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囲いの中、ゆっくりのすすり泣く声が響いている。 木の杭を地面に打ち込み、有刺鉄線で杭に繋いだだけのお粗末な囲い。 でも、中にいるゆっくりは囲いの中から出られない。 ゆっくりの柔らかい体で杭の間を無理に通ろうとすれば、そのまま有刺鉄線の棘にズタズタに傷を付けられるだけだから。 その姿を、地べたに腰を下ろして俺は見張っている。 いつまで見張っていればいいのかは分からない。 村長はすぐに連れてくると言ったけれど、ドス程の巨体ならここへ来るまで暫く掛かるだろう。 逃げ出す恐れの無い物を見張るほど退屈なものはない。 なので俺は隣に座っているゆちゅりーに話しかけた。 「なあ、ドスはどれくらいで来ると思う?」 「分からないわ… ドスは体が大きいもの」 「だよな、大人しく待つしかないか…」 そこで俺は会話を打ち切り、再び囲いの中のゆっくり達を見張る。 このゆちゅりーは、ドスの側近で俺達人間の協力者だ。 俺の住む村とゆっくりの関係は比較的良好だった。 ゆっくり達は山の恵みを村に与え、代わりに俺達はお礼代わりに作物をゆっくりに与えた。 だが、そんなゆっくりの群れにもやはり膿というものは存在したのだ。 それが、この囲いの中のゆっくり達である。 以前からドスの群れに畑を荒らすゆっくりがいた。 その為、村の中ではゆっくりを全て殺すべきだと主張する人間が現れだした。 ドスに何度注意するよう頼んでも問題は解決せず、本当に全てのゆっくりを殺すかどうかの選択を迫られたときだ。 話を聞いていたこいつが、「ドスは皆に甘いから…私が何とかするわ」と言い出した。 ゆちゅりーの言い分は実に単純なもので、このまま人間を怒らせれば群れの皆が死ぬ。だからその原因を何とかしたいというものだった。 正直群れのゆっくり全てを駆除するのは大変だし、ドスの相手もしないとなると怪我人だってでるだろう。 半信半疑ではあったものの、村の人間はこいつを信じることにした。 信じた結果はご覧の通り。ゆちゅりーは見事畑荒しのゆっくり達をおびき寄せ、村の人間でこの囲いへ閉じ込めた。 このまま反省させて返しても良かったのだが、それはゆちゅりーに止められてしまった。 ゆちゅりー曰く、ドスに責任を取らすとの事だ。 どういう意味なのかは分からなかったけれど、村長はゆちゅりーの言うとおり皆を連れてドスを呼びに行った。 見張りの為に俺を残してだ。 ドスの巣へ向かってからもう30分は経った筈なのに、いまだにドスが来る気配は無い。 もう一度言わせてもらうが、逃げ出す恐れの無い物を見張るほど退屈なものはない。 俺は何度目になるか分からない欠伸をすると、村の方から一人の人間が近づいてくるのが見えた。 あれは… ゆっくりを殺すべきと主張してた奴らのリーダーだ。 もう畑を荒らすゆっくりは捕まえたのに、今更なんの用なんだ? 「やあ、見張りご苦労さん」 「…どうも」 胡散臭い笑みを浮かべて話しかけてきたので、俺も立ち上がって一応返事をする。 正直、俺はこの人が苦手だった。 普段は物静かで大人しい人なんだが、ゆっくりが絡むと途端に感情的になる人。 自称虐待お兄さん。家には生け捕りにしたゆっくりを捕まえて名前どおり虐待してるとかで、近所の人の話では彼の家からは常にゆっくりの泣き叫ぶ声が聞えてくるとか。 ゆっくりもこの人には近づこうとしないのは、やっぱり本能的なもので危険だと感じ取っているんだろう。 とりあえずゆちゅりーの姿をこの人の視界に入れないように少しだけ俺は動いた。 「しっかし、畑を荒らすゆっくりってこんなにいたんだ~ 凄い凄い」 「まあ、30匹はいるらしいですからね」 「結構いるねぇ」 囲いの中のゆっくりを見ながら楽しそうに話しかけてくる。 ちなみに、この人の姿を見た囲いの中のゆっくりは全員できる限り囲いの端で固まっている。 この人早くどっかいかねえかな… 「この饅頭共はどうすんの?」 「へ?」 「ゆっくりだよ、ゆっくり。いくらなんでもこのままって訳じゃないでしょ?」 「ああ、今村長がドスを呼びにいってますよ。なんでもドスに責任を取ってもらうとかなんとか」 「ドス? あのでかい奴に責任取ってもらうの?」 ドスという言葉を聞いた瞬間、少し声の調子が上がった気がする。 「そうですよ。それが何か?」 「おいおい、ドスっていう固体は非常に仲間に甘いんだぜ? そんなのがここに来て囲いの中のこいつら見たら、拉致監禁したって襲ってくるに決まってるじゃないか」 「そんなこと俺に言われても知りませんよ。村長は俺に見張ってろって言ったからここにいるだけなんですから」 「ふぅ、村長は本当に救い難い… せっかく僕が村を元の形にしようって言っても山のゆっくり達を大切にするんだもんなあ…」 「いいじゃないですか。ドスみたいなでかいの相手にしたら誰か怪我するかもしれないし、死人だって出るかもしれないんですよ? だったら今のままで」 「分かってないな… 君も僕も生まれるずっと前はこっちが一方的にゆっくりを蹂躙していい時代だったんだよ? それなのに今はおままごとみたいに皆仲良くなんてさ…」 「おままごとでも結構ですよ。ゆっくりがいるお陰で狼とか現れたらその場所を教えてもらえるんですから、村だって少しは安全になったじゃないですか」 「おいおい、ゆっくりは自分が食われないために教えてくるだけなんだぜ? 言っちゃえば饅頭は僕らを利用してるんだな」 …一々腹立つ物言いしてくる人だな。 そんな風に思っていたら、俺の後ろのゆちゅりーに気づきやがった。 「ところでさ、君の後ろにいるぱちゅりーはなんなの?」 「こいつですか? ドスまりさの側近の子ですよ」 「側近ねえ…」 男は一歩だけこちらに近づいてきたので、俺も一歩下がる。 「……何にもしてないのに離れるのは酷くないか?」 「何となくなんですが、貴方にゆっくりを近づけちゃいけない気がするんですよ」 「まあいいや、歓迎されてないようだからそろそろ僕は帰るよ」 「そうですか」 「じゃあね~」 歩きながら右手を振り、去っていった。 そんなに長い間いたとは思えないが、話してるだけで疲れが貯まってきた。 深呼吸をして少し心を落ち着かせ、ゆちゅりーに話しかける。 あいつが言っていた事が、ちょっとだけ引っ掛かったから。 「なあ、嘘だよな?」 「え?」 「あいつが言ってたろ、ドスがここに来たら仲間の為にこっちを襲ってくるって」 「…言ってたわね」 「お前はさ、俺達人間の為にこいつらをおびき寄せてくれたんだよな? それとも、やっぱり油断させてドスに俺らを殺させるのか?」 正直言うと、男の言葉を聞いて俺は不安になった。 こいつが畑荒し共をおびき寄せてくれたのは知ってるし、その理由はゆっくりの群れが人間に駆除されない為というのも分かっている。 でも、ここまで畑荒しが増えたのはドスが何もしなかったからだ。 さっきの男が言ったようにドスがこちらを襲ってくる可能性は十分あった。 「ドスは仲間に甘いのは事実よ。人間よりも、群れのゆっくりを大切にしてるのも認めるわ」 「そっか… じゃあ、本当にドスが襲ってくるかもしれないんだな…」 「でも、そんな事をしたら群れの皆は人間に殺されてしまう。だから、私が何とかしてみせるわ」 「お前が?」 こんな小さい体で、ドスの巨体を止めるっていうのか? 馬鹿げてるとは思ったけれどゆちゅりーの目は本気だ。 「じゃあ、信じるよ。お前がなんとかしてくれるって」 「任せて、絶対ドスに人間は殺させないから」 「頼りにさせてもらうよ」 大きさがバレーボールみたいなゆっくりに頼るのは情けないと思ったけれど、ドスを説得できるのはきっとこいつだけなのだろう。 ドスが来るまでどうなるかは分からない。でも、やっぱりどこかで安心はしていた。 それから、ドスが来るまでゆちゅりーも俺も口を噤んでいた。 「み、みんな… なんでみんなつかまってるの!? にんげんにつかまったの!? そんちょうさんせつめいしてね!! つまらないりゆうだったらドスはゆるさないよ!!」 村長がドスを連れて来るまで、結局二時間掛かった。 そして、上の言葉が囲いの中のゆっくりを見たドスの第一声だ。 捕まってる奴らは捕まってる奴らで、ドスの姿を見た途端「たすけて」だの、「にんげんをやっつけて」だの騒ぎ始めた。 さっきまでの怯えていた姿は嘘みたいだ。 まあ、ドス来たからには助けてもらえると喜ぶのは無理も無い。 けれど、村長を問い詰めるドスの前にゆちゅりーが立ち塞がった。 囲いの中の奴等にとっては自分を騙し人間に味方した裏切り者。 だが、ドスにとっては自分の大事な側近。 ゆちゅりーが立ち塞がった事で、ドスは少し頭が冷えたようだ。 「ドス、本当は分かっているんでしょ? この子達が、人里で何をしたか?」 「ぱちゅりー…」 「貴方は叱った気になっても、『もうやっちゃだめだよ』ってだけじゃまたやるに決まってるじゃない」 「で、でも…」 そ、それだけかよ…ドスの注意って… 「いい? ドスが怒る気ないから、この子達は調子に乗って人間の畑を荒らしたのよ? それなのに人間の人達を悪く言うの?」 「そ、そんなつもりはないよ!! ただ、このこたちがつかまってたからかわいそうで…」 「この子達が可哀想って思うなら、ドスは尚更この子達を言い聞かすべきだったのよ」 「つ、つぎからちゃんとしかるよ!! だから、だからこのこたちをはなして!!」 でかい顔を地面に付けて懇願するドスまりさだが、ゆちゅりーへは届かない。 「本当はドスも分かってるんでしょ? この子達にすべき事を」 「でも、でも…」 「囲いの中の子はね、たくさん迷惑を掛けたわ。だから責任を取らなきゃいけないのよ」 「せ、せきにんてどうするの!? このこたちにひどいことしちゃだめだよ!!」 「この子達じゃなくて、貴方が責任を取るのよ」 「ま、まりさはこのこたちのためならなんでもするよ!! だからなんでもいってね!!」 仲間意識が強いドスだけあって、こいつらが助かるためなら何でもやるという思いは本当だろう。 でも、ゆちゅりーはこいつらじゃなく群れの事だけを常に考えている。甘いドスと違って。 「この子達は膿よ。それを群れの中にずっと留めておくわけにはいかないの。それに、人間の人達にも見せ付けなきゃいけないわ」 「ぱ、ぱちゅりー? な、なにをいってるの? ドスにもわかるようにいってね!!」 「簡単に言うわ。貴方は、この囲いの中の子達を殺さなきゃいけないの。全部ね」 ゆちゅりーの言葉を聞いて、ドスは固まった。 囲いの中の奴らは怯え、泣き叫び、どれもがドスまりさに助けを求めている。 「……じょ、じょうだんにしてはひどすぎるよぱちゅりー!! みんなおびえてるよ!! あやまってね!!」 「冗談じゃない。この子達はね、人間の畑を荒らしすぎたのよ。ドスがずっと何も言わなかったから… その責任を今果たさなきゃ駄目なのよ」 「でも、ころすなんてかわいそうすぎるよ…」 「じゃあ、ドスは群れの皆を見殺しにするの? 勝手に人間の畑を荒らした群れの膿よりも、群れの皆を犠牲にするの?」 「そ、そうじゃないよ!!」 「じゃあ、貴方がすべき事は分かるわよね? 分かっているなら、私は何にも言わないわ」 ドスに説教をし終えたゆちゅりーは俺の側までやってきた。 本当は、殺すほどではないんじゃないかって俺は思ってる。村長も、村の皆も。 でも、ゆちゅりーは俺達に言った。 信用を得るために、群れの中の膿は除かなければいけない。 それはゆっくりでも人間でも変わりないと。 そして、悩んでいたドスまりさだは囲いの中のゆっくりに向き合った。 口の中を輝かせながら。 「ドスまって!!」 「これからはもうおやさいぬすまないよ!!」 「だからおねがいだからころさないで!!」 「もうしません、もうしませんから!!」 「おねがいだがらだずげてぐだざい!!」 ドスが何をしようとしたのか分かって、命乞いを始める囲いの中のゆっくり達。 それでも、ドスは涙を流すだけで止めようとはしなかった。 涙を流しながら、ドスまりさはドススパークを放った。 泣きながら、仲間の命を奪うために。 お粗末な囲いは破壊され、後にも塵すら残らなかった。 「貴方がこれから悪さをした子を叱ればもうこういう事にはならないから。これからはちゃんとできるわね?」 仲間を殺した事で号泣するドスまりさに近づいてゆちゅりーは言った。 でも、ドスはやはりゆちゅりーを許せないようだ。 「これからはちゃんとやるよ… でも、ドスはぱちゅりーをゆるさないから… もうむれにはもどってこないでね…」 「分かってるわ。お別れね、ドス」 それだけのやり取りで、ドスは来た道を戻っていく。 村長達も帰り、後には、俺とゆちゅりーが残った。 「お前これからどうすんだ?」 とりあえず、ゆちゅリーに声を掛ける。 聞いた話ではゆちゅりー種というのは知力が高い代わりに体が弱いらしい。 その為どこかの群れに属して生きていくのだが、こいつはその群れを追い出されてしまった。 このまま間違いなく死んでしまう野生で生きていくのなら、俺はこいつを家へ連れて帰るつもりだった。 でも、ゆちゅりーは俺にこう言った 「まだ、やらなきゃいけないことがあるからお兄さんに見届けてほしいの」 やあ、僕は虐待お兄さん。 今僕は籠を背負って夜の山の中を歩いているんだ。 え?こんな夜遅くにピクニックかって? 違う違う、僕はゆっくりを捕まえ来たんだよ。 僕の家には生け捕りにしたゆっくりが何匹もいるんだけど、今日は嫌な事があったからつい憂さ晴らしに全部殺しちゃったんだ。 だから、その補充に来たんだね。 嫌な事って何かって? それはね、また村の馬鹿な奴らとゆっくりが仲良くするようになっちゃったんだよね。 せっかく僕がゆっくりを畑に案内して荒らさせるようにしたのに、そいつら全部処分されちゃったんだもん。 村の皆で饅頭共を駆除する絶好の機会だったっていうのにさ、皆このままゆっくりと仲良くする事を選ぶなんて馬鹿だと思わないかい? おっと、早速ゆっくりの巣を見つけたぞ。 何? ただの木じゃないかって? 僕は虐待お兄さんだからね、ゆっくりの巣とかだいたい分かるんだよ。 羨ましいかい? 無駄にカモフラージュされてる入口を壊して掴まえようとした僕に、いきなり後ろから小石が飛んできた。 後ろを振り返ると、あのドスの側近とか言ってた生意気な紫饅頭がいるじゃないか。 ちょっとムカついたけど、紫饅頭は簡単に死んじゃうからすぐに手を出すことを僕はしない。 ゆっくりの苦しむ様や絶望する姿を見続けるのが虐待の醍醐味なのに、死なせっちゃったらそれで終わりだろう? だから、僕はこの紫饅頭と言葉遊びを楽しむ事にした。 「いきなり石をぶつけるなんて酷くないかな?僕が何をしたっていうんだい?」 「貴方は… そこのゆっくり達を捕まえようとした。私はそれを助けようとしただけよ」 饅頭の癖に生意気な口の利き方をする奴だ。 こういう奴は懲らしめなきゃね、虐待お兄さんとして。 「そうかい、でも君にこの巣の中のゆっくりを助けることはできないよ」 そう言いながら僕はゆっくりの巣に足を突っ込む。 これで中のゆっくりは生き埋め、物音を聞いて近づいてきた親ゆっくりは潰れただろう。靴の裏に餡子が付いたのが分かるもん。 「何故なら、巣を崩せば終わりだからね」 「本当に貴方はクズ…いえ、膿ね。村の人達の膿」 「膿… ゆっくりの癖に難しい言葉を知っているんだねぇ~」 笑顔は崩さないけれど、僕の腸は煮えくり返りそうだったよ。 だって、害虫でしかないゆっくりに膿扱いされたんだぜ? ムカつかない方が無理だって。 「私は群れの膿を取り除いた。だから、今度は村の人達の膿を取り除くわ!!」 ごめん、もう我慢の限界。 「やってみろよ糞饅頭!! 捕まえて死んだほうがマシって想いを何度でもさせてやるからな!!」 僕は叫んで、こいつを捕まえるために走り出す。 糞饅頭に膿扱いされて、しかもそれを取り除くって言われたんだぜ? それって僕は饅頭にコケにされたってことだろ? 誰だって怒るって、仕方ない仕方ない。 そこそこ距離は離れていたけど、跳ねる事でしかできない糞饅頭と二本の足がある人間。簡単に捕まえられるって思ったさ。 けど、糞饅頭は生意気にも頭を働かせたんだよね。 小さいからって藪の中とか木の間とかを通るんだ。それで追うのに結構時間が掛かってしまったよ。 でも、やっぱり人間と饅頭。 追いつけないわけが無く、藪に突っ込んだのを見た僕はそのまま跳んだ。奴を捕まえる為に。 その先が崖とも知らずにさ。 僕は饅頭の策略に乗せられ、そのまま一緒に落っこちた。 死ぬ間際は時間が遅く感じるとかよく言うけど、そんな事は無かった。 あっという間に地面が近づいてきて叩きつけられた僕は、そのまま意識を閉じた… 次の日、村はある事で話題になった。 自称虐待お兄さんが死んだと。 側には一匹のゆっくりが死んでおり、追いかけてる最中に崖から落ちて死んだのだと判断された。 でも、俺は知っている。 ゆちゅりーが、この村の膿を取り除いてくれたのだと。 以前からゆっくりを虐待してきた男。 そのゆっくりは、無論あの山から捕まえてきたゆっくりだ。 俺達人間は気にしなくても、ゆっくりの群れが気にしないわけが無い。 ゆちゅりーの話では、ゆっくりの中には人間と戦うべきだと訴える奴もいたらしい。 ドスが以前から村長に言っていたみたいだが、村長はあの男に何か注意したわけではないらしい。 村長もドスも、結局身内には甘いのだ。 ゆっくりと人間が戦ったらゆっくりが死ぬだけだと分かっていたゆちゅりーは、今回全ての膿と取り除く事を決意した。 畑荒しのゆっくりと、あの自称虐待お兄さんだ。 全てを知っているのは最後まで見届けた俺だけ。 それを誰かに言うつもりはない。ゆちゅりーもそれを望みはしないだろう。 村はゆっくりに作物を与え、ゆっくりは村に山の恵みを与えてくれる。 その関係をずっと維持すればいい。 ゆちゅりーがいなくなった後の群れが心配だったが、ゆちゅりーは後進の育成にも余念が無かった。 ちゃんと自分が居なくなった後の考えての事なのだから、流石と言わざるを得ない。 ゆちゅりーが守ったこの関係を、ずっと維持していこうと思う。 これからずっと、このままずっと… 終 こんな駄文を最後まで読んで頂き本当にありがとうございます!! もし、ゆっくりと人間が共生できている場合 畑を荒らすゆっくりが膿ならば、人間に側の膿は虐待お兄さんだろうなあと思ったのが今回書いた切欠です 実際、膿の駆除の為に人間は動こうとしないと思います。 たかがゆっくりを殺した位で目くじら立てんでも…そう思うでしょう。 だから、群れと村の為に動いたゆちゅりーは立派だと自分は思うんです。 今回はこれで 御目汚し失礼!! 書いた作品 ゆっくりいじめ系352 虐められるゆっくり ゆっくりいじめ系382 ある馬鹿なゆっくりの話 ゆっくりいじめ系394 きめぇ丸 ゆっくりいじめ系421 めーりんとこうりん ゆっくりいじめ系488 ゆっくり飼ってます ゆっくりいじめ系497 携帯でチマチマ書いてみた ゆっくりいじめ系571 みんなで食べよう ゆっくりいじめ系572 きめぇ丸その後 ゆっくりいじめ系596 ゆこまち ゆっくりいじめ系611 どこで何が狂い出したのか… ゆっくりいじめ系628 鳩と餌と糞 ゆっくりいじめ系793 誰かがやらねばいけないこと ゆっくりいじめ系823 保護場 ゆっくりいじめ系843 ゆっくり飼ってます2 幽香×ゆっくり系9 ある馬鹿なゆっくりの話2 森近霖之助×ゆっくり系1 代価 ゆっくりいじめ小ネタ125 虫眼鏡 ゆっくりいじめ小ネタ128 ゆっくりが大好きだ!! ゆっくりいじめ小ネタ140 ガラス このSSに感想を付ける
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ここでは、今まで投稿した動画の感想を綴っております。 まあ、編集者の一方的な感想ですがね。(笑) ☆第一回 ☆第二回 ☆第三回 ☆第四回 ☆第五回 ☆第六回 ☆第七回 ☆第八回 ☆第九回 ☆第十回 第十一回 ☆第十二回 ☆第十三回 ☆第十四回 第十五回 ☆第十六回 前後半 ☆第十七回 ☆第十八回 ☆第十九回 ☆第二十回 ☆第二十一回 ☆第二十二回 ☆第二十三回 ☆第二十四回 ☆第二十五回
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身黒頭赤虫│漢│虫部│ http //wakanmomomikan.yu-nagi.com/momomi3/maki-6975.htm
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※以前あげたものを一部改変し、中編を付けてあげなおしました。 ※俺設定注意 ※駄文、稚拙な表現注意。 ※ちるの、れてぃ種優遇注意 ※グロ注意 ゆっくりドキュメンタリー ゆっくりちるのの生態(前編) チャラララーラーラータンタンチャラララーラーラー(番組のイントロがながれる) みなさんこんばんわ。ゆっくりドキュメンタリー希少種の生態のお時間です。 毎回シリーズで動く饅頭、不思議生物ゆっくりについてお伝えしております。 今回のテーマはこれ。 (もっていたフィリップを見せる) 真夏の暑さの強い味方、ゆっくりちるのの生態について見ていきたいとおもいます。 ちるのと聞いて皆さんは何を連想するでしょうか。冷たい、氷、おバカ等色々あるでしょう。はては希少種でなかなか手に入らない。買おうとしてもれいむやまりさの数十倍の値段がついていてなかなか手が出ない。そういった印象はないでしょうか。 ですが、ちるのの生態について語る前にまず言っておきたいのはちるの種は一応希少種ではあるが、全体の個体数はけして少ないわけではないということです。 事実ゆっくり保護局のさだめる希少種の希少度はSからDまでありますが、ちるのの希少度は最低のD。 これはゆっくりちぇん、ゆっくりみょんより少し高い程度ランクであり、ドスまりさよりも希少度は低く、それこそ100匹程度の群れであればれば一匹はいるレベルであり、けして珍しいものではありません。 しかし多くの人は首をかしげるのではないでしょうか?「ちるの種なんてゆっくりの群れで見たことなんてないし、そもそもちるの自体ゆっくりショップ以外じゃほとんど見ない。」と。 ではなぜこのような矛盾が起こるのでしょうか。VTRを用意したのでご覧ください。 (スタジオからVTRに切り替わる) ここは雪の降る山の中。あたりはすっかり一面銀世界となっている。 そんななか洞窟から聞こえる「ゆー、ゆー」と聞こえる調子はずれな声。 ゆっくりである。 小さな洞窟の中で30頭ほどだろうか、ゆっくりたちが肩を寄せ合うようにしながら冬を越そうとしていた。 どうやら群れ単位でいくつかの家族が合同で冬ごもりをしているらしい。 通常ゆっくりの冬ごもりは一家族で行うものだが、この群れは固体数が少なく、群れの皆が仲がいいため、群れ全体での冬ごもりを 行うことにしたのだ。 「ゆっ、おちびちゃんたちは、おうたがじようずだね」 「ゆゆっ、もちろんだよ。みゃみゃのこだもん」 「すばらしいびせいだったんだぜ。うぃーんがっしょうだんも、はだしでにげだすんだぜ」 「とってもとかいはなおうただったわ」 「むきゅ、そうね」 そう話しているのはまりさとれいむのつがいに2匹のこれいむ達、、そしておとなりにすんでいるありすとこの群れのリーダーであるぱちゅりーである。 どう聞いても歌というよりうなり声だったが、ゆっくりたちの中ではそれでいいらしい。 「ありすもはやくこういうとかいはこどもたちがほしいわ」 「むきゅ。ありすほどのびゆっくりなら、ふゆさんさえおわればいくらでももらいてはいるわ。いまはがまんしてね」 「ゆー。ふゆさん、ゆっくりしないではるになってね」 ありすは不満をもらすが、今の状態もそれほど嫌いではなかった。 大好きな群れのみんなとすーりすりやおうたをうたってすごすゆっくりした日々。 リーダーのぱちゅりーが管理してくれているおかげでけして多くはないが食料にも余裕があった。 食料集めに忙しくてつがいのお相手を見つけられなかったのは残念だったが、その分、春にはよいゆっくりとつがいになり子供も作って ゆっくりしよう。 都会派な子供たちにすてきなだーりん。かわいいおちびちゃんにはたくさんすーりすーりしてあげて、都会派がなんたるか英才教育も同時に行う。そして晴れた日にはみんなでピクニックにでかけるのだ。お花畑で無邪気に遊ぶおちびちゃんたちとそれを見守るだーりんとありす。 なんと素晴らしいことだろう。 考えただけでため息がでるほどに。 もうすでにありすの心の中は春爛漫。ゆっくりできるであろう未来に酔っていた。 実際、ありすはこの群れのなかでは一番の美ゆっくりであり、群れの中、外を問わず好意をいだいている者も少なくない。 そして、このあたりはれみりゃや、ふらんの縄張りの外であり、もしこのまま春を迎えられれえばその妄想が現実となる可能性も高かった。 無事春を迎えられればだが・・・・・ お花畑満開のありすとは裏腹にぱちゅりーにはひとつ悩みがあった。 誰かに見られてるような気がするのだ。 この洞窟は群れ合同の冬ごもりのため、ぱちゅりーの選んだもので広さや食料をおくスペース等には問題ない。 また群れのみんなががんばってくれたおかげで食料の量も十分である。 だが何かに見られているような感覚を何度も感じている。 最初は、げすまりさたちが、この群れの食料を狙っているのかと思ったが、どうやら違うようだ。 では一体だれが・・・。 考え込んでいたぱちゅりーだったが物音がそれを邪魔した。 どうやら出入り口を誰かがノックしているようだ。 こんな真冬になんだろう。となりの群れのゆっくり? それともまさかれみりゃや、れてぃが来たのではないか。 そう思い一瞬みがまえるぱちゅりーだが、もしそれならノックするはずもない。 入り口の枝や干草で作ったバリケードを破壊し、中にはいってくるか、長い舌を伸ばしてくるはずである。 例え人間でもそうするだろう。強い人間なら頑丈なバリケードも片手で粉砕するだろう。 不思議に思いながら、ぱちゅりーは入り口に向かった。 それが大きく自分の運命を変えると知らずに・・・・・ ぱちゅりーは円形の居住スペースからせまい通路を這うように進んでいた。 この洞窟は丸底フラスコ型の形になっている。 入り口から居住スペースまでの通路が狭く細長く、成体のゆっくり一体がやっと出入りすることができる程度の大きさしかなく、代わりに居住スペースが広いような作りになっていた。 なぜこのような洞窟を選んだかというと捕食種対策である。 ゆっくりが冬ごもりを成功させる為、もっとも気をつけなければならない点は食料の備蓄もあるが、捕食種への対策も同じく 重要な要素となっている。 おもな脅威として挙げられるのは、冬限定の捕食種れてぃ、冬ごもりの食料が足りなくなって慌ててもう一度食料を集めだした れみりゃ、ふらん、さらには捕食種ではないが冬ごもり用の食料を狙うげすまりさなどである。このあたりにれみりゃ、ふらんは いないが、餌がないとわかれば縄張りの外まで行動範囲を広げかねない。 このように細長い通路にしておけばれてぃ、胴付きの捕食種の進入は防げる上、もし胴なしれみりゃや、げすまりさが進入してきても、 細長い通路に詰まっている間に、尖った木の枝(まりさいわく剣)で撃退できるようできている。 しかしいくらなんでも狭すぎた。これでは這うようにしてしか外に出られない。病弱のぱちゅりーにこれはきつい。 もう少し通路を大きくしておくべきだったかと反省しつつもやっと入り口の前に着き、入り口のバリケードを取り外す。 外の木枯らしがぱちゅりーにはこたえた。 そこにいたのは、青いリボンに水色の四角い羽をもつゆっくり。 寒風吹きすさぶ中、立っていたのはゆっくりちるのだった。 「むきゅ・・・。それはごしゅーしょうさまね・・・」 ぱちゅりーは声を落としていった。 あのあと立ち話もなんだからと、ちるのを招きいれ、ぽつり、ぽつりと話すちるからここにきた事情を聞きだしたのだ。 それによるとちるのはこのとなりの谷にすむゆっくりで、父、母共にちるの種で、家族全員ちるの種だったらしい。 ちるの種は冬ごもりする必要がない為、冬でも外出できる。 ちるのは成体になったばかりの遊びたい盛り。 その日も純白の氷原を満喫し、家路についた。 そして家まで来て愕然とする。 家がないのだ。 正確には家だったほら穴が地すべりを起こし、家族全員生き埋めになっていたのだ。 泣きながらさまよい歩き、やっとゆっくりの巣らしきものを見つけ助けをもとめたというのだ。 ぱちゅりーは考える。このままこのちるのをおいだすのはゆっくりできないことだ。 ちらりと群れのみんなを見る。 群れ以外の者を自分の一存でおいていいものか? しかしこの考えは杞憂に終わる。 「ぱちゅりー、このこをむれでゆっくりさせてあげてほしいのぜ」 「こまっているゆっくりをみすてるのはしゅくじょじゃないわ」 「おねがいぱちゅりー」 安心した。どうやら群れ全員同じ意見のようだ。 「それではこのこをむれのいちいんとしてみとめるわ。よろしくね、ちるの」 こうしてちるのは群れの一員になった。 「むきゅう・・・」 ぱちゅりーは悩んでいた。ちるのが群れの一員になって3日。 ちるのは特に群れのみんなとも問題を起こさず、むしろ予想以上の働きを見せている。 ちるのは雪や寒さに強く、多少の吹雪でも平気である。 そのことを活かせば通常のゆっくりたちには不可能な雪原での狩りが可能なのだ。 はじめ、ちるのが狩りにいくといったとき冬に食料などないのに、と多くのゆっくりが思った。 しかしちるのがどうしてもと言うので、群れの使っている狩用のりゅっく(草を編んで袋状にしたもの)を貸し与えたのだ。 そしてその日の夕方ちるのはそのりゅっくいっぱいに食料を詰め込んできたのだ。 冬でも山にはたくさんの食べられる野草は存在する。 ふきのとうやスノードロップがそうだ。 その他にもどこから見つけてきたのか冬眠中のかえる等の小動物までとってきた。 これらは群れのゆっくりたちには大好評で皆争うようにして食べた。 冬ごもりでで味気の無いぱさぱさの保存食しか食べていなかったことを考えると当然である。 みんな喜んでるし、そんな様子を見てちるのも笑っている。 でも・・・・ なんだろう・・・この違和感・・・ なにか大切なことを見落としているような・・・ しかし、具体的にそれが何かはぱちゅりーには解らなかった。 そんなある日ちるのが、かりで得た戦利品に皆驚いた。 あまあまである。 ちるのはりゅっく一杯に黒いあまあまを持ってきたのだ。 簡単に甘味を味わえる飼いゆっくりと違い、野生で生きるゆっくりたちはあまあまとは無縁である。 せいぜいが柿や野いちごくらいくらいでそれすら身体能力の低いゆっくりたちにはほとんど口に出来ない。 ましてあまあまなど野生ゆっくりたちには黄金よりも価値があると言えよう。 「ゆっ、れいむにあまあまちょうだいね」 「まりさがさきだよっ!」 と巣の中は蜂の巣をつついたような大騒ぎである。 「ゆっ、あたいのさいきょーのあまあまみんなであじわってね」 ちるのはそういうと少しずつ各自に黒いあまあまを配っていった。 そして配られた端から食べていくゆっくりたち。 「しっしあわせーっ!」 「へぶんじょうたいっ!」 そう言い全員恍惚の表情を浮かべていた。 そんななか、ぱちゅりーだけがあまあまを口にしなかった。 おかしい。 あまあまは人間さんしか持っていない品のはず。けして野生には落ちていない。 どうやってちるのはあまあまを手に入れられたのか。 そう思うと食が進まなかったのである。自分の分はとなりのれいむにあげた。 そんななかちるのは全員のあまあまがなくなったのを確認すると 「おかわりがほしいひとはまだあるよ」 と叫んだ。 「どこ?どこにあるみょん!?」 「あまあまどこなんだぜ!?」 完全に興奮しているゆっくりたちにちるのは、 「そと。あんまりおおいんでいりぐちのところにおいてきたんだ。」 と、いい群れ全体を見渡すようにして 「はやいものがちだよ。」 と興奮するゆっくりをあおるかのように言い放った。 「どくんだぜ。まりさがあまあまたべるんだぜ!」 「あまあまはとかいはなしゅくじょのものよ!」 「みょんはもっとあまあまたべたいみょん!!」 そう叫びながら出口へと殺到しる群れのゆっくりたち。 出口への通路は一匹ずつしか入れないのに我先にと押し合い、へし合いし正におしくら饅頭状態。 その様はまるでパニック状態である。 「やべてね・・どいでね・・」 足元で潰れる子ゆっくりもいたが誰も気にしない。 冷静なのはぱちゅりーとちるのだけだった。 ぱちゅりーは思った。 みんなあきらかに普通じゃない。 皆を止めねば。 そう長年おさをしていた自分の勘が言っている。 「むきゅ、待ってみんなおちついて・・・むぎゅっ」 しかし最早、暴徒と化しているゆっくりたちを貧弱なぱちゅりーにとめられるはずも無い。 早々に吹き飛ばされぱちゅりーは気絶した。 「ぐふふ。一番乗りなんだぜ」 入り口を一番初めに抜けたのは群れで一番狩りのうまいまりさだった。 そしてそのまりさの前にある黒いもの。あまあまだ。 「あまあまさんはまりさにゆっくりたべられてね!」 そう言い飛びかかろうとした瞬間 まりさの世界は反転し、地面から急激に離れていった。 「まるでおそらをとんで・・ゆうぅぅぅぅ!?」 そしてまりさが見たものは・・・ 「むきゅう・・・」 どれくらい気を失っていただろうか。ぱちゅりーは目をさました。 もう巣の中には誰も残っていない。みんな外へいってしまったようだ。 打ち所が悪かったのかまだ頭がふらふらする。 しかしここでじっとしているわけにはいかない。ぱちゅりーは外へと歩き出す。 せまい入り口からなんとか這い出る。冷たい雪があんよに痛い。 そこには誰もいなかった。 もうすっかり日がくれ、月の光が雪に照り返され幻想的ですらある。 さっきは夕方だったからかなりの時間気を失っていたようだ。 しかしそうなると疑問が残る。群れのみんなはどこへいったのか。 この雪のなかどこかへいったとは考えにくい。実際ぱちゅりーもすでにこの寒さにまいっている。 「むきゅう・・・みんなどこに・・・」 その瞬間ぱちゅりーの体がふわりと浮いた。あのまりさのように。 と思った瞬間、巣の上の崖まで引き上げられ、そのまま崖の上にしたたか体を打ちつけた。 「む・・・むぎゅううぅぅ・・」 痛みのあまり悶えることしかできないぱちゅりー。 なんとか痛みに耐えつつ顔をあげるぱちゅりー。 そこで見たものは 見上げるような巨体、 白いお帽子 特有の下膨れの顔 れてぃだった。 だがぱちゅりーが本当に驚いたのはその横にいるゆっくりだった。 それはまぎれもなく自分の群れのちるのだった。 その二人の足元には仲間たちのものだったリボンやおぼうしが散乱している。 ぱちゅりーはすべてを理解した。いや理解したくなくても理解せねばならなかった。 仲間たちはこいつに食われたのだと。 そしてちるのが裏切り者だということ。 そう二匹はぐるだったのだ。 解説させてもらうと、ちるのは最初かられてぃの指示でこの群れに潜入したのだ。 れてぃへの食料として差し出すために。当然身の上話は同情を誘う為のでたらめである。 なぜこんな回りくどいまねをするのかと言うとこの群れの巣がなかなかやっかいだからである。 力技で巣の入り口を壊しても、れてぃの大きさでは巣にはとても入れない。 入り口から舌を伸ばすにしても、中のゆっくりたちまで舌が届かない。 仮に届いたとしても捕まえられるのは1匹か2匹。残りは舌の届かない奥まで逃げられてしまう。 だからこそれてぃは自分の配下であるゲスちるのを使ったのである。 作戦はこうだ。 まずゲスちるのをゆっくりの群れの中に潜入させる。 ゲスちるのは自らの長所を活かして冬ごもり中の群れに食料を提供し、群れの信用を得る。 この信用が曲者だったのだ。 仮に見ず知らずのゆっくりが「あまあまあげるよ」といっても付いていくゆっくりは少数だろう。 野生のゆっくりはそこまで餡子脳だと生き残れないのだ。 しかしこのゲスちるのの場合どうだろう。 このゲスちるのはすでになにもない冬の山から餌を手に入れると言う奇跡をおこしている。 群れは、ちるのなら野生では入手困難なあまあまを手に入れても不思議でないと思ってしまったのである。 また群れ全員に少量ずつあまあまを与えたのもうまかった。 人間空腹時にほんの少しだけ食べるとかえってお腹がすくものである。 甘味に飢えていたゆっくりにあまあまを少しだけ与えることで、もっとほしいと思わせ理性を失わせたのだ。 あまあまという欲望に支配されたゆっくりたちはおかわりがあるといえば外へ先を争って出ようとする。 あとは巣の上の崖に待機していたれてぃが舌で、巣から出てきたゆっくりを捕まえるだけ。 崖といっても2mもないので余裕でれてぃの舌が届く。あまあまに夢中のゆっくりは気づかずどんどん捕まっていく。 更に言うならこの巣の地形もれてぃに気づかなかった原因である。 もし普通の巣だった場合、2,3匹ずつ出てくるはずなので、れてぃの舌も全員捕らえることはできなかっただろう。 入り口が細長く一匹ずつしか出られない為、出てきた順番にれてぃの舌に捕まっていったのだ。 その様はまるでカツオの一本釣り。そして悲鳴を上げられないように次々に丸呑みしていったのだ。 「ひどいわ。むれのみんなをだましてたのね」 「そうだよ。あたいにとってのおさはれてぃだけ。」 そういうとにやりとわらうちるの。 ぱちゅりーは今頃になって自分が感じていた違和感の正体に気が付いた。 ちるのの笑顔だ。 今までぱちゅりーの知っているちるのの笑顔はもっと無邪気で純真だった。 ゲスまりさのように下卑た笑いではない。 しかし今頃わかっても全てが遅すぎた。 「むきゅうぅぅうう!みんなをかえしないよぉぉぉ!」 ぱちゅりーはれてぃを見据えて叫んだ。 こんなことしてもみんなが帰らないのはわかっている。しかし長としてそう言わずにはいれなかった。 「いいわよ」 「むきゅ!?」 予想外の言葉にぱちゅりーは驚いた。 「まあもっともこれをみてもそういってられるかしらねぇ。」 そう言うとれてぃは、ばっくりと大きくその口を開けた。 「むぎゅううううぅぅ!!えれえれえれ。」 思わずクリームを吐いてしまうぱちゅりー。 その口の中にいたのは紛れも無くぱちゅりーの群れのみんなだった。 しかし全員顔が無かった。 それどころか全身の皮がとけかかっており、薄皮一枚でなんとかなんとかゆっくりとしての形を維持しているものの 餡子のかたまりがうぞうぞ動いているようでかえってグロテスクである。 そう、皆れてぃの胃液(れてぃ曰く、くろまく液)によって溶けかかっていたのだ。 れてぃ種の習性として自分の胃液をコントロールできるというのがある。これにより、捕食したゆっくりを口のなかで 保存食状態にできるのだ。おそらく春夏秋をほとんど冬眠のようにくらす為だろう。 またその保存食を吐き出し、その甘い香りで他のゆっくりをひきつける撒き餌のような使用法もある。 実際このれてぃの保存食は人間にも愛好家は多く、高級ゆっくり料理店でしか出されないような代物だ。 ちるのに持たせたあまあまも当然それである。 保存食は一応生きているものの、もはや生きていると言うより、まだ死んでいないと言ったほうがいいだろう。 そうやってぱちゅりーがクリームを吐いて痙攣している所、れてぃの口の中から這い出てきたゆっくりが1匹いた。 なぜか、全身溶けかかっているのにぺにぺにをおったてたまま、クリームを吐いて動けないぱちゅりーに向かっている。 じつはこれ最初のシーンにでてきたお花畑ありすである。生命の危機に直面してれいぱーとしての本能がめざめてしまったらしい。 そしてその欲望は唯一無事なぱちゅりーへむけられてしまった。 必死で逃げようとするぱちゅりー。だが腰が抜けてしまって動けない。ついにありすにつかまってしまった。 そして始まる悪夢のような光景。 顔なしありすに執拗にすーりすりされるぱちゅりー。 皮が無い為、直接分泌液がぱちゅりーの肌へ塗りこまれる。 植物型にんっしんの茎がぱちゅりーからどんどん生えてくる。 「む・・むきゅぅぅ・・やべて・・・」 何とかやめさせようとするももう力が入らない。 のっぺらぼうのゆっくりににちゃにちゃと愛撫される恐怖にもはやぱちゅりーは限界だったのだ。 「えれえれ・・・もっとゆっくりしたかった・・・」 ついにぱちゅりーはショック死してしまった。 人間で言えば内臓むき出しの人体模型に襲われたようなものだから無理もない。 「ふん。しょせんひんじゃくなつうじょうしゅねぇ。」 れてぃは鼻で笑うように言い放ち、ぱちゅりーの死体をごくんと飲み込んだ。そしてありすのほうへ向き直る。 ありすは近くにあった切り株にむかってすーりすりしていた。 無理やりかたい木に体をこすりつけているのだから、命の源である餡子がぼろぼろと下に落ちていく。 もはやまともな思考ができないのだ。 もう何分と持たないだろう。 「まったく。せいよくだけはいちにんまえね・・・」 そう呆れたようにいうれてぃ。しかしその表情が急に変わった。 「こんなやつらのために・・・こんなやつらのためにぃ!!!」 次の瞬間れてぃはその巨体に似合わない身軽さで突進した。 その突進した先にいるのは切り株に愛撫し続けるありすだ。 どん。 もともと体の崩れかけていたありすはひとたまりも無い。 餡子を地面にぶちまけて永遠にゆっくりしてしまった。 しかしれてぃは止まらない。 「こんなくずどものために!わたしたちは!わたしたちはぁぁ!」 そう言いながらありすの死体を踏み続ける。 その表情からは先程の嗜虐と嘲りは消え、憎悪と怒りしか見えない。 れてぃが落ち着き、それをやめたころには、ありすだったものは雪の上にぐちゃぐちゃになった餡子が残るだけだった。 「れてぃ・・」 そう心配そうにつぶやくちるの。 こちらも先程のゲスの表情はもうなくなっている。 どうやらこのちるの、ただ欲望のままゲスになったのではないらしい。 その後、二匹は言葉をかわすことなく、自分たちの巣のある森の奥へときえていった。 そして一部始終を見ていたものがいた。 「あわわわわ・・・・たいへんなんだねー。わかるよー。」 このちぇんはとなりの群れのゆっくりで、冬ごもり中なにか問題が起きてないか、この群れの様子を見に来たのだ。 「みんなにしらせるんだねー。」 ちぇんはきびすを返すと自分の群れへと急いだ。 (スタジオに切り替わる) いかがだったでしょうか。あの二匹がなぜゲスになったのか、なぜあれほどまでに通常種を憎むのか。 我々にはうかがい知ることはできません。 しかし、一見何も考えていなさそうなちるの種やれてぃ種もまた様々な過去や苦悩を抱えて生きていることはご理解できたと思います。 しかしどれほど深い事情があろうと罪は罪。 こうしたごく一部のゲスちるののせいで他の多くの善良なちるの種が群れから追放されていったのを忘れてはなりません。 このあたり山々はゲスちるのが長い間いなかった為、群れの中に多数のちるの種が通常種と共に暮らしていました。 しかしそれも終わります。 目撃ゆっくりがいた為、冬ごもり終了後ゲスちるのの存在は群れの間へとすっかり知れ渡ってしまったのです。 そして始まるちるの種への迫害。 多くのちるのが群れからの追放処分や村八分に苦しみました。 しかしちるの種への苦難はこれだけでは終わらなかったのです。 (後編へ続く) あとがき 原作でも二次創作でもレティとチルノのからみは多いのに、なぜかゆっくりSSではこのカップリングは皆無に近い状態だったのでれてぃ=ちるの種専用のドスというイメージで駄文ながら書かせていただきました。 このれてぃがなぜ通常種を憎むのかは「野望のれてぃ れてぃの王国建国」(仮題)で書きたいとおもいます。 by長月
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※ある意味ゲス大勝利 ※おれ、希少種好きなんだな、これからもどんどん優遇するよ! 人里から離れた所にある森のゆっくりの群れ。 開けた場所にある群れの広場では、れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、み ょんと言ったゆっくりたちが思い思いにゆっくりしている。 朝から好きにゆっくりし続けていたが、やがて昼頃になると、子供たちが空腹を訴えて 騒ぎ出した。 「おきゃあしゃん、おにゃかすいちゃよ」 「ゆん! れいみゅも!」 「まりしゃも!」 「ゆん! それじゃ長のおうちに行こうね!」 ぞろぞろとゆっくりたちは長のおうちの洞窟へと向かう。天然の洞窟を利用している長 のおうちは、いざとなった時に避難する場所でもあり、多少窮屈なのに我慢すれば、群れ のもの全員を収容できる広大さであった。 「むきゅ、それじゃ持って行きなさい」 長のぱちゅりーは、洞窟の奥の貯蔵庫にあるごはんを分配した。 「わーい、おいちちょーだにぇ!」 「おうちにかえってむーしゃむーしゃしようね」 「むーちゃむーちゃしたらおひるねすりゅよ!」 「れいみゅたち、とってもゆっくちちてるね! 意気揚々と引き上げようとするゆっくりたちだったが…… 「ゆっ!」 一匹の子まりさが、何かを見つけて声を上げた。 「くじゅのれっとーちゅがいりゅよ!」 そう言った子まりさの視線の先には、一匹の子ゆっくりがいた。 「ゆ?」 なにが起きたのかよくわかっていないらしいその子ゆっくりは、 「ゆっくちちていっちぇね!」 とお決まりの挨拶をした。 「ゆ?」 「ゆゆ!」 子まりさの両側から子れいむと子ありすがやってきて、その子ゆっくりを見やる。 子まりさも含めて三匹とも、今の挨拶を聞いているはずなのに何も言わない。これだけ で異常事態である。普通ならば、この三匹も同じ挨拶を返すはずなのだ。 「ゆぅ? ゆっくちちていっちぇね!」 不思議そうにしたその子ゆっくりは、もう一度元気に挨拶した。 それに返って来たのは、汚いものを見るような子れいむと子ありすの目であり、同じ目 をした子まりさの体当たりであった。 「ゆぴ! い、いぢゃいぃぃぃぃ!」 「くじゅのれっとーちゅがあいしゃつしにゃいでにぇ!」 「むきゅ! やめなさい!」 騒ぎを聞きつけて長ぱちゅりーがやってくる。 「ゆぅ……おさ」 子まりさは、不満そうに後ろに下がった。 「れっとーちゅはきやすくあいさつしにゃいでにぇ!」 「いにゃきゃもののれっとーちゅめ!」 「れいみゅたちみたいなきちゅとはみぶんがちぎゃうんらよ!」 三匹は口々に罵倒しつつ帰っていく。 「ゆ……ゆぴぃ……お、おしゃぁ」 泣いていた子ゆっくりは、三匹が去り、そこにいるのが長ぱちゅりーだけと知るとそれ に縋り付いた。 「まったく、あの子たちは……よしよし、泣くのは止めなさい」 「ゆぅ……しゃなえは……れっとーちゅにゃんだにぇ」 子ゆっくりは、さなえ種であった。 子さなえは、どことなく諦観を面に表していた。 これまで教育されて頭では理解していたことを体に刻み込まれて嫌でも理解させられて いた。 「むきゅぅ……確かにそうよ……でも、だからと言って暴力を振るうことはぱちゅは許し ていないわ。さっきみたいにされたら言いなさい」 「ゆぅぅぅ、おしゃぁぁぁ!」 子さなえが長ぱちゅりーの言葉に感泣する。 「ゆぴゃあああん、おしゃあ!」 「ゆっ、ゆっ、おしゃ、ありがちょう」 「ゆぅぅぅ、ゆうきゃたちはれっとーちゅだけど、やさちいおしゃがいてよかっちゃわね」 そして、一連の出来事を物陰から見ていた子ゆっくりたちも同様であった。 かなこ種、すわこ種、ゆうか種――他にもらん種、すいか種、めーりん種の子供たちが いた。 皆、れっとーちゅ、すなわち劣等種であった。数は大人が十匹、子供が二十匹ほどだ。 この群れは、厳しい身分制があり、劣等種は、先ほどの子れいむが言っていた「きちゅ」 すなわち貴種の下に置かれている。 貴種はれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょん種である。こちらは大人 が百匹、子供が二百匹以上といったところか。 あらゆる点で貴種に劣ってゆっくりしていない劣等種は、毎日狩りをしてその成果を貴 種に献上することでなんとか群れにいることを許されていた。貴種の方が数が多いのだか ら、それは大変な労働であった。 今現在、大人の劣等種たちは狩りに出かけているところであり、その間、子供たちを長 が預かっているのである。 先ほど貴種たちが労せず持っていった食べ物も、全て劣等種が集めてきたものだ。 相当ゆっくりできていない劣等種たちだが、生まれた頃から自分たちは貴種よりも遙か に劣っていると叩き込まれているために反乱に踏み切ることなどできなかった。 そして、先のやり取りを見てもわかるように、長のぱちゅりーはかなり穏健な対処をと っており、どのようにゆっくりできなく劣等なものたちでも同じ群れの仲間であり、また 一生懸命劣った体で狩りをして食料を集めているのだからと、馬鹿するのはともかく物理 的な暴力の行使は許さなかった。 そのため、劣等種たちは重労働の狩りに耐え、貴種からの蔑みにさえ耐えれば、子供を 産むことも許されたし、夜の一時――むろん早朝から狩りに行くのだから早く眠るために 僅かな一時ではあったが、家族でゆっくりできぬこともなかった。 反抗できずとも、群れからの逃亡ならば可能であるのに、それをしないのもそのためだ。 ここから逃げ出しても、群れの外もまた劣等種である自分たちへの敵意に満ちているで あろうと、思い込んでいた。 自分たちが逆らっても勝てっこないという諦観――。 そして、我慢していれば殺されたりはしないという希望――。 その二つが天秤の両端に乗って、バランスをとっていた。 「ゆぅぅぅ、おしゃがじゃまちなければ、れっとーちゅをせいっしゃいしてやっちゃのに ぃ!」 「ゆゆん、にゃんでおしゃはあんなやちゅらにやちゃちくすりゅんだろうにぇ?」 先ほど、子さなえをいたぶろうとして長に止められた子まりさたちは不平たらたらであ った。 貴種は貴種で、自分たちがいかに優れていて、いかにゆっくりしているかを教えられて 育っているので劣等種のことは当たり前に見下している。 粗暴なものは、劣等種へ暴力を振るいたがるが、それを許さぬ長に対して不満を持って いた。 「ねえ、どうちちぇ?」 子まりさは、不満と疑問をストレートに親にぶつけた。 「ゆぅ、まりさたちも長はやさしすぎだと思ってるけど……この群れができたのは長のお かげだからね……」 親まりさはそう答えた。 大人のゆっくりたちも、長が劣等種を(貴種に言わせると)優遇しているのは疑問に思 っているのだが、そもそもこの群れを作った創成期のゆっくり唯一匹の生き残りがあの長 ぱちゅりーなのである。いわばその功績に対する尊敬というか気後れというかが大人たち が表立って長に不満を表明することを躊躇わせていた。 「むきゅ、安心しなさい」 そう声をかけてきたのはぱちゅりーだった。 このぱちゅりー、長ぱちゅりーの孫にあたる。 両親は既に死んでいて、長の唯一の身内であった。長と同じぱちゅりー種ということも あって頭がよく、次の長になるだろうと言われていた。 「ぱちゅが長になったら、全部よくなるわ」 と、言ったこの孫ぱちゅりー、もう自分は長になるのは決まっていると言わんばかりで あった。 「おばあちゃんは……あんまり言いたくないけどもう長くないわ。もう少しの辛抱よ。ぱ ちゅが長になったら、貴種は貴種らしく劣等種は劣等種らしくするわ」 と、あんまり言いたくないようには見えない顔で言った孫ぱちゅりーに、その場にいた 貴種ゆっくりたちの期待の眼差しが注がれる。 孫ぱちゅりーは、それを心地よさそうに受けていた。 ここ最近、孫ぱちゅりーはこうやって今の長が劣等種に対して肩入れし過ぎると不満を もらすものがいると、このように自分が長になったらよくなると言って回っていた。 いわば、次の長の座を確実にするための運動である。 これによって、不満を持っている貴種たちも、差し当たっては暴発せずに我慢していた。 ここにもまた微妙なバランスをたもつ天秤があった。 「ゆっゆっゆっ」 「きょうはたくさんとれたねえ」 「そうだねえ、みんなよくがんばったよ」 陽が落ちる前に、狩りに行っていた大人の劣等種が帰って来た。 その成果を長のおうちの貯蔵庫に運び込む。 「むきゅ、今日はまたがんばったわね、ごくろうさま」 長ぱちゅりーが声をかけると、劣等種たちはとてもゆっくりした笑顔になった。 この群れで、このように暖かい言葉をかけてくれるのは長と、もう一匹ぐらいであった。 その、もう一匹というのが、狩りに付き添っていた一匹のれいむである。 「ゆぅ、なんにもいじょーなしだったよ」 「むきゅ」 長にそう言ったれいむの役目は、劣等種たちの監視である。と、言っても、実際はただ 単に付き添っているだけである。 貯蔵庫に食べ物をおさめると、劣等種たちは長に預けていた子供たちを連れておうちに 帰る。 入り口までそれを送りに出たれいむは、それを見ている貴種たちを見た。ひーそひーそ と内緒話をしているが、聞こえずとも何を言っているかはわかる。 劣等種と、それに劣らぬ劣等ぶりなれいむを嘲笑っているのだろう。 れいむは、貴種たちにダメれいむと呼ばれていた。 はっきりいってそう言われるだけのことはあり、れいむは何をやってもダメだった。 かけっこ、おうた、けんか、何をやっても同世代のものたちの中で最低だった。 いつしか、あいつは姿形こそれいむだが中身は劣等種だと言われるようになった。その ことを特に苦々しく思っていたのが同じれいむ種たちで、自分たちの面汚しだとばかりに もうこいつの扱いを劣等種と同じにしろと言い出したものだ。 長が、れいむに身の回りの世話を頼んだのはそんな時だ。 貴種は、労働をしない。 長の世話を労働と呼ぶかどうかについては議論の余地はあろうが、少なくとも劣等種た ちに課された狩りに比べれば軽労働であろう。 それとともに、劣等種の監視という名目で狩りに同行させることにした。 とりあえずそれで、ダメれいむを完全に劣等種扱いせよとの声はおさまった。もちろん 劣等種同然のダメれいむという評価は定着してしまったが。 れいむは、長のその一連の処置を感謝していた。 今ではれいむは狩りに行くのが楽しみになっていた。 狩りに行けば、そこには自分をダメれいむと蔑む貴種はいない。 散々自分が蔑まれたれいむは劣等種たちにも優しく接していたために、彼らとも仲良く なっていた。 「ゆぅ……」 おうちの奥へとぽよんぽよんと跳ねるれいむの顔色は冴えない。 ここ最近、時々れいむは誰もおらぬところでこのような顔をすることがあった。 「どうしたの?」 突然いないと思っていた長に声をかけられて、れいむは驚いて跳ね上がった。 「ゆ! ゆ! ゆゆ! れ、れいむは別になやんでないよ! 長に聞きたいことなんかな いよ!」 「むきゅきゅ」 長はれいむの様子を見て微笑んでいた。 「む……き……」 だが、次の瞬間、その顔は歪んだ。 「げ……ごほ! ごほっ!」 「ゆゆ! 長!」 れいむが慌てて跳ねよって心配そうにする。 「むきゅ……大丈夫よ……でも、もうそろそろぱちゅも永遠にゆっくりするころね」 「ゆゆぅ、長、そんなこと言わないでね」 れいむは、純粋な悲しさもあったが、長という庇護者を失うことへの恐怖も同時に感じ て表情を暗くした。 次の長は、おそらく長の孫のぱちゅりーだろう。 しかし、こちらは劣等種にも自分にも相当辛くあたってくるであろうことは容易に推測 できた。 「れいむ……」 「ゆん?」 「なにか聞きたいことがあったら、ぱちゅが永遠にゆっくりするまえに聞くのよ。……今 までよくやってくれたれいむだからね、どんな質問にも答えるわよ。……孫にも教えてい ないようなことでも、ね」 「ゆ! ……ゆ、ゆぅ……も、もしどうしても聞きたいことができたら、そうするよ」 「むきゅきゅ」 長は笑顔になった。 先ほどの、慌てるれいむを見て浮かべた微笑が混じり物無しの純度の高いそれであった としたら、その笑顔には、多分に斜にかまえたような色があった。 「ゆっ! ゆっ! ゆゆゆゆっ!」 「ゆぐっ!」 かなこがごろりと地面に転がる。 「ゆん!」 転がしたのはすいかだ。 「さすがだねえ、すいか」 「ふふん、これでようやく勝ち越したよ」 何をやっているかと言えば、お互いに体を押し合って倒す遊びである。これをみんなは スモウと呼んでいた。 すいかは劣等種の中では一番の力持ちだ。 「よーし、それじゃ次は」 「かなこ、こないだのりたーんまっちだよ!」 と踊り出してきたのはすわこだ。 「よし、いっちょもんでやるか」 「まけないよー」 かなことすわこは、仲が良い一方でお互いへの対抗意識も強くことあるごとに張り合っ ている。 みんなが囃し立てる中、二匹は真っ向から激突した。 「ゆぅ……」 れいむも、それを見ていた。 今は、狩りの最中である。と言っても、もうだいぶ成果を上げたので、こうして遊んで いるのである。 監視役という本来の役割からすれば、れいむはこのことを咎めるべきであった。遊んで いる暇があったらもっと狩りを続けろと。 しかし、貴種よりも劣等種に親近感を感じているれいむは、そのようなことは言わなか った。 長は、どうも感付いているらしいのだが、 「……まあ、息抜きのゆっくりは必要ね」 と言って黙認している。 「ゆぅ……」 れいむは、複雑な表情であった。 かなことすわこのスモウは白熱している。 それを見て、れいむの中でどんどんある一つの疑問が大きくなっていくのを止められな い。 なんでもどんな質問にも答える、という長の言葉が何度も何度も思い浮かぶ。 明敏な長のことだ。れいむがどんな疑問を抱いているのかすら知っているのかもしれな い。 「……れいむ」 そんなれいむに声をかけてきたのはらんだ。 このらんは、とあることがあってからそれまで快活だった性格が暗く沈んだものになり、 あまり他のものとも話さなくなった。 そのらんが自ら声をかけてくるのは珍しい。 「かなこもすわこも強いな」 「ゆ?」 「わたしも、まけてないぞ。最近はやってないが、前はよくスモウをした。すいかにも勝 ったことがあるんだぞ」 「ゆ……それは……れいむも見てたよ」 まだ、らんの性格がこうではなかった頃、らんもみんなと一緒になって遊んでいたもの だ。何度かすいかのパワーをいなすようにらんが勝ったのをれいむも見たことがある。 「れいむは、どうかな」 「ゆ?」 「れいむは、わたしや、すいかやかなこやすわことスモウしたら、勝てるかな」 「ゆゆゆゆ!?」 れいむは改めてらんをじっと見る。冷徹な無表情であった。 そこからは蔑みとか挑発しようとかそういった感情は読み取れなかった。 「……勝てないよ……れいむは弱いから」 他の貴種ならば、口が裂けても言わぬことだが、ダメれいむと蔑まれ続けてきたれいむ にとっては、あまり抵抗のある言葉ではなかった。 なにより実際、とてもではないが勝てるとは思えなかった。 すいかやかなこだけではなく、ゆうかやさなえ、めーりん、この場にいる劣等種の誰に も勝てる気がしない。 「貴種で、一番強いのって誰だろうな」 「ゆ? ……それは……たぶん、まりさだよ」 まりさは、腕自慢のものを全て叩きのめした群れ一番の喧嘩自慢だった。れいむも長の 庇護を受ける前はよくいじめられたものだ。 「まりさ……ああ、あいつか」 「ゆぅ」 れいむはドキドキしていた。 らんが、ダメなれいむにならともかく、それ以外の貴種にも平気でぞんざいな口をきい ているからだ。 今のも、あいつ呼ばわりされたことを知られただけでまりさにせいっさいっされるだろ う。 「あのまりさとならどうだろう。どっちが強いと思う?」 「ゆ?」 れいむは卑屈な探るような視線でらんを見る。 まさか、まさか、まさか――。 「れ、れいむにはわからないよ。れいむダメだから、ばかだから」 困った時にいつもやっていたことをれいむはした。 れいむはダメだから、ばかだから、だから、わからない、だから、できない。 そう言えば、みんな納得してくれた。 「もちろんまりさのほうが強いよ、とは言わないんだな」 「ゆゆっ!」 れいむは哀れなぐらいに困惑していた。あの疑問がなければ、そう答えていたはずなの だ。れいむとて、貴種が優れており劣等種は劣っていると教え込まれて育ったのだ。 「れいむを困らせようとしたわけじゃないんだ。すまないな」 らんは、涙目になっているれいむにそう言って離れて行った。 らんも、れいむと同じ疑問を持っているに違いない。 そして、その疑問が確信に変わった時どうなるのか――。 長ぱちゅりーは数日後に生クリームを吐いて昏睡状態になった。 そこからなんとか意識を取り戻したが、もはや死を確信した長は皆を集めてその前で次 の長を誰にすべきかを問うた。 一瞬の間があってから、孫ぱちゅりーを長に推す声が上がり、やがてそれは大きな声と なった。 ちなみに、当然のことながら群れの行く末を決めるこの場に劣等種はいない。 「むきゅ……そう、それじゃあそのようにしましょう」 長ぱちゅりーはそう言って皆を解散させ、孫ぱちゅりーを自室に招いて話をした。 待ちに待った時が来たと孫ぱちゅりーは興奮しつつ帰っていった。 「長……」 れいむは長ぱちゅりーの死を間近にして、決意していた。 そして、それを長も察していた。 「れいむ、なにか聞きたいことがあるんでしょう?」 「……ゆん」 「むきゅ! 劣等種の子供なんか預かるのは嫌よ」 長の死後、新たな長になった孫ぱちゅりーは、とりあえず大人が狩りに行っている間に 劣等種の子供を長のおうちに預かるのを止めた。 今や我が城となった長の住居に劣等種など入れたくなかったのだ。 それに合わせて狩りのノルマも増やされた。 当初、子供たちだけを残していくのに不安を覚えた大人たちは何匹か残ろうとしたのだ が、増大したノルマに対応するためにはそれは無理であった。 そして、数日もしないうちに、留守に残っていた劣等種の子ゆっくりが、貴種の子ゆっ くりに暴行される事態が起きた。 もちろん、親たちは長に対して訴え出たが、劣等種といえども暴力を振るってはいけな いというのは前の長の時代の掟であって、自分が長になったからにはそのような馬鹿げた 掟は廃止だと告げられた。 仕方なく、大人が何匹か残ったが、貴種の子ゆっくりたちは制止する大人たちを嘲笑い ながら劣等種の子たちをいたぶった。制止と言っても少しでも触れたら劣等種の大人が貴 種の子供をいじめた、などと言われるのはわかっていたために懇願するしかなかったのだ。 それまでは満腹とは言わぬものの、それなりの量が支給されていた食料についても新長 は大幅に削減したために、空腹で傷付いた子供たちを前に劣等種たちは途方にくれた。 一度、れいむが改善を掛け合ったが当然のことながら無視された。 そればかりか、その話が群れに伝わるや、とうとうれいむはダメれいむから劣等れいむ と呼ばれることになった。 前の長の頃はこんなことはなかったのに、と嘆く劣等種たちにれいむはかける言葉も無 いといった顔をしていた。 「れいむ」 そのれいむへ声をかけたのは、らんであった。 「長に掛け合ったらしいな……馬鹿なことをする」 「……ゆぅ、でも、あまりにもひどいからね……」 「れいむは、ちぇんが死んだ時に、わたしをなぐさめてくれたな」 「ゆ、そんなこともあったね……」 「わたしは……いやわたしたちは、れいむのことを仲間だと思っているよ。……劣等種に そう思われるのは嫌かな?」 「……そんなことはないよ。れいむも、そう思っているよ」 「そうか」 らんは久しぶりに微かに笑って言った。 「ゆああああああ、おねえざん! おねえざぁぁぁん!」 一匹のさなえが泣いていた。 その前には黒ずんでいるさなえ種の死体がある。 頭から何本もの茎が生えていることから、すっきりのしすぎで死んだのは明らかだ。 泣いているさなえの姉のさなえで、今日は狩りの間に留守番をしていた。 お決まりの貴種の子ゆっくりの襲撃があり、それにやめてやめてと懇願し無視され、そ れでその日は終わらなかった。 子ゆっくりたちが引き上げた後、大人のゆっくりが何匹もやってきて代わる代わる、さ なえが死ぬまで犯したのだ。 その光景を見せ付けられた劣等種の子供たちはむろん見たままを証言したのだが、長と 幹部たちにより「劣等種の証言は信用できない」と断定されて無視された。 姉さなえを犯し殺した貴種たちの、 「さなえから誘ってきた。ほんとうなら劣等種なんかとすっきりしたくないんだけどあま りにもひっしに頼むからかわいそうになってすっきりしてやった。なんどやってももっと もっととせがむのでかわいそうに思って相手してやっていたら死んでしまった。まったく とんだいんらんめすぶただった」 という証言が全面的に採用され、姉さなえの死は事故、それも自ら望んだ自業自得のも のとされてしまった。 長も他の貴種たちも、それでその件は解決したとしてすぐに忘れてしまった。 劣等種をとことん見下していた貴種たちは、その細かな感情の動きなどに気を配ったり はしなかったし、そんな必要もないと思っていた。 奴らは劣等であり、自分たちの方が強い上に数も多いのだ。何かの間違いで反抗してき てもすぐに叩き潰せる。 そして、劣等で根性無しの連中は、見せしめに子供たちを痛めつけてやれば言うことを 聞くはずだ。 その程度の認識であった。 だから、劣等種たちの顔色から何から何までが以前のようではないことに気付いたのは れいむぐらいであった。 さなえは、死んだのだ。 前の長の頃には死ゆっくりなど出なかった。 それが超えてはならない一線であるというような認識は、当然ながら貴種たちには無か った。 今まで、前の長に遠慮していただけで、内心では劣等種など貴種に殺されても当然の存 在なのだと思っていた。 それが、一連の事件とそれに対する貴種の態度で、劣等種たちに刻み込まれた。 「れいむ、頼みがあるんだ」 らんがやってきた。 「ゆ? なに?」 「ほら、あのまりさ、群れで一番強いまりさ」 「ゆ……ああ、あのまりさ」 「まりさを呼び出してくれないか」 「ゆ?」 「実は……」 れいむはらんの話を聞いてまりさの所へ行った。 今や劣等種扱いのれいむであるから、ゴミでも見るかのような目をされたがそれでも一 応はれいむ種なのでなんとか話を聞いてもらえた。これが生粋の劣等種ならば話にもなら なかっただろう。らんも、それを見越してれいむに頼んだのだ。 そして、れいむの話を聞くや、まりさは身を乗り出してれいむに促されるまま、らんが 待っているという群れから少し離れたところへと着いてきた。 「ゆっ、ゆっ、ゆ~っ」 れいむの後ろで上機嫌にまりさは口ずさんでいる。 「ゆっへっへ、劣等種のくせになかなかわかってる奴なのぜ、あのらんのことはそれなり ーにあつかってやってもいいんだぜ」 まりさは、群れでけんかが一番強いことで貴種の中でも威張り散らしており、普通なら ば劣等種の呼び出しになど応じるわけがない。 それに応じたのだから、もちろんまりさがそうせざるを得ないほどの旨味があるのだ。 らんからの申し出は、狩りで得た食べ物の一部を他のものには内緒でまりさに渡すので 劣等種への便宜をはかって欲しい、というものであった。 最初それを聞いた時、まりさは疑わしい目つきでなぜ長に言わないのか、と聞いた。 「正直、長はあてにならないって……みんな、まりさの言うことの方を聞きそうだって」 と、れいむは答えた。らんに絶対にそう言っておいてくれと頼まれていた言葉だった。 それを聞くと、まりさはあからさまに喜んでれいむに着いてきた。 まりさは、その強さで新体制において群れの幹部におさまっているが、実のところ不満 であった。 自分こそ、長に相応しいと思っていた。 しかし、今の長は支持されている。前の長と同じぱちゅりー種で、その孫だからみんな 盲目的に支持しているのだ、とまりさは固く信じていた。 幹部であるまりさは、他のものより多くの食料支給を受けていたが、自分以外のものへ 分け与えられるほどではない。劣等種どもから別途食料が得られれば、それを与えて自分 のシンパを作ることができる。 それがある程度増えたところでクーデターを起こして長に取って代われば、みんななん となく支持しているだけなので、すんなりまりさを新しい長と認めるに違いない。 「ゆふふふ」 ほくそ笑むまりさの目の前のれいむが停止した。 「ゆ? ついたのかぜ?」 「ゆん」 れいむは一瞬、まりさを哀れみを込めた視線で見た。 しかし、劣等れいむごときにそんな目で見られるわけはないと思っているまりさは、そ れには気付かなかった。 れいむは、らんの申し出をそのまま受け取ってはいなかった。 これが他のもの、かなこ辺りからの申し出ならば、そうしただろうが、らんはどう見て もれいむと同じ疑問を持っていた節がある。 今回のまりさの呼び出しもおそらくは…… 「ゆん」 現れたらんに、まりさは倣岸にそっくり返る。 「わざわざまりささまが劣等種のために来てやったのぜ。話は本当なのかぜ?」 「ああ、嘘だ」 あっさりと、あまりにもあっさりとらんは言い切った。 「ゆあ? はあ? ゆゆゆゆ? な、なに言ってるのぜえええええ!?」 まりさは何を言っているのかしばらく理解できなかったようだが、ようやく理解すると 当然のことながら激怒した。 「まりささまは貴種でも一番けんかが強いのぜ! そのまりささまを劣等種ごときがから かったらどーなるかわかってるのぜ? 同じ貴種でも、まりささまをからかう奴はせいっ さいっするのぜ? それを、それを、劣等種ごときがあ!」 「せいっさいっ、か……」 らんは、少し考えるような素振りを見せたが…… 「じゃ、せいっさいっしてもらおうか」 「ゆっぎいいいいいいい!」 まりさはもう怒り過ぎて全く感情を制御できていない。 ただでさえ喧嘩っ早いまりさである。 「ゆっくりじねええええ!」 すぐさま跳ねてらんに飛びかかった。 「……!」 らんは、一瞬緊張した表情を見せたが、素早く後ろに飛んでまりさの体当たりを回避し た。 「ゆっ? よ、よくかわしたのぜ」 渾身の体当たりがかわされて、まりさは一瞬戸惑った。劣等種など、自分の体当たりを かわせもしないと思っていたのだ。 「ゆひゃあああ! いつまでかわせるのぜえええ!?」 気を取り直して飛び掛る。 「ゆ、ゆひぃ……ゆひぃ……なんで……どぼじで……」 そして、何十回も攻撃を繰り出し、そのことごとくがかわされ、とうとうまりさは疲労 で動けなくなった。 一方、らんは涼しい顔でそれを侮蔑をあらわに見ている。 「ゆ、ゆぎ、ゆぎぎぎぎ」 劣等種などにそんなふうに見られることは、貴種の中でも特に気位の高いまりさには耐 えられないことであった。 しかし、いかなまりさとて、実際ここまで攻撃がかわされ続ければ、らんの素早さは認 めざるを得ない。 ――ゆぎぃ、あたれば……いっぱつあたればあんな奴ぅぅぅ。 歯軋りするまりさに、らんは言った。 「終わりか、それじゃこっちから攻撃するぞ」 「ゆぅ……ゆへ」 まりさがにやっと笑う。 調子に乗って劣等種ごときが攻撃と来た。 これはチャンスだ。これを逃してはいけない。 「ゆ、ゆへえ、お、面白いのぜ、劣等種のごみのこーげきがまりささまに効くかためして みるのぜ、お、おばえみたいにコソコソ逃げないで、受け止めてやるのぜ」 そう言ってまりさはべたりと地面にあんよを密着させ、歯を食いしばった。 「よし、いくぞ」 らんは、跳躍した。 「ゆっはああああ! かうんたーなのぜ!」 まりさも同時に飛んで、真っ向から迎え撃った。 両者が激突し、らんがよろめきながらも着地する。 「ゆべえええ!」 一方のまりさは、跳ね飛ばされて着地もままならず顔面から地面に落ちた。 「ゆびぃぃぃぃ、い、いだいのぜええええ」 地面でこすった顔に小さな擦過傷が無数についている。 「ゆ、ゆびぃ、お、おがじい、おがじい、のぜ」 「おい」 「ゆ、ゆひぃぃぃ、く、くるなああああ! れ、劣等種は近付くんじゃないのぜえええ!」 「ふんっ!」 らんはまりさの前でくるりと回転した。 「ゆばああああ!」 尻尾に叩かれたまりさがふっ飛んで木の幹に激突する。 「ゆ、ゆびぃ、い、いだいのぜえ」 「おい、みんな、出て来い」 らんが言うと、そこかしこから劣等種たちが出てきた。 「ゆ、ゆひぃ」 プライドの高いまりさにとっては、こんな哀れな姿を劣等種に見られるのは辛いことで あった。 しかし、逃げ出そうにも体が動かない。 「「「ゆぅぅぅ……まさか、そんな……」」」 みな、愕然としている。 らんには、今から自分がやることを隠れて見ていてくれと言われていた。 群れで一番強いまりさがやってきて、らんがそれにあからさまに喧嘩を売るようなこと を言い出した時には皆恐怖に震えた。 らんがせいっさいっされて永遠にゆっくりしてしまう、と。 だが、そうはならなかったのは見ての通りである。 「みんな、わかっただろう。……こいつは……いや、こいつらは、貴種は……弱い!」 「「「ゆぅぅぅぅぅぅぅ……」」」 さすがにショックからすぐには立ち直れずに、劣等種たちは唸るばかりである。 らんの強さは幾度となくスモウで対戦してわかっている。劣等種の中でもそんなに群を 抜いて強いわけではない。 らんが、あそこまで余裕を持って勝てるのなら、他のものも、劣等種の中ではそんなに 強くないさなえでも十分に勝てるだろう。 「れいむ、すまなかったな」 「ゆん」 「……あまり、驚いていないな……やっぱり、お前もわかっていたのか?」 「ゆぅぅぅ、もしかしたら、とは思ってたよ……らんたちが狩りをしているのを見てたら ……どう見ても、れいむはもちろん、他のまりさとかれいむよりも……」 どう見ても、劣等種の方が身体能力が高い。 何度も何度も狩りに同行し、それを見ているとそう思わざるを得なかった。 それをそんなわけはない、そんなわけはない、と押さえ込んでいたのだ。 しかし、そんなれいむの前で劣等種たちは、群れで一番のジャンプ力が自慢のちぇんよ りも高く飛び、群れで一番の「剣」の達人であるみょんよりも巧みに口で棒を使っていた。 木の実を落とそうと幹に何度も体当たりするめーりんはどう見ても貴種の誰よりも頑丈 な体だったし、すいかよりも多くの荷物を持てるものなど貴種にいるとは思えなかった。 それが、れいむの抱いていた疑問であった。 れいむの餡子脳裏に、あの時の情景が蘇る。 あの時――そう、先代の長ぱちゅりーが死ぬ前のあの時だ。 「れいむ、なにか聞きたいことがあるんでしょう?」 「……ゆん」 れいむは疑問をぶつけた。 劣等種は弱く劣っていて、貴種は強く優れている。 そう教えられてきたし、この群れのものはみんなそう思っている。 だが、劣等種たちの狩りを見ていると、どうしてもそうは思えないのだ。みんな、貴種 の中でも優れたものたちよりも上に見える。 「むきゅきゅきゅ」 長は、笑った。 「……れいむ」 「ゆ、ゆぅ」 「その通りよ……劣等種は、貴種なんかよりも遙かに優れているわ」 「ゆ!? ゆゆ!?」 疑問は解決した。 しかし、戸惑う。長年の先入観は強く、れいむは実は、長にその疑問を馬鹿げた疑問と して否定されたがっていたのかもしれない。 「で、でも、どぼじで……」 「少し長くなるけど、話しておきましょう……あの馬鹿孫は話す価値がなかったからね」 長は、吐き捨てるように言った。 この群れが出来てしばらく経った頃、そばに住んでいた現在の劣等種たちの祖父母の代 のゆっくりたちと接触した。 友好的に付き合っていたのだが、こちらの群れから、油断しているうちにやってしまお うという意見が出た。 そんな物騒な意見が出たのは、奴らがその気になって侵略してきたらおしまいだからだ。 群れの創成期のものたちは、劣等種――人間たちは希少種と呼んでいるようだ――は自 分たちなど問題にしないような強さを持っていると認識していたし、それは間違ってはい なかった。 ゆっくりの天敵といえば捕食種のれみりゃ、ふらんだが、通常種(貴種)がこれらには なす術が無いのに対して、希少種はやりようによっては互角に渡り合える強さを持ってい る。 そこで、寝込みを襲って皆殺しにした。 むろん、罪悪感なくやってのけたわけではなくやらねばやられると思い込んでのことだ った。しかも、完全に奇襲したのに反撃にあってこちらも相当殺された。 目を覚まして騒いだ子供たちも殺したが、眠っていた子供たちをどうするかで意見が割 れた。 結局、とりあえず殺さずに、両親は突然襲ってきたふらんたちから自分たちを守るため に死んでしまったと言って、育てることにした。 子供の頃から洗脳して育てていけば、従順になるのではないかという打算があった。 奇襲成功にも関わらず手痛い反撃を受けて希少種の恐ろしさを痛感していたぱちゅりー たちは、こんな恐ろしいものは殺してしまわないと、と思うと同時にこの力を使えるよう になったら……という思いもあったのだ。 そして、希少種は劣等であると教え込まれ、貴種とされた通常種に逆らうような気にな らぬように育てられた。 創成期のゆっくりたちは次々に死んでいき、生き残ったぱちゅりーがそのシステムを完 成させた。 今や、群れでそのことを知るのはぱちゅりーだけだ。 「ゆぅぅぅ……」 話を聞いて、れいむは唸るしかなかった。れいむの中の長ぱちゅりーはひたすら慈悲深 い存在だった。 「むきゃきゃ……つまり、ぱちゅはとんでもないゲスなのよ」 長がそう言ってにたりと笑った時、れいむは中枢餡がゾッとする思いだった。 「で、でも長は優しいよ。劣等種にも優しくしてたよ」 「むきゅ」 長はおかしそうに笑った。 「れいむは優しいわね。だから、そういうあまあまなふうに考えるのよ」 「ゆ、ゆぅ……」 「ぱちゅが優しくしていたのには、全部理由があるのよ」 子供たちを預かるのは、ゆん質である。 暴行を禁止していたのは、何度もやられているうちに劣等種が死を覚悟で反撃して、そ れであっさり貴種が殺されてしまい、劣等種が真相に気付いてしまうのを防ぐため。 その他、あらゆる「優しい」処置は、全て劣等種を追い詰めてダメで元々と覚悟を決め て反乱に立ち上がらせたり、群れから逃亡させないためである。 「ゆ……ゆ……ゆ、で、でも」 れいむは、震えながら言った。 「でも、劣等種のみんな、長のことを好きだよ。長に感謝してたよ」 「むきゃきゃきゃきゃ! それもこれもぱちゅたち貴種が狩りもしないでむーしゃむーし ゃしてゆっくりするためよ」 「ゆぅぅぅ……」 「もう一度言っておくけど……ぱちゅは、ゲスよ、むきゃっ」 「ゆぅ……ゆ? ゆ、ゆ、長、長」 「なにかしら」 「そ、それじゃあ、これから……長が永遠にゆっくりしちゃったら、どうなるの?」 「むきゅきゅ」 「さ、さっき長、言ってたよね、次の長のぱちゅりーにはこのこと話してない、って」 「むきゅ、そうね」 「ど、どぼじて? は、話しておかないと、いけないんじゃ、ないの?」 「むきゃきゃきゃきゃ! だから、ぱちゅはゲスなのよ!」 「ゆゆぅ……」 「ぱちゅはね……あの馬鹿にはもうあいそがつきてるのよ」 「ば、馬鹿って……でも、ぱちゅりーは頭がいいってみんなが」 「あんなのはただの馬鹿よ、口だけ達者なだけ」 長ぱちゅりーは、次の長になる孫ぱちゅりーのことを話す時は声から表情から嫌悪感が ありありと出ていた。 「馬鹿のくせに、こともあろうに、このぱちゅを……」 「ゆゆ!?」 先ほど、孫ぱちゅりーと二人きりで話した時、その時に劣等種のシステムを全て打ち明 けるかどうかは長も迷っていたらしい。 しかし、孫ぱちゅりーは長ぱちゅりーの言うことを一切聞こうとはせず、あからさまに どうせもうすぐ死ぬのだからと軽んじていた。 そのことに、長ぱちゅりーは激怒した。 そうなると、日頃から自分が長になったらこんな間違った状態は正してやると言って回 っていたことも思い出された。 しかし、その場で罵ったりはしなかった。そんなことは馬鹿のやることだと思っていた。 だから、長ぱちゅりーは、何も教えてやらずに孫ぱちゅりーを帰したのだ。 「むきゅきゅ、ゲスなぱちゅは、もうあの馬鹿も群れの連中もどうでもいいのよ。むしろ あの貴種だと威張っている馬鹿どもは、劣等種に皆殺しにされてしまえばいいのよ」 「そ、そんな……」 これまでの経緯から、れいむの気持ちはとうに貴種などよりは劣等種寄りになっている。 しかし、それにしても、慈悲深いと思っていた長ぱちゅりーがこのようなことを考えて いるということがショックであった。 「れいむ……ぱちゅは、劣等種を道具だと思っていたわ」 自分たち、貴種が狩りもせずにゆっくり暮らすための道具。 そのために、長ぱちゅりーは長ぱちゅりーなりにあれこれ考えてやってきたのだ。 「なんとか……ぱちゅの生きてる間は上手くいったけど……これだって綱渡りよ。運がよ かっただけよ」 些細なきっかけで、天秤のバランスは崩れ、真実に気付いた劣等種たちが怒り狂って貴 種を殲滅する可能性はこれまでいくらでもありえた。 「それでも、ぱちゅだからできた、とは思っているわ。ぱちゅが死んだらほんの少しの遅 い早いの違いはあっても……すぐに駄目になると思うわ。それに……」 「ゆ……」 「れいむ、貴種を見てどう思う」 「ゆ、ゆゆ?」 「あいつら、ゆっくりしてるように見えるけど、どうかしら」 「ゆ……ゆっくり、してるよ、でも、なんか劣等種たちを馬鹿にしてる時とかは、ゆっく りしてないよ」 「むきゃきゃ、それはね、あいつらが働かないでもゆっくりできるからよ」 「ゆ!?」 「ぱちゅは、まさにそのために色々苦労してきたんだけど……生まれた時からそういう環 境にいると腐るのよ」 長ぱちゅりーの目から見て、とてもではないが奴らは貴種などという呼び名に値しない 存在だ。それどころか、奴らこそ劣等種と言うに相応しい。 「それに比べて、あの子たちは違うわ」 ずっと何かにがにがなものを噛んでいるようだった長ぱちゅりーの顔が、ふっと綻んだ。 あの子たち、というのはゆん質として預かっている劣等種の子たちのことだ。 子供たちは、先ほどれいむの言った通りに、長に感謝し、これを慕っていた。 知っていることを教えてやると、どんどん吸収する賢さもある。 長のやることは甘いよ、などと文句を言う連中や、自分が長になったら今のやり方は全 部変えてやる、などと言い回っている孫ぱちゅりーに比べれば、こちらの方が幾倍も可愛 い。 いわば、預かっていた子たちに情が移ってしまったのだ。 「ゆ! や、やっぱり、やっぱり長は優しいんだよ!」 れいむは勢い込んで言ったが、それに返って来たのは長ぱちゅりーの嘲りだった。 「優しいものですか! ぱちゅは、自分でそうしたというのに、そのせいで群れの奴らが 駄目になったからと、それに比べて可愛くて賢い劣等種の子たちに情を移してそのために 貴種の奴らなど殺されてしまえと思っているのよ」 「ゆ!?」 「無責任でひどいゲスなのよ、ぱちゅは」 「ゆ、ゆぅ……」 「むきゅぅ……大きな声を出して疲れたわ。そろそろ永遠にゆっくりさせてもらおうかし ら」 「お、長ぁ……」 「こんなゲスの死に泣くあまあまで馬鹿なれいむに言っておくわ」 「ゆ?」 「今でも、あなたは劣等種たちには好かれているわ。次の長が劣等種たちへひどいことを したら、それを止めるように言いなさい」 「ゆ、で、でも、れいむの言うことなんか」 「いいのよ、それで、あなたは劣等種たちの大きな好意を得られるわ……そうすれば、あ なたは生き残れるはず」 「長ぁ、なんで、なんでれいむにそこまで……」 長ぱちゅりーはそれには何も言わなかった。 劣等種の子たちのように賢いとは言えないものの、れいむもまた長を慕っていた。そし て、足りないながらも懸命に長の世話をしていた。 そんなれいむもまた、長にとっては可愛い子だったのだ。 しかし、それは言わぬままに長ぱちゅりーは永遠にゆっくりした。 ゲスが最後に言う言葉ではない、と思っていたのだろう。 「れいむ、れいむ、れいむ!」 「ゆっ! あ、ご、ごめん、ちょっとぼーっとしてたよ」 らんが自分の名前を連呼しているのに気付いて、れいむの意識は過去のあの時から、現 在へと戻ってきた。 れいむが回想をしていた間に、らん以外のものたちも現実を受け止めたらしい。 ていうか、いつのまにかまりさが破裂して死んでいた。 なんでも、すいかがまりさに思い切り押してみろと言い、まりさが必死に押したのだが すいかがその弱々しさに怒り出して、もっと強く押せと激昂し、これでせいいっばいなん でず、もうゆるじでぐだざい、とまりさが言ったらすいかがキレて体当たりしてそのよう なことになったらしい。 すいかがキレたのは、目の前のまりさにだけではなく、今までこんな弱っちい連中の言 うことを聞いていいようにされていたのかということへの怒りであろう。 そのすいかをはじめとして、かなこたちも明らかに先ほどまでと顔つきが違っていた。 その顔に、劣等種をごみと見下す貴種たちに通じるものを感じたれいむは寒気を感じた。 「れいむ、前にも言ったが、れいむは今の長がわたしたちにひどいことをした時に、それ を止めてくれた。ちぇんの時のこともあるし……れいむのことは、仲間だと思っている」 れいむは薄々と劣等種たちの本当の強さをわかっていたようだが、それとても確信があ ったわけではなく、さらにはあの時点でそのような行動に出るには十分に勇気が必要だっ たことをらんは認めていた。 「おう、そうさ! れいむは仲間さ!」 すいかが同調すると、それに賛同する声が上がる。 れいむは、とりあえずはほっとしたが、すぐに恐ろしくなった。 ――長、長! 長の言った通りになったよ! 長! 長はすごいよ、怖いぐらいに、す ごいよ…… 「よーし、それじゃ早速、あいつらぶっ飛ばしてやるか!」 すいかが頭を振って角をぶんぶんさせながら言うと、らんがそれに反対し、かなこも同 意した。 「なんといっても、数があまりにも違う、正面からやるのは少し減らしてからにしよう」 「そうだな」 「うーん、二人がそう言うなら、あたしはそれに従うよ」 「あいつらは、わたしたちを弱いと思っている……それにつけこむんだ」 活き活きとした表情で相談しているらんたちを見て、れいむはぶるりと震えた。自分は 外れているからいいものの、標的になっている群れの貴種たちのことを思うと、やはりそ こはれいむ種である、一抹の哀れさを感じていた。 後編に続く
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寒風吹きすさぶ工業団地の一角にある公園の中 そのゆっくり達はいた。 「風さんぴゅーぴゅー吹かないでね!れいむは寒いんだよ!」 「ゆーどうなってるのぜ?どうしてこんなに虫さんいないんだぜ!」 「むきゅ・・・去年はこんなに寒くなかったのに」 「花さんも全然ないわ、こんなの都会派じゃないわ」 れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ありす、4匹はブルブルと 震えながら、突然の寒波に戸惑っていた この地域は本来温暖であり、冬眠や冬篭りの習慣もなかったが今年は例年 になく、気温が下がり辛い冬となった 当然ゆっくりの餌となる虫や草は激減、寒さはお家に枯れ草を敷いたり 仲間同士かたまりスーリスーリすることでどうにか凌いできたが飢えだけ はどうしようもならない 「ぱちゅりーこのままじゃみんなお腹がすき過ぎて永遠にゆっくりしてしまうわ」 「そうだよ、ぱちゅりーれいむはあまあまが食べたいよ!なんとかしてね!!」 「むきゅ・・・そういわれてもこんな寒い冬さんはぱちゅも初めてだし・・・」 「なにが森の賢者なのぜ!!ぜんぜん役立たずなのぜ!!」 「むきょーー!ひどいわ!・・・んっ・・・あれはなにかしら・・・」 ぱちゅりーは公園の入り口の方に視線を向けた、話をはぐらかそうとしたわけではない 近くの工場の作業員であろうか男が一人、公園のベンチに腰掛けていた 時間は12時昼時である、男は手に持ったビニール袋からメロンパンの袋を取り出し、その封を開ける 「ゆわーー!!おいしそうだよ!パンさんはれいむの大好物だよ」 「あれはメロンパンさんだわ、すごく都会派な匂いよ」 その時まりさの目がキラリと光った。 「ゆっへっへっ!あのメロンパンさんを全部いただくのぜ!」 「なるほど・・・分けて貰えるようにお願いするのね。むきゅん」 「いいや、あの人間からメロンパンさんを奪うのぜ」 「無理よ・・人間さんには敵わないわ都会派じゃない事になるわよ」 「ゆふっゆふふ・・・」 その会話を遮るように不気味な笑い声が聞こえる。 「ゆふふふ・・・れいむにはまりさの考えがわかったよ。あの人間さん髪の毛は真っ白だよ お爺さんなんだよ、そして普通工場の人間さんは暖かいお部屋でみんな仲良くご飯を食べるのに あの人間さんは寒いお外で一人で食べようとしている・・・きっと嫌われ者なんだよ」 こういったゲスな事には鋭いれいむである 「なるほど、お爺さん相手だったらありす達なら楽勝ね」 「嫌われ者なら痛めつけても他の人間からの報復はないわね、むきょきょ」 「そうと決まればあのメロンパンをじじいから奪い返すのぜ!!」 そう言うが早いかゆっくり達はメロンパンにかじりつこうとする男の前に飛び出した。 「んっ・・・ゆっくりか・・・なにか用か?お前ら・・・」 「用も何もないんだぜぇ!!じじい誰に断ってここでご飯をムーシャムーシャしようと してんだぜぇ!!」 「そうよ!!ここはありす達のゆっくりプレイスよ、痛い目みたくなかったらそのメロンパンさん をよこしなさい!!」 「れいむ強いんだよ!ぷくーー!」 「むきょきょ、抵抗は無意味よ!」 普通なら問答無用で叩き潰される言動・・・セルフ死の宣告・・・ 「・・・なんだ・・・この寒さでエサが取れず苛立ってるって所か・・・いいぜ 食えよ・・・」 男はメロンパンを4つに千切るとれいむ達の前の置いてやる 「むーしゃむーしゃ、しっしあわせーー!」 「うめっこれめっちゃうめっ!がつがつ!」 「都会派な味だわ、でりーしゃすよー!」 「むきょーおいひいわー!」 メロンパンを食うゆっくり達、貪り喰う 「・・・それじゃ俺はアンパンでも食うか・・・」 男は袋からアンパンを取り出す、しかしその行動をゆっくり達は見逃さない 「待ってね!ハグハグ、そのアンパンさんもれいむ達の物だよ。ガツガツ!」 「そうなんだぜぇムシャムシャ!!白髪のクズじじいが食う位ならまりささまが食べてやるのぜ!パクパク」 「そうよこの田舎者!都会派の常識よぉ!」 「むきゅ・・・誰かお水を・・・パンさんが喉に・・・」 強欲!際限なき要求! 「おいおい・・・ずいぶんと欲張るじゃないか・・・ふーん・・・いいぜくれてやっても・・・」 にやりとほくそ笑むゆっくりたち(ぱちゅりー意外)相手が絞れると見れば絞れるだけ絞る最後の血一滴まで まるでヤクザ・・・テロリスト・・・最悪の思考! 「ゆふん!れいむに恐れをなしたね、なかなか利口な判断だよ」 「さあ白髪じじいはとっととアンパンさんをよこすのぜ」 「あら?ぱちゅりー食べてすぐ寝ると牛さんになるわよ」 「・・・きゅ・・・ちが・・・水・・・」 しかしゆっくり達は見逃していた、男の口の端がわずかに笑みを浮かべていたことに 「・・・俺一つと賭けをしようじゃないか・・・簡単なギャンブルさ・・・ 俺の投げたコインをお前らが裏か表か当てる・・・一回勝てばアンパンだけじゃなくこの 袋にあるポテチとオレンジジュースもやろう・・・嫌なら俺はもう戻るぜ・・・」 そう言うと男はベンチから腰を上げ公園を出る素振りを見せた 「ゆゆっ?まってねレイムのポテチさん返してね!」 「そうなんだぜ!白髪じじいに負けるわけないぜ、オレンジジュースさんはまりさのものなんだぜ!」 「そうよぉ!都会派にアンパンさんゲットだわ」 「む・・・・きゅお・・・・・・」 こうして勝負は開始された・・・ゆっくりの根拠のない自信と共に・・・ 「一番はれいむがやるよ、白髪ジジイを瞬殺だよ」 そういってふんぞり返りながら男の前にれいむが踊り出た 「フッ・・・れいむが一番手か・・・いいだろう・・・だがお前にはその頭の上のリボンを賭けてもらう・・・」 男の予想外の発言に唖然とするれいむ。自分は勝利しあまあまをムーシャムーシャする、それだけで頭がいっぱいだったのだ 「・・・なっ何言ってるのぉー!!おリボンさんがなくなったらゆっくりできな・・「やるのぜ!!」 れいむの抗議の声をまりさがさえぎる 「ばりざぁなに勝手な事言ってるのぉ!れいむのおリボンさんでしょぉー!」 「大丈夫なのぜれいむ、あんな白髪じじいに負けるはずないのぜ!それにここでゴネたらじじいに逃げる口実をやる だけなのぜ」 「そうよ、れいむなら都会派に完勝できるわ。ねっぱちゅりー」 「・・・・・・・」 ぱちゅりーはパンが喉につまりすでに永遠にゆっくりしかけていた。が、お昼寝を始めたと勘違いされ見事にスルーされていた 「決まりだな・・・始めるぜ・・・ピンッパシッ・・・さあ表か裏か・・・」 男は親指でコインを弾くと右手の甲で受け取り左手で挟みこむ 「さあ・・・れいむ・・・表か・・・裏か・・・」 おリボンを賭けた今れいむに当初の勢いはない、それどころかダラダラと砂糖水の汗を流している 「ゆゆぅ・・・表・・・嫌、裏のような気もするよ・・・」 「なにやってるのぜ!れいむそんなじじい相手にびびってんじゃないのぜ!!」 「そうよれいむ都会派じゃないわ!」 苛立つ外野の声、乱れるれいむの心、真綿のごとし 「ゆっ決めたよ!!表にするよ!!」 「・・・わかった・・・オープンだ・・・」 男はゆっくりと手をどかす・・・注がれる視線 コインは裏、敗北!覆る・・・れいむの絶対勝利! 「コインは・・・裏だ・・・お前の負けだれいむ・・・」 「ゆゆっ!ぞんなーどぼじでコインさん表じゃないのぉ!!」 「れいむなにやってるのぜー!そんな白髪じじいに負けるれいむはグズなんだぜ!!」 「この田舎物!制裁っしてやるわ!」 まりさとありすに挟まれ激しい暴力を受けるれいむ。まったくの加減なし 「おいおい・・・そのへんにしておけよ・・・とりあえずれいむのリボンはもらうぜ・・・」 「ゆんやぁ・・・れいむのおりぼんさんがえじでぇ・・・」 仲間にぼこぼこにされおリボンまで奪われるれいむ・・・もはや動く気力もない 「さあ・・・次は誰だ?・・・まりさかありすか・・・」 「まりさ様が勝負するのぜ!!」 勢いよくまりさが名乗りを上げる、その表情に一切の恐れはない 「いいだろう・・・ならばまりさお前にもそのとんがり帽子をかけて「まつのぜ!!」 男の話をまりさがさえぎった 「まりさが賭けるのはそこでお昼寝しているぱちゅりーのお帽子をなのぜ!」 「まりさ!何言ってるの都会派じゃないわよ!」 意外、まりさの提案。他人のお帽子を賭ける暴挙!しかも本人の承諾一切なし!! 「フッ、なるほどね・・・いるんだよな・・・自分は安全地帯で他人を危険にさらし勝負しようとする奴・・・ 今まで他人をハメることばかり考えて来た奴の思考・・・痩せた考え・・・」 実際まりさは他のゆっくりを犠牲にすることで生き延びてきたゲスである、仲間を囮にお野菜を盗んだり 口先だけで口説いたゆっくりとすっきりーをしそのまま母子共々捨てたことすらあった 「ゆっそれは違うぜじじい!ぱちゅりーはまりさの親友なのぜ!まりさのお帽子より・・・いや・・・まりさ 自身より大事なのぜ!その大切な物を賭けることでまりさは背水の陣をしいたのぜ!!」 「まりさ・・・そこまでぱちゅりーの事を・・・感動だわぁ!」 無茶苦茶な理論であるがまりさは大真面目である、無意識のゲス。罪を意識しないもっともドス黒い悪、それが まりさなのだ 「フフッ・・・アハハ・・・そう来るか・・饅頭の癖になかなかおもしろい事いうじゃないか・・・ ならば俺も少しはお前の狂気に答えなくちゃな・・・」 「じじい何を言ってるのぜ?」 「何・・・このままじゃまりさお前を鉄火場に引き込めない・・・だから掛け金を上乗せするのさ・・・ 俺は、当初のアンパン、ポテチ、オレンジジュースに加え先ほど得たれいむのおリボンを賭ける・・・ 倍プッシュだ・・まりさ・・・これでお前は自分の帽子を賭けざるをえなくなった・・・」 見る間に青ざめるまりさの顔 「なっ何言ってるのぜー!そんなこと勝手に「やるよぉ!!」 まりさの声をさえぎったのはれいむであった、その顔は腫れまるでゾンビである 「ヒィィッ!でいぶぅぅ!!」 「やるよねぇまりさぁ・・・逃げたりしないよねぇ・・・れいむに言ってたよねぇ・・・ あんな白髪じじい楽勝だってぇ・・・」 「そうよ、まりさは逃げたりしないわ!!だって自分より大事なぱちゅりーのお帽子を賭けたのよ 今更自分のお帽子なんてうんうんみたいなもんよ!!」 「ぞんなぁぁ!!」 まりさ追いつめられる、行動がすべて裏目。完全な自業自得・・・ 「決まりだな・・・いくぜ・・・ピンッパシッ・・・裏か・・表か・・・」 「ゆあー!かってに始めるなだぜー!」 ありすとれいむの応援が響く 「まりさ!!まりさ!!まりさ!!まりさ!!MARISA!!」 「ばりざぁ・・・ばりざぁ・・ばりざぁ・・・」 まりさに掛かる重圧、プレッシャー、ストレス、この状況から抜け出したい その一心でまりさは答えた 「はぁっはぁっ・・・表なのぜぇ!!」 「オープンだ・・・」 コインの向きは・・・ 「・・・裏だな・・・残念だったなまりさ・・・」 「ゆがーん!ウソなのぜぇー!」 「まりさぁ!この田舎物ぉ!」 「まりさぁ・・・まりさのお帽子素敵だよねぇ、でももう似合わないようにグシャグシャにしてあげる ねぇ・・・てめーの顔面の方をな!」 「やべでーばりざに近寄るなー!」 こうして男はまりさとぱちゅりーのお帽子を得ていびつな饅頭は二つになった 「さあ、ありす・・・次はお前だ・・・」 「来なさい、白髪じじい!ありすは負けないわ!」 ありすには秘策があった、裏・裏と連続したのだ次まで裏のはずがない。 事実コインギャンブルの確立は常に1/2である、確立的にも最善、安全な選択 「表よ!」 「・・・死ねば助かるのに・・・」 「えっ?」 「オープン・・・裏・・・」 三連続で裏はない・・・この考えはギャンブルでは通用しない・・・埋まっている・・・首まで底なし沼に! 「都会派じゃないわーーー!」 「ありずー」「制裁っ」 そのころぱちゅりーは三途の川で生死の境をさまよっていた 「むきゅ・・・ここは何処かしら大きな川さんね・・・あらなんだか光が見えるわ・・・それにあたたかい ゆっくりできるわぁー」 「おいお前、そこのぱちゅりーお前だよ!!」 声をかけたのは三途の川の渡し役、ゆっくりこまちである 「むきゅ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!じゃないよせっかく仕事さぼってすーやすーやしようと思ってたのに 悪いタイミングで死にやがって!」 「そう言われても、ぱちぇはなんだか川の向こう側へ行かなくちゃいけないような気が・・・」 「うるさい、あたしはお昼寝がしたいんだとっとと現世に帰れ!」くぱぁ! 「むきょおおー!」 川原の地面に穴が開きぱちゅりーは落ちてゆく 「・・・ぐえっ!がはっごほっ・・むきょ!」 ぱちゅりーが気が付くと背中の上にはぼろぼろのありす、自分の目の前には吐き出した餡庫にまざりぱちゅりー の喉を塞いでいたパンが落ちていた。 「みんながぱちゅの背中を押して助けてくれたのね・・・」 「まりさのせいで負けたんだよーこのゲス!」 「うるさいんだぜ!このレイパーのせいなんだぜ!」 「違うわよ、田舎者のでいぶのせいよ!」 「そこまでよ!」 「「ぱちゅりー」」 「なんだ・・・お前・・・てっきり死んだと思っていたが・・・生きていたのか・・」 どうやら男だけはぱちゅりーが死にかけていたことに気がついていたようだ 「むきゅ・・・たしかにぱちゅは一度死んだわ・・・でも地獄の鬼達を叩き伏せこの世に舞い戻ったのよ!」 「すごいのぜぱちゅりー!」「都会派よ!」「だかられいむにあまあまちょうだい!」 仲間の声援を一身に受けぱちゅりーは周りを見回すと瞬時に状況を理解した 「どうやらぱちゅ達は負けたようね・・・」 「なんだ・・・お前初めて見た時とはまるで別人だな・・・いや別餡とでも言うのかな・・・」 死線を潜り抜け、ぱちゅりーは何かを得ていた。神は困難を乗り越えた者に新たなる力を授ける事があるのだ 「むきゅむきゅむきゅー!」 ぱちゅりーの餡庫脳が唸りを上げ計算を開始する、この状況を打開するロジックそして勝利へのルート 「むきゅ!ぱちゅ達は白髪じじいに再戦を申し込むわ、ただしギャンブルの種目はぱちゅが決めるわ」 「何いってるのぉぱちゅりー!」「どうしたのぜー!」「すーやすーやzzz」 れいむ達からすれば寝耳に水である 「いいぜ・・・受けて立とう・・・ただお前らには相応の物を賭けてもらう・・・」 「当然ね・・・ぱちゅは全員のもみあげさんを賭けるわ!」 「何言ってるのぜ狂ってるのぜ!」「いやじゃぁーもみあげさんなくなったらゆっくりできないぃ!」「ぱちゅりー都会派な提案だわ!」 「ありす、あなたはもみあげさんがないからぺにぺにをかけてもらうわ」 「全然都会派じゃないー!」 阿鼻叫喚・・・当然であるゆっくりにとってもみあげを奪われる事は、人間が両腕を奪われる事に等しい 「面白い・・狂気の沙汰ほどおもしろい・・・ギャンブルらしくなってきたじゃないか・・・」 「白髪じじい・・・ぱちゅ達は作戦会議をするから少しまってちょうだい、みんなこっちに来て」 あまりの出来事の連続で混乱するばかりの仲間を落ち着かせるため、そして間を空ける事で男の勝負熱を下げ 流れを返るため、ぱちゅりーは作戦会議を始めた 「ぱじゅりーのばがーどうじでれいむのもみ上げさん賭けたのぉ!」 「勝手に人の物を賭けるなんてゲスすぎるんだぜぇ・・・」 「ありすのぺにぺに・・いやぁ!」 先ほどの敗戦が効いているのか、浮かぶのは敗北のイメージばかりである 「むきゅ作戦を説明するわ、勝率100パーセント、絶対勝利の計画をね・・・」 男はタバコをふかしていた、タダの暇つぶしのはずがここまで面白くなるとは正直思っていなかった 公園の端からはギャアギャアとゆっくり達の嘆きが響いている、しかしその声が止まったかと思うと不気味な 笑い声へとかわった・・・ 「ゆっへっへっこれは絶対勝てるのぜ、白髪じじいめ」 「白髪じじいも年貢の納め時だよ、ゆふふふ」 「田舎者の破滅する姿がみえるわぁ」 「むきゅきゅきゅ・・はじめましょうか」 ニヤニヤしながらゆっくり達は再び男の前の立つ、気持ちの悪い笑みには絶対的な自信が見え隠れしていた 「終わったか・・・ギャンブルの内容を説明してくれ・・・」 「ええ・・勝負は、れいむの左右のもみあげさんどちらかにコインを握り じじいがそれを当てる。それだけ・・・一回勝負よ」 「なるほどね・・・」 「ただし、れいむはじじいみたいにコインを弾けないから握る時にはじじいには後ろを向いて貰うわ」 「わかった・・・コインだ・・・」ピンッ・・・パシッ 「ゆふふ、たしかにれいむが受け取ったよ・・・後悔させてあげるね」 「やめるなら今なんだぜぇ白髪じじい!」 男はまりさの挑発を一切無視するかように後ろを向いた 「いいぜ・・・始めよう・・・」 「ふんっ・・・まりささまにびびってやがるのぜ」 にやりとぱちゅりーが笑いゲーム開始の合図を出す 「始めるわ!れいむはコインを握ってね!」 「わかったよぱちゅりー、コインを握るよ!」 れいむはコインを右のもみあげから左のもみあげに移し、そのままコインを 投げた、コインの行く先は大口を開けたまりさの口の中である。 そしてれいむは空になった両方のもみ上げを空のまま握りこんだ 「(むきゅきゅ、れいむ、まりさ完璧な仕事よ)」 これがぱちゅりーの作戦だった。 男が右左、どちらのもみあげを選んでも男の勝利はない、勝利を示すコイン自体 れいむのもみあげにはなく、まりさの口内にあるのだ。 あとは、男の指定した空のもみあげが開き男の負けが確定した瞬間、ありすがれいむによくやったと 飛び掛り全員で大騒ぎ、そのドサクサにコインを地面におけばいい。 完璧すぎる作戦、並の人間ではまず打破不可能な作戦とゆっくり達は思っていた しかしゆっくり達は思い知ることとなる、この男が並ではないことを・・・ 後半へ続く みなさんならどのようにぱちゅりー達の作戦を打破するでしょうか もし宜しければ推理して感想欄に書いてみて下さい。 後半はすでに出来ていますのでみんなの推理を見てから結末を変えるような ズルはしません、ご安心を。 後半は2日以内にはあげます。
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・初投稿です ・いじめ少ないです 『WARNING』 20XX年1月1日深夜2時 ある加工所にて 「WARNING,WARNING第5ブロックにてゆっくりが脱走。 繰り返す、第5ブロックにてゆっくりが脱走。 職員は脱走したゆっくりを捕獲せよ。これは訓練ではない。」 「おい、聞いたか?」 「ああ。新年早々ゆっくりが脱走かよ。」 俺は仲間の鬼意と深夜の中央司令室にいた。 「第5ブロックか・・・よし、行こう。」 「おk」 俺は捕獲用の網と籠とゆっくり用睡眠剤を持って鬼意と第5ブロックに向かった。 ~5分後~ 「うわぁ何じゃこりゃー。」 俺と鬼意はそう言った。 何せ500を超える饅頭がもぞもぞと動いているのだから。 「ゆっくりにげるよ!」 「そろーり、そろーり」 「れいむたちはこれからゆっくりぷれいすめざしてかこうじょからにげるんだね!」 「むきゅ!そうよこのじかんならにんげんさんもすーやすーやしてるからね!」 どうやら脱走の指揮を執っているのは、ぱちゅりーのようだ。 馬鹿な饅頭たちだ。 俺と鬼意は捕獲に取り掛かった。 「「「「「「「「「「なんでにんげんさんがここにいるのー」」」」」」」」」」 ゆっくりが気づいたようだ。 逃げるゆっくりがものすごい振動を起こす。 中には振動でレイパーになったアリスが周りのゆっくりを犯している。 ゲスが他のゆっくりを潰してまで逃げている。 だが前方には他の職員達が待機している。 俺と鬼意はどんどん睡眠剤を撒く。 「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!にんげんさんにつかまっちゃうよぉぉぉぉ!!!」 「ばかなにんげんさんなんてまりさのぷくーでいちころだよ!」 ゆうかん(笑)なゆっくりもいるもんだ。 前でもゆっくり用睡眠剤を撒いている。 ゆっくりの動きが鈍くなった。 「ゆぅぅなんだかねむくなったよーすーやすーや」 「みんなーねちゃだめー!!!」 ぱちゅりーが必死にみんなを起こす だがこの睡眠剤はとても強力だ寝たら12時間は起きない。 ぱちゅりーを透明な箱に入れ、他のゆっくりを回収していく。 「ふう、何とか回収できたぞ。」 「このゆっくり達はどうするんだ?」 「ぱちゅりーを尋問してから全部加工する。」 「ふーん、何匹かもらえないか?」 「また虐待か?」 「まぁな」 「こんなにいるから何匹か持って行ってもばれないだろう」 鬼意はれいむとまりさをお持ち帰りした。 ~12時間後~ 「むきゅ!ここはどこ?」 「起きたな。よし、はじめろ!」 スーツを着た男が行った。 「むきゅ!ぱちぇはもりのけんじゃなのよ! それがわかったらそこにいるばかなにんげんさんはさっさとここからぱちぇをだしなない!」 「うるさい。」ドン 男は透明な箱を叩いた。 男は続ける。 「なぜ脱走なんてした」 「ぱちぇたちはだっそうなんてしてないわ!ゆっくりぷれいすにいこうとしただけだわ」 「まあいい。お前には罰としてお前の仲間が加工されるのを見届けてもらう」 透明な箱の前にモニターが現れた。 そこには脱走したゆっくりが映っていた。 「ゆんやぁぁ!あんよさんがあちゅいよぉぉぉ!」 「たしゅけてぇぇ!」 「こんなのとかいはじゃないわぁぁ!」 「わからないよー」 「ちーんぽ」 モニターには鉄板上で叫ぶゆっくり達が映っていた。 「やめて!ぱちぇたちのなかまはわるくないわ!おねがいだからやめてあげて!」 「だまれ!」ドン 次に映ったのは潰されるゆっくりだった。 「かべさんこないでね!れいむつぶされちゃうよ!やめてね!やめてn」ブチュ 「どおじでごんなごどじゅるのぉぉぉ!」 ぱちゅりーは叫ぶ。 男は行った。 「お前が脱走を企てて、他のやつらを脱走させたからだよ。 お前がみんなを殺した。お前のせいなんだよ全部。」 「ぱ、ぱちぇがみんなをころしtエレエレエレエレ ぱちゅりーはクリームを吐いた。 だがオレンジジュースがかけられ意識が戻った。 「お前には仲間全員が死ぬまで死なせない。」 ぱちゅりーの口にテープが張られた。 これでクリームを吐いて死ねなくなる。 「むぅー!むぅー!」 何かを訴えている。 また足焼きもしているので動けない。 「まあ全員が死ぬまでゆっくりしていってね」 男はそう告げると部屋を出て行った。 ~1時間後~ 男は部屋に戻って来た。 「どうだ、お前の仲間が次々殺されるのをみるのは?」 ぱちゅりーは何も話さない。 男は赤い液体が入った注射器を取り出すと、ぱちゅりーに刺した。 ぱちゅりーは狂ったかのように身体をグネングネン動かすと、電池が切れたみたいに動かなくなった。 「処理完了」 男はそういうと部屋から出て行った。 by加工所職員
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死ぬ事は誰しもが恐れる事、死を目の前に狼狽しない者など、よほど達観しているか、 その死が五感で捉えるよりも早く、命の灯を消したかだ。 ゆっくりれいむの子、ゆっくりまりさは今、まさに消える命の灯であった。 野犬に襲われ、酷い傷を負い。既に母れいむの手の施しようのない所まで来ていた。 泣きながら延命を懇願するまりさにれいむはただ申し訳なさそうに見送るしかない。 「おかーしゃん・・・もっとゆっくりしたいよ」 無理だ。目元から足に至るほどの大きな傷ではもう歩けもしない。 それでも、母れいむは何度も頷き、もっとゆっくりしようねと落ち着かせる。 騒げば、それだけ体力を使う。そうなってはこんな小さな灯など死神の吐息で消えてうやもしれない。 「まりさ、かけっこでいちばんなんだよ」 知っている。母れいむはまりさの事を何でも知っている。 好きなご飯も、得意な遊びも、よくやる悪戯も、何も知らない事はない。 それでも母れいむは凄いねと褒めた。今はこうしてこの子と話ができるのが唯一の救いだ。 「むきゅ?れいむ、どうしたの?あ、ケガしてるじゃない」 そこにやってきた群れ一番の物知りぱちゅりーに母れいむは事情を話した。 「れいむ、ちょっとつらいかもしれないけど、ひとつかいけつさくはあるわ!」 それから1年が経ったある日、八意永琳は実験結果の回収にやってきた。 永琳の姿を見ると、物知りぱちゅりーは自慢そうに言った。 「おねーさんのやりかたでむれのみんなはずーっとゆっくりしてるよ!!」 森にはあちらこちらに黒い箱が置かれていた。 「こっちがれいむで、あっちがまりさ。むきゅん、すごいでしょ!」 「ええ、圧巻ね。群れのどれぐらいが永遠にゆっくりできるようになったの?」 「むきゅー・・・ほとんどよ!」 「誰と誰が残ってるの?」 「おねーさんがくれたはこにはいれないおおきなゆっくりがいるの。そのことぱちゅりーだけ」 「じゃあ、大きな箱を用意するわね」 大きな黒い箱の中に飛び込むゆっくりまりさ、まりさは頬にいくつも小さな傷があり、それがズキズキと痛んだが、もう大丈夫だ。 この箱に入れば永遠にゆっくりしていられる。だって、みんなもこの箱の中で永遠にゆっくりしているんだから、自分はそこに加わるだけだ。 仲間が箱に入る事を見送ると、ぱちゅりーは群れの中でたった1匹残ってしまった。 「これでみんなゆっくりできるね」 「あなたは入らないの?」 「むきゅ・・・」 防音、防臭の黒い箱はゆっくりが入ると天井となる板が固く閉まる構造になっていた。 中でどれほど呼びかけようと、外に聞こえる事はない。外でどれほど呼びかけようと、中に聞こえる事はない。 箱の中には可能性が二通りあって、中のゆっくりは死んでいるか、もしくは生きているか、 生きているという観測者がいる限り、中の箱は開かないのだから、生きているという仮定が永遠に続く事になる。 お話はここで終わる。お話と言うのは黒い箱の中のようなものだ。 ぱちゅりーはこの後、箱に入るかもしれないし、箱に入らず生きているという観測を続けるかもしれない。 箱の中のゆっくりはぱちゅりーの観測とは裏腹にどれも餓死か衰弱死しているだろう。 ゆっくりぱちゅりーはより大きな黒い箱に入れられた。永遠の命を持つゆっくりだ。 どこかにこのお話がある限り、ぱちゅりーは永遠のあらゆる可能性の中で生きる。 ~あとがき~ ぱちゅりーはずっと生きているのでしょうか、ずっと死んでいるのでしょうか、 それは分かりませんが、このお話はここでおしまい。 そして、もう一つ終わってしまう事があります。今までゆっくり虐待SSをたくさん書かせていただきましたが、 このSSをもって私のゆっくり虐待での活動を終わらせていただきます。いやー、私生活がちょっと忙しくなって・・・。 別の所で仲間と違う作品を作っていく事になりました。そちらもまたよろしくお願いします。今まで私のSSをご愛読ありがとうございました。 by118
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・このお話しは、anko1706 北のドスさま 前編その2 の続きの話しとなっております。 なのでそちらを読んでいないと、何がなんだがさっぱりわからないと思います。 ・その他の注意は前編と同じです。 「何か聞きたいことがあるって顔だねぱちゅりー?」 麓の村にある宿屋にて、男がぱちゅりーに尋ねる。 「むきゅうー、そのとおりよ。でも何度聞いても人間さんがまるで無視して答えてくれないから…」 ドスの群れへと視察へ行ったその後、 男とぱちゅりーは暴動の主犯であるまりさを抱えて、まっすぐ麓の村へと帰った。 途中の森で何度かぱちゅりーが男に話しかけたのだが、 男はキョロキョロと周りを見回すばかりでまったく反応してくれず、ぱちゅりーはそのうち質問することを諦めた。 ちなみにまりさは道中ずっとドスが悪い、ドスを制裁すべきだと、ギャーギャーうるさかったので、 男が当身をくらわせ、今は気を失っている。 そんなわけでドスの群れを出てからはじめて二人は言葉を交わしたのであった。 「いやー、ごめんごめん。ちょっとね、森内の死角をさがしてたんだわ。 それにあの森はドスたちのテリトリー内だぜ、どこに耳があるかわかったもんじゃない。 うかつなことを喋って相手にこっちの情報を与えることもないと思ってね」 「むきゅ!それじゃ、人間さんはドスが何かを企んでいると思っているわけ?」 「いや、まあ、どうかな?それをこいつに訊こうと思って連れてきたんだけどね」 男はベッドでぐったりと気を失っているまりさを指差す。 「まあ、あの群れには何かあるのは確実だろう。色々と気になる点も多かったし…」 「むきゅ、その人間さんが気になった点をぱちぇは聞きたいのだけれど」 ぱちゅりーもまた、あの群れにはなにか得体の知れない違和感を感じていた。 だが具体的にどこがどう怪しいのかと問われると、何とも言いがたい。 しかしぱちゅりーは、男ならばこのもやもやとした感覚に、しっかりとした答えを与えてくれるのではないかという期待があったのだ。 「んーとだな、まず第一にドスが直々に森の入り口で待っていたことかな」 男は顎に手をやりながら答える。 「むきゅ?それは人間さんたちとの協定関係を重要視してたからじゃないの?」 「まあそうだな、そう考えるのが一般的だと思う。 だが報告書によると、前回まで、つまり先輩が視察をしていたときには ドスはわざわざそんなことをしていなかったみたいだぜ、 なぜ今回にかぎってわざわざそんな面倒なことをしたのかな?」 男は逆にぱちゅりーに質問する。 「そ、それは、私たちが始めて森に来たから迷わないように気を使ってくれたんじゃないかしら?」 「いや、それはないよ。だってあいつ自分で言ってただろ『いつものにんげんさんとちがう』って、 あいつは今回オレたちが先輩の代理で来ることは知らなかったはずだ」 「!そういえば」 ぱちゅりーはハッとした様子で頷く。 「オレにはなにか……、森に見られたくない光景があって、 それを隠すためにわざわざ自分で群れまでの道案内をしたんじゃねえかと思えるんだわ。 例えば、群れの一部のゆっくりたちが他のゆっくりたちを虐待してるところとかさ」 そう男は指摘した。 そして実際にこの予想通り、男とぱちゅりーがドスに連れられて森を移動しているコースの すぐ目と鼻の先の場所では、いつものように幹部ゆっくりたちが奴隷たちをこき使っている光景が繰り広げられていたのだ。 それらの発覚を恐れたドスが、問題のない順路で群れまで先導したというのがことの真相であった。 「まあ、実際になんらかの虐待をしている所を隠しても、広場にゆっくりたちが集合したときの様子でバレバレだったんだけどね 集まってきた連中はほとんどズタボロで目が死んでたから」 「むきゅ!ゆっくりの数を数える為に、みんなが広場に集まったときの話しね! そのことのならぱちぇも気づいていたわ」 「みたいだね。やつらの出方を見たかったから、お前には黙ってるように合図したわけなんだが」 あの時、後から広場にやってきたゆっくりたちは、みな一様に目に光がなく、疲れきっている様子だった。 まあ相手は野生で暮らすゆっくりだ。疲れていたりボロボロだったりするのはそれ程変ではない。 だが問題は、はじめに広場で丸々と太って、とってもゆっくりしていた連中との対比だ。 同じ環境で暮らしているのにもかかわらず、ここまでの差が出るのは明らかにおかしい。 明らかになんらかの差別的な行為がこの群れで行われていることは、間違いなかった。 ぱちゅりーが初めに気づいて男に言おうとしたのはこのことである。 「その他にもぱちぇは、あのときのドスの冷や汗をかいた様子を見て、 ゆっくりの数をごまかしてるんじゃないかと疑ったんだけど…」 ぱちゅりーが躊躇いがちにあのときの自分の推測を口にする。 結局ぱちゅりーが睨んだ洞窟にはゆっくりの姿はなかったが、 その他の場所に隠れていないとも限らないと、ぱちゅりーは思い直していた。 「え?そうなの。オレはそれはないと踏んでたけどね。だってそんな簡単にバレるような嘘つくわけないだろ? もしそんなことしてたとしても、ゆっくりを数え終わった後に、隠れてそうな洞窟探し回れば一発で見つかっちゃうじゃん。 あの人そういうの絶対見逃さないから。 毎回毎回先輩の視察を経験しているドスがそんなアホなマネするとは思えんね。」 と、あっさりぱちゅりーの推論を否定する男。 「む、むきゅうー」 そう言われてみれば確かに男の言う通りである。 ぱちゅりーは段々自分の浅はかさが、恥ずかしくなってきた。 「あいつが冷や汗かいてビビッてたのは、単純に緊張と、 ボロボロのゆっくりのことを、突っ込まれやしないかとドキドキしてたからだろうな。 多分そのことを指摘されたときに備えて、何らかの言い訳は用意してあったと思うけどね。 大方、こっちが何を言っても実際に現場を押さえない限り状況証拠しかないから平気と踏んでたんじゃないかな?」 これまた男の予想は当たっており、ドスは男がゆっくりの数を数えている間、 何時ゆっくりたちの貧富の差を指摘されないかドキドキしていたのだ。 もし、指摘された場合は、現在は食の安全を最重要に考えており多少無理してでも食料を 集めるようにしているとか何とか言って誤魔化すつもりであった。 しかし、ドスの予想に反し、以外にも男は(ゆっくりたちの様子を窺うために)この事をスルーした。 もしも相手がいつも視察に来るおねえさんなら、絶対こんなことはあり得なかっただろうとドスは思った。 こうしてドスは、男のことを警戒するに値しない、大したことのない人間と結論付けるに至ったのだ。 まあ、要するに完全に男の術中にはまっていたわけである。 「そしてお次はあの洞窟内にあった大量の食料だ」 「むきゅ。あれは凄かったわね」 あのときの光景を思い出してか、遠い目をするぱちゅりー。 「凄いなんてもんじゃないさ、あれはもう緊急時の備えの保存食なんてレベルを超えてるよ。 あれだけの量をかき集めるのは半端じゃないぜ、恐らく群れのほとんどのゆっくりが ほとんど何も食わずに四六時中駆けずり回わって集めたんじゃないか?」 男は始めに食料庫を見たときから違和感を覚えていたのだ。 いくらなんでもこの量はおかしい、と。 事実あの大量の食料はドスが計画の為に、奴隷ゆっくりたちをフル動員させてかき集めたものであった。 「あれは、そう、明らかに何らかの用途を想定されて用意されたもんだろう」 「その用途ってなにかしら?」 「さあ?さすがにまだそこまではわからんね。 単純に考えれば、ドスが食料を独り占めするためかな… でも、そんな食い意地はってるようなタイプには見えなかったんだよな、んーちょっと想像つかねえ」 男はガリガリと頭を掻きながら唸る。 さしの男も、今の時点でドスが人間に対して反乱計画を練っており、 そのための奴隷ゆっくり増強のために、大量の食料が使われる予定だとは気づいていなかった。 男は一連のドスの不審な行動は自分の統治に問題あり、と人間に思われることを防ぐための措置と考えていた。 つまるところ、それ程事態を重くみていなかったのだ。 そもそも無知で愚かなゲスゆっくりならともかく、ある程度の知識があり、人間の強さをわかっているはずのドスが、 人間に攻め入る理由などないと考えるのが普通であり、男が今の時点で反乱の可能性を疑えなかったのは無理からぬことと、言えないこともなかった。 「んでもって最後はあのまりさたちの暴動だな」 「むきゅ!そうね、突然のことでぱちぇはビックリしたわ」 「オレも少しだけ驚いた。が、一番驚いたのはドスだろうな、あの慌てっぷりは演技とは思えない。 あのときのドスは本気で焦っていた。それは間違いないと男は感じていたし、 もし仮にこれがドスの企みだとしても、そんなことをするメリットはドスにはまったくないのだ。 「ところでぱちゅりーは、あのまりさたちの行動をどう思う?」 「むきゅうー、難しいわね。ゲスの考えることはよくわからないから… 多分人間さんより自分たちのほうが強いということを証明しようとしたんじゃないかしら? 野生のゆっくりは人間さんなんかちょろいと思っているゆっくりが多いから」 「証明?何のために?」 「さあ?そこまでは分からないわ。ゲスゆっくり特有の自己顕示欲や万能感の現われかしら?」 そんな意見を口にするぱちゅりー。 「ふむ。まあ普通の群れのゲスならそういうこともありえただろうな。 だが今問題にしているのはドスの群れのゆっくりの話だ。 村長の話じゃ、ゆっくりたちは人間に対して恐怖を抱いているように思える。 そんなゆっくりたちが、わざわざ人間に攻撃を仕掛ける理由とは何か? 答えは現状のドスの圧政を終わらせるため、だ」 「む、むきゅう?」 突然の男の答えに混乱するぱちゅりー。 「わからないか?今までの流れから、ドスが群れのゆっくりたちにとって辛い統治の仕方をしているのはほぼ確実だろう。 ゆっくりたちは考える。何とかしたい。でも相手はドスだ、自分らがかなう相手ではない。そこで人間の出番さ。 自分たちが人間に対して反乱を起こして怪我でもさせれば当然その責任は群れの長であるドスが被ることになる。 そうなれば現状の統治の仕方が問題視され、何らかのペナルティを受ける事になる。 あわよくば人間がドスを処分してくれるかもしれない。 と、まあ大方そんな所だろ、なあ、まりさ!」 男はベットのまりさに向かって声をかける。 「………にんげんさん」 いつから目が覚めていたのだろうか?まりさがむっくりと起き上がり男の方に向き直ると がばっと、顔を地面にこすり付けて懇願しはじめた。 「おねがいしまずうううううううううう!まりさたちはどうなってもいいですから、 あのどすをなんどがしてくださいいいいいいいいいいい! むれのみんなは、どれいのようにこきつかわれているんですううううううう! みんなぜんぜんゆっくりできてないんですうううううううううう! まりさたちはもうげんっかいなんですううううううううううううう!」 泣きながら訴えるまりさ。 その様子を見て男はまりさの願いを、 「やだよ!バーカ!」 「どじでそんなこというのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 きっぱりと拒否したのだった。 「ゆうううううううう!どうして?どうしてええええええええ!」 「やめろバカ騒ぐな、お隣の部屋の客に迷惑だろうが!」 「ゆぶぶぶぶぶぶ!」 ギャーギャーとうるさく騒ぎ立てるまりさの口を強引に閉じさせる男。 それでも喋り足りないのかゴモゴモと口を動かそうとするまりさ。 「あーもー鬱陶しい、おいぱちゅりーこいつに説明してやれ」 いちいち説明するのが面倒なのか、ぱちゅりーに解説を促す男。 「ゆう、ごめんなさいねまりさ。多分あなたの言うようにドスは群れのゆっくりたちに酷いことをしているんだと思う。 でも、それはあくまで群れのゆっくりたちの問題。人間さんの出る幕じゃないわ。 ましてや、あのドスは人間さんとの約束事はきちんと守ってる。現状のドスをどうこうする理由が人間さんには無いの」 「そういうことだ。別にオレたちは正義の味方じゃない。 極端な話し、人間とのルールさえ守ってくれれば、群れがどうなろうと知ったこっちゃないんだわ、これが」 「ゆううううう!」 男とぱちゅりーの説明に唸ることしかできないまりさ。 頭は悪くないらしく、今二人が言ったことがきちんと理解できているようだ。 「でも、でも、まりさたちは、にんげんさんたちにたいして、はんらっんしたよ! それはどすが、みんなにひどいことをしたからおこったことだよ! どすをなんとかしないかぎり、るーるをやぶってにんげんさんのむらへおりたり、 めいわくをかけるゆっくりが、ふえることになるよ!」 このまま放っておけば人間にとってもよろしくない事態になると、必死に訴えるまりさ。 「ハァ…それがバカだって言ってんだよまったく…」 「ゆ?」 男は溜息をつく。 「あのな、お前さん、どうやら人間に危害を加えたら処分されるのは自分たちと、 責任ゆのドスだけだと思ってるみたいだけど、それは甘い考えだぜ。 人間を傷つけるような危険なゆっくりの群れを人間が放っておくはずないだろが、そんなことになったら、群れごと全駆除だっての。 ドスと心中するのがお前らの望みなのか?もしそうだというのなら悪くない手だけどな」 「ゆうううう!!!」 まりさの目が驚愕に見開かれる。どうやらそこまでの事態は想定していなかったようだ。 まりさの考えでは、処分されるのは直接手を下した自分たちと責任ゆのドスだけで、他の群れのみんなは助かると思っていたのだ。 「やれやれ、わかったら人間に攻撃してドスを駆除させるなんてバカげた作戦は止めにしな。 今回の件は、お前のその馬鹿げた覚悟と、オレに攻撃する際、手加減してたことに免じて見逃してやるよ 今度群れに行ったときに、お前の仲間も連れてきてやるから、そいつらと一緒にどこか別の森に行くなり何なりしな」 そう男が突き放す。 「…………」 まりさは全餡子を必死に回転させて、これからのことを考えていた。 男は自分や反乱に加わったみんなを見逃してくれるといっている。このまま大人しくしていれば、夢にまでみた自由が手に入るのだ。 ほかの森へ移り住んでも生活は辛いだろうが、今よりはずっとましなはずである。 だが、しかし、もし今自分が逃げれば、群れで苦しんでいるほかのゆっくりたちはどうなる? あんなところに居続ければ、間違いなく一度もゆっくりすることなく、永遠にゆっくりしてしまうことだろう。 ダメだ!他のゆっくりを置いて、自分だけ逃げるわけにはいかない! こうなったらもう賭けだ。 確証はないし、それこそ群れごと人間さんに滅ぼされてしまう可能性があるが、このまま何もしないわけにはいかない。 「に、にんげんさん…」 「ん?なんだ?まだ何かあんのか?」 スウ、とまりさは大きく息を吸い込むと、意を決して発言した。 「にんげんさんが、どすをなんとかするりゆうはほかにもあるよ! あのどすは、にんげんさんのむらにたいしてはんっらんをたくらんでいるんだよ!!!」 「……ふーん」 気のない返事をする男。 対して、まりさは必死に続ける。 「う、うそじゃないよ!かんぶゆっくりたちがはなしているのをきいたんだよ! なにかひみつへいきもあるってはなしだよ!このままじゃにんげんさんたちもきけんなんだよ!」 「……ふーん。なんだか腹が減ってきたな。そろそろ飯にでも食いに行くか、ぱちゅりー」 「ゆがあああああああああ!まりさのはなしをきいてね!ほんとなんだよ!あのどすはきけんなんだよ!せいっさいしてね!」 騒ぎ立てるまりさを無視すると、男はぱちゅりーを抱えてさっさと部屋を出て行ってしまった。 慌ててまりさも追いかけるが、ドアをきっちりと閉められてしまう。 こうなると、ドアノブに届かないまりさにはどうしようもない。 「ゆうう、どうすれば」 部屋に一人残されたまりさは、うなだれながら呟いた。 「人間さん!あのまりさの話し本当かしら?」 「あん?反乱を企んでるとかいうやつ?」 村の飯屋にて、食事の最中にぱちゅりーが聞いてきた。 「そうよ、そのドスが反乱を企んでいるという話し。 ぱちぇは、まりさが出まかせを言っているんじゃないかと思ってるんだけど… もし本当にそんな事実があるなら、あんな最後のタイミングまで黙っている必要ないわけだし…」 ぱちゅりーはまりさが、ドスを人間に倒してもらうために嘘の情報をいっているのではないかと怪しんでいた。 正直まりさたちの境遇には同情するし、あのドスに対してもいい印象を持たない。 しかしだからといって、それに流されて判断を誤るわけにはいかない。 そのぐらいの分別はぱちゅりーにあったのだ。 「オレは絶対にあり得ない話しじゃないとは思うけどね。 火のないところには何とやらって言うし、群れでそういう噂が本当に広まってるなら可能性はなくはない。 まりさの奴が最後まで黙ってたのは絶対の確信がなかったからだろうな。 いざドスを倒してから、そんな事実はありませんでした。てなことになったら、シャレにならんことぐらいあのまりさでもわかってるはず。 それに群れのボスであるドスが人間に反乱を企んでるなんて、ゲスが人間にチョッカイ出したことなんか比較にならないくらい大問題だからな。 それこそ全駆除の可能性大だ。 まりさとしても、できるだけは口にしたくはなかったんだろう」 男が慎重な意見を述べる。 可能性はなくはないとったところか。 「それでもあえてそのことを口にしたのはドスが憎いから?」 「というよりも、本気で群れの現状を何とかしたいと思ってるんじゃないか? 自分は死ぬ覚悟でオレに仕掛けてきた点といい、あいつはバカだがそれなりに見所あるゆっくりだな。 ちょっとだけお前に似てるかもな?タイプは違うけど」 「ちっとも似てないわ!」 心外だとばかりにぶすっと頬を膨らませるぱちゅりー。 「まあ、なんにせよだ。明日からあの群れの様子をひっそりと探ってみるつもりさ。 そのために死角とか確認したわけだし、全てはそれからだ。その間、あのまりさのことはお前に任せるよ」 そう言って男は席を立って伸びをした。 次の日、ぱちゅりーとまりさを宿に残し、男は単身森へと向かっていた。 周囲を警戒しつつ、ゆっくりと慎重に進んでいく。 森のあちこちで見張りと思われるゆっくりが配置されていたからだ。 しかし所詮はゆっくりのざる警備である。 男とて、だてに日々野山を駆けずり回っているわけではない。 訓練されていない野生のゆっくりの包囲網を突破することぐらいわけはなかった。 (これはこれは、ずいぶんと厳重なことで、よほど見られたくないもんがこの森にはあるとみえるねえ…) そう思いながら、徐々に森の中心部へと近づいていく。 群れに近づくにつれて、だんだんとゆっくりたちの姿が増えていった。 そして、そこで見たゆっくりたちの光景は男が想像していたものよりも遥かに酷いものであった。 「ほらほら、さっさとはたらくみょん!」 ビシッ!ビシッ! 「ゆぎゃああああああああああああ!」 「ゆるしてえええええええええええ!」 幹部みょんたちにムチのような棒を振るわれ、泣きながら作業をするゆっくりたち。 「おねがいです!おちびちゃんはびょうきなんです!なにかたべだせてあげないとゆっくりできなくなっちゃうんです」 「どれいのこがどうなろうがしったこっちゃないよ!それくらいわかれよー!」 懇願するれいむから食料を取り上げる幹部ちぇんたち 「んほおおおおおおおお!あのまりさ!きにいったわああああああああああああああ! すっきりしつにはこんでちょうだい!」 「いやだあああああああああ!すっきりしつにはいきたくないいいいいいいいいいいい!」 ありすに見初められ、無理やりどこかへ連れて行かれるまりさ。 (……これは、予想していたよりずっと酷いな) そこで男が見たものは奴隷ゆっくりたちの地獄であった。 (まさかこれほどとは……。あのまりさの言っていた反乱の話しも、あながち嘘とは言えなくなってきたな。 あるいはオレは少し事態を甘く見ていたのかもしれん) 正直男はこの光景を見るまでは、ドスに対して不審を突きつけ、厳重注意で穏便に終わらせようかなと考えていた。 今までのことは多少行き過ぎた群れの統治が貧富の差や、ゆっくりたちの不満に現れたのだろうと思っていたのだ。 だが現場を実際に見て考えが変わった。 これは統治というレベルではない。群れの全てのゆっくりが、何かの目標に向けて一斉に稼動しているように見えたのだ。 その目標が人間への反乱だった場合断じて見過ごすわけにはいかない。 (多分本格的な活動を開始したのは前回の視察の直後からだろうな。そうでなければこの不審な動きを先輩が見逃すはずがない。 村長が言ってた、群れに降りてきたゆっくりの話しや、食料庫にあった大量の食料の計算も大体合う。 今回の視察までに大量に食料を集めておき、数の確認が終わってから一気に子作りして戦力の増強を図る算段。 万一見つかっても、次の視察までは最大数を超えても協定違反にはならないから一応言い逃れは可能。 ちっ、考えてやがるな) 男は日が暮れるまでの間、観察を続けると、一旦引き上げることにした。 あのまりさから詳しい話を訊き、対策を考える必要があったからだ。 「むきゅ!だからお野菜は人間さんが畑を耕やしたり種をまいたりするからきちんと育つの 勝手に生えてくるのは雑草ぐらいよ!」 「ゆうう!しらなかったのよ!どすはそんなことぜんぜんおしえてくれないから!」 男が帰ってきたとき宿屋の部屋では、ぱちゅりーがまりさに色々なことを教えていた。 やはりゆっくり同士、それなりに話しは合うようだ。 「おい、まりさ」 男はまりさに向かって声を掛ける 「ゆっ!にんげんさん!しんじてね!あのどすははんらんを…」 「ストップ!それ以上喋るな!」 男はまりさの口を強引に閉じさせる。 「もがもが!」 「いいかまりさ、オレ以外の、例えばこの村にいる人間とかにむやみにそのことを話すなよ、いらん混乱を招く可能性があるからな。 それから今からする質問に正直に答えろ、そうしたら協力を考えてやってもいい」 コクコクと頷くまりさ。 男は手を離しさまざまな質問をまりさにした。 ドスが食料を急激に集めはじめたのはいつからか? ドスは具体的にどのようにしてゆっくりたちを統治しているのか? 人間の村を襲うのはいつごろの予定なのか?また具体的にどのような作戦を立てているのか? 準備をはじめた時期についてはほぼ男の予想通り、前回の視察の直後だという。 また群れに降りてきたゆっくりについては、あまりのノルマの厳しさに集団脱走事件が起こり、 そのときに一匹だけ脱出に成功したゆっくりではないかという話しだ。 結局そのゆっくりも群れの実態の発覚を恐れたドスにより村人の前で潰されたわけなのだが。 まりさはドス他にも群れの仕組みなどを答えることができたが、 計画のことについては、流石に噂レベルでしかわからないということだった。 「成る程ね、密告のシステムか。エグイこと考えやがるねえ」 「むきゅ!まったくだわ!いくらなんでもやりすぎよ!」 憤慨するぱちゅりー。 「ゆっ!でもまりさはみっこくなんてしないよ!まりさのなかまたちだってそうだよ!」 「だろうな、だからこそこんな大それた作戦をばれずに実行できたわけだ。 ん?てことは今の奴隷ゆっくりたちはお互いに監視しあってないのか?」 「そうだよ!まりさたちはみんなできょうりょくしあって、むれからどすをおいだしたいんだよ! でもどれいゆっくりみんながそうなわけじゃないよ!なかには、わるいゆっくりもいるよ!」 ドスの作りだした密告システムだが、現在は初期ほど強力には機能していなかった。 何故なら、他のゆっくりを積極的に売るようなゲスはもうほとんど幹部候補ゆっくりになっており、 今現在の奴隷ゆっくりは、他ゆを密告することに抵抗を覚える善良ゆか、幹部候補になりたくてもなれないような、よほど要領の悪いアホゆがほとんどだったのだ。 だからこそまりさたちはお互いに結束することができたし、 ドスは奴隷のコントロールが難しくなってきたとして計画の実行をはやめたことに繋がっているのである。 「ふむ。だがそれは好材料ではあるな、上の連中とゲスだけ綺麗に消せばいいわけだ」 「むきゅ!でもどうやって?群れを全滅させずにドスや幹部や奴隷に混じってるゲスを選別して駆除するのは難しいと思うけど…」 ぱちゅりーの疑問は最もだった。 「まあ、それはおいおい考えるよ。どちらにしろ現状じゃ情報が少なすぎる、反乱計画の概要がわからん限り動きようがない。 ……そういえばまりさ、お前なんか秘密兵器があるとか言ってなかったけ?」 「ゆっ!そうだよ!でもまりさたちもうわさでしかきいたことがないんだよ! でもなんだかたべるとゆっくりできなくなっちゃうきのこが、かんけいしてるみたいだよ!」 「キノコ?毒キノコでも人間にプレゼントして食わせる作戦か?」 ふーむと男は唸る。 (そういえば食料庫に見たことがないキノコが大量にあったな。 この地方の固有種なんじゃないかと思っていたが、あれがそうなのか?) しかし男の疑問は程なくして解けることとなった。 それも考えうる最悪の形で……。 いつもの様に死角から双眼鏡で群れの様子を窺う男。 しかし、なんだか今日はいつもと様子が違った。群れの広場にドスと幹部ゆっくりたちが集まっているのだ。 どうやら幹部ぱちゅりーが嫌がる奴隷まりさにキノコを食べさせようとしているらしい。 (おいおいまさかマジで毒キノコ作戦なのか?) そう訝しげに様子を見ている男。 そしてキノコを食べはじめるまりさ、キノコを飲み込んだところでまりさは苦しみはじめそして、次の瞬間 (!?) 何と、まりさの口から小さな光弾が発射されたのだ。 光弾は一直線に進み、切り株に命中して小さな焦げ目を作った。 それを見て大喜びするドスと周りのゆっくりたち。 光弾を吐き出したまりさは、無残にも全ての餡子を吐き出し息絶えていた。 「……なんじゃありゃ。ちっ、思ったより面倒なことになりそうだねこりゃ…」 男はそう思わず呟いていた。 一体何なんだあれは?自分はこれでもゆっくりのプロのつもりだが、あんなものは今までお目にかかったことがない。 (あれがまりさのいっていた秘密兵器か。小型のドススパークといったところか? 一発の威力は小型の花火程度かな、食らってもちょっと火傷する程度だろうな。 だがそれはあくまで一発の場合だ。 もし奴らが100匹200匹単位で村にやって来て、一斉発射なんかされたらかなりヤバイことになるぞ。 まず間違いなく怪我人が出る。建物もぶっ壊れる。クソ!冗談じゃねえ) ゆっくりたちとの戦いは、ただ勝てばいいというものではない、人間側が無傷で完全勝利しなければ意味がないのだ。 もし、村の人間が誰か一人でも怪我をする事態にでもなればそれはすなわち男の、いや男の所属している組織全体の責任となるだ。 ドスをはじめとする人間を傷つけることが可能な武器を持ったゆっくりたちが、戦いの準備をしている。尋常ならざる事態だった。 (最悪ドスだけを始末すればそれでいいと思っていたが、そうもいかなくなっちまった) この状況では、手っ取り早くドスのみを制裁するという手段はもはや下策と成り果てた。 仮にもし今ここで男が群れに突っ込んで行けば、ドスは倒すことはできるだろう。 が、四方に逃げ散らばる群れのゆっくり全てを倒しきることはできない。 つまり、人間を傷つけることができるゆっくりたちが、森に散らばることになるのだ。 それがどれだけ厄介な事態かは、少しでも想像力があればわかろうものだ。 唯一の救いはドスと一部の幹部以外は人間と戦うことは望んでいないということか。 (全ゆっくりが集まっている機会を狙って一気にゲスどもを殲滅するのが理想か…) 応援を呼ぶ手もあったが、男はなるべく大事にはしたくなかった。 変に事を荒立てると、先輩の責任問題になる可能性があったからだ。 (とはいえやはりオレ一人では、不測の事態に対応できない可能性があるな。 失敗は許されないが、できるなら応援は呼びたくない……。 仕方ないな、またあいつの力を借りるのは癪だが場合が場合だ、連絡をするかあの女に…) 後編その2へつづく。
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「ゆっくりいじめ系1447 騎馬民族の襲来」?の続きです。 俺設定があります 他の書き手様の設定を拝借しています。 ◆ 彼らは「ゆっくり」を「ゆっくりさせない」ために生まれた。 彼らの祖先、めーりん種が受けてきた迫害の歴史、 その中で育まれた恨みと、復讐の共通無意識が、 彼らを生んだ。 それは進化なのだろうかか? 彼らは、地を素早く駆ける「足」を手に入れ、 「ゆっくりする」ことを捨てた。 ◆ 「ユラクス=メーリン」率いる部隊は、先ほどの戦闘で手に入った戦利品を 携えて、森の中を行進する。 目指すは、彼らの数少ない拠点にして、ユッティラ大王の居城のある 王都「ホン」だ。 「ゆぅぅぅぅぅぅっ・・・・」 「ゆぇっ・・・ゆぇっ・・・」 部隊の構成員の帽子の中からは、小さく短い嗚咽の様な物が漏れてくる。 奴隷として、「ホン」で働かせたり、ドゲスの群れ、人間の集落や、 ゆうかの農園に売り飛ばすために連れてきた子ゆっくり達だ。 赤ゆっくりでは脆弱すぎて使い物にならず、 大人ゆっくりは大人ゆっくりでその精神構造が 腐りきっているためにほとんどの場合使い物にならない。 精神がまだ固まっていない子ゆっくりを「ホン」で 「加工」し、「教育」することで初めて、 奴隷ゆっくりとして出荷できるのだ。 「ホン」に向かう道中、頭上を黒い影が閃いたかと思うと、 一匹のきめぇ丸が「ユラクス」の前に降り立った。 「ユラクス殿、お帰りになられましたか」 王都「ホン」の周辺を警戒する、斥候のきめぇ丸だ。 きめぇ丸は騎馬めーりんの盟友であり、 戦争時の略奪品の何%かを報酬として、 通訳、あるいは斥候とかなりの数が雇われている。 「(辺境の虫以下のクズどもの集落を3、4個潰し、また2つの村に貢納を約束させたぞ)※翻訳」 「それは、重畳。子息殿の活躍に大王もお喜びになるでしょう」 「(世辞はよせ、俺など所詮父上の第7子、王族の末も末。しかもまだ四十騎の将でしかない青二才だ)」 「いえいえ、ユラクス殿の才覚は決して御兄弟の方々には決して劣ってはおられませんよ・・・・」 偵察方のきめぇ丸がいるという事は王都ももうすぐだろう。 そんな事を思いながらきめぇ丸とのたわいのない話に花を咲かす。 「王子、配下の方々も疲れております・・・・そろそろ・・・」 通訳役のきめぇ丸が、二匹に近づいて来て、言う。 確かに、配下の者たちは長い軍旅で疲れている。 こんな所で時間を費やすのも 「(うむ、すまぬ・・・・ではなきめぇ丸。今度うまい赤ゆっくりでも奢ろう)」 「いえいえ、ユラクス殿もお気をつけて」 きめぇ丸と別れると、「ユラクス」隊は、一路王都を目指した。 森の中、何の前触れもなく、その平原は突然出現する。 まるで、森の中にコンパスで円でも描いたような 綺麗な円形の平野がそこには存在していた。 ユッティラ=メーリン=カーンの王国の都、「ホン」。 彼らの崇拝する戦の女神「紅美鈴」にちなんでつけられた名前だ。 騎馬めーりん、きめぇ丸、奴隷ゆっくりなど、おおよそ100匹近くの ゆっくりがここに常駐している。 それ以外の騎馬めーりんは、王族も含めてほとんどが戦場だ。 水に強いまりさ種の帽子などで作られた簡素なテントと、 盛り土や石を組んで作られた「かまくら」のような 簡単な構造の住居が、いくつか並んでいた。 「さあ、このれいむ、健康で頑丈な皮の持ち主で、奴隷にはぴったり!さあ、買った買った」 「ゆっ!草で3日分!」 「虫で4日分だぜ!」 「虫で5日分!」 「「「「ゆっ!!!!」」」 「虫5日分!他の方はおられませんか?」 逃亡帽子の為に飾りを奪われ、頬に刺青を入れられ、 奴隷用に「教育」されたれいむの周りを、 きめぇ丸と数匹のまりさが囲んでいる。 奴隷ゆっくりの「せり」だ。 司会を務めるのはきめぇ丸だ。 買い手は、主に奴隷商人として生計を立てる 西のゲストリート出身のゲスまりさ達だ。 騎馬めーりんは他のゆっくりを憎悪しているが、 話の通じる商売相手なら別だ。 彼らが憎むのは頭も悪く、感性も腐りきった普通のゆっくりであり、 ごく一部の頭の良いゆっくりは他種でも尊重した。 「むきゅっ!その子たちは東の第2番倉庫に移動よ」 「(解りました・・・・おい、糞饅頭ども、ゆっくりしないでこっちに来い! 引き殺されたいかぁっ!!)」 「「「どぼじでぎょんなぎょとずるにょぉおおおおお」」」 この記録係のぱちゅりーなどいい例だろう。 基本的には知能指数の非常に高い騎馬めーりんだが、 暗記力と、その持続力は優秀なぱちゅりー種には及ばない。 故に、知能が高すぎて愚鈍な普通のゆっくり達の群れから 迫害されたり追い出されたりしているぱちゅりー種を保護し、 秘書や、奴隷ゆっくりの管理、「ホン」の出納係などとして 使っているのだ。 彼女たちは「官僚ぱちゅりー」あるいは「秘書ぱちゅりー」などと呼ばれ、 騎馬めーりんの社会ではほとんど騎馬めーりんと同格の地位を与えられて おり、特に優秀な官僚ぱちゅりーは死んだ騎馬めーりんの帽子を与えられ、 王城に出入りする権利すら与えられるのだ。 騎馬めーりんは社会は、優秀な個体を異端として迫害するゆっくりと違い、 徹底した実力主義の社会なのだ。 それは王族すら例外でなく、無能な騎馬めーりんは、たとえ王の長子でも 王族の証である「メーリン」姓をはく奪され、 一兵卒の身分にに落とされることすらあった。 王族とて、その身分に安住し、「ゆっくり」することなど許されない。 それが、騎馬めーりんの社会なのだ。 「ユラクス」は、配下の兵たちと兵舎で別れると、 一人王城に向かった。 石組みで作られた大型の無骨な小屋。 これが王城である。 内部に入ると、官僚ぱちゅりーが忙しく働いている。 彼女たちには帽子が無い。 彼女たちは、騎馬めーりんの群れに加わる通過儀礼として、 帽子をその時の王に捧げるのだ。 それは、二度と普通のゆっくりの群れには戻らないという意思表示だ。 「(大王はおられるか?)」 「むきゅっ?ユラクス様、御帰還なさったのね」 官僚ぱちゅりーは、騎馬めーりんの言語を習得しており、 きめぇ丸の通訳を必要としない。 「残念ながら、陛下はここにおられないわ」 「(何処の戦場に?ここの所、ドスの群れとの大きなトラブルは無かったはずだが?)」 「『東のドス』との国境紛争よ。しばらくはお帰りになられないと思うわ」 『東のドス』 「ホン」の遥か東に存在するゆっくり達の国の主。 ゆっくりを見下す騎馬めーりんですら、その偉大さには 敬意を払わざるを得ない、一世一代の豪傑ドス。 それが『東のドス』だ。 その実態は謎に包まれており、その姿を見た者すらいない。 以前ユッティラが使者を出した時も、応対したのは 副王ににして参謀のぱちゅりーであり、 最後まで謁見することすら叶わなかったのだ。 「むきゅん。ある偵察部隊が襲った辺境の村が、 たまたま『東のドス』の支配下になってらしくて」 「(その村の支配権をめぐっての戦争か・・・・ 相手が相手だけに長引くな・・・・・・・・・・)」 支配権、という言葉が出たが、滅ぼさずに村を支配下に加える場合もあるのだ。 騎馬めーりんは、無作為にゆっくりの集落を襲っているわけではない。 貢納を受け入れた村は、襲わずに税を絞りとり、 じわじわと苦しめるやり方をする。 際限なく、ゆっくりを殺し続ければ、自分の首を絞めるはめになる。 餌を際限なく食べて、餓えるゆっくりどもと彼らは違うのだ。 「むきゅん。「ホン」の治世は、「ユゴデイ」様が執っておられるわ。 御報告なら、「王の間」へどうぞ」 「(ありがとう。では)」 「ユラクス」はぱちゅりーと別れて王の間へと向かった。 王の間は、これが強大な騎馬めーりんの王国の 国王の部屋かと疑問に思われるほどの簡素だった。 騎馬めーりんは質実剛健を好む。 それは王族とて例外ではない。 王座にはユッティラの姿はなく、 その前に仮設された簡素な椅子に、 王族の長子、「ユゴデイ=メーリン」が 座っていた。 「ユゴデイ」には左目が無く、 顔には醜い傷が幾筋も走っている。 帽子は、まりさ種の物にれいむ種のリボンを付けた物で、 髪の毛は殺したゆっくりの飾りで埋まっていた。 王国黎明期からユッティラ王のすぐ傍らで戦場に立ち、 ドスの群れを含むいくつもの群れとの闘争を生き残ってきた 歴戦の勇者。それが「ユゴデイ」だ。 ユッティラ王には子供が多いが、後継者となるのは まず彼に間違いないと、群れの間では言われていた。 所詮第七子で、体格も小さめの「ユラクス」には 雲の上のめーりんだと言っていい。 「(兄上、辺境視察の任務、完了して帰還致しました)」 「(おお、ユラクスか!ようかえった。まあ、こいつを食え)」 「(ありがたき幸せ)」 「ユゴデイ」は、傍らに転がっていたボロボロの 赤まりさを「ユラクス」に差し出した。 「ゆべ・・・もと・・・ゆく・・・・・」 うめき声を上げるまりさを気にすることなく、 「ユラクス」はまりさを貪る。 痛めつけた赤ゆっくりは、 騎馬めーりんにとっては最高の御馳走だ。 「(4つの村を滅ぼし、2つの村を隷属させました)」 「(うむ、若いながらお前はよくやってくれる。 兄としてたいそう、鼻が高いぞ)」 「(お褒めに預かり、光栄です)」 「(時にユラクス・・・・・・)」 「ユグデイ」は言葉を切ると、 ゆっくりとその話を切り出した。 「(今度、父上が帰り次第、『あの国』を再び攻めるぞ)」 「(!!!!!!)」 『あの国』 「ホン」の騎馬めーりん達の間で その言葉が意味する事は一つだ。 『のうかりん共和国』 数匹ののうかりんと、何十匹ものゆうか、 そして、群れを追い出された真面目で頭のいいゆっくり達が、 豊穣の神にして、太陽の化身「カザミ」を氏神として 団結する共和制の農業国家。 幾度となく騎馬めーりん達が支配下に置こうとして、 果たすことができなかった好敵手。 その征服はユッティラの先代の王からの、 王国の課題ともいえる物だった。 「(その時は、お主に先鋒を任せよう。準備しておけ)」 「(!!!!!!有難うございます!!)」 「ユラクス」は興奮で胸がはじけ飛びそうだった。 王家に宿願ともいえる戦いの先鋒に自分が? これからは寝られない夜がつづきそうだと、 「ユラクス」は思い、ニヤリと笑った。 続く 騎馬めーりんの設定を、他の書き手様に使っていただいて、 嬉しさでいっぱいです。 騎馬めーりんの設定は、好き勝手使ってください。 人の数だけゆっくりの設定があるのが、このスレなのです。 このSSに感想を付ける