺が答えるまで、魅音は何十分でもこの状態のまま待つつもりだろう。 魅音が何故こんな質問をしたのかはわからない。だが、何かに悩んでいて、誰かの言葉で救って欲しいと思って、俺に相談している事はわかる。だから、俺も魅音がどんな言葉を求めているのかを真剣に考えた。 その答えが、正しいかどうかはわからない。だけど、一人の仲間として、魅音の悩みを吹き飛ばすように笑顔で快活にそれを言ってやった。 「……最高の仲間の一人だと思ってる。お前が何を悩んでるのかは知らない。だけど、これだけは絶対だから、安心しろ」 俺の言葉を聞き、一瞬驚いたような顔をする魅音。だが、その後の反応は、俺の期待していた反応とは程遠い物だった。 「……そっ、か」 そう魅音は消え入りそうな声で言うと、膝を抱えていた両腕に顔を埋めてしまったのだ。直前にした、今にも泣きそうな魅音の顔を、俺は見逃さなかった。 誰がどう見ても、今の俺の返答で余計に魅音を傷つけてしまったのは明らかだった。理由はわからない。だが、俺の不用意な発言のせいで、仲間の一人が深く傷付いてしまったのは確かなのだ。その事実が、俺の胸を後悔という名の釘で抉る。これなら、何も答えない方が却って良かったのではないか……。 俺はそれ以上何も言えず、気まずい空気の中頭を垂れた。それは、さっきの魅音の姿勢と似ていたかもしれない。とんだ皮肉だ。 気づけば、今まで消えていた沈黙の闇が、再びこの場を支配していた。気のせいか、さっきよりも更に空気が重いように感じる。窒息してしまいそうだった。 そうして、無機質な時間がひたすら過ぎてゆく。水滴の落ちる感覚がやけに長い。 この空気をどうすれば拭い去る事が出来るのか。いや、どうすれば魅音の悩みを解決できるのか。 俺には見当も付かなかった。 3へ続く
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私、前原圭一は、操を狙われていました。 なぜ、どうして、操を狙われたのかはわかりません。 ただひとつ判る事は、 オヤシロさまの祟りと関係があったと言う事です。 どうしてこんなことになったのか、私にはわかりません。 これをあなたが読んだなら、その時、私は廃人になっているでしょう。 意識があるか、ないかの違いはあるでしょうが。 おかしい、何かがおかしい。 俺の名は前原圭一。東京からこの雛見沢へ引っ越してきたばかりの、村のニューフェイスだ。村のみんなは優しくて、初めての田舎暮らしに慣れない俺をあれこれと面倒を見てくれた。 よく耳にする、田舎は余所者を受け付けないなどという事もなく、俺はこの数ヶ月間を都会に居た頃とくらべて雲泥の差といってもいいほどにリラックスして送ってこられた……。 だけど、あの晩……綿流しのお祭りを境にして、世界は豹変してしまった。別に、レナや魅音といった俺の親友がおかしくなったとか、そんな話じゃない。もっと直接的で、体感的な事だ。 それは…… 「探しましたよ、お兄ちゃん!」 ジャーン! ジャーン! 「げぇっ富竹さん!!」 俺の背後に、やたらとダンディな声と鍛え抜かれた逞しいボディをビキニパンツ一丁でグググ! と誇示する、フリーカメラマンの富竹さんが現れた。いや、現れてしまったというべきか。 というか追いつかれたのだ。なぜなら俺は、今この男から全速力で逃げてきたのだから。俺は息がすでにあがっているが、富竹さんは余裕でとびっきりの笑顔を貼り付けたままだ。半裸で。 レナの宝探しに付き合っていた時に始めて会った富竹さんは、フリーのカメラマンを名乗る気弱そうな、どこにでもいそうなおっさんだった。ただひとつ、鍛え抜かれたボディを除いて。 富竹はいつも鷹野さんという綺麗なおば……女性と一緒にいて、綿流しのお祭りの時もそうだった。だけど、一夜明けてみれば鷹野さんは失踪し、そして富竹さんはビキニパンツ一丁の半裸という格好で俺の前に現れる様になってしまった。 それも、彼はどこをどうトチ狂ってしまったのか、この雛見沢をトミタケアイランド呼ばわりし始めた上に、俺の妹を名乗って大好きですとかいって追いかけまわしてくる。彼がこんな変態だったとは……。 いや……だけど、富竹さんはそういえば、初めて会った時にも君のような美少年がどうのこうのと言っていた。もしかしたら、いや、もしかしないでもそうだ、そうに決まっている。 富竹さんはガチホモの上にショタコンなんだ。救われないぜ……。俺が。 そうさ、これが富竹さんの本性だったんだ。だから鷹野さんはきっと、それに気づいて*されてしまったんだ。くそ、これ以上この場にとどまったら俺もどうなってしまうか解らない……!! 「あんなに約束したのに、ひどいじゃない!」 「うるせぇ来るな、来るんじゃねぇぇぇぇっ!!」 俺は言う事を聞きたがらない脚に鞭を打って再び駆け出す。今、富竹さんに捕まってしまったら、きっと俺は二度と戻る事のできない深みに落ちていってしまう気がする。 だから、逃げる! 全速力で! きっと今なら、カール・ルイスにだって競争して勝てるだろうと思えるほどの速度で、あぜ道を走る。走って走って、走り抜ける。目的地は魅音の家だ。俺の家は恐らく、すでに特定されてしまっているから危険だ。 魅音なら訳を話せばきっと俺を匿ってくれるはずだと親友を信じて走る。 これだけの速度だから、さすがの富竹さんも俺に追いついてはこられなかった。というかあの人、はだし、だから……。そしてようやく魅音の家にたどり着いた。 相変わらず大きな家だ……珍しいインターホンを押して、魅音に取り次いでもらおうとする。 しかし、俺がインターホンに手をかけるまえに、重そうな門戸がぎぃーっと開かれる。そして中から現れたのは…… 「待ってたよ、兄ィ!」 張り裂けんばかりの笑顔の富竹さんだった! いやもうさん付けなんていらない、こんな変態、トミタケで十分だっ。しかも兄ィなんて、異様に気持ち悪い呼び方をされた。やめてくれ。 「ぎゃあああっ! なんであんたがここにいるんだ!!」 「それは運命さ! 兄ィと私は運命の赤い糸で……」 「うっせぇええええ! 俺の魅音を返せよぉぉぉ!! うわああああっ!!」 もうだめだ、ここにトミタケがいるって事は、きっと魅音は*されてしまったに違いない。俺は号泣しながら身を翻すと、他に俺を匿ってくれそうな家を考える。 どこだどこだ、どこに逃げればいい……! ……そうだ、沙都子と梨花ちゃんの家なら! ちょっと遠いが、あの二人なら奇想天外な方法で俺を助けてくれるはずだ。小さな女の子に助けを求めるなんて男として情けない話だが、今はそんな事を気に掛けている場合じゃない! 「あ、兄ィ、待ってよぉ!!」 やっぱり後ろから追いかけてくるトミタケを尻目に、俺は二人の家へまっしくらだ。梨花ちゃんの策略と沙都子のトラップがあれば、あんな筋肉ダルマなんて一網打尽にできるはず。とにかく急げ。 しかし俺が疲れてきたせいか、さっきよりも脚の速度が上がっている気がするトミタケをなかなか振り切れなかった。それでも、林を通ったり田んぼを突っ切たりしてなんとか撒いて走ると、二人の家が見えてくる。 「お、おぉぉい! 沙都子ー! 梨花ちゃーん! 頼む、開けてくれ!! 今は何も聞かずに俺を匿ってくれ!!」 そんなに大きい家じゃないから、叫べば聞こえるはずだ。すると俺の願いは叶ったようで、すぐに上の階からどんどんと二人分の足音が降りてくるのが聞こえる。俺の悲壮な声に緊急性を感じてくれたのだろう。 しかし。 「兄君様、どうなさいました!?」 「どうしたのですか、兄上様……」 俺の目の前に現れたのは、可憐な二人の少女ではなく……鍛え抜かれたボディが逞しいトミタケだった! それも二体……二体だと!? 俺の眼が点になる。いやまて、トミタケはトミタケであって、唯一無二の存在のはずだよな。生き別れの双子がいたなんて話、聞いた事もないぞ……いやもうそんな事はどうでもいい。大事なことは、悪魔が二匹になったって事だ! そして梨花ちゃんと沙都子まで*されてしまったということだ! なぁんてことだ……ええい、こうなればここもデンジャーゾーンでしかねえ! 涙も枯れ果たて俺は、生きるために踵を返して最後の希望であるレナの家へ向かって飛び出した。 レナは自分の家に俺をあげるのをを嫌うが、だけど、これだけの事態だ……話せば解ってくれるはずだ! ……でも、魅音が*されて、沙都子と梨花ちゃんも*されたとなると……いや、まさか、そんな。レナに限って、そんなはずが……! 俺はレナの無事を願って彼女の家へと走ったが、しかしそんな願いは無惨にも打ち砕かれる事となった……俺の悪い予感が的中する。 そう、息も絶え絶えにたどり着いた竜宮家の玄関から出てきたのは、あのかいがいしく可愛いレナではなくて―― 「はぅ~~~兄チャマ見つけた! お持ち帰りィィィィィイ!!」 トミタケだった。 俺は絶望と怒りの余りに絶叫する。天をも突かんばかりに怒りの声を空へ放つ! 「くそぉぉおおおお! 俺の大事な人をみんな*しやがってぇええ! しかも気持ちの悪い真似まで……もう許さねぇぞ!! 大石さんに援軍を頼んで、てめぇを一五〇〇秒で雛見沢から消し去ってやる!!」 だけど結局、どこまでも他力本願な俺は玄関に置いてあったレナの形見の自転車を奪って輿宮の町を目指す。亀有のお巡りさん並の勢いでペダルをこぎまくる! たぶん、時速一〇〇キロは出ているはずだ、もの凄い勢いで景色が流れていく。この調子ならすぐに輿宮の町につくぞ! そして、あっという間に輿宮の町へ着いた。なんだか人気が感じられないが、構わず真っ先に警察署を探して駆け込んでいく! 俺の名を出せばすぐに捜査一課に通されるはずだ。 大石さんは俺を貴重な情報源と思っているらしいからな……! ちょっとしたVIP待遇みたいなもんだぜ。うぇっww だが、署に入ってみて違和感を感じた。おかしい――静かすぎる。まさか、いやそんな馬鹿な。 それに大石さんは別に大切な人じゃないぞ……んっふっふ、なんて笑いが気に障る程度のおっさんに過ぎないんだ。 というか俺の頭を踏んづけてくれた恨みは忘れねぇぞ。 だ、第一、トミタケといえど警察署の人間をまるごと**してしまうなんて、できるはずがない……。 なんて思っていると、俺の背後から聞きなれた笑いが飛んでくる。それにほっと安心した俺がいけなかった……。 「んっふっふ。来てしまいましたか、お兄ちゃん……」 お兄ちゃん、だと。まさ、か…… 俺は、錆び付いた歯車みたいにギギギと音がなりそうな程にぎこちなく首を後ろに回す……見たくない見たくない、見たくない……そう願ったが、やはり俺の眼に入ってきたのはトミタケだった。 悲鳴を上げて逃げ出そうとするが、しかしこのトミタケは俺を追いかけようとはせず、むしろ諭すような口調で俺を呼び止める。それは大石さんの喋り、そのものだった。 それに違和感を感じた俺は、勇気を振り絞って立ち止まる。 ……よし、トミタケは動かないみたいだ。他のトミタケとは違う……? そんな問いを俺は謎のトミタケに投げかける。すると、謎のトミタケは静かに語りはじめた。 「こんな姿をしてはいますが……私は大石です。あなたの敵じゃあありません」 「だ、だけど! どう見ても大石さんじゃなくてトミタケじゃないか!」 「いいから話を聞いてください、いいですか。今、この辺り一体には恐ろしいウィルスが蔓延しているんです」 「な、なんだって? ウィルス!? もしかして、トミタケの豹変と関係があるのか!?」 「そうです。そのウィルスの名前は「T-ウィルス」……ちなみにTは、トミタケのTです」 「んな事どうでもいいよ! そのウィルスがどうしたっていうんだよ!」 「このウィルスは、鷹野三四によって人為的に散布されたものです。いわば、生物兵器……!」 「な、なんだって? 鷹野さんが? なにがどうなってるんだ……」 訳のわからない俺に、謎のトミタケが勝手に核心に迫っていく。俺はもはや、呆然と立ち尽くしてその話に耳を傾けているしかなかった。 「そしてこのウィルスがヒトに空気感染すると、皆このようなトミタケになってしまうのです……身も心も!」 「なんてことだ……あのトミタケは、レナや魅音の成れの果てだったっていうのかよ……そんなのって……! ……・じゃ、じゃあなんで俺は大丈夫なんだよ……あんたも、心はトミタケじゃないみたいじゃないか」 「……私は、今しがたこの町に帰ってきたばかりです。まだ症状の進行が浅い……鷹野三四の陰謀をつきとめ、危機を知らせようとしたが遅かった……! だけど、お兄ちゃん! う、ぐぐぐ……! 違う、前原さん! あなたは違う、あなたは奇跡的にT-ウィルスへの耐性が備わっていた! だから前原さん、あなたは今すぐ町を脱出して遠くへ逃げ延びるんです。 そしてこの危機を、雛見沢大災害の事をどうか全世界に伝えて欲しい! このウィルスが世界中にばら撒かれたら、この世の終わりが来る……! だからだかだかだか……うぅ、お兄ちゃーん!」 く、くそ! とうとう大石さんまで感染しちまった……なんだかよく解らない。 なんでトミタケ化すると俺をお兄ちゃんと呼ぶのかも解らないが、とにかく俺は世界の命運を握っているらしい。 だけど鷹野さんが全ての黒幕だっていうなら、皆のカタキを取ってやる。泣いたり笑ったりできなくしてやる!! よし、逃げるぞ! そうだ、東京へ戻ろう! 金がないなら歩いてでも行ってやる! そうして復讐に燃える俺は警察署を飛び出した。 だが、警察署から出た瞬間に俺の進路を一二人ものトミタケが塞ぐ! くそ、こいつら待ち伏せてやがったな!! 「お兄ちゃん!」 「お兄ちゃま!」 「兄ィ!」 「お兄様~!」 「おにいたま~」 「兄上様!」 「にいさま!」 「アニキぃ!」 「兄くん……」 「兄君様ぁ!」 「兄チャマー!」 「兄やぁ~」 野太い声でおぞましいセリフを吐くトミタケ軍団が俺を襲う……! 「ぐわあああっ!! てめえら、俺をどうするつもりだぁああっ!!」 俺は必死にトミタケたちを払おうと抵抗するが、鍛えられたトミタケのボディから繰り出される肉体的接触は、俺などではとても抗えないレベルで……! く、くそ、こんな所で、こんなところでぇぇぇぇ……!! 俺はトミタケまみれになり、意識がブラックアウトしてい、く…… ごつん、と頭になにかが当たる音がした。頭をふっと上げると、青い髪の女の人が怒ったような顔で俺を見ていた……。 「あ……知恵、先生……」 「前原くん。授業中ですよ!」 「ゆ、夢だったのか……良かった、良かったぁああああ!!」 悪夢から救われた事に身が打ち震えて、俺はついがばぁっと知恵先生に抱きついてしまう。 知恵先生、おしりがイイよなうぇへへへへなんて邪な感情は一切抱いてなどいない。 ただ、まともな人間を久しぶりに見た様な感覚に安穏を得ようとする体が言う事を聞かないだけで。あぁ、良いニオイ~。 「ま、前原くん! やめなさい、そんな、まだ心の準備が……いやそうじゃなくて」 「先生ぇ~~俺怖かった、怖かったよぉぉぉ」 どさくさに紛れて先生の胸の谷間に顔をうずめてぐりぐりする俺を遠目に、他の生徒たちがひそひそ話をする。 「みー。なんだか今日の圭一は様子がおかしいのです。まるでセクハラオヤジなのです」 「圭一さんって年上好きでしたのね……それにしても大胆ですこと」 「そんなぁ……け、圭ちゃ~ん……」 「先生~~!」 「前原くん、放しなさいっ、あ、いやっ、そんな所さわっちゃダメぇ!」 何か興奮してしまって止めるに止められない状態になってしまった俺は、だから背後に近づく巨大な殺気に気づく事ができなかった。 その手が肩に触れてはじめて気づき、自身の愚かな行為を悔いるまでは――。 「あはははははははは。圭一くん……見損なったよ。そんなハレンチな人じゃないと思ってたなぁ……卑劣漢。恥知らず! これが前原流のやり方なの?! 私ばっか喋り尽くめ? 黙ってんじゃないわよッ!! 聞いてんの前原圭一ッ!!」 レナが、どこから取りだしたかの大きなトマホークを構えて鬼の様な形相で俺を睨んでいた。 あの、レナさん? それってもしかしてゲッタートマ…… 「うっさいなああぁぁぁッ! 黙ってろって言ってんでしょおおおぉぉッ!!」 「ちょ、待て、何も言ってねぇえええ!」 「あはははは! お前は汗の代わりに血を流せばいいやぁぁっ!」 あ、だめだ聞いてない。 そうして俺は暴走したレナのゲッ○ーストラングルを喰らいながら、意識を飛ばしていく。くそー……なんであんな夢を見ちまったんだよぉ。 そして、まさかレナに引導を渡されて人生を終わるとは思ってもいなかったぜ……。 あぁ、もうすぐ七夕だな……それまで生きていたかったなぁ。 ……でも、もし生きながらえたら、短冊の願い事は絶対にこう書いてやる! 「トミタケが喉を掻き毟りますように」 これを読んだあなた。 どうか真相を暴かないでください。 どうかそっとしておいてください、思い出したくありません。 それだけが私の望みです。 前原圭一 プリンセス・オブ・トミタケ ~究極 男の妹~ 完
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薄暗い地下祭具殿の中で、私は虚空を見上げる。 ひんやりと湿った空気が、不思議と心地いい。夏に縁側の下に潜り込むネコというのはこんな気分なのだろうか? もっとも、ここがどんな場所であるかを知っていながら、それでもそんな気分になれるというのは我ながらどうかと思うけれど。 「あの……。魅音さん。それで自分達を呼んだ理由というのは、何なのでしょうか?」 私は視線を彼らに戻す。 いつものように「園崎家次期頭首」としての眼を向けると、彼らの顔が益々固く強ばる。どうやら、何らかの叱責を受けるものと思ってしまったらしい。別に私にそんなつもりはないのだけれど。 確かに、何も彼らに思うところが無いと言えば嘘になる。だがそれは責めるようなものではない。 我ながら臆病だと思う私の心。内心では恐くて震えている。 けれど、覚悟は決まっている。だから、私は声までは震えさせることなく要求を伝える。 “私が詩音と同じケジメを付ける手伝いをしなさい” 彼らは一様に息を呑んだ。 それもそうだろう。よりにもよって自分を犯せと言ったのだ。無理もない。 「あの……冗談……ですよね?」 「冗談などではありません。私は本気です」 困惑した笑みを浮かべる彼らに、私はきっぱりと言い返す。 「そんな。……何故ですっ!? そんなこと、魅音さんにする理由が……筋がありません」 「お願いですから、考え直して下さいや。魅音さんが何を考えているのか、自分にはよく分かりませんが、ですが……どうかご自身のことを大切にして下さい」 血相を変えて、彼らは私を押し止めようと口を開いてくる。 そうだと思う。私だって自分を自分で馬鹿だと思う。 けれど、この生き方を変えることは出来ない。それを変えるということは、私はもう「魅音」ではなくなるということだ。 たとえ結果がどうであれ、私は「詩音」を汚した。「魅音」と「詩音」は常に同じだった。「詩音」の悲しみや苦しみを分かち合うのが「魅音」だ。「魅音」の生き方を継いだ私が、「魅音」としての生き様まで汚すわけにはいかない。 「……私もまた、詩音の行いに対し荷担しました。ケジメを付けなければならない理由ならあります」 「そんなの、黙っていればいい話じゃありませんか。俺らだって、そんなの黙ってます。決して誰にも、誓って言いやしやせん。ですから――」 彼らの……ヤクザにしては随分と良心的なことだが、その言い分も分からなくはない。ひょっとしたら口だけなのかも知れないが、そう言ってくる甘さに私はむしろ好感を覚える。 だが……。 「つまり、あなた達は私の言葉には従えない……そう捉えてよろしいということですね?」 私はあくまでも冷淡に、そう告げる。 彼らはしばし押し黙る。 そんな彼らを私は静かに見詰めて……。 「くっ……しかし、いくら魅音さんのご命令とは言っても……」 私はその言葉に、大仰に溜め息を吐いて見せた。 やれやれ、参ったね。彼らがここまで……意外と強情だとは思わなかった。けどまあ、それならそれでもいい。 「そうですか。そこまで言うなら、私もあなた達には頼みません」 「えっ……? それは……」 一瞬、彼らの表情に安堵の色が浮かぶが、私の顔を見てそういう意味ではないと悟る。 「あなた方を選んだのは、あのとき詩音を犯したのがあなた方だったから。なるべく詩音と同じ条件で……というだけの理由に他なりません。別に、他の人間でも構わないわけです」 そうだね。興宮で詩音に絡んだとかいう不良三人組でも探してみるか。それでなくても、それなりの格好をして誘えば、そういうのに飢えた連中の数人は見付けられそうなものだ。 我ながら、それこそ痴女みたいだと思うが。 数秒後、彼らのうちの一人が重たい息を吐いた。 「…………分かり……ました」 「おいっ!? お前。正気か?」 「仕方ねえだろ。……下手にそれこそ…………よりは、俺達の方がましだろ?」 「まあ……それは……そうだが」 どうやら、覚悟は決まったらしい。 「では決まりですね」 彼らがまた心変わりしないよう、私は直ぐに着物の腰ひもに手を掛けた。これが劇か何かの一場面で、決まり切っていたかのように私はその動作を行う。 手が震えそうになるのを無理矢理押さえ付け、帯を解く。 拘束していたものが無くなり、着物の前が大きく開き……そして私はするりと袖から腕を抜いた。 軽やかに着物が石畳の上に落ちる。 下着は元々身につけていない。それだけで私は一糸纏わぬ姿となった。男の前にそんな姿を晒すという羞恥に顔が赤くなるのを必死に誤魔化す。 「順番は誰からでも構いません。遠慮も要りません。……詩音に……したようにしなさい」 流石にここまでくると喉が渇く。一瞬、つっかえて上手く言えなかった。 「では、自分から参ります」 一瞬の目配せの後、一人の男が私に近付いてくる。確か、最後に詩音を犯した人だったっけ。 彼が私の目の前に立つ。 「それでは魅音さん。少々冷たいですが、横になって下さい」 私は頷き、彼の言葉に従う。 ひやりとした固い感触が私の背中から伝わってくる。 「…………失礼します」 彼は私の脚を大きく開かせ、私の秘部に顔を近付ける。 男の視線が私の秘部に突き刺さるかのようで、私の秘部が意志とは関係無しに震えた気がした。 「…………っ!?」 不意に、秘部からぬめった感触が伝わってくる。知識として知らなかった訳じゃないけど、それが男の舌だと理解するのに、ほんの一瞬とはいえ困惑した。 背筋をぞくりとした感覚が駆け上ってくる。 どうしようもなく恥ずかしくて、気色悪くて、でもそれに反比例するかのように私の体が反応する。 男の舌が私の秘唇を這い回る度……私の秘芯をこね回す度、私の秘部が痺れるような熱を帯びていく。 「んっ……んんっ」 そんな感覚を処理しきれず、私の声から喘ぎ声が漏れる。しかし彼は止めない。ぱっくりと開き、ひくひくと蠢く私の花びらを舌で愛撫し、蜜を啜る。 未経験なのだから、ちょっとは反応が鈍いのでは……と思っていたけど、どうやら私の場合は逆で、むしろ敏感ようだ。私が詩音にしたのと同じように、私の弱いところを責められ、私の秘部はあえなく潤ってしまった。 「はぁっ……あっ……ああっ……」 押し殺すような私の喘ぎ声。その反応を見て、私の体がもう準備万端なのだと判断したのだろう。男が私の秘部から顔を離す。 視線をそちらに向けると、ベルトを外し、ズボンを下ろした。熱を帯びた男のものが露出する。 男が私の上に覆い被さってくる。 「んっ」 屹立した男性器の先が私の入り口に当たり、心ならずも私は声を出してしまう。 「…………本当に、よろしいんですね魅音さん? もう、後戻りは出来ませんよ?」 私の耳元で、彼が努めて冷静に囁いてくる。……けれど、情欲を帯びた荒い息を隠し切れてはいない。 本当のことを言うと、恐い。詩音には悪いけど、逃げ出してしまいたい気持ちはある。でも……やはりそれだけは出来ない。 私は無言で「犯せ」と頷いた。 「では……参ります」 その直後、私の中に男性器が打ち込まれた。 「…………かっ……はっ……んぁっ」 体の中に生じる異物感に、私は目を見開く。 けれど、私の秘部はその熱くて固い肉の塊を締め上げていく。 ぎゅっと目を閉じると、少しだけ涙が零れた。 「大丈夫ですか? やはりお止めになった方が……」 男の不安げな声に、私は深く息を吸って呼吸を整える。 「遠慮は無用と言いました。詩音の時と同様に、構わず続けなさい」 そう答えると、男はしばし瞑目した。 「…………分かりました。それでは詩音さんの時と同様に、なるべく手早く済ませます。辛いかも知れませんが、だらだらと続けるより、その方が負担も軽いかと思いますので」 「……えっ?」 だが言うが早いか、男はピストン運動を再開する。 「はぁっ……あっ……あぁっ」 今までよりも激しく私の中を掻き回し、そして抉ってくる。 気持ちいいとかそんなのはよく分からない。痺れるように熱くて痛いだけ。虚ろで、私の何かが欠けていくという妙な惨めさを味わうだけだ。 荒々しく私の体を陵辱する男を感じながら、やっぱり悟史とは違うとか考えた。悟史だったらきっと、眉根を寄せてむぅとか鳴きながら、抱くんだろうな。 初めての相手が悟史だったなら、私だってきっとこんな……どこか虚しいというかそんな気持ちにはならなかったんだろう。ふと、そんな気がした。 (…………え?) 男に体を貫かれながら、現実逃避気味に残していた理性が疑問符を浮かべる。 (どうして私はこんなときに悟史のことを?) 熱い痺れに喘ぎながら、その答えを探る。 (どうして私は……こんな感情に?) それは、考えるまでもない答え。知っていた答え。ただ、気付かなかっただけ。 (相手が悟史じゃないから?) それは何故? “私も、悟史のことが好きだったから” けれど、今の私の行為は、初めてを悟史と……という機会を永遠に失ってしまうものだ。 ダカラソレガ悲シクテ……。 心の奥底から、感情の波が押し寄せる。 「……っ!!」 ダメだ。 そんな感情、今はダメだ。 忘れろ。忘れるんだ園崎魅音。 「はぁっ……あぁっ……あんっ……くっふっ……んんっ」 私は湧き上がる感情から逃げるように、男のものを受け入れることに意識を集中させた。……とにかく、とにかくとにかく、今は忘れよう。 「あふっ……くぅんっ……んんっ……あんっ」 私の中を犯す男性器の先が子宮にぶつかる度、その刺激が私の頭の中にノイズを生み出すような錯覚を感じる。 「ふぁぁっ……んくっ……んんっ……」 膣壁が彼の節くれ立った部分や反り返った部分に擦られる度、私の秘部からじわりと蜜が溢れていく。 私の上から、発情した男の荒い息が聞こえる。 私の……普段なら絶対に出せないような情欲に染まった声に反応するかのように、男のものが更に私の中で固く熱くなっていく。 そして、彼が苦しげに呻きながら特に激しく腰を私に打ち据えて……。 「はぁっ……はっ……ああああっ」 彼は自分のものを私から引き抜いた。 どろどろに熱くたぎった精液が私の体に降り注ぐ。それを見下ろしながら、私は妙に冷えた感情が湧き上がるのを感じた。 あははは。こりゃいーや。自分が汚れたってよく分かる。最低の気分だ。 薄ら笑いを浮かべながら、私はその場に立ち上がった。 「さあ……次はどちらです?」 そして、それから私は詩音と同様に四つん這いの格好で後ろから犬のように犯され、そして下から突き上げられるように犯された。 それから、私は彼らを解放し、シャワーを浴びてベッドに入り込んだ。声を押し殺して泣いた。きっと、私の胸の痛みは全然詩音が受けたものに届いてなんかいないと思うけれど。悟史の傷の痛みにも届いていないと思うけれど。 しかし、悪い事っていうのは続くものだ。 詩音があれだけ傷付いたっていうのに、あの数日後に悟史がいなくなってしまった。 その事実を知ったときの衝撃は、私自身上手く説明出来ない。とにかく、心の中にぽっかりと大きな穴が空いたようだった。 沙都子なんか、それこそ見ていられなかった。 でも、同時に思う。それなら詩音はどうだったのだろうかと……。 会うのが恐くて、ずっと避けていた。 ……学校にも行っているし、男の人に対する怯えも収まったようだと葛西さんには聞いている。 でも、それでも様子は直接この目で知りたかった。だってたった一人の妹だもの。 それに……結局、私はまだ詩音に謝っていないのだから。 「…………よしっ」 私は大きく息を吸って、鍵を詩音の部屋のドアに差し込む。 「葛西なの? ……大丈夫。鍵は開いてますよ」 「葛西さんじゃないよ。詩音」 出来るだけ穏やかな声で、詩音に告げる。 そして、ドアノブから鍵を引き抜いて、手を伸ばす。 「…………入るよ? いい?」 「……うん」 そんなたった少しのやり取りに、私の緊張が弛緩する。 私はドアを開けて、詩音の部屋に入った。 久しぶりに見る詩音の顔は…………優しい笑顔だった。 「いらっしゃい。魅音」 「うん」 詩音は笑って私を出迎えてくれた。 それが、本当に嬉しかった。 (ごめんね詩音) そして、私は微笑みながら詩音へと近付いていく。詩音の本当の胸中なんて、欠片も理解していないまま……。 ―END―
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圭一家畜(マゾ)ものです。 「それじゃあレナちゃん。 今日も圭一のこと、よろしくおねがいね?」 「はいおば様♪ 圭一くんのことは全てレナにまかせてください。 はぅ~♪」 「うふふふ、ほんとレナちゃんは良い子ね~?だらしない圭一のお嫁さんにピッタリだわ♪」 「は、はぅ。 そんなおば様ったらぁ……」 圭一くんのお家の玄関。 そこでレナはおば様にいつもどおりそうお願いされました。 毎朝言われていることだけど、レナはいまだにこのやりとりがちょっと恥ずかしいです……。おば様によろしくおねがいって言われる。 そしてお嫁さんになんて言われちゃうと、なんだかお腹の下あたりがすごくムズムズしてきちゃうの。 そうだよね……。 もしレナと圭一くんが「そう」なったら、おば様はレナの本当のお母様になるんだよね。 は、はぅ~♪ 「あ、あのあの。 こんな不束者ですが、どうぞよろしくお願いします……」 「ぷっ! あははは、レナちゃんほんとに可愛いわ。 うちの息子と取り替えたいくらい♪」 「は、はぅ~。 そんなこと言っちゃダメですよぉ……圭一くん拗ねちゃう……♪」 圭一くんのお母様。 とっても気さくで素敵な人です。 おまけにすっごく美人さんなの。 圭一くんをお迎えしに来るのが目的だけど、おば様に会えるのもすっごく楽しいです。 彼がこの雛見沢に来てからもうずっと、それはレナの日課みたいなものになってました。 「にしても遅いわねあの子……ほ~ら圭一!レナちゃんもう来てるわよ~早くしなさ~いっ!!」 おば様が階段の上に声をかけます。 するとめんどくさそうな顔をしながら圭一くんが降りてきました。 なんだか……まだちょっぴり眠そうなのかな? 圭一くんは目蓋がうつらうつらしてて、まだ半分夢の中にいるみたいです。 ヨロヨロと階段を降りてきながら、レナ達のいる玄関にまで靴を履きに来ました。 「まったく……ほら、もっとシャンとしなさいってば! あんたね、毎朝わざわざレナちゃんが迎えに来てくれてるから遅刻しないですんでるのよ? わかってるの?」 「はぅ……そ、そんなおばさま、レナはべつにいいですから……」 「いいのよレナちゃん。 この子は甘やかすとすぐつけあがるんだから、これくらい厳しく言うくらいがちょうどいい……のっ!!!」 そう言っておば様は、まだ眠そうにしながら靴を履いている圭一くんのお尻を叩きました。 うわ、痛そう。 途端にパっと目を開き、痛えなぁと呻く圭一くん。 くすっ、かぁいい…♪ あ、でもレナもおば様の言うことには賛成かな。 かな? 圭一くんはたしかに甘やかすと調子に乗っちゃうところ、あると思うな。 子供みたいに。 それはレナもよく知ってることだしね……♪ 「ほら、さっさと靴履きなさい! まったくあんたは……じゃあレナちゃん、よろしくね?」 「は~いおば様。 グ~タラな圭一くんはちゃ~んとレナがお世話しますから安心してください。 はぅ~♪」 おば様に合わせてレナがイジワルを言うと、圭一くんは何かブツブツ言いながら玄関を出て行っちゃいました。 はぅ、置いていくなんてヒドイよぅ……。 「ま、待ってよ~圭一くん……。 あ、それじゃあおば様、いってきま~す♪」 「いってらっしゃいレナちゃん♪ あ、圭一!レナちゃんに迷惑かけるんじゃないわよ!」 まるでテレビドラマみたいなやりとりです。 優しいおば様の声に見送られながら、レナは玄関から飛び出していきました。 置いてかれちゃうと思って慌てて走ったけど、圭一くんは歩くのを緩めてくれたみたい。 すぐにその背中に追いつけました。 いつもみたいに並んで登校していきます。 レナと圭一くんはすっかり仲良しさんなの♪ あ、でもあんまりのんびりもできないみたい。 結構早めにお家を出てきたのに、大分時間が経っちゃってました。 もう、これも圭一くんがお寝坊さんのせいだよ……。 「……これはお仕置きが必要だね。 きっついお仕置き。 圭一くん、覚悟はいいかな?」 レナが静かにそう呟くと、隣にいた圭一くんはビクンとしました。 あ、ちょっと怖かった? なぁんてね、嘘。 圭一くんをちょっと驚かせようとしたレナのイジワルでした。 玄関であんなに待たされたんだもん、レナだってちょっとはお返ししてもいいはずです。 でもそれだけだとアレなので、念のため釘を刺しておくことにしました。 隣で歩いている圭一くんの耳元に、スっと口を近づけます。 そして言ってあげるの。 「でもちゃんとしてないと、ほんとに「やっちゃう」からね? それだけはちゃ~んと覚えておいて。 ……わかった? ねぇお返事はお返事。 レナ圭一くんのお返事聞きたいなぁ……」 ……圭一くんはコクンと頷いてくれました。 うん、良い子さん♪ それじゃあ行こうか? レナは圭一くんと手を繋ぎます。 そして学校までの通学路を一緒に歩いていきました。 最近はもうこうして手を繋ぐのが当たり前になってます。 仲良しの証拠なんだ。 朝の陽射しがとってもきもちいい雛見沢。 村のあぜ道をこうして並んで歩いてると、レナはまるで圭一くんとデートしてるみたいな気分になれるんです。 はぅ~♪ これでしばらく二人は恋人気分。 魅ぃちゃんとの待ち合わせ場所に着くまでの数分、圭一くんはレナだけのものなんだよ。 やった~やった~よ~♪ ……ああ、でもそうはいかないみたい。 レナは気が付いちゃいました。 両脇が田んぼに挟まれた坂道。 魅ぃちゃんの待ち合わせ場所までの中間くらいのところに差し掛かると、なんだか圭一くんの様子がおかしくなってたの。 息がハァハァ荒くなっていて、お顔もちょっぴり熱っぽいみたいに赤くなってたの。 「どうしたの圭一くん。 お顔が真っ赤っかだね?」 レナはそう聞いてあげました。 大好きな圭一くんがお風邪でも引いてたら大変だもん。 当然、心配になります。 …………なぁんてね。 ほんとは全部わかってる。 これは風邪なんかじゃない。 お病気でもないの。 まあ強いて言うなら、男の子の発作かな? オスに特に起こりやすいものだね。 「はぁ……またなの圭一くん。 ほんと毎朝毎朝、なんだね……」 あまりにわかりやすい彼の仕草に、レナはおもわずため息をついちゃいます。 隣で歩いている圭一くんはそれにビクっとしました。 圭一くんの考えてることなんて、全てお見通し。 おまえはほんとにわかりやすいね? どうせまたいつもの「アレ」なんでしょう。 レナにはすぐにわかっちゃった。 嫌でもね。 毎朝毎朝のことだもん、そりゃあわかるよ。 レナのこと馬鹿にしてるのかな。 さっきまで恋人気分がもう台無し。 台無しだった。 どうしてくれるんだろう。 ……でもそんなの圭一くんは関係ないみたい。 なんだか身体をソワソワさせて、レナのお顔を期待を込めて見つめてくるの……。 「……なぁに圭一くん。 レナのお顔に何か付いてるかな。 かな。 はぅ~、虫でも付いてたら嫌だよぉ。 取って取って~?」 ほんとはわかってるんだけど、レナはわざとイジワルをして焦らしてあげます。 だってこれは圭一くんのお願いだから。 「ペット」のおねだりなんだから、ご主人様がイジワルするのは当たり前だよね。 すると圭一くんはモジモジし出しました。 恥ずかしいのかな、なんか子供みたいに身体を揺らし始めます。 おまけになんか口元でゴニョゴニョ言ってる……。 「シテ」だとか、「欲しい」だとか。 あーそういうの嫌いだなぁ、レナ。 男の子のくせにウジウジウジウジ。 言いたいことがあるならはっきり言って欲しいの。 そういうの、ペットとしてはよくないよ? そんな男らしくないから、レナや魅ぃちゃんはおろか…梨花ちゃんや沙都子ちゃんにまで……。 まあ、とにかくレナは怒ります。 はっきりしないペットは大嫌いだもん。 ちゃんとしつけてあげないとね。 嘘だッ!!の時じゃないけど、圭一くんのお顔をキツク睨みながらこう叱ってあげるの。 「だから、なに? そんなオドオドしてないではっきり言いなよ、このブ●野郎……」 ビクンっと身じろぎする圭一くん。 レナがそんなに怖かったのかな、そのままブルブル怯えていくの……。 ちょっと言いすぎたかな。 そこまで言うつもりなかったんだけどなぁ。 でも圭一くんは家畜だし、これくらい平気だよね? うんうん平気平気♪ レナがイラついてるってわかってくれたみたいだし。 すぐに彼は「ごめんなさい」してくれました。 あ、でもちょっと朝からキツすぎたかな。 ごめんなさい連呼モードになっちゃったよぉ~これはダメ。 「しつけ」ってやっぱり難しいです。 レナはすぐこうやって圭一くんを壊しちゃうの……。 だからレナはすぐに慰めてあげる。 ちゃんと直してあげないとね♪ 「はぅ~ごめん。 ごめんね圭一くん。 今のは嘘だよぉ~泣かないで? ね、ね?」 そうして今にも泣きそうなお顔を撫でてあげます。 さっきとはちがって、今度は圭一くんの身体を優しく抱きしめながら言ってあげました。 もちろんその時に胸を押し付けるのも忘れません。 圭一くんの胸板に、ポヨン…とセーラー服の胸元を押し当ててあげるの。 単純だもん。 こうしてあげれば、すぐ元通りになるんだよね? ほんとにスケベな男なの。 「ほら、機嫌なおして? レナが悪い子さんだったから……ね、ね、ねぇ?(むにゅむにゅむにゅ♪)」 そうやって何度も胸を押し付けていきます。 これはレナの得意技なの。 すると思ったとおり、圭一くんはすぐに立ち直ってくれました。 ほんとにバカな男……。 さっきまであんなに怯えていたのに、もうすっかりレナのセーラー服の胸元に目がいってます。 男の子ってほんとに簡単です。 簡単に手玉に取れるの。 致命的な弱点だね。 さっき圭一くんがお願いしようとしてたことも、つまりはそういうことだしね。 彼はレナに朝のご褒美が欲しいって、おねだりしてたんです。 もう毎朝毎朝の日課になっちゃってます……。 「もう、圭一くんったらしかたないなぁ……♪ でもここじゃダメだよ? え~っと……」 レナはキョロキョロと辺りを見回しました。 さすがにこんな往来のど真ん中でしてあげるわけにはいかないもんね。 人口が少ない雛見沢とはいえ、そのへんの田んぼには朝から野良仕事をしている人達もいます。 誰か人目につかないところ……と探していると、ちょうど良さそうな茂みがありました。 そこは深く木々が生い茂っていて、あそこなら誰にも見られる心配はなさそうです。 レナは圭一くんの手を引いてそこに入って行きました。 ……連れこんだって言ったほうが正しいかな。 まあとにかく、ペットを連れて入りました。 「……うん、ここなら誰にも見つからないね。 いっぱいエッチなことできるよ? くすくす♪」 思ったとおり、うまいこと木々が死角になって外からわかりにくい場所でした。 レナがそれを確認し終わると、圭一くんはもう待ちきれないとばかりに息を荒くしてました。 直立不動でジっと立ち尽くしたまま、ご主人様がこれからシテくれることを期待待ちにしているの。 「ふふふ……そんなに嬉しいの? ほんと圭一くんはスケベなんだから……♪」 レナがそう妖しく微笑んであげると、圭一くんはゴクンとつばを飲み込みました。 よく見るともうズボンの前がパンパン。 さっきおば様といる時はこんなになってなかったのに、いつのまにこんなに大きくさせたんだろうってくらいビンビンになってました。 ひょっとして……レナと仲良く手を繋いでる時にこうなっちゃったのかな? その時のレナは圭一くんを恋人みたいに感じてた。 手のぬくもりがすごくあったかくて、ほんとに純粋に君を身近に感じていた……。 なのに、圭一くんはそのぬくもりで別のことを考えてたってこと? レナと手を繋ぎながら、頭の中ではエッチなことばかり考えてたってことなのかな。 かな。 ……やっぱりただのブタだね。 少しでも期待したレナが馬鹿だった。 家畜と恋愛なんて。 なんだかすごく嫌な気分になりました。 おもわず殴りつけたくなっちゃうくらいに。 でもそれはグっと我慢しました。 お仕置きはいつでもできるんだから、今はご奉仕してあげないとね……。 「ほ~ら圭一くん、いつもみたいにレナが脱がせてあげる♪ ジっとしててね~?」 赤ちゃんをあやすみたいにしながら、レナは圭一くんのワイシャツに手を伸ばしていきます。 両手をボタンにかけて、それを一つ一つ外していってあげる。 お母さんみたいだね。 ペットなんだから、自分で脱げばいいのにって思う? うん、レナもそう思うよ。 でも圭一くんはこういうのがいいの。 こういうのが大好きみたいなの。 女の子に服を脱がされる……。 それにたまらなく興奮する変態さんみたいだから。 「ヌギヌギしようね~? レナがぜ~んぶ脱がせてあげる。 くすくすくす……♪」 一個一個ボタンを外していく。 プチ、プチ、プチってやっていくと、圭一くんはとってもきもちよさそうな顔をしました。 レナに赤ちゃんみたいなお顔を見せてくれます。 ……その顔がもうほんときもちわるい。 すっごくきもちわるくて、レナおもわず吐きそうになっちゃった。 でも家畜としては大合格かな。 男の子としては最低だけどね。 ああ、言わないけどね? そうしてやっと下までボタンを外し終わると、レナは圭一くんの上半身を晒していきました。 女の子のと比べるとあんまりかぁいくない、男の子の汚らしいお肌が見えてきます。 沙都子ちゃんや梨花ちゃん。 魅ぃちゃんのとは比べ物にならないほど醜い身体。 いかにも家畜らしいお肌だけど、レナはそこにヒタリと手を当ててあげました。 手のひらをピタっと押し付けて、家畜の汚らしい上半身を撫で回すようにサワサワしてあげます。 「ふふふ……♪ 圭一くん、レナにこうやってサワサワされるの……好きだよね?」 色っぽく聞いてあげながら、レナは圭一くんの身体を撫で回していきます。 上の方で首筋を撫でると、そこからスっと下に向かって、お腹の下あたりまで撫でてあげるの。 下半身はまだオアズケ……。 でも圭一くんはそれだけで、ああ…と声をあげるんです。 もうたまらないみたいに喘いじゃうの。 その声を聞いてレナはあることを思い出しました。 今までにも結構、こういうふうに身体をサワサワしてあげたことがあるんだけどね。 前に一度だけ、圭一くんに言われちゃった言葉があるの。 なんだかレナって、痴女みたいだよな……。 そう言われたの。 言われちゃったんだよ、たかが家畜風情にね。 失礼な言葉。 すっごく失礼だよね。 女の子に向かってチカンみたいだなんて。 まさか圭一くんにそんなふうな目でみられてたなんて、その時のレナは大ショックだったのを覚えてる。 たしかに今もこうして茂みに連れ込んでる。 そして服まで脱がせちゃった。 おまけに彼の裸を撫で回しちゃってるけど、そんなこと女の子に言っちゃダメだよね? その時のことを思い出して、レナはまたちょっとイラっとしちゃいました。 魅ぃちゃんが待ち合わせ場所で待ってる。 あまり時間もかけてられないし、レナは圭一くんの敏感なところを責めてあげることにしました。 「……ココ、もうちょっと硬くなってる。 期待してたんだね、このド変態……」 ちょっとキツメの声で言ってあげました。 圭一くんはビクっとしたけどそんなの関係ありません。 男の子にも女の子にも付いている乳首。 圭一くんのおっぱいを指で愛撫してあげたの。 そこはもううっすらと突起していて、指の感触を柔軟に返してくるほどしこっていました。 レナはそこをキュっと摘んじゃいます。 ううん、もうギュウギュウ摘んでいっちゃう。 ちょっとコリコリしてました。 そのまま指先でコロコロ転がしていく。 おもちゃみたいにね。 「ほーらほら……。 圭一くんはドMだから、おっぱい弄られるのが好きなんだよね~?」 またそうやって聞いてあげます。 質問と言葉責めは調教の基本だもんね。 でも圭一くんは答えてくれません。 でもいい。 答えるまでもなく喘いじゃってるからね。 レナが乳首をコリコリするたびに、圭一くんは、あっあっあっ…と女の子みたいな声をあげていくの。 男の子のくせに恥ずかしい。 普通男の子って声出さないよね? 喘がないよね? でも圭一くんは我慢できない男の子なの。 喘いじゃうオス豚なの。 これはレナ達だけが知ってる秘密です。 こんなかぁいい圭一くん、あのおば様だって知らないんだよ。 だよ? くすくすくす……♪ でもいくら喘ごうとも、レナは指だけじゃ済ましません。 もっともっといやらしいことをしてあげるの。 左手でおっぱいを弄りながら、もう片方の乳首に……口を近づけていきます。 「ん……圭一くんのかぁいいおっぱい、いただきま~す。 あ~ん……♪」 途端に圭一くんは嬉しそうな顔をします。 というより、だらしないお顔かな? レナはそのお顔を眺めながら、チュパリ…っと乳首を口に含んであげました。 上でまた変なお声がしたけど、そんなの無視して硬いしこりをチュパチュパしゃぶっていきます。 最初は優しく、なんて考えない。 時間がないからもう乱暴に。 音を立てて乳首をしゃぶっていきます……。 「ん……どぉ圭一くん。 おっぱいきもちいい? 乳首チュパチュパされてきもちいいの?」 一旦口を離してそう聞いてあげると、圭一くんはうんうんって何度も頷きました。 その頷き方がちょっとおもしろかった。 きもちいいからもっとしてしてご主人様!っていうのが簡単に見て取れる感じだったの……♪ だからレナはご褒美にもっと圭一くんをしゃぶってあげる。 スケベなペットの乳首を舌で可愛がってあげるの。 「んふふ、すっごく硬くなってる。 もうピンピンだよ圭一くん……いやらしいんだ……♪」 チュパチュパチュパ……。 赤ちゃんがするみたいに吸ってあげると、圭一くんのおっぱいはますます大きくなっていきました。 まるでおちんちんみたいなの……。 もちろん、吸ってあげるだけじゃないよ? 時折口をチュポンと離して、レロレロレロと舌でねぶってあげるの。 こうしてあげると圭一くんは喜ぶ。 もうすっごく喜ぶの。 ほんとにドMさんだから、大興奮だよ。 「……きもちいい? たまらないんでしょ、レナにおっぱい舐められるの……くすくすくす♪」 ピチャピチャピチャ。 ハァハァハァ……。 本来なら誰もいないはずの茂みに、レナのしゃぶる音と圭一くんの喘ぎ声だけが響いていきます。 ふと上目遣いにしてみると、圭一くんがレナのお顔をジっと見つめているのに気がつきました。 なんだろう、そのお顔。 彼はなんだかレナに熱っぽい視線を送ってきてます。 レナのことを卑猥な生き物だとでも言うような感じ。 あ、これ前にも見たことある顔だ。 まさかまたレナのこと、痴女だとでも思ってるのかな。 おっぱいしゃぶられてるから? もう、すぐそれなんだから。 百年生きてる梨花ちゃんみたいな熟女ならともかく、レナは圭一くんと同い年くらいの女の子だよ? チカンさんなんかになれるわけないのに……。 ほんとにスケベな女の子、って感じに決め付けてる。 そんな目だよ、圭一くんのそれは…。 「……そんないやらしい目で見ないでよ。 たかが家畜のくせに、レナに刃向かってるの?」 ……またイラついちゃいました。 だって家畜のくせにレナを見下してくるんだもん。 だからガリっとやっちゃった。 圭一くんの乳首に歯を立てちゃいました♪ わざとじゃない、おもわずだよ。 しかもほんとにちょびっと、優しくやったつもりなんだよ? あははははでもおもったより強くしちゃってたみたいだぁ。 圭一くん、あうっ!?って悲鳴あげちゃったぁ♪ うわ~痛そう痛そう。 乳首が痕になっちゃった。 もうレナの歯形がくっきりだね? あはははかぁいいかぁいいかぁいい乳首さん♪ まあいいよね。 だって圭一くんが悪いんだもんね。 ご主人様に逆らうとこういうことになるんだよ、よく覚えておいてね? ほらお返事はお返事。 返事しなって言ってるんだよねぇ聞いてるの圭一お返事はっ!? 「……うん。 今度から絶対そんな目でみないでね? 次はレナ噛み切っちゃうから……」 ……圭一くんはごめんなさいしてくれました。 うん、わかってくれたならいいんです。 でも大変です。 手元の腕時計を確認すると、もう大分時間が経っちゃってました。 このままじゃきっと魅ぃちゃんに叱られちゃいます。 「はぅ~大変大変。 もう魅ぃちゃん待ってるから、さっさとピュッピュッしちゃおうね~?」 レナはすぐに圭一くんのズボンに手をかけていきました。 ほんとはこれが目的だったのに、ついいつものM男乳首責めに熱中しちゃった。 そのままチャックをジーっと降ろすと、すぐに中からオットセイを取り出そうとしていきます。 でも、なかなか取り出せないの。 なんだか硬くって、中で引っかかってうまく出てこないの。 まったくもう……こんなビンビンにしちゃってるからだよ? 圭一くんはほんとド変態です。 仕方ないのでもうレナは乱暴に、グチャグチャにしながらむりやり引っ張り出しちゃいました。 途中おちんちんがものすごくしなってたようだけどそんなの関係ありません。 圭一くんの痛いっ!?て悲鳴も無視して、ようやくそのオットセイを取り出せました……。 「こんなに大きくしちゃって……。 圭一くんのオットセイ、あいかわらずすごいね……♪」 すごかった。 もうほんとにすごかったの。 圭一くんの勃起おちんちんです……。 もうビキビキに張り詰めちゃってて、見慣れているレナでもビックリしちゃうくらい大きく反り返ってました。 そう、もとはといえばこれが元凶。 圭一くんがこんなにスケベで悪い子さんなのも、レナ達とこんな関係になっちゃってるのもこのオットセイさんがイケナイんだよね? 「すぐに楽にしてあげる。 圭一くんのイケナイことしたくなっちゃう素、カラッカラになるまで絞り出してあげるからね……♪」 レナは憎たらしい目でそれを見つめながら、おちんちんの竿のところをギュっとしてあげました。 ちょっと強めに握るけど、いいよね? 時間がないし余裕もないんです。 魅ぃちゃんを待たせるどころか遅刻までしちゃうかもしれないけど、この圭一くんのおちんちんを静めるまでは学校になんて行けないもんね。 レナは竿を握り締めるとそのまま前後に…シコシコと手を動かしていきました。 いつもなら焦らして焦らして焦らし倒すんだけど、今日は別です。 すぐに射精させてあげるために、もうどんどん手のスピードを速めていきました。 「圭一くん、我慢しないでいいからね? すぐ出しちゃっていいの。 いつもみたいに出したらお仕置きなんて言わないから、このままピュッピュッってしていいよ、ていうかさっさと出して?」 レナはそう命令しながら、圭一くんのおちんちんをどんどんシゴいていきます。 シュッシュって激しくシゴきながら、もちろん乳首もペロペロしてあげます。 こうして両方シテあげると、この男はすぐに射精する。 それをレナはご主人様としての経験で知ってます。 ただでさえ朝。 夜中にこの袋にタプタプに溜まっただろうから、おちんちんの先っぽからはもうトロトロのお汁が噴き出ていました。 それがレナのお手々にいっぱいかかる。 もうピュッピュッて射精しちゃってるみたいにかかっていくの。 本当ならこれだけでもお仕置きものだけど、今日は特別です。 レナは手のひらを亀頭の先にかぶせて、そのお汁をたっぷりと受け止めてあげながら更にシゴいてあげます。 「ほら、きもちいいでしょ圭一くん。 こうやって手のひらでモミモミされると、すっごくたまらないんだよね? そう言ってたもんね~?」 亀頭をモミモミマッサージ。 これも圭一くんは大好きなんです。 でもなぜか彼は頷いてくれませんでした。 ただうーうー唸ってるだけで、歯をグっと食いしばって苦しそうなお顔をしています。 たぶん我慢してるんだね。 レナにここまでシテもらえるのはそうそう無いことだから、きっと射精するのがもったいないって思ってるんだと思う。 ……馬鹿な男。 我慢なんて無駄なのに。 たかが家畜が自制なんてできるわけがない。 レナが本気でやればこんな男なんてすぐに射精させられる。 ドピュドピュって簡単に屈服させられるんだよ? 口とかならともかく手でするの……えっと、手コキだっけ。 これなら簡単に射精させられる。 ほんと、ものの数分だよ。 五分と経たずに終わらせられるのに……。 「……圭一くん、なにガマンしてるのかな。 さっさとイっちゃってよ手が疲れるから。 おちんちんだけのオスブタのくせに、人間のフリなんてしないでね……?」 罵倒してあげると、ますますおちんちんがビクビクしてきました。 たぶん興奮したんだね。 うっうっうっーて唸りながら、圭一くんはもう射精目前です。 トドメを差せそうでした。 レナはおっぱいをもっと激しくしゃぶってあげます。 舌でペロペロペロ。 もう彼の乳首をベチャベチャにしながら吸ってあげるの。 上目遣いで圭一くんの顔を見る。 目が合っちゃった。 エッチな女の子だと思うなら思ってもいいよ? 今は実際そうだしね。 おちんちんもシゴいてあげる。 もっともっといやらしくシテあげるよほらほらほら。 こうやって根元からギュウギュウって、絞る取るみたいにしてあげる。 乱暴な方が好きなんだよね圭一くんは……。 「くすくす……♪ ほらイっちゃいな。 レナのお手々で射精しちゃいなよ。 たくさんたくさんドピュドピューって、みっともなく白いおしっこ出しちゃうんでしょ? レナが見ててあげる。 スケベな家畜、オス豚が性欲を満たすところをしっかり見ててあげるよ……♪」 あ、あっ、あーっと声が漏れました。 圭一くんのあえぎ声。 射精しちゃう時のやつです。 おちんちんが震えていく。 レナの手の中でビクンビクンと跳ねていきました。 先っぽの穴からまず透明な液がドピュッて出てきます。 そしてその後はもう真っ白なやつが、どぴゅどぴゅどぴゅ~っていっぱいいっぱい噴き出しきます。 レナはその瞬間を見ててあげます。 圭一くんは見られるのが好きだから、射精しているとこを視られるのがすきなド変態さんだから見ててあげます。 「わーすごいすごい、圭一くんいっぱい出してるねー? たくさんレナのお手々の中でどぴゅどぴゅしちゃって、きもちいい? ねぇ射精するのきもちいいのどうなのかなー♪」 一応また聞いてみるけど、圭一くんはやっぱり答えてくれません。 うーうー唸るだけ。 だってドピュドピュ射精してる真っ最中だもん、そんな余裕あるわけないんです。 だからこれはレナのイジワルでした。 はぅ~♪ でも興奮してくれてるのはわかるんです。 圭一くんは腰を必死に突き出しながら、レナのお手々にたくさんおちんちんを擦り付けてた。 それでもっともっとドピュドピュしてた。 それできもちいいよぉって言ってることにしてあげたの。 優しいご主人様で感謝して欲しいなぁ……♪ ……というか、長いねずいぶん。 射精がおさまらないよ。 そんなにきもちいいのかな? いつもならすぐピュピュ~ってして終わるのに、今日の圭一くんの射精はちょっと長めでした。 もう何回も何回もレナの手の中で暴れてます。 まるでマグマみたいにドビュドビュ精液を噴き出しちゃってるの……。 「……たくさん出るね圭一くん。 もっともっと出していいよ? ほーら根元からシゴき出してあげるほーらほーらほーら……♪」 レナは圭一くんの射精を手伝ってあげました。 おちんちんの根元のところをギュっとしてあげて、搾るようにシゴき上げてあげます。 尿道の中に残っているものがドビュウって噴き出してくる。 圭一くんのああっ!?て悲鳴が聞こえたけど、ちょっとやりすぎかな? ……あ、でもさすがに量が少なくなってきました。 ドロっとしたものが最後に噴き出ると、ようやく圭一くんのおちんちんはレナのお手々の中で鳴き止んでくれました……。 「……終わったね。 どう、きもちよかったでしょう? レナのお手々……♪」 ……圭一くんは涙目になってました。 よっぽどきもちよかったみたいです。 射精した後のおちんちんも少し赤くなってました。 まさに絞り出されたって感じです。 袋のとこも小さくしぼんじゃってたの……。 「よかった。 圭一くんがきもちよくなってくれると、レナもとっても嬉しいよ……?」 ちなみにここが調教の最大のポイントです。 この射精し終わった直後が、です。 エッチの最中どんなに汚く罵ったとしても、射精させた後はおもいきり優しくしてあげる。 それがレナの圭一くん調教法です。 射精後の気だるい感覚の中で、「女の子のやさしさ」をじっくり刷り込ませていくのがより良いペットに躾けていくコツなんだよ? はぅ~♪ 「くすくす……♪ おちんちん、白いのでいっぱい汚れちゃったね? 待ってて、今レナがキレイキレイにしてあげるからね?」 お母さんみたいに優しく微笑みかけてあげながら、レナは制服のポケットからハンカチを取り出しました。 ティッシュと一緒に取り出すのがコツかな。 ティッシュはポケットに戻して、あえてこっちのハンカチを選ぶの。 それを手の中でパッと広げて、何の惜しげもなく圭一くんのおちんちんにかぶせてあげます。 「白いの、全部キレイに拭きとってあげる。 ジっとしててね……?」 射精した直後のおちんちん。 ほとんどが地面に落ちていったとはいえ、白くドロドロした残りが先っぽや竿のところにたくさん付いちゃってます。 それをレナは拭いてあげるんです。 ハンカチで綺麗にぬぐってあげるの。 これは普段からレナが使ってるお気に入りのハンカチ、それは圭一くんも知ってることです。 それで汚い精液を拭き取ってあげます。 ぜ~んぶフキフキしてあげちゃうんだよ? 「すっごいいっぱい付いてる。 レナのハンカチで全部拭き取れるかな……?」 先っぽの穴にグリグリと布を擦り付けていきます。 圭一くんはまた、あうっ!?とかなんとか言ってたけど無視してグリグリしちゃいます。 そして竿の方にも布を広げて、レナのお気に入りのハンカチにどんどん精液が染み込んでいきます。 ちょっと甲斐甲斐しい奥さんみたいに綺麗にしてあげるんです。 こうしてハンカチで精液をぬぐってあげると、圭一くんはすっごく嬉しそうな顔をする。 なんていうのかな……。 お、俺のために、そんなお気に入りのまで使ってくれるのか!?って感じにわかりやすく反応してくれるんだ。 きっと圭一くんの頭の中では、今こういう妄想が浮かんでいるはずです。 レナは今日学校でトイレに行くたび、俺の精液が染み込んだこのハンカチを使うんだ。 その頃にはもうガビガビに乾いてしまってる精液が、このかぁいらしい手に何度も何度も触れていく。 トイレに行くたび、俺のザーメンをその手に染み込ませていくんだ……。 たぶんそんなふうなことを考えてるんだろうなぁっていうのが、鼻の下の伸びきったスケベ顔でわかります。 もう、バレバレだよ? 圭一くんのエッチ……♪ あ、ちなみにレナもう一枚ハンカチ持ってるから。 これはもちろん家畜精液専用。 こんなのもう汚らしくて二度と使えないもん。 学校でも圭一くんのぬくもりを感じたいの……とかはありえないしね。 こんなのただのタンパク質の固まり。 オス豚の汚い排泄液だよ。 圭一くんの幸せそうな顔を見るとついそうバラしたくなっちゃうんだけど、そこはグっとガマンしていくレナです。 ダメだよね、夢を壊しちゃ♪ あくまで圭一くんには、レナはなんだかんだ俺のことが好きなんだ! イジワルも愛情の裏返しなんだ!って勘違いさせとかないとだし……♪ 完全に隷属する奴隷に仕立て上げるには、ある程度恋人みたいな接し方も必要なんだ……めんどくさいけどね♪ 「……はい、綺麗になったよ? 圭一くんのオットセイさん今日もかぁいかった~はぅ~♪」 レナは圭一くんの汚かったおちんちんをキレイにしてあげました。 まあ、それでも汚いんだけどね。 今はとにかく急がなくちゃダメなんです。 腕時計を見ると、もうほんとギリギリの時間になってました。 「ほらほら圭一くん、もう魅ぃちゃん待ってるよ~行こう行こう学校は~ぅ~遅刻だよ~♪」 レナは圭一くんの手を取りました。 そしてそれをぐいぐい引っ張って茂みの外へと出て行きます。 そしてまた恋人同士みたいに手を繋いで、通学路をトコトコと歩き始めました。 ……でも圭一くんなんかフラフラしてる。 射精した後だから身体が重いのかな? あ、じゃあ手よりもこっちのほうがいいかな。 たぶんその方が堕ちやすいと思うしね……。 「……ねぇ圭一くん。 う、腕組んでもいいかな? えへへへへ♪」 レナはできるだけ恥ずかしそうにしながら、圭一くんの腕にシュルリと腕を絡ませていきました。 もちろんおっぱいを当てるようにしながら、ね。 急なレナの変化に圭一くんも驚いたみたい。 あんたどうしたのってお顔で見てきます。 「えへへへ♪ ほんとはずっとずっとこうやって登校したかったんだ? ほら、レナツンデレだから……今までイジメたりしちゃってごめんね?」 そんな甘えた声も出しちゃいます。 もう今日のレナはほんと特別大サービスなの。 圭一くんはわかりやすくヘラヘラしていきました。 まあ、スケベなこと考えてる時のお顔だね……。 たぶん、レナがようやくデレってくれたと思い込んでるにちがいないです。 おば様の言ってたとおりです。 甘やかすとすぐ調子に乗る、とっても単細胞な圭一くん。 レナはその家畜と腕組みをしながら、魅ぃちゃんの待つ待ち合わせ場所へと向かっていくのでした……。 私の家畜 ~チジョレナミィ~に続く -