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『家族のアイドル(笑)』 21KB いじめ 自業自得 飾り 家族崩壊 番い 野良ゆ ゲス 人間なし うんしー ぺにまむ ぬるい内容です おさげあき 虐待というよりいじめ、自業自得の内容です 相変わらずまりさ、れいむヘイトが酷いです おさげあき 33作目 「まりちゃはしゃいっきょうなのじぇ!そしちぇかじょくのあいどるなのじぇ!」 とある森の中にゆっくりの家族が住んでいた。 れいむとまりさのつがいというよくある家族だ。 そんな家族に先日新たな仲間が加わった。 それが冒頭で寝言をほざいたまりちゃである。 ゴミクズのまりさ種と無能のれいむ種から生まれたまさしく存在する価値のないクズだ。 そんなゴミクズであっても我が子が可愛いのか親は我が子に愛情を注ぐ。 だがそんな光景を疎ましく思いながら見つめるゴミがいた。 「にゃんで……にゃんで……かじょくのあいどるはれいみゅなのに……あんなゆっくちしてないいもうちょばかりきゃわいがられるの……?」 そう呟くのはまりちゃより先に生まれたれいみゅだ。 まりちゃが生まれる前は親の愛を独占出来てとてもゆっくりしていたがまりちゃが生まれてからはあまりれいみゅはゆっくり出来ていなかった。 親に甘えても「おちびちゃんはおねえちゃんなんだからがまんしてね!」と叱られる始末だ。 れいみゅはそのたびに巣の奥でゆんゆんすすり泣く。 まりちゃも親に甘やかされどんどん増長していきゴミクズのまりさ種に相応しいクズっぷりを見せ付けるようになった。 挙句に姉であるれいみゅに「どうちておねえちゃんはしょんなにゆっくちしてないのじぇ?」とバカにするようになった。 一番可愛くアイドルに相応しいのは自分だと信じるれいみゅにとってまりちゃはもはや敵でしかない。 まりさ種がゴミクズなのは知っての通りだがれいむ種も同じくらいクズなのは言うまでもない。 れいみゅも所詮はまりちゃと同レベルなのだ。 そんなれいみゅが暴走するのも時間の問題だった。 -数日後- 「まりちゃ、ちょっとれいみゅとおさんぽしない?」 「ゆゆ?」 ある日、れいみゅがいきなりまりちゃを散歩に誘う。 これまで2匹はお互い距離を置いて生活していたのでれいみゅの言葉にまりちゃは驚いた。 「おねえちゃんとさんぽ?おきゃあしゃんといっしょじゃないのじぇ?」 「れいみゅたちだけでぼうっけん!しゅるんだよ、とってもたのちいよ!」 「ゆゆ!ぼうっけん!しょれはゆっくちできるのじぇ!しゃいっきょう!のまりちゃにふさわしいのじぇ!」 「でもおきゃあしゃんにみつかったらぼうっけん!できないからみつからないようにしょろーりしょろーりとおそとにいこうにぇ!」 「ゆっくちりきゃいしたのじぇ!」 現在母れいむは昼寝中だ。 れいみゅとまりちゃはそろーりそろーりと這って見事に外に出る事に成功した。 「それじゃぼうっけん!のはじまりだにぇ!」 「まりちゃのれきしにのこるだいっぼうっけん!がいまはじまるのじぇ!」 元気に跳ねて行くまりちゃの背後でれいみゅがドス黒い笑みを浮かべた。 「ゆぷぷ!さいしょにしてさいごのぼうっけん!をせいぜいたんのうするといいよ!ゆぷぷ!」 そして我が家から10メートルほど離れた草むらの中でまりちゃが立ち止まる。 「ゆゆ!まりちゃちーちーしたくなってきたのじぇ!ちーちーしゅるよ!しゅっきりーーーーー!」 ドヤ顔で宣言した後、まりちゃは元気よく排泄を始める。 そんなまりちゃの背後でれいみゅは辺りを確認した。 草むらで覆われ外から誰にも見えない事を。 やるなら今だと判断したれいみゅがまりちゃに思いっきり体当たりをかます。 「ぴゅげぇ!?」 背後からの突然の奇襲にまりちゃは地面へ思いっきり顔面を叩き付ける。 自分の出したしーしーに濡れた地面へと。 「ぴぎぃぃぃぃぃ!くしゃいぃぃぃぃぃ!いちゃいぃぃぃぃぃ!まりちゃのおきゃおがぁぁぁぁぁぁ!」 痛みと小便の臭さに泣き叫ぶまりちゃ。 「ゆぷぷ!ぶじゃまだにぇ!」 「ゆゆぅぅぅぅぅ!?」 姉の言葉に驚くまりちゃ。 「どぼじでまりちゃにこんなひどいことしゅるんだじぇぇぇぇぇ!?」 「かじょくのあいどるはれいみゅだよ!おまえなんかにわたさないよ!」 「なにいっちぇるのじぇ!?ゆっくちしてにゃいぶしゃいくなおねえちゃんよりまりちゃのほうがあいどるにふさわしいのじぇ!」 「だまってにぇ!このげしゅ!」 「ぴぎぃぃぃぃぃ!」 再びまりちゃに体当たりするれいみゅ。 「おまえのようなごみくじゅにおかじゃりなんかひつようないよ!」 れいみゅはまりちゃから帽子を奪い取るとそれに噛み付いて引き裂いた。 「ゆっぴゃぁぁぁぁぁ!?まりちゃのくろびかりするおぼうちぎゃぁぁぁぁぁ!?まりちゃのじゅんっじょう!なこころをひょうっげん!したしろいおりぼんしゃんがぁぁぁぁぁ!?」 まりちゃの絶叫を聞いてとてもゆっくりしたれいみゅはバラバラに引き裂いた帽子の残骸にうんうんを排出する。 「ぴぎぃぃぃぃぃぃ!まりちゃのおぼうちぃぃぃぃぃぃ!これじゃもうゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃぃ!」 「まだまだこれからだよ!」 れいみゅは近くに落ちていた木の枝を咥えるとまりちゃのまむまむへ思いっきりぶっ刺した。 「ぴゅげぇぇぇぇぇぇ!ばでぃぢゃのまむまむぅぅぅぅぅぅ!しゃーもんぴんくのばーじんしゃんぎゃぁぁぁぁぁぁ!」 自分の大切なばーじんさん(笑)を喪失したまりちゃの悲しみは想像を絶するだろう。 だがれいみゅは止まらない。 「つぎはまりちゃのきたないおしゃげをひきぬくよ!」 「ゆゆぅぅぅぅぅ!?やめぢぇやめぢぇやめぢぇぇぇぇぇぇぇ!ばでぃぢゃのおしゃげしゃんだけはゆるちてぇぇぇぇぇぇ!」 「だめだよ!まりちゃにそんなものひつようないんだからにぇ!」 れいみゅはまりちゃのおさげに噛み付く。 まりちゃは必死におさげを振り回そうとするが無駄である。 少しずつ嫌な音を立てながら抜けていくおさげの感触にまりちゃは悲痛な声を上げた。 「ぼうやべぢぇぇぇぇぇぇ!ばでぃぢゃがわるがっだでしゅぅぅぅぅぅぅ!ぼうあいどるなんていりばじぇん!だからぁぁぁぁぁ!」 だがれいみゅは今更やめるつもりはない。 もっともっとこのクソチビの泣き叫ぶ姿が見たい。 れいみゅは完全にゲスとして覚醒していた。 このまま行けばれいみゅはまりちゃを殺すまで止まらないだろう。 だがここで邪魔が入った。 「ゆゆぅぅぅぅぅ!?おちびちゃんたち!なにしてるのぉぉぉぉぉぉ!?」 まりちゃの絶叫を聞いて目を覚ました母れいむが駆けつけたのだ。 我が家から10メートルしか離れていなかったのですぐ発見出来た。 「ゆっ……!おきゃあしゃん……!」 「おちびちゃん!これはどういうことなの!?」 「ゆっ……!しょれは……」 口ごもるれいみゅ。 そんな時、まりちゃが口を開いた。 「おきゃあしゃぁぁぁぁぁん!このげしゅがまりちゃをいじめたんだよぉぉぉぉぉ!おかじゃりもぼろぼろにしゃれて……!ゆっぐ……えっぐ……! おしゃげしゃんもうごかないのぉぉぉぉぉぉ!まりちゃのしあわしぇをつかみとるおしゃげしゃんがぁぁぁぁぁぁ!」 「お……おちびちゃん……」 飾りが無いと我が子だと認識出来ないゆっくりもいるがこの母れいむはかろうじてまりちゃを我が子だと認識出来たようだ。 帽子は無いがまりちゃのおさげが無事だったのが不幸中の幸いだろう。 「とにかくおちびちゃんのてあてもしないといけないしおうちにかえるよ!」 -数時間後- 「ゆっくりできないことをしたくそちびはせいっさい!なのぜ!」 父まりさが狩りから帰宅し事情を説明すると父まりさは即座にれいみゅの制裁を決めた。 「まってね!このおちびちゃんにもなにかじじょうがあるかも……」 母まりさは今にもれいみゅに襲い掛かろうとする父まりさをなだめるのに必死だ。 「じじょう?どんなりゆうがあろうといもうとをこんなめにあわせたげすはれいっがい!なくしけいなのぜ!」 「ゆひぃぃぃぃぃ!」 れいみゅがおそろしーしーを漏らす。 「ゆっ……ゆっ……ゆっ……」 まりちゃはかなり危険な状態だ。 母れいむがぺーろぺーろしたがまりちゃの傷は思ったよりもずっと深い。 まむまむは無残に裂け未だに少量の餡子が漏れている。 赤ゆっくりは非常に脆い。 ちょっとしたことですぐ死んでしまう。 もはやまりちゃに残された時間は僅かだろう。 たとえ体の傷が大した事が無かったとしても心の傷は決して癒える事は無い。 自分の大切な帽子、そしてばーじんさんを失った心の傷はまりちゃには深すぎるのだ。 おさげはかろうじて無事だったが中途半端に引き抜こうとしたため動かす事が出来なくなったようだ。 「くそちびぃぃぃぃぃ!だまってないでなんとかいえぇぇぇぇぇぇ!なんでこんなことをしたぁぁぁぁぁぁ!」 「……ぜんぶまりちゃがわるいんだよ……」 「ゆあぁぁぁぁぁぁん!?きこえないのぜぇぇぇぇぇぇ!はっきりいうのぜぇぇぇぇぇぇ!」 「まりちゃがぜんぶわるいんだよぉぉぉぉぉぉ!かじょくのあいどるはれいみゅだもぉぉぉぉぉぉん!」 「「ゆゆ!?」」 突然のれいみゅの絶叫に両親が驚く。 「ぜんぶまりちゃがわるい!いちばんきゃわいいのはれいみゅだよ!しょれなのにまりちゃがあいどるきどりでなまいきだった!だからしぇいっしゃい!したんだよ! れいみゅはわるくないもん!ぜんぶまりちゃがわるいんだもん!おきゃあしゃんならわかっちぇくれるよにぇ……?」 れいみゅの言葉に母れいむはしばらく悩んだが…… 「うん!それならしかたないね!」 「れ……れいむぅぅぅぅぅぅ!?」 母れいむはあっさりれいみゅの言い分に納得した。 当然父まりさに納得出来るはずもない。 「まりさ!たしかにまりさににたおちびちゃんはかわいかったよ!でもやっぱりいちばんかわいいのはれいむににたおちびちゃんだよ! それにいまはまりさににたおちびはおかざりもないからかわいくないよ!でもれいむににたおちびちゃんはおかざりもぶじだしかわいいよ!ゆっくりりかいしてね!」 「な……なんなのそれぇぇぇぇぇぇ!?」 生まれたばかりのまりちゃを優先して可愛がりつつも母れいむは心のどこかで違和感を感じていた。 本当に自分が一番大切にしなければならないのはまりちゃなのか? そんな悩みを抱えていた時に今回の事件が起きた。 そして先ほどのれいみゅの告白で理解した。 やはり自分はまりちゃよりもれいみゅのほうが大切だと言う事を。 自分に似た種の子を一番大切にするのはよくある事だがれいむ種は特にその意識が強い。 結局母れいむもクズで無能で存在するだけで不快感を撒き散らす生ゴミ糞れいむなのだ。 だが父まりさは生ゴミの説明に納得しなかった。 「おかざりがぶじでもじぶんのいもうとをぼろぼろにするげすなんかかわいくないんだぜぇぇぇぇぇぇ!せいっさい!するんだぜ!」 「いいかげんにしてね!れいむににたおちびちゃんにはなんのつみもないんだよ!もしせいっさい!するなられいむがあいてになるよ!」 「……わかったのぜ」 「ようやくりかいしたんだね!それじゃあゆっくりしてないくそちびをすてにいってね!すぐでいいよ!」 母れいむが瀕死のまりちゃをもみあげで掴むと父まりさの前へ投げ捨てる。 「もっちょ……ゆっくち……しちゃ……」 母れいむの行為がトドメを刺したのだろう。 瀕死だったまりちゃは最後の台詞を言い切る途中で永遠にゆっくりした。 そして父まりさは…… 「ゆおらぁぁぁぁぁ!!」 「ゆげぇぇぇぇぇぇ!!」 父まりさの一撃で派手に吹っ飛ぶ母れいむ。 「い……いきなりなにをするのぉぉぉぉぉ!?」 「げすなれいむをせいっさい!するのぜぇぇぇぇぇぇ!」 「れいむはげすじゃないぃぃぃぃぃぃ!ぎゃくぎれはみっともな……ばぎょ!?」 追撃を受けて吹っ飛ぶ母れいむ。 「どぼじでぇぇぇぇぇ!?どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉぉ!?」 「こんなどうしようもないげすといっしょになったのがまちがいだったのぜ!いまそのあやまちをただすのぜ!しね!しね!いますぐしねぇぇぇぇぇぇ!」 「ゆんぎゃぁぁぁぁぁ!やべでぇぇぇぇぇぇ!でいぶじぬぅぅぅぅぅぅ!じんじゃうぅぅぅぅぅ!」 母れいむの上に乗り何度も跳ねる父まりさ。 父まりさに踏まれるたびに母れいむは餡子を吐き出していく。 「おまえのようなげすにこんなものひつようないんだぜ!」 ブチィ!! 「ゆんぎぇぇぇぇぇぇぇぇ!でいぶのめがみすらしっとするうつくしいもみあげさんがぁぁぁぁぁぁぁ!?」 「うんうんいかのきたないもみあげをせいっさい!なのぜ!」 ブチィ!! 「ゆごぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!もみあげさんがりょうほうなくなっちゃったぁぁぁぁぁぁぁ!これじゃもうゆっくりできないぃぃぃぃぃぃ!」 「つぎはめにわるすぎるまっかなりぼんをせいっさい!なのぜ!」 「やべでやべでやべでやべでぇぇぇぇぇぇぇ!でいぶのおりぼんざんだけばぁぁぁぁぁぁぁぁ!おりぼんざんだげばゆるじでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 母れいむの叫びも空しくリボンは父まりさによってバラバラにされてしまった。 「まっかにさきほこってだれにもつみとることができないうつくしさをほこるじょうっひん!なおりぼんさんがぁぁぁぁぁ!?」 「ゆひゃひゃひゃ!なにをねごとほざいてるのぜ!こんなうんうんいかのおぶつなんかこのあつかいでじゅうっぶん!なのぜ!」 父まりさはバラバラにしたリボンにうんうんとしーしーをぶっかけた。 「あっ……あああああああーーーーーーーーーー!!」 喉が潰れんばかりに叫ぶ母れいむを見て父まりさはとてもゆっくりしていた。 「つぎはおまえのくされまむまむをずたずたにするのぜ!そしてかみのけをぬいておべべもつぶしてそして……」 ドゴォ!! 父まりさは今後の予定をベラベラ喋ってる途中で吹っ飛んだ。 吹っ飛ばしたのは母れいむである。 「ゆるさないぞぉぉぉぉぉぉ!このくそまりさぁぁぁぁぁぁぁ!ころす!ぜったいころす!」 自分の大切なお飾りを破壊された母れいむは悲しみを通り越して怒り狂っていた。 「ゆぎぎぎぎぎ!いきるかちのないくそでいぶのくせになまいきなおぶつなのぜ!そんなにしにたいならとっとところしてやるのぜぇぇぇぇぇぇ!」 父まりさも想定外の反撃を受けてぶちキレたのか母れいむに負けず劣らずの憤怒っぷりだ。 「「ゆっぐりじないでぞぐざにじねぇぇぇぇぇぇぇ!!」」 こうして父まりさと母れいむの殺し合いが始まった。 -数時間後- 「……なんでこんなことになっちゃったの……?」 静かになった我が家の中でれいみゅはそう呟いた。 結局父まりさと母れいむは相打ちになり死んでしまった。 生き残ったのは両親の殺し合いに怯え巣の奥でおそろしーしーを漏らし震えていたれいみゅだけだ。 「れいみゅはただ……かじょくのあいどるになりたかっただけなのに……なにがわるきゃったの?どこでまちがえたの?」 れいみゅは涙を流す。 こんな結末は望んでいなかった。 ただ可愛い自分に相応しい待遇が欲しかっただけ。 その結果がこれである。 「これからどうやっていきていけばいいの……?」 親が死に狩りは自分でしなければならない。 だが父まりさからは何も教えてもらっていない。 幼い子ゆっくりで取れる食料などたかが知れている。 おまけに一人ぼっちだ。 ゆっくりは孤独を嫌うためこれから多大なストレスを味わうだろう。 他のゆっくりに面倒をみてくれと言ったところで自分の餡子を受け継いでいない子供の面倒を見るほどゆっくりは優しくない。 「やじゃよ……ゆっくちできにゃいよ……ゆっくちしたいよ……」 考えれば考えるほど最悪の未来しか思い浮かばない。 「やじゃ……やじゃ……やじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 もはやれいみゅに出来るのは現実から逃れるために泣き叫ぶ事だけだった。 -れいみゅのその後- 「ゆぅぅぅぅぅぅ……ゆぅぅぅぅぅぅ……」 あれから数日が経った。 れいみゅはまだしぶとく生きている。 満足な狩りなど出来ないためその辺に生えている草を食べて生きながらえていた。 だが一匹で食べる食事は例外なくゆっくり出来なかった。 れいみゅはかつての幸せな生活を思い出す。 頼もしい父まりさと優しい母れいむに囲まれての食事は苦い草であってもゆっくり出来た。 むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!と元気に叫んでいたのが遠い過去のようだ。 今現在、食事で口に出る言葉は例外なく「ふしあわせぇぇぇぇぇ……」である。 「ゆゆ!またあのうすぎたないやつだよ!」 「ゆぷぷ!みじめなちびだね!」 森には当然れいみゅ以外にもゆっくりは数多く生活している。 だがれいみゅは全てのゆっくりからバカにされる存在だった。 親のいない子ゆっくりはゆっくり出来ないというのもあるが体やお飾りが異常に汚れているのが原因だ。 野生で生活する以上どうしても体は汚れてしまうのは仕方ない。 成体ならある程度自分で汚れを取る事も出来るが不器用な子ゆっくりにそんな事は不可能だ。 親がいれば舌を使って汚れを取ってもらえるのだが親がいなければどうする事も出来ない。 ぺーろぺーろとは親愛の証だけでなく汚れを取るという目的も兼ねているのだ。 「おい!きたないくそちび!めざわりだからさっさときえてね!」 「そうだぜ!ごみくずはとっとときえるのぜ!」 「ゆっ……!」 大抵のゆっくりはあざ笑うだけで積極的にれいみゅと関わったりしないがたまにこういうゲスが暇つぶしにれいみゅを苛めてくるのだ。 「ゆふん!ほんとにぶさいくでみじめなちびだね!」 「いきててはずかしくないのかだぜ?ゆぷぷ!」 「……れいみゅは……きゃわいいもん……」 「はぁぁぁぁぁぁぁ!?おまえのようなくずがかわいい!?じょうだんはかおだけにしてね!」 「ごみくずのくせにまりさたちにくちごたえするのかだぜぇぇぇぇぇぇ!?」 未だに自分が可愛いと信じるれいみゅにとってぶさいくと言われるのは我慢出来なかった。 だからつい反論してしまったがそれが過ちだとすぐ後悔する。 だがもう遅い。 「なまいきなくそちびはせいっさい!だよ!」 「ゆぷぷ!みじめにないてにげればゆるしてやったのにばかなちびなのぜ!」 「ご……ごめんなしゃい……ゆるちてくだしゃい……」 「ゆるさないよ!ばつとしてそのきたないおりぼんをぼっしゅうするよ!」 「ゆゆぅぅぅぅぅぅ!?しょれだけはかんべんしちぇぇぇぇぇぇぇ!」 「だめだぜ!あたまのわるいくそちびにはきょうっいく!がひつようなのぜ!」 ゲスれいむはれいみゅからリボンを奪い取る。 れいみゅはぴょんぴょん跳ねて必死に取り返そうとするが無意味だ。 「ゆひゃひゃひゃ!ほらほら!もっとあんよをつかわないとおりぼんさんにはとどかないよ!」 「おかざりのないくそちびはほんとにみじめなんだぜ!ぶひゃひゃひゃひゃ!」 やがて体力が尽きたのかその場で涙を流しながらリボンを見上げるだけとなった。 「かえしちぇくだしゃい……れいみゅのたいせつなおりぼんしゃん……」 「ならおもしろいげいをみせてね!すぐでいいよ!」 「げい……?」 「そうだぜ!たとえばじぶんでだしたうんうんをおいしそうにむーしゃむーしゃするとかおもしろそうなんだぜ!」 「ゆゆぅぅぅぅぅぅ!?」 「あ、もちろんむーしゃむーしゃ、しあわせー!ってげんきにさけんでね!」 「しょんな……」 「どうするのぜ?このままおまえのきたないりぼんをばらばらにしてもいいのぜ?」 「ゆっぐ……わかりまちた……」 れいみゅはその場でうんうんするとそれに口を近づけるがためらいがあり中々食べようとしない。 「どうしたのぜ?はやくしないとりぼんをばらばらにするのぜ!」 ゲスまりさがせかすとれいみゅはようやく自分のうんうんを食べ始めた。 「ゆっぷぅ!おええぇぇぇぇぇ!」 あまりの悪臭と味に吐き出そうとするがゲス2匹はそれを許さない。 「はいたらりぼんはばらばらだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「それからちゃんとせりふをいうのぜ!むーしゃむーしゃ、しあわせーって!」 「む……むーしゃ……むーしゃ……しあわせぇぇぇぇぇぇぇ……」 台詞とは裏腹にその表情は幸せとは程遠くゲス2匹はその表情に納得しない。 「はぁぁぁぁぁぁぁ!?なんなのぉぉぉぉぉぉ!?そのかおはぁぁぁぁぁぁぁ!?」 「どうやらりぼんはいらないみたいなんだぜ!それじゃりぼんをやぶくのぜ!」 自分の大切なリボンを取り返すためにれいみゅは必死に笑顔を作って叫んだ。 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせーーーーー!」 半分ヤケクソになっているがどうやらその必死な姿にゲス2匹は満足したようだ。 「ゆひゃひゃひゃひゃ!こいつうんうんたべてしあわせーっていってるよ!」 「これからこいつはうんうんってよぶのぜ!よろしくなのぜ!うんうん!」 「ゆっぐぅぅぅぅぅぅ……!」 涙を流しながら屈辱に耐えるれいみゅ。 ここで反論したらまた酷い要求を受けてしまうのでひたすら耐えた。 「まあおもしろかったしゆるしてあげるよ!かんしゃしてね!」 「またあいてしてやるのぜ!うんうん!」 そういって2匹がれいみゅから離れていくが…… 「ま……まっちぇ!おりぼんしゃんかえしちぇにぇ!」 まだリボンを返してもらっていないれいみゅが2匹に叫ぶ。 「ゆ?すっかりわすれてたよ!うっかりしててごめんね!」 2匹は思い出したかのようにリボンをれいみゅの前に落とした。 「ゆぅぅぅぅぅ……れいみゅのおりぼんしゃん……おきゃえりなしゃい……」 れいみゅがゆっくりと自分のリボンに近づくが…… 「おっと!とつぜんだけどうんうんしたくなってきたのぜ!」 突然ゲスまりさがその場でうんうんをした。 当然リボンはうんうんまみれになってしまう。 「ゆゆ!れいむもしーしーしたくなってきたよ!」 今度はゲスれいむがゲスまりさの出したうんうんの上にしーしーをぶっかける。 「「それじゃあね!」」 満面の笑みで去っていくゲス2匹。 「……」 れいみゅはうんうんとしーしーのトッピングで変わり果てた自分のリボンを前にしばらく硬直していた。 「ゆ……ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 数分後、硬直から開放されたれいみゅの悲鳴が森の中にこだました。 -その日の夜- 「ゆっぐ……えっぐ……」 れいみゅは家族の死臭に満ちた我が家へと帰ってきた。 その頭にはうんうんとしーしーで汚れきったリボンが付いている。 こんなリボンでも身につけてないとゆっくり出来ないようだ。 まあ身につけてても悪臭でゆっくり出来ないが。 「どうちて……どうちてれいみゅはこんなにみじめなの……?」 己の惨めさに涙が止まらない。 そんな時だ。 「「ゆんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」 突然ゆっくりの絶叫が森に響いた。 その声は昼間にれいみゅを苛めたあのゲス2匹である。 「「うっうーーー♪もっとたべるんだどーーーー!」」 「「やべでぇぇぇぇぇぇぇ!だべないでぇぇぇぇぇぇぇ!あんござんどらないでぇぇぇぇぇぇ!」」 どうやられみりゃの襲撃を受けて餡子を吸われているようだ。 「「じゃまなものはぽーいするんだどー」」 「あああーーーーー!でいぶのおりぼんざんがぁぁぁぁぁぁ!?」 「ばでぃざのずでぎなおぼうじがぁぁぁぁぁぁぁ!?」 ゆっくりは苦しめると中身の餡子が甘くなっていくので最近はれみりゃも簡単には殺さず苦しめてから殺すようにしている。 その後も「でいぶのもみあげさんがぁぁぁぁ!?」とか「ばでぃざのおざげざんがぁぁぁぁ!?」とか様々な悲鳴が聞こえてきた。 れいみゅは巣の奥でガタガタ震えるのみだ。 自分を苛めた2匹が死んでざまあみろという気持ちはない。 ただ怖かった。 2匹を食らったれみりゃが今度は自分の巣へやってこないかその恐怖でいっぱいだった。 親に抱きつく事で恐怖を紛らわす事も出来るが既に両親は地獄へ堕ちている。 同時に親がいない事で巣にけっかいを張る事も出来ないので巣は完全に無防備だ。 「ゆ……ゆ……ゆ……ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 そしてついに恐怖に耐え切れずれいみゅは大絶叫を上げ巣から飛び出した。 自殺行為でしかないのだが錯乱しているれいみゅにまともな判断など出来なかった。 そして案の定れみりゃに見つかった。 そりゃあんだけ大絶叫を上げてればここに餌があるよと言っているようなものである。 「うー♪みつけたんだどー!いただきまー……」 背後かられいみゅに噛み付こうとしたれみりゃだが…… 「うー!?こいつくさすぎるんだどー!こんなやつたべたくないんだどー!」 あまりの悪臭にれみりゃはれいみゅを食べる事無く他の餌を探し飛んでいった。 餌としての価値すらなくなったれいみゅだが結果として助かった。 だがれいみゅは必死に逃げ続けた。 「ゆひぃ!?」 暗くて周りがよく見えなかったというのもありれいみゅはあんよを踏み外して崖から転落してしまった。 「れいみゅ……!おしょらをとんでるみだい゛!?」 れいみゅが落下した先には木の枝がありれいみゅはその枝に思いっきり突き刺さる形になって止まった。 「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」 口から背中まで枝が貫通したれいみゅはビクンビクンと痙攣している。 中枢餡も損傷を受けたようでれいみゅは誰が見ても手遅れと分かる表情をしていた。 「あ゛……あ゛……」 もはやまともに喋る事すら出来なくなったれいみゅ。 そんなれいみゅのもみあげが何かを掴もうと小刻みに動いていたがやがてダラリと垂れ動かなくなった。 ようやくれいみゅの生命活動が停止したのである。 最後にれいみゅが掴もうとしたのが何だったのか、それはれいみゅにしか分からない。 だがれいみゅの苦しみに満ちた表情からそれを掴む事が出来なかったのは確かだろう。 無残な最期を遂げたれいみゅだが仕方ない事だ。 れいみゅも親と同様にバカでクズで無能で存在する価値の無い腐れ饅頭なのだから。
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―1― 木の根本に開いた穴は、元々は野ウサギの巣であった。 それを多少の拡張と補強を施して利用しているのは、最近つがいになったばかりの二匹のゆっくり だった。 野ウサギの巣には、ゆっくり自身が掘ったものとは比較にならないほどの奥行きがある。そのため、 奥の方で大声で騒いだところで出入り口から聞こえるのは、ほんの僅かな不明瞭な声。 そんな微かな声でも会話の雰囲気を掴むことが出来る。 大きな怒声と小さな悲鳴。 それはどう聞いても険悪な雰囲気であった。 「むきゅ……。上手くいってないのかしらね、あのふたり……」 おうちの奥から聞こえてきた声に何の気無しに耳を澄ませていた通りすがりのぱちゅりーは、溜息 を一つ吐いてその場を後にした。 一方その頃、おうちの奥ではぱちゅりーが懸念した通りの夫婦喧嘩が展開されていた。 もっとも、それはかなり一方的な展開であった。 「これはいったい何なの、まりさっ!」 「ゆひぃっ!? そ、そんなこわいおかおでどならないでね……」 「まりさがれいむをおこらせるようなことするからでしょっ!! これは! いったい! 何なのっ て! 聞いてるんだよぉっ!!」 「ゆ、ゆわぁっ!?」 野生動物が作り上げた頑丈な巣穴が、れいむがあんよを踏み鳴らす度にパラパラと砂埃を落とす。 れいむの体躯は、一般サイズのゆっくりであるまりさより一回りか二回りほど大きい。さらにまり さは気迫負けして縮こまっているので殊更大きく見える。当のまりさの視点ともなると、れいむの姿 はドスをも超える巨体に映っていた。 そんなれいむが物凄い形相で見下ろしている。 荒い呼気が頬を撫でた時点でまりさの恐怖は臨界を超えて、チョロチョロと水音と共に下から溢れ 出した。れいむの地団駄が続いていなければ、その音と振動が絶えずまりさを揺さぶっていなければ とっくに気を失っていた事だろう。 気絶できれば少しはゆっくり出来たかも知れない。 しかし現実に逃避が出来ない以上、まりさは大人しく応えるしかなかった。 「それ……それは、ごはんさん……だよ?」 まりさとれいむの丁度中間にこんもりと草が積んである。まりさが集めて持って帰ったお帽子一杯 に詰め込んできたそれが、れいむの火種となっていた。 狩りと称する野草の採取から帰り、笑顔で収穫をひけらかしたところで何故だかれいむの怒りが爆 発してしまったのである。折角ごはんをあつめてきたというのに何故れいむが怒っているのか、まり さには解らない。 解らないから鍔広の帽子の陰からこそこそとれいむの顔色を伺いながら、なるべく刺激しないよう に小さな声で返答する。 そんなまりさの顔に、れいむの蹴り飛ばした草が浴びせられた。 更に罵声まで飛んできた。 「ごはんさんは柔らかくって、にがにがの少ない草さんを集めてきてねって言ったでしょうがぁっ! どぉしてこんなに堅い草さんばっかり集めてくるのっ!」 「ゆひっ!? しらないよっ!? まりさそんなことしらないよっ!?」 「まりさがれいむのお話を聞いてないだけでしょぉっ!!」 「ゆぎゃんっ!」 聞き覚えのないことは知らないとしか言いようがない。涙を流しての訴えは、しかし軽い体当たり によって却下された。 れいむとまりさの体格差からすれば相当加減された体当たりだったが、痛みに弱く挫け易いゆっく りからすれば耐え難い激痛に感じられた。まりさは瞬く間に目に涙を溜めて大泣きの準備に入った。 「ゆびぇ……え?」 「――まりさ、ゆっくり泣いてるひまがあるなら」 そんなまりさの目前――それこそ目と目が触れ合いそうなくらい近くに、無表情に目を見開いたれ いむの貌があった。 ゆっくりにあるまじき迫力に涙も声も引っ込んでしまったまりさにできたのは、かみ合わない歯を ガチガチと鳴らしながら静かにれいむの言葉を聞くことだけだった。 そんなまりさの様子に満足したのか、れいむの黒目がついっと動いて出入り口を見やった。 「ゆっくりしないでごはんさんを集めてきてね? 柔らかくって、にがにがさんじゃない草さんで良 いんだよ? たくさんでいいよ? 今度こそ、わかった?」 「ゆ、ゆっ、ゆひぃっ!? わかりましたぁっ! まりさはかりにいくよぉおおおおお……っ!!」 無言で語られた『さっさと行け!』のアイコンタクトに従い、まりさはゆっくりらしからぬ勢いで 巣穴を飛び出していった。 外の風に当たったまりさは不意に思う。 どうしてこうなったのだろうか、と。 だが何はさておき、れいむの機嫌を治すために美味しい食べ物をかき集めなければならない。 あまあまな空気に満ちたから恋人時代から、まったく以てゆっくりできないものへと激変した新婚 生活に涙しながら、まりさは跳ねた。 ―2― 一週間前までは、まりさは幸せの絶頂期にあった。 両親によって何不自由なく育てられたまりさは、狩りの練習に出かけた先でれいむと出会った。お うちの奥で大事に大事に育てられてきた一人っ仔のまりさにとって、それは同世代のゆっくりとの初 めての出会い。 れいむはとてもゆっくりした、美しいゆっくりだった。髪の艶、肌の張り、飾りの鮮やかさ、どれ をとってもその後出会ったどのゆっくりより抜きんでいた。 一目で惚れ込んだまりさは即座にれいむにプロポーズをするのだが、その時は一言で断られた。『れ いむはまりさのことを知らないから』というのがその理由。 それでもまりさは諦めず、懸命に自分をアピールし続けた。 甘やかされてきただけに狩りの要領こそ悪いまりさだったが、頻繁に出会い、話し、そして運良く 見つけたこのおうちと、がんばって集めた食料の備蓄を見せたことで、漸くれいむはまりさを受け入 れてくれた。この時、まりさの両親の尽力があったことは、れいむには秘密である。 おうちを構えて伴侶を得、順風満帆に滑り出したまりさの新生活。これからおちびちゃんを沢山作 り、れいむと一緒に賑やかで幸せな家庭を築く。そんなまりさの薔薇色の将来設計は、一晩明けたと きには崩れ去っていた。 とても優しかったれいむの豹変。 まりさが一生懸命集めてきたごはんに、「堅い」「苦い」とケチを付ける。何とかして柔らかくて 口当たりの良いご馳走をかき集めてもまりさの口には入らない。 肌をすり合わせて一緒に眠ろうとしても、おうちの一番奥にある一番広い部屋からつまみ出される。 寄り添って眠った記憶は、正式につがいとなる前のひなたぼっこにまで戻らないと見あたらなかった。 抗議の声を上げたこともある。しかし、かつての優しかったれいむからは想像もつかないほどの迫 力で以て打ちのめされた。それ以降、まりさはただ従順にれいむに従っている。 日が昇ってから青空に朱色が混じる頃まで、ただひたすらにごはんを集めることで過ぎていく。そ して独りっきりで眠る夜。 まりさの一日にはゆっくりできる時がなかった。 こんなにゆっくりできない生活がしたいわけではなかった。 群一番のゆっくりしたお嫁さんをもらい、たくさんの子供をつくり、幸せな家庭を自らの手で築き 上げることで親の庇護の下で暮らしていた日々よりも、たくさんたくさんゆっくりする。 そんな夢を見てれいむにプロポーズしたはずなのに、現実には夢の欠片さえ視ることができないで いた。 「……ゆっくりしたいよ……」 美味しそうに見える草をむしり採りながらまりさは溜息をもらす。 そこはおうちから少し離れた所にある、背の高い草が生い茂る小さな広場。群の居住地からは少し 離れたところに住み着いているだけに、ここはまりさの狩り場として独り占めできていた。 だから狩り自体に大した労力は必要ない。 ぶちぶち草をむしりながら悩むだけの余裕が持てる。ぶちぶちと草を抜きながらぶつぶつと愚痴を 漏らす。 「なんでれいむはまりさをゆっくりさせてくれないんだろ……? いっしょにゆっくりしようねっ! て、いっしょにいったのになぁ……」 引き抜いた草がある程度の山と成ったところで帽子を下ろし、収穫を詰め込んでゆく。 詰めてみると容量に少し余裕があったので、もう少し草むしりに勤しむことにした。自然と愚痴も 続く。 まりさの中で「何故」と「どうして」が空回りしていた。 しかしながら、ぼんやりとしたまりさの疑問を、ぼんやりとしたまりさの頭で解決することなどで きはしない。 「ゆっ、まりさじゃない! おひさしぶり、ゆっくりしていってね!」 「ゆ……? ありす……?」 底なし沼に踏み込んだ者を助けるには、他者の助けが必要なのだから。 ―3― ごはんを求めてこの草むらまで遠出してきたありすは、幸いまりさの幼なじみだった。 既知の仲と言うこともあって、暗い顔をしていたまりさから遠慮なく悩みを聞き出したありすは、 その話の内容に怒りの余り憤然とここには居ないれいむをなじる。 「なんてひどいのれいむ……っ! いいえ、そんなれいむなんて、もうでいぶよ、でいぶっ! せっ かくありすがまりさからみをひいたっていうのに……っ。ゆっ、いえそれはともかく、ふたりでいっ しょにゆっくりすることもできないだなんて、とんだいなかものだったようねっ!!」 「あ、ありす、おちついてね……?」 その剣幕には暗い顔で相談したまりさも若干引き気味である。怯えて引きつった表情のまりさを見 たことで冷静さを取り戻したありすは、しばらく深呼吸をして冷静さを取り戻した。 「まりさ、おさにそうだんしましょう!」 「……ゆ?」 「ざんねんだけど、ありすがいくらかんがえてもまりさをゆっくしさせてあげられるほうほうはおも いつかないわ。だけど、おさならきっととってもゆっくりできるほうほうをかんがえてくれるはずよ っ!」 他人任せとは言え、ありすは目と目を合わせて力強く断言する。それほどまでに憔悴したまりさの 姿は見ていられなかったのだ。 ありすの記憶の中にあるまりさの姿は、何時だって見ている方も釣られて元気になってしまいそう な程に、明るく活発だった。 こんなお帽子の陰に隠れるようにして相手を窺うような、おどおどとした暗いゆっくりなどありす の知っているまりさではない。 「れいむからとりもどしましょう、まりさのゆっくりを!」 「まりさの……ゆっくり……っ!」 ありすの力強い言葉に、地面ばかりを見ていたまりさの顔が上向く。 ゆっくりしたい、という願望はゆっくりの根幹を為す命題とも言える。だが今のまりさはまるでゆ っくりできていない。 それは何故か。 考えるまでもない。まりさのゆっくりが理不尽にもれいむに踏みにじられているからだ。 そこまで思い至ったことで、れいむへの恐れから思考停止に陥っていたまりさの餡が、熱を持って 巡り始めた。 「……ゆっくりしたい。まりさだってゆっくりしたいんだよぉおおおおおっっ!!」 これまでれいむによって押さえつけられてきたまりさの思いが、叫びとなって一気に爆発する。大 声を張り上げたのは一体何時振りだろうか。 そしてありすとまりさは群の長の下へと赴き、まりさの窮状を訴えた。 まりさの涙混じりの嘆願を静かに聞き終えた群の長ぱちゅりーは、しばし瞑目した。 「……むきゅぅ。最近あなた達のおうちの近くを通ると喧嘩しているようなおこえが聞こえるから気 にしてはいたのだけど……そんなことになっていたなんて気付かなかったわ」 友達から恋人として仲良くやっていた二匹が、つがいになった途端に激しい喧嘩をするようになる ということは、ぱちゅりーが群の長を引き受けてからも数回あった。 夫婦喧嘩をすること自体は珍しいことではない。 ただ、新婚一週間で――否、話を聞くに新婚初日から不協和音を響かせたつがいは初めてのことだ った。 しかしながら、驚きはしたもののやることに変わりはない。 ぱちゅりーはありすを少し離れさせると、まりさと向き合って訊ねた。 「ね、まりさ。まりさはどうすればゆっくりできるのかしら?」 「ゆ? どうすればって……どういうこと?」 「れいむと仲直りすればゆっくりできる? それともれいむと別れたらゆっくりできる?」 「ゆ……? ゆぅぅ……」 「ちょ、ちょっとおさっ!」 「ありすはちょっと黙っていてちょうだい。ぱちぇはまりさに聞いているのよ」 目を白黒させて悩みだしたまりさをありすが庇おうとするが、ぱちゅりーは一言の下にありすを黙 らせた。 仲直りしたいと言うのであれば、れいむとまりさ、双方の話を聞きながらじっくりと解決策を練る 必要がある。時間と手間は掛かるだろうが、れいむが豹変した理由さえはっきりすれば元の鞘に納め ることも不可能ではないとぱちゅりーは考えていた。 別れたいというのであれば、話はより簡単になる。 「まりさは……まりさは、あんなれいむとはもう、おわかれしたいよ」 「むきゅ……わかったわ」 一つ一つの言葉を噛み締めるようにして告げるまりさの姿に、その覚悟は堅いと見て取れた。 一つ頷き、ぱちゅりーはおうちの外へとあんよを向ける。 突然移動を始めたぱちゅりーを慌てて追いかけてきたまりさとありすに、顔は正面を向いたままで ぱちゅりーは告げた。 「まりさ、ありす。群のみんなをまりさのおうちの前まで集めてきてちょうだい。最後にぱちぇがれ いむと話をしてみて、それから決定を下すわ」 ―4― そして日の傾いた夕暮れ時。 まりさとれいむのおうちの前には群のゆっくりたちの姿があった。幼い赤子とそれを見守る母親以 外が勢揃いしたその数は、五十に近い。 それはまりさとれいむの絶縁の立ち会いゆっくりであり、ぱちゅりーの用意した、いざというとき の用心だった。 その先頭に立つ長、ぱちゅりーがしんと静まり返った群を代表して大声で呼びかけた。 「れいむ! ご用があるから出ていらっしゃい!」 「……ぱちゅりー? こんな時間に何のご用なの?」 暫くしておうちの奥からのっそりとれいむが現れた。 おうちの出入り口に頭を軽くこする程の巨体に群れのゆっくりたちは目を剥いて驚く。一週間ほど 前までは群でも小柄な部類に入っていたれいむが、自分たちを大きく上回る巨体になっていては驚く のも無理はない。 れいむもまた、おうちを出た途端に群のみんなが大挙して取り囲んでいる状況に目を丸くした。 双方が膠着した中、ただ一匹平然としていたぱちゅりーが口を開いた。 「むきゅ、ゆっくりしていってね。お久しぶり、れいむ」 「ゆっ!? ゆっくりしていってね! ゆん、久しぶりだね、ぱちゅりー」 声をかけられたことで我に返ったれいむも、にこやかに挨拶を返す。 しかし周りの異様な状況に、にこやかな表情は瞬く間に訝しげなものに取って代わる。次いでぱち ゅりーの陰に隠れるようにしてまりさが小さくなっているのに気付くと、表情は苛立たし気なものへ 変化した。その隣で怯えるまりさを支えているありすの姿があったが、それもれいむの気分を害した。 「みんなして何のご用なの? そこでまりさは何をしてるの? 今日はお帰りが遅いから何処まで狩 りに行ったのかって思っていたけど、ごはんさんはどうしたの? ありすとなにをしていたの?」 「ゆ……ゆひッ!?」 「むっきゅん! まりさに質問する前に、ぱちゅがれいむに聞きたいことがあるの。いいかしら?」 まりさに向かいかけたれいむだったが、ぱちゅりーの咳払いで機先を制された。先刻の気勢もれい むの前に来ただけで吹き飛んでいたまりさは、それ幸いとぱちゅりーの後ろで縮こまる。 ぱちゅりーの話を聞く前に、まりさを詰問して今日の分の食料を取り立てたかったが、相手は長ら くお世話になっている群の長であるし、周囲には馴染みの顔も多い。苛立ちは収まらないが、れいむ はとりあえずまりさから視線を引き剥がした。 そうして改めてぱちゅりーと向かい合う。 「……ゆふぅ。ゆっくりわかったよ。ぱちゅりーは何が聞きたいの?」 「ありがとう、れいむ。まりさに聞いたのだけれど、まりさをゆっくりさせないで一日中狩りに行か せてるって本当?」 「本当だよ。けど、柔らかくて美味しいごはんさんを採ってこれないまりさが悪いんだよ!」 「けっこんしてからは、すーりすーりもしないし、一緒にすーやすーやする事もないって本当?」 「本当だよ。まりさとはもう二度とすーりすーりも、すーやすーやも、してあげるつもりはないよ!」 「それじゃあ最後に、そんなれいむの態度に文句を言ったまりさに暴力を振るったって、本当?」 「それがどうかしたの? れいむの言うことを聞いてくれないまりさが悪いんだよ! 何もかも、ぜ ーんぶまりさが悪いんだよっ!」 「むきゅ、解ったわ……」 ぱちゅりーは嘆息と共に目を閉じる。 そして再び目を開いたとき、その瞳には確固たる決意が宿っていた。 「れいむのゆっくりの為に、あんなにゆっくりしていたまりさをまったくゆっくりさせなかった。大 切にしなきゃいけないつがいを、こんなにボロボロになるまで扱き使うようなゆっくりは『でいぶ』 よ。でいぶはいずれ群のゆっくりにも害となるわ」 「……ゆ? なにいってるの……?」 「ぱちぇの群にでいぶはいらない。今ここに、ぱちぇはれいむを群から追放することを宣言するわ!」 突然何を言い出したのか即座に理解できずにキョトンとしているれいむを余所に、ぱちゅりーの台 詞は続く。 「まりさもれいむとお別れしたいってぱちぇに伝えているわ。だかられいむは独りで、ゆっくりしな いでぱちぇの群からでていきなさい!」 「なにを……なに言ってるのぉっ!!」 「大人しく出ていかないのなら……」 理解が追いついたれいむが激昂するのと、ぱちゅりーとれいむの間に群でも屈強なゆっくりたちが 割り込んでくるのはほぼ同時だった。れいむが暴れ出したときに巻き込まれないくらいの距離を取り ながらも、ぱちゅりーはれいむを真っ直ぐに見据えていた。 「手荒な手段を執ってでも出て行ってもらうことになるわ。例え、れいむがゆっくりできない怪我を 負うことになっても、ね。幼い頃から貴女を知っているぱちぇは、できればそんな乱暴な手段は執り たくないの。大人しく群から出て行ってちょうだい」 「……けるな、ふざけるな! ふざけるなぁあああああっ!!」 取り囲む尖った木の枝や棒をくわえたゆっくりたちの姿は、怒り狂ったれいむの目にはもはや映っ ていなかった。 視線だけでゆっくりが殺せそうな形相で、ぱちゅりーを――否、その後ろでしーしーを漏らして震 えているまりさだけを睨みつける。 「れいむの言うことをぜんっぜんッ聞きやしないまりさも、そんなまりさの言うことなんかを真に受 けるぱちゅりーも! そんなぱちゅりーに考え無しに従ってるだけのみんなもっ! みんなみんな永 遠にゆっくりしてしまえぇえええええっ!!」 「むぎゃっ!?」 間に入ったゆっくりたちを事もなく蹴散らして、れいむはまりさに向かって猛進する。 屈強なゆっくりとは言っても、それは戦い慣れしているのではなく、単に体力やあんよの早さが他 のゆっくりに比べれば優れていると言うだけの話。憤怒の形相で迫るれいむの正面に居たゆっくりた ちは、その余りの怖ろしさにぱちゅりーの命令を無視して逃げ出していた。動かないゆっくりも居た が、それらは完全に気を呑まれて竦んでおり、鎧袖一触で吹き飛ばされた。 ぱちゅりーの顔色がここに来て初めて変わる。 ぱちゅりーとれいむの間を阻むゆっくりが総て居なくなった瞬間、ぱちゅりーの餡は突進を喰らっ て容易く弾け飛ぶ自分の姿を幻視した。 だが、そうはならなかった。 れいむ正面のゆっくりたちこそ逃げ出していたが、左右と背後に陣取っていたゆっくりたちが懸命 に追いすがっていた。 体当たりをしかけて髪に噛み付き、棒を振りかざしてれいむの動きを封じようと殺到するゆっくり の群。目の前に尖った枝を突きつけたり、頬を軽く切り裂いたりしてれいむの気勢を挫こうと試みる が、激怒のれいむは歯牙にもかけない。 突き出された枝に躊躇無く飛び込み、突き刺さった枝をへし折りながらもただ前へ。瞬きを忘れた れいむの双眸は、ただひたすらにまりさだけを捉えていた。 それでも進む速度は遅くなっていた。お陰でれいむから距離を置くことができたぱちゅりーは呼吸 を整えながら、ゆっくりを蹴散らして徐々に近付いてくるれいむの姿を見据えた。 「むきゅぅ……むきゅぅ………むきゅ。できればお話で済ませたかったわ、れいむ……」 距離を置いたと言っても、愚直に突き進むれいむが肉薄するのに大して時間は掛からないだろう。 だから、ぱちゅりーは穏便な手段を諦めた。 「このままじゃ、みんなれいむに永遠にゆっくりさせられてしまうわ! その前に、れいむを倒すの よ! 手加減はもう考えなくていいわっ!!」 れいむの怒声を上回る咆哮がゆっくりたちから上がる。 途端に牽制で頬を引っかけていた程度の枝が、れいむに深々と突き立てられた。れいむの前にかざ された枝も、どれだけれいむが近付こうとも引く気配がない。 れいむには何の変化もない。痛みなど何処かに忘れ去ったかのように、髪など引き抜かれるに任せ、 頬に穴を開けた枝を噛み砕き、瞳に突き刺さった枝をくわえていたゆっくりを跳ね飛ばして突き進む。 双方、死に物狂いとなったこの戦いは、それから少しして終結した。 ―5― 「ありがとう、ありがとう! みんな、まりさのためにありがとうねっ!!」 激戦の跡から立ち去る群のゆっくりたちに、まりさが涙を流して感謝を捧げてから暫くして、まり さのおうちの周りはいつもの静寂を取り戻しつつあった。 いつもと違うのは、時折呻き声や泣き声が遠くから聞こえてくること。 たった一匹のれいむが相手だったとはいえ、激戦を終えた時、群のゆっくりたちの殆どが大小様々 な傷を負っていた。永遠のゆっくりへと旅立ったゆっくりも少なくはない。 怪我に呻くゆっくり。死者を嘆くゆっくり。その声は各自が自らのおうちへ帰った今もなお聞こえ てくるほどだった。群で被害にあっていないゆっくりは居ないから群のある森全体が悲しみに包まれ ていると言っても過言ではない。この声は数日は聞こえてくるのだろう。 そんな沈痛な空気が流れる中、数少ない無傷のゆっくりであるまりさは満面の笑顔でおうちの周囲 を飛び跳ねていた。 そして入り口でピタリと止まると、ピョンと飛び跳ね、大声で叫んだ。 「ここはっ、まりさのおうちだよっ! まりさだけのおうちだよーっ!!」 ここは元々まりさのおうちではあったが、実質はれいむに占有されていただけに自分のおうちとい う実感がまりさには乏しかった。だからこその再おうち宣言であった。 空中で全力のおうち宣言を行ったまりさは、着地して暫く静かに耳を澄ませた。 聞こえてくるのは群のゆっくりの暗い声ばかりで、おうち宣言への異議は聞こえてこない。 その結果に満足したまりさは帽子の鍔を跳ね上げて笑う。 「ゆん! それじゃ、まりさはしんっきょのおそうじをするよ!」 足取りも軽く、まりさはおうちの中へと消えてゆく。 まりさは自覚しているだろうか。 おうちの周りを跳ね回っている時も、おうち宣言をした後に周囲を見回しながら耳を澄ませていた ときも、ある一角だけは努めて見ようとしなかったことに。 そこに、れいむの姿がある。 両のもみあげは千切れ、片目は潰れ、総身どこから見ても深々と突き刺さった木の枝や大きく開い た傷が見て取れる。大口を開けた口内にすら木の枝は突き刺さっていた。 だがそんな傷を負いながらも、れいむは静かにそこに在った。 泣くことも喚くこともしない。残された片目は瞬きもせずに中空をぼうっと眺め、開いた口からボ ロボロになった舌が零れだしている。 どう見たって死んでいる。 そんなれいむの姿を、まりさは努めて意識から排除していた。 ―6― 果実や木の実を大きめの葉に包む。 中身別に分けた数個の包みを長めのツタで縛って纏め上げると、まとめて頭の上にひょいと乗せた。 ちょっと重いけれど、ありすは気にすることなく外へと飛び出した。 「さて、いままでゆっくりできなかったぶんまで、まりさをうんとゆっくりさせてあげなくっちゃ!」 あんよも軽く、頭上の荷物の重さも感じないほどに軽やかに飛び跳ねてありすは進む。ツタの端を しっかりくわえているので、うっかり落として無くす心配もない。 ありすにとって、まりさもれいむも友達であることに違いはなかった。 だから、れいむの豹変には驚いたし結局殺されてしまったことが悲しくもある。しかしそれでも、 まりさをあれほどボロボロになるまで扱き使っていたれいむの非道を思えば、罪悪感はさほど感じな かった。 今はとにかく、ゆっくりできない状況から解放されたまりさと一緒にご馳走でも食べて、あんなれ いむの事などゆっくりらしい忘却力で餡子の片隅に追いやってしまおうと考えていた。 そのための大荷物である。重いと感じるはずもない。 それなりに離れたところにあるまりさのおうちも、不思議と長い道程とは感じなかった。 同じ頃、同じようにまりさのおうちを目指しているゆっくりが居た。 長のぱちゅりーと、成体のゆっくりが数匹。 ありすが元気一杯に飛び跳ねているのに比べて、此方は雰囲気からして暗く、いかにもゆっくりし ていない様子が見て取れた。 「むきゅぅ……困ったわね。まりさはぱちぇのお願いを聞いてくれるかしら?」 「きいてくれないとこまるんだねー、わかるよー」 「そもそもまりさをたすけるために、みんなゆっくりできなくなっちゃったんだみょん。まりさがむ れをたすけるのはとうぜんみょん」 悩みの種は、群の働き手である体力に優れたゆっくりたちが軒並み傷付くか、最悪、永遠にゆっく りしてしまったことにあった。 今回の激戦で最前線に投入された精強なゆっくりたちは、みんな食料調達に優れていた。それだけ に、自分以外のゆっくりを養っているゆっくりが多かった。 つがいを永遠に失ったものや、怪我を負った大黒柱を抱え込むことになった一家など、これから先 の生活を悲観する家庭は少なくない。 ぱちゅりーは長として、彼らのこれからを考えないわけにはいかなかった。 そこで考えついたのが次の春が来るまで、群全体が集まって暮らすという案だった。 そうすれば、狩りに行けるゆっくりは憂い無く出かけられるし、重傷の怪我ゆっくりや孤児ゆっく りの面倒だって、子守で残っているゆっくりたちなどで見ることもできる。 その案を実現させるためにも、狩りのできる元気のあるゆっくりは一匹でも多く参加してもらいた かった。 特に、今回の発端でもあるまりさには是が非でも先頭に立って欲しい。 みんなが傷付いている時にぱちゅりーの陰に隠れていただけのまりさに対して、群のゆっくりたち の視線が厳しくなっている。それを鋭敏に感じ取ったぱちゅりーは、まりさがこれからも群の一員と してゆっくりしていくためにも、まりさの協力を期待していた。 しかし、一抹の不安がある。 ぱちゅりーはまりさの言動の何処かに、朧気ながらゆっくりできないものを感じていた。 それがぱちゅりーの表情に影を落とし、一行の雰囲気を暗くしていた。 「……それも確認してみないと解らないわね。むきゅ……」 自らに言い聞かせるように呟き、ぱちゅりーはあんよを進めた。 だが、何も持っていない身軽な身体は、不思議なほどに重く感じられた。 ―7― その頃、まりさのおうちの前には雑多な物が積み上げられていた。 それはれいむが寝ていた干し草であり、ありすかられいむに送られた蔦草のばっぐであり、れいむ が集めていた綺麗な小石などの宝物であった。 まりさはあれから、巣穴の奥深くかられいむが愛用していた品々を引っぱり出しては捨てていた。 まだ十分に使えそうな物ばかりなのに捨てているのは、それだけれいむが憎かったからだろうか。 そんなまりさの心情をおもんばかり、ありすはますます自分がまりさを元気付けねばと気合いを入 れ直した。 「……けど、ちょっともったいないわね。つかえるものはつかうのがとかいはなんだけど……」 などと、少なからず後ろ髪を引かれながらありすはおうちの出入り口に近付いた。 そして大きく息を吸い込むと、おうちの奥へ大声を放った。まりさのおうちは元は野生動物が作っ た巣穴だけに奥が深く少し入り組んでいるので、考え無しに踏み込むよりは出入り口で声をかけた方 が効率が良かった。 「ゆっくりしていってねーっ! まりさっ! いるかしらー!?」 「……ゅ……ゅ…………」 「ゆっくりしていってねーっ! ゆ、あんなところにかくれてたんだねっ!! ありす、ゆっくりま っててねー!」 「……ゆ?」 目を点にしたありすの頭が傾く。 聞き間違いでなければ、今ありすの挨拶に応えた声は二つあった。一つは間違いなく聞き慣れたま りさの声。しかし、もう一つの声に聞き覚えはない。 社交的な生活を送っているありすは群の殆どのゆっくりと話した覚えがある。それ故に一度会話し た相手であれば、それが誰かは解らなくても、少なくとも聞き覚えくらいはあるはずだった。 どこかから流れてきたゆっくりがまりさのおうちに迷い込んだのか? しかし、聞こえてきたのは幼い感じの声。 「まいご……かしらね?」 頭を傾げるありすだったが、答えはおうちから出てきたまりさが口にくわえていた。 黒いとんがり帽子。三つ編みは二つあるけど髪型と、ハシバミ色の瞳はまりさと良く似ている。 帽子に巻いているのと、三つ編みを束ねているリボン。そして艶やかな黒髪にはれいむの面影があ った。 れいむとまりさの面影を併せ持つその幼いゆっくりを、まりさは無造作におうちの外に投げ捨てた。 顔面から地面に叩きつけられた幼いゆっくりは痛みを堪えるかのようにしばらく平ぺったくなって 震えていたが、ぐずつきながらも身体を起こし、ぎこちなくても笑顔を作るとまりさに向けた。 「ゆぅっ!? ゆっ……ゆっく……ゆ、ゆーゆぅー?」 「うるさいよっ! おまえなんかがいるとまりさはゆっくりできないんだよ! ゆっくりりかいして ね。りかいしたらゆっくりつぶされてねっ!」 「ゆ……? ゆっ!? ま、まちなさいまりさっ!!」 躊躇無く幼いゆっくりの真上に跳躍したまりさに、我に返ったありすが大慌てで横から飛びつく。 辛うじて幼いゆっくりの横にまりさを押しのくことができたありすに、柳眉を逆立てたまりさの顔 が迫った。 「ちょっとありす! なんでまりさのじゃまをするのっ!?」 「ゆっ!? ごめんなさ……じゃないわよっ!! なんなの、このこはっ!」 「ゆ……っ!?」 一端引いたものの、まりさ以上の剣幕で詰め寄るありすにまりさの意気は一瞬で消し飛んだ。そこ にいるのはありすが良く見知った、明るく元気で、でもとっても臆病なゆっくりまりさの姿だった。 瞬く間に涙目になったまりさに少し躊躇しながらも、ありすは強い口調で問いつめた。 「このこがなにをしたかはしらないけれど、いきなりえいえんにゆっくりさせようとするだなんて、 ぜんっぜんとかいはじゃないわっ! それにこのこ、まりさやれいむににているけど、ひょっとして ……」 「ゆっ!? ちがうよ、ちがうよっ! そんなのまりさのちびちゃんなんかじゃないよ! そんなゆ っくりしてないのなんか、まりさはしらないよっ!」 「……あいかわらず、うそがへたね。まりさ……」 「しらないしらない、しらないったらしらないよぉーっ!!」 何時しか静かな口調となったありすの言葉を、まりさは顔を激しく振って否定する。 あまりにゆっくりできない勢いで顔を振るのでありすは一歩引いた。振り回されたお下げが当たり かけて、更に一歩。 下がった刹那にまりさは飛び出していた。 「あ……っ!」 「おまえなんかしらない、しらないゆっくりはつぶれちゃえぇえええええっ!!」 愕然とするありすの横をすり抜けたまりさは、再び幼いゆっくりの頭上へと舞い上がる。 着地した直後のありすは動けない。 成体のゆっくりに踏みつぶされる幼い仔の姿を想像して、ありすはギュッと堅く目を閉じた。 だから見逃した。 「そこまでよっ!!」 「ゆぎゅっ!?」 突如響き渡るぱちゅりーの声。同時に飛び出した二匹のゆっくりが正面から飛びかかり、まりさを 迎撃した。 恐る恐る目を開いたありすの視界に飛び込んできたのは、ゆーゆー泣き始めた幼いゆっくりと、頭 から墜落してじたばたと足掻くまりさの姿だった。 そこへゆっくりと、ぱちゅりーがまりさの元へと歩み寄る。 「本当はまりさにお願いがあって来たのだけど……。まりさ、ぱちぇはあの仔の事は何も聞いてない わ。改めてまりさのお話が聞きたいの。ゆっくりと詳しく、今度は正直に全部、話してくれるわね?」 「ゆ……ゆぅ……ゆっくりりかいしたよ……」 滅多に見られない群の長としての威厳を前にして、まりさはがっくりと項垂れたのだった。 ―続く― 挿絵:我慢あき
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『野良さん、ありがとう!』 24KB 差別・格差 嫉妬 飼いゆ 野良ゆ ひまつぶしに。 ※※飼いと野良ゆの格差ものです※※ 初夏に手をかけた時節の公園、広場から少し外れた木陰の続く裏道を、ゆんしょゆんしょと二匹のゆっくりが走っていた。二匹ともいまだに小さな子ゆっくりのまりさとれいむ。せいぜいもう赤ちゃんとは呼べないかな?という程度の年頃である。 さてさてこの二匹の子ゆっくり、見るひとが陽光のなかきらめくお飾りにつけられたバッジを見ればわかるとおり、飼いゆっくりだ。もちろん身体も未熟、知識も未熟、まだまだこれからたくさん両親や飼い主さんからじょうしきっを学ばなくてはならない立場。金銀胴なる飼いゆっくりのランク付け以前の、単に「この饅頭は野良ではないですよー」という程度のしるしでしかない。 そんな二匹が人通りの少ない公園の裏道で、両親とも飼い主さんとも離れて子ゆっくり二匹だけで走っている理由は、このさい重大な伏線でもなければドラマティックな何かでもないので一口で言ってしまうと、単に冒険心ゆえ少々周りを見ることを忘れてしまっただけだ。もちろん、この公園までは飼い主さんに連れられて、両親同伴できている。飼い主さんから一家丸ごと自由に遊んでいいよといわれ、さらに両親からも自由に遊んでいいよといわれ、両人ちょっと目を離した隙にこんなところにきてしまったという、まあ子ゆっくりにありがちといえばありがちな話である。 この公園、もちろん子ゆっくりを放して遊べる程度には安全な場所で、子まりさも子れいむも両親の姿が見えなくなったことは気づいているが、不安はない。いや、まったくないといえば嘘になるものの、これも子ゆっくりにありがちだが好奇心のほうが勝っており、少々の不安はだいぼうけんっのスパイスでしかないのだ。それに、なんだかんだで大好きな飼い主さんも大好きなお父さんお母さんも、なにかあれば二匹をすぐ見つけてくれるはず…… しかしいかに平和な公園といえども、子ゆっくりが100%安全なわけではない。例えば間違えて道路にでてしまい車さんに轢かれる、例えば人間さんが遊ぶボールにぶつかってしまう、例えば急な雨さんが降りだしてくる。それに例えば、 「ゆぷぷぷぷ。くさいんだぜ。すっごくくそにんげんくさくて、はながまがりそうなんだぜ!」 「おお、くさいくさい。ほんとうにくそにんげんにかわれる、やせいをうしなったかちくっのにおいはたまらないよ!」 『野良さん、ありがとう!』 これだ。野良ゆっくりである。いきなり子まりさと子れいむの目の前に、大人サイズの野良二匹――野良まりさと野良れいむがあらわれた。 こんな野良ゆっくりたちが人通りの少ない公園の裏道で、両親とも飼い主さんとも離れた子ゆっくり二匹の前に現れた理由も、このさい深遠な理由などなければ何らかの因縁の結果でもないので一口で言ってしまうと、単なる偶然である。実のところ、野良二匹は特に意図して子ゆっくりに絡もうとしたわけですらない。ゆっくりは――野良であろうとバッジ付きであろうと、基本的に自らの考えたことをそのまま口にだしてしまう習性がある。それがどんな状況を引き起こすか、あるいは周りにどんな印象を与えるか、のごとき「機微」や「空気」を読んで「考える」ことが極端に苦手なのだ。 子まりさと子れいむは、ぴたりとあんよを止めた。これがもう少し成長して、飼いゆっくりとしてのきょういくっをもっと受けていれば、こんなミステイクはおこさなかったであろう。野良に関わってなにひとついいことはなく、無視をすべきだというのは飼いゆっくりの「いろは」の「い」である。もちろん二匹とて生まれつきの飼いゆっくり、いちおうそんな程度のことは両親から言われている。要するに一瞬おどろいて足を止めてしまった、というだけなのだが―― 「それにしてもほんとうに、かいゆっくりはぜんゆっくりのなかでもさいていへんっなのぜ! あのひょろひょろあんよのついたきみのわるい『にんげん』みたいなかとうせいぶつに、よりによってえさをめぐんでもらっていきているなんて、まりさならはずかしくてせけんさまにかおむけできないのぜ」 「ゆーん、ほんとうにきびしいやせいのせかいでさばいぶっしているれいむたちにとってすれば、いきているだけではずかしくないのかしんぱいになるよ! こんなくそにんげんくさいおちびをうんだおやも、きっとあくしゅうをまきちらすうんうんゆっくりなんだろうね! うんうんいちぞくだよ!」 「な、なにをいってりゅのじぇー! かいぬしさんをばかにすりゅのはゆりゅしゃないのじぇ!」 「おちょーさんとおかーさんをばかにしにゃいでね! れいむ、ゆりゅせないよ!」 思わずきっと野良二匹をにらみつけ、子ゆっくりたちは声を張り上げた。……張り上げてしまった。自分たちならいざ知らず、敬愛してやまない飼い主さんと、尊敬してやまない両親を、ひとまとめに馬鹿にされたからである。 「ゆあーん?……れいむ、いまなにかきこえたのぜ?」 「……まりさ、なんだかくっさいくっさいいきにのせて、みみざわりなおとがきこえたきがするよ」 先ほどまで嘲笑を浮かべていた野良二匹が、口元を引き締め眉根をよせる。ずい、と一歩野良まりさが前にでた。 「おちびども。いまもしかして、まりさたちにくちごたえっをしたのぜ?」 のーびと身体をそらせて、野良れいむが二匹を見下す。 「うんうんはれいむたちのしかいにはいるだけでつみなんだよ。それをよりによって……」 一メートルほどの距離で睨み合う子ゆっくり二匹と、野良二匹。――子ゆっくりたちは既にぷるぷると小刻みにふるえており、目じりには砂糖水の涙すら浮かべている。はじめて会う野良、はじめて会う明確な敵意。おしつぶされそうな重圧に思わず半ぴょんぴょん下がってしまう。それを見て、にへりと野良二匹は再び笑みを浮かべた。 「あやまるならいまなのぜ。さいっきょうのまりささまが、いまならあんよをなめるぐらいでゆるしてやるのぜ……」 「くっさいかいゆっくりごとき、ぷくーのぷではんごろしなんだからね。ちょうしにのるんじゃないよ」 「あ、あやまりゃないのじぇ!」 「そ、そうじゃそうじゃ!」 恐怖を呑み込むために声を張り上げる。それを聞いて、野良二匹の目に剣呑な光が宿った。そんなにせいっさいがおのぞみなのぜ?……そんな声が音になる、その直前。 「ななななな、なにをやってるのおちびちゃん!!?」 ステレオでそんなシャウトが公園の裏道に轟いた。 次の瞬間、ばっと両組のあいだに影が躍り出る。ゆっくりである。野良たちと同じ程度のサイズの、これまた同じまりさとれいむ。 「お、おちょーさん!」 「おかーさん!」 あらわれたのは子ゆっくりの両親だった。明らかなテンパりとパニクりをその表情に浮かべて、野良を見て子供たちを見て野良を見て、そして子供たちをもう一度見て。 「ここ、こののらさんたちになにかしたのおちびちゃんたち!?」 親まりさはおさげをぶんぶんと振り回しながら、子ゆっくりたちに詰問する。 「ののの、のらさんごめんなさい! おちびちゃんたちがとんだしつれいを!?」 親れいむはあんよを曲げてとにもかくにもと野良たちに頭を下げる。 「おちょーさん、しつれいなのはこいつりゃなのじぇ!」 「しょうだよっ! おかーさんたちだけじゃなく、かいぬしさんもぶじょくっしたんぢゃよ!」 「うんうんおちび、なにをいってるのぜ? まりささまはくそにんげんはゆっくりできないし、そのえさにあさましくくいつくかいゆっくりもゆっくりできない、めいはくなしんじつっをいっただけなのぜ?」 「そうだよ! くっさいうんうんどもはしょせんうんうんなんだから、そこのうんうんれいむのいうとおりいきてるだけでとんだしつれいっだよ。くっさいほもさぴうんうん、かいゆうんうん、はながまがりそうだよ!」 「お、おちょーさん、いみゃのきいたのじぇ……?」 「ゆるせにゃいよ。くさいのはそっちののら……」 「おちびちゃんたち! なんてことをいうのおおおおおお!」 「のらさんたちにわるいでしょおおおおおお!?」 血相を変えて叫ぶ両親に、一種唖然となりすぐに明確な涙目を見せる子ゆっくりたち。そんな情景に、野良まりさも野良れいむもこれ以上ないまですっきりー!なドヤ顔を浮かべた。 「そっちのでかぶつうんうんは、たしょうちからのさ、うまれとそだちのさ、どちらがゆっくりしているかわかっているみたいなのぜ」 「そのとおりだね。かんだいなれいむたちがいまならいっかそろってどげざっぐらいでゆるしてあげなくもないよ」 「いいかいおちびちゃんたち、のらゆっくりさんたちにひどいことをしちゃいけないんだよ」 「ゆぷぷぷぷ、そのとおりなのぜ。まあ、さいっきょうのまりささまにひどいことなんてできるわけがないけど」 「おとーさんまりさのいうとおりだよ。おちびちゃんたちはかいゆっくりでしょ? かいゆっくりならかいゆっくりらしいせつどっがひつようなんだよ」 「そのとおりだよ! うんうんのにおいまきちらしてわがものがおであるくなんて、はんざいっだよ! あめりかさんならそしょうものだよ!」 「のらさんたちだってね、ほんとうはひがいしゃなんだよ」 「そのとお……ゆ?」 「のらさんにひつようなのはあたたかいどうじょうっなんだよ」 「ゆゆゆ?」 いま何か、とてもゆっくりできない言葉が、相変わらずうんうんくさい空気にあわせて流れてきたような……と野良二匹が小首をかしげると、先ほどまで諭すような目で子ゆっくりたちを見つめていた親ゆっくり二匹が、視線を野良たちに移した。 「みてごらんおちびちゃん。のらさんたちのすがたを」 反射的に、野良れいむが答える。 「とってもゆっくりして、うつくしいびーなすっみたいな……」 「きたないよ」 「ゆべえ!?」 ……答える、のを無視して子れいむが思わずぽつりと漏らした言葉に、潰れたカエルのような声をだす野良れいむ。ちょっタンマいまなんていった?きたない?汚いだと?飼いゆっくりふぜいが、うんうんと変わらない存在が、このれいむ様のことを汚いなんて――! 「おいくそちび! いまのもういっか」 「おちびちゃん! だめでしょほんとうのことをいっちゃ! のらさんがきずついちゃうよ!」 「そうだよおちびちゃん! めっ! のらさんだってほんとうはきれいきれいしたいのに、それがかなわないんだよ!?」 「ななななななな、なにをいってるんだこのくそかいゆっぐりぃぃぃぃ!?」 野良二匹の叫びに親ゆっくり二匹は反応を見せず、あえてきびしさっを宿した瞳で子供たちの顔を覗き込んだ。 「おちびちゃん、おちびちゃんはたしかにあんなおかざりもよごれていて、『は』はおはぐろっみたいにまっくろで、はださんもへんなしるがこびりついてて、おまけにあにゃるにはうんうんのかすがもうひとなつもまえからすみついてるような、あんなすがたじゃないよ?」 「……でもね、おちびちゃんたちがひとりっでああならずにすんでいるわけじゃないんだよ。かいぬしさんがきちんとおちびちゃんたちをみてくれて、それではじめてあんなみすぼらしくならずにすんでるんだよ。のらさんはね、ゆっくりできないあんなすがたになりながらも、ひっしにがんばってるんだよ!」 「おちょーさん」 「おかーさん」 そういわれて改めて、子ゆっくりたちは野良に目線を写す。なんだかギリギリと歯ぎしりをし、目を血走らせ、びったんびったんとおさげで地面を叩いている。ゆっくりしていない。ぜんぜんゆっくりできていない。しかし――いま大好きなおとーさんとおかーさんのいったことを考える。なんだかみんながゆっくりするために大事なことの淵に手をかけていると、漠然と二匹は思った。 「おちょーさん、のらさんはひぎゃいしゃ……なのじぇ?」 「そうだよ、おちびちゃん。しゃかいというりふじんっなせかいで、のらさんたちはぜったいにゆっくりできないさだめにうまれてしまったんだよ」 「おかーさん、のらさんはそりぇでもがんばってりゅ……の?」 「おちびちゃん、そのとおりだよ! のらさんたちにとって、かいゆっくりやにんげんさんをばかにすることは、いきるためにひつようなことなんだよ」 「おばえらざっぎがらなにをいっでるんだあああああああ!!!」 「おばえらがうんうん! でいぶだぢがほうぜぎっ! ぞれがしんじづだろうがああああああ!!!!!」 「おちびちゃんたち、のらさんはああおもいこまないとだめなんだよ。たとえばおちびちゃんたちにはしんじられないかもしれないけど、のらさんたちのしょくじはほんとうにひどくて……」 「ひどいっでいうなあああああ!! まりざはかりのめいじんっなのぜえええ!!! ごのまえもいもむしさんにかまきりさんに、それにとんぼさんまではんてぃんぐっしたのぜええええええ!!!」 はっ、とそれを聞いて子ゆっくりどもが目を見開く。どーだまいったかのぜ?このくそちびども、と野良まりさ。 「し、しんじりゃれないのじぇ……」 そうなのぜそうなのぜえええ!?まりさはつばを飛ばして叫ぶ。あめいじんぐっなまりささまの狩りによるご馳走はうんうんどもなんかとは…… 「おちょーさん、もしかして……」 「そのとおりだよ、おちびちゃんたち。のらさんはね、いもむしさんやかまきりさんやとんぼさんをたべてるんだよ」 「ゆゆっ!?」 信じられない両親の発言にびっくり仰天の子ゆっくりたち。 「ゆゆっ!?」 子ゆっくりたちのその反応にびっくり仰天の野良たち。 「で、でみょいもむしさんやかまきりさんやとんぼさんはまじゅいまじゅいだよ……?」 「でもそれがのらさんたちのしょくじなの。かいゆっくりみたいにあさにたらこぱしたさん、ひるはかいせんちゃーはんさん、さんじのおやつにあまあまのけーきさん、よるはおにくたっぷりっのすきやきさん、でざーとにちょこれーとさん……なんてしょくせいかつっはできないんだよ」 「ま、まりしゃそれでもしんじりゃれないのじぇ。むしさんをそのままたべるなんて、きもちわる……」 「おちびちゃん!!」 その時! 親まりさの愛のおさげ鞭が子まりさの頬に飛んだ。ゆゆゆっとじんわり痛む頬を抱える自分のおちびちゃんに、声を強くする。 「のらさんにしつれいでしょ!? のらさんはね、のらさんはね、ごはんをくれるかいぬしさんなんていなんだよおおお!?」 「そうだよおちびちゃん! のらさんはいちにちじめんをはいずりまわって、やっとそのひたべられるだけのむじさんやきのみさんをとってきて、ふしあわせーっなごはんさんでまいにちがんばってるんだよ!?」 「お、おちょーさん……ごめんなのじぇ」 「ちがうでしょおちびちゃん。おとーさんやおかーさんにあやまってもいみがないよ! あやまるならあまあまもたべられず、あじなんてにがにがしかしないむしさんをちょっとだけたべてこれからもまいにちをすごす、ふこうなのらさんたちにでしょ?」 「そ、そうだったのじぇ」 「れ、れいむもひぢょいことをいっちゃったよ。いっしょにあやまりょう、まりしゃ」 いまだに真剣な表情を崩さないお父さんとお母さん。正直なところ、子まりさにとって両親に叩かれたのははじめての経験であったし、子れいむにしたところであそこまで強い口調で何かを教えられたのははじめてだった。だからこそ、だからこそである。これこそが大好きで尊敬できるお父さん、お母さんの子供である自分たちが、本当に学ばなくてはならないことなのだと、直感できた。野良さんに、謝らなくてはならない。 ぴょんぴょんと野良さんたちの前まで跳ねて、二匹は同時に頭を下げて言った。 「のらさんたち、ごめんなさい。ゆっくりしていって――」 「ふふふふふざげるなあああああああああああああああ!! このうんうんっ、うんうんっ、うんうんっくそがいゆっくりどもおおおおおおお!!!!」 野良ゆっくりたちは爆発した。何がたらこぱしたさんだ、何がかいせんちゃーはんさんだ、何がさんじのおやつのあまあまのけーきさんだ、何がおにくたっぷりっすきやきさんだ、何がでざーとのちょこれーとさんだ、何が飼い主さんだ、何が飼いゆっくりだ――!! 「おばえらなんで『じゆう』がまったくないどれいだろうがああああああああ!!!ゆっくりできない、くさいくさいくそにんげんにっ! くびわをつげられたどれいゆっぐりだあああああああ!!!!」 「ぞうなのぜっ!!! 『じゆう』こそがゆっぐり! ゆっぐりこそが『じゆう』!! がいけんなんてうんうんいかなのぜ! おいしいごはんさんなんか、『じゆう』にくらべだらはのあいだにはさまったはくそなのぜええええええ!!!」 「ゆゆ……『じゆう』さん?」 「のらさんたちは『じゆう』なのじぇ?」 ぽかんと不思議そうにこちらを見る子ゆっくりどもに、野良二匹ふーふーと息を整えながらようやく数分ぶりの笑みを浮かべた。これは地獄に一本の蜘蛛の糸が垂れてきたようであった。先ほどまで屈辱という針と怒りという火と嫉妬という金棒によって責め立てられていた野良たちにとっては。 「そ……そ……そうなのぜええ……『じゆう』なのぜ、まりささまたちは……あ、あばあばさんがあっても『じゆう』がなければむいみっなのぜえええ……」」 「ふう……ふう……じ、『じゆう』がないなんてうんうんかいゆっくりどもはほんとうにゆっくりで、できてないね……」 ――さてさて、先ほどまで両親に諭され、ひとつ大人になったかのように見えた子ゆっくりたちも、しょせんまだまだ未熟者である。そうまであからさまに「お前はゆっくりしてない」といわれれば、むくむくとまた反抗心が沸きあがってきてしまう。いぶかしげに聞き返した。 「そそ、そんなに『じゆう』さんはいいのじぇ?」 「ゆふん。そのとおりだよ! くそにんげんにかわれたあわれなかいゆっくりのうんうんあんこのうじゃわからないかもしれないけどね」 「れいむ、あまりかわいそうなくそちびをおいつめちゃだめなのぜ。こいつらは『じゆう』がないから、ゆっくりできていないのぜ」 完全に数分前の余裕を取り戻した、というよりは数分前の余裕を取り戻さねばならないと餡子を総動員させた野良二匹。ぐねりと縦長に反り返り、口元にいやらしい嘲笑を浮かべ、ちびどもを見下ろす。……なお子ゆっくりたちの両親はというと、とりあえずのらさんが元気になってよかったよー、てなものである。 とにもかくにも、野良二匹にはやらねばならないことがあった。先ほどから痛めつけられ、削り取られたプライドの修復である。『じゆう』! このマジックワードを武器に、今こそくそなまいきな子ゆっくりに反撃開始だ。 「ゆーぷぷぷぷぷぷぷ! まりさたち、『じゆう』でごーめんね!」 「ゆっくりしてるれいむたちだからー、『じゆう』があってー、なんでもできるんだよー!」 「ゆゆ? のらさんたちは『じゆう』だから、なんでもできりゅの?」 「そうだよ! それが『じゆう』! だよ!」 「じゃあじゃあ、もしかしてれいみゅいつもいやなあめしゃんのひでも、やっぱり『じゆう』なの?」 「そのとおりなのぜ! きいておどろくなだぜ! 『じゆう』あふれるまりささまたちはっ、なんとっ、あめさんのひでもっ、おうちがしっかりしてるからぬれずにすむのぜええええええええ!!!」 どうだこのくそちびども、お前らこそ屈辱と怒りと嫉妬に身がふるえるがいい、と口から泡を飛ばしておさげをぴっとつきつける。……が、どうにも子ゆっくりたちの反応は芳しくない。不思議そうに小首をかしげて、 「……のらさん、それはあたりまえなのじぇ」 「それに『じゆう』とはあんまりかんけいないきがするよ……」 「はあああああ!? なにをのんきなことをいってるのぜっ!? おうちがしっかりしてるからぬれないのはぜんぜんっあたりまえじゃないのぜ!!? まりささまがみっかみばんねずにえださんやはっぱさんをあつめて、ようやくっかんせいしたのぜえええ!?」 「そうだよくそちびどもおおおお!!!! それにたくさんったいようさんがのぼるとかってにはっぱさんがどこかにいっちゃうから、そのつどあつめなおしっするんだよおおおお!? ぜんぜんっあたりまえじゃないでしょおおお!?」 「でみょ、でみょまりしゃたちにとっては……」 言いかけた子まりさの後頭部が何者かにはたかれる。ゆゆゆっと目を回しながら振り向くと、そこにはぷくー寸前の怖い顔をしたお父さんとお母さんが…… 「おちびちゃんっ! またのらさんをこまらせてるんだね!? いいかいおちびちゃん、おちびちゃんはかいぬしさんのいえのなかで、あめさんもかぜさんも、あつささんもさむささんもかんけいなくかいてきっにくらせるけど、のらさんはそうはいかないんだよ!?」 「それに、あめさんのひはせまいすでさむいさむいにたえてちぢこまるだけののらさんと、ひろいかいぬしさんのいえでおそととかわらずあそべるかいゆっくり、どっちが『じゆう』かはわかるでしょおおお!? のらさんは『じゆう』にすがってるんだよおおお!? それがかんちがいっだとほんとうのことにきづかせるなんて、かわいそうだよおお!!」 「ゆがあああああああああ!!! まだおばえらがああああああ!!! ごのうんうんうんうんうんうんどもおおおおおおお!!!!!」 同時に叫ぶ野良二匹。……と少しして、憤怒で額をぐねぐねと地面にこすり付けていた野良れいむが、「お、お、おばえら……」と餡子から搾り出されるような声をだし、 「おばえらがいゆっぐりはっ、おちびをづぐれないんだろおおおおおおおおおお!!?」 口が張り裂けんばかりに叫んだ。ゆゆゆゆっ、と野良まりさも反応する。 「そそそそ、そうなんだぜっ!! 『じゆう』のないおばえらはおちびをづぐれない、ぞれががいゆっぐりなんだぜえええええ!!!! ねえねえどんなぎもぢどんなぎもぢいいいい!? しそんをのごぜないってどんなぎもぢいいいいいいい!? 『じゆう』がないってどんなぎもぢいいいいいいい!!!??」 「……の、のらさん、まりしゃとれいみゅをうんでりゅから、おちびをつくる『じゆう』はあるきがするのじぇ……」 「――――ゆゆ?」 「それにのらさんたちはつがいだよにぇ? 『じゆう』なのらしゃんたちはおちびちゃんはつくりゃなかったの?」 「――――ゆゆゆゆ?」 野良二匹が同時に押し黙る。おちびちゃん、おちびちゃん……! 今まで忘れていた、というよりはゆっくりできなさすぎてフタをしていた記憶が、餡子の奥から蘇ってくる。確かに二匹にもおちびちゃんがいた。一匹は生まれた次の朝には餓死し、一匹は公園でカラスにつつかれて出餡多量。前者は「なぜうんだにょ?」、後者は「つぎはこんにゃつきゃえないおやどもはいやなのじぇ」が遺言だった。 「おちびちゃん」 そのとき。ひどく冷静な声で。訳知り顔で。同情をその瞳に浮かべて。――ね、おちびちゃん、と親ゆっくりが言った。 「さっきもいったでしょ、のらさんたちがいってる『じゆう』はかんちがいなんだよ。こどもをつくれてそだてることができてるまりさたちと、こどものいないのらさんたち……ね、おちびちゃん、むずかしいかもしれないけどこれでさっしてね」 「わ、わかったのじぇ……のらさんたち、ごめんなのじぇ」 「ごめんなしゃい、のらさん」 ――二匹の野良の餡子のなかで、ぷつん、と何かが切れてしまった。はっきりとその音まで、聞こえた気がした。 「……ね」 「……しね」 「のらさん?」 「いだよ……」 「さいするのぜ……」 「のらさん? の――」 「し、し、しねええええええええええ!!!!! このっ、うんうんのっ、きたならしいっ、くさいごみくずのっ、こえだめよりはえのわいた、ぐぞがいゆっぐりいいいいいい!!!!」 「せいっさいなのぜえええええええええ!! ぜっだいにゆるざないのぜええええええ!!! だんで、だんでばりざざまがごんながいゆっぐりどもにいいいいい!!!! がいゆっぐりどもぞごになおれええええすーぱーせいっさいだいむのはじまりなのぜええええええ!!!」 屈辱が餡子に火をともした! 怒りがあんよによる跳躍を爆発させる! 嫉妬のエネルギーを弾丸のごとき体当たりにこめて! ぽっすん。野良まりさが子まりさに、野良れいむが子れいむに。ぶつかって、跳ね返って、転がって、向き直る。 「の、のらさん……」 子ゆっくりたちがぽつりと呟き、その声が更に野良たちのせいっさいっ感情を増幅させた! 「しねええええ!!! しねええええええええ!!!!!」 「せいっさいなのぜええええ!!! せいっさいなのぜえええええええ!!!!!」 ぽっすん。ぽっすん。ぽっすん。ぽっすん。 ――もう大分傾いた太陽のもと、遠くから聞こえる人間の子供たちの歓声のなか、木陰も涼しい公園の裏道。困惑を顔に貼り付ける子ゆっくりたちと、意味は違うが同じく困惑する親ゆっくりたち。そんな悠長な景色のなかで、凄まじい表情を浮かべひたすら自分より小さな子ゆっくりに体当たりを敢行する野良たちの姿は、もしこれが絵画であるなら「空回り」ないし「場違い」なる題がつくであろう。 野良たちの主観ではたっぷりと、正味なはなし客観的には十秒にも満たないほど短い時間が過ぎ。野良まりさは全身を上下させて仰向けに野良れいむは全身をふるわせてうつぶせに、だらりと倒れこむ。限界だったようだ。 二匹のぜーはーぜーはーどうなのぜきいたのぜしんだのぜくそかいゆっくりがごみになったみたいだねつよくってごめんねぜーはーぜーはー、という途切れ途切れの声をBGMに、ぽつりと子まりさが呟く。 「のらさん、いまのなんだったのじぇ……?」 せい……さいっ……だよ……と野良れいむが答え、だから……さっさとくそちびはしぬのぜ……と野良まりさが続ける。 「でもおきゃしいよ……のらさんのたいあたり、こどものまりしゃとあそびでおすもうっすりゅときより、よわかったよ」 そんなことないのぜ、という意味の抗弁を弱弱しい呼吸で野良まりさが口にしかけるが、その前に親ゆっくりたちがずいっと一歩前にでて口を開いた。 「おちびちゃんたち。これが、これも……のらさんなんだよ。よわかったでしょ? おちびちゃんたちいかだったでしょ? それでも、しかたないんだよ。のらさんはね、ろくなものをうまれたてっのころからたべていないから、ちゃんとせいちょうできないんだよ」 「ようするにねおちびちゃん、のらさんたちとかいゆっくりでは、かんきょうっのちがいだけじゃなくて、ゆっくりとしてのすぺっくっもうめられないさがあるってことなんだよ」 ぽかん、と野良ゆっくりも子ゆっくりも、口を開け放しにする。それってつまり―― 「のらさんたちはまりしゃにはぜったいかてにゃいってことなの……じぇ?」 「おちびちゃんたち。これがげんじつっなんだよ。かいゆっくりじゃない、かいぬしさんがいない。それだけで、ゆんせいにここまでのさがでちゃうんだよ。がいけんはきたないきたない、しょくじはまずいものしかたべられない、『じゆう』もぜんぜんない、そもそもおちびちゃんもまともにそだてられない、そういうかんきょうっのちがいをぜんぶさっぱりーにしても、いっぴきのゆっくりとしてさがありすぎる……」 「そ、そんにゃにょざんこくっすぎりゅよ! じゃあのらさんたちはゆっくりできないよ!」 「そうだよ。おちびちゃんたちみたいなかいゆっくりにとってみれば、のらさんたちはぜったいにゆっくりできないよ。でもね、でもね! おちびちゃんたち、よくかんがえてごらん。それはあくまでかいゆっくりとくらべたら、だよ……だからね、きょうおとーさんとおかーさんがいっただいじなことをおもいだしてごらん」 「ゆ?」 「ゆゆ?」 二匹の子ゆっくりは、今日学んだことを思い出そうとする。大事なこと……みんながゆっくりするためにとても大事なこと。 「のらさんたちも、ゆっくりできにゃいけど、がんばってりゅのじぇ?」 「のらさんがわりゅいんじゃなくて、ひがいしゃなにょ?」 「だからのらさんたちをわりゅくいっちゃだめなのじぇ?」 「ただでしゃえのらさんよりあっとうてきにゆっくりしてるりぇいむたちが……」 「のらさんたちにほんちょうのこちょをいうのはゆっくりしてないんだじぇ」 「そうだよ、おちびちゃんたち! だからかいゆっくりとのらゆっくりのあいだにはくらくてふかいかわっがながれてるんだよ! それがおちびちゃんたちがまだほんのあかちゃんのころから、くちをすっぱくして『のらとはかかわるな』といってるりゆうなんだよ」 「それにね、おちびちゃんたちがやさしいかいぬしさんのもとで、のらさんみたいなひさんっすぎるせいかつをおくらないようにうまれることができたのも、たんなるぐうぜんっだよ! だからかんしゃして、おごらないように、けんきょっにならなきゃいけないんだよ!」 「けんきょ……しょうしないとまりしゃたちはすぐおごっちゃうのじぇ……」 「だきゃらじぶんのためにも……のらさんにほんとうのことをいってばきゃにするのはよくないよ……」 ――はっ、と今まで地面を見つめて考え込んだ子ゆっくり二匹が、目を上げた。その目には紛れもない光が宿っている。古来より、その光をさして人は知性と呼ぶし、光がさすことを成長と呼んだ。ほんの一時間にも満たない出来事であったが、いままさに二匹の子ゆっくりは、単なる「おちびちゃん」から半歩「大人」の世界へ足を踏み入れたのだ。両親がゆっくり、ゆっくりと笑みを浮かべてうなずく。それを教えてくれたのはおとーさんおかーさんと、そして…… 「ゆっ、のらさん!」 二匹は同時に、いまだにだらりと身を地面に横たえる二匹の野良ゆっくりに向き直る。爽やかな風が、裏道を走りぬけた。ざわざわと木々が囁きを交わす。 「ありがとう、ございましたっ!」 ――いって踵を返した二匹の親ゆっくりと、二匹の子ゆっくり。飼い主さんのもとへ、いるべき場所へと帰ってゆく。その影のうちふたつが、つい一日前よりほんの少しだけ伸びているように見えるのは、気のせいだろうか? そして二匹の野良はというと……極めて遺憾ながら、これも二匹の親ゆっくりの「教育」を最後には十全に受け取ってしまっていた。すなわち、自分がどんなに努力しても絶対に届かない「ゆっくり」を享受する存在がいること、そしてそれを知ってしまったからには自分たちは二度と「ゆっくり」できないということ。だからふたりはその場で成長を止めた。あえてその死因を言語化するならば、「絶望」――ということにでも、なるだろう。実のところ、野良には珍しくない死に様であった。
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―1― 木の根本に開いた穴は、元々は野ウサギの巣であった。 それを多少の拡張と補強を施して利用しているのは、最近つがいになったばかりの二匹のゆっくり だった。 野ウサギの巣には、ゆっくり自身が掘ったものとは比較にならないほどの奥行きがある。そのため、 奥の方で大声で騒いだところで出入り口から聞こえるのは、ほんの僅かな不明瞭な声。 そんな微かな声でも会話の雰囲気を掴むことが出来る。 大きな怒声と小さな悲鳴。 それはどう聞いても険悪な雰囲気であった。 「むきゅ……。上手くいってないのかしらね、あのふたり……」 おうちの奥から聞こえてきた声に何の気無しに耳を澄ませていた通りすがりのぱちゅりーは、溜息 を一つ吐いてその場を後にした。 一方その頃、おうちの奥ではぱちゅりーが懸念した通りの夫婦喧嘩が展開されていた。 もっとも、それはかなり一方的な展開であった。 「これはいったい何なの、まりさっ!」 「ゆひぃっ!? そ、そんなこわいおかおでどならないでね……」 「まりさがれいむをおこらせるようなことするからでしょっ!! これは! いったい! 何なのっ て! 聞いてるんだよぉっ!!」 「ゆ、ゆわぁっ!?」 野生動物が作り上げた頑丈な巣穴が、れいむがあんよを踏み鳴らす度にパラパラと砂埃を落とす。 れいむの体躯は、一般サイズのゆっくりであるまりさより一回りか二回りほど大きい。さらにまり さは気迫負けして縮こまっているので殊更大きく見える。当のまりさの視点ともなると、れいむの姿 はドスをも超える巨体に映っていた。 そんなれいむが物凄い形相で見下ろしている。 荒い呼気が頬を撫でた時点でまりさの恐怖は臨界を超えて、チョロチョロと水音と共に下から溢れ 出した。れいむの地団駄が続いていなければ、その音と振動が絶えずまりさを揺さぶっていなければ とっくに気を失っていた事だろう。 気絶できれば少しはゆっくり出来たかも知れない。 しかし現実に逃避が出来ない以上、まりさは大人しく応えるしかなかった。 「それ……それは、ごはんさん……だよ?」 まりさとれいむの丁度中間にこんもりと草が積んである。まりさが集めて持って帰ったお帽子一杯 に詰め込んできたそれが、れいむの火種となっていた。 狩りと称する野草の採取から帰り、笑顔で収穫をひけらかしたところで何故だかれいむの怒りが爆 発してしまったのである。折角ごはんをあつめてきたというのに何故れいむが怒っているのか、まり さには解らない。 解らないから鍔広の帽子の陰からこそこそとれいむの顔色を伺いながら、なるべく刺激しないよう に小さな声で返答する。 そんなまりさの顔に、れいむの蹴り飛ばした草が浴びせられた。 更に罵声まで飛んできた。 「ごはんさんは柔らかくって、にがにがの少ない草さんを集めてきてねって言ったでしょうがぁっ! どぉしてこんなに堅い草さんばっかり集めてくるのっ!」 「ゆひっ!? しらないよっ!? まりさそんなことしらないよっ!?」 「まりさがれいむのお話を聞いてないだけでしょぉっ!!」 「ゆぎゃんっ!」 聞き覚えのないことは知らないとしか言いようがない。涙を流しての訴えは、しかし軽い体当たり によって却下された。 れいむとまりさの体格差からすれば相当加減された体当たりだったが、痛みに弱く挫け易いゆっく りからすれば耐え難い激痛に感じられた。まりさは瞬く間に目に涙を溜めて大泣きの準備に入った。 「ゆびぇ……え?」 「――まりさ、ゆっくり泣いてるひまがあるなら」 そんなまりさの目前――それこそ目と目が触れ合いそうなくらい近くに、無表情に目を見開いたれ いむの貌があった。 ゆっくりにあるまじき迫力に涙も声も引っ込んでしまったまりさにできたのは、かみ合わない歯を ガチガチと鳴らしながら静かにれいむの言葉を聞くことだけだった。 そんなまりさの様子に満足したのか、れいむの黒目がついっと動いて出入り口を見やった。 「ゆっくりしないでごはんさんを集めてきてね? 柔らかくって、にがにがさんじゃない草さんで良 いんだよ? たくさんでいいよ? 今度こそ、わかった?」 「ゆ、ゆっ、ゆひぃっ!? わかりましたぁっ! まりさはかりにいくよぉおおおおお……っ!!」 無言で語られた『さっさと行け!』のアイコンタクトに従い、まりさはゆっくりらしからぬ勢いで 巣穴を飛び出していった。 外の風に当たったまりさは不意に思う。 どうしてこうなったのだろうか、と。 だが何はさておき、れいむの機嫌を治すために美味しい食べ物をかき集めなければならない。 あまあまな空気に満ちたから恋人時代から、まったく以てゆっくりできないものへと激変した新婚 生活に涙しながら、まりさは跳ねた。 ―2― 一週間前までは、まりさは幸せの絶頂期にあった。 両親によって何不自由なく育てられたまりさは、狩りの練習に出かけた先でれいむと出会った。お うちの奥で大事に大事に育てられてきた一人っ仔のまりさにとって、それは同世代のゆっくりとの初 めての出会い。 れいむはとてもゆっくりした、美しいゆっくりだった。髪の艶、肌の張り、飾りの鮮やかさ、どれ をとってもその後出会ったどのゆっくりより抜きんでいた。 一目で惚れ込んだまりさは即座にれいむにプロポーズをするのだが、その時は一言で断られた。『れ いむはまりさのことを知らないから』というのがその理由。 それでもまりさは諦めず、懸命に自分をアピールし続けた。 甘やかされてきただけに狩りの要領こそ悪いまりさだったが、頻繁に出会い、話し、そして運良く 見つけたこのおうちと、がんばって集めた食料の備蓄を見せたことで、漸くれいむはまりさを受け入 れてくれた。この時、まりさの両親の尽力があったことは、れいむには秘密である。 おうちを構えて伴侶を得、順風満帆に滑り出したまりさの新生活。これからおちびちゃんを沢山作 り、れいむと一緒に賑やかで幸せな家庭を築く。そんなまりさの薔薇色の将来設計は、一晩明けたと きには崩れ去っていた。 とても優しかったれいむの豹変。 まりさが一生懸命集めてきたごはんに、「堅い」「苦い」とケチを付ける。何とかして柔らかくて 口当たりの良いご馳走をかき集めてもまりさの口には入らない。 肌をすり合わせて一緒に眠ろうとしても、おうちの一番奥にある一番広い部屋からつまみ出される。 寄り添って眠った記憶は、正式につがいとなる前のひなたぼっこにまで戻らないと見あたらなかった。 抗議の声を上げたこともある。しかし、かつての優しかったれいむからは想像もつかないほどの迫 力で以て打ちのめされた。それ以降、まりさはただ従順にれいむに従っている。 日が昇ってから青空に朱色が混じる頃まで、ただひたすらにごはんを集めることで過ぎていく。そ して独りっきりで眠る夜。 まりさの一日にはゆっくりできる時がなかった。 こんなにゆっくりできない生活がしたいわけではなかった。 群一番のゆっくりしたお嫁さんをもらい、たくさんの子供をつくり、幸せな家庭を自らの手で築き 上げることで親の庇護の下で暮らしていた日々よりも、たくさんたくさんゆっくりする。 そんな夢を見てれいむにプロポーズしたはずなのに、現実には夢の欠片さえ視ることができないで いた。 「……ゆっくりしたいよ……」 美味しそうに見える草をむしり採りながらまりさは溜息をもらす。 そこはおうちから少し離れた所にある、背の高い草が生い茂る小さな広場。群の居住地からは少し 離れたところに住み着いているだけに、ここはまりさの狩り場として独り占めできていた。 だから狩り自体に大した労力は必要ない。 ぶちぶち草をむしりながら悩むだけの余裕が持てる。ぶちぶちと草を抜きながらぶつぶつと愚痴を 漏らす。 「なんでれいむはまりさをゆっくりさせてくれないんだろ……? いっしょにゆっくりしようねっ! て、いっしょにいったのになぁ……」 引き抜いた草がある程度の山と成ったところで帽子を下ろし、収穫を詰め込んでゆく。 詰めてみると容量に少し余裕があったので、もう少し草むしりに勤しむことにした。自然と愚痴も 続く。 まりさの中で「何故」と「どうして」が空回りしていた。 しかしながら、ぼんやりとしたまりさの疑問を、ぼんやりとしたまりさの頭で解決することなどで きはしない。 「ゆっ、まりさじゃない! おひさしぶり、ゆっくりしていってね!」 「ゆ……? ありす……?」 底なし沼に踏み込んだ者を助けるには、他者の助けが必要なのだから。 ―3― ごはんを求めてこの草むらまで遠出してきたありすは、幸いまりさの幼なじみだった。 既知の仲と言うこともあって、暗い顔をしていたまりさから遠慮なく悩みを聞き出したありすは、 その話の内容に怒りの余り憤然とここには居ないれいむをなじる。 「なんてひどいのれいむ……っ! いいえ、そんなれいむなんて、もうでいぶよ、でいぶっ! せっ かくありすがまりさからみをひいたっていうのに……っ。ゆっ、いえそれはともかく、ふたりでいっ しょにゆっくりすることもできないだなんて、とんだいなかものだったようねっ!!」 「あ、ありす、おちついてね……?」 その剣幕には暗い顔で相談したまりさも若干引き気味である。怯えて引きつった表情のまりさを見 たことで冷静さを取り戻したありすは、しばらく深呼吸をして冷静さを取り戻した。 「まりさ、おさにそうだんしましょう!」 「……ゆ?」 「ざんねんだけど、ありすがいくらかんがえてもまりさをゆっくしさせてあげられるほうほうはおも いつかないわ。だけど、おさならきっととってもゆっくりできるほうほうをかんがえてくれるはずよ っ!」 他人任せとは言え、ありすは目と目を合わせて力強く断言する。それほどまでに憔悴したまりさの 姿は見ていられなかったのだ。 ありすの記憶の中にあるまりさの姿は、何時だって見ている方も釣られて元気になってしまいそう な程に、明るく活発だった。 こんなお帽子の陰に隠れるようにして相手を窺うような、おどおどとした暗いゆっくりなどありす の知っているまりさではない。 「れいむからとりもどしましょう、まりさのゆっくりを!」 「まりさの……ゆっくり……っ!」 ありすの力強い言葉に、地面ばかりを見ていたまりさの顔が上向く。 ゆっくりしたい、という願望はゆっくりの根幹を為す命題とも言える。だが今のまりさはまるでゆ っくりできていない。 それは何故か。 考えるまでもない。まりさのゆっくりが理不尽にもれいむに踏みにじられているからだ。 そこまで思い至ったことで、れいむへの恐れから思考停止に陥っていたまりさの餡が、熱を持って 巡り始めた。 「……ゆっくりしたい。まりさだってゆっくりしたいんだよぉおおおおおっっ!!」 これまでれいむによって押さえつけられてきたまりさの思いが、叫びとなって一気に爆発する。大 声を張り上げたのは一体何時振りだろうか。 そしてありすとまりさは群の長の下へと赴き、まりさの窮状を訴えた。 まりさの涙混じりの嘆願を静かに聞き終えた群の長ぱちゅりーは、しばし瞑目した。 「……むきゅぅ。最近あなた達のおうちの近くを通ると喧嘩しているようなおこえが聞こえるから気 にしてはいたのだけど……そんなことになっていたなんて気付かなかったわ」 友達から恋人として仲良くやっていた二匹が、つがいになった途端に激しい喧嘩をするようになる ということは、ぱちゅりーが群の長を引き受けてからも数回あった。 夫婦喧嘩をすること自体は珍しいことではない。 ただ、新婚一週間で――否、話を聞くに新婚初日から不協和音を響かせたつがいは初めてのことだ った。 しかしながら、驚きはしたもののやることに変わりはない。 ぱちゅりーはありすを少し離れさせると、まりさと向き合って訊ねた。 「ね、まりさ。まりさはどうすればゆっくりできるのかしら?」 「ゆ? どうすればって……どういうこと?」 「れいむと仲直りすればゆっくりできる? それともれいむと別れたらゆっくりできる?」 「ゆ……? ゆぅぅ……」 「ちょ、ちょっとおさっ!」 「ありすはちょっと黙っていてちょうだい。ぱちぇはまりさに聞いているのよ」 目を白黒させて悩みだしたまりさをありすが庇おうとするが、ぱちゅりーは一言の下にありすを黙 らせた。 仲直りしたいと言うのであれば、れいむとまりさ、双方の話を聞きながらじっくりと解決策を練る 必要がある。時間と手間は掛かるだろうが、れいむが豹変した理由さえはっきりすれば元の鞘に納め ることも不可能ではないとぱちゅりーは考えていた。 別れたいというのであれば、話はより簡単になる。 「まりさは……まりさは、あんなれいむとはもう、おわかれしたいよ」 「むきゅ……わかったわ」 一つ一つの言葉を噛み締めるようにして告げるまりさの姿に、その覚悟は堅いと見て取れた。 一つ頷き、ぱちゅりーはおうちの外へとあんよを向ける。 突然移動を始めたぱちゅりーを慌てて追いかけてきたまりさとありすに、顔は正面を向いたままで ぱちゅりーは告げた。 「まりさ、ありす。群のみんなをまりさのおうちの前まで集めてきてちょうだい。最後にぱちぇがれ いむと話をしてみて、それから決定を下すわ」 ―4― そして日の傾いた夕暮れ時。 まりさとれいむのおうちの前には群のゆっくりたちの姿があった。幼い赤子とそれを見守る母親以 外が勢揃いしたその数は、五十に近い。 それはまりさとれいむの絶縁の立ち会いゆっくりであり、ぱちゅりーの用意した、いざというとき の用心だった。 その先頭に立つ長、ぱちゅりーがしんと静まり返った群を代表して大声で呼びかけた。 「れいむ! ご用があるから出ていらっしゃい!」 「……ぱちゅりー? こんな時間に何のご用なの?」 暫くしておうちの奥からのっそりとれいむが現れた。 おうちの出入り口に頭を軽くこする程の巨体に群れのゆっくりたちは目を剥いて驚く。一週間ほど 前までは群でも小柄な部類に入っていたれいむが、自分たちを大きく上回る巨体になっていては驚く のも無理はない。 れいむもまた、おうちを出た途端に群のみんなが大挙して取り囲んでいる状況に目を丸くした。 双方が膠着した中、ただ一匹平然としていたぱちゅりーが口を開いた。 「むきゅ、ゆっくりしていってね。お久しぶり、れいむ」 「ゆっ!? ゆっくりしていってね! ゆん、久しぶりだね、ぱちゅりー」 声をかけられたことで我に返ったれいむも、にこやかに挨拶を返す。 しかし周りの異様な状況に、にこやかな表情は瞬く間に訝しげなものに取って代わる。次いでぱち ゅりーの陰に隠れるようにしてまりさが小さくなっているのに気付くと、表情は苛立たし気なものへ 変化した。その隣で怯えるまりさを支えているありすの姿があったが、それもれいむの気分を害した。 「みんなして何のご用なの? そこでまりさは何をしてるの? 今日はお帰りが遅いから何処まで狩 りに行ったのかって思っていたけど、ごはんさんはどうしたの? ありすとなにをしていたの?」 「ゆ……ゆひッ!?」 「むっきゅん! まりさに質問する前に、ぱちゅがれいむに聞きたいことがあるの。いいかしら?」 まりさに向かいかけたれいむだったが、ぱちゅりーの咳払いで機先を制された。先刻の気勢もれい むの前に来ただけで吹き飛んでいたまりさは、それ幸いとぱちゅりーの後ろで縮こまる。 ぱちゅりーの話を聞く前に、まりさを詰問して今日の分の食料を取り立てたかったが、相手は長ら くお世話になっている群の長であるし、周囲には馴染みの顔も多い。苛立ちは収まらないが、れいむ はとりあえずまりさから視線を引き剥がした。 そうして改めてぱちゅりーと向かい合う。 「……ゆふぅ。ゆっくりわかったよ。ぱちゅりーは何が聞きたいの?」 「ありがとう、れいむ。まりさに聞いたのだけれど、まりさをゆっくりさせないで一日中狩りに行か せてるって本当?」 「本当だよ。けど、柔らかくて美味しいごはんさんを採ってこれないまりさが悪いんだよ!」 「けっこんしてからは、すーりすーりもしないし、一緒にすーやすーやする事もないって本当?」 「本当だよ。まりさとはもう二度とすーりすーりも、すーやすーやも、してあげるつもりはないよ!」 「それじゃあ最後に、そんなれいむの態度に文句を言ったまりさに暴力を振るったって、本当?」 「それがどうかしたの? れいむの言うことを聞いてくれないまりさが悪いんだよ! 何もかも、ぜ ーんぶまりさが悪いんだよっ!」 「むきゅ、解ったわ……」 ぱちゅりーは嘆息と共に目を閉じる。 そして再び目を開いたとき、その瞳には確固たる決意が宿っていた。 「れいむのゆっくりの為に、あんなにゆっくりしていたまりさをまったくゆっくりさせなかった。大 切にしなきゃいけないつがいを、こんなにボロボロになるまで扱き使うようなゆっくりは『でいぶ』 よ。でいぶはいずれ群のゆっくりにも害となるわ」 「……ゆ? なにいってるの……?」 「ぱちぇの群にでいぶはいらない。今ここに、ぱちぇはれいむを群から追放することを宣言するわ!」 突然何を言い出したのか即座に理解できずにキョトンとしているれいむを余所に、ぱちゅりーの台 詞は続く。 「まりさもれいむとお別れしたいってぱちぇに伝えているわ。だかられいむは独りで、ゆっくりしな いでぱちぇの群からでていきなさい!」 「なにを……なに言ってるのぉっ!!」 「大人しく出ていかないのなら……」 理解が追いついたれいむが激昂するのと、ぱちゅりーとれいむの間に群でも屈強なゆっくりたちが 割り込んでくるのはほぼ同時だった。れいむが暴れ出したときに巻き込まれないくらいの距離を取り ながらも、ぱちゅりーはれいむを真っ直ぐに見据えていた。 「手荒な手段を執ってでも出て行ってもらうことになるわ。例え、れいむがゆっくりできない怪我を 負うことになっても、ね。幼い頃から貴女を知っているぱちぇは、できればそんな乱暴な手段は執り たくないの。大人しく群から出て行ってちょうだい」 「……けるな、ふざけるな! ふざけるなぁあああああっ!!」 取り囲む尖った木の枝や棒をくわえたゆっくりたちの姿は、怒り狂ったれいむの目にはもはや映っ ていなかった。 視線だけでゆっくりが殺せそうな形相で、ぱちゅりーを――否、その後ろでしーしーを漏らして震 えているまりさだけを睨みつける。 「れいむの言うことをぜんっぜんッ聞きやしないまりさも、そんなまりさの言うことなんかを真に受 けるぱちゅりーも! そんなぱちゅりーに考え無しに従ってるだけのみんなもっ! みんなみんな永 遠にゆっくりしてしまえぇえええええっ!!」 「むぎゃっ!?」 間に入ったゆっくりたちを事もなく蹴散らして、れいむはまりさに向かって猛進する。 屈強なゆっくりとは言っても、それは戦い慣れしているのではなく、単に体力やあんよの早さが他 のゆっくりに比べれば優れていると言うだけの話。憤怒の形相で迫るれいむの正面に居たゆっくりた ちは、その余りの怖ろしさにぱちゅりーの命令を無視して逃げ出していた。動かないゆっくりも居た が、それらは完全に気を呑まれて竦んでおり、鎧袖一触で吹き飛ばされた。 ぱちゅりーの顔色がここに来て初めて変わる。 ぱちゅりーとれいむの間を阻むゆっくりが総て居なくなった瞬間、ぱちゅりーの餡は突進を喰らっ て容易く弾け飛ぶ自分の姿を幻視した。 だが、そうはならなかった。 れいむ正面のゆっくりたちこそ逃げ出していたが、左右と背後に陣取っていたゆっくりたちが懸命 に追いすがっていた。 体当たりをしかけて髪に噛み付き、棒を振りかざしてれいむの動きを封じようと殺到するゆっくり の群。目の前に尖った枝を突きつけたり、頬を軽く切り裂いたりしてれいむの気勢を挫こうと試みる が、激怒のれいむは歯牙にもかけない。 突き出された枝に躊躇無く飛び込み、突き刺さった枝をへし折りながらもただ前へ。瞬きを忘れた れいむの双眸は、ただひたすらにまりさだけを捉えていた。 それでも進む速度は遅くなっていた。お陰でれいむから距離を置くことができたぱちゅりーは呼吸 を整えながら、ゆっくりを蹴散らして徐々に近付いてくるれいむの姿を見据えた。 「むきゅぅ……むきゅぅ………むきゅ。できればお話で済ませたかったわ、れいむ……」 距離を置いたと言っても、愚直に突き進むれいむが肉薄するのに大して時間は掛からないだろう。 だから、ぱちゅりーは穏便な手段を諦めた。 「このままじゃ、みんなれいむに永遠にゆっくりさせられてしまうわ! その前に、れいむを倒すの よ! 手加減はもう考えなくていいわっ!!」 れいむの怒声を上回る咆哮がゆっくりたちから上がる。 途端に牽制で頬を引っかけていた程度の枝が、れいむに深々と突き立てられた。れいむの前にかざ された枝も、どれだけれいむが近付こうとも引く気配がない。 れいむには何の変化もない。痛みなど何処かに忘れ去ったかのように、髪など引き抜かれるに任せ、 頬に穴を開けた枝を噛み砕き、瞳に突き刺さった枝をくわえていたゆっくりを跳ね飛ばして突き進む。 双方、死に物狂いとなったこの戦いは、それから少しして終結した。 ―5― 「ありがとう、ありがとう! みんな、まりさのためにありがとうねっ!!」 激戦の跡から立ち去る群のゆっくりたちに、まりさが涙を流して感謝を捧げてから暫くして、まり さのおうちの周りはいつもの静寂を取り戻しつつあった。 いつもと違うのは、時折呻き声や泣き声が遠くから聞こえてくること。 たった一匹のれいむが相手だったとはいえ、激戦を終えた時、群のゆっくりたちの殆どが大小様々 な傷を負っていた。永遠のゆっくりへと旅立ったゆっくりも少なくはない。 怪我に呻くゆっくり。死者を嘆くゆっくり。その声は各自が自らのおうちへ帰った今もなお聞こえ てくるほどだった。群で被害にあっていないゆっくりは居ないから群のある森全体が悲しみに包まれ ていると言っても過言ではない。この声は数日は聞こえてくるのだろう。 そんな沈痛な空気が流れる中、数少ない無傷のゆっくりであるまりさは満面の笑顔でおうちの周囲 を飛び跳ねていた。 そして入り口でピタリと止まると、ピョンと飛び跳ね、大声で叫んだ。 「ここはっ、まりさのおうちだよっ! まりさだけのおうちだよーっ!!」 ここは元々まりさのおうちではあったが、実質はれいむに占有されていただけに自分のおうちとい う実感がまりさには乏しかった。だからこその再おうち宣言であった。 空中で全力のおうち宣言を行ったまりさは、着地して暫く静かに耳を澄ませた。 聞こえてくるのは群のゆっくりの暗い声ばかりで、おうち宣言への異議は聞こえてこない。 その結果に満足したまりさは帽子の鍔を跳ね上げて笑う。 「ゆん! それじゃ、まりさはしんっきょのおそうじをするよ!」 足取りも軽く、まりさはおうちの中へと消えてゆく。 まりさは自覚しているだろうか。 おうちの周りを跳ね回っている時も、おうち宣言をした後に周囲を見回しながら耳を澄ませていた ときも、ある一角だけは努めて見ようとしなかったことに。 そこに、れいむの姿がある。 両のもみあげは千切れ、片目は潰れ、総身どこから見ても深々と突き刺さった木の枝や大きく開い た傷が見て取れる。大口を開けた口内にすら木の枝は突き刺さっていた。 だがそんな傷を負いながらも、れいむは静かにそこに在った。 泣くことも喚くこともしない。残された片目は瞬きもせずに中空をぼうっと眺め、開いた口からボ ロボロになった舌が零れだしている。 どう見たって死んでいる。 そんなれいむの姿を、まりさは努めて意識から排除していた。 ―6― 果実や木の実を大きめの葉に包む。 中身別に分けた数個の包みを長めのツタで縛って纏め上げると、まとめて頭の上にひょいと乗せた。 ちょっと重いけれど、ありすは気にすることなく外へと飛び出した。 「さて、いままでゆっくりできなかったぶんまで、まりさをうんとゆっくりさせてあげなくっちゃ!」 あんよも軽く、頭上の荷物の重さも感じないほどに軽やかに飛び跳ねてありすは進む。ツタの端を しっかりくわえているので、うっかり落として無くす心配もない。 ありすにとって、まりさもれいむも友達であることに違いはなかった。 だから、れいむの豹変には驚いたし結局殺されてしまったことが悲しくもある。しかしそれでも、 まりさをあれほどボロボロになるまで扱き使っていたれいむの非道を思えば、罪悪感はさほど感じな かった。 今はとにかく、ゆっくりできない状況から解放されたまりさと一緒にご馳走でも食べて、あんなれ いむの事などゆっくりらしい忘却力で餡子の片隅に追いやってしまおうと考えていた。 そのための大荷物である。重いと感じるはずもない。 それなりに離れたところにあるまりさのおうちも、不思議と長い道程とは感じなかった。 同じ頃、同じようにまりさのおうちを目指しているゆっくりが居た。 長のぱちゅりーと、成体のゆっくりが数匹。 ありすが元気一杯に飛び跳ねているのに比べて、此方は雰囲気からして暗く、いかにもゆっくりし ていない様子が見て取れた。 「むきゅぅ……困ったわね。まりさはぱちぇのお願いを聞いてくれるかしら?」 「きいてくれないとこまるんだねー、わかるよー」 「そもそもまりさをたすけるために、みんなゆっくりできなくなっちゃったんだみょん。まりさがむ れをたすけるのはとうぜんみょん」 悩みの種は、群の働き手である体力に優れたゆっくりたちが軒並み傷付くか、最悪、永遠にゆっく りしてしまったことにあった。 今回の激戦で最前線に投入された精強なゆっくりたちは、みんな食料調達に優れていた。それだけ に、自分以外のゆっくりを養っているゆっくりが多かった。 つがいを永遠に失ったものや、怪我を負った大黒柱を抱え込むことになった一家など、これから先 の生活を悲観する家庭は少なくない。 ぱちゅりーは長として、彼らのこれからを考えないわけにはいかなかった。 そこで考えついたのが次の春が来るまで、群全体が集まって暮らすという案だった。 そうすれば、狩りに行けるゆっくりは憂い無く出かけられるし、重傷の怪我ゆっくりや孤児ゆっく りの面倒だって、子守で残っているゆっくりたちなどで見ることもできる。 その案を実現させるためにも、狩りのできる元気のあるゆっくりは一匹でも多く参加してもらいた かった。 特に、今回の発端でもあるまりさには是が非でも先頭に立って欲しい。 みんなが傷付いている時にぱちゅりーの陰に隠れていただけのまりさに対して、群のゆっくりたち の視線が厳しくなっている。それを鋭敏に感じ取ったぱちゅりーは、まりさがこれからも群の一員と してゆっくりしていくためにも、まりさの協力を期待していた。 しかし、一抹の不安がある。 ぱちゅりーはまりさの言動の何処かに、朧気ながらゆっくりできないものを感じていた。 それがぱちゅりーの表情に影を落とし、一行の雰囲気を暗くしていた。 「……それも確認してみないと解らないわね。むきゅ……」 自らに言い聞かせるように呟き、ぱちゅりーはあんよを進めた。 だが、何も持っていない身軽な身体は、不思議なほどに重く感じられた。 ―7― その頃、まりさのおうちの前には雑多な物が積み上げられていた。 それはれいむが寝ていた干し草であり、ありすかられいむに送られた蔦草のばっぐであり、れいむ が集めていた綺麗な小石などの宝物であった。 まりさはあれから、巣穴の奥深くかられいむが愛用していた品々を引っぱり出しては捨てていた。 まだ十分に使えそうな物ばかりなのに捨てているのは、それだけれいむが憎かったからだろうか。 そんなまりさの心情をおもんばかり、ありすはますます自分がまりさを元気付けねばと気合いを入 れ直した。 「……けど、ちょっともったいないわね。つかえるものはつかうのがとかいはなんだけど……」 などと、少なからず後ろ髪を引かれながらありすはおうちの出入り口に近付いた。 そして大きく息を吸い込むと、おうちの奥へ大声を放った。まりさのおうちは元は野生動物が作っ た巣穴だけに奥が深く少し入り組んでいるので、考え無しに踏み込むよりは出入り口で声をかけた方 が効率が良かった。 「ゆっくりしていってねーっ! まりさっ! いるかしらー!?」 「……ゅ……ゅ…………」 「ゆっくりしていってねーっ! ゆ、あんなところにかくれてたんだねっ!! ありす、ゆっくりま っててねー!」 「……ゆ?」 目を点にしたありすの頭が傾く。 聞き間違いでなければ、今ありすの挨拶に応えた声は二つあった。一つは間違いなく聞き慣れたま りさの声。しかし、もう一つの声に聞き覚えはない。 社交的な生活を送っているありすは群の殆どのゆっくりと話した覚えがある。それ故に一度会話し た相手であれば、それが誰かは解らなくても、少なくとも聞き覚えくらいはあるはずだった。 どこかから流れてきたゆっくりがまりさのおうちに迷い込んだのか? しかし、聞こえてきたのは幼い感じの声。 「まいご……かしらね?」 頭を傾げるありすだったが、答えはおうちから出てきたまりさが口にくわえていた。 黒いとんがり帽子。三つ編みは二つあるけど髪型と、ハシバミ色の瞳はまりさと良く似ている。 帽子に巻いているのと、三つ編みを束ねているリボン。そして艶やかな黒髪にはれいむの面影があ った。 れいむとまりさの面影を併せ持つその幼いゆっくりを、まりさは無造作におうちの外に投げ捨てた。 顔面から地面に叩きつけられた幼いゆっくりは痛みを堪えるかのようにしばらく平ぺったくなって 震えていたが、ぐずつきながらも身体を起こし、ぎこちなくても笑顔を作るとまりさに向けた。 「ゆぅっ!? ゆっ……ゆっく……ゆ、ゆーゆぅー?」 「うるさいよっ! おまえなんかがいるとまりさはゆっくりできないんだよ! ゆっくりりかいして ね。りかいしたらゆっくりつぶされてねっ!」 「ゆ……? ゆっ!? ま、まちなさいまりさっ!!」 躊躇無く幼いゆっくりの真上に跳躍したまりさに、我に返ったありすが大慌てで横から飛びつく。 辛うじて幼いゆっくりの横にまりさを押しのくことができたありすに、柳眉を逆立てたまりさの顔 が迫った。 「ちょっとありす! なんでまりさのじゃまをするのっ!?」 「ゆっ!? ごめんなさ……じゃないわよっ!! なんなの、このこはっ!」 「ゆ……っ!?」 一端引いたものの、まりさ以上の剣幕で詰め寄るありすにまりさの意気は一瞬で消し飛んだ。そこ にいるのはありすが良く見知った、明るく元気で、でもとっても臆病なゆっくりまりさの姿だった。 瞬く間に涙目になったまりさに少し躊躇しながらも、ありすは強い口調で問いつめた。 「このこがなにをしたかはしらないけれど、いきなりえいえんにゆっくりさせようとするだなんて、 ぜんっぜんとかいはじゃないわっ! それにこのこ、まりさやれいむににているけど、ひょっとして ……」 「ゆっ!? ちがうよ、ちがうよっ! そんなのまりさのちびちゃんなんかじゃないよ! そんなゆ っくりしてないのなんか、まりさはしらないよっ!」 「……あいかわらず、うそがへたね。まりさ……」 「しらないしらない、しらないったらしらないよぉーっ!!」 何時しか静かな口調となったありすの言葉を、まりさは顔を激しく振って否定する。 あまりにゆっくりできない勢いで顔を振るのでありすは一歩引いた。振り回されたお下げが当たり かけて、更に一歩。 下がった刹那にまりさは飛び出していた。 「あ……っ!」 「おまえなんかしらない、しらないゆっくりはつぶれちゃえぇえええええっ!!」 愕然とするありすの横をすり抜けたまりさは、再び幼いゆっくりの頭上へと舞い上がる。 着地した直後のありすは動けない。 成体のゆっくりに踏みつぶされる幼い仔の姿を想像して、ありすはギュッと堅く目を閉じた。 だから見逃した。 「そこまでよっ!!」 「ゆぎゅっ!?」 突如響き渡るぱちゅりーの声。同時に飛び出した二匹のゆっくりが正面から飛びかかり、まりさを 迎撃した。 恐る恐る目を開いたありすの視界に飛び込んできたのは、ゆーゆー泣き始めた幼いゆっくりと、頭 から墜落してじたばたと足掻くまりさの姿だった。 そこへゆっくりと、ぱちゅりーがまりさの元へと歩み寄る。 「本当はまりさにお願いがあって来たのだけど……。まりさ、ぱちぇはあの仔の事は何も聞いてない わ。改めてまりさのお話が聞きたいの。ゆっくりと詳しく、今度は正直に全部、話してくれるわね?」 「ゆ……ゆぅ……ゆっくりりかいしたよ……」 滅多に見られない群の長としての威厳を前にして、まりさはがっくりと項垂れたのだった。 ―続く―
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『逃げこんできたゆっくり親子』 28KB 虐待 制裁 観察 誤解 飾り お家宣言 家族崩壊 同族殺し 番い 赤ゆ 現代 虐待人間 比較的普通な虐待をと思って書きました 初投稿です。 逃げこんできたゆっくり親子 薄くなっていたはずの意識が、引き戻されてくる。 目が冴えてきてしまっている。 今の時間は深夜。 今日はいまいち寝つきが悪く、それでも今やっと眠れそうになったところだった。 だがそこに何やら不審な音が聞こえ、驚きとわずかな恐怖で目が覚めてしまったのだ。 窓を叩くような音。 隣の居間だ。最も、この狭いアパートでは、部屋という部屋はこの寝室とその居間くらいなのだが。 俺の安眠を妨げるのは一体何者だと、わずかに夢心地に入って朦朧とした意識により、怒りだけ駆られて跳ね起きる。 戸を引いて居間に入り掃き出し窓の外を見てみると、外のわずかな光に照らされたそこには、ゆっくりれいむの親子の姿があった。 どちらもれいむ種の、親一匹子一匹。 やたら切羽詰まった表情で思いっきり窓への体当たりを繰り返しているので、とっとと開けることにする。 いくらゆっくりでも、壊されるのではと少し怖くなったのだ。 俺が窓を開けると二匹は素早く部屋に滑り込んで来て、親れいむが叫ぶ。 「ほら、はやくしめてね! れみりゃがきちゃうよ!」 ふむ。なるほど、こいつらは追われて焦っていたということか。 外を見てみると我らアパート住民の庭に、街灯に背を照らされた胴つきれみりゃらしき影が、やたらよたよたしながら入ってくるのが見えた。 ただのゆっくりに逃げられる要領の悪さが、シルエットだけでも窺える。 ちなみにその庭部分は、手を伸ばせば隣の塀に届きそうなほど狭い。 我が家が惨劇の舞台になっても困るので、一応窓を閉めてやることにする。 振り返ると薄汚れたれいむ親子がこちらを見ていた。 「ありがとうございますう! たすかりましたあ!」 「ゆ、ゆ、ゆーぅ」 赤ゆの方は既に疲れきっているのか、ふらふらだ。 こちらは無理に起こされたところだというのにな。 「あのれみりゃから逃げてきたのか?」 「そうですぅぅ、まりさともはぐれちゃって……」 「大変だな。そいつはもう食べられちゃったのかね」 「ゆぐ……と、とにかく、れみりゃがいるおそとにはでられないです! どうかここにとめてください!」 「えー……?」 小汚いこんなやつらを泊めてやるのなんて、正直ごめんだ。 明かりが少ない状況だが、こいつらが例にもれず汚いことはよく分かる。 が、これ以上面倒なことを起こしたくもなかった。 追い出そうとすればうるさいだろうし、れみりゃとて決して静かなやつでもないだろう。 なんといっても今は早く寝たいのだ。 親子にそこまでゲスな雰囲気は見てとれないし、一晩できちんと追い出せばいいだろう。 そう思って俺は親子を泊めることを許した。 「ゆん! よかったあ、ありがとう!」 親れいむの一応の感謝が、右耳から左耳に抜けていく。 飲み物を箱買いしたときの段ボールに新聞を敷いてスペースを作ってやり、そこにのせる。 一応そこから出ないよう言って聞かせ、俺は寝室に戻った。 せめて今からでも安眠を迎えたい。 翌朝、俺はまたも音によって意識を覚醒させられることとなった。 目覚まし時計をセットしていたわけではない。 全く夜も朝も無理に起こされるなんてついてないなー、なんて思っている場合では無かった。 俺の耳に飛び込んできたのは昨日とは比べ物にならないとんでもなく大きな音だったのだから。 昨晩以上に体に力を込めて跳ね起き、居間への戸を叩きつけるように開いた。 そこに広がっていたのは昨日とは違う居間の光景だった。 見事に荒らされ散乱とした部屋。 どシンプルな三段の小さいキャビネットは引き出しを引かれ、中のものを掘り返されている。 なにに使う訳でも無い折り畳みナイフに、昨日駅前でもらったゆっくり保護団体のチラシ等々。確かにきちんとしまっていたはずのものは今は無造作に放り出されている。 そして、あまり物を置いていなかったスチールラックが引き倒されている。先程の音の主はこれらしい。物をのせ無さ過ぎて不安定だったのかもしれない。 そばには、それに乗せていたはずのゆっくりみょんをかたどった、陶器の小物入れが落ちて割れていた。 なかなか気にいっていたのだが、置くところが高すぎたか。 俺にとってこれは惨劇だ。結局この部屋で、起こってしまったわけだ。 基本的に大したものは置いていないので被害はそれなり。だが、これを片づけることを思わされると気が重い。 そして何より、ここまで触れてきていないがこれらを引き起こしたその原因。 いや、それはもはや考えるまでもない。 やはり昨日無理をしてでも追い出してれみりゃに捧げてやればよかったのだ。 まさか、一晩で評価をひっくり返すことになろうとは。 そうその原因は、やはりと言うべきか。……ゆっくり親子だった。 「あ、にんげんさん」 こちらを見つけ浮かべる笑みに嘲りを感じた。 そんなつもりはないだろうなとも思う。 「にんげんしゃん! あみゃあみゃちょーだいにぇ!」 足元から赤ゆの声がする。 こんなことをして、なぜ平気な顔でいられるのだろう。 そこまでこいつらはどうしようもない生物か。 「にんげんさん、ここはれいむのものだよ! さっきにんげんさんがくるまえにせんげんしたからね!」 「しょうなんぢゃよ! ゆっくちりかいしちぇね!」 なんだそりゃ。 ここは俺の家だって、流石のこいつらにも分かっているはずなのに。 「ゆゆ~ん、にんげんさんはじぶんのおうちにもどってね! こっちにくるならあまあまちょうだいね! たくさんでいいよ!」 ちら、と俺が出てきた寝室を見ながら言うれいむ。 どうやらこの部屋をもらったと、そう言いたいらしい。 「これ、お前らがやったのか?」 「ゆ? そうだよ! あまあまさがしだよ! なかったけどね! どこにかくしたのか、おしえてくれてもいいよ!」 眠りに落ちるのを邪魔され、れみりゃから助けてやって、更に一晩泊めてまでやった。 その見返りがこれとは。今まで冷静を保っていたはずの俺の心に、怒りが沸き起こるのをここにきて感じた。 後押ししてくれるこの感情。 これに任せよう。平気で恩を仇で返すこんなやつらに、遠慮してやる道理がどこにある。 気付くと俺は親れいむを蹴りあげていた。 白い壁にぶつかるれいむ。 「ゆ……! び……! ゆうっ、ゆうんやあああぁぁぁ!! いだいいいいぃぃぃ!! いだいよおおおぉぉ!」 「お、お、おかーしゃ……! くしょにんげん! おかーしゃになにしゅる……ゆぴ!」 飛びついてきた赤ゆを、傷つけない程度に軽く蹴り上げる。 脆い方は扱いづらいな。 「おしょらをとん……ゆぺ」 定型句を唱えかけてから地面に落ちる赤れいむ。 「そんなに強く蹴ってないって……お前のかーさん根性ないな」 そう言ってやってから親れいむに近づく。 「ゆぴぃ……! あやばり! あやばりばず! あやばりばずからぼうげらだいで!」 早くも白旗を上げるとは、やりがいのない奴だ。 だがこんな程度で腹の虫がおさまるわけがない。 れいむを両手で挟みこむようにもちあげ、一言投げかける。 「そんなの聞けないなー。なんでこんなことしたのかねぇ……」 「ゆあ……、と、とってもゆっくりしてるばしょだとおもってぇ……。 それにおきたらだれもいなかったから……ゆぎ! ゆぐ!」 挟んだ手で、れいむをねじり上げる。 ルービックキューブを捻るようにだ。 これで理由になると思っているのだろうか。おめでたいな。 これが人間だったら、別に真意でもあったのだろうか。 等と思ってから人間ならこんなことはしないな、と自分で突っ込みを入れる。 結局、昨晩の判断は間違っていたのだ。善良だと思ったのは何かの間違い。 疲れていてゲスな部分を出す余裕がなかったのかもしれない。 もしかすると寝ぼけた俺がそういう部分を見逃しただけなのかもしれない。 結局は見抜けなかった俺も悪いのだろうか。 そう思うとどこか少し冷静になった。 だがそんなことで許せるのか。許せるはずがない。 こいつらは俺に恩義を感じこそすれ、こんな目にあわせる理由はないはずなのだ。 そしてあまつさえこんな風に責任を感じさせてまでいるのだ。 そう思うと、強い苛立ちが沸き起こるのを感じた。 「ゆぎ! ゆぎ! いだいいいぃぃ……!」 「おかーしゃぁ……」 れいむを持つ手に力が入りかける。だがこんなことで潰してしまっては仕方ない。部屋も余計に汚れてしまう。 なんとか、最低限の痛みを感じてくれる程度におさめる。 そしてすぐに軽い捻りの限界に達したらしく、これ以上は動かなくなる。 まあ、いい。とりあえずこれはやめよう。正直ただ蹴る方がすかっとする。 手を離し、れいむが落ちる。成体なら人間の手元から落ちても案外平気だ。 「ゆっ! うぇっ……! ちょっと! きゅうにおとさないでね!」 次は赤ゆだ。 親れいむを足で押しのけて赤ゆに手を伸ばす。 一度逃げられるも、赤ゆの速度では大したことはない。きちんと捕まえ手のひらの上に載せる。 「ゆゆーん、れいみゅはとりしゃんー!」 すると母性に訴えかけられたか、怯えて固まっていた親れいむが声を上げる。 「ゆ! おちびちゃんはやめてあげてね! れいむのおちびちゃんなんだよ!」 だからなんだっていうんだ。 逐一イライラさせられる。こいつらはいらつかせる精神攻撃が得意技なのだろうか。 「それで? だからなんだって?」 「ゆ!? おちびちゃんはとってもゆっくりしてるんだよ! ほらよくみてね! ゆっくりしてるでしょ! ね!」 たしかにとってもゆっくりだ。 今見るとどうしようもなくいらつく、それはそれはとってもゆっくりな顔をしている小さな饅頭。 「ゆ?」と呟く赤ゆの顔に、もはや無意識でデコピンをお見舞いする。 「いぢゃいいいぃぃぃぃ!! なにじゅるのおおぉ! ゆうううぅぅぅ!」 「おちびちゃあぁん! ゆぐぅ! くそじじい! おちびちゃんをかえしてね!」 足元にぶつかってくる親れいむ。 ゆっくりってやつは柔らかい。正直痛くも痒くもなかった。 「れいみゅぷきゅーしゅるよ! ぷっきゅうううぅぅぅ!!」 「せいっさい!するよ! くそじじいはしんでね! すぐでいいよ!」 無駄な反抗を見せる二匹 それではと、親れいむに赤ゆをとり返すチャンスをやることにする。 散らかった部屋に転がっていた折り畳みナイフを拾い、ひろげる。 親れいむに見せて言ってやる。 「おいれいむ……、これみえるか?」 「ゆ! なんだくそじじい! みえるよ! ばかにしないでね! で、なにそれ! あまあま!?」 「これはナイフって言ってな。物に当てるとよく切れるんだ」 「ぷきゅううううぅぅぅ!」 ぎらつくナイフを親れいむによく見せてやる。 「ないふ? きれるのはゆっくりできないよ!」 さっきまで怒っていたのに、なかなか素直だ。 馬鹿なのは、使いやすいという利点をもっているというわけか。 「お前の体で試してやろうか?」 「ゆ!? い、いいよ! ないふさんはすーぱすーぱさんだね! れいむわかったからきるひつようないよ!」 「ぷぅー、きゅううううぅぅ!」 「じゃあおちびで試そう」 話題に出されて、手のひらの上で必死に膨らんでいた赤ゆが反応した。 「ゆぴ!?」 その顔には恐怖が浮かんでいる。 うむ、気分が良いってことはないがこの顔ならイライラはしないで済むな。 「ゆああああぁぁぁ!? どぼじでそんなごというのおおおぉぉぉ!!」 「嫌か?」 「ゆ! いや! いやじゃよ! れいみゅすーぱすーぱさんいやじゃよおおぉ!!」 「おちびちゃんいやがってるでしょおおぉ!! だめだよおおぉぉぉ!!」 否定の色を強く表わし訴える二匹。 そんなことを言える立場じゃないと分からせてやることすら、難しいようだ。 「じゃあお前がかわるか?」 「どぼじでぞうなるのぉ!」 「お前がやったらおちびを切ったりはしないし、ちゃんと降ろしてやろうかなって思ってるんだけどなー」 「ゆ!?」 「ほ、ほんとうに……?」 「うん、約束は破らないさ」 そんなんじゃ、恩も返せないこいつらと一緒になってしまうからな。 「ゆぐぅ……」 「おかーしゃ……」 俯いて考え始めるれいむ。 自分の体が裂かれるのとおちびちゃんのどっちが大事か、もはや逆に及びもつかないほどの単純思考っぷりでじっくりと考えているんだろう。 「ゆ……わかったよ。れいむはどうなってもいいからおちびちゃんをはなしてね!」 手のひらのおちびが安堵の息を洩らすが、すぐに気付いて親に心配そうなまなざしを向ける。自分の安易さに気付き、親の運命を憂いているといったところか。 さて、よく選んだ。 そうでなくちゃ困る。おちびを見捨てられたりしたら、あとはもう単純に痛めつけるしか手段が無くなってしまうのだから。 「よし、じゃあ……持っておいてやるからお前が自分で体当てて切れ」 「ゆ」 「ゆぴ!? お、おかーしゃ……!」 少し屈んで、ナイフを床に立てるようにして抑えてやる。もちろんおちびを持った手は、高く掲げて降りられないようにしておく。 ナイフには角度を付けておいてやろう。自ら飛び込みやすいように。 「さ、どうした?」 れいむはどうやら予想外だったらしく、その場で硬直する。 俺は切れ味を試すと言っただけで、直々に刻んでやるなんて言った覚えはないのだが。 なんといっても両手がふさがっているのだ。是非協力して貰わなくては。 「……りです……。」 親れいむがぼそりと呟く。 「ん? なに?」 聞き返すと、俺の顔を見上げ口を開いた。 「むりです……!」 「なにがー?」 「むりいいぃ! むりですう! じぶんからいたいいたいはむりですうぅぅ!」 「ゆ!?」 「そっか……。じゃあ仕方ない、おちびだな」 「やべでえぇえ!」 おちびが手のひらの上でびくりとする。 そして俺の方へとゆっくり振り返ってきた。 俺はそんな可哀想なおちびに笑顔を向けてやる。 お前の親が不甲斐ないばっかりにな。 「お、おかーしゃ……」 「やべで! やべでえぇぇぇ! おちびちゃんはまだちっちゃいんですうう!」 立ち上がりナイフを持ち直す。おちびのデコに突きつけ、言う。 「まー、いいや」 「ゆ……?」 「ゆ!!」 「やっぱやめとくか。刃物なんて俺もちょっと危ないしな」 「ゆ、ゆあああぁぁぁ! やっちゃ! たしゅかっちゃよぉぉ!」 「にんげんさんありがとおおぉ! ゆ、ゆ! はやくおちびちゃんをおろしてねぇぇ!!」 なんと勝手な。 それにまさか、自分で言った感謝の言葉まで台無しにするようなことまで言うとは。 「解放してやるとまでは言ってないぞ」 「どぼじでぞんなごというのお!」 「ゆん! もうおかーしゃをいじめないでにぇ! れいみゅもおろしちぇにぇ! しゅぐでいいよ!」 本当に、どうしてこいつらはこうも瞬時に調子に乗れるのだろう。 一度ゆっくりの思考を覗いてみたいものだ。 ナイフをたたんで床に置き、おちびを先程の親れいむと同じ刑に処す。 顔を挟んで持っての雑巾絞りだ。 このサイズでは持つよりつまむという感じだが。 「ゆ……ゆぎ! いぢゃいいいぃぃ! やべでねぇぇ!」 声を上げるが、もちろん続ける。 おちびは柔らかいが小さいので加減が難しい。 こいつならもっと面白い状態になってくれるかと思ったのだが、結局親と同じ程度にしか捻れないようだ。残念ながら。 「ゆぎ、ゆぎぎぎぎぎぎ!」 仕方ないのでひとまず終えてやって離すことにする。 もちろん手のひらの上から降ろすわけではない。 「ゆ……ゆふぅー! みょうおわり? おわり? れいみゅたえちゃよ! ゆっへん!」 「すごいよぉ! おちびちゃあぁん!」 「なんだきゃれいみゅ、みゃえよりふにゃふにゃしゃんになったきがしゅりゅよ! れいみゅは、なめくじしゃん!」 「おちびちゃんよくがんばったねえぇ!」 まったく、俺が加減してやったからだというのに。 こんなことでぎゃあぎゃあと、いちいち面倒な奴らだ。 おちびを褒め尽くしたれいむが今度はこちらをキッと睨みつける。 「いいかげんにしてね! そろそろおちびちゃんをはなしてね!」 まだ言うか。 おちびを軽く痛めつける程度では、堂々巡りにしかならないらしい。 同じことばかりうるさく言われ続けるのは、もう勘弁してほしいところだ。 またしてもイラッとしてしまったので親れいむの顔にもう一度蹴りを入れてやる。 ただし今度はさらに弱め、小突く程度だ。 「ゆちー、なんだきゃやわやわしゃんしゅぎちぇ、れいみゅゆるゆるしゃんだよぉ」 おちびがもはや訳のわからないことを言っている。もうこいつは無視だ。 「ゆぎっ! いだい! ゆんやああぁぁあ!!」 「ゆぅー、うんうんでりゅよ!」 本当に軽くなのに大袈裟にわめく親れいむ。 さっきの一撃を思い出したってだけで叫んでいるのではなかろうか。 ……なに、うんうん? 「うんうんしゅっきりー! ぎゅいぃーでゆるゆるしゃんになっちゃからいっぴゃいでちゃよ!」 ……見ると、おちびが手のひらの上でうんうんをかましてくれていた。 それもきれいに手のひらに収まるように。 黒い餡子の塊が何やら仄かにあったかい。 ああ……なんだか、もういいや。 「……ゆっ! なにしゅるの! れいみゅのおかざりしゃんかえしちぇね!」 おちびを指でおさえ、もう片方の手でリボンを抜きとる。 それをポケットにしまってから、もう一度おちびをしっかりおさえる。 そして、手のひらの上の排泄物をおちびの髪に塗りたくった。 「おかざ……ゆぴぃ! うんうんちゅけないでにぇ!」 それはこっちの台詞だ。 うるさく言ってくるが、もちろんやめてなどやらない。 大方塗り終えると、だいぶ手のひらにも広がってしまっていた。 「おちびちゃんになにじでるのおおおぉぉ!」 「ゆんやああぁ! くちゃいいぃ! ゆぴいいいぃぃぃ!! れいみゅのさらさらかがやくごくじょうっ!のかみしゃんがくちゃいぃぃ!」 うるさく泣きわめくおちびを掃き出し窓から狭い庭部分に放り出し、窓を閉める。 「ゆ!? お、おちびちゃん!」 まず手を洗おう。そしたらもう、いいかげん終わらせてしまうとしよう。 俺ももはや限界だ。しかし何とも屈辱的な方法で本気にさせられてしまったものだ。 おちびの贈り物を洗い落した後、未だ散乱した居間に戻ると親れいむが窓に向かって体当たりしていた。 外から中から、窓がそんなに好きか。と言う冗談は置いといて。 さっきから親れいむの声は部屋に響いていた。 もちろんその目的はただ一つ。おちびの元に行こうと奮闘している、というわけだ。 「おちびちゃん! いまあけてあげるからね! まっててねええぇぇ!」 だが窓は大きな音を立てるばかりで、割れてまではくれない。 俺は足に体当たりされた感触を思い出して、あの力じゃ無理だろうな、と思った。 昨夜のれみりゃは既にいなくなっていて、外には脅威が存在するわけでもなんでもない。 それでも親れいむが必死なのは、さっきのことでおちびちゃんが泣きっぱなしだからだろう。くちゃいくちゃいと。 親れいむを後ろから捕まえ、体当たりを止める。 「なにするくそじじい! おちびちゃんをはやくもどせ!」 「戻す?」 「ここはれいむのゆっくりぷれいすだっていってるだろおおぉ! はやくもどせ!」 しつこい奴だ。と思って、そういえばまだきちっと否定してやってなかったことを思い出す。 「戻すね……、まあ賛成してもいいな」 ただし言葉尻をとって、の話だが。 「じゃあはやくもどせ! おちびちゃんをもどせ! それからあまあまもってこおおぉい!」 「お前が戻れよ。元の外にさ」 「ゆが!? そんなのおかしいでしょおお!? ここがれいむのゆっくりぷれいすなんだよお!!」 「ここは俺の家なんだよ。この部屋もあっちの部屋も。お前が来るずっと前に人間流のおうち宣言をしてるんだよ」 「ぞんなのじるがああ! いいがらおぢびぢゃんをもどぜ! ばやぐじろおおぉぉ!」 やはり言っても無駄か。 なにも聞かず傲岸不遜を貫き続けるしかない。ある意味一貫しているわけだ。 そんなお前たちを気にいってくれる人の所に飛び込めば、よかったのにな。いればだが。 親れいむのリボンも抜き取り、窓の外に出してやる。 ただしこいつは、おちびより強くだ。真っ直ぐ投げてやると、目の前のコンクリートブロックの塀に潰れるようにぶつかるれいむ。 それでも平気でぼてっと地面に落ち、泣き声を上げてみせるのは流石の丈夫さだ。柔軟性のなせる技だろうか。 俺は先ほどのナイフを持ち、サンダルをつっかけて庭におりる。 素早くおちびに飛びつこうとする親れいむに先んじて手を伸ばし、おちびを持ち上げた。 「さーて、さっきの約束やっぱ守ってもらおうかな」 そう言ってナイフをおちびにあてる。 怯えるおちび。 親れいむは愕然とした表情で固まっていた。 「こいつで切れ味試すって約束だったよな」 親れいむが表情に絶望を交え、悲痛な声をあげる。 「さっきはやめるっでいったでしょ! やべで! やべで! おぢびちゃんをだずげて! ごんどごぞがんばりばすがら!」 「あのな……二度も同じチャンスは訪れないものだよ」 そう言って、ぷるぷる震えるおちびの口にナイフを突っ込む。 深くまで差し込んだナイフで、頬の皮を切り裂く。後頭部近くまで広がる口。 「いぢゅあい! いぢゅぁいゆお……おかーしゃ……ゆぴいいいいぃぃ!」 泣き叫ぶおちびを押さえ込んで反対側も同じようにする。口裂けゆっくりが完成した。 さらに騒ぎ始めるおちびを強く抑え込む。 自分の体なのに騒ぎ過ぎれば餡子が漏れて危ないと分かっていないのか。 餡子が漏れ出さない内に地面に置き、親れいむと再会させてやる。思えば俺に捕まって以来の再会だ。 だが親れいむはそれどころではないのをきちんと弁えているようだ。流石に慎重な姿勢を見せる。 「おちびちゃん! しずかにしてね、あんこさんがもれちゃうよ」 「ゆ……おかしゃ、ゆうぅ……しゃべりにきゅぅいぃぃー!」 「おちびちゃん! しずかにしないとだめだよ!」 おちびを叱り必死にその動きを止めようとする親れいむ。 だがすでに切り口からは餡子が漏れかけている。このままではもっと漏れていくだろう。 だがそれよりもまず、おちびの体はぱかぱかと開いてみせていた。 おちびが喋るのに乗って上顎が持ち上がるのだ。 バランスを崩せば、あの体はすぐ開いてしまうだろう。 おちびはそんな自分の体の状態に困惑しながらも、叫ぶのをやめられない。 親れいむもそんなおちびを見て焦りを募らせ始めたようだ。 「おい、れいむ。おちびちゃんを後ろから支えてやった方がいいぞ」 親れいむに声をかけてやる。 親れいむははっと気づいたようにして、こちらに一瞥をくれることもなくおちびの背後に回る。 「おちびちゃん、おかあさんがささえてあげるからしずかに……ゆ! く、くさっ」 最後にれいむは反射で呟く。 そう、髪にはさっきうんうんを塗りつけたばかり。 つい出てしまった親れいむの小さな声を、おちびは聞き逃さなかった。 大口を開け、とうとう―― 「なにいっちぇるの……! おかーしゃがいけにゃいんでちょ……! おかーしゃがぜん! びゅっ! ……べ……べ」 叫ぶ勢いで上あごがあがりきり、頭が地面に落ちる。 まさにと言うべきか、首の皮一枚で繋がっておちびはゆっくりの開きになってしまった。 「お、おちびちゃああぁん!」 下あごに多くのあんこが残されているのがわかる。 上あごにもいくらか持っていかれているが、下あご部分では餡子がこんもりと山になっていた。 もしかするとあれが中枢餡というやつなのかもしれない。変わった様子はないのでよく分からないが。 下あごの先でずらりと半円状にならんだ歯の真ん中、舌がぴくぴくと痙攣していた。 先っちょは丸められていて、おちびが痛みに耐えているのがうかがえる。おそらく風前の灯だろうが、おちびはまだ生きているようだ。 そしてその身を二つに裂かれた苦しみを味わっているのだろう。 親れいむがもはやどうしていいか分からずに――いや、あれは既におちびを亡くした悲しみを感じているのかもしれない――顔を絶望に固め立ちすくんでいた。 だが、おちびは確かにまだ生きている。 この声が届くかは分からないが、こんな半端で終わらせても仕方ない。仕上げてやらねば。 「おちび、ジャンプしたら戻れるんじゃないか?」 俺の声にピクリと反応する二匹。 親れいむの顔が、本格的に絶望から悲しみへと変わった。 「おちびちゃん! うごいちゃだめ!」 だがおちびは、その台詞とほぼ同時に飛んでしまっていた。 苦しみに支配されたその思考は、きっと究極的に単純だったのだろう。 ジャンプの頂点からの落ち際に、確かに元の体を取り戻すおちび。 疲弊しきって濁った瞳にわずかの希望が浮き上がった。 だがその体はバランスを崩し、顔を地面へと向けてしまう。後ろを気遣いすぎて前に重心が乗っていなかったのだろう。 そしておちびは落ちた。 地面にあんこをはきだし潰れるおちび。今度こそピクリとも動かなくなる。 親れいむはそれをもはや生気のない目で見つめていた。 「あーあ、潰れちゃったな」 俺が言うと、ゆっくりこちらを見上げる親れいむ。 「さて、次はお前かな」 継いだ言葉に震え上がって、恐怖を浮かべた顔をする。 その表情のまま、ずいと前に出て叫び出す。 「ゆるじで! おぢびぢゃんぼばりざぼなぐじで、れいぶかばいぞうなんでずぅ!」 「ふーん、可哀想とは思わないけど……許されたいのか」 「ゆるじでぐだざい!」 「でもねぇ、俺もこのまま許すわけにはな」 「なんでぼじばず! なんべぼじばずがらゆるじで!」 「ん? そうか、なんでもするか。ならひとつ方法があるよ」 「ゆ! なに! なんでずが! ばやぐいっで!」 わずかに顔に喜びを浮かべ、食いついてくる。 俺の言ったことはろくに実現できていないこいつだが、次こそやってくれるだろうか。 「そのおちび、食べてくれ」 「ゆ……!」 れいむが表情を固め、たじろぐ。やはり無理だろうか。 「嫌か?」 「ゆ! ばっで! ばっで……」 戸惑い、怯えた表情を浮かべるれいむ。 なんだかんだで、色んな表情を見る羽目になったな。 「そうだよな、助かりたいよな」 「ゆ……」 俯く。 「でもおちびは食べたくないか? でもさあ、考えてみろ。」 顔を上げ、こちらを見る。 怯えを残したままの、救いを求める表情だ。そんなものを与えようとは思わないが。 「お前だけが許されたらおちびはここであのままだぞ」 「ゆ……!?」 「親に見捨てられ、野ざらしのまま段々朽ちていく……。可哀想じゃないか?」 「……」 「おちびはもう動けないんだ。れいむが自分の体に取り込んでさあ、ここから連れて行ってやれよ。そしたら、ずっと一緒にいられるじゃないか」 「ゆ……ずっと……ゆっくり……」 「そうそう、ずっと一緒にゆっくりできる。それに、俺もおちびを片づけてやらなくてすむから、助かるんだよ」 「ゆ……」 「俺とおちびを助けると思って、頼むよれいむ」 「ゆ……あ……」 ゆっくりとおちびに近づくれいむ。 うんうんの臭いもまだ残るであろうその体に、れいむは今度こそ躊躇わずに食いついた。 ゆっくりと咀嚼する。 すすり泣く声が聞こえたのは、最初だけ。 食べ終えて動かなくなったれいむの前に回る。 おちびは餡子のひとかたまりも残さずに、消えている。土をなめてでも、れいむが食べ尽くしたからだ。 口がだらしなく開かれ、その目はまたも生気をなくし焦点があっていなかった。 そんなれいむに告げてやることとする。 「よしれいむ、今度こそできたな」 わずかに見上げるれいむ。 だが未だにその目は遠くを見ている。 最後だけだが、やっと俺の指図を行動に移せたか。 「これで許してやれるぞ、れいむ。俺はこれ以上お前に危害をくわえない。後は好きに逃げな」 「ゆ!」 れいむの顔に一気に驚きと喜びが灯った。 「ほんとうにゆるしてくれるの!?」 信じられていなかったのだろうか。 「ああもちろん、約束は守らなくちゃな。あ、その前に」 「ゆ?」 「お飾り返してやるからな」 家から出すときに奪い取ったリボンを取り出し、れいむに見せる。 「つけてやるよ。……もう何もしないから、来な」 そう言ってやると、おずおずと近づいてくるれいむ。 さっきの約束は本当だ。だから俺はもう本当に危害を加える気はない。 後はこの親子を逃がしてやるだけだ。 れいむの後頭部の辺りに元通りにしっかりリボンを結んでやった。 「もうちょっとだからな」 そう言ってれいむを少し引き寄せ軽く押さえる。 そして頭にリボンを結ぶ。 れいむは静かに任せている。顔を見ると喜んでいるようだ。お飾りが戻ってきて嬉しいのだろう。 「さ、出来た。もういっていいぞ」 「ゆん……ありがとう! それじゃあ、さよなら」 ゆっくり去っていくれいむを見送る。 れいむは昨晩れみりゃが現れた辺りから逃げていった。 さて、やっといなくなったな。 下手に潰して掃除の手間を増やすのに比べれば、ましなやり方だったろう。 鬱憤もそれなりに晴らせたのだし。 俺は正直おちびがつぶれた時点で充分だった。既に飽きていたのだ。 だがそのおちびもれいむに片づけさせられたし、結果だけ見ればゆっくりの被害にあった割には上々な対処ができた方なのではないだろうか。 そして残ったれいむも、これから自らゆっくりできない所へ飛び込んでいくことになるのだ。 さ、部屋の掃除に取り掛かろう。 れいむは必死に走っていた。 あの人間が見えなくなった時点で、追ってくるのではと俄かに恐くなったのだ。 持てる力の全てで、全力疾走する。 まあ人間の子供の歩行よりと同じ程度の速度だったが。 気付くとれいむは、やたら草の生い茂った土地の前に立っていた。 周りは人間の家が立ち並んでいるばかりなのに、この場所だけに背の高い草が並んでいる。 何のことはない、ただの空き地だった。 だがそんなことれいむは知らず、とりあえず仲間でもいないかと、近づかないで覗き込むようにして見る。 もちろん逃げてきた方への警戒も怠らない。 と、その時ガサッと草をかき分ける音がした。空き地の方で何かが動き、そして近づいてくる。 れいむは一歩二歩と下がり警戒しながらその何かが現れるのを待った。 そして、あらわれたその姿は……ゆっくり。ゆっくりまりさだった。 れいむはそのまりさに見覚えがあった。昨日はぐれた番のまりさだ。 食われたかと思っていたが、生きていたのだ。 「ゆ! まりさぁ!」 「ゆ! れいむ! いきてたんだ……ぜ……」 言葉を尻すぼみにするまりさ。もしかして傷ついているのだろうかと、れいむは思った。 「まりさ! だいじょうぶだったんだね!」 「……ゆ、れいむこそだぜ」 「しんぱいしたんだよ、まりさ」 「ゆ、そうかぜ」 わずかに俯くまりさ。帽子に隠れて表情が窺いづらい。 「まりさ、どうしたの? ようすがおかしいよ?」 「……れいむ、おちびはどうしたのぜ」 「ゆ……おちびちゃんは……にんげんさんに……。 いっしょにつかまっちゃって、たいへんだったんだよ」 「そうかぜ」 後ろを向くまりさ。 れいむは思った。おちびの死を悲しんでいるのだろうと。 あんなにゆっくりとしていたおちびちゃんだったのだ。仕方ない。 まりさが振り向く。 「なら、その……ちいさいおかざりはなんなのぜ!?」 「ゆ!?」 まりさはれいむの頭を見上げ、怒りの表情を浮かべていた。 れいむは戸惑う。まりさが何を言っているのか、分からない。 「お、おかざりってなんのこと?」 「そのあたまについたちいさなおかざりのことなのぜ! ふたつもつけて、おかしいのぜ! それはおちびのじゃないのかぜ!?」 まりさの言う通り、れいむの頭の上はいつもと様子が違っていた。 自前のお飾りは問題なく付いている。 だが、一まとまりの黒い髪が、真っ直ぐ上にのびアホ毛のように突っ立っていた。 その根元を小さいお飾りに支えられて。 「そんなつけかたして! おちびをばかにしてるのかぜ!!」 「ゆ! ゆぴ!?」 混乱しだすれいむ。 緩む思考から何とか絞り出して、れいむは自分とおちびのお飾りのことを思い返す。 自分のお飾りは一度取られたものの、きちんと人間に返してもらったはず。そして、おちびのお飾りは……。 「ゆ! まりさ! にんげんさんのしわざだよ! きっとあのにんげんがれいむに」 れいむの餡子に皮が裂ける音が響いた。 「ゆゆ、ああ、あぁぁぁ!」 まりさが口に石をくわえ、ぶつかってきたのだ。 わずかな裂け目かられいむに痛みが伝わる。 「おかざりをうばったのぜ……!! おちびちゃんから!」 「ま、まりさ! ちがうよ! これはにんげんが」 「うるさいのぜ! ふざけるなだぜ! そんなのうそなのぜ! うそなんかききたくないのぜ!」 「まりざ!」 「おちび! かたきはとるのぜ!」 「やめで! やべでばりざあ!」 まりさのくわえた石が襲いかかる。れいむの体を裂き、ひっこめられてまた襲い、裂く。 れいむの体はぼろぼろになっていった。 まりさの体当たりの衝撃で、増えゆく穴から餡子がさらに漏れ出す。 まりさは石を捨て、れいむの上に乗っかった。 れいむの上で体重を乗せて何度も跳ね、れいむの体から餡子を追い出しながら潰していく。 やがてれいむがピクリとも動かなくなると、まりさは吠えた。 「ゆっゆおおぉぉー!! おちび! かたきはとったのぜえ!」 ゆおーゆおーと、高らかに叫ぶまりさは気付かない。 草陰から自分を見つめる存在に。 昨夜逃した獲物を、再度見つけた捕食者の視線に。 おわり 挿絵:
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相談事、書き込んでb あれ作って、リンク。 -- 喜骨折人 (2011-08-02 21 52 42) "( ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ""( ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ""( ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ" -- 豪槍 (2011-08-03 11 05 56) リンク? -- 管理人 (2011-08-03 17 28 34) 他のサイトへのリンク -- 喜骨折人 (2011-08-06 02 49 33) どうやるん? -- 管理人 (2011-08-06 20 23 45) 試合でなかなか勝てないんですが、誰が悪いのでしょう? -- icedog (2011-08-12 16 35 11) あなた -- 喜骨折人 (2011-08-13 00 38 23) あなた -- 喜骨折人 (2011-08-13 00 52 00) あなた -- 喜骨折人 (2011-08-13 00 52 13) icedogってなんか知ったかばかりしていてハッタリやたらとかまして挙句の果てに音痴なんだよなぁ -- 豪槍 (2011-08-13 11 16 32) ぶっ(笑) -- ほっとドッグ。 (2011-08-14 21 32 28) 豪槍って人にオタク、オタクって言う割にPC使用率は俺より高いんだよなぁ、 -- icedog (2011-08-15 12 47 20) 豪槍ってあんまり強くねーのに喧嘩厨だし、てか喧嘩厨っていうより友達がほしいだけなのかなwww -- icedog (2011-08-15 12 48 54) 豪槍って人に言えるぐらい歌上手くもねーよな、大体、米欄と書いてあるのをを「誤字しまくり、コメだろ」とかwwwお前の方が知ったかじゃねぇかwww -- icedog (2011-08-15 12 51 22) ↑書いてあるのををwwwこれは馬路誤字www -- icedog (2011-08-15 12 51 58) ポリバケツ同盟はあの後どうなったのでしょうか?教えていただきたい -- 喜骨折人 (2011-08-17 17 56 12) ↑What s? -- 管理人 (2011-08-25 13 28 39) あの~俺はicedogよりは歌うたうのはうまいと思うんだけど・・・ -- 豪槍 (2011-08-26 03 36 58) 音痴さ icedog≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪豪槍 -- 喜骨折人 (2011-08-28 17 51 48) やーい、ザマミロ豪槍 -- 喜骨折人がかばってくれた(涙) (2011-09-01 19 03 29) ↑誰?有間?管理人? -- 豪槍 (2011-09-03 11 11 23) はじめてコメントするけどなんかすごい出来てるじゃん こんなできてるとは思わなかった>。< -- 手裏剣? (2011-09-07 12 50 56) なあ竹村~あ、豪槍 だったな、有馬の名前だすんやったら、自分の名前だせばいいんじゃね?あ?「俺の名前は 竹村 竜 で~っす」てなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwはやくいえよw -- Lex (2011-09-11 21 48 45) 東淀川の女子にあやまるんですかねぇ -- ? (2011-09-11 22 44 53) プライドってのがないんですかねぇ -- ????? (2011-09-11 22 45 08) いもって次の日仮病で学校休むんですかねぇ -- ????? (2011-09-11 22 45 25) 御前等馬鹿過笑 -- 喜骨折人 (2011-09-12 00 49 58) 正解数:260 失敗数:1 正解率:99.616 タイプ速度:4.305 得点:1448.58ってタイプ早いほうですか? -- 名無しさん (2011-09-17 18 00 20) 早いか遅いか分かりません どっちか教えてください -- 名無しさん (2011-09-17 18 00 55) 名前は教えてくれたら言います。 -- あなたの知ってる人^^ (2011-09-17 18 01 21) どうか診断お願いします -- あなたの知ってる人 (2011-09-17 18 01 50) •正解数:260 失敗数:1 正解率:99.616 タイプ速度:4.305 得点:1448.58ってタイプ早いほうですか? -- 名無しさん (2011-09-17 18 06 17) はやいよ↑ -- 管理人 (2011-09-27 11 11 57) ksだろおまえうそはいいよ -- ねもと (2011-10-01 14 02 16) ちびちゃしよ!w -- しら (2011-10-02 10 33 33) なんかさーワンピースのワンピースの王下七武海みたいに空軍も王下七武海[おうかしちぶかい]きなの作れば? -- ゴースト姫 (2011-10-03 19 00 26) ↑のワンピースのワンピースの件はあれただのまちがいだからきにしないでーーワンピースみたいなリアル七武海てきな゜ー゜ -- ゴースト姫 (2011-10-03 19 02 42) うん、??よく言ってる意味が・・・ -- 管理人 (2011-10-06 10 11 57) すいません!!!!!!!!!!!!! -- 林檎 (2011-10-06 11 18 29) 土屋映一は雑魚。チャットだけしか芸がない悲しい男。 テストの点数は平均以下、運動神経はサッカーだけかろうじてあり。 -- 名無しさん (2011-10-09 00 01 44) 根性も腐ってる。制服のシャツインは顧問の前だけでして、顧問の目がつかないとこではしない。 -- 名無しさん (2011-10-09 00 02 37) シャツインはずっとしてるんだが?よくみてから発言したらどうだ?考えろよwまあリアてことはわかってるからksばっかりだなw自分の名前も出さずに言うだけか?笑わせるなよwそこまでの雑魚じゃないと思うが? -- 管理人 (2011-10-10 23 43 01) 個人名の載ってるコメントのすべてを早く消してくださいお願いします。 -- 豪槍 (2011-10-11 18 26 03) 豪槍は・・・ -- しんだ王子 (2011-11-23 21 45 51) 豪槍は・・・ -- しんだ王子 (2011-11-23 21 46 13) ここにカラーうちこんだら色かわるんじゃね? -- つきね (2011-12-24 20 48 47) おっと雑魚がウィキを作ってやがるwww雑魚の癖にww -- EVOLTA (2011-12-28 00 18 27) *私のウィキをパクるのは辞めてください} -- 名無しさん (2012-02-02 20 12 27) なんか、このwiki見てると悲しくなってくるよ。シャツinしてるとかそんなうそぶったたいて、本当はかっこつけたいだけでしょ?だから、ヴァンガードとかバトルスピリッツなど中2(もうすぐ三年か)になってそんなことしてるくせに。なんかここだけは強気になっていろいろ書いてるけど、学校では嫌われてるし、一年の時はボコボコにされてるし(ww)なんか最近ちょうしにのりすぎじゃない?自分でもわかってるでしょ?いじめられてること。だ・か・ら、学校で調子に乗るなど、ここでいきって調子に乗らないでください。最後にお前まじできもいなww -- @@@ (2012-03-29 15 29 29) 名前 コメント
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『取り返すために』 37KB 虐待 差別・格差 群れ 赤ゆ 希少種 自然界 現代 虐待人間 独自設定 17作目 「ゆ、ううまれるよ、まりさぁ!」 「ゆゆ、れいむまつのぜ。いまおぼうしをよういするのぜ!」 春のある日の事、とある森のとある番のれいむが出産の時を迎えていた。 夫のまりさは妻の言葉に、慌てて自分の頭からトンガリ帽子を外して構える。 「ゆぅ……ゆぐぐゆぅ!」 力む声の後に何かがすっぽ抜けるような音が巣の中に響く。 そしてれいむの体から飛び出す新たな命、それを受け止めるまりさのお帽子。 「ゆ、う、うまくうけとめられたのかぜ?」 そう言ってまりさは自分のお帽子の中を覗く、 「ゆ、ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」 その中には待ち望んで居た自分に良く似たおちびちゃん、赤まりさが天使のような微笑を目の前の父に向けていた。 「ゆ、ゆわ~ゆっくりしたおちびちゃんだよぉ。ゆっくりしていってね!」 その子供に向って満面の笑みと共に挨拶をする。 そんなまりさの至福の時間は、切羽詰った妻の言葉で中断される事になる。 「ま、まりさ……つぎの、つぎのあかちゃんが!」 「ゆ、れいむ!わかったのぜ!」 そう言って赤まりさをお下げで掴み、お帽子の中から取り出し脇にどける。 赤まりさは一瞬寒そうに身震いすると、隣の父に擦り寄った。 「ゆぅ、れいむ!もうだいじょうぶなのぜ!」 「ゆぐぐぐ、ゆぅ!」 そうして飛び出す新たな命、今度の子供は赤れいむだった、先ほどと同じように親子が挨拶をする。 先に生まれた姉も妹の誕生を歓迎し、いっしょにすーりすーりをする。 続けて生まれたのは、またもや赤まりさ。自分の同じおちびちゃんのたくさんの誕生に父まりさの頬は緩みっぱなしである。 苦しそうな母れいむも、番のそんな様子にゆっくりとした笑みを向ける。 「ま、まりさまただよ、おちびちゃんがあとひとりいるよ!」 自分の体の様子から最後の子供であることに気が付き番に用意を促す。 「いつでもだいじょうぶなのぜ!」 最初は慌て居た父まりさも、4回目となるともう慣れたものである。 傍に3匹の赤ゆっくりを待たせ、母れいむに向けてお帽子を構える。 「ゆぐぐぐ、ゆぅ、まりさ!」 母れいむから飛び出した赤ゆっくりが、放物線を描いて父まりさのお帽子に入った。 「ゆ、れいむ!さいごのおちびちゃんもちゃーんとうまれたのぜ!」 最後の赤ゆっくりをしっかりと受け止めると、先に番が気になったのか母れいむの様子を見に行く。 苦しそうな息をしていた母れいむも何とか息を整えると待望の我が子のいる場所へやってきた。 「ゆ……ゆ~おちびちゃん!」 そう言って涙を見せる母れいむ、赤ゆっくりとの最初のご挨拶はゆっくり達にとって重要な儀式である。 植物性妊娠であれば、出産は短時間であるため両親は一度に子供達とご挨拶が出来るが。 動物性妊娠の場合、母体になるゆっくりにもその番にも負担がかかるため、一度にご挨拶という訳には行かない。 しかしそれでも重要な儀式であることに変わりは無いのである。 近寄ってくる母親に顔を輝かせる赤ゆっくり達、体の自由の利く父まりさは番のれいむと子供達の始めてのご挨拶の為に先行して最後に生まれた赤ゆっくりをお帽子から出してあげるつもりである。 「ゆ~おちびちゃん!でてくるのぜ!」 そう言ってお帽子にお下げを伸ばす父まりさ、地面に置いて潰れたお帽子を開いて中にお下げを差し込む。 「おちびちゃんも、おかあ……ゆっ!」 その時父まりさの顔に驚愕が走った。背後の母れいむも先に生まれた赤ゆっくり達も「ゆっくりしていってね」と言おうとしたところで上がった大声に動きを止めている。 「ゆ……ゆぅ?ま、まりさいったいどうしたの、おおごえはあかちゃんがこわいこわいだよ?」 そう言って父まりさに近づいた母れいむ、そんな彼女も後ろからお帽子の中を覗き動きを止める。 「ゆっ!……ど、どぼじでぇ?」 「ゆあぁ、ど、どういうことなんだぜえええ!」 その言葉に反応して再度疑問の大声を上げる父まりさ。 「「「ゆ、ゆっきゅ!」」」 赤ゆっくり達も引きつった顔になっている。 「ゆ……ゆっきゅり……ゆ?」 父まりさのお帽子の中でそんな家族の様子に驚きを隠せない赤ゆっくり。輝く金髪に真っ赤なカチューシャを飾ったその子供は赤ありす――ゆっくりありすであった。 おうちの中は大混乱に陥った。ゆっくりの常識に置いて両親と違う子供が生まれることなど無い。 子供達とのご挨拶もそこそこに父まりさはおうちを飛び出し、群れの長であり森の賢者であるぱちゅりーを頼るべく長のおうちを目指した。 長のおうちはこの森の外るとても大きな木の下に作られており。中にはいくつもの部屋と食料庫や倉庫、外には侵入者対策の防壁と水害対策の浅い溝が備えられたこの群れでも有数の立派なおうちである。 そのおうちに父まりさが駆け込むと、長ぱちゅりーは保存食を開けてむーしゃむしゃしていた。 「ゆぅ、おさ!ぱちゅりー、たいへんなのぜ!」 「む、むきゅ、まりさ、いったなにがあったの?」 保存食を巻いていた木の葉で食べかけを隠し、口の中の物を飲み込んで聞いてくる。 「たいへんなのぜ、おさ!まりさのおちびちゃんが、たいへんなのぜ!」 慌ててぱちゅりーを連れ出そうと、もみ上げを引っ張ろうとする父まりさ。 「ま、まちなさいちゃんといくから!」 視線と態度で急かすが体が弱いぱちゅりーの動きはゆっくりとしたものである。 結局後ろから父まりさがせっつくようにして、ぱちゅりーを自分のおうちまで連れて行く事になった。 「ふうふう、おじゃまするわね」 息を切らした長ぱちゅりーが、まりさとれいむのおうちに辿り着くと。中で待っていた母れいむが不安そうな顔で歓迎する。 赤ゆっくりとはご挨拶を済ませたのか寄り添っているが、常識外れの事態にやはり皆不安だったのかどこかぎこちない様な空気が流れていた。 しかし番のまりさと頼れる長のぱちゅりーが来た事によって母れいむの顔にも少し明るさが戻る。 「ゆぅ、おさ!きてくれたんだね!」 「むきゅ、だいじょうぶよれいむ!それにしてもまりさ、いったいなにがあったの?」 そう言っておうちの中を見回す、こういう場合ぱちゅりーが呼ばれるのは大体出産がらみのトラブルと決まっている。 しかし既にれいむは出産を終えているようだし、赤ゆっくり達が病気と言うようにも見えない。 その事を疑問に思ったのか、父まりさに問いかける。 「お、おさ、みてほしいのぜ!まりさとれいむのおちびちゃんが!」 「むきゅ……たくさんよね、ゆっくりしたおちびちゃんよ!」 「ちがうのぜおさ!あのおちびちゃんをみるのぜ、ありすなのぜ!」 「むきゅ……む、むきゅーほんとうだわ!ありすよ!」 その言葉におうちの中の視線が赤ありすに集中する。生まれていきなりこんな状況に放り込まれ、唐突にやって来た家族以外のゆっくりに不安そうな表情だった赤ゆっくり達、その中でも特に不安だった赤ありすの顔に驚きが走る。 「ゆ、ゆぴぃ!」 「そうなんだよ、おさ!れいむとまりさのおちびちゃんなのに、あのこだけありすなんだよ!」 「そうなのぜ、いったいなにがあったのぜ?」 「むきゅ……むきゅ……えーと、れいむ?うわきなんて……してないわよね!」 「ゆ!な、なにいってるのぉおさ!れいむがまりさいがいと、そんなことするわけないでしょうぉ!」 「そ、そうなのぜ!れいむはそんなゆっくりじゃないのぜ!」 「それにみるのぜ、おさ!まりさのおちびちゃんもうまれているのぜ!」 「む、むきゅう……こ、これはいじょうなじたいよ……」 「「ゆゅ!!!」」 「まりさ、れいむ、すこしまちなさい!けんじゃのぱちぇのまどうしょをみてくるわ!」 「そうすれば、なにもかもわかるわ!」 そう言って巣の外に走り出す長ぱちゅりー、おうちの中には家族が残された。 「ゆ、ゆぅ、だいじょうぶなのかな、まりさ?」 「だいじょうぶなのぜ、おさはもりのけんじゃなのぜ!」 家族と寄り添う父まりさ、赤ゆっくり達もしばらくぶりの父に体を擦り付ける。 「いままでだって、ぜーんぶおさがおしえてくれたのぜ。だからだいじょうぶなのぜ!」 父まりさと母れいむはあの長のぱちゅりーを信用していた。この群れの長としてはまだ短いが森の賢者と呼ばれ、この群れ一番の知恵を持つゆっくりであり、その知恵と知識でこの群れを助けてきた。 何よりあのぱちゅりーの先祖は、群れの英ゆんなのである。 まりさ達が生まれるより前、この群れが沢山のふらんに襲われると言う大事件があった。 沢山の犠牲を出しながらもふらんを撃退し生き残った賢者でこの群れの基礎を作ったゆっくりでも有るのだ。 あの立派な長のおうちや群れの制度、梅雨や冬に向けて作る保存食の技術を作ったのも彼女であると聞いている。 長のおうちにはそんな「けんじゃのまどうしょ」が有り、長ぱちゅりーだけがそれから様々な知識を読み取る事が出来るのである。 しばらくすると再び息を切らせた長ぱちゅりーがおうちに現れた。 「はぁはぁ、むきゅ、はぁ、わ、わかったわ!」 「ゆぅ、ほんとうなのぜおさ!」 「す、すごいよおさ!」 「はぁはぁ、そうよ、けんじゃのぱちぇにはわかったわ!」 「そのおちびちゃんは……"チェンジリング"なのよ!」 「「ゆっ!?」」 「なんなのぜおさ、そのちぇんじりんぐって?」 「ゆぅ、はやく「むきゅ、まちなさい!」 「ゆ?」 「まりさ、れいむ、ちょっとそとではなしをしたいわ!」 「ゆ、わ、わかったのぜ!」 「ゆぅ、わかったよ!」 母れいむは赤ゆっくりの方を不安そうに見ると、もみ上げで抱きしめ少し外で話すと言い含めて外に出た。 おうちから出ると長ぱちゅりーは神妙な顔になり、二匹を見回す。 「むきゅ、あのおちびちゃんは、とりかえられてしまったよ!」 「「ゆゅ!」」 「まずはききなさい、あなたたちのおちびちゃんは、とってもゆっくりしているわ」 「そういうゆっくりしたおちびちゃんは、よーせいにねらわれるのよ。よーせいがじぶんのおちびちゃんと、とりかえていくのよ!」 「ゆ、そ、それじゃあ、まりさのおびちゃんは?」 「よ、よーせい?そのゆっくりが、れいむのおちびちゃんをさらったの!」 「むきゅ……よーせいは……むきゅ!そうよれいぱーありすよ!」 「れいぱーありすがまりさたちのおちびちゃんをねらって、じぶんのおちびちゃんといれかえたの!」 「げんにあのおちびちゃんは、ありすのおちびちゃんでしょう!」 「ゆ、ゆぅーれいぱーはゆっくりできないのぜ!」 「ゆわーん、れいむの、れいむのおちびちゃんがれいぱーありすに!」 「むきゅ、だいじょうぶよ!おちびちゃんをとりかえすほーほうがあるの!」 「ゆ……お、おさ。ほ、ほんとうなのかぜ?」 「れ、れいむのおちびちゃん、かえってくるの!」 「むきゅ、そうよ!」 「すごいのぜ、やっぱりおさはけんじゃなのぜ!」 「すごいよ、はやくおしえてね、いますぐでいいよ!」 「むきゃっきゃきゃ、ちょちょっとまちなさい!」 詰め寄ってくる親2匹を押し留め、長ぱちゅりーは息を落ち着けて語りだした。 「まりさたちののおちびちゃんをとりかえすには、あのありすをいじめるひつようがあるわ!」 「ゆ、いじめるのぜ!」 「おちびちゃんをいじめるのは、ゆっくりできないよ!」 「そうよ、あのありすのおちびちゃんをいじめることで、よーせい……れいぱーありすがおちびちゃんをかえしにくるのよ!」 「まりさたちもじぶんのおちびちゃんがいじめられたら、ゆっくりできないでしょう!」 「ゆぅ、そうなのぜ……」 「わかったよ!れいむはあのありすをいじめるよ、れいむのおちびちゃんをとりかえしたいからね!」 「れいむ……そうなのぜ、まりさのおちびちゃんをれいぱーなんかにわたせないのぜ!」 そう言って気炎を上げるまりさとれいむ、長ぱちゅりーはそんな2匹を慌てて止める。 「まちなさい、ふたりとも!とりもどすには、いくつかのちゅういがあるの!」 「「ゆっ!」」 こうして長ぱちゅりーは2匹に子供を取り返すための注意を行った。真剣な顔になる父まりさと母れいむ、しばらくしてから長はおうちに帰り、2匹もおうちの中へ戻って行った。 「おきゃーしゃん、おちょーしゃんおかいえりなしゃい!」 父まりさ達がおうちに入ると放置されて不安だったのか赤ゆっくり達が擦り寄って来る。 それには笑顔で返す2匹、おうちの中に明るい空気が広がった。 「おちょうしゃん、ありしゅにも!」 そう言って父まりさに擦り寄る赤ありす、 「れいぱーのくそがきはちかよらないでね!」 「ゆぴぃ!」 そんな空気も赤ありすが父まりさに吹き飛ばされると凍りついた。赤ありすは倒れて痛みにうめいている。 「ゆぴゃぁ、どうちて、れいみゅのいもーちょをどうしちぇ、おきゃーしゃん、おちょーしゃんが!」 母れいむに訴える赤れいむだが、母れいむの目も冷たいままだ。 「ゆ、おちびちゃんいいんだよ、あれはみんなのいもーとじゃないんだよ!」 「そうなのぜ、あれはれいぱーのくそがきなのぜ!」 「しょ、しょーなの!」 「そうだよ、はやくこっちにきてね、おかあさんいっしょにむーしゃむしゃしよーね!」 そう言って赤ありすの方に向おうとした赤れいむを呼び寄せる。 赤れいむもしばらくは倒れている、赤ありすを気にしていたが姉妹と同じように母れいむの元へ向った。 父まりさがおうちの食料庫からとっておきのあまあま――木苺を持ってくる、生まれて直ぐに母れいむから茎を噛み砕いて与えられていた赤ゆっくり達だが、それから随分と時間が経ってしまった。 はじめて見るあまあまによだれを垂らし、目を輝かせている。 「ゆわーおいししょうだよ、おきゃーしゃんたべちぇいいの!」 「いいんだよおちびちゃん、いっぱいむーしゃむしゃしてね」 その言葉に3匹の赤ゆっくりがあまあまに飛びつく。 「「「むーちゃむーちゃ、あみゃあみゃしあわちぇー!」」」 その言葉に父まりさと母れいむの顔にも笑顔が広がった。 「あ、ありちゅにも、ありちゅにもあみゃあみゃちょうだいね!」 しかし、痛む体を押して赤ありすが戻って来ると、その顔に影が差す。 「ゆ、なにいってるの?あまあまはれいむのおちびちゃんのだよ、くそがきはだまってね!」 そう言って蹴飛ばそうとして母れいむを父まりさが抑えた。 「まつのぜれいむ、おさのことば、わすれたのかぜ!」 「ゆっ!」 2匹の頭に長ぱちゅりーの言葉が蘇る。 「むきゅ、あのおちびちゃんだけど、えいえんにゆっくりさせてはだめよ!」 「えいえんにゆっくりさせずにいじめなくては、よーせいはこどもをかえしにこないわ!」 父まりさは再び食料庫に戻り、食料を咥えて来る。 「さぁ、おまえのごはんはこれなのぜ、かんしゃしてむーしゃむしゃするのぜ!」 投げるようにして与えたのは、親達でも保存食としてしか食べない苦い草であった。 「ゆ、ぎょはんにゃのね、ちょかいはよ……むーちゃゆぎぃ!」 草といえば生まれて直ぐに食べたあの茎しか知らない赤ありすは喜んでそれにかぶりつく、しかし口の中に広がったのは刺すよな苦味であった。 「ゆぎぃ、ゆぎゅう、きょれぢょくはいっちぇ……」 草とクリームを吐き出す赤ありす、それをニヤニヤと笑って見つめる両親。 「おお、あわれあわれ、れいぱーのくそがきがくるしんでるよ!」 「きたないね、おちびちゃんはあんなふうになっちゃだめだからね!」 両親の態度に赤れいむと赤まりさ達は驚きを隠せない。 「ゆぅ、れーみゅのいもうちょが……」 しかし赤ゆっくりにとって正義とはイコール親である。 「きにしにゃくちゃいいよ、れいみゅ!」 「しょーじゃよ、ありぇはまりしゃたちのいもーちょじゃにゃいんだよ!」 「で、でみょ……」 「それにあのこはまりしゃでもれいみゅでもないよ、ゆっくりできにゃいこだよ!」 そう言って赤ありすに冷たい目を向ける赤まりさ達、赤れいむは困惑しているがそれ以上は何も出来ない。 「ゆっ、おねーちゃん、どうしちぇありしゅをそんなめで……」 苦しんで誰かに縋ろうと家族の方に目をやるが相変わらず両親からは冷たい目で見られている。 それならば姉達に、と向いた姉達かたら向けられたのは同じような冷たい視線だった。 「ゆぴぴ、どうしちぇ?」 「さっさとたべてね、れいぱーのくそがきにはそれでもぜいたくだよ!」 動きを止めていると父まりさに小突かれる、お下げで口に苦い草が押し込まれる。 吐き出そうともがくが、結局それは赤ありすが全ての草を飲み込むまで続いた。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ……」 おうちの端では赤ありすが体を震わせながら泣いている。非ゆっくち症一歩手前である。普通の赤ゆっくりであれば既に発症してもおかしくは無い、しかし赤ありすは何かに守られているかの様に発症する事は無かった。 「さぁおちびちゃん、おかあさんがおうたをうたってあげるからね。ゆっくりすーやすーやしようね!」 母れいむが赤ゆっくり達を柔らかい草を敷いた場所に呼び寄せる。赤ゆっくりが集まると柔らかい草の中に入れて歌い始めた。 「ゆ~ゆ~ゆっくりしていってね~♪、おちびちゃんはゆっくり~したこだから~ゆっくりおねむしてね~♪」 その歌と隣に居る母の温もりに、赤ゆっくり達のまぶたがストンと落ちる。 寝息が立ち始めた、母れいむは歌いながらゆっくりとした笑顔を浮かべる、父まりさもその様子を見て微笑んだ。 お歌の効果は赤ありすにも平等に現れていた。涙が止まり心の中が少しだけ暖かくなる、まぶたがゆっくりと落ち始めた。 何かを叩いた鈍い音が響いた。 「ゆぴぃ!」 眠りに落ちようとしていた赤ありすが飛び起きる、父まりさが咥えた木の枝で赤ありすを叩いたのだ。 「お、おちょうしゃんにゃに!」 「れいぱーのくそがきがすーやすーやなんてぜいたくだよ、ゆっくりくるしんでね!」 父まりさは長ぱちゅりーの言葉を思い出す。 「むきゅ、それでねあのおちびちゃんをきのえださんでたたくの!」 「ほんとうはめーらめーらでいじめるのもいいんだけど、めーらめーらをつかえるゆっくりはいないし……」 「おちびちゃんのめのまえでむずかしいことをやって、よーせいのこどもにボロをださせるってもあるけど……」 「むきゅ……それはこのけんじゃのぱちぇがきょうりょっくするわ!」 「おまえがくるしまないとまりさのおちびちゃんがかえってこないんだよ!」 「ゆぴぃ、いちゃいいちゃいわ!」 そこに子供を寝かしつけた母れいむがやってくる。 「おきゃーしゃんちゃすけちぇ、おちょーしゃんが!」 「まりさ、おちびちゃんはすーやすーやしちゃったよ、だけどしずかにしてね!」 「ごめんなのぜれいむ」 「おきゃーしゃん!」 「れいむもきょりょっくするよ、だからおそとでやろうね!」 「やじゃあ、やめちぇえ!」 父まりさは赤ありすの髪を咥えお家のそとに放り出す。 「ゆびぃ!」 「れいむ、うまくたたくのぜ、そうしないとおちびちゃんがかえってこないのぜ!」 「わかってるよ、あしたからはむれのみんなにもきょうりょっくしてもらうよ!」 「ゆびぃ、やめちぇえいぎぃ!」 森の中に何かを叩く音が響き渡った。 赤ありすは寒いお外で倒れ付していた、体中に鈍い痛みが広がり意識も朦朧としてくる。 目の前ではおうちの扉が父と母によって厳重に閉じられている、隙間も漏らさぬけっかいは赤ありすへの拒絶への表れだ。 「おちょうしゃん、おかーしゃん、どうしちぇどうしちぇありしゅに……」 「うるさいよ、れいぱーのくそがきがおとうさんなんてよばないでね!」 「そうだよ、これはゆっくりするためにひつようなことなんだよ!これは、れいむたちのおちびちゃんを……」 「「とりかえすためなんだよ!!!」」 夜になった群れの森、空には満月が煌々と浮かび、夜とは思えない明るさである。 本来捕食種の活動時間であり、ゆっくりの居ないはずの時間に出歩いている者があった。 それは通常のゆっくりより一回り大きい体を重そうに動かし、ゆっくりと森の中を進んでいる。 頭には2本の角、薄緑色の髪を月明かりに輝かせる、ゆっくりけーねである。 満月の今夜、ゆっくりけーねは「はんじゅう」に変化し様々な「れきし」の知識を有するのである。 そんな能力を持つけーねだが、決して戦闘能力に優れたゆっくりでは無い。 しかし夜の森を歩くけーねの歩みには少しの怯えも含まれて居なかった。 彼女は知っていたのだ、もうこの森には捕食種は居ない事を。 しばらく進んで森の広場まで来ると、けーねは満月を見上げる。 「久しぶりだな……」 その瞳に映るのは空の満月でも、他のゆっくりでも無い。 この森のゆっくりの達の歴史であった。 「あぁ、もこう、らん、みんなも!」 うつろな目で過去の歴史に浸るけーねの顔には、堪えようの無い喜びが浮かんでいた。 楽しい時間は早く過ぎるもので、しばらくすると月に雲がかかる、興を削がれ不満そうな顔になるけーね。 溜息を付いて長のおうちへの道を引き返す。その途中、ゆっくりのおうちの前に通りかかると泣いてけっかいにすがり付く赤ありすが目に入った。 「……すまない、謝って済むものではないが」 そう言って目を伏せるけーね、 「いや、全て私のせいだな……」 そう、今目の前に居る傷付いた赤ありす、全ての原因はこのけーねにあった。 この森のゆっくりの群れは、このけーねとその番のもこうが作ったものであった。 昔居た群れで希少種という事から、差別されたり危険な仕事を押し付けられていた2匹は旅立ちを決意した。 住み慣れた場所を離れ、旅暮らしをしながら新しい住処を探す。その旅はとても辛く危険な物だった。 多くの場所には先住のゆっくりの群れが居たし、旅のゆっくりであり希少種の2匹を快く迎え入れてくれる群れは無かった。 多くの場合で追い出されたし。受け入れてくれる場合もその能力目当てであったり、すっきりーの対象として狙ったり。 ゲスやレイパーの襲撃を受けた事も一度や二度では無かった。 そんな2匹が長い旅の果てに見つけたのがこの森であった。豊富な自然と豊かな水源を持つこの場所はゆっくりの生活に必要な物が全て揃っており。何故か近くに他の群れが居ないという優良なゆっくりプレイスであった。 さっそくこの場所に自分達のおうちを作り始めるけーねともこう。旅の途中で出会い同じような悩みを抱えていた希少種や仲良くなった通常種の仲間達もいつしか現れ、この場所に群れが作られたのはそれから少し経っての事だった。 群れの長にはもこうが就任し、その番であるけーねが群れの参謀としてサポートすることになったこの群れは順調に発展する事になる。 この辺りで一番の大きな木の下に空いていた穴を拡張して、群れの全てが越冬したりいざと言う時に篭城できる「長のお家」として整備したり。 食料を計画的に収集し、何らかのトラブルや梅雨や冬の食糧不足に備えて「保存食」として加工するなど様々な工夫が凝らされた。 群れの掟も整備され、多くの群れが陥るゆん口問題に向けて妊娠を胎生妊娠で行う事もこの時決まった。 この時期がけーねにとっての幸せの絶頂であった。 けーねともこうの番にもおちびちゃんが一匹生まれたし。仲間達も子宝を授かり群れは拡大していく。 群れが大きくなってくると、その噂を聞きつけて群れに加わりたいと言って来るゆっくりが現れ、もこうは寛大に彼らを仲間に加えた。 そんなけーねの幸せを引き裂く事件が起きたのは季節が変わった頃であった。 この場所に群れを作ったけーねともこうだが、2匹はとある重大な見落としをしていた。 何故こんなゆっくりした場所に、ゆっくりが暮らしていなかったかである。 その答えは、ある夜に群れに襲い掛かった。 「うーしね!しね、しね!」 ふらん達捕食種の集団であった。群れを作った彼女達によって、この場所はゆっくりに荒らされていなかったのだ。 元々この辺りに住んでいたれみりゃすら追い出したふらんの群れの攻撃力は凄まじく、群れの被害がいきなり増大する事になる。 長のもこうは外で戦えば数を生かす間も無く殺されるだけであるとして、長のおうちを使って迎え撃つ事を提案。 元々越冬にも使えるようにと大きく作られていたおうちの外にバリケードを作ったり、中に罠を張り巡らせたりと要塞化を行う。 ふらん達の襲撃を警戒して狩りの成果は振るっていなかったが、群れに残っていた全ての食料を運び込み襲撃を待った。 それまで夕方に外に出ているゆっくりを一気に囲んで捕食していたふらん達だが。ゆっくり達がおうちに篭って出てこないとしばらくは警戒するように外を飛び回っていたが、焦れたのか長のおうちへの攻撃を仕掛けてきた。 長のおうちのでの闘いは熾烈なものになった、子ゆっくり達を奥に隠しておうちの入り口と入って直ぐのホールに仕掛けた罠とで迎え撃った群れのゆっくり達だが。 敵にはふらんが10匹は居たのである、罠にかかったところを奇襲して2匹、中で囲んで4匹を討ち取ったが。 4匹を残して罠は尽きてしまい、おうちの中にも進入されあとは完全な実力の戦いとなった。 けーねはそれまでの襲撃とこの戦いで敵のふらんの数を正確に把握していた。残るふらんはおうちの中に居る者だけである。 長のおうちに作られた隠し通路から、子ゆっくりの脱出を声に出さず提案するけーねに、もこうが目で指示を送る。 その場をもこうに任せて他のゆっくりと共に隠し通路を空けて奥に居た子ゆっくり達を外に送り出す。 それを見送って引き返そうとしたけーねが目にしたのは信じられない事態であった。 「むきゅ、ぱちぇはこんなところでしんでいいゆっくりじゃないのよ、ぱちぇがしねばせかいのそんしつよ!」 「ゆ、まりささまはにげるのぜ、あとはおさたちにまかせるのぜ!」 「ゆぅぅ、れいむはもうこんなところにいたくないよぉ、はやくにげるよ!」 「わかるよーここからにげるんだね!」 子ゆっくりを逃がすための抜け道から、我先にと逃げ出す群れのゆっくり達であった。 もちろん子ゆっくりだけで外に出すことは出来ない、奥に居たみょんを1匹先に出していたし。 後からも数匹追わせるつもりであった。しかしこの時ほとんどのゆっくりが逃げ出してしまったのである。 引き止めるけーねの言葉に耳を貸すものは居ない。結局残ったのはけーねともこう、そして2匹と仲の良かったこの群れの初期から居るゆっくり達だけであった。 この事は重大な危機をもたらした、おうちの中に入っているためふらんの飛翔能力は無いもの考えてよいが、それでもなお捕食種は強敵である。 しかし狭い場所であるため攻撃が避けづらく、犠牲は大きくなるが物量でぶつかれば勝利も掴めるはずであった。 ところがそのためにゆっくりが居なくなってしまったのである、残ったゆっくりには希少種のもこうとらんの攻撃力の高いものも居るがそれでも圧倒的に足りなかった。 もこうの元に駈けて戻る。けーねの表情にもこうは何かを察したのか、 「わかったよ、だいじょうぶ。けーねはもこうがまもるよ!」 そう言って体に炎を身に纏いふらんに飛び込んだ、その後ろかららんが尻尾の米粒の発射で援護する。 それに合わせて仲間たちがふらんに飛び掛った。ふらんの攻撃で一匹また一匹と潰されながらも前に行った者の死体を目隠しにしてふらんに木の枝を突き刺す仲間達。 それはまさにぶつかり合いであった、もこうは噛み付いてきたふらんを一匹消し炭に変えたが、そのふらんから出たところで後ろのふらんの「れーばてぃん」に刺された。 らんは米粒を乱しながら突っ込み方耳に噛み付かれながらもその相手に射撃を集中して相打ちとなった。 他の仲間たちは全ゆで1匹のふらんにあたり、皆潰されながらも相手のふらんをいが栗の様な姿に変えた。 おうちの最奥で最後のふらんと対峙するけーね、ふらんの背後では愛しい夫が、大切な友が仲間が死んでいる。 厳しい表情を崩さずに涙を流す、口に咥えた木の枝を向けられたふらんは、仲間の死が堪えていないのかむしろ面白がるような顔をしている。 「う~しね、しね!」 近づいてくるもこうの敵のふらん、敵は1匹こちらも1匹であった。 にじり寄って来るふらん、けーねが覚悟を決め特攻しようとしたとき、けーねの足元から火の玉が飛び出した。 「おかあしゃんは、もこうがまもるよ!」 飛び出したのけーねともこうのおちびちゃん、子もこうであった。 「ふじゃまぼるけーの!」 そう叫び、ふらんの口の中に飛び込む。 「う、しね?う……うがあああああ!」 ふらんの口から火の手が上がった。目が白く濁り、小さな火柱が噴出す。 まるで炎がゆっくり体を嘗め回しているようだ、全身が炎に包まれると一瞬強い光を発し黒焦げの球体が残る。 辺りに焦げたよう臭いが充満した。 湯気とも煙ともつかないものを上げている、ふらんだった物。 けーねはそれに飛びつくと熱さも忘れて中を開いた。 「おちびちゃん、何処だ?何処に居るんだ?」 消し炭の中を必死になって探すが求めている物は見つからない、気が付くと目の前に残るのは黒い灰だけであった。 周囲を見渡す、長のおうちの中はこげた臭い甘い臭い、そして耐え切れないようなゆっくり出来ない臭いでいっぱいだった。 何処を見ても永遠にゆっくりしたゆっくりの死体が転がっている。目を凝らせばそれらは皆けーねの仲間達である。 仲の良かったらんが居た、頭の良かったまりさが居た、子供達に優しいれいむが居た。 そして、そして奥に転がる黒い物は…… 「も、ぼごうー!」 けーねはそれに駆け寄った、愛しいもこうだと思われるそれにすーりすーりをするが、先ほどのものと同じように粉々の炭に成ってしまう。 「ゆ、ゆがああああ!」 けーねの絶叫が長のおうちの中に響き渡った。 その後の事は思い出したくも無い。暗いおうちの中で家族や仲間たちの死骸を集めて埋めていると隠し通路を戻ってくるものが居たのだ。 それは群れのぱちゅりーだった、その顔には見覚えがあるあの時隠し通路から真っ先に逃げたやつである。 「む、むきゅ……けーね、ふらんたちは?」 覗うような目でこちらを見てくるぱちゅりーを無視して埋葬を続けるけーね、皆はおうちの奥にまとめて埋める事にした。 しばらくキョロキョロろしていたが、何かに納得したのか引き返すぱちゅりー。しばらくすると群れの仲間達も戻ってきた。 その後で群れのゆっくり達が話していたのは信じられない事であった。 「むきゅきゅ、わたしたちはふらんにかったのよ!けんじゃのしょうりよ!」 「むははは、さいっきょうのまりささまにかかればこんなもんなのぜ!」 「れいむたち、ゆっくりしているゆっくりをたべようとするから、こんなことになるんだよ!」 「わかるよー、つよいんだよー!」 何と最初の戦いでも後ろに隠れ、その後は隠し通路で逃げ出したゆっくり達がこれを自分達の勝利だと言い出したのだ。 必死に戦って散っていったゆっくりの埋葬を続けるけーねを手伝おうとするものは居ない。 「むきゃきゃきゃ、これからけんじゃのぱちぇがむれのおさになるわ!」 何がどうなったのかは分からないが、最初に入ってきたぱちゅりーは仲間達の中でゆん望を得たらしく長となっていた。 その様子をけーねは、ただ冷たい目で見ていた。しかし、声を上げようとは思わなかった大切な家族や仲間を失ったけーねの心は凍り付いていたのだから。 この時をもってこの群れはぱちゅりーを長とする群れに変わった。けーねは長ぱちゅりーのおうちとなった、長のおうちの一室を使い何をするでもなく、自分の食料は自分で集め他のゆっくりと関わる事無く暮らしていた。 長ぱちゅりーがそんなけーねに何か言う事は無かった、自分でも分かっていたのかもしれない。しかし困った事があると密かにけーねに知恵を借り、それを自分の知識として群れには発表していた。 元々完成していた群れ、外敵の居ないゆっくりプレイス、この群れは再び発展を始めた。 しかし昔のように新たな掟を作ったり、新しいものを作り出すそんな進歩は起きなかった。 元々あった群れのままゆっくりの数だけ増える、そうしてこの群れは大きくなっていった。 けーねの唯一の心残りは、永遠にゆっくりしてしまった仲間達の子供だったが、彼女達も大きくなるとこの群れに何かゆっくり出来ないものを感じたのか、歯が抜けるように群れから出て行った。 こうして時が流れ、長ぱちゅりーが代替わりし孫の代になる頃には、けーねはかなりの老ゆっくりと成っていた。 けーねの生活は自分のおうちでもある、家族と仲間の墓に祈る事と、簡単な狩りだけになっていた。 そして希少種としてのけーねの力が最も発揮される満月の夜には、その力を使い群れの歴史を読み取って家族や仲間たちに再会するのだ。 月に一度の満月の夜は、けーねにとって失ってしまった者に出会える唯一の日であった。 それは自分ともこう、そして仲間達が作り上げた輝かしい群れの歴史だった。多くの苦労があった、しかしそれを必死で乗り越えたからこそ、今こうして歴史に刻まれているのである。 今の群れは停滞という緩やかな死の中にあった。完成された群れのシステムと居ない外敵、そして問題があったときに頼れる知恵袋の存在は、若いゆっくりを酷く頭の悪いものにしていた。 今の長のぱちゅりーにしてもそうである、その祖母の頃にはある程度の頭の良さがあったが。今では他のゆっくりと変わらない程度である。 このまま行けば長い時間をかけて群れは滅びるかも知れない、しかしそれはけーねの寿命よりも後のことだろう。 あの子ありすの問題がけーねの耳に入ったとき、けーねにはそれが直ぐに「チェンジリング」であると分かった。 低い確率で生まれる両親とは異なる種の赤ゆっくり、チェンジリングは幸運を呼ぶと言われている。 けーねの持つゆっくりの歴史においてもそれは証明されていた。チェンジリングはそれを得た者に幸運を呼び、自身もその幸運によって守られるゆっくりである。 しかし、チェンジリングは両親と異なる外見を持つゆえに、両親に疎外されたり虐待されたりする事の多い子供でもある。 けーねの知る中でも多くのチェンジリングは親に追い出されるなど壮絶なゆん生を送る事となった。 幸運に守られたチェンジリングはそれでも何とか生き延びる事が多いのだが、その幸運の加護をその子を産んだ両親が受けられないのは皮肉と言えるだろう。 その幸運から人間に拾われ、人間を幸せにしているものも多いと言う。 あの赤ありすはこの群れでゆっくりと育てれば、その力をこの群れで発揮しただろう。 しかし、けーねは自分に相談に来た長ぱちゅりーにはそれを教えなかった。 ただチェンジリング――取替え子――に関する知識は与えたのだ。 それは人間の知識であった、人間の歴史においてそう呼ばれた存在がどのような目にあったか、それを教えたのだ。 あのぱちゅりーはけーねの教えた間違った知識を嬉々として親達に教えるだろう。そうなれば子供を取り戻すために何が起きるかは自明の理である。 そしてその結果は今目の前に居るのである。 けーねはゆっくりのチェンジリングに関する負の面も知っていた。幸運を呼ぶ彼女達だが、無下に扱った者や群れに不幸を呼ぶ例があるのだ。 いくら歴史を知っているからとはいえ、そんな物に縋るのは愚かしいと思う、何もしていないあのありすを陥れた自分は間違いなくゲスゆっくりなのだろう。 しかし長い時間をかけてけーねの中にはこの群れのゆっくりへの悪意が育っていたのだ。 何もしないで惰眠をむさぼり、さもその繁栄を自分達の手柄であるかのようにゆっくりしているこの群れのゆっくり達。 違う、この群れは私達の作った群れだ、決してお前達のものでは無い。 もし自分の力がとても大きければ、この群れの歴史を消し去ってしまったと思う。しかし自分にそんな力は無いのだ。 老いたけーねに出来るのは悪意の種を蒔くだけである、その種は育つのだろうか。 今も赤ありすがおうちの扉にすがり付いて泣き声を上げている、中に居る親から怒鳴られた様だ。 「すまないな……これも取り返すためなんだ」 「畜生っ!」 血の滲むジーパンを押さえ込み思わず叫んでしまった。追っていたものに気を取られていたとは言えまさかこんな所で転んでしまうとは。 飛び出していた木の根に足を引っ掛け坂を転がり落ち飛び出していた鋭い枝を刺してしまったのだ。 上を見るが既にアレは居ない、逃がしてしまったか。近道しようとこの道を通ったとき偶々森の中に飛んで行ったゆっくり、銀髪に変わった翼のゆっくりだった、まず間違いなく希少種のゆっくりだろう、場合によっては2桁の福沢諭吉で取引されるそれに引き寄せられるかのように森に入ったのが失敗だった、意外と早く飛ぶそれに対して慣れない森の中では追いつく事が出来ず結局かなり森の奥まで入ってしまった。 その結果は既に見えなくなったあいつと、この足の傷であるとてもじゃ無いがやってられない。 「野郎、捕まえてペットショップに叩き売ってやろうと思ったのにつつっ!」 足を押さえて立ち上がる、何とか歩ける。 「ゆゆ~ん、ちょうちょさんまつのぜ!まりさのおちびちゃんはちょうちょさんがすきなのぜ!」 前方の茂みの奥から癇に障る声がする。これはゆっくりまりさか?ゆっくりで失敗した所にである、畜生あいつを捕まえて潰してやろうか。 「つかまえたのぜ!まりさはおちびちゃんのまつおうちにかえるのぜ!」 ん、今聞き捨て為らない事を言ったぞ、お家……この辺りには野生のゆっくりが住んでいるのか……もしかしてさっきの希少種もこの辺りに住んでいるのでは。 痛む足でもゆっくりなら後を追うのは難しくない、後を着けると確かにそれはあった――野生のゆっくりの群れである。 早速希少種を探そうかと思うが、この足では飛ばれたら逃げられてしまう、ここは我慢してしっかり準備をしなくては。 何群れの位置は確認済みだ、この場所にあの希少種が居れば捕まえるのは簡単だろう、もし居なければ……あの群れにこのイライラを解消させて貰おう。 「ゆ!にんげんさんなのぜ、ここはまりさたちのゆっくりプレイスなのぜ、さっさとでていくのぜ!」 翌日傷の手当てをして装備を整えあの群れに訪れると、早速1匹のまりさに見つかってしまった。 町に居る野良と違い人間を恐れていないのか、こちらに対して高圧的な態度に出てぷくーをしている。 面白い、最近町では味わえない反応である、町の野良はこういう場合は大体逃げてしまうからな。 「きこえないのかぜにんげんさん!みみさんがないのかぜ、おぉあわれあわれ「ゆが!」 うん、どうも随分長い事人間に会って居ないゆっくりの様だ、感動して撃ってしまった。 「ゆがぁいだいのぜ!なんなのぜこれはあんよがうごかないのぜ!いぎゃ!」 指に力を入れると金属を引き抜くような音がする、おぉちゃんと致命傷は避けているし動けなくしている。 意外と冷静だったな自分、3本の釘がまりさの顎の部分と体の左右を地面に縫いとめている。 良かったまりさの態度に当初の目的を忘れるところだった。 「ゆぎぃ、えだざんぬげるのぜ、まりさをはなすのぜ!」 「まりさぁちょっと聞きたい事があるんだけどなぁ!」 「ぬけるのぜぇ、ゆぎぃ!」 話を聞かないまりさの帽子に1本打ち込んでやる。 「まりさ……聞きたい事が有るんだけど」 「は、はひぃなんですか!?」 手に持った物をふらふらさせながら聞いてやる、ちなみにこいつは釘打ち機だ本当はこうやって使ってはいけない。 「この群れに変わったゆっくりは居ないか?銀色で羽が生えたやつなんだけど……?」 「れ、れみりゃはいません!」 「れみりやじゃねーよ!」 もう一方の手に持ったを動かしてやる、金属の回転音が響いた。 「ゆひぃいしりません、しりません!ほんどうにしらないんです!」 回転するドリルの先端を額に当ててやると騒ぎ出した。知らないのか……いやこいつが馬鹿という可能性もある。 「ゆぅ、うるさいよまりさ。ゆぅ、なんでにんげんさんがいるのぉ!」 うん、次の証言者が来た……まりさ、お前は用済みだ。 「ゆ、それをちかづけ、ゆぎゃあああああああ!」 「ゆぴゆぴゆぴゆぴゆぴゆぴ……」 ドリルでまりさの顔面を掘ってやる、表面を掘るつもりだったが最初に力を入れすぎたのか中枢餡にいったのか変な事を言いながら痙攣してる。 「ゆ、ゆわぁ!」 ん、れいむがおそろしーしーを流しながら硬直している。まぁまりさのを見せたしな。 「れいむ……次はお前だからな!」 そう言って釘打ち機をれいむに向けた。 「ちっ、こいつもダメか!」 目の前でボロボロになったちぇんを蹴り飛ばし、悪態をつくあの後10匹ほど同じような目にあわせて話を聞いてみたが誰もあの希少種について知って居ない。 これは……間違えたか。このまま時間が経てばたとえこの群れに居たとしても逃げてしまうかも知れない。 「まりさはおちびちゃんをまもるよ、ぷくーーー!!!」 あー、だいぶゆっくりを殺したんだが、何かこの群れの連中は逃げるって事を知らない。今も1匹のまりさが巣の前で膨らんでいる。 面倒だしムカつくのでさっさと絞めたいがあの希少種を諦めるわけにはいかない、しかしゆっくりの処刑で活躍したドリルはさっきのちぇんのチョコレートで少し切れ味が下がっている。 「にんげんさん、さっさとでていってね!」 「ゆぎっゆぎっゆぎぃ!」 とりあえず動けないように撃っておいてと。 「銀色で羽が「おとうさんはまりさがまもるよ!」 あ、いきなり奥から子まりさが飛び出してきた、 「おちびちゃんさがっているのぜ!」「まりさはおとなだよ、おとうびぃ!!!」 子ゆっくりは知らないだろう、叩く事に定評のあるバールでとりあえず潰しておく。 「お、おぢびじゃああああん!!!」 最近何処の秘密結社だか知らないがバールの様なものなどといって類似品が出回っているが、やはり基本は押さえておきたい。 「お、おねえちゃーん!ぷっぷくー!びぃ……」 あ、奥から子まりさが出てきたから思わず撃ったら何か良いところに当たったのか沈黙してしまった。 「ばりざのおぢぃびじゃんがぁ!」 「れいむはにげるよ、まりさはじかんをかせいでね!」 今度は成体のれいむか、出てきたと思ったら逃げるとか……でいぶってやつか。 「れいむはおちぶぅ!」 「おきゃーしゃーん!」 バールで叩いたら中から何か子れいむが出てきた、煩いが無視する。 「ゆひ、ゆひ、まりざのかぞぐがぁ!」 さてと本番、いやそうだな聞き方を変えてみるか。 「まりさ、この群れで一番物知り……いやこの群れの賢者(笑)は誰だい?」 「まりざの、ゆひぃ、ぱ、ぱじゅりーです!おざのぱじゅりーがけんじゃです!」 「長のぱちゅりーか……で何処に住んでるの?」 「あぞごです、あのおおぎなおざのいえにずんでいまず!」 「そうか、ありがとう!」 「ゆぎぃぃいいい、いじゃいやめで、やめでぐだざい、いじゃい!」 長か盲点だった、最初にそいつに聞けばよかったんだ。このまりさには感謝の気持ちとして小型の鋸で胴体を横に切ってやった。上半分がきれいに後ろに落ちたのは感動だ。 ん、まりさが半分になって巣の中が見えて気が付く。奥で子ありすが倒れてるぞ、こいつらの娘か……いや種類が違うし、れいぱーの子供でも制裁されてたのだろう。長と言う情報源があるので放っておく。 「むきゅうこれはなんなの、なにそこのじじいは!」 まぁぱちゅりーだから逃げてはいないと思ったが、言われたとおり大きな木の前に行くと待ち構えているとは思わなかった。 どうやら群れのゆっくりは長の下に逃げたようだ。 とりあえず、あの希少種はこの場には居ないようだし、話せる口はあの賢者(笑)だけでも良いか。 「おさ、あのじじいだよあのじじいがまりさをころしたんだよ!」 「むきゅう、なんですって!ゆっくりしていないじじいね!さっさとはいじょしなさい!」 「ゆっゆおゆぎぃ!」「ゆが!」「ゆぎぃ!」「ゆぶ!」 「むぎぃぃいだいわぁ!」 釘を乱射しておく、あれぱちゅりーにも当たっちゃったか、まぁ右の頬に刺さっただけだ。死にはしないだろう。 釘が体に刺さり、逃げようとするとさらに刺さって呻いているゆっくり達を避けてぱちゅりーに近づき掴み上げる。 汚ねぇ、クリームが手についたぞ。 「おい!お前がこの群れの長だな!」 「むきゅ、そうよぱちぇがこのむれのいだいなおさよ!ふとうなあつかい、ひぃ!」 何か生意気なので鋸で撫でてやる。道具を背に仕舞いぱちゅりーの頬に刺さった釘を撫でながら優しく聞いてやる。 「なぁぱちゅりー、実は珍しいゆっくりを探してるんだけど……銀色で羽が生えてるんだ、知らないか?」 「むきゅしらな……ゆきぃ、え、と、その、むきゅうそうよ!しってるわ、けーねよ!ひぃおうちのなかにいるわぁ!」 んー、けーね?あれって空飛んだっけ? 何か別のやつが出てきたっぽいがあれも希少種だ、ラッキーと言えるだろう。いやしかしゆっくりの証言だ命乞いの嘘って事を考えないと。 足元で呻いているまりさを足で蹴り起こして聞いてやる。 「おいまりさ、おまえけーねって知ってるか?この群れに居るんだろうな?」 「ゆぎ、けーね……しらないのぜ!そんなゆっくりこのむれにいないのぜ!」 「話が違うじゃねぇか!」 「む、むぎゅううう!むぎ、ぎ、ぎ、ぎ!」 怒りから手に持っていたぱちゅりーを地面に叩きつけ、釘を打ち込んでしまう。 「ちぃ、時間を無駄にした!せめてストレス解消くらいはさせろよ!」 「あの希少種を売ってこの間の馬の負けを取り返そうと思ったのによぉ!」 まったく怪我を押して暑い中時間までかけて収穫なしである。せめて虐待でストレスを発散しておこう、唇を舐め周りを見回す、ゆっくり達の恐怖の視線が気持ちよかった。 あの後30分ほどでストレス解消は終わった。ここに居なかったやつも大半は餡子脳で、こちらにつっかっかって来たので色々と試させてもらった。 とりあえずあの群れのゆっくりほぼ殺したと言っても良いだろう、楽しみに使われた工具の手入れと空の透明な箱が心残りだが気分は爽快だ。 それと全て終わった後、長のお家と呼ばれる大きな木の下の穴を覘いて見ると、大きなゆっくりが白くなって死んでいた。 恐らく老衰だろう、体の大きさからしてかなり高齢だったのかもしれない、なんと驚く事にそのゆっくりがゆっくりけーねであった。 つまりあの長とやらは正しい事を言っていたのだ、悪い事をした、それならもっとじっくり殺してやったのに。 とりあえずバールで殴っておいたが、あのけーねが笑顔で死んでいたのは妙に気にかかった。 終わり 公民あき 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございました。 今回のネタは「チェンジリング」です、これを話に使ってみたくてウィキペディアで取替え子について調べたら…… 人間の方が餡子脳だった時代もあるようです。 あと台詞の間に入れていた改行を無しにしてみました、今までのとどちらが読みやすいでしょうか? こちらの方が読みやすいようでしたらこれからはこっちにして見ます。 過去作品 http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/2942.html 挿絵:車田あき
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/78.html
ゆっくりしないでね!3 テストようやく終わりました;w; 駄文でよければ見てください。;w; 男は唖然としてた。あのゆっくり一家全員に地獄をみせるつもりだった。しかし地獄を見せる前にれいむと実ゆっくりは逃げてしまった。 自分の家は木々が生い茂る山に接しており、あのゆっくりは恐らくこの山に逃げただろう。 木々の生い茂る場所に逃げたゆっくりを探すことはとても大変だ。 すぐにカツオ(犬)を使い追跡しようと考えた たまらなく悔しかった。ゆっくりごときに踊らされたことが。自分のエゴをゆっくりごときに通せなかったことが。 あの逃げれたゆっくり一家はこれからどこかでゆっくりし、無駄な生を謳歌すると思うとくやしさで気が触れそうだった。 足をみるとまりさが脛のあたりを必死に残った歯で噛みついていた。 かなり痛い。噛まれた部分は見えないが血が滲んでいるだろう 「糞饅頭・・・・・お前には・・・・生きてきたことを後悔させてやるからな・・絶対に」 男は忌々しそうに呟くと噛みつかれながら部屋の隅においてある蠅叩きを手に取る そしてそれを全力で振るう パァン!!! 「ゆびゃあ!!!!」 まりさはゆん生の中で一度も感じたことのない異質な痛みにたまらず悲鳴を上げる その拍子に男の脛から口を放してしまう 「ゆびゃあああああああああ!!!いだいいいいいいいいいいいいいい!!!」 まりさは男の周りでのたうち回っていた。まりさの肌は脂汗を分泌し始め、徐々にとヌメりを帯びてくる。 ゆっくりの肌は人間の肌よりも痛みに対して敏感だという報告もある。 激しく痛がるまりさを見ても一切の慈悲を見せずに、男は何度も蠅叩きでまりさを叩く。 パァン!!「ゆびゃあ!!!」パァン!!「いじゃい!!!」パァン!!「やめじぇ!!!」パァン!!「ぐぎゅ!!?」 まりさの肌に蠅叩きの網目が無数に付き、全身が赤く腫れあがるころにはまりさ餡子をブクブクと吐き出しながら痙攣していた。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ「パァン!!」ゆ゛っ!!?」 痙攣していてもなお叩く男。その手は止まらない。まりさの反応はだんだんと小さくなってゆく。 日が高く昇りかけた頃になり、叩くだけ叩いて疲れたのか男は手を止める。 「ハァ・・ハァ・・・糞・・肩と腕がいてえ・・・わかってると思うんだ・・・」 ちらりとまりさをみると、ヌメりきった全身に網目模様が付き餡子の色が滲んでいる。所々小さくではあるがまりさの肌は破け液状餡子が流れ痛々しい。 痙攣し、気絶してるまりさを見てめんどくさそうな顔をした後 男は小麦粉を水で溶き、それをハケでまりさの全身を塗りたくり、傷の補修をする。 「このまま死んだら楽だからな。お前らはもっと生き地獄を味わうべきだ ・・・・・・・・わかってると思うんだ(ボソッ)」 満身創痍のまりさを先ほどまで入れていた透明のケースに放り投げるように入れ、蓋を閉める。 「くそ・・・あの逃げた赤饅頭を追わないとゆっくりしちまう・・・・」 そう、男はまりさを叩くことに夢中になりすぎてれいむを追うことを忘れてしまった。そのことを後悔する男。 「クソッ!・・・・・・明日は仕事なかったら今からでも探しに行けるんだが・・・・・・・・」 男は明日から10日ほど連続で仕事をする予定になっている。仕事内容は農家の土地に出没するゆっくり駆除などである。 れいむを追って地獄を見せたいところだが明日の仕事を休むわけにはいかない。 それに農家のゆっくり駆除はそれなりに肉体労働であるため明日に疲れを残すわけにはいかないと考えていた。 「くっそ・・・絶対見つけ出して地獄を見せてやるからな・・・」 れいむは運がよかった。逃げている間に捕食者やゆっくりに仇なす動物などに出くわさなかったのである。 さらに幸運なことに倒れるまで逃げ続けた結果、その付近の群れの一員に倒れているところを発見され群れによって保護されていた。 れいむが男のところから逃げ出してから丁度3日。 れいむは保護された先で、夢を見ていた。 れいむの寝ている場所には藁や羽毛が敷き詰められており、とても気持ちよさそうであったがれいむはひどくうなされている。 夢の中、れいむは朽ちた木の洞に作ったおうちの中で、子ゆっくりに成りかけの我が子と最愛の夫であるまりさを探す。 「ゆぅ・・・れいむのかわいいおちびちゃん・・・ゆっくりしていってね・・・どこにいるかおしえてね」 れいむは意識していないが、現実世界で無いそこは雑音が一切入ってこない、まさに無音の世界であった。 「ゆぅ・・どこにいるの!おかーさん怒るよ?ゆっくりしないで出てきてね」 何の返事も返ってこない事にれいむの表情は焦燥の色がでてくる。 「ゆぅ・・・スーー(息を吸う音) ゆっくりしていってね!!!!」 全力でゆっくりしていってねを言う。しかし返事はどこからも聞こえない。 れいむの顔は泣きそうであった。 洞の中を探すのはやめて外へ出ようとした時、洞の中から何やら気配を感じた。振り返ると子れいむ2匹と子まりさ2匹が洞の中で座っていた 「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」」」」 元気よくゆっくりしていってねをする子ゆっくり達 「ゆっ!ゆっくりしていってね!!どこにってたのおちびちゃん?あまり心配させないでね!ぷんぷん!!」 子ゆっくりたちはそう言う母れいむの顔を見ると、笑顔でれいむの側までやってきてす〜りす〜りした。 「おきゃーさんだーいしゅきー」「ゆっゆ〜♪」「おきゃーしゃんのほっぺゆっくちゆっくち」「しゅりしゅり〜」 子ゆっくりたちは一斉に甘えだす。れいむは「ゆっ くすぐったいよおちびちゃん♪すーりすーり」 れいむの顔は先ほどと違ってとても幸せそうな顔をしている。 「とってもゆっくりできるおちびちゃんたちだね!ゆっくりし「「「「ゆぎゃあああああああああああああああ あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」ゆゆ!!!びっくりしたよ!!」 子ゆっくりたちは一斉に苦しみ始めた。餡子を吐き出し、その丸い身体をグネグネと捩りながら苦しみ出す。 「「いじゃいよ゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ぎゃあ゙あ゙じゃあ゙あ゙あ゙あ゙ん゙!!!たじゅげじぇええ」」 子ゆっくり達の身体が分泌された脂汗にぬらぬらとてかり、髪の毛が一斉に抜け始め、まむまむに相当する場所が黒く炭化し始めてきた。 「おちびちゃんだぢどぼじだの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!?まりざあ!!?まりざあ!助けてよ!!おちびちゃんたちが!!」 悲鳴を上げた後れいむは最愛の夫であるまりさに助けを求めるがまりさはどこにも現れない。 子ゆっくりたちは全身が薄く焦げ、変わり果てた姿となり、プルプルと震えているだけの丸い物体となっている。 「まりざああああ!!!おちびちゃんたぢがああああああああああ!!!!ゆっ!!」 れいむは洞に差し込む光が急に少なくなったことに驚き、洞の内側から外をみるとそこには 笑う人間さんと・・・見るからに強そうな犬さんが・・そして生気の抜け、目の焦点が合っていない最愛のまりさが・・・洞の前に差し込む光をさえぎる形で立っていた。 絶望感がれいむを襲う。 「おちびちゃんにげてえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」 れいむは夢から覚めた。全身に寝汗がびっしょりとついていた。未だ気分が悪い。 仰向けのままあたりを見回す。どうやら土に掘ってある洞の中らしい。ゆっくりにしては大きい洞でとても住みやすそうであった。 「気づいたのねれいむ。外傷らしいところは無さそうだし、ただの疲労でしょう。安心していいわよ、むきゅ。」 洞の奥から発せられた声。仰向けに寝かされていた身体をグネグネと捩りながら起こし声の主を探す。 そこにはぱちゅりーが居た。れいむよりも二回りほど大きい。おそらく長生きした個体なのであろう。 そして地面を見てみるとれいむの下にはおふとんさんがひいてあった。 それはれいむの尋常ではない量の寝汗により湿り気を帯び縮みきっている。 「ゆぅ・・ここは・・」 「ここはドスが率いる群れの巣の一つよ。あなたは群れの近くで倒れてたのを発見されてここまでもってきたのよ、むきゅ。」 「ゆぅ・・・介抱してくれてどうもありがとうね・・・」 「どういたしまして。むきゅん。でもお礼ならドスと運んできてくれたゆっくりに言ってね、むきゅん。」 れいむは何かを思い出したようにハッする仕草をしたあと、周りをキョロキョロと見始めた。 「ねえぱちゅりー。おちびちゃんたち見なかった?」 「あの飾りのない子たちの事ね?あの子たちなら今は群れのれいむが世話をしてるわ。安心してね。今連れてくるわね。むきゅん。 待っている間にこれ食べておいてね。子持ちなんだから遠慮しないでね、むきゅん。」 そういうとぱちゅりーはバインバインと跳ねながら洞の外へいってしまった。 ぱちゅりーの子持ちという言葉にはっとするれいむ。上を向いてみると茎があり、それにはたった一つ、実ゆっくり(れいむ種)が付いていた。 れいむは他の実ゆっくりが人間さんにゆっくり出来ないことをされて潰れたのを「ゆ゙ぅ゙」と言って思い出す。 寝ている間あまり食べてなかったせいで実ゆっくりは頬がコケて、かなり痩せ細っていた。 その表情は実ゆっくり特優のうっすら笑顔を浮かべている寝顔ではなく、何かに苦しんでいるようなそんな表情であった。 「ゆゔ?!おちびちゃん!!ゆっくりしていってね!?今ごはんむーしゃむーしゃするからねっ!」 れいむはぱちゅりーが食べてといった食べ物を急いで口にする。 「むーしゃむーしゃ・・・・・し・・し・・しあわせーーーー!!!?」 長い間食べ物を口にしていない、空腹による美味しかったというだけではない。どれもれいむにとってそれ自体がごちそうであった。 干し野イチゴや干しイチジク、木の実さんに芋虫や虫さんや野菜さん。どれもとてもゆっくりできた。 バクバクバクと普段ならばれいむ一匹ではとても食べ切れない量をすぐに完食してしまった。 「ゆふー とってもおいしかったよ!」 実れいむを見上げてみると先ほどまでの苦しそうな寝顔は無くなり、とても安らかな顔つきになっている。 そしてゆっくりではあるが、目に見える速度でゆっくりと膨らんでゆく。栄養(餡子)行き渡っているのだろう。それを見てれいむはゆっくりできた。 「待たせたわねれいむ」 ぱちゅりーがれいむのところに戻ってきた。その後ろにはれいむが二匹おり、 その二匹は大きな葉っぱを口を使って担架のようにし、子ゆっくり(作者には判別不能であるがその内訳はれいむ種1まりさ種1)二匹を運んできた。 二匹の子ゆっくりは、未だ寝たきりであり、黒く炭化したまむまむと髪の毛の状態(ハゲ)はそのままであった。 しかし、全身焼けただれ、黒っぽくなっていた肌は少しだがゆっくり本来の肌色を取り戻していた。 「ゆうっ!おちびちゃんたち!!ゆっくりしていってね!!!」 といい、れいむは二匹の子ゆっくりにすーりすーりをする。 とするとどうだろう。子ゆっくりたちの肌はまだカサついてはいるが、元のフニっとし、すべすべな肌を若干ではあるが取り戻していた。 「おきゃーしゃん!ゆっくちしていっちぇにぇ!!まりしゃはもうだいじょうぶだよ!ここの群れはとってもゆっくちしてりゅよ!」 あれだけの怪我を負い、元気が無くしていたまりさが元気を取り戻したことに驚くれいむ。 「れいみゅのごはんも用意してくれてとってもゆっくちできたよ。しあわせ〜だったよ。ゆんゆん。」 「むきゅん 子ゆっくりたちの状態が酷かったから秘伝のお薬をつかったのよ 大分よくなったみたいね。むきゅん。 まだ完治はしてないけど栄養のあるものを食べさせていればもっとよくなるわ。」 「この辺りはドスの管理もあって、とっても食料が豊富で、えいよーのあるものがたくさんあるからゆっくりできるよ」 と運んできたれいむが言う。 母れいむは子ゆっくりたちを見ると若干前よりも大きくなり、そしてぷっくりとしていると感じた。全身火傷で失った肌の艶も少しではあるが出てきている。 完治も夢じゃないかもしれない。えいよーのあるゆっくりしたものを食べさせてもらったんだなあと思う。 どうやらこの群れは見ず知らずのれいむたちにとてもとても手厚い介抱をしてくれたようだとれいむは理解した。 人間にあれだけ酷いことをされ、傷つき落ち込んでいた心に親切にされたという事実が浸みわたりれいむは涙が自然と出てきた。 「ゆゅゅ・・・ありがとおぉぉ・・ほんとにありがとね・・れいむ うれしいよ とってもゆっくりできるよ・・・」 この暖かい気持ち 「ゆっくり」だ。それを感じながられいむは「ゆんゆん」と泣き始めた。 「むきゅん。別に当たり前の事をしただけよ。困った時はお互いさまでしょう?」 照れながら言うぱちゅりー。 そんなぱちゅりーを見ながられいむは子ゆっくりに聞こえないようにそっとある質問をする。 「ねえぱちゅりー・・・髪と・・・その・・まむまむは治るかな・・」 「むきゅう・・・髪は時間がかかるでしょうが治ると思うわ。むきゅん。 でも・・まむまむはむきゅん、正直に言うわ。 治らないわ・・・肌と違って、秘伝のお薬を使っても、まむまむは手の施しようがなかったのよ。ごめんなさいね・・・むきゅう・・」 ぱちゅりーはそう言って少し残念そうにうつむいた。 「そっか・・・ごべんでぇ・・おちびちゃん・・・・・守ってあげられなくて・・・ゆ・・ゆぅ・・・・ゆえええええええん」 またれいむは泣き始めた。もうおちびちゃんたちは胎生出産をすることができなくなってしまった。まだ蔦を使ってでの出産は可能ではあるが、 我が子の不憫さにどうしても涙が出てきてしまう。 「お取り込み中のところちょっといいかな?」 ゆぅゆぅ泣いているところに、の太い声が聞こえた。 どうやら洞の外から発せられた声のようだ。声の主を確認するためにれいむは洞から顔を出す。 そこには洞には到底入りきらないようなサイズのまりさ・・・ドスがいた。3メートル近くはあるだろうか。羆もびっくりなサイズである。 穏やかな顔とは裏腹に身体中には歴戦のものと思われる傷跡が無数にあった。 「ゆぅ!ドスだね れいむたちを助けてくれてありがとね とても感謝してるよ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね、れいむ。ここは人間さんから貸してもらったドスたちのゆっくりぷれいすだよ。群れのみんなから聞いたけど大変な目に遭ったんだってね。 れいむさえよければ子供たちの傷が治るまで居ていいからね。」 れいむの顔がパァっと明るくなる。ここはなんてゆっくりしたところだろうかとれいむは思う。 「ありがとうドス。子どもたちもとってもゆっくりできてるよ。ドスのおかげだよ」 「どういたしましてだよ、れいむ。ところであの子ゆっくりたちの傷って、やったの人間さんでしょ?」 突然今回の悲劇の核心を突く言葉に顔を硬直させるれいむ。 「でい゙ぶだぢばな゙に゙も゙じでな゙い゙の゙に゙・・・・・・い゙ぎな゙り゙人間ざん゙が・・・ゆ゙ぅぅぅ・・・酷い゙ごどを゙・・・ゆぅぅぅぅ・・」 いきなり泣き出し、嗚咽を漏らすれいむ。 「やっぱりそうなんだね。でも安心してね。ここは人間さんとの協定があるからゆっくりできるよ。ゆっくりしていってね!」 この群れは人間と協定を結んでいた。ドスはそれをれいむに説明した。 おおまかな協定内容はこうだ。 1 ゆっくりたちはマツタケやイワタケなど人間にとって高価な山の幸を広範囲にわたって探し、人間がやるように綺麗に収穫し、それを人間に献上する。 または、ゆっくりが狩れない高価な食材の位置を人間に伝えたり、綺麗な石(宝石の類)なども見つけたらそれも献上する。 2 献上する際、ドスは人間たちに群れの繁殖状況等を報告する。 3 人間は献上されている限りゆっくりを殺さない。そして人間は集落で捕まえた虫や出来そこないの野菜や野菜くず、普段食べないような木の実などを適当に渡す。 4 一つの番が子供を産むのは生涯をかけて3匹まで。それを守れないゆっくりは群れによって永遠にゆっくりさせられるか追放である。 ただし何かしらの理由で成ゆっくりになれなかった場合や災害で群れの総数が著しく減った場合にはそれは適用されない。 5 人間側が増えすぎだと判断した場合、群れでそのゆっくりを処理するか、この村の人間の縄張りの外まで連れていくか人間に渡すかのどちらかを選んでもらう。 6 人間と争いは絶対に起こしてはならない。それはこの村の人間に限ったことではない。 7 この辺りの土地は人間さんのものである。よって、ゆっくりは人間さんの慈悲でこの土地に住まわせてもらっているだけであって、 ゆっくりはこの土地がゆっくりのものであるということをいかなる場合においても主張することはできない。 8 条約が守られない場合ゆっくりはこの土地から出ていくか、永遠にゆっくりすることを選んでもらう。 などと、ゆん口調節までさせられているかなり不平等な協定内容ではあったが、守っている限りここのゆっくり達の生活は安寧としたものであった。 そして追加情報は、この付近の人間さんはここ以外の人間さんよりも気性が荒くなく、ゆっくりできるらしい。 そして、冬籠りの際の食糧援助などもしてもらえるらしい。 「ゆう?・・そうなんだ・・じゃあ、ゆっくりドスの気持ちに甘えさせてもらうね」 「ゆ!そうしてね。この群れにはまだまだ余裕があるからゆっくりしていってね。」 そう言い残しドスは自分の巣へ帰って行ってしまった。 「むきゅ れいむは今日から子供達が治るまでここに住めばいいと思うわ。丁度だれも住んでなかったから」 「ゆ!ありがとうぱちゅりー。そうさせてもらうね。」 「それじゃあわたしは自分のおうちにかえるわね。ゆっくりしていってねれいむ。おちびちゃんたち。」 「「「ゆっくりしていってね(ゆっきゅりしていっちぇにぇ)」」」 ぱちゅりーが出て行って、れいむと子ゆっくり二匹になったれいむ一家。 「おきゃーしゃん ゆっくちゆっくち」 子ゆっくりたちが母れいむに甘えてくる。れいむはそれをすりすりで返した。 (れいむたちはこれからゆっくりできる。でも・・でも・・まりさが心配だよ。きっとまだ生きてるよね!れいむ心配だよ。 おちびちゃんたちがもう少し大きくなったら探しに行くよ!だからまりさ・・絶対生きててね!) 頭に生えている実ゆっくりを見つめる。もうすぐ生まれるだろうと本能的にれいむは感じ取った。 「ゆぅ・・れいむのおちびちゃん・・安心してゆっくり生まれてね・・絶対れいむが守ってあげるからね・・・」 れいむはそう心に誓う。 それからのれいむ一家の生活はとてもゆっくりしたものであった。 子ゆっくりたちは成長し、野球ボールサイズからソフトボールサイズとなり、赤ちゃん言葉が抜け、そして肌は昔のように柔らかさとハリを取り戻していた。 子ゆっくりたちは寝た切りの状態から赤ゆっくりと同じくらいの運動量をこなせるくらい回復していた。 頭からはまばらではあるが、うっすらと髪の毛が生え始め、その色の違いによりれいむかまりさかを見分けることができる。 そして新たに生まれた赤ちゃんゆっくり。蔦に成っていた実ゆっくりの最後の生き残りである赤れいむは元気に生まれ、今は帽子のない姉たちと元気に遊んでいる。 その赤れいむはいまや家族のアイドル的存在である。れいむは赤れいむを見るたびにこのおちびちゃんをまりさに見せてあげたいと思うのであった。 「おちびちゃんゆっくりしていってね!」 「おねーちゃんゆっくちゆっくち」 「おちびちゃんたち!ゆっくりしてるね!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり(ち)していってね(にぇ)!」 子供たちは赤ゆっくりと鬼ごっこをしたり、ゆっくりごっこをしたりでとても生き生きとしていた。 「ふわあああああ〜〜〜むにゃむにゃ・・・れーみゅもうちゅかれちゃよ・・・ゆっきゅりおひるねしちゃいよ」 「ゆっ!そうだねおちびちゃん。おねーちゃんたちと一緒にお昼寝しようね!」 そういって昼寝を始める子供達。母れいむはそれを見ながらゆっくりした気分に包まれていた。 今の家族はすべてこの赤れいむが中心に回っていると言っても過言ではない。赤れいむは一家にとってはとっても愛らしく、可愛く、まるで天使のようであった。 それから子供達を起こさないようにそっと巣(仮)を出て、昼寝から覚めた後のおやつとなるものを探しに回る。 まりさのことは心配だ。しかし、今は子供達を自分の力で生きられるようにすることが先だろう。まずはえいよーのあるものをしっかり食べて成長することが第一。 れいむはそれがまりさの願いでもあると考える。 「ゆふふふふ・・おちびちゃんたち喜んでくれるかな・・」 れいむはやわらかい花を口にくわえ巣へ戻る。 巣では子ゆっくり達と赤れいむが仲良く寄り添い、ゆーゆーと言いながら寝ていた。 「ゆっくりしたおちびちゃんたちだね!れいむうれしいよ。」 れいむは子供達が起きないように静かに巣に入ったが、赤れいむはその気配に気づき目が覚めた。 「ゆぅ〜おきゃーしゃん ゆっくちおはよう!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!おちびちゃんたち!おやつもってきたよ!」 「ゆわーい」 「おやつおやつー」 「ゆっくち、ゆっくち」 子ゆっくりは花にかぶりつく。うっすらと甘い味、フローラルな香りがとてもゆっくりさせてくれる 「「むーしゃむーしゃ ゆゆ〜しあわせ〜」」 赤れいむには母れいむが噛みほぐしたものを口うつしで与えてやる。 「ゆー しあわしぇー!」 親ゆっくりも子ゆっくりも赤れいむもそこでの生活は何もかもがゆっくりできた。ずっとここにいたい。ここには「ゆっくり」がある。 だがそんなゆっくりした生活はもう終わる。 なぜなら人間が連日の仕事を終え、一家を探し始めたからである。 「ちっ、この付近にはあの糞饅頭いないっぽいな」 男は忌々しげに舌うちをし、足元に転がっている成体のゆっくりまりさを蹴り飛ばす。 ズン!!「ゆげぇ!!」 蹴られたまりさは10メートルほど先に落下した。 「まりさああああああああ!!!」 「おとおおおしゃああああああん!!」 それを見ていたれいむと子ゆっくりたちは声を上げる。 男はあのまりさの妻であるれいむとその子供達を探しに森まできていた。 その際ゆっくりを見つけては禿げた子ゆっくり二匹を連れたれいむは知らないかと聞きまわった。 知らないと答えたゆっくりはみな適度に重傷を負わされ、まむまむを割かれ、目を潰され、舌を引き抜かれた。男は子供も大人も区別なく平等にそれを行った。 今この男によって新たに捕えられた一家が男の尋問を受けている。 一家がおさんぽ(笑)中に歌を歌いながら歩いていたのを男に発見されたのだ。 一家の構成は親れいむ、親まりさ、子れいむ×3 子まりさ×2であった。 ゆっくり一家は一切拘束は受けていないが、逃げたら犬に食い殺されることを知っている。 なぜなら、この一家の親達は子供だけでも逃がそうとした。その際一番早く逃げようとした子まりさに向かって、ゆっくりでは一生かかっても出せない 速度でカツオが飛びかかり、食い殺したのであった。次にその妹であるれいむを食い殺した。 まだ子供は3匹残ってはいるが、犬による圧力で、一家全員金縛りにかかりそこから動くことができない。 「なあれいむ・・お前は知らないのか?正直に答えてくれたら助けてやるぞ。その苦しみから解放させてやる」 「ゆ・・・ゆゆゆゆゆ・・・しらないよ・・・・ほんとうに知らないよ・・・おちびちゃんだけでも逃がしてほしいよ・・・・」 泣きながらガタガタと震えれいむは男に懇願する。 「そうか知らないのか。ならこんな舌はいらないよね。こんなまむまむはいらないよね。こんな目はいらないよね」 そう言うと男は子れいむを持ち上げる 「ゆっくりやめてね!おちびちゃんを放してね!」 男はそれを無視し、子れいむに手を伸ばす。 恐怖を感じた子れいむは親に助けを求める。必死に。 「おぎゃーしゃーんたすけてえええええええええ「ブスリ」ぴぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!?」 人差し指を子れいむのまむまむに深く突き立てる。子れいむの全身から謎の液体が大量に分泌されぬるぬるぬめぬめしてくる。 「だいじょうぶだって!こんなのすぐ終わるんだから」 突き立てた指をぐりぐりと回し、その穴を広げ、その広がったスペースに中指も入れる。その際子れいむのまむまむは裂けた。 「いぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 指を引き抜き、手をチョキの形にし、両目に指を突き立てる。 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 「やめてええええええええええええええええええええええ!!!!?おちびちゃああああああああああああああああん!!!??しっかりしてえええええ!!!?」 「れいむおねえちゃああああああああああああああん!!!?」 指を抜いても未だ悲鳴を上げ、大きな口をあけている子れいむ。男はその大きく開けられた口に、手を無理やりその口に入りきれない手を突っ込む。 その際、口の端がぶちぶちと音を立てて裂ける。 「ゆぐぐぐっぐぐっぐうぐぐ!!!??」 たまらずさらに悲鳴を上げる子れいむ。男はその悲鳴を無視し、ぬるぬるした舌を全力で掴み一気に引き抜いた。 ブツッ!!! 「!!!!!!!????????????!!!!!!!!?????」 悲鳴は消えた。代わりに物凄い形相をしてしーしーとうんうんを撒き散らしながら、ビッタンビッタンと跳ねまわる子れいむが居た。 子れいむの周りには無理やり手を突っ込まれた事により折れたり抜けたりした歯がいくつも転がっていた。 「おちびちゃああああああああああああああああん!!!?」 今度は子まりさに同じことをしようと手を伸ばした瞬間 「やめてね!!!!!」 先ほど蹴り飛ばした親まりさが叫んだ。 「まりさ達は知らないけど、この森をあの山に向かってずっと行ったところにドスのいる群れがあるよ・・・そこなら誰かそのれいむの居場所知ってるかもしれないよ・・・ まりさ達はしらないよ・・・お願いだよ人間さん・・もう酷いことしないで・・・まりさ達を見逃してほしいよ・・・・・」 まるい身体をクニって曲げている。本人は土下座のつもりだ。 (ふむ・・・どうやらこの一家は何も知らないみたいだな・・・このままこいつらを尋問を続けるのは時間の無駄か。 ドスの群れまで行って適当に捕まえた奴を尋問したほうがいいかもしれないな) 「わかった。尋問はもうやめてやる。俺も忙しいしな。情報を提供してくれた礼だ。楽に死なせてやる・・」 「ゆへ?」 男はまりさのところまで全力で助走をつけ、渾身の力を込めて蹴りあげた。 ドグシャッ!!「ゆべっ」 まりさは鈍い音を立てて、餡子を飛び散らせながら勢いよく木に激突し爆ぜた。 「ゆ・・・・?まりさ・・・?」 「おとうさん・・・?」 「ゆっくり・・・ゆっくり返事してね・・・?」 現状を把握しきれていないゆっくり一家。 「カツオ。食ってもいいぞ」 把握する間もなく死なせてあげようとするのは男の情報をくれたゆっくりに対する僅かな慈悲でもあった。 カツオがその言葉が発せられた途端、爆発するような速度で親れいむとの間を縮め、食らいつき、右側頭部を食い千切る。 「ゆぎゅ!!?」 側頭部の皮を飲み込んだ後、餡子をひたすらガフッガフッと音を立てながら貪るカツオ。 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!まりざあああああああああたずげでええええええええ!!!?」 「おきゃあああああああしゃああああああん!!!?」 「ゆっくりしてええええええ!!!」 恐怖と痛みにより甘みを増した餡子を美味しそうに貪るカツオ。れいむの反応が段々と小さくなり 「ゆゆゆゆ・・・ああああああああああああ・・・ああ・・・お・・・・ち・・・・・・・に・・・・・げ・・・」 餡子を食い漁られまともに言葉を発することができないれいむ。 そのれいむが最後に見たものは、 愛する「おちびちゃん」が一匹残らず脳天から男の足に踏み抜かれ、 目やあにゃる、ゆっくりの身体の所々から命の素である餡子を盛大に噴出し、 そのあまりにも短い生涯を終える光景であった。 次 選択肢 投票 しあわせー! 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夏のお遊びYの巻2 22KB 人間はあれです 方言が苦手な人は閉じた方がベター 駄文なのは勿論。舞台は幻想郷?なら問題ないかなぁ。 形だけはついたかな? オナニーするのも大変やね。SS作家さんは尊敬する。ゆっくりさせてくれるから。 少しでもゆっくりできたなら幸いです。 「はーい! みんなゆっくりお菓子をいっぱい食べてかな?」 「「「「ゆー、もうおなかいっぱいだよ! おにいさん! とってもゆっくりできてるよ!!!!」」」」 全く白々しい。ゆっくりどもが仲間割れする様をニヤニヤしながら見ようとしていたくせに。 「ゆーん、もうぽんぽんしゃんいっぴゃいだよ!」 「むきゅん。いままでのゆんせいのなかでいちばんゆっくりできたきがするわ!」 「ありすはいままさに、とかいはのしんのいみをじっかんしているのね!!」 こいつらもこいつらで、今さっきのことをすでに忘れておるではないか。 まあ、これがゆっくり。いや、これこそがゆっくり。 「げっぷぅー おかしさんをたべすぎちゃったんだぜ! まりさはのどがかわいたから、おみずさんをのみにいくんだぜ!」 「おちょうさん! あちゃしもいくよ!」 「じゃあ、みんなでいこうね! おちびちびちゃんたちも! ぷすぅー!! あらやだれいむったら。」 水分の少ないものを、一気にそれも腹一杯食べたせいで、こいつらは喉が渇いてきたようだ。 あまあまのおかげで完治した体で、水飲み場であろう場所へ一斉に跳ねていく。 「みんな喉が渇いちゃったのかな? お兄さんはこんなことになるだろうと思って、とーってもあまあまなお水さんを作る準備をしてきたんだ。」 そういって今度は『ユッカリン』の袋を取り出した。 「あまあま水を一杯作るよ! だからちょっと待っててね!」 そう言って不法投棄されたであろうコンクリを練る箱にユッカリンを半分入れて、バケツでドブ川の水を注ぐ。 俺も一緒に何往復もして水を張っていく。それにしてもいれたユッカリンの量は尋常ではない。 『ユッカリン』とは、ゆっくりを元にして作られた合成甘味料である。 甘味が貴重であった時代に製造され、重宝されたものだ。駄菓子などの甘味は全てこれによって付けられていた。 しかしながら、その後哺乳類にとっては畸形を産み出す等の問題が発覚し、使用が制限された。 今となっては飼いゆっくりの餌ぐらいにしか用いられていない。 これの特徴としては、とにかく甘い、ただただ甘いのだ。 ゆっくりを万力によって、じっくり1週間締め上げ、殺したものの餡子から生成される。 100gでコーラ1ガロンを作れる程のものだ。しかも、ゆっくりにとっては非常に強い中毒性が見られる。 ゆっくり達は、この水を狂ったように群がることは目に見えている。 ゆっくりたちはもう騒ぐことなく、俺達の作業を見守っている。 俺達のすることは、『間違いなくゆっくりできる』と思い込んだためであろう。 普通なら、『おい! じじいはやくするんだぜ!』っといった言葉が聞こえてくるはずなのに。 気味が悪い、ここまで単純で思い込みの強い生き物は。 だが、これも落とした時の極上のスパイスとなるので有り難いのだが。 「さあ、できたよ! みんなゆっくり飲んでいってね!」 「ありがとうね、おにいさん! ゆっくりいただくよ!」 「おちびちゃんたちはまっててね、おかあさんたちがくちにいれてもってきてあげるから。」 「わかっちゃよ、おきゃあさん! ゆっくりまっちぇるよ!」 「あまあまなおみずさんなんだぜ! はやくみんなでのむんだぜ!」 親ゆっくりともう大きな子ゆっくりらが水の所へ向かっていく。 赤ゆっくり達は運んでくる親ゆっくりを待っている。 1匹の子まりさが、一番最初に口を付ける。 「ゆっ、ゆっ!!! あ、あっ、あんみゃーぃ! ごーく、ごーく!!!! ゆべぇぇぇぇーーー へぶんじょうたいなんだぜえぇぇぇ!!!! もっと、もっと、もっとのむんだぜ!」 子まりさの声を聞き、他のゆっくりらも急いで飲み始める。 「むきゅ、むぎゅうぅぅぅ!!! なんてあまいおみずさんなのぉぉ?」 「わか、わからないよぉぉ! こ、こ、こんなにあばいおみざさんなんでぇぇ!!!」 「これごぞじんのとがいはなあじよおおぉぉーーーー」 「なんなのおぉーーこれ!!! すごく、すごくあんまぁぁーーいいい!!!」 我先にと水のある所へ顔を突っ込み、ガブガブと飲む。 普通の甘い水なら、『これはぜんぶわたしのものよ!』といった争いが見られるが、全く起こらない。 他のことに口を使うことがもったいないことの様に水へ向かう。 それをおかしいと感じ始めた赤ゆっくりらは 「おきゃあさああん! どうじたのぉ? れいみゅにももっちぇきちぇよぉぉーーー」 「どぼじでぼってきてくれないんだじぇーー? まりざものみたいんだぜええぇーー」 と騒ぎ、親ゆっくりに持ってるよう促す。 これも普段なら、『うるさいんだよ! おやがのみおわるのをこどもはだまってまってるんだよ!』と いったことがあるはずだ。それも起こることがない。 赤ゆっくりも痺れを切らしたのか 「ぷんぷん! もっちぇきちぇくれないんだったら、じぶんでいくよ!」 と言い、水へと跳ねだした。 相手を無言で押し合い、ただ『ごーく、ごーく、ごーく』といった声だけが聞こえる。 遅れて赤ゆっくり達が水場にたどり着く頃には、空っぽになっていた。 ゆっくり達は、声ひとつ上げない。まさに『へぶんじょうたい』にあるのだ。 急いで水をもう一度作る。 それに赤ゆっくりが飛びつく。まだ体が受け入れられるゆっくりも同じように、また水に向かう。 「ち、ち、ちちゃあわぜーぇぇぇ!!!! あめ、うめ、あばぁぁああぁいい!!!」 「あみゃっ、あみゃ!! しゅごく、しゅごきゅあまいんだじぇ!!」 赤ゆっくり達は溶けるのも恐れず、水の中に飛び込む。 『ぶはっ、ぶはっ!!! ごーく、ごーく、ごーーーーく!!!!』 溶ける間もなく、水は飲み干された。 ゆっくりらの体は、お菓子を食べる前に2,3倍に膨れ上がった。 粉っぽいものが多かったのと、水を一気に飲んだためであろう。 自分達の身に起こった異変に気づいているものはいない。 「くっ、くっ! ここまでいくともう動けねえよな。」 Yが小さく笑う。 「はーい、はーい! みんなゆっくりできたかな?」 「げぷぅー まりさはゆっくりをまんきつしているんだぜ!」 「ゆぐっー れいみゅはいままでこんにゃにゆっきゅりしちゃこちょなかったよ!」 「あでぃすはとかいはをまんきつできたばぁー げぷっ」 「むぎゅん、げふ あじがとうね! おにいざん。ゆっくりできでるわー」 口々にゆっくりできていることを口にする。 もうパンク寸前の風船と変わりない、水ぶくれゆっくりが完成した。 「じゃあ、お祭りの最後に花火をやるよ! ゆっくり見ていってね!!」 「ゆうぅ。はにゃびしゃんってなんなの? おちょうさん!」 「はなびっていうのは、とってもきれいなきらきらさんなんだぜ! おちびちゃんはこのまえうまれたばかりだからはじめてなんだぜ!」 「しゅごい、しゅごい! はやくみちゃいよ! おにいしゃんおねがいね!」 Yと俺はいくつかの花火に火を点けた。 『パチパチ』という音と共に、火の粉が舞う。 「ゆわあぁー きれいだね! おかあさん!」 「おちびちゃんほんとうにきれいでゆっくりできるね!」 あちこちでゆっくりが花火の綺麗さに、感激の声をあげる。 『ポン ポン ポーン!!!』俺がパラシュート花火を打ち上げる。 ゆっくり達は揃って上を見上げる。 「おにいさん! あれはなーに? ゆっくりできるもの?」 「ああ。とてもゆっくりできるものだよ!」 「ゆっゆっ! あれはまりさのたからものにするよ!」 「わかるよー ちぇんのものなんだよー」 幸い風が吹いていなかったおかげで、ゆっくり達の近くに落ちる。 「へへっ。これはまりさのたからものなんだぜ!」 「ゆーん。れいみゅもほしきゃっちゃよ。ゆぐぅん、ゆぐぅん。」 「やったよー ちぇんのものだよー」 「むぎゅん、ざんねんとれなかったわ。」 取れたものは満面の笑みで、取れたことを自慢する。 それを取れなかったものは恨めしそうに見つめる。 『ずるいよ! わたしにもちょうだいよ!』といった展開を期待するが。 「これはまりさたちかぞくのものだぜ! だけど、そっちのまりさのものでもあるんだぜ!」 「おじしゃんありがちょう! ゆーん、ほんちょにゆっくりしちゃものだね!」 「わかるよー はい、ぱちゅりー!」 「むきゅ? いいのちぇん?」 お互いに譲り合う? あれ? これがゆっくり? 俺の知ってるゆっくりじゃないよ。 早く取り合いしてくれないと、ゆっぐりでぎないよ゛!!! Yは先程の騒ぎを納めた子ゆっくりれいむの側に行く。 「やあ、れいむ! ゆっくりできてるかい?」 「おにいさん! とってもゆっくりできてるよ! おにいさんありがとうね!」 「うん、そうか。それはれいむにとって本当によかったね!」 「ゆん! れいむいままでのゆんせいでいちばんゆっくりできてるよ! ゆっくりってこんなものだったんだね。」 「そうか、そうか。ほんとうによかったね。」 「おにいさんもゆっくりできてる?」 「ゆっくりできてないよ!」 「ゆうぅ? どうして? こんなにみんなゆっくりできてるのに!!!」 「あのお兄さん見てごらん? ゆっくりしている顔にみえるかい?」 Yが俺の方を指差す。 「ゆっ!!!! どういうこと? あのおにいさん、ゆっくりしているかおにみえないよ!!!」 子れいむは疑問の声を上げる。 「お、お、おにいさんも。ゆ、ゆ、ゆっくりしているかおじゃないよ!!!」 「そうだよ! ゆっくりなんかしてねえよ!!!」 「どうして? どうして? ゆっくりしようよ!!! ゆっくりしていってよ!!!」 子れいむは強く哀願する。 「どうしてゆっくりしていないかって? ゆっくりできるわきゃねえだろ、こんなもんで。」 「どうして、どぼじで!!! ゆっくり、ゆっぐりじでよおぉぉ!!! おねがいだよおおぉぉぉーーー!!!」 「じゃあ。れいむ達みんながゆっくりさせてくれるんか?」 「ゆっ! うん! ゆん! れいむたちがおにいさんたちをゆっくりさせてあげりゅよおおぉぉ!!!」 「ほー! 今の言葉、ここにいるゆっくり全部の言葉と思っていいんやな?」 「ゆん!!! みんなきっとそうおもってるよ!!! ゆっくりしていってほしいんだよ!!!」 「くっ、くっくっ。ありがとさん。ゆっくりさせてもらうよっと!!!」 『ズボッ!!!!!!!』 子れいむは驚きの声を上げ、られない。 口には打ち上げ花火が詰め込められていた。 「はははっ、ははっ。『どぼじてごんなごとするのー!』ってか。 にんげんさんはなぁ、『ゆっくりがゆっくりしてる』所なんか見ても、いらっとくるだけなんだよ!! さあ! 火踊りでも見せて俺らをゆっくりさせてくれや。」 『ズボッ!! スボオォォォ!!!』 子れいむの両目に互い違いに連発式花火が刺さる。 『ズボッ! ズボッ! ズボッ、ズボッ!』 子れいむの頭には何本もの、手持ち花火の花が咲いた。 「おーい! みんな! 最後の花火だよ! とってもゆっくりできるから、ゆっくり見ていってね!!!!」 『ゆーん、残念もう終わりなの?』といった会話がされる中、 Yは子れいむ花火をゆっくりの中心に置く。 ゆっくり達は声が出ない。目の前の光景を処理しきれないに違いない。 ポケットからライターを取り出す。 ゆっくりはここでやっと震え始める。 『シュッ! ボアッ!』 「汚い花火だけど、ゆんせい最後の花火。 しっかり、楽しませてね!!」 「「「「どうじて、こんなごとするのおおぉぉぉぉおおおーーーー」」」」 あるゆっくりは叫び、その場で震える。 あるゆっくりはその場から逃げようとする。しかしそれは先程の暴飲暴食で叶わない。 ゆっくり達の体はパンパンに膨らんでしまっている。 はうことさえ困難である。 子れいむの頭の花火に火が着く。 『シャアー』といった音と火花が散る。 その火花が次の花火へと移っていく。 『シュポッ! シュポッ! シュポッ!』 連発花火が飛び出す。 頭の熱さで子れいむはジタバタジタバタする。『ぶー、ぐー』っと唸っている。 暴れる程に火の玉がゆっくり達を見境無く襲う。 「ゆべっ!!! あづい、あづいいいいぃ!! おどうしゃん、まりしゃいごけないびょおぉう!!!」 「へっ! のろまなこどもはゆっくりやけしぬんだぜ!! まりさはゆっくりしないでにげるんだ、ぜ? どぼじで、どうじで、まりさのあじさんぴゅんぴょんでぎないのぉぉーーー」 「れいむは、でいぶはもっとゆっくりしたいんだよ!! まぬけなゆっくりはしんでいってね!! ずーり、ずり。ゆぎょっっ!!!」 『ドーン!!!! ドーン!!! ドン!!!』 打ち上げ花火にも火が着いた。大きな火の玉がゆっくり目掛け、飛ぶ。 「むぎゅううぅ。ぱ、ぱちぇのおがおがあづいいいいぃ!!! ちぇん? ぢぇーーーーーん!!!」 「わかるよー ぱちぇはゆっくりしぬんだね!! ちぇんはにげるよー ずーり、ずr。ゆべぇぇぇぇぇぇーーーー」 俺とSも花火大会に参加する。 俺は手始めに子まりさを中心に、頭にドラゴン花火をねじ込んでいく。 「ずーり、ずり。ま、まりしゃのおぼうじかえぜぇぇーーー。 ぶびゅっ!!!」 「にげりゅんだじぇ! まだまだゆっくりしちゃいんだじぇ!!! ゆぎゃっ!!!」 「おがあさぁーん!!! おいでかないでよ゛ーーー ゆぴょっ!!!」 『シャアーッ』と火花が上がる。 「あづい、あじゅい、あじゅいぃぃぃぃーーーー」 「おきゃあしゃん、けして、けじてぇぇ!!!!」 「ひ、ひっ、ひをはやぐけぜぇぇーーー みずてるな!! このくじゅおや!! まりしゃをみずてるなぁ!!!」 「れいむのおちびちゃん!!! おかあさんがいまたすけてあげるよ!!! あつぅ! あじいぃぃぃーーー!!! どぼじでおじびじゃんゆぶれてりゅのおおぉぉぉ!!!」 暴れれば暴れる程、火花が飛び散り、新たな炎を生む。 「ごのぐそちびぃい!!! こっちにぐるなあぁぁぁーーーー でいぶがあじゅいでしょおおぉぉお!!! おやをもやそうとするこどもは、ゆっくりじないでじんでじまえぇえーーー あずいいいいぃーー」 「ま、ま、まりざのおぼうしがああぁーーー もえる、もえじゃぶよおぉ!!! そこのにんげん!!! ゆっくりじないでけせえぇぇぇぇーーーー」 「け、けすんだぜ!! みんなできょうりょくしてひをけすんだぜ!!! おみずさんをくんでくr… ばでさのおぼうじさんもやずなぁーー!!! このじびぃぃぃ!!!」 「まりしゃたちのおたきゃらさんがあぁぁーーー!!! もえ、もえちぇりゅよ゛おぉ!!!」 「このおばか!!! そんなことよりにg… でいぶのがみさんがああぁぁ!!!」 Sは先程のロケット花火を使う。 「お前達、いっつもおそらとんでるみたいーって言うよな。 実際に飛ばしてやるよ、おそらにな。」 この現状を見せられて『あちゃしもー』という子ゆっくりは一切いない。 親は子を置いてなんとか逃げようとし、子ども達は恐怖で身が竦んでいる。 「はやく、はやくにがえるのよおぉぉーーー!!! とかいはなこどもたちならできるでしょおぉぉーーー」 「あ、あ、あ、あ、あ。ありしゅのあんよしゃん、あんよしゃん!! はにぇちぇよーー!!!」 Sはロケット花火を何本も無造作に刺していく。 『ズボッ! ズボッ!!!』 「もうすぐおそらにとべるからな。待ってろよ!」 「いぢゃっ!!! まりしゃちょびちゃ!!! ゆぐぅえ!!! くないんだじぇええええぇぇぇぇーーーー」 何匹かの子ゆっくりはきれいにおそらにむかって飛んでいく。 『ヒュン!! ヒューーーン!!!』 「おじびじゃんが。おちびちゃんがぁ、おそらにいいいいぃーーー」 『パーン!! パーーーーーン!!!』 「ゆぎゃああぁーー!!! おちびじゃあぁーーーーん!!!!」 何匹かの親ゆっくりは、飛ぶ程の力を得られずに、地面を引きずられることに。 『ヒュン!! ヒューーーン!!!』 「いだい、いたいぃぃぃーーーー!!!! あんよさんが、あんよ゛ざんがけずれるううーーー」 『ドン!! ドン』 「おちょうさん!!! いだい、いたい、れいみゅからはなれでえええぇーー!!! つぶれりゅーーー」 「このくずおやぁ!!! どけ、どげええぇぇ!!! まりざのあじがああぁ!!!』 『ガリガリ、ガリッ!!!」 「いだい、あづい、じぬううぅ!!! あだまがあづい、ぐちがあづいいいぃぃ!!!!」 「じね、じねえええぇぇぇ!!! れいぶをごろぞうとするむのうははやくどいてじね、しねぇぇぇ!!!」 「ゆぐぅ、ゆぐっ!! ばりさのあ、あんよざんがぁあああ。なぐなどぅうううぅーー!!!」 『ボムゥ!!!』 「あがっ、あがっ!! ゆべぇぇ!!! ゆっ、ゆっゆ」 「あみゃあみゃさんがふっちぇきたよ!!! おちょうさん!!! おちょうs…」 「ゆべっ!! ゆべっ!!! おじょうざんのながみがぁぁぁあーーー」 「うーん。ゆっくりできる光景やなぁーK!!」 「そうやな。爽快感抜群やな!!」 そういって次の獲物を探す。 「今度はでかいやつが、こう『バーン』と弾けんのがみたいよな?」 「そうか? 俺はもうちょっとあがく様がみたいねんけどな。」 「そんじゃあ、俺はもうこいつ使うわ。」 Sは爆竹の箱を持ってくる。 「お前がやって、うろたえてる様な奴にやっていくわ。」 「了解。」 俺は動けないゆっくり達を更に追い込んでいくために、周囲を打ち上げ花火で囲い、ねずみ花火を大量に投げ込む。 「ゆわーーん!!! い、い、いごけないのに、ひひ、ひがぁぁーーー」 「ぼう、ばんさんやべてぇぇ!!!! ゆべあぁっ!!! いだい、あどぅいいいぃ!!!」 「ごっちごないべぇぇーーー いながものおおおぉぉ!!!」 「ひが、ひが。ひにかごまれでるぅぅ!!!」 もう火を何とか消そうとするものはいなくなった。 動けないまりさは、ただおぼうしが燃えていくのを熱さに耐え、見守ることもできない。 あんよが傷つき、餡子が漏れてくるものは、大量の水により薄くなったためすぐに果ててしまう。 髪の毛は燃え、熱さで『ゆっ、ゆっ、ゆっ』と逝ってしまったものも多い。 最後の足掻きを楽しむため、Sは爆竹に火を点けようとする。 その時。 1匹の子れいむが、1つの儚い希望を与えた。 「ゆっく、ゆっぐ… おでええちゃーーん!!! もでじゃでべぇぇ!! ごわい、こわいみょーーー!!!」 どうすることもできず泣き、しーしーを漏らす。 『ジュワッ!!!』 その姉の頭の火が妹のしーしーによって鎮火される。 「ゆっ、ゆゆゆっ!!! みんなぁあ、しーしーだよ!!! しーしーでひをけずんだよおおぉぉ!!!」 それに気づいた母れいむが叫ぶ。 「しーしー? そうなんだぜ!! しーしーはおみずさんなんだぜ!! ちょっとくさいけどおちびちゃんがまんするんだぜ!!」 「だすよ、だすよ。しーしーだすよ!!! しーしーだしてゆっくりするんだよー!!!」 「わかるよー ちぇんもしーしーだすよーーー」 一斉に燃えている、熱さに苦しんでいる他のゆっくりにしーしーをぶっかけていく。 「ぐざいぃぃぃーーーー やべて!! れいむにしーしーかけないでええぇ!!!」 「ゆぐぅっ!! がまんするんだぜ、れいむ!!! ひさんをけさないとゆっくりできないんだぜ!!!」 「ぱちゅりー! がまんしてほしいんだよー」 「ちぇん!!! くさい、あづくないけど、くっくさいんだわーーー」 これから起こり得ることはわかっている。 一先ず花火に火を点けるのをやめ、見守る。 そこには、当たり前の光景が現れてきた。 「ゆふぅぅ。 おちびちゃんのひはきえたよ!! これでゆっくりできるね!!! ゆゆゆっ? しーしーさんとまっでよーーー どぼじてしーしーとまらないのぉぉーー お、お、お、れいむのこどぼがぁぁぁ、どけちゃうよよよぉぉぉ!!!」 「れいみゅのからだが、からだが、とけちゃぶよ、どけるうううぅぅーーー じね、しね!!! こどもにしーしーかけてごろすようなくじゅおやはじねえええぇーー!!!」 「ぢえええぇえん!! ぱちぇのなかみが、ながびがあぶれでくるぅぅぅぅーーー」 「わがらないびょー!!! ぢぇんのじーじーがとばらないいいぃ゛ーー」 お前ら、さっきどれだけ水飲んだ? 自分の体積以上飲んだよな? そんな奴が小便したらどうなる? すぐには、とまんねええよな。 ゆっくりは水に強いか? お前ら、饅頭だよな? そんな奴らに水、一杯かけたらどうなる? そりゃ溶けるよな。 それなのに何で『同じ方向』ずっと向いてるんだ? 違う方向けば、目の前にいるゆっくりにかからねえよな。 なんでそれが、わかんねえんだ? そりゃあ、お前達がゆっくりだからだな。 「おい!!! おいつらやっぱり、なんだな?」 「そりゃそうやろ。ゆっくりやからな。」 「はっはっはははは!!! ひでえ、これはひどい、ひどすぎるよなぁ、おい!!!」 目の前には 餡子色にクリーム色が混じった水溜りが広がる。 その中に、しーしーをぶっかけていたゆっくりが数匹残っている。 「ゆん! せっかくひをけしてやったおやに、ひどいこというこどもはこうなるんだよ!!! いいきみだよ!!! ゆっくりできていないしょうこだよ!!!」 「わがらないよ、わからないよぉおおーーー どうしてぱちぇがああぁぁーー」 皮が伸びきった体で思い思いのことを口にしている。 それにしても生き残っているゆっくりどもは酷い。 急激に膨張したおかげで皮が伸びきり、縮むのが追いつかない。 しゃべる度に『プヨン』と震える。 大量の水を排泄したため、しーしーの穴がぽっかりと開いたままになっている。 「もう、帰っか?」 俺はSから爆竹の箱を受け取る。 「ありがとな。ほんまにゆっくりできたわ。これもお前らのおかげやな。」 「なにいってぶんだよおおぉぉ!!! れいむたちはゆっくりできでないよおおぉーーー」 「当たり前やろ? ゆっくりさせるつもりはないねんから。」 「ど、ど、どぼじでそんにゃこというんだじぇええぇぇぇーー」 「ゆっくりがゆっくりしてるの見て、ゆっくりできる奴いてると思うんか?」 「ゆ、ゆ、ゆっくりがゆっくじしでなにがわりゅいんだぜえええぇぇぇ!!!!」 「悪いなぁー ほんまに悪い。世界で一番悪い。」 「わからない、わがらなびいいぃぃーー!!!」 「わかってくれんで、結構!!! じゃあほんまにゆっくりしような!!!」 それぞれ爆竹を手に取り、ゆっくりへ向かう。 だらしなく開いたしーしーの穴に爆竹を詰める。 「まずはこのれいむ、君に決めた!!!」 「やめでえええぇーー しーしーのところにへんなものいれないでぇぇぇーーーー」 「何や、思ったより入んな。このガバガバ!!!!」 「れいむ、でいぶ、がばがばじゃないいいいぃ!! へんなこというなああぁぁ」 「え? 見てみろよ!! こんなに入ってんねんぞ、お前!」 「ゆ? ゆ? どのしでへんなものがじーじーのとこりょにぃ゛!!!」 3束程がしーしーの穴に目一杯詰まる。 SとYも同様に詰める。 「ほな、この一番でかい奴。逝こか。」 「いや、いや゛!!! まりさはじにたぐなびいいぃ!!! もっとゆっぐりじたいぃぃぃーーー」 「向こうでしろや。」 『シュボッ!!!! ジジ、ジジ、ジ』 『パン、バン、バババババーーーーン!!!!』 『ゆべっ!!』っといった断末魔もなく、まりさは内側から餡子をぶちまけた。 しーしーの穴の辺りは吹っ飛び、弾けた餡子が体中に穴を開けた。 餡子がへばり付いた皮が残るのみとなった。 続けて爆発音と、ゆっくりが弾ける音が響く。 餡子とクリーム、中身のなくなった皮が辺りに広がるのみ。 全てのゆっくりが『本当にゆっくり』してしまったようだ。 「お前! 顔見てみい。餡子まみれやぞ!!」 「うっさい。お前なんかクリームだらけで、顔射もののAVみたいやぞ。」 「それにしても、甘ったるい匂い。気持ち悪い。おえっ!!!」 バケツでドブ川の水を掛けていく。 花火の残り火で火事にでもなったら、洒落にならない。 「ほんまに気持ちよかったぁー 昔とスケールが違うから爽快感が違うな。」 「ほんまやな。でも途中かなりダレたぞ、お前!」 「しゃーないやろ。でもその分、すっきりできたやろ。」 「それはそうやけど、時間掛かりすぎ。もうラジオ体操始まるやんけ。早く帰んぞ。」 「おい。Tは? あいつどこいってん?」 「おーい、T!! もう帰んぞー。先帰ってまうぞー」 「あれ? でっかいぱちゅりーいてへんやん?」 「おいおい、あいつ持って帰ったんか? 物好きやのお。」 「また帰ってから連絡すりゃいいやろ。もう帰ろうぜ! とりあえず眠い。」 ゴミを持って出口へと向かう。 その時。 「ゆっ、ゆっ。ゆええぇぇーーん。おじびちゃーーん。ごめんね、ごべんねぇーーー」 「ゆっぐっ、ゆっぐっ!! おちびちゃんたちのぶんまでゆっくりするよ。むこうでゆっくじしでね!!」 「えっ? まだいてるやん?」 「全部やったんと違うん?」 最初に子どもを殺した番がそこにいた。 何とか飾りを見つけてきたのであろう、穴を掘り、墓を作っているようだ。 今まであった惨劇に気づくことも、巻き込まれることもなく生き残っていた。 穴を埋め、アイスの棒をその上に刺す。 「ゆぐっ、ゆぐっ、でいぶーーー!! おちびちゃんのぶんもゆっくりずんるんだぜえぇぇーーー」 「わ、わかったよ!!! かなしいけど、おじびちゃんのためだぼんねぇぇ!!!」 涙まみれでお互いを慰め合う。 自然と体が密着していく。 「ゆっ、ゆっ、ゆはぁーー!! な、な、なんだかへんなきぶんになってきたんだぜ!!」 「ゆ、ゆ、ゆっ!! れいむもだよ、まりさぁー!! ゆ、ゆ、ゆゆゆっ!!」 ネチョネチョとした音が聞こえてきた。 こいつら盛ってやがる。しかも今さっき殺された子どもの墓の前で!! 「す、すっきりしたくなったんだぜ!! れいむ!!」 「れいむのまむまむがまりさのぺにぺにをよんでるよぉぉーーー!!!」 「おい、なにやってんねん!! 子どもの墓の前で。」 「ゆ!!! しつれいなにんげんだね!!! これかられいむとすっきりすんだよ!!! ゆっくりしないでどっかにいけ!!!」 「なあ、お前ら。俺らの顔がわからんか?」 「しらないよ!!! はやくどっかにいってよね!!! はずかしいんだから。」 「いや。それよりそこ子どものお墓やろ。そんなとこですっきりしていいんか?」 「ゆぅーん。なにいってるんだぜ!! おかちゃんはとってもゆっくりできるんだぜ!! だからきっとよろこんでくれるんだぜ!!! それにこういうしちゅえーしょんはもえるんだぜ!!!」 「なにいってるのまりさ。このばかぁー。」 『ハア、ハア』という息遣いの中、まりさのぺにぺにがいきり立つ。 「ゆへへっ。くそにんげんはすっきりしたことないから、くぎづけなんだぜ!! かわいそうだからみせてやるんだぜ!!! そなかわりにあまあm…」 れいむはまりさに背を向ける。 「ゆはん、ばかぁー れいむははずかしいよ!!! こんなにみられてこうふんするまりさなんてきらいだよ! でもしかたないね、まりさがいうのなら。はやくあm…」 『グシャ!! グシャ!!』 俺は無言で2匹を踏み潰した。 「ほんまにどうなってるんや? この餡子脳は! 気持ち悪い!!」 「今さっき子ども殺した奴の顔忘れるなんてな。」 「やっぱりシンプルに潰すのが一番気持ちいいな。」 フェンスを乗り越え、単車にキーを挿す。 「ほな、おつかれさん。またな。」 「おう、おつかれ。面白いことあったらまた連絡するわ。」 「さっさと帰って寝るか。」 俺達3人は家路に着いた。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る せっかくTのキャラが立ちまくってるんだから もっとTの活躍が見たかったな -- 2010-08-22 08 01 15 いや、草原の中で横に花火とかしたら残り火とか関係なく草燃えるだろ、水分含んでるゆっくりよりも -- 2010-02-28 01 38 05
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人間はあれです 方言が苦手な人は閉じた方がベター 駄文なのは勿論。舞台は幻想郷?なら問題ないかなぁ。 形だけはついたかな? オナニーするのも大変やね。SS作家さんは尊敬する。ゆっくりさせてくれるから。 少しでもゆっくりできたなら幸いです。 「はーい! みんなゆっくりお菓子をいっぱい食べてかな?」 「「「「ゆー、もうおなかいっぱいだよ! おにいさん! とってもゆっくりできてるよ!!!!」」」」 全く白々しい。ゆっくりどもが仲間割れする様をニヤニヤしながら見ようとしていたくせに。 「ゆーん、もうぽんぽんしゃんいっぴゃいだよ!」 「むきゅん。いままでのゆんせいのなかでいちばんゆっくりできたきがするわ!」 「ありすはいままさに、とかいはのしんのいみをじっかんしているのね!!」 こいつらもこいつらで、今さっきのことをすでに忘れておるではないか。 まあ、これがゆっくり。いや、これこそがゆっくり。 「げっぷぅー おかしさんをたべすぎちゃったんだぜ! まりさはのどがかわいたから、おみずさんをのみにいくんだぜ!」 「おちょうさん! あちゃしもいくよ!」 「じゃあ、みんなでいこうね! おちびちびちゃんたちも! ぷすぅー!! あらやだれいむったら。」 水分の少ないものを、一気にそれも腹一杯食べたせいで、こいつらは喉が渇いてきたようだ。 あまあまのおかげで完治した体で、水飲み場であろう場所へ一斉に跳ねていく。 「みんな喉が渇いちゃったのかな? お兄さんはこんなことになるだろうと思って、とーってもあまあまなお水さんを作る準備をしてきたんだ。」 そういって今度は『ユッカリン』の袋を取り出した。 「あまあま水を一杯作るよ! だからちょっと待っててね!」 そう言って不法投棄されたであろうコンクリを練る箱にユッカリンを半分入れて、バケツでドブ川の水を注ぐ。 俺も一緒に何往復もして水を張っていく。それにしてもいれたユッカリンの量は尋常ではない。 『ユッカリン』とは、ゆっくりを元にして作られた合成甘味料である。 甘味が貴重であった時代に製造され、重宝されたものだ。駄菓子などの甘味は全てこれによって付けられていた。 しかしながら、その後哺乳類にとっては畸形を産み出す等の問題が発覚し、使用が制限された。 今となっては飼いゆっくりの餌ぐらいにしか用いられていない。 これの特徴としては、とにかく甘い、ただただ甘いのだ。 ゆっくりを万力によって、じっくり1週間締め上げ、殺したものの餡子から生成される。 100gでコーラ1ガロンを作れる程のものだ。しかも、ゆっくりにとっては非常に強い中毒性が見られる。 ゆっくり達は、この水を狂ったように群がることは目に見えている。 ゆっくりたちはもう騒ぐことなく、俺達の作業を見守っている。 俺達のすることは、『間違いなくゆっくりできる』と思い込んだためであろう。 普通なら、『おい! じじいはやくするんだぜ!』っといった言葉が聞こえてくるはずなのに。 気味が悪い、ここまで単純で思い込みの強い生き物は。 だが、これも落とした時の極上のスパイスとなるので有り難いのだが。 「さあ、できたよ! みんなゆっくり飲んでいってね!」 「ありがとうね、おにいさん! ゆっくりいただくよ!」 「おちびちゃんたちはまっててね、おかあさんたちがくちにいれてもってきてあげるから。」 「わかっちゃよ、おきゃあさん! ゆっくりまっちぇるよ!」 「あまあまなおみずさんなんだぜ! はやくみんなでのむんだぜ!」 親ゆっくりともう大きな子ゆっくりらが水の所へ向かっていく。 赤ゆっくり達は運んでくる親ゆっくりを待っている。 1匹の子まりさが、一番最初に口を付ける。 「ゆっ、ゆっ!!! あ、あっ、あんみゃーぃ! ごーく、ごーく!!!! ゆべぇぇぇぇーーー へぶんじょうたいなんだぜえぇぇぇ!!!! もっと、もっと、もっとのむんだぜ!」 子まりさの声を聞き、他のゆっくりらも急いで飲み始める。 「むきゅ、むぎゅうぅぅぅ!!! なんてあまいおみずさんなのぉぉ?」 「わか、わからないよぉぉ! こ、こ、こんなにあばいおみざさんなんでぇぇ!!!」 「これごぞじんのとがいはなあじよおおぉぉーーーー」 「なんなのおぉーーこれ!!! すごく、すごくあんまぁぁーーいいい!!!」 我先にと水のある所へ顔を突っ込み、ガブガブと飲む。 普通の甘い水なら、『これはぜんぶわたしのものよ!』といった争いが見られるが、全く起こらない。 他のことに口を使うことがもったいないことの様に水へ向かう。 それをおかしいと感じ始めた赤ゆっくりらは 「おきゃあさああん! どうじたのぉ? れいみゅにももっちぇきちぇよぉぉーーー」 「どぼじでぼってきてくれないんだじぇーー? まりざものみたいんだぜええぇーー」 と騒ぎ、親ゆっくりに持ってるよう促す。 これも普段なら、『うるさいんだよ! おやがのみおわるのをこどもはだまってまってるんだよ!』と いったことがあるはずだ。それも起こることがない。 赤ゆっくりも痺れを切らしたのか 「ぷんぷん! もっちぇきちぇくれないんだったら、じぶんでいくよ!」 と言い、水へと跳ねだした。 相手を無言で押し合い、ただ『ごーく、ごーく、ごーく』といった声だけが聞こえる。 遅れて赤ゆっくり達が水場にたどり着く頃には、空っぽになっていた。 ゆっくり達は、声ひとつ上げない。まさに『へぶんじょうたい』にあるのだ。 急いで水をもう一度作る。 それに赤ゆっくりが飛びつく。まだ体が受け入れられるゆっくりも同じように、また水に向かう。 「ち、ち、ちちゃあわぜーぇぇぇ!!!! あめ、うめ、あばぁぁああぁいい!!!」 「あみゃっ、あみゃ!! しゅごく、しゅごきゅあまいんだじぇ!!」 赤ゆっくり達は溶けるのも恐れず、水の中に飛び込む。 『ぶはっ、ぶはっ!!! ごーく、ごーく、ごーーーーく!!!!』 溶ける間もなく、水は飲み干された。 ゆっくりらの体は、お菓子を食べる前に2,3倍に膨れ上がった。 粉っぽいものが多かったのと、水を一気に飲んだためであろう。 自分達の身に起こった異変に気づいているものはいない。 「くっ、くっ! ここまでいくともう動けねえよな。」 Yが小さく笑う。 「はーい、はーい! みんなゆっくりできたかな?」 「げぷぅー まりさはゆっくりをまんきつしているんだぜ!」 「ゆぐっー れいみゅはいままでこんにゃにゆっきゅりしちゃこちょなかったよ!」 「あでぃすはとかいはをまんきつできたばぁー げぷっ」 「むぎゅん、げふ あじがとうね! おにいざん。ゆっくりできでるわー」 口々にゆっくりできていることを口にする。 もうパンク寸前の風船と変わりない、水ぶくれゆっくりが完成した。 「じゃあ、お祭りの最後に花火をやるよ! ゆっくり見ていってね!!」 「ゆうぅ。はにゃびしゃんってなんなの? おちょうさん!」 「はなびっていうのは、とってもきれいなきらきらさんなんだぜ! おちびちゃんはこのまえうまれたばかりだからはじめてなんだぜ!」 「しゅごい、しゅごい! はやくみちゃいよ! おにいしゃんおねがいね!」 Yと俺はいくつかの花火に火を点けた。 『パチパチ』という音と共に、火の粉が舞う。 「ゆわあぁー きれいだね! おかあさん!」 「おちびちゃんほんとうにきれいでゆっくりできるね!」 あちこちでゆっくりが花火の綺麗さに、感激の声をあげる。 『ポン ポン ポーン!!!』俺がパラシュート花火を打ち上げる。 ゆっくり達は揃って上を見上げる。 「おにいさん! あれはなーに? ゆっくりできるもの?」 「ああ。とてもゆっくりできるものだよ!」 「ゆっゆっ! あれはまりさのたからものにするよ!」 「わかるよー ちぇんのものなんだよー」 幸い風が吹いていなかったおかげで、ゆっくり達の近くに落ちる。 「へへっ。これはまりさのたからものなんだぜ!」 「ゆーん。れいみゅもほしきゃっちゃよ。ゆぐぅん、ゆぐぅん。」 「やったよー ちぇんのものだよー」 「むぎゅん、ざんねんとれなかったわ。」 取れたものは満面の笑みで、取れたことを自慢する。 それを取れなかったものは恨めしそうに見つめる。 『ずるいよ! わたしにもちょうだいよ!』といった展開を期待するが。 「これはまりさたちかぞくのものだぜ! だけど、そっちのまりさのものでもあるんだぜ!」 「おじしゃんありがちょう! ゆーん、ほんちょにゆっくりしちゃものだね!」 「わかるよー はい、ぱちゅりー!」 「むきゅ? いいのちぇん?」 お互いに譲り合う? あれ? これがゆっくり? 俺の知ってるゆっくりじゃないよ。 早く取り合いしてくれないと、ゆっぐりでぎないよ゛!!! Yは先程の騒ぎを納めた子ゆっくりれいむの側に行く。 「やあ、れいむ! ゆっくりできてるかい?」 「おにいさん! とってもゆっくりできてるよ! おにいさんありがとうね!」 「うん、そうか。それはれいむにとって本当によかったね!」 「ゆん! れいむいままでのゆんせいでいちばんゆっくりできてるよ! ゆっくりってこんなものだったんだね。」 「そうか、そうか。ほんとうによかったね。」 「おにいさんもゆっくりできてる?」 「ゆっくりできてないよ!」 「ゆうぅ? どうして? こんなにみんなゆっくりできてるのに!!!」 「あのお兄さん見てごらん? ゆっくりしている顔にみえるかい?」 Yが俺の方を指差す。 「ゆっ!!!! どういうこと? あのおにいさん、ゆっくりしているかおにみえないよ!!!」 子れいむは疑問の声を上げる。 「お、お、おにいさんも。ゆ、ゆ、ゆっくりしているかおじゃないよ!!!」 「そうだよ! ゆっくりなんかしてねえよ!!!」 「どうして? どうして? ゆっくりしようよ!!! ゆっくりしていってよ!!!」 子れいむは強く哀願する。 「どうしてゆっくりしていないかって? ゆっくりできるわきゃねえだろ、こんなもんで。」 「どうして、どぼじで!!! ゆっくり、ゆっぐりじでよおぉぉ!!! おねがいだよおおぉぉぉーーー!!!」 「じゃあ。れいむ達みんながゆっくりさせてくれるんか?」 「ゆっ! うん! ゆん! れいむたちがおにいさんたちをゆっくりさせてあげりゅよおおぉぉ!!!」 「ほー! 今の言葉、ここにいるゆっくり全部の言葉と思っていいんやな?」 「ゆん!!! みんなきっとそうおもってるよ!!! ゆっくりしていってほしいんだよ!!!」 「くっ、くっくっ。ありがとさん。ゆっくりさせてもらうよっと!!!」 『ズボッ!!!!!!!』 子れいむは驚きの声を上げ、られない。 口には打ち上げ花火が詰め込められていた。 「はははっ、ははっ。『どぼじてごんなごとするのー!』ってか。 にんげんさんはなぁ、『ゆっくりがゆっくりしてる』所なんか見ても、いらっとくるだけなんだよ!! さあ! 火踊りでも見せて俺らをゆっくりさせてくれや。」 『ズボッ!! スボオォォォ!!!』 子れいむの両目に互い違いに連発式花火が刺さる。 『ズボッ! ズボッ! ズボッ、ズボッ!』 子れいむの頭には何本もの、手持ち花火の花が咲いた。 「おーい! みんな! 最後の花火だよ! とってもゆっくりできるから、ゆっくり見ていってね!!!!」 『ゆーん、残念もう終わりなの?』といった会話がされる中、 Yは子れいむ花火をゆっくりの中心に置く。 ゆっくり達は声が出ない。目の前の光景を処理しきれないに違いない。 ポケットからライターを取り出す。 ゆっくりはここでやっと震え始める。 『シュッ! ボアッ!』 「汚い花火だけど、ゆんせい最後の花火。 しっかり、楽しませてね!!」 「「「「どうじて、こんなごとするのおおぉぉぉぉおおおーーーー」」」」 あるゆっくりは叫び、その場で震える。 あるゆっくりはその場から逃げようとする。しかしそれは先程の暴飲暴食で叶わない。 ゆっくり達の体はパンパンに膨らんでしまっている。 はうことさえ困難である。 子れいむの頭の花火に火が着く。 『シャアー』といった音と火花が散る。 その火花が次の花火へと移っていく。 『シュポッ! シュポッ! シュポッ!』 連発花火が飛び出す。 頭の熱さで子れいむはジタバタジタバタする。『ぶー、ぐー』っと唸っている。 暴れる程に火の玉がゆっくり達を見境無く襲う。 「ゆべっ!!! あづい、あづいいいいぃ!! おどうしゃん、まりしゃいごけないびょおぉう!!!」 「へっ! のろまなこどもはゆっくりやけしぬんだぜ!! まりさはゆっくりしないでにげるんだ、ぜ? どぼじで、どうじで、まりさのあじさんぴゅんぴょんでぎないのぉぉーーー」 「れいむは、でいぶはもっとゆっくりしたいんだよ!! まぬけなゆっくりはしんでいってね!! ずーり、ずり。ゆぎょっっ!!!」 『ドーン!!!! ドーン!!! ドン!!!』 打ち上げ花火にも火が着いた。大きな火の玉がゆっくり目掛け、飛ぶ。 「むぎゅううぅ。ぱ、ぱちぇのおがおがあづいいいいぃ!!! ちぇん? ぢぇーーーーーん!!!」 「わかるよー ぱちぇはゆっくりしぬんだね!! ちぇんはにげるよー ずーり、ずr。ゆべぇぇぇぇぇぇーーーー」 俺とSも花火大会に参加する。 俺は手始めに子まりさを中心に、頭にドラゴン花火をねじ込んでいく。 「ずーり、ずり。ま、まりしゃのおぼうじかえぜぇぇーーー。 ぶびゅっ!!!」 「にげりゅんだじぇ! まだまだゆっくりしちゃいんだじぇ!!! ゆぎゃっ!!!」 「おがあさぁーん!!! おいでかないでよ゛ーーー ゆぴょっ!!!」 『シャアーッ』と火花が上がる。 「あづい、あじゅい、あじゅいぃぃぃぃーーーー」 「おきゃあしゃん、けして、けじてぇぇ!!!!」 「ひ、ひっ、ひをはやぐけぜぇぇーーー みずてるな!! このくじゅおや!! まりしゃをみずてるなぁ!!!」 「れいむのおちびちゃん!!! おかあさんがいまたすけてあげるよ!!! あつぅ! あじいぃぃぃーーー!!! どぼじでおじびじゃんゆぶれてりゅのおおぉぉぉ!!!」 暴れれば暴れる程、火花が飛び散り、新たな炎を生む。 「ごのぐそちびぃい!!! こっちにぐるなあぁぁぁーーーー でいぶがあじゅいでしょおおぉぉお!!! おやをもやそうとするこどもは、ゆっくりじないでじんでじまえぇえーーー あずいいいいぃーー」 「ま、ま、まりざのおぼうしがああぁーーー もえる、もえじゃぶよおぉ!!! そこのにんげん!!! ゆっくりじないでけせえぇぇぇぇーーーー」 「け、けすんだぜ!! みんなできょうりょくしてひをけすんだぜ!!! おみずさんをくんでくr… ばでさのおぼうじさんもやずなぁーー!!! このじびぃぃぃ!!!」 「まりしゃたちのおたきゃらさんがあぁぁーーー!!! もえ、もえちぇりゅよ゛おぉ!!!」 「このおばか!!! そんなことよりにg… でいぶのがみさんがああぁぁ!!!」 Sは先程のロケット花火を使う。 「お前達、いっつもおそらとんでるみたいーって言うよな。 実際に飛ばしてやるよ、おそらにな。」 この現状を見せられて『あちゃしもー』という子ゆっくりは一切いない。 親は子を置いてなんとか逃げようとし、子ども達は恐怖で身が竦んでいる。 「はやく、はやくにがえるのよおぉぉーーー!!! とかいはなこどもたちならできるでしょおぉぉーーー」 「あ、あ、あ、あ、あ。ありしゅのあんよしゃん、あんよしゃん!! はにぇちぇよーー!!!」 Sはロケット花火を何本も無造作に刺していく。 『ズボッ! ズボッ!!!』 「もうすぐおそらにとべるからな。待ってろよ!」 「いぢゃっ!!! まりしゃちょびちゃ!!! ゆぐぅえ!!! くないんだじぇええええぇぇぇぇーーーー」 何匹かの子ゆっくりはきれいにおそらにむかって飛んでいく。 『ヒュン!! ヒューーーン!!!』 「おじびじゃんが。おちびちゃんがぁ、おそらにいいいいぃーーー」 『パーン!! パーーーーーン!!!』 「ゆぎゃああぁーー!!! おちびじゃあぁーーーーん!!!!」 何匹かの親ゆっくりは、飛ぶ程の力を得られずに、地面を引きずられることに。 『ヒュン!! ヒューーーン!!!』 「いだい、いたいぃぃぃーーーー!!!! あんよさんが、あんよ゛ざんがけずれるううーーー」 『ドン!! ドン』 「おちょうさん!!! いだい、いたい、れいみゅからはなれでえええぇーー!!! つぶれりゅーーー」 「このくずおやぁ!!! どけ、どげええぇぇ!!! まりざのあじがああぁ!!!』 『ガリガリ、ガリッ!!!」 「いだい、あづい、じぬううぅ!!! あだまがあづい、ぐちがあづいいいぃぃ!!!!」 「じね、じねえええぇぇぇ!!! れいぶをごろぞうとするむのうははやくどいてじね、しねぇぇぇ!!!」 「ゆぐぅ、ゆぐっ!! ばりさのあ、あんよざんがぁあああ。なぐなどぅうううぅーー!!!」 『ボムゥ!!!』 「あがっ、あがっ!! ゆべぇぇ!!! ゆっ、ゆっゆ」 「あみゃあみゃさんがふっちぇきたよ!!! おちょうさん!!! おちょうs…」 「ゆべっ!! ゆべっ!!! おじょうざんのながみがぁぁぁあーーー」 「うーん。ゆっくりできる光景やなぁーK!!」 「そうやな。爽快感抜群やな!!」 そういって次の獲物を探す。 「今度はでかいやつが、こう『バーン』と弾けんのがみたいよな?」 「そうか? 俺はもうちょっとあがく様がみたいねんけどな。」 「そんじゃあ、俺はもうこいつ使うわ。」 Sは爆竹の箱を持ってくる。 「お前がやって、うろたえてる様な奴にやっていくわ。」 「了解。」 俺は動けないゆっくり達を更に追い込んでいくために、周囲を打ち上げ花火で囲い、ねずみ花火を大量に投げ込む。 「ゆわーーん!!! い、い、いごけないのに、ひひ、ひがぁぁーーー」 「ぼう、ばんさんやべてぇぇ!!!! ゆべあぁっ!!! いだい、あどぅいいいぃ!!!」 「ごっちごないべぇぇーーー いながものおおおぉぉ!!!」 「ひが、ひが。ひにかごまれでるぅぅ!!!」 もう火を何とか消そうとするものはいなくなった。 動けないまりさは、ただおぼうしが燃えていくのを熱さに耐え、見守ることもできない。 あんよが傷つき、餡子が漏れてくるものは、大量の水により薄くなったためすぐに果ててしまう。 髪の毛は燃え、熱さで『ゆっ、ゆっ、ゆっ』と逝ってしまったものも多い。 最後の足掻きを楽しむため、Sは爆竹に火を点けようとする。 その時。 1匹の子れいむが、1つの儚い希望を与えた。 「ゆっく、ゆっぐ… おでええちゃーーん!!! もでじゃでべぇぇ!! ごわい、こわいみょーーー!!!」 どうすることもできず泣き、しーしーを漏らす。 『ジュワッ!!!』 その姉の頭の火が妹のしーしーによって鎮火される。 「ゆっ、ゆゆゆっ!!! みんなぁあ、しーしーだよ!!! しーしーでひをけずんだよおおぉぉ!!!」 それに気づいた母れいむが叫ぶ。 「しーしー? そうなんだぜ!! しーしーはおみずさんなんだぜ!! ちょっとくさいけどおちびちゃんがまんするんだぜ!!」 「だすよ、だすよ。しーしーだすよ!!! しーしーだしてゆっくりするんだよー!!!」 「わかるよー ちぇんもしーしーだすよーーー」 一斉に燃えている、熱さに苦しんでいる他のゆっくりにしーしーをぶっかけていく。 「ぐざいぃぃぃーーーー やべて!! れいむにしーしーかけないでええぇ!!!」 「ゆぐぅっ!! がまんするんだぜ、れいむ!!! ひさんをけさないとゆっくりできないんだぜ!!!」 「ぱちゅりー! がまんしてほしいんだよー」 「ちぇん!!! くさい、あづくないけど、くっくさいんだわーーー」 これから起こり得ることはわかっている。 一先ず花火に火を点けるのをやめ、見守る。 そこには、当たり前の光景が現れてきた。 「ゆふぅぅ。 おちびちゃんのひはきえたよ!! これでゆっくりできるね!!! ゆゆゆっ? しーしーさんとまっでよーーー どぼじてしーしーとまらないのぉぉーー お、お、お、れいむのこどぼがぁぁぁ、どけちゃうよよよぉぉぉ!!!」 「れいみゅのからだが、からだが、とけちゃぶよ、どけるうううぅぅーーー じね、しね!!! こどもにしーしーかけてごろすようなくじゅおやはじねえええぇーー!!!」 「ぢえええぇえん!! ぱちぇのなかみが、ながびがあぶれでくるぅぅぅぅーーー」 「わがらないびょー!!! ぢぇんのじーじーがとばらないいいぃ゛ーー」 お前ら、さっきどれだけ水飲んだ? 自分の体積以上飲んだよな? そんな奴が小便したらどうなる? すぐには、とまんねええよな。 ゆっくりは水に強いか? お前ら、饅頭だよな? そんな奴らに水、一杯かけたらどうなる? そりゃ溶けるよな。 それなのに何で『同じ方向』ずっと向いてるんだ? 違う方向けば、目の前にいるゆっくりにかからねえよな。 なんでそれが、わかんねえんだ? そりゃあ、お前達がゆっくりだからだな。 「おい!!! おいつらやっぱり、なんだな?」 「そりゃそうやろ。ゆっくりやからな。」 「はっはっはははは!!! ひでえ、これはひどい、ひどすぎるよなぁ、おい!!!」 目の前には 餡子色にクリーム色が混じった水溜りが広がる。 その中に、しーしーをぶっかけていたゆっくりが数匹残っている。 「ゆん! せっかくひをけしてやったおやに、ひどいこというこどもはこうなるんだよ!!! いいきみだよ!!! ゆっくりできていないしょうこだよ!!!」 「わがらないよ、わからないよぉおおーーー どうしてぱちぇがああぁぁーー」 皮が伸びきった体で思い思いのことを口にしている。 それにしても生き残っているゆっくりどもは酷い。 急激に膨張したおかげで皮が伸びきり、縮むのが追いつかない。 しゃべる度に『プヨン』と震える。 大量の水を排泄したため、しーしーの穴がぽっかりと開いたままになっている。 「もう、帰っか?」 俺はSから爆竹の箱を受け取る。 「ありがとな。ほんまにゆっくりできたわ。これもお前らのおかげやな。」 「なにいってぶんだよおおぉぉ!!! れいむたちはゆっくりできでないよおおぉーーー」 「当たり前やろ? ゆっくりさせるつもりはないねんから。」 「ど、ど、どぼじでそんにゃこというんだじぇええぇぇぇーー」 「ゆっくりがゆっくりしてるの見て、ゆっくりできる奴いてると思うんか?」 「ゆ、ゆ、ゆっくりがゆっくじしでなにがわりゅいんだぜえええぇぇぇ!!!!」 「悪いなぁー ほんまに悪い。世界で一番悪い。」 「わからない、わがらなびいいぃぃーー!!!」 「わかってくれんで、結構!!! じゃあほんまにゆっくりしような!!!」 それぞれ爆竹を手に取り、ゆっくりへ向かう。 だらしなく開いたしーしーの穴に爆竹を詰める。 「まずはこのれいむ、君に決めた!!!」 「やめでえええぇーー しーしーのところにへんなものいれないでぇぇぇーーーー」 「何や、思ったより入んな。このガバガバ!!!!」 「れいむ、でいぶ、がばがばじゃないいいいぃ!! へんなこというなああぁぁ」 「え? 見てみろよ!! こんなに入ってんねんぞ、お前!」 「ゆ? ゆ? どのしでへんなものがじーじーのとこりょにぃ゛!!!」 3束程がしーしーの穴に目一杯詰まる。 SとYも同様に詰める。 「ほな、この一番でかい奴。逝こか。」 「いや、いや゛!!! まりさはじにたぐなびいいぃ!!! もっとゆっぐりじたいぃぃぃーーー」 「向こうでしろや。」 『シュボッ!!!! ジジ、ジジ、ジ』 『パン、バン、バババババーーーーン!!!!』 『ゆべっ!!』っといった断末魔もなく、まりさは内側から餡子をぶちまけた。 しーしーの穴の辺りは吹っ飛び、弾けた餡子が体中に穴を開けた。 餡子がへばり付いた皮が残るのみとなった。 続けて爆発音と、ゆっくりが弾ける音が響く。 餡子とクリーム、中身のなくなった皮が辺りに広がるのみ。 全てのゆっくりが『本当にゆっくり』してしまったようだ。 「お前! 顔見てみい。餡子まみれやぞ!!」 「うっさい。お前なんかクリームだらけで、顔射もののAVみたいやぞ。」 「それにしても、甘ったるい匂い。気持ち悪い。おえっ!!!」 バケツでドブ川の水を掛けていく。 花火の残り火で火事にでもなったら、洒落にならない。 「ほんまに気持ちよかったぁー 昔とスケールが違うから爽快感が違うな。」 「ほんまやな。でも途中かなりダレたぞ、お前!」 「しゃーないやろ。でもその分、すっきりできたやろ。」 「それはそうやけど、時間掛かりすぎ。もうラジオ体操始まるやんけ。早く帰んぞ。」 「おい。Tは? あいつどこいってん?」 「おーい、T!! もう帰んぞー。先帰ってまうぞー」 「あれ? でっかいぱちゅりーいてへんやん?」 「おいおい、あいつ持って帰ったんか? 物好きやのお。」 「また帰ってから連絡すりゃいいやろ。もう帰ろうぜ! とりあえず眠い。」 ゴミを持って出口へと向かう。 その時。 「ゆっ、ゆっ。ゆええぇぇーーん。おじびちゃーーん。ごめんね、ごべんねぇーーー」 「ゆっぐっ、ゆっぐっ!! おちびちゃんたちのぶんまでゆっくりするよ。むこうでゆっくじしでね!!」 「えっ? まだいてるやん?」 「全部やったんと違うん?」 最初に子どもを殺した番がそこにいた。 何とか飾りを見つけてきたのであろう、穴を掘り、墓を作っているようだ。 今まであった惨劇に気づくことも、巻き込まれることもなく生き残っていた。 穴を埋め、アイスの棒をその上に刺す。 「ゆぐっ、ゆぐっ、でいぶーーー!! おちびちゃんのぶんもゆっくりずんるんだぜえぇぇーーー」 「わ、わかったよ!!! かなしいけど、おじびちゃんのためだぼんねぇぇ!!!」 涙まみれでお互いを慰め合う。 自然と体が密着していく。 「ゆっ、ゆっ、ゆはぁーー!! な、な、なんだかへんなきぶんになってきたんだぜ!!」 「ゆ、ゆ、ゆっ!! れいむもだよ、まりさぁー!! ゆ、ゆ、ゆゆゆっ!!」 ネチョネチョとした音が聞こえてきた。 こいつら盛ってやがる。しかも今さっき殺された子どもの墓の前で!! 「す、すっきりしたくなったんだぜ!! れいむ!!」 「れいむのまむまむがまりさのぺにぺにをよんでるよぉぉーーー!!!」 「おい、なにやってんねん!! 子どもの墓の前で。」 「ゆ!!! しつれいなにんげんだね!!! これかられいむとすっきりすんだよ!!! ゆっくりしないでどっかにいけ!!!」 「なあ、お前ら。俺らの顔がわからんか?」 「しらないよ!!! はやくどっかにいってよね!!! はずかしいんだから。」 「いや。それよりそこ子どものお墓やろ。そんなとこですっきりしていいんか?」 「ゆぅーん。なにいってるんだぜ!! おかちゃんはとってもゆっくりできるんだぜ!! だからきっとよろこんでくれるんだぜ!!! それにこういうしちゅえーしょんはもえるんだぜ!!!」 「なにいってるのまりさ。このばかぁー。」 『ハア、ハア』という息遣いの中、まりさのぺにぺにがいきり立つ。 「ゆへへっ。くそにんげんはすっきりしたことないから、くぎづけなんだぜ!! かわいそうだからみせてやるんだぜ!!! そなかわりにあまあm…」 れいむはまりさに背を向ける。 「ゆはん、ばかぁー れいむははずかしいよ!!! こんなにみられてこうふんするまりさなんてきらいだよ! でもしかたないね、まりさがいうのなら。はやくあm…」 『グシャ!! グシャ!!』 俺は無言で2匹を踏み潰した。 「ほんまにどうなってるんや? この餡子脳は! 気持ち悪い!!」 「今さっき子ども殺した奴の顔忘れるなんてな。」 「やっぱりシンプルに潰すのが一番気持ちいいな。」 フェンスを乗り越え、単車にキーを挿す。 「ほな、おつかれさん。またな。」 「おう、おつかれ。面白いことあったらまた連絡するわ。」 「さっさと帰って寝るか。」 俺達3人は家路に着いた。