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* 壁にもたれながら立っていた。ここにいる理由はない、これといって見当たらない。だか強いて理由をつけるとするなら、通路の改修をたしか来月あたりから行うだとか事務局のほうから通達があった、だからその前に一度傷み具合を見ておく必要があると思えた。それだけの話だった。 俺が立っていた場所は、饐えたにおいをはなつ地下から、ぬうと地上へむけて伸びた回廊で、埃くさい、土くさい、よどんだまま動かない空気、深く吸ってしまうとおのれの体まで、この嫌なにおいをはなってしまうように思う。気に入らない。俺は浅く呼気をくりかえす。どうしてこうまでよどんでいる。いっそ縦穴をぶち抜いて、なまぐさくて酸い、なんとも言えないにおいを、暢気な顔をして上を歩く連中の鼻先に、どうだこのざまはと香水よろしくまき散らしてやればいいのだ。目をむき、顔をしかめ、鼻をおおい、どうしたことだと慌てふためくさまは、きっとたいそう愉快だろう。だがここの空気を動かす人数はほんの僅かで、ぎらぎらとした目を光らせ出てゆくばかりだ。俺のように足を止めるものはいない。だからきっと誰も気づかない。鈍いのだ、許される鈍さがときに俺はいやになる。 いやならここを通らねばいい。回廊を通らねばならぬ決まりはない。 たとえばふっとそのあたりの裏口から出立していっても、誰も気に留めやしない。ヴァチカンはスキャンダルになれている。メディアに叩かれることになれきっている、いっこうに構わないのだ。ただ、人目を避けるという意味で、機関員はよく地下通路を利用する。とくに復路は最大限に利用している。なぜなら戻るやつらの全身は、バケツをひっくり返したようにしとどに濡れている。そうしてへばりついている。血と、肉と、それから臓腑や、臓腑におさめられた吐瀉。ぼたぼたと垂らして意気揚揚に凱旋する。薄汚い人間ども。それから薄汚い人間にもおとる化け物ども。 始末書を書く苦労よりは、通路へ足を運ぶ手間をえらんだ。 そうか、と俺は気がついた。ここに満ちているのはそれだ。まるでなってない連中の体は、体といううつわを消しても、ぶかっこうにうつし世に残っている。においになってしがみついている、だからこんなにいやなにおいなのだ。 体のすみずみ、爪の先から毛細血管にいたるまで、できそこないのそいつらのにおいが染みつくこころもちがして、俺は頭を振る。いやだ。頭を振った拍子に抱えていた紙の束がずるとこぼれて、どさどさと床に散った。ああ畜生。俺は毒づき、舌打ちをし、しようもなく拾いはじめる。こんなことになるのだったら機関室から直接やってこないで、一度書庫にでも行くべきだった。へまをした。せめてクリップで止めるなり、封筒に入れておくなりすべきだった。せっかく揃えたページがまるで台無しだし、とりとめもないメモならともかく、書庫から持ち出した秘匿ファイルのたぐいは、面倒なまでに事務のチェックが入る。汚れただの、折れ曲がっただの、なんくせつけられるのは気に食わない。 紙というやつは束ねると重い。えらく重い。重いくせにひとひらひとひらは、うまく風に乗せるとやけに軽くて、足元にも、すこし離れた場所にも、そうしてもっとずっと離れた場所にも、裏に表にばらばらになって、書類は散った。糞。腰をかがめて拾う。 すくい上げては手に束ね、拾いあげては胸に抱えしていると、ミレェの穂をひろう農婦のような、そんなこころもちになった。むしゃくしゃささくれた頭がわずか冷える。あれはいい。暗い色調の農婦どもも、淡々とひろうように見えて実はあの頭巾の内側で辟易していたかだとか思うと小気味よかった。だが同じミレェなら、俺は晩鐘のほうがいい、色数がすくない分あちらこちらに目を奪われずともすむからいい、あの絵の前で他になにも考えずに一日ぼうとしていることができたなら、どんなにそれは有意義な時間となるだろうか。そんなことを思いながら拾いあげていた俺の耳に、回廊をこちらへやってくる足音があった。 足音がやってくることはわかっていた。だから俺はいたくもないこんな場所で呼吸をして、あまつさえ落ち穂の農婦のまねごとをしている。 うっそりと近づいてくる貴様、顔をあげ姿を見止めなくても俺には判る、片手に着替えと必要最低限の身の回りの品をいれた革鞄、色は黒い、黒はなにしろ一番汚れが目立たないからとそう言っていた貴様の声が蘇る。それに同じ黒のカソック。それに外套。 いつもと変わらない貴様の姿かたち。 次の任務地が、ヴァチカンとまるで正反対に位置する国だということも、俺は知っている。なにしろ俺が、俺自身が、この懸案を圧倒的かつ速やかに解決するために、貴様を投入することを許可した人間だったからだ。襲われた聖堂。ステンドグラスはご丁寧に一枚、一枚、打ち砕かれ、あらわになった教壇の上に馘られた司祭の頭蓋、こちらへむけてポォズ。はい、お客様、笑顔で。切りとられた映像が郵送されるサーヴィス付きだった。 雑魚だ。自己顕示欲の強い百にも満たない雑魚の群れだ。 新興宗教テロリストどもに、十三課きっての切り札を投入するのもいかがなものかと意見もあったが、そもそも人員がない。動けるものはみな別の場所へ出払い、基本的にやつらは仕事をやりおえたと判断するまで連絡してこないのが常だったから、そもそも任務地変更の指示もできない。残った手持ち札は孤児院で偽善の笑みで完璧に固めながら、おのれの出番はいまかいまかと爪をとぎ燻っていたそいつだけで、だからそいつを使うのは必然でもあったのだ。使い勝手の悪いジョーカー。持っている分には有利でも最後まで持ちつづけると負けになる。そう言うものなのだ、そういうルールなのだ、だからこのあたりで一度場に出してゲームを読みなおす必要があった。 近づいてきた貴様が俺の手前で足を止めた。足を止め黙っている、俺が顔をあげ声をかけるのを見越している、見ているくせに口を噤んでうかがっている。腹立たしかったのでむきになって俺は拾いつづけた。声などかけるか。こちらから発してなどやるものか。俺は、こうして、書庫から借りだした文書を拾いまとめるのに忙しいのだ。 ややして貴様が長い息を吐き、身をかがめるのが判った。 俺と同じように貴様も紙を拾いあげる、大きな背をかがめて意外に器用な手つきで貴様も農婦になって落ち穂を拾う、莫迦だな、貴様のような大女がいるものか。おのれの口元がゆるむのが判る。おかしかった。 にやにやしはじめた俺を怪訝な目でちらと貴様がうかがうのが手に取るように判る、いい気分だ、実に愉快だった。だから俺は顔をあげ貴様を見てやった。 反逆者ユダの名を冠した俺たちの機関の聖堂騎士。武装神父。 俺が思った通りの恰好で、俺が思った通りの鞄をもって、もう片手に拾いあげた書類、俺の方へと差し出す。なにかご用ですか、次に貴様はきっとそう言うだろうと思った。 「なにかご用ですか。」 ああやっぱりな、貴様が思った通りの言葉を発し、俺は俺の予想が当たったことに半分満足して愉快になり、予想通りの言葉に、ここで待っていてやった俺に対してその言い草はなんだと、もう半分はひどく不愉快になった。顔をしかめて別に、と返す。別に貴様に用があって、こんなところにいたわけじゃあ決してなかった。 貴様に用事なんてない、俺は単に貴様の鞄が見たかったから、ふとした好奇心だとか言うやつでそれ以外の理由はない、貴様の鞄は着替えを詰めこんでぱんぱんに膨らみ、留め具が躍起になって押さえつけている。それだけの荷物をもって貴様は出かけるのだな。どれだけゆくのだ。ひと月か。ふた月か。それとももっと長いのか。 「――機関長?」 変更点でもあるかと俺は聞かれて肩をそびやかす。そうして、そんなものあるわけがないだろうと吐き棄てた。俺の計画も、指示も、いつでも完璧だったろう、間違ったことがあったか。 「では、なぜ、」 「俺がここにいるとまずい理由でもあるか?」 逆に俺は貴様に聞いた。 「それとも、久方の出がけに、俺がいちゃあ縁起が悪いとでも貴様がいうタマか。ゼロか、百か、我々十三課にあるのはそれだけの話だし、そもそも貴様に、情緒もへったくれも必要ないのは俺がよく知っている。かくあれかし、だ。晴れの任務だ、始末書の一枚減らす努力でもしながら、せいぜい気張ってやってこい。」 「然り、然り。」 否、否とつづけながら貴様が笑った、素直ではないとそんなことを言う。 「殊勝に見送りにでも来てくれたかと期待したが。」 「莫迦な。」 何故。俺が。そんなことをしなけりゃならない? 唐突にこちらへ伸ばされかけた腕に、俺は必要以上に驚いて飛びのいた。なにかと思った、どうしたことだ、なにをされることかと思った、ぎょっとなった俺の前に所在なさ気に揺れる紙の束。貴様が拾い上げた麦の穂。ああ、そう言えば俺がぶちまけたのだった。 「貴様のでかい図体がないと思うだけで、しばらくせいせいとする。」 受け取りながら俺は言った。鼻に皴が寄る、おかしな顔をしている自覚はあった。だがこの場合、笑ってやればよいのか、まともに嫌がらせの顔をしてよいものか判らなかった。どうせしばらく見ないのだ、できれば貴様をいっとう不快にして立ち去りたいものだがと俺は思う。 はあ、とたよりない声で貴様がこたえた。このやっかいな上司をどうしたものかと思案しているのが判る、だから俺はロザリオを寄越せといった。 「え?」 「貴様のロザリオを寄越せと言っているんだ。戻るまで没収させろ。」 「……意味が、さっぱり判らないが、」 「はやく。」 歯をむき出して威嚇してやると、やれやれといった調子で貴様がうなじに手をかけ、胸元へぶらさげていた十字の紐をほどき、俺へと差し出す。たいして文句もなく貴様が従ったことに、俺は一挙に気分がよくなって、代わりに俺の十字を貸し出してやろうといった。 「なければ祈ることもできないだろうが。」 壊すな。汚すな。傷をつけるな。どれを違えても罰則ものだからな。言って俺も十字を外し、いぶかしむ貴様のてのひらに握らせようと差しだす、すると貴様が不意に身をかがめ、つけてはくれないのかと言った。 「え?」 聞き返すのはこちらの番だった。 だがすぐに貴様の意図を読む、駄々をこねる俺への当てこすりか、思えてむっとなった。どうして俺が貴様にロザリオをあててやらねばならないのかと、だが面白そうにこちらをうかがう貴様の気配によかろうというこころもちがむくむくと湧き起こる、俺にできないと思っているんだろう、貴様はそうして俺を不快にさせて楽しんでいるんだろう、だとしたらそれは失敗に終わったぞと莫迦にしてやるつもりで、俺は十字を貴様の首にかけた。 身をかがめてもなお大柄な貴様の首は俺の上にあって、まったく、なにを食ったらこうも成長するのかと俺は思う。再生者だからこそ大きいのか、骨格からして違うのか、それともこれは生まれつきだとか言うやつだろうか。 首の後ろで固結んでやる俺の耳元に、不意になまあたたかななにかが一瞬触れたような気配があって、俺はぎくりとして貴様を見る、貴様の目を真正面からまともに見る。今のはなんだ、何をしやがった。睨んだ貴様は飄とした顔で、おやどうかしましたかと言った。 「……なんでもない。なにもない!」 かっとおのれの頬に血がのぼるのが判る。本気で殴り掛かりたいとも思えたが、殴りかかって勝てる相手ではないことも知っていた。こいつは俺をからかっておかしがっていた、この先何十日、慌てふためいた俺を思い出してはほくそ笑むんだろう、世界地図の裏側から、俺のみっともない態をなんどもなんども繰り返して悦に入るんだろう。 「ほかに、なにか?」 「……とっとといけ!」 片手で顔を覆って俺は怒鳴る。怒鳴り散らす。せっかく拾った紙の束が、水泡に帰してすべてまた足もとやら、柱の影やら、壁際まで滑り飛んでいったけれど、そんなことはもうどうでもよかった。 よい子には土産を買ってくるからな。背中越しにそいつは言った。だめだ、これはもう殺ろう、しんから思えて俺はすざまじい目付きで貴様を見る、見ようとする、だが既に冷たい金属音をひびかせて、地上への出口がゆっくりと閉じる、軋みながら閉じる、貴様の背中はもうそこにない。畜生。残ったのは使い込まれてくすんだ色、忌ま忌ましい貴様の胸に先ごろまでかけられていたロザリオひとつのみだった。 (*Rosarium :ロザリオ) next --------------------------------
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……戦況は混乱を極めていた。 バーサーカー、カルキを殲滅したラーヴァナは戦いを求め、ヴィマナを駆って冬木市へと侵攻しようと目論む。 これだけ派手なことをすれば、他の隠れているサーヴァントも牙を剥くに違いない。 その中に余を満足できるものがいればいいのだが。 そんな風に思っているラーヴァナの前に一人の騎士が立ち向かう。 「まてい!魔王よ! 貴様の狼藉、もはや許し難い! 邪悪の前に膝を屈するなかれ、正義を躊躇う事なかれ! この騎士王であるライダー、ドン・キホーテが相手する!」 その強大なステータスに、放たれる凄まじい重圧感。これは並の英霊などでは断じてない。 だが、そんなものは些細なことでしかない。 その邪悪に立ち向かおうとする意思。 敢然と邪悪と闘わんとする正義たる気高き誇り。 そのライダーの威風堂々たる姿は魔王ラーヴァナですら畏怖させた。 「く、くくく……! 面白い、面白いぞ!この余を畏怖させるとは! 貴様こそ、余を満たせるかもしれぬな……。 だが、ここではあまりに舞台が整っておらぬ。 それではせっかくの楽しみが損なわれてしまうからな。 ここはいったん引こう。さらばだ!」 ライダー……ドンキホーテの活躍により、一度はラーヴァナは退けられたが、 ラーヴァナはライダー、ドンキホーテとランサー、ヴラド以外全てのサーヴァントを葬っていた。 そして、最後の第八番目のサーヴァント、英雄王ギルガメッシュがついに動き始めた。 古い英雄にとって天敵であるドンキホーテの欺瞞能力、『我、騎士道を邁進す(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)』 だが、その能力も、ギルガメッシュの宝具《偽り破る真実の鏡》とルールブレイカーによって打ち砕かれていた。 「吾輩は……吾輩はもうダメだ……。 騎士道など……騎士など……どこにも存在しない……存在しないのだ……。」 そう呟きながら地面に膝をつくライダー、ドン・キホーテ。 そこに存在しているのは、ラーヴァナにさえ畏怖された英雄狂ではなく、ただの夢破れた老人にすぎなかった。 「愚かな道化め。道化が騎士王を名乗るとはその罪、万死に値する。 大人しく―――!!?」 膝をついたライダーにむかって剣を振りおろそうとしたギルガメッシュに対して、魔力弾の砲撃が襲いかかる。 それは、巨大な空中戦艦、プシュパカ・ヴィマナから放たれる支援砲撃である。 ヴィマナの上で腕を組んで下を見下ろしているラーヴァナはライダーに向かって叫ぶ。 「どうした!立て!立つがいい!英雄狂よ! 屈するのか?貴様は屈するのか!?余を畏怖させた英雄が……たかが幻想が破れたぐらいで屈するのか! ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャよ!―――真の騎士よ!」 ぴくり、とその言葉に膝をついていたライダーの肩がふるえる。 「ステータス?宝具?戦闘能力の高さ? くだらぬ……全てくだらぬ! 最も大事なのは正義たらんと、騎士であろうとするその意思だ! ふるえながらも邪悪に立ち向かおうとするその気高き誇りだ! そう!魔王を滅ぼすのは、いつだって勇気あるものたちだ!!」 そうライダーに向かって叫んだラーヴァナは、ぴらりプシュパカ・とヴィマナから飛び降りると、 通常の人間なら瞬時に心臓が止まりそうなほどの邪眼めいた視線で英雄王を睨みつける。 「英雄王よ。真の騎士であるこやつを愚弄するとは……もはや許さぬ!」 英雄の頂点に立つ英雄王は神代の魔王に向かって怒気をむける。 「王を詐称する愚か者が我に意見をいうか。 たわけが。王を名乗るその不遜、己の死で購え。」 「よかろう、英雄王よ。相手になろう。 だが心せよ。魔王を倒せるのは勇気あるものたち……勇者だけだ! 王ではない!邪悪に立ち向かう気高き意思が無き高慢たる王に……余は殺せぬ!」 「黙れ!出し惜しみはなしだ……。食らうがいい!天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!」 かつて混沌から天地を切り離したその剣が発生する暴風は、擬似的な空間断層すら引き起こす。 その暴風による空間断層に耐えられる存在はない。 だが、とっさにラーヴァナの前にヴィマナが舞い降り、己の盾になる。 ヴィマナはその機体の三分の一を砕かれながらも、まだ機能は停止せず、その暴風を食い止める 全てを素粒子へと打ち砕く死の暴風はラーヴァナを粉微塵にし、 周囲の10mの地面すらも完全に抉りとり大きなクレーターを作り出す。 もはや、ラーヴァナのいた痕跡は、足首の一部分だけにすぎない。 ヴィマナの強靭な装甲はエヌマ・エリシュですら軽減したのだ。 『なるほど。乖離剣エアか。確かに凄まじい威力だ。素晴らしい威力だ。 さすがに天地を切り開き、混沌から秩序をもらたした剣だ。』 「―――!!?」 その空中から響き渡る声に、さすがの英雄王も狼狽する。 なぜなら……その声は今彼が打倒した敵そのものだったからだ。 『だが……その剣は神が振るった神剣! そして、貴様はランクこそ下がっているが最大の神霊適性を持つ英霊!! それでは余は殺せぬ……。殺せぬわ!王では余は殺せぬわ!!』 そう、ギルガメッシュが振るう乖離剣エアは、かつて知恵の神がウルリクンミの両足を切り落とした 天地を切り離した神剣である。 最高位の神エアが振るった神剣に、ランクこそBに下がっているものの、最大の神霊適正を持つ英雄王。 その攻撃は耐神性を持つラーヴァナに通用するか。 その答えは、今やほぼ完全に肉体を再生しつつあるラーヴァナ自身が答えそのものだ。 「英雄王よ。貴様の敗因はただ一つ。貴様は乖離剣に頼りすぎた。それだけの話だ。」 ……もはや分かり切った結末を語ることはない。 光り輝く英雄王は、漆黒の魔王に飲み込まれるだけなのだから。 その間に脱出したライダーと士郎。 だが、もはやライダーには戦う力が残っていないことは、本人が一番知っていた。 「どうするんだ? ライダー。もうアンタの宝具は使えない。なら……。」 「いいや、サンチョ、いや、少年よ。 それでも、吾輩は騎士なのだ。 騎士たるもの、強大な邪悪を見過ごすなかれ。虐げられるものを見過ごすなかれ。 ……吾輩は偽物の、ただの道化だ。それでも、その誓いだけは、嘘でも偽物でもない。」 ああ。そうか。この人は狂ってなどいなかったのだ。 ただ、真実の誇り高き騎士であらんとしていただけなのだ。 ……そんなものは、最早どこにもないというのに。 そして、いま再び風車に突撃したように、彼は風車よりはるかに巨大な敵に立ち向かおうとしている。 「ならば、私が貴様に力を貸そう。英雄狂よ。」 その瞬間、どこからともなく大量の蝙蝠が空中より飛来し、ざざざざと一か所に収束する。 そこに存在していたのは、蝙蝠の塊ではなく、一人の血塗られた杭を持つ長身の男だった。 ランサー、ヴラド・ツェペシュ 串刺し公として恐れられた彼がついに本格的に参戦したのだ。 「……串刺狂。何故、そなたは吾輩に力を貸すのだ?」 「理由だと?そんなものは一つだけだ。 奴は、ラーヴァナは悪だ。私は悪の存在を許すことはできぬ。断じてな。 あのような邪悪によって犠牲にされる市民を見捨てるわけにはいかぬ。」 そう、かつてヴラドは征服王メフメト2世の侵略に対して、 大軍に対して立ち向かった経歴のある英霊だ。 ならば、メフメト2世よりはるかに無慈悲で残忍な殺戮を行うであろう魔王ラーヴァナを放置できるはずもない。 その意思だけは、疑う余地はなかった。 そして、とうとうヴラドとラーヴァナの戦いが始まった。 英雄王の最後のハルペーによる攻撃によって彼の胸には大きく傷が走っているが、そんなことは問題で花い。 しかし、神代の魔王と恐れられた ラーヴァナと、中世の英雄であるヴラドでは、神秘の蓄積が違いすぎる。 まともに戦っては勝ち目はない。 だが、彼の固有スキル:軍略D+は不利な情勢やゲリラ戦を行うときにも有利な補正を得られる。 何とか、敏捷で勝るヴラドは必死の回避により、筋力Aの膨大な破壊力を持つラーヴァナの攻撃を回避し、 手にした長槍のような血塗られた魔杭で剣や矛の一撃をそらしていく。 だが、ついに、ウラドの左腕の傷からまるでパイルパンガーにように突き出された血液で構成された魔杭がラーヴァナの腕を貫く 「喰らえ!『餓え渇く鮮血の粛杭(カズィクル・ベイ)』!!」 ヴラドの宝具、餓え渇く鮮血の粛杭 それは、この杭で傷つけられた者の血液を媒介とし、次なる杭を生成する。 魔杭によって傷つけられたラーヴァナの血液は鋭い無数の杭と化し、ラーヴァナを体内より爆裂させる。 体内から生えた杭によってハリネズミのようになった彼はそれでも動じない。 「なるほど。串刺狂よ。確かにそなたは吸血鬼の属性は持っているが、同時に人間としての属性も持っている。 それならば、余を多少なりと傷つける事もできよう。だが……。」 伝承上で語られる吸血鬼の能力を再現する能力があるとはいえ、 彼は本来何の因子も持たないただの人間であった。 それならば、ラーヴァナの宝具「羅刹王」は発動しない。 だが……。 「愚か者め。人である事を捨て去り、魔へと堕落した半端者が余に勝てるか! 貴様と余では、魔としての純度が違いすぎるわ!!」 だが、しょせんそれは再生速度が遅くなるというだけの話。 もはやヴラドは通常の人間ではなく、吸血鬼としての属性が付与されている。 それに後天的に吸血鬼としての属性を付与された中世の人間であり半魔と呼べるヴラドと、 神代の時代に魔王と恐れられたラーヴァナでは魔としての純度があまりに違いすぎる。 同じ属性ならば、より純度が高い方が勝利するのが絶対の法則。 ヴラドでは、ラーヴァナには決して敵うはずがない。 そして、ラーヴァナの無慈悲な一撃はヴラドの心臓を貫く。 だが、心臓を貫かれながら、彼は不敵な笑みを浮かべた。 「確かにな……。もはや人から外れた私の攻撃は貴様には通じない。だが……。」 「だが……貴様の行動を封じることはできる!」 その瞬間、ラーヴァナは気づいた。 彼の足元。そこには彼自身が流した血。 そして、ヴラドがこっそりと地面に流し続けた大量の血によって彼の地面は血の海になっていることを。 「吼えろ!『餓え渇く鮮血の粛杭(カズィクル・ベイ)』!!」 その瞬間、ラーヴァナの地面の血の海から大小無数の鋭い杭が飛び出て 彼の腕を、脚を、胴体を、顔をあらゆる場所を串刺しにする。 心臓を貫かれ、肉体を失いながらも、宝具を維持するため必死で肉体を維持しながらヴラドは叫ぶ。 「行け!ライダー!見せてみろ!貴様の誇りを私に見せてみろ!」 その瞬間、今まで隠れていたライダーがロシナンテに跨り、ランスを構えながら、 串刺しにされ、身動きの取れないラーヴァナに突撃する。 「騎士たるもの、悪を前に膝をつく事勿れ、正義を前に果たさざる事勿れ。 我こそは騎士ドンキホーテ! 騎士道を為す者! 魔王よ!吾輩の槍の前に倒れるがいい!!」 「第七のマスターが令呪の名の下に命ずる。 ライダー!奴の心臓を貫け―――!!」 瞬間、士郎の令呪の力により、ライダーはまさしく彗星となった。 ペルレフォーンとほぼ同じ速度でロシナンテは大地をかける。 そのランスを構えて突撃する姿に、杭に刺し貫かれて身動きが取れない魔王は再び恐怖を覚えた。 「プシュパカ・ヴィマナ支援砲撃要請!撃てぇ!!」 プシュパカ・ヴィマナから放たれる無数の魔力弾や魔力レーザー。 そして、ラーヴァナは力づくて腕の部分の杭だけ破壊し、弓を引き絞り撃ってくる強弓。 一本目の矢がライダーの兜を破壊し、もう一本が鎧を破壊し脇腹に深く突き刺さる。 魔力レーザーはライダーの左腕を切り落とし、魔力弾が右肩の鎧を破壊し、ロシナンテの脇腹を大きくえぐる。 それでもなお、ライダーには致命傷を与えられない。 ライダーの固有スキル:錆び付いた英雄譚(ラスト・ファンタズム) それは、英霊が近代より古いものであればあるほど、アロンソ・キハーナに対する行動のファンブル率が上昇する。 さらに幸運:A+の力により、彼の攻撃は全て致命傷には至らない。 そして、ヴラドが完全に消え去る寸前、杭によって身動きの取れないラーヴァナの心臓をライダーのランスが貫く。 英雄王のハルペーによって胸に大きな傷を負っていたラーヴァナでは、その攻撃に耐えうるはずもない。 それを見て、ヴラドは満足そうに無言で消え去り、ラーヴァナも心臓を貫かれながら満足そうに高笑いする。 「く……くくはははは……ははははは! 貴様が、貴様こそが余の死か……。 最高だ、お主は最高だぞ、英雄狂。 そうだ。化け物を滅ぼせるのは人間だけだ。魔王を殺せるのは勇者だけだ」 ラーヴァナの宝具「羅刹王」は純然たる人間には通用しない。 そして、ドンキホーテは妄想に生きたただの人間でしかないのだ。 さらに、サーヴァントは心臓を破壊されれば消滅する。それは宝具の加護を失ったラーヴァナであろうと例外ではない。 「感謝する魔王よ。我が妄想物語に付き合ってくれて。」 「何を……いう……。そなたの信念は、妄想などでは……ない。 胸を張れ……。そなたこそが、魔王を倒した騎士なのだから……。」 「礼をいうぞ……。余を救ってくれて……。そなたこそが……真の……騎士……、」 ラーヴァナは風になった――― ドンキホーテが無意識のうちにとっていたのは『敬礼』の姿であった―――――― 涙は流さなかったが 無言の男の詩があった――― 奇妙な友情があった―――
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186 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:2008/04/11(金) 11 52 15 ID ??? 学園昼休み中 ジュドー「get up get up! Hu~♪(ゲーラッ、ゲーラッ! ポ~~~~ゥ♪)」 ポゥ 「コラアァッ、またそうやって私をバカにしてええっ!」 ジュドー「やべ、ポゥ先生がまた泣いた。まさか見てたとは。それ逃げろ~」 カミーユ「いい加減にしろっ、お子様か!(ゴンッ)」 ジュドー「むぎゅ~」 ポゥ 「ちょっと生活指導室まで来なさい!(これじゃあ、副担任以下の見習い教師だ、ウゥッ)」 ルナマリア「ジュドーがやってた歌と踊りって、何?」 メイリン「たしか、ずっと昔のカリスマ歌手が唄ってたのだった気がする。 えっと、マヒロー・ガリクソンって人の、スレッガーって曲だったかな」 ルナマリア「へえ、詳しいのね」 カミーユ「全然違うだろ……。メイリンって情報のエキスパートじゃなかったのかよ」 ハマーン「大人を、それも教師を泣かせるとは。大した根性だよ、ジュドー・アーシタ」 ジュドー「なんでハマーン先生の補習を受けさせられてんだ。しかもなんか、スッゲー生き生きしてるし」 ハマーン「そこっ、さかしいぞ!」 ジュドー「うわ、危ねー。……なにも出席簿を投げることないだろ!」 ハマーン「ほう、口答えを……まだするかっ!」 ジュドー「イテテ、チョークがファンネルのように飛んできた。……どうなる、ジュドー」 ハマーン(まさかふたりきりで補習ができようとは。ポゥ先生には今度ご馳走しなければ。 それにしても……。あぁ、この胸の高鳴りを見抜かれたくなくて、つい手が出てしまう) 翌日。 ジュドー「ポゥポゥポゥ~♪ 鳩ポゥポ~~~~~ウッ!!」 ポゥ 「またおまえかあああっ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・」 ハマーン「そうか、それほど私と時を共にしたいか。 さあ、私の胸に飛び込んでくるがいい、ジュドー・アーシタ」 ジュドー「なんでまたハマーン先生が出てくるんだよ……。て、嬉しそうに両手を広げんなっ」 187 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:2008/04/11(金) 12 11 57 ID ??? シーマ「ジュドーの坊やは何だかんだ言いながら、わざとハマーンの補修を受けるよう行動しているように見えるよ」 ハマーン「つまり?」 シーマ「所謂ツンデレだね。ジュドーがあんたのものになる日も近いよ」 ハマーン「そ、そうか。それは楽しみだ」 シーマ「ところでコウの事なんだけどねぇ……」 ハマーン「あれは何だかんだと言いながら、最終的にシーマの誘いを受け行動を共にしている」 シーマ「つまり?」 ハマーン「所謂嫌よ嫌よも好きのうちだ。コウが貴様のものになる日も近いだろう」 シーマ「や、やっぱりそうかい? いやぁ、楽しみだねぇ」 ジュドー「ううっ、なぜか悪寒が……」 コウ「僕も急に寒気が……」
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思えば、鳥さんと私の関係ってだいぶおかしい気がする。 ウスワイヤとホウオウグループ、その二つがどのような関係にあるかだなんて、私自身よく知ってる。 ウスワイヤにとっては必ず倒さなければいけない相手、だ。必ずは必ず、絶対、100%倒さなきゃ駄目。 対して、ホウオウグループには障害で振り払わなければいけない。彼らと相入れる事は恐らくないだろう。 それを踏まえて鳥さんにホウオウグループに入れだの理解しろだの言っても、きっと無理な話だ。 でも、それは当たり前のこと。 だって、鳥さんの人生を狂わせた上に大事な人達を奪った相手を許せだなんて私にだって出来ない。 父親を許せと言われてるようなものだ、無理無理。 それなのに、二人ともお互いのことが好きだなんておかしいよね。 将来的には、必ずどちらかが消える筈なのに。 「…トキコ?」 「えっ?なに、鳥さん?」 「いや、…なんだかぼーっとしていたから…少し休もうか?」 「そんな!大丈夫っ、それより早く、えらぼ!」 「あ、あぁ。」 どうやら私はブレスレットを手に取ったまま、そのまま考え込んでいたようだ。 いけないいけない、今はデート。もうポリトワルの方は済んだんだし、普通に楽しまないと! ということで、今私達はスノーエンジェルに訪れているのだ。 ここには北欧雑貨の他にもアクセサリーなどが置いてあり、女の子にも大人気のお店である。 以前、エミちゃんとウミちゃんとスノーエンジェルに来た時、鳥さんに似合うアクセサリーがあったのを思い出し、 早速今日、鳥さんを連れてきたのだ。 …その時は普通にお買い物だったよ、ホントだよ? 「(うーん、どれだったかな…)…あ、これこれ!鳥さんこれどう?」 そう言って私が差し出したのは、赤い石が埋め込まれた銀色のブレスレットだ。 女の子っぽい、というよりもデザインは若干男の子向けだからクールな鳥さんにはぴったり。 しかし、鳥さんは何故か一瞬、動きが止まり、黙ってしまったのであった。 「鳥さん?」 「…シンプル、で良いと思う。けど、…その、」 その表情は明らかにおかしいし、若干暗かった。 こういうのもいいんじゃないかな、とストラップを私に見せてきたけど、その前に少しだけ見せた、 手首を押さえた動作を私は見逃さなかった。 手首に対して何かトラウマでもあったのだろうか。 …そういえば、鳥さん腕時計とか持ってなかったよね。 「………」 「トキコ?」 「…ううん、こっちがいい。駄目?」 「駄目、じゃないけど…」 「付けるのが嫌なら、持ってるだけでいいよ。ね?」 我ながらあざとく、首を傾げて鳥さんにおねだりしてみたら、苦笑しながら頷いて受け取ってくれたのであった。 今はきっと無理かもしれないけど、いつか付けてくれるといいな! そんな淡い期待を抱きながら、同じデザインの物を購入して、私達はスノーエンジェルを後にした。 「うわー!冷たい!」 「トキコ!そんなに近付くと波が…」 「アーッ!!」 「………」 空はすっかり夕焼け色に染まり、水平線の向こうは太陽の光でキラキラと輝いていた。 デートの最後に来た場所は海岸で、私が無理矢理鳥さんを連れて来たのだ。 ちなみにこの近くに村長さんの家があったらしいけれども、私はまったく知らなかったのは内緒。 鳥さんの警告を聞かずにものの見事に塩水を被ってしまった私は、波打ち際で尻餅を付いていた。 服もずぶ濡れで、肌に張り付いて気持ち悪い。カバンを近くに置いてからでよかった。 「大丈夫?」 「大丈夫っぽく見えるー?」 「…全然。」 律儀に靴を脱いでズボンを捲って海に入ってきた鳥さんは、私に手を差し出してそう言った。 無傷な状態が無性に悔しくて、私は思わずその手を力任せに引っ張って、鳥さんを海へと引きずり落とした。 ざっぱーん、と豪快な音と共に突っ込む鳥さん。 「っトキコーーーー!!!!」 「あはははははは!!!!」 私と同じようにずぶ濡れになってしまった鳥さんは顔を上げると、それを合図に私は逃げ出した。 きっとすぐ捕まるであろう鬼ごっこ、なんだか思ってたより楽しくて、ずっと続けばいいのにだなんて、 つい頭のどこかで考えてしまった。 力強く手首を掴まれ、その勢いで身体が前のめりになったけど、私の足は止まった。 ぜぇぜぇ、と息を吐く鳥さんは、一旦大きく息を吸って、それから吐いた後、 「捕まえた。」 と言って、少しムッとした表情を浮かべたが、すぐに笑顔を浮かべた。 束の間の逃走劇は、これにておしまい。 私達は手を繋ぎながら、荷物が置いてある場所まで歩いていった。 歩きながら、私は鳥さんに話しかけた。 「あのね、鳥さん。」 「ん?」 「私、海行ったことなかったんだ、今まで。」 「…そうか。」 「うん、だから今日来る事が出来て良かった。」 「また、来ればいいじゃないか。」 「…来れるかな、また。」 「………」 そう言ったら、鳥さんは黙ってしまった。 私も、そのまま黙り込んだ。 …終わりを考えるだなんて、らしくないよね私。 「来れるさ。」 凛とした鳥さんの声。 「今度は、皆で来よう。」 振り向いたら、鳥さんは優しい笑顔を浮かべて私に言った。 それが夕陽よりも眩しくて、温かくて、なんだかとても安心した。 でも、何故か喉がつっかえて上手く声が出せなかったから、私は頷いて返事を返した。 夕暮れはあっという間に暗闇を帯びて、もうすぐ夜がやってくる。 鳥さんが私をうちまで送ってくれるそうなので、その言葉に甘えて、私達はまた歩いていた。 …そういえば、大事な事忘れてた。 「あのね、鳥さん。」 「ん?」 先程と同じように声をかけて、一つ間を置いた後、ちょっとドキドキしながら私は告げた。 「この前の返事なんだけどね?」 「…あ、あぁ…」 「やっぱり、私はホウオウ様が好き。」 「…そう、か…」 やっぱり予想通り、鳥さんの声はどこか落ちていた。若干、繋いでいた手の力も緩んだ気がするし。 でもね、と私が言葉を続けると、少しだけ鳥さんの身体が強ばった。 「鳥さんも、好き。」 「え…」 「だから、優劣とか順位とか、そういうのは付けられない! 私は鳥さんが一番好き、その気持ちには変わらない。」 「…トキコ…」 ホウオウ様も、鳥さんも大切。 だから私は、ありのままの答えを鳥さんに伝えた。 選ぶ必要はない、その影さんの言葉を信じて。 少しだけ反応が怖かったけど、鳥さんは追求も何もしないで、私に一言をくれたのであった。 「…ありがとう。」 朱雀と朱鷺がデートするお話 「答え」 (その答えに彼女の全ての想いが込められていた) (…と、思う)
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Q:どうしてスザクはうざがられることがあるのですか? A:超人だからです。 いえそれはポテトです。Yes,My rule. Q:壁子とか壁っ娘ってなんですか? A:一期で「自分のギアスの効果がどれくらいの時間続くのか」を調べるためにルルーシュにギアスをかけられて、毎日壁に印をつけていた子です。ルルーシュの学校の生徒の大半は入れ替わっているので、壁子ももう本国へ帰っているのでは…? Q:皇帝やロロにギアスを与えたのは誰ですか? A:第三話の時点ではまだわかりませんが、V.V.ではないかという説があります。 Q:ロロのギアス能力の正体は何ですか? A:これも第三話の時点ではまだはっきりわかりませんが、一定範囲内の人の意識を一定時間止めているというのが有力。回数制限無し。目を合わせる必要無し。 Q:OPで夕日の中をさっそうと歩いている人は誰ですか?オレンジですか? A:おそらくオレンジだと思われます。オレンジが誰なのかについては一期を参照してください。 Q:ルルーシュのギアスは何回使えるの? A:現状では一人に対して一回です。C.C.に対しては最初からギアスが無効です。 Q:ルルーシュの学校の生徒達はどうなったんですか? A:生徒会のメンバーはブリタニア皇帝に記憶を書き変えられています。他の生徒は本国へ帰ったようです。 Q:ニーナはどこにいるんですか? A:卒業して科学者になりました。今は何かを研究中です。 Q:2話の時点で、ロロはルル=ゼロと知ってるの? A:余裕で知ってます。しかし、3話の時点で新たなゼロとは別人かと考え出したようです。 Q:「ギアス」ってルルーシュが勝手につけた名称じゃなかった? A:それで正解だったようです。C.C.はなぜ知ってるのか疑問に思い、尋ねたのでしょう。 Q:ゼロはいつガオハイに・・・ A:ビル倒壊→領事館へ→ガオハイに謁見、ギアスかけ→ルル逃亡→C.C.ゼロがパフォーマンス Q:意識停止なら、なんで月下の自爆で A:ヴィンセントは丈夫なんです。完全に回避できた訳ではないので損傷は受けました Q:ロロのギアスが暴走したら孤独になるの? A:そんなアホ展開になる筈もなく、その前にスザク様にでも殺されるでしょう。 Q:コーネリアは? A:ブラックリベリオンの際に、失踪しました。 Q:ヴィレッタはギアスのことや、ルル=ゼロを・・・ A:知ってます。C.C.捕獲チームで現在指揮官のようです。同じように男爵もある程度は知っていたのでしょう Q:ガウェインは・・・? A:海底です。完全に沈黙しました。プラモ・・・ Q:C.C.はどうやって海底から・・・? A:死亡と蘇生を繰り返して、浮いてきたという話です Q:スザクは何したいの? 『黒の騎士団の独立戦争は悪い戦争!』 『帝国の侵略戦争は良い戦争!』 元気に世界各地で侵略のお手伝いをしているようです。 Q:ルルはどうやって試着室出たの? A這いました。下のほうは死角だったようです Q:ジノやアーニャは、ゼロ生存を聞いていたんじゃないの? 1話→2話 A:現在謎です。皮肉? 時系列逆? 記憶消去? Q:機情局の会議で「ギアスを使った形跡はない」とか話しているのに、なんで隊員にギアスの事を聞かれたぐらいで殺さないとならんの? A:心の声という話です。
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…ふと思いついた瀬戸内百合ネタ短文。 需要があるかどうかわかりませんが、訳もなく萌えてしまいました。 にょた就にこれこれこうな目に遭わされる姉貴。 いや、もうにょ光秀にいけない悪戯されるにょ長政様も書きかけているのですが。 最初はほんの些細な出来事だった。 「接吻、したことある?」 いつものように二人で甘味を食べながら、長曾我部元親は向かいに座る彼女の顔を見た。 侍女が用意していったお茶を啜り、極上の甘味を堪能する。 「それが何か?」 匙に掬った餡を口に含み、こくりと飲み込むと、毛利元就は冷たく一瞥したのみで、 興味無さそうに視線を手元へと落とす。 「……あるんだ」 「別に貴様に責められる謂れはないぞ」 最後の一口をゆっくりと味わいながら、元就は匙を置いた。 「そう」 元親の方は、と見れば、彼女の手元にある碗には半分程度中身が残っていた。 彼女の好きな名店のあんみつだ。甘い物には目が無い、という元親にしては珍しい事があるものだ、と元就は呟いた。 「したい相手でも居るのか」 琥珀色の瞳を細めて、色白な元親の顔を眺める。 「ま、まさかぁ」 半分ほど声が高くなり、ははは、と引き攣った笑いをしながらも、瑠璃紺の隻眼が不安げに宙を彷徨う。 「嘘をつくなら、もっと上手にやれ」 ああ、こんな所がどうしょもなく可愛い、と乙女らしい反応を示した幼馴染の慌てふためく様を観察しつつ、 元就は口元を僅かに歪め、にやり、と笑う。 「そんなんじゃない」 「では、ここで我が貴様の唇を奪っても文句はないな」 えっ、と驚く間もなく、元就の細い指が元親の顎を捉えて、白く端整な顔が近付いてくる。 切れ長の瞳を細めて笑むその顔は、うっかり見惚れる程に美しい。 「ちょっと…」 「…うるさい、黙れ」 ちゅ、と柔らかな唇が触れ、元親の頭の中は混乱した。 それなりのお年頃ではあるが、未だに誰かとこのような事を、しかも異性はおろか同性相手にも経験した事がなかったからだ。 並みの男性よりも長身で、重い碇槍を片手で振り回し、先頭を切って戦場を駆ける鬼神さながらの猛将だが、 その本質は紛うことなき姫であり、都で人気のある恋物語を読んでは色々と憧れを抱き、そして現実に溜め息する。 乳母などから、男女の営みとはどのようなものか、閨では殿方と如何様に接すれば良いか、 それこそ破廉恥な、と顔を赤らめて耳を塞ぎたくなるような事まで教えられている。 まあ、これもいずれどこぞの家へと嫁ぎ、子孫繁栄の為に必要な知識ではあるのだが。 仲の良い侍女などは、恋人とそのような間柄になったのであればこれこれこう、と詳細な話まで懇切丁寧に教えてくれる。 だがしかし、この年になるまで元親にはそのような機会がなかった。 今更言うのも恥ずかしい。 「……ん………」 隻眼をぱちぱちと瞬かせながら、軽く啄ばむように口付けを施される。 ふっと唇が離れていくと、元親の唇からは溜め息が零れた。 「何だ、これしきの事で」 ふふん、と勝ち誇ったような笑みを浮かべ、元就は彼女の襟元へと手を添えた。 ぼうっとしている元親は、自分が何をされようとしているのかを咄嗟に理解できず、手を振り払う事もしなかった。 「その先を教えてやろうか」 するり、と指が着物の襟を滑り、腰の帯へと伸びた。 「…えっ、ちょっと待って」 ようやく元就の意図を理解した元親は、小柄な彼女の体を払い除けようとするが、再び唇を塞がれ、口腔を舌で犯される。 いつの間に元就はこんな事を覚えたのだと驚きつつも、反撃かなわず、気付けば畳の上に押し倒された格好だった。 少し荒く呼吸を繰り返しながら、着物を解いていく元就の顔を見る。 「そのように怯えた顔をするでない」 別に取って食う訳ではないぞ、と鼻の頭を舐められ、元親は擽ったいのか首を竦めた。 「閨で恥をかかぬように、我が教えてやろう」 「いや、いいってば、ちょっと…あっ!」 暴れれば着物の裾が乱れ、余計に着崩れていった。 宵闇の華2
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長宗我部元親 基本情報登場シナリオ 全合戦出陣開放条件 戦闘系データ戦技 武器 オススメの使い方 イベント会話イベント 台詞 ○○攻略・編集報告 基本情報 名前/よみ 長宗我部元親/ちょうそかべもとちか 性別 男 身長 立場 武器 三味線 アクションタイプ チャージ攻撃タイプ 固有属性 声優/よみ 置鮎龍太郎/おきあゆりょうたろう 備考 登場シナリオ 味方に関しては、初期配置や自軍でプレイヤー武将として選択出来る場合は上の覧、援軍で登場し、全合戦出陣開放するまで選択出来ない場合は下の覧に記載しています。 味方として登場 初期配置 章 年 ここにシナリオ名[[]] 自軍所属 年 援軍 年 敵として登場 章 年 ここにシナリオ名[[]] 全合戦出陣開放条件 戦闘系データ 戦技 戦技1 戦技2 戦技3 戦技4 戦技5 滅流 開眼 加護 博取 夜叉 武器 ランク 名称 取得場所 攻撃力 備考 1 初期装備 ??~?? 2 轟蛇皮線 ― 3 和楽號三線 4 天津甕三味星 明智の章:山崎防衛戦 41 レア武器 5 蝙蝠髑髏 練武館でポイントと交換 46 第2レア武器 レア武器取得方法詳細 お勧めの取得方法を書いて下さい。 オススメの使い方 お勧めの武器や立ち回り方法、コンボを書いて下さい。 攻撃技一覧 武器 三味線 通常攻撃 N1~3 N4~7 N8 チャージ攻撃 C2-1 C2-2 C2-3 C3-1 C3-2 C3-3 C4-1 C4-2 C4-3 C5-1 C5-2 C5-3 神速攻撃 S1~3 S4~5 S6 神速強攻撃 SS2 SS3 SS4 SS5 SS6 ダッシュ攻撃 ジャンプ攻撃 ジャンプチャージ 騎乗攻撃 騎乗1~3 騎乗4~7 騎乗8 騎乗C2 騎乗C3 騎乗C4 無双奥義 無双奥義 無双秘奥義 無双奥義・皆伝 特殊技 影技 殺陣 無双極意 イベント 会話イベント 出現条件の覧には、友好度などの出現条件があれば記載しています。 イベント名 出現シナリオ 選択肢 好感度上下 出現条件 台詞 状況 相手 セリフ 武将切り替え ── 軍団撃破名乗り 軍団撃破を誉める50人撃破を誉める 目上 目下 50人撃破名乗り ── 1000人撃破名乗り NPC時苦戦中 救援に対する感謝 目上 目下 赤ゾーン侵入時警告 目上 目下 敵邂逅 真田幸村 幸村「燃えよ、魂! 炎となりて槍に宿れ!」元親「上等! 俺も魂を乗せ、奏でよう。炎のように熱く、凄絶な曲をな!」 明智光秀 光秀「元親殿…戦なき地平を見るには、あなたすら越えねばならないのか…!」元親「迷うな…お前が望む未来のためだ」光秀「元親殿…私は…」 阿国 元親「凄絶に貴女に送ろう…葬送曲を」阿国「顔きれいけど、言うこと面白どすなあ。ほな、その曲で死の舞舞わしてもらいますぅ」 森蘭丸 元親「貴様の覚悟は凄絶だが…虚しい」蘭丸「虚しい? 私は信長様のお役に立てれば、それで…」元親「信長が貴様に期待しているのはその程度か? もしそうなら…哀れだな」 本多忠勝 忠勝「四国の雄よ、この忠勝に挑め!」元親「本多忠勝…その武名に応えよう。俺の熱き反骨魂でな!」 島津義弘 義弘「土佐の蝙蝠が、バタバタと騒ぎおる」元親「乱世の闇を貫く声なき声を凄絶に歌いながらな」 立花誾千代 誾千代「貴様の軟弱な三味の音など、雷でかき消してやる!」元親「たとえ楽の音が消し去られても、楽の魂が、乱世ごとお前を震撼させる!」 前田利家 利家「てめえとはタメだったな。五分の勝負ができるってモンだ」元親「三本の獲物と三味…数の上でも対等か。来い、抗ってやる!」 長宗我部元親 敵軍「時の波に流されし、失われた声たちが、俺すら止められぬ曲となってほとばしる…」自軍「俺に止められぬのなら俺が止めてやる。反骨の魂に突き動かされし楽の音で!」 柴田勝家 勝家「怒涛のごとき時代のうねり…。蝙蝠よ、わぬしは何を思う」元親「凄絶に抗い…俺はうねりの先にあるものを見る」 甲斐姫 元親「貴様、凄絶だな…」甲斐姫「…褒め言葉じゃないでしょ、それ!」 綾御前 元親「貴様が愛ですべてを縛るなら、俺は、愛に抗おう」綾御前「抗うのも最初のうちだけ…。愛は無敵ですよ?」 藤堂高虎 元親「来い…貴様の反骨を見てやる」高虎「俺の反骨しか見られない奴に、俺が見切れるか…!」 小少将 元親「お前が呼び寄せる不幸の潮…楽の音で砕いてみせよう、凄絶にな!」小少将「は? なにそれ日本語? わけわかんない。で、やるの? やらないの?」元親「お前は俺だ。わかっているだろう」小少将「…やるのね、はいはい」 攻撃技使用時 攻撃技 文字 セリフ 特殊技1 ─ 特殊技2 無双奥義 奏 無双秘奥義 響 無双奥義・皆伝 特殊台詞 状況 シナリオ 相手 セリフ 味方接近 山崎防衛戦 小少将 小少将「もし光秀おじさまが天下を取ったら…。あなたはきっと大大名ね。よかったじゃない」元親「そんな見返りなど求めぬ。俺と光秀は魂でつながっている同胞だ」小少将「…やっぱあなたってわけわかんない。もらえるものはもらっておけばいいのに」 敵邂逅 山崎防衛戦 羽柴秀吉 秀吉「鬼若子のご登場か! わしに仕える気は…ないじゃろうなあ」元親「百万石積んだところで俺の心は動かない。俺を動かすのは友の凄絶な反骨の魂のみ!」 岐阜城の戦い 柴田勝家 元親「亡き主の妹姫への忠義…その陰に秘めた慕情…可憐だ!」勝家「か、かれ…!? 黙して戦えい!」 お市 元親「兄の復讐に燃える凄絶な花よ…。この俺が手折らせてもらう…凄絶な覚悟で!」お市「…な、なんだかよくわからないけど、参ります!」 練武館 遠呂智 元親「死ぬことを許されぬ凄絶な生…ならば最後まで抗うがいい! 凄絶に!」遠呂智「我に生きよと言うか。魔王のようなことを…」 台詞が出た時の状況が不明なもの(情報提供・編集求む) 特定の武将名 台詞 判明している状況 ○○攻略・編集報告
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映姫4 うpろだ221 六十年毎の、一周期。 現世も冥界も魂が溢れ返り、季節外れの花が咲き乱れる時。 彼女――四季映姫・ヤマザナドゥに取っては、通過儀礼のようなものだ。 無縁塚でサボる部下の尻を叩き、現界に赴いて人妖に『自称』有り難い説教を説いて行く。 そんな何時も変わらぬ、閻魔の日課だ。 だが、今回の開花騒動は、閻魔の元にひとつ、違う花が届く事となった。 「――映姫様、お客様ですよ」 「は?」 是非曲直庁。 時代の流れに対応して、変化を遂げた、地獄の公的機関。 今日も閻魔と死神が、日頃のお勤めをこなしている場所。 そんなところに来る客人とは、大変珍しいものであるが、 「まだ花は全て散っていないというのに……また花妖怪ですか」 「違いますって」 「では八雲の隙間妖怪」 「のんのん」 「まさか巫女ですか」 「あれが来れたら地獄のあり方を考え直さなきゃ行けませんよ」 此処、幻想郷部署の客となると、大概の場合は迷惑を担いで現れる類である。 寛大を持って成る閻魔でも、渋い顔になるのは否めない。 「では、冥界の?」 「だーから違いますって」 が、彼女の部下は何故かニヤニヤと笑っている。 嫌味っぽさを隠しもせず、不遜なほどに笑みを浮かべる。 「……小町、では誰なのですか」 「いえ、正しくは――新任の閻魔なんですがね」 「新任?」 これは珍しい、と目を見開く。 十王全てが閻魔を名乗るようになってから、新任が来ると言うのは初めての事だ。 「あれ?待って――十王に欠員は出ていない筈では?」 「はい。ですが人手不足で――この度、試験的に地蔵業務を閻魔業務を分担制にするそうです」 「……確かに、現状の業務では、説教廻りは時間外勤務ですが」 だが、あれは自分が好きでやっている事だ。おいそれと他人に一任する気にもなれない。 そんな表情が顔に出たのか、小町の笑みが益々深くなる。 「いいじゃないですか、働き詰めは身体に障りますよ」 「いえ、しかし――」 「ところで映姫様」 映姫の反論を遮るように、小町が話題を変えに来た。 「もしかして――覚えてらっしゃらないのですか?約束」 「何の事です?」 その返答に、小町の腰が砕けた。 「……ま、まさか本当に忘れてらっしゃるとは……」 「え?ご、ごめんなさい小町、私は何のことだが――」 『――小町さん、こりゃ百聞は一見にしかずの方が良さそうだ』 そこに、事務所の扉越しに響く声。 「……そーだね、入りな。んでこの鈍感なワーカホリックに一発くれてやりなよ」 『ははは、相変わらずなのか。老けるぞ、映姫』 「んなっ」 本人を前に、部下と揃って不遜の極み。 無論、そこに物申さぬ四季映姫ではなく、机から立ち上がって檄を返す。 「同僚とはいえ失礼なッ!?何者です!?」 『では感動のご対面と行きましょうか』 突きつけられた卒塔婆の前で、扉が開き―― 「どうも。この度着任致しました――」 現れたのは、一人の男。 「――って、もし、映姫王?」 その姿を見て、映姫が固まった。 パーフェクトフリーズもかくやの硬直である。 「あー、この服?どうよ小町さん、やっぱ変か?」 「ま、まあ確かに黒スーツに黒ハットの閻魔なんて、ハイカラが過ぎるたぁ思うけど――」 そうではない。そうではないのだ。 「あ―」 映姫の口から、声にならない声が漏れる。 見開かれた瞳から、涙が溢れ出す。 「あなた――は」 「――はい」 漸く搾り出された声に答えるように、男が歩み寄り、ハットを取る。 「百から先の、其れこそ数え切れぬほど時を刻みましたが―― 漸く、貴女の隣に、立つ事が出来ました」 その声と顔を、映姫は覚えていた。 何年前かはとうに忘れていても、覚えていた。 「ほんと、どの位になるんだろかね。 全く、あたいより偉くなっちまってさ――おっと、口が過ぎましたな」 「今までどおり、○○で良いさ。で――何を泣いているんですか」 「――すみませんでした――忘れていてしまって」 「さて、待てとは言いましたが忘れるなとは言ってませんよ?」 「はい――待ちました。随分と、長く」 「これからは、人手不足に悩む必要もありませんよ――」 「はい――」 幾星霜を、どれだけ重ねた昔だろうか。 その時、一人の阿呆が居た。 「楽しみですな。一緒に茶を飲むのが」 「はい―」 長き裁判の結果、得た無罪の判決。 それをとんでもない理由で突っ撥ね、自ら地獄の門を潜った不心得者である。 その理由を、その男は地獄の門の前で、こう言い放った。 「漸く――惚れた女の寝顔を、公然と拝む事が出来ます」 曰く。 『惚れた女の紐のままでは、未練にしたって耐えるに偲びん』と。 「そっ―あなた、そんな事を覚えてたんですか!?」 「無間地獄は何も無い所でしてな――思い出を掘り返す時間には事欠きませんでしたよ? それはもう涎の雫の長さまでくっきrぐぉ」 男の鳩尾を抉る卒塔婆。 それを振るった映姫の表情は、照れ隠しの憤怒が被さっていた。 「――変わらないのね。あなたは」 「――あの無の中では、変わらぬものしか残りませんよ――貴女への想いとかね」 「これほど不純な閻魔も居たものですかね」 「これほど純粋な閻魔も居ません」 それは昔、遠い別れの前にも交わしたやり取り。 それを尻目に、やれやれと部下は退散を始めた。 「――さて、部下の厚意に預かり、敬語は止めにしようと思うんだけど」 「そうね。でも公私は白黒付けましょうかね」 「今言う事じゃ無かろうに」 昔と違う事は、ただ一つ―― 「ただいま。映姫」 「ええ。おかえりなさい、あなた」 いつでも、寄り添う事が出来る距離にいる事だった。 「――お二人さーん、そろそろ新任挨拶の時間ですよー」 玄関を叩く音と、小町の声。 世にも珍しい閻魔の夫婦、最初の朝は、そんな無粋な目覚めから始まった。 「……案外、ロマンチックにはいかないな」 「……そう、ね」 同じ寝床から、同じ柄の寝巻きで、気だるげに目覚める。 これだけ見れば充分にロマンスなのだが、何分安月給ゆえの共同宿舎。 玄関からの声が直に届く程度には狭かった。 映姫が羽織った大きな男物のシャツも、その寝乱れた髪も、この状況では色気ないものだ。 「……でも、一緒ってのは良いな」 「ええ。私もそう思うわ」 それでも。 「おはよう、映姫」 「おはようございます、あなた」 この二人は、幸せなのであるが。 「しっかし、ここに二人は狭い」 「寝床は兎も角、他は通るのも億劫ね」 朝の洗顔は、狭い洗面所故に交互に。 なんとも窮屈な物である。 「まあ、これも良いのかも知れないな」 「いえ、それは困るわ」 適当に出来合いの朝食を済ませ、制服の袖を通す。 互いの身だしなみを整え合いながらの、忙しない朝のやり取り。 「――せめて、子供部屋が二つは欲しいわ」 「……閻魔同士で子連れか。しかも気が早いぜ奥さんよ」 「何れは貯まるでしょう?色々と」 「溜め過ぎると二つじゃ足りなkぐぉ止めろネクタイはヤバい」 色めき立つ会話も程ほどに、二人揃って玄関を開け――。 「「――昨夜はお楽しみでs」」 「おはよう御座いやがりますねこのサボり魔」 「そしてパパラッチは飛んでお帰りッ」 上司夫妻を売った駄目部下とパパラッチを、見事なコンビネーションで粉砕した。 具体的且つ一言で説明するなら、【重裁『ランページ・ジャジメント』】だろうか。 「ったく――それじゃ行きましょうか、奥さん」 「勿論ですわ――それはもう文字通り地獄なりとも何処へでも」 幻想郷の閻魔さまに、旦那様が出来ました――。 文々。新聞、どうにか上がった今朝の号外(検閲済み)の、見出しであった。 おまけ 勤務時間の、とある話。 「――しかし、小町」 「何でしょう?」 「自分の夫の仕事振りというのも気になりますね」 「あー……」 「というわけでこれから、視察も兼ねて顔を出そうかと」 「うー、あー、その」 「あの人の勤務先は解かりますよね――って、小町」 「あ、あいつなら今、そろそろ極卒との定例会で」 「賽の河原ですね――どうしました?顔色が悪いようですが」 「どうしても、ご覧になります?」 賽の河原。 親に先立った不孝者の霊が、己の罪を償う場所。 「よしよし、今日も沢山積んでいるね」 「あ、黒帽子の閻魔さまだー!」 黒ハットの閻魔は、その穏やかな物腰で、早くも子ども達に馴染みつつあった。 (ああ、ちゃんと子ども達とも打ち解けてますね) (はい……) それを物陰から見守る上司と部下。 別にやましい事があるわけでは無いが、閻魔が覗き見とはこれ如何に。 (で、何が問題なのです?確かに、少々甘すぎる気もしますが) (いえ、あたいの旦那の部署から聞いた話なんですがね?) (そう言えば届を出したのよね、おめでとう) (あ、有難う御座います。で、ですね) 「――あンた新入りかい?困るんだよねーガキに甘くしちゃ」 「「ひっ」」 其処へ、肩を怒らせ、金棒を肩に担いだ極卒が歩み寄る。 「ん?」 (む?なんですかあの柄の悪い極卒は) (あー、今季入ってきた新入りですね) (では夫の顔を知らないわけですね?全く、私が一言――) 「そうか、私を知らないかね――それは良い」 「あーん?てめえ何言って」 「ア テ ン シ ョ ン (気をつけ)ッ!!!」 極卒の声を遮るような、鋭い檄が飛んだ。 「●●!」 「アイ!サー!」 そして何処からとも無く、くるくると回転して現れる死神の男。 (あ゛ー!!?何やってんのアンタ!?) (ど、どうしました小町) (う、うちの旦那です) (はい?) (地獄での監察官をやった、って聞いてましたけど、まさかそっちだったとは――) 「どう思う」 黒ハットの閻魔に、何故か前時代的な軍服を来た死神が応答する。 「イエス・サー。致し方ない事かと思われます。 この男は、つい最近訓練機関を終えたばかりで有りますが故。サー」 「ふん、つまり体制的に蔓延する怠惰か。成る程――」 黒ハットを押さえ、落胆のジェスチャーを示し―― 「おい、貴様」 「な、何だよテメエ、死神従えて――」 「馬鹿もんが!!閻魔様がお呼びだ!口を慎め!!!!」 軍服死神こと●●が、躊躇ない叱咤を浴びせ、極卒が怯む。 それにしてもこの男、ノリノリである。 「な、こ、こいつが、閻魔さま!?こ、こりゃ失礼を」 「貴様の頭蓋にはクソしか詰まっていないのか?」 黒ハットの鍔越しに、○○の眼光がぎらりと輝く。 「それとも、ソレが貴様の脳が導き出した、上司に対する態度かね」 「ひっ、し、失礼しま――」 「ふざけるな!!聞こえんぞ!!」 檄が飛び、獄卒が縮み上がる。 「たッ!!大変失礼致しましたッ!!!」 「言わねば解からんか!!その口がクソを垂れる前と後ろに――」 「サー!!大変失礼致しました!!サー!!」 「よし。いいだろう。 今回はそのクソ以下の熟成の、粗末な脳ミソに免じて、大目に見てやる」 「さ、サー。感謝します、サー」 先程までの柄の悪さは何処へやら、新人獄卒は足早に去っていった。 それを不満も隠さず嘆息し、黒ハットの閻魔が辺りを睥睨する。 気が付けば、騒ぎを聞きつけた他の獄卒が集まっていた。 「こらお前達、とっとと業務に――」 「いや●●、丁度良い」 黒帽子を一層深く被りなおし―― 「改めて、これだけは言っておく。 映姫は大変寛大な閻魔であったが、私は違うぞ!! 田舎の昼行灯気分に浸かり切ったその性根を、この私が直々に扱き倒してやる!! 覚悟するがいい!!」 罵倒する。 「いいか!!?貴様等獄卒は、蝿に集られるクソにも劣るクソ虫だ!! それも訓練されていない、的当ての鬼にもなれない張子のクソ虫どもだ!! それをこの私が自ら!!徹底的に!!血の小便が出るまで鍛えなおしてやる!! 貴様等が名乗る事さえおごがましい罪人である事を、その髄にまで刻み込んでやる!!」 語彙の全てを尽くし、罵倒する。 「どうだ!!嬉しいだろう!?だが勘違いするな!!全ては貴様等の為ではない!! ――そうでなければ、私の給料に響くからだ!!そこに酌量はあっても慈悲は無い!!」 全身全霊で、罵倒する――! 「――返事はどうした!!」 『サー!!イエス・サー!!』 その罵倒に、軍人モドキの死神がまた合いの手を入れる。 「ふざけるな!!聞こえんぞ!!!」 『サー!!!!!イエス・サー!!!!!』 (……これなんてFMJ?) (……) (つーかうちの旦那もノリノリだなあ……あ、手ェ振った。こっち気付いてるな) 「おおー……最近の閻魔様って――格好いいー」 「ははは、そう言うな。照れるなあ――こら貴様等、聞いているのか!!?」 (えー最近の子ども達ってあーいうのが良いのかーうわーやだなそれ) (……) (あ、もしもし、映姫様、大丈夫ですか?お気を確かに――) (……素敵) (は?) (なんて良い声……強い語調……野蛮にして知的な罵倒……) (え?ちょ、映姫様、何ウットリ桃色吐息な奥様フェイスになってるんですか、ねえ) (ああ、最高よあなた……今夜は楽しみにしてなさい……ああ、あぁ――) (ぅわ、駄目だこの人) 何はともあれ。 この夫妻の仲が円満に行きそうなのは、間違いなさそうである。 おまけ2。 「ふーむ、よもや此処までとは。俺から教える事はもう無いな」 「は、有難う御座います。●●先生」 「いやいや、堅苦しいのは無しだ。――で、どーよ、奥様との生活は」 「いやー良いですね。オンの凛々しい姿も可憐ですけど、オフの気の抜けた表情もまた――うむ、 こう――駄 目 だ !! 何 と も 言 え な い!!」 「そうかそうかこの駄目閻魔め。 あー小町も可愛いったら可愛いんだが、ギャップって奴はまだ控え目でな? もーちょっと色々と慎ましく可憐な小町も、もっと見たいもんだ」 「でも、そういうタイプだと思いますよ?」 「時々は見せてくれるんだが、ワンスモア、だな。 あ、胸は慎ましくない方gげふう」 「何 言 っ て い る ん だ い っ!!?」 「俺は慎ましいほうが――おや聞いてたのか小町さん」 「○○も!!映姫様に知られたらどうなるか」 「既に知っているさ」 「はあ?」 「『そっちの』話の相談相手は、全て先生からだからな。そして其処に居る」 「こ、小町ったら、案外おしとやかな所もあるのね……ぽ」 「こ の エ ロ 旦 那 ァーーーーッ!!?裁きを受ける前に 死 ね ぇ !!」 「うわぁい小町ブリーガーだ幸sぽぐぅ」 是非曲直庁・幻想郷課は、今日も春度が全開でした。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 7スレ目 631 「ふぅ…」 「お疲れ様です、四季様」 今日の裁判を滞りなく終え、小さい体を一杯に伸ばす四季様に 俺は湯気の立つ湯飲みを手渡す。 ちなみに中身は梅こぶ茶だ。 「ありがとう…やはり、この香りと味は落ち着きますね」 一度思い立って振舞ってみたら思いの外気に入られたようで、 以来梅こぶ茶が仕事の後の一杯となっている。 年寄り臭いとか思ってても口には出さない。 まだ地獄は経験したくないからな。 「○○、今失礼なことを考えませんでしたか」 「滅相も御座いません」 「それならば良いのですが…うう、ちょっと熱いですね」 ふーふーと息を吹きかけお茶を冷ましながら飲む姿を見て、思わず笑みが零れる。 外見相応の、どこか子供っぽい仕草から感じる微笑ましさか、 はたまたその光景を俺だけが目にしていると言う優越感からか。 「どうかしましたか?」 「いえ別に。 次からは少し温めに淹れますね、四季様」 「そうしてもらえると助かります…ではなくて。 少し変ですよ、○○。 キチンと休養は取っているのでしょうね?」 「ご心配なく。 睡眠時間は十分ですよ」 そうですか、と彼女は満足げな表情で頷き、またお茶を口に運ぶ。 しばらくの間、閻魔の仕事場には、小柄な少女の微かな吐息が響いていた。 「ご馳走様です」 「お粗末さまです、四季様。 お味の程は?」 うーん、と四季様は下唇に指を当てて考え込む。 「若干ですが、薄かったような気がします。 あとは…」 「少し熱くて飲み難かった、ですね。 精進いたします」 苦笑を混ぜながら言う俺に、彼女はほんの少しだけ不機嫌そうな瞳を向け、 「それもそうなのですが…私が言いたいのは」 「???」 はて、まだ他にあっただろうか。 わずかに首を傾げて見せると四季様は、 「言葉遣い、です。 仕事は終わったのですから、その」 顔を俯かせて、ぼそぼそと言葉を紡ぐ。 最後の方は殆ど蚊の泣くような 声だった。 彼女の意図…と言うか希望は何となく分かる。 しかし俺は 敢えて気づかない振りをしてみせることにした。 たまには構わないだろう。 「すみませんが…他に、何か?」 「うぅ…そんなに私の口から言わせたいのですか」 イエス、絶対にイエス。 アレ、俺ってSだったんかな? と軽く戦慄 している俺に、愛用の勺で口元を覆った四季様は少しの間口篭っていたが、 「し、仕事は終わったのですから上司と部下ではありません。 そ、その…今からは恋人として接して欲しいと私は言っているのです!」 一気に捲くし立てて見せた。 視線の関係上表情を伺うことは 出来ないが、恐らくは真っ赤になっていらっしゃるのではないかな、と思う。 俺は軽く咳払いをすると、 「分かったよ、映姫」 畏まった口調を廃して四季様…もとい映姫に微笑みかけて見せる。 「そうです、それでいいのです。 貴方は少し悪戯が過ぎる。 もう少し恋人の意志を汲むこと、コレが貴方に積める善行ですよ?」 「勿体無いお言葉です」 「ま、また! だから貴方と言う人は…」 勺で俺の額を打とうとする映姫の腕をやんわりと掴み、体ごと手元に引き寄せる。 外見どおりに小さく軽い、恋人の身体を腕の中に収めながら、俺は彼女の耳に口を寄せ、 「ごめん、映姫。 ちょっと悪ノリが過ぎた」 「貴方は…狡い人ですね」 「…嫌いになったか?」 「そんなことは、ありませんよ」 背中に回された両の腕に、力が籠る。 強すぎず弱すぎない、心地よさに満ちた抱擁。 その光景は数分後、霊魂を送り忘れたサボタージュの権化が部屋に飛び込んでくるまで続いた。 「コマチー? 入室の際にはノックをしろと教わりませんでしたかー?」 「い、いえそれはですね。 連絡が遅れちゃマズいと思ったわけで」 「やれやれ…来月の給料査定、楽しみにしておくことです」 「そ、そんな殺生な! ○○、アンタからも言ってくれないか!?」 「小町。 黙って訊くこと以外で、部下が上司に出来るこたぁないぜ?」 「う…うわーん!! 神様のばっかやろおぉぉぉー!!」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 7スレ目 690-691 、 ___,,..‐ァ、___ ,. , '"´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ト 、 | >''"´ . .//T\ . `"''<i//i / \, '" . . . . . . . .i | i .閻 | | . . . . . . .`y !. | 少しばかり人の弱みを見つけたら、 \_ . . . . . . . | |_l 魔 l | . . . . . / / | ここぞとばかりに突付きまくる. '; r---r-ヘ_r‐'-、__,.r‐ァ'-‐''"ヽ.,__ノ ! その根性が気に食わないのです !/ァヽ、_rへ、/_>、,__!,.イ . . ! . . . . .〉ヾ!-'、<_] | 花映塚では私が⑨に負けた?く__/ . ノ ( . . . . / ! . . /! . ./ | . /!_, .ィ/! . . .',、 ヽ. ! 何が花映塚ですか !/ . . ⌒ ;. ./メ、!,/__レ' レ' !_,,.!'rァ! . i . . ト、 | .! たかが弾幕ごっこに負けただけです/,.! . . . i . / . ./ァ'ーr--r' ´ト '! !.! . ! ./ )' | お遊戯の勝敗ではなく/ ! . . . '; i . . . iハ ト !. '-''ン'| . レ',.イ < 審議者として説教を行って何が悪いのです ';. !. . . レへ; | ゝ `"´ . ⊂⊃|'_ノ、.,_,.ヘ.,,_ | 大体いい歳して弾いじりなんかしてるんじゃありません ハ ! . . . i. .'; . ⊂⊃ ,. -‐、 ,.イ| . |ゝヽ、.,_____ノ| 他にも言いたい事が沢山ありますよイ ハ! . . . .! . . ハ .`i> 、.,_!____,. 'イi . . ! r | 私が一生懸命作ったカレーライスに`´/.レヘ . !. ノン´ンヽ、二「__ン ヤ! ノン!. ___ ! ジャガイモが入っていたからって. / ,' !ァ''"´ `ヽ ヽ、_o' `'マ`ヽ. / /7 .| 食べずに全部残すとはどういう了見です'_,ノ / ヽ,.- 、., ___ ! ハ//i/ __ ! 私は別にいいのです k、 、 ノ´ _____,,ン--─ '''""´  ̄\\ 野菜を作ったお百姓さんに申し訳無いでしょう //ヽr'" 7´ 、 `ヽ.____ // ) ) そもそもの罪は告白しておいて ./ ./ /iヽ.r/i ヽ ヽ,_ソ o ̄""iニ=;─; -'- ' .| 結婚するつもりが無いというあなたの態度です |__,|_/」 .!Y iヽr 、_ン'"i ! !" ! | ええそうですよ 勘違いして一人で浮かれてた ヽ、.,____,,.. イコ o r-!、 _/ | 私が悪いんですよ ,.く / ! Yく !、 ', …… じゃなくてですねえーと / `ート、 ;____ /! ; イヽ.ノ ヽ、 _____________________________________________________ 「とまあ、こんな事があって、ここまで逃げてきたわけだが」 「それであたいにどうしろってのさ。夫婦喧嘩は犬も食わぬって言葉知らないのかい?」 「いや、ほとぼりが冷めるまで置いてもらおうかなー、と」 「お断りだよ。あんたが喧嘩した直後にここにいるってだけで四季様の機嫌が悪くなるってのに。 いくらあたいでも巻き添えは御免だね」 だよなあ。俺だって他人の巻き添えとか真っ平御免だ。 ま、俺も本気で小町のとこに入り浸ろうとしてたわけじゃないけどさ。 人間心の準備というかインターバルというか覚悟完了というか、そういうのは必要なんだよ。 「ところでさ」 「ん、なんだい?」 「弾いじりってなんか響きがエロいよな」 うっわ、小町がすっごい冷ややかな目で俺を見てる。 「……いいからさっさと謝って料理を平らげてきな。それで万事解決するだろうさ」 「それは暗に俺に死ねって言ってるんだな?」 「お、そりゃいい。あんたにあたいの仕事を手伝ってもらうのも悪くないかもねー」 そう言ってカラカラと笑う。 やれやれ、どうにも小町には敵わない。 でも結構ガチで深刻な事態だし、このままってのもシャクなので、精一杯の悪態をついて帰ろうと思う。 「クソッ! なんて時代だ!」 正直ネタとしか思えない悪態をつきながら、彼は四季様の下へ戻っていった。 やれやれ、事あるごとにあたいの所に厄介事を持ち込まないでほしい。 それでなくてもこっちは忙しいし、どうせすぐ元の鞘に収まるんだから。 というか、四季様も四季様なんだよ。 家事もろくすっぽ出来ないくせに、ここぞとばかりに○○の為に頑張っちゃったりして。 指に絆創膏張ってたの、○○やあたいが気づいて無いとでも思ってるのかね。 大方女らしい所見せようとしてこさえた傷だろうけど。 ○○が某メイド長の料理の話をした矢先にコレだ。中々可愛い所あるじゃないのさ。 ……でもあたいは決して四季様唯一のレパートリー、どどめ色の物体をカレーとは認めない。絶対に。 四季様、○○が他でもない貴方の料理を残したのは、絶対ジャガイモとかそういう問題じゃないですから……。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ280 拝啓おふくろ様、あなたの息子は今とてもピンチです。 「さ、今から私が貴方に下す罰を当ててみなさい」 怒り心頭、怒髪天を衝くという表現がまさにぴったりとも言える状態で、えーき様は手にした笏を俺に向けた。 すっごい怖いですえーき様。 「さ、彷徨える大罪?」 「NO!NO!NO!」 「じ、十王裁判?」 「NO!NO!NO!」 俺の願望を込めた予想はことごとく外れ、残るは地獄のごとき苛烈さを誇る審判しか残らない。 OH MY GOD! 「もしかしてギルティ・オワ・ノットギルティですかぁぁぁぁ!?」 「YES!YES!YES! ……ってこら、待ちなさい!!」 俺は答えを待たずに逃げ出した。 だってまだ死にたくないもん。 「待ちなさい! 一度あの世で私に詫び続けなさい○○ーッ!!!」 当然のことながら、えーき様は恐ろしい勢いで俺を追ってきた。 引き立て役だった過去に決別する気は毛頭ないので、俺はもう必死に走ったわけだよ。 「俺が何をしたぁぁぁ!!」 「紅魔館の門番とイチャイチャしてて何を言ってやがりますかぁ!!」 「冤罪だァァ!!」 えーき様が怒ってらっしゃる理由が分かったが、それでなんで俺がこんな目にあうのか分からない。 俺は紅魔館に行った事なんて一度もない。 たった一度だけ、門番と顔を合わせたことがあったが……たった一度だ。 「いいから黙って審判を受け入れなさい!」 「ぐえっ! ……あ、あぶねぇ」 防備品A、ヘルメットに深々と突き刺さった笏を見て、俺は血の気が引いていくのを自覚した。 殺る気満々だよこの人ー!!? 「ド畜生、殺られてたまるかー!!」 人間の里の家の隙間を縦横無尽に駆け回り、えーき様が落ち着くまでの時間を稼ごうとするが、飛行可能である彼女の前にはあまり意味をなさないらしい。 気がつけば真上に居て、レーザーをぶっ放そうとしてくるから怖い。 慌ててその場から駆け出し、家の角を曲がった瞬間――――何かが出てきた。 避けきれない! 俺はその何かにモロにぶつかり、そのままもつれ合って転倒。 衝撃と痛みで視界がはっきりとしないが、俺とぶつかったのは人間のようだ。 「「いてててて……」」 同時に呻き声を上げる、俺と誰かさん。 心なしか声が似てるような気がしたが、まあ気のせいだろう。 「ん?」 「あ?」 いざ起き上がろうとしたとき、俺はその誰かさんの顔を見た。 ……驚いたことに、そこには『俺』が居た。 体格も、顔も、身長も同じだ。ついでに声も。 「○○が2人……!?」 上空に居たえーき様も流石にこれには驚いたようだ。 しかし一番驚いているのは、俺と俺2号(今命名)だろう。 「大丈夫でs……えぇー!? ●●さんが2人ッ!?」 その時、タイミングよくやって来たのは例の紅魔館の門番。 名前は……「ほんみりん」だっけか? まあいいや、兎に角『俺』の浮気疑惑の相手だ。 しかしこの俺2号、名前まで似てるとはどういうことか。マジもんのドッペルゲンガーかなんかだろうか。 「あ、なるほど」 その時俺はぴんと来た。 紅魔館の門番といちゃついてたって言うのは……多分コイツだ。 ここまで俺にそっくりならば、えーき様が間違えてしまうのも無理もない。 「えっ!? あっ、あ……うあぁぁぁぁん!!」 ようやく己の間違いに気づいたのか、えーき様は顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりめぐるましくその表情を変え、挙句の果てには泣いてどこかへ飛び去ってしまった。 よっぽど恥ずかしかったのだろう。あと、俺を殺しかけたのを反省しているのかもしれない。 行く場所は大体検討がつくし、慌てて追う必要もないだろう。体痛いし。 「仕方ないなぁ……」 ヘルメットに突き刺さった笏を引っこ抜いてもう一度かぶり、俺は後ろで尻餅をつきっぱなしな俺2号へと振り返る。 今一事情が飲み込めてないようで、奴さんはまだ目を丸くしていた。 「こっちも色々事情があるんでな。まあ、また機会があればじっくり話し合おうぜ!」 さて、職務を投げ出した閻魔様を探しにいこうか。 俺はえーき様が飛び去った方向へ、駆け足で向かうことにした。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ286 えーき様に勘違いで殺されかけてから3日。 俺は……いや、俺とえーき様は買い物という名の、いわゆる"でぇと"をしていた。 はっきり言わせてもらうが、人生初体験である。 歓喜の歌も今なら歌えるかもしれない。いや、きっと歌えるぞ! しかし私服のえーき様は可愛い。相変わらずのミニスカで生足が拝めるのもたまらん。 いつもの帽子もないから、直に見えるうなじもまた艶かしい。 「どうかしましたか?」 「いいえ、何でもありませんとも。決して生足かーいいよかーいいとかうなじハァハァとか思ってませんともぐえ」 ちょっと興奮しすぎていらぬことを口走ってしまった。反省せねば。 自分の頭に突き刺さった笏を引っこ抜き、絆創膏を当てて治療だ。 「もう、せっかくの機会なのですからそういうことを考えてないで、今を楽しみなさい。それが貴方にできる善行ですよ」 「おや、映姫様は今がよければ良いと言う考えは否定なさっていたような」 「細かいところを気にしない! あなたは大雑把なのか神経質なのか分からなくなるときがあるわ」 「よく言われたことです。っと、このネックレスは似合うかもしれませんねぇ」 俺は露店の品物の中からネックレスを手に取るとを、えーき様の首にかけた。 うん、似合う。無茶苦茶似合う。 「あっ……あ、ありがとう」 そこで頬を染めるのは反則。 俺の心にハリケンショットですよコンチクショウ。 「いやはは、これも善行ってやつですよ。親父さん、これ代金ね」 店の人に代金を渡し、また別の場所へ向かおうとする俺達。 しかし! その前に立ちはだかる黒い影が!! 「ふふっ、見つけたぞ……」 「げ、俺2号」 家の影から現れたのは、俺そっくりな人間。その名も●●。 俺と同様に外からやってきた奴なのだが、コイツはどうも紅魔館で世話になっているらしい。 門番と一緒に居るところを、よく目撃されているそうだ。 ま、そのせいで俺が殺されかけたわけだが。 「なんの用だ。俺は今スウィートスウィートなタイムを満喫しているというのに」 「そうです。せっかくの休日だというのに」 俺とえーき様はこの空気の読めないヤローにブーイングを浴びせかける。 が、このヤローの面の皮はかなり分厚いようだ。 閻魔様のブーイングを浴びてもなお涼しい顔をしてやがるぜ。 「ふっ、それが貴様のコレか」 ●●は小指をおっ立てながら、ニヤリと笑う。 うわ、こんなところまで俺そっくりとは気味が悪いぜ。 「その通りだ。悪いかコノヤロー、無茶苦茶可愛いんだぞ」 「えっ、あの……っ」 とりあえず負けじと胸をはって答えてやる。 えーき様の顔はまっかっかだ。可愛いなーもう! 「ほう、言い切るとは流石だ。だが! 美鈴の方が美人で可愛いと断言してやろう!」 「なぁ~にぃ~?」 聞き捨てならねえなぁ。 俺は奴を睨みつけて、一歩前に出た。絶対訂正させてやるぜ! 「ちょっと、ちょっと●●さん。ちょっと目を離したら……ああっ、閻魔様の連れ人に喧嘩を売ってるぅ!?」 その時、またもや家の影から誰かが現れた。 在中華的妖怪、名前は確か紅美鈴。 紅魔館の門番であり、このヤローとイチャイチャしてるともっぱらの評判だ。 「テメー、好き勝手言いやがって……映姫はなぁ、可愛くって、細かいことによく気づいて、優しくて、でも実は甘えんぼさんなんだぞコラ!」 「ちょ、ちょっと○○! 何口走ってるんですか!?」 「ほう、だが美鈴は気立てが良くて、美人で、芯が強くて、胸も大きいんだぞこの野朗!」 「●●さん! 恥ずかしいから大声で叫ばないでください!」 俺も奴もすっかり頭に血が上っている。 コイツは白黒つけんといけないようだな…… こんなこともあろうかと! 鍛え続けたこの体ッ! 奴をぶちのめして己が正義を証明してやるぜッ!! 「この胸にしか目がいかないエロ助め、ぶちのめしてやる!」 「このロリコンがァ……手前こそぶっ飛ばす! そして美鈴が幻想郷で一番の美人であると知れ!」 「誰がだコラ。幻想郷で一番の美人は映姫に決まってんだろうが!」 まるで西部劇のガンマン同士の一騎打ちのように、俺と奴は距離をとって立っている。 「手前、格闘技の心得はあるのか?」 「カラーテを少々」 「奇遇だな、俺もだ」 奴が構える。人間同士であるならば肉弾戦しかあるまいて! だが、それは俺の希望的観測にしか過ぎなかった。 「でりゃああ!!」 奴が突っ込んでくる。 蹴りか! 俺は軽く回避しようとしたが、奴の足の裏に集まる光を見た瞬間、全身の血が引いた。 「でぇ!?」 それは光弾だった。 奴は人間でありながら弾幕を発射する手段を身につけていたというのか!? 弾が俺の肩をグレイズし、服が焦げる。 やべえ、死ぬ。 「ふはは! 避けるとは流石だ。これが俺の、美鈴との愛の結晶! その名も『初見殺しチャイナキック』!」 「まんまじゃねーか! くそ、反則だぜ」 「○○ッ!」 「男の勝負に手を出すなァ!」 前に出ようとした映姫を制止する。しかしコレはまずいぞ。 奴の蹴りはショットガンだ。外の世界の人間が弾幕撃つなんて反則だぜ。 「ふっ、貴様に弾幕が撃てるか? 撃てないだろうなぁ、それが貴様と俺の、嫁に対する愛情の違いだ!」 「んだとぉ!」 俺の、俺の映姫に対する想いが奴に負けているだと!? そんなことはない! 俺はッ! 俺はッ!! 「俺はッ! 世界で一番映姫を愛してるんだよォォォォ!!」 前に出ろ、前に出ろ! 奴の蹴りはさっきので見切れたはずだ。直感を信じろ! 蹴りが放たれる、その瞬間が最大のチャンスだ! 「手前ェェ!!」 「うおおおおおお!!」 奴が蹴りを放とうとするその瞬間に横に回りこみ、一発奴の顔に叩き込むッ! しかし、奴の反応速度は俺の予想以上だった。 自分の顔に向かってくる拳。 完全なカウンターだ。 「ぐはっ……」 「ぐえっ……」 だが、確かな手ごたえを感じ、俺の意識は飛んだ。 意識がはっきりしてきたとき、俺が真っ先に感じたのは「やわらかい」だった。 それもそのはず。映姫様が膝枕をしてくれていたのだ。 「まったく、あんな無茶を……」 「でも、彼の気持ちをその口から聞けたじゃありませんか。あそこまで想われているなんて、私ちょっとうらやましいです」 よく見ると●●には美鈴さんが膝枕している。 あの野朗も、俺と同じく気絶したようだ。まったく、やれやれだぜ。 「でも、貴女と違って私には職務がありますし……」 「時間なんて関係ないですよ。要は、どれだけ彼と楽しい思い出が作れたか……大切なのはそこじゃありませんか?」 「……そうですね、貴女の言うとおりです。私ったら、いつもは偉そうな事言ってるけれど、そんな大事なことに気づかないなんてダメですね」 「そんなことはない!」 俺は思わず大声を出してしまった。 「眼が覚めてたんですか?」 「ついさっきに。映姫様、貴女のお陰で俺は誰かを愛することの素晴らしさを知れた。貴女から大切な思い出も沢山もらえた。だから、貴女は自信を持って良いんだ」 「○○……」 すげえキャラじゃないなと感じつつも、俺は起き上がって映姫を抱きしめた。 ───────────────────────────────────────────────────────────
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訓練所 既に加入済みの方は教官・訓練兵ともに必ずお読み下さい教官のログイン時間について よく来たなゴミども! ここはAlliance of Valiant Armsで活動するNOOBどもを一人前に育て上げるための訓練クラン「訓練所」のHPだ。 「俺はそこらへんの奴より上手い」そう思ってる上級者さんは何も得るものがないだろう、今すぐ立ち退くことをオススメする。 大変申し訳ありませんが私はKD1,5前後の自称中級者でございます。 「芋スナ氏ねって言われた」「F5おねってよく見るけど何?」「SD1以下です」そんなゴミども、ちょっと来い。 訓練所の目的読んでね(はーと どうだ、殺風景だろう? 貴様ら半人前のNOOBどもには華やかなHPもブログも礼儀も必要ない。 クランHPを作ってやっただけありがたいと思え。 今日からここが貴様のホームだ! まずこのWIKI内にある全ての項目を一字一句見逃さず頭に叩き込め。 …面倒くさくなってきた。 ということで早速だが加入条件だ。 加入条件読め! よし、読んだな?掲示板ここに加入届けだして来い! 気づいたら招待状おくっといてやる。 教官急募 初心者さんに自分のノウハウを伝えたい、手伝ってもいい、そんな優しいベテラン鬼教官さんを募集しております。 もちろん、サブアカウントで構いません。 指導する立場になりますので若干ですが条件を設けさせていただきました。 お手伝いいただける方は教官募集こちらを参照の上、掲示板こちらから申請をお願い致します。 確認次第、招待状を送付しますのでお待ち下さい。 テンプレ作り直しのため現行スレを削除、新スレに置き換えました -----------
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FOOLY COOLY ◆B0yhIEaBOI 月が昇る。丸い満月だ。 昨晩と変わらない綺麗な球体が、今夜も俺の姿を煌々と照らし出す。 改めて思えば、この奇妙な世界に来てから早くも一日が経過したことになる。 一日。正確には18時間23分56秒間。長い。長すぎる。 一日あればゲーテの詩集を完読できる。1/1のガ○プラだって出来上がる。 光の粒子はもう200億km彼方の先だ。 だが一方の俺は何を成した。ほんの数十kmを走っただけではないか。 時速に換算すれば実に数km/h程度。遅い。遅すぎる。 加速が、更なる加速が必要だ。 俺は市街地に立つビルの上から彼方を見つめていた。 その視線の先にあるのは歪に崩れたコンクリートの塊。自分がつい先ほどまで居た、仲間達が待つホテルだ。 そのホテルには、此処からでも一目で分かる、明らかな異変が生じていた。 何者かによる襲撃……それしか考えられない。 ホテルは今にも崩れそうだ。一刻の猶予も無いだろう。 一刻か…… だが、それだけあれば十分だ! 「風力、温度、湿度、一気に確認。ならば、やってやりますか!」 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡☆ 「炎の矢ッ!」 光の叫びと共に、数個の火の玉が打ち出される。 それら真っ赤に燃える火の玉は、狙い通り目標に命中した。 火の玉は当たる瞬間に一際大きく燃え上がる。 あれがもし私に当たったなら、火傷なんかでは済まないかもしれない。 ……だと言うのに。 「どうした? 追撃はしないのか、紅い魔女よ?」 当の目標である筈の男は、光の攻撃を全て受けても尚悠然と立っている。 火の玉を全く避けようともしない。 直撃した火の玉の残り火が燻っているというのに、男はそれを意にも介していない。 「ふむ、威力だけを取れば中々のものだ。だが、再装填の時間も長く弾幕を張れるだけの連射性も無い。 現行のライフル銃でも十分代用が効くレベルだな」 それどころか、冷静に光の攻撃を分析、解説しだしている。 自分の体で光の魔法の性能を見定めているのだ。 ――狂っている。 「光! 今はあんな奴放って置いて今は避難しよう! このビルだって何時崩れるか分からないよ!」 そう叫んだ私は、本能的にこの男の恐ろしさを感じ取っていたのかもしれない。 今はまず、この脅威から逃げるべきだと。でも。 「駄目だよみぃちゃん! こいつを放っておいたら、ホテルにいる皆が危ない!」 光はそれを良しとはしなかった。 でも、私は見た。光の瞳の中にある暗い影を。私の中にも居るソレを。 恐怖を。 ああ、光だって怖いんだ。 でも、仲間のために、恐怖に敢えて向かって行くつもりなんだ。 強いな、光は。 「……わかったよ。でも、無理しちゃ駄目だからね? 光に何かあったら、仲間だってきっと悲しむよ。 危なくなったらすぐに逃げるんだからね?」 「うん、分かってる。それにここで時間を稼いでおけば、ホテルにいる皆が避難してくるだろうし…… そうしたら、きっと皆であいつをやっつけられるよ!」 しかし勇ましい言葉とは裏腹に、光はとても不安そうだった。 当然だ。光だって、不思議な魔法が使えるといっても自分と同年代の女の子。 私がこんなに怖いのに、光だけが平気なワケが無い。 恐怖に負けない勇気……言葉にすれば陳腐なのに、体現するのはとても難しいモノ。 光が持っているソレが、私はなんだか羨ましかった。 「さて、おしゃべりは済んだか? 別れの言葉は? 神への祈りは終わったか? ならばそろそろ……始めるとするかッ!」 男の咆哮にビクリと体が硬直する。私が必死に積み上げた勇気が吹き飛んで行く。 そして私は悟った。『逃げる』だなんて甘いことをこの男が許してくれるはずが無い。 だがその時、恐怖に魅入られ立ち竦んでいる私を尻目に光が走り出した。 「みぃちゃん! 危ないからどこかに隠れていて!」 「光……! 」 『私も戦う』『援護する』 その言葉が喉元まで来ていたが、どうしても口には出せなかった。 私が持っているのはナイフ1本。銃も無い。戦闘能力が皆無なのだ。 でも、もし私が武器を持っていたとしても、果たして光と共に戦えるかどうか? 私は密かに、自分が武器を持っていないことに安堵していた。 自分の卑屈さに嫌気がした。 「はああああああっ! 炎の矢――ッ!!」 雄叫びを上げながら、光が再度男に攻撃を仕掛けた。 だが男は飛来する火球をものともせずに、ゆっくりと光の方へ向かってゆく。 「この程度では私の足を止めることすらできんぞ。もっと強力な攻撃手段は無いのか?」 そう言いながら男は、退屈そうに、そして少し苛ついているかのように光を睨みつけた。 おぞましい。身の毛もよだつとはこのことを言うのだろう。 光もどうやら私と同じ気持ちのようだ。この男の目を見ていると、体の奥から震えてくる。 「く、くそっ……ならこれでどうだっ! 紅い――稲妻ッ!!」 光が呪文を唱えると、今度は火の玉ではなく赤い色の光線が発射された。 紅い光が奔る。次の瞬間、爆音が周囲に響き渡った。 爆煙が上がる。 「やった! 光!!」 「駄目だ、まだ来ちゃ駄目だみぃちゃん!」 思わず駆け寄ろうとした私を光が制止した。 もうもうと立ち込める煙の中から、黒い影が姿を現したからだ。 「これが全力か……まあ、人外の力を行使できるのは素晴らしい。だが、ただ『それだけ』だ」 男は、尚もゆっくりと光に向かって歩いてゆく。 まるで光の攻撃が効いていない。いや、効いているのかもしれないが、アイツを倒すのには不十分だ。 駄目だ。私たちでは無理だ。早く逃げないと…… 「うわああああああっ!! 」 ――えっ? 光の叫び声だった。光が剣を構えて、男に向かって突進していく。 「ほう、小細工は止めて正攻法か。いいだろう」 男が嗤う。 だ、駄目だよ光、あんな化け物に向かっていくなんて、※されちゃうよ……! 危なくなったら逃げるって言ったのに、なんで!? 「いやあッ!!」 光が剣を振る。女の子としては意外なほどの剣捌きだ。 鋭い剣閃が男を襲う。 でも、当たらない。 男はその全てを巧みに躱している。 ……いや、避けているというよりも、『攻撃が当たらない所に体を動かしている』と表現した方がいいのかもしれない。 男は、全く危なげもなく光の攻撃を凌いでいるのだ。 レベルが違う。違いすぎる。 「剣術も達者とは言え、凡庸なレベルだな。それ一ツだけで戦況を覆せるほどのものでもない」 男は、先ほどと同じように光の観察を続けているようだ。 「うるさいッ!!」 しかし光の突きはするりと避けられてしまう。 男はそんな光を眺めながらも、淡々と喋り続ける。 「だが、貴様にとって最も致命的なのは『戦術』だ。貴様は自らの技能を全く活かせてはいない。 重要なのは、敵と己の能力を見極め、最善の手を模索することだ。 だというのに貴様は己の特殊技能に頼りきり、それを如何に活用するか、という命題をお座成りにしている。 それではまるきり、宝の持ち腐れだ」 男の目が細る。 「まあ、私は唯ひたすらに向かってくる輩も大好きだがね」 そしてその目じりが歪む。 なんて禍々しい笑顔なんだ。 「さて、ではそろそろこちらからも往かせてもらおうか!」 「うわっ!?」 言うと同時に、男の手元から何かが発射された。 光の剣と当たったソレは、鈍い音を立てながら光の後方へ飛んでゆく。 鎖……? 分銅の付いた、時代劇で鎖鎌の先についてるような類のものだろうか。 それを男は投げつけたのだ。恐るべきスピードで。 恐らく、偶然そこにあった光の剣に鎖が当たり、さらに偶然にも軌跡が変わった鎖が光の体から逸れたのだろう。 この土壇場で、光は確かについていた。 だが、偶然も三度は続かない。 くいっ、と男は手首を捻る。すると、鎖はまるでそれ自身が生きているかのように大きくうねる。 そしてそのうねりは光の体を中心とした円運動へと変化し、鎖が光の体に巻きついてゆく。 「し、しまった……!」 「覚えておけ。これが『活用する』ということだ!」 そう言うと同時に、男は再び右手を捻る。 すると光の体が、まるで玩具の様に宙を舞った。 「あうっ!」 強烈な勢いでコンクリートの壁に叩きつけられた光の口から、悲痛な呻き声が漏れる。 光の体は、そのまま地面に崩れ落ちた。 「紅き魔女もこの程度か……正直がっかりだな」 男が残念そうに呟く。もう光に対する興味を失ってしまったのだろうか。 なら、早く光を介抱しないと。 そう思った私の体を、鋭い殺気が突き抜けた。 「では貴様はどうだ? 貴様は人か? 狗か? それとも唯の臆病者か?」 男の冷たい目が、私を射抜いていた。 「ひっ……」 掴まった。体ではなく、心が。 もう一歩も動けない。立っているのも不可能だ。 私は力なく、その場にへたり込んでしまった。 蛇に睨まれた蛙っていうのは、きっとこういうことを言うのだろう。 私は必死に、唯一の武器であるナイフを両手で握り締めていた。 「あ……あっ……」 言葉すら出てこない。ヒューヒューと息だけが気道を行き来する。 そんな私を見下しながら、男が叫ぶ。 「どうした? 貴様の友は及ばずながらも懸命に戦ったぞ? どうした?? まだ仲間がひとりやられただけだ。 どうした!? 早く立て。武器を構えろ。私に一矢報いてみせろ! HURRY! HURRY! HURRY!! 」 「……助けて、圭ちゃん……」 その言葉が無意識に私の口から零れ落ちた。 怖かった。唯々死ぬのが怖かった。助けて欲しかった。唯それだけだった。 でも、それが男にとっては気に食わなかったようだ。 「……なんだ、貴様は戦うことも出来ない只の糞か。つまらん。全く以ってつまらん」 心底落胆した、といった素振りで私を見る男の目は、侮蔑の感情で満ちていた。 でも、もし命が助かるのならそれでも良い。そのときは本当にそう思っていた。 「つまらん。貴様には生かしておく価値も感じない。ならば、此処で死なせてやるのも情けのうちか」 「ひィッ! 」 思わず悲鳴が漏れる。 男がこちらに向かって歩いてくる。 私は必死に逃げようとするのに、体が言うことを聞かない。 一歩、また一歩。死神が私に向かって歩いてくる。 嫌だ。死ぬのは嫌だ。嫌だ嫌だ嫌嫌嫌いやァ……。 「――それ以上みぃちゃんに近寄るなッ! 」 突如、光の声が木霊した。 「むっ!?」 それと同時に、男の右肩が裂ける。 周囲には光の姿はおろか、人影一つ見当たらない。風が吹いているだけだ。 何? 何が起こっているの?? あまりの恐怖に気が狂ってしまったのだろうか!? 状況が全く理解できない私とは違い、男は可笑しそうに微笑んでいる。 「ほう、超加速か……中々面白いことをする」 男がそう呟く間にも、新たな傷が男の体に刻み込まれる。 超加速……!? そうか、光の持っていた『デンコウセッカ』だ。 それを飲めば凄まじいスピードで動けるようになるって光が言っていた。 でも、それにしたって桁違いのスピードだ。文字通り、目にも止まらない。 今の光を捕まえることなんか、きっとどんな化け物でも不可能だろう。 それはまるで風そのもの、旋風だ。 明確な意思を持ったカマイタチが、男とその周囲の物を切り刻んでゆく。 「やるじゃあないか、紅い魔女よ。あれで終わりかと思っていたが、意外と打たれ強いのだな」 ……そうだ。光はさっき、思いっきり壁に叩きつけられたんだ。 なのに、光は今も戦い続けている。 その姿は見えないけれど、きっと光だってボロボロの筈なんだ。 それでも必死に、臆することなく男に立ち向かっている。 何故なの? どうして光はそんなに強くいられるの? だが、次々と斬りつけられながらも男は怯むそぶりすら見せない。 「土壇場の最後の足掻きにしては上出来だぞ、紅い魔女。 だが、残念だ。貴様はもう少し私の助言を真面目に聞くべきだったな」 男は光が居るであろう空間に向かって叫びかける。 「超加速、大いに結構。だが、それも貴様には過ぎた長物のようだな。 高速で移動するということは、即ち周りのものが高速で通り過ぎてゆくということ。 今の貴様の目は、ちゃんと私を捉えられているのか? 否。それにしては攻撃が乱雑すぎる。 貴様は自身のスピードを制御しきれてはいまい。 その証拠に……」 男は手にした鎖を、近くの電柱に投げつける。 鎖は電柱に巻きついて、男との間に縄跳びのようなループを作る。 ――そこに光が飛び込んだ。 「うわあっ!?」 鎖に躓いた光の体が、アスファルトの地面の上を派手に滑ってゆく。 「ほうら、この通り。簡単に足元を掬われる」 そして光の姿を確認すると同時に、男が跳んだ。 着地点は光の背中。 「ぐはっ」 「そら、捕まえたぞ、紅い魔女。だから私は言ったのだ。『重要なのは戦術』だと。 己の力を正しく認識し、単一能としてでなく、自らの理知(ロジック)を持って力を行使することだと。 貴様の敗因は、己の力に対する『認識不足』というところか」 男は独り言のように喋り続けている。 その間も光は男から逃れようともがいているが、光の背中にがっちりと食い込んだ男の足がそれを許さない。 助けないと。早く光を助けないと。 そう心では思っているのに、私の体は全く動いてくれない。 怖い。恐ろしい。嫌だ。死にたくない。 光は私のことを守ってくれたのに。光はあんなに強いのに。 ……どうして私は、こんなにも弱いの? 「――ッ!」 瞬間、這い蹲る光と目が合った。 疚しい、後ろめたい気持ちでいっぱいの私とは対照的に、 光の目は未だ強い輝きで満ちている。 光の唇が動いている。何かを伝えようとしているんだ。 肺を圧迫された光の口からは何の声も聞こえなかったけれど、 口の動きで光が何を言っているのかが、何故かその時ははっきりと分かった。 「 に げ て み ぃ ち ゃ ん 」 男の足が、光の頭にかかる。 「では、さようなら。紅き魔女よ」 ぐしゃっ。 「あ…………」 光の頭が、トマトのように潰れるのが見えた。 不思議と悲しくはなかった。いや、悲しみも恐怖も、何も感じられなくなっていた。 喉下から何かがこみ上げてきたけれど、涙も何もかもが枯れ果てていたのか、何も出てこなかった。 もう何も出来なかった。何もしたくなかったし、何も考えたくなかった。 「何だこの剣は? 水なのか剣なのか……? まあいい。こちらの重剣ならば使い道もあろう」 男が、光の遺体から一本の剣を取り出した。 風の剣……だっただろうか。私じゃ重すぎて持てなかった剣。それをあの男は軽々と持ち上げている。 あれで私は切り※されるのかな? ……うん、もうそれでもいいや。 富竹さんも、レナも、梨花ちゃんも、圭ちゃんも、光もみんな※んじゃったんだ。 みんなを守ろうと思ってたのに、私は何も出来なかった。 それどころか、逆に私が守られてばっかりだった。 もういいよね。私なんかが生き残ってても、また誰かの足手まといになるだけだよね。 それなら、ここで※んでしまった方がよっぽどいい。 男がこちらに歩いてくる。 そして私の目の前まで来ると、男はゆっくりと剣を振り上げた。 「紅き魔女も独りきりでは寂しかろう。健闘を讃えて、せめてもの手向けだ」 剣が振り下ろされる。 その時の私は何故か、とても穏やかな気持ちだった。 圭ちゃん、みんな、そっちに行ってもまた仲良くしてね……。 そんなことだけを考えていた。 ――風が、吹いた。 「衝撃のォッ……ファーストブリットぉッ!!!!」 何処からともなく聞こえてきた叫び声と共に、男の体が吹き飛んだ。 そして私の目の前には、別の男の背中があった。 ピンチに駆けつけるヒーロー。 年甲斐も無くそんなフレーズが頭を過ぎる。 恐怖も悲しみも無力感も、その一瞬だけは吹き飛んでしまっていた。 「すご……」 思わずそう呟いてしまってから、しまったと思った。 でもそのときは、ただ純粋に凄いって、そう思ったんだ。 「1分11秒38……いかんいかん、世界を縮めすぎてしまったァ~~、 ところでご無事でしたか? イオンさん!」 「みっ……魅音だよ!」 そこには、背が高くて変な髪形で、趣味の悪いグラサンをしたあの男、 ストレイト・クーガーが立っていた。 「……私としたことが、少々遅れてしまったようですね。お怪我はございませんか? 」 「私は……私なんかより、光が、光が……」 クーガーが振り向いた先には、光が変わり果てた姿で横たわっている。 「光さん……逝ってしまわれたのですか。決着は永遠にお預けですね……光さん、ゴッドスピード」 「光だけじゃないよ、 梨花ちゃんもっ、私の、目の前でっ……」 視界が滲む。 今頃になって、私の目からは涙が溢れてきた。 「それに、レナも、圭ちゃんもっ、みんなっ、し、し、死んじゃったんだよっ」 涙が止まらなかった。 それまでに溜まっていた悲しみが、堰を切ったように流れ出す。 「なのにっ、私は誰も守れなくてっ、そ、それどころか守ってもらってばっかりでっ、 仇を取ろうとしてもっ、出来なくてっ、 そんな私なんて、み、皆の代わりにっ、し、し、死んだ方が良かったんだよっ」 悲しかった。仲間の死が、自分の弱さが、唯ひたすらに悲しかった。 クーガーは珍しく無口で、静かに私の話を聞いていた。 でも。 「……失礼します」 パァン 一瞬、何が起こったのか分からなかった。 クーガーの手と、遅れて来た頬の痛みから、自分がぶたれたことに気が付いた。 「何、すんのよっ」 「いい加減になさい!」 いきり立つ私の両肩を、クーガーの両手ががっしりと掴む。 「どうしたんですか、 貴方らしくも無い。 昨晩初めてお会いした時、貴方は自分の身の安全よりも仲間の身の危険を案じていた。違いますか? なのにその貴方が自らのことを『死んだ方がいい』だなんて…… しっかりなさい。貴方はもっと強い人だ!」 一瞬、クーガーが何を言っているのか理解できなかった。 強い? 私が?? この人は本当に何を言っているんだろう。 「私は、強くなんかないよ……っ。 梨花ちゃんが死んだときも、怖くなって逃げ出したし、 光が一人で戦ってる時も、一緒に戦えずに、ただ震えてるだけで…… 怖いんだよ。殺されるのが怖かったんだよ。戦いたくなかったんだよっ! でも、そのせいで光は死んじゃったんだ。私のせいで、光が……っ!」 「だから貴方も死ぬと? それは全くのナンセンスですよ」 「でもっ、私が助けられなかったからっ!」 「だが、貴方は戦っていた」 「えっ……?」 クーガーが私を見つめている。何時に無く真剣な表情で。 「恐怖を感じる、というのは大切なことです。 恐怖とは生存本能であり、最悪のケースを想定するリスクマネージメントそのもの。 恐怖を知らずに敵に向かうのは唯の馬鹿です。鈍感なだけです。それならノミにだって出来る。 いいですか? 大切なのは、『恐怖を知り、そしてそれに立ち向かうこと』なのです。 貴方は確かに恐怖した。何も出来なかったのかもしれない。逃げたこともあったかもしれない。 でも、貴方は確かに戦った。恐怖に向き合い、目を背けずに、必死に抗っていたんでしょう? これを強いと、勇敢だと言えないわけが無い!」 「私が……強い?」 意外だった。まさか自分のことを『強い』と形容されるだなんて、思っても見なかった。 「ええ。貴方は強い方だ。 それにまだ貴方には仲間が居るじゃないですか。 光さんに守られた命で、貴方がまた別の仲間を守ればいいのです。 そうしなければ、折角の光さんの頑張りが無駄になってしまう。 貴方は前に進まなければならないのです。戦わなければいけないのです。 もっと、もっと強くならなければならないのです。 そして戦って戦って、勝つまで戦い続ける…… それが、光さんのためでもあり、仲間のためでもあり、そして貴方自身のためでもある。そうでしょう?」 …………。 強さ。 負けない強さ。負けても尚戦おうとする強さ。 怖くても、挫けても、それでも立ち上がって戦う強さ。 何度でも何度でも戦って、最後に勝つまで戦う強さ。 そうだ。クーガーの言うとおりだ。 私にはまだ沙都子がいる。それにこのまま私が死んだんじゃ、光はまるで無駄死にだ。 私は死んだりしちゃ駄目なんだ。光のためにも、生きて、戦わないといけないんだ。 怖いけど、それでも立ち向かわないといけないんだ。 それが光に対する、せめてもの恩返しなんだ……。 「……ありがとう、クーガー。お陰で……目が覚めたよ」 「お役に立てて光栄です。 ああ、それともう一つ。貴方には、俺という心強い仲間がいるじゃあありませんか。 貴方の前に立ち塞がる障壁など、この俺が粉砕して御覧に入れましょう!」 クーガーはそう言ったとたんに立ち上がり、遠くを見据えた。 その先には、あの男が静かにこちらを眺めていた。 「イオンさん、危ないですから少し離れていてください」 「魅音だよっ! ……で、でも一人で大丈夫なの? あいつ、凄く強いんだよ……!?」 不安そうな私に向かって笑いかけるクーガーの顔は、以前に見たとおりの巫座戯た笑顔だった。 「心配はご無用! なんといっても俺は、世界最速の男ですから!」 私が物陰に隠れると、クーガーが男の方へ歩き出した。ゆっくりと。ゆっくりと。 男との距離がどんどんと狭くなってゆく。 3m……2m……1m……って、え? まだ止まらない!? そしてクーガーは、男の眼前……高い鼻が触る程の近さで、立ち止まった。 静かな睨み合い。 本能的な恐怖を喚起させるようなあの男の眼光にも、クーガーは全く怯まない。 「なんだ、もうお別れの挨拶は済んだのか?」 「ほう、最低限のマナーは弁えているようだな。驚きだ。だが、その程度では光さんと魅音さんの痛みには釣り合わないな」 「ならばどうする? 貴様がその差を埋めるとでも?」 「ああ、そうだ。貴様の罪には、それ相応の罰が必要だ。断罪してやろう、この俺が!」 「貴様にそれが出来るのか!?」 「愚問だな!」 その刹那、限界まで張り詰めていたものが、弾けた。 男が剣を振るった。 信じられないスピードだ! 本当にあの剣は、あの重い風の剣なの!? 盛大な音を立てて、小規模なクレーターが地面に出現する。 だがクーガーはそこにはいない。 上だ! 鈍い音を立てて、強烈な回し蹴りが男の顔面を直撃する! 「フフ、やるじゃあないか。素晴らしいスピードだ。そしてそれを完全に我が物にしている。 よくぞ人の身でここまで練り上げたものだ」 「お褒めに預かり光栄だが、まだまだこんなものじゃあないぞ。この俺の速さは! この俺の怒りは!!」 クーガーが足を振りぬくと、男の体が一直線にビルの壁に突き刺さる。 だが、次の瞬間には男は立ち上がり、再度クーガーに突撃してゆく。 化け物だ。クーガーも、男も。 「中々のタフネスだ。パワーも申し分無い。だがこれでは俺を倒すには不十分! NOT ENOUGH!! まだまだ足りない! 足りないぞ!」 クーガーが吼える。 「貴様に足らないもの、それは――」 クーガーが跳んだ。 「情熱!」――――男に強烈なドロップキックが炸裂する。 「正義!」――――だが男は倒れない。 「友情!」――――男が高速で剣を薙ぐ。 「理念!」――――だが、やはりクーガーには掠りもしない。 「人情!」――――しかし男はもう一方の手で鎖を放つ。男を中心に、放射状に鎖が拡散する。 「優しさ!」――――全方位攻撃! 死角はあるの!? 「勤勉さ!」――――クーガーは何処に!? 右か? 左か? 上か? 背後か? 「そして何より――――速さが足りない!!!」 ――――正面だ!! 円形に広がる鎖の間合いの、更に内側にクーガーの姿が現れる! 「壊滅のぉッ! セカンドブリットぉッッ!!」 クーガーの強烈な一撃が男に直撃する。 男の体が、まるでミサイルのようにビルの壁に飛び込んでいった。 2……いや、3軒向こうのビルにまで貫通しただろうか。 流石にこれで決まり……? いや、クーガーはまだ戦闘態勢を解除していない。 男は、まだ健在だ……! パン、パン、パン…… 瓦礫の奥から、乾いた拍手が聞こえてくる。 「ブラヴォー。最高だ。最高だぞヒューマン。こんなに楽しいのも久しぶりだ」 もうもうとした粉塵の中から、男が歩き出てくる。 その姿はボロボロなのに、その威圧感は全く衰えてはいない。 この男は、一体何度立ち上がるのか。 まさか……本当に不死身なの? 「強がりのつもりかぁ? さっきから一方的に攻撃させてもらって、少し申し訳ないぐらいだぞ!」 「ならば、一発殴らせてくれるのか? それでずいぶんとお釣りが貰えそうだがな」 「御免だね。生憎とそういった趣味は持ち合わせていない」 「では、このまま続けるとするか。私が力尽きるのが先か、貴様に一撃くれてやるのが先か…… クク、長くなりそうだな」 「消耗戦という訳か。まあ、何度やろうが貴様の攻撃が俺に触れることは無いだろうが……」 クーガーの目が妖しく光る。 「……だが、それだけは絶対にノゥ!!」 クーガーの周囲の空気が変わった。 「『ゆっくりじっくり着実に』等、この俺の美学に反すること甚だしい!! 漢たるもの、速攻即決一撃必殺、スピードの無い答えなど答えに非ず! そう、速度こそ力! 速度こそ美!! そして速度こそ――――『文化』だッ!!」 風が舞う。 瓦礫が舞う。 そしてそれが次々と光の欠片へと分解されてゆく。 その中心に立つクーガーの体が光る。 それまで足だけに纏われていたプロテクターが、膝に、腰に、胸にと広がってゆく。 そして遂には、クーガーの全身がプロテクターに包まれた。 紫色の、流線型のフォルム。 きっと、きっとこれがクーガーの正真正銘のフルパワーなんだ。 「ほう、それが貴様の全力か。面白い。いいだろう、見せてみろ、貴様の力を!」 「ああ、見せてやろうとも! ヒトの、この俺の……『文化』をッッ!!」 クーガーが走り出した。 今までに増して、凄まじいスピードだ。 まるで……光!? 対する男は、手にした剣を振りかぶる。 男は動かない。 迫り来る一瞬に、自分の全てを賭けているんだ。 私は必死に目を開いて、2人の姿を凝視する。 瞬きする間に終わってしまう、その瞬間を見届けるために。 「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ」」 二つの点が、交叉する。 「瞬殺のッ!! ファイナルブリットォォォオオッッッ!!!!!」 ☆ 「しかし、イオンさんがご無事で何よりでした」 「魅音だよ! ……ま、あたしも怪我してるし、丸っきり無事ってワケでも無いんだけどね。 ……でも、生きてるってだけでも儲けモンかな?」 「ハハ、イオンさんが元気になって下さって俺も嬉しいですよ」 「魅音だって言ってんだろ!」 そんな殺し合いの場には不似合いな会話を、私たち2人は交わしていた。 本当は、現状ではそんな暇なんて無いのだろうけれど。 だけど次の行動を起こすためには、私にはもう少しだけ時間が必要だった。心の整理をつけるための時間が。 それぐらいはクーガーも察してくれているのだろうか? 「しかし、また2人でタンデム出来る機会が来ようとは! さて、次は何処へ行きましょうか!?」 前言撤回。無いな。 「……ところでさ、クーガー。あいつ……アレでやっつけたんだよね?」 「ええ。アレで生きているのは正真正銘の化け物だけでしょう」 私は確かに見ていた。 クーガーの必殺の一撃をまともに受けたあの男の体が、まるで爆発するみたいに四散するのを。 あれだけの衝撃を受けて無事な筈は無いけれど、心の片隅に僅かな不安がまだこびり付いていた。 あの男の威圧感に毒され過ぎたのだろうか。 「イオンさん?」 「だから魅音だって何べん言ったら!」 「ああ、スイマセ~ン。ところで、これからの予定はどうなされるおつもりなんですか?」 「え? この後……?」 そう言われた私は、今にも崩れそうなホテルと、私の傍らで横たわる光を見比べる。 「私は、光を埋めてあげたい。このまま放っておくのはあんまりだもん。 でも、ホテルの中にはまだ光の仲間も居るだろうし……その人たちも放っては置けないよ」 「ふむ……私もホテルの中にいる仲間のことが気がかりです。ですが、怪我人が居るとは言えそれなりの大所帯。 彼らだけでも対処できるとは思いますが……。 それに、別の仲間を余所で待たせているのですが、彼女も迎えに行ってあげなければならない。 ホテルを攻撃した者となのかちゃんの行方も気になりますし……一度この場から非難するのも手ではありますね」 ……ん? 何だこの違和感。クーガーが何時に無く弱気じゃないか? 『全てを一気にスピーディにやり遂げましょう!』とか言って走りだすかと思ってたけれど……。 やっぱりクーガーも私に気を使ってくれてるのだろうか? イヤイヤ、やっぱりそれは無いな。 「なんにせよ、早急にこれからの行動指針を決めないといけません。 なあに心配は要りません! 俺が貴方を安ッ全! にエスコートして差し上げますからね!」 「むしろ、そっちの方が不安だよ……」 「……素晴らしい」 「え? クーガー何か言った?」 「ですから俺とイオンさんの将来についてをですねっ!」 「その前にちゃんと名前を覚えろッ!」 「痛いっ! バイオレーンス!!」 【D-5/ホテル正面玄関付近/1日目/夜】 【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】 [状態] 疲労(大)、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り) [装備] スペツナズナイフ×1 [道具] 支給品一式、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着(一部破れている) [思考・状況] 1:迷い(※)。 2:沙都子と合流し、護る。 3:圭一、レナ、梨花の仇を取る(翠星石、水銀燈、カレイドルビーが対象)。 4:2、3に協力してくれる人がいたら仲間にする。 基本:バトルロワイアルの打倒。 [備考]:※光の埋葬・ホテル内への進入・ホテルからの退避のどれをするか迷っています。 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [状態] 消耗大(これ以上の戦闘は命に影響。だがその素振りは一切見せない) [装備] なし [道具] 支給品一式 [思考・状況] 1:魅音に同行。 2:セラスを迎えに戻る。 3:なのはを友の下へ連れてゆく。 【アーカード@HELLSING】 [状態]:四肢が千切れる等損傷極大( 心臓は辛うじて無事) [装備]:鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:0/0発)@HELLSING [道具]:無し [思考]: 1:肉体の再生を待つ。 2:ホテルを崩壊させた方の魔女にも興味。 3:カズマ、劉鳳、クーガーとはぜひ再戦したい。 【獅堂光@魔法騎士レイアース 死亡】 [残り42人] ※ 光の所持品は光の遺体の傍に放置されています。 詳細:支給品一式、龍咲海の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(炎)@魔法騎士レイアース エスクード(風)@魔法騎士レイアース、オモチャのオペラグラス 時系列順で読む Back 正義×正義 Next 「ゴイスーな――」 投下順で読む Back 正義×正義 Next 「ゴイスーな――」 207 「ゼロのルイズ」(後編) 園崎魅音 228 ここがいわゆる正念場(前編) 207 「ゼロのルイズ」(後編) ストレイト・クーガー 228 ここがいわゆる正念場(前編) 207 「ゼロのルイズ」(後編) アーカード 227 お楽しみは、これからだ 207 「ゼロのルイズ」(後編) 獅堂光