約 3,070,907 件
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/383.html
閉ざされた扉 3 アーティファクト T:あなたのマナ・プールに黒を加える。 2黒,T:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を1枚捨てる。この能力はあなたがソーサリーをプレイしてよいときのみプレイできる。 32版 381のカード。 [部分編集] 能力の起動に黒マナが必要となった代わりにマナ能力を得た《破裂の王笏》といった感じのカード。 本家の、色を問わずに手札破壊ができるという利点は失われてしまったが、マナアーティファクトとしても標準的な性能であり、非常に融通が利く。 序盤から終盤まで無駄なく活用できるカードであり、黒系コントロールデッキならば採用を考えてもいいだろう。
https://w.atwiki.jp/sdstarwiki/pages/67.html
「残された者達」 突如ラクロアに反旗を翻した二人の近衛騎士、デュエルとイージス。 彼らは同時に襲撃してきたザフトの軍門に下ると燃え盛るラクロアを後にする。 残ったのは瓦礫の山と途方に暮れた人々。 しかし、その逆境にも屈することなく立ち向かう者達がいた…。 全く、ラクス様ときたらどうも思いつきで行動する癖があって困る。 …もっとも、あそこでラクス様が名乗りでなければアズラエルが全てを仕切っていただろう。 どうもあの男は腹の底に何かを隠している節があり信用できない。 この間も勝手に国の書物庫をうろついていたので注意したことを思い出し眉をしかめながら、宰相ナタルは王女ラクスを探し回っていた。二人の近衛騎士の反乱とザフトの襲撃により陛下は重傷を負い、国も大きな打撃を受けた。 立て直すには代わりの指導者が必要だ。本来ならば大臣であるアズラエルが執政を行うはずであったが、ラクス様たっての強い希望により彼女を中心に我々が手助けをする形となった。 もちろんそれは単なる思いつきなどではなく、自分がやらねばならぬという使命感からだろうという事はナタルもわかっている。 まだまだ拙くはあるが、努力も垣間見られる。正直言ってあの王女がここまでやることにナタルも驚いていた。 彼女が思いつきで、と指摘しているのは王女が毎日1回は必ず国民の前で歌を披露する事だ。王女曰く、 「疲れきった皆を励ますには歌が一番ですわ」 だそうだ。しかし毎日毎日歌を続け、その後子供達の相手をし、更に続けて国を治めるための膨大な量の仕事。 いつ休んでいるのかと呆れてしまう。 自分の助けがあったとしても、これでは体を壊してしまうではないか。 上に立つ者の威厳とは、模範となるべき規則正しい生活に宿る。それがナタルの持論だった。 開け放った扉から溢れる外の光をきつく見据えた彼女は自身もまた執政の手助け、騎士団の指揮という二足の草鞋を履き碌な休みを取っていないことを知らずのうちに棚に上げて憤る。 だが彼女は表面上は一片も疲れを見せることはない。旅立つ際、騎士団長フラガにあまり肩に力を入れるなと受けた忠告も、国をあるべき姿に戻す日までは休むことは許されないと意味をなさずにいた。 その考えは他者に対しても例外ではなく、あまりに苛烈な彼女の方針に舌を巻く者もいれば不平を漏らす者もいる。 しかしこの過剰なまでの厳格さが、今のラクロアを支えているのも確かであった。 ナタルは、王女ラクスを発見し今日こそは休んでもらう事を固く決めると国民に囲まれ、楽しそうに微笑んでいる彼女の元へと急いだ。 瓦礫の山を前に困った事になった、と誰にも聞こえないようひとりごちる重闘士バスター。 それは本人ではなく、実は副官であった闘士バスターダガーが影武者としてバスターの鎧をつけ、本人と瓜二つの仮面をつけ偽装した姿であった。 ふと、あの時のことが脳裏に蘇る。自分がこのような苦境に立たされることとなった、そもそもの原因が。 「先ほどザフトへ潜入する命が陛下より与えられた。俺が留守の間、闘士隊はお前に任せる」 「えぇっ!?どういう事ですか隊長!?」 「送っていた諜報員がやられたらしい。後任として俺が行く事となった。この事はほんの一部の者しか知らん」 「何故そのような重要な話を自分に…」 嫌な予感に包まれながらもバスターに問いかけるバスターダガー。バスターは無表情でバスターダガーの肩に手を置く。 「明日からは、お前が重闘士バスターだ」 「ええぇぇええーーっ!?」 そして頭にバスターの振る舞いから言動まで全て叩き込み、偽の鎧と仮面を与えられ現在に至る。 しばらくは一定の間隔で連絡が入っていたが、ある日何の音沙汰もなくなってしまった。 それから数日後近衛騎士達の反乱、同時にザフトの襲撃が起こる。 当然闘士隊の隊長として応戦するが、結局ザフトの破壊行為を食い止めるのが精一杯であった。 それでもいくつかの建物は破壊されたし、怪我人も続出した。 国王陛下が重傷を負ったものの、それでも死人は出なかったのが不幸中の幸いだ。 そして今はその瓦礫を撤去する作業の途中であり、城の周りは人々の往来が激しい。 丈夫さが取り柄の闘士隊にも負傷した者はおり、決して多くはない人数での作業は難航している。 毎日欠かさず行けと言われていたディアッカの店も忙しさで顔を出すこともままならない。 唯一事情を知る彼は、この耐え難い状況の中で清涼剤とも言える存在であった。 「それにしてもこの忙しいのに副隊長のヤローはどこ行きやがったんだ」 「肝心な時に役に立たねぇんだからよ」 事情を知らない同僚たちの心無い言葉も、バスターダガーを苦しめる。仲間達に囲まれているのに、彼の胸中を埋め尽くすのは圧倒的な無力感と孤独感だった。 隊長…自分はどうしたらいいんですか。何故、自分なんですか。 あまりに重いモノを背負いながら、バスターダガーは立ち尽くしていた。 「ったく、ここ数日忙しいったら…これが通常営業なら売り上げはグゥレイトだぜ」 厚い雲に覆われた空の下、若き料理人ディアッカは炊き出しの後片付けをしていた。 しかしその脳裏には、大事な使命を与えられ旅立ったまま音沙汰のない男の事が浮かぶ。 突然自分の元へとやってきて、自分が与えられた任務を語りだすと装備一式を預かってくれ、後この事は秘密だ喋ったら殴る。それだけ言って旅立った彼の相変わらず不器用な態度を思い出すと笑いもこみ上げてくるというものだ。 それをあっさり承諾する自分も彼との付き合いは長いとは言え、まともではないのかもしれない。 そして彼が旅立った日、これからは用意する料理が一人分減ると考えていた自分の前にバスターが現れる。 一瞬面食らったものの、他の者ならまだしも毎日彼の顔を見ているディアッカはすぐに偽者だと理解した。 「よぅ、バスター!いつものヤツでいいよな?」 事情を配慮して普段通り接する。一方のバスターは挙動不審気味に答えた。 「は、はぁ…お構いなく」 バスターにはありえない程慎ましい態度に吹き出すのをこらえながら料理を食わせた後、店の裏に連れて行き正体を確かめる。 案の定よく出来た仮面の下には、怯えるように青ざめたバスターダガーの顔があった。 「ど…どうも…この事はどうか内密に」 「わかってる…お互い苦労するよな、実際」 バスターは辛いのが好きだが、こいつは苦手だったからこれから大変だろうと苦笑しながらも色々と注意した後解放し、次の日からは見えないように香辛料を減らしておいてやった。 彼もまた、バスターの強引な手口の犠牲者かと思うと同情しながらも嬉しくなる。 それにしても、あのバスターが潜入の任務なんて大人しい真似が出来るのだろうか? 不安になったのでバスターダガーに尋ねたが、定期的にあった連絡が途絶えているらしい。 しかしあいつの事だ、自分の料理が食えない事に不満を抱きながらも元気にやっているかもしれない。 とにかく自分に出来るのは彼を信じて鍋を振るい続ける事だけだ。ここが彼の帰ってくる場所なのだから。 片付けを終え、食堂に帰る途中瓦礫を運び出す闘士隊を見ながら、最近バスターダガーが顔を出していない事を思い出す。 バスターは何があっても必ず1日1回は来るから毎日来いと言っておいたのに。 生真面目を絵に描いたような男なので、任務への重圧に苦しんでいる事はディアッカにも手に取るようにわかっている。 だからこそ、からかいがいがある。少々捻くれたところもあるディアッカはむしろこの状況を楽しんでいた。 「あいつ…忙しさを盾に逃げやがったな」 今日は香辛料を倍にしてやろう、ディアッカはにやりと笑うと重々しい空気の中立ち尽くす、自分と同じく彼を待つ男の元へ走り出したのだった。 おまけ:コミックワールドネタ(ディアッカ分多め。誕生日おめでとう!3/29) バスターダガー誕生 バ「明日からはお前が闘士隊の隊長だ」 ダ「えぇぇええーーっ!?」 バ「ほら、鎧も用意してある。」バァーーン ダ「おぉーっ!って顔はどうするんですか!根本的に違いますよ!」 バ「安心しろ、これがある。」 (仮面を取り出す) ダ「うぉっ、すごい!そっくりだ!これどうしたんです?」 バ「石膏に顔突っ込んで作った」 ダ(…良く見たらところどころに張り付いてる…) 相談 バ「というわけだ、俺の装備一式預かってくれ」 デ「お安い御用だぜ!」 バ「じゃあ頼んだぞ。」 すたすた…ズズズ(コマの外からでかい風呂敷を引っ張ってくる) デ「?」 バ「ざっと見て600というところだ」 デ「グゥレイトォ!」 武器 バ「ディアッカよ、いつお前の店が襲われるかもわからん。 いざという時のために、俺のコレクションからいくつか使え」 デ「ハハ、大丈夫だって!いざという時はこれがあるしな!」 (包丁やおたまを取り出す) バ「本当にそんなもので大丈夫なのか?」 デ「あぁ、料理人の俺にとっちゃこれが武器さ!」 バ「…武器…ディアッカ、少しの間これを貸してくれ」 デ「ん、いいけど?」 ――――数日後、ストライク達と交戦したザフト軍 「大変です!ストライクのまわりにすごいヤツがいて近づけません!」 「何ィ!どんなヤツだ!?」 「なんかおたまとか包丁振り回してます!」 「そんなバカなヤツがいるか!」 (中華なべで剣を受けるバスター) 「いたァーーーーーーーー!」
https://w.atwiki.jp/yuina/pages/753.html
<ミナル街外れ―雑貨工房『MAOH堂』> 『MAOH堂』―知る人ぞ知る・知らない人はぜんぜん知らないミナルの街外れに立っている工房兼雑貨屋。 もともと宿屋だった建物を改装しており、四階建てという大きな建物である。 一階の一部を店舗とし、その残りと二階から四階を住居スペースに使っており、エリスたちもその部屋を間借りして拠点にしている。 そんなMAOH堂の二階のリビングにて ???「ハハハ、そりゃとんだ災難だったねぇエリス」 エリス「そんなに笑わないでよ師匠ーー!」 無事に帰ってこれたエリス達の土産話を聞いて面白おかしく笑う女性―マリエルことマリー。 彼女はMAOH堂の店主の一人であり、エリスのクリエイターとしての師匠でもある。 ちなみにキョウも店主の一人だったりする。 マリー「それで、助けられちゃった上にキョウちゃんからお灸すえられちゃったってわけね」 エリス「キョウさんって怒鳴ったりして怒ってるわけじゃないんだけど、なんか逆らえないのよね」 そのときの光景を思い出しながらエリスが口にする。 怒るというよりは注意・忠告に近い形ではあるのだが、なぜか逆らうことのできない威圧感のようなものを感じてしまう。 ただ、自分たちを心配してのことなのがわかるので不思議と恐怖は感じないのである。 マリー「キョウちゃんは滅多な事で怒鳴ったりはしないからねぇ・・・とにかく、無事だったからいいとしてこれからは気をつけなさいよ?」 エリス・ショコラ「「はぁーい(ですよ)」」 マリー「うん、よろしい」 二人がそろって返事をするのを聞いて、マリーは満足してこの話題を打ち切る。 それからは北の方での面白かったことなどを聞いて談笑していた。 しばらくしてそんなところヴァンがうんざりしたような顔でやってきた。 キッチンから来たのか食器を手にしている。 ヴァン「お前らなぁ・・・少しはこっち手伝えよ・・・・・・」 エリス「あ、ヴァン。 ご飯できたの?」 ヴァン「ああ。 わかったらさっさと手伝え」 エリス「はいはい、わかったわよ。 ショコラいこ」 ショコラ「うぃ、ですよー」 返事をしてエリスとショコラはキッチンのほうへ向かっていった。 マリーはその場に残ってエリス達を見送り、ちょうどコップを運びに来ていた少女に話しかける。 マリー「若いっていうのは元気があっていいわよね。 ね、ミィちゃん?」 ミィ「・・・・・・・・・」 マリー「ミィちゃんってばぁ」 ミィ「・・・・・・マリーさんも手伝わないとお酒抜きって。キョウが言ってたよ」 マリー「え゛・・・・・・」 呼ばれた少女―ミィは問いかけには答えずにキョウからの伝言を伝えた。 それは「食事の準備手伝わなければお酒抜き」という簡潔なものであったが、それを聞いたマリーは間抜けな声を発して硬直。 酒好きな彼女にとってはそれは致命的なものだったのかもしれない。 数秒の時間を置いて マリー「・・・ホントウニ?」 なぜか片言になっていた。 ミィ「うん、本当に。 もうすぐ準備終わるから決定だと思うよ」 マリー「・・・・・・うぁぁぁああ! キョウちゃん、手伝う! 手伝うから!! お酒抜きだけはぁぁぁぁぁ!!!」 そのミィの言葉が引き金になってしまった。 勢いよく席を立ち、半ば錯乱に近い状態でキッチンへ駆け込んでいくマリー。 アル「マリーさん!? ちょっと、落ち着いっ!?」 エリス「ちょっと師しょっ!?」 キョウ「ヴァン、押さえとけ!」 ヴァン「む、無茶いわないでくれ!」 マリーが突入したキッチンからはそんな怒声やら悲鳴やらが聞こえてくる。 ミィと同じように食器をテーブルに並べにきていたフィリアはその光景を見て若干引きつった笑顔をしていた。 フィリア「ミィ・・・あれ、よかったんですの?」 ミィ「・・・・・・・・・ちょっと間違った、かも」 フィリア「ありゃりゃ・・・でも―」 二人は顔を見合わせてから混沌と化したキッチンへ再び目を向ける。 そのキッチンの光景はドタバタと騒がしいものの、どこか微笑ましいものでもあった。 フィリア「いつも通りの賑やかで楽しいご飯になりそうですの~」 ミィ「うん、そうだね」 二人は少しだけ可笑しそうに笑いあう。 ドタバタしつつも賑やかで楽しい時間が、今日もまた過ぎていくのであった。
https://w.atwiki.jp/aa-ranritsu/pages/222.html
縹の由縁 キミがくれた、意味。何を賭してでも、キミを。縹の由縁。 参加 Stella Board(試遊会Lv2) 36 性別 女 種族 人間 年齢 19 身長 140前後 体重 軽め 一人称 私 本名 灘尾 遊恵(なだお ゆえ) 好物 いちごプリン 大切 ポミエ 異能 特に無し 特技 護戦武術常盤流 進七段 日記 01 0514-0519 02 0520-0521 03 0522-052804 0529-0602 05 0603-0608 06 0609-061207 0613-0615 画像 画像集 資料 雑資料 落書き 落書き箱 「キミさえ、信じていてくれれば。キミさえ、願っていてくれれば。」「私が、それを叶えるから。」 ゲーム内プロフ + プロフ絵 + プロフ絵2 + アイコン眼鏡あり + アイコン眼鏡なし 通常 HN:縹の由縁(はなだのゆえん)。 何処にでも居る普通の陰の者。 体育会系。 ~由縁~ 縹の由縁 「…おわっ、何か変な名前で登録されてるッス!?」 縹の由縁 「…あー、音声入力が上手く行かんかったか。」 縹の由縁 「まぁ良いや、本名で登録するのも難だし。」 縹の由縁 「……へぇ、この字ってハナダって読むんスねぇ~。」 ← その他情報 → 名前 : 好きに呼んで。 本名 : 灘尾 遊恵(なだお ゆえ) 身長 : 140前後。前!? 小さくねぇ!? 年齢 : 19 眼鏡 : 戦闘時は外します。 挙動 : 陰の者特有のマウントが在るかも知れないので頑張って回避してくれ。 方針 : 暫定適当に殴る。そのうち壁若しくは殴りの者になる見込み。 接続 : 絡むとリンク設定されるかも知れません。 日記 : 絡むと日記に書かれるかも知れません。 連出 : フォヨった人達はまぁまぁ万遍無く連れ出す方かと思います。たぶん。 活動 : アクティヴ時間不規則。置くときは置きます故、よろしくお願いします。 終盤 あの子への、答えを探して。 これから キミと、一緒に生きたい。 私がやっと見つけた、私の生きる意味。 解説 キャラクター 背負ってる設定は最近の自キャラにしては軽めだけど、 思い詰める性格でメンタル的に深い闇に浸かってるタイプのキャラ。 ウザ絡みはワザとやってて、キャラは作ってる。 後述の理由で他人に好かれる事に忌避感を抱いている為、 深い付き合いにならない様に。 それでも突き放し切れないのが彼女の弱さでもある。 本来の性格は、一途で真摯。 突き進むと決めた道は、必ず打ち抜いて通る。 故に折れた時にがっつり腐ってしまった訳ですが。 もう二度と、折れないんじゃないかな。 武術 + 展開 幼い頃から打ち込んでいたもの。 彼女は天賦の才と称され、その道の極みに辿り着く事を期待され、 また、彼女自身もそれを誇りに思い、それを夢に描いていた。 しかし、何時からか。 彼女自身が思い描く、武の技から。 少しずつ、離れていく。 届かない。 出来る筈の事が、出来ない。 彼女は、女として生まれた。 彼女は、体躯に恵まれなず、小さなまま成長を止めた。 彼女は、或いは女性としては恵まれた身体で、乳房は膨らんでいった。 彼女は、近眼の性質で、視力は人の顔も判別出来ない程度に下がって行った。 どれか一つであれば、乗り越えられたかも知れない。 全てが重なったとき。 彼女は、彼女自身の才覚により、悟ってしまう。 私は。この武術の、頂きに。届く事は無い。 これが、彼女の陰りを生んだ、二つの諦めの一つ。 護戦武術常盤流 + 展開 守護をその神髄とする古武術。 型として、護の閃と戦の閃に体系されるが、戦の閃はあくまで護の閃に付随するものに過ぎない。 遊恵の段位は進七段。 常盤流段位は剣道等と同じで年齢(修練年月)の制限が在るが、 特に秀でた技と、見込み在る練心(要は武道的な精神)を認められた場合、 進段位として認定される。規定年齢となれば進の字が取れる。 常盤流では八段で免許皆伝とされる。 なお、常盤流の歴史の中で、段位者が居ない期間の方が長い事から、九段は「不在段位」とも呼ばれ、 頂点となる十段は「幻」と称される。 遊恵のかつての目標は、十段の段位を掴む事であった。 戦の閃 + 展開 遊恵が専ら戦の閃を使ってるのは、序盤は適当にあしらっているから。 それ以降も、"護るべきもの"を見出せないままなので、ずっと戦の閃を使ってる。 結局、ゲーム部分が終わるまで、ずっとそうなったけど、 終わってから"護るべきもの"を見出せたので、遊恵の武術も、その神髄に至るのだろうと思われる。 かつて夢見た頂点には届かなくても。 その拳を振るう、真の意味を手に入れたのだから。 禁じ手 牙狼翔迅 + 展開 がろうしょうじん。 攻めの秘奥義。 ネタ元は昔作ったゲームからの再利用。 イメージとしてはアッパー系の技。 禁じ手・昇竜拳みたいな。みたいなって言うか「禁じ手」の枕詞はそれのパクリ。 本来は免許皆伝の八段認定者にのみ習得が許されるものだが、 遊恵は「うっかり憶えちゃった」。 過去 + 展開 同じ道場の先輩。 穏やかで優しく、武としては別の"強さ"を持って居て。 それは、恋だったのかも知れない。 その答えは、分からない。 先輩は、ある日突然、亡くなった。 遊恵の想いは、恋だったのか如何かも、分からないまま。 同じ学校の同級生。 先輩が死んで、武術の極みに届かないと察してしまってから、 遊恵の心は沈み、何もする気が起きず、沈んでいた。 そんな遊恵を気遣い、何時も側にいて、励ましてくれた。 それは、もう一度訪れた、恋だったのかも知れない。 その答えは、また分からないまま。 同級生もまた、突然、亡くなった。 二度、想った相手を失って。 遊恵は、人を好きになると言う事が、分からなくなった。 そして無意識の中で、人を好きになると言う事と、その人を失と言う事が結び付けられてしまった。 これが、もう一つの諦め。 遊恵は、生きる意味を、自分自身の中にも、自分以外の誰かにも、見出す事が出来なくなった。 周辺事情 + 展開 何でこんなキャラやろうと思ったのか思い出せん。 どちらかと言えばおっぱい枠で巨乳キャラをやっとこうと言うのが先に在った気がします。 普通は長所で在る部分を、短所として描くのが割と好きなんで、巨乳を短所にしようと。 言う所から色々広げた結果だった気がします。 因みに常盤流は、私があんまり「ただ単に偶然名前が一緒なだけ」ってのをやりたくないので、 常盤家と関係を持たせる事で考えては居たのですが、今はぼかして置きます。 織と刀の物語が、"奇跡や不思議な力が無い世界"を前提にしているので、 遊恵が何れポミエの元に辿り着く=異世界に行く様な不思議な力が存在する って事になって、織と刀の物語の哲学的な部分が崩れてしまう為です。 今は未だ。 織の物語が完結したときに、色々確定出来るのかなーって、今の段階では思ってます。 Q.通信機は不思議な力判定じゃないの? A.だってもう使えないし。(制限が多くてかなり万能性が薄い為、セーフかなって。) やり残したこと、悔いなど + 展開 特になし。ポミちゃとは"これからの未来"が幸福に満ちている(鋼の意志)から満足です。 言えば、あんまり抱えたモノを表現できてなかったかなぁ、ってのはありますが、そもそもそこまでちゃんと表に出すつもりも無かった様な。 あと、ひとによって態度が違ったり、同じひととでも態度が一貫して無かったりするのは、メンタルの不安定さと言うか、 人間性の不安定性さと言うかなんですが、それがわかる様になってたかと言うと…ダメそう。 一番振り回してたのは犬っ娘かも知れない。 嫁 + 展開 嫁では無い。 ポミエちゃんである。 色々あって想いを通わせては居るものの、 たぶん遊恵からの感情と、ポミエからの感情は別な気がする。 遊恵はポミエに依存の感情が在るのを自覚してるし、 ほぼほぼ恋愛感情に至っているけれど、 ポミエが望む関係で居たいと思って居るし、 唯、一緒に居られるだけで充分だと思って居る。 まぁ、わるい欲望の目では見がちかとは思いますが、 ちゃんと自制出来ると思います。たぶん。 余 + 展開 過去の先輩と同級生は、どっちがどっちとも決めてませんが、それぞれ男と女。 恋愛対象としては、性別の境が無い感じ。 とおる(PL くろばまめ)さんの性別をすらっと見て取ったのも、 「"女性を恋愛対象として見ている女性"の視線」を感じたから…と言うのは若干後付け。 補間 + 喋らせてみる 自己紹介 「縹の由縁…は、もう良いか。私の名前は、灘尾遊恵。」 二番目に大切なもの 「…ん。私にとって大切なのは、常盤流の武の道。今は、それが二番目かな。」 嫌な思い出を何か一つ 「……如何かな。他人に話せる様なやつは、浮かばないね。」 11歳の女の子をそういう目で見てるのは如何かと思います 「うるっさいよ!? 急にぶっこんできやがって!」 「大体、私はっ! ………今は、保護者として、あの子を守るだけだよ。…私は、そういう"好き"だけど。あの子が私を如何思うかは、あの子が育ってから、あの子自身の想いで決めれば良い。」 「あの子が一緒に生きてくれるから。どんな関係だって、私は構わない。」
https://w.atwiki.jp/sare/pages/240.html
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/235.html
☆語るに及ばず。 新宿 という街は、とにかく目の疲れる場所である。 耳目を惹き付ける為に奇抜さを追求した看板程度ならまだしも、建築法を逸脱している疑いすら浮かぶ間取りの鉄宿。 周辺事情を真面目に考察すれば、攻撃的な彩色がむしろ防衛的な虚勢に見える個人店舗は枚挙に暇がない。 そして何より、中身以上にカテゴリの数が多いと思わざるを得ない、道を行き交う人間の外見。 系統樹に埋没すまいと着飾り、かつ自分の内面を虚実交えて表現しようと工夫を凝らしている者。 熟慮の果てにそういった努力も女々しいと斬って捨て、独創性が暴走して自分でも訳の分からなくなった姿に落ち着いた者。 パーソナリティなど知ったことかと、その日の気分によって七変化するノン・ポリシーが体外にまで染み出した者。 各々の思想・事情が絡み合い、混沌のファッション・ショウと化したこの街。それ故に、歩く二人の少女も衆目を引きすぎることはなかった。 「ゆえっち、大丈夫なんかね。どう見ても普通の病気じゃなかったけどね」 「うつうつします……」 一人は、口元のピアスと肩口から腰に納まった、無骨な斧を連想させる髑髏付きのギターが特徴的な少女だ。 日系人ではないが流暢な日本語と、十人に聞けば七人は認める程度の整った顔立ちから常時作られる遠慮のない笑顔が、棘だらけのパンクな衣装の与える印象を中和していた。 一人は、水着だった。水着で出歩いていた。恥部を隠しているだけ 新宿 では遠慮しているのだと言わんばかりの格好である。 隣の少女とは対照的に"陰"のオーラを纏っている彼女を、往来を歩く男たちもそれほどまじまじと見つめはしない。服装と雰囲気とのギャップが、好色家の初動を止める役割を果たしている。 「しかしうっちゃん、本当に着いてくるのね。音楽とか好きだったっけ」 「トットが楽しそうだったから」 「なんせ、新宿きっての大イベントだからね。飛び入り魔としてはほっとけないからね」 「飛び入り魔?」 「正規の手段を取らずにステージに出て、盛り上げて去っていくお仕事のこと」 「お仕事……?」 「手順を丸暗記するくらい経験を積んで、下準備と逃走経路の想定をしっかりやれば、何でも仕事になるのね」 いずれ音楽界に革命を起こす、と豪語する親友を微笑ましげに見る水着の少女が、ふと腰に手をやる。 取り出した携帯には爆発事故発生、という物騒なニュースが入ってきていた。現在地からそう遠くはない。 このニュースだけでなく、最近新宿の街は物騒だ。保護者からも外出は極力控えるよう言われているが、友人の晴れ姿?は見逃せない。 しかし、この調子ではイベント自体が中止になってもおかしくない。 「可愛い後輩のお見舞いの後に無法者をやるんだから、そうなっても天命なのね。その場合はトットのオンリーステージになるのね。無人ライブ」 「一人でも聴くから、がんばって」 「うおお! あっ、師匠から電話なのね」 ライトハンド奏法でぎゃりぎゃり、とギターをかき鳴らした直後、慌てて電話に出る少女。 鋲・ベルト・皮・棘・包帯を多用した、正にステージ衣装と言った彼女の頬に朱が差す。 楽しげに談笑する友人を見て、水着の少女もまた笑顔になる。何事にも拘泥せず、己の心に正直に走り続ける。そんな彼女を見て思う。 なるほど、この友人ならば愛でられるアイドルでも、芸術という茨の道を歩むアーティストでもなく、満天に輝き全てを照らすスターになるのが相応しいのだろう、と。 ☆北上 聖杯戦争のマスターに与えられる特権の一つに、己のサーヴァントとの念話能力の取得がある。 日常生活を送る上では便利なものだが、学校と自宅ほど距離が開くと不通となってしまう。 マスターの心体に著しい負荷がかかればサーヴァントは気付くというが、ちょっとした用件を伝えるにはやはり通信機器は必要だ。 例えば今日のように学食が混んでいる時、アサシンに連絡を入れれば彼女の宝具により家まで一っ飛び。 家にある余りものを適当に食べる事で食費を節約できる上、気分が乗らなければそのまま学校を脱けることもできる。 午前中の授業を受けている間は、耳に入ってくる噂話にとにかく気が気ではなかった。 自分が普段通りに生活しているというというのに、軍靴を並べて競い合う御同輩たちは 新宿 の至る所で大暴れ。 聖杯戦争の関係者であることを隠す為に市井に身を潜めるのはいいが、いつ"普段通りの日常"に宝具が飛んでくるのか分からないのでは困る。 アサシンを見れば、ペアで購入した携帯電話で誰かと談笑していた。いつになく楽しそうだ。 NPCに接触する事は控えると言っていたが、髪の毛収集で外出した際に綺麗な髪の子をナンパでもしたのだろうか。 純真一途というには気が多いこのサーヴァントが相方だ、常に自分だけを監視してくれているとは期待しない方がいいだろう。 咄嗟の事態で脱落するのに怯えなくてはならないほど切迫した今の 新宿 の状況では、むしろ自宅に籠もっていた方が安全かもしれない。 通話を切ったアサシンに、今後の戦略を相談する。彼女も同種の懸念を持っていたらしく、淀みなく言葉を紡ぐ。 「思ったよりも展開の変転が早いですからね。今日はもう学校に行かなくてもよいでしょう」 「専守防衛……って奴、やめてもいいの? このアパートで篭城ってあんまりいい結果になりそうには思えないんだけど」 新宿 の時代観に合った受身の戦略を捨てて徹底防衛に回るには、自分とアサシンだけでは難しいといわざるを得ない。 逃げ回り、身を潜め、最小の労力で敵を仕留めるのに適したアサシンの能力ですら、防戦に徹し続けて勝利を掴むには足りないと北上は思う。 この街は狭いのだ。ここ半日で聞き知った事件の半分でも聖杯戦争の関係者の仕業だとすれば、戦場どころか狩場としても窮屈すぎる。 くだんの、一瞬で車両十数台を爆散させて交通網を遮断したテロ屋がサーヴァントだとすれば、四、五時間もあれば全域を廃墟に出来るだろう。 正午に発令された新たな討伐対象のサーヴァントに至っては、間違いなく現在進行形で廃墟の山を増やしている。討伐が済んだのなら、主催者からそれと伝えてくるだろう。 討伐令の意味するところ―――無法や騒乱への牽制など全く意に介さない主従がいて、それらを仕留めた善良な主従は未だ存在しない。 矢面には立たないにしても、前者が本格的に狩猟を開始する前に暗殺なり懐柔なりの対処をしなくては"詰む"という確信があった。 「もちろん、ただ逃げ腰でいるとは言いませんよ。どうやら街中に悪魔の類が放たれているようですし。私が偵察に出ましょう」 「……我慢が利かなくなってるわけじゃないよね?」 「まさか」 見破られるとは、と続くんじゃないだろうな、とアサシンの心中を探る。彼女の性格はマスターとして概ね理解しているつもりだ。 水晶玉で 新宿 のあちこちを眺めている中で、魅力的な髪の毛を持つ人々に魅了され陶酔している姿は何度も目撃している。 魔法少女、という職業に就いていた生前のアサシンは、雇い主の方針に従って隠密に徹していたという。 しかし英霊となり生前の制約から解放された今、憂慮すべきは彼女の生き様ではなく性格だ。 髪に対しては自制が利かなくなるアサシンに対しては、釘を刺しておく必要があった。 こちらの意を読み取ったのか、微笑を浮かべたアサシンが一礼して身支度を整え始める。 水晶玉で新宿の街を遠視して見つけた、気になるいくつかのポイントを伝え、それに関するニュースをチェックするよう言い残して姿を消す。 挙動に浮つきや油断は見られない。ならばひとまずは任せよう、とテレビの前に腰を下ろした。 昼のニュース番組では、 新宿 を襲う未曾有の緊急事態を声高に叫び、各方面を非難するコメンテーターが幅を効かせていた。 「まるで戦時下ですよ」という他人事のような言葉に、少し呆れて笑ってしまう。 「平和はやっぱり長続きしちゃダメだね」 本心から出た呟きに、何故かチクリと胸が痛んだ。 【歌舞伎町・富山方面(新宿三丁目周辺、北上(ブ)の暮らす安アパート)/一日目 午後 13:20】 【北上@艦隊これくしょん(ブラゲ版)】 [状態] サボリ 満腹 [令呪] 残り三画、背中中央・艤装との接合部だった場所 [契約者の鍵] 有(ただしアサシンに渡してある) [装備] 最寄りの高等学校の制服 [道具] なし [所持金] 戦勝国のエリート軍人の給料+戦勝報酬程度(ただし貯金済み) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が欲しい 1.アサシンに偵察を任せ、テレビを見る。 2.危機に直面した場合、令呪を使ってでも生き延びる。 ☆バッター バッターとセリューが打たれた犬のような主従を拾ってから、三時間ほどが経過していた。 聖杯戦争の参加者に三時間も与えれば……特に、バーサーカーを有するマスターに三時間も与えれば、流血沙汰は一度や二度ではないはずだろう。 しかし彼らは汚泥で煉られた悪鬼、人魂を虫食む天魔、それらを産み出す魔人のいずれとも交戦せず、魔力の激突を感知してもそちらに穂先を向けていなかった。 二組の主従が集うは、四ツ谷信濃町方面……彼の『メフィスト病院』のお膝元、目と鼻の先といっても過言ではない、一軒の空家。 元は薬局だったのだが、店主一家が数日前に「存在する意味が分からない」と言う嘆きを残して夜逃げしたらしい。 困る人間もいるまい、と間借することになったのはバッターの提案によるもので、わざわざここを選んだのは、単純な理由。 番場とシャドウラビリスを襲ったセイバーの主従、そして聖杯戦争の競争相手を治療した『メフィスト』という男へ探りを入れる為であった。 怯える真昼と唸るシャドウラビリスを引きずって南元町の外れ"食屍鬼街"に向かったバッターの強行偵察は空振り。 日本国の常識から外れたような無法者の集団は、銀蝗の魔人に関する記憶を失って呆けていた。 数名を死なせないよう慎重に拷問して弱らせ、バッターが使役するAdd-Onsの所持するスキル"透視図法"により暗示を破ったが、去就は不明だった。 一方セリューは、元患者である番場組や保険証を持っていないバッターに代わり、メフィスト病院に隠密偵察を仕掛けていた。 元々昼間の 新宿 では精力的に慈善活動を行い、警察官を目指す女性という役割も生真面目にこなしていたセリューには、NPCの知り合いもいる。 その中にメフィスト病院で逗留している男性がいたのを幸いと、見舞いの形で正面から堂々と訪問したのだ。 「あの病院凄いですよ! 患者がみんな笑顔なんです!」 「落ち着けセリュー。メフィストとは接触できたのか」 「本人とは会えませんでしたが、お見舞いの帰りに気になって、という体で検査をしてもらったお医者様や患者さんから聞き込みをしてきました」 己のマスターがぶらぶらと振る右腕を凝っと見つめるバッター。 調査の取っ掛かりになれば、とセリューが自傷した上腕骨のヒビは、目視では完治しており、施術の痕もない。驚くべきは、そこに魔術の痕跡さえも一切存在しない事だ。 バッターの目から見れば、あの病院施設自体が魔術工房などという低レベルに収まらない"神殿"の域にあることは明白だった。 だがメフィスト病院が宝具でありスタッフもその付属品だったとしても、骨折を魔術の行使なし、手術なしで"復元"と言ってもいいほど完全に治療しているのは異常だ。 半死であった番場真昼をベスト以上のコンディションに戻している事から予想はしていたが、メフィストという医者のサーヴァントは相当に条理を超えた存在であるらしい。 「えーとですね、話を聞いた方の半分以上が、ドクターメフィストの事を思い出すだけで絶頂したり失神したりして難航したのですが」 「口封じの呪いか?」 「いえ、普段からよくあることらしく、テキパキと処理はされていましたね。それで、悪い評判は一切ありませんでした」 「あ、あの病院は、おお医者さまをうやまってやがりになる人ばっかだって、(真夜が)言ってました」 「? 番場さんの言う通りでしたね。従業員は例外なくドクターメフィストに憧れ、患者さんは例外なく彼と病院に感謝している。理想的な医療施設じゃないでしょうか? まあ、妄信的すぎて少し怖い感じはしましたが……。腕前だけではなく、容姿もズバ抜けて優れているらしいので、不自然とまでは言えないかと」 言って、セリューが周囲を見渡す。元々真夜が本戦の開始前に集めていた情報、潜伏先の候補であったこの旧薬局には、薬や家具がそのまま残されていた。 そもそも鍵すらかかっておらず、一同は首を傾げたものだが、メフィストというサーヴァントの美しさに当てられて忘我した結果、と思えば納得が行く。 番場たちも恐怖や困惑が先に来なければ、時系列すら魅了されて殺到し、そこにいるだけで時の流れが崩壊してもおかしくないあの医師の虜になっていただろう。 バッターはセリューの報告を聞き、鰐の顎門を開閉する。思案する彼を尊敬の眼差しで見つめるセリューに、真昼が声をかける。 「セリューさん、すごい、です。私なんて、病院の中、全然見ずに出てきちゃったのに」 「いえ、番場さんは本当に怪我してたわけですし! 悪漢に襲われて助かった後だったんだから、動転してても恥じることはないですよ」 「ゥゥゥゥ……」 真昼の手を取って上下するセリューを見て、シャドウラビリスが間に入ってくる。 シャビリスには、セリューが己のマスターにスキンシップを取っていると割って入る癖があった。 セリューは苦笑しながら機械の少女の頭を撫で、「そうだ」と懐から何かを取り出した。 「これおみやげに……って、番場さんも貰ってますよね」 「あ……じゃあ、交換しましょう、煎餅」 メフィスト病院の受付で貰える贈答品、まったく変わりのないそれを意味なく取り替えるセリューと真昼。 微笑ましい光景だった。バッターの左腕が、その場の誰にも反応できない速度で得物(バット)を振るまでは。 片手とはいえ、掛け値なしの全力のスイングだった。ごうん、と風を切る音が薬局全体に轟く。 「バッターさん!?」 驚愕の声を上げるセリューが一拍遅れて気付く。"バッターの全力の一撃の後に、壁や床が崩れる音が聞こえなかった"事に。 バットの先端は、バッターの左後方の壁……その30cm手前で静止している。……否、静止させられている。 凶器が食い荒らした軌道上、一瞬カラにされた空間に大気が戻っていく。ありえない現象が生んだ在り得ない兇風を浴びて、壁の前に赤い影が浮かび上がった。 何故今までそこにいたのが分からなかったほどの長身。だらしなく伸びた髪、だらしなく開いたスーツの胸元。全身の気怠げな印象を、爛々と輝く瞳だけが否定している。 「ちょちょちょちょーいwwwwホントにいたのは良いけど勘よすぎですよバーサーカーくーんwwwwwww(SSが)もうはじまってる!wwwwwwwwwwwwwww」 「お前の叫びは何処にも届かない。呪われた旅人よ、お前を浄化する」 不快な嘲笑を上げる、性別も年齢も不詳な存在―――間違いなくサーヴァントだろう―――に、バッターが第二撃を喰らわせようと一歩踏み込んだ。 ☆赤のアサシン メフィスト病院を出て二十と三秒後、ベルク・カッツェは気配遮断スキルを存分に活かして―――喚き散らしていた。 「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!! ウッゼェェェエェェェェェエ!!!!!!!!!!!!!!!!」 周囲のNPCは咆哮……否、発狂しているカッツェに目を留める事もなく歩き続けている。 異形の両目を凝凝と見開き、憎悪と苛立ちを吐き出すカッツェは、これだけしても脳裏から離れない一人の男の代わりと言わんばかりに地面を踏みしめる。 アスファルトが足型に凹み、やがて粉砕されて白煙と異臭を上げてもなお、"赤"のアサシンの憤懣は滾っていた。 この道化じみた男がこれほどまで正直な怒りを発散しているのは、もちろん魔界医師メフィストのせいであった。 他者など、何の価値もない心とかいう物に感けた愚鈍な猿に過ぎないというベルク・カッツェの持論は、今しがた粉々に打ち砕かれた。 召喚された直後、メフィストの顔を一目見た瞬間に、「この男を、永遠に忘れたくない」と茹った脳に強制上書きされた感覚が彼にはあった。 今、あの男は何をしているのか。誰と一緒にいるのか。誰を見ているのか。誰に見られているのか。なんとしても知りたい。 カッツェに未来永劫生まれるはずのなかった、個人への固執……独占欲……恋! カッツェだからこそ、その感情は抑え込むことが困難だったといえる。 まともな情緒を育んだ人間や英霊ならば、対策とまではいかずとも、その経験からメフィストの美貌と自分の内面に"折り合い"のようなモノをつけることが出来たはずなのだ。 「糞がぁ……冗談じゃねぇぞぉ……」 心臓の鼓動が静まらない。暴れた為ではない、恋のせいだ。 他人の不幸を楽しむ事に対してはアクセル全開となるはずのカッツェの性癖と思考は、メフィストの不幸を想像することが出来なかった。 自分が変質していく、という危機感が苛立ちを加速させる。宝具である『幸災楽禍のNOTE』の衰えが感じられる。萎えている、のだ。 周囲のNPCにCROWDSアプリを配布して愚行に走らせるのがベルク・カッツェのやるべきことなのだろうが、それをやる気が起きない。 仮にこの新宿の全住民の悪意を束ねても、メフィスト一人に対する関心を上回る事はないとわかっているのだ。 「 」 もはや喋る意味もないな、と溜息をつくカッツェに、在りし日の面影はない。 最初に見つけたサーヴァントに殴りかかって脱落しようかとさえ考え始めていた。 そんなカッツェの肩が、背後から叩かれた。攻撃ではない。普通に、である。 「あ?」 「え? え? 手?」 気配遮断は機能しているし、サーヴァントも感知していない。 振り向いたカッツェの目には、30手前の、歩きスマホをしているOLが映る。NPCだ。 ただのNPCが、気配遮断中のアサシンを発見するなど……いや、発見していない。 OLはきょとんとして棒立ちになっており、その視線はカッツェに止まっていなかった。 そこでカッツェが気付く。自分の肩を叩いた手はOLの物ではない。宙に、手が浮かんでいた。 注がれるOLの視線を厭うように、浮かぶ手が振るわれる。手刀が、OLの首を切り裂く。 その人ならぬ力は、サーヴァントのそれだった。周囲の人間が悲鳴を上げ、OLが崩れ落ちる。 彼女が落とした携帯は通話状態になっていた。声が、カッツェの耳に届く。 『悪逆の英霊、ベルク・カッツェ。お目にかかれて光栄です』 「お目にかかってないでしょwwww誰wwww」 カッツェは、自然と口から出る嘲りに自分自身驚いていた。 先ほどまでは全くやる気がなかったというのに、精神テンションが少し上がっている。 NPCを伝書鳩以下の扱いで使い捨てて悪びれる風もない電話の先のサーヴァントから、痛快なまでの悪辣さを感じたからだろうか。 『 新宿 の聖杯戦争にアサシンとして召喚された、貴方の名声に及ぶべくもない小物のサーヴァントでございます』 「ミィと同じクラスっすかwwwwwwwwwwちょwwwwwwww非通知wwwwwwwww割と最近の英雄サン?wwwwwwwwww」 『余りお調子が良くないようなので、まずは用件だけお伝えします。貴方に会っていただきたい、面白い者たちがいまして……』 相手の不調を見透かすような慇懃無礼な態度……それを意図して行っている小賢しさ。 普段ならまだしも、悪意と煽りに餓えている今のカッツェには、その声は福音にすら聞こえた。 何故自分の真名を知っているのか。そもそも、どこで自分の存在を認識して接触して来たのか。謎だらけだが、今はどうでもいい。 つらつらと自分の都合を語る相手を軽口で囃し立てながら、少しでもあの美影身に引きずられる意識を縫い止める。 潔く諦めるなど、どれだけ変質しても、やはりベルク・カッツェには出来ないことであった。 ☆セリュー・ユビキタス 突如出現した敵サーヴァントに対し、セリューは即座に両目を見開いてそのステータスを確認した。 特に突出した点はない。敏捷値を除けば全体的に己のサーヴァントに劣る能力の相手だ。 アサシンの強みのスピードも、室内という限定空間に加え数の利も自分達にあるこの状況ならば然程の問題でもない。 実際に、バッターの殴打を浴びて天井に激突し、受身すら取らずに薬品棚へと落下していくではないか。 しかしセリューは、痩躯の男に対し何とも言えない不吉な予感を感じ取っていた。 一目見ただけで看破できる悪人というのは、そうそういるものではない。 ただの市民にしか見えない人間が突如として悪の本性を現したりもするし、どう見ても尋常ではない格好の正義の味方も存在する。 悪党の取り締まりを生業とするセリューは、外見の第一印象に惑わされる事がないよう心がけ、相手が悪と分かれば即断罪してきた。 彼女なりの規律はしかし、目の前のサーヴァントによって脅かされつつあった。 「バッターさん、この敵は……」 「災害のような相手だ。世界をかき回しながらも、目的意識がない。どうやら、悪意だけがこいつに意味を持たせているようだな」 「なになにワニさんwwwそんなナリして~~~~……心療医かっ!wwwwカウンセラーかっ!wwwwwww病院にはもう寄ってきましたんーwwwwwww」 芸人のような声を上げながら、伏せていたアサシンがビデオ映像のコマ戻しの如く立ち上がる。 押し倒された薬品棚のガラスも、割れた瓶から零れ散った薬液も、バッターの猛撃も、その道化た動作に影響を与えていない。 セリューは、鼻歌を歌いながら踊り始めたアサシンを睨みつける。 あまりにも"人間性"から逸脱したその軽骨ぶりは、到底許容できるものではなかった。 「そこのふざけたアサシン! 貴様のマスターはどこにいる、サーヴァントに愚鈍な振る舞いを許す悪のマスターにこのセリュー・ユビキタスが鉄槌を……」 「だーれが愚鈍だゴルァァァァァ!」 不快も顕わに怒声が走る。一転して凶相を晒したアサシンが、手近な椅子をミサイルもかくやの速度で投擲したのだ。 息を呑むセリューの眼前に、シャドウラビリスが無言で躍り出た。人間の目には光の線が走ったとしか見えない斬影が走る。 大斧によってティッシュ箱から砂塵の一握ほどのサイズまで不揃いに寸断された木片は、セリューと背後で震える真昼に届く事なく地に落ちた。 「アアアアアアアアアアアアア!!!」 「ちょえwwww普通に喋ってもいいんやでーwwwバーサーカーだとしてもwwwwwww」 またも軽薄な態度に戻ったアサシンの挑発を聞いてか聞こえずか、シャドウラビリスが遮二無二吶喊を図った。 戦斧はフローリングに疵痕を残しながら、隙だらけのサーヴァントを脇腹から両断せんと迫る。 致命のタイミングで撃ち込まれた一閃が、アサシンを錐揉みに回転させて跳ね飛ばした。 シャドウラビリスの虚ろな目に、困惑の色が混ざる。その色彩を驚愕へと深める光景が、直後に訪れた。 「じゃんか♪じゃんか♪そいや♪そいや♪」 遠慮ない勢いで地面に激突し、うつ伏せになっていたアサシンが平然と立ち上がる。 バッター、シャドウラビリスというバーサーカークラスのサーヴァント二体の攻撃を受けてもまるで怯んだ様子がない。 最高水準の耐久力を持つ、鉄壁のサーヴァントなのか。否、剛健とは程遠い。 無窮の武錬を誇る、術理極めし求道の英霊だというのか。否、老練には程遠い。 それは偶然……適当にかざした防手や、力を受ける方向がたまたまに最高の結果を生んだかのような埒外だった。 しかし、アサシンは幸運のステータスが高いわけでもない。 セリューのマスターとしての眼力で推し量れない、スキル・宝具に、何らかのからくりがあるのは明白だった。 「はぁ~~~やっぱりバトルってつまらないよねぇ。観戦が一番ッすわ~~~www」 「お前の望みを叶える義理はない。何も見えず、誰にも見られない処へ還るがいい」 普通に考えるなら、得体の知れない能力からは一時撤退して敵サーヴァントの素性を探る、マスターを探し出して暗殺するという選択肢もあるだろう。 しかしバッターはその定石を頭の端にも留めず、兇眼を研ぎ澄ます。バーサーカーとして召喚された彼に、逃げの一手はない。 実力を異能という不確定要素で誤魔化す事が、いつまでも続くはずもない。多面的な攻撃を行えば、いずれは捉えられると判断したようだ。 己のサーヴァントを心の師と仰ぎ、全幅の信頼を置くセリューもまた、悪漢を前に退くつもりは毛頭なかった。 「始原光体アルファ」 ポウ、と光が灯る。何の前触れもなく出現したその球体は、並々ならぬ威容を発散していた。 ただの攻撃ではない―――そう察したのか、半歩下がったアサシンが息を呑む。 光球が、背後からアサシンを抱いている。転移としてもあまりに唐突な、理不尽すら感じる奇襲。 振り払い、真横に飛ぶアサシンに不調が見られた。右手が僅かに麻痺し、視界の半分が暗闇に覆われている。 光球が鎖を放つ。罪人捕らえるべし、とばかりに射出された白銀の鎖は、悪魔を拘束した際の数倍の速度でアサシンに迫る。 「デバフやっべwwwこれ絶対クールタイム12だわwwwwバフ……こっちもバフ…バフ……バ……バ……バード・グォォォォォwwwwwwwwwwwwwwww」 しかし、アサシンの余裕はまるで崩れない。片足を上げ、バレリーナのような動きで鎖を回避して宙に舞い上がる。 同時に、その全身を四条のリングが覆う。一瞬だけ鎧を纏った戦士の姿が映り……消えた。 完全に実体が隠れている。先だっての気配遮断などは比較するにも当たらない隠身術。 不快な笑い声は消えていないにも関わらず、アドオン・アルファは『敵はいない』と判断したのか鎖を引き戻す。 バッターが指示すれば再度の射出は可能だが、その事実はアドオンの強みである自律機能が今のアサシンには有効でないという事を示していた。 マスター二人の背中を冷や汗が伝う。暗殺こそアサシンクラスの真骨頂とはいえ、面と向かった状態でこれだけ完璧に姿を消せるとは。 今セリュー達に攻撃の矛先が向けられれば、サーヴァントの守りも追いつくまい。 「そこか」 「痛ったい! ウッソだろこいつwwwwww」 しかし、セリューの動揺は杞憂だった。 0コンマ数秒の目配りの後、あらぬ方向へ飛び上がったバッターの兇器が見えない何かを殴りつける。 轟音、驚笑と共に風を切って何かが壁に激突した。正体は、人間大の罅痕を見るまでもない。 セリューの目が、バッターの手に握られた数房の赤い髪を認めた。 あの長髪を掴み、引き寄せてバットで殴打したらしい。 汚らわしいとばかりに放られた髪が、追撃に走るバッターの猛進に煽られて四散する。 横顔を通り過ぎる髪を見ても、尚本体の存在は感知できない。バッターにしか見えていないようだ。 「鞭か」 バッターが腰を落とし、直後に彼の背後の壁に亀裂が入る。攻撃すらも、余人には気付かれずに行えるのか。 亀裂の位置から見えない何かが壁をなぞる様に天井に向けて破壊を拡げていく。 鞭のような武器と思しきそれは、再度バッターに向けて振り下ろされる。 セリューがそう理解したのは、バッターが横っ飛びに移動し、直後に床に陥没ができたからだ。 「バッターさん! 一体何が……」 「アムネジア・エフェクトだ。"管理者"の手で魂を変造された生物……ガッチャマンが得る異能の一つ」 「ちょちょちょwwwおかしいでしょwwwwなんで知って」 「お前の固有能力は特に万能だ。その本性がなければ、浄化が困難な存在だっただろうな……ベルク・カッツェ」 「……何だ、お前?」 真名を明かされたアサシン―――ベルク何某が、笑みを止めた。 セリューには見る術もないが、表情も恐らく笑ってはいまい。 バッターからの悪気ない軽視を察して苛立ったのか、材料すらなく真名を看破され不気味に感じているのか。 後者だとしたら、逃亡の恐れもある。セリューは番場に耳打ちして、シャドウラビリスに対し出口を固める指示を出すよう提言。 その間、バッターと姿なきアサシンは睨み合いを続けていた。 セリューの思考は未だ至っていないが、バッターがアサシンの素性を看破し得た裏付けは彼の持つ対霊・概念スキルと真名看破スキルにある。 戦闘開始の瞬間から、バッターはアサシンの真名を探り当ててその英霊歴を知ることで先手を取るべく、"ワイド・アングル"による看破を試みていた。 だが、アサシンの第一宝具が、バッターの狙いを崩すべく、真名秘匿の効果を発揮してそれを妨害していた。かの幸災楽禍は、特定の条件下において万能である。 こと騒乱・扇動を引き起こす為ならば……この場合は、バッターの実力を引き出して 新宿 を更なる狂騒に導くに足る存在かどうか見極める為にならば。 不発に終わった兇眼、しかしバッターはその眼光を緩めなかった。否、彼のアイデンティティゆえに、その暴力的な両眼は常に魔貌と共にそこに在ったのだ。 アサシンが最大戦闘力を発揮する姿、Gスーツを纏うガッチャマンへと変じた際に、その愚直なまでの選択が功を奏した。 ガッチャマンとして真っ向から戦う時、アサシンの力は確かに増すが、英霊としての本領を発揮できるとは言い難い。加えて、精神に常時の物とは別の異常を抱えていたのが災いする。 数多の文化を崩壊させた、宇宙をホームグラウンドにしながらも地球の英霊史に刻まれる規格外の道化……それ程の存在が一瞬見せた濁りが、バッターを彼の真名へと辿り着かせた。 真名が明らかになり、敵がガッチャマン……神に近い存在により、生前でありながら魂を加工された"霊"の属性を持つ相手と分かれば、対霊・概念スキルが活きてくる。 磐石のはずの気配遮断スキルは感知効果によって意味を成さず、肉持たぬ霊・魔・概念……優先して浄化すべき存在に対し、サーヴァントとしての霊器は強靭さを増していく。 「バッターさん、ステータスが凄い事になってますよ! 今こそ正義の鉄槌を!」 セリューが歓喜の声を上げる。それに応えるかのように、殺人バットが常時に倍する魔力を帯びた。 あまりにも狭いグラウンドを、バッターが進塁する。命というボールを、いかなる球種で逃げようと打ち果たす為に。 ☆ベルク・カッツェ カッツェもまた、セリューと同じく歓喜に心を震わせていた。 変な女の言うがまま、らしくもないガチバトルを挑んだ目的は達成されつつあった。 ノリの悪い、心の揺るがない、スカした気に食わないワニ野郎ではあるが、このサーヴァントは最高だ。 悪逆の徒であるカッツェは敏感に、バッターから発散される濃厚な『悪意』を感じ取っていた。 本人がどう思っているかまでは知らないが、挙動、言動の全てが暴力によって思いを遂げる外道のオーラを帯びている。 浄化がどうのと言っていたが、カッツェから見ればバッターの願いは破壊・粉砕・滅却。"全てを台無しにする"事に他ならない。 「うおおおおwwwみwwwwなwwwwぎwwwwっwwwwてwwwwwきwwwwwたwwwwwwwwww」 場を盛り上げるために一旦我慢して下げたテンションが再び最高潮に達する。 これこそ、ベルク・カッツェが求めていた展開だ。 未開の猿が踊る様は見ていて楽しいものではあるが、あの美影身に注がれる己の思いを止めるには至らない。 ならば、同じサーヴァント……それも自分と同質の存在から悪意を浴びるという手はどうか。 その試みは見事に成功し、彼の心には再び悪意の灯火が揺らめき始めていた。 「ミィはwwwwミィは元気ですwwwwwwwwww故にダッシュで脱兎wwwwwwwww」 カッツェのGスーツが、残像を残して廊下へ続く扉に駆け出した。 アムネジア・エフェクトを考慮に入れなくとも、サーヴァント以外には目でも追えない疾走。 だがそれを阻むように、マスターからの命令を受けていたと思しき機械少女のサーヴァントが行く手を塞いでいた。 速度を落とす事なく飛び上がる。バッター以外には、未だ気配遮断の効果は継続しているはず。 相手の防御など考慮に入れない、カッツェの全力の飛び蹴りがシャドウラビリスに迫り、同時にバッターが呟いた。 「撃て」 「アアアアアアアアアアア!!!!!!」 ビクン、と痙攣したようにシャドウラビリスの腕が跳ね上がる。 自分に向けられている拳を見てカッツェが身を捩ると同時、シャドウラビリスの肘先から青い蒸気が噴出された。 猛烈な勢いで放たれた攻撃の正体を、空中で反転する視界の端で捉える。その鉄塊は、華奢にも見える前腕だった。 鼻先を掠めるチェーンを、尻尾を変化させた鋭鞭で切り払う。ゴトン、と前腕が床に落ちる音がした。 からくり仕掛けの戦士も、サーヴァントであれば整備は必要ない。魔力さえ供給すれば破損した箇所を補うことはできる。 しかし、機構として霊器に染み付いた前提はある。カッツェとて、NOTEを破壊されれば仮に無限の魔力供給があっても消滅は免れない。 チェーンパンチもまた、線を断たれれば糸を繋ぐまでは本体に戻れないのが道理。 片腕を失ったシャドウラビリスを一蹴しようと回り込む。反応している様子はない。 ロケットパンチが放たれてから2秒半が経過しているが、バッターは急ぐ素振りもなくこちらへ歩いてくるだけ。 カッツェがシャドウラビリスの横面を殴り飛ばすのを阻む要素は、何一つないはずだった。 「ないはずだったーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwぐええええーーwwwwwwwwww」 脇腹に鋼の感触が押し当てられていた。Gスーツが凹むほどの衝撃がカッツェを横転させる。 もんどりうったカッツェの目に映ったのは、空中で何の助けもなく浮かぶシャビリスの前腕。 ありえない光景だが、未だカッツェの喜悦を崩すには至らない。 「どういうことなのwww」 「餓えた鉄の豚には、過ぎた"エサ"を与えただけの事だ」 倒れ伏すカッツェに向けてか、シャドウラビリスに向けてか、バッターが唸った。 見れば彼女の肘先、ロケットパンチの射出口から光が走っている。 その光には、カッツェも見覚えがあった。バッターが侍らせていた光球の輝きに酷似しているではないか。 聖霊を思わせる威光が、彼女とその腕を繋いでいた。本来の機能を失ったチェーンは一瞬で錆びて、赤砂へと成り果てた。 耳を澄ませば、微かに歌劇が聞こえる気がした。光に乗って、迷宮に封じられた牛頭の王子の嘆きが轟いている。 アームがシャドウラビリスの頭上まで浮遊し、掲げられた肘先に再接続される。 身切れた箇所から漏れていた光は……聖霊の具現たる白き光は彼女の左目から一握だけ噴出して消えた。 右目には、黄色い破壊衝動の光が変わらず宿っているが、光を失った左目は正気の色を取り戻している。 機械少女のマスターが息を呑む気配がした。カッツェは、バッターの言葉の意味するところを理解した。 「なるwwwwサーヴァントをアップデートしたってわけですかwwwwwwww」 アサシンの女から得たバッターたちの情報と、実際に戦闘に入った印象を照らし合わせ、疑問に思っていた点があった。 それは、『あまりにも、無難に戦闘が進みすぎる。』―――という事。 バーサーカー同士が同盟を組むというのが、まず異常な事態なのだ。 だというのに互いに足を引っ張り合うこともなく、各々の役割を守っている。 異常ながら理性を残すバッターはともかく、シャドウラビリスにはマスターの細かい指示を受けることなど出来そうには見えない。 同盟を組んだ後、バッターが狂犬の手綱を握る為に何らかの手段を講じたのではないか、とは薄々勘付いていた。 気弱そうなマスターに令呪を使わせた、といった所ではないかと予想していたが、実体は想像を超えて驚嘆に値する。 カッツェにはあの光体の本質を推し量る程の知識はないが、それが自律している事は挙動から読み取れていた。 あのセベクの如き悪鬼は、知性を持つ霊体を仲間の霊器に直接組み込む事で、暴走の危険を軽減させたのだ。 英霊の矜持を理解する存在であれば忌避するであろう暴挙を平然と行うバッターは、やはり聖者などではない。 "自分と同じ存在"に相違あるまい、とカッツェは得心する。 「そこの可哀想なバーサーカーちゃんには、個人的に同情を禁じ得ないwwwww君には負けたよwwwwwwww許してwwwwww」 「姿は見えないけど、どうせ神妙な顔なんてしてないんでしょう! 惑わされずに正義執行してください、シャドウラビリスさん!」 「そ、それでお願いする……ます……」 「EEEEEE……εεεεァァァァ!!!!! 死……んド……きナ……!」 「ええええwww負けを認めた相手に攻撃とかwwww死体蹴りかwwwwww」 いやこれは第二ラウンドだ、とばかりに大斧を顕現させ、躊躇なく振り下ろすシャドウラビリス。 だが、その攻撃は地面を穿つ。カッツェはこの戦闘が始まってから一度も動揺していない。 全ては目的を―――バッターの悪意を堪能し、自分を取り戻すという目的を達成する為のお遊び。 幸災楽禍の加護が、『カッツェ自身の悪意』という騒乱に対する最大の火種を大火に導く為、その真価を発揮する。 極限まで上昇したカッツェの敏捷値は、強化されたバッターとシャビリスのそれをゆうに凌駕した。 バッターの目の前に、玩弄のGスーツが超高速で移動していた。 シャドウラビリスの攻撃の余波に対応しようとしていたバッターが、初めて虚を突かれる。 この隙を生む事だけが、カッツェの狙いであった。 バッターの悪意をより深く理解し、あの美影身の痕跡を完全に消すのだ。 「ミィは本当反省ぽんwwwwwww熱いベーゼで仲直りんwwwwwww」 Gスーツを脱ぎ捨て、バッターの厚い胸板にしな垂れかかる。 粘膜接触によってこそ相手の内面を深層まで理解できるという己が持論に従って、カッツェは鰐の下顎に唇を這わせた。 不浄不遜の接吻が、女三人の視線を引き付ける。理解不能な感情が飛び交う中、カッツェとバッターだけが、共有した"それ"を見ていた。 ――――――――――――――――――――――――――― スイッチは OFF になった。 ☆バッター 「―――"見たな"」 問いに、答えは返されなかった。 土石流のように流れる嘔吐物を眺める。 自分と同じ姿になった道化が垂れ流す、後悔と絶望の混合物。 道化は、『信じられない』といった目つきで、こちらをただ見ていた。 不快な哄笑が聞こえなくなったのはいいが、全く不愉快だ。 「両目とも、恐怖で満たされた目だ」 かって、同じ言葉を吐き捨てた。その時と同じ思いを抱いている。 いや……自分自身の眼は、あの子のそれよりも……。詮無き事だ。 自分を模した"迫り来る災害"が、こちらから距離を取ろうとしている。 一歩、進む。二歩、退がられる。一歩、進む。二歩、退がられる。 鏡写しの存在は、必然的に離れていく。己の全体像が見える。 「ミィは……てめえは……」 「既に、"通り過ぎた災害"だ」 搾り出すように呟く道化に、繋がりを感じる。 目の前の存在は、自分の全てを知った。 あるいは未来永劫現れることのない、バッターという存在の真なる理解者なのかもしれない。 それでも、浄化は成されなければならない。神聖なる任務を果たさねばならない。 「『Demented Purificatory Incarnation ――――』」 バットを、脇に放る。 好んで使う武器ではある。だが、浄化は血塗られた両手の爪で行うべきだろう。 バーサーカーのサーヴァントとして召喚されたが故の、縛りのようなものだ。 迷い子に預けたエプシロン以外のアドオン球体を出現させる。 際限なく輝きを増す一対の父と子、アルファとオメガ。 セリューが、指示通りに退避を始めた。間に合えばいいのだが。 目の前の存在に歩み寄る。もはや、逃げる術はない。逃がす意思もない。 爪が届く位置まで来た。様子を窺う鉄の女の廃熱音だけが部屋に響く。 鰐の顔を天に向ける。唾吐く事なく、ただ牙のみを見せ付ける。 「―――― 『The Batter』」 自身の真名と共に、宝具の真名を解放する。不要な動作こそが、必要な運命を手繰り寄せるのだ。 この地を浄化させるという意思が世界を包む。楔となる存在を抹消する事で、人理を天意で塗り潰すのだ。 周囲が白く染まっていく。ベルク・カッツェが 新宿 に置いて占める何十分の一かを、白い世界に変えるのだ。 かって、ガーディアンを倒した時と同じように広がる光。"何か"を切るように、爪を振り下ろす。 しかし、その結果は。かってのそれとは、別の物になった。 ☆セリュー・ユビキタス 『俺はバーサーカーだ。お前というマスターを護るのは向いていない』 バッターの言葉を思い出しながら、セリューは全力疾走で薬局の廊下を駆ける。 光球……バッター本人にも正体が分からない、"象徴する何か"がその光度を激しく増したのは、合図だった。 あの合図を見たら、どのような状況であれセリューはバッターから迅速に距離を取らなければならない。 世界に対する管理者……この 新宿 という閉鎖世界においては、自分達に対し討伐令を出した主催者か。 それらに致死の一撃を加えることで、バッターという存在"そのもの"である宝具は発動する。 バッターの言う浄化とは、具体的にはその宝具の発動によって世界を悪のない場所へと変えることを指すらしい。 生前にガーディアン、という存在を倒した時にはその支配下にあったエリアが一度に浄化されたという。 そこまで語ったバッターが、思い至った仮説があった。 契約者の鍵を見るまでもなく、サーヴァントの召喚に主催者の助力があったのは明白だ。 セリューや番場に、魔術的な知識は一切ない。魔術師としての素養も最低ライン上であろう。 『サーヴァントとして召喚された英霊に何か仕掛けをしているかも知れないし……相争わせて最後の一人を決めるという 聖杯戦争の形式からして、サーヴァントが脱落する事に彼奴等の狙いが隠されている可能性は高い』 故にサーヴァントはガーディアンと同じ特性を持ち、管理者の権能の一旦を分け与えられているのではないか。 バッターの"浄化"によってサーヴァントを倒した時、この 新宿 のエリアの一部が浄化できるのではないか。 それを続けていけば、主催者に接触する機会も生まれるのではないか。聴くセリューは、相槌を打つのが精一杯だった。 セリューにとってはまったく畑違いの事というのもあり、とりあえず記憶だけして理解は後回しにしたのだが……。 背後に迫る神聖な気配を感じて、頭ではなく心で理解できた。バッターの推測は正しかったようだ。 「あれが、バッターさんのいう浄化された世界! 凄い!」 善も悪もない、等と謙遜していたが、セリューが背中から感じる新世界の鼓動はまさしく正義の為のもの。 悪の念が全くないあの世界には、きっと正しさが満ち溢れることだろう。しかし、今は見惚れている暇はない。 浄化に巻き込まれていく薬局の壁や床は一瞬で色を失い、"死"を連想させる。 飛び回る蝿も同様で、地に落ちて本来の色を失ったその姿からは意思の力が希薄に感じる。 魂が抜けかけている、とでもいうのか。目障りで不潔な蝿も、魂魄だけとなれば嫌悪感もなくなる。 人間もああなるとすれば少し物悲しくはあるが、悪が蔓延る現状の世界よりは遥かにマシというものだろう。 正義の意思を持つ罪なき者ならば、たとえ肉体を失っても健全な魂だけが住む社会を作り上げられると、セリューは信じていた。 とはいえ、今自分がああなるわけにはいかない。胸に燃える正義の炎を静めるとすれば、バッターと共に浄化を成し遂げた後だ。 「くっ……!」 だが、セリューの足取りは平時より重い。普段なら20秒もあれば抜けられる距離を、1分かけても半分しか移動できていない。 戦闘の余波で廊下が歪んで足場が悪く、さらに番場の手を引いているという事もあるが、バッターに供給する魔力の消費が主な原因だった。 バッター自身が持つ魔力が豊富な為、これまで感じたことの無かった消耗。 宝具が効果を発揮したからというだけでなく、シャドウラビリスと融合した光球に魔力が流れる感覚もある。 理性を僅かに取り戻したとはいえ、遠慮も躊躇もなく暴れるのが彼女だ。 アドオン球体の力を憚ることなく振るい、浪費しているあおりがバッターのマスターであるセリューに来ているのだろう。 バッターが浄化に全霊を傾けている今になって初めて感じたということは、普段は彼がこの消耗を肩代わりしているのか。 そう思うと、突き放したような態度を取る事もある己のサーヴァントへの信頼が増し……申し訳なくも感じる。 「あっ!?」 「セ、セリューさん」 足を掴まれたような感覚と共に、セリューが転倒した。 足元に目をやるが、躓くようなものは何も無い。断続する眩暈のせいか、と結論付けて立ち上がる。 あと十歩も駆ければ、薬局からは抜けられるだろう。だが、浄化がどこまで広がるかも分からない。 太ももに活を入れようとして、薬局から抜け出る前に浄化に追いつかれると悟る。 番場を見捨てて一人で逃げればそれを先送りには出来るだろうが、根本的な解決にならない。 一度保護すると決めた相手を切り捨てるなど、正当な理由も無く出来るセリューではなかった。 せめてと番場を抱き寄せ、自分の後ろに回らせる。浄化の見えない壁と対峙しながら、セリューの心に様々な思いが去来していた。 事を成せなかった無念もある、浄化を受ける不安もある。しかし何よりも、自分を信頼してくれたバッターの期待に応えられないのが悲しい。 「―――――ッ!?」 頬を伝う涙が、ぴちゃんと肌の上を跳ねた。 浄化の衝撃ではない……暖かい手が、愛しむようにセリューの耳を、額を、髪を撫でている。 視界に映るその手は、背後に居るはずの番場の物ではない。 困惑するセリューの耳に、鈴を転がすような美声が届いた。 「……やはり、手入れが足りませんね」 言葉の意味を考える間もなく、何かに引っ張られるような感覚がセリューを襲う。 番場の悲鳴が聞こえる、と気付いた直後、視界は一変していた。 屋外……薬局の反対側の歩道に、セリューはいた。膝の上では番場が目を回している。 浄化は薬局を丸々覆ったところで止まっていた。諦めた自分を恥じるセリューの背後から声がした。 「貴女のサーヴァントの力……なのでしょうが、凄まじい物ですね」 聖杯戦争の関係者―――そう気付き、弾かれるように向きなおる。 視界に捉えた女性は、御伽噺から抜け出したような美しさのサーヴァント……またもやアサシンだった。 柔らかい笑顔からは、敵意は感じられない。だが、油断は禁物だ。 バッターも、討伐令を出された自分達を狙う主従に注意しろと言っていた。 警戒の視線を飛ばすセリューに構わず、女性は更なる言葉をかけてくる。 「そう身構えなくてもいいでしょう。私は貴女の首を取りにきたわけではありません」 「その言葉を信じる根拠がどこにある」 「もう見せていますよ」 女アサシンが、白磁のような右手人指し指を唇に当ててセリューに示す。 指先には水滴が乗っていた。右手の中指に填められた指輪に、見覚えがある。 「私の能力で、貴女の窮地をお助けさせていただきました」 「自分の手で仕留めなければ、討伐報酬を得られないと思っての行動でないとは言い切れない」 「疑り深いですね」 じりじりと後ずさるセリューをにこやかに見つめながら、女アサシンは言葉を続けた。 「私がそのつもりで労力を割いたのなら、悠長に喋って好機を逃すような真似はしませんよ……ほら」 「!」 女アサシンが指差した先……薬局の扉が、巨大な腕に内側から破られる。 地面を掴み、這いずるように建物を破壊しながら現れたのは、上半身だけの雄牛の怪物だった。 両肩には、バッターとシャドウラビリスが騎乗している。バッターはもちろん、シャドウラビリスも浄化の影響を受けていない。 アドオン球体を取り込んだ恩恵か、と番場に安堵するよう伝えようとしたセリューの傍らに、いつの間にか近寄って来た女アサシンがいた。 番場の頭を撫でるその姿からは、悪意は感じられない。セリューは、この女アサシンを信用することにした。 雄牛が消え、バッターが猛然とこちらに駆け寄ってくる。問答無用で振り下ろしたバットは、しかし女アサシンに当たることはない。 その一撃が地面に向けられていたにも関わらず、アスファルトに破壊がもたらされていない様には、見覚えがあった。 「わかったわかったwwwwwもう本当にミィの負けでいいなりwwwwwwwwww」 嘲笑が遠ざかっていく。セリューが息を呑み、バッターを見遣る。 あの状況から、赤髪のアサシンは浄化から逃げ仰せたというのか。 「無事だったか、セリュー」 「は、はい。こちらのアサシンさんに助けられて……それより、浄化は発動してるのに何故あっちのアサシンは!?」 「霊魂を七割ほど削ったところで、奴が受肉している事がわかった。これは、サーヴァントとしてはありえない。ヒトの原型、アダム・カドモンに近い存在だ」 霊核の粉砕を消滅の目安として破壊を進めていたバッターの疑念に乗じ、本来在るべき霊核を持たないアサシンは宝具を展開、逃げおおせたという。 女アサシンに険しい視線を配りながらも、バッターはセリューにこれは重要だぞ、とばかりに言って聞かせる。 「浄化の範囲も異常に狭すぎる。奴は俺たちとは違い、聖杯戦争の主催者に召喚された存在ではないかもしれない」 「やはり……」 女アサシンの呟きに、バッターが眼光を強める。 仲裁しようと口を開きかけるセリューだが、ここは思いとどまった。 たまたま通りかかってセリューの危機を救った、などという事はありえない。 この女アサシンも、先の騒乱に一枚噛んでいる可能性は高い。 バッターもまた、その言質を取ってから対応を決めたいようで、相手の言葉を促すように首を鳴らした。 「私がここに来たのは、メフィスト病院を調べる為ですが……貴女方の内偵も、進めさせていただいておりました」 「アサシンならば妥当な動きだ。俺たちの情報を探り、何を企んだ」 「NPCを大量に殺しているという布告が真実かどうか確かめ、悪党の類なら誅罰を与えようと考えていました」 「それは誤解です! こんなおかしな討伐令を出す連中に騙されないでください! 私達は正義です!」 セリューが純粋な瞳で訴える。女アサシンは「わかっていますよ」と短く告げて、バッターを、そして無色に変貌した薬局を見た。 「真っ当な英霊ならば、褒章をぶら下げられたからといって討たれる謂れなき者を追ったりはしません」 「俺たちに討たれる謂れがない、と判断した理由があるのか」 「貴女たちが殺めたNPC、今朝の時点では121名、現時点では123名でしょうか? それら全てが、悪漢やその庇護を受けた者や……悪魔の類でしたからね」 女アサシンがバラバラ、とバッチのような物を落とす。ヤクザの代紋……全てセリューたちが潰してきた組のものだった。 聖杯戦争が始まって半日の間に起きた戦闘で討ったNPCまで把握されているのには、セリューも驚いた。 ここまで調べがついているのなら、自分達が正義の味方だということは誰にとっても明白だろう、と頷くセリュー。 だが、バッターはそう単純でもない。完全に動向を把握されている手段を置いても、目の前の女を信用できないと直感していた。 「セリューを助けたのは何故だ」 「打算ですよ。正義の使徒たる彼女とその仲間たちなら、私の懸念を祓う力になってくれるのではないか、と思いまして」 「一体どんなお悩みが? 主催者を倒すなら、是非……」 「それ以前の問題です。あのアサシン……ベルク・カッツェ。あの英霊は、本来サーヴァントとして魔術師に召喚できるようなものではありません」 それについては、バッターも同感だった。アレを御せるマスターなどいるはずもない。 自分の意思、または英霊より上位の存在に招かれなければ、召喚に応じるはずもないだろう。 聖杯という願望器でもなければ不可能であろう受肉を果たしていることから、後者の可能性が高い。 それが主催者の手によるものでないとすれば、事態はあまり面白くない。 「星亙りの災禍を召喚した者に、心当たりでもあるのか」 「御名答です。あれを召喚した者はメフィスト病院にいます……召喚した時刻は、今日の13時過ぎ。場所は、同じくメフィスト病院」 「えっ!? さっき潜入して捜査したけど、そんな気配は」 「召喚の瞬間、あの病院内に居なければ……そして、サーヴァントでなければ、察知は困難だったでしょう。しかも、カッツェ以外にも数体が召喚されているようです」 バッターが、カッツェの無意味な言葉の中に『病院』に寄った、というフレーズがあったと思い出す。 「街に蔓延る汚鬼や羅刹の根源ではなかったが、やはり唯の道楽でもなかったというわけか」 「令呪の縛りがないサーヴァントの厄介さは、それらの比ではないでしょう。このままでは、この街は魔界の有様になりかねません」 「バッターさん! いますぐメフィスト病院を攻めましょう!」 「落ち着いてください、セリューさん。まだ話は終わっていません」 女アサシンはハンドバッグから一枚の紙を取り出し、セリューに手渡した。 新宿 の地図であり、多数の黒点と少数の赤点が書き込まれている。 「この地図には、先ほど話題に出た悪魔の出現ポイントと、その周辺を探索して私がサーヴァントの気配を感じた位置を記しています」 「こんなに沢山……」 「貴女方を見つけたのと同じ能力での調査ですので、信憑性はあると思いますよ。……もうお解かりでしょうが、私の懸念とはこの無軌道な連中が 聖杯戦争そのものを破綻させ、NPCとはいえ無辜の民が血の海に沈むことです。それだけは、なんとしても止めたい」 「お前が惨劇を止めるための熱意を持ち合わせているようには見えないが」 「恥ずかしながら、若さを失って青春の情熱を保てなかった人間でして」 「いえ、まだまだお若いですよアサシンさん! 一緒に悪党を倒しましょう!」 「そうですね。でも私は、ベルク・カッツェ以外の病院産サーヴァントの足取りを追わなければならないので一旦……」 「ならば、俺たちはお前が調べた場所に赴こう。協力を感謝する」 だが、お前はここで浄化する―――その言葉を呑み込んで、バッターは女アサシンに向かって歩を進めた。 対霊・概念スキルは反応していない。このサーヴァントは、汚された魂の徒ではない。だが、度し難い毒婦だ。 バッターはこの女を浄化せねばならぬと強く直感していた。セリューを納得させる手間を考慮しても、今消せるならば消すべき相手だと。 迫るバッターの足を、女アサシンが止める。たった二言の呟きで。 ........ 「ああ、そうだ。バッターさん」 セリューも口にせず、本人も名乗らなかった真名を事も無げに呼ぶ、最初の呟き。 ................... 「あなたの家族が来ていますよ」 そして最後の呟きは、バッターの思考を一瞬止めた。いかなる驚愕にも、いかなる疑念にも揺るがなかった、 浄化者 の思考がコンマ1秒にも満たぬ間凍りつく。 バットに手を伸ばした次の瞬間、女アサシンは消え遂せていた。霊体化しての移動、追えばあるいは捕らえられるかもしれないが、リスクの方が大きい。 訝しむセリューを「行くぞ」と促して、バッターは一瞬の凍結を過去の物とした。あの言葉が想起させた"それ"は、もう終わっていることだ。OFFになった結末以前の話だ。 自分の内面を完全に模したベルク・カッツェですら、"それ"に辿りつく事はない、人理から抹消された点に過ぎない。観測できるのは、同じく人理から消えた者のみ。 ほとんどの英霊は親、あるいは妻、そして子を持つヒトの大系に属する。天や地の属性にも、無から生まれた存在はそう多くない。 女アサシンは、大概の英霊が共通して持つ過去を揺さぶり、察した危険を脱しただけだ。バッターは至極冷静に結論付け、歩き出すのであった。 【四谷、信濃町(メフィスト病院周辺、薬局前)/1日目 午後1:45分】 【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】 [状態]魔力消費(中) [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]この世界の価値観にあった服装(警備隊時代の服は別にしまってある) [道具]トンファーガン、体内に仕込まれた銃 免許証×20 やくざの匕首 携帯電話 ピティ・フレデリカが適当に作った地図 メフィスト病院の贈答品(煎餅) [所持金]素寒貧 [思考・状況] 基本行動方針:悪は死ね 1.正義を成す 2.悪は死ね 3.バッターに従う 4.番場さんを痛めつけた主従……悪ですね間違いない!! 5.メフィスト病院……これも悪ですね!! [備考] 遠坂凛を許し難い悪だと認識しました ソニックブームを殺さなければならないと認識しました 女アサシン(ピティ・フレデリカ)の姿形を認識しました 主催者を悪だと認識しました 自分達に討伐令が下されたのは理不尽だと憤っています バッターの理想に強い同調を示しております 病院施設に逗留中と自称する謎の男性から、 新宿 の裏情報などを得ています 西大久保二丁目の路地裏の一角に悪魔化が解除された少年(トウコツ)の死体が放置されています 上記周辺に、戦闘による騒音が発生しました メフィスト病院周辺の薬局が浄化され、倒壊しました 番場真昼/真野と同盟を組みました 【バーサーカー(バッター)@OFF】 [状態]健康 魔力消費(中) [装備]野球帽、野球のユニフォーム [道具] [所持金]マスターに依存 [思考・状況] 基本行動方針:世界の浄化 1.主催者の抹殺 2.立ちはだかる者には浄化を [備考] 主催者は絶対に殺すと意気込んでいます セリューを逮捕しようとした警察を相当数殺害したようです 新宿に魔物をバラまいているサーヴァントとマスターがいると認識しています 自身の対霊・概念スキルでも感知できない存在がいると知りました 女アサシン(ピティ・フレデリカ)を嫌悪しています 『メフィスト病院』内でサーヴァントが召喚された事実を確認しました。 ………………………………………… 【番場真昼/真夜@悪魔のリドル】 [状態]健康 [令呪]残り零画 [契約者の鍵]無 [装備]学校の制服 [道具]聖遺物(煎餅) [所持金]学生相応のそれ [思考・状況] 基本行動方針:真昼の幸せを守る。 1. 新宿 からの脱出 [備考] ウェザー・リポートがセイバー(シャドームーン)のマスターであると認識しました 本戦開始の告知を聞いていませんが、セリューたちが討伐令下にあることは知りました 拠点は歌舞伎町・戸山方面住宅街。昼間は真昼の人格が周辺の高校に通っています セリュー&バーサーカー(バッター)の主従と同盟を結びました 【シャドウラビリス@ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ】 [状態]健康、魔力消費(小)、Add-On(ε)により霊器強化(若干の理性獲得、(ε)のアビリティの一部を使用可能、チェーンナックルが無線パンチに変化、ステータス向上) 令呪による命令【真昼を守れ】【真昼を危険に近づけるな】【回復のみに専念せよ】(回復が終了した為事実上消滅) [装備]スラッシュアックス Add-On(ε) [道具] [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:全参加者及び 新宿 全住人の破壊 1.全てを破壊し、本物になる [備考] セイバー(シャドームーン)と交戦。ウェザーをマスターと認識しました。 メフィストが何者なのかは、未だに推測出来ていません。 理性を獲得し無駄な暴走は控えるようになりましたが、元から破壊願望が強い為根本的な行動は改めません。 ステータスが以下の値に向上 筋力C(A) 耐久C(B) 敏捷C→B(A) 魔力D→B(A) 幸運D→E(E) 宝具B ☆ピティ・フレデリカ 『えー! 師匠はライブ見に来ないのねー? こっちはもう会場に着くのよー』 「ええ。急用が出来てしまって。でも、動画サイトとかで中継しているんでしょう? 活躍、期待していますよ」 『師匠に借りた最新のギターが唸るよ! うおおおお!』 ギィィン、と電話の向こうからけたたましい音響が鳴り響く。 今朝会ったばかりの相手に対するとは思えない馴れ馴れしさ、いやこれは親しみ深さというのか。 ともかく、1NPCの少女のハイテンションぶりに、ピティ・フレデリカは頬を緩めた。 早朝、彼女はメフィスト病院に患者として送り込んだ男の周囲から少しずつ髪の毛を収集、映像を切り替えて内偵を進めていた。 奇病難病の患者を優先して取捨選択し、メフィストが直接診察したという少女に目を付けた矢先の事だった。 見舞い客の中に、自分の知る外見をしたNPCが居た。魔法少女として薫陶を与えた愛弟子、トットポップと瓜二つの少女だった。 自身が英霊となった今、驚くほどのことでもないが、本来の彼女は故人である。B市での騒動の際に、暗殺屋に殺されたのだ。 「私と同じ名前のアイドルもいるとか。よければ、サインでもお願いしておきましょうか」 『オーケーオーケー。弟子として師匠のお願いを聞くのは当然のことだものね』 「では、失礼しますね。宮ちゃんにもよろしく」 電話を切って、嘆息する。当然の事だが、トットポップに似たNPCは魔法少女ではない。外見と性格だけ同じの別人だ。 しかしそれでも、その似姿を見たフレデリカはいてもたってもいられなかった。 マスターが学校に行って一人きりだったという事もあり、リスクは承知の上で家を飛び出し、メフィスト病院の周辺で待ち伏せた。 偶然を装って接触した瞬間は、感極まって言葉も出なかった。フレデリカにとってトットポップは愛弟子の一人、というだけの相手ではない。 彼女の死が、自分を見つめ直して新たなステージへ進む切欠となったのだ。 生前の彼女を、NPCとはいえ生きている彼女と照らし合わせる事であの時の最初の想い……弟子への打算なき愛情を再認識する事が出来た。 それだけでも、 新宿 に来て良かったと言えるだろう。後は、あの時の第二の感情、弟子を殺された怒りを反芻する事が出来れば最高だ。 トットポップのNPCはギターの技量を完璧には再現していないようで、魔法少女として強化された身体機能・感覚機能をフル活用、 更にトットポップとの交流の中で記憶していたギターの奏術を再現する事で、謎の占い師ルック流れギタリストとして心酔を得ることが出来た。 師匠、師匠と呼んでくる可愛らしい姿にうっとりしながらも、彼女が独自に計画していたライブ乱入計画に色々と入れ知恵を行った。 二日前まであのライブに出るアイドルのマネージャーの髪がコレクションの中にあり、ライブ会場の詳細は記憶していた。 不慮の事態でマネージャーが死亡した際の映像を見て、担当アイドルの一人……奇しくも自分と同じ名を持つ少女に興味を持ち、色々と調べていたのが役に立った。 今日のライブも興味深く見物させてもらうつもりだったが、更に楽しみが増えたわけだ。 「……おっと、いけませんね。愉悦ばかりに気を取られず、サーヴァントとしての勤めも果たさなくては」 まずは、カッツェへのフォローだ。水晶玉を取り出しながら、携帯で電話をかける。 バッター達との戦闘の中で散らばったカッツェの毛髪を、セリューを救う際に回収しておいた。 ベルク・カッツェの素性を、その姿を見るだけで看破できたのは、彼の英霊に髪にまつわる逸話があったからだ。 『人の子に髪を切られ、取り込まれた』という逸話が。 しばらくコール音が続き、電話を取ったカッツェは意外と上機嫌だった。怖ろしい英霊だ。 『おいすーwwww』 「御無事でしたか。どうでしたか、件のサーヴァントたちは?」 『最ッッッ高に胸糞悪かったんだけどーwwwwwwwとんでもない奴に嗾けやがって、月夜の晩ばかりじゃねーぞwwwww』 「乱星の魔人、ベルク・カッツェほどの御方の力をお借りして対価を払わない、などとは言いません。これからは背中に怯えて過ごすとします」 『その隙だらけの背中でよく言えたものだな(キメ声)。wwwwwwwwwwwwそのうち見つけて遊びにいっちゃいますよーんwwwww』 心底楽しそうに嘲弄言語を投げかけ、通話を切断したカッツェは、フレデリカの居場所から半キロ程離れたビルの屋上に立っている。 バッターから全力で離脱し、深手を負っているがそれを欠片も匂わせないのは流石というべきか。 水晶玉でカッツェの動向を確認しながら、感心して両手を打つフレデリカは、怯えとは無縁であった。 「さて、こちらは……成る程、メフィスト病院に突撃してもらってもよかったけど……」 セリューに水晶玉のチャンネルを切り替え、バッター達が自分の渡したデタラメな地図に示された地点に向かっている事を確認する。 バッターはフレデリカが自分を利用しようとしている、と気付いたのか、バーサーカーならではの狂気からか、フレデリカを殺そうとしていた。 それを察して虚言で混乱を生じさせて逃走することに成功したフレデリカであったが、バッターたちがこう動く事は予想の範囲内。 彼らは、「目的の為に」「殺す」というシンプルな思考で動いていながら、その目的が他者に理解不能という壊れた歯車のような存在だ。 軌道がシンプルなのだから、多少疑わしい相手からの情報でも一応確認に向かうだろうとフレデリカは予想し、見事的中した。 「聖杯戦争を勝ち抜く為に、自分達を利用しようとしている……くらいの読みでいてくれればいいのですが」 協調という言葉から最も遠い位置にいるバッターとも、物分りがいいようでいつ爆発するか分からないセリューとも、一緒に行動することは避けたい。 あの主従が、件のライブ会場に介入するのは出来れば避けたかった。狂人が相手では、弟子を殺されて怒る正義の魔法少女が絵にならない。 その手の展開の怒りの対象としては分かりやすい悪人がベスト。次点で、悲しくも望まぬ力を与えられた悲劇のヒロインなどもいいだろう。 よって、ライブ会場から露骨過ぎない程度に離れたメフィスト病院や地図上の赤点のポイントに、バッターたちを導いたのだ。 「いくつかは、本当に怪しい場所もありますし……メフィスト病院に至っては、ね……」 フレデリカがベルク・カッツェの存在を感知したのも、メフィスト病院の中に手を伸ばし、髪を回収している瞬間だった。 召喚の瞬間に、病院内にいた感知能力の高いサーヴァント以外には気付きようもない魔力波動。"英霊召喚"。 カッツェと電話越しに交わした会話と、バッターの「受肉していた」という言葉から、マスターに依存しない規格外の存在として召喚されている事が分かる。 仮にあの魔界医師・メフィストがカドモン・サーヴァントを戦力として使うつもりならば、聖杯戦争の趨勢が傾く程度で済む。 だが何か別の目的で彼らを喚んだのならば、想定すら出来ない何かが起こる……ならば、同じく想定できない要素をぶつけてみたかったのだが。 「やはり、黒幕より正義の魔法少女を目指すべき、という天啓でしょうか」 思い通りにいかない状況に、妙な理屈を当てはめて頬を染めるフレデリカであった。 【四谷、信濃町方面/須賀町/1日目 午後1:45分】 【アサシン(ピティ・フレデリカ)@魔法少女育成計画】 [状態]健康 [装備]魔法の水晶玉、NPCの髪の毛×6、北上の髪の毛、セリュー・ユビキタスの髪の毛、番場真昼/真夜の髪の毛、ベルク・カッツェの髪の毛 [道具]NPCの髪の毛を集めたアルバム、北上の髪の毛予備十数本、セリューの髪の毛予備一本、ベルク・カッツェの髪の毛予備一本、契約者の鍵 [思考・状況] 基本行動方針:北上の願いを肯定、聖杯を渡してあげたい 0.北上の周囲を警戒。なにかあれば北上を引き戻す。 1.PM2:00に行われる、新国立競技場のコンサートを何らかの方法で観る。 2.メフィスト病院に最大限の警戒。 3.NPC・参加者問わず髪の毛を収集し、情報収集の幅を広げる。 [備考] セリュー・ユビキタス&バーサーカー(バッター)を確認しました。 番場真昼&バーサーカー(シャドウラビリス)を確認しました。 赤のアサシン(ベルク・カッツェ)を確認しました。 予選期間中に起こった事件のうち、NPCが認知している事件は全て網羅してあります。 メフィストの噂(医術・美貌)をかなり詳細に把握しています。同時に彼を『要警戒対象』であると判断しています。 髪の魅力には耐え切れないと確信しているので、視界に入れないよう努力します。 『メフィスト病院』内の重篤患者(NPC)の髪の毛を入手し、内偵を進めています。 『メフィスト病院』内でサーヴァントが召喚された事実を確認しました。 ☆ベルク・カッツェ 「き……き……き……キターーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!wwwwwwwwwwwwww」 交差点で、突如中年男性が雄叫びを上げる。 動揺する周囲の人間に、男性は見境なく殴りかかる。 押し倒した老人の顔面を全力で殴打する男性の拳からは、骨が露出している。 動かなくなった老人を見て正義感に目覚めた若者が横合いから中年の男に蹴りを入れる。 次の瞬間、青年の脇から軽自動車が突っ込んだ。 信号を無視して人を跳ね飛ばした車は、ブレーキも踏まずに対向車線に飛び出す。 正面衝突した高級車からは近日の緊張から過剰になっているのが見て取れるSPが飛び出し、銃を抜いて軽自動車を包囲する。 銃声が鳴り響く。高級車の周りに陣取り、守りを固めていたSPの一人が、事もあろうに警護すべき車両の中に発砲していた。 「いや~~~~やっぱり好きなんすね~~~~こういうのが~~~~」 その場で最も目立つ長身でありながら、誰からも視線を浴びていない赤髪のサーヴァント、ベルク・カッツェ。 怒号と悲鳴が飛び交う地獄の光景をただただ楽しむその態度は、平時のカッツェのものであった。 「あのワニ野郎wwwwケダモノだけに空っぽの中身だったけどこうなるとありがたいわ~~wwwwwwwwww」 バッターの内面。通り過ぎた災害、と自称した、既に終わってしまっているそれは、カッツェに多大な驚愕と、倍する恩恵を齎した。 白い、白い世界。抑止力も及ばない、万物の営みが終息した、真の意味での原風景。 それを、バッターの心象を通して視たカッツェの心からは、メフィストへの恋の呪縛は消え去っていた。 もし再度メフィストの魔貌を目にしても、一度受けた屈辱を経験値として今度は受け流せるだろう。 宝具の力も、数分前の非ではなく高まっている。消滅を危ぶむほど著しく傷付いた霊器も、強く躍動を始めていた。 「んでんでんでんでーーーーwwwwwwwwwwwwwwwww自分らしくで行くにゃんwwwwwwwwwwwwww」 狂騒のサーヴァントは、 新宿 に混沌を撒き散らす。 ……何者かの目論見通りに、己の意思で以て。 【歌舞伎町、戸山方面/1日目 午後1:45分】 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]実体化、肉体損傷(中)、霊器損傷(中)、魔力消費(大) [装備] [道具] 携帯電話 [所持金]貰ってない [思考・状況]真っ赤な真っ赤な血がみたぁい! 基本行動方針: 1.血を見たい、闘争を見たい、 新宿 を越えて世界を滅茶苦茶にしたい 2.ルイルイ(ルイ・サイファー)に興味 3.バッターに苦手意識 [備考] 現在 新宿 の街のあちこちでNPCの悪意を煽り、惨事を引き起こしています。 時系列順 Back 魔胎都市〈新宿〉 Next シャドームーン〈新宿〉に翔ける 投下順 Back 復習の時間 Next 一人女子会 ←Back Character name Next→ 22 未だ舞台に上がらぬ少女たち 北上 アサシン(ピティ・フレデリカ) 38 仮面忍法帖 セリュー・ユビキタス 59 The proof of the pudding is in the eating バーサーカー(バッター) 38 仮面忍法帖 番場真昼/真夜 バーサーカー(シャドウラビリス) 33 黙示録都市<新宿> 赤のアサシン 48 Cinderella Cage
https://w.atwiki.jp/himajinnomousou/pages/57.html
ゴドウィンの変、なんて呼ばれ方をしているらしい先日のロアーヌでの事件は、多分、あたしの人生を大きく変えたんだろう。 なにせ、生まれてから今までの二十年を開拓地シノンから殆ど出たことなんてなかったあたしが、あの事件から数日経った今、どうしたワケか港町ミュルスでこうして遠く離れた地へと誘う船を待っているのだから。 そして更に驚くべきことは、あたしの隣で眠たそうに欠伸をしている風変わりな男が、これから始まる未知の旅の連れだということだ。 いや、正確には違ったか。あたしは最早、この男に連れ去られたに等しい。 お節介にも、今まで当然だと思っていた自分の居場所がなくなって呆然としていたあたしを、この男は連れ去ったのだ。 「なんだ、エレン。未だにウジウジ考えてるのか。意外と女々しいな」 遠く吹き鳴らされる汽笛の音を聞きながら空をぼーっと見上げてたら、隣の男が欠伸をかみ殺しながら話しかけてきた。 男の名は、ハリード。戦人の間では有名な腕利きの傭兵らしいけど、正直知ったこっちゃない。 「・・・相変わらず煩いオヤジね。抑もあたしは、正真正銘の女よ。女々しくて何が悪いのよ」 ワザと不機嫌っぽく声色を変えながら、半眼でハリードを見る。 だけどハリードはそんな事には一切動揺なんてしないで、さっきまでのあたしと同じ様に、青く広がる空に目を向けた。 「ま、海に出たら気分も変わるさ。精々今のうちに、暫しの別れとなるロアーヌ領土を眺めておくんだな」 たいそう他人事の様にそう言うと、少し深くベンチに座り込んだハリードは目を瞑って昼寝にはいってしまう。 それをあたしはため息一つついて眺め、言われた通りに少しでも記憶に残そうと周りの風景に視線を投げかけた。 『あんたが一緒じゃ、トムの邪魔になるだけよ』 『そんなことないよ。私だって、お姉ちゃんがいなくても一人でトムの手助けが出来るわ!』 ずっと守り続けてきた最愛の妹の、これが初めての口ごたえ。 一言一句、忘れず覚えてる。 それでまさか頭に血が昇っちゃうなんて、あたしってまだまだ若いんだなって思ったわ。 何時の間にか、あの子を自分の所有物気取りしてたってワケ。これってすっごい自己嫌悪。 それで喧嘩別れして、何故かこのおっさんに連れ去られて今に至る、と。 ほんと、なんでこんなことになったのか。 あたしはこれからどうすればいいっていうのか。最愛なる妹は今頃はどうしているだろうか。 ・・・とまあ、すごく色々と考えてしまうわけよ。 とは言え妹のことは、最もあたしが信頼する友人のトムが任せてくれって言ってくれたから、実はそんなに心配はしてないのよね。 トムなら寧ろ、あの子の成長をあたし以上に巧く手助けしてやれることでしょう。 そう思ってしまうところも、自己嫌悪の一因だけど。 そんなわけで、これまであたしの中の殆ど全てを占めていた存在理由が無くなってこれからどうしようかってとこなのだけれど、そんな人生最大の悩みを女々しいの一言で片付けてくれやがった隣のおっさんは、そう言えばなんであたしなんかを連れ出したんだろうか。 なんか変なことを考えてたらいつでもぶん殴ってやるけど、多分違うって思う。 このおっさんは、多分あたしよりもっとずっと、無くしてる。 類友っていうのかな、こういうのを。そんな気がする。 何となくそれを感じてしまったからだろう。 今こうしているのは、居心地が悪くもない。 傷の舐め合いみたいで情けないけど、今はそんな行為に甘えていたい。 だから、あたしは連れ出されてしまったんだ。 あぁ、確かにあたし、ちょっと女々しいかも。 『どうした? みんな行っちまったのに、なんで残ってるんだ?』 『そんなのあたしの勝手でしょう! 一々煩いオヤジなんだから!』 生まれも育ちも性別もそうだ。 思えば何もかもが違うはずなのに、あの時のこいつは、まるで昔の俺みたいだった。 突然、無くした、って顔をしてたのさ。 それでいて顔が姫と瓜二つだなんて、そんな馬鹿みたいな話があって良いものかと思ったよ。 自慢じゃないが、俺は硬派なんだ。自分から女を旅に誘うなんて、今の今までただの一度だってした事がない。本当だ。 だが今回は事情が違う。 こいつは姫と瓜二つのくせに、よりにもよって俺と同じような顔をしていやがった。 そんなのに声を掛けずに立ち去れる奴がいるか? 少なくとも俺には無理だ。なにせ、俺は割りかし節介焼きな方だからな。自覚してるよ、そんくらいはな。 そんな優しさに対する返答がオヤジ呼ばわりなのは、納得いかないがな。 まぁそうはいっても、こうしてついて来たんだ。多分こいつも、奥底で気が付いてたんだろう。自分が、無くしちまった、って事を。 そうして今に至るなら、まぁいい。 俺がこうした事にも、こいつがついてきた事にも、いずれこれからの旅の中で答えが出てくる事だろう。 だが正直、この先に関しては戸惑いも多い。 勢い余って連れてきちまったものの、こう、なんつうのかね。年頃の女の扱いってのは、慣れちゃいない。 戦闘の素質は十分過ぎるほどにあるし、気質もいい。性格も快活で、そういう意味では扱いに困る奴じゃない。 だが、女だ。 暫く旅をすれば色々とあるだろう。と言うか既に、対応をどうしようか懸念する事がいくつか有るんだ。 例えばそう、あれだ。月一のアレとか。 俺は察してやるべきなのか、敢えて無視するべきなのか。 街でとる宿は風呂付きのとこにしてやった方がいいのか。 あ、野宿も含む旅路の備品には、体臭を気にするなら香水とか持たせた方がいいのか? 一先ずはこうして昼寝を装っている間に、それらの事項に対して基本指針を立てなければならない。 うぅむ、前途多難な気がしてきた。 あぁ、確かに俺、オヤジかもしれねぇな。 先日の嵐が嘘の様に、穏やかで透き通る様な青い空の下。 アイスティーを買ってきて二人で並んで飲みながら、間もなく荷の積み込みが終わる船舶を眺めていた。 「ねぇハリード」 「・・・なんだ?」 此方に視線は向けずに、野太い声だけが返ってくる。 寧ろその方が話しやすいので、そのまま続けた。 「ありがとう」 ポツリとそう言うと、ハリードはぴくりとも表情を変えないまま、アイスティーを一口啜った。 「まだ、何も変わっちゃいない。今、礼を言われる筋合いは・・・」 「変わったじゃない」 言葉を途中で遮ってやると、あたしは大きく一歩踏み出してハリードに向き直った。 「二人だよ。ついさっきまで一人だったのに、今は誰かと一緒にいる。これって、すごい変わり様だと思わない?」 アイスティーを口に添えたまま二度三度目を瞬かせてあたしを見たハリードは、ゆっくりとカップを下ろすと、ニヤリと口の端を吊り上げて笑った。 「そうだな。確かにそうだ」 「でしょ?」 満面の笑みと共に、あたしはそれに応える。 最早、グダグダと悩んでいるのが馬鹿らしくなっていた。 考えたって今はどうしようも無いし。 あたしはあたしの何かを、これから見つけなくちゃならない。 そう、何かよくわからないけれどこれはきっと、チャンス。それくらいの気持ちでいよう。 しかも、一人だと不安もあるだろうけれどワザワザそれに付き合ってくれる道連れがいるなんて、有難いことじゃない。 よし、決めた。世界、どんとこい。 「わ、ハリード見て見て、イルカ!」 「・・・そんな珍しいもんか?」 船のヘリから海面を見下ろして、大はしゃぎするエレン。 こいつはさっきから、ずっとこんな調子だ。 「そりゃ珍しいわよ! シノンの田舎っぷりを舐めちゃいけないわ!」 「いや、今一番シノンを舐めたのはお前だぞ・・・」 なんでかよく分からないが、兎に角、本人の中では吹っ切れたようだ。 このテンションに付き合うのは骨が折れそうだが、まぁたまには騒がしい旅も悪くない。 はしゃぐエレンを尻目に、俺はいたって平和な青空に視線を投げかけた。 今回のロアーヌでの一件から、どうも何かが動き出したような気がしてならない。急激にではないが、しかし緩やかでもない速度で。 そして確実に、その流れによってこの世界の何かも変化していく。そんな予感がする。 つまりはあのデカイ事件が、さらに大きな何かの始まりの様に思えてならないのだ。 単なる勘だが、意外とこういう勘ってのは当たるもんだ。 「ねぇハリード!」 物思いに耽っていると、また名を呼ばれた。こう自分の名を連呼されるのも、随分と久しい。 「イルカって食べれるのかな?」 「・・・意外といけるかもしれんな」 「ほんと!?」 なにやら周囲をキョロキョロと見渡しはじめたエレンを眺めていたら、急に小さな笑いがこみ上げてきた。 久しく忘れていたような、そんな笑い。そんな気がする。 なにが起こるかも分からないのなら、どんと構えていればいい。 今までずっとそうしてきたし、これからもそうだ。 それが愉快なものならば良かろう。 それが不愉快なものなら・・・こいつと一緒に、ぶっ潰すのも悪くない。 さて、流石にイルカの一本釣りを始めそうな勢いの相方をそのままにしておくのは拙いだろう。 ため息と共に自然と自分の口の端が吊り上がるのを自覚しながら、俺は今まさに釣竿を振りかぶったエレンに向かって歩き出した。 番外編一覧に戻る TOPに戻る
https://w.atwiki.jp/siritori_review/pages/127.html
金融業者と そのペットのインコが、何者かによって殺害された。奇しくも第一発見者となってしまった サラリーマン・鳥越九郎は、自らの置かれた状況と 生来の臆病さから、「自分が疑われるのではないか」という不安を肥大させ、やがて「犯人は自分である」と思い込むようになる。 一方、絶倫の私立探偵・中堂鈴之助と、性欲旺盛な助手・色田姫子は、別の観点から その事件の真相に迫ろうとするのだが…。 という物語なのですが、だからといって『自らを犯人だと思い込んだ男と、社会の闇に立ち向かう探偵達が織りなす、サイコホラー的サスペンス』では、全くありません。 小心者で思いこみが激しい鳥越に振り回される、スナックの客たち――フェロモン振りまき探偵&助手、曰くありげなヤクザの親分、薄幸そうな人妻、自らの性に悩む青年、老いらくの動物学者、…etc.を描いた、ドタバタコメディです。 中盤、鳥越が「人質」たちと共に スナックに立て篭もったかと思うと、その後はずーっと 彼らはそこでグダグダ過ごします。あとは、終盤になってやっと 探偵たちがちょっと推理をするくらい。 特に終盤、客観的には「えー、それでいいのー?」なんですが、なんかみんな概ね満足そうだからいいのかもしれない。 基本的に、「さら~っとニヤニヤ読んで、それでお終い」系です。それぞれの人物の背景や思考は 意外に深くて(特に奥さん達が酷くてよい)、結構楽しかったです。 ただ、下ネタは多いし、トータルでは 積極的にオススメできない…かな。
https://w.atwiki.jp/shinjukuop18/pages/22.html
1章 2章 3章 4章 1章 神宮寺探偵事務所 Speak 藤木美佳×2 Look キッチン Speak 藤木美佳×2 依頼について 父親について 事件について 父親について 事件につおて 犯人について 依頼内容の確認 調査について Speak 藤木美佳 Look 棚 Move ハウス三崎 ハウス三崎 前 Look アパート Push 102号室 Speak 隣人 事件当時について 隆司について 母親について 被害者について 「不幸」について 目撃前の事について Speak 熊野×3 樋口宅 中 Speak 熊野 事件の流れ 凶器について 現場について 湯飲みについて Search ゴミ箱 テーブル フック 窓 タンス×2 写真 Speak 熊野 約束をして来た ゴミ箱のメモ Speak 熊野 響子について 動機について 放火 Speak 熊野 放火について ハウス三崎 前 Item 携帯電話 写真 Move 他の場所へ 藤木宅 藤木宅 前 Push Speak 男 吉住 藤木美佳 吉住について 1人暮らしの事 藤木美佳 藤木宅 居間 Speak 藤木美佳 隆司達との関係 答える Speak 藤木美佳 隆司達との関係 写真について 関係の破綻 犯人について ノイズについて Look 室内 Speak 藤木美佳 由紀 Item 名刺 使う Speak 由紀 藤木美佳 由紀について ノイズについて Look モジュラージャック 藤木宅 前 Speak 藤木美佳×2 Move 中に入る 藤木宅 居間 Search コンセント タップ コードレス子機 Move 書斎 藤木家 書斎 Search 照明 傘の上 キャビネット 引き出し 手帳 藤木宅 前 Speak 藤木美佳 知人 1ヶ月前 藤木を調べるため Look 2階の窓 2章 藤木宅 2階 Speak 樋口隆司 藤木美佳 樋口隆司 事件当日の事 インターホンの事 母親について 盗聴について 藤木の来訪について 死体について 現場について 犯人について Move 外に出る 神宮寺探偵事務所 Speak 洋子×2 母親をかばう (Speak) 洋子 藤木宅の書斎 Move 藤木宅 藤木宅 前 Speak 藤木美佳 Move 中に入る 藤木宅 居間 Speak 藤木美佳 仕掛けた人物の事 手帳について 藤木について 隆司について Move 書斎 藤木宅 書斎 Look キャビネット Item 携帯電話 Move リビング 藤木宅 居間 Speak 加納由紀 藤木について 来訪について Speak 藤木美佳 Move 隆司の部屋 藤木宅 2階 Speak 樋口隆司 エイセイについて 1年前の事について 放火について 母親の事 Speak 藤木美佳 Move リビング 藤木宅 居間 Move 外に出る 藤木宅 前 Move 他の場所へ 喫茶店跡地 喫茶店跡地 Speak 藤木美佳×2 Look 辺り Speak 通行人 土地について 響子達について 放火 Speak 藤木美佳 追い出し Speak 通行人 地上げ行為について 不動産会社について×2 Look 看板 Move 立共ハウジング 立共ハウジング Speak 受付嬢 鈴森×2 藤木美佳 鈴森の事 他の社内の人の事 Speak 受付嬢 受付嬢について 会社の事について エイセイについて Move 応接室 立共ハウジング 応接室 Item 名刺 Speak 大山 喫茶店跡地の事 響子達について 放火について×2 Move 受付 立共ハウジング Move Speak 吉住 藤木美佳 Move 藤木宅 前 Speak 藤木美佳 Move 中に入る 藤木宅 居間 Move 隆司の部屋 藤木宅 2階 Look 室内 Move リビング 藤木宅 居間 Speak 藤木美佳 Move 書斎 藤木宅 書斎 Look 机 Speak 樋口隆司 出ていく理由 地上げ 立共ハウジング Speak 樋口隆司 地上げについて 藤木 Speak 樋口隆司 藤木について 引越しについて 藤木殺害について 響子について 3章 藤木宅 書斎 Speak 藤木美佳 樋口隆司 買い取り契約の事 Item パンフレット Speak 樋口隆司 大山について 目撃者 Speak 樋口隆司 大山のいた場所 大山と会った時間 運転手について 響子について 拉致 犯人に仕立てる Speak 樋口隆司 神宮寺探偵事務所 Think Item 携帯電話 Speak 熊野 ワゴンについて 不動産会社の事×2 Speak 洋子 永勢について 傷のある男の事 Move 藤木宅 藤木宅 前 Move 中に入る 藤木宅 居間 Speak 藤木美佳 大山との関係 大山について 盗聴について 藤木美佳 Look 室内 Speak 吉住×2 Look 吉住 Speak 吉住 Speak 藤木美佳×2 Move 外に出る 藤木宅 前 Move 他の場所 永勢コンサルタント 永勢コンサルタント Look ビル 辺り Speak ビルの関係者 Look ビル 男 眉 Look 男 スナック Look 店 男達×2 Speak 女 1ヶ月前の事 ネックレスについて Look 店 樋口響子 Speak 女 ネックレスについて 男の仕事について Move 藤木宅 藤木宅 前 Look 加納由紀 Speak 加納由紀 美佳について 吉住について 考えている事 Move 中に入る 藤木宅 居間 Speak 藤木美佳 藤木美佳 Move 隆司の部屋 藤木宅 2階 Speak 樋口隆司 Item ネックレス Speak 樋口隆司 響子が拉致された 永勢コンサルタント 藤木を殺害した Speak 藤木美佳 Move リビング 藤木宅 居間 Move 外に出る 藤木宅 前 Move 他の場所へ 立共ハウジング 立共ハウジング Speak 受付嬢 事件当日の事 大山について 放火について 鈴森 Move 応接室 立共ハウジング 応接室 Speak 鈴森 書類について 永勢コンサルタントについて 書類について×2 書類の内容 鈴森 Move 藤木宅 前 Speak 樋口隆司 Move 中に入る 藤木宅 居間 Speak 樋口隆司 藤木美佳 Move 書斎 藤木宅 書斎 Search 本棚 山 Search 本棚 右中央 写真集 Search 本棚 写真集 棚に入れる 左中央 左下 右中央 右下 奥行 棚の裏 Search 本棚 金庫 机 引き出し 金庫 Item 金庫の鍵 Search金庫 回す メモ 右 6 右 左 Look 樋口隆司 Speak 樋口隆司×2 藤木美佳 Look 箱 指輪 Speak 藤木美佳×2 4章 藤木宅 2階 Speak 藤木美佳 Search キャビネット 電話機 ゴミ箱 本 Think 電話を使った 吉住 内線を使った Move 立共ハウジング 立共ハウジング Speak 受付 Speak 吉住 隆司達の居場所 発信履歴 Move Look 吉住 Speak 鈴森 Speak 鈴森 Look 吉住 Speak 吉住 立共ハウジング 応接室 Speak 鈴森 吉住について 大山について 書類について Item 携帯電話 永勢コンサルタント Speak 熊野 Move 中に入る ビルの倉庫 Look 室内 倒れている人物 Speak 樋口響子 隆司について 藤木について 事件当日について 熊野 Look 落ちている携帯電話 メールをする エンディング トロフィー【依頼完了:託された指輪】獲得
https://w.atwiki.jp/animalrowa/pages/238.html
赦されざる者 ◆TPKO6O3QOM 墓場ってなあ、嫌なもんだ。別に、ゾンビが這い出てくるとか、ペット・セメタリーみたいなことが起きるとか、そういうことを言ってるんじゃねえ。んなことを勝手に想像して勝手に怖がる能天気は人間だけで十分だ。 じゃあ、何が嫌なのかっていやあ、しみったれてるからさ。遺族たちの、亡者たちへの弔いと称した自己憐憫が満ち溢れて居やがる。その陰湿な情念が毛皮に纏わりついてくるようで、非常に不愉快だ。カビつきそうでな。 そんな中を進むなら、血臭の中で深呼吸した方がマシってんもんさ。 「――で、しないの? 深呼吸」 「すると思ってんのか? おまえはバカか? バカなのか? もしくはアホか?」 くだらないことを口にしたピカチュウに対して鼻を鳴らす。奴の身体に小さな稲妻が走ったのが見えたが、溜息を一つして結局何もしてこなかった。自分の質問の馬鹿さ加減に気付いたらしい。 おれはサッカー場に向かって、のんびり空の旅を満喫中だった。地上6フィートぐらいだが、浮いているんだから間違っていないはずだ。 保健所を出たおれ達は墓場に通りかかっていた。風に乗って血の臭いが流れてきている。然程遠くはないだろう。風に混じる濃厚な血の香は、その主が生きていないであろうことを知らせている。 墓地の裏手には発電所の陰が見えている。もっとも、禁止区域に指定されてしまったんだから実物大写真パネルみたいなものだが。 道中、ピカチュウが、参加者は異世界から集められただの、首輪が取れたら言葉が通じなくなるだの、色々話してくれた。 まじめに聞くのが恥ずかしくなる、ゴシップ紙にも載らないような戯言だ。とはいえ、状況を考えると、一笑に片づけるのは多少憚られる。 オカリナとかいうカラスが人間語話していたしな。しかも、人間の姿にも変身できるとか。よくもまあ、あんなみずぼらしい生き物に化ける気になるもんだ。 電気ネズミの方は、まあ、いそうだけどな。魚が発電するんだし。 ワニ野郎やイヌ女も、異世界の――それこそ魔界の住人かなんかだと言われりゃ、納得できないことはない。常識で考えりゃ、あんなのアマゾンや中国の奥地にもいねえわな。 「この臭いって北の方から流れてきてるよね? もしかしたら墓地の中かな?」 「かもな――って、何をする気だ!?」 機首を北に向け始めたピカチュウにおれは叫んだ。いや、大体分かる。大方、怪我した奴を助けに行くとか、保健所に来るらしいピカチュウの仲間かどうか確認したいとか、そんなところだろう。 「血の臭いがあるってことは怪我した子がいるってことでしょ。なら、助けに行かなきゃ。もしかしたら、ニャースたちなのかもしれないし」 「ドンピシャか! ちったぁ外せよこの野郎!」 叫んだ拍子に全身に痛みが走った。本調子には程遠い。興奮が落ち着いたからか、疲れが一気に表面化したようだ。 そういや、傷の手当てをしてくれたのはピカチュウじゃなくてカラスらしい。一応、女だし、悪い気はしねえ。 「あのなあ、血の臭いがあるってことは、そこでトラブルがあったってことだ。すこぶるつきのな。いんや、まだ進行形かもしれねえ。わざわざ出向いてどうすんだ」 「だからこそ行くんでしょ? まだ助かるもしれない。見捨てるなんて、ぼくにはできないよ!」 「捨てろ! ポリシーごとコンクリ詰めにして!」 そう吐き捨てる。てめえ一匹ならともかく、おれという同伴者がいることを忘れているんじゃねえのか? おれはマクレーン刑事にゃなりたくねえ。舌打ちを抑え、おれは続ける。 「てめえのお仲間に関しても、だ。こんな状況だ。そりゃ誰か死んでるだろうよ。その痕跡をいちいち関連付けてたら身体がもたねえ。死ぬときゃ死ぬんだ。ホテル出て、もう死んでてもおかしくはない」 「それなら尚更――!」 「おまえ、ほんっとバカだろ。脳味噌、小麦粉と同じ比重だろ。分からねえんだから、信じることしか出来ねえんだよ。おまえは奴を信じて、そして奴の信用に応えてやる。そうして連携していくしかない」 おれは前足の上に顎を乗せ、ピカチュウを見上げた。そして、ニヤリと口吻を釣り上げる。 「そういうのを信頼って言うんじゃねえのか?」 「きみ、ただ単に厄介事が嫌なだけだよね?」 「ああ」 たりめえだろうが。他に何があるよ。保身以外でこんな恥ずかしい台詞、誰が言うか。 半眼のピカチュウから眼をそらし、発進を指示する。喰ってかかると思いきや、ピカチュウは大きく嘆息し、了承しやがった。 「まあ……きみの言うことにも一理ある。認めなくないけどさ。じゃあ、大きく迂回して行くよ。……だけど、きみのスタンドって技は強そうなのに、なんでそれを使って人助けしないのさ?」 「やりたくねえからだ。単純明快だろ?」 「……感動するほどにね」 ピカチュウは呻きつつも、空飛ぶサーフボードはゆっくりと機首を南に向けて動き始めた。 蒼穹を雲がゆっくりと流れて行く。風と戯れながら、それらは嬉しそうに姿かたちを変化させては千切れて飛ぶ。 風は上空だけでなく、大地の表面も時折駆け抜けていく。風が吹くたびに濡れた鼻をひくつかせながら、チョッパーはただぼぉっと大空を見上げていた。 回りはドーム状で、何万という座席がチョッパーを見下ろす様に並んでいた。物言わぬ座席は、さながら無感情な傍聴人のように見えてくる。そうなると、反響する風音は無慈悲な判決の声か。 チョッパーが寝っ転がっているのはサッカーグラウンドの真ん中だ。一面に広がる人工芝は太陽の熱を受け、少し熱い。しかし、チョッパーにそれを気にする様子はない。 黒く大きな瞳には青空が映り込んではいるものの、何も見てはいなかった。ただゆっくりと上下する胸部が、生きてはいることを知らせている。 あれからがむしゃらに走り続け、気がつけばサッカー場の前にいたのだ。 ひとまず、何を考えるでもなく探索し、医務室で薬品や治療用具を調達した。医者の本能のようなものだろうか。それでどうしたいという目的があったわけでもない。 何でも治せる医者になると、己に刻んだ一文が身体を動かしたのか。 医務室にあったのは、鎮痛剤や担架、消毒液といった応急用のものだけであったが、それでもないよりは他者の命を繋ぎ止められる確率は上がる。 しかし、それを持って誰かを助けに向かうまでには至らなかった。 丁度入れ終わったとき、キュウビの放送が始まったのだ。当然ながら、キュウビの読み上げた名前に聞き覚えのあるものはない。 ただ、その中に自分が海に落としてしまった悪魔の実の能力者の名が入っていることは確かだ。 何でも治せる医者。それになる資格か、果たして人殺しの己にあるのか。その疑念が自我を呼び戻し、彼の歩みをも止めた。 誰かを救うどころか、故意ではないとはいえ悪魔の実の能力者を海に突き落として殺してしまった。 傷ついた人を助けることができる医者だというのにだ。 チョッパーの顔が大きくゆがみ、目に瞑い炎が燈る。 どうして走り続けたのだろう。なぜ、助けを呼ばなかったのだろう。助けてと叫び続けていたら、誰か――悪魔の実を食していない誰かが来てくれたのかもしれないのに。 涙が目じりを伝い、毛の上を滑って行った。 助けを呼んだところで、海深く沈んだ生き物を引き上げることなどできない。どっちにしろ間に合わない。そう、冷静な声が告げる。 ならば、隠したかったのか。黙っていれば、殺したことは誰にも分からない。誰も知らなければ、自分の罪はなかったことになるとでも思っていたのか。 風が、誰かがこのサッカー場に来たことを教えてくれた。 彼は跳び起きると、物陰に隠れて様子を窺う。その自分の行動が、とても悲しかった。 やってきたのは小さな犬と黄色いネズミのような生物の二人組だ。彼らの交わす言葉が聞こえてくる。 「広い場所だね、ここ」 「……別に付いてこなくても良いだろ。さっさとホテルに行けよ」 「誰か潜んでいたらどうするのさ」 心臓が一つ大きく跳ね上がる。 「全部チェックするまで行かねえつもりか、おまえは……」 ざりと、人工芝を踏みつける音がした。グラウンドに入ってきたのだ。 息を潜め、この場から去ってくれることをただひたすら願う。 「……ねえ、あれ……さ」 「気にするな。無視しろ。頭が可哀そうなやつなんだよ。関わらない限り、バカは直接的には無害だから」 「いやでもさ、あれ待ってるよね。絶対待ってるよね。そうでなきゃ、対応に困るよ?」 二匹の会話からは、彼らが殺し合いに乗っているかどうかは読み取れない。 ただ、彼らは何について話しているんだろうか。 正面通路に流れ込む風に撫でられた尻を震わし、チョッパーは唾液を呑み込んだ。 「あの、さ……そこの君、隠れるなら頭とお尻の向き逆じゃないかな?」 「関わるのかよ。そっとしとけよ。ただでさえバカなのに更にバカになるつもりか? どんだけ自虐趣味なんだよ、てめえ」 どうやら、向こうには何故かチョッパーが隠れているのが丸わかりらしい。素直に顔を出す。 「ど、どうして分かったんだ?」 訊くと、ネズミは困ったような笑みではぐらかし、犬の方は目を合わそうとしてくれない。犬は眼をそらしたまま、呼びかけてきた。 「おい、豆ダヌキ」 「タヌキじゃねえよ! トナカイだよ! 角あるだろ、角! 自己主張しまくってるだろ!?」 「どうでもいいってんだ、タヌキ鹿。マンマルってペンギンと、ツノジローっつーキツネ知らねえか?」 面倒くさそうに犬が訊いてくる。チョッパーがこれまで出会ったのはただ一人だけだ。そして、その一人は――。 「いや、知らない……よ」 「そうかよ。じゃ、用はねえ」 不躾にそう吐き捨てると、犬は鼻を鳴らして適当なところに蹲った。 会話が終わるのを待って、今度はネズミがちょこちょことした足取りで近づいてきた。 「ぼくはピカチュウって言うんだ。きみは?」 「トニートニー・チョッパー……」 「……どうでもいいが、おまえら、声似てんのな」 「いや、似てないでしょ。全然。もう、静かに寝てなよ」 犬に対し、ピカチュウと名乗ったネズミは手で払う仕草をした。向き直ったピカチュウのくりくりとした瞳に、チョッパーの不安な表情が映り込んでいる。ピカチュウはチョッパーを安心させるように尻尾を振って見せた。 「きみは、ここに用があるの? ぼくはこれからD-4のホテルに行くんだ。そこで、キュウビに対抗する仲間を集めててさ。よかったら、一緒に行かない?」 「いや、用事は何もないけど……こいつは行かないのか?」 少し離れた場所で横になっている犬に視線を送り、訊く。ピカチュウは苦笑のようなものを浮かべた。 「行かないって。まあ、彼には捜し人がいるから。……会ったばかりだし、信用できないかな?」 小首をかしげるピカチュウに、チョッパーはぶんぶんと首を振った。 「そういうんじゃないんだ。誘ってもらえたのは凄くうれしいよ。まともに会話できたの、ここにきて初めてだったし。でも……」 ピカチュウは良いネズミだと、チョッパーは思う。そのまっすぐな瞳の光は穢れのない絹布のようなものだ。だからこそ、人殺しは一緒に居てはいけない。 もし、あの獣耳の男の知り合いがピカチュウと仲間になろうとしたとき、自分が障害になる。相手だって、仲間を殺した相手と一緒に居たくはないはずだ。 入ったばかりの頃のロビンへ、自分がどんな対応をしていたか――。 「嫌なら、無理強いはしないよ。こんな状況だし、行動一つに命がけだもんね。だけど、キュウビの企みを打破できる糸口を掴みかけてるんだ。出来ることなら、力を貸してほしい」 ピカチュウの言葉は、チョッパーのことを知った上でのものではない。チョッパー自身の力を求めている言葉ではない。それでも、求められるのは単純に嬉しかった。もしかしたら、ルフィ海賊団の一員になれたときと同じぐらいに。 「……おれ、やっぱり行けない。だって、お、おれ……ひ、ひとを……」 口に出すのが憚られた。言葉にしてしまえば、それは再確認することになる。だが、ピカチュウに納得してもらうには言うしかない。 「……ひとを、死なせたんだ。いや、違う。ころしたんだ。そんな気はなかったんだけど……殺しちゃったんだよぉ」 血を吐くように、チョッパーは告げた。大粒の涙が頬を滑り落ち、また、鼻水が口の中に入って、しょっぱい味が口内を満たした。それをぬぐい、続ける。 「だから、ピカチュウとは、一緒に、いげない。おで、じゃまになるがら……ひどごろしがいたら、だれも、じんようしてぐれないがら……ながまになんて、なってぐれないがら……」 涙の帳の向こうで、ピカチュウの驚いた顔が見える。それを避けるように、チョッパーは顔を伏せた。 ――ばけもの。突如聞こえてきた、あの声が蘇る。 「あの人は、あのじとの友達も、絶対おでをゆるじてぐれないよ……ぜったい、仲間になっでぐれないよ。おで、医者なのに……万能薬になって傷ついた人をたずけるって決めだのに……ドグダーに誓っだのに!」 堰を切ったように言葉が奔流のように流れ出る。涙と涎と鼻水が、足元に水たまりを作っていた。胸に溜めていた大きな澱みが、一気に吐き出されていく。 と、ぽんと頭に手が乗せられた。 「故意じゃなかったんでしょ? 殺す気なんて、なかったんでしょ? それなら、ぼくには何の問題はないよ」 帽子越しに、ピカチュウの手の暖かさが伝わってくる。 「ビカチュウはよぐても、ほがのみんなが――」 「言葉を尽くそうよ。一生懸命さ。ぼくも協力する。チョッパーが、人殺しを好き好んでするようなやつじゃないって分かってくれるよ。その人の友達だって、さ」 ピカチュウがチョッパーの顔を覗き込んだ。そして、柔らかい笑みを浮かべる。 「そして、キュウビの企みをぶち壊してやろうよ。一人でも多く助けようよ。そうすれば、その人だってきっと許してくれる」 「つ、償えるのがな。あの人の命を……。おで、一緒に行っでいいのがな……?」 チョッパーは顔を上げた。ピカチュウが力強く頷く。 「おで、ピカチュウと――」 「おめえらよぉ、赦されること前提で喋ってんじゃねえよ」 不機嫌な声音が、チョッパーの言葉を両断した。 犬が険悪な表情で、チョッパーとピカチュウを睨めた。 「耳が腐るぜ、まったく。大体、てめえ、んなこた、黙ってりゃすむ話じゃねえか。なんで話したよ」 貫かれそうな眼光がチョッパーに向けられる。 「それはチョッパーの責任感が強いから……」 「責任感? けっ。要は同情がほしいんだろ。ゆるじてくれないよ~……か。そう口にすりゃ、そこのピカチュウみたいな脳内に満開のお花畑があるバカどもがちやほやしてくれるからな。欺瞞もいいとこだ」 犬は冷笑を浮かべたが、剣呑な眼差しは変わらない。断罪するように、チョッパーを貫いている。 「贖罪って言葉ほど、ゲロと同じ匂いのするもんはねえ。辛くて逃げ出したいが、でも無責任にゃ思われたくはねえもんだから、一先ず死人に託けて、てめえを飾りやがる。人間がする常套手段だ。 そんで頃合いになったら、もう十分だと放りだすのさ。死人に口なしなのをいいことによ」 「お、おれはそんなんじゃない!」 チョッパーの言葉に、へえと犬は鼻を鳴らした。チョッパーは猛烈な吐き気のようなものを覚えていた。出来れば耳をふさぎたかった。もう黙ってくれと、犬に念じる。 されど、犬は畳みかけるように続けた。 「はっきり言ってやる。てめえは絶対に赦されることはねえ。仮にてめえが何万何億の命を助けたとしても、だ」 「チョッパーのは事故だったんだよ!?」 「故意だろうと事故だろうと、殺された当人にとってどれ程の違いがあるってんだ? それに、霊ってもんがいるとして、他人の命を助けたからって、どうして赦せるんだよ? てめえは死んだままなんだぜ? 遺族にしたって、殺された当人が帰ってくるわけじゃねえ」 今にも吐瀉物が喉を競り上がってきそうだった。自分の心を覆う保護膜が切り裂かれていくのを感じる。そこに仕舞われていた汚泥が切れ目から毀れ出していく。一番眼を背けたいものが――。 ふと、ピカチュウがチョッパーの手を掴んだ。 「……行こう。チョッパー。イギー、きみは意地悪だ。きみの言葉は徒に傷つけるだけじゃないか」 手を引かれるまま、引きずられるように足を動かす。 「逃げんのか。まあ、いいけどよ。だけどな、そいつが殺したって事実から逃げられるわけじゃねえんだぜ」 「………………」 犬の言葉に応えないピカチュウの背中には、微小な稲妻が幾つも走っていた。それを覇気のない瞳で、チョッパーは見つめていた。 人を殺し、その事実を我が身可愛さに逃げようとしていた。その醜悪な塊が胸に重く圧し掛かっている。 グラウンドを抜けた後も、犬の言葉は深い噛み傷をチョッパーに残し続けていた。 【E-4 /サッカー場付近/1日目/午前】 【ピカチュウ@ポケットモンスター】 【状態】:健康、苛立ち 【装備】:いかずちプレート@ポケットモンスター 【道具】:支給品一式 、地球動物兵士化銃@ケロロ軍曹、ライディングボード@リリカルなのは 【思考】 基本:キュウビを倒して脱出する 0:ぴぃぃぃかぁぁぁじゅぅぅぅううう…… 1:ホテルに行く 2:自分の知り合いとオーボウを探す。 3:仲間や良い動物が悪い動物に襲われる前に助ける ※DP編からの参戦です。 ※『ガンプラ』が武器だということに関しては半信半疑です ※ポケモン以外の生き物について把握しました。 ※『世界の民話』の内四編を読みました。 【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】 【状態】罪悪感、激しい動揺、自己嫌悪、虚脱感 【装備】なし 【所持品】支給品一式 、応急処置用の医療品、担架 【思考】 基本:殺し合いからの脱出、可能ならキュウビの撃破 0:……………… 1:ピカチュウとホテルに行く ※参戦時期は少なくともフランキーを仲間にしてからです。 ※ザフィーラ(名前は知らない)を動物系悪魔の実の能力者と誤解しています。また、自分のせいで海に落ちてしまったと思っています。 ※イッスンには気づいていません。剣(グランドリオン)が喋ると思っています。 【E-4 /サッカー場/1日目/午前】 【イギー@ジョジョの奇妙な冒険】 【状態】:全身打撲(小・治療済)、疲労(中)、精神的疲労(中) 【装備】:腕時計 【道具】:支給品一式(食糧:ドライフード)、犬笛 【思考】 基本:面倒なので殺し合いには乗らない。 1:サッカー場でしばらく休んでいく。 2:マンマルとツネジローを探し、タヌタローのことを伝える。 【備考】 ※イギーの参戦時期はペット・ショップとの戦闘で、下水道に逃げ込む前後です。 ※スタンドの制限に気づきました。 ※タヌ太郎に少し心を許しました。 ※コロマル、アライグマの父と情報交換をしました。 ※ピカチュウたちと情報交換しました。 ※オーボウ、グレッグル、ミュウツーへの伝言を預かりました。 時系列順で読む Back Dances with the Goddess Next 熊嵐 投下順で読む Back Dances with the Goddess Next 雪上断温 059 距離を超えた遭遇 ピカチュウ 094:荒れ狂う稲光の―― 059 距離を超えた遭遇 イギー 81 stray 048 Beyond the Sword トニートニー・チョッパー 094:荒れ狂う稲光の――