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『ゆっくりの越冬 前半』 38KB 観察 考証 越冬 自然界 人間なし うんしー 初投稿です。 ※前書き 設定の独自解釈があります。 スレなどで気に入ったネタは容赦なく盛り込んであります。 考察要素が強めです。 それでも良いと思われる方、どうぞご照覧下さい。 ゆっくりの越冬 木々の間から街を望む、小さな山の中にそのゆっくりの群れはある。 群れは小さく、長も普通サイズのまりさ。 しかし規模の小ささが幸いして人間との軋轢も生まれず比較的平穏に暮らしている。 一般にゆっくりは子沢山であり、2匹以上いればあっという間に数が増えると思われているが それは恵まれた環境に限った話。 赤ゆっくりや子ゆっくりが厳しい自然界で生き抜ける確率はそれほど高くない。 だから、この群れは2年の歳月を経ても規模があまり変わってこなかった。 そうして季節は巡り、夏の終わりに生まれた赤ゆっくりが一人前になる頃、 群れのゆっくり達が越冬の準備をしはじめると共にこの話は始まる。 「「ここをれいむとまりさのゆっくりぷれいすにするよ!!」」 彼女たちはつい先日に独り立ちしたばかりの若いまりさとれいむ。 どうやら新たな住処となる場所…自分たちだけの「ゆっくりぷれいす」を見つけたところのようだ。 この2匹は生まれた“おうち”がすぐ近くにあったために、家族ぐるみでの付き合いがあった。 小さい頃から特に仲が良く、大人になり、独り立ちすると共にごく自然につがいになったのだ。 とはいえ、今は冬の準備で忙しい時期。まだ子供を作ることはできないでいる。 2匹が巣を作ろうと決めたのは60センチ程の土手に空いた小さな洞穴。 雨で崩れたのか、木の根が露出しておりなんとも丈夫そうな佇まいである。 冬籠りに向けて通常より広い範囲で狩りを行っていた為に運よく発見できたものだ。 すぐにおうち宣言を済ませ、あとは冬に向けて住みよい様に拡張するのみとなっている。 とはいったものの、まるで誰かが住んでいたかの様に、この穴倉は2匹で暮らすには既に十分な広さがあった。 越冬用の食糧を溜めるのでなければ拡張すら必要なかったかもしれない。 「それじゃあ、まりさは かりにいってくるのぜ!」 「ゆっくりいってらっしゃい! きをつけてね!」 本来ならふたりで狩りをし、狩りを終えたらふたりで協力して穴を広げるところだが れいむは自分だけでおうち作りを引き受けるとまりさに伝えた。 小さいころから母ありすの“とかいはなこーでぃねーと”を手伝っていたれいむは 狩りよりもおうち作りが得意だった為だ。 逆に父まりさと主に木々の間を駆け巡ってばかりいたまりさはおうち作りは苦手。 そこでまりさは狩りに、れいむはおうち作りに専念することにした。 この作戦は見たところ功を奏したようである。 まりさは「群で一番の狩りの名人」、すなわちまりさ種としては平均的な能力だったが この森は食糧となる草や花も豊富であり 時間の余裕も手伝って順調に保存用のごはんを貯めることができた。 秋が終わりを告げいよいよ越冬に入る頃、まりさとれいむには丁度良いおうちが出来上がっていた。 巣穴の奥にもたっぷりのごはんが貯め込まれている。 拡張された食糧庫は、春になれば生まれてくるであろう“おちびちゃん”たちの部屋になるのである。 長まりさの娘であり幼いころからの親友であるぱちゅりーに教わって、きちんと長持ちするものだけを集めたものだ。 しっかり切り詰めれば大人のゆっくり3人が十分に食い繋げるだろうと言っていたので安心できる。 「ゆっ! さいきん だいぶすずしくなってきたね! おうちをゆっくりふさごうね!」 「わかったのぜ! でもそのまえに おとーさんとおかーさんに あいさつしてくるのぜ!」 春には再会できるとは言え、今までのゆん生と同じほどの期間会うことができなくなる。 2匹はそれぞれの両親や、同じく一人立ちした姉妹に挨拶しに行くことにした。 お互いの準備が万全であると確認し、長い時間をかけて別れを惜しむと 巣に戻り、いつもの“けっかいっ”よりも厳重に枝や石、唾液を混ぜた土で入口を丹念に塞いでいく。 自由な出入りはできなくなるものの、冷たい外気が入って来なくなり 巣の中は2匹の体温によって一定の温度が保たれるだろう。 「これで やっとゆっくりできるのぜ!」 「まりさ! はるまで ゆっくりしようね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆっくりしていってね!!」」 最初の夜が明け、2匹は朝の挨拶を交わした。 初めての越冬、それ以上に、初めてのふたりきりのおうち。 彼女たちを包む軽い興奮と深い幸福感は、ぷろぽーずのときの甘いふぁーすとちゅっちゅと同じ程。 親愛を込めたすーりすーりの後、食糧庫から今日のごはんとして干した草や虫を葉っぱのお皿に載せる。 これで丸一日分である。必要最低限のため、昨日までの1/10程度しかない。 「「むーしゃ!むーしゃ! しあわせー!」」 それでも2人なら、なにを食べても美味しい。 2人なら、どこにいても幸せ。 2人なら、ずっとずっとゆっくりできる。 れいむとまりさは心の底からそう信じていた。 ごはんが終わったらお互いをぺーろぺーろして綺麗にし、まだ見ぬ春への思いを話し合う。 「はるになったら みんなでピクニックにいこうね!」 「おはなさんをたくさん むーしゃむーしゃするのぜ!!」 「おとーさんや おかーさんや おねーちゃんたちと たくさんすーりすーりしようね!」 「まりさたちも すっきりーして おちびちゃんをたくさんつくるのぜ!」 「もう… まりさったら…///」 「ゆへへっ …はるさんが まちどおしいのぜ!」 「そうだね! はるさんは ゆっくりしないで はやくきてね!」 お喋りが終わったらお昼寝の時間。これからは食糧や体力を無駄にできない。 昼間の僅かな時間以外のほとんどを仮眠と睡眠で過さなければいけなくなる。 だが、ふたりにとってそれは苦にならないだろう。何故なら自分の一番大事な宝物がすぐ横にいる。 それを意識するだけでれいむもまりさも餡子の奥がポカポカしてくるのを感じていた。 彼女たちにとって、ふたりきりでゆっくりし続けることができるこの冬籠りは ゆっくりしている自分達への神さまからのご褒美だとすら考えられた。 “きっとこれが本当のゆっくりなんだね…” そんなことを考えながら、ふたりは再びまどろみの中に落ちていった。 そんなしあわせーな生活が1週間もした朝。 「ゆぅ… はるさんはゆっくりしすぎなのぜ」 ゆっくりはゆっくりしていれば幸せとは誰が言ったのだろうか、 まりさはいつまでも訪れぬ春に苛立ちを覚え始めていた。 もう数え切れないほどに“たくさん”寝て起きたのに春の気配は感じられない。 秋の間、野山を駆け巡る生活をしてきたまりさは体を思いきり動かせないことが不満なのだ。 思う存分ぴょんぴょんしたい。干し草ではない、獲ったばかりの虫さんやキノコさんをむーしゃむーしゃしたい。 そんな思いがつい漏れてしまった。 「ゆっ? どうしたのまりさ?」 「なんでもないのぜ! ちょっと ねてばっかりだと からだがなまっちゃいそうだって おもっただけなのぜ!」 「ゆふふっ! まりさは かけっこが だいすきだもんね!」 「そうなのぜ! かけっこなら ちぇんにだってまけないのぜ?」 「ゆゆぅ!? すごいねまりさ!」 実際のところ彼女たちの群れにちぇんはいない。比べたことも勿論ないのだが、れいむはあっさり信じる。 れいむにとってまりさは特別なゆっくり。ちぇんよりも素早く、みょんよりも勇敢に違いない。 だが、だからこそ、れいむは冬籠りの退屈さが活発なまりさには辛いのだろうと気が付いていた。 なんとかしてまりさにゆっくりして貰いたい…れいむは必死に餡子を捻り、 ついに今まで誰も思いつかなかったような素晴らしいアイデアを閃いた。 「まりさ! おちびちゃんがいれば ゆっくりできるよ!」 まりさは突然の言葉に驚き、同時に心配をかけていたことに気が付いた。 大好きなれいむを心配させていたなんて…そんな自分の為にれいむ色々と考えてくれたんだ。 深い反省と感謝の気持ちがまりさを満たしていく。まりさは知らず知らずのうちに笑顔を浮かべていた。 一瞬ぽかんとした後、ゆっくりと笑顔になるまりさを見て れいむは自分のアイデアが間違ってはいなかったと改めて確信する。 おちびちゃんがいれば退屈で辛い冬籠りも明るく楽しいものになるだろう。 春まで待とうとしていた理由は思い出せないが、思い出せない位ならどうせ大した理由ではなかったのだろう。 『こんな素晴らしい事を何故もっと早く考え付かなかったのか。』 れいむはこれまでの時間を無駄にしたようにすら思えてきた。だが過ぎたことを嘆いても仕方がない。 大切なのはこれからの冬籠りを、まりさと、かわいいおちびちゃんたちとゆっくり過ごしていくことだ。 もう寝ては起きて春を待つだけの生活はおしまいなのだ。れいむには、未来は薔薇色の日々が約束されていた。 美味しそうな花がたくさん咲く広場で、自分に似たおちびちゃん達とゆっくりしたおうたを歌う光景を 幻視していたれいむは、しかしまりさの言葉で現在に引き戻された。 「ゆ? でもぱちゅりーは 『ふゆのあいだにおちびちゃんをつくるとゆっくりできなくなる』 っていってたのぜ?」 「ゆゆっ!? おちびちゃんはゆっくりできるんだよ!?」 そう言われれば確かにぱちゅりーはそんなことを言っていた。 その時は気が付かなかったが考えてみればおかしな話である。 おちびちゃんはれいむ達をゆっくりさせる為に生れて来てくれるのだ。ゆっくりできない筈がない。 「ごはんを食べたらお腹が減る」と言っているようなものである。 とはいえ、ぱちゅりーはとても賢く、間違ったことを言ったことは一度もない。 そのぱちゅりーが「ゆっくりできない」と言ったのならそれはきっとゆっくりできないのだ。 れいむとまりさは混乱した。なにせおちびちゃんがゆっくりできるのは間違えようのない事実なのだから。 この矛盾に2匹は… 「ゆっ! きっとぱちゅりーがかんちがいしたんだね!」 さして悩まずに結論を出した。 ぱちゅりーはつがいもおらず当然子供もいない。だからきっと何かの勘違いだったのだろう。 即時満場一致で可決。 そうと決まれば善は急げである。 彼女たちは失った時間を取り戻すかのように互いの肌を擦り合わせ始めた。 「すーりすーり… ゆゆっ… れいむぅ…」 「ゆぅう… まりさぁ… とってもきもちいいよぉ…」 ぬちゃぬちゃ。ぴちゃぴちゃ。 妙に粘度の高い砂糖水がぬらぬらと滴る。 二匹とも眼をトロンとさせ、口元はだらしなく半開きで涎が垂れている。 普段の姿からすれば眼を背けたくなる醜悪さだが興奮ゆえか気が付いていないようだ。 相手の分泌した液体を自らの肌で拭おうとしているのか… あるいは自らの分泌した液体を相手の肌に擦りつけようとしているのか。 どういう原理か桜餅のように紅潮した二つの饅頭は徐々にその動きを速めていく。 「「すっきりー!!!」」 巣穴に響くような叫びと共にその動きをぴくりと止めた。 一呼吸付く、とれいむの額から瑞々しい新緑の茎がするすると伸び始める。 30センチを越えた程で伸びるのをやめ、次に等間隔に出来た6つの瘤が少しずつ膨らみ始めた。 一方れいむは幸せに満ちた表情で自分の頭に宿った実を眺めているが、みると明らかに頬がこけている。 1週間にわたる摂食生活では植物型妊娠に耐えられないのだろう。 頬がべこんとへこむに至り、ようやく自分の状態に気が付いて騒ぎ始めた。 「ゆぅぅぅうう!!? これいじょうれいむのあんこさんすわないでねぇぇぇ!!! でいぶじんじゃううぅぅぅ!!!」 「ゆあぁぁぁああ!? れいむぅぅぅ!?!?!」 焦ったまりさは食糧庫に飛んでいき、大量のごはんをれいむの口に押し込んだ。 大切な食糧だがれいむの命には代えられない。それに少しくらい多く食べても大丈夫な程に食糧は貯めた筈だ。 結局普段の一日分程の食糧を食べるに至りようやくれいむはいつもの丸い形と笑顔を取り戻した。 「ありがとうまりさ! やっぱりまりさはさいっこうっのだーりんだよっ!」 「ゆっへん! それほどでもあるのぜ! れいむはかならずまりさがまもるっていったのぜ?」 記憶にはないが確かに言われてみれば言われた気がする。れいむは一人まりさへの愛を深めていた。 そんな寸劇が終わってみれば、蔓にできた6つの瘤は 直径3センチ程の大きさながらゆっくりの姿を形作っていた。いわゆる実ゆっくりだ。 無事(?)ににんっしんっ!成功である。 6日後。 「ゆゆぅ~~~んっ! れいむのおちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるよぉ~~~!!」 「おちびちゃんたち、ゆっくりうまれるのぜ! ゆっくり! ゆっくりなのぜ!」 「もう! まりさも もっとゆっくりしてね!!」 まりさが「おちびちゃんのため」といってれいむに多めのごはんを食べさせていた甲斐もあり 実ゆっくりたちはもう生まれる寸前の大きさになっていた。 この日は朝からぷるぷると震えており、もうすぐ赤ゆっくりが産声をあげることを2匹に教えている。 まりさなど興奮しすぎて実ゆを取って食わんばかりの接近だ。 そんな両親に見守る中、赤ゆたちは誕生の時を迎えた。 ぷるぷるぷる、ぷちっ…ぽとん。「ゆっ!」 「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「れいみゅはれいみゅぢゃよ! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「ゆぅぅ~! とってもゆっくりしたおちびちゃんなのぜぇ!」 「ゆっ! つぎのおちびちゃんもうまれそうだよ!」 ぷちっ…ぽとん。「ゆっ!」 「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「「「ゆっくりしていってね!!(ゆっくちしちぇいっちぇにぇ)!」」」 「まりちゃはまりちゃにゃのじぇ! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」 「しゃべりかたまで まりさにそっくりだね!」 「れいみゅのいもーちょぢゃにぇ! れいみゅはれいみゅぢゃよ!」 ぷちっ…ぺちょん。「ゆ゛っ!」 「まりちゃはまりちゃぢゃよ! ゆっくち! ゆっくちぃ!」 「とってももちもちおはだなおちびちゃんなのぜ! しょうらいは びゆっくりまちがいなしなのぜ!」 ぷちっ…ぽよん。「ゆぴっ!」 「れいみゅはれいみゅぢゃよ! ゆっくちちちぇいっちぇにぇ~♪」 「おうたのじょうずそうな おちびちゃんだよぉ!」 続けざまに4匹の赤ゆが生まれ巣穴はやにわに賑やかになった。 5つめの実が大きく震え始めたのを見てまりさも赤ゆ達もさらに興奮が高まる。 「ゆゆぅー! まりちゃのいもーちょ! ゆっくち! ゆっくち!」 生まれて1分足らずにも関わらず姉としての意識が芽生えているのだろうか、 揺れる実を見上げながらぴょんぴょんと飛び跳ねる3女赤まりさ。 ぷるぷるぷる、ぷちっ…べちょっ。「びゅべっ」 「ゆっくちちいぇいっちぇにぇ!」 飛び跳ねすぎて生まれてくる赤ゆの真下に入ってしまったらしい。落下した妹が直撃した。 ピンポン玉サイズである赤ゆの重量など高が知れているが、自身も生まれたばかりの身。 赤まりさは大きくひしゃげ餡子を吐き出してしまった。 「ゆあああ!? おちびちゃぁぁぁああん!?」 「ゆっ! まりちゃがうまれちゃよ! ゆっくちちちぇいっちぇにぇ! ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」 「びゃべっ! ゆげっ! ゆぢっ!」 姉の惨状に気付かない赤まりさは挨拶がなかったことに不満を覚え、その場で何度も飛び跳ねる。 「ゆ゛っ ゆ゛っ ゆ゛っ」 「おちびちゃんとびはねちゃだめぇぇぇぇぇ!!」 「ゆぅ? …おにぇーちゃぁぁぁああん!? にゃんぢぇぇぇぇえええ!?」 「…もっちょ…ゆ゛っぐぢ………」 「「おちびちゃんがぁぁぁぁあああ!!!!」」 「「いみょーちょぎゃぁぁああ!?!?」」 「「おにぇーちゃんぎゃぁぁぁ!!」」 気が付いた時には既に手遅れ。体の大半の餡子を吐き散らし、生まれたばかりの命は儚くもあっさり散った。 突然の不幸に嘆く一家。しかし悲しみに暮れる間もなく蔓に残った最後の実が大きく揺れ始める。 残念だけど、死んでしまったおちびちゃんのことは諦めよう。おちびちゃんはまた作ればいい。 今は悲しむよりも、残ったおちびちゃんにより深い愛情を注ぐべきなのだ。 驚くべき速さで気持を切り替える両親。 潰れた饅頭の残骸もそのままに、最後の子供の誕生に意識を集中する。 ぷるぷる、ぷちっ…ぽゆん。 「ゆぴ! ゆっち! ゆっち!」 「「ゆっくりしていって…ね…?」」 「ゆち! ゆー! ゆっくちー!」 「ゆ? れいみゅにょいみょーちょ…にゃんぢゃきゃ ゆっくちちちぇにゃいにぇ…」 お決まりの挨拶すらまともに出来ず、髪の毛は頭頂部に申し訳程度。 瞳の焦点も定まらず口からは涎が垂れている。 言うまでも無い事だが、ゆっくりは「すっきりー」すると、体調に関わらずある程度の数を「にんっしんっ」する。 節食生活だったれいむでは6匹の子供は多すぎたのだ。 さらに越冬中であるのも災いした。 実は普段の生活において、植物性にんっしんっは実ゆっくりが落ちてしまうことが多い。 ただ4つ以上は「たくさん」としか認識できない為に2つ3つ減っても親は気がつかないのだ。 洞窟の中で安静にしていたれいむは幸か不幸か全ての実が順調に育ってしまった。 すなわち、多少多めに食べたところで普段の半分以下。 6女のれいむは未熟ゆで誕生したのである。 先に生まれた姉たちは、本能が異端を許さないのか生まれたばかり妹に蔑むような視線を向ける。 れいむとまりさも困ったようにお互いを見合わせた。 「ゆぅぅ…ゆっ! きっと ごはんさんがたりなかったのぜ! このおちびちゃんも ごはんさんをたくさんたべれば、ほかのおちびちゃんみたいになるはずなのぜ!」 「ゆっ! そうだね! このこも れいむのかわいいおちびちゃんだよ!」 「ゆっくちぢぇきにゃいよ…」 「あんにゃ いもーちょにゃんちぇ いりゃにゃいよ…」 気を取り直して子育て宣言をする2匹だが、姉妹のほとんどは末れいむを疎んでいるのに気がつかない。 「まりちゃは おにゃきゃぎゃしゅいちゃよ! ごはんしゃんを むーちゃむーちゃしゃしぇちぇにぇ! いましゅぎゅぢぇいいよ!」 「ゆっ! おちびちゃんたちは このくきさんをたべるのぜ! むーしゃ、むーしゃ、ぺっ」 まりさがれいむの頭の茎を口で咥えて根元から折り、良く噛んでから吐き出す。 これが赤ゆ達の最初の食事である。 この茎は程良く甘く、程良く苦い為に生まれたばかりの赤ゆの味覚調整の役割があると言われている。 「ゆわーい! まりちゃにょ しゅーぱーむーちゃむーちゃたいみゅぢゃよ!」 「まだだよおちびちゃん! ちゃんとみんなで いただきますをしようね!」 「しょうぢゃよ! ひちょりぢゃけ しゃきにむーちゃむーちゃ しゅりゅにゃんて ゆっくちちちぇにゃいよ!」 「ゆぅぅぅ! ぢょぉぢぢぇ じょんにゃぎょぢょ いうにょぉぉお!?」 「おちついてね! ごはんさんはにげないよ! ゆっくりたべてね!」 「「「ゆっくちいちゃぢゃきましゅ!!」」」「うみぇっ! こりぇめっちゃうみぇっ! ぱにぇっ!」 「「「むーちゃ! むーちゃ! ちあわちぇぇぇ!!」」」 結局5女まりさは挨拶もせずに食べ始めていた。 よほどお腹が減っているのだろう、それにまだ生まれたばかりなのだから… そう思った両親は5女まりさを可愛いと感じこそすれ叱ることはしなかった。 「ゆぷー、おにゃきゃいっぴゃいぢゃよ」 「ごちちょうしゃみゃぢぇちちゃ!」 「おぉ、みゃんぴゅきゅみゃんぴゅきゅ」 「れいみゅ にゃんぢゃきゃ にぇみゅきゅにゃっちぇきちゃよ…」 「ゆぴー…ゆぴー…」 初めてのごはんを食べ終わった赤ゆ達には早くも睡魔が降りてきたようだ。 この日の為にまりさが作っておいた「べっど」(干し草をまとめてくぼみを作っただけのもの)に 寝かせてあげると、あっという間に寝息を立て始める。 れいむとまりさは不幸な3女の死骸を 「はるさんがきたら ちゃんとうめてあげるからね…」 といって食糧庫の隅に移動させた後、自分達の食事をしていないことも忘れて にこにことおちびちゃん達の寝顔を眺めていた。 「ゆっ! れいみゅゆっくちおきちゃよ!」 「ゆっくちあしょぶのじぇ!」 「おきゃーしゃんにょ おうたぎゃききちゃいよ!」 「おちょーしゃん! まりしゃにしゅーりしゅーりしちぇにぇ!」 「ゆっち! ゆっくちー!」 やがて赤ゆ達は眼を覚まし、今度は遊びの時間が始まる。 長女れいむと次女まりさは元気におうちのなかを追いかけっこ。 成体であるれいむとまりさには運動する程の広さは無い巣穴の中もピンポン玉程の赤ゆにとっては大運動場だ。 4女れいむは母れいむにおうたをせがみ、れいむも嬉しそうにそれに応える。 5女まりさは父まりさに近寄って(殆ど父まりさの方から近寄っていたが)頬ずりしている。 「ゆ~ゆゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪」 「ゆんゆ~ん♪ ゆっくち~♪」 母のゆっくりした歌声を聞き、自分も真似して歌い出す4女れいむ。 今まで聞いたこともないような美声、そして拙いながらも一生懸命に歌う姿は母れいむをさらに感動させた。 きっとこのおちびちゃんは群れ一番の歌姫になるだろう。 母に褒められた4女れいむは恥ずかしそうに笑う。 きっと自分は皆をゆっくりさせるために生まれてきたんだとれいむは思った。 沢山練習して、群れの皆を沢山ゆっくりさせてあげるんだ。それが本当のゆっくりに繋がるんだ…。 そんな決意を胸(?)に生まれたばかりのれいむは歌の練習に励んでいた。 「ゆゆ~ゆ~ん♪ ゆっくちちちぇいっちぇにぇ~♪」 「ゆっくりしていってね~♪」 「ゆっ! まりちゃは たきゃいたきゃいしちぇほちいよ!」 未熟な末れいむもに5女まりさと同様、父まりさの頬にすり寄ってきたが、5女まりさはそれを一瞥すると 今度は「たかいたかい」をねだりはじめた。 「たかいたかい」はまりさ種特有の行動で、帽子のつばでぽんぽんと子供を跳ねさせる遊びである。 ある程度大きくなると乗ることはできなくなるが、空を飛ぶような感覚はほとんどの赤ゆを魅了する。 可愛いおちびちゃんにねだられて父まりさが断る筈がない。 器用につばの先を地面に近寄せて5女まりさを載せると、天井にぶつからないように注意深く跳ねあげる。 「おしょりゃをとんじぇりゅみちゃい!」 姉妹達を遥か眼下に望み、あれほど巨大な両親すら見下ろす高度は赤まりさに浮遊感を覚えさせる。 おうちの中でなければきっと世界の果てまで見渡すことができるだろう。 こんな場所から世界を見下ろす自分はきっと誰よりも選ばれたゆっくりに違いない。 5女まりさは、自らが全てを超越した万能な存在であることを自覚した。 見れば地べたで出来損ないの妹がぴょんぴょんと飛び跳ねている。 クズの分際で自分と同じ場所に並びたがるとはなんて身の程知らずなのだろう。 「ゆ? おちびちゃんも たかいたかいがしてほしいの?」 「ゆっち! おちょりゃ! ゆっくち!」 しかし、あろうことか父まりさはクズ奴隷を帽子に載せてしまった。 まったく…それこそ勘違いした奴隷を付けあがらせるだけだというのに。 「おしょりゃをとんじぇりゅみちゃい!」 「おちょりゃ! おちょりゃ!」 だが一度浮き上がると細かい事は気にならなくなる。全てを忘れ恍惚感に浸る5女まりさ。 仲良く飛び跳ねるおちびちゃん達を見て父まりさは満足そうに微笑んだ。 この子達なら、春が来ても他のゆっくりのおちびちゃんと仲良くなれる。 きっと子供たちのリーダーになるに違いない―――父まりさはそう思っていた。 そうして30分も経ち、外ではすっかり日が高くなった頃。 「ゆっくちおにゃきゃがしゅいちゃよ!」 「まりちゃは むーちゃむーちゃちちゃいにょじぇ!」 追いかけっこをしていた長女れいむと次女まりさは、たっぷり運動してお腹が空いたらしい。 本来、冬籠り中はなるべく活動を控えて餡子の消耗を抑えなければいけない。 ぱちゅりーに言われた通り1日1食のつもりだった両親は困ってしまったが、赤ゆは元気に遊ぶのが仕事。 生まれたばかりのおちびちゃんに「じっとしていろ」なんてゆっくりできないことを許せる両親ではなかった。 確かに赤ゆっくりは食欲旺盛で1日に自分の体積の2倍以上食べてしまうが、 体が小さいので一度に食べるごはんの量は全員分を合わせても大人1人分程よりやや少ない程度でしかない。 ぱちゅりーは「大人3人分」と言っていたし、おちびちゃんが「たくさん」よりさらに沢山いても ごはんが足りなくなる事はないだろうと考え直した。 「ゆっ! そういえばまりさたちも きょうのごはんさんを むーしゃむーしゃしてなかったのぜ!」 「ゆゆっ! すっかりわすれてたよ! それじゃみんなでごはんにしようね!」 れいむとまりさの食事は最低限の量しか食べていないのでこれを忘れるわけにはいかない。 普段1日に食べる量のわずか1/10程度だが、可愛いおちびちゃんを見ていれば空腹なんて吹っ飛んでしまう。 まりさが急いで全員分のごはんを用意し、皆でいただきますの挨拶。 「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」」 冬籠り中でなければもっと新鮮な木の実や虫をお腹いっぱい食べていたれいむとまりさだが、 それでも家族で食べるごはんは別格の味わいを2匹にもたらした。 しかし… 「むーちゃ!むーちゃ! …まじゅいぃぃい!! 「こりぇどきゅはいっちぇりゅ!」 「こんにゃにょ たびぇらりぇにゃいよ! あみゃあみゃしゃんもっちぇきちぇにぇ!」 「「ゆ…ゆゆぅっ!?」」 顎の弱い赤ゆ達は干し草を噛み砕くことができず、さらに苦みに耐えられないので 親がしっかり咀嚼してから与えなければいけない。 そうして柔らかくし、砂糖水の唾液と混ざることで甘くなって初めて食べられるようになる。 れいむもまりさも餡子に刻まれた本能で知っていた筈だが、すっかり舞い上がってしまい忘れていたのだ。 急いで一匹ずつごはんを噛み、口移しで与え始めた。 「ゆっ! ごめんねおちびちゃんたち! ちょっとまっててね!!」 「もっ もっ もっ… やわらかくなったのぜ! じゅんばんに あーんするのぜ!」 「あーんしゅるよ! …むーちゃ!むーちゃ! ちあわちぇぇぇ!!」 今度こそ大丈夫だ。思いがけないトラブルもあったが無事に全員が食事を終えた。 一安心した両親だが、すぐに次の問題が浮かび上がる。 半月以上少ない食事を続けたれいむとまりさは忘れていたが お腹がいっぱいになったゆっくりがすることと言えばひとつである。 「ゆっ おにゃきゃいっぴゃいぢゃよ!」 「きゃわいいまりちゃぎゃ うんうんしゅるにょじぇ! しゅっきりー!」 「うんうんでりゅよ! しゅっきりー!」 「しゅっきりー!」 「ちゅっち! ちゅっちー!」 ぷりぷりと不快な音を響かせて次々と「うんうん」…古い餡子を排泄する赤ゆ達。 赤ゆはこうして体内の餡子を新しくすることで成長していく。 古い餡子のままでは体が大きくならないのである。外皮と中身の違いはあるが、言うなれば脱皮に近い。 生まれた直後に食べた茎は量が多すぎず、赤ゆは何故か空腹状態で生まれるために 食べてもうんうんをしなかったのだ。 「ゆゆぅ!? おちびちゃんたち! うんうんしちゃダメなのぜ!」 「にゃにいっちぇりゅにょ? うんうんしにゃいちょ ゆっくちぢぇきにゃいよ?」 「ばきゃにゃにょ? ちにゅにょ?」 「まぢゃでりゅよ! しゅっきりー!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉ!?」 当然まりさにはそんなことは判らない。 知っているのは冬籠り中にうんうんで餡子を無駄に消費してはいけないということだけ。 しかもさっきはしなかったのに、という驚きが加わっている。 赤ゆは赤ゆで越冬などという概念は理解していない。 より沢山食べて、より沢山排泄する。 それが成長に…ひいてはゆっくりするのに必要なプログラムとして餡子に刻まれているだけだ。 「まりさ! おちびちゃんがうんうんするのはしかたないよ!」 「ゆぅ… でも…」 「おちびちゃんは たくさんゆっくりさせてあげないと しょうらい ゆっくりしたゆっくりに なれないよ! それに ごはんさんも たくさんあるんだから だいじょうぶだよ!」 れいむはそれが本能で判っているのか、まりさを諭す。 一般にれいむは子育てが上手だと言われるのも、赤ゆの成長メカニズムを 本能で理解しているからという説がある(ただの迷信で、むしろ下手だという説もある)。 保存した食料が少なければれいむも考えただろうが、余裕があるならむしろゆっくりすることを推奨した。 ごはんはたくさんある。そう思えばこそまりさも納得した。 しかし問題はこれだけで終わらない。 「ゆぁぁん!! くちゃいぃぃ!!」 「にゃんぢぇ おうちにょなきゃに うんうんがありゅにょぉぉぉ!? 「ゆぴぃぃぃ!!」 「うんうんしゃん あっちにいっちぇにぇ! ゆっくちぢぇきにゃいぃぃ!!」 「はやきゅ うんうんをどっきゃにやっちぇにぇ! まりちゃこみゃっちぇりゅよ!」 「「ゆぅぅぅ!!?」」 自分達の出したうんうんの臭いに苦しみ出す赤ゆ達。 成分は唯の餡子なので実際には臭いなどしないのだが、ゆっくり達は口をそろえてうんうんは臭いのだと言う。 ゆっくりは都合の悪い記憶、いわゆる「ゆっくりできない記憶」を含む餡子をうんうんとして外に出す。 饅頭の癖に(饅頭だからこそか)甘い物を異常に好むゆっくりが その悪い記憶を誤って食べてしまわないようにする為の本能なのだろう。 ちなみにうんうんだと知らなければ普通の餡子として喜んで食べる。 閉じた巣穴の中に広がるうんうん臭。 本来なら外に捨ててくる筈のものだ。いや、そもそも大人のゆっくりはおうちの中でうんうんをしたりしない。 赤ゆだからおうちの中でするのは仕方がないとしても、冬籠りをしている今、うんうんを捨てる場所はなかった。 もちろんおうちの「げんかん」を開けるなどという発想は出ない。 考え付いたところで、外の寒さが巣穴に入り込めば生後半日の赤ゆなど30分で凍死してしまっただろうが。 「しかたないのぜ… げんかんのちかくによせて、おおきめのはっぱさんを かぶせておくのぜ」 早く処理しなければ赤ゆ達の命に関わると、とっさの苦しい判断だが意外なことに功を奏した。 しっかり塞いであるとはいえ、巣穴の入り口付近は寒くなるので冬の間は近寄らない。 この寒さが幸いし臭いが拡散するのを防いだのだ。 予備の布団として準備してあった葉っぱを被せるとおうちの中から見事うんうん臭は消えさった。 「ゆっ! くちゃくにゃきゅにゃっちゃよ!」 「ゆっくち! ゆぴっ! ゆっち!」 「おちょーしゃん ありぎゃちょー!」 「ゆん! いっけんらくちゃくなのぜ!」 安心したらしい赤ゆはまたすぐ眠りに落ちる。まさに食う寝る遊ぶの繰り返し。 一方れいむとまりさは朝から慌て通しだが、可愛いおちびちゃんのいる生活はそれでも幸せなものらしい。 赤ゆ達が再び目覚めるまでにこにことその寝顔を眺め続けた。 燃費の悪い赤ゆはごはんの間隔も短い。 その後も午後と夕方にもう一度ずつごはんを食べ、ようやくこの一日は終了した。 それから3日、大きなトラブルもなく赤ゆたちは順調に成長していた。 順調に育っているらしく生まれたときより一回り大きくなっているが、対して両親は心なし痩せて見える。 気まぐれで全く我慢と言うことをしない赤ゆの世話で消耗しているのだろう。 元々寝ていることを前提にした食事量は、子供たちの遊びに付き合うには少なすぎるのだ。 それでもみだりに食べる量を増やさないのは2匹は賢さの故か、 はたまた量を測るのに使うお皿が変わらないからか。 「ゆぅ… ごはんさんはたりてるはずなのに なんだかおなかがすくよ…」 明らかに後者であった。 おちびちゃんたちに聞かれないよう、そっとぼやくれいむ。 だがそこは怒鳴ることはできても声をひそめる事のできないナマモノの事 遊びに夢中な子供達は気がつかなかったが、まりさにあっさり聞かれてしまった。 「きっとこそだてで つかれてるのぜ! ゆっくりねれば だいじょうぶなのぜ! どうしても おなかがすいたら ごはんさんを おおめにたべるのぜ? ごはんさんはまだ たくっさんっあるから すこしくらいなら もんだいないのぜ!」 そう。確かにごはんは沢山ある。 冬籠りの初日、まりさが狩りで集めた山盛りの食糧を見てれいむは感動したものだ。 こんなに沢山のごはんは、きっといくら食べてもなくならないだろうと。 あれから何日も経った今でもその量は寸分も減っていないようにすら見える。 しかしそれでもれいむは追加で食べるつもりはなかった。 自分が食べるよりも、おちびちゃんにより多く食べさせてあげたい…そう思っていた。 「まりちゃも ぎょはんしゃん たびぇちゃいのじぇ!」 「れーみゅも むーちゃむーちゃちちゃいよ!」 「ごはん」という言葉を聞いて、赤ゆ達は思い出したように次々と空腹を訴え始めた。 「ゆっ! それじゃ ゆっくりごはんさんにしようね!」 「「「ゆっくちいちゃぢゃきましゅ!!」」」 いつもどおりに始まる昼食だったが、いつもとひとつ違うことがあった。 食べ終わった赤ゆ達がどこか不満げである。 「ゆー! じぇんじぇんちゃりにゃいよ!」 「もっちょちょうらいにぇ!」 れいむはお皿の葉っぱで量をはかっている為、体が大きくなっているのに 貰えるごはんの量が変わっていなかったのだ。 実のところ朝食から若干足りてはいなかったのだが、起きてすぐの朝ごはんだったのに加え 足りない量も僅かだったために不満を漏らさなかった。 しっかり遊んだ後のごはんが足りないという事実はあっというまに赤ゆの不満を爆発させた。 驚いたのは両親だ。 朝のごはんまでは同じ量で満足していたのに。 「おちびちゃんたち! ごはんさんはちゃんと いつもとおんなじだけあげたよ!」 「そうなのぜ! たべすぎはゆっくりできないのぜ!」 そう諭しても赤ゆの不満は止まらない。もとより我慢という物を全くしないナマモノである。 今までは満腹になるだけ食べていた、というそれが彼女たちの全てである。 その中でも特に単純な…というより原始的な知性しか持ち合わせていない 未熟ゆである末れいむが行動を起こした。 妹から順番に与えられていた為に、末れいむが食べ終わった時は上の姉達はまだごはんにありついていない。 だからその与えられたごはんを横から奪ったのだ。 「まりちゃにょ ぎょはんしゃんぎゃぁぁぁ!?」 「ゆうぅぅ!? おちびちゃん、おねえちゃんのごはんさんをとっちゃダメだよ!!」 「うーちゃ! うーちゃ! ちゃっちぇー!」 親は慌てて止めるが口で言って聞く相手ではない。至福そのものの表情で次女まりさのごはんを貪る末れいむ。 「ゆっ! まりちゃをさしおいちぇ むーちゃむーちゃしゅりゅなんちぇ にゃみゃいきぢゃよ! まりちゃみょ むーちゃむーちゃしゅりゅよ!」 それを見た5女まりさも乏しい理性が飛んだのだろう、同じく次女まりさのごはんに齧り付こうとした。 だがその瞬間… ぼいんっ 「ぎゅぴぃっ!?」 「お、おちびちゃん!?」 「ぴぃぃぃ! ゆぃぃぃ!!」 長女れいむが末れいむに体当たりした。 「ぷきゅぅぅ! しょりぇはまりしゃにょぎょはんしゃんぢゃよ! ゆっくちはんしぇいしちぇにぇ!」 長女としての責任感が芽生えているのか、悪い事をした妹と威嚇する長女れいむ。 末れいむは突然の攻撃に訳も判らず泣き叫ぶだけだ。 「ゆゆゆ… ゆっ! れいむ! ごはんさんのおかわりをもってくるのぜ!」 「ゆ…ゆゆっ! わかったよ! おちびちゃんたちは もうちょっとまっててね!」 とっさのことに対処しきれない両親だったが、ひとまず食糧庫に追加のごはんを取りに行く。 慌てたとはいえ、ここで2匹とも食糧庫に向かったのが失敗だった。 「まりちゃにょ ぎょはんしゃんをとりゅ げしゅなゆっくりは しぇいっしゃいっ! しゅりゅのじぇ!!」 自分のごはんをとられた次女まりさが泣き叫ぶ末れいむに飛びかかった。 相手はもともとゆっくりできず疎ましかった未熟ゆだ。 ごはんを奪われたことで完全に「外敵」としか捉えられなくなっている。 両親のいない今、その攻撃を止められる物はいない。 追いかけっこで鍛えた俊足のあんよで妹にのしかかり、激しくストンピングする。 「ゆぎ! ゆぎゅ! ぎぢいぃぃ!!」 「ちにぇ! ちにぇ! げしゅはゆっくちちにぇぇぇ!!」 頭頂部に僅かな髪と共に生える小さなモミアゲを激しく振りながら悶える末れいむ。 その動きが気に食わないのか次女まりさはモミアゲを咥えて強く引っ張ると、 ブチブチと音を立てて未発達なモミアゲは千切れ傷ついた皮の隙間から赤ゆの柔らかい餡子が覗く。 再びストンピングを始めると傷口が大きく裂けて中身が吹き出てきた。 こめかみと口、あにゃる、目玉の隙間から内容物をぶちまけて末れいむは徐々にひしゃげ、潰れていく。 「まりちゃ! ゆっくちちちぇにぇ! !ゆっくちちちぇにぇ」 「しょうぢゃよ! しょんにゃやちゅ ゆっくちぢぇきにゃいよ! きゅじゅはゆっくちちんぢぇにぇ!」 「にゃにいっちぇりゅにょぉぉぉ!?!?」 妹の凶行を止めようとする長女だが、あろうことか自分もごはんを奪おうとしていた5女まりさが檄を飛ばす。 5女まりさにとって、いつも身の程知らずに自分の玉座(父まりさの帽子の上)に土足で踏み込んできて あまつさえ選ばれたゆっくりである自分だけが許された行為(たかいたかい)を享受しようという 生意気なクズ奴隷が制裁されるのはごく自然なことだった。 だが自分が手を下すのも汚らわしいと思い、親が制裁するのを寛大にも我慢強く待っていたが 愚図な両親は全くやろうとしない。 それをいつも地べたに這いつくばって走り回るだけの愚鈍な姉がようやく自分の為に働いたのだと考えていた。 他の愚図共に比べれば多少は使える奴だと考えを改める。まりさは優秀なものには正当な評価を与えるのだ。 「ぎゅ…ぢ……………………」 「ゆっ! やっちょちんぢゃにぇ! しぇいしぇいしちゃよ!」 未熟ゆに生まれたが故に体が小さい末れいむはあっという間に餡子の染みになり果てた。 自分は何もしていない癖にそう吐き捨てる5女まりさ。 母れいむと父まりさが戻って最初に目にした物は、満足げにふんぞり返る2匹の赤まりさであった。 「ゆぅぅぅぅぅ!! おちびちゃぁぁぁぁん!?!?」 「どぼじでづぶれぢゃっでるのぉぉぉぉ!?!?」 「ゆふん! げしゅにゃゆっくりは まりちゃがしぇいっしゃいっ!しちゃよ! まりちゃ ちゅよくっちぇぎょみぇんにぇ!」 「それはおちびちゃんのいもうとでしょぉぉぉ!?」 「ゆっ! きょんにゃゆっくちぢぇきにゃいきゅじゅは まりちゃにょいもーちょじゃにゃいよ! へんにゃこちょ いわにゃいぢぇにぇ! ぴゅんぴゅん!」 慟哭する両親に赤まりさ達は当然のように言い放った。 彼女たちの中では、末れいむは最早「外から来たゆっくりできないゆっくり」としか認識されていない。 それを永遠にゆっくりさせて家族を守ったことはなんと誇らしいことか。 もちろん攻撃していた時は姉妹を守ろうなどと考えていなかったが、たった今そういうことになった。 「ゆぅぅぅ… おちびちゃんがぁぁ…」 「ゆぅ… ざんねんだけど しかたないのぜ。もともとあんまりゆっくりしてなかったおちびちゃんだから ちゃんとおおきくなれるか わからなかったのぜ。」 母性の強いれいむに対しまりさはややシニカルだ。 死んだのが未熟ゆ、それもまりさ種では無かった為だろうか。 それに野生のゆっくりである彼女たちに未熟児を育てるのは難しい。 見方によっては、先延ばしにした問題が自動的に片付いたとも言えるのだ。 こんなにも早く2人の子供を失ってしまったが、まだおちびちゃんは「たくさん」いる。 追加のごはんを与えながら、二度とこのような悲劇件が起こらないよう おちびちゃん達の成長に合わせて少しずつごはんを増やす事を心に誓う2匹であった。 それが立派な両親の役目なのだと胸(顎?)に刻んで…。 そもそも冬籠り中でなければ赤ゆの食事量を親が管理するようなことがないのだが、2匹が思い至ることはない。 一週間が経過した頃、十分な量の食事が与えられた4匹は既に子ゆっくりと呼べるサイズにまで成長していた。 一日に食べるごはんもずいぶん多くなっており(流石に4回も食べる必要はなくなったが) それでも量だけなら大人のゆっくりが平均的に食べる量の半分程にまで達している。 生まれたばかりの頃の3倍近くだ。もちろん、もう口移しをしてもらう必要もない。 そして一匹ずつが大振りのミカン程の大きさであり、ここまで成長すると巣穴の中で激しい動きはできない。 元々それなりの広さがあった穴を拡張しただけ為に普通に過ごす分には狭さを感じることはないが 遊びたい盛りの子ゆっくり達にそんな我慢が出来るわけがなかった。 必然的に4匹の興味はまだ見ぬ外の世界へと向かう。 「おとーしゃん! れいむおしょとにでちゃいよ!」 「まりしゃも おしょとであしょびちゃいのじぇ!」 わざとらしく媚びたような喋り方もだいぶ聞き取りやすくなっている。 両親にとっては我が子の成長のバロメータだ。嬉しさ半分、寂しさ半分と言ったところだろう。 「ゆっ! おちびちゃん、いまはふゆさんだから おそとにはでられないよ! ゆっくりりかいしてね!」 「ゆゆゆ? ふゆしゃん?」 「そうなのぜ! とってもさむいさむいで ゆっくりできないのぜ!」 「ゆぅぅ! しゃむいしゃむいは ゆっくちできにゃいよ!」 「ゆっくちしちゃいよ!」 「ゆぎぃぃぃ! おしょちょでちゃいいぃぃ!」 上の3匹は素直に理解を示したようだが、末っ子であり(と思っている)甘やかされた5女まりさは しつこくダダをこねる。 大きさは皆同じ位なのに一匹だけ赤ゆ言葉が多く残っているのも甘やかされた結果だろう。 それでも「末妹には優しくしなければいけない」と思っている一家は優しくまりさを諭す。 結局、最近の特等席である父まりさの帽子の中にもぐりこんでようやく落ち着いた。 大きすぎる帽子の縁を少し持ち上げて顔を出すとまるで自分が被っているような気分になる。 誰よりも高い目線と大きい帽子が5女まりさを最も満足させるものであった。 「ゆっ! ちょっとせみゃいけど おうちのなかであしょぶのじぇ!」 「そうだにぇ! しゃむいしゃむいは ゆっくちできにゃいにぇ!」 「ゆ~♪ れいみゅはゆっくち おうたしゃんのれんっしゅうっ するにぇ! ゆゆゆ~♪」 相変わらず仲の良い長女と次女は両親の間を縫って追いかけっこを始めた。 大人しい4女れいむは今日も母れいむとお歌の練習だ。 だがどうにもおうちの広さに限界があり、駆けずり回る2匹が両親や4女にぶつかってしまう。 体のサイズが違うので両親はなんともないが、同じ大きさの4女にはそれなりのダメージになる。 歌の練習もできず、痛みで今にも泣きそうだ。 「ゆんやぁぁ! おうたがゆっくちできにゃいよぉぉ!」 「ゆっ! ごみょんなのじぇ! わざとじゃないのじぇ?」 「しょうだ! れいむもいっちょに あしょぼーよ!」 「ゆゆっ? でもれいむはおうたのれんっしゅうがしちゃいよ…」 「そうだね! おちびちゃんも たまには みんなといっしょにあそんでおいで!」 「ゆぅ… わかっちゃよ! れいむもおいかけっこしゅるよ!」 困った2匹は4女を誘い、助け舟に両親も勧める。 おうたが好きなのは判るが、もっと運動させなければと思ったので丁度良かった。 結局4女れいむも追いかけっこに参加することになり、仲良く駆け回る子供達をみて両親も一安心。 だが次女まりさの外への興味を捨てきれないようだ。 チラチラと「結界」で塞いだ入口の方に目線を送っている。 無理もない、本来ならばもう巣の外に出て跳ねまわっている筈のサイズである。 狭い巣の中だけの生活は活発な次女まりさに少しずつストレスを与えていた。 そしてそれは、最悪の形で実を結ぶ。 「ゆぴぃぃぃぃぃぃ!?!?!?」 筋肉も内臓も餡子であるこのナマモノは、種族とサイズが同じであれば運動能力に差が出ない。 それでも日々の行動で要領や効率を学んでいき、それが実践での差に繋がっていく。 だから、追いかけっこに慣れている姉たちに対して歌ってばかりいた4女は明らかに要領が悪かった。 追えばいつまでも捕まえられず、逃げれば簡単に捕まってしまい、まるでゲームにならない。 本来なら外の世界で発散される筈の、巣の中で遊ぶには多すぎるエネルギー。 追いかけっこがあっさり終わってしまったことへの欲求不満。 それが次女まりさの力加減を誤らせた。 「れいむのすてきなおりぼんしゃんがぁぁぁぁぁ!!! ゆっくちできにゃいぃぃぃ!!!!!」 次女まりさが逃げる4女れいむに追いすがってリボンを咥えた拍子に、 勢い余ってリボンを大きく引き裂いてしまった。 「ぺーりょ!ぺーりょ! なおっちぇにぇ! れいむのおりぼんしゃんなおっちぇにぇぇぇ!!!」 ぺーろぺーろと口で言いながら必死にリボンの切れ端を舐める4女れいむ。 異変に気付いた両親もすぐさま近寄ってきた。もっとも、近寄ったところで出来ることなど無い。 「どぼじでにゃにもじでぐれにゃいにょぉぉぉ!?!?!?」 「ゆぅぅ…おかーさんたちでも おりぼんさんはなおせないよ…」 「ゆんやぁぁぁ!! ゆんやぁぁぁああああ!!!」 「おちびちゃん おちつくのぜ! すーりすーり!」 両親が必死になだめるものの、命と同じほど大切なお飾りがキズものになってしまったダメージは大きい。 ゆっくりのお飾りは個体の識別から個体の評価まで関わる重要なパーツである。 体の一部だけあり多少の傷は時間と共に治っていくが、 治癒の見込めない大きい傷はそれだけで迫害の対象になり得る。 それだけではない。 お飾りが不完全な状態になると、ゆっくり自身が不快感を覚える。 「ゆっくりできない」と表現されるそれはゆっくり独特の症状である。 また、本人ほどではないが周囲のゆっくりも不快感を覚えるらしい。 と言っても、こちらは一般人が道端で動物の死骸を見てしまった時に感じるのと似たものだろう。 「ゆぐぅぅぅ… ゆっぐぢでぎにゃいぃぃ…」 その日はそのまま両親と姉たちがグズる妹を心配し、なだめすかして夜を迎えた。 責任を感じたのだろう、次女まりさは特に必死に妹の世話に励んでいたものの 結局4女れいむは夕食も碌に咽喉を通らず、泣き疲れて眠ってしまった。 暗い雰囲気の中、5女まりさだけが楽しそうに姉の残したごはんを貪っていた。 後半に続く
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ここはゆっくりが集まる森。 れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ありす。 色んなゆっくりが平和に、仲良く暮らしていた。 ただ、ひとつの家族を除いて……。 「さっさとごはんをとりにいくんだぜ!!!」 親まりさがれいむに怒鳴りつける。 「でも、まいにちれいむばかりがかりにいってつかれるんだよ!たまにはやすませてね!!!」 れいむが抗議するのは当然である。 普通の家族は親が休んで子供を狩りに行かせるなんてことはないからだ。 「もっとおやをだいじにしないとだめでしょおおおおおおおお!!!」 そう言ってれいむを外に追い出す。 「ゆぅ…。まいにちかりにいくのはつかれるけど、みんなのためだよ…。」 「ゆ!れいむごはんをあつめてるの!とかいはなありすおねーさんにすこしわけてね!!」 「むきゅ!ちしきじんのぱちゅりーおねーさんにもすこしわけるのよ!!」 出てきたのはありすお姉さんとぱちゅりーお姉さん。 「もうすこしでかえるからそれまでまっててね!」 「けちはいなかものがすることよ!さっさとわけなさい!」 「むきゅ!れいむのくせにわがままいっちゃだめでしょ!」 お姉さん達に逆らえないれいむは、しぶしぶ集めていた食べ物を地面に置いた。 「それがとかいはのたいおうよ!ごほうびにぜんぶもらっていってあげるわ!!」 「どぼじでぞんなごどずるのおおおおおおおおおおおおお!?でいぶがいっじょうげんめいあづめだんだよおおおおおおおおお!!!!!?」 「またあつめればいいじゃない!これだからちしきじんじゃないこはいやなのよね!!!」 集めた食料を全て奪われて泣き叫ぶれいむ。 だが、そんなことは知らない顔をしてお姉さん達はどこかへ行った。 「ゆっ…これじゃまたおとうさんとおかあさんにおこられるよ…」 「どうしたんだぜ!そんなかなしいかおはれいむらしくないぜ!」 でてきたのはれいむの唯一の友達のまりさ。 「ちょっとごはんをおとしただけだよ!」 「それはこまったんだぜ!まりさもいっしょにごはんをあつめてやるんだぜ!」 お昼過ぎ。ようやく食料を集め終えてれいむは家に帰った。 「ゆっくりあつめてきたよ!おくれてごめんね!」 「おそすぎるんだぜ!もうとっくにみんなむ~しゃむ~しゃしたんだぜ!」 「そうだよ!わたしのかわいいおちびちゃんたちがあつめてくれたんだよ!」 親まりさと親れいむから事実を聞かされた。 ありすお姉さんとぱちゅりーお姉さんは、 れいむから奪った食料をさも自分が取ってきたかのように持ってきていたのだ。 「ゆゆ!そのごはんはさっきれいむがとってきたものだよ!」 「なにいってるの!れいむはずっとあそんでたんでしょ!おちびちゃんたちから聞いたよ!」 「うそをつくれいむはごはんをおいてそとにでるんだぜ!!!」 外に叩き出されるれいむ。 「ゆぅ…これじゃゆっくりできないよ…」 夜空の下で震えるれいむ。ご飯もろくに食べていないので余計に寂しさを感じる。 「ゆゆ?どうちたの?おしゃんぽちてりゅの?」 そこに子ありすが現れる。 「ゆぅ、そうだよ…。ありすはこんなところでなにをしているの?おかあさんは?」 「おかあさんはようじがあるからって!ありしゅはみゃみゃがきゃえってくりゅにょをみゃっていりゅんだよ!」 「それはおりこうさんだね!れいむおねえさんといっしょにあそんでゆっくりまとうね!」 「ゆっきゅりりきゃいしちゃよ!」 まるで妹が出来たかのように思い、少し幸せなれいむだった。 それと同時に、なぜこんな時間に子供を連れて、しかも一人にしているのかも疑問だったが、 餡子脳なのでそれほど気にはしなかった。 「おちびちゃんはなにをしてあそびたいのかな?」 「しゅっきりあしょびがちたいよ!」 「ゆぅ?それはどうやるの?」 「おねえしゃんはうちろをむいちぇにぇ!」 聞いたことのない遊びに少し戸惑いながらも言われたとおりに後ろを向く。 「おきゃあしゃんがね、こうすりゅとなかよくなりぇりゅって!!」 「やべでえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」 予想通り(と言っても、れいむは予想していなかったが)子ありすにレイプされるれいむ。 まだ子供とはいえ、精力は他のゆっくりの5倍はあり、子ありすのそれは処ゆっくりのれいむにはきつすぎるものであった。 「きょわれりゅほ~ぢょあい~ちてみょ~、しゃんぶんのいち~もちゅた~わりゃにゃい~♪」 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」 どこから覚えてきたのか、懐かしい曲を歌う子ありす。 「おちびちゃん!ちゃんとままのとかいはのあいをみてくれなきゃだめでしょ!!」 子ありすの親のありすがやって来た。 「あら、さすがままのこね。おしえなくてもりっぱにとかいはなあいができてるわ!!」 「みゃみゃ!おねーしゃんとあしょんでちゃよ!たのちきゃっちゃよ!」 「それはよかったわね。さぁ、はやくおうちにかえりましょ」 子ありすを頭に乗せて帰って行く親ありす。 自分より年下の子に抵抗出来なく犯されてしまったれいむ。 次の日の朝。 「ゆぐぅ…。ゆっくりかえったよ…」 「ゆゆ!いままでなにしてたんだぜ!れいむがにんっしんしてこどもがうまれそうなんだよ!」 「ゆぎぎぎぎ…もうすぐでうまれるよ…はやくあーんしてあかちゃんをうけとめるじゅんびをしてね…!」 「きこえたんだぜ!?はやくくちをあけるんだぜ!」 親に命令されて、赤ちゃんのクッションにするために口を大きく開くれいむ。 「もうずぐでうばれぶよおおおおおおおお!!!!」 ぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶり れいむの口は、親れいむから出た黒い物体で満たされた。 親れいむから出たのは、赤ちゃんではなくうんうんだった。 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!でいぶど、でいぶのあがぢゃんがあああああああああああ!!!」 親れいむのうんうんを全身で浴び、しかも口にまで入って酷く慌てるれいむ。 「しずかにするんだぜ!ゆっくりできないくそやろうはゆっくりしっかくなんだぜ!!!」 親まりさの頭突きを喰らい、壁に激突するれいむ。 その拍子にれいむの赤ちゃんが全て潰される。 「ゆわあああああああああ!!!でいぶのずでぎなあがぢゃんがあああああああ!!!!!!!」 「そんなことしらないんだぜ!かってにつくってくるれいむがわるいんだぜ!!あやまるんだぜ!!!」 「ゆふぅ…うまれるきがしたけどそんなことなかったみたいだよ!それときたないれいむはどっかいってね!!!」 その時、外かられいむにとって見慣れたゆっくりがやってきた。 「あそびにきたんだ…………。れいむ、いったいどうしたんだぜ!」 れいむの唯一の友達であるまりさだった。 「ばりざぁ…。だじげで…でいぶを…でいぶは…」 「れいむになにをしたんだぜ!こんなゆっくりできないかぞくはおいてどこかへいこうね!!!」 「むきゅ!それはけんめいなはんだんじゃないわよ!」 「んほぉ…ともだちをおもうまりさをみてたらすこしこうふんしてきたわぁ…」 ありすお姉さんとぱちゅりーお姉さんがまりさの前に立ちはだかる。 「れいむをみすてたほうがけんめいなはんだんよ!」 ぱちゅりーお姉さんの言葉を聞き、ありすを見て体を震わせるまりさ。 このままれいむの味方をしてしまったらありすにレイプされてしまう。 ならばどうすれば自分は助かるのか、まりさの本能は分かっていた。 分かっていたが、れいむはまりさにとっても唯一の友達だった。 そんなに簡単に切れる仲ではない。究極の選択を目の前にしてまりさは悩んでいた。 「いいことをおしえてあげるわぁ、あなたのだいすきなれいむは、きのういなかものとこどもをつくっていたのよぉ」 「あたまについてるのをみればちしきじんじゃなくてもわかるわね!!」 事実を聞かされたまりさは、今まで信頼していた友達に裏切られたと感じていた。 お互い一人しかいない友達同士。それはゆっくりにとっては恋人同然だ。 「れいむはくずだぜ!こんなにきれいなおねえさんのわるぐちばっかいってたぜ!きのうだってむりやりまりさにごはんをあつめさせたんだぜ!!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおおおお!!!どぼだぢでじょおおおおおおおおおおお!!!!!」 「こんなにきたないれいむはともだちじゃないんだぜ!かんちがいしてはずかしいね!くさいからしんでね!!!」 「ヴぁりずぁ…」 「もうおうちかえるぜ!」 そうまりさが言い残して帰ろうとしたが、お姉さん達はそうはさせなかった。 「せっかくここまできたんだからとかいはなおねえさんとすっきりしましょお~」 「やくそくがちがうぜ!まりさはおうちかえるんだぜ!!!」 「むきゅ!だれもれいむをみすてたらたすけるなんていってないわよ!」 「うぞづぎいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 れいむの目の前で唯一の友達だったまりさがありすお姉さんによって犯されている。 何度もれいむに助けを求めていたが、れいむはぱちゅりーお姉さんに掴まれて、助けることはできなかった。 しばらくして、ありすが満足した。 ありすの下にあるのは今にも死に絶えそうなまりさの姿。 「でいぶぅ…だ…じ…げ…」 「もうこのくずはいらないね!そとになげすてるぜ!」 そう親まりさは言い、まりさを掴んで外へ思いっきり投げつけた。 空中に舞うまりさとれいむは、ずっとお互いを見つめ合っていた。 そして、空中に舞っていたまりさは、木に激突してただの餡子になった。 嘘のような一時だった。 妹だと思っていた存在にレイプされてにんっしんして、うんうんを全身に浴び、唯一の友達に見捨てられた直後にその友達が犯され、目の前で殺された。 正に生き地獄だった。 れいむは、ただ呆然と宙を見つめていることしかできなかった。 そこに、聞き慣れない声がした。 「ゆっくりお菓子があるよ!食べたい人は集まってきてね!」 それは人間のお兄さんだった。 「ゆ!おかしだって!みんなでもらいにいくんだぜ!!!」 「きっととかいはなおかしがたくさんあるのよ!」 「むきゅ!だがしじゃなくておかしだからね!きっとこうきゅうよ!」 「ゆぅ…れいむはにんっしんしてるからうごけないよ…」 「あんしんするんだぜ!まりさがれいむの分までもらってくるよ!」 家族は、少し興奮気味にはしゃぐ。 「ちっ…集まったのは三匹だけか。ここらへんはゆっくりが少ないのかな」 「いいからあまあまをさっさとよこすんだぜ!」 「さいしんのりゅうこうのさいせんたんのとかいはなこうきゅうおかしをちょうだいね!」 「むきゅ!はやくよこすのがけんめいなはんだんよ!」 「まぁ、いいか。れみりゃの腹が膨れれば。」 「れみりゃ!!!そんなこと聞いてないよ!おうちかえるうううううううううううう!!!」 「とかいはなおかしはどぼじだのおおおおおおおおおお!!!!!?」 「このちしきじんなぱちゅりーさまをだまじだのねええええええええええ!!!」 「元気があっていいなぁ。れみりゃも満足するだろうな」 「「「いやあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!」」」 叫ぶ三匹の足をナイフで切り付け、袋に入れてお兄さんは帰って行った。 「おなかがすいたよ!れいむはごはんをとりにいってきてね!!!」 親れいむがれいむに命令するが、れいむは何も言わない。 「きこえてないの!はやくごはんをとりにいってきてね!!!!」 うるさく叫ぶ親れいむに、れいむは近付く。 「やべでええええええええええええええ!!!!!」 「うっめ!うっめ!めっちゃうっめ!めがうっめ!まいうー!」 れいむが親れいむを食べる。 憎しみと空腹に任せ親れいむの全てを喰らい尽くす。 「しあわせー!」 親れいむの中にいた赤れいむごと食べ終えたれいむは、体を洗うために川へと向かった。 そこに、一人の老人がいた。 「おじいさんゆっくりしていってね!!!」 「あぁ、ゆっくりれいむか。ゆっくりしていってね」 「おじいさんこんなところで何してるの!?」 「いや、特に何も。ただの散歩じゃよ。ところで何で餡子塗れなんだい?」 「おかあさんにうんうんかけられたんだよ!れいむのあかちゃんをゆっくりできなくされたんだよ!おともだちを…」 「あぁ、それ以上言わなくて良いよ。どうだい、これから家に来ないかい?実はわしも一人で寂しいんじゃよ」 「いく!ゆっくりさせてね!!!」 「それじゃ、行こうか」 おわり 「むきゅ!いいおはなしだったわね!さいごにいいこがゆっくりできるのよ!」 飼い主のお兄さんの本棚から取り出した本を閉じて、子供の方へ振り向く親ぱちゅりー。 だが、子ぱちゅりー達にはその本は刺激が強すぎたのか、子ぱちゅりー達は泡を吹いて絶命していた。 「むきょああああああああ!!!おあっぢゅでぃーのずでぎなごどもだぢがあああああああああ!!!!」 親ぱちゅりーも、絶命するのは時間の問題だろう。 本当に終わり
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『ゆっくりできないから叩く』 3KB 考証 飾り かなり人を選びます ある森にあるゆっくりの群れがあった。 他の森の群れととくに違うところはなくみな仲良く過ごしていた。 とても優秀なゆっくりがいるというわけでもない。 とても無能なゆっくりがいるというわけでもない。 みなよくも悪くも普通なゆっくりだった。 そんなごくごく普通の群れに、ひとつの命が誕生しようとしているのだ。 「れいみゅ、うまれりゅよ!きゃわいきゅうまれりゅよ!」 「ぎぎぎ・・・おちびちゃん、うまれるんだねぇ・・・」 スッポーンという音がして、赤れいむはまりさに受け止められ潰れることもなく無事産まれた。 「れいみゅ、うまれちゃよ!ゆっくちしていってにぇ!」 「ゆわぁ~・・・すっっっっっっっっごくかわいいいおちびちゃんだよおおおおおおお!!!」 「さすがれいむとまりさのおちびちゃん・・・かわいすぎるよおおおおおおおおおおお!!!」 れいむはおちびちゃんがこの世に産まれてきたことを、そして自分たちの子供として産まれてきてくれたことを心の底から感謝した。 ああ、ありがとう。 おちびちゃん、これからいっしょにゆっくりしようね! だが、まりさは違った。 「ゆ・・・?このおちびちゃん、おかざりにはっぱさんついてるのぜ?」 「あ・・・ほんとだね、いつついたのかな?」 「しゃっきれいみゅがじぶんでちゅけたんだよ!きれいでちょ!じぶんでちゅけられたなんちぇ、れいみゅのみらいがちゃのしみすぎてこまっちゃうよぉ・・・」 赤れいむは綺麗だから落ち葉を自分のお飾りにつけた。ただそれだけのことである。 だが、ごく普通なこの群れでは『狩りに行けるようになったゆっくりはお飾りに印を付ける』という、ルールではないがマナーのようなものがあった。 まりさの帽子にも当然ドングリの帽子が付けられている。 まりさはすぐに動いた。 「よけいにきれいになっちゃれいみゅをしゅくふくしちぇね!」 「・・・・・・かりにいけるようになってはじめてしるしをつけていいんだぜぇぇぇーー?うまれたときからしるしがついてるなんてゆっくりしてないね! せいっさいするよ!うまれたときからしるしがついてるからおちびちゃんはせいっさいだよ!」 まりさは産まれて5分も経たないうちに自分の子を潰した。 産まれてすぐに帽子に印をつけたという理由で潰した。 「ま・・・・・・まり・・・さ?なに・・・?」 「ゆっくりできないゆっくりだったからしょうがないのぜ!ゆっくりできないゆっくりはせいっさいしていいのぜ! そのほうがみんなゆっくりできるから、まりささまはせいぎっ!なのぜぇぇ!!!」 「なにいってるのおおおおおおおおおおおおお・・・う、うまれるううううううう!!」 怒り心頭になろうとするれいむは、再び産気づいた。 おちびちゃんは一匹ではなかったようだ。 「うまれりゅよ!まりしゃ、せかいにたんじょうしゅるよ!」 次のおちびちゃんはまりさのようだ。 「がんばるのぜ!もうちょっとがんばるのぜ!」 まりさも帽子に力を入れる。 「う・・・う、うまれるううううううう!!」 またもや2度目のスッポーンが鳴り響き、まりさは無事に産まれた。 「ゆっくちしていってにぇ!」 「お・・・おちびちゃあああああああん、かわいいのぜえええええええ!!」 「ゆふー、ゆふー・・・お、おわったよぉ・・・」 れいむはおちびちゃんを産み終え、体全体で息をしている。 れいむはおちびちゃんを見て、言った。 「・・・なんだかおぼうしがまがってて、れいむのこのみじゃないね!れいむのこのみじゃないからせいっさいだよ!」 れいむは自分の子を5分もしないうちに潰した。 「なにやってるのぜえええええええ!?おぼうしがまがってたらなおしてあげたらいいでしょおおおおおお!?さいしょっからつぶしちゃってどうするのおおおおおお!?」 「うるさいね!おぼうしがまがっててれいむごのみじゃないんだから、もうさいしょっからつぶしちゃっていいんだよ!だって、れいむはただしいことをしたんだから!そのほうが みんなゆっくりできるんだよ!ゆっくり理解してね!」 「ばかあああああああああああああああ!!しねえええええええええええ!!」 「おまえこそしねえええええええええええええええええ!!」 2匹はお互いに体当たりを続け、結果まりさがれいむを殺した。 だがまりさもまた、れいむの死に際の歯の一撃で餡子が出すぎて死んだ。 最初から名前がついてるから叩く。 最初からお帽子に印がついてるからせいっさい。 話がつまらないから叩く。 帽子がまがってるからせいっさい。 どこに違いがあるんでしょうか。
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みなさんはゆっくりがおそれるゆっくりをどこまで知っているだろうか ゆっくりれみりゃ?メジャーですね ゆっくりふらん?それもメジャーですね れてぃ?ゆゆこ?それも比較的有名ですね ですが、ゆっくりがれみりゃ以上におそれるゆっくりがいます。 そいつの名は・・・・ 恐るべきゆっくり 「ゆ~~、ゆ~、ゆ~~~~~~!!!」 「「「ゆ~~、ゆ~、ゆ~~~~~!!!」」」 れいむ親子の音痴な歌がれいむ親子のお家に響き渡る。 ここはドスが治めるゆっくりの群れである。れいむ親子はドスの群れに所属するどこにでもいる ゆっくり家族であった。 夫のまりさは今は狩りにいっており、妻のれいむは子供たちとゆっくりできるお歌 の練習をしている。 「ゆっゆっゆ~~~~~~」 「「「ゆっゆっゆ~~~~~~」」」 雑音がようやくフィナーレを終え、れいむは子供たちを褒め称えた 「ゆ~~ん、さすがれいむとまりさのおちびちゃんだよ!! とてもゆっくりできるおうたさんだったよ!!」 「ゆん!!とうぜんだよ!!れいむはぷろのあーてぃすとなんだよ!!」 「れいみゅおねえちゃん、とてもおうちゃがうまっきゃったよ!! れいむのあきょがれだよ!!」 「さすがまりさのいもうとだよ!!」 家族はにぎやかにとてもゆっくりできたよと誉めたたえあった。 特に長女れいむはゆっくりからしたらとても歌がうまく、皆の歌姫であった。 群れのゆっくりからは将来の歌姫だよ!!と期待を寄せられていた。 「ゆっくりただいまだよ!!」 家族がわいわくと談話していると一家の大黒柱である親まりさが帰ってきた。 口は大きく膨らんでいる。どうやら今日は大漁だったようだ。 「「「ゆわ~い、おとうさんおかえりなさい!!!」」」 子ゆっくり達は父親の姿を見るや否や親まりさへと駆けて行った。 親れいむも夫であるまりさに微笑みで返した。 「おかえりなさいまりさ!!かりはじょうじょう?」 「もちろんだよ!!まりさはもりいちばんのかりうどさんなんだよ!!」 そうまりさが返答すると、口を大きく開け今日の狩りの成果を広げた。 出てきたのは食べられる山菜やキノコなどなどゆっくりから見れば御馳走の山だった。 「「「ゆわ~~い、ごちそうがいっぱいだよ!!」」」 大はしゃぎする子ゆっくり達。三匹とも美味しそうな御馳走に我先と駆けだしたが 親れいむが子供達を止めた。 「だめだよおちびちゃんたち!!ちゃんとわけてからね!!」 そういうと親れいむは均等になるように御馳走の山を分けて行った。子ゆっくり達も納得し、 率先して母の手伝いを始めた。実に微笑ましい光景であった。 そうこうしているうちに配分が終わり、一家はきれいに整列した。 「それじゃあおちびちゃんたち!!きょうもがんばってかりをしてきてくれたおとうさんに ゆっくりおれいをしてからいただきますをしようね!!」 「「「ゆ!!ゆっくりわかったよ!!」」」 子ゆっくり達は親まりさの方を向いた。 「「「おとうさん!!きょうもおいしいごはんをありがとう!! ゆっくりいただきます!!!」」」 「「ゆっくりいただきます。」」 親ゆっくりのいただきますを皮切りに御馳走の時間が始まった。 美味しそうな木の実にキノコ、山菜、どれもゆっくりにとっては御馳走であった。 ただ一つ、長女れいむのごはんに白い木の実があった。 「ゆ?」 長女れいむは今まで見た事もない白くて大きな木の実に気が付き父に聞いた 「おとうさん!!このしろいしろいさんはなぁ~に?」 「ゆ?それはね、おとうさんがにんげんさんからもらったごはんだよ!! むかしにね、それとおなじようなごはんがあったんだけどねもうどくがあったんだよ!! でもね、このしろいしろいさんはおとうさんがどくみをしたからだいじょうぶだよ!!」 長女れいむはそれを聞いて安心し、おそるおそる口に含んだ 「む~しゃ、む~しゃ・・・・・し、しあわせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ヘブンじょうたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 長女れいむはあまりのおいしさに飛び跳ねながら叫んでいた。 「おちびちゃん!!おしょくじちゅうにおぎょうぎわるいことしちゃだめでしょ!!」 親れいむは長女をたしなめようとしたが、聞く耳持たずだった。 あまりに革命的なまでにおいしかったのだろう。 「ゆぅ~~、おねえちゃんだけじゅるい!!れいみゅもたべちゃいぃぃぃ!!」 妹れいむが駄々をこね始めた。だが、あの白い木の実はすでに長女が平らげてしまっていた。 親れいむはどうにかしてなだめようとしたが、耳に入る様子もなかった。 「しょうがないね!!あしたおとうさんがにんげんさんからまたもらってくるから がまんしてね!!」 親まりさがそういうと妹れいむはピタっと泣きやみ大喜びで跳ね始めた。 「ゆぅ~~、まりさも!!まりさも!!」 長女まりさも欲しがっていたようだ 「しょうがないね!!みんなの分をもらってくるよ!!」 「「「ゆわ~~い!!おとうさんだいすき!!」」」 子ゆっくり達は皆大喜びであった。 かくして一波乱食事は終わり、辺りを片づけた後皆床に着くことにした。 「それじゃあ、ゆっくりおやすみ!!」 「「「「ゆっくりおやすみなさい!!!」」」」 家族はそれぞれのベッドに健やかな眠りにつき始めた。 ベッドといっても枯れ葉や落ち葉を敷き詰めたものなのだが。 「ゆぴー、すぴー」 「しろいしろいさん・・・・れいむにたべられ・・・・」 「まってねぇ~~・・・・」 子ゆっくり達は皆幸せそうに寝ていた。 一方そのころ、とある暗い所で新しい命が誕生した。 「・・・・・・・」 ソレは辺りを見回し始めた。黒くて生暖かいものが辺りに敷き詰められていた。 否、自分が埋まっていたのだ。 ソレは本能的に分かっていた。ご飯だ。 ソレは生まれたばかりの小さな口を小さくあけ、少しずつ食べ始めた。 本当にほんの少しの量を何度も回数を分けながら食べて行く。 少しずつ食べて行くと腹はさすがに満たされ、ソレは生まれた所から少しずつ移動を始めた。 「・・・・・・・」 目の前にあるご飯をかき分けながら進むと自分と同じ生き物がいた。 ソレは本能的に分かった。あれは自分の姉妹だ。 ソレは少しづつ姉妹に近づいて行った。姉妹の方も気づいたらしく、自分の方へと寄ってきた。 少しずつ、少しずつ。 そしてお互いが頬ずりが出来る位近くにたどり着いた。 ソレと姉妹はさっそく信頼の頬ずりを始めた。 あまり空間がないのにも関わらず、姉妹は器用に頬ずりをしていく。 そして本能が呼びかける。子孫を残せと 姉妹の方も本能の呼びかけに答えたらしく、ゆっくりと後ろを向いた。 どうやら「受け」をやってくれるようだ ソレは姉妹と交尾を始めた… 1時間後、姉妹の腹は非常に大きく膨らんでいた。 ソレは交尾の成功に満足したのか少し眠りについた。 さらに数時間後、ソレは目が覚めると姉妹のお腹はさらに膨れ上がっていた もうそろそろ頃間であると本能が語り始めた。 ソレは姉妹にそろそろだという事を伝えると姉妹は適当な空間に生殖器を向けた。 姉妹は体に力を入れ始めた。必死に力を入れているのが見て分かるぐらいに顔を歪めていた。 そして ぼん!!ぼん!!ぼん!! 姉妹は空間目掛けて何かを自分の生殖器から射出した。 それは非常に早く何か良く分からなかったが白い物体にであるように見えた。 ぼん!!ぼん!!ぼん!! 姉妹はまだ射出を止めない。腹の中にそれだけ大量の物が詰まっていたのだろう、今だに止む気配がない 結局、射出が止まったのは100個ほど飛ばしてからだった。 朝、ゆっくり一家はゆっくりと目を覚ました。 とある一匹は除いて 「ゆ~ん・・おかあさん・・ぽんぽんさんがいたいよぉ・・・」 昨日しろい木の実のような物を食べてヘブン状態になったあの長女れいむだった。 翌朝起きるとお腹が痛く、食事もほとんど取れない状態になった。 「おねえちゃん、いたいいたいさんはやくなおってね・・・」 「れいむぅ・・・」「おちびちゃん・・・」 親まりさは狩りをお休みして長女れいむの看病したり、腹痛に効くお薬を飲ませても一向に 良くならなかった。 それどころか、痛みが少しずつ増してきているようだった。 「おかあさぁぁぁぁぁん、ぽんぽんがゆっくりいたくなってきたよぉぉぉぉぉぉ!!!」 娘の状態が一向に良くならないどころかますます悪化してきたことに親達は、このままではまずい と考えぱちゅりーの診療所に長女を連れていくことにした。 長女れいむは大きな葉っぱの上に横になり、両親はその両端を咥えゆっくりと運び始めた。 姉妹の子ゆっくり達は横について長女れいむを励まし続けていた。 「おねえちゃん!!もうすぐびょういんだからね!!」 「ゆっくりだいじょうだからね!!」 だがそんな励ましの声も今の長女には届かなかったようだ。 長女の顔色はますます青白くなっていき、呼吸は少しづつ小さくなっていった。 「ゆぅ・・・・ゆぅ・・・・」 必死に痛みに耐える長女。だが、その緊張した空気は突然の悲鳴に打ち砕かれた 「ゆぴぃ!!ゆぷぅ!!」 長女の苦しみ方が変わった。今までは痛みに耐えるような様子が尋常ではない痛みに苦しむものに かわったのだ。 「ゆぷぅ!!うbひfふsぅvfvふぃおwぇjjjねいぁj」 突如として発せられる解読不能な言語。これには両親はただ事ではないと悟り 歩みが自然と速くなっていた。 「jkhbtkぶjひlすぇrbふlうぇr・・・fykhうぇjkbち・・・・ふ」 病院に近づくにつれ、長女の叫びは少しづつ小さくなっていった。 駆けること30分、一家はどうにか群れ唯一の診療所にたどり着いた。 長女はぐったりとしており、両親は心配そうに戸を叩いた 「ぱちゅりー!!おちびちゃんがたいへんなの!!たすけてあげてね!!」 2,3度叩いた辺りでぱちゅりーが出てきた 「むきゅ!!こんなあさはやくからどうしたの?」 「おちびちゃんがたいへんなの!!はやくたすけてね!!」 ぱちゅりーは群れの中でも歌姫として有名な子れいむの身になにかあった事を理解し すぐに家の中に家族を招きいれ、容態を見た 長女の体は青白くなり、呼吸は停止しており、瞳孔も開ききっていた… 「むきゅ……、もうえいえんにゆっくりしちゃっているわ…」 ぱちゅりーは少し悩んだが、素直にそう告げた。 家族はそんな馬鹿なという顔でポカンとしていた。 「ぱちゅりー…なにいってるの…ぽんぽんがいたいだけでしんじゃうなんてそんなこと ないでしょ…」 親まりさはそうか細い声で喋った。 だが、ぱちゅりーは辛い現実を続けた 「残念だけど…もうえいえんにゆっくりしちゃってるわ…さわってみなさい…もうこんなにつめたいわ…」 信じられないような顔をしながら両親は頬ずりをした。とても冷たかった。 昨日あんなにゆっくりしていたのに…たった一日で…たった一日で皆に愛されていたおちびちゃんが …おちびちゃんが!! 「おちびちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 「どぼじでごんなごどにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 両親の叫びが残りの姉妹に全てを語っていた。 「しょんな…うしょだよね!!おねえちゃんがえいえんにゆっくちちちゃうわけないよね…」 「うそだぁぁぁぁ!!ばりざのいぼうどがじぬわげないんだぜ!!」 言葉ではそうはいっているものの、目には涙が溜まっていた。 姉妹はその場で耐えきれなくなり、両親と一緒に泣きだしてしまった。 「おねえぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 「でいぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 家族はわんわんと泣きだしてしまった。 両親は頬ずりしながら泣き、姉妹はその場で両親以上に泣きだしてしまった。 あんになゆっくりしていたのに…死んだなんてうそだ… あんなに群れのみんなに愛されていたのに… あんなに(ゆっくり基準で)きれいなお歌を歌っていたのに… そんな思いが錯綜する中、あり得ないことが起こった。 むくっ… 死んだはずのれいむが体を起こしたのだ。 体を器用に動かし、何事もないように起き上がったのだ。 この光景にぱちゅりーは驚き、家族は喜んだ。 「ゆ?おぢびぢゃぁぁぁぁぁぁん!!いぎがえっだんだねぇぇぇぇぇ!!」 「よがっだよぉぉぉぉ!!よがっだよぉぉぉぉ!!」 「おねえぢゃんがいぎがえっだぁぁぁぁ!!」 「ゆぅゆぅ…ゆわ~~~ん!!」 家族は大喜びでれいむにすり寄り、さっそく頬ずりしはじめた。 だが、ぱちゅりーは見逃さなかった。 そう、れいむは間違いなく死んでいた。 瞳孔は完全に開いており、すでに死臭が漂い始めていた。 つまり、れいむは死んでいるはずなのになぜか起き上がったのだ。 家族はれいむが起き上がった=生き返ったとみなして大喜びのあまりその事実を完全に 見落としていた。 ぱちゅりーはあり得ない光景に目を丸くしてその様子を見守るしかなかった。 ぱちゅりーが見守っていると、一瞬ではあるがれいむの腹がふくらんだ。 「むきゅ!?な、なに!!」 れいむの腹から何かが出ようとしているように見えた。 れいむの腹は一瞬膨らんだらすぐしぼむを繰り返し、さすがの一家もただ事でないことに 気づいた。 「ゆうぅぅぅぅ!!どうしたのおちびちゃん!!」 「またぽんぽんいたいの?いたいの!?」 「おねえちゃん、ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「こわいことしないでねぇぇぇぇぇ!!」 家族は皆恐慌状態に陥った。 そして一拍おいてれいむの腹が裂け、中から何かが出てきた。 それは…… とりあえず前半はここまで あとがき ここ最近書いていなかったせいか腕が落ちた気がします。 ですので一旦ここでとめて数日後に後半を挙げます。 作者 アイアンゆっくり 過去作 まりさの馬鹿 ゆっくり地縛霊 れいむ親子の場合 ゆっくりおしえてね!! 1~2 世界で一番短い虐待 ゆっくり地縛霊 まりさ達の場合 鬼斬 1~ 怪奇現象 ゆっくり自縛霊 ありすの場合 このSSに感想を付ける
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過去作 anko1548『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』前編 anko1744『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』中編-1 anko1745『よわいものいじめはゆっくりできないよ!』中編-2 「よう、元気でやってるか?」 「!!!!」 お兄さんがやってきた。 引き戸を開け、家族に声をかける。家族は答える余裕もなく、ぶるぶるがたがた震え出した。 「ゆゆっ!おにーしゃん、ゆっくちちていっちぇにぇっ!!」 「おにーしゃん?ゆっくちちていっちぇにぇ!!」 飾りのない二人がクッションから飛び上がり、お兄さんの足元を目指してぴょんぴょん跳ねていく。 「おう、ゆっくりしているか?」 「ゆんっ!まりしゃ、ゆっくちちてりゅよっ!!」 「れーみゅもゆっくちちてりゅよ!!おにーしゃん、いちゅもありがちょう!!」 「よしよし、いい子だな。お飾りがなくたって本当にゆっくりしているよ、お前らは」 「ゆゆ~~んっ♪」 「それにひきかえ……」 お兄さんの視線が、じとりとこちら側に移る。 家族はいよいよがたがた震え、背面のガラス壁に体を押し付けた。 「こっちのゴミクズ共ときたら……なッ!」 ガァン!! 「ゆびいぃっ!!」 お兄さんに蹴られ、水槽が激しく揺れる。 頑丈な水槽はそうそう割れることはないが、それでも安全を保障してはくれない。 「お飾りがないだけで、口がきけないだけで、 自分の子供さえ大喜びで苛めるクソゲスなんだからなぁ………なんでおめおめ生きてられんの?」 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!くそげすでごめんなさい!!いぎででごべんなざい!!」 「ゆーっ!!まだまだはんちぇいがたりにゃいよっ!!」 「おにーしゃん、はやきゅ!!はやきゅはじめようにぇっ!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!」 「おう、今日も楽しい楽しい制裁タイムの始まりだ。 たっぷりこいつらで遊んでやろうな」 「ゆゆーんっ!!」 「おでがいでず!!ぼうやべでぐだざい!がらだじゅうがいだいんでず!!ゆっぐじでぎだいんでずぅぅ!!」 「あのなあ、お前らはゴミクズなんだろ?自分で認めたんだろ? ゴミクズは玩具になるしかねえもんなあ。さ、きりきり働こうか」 「ばぢがっでばじだ!!でいぶだぢがばぢがっでばじだ!!ゆっぐじざぜでええぇぇ!!」 「ゆーっ!きょうはぷきゅーしゃんをしゅるよっ!!」 「お、いいな、それでいこう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぷぐーざんはゆっぐじでぎだいいいいいぃぃ!!!」 毎日の日課、お兄さんからの制裁が今日も始まった。 子ゆっくりの注文に応える形で、ありとあらゆる責め苦が家族に課せられ、それを見て飾りのない二人は楽しむ。 今日の制裁は「ぷくーさん」だった。 口をテープで塞いだあと、透明なラップで全身を厳重にくるまれ密封される。 次にラップの隙間から、先端に風船のついたホースをあにゃるに突っ込まれ、 ポンプでホースから風船に空気を注入される。 体内の風船に押されて全身がまん丸に膨れ上がるが、ラップでくるまれているために、遮られて破裂はできない。 風船は容赦なく膨れ上がり、体内の風船と体外のラップに挟まれて体中の餡子が圧迫まれ、想像を絶する苦痛がえんえんと続く。 「ゆ゛ぶぶぶぶぶぶっぶぶぶぶぶぶっぶぶぶぶぶぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!!」 「ゆーっきゃっきゃっきゃっ!!ぷきゅーきょわ~~い☆」 「たのちい?たのちい?ねえねえぷきゅーたのちいぃ?ゆっくちゆっくちぃ~~♪」 笑い転げる二匹の前で、家族が一匹ずつぷくー責めを受ける。 十数分も続けて餡子を押しつぶされたゆっくり達は、その日一日は動くこともできない苦痛と疲労に悶えることになる。 今また、親れいむが責められていた。 全身を真っ赤にして涙を流し、膨れ上がる。 まん丸に見開かれた両目は半ば飛び出し、慈悲を求めてわが子を見つめ震えていた。 それを見て、二匹の子供はますます笑い声をあげるのだった。 地獄のような毎日。それでも、ただひとつの救いがあった。 まがりなりにも、家族が一緒にいるということだ。 ほとんど会話はなく、そのうち二匹はこのうえもない怨嗟と憎悪と侮蔑を向けてきてはいるが、 家族はたしかに揃っていた。 「ゆぅ……ぺーろ、ぺーろ……」 水槽の中で、ほとんど唯一といえる楽しみ。 家族とのすーりすーりとぺーろぺーろだけが、親まりさ達の正気を保っていると言ってよかった。 「ぺーろ、ぺー………おちび……ちゃん?」 しかし、家族は少しずつ狂いはじめていた。 ぺーろぺーろしていた子まりさが全く反応を返してこないのに疑問を感じ、その顔を覗き込む。 しかし、その子まりさは何も応えず、ただ視線を一点のみに向けていた。 壁の一点。何もない、ただの壁。しかしそれを、日がな一日、食事もとらず動きもせずに見ている。 親まりさがどれだけ呼びかけても、その子まりさが応えることはなかった。 死んでいるのかと思って焦ったが、目はたしかに開いていた。 「だずげでぐだざい!!おぢびぢゃんがゆっぐじでぎでないんでず!!」 「ん?知るかよ。自分でなんとかしろ」 「おでがいじばず!!ばりざだぢじゃだずげであげられだいんでず!!おぢびぢゃんを!!おぢびぢゃっ」 「何をいまさらわめいてんだよ。子供なんかどうでもいいんだろ?なあ、れいむ、まりさ」 「ゆーっ!!れいみゅをこんにゃにしたくちぇに、いましゃらあちゅかまちいよっ!!」 「にゃんでまりしゃはたちゅけにゃかっちゃの!?しょいつもいじみぇればいいでちょっ!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅぅぅ………!!!」 お兄さんに助けを求めるが、すげない答えが返ってくるばかり。 それどころか子供たちにまぜっかえされ、罵倒されるばかりだった。 ぴくりとも動かなくなった子供を、家族は涙にくれながら夜通しぺーろぺーろするしかなかった。 「ゆぢっ!!ゆぢーっ!!ぎゅぐげげげげげ!!びょぢぢ!!」 次の日には、子れいむの一人がおかしくなっていた。 もみあげをひっきりなしにばたばたばたばたばたつかせ、涎と糞尿を垂れ流す。 口にする言葉はもはやほとんど意味をなさない、歯軋りのように不快な雑音に変じていた。 焦点の合わない視線をしきりに泳がせながら、狭い水槽の中で暴れ周り、家族を困らせた。 「うー☆あみゃあみゃだっどぅー!おぜうしゃまのぶりゃんちににゃるんだどぅー☆」 「ゆびっ!!いぢゃいっ!!やべでぇおにぇえじゃんん!!」 子まりさの一人が、れみりゃの声色を真似て姉妹の頬をかじり始めた。 噛む力が弱くなかなか噛み千切るまでにはいかないが、 それでも姉妹は苦痛に泣き、何よりそのゆっくりできない声が家族を苛んだ。 両親がその度にきつく叱り押さえつけることでなんとか事なきを得てはいたが、 子まりさの口調はもはや戻らず、ずっとれみりゃの声色で喋り、隙をついては家族を捕食しようとした。 「んほぉぉぉ!!んっほおおおおぉぉぉ!!!」 子れいむの一人がれいぱーになった。 涎を垂らして小さなぺにぺにを誇示するように突き出し、おぞましくも実の姉妹とすっきりに及ぼうとした。 両親がいくら叱ってもやはり治る気配はなく、、一日中半ば拘束するように押さえつけていなければならなかった。 親のもみあげに押さえつけられていてすら、壁や床にぺにぺにをこすりつけてひとりすっきりーに及ぶわが子を前に、 両親はまたも苦い涙を流した。 「じゃおーん!じゃおーん!」 あの日の苛めに対するあてつけだろうか? 子まりさの一人が、「じゃおーん」しか言わなくなった。 それしか喋れないゆっくりを見てももう苛めないと誓った手前、あまり強くは叱れなかったし、 やたらに楽しげに連呼するわが子を見ながら、両親は、 こんな生活でも楽しんでいられるなら、狂ったほうがよかったのかもしれないと後ろ向きな安堵をさえ覚えた。 「ちーんぽ!でかまら!ぺにす!!」 最後に残った子れいむが狂ったとき、両親は大声で泣き喚いた。 水槽の中に一緒に閉じ込められた愛しい子供たちはどの子も狂い、 もはや意思疎通も適わず、わけのわからないことを言いながら蠢く狂い饅頭となり果てた。 残った二匹は、水槽の外で自分たちをせせら笑っている。 それでも両親は、帽子のない二匹の子供たちにすがろうとした。 「……ゆっくり……ゆっくりしていって……ね…」 「ゆ?ゆゆーん?にゃにいきにゃりはなちかけちぇきちぇるわきぇ~?」 「れーみゅちゃちをぷーすぷーすしちゃごみくじゅがにゃにかいっちぇるよっ!!」 「ごべんね………ごべんね………ゆぐじで………おがあざんをゆぐじで……」 「ごべんにぇ~♪ゆぐじじぇ~♪うんうんぴゅりぴゅり~~♪」 「はんっちぇいっがたりにゃいよ!!ごみくじゅ!!ちにぇ!!」 こんな会話でも、唯一意思の疎通ができる子供達と、 両親はなんとか仲直りしようとわずかな望みをつないだ。 あんなにゆっくりしていた子供たちだから。 根は素直な子供たちだから、きっといつか、きっといつか。 「おちびちゃ………おちびちゃ…………」 「ちにぇ!!ごみくじゅ!!くそげしゅ!!」 「いっしょに………いっしょに、ゆっくり……おがあざん、ど……… ながよぐ、じで…………おでがい…………おでがいだがら……がぞぐ、みんなで……」 「ゆっはああああぁぁぁああああぁぁ!!?にゃにいっちぇるにょおおおおぉぉぉ!!!? しょのかぞきゅをぷーしゅぷーしゅしちゃのはどこのだりぇなんぢゃあああぁぁぁ!!!」 「何やってんだよ、お前ら」 「ゆひぃぃ!!」 お兄さんが、その様子を見咎めてきた。 「ゆーっ!!おにーしゃん!!きょのごみくじゅどみょが、にゃかにゃおりしちゃいっちぇ~~♪」 「ああ?そんな事言ったのか? お前らをこんな目に遭わせといて、どの面下げてそんな事言えるんだか」 「ゆ゛ぐぅぅぅ………」 「可愛い子供たちなら、そこに一杯いるじゃねえか。 そこで一家団欒してりゃいいだろ?え?」 「………みんな、みんな………ゆっくりしてないよ……… ゆっくりできなくなっちゃったよ…………」 「はあ?」 全く動かない妹の頬をかじっている子まりさ。 自分のもみあげの下で暴れているれいぱーの子れいむ。 小さなもみあげをふりみだして何やらわからない言葉を連呼している子れいむ。 「じゃおーん」を連呼する子まりさ、「ちーんぽ」を連呼する子れいむ。 誰一人としてゆっくりしていなかった。 もはやこの水槽は、壊れたゆっくりを収容する精神病院と化していた。 両親でさえ、明日にも発狂寸前の状態だ。 「ふーん?で、そいつらは壊れちゃったから捨てちゃおうと。 最後に残った二匹の子供といちゃいちゃしたいと」 「ゆぷぷ!あちゅかまちーにぇ!!」 「「…………………………」」 「じゃあ、ひとつだけ質問しようか。 その答えによっては、お前らにチャンスをやらんでもない」 「ゆ゛ぅっ!?」 この期に及んで、まだ希望が見えてきたというのか。 両親はお兄さんを食い入るように見つめた。 「子供を作れない子まりさ、目の見えない子れいむ、ともにお飾りのないこの二匹。 一方、お飾りはあるけど壊れちゃったそこの六匹。 さーて、ゆっくりできるのはどっちかな~~?」 「……おかざりのないおちびちゃんのほうがゆっくりしてるよぉっ……!!」 両親の答えに迷いはなかった。 「バーカ」 「ゆ゛っ!?」 お兄さんは、六匹の子供たちを水槽から取り出して床に並べ、 その頭から次々とお飾りを取り上げた。 「「ゆっ??」」 飾りがなくなったとたんに、個体識別の術がなくなり、 六匹はどこの誰とも知れず得体の知れないゆっくりと化す。 それでも、その動きや喋りを見ていると、ようやく確信が持てた。 こいつらは絶対にまりさたちのおちびちゃんじゃない。 深くため息をつき、お兄さんが解説してきた。 「こいつはただの饅頭に目鼻をマジックで書き込んだだけ。 こいつは野良ゆっくりに捨てられてた未熟児。 こいつらはそれぞれれみりゃ、レイパーありす、めーりん、みょんの子供。 毎日一匹ずつ、お前らが寝てる隙にすり替えさせてもらった」 「…………………!!」 「おい、入っていいぞ」 「「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよっ!!」」」」」」 引き戸の向こうから、六人の子ゆっくりがぴょんぴょん跳ねてきていた。 「ゆーっ!!おきゃーしゃん、まだゆっくちできにゃいの?」 「まりちゃたちはゆっくちちてりゅよっ!!」 「みゃいにちあみゃあみゃをむーちゃむーちゃできりゅんだよ!!ゆっくち!ゆっくち!!」 「おにぇーちゃんたちもゆるちてくれちゃよっ!!」 「ゆあ…………あ……………おちび、ちゃん……?」 傷だらけで、お飾りのない子供たち。 しかし、その表情はこのうえもなくゆっくりできるものだった。 本来、飾りのないゆっくりは大きな不快感を伴って目に映り、他のゆっくりに強い嫌悪感を抱かせる。 だがこの数日で、家族の価値観には大きな変化が起こっていた。 飾りがないのに、むしろ飾りがないからという理由でちやほやされていた二人の子供。 飾りがあっても、ついには精神に異常をきたした子供たち。 それらを目に写しているうちに、家族たちの精神にはある種の刷り込みが行われていた。 「これで三回目。 僕の言いたいことがわかるか?」 「……………………」 「お前らは、飾りしか見ていない。 あれだけ可愛がっていた子供でも、飾りがなければ赤の他人に見え、 全く見ず知らずの、しかも捕食種の子供が、飾りさえ乗っていれば可愛い子供に見える。違うか?」 「…………ちがい、ばぜん………」 「その程度なんだ。 お前らは家族思いのつもりでいるかもしれないが、結局、外見も性格も見ちゃいない。 ひたすらお飾りしか見ていない。子供の頭の上にのっかってるお飾りだけを可愛がっていたんだ。 どうだ、認めるか?」 「………………みどべばず……」 お兄さんは屈み込み、両親の前で指を振って言った。 「いいか。お前達に最後のチャンスをやろう」 「ゆ゛っ!?」 「帽子だけの絆でいいのか? 互いの本質なんて見ずに、お飾りだけを愛でる、そんないびつな家族でいいのか?」 「…………っ!!いや、でずっ………!」 「なあ、やり直さないか。 本当にお互いのことを見て、そのいいところ、悪いところを隅々まで知りあって、 互いのゆん格を認め合ったうえで思いやれる、そんなゆっくりできる家族を目指さないか」 「おにっ、いざん…………」 「ゆっぐじ、じだい…でず……… ……ゆっぐじ、でぎる、がぞぐざんに………なりだい、でずぅぅ……!!」 「いいだろう」 そう言うと、お兄さんは夫婦を水槽から取り上げて床に置いた。 「……おにいさん……?」 「一からやり直しだ。これはもういらない」 まりさとれいむ夫婦のお飾りが取り上げられる。 「ゆぅっ…………!!!」 「こんなものがあるからお互いが見えなくなるんだ。 これは預かっておく。飾りなんかに惑わされずに、本当の意味でお互いを見るんだ。できるな?」 「ゆぐっ…………やり、ばず…………!!」 「よし。さあ、家族同士で改めて挨拶しようか」 お兄さんの手で、総勢十匹の家族が円陣を組んで並べられた。 全員が飾りを失い、互いにほとんど見分けがつかない。 その中心に、れいむとまりさ夫婦、そして最初に虐められた子まりさと子れいむが向かい合っている。 おずおずと、夫婦が口を開いた。 「………おち、びちゃ……………」 子まりさと子れいむは互いに頷き合い、二人で両親に向かって叫んだ。 「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」」 それは、今までで一番の、 二人がこの世に生まれ落ちたときの初めての挨拶よりも、もっともっとゆっくりできる挨拶だった。 やり直そう。 みんなで、また一から始めよう。 おちびちゃんたちも、おとうさんもおかあさんも、今日この時、再び生まれ落ちたのだ。 涙でびしょびしょに濡れた頬を子供に押しつけながら、 まりさとれいむ夫婦はゆっくりしていってねと何度も何度も叫び続けた。 ――――――― 二週間が経ち、我が家のベランダはすっかり賑やかになっていた。 「ゆっ!ゆっ!おちびちゃん、ゆっくりおかあさんのべろさんにのってね!」 「ゆーっ!おしょらをとんでりゅみちゃ~~い!!」 「れいみゅおねーしゃんじゅるい!まりちゃも~~!!」 「ゆふふ、ゆっくりじゅんばんだよ!ゆっくりしていってね!!」 「れいみゅ、こっちぢゃよっ!ゆっくちついてきちぇにぇ!!」 「ゆっくちおにぇーしゃんについていきゅよっ!!ゆっくち、ゆっくち……ゆゆっ?こりぇ、にゃあに?」 「ゆふふ、あててみちぇね!あてられちゃら、れいみゅのもにょだよ!!」 「ゆっ!ぺーりょぺーりょしゅるよ!!………ちあわちぇ~~~!!ゆゆっ、ちょこれーちょしゃんだよっ!!」 「よきゅわきゃっちゃね!!ゆっくちたべちぇいっちぇね!!」 「おにぇーしゃん、ありがちょ~~!!ぺーりょ、ぺーりょ………あみゃあみゃちあわちぇ~~~!! ゆっ、おにぇーしゃん、いっちょにぺーりょぺーりょちようにぇっ♪」 「ゆゆっ!?ありがちょうにぇ!!いっちょにぺーりょぺーりょたいみゅ、はじまりゅよっ☆」 「「「「ゆっくりしていってね~~♪」」」」 例の家族は、飾りがないまま、しかし仲むつまじく団欒していた。 初めのころは飾りがないことでお互いに認識できなかったが、 必死に相手の表情や声、外見を注視することで、少しずつ少しずつ個体識別ができるようになっていった。 今では、十匹の家族はお互い完璧に識別できている。 当たり前だ、識別できないほうがおかしい。 「見分けがつかない」という思い込みを「見分けがつく」という思い込みにすり替えればいいだけの話だ。 見分けがつくと思えば、見分けはつくに決まっている。識別しようという意思、努力が致命的に欠けていたということか。 「ゆーっ、れいむのびせいによいしれていってね!!ゆ~ゆ~♪」 「れいみゅおばしゃんのおうちゃはゆっくちしちぇるにぇ!!」 「ゆっ!ゆっ!まりしゃのだんしゅをみちぇいっちぇにぇ~~」 「おばしゃんもまりしゃもゆっくちしちぇりゅねっ!!」 「じゃおーん!」 「まりしゃとおいきゃけっきょちようにぇっ!!ゆっくち!ゆっくち!」 「じゃおーん!!じゃおーん!!」 「みぇーりんははやしゅぎるよぉ!!でみょ、きょうこちょはまけにゃいよっ!!ゆっくち!!ゆっくちぃぃ!!」 ベランダでゆっくりしているのは家族だけではない。 世話係のさくやの他、帽子すり替え実験のために買ってきたもろもろのゆっくりも仲間に入っている。 野良だったのを拾ってきた飾りのないれいむ、ペットショップで買ってきた子めーりんはすっかり家族と打ち解けていた。 同じくすり替えるために集めてきた当て馬達も、厄介者ではありながら夫婦たちの手で分け隔てなく世話を受けている。 みょん種の赤ゆっくりは子めーりんと同じく一家の団欒に参加できているが、 そもそも捕食種である赤れみりゃや知能に欠陥がある未熟児とレイパーはなかなか難しいようだ。 それでも文句ひとつ言わず、家族たちはかいがいしく世話をしていた。 赤れみりゃなどは、このごろではたどたどしくも家族の輪に入っていきたそうな表情さえ見せている。 初めは家族だけで暮らさせ、互いの識別ができるようになってから、 ゆっくりの数を増やして難度を上げようという意図で余所者のゆっくりを参加させたのだが、 一旦飾りなしの識別ができるようになればあとは早かった。 余所者を虐めたり見下すようなこともまったくない。 自分たちが飾りを失って底辺の存在に堕ちたこと、 そもそも余所者を虐めたばかりにこんなことになってしまったこと、 個体識別のために相手の性格をよく吟味するようになった結果、根拠なく見下すことがなくなったこと。 要因はいろいろ思いつくが、他種への差別心は、少なくとも表に出さなくなったようだ。 ゆっくりがあれだけ執着する頭の飾りだが、こうなってみればないほうがずっといいんじゃないか。 今、僕の目の前では、ゆっくりたちがこのうえもなくゆっくりした笑顔で笑いさざめいている。 飾りを失い、傷だらけの家族たち。 希少種、捕食種、通常の言葉を喋れないめーりんやみょん。 どれも通常の群れにいれば真っ先に差別、虐めの対象にされるはみ出し者だが、 ここではなんの差別もなく、互いに認め合い、慈しみあっている。 ちょっとしたユートピアだ。 下拵えには時間をかけた。 初めに家族に苛められた子まりさと子れいむには、 さんざんに家族を見下し、貶めてやるようにそそのかした。 本人たちも充分に家族を恨んでいたので喜んでやってくれたが、 毎日寝る前には二匹を家に引き入れ、釘を刺した。 「お前達だって前はそうだった、飾りのないゆっくりを虐めていたはずだ」 「お母さんたちも反省すればお前達と同じようにゆっくりできる」と、毎日繰り返し念を押した。 ゆっくりとしては善良な個体であるはずという僕の試算は当たり、 飾りを捨てた家族を、二匹は温かく迎え入れた。 一日ごとに子ゆっくりたちの帽子を奪い、家に招き入れてあまあまを振る舞い、 初めに虐待された二匹からはうってかわった歓迎をもって当たらせ、 飾りがないとゆっくりしている、飾りがないからゆっくりできると教え込んだ。 最後に両親に種明かしをし、家族全員から飾りを取り上げたとき、 すでに飾りに頼らない価値観の下地はできていた。 今、家族に差別心はなく、飾りのないゆっくりこそゆっくりできると信じ込んでいる。 屈託のない団欒を楽しむ家族を眺め、僕は確信した。 頃合いだ。 「ゆっ!おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!ゆっくち!!ゆっくち!!」」」 ベランダに出ると、家族たちが僕に笑顔と挨拶を向けてくる。 どの顔も非常にゆっくりした幸福感に満ち溢れていた。 「やあ、みんなゆっくりしているな」 「ゆーんっ!!おにいさんのおかげだよ!!」 「おかざりさんがないとゆっくりできるよっ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 「おにいちゃんありがちょー!!」 「そうなのかい?」 「ゆんっ!まりさ、いままではおかざりさんしかみてなかったよ。 でも、おかざりがないと、おちびちゃんやれいむのことをよくみるようになったよ。 みればみるほど、みんなちがうんだよ!おかおも、おこえも、うごきかただって、みんなちがうし、 ちがうけど、みんなみんなかわいいんだよ!!いままできづかなかった、いろんなかわいいところがあったよっ!! きずだらけだけど、まりさのかぞくさんはいままでよりずっとずっとかわいいんだよぉ!!」 「ゆゆぅ~~ん、まりさぁぁ~~♪れいむ、てれちゃうよっ///」 「「「おちょーしゃんゆっくち!ゆっくちぃ!!」」」 「そうか。うん、素晴らしい。みんな本当にゆっくりしているな」 「ゆふ~ん♪」 僕は頷き、ベランダのゆっくり達に声をかけた。 「みんな、今日はまりさたちの家族だけに大事な話があるんだ。 悪いけど、まりさたちだけこっちに来てくれ」 「ゆんっ?ゆっくりりかいしたよ!!」 十匹のまりさ、れいむ家族を、ガラス戸を開けて屋内に迎え入れる。 「ゆっくり!ゆっくり!」「ゆっくち!ゆっくち!」 楽しげに跳ねる家族たちを、僕は奥まった和室に案内した。 和室は僕の寝室であり、隅にたたまれた布団とテレビの他は殺風景なものだ。 家族を並ばせると、僕は家族たちに話しはじめた。 「改めて、みんな。本当にゆっくりしているね」 「ゆふんっ☆てれちゃうよ!」 「お飾りなんかなくても、ちゃんとお互いがわかる。お互いのことをよく見てる。 弱い者苛めなんかするゲスはここには一人もいない。 今度こそ僕は確信して言おう、みんな、本当にゆっくりしたゆっくりだ!」 「ゆゆぅぅぅ~~~~んっ!!まりさ、かんむりょうっ!!だよぉぉ~~~!!」 「おにいさんのおかげだよぉぉ!!ありがとう、おにいさんっ!! おちびちゃんたち、みんなでゆっくりおにいさんにおれいをいおうね!!」 「「「「おにいしゃん、ゆっくちありがちょ~~~~!!」」」」 「うん、うん。僕も本当にうれしいよ。だから…………」 間を置き、笑顔で家族たちを見渡してから僕は言い渡した。 「今度こそ約束を果たしたいと思う。君たちを、森に帰してあげよう!!」 「「「「「「「「「「ゆっ?」」」」」」」」」」 家族の笑顔が止まった。 一瞬の静寂の後、家族の表情はみるみるうちに青ざめていった。 ――――――― 「おでがいじばず!!おにいざん!!ごごにおいでぐだざい!!おいださないでぐだざいいぃ!!」 「もりにがえりだぐだいぃぃ!!ごごがいいよぉ!!ごごじゃないどゆっぐじでぎだいよおおぉぉ!!」 「やぢゃ!!やぢゃ!!いじべられるのやぢゃあああぁぁ!!ゆっぐじじだいいいぃ!!!」 「ぎょわいぎょわいぎょわいいぃぃ!!ゆっぐじ!!ゆっぐじざぜでええぇぇ!!!」 全身から恐怖の汗をしたたらせ、家族一同はお兄さんに懇願していた。 ここに住まわせて、森に帰さないで。 しかし、お兄さんは不思議そうに首をかしげて言った。 「あっれぇ~~~?どうしたんだい、みんな?ようやく元の家に帰れるんじゃないか。もっと喜んでいいんだぞ!」 「やだ!!やだああぁぁ!!もりにがえりだぐない!!ゆっぐじでぎない!!ごごにおいでええぇ!!!」 「おいおい、何を言ってるんだ。もともとあそこでゆっくりしてたんだろ?遠慮しなくていいんだぞ、さあ出発だ!」 「やぢゃやぢゃやぢゃやぢゃやぢゃあああああぁぁ!!!ごご!!ごごぎゃいい!!ごごでゆっぐぢずりゅううぅぅぅ!!!」 飾りを失い、全身を傷だらけにし、おめめやまむまむを失った子まで混じっているこの一家が、 今森に帰されればどうなるかは火を見るより明らかだった。 すぐに他のゆっくりに見咎められ、たちまちのうちにいじめ殺されてしまうだろう。 この家を一歩でも出ることは、自分たちにとって即、死を意味していた。 それがわかっていた一家は、ここを先途とお兄さんにすがりついた。 「ごごでゆっぐりじだいでず!!もりにがえるど、ぼがのゆっぐじにいじべらればず!! ばりざだぢはごごじゃだいどゆっぐじでぎばぜん!!おにいざん!!おにいざああああんおでがいじばずうううう!!!」 「あ、そうなのか。しまった、そうだよな、虐められちゃうよな。それじゃゆっくりできないなあ」 「ゆっ!!そうだよっ!!だからここでゆっくりさせてねっ!!」 「いや、約束だから。約束は守らなきゃいけないもんな、森に帰すよ。しょうがないよね!」 「いいよおおぉぉぉ!!ばぼらだぐでいいいいぃぃぃ!!!ごごにおいでえええぇぇ!!!」 「やだよ、だってここ、僕の家だもん。 お前らがいるから、僕ベランダ使えないんだよね。洗濯物とか干したいし」 「ゆ゛っ!!じゃあぼがのおべやざんでいいでず!!ごのおうぢざんならどごでぼいいでず!!ぼんぐいいばぜええん!!!」 「あのね、僕が文句言ってるの。この家、狭いの。お前らに居座られてると迷惑なの。出てってくれない?」 「ごごがらおいだざれだらばりざだぢじんじゃうよおおおおぉぉぉ!!!」 「だから?知らないよ、そんなこと。自分でなんとかしてね!」 必死にお兄さんの足にすがりつき、涙と涎を撒き散らして懇願するまりさ。 しかしお兄さんは一向に首を縦に振ろうとはせず、それどころか楽しんでさえいるようだった。 夫の無様な姿を見ながら、それまでお兄さんに抱いていた感情が急転していくのをれいむは感じていた。 「………おにい、ざんが……………」 「ん?」 「おにいざんがでいぶだぢをごごにづれでぎだんでじょおおおおおお!!?」 れいむは叫んでいた。 全身をぶるぶる震わせ、怒りをあらわに声をはりあげる。 「おにいざんがっ!!でいぶだぢをもりがらざらっでぎでっ!! おぢびぢゃんだぢをいじべでっ!!ごんながらだにじだんでじょおおおおぉぉ!!?」 「いやまあ、いろいろ制裁したけど。生活に支障が出るほどの傷は負わせてないよ。 この子まりさのまむまむと子れいむのおめめは別だけど、これやったのはき・み・た・ち☆」 「ゆ゛ぐぅっ…………!!」 「おぼうちっ!!おぼうちしゃんがえじぢぇえええ!!」 「ゆっ!!れいみゅもっ!!れいみゅのおりぼんしゃんがえじでにぇ!!」 「ゆゆっ!!そうだよっ!!おかざりさんがあればあんっしんっ!だよっ!!!」 子供たちの声に笑みを取り戻し、まりさはお兄さんに向きなおって言った。 「ゆっ!!まりさたち、もりにかえってもいいよっ!! でもおかざりさんかえしてねっ!!あまあまもいらないよ!!おかざりさんがあればすぐにでていくよっ!!」 「あー、お飾りかあ………ちょっと待ってね。押し入れにしまってあるから」 お兄さんが部屋の壁をずらすと、中に小さなお部屋があり、 その中に、前にみんなで入っていた透明な箱が置いてあった。 お兄さんがそれを取り出して家族たちの前に置く。 見ると、箱の中にみんなのお飾りが山になって入っていた。 家族が狂喜乱舞する。 「ゆぅぅぅ!!あったよ!!まりさのおぼうしあったよおおぉぉ!!」 「よかったぁ!!よかったよおおぉぉ!!れいむのおりぼんさんよかったああぁあ!!」 「まりちゃのおぼうちっ!!おぼうちぃ!!」 「ゆーっ!!ゆっくち!!おりぼんしゃんゆっくちちていってにぇ!!ゆっくちいぃぃ!!」 飛び跳ねながら喜び合っているうちに、光がお飾りの山の上に落ちた。 「ゆゆっ?」 「…………どぼじでおりぼんざんぼえでるのおおおぉぉぉっ!!!?」 お兄さんが落としたものは火だった。 小さな棒の先についていた火は、たちまちのうちにお飾りの山に燃え移り、赤い炎をめらめらと躍らせている。 まりさたちは恐慌をきたして叫び狂った。 「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だべええだべえええええぼえぢゃうおぼうじじゃんぼえぢゃああああ!!!」 「だんでええええ!!?だんでごんだごどずるのおおおおおおおおおあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ゆんやあああああーーーーーーっ!!!ゆびゃああああああーーーーーーーっ!!!」 「だじゅげぢぇ!!だじゅげぢぇ!!おぼうじじゃんだじゅげぢぇええええええっ!!!」 「おにいじゃーーーーーっ!!おにいじゃああああーーーーーーーーっおにいいいいいい」 いくら体当たりしても箱はびくともせず、お兄さんに体当たりしても同じくびくともせずににやにや笑っているばかりである。 ひとときの狂乱を経て、ついにすべてのお飾りは黒い消し炭と化した。 「ゆ゛あ゛……あ゛……あ゛あ゛あ゛…………おぼうぢ………ばりじゃ、の……」 「どぼじで…………どぼじで………どぼぢで…………どぼじ……で」 水槽の壁を力なくぺーろぺーろしながら涙に暮れる家族たち。 その背中に、お兄さんが明るい声をかけた。 「いやー、お飾り燃えちゃったね。でもいいよなっ、お前達はもうお飾りなくてもわかるもんな!」 「おがざりざんがだいどいじべられるでじょおおおおおおおお!!!!?」 「でいぶだぢじんじゃうんだよおおおおぉぉぉぉ!!ごろざれぢゃうんだよおおおおおお!!?」 「うん、そうだね。だから?」 「………っぐ…………ゆっぐじでぎだいおにいざんはゆっぐじじねええええええ!!!」 涙を振り絞り、れいむがお兄さんの足をめがけて突進した。 渾身の突進を受けてもお兄さんは動じず、冷やかにれいむを見下ろしているだけだ。 ぎりぎりと歯軋りし、れいむは慟哭しながら体当たりを繰り返した。 まりさはただただ泣きじゃくりながらその光景を見つめ、子供たちはひたすら燃えカスを囲んで泣き喚いていた。 その時、お兄さんが何かを床に落とした。 「ゆっ?」 涙に濡れた目で、まりさがそれを視界に捉える。 それは、赤いカチューシャだった。 「いじめ殺されるだって?」 足元にまとわりつくれいむを、足でごろんとカチューシャの方に転がしながらお兄さんは言った。 「ちょっと、一緒に面白いビデオを見ないか」 『きょーろきょーろしゅるわっ!きょーろ、きょーろ!』 『はは、落ちないように気をつけろよ』 『おにーしゃんのおちぇちぇはとっちぇもときゃいはにぇ!』 『ふーかふーか!ふーかふーか! このべっどさんとってもとかいはよ!おにいさん、ありがとう!』 『どういたしまして。銀バッジを取ったごほうびだよ』 『ゆんっ!おにいさんのしどうのおかげよっ! これからはもっともっとおにいさんをとかいはにゆっくりさせるわっ!!』 『いちにっ!いちにっ!』 『何してるんだ、ありす』 『ゆっ!だいえっとさんよ!このごろたいじゅうがゆっくりしすぎてるから……』 『ははは、そんなこと気にしてるのか。可愛いやつだな』 『ゆっ、もう!しらないっ!!』 『ゆわあああぁぁ!!とかいは!!とかいはだわあぁ!!』 『そんなにはしゃぐなよ。迷子にならないようにな』 『ゆーんっ!こんなゆっくりできるとかいはなばかんすさんにつれてきてくれてありがとう、おにいさんっ!!』 『ついに金バッジを取れたからな。これからはどんどんいろんなところに遊びに行こうな。 そうだ、約束だったな、今度お婿さんを連れてくるよ。おちびちゃんも作ったらいい』 『とかいは!!とかいはだわぁぁぁ!!おにいさんのかいゆっくりで、ありす、しあわせよおおぉぉ!!』 お兄さんが何やら細工すると、部屋の隅にあった黒い箱の中に映像が流れ始めた。 この家で過ごしているうちに知った、あれはテレビさんというものだ。 そこに流れているのは、一人のゆっくりありすの姿だった。 ビデオの中に姿は映っていないが、 個体の特徴に鋭敏になった今の家族には、ありすに話しかける声がお兄さんのものであることはすぐにわかった。 お兄さんとありすの、幸福そうな生活がながながと流された。 そのありすは気立てがよく、身だしなみも整い、どこから見てもゆっくりできる美ゆっくりだった。 思わず自分の妻と比べそうになり、まりさはつい頭を振った。 「この子は僕の飼いゆっくりだった。とても可愛い、聞き分けのいい子だった」 お兄さんが説明を加えた。 「赤ゆっくりの頃に、捨てられて死にかけていたのを気まぐれで拾ってきたんだ。 ゆっくり飼いの勝手がわからない僕を、むしろありすの方がサポートしてくれた。 至らないところの多い僕に文句を言わず、 助けてもらった感謝を繰り返し、僕をゆっくりさせるために尽くしてくれた。 ついには金バッジまで取得するほど優秀な個体だった。宝クジに当たるくらいの拾い物だったんだ。 赤ゆっくりの頃に捨てられた経験が、いい方向に作用したのかもしれない」 「ゆうぅぅ……………」 流れる映像を見ても、「ゆっくりしてるね!」などとは漏らせなかった。 ありすがすでに鬼籍に入っていることは、すぐそこに転がっているカチューシャを見れば想像できた。 最初から悲劇として語られているこのエピソードがどこに行くのか、にわかには読めなかった。 「ありすの愛情に僕も報いたかった。 ありす自身の安全を考えてバッジ試験も受けさせた。辛い勉強も不満を言わずにやってくれたよ。 ただひとつ、ありすが一度だけ漏らしたわがままは、子供が欲しいということだった。 子供を作ったゆっくりはリスクを抱えている。ゆっくりの生態を調べるうちにそれを知った僕は、 金バッジを取るまでおあずけだと言った」 「ゆぅ………おちびちゃんはゆっくりできるのに……」 まりさが思わず口をはさんだが、お兄さんは全く無視して先を続けた。 家族に話しているというより、ただ独白しているようだった。 「いまでは後悔してる。すごく後悔している。 ありすの望みをすぐに叶えてやらなかったことを。 僕に言われたありすは、それまでの何倍も勉強に身を入れ、とうとう金バッジを取った。 僕は約束通り、つがいを与えて子供を作らせてあげるつもりだったが、 赤ゆっくりができればそうそう外出もできなくなる。 その前に、ご褒美でキャンプに連れていってあげることにしたんだ。 そこで、ありすはゆっくりに殺された」 「ゆううぅ!?ゆっくりごろしはゆっくりできないよ!!」 思わず叫んだれいむに、お兄さんはすぐに屈みこんで答えた。 「そうだよな。ゆっくりできないよな! こんなゆっくりできるありすを殺すなんてひどいことだよな」 「ゆーっ!ゆっくりしてないよ!ありすがかわいそうだよ!!」 「もうすぐおちびちゃんがつくれたのにぃぃ!!」 「ありちゅおにぇーしゃん、きょろしゃにゃいでええぇ!!」 「ありすはひどい殺され方だった。 全身を枝でぷーすぷーすされて、目を潰されて髪もむしられて、最後には生きたまま食われて死んだんだ」 「ゆううぅぅぅ!!きょわいよおおぉぉ!!」 「ひどいよおおぉぉ!!ゆっくりできないよおおぉぉ!!」 「こんなにゆっくりしたありすなのにいぃぃ!!」 現在の状況も忘れて、つい感情にかられて叫ぶ家族たち。 お兄さんは何度も頷いて続けた。 「そんなひどいことをするゆっくりはゆっくりできないよな!」 「ゆっくりできないよ!!」 「ありすが死んだのに、そいつらは今ものんびりゆっくりしてるんだ。許せないよな!」 「ゆるせないよっ!!ゆっくりごろしはせいっさいっしなきゃいけないよ!!」 「苦しんだありすのためにも、たっぷり苦しめて、ゆっくりできない目に遭わせなきゃ割に合わないよなあ!」 「ゆーっ!!かたきうちだよおおぉ!!そんなひどいゆっくりはゆっくりしちゃいけないんだよぉ!!」 「そうか、そうだよな!そう言ってくれるか!!お兄さんは嬉しいよ、みんな!」 「「「「ゆーっ!!」」」」 「まさか、まさか……ありすを殺したやつらが、自分から喜んで罰を受けてくれるなんて!」 「ゆぇっ?」 足元のカチューシャを拾い上げて見つめながら、お兄さんは淡々とした口調に戻って続けた。 「森のそばの川でキャンプをしたとき、ありすは迷子になった。 その時に、カチューシャを落としてしまったんだ。 飾りをなくしてしまったありすを、そこに住んでいたゆっくりの一家が見つけて、 「ゆっくりできないゆっくり」呼ばわりして、なぶり殺しにした」 そこまで言って言葉を切り、お兄さんは笑顔を浮かべて家族をゆっくりと見渡した。 家族は、小刻みに震えはじめた。 「僕がどうして、お前たちを家に連れてきたんだと思う? 野良ゆっくりの家族なんかわざわざ攫ってきたってなんの得にもならない。 見ず知らずのゆっくりを、飾りがなくてもお互いを識別できる、ゆっくりした家族にする。 そんな七面倒臭いことを、純粋な善意でやると思うか? お前らみたいな薄汚いゴミクズを、なんで僕がわざわざゆっくりさせてやらなきゃならないんだ?」 「………………おに、い、さ………ん……」 「お前たちには知ってもらわなければならなかった。 お飾りがなくても、お前らが殺したありすは素晴らしいゆっくりだったということを。 お前らは、罪のない、思いやりの深いゆっくりできるゆっくりを、 ただお飾りがないという、くだらない些細な理由で虐めた。 ゆっくりに満ちた未来が待ち受けていたゆっくりを、喜色満面でなぶり殺しにした。 『せいっさいっ』なんかじゃない、同族殺しのリンチ、暴力だった。 お前らが恃みとする正当性、「お飾りがなかった」という理由は、なんの意味ももたないこじつけだ。 それをお前たちには知ってもらわなければならなかった」 「ゆ゛………ゆ゛………ゆる……ゆるじ………」 「そうでなければ、僕が何をしても、「まりさたちなんにもわるいことしてないのにいいぃ!!」とお前たちは叫ぶだろう。 僕は、ゆっくりできる善良なお前たちにいわれのない暴力を加える悪漢ということになり、 お前たちは誇りと家族愛で自分たちを慰めながら死んでいくだろう。 そんなことは許さない。絶対に許さない。 お前たちが僕の愛する家族にしたことを、僕はお前たちにやり返してやるんだ。 お前達が叫ぶのは毅然たる抗議でも非難でもなく、みじめったらしい謝罪と懇願、命乞いでなければならない」 「あ゛……あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛………………!」 「いやあ、でもよかった!自分から罰を受けてくれるなんて! ありすをなぶり殺しにするような奴はゆっくりしちゃいけない、苦しめなければいけない。 お前達自身の口からそう言ってもらえてよかったよ! もし抵抗されたら面倒だと思っていたんだ。いや、スムーズに進んでよかったよかった」 「ゆ゛るじでぐだざいいいいぃぃぃ!!!」 まりさは床に頭を打ちつけて叫んでいた。 何度も何度も頭を打ち、喉を震わせて叫ぶ。 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!おにいざんのありずをいじべでごべんだざい!! おがざりがだいだげでいじべで、ごろじでごべんだざい!! ぼんどうにぼうじわげありばぜんでじだ!!ばりざだぢがっ、ゆっぐりじでばぜんでじだ!!」 「ああ、そうだね」 れいむもまりさに続いて頭を下げた。 「じらだがっだんでず!!ありずが、あんだにゆっぐじじでだだんで!!あんだにやざじいびゆっぐじだっだだんで!! おがざりがだいがら、わがらだがっだんでずううぅ!! ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆっぐじじでだいでいぶでごべんだざい!!」 「本当だねえ」 親に倣い、子供たちも詫びはじめた。 「ゆびぇええええん!!ぎょべんなぢゃいっ!!ぎょべんなぢゃいいい!!」 「ばりじゃがわりゅがっだでじゅうぅぅ!!ゆるじぢぇえええ!!」 「ぼうじばじぇん!!ぼうわりゅいごどじばじぇえん!!ゆっぐぢぃぃぃ!!」 「うんうん、もう二度とやっちゃだめだぞ」 お兄さんは腕を組んで笑っていた。 まりさは顔を上げ、おずおずと頼んだ。 「お、おに、いざん……ゆぐじで、ぐだざい…………?」 「え、駄目だよ。絶対に許さないよ。何言ってるのかな?」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ごべんだざあああいいいいい!!!」 「うんうん、さあ、罰を受けようね! みんなで森に行って、森のゆっくりたちに虐めてもらおうな!それが罰だよ、ゆっくり理解してね!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やべで!!おでがい!!でいぶだぢはどうなっでぼっ!! おぢびぢゃ!!おぢびぢゃんだげはあぁぁ!!」 「またそれかい?おちびちゃんだけは、か」 「ばいっ!!ばりざどでいぶがいじべらればず!!ごろざればずうぅ!! おぢびぢゃ、だげはっ!!おでがっ!!ごごでぐらざぜでぐだざいいいいぃぃ!!」 「ふざけんなよ、コラ」 低い声で返答し、お兄さんはまりさの頬を蹴り抜いた。 「あぶぎゅうっ!!?」 「ば!!ばりざああぁあ!?」 「ん、なに注文しちゃってんの?罰を受ける立場なんだろ? 一番大事なものだけは見逃してくださいって、なにそれ?お前たちはありすの何を見逃したの?ねえ?」 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆぐじでぐだざいいい!!」 「お前たちがありすを許していれば、僕も考えたんだけどねえ」 「ばんぜいじばじだっ!!でいぶだぢはげずでじだっ!!ぼうにどどじばぜん!! ごごろを、ごごろをいれがえっ!!おぢびぢゃんだぢはっ!!」 「うんうん、本当に悪いことをしちゃったねえ。だから罰を受けようね!」 「おぢびぢゃだげはっ!!おぢびぢゃっ!!」 「しつこいんだよ!」 「ゆぎげべぇ!?」 れいむの頭が勢いよく踏みつけられる。 衝撃でうんうんが漏れてしまうが、意に介する余裕はなかった。 「反省しましたとか、心を入れ替えるとかさ、だからなんなの? 本当に、ほんっと~~~~に悪いことをしたと思って反省してるんならさ、 どんな罰を与えられても喜んで受けるのが筋だろ?やったことの責任をとろう、ってまず考えるのが本当だろ? それが何?反省したから罰は勘弁してくれって?責任をとるのは嫌ですって? それって反省したって言うの?ねえ?ねえねえねえねえ」 「あぎっ!!いびぎぃ!!ゆぎひいいいぃいいびいいいい!!」 「ごべんだざいっ!!わるがっだでずっ!!びどいごどいっでるのはわがっでばずっ!! でぼ、でぼ、ばりざの、おぢびぢゃんは、どっでぼ……ゆっぐじじででっ!!」 「僕のありすもとってもゆっくりしていたよ。 そうかなるほど、ちょうどいいや、とってもゆっくりしているおちびちゃんたちなら僕のありすと見合うね!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛やべでえええええぇぇ!!!」 「え、本気で言ってんの? 僕の一番大事なものを壊しといて、お前たちの一番大事なものは見逃してって頼んでるのお前ら? そんなことして僕になんか見返りあんの?」 「ごべんだざい!!ごべんだざい!!ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!」 お兄さんの言うとおりだということはわかった。 何から何までお兄さんは正しく、お兄さんの言う罰をみんなで受ければ筋が通ることもわかった。 ここで逃げるのはゆっくりできない。ここで逃げるのは卑怯者だ。 でも、でも、それでも、それだけは。 おちびちゃん。 まりさたちの、ゆっくりした、おちびちゃんたちだけは。 「ゆぐじでぐだざい!!ゆぐじでぐだざい!!おでがいじばず!!ぼんどうにおでがいじばず!!ゆぐじでぐだざいいいぃ!!!」 「へえ……それがお前らのルールなんだ」 言いながら、お兄さんはむしるように子れいむの一人を取り上げた。 「おしょらをとんでりゅみちゃいぃ!?」 「ゆああぁぁ!!おぢびぢゃ、おぢびぢゃあぁ!!」 「たとえばこんなことをしても許されるんだよな!!」 「ゆっびゃあああぁぁぁぁっ!!!?」 ガリガリガリガリ お兄さんが子れいむの顔面を壁に押し付けて擦り付けた。 「ごぎょおおおおおぉぉぉびびゃああああぁぁいぢゃばばばばばぎゅううううーーーっ」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やべでやべでやべでやべでええええぇぇ!!!」 「こんなことをしてもっ!!」 勢いよく振りぬき、子れいむの顔面を家族に見せ付ける。 子れいむの顔の右半分は痛々しい擦過傷にまみれ、口の右側が裂けて砕けた歯がこぼれ出し、 右の瞼がけずり落とされて眼球が消失していた。 「ゆ゛………いぢゃ………いぢゃ……あ゛………………びぎゅい゛い゛ぃぃ…………」 「おぢびぢゃーーーーっ!!おぢびぢゃあああああぁぁ!!」 「お前らは許してくれるんだよな! お兄さん悪いことしちゃったよ!かわいいおちびちゃん虐めちゃったよ! でも反省したからね!許してね!ゆっくり許してくれるよね!!ねえ!!」 「………!!………………!!!」 「ゆっくり許してもらったから次にいこうね!次も許してくれるよな!!反省するからさ!!」 「やべでええええぇぇぇおでがいいいいいぃぃぃ!!!」 次の子供を手に取ろうとしたお兄さんを、まりさが必死に制する。 肩で息をしながらお兄さんは手を止め、まりさに向き直ってつぶやくように言った。 「……選べ。 森に行って罰を受けるか、ここで僕の暴力をすべて許すか」 「…………………………!!!!」 まりさはぶるぶる震えて歯を食いしばり、大量の涙を流しながら、やがてがっくりとうなだれた。 (後編2へ)
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前 さっそく、まりさは自分の巣にれいむを案内した。 まりさの巣は、長老クラスに次いで群れの中で一番大きかった。 群れへの貢献から、まりさは立地条件の良い巣を譲ってもらい、それを拡張したのだ。 きっとれいむも満足してくれる……にんまりとまりさはほくそえんだ。 「ゆふ~ん、だーりんのとことくらべるとせまいけどまぁまぁだよ。ゆっくりしてあげてもいいよ。」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。といって、特に文句を言うわけでもない。 あの人間と比べられるのは癪だけど、仕方がない。どう頑張ったところで、自分より強い人間より 凄いゆっくりプレイスを作れるわけがないのだ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。そのうちあのにんげんさんのことをわすれて まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 「じゃあまりさはかりにいくから、れいむはゆっくりしていくんだぜ」 「ゆっくりがんばってね。」 まりさはれいむに親愛のすりすりをしてもらうと、元気に出ていった。夫婦としてのすりすり ではないことがまりさには悲しかったが、離婚したばかりなのだ。時間が経てばまりさにもきっと 愛情のすりすりをしてくれるはずだ。 ムカデ、ダンゴムシ、イモムシ、桜の葉、クローバー、大きな蛾。 頬に一杯食べ物を詰めてまりさはれいむの待つ巣に帰ってくる。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「むーしゃ、むーしゃ、それなりー。だーりんのとことくらべるとまずいけどまぁまぁだよ。 ありがとうね、まりさ!!」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。といって、特に文句を言うわけでもない。 あの人間と比べられるのは癪だけど、仕方がない。どう頑張ったところで、自分より強い人間より 美味しい食べ物を採ってこれるわけがないのだ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。そのうちあのにんげんさんのことをわすれて まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 食事の時間が終わり、まったりとした空気が流れる。 まりさはれいむの頬にこすりつけ、だんだんとスピードをあげていく。 いつの間にか体もぶるぶる小刻みに震る。目つきがとろんとしてくる。 つい、劣情に駆られてしまうのを止めるのも野暮なものだろう。 特に今日はあの美れいむをようやくつがいとして向かえた後である。たまりにたまっているのだ。 当然、交尾の時間となる。 「ゆっゆっゆっ……」 ねちゃねちゃとした、粘っこいものが糸を引きそうな音を出してこすり合わせる。 「ゆゆゆゆ……ゆっゆっゆっ……」 「…………」 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 「…………」 二匹のほお擦りは加速していく。だが、興奮するまりさを尻目に、れいむはどこか冷めていた。 「ゆっゆっ……んほぉぉぉぉ!!!」 「すっきりー!!!」 「すっきりー」 二匹の交尾は終わった。 「ゆゆっ、まりさはそーろーだね。だーりんのとくらべるとへたくそだけど、しょうがないよね。」 「ゆあああああああ!!!どうじでぇぞんだごどいぶの~~!!」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。しかも、ボロクソに文句を言っている。 あの人間と比べられるのは癪だけど、意味が分からない。どう頑張ったところで、ゆっくりである自分より人間 がれいむをすっきりさせられるわけがないのだ。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。いまはすっきりーできないけど、おちびちゃんができるのは まりさだけだから、まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 そう思わなければ、まりさを支えるプライドが持たないのだ。 まりさの名誉のために言えば、人間と比べることが間違いなのだ。 そもそも、ただでさえ惰弱なゆっくりが交尾のときは完全な無防備になる。 野生の生物は交尾は早ければ早いほど良いのだ。 気持ちよさなど二の次、とにかく受精したら即警戒態勢に入る必要がある。 ゆっくりも、ご多分に漏れずそのパターンだった。 対して、男がれいむをすっきりーさせていた場合、天敵はいないためいくらでも時間をかけることができる。 手も足も道具もある人間のほうが、ゆっくりよりバリエーションも多いのは当然のことだ。 しかも、悲しいことに人間の足ですっきりーしまくったれいむと違って、まりさは初めてだった。 れいむを思うあまり、ほかのゆっくりに見向きもしなかった結果がこれである。 それでも、何とかれいむを妊娠させることが出来た。 胎児型の出産になるので、2週間後には元気な子供が生まれるだろう。 れいむが来てからの数日、まりさは全然ゆっくり出来なかった。 まりさがどんなに努力しても、れいむはそれなりにしか喜んでくれない。 いや、それはいい。愛するれいむのためなら、どんなに苦労しても、喜んでくれるまで頑張れる。 ただ、常に人間と比べられるのは我慢ならない。どうやっても勝てないと分かっているだけに、まりさ としても嫉妬しようがない。やり場のない怒りを覚えるだけである。 それでも、子供さえできれば……子供さえ出来ればきっとれいむはまりさの良さに気付いてくれる。 そんな願望に近い思いでまりさは耐えていた。 とうとう、出産日を迎えた。 「ゆゆ!?れっれいむ!ゆっくりがんばるんだぜ!!ゆっゆっふー!ゆっゆっふー!」 「が、がっばるがだで!でいぶがっばるがだで!!」 閉じていたれいむの産道が、今にも爆ぜんばかりに開き……ポンと1匹のでかいゆっくりを出産した。 「おっ、おじびじゃん!ゆっぐりじでね!!ゆっぐりじでねぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 れいむは涙ながらに喜んだ。最愛の娘との対面だ。ずっと、ずっとこの子をゆっくりさせてあげよう。 「ゆっくりしていってね!!」 まりさも嬉しかった。長年夢見ていたれいむとの家族だ。嬉しくないはずはない。 「おかーしゃん…?」 「そうだよ!おちびちゃんのおかーさんだよ!」 「ゆっくりしていってね!!というんだぜっ!」 「ゆっきゅり…ちて…いっちぇね」 「そうだぜっ!!がばいいんだじぇぇぇ!!!!」 「れいむ、みるんだぜっ!!とってもゆっくりしたおちびちゃんだぜっ!!」 「ゆー♪そうだねっ!!だーりんもよろこんでくれるよね!!」 静寂 「ゆぶぶぶぶ…………。もういやだぁぁぁ、ゆっぐりじだいんだぜぇぇぇぇ!!」 「ゆゆっ? どーしたの?まりさ。ゆっくりしていってねっ!!おちびちゃんがこわがるでしょ!?ぷんぷん」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 何も変わらなかった。 何一つとして、変わらなかった。 れいむは、まりさがプロポーズしたときから変わってなかった。 れいむの目に、まりさはつがいとして映らなかった。 「で、でいぶばあどじじぃとまりさとどっじがずぎなんだぜぇ!!!!」 れいむはまりさを受け入れてくれたはずなのに、いつまで経ってもあの男の子とは忘れない。 とうとう我慢できなくなったまりさは禁断の言葉を口にした。 「ゆゆっ?そんなの決まってるでしょぉぉおぉ!!まりさはばかなの?」 れいむは即答した。 そうだ、決まっている。 「まりさのほうがすきにきまってるでしょっ!!」 ああ、よかったんだぜ。れいむはやっぱりまりさをあいしているんだぜ。 それなら、まだがまんできるんだぜ。おちびちゃんたちがおおきくなるころにはきっと、 こんどこそまりさとゆっくりできるんだぜ。 「あいしているのはだーりんだけだけどね♪まりさったら、なにいわせるの?はずかしーよ!」 「…………でてってね。」 能面のような顔でまりさは静かに言った。 「ゆっ?」 「まりさのゆっくりプレイスからでていくんだぜぇぇ!!」 そう言うやいなや、まりさはれいむに体当たりを喰らわした。 れいむはまりさをあいしていなかったんだぜ。 そんなれいむとはもうゆっくりできないんだぜ。 「ゆべっ!」 「やめてよねっ!れいむがほんきになったらまりさにまけるわけないでしょっ!!」 いくら、まりさの戦闘力が高くとも、栄養状態の違いから固体の大きさが違いすぎる。 出産の疲れはあるものの、子供を守ろうと強い意志を持つれいむにまりさが勝てる道理 などなかった。 「“かてーないぼーりょく”をするまりさとはゆっくりできないよっ!!りこんするよ!!」 よかった。なにはともあれ、れいむはでていくんだぜ。 これでゆっくりできるんだぜ。 「“いしゃりょー”と“ざいさんぶんよ”をもらうねっ!!あと、“しんけん”はれいむ のものだよっ!!」 「ゆうううううううううううううう!!!やっ、やめるんだぜ!!まりさのたからものをかえすんだぜ!!」 「やべでー!!ばでぃざのだべぼのどらないでぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないいいいい!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ば、ばでぃざのべっどがぁぁ!!」 「じゃあ、これぐらいでいいよっ!!」 そうれいむが言ったあとは酷い様子だった。まるで強盗にでも合ったかのように、家はめちゃくちゃに荒らされた。 まりさが群れを救ったとき、長老達からもらったきれいな石。 まりさがれいむのために寝る間を惜しんで狩りした結果、たまった餌。 都会派のありすから貢いでもらった綿。 まりさの大切な物はほとんど全て奪われた。 「ゆゆっ!じゃあれいむはおうちにかえるね。まりさ、“りこん”したけどこれからもれいむの“しんゆう”でいてねっ!」 「もうにどとくるなだぜぇぇぇぇ!!!!」 ゆ、れいむがあんなにゆっくりできないゆっくりだったなんて……。 今までの思い出を振り返り、まりさは静かに涙を流し続けた。 でも、これでわかったんだぜ。まりさにふさわしいのはありすだぜ。 これからはありすのおもいにこたえるんだぜ。 まりさは気付かなかった。 散々大見得をきって人間のところに行ったものの、完膚なきまでに叩きのめされ、れいむにお情けでつがいにしてもらったのに、 れいむをゆっくりさせることが出来ずに三行半を突きつけられ、挙句実力行使でもれいむの返り討ちにあったまりさが群れのゆ っくりの尊敬を集めるわけなどないことに。 ありすが、れいむに対するまりさほどに辛抱強くないことに。 まりさがれいむと別れるまでの間は、ありすにほかのゆっくりとつがいになるのに充分なほどに時間が過ぎていることに。 「ゆゆっ!ただいま、あなた。」 「ああ、れいむか。久しぶりだね。その様子だと上手く行ったようだね。」 「ゆほーん、かわいいおちびちゃんだよっ!!」 あの晩、男とれいむの会話はこうだ。 「ゆゆ……あなた、ゆっくりきいてね!!たいせつなおはなしがあるの。」 「なんだい、れいむ。急に」 「れ、れいむはおちびちゃんがほしいよ!」 「ほほぅ?だが、僕は君に種付けることはできないよ。お隣さんに頼んで、ゆっくりを貸してもらっても良いが」 「ゆ~、あのねっ!れいむには“しんゆう”のまりさがいるの!!すっごくゆっくりできるんだよ!」 「成る程、じゃあそのゆっくりと子作りをしたいわけだ?」 「ゆっ!そうだよっ!でも、まりさはれいむがあなたとけっこんしている“ひとづま”だってしってるんだよっ! だ、だから、だからでいぶどりごんじでねぇぇ!あなだのごどあいじでるど、ゆっぐぢりがいじでねぇぇ」 途中から涙声になる。 「ああ、別に構わんが、群れに帰るのか。寂しくなるなぁ~」 「ゆゆっ!あなた、あんしんしてねっ!!おちびちゃんがうまれたら、“さいこん”しようねっ!! すこしのあいだだけど、がまんしてね!!」 ほ~。仮想離婚か。なかなか考えるなぁ。ゆっくりなのに。 「そのまりさは、うんというのかい?」 「だいじょうぶだよ、あなたっ!!れいむはまりさのことがだいすきだし、まりさもれいむのことがだいすきだよっ!! あいしているのはあなただけだけど、“しんゆう”のまりさはずっとれいむとかぞくをつくりたがってたしねっ!! きっと、まりさもゆっくりできるよ!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 元ネタは童話の「ねずみの嫁入り」(そんな名前だったような気がする) お家宣言して潰されるのなら、お家の人になってしまえば良いじゃない。 かいたもの 甘い話には裏がある。 このSSに感想を付ける
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前 さっそく、まりさは自分の巣にれいむを案内した。 まりさの巣は、長老クラスに次いで群れの中で一番大きかった。 群れへの貢献から、まりさは立地条件の良い巣を譲ってもらい、それを拡張したのだ。 きっとれいむも満足してくれる……にんまりとまりさはほくそえんだ。 「ゆふ~ん、だーりんのとことくらべるとせまいけどまぁまぁだよ。ゆっくりしてあげてもいいよ。」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。といって、特に文句を言うわけでもない。 あの人間と比べられるのは癪だけど、仕方がない。どう頑張ったところで、自分より強い人間より 凄いゆっくりプレイスを作れるわけがないのだ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。そのうちあのにんげんさんのことをわすれて まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 「じゃあまりさはかりにいくから、れいむはゆっくりしていくんだぜ」 「ゆっくりがんばってね。」 まりさはれいむに親愛のすりすりをしてもらうと、元気に出ていった。夫婦としてのすりすり ではないことがまりさには悲しかったが、離婚したばかりなのだ。時間が経てばまりさにもきっと 愛情のすりすりをしてくれるはずだ。 ムカデ、ダンゴムシ、イモムシ、桜の葉、クローバー、大きな蛾。 頬に一杯食べ物を詰めてまりさはれいむの待つ巣に帰ってくる。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「むーしゃ、むーしゃ、それなりー。だーりんのとことくらべるとまずいけどまぁまぁだよ。 ありがとうね、まりさ!!」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。といって、特に文句を言うわけでもない。 あの人間と比べられるのは癪だけど、仕方がない。どう頑張ったところで、自分より強い人間より 美味しい食べ物を採ってこれるわけがないのだ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。そのうちあのにんげんさんのことをわすれて まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 食事の時間が終わり、まったりとした空気が流れる。 まりさはれいむの頬にこすりつけ、だんだんとスピードをあげていく。 いつの間にか体もぶるぶる小刻みに震る。目つきがとろんとしてくる。 つい、劣情に駆られてしまうのを止めるのも野暮なものだろう。 特に今日はあの美れいむをようやくつがいとして向かえた後である。たまりにたまっているのだ。 当然、交尾の時間となる。 「ゆっゆっゆっ……」 ねちゃねちゃとした、粘っこいものが糸を引きそうな音を出してこすり合わせる。 「ゆゆゆゆ……ゆっゆっゆっ……」 「…………」 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 「…………」 二匹のほお擦りは加速していく。だが、興奮するまりさを尻目に、れいむはどこか冷めていた。 「ゆっゆっ……んほぉぉぉぉ!!!」 「すっきりー!!!」 「すっきりー」 二匹の交尾は終わった。 「ゆゆっ、まりさはそーろーだね。だーりんのとくらべるとへたくそだけど、しょうがないよね。」 「ゆあああああああ!!!どうじでぇぞんだごどいぶの~~!!」 どうやら、れいむはお気に召さなかったらしい。しかも、ボロクソに文句を言っている。 あの人間と比べられるのは癪だけど、意味が分からない。どう頑張ったところで、ゆっくりである自分より人間 がれいむをすっきりさせられるわけがないのだ。 だいじょうぶ、れいむはまだきたばっかりなんだぜ。いまはすっきりーできないけど、おちびちゃんができるのは まりさだけだから、まりさとだけゆっくりするにきまってるんだぜ。 そう、無理やり自分に言い聞かせることでまりさは気持ちを抑えていた。 そう思わなければ、まりさを支えるプライドが持たないのだ。 まりさの名誉のために言えば、人間と比べることが間違いなのだ。 そもそも、ただでさえ惰弱なゆっくりが交尾のときは完全な無防備になる。 野生の生物は交尾は早ければ早いほど良いのだ。 気持ちよさなど二の次、とにかく受精したら即警戒態勢に入る必要がある。 ゆっくりも、ご多分に漏れずそのパターンだった。 対して、男がれいむをすっきりーさせていた場合、天敵はいないためいくらでも時間をかけることができる。 手も足も道具もある人間のほうが、ゆっくりよりバリエーションも多いのは当然のことだ。 しかも、悲しいことに人間の足ですっきりーしまくったれいむと違って、まりさは初めてだった。 れいむを思うあまり、ほかのゆっくりに見向きもしなかった結果がこれである。 それでも、何とかれいむを妊娠させることが出来た。 胎児型の出産になるので、2週間後には元気な子供が生まれるだろう。 れいむが来てからの数日、まりさは全然ゆっくり出来なかった。 まりさがどんなに努力しても、れいむはそれなりにしか喜んでくれない。 いや、それはいい。愛するれいむのためなら、どんなに苦労しても、喜んでくれるまで頑張れる。 ただ、常に人間と比べられるのは我慢ならない。どうやっても勝てないと分かっているだけに、まりさ としても嫉妬しようがない。やり場のない怒りを覚えるだけである。 それでも、子供さえできれば……子供さえ出来ればきっとれいむはまりさの良さに気付いてくれる。 そんな願望に近い思いでまりさは耐えていた。 とうとう、出産日を迎えた。 「ゆゆ!?れっれいむ!ゆっくりがんばるんだぜ!!ゆっゆっふー!ゆっゆっふー!」 「が、がっばるがだで!でいぶがっばるがだで!!」 閉じていたれいむの産道が、今にも爆ぜんばかりに開き……ポンと1匹のでかいゆっくりを出産した。 「おっ、おじびじゃん!ゆっぐりじでね!!ゆっぐりじでねぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 れいむは涙ながらに喜んだ。最愛の娘との対面だ。ずっと、ずっとこの子をゆっくりさせてあげよう。 「ゆっくりしていってね!!」 まりさも嬉しかった。長年夢見ていたれいむとの家族だ。嬉しくないはずはない。 「おかーしゃん…?」 「そうだよ!おちびちゃんのおかーさんだよ!」 「ゆっくりしていってね!!というんだぜっ!」 「ゆっきゅり…ちて…いっちぇね」 「そうだぜっ!!がばいいんだじぇぇぇ!!!!」 「れいむ、みるんだぜっ!!とってもゆっくりしたおちびちゃんだぜっ!!」 「ゆー♪そうだねっ!!だーりんもよろこんでくれるよね!!」 静寂 「ゆぶぶぶぶ…………。もういやだぁぁぁ、ゆっぐりじだいんだぜぇぇぇぇ!!」 「ゆゆっ? どーしたの?まりさ。ゆっくりしていってねっ!!おちびちゃんがこわがるでしょ!?ぷんぷん」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 何も変わらなかった。 何一つとして、変わらなかった。 れいむは、まりさがプロポーズしたときから変わってなかった。 れいむの目に、まりさはつがいとして映らなかった。 「で、でいぶばあどじじぃとまりさとどっじがずぎなんだぜぇ!!!!」 れいむはまりさを受け入れてくれたはずなのに、いつまで経ってもあの男の子とは忘れない。 とうとう我慢できなくなったまりさは禁断の言葉を口にした。 「ゆゆっ?そんなの決まってるでしょぉぉおぉ!!まりさはばかなの?」 れいむは即答した。 そうだ、決まっている。 「まりさのほうがすきにきまってるでしょっ!!」 ああ、よかったんだぜ。れいむはやっぱりまりさをあいしているんだぜ。 それなら、まだがまんできるんだぜ。おちびちゃんたちがおおきくなるころにはきっと、 こんどこそまりさとゆっくりできるんだぜ。 「あいしているのはだーりんだけだけどね♪まりさったら、なにいわせるの?はずかしーよ!」 「…………でてってね。」 能面のような顔でまりさは静かに言った。 「ゆっ?」 「まりさのゆっくりプレイスからでていくんだぜぇぇ!!」 そう言うやいなや、まりさはれいむに体当たりを喰らわした。 れいむはまりさをあいしていなかったんだぜ。 そんなれいむとはもうゆっくりできないんだぜ。 「ゆべっ!」 「やめてよねっ!れいむがほんきになったらまりさにまけるわけないでしょっ!!」 いくら、まりさの戦闘力が高くとも、栄養状態の違いから固体の大きさが違いすぎる。 出産の疲れはあるものの、子供を守ろうと強い意志を持つれいむにまりさが勝てる道理 などなかった。 「“かてーないぼーりょく”をするまりさとはゆっくりできないよっ!!りこんするよ!!」 よかった。なにはともあれ、れいむはでていくんだぜ。 これでゆっくりできるんだぜ。 「“いしゃりょー”と“ざいさんぶんよ”をもらうねっ!!あと、“しんけん”はれいむ のものだよっ!!」 「ゆうううううううううううううう!!!やっ、やめるんだぜ!!まりさのたからものをかえすんだぜ!!」 「やべでー!!ばでぃざのだべぼのどらないでぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないいいいい!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ば、ばでぃざのべっどがぁぁ!!」 「じゃあ、これぐらいでいいよっ!!」 そうれいむが言ったあとは酷い様子だった。まるで強盗にでも合ったかのように、家はめちゃくちゃに荒らされた。 まりさが群れを救ったとき、長老達からもらったきれいな石。 まりさがれいむのために寝る間を惜しんで狩りした結果、たまった餌。 都会派のありすから貢いでもらった綿。 まりさの大切な物はほとんど全て奪われた。 「ゆゆっ!じゃあれいむはおうちにかえるね。まりさ、“りこん”したけどこれからもれいむの“しんゆう”でいてねっ!」 「もうにどとくるなだぜぇぇぇぇ!!!!」 ゆ、れいむがあんなにゆっくりできないゆっくりだったなんて……。 今までの思い出を振り返り、まりさは静かに涙を流し続けた。 でも、これでわかったんだぜ。まりさにふさわしいのはありすだぜ。 これからはありすのおもいにこたえるんだぜ。 まりさは気付かなかった。 散々大見得をきって人間のところに行ったものの、完膚なきまでに叩きのめされ、れいむにお情けでつがいにしてもらったのに、 れいむをゆっくりさせることが出来ずに三行半を突きつけられ、挙句実力行使でもれいむの返り討ちにあったまりさが群れのゆ っくりの尊敬を集めるわけなどないことに。 ありすが、れいむに対するまりさほどに辛抱強くないことに。 まりさがれいむと別れるまでの間は、ありすにほかのゆっくりとつがいになるのに充分なほどに時間が過ぎていることに。 「ゆゆっ!ただいま、あなた。」 「ああ、れいむか。久しぶりだね。その様子だと上手く行ったようだね。」 「ゆほーん、かわいいおちびちゃんだよっ!!」 あの晩、男とれいむの会話はこうだ。 「ゆゆ……あなた、ゆっくりきいてね!!たいせつなおはなしがあるの。」 「なんだい、れいむ。急に」 「れ、れいむはおちびちゃんがほしいよ!」 「ほほぅ?だが、僕は君に種付けることはできないよ。お隣さんに頼んで、ゆっくりを貸してもらっても良いが」 「ゆ~、あのねっ!れいむには“しんゆう”のまりさがいるの!!すっごくゆっくりできるんだよ!」 「成る程、じゃあそのゆっくりと子作りをしたいわけだ?」 「ゆっ!そうだよっ!でも、まりさはれいむがあなたとけっこんしている“ひとづま”だってしってるんだよっ! だ、だから、だからでいぶどりごんじでねぇぇ!あなだのごどあいじでるど、ゆっぐぢりがいじでねぇぇ」 途中から涙声になる。 「ああ、別に構わんが、群れに帰るのか。寂しくなるなぁ~」 「ゆゆっ!あなた、あんしんしてねっ!!おちびちゃんがうまれたら、“さいこん”しようねっ!! すこしのあいだだけど、がまんしてね!!」 ほ~。仮想離婚か。なかなか考えるなぁ。ゆっくりなのに。 「そのまりさは、うんというのかい?」 「だいじょうぶだよ、あなたっ!!れいむはまりさのことがだいすきだし、まりさもれいむのことがだいすきだよっ!! あいしているのはあなただけだけど、“しんゆう”のまりさはずっとれいむとかぞくをつくりたがってたしねっ!! きっと、まりさもゆっくりできるよ!!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 元ネタは童話の「ねずみの嫁入り」(そんな名前だったような気がする) お家宣言して潰されるのなら、お家の人になってしまえば良いじゃない。 かいたもの 甘い話には裏がある。 このSSに感想を付ける
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「ただいまー。お前ら、嬉しいニュースがあるぞ」 「おにいさん、ゆっくりおかえりなさい!!」 「うれしいにゅーすってなんなの?」 「「「「なんなの?」」」」 大学から帰ってきた男は、我が家の愛すべき同居人であるゆっくり一家の部屋に行くと、こいつらの喜びそうな話を真っ先にしてやった。 「実はな、この前お兄さんに恋人が出来たって話をしただろ」 「ゆっくりおぼえてるよ!! とってもびじんさんなおねえさんのしゃしんをみせてくれたよ!!」 「さすがはまりさだ、曇りなき審美眼を備えているようだな」 「ゆうぅ!! ゆっくりてれるよ!!」 「でな、その彼女だが、話を聞くと最近ゆっくりを買ったらしいんだ」 「ゆゆっ!! ほんとう!?」 「ああ、しかもまだ生まれて間もない赤ゆっくりだ。とっても可愛いらしいぞ」 「ゆうぅ……まりさとれいむのちびちゃんたちも、ゆっくりかわいいよ!!」 「拗ねるなよ。そんなこと同居してる俺が一番よく解ってるよ」 「ゆっくりあんしんしたよ!!」 「でだ、ここからが肝心なんだが、明日彼女がこの部屋にやってくるんだが、その時、赤ゆっくりも一緒に連れてくるっていうんだ」 「ゆゆっ!!」 「何でもゆっくりショップで買った赤ゆっくりらしくてな。一匹だけの購入だから、親も姉妹も友達もいないんだ。 彼女が部屋にいるときはとっても嬉しそうな様子を見せるそうなんだけど、大学に行ったり、外出したりすると、その子は一人ぼっちになっちまう」 「ゆうぅ……ゆっくりかわいそうだよ」 「だから、お前らにその子の友達になって欲しいんだ」 「ゆっくりまかせてよ!!」 「そういうと思ってたよ。それに生まれたばかりの赤ゆっくりだから、お前らで立派に教育してやってくれ」 「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」」」 一家の元気な返事に満足した男は、一家全員を自分の掌に乗せる。 そして、小指で丁寧に丁寧に一家全員の頭を撫でてあげた。 ここで気になる人が出てくることだろう。 一家全員が掌に乗る? そんなことが可能なのかと? 可能なのである。 一家の家族構成は、親まりさに親れいむ、生後半年の子ゆっくり三匹に、生後三か月の赤ゆっくり三匹の計八匹。 普通のゆっくりなら、それだけで10㎏を超す重量になるものである。 しかし、男の飼っているゆっくりは、普通のゆっくり種とは異なる、新種のゆっくりであった。 その名もマイクロゆっくり。 普通の成体ゆっくりが最大でバスケットボールほどの大きさまで成長するのに対し、このマイクロゆっくり種は、最大でピンポン玉ほどにしか大きくならないのが特徴である。 ゆっくりが現代社会に現れて早10年。 初めこそ人々はその不思議な生態に大いに沸いた。やれ宇宙人の襲来だとか、異世界からの侵略者だのと、毎日のように特番で流されたものだ。 おかげで当時見たかった番組が、かなり潰されてしまったものである。 しかし、人間の慣れというのは恐ろしいもので、半年も過ぎるとゆっくりに対する関心は徐々に薄れ始めた。 道端でゆっくりを見ても、犬や猫を見るような感覚で見向きもしない。 ゆっくりたちに、人間が恐怖するほどの力がなかったことも、関心を無くさせる要因だったのだろう。 そんなこともあって、現代社会はすんなりとゆっくりの存在を認めてしまったのである。 そうなると次に人間が起こす行動は、ゆっくりが人間にどれだけ利益をもたらすかということだ。 如何にもエゴで凝り固まった現代人の考えそうなことである。 まず真っ先に、その饅頭という特殊な姿から、当然の如く食用への流用が行われ始めた。 続いて、簡単な言葉を話し、理解できることから、人間の仕事の一部に使われることとなる。 そして、その憎らしくも愛らしい容姿から、ペット界でも当然扱われていった。 今や犬や猫を飼うが如く、普通の家庭でもゆっくりが飼われている。 しかし、ゆっくりの飼育には結構手間がかかる。 食べ物を食べても排出しないというのはペットとして最高の利点なのだが、ゆっくりはかなりの大食漢で、月々の出費もバカにならない。 何事にも興味を示し、躾がなっていないと部屋の中で暴れ放題、すぐに部屋が荒らされてしまう。 しかも、荒らされるだけならともかく、動き回りたがるくせに猫のように俊敏性や機敏性は持ち合わせていないので、ちょっとしたことですぐに怪我を負ってしまう。 オレンジジュースと小麦粉で治るのはいいが、大事なペットが怪我をしているのを見るのは飼い主として辛いものがある。 そこで開発されたのが、ゆっくりの遺伝子餡をいじって生み出された新種のゆっくり、その名もミニゆっくりである。 成長してもソフトボール大の大きさにしかならないミニゆっくりは、家計への優しさや、暴れても被害が少ないこともあって、爆発的なブームとなった。 ブームとなれば大金が動き、大金が動けば味を占める。 となると、次に人類が考え付くのは、ミニゆっくりより小さな種を作り出すということであろう。携帯電話が進化するたびに薄く小さくなるようなものだ。 ミニゆっくり出現から3年の年月をかけ、人類は遂にミニゆっくりよりも更に小さい新種、マイクロゆっくりを誕生させることに成功した。 しかし、このマイクロゆっくりはミニゆっくりと違い、一過性のブームに終わってしまった。 成長してもピンポン玉という大きさから、家計への負担、家への被害はミニゆっくり以上に減ったが、それ以上にその扱いがとても難しい種であったからだ。 成体ゆっくりですら途轍もなく皮がもろく、ちょっと力の加減を間違えるだけで、簡単に皮が破れ餡子が漏れ出してしまう。 食べ物も粉末状まで砕かないと摂取できないし、水を与える時もスポイトで一滴ずつ飲ませなければならない。 また赤ゆっくりなど小豆大の大きさしかなく、鼻息の荒い飼い主が飼おうものなら、一息で飛ばされること請け合いだ。 ゆっくりの利点であるオレンジジュースと小麦粉で回復できるという特徴も、普通のゆっくりのように頭からジャブジャブ掛けようものなら、オレンジジュースの池で溺死しかねない。 そういった飼い難さも相まって、マイクロゆっくりは一部のマニアだけが買い求める上級者向けの種となってしまったのである。 男はそんな上級者の一人であった。 子供のころは、普通のゆっくりを飼っており、それが亡くなりミニゆっくりが出るや、先代の代わりにとミニゆっくりを求めた。 小さくなった分、寿命は普通のゆっくりより少なく、男が高校生の時には、悲しいことにミニゆっくりは寿命を迎えてしまった。 翌年が受験だったこともあり、ゆっくりを飼うのを控えていた男だが、無事志望大学に合格できたことと、一人暮らしの寂しさもあって、一学年の夏にマイクロゆっくりを購入したのである。 元来のマメで繊細な性格も相まって、現在に至るまでの一年半、紆余曲折はあったものの、特に大きな失敗を犯すこともなく育てることに成功している。 まりさ一家は、男の話を聞いて、明日が楽しみだった。 男は優しく、とてもゆっくりした飼い主だったが、その体の構造上、普通のゆっくりと同じく、外を散歩することなどはさせてもらえない。 ウッカリ外に出ようものなら、誤って人間に踏みつぶされるか、突風に吹き飛ばされるかが落ちである。 そんなこともあって、一家は生まれてこのかた家族以外のゆっくりと出会ったことがなかった。 中でも生後三か月の赤ゆっくりは、男の話を聞いて、特に興奮した。 生まれたばかり。つまりそれは、自分たちより年下であることを意味する。 まだまだ甘えたい年頃ではあるが、同時にお姉ちゃん風を吹かせたかった赤ゆっくりは、早く明日が来ないかと待ち遠しくて仕方がなかった。 「おにいさん!! かのじょさんは、ゆっくりまだこないの?」 「う~ん、そろそろ来ると思うよ」 今朝から一家は、何度も男に訊ねてくる。それほどまで、赤ゆっくりの登場が待ち遠しかったのだ。 焦らしプレイのように悶々とした時間を過ごす一家であったが、午後1時を過ぎたころ、来客を知らせるベルが鳴り響いた。 「ゆっ!! おにいさん!!」 「分かってるよ、いま迎えに行ってくる」 ベッドから飛び降り、玄関にドアを開ける。 そこには、以前写真で見せてもらった長い黒髪の女性が佇んでいた。 「こんにちは、愛で男くん」 「やあ、ようこそ。汚い所だけど、まあ上がってくれよ」 「ええ。お邪魔します」 女性は軽くお辞儀すると、靴を脱いで、部屋に上がり込んだ。 その手には、小粋な可愛いペットゲージがぶら下がっている。 「愛で子、昼食はもう取った?」 「ええ、一時間くらい前に」 「そっか、良かったよ。家の冷蔵庫、何にも入ってないからさ」 「ふふ、後で一緒に買いに行きましょう。今夜は私が作ってあげるから」 「ひゃっほーいっ!! 手作り料理ゲットゥ!!」 男はテンション高く悲鳴を上げる。隣人や階下の人が、苦情に来ないか心配である。 彼女である愛で子は、男性の部屋が珍しいのか、興味深そうに周りを見渡している。 そして扉を跨ぎ隣室に入るや、一mという特大の水槽を見つけると、「これね!!」と、目を輝かせて近づいてきた。 言うまでもなく、マイクロ一家の入った水槽である。 普段、一家は水槽の中で生活している。 と言っても、一mという巨大な水槽であるため、マイクロ一家にとっては、巨大な庭付き大豪邸のようなものである。 一家は愛で子の目の前に一列に並び、歓迎の意を示す。 「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」 愛で子もそんな一家に目を細め、「ゆっくりしていってね」と笑顔で返した。 「おねえさんが、おにいさんのかのじょさんなの?」 「ええそうよ。よろしくね、まりさちゃん」 「ゆっくりよろしくね、おねえさん!!」 軽い挨拶を済ませ終えるや、一家は気になっていたことを愛で子に告げる。 「おねえさん!! あかちゃんはどこにいるの?」 その言葉に愛で子は微笑むと、手に下げていたゲージを開けて、中に手を入れる。 そして、それを優しく掴むと、両手で姿が見えないように隠しながら、ゆっくり水槽の中に手を入れていった。 一斉に愛で子の手に群がってくる一家。 興味津津とばかりに、愛で子の手の中を注視する。 ようやく待ちに待った瞬間がやってきた。愛で子がその手を上げる。 手の中から出てきたゆっくりは、一家に目を向けると、大きな声で挨拶をしてきた。 「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」 「ゆゆっ!?!?!?」 その瞬間、一家全員が凍りついた。 目の前のれいむ種を、呆気に取られながら見つめ続ける。 「おい、お前らどうしたんだ、急に無口になって?」 傍でジッと見ていた男が、一家の妙な態度に首を捻る。 あれほど楽しみにしてたというのに、なぜ急に押し黙ってしまったというのか。 その疑問に、一家の大黒柱たるまりさが口を開いた。 「ゆうぅ……おにいさん!! ゆっくりうそをついたね!!」 「はあ、何のことだ?」 「おにいさんはあかちゃんがくるっていってたよ!! それなのに、このれいむはもうりっぱなおとなだよ!!」 「……なるほど、そういうことか」 愛で子が取り出したれいむ。それは、一家の大黒柱であるまりさの5倍は大きかったのだ。 それ故に、一家は男が嘘をついたのだと解釈したのである。 そんな一家に、男ではなく愛で子が説明を加えてくる。 「まりさちゃん。この子は、本当に赤ちゃんなのよ」 「うそだよ!! まりさよりおおきいのに、あかちゃんなんてへんだよ!!」 「この子はね、普通のゆっくりの赤ちゃんなの」 「ふつうのゆっくり?」 「まりさちゃんたちはね、マイクロゆっくり種って言って、ゆっくりの中でも一番小さい種族なの。そしてこの子は普通のゆっくり……一番大きな種族で、これでもまだ生まれたばっかりなのよ。 本当は普通のゆっくり種も生まれたばかりはこんなに大きくないんだけど、この子は胎生出産で生まれたから、特に大きい子なの」 「ゆうぅぅ……」 説明を受けても、いまいち納得できない一家。 確かに胎生で出産された子供が、蔓で出産された子供より大きくなることは知っている。しかし、それでも納得できないものは、納得できない。 それも仕方がない。一家は自分たち以外の種にあったことがなく、自分たちこそがスタンダードなのだから。 「さっきの挨拶を聞いただろ。『ゆっきゅりちていっちぇね』って赤ちゃん言葉だったじゃないか」 男も注釈を入れてくる。 言われてみればその通りで、あれは自分たちのチビちゃんも少し前まで使っていた赤ゆっくり言葉である。 もしかしたら目の前のゆっくりは態と赤ゆっくりの喋りをマネしているのかとも考えたが、一家はすぐにそれを否定した。 赤ゆっくりの喋り方は、まだ舌足らずなだけであって、意識して喋るのはとても難しいのである。 仮に意識して話せたとしても、普通の成体ゆっくりなら、演技でも赤ゆっくり言葉を使うことに抵抗があるだろう。 人間に例えるなら、常時「バブー」「ハーイ」「チャーン」と言っているようなものである。正に羞恥プレイだ。 「お前らは、昨日俺と約束したよな。この子と友達になってくれるって。俺はお前たちを約束を守らないような子に育てた覚えはないぞ」 男が少し厳しい口調で言ってくる。愛で子も若干悲しそうな表情だ。 一家は目の前の巨大赤れいむに目を向ける。この状況を全く理解していないような、能天気な振る舞いだ。 最初は若干渋る態度を取っていた一家だったが、男たちや巨大赤れいむの様子を見て決心した。昨日言ったとおり、この子と友達になってやろうと。 大好きな男やその彼女を悲しませるのは一家としても本意ではないし、よく巨大赤れいむを観察すると、態度のそこかしこに赤ゆっくり独特の仕草が見て取れる。 体は大きくても、この子は確かに生まれたばかりの赤ちゃんなのだ。 それなら、両親は自分の娘たちのように、子ゆっくりは自分の妹のように、赤ゆっくりは妹が出来たように接してあげればいい。 これが一家の出した結論だった。 「おにいさん!! ゆっくりうたがってごめんね!! まりさたち、この……おちびちゃん? と、いっぱいあそんであげるよ!!」 「おお、偉いぞ、まりさ」 「まりさちゃん、ありがとう」 「ゆっくりまかせてね!!」 こうして、一家の世話が始まった。 一家の中で最初に巨大赤れいむと接触したのは、赤ゆっくりたちだった。 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 「ゆっきゅりちていっちぇね!!」 「なにかあったら、なんでもおねえちゃんたちにいってね!!」 一度やってみたかったお姉ちゃん風を吹かせる赤ゆっくりたち。 しかし、そこは生まれたばかりの巨大赤れいむである。元々ゆっくりは空気が読めないが、それに輪をかけて遠慮がないというか、空気が読めない。 「ゆっ? れいみゅよりちっちゃいにょに、おにぇえちゃんにゃんて、おかちいよ!!」 「ゆっ!?」 痛いところを突かれた赤ゆっくりは、短く呻く。 親まりさですら、最初巨大赤れいむを見たとき、大人だと思ったくらいである。巨大赤れいむがおかしいと思っても不思議ではない。 しかし、そこは水槽の側に控えていた愛で子が、巨大赤れいむを叱りつめる。 「こら、れいむ。お姉ちゃんに、そんな口をきいちゃ駄目でしょ」 「ゆうぅぅ……で、でみょ……」 「でもじゃありません、お姉ちゃんに謝りなさい」 「……おねえちゃん、ゆっきゅりごめんにゃちゃい」 「お前ら、相手は生まれたばかりなんだ。許してやってくれ」 「ゆ、ゆっくりゆるすよ……」 のっけからケチがついた一家と巨大赤れいむとの接触。 若干、嫌な空気が流れ始めるが、そこは年長者の理解ある親まりさが取り成した。 「ゆっ……みんなでなかよくゆっくりしようね!! きょうは、まりさたちがゆっくりあそんであげるからね!! おねえさんのちびちゃんは、なにであそびたい?」 「ゆっ!!」 大好きな飼い主に叱られて気落ちしていた巨大赤れいむだが、親まりさの言葉に目を輝かせ始める。 目の前に好物をぶら下げられると、数秒前のことすら忘れるのが、赤ゆっくりの特性である。 「りぇいむ、ゆっきゅりおにごっごがちたいよ!!」 一匹で生活していた巨大赤れいむは、集団での遊戯に憧れていた。 嘗て、テレビでたくさんのゆっくりが集まってしていた鬼ごっこを、一度遊んでみたかったのである。 しかし、これには愛で子か難色を示した。 「愛で男くん。鬼ごっこしたいって言ってるけど、大丈夫かしら?」 「どういうこと?」 「まりさちゃんたちが、れいむに潰されちゃったら……」 「ああ、それは俺らが注意していれば大丈夫だろう。危なくなったら、すぐに手を入れればいいよ」 「……そうね、分かったわ」 愛で子も納得したことを受け、親まりさが全員の顔を見渡し告げてくる。 「ゆっくりりかいしたよ!! それじゃあ、みんなでおにごっこをやろうね!! まずさいしょは、まりさがおにさんになるよ!! みんなゆっくりしないでにげてね!!」 その言葉に、蜘蛛の子を散らすように、水槽内を駆け回っていく一家と巨大赤れいむ。 まりさは男の躾もあってゆっくりにしては頭がよく、ゆっくり十まで数え終えると、水槽内を駆け始めた。 まずは、巨大赤れいむを追いかける。 別に自分の子供が酷いことを言われたからとか、そんなチッポケな感情からではなく、鬼ごっこをするのに相手にされないのは詰らないだろうという、まりさなりの優しさであった。 「おねえさんのおちびちゃん!! ゆっくりまってね!!」 「ゆうぅ!! こっちにきちゃよ!! ゆっきゅりにげりゅよ!!」 自分が追われていることに気が付いた巨大赤れいむは、親まりさから逃げようと、全力で水槽内を駆け回る。 しかし、これがそもそも間違いの元であった。 前述のとおり、巨大赤れいむは、親まりさの実に5倍の体積がある。 その体格差はしっかりとこの状況にも反映され、親まりさが全力で追いかけても、巨大赤れいむには追い付くことが出来なかった。 「ゆひーゆひーゆひー……おねえさんの……おちびちゃん……ゆっく……り……してね……」 数分後、親まりさは息も絶え絶えといった様子で、トロトロ巨大赤れいむを追い続ける。 しかし、どんなに頑張ろうと体格のハンデは大きかった。 これでは仕方がないと、親まりさは手近にいた自分の子供にタッチをする。 「ゆ、ゆっくり……つかまえ…たよ」 「ゆうぅ、つかまっちゃったよ!! つぎは、れいむがおにさんだよ!! ゆっくりにげてね!!」 鬼になった子れいむが、姉妹や巨大赤れいむを追いかける。 しかし、初めは親まりさ同様、巨大赤れいむを追いかけていた子れいむだったが、自分には追い付けないことをすぐさま理解するや、すぐにターゲットを切り替えた。 子れいむに、親まりさほどの忍耐を要求するのは酷というものである。 子れいむは、妹である赤まりさにタッチをし、次は赤まりさが鬼となった。 しかし、赤まりさは最初から巨大赤れいむを狙う気はなかった。 巨大赤れいむにお姉ちゃんじゃないと言われたことを多少根に持っていることもあったが、それ以上に親まりさと子れいむの様子を見て、自分では巨大赤れいむには追い付けないと理解していたのである。 赤まりさは、態とゆっくり逃げていた親れいむを追いかけタッチした。 その後、鬼は目まぐるしく変化していったが、巨大赤れいむが鬼になることは一度もなかった。 巨大赤れいむはツマらなかった。 一家が構ってくれたのは最初だけで、後は自分そっちのけで、一家だけで鬼ごっこをしているように見えたのだ。 そこには自分と相手の体格差などは全く考慮に入っていない。 当たり前である。巨大赤れいむは、生まれたばかりなのだ。自分が遠慮しなくちゃならないなんて考えは、一切巨大赤れいむの餡子脳にはない。 自身がすべきことは、何事においても全力でゆっくりすることと考えている。 マイクロ一家はそんな巨大赤れいむの気持ちに気がつかない。 当然と言えば当然である。いくら賢いとはいえ、彼女らもまたゆっくりなのだから。 しかし、それを眺めていたギャラリーは理解していた。 次第に巨大赤れいむのテンションが下がるのを見て、これは不味いと思い始めた男は、水槽内で駆け回るマイクロ一家に声をかける。 「おい、お前ら、もう疲れただろ。そろそろゆっくり休んだらどうだ?」 「ゆっ? れいむたち、まだつかれてないよ!!」 「そうだよ!! まだまだいっぱいあそべるよ!!」 ゆっくりらしい、実に空気の読めない発言。 仕方がないと、男は餌で一家の関心を引き付けることにした。 「お菓子をあげるぞ~、美味しいぞ~」 「ゆゆっ!! ゆっくりおかしたいむにするよ!! みんな、ゆっくりあつまってね!!」 親まりさの号令を受けて、巨大赤れいむを含む全員が、親まりさの元に集合してくる。 男は水槽横に置いておいたお菓子の缶の蓋を開ける。 しかしそれを見て、しまったという表情を見せる。 「愛で男くん、どうしたの?」 「あ、いや、まだたくさん残ってると思ってたんだが、思いのほか菓子の量が少なくて……」 「まあ!!」 菓子を詰めた缶の中には、クッキーが二枚入っているだけであった。 男は自分の失態に、唇を噛みしめる。今日、愛で子が来ることは分かっていたのだ。前もって確認し、予め買いだめしておくべきだった。 仕方がないと、男は二枚のクッキーを取り出し、巨大赤れいむに与えてくれと、愛で子に渡してくる。 しかし、愛で子は受け取りを拒否し、逆にマイクロ一家にあげてと遠慮する。 愛で子の気遣いは嬉しいが、ホスト役の男からすれば、自分のマイクロ一家こそ我慢させるべきなのは間違いない。 半ば押しつけるように愛で子の手を取るが、愛で子も愛で子で態度を崩さない。 普段はお淑やかな性格だが、こういうところは頑固で曲げない娘なのだ。元々、育ちのいいお嬢さんなのである。 少しの間、互いに押し付け合っていた二人だが、どちらも引かないと分かるや、仕方がないと折半することで落ち着いた。 男はクッキーを粉々にしてマイクロ一家の前に、愛で子は四等分に分けて、巨大赤ゆっくりの口に持っていった。 「「「「む~しゃむ~しゃ(む~ちぁむ~ちゃ)、しあわせ(ちあわちぇ)~~~♪♪」」」」 ゆっくり独特の食事風景。 全員が美味しそうにクッキーを頬張っている。 しかし巨大赤れいむは、その体の大きさ上、食べる量も当然多く、クッキー一枚では腹の足しにもならなかった。 対して、全員を併せても巨大赤れいむに遥か及ばないマイクロ一家は、未だ粉々のクッキーに舌鼓を打っていた。 それを羨ましそうな視線で眺める巨大赤れいむ。 初めこそ我慢していたのだが、そこは赤ゆっくりの忍耐力である。すぐに欲に負けて、一家の前のクッキーに突進しようとした。 しかし寸でのところで、愛で子の手が巨大赤れいむの進路を塞ぐ。 「ゆっ!?」 「れいむ、あなたは今何をしようとしていたの?」 「ゆ……ゆうぅ……」 「あなたにはちゃんとクッキーを一枚与えたでしょ。それなのにまりさちゃんたちの分を横取りしようなんて、そんな悪い子はお仕置きしますよ」 「ゆうううぅぅぅぅ――――――!!!! ごめんなちゃああああ――――――――いっ!!!!」 愛で子は軽く巨大赤れいむの頭を小突く。 それは衝撃に弱い赤ゆっくりでも全く痛くない形だけのものであったが、痛い痛くない以前に、最愛の飼い主が自分を怒ったことが、巨大赤れいむには耐えられなかった。 「ゆわあああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――ん!!!!」 癇癪持ちの子供のように、巨大赤れいむの鳴き声が部屋中に響き渡る。 男は慌てて慰めようと一家にお菓子を与えてやれと忠告するが、それを愛で子が制止する。 「ちゃんと半分ずつ分けたのだから、そんなことをしてはだめよ」 「しかし……」 「甘やかすだけじゃ、この子の為にもならないわ。私、この子には、しっかりした子に育ってほしいの」 「んん……まあ、その気持ちは理解できるが……」 愛で子の気持ちは、男も大いに理解できる。 男もマイクロ一家を育て上げるのに、決して甘やかすだけではなかった。 時には厳しく叱りつけ、時には目一杯褒めてやる。勉強も教え込んだし、マナーも身につけさせた。飴と鞭を上手に使った結果が、この賢いマイクロ一家であるという自負がある。 しかし、今日はあくまでホストの立場である。その為、粗相がないようにと、ついつい手を出してしまうのだ。 なかなか泣きやまない巨大赤れいむに溜息をつき、愛で子は仕方がないと、今度はやさしく頭を撫で始める。 それを受けて、愛で子が自分を許してくれたのかと考えた巨大赤れいむは、ようやく涙を仕舞い込んだ。 しかし、愛で子はそれだけでは終わらせなかった。自分のしたことについては、しっかりと反省をさせなければならない。 「れいむ。お姉ちゃんたちに、何か言うことがあるでしょ?」 「ゆっ?」 初め、何を言われているのか分からなそうな巨大赤れいむ。 自分がしようとしたことの罪の意識はないのだろう。 「お姉ちゃんたちのお菓子を、横取りしようとしたでしょ。あなたもそんなことされたら嫌でしょ。ちゃんと謝りなさい」 「ゆうぅ……でも、れいみゅ、たべちぇないよ……」 「食べる食べないではなく、しようとしたことが問題なの。素直に謝れないのは、人としてもゆっくりとしても最低よ」 愛で子の言葉に納得のいかない様子の巨大赤れいむ。 そもそも巨大赤れいむには、初めから納得できなかった。 自分は既に食べ終わっているのに、向こうは未だに美味しそうに頬張っている。 向こうのほうが食べる数が多いのに、自分より食べるのが遅い。それは、向こうのほうが、大量の菓子を与えられたことを意味するのではないのか。 子どもというのは、論理より視覚を優先させる生き物である。 長く細いコップと短く太いコップに同じ量の水を入れ、どっちのほうが多いかと問うと、ほとんどの子供が長く細いコップを選ぶという。 そのコップに入った水のほうが、高さが高いからだ。 これと同じで、マイクロ一家の菓子は粉々に砕かれているため、空気を含んで一見大量にあるように見える。 そこに、体格の差や菓子を折半したという事実は含まれていなかった。 その為、巨大赤れいむからすれば、どうしても自分の不手際とは思えなかったのである。 しかし、そうはいっても、最愛の飼い主である愛で子は、厳しい表情で巨大赤れいむを見つめている。 謝るまでは、決して許さないというのが見え見えだ。 この家に来て早々謝罪をさせられ、またもや謝罪するのは、巨大赤れいむのプライドを大いに傷つけたが、愛で子に許してもらえないよりはマシと、渋々一家の目の前に赴き頭を下げる。 「ゆっきゅりごめんなちゃい……」 「まりさたちは、ゆっくりおこってないよ!! ゆっくりげんきをだしてね!!」 親まりさが代表で返事を返したことで、愛で子の吊りあがっていた眉も、とりあえず元に戻った。 そもそも、マイクロ一家からすれば被害にあたたわけではないので、怒る理由がないのだ。 親まりさの空気の読める対応に、ホスト役の男もホッと息をもらす。 愛で子にいいところを見せる意味でも、不穏な空気にならなかった意味でも、親まりさの対応は上出来の部類だった。 後は巨大赤れいむのケアをすればいいと、買い物に行ったとき大量にお菓子を買ってくることを約束し、その場は何とか幕を閉じるのであった。 しかし、巨大赤れいむの餡子脳には、着実に不満が渦巻き始めたのである。 中編?へ
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『Stray 2 ~嫉妬と決意~』 34KB 観察 不運 日常模様 都会 現代 2話 かすがあきです。 注意 anko4465 Stray 1 ~れいむは地域ゆっくり~ の続きです。 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 死なない ゆっくりがいます。 Stray 2 ~嫉妬と決意~ 両親が死んだ翌日、れいむはいつもと同じで掃除をしている。 「ゆぅ…………きょうも ごみさんが いっぱいだよ………」 れいむが暮らす公園は駅と繁華街と住宅街が隣り合っているため、ゴミが多い。 特に夏場は食べ歩きで容器類が不法投棄されたり、花火のなどでゴミが多い。 れいむは暑さを我慢しながら、汚い舌でゴミをゴミ袋へ入れていく。 「ゆ!…………ゆぅ………まただよ……」 掃除をしている れいむの顔が暗くなる。 れいむの視線の先には、所々焦げた小さな饅頭が4つと、黒いとんがり帽子を被った、やはり焦げた大きな饅頭が1つ。 その側で、汚いリボンをつけた大きな饅頭があった。 「この おかざりさんは はじめてみるから むれの ゆっくりじゃないね。」 れいむの言う通り、この饅頭たちは群れに所属していない ゆっくりの遺体である。 「ゆっくりごめんね。」 れいむはそう呟いてから赤ゆの遺体を咥え、ゴミ袋にいれる。 そして、所々黒く焦げている まりさの遺体に歯をあて、小さく千切っていく。 成体ゆっくりの遺体をそのままゴミ袋にいれるの事はゆっくりの力ではできないからだ。 「……ゆっぷ……こげてても……やっぱり くさいよ…… ゆっくりできないけど、がまんだよ………ごめんね、まりさ…… おぼうしも いっしょに すてさせて もらうよ……」 見ず知らずの ゆっくりとはいえ、同族の遺体を噛み千切る事は辛い。 れいむは押し寄せる吐き気と戦いながら、掃除を続ける。 ------ 昨晩、れいむがダンボール箱の中で泣きつかれ眠っている頃、 公園の中心部では若者2人が花火で遊んでいた。 - ッヒューー………ッドーーン!! 「ゆわぁ~~。とっちぇも きりぇーなのじぇ……」×2 「ほんっちょうだね!まるで れいみゅ みちゃいだよ!」×2 「ゆぷぷ。ほんっとうだね、おちびちゃんたち。とっても ゆっくりできるね。」 始めて見る花火に赤ゆっくり4匹(姉れいむ・姉まりさ・妹まりさ・妹れいむ)と れいむが喜ぶ。 笑顔の家族を見て、まりさが ゆっくりとした気持ちになる。 「よかったのぜ。みんなが どれいの もてなしに よろこんでいるのぜ。 これも すべて まりさが さいっきょう だからに ちがいないのぜ! くそにんげんを どれいに できて さいっこうに きぶんが いいのぜ! ゆ!さいっきょうの まりさは ごはんさんを むーしゃむーしゃするのぜ! むーしゃむーしゃ……っしあわっせー!!」 「ゆ!まりさだけ ずるいよ!れいむも もっともっと むーしゃむーしゃするよ!」 「まりちゃ(れいみゅ)もするーー!!」×4 一家は透明な箱の中で駄菓子を食べてより幸せになる。 『ははは、見ろよコイツ等。幸せそうな顔してるぜ?』 缶ビール片手に青年が笑いながら言う。 『いいじゃない。最後の晩餐なんだから。 安くい菓子だけど、生ゴミよりはご馳走でしょうし。』 女性が青年から缶を奪い取りながら言い、ビールを一口飲む。 『まっずーい。やっぱりビールは私の口にあわないわ。』 『リキュールも買ってあるからそっちを飲めばいいのに。 よし、ロケットは終わったから そろそろ手持ち花火にするか。』 「おそらとんでりゅみちゃい!!」 ロケット花火がなくなったのを確認した青年が姉れいむを持ち上げながら言う。 「おねーちゃんずるいのじぇ!!」×2 「れいみゅも!れいみゅも!!」 浮遊感を楽しむ姉れいむを見て、残りの赤ゆっくりたちが自分にもしろと騒ぐ。 「ゆぷぷ。おちびちゃんたち、だいじょうぶだよ。 おとーさんに めいっれいしてもらって たかいたかいを たのしもーね。」 「ゆっくりまかせるのぜ。おい!どれい!! ほかの おちびたちにも たかいたかいを するのぜ!! さっさと しないと この せいっきょうの まりささまが せいっさいするのぜ? ゆあぁ~?きいてるのかぜ?」 まりさが勝ち誇った顔で言う。 この一家、裏路地でゴミ漁りをしながら生活をしていた野良一家である。 ゴミ漁りをして生きている野良ゆっくりは人間との力関係を理解し、卑屈な個体が多い。 しかし、餡子脳のため、 親がどれだけ人間の脅威を教えても理解できずに人間にケンカを売り、殺される子ゆっくりも大量にいる。 が、中には運だけで生き残り、成体まで成長するバカもいる。 まりさと れいむは運だけで生き残り、結婚し、子供までつくった個体である。 子供が生まれ、立派な家が必要→人間の家でお家宣言をしようという発想から、 夕方、虐待派の青年の家(公園の近所にある学生向けアパート)でお家宣言をした愚かな個体である。 人間の家で、それも虐待派の人間の家で お家宣言をしたのだ、もはやこの ゆっくりたちに命はない。 姉れいむは透明な箱(ビックサイズ)に入れられる。 「ゆ!もっちょ れいみゅは おそらを とびたいよ! さっさとしてね!すぐで いいよ!!」 地面に下ろされたことが不満な姉れいむが青年に向かって叫ぶ。 『ねぇ、れいむ。れいむってさ、花火好き?』 リキュールが入った缶を片手に女性が尋ねる。 「ゆ?はなびしゃん?すきだよ!はなびしゃんは とっちぇも きりぇーなんだよ! まるで れいみゅ みたいに きりぇーで れいみゅ、はなびしゃんが だいっすきだよ!」 『そっか。それじゃぁ、れいむに花火を見せてあげるね。』 『ほい、火……』 ビールを飲みながら青年がライターを女性の手元に近づける。 手には、花火が握られている。 -ッジュッボ………ッシューーーー!!! 花火から勢いよく火が飛び出る。 「ゆっわぁーー!!ちょっちぇも きりぇーだよ!!」 『でしょ、もっと近くで見せてあげるね。』 「ゆ!なかなか きが きく ばばあだにぇ! ちょくっべつに どりぇーに してあげるきゃら かんしゃちてにぇ!! おれいは あみゃあみゃでいいよ!とくもりで いいよ!!」 額に青筋を立てながら、女性は花火を透明な箱の中にいる姉れいむにゆっくり向ける。 「ゆわぁーー!!れいみゅ みたいに きれ っぎゃぁぁああ!!! ああ!!っあじゅいぃいいいい!!!」 火花が姉れいむの汚い身体にかかり、姉れいむが絶叫をあげる。 『お!喜んでもらえてなによりだ。ほら、もっと花火を見せてやるからな。』 青年が女性の花火の側に別の花火を近づける。 -ッジュッボ………ッシューーーー!!! 青年の持つ花火に火が燃え移り、姉れいむ目掛けて勢いよく火が飛び出る。 「っあじゅいぃいい!!だっだじゅげ!! っゆっぎゃぁぁああ!!!!だじゅげでぇええ!!おぎゃぁじゃぁぁあん!!!」 姉れいむは絶叫をあげながら透明な箱の中を必死に跳ねる。 が、ビックサイズとはいえ箱の中だ。逃げれる場所などない。 「おぢびぃいいい!!」 「おぢびじゃぁあん!!」 まりさと れいむが姉れいむを助けようと透明な箱の中で跳ねているが無駄な努力である。 「っゆっぎゃぁああ!!!あ!!!あじゅいぃい!!めぇぇええ!!!めぎゃぁあああ!!! っめっぎゃぁああああ!!!!っだ!!だじゅげじぇぇええええ!!!あっじゃぁあああ!!!」 眼に火花が入ったようで、姉れいむが一際大きな絶叫をあげる。 『ほら、お前も楽しめよ。』 「おそらとんでりゅみちゃい!」 青年が姉まりさをもちあげ、姉れいむの入った透明な箱に近づける。 「やめりゅのじぇぇえ!!あ!あそこは ゆっくりできないのじぇぇえ!!」 姉れいむと同じ所に入れられることを察した姉まりさが叫ぶ。 『そっか、いやなのか。じゃぁ まりさはあの箱の中にいはいれないよ。』 青年は姉まりさの要望を聞き入れた。 『でも、その代わり、帽子をいれておこう。』 「まりちゃの おぼうちぎゃぁあああ!!!」 笑顔の青年は、姉まりさから帽子をとりあげ、帽子を透明な箱にいれる。 「あじゅいぃいい!!あじゅぃぃいい!!だれぎゃぁあ!!れ!れいみゅをたちゅけちぇぇぇ!!! っゆ!!お!!おぼうちじゃぁあ!!」 透明な箱の中で、姉れいむは黒とんがり帽子を見つける。 「こ、この おぼうちを かぶれば げすな はなびしゃんから にげれりゅよ!! ゆぷぷ!!れいみゅったら かちこしゅぎりゅよ!!」 姉れいむは笑いながらそう言い、姉まりさの帽子を被る。 ちょうど花火の勢いが弱まったこともあり、姉れいむは火の脅威から一時的に逃れることができた。 「ゆぷぷ。もう げすな はなびしゃん なんて こわきゅないよ! こうっさん したら さっさと あまあまを もってきてにぇ!ときゅもりでいいよ!!」 勝利を確信した姉れいむが笑顔で宣言をする。 そんな姉れいむに、姉まりさが泣きながら叫ぶ。 「かえちゅのじぇぇえ!!まりちゃの おぼうちをぉお!!」 「ゆぴゅぴゅ。なにいってりゅにょ?ばかなにょ?あほなにょ? おぼうちしゃんで れいみゅは てっぺきの ぼうぎょを てにいれちゃんだよ! だめに きまっちぇるでしょ! そんなことも りかい できないにゃんて、おぼうちの ない げしゅは なんて おりょかなにょ? おお、おりょかおりょか。」 「ゆっがぁああ!!がえじぇぇええ!!」 姉まりさは飛びかかろうとするが青年に握られており、動くことができない。 『お、中々意外な行動をとったな。この れいむ。』 『本当ね。でも、そのおかげで楽しめそうよ。』 女性が新しい花火に火をつけながら笑顔で言う。 -ッジュッボ………ッシューーーー!!! 花火から勢いよく飛び出る火が帽子にあたる。 「ゆぴゅぴゅ。むだだよ! れいみゅには おぼうちが あるから はなびしゃんは こわきゅにゃ…… っゆっぎゃぁああ!!あ!!あぢゅいぃいI!! ど!どぼぢじぇぇえ!!??どぼじで おぼうじを がぶっじぇりゅのにいぃい!!??」 帽子のおかげで火の粉からは身を守れても熱からは身を守ることはできない。 女性は花火を帽子のリボン付近に近づけ、帽子に火をつける。 「っゆっぎゃぁああ!!!ああ!!ああああああぁああ!!!!」 頭部からの熱に姉れいむが絶叫をあげ、帽子を舌で投げ飛ばす。 「っば!!ばりじゃの おぼうじぎゃぁぁああ!!!」 大事な帽子に火がついたとあって、姉まりさが絶叫をあげる。 『ほら、まりさ。帽子をとりかえさないと。』 青年が姉まりさを握る力を緩めた。 姉まりさは急いで青年の手から、透明な箱の中へと飛び移り、顔面を強打した。 「っぐっべぇぇ………い、いじゃいのじぇ…… で、でみょ、いたいことより、おぼうしを………いそぐのじぇ!!」 痛みに堪えながら、姉まりさは燃えている帽子に近づき、帽子を守るために愚かにも燃え盛る炎を舐める。 「ぎえじぇにぇ!!げしゅにゃ ほのおじゃんは ざっざど ぎえじぇねぇ!! ぺーりょぺー…ゆっぎゃぁあああ!!あああ!!あじゅいぃいい!!!あっじゅいぃいいい!!!!」 結果、姉まりさは火傷を負い、痛みで箱の中を暴れる。 『ははは。火を消せるはずないのに、まりさ種って本当にバカだよね。いや、ゆっくり全部か。』 姉まりさの行動を見て青年は笑う。そして、花火に火をつけ、姉れいむと姉まりさとに向ける。 姉れいむと姉まりさは花火と帽子を燃やす炎から逃れようと透明な箱の中を必死に走り回る。 が、どれだけ逃げても箱の中のため、逃げ場所はない。 2匹の身体に無数の火傷ができていく。 『あれ?動きが鈍くなってきた?』 「た……たじゅげ……」 「ば……まりぢゃ……じにじゃくにゃ………」 2匹は体力的に限界がきており、火が近くにきても跳ねることなくズリズリと這いずるだけだ。 『やっぱり赤ゆは体力が少ないな。まぁ、しかたがない。次の赤ゆを入れるか。』 「っゆっびぃいいい!!」 消えた花火を姉れいむに強く押し付けてから水の張ったバケツに捨てた青年が透明な箱に手を伸ばす。 「ぐるにゃぁぁああ!!」×2 「おちびちゃん!ゆっくり おかーさんの おくちに かくれてね! おかーさんの おくちのなかは あんっぜんだよ!」 「おちびは さいっきょうの まりさが まもるのぜ!! くらうのぜ!さいっきょうの まりさの さいっきょの ぷくーを!ぷくーー!!」 透明な箱の中では、れいむが赤ゆを口内に入れようとしている。 その隣で、家族を守るため、自称最強である最弱のまりさが頬を膨らませている。 何をしても無駄なのだが、餡子脳のため、そのことに気がついていない。 「おそらとんでりゅみちゃい!!」×2 今ごろ 口に隠れろと言う れいむに本当に子供を守る気があるのかを疑問に思いながら、 青年は妹まりさ・妹れいむを箱から取り出す。 「おちびぃいい!!!がえぜぇえ!! せいっさい されたくなかったら、さっさと おちびを かえすのっぜぇええ!!」 「おちびちゃぁあああん!! まりざぁああ!!ざっざど おちびちゃんを どりがえじでぇええ!!」 喚く2匹を無視して、青年は透明な箱の中に赤ゆたちを入れる。 「っゆべぇ……れ、れいみゅおねーしゃん、だ、だいじょうかじぇ?」 「っゆべぇ……や、やめてにぇ…… にんげんしゃん!おねがいちましゅ!きゃわいい きゃわいい れいみゅだけは みのがちちぇにぇ!」 火傷を負った姉の心配をする妹まりさと、命乞いをする妹れいむである。 『うわぁ……さっすがれいむ種。平気で姉妹を見捨てるわね。』 『虫唾がはしるから当然制裁だな。』 -ッジュッボ………ッシューーーー!!! 助ける気などまったくない2人が花火に火をつけ、赤ゆたちに向ける。 「っゆっぎゃぁあああああああああああああ!!!」×2 まだ元気がある2匹が絶叫をあげ、箱の中を飛び跳ねる。 「おちびぢゃぁあああん!!まりざぁああ!! さっさと くそにんげんを せいっさいして おちびちゃんを たすげでぇええ!!」 「わかってるのぜ!! おいぃいい!!ごの ぐぞにんげんがぁあああ!! いますぐ おちびを たすけるのぜぇええ!!いまなら ぜんごろしで かんべん してやるのぜぇえ!!」 『いつも思うんだけどさ、全殺しで勘弁してやるってどういう意味なの?』 『さぁ?ゆっくりの言葉なんて一々考えるなよ。お、そうだ!』 「おそらとんでるみたい!」 青年は まりさを持ち上げ、女性のほうに まりさの足を向ける。 『ねぇ、悪いけどライターで足焼きをしてくれない?』 『ん?いいよ。』 「な!なにを いってるのぜ!? どれいの ぶんっざいで さいっきょうの まりささまに きがいを くわえるつもりかぜ? げらげらげらげら。そんなのは ふかのうさんなのぜ。 まったく、これだから くそにんげんは おろかなの っぜぇえええええええ!!?? っゆっぎゃぁぁあ!??ああああぁあ!!あづいぃいいい!!!」 『ほら、まりさ。最強なんでしょ?私の攻撃なんて痛くも痒くもないんでしょ? なんで そんな大きな悲鳴をあげるの?』 女性がニヤニヤしながら言うが、その声は まりさには届いていない。 数分後、青年は脚部が炭化した まりさの足にリキュールをかける。 糖分を含んでいるため、痛み止めになるからだ。 そして、まりさを赤ゆたちのいる箱の中にいれる。 「おとーじゃぁああん!!」×2 「おどうじゃ………」×2 箱に入ってきたまりさを見て、4匹は笑顔になった。これで助かると信じているのだ。 動くだけの元気がある2匹はまりさの側にかけより、頬を擦っている。 「おちび!!もう だいっじょうぶなのぜ! この さいっきょうの おとーさんが おちびたちを ぜったいに まもってみせるのぜ!!」 『粋がるのはいいけどさ、どうやって?』 「げらげらげらげら! そんなことも わからいのかぜ?まったく、これだから くそにんげんは おろかなのぜ。 この さいっきょうの まりささまが すぐに せいっさいしていやるのぜ! ないたって ゆるさいのぜ。かくごするのぜ! っゆ?ゆゆ??」 まりさが上半身(?)をねじる。 「ゆ?っど!どぼじで あんよが うごかないのぜ!? う!うごくのぜ!!さいっきょうの まりさの さいっきょうの あんよさん! うごいて さっさと あの くそにんげんを せいっさいするのぜぇぇええ!!」 『ははは。頑張ってね、まりさ。はやくしないと、子供が大変よ。』 花火に火をつけながら女性が言う。 そして、火のついた花火を、姉まりさ・姉れいむに近づける。 「っあ゛!あづいぃいいい!!!だ!だじゅげじぇぇええ!!!おじょうじゃぁああん!!×2 動くだけの力がない2匹は父であるまりさに助けを求めてただ叫ぶだけだ。 「おちびぃいい!!!まってるのぜぇえぇええ!!すぐに たすけるのぜ!! うごげぇええ!!うごくのぜぇええ!!まりさの さいっきょうの あんよざん!! うごがないど!!うごがないと おちびがぁああああ!!!っゆっがぁああ!!うごげぇええ!! うごげ!うごげ!!うごげ!!うごいて れいむにの かわいい おちびを たすけるのっぜぇええ!!!!」 「がんばりゅのじぇ!!さいっきょうの まりちゃの おとうしゃんなら できるのじぇ!! はやくちて れいみゅおねーしゃんを たすけりゅのじぇ!!」 「おちょうしゃん!はやく くしょにんげんを せいっしゃしちて れいみゅを まもってにぇ!!すぐでいいよ!!」 妹まりさ・妹れいむの応援も虚しく、まりさは動くことができない。ただ、醜く身体をねじるだけだ。 「あ゛あぁああ!!ぼ!!ぼっど……ぼっど ゆっぎゅぢ……ちたが……じゃ……」×2 花火に晒され続けた2匹が息を引き取った。 「おちびぃいいいい!!!!」 まりさが箱の中で絶叫をあげる。 『まったく、子供を助けないだなんて最低な親だな。 そんな最低な まりさにはお仕置きとして帽子を没収だ。』 「ゆっがぁああ!!!がえじでぇええ!! おでがい じばずぅう!!がえじでぐだざいぃいい!!おでがいじばずぅうう!! ぞれが ないどぉお!!ぞれげないど ゆっぐりでぎないんでずぅううう!!!おでがいじばずぅうう!!」 帽子を失った途端、先ほどまでの威勢はなくなり まりさは涙を流しながら帽子を返すように懇願する。 「おぼうちの ない げしゅおやは ちねーー!!ぷきゅーー!!!」×2 「お!おちびぃい!!ど!どぼじで ぞんなごどいうのぉおおお!!?? おどうざんでしょぉおお!!!??」 子ゆっくり2匹は、帽子を失くしたまりさを突然見下す。 『うわぁ~~。 帽子なくしたぐらいで子供から見下されるだなんて…… これだから ゆっくりって嫌い。』 帽子なくした まりさに親としての威厳などありはしない。 飾りがない個体は飾りを持つ個体から見下される存在となるのだ。 先ほど、姉まりさのことを誰も心配しなかったのは、姉まりさに帽子がなかったからである。 これは、ゆっくりの習性であるが、女性は ゆっくりのこういう習性が嫌いである。 愚かな習性を見ると、女性は制裁という名のゆ虐をしたくなる。 『ははは。確かにな。』 女性とは反対に、青年は ゆっくりの こういう愚かな習性が好きであった。 愚かな習性のお陰で罪悪感もなくゆ虐ができるからだ。 青年は、大した理由もなく持ち歩いているナイフを取り出し、まりさの額に刃をあてる。 『花火の土台を作らないとな……よっと……』 青年が まりさの頭をナイフで削ぎ、まりさの頭頂部が平らになる。 「っゆっぎゃあぁああああああ!!!ああぁあ!!あだばがぁあああああ!!!!」 「ゆぴゅぴゅ。げしゅな おとーしゃんが ないてりゅよ。」 「げりゃげりゃげりゃ。さいっきょうの まりちゃと ちがっちぇ、さいっじゃきゅな おとーしゃん らちいのじぇ。 まったく、はずかちいのじぇ!ちょっと あたまを けがしたぐらいで さわぎすぎなのじぇ!」 「ゆぷぷ。おぼうしのない まりさには おにあいの すがただね。 おお、おろかおろか。もっと くるしんでいいよ!」 まりさの絶叫を聞き、家族は笑顔である。飾りを失った個体に対しては愛情も情けもないのだ。 『まったく、こいつらは。まりさの次は自分だということを考えないのかね?』 『あはは。そんな頭あるはずないじゃん。餡子脳なんだから。 こいつらの こういうところって、あたし大嫌い。』 飲み終えたリキュールの缶を手で潰しながた女性が言う。その眼は冷たく、ゆっくりを見下している。 『まぁまぁ。そんな愚かな ゆっくりには制裁がお似合いだろ?』 女性とは反対に笑顔の青年がまりさの頭にドラゴン花火をセットする。 「っゆっぎゃぁああ!!やべ!やべでぇえ!! ああぁぁ!!あだばに べんなの おがないでぐざいぃい!! やべでぇえ!!ぐりぐりじないでぇええ!!おでがいじばずぅううう!!! いじゃぁぁああ!!!やじゃぁあああ!!!なにかが はいっでぐるぅうううう!!!」 ドラゴン花火が餡子に深々と刺し込まれ、まりさは絶叫をあげる。 喚く まりさを無視して、青年がドラゴン花火に火をつけた。 -ッシューーーー!!!ッジュッボォーーーー!!! 『あはは!すっごくキレー!!』 『ほんとうだ。』 「ゆぷぷ。まりさの あたまに きれーな おはなさんがさいたよ。」 「ゆぴゅぴゅ。とっちぇも きりぇーだよ。」 「げしゅ おやも たまには やくに たちゅのじぇ。」 まりさから吹き出る七色の炎に見とれる2人と3匹。 「っゆっぎゃあぁあ!!あぁぁあ!!あづいぃいいい!! だずげだずげ!!だじゅげでぇえええええええええ!!!」 花火の熱と、降りかかる火の粉でまりさは絶叫をあげる。 助けを求めるが、誰も まりさを助けるつもりはない。 -………ッジュ!………ッジュッボォーーー!!! -………ッジュ!………ッジュッボォーーー!!! ドラゴン花火を見ながら、青年はネズミ花火を火をつけ、透明な箱の中にいれていく。 「っゆっぎゃぁああ!!いっじゃあぁあ!!あじゅぃいい!!」×3 箱の中を でたらめに回転する複数のネズミ花火に、まりさ・妹まりさ・妹れいむは悲鳴をあげる。 「おちびちゃぁぁあん!!ゆっくりして!ゆっくりして!!ゆっくりするんだよぉおお!!!」 飾りを失っていない子供の心配をする れいむが、透明な箱から飛び出ようと顔面を壁に押し付けているが、意味はない。 『あはは。ほら、れいむ。頑張って子供を助けてね、手伝ってあげるからさ。』 女性は笑いながら れいむを透明な箱から取り出す。 『お、優しいね。さっすが俺の彼女。ほら、れいむ。優しい彼女にお礼は?』 「おちびちゃぁぁあん!まっででね!すぐに おかーさんが たすけるよぉおおお!!!」 青年の言葉は れいむには届いておらず、れいむは泣きながら まりさたちが入った透明な箱に向かって跳ねる。 「っゆっべぇええ!!!………あ!あづいぃいいいい!!!」 透明な箱に顔面を押し付けた れいむは、箱から跳び退く。箱が熱を持っているのだ。 「ゆがぁぁあ……げすな かべさんは あつくて ちかづけないよ……… ど、どうすれば いいの?どうすれば おちびちゃんを たすけれるのぉおお?」 「ぎゃわいい ぎゃわいい れいみゅを だじゅげじぇぇえ!!おかぁじゃぁああん!」 「おがぁじゃぁああん!!だ!っだじゅげじぇぇええ!!」 「おちびぢゃぁあん!!ゆっぐりずるんだよ!!ぞうずれば ぎっど だずがるよぉおお!!!」 子供は助けたいが、危険は一切犯したくない れいむはアドバイスを叫ぶ。 この状況下でどうしたら ゆっくりできるのか? 仮に ゆっくりできたところで危険は回避されない。 れいむのアドバイスは れいむのように全くもって役に立たない。 「ぜいっさい ちてやりゅのじぇ!!さいっきょうの まりちゃが げすな はなびしゃんを せいっさいすりゅのじぇ!!」 妹まりさは愚かにもネズミ花火に向かって口をあけて突進する。 「こにゃいでぇえ!!れいみゅが きゃわいすぎるからって、すとーかーだなんてゆっきゅりできにゃいよ!! れいみゅ、はなびしゃんなんで だいきりゃいだよ!!」 妹れいむはネズミ花火から逃れようとするが、恐怖で眼を閉じデタラメに跳ねている。 そして、2匹はネズミ花火に激突し、動けなくなり、身体を焼かれ、死んでいった。 「っだずげ!だずげ!!!っあっづぁぁあああ!!っゆっぎゃぁぁああああ!! っぐっぼぉおおおおお!!!ぐぶぶぶっばあぁあああ!!! っゆっばぁあぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!」 まりさの口内にネズミ花火が入り、まりさの体内で暴れる。 頭と口から火をあげながら、まりさは辞世の句を詠むこともできずに息絶えた。 「おちびじゃん……れ、れいむの……かわいい かわいい れいむの おちびちゃんが……」 花火が収まり、焦げ饅頭が入った箱を見ながら れいむが泣きながら呟く。 『やだな、れいむ。死んだのは子供だけじゃないだろ?生きていく上で、もっと大事なものを失っただろ?』 「ゆ?どういうこと?おちびちゃんよりも だいじなものなんて ないよ?」 青年が焦げた饅頭に まりさに帽子をかぶせた。 途端、れいむの顔色が悪くなる。 「っば!ばりっざぁぁああ!!!ど!どぼじで ばりざが じんでるのぉおおおお!!!」 苦しむ まりさを笑って見ていた者の発言とは思えないことを言う れいむである。 「おぎでぇえええ!! ゆっくり! ば!ばりざが いないど、 ゆっくり! だれが ごばんざんを ゆっくり! もってぐるのぉおお!!?? だれが ゆっくり! おちびじゃんの せわを ずるのぉおおお!!?? おでがい!!いぎがえっでぇええええ!! ゆっくり! れ!れいぶを びどりにじないでぇえええ!! れいぶを ゆっぐりざぜるのが ばりざの ぎむでじょうがぁああああああ!!!! ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!」 大事な子供を失い、愛する(?)まりさを失った れいむ。 孤独を嫌い、労働を嫌う れいむにとって、 一緒に過ごす家族・生活を支える番を失ったことは非ゆっくり症を発症させるには十分な悲劇であった。 なお、餡子脳の為、帽子がない まりさが苦しんでいたことを忘れており、 帽子なしの死骸を番とは認識できていなかった。 『あれ?非ゆっくり症?なぁ、コイツに薬を喰わせてなかったの?』 青年が れいむの非ゆっくり症の発症に驚きながら女性に聞く。 『あ、ごめん。薬食べさせるの忘れてた……』 申し訳なさそうに謝る女性。 『そっか。まぁ、いいよ。花火もなくなったことだし。にしても、うるさいな。』 「ゴメンね。あたしが薬を忘れたばっかりに。 おわびに、れいむは あたしが処分するね。』 「ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり! ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっぴ!!!!……………」 女性は待針を取り出し、れいむの額に刺し込む。 中枢餡を突かれた れいむはそのまま絶命した。 『さ、おわったよ。はやく帰って お風呂にはいって いいことしよーよ。』 『お!そうこなくっちゃ。一緒に入ろうな。』 青年は笑顔で透明な箱を逆さまにし、ゴミを地面にばら撒きながら言う。 そして、バケツの水をゴミにかけ、火の始末をした。 『よし、こうしておけば そのうち公園の ゆっくりが勝手に掃除するだろ。』 『あはは。同族の死骸の処分させるだなんて、可愛そうなことさせるね。 きっと、公園の ゆっくりから恨まれるよ。』 『いやいや、俺みたいのがゴミを公園に捨てることで、 公園のゆっくりの生存が認められるわけだ。 反対に感謝されているに違いない。』 2人は手をつなぎ、笑顔で公園から立ち去る。 2人がいた場所には、ゴミが散乱している。 ------ セミが鳴く中、れいむは昨晩殺された ゆっくり一家の遺体の片付けを続ける。 まりさの遺体をゴミ袋におさめた後、れいむの遺体へと近づく。 「ごめんね、れいむ。」 遺体に謝ってから、れいむは口を大きくあけ、遺体の頬に噛みついた。 口内が死臭に犯される。何度味わってもこの臭いに慣れることはない。 れいむは吐き気を我慢しながら、遺体を小さく千切っていく。 「っゆぴ!?」 口内に突然鋭い痛みが発生し、れいむは遺体から口をはなし、飛び退いた。 口内を舌で舐めながら、れいむは遺体を注意深く見る。 「ゆ?ゆゆ??これは………まちばりさん? そっか、このれいむは まちばりさんで あんこさんを つかれて しんじゃったんだね……」 昔、友人のちぇんが針で殺されるところを見ていたことがある。 嫌な事を思いだし、憂鬱な気分になるが、それでも仕事はしなくてはならない。 れいむは針をさけて遺体の片付けをした。 片付けを終えた れいむは まわりを見渡す。 「ゆぅ………もえないごみの ごみぶくろさんを もった ゆっくりが いないよ…」 いつもなら、隣のダンボール箱に住むまりさや、その妹のれいむと一緒に掃除をするのだが、今日は誰とも話をしたくなく、一人で掃除をしている。 そのため、れいむは燃えるゴミ袋しか持っておらず、針を捨てたくても燃えないゴミ用のゴミ袋を持った ゆっくりがいないのだ。 「ゆぅ………まちばりさんを ここに おいて おいたら、ゆっくりが けがしちゃうよ…… どうしよう………っゆ!そうだ!!」 待針の処分に頭を悩ませた れいむだが、名案を思いついた。 れいむは待針を咥え、揉み上げを口に近づける。 そして、右の揉み上げの中に待針をしまう。 「っゆ!すこし うごかしにくいけど、これで まちばりさんを ゆっくり はこべるよ! ゆぷぷ。れいむったら かしこすぎて こわいぐらいだよ! こんな かしこくて かわいい れいむ だから きっと きょうこそは かいゆっくりに なれるよね? ゆーん。なんだか きぶんが よくなってきたよ!ゆっくりー!!」 気分がよくなった れいむは笑顔でゴミ袋を咥え、歩き出す。 ゴミを運ぶ途中で れいむは、噴水に寄ることにした。 暑くて喉が渇いたこともあるが、死臭で臭くなった口内を洗いたかったのだ。 「ごーくごーく……ごーくごーく…… っぷはぁ……おみずさんは ゆっくりできるよ。」 水を飲み終えた後、れいむは汚い舌で噴水の水をすくう。 「ゆ!かいゆっくりに なるためには からだを きれーきれーに しないとね!」 笑顔の れいむは水で身体を洗う。 裏路地等で暮らす野良よりは 綺麗だが、石鹸もシャワーもないので それなりである。 特に髪は洗髪の手段も知識もないため、ベタベタで不潔であるが、れいむはそのことを知らない。 「ゆ!きれーに なったよ!ゆぷぷ。れいむの かわいさに ますます みがきがかかったね。 ゆーん。なんだか きょうは きぶんが いいよ! おさの ところにいくまえだけど、すこしだけ おうたを うたっちゃうよ! まったりのひ~♪ゆっくりのひ~♪すっきりのひ~♪♪」 セミの鳴き声とれいむの歌声が公園に広がる。 「おねーさん。ゆっくりしていってくださいね。 あと、とても すてきな おうたです。とっても ゆっくりしていますね」 「ゆっくりしていってね!!!ゆ?」 声をかけられ、れいむは反射で返事をし、振り返る。 振り返った先には、胴付き金バッチの さなえがいた。 「ゆ………ま、まさか さなえって れいむの いもーとの さなえ?」 「はい。そうです。おねーさんの いもーとの さなえです。 おひさしぶりです。おねーさん。」 さなえは微笑み、れいむと話しやすいように屈む。 れいむが石段の上にいたこともあり、2匹の顔の高さはほぼ同じになった。 「ゆわぁ………いもーと……すっごく きれーだよ…… すっごく ゆっくりしているよ………」 さなえの顔を見て、れいむは思ったことを口にした。 同時に、劣等感に襲われた。 毎日噴水の水で身体を綺麗にしており、自分の美しさには それなりの自信があった。 が、さなえの白くて柔らかそうでキズがまったくない肌。潤いのある唇。 そして、自分とはまったく違う、サラサラで艶のある美しい髪。 一緒に暮らしていた頃は差なんてなかった。 いや、むしろ自分の方が綺麗だったハズだ。 飼いゆっくりになり、自分よりもはるかに美しくなった妹に れいむは嫉妬する。 「ほんとうですか?ありがとうございます。 まいにち おにーさんに ていれして もらってますから。」 さなえが照れながら言う。 「そ、そうなんだ。さすが かいゆっくりだね。うらやましいよ。」 「でも、さなえは まいにち さびしいんです。 だって、おにーさんは やさしいけど、おとーさんや おかーさん。 それに、おねーさんと あえませんから。 でも、おにーさんが どうつきなったら あいにいって いいって いってくれました。 だから、さなえ どうつきに なるように まいにち おねがいしてたんです。 そしたら、きのう おきたら どうつきに なっていました。 おねーさん。おとーさんたちは ゆっくりしていますか? さなえ、おにーさんに たのんで おみやげの あまあまを もらってきました。 おうちで みんなで たべましょうよ。」 さなえが笑顔で近況報告をする。 姉との再会が嬉しいのか、さなえは れいむの顔が暗い事に気がつくことなく、話をする。 「……………いないよ………」 「え?」 「おとーさんも おかーさんも、おそらの ゆっくりぷれいすに いっちゃたよ。 だから、もう ………もう ここには いないよ………」 れいむが涙ぐみながら言い、さなえの笑顔が曇った。 「………な、なんなの!? くるなら もっと はやくきて れいむたちを かいゆっくりに してくれれば よかったのに!! いもーとが ゆっくりしすぎてるから、そんな かみさんを きれーきれーに なんてしてるから!! だから おとーさんも おかーさんも しんじゃったんだよ!!」 れいむは涙を流しながら叫ぶ。 「でもね!もういいよ!とくっべつに ゆるしてあげるから かんしゃしてね! はやく れいむも いもーとの おうちに つれていってね!れいむも かいゆっくりにしてね! そしたら あまあまを ちょうだいね!とくもりで いいよ!!」 「………………おねーさん………ごめんなさい。 それは ……その……できません………」 さなえは申し訳なさそうな顔をしながら言う。 「はぁあああ!!??どぼじで ぞんなごど いうのぉおおお!!?? そんな うそさんは ゆっくりできないでしょうがぁあぁぁあ!!」 「おにーさんが、さなえの かぞくまで かうことは できないって……」 「その じじいを せっとくするのが いぼーどの やぐめでじょぉおおお!!?? いいがら、ざっざっど そいづを せっとくじろぉおおおおお!!!」 「ごめんなさい……がんばったけど、むりでした。 その……おにーさんは、きしょうしゅしか かいたくないそうです。 だから、その………つうじょうしゅの おねーさんたちは かえないって………」 さなえも、家族と一緒に暮らしたいと考えている。 飼い主に何度となく懇願したが、答えはいつも No であった。 さなえにとって優しい飼い主であったが、この願いだけは聞き入れてもらえなかった。 これは、飼い主が多頭飼いをする気がないことと、稀少種にしか興味がないからである。 「ごめんで ずむがぁあああああ!! ぞんなの びぎょうだよ!!きじょうじゅだがら がいゆっぐりに なるだなんで!! れいぶも がいゆっぐりに なりだいんだよぉおおお!!! がいゆっぐりになって、まいにち あまあまを たべて、おびるねをじで、ゆっぐりじだいんだよぉおおお!! ごごは ゆっぐり でぎないんだよぉおお!!れいぶは ゆっぐり゛じだいんだぁああ!! いいがら ゆっぐりざぜろぉおおおおおお!!!!」 「……ほんとうに ごめんなさい。 あまあまは、おうちに おいておきますから たべてくださいね…… また きますから………そのときは いっしょに ゆっくりさせてくださいね……」 そう言って、さなえは走り出す。その目には涙が溜まっている。 両親の死を知り、姉から無理を言われたのだ。 そして、姉と一緒にゆっくりできなかったことが悲しいからだ。 「ゆっぐりなんて でぎるがぁああああ!!! れいぶは ちいきゆっくりなんだよぉおおお!!!のらと おなじで ゆっぐりでぎないんだよぉおおおお!!! きょうにも しんじゃうかも しれないんだよぉおおおおお!!!! がいゆっぐりの いぼーどどは ちがうんだよぉおお!!かわいぞうなんだよぉおおおお!!! だがらぁああ!!!だがら れいぶも がいゆっぐりじろぉおおおお!!! ごの むのーの いぼーどがぁああ!!きじょーじゅだがらっで いいぎになるなぁあああ!! れいぶのぼうが ゆっぐりじでるんだぁああああ!!!もう にどど ぐるなぁああああ!!!」 れいむはさなえの背中に向かって叫ぶ。 さなえは何も言うことなく、ただ涙を流しながら立ち去った。 ------ 夜、元気なく家に戻った れいむは菓子を見つけた。 さなえが置いていった菓子で、とても美味しそうだ。 長ぱちゅりーから支給された ゆっくりフード・狩りでとったセミと菓子を見比べる。 どう贔屓目に見ても、菓子のほうが美味しそうだ。 必死に働く自分よりも、何もしてない さなえのほうが美味しいものを用意できる。 地域ゆっくりと飼いゆっくりとの違いを感じ、れいむは激しい劣等感に襲われ、涙を流す。 「むーじゃむーじゃ……ごっぐん……」 れいむが泣きながら菓子を食べる。 甘い味は れいむに幸せを与えるハズだが、心は満たされない。 妹は毎日こんな美味しいものを食べているのだろうか? 自分の食事との差を実感し、れいむの劣等感が増していく。 「ひどいよ……いもーとばっかり ゆっくりして……」 れいむが呟きながら妹の綺麗な姿、ゆっくりした姿を思い出す。 「ゆぅ………ごべんね……いぼーと…… ひどいこと いっちゃって………」 れいむは ここにはいない妹に向かって謝る。 興奮して酷いことを言ったことを自覚しているのだ。 自分が飼いゆっくりではなく、両親が死んだことは妹のせいではない。 頭では理解できても、心が追いつかなかった。 ゆっくりしている妹を見て、嫉妬し、ゆっくりできないことを全て妹のせいだと決めつけてしまった。 「でも、いもーとは ゆっくりしてたよ…… さすが かいゆっくりだよ………れいむも いつか ぜったいに…… ゆぅ…………わからないよ………どうしたら かいゆっくりに なれるの?」 れいむは餡子脳でどうしたら飼いゆっくになれるかを考える。 毎晩考えていることだが、答えは未だに見つからない。 友人や長ぱちゅりーにも相談しているが、正しい答えはまだ見つかっていない。 ただ、これまでに飼いゆっくりになれた仲間や、逆に捨てられてた ゆっくりを観察して分かったこともある。 ①人間は身なりが綺麗で食事のマナーを守れるゆっくりを飼いゆっくりにする。 ②人間は我侭を言わない ゆっくりを飼いゆっくりにする。 ③人間は稀少種を飼いゆっくりにする。 自分はれいむ種で③の条件は満たせないが、①と②は満たしている。 しかし、未だに飼いゆっくりにはなれない。何が足りないのだろうか? ちなみに、③の条件を満たしていれば、妹のように①の条件を満たしていなくても飼いゆっくりになれることが分かっている。 この事から、れいむは稀少種が羨ましく、妹に嫉妬している。 れいむは餡子脳をフル回転させるが答えはでてこない。 そもそも、明確な答えなどない。強いて言えば、【運】であろうか。 「ゆぅ~~~………かんがえすぎたら あたまが いたくなってきたよ…… っゆっぴ!?」 知恵熱で熱くなった頭を揉み上げでさすると、れいむの頭に痛みが走った。 慌てて揉み上げをはなし、揉み上げを凝視すると、待針が見えた。 「ゆ?そっか、まちばりさんを すてるのを わすれてたよ。 れいむったら うっかりさんだよ。 まちばりさんは あぶないから、あした すぐに すてないと だめだね。」 ゴミ捨てのついでに燃えないゴミ袋に待針を捨てるつもりであったが、 さなえと会ったことで興奮していた れいむは、待針のことを忘れていたのだ。 「ゆぅ………あぶない まちばりさんを ちゃんと すてれるぐらい れいむは かしこくって やさしくって かわいいのに、なんで かいゆっくりになれないの? いもうとより ゆっくりしているのに………きしょうしゅよりも ゆっくりしているのに…… ゆ?………ゆゆ??…‥…ゆ~~………」 待針を床に置き、れうむは再びどうしたら飼いゆっくりになれるかを考える。 「ゆ!そうだ!!そうだよ!!すっごいことを おもいついたよ! そうだよ!そうすれば ぜったいに かいゆっくりになれるよ!」 餡子脳が再び熱を持ち始めた頃、れいむの両方の揉み上げが元気良く跳ねた。 名案を思いついた れいむが笑顔になる。 「ゆぅ………でも……… ゆぅ………………でも、それをすると……ゆっくり できなくなるよ………」 が、すぐにその笑顔が曇った。 浮かない顔のれいむが、ダンボールの片隅を見る。 れいむの視線の先には、両親の形見である赤いリボンと、白いリボンが置いてある。 「おかーさん……おとーさん…………」 れいむは両親の形見に そっと頬をあてる。 れいむの脳裏に両親が死ぬ瞬間の光景が浮かんだ。 「………れいむは かいゆっくりになりたいよ。 かいゆっくりだったら、おかーさんも おとーさんも しななかったよ。」 れいむは飼いゆっくりになることで、襲われる心配のない安らかな生活が得られると考えている。 もし、両親が飼いゆっくりだったら、今頃は家族で楽しくゆっくりしているハズだ。 今、自分が孤独でゆっくりできないのは、自分が飼いゆっくりでないからだと れいむは考えている。 【いづか……ぜっだいに……かいゆっぐりになっで……もっどもっど……ゆっぐりじでね……】 母れいむの最後の言葉を思い出す。 そして、自分が絶対に飼いゆっくりになる決心をしたことを思い出した。 ダンボール箱に置かれた菓子を見る。 妹は毎日こんな美味しいものを食べているのだ。 地域ゆっくりの自分と違い、働かなくてもいい飼いゆっくり。 ゆっくりするだけで身の安全と美味しい食事が約束されている飼いゆっくり。 (飼い主によっては ゆっくりできない生活をする強いられることもあるが、れいむは そのことを知らない。) 飼いゆっくりである妹に、れいむは嫉妬する。 「きめたよ。れいむは…… れいむは かいゆっくりに なるためなら なんでも するよ……… どんなに ゆっくりできなくても、かいゆっくりに なれば、ゆっくりできるから……… いもーとみたいに ゆっくりできるから。 ぜったいに。ぜったいに かいゆっくりに なって、いもーとみたいに ゆっくりするよ……」 れいむは自分の決意を口にし、右の揉み上げに待針を仕舞った。 その顔は ゆっくりしておらず、険しい顔であった。 つづく あとがき ゆっくりを飼うことができるとしたら、個人的にれいむ種がいいです。 でいぶになった瞬間、処分しますが。 過去作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/3986.html
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『ぼーきゃくろくっおん』 21KB 虐待 制裁 家族崩壊 同族殺し 飼いゆ 現代 虐待人間 某アニメ映画のパロディではありません 注意: 某映画とは一切関係はありません(録音というか録画だし) ゆっくりが変なところで高スペックです(ネタってことで勘弁して下さい) 『ぼーきゃくろくっおん』 「ゆわああああぁぁぁぁぁぁ!?」 「どぼじでぇぇぇぇぇ!?」 とある住宅の一室にて突如響き渡るゆっくりの悲鳴。 その悲鳴を聞きつけた飼い主の青年が何事かと現場に駆け付けた。 「なんだなんだ?どうしたってんだ?まりさ、れいむ」 そこには二匹のゆっくりが大粒の涙を流しながら絶叫していた。 そして二匹の目の前には大量の餡子がぶちまけられている。 「お、おにーさぁぁぁん!れいむの・・・・・・れいむのおちびちゃんがぁぁぁ!」 「ん?ひょっとしてその餡子、お前らのチビか?」 よく見ると飛び散った餡子の中心には黒いとんがり帽子がちょこんと置いてあるのが確認できた。 この帽子が無ければ、飛び散った餡子が潰れた赤まりさのものであるとはわからなかっただろう。 「こいつは酷いな・・・・・・一体何があったんだ?事故ってレベルじゃねぇだろコレ」 この餡子のぶちまけられっぷりからして、躓いて転んだとか、どっかから落ちた程度では説明はつかない。 それほど酷い状態だった。 「わがらないんだぜぇぇ!まりざだちのしらないあいだに、おちびちゃんがいなくなって・・・・・・!」 「それで・・・・・・ゆぐっ・・・・・・どこにいったのか、さがしにいってもみつからないから、もどっでぎだら・・・・・・おちびちゃんが、おちびちゃんが・・・・・・えいっえんにゆっくりしてたんだよぉぉ!!」 ただ事ではないと判断した青年はただちに室内に異常が無いかを確認しはじめた。 そしてすぐに異常らしきものを発見する。窓の一つが開いているのだ。 「こりゃあ、別のゆっくりの仕業かもしれんなぁ・・・・・・」 家に侵入したゲスゆっくりか、捕食種ゆっくりなどの仕業ではないかと青年は判断した。 「ゆ、ゆるさないんだぜぇ・・・・・・!おちびちゃんをころしたゲスはただじゃおかないんだぜぇ!!」 まりさは歯をギリギリとさせ、怒りの表情を浮かべていた。 「ただじゃおかないって・・・・・・犯人を見つけたらどうするつもりなんだ?」 「きまってるのぜ!ふくっしゅうなのぜ!おちびちゃんがうけたいたみをはんっにんにもあじあわせてやるんだぜ!!」 まりさの穏やかではない発言に青年は思わず眉をしかめる。 「・・・・・・まりさよ、復讐なんて虚しいだけだぞ? チビが死んじまったのは悲しいことだが、いつまでも過去にこだわってたら明るい未来なんてやってこない。 これは悲しい事故だと諦めて、また新しい子供でも作ってゆっくりした方がお前らの為ってもんだろ?」 青年は死んだ子供のことは忘れろという。 一見、冷酷なことを言っているようにも聞こえるかもしれない。 だが相手はゆっくりである。ゆっくりは本人にとって都合の悪い記憶は忘却する性質を持つという。 子供を殺された怒りの感情も時が経ち、新しい子供でも作ればすぐに忘れてしまえるだろう。 だから、一時の感情に身を任せて復讐などというゆっくりできないことに時間を費やしたところでただの徒労にしかならない。 そう青年は思ったのだが・・・・・・ 「はぁぁぁぁぁぁぁ!!?なにいってるんだぜぇぇぇ!?」 「そんなことできるわけがないでしょぉぉぉ!?」 冷却期間が足りないのだろう。そんなことを容認できるゆっくり達ではなかった。 ゆっくりと言えども子供を失った悲しみはそう簡単には忘れられないのだろう。 「はんっにんをみつけて!かおのかたちがわからなくなるまでボッコボコにしてやるんだぜ!」 「それだけじゃすまさないよ!おめめだってくりぬいて、めのまえでむーしゃむーしゃしてあげるんだよ!」 「あんよさんだってズタズタにしてやるんだぜぇ!うごけなくしてゆっくりといたぶってやるんだぜ!」 「いくらごめんなさいしたって、ぜっったいゆるしてなんかあげないんだよ!ゆっくりしていってね!えいっえんでいいよ!ゆぎぎ!」 「えいっえんにゆっくりさせるなんてなまぬるいんだぜ! はんっごろしにしたあとオレンジジュースさんをかけてまたはんっごろしにしてやるのぜ! えいっえんのくるしみをあじあわせてやるんだぜー!ゆがー!」 怒りで頭(といっても頭しかないのだが)に血が上っているのだろう。 ゆっくりらしからぬ物騒な発言を繰り広げている。 そんな飼いゆ達の姿に青年は溜息をついた。今は何を言っても無駄だろう。 「はぁ・・・・・・わかった。そんなに言うなら犯人探しを手伝ってやろう」 「ゆゆ!?そんなことできるの!?」 「まあな。・・・・・・実はこの部屋にビデオカメラを設置しておいたんだ。 これを再生してやれば事の顛末がわかるはずだ」 元々はゆっくりの生態を観察するために青年が設置しておいたものだ。 まさかこんなことになるとは夢にも思わなかったに違いない。 「ゆ?びでおかめらさんって?」 「ああ、ビデオカメラってのはだな・・・・・・」 ゆっくり達にもわかるようビデオカメラが何なのかを説明した後、録画した内容を観るためにビデオをモニターにセットする。 「さて、これで準備はOKな訳だが・・・・・・最後にもう一度だけ確認する。 本当にいいんだな?やめるなら今しかないぞ」 これを見れば犯人はわかるだろう。 だが、それと同時に自分たちが可愛がっていたおちびちゃんの死に様を見せられるということでもあるのだ。 それは両親にとっては辛いことである。 「ゆぅ・・・・・・おにーさん。まりさたちは、もう、きめたんだぜ。 そうしなきゃ、みらいにむけてゆっくりなんてできないんだぜ」 「れいむたちはみらいをゆっくりするためにも、かこのせいっさんをしなくちゃならないんだよ!」 二匹のゆっくりはキリッとした表情で青年を見つめていた。 どうやら二匹の決意は固いようだ。 「そうか・・・・・・お前らがそう決めたんなら、もう止めはしないさ」 青年はビデオを再生させる。 「それじゃあ始めようか・・・・・・その嘆きを再生する」 『ゆぅ~ぴぃ・・・・・・ゆぅ~ぴぃ・・・・・・』 モニターにはついさっきまで寝床でゆっくりと眠っていた赤まりさの姿が映っていた。 「ゆぅぅ・・・・・・ほんとうに、おちびちゃんがうつてるよ!おちびちゃん!ゆっくりしていってね!」 「れいむ、さっきも説明したがこれは過去の映像だ。チビが生き返ったわけじゃない」 「ゆ、ゆぅ、わかってるよ・・・・・・」 それでも叫ばずにはいられなかった。それほどまでに我が子は大切な宝物だったのだ。 『ゆぅ~ぴぃ・・・・・・ゆぅ~ぴぃ・・・・・・』 『ゆゆ~ん、まりさはもうたべられないんだぜぇ。むにゃむにゃ・・・・・・』 『ゆう、ゆう、れいむ、かわいくってごめんね~・・・・・・ゆぅ、ゆぅ・・・・・・』 ぐっすりと眠っている赤まりさの後ろにはまりさとれいむも眠っていた。 幸せそうに眠る3匹の寝顔をみているとこれから恐ろしい惨劇が待ち構えているなど想像もつかないだろう。 だが、それは唐突にやってきた。 画面外から大きな「手」がぬっと現れたのだ。 そしてその「手」は赤まりさの帽子を摘みあげた。 「ゆゆっ!?なにするんだぜ!おちびちゃんのおぼうしをかえすんだぜ!」 映像を見ていたまりさが叫ぶがこれは過去の映像である。 何を言ったところで起こってしまった出来事は変えられない。 「こいつがおちびちゃんをころしたはんっにんなの?」 しかし、予想に反して「手」はこれ以上赤まりさには手を出さなかった。 「手」は赤まりさから取り上げた帽子を寝床の近くにあるピンポン玉の上に乗せたのだ。 このピンポン玉は赤まりさの玩具として青年が用意したもので、赤まりさにとっては大切な宝物になっていた。 その後「手」は眠っているれいむの頬を人差し指でツンツンと突き始めた。 『・・・・・・ゆぅ?なんなの?れいむまだねむいよ・・・・・・』 れいむが覚醒し始めると「手」はまりさを同様に起こし始めた。 『・・・・・・なんなのぜ?まりさはすーぱーすーやすーやたいむなのぜ・・・・・・』 まりさも覚醒したようだ。 二匹はまだ寝ぼけているようで自分たちを起こした「手」には気がついていないようだ。 そして「手」は何をするわけでもなく画面外へと引っこんでしまった。 おかしい。 この映像を見ていたまりさとれいむは自分の体から嫌な汗が流れていることに気がついた。 なぜだろう?わからない。 ただ、ここから先の映像は見てはいけない。 そんな漠然とした思いが二匹の頭の中で警鐘としてガンガンと鳴り響いていた。 それがなぜなのかは全くわからない二匹はこの状況に困惑していた。 と、その時である。 『ゆゆっ!?なんだかゆっくりしてないゆっくりがいるよ!!』 突如、映像内のれいむが叫び声を上げた。 『ゆっ!ほんとうなのぜ!しかもなまいきにもおちびちゃんのベッドさんをどくっせんしてるのぜ!』 ゆっくりしていないゆっくり。 ゆっくりの世界では見た目が汚いゆっくりなどはこのように呼ばれることがある。 特に飾りのないゆっくりがよく言われることが多い。 そう、この映像の両親が言っている「ゆっくりしていないゆっくり」とは、先ほど「手」によって帽子を取られた赤まりさのことだ。 ゆっくりは飾りによって個体の認識をしているという。 だから帽子が取られた赤まりさは両親に自分の子供であると認識されなかったのだ。 「ゆっ!?ゆっ!?な、なにいってるんだぜ!?そのゆっくりはおちびちゃんなのぜ!」 「そ、そうだよ、とってもゆっくりとしたれいむのおちびちゃんだよ!?」 だが、映像を見ている両親は帽子の無い赤まりさをちゃんと自分の子供であると認識していた。 映像内の両親はそれができていないのに、同一のゆっくりでこの認識の違いは何故なのか? それは帽子を取られるところを実際に目撃しているかいないかの違いが、認識の違いにつながったのである。 いくらゆっくりといえど、目の前で飾りをとる場面を見ていれば個体認識はできるのだ。 『おちびちゃんのベッドさんをうばうなんてとんでもないゲスだね!』 『おい!おきるのぜ!このゲス!』 まりさが赤まりさに体当たりを喰らわせる。 『ゆぴ!?・・・・・・ゆ、ゆぅ?』 気持ちよく眠っていたところを突然、突き飛ばされた赤まりさは一体何が起こったのか理解できていなかった。 『ここはれいむのかわいいおちびちゃんのベッドさんだよ! ゆっくりしてないゆっくりはゆっくりしないでゆっくりきえてね!』 『ゆぅ~?なにいっちぇるの?まりちゃはまりちゃだよ?』 『はぁぁぁぁぁぁ!!?なにいってるのぜ!?おちびちゃんはあそこにいるでしょぉぉ!?』 『そうだよ!おちびちゃんはベッドさんをとられてかなしんでるんだよ!ゆっくりしないであやまってね!』 どうやら二匹は帽子を乗せたピンポン玉を自分の子供として認識しているらしい。 これも飾りで個体認識をするゆっくりの特性だった。 『なにいっちぇるのぉぉぉ!?まりちゃがまりちゃだよ!おきゃーしゃん!』 『だれがおまえみたいなきたないゲスのおかあさんだぁぁ!』 『しかもおちびちゃんのなまえまでかたってるのぜ!』 『ゆぅぅぅ!?おちょーしゃんもなにいっちぇるのぉぉぉ!?』 あんなに優しかった両親から罵声を浴びせられ困惑し涙目の赤まりさ。 その時、赤まりさは自分の帽子が乗せられたピンポン玉を発見する。 『ゆゆ?どうちてまりちゃのおぼうちがこんなとこりょにあるにょ?ゆっくちかえしちぇね!』 赤まりさはピンポン玉に近づき帽子を取ろうとした、その瞬間。 ドン! まりさの体当たりを受け、赤まりさは思いっきり吹っ飛ばされた。 そして赤まりさは顔面を床に激しく打ちつけられた。 『ゆ、ゆぴぃ?・・・・・・きゃわいい、まりちゃのきゃおが・・・・・・い、いちゃい?』 赤まりさは突如受けた攻撃に何が起こったのか理解できていなかった。 だが、その攻撃を繰り出したまりさは怒り心頭で顔を醜く歪ませていた。 『こいつ・・・・・・おちびちゃんのおぼうしをうばおうとしたのぜ・・・・・・』 『ベッドさんだけでもずうずうしいのに・・・・・・おぼうしにまでてをだすなんて・・・・・・』 飾りはゆっくりにとって命の次に大事なものだ。 もし他ゆんがそれに手をだそうものならどうなるのか。 ピキピキピキィィィィィィィィィィィィ!!! 『とんっでもないゲスなのぜぇぇ!!!ぷくぅぅ!!』 『もうおんこうなれいむもかんにんぶくろのおがきれたよっ!!!ぷくぅぅ!!』 『ゆぴぃぃぃ!?お、おちょーしゃん!おきゃーしゃん!どうちておこっちぇるのぉぉぉ!?』 体をぷくーっと膨らませ、ゆっくり最大の威嚇行為を赤まりさに向けている。 もはや両親の怒りは有頂天に達していた。 『『ゆっくりできないゲスはせいっさいするよ!!!』』 『ゆ、ゆ、ゆ・・・・・っ!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』 こうして、両親による恐ろしい制裁がはじまった。 「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」 「やめてねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 映像をみていた両親が叫び出す。 もはや変えられぬ過去の映像であるとしても叫ばずにはいられなかったのだ。 それほどまでに凄惨な制裁だったのである。 『ゆんやぁぁぁぁ!ゆんやぁぁぁぁああああ!!』 二匹掛りで執拗に体当たりを喰らわせている。 『やべちぇぇぇぇ!!まりちゃのかぎゃやくおうぎょんのかみのきぇぎゃぁぁぁ!!』 れいむが髪をブチブチと引き抜いている。 『いじゃいぃぃぃぃ!!おべべ!まりちゃのおべべぇぇぇ!!』 まりさが右目をくり抜き、空いた右目の空洞を舌でグリグリと穿っている。 『ぼう、やべちぇ、いちゃい、いちゃいよぉぉ、ゆんやぁ・・・・・・』 これだけ痛めつけられていながら、赤まりさは死ななかった。 二匹が殺さないよう適度に手を抜いているのだ。 『ゆげら!ゆげら!どう?いたいのぜ?いたいのぜぇぇ?』 『ゆげげ!でもゆっくりなんてさせてあげないよ?もっともっとくるしんでね!』 ゆっくりはゆっくりしていないものを見下す事が多い。 それは他者を見下すことで自分がよりゆっくりした存在であると認識する為である。 そしてその嘲りの感情は、時として暴力となって対象に襲いかかる。 それが今の状況だ。これは、もはや制裁などではなかった。 「うわぁ、流石の俺でもこれは引くわぁ・・・・・・ん?どうしたおまえら?」 二匹のゆっくりはもう映像を見ていられなかった。 目をつぶり、プルプルと震えながらこの真実から目を避けていた。 「おいおい、お前ら。過去の清算するんだろ?あんなにキリッとした顔でいってたじゃないか。 だからちゃんと見てないとダメだろ。おっ!なんかまた出てきたぞ。みてみろ」 「ゆ、ゆぅ?」 恐ろしい虐待が行われている最中。 画面外から再びあの「手」が現れたのだ。 その「手」はピンポン玉の上の帽子を摘みあげると画面外へと消えていった。 しかし、映像内の両親はそれに気付いていない。 赤まりさをいたぶることに夢中になっていたからだ。 『れいむ、そろそろふぃにっしゅにするのぜ。アレをひさしぶりにやってみたいのぜ!』 『ゆぅ?アレなの?ゆふふ、そうだね、ひさしぶりにやってみようね!』 そう言うと、れいむは頭が低くなるよう体をへにゃりと縮ませた。 まりさは息絶え絶えの赤まりさを口に咥えるとれいむの頭に乗り上がった。 『いくよ?まりさ』 『じゅんびおーけーだぜ!れいむ』 『ゆ、ゆぴぃ・・・・・・な、なに、ちゅるにょ?やめちぇね、やめちぇね・・・・・・』 れいむはまりさを頭の上に乗せたまま勢いよく伸びあがった。 『のーびのーび!』 そしてその伸びが最大になった瞬間、まりさはれいむの頭を踏み台に、遥か上空へと飛びあがる。 「ゆ、ゆげぇぇぇぇ!あ、あのわざはー!?」 「知っているのかー?まりさー!ってお前の映像なんだから当たり前か」 まりさを打ち上げた後、れいむはその場で仰向けに倒れこみ、あんよをプリン!と持ち上げる。 一方、上空へ打ち上げられたまりさは口に咥えていた赤まりさを腹の上に乗せ、そのままクルリと回転し、赤まりさが下になる体制のまま一気に下降しはじめる。 まりさの真下にはあんよを持ち上げたれいむがニヤニヤとした笑みを浮かべて待ち構えている。 『ゆっくりしてないゲスは・・・・・・っ!ぷくぅぅぅ!』 『ゆっくりしねぇぇぇぇぇ!』 『ゆぴぃぃぃぃ!た、たしゅけちぇ・・・・・・っ!』 『『ゆっくりほうかいのふぃなーれ!!』』 グシャアアアアアア!!! ぷくぅっと膨れた状態で下降してきたまりさの腹とれいむの持ち上げていたあんよが勢いよく衝突する。 そしてその間に挟まれていた赤まりさは衝突のショックでグチャグチャに潰されてしまった。 『ぷしゅるるるぅぅ~、ゆへへ!きまったのぜ!』 口の中から息を吐きながられいむのあんよから飛び退くまりさ。 『やったね!まりさ!』 れいむもむくりと起き上がる。 その際、あんよの上に残っていた潰された赤まりさがべちゃりと地面に落ちた。 「ゆ、あ、あ、あ・・・・・・」 「ど、どぼじで・・・・・・こんな、ことに・・・・・・」 「すっげぇなぁ、お前ら。無駄にスペック高すぎ」 赤まりさが自分たちによって殺される映像を見せられ、二匹はただ涙を流して呆然とするしかなかった。 『ゆ!そうだぜ!おちびちゃん!ベッドさんをどくっせんしてたゲスはやっつけたんだぜ!』 ゲスの制裁に夢中になり忘れていた自分の子供のことを思い出したようだ。 『ゆゆ?おちびちゃん?』 だが、どこを見渡しても赤まりさの姿は見えなかった。 目の前で潰れているのだが、いまの二匹にはそれがわからない。 『ゆぅ・・・・・・どこいっちゃったのぜ、おちびちゃん』 『ひょっとして、ゲスがせいっさいされるところをみるのがこわくなっちゃったのかも。 それでどこかにかくれちゃったんだよ』 『ゆゆ!おちびちゃんにはすこししげきがつよすぎたのかもしれないのぜ』 『ゆもう!ゆっくりやりすぎだよ!まりさ!』 自分もノリノリで制裁していたのを棚に上げてぷんぷんと頬を膨らませてまりさに注意をするれいむ。 『ごめんごめんなのぜ。きっととなりのおへやにでもいるのぜ。いっしょにむかえにいってあげるのぜ!』 『そうだね、こわがってるおちびちゃんにすーりすーりしてあんしんさせてあげようね!』 そう言いながら二匹は部屋から出ていった。 その直後、画面外から三度「手」が現れ、先ほど奪っていった赤まりさの帽子を潰された餡子の上に乗せ、画面外に消えていった。 しばらくした後、 『ゆぅ、おちびちゃんいないね』 『まったく、どこへいったのぜ』 二匹が部屋に戻ってきた。 こうして話は冒頭へと繋がるのだった。 「さて。これで犯人はわかった訳だが・・・・・・。 お前ら、犯人が見つかったらどうしてやるんだっけ?なんか言ってたよなぁ」 「ゆ!ゆ!し、しらないのぜ。まりさ、なんにもいってないのぜ!」 「れいむもしらないよ!それにおちびちゃんがしんだのは!かなしいじこだったんだよ! だかられいむ、なんにもわるいことしてないよ!」 あそこまで悪意に満ちた言動で子供を殺しておいて、この言い分である。 青年は肩をすくめ、軽く溜息をついた。 「お前らが、数分前に言った自分の発言もすぐ忘れるような餡子脳だってのはわかった。 ・・・・・・だが、そんなこともあろうかとお前らの発言もきっちり収録しておいたのさ」 ビデオはその後のことも録画し続けていた。 つまり、二匹が犯人を見つけて復讐を誓う場面もしっかりと録画されていたのである。 「えぇ~と確かここらへんだったな。ピッピッピッと・・・・・・」 リモコンを操作し、映像を問題のシーンまで進める。 『はんっにんをみつけて!かおのかたちがわからなくなるまでボッコボコにしてやるんだぜ!』 「・・・・・・だ、そうだが」 「「ゆ!?ゆ!?」」 「しかし、言った本人達が犯人だったということは、制裁の執行人がいなくなってしまうなぁ」 「そ、そうだよ!だから・・・・・・!」 「わかった。そういうことなら、僭越ながらこの俺が代わりに制裁を実行してやろうじゃないか!」 「「ゆゆっ!?」」 青年はそう言うとまりさの顔面を思いっきり殴りつけた。 「ふん!」 ドゴっ! 「ゆべぇぇぇ!?い、いだいぃぃぃぃぃ!!!」 「な、なにするのぉぉぉ!?おにーさぁぁぁん!!」 「お前もだよ。そら!」 れいむも同様に顔面を殴りつける。 「いだぁぁぁぁぁぁあああ!!」 ドゴ!バゴ!ベシ!ガスガス! 「ゆ、ゆべ!や、やべっ!やべ・・・・・・でっ!」 「いだ、いだい!いだいよぉぉぉ!ゆんやぁぁ!!」 その後、青年はまりさが言ったように顔の形が変わるまで殴り続けた。 「さてさて、お次は何をするんだっけかな?」 『それだけじゃすまさないよ!おめめだってくりぬいて、めのまえでむーしゃむーしゃしてあげるんだよ!』 「りょーかい♪とりあえず片目をくり抜いてやんよ」 ドスっ! 「ゆぎゃあああああああ!ば、ばりざのほうせきのようなおめめがぁぁ!!」 スボっ! 「ゆんぎゃああああああ!でいぶのよぞらにかがやくこうせいのようなおめめがぁあああ!!」 二匹は赤まりさと同じように右目を抉りとられ、あまりの痛みに辺りをのたうち回った。 「もっちもっち!お前らの目玉、白玉団子みたいでうめぇな。 もう片方は後で食ってやるから、とりあえず次いってみよう」 『あんよさんだってズタズタにしてやるんだぜぇ!うごけなくしてゆっくりといたぶってやるんだぜ!』 「次は足か。よっしゃ、このよく切れるカッタ―でズッタズタにしてやろうじゃないか」 ザク! 「ゆぎぃぃぃぃ!ばりざのがもじかのようなあんよさんがぁぁぁあ!!」 「ザックザクに耕してやるよ!」 ザク!ザク!ザク! 「や、やべでっ!ご、ごべんだざい!ごべんだざいぃぃぃ!あやばりばずがらっ!ゆるじでぐだざぁぁぁ」 『いくらごめんなさいしたって、ぜっったいゆるしてなんかあげないんだよ!』 「だってさ。あきらメロン♪」 「ぁぁぁぁぁいぃ!?や、やべでねぇぇぇ!あんよさんっ!いだいいだいじないでぇぇぇぇ!!」 足をズタズタに切り裂かれた。これでもう逃げることもままならないだろう。 「ゆ゙、ゆ゙、ゆ゙」 「も、もう、ごろじ、で・・・・・・」 「ふぅ。流石にもう限界か。充分いためつけたことだし。そろそろ楽にしてやろうか。ん?」 『えいっえんにゆっくりさせるなんてなまぬるいんだぜ! はんっごろしにしたあとオレンジジュースさんをかけてまたはんっごろしにしてやるのぜ! えいっえんのくるしみをあじあわせてやるんだぜー!』 「ああ、残念。まだまだ許されないようだ。ちょっとまってろ。オレンジジュース持ってくるから」 そう言いながら、青年は部屋から出ていった。 「ゆ、ゆぅぅ・・・・・・ど、どぼじで、ごんなごどにぃ・・・・・・」 「あんなに、ゆっくりしてたのに・・・・・・どぼじで・・・・・・」 この二匹は元々野良ゆっくりだった。 それを今の青年に拾われて飼いゆっくりになった。 それから二匹はとてもゆっくりとした日々を過ごしてきたのだ。 「ひょ、ひょっとして・・・・・・おにーさんは、ぎゃくったいおにーさんだったの、ぜ?」 「ゆゆ!?あんなにやさしかった、おにーさんが・・・・・・」 青年は毎日おいしいものを食べさせてくれた。 いっしょに遊んでくれた。 子供を作ることも笑顔で許してくれた。 それなのに、自分たちは騙されていたというのか。 「き、きっと・・・・・・おにーさんはまりさたちを、だましてたのぜっ!」 「ぞ、ぞんな・・・・・・!し、しどい!」 世の中にはゆっくりを虐めて楽しむ虐待鬼威惨と呼ばれる人間がいる。 まりさは野良時代、そうした人間に殺された仲間をみたことがある。 「ゆ、ゆぐぅぅ!ぐ、ぐやじいのぜ・・・・・・! このまりざのめをもっでじでも、あのくぞにんげんのほんっしつがみぬけなかったなんで・・・・・・」 まりさは涙した。 自分がもっと用心していれば、こんなことにはならなかったのだと。 「そんなことはないぞ、まりさ。俺は別にこんなことしたくてやってる訳じゃない」 青年がオレンジジュースを持って帰ってきた。 「な、なにいってるのぜ!よくもそんなことをぬけっぬけとぉ!」 「冷静になって考えてみろよ。今こうしてお前らを制裁してるのは元々お前らが言い出したことじゃないか」 「ゆゆ!?」 「俺は復讐なんてやめようって最初に言ったぞ? そもそも、お前らがチビを殺したりしなければこんなことにならなかったんだ」 「ゆ、あ、あああ・・・・・・!」 青年はバシャバシャとオレンジジュースを二匹にかけてやる。 二匹のゆっくりの体がある程度再生されていく。 「俺は有言実行をモットーとしていてね。だからこれはお前らが言ったことは忠実に実行しているだけに過ぎない。 つまり、今のこの状況はお前らの自業自得ってことだな。ゆっくり理解できたかな?」 「ゆぐぅぅぅぅ!!」 勿論、青年の言っていることは詭弁だった。 そもそも赤まりさが眠っている間に帽子を奪い、ゆっくり達が家庭崩壊するよう仕向けたのはこの青年である。 まりさの言うとおり青年が二匹のゆっくりを拾ったのは虐めることが目的だった。 可愛がる反面、日常のあちこちに死亡フラグをばらまき、何時自滅するのか観察するのがこの青年のやり方だったのだ。 例え、今日の事件がなかったとしてもいずれは自滅に至っていただろう。 だが、ゆっくり相手にはこの程度の詭弁でも充分論破できてしまう。 「ゆぐっゆぐっ!ま、まりざがばがだったのぜぇぇ!」 「ゆ、ゆぅぅぅぅ!ご、ごべんねぇぇ、おちびちゃん!おかぁさんがもっどじっがりじでいればぁぁ」 単純なやつらだと青年は苦笑した。 こんな馬鹿なやつらはゆっくりの中でも珍しいんじゃないのかとも思った。 「さ、そういうわけだ。続きを始めよう。なに、心配するな。殺しはしないさ。 お前らは犯人を殺すとは言わなかったからな。 ・・・・・・ただし、死んだ方がマシだとは思うかもしれんがな。ジョワ、ジョワジョワジョワ!」 「ゆわぁぁぁぁぁ!がんべんぢでぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「も、もうやだぁぁぁ!おうちかえるぅぅぅぅぅ!!」 こうして、まりさとれいむへの制裁はいつまでも続くのであった。 <了> 前作: anko2106_プラント