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魔法死神リリカルBLEACH クロス元:BLEACH 最終更新:09/05/29 Episode 1 『Death&Magical girl』 Episode 2 『The indication』 Episode 3 『Crossing World』 Episode 4 『Actors gather』 Episode 5 『The Advancement』 Episode 6 『Certain holiday of six mobile divisions』 Episode 7 『The world that intersects again』 コメント欄です 感想やメッセージ等何でも良いので気軽にどうぞ 原作のブリ―チ破面編も佳境になりました。小説のほうも早く続きをみたいです。改めて思います。今ミッドチルダにいるブリ―チ勢とリリカル勢の力の差があります。スカ派にはウルキオラがいます。ウルキオラいるだけで圧倒的てかんじがします。他の破面もでるのか気になります。早く続きがみたいです。 -- 名無し (2009-12-11 19 30 20) 早く続きを? -- 黒 (2009-12-18 21 42 24) 早く続きが読みたいです -- telephone (2010-01-07 11 30 42) いつになったら続きが読めるんだろう -- 司 (2010-01-17 01 13 33) 09/05/29から途切れていますね、作者に何かあったのか?その前に作者って何者実際何しているんだろう -- カイト (2010-01-21 22 29 26) この流れは…放置か…orz -- タク (2010-01-23 12 21 02) 続きが気になるなぁ -- 名無しさん (2010-02-17 23 53 02) なのはとBLEACHのクロス、結構人気ある?まぁ、自分もなのはとBLEACHは大好きだから早く読みたいけど。 -- 名無しさん (2010-02-19 11 04 51) 日番谷とヴィータの勝負の続きがきになる・・・更新がんばってほしいなぁ -- 名無しさん (2010-03-14 23 20 33) あ -- あ (2010-04-01 18 20 12) 続きを期待しています。 -- 名無しさん (2010-04-02 00 14 04) この先の続きが気になる。個人的にはエクシードモードのなのはと刀剣開放第二階層のウルキオラとの戦闘が見てみたいかも -- 名無しさん (2010-06-05 00 12 58) これはいいですね。続きが気になる所です(^^) -- nanasisann (2010-07-16 12 19 19) 更新はまだなのでしょうか・・・ -- teleohone (2010-10-10 19 36 32) 見たい見たい、ジュード -- 名無しさん (2011-10-03 03 16 14) 一体どうなるのか気になります。早く続きが読みたい? -- オメガ (2011-11-28 10 47 52) 更新期待して2年・・・ -- telephone (2012-01-25 16 23 21) 続きが気になる。だけど、ブリーチの圧倒的勝利しか想像できない -- おれ (2012-12-18 16 00 02) 続きの更新お願いします -- 櫂 (2013-01-29 10 51 19) なにかコメントしてください。 もしくは更新をお願いします。 -- 櫂 (2013-01-29 22 16 57) 更新切なく頼みます(´;ω;`) -- 名無しさん (2013-02-19 23 23 01) つづきお願いします゚(゚´Д`゚)゚ -- 名無しさん (2013-02-21 19 56 21) BLEACHもなのはもすきだっ -- ほのボン (2013-02-21 19 57 07) なんか二次創作ってどれも未完結な作品が多く中途半端ですね。途中で放置するぐらいならさっさと削除するか、最初から投稿しないでほしいものです! -- 名無し (2013-03-16 17 12 10) とにかくつづきが見たいです゚(゚´Д`゚)゚ -- tasha (2013-03-17 00 04 32) mitaiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii -- oiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii (2013-05-07 22 38 42) 今更読んで思ったんだけど2話だけ海鳴が鳴海ってなってるのには何か意味が? -- 名無しさん (2013-07-27 23 00 49) 続き -- 名無し (2013-10-31 21 33 10) 更新する気が無いなら削除して下さい!ウザイです。 -- 名無しさん (2013-12-11 23 00 25) 続き書いてくださいお願いします -- 名無しさん (2020-09-03 19 46 25) 名前 コメント TOPページへ このページの先頭へ
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「アンタみたいな犯罪者を、あたしは許さない」 ティアナが一枚のカードを握りしめながら俺を睨み付ける。 俺はそこまで恨まれるようなことをしただろうか?……いや、恨んでいるとは違うか。しかし彼女がああなっている理由はなんだ? 人を傷付けたのが許せないのか、言い訳にしか聞こえないことばかり言うのが許せないのか、それとも罪が課されなかったことが許せないのか。 「おい、俺は戦い方なんか知らないぞ?」 そんなの知らないとばかりに構えを取るティアナ。こちらの台詞は無視する算段か。 しかしどんな理由にしろ彼女とは分かり合う必要がある。勘違いされたままというのは気分が悪い。 「じゃあ、いくわよ」 結局、いくら考えようと、この戦いを止めることは出来なさそうだ。 リリカル×ライダー 第四話『模擬戦』 「なのは、何故この模擬戦を許可した?」 後ろから話しかけられたので振り向くと、そこにはシグナムさんが立っていた。 彼女の特徴は燃えるような、しかし赤いとは違う桃色に似た髪だと思う。普段からその髪をポニーテールに纏めていて、キリッとしててカッコいい。厳しく真面目な性格で、はやてちゃんの守護騎士達の中でも特にリーダーとして慕われている。 「シグナムさんがここに来るなんて珍しいですね」 「何を言う。こんな興味深い模擬戦、見ないはずがなかろう」 彼女の戦闘(決闘?) 好きは、今に始まったことではなかった。 「にゃはは……そ、そうですね」 実はわたし、ちょっとだけシグナムさんが苦手。あんまりお話しないからというのもあるけど、何より性格的に合わない。嫌いってわけじゃないし、むしろ尊敬してる所もあるのだけれど。 逆にフェイトちゃんとは仲が良いんだけどなぁ。 「で、何故許可した? なのはらしくないと思うが」 自分は過去の失敗から、無茶はさせないように教育している。今回の模擬戦はそれに反するということだろう。そう、自分でもそれぐらいは分かっている。 「やらせてあげないとティアナも納得しないだろうな、と思ったので。それにカズマ君が何故暴走していたかも知りたいし、丁度いいかと思いまして」 「やはりらしくないな。お前がそんな打算的な行動を取るとは」 クスリと笑ってそんなことを言うシグナムさん。わたしってそんなに良い人ぶってたかな? ただ、らしくないなとは自分でも思うけど。 「まぁ、私は楽しませてもらうだけだ。なのはの判断以上の答えを私が出せる訳ではないからな」 それっきり、黙り込んでしまった。 ・・・ 「クロスミラージュ、セットアップ!」 『Set up』 ティアナが一枚のカードを掲げる。彼女の一声と共にそのカードと持ち主が橙色の光に包まれ、それが無くなった頃には先ほどとは全く違う、活動的な服装になっていた。おそらくあの服がバリアジャケットとやらだろう。 そしてカードの代わりに握られた二丁の拳銃。アレが彼女のデバイスらしい。 「さぁ、アンタもバリアジャケットを纏いなさい」 いや、纏えって言われてもやり方知らなんだがな。今から何をすればいいのか、さっぱりなんだから。 ――戦え。 「……っ!」 来た、アレだ。あの衝動が沸き上がってくる。俺に全てを破壊させようとする、あの衝動。なのはを傷付けたあの力。……俺をおかしくする、この力。 ――戦え。 また左手が動き出す。返却された例の機器を握った左手が。 「チェンジデバイス、セットアップ」 『Stand by ready set up.』 例の機器、チェンジデバイスが動き出す。中央のクリスタルが一瞬光り、ベルトが射出されて腰に取り付けられ、待機音が鳴り出す。 ――戦え。 また、俺が俺でなくなっていく……。 ・・・ 「あれが、お前の言っていた」 「ホントに“変わった”でしょう?」 わたしが見る先、空間シミュレーターが設置された訓練場。そこでティアナと“彼”は戦っていた。 鎧に似た青いバリアジャケットを纏い、ティアナに向かって歩くカズマ君。けれど、彼はカズマ君であってカズマ君ではない。 「確かに戦うことしか考えていない戦闘狂のようだな。闘争本能の具現とは、言い得て妙だ」 今日の朝、カズマ君の部隊入り挨拶の後にシャマルさんが出した一つの結論がそうだった。少ないデータと推測で成り立った、まだ原因すら欠片も考えられていない危うい推論ではあるけれど、確かに納得出来る考えでもあった。 「わたしのときはあっちが先だったんですけどね」 「あれが先だと、やはり恐怖を抱くだろうな。今は不安と危険性を感じているが」 カズマ君の拳に展開された小さな青い三角形の魔法陣がティアナの放つ橙色の弾丸を悉く粉砕する。それは荒々しく原始的で、しかし緻密で精巧な迎撃。あんなシールドの使い方、初めて見た。 シグナムさんの言う通り、不安と危険性、そして何とかしてあげたいという思いをわたしは抱いていた。そのためにも、まずはこの戦いを見届けなければならない。 何をすればいいか、見極めるために。 ・・・ 「……くっ!」 またも放った弾丸が迎撃される。 すでに数十発は撃ち込んでいるのに、全て叩き落とされていた。あのカズマって人が突然表情を歪ませて変身してからずっと、言い知れぬ恐怖があたしを包んでいるのが分かる。それを振り払うように攻撃を続けるが、ことごとく無力化されてしまった。 「いったい、何なのよっ!」 なのはさんの教えを破るのを覚悟でビルに飛び込む。射撃型魔導師、特にセンターガードの自分がみだりに動くのは本来得策ではないのだが、今回は一対一ゆえに例外だ。 アイツはゆっくりとこちらに歩み寄る。こちらを侮っているのではなく、こちらを見極めるために。 念のために空間に残しておいた魔力スフィア三つを魔弾に変えて、飛ばしておく。ただの時間稼ぎだ。今は考える時間が欲しかった。 (アイツ、戦い慣れしてる……) いや、正確には戦いをどう進めるのが最も合理的かを理解している、と言うべきか。普段みんなに指示を出す司令塔または頭脳となるあたしだからこそ、それらを理解しているということが分かる。 「カートリッジは使ってないから十分にある。ただ通常の魔法弾はまともに使用しても意味はない。ならクロスファイアか“アレ”を――」 ――いやダメだ。そんな正攻法では勝てない。だいたい“アレ”はまだ実用段階にある代物じゃないのだから、今はまだ使えない。 そう考えている間に、アイツはやって来ていた。 「っ!」 自分の隣の壁が吹き飛ぶ。丸く穿たれた穴の先に見える、青い影。 「このォ!」 考えている暇すら与えてはもらえない。あたしはクロスミラージュを構えて魔法弾を撃ち出した。 ・・・ ――戦え。 (……うるさい) ――戦え。 (うるさい) ――戦え。 (五月蝿い!) 自らの内から響く声がうるさい。俺を惑わすこの声が五月蝿い。俺に望まないことをさせる声が本当にうるさい! 俺は、人を守るためにしか、戦わない! 「……っ!」 頭が疼く。今何かを思いだそうとしたはず―― 「――あ、あれ?」 目の前の光景に、思考がフリーズした。 「あ、アンタ、なんかに……」 俺が、正確には装甲に包まれた俺の右腕が、ティアナの首を掴んでいた。その右手が、俺の意思に反して力を込めていく。 「や、やめ……」 止めろぉぉぉぉぉぉぉ! そう思った途端、手から彼女が消え失せた。 「き、消えた?」 まるで陽炎のように橙色の輪郭を一瞬残して消えた彼女。あれは、一体? いや、そもそも俺は何をしていた? 「また、またなのか……」 そう思い立った矢先に、事態は推移していた。 「ぐあっ!」 背中に衝撃。装甲ごしではあるが、内臓を揺るがすような嫌な感じ。まさか、攻撃された? 後ろを見れば、消えたはずのティアナがこちらに銃口を向けていた。 「あ、当たった……?」 彼女も驚いたような顔をしている。 そして状況を思い出す。今が模擬戦の真っ最中だったということを。 「や、ヤバい!」 速攻で、全力で逃げることを決めた。 「あ、待ちなさい!」 そして第2ラウンドが始まった。 ・・・ 「あれは幻影だったのか」 シグナムさんが驚いたという顔をして、そう呟いた。 「ティアナ、この頃は頑丈なフェイクシルエットも作れるようになったんですよ。しかも喋ることが出来る精巧なものを。……まだ軽く掴めるぐらいですし、維持と精製に相当魔力を持っていかれるんですけどね」 ティアナ特有と呼べる、彼女の得意魔法、それがフェイクシルエット。幻影を精製する魔法だけど、彼女が使えば色んな応用が効く。今のような精巧な偽者も、最近は作れるようになった。 今の奇襲も、彼女らしい機転の効いたものだった。 「しかしアイツ、元に戻ったみたいだな」 アイツとはカズマ君のことだろうけど、確かにさっきとは違う普通のカズマ君に戻っていた。先程の怖いぐらい完璧な戦闘が嘘のように今はティアナから逃げている。 「今のカズマ君じゃ、ティアナには歯が立ちませんよね」 魔法弾がカズマ君に降り注ぐ。橙色の光雨はフェイクを混ぜたものだけれど、相手の戦意を喪失させ、回避を困難にさせる。カズマ君の装甲にいくつかがぶつかり、火花が飛び散っているのが痛々しい。 そろそろ模擬戦も終了か、と思う。これ以上続けても意味はないと思うし。 「いや待て、なのは。あいつをよく見ろ。無意識か知らないがティアナの射撃を避けてるぞ」 「え?」 ……確かに、彼は逃げ惑いながらも体を左右にずらして避けていた。ティアナが四方八方から放つ射撃と誘導弾を当初は全弾直撃していたのが、今は八割を避けている。 「なのは、まだ面白くなるかもしれんぞ?」 シグナムさんの笑顔が、妙に楽しげに映った。 ・・・ 「このっ、落ちなさい!」 「うわぁ!」 アイツの右に着弾。いや、アイツが左に避けた結果、右に着弾と言うべきか。 さっきから段々と回避が上手くなってる。無様に逃げているくせに、その背中に魔力弾が当たらない。その上、当たっても致命傷にならないほど頑丈なのだ。 さっきとは違う意味で、焦りを感じていた。 「おい! もう降参するから撃つのを止めろ!」 「そうやって騙そうとしても無駄よ!」 多分騙そうと言っているわけじゃないと思うけど。でもコイツをコテンパンに叩きのめさないと気がすまない。 なんでここまでムキになっているか、自分でもよく分からなくなってるけど。 「このっ……!」 フェイクシルエットを彼の前に出現させる。同時に誘導弾四発を二手に別れさせて左右同時攻撃。そして回避した所をあたしが――! 「うわっ!」 彼が目の前に現れた偽のあたしを慌てて避ける。そこに誘導弾を仕向ける。 「いい加減にしろっ!」 彼が体を捻って右の二発を避ける。流石に体制的に無理があるので左の二発は避けられなかったけど、手で強引に叩き落としている。それもシールドも無しに。 「でも、これで終わりよっ! クロスファイアァァァ、シューーート!」 彼に向けた二つの銃口から八つの魔弾が炸裂する。魔力弾達は渦を描くような弾道を取りながら一つの砲撃のようにアイツに迫る。 「っ!」 それに対しアイツは、剣を引き抜いて待ち構えていた。その構えは垂直に支えた剣の峰に左手を添え、腰を落とした独特のもの。 その左手が、ゆっくり剣の峰を撫でる。 「そんなんで……」 「でやぁぁぁ!」 そんなあたしの疑問も刹那。一瞬の内に彼の元に届いた魔弾の軌道に合わせるように、彼は剣を動かす。その剣の腹を滑るようにして魔弾達はあらぬ方向へ流れていった。 アイツは、その剣で、あたしの射撃を弾いた。いや、反らしたのだ。 完璧に、受け流されたんだ。 「そ、んな」 「これで、もう終わりだ」 疲れたような声で宣言するアイツ――カズマ。 あたしは……まだ、負けてなんか―― 「――二人とも、そこまで!」 唐突に、なのはさんの声が訓練場を満たした。 ・・・ 「主はやて。これがカズマについての報告書です」 大きな机と大量の書類。隣には小人用としか思えない小さな机。 特徴と呼べるものがそんなものしかないこの部屋が部隊長室、そう、八神はやての部屋だ。 ペンと紙の匂いに混じる仄かな甘い香りだけが、ここが女性の部屋であることを証明していた。 「ありがとな、シグナム。慣れないことやらせてしまって大変やったやろ?」 いえ、と断りつつ書類を机に置くシグナム。 「しかし何故このようなことを?」 彼女からしてみれば疑問に違いない。これではまるで彼を監視しているようだからだ。 少なくとも彼女からすればカズマは本当に記憶喪失に見えるし、性格も悪くはないように見えたので、主の目的が読めなかったのだ。 だが、それは決して主を勘繰っているわけではない。シグナムははやてを信じているからこそ、事情を説明して欲しかったのだ。 「んー、単に知りたかっただけよ? 今後使えるかどうかを」 ……シャマルが言っていたのはこれか。 シグナムは溜め息をつきながらはやての手を握った。 「シグナム……?」 「主、私達は家族であり、家来です。貴女のことを守護騎士全員が大切に思っていますし、我々全員が貴女のためなら命を捨ててでも尽くすつもりです」 「シグナム……」 彼女は握った手に力を込め、決して離さぬように胸にかき抱く。 「だから主はやてよ、私達にだけは、隠し事をしないで下さい。私達家族を、信じてください」 シグナムが深々と頭を下げる。その手は僅かだが、震えていた。 はやては少しだけ驚いた表情を浮かべたものの、すぐにそれを笑顔に変えて彼女の頭に優しく手を置いた。 「私がシグナム達を信じていないなんてことは一度だってあらへんよ?」 シグナムは頭を上げて、はやてと視線を合わせた。 「では教えてください。何故カズマの監察を、私に命じたのかを」 そこで少しだけはやては困ったように首を竦めるも、すぐに笑顔に戻す。 「私は、カズマ君を助けるつもりや。けどそのためには彼の事を知っておかないかん。武装局員になれる実力があるなら私が連れていくつもりやし、本人が望むなら進路先を斡旋することもできる。逆に戦闘能力がないようならそれに応じた仕事を探してやらないかん。どちらにしろ、カズマ君のことを知らんと私は何も出来んやろ?」 「そういう、ことだったのですか……」 流石は我が主だ、とシグナムが頷く。彼女としてもはやてがそこまで考えて動いているとは想像がつかなかったのだろう。 「申し訳ありません。信じ方が足りなかったのは、私の方だったのかもしれません」 「ええよ、気にせんどいて? それよりカズマ君のこと、ちゃんと見といてや?」 「はい、主はやて」 今度こそ晴れやかな顔で、シグナムは力強く頷いた。 ・・・ 結局、勝負はティアナの勝利で決まった。当然だ、自分はひたすら逃げていただけなのだから。 「カズマ君はやっぱりセンスはあるんだけど……」 「……すいません」 不貞腐れたような返答を、なのはに返す。 やはり最大の問題は"あれ"だろう。制御出来なければ俺は役立たずだ。ふと思ったが、記憶を失う前の自分は、こんなことで苦しんだのだろうか。 「痛っ!」 「こんなになるまで模擬戦続けたの?」 俺の身体中に出来た打撲の後を見てシャマルさんが顔をしかめる。バリアジャケットとやらで多少はダメージを緩和出来ても、完全には無力化できないらしい。なのはも最初見たときは顔を歪ませていた。 「なんだかカズマ君って早速患者の姿が板に付いてきたわね~」 「勘弁してくれよ……」 小声で抗議しておく。効果は全くないだろうが。 二度目の医務室だが、未だに慣れることはできない。いや、こういった場所に医者以外が慣れること自体おかしいか。アルコールの臭いが僅かに鼻をくすぐる空間は、やっぱり居心地悪さしか感じない。 「はい、おしまい」 包帯をあちこちに巻かれてようやく完了か。何だか治療だけで疲れた。 「さ、二人とも疲れたでしょ? 食堂で皆待ってるから」 なのはが笑いながら指差す。もう二時だった。一緒に付いてきていたティアナは隣で不満そうにしていたが、諦めたように溜め息をついた。 シャマルさんに送られて医務室を出た後、食堂に三人で行く間、なのはが何度か話しかけてきたので気まずくはならなかった。ティアナも考え事をしているらしく、俺に絡んではこなかったし目も合わせなかった。 そうして着いた食堂ではフォワードメンバーの三人、スバル、エリオ、キャロが待っていた。 皿に盛られた料理を見て、ようやく空腹を意識したのが不思議だ。あんなに運動したというのに。俺は少食だったのだろうか。 「「お帰りなさい、なのはさん、ティアさん!」」 「お帰りなさい、なのはさん! ティアもお疲れ!」 年少組のエリオとキャロは口を揃えて、スバルは大きく元気な声で、二人を迎えた。 当然、俺の名前はない。 「……なのは、用事思い出したから今日は――」 「――ダメだよ。皆と仲良くしてくれなきゃ」 見事に捕まってしまった。 どうやら自分は器用なことが出来ない質らしい。腕を捕まれていたことにも、今更気付いたほどだ。 ティアナはまだ考え事をしているのか、挨拶をした三人に軽く答えた後に椅子に座っても腕組みを崩さなかった。 「……ティア?」 「あ、な、なによスバル?」 彼女も恥ずかしいと頬を赤く染めたりするのか、と思った。当然のことか。 「ティアがボーっとしてるなんて珍しいなーと思って」 「あたしは考え事してたのっ!」 わいわいと騒ぎ出す二人だが、仲が良いのだろうからか、端からはコントのように見えた。決してティアナには言えないが。 「あ、あの」 「……え?」 唐突に話し掛けられた。まさか誰かに話しかけてもらえるとは思ってなかったので、咄嗟に反応出来なかった。 見ればキャロがこちらを向いて必死に何か言おうとしていた。……けれど、俺の関心は別の方にいってしまっていた。 「な、なんだその蜥蜴……」 「と、蜥蜴じゃないです! フリードです!」 「キュクルー!」 彼女の頭に乗っている小さな羽を生やした白蜥蜴――もといフリードなる生物に、俺は驚いていた。 「そっかぁ、竜なんて知らないよね」 なのはが合いの手を入れてくれたのは助かった。正直、驚いてる最中の俺に女の子の相手は無理だ。 「竜、だって?」 「そうだよ。わたしもフリードが初めてだったけど、似たようなものなら前に行った戦地で見たかな」 とても竜には見えなかった。さすがに蜥蜴は違うだろうが。 「あ、りゅ、竜だったのか。その、間違えて、悪かったな」 歯切れの悪い口振りに自己嫌悪したのは秘密だ。 「もう、せっかくエリオ君と謝ろうと思ってたのに……」 怒っても可愛らしいのは幼い女の子の特権だろう。俺もキャロを見てるとひたすらに自分が悪いように思えてきた。 「ご、ごめんな」 「キャロもそのくらいで許してあげなよ」 エリオがぽんぽんとキャロの肩を叩く。何だかお兄さんのようだ。 ようやく機嫌を戻したキャロとエリオが姿勢を正してこちらを向く。こちらも何だか緊張してきた。 「「か、カズマさんっ」」 二人が揃って声を上げる。いつの間にか、なのはもティアナとスバルも押し黙っていた。 「「今まで冷たい態度を取って、すみませんでしたっ!」」 食堂中に、二人の声が鳴り響いた。 取り敢えず、声のでかさには驚かざるを得ない。二人仲良くハモるのはいいが、そのせいで食堂中に響いてしまうのは勘弁して欲しかった。 しかも二人の声に反応した周りの目線が凄かった。何故だろう、謝られているのに悪者として見られているような気がする。 「べ、別に謝るほどのことじゃ――」 「その、わたしたち勘違いしてたんです」 俺の言葉を遮るように、キャロは言った。 「わたし、最初は怖い人なんだろうな、って思ってて。あの時近くで見てたエリオ君が怖かったって言ってたし。でも模擬戦見てて、最初はやっぱり怖いと思いましたけど、途中から本当は優しい人なんじゃないかと思い始めて……」 「僕達にはティアさんを傷付けないように戦っているように見えたんです。戦いが終わった後も自分のことなんか全然気にせずティアさんの心配をしてましたし」 キャロの言葉をエリオが引き継ぎ、俺に訴えかける。 確かに自分に彼女を傷付ける意志があったかと言えば否だ。でもそれは当然のことだ。人を傷付けるなんて――。 (――待て。何故俺はそこまで人を守るだの傷付けるなどに拘るんだ?) 一瞬の疑問。だが、それはすぐに氷解する。 (いや、人として当然か) それで決着はついた。ついてしまった。 「……聞いてますか?」 「――あ、あぁ、もちろんだって。それで?」 すぐに誤魔化す。今考えることはそんなことではなかった。 「それで、その、これからは仲良くしてもらえませんか?」 「お願いします!」 ぺこりと頭を下げるエリオとキャロ。願ってもないことだ。 「こちらこそ、仲良くしてくれると嬉しい」 初めて心の底から笑えた気がした。 「――うん、無事仲直りできたね」 にっこり笑顔でなのはが俺達の手を取って握らせる。気恥ずかしいが、なのはの気配りは嬉しかった。おそらくセッティングしてくれたのもなのはだろう。彼女も童子のような満面の笑みを浮かべていた。 たちまち主導権を握ったなのはが話を進めていく。自分と彼女達が話しやすいようにしてくれながら。 ――ま、これも悪くないか。 俺もようやく、そう思えるようになった。 ・・・ 「ようやく打ち解けたか。世話の焼ける」 くつくつと低くくぐもった笑い声を放つ男が一人、広大な広間でカズマを見つめる。 巨大なモニターにはカズマが笑う姿が映し出されている。 「これでわしはお前の願いを叶えたぞ。すまんが、今度はわしの研究に付き合ってもらう」 広間のあちこちに置かれた機械を操作しながら、ポケットから十二枚のカードを取り出す。スペードのマークと、鮮やかな生き物の絵が描かれたカードを。 「わしは研究者だ。悪く思わないでくれ」 それらのカードを、機械のスリットに差し込む。 「さぁ、見せてくれ。人を超えた、仮面の戦士の力を」 スリットから、光が溢れ出した。 ・・・ ようやく打ち解け始めた居場所、機動六課。安息の地を手にした彼は、日々腕を磨きながら内に潜む闇を押さえ込んでいた。そんな彼を試すかのように、断罪の鉄槌がカズマを襲う。 次回『鉄槌』 Revive Brave Heart 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第三話 月村家 突然であるが、月村家に一人の庭師が現れた。 彼が操る刈り込みハサミは瞬く間に不規則に生えた小枝を平らにし、 彼が操る手バサミは、木から余計な枝を間引きながらも、木が持つ美しさを落とす事無く自然に生かし続け、 彼が振るう貝殻虫用ブラシは瞬く間に枝についた貝殻虫を払い落とす。 その仕事ぶりは素早く、そして繊細にして大胆。彼の手に掛かった草木は生き生きと光合成を行い、 彼の手に掛かった花は、感謝を表すようにその美しさを一層引き立てる。 「♪~~~~♪~~~」 今は花壇に咲き乱れるパンジーに水を与えているその人物こそ、月村家に突如現れた鋼の庭師 名を『月村家の庭師・ガンダム』という。 決して『ラクロアの騎士・ガンダム』ではない。『月村家の庭師・ガンダム』である。 確認のためにもう一度言おう。何?行稼ぎ?シツレイナ。『ラクロアの騎士・ガンダム』ではない。『月村家の庭師・ガンダム』である。 念には念を、もう一度・・・何?これ以上小賢しい真似をするともう読まない?はははははは・・・ゴメンなさいorz 兎にも角にも、彼の仕事っぷりは本物であり、月村家のメイド長でもあり、園芸に関しては少しうるさいノエルにも 「・・・・・・見事です・・・・・・・」 と、言わせるほどのもであった。 そもそも何故『騎士』から『庭師』へとジョブチェンジしたのか? 発端はナイトガンダムの「私にも何が出来る仕事はありませんか?」発言から始まった。 彼は周囲の仲間(スダ・ドアカワールドでの)が認めるほど『ド』が付く真面目人間基、真面目MSである。そのためか、 何もしないで月村家に居候する事に抵抗があったため、無茶は承知で自分にも何か出来ないかと尋ねたのである。 無論忍は「そんなこと気にする必要は無い!無い!!ナッシング!!!」と言おうとし、笑顔で口を開いた。その時、 「それでしたら、庭のお手入れの手伝いをしていただくのはどうでしょうか?」 おそらくは扉越しに聞いていたのだろう。お茶のおかわりを持って来たファリンが『これは名案!!』と 言いたげは表情で呟いた。 いきなりだが、月村家は広い。そりゃあもう広い。当然庭も広い。 庭に関しては、でかい物を測る時に要する一般的な計算方法『東京ドーム?個分』という方法を余裕で使えるほどの広さである。 その証拠に、初めて遊びに来たなのはが迷子になったり(恭也曰く、『・・・・・遭難の名違いでは?』) つい最近訪れたナイトガンダムが笑顔で「素晴しいですね。『森』に囲まれた邸宅とは」と勘違いをするほど広い。 そのため、庭を手入れするのも一苦労所であり、ノエルとファリンの超人真っ青な働きっぷりがなければ、月村家の庭は 本当の『森』になっていたかもしれない。いや、なっていた。絶対に。 (ちなみに、忍も少しでも二人の負担を減らそうと、多数の庭師を雇った事があるのだが、二日も経たずに全員が『やってられっか』 という書置きを残して逃亡してしまうという事態になった) そのため、ファリンとしても、『人手が増えれば助かる』という考えの基で誘ったのだ。 その誘いにナイトガンダムは快く快諾、早速ノエルから軽いレクチャーを受けた後、実戦した結果が冒頭である。 今のガンダムの装備は剣と盾、電磁スピアという通常装備ではなく、刈り込みハサミに手バサミ、貝殻虫用ブラシなどの小物が入ったベルト。 騎士の風格はどこへやら だが、ジョブチェンジしたとはいえ、彼の働きっぷりは『ガンダム』の名に恥じぬ物であり、 その有能ぶりに共感した忍が『月村家専属庭師』の照合を与えるほどであった。 「・・・・・よし、次は枝の間引きをするか・・・・・」 そして今に至る。 だが、勘違いしないでいただきたい。決して彼は『騎士』の誇りを捨てたわけではない。 刈り込みハサミを肩に担ぎながら目標の木に向かうナイトガンダム。 時刻は午後2時過ぎ、日が程よく当たっているため、12月とはいえ、それ程寒さを感じない今日この頃。 時たま、放し飼いにされている猫達が足元を通り過ぎる中 『目標視認・・・・・攻撃開始』 ふと聞こえる電子音。同時に地面から現れた二つの砲台。 それらは間髪入れずに『死ぬ事は無いが、当たれば悶絶間違いなし』なゴム弾を 視認した目標『ナイトガンダム』に向けて発射した。(まぁ、鎧を装着しているので、痛くも痒くも無いが) 本来なら当たる事間違い無しの奇襲。だが、砲台が現れた直後、ナイトガンダムはゴム弾が発射されるより早く上空へとジャンプ。 発射されたゴム弾が地面を削り取ると同時に、ナイトガンダムは上空で刈り込みハサミを振り被り、投げ放った。 勢いをつけて投げられた刈り込みハサミは横回転をしながら真っ直ぐに砲台に向かい突き刺さり、機能を停止する。 残った砲台は、直に目標を上空へと定め、砲身を上げようとうするが、 それより早く落下してきたナイトガンダムの蹴りを喰らい、残った砲台も役目を達する事無く機能を停止した。 このように、庭師の仕事を行なうと同時に、自らの訓練も怠っていない。 そもそもこの『自動追尾攻撃装置』は忍が趣味で作った月村家の防衛装置だったのだが、以前の新聞屋を追っ払って以降、 最近は出番が全く無く、作った忍本人ですら忘れかけていた。 だが、ナイトガンダムという珍脚が現れたため、久しぶりに発動。 庭を散策していた彼に問答無用に襲い掛かったが、モンスターや騎士や魔王と戦っていたナイトガンダムの前では効果が無く、 先ほどのように、難なく全機撃破。 後に事情を説明した後、忍を叱るノエルをたしなめながらも、不要であれば自身の訓練に使いたいと申し出たのだ。 その結果、役目を終えた『自動追尾攻撃装置』は『ナイトガンダム専用自動追尾攻撃訓練装置』という 長ったらしい名前と新機能を与えられ生まれ変わり、その役目を日々存分に果たしていた。 「しかし・・・住む所ばかりか、このような訓練設備を与えてくれる忍殿達には、本当に感謝の言葉も見つからない・・・・」 改めて内心で感謝をしながらも、少しでも恩を返すため仕事を再開しようとするナイトガンダム。その時 「ただいま、ガンダムさん」 ふと、後ろから聞こえた声に自然と振り向くと、そこには学校帰りなのか、制服姿でカバンを持っているこの家の住人、『月村すずか』と 「やっほ~!遊びに来たわよ~!!!」 同じく制服姿でカバンを持っているすずかの友人『アリサ・バニングス』が手を振りながら近づいてきた。 以前にも紹介したが、ナイトガンダムはMS族、ここ地球にはいない種族である。 そのため、当然目立つ存在であるため外に出ることは出来ない。本来なら月村家にいれば問題ないのだが、 さすがに屋敷の中に閉じ込めとくのは可哀想と思った忍達は作戦プランその2『俺はキカイダー作戦』を決行することにした。 これはガンダムを『忍が作ったお手伝いロボ』に仕立てることにより、周囲の目を欺かせるという手段である。 幸い忍の機械好きは周囲に知られているため、それ程怪しまれない事も利点としてあげられる。 (実際、素体が残っていたとはいえ、忍はノエルやファリンを『製作』した実績を持つ『周囲には内密だが』) えっ?「ミッドチルダの様な科学が進んだ世界じゃないんだから、そんなプラン直に駄目になるだろ?」 確かに、ノエルとファリンは見た目から美女メイドさん・美少女メイドさんとして十分通用する。 その点、ナイトガンダムは失礼だが正に未知生物である。外見がロボットに酷似しているとはいえ、確かに無理があるようだが、 そんな読者の皆様にこの言葉を送りたい。 『海鳴市じゃそんなの日常茶飯事だぜ!!!』 さて、話を戻しましょう。 時刻は午後3時過ぎ、遊びに来たアリサはナイトガンダムを誘い、今はすずかの部屋でTVゲームの真っ最中であった。 「だっけど、なのはも付き合い悪いわね~。まぁ、しょうがないか。なのはにも用事があるんだし・・・・そ~らいただだき!!」 「『なのは』というのは・・・・アリサ達の親友ですか?・・・・・・・あっ・・・・負けてしまった・・・・」 「『高町なのは』ちゃん。私達の大事な友達なんだ。もうアリサちゃん。ガンダムさんは初めてなんだから、もうちょっと手加減しないと」 「だめよ!甘やかしちゃ!痛い思いをすれば嫌でも強くなるわ。それとガンダム。敬語なんて使わなくていいわよ」 TV画面に映る『GAME OVER』の文字を見た後、ナイトガンダムは横で座っているアリサの横顔を見る。 「(ほんとうに・・・強い子だ・・・・・)」 心からそう思う。昨日あんな出来事があったにも関わらず、彼女はすずかから聞いた様に自然と周囲に明るさを撒いている。 決して誰にでも真似できる芸当ではあるまい。本来なら塞ぎ込んでも可笑しくは無い筈なのだから。 だか、彼女は明るい声でビシバシとすずかに指示を出したり、自分に『てれびげえむ』という遊びを教えてくれている。 その彼女の心の強さと面倒見の良さ、明るい声でハキハキと支持を出すリーダーシップさが、大人しいすずかを引き付けているのだと思う。 そんなアリサを微笑みながら見つめるすずかは、常に半歩下がり、友を見守という役割がぴったりだと思う。 出会ってからそれ程経ってはいないが『月村すずか』という子は察しがよく、気遣いが細かいため、強気なアリサを止めるのには丁度良いと思う。 それに彼女の微笑には周囲の空気を和ませる不思議な力があった。(昨日の事件でも、解決して尚皆が緊迫した表情をしていたが、彼女の 心から安心した笑みにより、周囲のピリピリした空気も自然と緩和されていった) そんな二人が口にする『高町なのは』という子も、彼女達のような心優しい少女であると、ナイトガンダムはふと思った。 「しょうがないわね~。もっとハンデを付けてあげましょう・・・ん?どうしたのガンダム?」 自分を見つめているナイトガンダムの視線に気が付いたアリサは彼を見据え、首をかしげながら尋ねる。 「いえ・・・・なんでもありませ・・・なんでもないよ。続きをやろうか」 微笑みながら答えたナイトガンダムはコントローラーを持つ手に力をいれ、再びTV画面を見つめる。 「そう?ならいいんだけど・・・・・そういえばさ、ナイトガンダムって忍さんが作ったロボットなんだよね?」 「はい」 「・・・・・・それ、本当?」 先ほどとは違い、怖いほど冷静な声にすずかは固まり、ナイトガンダムは沈黙する。そしてゆっくりと顔をアリサの方に向けると、 目の前にはアリサの真剣な顔、そしてゆっくりと彼女の両腕がナイトガンダムの頬に触れる。そして むにゅ~ 伸ばすように思いっきり引っ張った。 「ほらほらほらほら~白状しなさい!!こんなにやわらかいわけないでしょ~!!!!」 「や・・・やめる・・んだ・・アリ・・ハ・・・」 「なら白状しなさり!!でなきゃもっと引っ張るわよ!!そらそらそら~!!!」 数分後 「なるほどね、じゃあナイトガンダムは『スダ・ドアカワールド』って世界からきたのね」 頬を腫らしているナイトガンダムに変わり、すずかが『スダ・ドアカワールド』の事、MS族の事、事故によりこの世界に来たこと、 ロボットという事にしておけば、ある程度自由が利くから嘘を付いた事などを話した。 すずかが語った真実に、腕を組みながら『ウンウン』と頷くアリサ。 同時に彼女も自分の所にも、流れ星が落ちてきたことを話そうとしたが、 自分の所に落ちてきたのはただの石の固まり。話しても白けるだけと思い直にやめた。 「ですがアリサ、どうして私が・・その『ろぼっと』では無いと思ったんだい?」 引っ張られた頬を撫でながら、ナイトガンダムは唯一疑問に思ったことを口にする。 「それはね・・・・私にも上手く口に出来ないんだけど・・その・・・・温かみがあったから・・・・かな・・・」 「『温かみ』ですか?」 「そ、あの抱きしめられた時にね、人が持つ温かみって言うのかな・・・そんだけよ。さ、続きを始めましょ!」 そう言い、再びコントローラーを持ち、画面を見ようとするアリサ。だが、動かす首を途中で止め、再びガンダムの方を向く。 「・・・でもさ・・・・ガンダムにも・・・・家族とかが・・・・いるんじゃないの?・・・・・寂しくない」 アリサが放った言葉に真っ先に反応したのは、ナイトガンダムではなくすずかだった。 そういえばそうだ。ナイトガンダムは自分の意思に関係なくこの世界に自分と同じ種族がいない世界に来たのだ。 当然家族とも、友達とも、別れを告げずに・・・・・本当だったら錯乱しても可笑しくは無い。 そしてすずかはふと考えてみる。もし自分がナイトガンダムの立場だったらどうだったろうか・・・・・・・ 「(・・・・・いやだ・・・・想像したくない・・・・・)」 正直考えるのも恐ろしい、自分だったら耐えられないだろう。 おそらくそんな気持ちをナイトガンダムは味わってる筈。それなのに、自分は住人が増えた事にただはしゃいで・・・・・・ 「すずか、ありがとう」 ふと近くから聞こえた声に我に返るすずか。すぐ側には微笑んでいるナイトガンダムが立っていた。 「私のことを心配してくれたんだね。でも心配しないで、大丈夫だから」 「でも・・・・私・・・・ガンダムさんの・・・・気持ちも知らないで・・・・・勝手に喜んで・・・・・最低だよ・・・・」 俯きながら声を絞り出すすずかに、ナイトガンダムはそっと彼女の肩に手を置く。 「そんなに自分を責めないで。むしろ見ず知らずの私を保護してくれた貴方達には、とても感謝しているんだ。 正直MS族の私は『見世物』とされていても可笑しくは無いからね。そんな私を温かく迎えてくれた月村家の皆には本当に感謝してる」 安心させるように語り掛けるナイトガンダムに、すずかの顔からも自然と自己嫌悪の念が薄れていく。 「それに・・・・言いそびれたことだけど、私には昔の記憶がないんだ。だから、私に家族がいたのかも分からないし、 離れ離れになった時の辛さも分からない。だけど、私にも心強い仲間達がいた。彼らと別れたのは確かに寂しい。ですがすずか、貴方が気に病む事はないよ」 すずかに語りかけながら、サタンガンダムを倒すために共に旅をした仲間たちのことを思い出す。 だが、ナイトガンダムの心に残るのは寂しさのみであった。サタンガンダムを倒した今となっては、スダ・ドアカワールドにも平和が訪れる。 平和を脅かす敵がいなくなっただけでも、彼の心は安心感に満たされていた。 「それに、今はすずかやアリサ、忍殿達がいるから、寂しい事なんて無いよ。改めて御礼を言わせて欲しい。心配をしてくれて、ありがとう」 PM 19時45分 あの後、アリサに負け続けたガンダムは10回目となる再戦を希望するも、二人とも習い事の時間が来たため断念。 二人が習い事に言った後は、屋敷内に設けられた自分の部屋で地球の文化についての勉強をしていた。 「しかし『カガク』なる機械技術がスバ抜けて進んでいるにも関わらず、魔法は全く無いとは・・・・」 借りた本の中には、魔法に関する物も含まれていたが、全てが立証の無い空想物ばかりであった。 実際『スダ・ドアカワールド』にも機械技術があったが、地球と比べたら比較するのも馬鹿らしくなる程劣っていた。 だが、魔法技術に関しては使える者、使えない者がいたが、日常で使われている程一般的であった。 「おそらく、ここの人達には魔力が無いんだろう・・・それを補う意味も込めて、自然と機械技術が発展したんだろう」 夕食の時に一回だけ部屋を出たきり、部屋に篭って本を読みふけるガンダム。 聞こえてくるのは時計が刻む針の音のみ、ただ静かに夜は更けていく 筈だった 何の前触れも無く、突然ナイトガンダムの部屋が暗い色に包まれる。 白い壁紙に囲まれた明るい部屋が、一転してどんよりとした暗い部屋へと姿を変える。 「これは・・・・封鎖結界!!?」 突然の事態に驚きづつも、彼には原因が直に分かった。 相手を発動領域内に閉じ込める結界の一種であり、『スダ・ドアカワールド』で戦ったジオンの魔道師も使っていた術。 「なぜだ・・・・・この世界には魔法は存在しない筈・・・・・いや、先ずはすすか達の安否を・・・」 海鳴市上空 「・・・・・・魔力反応は・・2つ?・・・・・・・」 封鎖結界を展開したヴィータは、狙っていた高魔力を持つ獲物だけではなく、 今まで反応がなった高い魔力を持った獲物も掛かったために、ふと疑問に思う。 「・・・まぁ、良いオマケが釣れたってことだ・・・・二人合わせて、上手くすれば30ページは稼げるな・・・・」 だが、彼女のする事には変わりは無い、高い魔力を持つ二人から魔力をいただく・・・・・はやてのために。 「先ずは大物からだな。行くよ、グラーフアイゼン」『Ja wohl』 自分の相棒の返事を聞いたヴィータは、目的を遂行するために、大物「高町なのは」の元に向かう。 一つの赤い流星が、誰もいない町の上空を翔る。 月村家 「やはり・・・・いないか・・・・」 リビング・キッチン・忍達の部屋(丁重に数回ノックした後入室)を確認したガンダム。 だが、彼が予想した通り、月村家には彼女達どころか普段彼方此方にいる猫すらおらず、不気味に静まり返っていた。 当初、ナイトガンダムは自分が狙われているのではないかと思った。この結界は自分の知識が正しければ 指定した人物、もしくはある条件に該当する人物を発動領域内に閉じこめる効果がある筈。 皆を残して自分がこの場にいるということは、自分を目的としているのか、もしくは自分が『ある条件に該当している』という事である。 前者の場合なら、直にでもこの場を立ち去らなければならないが、 「大きな魔力反応が・・・・・移動している・・・・・」 この封鎖結界が発動してから直に感じた大きな魔力反応。十中八九この結界を張った人物で間違いは無いのだが、 その人物は自分の所には向かわず、もう一つ、別の方向から感じる大きな魔力反応の方へと向かっていた。 「私を狙ったわけではない・・・・だが私は結果内にいる。おそらくこの結界を張った魔道師は『魔力がある者』だけを目標にしたのか。 だが、このままでは・・・・・マズイな」 結界の効果のため、外にいるすずか達には危害は及ばないとはいえ、このままにしておく訳には行かない。 せめて、この結界を張った魔術師に目的などを聞く必要がある。 「ここでジッとしていも始まらない・・・・・行こう」 既に返してもらった剣と盾、電磁スピアを装備し、ナイトガンダムは市街地方面へと向かった。 数十分後 :市街地 「うっ・・・・・あ・・・・・・あ・ああ・・・・・」 封鎖結界により隔離された市街地。 そこに立ち並ぶビルのオフィス内に高町なのははいた。 だが、彼女は既に満身創痍であった。体は彼方此方が痛み、立つ事も出来ない。 自分の愛杖もボロボロであり、今は弱々しく光りを放っているだけ。 「・・・どう・・・・して・・・・」 ゆっくりと自分に近づいてくる襲撃者の少女を霞む目で見据えながら、この数十分間で起きた出来事を思い出す。 何もかもが突然だった。急に発生した封鎖結界、突然襲ってきた鉄鎚を持った女の子。 どうにか話を聞いてもらおうと言葉を投げかけるも、無視され攻められる。 おそらく、威嚇として撃ったディバインバスターが彼女の怒りに火をつけたのだろう。 あの帽子を吹き飛ばした瞬間、彼女の瞳は怒りに満ち溢れ、自分への攻撃も激しくなった。 それからは一方的だった。多少自信があった防御も簡単に打ち砕かれ、ビルの中にあるオフィスまで吹き飛ばされた。 続けて放たれた一撃で、容赦なく壁に叩きつけられ、今に至る。 バリアジャケットのおかげでダメージは抑えられたが、それでも体の彼方此方が痛み、動く事ができない。 これほどの痛みをなのはは今まで経験した事が無かった。だからこそ、自分を痛めつけた相手が近づいてくるたびに 言い様の無い恐怖感が増す。 それでも、恐怖と痛みに耐えながら、なのはは傷ついたレイジングハートを襲撃者に向けた。 「(・・・・こんなので・・・・・終わり・・・・・・やだ・・・・ユーノ君・・・クロノ君・・・・フェイトちゃん!!!)」 「(ちっ・・・・やりすぎたな・・・・)」 内心で舌打ちをしながらも、ヴィータは目的の遂行のため、なのはに向かって歩み続ける。 あの帽子を吹き飛ばされた瞬間、自分は感情的になってしまった。 完璧に相手を『ぶち殺す』勢いで攻撃を仕掛けてしまった。 シグナムが始終自分に冷静になれと言っているが、今回ばかりは素直に認めようと思う。 「(だけど・・・・よかった・・・・ありがとう)」 ヴィータは安心すると同時に、内心でこの魔術師に感謝の言葉を送った。 自分の攻撃を完全ではないとはいえ、防いだ事は癪だが、こいつは死ななかった。 正直下手な魔道師だったら、自分は誓いを破って殺してしまっていたに違いない。 だが、それとこれとは別、こいつは見逃すには欲しい相手だ。もう一撃食らわせた後、魔力をごっそりいただく。 「・・・・・わりいな・・・・・・恨んでくれても・・・・・・・かまわねぇぜ・・・・・・」 痛みに耐えながら、大破した杖を自分に向ける魔道師に言葉を投げかけた後、ヴィータはゆっくりと アイゼンを振り被る・・・・・・・・・・そして ガキィン 振り下ろした瞬間、突如横から飛んできた『何か』により、アイゼンは叩き付けられて、ヴィータの手から離れた。 「なっ!!?」 アイゼンは地面を滑るようにして転がり、その近くには一本の西洋の剣が床に深々と突き刺さる。 突然の襲撃にヴィータは驚きながらも、アイゼンを吹き飛ばした『何か』が飛んできた方向を睨みつける。そこには 「弱い者虐めは・・・・・許さん!!!!」 ヴィータを正面から睨み返すナイトガンダムの姿があった。 「(なんだ・・・・・こいつ・・・・・・)」 睨みつけながらもナイトガンダムの姿を観察するヴィータ。 同時に気付かれないようにゆっくりと後方にさがる。 「(一見小型の傀儡兵に見えなくもねぇが、この世界の技術じゃ作れる筈がない。それじゃあ『ろぼっと』っていう機械人形か? でもあいつからは魔力を感じる、間違いなく生物だ。おそらくオマケとして引っかかったのはこいつだろうな・・・・・・)何だテメェ・・・・管理局か!?」 先ずは敵か味方か確認しなければならない、ほぼ答えは決まっているだろうがヴィータは尋ねてみる。 「管理局?なんだいそれは?むしろこちらが聞きたい、この結界を張ったのは君だね?」 「ああ、そうだよ。だったら何だって言うんだよ?それに管理局じゃねぇんだったら、なんでアタシの邪魔するんだよ?こいつの知り合いか!?」 「いや、この子の事は知らない。だが、勝負が付いて尚、この子を攻撃しようとする君のやり方は間違っている。だから止めた。 もし、またこの子を傷つける様な真似をするんだったら・・・・・」 背中に背負っていた電磁スピアを抜き取り、その切っ先をヴィータに向かって突きつけ 「ラクロアの騎士・ガンダムが相手になる」 はっきりと言い放った。 その姿に、ヴィータは一瞬キョトンとするが、直に獰猛な笑みを浮かべる。そして 「・・・・へっ、どの道おめぇも対象だったんだ。順番が逆になっちまったが・・・・・関係ねぇ!!」 後ろに下がる様にジャンプ、一気にアイゼンが転がっている所まで飛び跳ね、アイゼンを拾う。 そして、ナイトガンダム同様に切っ先を突きつけ、言い放った。 「ああ!!相手になってもらおうか!!この鉄槌の騎士・ヴィータの相手をなぁ!!」 地面を蹴り、ナイトガンダムに向かって突進、グラーフアイゼン手加減無しに叩きつける。 迫り来るその攻撃を、ナイトガンダムは相手の力を見る意味も込め、避けずに盾で防ぐ。 激突した瞬間、発生した衝撃波は、周辺に散らばっているコンクリートの破片や、今だ立ち込ている煙を一気に吹き飛ばす。 「(こいつ・・・・真正面から防ぎやがった・・・・・)」 手加減無しの渾身の一撃、ハンマーフォルムに戻ったとは言え、障壁を使わず、ただの盾で真正面から防がれた事に、 ヴィータは純粋に驚くと同時に、悔しさを露にする。だが、そんな気持ちを表したのも一瞬、 「なろぉ・・・・・・待ってやがれ・・・・その盾たたきわってやらぁあああ!!!!!!」 盾を破壊せんと、腕に更なる力を込めた。 「(くっ・・・・なんて力だ・・・・)」 グラーフアイゼンの攻撃を耐えているナイトガンダムは素直な感想を内心で呟く。 正直、油断をしないで正解だったと思う。見た目はすずかと同じ、もしくは年下にしか見えない少女。 だが、彼女かから発せられる気迫は正に騎士。幾つもの修羅場や戦場を駆け抜けている者だからこそ 発する事が出来る気迫。それを感じた時点で、ナイトガンダムは『手加減』という言葉を捨てた。 目の前にいるのは子供ではない。百戦錬磨の兵だ。 だからこそ、強敵と戦う気持ちで・・・それこそ、サタンガンダムと戦った時の気持ちで戦わないと負ける。 目の前の少女をサタンガンダムと同等の敵と新たに認識したガンダムは、盾を持つ手に力を込めて 「おぉおおおおおお!!!!」 力任せにヴィータを払った。 吹き飛ばされながらも、ヴィータは空中で態勢を整え着地する。同時にグラーフアイゼンを振り被り、 近くにあった机をボールに見立て、 「おりゃあ!!」 ゲートボールで鍛えたスイングで叩きつけた。 叩きつけられた机は形を凹ませながらも、ものすごいスピードでナイトガンダムに迫る。 だが、迫り来る鉄の固まりを目の前にしても、ナイトガンダムは特に表情を変えずに、 盾を装着している左腕で、蚊を払うかのように難なくたたき払った。 正直大した効果を期待していなかったとは言え、あまりにもあっさり払われた事に、内心で舌打ちをするヴィータ。 「(・・・・・強ええな・・・・・あいつみたいな砲撃に特化した奴だったら、懐に入り込んでブチのめせるんだけど・・・・)」 確認の意味を込め、先ほど倒したなのはの方を見る。 苦しそうに自分達の戦いを見ているなのはの姿を確認したヴィータは、反撃は勿論、逃げる事も出来ないと判断し、無視する事に決める。 「(根拠のねぇ予想はしたくはねぇが・・・・こいつは武器からしておそらくシグナムと同じ接近戦を主体としてる・・・・・ カートリッジの無駄使いは出来ねぇ・・・・だけどカートリッジ無しで戦える相手でもねぇ・・・・)」 少しの隙も見逃さないように、互いに互いを睨みつけるように見据える二人。 先ほどとは打って変わり、今聞こえるのはなのはの苦しそうな息遣い。 「(・・・・・距離を取ってシュワルベフリーゲンで牽制、隙が出来たらラケーテンでぶっ叩く。もし無理でも時間が稼げる。 シグナム達が来ればこっちの勝ち・・・・・まぁ、こいつかあの魔道師の仲間でも来たらアタシはピンチ・・・・・賭けだな、こりゃ)」 行なうべき行動を考えたヴィータは即座に行動に出る。 「おりゃあ!!」 何の前触れも無くグラーフアイゼンを振り被り、リノリウムの床に叩きつける。 オフィス全体が響くと同時に、床に積もった塵が再び舞い上がる。 一種の煙幕と化した塵と埃はナイトガンダムに襲いかかり、一瞬だけ彼の視界を奪った。 だがその一瞬の時間だけあれば、ヴィータには十分だった。 「へっ!ここじゃあ狭すぎる!!外に出な!そこで相手してやる!!!」 割れた窓ガラスの向こうから聞こえてくるヴィータの声。 ナイトガンダムも即座に後を追おうとするが、直に方向を窓から倒れているなのはに変え、駆け寄る。 「大丈夫かい・・・・・・少し待ってて」 ナイトガンダムは電磁スピアを背中に掛け、しゃがみ込む。そして有無を言わさずになのはの胸元に手を当て、唯一自分が使える回復魔法を掛ける。 暖かい光りがなのはを包み込み、あれほど体を支配していた痛みが和らいでいく。 「・・・・少しは楽になったかい?だけど申し訳ない。僧侶ガンタンクだったらもっと効果のある回復魔法が使えるのですが・・・・」 「い・・いえいえ!!そんなことありません!!体の痛みが和らぎました!!」 本当に申し訳無さそうに頭を垂れるガンダムに、なのはは必死に弁護する。 「それに・・・助けていただいて・・ありがとうございます・・・・あの・・・・・」 「ああ・・・申し遅れました。私、ラクロアの騎士・ガンダムと申します。」 「ガンダムさんですか。私、高町なのはと言います。あの・・・・・・」 なのはの表情から、自分の正体を聞きたいことは直に分かったが、今はゆっくりと話をする暇は彼には無かった。 「申し訳ありません。なのはさんが色々と私について聞きたいのは分かります。私も貴方に聞きたいことがある。 ですが、今はそんな時間はありません。ですが一つだけ聞かせてください。なぜ、貴方はあの少女に狙われたのですか?」 あの少女は自分がこの結界を張ったと言った。そして『・・・・へっ、どの道おめぇも対象だったんだ。順番が逆になっちまったが・・・・・関係ねぇ!!』 とも言っていた。その情報から、彼女は襲撃者で、高町なのはと自分は襲撃目標だった事が分かった。 だからこそ、狙われたであろうなのはに心当たりが無いか尋ねたのだが、 なのはの口から出たのは、『自分にも分からず、突然狙われた』という答えだった。 「・・・・そうですか」 なのはから聞いた内容に嘘は無いと思う。だが、ナイトガンダムには妙なシコリが残っていた。 「(そうなると、あの少女はただの通り魔と言う事になる。だが・・・あの少女の目からは悪意が感じられない。 むしろ何かを決意した・・・・・いや、今考えるのはやめよう。この子の安全と、結界の解除を優先するべきた)」 今は戦う事に気持ちを切り替えたガンダムはなのはに、ジッとしているように言う当時に、床に刺さっている剣を抜き取り、 右腕に持つ。そして 「・・・・・・・参る!!」 ヴィータが待っているであろう、隔離されたコンクリートジャングルに向かって、ナイトガンダムは飛び出した。 戻る 目次へ 次へ
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裏第一回戦:試合場【遊園地】結果 このページではダンゲロスSS3裏トーナメント第一回戦、遊園地の試合結果を公開します。 投票結果 試合SS キャラクター名 得票数 第一回戦【遊園地】SSその1 高島平 四葉 4票 第一回戦【遊園地】SSその2 雨竜院雨弓 4票 第一回戦【遊園地】SSその3 偽名探偵こまね 21票 コメント 高島平四葉 その3と悩んだけど、後先を考えないインフレ描写のインパクトでわずかにこっちが上回りました。その3のルールをついた決着描写や前半のほのぼのもよかったです。その2も途中まで良かったけど、四葉の強化方法にやや唐突感があったかなあ。 最初の狂気に満ちた展開。そして自分自身にモアを行使する四葉ちゃんが良かったです。勝ち進んだらどういう展開にするのか気になるところ。 偽原は死んだwww 雨竜院雨弓 最後までファントムルージュに抗う3人が描かれていて面白かった。 比較的ハッピーな結末も嬉しかった どこを見てもファントム!一般人と達人と世界の敵が同じリングでまともに闘う無茶を通したこのssは素晴らしい。 やはり一番熱い。青キジの歌が流れて来た時に感動してしまった。 偽名探偵こまね 一番本筋にあのクドいのが絡んでなかったからなあ。反則負けは使って欲しかったものではあるし。 その2の壮絶なバトル描写も好きだったけれど、絶望的な戦力差とファントムルージュに負けず、意外な応用で勝ちを拾ったこちらに入れたい。 汚いなさすが探偵きたない アナウンスを消してしまうのは面白いです ファントムルージュの闇に呑まれた遊園地ブロックで、おそらく唯一ファントムを表面的なものでなく真摯に扱っていたところが好印象でした。SSそのものも、遊園地同盟の発足で物語に厚みを生み、それに終わることなく四葉攻略にも利用し、またルールを利用したスマートな雨弓攻略など、非常に美しかったです。 サービス精神に負けた 綺麗な決着というか、見事なルールを突いた探偵らしい勝ち方。 でも雨竜院のおもらしはどの層に訴えているんだろう。 なんて汚く面白い手で勝つんだ! 伏線の仕込み方が超丁寧で、意外性抜群。読者と対戦相手の思考を読み取り、いち早くファントム成分を叩き切ったその判断は見事の一言である。 尿の有無を選択できるユーザーフレンドリーな仕様が助かりました!僕はそっちの趣味はないけど、敬意を表してお化け屋敷だけ漏らしたことにしました。遊園地で楽しく遊ぶ描写を勝利への下準備として活用するプロット構築力は凄いと思います。その1の狂気の沙汰と、その2の熱いバトルも良かったよ! 糞尿汚えな!ファントム四葉とかもう何言ってんのか全くわかんねえな!こまねちゃんマジ汚えな! カワイイヤッター!その1は「黒の黙示録」とかそんなタイトルの文書の一節ですよね…? 完成度はその2のほうが上だが「同盟を結ぶ(仲間を増やしていく)」という選択を彼女がとったことが決め手となった。唯の人である彼女が「世界の敵と対する」ためのそれは必須の条件である―と思っていたし、それも本選中に伏線として提示してあるのでよい感じ。本道と言うスト―リ性を踏まえるとその3が勝っていた。後、遊園地と言う舞台を魅力的に表現していたことにも好感。 ようやくファントムルージュから逃れることが… 事象に派手さはないものの、ファントムルージュの呪縛をほぼ逃れていることが素晴らしい。あの能力の悪魔的な魅惑に抗うとは。 良いゆるふわでした。戦闘パートの探偵らしいギミックもお見事!
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「行くぜ! 俺の必殺技……パート2!!」 ――Full Charge―― 電王の掛け声に応えるように、チャージされたフリーエネルギーがデンガッシャーの剣先へと収束されて行く。 チャージが完了し、デンガッシャーから離れたオーラソードは、周囲のワームの身体を切り裂きながら飛んで行く。 電王が振るうデンガッシャーに合わせて、空を舞うオーラソードは滑るように飛んで行くが―― 「えぇっ……!?」 『Protection,EX』 その先にいたのは、高町なのはであった。 なのはの危機を察知したレイジングハートは咄嗟にバリアを展開し、オーラソードを弾く。 しかし、直撃を防ぐことには成功したが、それでも衝撃はなのは側にも伝わる。 結果、バリア毎弾かれたなのはの体は、そのまま地面へとたたき付けられることとなった。 「ハイパー……キック!!」 ――Rider Kick―― ハイパーカブトは真っ直ぐに、宙に浮かんだコキリアワームへと真っ直ぐに飛んで行く。 まるで竜巻のようなタキオン粒子を纏ったその脚は、激しい火花を散らせながら、コキリアワームを打ち貫いた。 着地すると同時に、時間は元の流れを取り戻し、展開されたカブトの装甲も元の位置へと戻って行く。 やがて、変身を解除すると同時に意識を失った天道は、過度の疲労からか、その場に倒れ込んだ。 その後、意識を失った天道は、すぐにアースラの医務室へと運び込まれた。 幸い天道のダメージはそれほど重い訳でも無く、すぐに意識を取り戻す事が出来た。 それも起きるや否や、天道の態度は相変わらずの尊大さ。 流石の加賀美もはやても、呆れずにはいられなかったという。 勿論、呆れた反面、天道がいつも通りの態度であることには安心を覚えたが。 「どう? 美味しい?」 「……んー…………」 現在は、はやてがお見舞いついでに作った料理を、天道が食べている最中である。 メニューの内容は“オムライス”。 単純で平凡な料理でありながらも、料理人の実力を見る事が出来る料理だ。 そんなオムライスを、しばらく味わった天道が出した答えは。 「……まぁまぁだな」 「うんうん、まぁまぁかぁ……って! 美味しくないんかい!!」 「……まぁまぁだな」 はやての料理に対する評価は一言のみ。“まぁまぁ”だ。 そんな天道の態度に多少の落胆を覚えたが、なんだかんだで美味しそうに食べてくれている。 まぁ、これはこれでいいのかな?等と考えながら、はやては天道を眺めていた。 ACT.20「FULL FORCE-ACTION」前編 それから数日の日をおいて。 今日も天道は、このアースラ内での生活を強いられていた。 ……と言っても最近は以前程の危険人物扱いでは無く、良太郎並の行動は許されていたが。 良太郎はたまに元の家に戻っているらしいが、まぁそんなことは天道にとってはどうでも良かった。 それよりも天道にとって最も重要なのは、今の自分がこの戦艦内でどう生きていくかだ。 そしてその答えが、天道が今まさに立っている場所にある。 目の前にあるのは、沢山の食材に、まな板、包丁、その他諸々。 そう。ここは厨房だ。アースラの食堂で、皆の料理を作る、厨房だ。 そんな場所に、天道総司は立っていた。 それも、白いエプロンを着けた―――コック姿で。 「よし、では今日も一日。旨い飯を作るぞ!」 「「「はいッ!!」」」 天道の掛け声に、厨房の料理人達は声を揃えた。 すぐに天道は自分の持ち場につき、局員達の昼食の準備を始める。 手慣れた手つきで、冷蔵庫から持って来た新鮮な野菜に包丁を突き立てて行く。 その包丁さばきは見事の一言。 素早く野菜を捌きながらも、決して形を乱すこと無く、常に一定の間隔で綺麗に捌いている。 厨房で料理を作る局員達は、目を輝かせてそんな天道の包丁捌きを見詰めていた。 さて、何故天道が食堂で料理を作っているのかと言うと―――時は数日前へと遡る。 それはある日の事だった。 いつも通りに、クロノに持って来られた料理を完食した天道。 そんな天道が、箸を見つめながら、ぽつりと言った。 「やはり……旨くないわけじゃないが……旨い訳でもないな」 「失礼な。だいたい君はそんな贅沢を言える立場じゃないだろう?」 天道の食べっぷりを黙って見ていたクロノであったが、これには流石に呆れ顔。 クロノも小さなため息を落としながら、むすっと言い返す。 一方で天道は、箸を持ったまま、何かを考えるような姿勢で食器を見詰めるのみ。 「そんなに不満なら、食べなければいいだろう? それか、君が自分で作れば――」 「――それだ」 「へ……?」 「俺をここの厨房へ案内しろ」 「…………」 クロノが言い終えるのを待たずに、天道はすっくと立ち上がった。 困ったクロノは、渋りながらも艦長であるリンディに連絡を入れ、指示を仰いだ。 結果、答えは即座に帰って来た。 「面白そうだから、いいじゃない」 と、これがリンディ・ハラオウン艦長が出した答えであった。 アースラで起こったあらゆる責任を負うべき館長である筈なのに、そんなに軽くていいのかと クロノは突っ込みたくて仕方がなかったが、どうせ自分が何を言っても無駄なのだろうと。 またしてもクロノはため息を落としながら、リンディの思いつきに付き合うことにした。 そういう訳で、早速天道は食堂へと招かれ、自慢の腕前を奮って見せた。 リンディとクロノ、二人分の晩御飯を作ることになった天道は、“味噌汁”、“鯖の味噌煮”、に、白米という非常に単純な料理を作った。 当初はあまりの平凡さに、期待外れだ何だと言っていたが――― 一口食べればそんな考えはすぐに吹き飛んだ。 天道の料理を食べた二人がどんな反応を示したのか。それは最早想像に難くない。 料理も単純ながら、二人の感想も至って単純。「旨い!」の一言。 こうして天道の料理の噂は瞬く間にアースラ内に響き渡り、翌日には厨房で実際に料理を作る立場に。 翌々日には、厨房の料理長のポジションを任せられる程になっていた。 これが、アースラ内での天道の自由な行動を許す大きなきっかけになったのは、まず間違いないだろう。 たった数日ではあったが、天道の料理を食べた人は、明らかに天道に対して好意を抱いていたからだ。 実際、この数日間、アースラの局員達はこの食堂の料理ばかりを好んで食べるようになったと言う。 と言うのも、天道の料理は、食べた者を昇天させてしまう程の美味しさなのだ。 そうなるのも当然と言えば当然だろう。 と、こうして料理長として料理を作る事になり、現在に至る訳である。 天道が野菜を刻んでいると、ふと背後から何者かの気配を感じた。 「止まれ。俺が料理をしている時、その半径1m以内は神の領域だ」 「…………」 背後の気配が止まった。流れる沈黙。 キリのいい所まで作業を終わらせた天道は、ゆっくりと背後へと振り向いた。 「なんだ、クロノか。どうしたんだ?」 天道に話しかけた相手は、他ならぬクロノ・ハラオウンであった。 当初は厨房の料理人にアドバイスでも頼まれたのかと思ったが、相手がクロノなら話は別だ。 一応形だけでも天道はクロノの指示に従っている以上、蔑ろにする訳にも行かない。 天道も警戒心を解き、エプロンを外して応対した。 「何だ。そんないつも通り真剣な顔をして」 「天道……君の処分が決まった。一緒に艦長室まで来てくれるかな。 ……あといつも通り真剣な顔って何だ。」 「気にするな……ようやくか。待ちくたびれたぞ」 クロノはどことなく心外そうに呟くが、天道はお構いなしにエプロンを脱ぎ始める。 考えてみれば、天道がクロノとこんな風に話すようになったのも、ごく最近―― とくに、暴走したカブトを、ザビーが身を呈して救った時からなのだろう。 あれ以来、天道は少しだけクロノという人間を見直したのだ。あくまで少しだけだが。 きちんとエプロンを畳んだ天道は、それをクロノに渡しながら、不敵に微笑んだ。 ◆ それからややあって天道は、クロノに案内され、艦長室の前まで連れられた。 どうやらクロノは艦長室の中まで同席する必要はないらしい。 案内を終えたクロノは、「自分の役目は終えたから仕事に戻る」と、そのまま天道の前から姿を消した。 調度クロノの姿が見えなくなると同時に艦長室のドアは開かれた。 中から、自分を呼ぶリンディ・ハラオウン艦長の声が聞こえる。 声に導かれ、天道は一歩踏み出す―――刹那、室内の予想外の和風さに一瞬とは言え天道は自分の目を疑った。 無理もない。これまで天道は、アースラ内部で機械的な部屋ばかりを見て来たのだ。 それなのに、まさか艦長室がこんなにも庶民的な部屋だと一体誰が想像しただろうか。 と言っても、天道にとって和風の空間というのはかえって落ち着ける空間なのだが。 「どうしたのかしら? 天道さん。この部屋がそんなに意外だった?」 「……ああ。少しはいいセンスをしてるようだな」 「それはどうも」 天道がこの部屋に入った瞬間から既に表情に小さな微笑みを浮かべていたリンディだが、 天道にセンスを褒められた事に気を良くしたのか、リンディはさらに上機嫌そうに微笑み返した。 いや、天道にとってはこんな会話はどうでも良い。 重要なのは、自分に下される処分についてだ。 と言っても、管理局――というよりもネイティブの連中が天道の力を必要としている以上、 天道に実害が及ぶような処分が下されるとは思えないが。 それ故に天道は、自信満々といった雰囲気で、腕を組みながら言った。 「そんな話はどうでもいい。それより、俺に下された処分とやらを聞かせて貰おうか」 「まぁそう慌てないの……処分と言うよりも、ちょっとしたお話があって呼んだだけだから」 「話だと? 言っておくが俺は、管理局に入るつもりは無いぞ」 「ええ、その話なんだけど……」 ばつが悪そうに苦笑しながら、リンディはテーブルのボタンを押した。 同時に、リンディと天道の眼前に、宙に浮かぶモニターが現れる。 天道もいい加減見飽きた技術である為に、今更驚いたりはしない。 モニターに映し出された人物は、天道の顔を見るなり、満面の笑みを浮かべ、画面に身を乗り出した。 「いやぁ~……貴方が天道さんですか! どうやら噂通りの方のようですね!」 「…………」 モニターに映る一人の男。歳は中年程。体格は小太り。 正直言って、どこにでも居そうな普通の男だ。 天道はモニターに映った男に、冷たい視線を送る。 「……どうやら噂通り、クールな方のようですね! いやぁ益々素晴らしい!」 「要件は何だ。わざわざこうして俺を呼び出したんだ。俺に何か言いたい事があるんだろう」 「いやぁ~……本当に素晴らしい、まさに天道さんのおっしゃる通り! 今回は一つ、話したいことがありましてねぇ……」 モニター画面の中で、気のいい笑顔を続けていた男の表情が変わる。 笑顔という点では変わらないが、その中にもどこか真剣な色合いを浮かべたような表情。 天道には、この男がどこか気味悪く感じられた。 「あ、その前に……私はネイティブの根岸と申します。以後お見知りおきを」 「ネイティブだと……?」 「ええ、ですがその件はまたの機会に。時間も無いので、今は天道さんへの処分だけ伝えさせて頂きます」 ネイティブという単語を耳にすると同時に、天道の目付きも変わる。 何せ今最も優先すべき謎なのだから。 天道はちらりとリンディを見やるが、リンディも申し訳なさそうにゆっくりと首を横に振るのみ。 どうやらリンディ提督ですら、ネイティブという言葉についてはあまり知らないらしい。 仕方がない……と、天道はため息混じりにモニターに視線を戻した。 「えー……結論を言わせて貰うと、天道さんにこれといった処分はありません。 そしてリンディ提督とアースラスタッフ一同には、今後は天道さんの指揮下に入って頂きます」 「「な……!?」」 不敵な作り笑顔を全く崩さないままに、根岸が言った。 対照的に、天道とリンディの二人が驚愕に表情を固める。 もちろんリンディにとってそれは不服な事なのだろうが、天道とていきなりこんなことを言われても訳が解らない。 つまりは、自分を管理局に入れるということだろうか? だとすれば、天道はそんな命令に従うつもりは無い。 というよりも、アースラのスタッフを、それほど天道は欲してはいないのだ。 自分一人でも十分戦える以上、本当に味方として信用できるかもわからないような組織を側に置く天道ではない。 と、天道がそんな事を考えていると、横に座っていたリンディが声を張り上げた。 「ちょ、ちょっと待って下さい! それは一体――」 「まぁまぁ落ち着いて! 別にリンディ提督の階級を下げるとか、天道さんを上司 として管理局に招き入れろとか、そんな事を言ってるんじゃありませんよ」 リンディの言葉を遮って、根岸が苦笑気味に続ける。 「リンディ提督以下アースラスタッフ一同には、ただ天道さんの手助けをして欲しいんですよ」 「手助けだと……?」 「ええ、貴方は今まで通り、ワームを倒してくれればいい。 そのために必要であれば、彼女達の力を借りればいいんです」 「……生憎だが、俺にそんな手助けは必要な――」 「まぁまぁまぁ! そう言わずに! あって損するものじゃないでしょう! つまり、貴方は今まで通り、我々は貴方に協力したい……そう言ってるんですよ」 またしても天道が言い終える前に、根岸が割り込んだ。 正直あっさり納得することは出来ないが、現時点では根岸の言い分に、 天道にとって損失になるような事が見受けられないのも事実だ。 もしも向こうから何らかの要求が突き付けられたなら、また話は変わって来るが。 根岸は正直言ってZECTの加賀美総帥や三島と同じくらいに胡散臭い。 だが、根岸が自分の力を必要としていることに恐らく嘘はないのだろう。 ならば、こちらから利用してやるまで。 以上の点を踏まえて、暫く考えた後、天道は結論を出した。 「……いいだろう。ただし、俺の邪魔だけはしない事だな」 「えぇ、はい、それはもちろんです! リンディ提督も、分かってますね……?」 「……わかりました。私たちは今まで通り、仮面ライダーと協力して敵を倒せばいい……ということですね?」 根岸の問いに、リンディは少し表情を曇らせながら、答えた。 まぁ根岸のような胡散臭い男にいきなりこんなことを言われれば誰だってそうなるか、 などと考えながら、天道もリンディの顔を見つめる。 リンディに言わせれば、天道もまた仮面ライダーの一人。 ならば、今まで通り仮面ライダーをサポートすればいいと判断したのだろう。 リンディの答えを聞いた根岸もまた、満足そうな笑顔を浮かべ、大きく頷いた。 こうして、結果的に天道は無罪放免。 それどころか、アースラスタッフという心強い味方を手に入れる事になるのであった。 ◆ 天道が食堂に戻った時には、局員達の朝食も終わり、人影も少なくなってきた所だった。 食堂に見えるのは、サボり癖があるのか仕事が暇なのかは知らないが、のんびりと朝食を食べている数人のみ。 そんな人々も次第に食事を終え、自分の持ち場に戻って行く。 そんな中で、段々と人が居なくなってゆく食堂を見守っていた天道の目に、明らかに不自然な姿をした一人の男が映った。 鋭く尖った二本のツノを持ち、頭から足先まで全身真っ赤っかという異様な姿を持った怪人。 野上良太郎に取り憑いた、赤鬼の姿をモチーフとしたイマジン。 名前は―――モモタロスというらしい。 どうやら初陣の時から、良太郎がイメージしていた桃太郎と、このイマジンのイメージが一致していたらしい。 そんな理由で、いつからかモモタロスと呼ばれるようになったこのイマジン。 本人はそんな名前のセンスに非常に不服そうだが。 良太郎に取り憑いたばかりのモモタロスは、誰とも打ち解けようとはしない。 ただ、たった一人でふて腐れたように食堂の椅子に寝そべっていた。 傍らに置かれたコーヒーは既に冷めている様子で、どうやらモモタロスは長時間ここでダラけていたのだろうという事が伺えた。 ◆ 良太郎や他の局員達にいつの間にやらモモタロスと名付けられたこのイマジンは、 何をするでもなく、ただぼーっと天井を眺めていた。 モモタロスは今、非常に苛立っていた。 良太郎という特異点の少年に取り憑いてしまった事に関しては、今はそれほど悔やんではいない。 寧ろ、イマジンとして過去を侵略するよりも、正義のヒーロー電王として、侵略者を倒す方が、段違いにカッコイイ。 元々派手にカッコよく戦いたかった彼にとっては、電王として戦えるという事はプラスなのだ。 1番の問題はその後。電王としての戦いの中で、自分の最高にカッコイイ―筈の―必殺技を、なのはにぶつけてしまった事だ。 勿論、彼に言わせればあんな邪魔なところにいたなのはが悪いのだ。 だが、それでいいのかという疑問が、彼の心を苛む。 なのはが悪いと決め付けて逃げる事は確かに簡単だが、それは本当にカッコイイのか? 小さな子供を傷付けて、自分は平然と罪から逃れようとする。 そんな形が、本当に彼が望んだ物なのか? 答えは、Noだ。 今の自分が最高にカッコ悪いという事は、彼自身が1番理解しているのだ。 だが、だからと言って不器用な彼に、今更素直に頭を下げるなど、出来る筈もない。 だからこそむしゃくしゃと悩んでいるのだ。 良太郎には口を利いて貰えなくなり、何処か責められている気がしてなのは達に顔を合わせる事も出来ない。 「畜生……良太郎の奴、人を悪者みたいな目で見がって……」 天井を見詰めたまま、小さな声で呟いた。 寂しさや虚しさといった感情が嫌と言う程に込められた声。 それは、周囲の者が見ているだけでも、何処か可哀相に思えてくる程だった。 ややあって、うじうじと寝転んでいた彼の視界に、一人の男が入った。 自分を見下ろすその顔には、確かな見覚えがある。 天然パーマに、嫌に落ち着き払ったいけ好かない野郎――天道総司だ。 何か言いたい事でもあるのか、天道はただ自分を見下して気味悪く立っていた。 「……なんだよ?」 「ここは寝る所じゃない。飯を食わないのなら出て行け」 「っるせぇな! 言われなくても出てってやるよ!」 言われた途端に腹が立った。 すぐに立ち上がったモモタロスは、天道に背を向けて、ズカズカと歩いて行く。 別に行く宛てはないが、今ここにいることが胸糞悪い。だから出て行く。 そう考え、食堂を出ようとするが――― 「待て」 「……あ?」 「お前、顔が赤いぞ」 「な……!? べ、別に赤くなんてねぇよ!?」 食堂のドア付近で振り向くと、何やらトレイに食器を乗せながら、天道が言った。 顔が赤い。この一言で、何故か心の中身を見透かされたような気がしたモモタロスは、少し焦ったようにそれを否定する。 いや、元々モモタロスは顔が赤い訳だが。 と、モモタロス本人も、ややあってその事実に気付いた。 「って……俺の顔は元々赤いだろうが!!」 モモタロスが怒鳴るが、天道は耳を傾ける様子も無く、マイペースに作業を続ける。 トレイに乗っているのは、魚と白いご飯。 それをテーブルに置いた天道は、モモタロスに視線を送った。 「お前、今日は何も食べてないだろう」 「別にちょっとくらい食わなくたって死にはしねぇよ」 「いいから食べろ。腹が減っていては、余計に苛々するだけだ」 天道の言葉に、モモタロスは誰が食うもんかとそっぽを向くが―― 刹那、モモタロスの腹がぐうと音を鳴らした。 そういえば、昨日の夜からろくに何も食べていなかったなぁと。 そんな状態で天道の作った料理を見てしまって、腹が減らない訳が無かった。 ご飯からは白い湯気が立ち上り、味噌に漬けられた魚は美味しそうな香りを醸し出す。 気付けばモモタロスは、渋々ながら天道が誘導するテーブルの席に着席していた。 あくまで渋々ながらだ。別に食べたい訳じゃないからな! と心の中で繰り返しながら。 「……礼なんて言わねぇからな」 「いいから黙って食べろ」 「チッ……相変わらずいけ好かねぇ野郎だぜ……」 言いながら、天道が作った「鯖の味噌煮」という料理を箸で口に運ぶ。 口に入った鯖を、歯で噛み砕いた瞬間――― モモタロスの目はかっと開かれ、口元が緩んだ。 「どうだ?」 「ッ……うっめぇぇぇぇぇええええええぇ!!!」 天道な問い掛けに答えながらも、残った鯖味噌と白米を、ガツガツと頬張る。 美味い。美味過ぎる、と。 あまりの美味しさに、初めての料理を次々と飲み込んで行く。 モモタロスがそんなペースで食事を続けると、鯖味噌も白米もあっという間に無くなっていた。 完食したモモタロスは心底幸せそうな表情で腹を叩きながら、椅子の背に体重を預けた。 ややあって、ふと天道を見てみると、天道はやけに自信ありげな表情で、人差し指を天井に向けていた。 「おばあちゃんが言ってた……料理とは常に人を幸せにするべきものだ……ってな。 どうだ。少しは気持ちが楽になったか?」 「へっ、別にメシ食ったくらいで変わるかよ」 天道に顔を背け、腕を組んで答える。 確かに言われてみれば、料理を食べている間はまるですべて忘れたように幸せな気持ちだった気がする。 気はするが、素直になれないモモタロスは、改めて美味しい等とは絶対に言う気は無い。 第一、そんな気がするだけでは意味が無いのだ。 問題は良太郎やなのは達にこれからどう顔向けすればいいのか。 例え一時的に気持ちが切り替わろうが、根本的な問題を解決しない事には何も変わらないのだ。 そんなモモタロスの懸念を知ってかしらずか、天道がぽつりと呟いた。 「そうか。ならば自分はどうしたいのか……まずはそこから考え直すんだな」 「あ? 俺がどうしたいかだ?」 「変な言い訳を考えずに、素直になることも時には必要という事だ」 言いながら、天道は食器の乗ったトレイを厨房へと運んで行く。 何が言いたいんだよと言い返したかったが、どうせ天道はそこまでは教えてはくれないだろう。 自分で考えろ、と。恐らくはその一言で済まされてしまう。 ならばわざわざ自分から悔しい思いをしに行く事も無い。 それ故に、モモタロスは、一人で考える事にした。 「あぁ……さっきのメシ上手かったなぁ」 と、その前にぽつりと一言。 結局、すぐには難しい考え事には入れないモモタロスであった。 しかしもしかすると、モモタロスがこうして少しは前向きに思考出来るようになった原因は、天道の料理にあるのかも知れない。 と言っても、それは誰にも――おそらくモモタロス自身にもわからないことだろうが。
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第四話 海鳴市 時刻は夜の8時頃、三日月の光りが周囲を優しく照らす冬の夜。夕食と入浴を終えたすずかは 数匹の子猫と一緒に、自室でアリサとの会話を楽しんでいた。 今日の学校での出来事や、最近始まったドラマやアニメの評価などの雑談、 そして、今度訪れるフェイトについての話に、二人とも時間を忘れて夢中になる。 「フェイトがこっちに来るって聞いて、なのは本当に嬉しそうだったもんね」 机に無造作に並べてある自分達やフェイト写真を見ながら、電話越しにすずかに話すアリサ。 彼女の左右で寝息を立てている犬の頭を撫でているその表情は、フェイトと合える事への嬉しさに満ち溢れていた。 そして話は弾み、3人仲良し組のリーダ的存在であるアリサは『フェイトのお迎えイベント』を企画。 その案に、すずかも声を弾ませながら賛成。『プレゼントに何送ろうか?』『場所は翠屋』なと、とんとん拍子で話しが進む。 「ふふっ、今から楽しみね・・・そういえば、ガンダムは何してるの?」 ソファから立ち上がり、近くの窓に向かって歩きながら、アリサは尋ねる。 主人が離れた事に眠りについていた犬は起き、アリサの方に顔を向けるが、窓の近くで立ち止まったため再び寝息を立てる。 『ガンダムさん?今は部屋で勉強してると思うよ』 「勉強?なんでまた?」 『ほら、ガンダムさんこの世界の事知らないから・・・・・・外に出た時に見たもの全てに驚いちゃどうしようもないからって』 「なるほどね~」と呟きながら、アリサは窓のガラス越しに冬の夜空を見上げる。 窓から見る夜空は、あの時の様に満天の星空で輝いていた。 「・・・・・・・だけど、もしかしてガンダムって始めて『テレビ』見たとき、『ひ・・人が小さくなって薄い板の中で動いてる!!!』とか いったんじゃないの?・・・ははははは冗談よ冗談!!」 「・・・・・・・・よくわかったね、アリサちゃん』 数秒の沈黙が続く。電話越しから子猫の鳴き声が聞こえる。 「あ~・・・・・だけどまぁ、なのは達にも早く会わせたいわ。その時はやっぱり、『ロボット』ってことで通すの?」 『うん。ガンダムさんの要望でもあるんだ。だからアリサちゃん』 「分かってるわよ。このことは二人だけ・・じゃなくて、月村家の皆さんと私だけの秘密って事でね。ふふっ、なのはとフェイトには悪いけど」 二人がガンダムを見たら、どんな顔をするのだろうと思いながら、アリサは再びソファに座り、すずかとの会話を楽しんだ。 結界内 すずかとアリサが会話に花を咲かせている頃、勉強中と思われていたナイトガンダムは 「くっ!!」 上空から降り注ぐ鉄球攻撃を必死に避けていた。 なのはを助けた結果、ヴィータと戦う事となったガンダム。だが、始まってみれば戦局は一方的なものであった。 「おらぁ!!」『Schwalbefliegen』 ヴィータは目の前で軽く投げはなった小さな鉄球を、ナイトガンダムに向かってグラーフアイゼンで叩きつける。 叩きつけられた鉄球は、赤い光り纏った砲弾と化し、道路を走るナイトガンダムに迫る。 その攻撃を盾で防いだり、剣で斬り払うなどして、どうにかやり過ごすが、そのたびに新たな砲弾が迫り来る。 ヴィータとナイトガンダム、この二人の致命的な差は、『空が飛べない』という事であった。 仮に飛行能力が無くとも、弓矢などの射撃系の武器や、射撃魔法を使えば、反撃する事が出来るが、ナイトガンダムはそれらの武器や魔法を使うことが出来ず、 相手が接近戦を仕掛けたときに反撃しようという考えも、ナイトガンダムが飛べないと解った以上、ヴォルケンリッターの中で唯一射撃系魔法が使えるヴィータが、 そのような手段をとる筈がなかった。 そのため、空中で攻撃を行なってくるヴィータに攻撃する事が出来ずにいた。 何度目かになるシュワルベフリーゲンを放つヴィータ。 彼女にとっても、ナイトガンダムが空を飛べないという事は予想外だった。 あの時、自分の攻撃を難なく受け止めた時点で、ナイトガンダムが只者ではないと分かった。 彼女も一人の騎士である。あいつのような騎士との戦いはシグナムほどではないが嫌いではない。 今まで戦ってきた魔道師は全員たいした奴らでは無かったし、あの白い服を着た魔道師も接近戦に持ち込んだらあっという間に片付ける事ができた。 だが、あいつ『騎士ガンダム』は装備からして自分と同じ接近戦主体。自分のグラーフアイゼンとあいつの剣がぶつかり合う空中戦を期待していたのだが、 現実は彼女の期待を反した結果だった。 「(まったく・・・・・期待させやがって・・・・)」 内心で毒を吐きながらも、空中に浮いたまま攻撃を続けるヴィータ。その表情は正に『楽しみを奪われた子供』であった。 相手が空を飛べないと分かった時点で、ヴィータは『上空からの射撃魔法による攻撃』という戦法をとる事にした。 一個人としてなら、あいつに合わせて地上で戦う事も悪くはない。だが、今の自分ははやての騎士。絶対負けられない戦い。 今までの主だったら、効率や勝率など無視して自分勝手に戦っていたが、はやてのために戦う今は効率や勝率などを優先する必要がある。 ならやることは一つ、あいつの射程外から攻撃を行ない、時間を稼ぐ。仕留める事は無理でも、シグナム達が来るまでの時間を稼ぐには十分。 正直自分の性格には合わない攻撃手段だが、文句を言う事などできなかった。 「だめだ・・・・このままでは・・・・」 数度目となるシュワルベフリーゲンの砲弾を切り払ったナイトガンダムは、現状の打開策を必死に考える。 彼とて、今まで空を飛ぶ敵と戦った事が無いわけではない。だが、その様な敵が現れた場合は、 僧侶ガンタンクの魔法や妖精ジムスナイパーカスタムの矢などに頼っていた。 自身でも、ペガサスに乗ったり、剣や電磁スピアなどを投げるなどの荒技で対応していたが、この世界ではペガサスを呼ぶ事は出来ないし、 武器を投げるとしても、彼女『ヴィータ』が相手では、避けられるか切り払われるのが目に見えていた。 魔法も使う事は出来るが、彼女との距離を考えると、届くとは思えない。魔力を無駄にするだけ。 唯一届くかもしれない魔法も、詠唱時間がかかるため、詠唱中に餌食になるのが目に見えている。 「何か・・・方法は・・・・・・・・」 『ビル』という建物の屋上に上ったとしても、空を飛べる彼女は楽々と移動する事ができる。 登りきった途端に場所を移動されてしまえば意味がない。 「せめて・・・・ヴィータの高さまで飛ぶ事ができれば・・・・・・ん?」 ふと、打開策を考えるナイトガンダムの頭に、今日アリサとやったゲームの映像が浮かび上がった。 そのゲームは、様々な障害物や敵を乗り切り、自分が操るキャラを目的地まで連れて行くというゲームだった。 その中に、普通のジャンプでは飛び越える事ができない絶壁を飛び越えるために使う『ジャンプ台』という、撓る細長い板があったことを思い出した。 「・・・・・・やってみるしかない・・・・・・・・」 頭の中で大まかな作戦を練ったガンダムは早速行動に出た。 迫り来るシュワルベフリーゲンを切り払った直後、ナイトガンダムは信号の近くに止められいてる車に向かって全速力で走り出す。 その行動に、ヴィータは多少不審な顔をするも、鉄球を形成、シュワルベフリーゲンを放つためにアイゼンを振り被る。 だが、それより早くナイトガンダムは目的の車に近づき、勢いをつけてジャンプ。車の屋根に勢い良く着地した瞬間、 再びジャンプし信号機の上で着地。そして直に背中に背負っていた電磁スピアを近くのビルの壁目掛けて投げる。 上手い具合に電磁スピアが刺さった事を確認したナイトガンダムは、それ目掛けて三度目のジャンプを行い、電磁スピアの持ち手部分にバランスよく着地する。 その瞬間、ビルの外壁に刺さった電磁スピアはジャンプ台の様にガンダムの体重により撓り、 結果、電磁スピアは即席としてだが、『ジャンプ台』としてその役目を果たし、ナイトガンダムを一気にヴィータのいる上空まで導いた。 「なっ!!?」 自分に向かって猛スピードで迫ってくるナイトガンダムに、ヴィータは驚きながらもシュワルベフリーゲンを放つ。 放たれた鉄球は、真っ直ぐにナイトガンダムに向かうが、 「はぁ!!!」 その攻撃を、ナイトガンダムは右手に持った剣で一閃、すべて破壊しスピードを落とす事無く上空のヴィータまで近づく。そして 「はぁあああ!!!」 気合の声と共に、ヴィータに横一文字の斬撃を繰り出した。 迫り来る斬撃をヴィータは咄嗟にアイゼンの柄で防ぐ。ぶつかり合った瞬間、 硬い物がぶつかる音が辺りに響き渡り、互いの武器の接触部分に激しいスパークが発生する。 こうなれば後はただの力比べ、互いに互いを押し切ろうと力を込める。だが、 「・・・・・くっ・・この・・・・・」 ナイトガンダムの勢いをつけた特攻に対し、自分は不意を付かれた上に空中に浮いていただけ、 徐々にアイゼンが押されていく事、自分が力負けしけいる事に、ヴィータは隠す事無く顔を顰める。そして 「はぁ!!」 そのままナイトガンダムはヴィータを横一文字に切り払い、道路目掛けて吹き飛ばした。 勢いを無くし、自由落下をするナイトガンダムに対し、力の限り投げつけたボールの様な勢いで地面に向かって落下するヴィータ。 だが、彼女とて騎士の一人。そのまま落下するような事は断じてしない。 「なめんな!!」 落下をしながらも、ヴィータは即座に飛行魔法を使い、勢いを殺しならも態勢を整える。 靴底でアスファルトの道路を削りながらも、道路に『落下』ではなく、どうにか『着地』することが出来たヴィータは途中、 信号機で一度着地しながらゆっくりと降りてくるナイトガンダムを睨みつける。 「・・・・・へっ・・・・やっぱり、おめぇには、こんな姑息な手は通じねぇみてぇだな・・・・・アイゼン!!!」『Raketenform 』 獰猛に微笑ながら、アイゼンのカートリッジをロード、ラケーテンフォルムに変形させナイトガンダムに向ける。 その姿を見たナイトガンダムも、再び立てと剣を構え、ヴィータの攻撃に備える。 「・・・・・一つ聞きたい・・・・何故君は戦っているんだ・・・・・」 「はぁ?そんなんテメェに関係ねぇだろ?」 「いや、君の瞳からは悪意邪な欲望が感じられない・・・・・目的を話してくれないかい・・・・・」 「・・・・へっ、会ったばかりの相手になぁ・・・『アタシらの目的は~です』なんて言えるかってんだ!ボケェ!!!」 アスファルトを蹴り上げ、一気にナイトガンダムに迫るヴィータ。だがその時 「そこまでだよ!!!」 突如上空から聞こえた声と共に、ヴィータの手足に金色の輪が出現し、彼女の手足を締め上げた。 「・・・なっ!?バインド・・・・この・・・・くっそ!!!」 茂垣ながらも、自分を拘束したであろう相手を魔力反応と声から瞬時に見つけ出したヴィータは、険しい顔をしながら上空を見上げる。 その姿にナイトガンダムも釣られて空を見上げる。するとそこには、狼の尻尾と耳を持った忍と同じ位の歳の少女と 漆黒の服とマントに身を包み、右手には黒く輝く戦斧を携えた、すすかやアリサと同じ位の歳少女がいた。 「何モンだてめぇら!!」 「・・・時空管理局嘱託魔道師、フェイト・テスタロッサ。君は民間人への魔法攻撃を行なった。軽犯罪では済まない罪だ。 だけど、これ以上抵抗しないこと、名前と出身世界、目的を話してくれれば、君に弁護の機会を与える事ができる」 二人はゆっくりと地上に降りる。その内の戦斧を携えた少女はゆっくりとヴィータに近づき、 「あんただね、なのはが言っていたガンダムって」 狼の尻尾と耳を生やした少女はナイトガンダムの側に降りると。腰をかがめ、マジマジと見つめる。 「へぇ~・・・・ほんと、見た事がない種族だね・・・・何処の世界出身だい?っと、そんな事を聞くのは後だね。 私の名はアルフ。先ずはお礼を言わせておくれ。なのはを助けてくれて、ありがとう」 無邪気な子供のように微笑むアルフに、ナイトガンダムも自然と笑みを漏らす。 「いえ・・・・・あの、貴方達は・・・あの子の知り合いなのですか?」 「まっ、そんな所さ。ああ、なのはなら安心しな。ユーノが・・・ああ、アタシらの仲間が介抱しているから大丈夫だよ」 なのはを一人残した事を心配していたナイトガンダムは、アルフの報告を聞き、安心した事を表すように深く息を吐く。 そして彼女から聞いた『なのはを助けてくれて』という言葉から、なのはの仲間であると改めて確信したガンダムは、構えも説こうとするが、 「っ!いけない!!!」 場の空気が変わった事を理解したガンダムは、叫びながら反射手に地面を蹴り、フェイトとの距離を一気に縮める。 その突然の行動に、フェイトやアルフは勿論、拘束されているヴィータさえ何事かと驚くが、彼の行動の意味を直に知る事となる。 ナイトガンダムがフェイトの隣に来た瞬間、上空から急降下してきた人物が、ヴィータを尋問してたフェイトの真横に着地し、問答無用で右手に持っている 剣を横なぎに振るう。突然の事態に対応しきれないフェイト、だが、場の空気が変わった事を感じたナイトガンダムにより フェイトに当たる筈だった一撃は、彼の盾によって防がれた。 「えっ?」 突然の事態に対応しきれないフェイト 「・・・ほう」 不意打ちの筈の自分の攻撃を察知した所か、見事に受け止められた事に、つい声を出して感心してしまう襲撃者。 ナイトガンダムはそんな驚いたり感心してる二人を無視し、盾で剣を受け止めたまま、右手の剣で襲撃者に斬りかかる。 下からの袈裟による斬撃を、襲撃者はバックステップで交わすと同時に、持ってる剣を空に向かって掲げる。 「・・・レヴァンティン・・・・カートリッジロード」『Explosion』 剣から鳴り響く電子音と共に、襲撃者が空に向かって掲げている剣から、薬莢が排出される。 その瞬間、突然発生した炎が、剣の刃の部分だけを包みこむ様に燃え盛る。そして 「紫電一閃!!」 叫び声と共に、襲撃者の女性の女性は地面を蹴り、ナイトガンダムに向かって突撃、 燃え盛る炎の剣『レヴァンティン』を容赦なく振り下ろした。迫り来る攻撃に、ナイトガンダムは先ほとど同様に、盾で防ごうとするが、 レヴァンティンが盾に直撃した瞬間、激しい衝撃がナイトガンダムを襲った。 「・・な・・・なんて・・・・・重い攻撃だ・・・・・」 先程のヴィータの金槌を越える衝撃に、顔を顰めながらも耐える。足が地面に陥没し、アスファルトが砕け散る。 それでもなお、ナイトガンダムは攻撃を耐えつづけ、押し返そうとする。 紫電一閃の斬撃を正面から防がれた事に、襲撃者は悔しさよりも、強い相手に出会えた事に、自然と口をほころばせる。 「・・・・・・・正面から絶えるとはな・・・・・ヴィータが苦戦するわけだ・・・・・だがな!!」『EXPLOSION』 電子音と共に、レヴァンティンの刃を纏っていた炎は一層激しさを増す。そして 「はぁあああ!!!」 襲撃者の気合の声が木霊した瞬間、接触部で魔力爆発が発生。レヴァンティンの刃はナイトガンダムを盾ごときり払い、吹き飛ばした。 「くっ、この!!」 ナイトガンダムを吹き飛ばした襲撃者を睨みつけるアルフ。直に渾身の一撃を叩き込もうと拳を握り 突撃しようとするが 「でぉああああ!!」 突如上空から聞こえて来る叫びにアルフは攻撃を中断、障壁を展開する暇が無かったため、咄嗟に腕を頭の上まで上げた後、 肘を曲げ交差させる。その直後、声の主と思われるアルフと同じ狼の尻尾と耳を持った男性が、拳を振り下ろしてきた。 叩きつ得られた瞬間、衝撃と痛みがアルフを襲う。 「くっ・・・・この・・くらい!!」 歯を食いしばりながら耐え抜くアルフ。相手の拳の勢いが弱まった所で、交差している腕を払い、距離をあける為に上空へと逃げる。 だが、アルフを攻撃した男も、狙いをアルフに定めたのか、後を追うように飛行を開始した。 「・・・・ああ・・・・・」 自分を庇ってくれたナイトガンダムが吹き飛ばされた瞬間を見たフェイトは、バルデッシュをサイズフォームに変形させ、 襲撃者に向かって切りかかろうとする。だが、 「よくもやってくれたな!!」 ナイトガンダムが襲撃者の攻撃を防いでいた数十秒の間に、ヴィータは自分を拘束していたバインドを解除。 攻撃に入ろうとするフェイトより早く、グラーフアイゼンを叩き付けた。 フェイトは先程の汚名を挽回する様に素早く反応しバルディッシュで防御、力比べになる前に切り払い、吹き飛ばされたナイトガンダムの元へ向かった。 「ちっ・・・・・」 フェイトを逃がした事に舌打ちをしながらも、自分を助けてくれた襲撃者『シグナム』の方に顔を向ける。 「あんがとな・・・・・助かった・・・・」 言っている途中で恥ずかしくなったのか、そっぽを向きながら小さな声でお礼を言うヴィータに、 シグナムは一瞬呆気にとられた顔をするが、直に微笑む。 「しかしどうした、ヴィータ?油断でもしたか?」 「うるせぇよ!・・・・まぁ、間違ってはねぇけどよ・・・・・だけどな、これから逆転して、あいつらをボッコボコにする予定だったんだよ!」 確かにあの時、自分はナイトガンダムとの戦いに集中していた。だから自分を拘束したあの二人の存在には気付かなかった。 あいつらの仲間が来るかもしれないのに、周囲の警戒を怠っていたために起きた事態。油断以外の何者でもない。 だからこそヴィータは素直とは言い難いが認めた。二度とこのような過ちを起こさないために。 「そうか・・・だが、すまなかった。遅くなってしまって」 「気にすんな・・・助けてもらった事に変わりはねぇからな・・・・」 「そうか。だがあまり無茶はするな。お前が怪我でもしたら、我らが主も心配する。あとこれを。破損は直しておいたぞ」 妹を心配する姉のように優しく語り掛けながら、シグナムはなのはの砲撃で吹き飛んだヴィータの帽子を 彼女の頭に優しく乗せる。 「・・・・ありがと・・・・シグナム・・・・・」 自分で帽子の位置を整えているヴィータを一瞥した後、シグナムは後ろを振り返る。 そこには、先程自分を攻撃しようとした少女が、同じく自分が吹き飛ばした一見小型の傀儡兵に見える者の側で何かを話しており、 上空では少女の守護獣であろう少女が、ザフィーラと激しい空中戦を繰り広げていた。 「・・・状況は・・・実質3対3。だが、奴は何者だ?小型の傀儡兵の様に見えるが・・・・・」 「ワカンネ。だげど、この世界じゃ傀儡兵を作る技術はないし、管理局に関しても知らないっていってた。もしかしたら あいつらの仲間ですらないかもしれねぇ・・・・・まぁ、収集対象には変わりはねぇがな」 アイゼンにカートリッジを補充品しなら、今時分が知りえる情報を話すヴィータ。 「あいつ・・・・ガンダムって言ってたな。あいつは空を飛べない。下手すりゃ魔力はあっても魔法すら使えないかもしれない。 だけど剣術に関しては強い・・・・間違い無くな・・・・・ベルカの騎士のアタシらには厄介な敵だ」 カートリッジの補充を終えたアイゼンを一度振り、シグナムの前へと出るヴィータ。 直に補充したばかりのカートリッジをロードし、ラケーテンフォームへと変形させる。 「シグナム・・・・・わりぃが、ガンダムはアタシがやる。シグナムはあの黒い魔道師の相手を頼む。空を飛べば、向こうも食いついてくる筈だ」 「・・・・・お前から進んで相手を選ぶとは珍しい・・・いや、初めてかもしれんな・・・・お前の話から、 ガンダムとやらの相手をしてみたかったのだが・・・・・まぁ、また今度にしよう」 『また今度』というシグナムの言葉に反応したヴィータは、アイゼンを横に振り被りながらも、吐き捨てるように笑う。 「無駄だと思うぜ。一度収集した相手からは収集できない。ここであいつをぶった押せばもう戦う機会なんて無いんだからな。 ただの時間の無駄になる。それには、分かってるだろ、シグナム。『一対一ならベルカの騎士に』」 「『負けはない』・・・ふっ、その通りだ・・・・・行くぞ!!!」 「あの・・・・大丈夫・・・ですか・・・・」 シグナムの一撃で吹き飛ばされたナイトガンダムの元へ向かったフェイトは、抱き起こすように、ナイトガンダムの体に手を回す。 「ああ・・・・大丈夫・・・・・ありがとう」 「いえ、お礼を言うの私のほうです。あの時、私を庇ってくれてありがとうございました。それに・・・・なのはを助けてくれて」 なのはの名前が出た途端、フェイトは悔しそうに俯く。 事態を知り、フェイト達が駆けつけた時には、すでになのはは襲撃された後であった。 もし、あの時ナイトガンダムが駆けつけなかったら、なのはは魔力を奪われていたに違いない。 フェイトはただ悔しかった。自分に手を差し伸べてくれたなのはを、『友達』と言ってくれたなのはを助けられなかった事に。 「・・・・・・・気を落とす事はないよ。君はなのはさんの危機を知って駆けつけた。友達を救うために。 それに、もしヴィータ達の仲間の到着が早かったら、結果的になのはさんは危なかった。今こうして彼女達をなのはさんの元へ 向かわせないでいられるのは、君達のおかげだ・・・・私こそお礼を言わせてください。助けていただき、感謝いたします」 跪き、頭を垂れるナイトガンダムに、フェイトはどうしていいのか慌てる。 「い・・・・・いえ、そんなことないです。あ、名前がまだでした。私はフェイト、フェイト・テスタロッサ。一緒にいた子はアルフ。 あと、敬語とかは使わないでください。私・・偉くありませんから・・・・」 「わかったよ、フェイト。私の名前はガンダム。ラクロアの騎士ガンダム。同じく敬語とかは使わなくていいよ。偉くないからね」 ナイトガンダムの物言いに、先程まで落ち込み気味だったフェイトの顔にも笑みが浮かぶ。 その顔を見たナイトガンダムも安心したのか、釣られて微笑むが、直に顔を引き締めた。 「フェイト・・・・・現状では3体3。だが、私は空を飛ぶ事が出来ない。おそらく君達の戦闘では足手まといになるだろう。 それになのはさんの事もある。ここは撤退をすべきだと思う・・・・・どうだろう」 「うん。私も同じことを考えていた。ちょっと待ってて」 瞳を閉じ、急に黙り込むフェイト。数十秒後、瞳を開け、再びナイトガンダムを見据えた。 「今、ユーノと相談してみた。アルフと協力すれば何とか出来るみたい」 「分かった。それまでは私達が彼女達の相手をして注意を引きつけよう。私でも囮くらいにはなれる筈だ」 二人は同時にヴィータ達の方を向く。すると、ヴィータはナイトガンダムと目が合った瞬間、獰猛に微笑みながら、 ラケーテンフォームへと変形させたアイゼンを突きつけ、シグナムは空が飛べるフェイトを誘うように飛行を開始する。 「・・・相手は決まったようだ。がんばろう!」 「うん!」 「フェイトちゃん・・・・・・」 フェイトが上空へ上がる姿を見たなのはは小さく名前を呟く。 今なのはは、ユーノが張った結界魔法『ラウンドガーダー・エクステンド』の中で佇んでいた。 その結界を張ったユーノもまた、自分達を閉じ込めている結界を破壊すべく、周辺調査のためこの場にはいない。 「・・・・・・みんな・・・・・・」 自分も皆の所で戦いたい。だが、時より体にほとばしる痛みが、その願いを叶える事の難しさをなのはに無理矢理教える。 それでも、彼女は一番痛む左腕を押さえながら、ゆっくりと戦いの場絵へと歩み始める。その時、 『Master』 見た目からも、使い物になるのか疑わしいほど大破したレイジングハートが、なのはを呼び止める。そして 『shooting mode acceleration』 その電子音の直後、レイジングハートから桃色の羽が生えた。まるで、自分はまだ戦える事を主張するかの様に。 「レイジング・・・・・ハート・・・」 なのははレイジングハートが自分に何をさせようか直に理解できた。だが、間違いであって欲しいため、口を噤む。だが 『Let s shoot it. starlight Breaker』 なのはの思いを代弁するかのように、レイジングハートは呟いた。 戻る 目次へ 次へ
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それは小さな思いでした。 新たに始まる私達の日々。 決めたのは、戦う事を諦めない事。 誓ったのは、昨日よりももっと強くなる事。 走り出した復讐のプログラミング。 もう、二度と大切な人を傷付けないために。 宇宙の騎士リリカルなのはBLADE…… 始まります。 ピピピピピピピッ…… 鳴り響く目覚まし時計のアラーム音。 「……ん。」 はやては時計をパシッと叩き、アラームを止めた。 明るい朝日が差し込み、今日もいつも通りの日常が始まる。 起き上がって横を見ればヴィータはすやすやと寝息をたたて眠っている。 はやてはクスッと笑いヴィータに布団をかけ直し、そのままリビングへと向かった。 「……ん……あ?」 リビングのソファで眠っていたシグナムは、キッチンから聞こえる音に目を覚ました。 「ごめんな、起こした?」 「あ……いえ。」 キッチンで朝食の準備をしていたのははやてだ。 「ちゃんとベッドで寝やなあかんよ?風邪ひいてまう」 「す、すみません……」 シグナムは自分にかけられた毛布をたたみながら謝罪する。 「シグナム、夕べもまた夜更かしさんかぁ?」 「あ……あぁ、その……少しばかり……」 シグナムの答えに「ふふっ」と笑うはやて。 間違っても闇の書を完成させる為にリンカーコアを蒐集していた等とは言えない。 「はい、ホットミルク。ザフィーラのもあるよ」 「ありがとう…ございます。」 シグナムははやてから差し出されたホットミルクを両手で受け取り、礼を言う。 「すみません、寝坊しました!」 そうこうしていると、今度はシャマルがエプロンを付けながら急いでリビングに入ってくる。 「おはよう、シャマル」 「……ああ、もう……ごめんなさい、はやてちゃん!」 シャマルはあいさつと同時に謝罪しながらキッチンに入る。もちろんはやては「ええよ」と笑う。 「おはよう……」 次にリビングに入ってくるのはシンヤだ。 「おはよう……ってなんや、シンヤも夜更かしさんか?」 「ああ……まぁね。それより、ホットミルクはあるかい?」 やはりはやてにはすぐに見破られてしまうのか。返事を返しながら着席し、ホットミルクを要求するシンヤ。 「あ……シンヤくん、その前に顔洗ってきなさい!」 それを聞いたシャマルは腰に手を当て、まるで母親のように言う。 「朝からうるさいなぁ、もう洗ったよ」 「あはは、流石シンヤやなぁ。はい、あったまるよ」 「ああ、ありがとうはやて」 シンヤの返答を聞いて笑いながらホットミルクを差し出すはやて。シンヤも「ふふ……」と笑いながら受け取る。 「(あったかい……な。)」 シンヤは手に持ったホットミルクを見つめる。そうしていると、人間だった頃の記憶が甦ってくる。 普通の家と何も変わらない朝食の風景。そこにいるのは父さん、ケンゴ兄さん、ミユキ、フォン、そして…… タカヤ兄さん。 思い出した途端に、シンヤの中から何かが込み上げてくる。自然にカップを持つ手が震えてくる。 「(タカヤ兄さん……いや、ブレードッ!)」 強くカップを握りしめ、それにより中のミルクが振動する。そして憎しみの次に込み上げる感情は、喜び。 「(ククク……ブレードは今頃……)」 考えれば考える程笑みがこぼれる。はやて達に気付かれはしないが、ちょっと危ない笑いだ。 第4話「ペガス発進!新たなる力、起動!」 それは昨日の出来事。 「ハッハハハハハ……アーハッハッハッハッ!」 笑いながらクロノから離れてゆくエビル。 しかし…… 「……ん?」 エビルの周囲から現れた、輝く鎖のような物が自分目掛けて飛んでくる。これには見覚えがある。 「人間共が使うバインドとか言う奴か……」 クロノの目の前で堂々と去ろうとしているエビル。もちろん執務官として逃がす訳にはいかない。 ましてやエビルは闇の書に関わる者。クロノとしても尚更逃がす訳にはいかない。 テッカマンとまともに戦っても勝ち目は無い。なら、バインドで何重にも拘束し、 動きを封じて転送する。今がそのチャンスかもしれない。いや、今しか無いというべきか。 詠唱を終え、『ディレイバインド』を発動するクロノ。エビルの周囲に現れた鎖はエビル目掛けて飛んでゆく。 しかし…… 「消え……ッ!?」 目の前のエビルが消えた。そして一瞬、クロノの肌を風が掠めた。 「(まさか……)」 そして背後から感じる何者かの気配。クロノは恐る恐る後ろを振り向く。 そこにいたのは、自分の首筋辺りにテックランサーを突き付けて立っているエビル。 「……ッ!?」 「お前、死にたいのか?」 「何を……!」 「せっかく見逃してやろうと思ったけど……そんなに死にたいなら望み通り殺してやるよ!」 エビルはテックランサーを振り上げる。それを見て「殺される!」と思ったクロノは反射的に目をつむる。 「(………な?)」 しかし、テックランサーが自分に突き刺さる事は無かった。 ゆっくりと見上げれば、エビルはテックランサーを振り上げたまま静止している。 「…………。」 『(くれぐれも、殺さないでね。)』 エビルの脳裏をよぎるシャマルの言葉。 こんな虫けら一人、殺そうと思えば一瞬だ。だが、それはできない。してはならない。 ブレードならまだしも、こいつはただの人間だ。 「チッ……今回だけは見逃してやるよ。」 「……な!?」 「ただし……これが最期のチャンスだ。次は無いと思え……!」 「…………!」 エビルの恐ろしい声に返す言葉を失うクロノ。さすがのクロノでも死の恐怖を感じたのは初めてだった。 「それより……ブレードを追い掛けたらどうだ?」 さっきの恐ろしい声とは打って変わり、今度は少し楽しそうに言うエビル。 「……なに!?」 「ククク……行ってやれよ?楽しい事になってるかもなぁ」 最後にそう言い、また笑いながら立ち去ってゆくエビル。 「(ククク……『俺は』殺さないさ。後は知らないけどねぇ……)」 エビルはそう思いながらまた楽しそうに歩き始めた。 「そうだ……Dボゥイ!」 クロノはエビルが見えなくなった頃にやっと正気を取り戻し、空に上がる。まずはエビルが言うようにブレードを追うのが先だ。 「……にしても、なんでこんな時に!」 こんな非常時に敵から逃げ出したブレードに対し愚痴を零しながらクロノは捜索を開始した。 ハラオウン家、クロノ自室。 現在、クロノは通信中。相手はレティ提督だ。 内容は、グレアム提督の口利きのお陰で武装局員の指揮権が借りられた、という話。 『それはそうと……』 「何ですか?レティ提督」 『Dボゥイの様子はどう?』 「……はぁ。今はアースラで眠ってますよ……」 クロノは少ししかめっ面をして答える。 『そう……昨日は散々な目にあったみたいね?』 それを見たレティはクスクスと笑いながら言う。まぁ昨日といっても正確には今日だが。 「はぁ、もう……死ぬかと思いましたよ……まったく。」 『フフ……まぁ助かって良かったじゃない』 「……それはそうですけど……」 言いながらかなり不機嫌そうな表情をするクロノ。 ここで再び回想シーンだ。 「……Dボゥイ!!」 クロノはブレードの捜索を開始してすぐにブレードを発見、地面に佇むDボゥイに呼び掛ける。 「聞こえないのか、Dボゥイ!」 今度はさらに接近して呼ぶ。それに気付いたブレードはゆっくりとクロノへと目線を向ける。 この時、ブレードの瞳の色が赤くなっていることにクロノは気付かなかった。 「一体どういうことなんだDボゥイ!理由の無い敵前逃亡なんて……ッ!?」 言いながら歩み寄るクロノの動きが止まった。ブレードはクロノの目の前で肩から二本のテックランサーを出し、連結したのだ。 「D……ボゥイ?」 「うおおおおおおッ!」 テックランサーを振り回し、クロノに襲い掛かろうと走ってくるブレード。 クロノは咄嗟に空に飛び上がり回避する。 「何をするんだDボゥイ!」 「うおお!おおおおお!」 言葉は通じず、さらにクロノに追撃しようとするブレード。もちろんクロノは全力全開で逃げる。 「くそッ……本当にデンジャラスボゥイだな、キミは!」 クロノはしばらく逃げ続け、いよいよもってキレかけていた。逃げながらブレイズキャノンの発射準備に入り…… 「クソ……なんでこんなこと……」 クロノの中で何かが弾けた。意識を集中させるクロノ。 そして一気に急降下……いや、落下する。ブレードもそれを追うためすぐに急降下。 「うおおおおおおッ!!」 ブレードは叫びながらクロノの顔面を狙ってテックランサーを振るう。しかしクロノはそれを顎を上げて紙一重で回避。そして…… 「何なんだアンタはァーーーーーーーーーッ!!」 『ブレイズキャノン』 急降下してきたブレードの腹にS2Uを突き付け、零距離でブレイズキャノンを発射。 お互いに落下する。 「……やったか?」 ダメージは与えられないまでも衝撃は伝わったはずだ。そう思いブレードを見る。 しかし、やはりブレードは無傷。普通に立っている。クロノは「ダメか」と思った。しかし…… 「うおおおおおおッ!」 「何!?」 次の瞬間、ブレードはまた両手で頭を抱えて苦しみ出したのだ。 本当に苦しそうにもがき苦しみ、そして最後はその場に倒れた。 「Dボゥイ?」 「…………。」 返事は無い。ブレードは死んだように動かない。 やがてブレードの体は緑の光に包まれ、人間の姿に戻った。 その時、近くに割れた緑のクリスタルが落ちていたという……。 『……で、拘束されてアースラに転送されたわけね』 「はい。まったく、Dボゥイの奴一体何考えてんだか……」 話をまとめるレティ。クロノは大きな溜め息をつきながら答えた。 「お、クロノ君。どう?そっちは」 部屋から出てきたクロノに、リビングで冷蔵庫を漁っていたエイミィが話し掛ける。 「武装局員の中隊を借りられたよ。そっちは?」 「よく無いね~。夕べもまたやられてる」 エイミィは昨晩の被害について説明する。昨日は魔導師が十数人、リンカーコアを持つ野性生物が5匹。 いずれもリンカーコアを奪われており、野性生物の内一匹はエビルが倒した龍だ。 「そういえば、Dボゥイ……目が覚めたらしいよ」 「そうか……。」 エイミィはリモコンのボタンを押し、さっきまで空中に表示していた闇の書の画像を別の画像に切り替えた。 「……これは?」 表示されているのは緑のクリスタル。だが、割れてしまっている。 「うん、Dボゥイが変身……テックセットだっけ?に使うクリスタル。」 「……でも、割れてるぞ?」 「うん……これが割れちゃったらもう……テックセット、できないらしいよ……」 「……そんな!」 クロノは耳を疑った。いきなり逃げ出して、いきなり襲い掛かって、いきなりテックセット不能なんて……訳がわからなさすぎる。 「……とりあえず今、艦長が事情を聞いてるらしいよ」 「…………。」 アースラ、面会室。 ガチャリとドアノブを回す音が聞こえ、リンディが入ってくる。 「Dボゥイ……。」 「…………。」 Dボゥイは何も言えない。 「理由の無い敵前逃亡……それにクロノ執務官に襲い掛かった理由、聞かせて貰えるかしら?」 「…………。」 数時間後。 「あ、メール……」 携帯の着信に気付いたなのは。 相手はクロノだ。どうやらレイジングハートとバルディッシュは来週には修理が終わるらしい。 それともう一つ、フェイトに「寄り道は自由だが夕食の時間には戻ってくるように」と伝えて欲しいとの事。 なのははレイジングハートの復活を心待ちにしながら、フェイトやアリサ達と思い思いの時を過ごす 同刻、八神家。 「カートリッジか?」 シャマルがカートリッジに魔力を込めていると、目の前で壁にもたれているシンヤが話し掛けてくる。 「うん、昼間のうちに造り置きしておかなきゃ」 シャマルが答える。 「大変だね。一人で任されっぱなしで」 「ううん、バックアップが私の役割だからね。これくらい平気よ」 カートリッジを眺めながら笑顔で言うシャマル。 「そうか。ま、俺には造れ無いしね」 「それに、お前にカートリッジは必要無いからな」 今度は外出準備中のシグナムが上着を着ながら言う。 確かにテッカマンには魔力もカートリッジも全く関係無い。 「まあね。シグナムはこれからはやてのお迎えかい?」 「ああ。お前も来るか?」 「遠慮しとくよ。俺が行く意味が無いからね。」 シンヤはシグナムの誘いを断る。 別段はやてを嫌いな訳でも無いが、ただ迎えに行くだけならわざわざ自分が行く必要も無い。 シグナムは「そうか。」と言い、そのまま部屋を出た。 一方、再びアースラ。 「Dボゥイ……そろそろ答えてくれないかしら?悪いようにはしないから……」 「…………。」 ずっとだんまりを決め込むDボゥイにリンディは半ば諦めかけていた。その時…… 「俺は……」 「……?何、Dボゥイ?」 「俺が、人の心を保っていられるのは、テックセットしてから30分が限界だ。」 「……え?」 予想外の展開にキョトンとした顔をするリンディ。 「テックセットしてから30分が経過すれば、俺の心はラダムに支配され、身も心もあの化け物になってしまう。」 「そんな……!?」 リンディはあまりにショッキングな事実に口を塞ぐ。 「だから……30分が経過して、できるだけクロノから離れようとしたのね……?」 「…………。」 「でも……それならどうして貴方はまた人間に戻れたの?」 ここで疑問に思った事を質問してみるリンディ。 「恐らく、暴走する直前にエビルのPSYボルテッカを受けて体力を消耗していたからだろう」 「…………。」 今度はDボゥイの説明に言葉を無くすリンディ。 「いいえ……きっと違うわ。」 「何?」 「貴方がまた人に戻れたのはきっと、貴方が人でありたいと願ったからよ」 リンディの言葉に驚くDボゥイ。まさかこんな風に言われるとは思っていなかった。 「貴方は化け物なんかじゃないわ。だって、ちゃんとこうして戻って来れたじゃない」 「……だとしても、変身できなくなった俺にはもう生きる意味なんて無い」 「……そんなこと言っちゃダメよ。生きてる事に意味があるんだから……」 突然ネガティブな話をしだしたDボゥイ。リンディは戒めるように説得を試みる。 「……仮に変身できたとしても……もう戦いたく無い。」 「……どうして?」 「こんないつ化け物になるか解らない奴がいても迷惑なだけだろ……」 「…………。」 Dボゥイの話を聞きながら黙って深く息を吸い込むリンディ。 「それに、俺はもう誰も傷付けたく無い。これ以上戦ってまた皆を……」 「い い 加 減 に な さ い ッ ! !」 「……!?」 リンディは大きな声でDボゥイを制した。それこそ他の部屋にまで聞こえるくらいの、特大の声で。 「さっきから聞いてれば化け物だとか傷付けるとかって……あなたは誰も傷付けたりしてないじゃない!」 「傷付けてからじゃ遅いんだよ!俺みたいな化け物、いつ仲間を襲うかわからない!」 「いいえ、貴方は人間よ!化け物なんかじゃ無いわ!」 「……何と言おうが、俺にはもう変身能力は無い!もう戦え無いんだよ!」 「…………!!」 しばし流れる沈黙。リンディも黙ってしまう。いや、何か考えがあるのだろうか? 「……わかりました。」 「…………。」 だが今度はやけにあっさりと引き下がる。そのままリンディは席を立ち、面会室を後にした。 本局、メンテナンスルーム。 ピピピピピピピピッ バルディッシュとレイジングハートの改修作業を進めていたマリーの元に通信が入る。 「誰だろ……?」 言いながらボタンを押し、相手をモニターに映す。 『久しぶりね、マリー』 「あ……お久しぶりです、リンディ提督!どうしたんですか?」 相手はアースラ艦長リンディ・ハラオウン。 『それが……ちょっと急ぎの用なのよ』 「はぁ……。」 『とりあえず、今から送るデータを見て頂戴。』 「あ、はい。」 マリーは受信したデータを見る為にボタンを押す。 同時にモニターに割れた緑のクリスタルと、そのデータが表示される。 「これは……テッククリスタル?……ですか?」 表示されている名前を読み上げるマリー。 『ええ、その割れたクリスタルを元通りに直して欲しいの。できれば一週間以内で』 「ええ!?む、無茶ですよ……こんな複雑なデータ……ロストロギア級じゃないですか!!」 モニターに表示されているだけでもテッククリスタルのデータは膨大な量となっており、それでもまだ未知の部分が多いという。 『そこをなんとかお願い!今必要なのよ、コレ……』 「う~ん……」 う~んと唸り、しばらく考えるマリー。 「……わかりました。完全に元通りになる保証はありませんけど……」 『ありがとう、感謝するわ!』 数分後、マリーの元にテッククリスタルが転送される。 「さてと……どうしようか……」 割れたクリスタルを眺めるマリー。 「そうだ……アレなら……」 何かを思い出したマリーは、ぽつりと呟いた。 その日の晩、ハラオウン家。 「……Dボゥイ、入るよ?」 言いながらDボゥイの部屋に入り、パチッと電気をつけるフェイト。 「ねぇ、Dボゥイ……」 「……何だ。」 ふて腐れたようにベッドに寝転がったまま素っ気ない返事を返す。 「その……変身、できなくなったんだって……?」 「ああ、その通りだ。戦え無い俺に生きる意味なんて無い」 気まずそうに話を持ち掛けるフェイトに、Dボゥイは冷たい口調で返す。 「前にDボゥイ……ラダムを倒すのは使命だって言ってたよね……?」 「…………。」 「その……ラダムって何なのかイマイチよくわかんないけど、Dボゥイの気持ち……わかるよ」 「……お前に何がわかる?」 Dボゥイはフェイトの顔を見ず、窓を向いたまま答える。 「使命……目的の為に、強い意思で自分を固めちゃうと、周りの言葉が入らなくなるから……」 「…………。」 「そうなっちゃうと、使命を果たすまでは一歩も後に引けなくなる……。」 Dボゥイは黙ってフェイトの話を聞く。 「……それが間違ってるかもって思っても……疑っても……」 「…………。」 「だけど、絶対間違って無いって信じてた時は……信じようとしてた時は……誰の言葉も入ってこなかった。私がそうだったからね」 「お前……」 ここで始めて振り向き、フェイトと顔を合わせたDボゥイ。 それはかつてのフェイト自身の話。フェイトは母親であるプレシア・テスタロッサの命令に従い、その使命の為になのは達と戦い続けた。 「だからこそ、その使命が果たせ無くなったら……拠り所を無くしちゃったら……どうしていいのかわかんなくなっちゃう……」 フェイトはかつて母親の為に戦い続けたにも関わらず、その母親に見捨てられ、自分を見失いかけた。 当時のフェイトは、使命を見失った今のDボゥイと似ていると、そう言いたいのだ。 「Dボゥイのとはちょっと違うかもしれないけど……強い心で、想いを貫けば……」 「ミユキ……」 「……え?」 Dボゥイがぽつりと呟いた言葉に「え?」という顔をするフェイト。 「……いや、何でもない。」 「………。」 「……少し、フェイトの姿が死んだ俺の妹の姿と被ったんだ。」 妹?そんな話初耳だ。気になったフェイトはそれについて言及することにした。 「Dボゥイ……妹いたの?」 「ああ……元の世界でな……」 それからフェイトはしばらくDボゥイの妹……ミユキについての話を聞いていた。 自分と年が近い事や、優しい性格だった事など、色々だ……。 「Dボゥイの様子はどうだった?」 「うん……まだしばらくは落ち込んだままかな……」 リビングに戻って、クロノに報告するフェイト。 妹の話など、今まで言わなかったような話をしてくれるあたり、少しずつだが心を開いてくれている。そう考えると、やはり嬉しかった。 「……あれ?」 だが、フェイトはそこで一つの矛盾に気付いた。 「Dボゥイ……記憶、戻ったのかな……?」 妹の話をするという事は記憶が残っているということになる。 つまり、Dボゥイは少しずつだが記憶を取り戻しつつあるのか…… もしくは、「最初から記憶を失ってなどいない」のか…… 一週間後。 この一週間、海鳴市に住む者は皆、思い思いの時を過ごした。 なのはは毎日魔法のリハビリに勤しみ、本局でもバルディッシュとレイジングハートの改修が進む。 そしてその間にもシンヤを含めたヴォルケンリッターはリンカーコアの蒐集を続ける。 一方、Dボゥイはやり切れない思いで葛藤を続けていた。 ラダムは憎い。だがまたいつ仲間を襲うか解らない為、戦うのが怖い。さらにテックセットも不能ときた…… 「ありがとうございましたー!」 本局の医務室からなのはが出てくる。すると、「なのは!」と呼びながらユーノ、アルフ、フェイトが駆け寄ってくる。 「検査結果、どうだった?」 「無事、完治!」 アルフの質問に笑顔で答えるなのは。魔力は完全に回復したらしい。それを聞いてフェイト達も笑顔になる。 「こっちも、完治だって!」 フェイトとユーノの手に輝くのは、赤い宝石と黄色い宝石。レイジングハートとバルディッシュだ。 「そう、よかったぁ!じゃあ戻ったら、レイジングハートとバルディッシュの説明しなきゃね」 二機のデバイスとなのはが完治したとの報を受けたエイミィは通信相手に喜ぶ。 「それから……Dボゥイにはこっちも説明しなきゃね……」 隣のモニターを見るエイミィ。そこに映し出されていたのは青い巨大なロボット。この世界的には傀儡兵というべきか。 「ふふ……Dボゥイ、驚くだろうな……ってコレ!?」 突如、警報が鳴り響く。モニターにはアラートの文字。要するに緊急事態だ。 「……管理局か。」 「でも、チャラいよこいつら?」 ザフィーラとヴィータ、それとエビルが大勢の武装局員に囲まれていた。 「ふん……こんな奴ら相手にしたってつまらないよ」 だがエビルは余裕な態度だ。ブレードがいない今、この世界にエビルを楽しませる相手はいないのか…… しかし、次の瞬間周囲の局員は一斉に撤退し…… 「上だ!」 「スティンガーブレイド、エクスキューションシフト!!」 ザフィーラの声に上を向けば、そこにいるのは青く輝く大量の剣を従えたクロノ。 次の瞬間大量の剣は三人に向けて降り注ぎ、爆発。 眩しい光と爆煙が立ち込める。 「少しは、通ったか……!?」 はぁはぁと息切れしながら言うクロノ。しかし、ザフィーラの腕に何本かの剣が刺さっただけで、 特に大きなダメージを与えた様子は無い。しかもその剣もすぐに抜かれてしまう。 一方、アースラ。 「クロノ君、今助っ人を二人転送したから!」 『……なのは、フェイト!?』 エイミィの言葉に下を振り向くクロノ。そこにいるのはなのはとフェイト。もう完治したのかと驚くクロノ。 そして二人は新たなデバイスの名を叫ぶ。 『レイジングハート・エクセリオン!!』 『バルディッシュ・アサルト!!』 二人の体はピンクと黄色の光に包まれ、バリアジャケットの装着が完了。 二人は新しくなったデバイスを構えた。 「どうDボゥイ?あの子達の新しい力。」 「……俺には、関係無い。」 モニター越しに二人を見ていたDボゥイに話し掛けるリンディ。 「やっぱり……戦うのが怖いの?」 「ああ、その通りさ。第一今の俺は変身できない。行っても足手まといになるだけ……」 「そうでも無いっスよー!」 リンディに答えるDボゥイの言葉を遮り、大声で言うエイミィ。 「何だと?」 「Dボゥイはテックセットできるよ!」 「馬鹿な……クリスタルが無いのにどうやって?」 その質問に対し、「ふふん」と笑いながら目の前のパネルをカタカタと叩くエイミィ。 そして表示された画像。それは格納庫らしき場所に保管されている青いロボット。 「これは……!?」 「よくぞ聞いてくれましたぁ!機動兵ペガス、Dボゥイのテックセットを可能にするサポートロボだよ!」 エイミィの言葉に驚いて言葉も無いDボゥイ。 「これ元は作業用のロボットなんだけど、一週間でここまで改修するのは大変だったのよ?」 リンディが「ふふふ」と笑いながら言う。 「だが、テックセットができたとしても……もう俺は戦いたくない!」 モニターを見れば、なのは達は相手の守護騎士と何か喋っている。エビルは腕を組んで黙っているようだが…… 「もう嫌なんだ……俺が弱いせいで……俺の力が足りないせいで、これ以上誰かが傷付いていくのは……!」 「Dボゥイ……」 「大丈夫よ、Dボゥイ。」 リンディが優しい口調で言う。 「貴方は強いわ。だって、強い心を持っているもの」 「……提督。」 俯いていたDボゥイはゆっくりと顔を上げる。 「そうだよ!今までだって、ちゃんと戦ってきたじゃない!」 「……エイミィ。」 今度はエイミィだ。 「そりゃあ、人間は誰だって一度くらい失敗するわ。でも、それで諦めちゃダメよ!」 「だが……俺は……」 「いい?貴方は化け物なんかじゃないわ。れっきとした人間よ!」 「……俺は……。」 確かに今自分が行かねば、なのは達がヴォルケンリッターを倒せたとしてもエビルにまで勝てる保証は無い。 「それに、もしまた暴走しても私達が絶対元に戻すから!」 エイミィが自信に満ちた表情で言う。何故か信じてみたくなるような、そんな笑顔だ。 エイミィとリンディの激励に心を揺さぶられつつあるDボゥイは、俯きながらぎゅっと拳をにぎりしめる。 『強い心で、想いを貫く。』 さらに、あの日のフェイトの言葉がDボゥイの脳裏をよぎる。 もうDボゥイの答えは決まっていた。 いや……最初から決まっていたはずだ。家族や友人がラダムのテックシステムに取り込まれたあの時から。 さっきまでのDボゥイはただ、その決意から逃げていただけ。 そして…… 「俺は……俺はッ……!!」 次の瞬間、Dボゥイは転送ポートを目指して一気に走り出していた。それを見たリンディとエイミィはニコッと笑いアイコンタクト。 「お待たせしました!機動兵ペガス……発進ッ!!」 パネルのボタンを押すエイミィ。それと同時にDボゥイはアースラから姿を消した。 「話し合いをしようってのに武器を持ってやってくる馬鹿がいるか、バァ~カ!」 「いきなり襲ってきた人がそれを言う!?」 上空からグラーフアイゼンを突き付けるヴィータに、なのはが反論する。 「この感覚は……まさか……!」 しかし二人のやり取りを無視して割り込むエビル。 「あ?どうしたんだよシンヤ?」 「まさか……ブレードか?」 エビルの態度がいつもと違う事に気付いたザフィーラとヴィータ。 「いや……まさか……ブレードはもう……!」 小さな声でブツブツと驚きの声をあげるエビル。ブレードはもはや完全にラダムと化したはずだ。 まさかまたここに現れるなんてことは有り得ないはずだ。 しかし、エビルの予感は的中することとなる。 近くに現れた魔法陣から現れたのは見覚えのある男……。 「Dボゥイ!?」 「Dボゥイさん!」 「あいつ……ブレードの野郎か!」 フェイト、なのは、ヴィータもそれぞれに驚く。もちろんフェイトとなのはは嬉しそうな表情で。 「ク……ククク……兄さぁん、流石だよ兄さぁん!!ラダムの支配を脱したんだね!?」 そしてエビルは両手を広げて笑い出す。 「Dボゥイ、もう大丈夫なの……!?」 「ああ、俺はもう迷わない! ……エビル!俺は貴様らテッカマンを一人残らず滅ぼすまで戦い続ける!」 フェイトに返事を返しながらエビルを指差すDボゥイ。エビルも実に楽しそうだ。 「フン、いつラダムに支配されるか解らない兄さんにそれができるかな?」 「黙れエビル!俺は確かに人間では無いかも知れない……!」 その言葉になのはとフェイトは顔をしかめる。 「……だが、貴様らの様に人の心まで捨てはしない!俺は……俺はァッ……!!!」 次の瞬間、少し離れた空中に魔法陣が現れ、中から青いロボットが飛んでくる。 「テッカマンブレードだッ!ペガァスッ!!」 言うと同時に一気に飛び上がり、大きな声で青いロボットの名を呼ぶDボゥイ。 ロボットの名は『ペガス』。 ペガスの背中が開き、中に人一人が入れるスペースが現れる。 『マッテイマシタ。騎士ブレード』 「行くぞ、ペガスッ!!」 『ラーサッ!!』 そしてDボゥイがペガスの内部に入り、再び閉じる。次の瞬間にはペガスの頭部が変型。 そして中から現れたのは紛れも無い『テッカマンブレード』だった。 「また変身できたんだね!」 「クリスタル……直ったんだ!」 なのはとフェイトも嬉しそうな、ヒーローを見るような目でブレードを見る。 ブレードはすぐにペガスの背中に飛び乗り、連結したテックランサーを振り回しながら回転させ、構える。 そして…… 「テッカマンブレェーーードッッ!!!」 テックランサーを構え、大きな声でその名を名乗った。 戻る 目次へ 次へ
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第二回戦:試合場【城】結果 このページではダンゲロスSS3第二回戦、城の試合結果を公開します。 投票結果 試合SS キャラクター名 得票数 第二回戦【城】SSその1 遠藤終赤 12票 第二回戦【城】SSその2 紅蓮寺工藤 6票 第二回戦【城】SSその3 黄樺地 セニオ 13票 コメント 「それでは城の異世界戦・投票状況について、大会実況の私、佐倉光素と」 「解説の埴井きららが紹介するよ!」 「三者三様、独自の世界観を持った選手による世界観のぶつかり合いとなった城の試合」 「決着のつけ方も異次元にぽーんと投げちゃう戦いだったね!みんなすごい!」 「ですが試合内容に比べて票の動きは終始、綺麗に推移していました」 「遠藤ちゃんと黄樺地さんに2票入ると紅蓮寺さんに1票入るの繰り返し!」 「徹頭徹尾、終始徹底してそのバランスで票が入り続けました」 「コメントを見ると、みんなどこに投票するか迷っていたみたいだけど……」 「最終的には黄樺地選手に連続で票が入って決着となりました」 「紙一重の攻防!」 「ということで第二回戦、城の試合を制したのはー」 「「貴方もチャラ男の元に!黄樺地セニオ選手です!!!」」 「「おめでとうございまーす!!!」」 遠藤終赤 「勝者だれ」「ヒヒヒ、拙ですウェーイwwww」「マジで誰だよ・・・」ちょっとどのSSの勝者が誰だか全然わかんないんですけど、セニオが地の文まで支配した空間が超たのしかったのでコレで。三本ともものすごかったです。 あえて勝つ場面を描かず、最後の大仕掛けで驚きを与えてくれたこの作品に。 あとチャラい地の文wwwウケルwww 一読しただけでは意味がわからないが、読めば読むほどメタSSとしての技術力が凄まじい。どれに入れるかは相当迷ったが、直感を信じて投票したい。 ダイナミックなメタ描写の殴り合いがどれも素晴らしく、悩みましたが、「赤」と「黄」を入れ替えるという予想だにしなかったアイデアとそこに至るまでの巧妙な複線の数々、それだけでなくチャラップなどの『笑い』もブロック随一であり、シリアスとギャグの両面で非凡な発想を魅せたこちらに投票します。 全SSともややこし気味。メタ能力を活かそうとするのではなく自作品の作風や特色をどうメタるか考えるべきだろう。たぶんそのほうが読者もスッキリしたと思う。判り易さはその2だが色を保持したという意味でその1に投票 わけがわからないが面白かった 紅蓮寺工藤 どれも凄かったけど最後が一番スッと入ってきたので ヒ……ヒヒ…… 黄樺地 セニオ 最大風速は関西KAIMETSU!ww関東SENMETSUww! パンデミックで超SHIMETSUwww!ファントムルージュで眼がTENMETSUwww だったが 3のオチに全て持ってかれた おい!14歳の探偵はどこにいる?どこにいるんだよー! チャラ男に引きずり込まれました 3本とも、メタネタに真摯に向き合い、非常に高度な内容に仕上がっており、甲乙つけがたい。しかしその1はやや中盤の描写が分かり辛く(ことわりは一応しているものの)、ややバタバタしてしまった感が否めない。その2は冒頭のサマーソルトキックがその後特に活かされておらず、また探偵の修行を積んでいるならば終赤は性的な知識も十分に持っているはずであり(探偵小説にはその手の描写も結構ある)全体的にネタに対して詰めの甘さが見られた気がする。というわけで(個人的には)総合的に最もバランスが取れていると感じ、またラストのインパクトも大きかったその3が僅差で上回るか。 どのSSも驚きという要素があって非常に良かった。が、丁寧に伏線を張っておいて、後の展開で読者を置き去りにしない、という観点で優れていたのはこれ。上手い。 いずれ劣らぬ傑作ぞろいでした。メタフィクションのスケールの大きさ、キャラクタの特性活用、チャラ度を考慮してセニオに投票。 失策も恣意設定もなかったのがこれかなあ。面白さでは甲乙つけがたいわい
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9:恐怖! 百合ショッカー四天王編 各々のバイクへ乗ったまま百合ショッカー本部内へ突入したディケイド達。そして内部の通路を通り奥へ奥へと爆走する。 「外から見るより随分と広いんだなここ。」 クウガはトライチェイサー2000を運転しながらも周囲を見渡しそう呟いていた。百合ショッカー本部の内部通路は 外から見える建物の大きさ以上に長かった。恐らく外から見える建物はただ魅せる為の演出で内部は地下に広大な基地が 建造されていると推測された。 そして長い通路を通り、通路の先にあった大きな部屋に出た。その向かい側には次へ進む通路の入り口らしき物が 見えたのだったが、それを遮る様に何者かが立ち塞がっていた。 「僕はシャドームーン様直々のご指名によりゴルゴム本隊からやって来たフェレット怪人だキュー。」 「フェレット怪人!?」 ゴルゴム怪人の名称は、一般的にベースとなった生物の名称の後に怪人と付く形を取る。(例:クモ怪人・ヒョウ怪人) そして彼はフェレットをベースとしたフェレット怪人だったのである。その姿は元になったフェレット同様に 可愛らしい様にも思えたが、シャドームーン直々に指名されて来たと言うだけにかなりの戦闘力を持つ事が予想された。 「お前達の中にもフェレットがいるらしいじゃないかキュー! そいつを今すぐに出せキュー! 僕が相手になってやるキュー!」 フェレット怪人が言うフェレットとはすなわちユーノの事。それもディケイドの力によって巨大フェレットに ファイナルフォームライドした状態を指しているのだろう。しかし、今のユーノはクロノと共に仮面ライダーWになっていたのだった。 「こっちも色々あって君の要求には応えられないけど…。」 「代わりに僕達が相手に立ってやろう。」 「ユーノ君! クロノ君!」 ここでユノクロWがハードボイルダーから降りて前に出た。これにはなのはも驚いていたのだが それを追う様に同じく前に出ようとしていたなのはをユノクロWは止めていた。 「僕達が奴を食い止めている間に先に進むんだ。」 「で…でも…。」 「でもじゃない! こんな所でグズグズはしていられないのは分かってるでしょ!?」 「!」 ユノクロWを心配して躊躇するなのはに対し、ユノクロWの内のユーノの部分が思わず怒鳴っていた。 彼の言う通り今はフェレット怪人だけに構っている暇は無い。故にユノクロWは自分がフェレット怪人を 食い止めている間になのは達に百合ショッカーの本隊を倒して欲しかったのである。 「行くんだ! 僕達がコイツを食い止めている間に行くんだー!!」 「う…うん…。」 「行くぞなのは! 今度はこっちに乗れ!」 単身フェレット怪人に突撃し、正面から組み合っていたユノクロW。その隙になのははディケイドに手を引っ張られる形で マシンディケイダーの後部座席に乗り込み、ディケイド達はさらに先へ進んで行った。 「お前なんかがこの僕に勝てるのかキュー!?」 「勝てると思うから挑むんじゃない! お前の相手には僕達じゃないとダメだからやるんだ! 行くぞぉ!」 ユノクロWとフェレット怪人の戦いが今始まった。 マシンディケイダーに乗ったディケイドとなのは、トライチェイサー2000に乗るクウガ、バトルホッパーに乗る BLACKと朱里ちゃんはさらに通路を突き進んでいたが、ここで再び広い部屋に出た。そして、やはりそこにも何者かの姿があった。 「な…何だコイツ…。」 その部屋にいた何者か…それは巨大なウサギだった。しかし、ウサギを元にした怪人…と言うわけでも無く、 むしろウサギのぬいぐるみを巨大化させた様な代物だったのである。 「まさか…クリス!」 なのはは思わず叫んでいた。クリス…正式名称・セイクリッドハート。なのはが義娘であるヴィヴィオの為に用意した ウサギのぬいぐるみ型デバイスである。しかし、本来のクリスは子供の掌の上に乗る程度の大きさしかない。 だが今目の前にいたクリスはのべ三メートルの巨体であったのだ。 「でもどうしてこんな大きさに…。」 「恐らく百合ショッカーによって強化改造でもされたんだろうな。」 まあ現状ではそう考える他は無いだろう。百合ショッカーの科学力ならばクリスを巨大化させつつ自らの尖兵として 扱う等造作な事では無い。 ここは通さんと言わんばかりに一歩一歩歩み寄って来る巨大クリス。その可愛らしい外見からは想像も出来ないシュールさと迫力。 だが、ここでクウガが前に出ていたのだった。 「ユウスケ?」 「ここは俺の出番だ。後は俺に任せて士達は先へ進め。」 クウガは単身巨大クリスに挑むつもりらしかった。流石のクウガも分が悪い戦いになると思われるが、だからと言って 巨大クリスだけに構っている事は出来なかった。 「分かった…後は頼んだぞ。」 「ああ! 俺も一刻も早くアイツを倒して後を追う。」 巨大クリスに挑むクウガを残し、ディケイド達はさらに進んだ。しかし、巨大クリスの存在がなのはに新たな心配事を作っていた。 「まさかクリスまで…と言う事はヴィヴィオも何処かに…。」 クリスが百合ショッカーによって改造され敵に回った。それはクリスの持ち主であるヴィヴィオも何処かに囚われている事を連想させた。 ヴィヴィオの事を思うとなのはは気が気では無かった。 ディケイド達が先へ進んだ後、クウガは巨大クリスに対し構えていた。 「さあ行くぞ!!」 クウガは巨大クリスへ挑みかかり、ここでも戦闘が始まった。 マシンディケイダーに乗ったディケイドとなのは、バトルホッパーに乗ったBLACKと朱里ちゃんはさらに通路を進む。 そして例によってまた広い部屋に出たのだった。 「また誰かいるよ。」 「今度は誰だ?」 「あれは…。」 「はわわわわ…。」 部屋の中にはまたも行く手を遮る刺客と思しき者の姿があった。しかし、それはいわゆる『怪人』の類では無かった。 闇の様に漆黒のドレスを見に纏い、左側の背中に悪魔のごとき翼を生やした黒髪の美女。その瞳は刃の様に鋭く、 そのまま突き刺してしまわんばかりの勢いでディケイドを睨んでいた。 「久しぶりだな…破壊者…。」 「お前は…ダークプリキュアか…。」 ダークプリキュア。かつてディケイドが旅したプリキュア世界の一つ、『ハートキャッチの世界』において、 世界を砂漠化させようとしていた砂漠の使徒によって作られた人造プリキュアとでも言うべき存在。 先にいたスナッキーもそうだが、何故彼女が百合ショッカーに所属していると言うのか… 「まさかお前まで百合ショッカーにいたとはな。」 「こっちもまたお前と出会う事になるとは思わなかった。」 「知り合いなの?」 ディケイドとダークプリキュアの会話から察するに、双方は既に互いを知り合っている様だった。 「ああ…。俺がハートキャッチの世界に行った時、成り行き上とは言えそこでプリキュアと砂漠の使徒の戦いに介入しちまったからな。」 「そうだ! 貴様の邪魔が無ければ私はキュアムーンライトを倒す事が出来たと言うのに…。そして砂漠の使徒も崩壊し… 私は死にそびれた敗残兵として虚空を彷徨っていた所をシャドームーンに拾われ、後はこの百合ショッカーなる得体の知れない連中の 一員として戦わざる得なくなった。この屈辱……貴様に分かるかぁ!?」 「色々説明ありがとうな。」 「くっ…貴様…。」 詳しい事は不明だが、彼女の言葉からするととにかくディケイドとダークプリキュアの間にはただならぬ因縁があった様だ。 「もうこうなってしまった以上私は今更キュアムーンライトに再び挑もうとは思わない。だが…貴様は許さん!! はぁ!!」 ダークプリキュアは猛烈な勢いでディケイド目掛け跳びかかって来た。が、そのディケイドを狙っていた拳を掌で 受け止めていたのは何とBLACKだった。 「光太郎!?」 「ここは俺に任せて先に進むんだ!」 BLACKはダークプリキュアの相手を引き受け、その内にディケイドとなのはを先に進ませるつもりだった。 「邪魔をするなぁ! 貴様には用は無い! 私の狙いはあの破壊者だけだぁ!」 「そうはいかん!」 最初からディケイドしか眼中に無いと言わんばかりのダークプリキュアはBLACKを突破してディケイドへ 向かおうとしていたが、BLACKは身体を張って遮っていた。 「何をしている!? 今の内に進むんだ!」 「ああ!」 「光太郎さん頑張ってください。」 ディケイドとなのはは再びマシンディケイダーに乗り込み、先へ進んだ。BLACKはそれを見送った後、 さらにバトルホッパーに目を向けていた。 「バトルホッパー、その子を守ってやるんだ。」 「はわわわわわ…。」 バトルホッパーには未だ朱里ちゃんが乗っている。ディエンドの三国ライドによって呼び出された存在とは言え 少女が戦いに巻き込まれて大怪我をしてしまう様を見るのは辛い。それ故にBLACKは自分がダークプリキュアの相手を している間、バトルホッパーに朱里ちゃんの護衛を任せるのだった。 「こうなったら仕方が無い…。まず貴様を倒してから破壊者の後を追わせてもらう!!」 「来い!!」 こうしてBLACKとダークプリキュアの戦いが始まった。 沢山いた仲間もついにディケイドとなのはの二人きりになってしまった。こうなってしまうと流石に心細い物があった。 「これ以上何か出て来たらたまらんな。」 「あ、次が見えて来たよ。」 なのはの言う通りだった。長い通路も終え、再び広い部屋に出た。 「ここが終点の様だな。」 ディケイドの言う通りだった。その部屋で行き止まり。それを証明する様に、部屋の奥には首領の椅子に座る フェイト=T=ハラオウンと、その側近として君臨していたシャドームーンの姿があったからだ。 「フェイトちゃん!」 「ついにここまで来たな…。」 思わずフェイトの所へ駆け寄ろうとしたなのはだったが、シャドームーンに立ち塞がれ思わず止まっていた。 そしてなのはを下げつつディケイドが前に出る。 「月影ぇ~! お前も百合厨だったとは堕ちる所まで堕ちたな~!」 「如何にも。創世王として世界を…全てを支配する為ならば私は百合厨にでも何にでもなってやる……と言いたい所だがな…。」 「?」 「正直の所、私は百合厨どもの言うなのフェイに関してはどうでも良いのだ。しかし、なのフェイの百合に多くの人々が 支持している事実は見逃す事は出来ん。考えても見ろ。愚民どもが好むと言う民主主義とやらで考えても、数多くの賛成者、 支持者のいる百合こそが正義となり、逆にそれに反対しようとする者は悪とされる。現に筆者の奴はその為に一方的に悪とされ 正義の徒を気取った百合厨どもの総攻撃を受けてまさに満身創痍の状態にあるでは無いか。これが意味する事… それは我々百合ショッカーこそが世界を支配するに相応しい正義であり、それを破壊しようとするディケイド…貴様が悪なのだ。 故にそこにいる高町なのはと私の後にいるフェイト=T=ハラオウンには精々私の世界支配の為の人形として利用させてもらおうか。」 シャドームーンは百合ショッカーに与してはいても、百合そのものを好んでいるわけでは無かった。 あくまでも己が世界を、全てを支配する為に利用価値があるからそれを利用していると言う、手段でしか無かったのである。 力と恐怖で支配するのでは無く、人々から支持を得ている物を利用する事で人々からの支持と賞賛を得て 逆に反対意見を一方的に悪にして反対し難くする。なんと言う恐ろしい計画であろうか。 そして、シャドームーンは己の世界支配の為に高町なのはへと手を伸ばそうとしていた。 「そうはさせん! コイツはレズビアンの真似事なんて嫌だってよ。」 「そうか…ならば世の中には嫌でもしなくてはならない事があると言う事を教えねばならんな。」 シャドームーンは己の持つ世紀王専用剣・サタンサーベルを抜いた。 「ついに最後の戦い…と言う所だな。気を抜くなよ!」 「うん!」 ディケイドはライドブッカー・ソードモードを、なのははレイジングハートを握り構えた。 「行くぞ!」 「来い!」 こうしてディケイド&なのはVSシャドームーンの戦いが幕を開けた。 時同じく、仮面ライダー1号・2号・V3は激闘の末に百合ショッカーライダー部隊を全滅させていた。 「ハァ…ハァ…後はお前だ…地獄大使…。」 「いや…今はガチ百合大使と名乗っているんだったかな…?」 地獄大使改めガチ百合大使の変身体・ユリユリンダに向けて構えるが、ユリユリンダは余裕の笑みを浮かべていた。 「ハッハッハッ! 良くぞやったと褒めてやろう。だが、随分と息が上がっているな。」 その通りだった。確かに百合ショッカーライダー部隊を全滅させた三人だったが、それ相応に疲弊し 体力も大きく消耗していたのだった。 「今の疲れきった貴様達等、倒すのは容易いわ!」 「そうは行くか!」 「この程度でヘバる程甘い鍛え方はしていない!」 疲れきった身体にムチを打ち、三人はユリユリンダに跳びかかる。しかし… 「本当にムチ打ってやるわぁ!」 「ぬあ!」 ユリユリンダはムチ状の腕を振り回し、トリプルライダーをまとめて弾き飛ばしてしまった。 三人も疲弊・消耗があるとは言え、物凄いパワーとスピードである。 「くそ…こうなったらこっちにも考えがある。」 「どうせ三人まとめてライダーキックと言うのだろう? そんな物弾き飛ばしてやる。」 ユリユリンダは正面から迎え撃ってやらんばかりに大きく胸を張る…が、次の瞬間1号・2号・V3は三方向に散開した。 「何!?」 「ライダァァァァ! トリプル!! キィィィィィック!!」 「ぬあ!?」 トリプルライダーの正面・左・右からの三方向同時ライダーキック。これではユリユリンダも どう迎撃して良いか分からず、真っ向からそのライダートリプルキックを受けてしまうのだった。 「うああぁぁぁぁ!!」 手足をバタ付かせながら大きく吹っ飛んで行くユリユリンダ。そして大地を砕かんばかりの勢いで地面に叩き付けられるのだった。 「偉大なる百合ショッカーに…百合バンザァァァァァァイ!!」 ユリユリンダは最後の力を振り絞った百合万歳と共に…大爆発を起こした。 「やったな。」 「おお。」 「後はディケイド達の頑張りを祈るのみだ。」 仮面ライダー1号・2号・V3は百合ショッカーアジトのある方向をじっと見つめていた。