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★★★★★お知らせ ちびちゃと平和軍ウィキへようこそ! どうも、ウィキ管理人のERISUです 此処ちびちゃと平和軍はちびちゃとで活動していまーす そもそもちびちゃと平和軍とは ちびちゃと平和軍とはちびちゃとで平和を願うちびちゃと住民の方です 平和軍に入りたい方 一樹さんに聞いてくださいね えぇーっと まあ、僕はちびちゃと平和軍のウィキの管理人だけなので 平和軍についてはまだそんなに知りません☆ ってことで宜しくお願いします 見てきた人はコメントどうぞ☆ はぁいーw 平和軍一樹です。 -- itsuki (2011-03-19 16 56 42) ちゃーっす。リーダーでーす。蒼兎でーす。入りたかったら話しかけてくださいねー。 -- 平和軍 蒼兎 (2011-03-19 18 05 17) おおー蒼兎~☆ -- itsuki (2011-03-19 18 06 15) 平和軍のリーダーは蒼兎で―――――――――っす!!! -- itsuki (2011-03-19 18 20 19) 入りました -- 小川君 (2011-03-19 18 21 14) 小川君ようこそ平和軍へ ←誰やねん -- itsuki (2011-03-19 18 21 44) よろしく -- 小川君 (2011-03-19 18 22 50) 平和一番 -- 小川君 (2011-03-19 18 23 16) 小川君。一樹ですよー 平和一番!!!! -- itsuki (2011-03-19 18 24 47) 平和軍だけど、そこまで平和じゃねえなw喧嘩師ばっかだしw -- 蒼兎 (2011-03-19 18 25 55) 実際今もとめてねーなーッw -- itsuki (2011-03-19 18 27 04) もとめてない??? -- 小川君 (2011-03-19 18 27 37) どういう意味? -- 小川君 (2011-03-19 18 27 50) も、止めてないなーってことwスマソ! -- itsuki (2011-03-19 18 29 20) そういう意味か!わかったw -- 小川君 (2011-03-19 18 29 45) 小川君、移動しない?ごめんこんなとこで -- itsuki (2011-03-19 18 30 46) いいよw -- 小川君 (2011-03-19 18 31 30) はっぱへGO-w -- itsuki (2011-03-19 18 32 08) エラーしまくってるな、ってかお前らだけでしゃべりすぎだろ -- 蒼兎 (2011-03-19 18 33 31) スマソ 蒼兎冗談きつい! -- itsuki (2011-03-19 18 34 41) ホント冗談きついw -- 小川君 (2011-03-19 18 35 50) ERISU~載せてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー -- 小川君 (2011-03-19 18 48 26) 一樹>了解!蒼兎ねー -- ERISU☆ (2011-03-20 08 56 24) 小川>ん、いいけどスクリーンショット撮らないとw -- エリスううぅぅぅ@三沢 (2011-03-20 08 57 08) 今木ー2にいるよ~ -- 小川君 (2011-03-20 11 48 08) 今日は -- 小川君 (2011-03-20 11 52 55) 夜にどこかにいると思う -- 小川君 (2011-03-20 11 53 11) 今もいるけどw -- 小川君 (2011-03-20 11 53 54) イエ―イ小川君! -- itsuki (2011-03-20 12 04 12) OK!できれば今撮りに行きマース -- ERISU@三沢 (2011-03-20 12 10 42) でけwww -- itsuki (2011-03-20 12 31 35) ERISU,おれ今いるからとってよ、俺もとってよw -- 蒼兎 (2011-03-20 19 22 45) 平和軍の出没地(集合場所)は、葉っぱで決定!! -- 蒼兎 (2011-03-20 19 55 10) OK -- itsuki (2011-03-20 20 11 21) きました -- 小川君 (2011-03-20 20 15 47) イエ―――――――――――――――――――――――イ -- itsuki (2011-03-20 20 16 10) 平和軍とか喧嘩を好まないんでしょwwエロス喧嘩師なのにこんなのやっちゃっていいのかよ。まぁ、こんな軍すぐつぶれるけどな。 -- るんと (2011-03-20 21 24 58) るんと>いや、俺はこのウィキの管理人だけあって平和軍の活動はちょっと・・・うん^^; -- ERISU (2011-03-21 12 59 08) 明日の7時無理だよwwwww m(__)m -- itsuki (2011-03-21 20 52 23) {平和隊ってなんだ?どうせ、こんな軍なんてそこ等の喧嘩師に潰される程度の勢力なんじゃないのか?所詮其の程度っつーことだよ粕。あのな、御前らみたいに平凡な喧嘩師より劣化してる奴らが軍結成して、どうなるんだよ?教えてやるけど、御前らが結成して蔓延っても勢力的には徒爾ね。精々必死こいて跋扈してれば?www -- マヤ (2011-03-23 06 52 00) 一樹のリア友だけど平和軍、入りたいなぁ・・・ -- ♪亜美♪ (2011-03-23 18 31 08) いきなり、すんませんw -- ♪亜美♪ (2011-03-23 18 31 44) 平和軍は確かに勢力がない!だからつぶれる!っていうか活動してない! -- ERISU (2011-05-02 17 12 07) 今頃 軍 なんて・・・・w -- 蛇丹生性格 (2012-08-07 11 09 05) いもいもいもいも -- baka (2012-10-04 16 37 38) 蒼兎にもう一度あいたいです -- 一樹 (2015-03-27 02 05 33) 名前 コメント
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『逃げこんできたゆっくり親子』 28KB 虐待 制裁 観察 誤解 飾り お家宣言 家族崩壊 同族殺し 番い 赤ゆ 現代 虐待人間 比較的普通な虐待をと思って書きました 初投稿です。 逃げこんできたゆっくり親子 薄くなっていたはずの意識が、引き戻されてくる。 目が冴えてきてしまっている。 今の時間は深夜。 今日はいまいち寝つきが悪く、それでも今やっと眠れそうになったところだった。 だがそこに何やら不審な音が聞こえ、驚きとわずかな恐怖で目が覚めてしまったのだ。 窓を叩くような音。 隣の居間だ。最も、この狭いアパートでは、部屋という部屋はこの寝室とその居間くらいなのだが。 俺の安眠を妨げるのは一体何者だと、わずかに夢心地に入って朦朧とした意識により、怒りだけ駆られて跳ね起きる。 戸を引いて居間に入り掃き出し窓の外を見てみると、外のわずかな光に照らされたそこには、ゆっくりれいむの親子の姿があった。 どちらもれいむ種の、親一匹子一匹。 やたら切羽詰まった表情で思いっきり窓への体当たりを繰り返しているので、とっとと開けることにする。 いくらゆっくりでも、壊されるのではと少し怖くなったのだ。 俺が窓を開けると二匹は素早く部屋に滑り込んで来て、親れいむが叫ぶ。 「ほら、はやくしめてね! れみりゃがきちゃうよ!」 ふむ。なるほど、こいつらは追われて焦っていたということか。 外を見てみると我らアパート住民の庭に、街灯に背を照らされた胴つきれみりゃらしき影が、やたらよたよたしながら入ってくるのが見えた。 ただのゆっくりに逃げられる要領の悪さが、シルエットだけでも窺える。 ちなみにその庭部分は、手を伸ばせば隣の塀に届きそうなほど狭い。 我が家が惨劇の舞台になっても困るので、一応窓を閉めてやることにする。 振り返ると薄汚れたれいむ親子がこちらを見ていた。 「ありがとうございますう! たすかりましたあ!」 「ゆ、ゆ、ゆーぅ」 赤ゆの方は既に疲れきっているのか、ふらふらだ。 こちらは無理に起こされたところだというのにな。 「あのれみりゃから逃げてきたのか?」 「そうですぅぅ、まりさともはぐれちゃって……」 「大変だな。そいつはもう食べられちゃったのかね」 「ゆぐ……と、とにかく、れみりゃがいるおそとにはでられないです! どうかここにとめてください!」 「えー……?」 小汚いこんなやつらを泊めてやるのなんて、正直ごめんだ。 明かりが少ない状況だが、こいつらが例にもれず汚いことはよく分かる。 が、これ以上面倒なことを起こしたくもなかった。 追い出そうとすればうるさいだろうし、れみりゃとて決して静かなやつでもないだろう。 なんといっても今は早く寝たいのだ。 親子にそこまでゲスな雰囲気は見てとれないし、一晩できちんと追い出せばいいだろう。 そう思って俺は親子を泊めることを許した。 「ゆん! よかったあ、ありがとう!」 親れいむの一応の感謝が、右耳から左耳に抜けていく。 飲み物を箱買いしたときの段ボールに新聞を敷いてスペースを作ってやり、そこにのせる。 一応そこから出ないよう言って聞かせ、俺は寝室に戻った。 せめて今からでも安眠を迎えたい。 翌朝、俺はまたも音によって意識を覚醒させられることとなった。 目覚まし時計をセットしていたわけではない。 全く夜も朝も無理に起こされるなんてついてないなー、なんて思っている場合では無かった。 俺の耳に飛び込んできたのは昨日とは比べ物にならないとんでもなく大きな音だったのだから。 昨晩以上に体に力を込めて跳ね起き、居間への戸を叩きつけるように開いた。 そこに広がっていたのは昨日とは違う居間の光景だった。 見事に荒らされ散乱とした部屋。 どシンプルな三段の小さいキャビネットは引き出しを引かれ、中のものを掘り返されている。 なにに使う訳でも無い折り畳みナイフに、昨日駅前でもらったゆっくり保護団体のチラシ等々。確かにきちんとしまっていたはずのものは今は無造作に放り出されている。 そして、あまり物を置いていなかったスチールラックが引き倒されている。先程の音の主はこれらしい。物をのせ無さ過ぎて不安定だったのかもしれない。 そばには、それに乗せていたはずのゆっくりみょんをかたどった、陶器の小物入れが落ちて割れていた。 なかなか気にいっていたのだが、置くところが高すぎたか。 俺にとってこれは惨劇だ。結局この部屋で、起こってしまったわけだ。 基本的に大したものは置いていないので被害はそれなり。だが、これを片づけることを思わされると気が重い。 そして何より、ここまで触れてきていないがこれらを引き起こしたその原因。 いや、それはもはや考えるまでもない。 やはり昨日無理をしてでも追い出してれみりゃに捧げてやればよかったのだ。 まさか、一晩で評価をひっくり返すことになろうとは。 そうその原因は、やはりと言うべきか。……ゆっくり親子だった。 「あ、にんげんさん」 こちらを見つけ浮かべる笑みに嘲りを感じた。 そんなつもりはないだろうなとも思う。 「にんげんしゃん! あみゃあみゃちょーだいにぇ!」 足元から赤ゆの声がする。 こんなことをして、なぜ平気な顔でいられるのだろう。 そこまでこいつらはどうしようもない生物か。 「にんげんさん、ここはれいむのものだよ! さっきにんげんさんがくるまえにせんげんしたからね!」 「しょうなんぢゃよ! ゆっくちりかいしちぇね!」 なんだそりゃ。 ここは俺の家だって、流石のこいつらにも分かっているはずなのに。 「ゆゆ~ん、にんげんさんはじぶんのおうちにもどってね! こっちにくるならあまあまちょうだいね! たくさんでいいよ!」 ちら、と俺が出てきた寝室を見ながら言うれいむ。 どうやらこの部屋をもらったと、そう言いたいらしい。 「これ、お前らがやったのか?」 「ゆ? そうだよ! あまあまさがしだよ! なかったけどね! どこにかくしたのか、おしえてくれてもいいよ!」 眠りに落ちるのを邪魔され、れみりゃから助けてやって、更に一晩泊めてまでやった。 その見返りがこれとは。今まで冷静を保っていたはずの俺の心に、怒りが沸き起こるのをここにきて感じた。 後押ししてくれるこの感情。 これに任せよう。平気で恩を仇で返すこんなやつらに、遠慮してやる道理がどこにある。 気付くと俺は親れいむを蹴りあげていた。 白い壁にぶつかるれいむ。 「ゆ……! び……! ゆうっ、ゆうんやあああぁぁぁ!! いだいいいいぃぃぃ!! いだいよおおおぉぉ!」 「お、お、おかーしゃ……! くしょにんげん! おかーしゃになにしゅる……ゆぴ!」 飛びついてきた赤ゆを、傷つけない程度に軽く蹴り上げる。 脆い方は扱いづらいな。 「おしょらをとん……ゆぺ」 定型句を唱えかけてから地面に落ちる赤れいむ。 「そんなに強く蹴ってないって……お前のかーさん根性ないな」 そう言ってやってから親れいむに近づく。 「ゆぴぃ……! あやばり! あやばりばず! あやばりばずからぼうげらだいで!」 早くも白旗を上げるとは、やりがいのない奴だ。 だがこんな程度で腹の虫がおさまるわけがない。 れいむを両手で挟みこむようにもちあげ、一言投げかける。 「そんなの聞けないなー。なんでこんなことしたのかねぇ……」 「ゆあ……、と、とってもゆっくりしてるばしょだとおもってぇ……。 それにおきたらだれもいなかったから……ゆぎ! ゆぐ!」 挟んだ手で、れいむをねじり上げる。 ルービックキューブを捻るようにだ。 これで理由になると思っているのだろうか。おめでたいな。 これが人間だったら、別に真意でもあったのだろうか。 等と思ってから人間ならこんなことはしないな、と自分で突っ込みを入れる。 結局、昨晩の判断は間違っていたのだ。善良だと思ったのは何かの間違い。 疲れていてゲスな部分を出す余裕がなかったのかもしれない。 もしかすると寝ぼけた俺がそういう部分を見逃しただけなのかもしれない。 結局は見抜けなかった俺も悪いのだろうか。 そう思うとどこか少し冷静になった。 だがそんなことで許せるのか。許せるはずがない。 こいつらは俺に恩義を感じこそすれ、こんな目にあわせる理由はないはずなのだ。 そしてあまつさえこんな風に責任を感じさせてまでいるのだ。 そう思うと、強い苛立ちが沸き起こるのを感じた。 「ゆぎ! ゆぎ! いだいいいぃぃ……!」 「おかーしゃぁ……」 れいむを持つ手に力が入りかける。だがこんなことで潰してしまっては仕方ない。部屋も余計に汚れてしまう。 なんとか、最低限の痛みを感じてくれる程度におさめる。 そしてすぐに軽い捻りの限界に達したらしく、これ以上は動かなくなる。 まあ、いい。とりあえずこれはやめよう。正直ただ蹴る方がすかっとする。 手を離し、れいむが落ちる。成体なら人間の手元から落ちても案外平気だ。 「ゆっ! うぇっ……! ちょっと! きゅうにおとさないでね!」 次は赤ゆだ。 親れいむを足で押しのけて赤ゆに手を伸ばす。 一度逃げられるも、赤ゆの速度では大したことはない。きちんと捕まえ手のひらの上に載せる。 「ゆゆーん、れいみゅはとりしゃんー!」 すると母性に訴えかけられたか、怯えて固まっていた親れいむが声を上げる。 「ゆ! おちびちゃんはやめてあげてね! れいむのおちびちゃんなんだよ!」 だからなんだっていうんだ。 逐一イライラさせられる。こいつらはいらつかせる精神攻撃が得意技なのだろうか。 「それで? だからなんだって?」 「ゆ!? おちびちゃんはとってもゆっくりしてるんだよ! ほらよくみてね! ゆっくりしてるでしょ! ね!」 たしかにとってもゆっくりだ。 今見るとどうしようもなくいらつく、それはそれはとってもゆっくりな顔をしている小さな饅頭。 「ゆ?」と呟く赤ゆの顔に、もはや無意識でデコピンをお見舞いする。 「いぢゃいいいぃぃぃぃ!! なにじゅるのおおぉ! ゆうううぅぅぅ!」 「おちびちゃあぁん! ゆぐぅ! くそじじい! おちびちゃんをかえしてね!」 足元にぶつかってくる親れいむ。 ゆっくりってやつは柔らかい。正直痛くも痒くもなかった。 「れいみゅぷきゅーしゅるよ! ぷっきゅうううぅぅぅ!!」 「せいっさい!するよ! くそじじいはしんでね! すぐでいいよ!」 無駄な反抗を見せる二匹 それではと、親れいむに赤ゆをとり返すチャンスをやることにする。 散らかった部屋に転がっていた折り畳みナイフを拾い、ひろげる。 親れいむに見せて言ってやる。 「おいれいむ……、これみえるか?」 「ゆ! なんだくそじじい! みえるよ! ばかにしないでね! で、なにそれ! あまあま!?」 「これはナイフって言ってな。物に当てるとよく切れるんだ」 「ぷきゅううううぅぅぅ!」 ぎらつくナイフを親れいむによく見せてやる。 「ないふ? きれるのはゆっくりできないよ!」 さっきまで怒っていたのに、なかなか素直だ。 馬鹿なのは、使いやすいという利点をもっているというわけか。 「お前の体で試してやろうか?」 「ゆ!? い、いいよ! ないふさんはすーぱすーぱさんだね! れいむわかったからきるひつようないよ!」 「ぷぅー、きゅううううぅぅ!」 「じゃあおちびで試そう」 話題に出されて、手のひらの上で必死に膨らんでいた赤ゆが反応した。 「ゆぴ!?」 その顔には恐怖が浮かんでいる。 うむ、気分が良いってことはないがこの顔ならイライラはしないで済むな。 「ゆああああぁぁぁ!? どぼじでそんなごというのおおおぉぉぉ!!」 「嫌か?」 「ゆ! いや! いやじゃよ! れいみゅすーぱすーぱさんいやじゃよおおぉ!!」 「おちびちゃんいやがってるでしょおおぉ!! だめだよおおぉぉぉ!!」 否定の色を強く表わし訴える二匹。 そんなことを言える立場じゃないと分からせてやることすら、難しいようだ。 「じゃあお前がかわるか?」 「どぼじでぞうなるのぉ!」 「お前がやったらおちびを切ったりはしないし、ちゃんと降ろしてやろうかなって思ってるんだけどなー」 「ゆ!?」 「ほ、ほんとうに……?」 「うん、約束は破らないさ」 そんなんじゃ、恩も返せないこいつらと一緒になってしまうからな。 「ゆぐぅ……」 「おかーしゃ……」 俯いて考え始めるれいむ。 自分の体が裂かれるのとおちびちゃんのどっちが大事か、もはや逆に及びもつかないほどの単純思考っぷりでじっくりと考えているんだろう。 「ゆ……わかったよ。れいむはどうなってもいいからおちびちゃんをはなしてね!」 手のひらのおちびが安堵の息を洩らすが、すぐに気付いて親に心配そうなまなざしを向ける。自分の安易さに気付き、親の運命を憂いているといったところか。 さて、よく選んだ。 そうでなくちゃ困る。おちびを見捨てられたりしたら、あとはもう単純に痛めつけるしか手段が無くなってしまうのだから。 「よし、じゃあ……持っておいてやるからお前が自分で体当てて切れ」 「ゆ」 「ゆぴ!? お、おかーしゃ……!」 少し屈んで、ナイフを床に立てるようにして抑えてやる。もちろんおちびを持った手は、高く掲げて降りられないようにしておく。 ナイフには角度を付けておいてやろう。自ら飛び込みやすいように。 「さ、どうした?」 れいむはどうやら予想外だったらしく、その場で硬直する。 俺は切れ味を試すと言っただけで、直々に刻んでやるなんて言った覚えはないのだが。 なんといっても両手がふさがっているのだ。是非協力して貰わなくては。 「……りです……。」 親れいむがぼそりと呟く。 「ん? なに?」 聞き返すと、俺の顔を見上げ口を開いた。 「むりです……!」 「なにがー?」 「むりいいぃ! むりですう! じぶんからいたいいたいはむりですうぅぅ!」 「ゆ!?」 「そっか……。じゃあ仕方ない、おちびだな」 「やべでえぇえ!」 おちびが手のひらの上でびくりとする。 そして俺の方へとゆっくり振り返ってきた。 俺はそんな可哀想なおちびに笑顔を向けてやる。 お前の親が不甲斐ないばっかりにな。 「お、おかーしゃ……」 「やべで! やべでえぇぇぇ! おちびちゃんはまだちっちゃいんですうう!」 立ち上がりナイフを持ち直す。おちびのデコに突きつけ、言う。 「まー、いいや」 「ゆ……?」 「ゆ!!」 「やっぱやめとくか。刃物なんて俺もちょっと危ないしな」 「ゆ、ゆあああぁぁぁ! やっちゃ! たしゅかっちゃよぉぉ!」 「にんげんさんありがとおおぉ! ゆ、ゆ! はやくおちびちゃんをおろしてねぇぇ!!」 なんと勝手な。 それにまさか、自分で言った感謝の言葉まで台無しにするようなことまで言うとは。 「解放してやるとまでは言ってないぞ」 「どぼじでぞんなごというのお!」 「ゆん! もうおかーしゃをいじめないでにぇ! れいみゅもおろしちぇにぇ! しゅぐでいいよ!」 本当に、どうしてこいつらはこうも瞬時に調子に乗れるのだろう。 一度ゆっくりの思考を覗いてみたいものだ。 ナイフをたたんで床に置き、おちびを先程の親れいむと同じ刑に処す。 顔を挟んで持っての雑巾絞りだ。 このサイズでは持つよりつまむという感じだが。 「ゆ……ゆぎ! いぢゃいいいぃぃ! やべでねぇぇ!」 声を上げるが、もちろん続ける。 おちびは柔らかいが小さいので加減が難しい。 こいつならもっと面白い状態になってくれるかと思ったのだが、結局親と同じ程度にしか捻れないようだ。残念ながら。 「ゆぎ、ゆぎぎぎぎぎぎ!」 仕方ないのでひとまず終えてやって離すことにする。 もちろん手のひらの上から降ろすわけではない。 「ゆ……ゆふぅー! みょうおわり? おわり? れいみゅたえちゃよ! ゆっへん!」 「すごいよぉ! おちびちゃあぁん!」 「なんだきゃれいみゅ、みゃえよりふにゃふにゃしゃんになったきがしゅりゅよ! れいみゅは、なめくじしゃん!」 「おちびちゃんよくがんばったねえぇ!」 まったく、俺が加減してやったからだというのに。 こんなことでぎゃあぎゃあと、いちいち面倒な奴らだ。 おちびを褒め尽くしたれいむが今度はこちらをキッと睨みつける。 「いいかげんにしてね! そろそろおちびちゃんをはなしてね!」 まだ言うか。 おちびを軽く痛めつける程度では、堂々巡りにしかならないらしい。 同じことばかりうるさく言われ続けるのは、もう勘弁してほしいところだ。 またしてもイラッとしてしまったので親れいむの顔にもう一度蹴りを入れてやる。 ただし今度はさらに弱め、小突く程度だ。 「ゆちー、なんだきゃやわやわしゃんしゅぎちぇ、れいみゅゆるゆるしゃんだよぉ」 おちびがもはや訳のわからないことを言っている。もうこいつは無視だ。 「ゆぎっ! いだい! ゆんやああぁぁあ!!」 「ゆぅー、うんうんでりゅよ!」 本当に軽くなのに大袈裟にわめく親れいむ。 さっきの一撃を思い出したってだけで叫んでいるのではなかろうか。 ……なに、うんうん? 「うんうんしゅっきりー! ぎゅいぃーでゆるゆるしゃんになっちゃからいっぴゃいでちゃよ!」 ……見ると、おちびが手のひらの上でうんうんをかましてくれていた。 それもきれいに手のひらに収まるように。 黒い餡子の塊が何やら仄かにあったかい。 ああ……なんだか、もういいや。 「……ゆっ! なにしゅるの! れいみゅのおかざりしゃんかえしちぇね!」 おちびを指でおさえ、もう片方の手でリボンを抜きとる。 それをポケットにしまってから、もう一度おちびをしっかりおさえる。 そして、手のひらの上の排泄物をおちびの髪に塗りたくった。 「おかざ……ゆぴぃ! うんうんちゅけないでにぇ!」 それはこっちの台詞だ。 うるさく言ってくるが、もちろんやめてなどやらない。 大方塗り終えると、だいぶ手のひらにも広がってしまっていた。 「おちびちゃんになにじでるのおおおぉぉ!」 「ゆんやああぁ! くちゃいいぃ! ゆぴいいいぃぃぃ!! れいみゅのさらさらかがやくごくじょうっ!のかみしゃんがくちゃいぃぃ!」 うるさく泣きわめくおちびを掃き出し窓から狭い庭部分に放り出し、窓を閉める。 「ゆ!? お、おちびちゃん!」 まず手を洗おう。そしたらもう、いいかげん終わらせてしまうとしよう。 俺ももはや限界だ。しかし何とも屈辱的な方法で本気にさせられてしまったものだ。 おちびの贈り物を洗い落した後、未だ散乱した居間に戻ると親れいむが窓に向かって体当たりしていた。 外から中から、窓がそんなに好きか。と言う冗談は置いといて。 さっきから親れいむの声は部屋に響いていた。 もちろんその目的はただ一つ。おちびの元に行こうと奮闘している、というわけだ。 「おちびちゃん! いまあけてあげるからね! まっててねええぇぇ!」 だが窓は大きな音を立てるばかりで、割れてまではくれない。 俺は足に体当たりされた感触を思い出して、あの力じゃ無理だろうな、と思った。 昨夜のれみりゃは既にいなくなっていて、外には脅威が存在するわけでもなんでもない。 それでも親れいむが必死なのは、さっきのことでおちびちゃんが泣きっぱなしだからだろう。くちゃいくちゃいと。 親れいむを後ろから捕まえ、体当たりを止める。 「なにするくそじじい! おちびちゃんをはやくもどせ!」 「戻す?」 「ここはれいむのゆっくりぷれいすだっていってるだろおおぉ! はやくもどせ!」 しつこい奴だ。と思って、そういえばまだきちっと否定してやってなかったことを思い出す。 「戻すね……、まあ賛成してもいいな」 ただし言葉尻をとって、の話だが。 「じゃあはやくもどせ! おちびちゃんをもどせ! それからあまあまもってこおおぉい!」 「お前が戻れよ。元の外にさ」 「ゆが!? そんなのおかしいでしょおお!? ここがれいむのゆっくりぷれいすなんだよお!!」 「ここは俺の家なんだよ。この部屋もあっちの部屋も。お前が来るずっと前に人間流のおうち宣言をしてるんだよ」 「ぞんなのじるがああ! いいがらおぢびぢゃんをもどぜ! ばやぐじろおおぉぉ!」 やはり言っても無駄か。 なにも聞かず傲岸不遜を貫き続けるしかない。ある意味一貫しているわけだ。 そんなお前たちを気にいってくれる人の所に飛び込めば、よかったのにな。いればだが。 親れいむのリボンも抜き取り、窓の外に出してやる。 ただしこいつは、おちびより強くだ。真っ直ぐ投げてやると、目の前のコンクリートブロックの塀に潰れるようにぶつかるれいむ。 それでも平気でぼてっと地面に落ち、泣き声を上げてみせるのは流石の丈夫さだ。柔軟性のなせる技だろうか。 俺は先ほどのナイフを持ち、サンダルをつっかけて庭におりる。 素早くおちびに飛びつこうとする親れいむに先んじて手を伸ばし、おちびを持ち上げた。 「さーて、さっきの約束やっぱ守ってもらおうかな」 そう言ってナイフをおちびにあてる。 怯えるおちび。 親れいむは愕然とした表情で固まっていた。 「こいつで切れ味試すって約束だったよな」 親れいむが表情に絶望を交え、悲痛な声をあげる。 「さっきはやめるっでいったでしょ! やべで! やべで! おぢびちゃんをだずげて! ごんどごぞがんばりばすがら!」 「あのな……二度も同じチャンスは訪れないものだよ」 そう言って、ぷるぷる震えるおちびの口にナイフを突っ込む。 深くまで差し込んだナイフで、頬の皮を切り裂く。後頭部近くまで広がる口。 「いぢゅあい! いぢゅぁいゆお……おかーしゃ……ゆぴいいいいぃぃ!」 泣き叫ぶおちびを押さえ込んで反対側も同じようにする。口裂けゆっくりが完成した。 さらに騒ぎ始めるおちびを強く抑え込む。 自分の体なのに騒ぎ過ぎれば餡子が漏れて危ないと分かっていないのか。 餡子が漏れ出さない内に地面に置き、親れいむと再会させてやる。思えば俺に捕まって以来の再会だ。 だが親れいむはそれどころではないのをきちんと弁えているようだ。流石に慎重な姿勢を見せる。 「おちびちゃん! しずかにしてね、あんこさんがもれちゃうよ」 「ゆ……おかしゃ、ゆうぅ……しゃべりにきゅぅいぃぃー!」 「おちびちゃん! しずかにしないとだめだよ!」 おちびを叱り必死にその動きを止めようとする親れいむ。 だがすでに切り口からは餡子が漏れかけている。このままではもっと漏れていくだろう。 だがそれよりもまず、おちびの体はぱかぱかと開いてみせていた。 おちびが喋るのに乗って上顎が持ち上がるのだ。 バランスを崩せば、あの体はすぐ開いてしまうだろう。 おちびはそんな自分の体の状態に困惑しながらも、叫ぶのをやめられない。 親れいむもそんなおちびを見て焦りを募らせ始めたようだ。 「おい、れいむ。おちびちゃんを後ろから支えてやった方がいいぞ」 親れいむに声をかけてやる。 親れいむははっと気づいたようにして、こちらに一瞥をくれることもなくおちびの背後に回る。 「おちびちゃん、おかあさんがささえてあげるからしずかに……ゆ! く、くさっ」 最後にれいむは反射で呟く。 そう、髪にはさっきうんうんを塗りつけたばかり。 つい出てしまった親れいむの小さな声を、おちびは聞き逃さなかった。 大口を開け、とうとう―― 「なにいっちぇるの……! おかーしゃがいけにゃいんでちょ……! おかーしゃがぜん! びゅっ! ……べ……べ」 叫ぶ勢いで上あごがあがりきり、頭が地面に落ちる。 まさにと言うべきか、首の皮一枚で繋がっておちびはゆっくりの開きになってしまった。 「お、おちびちゃああぁん!」 下あごに多くのあんこが残されているのがわかる。 上あごにもいくらか持っていかれているが、下あご部分では餡子がこんもりと山になっていた。 もしかするとあれが中枢餡というやつなのかもしれない。変わった様子はないのでよく分からないが。 下あごの先でずらりと半円状にならんだ歯の真ん中、舌がぴくぴくと痙攣していた。 先っちょは丸められていて、おちびが痛みに耐えているのがうかがえる。おそらく風前の灯だろうが、おちびはまだ生きているようだ。 そしてその身を二つに裂かれた苦しみを味わっているのだろう。 親れいむがもはやどうしていいか分からずに――いや、あれは既におちびを亡くした悲しみを感じているのかもしれない――顔を絶望に固め立ちすくんでいた。 だが、おちびは確かにまだ生きている。 この声が届くかは分からないが、こんな半端で終わらせても仕方ない。仕上げてやらねば。 「おちび、ジャンプしたら戻れるんじゃないか?」 俺の声にピクリと反応する二匹。 親れいむの顔が、本格的に絶望から悲しみへと変わった。 「おちびちゃん! うごいちゃだめ!」 だがおちびは、その台詞とほぼ同時に飛んでしまっていた。 苦しみに支配されたその思考は、きっと究極的に単純だったのだろう。 ジャンプの頂点からの落ち際に、確かに元の体を取り戻すおちび。 疲弊しきって濁った瞳にわずかの希望が浮き上がった。 だがその体はバランスを崩し、顔を地面へと向けてしまう。後ろを気遣いすぎて前に重心が乗っていなかったのだろう。 そしておちびは落ちた。 地面にあんこをはきだし潰れるおちび。今度こそピクリとも動かなくなる。 親れいむはそれをもはや生気のない目で見つめていた。 「あーあ、潰れちゃったな」 俺が言うと、ゆっくりこちらを見上げる親れいむ。 「さて、次はお前かな」 継いだ言葉に震え上がって、恐怖を浮かべた顔をする。 その表情のまま、ずいと前に出て叫び出す。 「ゆるじで! おぢびぢゃんぼばりざぼなぐじで、れいぶかばいぞうなんでずぅ!」 「ふーん、可哀想とは思わないけど……許されたいのか」 「ゆるじでぐだざい!」 「でもねぇ、俺もこのまま許すわけにはな」 「なんでぼじばず! なんべぼじばずがらゆるじで!」 「ん? そうか、なんでもするか。ならひとつ方法があるよ」 「ゆ! なに! なんでずが! ばやぐいっで!」 わずかに顔に喜びを浮かべ、食いついてくる。 俺の言ったことはろくに実現できていないこいつだが、次こそやってくれるだろうか。 「そのおちび、食べてくれ」 「ゆ……!」 れいむが表情を固め、たじろぐ。やはり無理だろうか。 「嫌か?」 「ゆ! ばっで! ばっで……」 戸惑い、怯えた表情を浮かべるれいむ。 なんだかんだで、色んな表情を見る羽目になったな。 「そうだよな、助かりたいよな」 「ゆ……」 俯く。 「でもおちびは食べたくないか? でもさあ、考えてみろ。」 顔を上げ、こちらを見る。 怯えを残したままの、救いを求める表情だ。そんなものを与えようとは思わないが。 「お前だけが許されたらおちびはここであのままだぞ」 「ゆ……!?」 「親に見捨てられ、野ざらしのまま段々朽ちていく……。可哀想じゃないか?」 「……」 「おちびはもう動けないんだ。れいむが自分の体に取り込んでさあ、ここから連れて行ってやれよ。そしたら、ずっと一緒にいられるじゃないか」 「ゆ……ずっと……ゆっくり……」 「そうそう、ずっと一緒にゆっくりできる。それに、俺もおちびを片づけてやらなくてすむから、助かるんだよ」 「ゆ……」 「俺とおちびを助けると思って、頼むよれいむ」 「ゆ……あ……」 ゆっくりとおちびに近づくれいむ。 うんうんの臭いもまだ残るであろうその体に、れいむは今度こそ躊躇わずに食いついた。 ゆっくりと咀嚼する。 すすり泣く声が聞こえたのは、最初だけ。 食べ終えて動かなくなったれいむの前に回る。 おちびは餡子のひとかたまりも残さずに、消えている。土をなめてでも、れいむが食べ尽くしたからだ。 口がだらしなく開かれ、その目はまたも生気をなくし焦点があっていなかった。 そんなれいむに告げてやることとする。 「よしれいむ、今度こそできたな」 わずかに見上げるれいむ。 だが未だにその目は遠くを見ている。 最後だけだが、やっと俺の指図を行動に移せたか。 「これで許してやれるぞ、れいむ。俺はこれ以上お前に危害をくわえない。後は好きに逃げな」 「ゆ!」 れいむの顔に一気に驚きと喜びが灯った。 「ほんとうにゆるしてくれるの!?」 信じられていなかったのだろうか。 「ああもちろん、約束は守らなくちゃな。あ、その前に」 「ゆ?」 「お飾り返してやるからな」 家から出すときに奪い取ったリボンを取り出し、れいむに見せる。 「つけてやるよ。……もう何もしないから、来な」 そう言ってやると、おずおずと近づいてくるれいむ。 さっきの約束は本当だ。だから俺はもう本当に危害を加える気はない。 後はこの親子を逃がしてやるだけだ。 れいむの後頭部の辺りに元通りにしっかりリボンを結んでやった。 「もうちょっとだからな」 そう言ってれいむを少し引き寄せ軽く押さえる。 そして頭にリボンを結ぶ。 れいむは静かに任せている。顔を見ると喜んでいるようだ。お飾りが戻ってきて嬉しいのだろう。 「さ、出来た。もういっていいぞ」 「ゆん……ありがとう! それじゃあ、さよなら」 ゆっくり去っていくれいむを見送る。 れいむは昨晩れみりゃが現れた辺りから逃げていった。 さて、やっといなくなったな。 下手に潰して掃除の手間を増やすのに比べれば、ましなやり方だったろう。 鬱憤もそれなりに晴らせたのだし。 俺は正直おちびがつぶれた時点で充分だった。既に飽きていたのだ。 だがそのおちびもれいむに片づけさせられたし、結果だけ見ればゆっくりの被害にあった割には上々な対処ができた方なのではないだろうか。 そして残ったれいむも、これから自らゆっくりできない所へ飛び込んでいくことになるのだ。 さ、部屋の掃除に取り掛かろう。 れいむは必死に走っていた。 あの人間が見えなくなった時点で、追ってくるのではと俄かに恐くなったのだ。 持てる力の全てで、全力疾走する。 まあ人間の子供の歩行よりと同じ程度の速度だったが。 気付くとれいむは、やたら草の生い茂った土地の前に立っていた。 周りは人間の家が立ち並んでいるばかりなのに、この場所だけに背の高い草が並んでいる。 何のことはない、ただの空き地だった。 だがそんなことれいむは知らず、とりあえず仲間でもいないかと、近づかないで覗き込むようにして見る。 もちろん逃げてきた方への警戒も怠らない。 と、その時ガサッと草をかき分ける音がした。空き地の方で何かが動き、そして近づいてくる。 れいむは一歩二歩と下がり警戒しながらその何かが現れるのを待った。 そして、あらわれたその姿は……ゆっくり。ゆっくりまりさだった。 れいむはそのまりさに見覚えがあった。昨日はぐれた番のまりさだ。 食われたかと思っていたが、生きていたのだ。 「ゆ! まりさぁ!」 「ゆ! れいむ! いきてたんだ……ぜ……」 言葉を尻すぼみにするまりさ。もしかして傷ついているのだろうかと、れいむは思った。 「まりさ! だいじょうぶだったんだね!」 「……ゆ、れいむこそだぜ」 「しんぱいしたんだよ、まりさ」 「ゆ、そうかぜ」 わずかに俯くまりさ。帽子に隠れて表情が窺いづらい。 「まりさ、どうしたの? ようすがおかしいよ?」 「……れいむ、おちびはどうしたのぜ」 「ゆ……おちびちゃんは……にんげんさんに……。 いっしょにつかまっちゃって、たいへんだったんだよ」 「そうかぜ」 後ろを向くまりさ。 れいむは思った。おちびの死を悲しんでいるのだろうと。 あんなにゆっくりとしていたおちびちゃんだったのだ。仕方ない。 まりさが振り向く。 「なら、その……ちいさいおかざりはなんなのぜ!?」 「ゆ!?」 まりさはれいむの頭を見上げ、怒りの表情を浮かべていた。 れいむは戸惑う。まりさが何を言っているのか、分からない。 「お、おかざりってなんのこと?」 「そのあたまについたちいさなおかざりのことなのぜ! ふたつもつけて、おかしいのぜ! それはおちびのじゃないのかぜ!?」 まりさの言う通り、れいむの頭の上はいつもと様子が違っていた。 自前のお飾りは問題なく付いている。 だが、一まとまりの黒い髪が、真っ直ぐ上にのびアホ毛のように突っ立っていた。 その根元を小さいお飾りに支えられて。 「そんなつけかたして! おちびをばかにしてるのかぜ!!」 「ゆ! ゆぴ!?」 混乱しだすれいむ。 緩む思考から何とか絞り出して、れいむは自分とおちびのお飾りのことを思い返す。 自分のお飾りは一度取られたものの、きちんと人間に返してもらったはず。そして、おちびのお飾りは……。 「ゆ! まりさ! にんげんさんのしわざだよ! きっとあのにんげんがれいむに」 れいむの餡子に皮が裂ける音が響いた。 「ゆゆ、ああ、あぁぁぁ!」 まりさが口に石をくわえ、ぶつかってきたのだ。 わずかな裂け目かられいむに痛みが伝わる。 「おかざりをうばったのぜ……!! おちびちゃんから!」 「ま、まりさ! ちがうよ! これはにんげんが」 「うるさいのぜ! ふざけるなだぜ! そんなのうそなのぜ! うそなんかききたくないのぜ!」 「まりざ!」 「おちび! かたきはとるのぜ!」 「やめで! やべでばりざあ!」 まりさのくわえた石が襲いかかる。れいむの体を裂き、ひっこめられてまた襲い、裂く。 れいむの体はぼろぼろになっていった。 まりさの体当たりの衝撃で、増えゆく穴から餡子がさらに漏れ出す。 まりさは石を捨て、れいむの上に乗っかった。 れいむの上で体重を乗せて何度も跳ね、れいむの体から餡子を追い出しながら潰していく。 やがてれいむがピクリとも動かなくなると、まりさは吠えた。 「ゆっゆおおぉぉー!! おちび! かたきはとったのぜえ!」 ゆおーゆおーと、高らかに叫ぶまりさは気付かない。 草陰から自分を見つめる存在に。 昨夜逃した獲物を、再度見つけた捕食者の視線に。 おわり 挿絵:
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ゆっくりいじめ系1914 楽園~まりさの場合(外伝)より続く ※俺設定注意 presented by [498] 「な に を し て い る の っ ! ?」 突然の怒鳴り声に驚いて目を覚ます11匹の姉妹達。目を開けると、藁と羽毛の寝床から憤怒の形相でこちらを睨み付けるれいむの姿が見えた。 少々騒いだところで目を覚ますれいむではない、だがこのときれいむは悪い夢を見ていた、最愛のまりさがレイパーありすに犯される夢、あのときと同じシチュエーションの夢を見ていたのだ。悪夢にうなされ目を覚ましてみると、そこに居る筈の子れいむが見当たらない。 寝ぼけて布団から出て行ったのだろうか?あの子は体が弱い、柔らかい布団の中で寝かせてあげないと体に障る。辺りを見回して我が子の姿を探すれいむ、それは意外な場所で見つかった。姉妹全員が固まって眠るその中心、長女と三女の子ありすに挟まれ、子れいむは安らかな寝息を立てていた。 端から見れば仲睦まじい姉妹の触れ合いだが、れいむに限りそうは見えなかった。ふと、子ありすが子れいむ側に寝返りを打つ、丁度『すーりすーり』をしているような体勢だ。 瞬間、れいむに電流走る。 直前まで見ていた夢も影響し、れいむにはそれが、子ありすが子れいむを犯し殺そうとしているように見えた、子ありすが『あのありす』と重なって見えてしまったのだ。焼付いたイメージはもう離れない、我が子が危ない、れいむはゆっくりらしからぬ大声を上げた。 姉妹達は焦っていた、いつもは起きる事のない時間にれいむが目覚めてしまったからだ、しかも姉妹達の真ん中には子れいむが居る。 10匹の姉妹達は子れいむとの接触をれいむから禁じられていた、子れいむと自分達とで受ける『おべんきょう』の内容が違うから、というのがその理由だったが、実際はれいむによる忌み子と我が子の隔離が目的だった。 無断で一緒にお昼寝していたとなればお仕置きは必至。怯える姉妹達の中、最初に口を開いたのは子れいむだった。 「ゆ…おとーしゃん、おこらにゃいでね!けほっ、けほっ……れいむがしらにゃいうちにおねーちゃんのとこでねてたの!」 「お…おちびちゃん……?」 「きっちょねぼけてころがっていったんだよ!けほっ…でもれいみゅあんよがいたくなっちゃったから、おとーしゃんのとこにもどれなき ゃったの!だきゃらおねーちゃんたちにおねがいちていっちょにおねむちてたの!」 「………………」 咳き込みながら必至に姉達を弁護する子れいむに、姉妹達は心配しながらも安堵の表情を浮かべる。止むを得ない理由があるなられいむも怒らないだろう……ちょっと残念だが、揃ってお昼寝は暫く控えなければ……。だがれいむから返ってきた言葉は姉妹達の予想を斜め上行くものだった。 「そう…それじゃあしかたないね!」 「ゆぅ…ゆぅ……、そうだよ、おねーちゃんたちはわるくないよ!だかりゃ……」 「あのくそがきどもに、そういえっておどされたんだよね?わかったよ…… いまたすけてあげるからねえええええぇぇぇっ!!!」 「ゆ、ゆううぅぅっ!!?」×11 硬い筈の、動かすだけで痛い筈の底部無理やり伸縮させ、尺取虫のような挙動で姉妹達へ猛然と向かっていくれいむ、水分の無くなってひび割れているいる箇所からは、少量だが餡子が漏れていた。 れいむに見竦められ、動く事の出来ない姉妹達。しかしあと少しで届く、というところで、ドアを開いて『あの男』が乱入してきた。 バンッ! 「ゆ!?」 今度は全員で驚いて見せるゆっくり一家、振り向くとそこに箱に入ったまりさを抱える鬼畏惨の姿があった。 「ゆ、ゆっくりじゃましないでね!おにいさん!れいむはいまからおちびちゃんをたすけるんだ……か…ら?」 「お…おかあしゃあああああんっ!!」×11 「ゆ、ゆ??れいむもおちびちゃんたちもどうしたの?」 まりさを見つけて焦るれいむ。不味い、非常に不味い……別にこの糞餓鬼共にどう思われようと知った事ではないが、まりさに『おべんきょう』や体罰の事を知られてしまうのはよろしくない……最悪のタイミングだ、どうしたものか……れいむが姉妹とまりさを見比べてあたふたとしている。そんな心の動きを察したのか、鬼畏惨がれいむに近づいて耳打ちをする。 「れいむ、安心して良いよ、まりさは今来たばかりだ、ここで起こった事は知らないし、僕から言う事も無い。」 そう言うと鬼畏惨は突然部屋の端から透明な板を引っ張り出してきて、何やら組み立て始めた。 姉妹達はと言うと、透明な箱に閉じ込められているまりさに向かって一斉に泣きつき始めた。事態がよく呑み込めないまりさと、姉妹達が告げ口するのではないかと気が気でないれいむ。暫くやいのやいのと騒いでいた一家だったが、いきなり鬼畏惨がれいむを掴んで放り投げた。 「ゆゆ!?おそらをとんでるみtゆべしっ!」 投げられた先は、先程から鬼畏惨が作っていた透明な板で出来た囲いの中だった。囲いの大きさは2m四方、高さは人間の腰ぐらいまである、跳ねる事の出来ないれいむでは脱出可能な高さではない。 次に鬼畏惨は、まりさに泣きつく姉妹達を子れいむを除き、まりさを入れたのより若干大きいサイズの透明な箱の中に詰めていく。 「ゆぎゅっ、しぇまいよぅ…」 「ゆっ、まりしゃ、ありしゅのうえではねにゃいでね!」 「ありしゅおさにゃいでええ!まりさのぽんぽんいちゃーよぉっ!」 「ゆえーん!くりゅしいよー!!」 「おかーしゃんたちけてえええ!」 「ゆうう!おにーさん、おちびちゃんたちをだしてあげてね!くるしんでるよ!」 「心配しなくても直ぐに出してあげるさ。」 鬼畏惨は箱詰めの姉妹達を抱えると、囲いの中のれいむの目の前に置いた。箱が隔てているとはいえ、目と鼻の先にれいむが居る状況にガタガタと震える姉妹達。まりさの手前、なんとか取り繕おうとして姉妹達に作り笑いを浮かべてみせるれいむだったが、その引き攣った笑い顔は姉妹達に更に恐怖を与えた。 「れいむ、子供達はひとまず置いといて、ちょっとコレを見てくれないか?」 「ゆ?」 あらかじめ用意して置いたビデオデッキとモニタをれいむに見える位置に配置する鬼畏惨。 「これはまりさの『おつとめ』様子を記録したものだ。」 「ゆ、『おつとめ』…の?」 ポケットからテープを取り出し、ビデオデッキにセット、再生。画面に映し出されたのは、笑顔で食事をするまりさとありすだった。『むーしゃ、むーしゃ、しあわせ?♪』と見るからに美味しそうなご馳走を仲良く頬張る二匹。え…?あのありすは……なんでまりさと……?どうして…?そんなれいむの想いをよそに映像は流れ続ける。 まりさの頬に付いたハチミツを舐め取るありす。 それに頬を赤らめて俯くまりさ。 ソファの上ですーりすーりする二匹。 そのまま寄り添って寝てしまう二匹。 起きたら笑顔で挨拶、そして語らう二匹。 『ねえまりさ、あのれいむのこと、すき?』 『そんなわけないよ!』 『そう…じゃあありすのことは?』 『ゆうん♪だいすきにきまってるよお♪せかいでいちばんあいしてるよ♪』 そんな会話を最後に映像は途切れた。最後の方は音声の繋ぎ合わせなのだが、れいむにそんな事分かる訳もなく、歯を食いしばり、涙を流しながら震えていた。 まりさは口をパクパクさせて青ざめていた。何か言おうとするが、焦りと緊張で上手く言葉にできずオロオロするばかり。姉妹達はまりさとれいむの異様な雰囲気になにかゆっくり出来ないものを感じ、押し黙っていた。 そんな中、沈黙を破ったのはれいむだった。 「どおおおしてえええええ!?どおしてれいぱーありすとまりさがなかよくしてるのおおおおお!?」 「ゆっ!?れ、れいむ、それは……」 「うらぎったね!れいむのきもちをうらぎったね!?れいむはまりさがまいにち『おつとめ』がんばってるってしんじてたから、れいむもがんばっておちびちゃんのおせわしてたのにっ!!なのにっ!!まりさは!まいにち!あんな!ゆっくりしたおへやで!おいしそうなごちそうたべながら!れいぱーありすとうわきしてたんだ!!!うああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「ち、ちがうよ!!れいむ、まりさはうわきなんて……」 「じゃあさっきのはなんなのおおおおお!!?」 二匹の様子を見て少々不満そうな鬼畏惨。 上々な出来だが、れいむの姉妹達へのヘイトがいまいち足りない、どうしたものか……。ふと、足元に変な感触を感じ見下ろしてみると、鬼畏惨に擦り寄ってくる子れいむの姿があった。 「ゆぅ…ゆぅ……おにーしゃん、おねーちゃんたちをこっちにもどしてね。あそこにいたらゆっくりできにゃいよ。」 姉妹達を心配して、れいむから遠ざけるよう鬼畏惨にお願いする子れいむ。 そうだ、コレがあったじゃないか。鬼畏惨は子れいむを掴みあげると、他のゆっくりから見えないように、子れいむの後頭部から中枢餡子を狙って注射器で微量のカプサイシンを注入する。 「ぴぎょ!よよよよよよよよよよよよよ!!」 少量とはいえ、中枢餡子を辛味に蝕まれた所為で変な声を上げ始める子れいむ。鬼畏惨はそんな子れいむを囲いの中、れいむの真後ろに置いた。 「よし。 おーいれいむ、ちょっとこっちみてくれないか?」 「ゆ!?おにーさんはだまっててね!いまれいむはまりさと……」 「れいむの『おちびちゃん』が大変な事になってるんだ。」 「ゆ、おちびちゃん!?」 れいむが振り向くと、そこには顔を真っ青にして白目を剥き、小刻みに震えながら餡子を吐く我が子の姿があった。 「お……お、おちびちゃん!?どうしたの!?」 「お、お、お、おと…しゃん……なん…か……びり…びり…すりゅよ………ごふっ。」 「しっかりしてね!おとーさんがぺーろぺーろしてあげるからねっ!!!」 「ぴ……ぎゅ………」 「あああああんこさんでてきちゃだめえええええ!!もどってね!あんこさんゆっくりおちびちゃんのおくちにもどってねええええ!?」 我が子の吐いた餡子をどうにかして口から戻そうとするれいむだったが、子れいむの吐く餡子によってそれを阻まれる。ゆっくり、ゆっくりと体内の餡子を失っていき、気が付けば子れいむは床に顔だけ張り付いたような姿になっていた。平べったい顔から浮き出た二つの眼球がれいむの方を向く、れいむにはそれが『おとーしゃん、たちけてね…』と訴えているように見えた。一分後、子れいむは残った中枢餡子を吐き出し、苦悶の表情のまま絶命した。 れいむは物言わぬ皮となった我が子を見つめ、顔の穴という穴から体液を流し続けていた。なんでれいむのおちびちゃんがこんな目に遭わなきゃならないの……っ!? そんな悲しみに暮れるれいむに囁く鬼一匹。 「やあれいむ、なんで君の子供が死んだのか分かるかい?」 「ゆ゛あ゛…あ゛、あ゛……わがらないぃ、わがらないよお゛お゛お゛……どぼぢでえ?どぼぢででいぶのおぢびぢゃんがああああ………せっがくうばれだのにいぃ……はじめてのあがちゃんだったのにいぃ………。」 「ふむ、れいむの子は体が弱かったよね?だから元気になるよう、れいむはれいむに他の姉妹より多くごはんをあげてたよね。」 「ゆ゛!れ、れいむ…そんなことしてたの!?」 「だ、だって!!おちびちゃんはからだがよわかったんだよ!?ごはんはほかのこよりいっぱいあげなきゃだめでしょおおお!?」 「そのごはんを食べてなかった、としたら?」 「……ゆ?」 れいむは鬼畏惨を見て首をかしげる。そんな筈は無い、最初の方こそ残してはいたが、寝て起きるとおちびちゃんにあげたごはんは全部無くなっていたのだ、食べてないなんて筈が…。 困惑するれいむに、鬼畏惨は姉妹達を指差しながら言った。 「君が子供にあげたごはん、君が寝てる間にあの姉妹が食べてたみたいなんだよね、殆ど全部。」 「ゆ、ゆゆうぅぅ?!?」×10 確かに姉妹達は子れいむの餌を食べた。しかしそれは子れいむが言い出した事であり、更に言うならその餌は元々姉妹達が食べる筈のものだったのだ。仮にそうでなかったとしても、れいむは子れいむが食べ切れなかった分は捨てていたので、その捨てる筈だった物を姉妹達は口にしていたのだ。どっちにしても、姉妹達が子れいむの餌を食べた事は咎められような事ではないし、まして子れいむの死因になどなりはしないのだ。 だがれいむはそう思わなかった。 子れいむは体が弱い、だから大量のごはんが必要、それを姉妹達が食べた、だから子れいむは姉妹達の所為で死んだ。 れいむの頭の中ではそんな論理展開がなされていた。 子れいむの死を自分達の所為にされて固まっている姉妹達をれいむが睨み付ける。その顔は、先程姉妹達に向かって行ったときものとは比べ物にならない程、憎悪で歪んでいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!お゛ま゛え゛だぢはごろずっ!!い゛っびぎの゛ごら゛ずごろ゛じでや゛る゛!!!」 「いやああああ!」 「きょわいよおおお!」 「おきゃあしゃあああん!」 「ぴいいい!?ゆっくちちていってね!ゆっくちちていってね!ゆっくちちていってねえええ!?」 「たちけてえええ!」 「ゆーっ!ゆーっ!れいむやめてね!!まりさのおちびちゃんたちだよっ!おねがいだからやめてねえっ!!?」 「うるざいっ!!れ゛いぷまのこどもも゛!うらぎりぼの゛のばりざも!みんなゆっぐぢでぎなぐじでや゛る゛う゛う゛う゛う゛!!!」 「どぼぢでそんなごどいうのおおおおおおお!?」 姉妹達を踏み殺そう、喰い殺そうと透明な箱に体を打ちつけ続けるれいむ。姉妹達は相変わらず泣き叫んでいるが、まりさは透明な箱で姉妹達が守られている事に気づくと、今度は鬼畏惨に姉妹達を助けるよう懇願しだした。 「おにいさん!まりさのおちびちゃんたちをたすけてあげてね!」 「…………」 「あのままじゃれいむにゆっくりできなくされちゃうよ!おねがいだからたすけてね!」 「………そうだな、今は大丈夫でも、あのままじゃ箱が壊れたとき子供達が危ないね。」 嘘だ。あの加工所製の透明な箱は、例え鬼畏惨が力の限り蹴ったとしても壊れはしない、まして底部が不自由なゆっくりの体当たりなど効く筈もない。だがそこはゆっくり補正、鬼畏惨の言葉も加わった事で、まりさの目には鬼気迫るれいむの攻撃で今にも箱が壊れそうになってるように見えた。 「ゆうううっ…!おねがいしますっ!どうかこどもたちをたすけてくださいいいいいっ!!」 「…………」 「とってもいいこたちなんですっ!すごくやさしくて!あたまもよくて!おうたもじょうずで!ゆっくりしたこたちなんですううう!!!おねがいしますっ!なんでもしますっ!あのこたちをたすけてあげてえええええ!!!」 「っん素晴らしいっ!!その言葉を待っていた!!」 「ひゅぐっ!?」 「まりさ、今君は『何でもする』と言ったね?」 「ゆ、い、いったよ!おちびちゃんたちをたすけるためならなんでもするよ!ほんとだよっ!!」 「わかった、実は子供達を助けるにあたって、ひとつ選択をしもらいたいんだ。 ああ、『えらぶ』って事だよ」 「『えらぶ』んだね?ゆっくりりかいしたよ!で、まりさはなにをえらべばいいの!?ゆっくりしないでおしえてね!!」 「簡単さ、『れいむを殺して子供達を助ける』か『子供達を見殺しにしてれいむを生かす』か……さあ、ゆっくりえらんでいってね!」 「……ゆ?………ゆ!?ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!?」 一拍置いて言葉の意味を理解するまりさ。鬼畏惨は更に追い討ちをかけるように言葉を続ける。 「ああ、そのままにしておいても子供達も何匹か生き残るだろうけど、それじゃツマンナイからさ、まりさがどっちも選ばなかったら頃合を見て全員潰すから。」 「いやああああ!!!おねがいだからたすけてあげでえええ!!!」 「うん、だからどっちを?」 「そんなのえらべないいいいいい!!!」 「じゃあみんな潰すけど、いいんだね?」 「ぞれはだめええええ!!!たすけてあげでええええ!!!」 「堂々巡りだな……じゃ、選びやすいようにしてあげるよ。」 そう言うと鬼畏惨は囲いの中に入って行き、姉妹達が入っている箱を、蓋を開けてれいむの前でひっくり返した。 顔から地面に落ちたり、他の姉妹が上に乗っかったりして、大半が動けないでいる。そんな姉妹の中で、頭から落ちて逆さまになったまま動けない子ありすにれいむが近づいていく。 「だめえええ!!おちびちゃんにげてえええ!!」 「ゆっきゅ?」 「ゆっくりしんでねえええぇぇぇっ!!!」 底部が上を向いてる子ありすをれいむが噛み千切る、丁度、口の真ん中から下半分を失うような形だ。上顎だけピクピクと動かし、目はキョロキョロと周りを見回している、暫くして自分の体が半分無くなった事に気づき、痛みと恐怖で涙を滲ませる子ありす。れいむは半分になった子ありすを咥えると、囲いの隅に放り投げた。 「とどめなんかさしてあげないよ!!れいぱーありすはそこでずうううぅぅぅっと!くるしみながらしんでねっ!!!」 「ゆああああん!ありしゅううううう!!」 「まりじゃのいもうとがあああああ!!!」 「おかあしゃあああん!たちけてねええええ!」 「まりしゃはしにたくにゃいよ!ゆっくちにげりゅよ!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶや゛べでね゛え゛え゛え゛!!!ばりざの゛ごどもごろざな゛いでえ゛え゛え゛え゛!!!」 そして始まる小さな逃走劇。底部が不自由なれいむの移動速度では、全力で逃げる子ゆっくりを捕まえる事はまず出来ない。だがそれも広い空間での事だ、2m四方の囲いの中では大回りに移動する事が出来ない。姉妹達は迫り来る恐怖から全員で固まって逃げていた、こうなると、壁を背にしたとき壁側の子ゆっくりは初動が遅れる事になる、そして遅れた者の中から次の死者が出るのだ。 二匹目の犠牲者も子ありすだった。れいむはここでもありすを重点的に狙っていた。 この子ありすはれいむに押さえつけられ、身動きを封じられた。 「やめちぇえええ!!ありしゅのあんよだべにゃいでえええええ!!!」 まず押さえつけずに済むよう、底部を食いちぎる。 「いぢゃあ゛あ゛よ゛お゛お゛お゛!!!ありじゅのおべ、おべ、おべべがあ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 次に舌で両目を抉り、眼球がカスタードに繋がった状態で咀嚼する。 「んぐぉ!?ん…!ん…!んばばばば!!!」 最後に口内を口の部分ごと食いちぎる。 目を抉られ、口を縦長に食いちぎられた所為で、子ありすはまるで絵画『叫び』のような見た目になっていた。 三匹目は子まりさ。子ありすを捕まえようとしたのだが、先頭集団に居る子ありすを捕まえるのは困難だった為、近くでのそのそと動いていた姉妹の中で末っ子の子まりさに標的を変えたのだ。 「まりさににてるからってちょうしにのらないでねっ!!おまえもれいぱーのこだよっ!しんでもれいむにわびつづけてねっ!!!」 「あよ、あんよ゛!あんよはやめぢぇえ゛え゛え゛え゛!!!」 子ありすと同じように動きを封じるれいむ。 「までぃじゃのおぼうぢがあ゛あ゛あ゛あ゛!!?がえぢでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 子まりさの帽子を目の前で引き裂いていき、『おまえにはもうひつようないよ』と冷たく言い放つ。 「おぶぉっ!やべちぇええええ!!まりじゃのきれいなかみもってがないでえ゛え゛え゛え゛!!!」 今度は上から圧し掛かり、髪の毛を頭皮ごと引き千切る。 「ゆおおおお!?まりじゃのおはだが!!おべべがあ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 引き千切った頭皮から、まるでリンゴの皮を剥くように螺旋を描いて子まりさの皮を剥ぐ。瞼を失った眼球がぽろりと落ちて、れいむに踏み潰された。 最初の子ありすとは逆に、口の部分だけ残し餡塊となった子まりさ。わずかな大気の動きだけでも激痛なのだろう、しきりに痛みを訴えている。 四匹目の犠牲者が出たところで鬼畏惨が泣き喚くまりさに声をかけた。 「どうする?まりさ。」 「ゆああぁぁ……おちびちゃぁん…れいぶぅ……どぼぢてええぇぇ……?」 「やれやれ、まだ決められないのかい?最初にも言ったけど、決められないなら全員潰すよ?」 「ゆぃぃっ!?それはだめえええええ!!!」 「……まあ僕としては、子供達を残す方をお勧めするけどね。考えてもみなよ、仮にれいむを生かしたとして、まりさにどんな得があるっていうんだい? ま り さ の 子 を 殺 す よ う な ゆ っ く り な ん だ よ ?」 「……っ!?」 実際のところ、最初にれいむの手に掛かった子ありす以外はまだ生きていた。と言っても回復は絶望的で、中枢餡子のおかげで辛うじて意識が保っていられるという状態であり、とても『生きている』とは言い難い状態だった。 おちびちゃん……まりさのかわいいおちびちゃん………望んだすっきりじゃなかったけど、それでも大切に育ててきたまりさの子供達………。一緒にゆっくり出来る時間は少なかった、だからこれからすーりすーりもぺーろぺーろも沢山してあげるつもりだった………。けどもう4人も殺されちゃった…………。どうして?まりさはただみんなでゆっくr「おー、五匹目。喰っとる、喰っとる。」 「ゆ゛!?あ……あ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 「まりさが早く選ばないからだぞ??……ゆっくりした結果がこれだよ!ってやつだね。」 まりさが囲いの方を見ると、子まりさがれいむに丸ごと噛み潰されている最中だった。れいむの口の中で必至に助けを乞う子まりさ、れいむは姉妹達に見せ付けるように、ゆっくりと歯で圧力を加えていく。みちみちと皮の裂ける音が聞こえ、圧迫された餡子が子まりさの目から口からまむまむから少しずつ溢れてくる、そして張力の限界を迎えた顔が、音を立てて口から一文字に裂け、押し出される形で子まりさの中身が外へひり出された。 もうゆっくりしている暇など無い!まりさの心は決まった。 「……おにいざんっ!ばりさはおちびぢゃんだちをえらぶよっっ!!!」 「決まったか。確認するけど、子供達を助けるんだよね?」 「そうだよ゛っ!!まりざはまりざがうんだおぢびちゃんたちをまもる゛よっ!!」 「わかった、それじゃあ子供達を助けるとしよう。」 鬼畏惨が囲いへ向かうと、れいむが6匹目を捕まえようとしているところだった。鬼畏惨はれいむを掴み上げ、殺戮ショーを強制中止させる。 「じゃまするなああああああ!!!ころさせろおおおおおおおお!!!」 「おお狂気狂気、お楽しみのところ悪いんだけど終了な、しゅーりょー。」 「ゆっ…ぐ……?」 「ゆぅ、たすかっちゃの?」 「ゆ!もうだいじょーぶだよ!」 「ゆっきゅいできるよ!」 「ゆえぇぇ……でもいもうちょがあぁ…おねーちゃんがああぁぁ……」 姉妹達の死に涙を流す子供達、殺戮が終わっても残るのは地獄だった。子供達の事はひとまず捨て置き、掴んだれいむをまりさの入った箱に叩きつける鬼畏惨。 「ゆべっ!」 「ゆひいぃっ!れいむう!?」 透明な箱の外側に張り付いたれいむに小さく悲鳴を漏らすまりさ、憎悪に歪んだその顔は、『楽園』に来た頃のれいむとは完全に別のものへと変わっていた。 鬼畏惨はれいむを箱から引っぺがすと、箱のまりさと向き合うように押さえつける。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!はなせえええ!!あいつらぜんぶゆっくりできなくしてやるううううう!!!」 「ああ、あ……れい……む……」 「さあまりさ、良く見ておくんだよ? 君が『選んだ事』を、ね」 to be continued...⇒
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後編です 副題とかにも挑戦してみました 今作群は挑戦の塊です 思春期によくお世話になり、あとで顔から火を吐かせてくれるポエムにも挑戦です ちなみに発条(ぜんまい)です ではどうぞ 可愛い時計、止まって泣いた 優しい発条、笑って巻いた 時計と発条、仲良しこよし 何時も一組、笑ってる 「ちびちゃん、あさだよ」 「あちゃだよ、おねーしゃん!おねぼーさんはゆっくりできないよ」 「ゆ…、おかあ、さん?」 目を開けるとそこにはお母さんと妹の姿があった 「あたりまえだよ!れいむはちびちゃんのおかあさんにきまってるよ ゆふ、まだねぼけてるんだね」 そういって自分の顔をぺーろぺーろしてくれる しかし、震えが止まらない 何故だろう? ああ、そうか… 「ゆゆ…にゃんだかゆっくりできないゆめをみてたきがしゅるの… みゃみゃもぴゃぴゃもれーみゅもみんなどっかにいっちゃうの…」 「ゆふふ、うん、それはたしかにゆめだよ おかあさんもおとうさんもちびちゃんもちゃんとここにいるよ…」 まだ震えている体を丹念にペーろぺーろしていく その懐かしくゆっくりとした感覚に徐々に震えが収まって行く 「ゆゆ、もうだいじょうぶだよ! ぜんぶゆめだったんだね! ままもれーむもぱぱもちゃんといるね!」 半ば自分に言い聞かせるように、半ば確かめるようにはっきりとした口調で言った 「そうだよ、じゃあ、あさごはんだよ!」 「いっちょにむーちゃむーちゃしようね!」 元気の無い姉を気遣ってか仔れいむも元気一杯に話しかける そんな何気ない日常 かけがえのない日常 「今日」も何事も無く始まって行く… みんなで朝ごはんをむーしゃむーしゃした後 しばらくみんなでゆっくりした 何とも無い風を装っているがどこか元気の無い仔まりさが気になったのだろう 仔まりさがゆっくりしたのを確認し、父まりさは狩りに出かけて行った 「きょうもいっぱい、おいしいごはんさんとってくるよ! たのしみにしててね! れいむ、ちびちゃんたちをおねがいね!」 「ゆっくりまかせてね!まりさもけがしないようきをつけてね!」 何時ものやり取りの後、母れいむは朝ごはんの片づけをし仔とゆっくりし始めた ゆっくりと言ってもゆっくりしているのは子供ばかり おかしなことをしているんじゃないかと、危ない目に遭っているんじゃないかと母れいむは目が離せない、気が抜けない 命よりも大切な仔だ、絶対ゆっくりさせる そんな気持ちが無ければとてもじゃないが親なんてやっていられない お歌を歌ってもらったり、一緒になって練習したり 日向ぼっこをしたり、追いかけっこをしたり、一日はあっという間に過ぎていく 「ゆ!いまかえったよ!ごはんさんいっぱいとれたよ!」 父まりさがご飯を手(帽子)に帰って来た 夕ご飯を食べてゆっくりとした一日もこのまま終わる そう思った時だった 「たいへんだよー!」 ひどくゆっくりとしてない叫び声が群れに響く なにか大変なことが起きたと思い、れいむと仔を巣に残し父まりさが様子を見に行った 「どうしたの?」 辺りを跳ねまわるちぇんを捕まえて事情を聞いた 「ゲスだよ!むれのはじっこにいたゆっくりのおうちがおそわれたんだよー! すごくたくさんなんだよー! ゆっくりしないでにげるんだよー!」 そう言うや否やすぐさま他の所へ告げに行く 「ゆう…まずいよ…」 父まりさの体に冷や汗が流れる この辺りは比較的安全な地域で今まで群れが襲撃を受けた事が無い だから此処には集団的な戦闘経験のあるゆっくりはいない 早くもパニックが起きているようだ 本来は戦闘要員をかき集める役目のちぇんがあの調子では仕方がない とにかく一度お家に戻ろう … 「というわけなんだよ、みんなはまりさがもどるまでぜったいにおうちのそとにでないでね!」 「ゆ、わかったよ。ちびちゃんはれいむにまかせてね!…けが、しないでね…」 巣に戻ると、家族に状況を知らせた そして総崩れの群れを立て直すべく、長の所に近所の成体を連れて行くと父まりさは言った それを聞いて仔まりさはひどくゆっくり出来なくなった お父さんがもう帰って来ない…そんな気がしてならなかった しかし、群れに生きる以上戦いは義務である それに大切な人を守るために戦う事の大事さを繰り返し教えられて育ってきたまりさには止められなかった 「おとーしゃん…」 「どうしたのちびちゃん、あかちゃんことばになってるよ!」 「はやく…かえってきてね」 「ゆ!もちろんだよ!おとうさんならげすなんてあっというまにやっつけちゃうよ!」 これしか言えなかった 手近のお家から順に覗いていく しかし、パニックが起きてから暫く経つ、近所に残っていたゆっくりは少なかった それでもいっぱい(具体的には8体)集められた 「ゆ、それじゃみんなおさのところにいくよ!」 「「「「「「「えい、えい、ゆー!!!!!!!」」」」」」」 互いに鼓舞しあい今や敵地となった群れを進んでいく 慎重に敵の姿を探りながら行くが今の所、ゲスらしき物は居ない 「まちがいだったのかな…」 次第にはそんな事を言い出す始末 なんとか宥めながらなんとか長の所まで導いた 警戒なんてあったもんじゃない 「おさ?まりさだよ!しつれいするよ!」 返事も待たずお家へ入って行く しかしそこに「あった」物は… 「「「「「「「「おざああああああああ!?」」」」」」」」 体を食いちぎられたうえ、れいぷされたのか全身から餡子を流し、茎を生やしている長だった物だった 如何に体格が大きいとはいえ、所詮はぱちゅりー、もみあげで二,三体を道連れにするので精一杯だったようだ 「おさがゆっくりさせられたよ!」 「もうだめだよ!さっさとにげるよ!」 「おさぁぁぁぁぁ」 元々無い戦意がさらに下がっていく 「ゆ、でもまだぱちゅりーがいるよ!」 まだ若いが長老一粒種、厳しく躾けられ、親の威光無しに見ても次期長確実とされている それを担ぎ上げ、群れに統制を取り戻そうと考えたのだ 「そうだね!まだぱちゅりーがいたね!」 「ぱちゅりーさえいれば、あと…でもたたかえる!」 僅かな希望に盛り上がる中一人のれいむが言った 「ぱちゅ、りー?」 「うんそうだよ!あのぱちゅりーならおさのかわりになれるよ!」 そう言いながられいむの視線の先を追う 「………」 人はあまりの衝撃を受けると話せなくなるという ゆっくりでも同様の様だ 長が庇うように立ちふさがる奥にそれはあった 二/三程が食われて無くなっている、次期長の骸が 「「「「「「ぱぢゅりぃぃぃぃぃいいいいい」」」」」」 もう駄目だ… 群れを掌握できる人材はもう居ないだろう 群れの中心に位置している長が屠られている以上、その周辺に居住していた長老達も無事ではないだろう こうなったら、ここを捨てるしかもう道は無い 「みんな、ゆっくりきいてね、もうむれはおしまいだよ!」 「ゆゆゆゆゆ?」 「どぼじでそんなこというのぉぉぉぉぉ!?」 「嘘だっ!」 「それでどうするの?」 なんか違うの混じっていたような気がするけど…まあ、いいや 「みんなでげすのこないところにおひっこしするよ!」 「でも、とちゅうでおそわれちゃうよ…」 「あかちゃんは?まだちいさくてとおくにはいけないよ?」 「ごはんは?おひっこしのじゅんびなんてしてないよ?」 問題は山積みだ でもやらなければ死を待つだけだ それに今の調子でばらばらに逃げるのではただ被害を増やすだけ、何とかして一定以上の規模で疎開したい 「じゃあ、みんなはここにのこってげすとたたかうの?」 「ゆう、そうはいわないけど…」 という物も居れば 「ゆ!おさのかたきうちだよ!げすにめにものみせてやるんだよ!」 等と盛り上がっている物も居る 会議は踊る、むしろ転がる 理性的な考えが苦手で、感情的なゆっくりがそんなにすぐに纏まる訳が無い まりさはこの後何かあっても長にはなりたくないなと痛感していた 「とりあえず、おそとにでよう!おはなしはそれからだよ!」 強引にでも話を進ませる そうしないと何時までも此処でゆっくりすることになるからだ 玄関を抜けるとそこには絶望があった 沢山のゲスがいた 予想通り、長老達のお飾りを持っている個体が散見される 皆やられてしまったのだろう 「ゆああああああああ」 景気のいい事を言っていた個体までも悲鳴を上げる 「みんなにげるよ!」 その場から逃げ出した 幸い、ゲス達は奪った食料を貪ったり、れいぷするのに忙しかったりして追いかけては来なかった 「みんな、いそいでね!」 皆を急かした後、お家へ入る 「みんな、ゆっくりしないできいてね!」 「まりさ、どうしたの?」 只事ではない、そう察した 「おひっこしするよ!みんなでげすのこないところでゆっくりするよ!」 「だからどうして?」 「おさも、おさのぱちゅりーも、ちょーろーもみんなゆっくりしちゃったんだよ! だからおひっこしするんだよ!」 よく分からないがこれ以上問いかけている時間は無さそうだ 「おちびちゃん、おひっこしするよ!みんなでごはんさんもっていこうね!」 「「わかった(ちゃ)よ!」」 片っ端からご飯を口へ詰め込み、家を出た もう帰る事の無い、お家…ゆっくり出来ない気分で眺め振り切った 「みんな、じゅんびはできたね!おやまにいくよ!おやまならかくれるところがたくさんあるからだいじょうぶだよ!」 そう言って導いていく父まりさ しかし 「いきのいい、ゆっくりがいたんだぜ!」 「でいぶはしんぐるまざーなんだよ!ゆっくりごはんさんになってね!」 「にげられないんだよー、でもにげまわってたのしませてほしーんだよー、むごたらしくしんでね!」 無数のげす達が追いかけてくる このままじゃ逃げきれない! 「みんな、かぞくをまもるよ!いっしょにたたかってね!」 足止めするべく立ち止まり、他の一家の父親に一緒に戦うよう求める 「いやなのぜ!まりさはにげるのぜ!」 「れいむもにげるよ!かてないたたかいをするのはゆっくりできないよ!」 「かちめのないたたかいはとかいはじゃないわ!」 皆まりさを置いて逃げ出してしまった 「ゆううう、まりさひとりでもくいとめるよ!れいむはちびちゃんをおねがいね!」 「まりさ、だめだよ、いっしょににげよう!」 「だいじょうぶ、まりさはふじみなのぜ、おぼうしさんをれいむにあずけるから、かならずあとからおいつくのぜ」 危機を前に男性性が強くなったのか、ぜ言葉が出るまりさ 愛しのれいむにお帽子を押し付け後は振り返らず、げす達へ突っ込んでいく 「まりさ!…いぐよおちびちゃん、いそいでれいむのおくちにはいってね!」 こうなったらご飯どころではない 口に入れていた食糧を吐き出し、ちびちゃんを入れて跳ねる … どれくらい経っただろう、山へ入りしばしの休憩をとった すると声が近付いてきた 「にげられないんだよー!あきらめてねー!」 ちぇん! 一番厄介な奴が追いついてきた… (ゆう、れいむのあんよじゃ逃げきれないよ…) こうなったら… ちびちゃんたちの布団代わりに使っているまりさのお帽子を見つめる (やるしかないよ!…ゆふふ、たしかにおいつくね、まりさ…) 「ちびちゃん、いや、まりさ」 「なに?おかーさん?」 「これからおかーさんは…おかーさんはちょっとおはなししてくるよ おなじゆっくりだもん、はなせばわかるよ!」 「おかーしゃん…」 「だからちょっとのあいだれいむをおねがいするよ… おねーさんなんだからいもーとをゆっくりさせてあげてね! れいむ、おねーちゃんにわがままいっちゃだめだよ!」 「わかったよ、わかったからすぐかえってきてね!まりさとやくそくだよ!」 「わがみゃみゃいわにゃいよ!じゃからすぎゅかえってきてにぇ!」 「やくそくしたよ、だからふたりともゆっくりしてね!」 まりさの形見を目深にかぶり、茂みを飛び出していく 「れいみゅ…いくよ!」 「うん…」 「ゆがあああ、ゆっくりできないげすはじねええええええ」 凄まじい形相でちぇんに迫るれいむ 此処だけ見るとどちらが悪役か分からない その後夜を徹し、茂みに隠れながら逃げ続けた 分散したことが幸いしたのか、追手も分散し発見を免れた その後も山奥を目指し進み続ける 数日間逃げ続け、やっと雨宿りできそうな木の根元に落ち着く 何とか逃げ伸びる事は出来たようだ しかし、まだ狩りもできない子ども 草を食べて飢えをしのごうとした しかしまだ赤ゆに近いれいむの体はそれを受け付けなかった 家を出るときは真ん丸で可愛らしい赤ゆだったれいむ、今は見る影もなく萎んでしまった 「おねぇーしゃん…ゆっくりできなくて…ごめんね…」 「れいみゅ、れいみゅ!しんじゃだめだよ!ゆっくりしてね!」 懸命に声をかけ励まそうとする 「ごめんね…ごめんね…」 うわ言の様に繰り返し、最後に微かに痙攣を残し、れいむの短い生涯は終わった 「れいみゅうううううううううううう」 その後、数日間仔まりさの泣き声が途切れることはなかった 「ごべんねえええ、ゆっぐりざぜられなぐっで、ごべんねえええええ」 …… … その後小規模な群れの被害が相次ぎ、ようやく事態を重く見たどすたちにより群連合が締結された 各群れから抽出された精鋭で討伐軍が編成され、ゲス集団は壊滅していった ゲスの集団が消滅した今もその組織は残り、この地域の群の防衛にあたっている 「ごべんねえぇぇぇえ」 「おねえしゃん?おねえしゃん、ゆっくりしてね?」 ゆさゆさと体が揺すられる 「おねえしゃんだいじょうびゅ?」 「れいむ?」 「ゆ?ふりゃんだよ?」 「…」 しばし中に視線を彷徨わせる 「ゆ…ゆ!ごめんね、おこしちゃったかな?」 漸く状況が飲みこめた 夢を見ていたようだ 魘されて寝言を言ったらしい 「ううん、ねみゅれなかっちゃの…」 「そう、よかった…おひるねしすぎちゃったのかな?」 そうではない事は分かっているがその事を敢えて言うほど無神経ではない 「いっしょにすーやすーやしようね…ゆ、おうたさんうたってあげるよ」 ♪~ 柔らかな音色が紡がれていく (このこはぜったいにゆっくりさせるよ!れいむみたいにはぜったいしないよ、だからみまもっててね…れーみゅ…) 今度こそ二人は安息の世界へと沈みこんでいく… まりさとふらんが出会ってからもう一月近くたった 毎日草むら周辺をうろついて親ふらんの迎えを待っているが、いまだ邂逅を果たせていない もう待つのは限界だ、冬支度を始めなければならない 特にふらんが好きな茸はかなり少なくなっていた 「ふらん、今日はおねーさんと一緒に茸さん狩りに行こう!」 「ゆう?きのこしゃん?いきゅー」 「ゆん、じゃあ、おねーさんのおぼうしさんにのってね!ちょっととおくにいくよ!」 「おぼうしさんにのりゅの?」 「そうだよー、ゆいしょっと」 お帽子の縁にふらんを載せる 「ゆわああ、たきゃいよぉ、ふりゃんおそりゃをとんでるみちゃい」 「ゆふふ、どう?おちびちゃんきもちいい?」 「うん、きもちいい…」 羽に風を受け、まるで飛ぶような仕草をする 「ゆふふ、それじゃあ、おちないようにしっかりつかまっててね!」 「う~♪」 跳ねる事によって増した風にうっとりとして、ご機嫌な声が出る (ゆふふ、ちびちゃんゆっくりしてるね!) 「さあ、ついたよ!」 何時も茸をとる辺りに着いた ちびちゃんがはしゃぐもんだからつい張り切って跳ねてしまった 帰りはゆっくり帰ろう… 「きょきょでとりゅの?」 「そうだよー、こうしてね、木さんのしたとかにね、よくあるんだよー」 瞬く間に次々と茸を見つけて行く ふらんの目には何もないように見えたのにあっという間に集まっていく 「しゅごいよ!おねえしゃんしゅごいよ!」 「ゆへん、でもなれればちびちゃんにもすぐにできるようになるよ!」 「う~、ふりゃん、がんばりゅ!」 お帽子の上からきょろきょろとあたりを見回す 「おねーしゃん、あっちにきれいなきのこしゃんがありゅよ!」 「ゆー、どれどれ、…ゆう、ちびちゃんこのきのこさんはたべられないよ」 「そうにゃの?」 「たべるとあんこさんはくのがとまらなくなってゆっくりできないんだよ! ちびちゃんもきをつけてね!おねーちゃんもいっかいたべてひどいめにあったよ!」 「ゆゆ!?きょわいよ…」 「たべなければだいじょうぶだよ、あんしんしてね」 震えるふらんをあやす様にお帽子を跳ねさせ、高い高いをする 「うー!ふりゃんおしょらをとんじぇるみちゃい!」 山の天気の様に目まぐるしく変化するふらんの表情 まりさにはそんなちびちゃんが可愛らしくてたまらなかった 遊んでるんだか狩りしてるんだか、兎に角茸を集めて行く そうしていると近くにゆっくりの気配を感じた 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅちちていってね!」 この辺は偶に他のゆっくりと会う 過去の記憶からゆっくり嫌いを患っているまりさだがちゃんと挨拶を交わす まねしてふらんもちぇんに声を投げかける まりさに仔が居るなどとは思いもよらなかったから驚き帽子の上に視線を向ける 「ゆぴ!?ふ、ふらん!?」 お帽子に載せたふらんを見るなりちぇんは顔を強張らせた 「そうだよー、まりさのおちびちゃんだよ!ゆっくりしてるでしょ?」 「う、うん…そ、それじゃ、ちぇんはようじがあるからさよならーだよー」 そう言うなり逃げ出すように跳ねて行く 「ゆう?にゃんだったの?」 「わからないよー、ゆっくりできないこだったんだろうねー」 「おねーしゃん…」 ちぇんの口癖を真似てみると不安げな顔をしていたふらんの顔に笑顔が戻る (なんだったんだろう) そう思いつつ狩りを続けた 間もなく冬だ、もっと沢山のご飯を集めないと! 暫く跳ねていると茸だけでなく、色々な木の実も沢山見つけられた お帽子の中に獲物を詰めているとふらんも真似してYUN帽に詰めようとする しかし、底が浅くて僅かな量しか入らない 「ゆう、おねーしゃんのおぼうししゃんすごいよ! ごはんしゃんたくさんはいるし、ふりゃんものれりゅよ! ふりゃんもおねーしゃんみたいなおぼうしさんほしいよ!」 などと駄々をこね始めた 「ちびちゅんのおぼうしさんもかわいくってとってもゆっくりしてるよ! もっとおおきくなったらいっぱいごはんさんつめられるよ!」 と宥める まりさ自身も昔、お父さんに同じような事をよく言ったものだ しかしちゃんと大きくなって詰められるようになった 形は違うけど多分ちゃんと出来る様になるだろう そんな実感の籠った言葉を聞き機嫌を直す 「ゆ!ふりゃんもはやくおおききゅなりゅよ!」 「ゆふふ、たのしみにしてるよ…」 そうなったら別れの日は近い その時を想像してまりさはちょっと泣きそうになる 「ゆ~!きのこしゃんもっとさがしゅよ!」 しんみりしていると先にふらんが行ってしまった 「まってね!」 「はやきゅ、おねーしゃん!」 追いかけると更に逃げ、追いかけっこへ発展していった 恵みの秋はまたたく間に過ぎ去り、 冬は次第に深さを増していく… 出会ってから半年以上が経ち、冬を越し春を迎えた 久しぶりに外に出るとはしゃいで飛び回った 冬の間にすっかり成長し、赤ゆから仔ゆっくりへと成長を果たしていた 羽をぐんと伸ばして伸びをすると何だか飛べそうな気がしてきた 「ゆ!ふらん、おそらをとんでるよ!」 気がするだけではない、実際に飛んでいた それを見たまりさは仰天する 「おちびちゃんがおそらをとんでる!!!!」 「みてみておねーちゃん!」 驚くまりさを見て調子に乗って輪を描いて飛び、そばへ下りた 「すごいよ、おちびちゃん!まりさおそらをとぶゆっくりなんてみたことがないよ!」 興奮して頬を擦りつける 「あつい、あついよおねえちゃん!」 あまりに気を入れてすーりすーりをしたものだから、頬が熱を持ったのだ 「ごめんね、おちびちゃん」 ちょっと赤くなった頬をペーろぺーろしてあげる 「ゆうううう♪~」 半ベソかいていたがすぐに機嫌を直す ころころと笑顔を浮かべるのを見て、ぺろぺろをやめて言った 「それじゃあ、おちびちゃん、おねーちゃんかりにいってくるよ!」 そろそろ一人でいても大丈夫だろう 連れて行きたいがまだ雪解けから間もない、 「うん、ふらんおるすばんしてるよ!」 「とおくにいっちゃだめだよ!かわさんはあぶないからちかづいちゃだめだよ!」 念を押してから狩り場へと出かけて行った しかし、駄目と言われればやりたくなるのが子供と言う物 ちょっとだけならと川へ行ってしまった 「ゆう、すごいよ!」 雪解けを集めて速し、どっかの川 一時程ではないがまだまだ流量は多い 河原へ下りて行くとじんわりと水っけがあんよへ伝わってくる 「ちゅべたいっ!」 あんよも冷たいし、おねーさんにも注意されているしもう帰ろうと思った時 ふらんの目にある物が映った 「ゆう?」 そっと摘みあげる 「ゆああ、きれいだよ!ふらんのたからものにするよ!」 狩りを終えて帰って来たまりさを何も無いかったかの様に出迎える 「おちびちゃん、とおくにいってたね!」 あんよについた泥を見咎められ、怒られた 「もう、とおくへいかないよ。ゆるじてぇ」 泣きながら謝り、その後二人でご飯を食べた 何事もない(今日はあったけど)平穏な日々、今日からまた続くと信じていた …… … だが、その日は唐突に訪れた 群との交流が無いまりさの巣に5体ものゆっくりが訪れたのだ どうしても話したい事がある、だから子供を連れてついて来て欲しいと彼らは言う 善良そうな顔をしていて、手土産のご飯も沢山渡され 何より、来なければどうなるか、と声に出さずに凄んでくる 1対5では勝ち目が無い 何とか穏便に済ませようと要求をのみ、ふらんを連れ巣を出た そして彼らは言った 「ふらんをわたせ」 何故自分のおちびちゃんを取り上げようとするのかと語尾を荒げると 「ふらんはゆっくりをたべるゆっくり、そんなあくまのようなゆっくりがちかくにいられるとこまる」 「れみりゃいじょうのかいりきをほこるばけもの、おとなになられたらてにおえない」 「ゆっくりにとってしにがみのようなものだ、あれのおやをころすにもただいなひがいがでた」 ちびちゃんのお母さんを殺したのはお前たちか! 怒りにわなわなと体が震える 「ははおやだけではない、ちちおやもだ」 一体が誇らしげに言う ふらんに勝ったのだ、誇らしくないはずが無い 「はねなしだからなんとかてにおえた」 「はねなしのゆっくりしてないこだからみすててもしかたがない」 「はねなしでかりもできないおやだった、だからそいつはほんとうはもうしんでいたはずだ」 「そうだったはずをそうにするだけ、きにやむことはない」 親ふらんを悪しざまに侮蔑しながら説得しようとして来る その顔にはゆっくりしてない親から生まれたゆっくりしてない子どもを何故わざわざ育てようとするのか、という拭い切れない差別意識があった まりさには羽無しの意味は分からなかったが、兎に角ふらんのお母さんを見下しているのは分かる 不完全な物を嫌うゆっくり、生まれつき羽が無い奇形は捕食種と言えど軽侮の対象らしい これ以上をちびちゃんに聞かせられない そう思い、少しの間離れているように言った だがそれだけではない まりさの心にふらんを見捨ててゆっくりしたい 元々見ず知らずの仔だ、命をかけて守る必要はない そんな気持ちが生まれ、そばに居られなくなったからだ 「それにしてもゆっくりをくらい、そらをかけるゆっくりがじべたをはいずり、きのこやらくさやらをすにはこんでいくのはあわれだったぜ」 茸…そうかなんでちびちゃんが茸が好きだったのか それは親の愛情そのものの味、ゆっくりできる記憶が刺激されたんだろう その後も散々罵り、子供を見捨てることの正当さをまくしたてたのち、最後にこう言った 「ゆ、まりさはまいごのちびちゃんをそだててあげる、とってもゆっくりしたゆっくりだよ! だからおとなしくふらんをわたせばまりさにはなにもしないよ!」 「まりさたちはむれをだいひょーするしこゆなんだよ!つよいんだよ!おとなしくゆうこときいてね!」 こいつらは善良だ 大人しく言う事を聞き、ふらんを渡せば間違いなく自分を見逃すだろう 死ぬのは怖い ゆっくりしたい しかし… 不意に虚空へ今は亡き家族の顔が投影される お父さんだ (まりさの弱虫さんを叱っているのかな…すごく怖い顔だよ…) お母さんだ (まりさの卑怯を悲しんでいるのかな…すごく悲しそうだよ…) れいむだ いや、これは… (まりさの顔だ、それも小さいときの… 泣いてるの?怒ってるの?どうしてそんな顔をしてるの?) ああ、これは…またやるの?たいせつなひとをまたしなせるの?…憤っているんだ 最後に…ふらんの顔が浮かんだ 寝ている時、食べている時、一緒に遊んだ時、他愛のない顔ばかり思い出す 死神…悪魔… れみりゃ以上の化け物…ゆっくりの天敵 (だけど、だけど、だけど!ふらんはまりさのこだよ!) そう思い定めた直後、虚空に浮かぶ顔は無数の笑顔に変わった それが正しいと言わんばかりに 「ふらんは…わたさないよ!まりさはふらんのおかあさんだよ、なにがあってもぜったいにまもるんだよ! ふらんをわたせばみのがす? ばかなの?しぬの? じぶんのおちびちゃんをみすてていきのびるゆっくりがどこにいるの? はじをしってよね!ゆっくりできないよ!」 言ってしまった それを聞いたふらんの目から涙が溢れる 「ちび、にげろおおお」 ふらんの涙に違うものが混じる この言葉は偶然だろうが親ふらんがふらんに掛けた最後の言葉と同じだったからだ 逃げるふらんを背中で見ながらゆっくりと正対する 捕食種とやらを狩るほどの手慣れだ まず助からないだろう しかし、後悔は微塵もない もし生まれ変わりとやらが実在したとしてもまた同じ選択をするだろう それほどまでにこれが正しい事だと信じた そして…ゆっくりの信じる気持ちは力となる…! 「ゆああああああああ!!!」 多勢に無勢しかし果敢に挑んでいく ばぐん! 「ゆっぎいいいいい、あでぃずのおべべがあああああ」 一番手近に居た「饅頭」の目を噛み千切る 力が籠り過ぎていたせいか、ありすの大きくなった眼窩には何本か砕けた歯が残る この瞬間まりさはゆっくりではない化け物となったのだろう 「ゆがああああああああああああ!!!!」 どこん! 「ゆべえ、あぁぁ、ごほぅ、わがらないよー」 自身の体にも亀裂が走るほどの体当たりをかます 開いた傷口から餡子が流れる だが、痛みなど最早感じない すると 「ゆぎいいぃい?」 「ゆっくりできないばけものはさっさとしんでね!」 「おねえちゃん?」 その悲鳴を聞き思わず立ち止まるふらん 「ぐるなあああ、いげええええええ」 怒鳴り、追い返す 背中に違和感を感じる… ああ、刺されたんだ… これが枝さんの感触、いや、死の感触 だが 「ゆうううああああああああああ!!!」 渾身の力でそれを払う 今はまだお前はお呼びじゃない! 「へ、へいふほおふひは…」 「があああああ」 「ゆべっ…」 やたら口のでかい「饅頭」を潰し、次の敵を探す まだだ、まだ二匹いるはず! 横合いから旋風の様にやや小ぶりな影が襲う 「よくもみんなをぉおぉ!!!」 みょんの振り下ろすけんがまりさの眼球を砕く 普通のゆっくりならこれで怯む、間違ってはいない しかし…死を悟ったゆっくりが眼球一つで怯むわけがない 死を覚悟したゆっくりと戦った事が無い、それが致命的だった 「おああああああああ!!」 もはやゆっくり特有のゆ付きの叫びですらなくなった咆哮を上げ、怯むみょんに体当たりをかける 「ゆああああ、おびょ」 恐怖のあまり躱す事を忘れ青眼に構えたまま固まっていた そこに体当たりを受けたのだから、そのまま咽喉の奥まで突き刺さる 無論まりさも唯では済まなかった あごの下から突きぬけ、貫通したけんは口内で僅かに残っていた歯列を歯肉ごと吹き飛ばした あと…あと一人… 「うぱあぁぁ」 側面から刺された みょんの様な怯ます剣筋ではない、殺意の塊の一撃 こいつは… 「まりざああああああ」 突き破れよ、とばかりに突き刺されたけんに向け力を込めた 自棄になった訳ではない その方角には… 「ゆべ!?」 地肌がむき出しな崖があった 崖に叩き付けられ、さしものまりさも口からけんを離す しかし今の自分の力ではもう潰せない でも あとちょっと あとちょっと力が加われば! 「ゆぐ、へへそんなたいあたりきかないのぜ?」 余裕を取り戻したまりさが挑発する 「ゆぐ、ぐふぁ…ならまりさがてほんをみせてみるといい「のぜ」?」 オウム返しというのは案外効くものだ、特に餡子脳なゆっくりならば 自分の語尾をからかわれていきり立ったまりさは襤褸雑巾になったまりさに体当たりする それが罠とも気が付かずに 「ゆべええええ」 攻撃が当たるなり、大量の餡子を噴き出す 口からだけでなく、全身の傷から流れる 「それだけあんこさんはけばもうおしまいなのぜ。もうあきらめるのぜ、まりさはよくたたかったのぜ…」 ニヤ 親まりさが正にゆっくりらしいニヤけ面を浮かべる 「そうそう、あきらめどきがかんじんなのz」 「ぐおおああああああああああ!!」 勝利を確信した憎たらしい面に齧り付く 「むだなのz…ゆ?なんのおと?」 ずずずと何かが滑る音が聞こえる まりさ!上から来るぞ! 「うえ?」 上をみると大きな岩(人間目線では石)が滑り落ちてくる 「はなぜええええええ」 渾身の力を込めて親まりさを引き離そうとする 「やだよ!そんなたのみは…きけないよ!」 「ゆがああああああああああはなぜえええええええええ」 執念勝ちかまりさが親まりさを剥がすのに成功した だが時すでに遅し 「やっt」 ずん! まりさの体に深々と石が突き刺さり、そして裂ける 勝った… しかしもう動けそうにない ちびちゃんは逃げ延びただろうか… 追手がこれだけならいいんだけど そしてゆっくりと視界が狭まり、全てが暗黒へ包まれようとした時 機能を停止しようとしていたまりさの目に小さな影が飛び込んできた 「ふ、らん…きちゃだめって…にげてっていったでしょ…」 「でも、でもおねえちゃんがしんぱいだったの」 「しかたないこだね…ほら…なかないで…ゆっくりできないこたちは…もういないよ…」 「おねえじゃん…」 ああ、泣かないで… でももうすーりすーりもペーろぺーろもできない… できないよ… どうしたら… … そうだ… 「ふらん…」 「にゃ…に゛?」 「まえ…ほしが…てた…まりさ…のいちば…んだいじ…なおぼうしさ…んあげる…よ…だから…なきやんでね…」 「おねええじゃんん」 これを受け取ってしまったら、すぐにまりさがゆっくりしてしまうのではないかと思えて受取れなかった 「ふら…おぼ…し…まりさ…おも…て…ゆ…くりして…ね…」 「やじゃ、やじゃよ、おねえじゃんとずっといっしょにいるううう おねえじゃんしんじゃやだあああああ」 「も…とゆっ…りさせたか…た…ごめんね…」 ゆっくりしたかったではない、ゆっくりさせたかった そう最後に残し、静かに痙攣して、やがて止まった まりさの命は燃え尽き、体はゆっくりと唯の餡子へと還って往く 徐々に失われていくゆっくりとしての存在を感じ、ふらんの体が弛緩する するとふらんのお帽子が脱げてしまい、転がる ゆっくりにとって命と同程度の価値を持つお飾り、しかし今はそれに気をかけることすらなかった そしてその中から或る物が顔を覗かせる… 「あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 それは…水晶 一緒に永遠にゆっくりしようと「えんげーじりんぐ」としてまりさに渡そうとしていたもの… もう渡せない もう一緒にゆっくりできない もう…まりさは居ない もう、もう、もう、もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう!!!!!! 幼い子供が親に向ける無垢な愛情 そう言うには彼女のそれは深すぎた… 可愛い時計、またまた泣いてる 優しい発条、ただただ見てる 時計と発条、離れ離れ 可愛い時計、もう動かない 作者です 最後までお読みいただき、ありがとうございます 何か前篇後篇と言いながら、明らかに分量が変ですね 一つに纏めるか、前中後に別けるべきでした 前作コメントより 愛ででもいける ありがとうございます 実はこの話、元々の題は「ふらまり」で ただまったりとした愛で話のつもりでネタづくりしていました しかし、ちょっと魔が差しちゃいましてこんな話になりました どうしてこうなった… ではまた二部でお会いしましょう 追記 あと、この連話を書き終えたら名前を持とうかと思ってます 現在は一作目の名から観察あきとなっています それがいい、もしくはこっちの名の方がいい! というご意見ありましたらよろしくお願いします ふたば系ゆっくりいじめ 468 ありす観察日誌 ふたば系ゆっくりいじめ 556 ゆっくりこしていってね! ふたば系ゆっくりいじめ 606 うんうん ふたば系ゆっくりいじめ 620 ゆうかを量産工場 ふたば系ゆっくりいじめ 626 U.N.オーエンは彼女なのか?前半
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『ゴルフ場でゆっくりと』 21KB 虐待 不運 番い 子ゆ 自然界 現代 虐待人間 独自設定 21作目です。わいは鬼威惨や! ※ゆっくりに関する独自の言葉がいくつか出てきます ※作中に出てくる人物の行動はマナー的に推奨されません 「ゴルフ場でゆっくりと」 ゆっくりたちの朝はわりと遅い。 日が昇る前からせっせと鳥が鳴き、野良猫が生ゴミを虎視眈々と狙う中、 人々は、朝の短い時間を割と忙しく過ごしている。 「朝」と「忙しさ」は非常に縁が深く、「朝は忙しい」というのは人々の中ではもう定番なのだが、 一方でゆっくりたちは毎日、その時間は巣の中でゆっくりと眠っている。 ゆっくりは、本能的にゆっくりできないことをとても嫌うので、 朝の早い時間にせかせかするようなゆっくりは ゆっくりできないゆっくりとして仲間から敬遠されてしまう。 そのため朝ゆっくり(朝ゆっくり眠ること)はゆっくりたちにとって、とても重要なステータスなのだ。 この日はちょうど祝日、人々は貴重な休みの朝をゆったりと過ごす。 毎日が休日のようなゆっくりは、いつものように朝ゆっくりを堪能する。 午前10時を回ったころ、山の斜面にあるゆっくりの巣の中から 目を覚ました子ゆっくりたちの鳴き声が聞こえてきた。 「ゆゆん、おめめしゅっきりーーーー!!」 「れいみゅいっぱいしゅーやしゅーやしちゃよ」 「まりちゃはきょうもいっぱいゆっくちしゅりゅんだじぇ!!」 「おちびちゃんたちおそとにでてきてね」 一家は巣の中から出て、恒例の体操を始める。 「いちにー」 「ゆんゆん」 「にーにー」 「ゆんゆん」 「もっとおげんきに!」 「ゆん!ゆん!」 「おさげをぴこぴこ」 「ゆんゆんゆん」 「のーびのーびみーんなーで」 「ゆん!ゆん!ゆん!」 「おちびちゃんたちすっきりできたかなぁーー?」 「「「しゅっきりーーーー!!」」」 親れいむ、親まりさ、子ゆっくり8匹、計10匹の家族は 体操を終えてすっきりしたところで、ぞろぞろと巣の中に戻っていった。 「ゆゆ、のーびのーびしちゃらおにゃきゃがしゅいちゃよ」 「「「おにゃきゃしゅいちゃーーーーーー!!」」」 「さあおちびちゃんたちみんなでごはんさんをいっしょにむしゃむしゃしようね」 「「「ゆっくちーーーーー」」」 「あさごはんしゃん!!」 「ごはんさんはたべきれないくらいあるからみんなでなかよくむーしゃむーしゃするんだぜ」 「ゆわーーーい」 「ごはんしゃんいっぱいたべりゅよ!!」 「むーちゃむーちゃ、しあわしぇーーーー!!」 一家は遅めの朝食を取り始める。 人間の世界でいうと、夜型の生活スタイルに近いのだが、 ゆっくりたちにとっては、これが最も理想的な朝の過ごし方らしい。 「ゆぷぅ、おにゃきゃいっぱいだよ~」 「おにゃきゃいっぱいになったからしゅーやしゅーやしゅりゅよ」 食事を終えると、子ゆっくりたちは小一時間ほど二度寝をする。 子ゆっくりたちが大人しく寝ている間に、親ゆっくりは朝の狩りに出かける。 そして親ゆっくりが狩りから帰ってきた後、今度は一家揃ってお散歩に出かける。 「ゆっくりおさんぽだよ!!」 このゆっくり一家は、この場所に移り住んできてまだ間がないため、 毎日のお散歩でいろいろな場所を歩き回っている。 そして今まで散歩中に、餌場や水場など生活に必要な場所をいくつも発見している。 この日ゆっくり一家は、辺り一面が芝生に覆われた場所を発見することができた。 そこは、人工的に芝生が植えられたゴルフ場であった。 「ここはじめんがとてもふかふかさんでゆっくりできるよ!!」 そこをゴルフ場とは認識していないものの ゆっくり一家は、芝生のたくさん生えたゴルフ場でゆっくりとすることにした。 「ゆっくちーー!れいみゅはこ~りょこ~りょしゅるよ!!」 「ゆゆっ、まりちゃもいっしょにこ~りょこ~りょしゅりゅじぇ!!」 「ゆゆ!きょうしょうだよ!!」 「ゆふふ、れいむがいちばんはやいよ」 「ゆっふん、まりさのほうがはやいんだぜ!!」 「ゆ・・・まっちぇよぉおお~~れいみゅをおいていかにゃいでにぇ!!」 ゆっくり一家は芝生の上でころころ競争を始めた。 快調な出足を見せた親まりさ 一方で、姉妹でも一番下の子れいむが一匹、出遅れてその場に取り残されてしまった。 「ゆわあああん、れいみゅはひちょりぼっちだよぉおおおお!!!」 子れいむの泣き声を聞いたゆっくり一家は、ふと後ろを振り返る。 「ゆ!?なかないでねおちびちゃん、おかーさんがいっしょにゆっくりしてあげるよ」 「まったくしょうがないんだぜ。おちびちゃんにはやくなるこつをおしえてあげるんだぜ」 「まりちゃもいっしょにゆっくちしてあげりゅよ!!」 「ゆゆっ、みんにゃといっしょなられいみゅさびちくにゃいよ!!」 「そうだよおちびちゃん、みんなでいっしょにゆっくりしようね!!」 心地よい午後の風がそよそよと流れる。 気温はゆっくりたちにとって適温で、直射日光が適度にゆっくりたちの体を温めてくれる。 底部に優しく触れる芝生は、ゆっくちたちにとって本当に心地が良いらしく、 とてもゆっくりできる環境がゆっくりたちを至福の世界へ誘う。 「ゆう、にゃんだきゃとてもねむたくにゃってきたよ・・・」 眠気がピークに達したゆっくり一家は、みんないっしょに芝生の上でお昼寝することにした。 「む~にゃむ~にゃ」 「ゆっくち・・・・す~やす~や」 「すぴーっ、ゆゆっ、すぴーっ、ゆゆっ」 不安や心配事とは全く無縁のゆっくりたち、みんな芝生の上で気持ちよさそうに眠っている。 空は雲ひとつない青空 鳥の黒い影が青いキャンパスを飛び交う 地面には青々とした芝生が生い茂り 山の高嶺から見降ろすと まるで緑の綺麗な空に黒い星がポツリポツリと浮かんでいるよう その黒い星は赤く光ったり黄色く光ったりしてコントラストを作り 緑の空を、汚くよごしている ゆっくり一家が昼寝を始めてから30分後、事件は起きた。 「ゆっ、しーしーがしちゃいよ」 尿意を催した一番下の子れいむが目を覚ました。 「そりょ~り、そりょ~りゆべっ、ゆっ、ゆぴーーーたすけちぇえええ!!!」 子ゆっくりの悲鳴で2匹の親ゆっくりは目を覚ました。 「ゆ!おちびちゃんのゆっくりできないこえがするよ。おちびちゃんはどこにいるの?」 「たすけちぇえええきょっちだよおおおおお」 「あっちのほうだぜ」 親れいむと親まりさは、声のする方向へ急ぎ足で向かっていく。 他の子ゆっくりたちは、姉妹の悲鳴が聞こえてもまだ昼寝を続けている。 「たすけちぇえええ」 「ゆんしょ、ゆんしょ、ゆゆっ、このあなさんからきこえてくるよ!!」 助けを求める子ゆっくりは、グリーン上のカップの中にいた。 カップの穴は直径、深さともに10cmほど、カップの中心には旗が立っていて、 子ゆっくりはちょうど旗とカップの隙間に挟まっていた。 子ゆっくりはカップの中で泣きながら、必死にのーびのーびを繰り返しているのだが、 子ゆっくりのゆん力(ゆっくりしたいという望みから出る底力)では外に出ることができないようだ。 「いまたすけてあげるんだぜ」 子ゆっくりを助けようと、親まりさは自ゆんの頭についたおさげを穴の中に垂らす。 穴の中にいる子ゆっくりは、上から垂らされたおさげにしがみつこうと口をパクパク動かす。 しかし残念ながら、まりさのおさげは子ゆっくりのところまで届かないようだ。 「ゆっくちできにゃいよおおおおお」 「おちびちゃんがんばってね。あとすこしだよ!!」 「ゆうう、なにかほかにいいほうほうが・・・ゆゆっあんなところにきのえださんがあるんだぜ」 「れいむはきのえださんをとってくるよ!!」 親れいむはグリーンから離れて木の枝と呼ぶ物体に近づき、それを口にくわえて運ぼうとする。 「ゆんしょゆんしょ・・・ゆっ、うごかないよ」 「ゆっくちしちゃいよぉおおおおお!!!!」 「おちびちゃんあとすこしだよ、あとすこしでたすかるからね。れいむはやくするんだぜ」 「うごけぇええええ・・・ゆぅゆぅ・・・・どぼぢでえ゛だざんはうごいでぐれ゛な゛いのお゛お゛お゛お゛」 親れいむが運ぼうとしている物はOBの杭だった。 地面にしっかりと埋まっているので、一匹のゆっくりが引っ張った程度ではびくともしない。 それにOBの杭は大きすぎて、子ゆっくりを助けるには見当違い、ということがれいむには分からない。 遠くから見ると、OBの杭が枝ほどの大きさに見えたので、 OBの杭は枝ほどの大きさだ、という先入観がれいむの頭の中を支配しているのだ。 「れいむはやくするんだぜ!!!・・ゆゆ!?あっちにもえださんがあるんだぜ」 れいむのいる反対方向に、まりさは別の枝のようなものを発見した。 「まりさがあれをとってくるんだぜ」 「おきゃーしゃんいきゃにゃいで。れいみゅひちょりぼっちだよぉおおおおお」 目的の物に向かってぴょんぴょんと跳ねていく親まりさ、 気が付くとツルツルした芝は少し深くなり、道も下り坂になってきている。 「ゆん、ゆん、ゆん、ゆゆ?こーろこーろするんだぜ」 「ゆゆ?まりさどこにいったの??」 「おきゃーしゃーーーーん」 下り坂はますます急になり、親まりさは前のめりになって転がり始める。 「こーろこーろゆぶっ、・・・・ゆゆ、ゆぺ、ゆぺっなんだかさらさらするんだぜ」 親まりさは、グリーン傍にあるバンカーに落ちてしまったようだ。 「えださんはどこいったんだぜ?ゆゆ、あんなところにあるんだぜ」 親まりさが枝と呼ぶものは、バンカーの砂を平らにする長さ2mほどのトンボだった。 その肝心のトンボはバンカーの外に置いてある。 やはりゆっくりは餡子脳、2匹とも全く見当違いな物を持っていこうとしている。 トンボを持っていこうとするにも、とりあえず親まりさはバンカーから外に出なければならない。しかし、 「ゆっ、ゆっ、ゆ?」 バンカーの縁はあり地獄の巣のようになっていて 親まりさが外に出ようとすると砂が崩れて、再びバンカーの中へ戻されてしまう。 コロコロ 「ゆぺっ、ゆぺっ、ゆうううんおそとにでられないんだぜ」 するとそこへ、まりさを探していたれいむが姿を現した。 「ゆゆ、まりさをみつけたよ・・ゆ、こーろこーろするよ!!」 コロコロ、ドスン 「ゆぺっ、すながおめめにはいったよぉおおおおお」 親ゆっくりは2匹揃ってバンカーにはまってしまった。 「れいむそんなことよりここからでておちびちゃんをたすけるんだぜ」 「ゆああああんおめめがいちゃくてみえないよぉおおおおおお」 「しかたないんだぜ。まりさがおめめをぺーろぺーろしてあげるんだぜ」 砂のついた舌で、れいむの目を舐め始めるまりさ。 「ゆ、ゆ、ゆ!?よけいにおめめがいちゃいよぉおおおおおおお!!」 「わがままいうなだぜ。それよりおちびちゃんをたすけないといけないんだぜ」 「・・・ゆ?おきゃーしゃんちゃちのおこえがしゅるよ」 「おきゃーしゃんはどこにいりゅの?」 近くで眠っていた子ゆっくり全ゆんが目を覚ました。 「ゆ!?おちびちゃんはこっちにきちゃだめなんだぜ!!!」 「ゆゆ!おきゃーしゃんちゃちあしょんでりゅみちゃいだよ」 「まりちゃもいっしょにあしょぶんだじぇ!!!」 「ゆわーーーいこーりょこーりょしゅるよ!!」 7匹の子ゆっくりが、親ゆっくりのいるバンカーの中へ転がりこんでいった。 「こーりょこーりょゆべ、いちゃいよぉおおおおおおしゅにゃがおめめにはいちゃよぉおおおおお」 「ゆぶ、おくちがむじゅむじゅしゅるよ」 「きょきょはにゃんだかゆっくちできにゃいにょじぇ」 「ゆぴーーーーおきゃーしゃんはやくたすけちぇええええええ」 「おちびちゃんたちおちつくんだぜ」 「おめめがいちゃいよぉおおおお」 「れいむもとにかくおちつくんだぜ」 ゆっくり一家はもう大パニックである。 ゆっくりできないストレスからわんわん泣き始める子ゆっくりたち、 その泣き声につられるように、目に砂が入ったれいむも大声で泣き始める。 まりさは何とかこの状況を打開しようと試みるも、バンカーの外へ出ることができないでいた。 それから数分後、ふぁーーーという変な声と共に、ゆっくり一家のいるバンカーに何かが飛んできた。 「ゆゆ?これはいったいなんなのぜ??」 一家がパニックに陥っている中、まりさだけが飛んできたものを冷静に観察していた。 しかしまりさには、白くて丸いそれが何なのか分からなかった。 さらに数分すると人の声が聞こえてきた。 「ったくもうやってらんね。隣のホールに打ち込んだのこれで何回目だろ・・・・ん?」 ゆっくり一家の前にやってきたのは、ゴルフをプレー中のおにいさんだった。 その顔は、あからさまに苛立ちの表情をしている。 「ゆ!ゆっくりしていってね!!」 「ああ、ゆっくりどもがバンカーにはまってら」 「おにいさんはゆっくりできるにんげんさんなのぜ?」 「いや全然ゆっくりしてねぇよ。」 「ゆ!?ゆっくりしていってね!!おにいさん、まりさたちをたすけてほしいんだぜ!!!」 「れいむはおめめがいたいよ」 「ゆわああんまりちゃもおめめがいちゃいいちゃいだよぉおおお」 「なるほどなるほど」 おにいさんはニヤッと笑みを浮かべた。 「おーーーい、俺ギブアップ!!それからここ最終ホールだから、俺はちょっと寄り道してから帰るわーーー」 「ゆゆ?」 「さてと、おや?あっちにも一匹いるみたいだな。このホールは人がいないようだし」 「そうなんだぜ、あっちのおちびちゃんもたすけてほしいんだぜ」 「あっちに行くことは行くが、ところでなんでてめえに指図されないといけないんだ?」 「ゆ!?」 「まあいい、連れてきてやるからそこで待ってろ」 「ゆ!おにいさんありがとうなんだぜ!!!」 カップの中でぴーぴー泣いている子れいむを拾い上げると、 おにいさんはすぐにゆっくり一家のもとへ戻ってきた。 「ゆゆ、おしょらをとんでりゅみちゃい!!」 「おにいさん、おちびちゃんをたすけてくれてありがとうなんだぜ!!!」 「なぁに、礼には及ばないさ。さて」 おにいさんは子れいむを少し強く握り始める。 「ゆびゃあああああああ」 「ゆっ、おちびちゃんがいたがってるんだぜ。はやくおちびちゃんをはなしてね!!!」 「だからなんでお前に指図されないといけないんだ?」 「ゆ!?」 子れいむを握る感触を存分に楽しむおにいさん。 一方で子れいむは、握られる度に大きな悲鳴をあげている。 「ゆげあああああああああああ」 「はやくやめてあげてね!!」 「いやだ」 「ゆっ、お゛にいさんはどうじでそんなごどする゛の?」 「一回ウィニングボール投げるの真似してみたかったんだよなぁ、そーーーれっ」 おにいさんが投げた子れいむは、見事な放物線を描きながら その先にある池にポチャンと落ちた。 いくら落ちたのが池とはいえ、かなり高いところから落ちたので 着水した瞬間に子れいむは破裂していることだろう。 「おちびちゃんになんてことするのぉおおおおおお」 「なにがあったのまりさ?」 「あのおにいしゃんはゆっくちできにゃいよ」 「ゆっくちにげりゅよ!!」 「ゆゆ?まりちゃをおいていきゃにゃいでにぇ!!」 子ゆっくりたちはバンカーの砂の上をもぞもぞと動き、足をとられながも逃げようとする。 だが、そもそもバンカーから出られないからおにいさんに助けを求めたのだから、 そんなゆっくりたちがおにいさんから逃げられる訳がない。 「さて次は、特に丸っこいコイツがいいな」 「ゆゆ!おしょらをとんでるみたいだじぇ!!」 一番丸々と太った子まりさがバンカーの外に出された。 「ゆ!おちびちゃんがおそとにでられたんだぜ。おにいさんありがとうなんだぜ!!」 「しーーーーっ!ショット前はお静かに」 「ゆゆ?おにいしゃんゆっくちしちぇ」 ビュン 「びゅっ」 「ナイスショット!」 「ゆ?おちびちゃんどこにいったんだぜ?」 ゆっくりたちが認識できないくらいの速さで、子まりさの体は四散した。 お兄さんの握ったクラブのフェース(ボールを打つ部分)には、小さな小麦粉の皮がペタっとくっついていた。 「おちびちゃんは星になったのさ」 散った餡子は無数の黒い塊となり、流星群のように地面へ降り注いでいく。 「ゆ、なにかとんできたよ。ぺーろぺーろ、ゆゆっ、これはあまあまさんだよ!!」 「あまあましゃん?」 「ぺーりょぺーりょ、し、しあわしぇええええ」 子ゆっくりたちは、今まで味わったことの無い至高のあまあまの味に魅了され、 口の中をむずむずさせながらも、砂の上に散在する餡子を夢中で舐め始めた。 「おにいさんがあまあまさんをくれたんだね!おにいさんありがとうなんだぜ」 「本当にどこまでもめでたいやつらだ。さて今度はパットの練習でもしようかな」 バンカーの中にいる子れいむを一匹ひょいっと持ち上げ、グリーンの上に置く。 おにいさんは今度はパターを持ち、ラインを読むフリをする。 「このグリーンは順目だからフックして・・・ああよく知らないけどまあいいや」 「おにいしゃんもっちょあまあましゃんちょうだいにぇ!!」 「よっと」 「ゆびゃ、ゆぴいいいいいちゃいよぉおおおこーりょこーりょしゅりゅよ!いちゃいよぉおおおこーりょこーりょ」 「にぎやかなやつだ。おお、でもいいとこいった。入るか入るか!!ああ惜しい、あと少し左だったか」 ゆっくりなど、グリーン上をどれくらいの速度で転がるか想像もつかないのに おにいさんは一発でその感覚を捉えることができた。 ゆっくりを使ったボールでなら、おにいさんはプロゴルファーを目指せるかもしれない。 ただ、パター以外で打つと簡単にボールが潰れてしまうのが残念な点だ。 「おちびちゃんのひめいがきこえるよ」 「次は親ゆっくりと子ゆっくりのコラボでいくか」 バンカーの中にいる親れいむと子れいむを持ち上げ、 親れいむの頭に木製のティーを刺してから、芝の上に置く。 「ゆぎゃっ、なんだかちくっとしたよ」 そしてティーの上に子れいむを乗せる。 「ゆわーい!れいみゅはおきゃーしゃんにたきゃたきゃいしてもらっちぇるよ!!!」 「ゆぎぎいちゃい。ゆぎゃ、おちびちゃんうごかないでね!!おちびちゃんがうごいたらいたいいたいになるんだよ!!!」 「ゆ?れいみゅはどこもいちゃくにゃいよ?」 「おちびちゃんじゃなくてゆぎゃっ、だからうごかないでっていってるでしょ!!」 「茶番はそのくらいにして、お静かに」 「たきゃいたきゃーーーぶっ」 「ゆげえええええええ」 「あらら、大きくダフッたな。失敗失敗」 おにいさんが振ったドライバーは 子れいむを消滅させ、さらにはティーごと親れいむの顔の一部を吹き飛ばした。 親れいむの顔は、頭から額そして眉間にかけてドライバーの形に沿ってえぐれている。 えぐれた部分からは、体内の中枢餡がちらりと姿を見せている。 「れ、れいむーーーーーー!!」 「ゆがあああああああいちゃあああああああいいいいいいい」 目に砂が入ったときとは比較にならないほどの痛みが親れいむを襲う。 「まあああああありいいいいいざああああああああ」 「れいむしっかりするんだぜ!!まりさがたすけてあげるんだぜ!!」 「いじゃあああああああいいいいいい」 しかしバンカーから抜け出すことのできないまりさには、れいむに対して何をしてあげることもできない。 まりさはただ、苦しみ続けるれいむの姿を見届けるしかなかった。 「無力だな」 「ゆ!?」 「お前は自ゆんの家族を一匹たりとも救うことができない」 「そんなことないよ!れいむはまりさがたすけてあげるんだぜ!!!」 「そうか、じゃあお前に何ができるか見せてもらおう」 バンカーの中にいる4匹、グリーン上のカップ傍にいる1匹、計5匹の子ゆっくりを芝生の上に並べる。 最初は8匹いた子ゆっくりだったが、3匹おにいさんが殺したのであとは5匹しか残っていない。 「ゆ?おにいしゃんあまあましゃんくれりゅにょ?」 「とっととあまあましゃんよこちてにぇ!」 「あまあましゃんくれにゃいとぷきゅーしゅりゅよ!」 「おにーしゃんはゆっくちできにゃいにんげんしゃんだよ、みんなにげりゅよ!!!」 「にゃにいっちぇるのじぇ、おにーしゃんはみんにゃにあまあましゃんをくれりゅんだじぇ」 パターで叩かれた一匹だけは、おにいさんに痛いことをされたのを覚えているようだが、 それ以外の子ゆっくりはあまあまがもらえると期待し、体を伸び縮みさせながらそわそわしている。 「さあ、お前の大事な大事な子ゆっくり。早くしないと減っていくぞ。ひと~つ」 パシュ 「ゆゆ!あまあましゃん!!!」 「あまあましゃんがおしょらからふってきちゃよ!!!」 「あまあましゃんおいちいいい!!!」 「やっぱりおにーしゃんはゆっくちしちぇりゅのじぇ!!」 「まりさのおちびちゃんがあああああああ」 おにいさんは、今度はゆったりとクラブを振ったので 子ゆっくりがクラブに潰されてしまったことを、まりさははっきりと理解できた。 しかし依然として、子ゆっくりたちは空から降るあまあまに夢中になっている。 「おにいさんこれいじょうはやめてね、ゆっくりできないよ!!!」 「やめて欲しいなら力で何とかしてみろよ」 「ゆううう・・・おにいさんゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「むだむだ、俺に説得は通用しない。ふた~つ」 ザシュ 「どうじでおにいさんはゆっくりしないの?もっとゆっくりしてよぉおおおおおお」 最初は強気だったまりさのだぜ口調は、もうすでに哀願の口調になっている。 しかしどんなに口調が変わろうとも、おにいさんの心は動かない。 「またあまあましゃんがふってきちゃよ!!」 「あまあましゃんがいっぱいでとちぇもゆっくちできりゅね!!」 「ゆぷぅ、れいみゅはもうおなきゃいっぱいだよ」 「み~っつ」 「ゆあああああああああああああああ」 ブシュ 「あまあましゃん♪あまあましゃん♪」 「おきゃーしゃんもこっちにきていっしょにあまあましゃんたべようよ」 「どぼぢでお゛に゛いざんはごんな゛ひどい゛ごどずるの゛?」 「なぜって?それは・・・・・・」 「おにいさんはゆっくりはんせいっしてね!!」 「おまえらがゆっくりだからだ」 「ゆ!?」 「よ~っつ」 ゴシュ 「あまあましゃんたべほうだいぢゃよ!!」 「おねがいだからやめてね。まりさたちはただゆっくりしたいだけなんだよ」 「そうかもな」 「そうだよ!!だからこれいじょうまりさたちにひどいことするのはやめてね!!!」 「だが、俺もお前らを虐めてゆっくりしたいだけなんだよ」 「ゆゆ!?それじゃまりさたちはゆっくりできないよ!!」 「別にいいじゃないか。お前らがゆっくりできなくても、「俺」はゆっくりできるんだから」 「どぼぢでぞんな゛ごどいうのぉお゛お゛お゛ま゛りさたちだっていぎでるんだよ!!!」 「お前らが生きてるだと、はは」 「どうじでわらうのぉお゛お゛お゛」 「だっておまえら」 「ゆっくりだっていきてるんだよぉおおおおおおおおお」 「大半がもう死んでるじゃん」 「ゆ!?」 「そしてお前もすぐに死ぬ。はい、いつ~つ」 ボシュ 「さて残りはお前と、放っておいても死ぬあいつだけだ。あ、そういえばさっき、あいつを助けるって言ってたな」 「ゆ!そういえばれいむ!?れいむだいじょうぶ??」 「ば・・・・でぃ・・・・・・・っざ・・・・・・・」 「この状態で助けられるんだろ?お前の力で何とかしてみろよ。 ちなみに言っとくが、俺は物理的にこいつを助けることはできない。どちらにしろ助けようとも思わないが」 おにいさんはまりさの体をひょいっと持ち上げ、重症を負ったれいむの前に置いてやる。 「れいむ、ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「も・・・・・っど・・・・・・ゆっぐじ・・・・・じだがっだ・・・・・よ」 「ぺーろぺーろ、ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「・・・・・・・」 「ゆっくりしていってね!!!れいむはゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!」 まりさの訴えかけも虚しく、れいむはその後何も喋らなくなってしまった。 「やっぱり口先だけだったようだな。出来もしないのに大言を吐くんじゃねぇよ、ほら」 おにいさんは手に持ったアイアンを4、5度れいむに叩きつける。 するとれいむの姿は見るも無残な、ピラピラした皮の破片になってしまった。 「れいむうううううううううう!!!」 「ついでにお前も」 「ゆぎゃ、いだいよぉおおおおおおおお」 「そりゃアイアンで頬を殴ったら痛いだろうな」 「やめてよゆっくりできないよ」 「その言葉は聞き飽きた。もっと別の悲鳴を聞かせてくれ」 「おにいさんゆっくりしてね!!それからまりさをゆっくりさせてね!!」 「だめだこれからお前は死ぬんだ」 「いやじゃあああああゆっくりしたいよおおゆぶっ、うがあああああああああ」 おにいさんの振ったアイアンのフェースは、まりさの左頬から斜め下へ入り、 底面を削って右頬から真横へと抜けていった。 中枢餡は損傷を免れたものの、 シャフト(棒のところ)の部分はまりさの下顎を根こそぎ剥がしていった。 「次はどんな悲鳴を聞かせてくれるんだ?んん?ほら」 「びゅ、びゅえええええええええ」 2度目のアイアンはまりさの顔面に斜めから入り、 左眼球と上顎を真っ二つに裂いた。 「痛いか~?痛いのか~~~??」 「ゆううううううううう」 3、4度目のアイアンはわざと空振りさせ、 5度目のアイアンはまりさの頭の帽子に直撃し、帽子は数mほど前方に飛んでいった。 「さて最後はとっておきだ。この特大ドライバーで盛大に葬ってやろう」 「ゆああああああああああああああああ」 「派手に散れ」 ドシュッ ビルの屋上から地面へスイカを落としたように まりさの餡子は周りに激しく飛び散った。 小さな餡子の粒は、時間差で地面に落下していく。 表面の皮はドライバーのヘッドに絡みつき、 その皮には少量の餡子の残骸がへばりついていた。 ほんの30分前までは、平和に眠るゆっくり一家が10匹ほどこの場所にいたのだが、 この時点でゆっくりの形を留めた物はもう、ゆっくり一家の遺留品である10ヶのお飾りしか残されていない。 ゴルフ場でゆっくりと戯れたおにいさんは できる限り餡子の塊とゆっくりのお飾りを回収して、緑の上の汚れをクリーンにした後、 +10という数字をスコア用紙に書き込んでその場を後にした 鉄籠あき過去の作品 ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1213.html
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「そこのにんげんさん!れいむたちを かいゆっくりにしてください! おねがいします!」 国鉄と私鉄を繋ぐ連絡ルートでは、スーツ姿の人々が足早に行き交っていた。 その道端でゆっくりが人間に声を荒げて呼び掛けている。 声を掛けられたジャージ姿の青年が足を止めると、親である大きなれいむと小さな子れいむ、そして子まりさの前に歩み寄った 『あ? ゆっくりか? 飼いゆっくりにしろだと?』 「そうです! おねがいします! れいむは むかし かいゆっくり だったんです! れいむたちは にんげんさんが ゆっくりできるように がんばりますから! どうか れいむたちを かいゆっくりにしてください! おねがいします!」 そう言って親のれいむは頭を何度も青年に向かって下げると 『あーん…なら答えてみろ』 「ゆべっ!」 青年は親れいむの顔につま先をひっかけると、ひっくり返した。 『あのよ 何の病気を持ってるかも分からねェ様な、地べたで這ってる小汚いお前達をさ わざわざ拾って帰るなんてあり得ンのか? ペットショップでゆっくりを飼うくらいの金はあンだよ』 普通の野良よりは出来の良さそうな親れいむだったが 案の定、この人間はゆっくり達を邪険に扱った。 「ご、ごはんさんも きれいに むーしゃむーしゃするし うんうんも ちゃんと おといれで できます! おかたづけも だいじょうぶです! おちびちゃんたちも とても いいこに しつけてあります! ほら、おちびちゃんたちも にんげんさんに あいさつしてね!」 『あーだからよ、躾なんてのはペットショップで買えば最初から― この野良のゆっくりが のたまってる躾とやらがどんな程度なのかを青年は想像もしなかったが それなりの事を仕込んでいるのか、小さな子供達は親に言われるとすぐに青年の前に跳ねてきた。 ぷりぷりのお尻を揺らした子まりさと、満面の笑顔でモミアゲをピコっている子れいむは口を開いた。 「ゆ? にんげんしゃん まりしゃをゆっくちさせちぇにぇ! いみゃすぐだよ! はやきゅしにゃいと ぷきゅー すりゅよ!」 すでに子まりさは頬に空気を溜め込んでまん丸になりつつふんぞり返っていた。 「れいみゅも ゆっくちしちゃいよ! はやきゅ ゆっくちさせちぇにぇ! ぐずぐずしにゃいでにぇ!」 子れいむはモミアゲで タシッ!タシッ!と地面を叩き青年を叱責している。 ぷきゅー たしったしっ ぷきゅー たしったしっ ぷきゅー たしったしっ 『…』 親れいむのハラハラとした表情とは裏腹に生意気なツラをした子ゆっくり達は 青年を遥か下の地面から大きな人間に向かって、体を大きくのけぞらして見下している。 『…んだよソレ、ガキ共は外で産んだか、腹ボテったら家族丸ごと捨てられたクチだろ? 何が飼いゆっくりだよ そいつら完全に野良のレベルじぇねェか』 未だに青年に対して「ゆっくりしていってね!」の一言もなく子供達は「早く連れて帰れ!クズ!のろま!」と催促を繰り返している。 そんな様子を見て慌てて親れいむは子供達の近くに跳ね寄り 「どうして おちびちゃんたちぃぃいい!? ちゃんと おしえたとおりに ごあいさつしないのぉおおおおおお!? にんげんさんに かってもらえないでしょぉおおおお!?」 子まりさは悪びれることもなく前歯見せてニヤリとすると 「ゆ?まりしゃは いいこ なんだじぇ! じじいは そんなにゃことも わかんにゃいのかじぇ? ゆぷぷっ ばきゃ?」 「れいみゅも いいこだから ゆっくちさせちぇにぇ! あと あまあま ちょーらいにぇ! たくしゃんでも いいよ!」 罵倒の合わせてリズミカルに赤いモミアゲと黄色おさげが小気味良くピコピコしている。 それを壊れた玩具でもあるかのように一瞥すると、青年は親れいむの弁解も待たずに答えた。 『あのよ、お前らの【ごべんなざいぃぃぃいい!!!】も同じだけどな 機械的に【にんげんさんを ゆっくりさせてあげる】とか 【じぶんは いいこです】なんて言われても全く意味ねぇンだよ 気持ちが篭ってないどころか 完全に嘘吐いてンじゃねェかよ 誰が飼うんだそんなの? あぁ? ナメてんのカ?』 青年の表情が更に険しくなるのを見て顔をひきつらせていた親れいむは 太いモミアゲを器用に振り回して子供達を回収し、あんよの元へ無理矢理に並ばせた。 呼吸を整えると冷や汗をだらっだらに垂れ流しながら親れいむが叱る。 「おちびちゃんんんんん!!! そんなこと いっちゃだめでしょぉおおおお!!!!」 「そんにゃこちょより おうどん たべちゃい!」 「ゆっくちのひ~♪ まっちゃりのひ~♪」 親に抱っこでもされたと勘違いしているのか、なにも悪びれず子供達は喜んでいた。 『そういうワケだ 諦めとけ じゃな』 「まままま、まってね にんげんさん! おちびちゃんたちは まだこどもだからね!!! おっきくなったら にんげんさんを いっぱい ゆっくりさせて あげられるから!!! ほんとうだよ!!!」 『は? なんでガキ共が大きくなるまで待たなきゃいけねェんだよ じゃあよ ガキの今は人間をゆっくりさせられないって事じゃねェかよ 駄目じゃねェか そんな性悪子饅頭を飼って更正する義理なんての俺にはねェよ 阿呆か さっさと何処か遠くの見えない所で轢かれてろ』 「ゆわわわわわっ ごべんなざい!ごべんなざいぃいいいいい! おおおおおねがいだから れいむたちを かいゆっくりにしてくださいぃぃぃ!!! まりさが ずっとゆっくりしちゃってから れいむたち なんにちも なにも たべてないんですぅううう!! おねがいします!おねがいしますぅうう!!! せ、せめて なにか ごはんさんだけでも おねがいじばずぅぅ!!」 親の悲痛な叫びと ご飯という単語で苦楽の日々を思い出したのか 子供達は涙を浮かべて、表情をくしゃくしゃに潰していってた。 「ゆっぐっ……ゆっくちぢだぃぃぃ…ゆぇ…ゆぇえええんんん!!!!!」 「ゆっくちちゃいよぉおおお……ゆびぇえええええんんんんん!!!!!」 「おねがいじばすぅぅうう!!!おねがいじばすぅぅうう!!!」 親ゆっくりの叫びと、高音の鳴き声が不協和音で耳を蹂躙する。 それでも誰も ゆっくりの大声に振り返ることもなく、対峙しているのは青年だけだ。 『うるせェ 今すぐ一思いに踏み潰してやろうか? 餌がほしい? 相方がいなくなってひもじいだって? なあ教えてくれよ お前たちに施してやってヨ…俺に見返りはあンのか?」 「ごべんなざい!ごべんなざい! れいむたちは かわいそうなんですぅぅぅ どうか めぐんでくださいぃぃいい!!!!」 『ああ、そう、不幸そうだな 理屈は分かる …困った時はお互い様って言うよな』 「はいいいい!! ぜいたくは いいませんんんん!! やすものの ゆっくりふーどでも ふぁんたさんでも なんでもいいんですぅうううう!!!!」 『でもよ、お前達はゆっくり 俺は人間様 助けてやる義理も同情もどっから出てくンだ? これっぽっちもないんじゃねェか? 大体お前らって簡単に言えば道端の糞ゴミカスじゃんかよ それに餌やったら俺は景観を荒らす悪党になっちまうんだが、…お前達は俺にそんな事をしろっていうのか? そんな真似をしたら俺はゆっくり出来なくなるんだが? 人間をゆっくりさせてあげる? 何言ってんだお前』 「ちがいばずぅうううう! れいむたちは うんうんでも ごみでも ないですぅぅぅうう!!! わるいごどは じばぜんんんん!!! ただゆっくりしたいだけなんでずぅぅう!!! れいむたちも にんげんさんを ゆっくりさせばずがらあああ!!!」 体液を撒き散らしながら迫ってくるれいむは、景気良く青年の足蹴にされて地面を転がるが 子供達はボロボロの親の事も心配もせずに抗議の声を上げ始めた。 「ばーきゃ!ばーきゃ! まりしゃは まりしゃだもんんんんにぇ!!! じじいが ごみなんだじぇ! きちゃないにぇ! ごみは ぽいぽいなんだじぇ!」 「ゆゆ! くちゃい くちゃい! うんうんじじいは ゆっくちちにゃいで ちんでにぇえええ!!! れいみゅが しぇーしゃい すりゅよ!」 『あれ? あれれ? 挑発していいの? ん? 潰そうか? 飼ってもらう気あるの? …あー ガキ共はマジで救えないな こんなん野良でも生きていけねェよ 自分で死ぬんだったら ハナから生まれてくんなヨ』 青年が子ゆっくり達に靴底を向けると、親れいむが間に滑り込んだ。 「ゆわあああああ!! やめて!やめてくだざいぃいいいい!!! すびばぜんんんんんんん!!!!!! ごべんなざぃいいいいい!!!!」 すっ飛んで来た親れいむは、額を地面にズリズリグリグリこすり付けて謝っている。 「ごべんなざい!ごべんなざい!ごべんなざい!」 バッ!ゴス!バッ!ゴス!バッ!ゴス! 青年の目を見ては涙で謝罪すると、体操のように地面へ全力ヘッドバッドを繰り返す親れいむ。 長い溜め息を吐いてたっぷり間をおいた後、青年は親れいむに告げた。 『ああ、そうだ あれだ うん…飼ってやるよ』 「ゆ? ゆゆゆ!? ほんとですかぁぁあああああ!!? やっだぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!」 青年のイライラを敏感に牛皮から感じ取っていたのか ゆっくり出来ない最悪の結末を思い描いていた親れいむは 突然の展開に体液を至る所の穴から垂れ流して喜んだ。 親の小躍りする様子を見て子供達も一緒に跳ね回った。 「じじぃは やっちょ まりしゃの つよしゃに きづいたんだにぇ!! えりゃいよ! どりぇいから けりゃいにちて あげりゅよ!」 「ゆっぴゃ~ん♪ れいみゅ かわいくて ごめんにぇ!!! いっぱい れいみゅを ゆっくちさせちぇにぇ!」 ひとしきり騒ぎ終わった家族を見据えると青年は続けた。 『飼うのは 親だけだ』 「「「ゆ?」」」 「おおおおおちびちゃんたちも かいゆっくりにしてくださいぃぃぃぃ!!!!」 慌てて親れいむが青年に詰め寄るが、広いオデコに深い靴痕をつけて悲鳴を上げて転がった。 『あんでだよ クズじゃん そいつら』 「ゆっ…ゆぐぐ………ほ、ほんとうは いいこなんでずぅぅぅうう!! ちゃんと しつけますからぁああ!!」 『つかどう見ても 仕草も中身もゲスなんですって感じだろうが 後で躾けるってどういう事だよ 現在進行形でクソ小袋って認めてるじゃねェか 誰が好き好んでソレを飼うんだよ』 「じじい! ばきゃな おかあしゃんの きゃわりに まりしゃを かうんだじぇ! はやくちないと おこりゅのじぇ!」 「れいみゅが ゆっくち ちてたら じじいも ゆっくちできりゅでしょ? りきゃいできりゅ?」 子供達の罵倒などは耳に届いていないのか青年は親れいむに問いかけた。 『おい糞生ゴミ袋……選べや その誰の得にもならない糞ガキ供を見捨てるか、また路頭に迷うかだ オススメは人間のあずかり知らない所で家族揃って溺死 ラッキープレイスはドブ川な』 「かわいい おちびちゃんを おいていくことなんて できまぜんんんん!!!! どうかぁああ どうか みんな かいゆっくりにぃいいいい!!!!!」 『10…9…』 「むりでずぅ! えらべばぜんんんんん!!!」 『8…2 1 0 ドーン』 「ゆわあああああああああああああああああ!!!!!!!」 『はい 時間切れー あーあ みんな死んだね 今日も寒いもんなぁ その場所好きなんだろ? そこで死ねばいいんじゃネ? 俺は俺の暖かいゆっくりプレイスに行くわ んじゃな』 青年は野良れいむ達に背中を見せて何処かへ行こうとすると 親れいむが震えた声で呼び止めた。 「ま、まって ください……れ……………れ……………………………………れいむ…を…」 『あん?』 「ゆぐっ…れい………れいむ………………………だけ……………………かってください」 「「ゆゆ!?おかあしゃん!?」」 生まれた時から誰よりも味方でとっても便利な母親が、想定外の裏切りを始めて子供達は さすがに小さな目をひん剥いて親に向けて罵倒をするより始めに固まった。 『…お前さっき無理とか言ってなかったか?』 しかし親れいむの顔は、ゆっくりにしては いたたまれない真剣な表情を見せていた。 「おちびちゃんたち…ぜったいに…ぜったいに もどってくるからね! おかあさん こんどは がんばって きんばっじさんを とって いいゆっくりに なったら みんなを かいゆっくりにしてもらうからね!!!」 未だに硬直している子供達の傍によって優しく話しかける親れいむは いたって真面目だった。 『…』 「おにいさん…れいむを かってください れいむは ゆっくりしないで がんばりますから おやつもいりません すーりすーりも してもらわなくてもいいです おひるねもしません さんぽもいいです れいむは きんばっじさんを とって…にんげんさんを いっぱいゆっくりさせてあげます… だから… そしたら… おちびちゃんたちも…どうか…おちびちゃんたちも…かって…おうちで かってあげてください おねがいします…」 ゆっくりの考えは単純だ 可愛いれいむだから、子供も当然可愛い。 優秀なれいむならば、子供も当然優秀。 まだまだ無邪気な子供達はしょうがないが ある程度常識のある自分が、金バッジを付けれる真っ当な飼いゆっくりとなれば 同じ素質を持っている子供達も良い子のハズなので、一緒に飼ってもらおうと言っているのだ。 そんな無茶苦茶な提案に青年はハッキリと答えた。 『……そうか、わかった』 放心している子供達を抱えて俯いていた親れいむは、顔を上げた。 「にんげんさん!」 青年はしばらく目を瞑り、大きく一回息をすると無表情で一言だけ発した。 『断る』 「…………………………………………………ゆ?……えら…べって……ゆ……れいむは…かい……ゆっくり?」 『そもそも飼うとか嘘だし』 「…ゆ…ん?……ごべんなざい……れいむ がんばって りかいしますから…もっかいだけ…い、いってください…」 『親も子もどっちも飼わない そのまま残酷にコンクリの上で死ね』 そして三匹のゆっくりがそのまま硬直して数十秒がたった。 『だってな 野良とすっきりして子供こさえて、バッジを毟られて追い出されたっぽい生ゴミフルセットをどうして俺が?』 「れ、れ、れいむたちは…ごみなん― 『そんなゲスまがいのバツイチより 新しくて可愛い子ゆっくりでも買ってきて愛でた方がいいだろう?』 いつの間にか放心から回復した小さいのらが とりあえず馬鹿にされているのがやっと理解できたのか、親れいむから抜け出して青年の足元で跳ねる。 「ぷっきゅぅうううう!!! なにいっちぇるの? まりしゃの ほうが きゃわいいんだじぇ!!!! じじいの めだまは くさってるんだじぇ!」 「れいみゅの すべすべ おはだしゃんに うっちょり しにゃいでにぇ! あまあまくりぇるなら さわっちぇもいいよ!」 『黙れ 今すぐ爆発しろ …最初言ったろ? 人間様が お前たちに同情するわけないし聞く耳なんか持たねェってさ そろそろ気づけよ 俺は単におちょくってんだよ 暇つぶしだよ』 さっきまで太いモミアゲをブンブン振って頼み込んだり謝ったり喜んだりしていた親れいむは、もう口元が僅かに動くだけだった。 「…にん…げん…さん…?」 『なんで驚いた顔なんだよ 本当に道端で糞が空飛んでるみたいな声を張り上げていれば 人間から餌を貰えたり 家で飼ってもらえるとでも思ってたのか? お前が思ってるほど人間は甘くはねェんだよ むしろ人間同士ですらそんな綺麗事なんかねェのによ なのに腐った饅頭ごときのお前らが そんな真似してて真っ当な目に会えるハズないだろうが ゆっくりの物乞いなんかをまともに取り合う人間なんかいねェんだよ それでも来るのは保健所か酔っ払いか野良犬だよ こいつらの違いなんかねェぞ? みんなお前らを一片たりともゆっくりさせねェのばっかりだよ お前らがやっている事は無駄で無意味で自殺行為 ついでに騒音公害だ』 「…ゆ…あ…」 『もう一度聞くが、人間様が そこらで這擦ってる汚いゆっくりを飼ってやる必要性があるのか? 人間に面と向かって懇願するって事は、ゆっくりと人間様がどんだけ違うかわかってんだろ? その人間様がなんで 好きなゆっくりを店で買わないで、わざわざ道端のゴミをペットとして持ち帰るんだよ』 「ゆ……ゆぐぅ……れ、れいむたちも すこしは よごれてるけど… お、お、おんなじ ゆっくりだよ? おちびちゃんたちも すこし やんちゃだけど かわいいよ? そ、それに れいむたちは おんなじゆっくりだけど おかねさんが なくても かっていいんだよ!」 『かわいい? 可愛いだと? そいつら自分自身を可愛いとか何とかいつも言ってるがな 実際人間から見たら野良も そこらで売ってるのも器量の差なんて分かんねェよ 可愛いか? ブサイクか? 知るかよ』 「だったら おそとでくらしている れいむたちも おみせの ゆっくりも おんなじでしょう!!! だから― 『けどよ、さっきから人間様に向かって暴言吐きまくってるそいつらさ どんなに見た目が可愛く見えたとしてもな 人間様に向かって口から屁を吹く そいつらを俺が可愛いって感じると思ってンのか? いいか? 可愛いから飼うんだぞ? なのに何やらかしてンだ?』 「おちびちゃんたちは かわいい…よ? ちょっと げんき すぎな だけで…」 『"可愛いと自称する"ゆっくりを飼うんじゃなくてな…"可愛く見える"ゆっくりを飼うんだよ 可愛いれいむだから人間に飼ってもらえる? 人間はれいむを見ていればゆっくりできる? だかられいむをゆっくりさせる恩返しをしなくちゃってか? よく聞くなこんなの 可愛いってのは永久属性の資格でもなんでもねェんだぞ? 手前自身がどう思ってようが関係ねェだろうが 飼い主なりに認められなきゃ意味ねェだろ? 自分が可愛かろうと驕って偉そうに暴言我侭三昧のゴミクズ玉が、いったいどうして可愛いんだよ はっきり言ってそいつは何一つ可愛くねェよ 意味分かんねェな 自分で自分を可愛くなくしてんじゃねェか』 「……それは、ちゃんと…し、しつけを…」 『そんなの躾けてる時点で 元は性格悪いって事だろ 今現在可愛くねェのに いらねェよ』 「だから れいむを さきに…」 『野良を飼え? ほしかったら店でちゃんとしたの金出すつってんだろ いらねェよ』 「………………なら………………どうずればいいの?」 『聞くなよ どうしようもねェよ お前らは何も出来ない 何も成れない ただのゴミだ』 「れれれれれれいむは、おおお、おうたをうたいますぅ!」 『歌ってゆっくり出来るなら そうやってお互いに歌いあって死ぬまで過ごしてろ お前のゲップみたいな歌なんて人間様には通じないんだよ お前飼いゆっくりなのに分からなかったのか? どうせ俺が来る前も歌っていたんだろ?誰か上手だと褒めてくれたか? そもそも足を止めて聞いてくれたか? 外で歌ってンのなんか只の騒音だろ? お前達がどれだけ考えて どうやったとしても、人間をゆっくりさせるなんて出来るハズがねェんだよ』 「……………ゅ………ぁ…」 いつの間にか親れいむは真っ白だった。髪の毛も飾りも。 親れいむは数日前まで誠実な飼いゆっくりだった。 それが街中に放り出されてしまえば、ちゃんとした寝ぐらやご飯など用意出来るはずもない。 しかしそこいらの物乞いしている野良とは違う絶対の自信が、親れいむの中にはあったのだ。 自分は飼われた事がある。自分はゆっくりの中でも飼いゆっくりとして扱われる資質があると。 元飼いゆっくりとしてアピールすれば、またどこかの人間に飼ってもらえる。 それは他にサバイバルな能力も何も持たない親れいむの 最後であり最良の方法だと、親れいむはこれに全てを賭けていた。 が、全部意味がないと言われてしまった。 たまたま話しかけた人間が悪かったとは思わなかった。 今、外で暮らしているのは前の飼い主のわがままに過ぎない。 れいむの取った手段は完璧であり否の打ち所もなく完全の作戦だと思っていたからだ。 失敗などはありえない。一度人間に飼われているゆっくりなのだから、きっかえさえあればどんな人間でも飼ってくれるハズなのだ。 もしも上手くいかないのならば………………………………………全てが れいむの勘違いと思い込みに過ぎなかったっという事だ。 そして、れいむには、もう、何も残っていない。 誰かをゆっくりさせてあげれば、自分もゆっくり出来る。 それは子供の頃から飼育員さんに教わっていたし、前の家での暮らし中でも心の底から理解していた。 けれど れいむの歌は人間さんには届かない。ただの騒音だから人間さんをゆっくりさせてあげられない。だかられいむ達もゆっくり出来ない。 れいむの子供達は可愛く見てもらえない。粗暴で我侭だから人間さんをゆっくりさせてあげられない。だかられいむ達もゆっくり出来ない。 れいむは飼ってもらえない。汚い野良だから人間さんをゆっくりさせてあげられない。だかられいむ達もゆっくり出来ない。 ゆっくりしたい。 もっとゆっくりと暮らしたい。けれどれいむ達は、お外の野良だから無理だ。 可愛い子供達を見せて飼ってもらおう。けれどれいむ達は、意地汚い野良だから無理だ。 上手なお歌を歌って飼ってもらおう。けれどれいむ達は、五月蝿い野良だから無理だ。 じゃあ野良じゃなかったら飼ってもらえるんだ。もう野良なんか止めよう。野良じゃなくて飼いゆっくりだったらいいんだ。 でもれいむ達は野良だから飼いゆっくりにはしてもらえない。なら野良じゃなくて誰かに飼って貰えばいい。けれどれいむ達は― 「…………………………………………………………………………………………………………………………………………」 『精々、惨めに死ねや』 『あ、一つだけあったわ』 「やりばずぅううううう!!! がんばりばずぅうううう!!!! れいむは かいゆっくりに なり ばずがりゃぁぁああああ!!」 『暇つぶしに付き合ってくれよ それなら俺もゆっくり出来る』 青年は初めて笑顔になり親れいむの頭をぽんぽんと叩いた。 「わがりばじだ! おうたですか!? かくれんぼですか!? おままごとですか!? れいむ ゆっくりしないで がんばりばず!!! にんげんさんを ゆっくりさせばず! ゆっぐり!ゆっぐり!ゆっぐり!」 『いや、暇"潰し"でいいゾ』 「ゆっ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ※おまんじゅうあきさん いんすぱいあ どっと こむ ※いつものかんじです せっきょうものが にがてなひとは もどるぼたんを おしてね ※ほとんど せりふだけです by キガフレ 挿絵:M1
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餡庫ンペ09参加作品です。 テーマは差別、キー要素は家出です。 「ふたば系ゆっくりいじめ 598 赤ありすと、まりさ一家 前編」の続きです。 作者はマ・あき。 以前「まりさがんばる」「まりさがんばった」を書きました。 赤ありすと、まりさ一家 後編 届かなかった。 お家には夜毎いしさんがぶつかってきた。 もう一家にも理解できた。 いしさんが、ゆっくりできないのではない。 ゆっくりできない、ゆっくりの仕業だ。 一家のお家に、いしさんをぶつけているのだ。 一家は満足に眠れない。 一家が外を出歩けば、赤ありすとそれを匿う一家を非難する声が聞こえる。 だが、面と向かって言ってくるゆっくりはいない。 声のする方を見れば、みんな黙って視線を外す。 気が滅入る。 姉妹と一緒に遊んでくれる子ゆっくりが減っていった。 最初は気のせいかと思っていたが、どんどん数が減り、今ではもう何匹も残っていない。 特に仲の良い子ちぇんと他に数匹だけだ。 姉妹だけで遊ぶことが増えた。 自分達は何も悪いことをしていない。 こんな状況も時間が解決してくれる。 一家はそう信じていた。 だが、あの飼いゆっくりがプレイスを訪れて無法を働く度、 一家への風当たりは強くなる一方だった。 一家が何もしなくても、一家には何一つ関係がなくても状況は悪化する。 最初に赤ありすが襲われたときには、味方のほうが多かった。 だが、今では味方はほとんどいない。 「むきゅむきゅん!もうすっかりいいわ。よくがんばったわね、おちびちゃん!」 「ゆん!ぱちゅりーおねーしゃんのおかげよ!」 「ぱちゅりー、ほんとにありがとうだよ! おかげで、おちびちゃんもすっかり元気になったよ!」 まりさ、赤ありす、おいしゃさまのぱちゅりーの三匹がゆっくりと話をしている。 ここは、おいしゃさまのぱちゅりーのお家だ。 最初の診察から、既に数回診察を受けている。 やっとぱちゅりーから、赤ありすの完治宣言がでたところだ。 ゆっくりしているのは、そればかりではない。 一家には、もうほとんど味方がいない。 そんななかで、このぱちゅりーは一家にも分け隔てなく接してくれる 数少ないゆっくりの一匹なのだ。 さらに、職業柄プレイスのゆっくりたちからの信頼も厚く、影響力も大きい。 このぱちゅりーが一家を差別しないことが、 多少なりとも一家への風当たりを和らげてくれていた。 赤ありすは勿論、まりさや他の姉妹にとっても、頼もしくもゆっくりした存在だった。 「むきゅ!いろいろ大変だとおもうけど、 こまったことがあったらいつでもいらっしゃい。 そうだんにのるわよ!」 「ありがとう、ぱちゅりー!とってもゆっくりできるよ!」 「ぱちゅりーおねーしゃん、ゆっくちありがとうにぇ! とっちぇもとかいはよ!」 ぱちゅりーのおかげで、ゆっくりした気分になれたまりさと、 そのお帽子の上の赤ありすは、 「ぱちゅりーはほんとうにゆっくりしてるね! ありすのケガもぜんぶなおしてくれたよ!」 「ほんとにぇ!ありちゅも大きくなったら、 ぱちゅりーおねーしゃんみたいにゃ、とかいはじょいになるにょ!」 「ゆふふふ!おちびちゃんなら、きっとなれるよ!」 「ゆん!それにしても、おとーしゃんのおぼうち、とかいはにぇ!とってもすてきよ!」 「ありがとうだよ。おちびちゃんにそんなこと言われると、まりさてれちゃうよ。 でも、ありすのカチューシャさんもとってもきれいだよ! しょうらいは美ゆっくりまちがいなしだね!」 「ゆぅぅん!」 帰宅途中の道すがら、ゆっくりとした会話を交し合った。 「ゆびっ、ゆび!ゆぐっ!ゆえええええん!」 「なかないで、まりさ・・・。むきゅぅぅぅ・・・。」 お家に辿り着くと、様子が変だ。 お家がぼろぼろだよ。 おちびちゃんたちが、泣いてるよ。 一体何があったの。 呆然とする、まりさと赤ありす。 お家がぼろぼろに壊され、そのお家の前で子まりさが泣いている。 子ぱちゅりーは、その子まりさを慰めているようだ。 だが、呆けている場合ではない。 親としての責任感からか、いち早く立ち直り、子ゆたちの安否を確認する。 「二人ともだいじょうぶなの?ケガはない?」 「むきゅうん・・・。だいじょうぶよ、おとーさま。 わたしも、まりさもケガはないわ・・。」 幸い二匹ともケガはないようだ。 「ゆぐっ!ゆええええぇぇん!まりしゃのお家しゃん・・・。 みんなのお家しゃんがぁぁーー!! こんなのひどいのじぇぇぇぇ!!! ゆぴぃぃぃーーー!」 しかし、子まりさはお家が壊されたことが余程ショックだったのだろう。 凄い勢いで泣き叫んでいる。 普段、陽気で腕白な子まりさだけに、余計に痛々しい。 「ゆぅぅぅ・・・。なかないでね、おちびちゃん・・・。 ・・・だいじょうぶだよ!お家ならまた、おとーさんがつくるよ! だから、ゆっくりしてね!」 「むきゅ!そうよ。こんなことでまけちゃだめよ!」 まりさと、子ぱちゅりーが口々に子まりさを慰める。 その甲斐あってか、やっと子まりさが泣き止む。 「ゆぐっ・・・。ま、まりしゃ・・・、もう泣かないのじぇ! ゆっくちするのじぇ!」 「そうだよ!ゆっくりだよ!」 「むきゅきゅ!むっきゅりよ!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 お互いへのゆっくりしていってね、で落ち着きを取り戻した三匹。 まりさは、子ゆたちの安否確認に続き、何があったのかを二匹に尋ねる。 「むきゅ・・・。」 「だじぇ・・・。」 言い辛そうな二匹。 しかし、子ぱちゅりーが意を決して口を開く。 「むきゅう・・・。せいっさいっだそうよ。 ゲスの飼いゆっくりをかくまうゆっくりに・・・。」 プレイスのゆっくりたちが集まってきて、一家のお家を壊したときの様子を説明する。 「「ゆ!?。」」 まりさと赤ありすの驚愕の声が重なる。 「ど、どうして!?そんなのひどすぎるよ・・・! まりさたちはなんにもわるいことなんかしてないのに!」 まりさは思う。 ゲスの飼いゆっくりとは誰のことだ? 赤ありすは悪いことなど何もしていない。 自分達家族の誰一人として、断じてゲスなどではない。 だが、現実としてとうとうお家まで壊されてしまった。 ここに来て、例の飼いゆっくりが今まで以上に無法を働いているのだ。 人間さんの力を恐れ、飼いゆっくりには逆らえない。 だが、例外的に人間さんとはぐれてしまった(と思い込んでいる)、 飼いゆっくりの赤ありすならば、せいっさいっをすることができる。 おそらくそういった理屈で、その鬱憤が一家に回ってきたのだろう。 嫌がらせはエスカレートする一方だ。 時間が経てば徐々に落ち着き、 また元の穏やかな生活が戻ると考えていた自分は甘かったらしい。 このままでは、おちびちゃんたちに直接危害を加えてくるのも時間の問題だろう。 ここは最早、自分達一家にとってゆっくりプレイスではないのかもしれない。 「・・・・・。」 赤ありすは思う。 自分はゲスなどではない。 何一つ悪いことなどしていない。 一家のお家を壊される謂れなどない。 これはあまりに理不尽だ。 ・・・・。 だが、理不尽であれどうであれ、自分が原因なのは間違いがない。 自分が飼いゆっくりであるばかりに一家に迷惑が掛かる。 これからも迷惑をかけ続ける。 壊されたお家を見ていると、自分を始め、 まりさや姉妹にまで危険が迫っていることが嫌と言うほど理解させられる。 自分は一家にとって、疫病神なのかもしれない・・・。 その日は、ボロボロのお家の残骸と、近くで拾い集めてきたダンボール片や ビニール片で作り直した仮設のお家で過ごした。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛。しゃ、しゃむいんだじぇ・・・。」 「むっきゅしょん!そうね・・・。それにお腹も空いたわね・・・。」 「ごめんね、おちびちゃんたち・・・。 明日になったら、お家も、ごはんもなんとかするからね。 今日だけはがまんしてね。」 「ゆ!ゆっくりりかいしたのじぇ! まりさはいいこだから、わがままいわないのじぇ!」 「むきゅん!ぱちぇもがまんできるわ! あしたはみんなで、ごはんをさがすのよ!」 「ゆゆーん!おちびちゃんたちは、ほんとにゆっくりしてるね! ・・ゆ!そうだよ!みんな、こっちにあつまろうね! ほら、みんなですーりすーりすればあったかいよ!」 「「ゆゆーん!!」」「・・・・・。」 赤ありすも一家と一塊になってすーりすーりしてみる。 お家はボロボロで隙間風が身にしみる。 冬に備えた備蓄のごはんもほとんどが持っていかれてしまった。 一人でさまよっていたとき以来の空腹が寒さに拍車をかける。 だが、そんなことは大して気にもならない。 今の自分には、とかいはなみゃみゃがいない。飼い主さんもいない。 未だに離れ離れのままだ。 恋しい。 なのに、今日まではとてもゆっくりできていた。 この、とてもゆっくりした一家と一緒だったから。 このゆっくりした一家と一緒だから、寒さも空腹も気にならない。 この一家と自分が、寒くてひもじい思いをするのは自分のせいだ。 飼いゆっくりの自分が一緒のせいだからだ。 なのに、この一家は誰も自分を責めない。 今も、こうして一緒にすーりすーりしている。 寒さも、空腹も気にならない。 気にならないくらい、ゆっくりできない。 寒さより、空腹より、ゆっくりした一家と一緒にいることがゆっくりできなかった。 理由は分からないが、とてもゆっくりできない。 一家と一緒にいることに耐えられないほどに。 赤ありすは、こんなに酷い目に遭っているのに、 自分を責めることさえしない一家と一緒にいることが何より辛かった。 赤ありすは、お家を出ることにした。 そして朝。 一番に目覚めたのは子まりさだった。 「ゆ゛−・・・。ゆっくりしていってね!!!おはゆっくりだじぇ!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 「おはようだよ、おちびちゃんたち!」 「むきゅー!おはゆっくりよ!」 「ゆっくりしていってにぇ・・・。」 この一家とも今日でお別れだ。 自分で決めたこととは言え、気分の良い朝とはいかない。 僅かなごはんでの朝むーしゃむーしゃを終えると、 昨日話していた通りお家の材料集めや狩りへ行くことになった。 いつもは、まりさだけでの狩りだが、場合が場合だけに 姉妹もプレイスの中で草花など安全に採れるごはんを採りに行くことになった。 「それじゃ、おちびちゃんたちも、きをつけてね! おひるにはまりさも一度もどってくるからね! おちびちゃんたちもおひるにはお家にもどるんだよ! それじゃ、ゆっくりいってきます!」 「「ゆっくりいってらっしゃい!!」」 姉妹は、まりさを見送ると自分達も出かけることにした。 「むきゅ!それじゃ、いきましょうか! あまりとおくへいくのはきけんだから、 プレイスと川さんのさかいのあたりで狩りをしましょう!」 「ゆ!わかったのじぇ!狩りならまりさにまかせてほしいんだじぇ!」 「ゆっくちがんばろうにぇ・・・。」 プレイスと隣接する川原の辺りは、草花やむしさんが比較的多く採れる狩場だ。 川原へはゆっくりプレイスから直接移動でき、 危険の多い人間さんのプレイスに出る必要がないため、 子ゆっくりが狩りをするにはうってつけの場所だ。 「ゆっくりのひー、まったりのひー!」 「むっきゅん、むっきゅん!むきゅむきゅむっきゅん!」 「・・・・・・・・。」 元気にお歌を歌う姉妹。 元来陽気で忘れっぽいゆっくりである。 加えて、今日は天気もよく過ごしやすい。 ちょっとした冒険気分だ。 そうなった理由は、お家が壊されごはんの備蓄も奪われたため、 子ゆたちにも少しでもごはんを採ってきて欲しいという切実なものなのだが、 赤ありす以外の子ゆっくりたちは楽しそうである。 しばらく移動すると、川原にたどり着いた。 「むきゅん!それじゃさっそく狩りをしましょうか! おひるには一度もどるから、それまでにごはんをあつめるわよ!」 「ゆん!まりさはあっちでむしさんをとってくるのじぇ!」ぴょーん まりさは、一匹で先に行ってしまう。 「むきゅ!?もう、まりさったら! ありすはぱちぇとお花さんでもあつめましょ。」 「ゆゆー・・・。ありちゅ、あっちでひとりでごはんをあちゅめりゅわ。」 「むきゅー・・・。ありすは、まだひとりはきけんよ。 ・・・しかないわね。でもとおくへいったらだめなのよ!」 むきゅ。 もともと危険の少ない場所だし、あまり遠くへ行かなければ大丈夫ね。 思いの外、赤ありすが頑固なのを見て、子ぱちゅりーのほうが折れた。 「ゆん!ありがちょう、ぱちゅりーおねーちゃん!」 赤ありすは、お礼を言うと茂みの中へと入っていく。 そしてそのまま、川の下流へと進んでいく。 このまま、一家ともゆっくりプレイスともお別れだ。 みゃみゃや、飼い主さんを探しに行こう。 みゃみゃや、飼い主さんに会えるかは分からないがここに留まることもできない。 こうして、赤ありすはゆっくりプレイスを出た。 赤ありすが、川沿いに進んでいると、姉妹と仲の良い子ちぇんに出会った。 多分、子ちぇんも狩りにきているのだろう。 子ちぇんは赤ありすよりも大分年長だから、一人でプレイスの外れにも来ているようだ。 「ありすー?一人でおさんぽなんだねー。 でも、ありす一人じゃあぶないから、ちぇんもいっしょにいくよー。」 子ちぇんは、今でも姉妹と遊んでくれるゆっくりとしたゆっくりだ。 きっと今も自分のことを心底心配して同行を申し出てくれたのだろう。 そんな心優しい子ちぇんを拒絶するのは忍びないが、 「ゆん!ありちゅは一人でおさんぽすりゅにょ! ちぇんみたいな、いにゃかもにょとは、いっしょにあるけにゃいわ!」 「にゃー・・・。ありす、ひどいよー・・・。」 尻尾と耳を力なく垂れさせる子ちぇん。 「それじゃ、ありちゅはしつれいすりゅわ!」 子ちぇんを振り切るように、出来るだけ高飛車に振舞う赤ありす。 が、 「ありすは、まだ赤ちゃんだから一人で遠くに行ったらだめなんだよー! わかってねー!」 それでも、赤ありすを心配して追いかけようとする子ちぇん。 「ぷくー!!ちぇんは、ありちゅをほうっておいてにぇ! ありちゅ、ほんきでぷくーすりゅよ!」 「にゃ!?ありすー・・・。わがらにゃいよー・・・。」 それでも心配そうな子ちぇん。 しかし、ぷくーまでされてしまっては結局赤ありすを見送るしかなかった。 お昼近く。 子ぱちゅりーは、そろそろお家に帰るために、 妹たちと合流しなければならないと考えていた。 「むきゅーん。もうじかんね。まりさとありすはどこかしら?」 と、 「ゆっゆゆーん!たいりょうなのじぇ!まりさは狩りの名人なのじぇ!」 子まりさが戻ってきた。 頭の上の小さなお帽子が大きく膨れている。 どうやら、狩りの成果は上々らしい。 「むきゅ!まりさ、狩りはうまくいったようね!」 「ゆん!あたりまえなのじぇ! 狩りのことなら、まりさにまかせてほしいんだじぇ! おねーちゃんとありすにも、ごちそうとってきたんだじぇ!」 「むきゅきゅ!ありがとう、まりさ。ところで、ありすを見なかった?」 「ゆーん?まりさはありすとはあわなかったのじぇ。」 「むきゅー。それじゃ、ありすをよびにいきましょ。あっちにいるはずよ。」 ありすの向かった茂みのほうへと跳ねていく二匹。 すると、がさごそと音を立てて、茂みの中から子ちぇんが出てきた。 「むきゅ!」 「ゆ!」 「にゃ!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 きれいに重なる三重唱。 お決まりの挨拶だ。 これさえあれば、いつでもゆっくり。 効果抜群の魔法のことば。 のはずが、子ちぇんは心なしか元気がないようだ。 「ちぇん、どうかしたのかしら?げんきがないわね。」 「まりさにはなすんだじぇ!そうだんにのるんだじぇ!」 心配する二匹。 「にゃー・・・。ちぇんは、ありすにきらわれちゃったみたいだよー・・・。」 子ちぇんは、赤ありすとの一部始終を姉妹に話した。 「むきゅー・・・。ありすが、そんなことを・・・?」 「ゆ!それより、そんなに遠くへいったらあぶないのじぇ! はやく探しにいくのじぇ!」 「ごめんねだよー。ちぇんがもっとちゃんと、とめてればよかったよー・・・。」 「ちぇんはわるくないんだじぇ!でも、ありすのこともゆるしてほしいのじぇ。 きっとなにか、りゆうがあったんだじぇ。」 「むきゅむきゅ。そうね、ありすはそんな、ゆっくりできないこじゃないわ。」 「いいんだよー、ちぇんはきにしてないんだよー。 それより、ありすをさがしにいくんだねー! ちぇんもいっしょにいくんだよー!」 「ゆ!いくのじぇ!」 「まって、ふたりとも!いくらありすでも、もうとおくへいってしまったわ! まずは、お家にかえっておとーさまにほうこくよ!」 「ゆ!?ゆゆぅぅ・・。しかたないのじぇ。 おとーしゃんなら、なんとかしてくれるのじぇ!」 「ぱちゅりーたちのおとーさんはとってもたよりになるんだねー!わかるよー!」 そうと決まれば、善は急げだ。 子ちぇんと別れ、姉妹はお家に大急ぎで戻ってきた。 お家には既に、まりさが帰っていた。 「ゆはー、ゆげー・・・。おとうさ・ごほっごほっ!!むぎゅんむぎょん!!」 「おちびちゃん、だいじょうぶ!そんなにあわてなくてもいいんだよ! まりさは、どこにもいったりしないよ!」 「ちがうのぜ!ありすが、ゆくえふめいなのじぇ! プレイスからでていったらしいんだじぇ!」 「ゆふー・・・。そうよ!ちぇんがありすをみたそうだけど、ようすがへんなの!」 子ぱちゅりーは、子ちぇんから聞いた話をまりさにも聞かせた。 「ゆゆゆ!?ありすが!?そんな・・・。」 まりさは、幾つかの可能性を考えた。 餡子脳にしては良く考えたほうだ。 一つは赤ありすが、家出してしまったこと。 これまでの、一家の苦労の原因と言えば、やはり赤ありすだった。 一家は誰も気にしていないが、優しい赤ありすにはそれも苦痛だったのかもしれない。 二つ目は、一人で狩りをしていて危険な虫さんに襲われたり、 川さんに流されてしまったということ。 比較的安全なプレイスとその周辺ではあるが、赤ゆっくりには危険も多い。 今回は、非常事態ということでおちびちゃんたちだけで行かせてしまったが、 自分も少し甘かったかもしれない。 三つ目は、飼いゆっくりを恨む一団に襲われたということ。 これまで、最初の襲撃以来おとなしかった為油断していたが、 いつ再び赤ありすに対して直接危害を加えようとするか分かったものではない。 まさか、ゆっくり気のないプレイスの外れで、赤ありすを・・。 いけない! すぐに赤ありすを探しに行かなくては! それに、危険といえばこうなった以上、他の姉妹から目を離すことも危険にすぎる。 全員で一緒に行動するべきだ。 「ゆ!みんなでありすをさがしにいくよ! おちびちゃんたちは、まりさのお帽子にのってね!」 「むきゅ!ありがとう、おとうさま!」 「ゆん!まりさもおとーさしゃんのお帽子さんにゆっくりのるのじぇ!」 よーじよーじ 「ゆ!二人とものったね!それじゃ、ゆっくりありすをさがしにいくよ!」 「「ゆっくりー!!」」 赤ありす捜索の決意もゆっくりと、一家が気炎を上げているその頃。 一方では、奴がプレイスに近づいていた。 「ゆふふふ!今日もゲス野良をせいっさいっだよ! 人間さんのためにもゲス野良くじょは飼いゆっくりのぎむだよ! ノブレス・オブリージュだよ! べ、べつにすきでやってるわけじゃないんだよ!!」 今日もゲス野良の住処で、ゲス野良駆除をするよ! ゆっゆっゆっゆ!今日の第一汚物消毒はどの汚まんじゅうがいいかな? きょろきょろと今日の獲物を物色する飼いゆっくり。 早くも、飼いゆっくりの存在に気づいた野良ゆっくりたちが、 あるものは大慌てで逃げ出し、 あるものは自分に注意が向かないよう体を縮めてやり過ごそうとする。 そんななか、一匹の野良ゆっくりに目が留まった。 「むきゅ!ゆ風邪ね!大丈夫よ。良く効くおくすりがあるわ!ちょっとまっててね!」 てきぱきと患ゆを診察する、あのおいしゃさまのぱちゅりーだ。 まだ、飼いゆっくりが現れたことに気づいていない。 ゆ!今日はあの紫もやしに決定だよ!ゆゆゆーん!! ぱちゅりーに向かって跳ねていく飼いゆっくり。 そしてそのまま 「ゲス野良はゆっくりしね!!」どすん 「むぎゅ!」ごろごろ 若干ぱちゅりーより大きな体で、勢い良くぶつかっていく。 「むぎゅぅぅぅぅ・・・。」 背後からの不意打ちに、大ダメージのぱちゅりー。 しかも、ぱちゅりーと言えば体の弱さでは定評がある。 このぱちゅりーも例外ではなく、一撃でほぼ行動不能だ。 「ゲス野良はゆっくりしね!おぶつはしょうどくだよ!ゆっはーー!」 ぼよんぼよん 「むぎょ!むげぇぇぇ!!や、やめ・・・。 ぱちぇ、むぎゅぅぅぅ!!!し・・・、しんじゃはぁふぅ!」 飼いゆっくりは、ころころと転がってそのまま起き上がれないぱちゅりーの上に 飛び乗ると、その上で全力で跳ねだした。 そのまま、何度も何度もぱちゅりーの上で飛び跳ねた。 「むぎゅぎゅ・・・。おねがいですぅぅぅ・・・。ぎゃふっ!! ぱ・・、ぱちぇはゲスなんかじゃありませんんんん。んぐぅっ!! みんなのけがやびょうきをなおす、いじゃなんでずぅぅぅぅ・・・。」 ぱちゅりーも、周りのゆっくりも手を出せない。 相手は飼いゆっくり。 背後には、恐ろしく強大な人間さんがついているのだ。 下手に手を出せば、自分のみならず、 このゆっくりプレイスのゆっくり全てが永遠にゆっくりさせられてしまう。 見ているしかない。 「ゆゆーん?おいしゃさまー!?ゲス野良が、かたはらいたいよ! だいたいゲスの野良を治すなんて、あくぎゃくひどうここにきわまれりだよ! くろっ!まっくろくろだよ!はんけつっ!しけいっだよっ!」 「そ、そんな・・・。ぱちぇは、「ぐちゃ」むぎょぎょぎょぎょ!!!」 えれえれえれえれ、びくんびくんびくん 言葉の途中で、飼いゆっくりに踏みつけられるぱちゅりー。 とうとう吐クリームと痙攣を同時に起こしてしまう。 「ゆっふー!!!いいしごとしたよ!!」 凄くいい笑顔の飼いゆっくり。 「ぱちゅりぃぃぃぃぃーーーー!!!ゆっくりよ!ゆっくりしてね!!!」 すると、瀕死のぱちゅりーの元へ駆け寄る一匹のゆっくり。 面倒見が良いと評判の、とかいはありすおねーさんだ。 ぱちゅりーとは同世代で、特に仲が良い。 コミュニティでも人気者のおねーさんだ。 「ゆゆ!?またゲス野良が寄ってきたよ?せいっさいっされたいんだね!!」 ゆふふふふ、と上機嫌の飼いゆっくり。 とかいはありすおねーさんは、この言葉にきっとなって振り返ると、 「だまりなさい!このいなかもの!こんなことをして恥ずかしくないの!! そのお飾りの銀ばっじと飼い主の人間さんにもうしわけないと思わないの!?」 「ゆゆゆゆゆ!?なにいってるの!うるさいよ! ゆっくりできない野良れいぱーはせいっさいっしてあげるよ!!」ぼよーん 「こんの・・・かっぺがぁぁぁぁぁーーーー!!!」ずどん 「ゆ!?ゆべぇぇぇ・・・!」ごろんごろん 体当たりをする飼いゆっくり。 それを迎撃する、とかいはありすおねーさん。 ありすおねーさん渾身のかっぺごろし(体当たり)で吹っ飛ぶ飼いゆっくり。 「ゆべべべべ・・・。な、なんでぇぇぇ・・・!?」 「なんでじゃないわよ! 今まであなたがみんなにしてきたことを思い出しなさい! もっと酷いことをいっぱいしてきたでしょう!」 「ゆー?なにいってるの!? 飼いゆっくりとゲス野良とじゃいのちの価値がちがうでしょぉぉぉーーー!! ばかなこといわないでね!!」 「いのちの価値がちがうですって!?そうね! あなたみたいなゲスと、 ゆっくりとしたぱちゅりーのいのちの価値は比べ物にならないわね!」 「ゆぎぎぎぎ!!!ちんこシューがうるさいよ!ばかにしないでね!!!」 「もんくがあるならかかってきなさい!!いくらでもあいてになるわよ!」ずいっ 「ゆ!?」ずざっ 「もうおわりなの?口ほどにもないわね! これにこりたら二度とプレイスにはちかづか・・・。」 「・・・フヒっ。フヒヒヒヒ!この銀ばっじがめにはいらないの!? ばかなの?しぬの?」 「銀ばっじがどうしたっていうの!? いまさら飼いゆっくりだからってゆるさないわよ!」 「ゆへへへへ!いいの!? 飼いゆっくりに逆らうと人間さんがただじゃすまさないよ! ありすだけじゃないよ! ここのゲス野良ぜんぶがえいえんにゆっくりしちゃうよ!」 「ゆ!?」 「ばかなありすはまわりをよくみてね!」 飼いゆっくりに言われ、辺りを見回す、ありすおねーさん。 「ありずぅぅぅ・・・・。」 「ありす・・・。」 「だめだよぉぉぉぉ・・・。人間さんにみんなころされちゃうよぉぉぉ・・・。」 「れいむとおちびちゃんをまきこまないでね!」 「むきゅ・・・。ありす・・・。」 「ありすのきもち、わかるよー・・・。 でも飼いゆっくりに逆らったらだめなんだよー・・・。わかってねー・・・。」 「ありす・・・。だめなんだぜ・・・!」 みんなの顔、顔、顔。 どれも今にも泣き出しそうな顔ばかりだ。 恐怖、悲しみ、怒り、屈辱。 どれもゆっくりしていない。 そのゆっくしていない顔が、ありすおねーさんに現実を突きつける。 「ゆ!そこのちんこシュー!」 「ありすは、ちんこシューなんかじゃ・・・」 「ちんこシューは飼いゆっくりに逆らうの?」 「ゆ・・・。ゆん・・・、ありすはちんこシューです・・・。」 「ちんこシュー!ぺにぺにをだすんだよ!ゆっくりしないでね!」 「そんな・・・!わがりまじだ・・・。これがありずのぺにぺにです・・・。」 天を衝くかのような立派な如意棒が、エレクチオン。 あまりの恥辱にありすは、涙をこらえるのに精一杯だ。 「そのままじっとしてるんだよ! うごいたら群れごとえいえんにゆっくりだよ!」 そう念を押すと、飼いゆっくりはありすに近づいたかと思うと、大口を開け、 「がぶりっ」 「ゆぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!?」 「むーしゃむーしゃ、ぺっ!」 ありすのぺにぺにを噛み千切り、咀嚼したかと思うと吐き出した。 吐き出され地面に落ちた如意棒は、ぐずぐずに崩れ、原型を留めていない。 「ぴぴぴぴぃぃぃぃぃ!!あ、ありずのとかいはぺにぺにが・・・!」 半狂乱のありすおねーさん。 「うごかないでね!」 「ゆぐぐぐぐぐぐ・・・!」 それでも、飼いゆっくりの言葉に反応して動きを止める。 「ゆっふっふっふ・・・。それじゃ、はじめるよ・・・。」 嫌らしい薄笑いで、再び飼いゆっくりが近づいてくる・・・・・・。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 楽しそうに飛び跳ね続ける飼いゆっくり。 飼いゆっくりの跳ねる音は最初は乾いていたが、今は水っぽい音がしている。 半ば体を潰されたありすが、自分自身のカスタードに塗れているせいだ。 そしてありすはとうとう痙攣しだす。 あらから、ありすおねーさんは散々に甚振られた。 特に噛み切られたぺにぺにの周辺は徹底的に痛めつけられた。 途中からは流石のとかいはも、狂ったように奇声を発し、 無様にのた打ち回るだけであった。 その姿は、普段のとかいはぶりを知るプレイスのゆっくりたちに大きな衝撃を与えた。 しかし、それも終わろうとしている。 (大変だよ!このままじゃ、ありすがゆっくりできくなっちゃうよ!) (だめだよ!飼いゆっくりに逆らったら、人間さんにゆっくりできなくされるのぜ!) (誰かケガを治せるゆっくりはいないの?) (むぎゅううぅぅぅ・・・。えれえれえれえれぇぇぇ・・・・・。) (たいへんだよー!ぱちゅりーもケガが酷いんだよー!) (どしよう・・・。ぱちゅりーしかおくすりは使えないよ! これじゃケガをゆっくりなおせないよ!) (おかーしゃーん!れいみゅきょわいよー!) (見ちゃだめだよ!おちびちゃんは、おかあさんの後ろにゆっくり隠れてね!) (ゆぅぅぅ・・・。ゆぅぅぅぅ・・・。はやく、はやくおわってね・・・。) (こんなの・・・。こんなの、とかいはじゃないわ!) 野良ゆたちが傍観しているしかない間に、 飼いゆっくりのせいっさいっが終わったらしい。 「ゆっふーー!こんなもんだね!今日のところはこれぐらいで許してあげるよ! かわいいあんよが、汚まんじゅうのせいで汚れちゃったよ! 早く帰ってお兄さんにきれいきれいしてらおうね!」 ぴょーんぴょーん ゆっくりプレイスから立ち去る飼いゆっくり。 「いったのぜ!はやくありすとぱちゅりーをたすけるのぜ!」 飼いゆっくりの姿が見えなくなるのを待って、飛び出す野良ゆたち。 「ありすー、だいじょうぶなのー!?」 「ありす!ゆっくりなのぜ!」 口々にありすを励ます。 しかし・・・・、 「と、とかいは・・・・。もっど・・・ゆっぐりしたかった・・・わ・・・。」 「わぎゃらないよーーーー!!!!?」 「ありずーーー!!!しっかりするのぜーー!!」 「なんで、ぱちゅがこんなめに・・・、なんにぼ・・・悪いごど・・・・むぎゅう・・。」 「ぱちゅでぃぃぃーーーー!ぱちゅでぃーがゆっぐりしぢゃっだーーーー!!!?」 「ぱちゅぅぅーーー、めをあけてーー!!こんなのとかいはじゃないわーーー!!」 以前から渦巻いていた飼いゆっくりへの怒りと憎しみ。 聡明でコミュニティの相談役でもあったおいしゃさまのぱちゅりーと、 世話好きで誰からも好かれたとかいはありすおねーさん。 この二匹が殺されたことで、それは頂点に達した。 もしかすると、頭の弱いゆっくりのこと。 たとえ人間さんの恐怖があっても、その場の勢いで飼いゆっくりに せいっさいっするということも有り得たかもしれない。 しかし、コミュニティにはしばらく前から暗黙の了解が成立していた。 飼いゆっくりへの怒りは、人間さんとはぐれた、ちびのゲス飼いゆっくりと それを匿う一家にぶつけること。 そうすることで、安全にガス抜きをしようというのだ。 今回も矛先は一家に向かう。 しかし、その怒りはこれまでの比ではない。 「ゆぎぎぎぎぎぎ!もうゆるせないんだぜ! 飼いゆっくりとそのかぞくをせいっさいっするんだぜ!」 「そうだみょん!ゆっくりプレイスのちあんのためにもほうっておけないみょん!」 「れいむ、もうゆるさないよ!ゲスのちんこシューをえいえんにゆっくりさせるよ!」 「これも飼いゆっくりがわるいんだよー!わかってねー!」 「むきゅ!こうへいにみてじょうじょうしゃくりょうの余地はないわね!」 「「「せいっさいっだよ!!!!」」」 ゆっくりたちは大挙して一家のお家へと向かっていく。 「にゃにゃ!?たたたた、たいへんだよー!!はやくしらせないとだめなんだよー!」 そして、子ちぇんは一家の元へと走る。 赤ありすはあれから当てもなくさまよっていた。 ただ、川原を川沿いに下っていた。 理由は特にない。 行く当てもないのだから、川沿いに移動しているだけだ。 川原を外れれば道路に出る。 あちら側は、ゆっくりの地獄が待ち受けている。 そのことは、赤ありすは身にしみて理解していた。 まだ、半日も移動していないし、子ゆ赤ゆからすれば別だが、 成体ならばゆっくりからすればそう大した距離を移動したわけではない。 しかし、赤ありすは赤ゆっくり。 やっとこれから子ゆっくりになろうかという時期だ。 半日近い移動で、あんよはすっかり痛んでしまった。 豊富な草花のおかげで、なんとか飢えを凌いではいるが、 狩りの名人であるまりさの採ってくるごはんとは比べ物にならない。 傍には誰もいない。 みゃみゃも飼い主さんも、おとーしゃんも姉妹も誰もいない。 独りで知らない道を進む。 赤ありすは赤ゆっくりだ。 赤ゆっくりにしては、今までずっと良く耐えてきた。 「ありちゅは、とかいは飼いゆっくりなにょよ! にゃんでだれもむかえにきてくれにゃいにょ? みゃみゃも、飼い主さんもありちゅのこときらいにゃにょ!? ありちゅのこちょ、いらないにょ!?」 「ありちゅ、なんにもわるいことしてないにょに・・・。 飼いゆっくりだからって、いじめるなんちぇひどいわ!」 「こんにゃのとかいはじゃにゃいわ!ありちゅ、もうお家かえりゅ! ありちゅ、おうちにかえりちゃいぃーー!!」 「ゆんやー!ゆんやーーー!!!ゆびーー!!ゆわーん!ゆええーん!!」 これまで我慢してきた不安や不満。 みゃみゃや飼い主さんを疑うなんちぇ、とかいはじゃないわ! お世話になっちぇるまりさおとーしゃんや、 おねーちゃんたちに我が侭言うなんちぇ、いなかもにょのすることよ! 自分にそう言い聞かせて押し殺してきた思いが爆発する。 一度言葉にしてしまえば、感情も抑えきれない。 なぜ、みゃみゃたちは自分を迎えに来てはくれないのか。 そもそも、みゃみゃと一緒にとかいはハウスで眠っていたはずが、 気がつけば見知らぬ場所に放り出されていた。 今まで、考えないようにしてきた。 しかし。 やはり、自分は捨てられてしまったのだろうか。 他に理由が思いつかない。 だとしたら自分は飼いゆっくりなどではない、ただの野良ゆっくりなのだろうか。 自分が野良ゆっくりならば、飼いゆっくりだからと自分が虐められることも、 一家に迷惑をかけることもなかったのではないか。 泣き叫びながら、お家に帰る宣言をした。 だがその「お家」がみゃみゃの待つお家か、一家の待つお家か自分でもわからない。 自分はどの「お家」に帰るというのだろう。 わからない。 わからない。 何一つわからない。 そして、どちらの「お家」にも帰れるわけもなく、赤ありすはさまよい続ける。 「おちびちゃーーん!!どこなのーーーー!!へんじをしてねーーー!?」 「ありすーー!でてらっしゃーーい!むきゅむきゅ。」 「ありすーー!!おこらないからでてくるのじぇーー!!」 まりさが、お帽子の上に子ゆたちを乗せて大急ぎで跳ねている。 一家は子ちぇんに聞いたとおり、ゆっくりプレイスと川原の境の辺りから、 赤ありすが向かったという方向へと進んでいる。 幸い川沿いに進んでいるだけであるし、赤ありすのペースなど高が知れている。 まりさなら子ゆ二匹を乗せていて猶、追いつくのにさほどの時間はかからないだろう。 だが、まだ幼い赤ゆっくりだ。 見知らぬ土地では何があるか知れたものではない。 急がねば。 どんどん進む。 そうして、跳ね続けていると、 ゆえぇぇぇーーーーん!!! 微かにだが、遠くからゆっくりの泣き声が聞こえてきた。 ・・・おちびちゃん!? 「ゆ・・・・。」 赤ありすの進むペースはどんどん落ちていった。 あんよはそろそろ限界だ。 ゆぅ・・・。ありちゅのあんよがいちゃいいちゃいだよ・・・。 やはり、その辺に生えている草花では赤ありすの口には合わない。 ゆぅぅ・・・。おとーしゃんのごちそうがたべちゃいわ・・・。 赤ゆっくりはそもそも庇護者の存在もなく、一匹で行動できるようにはできていない。 ありちゅ、さびしいにょ・・・。おねーちゃん・・・。 「ゆん、ゆぅぅ、ゆっぐ、ゆびぇぇぇぇぇん!!」 とうとう一歩も進めなくなった赤ありす。 なんで、こんなことになったのだろう。 うずくまったまま、一人泣き続ける。 「おちびちゃんーーーーん!!」 「ありすーー!!きこえるーーー!!」 「ありすーーー!!おへんじするんだじぇーーー!!」 ゆゆゆゆ!? 一家の声が聞こえる。 まりさに、子ぱちゅりーに、子まりさ。 三人とも揃っているようだ。 「おとーしゃーん!ぱちぇおねーちゃーん!まりしゃおねーちゃーん! ありちゅ、ここよーーー!!!」 我を忘れて必死に家族に呼びかける赤ありす。 そして、背の高い草むらを掻き分けてまりさが現れる。 勿論、お帽子の上には子ぱちゅりーと子まりさが一緒だ。 「おちびちゃん!ぶじだったんだね!しんぱいしたよ!」 「むきゅうぅぅ!だめじゃない、かってに遠くへいったりしちゃ! おねーちゃんしんぱいしたのよ!」 「とおくへ行くときはおねーちゃんたちにいわなきゃだめなのじぇ! つぎやったらぷくーするのじぇ!」 「ゆんやー!ごめんにゃしゃーーい!ゆっぐ、ゆっぐ・・・!」 「いいんだよ!もう、なかなくてもいいんだよ! あやまったりしなくてもいいんだよ!」 泣きじゃくる赤ありすの元にたどり着き、そっと頬を寄せるまりさ。 「むきゅー。ありすったら・・・。しんぱいしたのよ・・・。」 「もう、みんなにしんぱいかけたらだめなんだじぇ。」 姉妹もお帽子から降りて、赤ありすの元へとやってくる。 しばし、一家でゆっくりを噛み締める。 「ゆん・・・。おちびちゃん、どうしてこんなところまできちゃったの? おとーさんにゆっくりおしえてね!」 「ゆ・・・。ありちゅ・・・・・・。」 言いかけて、途中で黙り込む赤ありす。 「おとーさん、おこったりしないよ。 だからしょうじきにはなしてくれていいんだよ。」 急かしたりせず、ゆっくりと先を促すまりさ。 その甲斐あってか、途切れ途切れだが赤ありすが再び口を開く。 「ゆん・・・。ありちゅ、ありちゅが飼いゆっくりだから、おとーしゃんや おねーちゃんたちにめいわくをかけちゃうわ・・・。 ありちゅがいにゃければ・・・。 ありちゅがいにゃければ、 みんにゃゆっくりでしあわせーできるとおもったにょ・・・。」 「むきゅ・・・。」 「ゆ・・・。」 俯いて再び黙り込んでしまう赤ありす。 事態は悪化する一方で、赤ありすの悩みにも姉妹も何と言ってよいか分からない。 すると、 「ゆんゆん!よかったよ!」 「むきゅ!?」 「のじぇ!?」 「ゆ!?」 意外なまりさの言葉に驚く姉妹。 疑問を口にする。 「むきゅむきゅ!?どういうこと?なにがよかったの、おとーさま?」 「ゆー?わからないのじぇ?ぜんぜんよくないのじぇ?」 「ゆー・・・。やっぱち、ありちゅはでていったほうがいいにょにぇ・・・。」 赤ありすは、一層落ち込んでしまった。 まりさは、明るく先を続ける。 「ゆん!まりさはね、ありすがおと−さんたちのことがきらいになって でていっちゃたのかとおもってしんぱいしたよ! でも、そんなことがなくてよかったよ! それに、ありすはとってもやさしいね! だから、おとーさんはあんしんして、とってもゆっくりできたんだよ!」 いくら、信頼する父まりさの言葉とは言えあまりに気楽に過ぎないだろうか。 姉妹たちも流石に納得できない。 「むきゅ!?たしかにそれはよかったけど、お家もこわされちゃったし、 このままじゃずっとゆっくりできないわ・・・。どうにかしないと・・・。」 「そうなんだじぇ・・・。ありすはゆっくりできるいもーとだけど、 おうちをこわされたりするのはゆっくりできないんだじぇ・・・。」 「ゆぅ・・・。」 まりさは自信に満ちた態度で答える。 「だいじょうぶだよ!まりさはかんがえたよ。 もう、ゆっくりプレイスはゆっくりできないよ。 だから、あたらしいゆっくりプレイスをさがしにいくよ! まりさが、あたらしいお家をさがすから、みんなでゆっくりひっこそうね!」 「むっきゅり・・・!!」 「すごいんだじぇ・・・!!」 「と、とかいはーーー!!」 まさか、そんな大胆な秘策があったとは。 子ゆっくりたちは尊敬の目でまりさを見ている。 偉大な父を改めて見直した、といったところだろうか。 なんてとかいはなのだろうか。 もう二度と戻らない、顔を合わせることもないと思っていた家族が、 自分を探しにきてくれた。 それも、新しいゆっくりプレイスを探しておひっこしするそうだ。 確かにそれならば自分がお家を出る必要はない。 一家とお別れする必要もない。 「ゆゆーん!おとーしゃん、すーりすーり! おとーしゃんはとってもとかいはにぇ!」 思わず、まりさにすーりすーりしてしまう。 「ゆゆ!ありす、ずるいのじぇ!まりさも!すーりすーりだじぇ!」 「むっきゅー!もう、みんなこどもなんだから! むっきゅん!いいわ。ぱちゅもすーりすーりよ!」 「ゆゆ!おちびちゃんたち、くすぐったいよ! みんな、あまえんぼうだね!」 一家はすっかり、スーパーすりすりタイムに突入だ。 そうして、一家全員ですーりすーりしていると、 ぐぅぅぅぅぅ・・・・。 「ゆ!ゆゆゆゆゆ!?」 赤ありすのお腹の音が鳴り響いた。 「ゆふふふふ!ありすはおなかがすいたんだね!」 「むきゅきゅきゅきゅ!もう、ありすったら!」 「まりさもおなかすいたんだじぇ!」 口々に言い立てる。 「ゆ~!はずかちいわ・・・。」 真っ赤になる赤ありす。 まりさは、しばらくそんな姉妹の様子を幸せそうに見つめていた。 「ゆ!それじゃみんなでむーしゃむーしゃしようね! おとーさんのとってきたごはんがあるよ!」 「まりさもなんだじぇ! ごはんさん、おぼうしのなかにはいってるんだじぇ!」 「むきゅ!さすがね!」 「ゆーん!おとーしゃんもおねーちゃんも、とっちぇもとかいはにぇ!」 まりさと、子まりさがお帽子のなかに入れてあったごはんを取り出す。 まりさは勿論、子まりさも子ゆっくりにしてはなかなかの狩りの名人ぶりだ。 「たまにはおそとでむーしゃむーしゃもゆっくりしてるね!」 「すてきなぴくにっくね!」 「ありす!まりさのとったいもむしさんたべるんだじぇ! とってもおいしいのじぇ!」 「ゆゆーん!ありがちょう、おねーちゃん! いもむしさん、とっちぇもとかいはよ!」 思いがけず素敵なお昼のむーしゃむーしゃに、 一家はとってもゆっくりーで、しあわせーだ。 一家がそうして、ゆんゆんしていると遠くから、がさがさと、 草むらを掻き分けて近づいてくる気配がする。 方角からしてゆっくりプレイスの方から近づいてきている。 ずいぶんと急いでいるようだ。 ゆっくりだろうか。 いよいよ、気配が近づいてくる。 もうすぐ、自分達の居るところにたどり着く。 一家が軽く緊張して身構える。 すると、 「「「「ちぇん!?」」」」 姉妹と仲の良い子ちぇんが姿をあらわした。 余程急いできたのだろう 息も切れ切れ、草で切ったのだろうか体中に傷がついている。 「むきゅ!?ちぇんどうしたの?なにかあったの?」 子ぱちゅりーが問いかける。 「ゆはー、ゆひゅー、ぜーはー、・・・。た、たいへんなんだびょー・・・!」 荒い息のまま、やっとそれだけ搾り出すように言葉にする。 「ゆゆ!?たいへん?なにがたいへんなのじぇ?」 「ゆーはー、ゆーはー・・・。 まりさたちとわかれたあとで、 あのゆっくりしてない飼いゆっくりがプレイスにきたんだよー・・・・。」 子ちぇんは、ゆっくりプレイスを襲った悲劇の一部始終を一家に聞かせた。 「ゆゆゆゆゆ!?ぱちゅりーが!?そんな!なにかのまちがいじゃないの!?」 「にゃー・・・。ほんとなんだよー・・・。 おいしゃさまのぱちゅりーおねーさんは永遠にゆっくりしちゃったんだよー・・・。」 「むきゅ・・・。あのとかいはありすおねーさんが・・・。しんじられないわ・・・。」 「そうなんだじぇ!ありすおねーさんはとかいはでとってもつよいんだぜ!」 「飼いゆっくりには人間さんがついてるんだよー・・・。 ゆっくりプレイスのみんなをゆん質にとられて・・・。」 「むきゅう・・・。」 「そんなのないんだじぇ・・・!」 一家の受けた衝撃は計り知れない。 おいしゃさまのぱちゅりーは、一家がプレイスのゆっくりたちから 迫害されるようになった後も、変わらずゆっくりと接してくれた数少ないゆっくりだ。 迫害が酷くなる一方でも、どうにか無事過ごせていたのも、 プレイスのゆっくりに大きな影響力をもっていたぱちゅりーの存在あってのことだ。 それに赤ありすの命の恩ゆっくりでもある。 その赤ありすに至っては将来ぱちゅりーのような、じょいになる、とまで慕っていた。 ありすおねーさんは世話好きなとかいはで、姉妹に頻繁に声をかけてくれた。 ありすおねーさんもまた、最後まで一家への態度を変えなかったゆっくりだった。 プレイスでも評判の美ゆっくりで、みんなの人気者だった。 そんな二人がもういない!? だが、子ちぇんの話はまだ終わってはいない。 「にゃー!飼いゆっくりが二人を永遠にゆっくりさせて、 みんながおこっちゃったんだよー! ありすたちをせいっさいっするって、みんなのお家にむかってったんだよー!」 「ゆ!?まりさたち、なんにもわるいことしてないんだじぇ!?おかしんだじぇ!」 「ちぇんもそうおもうよー・・・。だけど・・・。」 驚きつつも納得がいかない子まりさ。 子ちぇんは俯いたままなにも言わない。 「むきゅ・・・。まりさ・・・。」 子ぱちゅりーも慰めの言葉もない。 「・・・・・。」 赤ありすは改めて衝撃を受けていた。 自分とプレイスを襲う飼いゆっくりは違う。 何の関係もない。 ゆっくりプレイスから引っ越すことが決まった今となっては何も悩むこともない。 さっきまではそう思っていた。 割り切ったはずだった。 だが、自分が飼いゆっくりだったという過去が付き纏って来る。 一家に迷惑をかけ続けることになる。 やはり、自分は一家といるべきではないのかもしれない・・・。 「ゆ!だいじょうぶだよ!いますぐひっこしだよ! おちびちゃんたちは、なにもしんぱいしなくていいんだよ! まりさがおちびちゃんたちをまもるからね!」 暗く澱んだ場所に落ちていこうとする思考を、力強い言葉がゆっくりと吹き飛ばす。 「ゆぅぅぅ!ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちーー!!」 あまりの感動に言葉にならない。 ただ、ゆっくりを連呼するばかりだ。 姉妹も同様だ。 「にゃにゃ!?おひっこし!?みんなどこかにいっちゃうのー!?」 ただ一人、子ちぇんだけが驚きの声をあげる。 「ゆん!そうだよ! まりさはおちびちゃんたちと一緒に、別のゆっくりプレイスをさがすよ!」 「にゃーー!?それじゃ、みんなとはもうあえないのー?」 子ちぇんが泣きそうな顔で姉妹に問いかける。 姉妹もその言葉で、はっとなる。 お引越ししたら、もうちぇんと会えないの・・・。 「むきゅう・・・。」 「だじぇ!?だじぇ!?」 子ぱちゅりーは既に事態を理解しているらしく、何も言わない。 子まりさは、混乱して答えを求め、きょろきょろしている。 まりさが静かに、申し訳なさそうに答える。 「ゆ・・・。プレイスはきけんだよ。 もうプレイスにはもどれないんだよ・・・。」 「ゆゆゆゆ!?ちぇんにあえないんだじぇ!?」 「そんなのいやだよー!わからないよー!!」 やっと事態を飲み込む子まりさ。 子ちぇんも姉妹と会えなくなるのは嫌だと、目に涙を溜めている。 「まりさたちは、もうゆっくりプレイスじゃ暮らせないよ・・・。 それに、まりさたちといたら、ちぇんまであぶないかもしれないよ・・・。 ゆっくりりかいしてね・・・。」 「にゃー・・・。わがらないよー・・・。」 「むきゅ・・・。ざんねんだけど、ぱちぇたちはもういかなきゃ・・・。 ゆっくりさよならよ・・・。でも、ちぇんのことはぜったいにわすれないわ。」 「・・・わがらにゃいよー・・・。」 「ゆっぐ、ぐすん!まりさもなんだじぇ! あえなくなるのはゆっくりできないけど、 ぜったいちぇんのことわすれないのじぇ!」 「わがらにゃいよー!わがらにゃいぃぃーーー!!」 ちぇんは突然のお別れにわからない、わからないと泣き叫ぶばかりだ。 再びまりさが口を開く。 「ちぇん・・・。プレイスのみんなはまりさたちのお家にいったんだよね? いまごろみんな、まりさたちをさがしているよ。 きっとすぐにここにもきちゃうよ・・・。 だから、もういかなきゃだよ。 ちぇん、今までおちびちゃんたちとなかよくしてくれてゆっくりありがとうだよ!」 「にゃー・・・。わがらにゃいぃぃ・・・。」 子ちぇんはそれでも、わからない、わからないと繰り返すだけだ。 「おちびちゃんたちは、お帽子に乗ってね。」 まりさが、姉妹にお帽子に乗るように促し、姉妹もそれに従う。 ありすは、ずっと無言だった。 子ちぇんが、姉妹との別れを受け入れられず、泣き続けている間何も言わなかった。 ゆぅ・・・。ありちゅ、ちぇんにひどいこといっちゃったよ・・・。 いにゃかもの! ぷくー! ちぇん、おこっちぇるよね・・・。 「ゆびぇぇぇぇぇぇん!!わがらにゃいびょぉぉ!わがらにゃいいいーー!!」 「わがらにゃいーー!!」 「わがらにゃいよーー!!」 遠ざかっていく子ちぇんの姿。 姉妹との別れを悲しみ、わからないと連呼する泣き声。 優しく面倒見の良い子ちぇんとも、もう別れ。 二度と会えないのだろう。 「ゆっくちーーーー!!!ちぇーーん!!ゆっくちちていってにぇーーーー!」 気づくと赤ありすはお帽子から身を乗り出し、叫んでいた。 そうだ。 悩んでいる場合などではない。 これで、お別れ。 またね、じゃないんだ。 言わなければ。 「ちぇぇぇぇん!!ゆっくちごめんにゃさーーーい!! ちぇんは、とっちぇもとかいはよーーーーーー!!!!」 「ありずーーー!?ありずーーーーー!!!ゆっくりしていってねーーーー!!!」 子ちぇんも、赤ありすに気づいてくれた。 今までのお礼も、今日のことへの謝罪も、まだまだ言葉を尽くしていない。 その暇もない。 ただ、あふれ出る想いをゆっくりしていってねと、とかいはの二言に託す。 子ちぇんは、まだお顔は涙でぐしょぐしょだが、 精一杯ゆっくりしていってねを返してくれた。 「ちぇぇぇぇぇん! ありちゅも、ちぇんのこちょ、ぜったい、わすれにゃいわーーーー!!!」 「ゆびぇぇぇぇぇーーーーん!!ちぇんもわずれないよーーーーー!!!」 遠ざかる一家。 一人残される子ちぇん。 「わすれないんだよー・・・。わかってねー・・・。」 一家は逃走する。 ルートは川原の草むらを、川沿いに下る。 このルートは他のゆっくりたちに察知されやすいかもしれないが、 他のルートは別の意味で危険すぎる。 人間さんだ。 川原の草むらを外れれば、すぐに道路に出る。 住宅地のど真ん中だ。 まりさと赤ありすが出会ったときのように、 別段人間さんの側にゆっくりに対する害意がなくとも、 人間さんはその存在だけで非常に危険なのだ。 まりさはそれなりに優秀で勝手を知ったゆっくりだが、 それでも危険なことに変わりはない。 まして、普段まりさがごちそうを探しに出向く早朝などの時間帯ではなく、 日中に子ゆっくり連れでは無謀すぎる。 ただ、人間さんのプレイスに入り込むルートを取れば、追手のゆっくりたちが 諦めるという可能性もある。 いざという時には、選択肢として考えるべきかもしれない。 だが、今は急いでプレイスから離れることだ。 早々に追手を引き離してしまえば、どのコースを選ぶかなど問題にならない。 「ゆ!まりさ、ゆっくりしないでいそぐよ!」 ゆっくりしない。 それは、ゆっくりにとって身を削られるような喪失感を伴う。 だが、おちびちゃんたちのため、幸せな未来のため、まりさはゆっくりしない。 ぴょーんぴょーん 子ゆっくりと赤ゆっくり、合計三匹を乗せているにしては随分な俊足だ。 だが、それでもスピードは確実に落ちるし、体力の消耗も激しい。 それでも、子ゆ赤ゆにぴょんぴょんさせたのではすぐに追いつかれてしまう。 まりさは必死だった。 追いつかれたら、終わりだ。 そう理解していた。 一家が無事に逃げ切るためには、追いつかれないこと以外にはない。 一対一ならコミュニティに所属するゆっくりで、 まりさに適うものなどそうそういはしない。 とは言え、複数のゆっくり相手ではそんなことは考えるだけ無駄だろう。 猛者ゆっくりであるからこそ、そのことをよく理解できた。 ひとたび追いつかれたならば、自分が囮になって姉妹を逃がすか、 先ほどの人間さんルートに飛び込むか。 二つに一つだ。 自分が囮になれば、姉妹だけは逃げ切れる可能性もある。 自分がどれだけ長く相手の注意を引き付けられるかが、勝負だ。 だが、このやり方では自分が助かる可能性は極めて低い。 一方の人間さんルートなら、追手ゆっくりが 人間さんのプレイスに入ることに恐れをなして追跡を断念する可能性もある。 だが、あの恐ろしい、巨大なすぃー! あれの恐ろしさはゆっくりの比ではない。 たとえ百匹のゆっくりでも勝てないのでは、と思わせられるあのすぃーが 迫ってきたら、抵抗するまもなく一家まとめてゆっくりだ。 なにしろ、信じられない猛スピードで突っ込んでくるのだ。 百戦錬磨のまりさでさえ、勝てる自信がない。 やはり、人間さんルートは奥の手だ。 最後の最後までとっておくのがいい。 そう決意し、ただひたすらに跳ね続ける。 そして、一時間ほども跳ね続けただろうか。 まりさは、力の続く限り跳ね続けた。 ゆっくりとしては、相当の距離を進んだ。 今のところ、追手の迫ってくる気配はない。 だが、お帽子の上に三匹のゆっくり。 流石に、辛い。 「ゆ、ゆ、ゆはー、ゆぜー・・・。」 息も荒くなる。 「むきゅ!?おとーさま、むりしないで・・・。」 「まりさ、じぶんでぴょんぴょんできるのじぇ!」 「ありちゅも!ありちゅもじぶんで、ぴょんぴょんすりゅわ!」 辛そうなまりさを気遣う姉妹。 まりさのおちびちゃんたちは、ほんとうにゆっくりしてるね。 まりさ、とってもゆっくりできるよ。 ・・・とは言え本当に子まりさや、赤ありすを自分で跳ねさせるわけにもいかない。 いや、子まりさならば、まりさの負担軽減のために 短時間なら自分で跳ねさせるというのも手かもしれない。 だが、子ぱちゅりーと赤ありすは論外。 遅々として進まないだろう。 このペースで駆け続ければ、無事に逃げ切れるかもしれない。 だが、流石に小休憩は取ったほうがいいかもしれない。 「ゆぅ・・・、ゆぅ・・・。 おちびちゃんたち、ちょっとだけゆっくりしようね・・・。」 立ち止まり、体を傾けおちびちゃんたちにお帽子から降りるよう促す。 「ゆぅ・・・、ゆぅ・・・。ゆふー・・・。」 やっと一息つけた。 ここまでは、順調だ。 一休みしたら、さらに川沿いに下っていこう。 まさか、追手ゆっくりたちも夜通し自分達を追ってはこないだろう。 一般的に言って、ゆっくりは夜行性ではない。 もう少しすれば、日が暮れてくる。 プレイスへ戻る時間を考えれば、夕暮れ時ぐらいまで見つからなければ、 追手ゆっくりたちも引き返さざるを得なくなる筈だ。 もう一がんばりだ。 新しいゆっくりプレイスでは、きっとおちびちゃんたちと幸せな毎日が待っている。 最初は、お家を建てたり狩場を開拓したりと苦労も多いかもしれない。 しかし、そこは自慢ではないが、 コミュニティでも優秀なまりさとして通っていた自分だ。 おちびちゃんたちを飢えさせたりなどはしない。 お家も、きっと立派なのを建てる。 その覚悟がある。 もう少しで、夢のような毎日が始まる。 まりさは、疲れもあってか少しばかり、気が抜けてしまった。 がさがさ 「にゃ!」 「だじぇぇ!?」 「むきゅー!?」 子ぱちゅりーと、子まありさが驚きの声をあげる。 そこで初めて、まりさも異常に気がつく。 近づいてくるゆっくりの気配を見落としてしまった。 こともあろうに、子まりさと子ぱちゅりーよりも、発見が遅れてしまった。 ゆ・・・。まりさ、ゆだんしちゃったよ・・・。 悔いたところで、既に遅い。 相手の先制を覚悟して身構える。 「みつけたんだよー!」 追ってはちぇん一匹だ。 ゆっくりのなかでも、俊足で知られるちぇん種。 おそらく、単独で先行してきたのだろう。 見つかってしまったのは、失策だが一匹だけならなんとでもなる。 しかし、追手ちぇんは、くるりと身を翻す。 「みつけたんだよー!みんなにしらせるんだよー!」 ぴょーんぴょーん そのまま跳ねていく。 「ゆ!?」 まずい。 てっきり一匹でも襲い掛かってくるとばかり思っていたが、思いのほか冷静だ。 向かってくるのならば、返り討ちにしてやることろだが、 すぐに仲間を呼びに行くとは! もしかすると、ぱちゅりー種あたりが入れ知恵したのかもしれない。 追うか。 駄目だ。 おちびちゃんたちを連れては、追いつけない。 おちびちゃんたちを置いていくのは危険すぎる。 「おちびちゃんたち、お帽子にのってね! ゆっくりしないでね!」 「むきゅ!!」 「だじぇ!!」 「ゆ・・ゆん!!」 子ゆっくりたちも大慌てでそれに従う。 ゆっくりしないでね、という強い語勢とまりさの緊張感が伝わっているのだろう。 「ゆっくりしないよ!いそぐよ!」 ぴょーんぴょーん まりさは、今まで以上に速度を速める。 だが、位置を把握されてしまった以上、追いつかれるのは時間の問題かもしれない。 何しろ、自分はおちびちゃんたちを乗せて跳ねている。 比較的身体能力が高めのまりさ、ちぇん、みょん、ありすといったゆっくりたちなら 他の種から先行してまりさに追いつくのも、それほど苦とはしないだろう。 やはり、いざとなったら、自分が囮になっておちびちゃんたちを逃がすしかなさそうだ。 だが、今は力の限りぴょーんぴょーんだ! まりさは、ひたすら力の限り跳ねた。 体力の配分など考えなかった。 そんな場合ではない。 すこしでも、遠くへ。 まりさは、跳ね続ける。 そして、ほんの暫く。 背後に気配を感じるようになった。 複数のゆっくりだ。 ゆゆゆゆ!? ・・・とうとうおいつかれちゃったね。 幸いまだ多少の距離はあるようだ。 まりさは、再びあんよを止め、おちびちゃんたちをお帽子から降ろす。 「ゆ!よくきいてね!このままじじゃ、まりさたちはにげきれないよ! だから、まりさがここにのこるよ!」 「むきゅ!?」 「だじぇ!?」 「ゆん!?」 口々に驚きの声をあげる。 まりさは、落ち着いて続ける。 「だいじょうぶだよ!おちびちゃんたちは、さきににげてね! まりさは、おってをひきつけるよ! まりさは、とってもあんよがはやいから、ひとりならかんたんににげきれるよ! おちびちゃんたちが、さきににげたら、まりさもすぐにおいつくからね!」 「ゆ、ゆわああぁぁ!すごいんだじぇ! おとーさんはてんさいなのじぇ!」 「おとーしゃんはすごいにょにぇ! でもきをちゅけてにぇ!けがしにゃいでにぇ!」 「むきゅう・・・。きをつけて・・・。」 子まりさと、赤ありすは素直に感心している。 それに比べ、子ぱちゅりーの顔色は優れない。 きっと、まりさの言葉が半分嘘なのを理解しているのだろう。 まりさとしては、嘘を言ったつもりはないが嘘になってしまうかもしれない。 だが、唯一つ、おちびちゃんたちを逃がすということだけは嘘にするつもりはない。 「もしもだよ! もしも、おちびちゃんたちが、ほかのゆっくりにおいつかれたら・・・。 そのときは、人間さんのプレイスにでてね。 人間さんのプレイスにでれば、ほかのゆっくりはおってこないよ。 でも、人間さんのプレイスはあぶないから、きをつけてね。 さいごのしゅだんだからね・・・。 それじゃ、はやくいってね! はやくいくんだよ!」 それだけ口早に伝えると、まりさはおちびちゃんたちに先を急がせる。 おちびちゃんたちが茂みの無効に消えたのを確認すると、それとは反対方向、 追手の方へと進む。 少し進んだ所で静かに待つ。 気配が近づいてくる。 見えてきた! 五匹といったところか。 しかし、ゆっくりとして平均的な認識力しかもたないまりさには『いっぱい』だ。 その『いっぱい』の追手の前に姿をさらけ出す。 「ちぇんのいったとおりだよー!飼いゆっくりのなかまなんだよー!」 「ゆ!ほんとうなのぜ!ゲスのかぞくのまりさなのぜ!」 「飼いゆっくりをかくまうゲスゆっくりはゆるさないちーんぽ!」 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!ゆるさないんだよ!」 「んほおぉぉぉーーーー!!」 関係ないことを言っている連中もいるが、とにかく戦意は旺盛なようだ。 猶のこと、おちびちゃんたちの所へ行かせるわけにはいかない。 「ゆ!まりさをつかまえられると、ほんきでおもってるの! ばかなの?しぬの?」 「これだけのかずをあいてに、いいどきょうだみょん!」 「なまいきなんだぜ!まりささまが、せいっさいっしてやるんだぜ!」 まりさの挑発に頭に血を上らせる追手ゆっくりたち。(頭とはどこだろう) 「ゆっふーん!まりさが、つかまるわけないよ! くやしかったら、つかまえてみてね!」 そう言うと、おちびちゃんたちが逃げたのとは別の方向へと跳ねる。 追手ゆっくりたちは、陽動に引っ掛かってくれるだろうか? 「ゆがー!まつのぜ!」 「まってねー!ちぇんは、ゆるさないんだよー!」 「れいむは、かわいいんだよ!」 うまくいった。 追手ゆっくりたちは、みんなまりさを追い始めた。 できる限り、おちびちゃんたちのために時間を稼がなくては。 まりさは、少しずつ逃走方向をずらしていく。 基本的に逃走ルートも追跡ルートも川沿いに進むだけであるから、 うまく半円を描く奇跡で、プレイスへと帰還するルートへ誘い込んでやればいい。 そうすれば、おちびちゃんたちは安全に逃走することができる。 だが、流石は追手のなかでも先頭集団。 足の速いものが揃っている。 ここまで、子ゆっくりたちを運び続けたまりさの体力では、 どこまでやれるかわからない。 だが、やるしかない。 と、いつのまにか、追手たちの集団から例のちぇんが飛び出してきて、 自分と並ぼうとしている。 「おそいよー!くちほどにもないんだねー!」 普段ならこの程度で追いつかれたりはしない。 やはり、疲労の蓄積で相当あんよが鈍っている。 「くらってねー!」 ちぇんが、体当たりを仕掛けてくる。 「ゆ!あまいよ!」 瞬間、速度を落とすことでちぇんをやり過ごす。 まりさを追い越し、背後を見せる形となったちぇんに対して、渾身の体当たり。 「ぎにゃーー!!?」ごろごろごろ あさっての方へと転がっていく。 やったよ! けれど、今のやり取りで、後続との差は更に縮まった。 意外なことに、次に追いついてきたのはれいむだ。 「にがさないよ!れいむはまりさのかたきをうつんだよ!」 ゆゆ!? まりさのかたき!? おそらく、このれいむの番は飼いゆっくりの餌食となったのだろう。 先ほどのしんぐるまざー発言もここからきているのだろうが、 「そんなのまりさたちには、かんけいないでしょーーー!!!」 ばすん 黙ってきいてれば、みんな飼いゆっくりがどーこー言ってるが、 実際のところ、まりさたちには何にも関係ないよ、ぷんぷん! そんな、これまでの怒りも併せて、まりさの体当たりが火を噴く。 「れいむは、しんぐるまざーなんだよ!」 どっすーん 「ゆぴゃ!?」 ころころ なんと、百戦錬磨のまりさがあっさりとはじき返されてしまった。 どうやら、このれいむ、ただのれいむかと思いきや、でいぶだったようだ。 まりさはなんとか体勢を立て直す。 幸い怪我は大したことがないようだ。 だが、追手ゆっくりたちに追いつかれてしまった。 追手でいぶが、近づいてくる。 流石に、でいぶが相手では真っ当な力比べでは勝ち目はない。 ならば・・・。 「ゆっくりしんでね!」 「ゆん!」ざくっ 「ゆわあーーーー!!いじゃいぃぃーーー!! かわいいれいむのおかおがー!」 まりさは、お帽子のなかに隠し持っていた木の枝で、でいぶを切り裂いた。 「ゆ!まりさは、ほんきだよ!かかってくるなら、ようしゃはしないよ!」 「ゆ・・・。」 「にゃー・・・。」 切れ味するどい木の枝と、それを構えるまりさの勇姿。 裂帛の気合に戻ってきたちぇんやでいぶが及び腰になる。 威嚇が成功したかと思われたが、追手の中からみょんとまりさが一匹ずつ進み出る。 二匹とも、まりさと同様鋭い木の枝をくわえている。 「ゆっへっへ!なかなかやるようなのぜ! でもしょせんはたぜいにぶぜいなのぜ! かこめばこっちのもんなのぜ!」 「そうだみょん!けんじゅつなら、みょんがまけるわけないみょん! おそるるにたらないちーんぽ!」 「わかるよー!あいてはひとりなんだねー!」 「ぐぎぎぎぎぎ!!よくもかわいいれいむをおこらせたね! しゃざいとばいしょうをようきゅうするよ!」 「んほおおおおおおお!!」 追手まりさとみょんの言葉に勢いを取り戻す。 特にあのでいぶの傷はそう浅くはないはずだが、ぴんぴんしている。 流石は、でいぶといったところか。 「ゆゆぅ・・・。」 囲まれてしまった。 「まりさのこうげきをくらうのぜ!」 まりさの死角に位置取りした、追手まりさが突っ込んでくる。 辛くもその攻撃をやり過ごす、と、 「くらうみょーーん!」 びゅっ 追手まりさの攻撃に続いて、みょんが攻撃を仕掛けてくる。 これも回避に成功した。 だが、ぎりぎりだ。 「んほおおおおおおお!!」 れいぱーが突っ込んでくる。 「ゆゆー!?」 ばすん ころころ 体当たりを避けきれず、その勢いで、ころころと転がるまりさ。 ダメージはそれほどではないが、ねっちょりしていてなんか気持ち悪い。 流石、れいぱー。 このままじゃ、やられちゃうよ・・・。 どうにかしないと・・・。 転がったまりさを、再び包囲しようと近づいてくる追手ゆっくりたち。 まりさは、挽回の一手を求め、周囲に目を走らせる。 手頃な大きさのいしさんに、目が留まる。 ゆゆ!きんだんのあのてがあったよ! 急いで、いしさんを口に含むまりさ。 近づいてくるゆっくりたち。 まりさは大きく膨れると、先頭の追手まりさ目掛けていしさんを吐き出す。 追手まりさの目に食い込むいしさん。 「ゆぎゃああああああ!!!?まりささまのおめめがーーーーーー!?」 のた打ち回る追手まりさ。 「ん、んほおお!???」 「ま、まりさー!?わからないんだよーー!!!?」 追手の動揺に付け込んで、木の枝をくわえ突撃する。 「にゃ、にゃにゃ!???ちぇんのほうにこないでねーー!!」どすん 体ごとちぇんにぶつかっていくまりさ。 「にゃ゛にゃ゛にゃ゛にゃ゛!????」 見事に追手ちぇんの体のど真ん中に突き刺さる、木の枝。 追手ちぇんは、痙攣をおこしてすぐに動かなくなる。 やったよ・・・。まずは一人だね・・・。 同属を殺めたとあれば、心晴れやかとはいかない。 だが、黙って殺されてやるほど、まりさも甘くない。 なんと言っても、厳しい野良として生きているのだ。 「まりささまのおべべがああああああああ!!!」 追手まりさは、先ほどから、物凄い叫び声をあげ続けている。 とりあえず、こちらも戦闘不能のようだ。 「まだやるの!まりさ、もうてかげんしないよ!ぷくーーーー!!」 更に威嚇。 「んほおおおお・・・。」 「でいぶはしんぐるまざーなんだよ・・・。」 「まだだみょーーーん!!」 みょんが突進してくる。 回避しきれない。 みょんへと、体の向きを変えたところで衝突する。 目の前が真っ白になる。 だが、それも一瞬のこと。 木の枝を構え直し、 「びゅ?」 おかしい、木の枝をくわえていない? いや、だが木の枝は口元にある。 だが、短い。 それに、まりさの声もおかしい。 「びゅげげげげげげ!?」 どうしたというのだろう。 声が出ない。 出てくるのは、潰れたような呻きばかりだ。 体の奥の餡子さんが痛い。 必死で自分の口元に視線をやる。 木の枝は折れてはいないようだ。 だが、やはり短い。 良く見れば木の枝は、自分が口にくわえているわけでもないのに、 口元から落ちもしない。 どういうわけだ。 とりあえずは、包囲を抜けよう。 ずーりずーり 「ゆびゃびゃ!?」 いたい。 それに、自分はぴょんぴょんしようとしたのだ。 ずーりずーりではない。 あんよを痛めてしまったのだろうか。 いや、痛いのはあんよではない。 寧ろ口元から、体の奥、そして更に突き抜けて体の反対側、後頭部までだ。 まさか。 まさかまさか。 嫌な想像が餡子脳に閃く。 そして、混乱したまりさは気づかなかったが、 まりさのすぐ傍には息絶えたみょんが転がっていた。 体の中央に木の枝が刺さっている。。 まりさとの衝突時に、深々と刺さった木の枝が中枢餡を貫いたのだ。 そしてみょんの木の枝は、まりさに刺さった。 まりさの口元の木の枝は、まりさのものではなく、みょんの木の枝が刺さったものだ。 まりさは当たり所がよく、即死は免れた。 だが、大きなダメージを負ってしまったのは確かだ。 もし、木の枝が刺さったまま、さらにずれれば中枢餡を傷つけ、 永遠にゆっくりしてしまうかもしれない。 それほどの傷だ。 だが、それ以前にまりさの危機は目の前に迫っていた。 「ゆぷぷぷぷ!いいざまだね! かわいいれいむをいじめたばつだよ!」 「んほおおおお!!」 でいぶと、れいぱーが残っていた! まりさが、串刺しになり抵抗もないとみるや、素早く距離をつめてくる。 「ぎゅんびゃああああああ!!!?」 紛れもない恐怖の悲鳴を上げるまりさ。 木の枝に串刺しになったのみならず、でいぶとれいぱーという、 忌避すべき輩が自分目掛けて襲い掛かってくる。 もはや、自分に抵抗する力がないことは、理解できていた。 自分がこのあと、どうなるのかも。 のしっ 「ばべでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 背後から凄い力で、圧し掛かられ、押さえつけられてしまう。 「んほおおおおおおおお!!しまるわーーーー!!」 「ぶびげええええええええ!!」 普段の勇敢なまりさからは想像もつかない、悲痛な泣き声。 ぱんぱん、ぬちょぬちょ ぱんぱん、ぬちょぬちょ 「んほおおおおおおお!!もりあがってきたわぁぁぁぁぁぁ!!!」 「びびゃがああああ!!!!ばらじでえええええ!!! ばがびゃんでびぢゃぶううううううう!!!!」 泣き叫ぶまりさ。 もう陰惨以外に言葉がない。 「すっきりー!」 「びゅっびりー!」 そして、同時声をあげる二匹。 まりさの頭上に一本の茎が生えてくる。 まりさからは見えないが、小さい数体の実ゆっくりが生っているはずだ。 まりさ、犯されちゃったよ・・・。 れいぽぉされて、赤ちゃんできちゃったよ・・・。 ざくっ 「びゅう!?」 そんな悲痛な思いに沈む間もなく、まりさに衝撃が走る。 「ゆふふ!かわいいれいむのかおに、きずをつけてくれたおれいだよ!」 でいぶが木の枝をくわえ、まりさに傷をつけたのだ。 だが、傷は深くない。 手加減されているのだ。 無論、慈悲などではない。 甚振るつもりだ。 ざくっ ざくっ ざくっ 滅多矢鱈に木の枝でまりさに切りつけるでいぶ。 「ゆびぎゅうううううううう!!!」 あまりの苦痛に悲鳴を上げる。 と、 「んほおおおおおお!!だい2らうんどよおおおおお!! えんりょしなくていいのよおおおお!!!」 ぱんぱん、ぬちょぬちょ ぱんぱん、ねちょねちょ 「ぎゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ!!!」 「ゆぷぷぷぷぷぷ!こっちもえんりょしないでね!」 ずぶっ 「ぐぎゃああああああああああ!!!」 そして、少し離れたところでは、 「まりささまのおめめがーーー!!おめめがみえないいいい!!!」 ゆっくりたちは大騒ぎを続けて、とんでもない騒音を周囲に撒き散らしていた。 れいぱーと、でいぶの饗宴はいつ果てるともなく続いた。 続くと思われた。 が、唐突にそれは終わりを告げる。 ぐちゃり つい、たった今まででいぶがいた場所に、巨大な何かが生えている。 いや、巨大な何かがでいぶを踏み潰したのだ。 巨大な何かを見上げる。 人間さんだ! 何故? ここは人間さんのプレイスではない。 川原だ。 ゆっくりプレイスではないが、ゆっくり以外はほとんど訪れることのない場所だ。 なのに、何故人間さんが現れ、しかもゆっくり殺しをしているのか。 まりさの知る限り、わざわざ川原にまできてゆっくりを殺していく人間さんなどいない。 「ん、んほ!?」 驚愕にすっきりの途中だというのに動きを止めるれいぱー。 巨大なあんよを持ち上げる人間さん。 「んほおおおおおおおおおおお!?????????」ぶちゃ れいぱーが潰される。 まりさの目の前で。 次は自分の番だ。 恐怖のあまり、身動きどころか、呻きさえ漏らすこともできず死を待つ、まりさ。 が、 「いじゃいいいいいぃいいいいい!!いじゃいのぜえええええええ!!!! まりささまのおめめが!きれいなおめめがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」 延々と大騒ぎを続ける追手まりさの方へと向き直る人間さん。 そして、 ぐちゃり 静かになった。 ほんの少し前までの喧騒が嘘のように静まり返る。 人間さんが、脚を振っている。 靴についた餡子を落としているようだ。 ゆ!? もしかして・・・・! 自分を助けてくれた!? この人間さんは自分を助けてくれたのだろうか!? 「にん・・・げ・・・じゃ・・・。ゆっぐ・・・じ・・・ありが・・・・。」 人間さんが、まりさの絞り出すようなお礼の声に気づき振り向く。 ぐちゃり 汚い物を踏んだとばかり、 靴の裏にこびり付いた餡子やカスタードを地面に擦り付け落とす人間さん。 そしてそのまま去っていく。 姉妹は歩みを止めず、逃走を続けていた。 まりさの言いつけの通り、川原を川沿いに下っている。 とはいえ、子ゆっくりのあんよではさほどの距離は進めない。 まして、身体能力の低いぱちゅりー種と、赤ゆっくりが一緒では尚更だ。 ともすれば、遅れがちになる二人のために、 比較的体力に余裕のある子まりさが殿を引き受け、二人を励ましつつ先に進んでいた。 別れた直後はそれほど不安でもなかったが、姉妹だけで逃走していると どうしても不安が頭をもたげてくる。 特に赤ありすは、しばらくすると改めてまりさのことが心配になったらしく、 おとーしゃんだいじょうぶかちら、と何度も口にしていた。 そのたびに子ぱちゅりーと子まりさが、おとーさんならだいじょうぶ、 と安心させてやらなければならなかった。 不安と疲労との戦いではあったものの、しばらくは何事もなく逃走を続けた姉妹だが、 「ゆゆ!?」 ふと違和感に気づいた子まりさは、立ち止まると周囲へと注意を傾けた。 がさごそ、がさごそ ぴょーん、ぴょーん 背後から草を掻き分けてくる音と、ゆっくりが跳ねるとき特有の物音が聞こえてくる。 自分の気のせいだろうか。 だんだんと近づいてくるように思える。 それも一匹ではない。 どうやら複数のゆっくりが近づきつつあるらしい。 子まりさは考える。 おとーさんは姉妹のために、一人残った。 ぱちぇおねーちゃんは、体が弱い。 ありすはまだ赤ちゃん、論外だ。 いざと言う時は、人間さんのプレイスに逃げ込めといっていた。 だが、それも危険な手だとも言っていた。 最後の手段だよ、と。 だが、まだ自分がいる。 体の弱い姉妹二匹のために、自分にはやれることがある。 ならば、自分がやるしかない。 あの偉大なおとーさんと同じまりさ種である自分が。 「ぱちぇおねーちゃんとありすは、はやくにげるんだじぇ! まりさもすぐにおいつくんだじぇ!」 「むきゅう・・・。」 「ゆぴぃぃぃぃ!いやぢゃあぁぁぁぁぁ! おねーちゃぁぁぁん!いきゃないぢぇぇぇぇぇぇ!」 躊躇う子ぱちゅりー。 泣き叫ぶ赤ありす。 「だいじょうぶなのじぇ、ありす! おねーちゃん!いもーとをたのんだのじぇ!」 そう言って、二匹に背を向ける子まりさ。 いもーとをたのむ。 その言葉にはっとなる子ぱちゅりー。 まりさの言わんとするところを理解したのだろう。 「むっきゅん!いくわよ、ありす!」 「いやぢゃ、いやぢゃぁぁぁぁ!」 赤ありすは、子まりさに追いすがろうとする。 ぱしっ 「ゆっ!?」 子ぱちゅりーが赤ありすに軽く体当たりする。 赤ありすは、驚いて目を見開き、思わず動きを止める 「むきゅー!いいかげんになさい! ありすが泣いてると、まりさだってゆっくりできないわ! いそいでにげるのよ!」 「ゆっぐ・・・、ゆぅぅぅ・・・。ゆっくちりかいしちゃわ・・・。 おねーちゃん、かえってきちぇね!やくちょくよ!」 「ゆ!やくそくなのじぇ!またみんなでゆっくりするのじぇ!」 背を向けたまま答える子まりさ。 そのまま、二匹と距離をとり、追手の声が聞こえる方へと向かう。 しばらく進むと、追手と思しき、まりさとれいむの姿が見えた。 周囲には他のゆっくりの気配はない。 どうやらこの二匹だけが先行してきているようだ。 「子ゆっくりどもはこっちにむかったはずなのぜ! はやくみつけるのぜ!」 「あまあま、たのしみだね!れいむがおいしくおりょうりするよ!」 「ゆっへっへ!れいむのりょうりはてんかいっぴんのんだぜ! いまからたのしみなのぜ!」 あまあま? おりょうり? 何のことだろうか。二匹の追手の話の内容は良く分からない。 しかし、大事なのはこの二匹の向かう先だ。 この二匹は先に逃げた姉妹の方へと向かっている。 予想したとおり、このままでは身体能力の低い姉妹たちは逃げ切れないだろう。 やはり自分が覚悟を決めるしかない。 子まりさは追手とある程度の距離を保ったまま、タイミングを計り姿を現した。 「ゆ!まりさはここなのじぇ!つかまえてみるのじぇ!」 偉大なおとーさん譲りの俊足を今こそ見せるときだ。 恐怖は勿論あるが、気分が高揚してくるのをとめられるものでもない。 いかに大人ゆっくりとはいえ、そうそうこの自分が遅れをとるものか。 そして追いかけっこを初めて数分。 「はひぇ、はひぇ・・・。」ぜーはー、ぜーは 追手もなかなかの俊足だ。 だが、負けてなるものか。 なかなか距離が離れない。 ならば我慢比べだ。 「はひぇ、はひぇ・・・・。」ぜーは、ぜーはー 相手はすぐに音を上げるに決まっている。 自分に追いつけるものか。 「はひぇ、はひぇ・・・。」ぜーはー、ぜーはー そう思っていたのに、そう思った結果が・・・、 「konozamaなんだじぇ・・・。」 だじぇ、だじぇ言いながら元気良く逃げ回っていたのも最初のうちだけ。 すぐに息が切れてきて、はひぇーはひぇーな様になった。 相手は別段無理をするでもなく、淡々と子まりさの少し後を着いてきている。 このままでは逃げ切れない。 いつか追いつかれる。 その焦りから、子まりさは周囲への警戒を怠る。 目の前に突き出た鋭い枝と、その先に三十センチほどの高低差が できていることに気づかない。 ザクッ ぼすん、ごろごろ 「ゆぴぃぃぃぃぃ!!!」 鋭い痛みと続く鈍い痛みに、子まりさは思わず悲鳴を上げる。 木の枝に速度を落とさぬまま突っ込み、皮を切り裂かれてしまった。 そして、そのままの勢いで三十センチの高さから落下し、転がった。 木の枝で裂いたのだろう頬と、落ちたときに石にでもぶつかったのか まりさのあんよも破け、餡子さんが漏れ出している。 「ゆぴぴぴぴぴ!!?まりさの餡子さん、とまるのじぇ!」 いたい、いたい 早く先に進まなければいけないのに。 姉妹を逃がして、そのあと自分もにげきらなければいけないのに。 まりさのあんよさん、はやくうごくのじぇ! 傷ついたあんよはどれだけ必死に動かしても、ずーりずーりがやっとだ。 しかも動くほどに、微量だが餡子が漏れていく。 子まりさはまだ気付いていないが、傷自体も動くほどに少しずつ大きくなっている。 ずーりずーり、ずーりずーり がさごそ、がさごそ ずーりずーり、ずーりずーり がさがさ、ごそごそ 子まりさは痛みを無視して必死にあんよを動かす。 しかし、遅々として先に進まない。 それに比べて、後ろから聞こえる物音はどんどん近づいている。 ずーりずーり、ずーりずーり がさごそ、がさごそ・・・「みつけたんだぜ!」 「ゆぅぅぅぅぅぅ!」 追いつかれた。 見つかってしまった。 あんよがいたい。 逃げ切れない。 「まりさはつよいのじぇ!いまならみのがしてやるのじぇ!」 精一杯の虚勢を張り、威嚇を試みる。 上手くいけば、戦わず相手を追い払える。 が、 「ゆっへっへ!まずはあんよなのぜ!」がぶっ 「まりちゃのあんよがーー!?」 相手は子まりさ如きの威嚇など意に介さない。 追手まりさの一噛みで、子まりさの底部の四分の一ほどの皮が噛み千切られた。 あんよ四分の一の損傷ならすぐに死に至ることもない。 しかし、これだけのケガを負ってはずーりずーりすらまともにできない。 まして、この二匹から逃げ切ることはもう不可能だろう。 続いてれいむが近づいてくる。 恐怖と痛みに半ば反射的に、再びの威嚇を試みる。 今度はぷくーだ。 「なにするのじぇ!?やめるのじぇ!まりさ、ほんきでおこるよ!ぷくー!」 しかし、追手のまりさとれいむは、そんな子まりさを全く相手にしない。 「これでもうにげられないね!ごくろうさま、まりさ! おりょうりはれいむにまかせてね!」 「れいむはりょうりめいじんなんだぜ!たのしみなんだぜ!」 「ゆふふふ!てれちゃうよ!ほんとうのこといわないでね! それじゃ、おりょうりかいしだよ!りょうりはあいじょうなんだよ!」 追手まりさと追手れいむが何を言っているのか理解できない。 りょうり? 一体何を料理するというのか。 理解はできないが、なにやら不吉なものを感じる。 「な、なにをするきなのじぇ・・・。」 気丈に振舞おうと努めるが、怯えが隠せない子まりさ。 声が震える。 ふと気づくと追手れいむが、先の鋭い木の枝をくわえている。 そして、それを子まりさ目掛けて振るう。 さくっ 「ゆぴいぃぃぃぃ!?いたいのじぇ!やめるのじぇ!」 さくっ さくっ 「ゆ!?ゆびぃぃぃぃぃ!!」 さくっ さくっ さくっ 「ゆっ!?ゆっ!?いちゃい、いちゃい、いちゃいぃぃぃぃぃ!!!」 追手れいむは子まりさを浅く、何度も切りつける。 その傷口は、皮が僅かに裂ける程度で、ほとんど出餡しない。 つまり苦痛を与えはするが、命を脅かすことのない傷だ。 子まりさが、苦痛とショックで痙攣を起こしかけるまで続ける。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 しかし、ショック死などさせない。 『りょうりめいじん』のれいむは、ギリギリの所を見極め一旦りょうりの手を休める。 「ゆぴー、ゆぴー・・・。ゆぅぅぅぅ・・・。」 子まりさが落ち着くのを待って、次の手順に移る。 「それにしても、このちびまりさ、きたないお帽子だね! まりさとはおおちがいだね!」 「まったくなんだぜ!おなじまりさとしてはずかしいんだぜ!」 「「ゆぷぷぷぷぷ!」」 二匹で子まりさを口々に罵倒し始める。 なかでも、ゆっくりにとっては個体認識などに極めて重要なお飾り、 この場合はお帽子について集中的に罵倒する。 「ゆ!?ゆゆゆゆ!?まりさのお帽子をわるくいわないでね! まりさのお帽子はとってもゆっくりできるんだじぇ!」 「ゆっぷー!!そんなきたない汚帽子がゆっくりできるの!? まったくかたはらいたいよ!しょうしな!だよ!」 「やっぱりきたない汚ちびまりさの汚帽子はゆっくりできないんだぜ! うんうんのにおいがするのぜ!」 「ゆびぃぃぃぃぃ!!やめるんだじぇ!まりさほんきでおこるのじぇぇぇぇ!」 度重なる侮辱に、痛みも忘れ怒り心頭の子まりさ。 しかし、二匹の追手はそんな子まりさの怒りもさらりと無視すると。 おりょうりの最終段階へと進む。 「こんなきたないお帽子はめざわりだね!わいせつぶつちんれつざいだね! れいむがしょぶんしてあげるよ!」 ぐいっ 言うや否や、追手れいむは子まりさに近づくと、 そのお帽子を口にくわえ剥ぎ取ってしまった。 「ゆんやー!!?まりちゃのお帽子さんかえすのじぇ! お帽子さんがないとゆっくりできないのじぇぇぇ!!!!」 子まりさはほとんど身動きが取れない。 そんな体でも、追手れいむの方へと這いずっていく。 その体からは少しずつだが、餡子が漏れる。 「ゆゆゆゆゆ!そんなにだいじなお帽子ならはやくとりかえしにきてね! はやくしないと・・・!」 びりっ 「ゆびゃああああああああ!!!」 追手れいむが子まりさのお帽子を少しだけ破いてみせる。 子まりさは狂ったように叫び始める。 じたばたと無意味に体を動かし、そのせいで出餡も増加する。 「ゆんやー!ゆんやー!かえすのじぇ!かえすのじぇぇぇぇ!!」 「おお、ぶざま!ぶざま!」 「くそちびがいいざまなのぜ!」 びりっ びりっ 「まりちゃのおぼーし!ゆっくりできるおぼーししゃんがああぁぁぁ!!」 びりっ びりっ 「ゆわーー!!もうやめるのじぇ! はやくぺーろぺーろしないとまりちゃのおぼーちなおらないのじぇ!」 ペーろペーろしたところでお帽子が治る訳もないが、 一刻も早くお帽子の元にたどり着こうと必死の子まりさ。 びりびりびりびりびり 「ゆ・・・!?ゆわあああああああああああああああ!!!???」 とうとう子まりさの目の前でただの布切れに姿を変えるお帽子。 「ぺーりょぺーりょ、ぺーりょぺーりょ・・・。 ゆわあああああ!?なんでなのじぇ! なんでおぼーちしゃん、なおらないのじぇぇぇぇぇ!!!???」 「ぺーりょぺーりょ、ぺーりょぺーりょ!はやくなおるのじぇ!? まりちゃのすてきなおぼーちしゃん!なおるのじぇ!」 「ぺーりょぺーりょ、ぺーりょぺーりょ・・・。」 一向に治らないお帽子をぺーろぺーろし続ける子まりさ。 「ゆゆゆ!?なんだかゆっくりできないこがいるよ!」 「ほんとうなんだぜ!おかざりなしのゆっくりできないゆっくりなのぜ!」 さも、今気づきましたと言わんばかりのわざとらしい態度の二匹。 しかし、子まりさはこれまで以上に動揺が激しい。 ゆっくりできない。 おかざりなし。 ゆっくりとしてのアイデンティティに関わる言葉だ。 既に異常な心理状態の子まりさが、更なる動揺を誘われたとしても無理はない。 「きもちわるいね!きっとおやにすてられたんだよ!」 「ちがうんだぜ! きっとこのおちびのかぞくもゆっくりできない連中なんだぜ!」 「ゆぴぃぃぃぃ!まりちゃはゆっくりできないゆっくりじゃないいぃぃ! ゆっくりしないであやまるのじぇ!」 「ゆぷぷぷぷ!この汚まんじゅうなにかいってるよ!」 「お帽子なしのくせにうるさいのぜ!」 「ゆぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」 とうとう精神的なショックから再度の痙攣に突入しかける子まりさ。 「ゆゆーん?そろそろいいね!あじみするよ!」 ぱくっ 「ゆぴっ!?」 小さく子まりさを齧る追手れいむ。 「ゆゆーん!おいしいよ!おりょうりかんせいだよ!」 「やったのぜ!まりさもあじみなのぜ!」 ぱくっ 「ゆぴいいいいいい!?いちゃいぃぃぃぃぃぃ!!」 むーしゃむーしゃ 「いいおあじなのぜ!さすがはまりさのれいむなのぜ!」 「ゆふふふふ!てれるよ! ゆん!それじゃ、ひさしぶりのごちそうだよ!いっしょにたべようね!」 「そうするのぜ!」 「「ゆっくりいただきます!!」」 一体何なのだ、この二匹は。 おりょうり? どうやら自分のことらしい。 それよりさっきこの二匹は自分のことを食べた。 そう、少しだけだが、確かに自分の体を食べたのだ。 ガタガタ ガタガタ 子まりさは今更体の震えが止まらない。 この二匹が自分に何をするつもりなのか、ようやく理解できた。 こいつらは自分を喰らうつもりなのだ。 どういうつもりかは知らないが、わざわざ自分を痛めつけた上で 生きたまま喰らうつもりだ。 ガタガタ ガタガタ 先ほどは、僅かに齧られただけだ。 齧られた場所も体の表面だ。 だが、この先はどうだろう。 自分の体を喰らうということは、自分のおめめや残ったあんよ、 なにより体の内にあって命の源である餡子さんまで食らうつもりではないのか。 ガタガタ ガタガタ 人間で言うところの内蔵や筋肉に当たるゆっくりの餡子。 それを生きたままにして貪られる。 餡子脳の子まりさにもこれから自分の身に起こること。 その苦痛と、恐怖がやっと理解された。 「ゆぴぴぴぴぴ!!おとーしゃ?おかーしゃ?ぱちゅりーおねーちゃ?ありちゅ? みんなどこなのじぇぇぇぇぇぇーーーー!!?」 ずーりずーり 「たすけてほしいのじぇ!まりちゃはここなのじぇぇぇぇーーー!!」 すーりずーり 痛めた体で無理に体を動かす。 ぽろぽろと餡子がこぼれる。 「ゆぅぅぅ!?もったいないよ! せっかくの餡子さんがもれちゃうでしょ!ぷんぷん!」 「まったく、しょうがないのぜ!」 がぶり 「ゆぎいいいいいいい!!!?」 追手まりさは更に子まりさのあんよを噛み千切る。 子まりさの底面は、ほぼ餡子が剥き出しでうねうねと不気味に蠢くものの、 最早僅かたりとも先に進むことはない。 「これでいいのぜ!こんどこそ、ゆっくりごちそうをあじわうのぜ!」 むーしゃむーしゃ ぺーろぺーろ がーつがーつ 旺盛なゆっくりの食欲の前に小さくなっていく子まりさの体。 叫ぶ子まりさ。 「やめるのじぇ!?やめるのじぇ!?まりしゃをたべないでほしいのじぇ! ゆぴぴぴぴ!!!そんなとこかじらないでほしいのじぇぇぇぇ!!!!!」 弱弱しく、途切れ途切れになっていく声。 「やめるのじぇ!!まりしゃの餡子しゃんたべないでほしいのじぇ!? いのちの餡子しゃん・・・。まりしゃ、の、・・・・。」 「ゆっふー!あまあまさんおいしかったね、まりさ!」 「ほんとうだぜ!こんなときぐらいしか、あまあまさんはたべられないのぜ! まりさたちはうんがいいのぜ!」 「あとのおちびはどうするの?」 「ゆあーん?まりさは、おなかいっぱいなのぜ! きょうのところはかえるんだぜ!」 「ゆっゆゆーん!そうだね!はらはちぶんめだね!さすがまりさだよ!」 「「ゆっくりごちそうさまっ(なのぜ)!!」」 ぴょーん ぴょーん 追手ゆっくりが去った後にはお帽子の残骸の黒い布以外は何も残されていない。 一方の子ぱちゅりーと赤ありす。 子まりさと別れた後も必死の逃走を続けてはいるものの、 歩みの遅さは変わらない。 「むきゅー、むきゅー・・・。」 「ゆはー、ゆはー・・・。」 二人とも無言で跳ね続ける。 「ゆっ!?」 ごろんごろん 赤ありすが石ころに躓いて転がる。 「ゆ・・・、ゆぴぇぇぇぇぇぇん!」 痛みに泣き出す赤ありす。 「むきゅん・・・。」 本来なら、赤ありすを宥めるなり叱咤するなりして先を急がせるべき 姉の子ぱちゅりーも精も根も尽き果てていた。 「むきゅ・・・。すーりすーり・・・。ゆっくりしていってね・・・。」 「ゆ!?・・・ゆっくりしちぇいってにぇ・・・。」 なんとかすーりすーりをしてやるので限界だ。 「・・・・。」 「・・・・。」 そのまましばらく、二匹は無言のままじっとしていた。 体力が尽きているのだ。 もう先に進めない。 それに。 おとーさんは無事だろうか。 姉妹のまりさは無事だろうか。 こうしている間にも二人が自分達に追いついてこないだろうか。 二人のことが心配でならない。 不安で不安で仕方がない。 だが、何もできない。 「むきゅ・・・。先にすすみましょうか・・・。」 「ゆ・・・。」 ずーりずーり ずーりずーり それこそ、ナメクジが這うような速度で先に進む。 少し行っては立ち止まる。 その繰り返し。 まわりは本格的に暗くなり始める。 暗くなれば、追手たちも諦めてまりさと、子まりさも戻ってくるかも知れない。 子ぱちゅりーは、自分を誤魔化してそう言い聞かせる。 そうしないと、不安で泣き叫び出しそうになる。 だが、今となっては赤ありすの面倒を見られるのは自分だけだ。 姉としてできる限りのことをしなければ。 無言のまま進む二匹。 稀に子ぱちゅりーから、赤ありすへの短い激励があるだけだ。 少し離れた道路のほうから、物音が聞こえてくる以外は、 しんと静まり返ったなかを二匹は進む。 不意に歩みを止める二匹。 それまでの静寂を破って川原から物音が聞こえる。 自分達の後方。 ゆっくりプレイス側から近づいてくる。 もしかしたら、まりさと、子まりさだろうか! 耳を済ませる。 違う! 物音の数はもっと多い。 おそらく大勢のゆっくりが近づいているのだ。 間違いない。 追手ゆっくりだ。 「むきゅ!ありす、いそぐわよ!」 急いだところで、自分達が逃げ切れるとは思えない。 「ゆん!わかっちゃわ、ぱちぇおねーちゃん!」 おとーさまは、なんと言っていただろうか。 疲労で鈍った餡子脳で考える。 そうだ、人間さんのプレイスに出ろと言っていた。 人間さんのプレイスは危険だ。 しかし、だからこそ追手も人間さんを恐れて、立ち去るかもしれない。 賭けるしかなさそうだ。 「ありす、川原をでるわ。人間さんのプレイスにいくのよ!」 「ゆゆ!?ぢぇも、あっちは・・・。」 赤ありすは、まりさと出会った時に 人間さんのプレイスでさんざん怖い思いをしている。 ショックで死に掛けたほどだ。 赤ありすは、人間さんのプレイスを「ゆっくりの地獄」と表現した。 あながち間違いではない。 そうした体験があるため、まりさに言われたことを覚えてはいても、 いざ人間さんのプレイスに出ると言われると、恐怖から尻込みしてしまう。 「むきゅん!ありす、おとーさまの言ったことをわすれたの!行くのよ!」 厳しい口調で、命じる。 赤ありすの戸惑いは理解できるし、自分も進んでそうしたいわけではない。 危険があることも承知している。 それでも、他に助かる手立てがないのだ。 本当にこれが最後の手段。 自分達の為に、囮になってくれたまりさや、子まりさはここにはいない。 誰も自分達姉妹を守ってはくれないのだから。 「ゆ・・・。ゆっくちりかいしちゃわ・・・。」 最後の最後の力を振り絞って、人間さんのプレイスへと出て行く。 この辺りは川原から、道路へは斜面になっている。 力尽きようとしている二匹のあんよをさらに鈍らせる。 後ろから近づく物音はどんどん近づいている。 自分達の位置は既に捕捉されているのだろう。 「むきゅー、むきゅー・・・。」 「ゆうー・・・、ゆふー・・・・。」 もうすぐ、人間さんのプレイスだ。 しかし、 「むきゅ!みつけたわ!ゲスの飼いゆっくりよ!」 「みつけたよ!ゲスはせいっさいっだよ!」 「ゆっくりしないで、まつんだぜ!」 とうとう追いつかれてしまった。 全部で十匹ほどの集団だ。 勿論、二匹にはたくさん、としか認識できない。 逃げる二匹。 追う十匹。 追う側が、ふと気づく。 「にゃ!あっちは人間さんのプレイスなんだよー!」 「みょ!?まずいみょん!人間さんのプレイスにはいけないみょん!」 「ゆんやー!人間さんはこわいよー!れいむはもどるよ!」 「ありすももどるわ! 人間さんのプレイスに入り込むなんていなかもののすることよ!」 追手ゆっくりの大半が、戻っていく。 むきゅ!やったわ、本当に諦めたわ! しかし、追手もあと三匹残った。 「むきゃきゃきゃ! 人間さんのプレイスに入っても、悪いことをしなければいいのよ! ぱちゅは、こんな手には引っ掛からないわ!」 「まりさは、ゲスゆっくりをしまつするまであきらめないよ!」 「れいむもおちびちゃんのために、ゲスをせいっさいっするよ!」 人間さんのプレイスに入ったというのに、構わず追ってくる。 二匹は必死であんよを動かすが、あっと言う間に距離をつめられる。 「おいついたよ!」ばすん 追手まりさから体当たりを受ける赤ありす。 「ゆぴいいいいぃぃぃぃぃ!?」 悲鳴を上げながら、ごろんごろんと転がっていく。 転がった先で今度は待ち構えた、追手れいむに弾かれる。 「れいむのいかりをおもいしってね!」どすん ごろんごろん 転がった先でようやく止まる赤ありす。 目を回したのか、痛みのせいか、その場所から動かずに泣き喚く。 「ゆぅぅぅぅぅ!!?ゆんやーーーー!!ゆぴいいいいいいいいい!!!」 「うるさいよ!なけばいいってもんじゃないんだよ!」 「そうだよ!なきたいのはこっちだよ!みんなのうらみをおもいしってね!」 どすん ばすん ぼすん 赤ありすに何度も体当たりを食らわせる、追手のれいむとまりさ。 「む、むきゅ!ありすにさわらな・・」どかっ 「むはー、むきゅー・・・。やっと追いついたわ・・・。」 止めに入ろうとした子ぱちゅりーも、 遅れて追いついた追手ぱちゅりーに不意打ちを食らわされ、動きを阻まれる。 「む、、むきゅん・・・。あ、ありす・・・・。」 「ゆびびびびびびびびび!!!?やめちぇぇぇぇぇぇ!! ありちゅのお飾りとらにゃいぢぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆぷぷぷぷ!お飾りなしのありすはゆっくりできないね!」 「ゲスの飼いゆっくりにはお飾りなしがおにあいだよ!」 お飾りを奪われた上、体当たりを食らわされたり、噛み付かれる赤ありす。 子ぱちゅりーも、追手ぱちゅりーに圧し掛かられる。 体の弱いぱちゅりーでは、これだけで、じわじわと生命力を奪われていく。 むきゅう・・・。もう、だめかしら。 諦めが、頭をもたげてくる。 すると、 シャー、キキッ 鋭い音がして、ゆっくり一同がそちらに視線をやる。 そこには、人間さん用の小さいすぃーに跨ったおにーさんがいた。 「ゆゆ!?」 「ま、まずいよ!?人間さんにみつかっちゃったよ!」 動揺する追手まりさとれいむ。 「むきゅきゅん! 人間さん、ぱちゅりーたちは、こっちのゲスゆっくりをせいっさいっしてるの! 人間さんたちの迷惑になることはしないから、ほうっておいてね!」 「ゆ!?さすがだよ、ぱちゅりー! そうだよ、まりさたちはゲスゆっくりをせいっさいしてるんだよ! だからにんげんさんにはかんけいないんだよ!」 「ゆゆん!人間さんはゆっくりしないで、はやくいってね! れいむたちは、わるいゆっくりじゃないんだよ!」 口々に、言い立てるゆっくりたち。 だが、おにーさんは、黙ってこちらを見つめてくる。 立ち去ろうとしない。 焦れたのか、ぱちゅりーが少々短気を起こす。 「むきゅん!聞こえないの!?ぱちぇのいったことが理解できる? 人間さんには迷惑を掛けないから、人間さんもさっさとどこかにいってね!」 それでも、無言のおにーさん。 追手ゆっくりたちは、動くどころか、何一つ話そうともしないおにーさんの その態度をどうとったのか、調子に乗って騒ぎ出す。 自転車で帰宅中に妙なものに行き当たった。 ゆっくりだ。 しかし、なんだこいつら。 この辺りのゆっくりたちは、その多くがとある場所を住処にしている。 この川沿いに少し行った先の空き地だ。 かなり広い場所で、私有地。 ただし、長いこと放置されてるようだ。 そこに多くのゆっくりが棲みついたんだ。 苦情がないわけじゃないけど、 公園なんかに棲みつかれるよりましってことで黙認されてる。 それと、黙認されてるもう一つの理由は、野良のゆっくりたち自身だ。 長く人間からの駆除を受け続けて、少しは学習したらしい。 人間に楯突いたり、そもそも人間の前に姿を現すことを控え始めたのだ。 そうして、ゆっくりの側が大人しくしていれば、 わざわざ望んでゆっくり潰しに走る人間は少数派だ。 この辺りのゆっくりは比較的大人しくて善良って言われてるんだけどな。 こいつら、理由は分からんが、子ゆっくりを虐めてるし。 あっちのありすなんか、お飾りを盗られて泣いてるな。 しかも、こっちが黙ってると調子に乗ってきやがったな。 こんな風に人間の生活圏に入ってきて大騒ぎするような連中は久しぶりに見たぞ。 とりあえず、潰しておこう。 ぶちゅ ぶちゅ ぶちゅ よし。 静かになった。 でも、まだ、残ってるんだよな。 こっちに小さいのが二匹。 ありゃ、二匹で寄り添って、小さく震えてやんの。 かわいいねー。 さて、こっちのちっこいの二匹は・・・・・・・・。 それから、子ぱちゅりーと赤ありすは、しあわせーな生涯を送った。 二匹を助けてくれたお兄さんが、そのまま二匹の飼い主さんになってくれた。 二匹は成体になる頃には、銀バッジのゆっくりになった。 成長した二匹は姉妹から番となった。 二匹は、何匹もの子ゆっくりと孫ゆっくりに恵まれた。 ほとんどの子供達は里子に出されたが、何匹かの子や孫はお兄さんの手元に残され、 ぱちゅりーとありすと一緒に暮らすことになった。 里子に出された子ゆっくりたちも、ときどきは会うことができた。 優しい飼い主さん。 暖かなお家。 おいしいごはん。 愛しい番に、可愛い子に孫、円満な家庭。 多くのものを失った二匹だったが、失った家族以外の全てを取り戻した。 失った家族は戻ってこなかったが、新しい家族を手に入れることができた。 二匹は、しわわせーに生き、老いて、そしてその生涯を終えた。 偶々助けた子ゆっくりを、ほんの気まぐれで飼い始めたが、 思ったより長い付き合いになったな・・・。 元野良の割りにこいつら、いいゆっくりだったよ・・・。 俺もすっかり情が移ったよな。 それにしても。 ゆっくりって本当に三より大きな数がわからないんだな。 実ゆを間引いたりしても全然気づかないし。 お飾りとって、口を利けないようにしておけば、 自分の子ゆがゆっくりコンポストにされてても全然気づかないし。 それに、数が増えすぎたと思ったら事故死、病死に見せかけて殺しちゃっても 俺がやったなんて疑いもしないし。 おかげで、実ゆ食べ放題だったし、生ゴミの処理も楽になったし。 まあ、生ゴミだけじゃなくて燃えないゴミとか、 危険物もちょっと無理させれば普通に処理してくれたけどさ。 最初の躾はちょっとコツがいるし、必ずしも責任もって飼おうとすれば楽じゃないよ。 ゆっくりって。 勿論、無責任に飼おうとすれば楽な連中だけどな。 しかし、潰したり食べたりできるし。 まあなんにしろ、一つ言えるのは、 ゆっくりってのは処分するには手間の掛からないペットではあるってことだ。 それは確かだろう? さいごまでよんでくれた人、ほんとうにありがとうございます。 それとおつかれさまです。 よむだけでひとくろうだったのではないでしょうか。
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『まりちゃの未来』 7KB 不運 飾り 赤ゆ 人間なし 独自設定 ネタ被りが怖いです まりちゃの未来 虐待はありません。 ゆっくりが死にません。 なんだか俺設定風味です。 それでもよろしければどうぞ。 楽しんでもらえれば幸いです。 まりちゃは今とてもゆっくりとしていた。 暖かな母の温もり。 優しく包み込むような母の声。 凛とした希望に満ちた父の声。 恐れも、苦しみも、悲しみも、飢えも無い世界で、まりちゃは微睡んでいた。 --ゆぴー。まりちゃはゆっくちしちぇいりゅにょじぇ。 --きょきょはちゃいきょっうのゆっくちぴゅれいしゅにゃのじぇ。 --きょんにゃゆっくちぴゅれいしゅをもっちぇるまりちゃは、えりゃばれちゃゆっくちにゃのじぇ。 まりちゃは与えられた環境を、思う存分享受していた。 暖かく、柔らかく、ただただゆっくりとしていられる場所。 そんなところが本当にあれば、それはゆっくりにとってまさしく桃源郷ともいえる、理想のゆっくりプレイスだろう。 だが本当はそんな場所は、この世界には存在しない。 この世界はそんなに優しくないのだ。 ……ただ母の胎内を除いて。 そうこのまりちゃは出産を母の胎内で待つ赤ゆっくりであった。 当然何時までもこの場所に、留まれるものではない。 恐れと、苦しみと、悲しみと、飢えに満ち、それでも希望という名の未来が待つ、外の世界へと旅立つ日がくる。 だがまりちゃはそんな日が来るとは露とも考えず、ただただゆっくりとしていた。 ついにその日が来た。 まりちゃの中にある中枢餡の本能が目覚めを呼びかけ始めた。 それは誕生を祝福するかのような、優しく柔らかな呼びかけであったが、 --うるちゃいんだじぇ、まりちゃはきょきょでゆっくちしゅるんだじぇ。 今のゆっくりを手放したくないまりちゃにとって煩わしいだけだった。 しかし自分の中の中枢餡からの呼びかけは絶え間なく続く。 本能の呼びかけが次の段階に入った、継承記憶の開放である。 ゆっくりにとってゆっくりする事は本能が教えてくれる。 しかし本能からくるゆっくりは自己のゆっくりだけで、そのままだとわがままなゲスが生まれるだけだ。 それを修正するのが両親から引き継ぐ記憶、継承記憶である。 もちろん全ての記憶が継承されるわけでは無いし、生まれてくる子に個体差もある。 そして一番重要な両親の資質、ゲスの両親からは碌な記憶しか引き継がない。 善良な両親なら生き延びてきた経験が、有用な記憶として継承されるだろう。 このまりちゃの両親は、善良で優秀な個体で運がよかった、何度も死ぬような目に遭いながらも生き延び、 普通のゆっくりならば、その餡子脳で上書きされるようなつらい記憶も、生きるための大事な知識として持ち続けていた。 しかし、ぬくぬくと大きくなってきたまりちゃにとって、その記憶は強烈過ぎた。 親姉妹が、仲間達が、おちびちゃん達が、惨殺される記憶。 人間に、鳥に、猫に、犬に、捕食種に、はてはゲスな同族に惨殺される恐怖の記憶。 もちろん幸せな記憶も含まれていたのだが、今まで快適な環境で幸せだけを感じてきたまりちゃにとって、 恐怖の記憶は、今まで経験したことが無く、まりちゃに恐慌を起こさせるには十二分すぎた。 --ゆぴー、なんなにょじぇー。きょれはなんなにょじぇーー。 --まりちゃをゆっきゅりさしぇろーー。きょんなにょはいやじゃじぇーー。 --きょわい、きょわいんだじぇーー。おしょとはいやだじぇーー。 最早まりちゃは外の世界に対し恐怖からパニックを起こしていた。 そんな時、 『まりさのかわいいおちびちゃん、おとーさんがいーっぱいすーりすーりしてあげるのぜ。 かりのしかただっていーっぱいおしえてあげるのぜ。だからがんばるんだぜ、まりさのかわいいおちびちゃん。』 父の愛情に満ちた力強い励ましの声が聞こえた。 『れっ、れいむのかわいいおちびちゃん、おかーさんっ…がペーろぺっろして…あげるよ。 いっしょにっ…ゆっくりしようね。だっ、だからがんばってね…、れっ、れいむのかわいい…おちびちゃん。』 母の慈愛に満ちた優しい励ましの声が聞こえた。 まりちゃは理解した。自分は望まれて生まれるのだと。 絶望の世界ではない、希望に満ちた未来へと生まれるのだと。 この暖かい場所を離れるのはつらいけど、父と母によりそって温もりを分かち合える。 「きゃわいいまりちゃがちゅてきにゆっくちうみゃれるよ。」 まりちゃが生れ落ちることを決意し初めて声をあげた時、まりちゃの両目が開いた。 そこは暗い場所であった。 そこには希望という名の未来はなかった。 視線をめぐらすと、産道が開いているのだろう明るい光が見えた。 その光にまりちゃは未来を見た気がした。 両親と寄り添ってゆっくりしている自分。 沢山の友達と一緒に跳ね回っている自分。 美ゆっくりと恋をしている自分。 愛する妻と可愛い子供たちに囲まれている自分。 そんな希望に満ちた未来。それが光のむこうで自分を待っている、そんな予感がした。 「まりちゃはうみゃれるよ。」 もう一度呟き、まりちゃは光へと向かった。 だがまりちゃは、希望に満ちた未来を望むあまり焦り過ぎたのだ。 まりちゃは這いずることなく、そのまま産道に向かってしまっていた。 産道はそんなに広くは無く、本来頭から這いずって、母の胎動の力も借りて進むべき狭き道である。 「ゆぴっ。」 当然産道にもぐりこむことも出来ず、跳ね返され倒れてしまった。 しかしその失敗がまりちゃの頭を冷やした。 「まりちゃとちたきょとが、あちぇりすぎたんだじぇ。」 まりちゃが再度もぐりこむために、起き上がろうとしたその時、胎内が蠢き始めた。 胎動が始まったのである。 「おかーしゃんが、てちゅだってきゅれてりゅんだにぇ。」 母の愛に感動して打ち震えているまりちゃの目に意外なものが映った。 リボンの付いた黒いトンガリ帽子である。 --なゃんであんなゃときょろにおぼうちがありゅの? --きょきょにはまりちゃいぎゃいいなゃいのに? --じゃああれはだゃれのおぼうち? --まりちゃのおぼうちとおにゃじだね、でみょありぇ? --きょきょはまりちゃしきゃいにゃいよ、ありぇ? --まりちゃしかいにゃい?まりちゃのおぼうちとおにゃじ? --ありぇ?ありぇ??ありぇ???ありぇ???? ここまでたっぷりと時間をかけて、ようやくまりちゃは解答を得た。 「ゆぴーー。まりちゃのちぇかいいちにょおぼうちがーー。」 あわてて帽子を取りに戻ろうとしたが、何故か起き上がれずあんよも動かなかった。 「ありぇ、にゃんでうぎょけにゃいにょ?」 まりちゃが不思議に思い、視線をあんよの方に向けると、あんよが産道に飲み込まれていて、動くことが出来なかった。 これは母親のれいむが初産ではなく、出産のコツをつかんでいた為に、効率よく胎動をコントロールすることが出来たことと、 まりちゃが思考に時間をかけすぎたことが原因であった。 まりちゃは慌ててあんよを引き抜こうとしたが、最早あんよはがっちりと挟まりピクリとも動くことは無かった。 「ゆぴーー。あんよしゃんはにゃしてぇにぇ。」 まりちゃはじたばたと足掻くが、あんよが抜ける気配は無い、それどころかじわじわと体が飲み込まれていく。 それでも諦め切れない、いや諦めるわけにはいかず、まりちゃは舌を伸ばしたり、おさげを伸ばしたりして、何とか帽子を回収しようとしていた。 「まっちぇね。おかーしゃん、まっちぇね。まりちゃのおぼうちが。まりちゃのおぼうちが。」 必死になって母親に呼びかけるが、胎動は止まる気配すらみせず、まりちゃを飲み込んでいく。 もう事態が好転することは無いだろう、体の半分が飲み込まれていた。 まりちゃはまだお帽子を回収しようと頑張っていた。 だが届かない。まりちゃの未来が詰まったお帽子には、最早届かない。 諦め切れないまりちゃは、お帽子に呼びかける。 「まりちゃのおぼうちゆっきゅりしにゃいでも…」 ついに口までもぐりこんでしまい喋れなくなる。 もはやまりちゃに出来ることは、顔が飲み込まれるまで、涙でかすむ目で大事な大事な自分の帽子を見つめるだけだった。 自分の思い描いた未来が、お帽子とともに自分から離れていってしまう。 まりちゃの目は絶望の色に染まっていた。 ついにその目も飲み込まれてしまった。 「まりさ。うっ、うまれるよっ。おちびちゃんが、うまれるよっ。」 「だいじょうぶだぜ。ちゃんとうけとめるんだぜ。あんしんするんだぜ。」 すぽーんと軽い音と、ぽすと柔らかい音が続けて鳴った。 「れいむ、おちびちゃんはちゃんとうけとめたのぜ。」 「ありがとう、まりさ。」 「「それじゃ、せーの。ゆっくりしてね、おちびちゃん。」」 お飾りの無いゆっくりは差別される、たとえ両親に守られようともそれは変わらない。 まりちゃはもう友達もできない、番もできない、おちびちゃんもできない。 まりちゃの未来は永遠に失われてしまった。 赤ゆ言葉がうまく使えてない気がする。 まだまだリハビリ中。 文章さんゆっくりしないで生えてきてーー。 前作で二ヶ月ぶりって書いたけど よく見ると三ヶ月ぶりだった。 前作で付け忘れた過去作達 anko2457 野生の条件 anko2459 好敵手 anko2467 花壇の罠 anko2487 サボテンとれいむ anko2494 感情の色 anko2512 ある研究員の悩み anko2565 俺のちぇん anko2595 テーブルバイブレータ anko3088 まりさのおぼうし
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てっぺき? 留守中 親れ「ゆ~ん!とっともゆっくりできるところをみつけたよぉ~♪」 赤れA「ゆっ!こんにゃところにごはんがありゅよ!」 帰宅―→ガチャ ギィ… バタン 親れ「ゆ?」 赤れA「むーちゃ!むーちゃ!ちあわちぇ~♪」 親れ「ゆゆっ!にんげんがいるよ!!ちびちゃんたち!をがーさんのおくちにかくれてね!!!」 赤れB「ゆっくち!」 赤れA「ゆぐっまっちぇにぇ」 家主「…………………」 ぱくんっ 親れ「これでちびちゃんたちは あんっぜんっ だよ!!」 赤れB「ゆ~ん!おきゃーしゃんのおくちのなかはしゅごくゆっくちできりゅにぇ!」 赤ま「おきゃーしゃんのおくちはてっぺきなんだじぇ!きしょじじいじゃてもあしもでないんだじぇ~!!」 赤れA「ゆふー!れーむはゆyっくちしゅるよ!!」 ポンッ 親れ「ゆゆっ?」 シュ ドスッ 親れ「ゆぶぇっ」 赤れA「どおじではいっでぐるのおおおおおおおおおおっ?!」 赤ま&赤れB「ごっじごないでねえええええええええええええ!!」 親れ「ぢびぢゃぃぃぢんぢゃう や゛っやめでっ…」 赤れB「やめちぇにぇ!れーにゅのかわいいおかおにふ…」グシャッ 赤ま「まりしゃはつよいんだじぇ!おこるとこわいんだじぇぇぇぇ! いまならゆるしてあげても…」ゴシャッ 赤れA「ゆんやぁぁああああ れーにゅまだしにちゃくにゃい ょおおぉお…」ベシャッ 親れ「ゆぷぷぷぷ……」 ズ 家主「おい、糞饅頭。いいもんみせてやるよ。」 親れ「ゆっ…ゆぅ…?」 フッ グチャ 親れ「ゆあ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ちびぢゃあ゛ああああん゛!!!」 家主「お口の中は安全なんだよね? なれなんて、ちびちゃん死んじゃったの? 馬鹿なの?死ぬの?」 親れ「ゆ…ゆ…」 家主「ああ… もう死んでるか。ゲラゲラ」 トロトロ 親れいむ「おくちのなかにかくれてねっ!」 口の中にチビ子を隠す親れいむ 親れいむ「ゆふふっ!これでおちびちゃんたちはみれないよ!」 罪綿棒「……」 呆れる罪綿棒 親れいむ「かわいいおちびちゃんをみたいならあまあまちょうだいねっ!」 チビの見覧と引き換えに甘いものを要求する親れいむ 親れいむの口の中では― 赤まりさ「みゃみゃのおきゅちはゆっくちできりゅのじぇっ!」 自信満々で余裕気な赤まりさ すると罪綿棒が― 罪綿棒「分かりましたーっ これをあげるので見せてください」 赤れいむ「\\\」 親れいむ「ゆゆっ?ちょこれーとさんはゆっくりできるよ!もっとちょうだいねっ!」 罪綿棒はチョコレートを取り出したようだ。 赤まりさ「(ちょ……ちょこれーとしゃん……っ!)」 赤れいむ「(しゃしゅがみゃみゃだにぇっ!こうしょうじょうじゅぢゃよっ!)」 閉ざされた口の中でチョコレートのことを聞いた赤チビ達はわーく!わーくっ!しおる。 赤れいむ「ゆっくちおくちをあけちぇにぇ!」 しかし十分後 赤まりさ「ゆっ…」 赤れいむ「ひっく…ひっきゅ…… おくちをあけちぇねっ!ぢゅっといちゃら れいみゅときぇちゃうよっ!」 赤まりさ「ゆっくちしすぎなのじぇ!きゃわいいまりちゃがぴんちなのじぇっ!」 赤チビ達は親の唾液でタイトルと違うがドロドロに溶けかかっていた。 なぜ唾液が出たのか?実は脳が眼が得た美味しそうな物を感じ取り、唾液腺を刺激したのだ。これにより唾液が多くでるようになった。 そして、赤チビ達はゆっくり解けていき、ズズズッ……と喉の奥へゆっくり滑り流れていく。 赤まりさ「ゆっ…ゆっ…ちょこりぇーと…しゃん…」 まりさは潰れ溶けていた。 赤れいむ「ゆっくちとまってにぇ!ゆっくちとまっちぇにぇっ! やじゃあああぁあああっ!」 ゴックン! 親れいむは口をナントカテープで×に封鎖され口が開けず、とうとう赤チビ達を飲んでしまい、眼から涙が流出する。 おわりん
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『ほんとうのゆっくり(前編)』 29KB 虐待 自業自得 現代 お久しぶり とある一室に、子ゆっくりから正に成体サイズになったところというぐらいの大きさの ゆっくりが二十匹ほどいた。 「ゆぅ、れいむたち、これからどうなっちゃうのかな」 「だいじょうぶなんだぜ、まりさたち、かいゆっくりになるためのくんれんを受けてきた のぜ、きっとこれからかいゆっくりとしてゆっくりできるんだぜ」 不安そうに言ったれいむに一匹のまりさが自信満々の表情で答える。 「むきゅ、そうよ、今までがんばってこれたんだから、大丈夫!」 それに呼応したのはぱちゅりーだ。 その声に励まされてか、れいむをはじめとする他のゆっくりたちも、互いに大丈夫大丈 夫と言い合って落ち着きを取り戻した。 「はいはい、ゆっくりしていってね!」 一人の青年がやってきた。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 元気な返事に頷くと、青年は持っていた段ボール箱を置いた。 そして、それを開いて中にあったものを次々に取り出して並べる。 興味深そうにそれを眺めるゆっくりたち。 「さて、あと十日したら金バッヂ試験を受けてもらう」 青年が言うと、ゆっくりたちがざわめく。金バッヂこそ、飼いゆっくりという栄光の門 への鍵と皆教え込まれている。 必ずしも人間に飼われるには金バッヂである必要はない。割り切って銀を飼ったり、む しろアホな方が可愛いと銅を飼う人間もいるからだ。 しかし、やはりより飼い主に見初められやすいのは金バッヂである。 このゆっくりたち、既におわかりかもしれぬが飼いゆっくりとして売り出すゆっくりを 育てる施設で産まれ育ったペットゆっくり候補たちであった。 既にここに来るまでに、数多くの姉妹や仲間が飼いゆっくり不適格と見做されて殺処分 されていた。 ゆっくり育成の手法についてはむろんこれが正解というものは無い。だが、このような 純粋に商売目的で大量のゆっくりを躾けるような施設では、失敗に対しては容赦なく死を もって対処するようなところが少なくない。 結局、ゆっくりの性格を矯正するには恐怖がもっとも効率がよい、という結論を人間た ちは導き出してしまっている。 この施設もその例からもれるものではなく。ゆっくりたちは、言葉遣いが悪い、排泄を ちゃんとトイレでしない、口答えをした、などのゆっくりにとっては些細な、と言ってよ い理由でともに育った仲間たちが散々にいたぶり殺されるのを見せ付けられていた。目を そらせば不服従だといって叩かれた。 段ボール箱から取り出したものの中に、小さめのホワイトボードがあった。 青年はそれを壁にかけた。そこには縦線が同じぐらいの間隔を置いて十本書かれていた。 「この棒を、一日ごとに一本消していく。これが全部無くなれば、その次の日が金バッヂ 試験の日だ」 一般的なゆっくりは、三以上の数を認識できない。しかし、それなりに鍛えられたこの ゆっくりたちならば、こうやって視覚的にわかりやすいようにすれば理解できる。 「ゆぅ、まだまだいっぱいだね」 「そうだね、ゆゆぅ、たくさんがたくさんだねー、わかるよー」 「ゆっくりできるね!」 「むきゅ、でもゆだんしちゃ駄目よ。すぐに金バッヂ試験の日が来るわよ」 弛緩するゆっくりたちに、ぱちゅりーが注意を促して引き締める。彼女は、このゆっく りたちの中でも自然にリーダー格のようになっていた。大体一番最初に人間の出す課題な どを理解し、わからぬものに教えたりしていたためである。 「むきゅ、おにいさん、それであと十日、どんなくんれんを受けるの?」 「あー、それは……」 「「「ゆゆゆ」」」 それが何より気になっていたのだろう。 青年が答えようとすると、ゆっくりたちは一斉にその口元を凝視した。 「基本、自由にしていいよ」 どのような地獄の訓練が……と思っていたゆっくりたちが拍子抜けするしかない台詞で あった。 「むきゅ……じゆう、って……好きなことをしてもいいってこと?」 これまで、失敗すれば苦しんで死ぬようなゆん生を強制されそれを生き抜いてきたのだ。 さすがにそのようなことを言われてもにわかに信じられるものではない。 「ああ」 「ゆ! そ、そ、それじゃあ! ゆっくりしてもいいの!」 「ああ、そうしたければね」 「「「ゆわああああああ!」」」 「むきゅぅ……」 歓声が上がる中、ぱちゅりーは難しい顔をしている。 「ただし」 と、青年が言った時、ぱちゅりーはやっぱりという顔になった。いくらなんでも、無条 件でそのようなことが許されるわけがない。 「十日後の金バッヂ試験に落ちた子は、殺処分だ。永遠にゆっくりしてもらう」 永遠にゆっくりする、という言葉に反射的に強張ったものの、それだけが条件ならばそ れほど悪いものとも思えなかった。 なにしろ今までが今までだけに、試験に落ちれば殺されるぐらいのことは無意識のうち に覚悟していたところがある。 「条件はこれだけだよ。ごはんは、今までと同じものを好きなだけ上げるよ」 青年はそう言うと早速ゆっくりフードを持ってきてそれを皿にあけた。 「ゆわわわわ!」 「むーしゃむーしゃするよ!」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「しあわせぇぇぇぇ!」 ゆっくりたちは腹が減っていたこともあり、皿に群がる。しかし、さすがにここまで来 た連中だけあって食べ方自体は丁寧で皿からこぼさないように注意している。 「それとこれ」 と、青年は大きな箱と小さな箱を取り出した。その二つは一本のコードで繋がっている。 壁に、薄型のモニターが張り付いている。青年は大きな箱から小さな箱へと繋がったコ ードとは別のコードをたぐってその先端をモニターの裏側の辺りに差し込んだ。 「試験に備えて、こいつで復習するといい。ほら、ここのボタンを押すと……」 と、青年は小さな箱についた大きなボタンを押した。 「「「ゆゆっ! あれは!」」」 ボタンを押した直後にモニターに映じたものに、ゆっくりたちは一様に心当たりがある ようであった。 それもそのはず、その映像はこれまで散々見せられた金バッヂを取得するための教育ビ デオだった。 「ゆぅ……それをいちにちどのぐらい見ればいいんだぜ?」 一匹のまりさが、上目遣いで探るように青年を見ながら言った。 「好きにすればいいよ。さっき言ったように基本的に自由にしていい。これも、別に復習 しなくてもいいや、って思うなら見ないでもいいよ」 「ゆゆっ!」 思ってもいなかった言葉だったのだろう。まりさは驚いたようだ。 「ああ、それと自由って言っても、他の子に暴力を振るったりしたら駄目だよ。そういう ことする子は、あのまりさみたいにぶるぶるの刑で死んでもらうからね」 その言葉に、ゆっくりたちは一匹残らず震え出した。 以前一匹のまりさがゆっくりできない境遇に耐えかねて青年を殺そうとした。 と、言っても、笑っちまうぐらい実力不足であり、すぐに押さえ込まれた。ころしてや ると喚いていたまりさの殺意が本物であると思った青年は「ぶるぶるの刑」に処した。 これは、ゆっくりを固定した状態で、細い細い針を中枢餡を貫いて刺し、その針を小刻 みに振動させるというものだった。 傷自体は小さいために対象が中枢餡といってもそう簡単には死にはしない。しかし、中 枢餡に絶えず刺激を受け続けるのだから間断なく激痛に苛まれる。 針とそれを振動させる機械も固定してしまえばほったらかしておけばいいだけなので人 間さまの手間もかからぬというわけだ。 結局まりさは苦しんで苦しんで、殺してくれと懇願しても放置されて三日経ってようや く死ぬことができた。 あくまで見せしめのためなのでその程度で済ませたが、虐待目的で行う場合は、一日ご とにオレンジジュース等をぶっかけて治療してやって延々と地獄の責め苦を味あわせるこ ともある。 「さて、それじゃ僕がこの部屋を出た瞬間から、さっき言ったように自由にしていいよ。 時々様子を見に来るけど、本当に十日後の試験まで勉強したくなかったらしなくてもいい んだよ」 「「「ゆっくりりかいしたよ! ゆっくりするよ!」」」 「うんうん、それじゃあね」 青年が部屋から出て行った。 「ゆわぁぁぁぁぁい、ゆっくりするよぉぉぉぉぉ!」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 「むきゅぅ、でも十日後には試験よ、ちゃんと復習もしましょうね」 「ぱちゅりー、それは明日からにして、今日一日だけはゆっくりしようよ!」 「そうだよ!」 「むきゅぅぅぅ、そうねえ」 ゆっくりたちの中では危機感があるぱちゅりーとてゆっくりである。一日だけ完全な休 みをとるのもよいだろうと思った。 皆、思い思いにゆっくりし始めた。 「うん」 その様子は、設置されたカメラを通して別室のモニターに映し出され、それを先ほどの 青年が眺めている。 「まあ、今まで思う存分ゆっくりしたことないんだから、そう思うのも当然かな。問題は、 明日からどうなるか……あのよく出来たぱちゅりーと数匹、ってとこかな?」 翌日、青年がモニターを見ながら呟いた独り言の通りになった。 「むきゅ! それじゃ今日からゆっくりするだけじゃなくて復習もしましょう!」 「ゆん!」 「ゆっくりしてるだけじゃ試験に落ちちゃうからねー、わかるよー」 「頑張ろうね!」 今日からは勉強も頑張ろうと呼びかけるぱちゅりーに十匹ほどのゆっくりが同調した。 「ゆぅ……れいむはもう一日だけゆっくりするよ」 「まりさも……そうしようかな。まだ時間はたくさんたくさんあるし」 「もう一日だけゆっくりしても大丈夫だよ」 残りの二十匹ほどは、昨日味わったゆっくりを今少し楽しみたいという欲求が勝ったよ うであった。 それもそのはずで、むしろぱちゅりーとそれに同調したものたちがゆっくりとしては相 当に自制心が強い方なのだ。 「むきゅぅ、でも、そうやってずるずると勉強しなくなったら、試験の日までにせっかく 覚えたことを忘れてしまうわ」 ぱちゅりーはもっともなことを言うのだが、それを認めつつも、だってまだたくさん時 間はあると言ってやはり二十匹ほどのゆっくりたちは勉強を拒んだ。 「むきゅぅ……」 「やあやあ、おはようさん。ごはんの補充と様子見に来たよ」 そこへ、はかったように青年が現れた。 「ゆゆゆ! ごはん!」 「ゆっくりごはんをちょうだいね!」 「ゆはっ、はらぺこなのぜー」 「ほいほい」 青年は手際よく大皿にゆっくりフードを盛っていく。 「ところで、僕が入ってきた時、なんか話してたみたいだけど、何を話していたのかな?」 「むきゅ」 ぱちゅりーは、先ほどあったことを青年に言った。 今まで、青年はきちんと言うことを聞くものへは優しかったが、その逆のものへはぶる ぶるの刑を筆頭に恐ろしい罰を執行していた。 その教育に厳しい青年ならば、きっと勉強をしないものたちを嗜めてくれるものと思っ ていた。 「ああ、それは昨日言ったように自由にすればいいよ」 しかし、青年は意外にも勉強をしないものを庇った。 いや、正確には別にどちらかに組したわけではない。ただ単純に、昨日散々言って聞か せたことをもう一度言っただけだ。 ここで、ぱちゅりーはようやく青年の言っていたことを理解した。というか、青年が言 っていたことが本当にそのまんまの意味であることを理解した。 「そうだよ! じゆうだよ! れいむたちじゆうなんだよ!」 「ゆっ! それじゃまりさのすきにするのぜ!」 「勉強はまた明日からにするよー、わかってねー」 力を得たゆっくりたちは、ここぞとばかりに言った。ぱちゅりーも、もうそれへあれこ れと言おうとはしなかった。 「ぱちゅりー、今日はまりさたちだけで勉強するんだぜ」 「そうだねー、きっとみんなも明日から勉強するよー」 「むきゅ、そうね」 思い思いにゆっくりする二十匹ほどから離れて、ぱちゅりーたちは壁のモニターの映像 を見て復習を始めた。 「むきゅ」 ぱちゅりーの顔に影がさした。 賢いぱちゅりーは気付いているのだ。一度ゆっくりに浸りきりゆっくりしようと決めた ものたちが容易に勉強というゆっくりできない行為に戻れないであろうことを。 「ゆわああああ、かわいいよー、まりさたちのおちびちゃん、まるでつばさのないえんじ ぇるっ、だよっ!」 翌朝、ボンクラ饅頭が何か喚いていた。 「ゆふふふ、ゆっくりしたおちびちゃん、ゆっくりうまれてね」 そのまりさの前には、頭から茎を生やしたれいむがいる。実っているのは子れいむ一匹、 子まりさ二匹であった。 「ゆわあああ、かわいいぃぃぃぃぃ!」 「おちびちゃんはゆっくりできるよ!」 「ゆはぁぁぁ、癒されるのぜー」 他のものたちは、ゆぅゆぅと誕生を待つおちびちゃんたちの眩いばかりの可愛さにめろ めろになっている。 「むきゅぅ」 「ゆぅ、ぱちゅりー、あれって……」 昨日からぱちゅりーと勉強をはじめていたものたちは、複雑な表情である。 「おちびちゃんなんか作って、いいのかな」 「わ、わからないよー、いいって言うまでおちびちゃんを作ったらいけない、ってお兄さ ん言ってたよね」 「むきゅ……いいはずよ」 「ゆゆ?」 「他の子に暴力を振るわなければ、あとは自由にしていいのだから……あれも、大丈夫な はず」 「ゆ、そ、そうなの!?」 「そ、そうなのかぜ?」 と、言われても相当きつく叩き込まれているので簡単には理解できない。なにしろ言い つけを破って子供を作ったものたちが、子供ももろともに家族ごとミキサーにかけられた のを見ているのだ。 「ういー、おはよー」 青年がやってきた。 「ん?」 ゆっくりフードを皿に盛ると、それに気付いた。 「おー、子供作ったの?」 「ゆん、かわいいでしょ、れいむとまりさのあいのけっしょうだよ!」 「ゆっくりできるよ」 「条件は理解してるよね? 十日……てもう今からだと八日後か……試験を受けてそれに 落ちたら永遠にゆっくりさせる、っていうの」 「「ゆっくりりかいしてるよ!」」 「うん、理解してるならいいや。そいじゃ」 青年は特に何もせずに部屋から出て行った。 「ゆゆゆゆ!?」 「ゆぅ……お兄さん、ぜんぜん怒ってなかった、ね?」 「お、おちびちゃん作ってもいいってこと?」 「そ、そうだよ! だって暴力をしなければ、あとはじゆうにしていいって言われたんだ もん! おちびちゃんを作るのだってじゆうなんだよ!」 一斉に色めき立つゆっくりたち。 ここは、天国だった。 好きなだけゆっくりすることができる。 狩りをしなくてもごはんが手に入り、捕食種などの脅威が無い点で野生や野良を遥かに 上回る境遇なのはもちろん、まったくの放任のため下手な飼いゆっくりなどよりもよほど ゆっくりできる。 それでも、やはりこれまでの徹底的な教育により、ごくごく自然におちびちゃんだけは 駄目なのだろうと思い込んでいた。 しかし、それまでもが自由だというのだから食料に不自由せず、外敵に脅かされぬゆっ くりたちがそれへ走るのは当たり前のことであった。 「「「ゆゆぅ~ん、かわいいよおちびちゃん!」」」 で、翌日には先のまりされいむに加えて新たに九つのカップルが誕生していた。要する に勉強をしていない連中はこれで全て番になって子を作ったということだ。 で、もうそうなると舞い上がってしまって、勉強などしようという気もふっ飛んだらし い。 「ゆ? ぱちゅりーたちはおちびちゃん作らないの?」 我が子の誕生をひとしきり喜んだ後、不思議そうに尋ねた。ぱちゅりーをはじめとする 十匹は全く子作りをしていないのだ。 「むきゅ、ぱちゅたちは勉強に集中したいからおちびちゃんは試験の後にするわ」 「ゆゆ、おちびちゃんゆっくりできるよ!」 「そうだよ。おちびちゃんがいても勉強はできるよ」 一応善意で子作りをすすめてくるものたちに、ぱちゅりーはあれこれと言って受け流し た。 実は昨晩、ぱちゅりーグループというべきものたちの中にも、おちびちゃんを作ろうか というものはいたのである。 だが、ぱちゅりーが、 「むきゅ、ぱちゅはやらないわ。今のところそういう相手がいないっていうのもあるけど ……産まれたばかりのおちびちゃんの世話をしながら勉強なんてできないもの」 と言うと、かなり未練ありげなものもいたが、皆子作りをしないことに決めた。 おちびちゃんの世話がいかに大変かは、飼い主さんの許しなくおちびちゃんを産んでは いけないという躾の理由の一つとして叩き込まれている。 躾のために少々誇張しているところはあったが、おちびちゃんの世話が大変なのは事実 である。とは言っても、ここでは食料は与えられ、天敵や自然の驚異も無いのだから子育 てにかかる手間というのは相当軽減されてはいるが。 「おーおーおーおー、これまた」 青年がやってきて、たわわに実ったクソ饅頭もといつばさのないえんじぇるたちに声を 上げる。 「お兄さん見て見て、れいむたちもおちびちゃんを作ったよ!」 「おちびちゃんにもえいよーがいるからちょっとごはんを増やしてほしいよ!」 「ゆっくりごはんをふやしてね!」 「ほいほい、ごはんは好きなだけ上げるっていう約束だからな、ちょっと待ってろ」 青年は一度部屋から出ると、これまでゆっくりフードを乗せていた大皿と同じ大きさの ものを持ってきた。 「今までの二倍やるよ。それなら足りるだろ」 「ゆゆん、それだけあれば大丈夫だよ!」 「ゆっくりありがとう! おにいさん!」 「ゆふふ、それじゃあたーくさんむーしゃむーしゃしようね! おちびちゃんにえいよー をあげないとね!」 「むーしゃむーしゃするよ!」 しあわせぇぇぇぇぇ、の大合唱を聞きつつ、青年はぱちゅりーグループに目をやった。 「「ゆぅ……」」 中に、ちらちらと子作りをした連中を見ているまりさとれいむがいた。 「……」 青年はすぐに出て行ったが、最後まで視線はそのまりさとれいむに注がれていた。 ホワイトボードの縦線が六本になった。 まだまだゆっくりにとってそれは「たくさん」にしか見えない。厳しい教育を受けたも のたちなので、さすがに最初に比べたらだいぶ減っているということは理解できるが、下 手に理解できるせいで「まだまだ半分もいってないよ!」という感じに思って勉強しない でゆっくりする理由にしてしまっていた。 「……ふむ」 別室で雑務をこなしつつモニターで部屋の様子をうかがっていた青年が言った。 勉強しているぱちゅりーグループの中の、例のまりさとれいむが明らかに勉強に身が入 らないといった感じで、我が子が生まれ落ちる瞬間を心待ちにしている幸せいっぱいのゆ っくりたちをちら見しているのだ。 ぱちゅりーたちは、それを時々注意するのだが、注意された時こそ気を取り直すものの、 やがてまた視線は教育ビデオから逸れてしまう。 「こいつらは……危ないな。せっかくここまでよくやってたのに」 青年は呟いたが、その危惧は早速その晩に現実のものとなった。 「さてと……」 青年は仕事を片付けて、最後にモニターを見て皆寝静まっていると見るや帰ろうとした。 「ゆゆっ! ゆゆっ!」 「れ、れいむぅぅぅぅ」 「ま、まりさ、いいよ、きぼぢいいぃぃぃぃ」 「れ、れいむのまむまむぎちぎちだよぉぉぉぉ!」 「ああ?」 思わず血管浮き立たせるような不快な声が聞こえてきた。 「まただれかすっきりしてんのか……あ」 青年は帰ろうとして立ち上がり、何かに気付いてモニターに再び目を向けた。 カメラを遠隔操作する装置をいじると、部屋の全景を映していたモニターの風景が変わ る。 あのぱちゅりーグループのもの以外は既に子作りをしている。まさかまだ子供が実って いる状態ですっきりはしないだろう。 父親役同士が不倫をしている、というおぞましい可能性も無いでは無いが、さすがにそ れは考えにくい。 そうなると……この声は…… どんなに隠れようとも、監視カメラの前に死角は無い。部屋の隅で盛っているまりさと れいむを、カメラは発見した。 「やっぱり」 そして、それは青年が思っていた通り、ちらちらと子作りしたものたちを見ていたぱち ゅりーグループのまりさとれいむであった。 このところ、子作りした連中はしきりにぱちゅりーグループに可愛いおちびちゃんを自 慢した後、ぱちゅりーたちもおちびちゃん作ればいいのに、と言っていた。 それが重なり、元々子作りに強い誘惑を感じていたあの二匹が陥落したのだろう。 「……まあ、自由だ」 「むきゅぅ」 「ゆぅぅぅ、れいむ、まりさぁ」 「わからないよー、わからないよー」 「「ゆゆぅ……」 翌日、れいむ種とまりさ種をそれぞれ二匹、計四匹の子供を実らせたれいむと、まりさ を前にぱちゅりーたちは、あるものは残念そうな顔で唸り、あるものはなじるように名前 を呼び、わからないと連呼していた。 まりさとれいむも、ぱちゅりーの言っていたことを理解していなかったわけではない。 自制心を上回る誘惑に耐え切れなかっただけである。 それなので、大きな喜びの中に、一抹の不安も覚えていて、それが冴えぬ表情に現われ ていた。 「ゆゆっ、まりさとれいむ、おちびちゃん作ったんだね!」 「ゆわーい、おちびちゃんかわいいねえええええ!」 「こっちに来ていっしょにおうたをうたおうよ!」 「ゆん、たいっきょうは大切なのぜ、今からゆっくりできるおうたを聴かせればゆっくり したおちびちゃんになるのぜ」 子作りをしていたゆっくりたちは、それを見つけると大喜びで近づいてきた。 「ゆぅ、それじゃぱちゅりー、れいむたちは……」 「ゆん……」 二匹は、そう言ってぱちゅりーたちから離れていった。 別に子供を作ったからといって一緒に勉強してはいけないということもないはずだが、 そこは子作りをしないで勉強を頑張ろう、と団結しているぱちゅりーたちの中にいること への居心地の悪さもあった。 同じく子供を宿したものたちと、おちびちゃんゆっくりうまれてね、と言っている方が 居心地は遥かにいいだろう。 ホワイトボードの縦線が五本になったその日、最初に子作りをした二匹の子供が産まれ た。 「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」 「ゆわわわわ!」 「かわいいよぉぉぉぉぉぉぉ!」 「えんじぇるっ! えんじぇるだよぉぉぉぉ!」 「おかあしゃん、すーりすーりしてにぇ」 「まりしゃもまりしゃも!」 「おとうしゃん、だーいちゅき!」 「「ゆゆぅぅぅん、おちびちゃんはゆっくりできるよぉぉぉ!」」 早速ゆっくりぶりを披露する一家に、他のものたちも色めき立った。 「ゆゆゆゆ! れいむのおちびちゃんもはやくうまれてね! いっしょにゆっくりしよう ね!」 「ゆふふふ、ありすもおちびちゃんとすーりすーりするのたのしみだわぁ」 「ゆっくり! ゆっくり! ゆっくりうまれてね~♪」 そして、縦線が四本になった日、遅れて子作りした九組の子供たちも産まれ、部屋は一 気に賑やかになった。 「うお! 第二陣も産まれたか」 部屋に来た青年が、うぞうぞと蠢くクソえんじぇるどもに驚いて声を上げた程である。 「お兄さん」 「ん? どした?」 青年が部屋を出ようとすると、ぱちゅりーが声をかけてきた。 「あれだけおちびちゃんがいると、ちょっとうるさいのよ。といっても、おちびちゃんが 少し騒がしいのは当然だし、それにそれも自由だし」 「ん、そうだな」 「でも、さすがにちょっと勉強の邪魔なのよ。なんとかならないかしら?」 「んー……おお、ちょっと待ってろ」 青年は何か思い当たったのか、一度部屋から出て行った。 ぱちゅりーたちは青年が置いて行ったごはんを食べて待つことにした。 「ゆゆ……」 「ぱ、ぱちゅりー……」 「なんだか、みんなの目が……」 「むきゅぅ……」 ぱちゅりーグループのものたちがなんとなく気分がよくないといった感じで言った。 それというのも、子作りをしたものたちが自分たちを見る目がなんだかゆっくりできな いのだ。 何か言ってくるわけではないし、こちらと目が合えば慌てて逸らすのだが、見下ろして いるようにしか見えなかった。 これはゆっくりしているものが偉い、というゆっくりの性質上仕方がないことと言えた。 別に禁じられているわけでもないおちびちゃんを作るという、とてもゆっくりできる行 為を頑なに拒むぱちゅりーたちは、凄く愚かな連中だと思われているのだ。 「ごはんを好きなだけむーしゃむーしゃして、おちびちゃんとゆっくりして……これがほ んっとうのゆっくりなんだね!」 一匹のれいむが感極まったように叫んだ。 それに同意する声がそこかしこから上がる。 この素晴らしい時に比べれば、自分たちが産まれてからの一時期はまったくゆっくりで きない時間だった。あんなものはゆん生とは言えない。 これこそが、これこそがほんとうのゆっくりなのだ! とおちびちゃんに囲まれたゆっ くりたちは歓喜の声を上げた。 別にぱちゅりーたちに聞かせているわけではないのだが、なんでこのほんとうのゆっく りを拒むのか、と皮肉を言われているようにも見える。 「うーし、おまたせー」 青年が台車を押してやってきた。 「もうちょい待てな」 青年は台車に乗った箱を開き、透明の板のようなものを取り出した。 それを組み立てると、大きな透明の箱が出来上がった。 「ほら、ここが入り口。鍵はここをこうやって閉める」 「むきゅ、わかったわ」 ぱちゅりーが中に入って扉を閉める。 何か口をパクパクさせてから出てきた。 「なに言ってたか聞こえた?」 「ゆ? ぱちゅりー、何か言ってたの?」 「ぜんぜん聞こえなかったよー」 「むきゅ、これなら大丈夫ね! お兄さんありがとう!」 「おう、どういたしまして」 他のゆっくりたちも興味深そうに見ていたが、中で勉強するためのものだ、と言うと興 味を失ったようだった。 それよりも、産まれたばかりのおちびちゃんたちと楽しくゆっくりする方が遥かに重要 だからだ。 翌日、例の元ぱりゅりーグループのまりさとれいむの子供たちも誕生の時を迎えた。 「ゆわわわわ、かわいいよぉぉぉぉぉ!」 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」 その愛らしさに全てがふっ飛んだ。 ゆっくりにとっておちびちゃんというのは、それほどの威力がある。 飼いゆっくりが子供を産んだ途端に飼い主を無視して子供にかかりきりになり、それを 許していたら仕舞いには飼い主を自分たちの世話をする召使のように扱うようになったと いうトラブルも頻出しているぐらいだ。 だからこそ、飼いゆっくりになるには勝手に子供を作るべきではないと認識しているこ とが必須条件にされているのである。 「ゆゆーん、おかあさんとすーりすーりしようね!」 「おとうさんのおぼうしに乗せてあげるよ!」 「ゆわーい、ゆっくち!」 「ゆっくちたのちいにぇ!」 幸せ一杯の家族たち。 それを尻目にするかのように、透明の箱の中ではぱちゅりーたちが勉強に励んでいる。 「うん、そろそろ試験の日が近づいてきたなー」 「「「ゆ!?」」」 お兄さんが、ホワイトボードの縦線を消した瞬間、部屋にいたゆっくりたちに一種異様 な空気が流れた。 残る縦線は三本。 これは試験前の時間が三日であることを示している。 そして、三というのはゆっくりが無理なく認識できる数字である。 既述のごとく、ここのゆっくりたちはある程度は教育を受けているので、それ以上の数 も視覚的には理解できる。 しかし、危機感などはおちびちゃんとの幸せなゆっくりによって抱きようがなかった。 それでも、残り三日、というのはリアルに「いよいよ試験も近い」と思わせる数字であ った。 「ゆ、ゆゆん、そ、そろそろ勉強しようか」 「そ、そうだね」 「ま、まあ、まりさたちなら三日勉強すれば大丈夫なのぜ」 「ん、なんだみんな勉強すんのか?」 青年はそう言うと、大きな箱と小さな箱とモニターを二組ほど持ってきた。 「最初からあるのはぱちゅりーたちが使ってるから、さすがにみんなで一斉にやったら見 にくい奴も出るだろうからな」 手際よくそれらを設置して、青年は部屋を出て行った。 「ゆがあああああああああ! やってられるかあああああああ!」 一匹のれいむ……好きなだけごはんを食べられるのですっかり太ってでいぶと化してい た……が叫んだ。 「こ、こんなの! こんなゆっくりできないごと! ふざけるなあああああ!」 教育ビデオとは、つまるところ「ゆっくりできないこと」を我慢しましょう、という内 容である。 これに「ほんとうのゆっくり」に浸りきっていたものが耐えられるはずは無いのだ。 他のものたちも、でいぶに同感の声を上げる。せっかくほんとうのゆっくりを手に入れ たのに、なんでこんなことをしなければいけないのか。 それでも、バッヂ試験に合格するためだ、と言う意見もあったが、そんなものは「ほん とうのゆっくり」の前には無力であった。 一匹減り、二匹減り、遂には元ぱちゅりーグループだったまりさとれいむだけになった。 だが、その二匹にも、絶えず誘惑が降りかかる。 勉強する間、子供たちは親と遊べなくて不満であったが、それを我慢するように言い聞 かせていた、 しかし、他のゆっくりたちがこれ見よがしに親子団欒を見せ付けるものだから、我慢し ようとした子供たちも、やがて癇癪を起こしてしまった。 宥めても聞かない子供たちにほとほと困り果てたところに、あの真っ先に叫び散らした でいぶがやってきた。 「二人とも、そんなゆっくりできないことを、おちびちゃんたちをゆっくりさせないでま ですることはないよ」 「ゆ、でも……」 「試験が……」 「試験ってなに? にんげんさんが勝手に作ったにんげんさんの勝手な基準でゆっくりを 分けることでしょ」 「「ゆぅ……」」 でいぶの言葉は一面の真実をついていた。 「そんなものに受かるのがなんなの? そのためにゆっくりできないことをして、おちび ちゃんたちもゆっくりできなくするの? そんなの間違ってるよ」 「「……」」 「……あのほんとうのゆっくりを知ってしまった以上、れいむたちはもうあんなゆっくり できないことはできないよ」 でいぶは、迷い無く言い切った。 その迷いの無さは、ある種の力強さを感じさせる。 「だから、そんなこと止めてゆっくりしよう。ほんとうのゆっくりを」 「「ゆゆゆ……」」 「ゆっくちちようよ!」 「ゆっくち! おかあしゃん、おとうしゃん!」 「いっちょにゆっくちちたいよ!」 揺れ動いた心へ、子供たちが駄目押しをした。 「ゆん……わかったよ」 「おちびちゃんたち……いっしょにゆっくりしようね!」 「「「ゆっくちちようにぇ!」」」 「さあ、みんな、ほんとうのゆっくりを!」 「「「ほんとうのゆっくりを!」」」」 幸せそのものな歓声が上がる。 そして、それに敢然と背を向けるように、今日も透明の箱ではぱちゅりーたちの勉強が 続いていた。 「ほい、ごはんだ、たっぷり食えよ」 大皿にごはんが盛り付けられると、ゆっくりたちは目を輝かせた。 「うん、あと二日か」 しかし、青年がホワイトボードの縦線を消し、残りが二本になってしまうとゆっくりた ちはなんともゆっくりできない表情をした。 これは、ぱちゅりーたちも例外ではないが、こちらは緊張によるものである。 「さあ、みんな、勉強するわよ!」 「ゆっ、がんばるのぜ」 「もう少しで試験だねー、なんかいけそうな気がするよー」 「これもぱちゅりーのおかげだよ」 緊張はしつつも、意気揚々と箱の中へ入っていくぱちゅりーたち。 「ゆぅ……」 「勉強……する?」 「ゆ、でも……」 一方それ以外のものたち。少しは焦ったか、勉強しようかというものもいたが、子供た ちがそんなことしないで一緒に遊んで欲しい、と言うとその連中も折れてしまった。 勉強をゆっくりできないことと認識している彼らは、子供への躾もそれに類するものと 思ってしまっており、またごはんはいくらでも青年がくれるために、全く躾をしていなか った。 当然、子供たちは近くある試験というのがどれほど重要なものかは理解していない。 それならば、そんなどうでもいいものへの準備である勉強などするよりも、自分たちと 遊んでゆっくりして欲しいというのが当たり前だろう。 「勉強なんかすることないよ! ほんとうのゆっくりにそんなものはいらないよ!」 でいぶが言うと、皆それに賛同する。 少し狂的な感じすらする熱狂的な賛同だった。 心の底では、わかっているのだ。このほんとうのゆっくりの先に何があるのか。 だからこそ、皆でほんとうのゆっくりというお題目を唱えてゆっくりすることで、それ を忘れようとしているのだ。 ……しかし、それには邪魔な存在があった。 言うまでもない、透明な箱によって素晴らしいほんとうのゆっくりの歓喜の声を遮って 勉強に励むぱちゅりーたちだ。 「ぱちゅりー! ぱちゅりー!」 その声は聞こえなかったが、どんどんと壁を叩く振動でそれに気付いた。 後ろにゆっくりたちを従えたでいぶだ。 「どうしたの? れいむ」 「ぱちゅりー、それに他のみんなも、そんなゆっくりできないことは止めなよ」 「むきゅ?」 「そうだよ! そんなことやめなよ!」 「いっしょにゆっくりしようよ!」 「ほんとうのゆっくりを!」 「「「ほんとうのゆっくりを!」」」 「むきゅ、なんなのよ……」 「ぱちゅりー、れいむたちとてもゆっくりしてるよ。ごはんを好きなだけむーしゃむーし ゃして、おちびちゃんに囲まれて……これがほんとうのゆっくりだよ! 産まれてからこ こに来るまでの生活は……あんなのはゆっくりじゃないよ! 生きているとは言えないよ! 」 「それはよかったわね。でも、ぱちゅたちは試験に受かってからゆっくりするから」 「それも、ほんとうのゆっくりじゃないよ!」 「むきゅ?」 「試験に受かってバッヂをもらって、それでにんげんさんに飼われたとしても……そのに んげんさんがごはんを好きなだけくれないかもしれないよ? おちびちゃんも、作ったら 駄目だって言うかもしれないよ?」 「むきゅ……まあ、それはそうね」 「そうでしょ! そうでしょぉぉぉぉぉ! だから、そんなことしないで、今! 今をゆ っくりするべきなんだよぉぉぉぉ!」 ぱちゅりーが自分の言うことを肯定したと見るや、でいぶは勢い込んで言った。 「でも、ぱちゅは勉強するわ。金バッヂ試験に受かるかどうか、自分を試してみたい気持 ちもあるし……みんなは?」 「ゆ!? ゆぅ……まりさは、最後まで頑張ってみるのぜ」 「ここまで頑張ったからには最後までやってみたいよねー」 「そうだよね」 「な、なにを言ってるのぉ! ほんとうのゆっくりを! ほんとうのゆっくりを味わいた くないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 「むきゅ、別にいいわ」 「ゆ……ゆ……ゆがああああああああああ! この! この馬鹿どもぉぉぉぉ! なんで っ! なんででいぶだぢがこんなに、こんなに親切で言っでやっでるのに言うどおりにじ ないんだぁぁぁぁぁ!」 「む、むきゅ!」 でいぶが激昂したのに驚いてぱちゅりーは慌てて扉を閉じて鍵をかける。 「あげろぉぉぉぉぉぉ!」 「出てこぉぉぉぉい!」 「ゆっぐり! ゆっぐりじろぉぉぉぉ!」 「ほんどうのゆっぐりが、なんでっ! なんでわがらないぃぃぃぃぃ!」 でいぶにあてられたのか、他のものたちもいきり立って叫びながら壁に体当たりする。 「おらおら、何やってんだてめえら」 そこへ青年がやってきた。 「うるざぁぁぁい、邪魔ずるなあああああああ! ゆべ!」 叫んだでいぶに、青年が容赦なく爪先を叩き込む。 「誰に口きいてんだボケ! 何やってんだって聞いてんだ! まさかこいつらに暴力振る ったんじゃないだろーな!」 「ゆ、そ、それは……」 「暴力振るったらぶるぶるの刑……それはわかってるよな?」 「「「ゆひぃぃぃ、ち、違いまずぅぅぅぅぅ!」」」 ぶるぶるの刑と聞いた途端に、ゆっくりたちは震え上がってしまう。 「おい、ぱちゅりー、本当か?」 「むきゅ、そ、それは本当よ。でも、みんなが勉強なんて止めろ、って言うのよ。箱に体 当たりも」 「あ? ぱちゅりーたちは好きで勉強してんだろうが、つまりはそれがぱちゅりーたちの 自由だ。お前ら、それを邪魔しようとしたわけ? 暴力振るってないって言ってもさ、そ ういうことなら箱への体当たりを暴力と見做してぶるぶるの刑にしてやってもいいんだぞ、 ん?」 「「「ゆぴぃぃぃ、ぶ、ぶるぶるはゆっぐりでぎないぃぃぃぃ!」」」 「だったらさっさと散れ! 他の奴の自由を邪魔すんな!」 青年がそう言って蹴る真似をすると、ゆっくりたちは一目散に離れていった。 続く