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ユイ「仮新入部員のユイっていいます!ヨロシクおねがいしまっす♪」 唯「あ、私と同じ名前なんだ~」 律「しかもギターだろ?」 ユイ「唯先輩のギターに憧れて入部したんすよ!」 唯「え~♪この子いい子だよお~♪」 律「…」 澪「でもユイだとごっちゃになるな…なんて呼べばいいんだろ…」 ユイ「ユイにゃんはユイにゃんでいいですよ!」 律「今なんて…?」 ユイ「♥ユイ☆にゃん♥」 梓(後輩ポジション、ギター、愛称…被ってる…早く消さねば…) 澪「仮って事は?」 ユイ「ハイ!まだ仮入部の見学って事です!皆さんの活動を見て判断しようかと…」 澪「なるほど、それじゃゆっくりしていってくれ」 ユイ「それじゃしつれいします!」 梓(シめたです…ここでいつもの体たらくっぷりを見せて入部する気をなくしてやるです…) 唯「ユイにゃんはギターどれぐらい弾けるの~?」 ユイ「たいした事ないですよ~」 梓「でしょうね、ギターの持ち方からしてセンスを感じられないです」 律「あずさ…?」 澪「それじゃ適当になんかやってもらおうかな」 梓(散々に扱き下ろして酷評して二度とけいおん部の敷居をまたげなくしてやるです) ジャカジャンジャンジャンジャン♪ !? ユイ「目覚めては繰り返す~♪」 ジャカジャカジャン 澪「これは…」ゴクリッ 唯「ひょえ~声が別人みたいだよ!?」 律「プロみたいだな!?」 澪「クオリティが高い、クオリティが!」 梓(これは一体!?) ユイ「見送った~手を振った~良かったねと~♪」 ジャーン パチパチパチ 唯「ゆ、ユイにゃん凄いよぉ!ぶっちゃけ凄すぎてトンちゃんとか窓から投げ捨てるレベル…」 律(これは凄い戦力になりそうだぞ…) 澪(ああ、絶対に手放してはならない…)ゴクリッ ユイ「ユイにゃんはストリートライヴとかやってますからね~」 梓(あわわ…これは本格的にヤバイです…) ユイ「先輩方の演奏も聞かせてほしいっす!」 梓(ここで下手な演奏でもしたら…) 澪『梓…1年もはやく入部しててそのレベルなんて情けないぞ…』 律『こりゃ梓を外してユイにゃんをリズムギター担当にさせるのもやむなしかもな』 唯『あずにゃんはあずぶーに格下げだね!ぶひぶひ!』 梓「ユイにゃんさんのギターは心に訴えるものがないです!」 ユイ「!?」 梓「そんなの間違わずに弾いてるだけじゃないですか!」フンス ユイ「…」ふるふる 唯「あずにゃんそれはちょっと…」 律「な、なあ落ち込むなよ、ユイにゃん」 澪「私は普通に上手いと思ってたぞ!作画のクオリティが高いし!」 ユイ「コォォラァァ!そんなあいまいな感性で渡井目を摘み取りにかかるな!!それでも先輩かぁ!」 梓(げっキレやがったです!!) 唯「ユイにゃんぎゅ~っ」 ユイ「!!」 澪「そんなんで収まるはず…」 ユイ「えへへ~」ほんわか 澪(収まったーっっ) 梓(クソッそこは私のポジションなのに…何から何まで憎たらしい…) 梓(そもそもこんなピンク色の髪ありえないです…) 梓(そしてジャンプのエロ漫画キャラみたいな痛いコスプレしっぽ…) 梓(どう考えてもけいおん部に相応しくない…) 梓(絶対に入部は許さないです、絶対にだ) 梓「私は認めません!HTTにユイさんが入るのは!」 唯「えーなんでなのー?」 律「普通に上手いしいいと思うんだけどなー」 梓「だめだめ!だめです!」 ユイ「負けるのが怖いんスかw」 梓「キー!!何が怖いもんですか!!」 ユイ「じゃあ勝負しましょうよ。」 ユイ「体育館でライブをやって人気投票どうっスか?」 梓「の、望むところです!!」 ユイ「じゃあ来週の金曜日に。」 梓「フフ、楽しみです・・・」 梓(先輩たちとの一体感で絶対に勝ってやるです。) 梓(私に勝負をしかけたことを後悔させてやるです!) 決闘当日 唯「うわーすごいお客さんたちだねー」 律「あれ?ユイはどこだ?」 唯「え?ここにいるよー」 律「お前じゃなくて・・・ユイは?」 澪「ユイなら裏でまだ練習してるぞ。」 梓(こんなギリギリまで練習wこれは勝ったも同然ですね。) 和「それではこれより生徒会公認のけいおん部VSユイさんの対決を行います!」 客「ワーワー!!」 和「まずは生徒会長の挨拶です。生徒会長、おねがいします。」 和「ありがとうございました。それではまずHTTから。」 唯「えーっと、こんにちは!放課後ティータイムです!」 唯「私たちは5人って少ないメンバーで頑張ってます!」 唯「それでは聞いてください!」 唯「GO!GO!MANIAC!!」 ジャンジャンジャンジャンジャン ジャカジャン 梓(すごい!いつも以上に5人の演奏がマッチしてる!) 梓(唯先輩の歌も絶好調だし) ジャーン 唯「ありがとー」 梓(フ、勝ったな・・・) 和「次は新入生のユイさんです!ユイさん、よろしくおねがいします!」 梓(一人でストリートライブやってるっていってたし結構ソロも慣れてるんだろうけど・・・) 梓(所詮は1人!私たち5人の敵じゃないです!) ゾロゾロ 梓(所詮は・・・って、え?ゾロゾロ?) ユイ「こんにちはー!ガルデモでーす!」 客「え?ガルデモ?」 客「なにそれ?」 ユイ「ガールズデッドモンスター、略してガルデモです!」 梓(まさか・・・4人でくるなんて・・・) ユイ「Alchemy!!」 ジャーン!! ユイ「ありがとー!」 和「ガルデモさんありがとうございました。それでは皆さん投票してください。」 梓(結構すごかった・・・これやばいんじゃない・・・?) 和「それでは結果発表です!」 梓(ゴクリ・・・) 和「それでは結果発表です!」 ジャカジャカジャジャカジャン!! 和「2票差でHTTの勝利です!!」 客「ワー!!」 梓(やった!でも危なかった。) 梓(でもこれでユイの件に関しては大丈夫です。) 客「アンコール!アンコール!」 唯「アンコールだってー」 律「梓、お前ボーカルやれよ」 梓「え?私がですか!?」 律「ああ。なんたって今日は梓が主役だからな。」 梓「先輩・・・」 客「アンコール!アンコール!」 紬「さぁ、早く行きましょう!」 梓「はい!」 梓「ふわふわタイム!」 君を見てると いつもハートドキドキ 梓(やっぱり私は先輩たちとこの5人で演奏するのが好きなんだ・・・) 梓(これからも私たち4人で・・・) 梓「ふわふわターイム!ふわふわターイム!」 梓(これがHTTなんだ・・・) ゴトン 唯「あず・・・にゃん・・・?」 部室! 唯「なんであずにゃんが消えちゃったの?」 律「わたしが知るかよ!」 澪「皆の前でいきなり消えるなんて・・・いったい何が・・・」 紬「ただ、彼女が満足してしまった。ただそれだけのことよ・・・」 おしまい。 戻る
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ゆっくり生長していってね!! 男がゆっくりの入った透明箱を眺めている。 ゆっくりはれいむ種で、その頭には木の芽のようなものがわずかに出ている。もうすぐ子供ができる証拠だ。 「もうすぐあかちゃんがうまれるよ、はやくあいたいね」 男は無表情に握り飯を頬張る。 部屋の中には数え切れないほどの食料がある。男とれいむが一月は暮らせそうな量だ。 「おにいさん!れいむはおなかすいたよ! かわいいれいむとあかちゃんのためにいっぱいごはんちょうだいね!」 男は答えない。 「どうしてむしするの?ばかなの?しぬの?」 ゆっくりの挑発的な口調もどこ吹く風と、男は書架から本を取り出し読み始める。 「はやくごはんちょうだい!あかちゃんがゆっくりできないよ!れいむもぷんぷんだよ!」 ゆっくりは膨らんで威嚇したり、飛び跳ねたりするが男は気にする様子もない。 「おながずいだぁぁぁ!!!ごはんをくれないおにーざんはゆっぐりじねぇぇぇぇ!!」 無反応。 それからしばらくして、とうとうれいむは疲れ果てて動けなくなった。 「どうじてむしずるのおおおおお!!!???ごはんちょうだいぃぃぃ!!!!」 しかし、やはり要求は通らなかった。 部屋の時計が10時を少し回ったとき、男は書き物をしていた手を止めて、手近な食料を箱に放り込んだ。 「おそいよ!あんまりおそいと、おなかとせなかがゆっくりできなくなっちゃうよ! だけどれいむはやさしいおかあさんになるんだから、きげんをなおしてたべてあげるね! むーしゃ、むーしゃ……しあわしぇぇぇぇぇぇ……!! だけど、ちょっとすくないよ!あかちゃんのぶんもむーしゃむーしゃさせてね!」 男は「さて、寝るか」と口の中で呟くと、寝床の支度をしてすぐに就寝した。 「いじわるしないでもっとちょうだいね!そしたらゆっくりしてもいいよ!」 「えいようがだいじなんだよ!わかってるの!!おにーざん!!ねちゃだめぇぇぇ!!!!」 男が明かりを消したので周囲は暗い。しかし、そこらじゅうにある食べ物の匂いがれいむを眠らせなかった。 「おなかすいたよ……ばかなおにいさんのせいでごはんがすくなくてごめんね……」 「あかちゃん、ゆっくりそだってね……」 「おなかすいた……」 れいむはまんじりともせず朝を迎えた。 「ん……おおっ……」 男が大きく伸びをするのと同時にれいむは挨拶をした。 「ゆ…ゆっくりしていってね!」 昨日は自分の言葉が乱暴すぎたのかもしれない、と思ったれいむなりの譲歩だった。 きちんとゆっくりさせれば、人間が自分のようなかわいらしいゆっくりにご飯をくれないわけがないという 打算も働いている。色々と間違えた打算だが。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね! それで……ゆっくりしたら、れいむにあさごはんちょうだいね!」 男は昨日読みかけにした本の続きを読み始め、れいむのことなど気にかける様子もない。 「おにいざああああんんん!!!! じぶんばっがりゆっぐりじてずるいよぉぉぉぉぉ!!!!!」 ふと、れいむは自分の頭上を見上げた。 視界の端でたよりなく揺れる”ゆ木(ぼく)”は、少し貧弱になってしまったように思える。 まだ実は膨らみ始めたばかりだが、これでは先が思いやられる。れいむは半狂乱になって叫んだ。 「おにーざんんんん!!!!おねがい!ごばんをぢょうだいぃぃぃぃぃ!!!!」 結局その日も、夜の10時まで食料を与えられることはなかった。そして次の日も、そのまた次の日も…… 食事は夜10時に一度、決まった量を与えられるきりだった。 * * * * 四日後。 「おかしいよ……?あかちゃん……うまれないよ……?」 ひょろひょろと背ばかりが伸びた”ゆ木”には小さな実が二つ付いている。 だが、本来なら今頃はゆっくりとしたあかちゃんとして言葉を発しているはずのそれは何も言ってくれない。 「あかちゃん……?れいむににてとってもかわいい、れいむのはじめてのあかちゃん……?」 このままでは大切なあかちゃんが死んでしまう。 「おにいざあああんんんん!!!」 「どぼじてごはんたぐさんぐれないのおおおおお!!??」 * * * * それからさらに数日。 れいむのゆ木は、なよなよとしなって顔の前へ垂れてくるようになった。 まだ喋ることのできない、ゆ木の先端の二つのつぼみ。それを見るたび、れいむの心は不安に張り裂けそうになる。 * * * * ちょうど二週間目の朝だった。 「ゆ……ゆっくちちていってね……」 「おきゃあしゃん……?」 気づくと二つのつぼみだったものには目と口が出来ていて、小さな、とても小さな声でれいむへと話しかけている。 れいむは感激した。 「ゆゆぅぅぅーーーーーん!!!!れいむのあかちゃぁぁぁんんんん!!!! ゆっくちしていってねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 * * * * 十六日目。 二匹の子れいむはいまだゆ木から切り離していない。 なぜかお兄さんが食事をわずかしか与えてくれない現状では、切り離すのは危険と親れいむが判断したのだ。 「おきゃあしゃん……ごはんさえあれば、れいみゅたちじぶんでゆっくちできるよ……?」 「ごはんもっとたべたい……おきゃあしゃん……もっとたくさんちょうだいね…」 「おにいさんが……おにいさんがわるいんだよ…… さあ、きょうもゆっくりしようね!」 わが子を励ますため、箱の真ん中で歌を歌う親れいむ。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~♪」 「ゆ……ゆ……」 「ゆ……ゆ……」 子供たちも歌うが元気がない。 れいむは不憫でならなかった。 本当ならば、今頃は元気なゆっくりとした子として生まれてきて、みんなでとてもゆっくりしているはずなのに。 ちびちゃん達だって、自分で飛んだり跳ねたりして、ゆっくりしたいだろうに。 「おかあさんも、つらいんだよ……ほんとは、ちびちゃんたちをゆっくりさせてあげたいんだよ……」 その日の昼過ぎ。 「ゆ……!」 「ゆ……!」 二匹の子れいむは体をゆすり、自分でゆ木から落ちようとし始めた。 「おちびちゃんたち!だめだよ!ゆっくりできなくなるよ!!」 「おきゃあしゃん!れいむはじめんでゆっきゅりしたいんだよ!」 「おきゃあしゃんがゆっきゅりさせてくれにゃいなら、じぶんでゆっきゅりしゅるよ!」 「どぼじてぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!!??」 親れいむは沸き上がる感情のままに跳ねる、その衝撃がまずかった。 萎えたゆ木に負荷がかかり、子れいむ達はついに切り離される。 「ゆゆっ!もうしゅぐおちゆよ!」 「これからはじぶんでゆっきゅりーしゅるよー!!」 夢にまで見た”親とのすーりすーり”や”自分ひとりでのゆっくり”への期待がふくらむ。 「おちゆよー!!」 「ゆっきゅりー!!」 ぷちん。ころころころ…… 「おっ……おぢびぢゃああああんんんん!!??」 れいむは地面に転がったわが子へと駆け寄る。 どうか無事でいてほしい。れいむの餡子はその思いで埋め尽くされた。 「おちび……ちゃん……?ゆっくり……して……いってね……?」 二匹の子れいむは、もう動かなかった。 「おちびちゃん……」 やはり弱すぎたのだ。ゆ木からの栄養が断たれたその瞬間、二匹はすでに物言わぬ饅頭となっていた。 「ゆああああああんんん!!!!!おぢびぢゃああああんんんん!!!!」 泣いているれいむの元へ男がやってくるが、悲しみに打ちひしがれるれいむは気づかない。 男はれいむの額の細長いゆ木に手をかけると、ぶちんと引き抜いた。 「ゆ……」 わずかな痛みと喪失感を額に感じ、我にかえるれいむ。 「おにいさん!それはあかちゃんのたべるはずだったものだよ!かえしてね!!」 こんな状況を作り出したお兄さんへの恨みよりも、わが子の遺品を持っていかれることに抗議の声を上げる。 男はやはり聞きもせず、通常の倍ほどの長さのあるゆ木を丁寧に戸棚にしまうと、れいむの元へ再びやってくる。 「じゃあな。……悪く思うな」 「ゆ?………ゅぅ?」 れいむは男の手で二つに割られた。断末魔を上げる暇もなかった。 男はそれをごみ入れに投げ捨てると、両の耳から、この二週間着けっぱなしだった耳栓を引き抜いた。 「あー、耳かゆかった……」 * * * * このようにして作られた、にんっしんゆっくりのひょろ長いゆ木は滋味に富み歯ごたえも良いので珍重される。 子の栄養がゆ木に逆流するためとも、あるいは単に生長期間が長いためとも言われているが、真相は定かでない。 恵まれぬ子が、生まれて初めて母親と一緒にむーちゃ♪むーちゃ♪するはずだったゆ木。 そこに懸けられた思い――生への渇望や期待が、その味わいをもたらすのかもしれない。 おしまい。 書いた人:”ゆ虐の友”従業員 このSSに感想を付ける
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律「じゃあなんでダイエットしてるんだ?」 唯「確かに!」 澪「違う、私が目標にしてるのは“キープ”だ!」 律唯「キープ?」 澪「ああ」 律「…どういうこと?」 澪「ほら、食事をするとその分増えるだろ?」 唯「うん」 澪「だから、その分減らしてるんだ」 律「え?食べると増えるから食べるの減らす??は?」 唯「むずかしくてわかんないよー」 澪「大体、毎日ケーキとか甘い物食べて、太らないわけないだろ?」 唯「私は太らな…澪「唯は別だけどな!!!!」 律「まあ、確かに…」 唯「でも、りっちゃん体型変わらなくない?」 律「そうか?」 唯「うん、1年の時から何にも変わってないよ」 律「それはいろいろと失礼だ」ペシ 唯「あたっ」 澪「まあ、それは律がドラムだからってのが大きいだろ」 唯「なんで?」 律「ドラムは全身使うからな」 唯「あ、そっかあ!消費量が多いんだね?」 澪「そういうこと」 律「でもさー」 澪「ん?」 律「この前澪、太ったっつって半ベソかいてたよな」 唯「そうなの!?」 律「どうでもいいんじゃなかったのか?」 澪「うっ……それは、やっぱり……」ゴニョゴニョ 律「は?」 唯「ごめん澪ちゃん、聞こえなかったよ~」アセアセ 澪「だから…その……なるべくなら…す、すっきりしてた方が……かわいい、かと……」ゴニョゴニョ 律「それも含まれてんのか」 澪「あ、当たり前だろ///」 唯「澪ちゃんか~わいい~♪」 律「ま、とりあえず澪が言うダイエットは趣味みたいなものか」 唯「女子高生の定番だね!」 澪「お前らも女子高生だろ」 唯「えー、私はいいよー」 唯「気にする生活より、気にしない生活の方が楽しいもん!」 律「ああ、確かにそれ言えてるな」 澪「そうか…?」 唯「今を楽しまなきゃもったいないよ!」 律「大人になってからでもダイエットできるしな」 唯「うんうん!」 澪「……」 唯「無理に我慢して万が一次の日事故とかで死んじゃったら、もう二度と食べられないしね!」 律「あ~確かに」 澪「ああ…」 唯「澪ちゃんも無理しない方がいいよ!」 律「そうそう!」 澪「…そっか…じゃあ……」 ??「ダメよ、澪ちゃん!!!!」 唯「はっ!!この声は!!」 律「ムギ!!!」 紬「ダメよ澪ちゃん、誘惑に負けちゃ!」 澪「ムギ…?」 紬「それに、りっちゃんも唯ちゃんも、何にもわかってないわね!」プンスカ 唯「あれ、ムギちゃん怒ってる…」ヒソヒソ 律「何かまずいこと言ったか?」ヒソヒソ 紬「聞こえてるわよ!!」ビシッ 唯律「ひいっ」 紬「澪ちゃんを誘惑しないの!」 唯「え…なんで?」 紬「唯ちゃんは異常な体質の持ち主だし、りっちゃんはドラムもそうだけどよく動いてるから消費できてるだけなのよ」 律「そうなの?」 紬「そうなの!」 唯「で、どうしてダメなの?」 紬「傷つくのは澪ちゃんだからよ」 澪「私…?」 紬「澪ちゃんが気にしないで食べるようになったらどうなる?」 律「え?…まあ、ちょっとは太るんじゃないか?」 澪「えっ」 唯「まあそうだよね~」 澪「えっ」 紬「でしょ?」 唯律「うん」 澪「えっ」 紬「どうしたの澪ちゃん?」 澪「え、だって律も唯も私が太ることを前提としてる…」 唯「だって、そりゃ食べたら太るでしょ」 律「まあな」 澪「そんな…」ガーン 紬「ほらね、澪ちゃん。二人はこんな調子なの」 澪「……」 律「だって澪、太るとかどうでもいいって言ったじゃん」 澪「……うん」 紬「!?」 唯「だから私たちもいい道に誘ったんだよ~」 紬「……」 唯「…ムギちゃんはダイエットしてる?」 紬「当たり前じゃない」 唯「なんで?」 紬「太った身体なんて見苦しいしすぐ疲れるし嫌なことばかりだもの」 唯「そっかぁ~」 律「ふーん、じゃあ澪は?」 澪「私か?」 澪「……うーん」 律「そうなると思った」 澪「やっぱり、趣味程度のものなのか…」 紬「…でも、澪ちゃん、ホントに傷つかない?」 澪「え?」 紬「だって、今まで目標にしてたものがいきなりなくなるのよ?」 紬「で、食べすぎたり運動しなさすぎたりして太ったら、ショックなんじゃないの?」 澪「確かに…それもあるかも」 紬「澪ちゃんが気にしないって言うならいいけど、ちょっと心配で……」 律「ムギ?」 唯「どうしたのムギちゃん?」 澪「ムギ…?」 紬「ごめんね、ちょっと目にゴミが……」ポロポロ 唯「大丈夫?」 紬「大丈夫…」ゴシゴシ 律「ムギ」 紬「なあに…?」 律「ストレートに聞くけど…、昔なんかあったのか?」 紬「…え…?」 律「…いや、間違ってたらごめん。でも、そうなのかなってさ」 唯「ムギちゃん、とっても悲しそうな顔してるよ…?」 紬「……なんでも、ないよ…?」ニコッ 律「…ムギ」 紬「……」 律「…ん、ごめんな、間違ってたみたい」ヨシヨシ 律「変なこと言って悪かったな」 律「けどさ、もしなんかあるなら、ちゃんと言ってくれよ?」 唯「そうだよ!」 唯「私達信用してくれてないみたいで、悲しくなっちゃうもん!」 澪「ああ」 澪「私達もムギのこと信頼してるからさ」 紬「みんな……」 紬「ごめんね、ありがとう…」ポロポロ 律「あー、泣くなってムギー!」ヨシヨシ 唯「大丈夫だよー」ダキッ 紬「…りっちゃんが聞いたこと…当たりなの」 唯「…?」 紬「私、小さい頃からたくさん食べさせられてて…」 紬「でも、お家から出させてもらえなかったから、運動もあまりできなかったの」 律「わぁ……」 紬「子供だから基礎代謝はいいとはいえ、当然、私はそこらの小学生より太っていたわ」 紬「だから小学校では避けられてた」 紬「もちろん、私立小とはいえ、私の家のこともあったからなんだけど…」 紬「寂しかった」 澪「ムギ…」 紬「中学生になるとき、ダイエットして、痩せて、新しい私立の中学校に通ったの」 紬「そうしたらすぐ友達ができたの」 紬「だから、それからはずっとダイエットしてるわ」 律「そうだったのか……」 唯「ムギちゃん、辛かったねえ……」ウルウル 紬「ありがとう唯ちゃん。でも、今はとても嬉しい」 紬「みんなが私の過去まで受け止めてくれるなんて…」 紬「友達って、やっぱり素敵ね♪」ニコッ 澪「ああ」ニコッ 澪「私達が言ってたことなんて、どうでもよくなってきたよ」 律「確かにな」ハハ 澪「やっぱり、私は太ったって痩せたってどっちでもいいよ」 澪「どんな姿の私でも、みんなが“私”として受け入れてくれるってわかったから」 澪「仲間って最高だな!」 終わり。 戻る
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『全部漢字表記になった理由』 32KB 虐待 制裁 お願いします ゼミの友達から銀バッジれいむをもらった。 どうもいつも利用しているゆっくりペットショップでポイントが溜まり、 それでくじを引いたらあたったらしい。 かといってそいつはもうゆっくりを飼っているので、いらないかと言われたのが俺。 もともと興味はあったし、一人暮らしで話し相手が欲しかったのも確かだったので引き取ることにした。 「ゆっくりしてってね!」 「ああ、うん」 れいむと暮らして既に一ヶ月たつ。 れいむとの生活の感想は、まぁなんというか、微妙……だった。 れいむは銀バッジ、もちろん部屋を荒らすとか所謂ゲスな行為はしなかった。 性格もまぁ、たまに何かをねだってくるくらいで、それほどわがままというわけではない。 だから別に何かが気に入らないわけでも無いし、飼ったことを後悔しているわけではない。 「きょうはぽーかぽーかしてるね!」 「晴れてるからな」 ただつまらない。 どうも期待しすぎていたのかもしれないが、“こんなものか”感がいなめない。 だいたいれいむと話が出来るなんて言っても、人間相手ですら共通の話題が無いと会話が弾まないのだ。 ゆっくり相手との会話なんて、たかが知れている。 とはいえ別にこのれいむが悪いわけではない。 休みの日には趣味の散歩に一緒に連れてっているし、もちろん食事もしっかり与えている。 だからまぁ、このままなんとなくダラダラと飼い続けていくんだろうと思う。 「思ってたのになぁ……」 泥にまみれた部屋、何かを漁られた形跡はないが汚されている。 犯人は目の前にいる。 「おにいさん!しょうかいするね!れいむのだんなさまだよっ!」 「よろしくおねがいするのぜっ!!」 汚い身体のまりさ種がれいむの横にいる。 まぁそりゃ、そんな体で部屋歩かれたら汚れるよな。 「それにしてもゆっくりしすぎなのぜおにいさんっ! まりさはおぎょうぎよくまっててあげたけど、 もちろんそれなりのおわびはあるのぜ?」 「もう、まりさ!あんまりおにいさんをおどかさないであげてね!」 れいむは全く自分が悪いことをしたという自覚は無いみたいだ。 一応野良と関わるなっていつも言ってたんだけど。 「きいてるのぜ?ん?ん? ……いくらまりさがやさしいからって、あんまりかんちがいしないほうがいいのぜ?」 「も、もうまりさ!そんなにおこらないであげてね! おにーさんはいま、れいむたちのあかちゃんにむちゅうなんだよっ!」 れいむの頭からは茎が生えていて、実ゆっくりが数匹ぶら下がっている。 早いな、この異常な繁殖力は気持ち悪い。 もちろん勝手に子供作っちゃ駄目とは言っといたんだけど。 去勢しなかった俺が悪いのかな。 うーん、なんか腹が立つというよりは冷めた。 所詮こんなもんか。 うん――――捨てよう。 「いいかげんにへんじするのぜぇぇっ!!! おいっ!まりさはだんなさまなんだぜっ!?」 「ま、まりさぁ! ――――お、おにいさん?どうしたの? あいさつはちゃんとしようね?」 確かこの辺に――――あったあった。 換気のために窓を開ける。 買った時から一回も使って無いため、中身はタップリ入ってる。 でもこれゆっくり相手に効くのかな。 「ゆっがぁぁあっ!! これがさいごのけいこくっ!なのぜっ! これいじょうむしするならいたいめに――――」 「うっせぇ」 プシューと勢いよく殺虫剤がまりさに向かって噴出される。 バズーカノズルとか書いてあるだけあって、かなりの量が一気に飛び出る。 「ゆっがぁぎごぐるぎぃあがげげげげぶぶっべぇぇぐぐぐぐぃぃぃ!!」 「っ!!へぇ? ――――まりさあぁああああああああああっっ!!!!」 「おーおー、効いてる効いてる」 目をグルングルン回し、まりさが苦しんでいる。 なんだか気持ち悪い絶叫まで響かせて、髪の毛を振り乱しながらゴロゴロ転がる。 それにあわせて俺も殺虫剤を操作し、噴射し続ける。 まりさの動きがなんか面白い。 「ゆげげべえぎぃじだぐががががあっぁあ!だげぇぇぇ!!」 「しぶといなー、めんどくせぇ」 「あっ、あっ、へ、あっ!お、おにいさぁっぁあぁああんっ!! なにしてるのぉぉぉぉぉぉぉっ!?」 この期におよんで『何してるの?』は無いだろう。 しかし、コイツなかなか死なない。まぁいいや、全部使い切る感じでいこう。 転がるまりさの口にノズルを差し込む。 「ゆげげげっ、ごごっぉぉ!げへぇえ……あがぁ?」 「おにぃ……さん?やめて……くれたの? だったら、まりさにあやまってね……?」 まともな思考力があるのかどうかわからないが、涙でぐちゃぐちゃになった目で俺を見るまりさ。 自分の口につっこまれてるものが何か分かったのだろうか? それともただ苦しみから逃れたいと訴えてるのかな? まぁ、どうでもいいや。 「おら」 「ゆげぼぉぁああああああああああああ!!ぎぎぎぎぎぎぎぎい!!」 直接口から殺虫剤を体内に噴射されたことで、いままでで一番激しく悶えるまりさ。 とはいえ、饅頭の抵抗くらいさすがに抑えられる。 れいむが何か叫んでるけど、トリガーを離す気はない。 「ゆびびぃぎぃちぃ!ゆっびゅんぅ!びゅ!……びぃ!」 「ああああああああああっ!!あああああああああっ!! まりさがぁぁぁ!!!!ああああああああっっ!!!!!!」 やっとまりさがおとなしくなってきた。ビクンビクンと痙攣している。 絶叫しながら体当たりしてくるれいむがウザったいので取りあえずここまでにしよう。 ペットショップ育ちのれいむには刺激が強すぎたかな? 「なんでっ!なんでこんなことするのぉぉぉぉっ!!! れいむのだんなさまなんだよぉぉぉぉぉぉっ!?」 「いや、野良と関わるなって俺言ったよね?」 「ゆぐぅ! で、でもれいむはちゃんとおちびちゃんつくったでしょぉぉぉっ!?」 「はぁ?」 わが飼いゆっくりながら意味が分からない。 もしかしてあまりの状況に混乱してるのかな? 「いや、俺子供も作るなって何回も言い聞かせて、お前も理解したよ!っていってたじゃん」 「でもれいむのおちびちゃんはこんなにかわいいでしょぉぉぉぉっ!! ゆっくりできたでしょぉぉぉっ!!!それなのにまりさをぉぉぉっ!!」 ああ、そういことか。なるほどね。 自分の最高に可愛い子供を見せて癒してやったのに、夫に暴力をふるうとは何事だと。 そう言いたい訳ね。 で、子供は可愛いからお前とした約束なんて無効だと、そう主張するわけだ。 やっぱりゆっくりは訳がわからない。 「あーもういいよ、はいはい」 「いいわけないでしょぉぉぉぉぉっ!!! れいむはおにーさんのためをおもっておちびちゃんつくってあげたのにぃぃぃ!! おちびちゃんのかわいさをしらないおにーさんがかわいそうだからぁぁ!! それなのにぃぃ!!おんしらずぅ!おんしらずぅ!!」 恩知らずねぇ、よく言うよ。 大体俺のためって言うけど、自分が欲しかっただけだろうに。 よくここまで全てを自分に都合よく解釈できるな。 「俺のために子供を作ってくれたんだ?」 「そうだよぉっ!!ゆっくりさせてあげようとしたんだよっ!!! さっきもみとれてたくせにぃぃ!!!ばかぁぁぁぁっ!!!」 「ふぅん」 ちょっとだけイラっときた。 まぁそこまで言うのなら。ただ潰すのはやめよう。 その実ゆっくりでたっぷりゆっくりさせてもらおうじゃないか。 「じっとしてろよー」 「ゆっ、な、なにするのっ!? れいむにひどいことしないでねっ!!? おにーさん!?れいむあかちゃんいるんだよぉぉっ!?」 持ってきたガムテープで、れいむの下半分をグルグル巻きにする。 たしかこいつらあんよが動かないと移動できないんだよな。 『足焼き』なんて技術があるらしいが、俺には出来ないしメンドい。 「いだっ!いたいよおにいさんっ!!かわさんがひっぱられるよぉっ!! なんがねーばねーばしてるぅ!!やだよっ!!れいむはにげぇるよぉっ! いだいぃぃぃぃ!!あんよさんいだいぃぃ!!うごかすといだいぃぃ!!」 「あーあんまり動くと痛いからなー。だからじっとしてろって言ったろ? 俺の言うこと守らないからだぞー」 ゆっくりのやわらかい皮にガムテープなんか貼り付けたら、もう剥がせないだろう。 恐らく皮ごと毟りとることになるが、剥がすつもりはないので問題ない。 ちゃんと目的は達成できたらしい。 れいむがもがこうとする度に、痛みを訴えてくる。 念のため机にも固定しておくか。 「やめてねっ!やめてねぇっ!! ねーばねーばさんはもういらないよぉぉっ!!」 よし、これでもうれいむは身動き一つできないだろう。 下半身が茶色いガムテープで覆われたれいむ。 準備完了かな。 「じゃぁれいむちょっとまってろー」 「ゆえぇっ!!?まってぇぇ!まってぇぇええええええええ!!」 「ゆぐぅぅぅぅっ、ゆぇぇぇぇんっ!!」 どうしてこんなことになってしまったのか。 飼い主のおにーさんは待ってろといったが、動けない以上れいむには何も出来ない。 まりさと結婚して、たくさんすーりーすーりして、可愛いおちびちゃんが出来た。 今まで感じたこと無いくらいとっても幸せだったのに。 「あんよさんいたいよぉぉっ!!どうしてぇぇ……どうしてこんなことするのぉぉっ!」 おにーさんが『子供を作るな』とれいむに言ったのはちゃんと覚えている。 でもそんなこと言うのは、おにーさんがおちびちゃんを見たこと無いからなのだ。 可愛いおちびちゃんを一回でも見たら、そんなこと言えるはずがない。 だから、おちびちゃんを作っておにーさんに見せてあげたのに。 それなのにこの仕打ちは酷すぎるじゃないか。 「まりさぁぁぁ!まりさおきてよぉぉっ!!」 必死でまりさに呼びかけるもなんの反応も無い。 おにーさんの“ぷしゅーさん”をかけられて苦しんでいたまりさ。 その様子を思い出すと身体が恐怖で震える、まりさは死んでしまったのだろうか。 「ゆ、ゆぅ、おちびちゃんがゆっくりしてくれてるのだけがすくいだよぉぉ」 れいむから伸びる茎にぶらさがるおちびちゃんはみんなスヤスヤ眠っている。 よかった、まりさの悲鳴を聞いてゆっくり出来なくなってると思ったけど。 おちびちゃんに話しかけていたわけじゃないから、聞こえなかったみたいだ。 「ゆううぅぅぅ!!おにーさぁぁん!もうおしおきさんやめてよぉぉぉっ!! もうじゅうぶんでしょぉぉぉぉっ!!!」 れいむがこのまま動けないのでは、おちびちゃんたちを守ることが出来ない。 今の状態はおにーさんのお仕置きなんだろうが、やりすぎだ。 れいむは“にんぷさん”なのに。 ――――やっぱり抗議しよう。 おにーさんのためにも、自分が間違っていることを教えてあげないと。 心を鬼にしてちょっと厳しいことも言おう。 おにーさんならちゃんと反省してくれるはずだ。 「お持たせ」 「おにーさんっ!!おまたせじゃないよっ!! どういうつもりなのっ!?れいむは“にんぷさん”なのはわかってるんでしょ!? おちびちゃんがいるんだよ!?ねぇっ!きいて……」 戻るなりれいむがゆっくりにしては早口で説教してきた。 うん、ゼミの教授が行ってた通りだ。 こいつらかなり強烈な恐怖を覚えてもすぐ忘れちまうんだな。 まぁ別にれいむはもう捨てるし、反省させる必要ないから全然構わない。 それよりもさっそく実ゆっくりで遊ぼう。 「えーと、ここらへんでいいのかな」 「聞いてるのっっ!!!ねぇええっ!!おに――――。 何してるの……?おちびちゃんがかわいいからって触っちゃだめだよ……!? おいっ!ねぇぇっ!!やめろぉぉぉっ!!おちびちゃんにさわるなぁぁっっ!!」 そういやゆっくりって耳無いんだっけ。 仕方が無いので人間なら耳がある部分に、イヤホンのシリコン部分をねじ込んだ。 うお、顔歪めている。 口がまだ育ちきってないのかな、悲鳴は上げない。 かわりにれいむがデカい声だしてるけど。 「なにしてぇぇっ!!!なにしてるんだぁぁあああああああ!!! やめろやめろやめろぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおっっ!!!!」 「いや、歌を聞かせてあげようと思って。 胎教にいいみたいな?まぁなんでもいいや」 「はぁぁぁぁっ!?」 実際こいつらなんかにはもったいない曲だけど。 手に持つ音楽プレイヤーをいじくる。 コイツは古いうえに安物なので、音量調整がかなりいい加減だ。 音量を最大にして流すと、マジで耳が壊れるんじゃないかって爆音が流れる。 まぁ、つまりそれを体験していただこうと思う。 「はやくそれをとれぇぇぇぇぇっ!!!きいてるのかぁぁぁぁっっ!!!」 「ではお聞きください、と」 再生ボタンを押す。 するとこの距離でも普通に聞こえるほどの大音量が、実ゆっくりの体内から響く。 『Ooh,baby,do you know what that s worth?』 「……!っ!っ!ぃ!」 「うるさぃぃぃぃぃっ!!なんだこのおうたはぁぁぁっ!! ゆゆううぅ!!おちびちゃあああああああああああんっっ!!」 「おお、すっげ、震えてる震えてる」 Belinda Carlisle『Heaven Is A Place On Earth』 俺のお気に入りの曲だ。 勝手に、生まれるゆっくりに語りかけていると思って聴くと、なかなかに皮肉だ。 まぁ“本ゆん”は曲を楽しむどころじゃなくて、爆音にあわせて体が不自然な振動を起こしている。 『Ooh,heaven is a place on earth』 「ぃ!!っ!!っ!!!」 「あああああああああああああああああああ!!! おちびちゃんおちびちゃんおちびちゃぁぁぁんっっ!! とめろぉぉぉおぉっ!!このおうたをとめろぉぉぉお!!!」 「うおっ、目から黒いの出てきた」 涙に体内の餡子が混ざったのだろうか。 ドロドロした黒い液体が目から流れている。 身体のほうも中で何かか爆発しているかのように、膨らんで元に戻るを繰り返している。 顔見るだけでここまで苦しみが伝わるってのもすごいな。 ヤバイ、ちょっと面白いかも。 『They say in heaven love comes first』 「――――っ!ぃぃぃぎぃぃぎぃい!!」 「おおっ!!!」 「おちびちゃぁぁぁんっ!おくちがぁぁ!ああああああああっっ!!」 暴力的な音の余りの振動におくちが耐えられなかったらしく、一気に裂けた。 そこから、未熟な声帯を通して気色の悪い悲鳴が出てくる。 おちびもそうだが、れいむの形相はもっとすごい。 目玉が飛び出すんじゃないかと思うくらい見開いて絶叫している。 『We ll make heaven a place on earth』 「ゆびちちちちちぃぃぃ!!ぎちぃぃぃぃ!!」 「あぁあああっっ!!おちびちゃあぁぁああん!! あんこさんはいちゃだめだよぉぉぉっっ!!!!」 「あっははっはっ!!」 違うよれいむ。 餡子を吐いてるわけじゃなくて、どんどん裂けていく口からこぼれていってるんだよ。 まぁたいした違いはないか、このままだと死んでしまうことはかわらない。 ここに来てやっと実ゆっくりが、お尻をブルンブルン振って抵抗し出した。 無駄だし遅すぎる。 この歌のようにほんとうに楽園があると信じ、愛で満たされていると思っていたのだろう。 残念、ツイてなかったね。 『Ooh,heaven is a place on earth』 「ぴゃっ!!!」 「ゆっ!!??――――どうしておちびちゃんがはれつしちゃうのぉぉぉぉっ!!」 「おおっ」 プシャンッ!と空気が抜けるような音がした。 体中の皮がひび割れ、おくちはどんどん裂けていった実ゆっくり。 最後は目玉が飛び出し、おくちは上下に分裂し、餡子を飛び散らせた。 身体がバラバラになってやっとイヤホンが外れる。 上半分は餡子の雨を降らせている。 「なかなか予想外でよかったわ」 「はぁああああああああああああ!? なにいってるんだぁぁぁっ!! ――――いぃ!? なんでおちびちゃんとっちゃうのぉおおぉぉっ!?」 とりあえず、次のヤツを色々するのに邪魔なんで毟り取る。 れいむうるさいなぁ、死んでるのは見ればわかるだろうに。 しかし、簡単に破裂したなぁ。 音だけじゃなくて、自分で暴れてたからさらに皮に負荷がかかって耐えられなくなったのかな。 まぁ楽しかったから何でもいいや。次行こう。 「ゆっくりごろしぃぃぃ!!げすぅぅ!! げすぅ!!!おんしらずのゆっくりしらずぅ!!!」 「つぎはれいむ種……か」 二番目のゆっくりは小さな身体に、これまた小さなおリボンがついてる。 こいつらって確か親が自分に話しかけている言葉は聞こえてるんだよな。 生まれる前から『可愛いゆっくりできる』と言われまくってるから、 調子に乗ったまま降りずに生まれてくる固体が多いと聞いたことがある。 ――――試してみますか。 「へんじしろげすぅぅ!!れいむはかいゆっくりだぞぉぉっ!! ぎんばっじなのしってるだろぉぉぉっ!!!!」 「ちっさっ!けっこう難しそうだな」 糸きりバサミを手に、実れいみゅのおリボンをそっと掴む。 もちろん、バラバラに切り刻むためだ。 「えいっ」 チョキンと、簡単にリボンは切ることができた。 後は現状を実ゆっくりに伝えるだけなんだけど――――。 「あああああああああああああっっ!!!??? れいむのかわいいおちびちゃんのりぼんさんがぁぁぁっ!! きれちゃったよぉぉぉおぉぉっ!! これじゃゆっくりできないぃぃぃぃぃ!!!!」 いいね、代役ご苦労。 れいむが『リボンが切れた』と言った瞬間、それまで安らかにスヤスヤしてた顔が、 一気に苦悶の表情に変わり、プルプルと震えだした。 どうやらちゃんと聞こえているようだ。 「おっとっと、あんまりあばれるとおちびちゃんまで切れちゃうぞ?」 実れいみゅの身体は傷つけないように、ちょっとずつお飾りとついでに髪の毛を細かく刻んでいく。 「やめろぉぉぉぉっ!!おちびちゃんのりぼんきるなぁぁぁぁっ!! ああああっ!!そんなにばらばらにしないでぇぇぇぇぇっ!!! ああああああああ!!ばらばらになっちゃったぁぁぁっ!!」 『バラバラになった』の所で実れいみゅがビクンと痙攣した。 なまじ目が見えていないせいで、余計に不安なのだろう。 顔がどんどん険しくなっていく。 「次ははもみあげかな」 「あっああああああっ!!!おちびちゃんのおかざりがぁぁぁっっ!! こわれちゃったよぉぉぉおおぉ!!!もどしてぇぇぇぇ!! もどしてぇぇぇぇぇぇえっっ!!!! これじゃおちびちゃんがゆっくりできないよぉぉぉぉっ!!!」 「ゆぃ……っ!きぃ!」 「おっ!」 不安が限界を超えたのか、実れいみゅの口がかすかに開いた。 親から『ゆっくり出来ない』なんて突然言われたら、そりゃ怖いだろう。 何かを懇願しようとしてるのかな?れいむがうるさくて聞こえない。 まぁいいや、もみあげだもみあげ。 「おいっ!おいおいおいおいぃぃっ!! おちびちゃんのもみあげをどうするの……? ねぇ……おいっ……やめっやめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」 「よっし、じゃぁ左も切るよー。はいジョキン」 「ああああああああああっっ!! なくなっちゃったぁぁぁぁ!!! おちびちゃんのもみあげがなくなっちゃったよぉぉぉっ!! もどしてえぇぇ!!ゆっくりしないでなおしてぇぇぇっ!!」」 お飾りと違って、痛みはないが切られている感触があるのだろう。 一応からだを振って弱弱しく抵抗していた。まぁ無駄なんだけど。 れいむの絶叫に合わせて、残ったもみあげも切り落とした瞬間だった。 「っぃい!」 「うおっ!!」 実れいみゅがいきなり両目をカッと見開いたので思わず驚いてしまった。 見るからに無理やりまぶたを開いたようで、少し千切れてしまっている。 そこまでするほど、不安になったのか。はっはっは。 涙でぐちゃぐちゃの目玉がギョロギョロと動いている。 「おちびちゃんぅぅ!! くそじじぃぃっ!! おかざりもとにもどせぇぇっ!! もみあげさんなおせぇぇぇっ!!」 実ゆっくりにしては結構激しくぶりゅんぶりゅんと身体をゆすっているれいみゅ。 折角目を開けてくれたんだから、自分のリボンともみあげだったモノを見せてあげようか。 「見えるかな?こんなんなっちゃったよ」 「ゆぴぃぃぃぃっ!」 「おー、鳴いた鳴いた」 おそらく実れいみゅにとっては精一杯の大口を上げて、悲鳴を上げる。 涙してるから泣き声だと思うけど、ひょっとしたら怒ってるのかな? 「おちびちゃぁぁぁん!なかないでぇぇ!! だいじょうぶだからぁぁぁっ!!! おかざりももみあげさんもなおるよぉぉぉっ!!!」 どうやら悲しんでいるらしい。 うーん、餡子を吐いて死ぬにはまだ至らないらしい。 もう少しだと思うんだけど。 「えー、お飾り治らないと何かマズイの?」 それを聴いた瞬間れいむが涎を撒き散らしながら、俺にキレた。 うん、ゆっくりごときとはいえ、思惑通りに動いてくれると気持ちいいね。 「なにいってんだげすじじぃぃっ!!あたりまえだろぉぉぉっ!!! おかざりがないとぜったいゆっくりできないんだよぉおぉぉっ!! みんなからばかにされちゃうでしょぉぉぉっ!!いじめられちゃうよぉぉっ!! せいさいされちゃうかもしれないんだよぉぉぉっ!!」 「……ゅっあっ!」 「そっか、お飾りが無いこのれいみゅは制裁されちゃうのか」 「おまえのせいだろぉぉぉぉぉっ!!!」 実れいみゅのほっぺたが、少し膨らんできている。 これは後一押しかな?なんだかワクワクしてきた。 「でもさぁ、もみあげは無くても大丈夫じゃないの? 何かにつかうの?」 「ゆぅがぁぁぁぁ!!ばかすぎるでしょぉぉぉおっ!! もみあげさんはっ!!おちびちゃんをなでてあげたりぃっ! “けっかい!”をつくるのにひつようなんだよぉぉぉぉっ!! もみあげさんがなきゃなんにもできないでしょぉぉぉっ!!」 プルプルと実れいみゅの身体が震えている。 自身の母親から絶望的な将来を丁寧に説明して貰うなんて体験、めったに出来るものじゃない。 赤ゆっくりじゃ耐えられないだろう。 「もみあげもおりぼんさんもないんじゃゆっくりできないよぉぉぉっ!! かわいそうなおちびちゃんぅぅぅ!!! ひどいよぉぉぉお!!!げすじじぃは―――――」 「ぶっ!べろろろろろろろろぉぉぉぉぉっ……」 「っしゃぁ!」 ついに母親からの責め苦に耐えられなくなったこの実ゆっくり。 おくち――というより餡子の圧力に耐え切れずあいた穴から、すごい勢いで餡子を吐き出した。 まるでダムを爆破したみたいだ。 思わずガッツポーズなんてしてしまった。 「あああああああああああああっ!!! おちびちゃんぅぅぅ!!!なんであんこさんはいちゃったのぉぉぉ!!」 実ゆっくりもストレスで死ぬのか。かなり面白かった。 自分でも驚くくらいテンションがあがっている。 なんかれいむ飼ってるときより全然楽しいわ。 「くそじじぃぃぃ!!ぜったいっ!!ぜったいゆるさないよぉぉおっ!! おまえはぁぁぁ!おまえぇぇはぁぁ!!!」 れいむが怒鳴ってくる、実れいみゅが死んだ原因の半分はお前なんだけどな。 まぁ別にれいむに関してはもうどうでもいい。 それより―――― 「ゆーじょ、ゆーじょ。ずーりずーりぃ……。 までぃざばゆっぐりにげるのぜぇ……。 しにだぐないのぜ……いまのうちなのぜ……」 満身創痍――というかほとんど死体みたいなまりさが這いずっている。 本当にしぶといなー。 「まりさ?どこに行くのかな?」 「――ゆひぃっっ!?」 「まりさっ!?まりさなの!? まりさぁぁぁぁ!!!たすけてぇぇぇぇ!!!」 テーブルの上に固定されてるれいむからじゃ、まりさの姿は見えない。 だからこそ、『助けてくれ』なんて見当違いなこといってるんだろうけど。 俺に声をかけられただけで、しーしーを漏らしながら怯えるまりさ。 汚いなぁ、砂糖水とはいえ床がベタベタになるじゃないか。 「ゆひぃぃぃぃぃぃぃ!!にんげんざぁんっ!! ごめんなざいぃぃ!!みのがじでぐだざいぃぃ!!」 「えー、どうしようかなぁ」 「ま、まりざは!そっちのれいむにだまざれたんですぅぅ!! ほんとうはいやだったのにぃ!むりやりぃ!!!」 「どうじでぞんなごどいうのぉぉおっ!!ばりざぁぁぁぁっ!!!」 バレバレの嘘をつくまりさ。 なんかこれが通用すると思っているのがすごい。 さっきはあんなに強気な態度だったのに。 「ふーん」 殺虫剤を手にとる。 別に俺にとってまりさの事情はどうでもいい。 さっきのが本当だとしてもまりさを殺して捨てるのは変わらない。 だが、殺虫剤のスプレー缶を見たまりさの反応はすごかった。 「まってくださぃぃぃ!!まっでぇぇぇっ!! まりざはぁぁ!まりざはいままでおいしいごはんさんをぉっ! だべたごとながったんですぅぅ!!」 「ほうほう」 いきなり身の上話をするまりさ。 俺の同情を引きたいのかな? そんな感情は全くわかないけど、ちょっと面白いから好きにさせてみよう。 「いっづもいっづもにがいくささんでぇぇっ!! ぜんぜんゆっぐりできないんですぅぅ!!! おそどはさむいさむいだしぃぃ!!!」 「あーはいはい」 なんかスゲーありがちな話だわ。 目新しさが無い。 「それでぇっぇっ!それでかいゆっくりはゆっくりしてるってきいたからぁぁ!!」 「だかられいむに近づいたのか」 「はいぃぃ!!おにーさんもとってもやさしいってれいむにきいたからぁぁ!」 「うん、よくわかったよ」 期待に満ちた目でまりさがこっちを見る。 その目に向かって、殺虫剤の、まりさにとっては命を奪う銃口を向ける。 「やめてやめてやめてぇぇぇぇぇっ!!! “ぷしゅーさん”はゆっぐりできないぃぃ!! なんでぇぇぇぇ!?まりざしょうじぎにはなじだのにぃぃ!!」 「だからちゃんと聞いて、終わるまで待ってあげたでしょ? もういいよね、死のうか」 「やだぁぁぁっっ!!!それくるしいんですぅぅ!! たくさんたくさんくるしいんですぅぅぅ!!!!」 アレだけのたうち回っているのを見せられれば分かるよ。 今も頭を何回も下げて必死だもんね。 ふふっ、ホント。これはクセになりそうだ。 「じゃぁ3数えたら発射するからね。いーち」 「ゅゆっ!?まっ、まっでまっでまっでっまっでぇぇ!!! どうじでぇぇ!!!ごんなにあやまっでるのにぃぃ!!」 キョロキョロと辺りを必死で見回している。 都合よく助けてくれる存在を探しているのかな? それとも逃げ道かな? 「にーぃ」 「あっぁっぁっ! ――――ま、まりしゃこーろこーろしゅりゅよっ!! こーりょこりょ!こりょりょんっ! の、のーびのーびもこんにゃにできりゅよっ!のーびのーびぃ!」 「ぶふぅっ!!」 いきなり赤ゆっくりみたいな言葉遣いするから吹いちゃったじゃないか。 恐怖の余りに幼児退行――――ってやつかな。 幸い可愛さアピールに必死のまりさには気づかれなかったみたいだけど。 「まりしゃおうたもじょうずなんだよっ! まっ、まーりーしゃはーゆっくりぃー。 とーってもゆーくりしてーるのぜぇー」 必死におうたまで歌い始めた。うんヘタだ。 「さーん」 「ゆっ!ゆぅぅ!ゆぅぅぇぇぇぇえっっ!! ま、まりしゃはぁぁっ、えっとぉぉ、えっとぉぉっ! まりしゃぁはぁ!!ゆっくちしたいんでしゅぅぅ!! もっともっとしあわせー!したいんでしゅぅ!!」 「いくよー」 「ああああぁぁぁぁあっ!! ――――ゆっくちさせてぇ……」 まりさの絶望で真っ黒になった瞳を見ながら、殺虫剤を噴射した。 「ゆげちゃぁぁがあぎぐゆぐゆぎぎぃぃぃ!!!」 悲鳴は一度噴きかけた時と変わらない。 だが、暴れ方は大人しい。 もうボロボロだったのだろう、そんな身体でよく命乞いが出来たものだ。 きっと本当に死にたくなかったんだろう。 顔がニヤけてくる。 「ゆぎっがぁぁっ!がぁっ!……ぐっ! ……っ!!……!……」 十秒ほどかけたところで悲鳴が止み、それから五秒ほどで痙攣が止まった。 今度こそ死んだかな? まぁいいや、死んでなかったらもう一回やるだけだ。 ――――死ねてるといいね、まりさ。 「ゆっふぇぇ……ゆぇぇぇ……」 静かだなと思っていたら、れいむは耳にあたる部分をもみあげで押さえながら震えて泣いていた。 どうやらまりさの絶叫に耐えられなくなったらしい。 まぁそりゃ夫があんなことされてたら怖いよな。 「れいむ」 「っっ!ひぃぃぃぃ!! お、おにいさぁぁぁあん!!ごめんなさいぃぃ!! れいむにはひどいことしないでくださいぃぃ!!!」 すっかりビビっちゃってるな。 まぁこっちのほうが都合がいいかな。 「うんわかった。じゃぁかわりに最後のおちびちゃんにヒドイことするね」 「ゆっ!?だ、だめですぅぅ!!さいごのおちびちゃんもだめですぅぅ!! ゆるしてくださいぃぃぃ!!!おねがいですぅぅ!!!」 「えー?だってれいむも俺の言うこときいてくれなかったじゃん。 勝手にまりさ家に入れるし、おちびちゃん作るし」 「そ、それはぁぁ!!ごめんなさいぃ!! でもでも、おにーさんがよろこぶとおもったんですぅぅ!!」 まぁなんでもいいけどね。 れいむを反省させるのが目的じゃないんだし。 「よっと」 「ああああああああああああっっ!!! くきさんとらないでぇぇぇぇぇっ!! もどしてぇぇ!!もどしてくださいぃぃぃ!!! おちびちゃんがしんじゃうよぉぉぉぉっ!!!」 最後の一匹となった実ゆっくりがついた茎をれいむから抜き取る。 抜いた瞬間、餡子の供給が絶たれたせいなのか、やはり顔が歪む。 うちの教授が言っていた。 茎を抜いても、すぐ別の固体に差し替えればちゃんと生まれてくると。 ――――それが死体でも平気なのかな? 「よいしょっと」 「ゆやあああああああああああっっ!! ゆっくりできないぃぃぃぃぃ!!!!」 まりさの死体をれいむが固定されているテーブルに置く。 それだけなのにれいむが騒ぎ出した。 ああそうか、死臭を感じ取れるのか。 「はいはい、ゆっくりしてってね」 「ゆっくりして――――どぼじでくきさんをまりさにさすのぉぉぉっ!!!」 それが目的ですから。 まりさの死体にしっかりと茎を刺して固定する。 苦しそうに歪んでいた実ゆっくりの顔が、なんとなく和らぐ。 死体でも大丈夫っぽいな。つまらない。 「おにぃさんぅ!おにぃさんおねが――――」 「このまま。 このままれいむが騒がなかったら、このおちびちゃんが生まれるまで俺は何もしない。 いいかれいむ、しゃべるな。そうすればおちびちゃんは無事生まれてくる」 「ゆぅ…………ゆっくりりかいしました」 とりあえず生まれてくるまでは待つつもりなので、その間れいむが騒ぐと面倒なので約束させる。 れいむにしても先の二匹のように潰されるよりはと、考えたんだろう。 「じゃぁれいむ、いまからしゃべるなよ?」 コクコクとれいむが頷くのを確認する。 「ふぅ……」 ――――ちょっと燃え尽きた感じかな。 あー、部屋片付けないとなぁ。 荒らされなかったとはいえ床にはところどころ泥がついてる。 高かったテンションの反動が一気に来る。 あの実ゆっくりが普通に生まれてきたらつまらない。 とはいえ、育たずにただ死ぬだけというのも面白みが無い。 まぁいいや。どうなるかは明日になれば分かる。 「ゆっぎやぁぁあああああああああ!!」 れいむの尋常ではない叫びに起こされた。 昨日は部屋をきれいにした後、そのまま寝てしまった。 とりあえず、れいむがいる部屋に行こう。 「ゆあぁああああああああああっ!!ああああっ!!」 「なんだ、生まれてるじゃん。 ――――ってああ、足りないゆっくりってやつか」 「ゆっ……あっ……ゆああぁ」 生まれたばかりの赤ゆっくりがいた。 目は半開きで、おくちといより、無数の小さな穴が顔に開いている感じ。 髪の毛も全然生えていないし、れいむ種みたいだけどお飾りも全然形になっていない。 まるで全身の皮が一度溶かされたような姿をしている。 足りないゆっくりっていうのは聞いたことはあるが、見たのはコレが初めてだ。 全部ここまで気持ちの悪い外見なのか。 「れいむのおちびちゃんがぁぁぁ!!」 「はいはいそうだね、足りない子で――――」 「どうしてしんじゃってるのにうごいてるのぉぉぉぉぉ!? こわいよぉぉぉっ!!ぞんびだよぉぉぉぉぉおっ!!!」 「は?」 死んでいる? いやいや、普通に動いてるけど。 赤ゆっくりを見ようとして、苗床のまりさの死骸が目に入った。 そうか――――死臭か。 「こっちくるなぁぁぁぁ!!おばけぇえぇぇ!!!!」 「なるほどね」 死臭たっぷりの餡子を栄養に育ったこのれいみゅは。 生きながら死臭がするようになったわけだ。 すごいな、まさかこんなことになるなんて。 「ゆっ……びぃ……あああ」 「ゆひぃぃぃ!!はなれろぉぉぉぞんびぃ!!くるなくるなくるなぁぁぁ!!!」 それにしてもゾンビとは。 確かに口を半開きで、うめき声を上げながらグズグズの皮でれいむに近づく様子はそのまんまだ。 やっぱり死体の餡子だと栄養が足りなかったのかな? 今度教授にでも聞いてみよう。 「やめろやめろやめろやめろぉぉっ!! どっかいけぇ!!ぷくーするぞぉぉぉっ!!」 「おいおいひどいぞれいむ。甘えているだけじゃないか」 赤ゆっくりが母親に甘えるのは当然だ。 目がまともに見えてるのかどうかは知らないが、とりあえずれいむが母親だと分かったんだろう。 のろのろと這いずりながられいむに近づいていく。 うん、確かに不気味だ。 「ゆあぁ……おが……ゆっぐ」 「おおっれいむ!おちびちゃんとの初すりすりだな」 「ゆひぃぃぃっ!!」 ついに死臭がするれいみゅが、母親のもとにたどり着いた。 そのヌメヌメした感じの肌をれいむにこすりつける。 「やめろぉぉぉ!!れいむにぃ!さわるなぁっ!!」 「ぴゅっ!!」 「あっ――あーあ、やりやがった」 やっとの思いで母親にたどりついたれいみゅを、自身のもみあげで殴り飛ばしたれいむ。 グジュンと不快な音とともに、れいみゅの身体は簡単に崩壊した。 「子殺しとか最低だな」 「こ、こんなのれいむのおちびちゃんじゃないよぉぉぉぉっ!! おちびちゃんのぞんびだよぉぉぉぉおっ!!! だかられいむはわるくないよぉぉぉおぉおっ!!」 「あーはいはい」 本当はもう少しあのれいみゅで遊びたかったけど仕方が無い。 終わりにするか。 「じゃ、れいむ。お前も捨てるから潰すな」 「ゆへ……?な、なんでぇぇぇぇ!!?? なんでれいむがつぶされちゃうのぉぉぉお!? れいむはかいゆっくりなんだよぉぉぉおっ!? ぎんばっじさんなんだよぉぉお!?」 まぁ納得するなんて思ってなかった。 「…………」 そうだな、一応一ヶ月間一緒に生活した義理もある。 少しくらい説明してやるか。 「れいむ、違うよ。 お前は飼いゆっくりでも銀バッジでもないよ」 「はっぁあぁぁ!?わけわから――――」 「俺の言いつけを守らなかった時点で、 飼いゆっくりでもバッジ付きでも無くなったんだよ」 「ゆ……え?」 れいむがこんなことしなければ、本当に俺はあのまま飼い続けるつもりだった。 「でもでもおちびちゃんはゆっくりできるんだよぉぉっ!? おにーさんだってぇ!!」 「俺は出来ないよ、だからダメって言ったの」 「ゆっぐぅ!そ、そんなのおにーさんがわるいでしょぉぉ!?」 「そうかもね、そうかもしれない。 他の人なら許してくれたかもね。でも俺は許さない。 だから俺に飼われている以上は、約束破ったらだめだったんだよ」 「ゆぐぅぅぅ、そんなのぉぉぉっ!そんなのぉぉ!」 れいむがギリギリと歯軋りの音を立てる。 「でもぉ、おにーさんはれいむといっしょにゆっくりしてたでしょぉ?」 「いやさぁ。 それなんだけど、そうでもないんだよなぁ。 こればっかりはれいむが悪いっていうか、考えなしに飼った俺が悪いんだけど」 「そ、そんなぁああああああああっ!! たくさんっ!おはなししたでしょぉぉ!?」 「いやー、全然会話覚えて無いわ。 確かに俺が夢中になるほどれいむが可愛かったら、少なくともれいむと子供は許してたかもね」 「そんなの、そんなのひどいよぉぉぉぉっ!!」 酷い……か。 まぁその通りだな。飼い主としては最低かもしれない。 だけど――――。 「悪いけど今の世の中のゆっくりの扱いなんてそんなもんだ。 同じ種類なのに、野良で死と隣り合わせの生活したり、 最初から人間に食べられるために生まれたり、飼われたりする。 全部人間の都合だよ」 「ううぅ……ゆえぇぇっ」 「だからまぁ、運が悪かったんだな。れいむは。 ツイてなかったんだよ」 「やだよぉぉぉ……れいむしにたくないよぉおお」 人間の都合で生死が決まるなんて話しても納得できないのは当然か。 「れいむいなくなったらおにーさんひとりになっちゃうよ……? そしたらゆっくりできないでしょぉ?」 「ん、じゃぁ新しいれいむをちゃんと買うよ。 次は金バッジのやつ」 「それはれいむじゃなくてれいむでしょぉぉぉぉっ!!!」 「はははっ、わけわかんねぇ」 まっ、所詮俺の自己満足か。 でも不思議なくらい罪悪感が沸かない。 むしろれいむがどんどん絶望していくのが、楽しい。 ゴミ袋の口を広げる。 「じゃあお別れだれいむ。 もちろん出来るだけ苦しまないようにしてやるから」 「やだぁっぁぁあ!!やだよぉぉぉぉっ!!!」 「あんまり動くと一回で死ねないかもよ?」 「ゆえぇぇぇ……」 とはいえガムテープで下半分を覆われているれいむ。 たいして身動きが取れるわけではない。 「ゆぅぅぅっっ……」 「まぁ、じゃあ来世は幸せになれるといいね」 満面の笑みが浮かんでいるであろう俺の顔を見て、れいむもやっと助からないのを悟ったらしい。 最後の悪あがきだった身体を揺することを止める。 「おにーさんはれいむがきらいだったの……?」 「いや?嫌いじゃなかったよ?好きでもなかったけどね」 「ゆえぇぇぇぇっ!!!」 また泣き出す。もう“おにーさん”じゃないんだけどね。 「じゃぁぁっ!!じゃぁぁ!!おにーさんにとってぇ! れいむはぁ!!れいむはなんだったのぉぉっ!? なんのいみがあったのっ!? れいむがおにーさんといっしょにゆっくりしたせいかつはぁっ!!? なんだったのぉぉっ!?」 最後の力を振り絞るようなれいむの叫び。 少し考えて、片足を振り上げる。 最後に妙なことを言うなぁ、れいむとすごした日々の意味か。 ――――ぶっちゃけどうとも思っていないんだけど。 今振り返ればそうだなぁ。 片足を思いっきりれいむに振り下ろす。 「タイトル参照」 最後までお読みいただきありがとうございました。 過去作 anko4095 『てーとまりしゃ』 anko4099 『てーとまりしゃとれいみゅのおとーさん』 anko4122 『てーとありしゅのおかーさん』 anko4126 『choice』 anko4203 4204 『てーと野良と長雨 前・後編』 ※オチについて 鬼意惨です
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2011年、2月20日、24時間配信凸企画中にオープンクエスチョンについて石炭さんと話していた際に寝惚けた丫戊个堂が突然言い出した名言(風の台詞)である。 石炭「オープンクエスチョンってウミガメのスープでしちゃいけないタイプの質問形式のことですか?」 ↓ あぼ「いや、焼いていいんだよ、この場合」 何を言っているのかわからないかもしれないが、私にもわからない。丫戊个堂自身ですら意味はわからないだろう。
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「むーちゃ、むーちゃ、ちあわせー!・・・」 赤ちゃんゆっくり、通称赤ゆっくりの声が畑一面に響く。 見渡せば同じように食事をしているゆっくりは3匹4匹では済まない。 その中に二周りほど大きなゆっくりが二匹いた。この畑にいるゆっくり達の両親だ。 片方がれいむ、もう一方がまりさという典型的なその夫婦も子供達同様に畑の中で食事をしてしあわせ、しあわせと連呼している。 しかし彼らが食べているの畑の主役である野菜ではない。その成長の邪魔をする細かな雑草をぷちぷちと食しているのだ。 「むーちゃ、むーちゃ・・・ちあわ・・」 幸せを連呼するゆっくりの数が時間の経過とともに減っていく。その順番は年の若い順のゆっくりからだという事は 減っていく口調から容易に判断することができた。 「みんなどうしたの・・・?おいしい草さんを食べれてるんだからゆっくりしあわせ~って言おうね?」 「ゆゅう・・・もうやじゃぁ!!」 心なしか焦りながら子供達に話しかけた親れいむの言葉にさからい、一匹の赤れいむが顔を上げて泣きはじめた。 「こんにゃのおいちくないよ!れいみゅあしょこのやしゃいさんが食べちゃい!」 「だ、だめだよおちびちゃん!そんなことがお兄さんに聞こえたら・・・」 親れいむの視線が赤れいむの頭頂へとゆっくり動く。 そこには一本の透明な線が毛のように赤れいむから生えていた。 よく見れば他のゆっくり達からも不自然にその線は生えており、スーッと伸びたその先は畑の脇に座っている人間の手に握られている。 「おちびちゃん、お願いだからせめて静かにしてね!今お父さんがおいしそうな草さんを探してあげるからね!」 「ゆぅぅ!だからくささんは嫌なの!たべちゃくないの!」 父親役であるまりさも赤れいむの我がままの制止に加わるが泣き止む様子はない。 「ゆぅぅぅぅ!!!おやちゃいがたべたいよぉぉぉ!!!」 「静かに!静かにしておちびちゃん!ね!お・・・」 その時、親れいむの体に淡い闇がかぶさった。 向かい合っている相方の顔が恐怖に引きつっているのを見てれいむの頬を冷や汗が伝う。 恐る恐る静かに後を振り向くれいむ。そこには先程まで座ってゆっくりしていた人間がずんと立っていた。 「野菜が食べたいって?」 「ち、違うんですお兄さん!この子はちょっと疲れてへんなことを言ってるだけなんです!」 「別に草さんがまずいなんて思ってないです!いつもたべれてむしゃむしゃしあわせ~♪」 ニコニコと笑いながらどれだけ自分達が毎日の暮らしに充実しているかを少ない語彙で力説する二匹の親ゆっくり。 だがそんなこともおかまい無しに赤れいむは我がままを止めない。 「おにゃかちゅいた!おにゃかちゅいた!おにゃかちゅいたぁ~!」 「だからそれなら草さんたちを食べればいいでしょおちびちゃん!いいかげんおかーさん怒るよ!」 焦りが限界を超え始めた親れいむはとうとう赤れいむをしかりだした。 だがそこはまだ子供、そう簡単に親の言うことを聞くなら苦労はしない。 「いやぁ!おやしゃい~!!!」 「まあまあ待て。そんなに無理して食べさせることもないだろう?」 「ゆっ・・・!?」 意外な人間の言葉、そもそもここの畑の雑草を食べる様に命じたのは彼だ。 今更食べなくていい等と都合のいいことを彼が言うことはないことを親ゆっくり達は知っていた。 「ゆっ!おにーちゃん、もうれいむ草さんをたべにゃくていいの!?」 対して無知な赤れいむは喜々とした表情で人間を見つめる。まるで野菜を食べていいと言われたかのようだ。 「ああ、いいよ。」 「ゆゆーん!ありがちょぉおにーしゃん!」 「だってまだ一匹減っても八匹もいるしね」 そう言うと人間はゆっくり達から伸びているその透明な線の束から一本だけを選び始めた。 「・・・ま、まっでええええ!!おにーさんまっでええええええ!!!」 「やめてくだざいいいい!!まだ赤ちゃんなんですぅぅぅ!!!」 その途端、親ゆっくり達は泣き叫びながら人間にすり寄り始めた。 当の人間は素知らぬ顔で線を選ぶことを止めない。 「おおこれだ。さておちびちゃん本当に草さんを食べたくないんだね?」 「ゆゅ!あんにゃゆっくりできないたべものは嫌いだよ!」 「そうかそうか・・・」 「嘘!うそでずおにぃざん!!このこは草さんだいすきですからぁ!!!むしゃむしゃしあわせですがらぁ!!」 「しょんなことにゃいよおかーしゃん!あんなまじゅくてちあわせじゃないたべものなんてれいみゅはもう食べないよ!」 「どうじでそんなごどいうのぉぉぉ!!!」 親ゆっくり達は赤れいむの発言を撤回しようと必死だが赤れいむは頑に雑草はもう食べないと言い張っている。 すると人間はそのゆっくり達の会話に飽きたのか、選んだその線を持つ手に力を加えて思いっきり引っ張った。 「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」」 親ゆっくりの叫びが同調し畑の隅遠くまで満遍なく響き渡る。 そのコンマ数秒後、叫び声とは違う乾いた音が響く。 「おちびちゃんがあああああああああああ!!!」 「ゆゅゅ!びっくりさせないでよおかーしゃん!」 「あ゛あ゛あ゛・・・ゆっ?おちびちゃん?」 「どうちたのおかーしゃん達!れいみゅびっくりしたよ!ぷんぷん!」 親れいむの足下には突然の叫び声に驚いた赤れいむが頬をぱんぱんに膨らませている。 親ゆっくり達も驚いている。 なぜなら今死んだはずの自分の子供が五体満足でその場にいたのだから。 だが親ゆっくり達は確かに聞いていた。あの忌々しいボンッという聞き慣れてしまった爆発音を。 「ん!?間違ったかな・・・」 「おねえちゃあああああああん!!!」 自分の子供の悲鳴を聞いた親ゆっくり達はゆっくりらしかぬ動きでバッとその方向へ振り向いた。 先程まで雑草をむさぼっていた子まりさがいたその場所には 子まりさの帽子に泣きつく赤まりさと 濃い茶色で塗りつぶされた地面しか存在しなかった。 「まりざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「おちびちゃんがあああああああああ!!!」 再び泣き叫び始める親ゆっくりの異常な様子に近くにいた赤れいむも流石に身の危険を感じ始めた。 「すまんなぁおちびちゃん。お前を爆発させるつもりがどうやら姉ちゃんを爆発させちまったらしい。」 「ゆ・・ゆ・・・?ばくはちゅ・・・?」 「そうだ、おっきな音がしたろ。あれはお前の姉ちゃんが体の中からふっとんで死んじまった音だ。」 「し、死んだ?おねえちゃんが・・・?」 「ああ、そうだ・・・すまんなお前を爆発させる線はこれだ。次は間違えないからな。安心しろ。」 そう言ってにこやかに微笑む人間の顔にはまるで罪悪感は見えない。 ようやく雑草を食べないことが身の危険へとつながることを理解した赤れいむは目に涙をためて 体をゆっくりと左右に振り始めた。 「いやじゃぁ・・・いやじゃぁ・・・ちにたくないぃ・・・」 「だいじょうぶ、もう草さんなんて食べなくていいんだからな。なぁに、お前が減ってもまだ七匹もいる。 俺の畑のことは心配するな。」 「いやじゃぁぁぁ!!!ちにたくないぃぃぃ!!!ゆっくりちたいよぉぉぉぉぉ!!!」 淡々と死の宣告をする人間との会話に我慢ができなくなった赤れいむは気が触れたかの様に猛烈な勢いで頭を揺らした。 「仕方ないだろ、おまえが草さんを食べたくないっていうんだから。」 「ゆぁぁぁ!!たべる!たべるから!ゆっくり!ゆっくりくささんをちゃべるよ!」 言うや否や赤れいむは周りの数少ない雑草に顔面をあてて食らいつき始めた。 その勢いは草よりもむしろ土を食してる割合の方が多い。 「・・むぐっ!むぐむぐむぐ!・・・はふっはふっ!」 「うーんやっぱりいいよ。」 「むぐっ!?」 一瞬、もう許してくれるのかと思い赤れいむは人間の方へと顔を上げようとした。 「そんなおいしくなさそうに食べるなんて可哀想だからね・・・しあわせじゃないおちびちゃんの姿は見ていられない。 さよならおちびちゃん。」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!むーしゃ!!!むーしゃ!!!ちあわちぇー!!!ちあわちぇー!!おいちー!!! ゆっきゅりできるよ!!!!しゅっごいゆっきゅりできるよ!!!!むちゃむちゃむちゃむちゃ!!!!ちあわちぇー!!!!」 最早赤れいむに雑草や野菜や土の区別等ついていない。 ただ目の前にある物をかぶりつきしあわせと連呼しているだけである。 「うっみぇ!!!!しゅっげうっみぇ!!!ぱにゃい!!!みゃじぱにゃい!!!!ちあわちぇちあわちぇ!!!」 「おーよかった!いやーここの草さんも俺の畑からできてるものだからねー。まずいわけがないとは思っていたんだよ。 それだけおいしいって言ってくれるならまだ大丈夫だね!いやーよかった。」 「ちあ、ちあわちぇ!!!ちあわちあわちぇ!!おいちおいちーよー!!!」 遠ざかっていく人間の姿に安堵したのか、今まで食べる等考えもしなかったその茶色のじゃりじゃりに 赤れいむは尋常ではない吐き気を催した。 「・・んぶ!おがぁ!おあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 一生命体から肥料へと変わっていく赤れいむ。その勢いは止まることなく一分も立たずに赤れいむは意識を遠のかせていった。 「もっちょ・・ちあわせになりた・・・きゃったよぉ・・・」 その5分後、子まりさの屍を弔い終わり戻ってきた親ゆっくり達はまたしても声をからす程に泣き叫ぶことになった。 ―夕方 「おーし、もう上がっていいぞごくろうさーん。」 『・・・・・・・・・・』 「みんなゆっくりしてないのか・・・」 『おにーさん!!とってもゆっくりできたよ!!あしたもゆっくりしようね!!!』 「そうかそうか!それじゃあ小屋へ戻ろうな。」 『ゆっくりもどるよ!』 「逃げたらだめだぞー。森の木にその線が引っかかってお前たちの中の爆弾ピンが外れたらボンッってなるからなー」 『ゆっくりにげないよ!』 「ご飯は・・・いらないか。お腹いっぱいだもんな。」 『ゆ、ゆっくりお腹いっぱいだよ!』 「そうだよなーよし、今日はもう寝なさい。明日も頑張ってもらうからな。」 『・・・ゆっくり・・・がんばるよ・・・!』 一家はここの畑に来たのは単なる社会科見学の一環だった。 人間の恐ろしさ、その野菜をとることの罪深さ、それを教える為に出向いただけだった。 そんなことは安全な巣の中でやるべきだったことを親ゆっくり達は今も後悔している。 彼らが捕まって一週間、爆弾の除去という人間との約束が果たされるその日まであともう一週間であった。 このSSに感想を付ける
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「むーちゃ、むーちゃ、ちあわせー!・・・」 赤ちゃんゆっくり、通称赤ゆっくりの声が畑一面に響く。 見渡せば同じように食事をしているゆっくりは3匹4匹では済まない。 その中に二周りほど大きなゆっくりが二匹いた。この畑にいるゆっくり達の両親だ。 片方がれいむ、もう一方がまりさという典型的なその夫婦も子供達同様に畑の中で食事をしてしあわせ、しあわせと連呼している。 しかし彼らが食べているの畑の主役である野菜ではない。その成長の邪魔をする細かな雑草をぷちぷちと食しているのだ。 「むーちゃ、むーちゃ・・・ちあわ・・」 幸せを連呼するゆっくりの数が時間の経過とともに減っていく。その順番は年の若い順のゆっくりからだという事は 減っていく口調から容易に判断することができた。 「みんなどうしたの・・・?おいしい草さんを食べれてるんだからゆっくりしあわせ~って言おうね?」 「ゆゅう・・・もうやじゃぁ!!」 心なしか焦りながら子供達に話しかけた親れいむの言葉にさからい、一匹の赤れいむが顔を上げて泣きはじめた。 「こんにゃのおいちくないよ!れいみゅあしょこのやしゃいさんが食べちゃい!」 「だ、だめだよおちびちゃん!そんなことがお兄さんに聞こえたら・・・」 親れいむの視線が赤れいむの頭頂へとゆっくり動く。 そこには一本の透明な線が毛のように赤れいむから生えていた。 よく見れば他のゆっくり達からも不自然にその線は生えており、スーッと伸びたその先は畑の脇に座っている人間の手に握られている。 「おちびちゃん、お願いだからせめて静かにしてね!今お父さんがおいしそうな草さんを探してあげるからね!」 「ゆぅぅ!だからくささんは嫌なの!たべちゃくないの!」 父親役であるまりさも赤れいむの我がままの制止に加わるが泣き止む様子はない。 「ゆぅぅぅぅ!!!おやちゃいがたべたいよぉぉぉ!!!」 「静かに!静かにしておちびちゃん!ね!お・・・」 その時、親れいむの体に淡い闇がかぶさった。 向かい合っている相方の顔が恐怖に引きつっているのを見てれいむの頬を冷や汗が伝う。 恐る恐る静かに後を振り向くれいむ。そこには先程まで座ってゆっくりしていた人間がずんと立っていた。 「野菜が食べたいって?」 「ち、違うんですお兄さん!この子はちょっと疲れてへんなことを言ってるだけなんです!」 「別に草さんがまずいなんて思ってないです!いつもたべれてむしゃむしゃしあわせ~♪」 ニコニコと笑いながらどれだけ自分達が毎日の暮らしに充実しているかを少ない語彙で力説する二匹の親ゆっくり。 だがそんなこともおかまい無しに赤れいむは我がままを止めない。 「おにゃかちゅいた!おにゃかちゅいた!おにゃかちゅいたぁ~!」 「だからそれなら草さんたちを食べればいいでしょおちびちゃん!いいかげんおかーさん怒るよ!」 焦りが限界を超え始めた親れいむはとうとう赤れいむをしかりだした。 だがそこはまだ子供、そう簡単に親の言うことを聞くなら苦労はしない。 「いやぁ!おやしゃい~!!!」 「まあまあ待て。そんなに無理して食べさせることもないだろう?」 「ゆっ・・・!?」 意外な人間の言葉、そもそもここの畑の雑草を食べる様に命じたのは彼だ。 今更食べなくていい等と都合のいいことを彼が言うことはないことを親ゆっくり達は知っていた。 「ゆっ!おにーちゃん、もうれいむ草さんをたべにゃくていいの!?」 対して無知な赤れいむは喜々とした表情で人間を見つめる。まるで野菜を食べていいと言われたかのようだ。 「ああ、いいよ。」 「ゆゆーん!ありがちょぉおにーしゃん!」 「だってまだ一匹減っても八匹もいるしね」 そう言うと人間はゆっくり達から伸びているその透明な線の束から一本だけを選び始めた。 「・・・ま、まっでええええ!!おにーさんまっでええええええ!!!」 「やめてくだざいいいい!!まだ赤ちゃんなんですぅぅぅ!!!」 その途端、親ゆっくり達は泣き叫びながら人間にすり寄り始めた。 当の人間は素知らぬ顔で線を選ぶことを止めない。 「おおこれだ。さておちびちゃん本当に草さんを食べたくないんだね?」 「ゆゅ!あんにゃゆっくりできないたべものは嫌いだよ!」 「そうかそうか・・・」 「嘘!うそでずおにぃざん!!このこは草さんだいすきですからぁ!!!むしゃむしゃしあわせですがらぁ!!」 「しょんなことにゃいよおかーしゃん!あんなまじゅくてちあわせじゃないたべものなんてれいみゅはもう食べないよ!」 「どうじでそんなごどいうのぉぉぉ!!!」 親ゆっくり達は赤れいむの発言を撤回しようと必死だが赤れいむは頑に雑草はもう食べないと言い張っている。 すると人間はそのゆっくり達の会話に飽きたのか、選んだその線を持つ手に力を加えて思いっきり引っ張った。 「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」」 親ゆっくりの叫びが同調し畑の隅遠くまで満遍なく響き渡る。 そのコンマ数秒後、叫び声とは違う乾いた音が響く。 「おちびちゃんがあああああああああああ!!!」 「ゆゅゅ!びっくりさせないでよおかーしゃん!」 「あ゛あ゛あ゛・・・ゆっ?おちびちゃん?」 「どうちたのおかーしゃん達!れいみゅびっくりしたよ!ぷんぷん!」 親れいむの足下には突然の叫び声に驚いた赤れいむが頬をぱんぱんに膨らませている。 親ゆっくり達も驚いている。 なぜなら今死んだはずの自分の子供が五体満足でその場にいたのだから。 だが親ゆっくり達は確かに聞いていた。あの忌々しいボンッという聞き慣れてしまった爆発音を。 「ん!?間違ったかな・・・」 「おねえちゃあああああああん!!!」 自分の子供の悲鳴を聞いた親ゆっくり達はゆっくりらしかぬ動きでバッとその方向へ振り向いた。 先程まで雑草をむさぼっていた子まりさがいたその場所には 子まりさの帽子に泣きつく赤まりさと 濃い茶色で塗りつぶされた地面しか存在しなかった。 「まりざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「おちびちゃんがあああああああああ!!!」 再び泣き叫び始める親ゆっくりの異常な様子に近くにいた赤れいむも流石に身の危険を感じ始めた。 「すまんなぁおちびちゃん。お前を爆発させるつもりがどうやら姉ちゃんを爆発させちまったらしい。」 「ゆ・・ゆ・・・?ばくはちゅ・・・?」 「そうだ、おっきな音がしたろ。あれはお前の姉ちゃんが体の中からふっとんで死んじまった音だ。」 「し、死んだ?おねえちゃんが・・・?」 「ああ、そうだ・・・すまんなお前を爆発させる線はこれだ。次は間違えないからな。安心しろ。」 そう言ってにこやかに微笑む人間の顔にはまるで罪悪感は見えない。 ようやく雑草を食べないことが身の危険へとつながることを理解した赤れいむは目に涙をためて 体をゆっくりと左右に振り始めた。 「いやじゃぁ・・・いやじゃぁ・・・ちにたくないぃ・・・」 「だいじょうぶ、もう草さんなんて食べなくていいんだからな。なぁに、お前が減ってもまだ七匹もいる。 俺の畑のことは心配するな。」 「いやじゃぁぁぁ!!!ちにたくないぃぃぃ!!!ゆっくりちたいよぉぉぉぉぉ!!!」 淡々と死の宣告をする人間との会話に我慢ができなくなった赤れいむは気が触れたかの様に猛烈な勢いで頭を揺らした。 「仕方ないだろ、おまえが草さんを食べたくないっていうんだから。」 「ゆぁぁぁ!!たべる!たべるから!ゆっくり!ゆっくりくささんをちゃべるよ!」 言うや否や赤れいむは周りの数少ない雑草に顔面をあてて食らいつき始めた。 その勢いは草よりもむしろ土を食してる割合の方が多い。 「・・むぐっ!むぐむぐむぐ!・・・はふっはふっ!」 「うーんやっぱりいいよ。」 「むぐっ!?」 一瞬、もう許してくれるのかと思い赤れいむは人間の方へと顔を上げようとした。 「そんなおいしくなさそうに食べるなんて可哀想だからね・・・しあわせじゃないおちびちゃんの姿は見ていられない。 さよならおちびちゃん。」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!むーしゃ!!!むーしゃ!!!ちあわちぇー!!!ちあわちぇー!!おいちー!!! ゆっきゅりできるよ!!!!しゅっごいゆっきゅりできるよ!!!!むちゃむちゃむちゃむちゃ!!!!ちあわちぇー!!!!」 最早赤れいむに雑草や野菜や土の区別等ついていない。 ただ目の前にある物をかぶりつきしあわせと連呼しているだけである。 「うっみぇ!!!!しゅっげうっみぇ!!!ぱにゃい!!!みゃじぱにゃい!!!!ちあわちぇちあわちぇ!!!」 「おーよかった!いやーここの草さんも俺の畑からできてるものだからねー。まずいわけがないとは思っていたんだよ。 それだけおいしいって言ってくれるならまだ大丈夫だね!いやーよかった。」 「ちあ、ちあわちぇ!!!ちあわちあわちぇ!!おいちおいちーよー!!!」 遠ざかっていく人間の姿に安堵したのか、今まで食べる等考えもしなかったその茶色のじゃりじゃりに 赤れいむは尋常ではない吐き気を催した。 「・・んぶ!おがぁ!おあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 一生命体から肥料へと変わっていく赤れいむ。その勢いは止まることなく一分も立たずに赤れいむは意識を遠のかせていった。 「もっちょ・・ちあわせになりた・・・きゃったよぉ・・・」 その5分後、子まりさの屍を弔い終わり戻ってきた親ゆっくり達はまたしても声をからす程に泣き叫ぶことになった。 ―夕方 「おーし、もう上がっていいぞごくろうさーん。」 『・・・・・・・・・・』 「みんなゆっくりしてないのか・・・」 『おにーさん!!とってもゆっくりできたよ!!あしたもゆっくりしようね!!!』 「そうかそうか!それじゃあ小屋へ戻ろうな。」 『ゆっくりもどるよ!』 「逃げたらだめだぞー。森の木にその線が引っかかってお前たちの中の爆弾ピンが外れたらボンッってなるからなー」 『ゆっくりにげないよ!』 「ご飯は・・・いらないか。お腹いっぱいだもんな。」 『ゆ、ゆっくりお腹いっぱいだよ!』 「そうだよなーよし、今日はもう寝なさい。明日も頑張ってもらうからな。」 『・・・ゆっくり・・・がんばるよ・・・!』 一家はここの畑に来たのは単なる社会科見学の一環だった。 人間の恐ろしさ、その野菜をとることの罪深さ、それを教える為に出向いただけだった。 そんなことは安全な巣の中でやるべきだったことを親ゆっくり達は今も後悔している。 彼らが捕まって一週間、爆弾の除去という人間との約束が果たされるその日まであともう一週間であった。 このSSに感想を付ける
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『おててを上げて渡りましょう』 9KB 観察 日常模様 育児 野良ゆ 子ゆ よろしくお願いします 「はい、みんなー」大きな人間さんが、人間さんのおちびちゃんたちに向かって言う。「一列に並んで、おててをつないでねー」 「はーい、せんせー!」 人間さんたちが仲良くおててをつなぎはじめた。そうやって、みんな一緒に道路を渡るのだ。 おぼつかないおちびちゃんの面倒を大人が見るのは当然のことで、とてもゆっくりできる。 それはゆっくりだろうと人間さんだろうと変わらない。 いつもはそう考えているれいむだが、今日は違った。 「どうちてしょんなこちょいうのおおおお!?」 れいむのおちびちゃんが泣きながら叫んだ。 いつもの散歩の帰り道、いつもの横断歩道。 「もういちどいうよ! おちびちゃん!」あえて厳しい声で言う。「おかあさんはさきにいっちゃうよ! ひとりでおうちにかえるよ!」 「ゆええええん! おかあしゃああああん!」 「おちびちゃんはいつまでもそこでないてるといいよ! ぷんぷん!」 突き放すように言い、れいむはおちびちゃんに背を向けた。 「ゆえええんっ! おかあしゃんっ! そっぽむかにゃいでにぇっ!? まりしゃのほうをむいちぇにぇっ!?」 縋ってきたおちびちゃんを、もみあげで払う。「はなしてねっ!」 おちびちゃんがびくっと体を硬くするのが、気配でわかった。 れいむの体も硬直する。 おめめをぎゅっと瞑り、「ごめんね! ごめんね、おちびちゃん!」と声には出さず謝った。 「ゆええええんっ! ゆええええんっ!」 目の前の横断歩道を、人間さんのすぃーが通過した。 信号は赤のまま。 「まだだよー。青になったら、みんなで道路を渡るからねー」 人間さんが言った。 「せんせー、ゆっくりがいる! ゆっくりがいる!」 人間さんのおちびちゃんが、れいむたちに気づいた。こっちを見てはしゃいでいる。 れいむが「ゆっくりしていってね!」と挨拶すると、たくさんの「ゆっくりしていってねっ!」という元気な声が返ってきた。 みんなとてもゆっくりした、いい子たちのようだ。 「ゆっくりで遊んでいい?」 「ゆっくりで遊びたーい!」 そんな楽しそうな声に、『せんせー』と呼ばれている大きな人間さんは、、 「はいはい。みんなー、ふざけたりしないでねー。道路で遊んだら駄目だよー?」 れいむと『せんせー』のおめめが合った。少し困ったような笑顔。 この『せんせー』がおちびちゃんたちを気遣っているのがよくわかる。実にゆっくりした人間さんだ。 れいむのおちびちゃんが、今より小さかった時のことを思い出す。 あの頃は、おちびちゃんをれいむのおつむに乗せてこの横断歩道を歩いていた。 そのたびに「おかあしゃんのおつむのうえは、とっちぇもゆっくちちてるにぇ!」と喜んでくれたのを覚えている。 つい先日までは、もみあげでおちびちゃんのおさげを引いて渡っていた。 足取りもしっかりしてきて、もうおちびちゃんもおちびちゃんじゃなくなってきたのだと、嬉しいような寂しいような、複雑な気持ちになりもした。 愛するおちびちゃんの成長を日々感じながら、れいむは考える。 おちびちゃんには、そろそろ一人でこの横断歩道を渡れるようになってもらおう。 れいむの力を借りなくても、自らのあんよで、立派に大地を踏みしめて歩んでいってもらおう、と。 おちびちゃんを強く立派なゆっくりに育てる。――永遠にゆっくりしてしまった最愛の夫、まりさにそう誓ったのだ。 れいむとおちびちゃんが訓練を開始したのが一昨日。 その日は「まりしゃこわいよ! おかあしゃんといっちょがいいよ!」と、れいむのもみあげを放さなかった。 怖いのはよくわかる。普段歩いている歩道の隅ではなく、人間さんのすぃーが行きかう道の真ん中に出なくてはいけないのだ。 しかし、そんなことを言っていては街中では生きていけない。 二日目の昨日は、少し厳しく、強引に横断歩道の上に押し出してみた。 すると「いやじゃああああ! こわいよおおおお!」と泣き叫んで手がつけられなくなってしまった。 とは言え、れいむの言うとおりにできないのが心苦しかったのだろうか。おうちに帰るまで「ごめんにぇ! ごめんにぇ!」と謝ってくれた。 そんなおちびちゃんの姿に胸を締め付けられながらも、れいむは心を鬼にしようと決意した。 だから今、れいむは、おちびちゃんに背を向け続ける。 「ゆわああああん! おがあじゃっ……おがあじゃあああああんっ!」 背中に突き刺さるような泣き声を聞くと、まだおちびちゃんには早かったのだろうか、自分は間違っているのだろうかと、決意が揺らぐ。 れいむは体をぷるぷると振るった。 自分達は野良ゆっくり。 いつ何時、何が起こるかわからない。れいむは明日にもまりさの元へ行くことになるかも知れない。 ならば、おちびちゃんに何を教えるにも早すぎると言うことはないはずだ。 信号が青に変わった。 人間さんのすぃーが1台、横断歩道の前で停止した。 「それじゃ、みんなで横断歩道を渡るよー。まっすぐ歩こうねー」 「はーい、せんせー!」 人間さんたちが道路を横断しはじめた。 片方のおててをみんなでつないで、もう片方のおててはお空に向けている。何ともゆっくりした姿だと思った。 よし、れいむも行こう。 ここは人間さんのすぃーの往来も少なく、なおかつ比較的短い横断歩道だ。 おちびちゃんがいつも歩いている速さなら、十分すぎるほど余裕はある。信号が点滅する前に渡りきれる。 大丈夫だ。 「ゆっ! あおになったよ! ゆっくりわたるよ! ぜんぜんこわくないよ!」 その言葉に「おちびちゃん! おかあさんについてきてね!」という意志を込めたつもりだ。 歩道から横断歩道へ。 人間さんたちと同じように、片方のもみあげを上げてみる。 「ゆっ! ゆっ! ゆっ! おかあさんは、おうだんほどうをわたるよ!」 「ゆええええんっ! おがあじゃんっ! まりじゃをおいでいがないでええええっ!」 「き、きこえないよっ! おかあさん、お、おちびちゃんのこえなんかきこえないよっ!」 「おがあじゃんっ! ゆっぐ……ゆっぐ……! おがあじゃああああんっ! おがあじゃああああんっ!」 あまりに悲痛な叫びに、思わずれいむはあんよを止めた。横断歩道をちょうど半分くらい渡ったところだ。 人間さんたちが、仲良くおててをつないで、ゆっくりとれいむの横を通過していく。 「はーい。まっすぐ歩いてねー」 『せんせー』は横断歩道の途中に立って、とことこと歩く人間さんたちを見守っている。 一瞬だけ『せんせー』とおめめが合い、すぐに逸らされた。 涙が出てきた。 もう駄目だ。訓練はまた今度。泣いているおちびちゃんを助けてあげよう。 よくがんばったね、ごめんねと、おつむをなーでなーでしてあげよう。 「おちびちゃっ……!」 歩道を振り返ったれいむは見た。 「ゆっぐ……! ゆっぐ……! おがっ、おがあじゃん……!」 おちびちゃんが、歩道から離れ、横断歩道を歩いていた。 いつもより若干遅めのペースながらも、一歩一歩、ゆっちゆっちと、確実にれいむの元に近づいてきている。 「まっちぇにぇ! ゆっぐ……ゆっぐ……まっちぇにぇ!」 「おちびっ……ちゃっ……!」 左右のもみあげで口元を抑えて嗚咽を堪える。 「ゆっぐぢ……ゆっぐぢ! ゆっぐ、ゆっぐ!」 「がんばっで……おぢびぢゃっ……がんば……でえ……」 おちびちゃん。 可愛い可愛いおちびちゃん。 「まりざあ……。おちびぢゃんをみでる? おぞらのゆっぐりぷれいすがら、おちびぢゃんをみでる? ばりざああああ……!」 れいむとまりさの愛の結晶は、こんなに逞しく成長してくれた。 怖いのだろう。心細いのだろう。 おめめをうるませながら、しゃくりあげながら、それでも懸命に横断歩道を渡るおちびちゃん。 そんな勇姿を見せられて、お母さんであるれいむが泣いていては格好がつかない。 「……ゆっ!」涙がこぼれないように体を仰け反らせ、れいむはつとめて明るく言った。「そのちょうしだよ、おちびちゃん! がんばってね! がんばってね!」 「ゆっぐぢ! ゆっぐぢ! おがあじゃん! まりじゃ……まりじゃ、がんばりゅよ!」 「がんばってね! がんばってね!」 おちびちゃんの向こうに見える信号を確認する。まだ青だ。 本当はおちびちゃんに寄り添って応援し続けてあげたいが、それでは訓練にならない。 せめておちびちゃんが悲しく辛い思いをしないように、楽しく歩こう。 楽しく、ゆっくりと。 「おちびちゃん、みてみて! ぴこぴこするよ!」 れいむはもみあげを上下に動かしながら、さらに後ろに――おちびちゃんの進行方向に――向かって飛び跳ねる。 とたんに、おちびちゃんのおめめが輝き始めた。 「ゆわあ……。おかあしゃんのぴこぴこは、とってもゆっくちできりゅよ!」 少しだけおちびちゃんの足取りが軽くなったようだ。 その調子、その調子。 「こんどは、のーびのーびするよ!」 体を伸び縮みさせながら後ろへジャンプ。 するとおちびちゃんは、 「まりしゃもまりしゃも! のーびのーびしゅるよ! のーびのーび!」 「ゆふふ! おちびちゃん! あんよがとまってるよ! ゆっくりまえにすすもうね!」 「ゆっ? まりしゃ、うっかりちてたよ! ゆっくち! ゆっくち! ゆっぎゅうっ」 「……ゆっ?」 れいむには何が起きたのかわからなかった。 目の前にはあんよ。人間さんの大きなあんよだ。 その下に、おちびちゃんの小さな体。 おちびちゃん自慢のお帽子のふちから、ゆっくりと餡子が、そして潰れたおめめが流れ出している。 つまり今、おちびちゃんは、れいむの目の前で、人間さんの大きなあんよによって踏み潰されたのか。 「……ゆ、ゆ?」 れいむは震える体を頑張って動かし、そのあんよの主を見た。 それはあの『せんせー』だった。 『せんせー』は、怒っているような笑っているような、不思議な表情をしている。 れいむはおめめを閉じた。 泣いて、笑って、横断歩道をゆっちゆっちと渡っていたおちびちゃん。 そうだ。さっきの無残な姿は、れいむの見間違いだったのかも知れない。 おちびちゃんは怪我ひとつなく、「ゆっくち!」と元気に―― おめめを開いて、おちびちゃんを確認する。 人間さんのあんよの下に、だらしなく広がった金色の糸と、赤黒い染み。 見間違いなどではなかった。 「お、おちびちゃ……」 れいむがそう呟くと、『せんせー』があんよをどけた。少し慌てている風だった。 「おちびちゃんっ!」れいむは慌てておちびちゃんに飛びついた。「おかあさんが、ぺーろぺーろしてあげるよっ!」 もみあげとお口を使って、潰れたお帽子を脱がす。 金色の髪が黒い餡子に埋まっているのは、これはおつむが割れてしまっているからだ。 ――駄目だ。考えては駄目だ。 とにかく治療しなくては。ぺーろぺーろして、おちびちゃんの傷を癒してあげなくては。 「ぺ、ぺーろぺーろっ!」舌がおちびちゃんの傷に触れる。 まず、甘いと思った。 気が狂うほどの甘さだ。 「ぺーろ、ぺー……ろ……」 おちびちゃんの中身はこんな味だったのかと思うと同時に、ソレを舐めている自分に気づく。 れいむのおつむの中が爆発した。 「うわああああああっ! れいむのおちびちゃんがああああああっ!?」 「せんせーがゆっくり潰したー!」 「ずるーい! ぼくも潰したーい!」 「道路で遊んじゃ駄目なんだよー!」 「あのれいむのもみあげ、もいでもいい?」 園児たちがが口々に拗ねたように言うと、 「や、これはその、違うの」保育士の若い女性は顔を赤くして、少し早口で言った。「あんなふざけた三文芝居見せられたら、つい……じゃなくて」 弁解するように続ける。 「ええと……ど、道路でふざけて遊んでると、このゆっくりみたいになっちゃうからね! みんなも事故には気をつけようね!」 (了) 作:藪あき
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* 『ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね』のブルーシートまりさが主役。リクエストがあったので。 * 前作にも増して虐成分少なめ。まあ、より前作を味わうためのおまけですんで。 『ゆっくりのみるゆめ』 D.O 「ゆっくりしちぇっちぇにぇ!!!」 ここは商用ゆっくりの総合製造工場、通称「餡工場」。 ここは銀バッジ付以上のような『愛玩用』ではなく『商品用』ゆっくりが日夜生産され続けている。 今回の主人公であるゆっくりまりさもこの工場内で産声を上げた。 「はーい『!』3つ。」 まりさは両親から「ゆっくりしていってね」と返されることもなく、所定のベルトコンベアーに振り分けられた。 赤まりさの等級区分はその活発さの度合いで決められている。 まりさ=活発 れいむ=母性(笑) ありす=都会派(笑) その個性が際立ってこそ購入者も満足するのだ。 まあ具体的には、生まれて第一声のあいさつが元気なほどよりマシな将来が用意されており、 『!』が3つ以上で廉価飼いゆ、2つ~1つで各種ゆっくり商品の生体部品、元気がなければ餡子となる。 「ゆぴっ!ゆぅ、にゃんだかねむきゅなっちぇきちゃよ。すぴーすぴー。」 廉価飼いゆにえらばれた赤ゆたちはあにゃるから睡眠薬入り茎ペーストを注入され、 真空パックに封入後各店舗へと送られる。 こうして彼女たちの命は1匹50円で飼い主に握られることとなるのである。 「ゆぅ、ゆっ?ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」 「うわーい!赤まりさだー!ゆっくりしていってね」 「どうだ、M太。元気な赤まりさだろー。」 「うん!すっげー元気!とーちゃんありがとー!」 「むほぉぉおおお!M太はかわいいなぁ!よーしよしよしよし×300。 M太の欲しいものならなんっっっっっっだって買ってあげるからなぁ。」 「ほーら。ごはんやるからな。あぁ、とーちゃん、邪魔。」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおお?」 「ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!!ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!!」 こうしてまりさは溺愛お父さんとM太の家で育てられることとなった。 数日の間は。 「とーちゃん!この『卓上水上まりさ』っての欲しい!買って!」 「んあ?赤まりさは?」 「飽きた。」 「むほぉぉおおお!そんな冷血のM太もかわいいなぁ!よーしよしよしよし×500。」 「おにーしゃん、やめちぇにぇ。おいていきゃにゃいでにぇ。 まりしゃなにかわるいこちょしちゃならあやまるよ?まっちぇにぇ。まっちぇ・・・まっちぇぇぇぇええええ!!!」 こうしてまりさは3日間も食事を忘れられた挙げ句、 家から遠く離れた林へと捨てられた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆぅ。むーちゃむーちゃ、ちょっとちあわちぇー。」 まりさは自分でも集めることができる唯一の食糧、雑草を食べて生き延びる。 草や虫など食べられない大抵の飼いまりさであれば、ここで儚いゆん生を終えていた事であろう。 だが、飼い主のあまりに雑な飼育が、結果として彼女の命を救うこととなった。 彼がこの数日間で与えられた食事と言えば、試供品のゆっくりフード『ミラクルベジタブル』一食分と水のみ。 そもそもこの商品にしてから、野菜の姿を残しつつ風味と食感を完全に除去したという、奇跡の名にふさわしい虐待用品である。 事実上体内に注入されていた茎ペーストのみで生き延びていたまりさは舌が肥えることとは無縁だったのだ。 「なんじぇ?まりしゃにゃにかわるいこちょしちゃにょ? おとーしゃん、おきゃーしゃん。さびちいよぉ。しゃむいよぉ。」 「むきゅ?おちびちゃん一人でこんなところにいちゃあぶないわよ?」 「わきゃらにゃいよ。おとーしゃんもおきゃーしゃんもいなかっちゃんだよ。 おにーしゃんもまりしゃをおいちぇどっきゃいっちゃったんだよ。」 「むきゅーん。大体事情はわかったわ。まだこんなに小さな赤ちゃんなのに。 まりさ、お外はあなたみたいな子供が一人でいると危ないわ。ぱちぇのところにいらっしゃい。」 まりさが林で生活を始めて4日目、初めて言葉を交わした相手は、体高50?を超える一匹の老ぱちゅりーだった。 「むきゅん。このキノコさんはゆっくりできるわ。こっちの木の実さんは殻をとらないとゆっくりできないわね。」 「しゅごーい。ぱちぇおにぇーちゃんはものしりだにぇ。」 「おねーさんなんてよばれたのは久し振りね。こんなおばーちゃんなのに。むきゅむきゅ。」 「おうちはゆっくりにとってごはんとおなじくらい大切なのよ。 雨さんも風さんも、太陽さんからも守ってくれるのよ。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「山のゆっくりは、穴をほっておうちをつくるけど、そうするとお引越しが大変ね。 できれば人間さんの置いて行った箱さんや布さんを使って作る方がいいかもしれないわ。」 「ぱちぇおねーちゃん。」 「何かしら?」 「なんではじめてあったときひとりだったの?」 「長をやっていた群れから追い出されたのよ。」 「なんで?ぱちぇおねーちゃんはこんなにゆっくりしてるのに。」 「若いドスが来てね。年寄りは引退しろって。 皆のために厳しくしていたけど、自分の娘にまで出て行けと言われた時はちょっと悲しかったわ、むきゅん。」 「・・・・。」 まりさがぱちゅりーから生きていく知識を吸収し、子ゆっくりとなったころ生活に転機が訪れた。 「ふむ、あれが報告のあった巨大ぱちゅりーか。これは珍しいね。」 「湯宇川教授、準備できました。」 「むきゅん。人間さんの気配がするわ。」 「にんげんさんはゆっくりできないよ!ぷんぷんっ。」 「そんなこと言っちゃだめよ。人間さんもゆっくりも、ゆっくりできる相手もいればできない相手もいるの。 でもね、もしもお話しすることがあっても絶対に近づいちゃだめよ。 喧嘩になりそうだったり、反対にいきなりあまあまをくれたりする人に出会ったら、 おうちも宝物も、全てを捨ててでも逃げるのよ。それが生き延びるコツね。」 「むぎゅぅぅううう。まりさ、おうちの裏口から逃げてね!振り返っちゃだめよ!」 「ぱちぇおねーちゃん!いっしょににげてね!もうひとりはいやだよ!」 「・・・おねーさんは一人でならば逃げられるわ。でもあなたがいたら足手まといなのよ。わかったら急いでね。むきゅ。」 「・・・ゆっくりりかいしたよ。」 「ここから太陽さんが顔を出す方にしばらく行ったところにありすとちぇんの群れがあるわ。 ぱちぇの親友なの。お互い生きてそこで落ち合いましょう。」 「おねーしゃん・・・」 「?」 「にんげんさんからにげて、またあえたら、おかーさんってよんでいい?」 「むきゅ、むっきゅーん。これは意地でも逃げきる理由ができたわ! さあ、もう行って!人間さんが来ちゃうわ!」 「むっきゅー!ぱちぇはこっちになんていないわよー!」 「でかいって言ってもしょせんゆっくりか。自分から声出して場所を知らせてくれてるよ。」 「ふむ。そうかね。まあ、そこまでして守りたいものなんて大体予想がつくがね。」 「はぁ。(相変わらずわけわかんねえなあ。まああの巨乳の考えてることなんてどうせ理解できねぇけど。)」 そして、ぱちぇは二度とまりさの前に姿を現すことはなかった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ありす。よろしくおねがいし、・・・するんだぜ。」 「大変だったわね、まりさ。これからはこのむれでゆっくりしていってね。」 「「「「「「わかるよー。」」」」」」 まりさはこれ以来『だぜ』まりさとなった。 だぜまりさは飼いゆや町ゆの間ではしばしばゲスの代名詞として敬遠される。 だが本来は、まりさ種の中でも特に活力とたくましさに優れた個体が生まれつき発現する個性である。 まりさは、もっと強く、たくましく、 大切なゆっくりを守れるような大人になりたいと願い、『だぜ』を語尾に付けるようになった。 「みんなもこの、ほぞんのきくきのみさんをあつめたほうがいいんだぜ。 ざっそうさんもいざってときにはたべられるんだぜ。ほして、おふとんにもできるんだぜ。」 「まりさすごいわー。とってもとかいてきね。」 「ばったさんをつかまえるには、いとさんにみじかいきのえださんをつけてそっとひっぱるんだぜ。」 「ばったさんがかってにくっちゅいてきちゃよー。まりしゃおにぇーちゃんしゅごーい。」 老ぱちゅりーはいなくなったが、その教えはまりさの中に生き続けていた。 いつしかまりさは群れの中心となり、彼女の知識と指導によって十分な食料を集めることができた群れは、 ほとんど被害を出すことなく冬を越えることができた。 ありすから長の座を譲り受けたのはそうして、群れの誰もがゆっくりしていた春のある日だった。 「まりさ。これからもむれのみんなをおねがいね。」 「これからは、まりさがむれのみんなをゆっくりさせるのぜ。みんなもゆっくりてつだってほしいのぜ。」 「まりしゃおにぇーしゃんははとっちぇもときゃいはなおさにぇ。」 「「「「「「わかるよー。」」」」」」 「さーて、んじゃ今日の作業始めんぞー!」 「「「ゆゆっ?」」」 「ほい、チェーンソーよこせ。」 「へいへーい。」 「んじゃ離れてろよ。『ギュァァァァアアアアアン』」 元長ありすとちぇんのとてもゆっくりしたおうち、大きな洞を持った大木が見る間に切り倒された。 あまりに突然の出来事、群れの誰一人として何が起きているのか理解できたものはいなかった。 「このでっけえ木さえどかせりゃ後はあっという間よぉ。とっとと切り株引っこ抜くぞぉ!」 「へいへーい。」 その周囲でも次々と木が切り倒されていく。 人間たちが手をつけていないのは、まりさたちが集会をしていた広場だけだった。 そして、元長ありすのおうち、大きな切り株が丸ごと引っこ抜かれたところで、 ようやくまりさたちは事の重大さに気がついた。 「ゆぁぁぁっぁあああああああ!なにやってるのおにーさぁぁああん! こんなのまったくとかいはじゃないわあああああ!!」 「何ってお前、家建てるんだよ、家。」 「そこはありすとちぇんのあいのすなのよぉぉおおおお! かえしてぇぇぇえええ!もとにもどしてぇぇぇええええ!」 元長ありすは、長まりさ、いや、これまで群のだれもが見たこともない取り乱し様だった。 このおうちは、ありすの親の親の親の代から長女に代々受け継がれてきた大切なおうち。 ありすのゆん生の思い出、そして今は亡き夫である、先々代長ちぇんの温もり、ありすのすべてが詰まっていたのである。 ありすは、ぽよん、ぽよん、と、効果などありようもない体当たりを繰り返して抗議していた。 「かえしてぇぇぇえええ。おねがいよぉぉ、かえしてよぉ・・・。」 「おーい新入りぃ。お前ちょっと杭よこせ。」 「へいへーい。」 「かえしてぇ・・・。かえ『ざくり』・・・・・・。」 ありすはなんの躊躇もなく、あっさりと殺された。 「おーい、お前らぁ。作業中止。ゆっくり駆除先にやっちまうぞぉ!」 「「「へいへーい。」」」 そして、建設作業員にとっては通常作業のひとつ、ゆっくりにとっては大虐殺が始められた。 まりさはそのころすでに、群れの縄張りからはるかに離れた民家の裏に逃げ隠れていた。 ありすが人間に大声で抗議を始めた瞬間、老ぱちゅりーの声が餡子の底から蘇ったのだ。 『おうちも宝物も、全てを捨ててでも逃げるのよ。それが生き延びるコツね。』 まりさは民家の裏に縮こまり、地面に顔を突っ伏して震えていた。 「やじゃぁぁぁあああ!やめちぇにぇ、や『ぞぶり』・・・」 春になり一番最初に群れに誕生した赤まりさが死んだ。 「ゆぁぁぁあああああぁぁぁ。いや『ぐさり』・・・」 秋に一緒にバッタを採った、群れ一番の美ありすが死んだ。 「わがらにゃ『ぶさり』・・・」 元長ありすの娘、まりさと並ぶ次代の長候補だったちぇんが死んだ。 どすり・・・ぶすり・・・ずぶり・・・・・・。 「親方ぁ。これどう処分するんすかぁ?」 「まったく今時ぁゴミもそこらにゃ捨てらんねえ。ごみ袋に放り込んで持って帰るんだよ!」 「「「へいへーい」」」 「ぱちゅりーおがあぢゃぁん、どうぢだらいいのぉ。おがあぢゃんならどうぢだのぉ。」 その日の夕暮れ、群れのゆっくりぷれいすには、ゆっくりの気配を感じさせるものは何一つ残されていなかった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 数日後、まりさは小さなビルの並ぶ街中に居た。 群れに居た時から、人間さんと会ったことは一度や二度ではない。 これまで人間たちは、稀にいたずら(あにゃるにストローを差し込んで空気を吹き込む程度)をしてくるくらいで、 あそこまで徹底的な虐殺をおこなったことなどなかった。 では何故? まりさは気づいた。 群れを潰した人間さんは皆同じ服装をしていた。 まりさは、その日から作業服の人間さんがいない場所を探し求め、気がつけば街中にたどりついていた。 「ここのゆっくりたちは皆ゆっくりできてないんだぜ。」 街中では、人間さんたちはゆっくりに手を出しては来なかった。 むしろ汚いものに触れないように、避けて通るくらいである。 狩りの成果を奪われたり、怪我を負わされる危険を感じるのは、むしろ同族のゆっくり達の方に対してであった。 「このおべんとうさんはちぇんのものなんだねー。わかるー!」 「つべこべいってないでれいむにそのごはんをちょうだいね!」 「ふぎゃぉぉおおおおお!」 「ゆがぁぁぁあああああ!」 「はーい、お前たち両方ゴミ箱へGO!」 「「どぼぢ」」ポイポイッ まりさとしては不思議だが、町ゆは植栽の周りに生える野草などは意外と食べない。 まりさとしては競争相手がいない以上ありがたい話ではあったが。 これは、町ゆの多くが元飼いゆっくりであったため、野草を食べ物と認識できなかったことによる。 まりさは、おそらく人間さんのご飯には、周りの草花ではゆっくりできなくなる毒が入っているのだろうと理解していた。 いつ、どれだけ手に入るかわからないご飯を求めてさまよう町ゆ達は皆、死んだような濁った眼をしている。 やはり、人間さんには極力関わらない方が良い。 しかし、れみりゃ達捕食種が出没するような本物の自然の中で育っていないまりさには、本当の山奥で生き延びる自信はなかった。 結局、危険と折り合いをつけてでもここで生きていく道しか残されてはいなかったのだった。 まりさは、雑居ビル2件に挟まれた、人間では通り抜けできない空間を選び、おうちをつくる。 雨さんにも他のゆっくりの攻撃にも負けない頑丈な木箱を商店の裏から、 雨さんを完全に防ぐ青いシートを公園のごみ箱から、 水や食料を保管する鍋、皿、クッション。 ゆっくり達も寝静まる夜、誰にも見られることのないように作業は続けられた。 そして気づく。 かつて老ぱちゅりーに教わった知識は、山で暮らすためのものよりも街中で暮らすためのものがはるかに多かったことに。 おそらくぱちゅりーは、ゆっくりたちの相食み争うこの街中で生きて、 ついに街中で隠れることもできなくなるほど大きくなった末に山へと移り住んだのであろうことに。 「ぱちゅりーおかあさん。おかあさんはどうやってこんなところでゆっくりしたゆっくりになれたんだぜ?」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そしてある日、まりさのゆん生にとって重要な出逢いがやってきた。 いつもどおり太陽が顔を出す前から食糧確保に励んでいたまりさは、 ゴミ捨て場にぞんざいに放り捨てられていた一匹のれいむと出会ったのだった。 あんよは7割方焼きを入れられており、たとえ回復したとしても這い歩くのがやっとであろう。 リボンはたばこを押しつけられて穴だらけ、もみあげは力任せに引きちぎられていた。 まむまむの位置には刃物を刺した跡が無数にあり、舌も半分ほどの長さしか残されていない。 これ以上無いくらいに、ゆっくりしていないれいむだった。 なのに何故あれほど惹きつけられたのだろうか。 ここまで酷い虐待を受けながらも、他の町ゆと異なり、その瞳に理性の輝きを宿していたから? それとも、彼女がおくちからそっと出した、おそらく生まれて間もないであろう一匹の赤まりさを丁寧に介抱する様が、 あの老ぱちゅりーと自分自身の姿に重なったから? 「れいむ。しゃべれるのかだぜ。そっちのまりさもだいじょうぶかだぜ?」 「だぃ・・じょぶ。・・ゆっく・・・ていt・・ね。」 「ゆ・・くち。」 「にんげんさんにやられたんだぜ。よかったらおうちまでおくるんだぜ?」 「も・・なくなtt・・た。に・げんさ・にこわさr・・て」 「そうかだぜ。ならまりさのおうちにくるんだぜ。そのおちびにもかいほうがひつようなんだぜ。」 「れいむの、旦那のまりさや他のおちびちゃんはいないのかだぜ。」 「?」 「辛いこと聞いてすまないのぜ。でも、このおちびちゃん以外は助からなかったのぜ?」 「れいmは、けっこnもすっきりーもしtことないよ?」 「?このおちびちゃんは?」 「ゆっくりできないにんげんさんのところに、おちびちゃnがいっぱいいたの。 すてらrそうになったとき、おくちにひとりだけかくせたんだよ。」 「じ・・・じぶんがしんじゃうかもしれないときに、じぶんのでもないおちびちゃんをたすけようとしたのかだぜ・・・。 よくそんなことができたんだぜ・・・。」 「だって、おちびちゃnはゆっくりできるんだよ?」 「でも、まりさは『おうちも宝物も、全てを捨ててでも逃げるのよ。』って教えられたのぜ? じゃないと生き残れないって言われたのぜ。」 「でも、おちびちゃんは、たからものよrゆっくりできるよ?」 「ゆっ。」 「ゆぁーはははは!!!れいむは凄いのぜ。 まりさなんて目じゃないくらい強いゆっくりなのぜ!! まりさなんて今までずっと逃げて逃げて全部捨ててきたのぜ! ぱちゅりーも、ありすも、ちぇんも、おちびちゃんたちも。 ゆふぅぅうう、ううぅぅぅぅぅうううぅぅぅ・・・」 まりさは笑いながら泣いていた。 これまで自分は、何一つとして守ってこれなかった。 それは、絶対に無理だと思ったから。 自分は死ぬわけにはいかないと思っていたから。 だが、このれいむは、多くの犠牲を払いながらも、ただ一つだけ、 この、だれの子供とも知れない赤まりさだけは守り通すことができたのだった。 そしてぱちゅりーも、おかあさんも全てを犠牲にしながら自分を守り抜いてくれた。 だが自分は・・・ なぜまりさが泣いているのかわからないれいむは、自分の怪我のことも忘れてオロオロしていた。 そして、自分が助けられたという事実すらよくわかっていない赤まりさは、 「おにぇーしゃんはしゅぎょいにょ?」などと首を(?)かしげていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 奇妙な共同生活が始まった。 餡子のつながりもなく、年齢も育ちもバラバラ。 その上一匹は全身ズタボロ。 だが、まりさは、トラウマと街での生活の中ですっかり鋭くなってしまった目つきを、 ボロれいむと赤まりさに対するときだけは少しほころばせるようになっていた。 そして数日が経ったころ、突然破局は訪れた。 「それじゃあ、狩りに行ってくるよ!」 「いってらっしゃい、まりさ。」 「まりしゃおにぇーしゃん、いっちぇらっしゃーい!」 「ゆ!それじゃあおそうじはじめようね!」「ゆっくち!」 まりさは毎早朝、日の出よりずいぶん早くから狩りに出かける。 大抵は植栽の周りに生える、タンポポやシソなどの採集になる。 人間でもしばしば食用とするこれらの野草ならば、 残飯による味覚汚染を受けたれいむでも食べられるのだ。 そして、留守番は動くことができないれいむが引き受けることになっていた。 「ゆーん!きれいになったn「やあ、れいむちゃん。おひさしぶり!」」 ビルの隙間の前には、れいむの体をズタズタにした張本人、虐待お兄さんが立っていた。 「いやー。探したよー。 だってさぁ、れいむちゃんを捨てた後、家に戻ったら赤ちゃんが一匹減ってるんだもん。 あの赤ちゃんさぁ。 ぼくが、ゆっくりプラネタリウムを作ろうと思ってかき集めた大事な大事な赤ちゃんなんだよー。 わし座のアルタイルって知ってる? あれにするつもりだった、きれいな形の赤まりさだったんだよー。 さぁ。出てきてお話ししようねぇ。」 「おきゃーさ「ゆぁああああああああ!!!!」」 れいむは、赤まりさがまだ虐待お兄さんに見つかっていないことを察知して、 赤まりさがしゃべりだす前に口の中に隠したあと、緊急避難用にと掘っていた穴の中に放り込んで、お皿で蓋をした。 「ゆぅぅぅううう!ゆぅぅぅうぅぅうぅうううう!」 「?しゃべれないの?馬鹿なの?まあ、どっちにしても君の体に聞いてみるだけだからいいけどね。」 そういうと、虐待お兄さんはおもむろに取り出したマジックハンドをれいむに向けた。 「ゆふーん。今日も収穫は上々なのぜ!」 れいむと赤まりさの喜ぶ顔を思い浮かべながら帰路についていたまりさは、しかし 甘い夢の終わりを悟った。 おうちのあるビルの隙間の前には、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべた人間さん。 そして、その足元には、 親指ほどの大きさの破片に丁寧に分解された饅頭と、れいむのリボンが置かれていた。 「ふぅ。確かにしゃべってたと思ったんだけど、結局悲鳴ひとつあげなかったなぁ。プライド傷ついちゃったよ。」 逃げなければ。まりさの中枢餡はそう告げていた。 しかし、まりさの中枢餡以外のどこかから命令を受けたあんよは、その人間さんに向かって走り始めていた。 「ゆぅぅううううううう!!!」 「え?あれっ?」 不意を突かれた虐待お兄さんは、ゆっくりに股の間を抜けられるという屈辱を受けた。 そしてまりさは、一切迷うことなく赤まりさが隠された穴へと駆け抜けた。 「ゆっがぁぁぁっぁああああああ!!!」 まりさは止まらない。何故れいむに閉じ込められたか分からず、 ベソをかいていた赤まりさを帽子の中に放り込み、再び人間さんの足元へと駆ける。 「2度も抜けさせるかっ!この糞饅頭がぁ!」 だが、まりさは無謀に突っ込むことなく、 おうちの入口あたりに隠してあった延長コードを虐待お兄さんの足元へと放り投げた。 「えっ?うわっ!」 乱雑に絡み合った延長コードに足を取られて転ぶ虐待お兄さん。 そのわきを、まりさはゆっくりにあるまじき速度で駆け抜けていく。 排水溝の中をくぐり、ビルの隙間を抜けて、公園を横切り、まりさはひたすら駆けて、駆けて、駆け抜けていった。 「なんてこった・・・。ゆっくりに翻弄されるとは・・・。」 まりさが疲れ果ててあんよを止めたとき、町には朝日が射し始めていた。 「ゆぅ。りぇいみゅおにぇーちゃんはどうちたの?」 「れいむおねーちゃんは・・・れいむおかーさんは、まりさを精いっぱい守ったんだよ。」 「ゆぅ?れいみゅおにぇーちゃんはおきゃーしゃんにゃにょ?おっかちいにぇ!」 「おかしくないよ、おかしくなんてないんだよ・・・。」 まりさは、それからしばらくの間、困った顔をしている赤まりさにすーりすーりし続けていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 数日後、まりさの住んでいたビルには、 あの恐ろしい、ありすたちを虐殺したのと同じ、作業服を着た人間さんたちがやって来ていた。 虐待お兄さんが、その財力にものを言わせてビルごとまりさたちのおうちを叩き潰してやろうと動いたのだった。 よほど屈辱的だったのだろう。 「これはゆっくりしていられないんだぜ。おちびちゃん、明日の朝は暗いうちにおひっこしするのぜ。」 「ゆーん。ゆっくりりかいしちゃよ。」 「・・・なかなかひとつの場所でゆっくりさせてはもらえないもんなんだぜ。 まりさにももう少しだけ運があったらよかったのに、苦労をかけるんだぜ。」 「おちょーしゃん。」 「?」 「まりしゃはとっちぇもゆっくちしちぇるよ。 おおきくなっちゃらおきゃーしゃんみたいにつよくて、おとーしゃんみちゃいにやさしいゆっくりになりちゃいよ。」 まりさをまっすぐ見つめる瞳はまるで、かつて老ぱちゅりーと見上げた星の輝き。 ビルの隙間で暮らすようになってから見ることのなくなって久しいその光に、 まりさは多くの大切なものとともに失ったかつての自分自身の姿を確かに感じた。 「さぁ、おちびちゃん。明日は太陽さんが出る前にお引越しをしなきゃならないから、早くすーやすーやしてね。」 「ゆっくちわかったよ。おとーしゃん。」 この世界は、ゆっくりに対してあまりにも厳しい。 この赤まりさも、ただひたすらに純粋であり続けることはおそらくできないだろう。 しかしながら、せめて一度、ただ一度でいいからこの赤まりさを心の底からゆっくりさせてあげたい。 それが報われることのなかった自分達の生涯を救う、唯一つの方法であると信じ、まりさは束の間の眠りにつくのだった。 ゲス度を下げるほど悲劇度は増す。でも爽快感は低下。難しい。 ※ちなみに、anko215.txtの登場ゆっくり達には一通り裏設定が存在しています。 水飲み場のゲス、便所ちぇん、小学校ゆうかりん。誰だって、それぞれの過去や葛藤を持って生きています。 などと色々邪推してみるのもSSの楽しみ方なのでしょうか。 実は「ゆうかりんのご奉仕授業」というタイトルで、小学校ゆうかりんのストーリーも掲載予定だったんだけども、 逃れることを許されない過酷な性的虐待、 校長から連日受ける性奴調教を軸として、 数学教師の緊縛SMプレイ→体育教師の青姦スカトロ浣腸プレイ →高学年生の好奇心に任せた壮絶な輪姦と続き、 全校集会での露出放尿プレイあたりまで受けながらも誇りを失わないゆうかりんは夏を迎える、 などと書いたあたりで、 「これ、ゆ虐じゃないんじゃね?」と思ったのでお蔵入りとしました。ていうかご時世的にやばい。 まあ、そんな背景があったということを念頭において、 彼女の言動を読み直していただけたら幸いです。
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『ほんとうのゆっくり(前編)』 29KB 虐待 自業自得 現代 お久しぶり とある一室に、子ゆっくりから正に成体サイズになったところというぐらいの大きさの ゆっくりが二十匹ほどいた。 「ゆぅ、れいむたち、これからどうなっちゃうのかな」 「だいじょうぶなんだぜ、まりさたち、かいゆっくりになるためのくんれんを受けてきた のぜ、きっとこれからかいゆっくりとしてゆっくりできるんだぜ」 不安そうに言ったれいむに一匹のまりさが自信満々の表情で答える。 「むきゅ、そうよ、今までがんばってこれたんだから、大丈夫!」 それに呼応したのはぱちゅりーだ。 その声に励まされてか、れいむをはじめとする他のゆっくりたちも、互いに大丈夫大丈 夫と言い合って落ち着きを取り戻した。 「はいはい、ゆっくりしていってね!」 一人の青年がやってきた。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 元気な返事に頷くと、青年は持っていた段ボール箱を置いた。 そして、それを開いて中にあったものを次々に取り出して並べる。 興味深そうにそれを眺めるゆっくりたち。 「さて、あと十日したら金バッヂ試験を受けてもらう」 青年が言うと、ゆっくりたちがざわめく。金バッヂこそ、飼いゆっくりという栄光の門 への鍵と皆教え込まれている。 必ずしも人間に飼われるには金バッヂである必要はない。割り切って銀を飼ったり、む しろアホな方が可愛いと銅を飼う人間もいるからだ。 しかし、やはりより飼い主に見初められやすいのは金バッヂである。 このゆっくりたち、既におわかりかもしれぬが飼いゆっくりとして売り出すゆっくりを 育てる施設で産まれ育ったペットゆっくり候補たちであった。 既にここに来るまでに、数多くの姉妹や仲間が飼いゆっくり不適格と見做されて殺処分 されていた。 ゆっくり育成の手法についてはむろんこれが正解というものは無い。だが、このような 純粋に商売目的で大量のゆっくりを躾けるような施設では、失敗に対しては容赦なく死を もって対処するようなところが少なくない。 結局、ゆっくりの性格を矯正するには恐怖がもっとも効率がよい、という結論を人間た ちは導き出してしまっている。 この施設もその例からもれるものではなく。ゆっくりたちは、言葉遣いが悪い、排泄を ちゃんとトイレでしない、口答えをした、などのゆっくりにとっては些細な、と言ってよ い理由でともに育った仲間たちが散々にいたぶり殺されるのを見せ付けられていた。目を そらせば不服従だといって叩かれた。 段ボール箱から取り出したものの中に、小さめのホワイトボードがあった。 青年はそれを壁にかけた。そこには縦線が同じぐらいの間隔を置いて十本書かれていた。 「この棒を、一日ごとに一本消していく。これが全部無くなれば、その次の日が金バッヂ 試験の日だ」 一般的なゆっくりは、三以上の数を認識できない。しかし、それなりに鍛えられたこの ゆっくりたちならば、こうやって視覚的にわかりやすいようにすれば理解できる。 「ゆぅ、まだまだいっぱいだね」 「そうだね、ゆゆぅ、たくさんがたくさんだねー、わかるよー」 「ゆっくりできるね!」 「むきゅ、でもゆだんしちゃ駄目よ。すぐに金バッヂ試験の日が来るわよ」 弛緩するゆっくりたちに、ぱちゅりーが注意を促して引き締める。彼女は、このゆっく りたちの中でも自然にリーダー格のようになっていた。大体一番最初に人間の出す課題な どを理解し、わからぬものに教えたりしていたためである。 「むきゅ、おにいさん、それであと十日、どんなくんれんを受けるの?」 「あー、それは……」 「「「ゆゆゆ」」」 それが何より気になっていたのだろう。 青年が答えようとすると、ゆっくりたちは一斉にその口元を凝視した。 「基本、自由にしていいよ」 どのような地獄の訓練が……と思っていたゆっくりたちが拍子抜けするしかない台詞で あった。 「むきゅ……じゆう、って……好きなことをしてもいいってこと?」 これまで、失敗すれば苦しんで死ぬようなゆん生を強制されそれを生き抜いてきたのだ。 さすがにそのようなことを言われてもにわかに信じられるものではない。 「ああ」 「ゆ! そ、そ、それじゃあ! ゆっくりしてもいいの!」 「ああ、そうしたければね」 「「「ゆわああああああ!」」」 「むきゅぅ……」 歓声が上がる中、ぱちゅりーは難しい顔をしている。 「ただし」 と、青年が言った時、ぱちゅりーはやっぱりという顔になった。いくらなんでも、無条 件でそのようなことが許されるわけがない。 「十日後の金バッヂ試験に落ちた子は、殺処分だ。永遠にゆっくりしてもらう」 永遠にゆっくりする、という言葉に反射的に強張ったものの、それだけが条件ならばそ れほど悪いものとも思えなかった。 なにしろ今までが今までだけに、試験に落ちれば殺されるぐらいのことは無意識のうち に覚悟していたところがある。 「条件はこれだけだよ。ごはんは、今までと同じものを好きなだけ上げるよ」 青年はそう言うと早速ゆっくりフードを持ってきてそれを皿にあけた。 「ゆわわわわ!」 「むーしゃむーしゃするよ!」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「しあわせぇぇぇぇ!」 ゆっくりたちは腹が減っていたこともあり、皿に群がる。しかし、さすがにここまで来 た連中だけあって食べ方自体は丁寧で皿からこぼさないように注意している。 「それとこれ」 と、青年は大きな箱と小さな箱を取り出した。その二つは一本のコードで繋がっている。 壁に、薄型のモニターが張り付いている。青年は大きな箱から小さな箱へと繋がったコ ードとは別のコードをたぐってその先端をモニターの裏側の辺りに差し込んだ。 「試験に備えて、こいつで復習するといい。ほら、ここのボタンを押すと……」 と、青年は小さな箱についた大きなボタンを押した。 「「「ゆゆっ! あれは!」」」 ボタンを押した直後にモニターに映じたものに、ゆっくりたちは一様に心当たりがある ようであった。 それもそのはず、その映像はこれまで散々見せられた金バッヂを取得するための教育ビ デオだった。 「ゆぅ……それをいちにちどのぐらい見ればいいんだぜ?」 一匹のまりさが、上目遣いで探るように青年を見ながら言った。 「好きにすればいいよ。さっき言ったように基本的に自由にしていい。これも、別に復習 しなくてもいいや、って思うなら見ないでもいいよ」 「ゆゆっ!」 思ってもいなかった言葉だったのだろう。まりさは驚いたようだ。 「ああ、それと自由って言っても、他の子に暴力を振るったりしたら駄目だよ。そういう ことする子は、あのまりさみたいにぶるぶるの刑で死んでもらうからね」 その言葉に、ゆっくりたちは一匹残らず震え出した。 以前一匹のまりさがゆっくりできない境遇に耐えかねて青年を殺そうとした。 と、言っても、笑っちまうぐらい実力不足であり、すぐに押さえ込まれた。ころしてや ると喚いていたまりさの殺意が本物であると思った青年は「ぶるぶるの刑」に処した。 これは、ゆっくりを固定した状態で、細い細い針を中枢餡を貫いて刺し、その針を小刻 みに振動させるというものだった。 傷自体は小さいために対象が中枢餡といってもそう簡単には死にはしない。しかし、中 枢餡に絶えず刺激を受け続けるのだから間断なく激痛に苛まれる。 針とそれを振動させる機械も固定してしまえばほったらかしておけばいいだけなので人 間さまの手間もかからぬというわけだ。 結局まりさは苦しんで苦しんで、殺してくれと懇願しても放置されて三日経ってようや く死ぬことができた。 あくまで見せしめのためなのでその程度で済ませたが、虐待目的で行う場合は、一日ご とにオレンジジュース等をぶっかけて治療してやって延々と地獄の責め苦を味あわせるこ ともある。 「さて、それじゃ僕がこの部屋を出た瞬間から、さっき言ったように自由にしていいよ。 時々様子を見に来るけど、本当に十日後の試験まで勉強したくなかったらしなくてもいい んだよ」 「「「ゆっくりりかいしたよ! ゆっくりするよ!」」」 「うんうん、それじゃあね」 青年が部屋から出て行った。 「ゆわぁぁぁぁぁい、ゆっくりするよぉぉぉぉぉ!」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 「むきゅぅ、でも十日後には試験よ、ちゃんと復習もしましょうね」 「ぱちゅりー、それは明日からにして、今日一日だけはゆっくりしようよ!」 「そうだよ!」 「むきゅぅぅぅ、そうねえ」 ゆっくりたちの中では危機感があるぱちゅりーとてゆっくりである。一日だけ完全な休 みをとるのもよいだろうと思った。 皆、思い思いにゆっくりし始めた。 「うん」 その様子は、設置されたカメラを通して別室のモニターに映し出され、それを先ほどの 青年が眺めている。 「まあ、今まで思う存分ゆっくりしたことないんだから、そう思うのも当然かな。問題は、 明日からどうなるか……あのよく出来たぱちゅりーと数匹、ってとこかな?」 翌日、青年がモニターを見ながら呟いた独り言の通りになった。 「むきゅ! それじゃ今日からゆっくりするだけじゃなくて復習もしましょう!」 「ゆん!」 「ゆっくりしてるだけじゃ試験に落ちちゃうからねー、わかるよー」 「頑張ろうね!」 今日からは勉強も頑張ろうと呼びかけるぱちゅりーに十匹ほどのゆっくりが同調した。 「ゆぅ……れいむはもう一日だけゆっくりするよ」 「まりさも……そうしようかな。まだ時間はたくさんたくさんあるし」 「もう一日だけゆっくりしても大丈夫だよ」 残りの二十匹ほどは、昨日味わったゆっくりを今少し楽しみたいという欲求が勝ったよ うであった。 それもそのはずで、むしろぱちゅりーとそれに同調したものたちがゆっくりとしては相 当に自制心が強い方なのだ。 「むきゅぅ、でも、そうやってずるずると勉強しなくなったら、試験の日までにせっかく 覚えたことを忘れてしまうわ」 ぱちゅりーはもっともなことを言うのだが、それを認めつつも、だってまだたくさん時 間はあると言ってやはり二十匹ほどのゆっくりたちは勉強を拒んだ。 「むきゅぅ……」 「やあやあ、おはようさん。ごはんの補充と様子見に来たよ」 そこへ、はかったように青年が現れた。 「ゆゆゆ! ごはん!」 「ゆっくりごはんをちょうだいね!」 「ゆはっ、はらぺこなのぜー」 「ほいほい」 青年は手際よく大皿にゆっくりフードを盛っていく。 「ところで、僕が入ってきた時、なんか話してたみたいだけど、何を話していたのかな?」 「むきゅ」 ぱちゅりーは、先ほどあったことを青年に言った。 今まで、青年はきちんと言うことを聞くものへは優しかったが、その逆のものへはぶる ぶるの刑を筆頭に恐ろしい罰を執行していた。 その教育に厳しい青年ならば、きっと勉強をしないものたちを嗜めてくれるものと思っ ていた。 「ああ、それは昨日言ったように自由にすればいいよ」 しかし、青年は意外にも勉強をしないものを庇った。 いや、正確には別にどちらかに組したわけではない。ただ単純に、昨日散々言って聞か せたことをもう一度言っただけだ。 ここで、ぱちゅりーはようやく青年の言っていたことを理解した。というか、青年が言 っていたことが本当にそのまんまの意味であることを理解した。 「そうだよ! じゆうだよ! れいむたちじゆうなんだよ!」 「ゆっ! それじゃまりさのすきにするのぜ!」 「勉強はまた明日からにするよー、わかってねー」 力を得たゆっくりたちは、ここぞとばかりに言った。ぱちゅりーも、もうそれへあれこ れと言おうとはしなかった。 「ぱちゅりー、今日はまりさたちだけで勉強するんだぜ」 「そうだねー、きっとみんなも明日から勉強するよー」 「むきゅ、そうね」 思い思いにゆっくりする二十匹ほどから離れて、ぱちゅりーたちは壁のモニターの映像 を見て復習を始めた。 「むきゅ」 ぱちゅりーの顔に影がさした。 賢いぱちゅりーは気付いているのだ。一度ゆっくりに浸りきりゆっくりしようと決めた ものたちが容易に勉強というゆっくりできない行為に戻れないであろうことを。 「ゆわああああ、かわいいよー、まりさたちのおちびちゃん、まるでつばさのないえんじ ぇるっ、だよっ!」 翌朝、ボンクラ饅頭が何か喚いていた。 「ゆふふふ、ゆっくりしたおちびちゃん、ゆっくりうまれてね」 そのまりさの前には、頭から茎を生やしたれいむがいる。実っているのは子れいむ一匹、 子まりさ二匹であった。 「ゆわあああ、かわいいぃぃぃぃぃ!」 「おちびちゃんはゆっくりできるよ!」 「ゆはぁぁぁ、癒されるのぜー」 他のものたちは、ゆぅゆぅと誕生を待つおちびちゃんたちの眩いばかりの可愛さにめろ めろになっている。 「むきゅぅ」 「ゆぅ、ぱちゅりー、あれって……」 昨日からぱちゅりーと勉強をはじめていたものたちは、複雑な表情である。 「おちびちゃんなんか作って、いいのかな」 「わ、わからないよー、いいって言うまでおちびちゃんを作ったらいけない、ってお兄さ ん言ってたよね」 「むきゅ……いいはずよ」 「ゆゆ?」 「他の子に暴力を振るわなければ、あとは自由にしていいのだから……あれも、大丈夫な はず」 「ゆ、そ、そうなの!?」 「そ、そうなのかぜ?」 と、言われても相当きつく叩き込まれているので簡単には理解できない。なにしろ言い つけを破って子供を作ったものたちが、子供ももろともに家族ごとミキサーにかけられた のを見ているのだ。 「ういー、おはよー」 青年がやってきた。 「ん?」 ゆっくりフードを皿に盛ると、それに気付いた。 「おー、子供作ったの?」 「ゆん、かわいいでしょ、れいむとまりさのあいのけっしょうだよ!」 「ゆっくりできるよ」 「条件は理解してるよね? 十日……てもう今からだと八日後か……試験を受けてそれに 落ちたら永遠にゆっくりさせる、っていうの」 「「ゆっくりりかいしてるよ!」」 「うん、理解してるならいいや。そいじゃ」 青年は特に何もせずに部屋から出て行った。 「ゆゆゆゆ!?」 「ゆぅ……お兄さん、ぜんぜん怒ってなかった、ね?」 「お、おちびちゃん作ってもいいってこと?」 「そ、そうだよ! だって暴力をしなければ、あとはじゆうにしていいって言われたんだ もん! おちびちゃんを作るのだってじゆうなんだよ!」 一斉に色めき立つゆっくりたち。 ここは、天国だった。 好きなだけゆっくりすることができる。 狩りをしなくてもごはんが手に入り、捕食種などの脅威が無い点で野生や野良を遥かに 上回る境遇なのはもちろん、まったくの放任のため下手な飼いゆっくりなどよりもよほど ゆっくりできる。 それでも、やはりこれまでの徹底的な教育により、ごくごく自然におちびちゃんだけは 駄目なのだろうと思い込んでいた。 しかし、それまでもが自由だというのだから食料に不自由せず、外敵に脅かされぬゆっ くりたちがそれへ走るのは当たり前のことであった。 「「「ゆゆぅ~ん、かわいいよおちびちゃん!」」」 で、翌日には先のまりされいむに加えて新たに九つのカップルが誕生していた。要する に勉強をしていない連中はこれで全て番になって子を作ったということだ。 で、もうそうなると舞い上がってしまって、勉強などしようという気もふっ飛んだらし い。 「ゆ? ぱちゅりーたちはおちびちゃん作らないの?」 我が子の誕生をひとしきり喜んだ後、不思議そうに尋ねた。ぱちゅりーをはじめとする 十匹は全く子作りをしていないのだ。 「むきゅ、ぱちゅたちは勉強に集中したいからおちびちゃんは試験の後にするわ」 「ゆゆ、おちびちゃんゆっくりできるよ!」 「そうだよ。おちびちゃんがいても勉強はできるよ」 一応善意で子作りをすすめてくるものたちに、ぱちゅりーはあれこれと言って受け流し た。 実は昨晩、ぱちゅりーグループというべきものたちの中にも、おちびちゃんを作ろうか というものはいたのである。 だが、ぱちゅりーが、 「むきゅ、ぱちゅはやらないわ。今のところそういう相手がいないっていうのもあるけど ……産まれたばかりのおちびちゃんの世話をしながら勉強なんてできないもの」 と言うと、かなり未練ありげなものもいたが、皆子作りをしないことに決めた。 おちびちゃんの世話がいかに大変かは、飼い主さんの許しなくおちびちゃんを産んでは いけないという躾の理由の一つとして叩き込まれている。 躾のために少々誇張しているところはあったが、おちびちゃんの世話が大変なのは事実 である。とは言っても、ここでは食料は与えられ、天敵や自然の驚異も無いのだから子育 てにかかる手間というのは相当軽減されてはいるが。 「おーおーおーおー、これまた」 青年がやってきて、たわわに実ったクソ饅頭もといつばさのないえんじぇるたちに声を 上げる。 「お兄さん見て見て、れいむたちもおちびちゃんを作ったよ!」 「おちびちゃんにもえいよーがいるからちょっとごはんを増やしてほしいよ!」 「ゆっくりごはんをふやしてね!」 「ほいほい、ごはんは好きなだけ上げるっていう約束だからな、ちょっと待ってろ」 青年は一度部屋から出ると、これまでゆっくりフードを乗せていた大皿と同じ大きさの ものを持ってきた。 「今までの二倍やるよ。それなら足りるだろ」 「ゆゆん、それだけあれば大丈夫だよ!」 「ゆっくりありがとう! おにいさん!」 「ゆふふ、それじゃあたーくさんむーしゃむーしゃしようね! おちびちゃんにえいよー をあげないとね!」 「むーしゃむーしゃするよ!」 しあわせぇぇぇぇぇ、の大合唱を聞きつつ、青年はぱちゅりーグループに目をやった。 「「ゆぅ……」」 中に、ちらちらと子作りをした連中を見ているまりさとれいむがいた。 「……」 青年はすぐに出て行ったが、最後まで視線はそのまりさとれいむに注がれていた。 ホワイトボードの縦線が六本になった。 まだまだゆっくりにとってそれは「たくさん」にしか見えない。厳しい教育を受けたも のたちなので、さすがに最初に比べたらだいぶ減っているということは理解できるが、下 手に理解できるせいで「まだまだ半分もいってないよ!」という感じに思って勉強しない でゆっくりする理由にしてしまっていた。 「……ふむ」 別室で雑務をこなしつつモニターで部屋の様子をうかがっていた青年が言った。 勉強しているぱちゅりーグループの中の、例のまりさとれいむが明らかに勉強に身が入 らないといった感じで、我が子が生まれ落ちる瞬間を心待ちにしている幸せいっぱいのゆ っくりたちをちら見しているのだ。 ぱちゅりーたちは、それを時々注意するのだが、注意された時こそ気を取り直すものの、 やがてまた視線は教育ビデオから逸れてしまう。 「こいつらは……危ないな。せっかくここまでよくやってたのに」 青年は呟いたが、その危惧は早速その晩に現実のものとなった。 「さてと……」 青年は仕事を片付けて、最後にモニターを見て皆寝静まっていると見るや帰ろうとした。 「ゆゆっ! ゆゆっ!」 「れ、れいむぅぅぅぅ」 「ま、まりさ、いいよ、きぼぢいいぃぃぃぃ」 「れ、れいむのまむまむぎちぎちだよぉぉぉぉ!」 「ああ?」 思わず血管浮き立たせるような不快な声が聞こえてきた。 「まただれかすっきりしてんのか……あ」 青年は帰ろうとして立ち上がり、何かに気付いてモニターに再び目を向けた。 カメラを遠隔操作する装置をいじると、部屋の全景を映していたモニターの風景が変わ る。 あのぱちゅりーグループのもの以外は既に子作りをしている。まさかまだ子供が実って いる状態ですっきりはしないだろう。 父親役同士が不倫をしている、というおぞましい可能性も無いでは無いが、さすがにそ れは考えにくい。 そうなると……この声は…… どんなに隠れようとも、監視カメラの前に死角は無い。部屋の隅で盛っているまりさと れいむを、カメラは発見した。 「やっぱり」 そして、それは青年が思っていた通り、ちらちらと子作りしたものたちを見ていたぱち ゅりーグループのまりさとれいむであった。 このところ、子作りした連中はしきりにぱちゅりーグループに可愛いおちびちゃんを自 慢した後、ぱちゅりーたちもおちびちゃん作ればいいのに、と言っていた。 それが重なり、元々子作りに強い誘惑を感じていたあの二匹が陥落したのだろう。 「……まあ、自由だ」 「むきゅぅ」 「ゆぅぅぅ、れいむ、まりさぁ」 「わからないよー、わからないよー」 「「ゆゆぅ……」 翌日、れいむ種とまりさ種をそれぞれ二匹、計四匹の子供を実らせたれいむと、まりさ を前にぱちゅりーたちは、あるものは残念そうな顔で唸り、あるものはなじるように名前 を呼び、わからないと連呼していた。 まりさとれいむも、ぱちゅりーの言っていたことを理解していなかったわけではない。 自制心を上回る誘惑に耐え切れなかっただけである。 それなので、大きな喜びの中に、一抹の不安も覚えていて、それが冴えぬ表情に現われ ていた。 「ゆゆっ、まりさとれいむ、おちびちゃん作ったんだね!」 「ゆわーい、おちびちゃんかわいいねえええええ!」 「こっちに来ていっしょにおうたをうたおうよ!」 「ゆん、たいっきょうは大切なのぜ、今からゆっくりできるおうたを聴かせればゆっくり したおちびちゃんになるのぜ」 子作りをしていたゆっくりたちは、それを見つけると大喜びで近づいてきた。 「ゆぅ、それじゃぱちゅりー、れいむたちは……」 「ゆん……」 二匹は、そう言ってぱちゅりーたちから離れていった。 別に子供を作ったからといって一緒に勉強してはいけないということもないはずだが、 そこは子作りをしないで勉強を頑張ろう、と団結しているぱちゅりーたちの中にいること への居心地の悪さもあった。 同じく子供を宿したものたちと、おちびちゃんゆっくりうまれてね、と言っている方が 居心地は遥かにいいだろう。 ホワイトボードの縦線が五本になったその日、最初に子作りをした二匹の子供が産まれ た。 「「「ゆっきゅちちていっちぇね!」」」 「ゆわわわわ!」 「かわいいよぉぉぉぉぉぉぉ!」 「えんじぇるっ! えんじぇるだよぉぉぉぉ!」 「おかあしゃん、すーりすーりしてにぇ」 「まりしゃもまりしゃも!」 「おとうしゃん、だーいちゅき!」 「「ゆゆぅぅぅん、おちびちゃんはゆっくりできるよぉぉぉ!」」 早速ゆっくりぶりを披露する一家に、他のものたちも色めき立った。 「ゆゆゆゆ! れいむのおちびちゃんもはやくうまれてね! いっしょにゆっくりしよう ね!」 「ゆふふふ、ありすもおちびちゃんとすーりすーりするのたのしみだわぁ」 「ゆっくり! ゆっくり! ゆっくりうまれてね~♪」 そして、縦線が四本になった日、遅れて子作りした九組の子供たちも産まれ、部屋は一 気に賑やかになった。 「うお! 第二陣も産まれたか」 部屋に来た青年が、うぞうぞと蠢くクソえんじぇるどもに驚いて声を上げた程である。 「お兄さん」 「ん? どした?」 青年が部屋を出ようとすると、ぱちゅりーが声をかけてきた。 「あれだけおちびちゃんがいると、ちょっとうるさいのよ。といっても、おちびちゃんが 少し騒がしいのは当然だし、それにそれも自由だし」 「ん、そうだな」 「でも、さすがにちょっと勉強の邪魔なのよ。なんとかならないかしら?」 「んー……おお、ちょっと待ってろ」 青年は何か思い当たったのか、一度部屋から出て行った。 ぱちゅりーたちは青年が置いて行ったごはんを食べて待つことにした。 「ゆゆ……」 「ぱ、ぱちゅりー……」 「なんだか、みんなの目が……」 「むきゅぅ……」 ぱちゅりーグループのものたちがなんとなく気分がよくないといった感じで言った。 それというのも、子作りをしたものたちが自分たちを見る目がなんだかゆっくりできな いのだ。 何か言ってくるわけではないし、こちらと目が合えば慌てて逸らすのだが、見下ろして いるようにしか見えなかった。 これはゆっくりしているものが偉い、というゆっくりの性質上仕方がないことと言えた。 別に禁じられているわけでもないおちびちゃんを作るという、とてもゆっくりできる行 為を頑なに拒むぱちゅりーたちは、凄く愚かな連中だと思われているのだ。 「ごはんを好きなだけむーしゃむーしゃして、おちびちゃんとゆっくりして……これがほ んっとうのゆっくりなんだね!」 一匹のれいむが感極まったように叫んだ。 それに同意する声がそこかしこから上がる。 この素晴らしい時に比べれば、自分たちが産まれてからの一時期はまったくゆっくりで きない時間だった。あんなものはゆん生とは言えない。 これこそが、これこそがほんとうのゆっくりなのだ! とおちびちゃんに囲まれたゆっ くりたちは歓喜の声を上げた。 別にぱちゅりーたちに聞かせているわけではないのだが、なんでこのほんとうのゆっく りを拒むのか、と皮肉を言われているようにも見える。 「うーし、おまたせー」 青年が台車を押してやってきた。 「もうちょい待てな」 青年は台車に乗った箱を開き、透明の板のようなものを取り出した。 それを組み立てると、大きな透明の箱が出来上がった。 「ほら、ここが入り口。鍵はここをこうやって閉める」 「むきゅ、わかったわ」 ぱちゅりーが中に入って扉を閉める。 何か口をパクパクさせてから出てきた。 「なに言ってたか聞こえた?」 「ゆ? ぱちゅりー、何か言ってたの?」 「ぜんぜん聞こえなかったよー」 「むきゅ、これなら大丈夫ね! お兄さんありがとう!」 「おう、どういたしまして」 他のゆっくりたちも興味深そうに見ていたが、中で勉強するためのものだ、と言うと興 味を失ったようだった。 それよりも、産まれたばかりのおちびちゃんたちと楽しくゆっくりする方が遥かに重要 だからだ。 翌日、例の元ぱりゅりーグループのまりさとれいむの子供たちも誕生の時を迎えた。 「ゆわわわわ、かわいいよぉぉぉぉぉ!」 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」 その愛らしさに全てがふっ飛んだ。 ゆっくりにとっておちびちゃんというのは、それほどの威力がある。 飼いゆっくりが子供を産んだ途端に飼い主を無視して子供にかかりきりになり、それを 許していたら仕舞いには飼い主を自分たちの世話をする召使のように扱うようになったと いうトラブルも頻出しているぐらいだ。 だからこそ、飼いゆっくりになるには勝手に子供を作るべきではないと認識しているこ とが必須条件にされているのである。 「ゆゆーん、おかあさんとすーりすーりしようね!」 「おとうさんのおぼうしに乗せてあげるよ!」 「ゆわーい、ゆっくち!」 「ゆっくちたのちいにぇ!」 幸せ一杯の家族たち。 それを尻目にするかのように、透明の箱の中ではぱちゅりーたちが勉強に励んでいる。 「うん、そろそろ試験の日が近づいてきたなー」 「「「ゆ!?」」」 お兄さんが、ホワイトボードの縦線を消した瞬間、部屋にいたゆっくりたちに一種異様 な空気が流れた。 残る縦線は三本。 これは試験前の時間が三日であることを示している。 そして、三というのはゆっくりが無理なく認識できる数字である。 既述のごとく、ここのゆっくりたちはある程度は教育を受けているので、それ以上の数 も視覚的には理解できる。 しかし、危機感などはおちびちゃんとの幸せなゆっくりによって抱きようがなかった。 それでも、残り三日、というのはリアルに「いよいよ試験も近い」と思わせる数字であ った。 「ゆ、ゆゆん、そ、そろそろ勉強しようか」 「そ、そうだね」 「ま、まあ、まりさたちなら三日勉強すれば大丈夫なのぜ」 「ん、なんだみんな勉強すんのか?」 青年はそう言うと、大きな箱と小さな箱とモニターを二組ほど持ってきた。 「最初からあるのはぱちゅりーたちが使ってるから、さすがにみんなで一斉にやったら見 にくい奴も出るだろうからな」 手際よくそれらを設置して、青年は部屋を出て行った。 「ゆがあああああああああ! やってられるかあああああああ!」 一匹のれいむ……好きなだけごはんを食べられるのですっかり太ってでいぶと化してい た……が叫んだ。 「こ、こんなの! こんなゆっくりできないごと! ふざけるなあああああ!」 教育ビデオとは、つまるところ「ゆっくりできないこと」を我慢しましょう、という内 容である。 これに「ほんとうのゆっくり」に浸りきっていたものが耐えられるはずは無いのだ。 他のものたちも、でいぶに同感の声を上げる。せっかくほんとうのゆっくりを手に入れ たのに、なんでこんなことをしなければいけないのか。 それでも、バッヂ試験に合格するためだ、と言う意見もあったが、そんなものは「ほん とうのゆっくり」の前には無力であった。 一匹減り、二匹減り、遂には元ぱちゅりーグループだったまりさとれいむだけになった。 だが、その二匹にも、絶えず誘惑が降りかかる。 勉強する間、子供たちは親と遊べなくて不満であったが、それを我慢するように言い聞 かせていた、 しかし、他のゆっくりたちがこれ見よがしに親子団欒を見せ付けるものだから、我慢し ようとした子供たちも、やがて癇癪を起こしてしまった。 宥めても聞かない子供たちにほとほと困り果てたところに、あの真っ先に叫び散らした でいぶがやってきた。 「二人とも、そんなゆっくりできないことを、おちびちゃんたちをゆっくりさせないでま ですることはないよ」 「ゆ、でも……」 「試験が……」 「試験ってなに? にんげんさんが勝手に作ったにんげんさんの勝手な基準でゆっくりを 分けることでしょ」 「「ゆぅ……」」 でいぶの言葉は一面の真実をついていた。 「そんなものに受かるのがなんなの? そのためにゆっくりできないことをして、おちび ちゃんたちもゆっくりできなくするの? そんなの間違ってるよ」 「「……」」 「……あのほんとうのゆっくりを知ってしまった以上、れいむたちはもうあんなゆっくり できないことはできないよ」 でいぶは、迷い無く言い切った。 その迷いの無さは、ある種の力強さを感じさせる。 「だから、そんなこと止めてゆっくりしよう。ほんとうのゆっくりを」 「「ゆゆゆ……」」 「ゆっくちちようよ!」 「ゆっくち! おかあしゃん、おとうしゃん!」 「いっちょにゆっくちちたいよ!」 揺れ動いた心へ、子供たちが駄目押しをした。 「ゆん……わかったよ」 「おちびちゃんたち……いっしょにゆっくりしようね!」 「「「ゆっくちちようにぇ!」」」 「さあ、みんな、ほんとうのゆっくりを!」 「「「ほんとうのゆっくりを!」」」」 幸せそのものな歓声が上がる。 そして、それに敢然と背を向けるように、今日も透明の箱ではぱちゅりーたちの勉強が 続いていた。 「ほい、ごはんだ、たっぷり食えよ」 大皿にごはんが盛り付けられると、ゆっくりたちは目を輝かせた。 「うん、あと二日か」 しかし、青年がホワイトボードの縦線を消し、残りが二本になってしまうとゆっくりた ちはなんともゆっくりできない表情をした。 これは、ぱちゅりーたちも例外ではないが、こちらは緊張によるものである。 「さあ、みんな、勉強するわよ!」 「ゆっ、がんばるのぜ」 「もう少しで試験だねー、なんかいけそうな気がするよー」 「これもぱちゅりーのおかげだよ」 緊張はしつつも、意気揚々と箱の中へ入っていくぱちゅりーたち。 「ゆぅ……」 「勉強……する?」 「ゆ、でも……」 一方それ以外のものたち。少しは焦ったか、勉強しようかというものもいたが、子供た ちがそんなことしないで一緒に遊んで欲しい、と言うとその連中も折れてしまった。 勉強をゆっくりできないことと認識している彼らは、子供への躾もそれに類するものと 思ってしまっており、またごはんはいくらでも青年がくれるために、全く躾をしていなか った。 当然、子供たちは近くある試験というのがどれほど重要なものかは理解していない。 それならば、そんなどうでもいいものへの準備である勉強などするよりも、自分たちと 遊んでゆっくりして欲しいというのが当たり前だろう。 「勉強なんかすることないよ! ほんとうのゆっくりにそんなものはいらないよ!」 でいぶが言うと、皆それに賛同する。 少し狂的な感じすらする熱狂的な賛同だった。 心の底では、わかっているのだ。このほんとうのゆっくりの先に何があるのか。 だからこそ、皆でほんとうのゆっくりというお題目を唱えてゆっくりすることで、それ を忘れようとしているのだ。 ……しかし、それには邪魔な存在があった。 言うまでもない、透明な箱によって素晴らしいほんとうのゆっくりの歓喜の声を遮って 勉強に励むぱちゅりーたちだ。 「ぱちゅりー! ぱちゅりー!」 その声は聞こえなかったが、どんどんと壁を叩く振動でそれに気付いた。 後ろにゆっくりたちを従えたでいぶだ。 「どうしたの? れいむ」 「ぱちゅりー、それに他のみんなも、そんなゆっくりできないことは止めなよ」 「むきゅ?」 「そうだよ! そんなことやめなよ!」 「いっしょにゆっくりしようよ!」 「ほんとうのゆっくりを!」 「「「ほんとうのゆっくりを!」」」 「むきゅ、なんなのよ……」 「ぱちゅりー、れいむたちとてもゆっくりしてるよ。ごはんを好きなだけむーしゃむーし ゃして、おちびちゃんに囲まれて……これがほんとうのゆっくりだよ! 産まれてからこ こに来るまでの生活は……あんなのはゆっくりじゃないよ! 生きているとは言えないよ! 」 「それはよかったわね。でも、ぱちゅたちは試験に受かってからゆっくりするから」 「それも、ほんとうのゆっくりじゃないよ!」 「むきゅ?」 「試験に受かってバッヂをもらって、それでにんげんさんに飼われたとしても……そのに んげんさんがごはんを好きなだけくれないかもしれないよ? おちびちゃんも、作ったら 駄目だって言うかもしれないよ?」 「むきゅ……まあ、それはそうね」 「そうでしょ! そうでしょぉぉぉぉぉ! だから、そんなことしないで、今! 今をゆ っくりするべきなんだよぉぉぉぉ!」 ぱちゅりーが自分の言うことを肯定したと見るや、でいぶは勢い込んで言った。 「でも、ぱちゅは勉強するわ。金バッヂ試験に受かるかどうか、自分を試してみたい気持 ちもあるし……みんなは?」 「ゆ!? ゆぅ……まりさは、最後まで頑張ってみるのぜ」 「ここまで頑張ったからには最後までやってみたいよねー」 「そうだよね」 「な、なにを言ってるのぉ! ほんとうのゆっくりを! ほんとうのゆっくりを味わいた くないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 「むきゅ、別にいいわ」 「ゆ……ゆ……ゆがああああああああああ! この! この馬鹿どもぉぉぉぉ! なんで っ! なんででいぶだぢがこんなに、こんなに親切で言っでやっでるのに言うどおりにじ ないんだぁぁぁぁぁ!」 「む、むきゅ!」 でいぶが激昂したのに驚いてぱちゅりーは慌てて扉を閉じて鍵をかける。 「あげろぉぉぉぉぉぉ!」 「出てこぉぉぉぉい!」 「ゆっぐり! ゆっぐりじろぉぉぉぉ!」 「ほんどうのゆっぐりが、なんでっ! なんでわがらないぃぃぃぃぃ!」 でいぶにあてられたのか、他のものたちもいきり立って叫びながら壁に体当たりする。 「おらおら、何やってんだてめえら」 そこへ青年がやってきた。 「うるざぁぁぁい、邪魔ずるなあああああああ! ゆべ!」 叫んだでいぶに、青年が容赦なく爪先を叩き込む。 「誰に口きいてんだボケ! 何やってんだって聞いてんだ! まさかこいつらに暴力振る ったんじゃないだろーな!」 「ゆ、そ、それは……」 「暴力振るったらぶるぶるの刑……それはわかってるよな?」 「「「ゆひぃぃぃ、ち、違いまずぅぅぅぅぅ!」」」 ぶるぶるの刑と聞いた途端に、ゆっくりたちは震え上がってしまう。 「おい、ぱちゅりー、本当か?」 「むきゅ、そ、それは本当よ。でも、みんなが勉強なんて止めろ、って言うのよ。箱に体 当たりも」 「あ? ぱちゅりーたちは好きで勉強してんだろうが、つまりはそれがぱちゅりーたちの 自由だ。お前ら、それを邪魔しようとしたわけ? 暴力振るってないって言ってもさ、そ ういうことなら箱への体当たりを暴力と見做してぶるぶるの刑にしてやってもいいんだぞ、 ん?」 「「「ゆぴぃぃぃ、ぶ、ぶるぶるはゆっぐりでぎないぃぃぃぃ!」」」 「だったらさっさと散れ! 他の奴の自由を邪魔すんな!」 青年がそう言って蹴る真似をすると、ゆっくりたちは一目散に離れていった。 続く