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その頃、四人のターバンどもで編成された聖帝軍先遣隊はシマウマの集団と戦闘をしていた。 本来なら交渉のためにリニアカーに乗って都庁へ向かう予定の彼らだったが、魔窟と化した関東から関西へ避難していた難民の一団を襲っていたシマウマたちを見て、いてもたってもいられずリニアを降りて交戦することにしたのだ。 『ソイヤッ! パインスカッシュ!!』 そして、今、戦いに終止符が打たれる。 頭にターバンをつけた葛葉紘太もとい仮面ライダー鎧夢の持つ、唯一のライダーキック。 パインアームズのアイアンブレイカーが、シマウマのリーダー格であるぴんころ地蔵尊に直撃した。 (ま、待ってくれ! 私には世界のためにやらなければならないことが……) 「殺し合いに乗ってない難民を襲う奴ら、絶対に許さねぇ!!」 実のところ、シマウマ達は好きで難民を襲っていたわけではなく、たまたま進路上に難民がいたために轢き殺してしまったのである。 全ては大阪で行われている拳王連合軍とホワイトベース組による二つの対主催組織による戦争を止めて、矛先を悪の力であるテラカオスに向けさせて滅ぼさせるため、世界のためである。 ……しかしだ。 彼らは先を急ぎすぎるあまり、難民の集団を迂回する選択を取らずにそのまま直進する道を選んでしまった。 結果、多くの難民をひき殺す結果となってしまい、その行いがターバンどもの怒りを買ったのである。 ついでにこの頃には拳王連合軍は半壊、ホワイトベース組は壊滅、テラカオスはとっくに大阪に到着済みである。 彼らはあまりにも遅すぎたのだ。 世界を救いたい大義名分は結構だったが、そのために彼らはあまりにも無駄な犠牲を出しすぎた。 多大な犠牲を他人に払わせながら成果を出せない者達は、五大幹部の開いたカオスロワやテラカオスのような必要悪ですらなく、単なる害悪だった。 その害悪の長であるぴんころ地蔵尊はツケを支払うように、しめやかに爆発四散した。 【ぴんころ地蔵尊@長野県 死亡確認】 死因:紘太のアイアンブレイカーで玉砕 ぴんころ地蔵尊を討ち取って間もなく、頭にターバンを巻いたクロコダインが現れる。 「紘太、そっちは終わったようだな」 「クロコダイン、みんなは無事か?」 「ああ、多少の手傷は受けたがごく軽傷だ。 シマウマ共は全滅、チルノもふなっしーも無事だ」 「そうか」 戦闘が終わるとわかると紘太は変身を解いた。 【ワンリー@かわいそうなぞう 死亡確認】 死因:ふなっしーの梨汁で滑って頭を打って死んだ 【ユキちゃん@アルプスの少女ハイジ 死亡確認】 死因:チルノのアイシクルフォールで凍死 【巨大カマキリ(緑)@ネクロネシア 死亡確認】 死因:クロコダインの獣王激烈掌で粉砕 【その他大勢の野生動物@いろいろ】 死因:聖帝軍先遣隊の総攻撃で全滅 ※モブ扱いのため、キルスコアは入りません 「難民たちは……?」 「……そちらはダメだった。 生存者はたったの一人、いや一匹のぬいぐるみのような生き物だけだ。 首輪が付いてないところからして参加者ではなく支給品だろう」 「クソッ、俺たちがもう少し早くついていれば!」 難民とシマウマの死体が無造作に転がる戦場で紘太は怒りに打ち震える。 彼とクロコダインの目線の先では、ターバンを巻いた梨と氷の妖精二人と女の子を模したぬいぐるみのような小さな生き物がいた。 妖精はふなっしーとチルノ、ぬいぐるみのような生き物は魔女シャルロッテである。 シャルロッテは悲しげな目で物言わぬ肉塊となった少年少女と、小さな謎の物体を見た。 それはシャルロッテの持ち主だった、ジュンと絵里の死体と、キルステンの成れの果ての姿であるグリーフシードだった。 彼女たちは化物がひしめき合う関東から関西方面に向けて、殺し合いに乗っていない他の多くの難民たちと共に脱出したが、運悪くシマウマと鉢合わせしてしまったのだ。 戦える者は応戦したが、結局シャルロッテを除いた全員が轢き殺されてしまった。 カオスロワの間だけの短い間ではあったが、シャルロッテにとって三人の友の死は大好物のチーズを食べられない以上に悲しいものであった。 【桜田ジュン@ローゼンメイデン 死亡確認】 【水谷絵理@アイドルマスター ディアリースターズ 死亡確認】 死因:ぴんころ地蔵尊に轢き殺される ※H.N.エリー(キルステン)は消滅し、グリーフシードになりました 【アニマル浜口@野生動物 死亡確認】 死因:シャルロッテに食われた 「仇はあたいらが全部うちとったけど、それで失った人がもどってくるわけじゃないのは悲しいね……」 「この子を一人ぼっちにするのはかわいそうなっしー…… 紘太、この子は殺し合いに乗ってなさそうだし、連れて行っていいなしか?」 「ああ、シャルロッテ…だったか? おまえが望むんだったらついてきてもいいが、どうする?」 このままシャルロッテを一人にさせるのは不憫だと思った四人は彼女を聖帝軍に誘った。 シャルロッテもコクコクと頷き、ふなっしーの頭に乗って彼らについていくことにした。 こうして聖帝軍に新たな仲間が加わった。 「難民たちを埋葬してやりたいが……流石にこの数を埋めてやれる時間はないな」 「こればっかりは仕方がない。それに我々にはどうしてもやるべきことがある」 死んでしまった者達を悼む暇なく、骸を野ざらしにしておかなけらばならない理由が四人にはあった。 一大勢力である都庁の魔物たちと交渉し、味方にする必要があったのだ。 さすれば聖帝軍はバックアップにより多大な力を得て、DMC狂信者とも渡り合える戦力を得られる。 さらに救済の予言の謎解きも進み、完遂も容易になるだろう。 逆に機械文明を嫌う彼らに敵と見なされ聖帝軍の移動拠点であるきらりん☆ロボを攻撃される恐れがある。 早急に接触し交渉を成功させる必要があった。 そのためには先遣隊である彼らが都庁へ向かう必要があるのだが…… 「ここどこなっしー?」 「この山々に囲まれた景色からして東京じゃないのは間違いなさそうだが……」 現在地:長野県 彼らはチルノのチンプンカンプンな運転の結果、東京に近づくどころか関東から離れていた! 「絶対にここ東京じゃねーよ! もうチルノにゃ運転手は任せておけねえ! 俺が運転手をやる!」 「ええー?!」 というわけでリニアモーターカーごっこの運転手はチルノから紘太に交代した。残当。 「しかし、さっきの放送……貴虎が死んじまうなんてな。 ミッチーにどんな顔すりゃいいんだよ……」 「気を落とすな、おまえのせいではない。 しかし、どうやって死んだかはわからんが、都庁の魔物と争って死んだとなると面倒なことになるぞ」 先の放送で仲間であった貴虎の死を知って気が沈みこむ紘太。 更に貴虎は自身の誤解から狂信者と手を組み、都庁同盟軍に深い傷跡を残した。 先遣隊はその事までは把握していないが、貴虎がネットでの宣告通りに動いていれば都庁に攻め入ったことは容易に想像できる。 これが都庁との交渉に大きな歪みを生んでいないことをクロコダインは祈る。 「とゆーか、てっきりダース・ベイダーが放送に出てくると思ったら安倍さんが出てきたなっしー?」 「どうゆうこと? てゆーか、「ばーだっく」も死んでいるみたいだし」 野田総理が死んで以降は、放送はダース・ベイダーが担っていたハズだがなぜか新総理を自称する安倍に変わっていた。 そして第二回放送でデモンストレーションで行い、参加者に圧倒的破壊力を見せつけたバーダックの死が放送で流れた。 これはどういうことか? 超人血盟軍や安倍の主催乗っ取りの件を知らない先遣隊だが、知らないなら知らないなりにクロコダインは考察する。 「安倍やバーダックの件について、オレなりの考えで確証はないが考えられることがある」 「なんだ? 言ってみてくれ」 「放送がダース・ベイダーから安倍に変わっている理由……ダース・ベイダーがなんらかの事情で放送に出られなくなったとする。 それだけの事情として、主催の拠点である九州ロボに参加者からの攻撃もしくは主催同士の内乱でもあったのではないか?」 「「「!」」」 「?、?、?」 チルノ以外の三人は考察の意図を理解した。 「攻撃や内乱が起きて、その過程でバーダックが戦死した。だから放送で呼ばれたのか?」 「ダース・ベイダーは怪我でもしたから放送を安倍さんに交代したなっしかねー?」 「もしくは安倍もしくは別の誰かが主催を乗っ取って、ダース・ベイダーをつまみ出した可能性もある。 情報がない我々にはなんとも言えんが、そんなところだろう」 「……」コクコク 「ええと、つまり、その、うん、あべそうりが悪い!」 クロコダインの考察は概ね的を得ていたと言える。 実際に九州ロボは攻撃と内乱にあい、ダース・ベイダーらは九州ロボを脱出せざる負えず、放送どころではなくなった。 そこを安倍が乗っ取ったのである。 「なんにせよバーダックがいなくなったのは助かるぜ」 「聖帝軍の誰もあいつに勝てそうなのいなかったなしからね」 「バーダックさえいなくなれば、あたいったらさいきょーね!」 圧倒的戦闘力を持つバーダックがいなくなったのは、拳王連合軍に所属するお騒がせマーダー(勘違い)マッドサイエンティスト祐一郎が死んだことと同じくらい、先遣隊には吉報のように聞こえた。 「それは違うぞ、みんな」 だがその喜びはクロコダインの言葉によって打ち砕かれる。 「どういうことなっしー?」 「考えてもみろ。 おそらく主催の大戦力であるバーダックの名前をわざわざ放送に流すか? 主催陣が対主催と真っ向から勝負がしたい酔狂な武人だったら話も変わってくるが、普通は放送で流さない。 流せばバーダックが欠けた分、戦力を失ったと見て対主催たちが九州ロボに攻め込んでくる可能性があるからだ」 「それはつまり……」 「どういうこと? ねえ、どういうこと?」 「チルノはちょっと黙ってくれねえかな?」 主催でも大戦力であったバーダックの名前を放送で流した理由とは? 「バーダックと同じかそれ以上の実力者が主催陣にはまだいる。 クロコダインはそう言いたいんだな?」 「ああ、だから放送でバーダックの名前を流した。あれは主催陣の強気の顕れではないかと思う」 「ひいいいいいい、あんな日本を一撃で消滅させられそうな奴がまだいるなんて怖気がするなっしーーー!」 考察を理解していないチルノを除いた全員が冷や汗をかいた。 バーダック以上の実力者がいた場合、聖帝軍の力を総結集させても勝てるかどうか怪しいからだ。 実際、この考察についても安倍はテラカオス化しており、同じ頃には四条化細胞を取り込んで大幅パワーアップしている。 攻撃力以外は既にバーダックを超えてると言っても過言ではない。 「ならば一層急がねならんな」 「ああ、余計な邪魔が入る前にすぐに都庁に向かうぞ!」 「幽香も霊夢もしんでるし、もたもたしてられないね!」 これから主催やマーダーに妨害される可能性は決してゼロではない。 その前に早く一秒でも早く都庁にたどり着く必要があった。 寄り道した結果、シャルロッテを救えた点を除けば先遣隊は大幅なロスタイムをしてしまった。 すぐにでも都庁へ行かなくてはならない。 ちなみにチルノは幽香が主催陣営だとは知らず、霊夢の名前が前の放送で一回流れていたことはすっかり忘れている。 「とりあえず来た道を戻れば埼玉県には戻れるそこから東京に進路を修正すれば都庁にはたどり着けるか。 時速300キロもあれば一時間以内にはつく……バイクが命の仮面ライダーの腕の見せどころだな」 「さっそく出発進行なっしー!」 運転手を紘太に変え、チルノ、ふなっしー、クロコダイン、シャルロッテを乗せたリニアモーターごっこが出発する。 進路は関東方面である東側……の逆方向である西側へ! なんと聖帝リニアは、前面方向ではなく後ろへ逆走し始めた! 「ちょっと待て紘太! 遊んでいるのか?!」 「なんで逆走するなっしー!?」 「ばかなの? しぬの?」 逆走するリニアに対し、運転手である紘太に非難が集中する。 「チルノ! おまえにだけはバカと言われたくねー! ……じゃなかった! 逆走してるのは俺のせいじゃねーよ!」 「なに?」 「このひみつ道具が操作を受け付けないんだ! 前身はおろか右や左にも曲がらねえ! それどころかブレーキもできないぞ!」 「「「なん……だと……?!」」」」 紘太の言葉に全員がショックを受けた。(こればかりはチルノも理解した) 実は先ほどのシマウマたちとの戦闘のゴタゴタの中でリニアモーターごっこはシマウマに衝突され、故障してしまったのである。 もはや聖帝リニアは逆走しかできず、ブレーキもできない暴走リニアと化したのだ。 「このままだとアタイらは「とちょー」にたどりつけないじゃない!」 「それどころか、このままだと関西方面に行くことになるぞ……」 「そりゃまずいなっしー! 特に大阪はマーダー集団の拳王連合軍がいて食人鬼の風鳴翼もそっちに向かっている話なっしー! そうでなくとも禁止エリアが……ああもう、このリニア誰か止めてなっしー!!」 (すまん、加賀美、サウザー……オレたちは都庁への交渉はもうできそうにない……許せ) 聖帝リニアは止まることなく、関西方面へと向かっていく……先遣隊の運命やいかに!? 【二日目・11 30/長野県】 【聖帝軍先遣隊】 【ターバンのガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】 【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒り、超不安、聖帝リニア運転手 【装備】戦極ドライバー、ロックシード(オレンジ)、ターバン、リニアモーターカーごっこ@ドラえもん(故障) 【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ) カチドキロックシード 【思考】 基本:殺し合いを止める 0:誰かリニアを止めてくれー! 1:DMC狂信者達、もう絶対許さねえ!! 2:救済の予言の謎を解く 3:貴虎…… 4:ダースベイダーも安倍総理も、絶対に許さねぇ!! 【ターバンのガキ(チルノ)@東方project】 【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、やる気十分 【装備】アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン 【道具】支給品一式、ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW 【思考】 基本:『だーすべいだー』を倒す 0:やっぱりあたいが運転手やればよかった? 1:『とうきょうとちょー』に向かうよー! 2:みんなで予言を解いて世界を救うよ! 3:せーてーは頼りないからさいきょーのあたいが皆を引っ張る 【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】 【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、超不安なっしー!、聖帝リニア車掌 【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン、シャルロッテ@魔法少女まどか☆マギカ 【道具】支給品一式、グリーフシード 【思考】 基本:殺し合いを止めるなっしー! 0:誰か助けてなっしー! 1:DMC狂信者達を成敗するなっしー! 2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー! 3:本当に都庁につけるか不安なっしー! 4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー! 5:新しい友達としてシャルロッテは守りたい 【ターバンのおっさん(獣王クロコダイン)@DRAGON QUEST ダイの大冒険】 【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒りと悲しみ 【装備】獣王の鎧、グレイトアックス、ターバン、聖帝軍の旗 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 基本:殺し合いを止める 0:これもう、都庁にたどり着くのは無理だろ 1:聖帝軍と協力し、DMC狂信者の軍勢を倒す、そのために都庁の魔物を説得する 2:世界救済の予言の謎を解く 3:都庁への到着については諦めモード ※聖帝リニアが故障しました、現在関西方面に向けて逆走しています
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都会では待機児童が減らないとか 保育所入所待ちが50人以上いるのが、全国101市区町村だそうです うちの方では全然待機児童なんていないよ だって田舎だもん ( . ) 0~2歳が多いとか、3歳以上は幼稚園という選択ができるから だから年齢ごとの定員のバランスあるんですよ 0~2歳て保育所しかないの?? こっちの方では幼稚園でも未満児受け入れてるとこもありますよ やっぱり都会と田舎の差なのでしょうか?? まぁ夫婦二人で働かないとお金がないかもしれないけど 私は保育園に入る3歳までは自分で育てたいと思いました だって手をかけられる0~3歳てこの時しかないんだよね 大きくなれば勝手に育つでしょう・・それに0~3歳て一番かわいい時期 それを他人に育ててもらうなんて、私は・・・ですね 大平俊介 網野智世子 産後ダイエット メンズスタイル
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おぜうはエロくならない 発生日:YYYY/MM/DD ログ引用部分ここに貼り付け
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駅前のスクランブル交差点に面したビルに設置された大型ディスプレイの中で、 彼女は今日も楽しげに歌っていた。 流れているのは、つい先週に出たばかりのラブソング。 生活スタイルが異なり始めた二人が、すれ違い、もつれ合いながらも ハッピーエンドに向かって駆け抜ける……という歌詞だ。 『終わらないストーリー』 ディスプレイに映る彼女に見入っていた僕の腕を、薔薇水晶が引っ張った。 薔「笹原くん。信号、変わったよ」 笹「ん……ホントだ。早く渡ろう」 僕たちは手を繋ぎながら、彼女の歌をBGMにして横断歩道を渡っていく。 今日は、久しぶりにウィンドウショッピングを愉しむ約束だった。 薔「この曲、すごく良いよね」 横断歩道を渡り終えたところで、薔薇水晶は僕の横顔を眺めながら言った。 薔「私、CD買っちゃった」 笹「ああ、僕もだ。結構、売れ行きも良いみたいだよ。オリコンチャートを 見たら、ミリオン近い数字が出てた」 薔「本当に? なんか、凄いよね。同級生にアイドル歌手が居るなんて」 笹「だよなあ。正直、ここまでメジャーになるなんて思わなかったよ」 翌日、珍しく彼女が登校していた。 笹「よお。久しぶりだな、メグ」 メ「あら。おはよう、笹原くん。会いたかったわよ、ダーリン♪」 笹「今日は来られたんだな。最近、休みがちだったから心配してたんだ」 メ「出席日数がヤバいのよ~。留年したら、どうしよっかな」 突然のスカウト。そしてデビュー。 天性の美貌と持ち前の歌唱力で瞬く間にスターとなったにも拘わらず、 メグは三ヶ月前と変わらず、至って普通の高校生然としていた。 余りにも突然の激変で、彼女自身、まだ戸惑っているのかも知れない。 メ「でも、みんな応援してくれてるし、頑張らないとね」 笹「あんまり無理するなよな」 メ「大丈夫大丈夫。笹原くんに会えて、元気が出たから」 けれど、そう呟いた彼女の横顔には、少しだけ疲れが見えた。 テレビや雑誌でメグの姿を見る回数に反比例して、登校する回数は減っていった。 そんなに仕事が忙しいのだろうか。時々、携帯のメールで連絡を取り合うけれど、 なかなか都合が付かなかった。たまには、会って話をしたい。 薔「最近、メグちゃん学校に来ないね。元気にしてるのかなぁ」 笹「うん。歌番やバラエティで見てる限りじゃ、元気そうなんだけど」 薔「この頃はメールの数も減ってるし、なんか心配だなぁ。 笹原くんは彼氏なんだから、電話で話とかしてるよね?」 笹「彼氏ったって、形ばかりの関係だよ。最近じゃ、話すどころか週末に 会うことすら出来ないんだから」 薔「そうなの……なんか寂しいね。あ、ちょっと駅前の本屋に寄って良い?」 笹「ああ、勿論」 駅前に来て、あの大型ディスプレイを見上げた僕たちは、思わず言葉を失った。 薔「ちょっと、笹原君! あれって――」 午後のワイドショーを垂れ流すディスプレイには、芸能関係のスクープが 下衆なタイトルと共に、しつこいほど繰り返し映されていた。 【大物新人アイドルと、有名若手俳優の交際疑惑】 【熱愛発覚!! 新人アイドルと――】 【深夜のお泊まりデート激写!】 それは紛れもなく、メグを誹謗するものだった。が、全てを嘘と言い切る根拠もない。 裏切られた――いや、そもそも僕なんて凡人が、彼女と釣り合う筈ないじゃないか。 悔しくて、情けなくて……僕は薔薇水晶を置いて、家まで逃げ帰った。 彼女はもう、違う世界の人間なのだと思い知らされた。 何が彼氏だよ。僕には、彼女を追い掛けるだけの能力も、ルックスも無い。 携帯に、メグからメールが届いた。 【メ】今度の土曜日に、会えないかな? 今更、会ってどうなるって言うんだろう。例のスクープについて、 言い訳を聞かされるだけじゃないのか? 惨めすぎる、そんなの。 【笹】ゴメン。都合が悪くていけない 送信しようとして、思い止まった。良い機会じゃないか。 この際、彼女と別れよう。会って、ハッキリ伝えるんだ。 了解の返事を打ち込んで、僕はメールを送信した。 薔薇学園の裏にある明伝城址公園で、僕たちは待ち合わせていた。 メ「お待たせ、笹原くん。ちょっと、遅くなっちゃった」 ベンチに座っていた僕を見て微笑み、メグは隣に腰を降ろした。 私服姿の彼女は、以前よりもずっと華やいで見えた。そりゃ当然だろう。 僕らなんかとは住む世界が違うんだ。服だって、きっとブランド物さ。 笹「別に、大して待っちゃいないさ。それより、今日はどうしたんだよ」 メ「ちょっと、ね。最近、色々と有りすぎて疲れちゃった」 笹「お忍びで息抜きってやつか」 メ「まぁね。それに、笹原くんとは最近デートしてなかったし」 デート、か。なんだか、お情けをかけられてるみたいだ。 惨めだな、まったく。 笹「デートなら、僕より相応しい奴等が居るだろ」 メグが息を呑む音が聞こえた。実際、今の彼女には最も触れられたくない話題だと思う。 けど、だからこそハッキリ言わなきゃならないんだ。 笹「最近、ワイドショーとかで騒がれまくってるだろ。そいつと――」 メ「待って! ちょっと、私の話を聞いて」 メグは強い口調で、僕の言葉を遮った。 メ「ねえ、笹原くん。まさか、あんな報道を信じてなんかないわよね?」 笹「信じるなと言われたって、ああも写真週刊誌とかで書かれてるとな。 別に、良いんじゃないか? メグはもう雲の上の人物なんだし、 派手な私生活も、芸能人のステイタスみたいなもんだろ」 メ「ばっ、バカねえ。あんなの全部、誤解なんだって」 誤解でも、何でも良い。もう、諦めはついてるんだから。 笹「あのさ……メグ。僕たち、もう別れないか」 メ「えっ――」 信じられないと、彼女の見開かれた眼が語っていた。どうして? と。 リップグロスを塗った彼女の唇が、戦慄いている。 何かを言おうとして、言葉にならない。そんな様子だった。 メ「――どうして、そんな事を言うの? 最近、殆ど会えなかったから?」 笹「言ったろ。住んでる世界が変わったんだよ。こんな関係を続けるのは、 お互い、もう無理なんだ」 メ「そんなの身勝手だわ! お互い、もっと会う時間をつくる努力すれば いいだけの話じゃないの」 笹「そりゃ、出来ることなら、そうしたいよ! けど――」 僕には、君を引き留めておくだけの力は無いんだ。 笹「もう、ダメなんだよ。僕たちは」 メ「――――っ!」 ぱんっ! メ「笹原のバカっ! あんたなんか最っ低の大バカよ! 大っ嫌い!」 メグは僕の頬を叩き、一頻り喚いて、目の前から走り去ってしまった。 胸が苦しかったけど、これで良いんだと自分を慰めた。 僕はまだ、メグのことが好きで好きで堪らない。 でも、だからこそ彼女の足枷になってはいけなかったんだ。 そう…………これで良かったのさ。 薔「どうして、メグちゃんをフッたの?」 その夜、薔薇水晶が家に訪ねてくるなり発した質問だ。 僕なりの考えを答えたら、薔薇水晶にも頬を殴られた。 薔「どうして、信じてあげられないの? メグちゃんは笹原くんのこと、大好きなんだよ?」 笹「だからって、高校生の僕が出来ることなんて、高が知れてるだろ」 薔「相談に乗って上げることくらい出来るじゃない!」 笹「話を聞いたって、解決できるかどうか分かんないだろ! もう帰ってくれよ!」 薔「ヤダ! 笹原くんがメグちゃんに謝るまで帰らないっ!」 薔薇水晶はいつになく強引だった。こんな彼女を見るのは初めてだ。 僕は彼女の気迫に圧されて、渋々ながら、メグの携帯に電話を掛けた。 笹「もしもし…………笹原だけど」 メ「――――何の用……なの?」 笹「これから、少しだけ会えないかな? 明伝公園で待ってるから」 メ「――――良いわよ。じゃあ、後でね」 笹「じゃあ、僕は出かけるからな。薔薇水晶は先に帰ってて良いよ」 薔「私も一緒に行くわ。笹原くん一人じゃあ、また喧嘩別れになりそうだから」 笹「もう、そんな事しないって」 とは言え、薔薇水晶が居てくれるのは心強かった。ついさっき別れたばかりで、 どの面下げてメグの前に立てるだろうか。一人きりじゃ、直前で尻込みした筈だ。 明伝公園に僕たちが着いた時、メグは街灯の下のベンチに座って項垂れていた。 学園では常に朗らかで、行動派だったメグ――彼女が、あんなにも憔悴しているなんて。 僕たちの接近に気付いてハッと顔を上げたメグは、 一瞬、嬉しそうな表情を浮かべ…………複雑な面持ちとなった。 メ「私に、あなた達の仲を見せ付けに来たの?」 薔「笹原くんが逃げ出さないように、見張ってるのよ」 思わず答えに窮したところに、薔薇水晶のフォローが入った。 格好悪いが、やはり一緒に来てもらって、良かったと思った。 ふぅん……と、メグは僕らを交互に見据えて、クスッと笑った。 メ「まあ、いいわ。それなら、笹原くん。どうして、私を呼びだしたの?」 笹「さっきの事、謝りたくてさ。それと、伝えたいことも有る」 メ「ヨリを戻したい……なんて虫のいい話なら、お断りよ。 私のプライドはずたずたに傷付けられたんだから」 笹「僕だって、そんな恥知らずじゃない。メグを信じるって、言いたかったんだ。 あんな写真週刊誌のゴシップ記事なんか、くそくらえだって」 メ「そう……」 メグは少し口を噤んで、溜息を吐いた。乱れた気持ちを整理するように。 そして、迷いが吹っ切れたように明るい笑顔を浮かべた。 薔薇学園で、毎日みんなを和ませてくれた、あの笑顔を――。 メ「私、アメリカに渡ろうって決めたの」 夜空の月を見上げて、メグは自分の抱負を語ってくれた。 メ「スクープだなんだと騒がれまくって、ちょっと嫌気がさしてたのよ。 良い機会だし、留学して一から出直そうって考えたの」 笹「凄いな、メグは。僕と同い年なのに、そんなにもスケールの大きい目標が あるんだから。僕なんか、何をしたいのかすら分かってない」 メ「人それぞれだもの。でもね、探し続けなければ、答えは見付けられる筈がないわ」 笹「そうだね。僕はまだ、真剣に人生と向き合ってない。甘えているんだと思う」 甘えているから、物事の本質が見えなくて、肝心な時に大切な人を傷付けてしまったんだ。 僕はメグの目を真っ直ぐに見詰めて、思いの限りを伝えた。 笹「僕には、メグみたいに天賦の才能なんかない。だけど、探し続けてみるよ。 そして、いつかメグを追い付けるだけの自信を得た時、僕はメグに伝えに行く。 今度こそ、どこまでも一緒に歩いて行こうって」 メ「ふふ……それって、いつ頃になる予定なの?」 笹「それは、その……今すぐにとは言えないけど、出来るだけ努力するから」 メ「ふぅん? まあ、気長に待つとするわ」 笑いながら、メグは右手を差し出した。 メ「暫く、お別れね。でも、忘れないで。世界の何処で歌っていようとも、 私は……不特定多数の誰かにではなく、貴方の為に歌っていることを」 忘れないよ。絶対に、忘れるもんか。 僕はメグの温もりを忘れないように、しっかりと握り締めた。 ――クリスマス 毎年恒例のメロディが満ち溢れた駅前に、僕と薔薇水晶は買い物に来ていた。 何処に行っても、ジングルベルや、山下達郎のクリスマスソングが流れている。 毎年、飽きもせず繰り返される光景。 駅前のスクランブル交差点で信号待ちをしていた時、 薔薇水晶が正面の大型ディスプレイを指差した。 薔「あっ! 笹原くん、メグちゃんが映ってるよ」 笹「本当だ。あいつ、向こうでも大人気だもんなぁ」 渡米して一ヶ月と経たず、メグは人気ロックバンド【RozenMaiden】のボーカルとして、 その名を世界中に知られる存在になっていた。あのゴシップ記事も直ぐに忘れられて、 国内でもメグの人気は回復している。 彼女は、大空を羽ばたく鳥のように、どんどん遠くへ行ってしまう―― 薔「笹原くんも大変だね。今や世界的な有名人に追い付かなきゃいけないなんて」 笹「確かに、途方もない目標だなぁ」 だけど、僕はメグと約束したんだ。必ず追い付いて、一緒に歩いて行くと。 ♪終わらないストーリー クリスマスの街に、メグの歌が流れ続ける。 毎年、飽きもせず繰り返される光景。 だけど、今年は――――少しだけ違って見えた。 おわり なんで笹原とメグが付き合ってんのっていうか笹原のバカ -- レーゼ (2008-12-27 03 03 18) ほんとアホラシ -- リーフ (2009-07-25 00 12 43) 名前 コメント
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えいえんなんてしらない【登録タグ え よしのん 曲 鏡音リン】 作詞:よしのん 作曲:よしのん 編曲:よしのん 唄:鏡音リン 歌詞 (ピアプロより転載) 永遠なんて知らない 約束は叶わない 愛なんて刹那の幻 優しくしないで 振り返らないで このまま背を向けていて 君が抱きしめたこの身体が 少しだけ いいものに 思えたりした 自分を好きになれるかもなんて 少しだけ 期待したりもした だけど 離れた指先から始まる孤独 確かなものは 重ねた肌のぬくもりだけ 永遠なんて知らない 約束は叶わない 愛なんて刹那の幻 愛してるなんて 大好きだよなんて はじめから言ったりしないで 別に何も出来ない自分と いつも上手に折り合いをつけてきた 執着と愛情と独占欲 何が違うのかがわからない そして 繋いだ指先から始まる孤独 繋がってても あたしと君と ひとりぼっち 永遠なんて知らない 約束は叶わない 愛なんて刹那の幻 優しくしないで 振り返らないで このまま背を向けていて コメント あ、格好いい。 -- 名無しさん (2011-05-06 00 30 09) 何で伸びないか不思議なくらい好き曲 -- 名無しさん (2012-03-08 01 51 19) この曲格好良いよ^^ -- 夕映 (2012-03-29 21 04 58) 名前 コメント
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体調不良 ★ ツムラ調査、8割が「なんとなく不調」 「Yahoo!news[健康産業速報](2024/1/24(水) 17 30)」より / ツムラが発表した「第4回なんとなく不調に関する実態調査」によると、「なんとなく不調」を感じている人が8割に上ることが明らかとなった。 同社では、自覚しながらもつい我慢しがちな症状や、調子が悪いものの病名の診断がつかない症状の総称を「なんとなく不調」と定義。今回の調査は昨年12月4日~7日、20~60代男女3000人を対象にネットで実施した。 その結果、前年調査より7.9ポイント増の80.0%が、「なんとなく不調」を実感。男女とも前年より増加、30代女性の90.0%が最多となった。「なんとなく不調」の上位症状は、「疲れ・だるさ」(53.4%)、「目の疲れ」(49.7%)、「肩こり」(48.1%)、「頭痛」(47.9%)となり、前年調査と同様だった。 1ヵ月のうち、平均9.5日は「なんとなく不調」を感じていたが、約7割は病院を受診せずと回答。前年調査より6.2ポイント増加した。 ツムラ調査、8割が「なんとなく不調」 ・・・枠珍接種率とだいたい同じなのは偶然だろうか😅https //t.co/rUwLS2QuuY — 毒母乳 (@7xCzVz2knym9PSL) January 24, 2024 .
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ハルヒ「甘いのがいい? 甘くないのがいい?」 ① ② 前へ 戻る 次へ 449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/15(土) 23 44 43.45 ID 6wAbXHbs0 キョン「消毒液……あった」 ハルヒ「…」 キョン「ちょっと染みるぞ」 キョン「大丈夫か? 包帯も巻いておこうな」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒ?」 ハルヒ「あ、ううん……びっくりしちゃって……」 キョン「怪我がこれぐらいでよかったよ。いや、よくはないけどさ」 ハルヒ「動けなかった……なにかと思って」 キョン「ごめんな。俺が居りゃまだこう……んー、なにもできなかったな」クルクル… ハルヒ「っ!」 キョン「! ごめっ、強く巻きすぎたか!?」 ハルヒ「ううん、大丈夫」 キョン「戻ってたら急にガラス割れる音がしたから……俺も慌てて走ったよ」 ハルヒ「こんなことも、あるんだね」 キョン「まったく、気をつけてもらわないとな。あそこまで飛ばすのは凄いかもしれないけどさ」 456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 00 57 50.15 ID FqgwpbN50 キョン「かばん取ってくるよ。ちょっとここで休んでろ」 ハルヒ「うん……」 キョン「ほんとに大丈夫か? ほら、横になってな」ポンポン ハルヒ「……そうする」 ハルヒ「はぁ……びっくりした」 ハルヒ「…」 ガラッ 女子A「せんせー、怪我したんで消毒液……って、あれ」 女子B「おっ、誰もいないじゃん!」 女子A「超ついてる! 今のうちにアルコール貰っちゃお!」 ハルヒ「あの声……」 458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 02 56.59 ID FqgwpbN50 女子A「ライター持ってる?」 女子B「あるけどさー。あんたピアサー使わないの?」 女子A「マジめんどいし。ってかピンで十分じゃん?」 女子A「中々広がらないんだよねー……痛っ」 女子B「ウチの彼氏さぁ、軟骨んトコに開けてんだよー。超ムリなんだけど」 女子A「マジで!? 血とかでまくりじゃね!?」 女子B「部屋行ったら血のついたティッシュ超あるの! マジウケる!」 ハルヒ「…」(ピアス? ……痛そう) 女子A「なんか変なティッシュも混ざってんでしょそれ」 女子B「生臭いやつ? ありえねー」ギャハハ ハルヒ「…」 460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 12 44.14 ID FqgwpbN50 女子A「Aの彼氏ってアレだよね。童貞だったんだよね」 女子B「そうそう! だから一回ヤらせたらすげー動物みたいでさ」ギャハハ 女子B「すげーバカなんだよね。あたしが演技してても全然気がつかないの」 女子A「そんなん男なんてみんなじゃね?」 女子B「部屋入ったらさぁ、超体なすりつけてくんの!」 女子A「なにそれー」 女子B「マジヤバイの! 毎回毎回さぁ、ヤらせてくれってうっせーの」 女子A「えー? でも好きなんっしょ?」 女子B「んー、もー微妙。家が金持ってるからアレだけどさー」 女子A「なにそれ、超鬼畜なんすけど!」ケラケラ ハルヒ「……うぅ」 女子A「そーいえばさぁ、涼宮とキョン君も怪しいよね」 ハルヒ「!」 女子B「あー、なんか昨日手繋いでるの見たってCが言ってた」 女子A「マジで?」 女子B「ってかアレじゃん。あいつさぁ、ちょっと優しくすればすぐヤらせてそうだし」 女子A「あー、みんな言ってるよねそれ」 ハルヒ「えっ……」 467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 28 48.91 ID FqgwpbN50 女子A「あいつさあ、顔はムカつくけどいいからさぁ」 女子B「でもアレじゃん? 性格が酷いじゃん、キモいし」 女子A「だからさぁ、ちょっと優しくされて勘違いしてんじゃない?」 女子B「キョン君いい人っぽいしなぁ」 女子A「アレだろうね、簡単に色々させてくれるから付き合ってるんだろうね」 女子B「わかるー。男子ってそんなもんだよね」 女子A「多分そのうち飽きられて捨てられんだろうね」 女子B「それってもう涼宮終わりじゃない? あ、でも二年になってクラス変わればありえそう」 女子A「そうなったらキョン君誘ってみようかなぁ」 女子B「いいじゃん! そんときは協力するよ!」 女子A「マジでー!?」ギャハハ ハルヒ「…」 女子A「ま、どうせそんぐらいしかアイツに話しかける目的ないよね」 女子B「中学んときとか、結構コクられてたみたいだし」 女子A「マジで!? だったら相当ヤりこんでんじゃね!?」 女子B「ヤりすぎで頭おかしくなってあんなこと言ったとか!? ありえるー」ケラケラッ ハルヒ「……そんなの……そんなんじゃ」 468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 30 51.22 ID aR2XSQlb0 まさかの鬱展開wktk 469 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 31 52.94 ID FqgwpbN50 女子A「もー帰ろー。C誘ってカラオケ行こうよ」 女子B「あームリ。あたし彼氏んとこ行かないと」 女子A「今日もっすか!」 ハルヒ「…」 ハルヒ「あたし……そんな風に見られてるの?」 ハルヒ「キョン君は……そんなの目的であたしに優しくしてくれるんじゃ……」 ハルヒ「…」 ハルヒ「んっ……ちっ、違うもん」ポロポロ ガラッ キョン「ハルヒー? ごめん、おまたせー」 ハルヒ「!」 キョン「……あれ、寝てるのか?」 ハルヒ「…」 470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 32 30.07 ID nDzyTH9jO こんなビッチJK今なかなかいねぇぞwwwwwwwwwwww 472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 35 03.83 ID FqgwpbN50 キョン「ハルヒ?」 ハルヒ「……ん」 キョン「寝てたか?」 ハルヒ「……ううん」 キョン「?」 キョン「部室行ったらさ、先生に呼び止められてさ」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒのこと心配してたよ。大丈夫か? って」 ハルヒ「…」 キョン「一応大丈夫とは言っといたけど……ん?」 キョン「ハルヒ? 聞いてるか?」 ハルヒ「あ……うん」 キョン「どうした、やっぱり指痛いのか?」 ハルヒ「う、ううん。大丈夫」 キョン「……ちょっとビックリしちゃったもんな。落ち着いてから帰ろう。うん」ナデナデ ハルヒ「キョン君……」 キョン「ん?」 475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 37 56.56 ID FqgwpbN50 ハルヒ「キョン君はさ……なんであたしに優しくしてくれるの?」 キョン「なんでって……んー」 ハルヒ「その、キョン君も男の子だから……」 キョン「あ?」 ハルヒ「もっと、明るくてさ……元気な子の方が」 キョン「…」 ハルヒ「あたしと一緒じゃ、変な目で」 キョン「なに言ってるんだよ」 ハルヒ「…」 キョン「俺がハルヒに優しくすることに、意味なんてないぞ」 ハルヒ「えっ?」 キョン「ハルヒだからそうする。それだけ。逆に言えば、ハルヒ以外の人には優しくする理由がないかな」 ハルヒ「…」 477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 42 33.27 ID FqgwpbN50 キョン「そんなこと今更聞くなよ。言わないとわかんないか?」 ハルヒ「…」 キョン「……どうしたハルヒ。なにかあったのか」 ハルヒ「ううん」 キョン「…」 ハルヒ「……キョン君だって……ちゃんとした恋愛したいでしょ?」 キョン「なっ」 ハルヒ「あたしなんか、一人じゃなにもできなくて、キョン君に頼ってばっかりで……」 キョン「…」 ハルヒ「ムリにあたしの傍に居てくれなくても、大丈夫だよ?」 キョン「いい加減にしろよ」 ハルヒ「!」 キョン「…」 ギュウ 483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 01 48 49.95 ID FqgwpbN50 キョン「俺がいつ、お前と居ることを嫌がったんだよ」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒのことを拒否したことがあったか? ハルヒの前で嫌な顔したことあるか?」 ハルヒ「……キョン君」 キョン「同情や安い感情なんかで、お前の傍に居るわけじゃないんだよ」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒのこと、守ってやりたいから……ずっと傍に居てほしいって思ってるから、だからそうしてるんだ」 ハルヒ「でも」 キョン「昨日電話で言ったじゃないか。俺の思ってることは、ハルヒの考えてることと一緒だって」 キョン「ちゃんとした恋愛ってなんだよ? そんなの……俺は興味ない」 キョン「俺はハルヒの隣で、ハルヒが笑ってるのをずっと見ていたい」 キョン「……俺が一方的にお前に近づいてるんじゃないんだぞ? 俺は、お前に傍に居てほしいんだ」 ハルヒ「…」 キョン「……それに、その……好きでもない奴、こうやって抱きしめるわけないだろ。気がつけバカ」 ハルヒ「キョン君……うん……んっ、ごめんっ……キョン君」 キョン「…」ポンポン 492 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 02 22 57.10 ID FqgwpbN50 キョン「……久しぶりに泣いたな。ハルヒ」 ハルヒ「んっ、ごめん……ごめんね?」 キョン「いいよ。すっきりするまで泣けばいいさ」 ハルヒ「ひっく……んっ」 キョン「…」ナデナデ ハルヒ「キョン君……」 キョン「もう大丈夫か?」 ハルヒ「……うん」 キョン「よし、じゃあ帰ろう」 ハルヒ「……手、繋いでいい?」 キョン「坂、降りてからな」 ハルヒ「うん」 キョン「歩けるか?」 ハルヒ「大丈夫」 キョン「カバンは持っててやるよ。さ、帰ろう」 501 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 03 11 39.19 ID FqgwpbN50 キョン「指、痛くないか?」 ハルヒ「うん、もう血も止まったみたい」 キョン「そうか」 ハルヒ「……バイトって、いつからするの?」 キョン「んー……来月からかなぁ」 ハルヒ「いつまで?」 キョン「さあね、多分二ヶ月ぐらい」 ハルヒ「そしたら、今年中はずっとバイトだね」 キョン「いや、年末までには辞めるよ」 ハルヒ「…」 キョン「だからさ、ちょっとだけSOS団に顔出すのは少なくなるかも」 ハルヒ「……あのね」 キョン「ん?」 ハルヒ「あの……あたしって、団長だよね」 キョン「そうだな それが?」 ハルヒ「…」 502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 03 14 11.98 ID FqgwpbN50 ハルヒ「団長命令って、使ってもいい?」 キョン「団長命令? あぁ、いいじゃないか。いいと思うぞ」 ハルヒ「…」 キョン「だけど、無理なお願いは勘弁だな」 ハルヒ「あ……うん」 キョン「というか、ハルヒ中心の部活ってわけなんだから。そういうのどんどん使っていいと思うぞ」 ハルヒ「……わかった」 キョン「?」 ハルヒ「じゃあ、団長命令使います」 キョン「俺に?」 ハルヒ「うん」 キョン「……なんだよ」 ハルヒ「あ、でも無理なら」 キョン「まあいいさ。言ってみ」 ハルヒ「うん。あのね?」 508 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 03 42 52.98 ID FqgwpbN50 ハルヒ「バイトするまでの間でいいからさ……あたしとこうやって、一緒に下校してください」 キョン「……ハルヒ」 ハルヒ「団長としては、団員が部活を抜けるのは……少しだけだとしても、寂しいからさ」 ハルヒ「だから、それまでのちょっとの間でもいいから。あたしと一緒に居て?」 キョン「…」 ハルヒ「あたし、キョン君に遠慮してた。優しくしてくれるのに甘えてて……」 ハルヒ「オロオロしてれば、キョン君は傍に居てくれるんだって。心のどこかで思ってたのかも」 ハルヒ「だけど、もう甘えない。ちゃんとキョン君に、傍に居てほしいって……おねがいするね」 ハルヒ「あたしは、キョン君が一緒に居てくれることを願います」 キョン「……わかった。そのお願い、ちゃんと守るよ」 ハルヒ「……手、繋いで?」 キョン「あいよ」 キュッ ハルヒ「……もう少し、わがままも言えるように頑張る」 キョン「遠慮なんかするなよ。俺は、ハルヒの為ならなんでもしてやるから……な?」 ハルヒ「…」グッ 515 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 03 50 07.38 ID FqgwpbN50 朝倉「一つの答えが出たわ。キョン君と涼宮さんの関係について」 長門「?」 朝倉「キョン君と涼宮さんは、やはり二人で一つの存在なの」 長門「同一体?」 朝倉「少し違うわね。要は涼宮さんが存在する為にはキョン君が必要で、その逆も然りってわけ」 長門「……理解」 朝倉「まるで磁石みたいにね。ほっておいても、気がつけば引っ付いちゃうの」 長門「それは涼宮ハルヒの力?」 朝倉「そこまではわからないのよね……だけど、それは一般的な恋愛感情と言われるそれとは段違いのモノみたい」 長門「愛情で動いていない?」 朝倉「そういう簡単な話じゃないってこと。いや、もしかしたら物凄く簡単なコトなのかしら?」 長門「??」 朝倉「難しいわね。人間の感情を持っても難しい問題かもしれないわ」 長門「互いを求める理由は、本人達にしかわからない?」 朝倉「えぇ。その上、それは誰にも邪魔できない。私達と同じ次元に居ても、それは閉鎖空間のように」 長門「……興味深い」 朝倉「このミックスフルーツ味のガムより?」チョイ 長門「それはそれで」 朝倉「はい、あーん」 長門「…」モクモク 516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 03 57 59.71 ID FqgwpbN50 古泉「バイトですか?」 キョン「あぁ、来週から。だから少しここに来るのも減るな」 古泉「そうですか。頑張ってください」 キョン「だからさ、閉鎖空間とか……そういうのが出来るかもしれない」 古泉「やっと僕の出番ですね」 みくる「んー、大丈夫じゃないですか?」 キョン「朝比奈さん。 でも、なんで?」 みくる「その話、涼宮さんにも伝えてるんですよね」 キョン「まあ」 みくる「じゃあ大丈夫です。納得してくれているなら、閉鎖空間なんて生まれませんよ」 キョン「そうですかね」 古泉「今のところ、彼女がストレスを感じているというのはないですね」 長門「…」コク 古泉「それどころか……なんでしょう。僕にはボーナスばかり支給されるといいますか」 キョン「?」 古泉「彼女の機嫌がいいと、喜ぶ人も多いんですよ」 キョン「……盗撮とかしてないだろうな?」 古泉「まあ、プライバシーの侵害になるようなことは……」 長門「自重している」 キョン「って、じゃあやろうと思えばできるのか」 みくる「禁則事項です☆」 キョン「あ、朝比奈さんまでっ?」 596 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 12 57 51.72 ID M50I17x90 みくる「あれ? 今日はキョン君お休みですか?」 ハルヒ「うん。バイトがあるって」 みくる「あ、そうですかぁ。そういえば古泉君もでしょうかね?」 ハルヒ「…」 みくる「寂しいですか?」 ハルヒ「!」 みくる「ん?」 ハルヒ「……えっと」 みくる「女の子だけですから、正直に言っても大丈夫ですよ?」 長門「…」コク ハルヒ「……ちょっとだけね?」 みくる「ふふっ」 長門「見に行く?」 ハルヒ「えっ? や、邪魔しちゃうのはダメだよね……」 みくる「でもキョン君も、涼宮さんが来てくれると喜ぶと思いますよ?」 ハルヒ「そ、そうかな? ……ううん、でも大丈夫」 みくる「そうですか」 ハルヒ「……明日、部活休みにしてもいいかな?」 みくる「ん? いいと思いますよ」 ハルヒ「そっか……うん。じゃあ休み」 長門「…」コク 607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 13 36 29.11 ID M50I17x90 キョン「閉鎖空間、生まれたのか」 古泉「えぇ。まあ、大した規模じゃなかったですけどね」 キョン「そうか……俺の所為?」 古泉「十中八九、あなたです」 キョン「…」 古泉「このところ、一週間は部室に来られてないんじゃないですか?」 キョン「バイトと家の用事が重なってたからな」 古泉「そうですか」 キョン「しかしだな……ハルヒとは教室でほぼ毎日顔をあわせてるんだぞ?」 古泉「そうは言われても、彼女はそれだけでは満足していないようですよ」 キョン「うーん……」 古泉「まあ、今はお互いにずっと一緒に居たい。って時期なんじゃないですか?」 キョン「お互いって言うな」 古泉「はは、これは失礼」 キョン「明日はバイトも休みだから、部室に顔出すよ」 古泉「えぇ、できればお願いします。それじゃ、仕事の邪魔になるといけないのでこれで」 キョン「あいよ」 610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 13 40 29.78 ID M50I17x90 ハルヒ「それじゃ、今日は終わりにしましょう」 みくる「はい」 長門「…」パタン ハルヒ「…」 みくる「手袋、間に合いそうですか?」 ハルヒ「うん。なんとか……もしかしたら、もう一つぐらい何か作れるかも」 みくる「そうですか。じゃあ帽子なんかどうでしょう?」 ハルヒ「うーん、でも手編みばっかりだと鬱陶しくないかな?」 みくる「涼宮さん、編み物上手ですから大丈夫だと思いますよ」 ハルヒ「そ、そうかな」 長門「…」コク みくる「それじゃ。また明日」 ハルヒ「はい、さようなら」 長門「…」フリフリ 611 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 13 45 10.25 ID M50I17x90 ハルヒ「それじゃ、また明日」 長門「帰宅?」 ハルヒ「ううん。毛糸足りなくなったから、ちょっと買い物して帰る」 長門「付き合う」 ハルヒ「えっ?」 ハルヒ「でも、帰るの遅くなるよ?」 長門「たまには」 ハルヒ「いいの?」 長門「問題ない」 ハルヒ「……うん。じゃあ、行こう」 長門「…」コク 615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 13 51 08.20 ID M50I17x90 ハルヒ「あ、この色可愛い……ほら、色んな色が混ざってる」 長門「ユニーク」 ハルヒ「…」 長門「こっち」 ハルヒ「そっちがいいかな……両方買っちゃおう」 長門「…」コク ハルヒ「沢山あっても、そんなに困らないしね」 長門「柔らかい」フモフモ ハルヒ「結構買っちゃった。紙袋こんもりしてる」 長門「持つ」 ハルヒ「ううん、大丈夫だよ」 長門「気にしないで」 ハルヒ「……じゃあ片方お願い」 長門「…」コク ハルヒ「ちょっと疲れたね。喫茶店で休憩しよっか」 長門「なら、あっち」 ハルヒ「?」 長門「美味しいブリュレがある」 ハルヒ「あ、じゃあそこ行こっか」 620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 13 58 10.45 ID M50I17x90 カランコロン ハルヒ「わあ……暖かいね」 長門「あそこの席」スッ ハルヒ「もしかして有希ちゃん、常連?」 ハルヒ「あたしロシアンティー飲もうっと」 長門「?」 ハルヒ「知らない?」 長門「頼んだことはない」 長門「……ジャム」 ハルヒ「うん。これをね、中に入れて飲むってことらしいんだけど」 長門「?」 ハルヒ「本当は舐めながら、紅茶は別に飲むみたい」 長門「どっち?」 ハルヒ「んー、あたしは別々に飲むかな」 長門「…」コク 623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 02 24.84 ID M50I17x90 長門「ココア」 ハルヒ「美味しい?」 長門「甘い。好き」コクッ ハルヒ「……うん、ほんとだ。美味しいねこれ」 長門「オススメ」 ハルヒ「雰囲気もいいし、いいトコ知ってるね。有希ちゃん」 長門「彼女が見つけた」 ハルヒ「彼女?」 長門「…」スッ ハルヒ「?」チラッ 朝倉「あら、見つかっちゃった」 ハルヒ「朝倉さん?」 朝倉「珍しく長門さんと涼宮さんがデートしてるから、尾行してたんだけどなぁ」 長門「…」 朝倉「私もご一緒していい?」 ハルヒ「うん、もちろん」 朝倉「じゃあ失礼。すいませーん、シナモンロールとチャイ一つー」 624 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 07 00.82 ID M50I17x90 朝倉「ほら長門さん、あーん」 長門「…」フルフル ハルヒ「?」 朝倉「もー。この子、シナモンだめみたいなのよね」 長門「…」 朝倉「ちょっとだけ。あーん」 長門「…」フルフル 朝倉「今日はキョン君はいないの?」 ハルヒ「うん。バイトだって」 朝倉「あぁ、なんかしてるって言ってたわね」 ハルヒ「最近ずっとバイトで……中々部活に来てくれないんだ」 朝倉「ふふっ、幸せな悩みねぇ」 ハルヒ「そ、そうかな?」 長門「…」 朝倉「もうココア飲んじゃったの?」 長門「甘いのは好き」 朝倉「じゃあほら、あーん」 長門「…」フルフル 朝倉「もー。好き嫌いはダメよ?」 628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 13 45.64 ID M50I17x90 朝倉「でも大変ね。そんなにぎゅうぎゅうに働くなんて」 ハルヒ「うん……なんか欲しい物が沢山あるって」 朝倉「ふぅん」 長門「?」クンクン 朝倉「あ、こら。勝手にカバン開けないでよ」 長門「クッキー」 朝倉「あーあ、見つかっちゃった。家帰ってから食べなさい」 長門「…」 朝倉「ダメ」 ハルヒ「……なにが欲しいのかな」 長門「クッキー」 朝倉「あなたじゃないわよ。なにかしらね?」 ハルヒ「部活よりも、興味があるものなのかな……わかんないけど」 朝倉「あら、嫉妬?」 ハルヒ「! そ、そんなんじゃないけど」 朝倉「いいじゃない。教室で会えるし、メールや電話もしてるんでしょ?」 ハルヒ「……メールとかは……キョン君帰ってすぐ寝ちゃうみたいだからあんまり……」 朝倉「あらら」 637 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 25 19.19 ID M50I17x90 長門「ココア」 朝倉「ちょっとは違うもの飲みなさいよ。せめてミルクティとか」 長門「……甘めで」 朝倉「砂糖で構成されてるのかしらね。この子」 朝倉「でも大丈夫でしょ。ずっとバイトするってわけじゃないんでしょ?」 ハルヒ「そうかな……」 朝倉「逢えないって言っても、二人共が好きあってることに変わりはないんでしょ?」 ハルヒ「!」 朝倉「なら問題ないんじゃない? 嫌いになったわけでもないんだし」 ハルヒ「…」 朝倉「あら、もしかしてまだそういう意思の疎通はできてない?」 ハルヒ「……ううん。多分だけど……気持ちは繋がってると、思う」 朝倉「なら、何も心配することはないわよ。ただ少し逢えないだけ」 ハルヒ「…」 長門「クッキー」 朝倉「諦めなさい」 638 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 29 41.42 ID M50I17x90 長門「…」コク、コク… 朝倉「もう、好きなだけ飲んで食べて……満足したらねむねむ?」 長門「寝てない」 朝倉「眠そうじゃないの」 朝倉「そろそろ帰りましょうか」 ハルヒ「うん」 朝倉「ほら、しゅんとしないの。あなたにはそういうの似合わないわよ?」 ハルヒ「…」 朝倉「そういう幸せなコトで悩めるなんて、相当キョン君のコト好きなのね?」 ハルヒ「……かなぁ」 朝倉「えぇ。間違いないわ」 ハルヒ「…」 朝倉「とにかく、俯いたってキョン君は落ちてないわよ。ほら、元気だしてー」コチョコチョ ハルヒ「! く、くすぐったいよ朝倉さん」 641 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 37 12.42 ID M50I17x90 朝倉「あの様子じゃ、ちょっとだけ世界が歪んじゃってそうね」 長門「…」 朝倉「ベタベタすぎると、こうやってちょっと逢えないだけで不安になっちゃうのねぇ」 長門「問題ない」 朝倉「あら、なんでそう思うの?」 長門「二十分後、あの二人は接触する。確立で言うと九十パーセント」 朝倉「あ、もしかして観察中?」 長門「行動パターンから推測した」 朝倉「このタイミングで出会うなら、どうにかなるかもね」 長門「加えて明日は部活は休み」 朝倉「なら……そうね。心配することはないわ」 長門「なので、クッキーを」 朝倉「どう繋がるのよそれ」 長門「…」 朝倉「はいはい、一枚だけね。歩きながら食べるのは行儀悪いんだけどねえ」スッ 長門「!」 645 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 14 55 07.10 ID M50I17x90 ハルヒ「遅くなっちゃった……真っ暗だ」 ハルヒ「…」 ハルヒ「寒いなぁ……雪でも降りそう」 ハルヒ「…」 ハルヒ「キョン君、また寒い寒いって言ってるんだろうな」 ハルヒ「……はぁ」 ハルヒ「…」(ココの信号、長いんだよね) ハルヒ「…」(電灯も少ないし、静か……ちょっと怖いな) ファサッ ハルヒ「!!!!」 キョン「! っと、びっくりした」 ハルヒ「……あっ」 キョン「何してんだハルヒ。帰りか?」 ハルヒ「キョン君……」 キョン「こんな寒いのにマフラー巻かずに……風邪ひくぞ?」クルクル… 652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 15 06 55.35 ID M50I17x90 ハルヒ「バイトは?」 キョン「今日はもう終わったよ。で、帰ってたらハルヒを見つけた」 ハルヒ「……そっか」 キョン「こんな時間まで部活だったのか?」 ハルヒ「ううん。これ買いに行ってたの」 キョン「毛糸? また沢山買ったな」 ハルヒ「えへへ」 キョン「明日さ、バイト休みだから部活行くよ」 ハルヒ「あ……」 キョン「ん?」 ハルヒ「ごめん、明日は休みにしちゃった」 キョン「そうなのか? なんだ、そうか」 ハルヒ「…」 657 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 15 10 21.20 ID M50I17x90 ハルヒ「バイト楽しい?」 キョン「んー、それなりに」 ハルヒ「そっか……お金、貯まってる?」 キョン「そうだな。割と順調だ」 キョン「結構沢山働いてるからなぁ。年末までには辞められそうだ」 ハルヒ「辞めるの?」 キョン「辞めないほうがいいか?」 ハルヒ「……ううん」 キョン「また金がなくなったら働くかな。もしくはしばらく働いて貯めてもいいな」 ハルヒ「……楽しそうだね」 キョン「そうでもないよ」 ハルヒ「?」 キョン「バイトするのが一番楽しいなら、こうやってハルヒに逢って嬉しくはならないさ」 ハルヒ「……キョン君」 664 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 15 14 24.71 ID M50I17x90 キョン「ごめんな、先週全然顔出せなかったもんな」 ハルヒ「ううん。平気だよ」 キョン「ほんとに? じゃあ来週もそんな感じ」 ハルヒ「……うん」 キョン「嘘だって。もうちょっと日数減らすよ」 ハルヒ「あ、えっと、気にしないで?」 キョン「何を?」 ハルヒ「あの……」 キョン「今日はもう暗いから、家まで送るよ」 ハルヒ「…」 キョン「俯くなって。どしたー?」 ハルヒ「手、繋いでいい?」 キョン「聞かないでいいよ。好きにすればいい」キュッ 666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 15 20 39.97 ID M50I17x90 キョン「寒くないか? ってかマフラーどうしたんだ?」 ハルヒ「あ、喫茶店に忘れてきた」 キョン「喫茶?」 ハルヒ「有希ちゃんと朝倉さんとね、行ったの」 キョン「そっか。なんか面白い組み合わせだな」 ハルヒ「とってもいいトコでね」 キョン「明日行ってみるか?」 ハルヒ「明日?」 キョン「忘れたんだろ? とりに行こう。ついでにお茶飲みにさ」 ハルヒ「いいの?」 キョン「俺も休みで、部活も休みなんだろ? 久しぶりに、二人で出かけよう」 ハルヒ「……うん」 キョン「ちょっとハルヒのこと、ほっときすぎたかな?」 ハルヒ「そ、そんなことないよ」 キョン「嘘つけ。寂しそうな顔しやがって」 ハルヒ「……してないもん」 キョン「誰もいないかな?」 ハルヒ「?」 キョン「いないな……ほら、こっちおいで」 ハルヒ「…」トトッ ギュゥ 668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 15 26 40.81 ID M50I17x90 キョン「少し顔出さないだけで、寂しそうな顔しやがって」 ハルヒ「…」 キョン「俺はハルヒの考えてることなら、なんだってわかるぞ?」ナデナデ ハルヒ「キョン君……ごめんね?」 キョン「謝らないでいいよ」 ハルヒ「授業中や休み時間、ちゃんとキョン君のこと見てるのに……放課後会えないだけで、ちょっと寂しかった」 キョン「授業中は黒板見てろよ? バカ」 ハルヒ「だって……早く昼休みこないかなって、昼休み終わらなきゃいいなって」 キョン「…」(なんか昼休み長く感じたのは、こういうことか) ハルヒ「……もうちょっと、このままでいい?」 キョン「あぁ、俺も抱きしめてるほうが暖かいからさ」 ハルヒ「…」ギュゥ 670 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/16(日) 15 33 52.97 ID M50I17x90 キョン「喫茶店の香りか? なんか甘い匂いする」クンクン ハルヒ「んー」 キョン「…」ナデナデ キョン「明日は、また迎えに来るよ」 ハルヒ「いいの?」 キョン「朝からずっと一緒に居よう。先週の埋め合わせだ」 ハルヒ「……うん」 キョン「明後日からまたバイトで行けなくなるけど、俺はハルヒのことちゃんと想ってるからな」 ハルヒ「あたしも……キョン君」 キョン「おやすみ」 ハルヒ「おやすみなさい」 キョン「……可愛いなぁ」テクテク… 775 名前:ハルヒはキョンの嫁 ◆UBgxfb/oXY :2008/11/17(月) 01 44 05.56 ID OKJEjsli0 長門「…」 キョン「…」 長門「買い物」 キョン「それ……全部買うのか」 長門「…」コク キョン「その為にわざわざここまで?」 長門「このガムは、ここにしか置いてない」 キョン「そうなのか」 長門「ジューシー」 キョン「いや、知らんけど」 長門「…」モクモク キョン「駐車場で食うなよ。せめて帰りながら食え」 長門「待ってる」モクモク キョン「何を?」 長門「…」プクー キョン「答えろ」 長門「…」モクモク 朝倉「あ、居た。こら、またそんなに買って……三つまでって言ったでしょ?」 長門「つい」 キョン「……仕事の邪魔だ。引き取ってくれ」 朝倉「私もついでになにか買ってかえるわ。あ、そうだ牛乳ある?」 キョン「そりゃもちろん」 780 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 02 07 22.34 ID OKJEjsli0 朝倉「涼宮さんとは上手くいってるの?」 キョン「なんだよ、上手くって」ピッ 朝倉「んー、言葉通りよ」 キョン「……別に普通だよ。いつも通り」ピッ 朝倉「この間ね、ちょっと前かな。一緒に喫茶店に行ったんだけど」 キョン「あぁ。駅前のビルの二階のトコだろ? ハルヒと行ったよ」ピッ 朝倉「そう? あそこいいトコでしょ」 キョン「そうだな。はい、五百六十三円です」ガサガサ 朝倉「あのときねぇ、涼宮さんキョン君のこと君付けで呼んでたんだけど」 キョン「……前から呼んでるじゃないか」 朝倉「そうね。だけどしばらくは呼ばなくなってたわ」 キョン「気のせいだろ」 朝倉「嘘だ」 キョン「……なんにせよ気にすんな。ほら、これ持って帰れって」 朝倉「ふふっ、ちゃんと進展してる癖に。知ってるわよ?」 キョン「まさかお前達、覗き見してんじゃないだろうな!?」 朝倉「さぁねー」トコトコ キョン「あ、こら」 朝倉「うふふ、テレちゃってる。さあ帰りましょ」 長門「…」モクモク 朝倉「もうこんなに食べたの? ちゃんとぺってしてるんでしょうね? まさか飲んでない?」 長門「…」モクモク 783 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 02 25 20.62 ID OKJEjsli0 古泉「どうやら順調なようですね」 キョン「……お前まで言うか」 古泉「いいじゃないですか」 キョン「で、今日はなんの用だよ」 古泉「特にこれといった目的はありませんよ。ただ買い物しに来ただけです」 キョン「そう言ってさっきまで外でずっとガム噛んでたのが居たな」 古泉「……駐車場に甘い匂いが漂ってたのはその所為ですか」 キョン「恐らくな」 古泉「それで、バイトはいつまで続けられるんですか?」 キョン「あと二週間だ。それでひとまず終了」 古泉「では、大体買うものの目星もついたと?」 キョン「まあ、なんとなくは」 古泉「そうですか」 キョン「……いや、本当になんとなくだけどな」 古泉「いいじゃないですか。なんとなくでも」 キョン「そうかなぁ」 古泉「はい。じゃ、これください」 キョン「はいよ」ピッ 790 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 02 48 06.69 ID OKJEjsli0 みくる「大変ですねぇ。こんな時間まで」 キョン「いえ、まあもう少しで終わりますし」 みくる「あ、このクッキー売ってるんだ」 キョン「?」 みくる「これ美味しいけど、あんまり見かけないんですよ」 キョン「そうなんですか」 みくる「コンビニに売ってるとは思わなかったなぁ」 みくる「もう今年も終わりですね」 キョン「なんだか、色々あった年でしたよ」 みくる「そうでしょうね。キョン君にとっても、涼宮さんにとっても」 キョン「はい」 みくる「でもまあ……まだイベントは残ってますよね?」 キョン「え?」 みくる「ふふっ、その為にバイトしてるんでしょ?」 キョン「……どうでしょうね」 みくる「何買うのかは決めたんですか?」 キョン「うーん、まだ少し悩んでて……二つあるやつにしようかと」 みくる「?」 794 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 02 53 17.71 ID OKJEjsli0 キョン「はぁ……疲れた」 キョン「にしても、今日は色んな人が来たな……ん?」 ウィーン ハルヒ「あ……」 キョン「ハルヒ」 ハルヒ「キョ、キョン君」 キョン「どうしたんだ? こんな時間に」 ハルヒ「あの、暇だったからちょっと散歩に」 キョン「そっか」(こんな時間に散歩? まったく……素直に言えばいいのに) ハルヒ「ごめんね? お仕事の邪魔しちゃだめだよね」 キョン「いや、もう終わるからさ。立ち読みでもして待ってろって」 ハルヒ「……うん」 キョン「…」 ハルヒ「…」 キョン「…」(なに読んでるんだ?)チラッ ハルヒ「…」(キョン君、ちゃんと働いてる……すごいなぁ)チラッ 797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 03 12 18.75 ID OKJEjsli0 キョン「ハルヒ、おまたせ」 ハルヒ「うん」 キョン「髪、マフラーに巻き込んでるじゃないか」クィクィ ハルヒ「んー」 キョン「んー、つかれた」 ハルヒ「おつかれさま」 キョン「さて……どうする?」 ハルヒ「?」 キョン「散歩なんて、嘘つきやがって」 ハルヒ「! うっ、嘘じゃないよ?」 キョン「そっか。じゃあ俺帰るから、ハルヒも気をつけて帰れよ」 ハルヒ「あ……キョ、キョン君」 キョン「なんだよ」 ハルヒ「……いじわる」 キョン「ははっ、うん。ごめんな。その辺ちょっと歩こうな」 ハルヒ「うん」 キョン「その前に……長門ー、あまーいガムがあるぞー」スッ 長門「!」ヒョコ 朝倉「あっ、こら長門さん!」 キョン「帰れ」 798 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 03 20 58.45 ID OKJEjsli0 キョン「まったく、油断も隙もないな」 ハルヒ「よくわかったね。二人が隠れてるの」 キョン「どうも見張られてる気がしたんでな……」 ハルヒ「?」 ハルヒ「キョン君ほら、息」ハァーッ キョン「真っ白だな。もう完全に冬だ」 ハルヒ「そろそろキョン君、冬眠しないといけないんじゃない?」 キョン「するわけないだろ。あーでも、寒さ感じないのならそれもいいかもな」 ハルヒ「春ぐらいになったら、起こしてあげるね」 キョン「その前に何度も起こされそうだけどな。寂しい寂しいって」 ハルヒ「そ、そんなことないよ」 キョン「どーだかなぁ」 803 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 03 33 02.67 ID OKJEjsli0 キョン「時間は大丈夫か?」 ハルヒ「うん。家族皆、十二時までは出掛けてて戻らないって言ってたから」 キョン「…」(これもハルヒの力? まさかなぁ) キョン「河川敷まで歩こうか」 ハルヒ「河川敷?」 キョン「天気もいいし、緩い階段あるだろ? あそこに座るといい夜空が見れそうだ」 ハルヒ「うん、行く」 キョン「コーヒー飲みながら行こう。甘いの、好きだったよな」ピッ ガコン キョン「……ふぅ。ほら」スッ ハルヒ「んっ……暖かいね」 キョン「そうだな。あと全部飲んでいいよ」 817 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 04 05 22.16 ID OKJEjsli0 キョン「ほら、ここ座りな」ポンポン ハルヒ「よいしょ……っと」 キョン「地面、冷たくないか?」 ハルヒ「大丈夫だよ」 キョン「ほらハルヒ、空見てみな」 ハルヒ「……わぁ」 キョン「ここに座ると、向かいの土手と線路のおかげでさ。全然街の灯りが見えないんだ」 ハルヒ「すごい……こんなに星が沢山」 キョン「だろ? 小さい頃よくここで遊んでたんだよ」 ハルヒ「綺麗だね」 818 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 04 17 20.11 ID OKJEjsli0 キョン「今日はSOS団全員がバイト先に来たんだよ」 ハルヒ「そうなの?」 キョン「まったく。どいつもこいつも暇人みたいでさ」 ハルヒ「ふふっ、あたしもそうだよ?」 キョン「団長がそんなこと言ってちゃダメだろ?」 ハルヒ「だって……やっぱりSOS団は、キョン君がいないとダメだもん」 キョン「そうだ、思い出した」 ハルヒ「?」 キョン「朝倉達の前で、キョン君って使っただろ?」 ハルヒ「……あっ」 キョン「こら、人前じゃ君付けしないって約束だったろ」 ハルヒ「ごっ、ごめんなさい。なんか……つい」 821 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 04 39 37.76 ID OKJEjsli0 キョン「ハルヒはなんで、そんなに俺を君付けで呼びたがるんだ?」 ハルヒ「……怒らない?」 キョン「? 言ってくれないと、怒る気も起きないって」 ハルヒ「えっとね」 ハルヒ「キョンって呼ぶより、キョン君って呼ぶほうが……安心するの」 キョン「安心?」 ハルヒ「あたし……キョン君に甘えちゃってるから」 キョン「…」 ハルヒ「キョン君はあたしの隣に居るよって言ってくれるけど……本当は少しだけ前に居て欲しいの」 キョン「前に?」 ハルヒ「あたしの手をひいて、あたし一人じゃ行けないトコ、できないことに導いてくれて」 ハルヒ「だから、卑怯で臆病かもしれないけど……キョン君に甘えてると安心するの」 キョン「でも呼び方なんて一緒じゃないか?」 ハルヒ「ううん。最初に出会ったときから、あたしの中じゃキョン君はキョン君だから……」 キョン「……よくわかんないな」 ハルヒ「だ、だよね? ごめんね、変なこと言って」 キョン「だけど俺に甘えてくれるなら、それはそれで俺は大歓迎だ」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒが頼りにしてくれるなら、俺は嬉しいよ。当たり前だろ?」 ハルヒ「キョン君……うん」 キョン「やっぱ時間が時間だから寒いな……ほら、もっとこっち寄れって」ススッ 823 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 04 47 57.17 ID OKJEjsli0 キョン「去年の今頃ってさ、俺達互いに受験生だったんだよな」 ハルヒ「うん。この時間は、ずっと部屋で勉強してたよ」 キョン「そこそこ勉強頑張ってさ。それで、なんとか第一志望に受かったんだ」 ハルヒ「あたしも第一志望だった」 キョン「理由は?」 ハルキョン「「なんとなく」」 キョン「……やっぱりな」 ハルヒ「キョン君も?」 キョン「なんか理由が思い出せないんだ。気がついたら、あの高校になってた」 ハルヒ「あたしも。もう……あれから一年経つんだね」 キョン「ハルヒを知ってから、まだ一年経ってないんだ。そうも考えられるぞ」 ハルヒ「早いんだか、遅いんだかわかんないね」 キョン「そうだな。でもできれば、時間はゆっくり流れてくれるほうがいいな」 ハルヒ「うん。できれば、ずっと高校生でいいかも」 キョン「……それでもいいけど、ちゃんと三年間で卒業しような。そう願っててくれよ?」 ハルヒ「?」 826 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 05 05 14.69 ID OKJEjsli0 キョン「ハルヒはなんの教科が得意だったんだ?」 ハルヒ「んー……なんだろ? 別に苦手なのも得意なのもなかったかな」 キョン「うわっ、優等生だなぁ」 ハルヒ「そ、そんなことないよ」 ハルヒ「あ、でも地理とか好きだったかも」 キョン「? なんでまた」 ハルヒ「地図とか見るの好きだったんだ。ううん、今も好き」 キョン「地図か……なんかワクワクするよな」 ハルヒ「世界から見れば日本なんてちっさいけど、あたしから見ればその日本でもすっごく大きいの」 キョン「そうだな。あれ? ここまでこんなにあるのかよ? ってなる」 ハルヒ「こんなに大きなところで、なんであたしはココに住んでるんだろうとか」 キョン「ここに住んでたら、どんな人と出会えたとか。なにがあってどう生きてるか、とかな」 ハルヒ「うん。そういうの想像するの好きだった。なんか……あんまり現実的なことは、つまらないって思ってたから」 キョン「……そうだな。俺もハルヒも、考えてたことは本当に一緒なんだな」 ハルヒ「色々考えたけどやっぱりキョン君に出会えたから、あたしはここで生まれ育って正解だったと思うよ」 829 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 05 10 35.14 ID OKJEjsli0 キョン「折角だからさ、冬休みにどこか行ってみようか?」 ハルヒ「ドコ?」 キョン「どこでもいいさ。半日掛けて行って、半日掛けて戻ってこよう」 ハルヒ「楽しそうだね」 キョン「あぁ。たとえ何もなかったとしても、満足できそうな旅だろ?」 ハルヒ「キョン君、よくそういうこと思いつくね」 キョン「日々の退屈を吹き飛ばすことなら、幾らでも思いつくさ」 ハルヒ「……あたしも昔はそうだったなぁ」 キョン「なんだよ、子供っぽいって言いたいのか?」 ハルヒ「ち、違うよ。毎日毎日つまらなくて……でもどうせずっとこんな日々なんだなって」 キョン「ん……」 ハルヒ「だけど、キョン君に出会ってからね? つまらない日なんてないんだ」 キョン「そっか」 ハルヒ「最初こそもうダメだって思ったけど……それからはずっと、キョン君があたしの中心」 キョン「…」 ハルヒ「……キョン君……あたし、キョン君にいっぱいありがとう言わないといけないね」 キョン「まだまだ。まだこんなもんじゃない。もっと、もーっとハルヒには楽しい想いをしてもらうからな」ナデナデ 843 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 05 47 27.11 ID OKJEjsli0 ハルヒ「もう少ししたら、二学期終わっちゃうね」 キョン「終わるギリギリに、なんとかバイトも終われそうだよ」 ハルヒ「なら、三学期はまた部活に?」 キョン「あぁ、三学期の間はずっとSOS団に顔出すよ」 キョン「二学期も終わってさ、年も越して三学期。それでようやく一年なんだなぁ」 ハルヒ「……あの」 キョン「ん?」 ハルヒ「その、年越しの前にね?」 キョン「前に?」 ハルヒ「あの……ほら」 キョン「わかんないなあ」 ハルヒ「…」 キョン「俺さ、仏教だからさ」 ハルヒ「えぇ」 キョン「……不安そうな顔すんなって」 ハルヒ「だって……」 キョン「あの喫茶店、二十四日も営業してるんだって」 ハルヒ「えっ?」 キョン「まあ他にも……っと、今日はここまで」 ハルヒ「え? え?」 キョン「なんでもないよ」 ハルヒ「キョン君……ふふっ、なーに?」 キョン「なんでもないって」 ハルヒ「教えてよー」 キョン「やだね」 847 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 05 56 49.94 ID OKJEjsli0 ハルヒ「はぁーっ」 キョン「ほんと息真っ白だな。色素抜けてるんじゃないか?」 ハルヒ「えぇっ、なにそれ」 キョン「でもさ、ふーってすると白くならないんだよな」 ハルヒ「?」 キョン「やってみ」 ハルヒ「ふーっ……あれ? ほんとだ」 キョン「な?」 ハルヒ「はぁーっ。ふーっ」 キョン「…」 ハルヒ「くすくす……変なの」 キョン「なぁハルヒ。もっかいやってみ? ふーって」 ハルヒ「? ふーっ……」 キョン「ん」 ハルヒ「!」 キョン「……乾燥してるから、カサカサだったかな」 ハルヒ「…」 キョン「なんか喋れって」 ハルヒ「あ……あの」 キョン「中々する機会なかったから……ダメだった?」 ハルヒ「今の……初めて……あの、キョン君……」 キョン「…」 ハルヒ「……バカ。びっくりした……キョン君のバカ」ギュゥ キョン「うん、俺もびっくりしたよ。……ハルヒ」ポンポン ハルヒ「…」 849 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 06 00 42.05 ID OKJEjsli0 長門「!?」 朝倉「ん? どうしたの?」 長門「……今、なにか……起こった」 朝倉「? あぁ、ゼリー零してる」 長門「もったいない」パクパク 朝倉「なになに、なんだったの?」 長門「……不明」 朝倉「うーん、なにか受信したのかな。私はそういうの弱いのよねぇ」 長門「色で喩えると……桃色」 朝倉「……なにしたのかしらキョン君」 長門「アクセスを拒否している。外部からの進入は不可能」 朝倉「あらら、閉鎖空間も生まれちゃってるの? あらあら」 長門「……プリンも食べていい?」 朝倉「だーめ」 856 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 06 30 15.69 ID OKJEjsli0 ハルヒ「…」 キョン「……もう少し、こうしてような」 ハルヒ「…」コク ハルヒ「…」 キョン「…」 ハルヒ「……こういうとき、何喋ったらいいのかな」 キョン「いつも通りでいいさ」 ハルヒ「でも……なんにも思いつかない」 キョン「……急すぎた?」 ハルヒ「うん。だけど、ずっと待ってた……かも」 キョン「どちらにしろ、ちょっとタイミングが違ったかな」 ハルヒ「そんなことないよ。だって、あたしこんなにキョン君のこと……」ギュゥ キョン「…」 ハルヒ「星、綺麗だね」 キョン「そうだな」 858 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 06 37 49.93 ID OKJEjsli0 キョン「そうだ、ハルヒ。立ってみな」 ハルヒ「…」 キョン「? どうした?」 ハルヒ「なんかふわふわして……手、貸して?」 キョン「ほら、よっと」 キョン「ハルヒにいいこと教えてやる」 ハルヒ「なに?」 キョン「実は今日は、特別な日なんだよ」 ハルヒ「え?」 キョン「何年か一度、多分この後は数千年って間隔が空くらしいんだけど」 キョン「この空の上をさ、目に見える範囲一杯に流れ星が降るんだってさ」 ハルヒ「ほんとに?」 キョン「本当だ。少し前からニュースで言ってたけど、やっぱり知らなかったか」 ハルヒ「……知らない。そうなんだ」 キョン「でもなんか見えないな」 ハルヒ「そうだね。綺麗だけど、流れ星じゃない」 キョン「ちょっとさ、お願いしてみるか」 ハルヒ「?」 キョン「星に願いを……って、俺が言うのは気持ち悪いな。だけどそんな感じ」 ハルヒ「星に?」 キョン「流れ星が見れますように。沢山の星が自分の頭上を舞いますようにってさ」 ハルヒ「……うん。祈ってみようか」 キョン「あぁ、ハルヒが祈れば……っと! うん。まあやってみよう」 859 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 06 47 15.48 ID OKJEjsli0 ハルヒ「…」 キョン「ぐーっと、心の底から祈ってみるんだ」 ハルヒ「……無理だよ」 キョン「? なんでさ?」 ハルヒ「あたし一人が祈ったって、流れ星なんて降るわけないよ」 キョン「なんでハルヒ一人なんだ?」 ハルヒ「えっ?」 キョン「今、ハルヒの前に居るのは誰だ? 俺とハルヒが居れば……不可能なんてあり得ないさ」 ハルヒ「…」 キョン「手貸してみ。額も合わせて」ピトッ ハルヒ「んっ、冷たい。キョン冷えてる」 キョン「んー。中はそうでもないよ。ぬくぬくだ」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒはなんでも疑いすぎだよ。大丈夫、世界はハルヒが想ってるほど残酷じゃない」 ハルヒ「……あたし、臆病だから……ダメな方にダメな方に考えちゃって」 キョン「俺がいる。俺と一緒なら、起きない奇跡なんてないよ」 ハルヒ「……うん」 キョン「…」 860 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 06 55 25.88 ID OKJEjsli0 朝倉「……? あれ、おかしいわね」 長門「…」 朝倉「何? なんかTVの映りが悪くなったわ」 長門「?」 朝倉「なんか変な電波出してるんじゃない? 長門さん」 長門「出してない」フルフル 朝倉「……!」 長門「!」 朝倉「今の、聞こえた?」 長門「……聞こえた」 朝倉「なにか、世界が動くような……そういう前触れよね」 長門「情報統合思念体に、アクセスしてみる?」 朝倉「ううん。とりあえずベランダに」トコトコ 朝倉「……!! なに、なにこれ!」 長門「?」 朝倉「ちょっと、ほら、見て見て!」 長門「!」 朝倉「流れ星……おかしいわ。この時間にこの惑星から観測できる流星なんて」 長門「太陽系の惑星全てから、観測できるはずがない」 朝倉「これは……」 長門「間違いなく、彼女の力」 朝倉「んー、一体なにをしてるのよあの二人は!」 861 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 00 41.59 ID OKJEjsli0 キョン「……そろそろかな」 ハルヒ「顔、上げてもいいかな?」 キョン「ちょっと待てよ……!」 ハルヒ「! わっ……ええっ」 キョン「なっ、なんだこれ」 ハルヒ「すごい……こんなに沢山!?」 キョン「次から次へと……」 ハルヒ「すごい! すごいよキョン君! 嘘じゃなかった!」 キョン「あ、あぁ。当たり前だろ? 俺がハルヒに嘘なんて」(ここまで出来るとは……信じられんな) ハルヒ「わぁ……これ、まるで本当に祈りが通じたみたいだね」 キョン「通じたんだよ。これは、ハルヒが起こした奇跡だ」 ハルヒ「? でもニュースで」 キョン「言ってみただけだよ。でも、もしかすると本当かもな」 ハルヒ「……あたしとキョン君の、二人の力だね」 キョン「そうだ。俺とハルヒの、二人の想いが重なったんだ」 ハルヒ「…」 キョン「もう一度、さっきのしてみようか?」 ハルヒ「今度はびっくりさせないでね?」 キョン「こっちおいで」 ハルヒ「……キョン君!」 865 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 10 28.74 ID OKJEjsli0 古泉「……それで、その日は涼宮さんと帰ったと」 キョン「あぁ、そうだ」 古泉「そうでしたか。いきなりの超現象でしたから、何事かと」 キョン「何事もなにも、普通に流れ星が見たいなぁと思っただけだよ」 古泉「しかし、なんでそんな時間にそんな場所で?」 キョン「なんだっていいだろ」 古泉「っと。はい、そうですね」 キョン「なにをにやついてんだよ」 長門「怪しい」 キョン「うるさいな」 みくる「はいはい、紅茶入りましたよー」 ガチャ ハルヒ「ごめんみんな。遅れちゃった」 キョン「遅いぞ? 掃除するのにどれだけ時間掛かってるんだよ」 ハルヒ「だ、だって……キョン君も手伝ってくれればよかったのに」 キョン「嫌だね。今日は俺当番じゃなかったしな」 ハルヒ「もー」 みくる「…」(キョン君? キョン君って呼んでる……それに涼宮さん、なんか明るくなったなぁ) 古泉「…」(これは確実になにかりましたね。ただ星を眺めるだけで閉鎖空間が出来るはずもないですし) 長門「…」モクモク 870 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 29 42.30 ID OKJEjsli0 ハルヒ「これで、年内のSOS団の活動は終了です」 キョン「おぉー、お疲れ様。なんか大したコトしてない気がするけど」 ハルヒ「い、言わないでよっ」 ハルヒ「皆、来年もSOS団のことよろしくお願いします」ペコ みくる「いえいえ。こちらこそ」 古泉「なんだかんだで楽しい部活ですしね」 長門「…」コク キョン「だってさ。よかったなハルヒ」 ハルヒ「……うん」 キョン「さ、帰るか」 ハルヒ「鍵返してくるから、靴箱で待ってて?」 キョン「ん? あぁ、わかったよ」 ハルヒ「……行った」 みくる「あれ、完成したんですか?」 ハルヒ「うん。だからね、みくるちゃんに見てもらおうと思って……」ゴソゴソ みくる「……わぁ……す、凄いです涼宮さん!」 ハルヒ「そっ、そうかな?」 873 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 40 29.85 ID OKJEjsli0 みくる「それ、いつ渡すんですか?」 ハルヒ「あのね、二十四日にキョン君と逢うから……」 みくる「んー、ラブラブですねぇ」 みくる「じゃあ、その喫茶店で?」 ハルヒ「多分そうなると思うよ」 みくる「実は……私、準備してたことがありまして」 ハルヒ「?」 みくる「もちろん学校は休みでしょ? だから……」 ハルヒ「……えっ? で、でも入れないんじゃ」 ガラッ 鶴屋「やっほー!!」 ハルヒ「!」 鶴屋「やっと登場できたっさ! ほいこれ、合鍵作るのに時間掛かっちゃったんだよ~」 ハルヒ「鶴屋さん……これは?」 鶴屋「私とみくるから、ハルにゃんへのちょっと早いクリスマスプレゼントさ!」 ハルヒ「……二人共……」 みくる「ですから、その日は是非……ね?」 ハルヒ「うん。ありがとう……うん」 875 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 46 52.54 ID OKJEjsli0 キョン「遅いな、ハルヒ」 朝倉「あら、どうしたのキョン君?」 キョン「朝倉」 キョン「ハルヒを待ってるんだよ」 朝倉「そんなとこだと思ったわ」 キョン「なんだよ」 朝倉「長門さん見なかった?」 キョン「? 見てないな」 朝倉「おかしいわねぇ……あ、ガム持ってない? もうなくなっちゃって」 キョン「あるけど?」 朝倉「じゃあ貸して? ほーら、ガムあるわよー」 長門「食べる」ヒョコ 朝倉「ほら見つけた」 キョン「……飼いなれてるな」 朝倉「まあね~」ナデナデ 長門「?」 877 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 49 59.44 ID OKJEjsli0 朝倉「この間のはビックリしちゃったわ」 キョン「朝倉達にも見えたのか」 朝倉「それどころか、街中の至る所で流れ星が観測されてたわね」 キョン「!?」 キョン「そ、それは……大丈夫だったのか?」 朝倉「なにが? あぁ、他の人?」 キョン「なんというか、パニックになったりとか」 朝倉「大丈夫。この子がいるもの」 長門「頑張った」 キョン「……どんだけ優秀なんだよ」 朝倉「そうでもないわよ。私が飴をあげないと、一人でぼーっとしてるだけだし」 長門「ガム」 朝倉「そうじゃなくて、モノの喩えよ。ね? こんな感じ」 キョン「凄いんだか凄くないんだか……まあ、助かったよ」 878 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 55 16.46 ID OKJEjsli0 ハルヒ「キョン君、おまたせ」 キョン「おっ、やっと来た」 朝倉「キョン君寂しそうだったわよ?」 キョン「おい」 ハルヒ「ご、ごめんね?」 キョン「ほら、行こう」 朝倉「あー、ちょっと待って」 キョン「?」 朝倉「あのさぁ、なんだろ。私達そういうのよくわかんないんだけど」 ハルヒ「?」 朝倉「クリスマスってイベント、あるじゃない?」 キョン「……それがどうかしたのか?」 朝倉「アレってね。大人数で祝う方が楽しいのよね」 キョン「まあ、そうかもな」 朝倉「だからさ、よかったらその日うちに来ない? この子と二人っきりってのも寂しくてね」 長門「…」コク キョン「あー……でもその日は」チラッ ハルヒ「…」 朝倉「ううん。無理に、とは言わないんだけど」 キョン「……どうする?」 ハルヒ「あ、あたしは……いいよ。その代わり、昼間は……」ゴニョゴニョ キョン「そうするか? まあ、夕方には喫茶も出る予定だし」 朝倉「あら、もしかしてあれ? 夜通し一緒にいるとか? そっかー、そういうのでもあるのよね」 キョン「!」 ハルヒ「!! ち、違っ!」 879 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 07 59 46.19 ID OKJEjsli0 キョン「よかったのか?」 ハルヒ「?」 キョン「だから、朝倉とのさ」 ハルヒ「うん……ダメだった?」 キョン「ダメじゃないけどさ。まあ、楽しいとは思うけど」 ハルヒ「……あの」 キョン「?」 ハルヒ「キョン君は……どうしたかった?」 キョン「俺? 俺は、そうだな……」 ハルヒ「…」 キョン「ハルヒが楽しい思いをしてくれるなら、どうだって大丈夫だよ」 ハルヒ「……ふふっ、ありがとう」 キョン「全く、ああいうのはちょっと気を使ってくれてもいいと思うけどなぁ」 ハルヒ「朝倉さん、たまにビックリするようなこと言うよね」 キョン「思いつきで行動したりしてるからな」 ハルヒ「……夜通し、一緒か……」 キョン「?」 ハルヒ「! なっ、なんでもないよ! なんでもない!」 881 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 03 45.93 ID OKJEjsli0 キョン「それじゃ、二十四日の朝迎えに行くよ」 ハルヒ「あ……えと、それまでは?」 キョン「ちょっとだけ考えたんだけどさ」 ハルヒ「うん?」 キョン「あえて、逢わない日を作るってのもいいかと思ってな」 ハルヒ「?」 キョン「いやほら、ここんとこ学校も含め毎日ハルヒと逢ってただろ?」 ハルヒ「う、うん。そうだね」 キョン「だからさ? クリスマスイヴまでは、ちょっと逢わない日を作ろうと思って」 ハルヒ「…」 キョン「寂しいか?」 ハルヒ「……うん」 キョン「大丈夫。逢える日になったら、逢えなかった日のおかげでますます嬉しくなるから」 ハルヒ「本当に?」 キョン「でないと、こんなこと思いつかないだろ?」 ハルヒ「……そっか」 キョン「だから、少しだけ我慢できるか? もちろん、メールとかはしようと思うけど」 ハルヒ「うん。じゃあ、あたしも一個お願いしていい?」 キョン「? いいよ」 883 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 09 29.86 ID OKJEjsli0 ハルヒ「我慢するから……ぎゅーって」 キョン「?」 ハルヒ「キョン君」パタパタ キョン「…」 ムギュウ ハルヒ「んー……ふぃ、苦しいよ」 キョン「数日分。ハルヒは寂しがりで甘えんぼだからさ」 ハルヒ「……そんなことないもん」 キョン「そんなことあるから、こんなこと言うんだろ?」 ハルヒ「ふふっ、違うよ」 キョン「違わないって」 ハルヒ「……キョン君……あたし、誰かとクリスマス祝うなんて、考えたこともなかった」 キョン「俺もだ。それが、まさかあのハルヒだなんて」 ハルヒ「なにそれ?」 キョン「自己紹介したすぐ後の俺ならさ。そう思ってる」 ハルヒ「…」 キョン「でもあの自己紹介がなければ、こんなにハルヒが可愛いってのも気がつかなかったかもな」 ハルヒ「……うん……あたしも。バカなことだったけど……今、全然後悔してないよ」 キョン「…」ナデナデ 889 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 16 20.08 ID OKJEjsli0 キョン妹「キョンくーん。電話鳴ってるー」ドンドン! キョン「あーもー、置いててくれ。キョン君はトイレ中だ」 キョン妹「キョン君トイレー。ごめんねハルにゃん?」 キョン「!」 キョン「……ったく、なんであいつは電話に出るんだ」 ハルヒ「結構妹ちゃんとお話するようになったよ」 キョン「そりゃどうも」 ハルヒ「……やっと明日逢えるね」 キョン「あぁ、寂しかったか?」 ハルヒ「ちょっとね。でも楽しみ」 キョン「過ぎてみると、結構早かったな」 ハルヒ「んー。そうでもなかった。とにかく早く逢いたいよ」 キョン「まあ焦るなって。あとほら、二十四時間もないぞ?」 ハルヒ「……キョン君」 キョン「ん?」 ハルヒ「んーん。呼んだだけ」 キョン「なんだよそれ」 893 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 20 12.45 ID OKJEjsli0 ピンポーン ハルヒ「!」タタタ… ガチャ ハルヒ「……キョン君!」 キョン「おはよう。ハルヒ」 ハルヒ「うん、おはよう」トトッ キョン「こら、スリッパで出てきちゃだめだろ?」 ハルヒ「あ……ご、ごめん。ちょっと待ってね?」 キョン「あいよ」 ハルヒ「おまたせ」 キョン「久しぶり」 ハルヒ「うん、久しぶり。キョン君……キョン君だ」 キョン「?」 ハルヒ「ほんとだ。逢えなかったからすっごい嬉しい。キョン君」ギュー キョン「あーもー。歩けないってば」 898 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 26 59.85 ID OKJEjsli0 キョン「あー、暖まるなぁ。コーヒーも美味いし、ほんといいトコだ」 ハルヒ「さすがに人が多いね」 キョン「そうだな。なんだか皆桃色だ」 ハルヒ「ふふっ、よくわかんないよ」 キョン「わりと常連になったよな。俺達」 ハルヒ「そうだね。朝倉さん達に負けないかも」 キョン「あ、そういえば朝倉達は」 ハルヒ「うん。夕方に行くって言っといた。昨日も一緒に遊んだんだよ」 キョン「電話で言ってたな」 ハルヒ「……朝倉さんとも、仲よくなれてよかった」 キョン「最初は、ちょっと拒否っちゃったもんな」 ハルヒ「でも、あたしと仲良くしてる所為で……」 キョン「気にすんなって。友達は数じゃない、想いの量さ」 ハルヒ「そうかな。うん、そうかも」 キョン「あ、そうだ」 ハルヒ「?」 900 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 33 23.90 ID OKJEjsli0 キョン「昨日、やっと最後の給料貰えたんだよ」 ハルヒ「あ、昨日が給料日だったの?」 キョン「うん。だからやっと欲しいのが買えたんだ」 ハルヒ「……なに?」 キョン「これ」スッ ハルヒ「これ……ゲーム?」 キョン「そう。これ欲しかったんだよ、国木田が面白いって自慢してきてさぁ」 ハルヒ「…」 キョン「凄いよなぁ。こんな小さいのにこの画質……って、おーい」 ハルヒ「なに?」 キョン「怒ってるのか?」 ハルヒ「ううん」 キョン「あー、ごめん。これも忘れてた」 ハルヒ「!」 キョン「ほら、首……よっと」カチャ ハルヒ「……これ……ネックレス」 キョン「ハートとリング。なんかまあ、意味はよくわかんないけどさ」 ハルヒ「…」 キョン「そういうのさ、初めて買ったからセンスとかないかも知れないけど……」 ハルヒ「キョン君……んっ、ありがと」 キョン「可愛い。似合ってるよ、ハルヒ」 ハルヒ「……うん」 キョン「さ、そろそろ行こうか」 901 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 36 50.13 ID OKJEjsli0 長門「…」 キョン「…」 長門「トナカイ」 キョン「なんでそっちのコスプレ?」 長門「雰囲気」 朝倉「あら、待ってたわよ。いらっしゃい」 ハルヒ「おじゃましまーす」 朝倉「早かったのね。もうちょっと遅くなるかと思ったわよ?」 キョン「外寒くてさ……」 朝倉「あら、なぁにそれ。涼宮さん」 ハルヒ「? あ、これ……あの、キョン君が」 朝倉「まぁ、プレゼント? ふーん、以外と可愛いことするのねキョン君」 キョン「うるさいな」 長門「…」チリン キョン「なんで長門はトナカイなんだよ。サンタはどこだ」 朝倉「だってそっちの方が可愛いでしょ。ほら、もう着替えてきていいわよ」 長門「メェ」 キョン「違う」 903 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 40 57.41 ID OKJEjsli0 朝倉「ほーら。どうこれ?」 キョン「! なんだそのケーキ、でかっ」 ハルヒ「昨日ね、三人で作ったんだ」 長門「…」コク キョン「凄いな……食べ切れるのかこれ」 長門「頑張る」 キョン「だろうな」 朝倉「こら。独り占めしないの。ちゃんと他の子も呼んでるから」 キョン「?」 ピンポーン 朝倉「ほら来た。はいはーい」トトト… みくる「あら、もう来てたんですね」 古泉「おじゃまします」 鶴屋「ほっほー! メリークリスマスだにょー!」 キョン「……騒がしいなぁ」 ハルヒ「ふふっ、SOS団勢ぞろいだね」 朝倉「あら、私もいいの?」 ハルヒ「もちろん!」 905 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 44 43.36 ID OKJEjsli0 朝倉「ほら、涼宮さんはキョン君の隣に座らないと」 ハルヒ「う、うん」ススッ キョン「もっと詰めろって。人数多いんだから」 ハルヒ「……わかった」ピトッ 朝倉「うーん。この人数集まるのは初めてね」 鶴屋「そうだねー! 有希んこの部屋に来るのは初めてさ!」 朝倉「……あ、初対面ね。朝倉涼子です」 鶴屋「鶴屋さんだよ! よろしくっさ!」 キョン「おいおい、このタイミングで挨拶か」 みくる「ふふっ」 長門「ガム」 キョン「お前は色々と間違えすぎだ」 古泉「なんだかアレですね。僕ら、とても恵まれた環境ですよね」 キョン「……そうだな」 ハルヒ「キョン君?」 キョン「ああいや、すいません」 907 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 51 51.13 ID OKJEjsli0 鶴屋「これめがっさ美味しいさ! ハルにゃんが作ったのかい?」 ハルヒ「はい、何度かお弁当に入れたりしてたら、得意料理になりました」 みくる「わー。綺麗ですねぇ」 古泉「今日は丁度予定がなかったので、呼んでもらえてよかったです」 キョン「本当か? お前が一番予定が埋まってそうだったんだが」 古泉「いえ、全く」 鶴屋「んー、みくるもそうだよねぇ」 みくる「わ、私も暇でしたよ?」 鶴屋「ならこの二人くっついちまえばいいさ!」ググッ みくる「はわわっ」 キョン「あー。絵になるなぁそれ」 鶴屋「ハルにゃんはキョン君と一緒でー」 朝倉「この子は私のー」ギュウウ 長門「……くるしい」 鶴屋「ほらこれで……あれ? 私余りモノ?」 909 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 08 57 29.62 ID OKJEjsli0 キョン「zzz……はっ」 ハルヒ「ん……くぅ」 キョン「……なんだ、皆寝てる」 キョン「もうこんな時間か……なんだかんだで結構遊んだな」 ハルヒ「んー……キョン君」 キョン「寝言?」ナデナデ 長門「……糖分が……襲ってくる……かゆ……あま」 キョン「…」(聞いてない聞いてない) キョン「…」 ハルヒ「んっ……あれ、寝ちゃってた」 キョン「あ、おはようハルヒ」 ハルヒ「おはよーキョンく……!」 キョン「?」 ハルヒ「い、今何時?」 キョン「ん? もう十一時だな」 ハルヒ「あ……キョン君! あの、ちょっと一緒に」 キョン「?」 ハルヒ「どうしよう、電車……間に合わないかも」 キョン「?? どうしたんだよ」 古泉「大丈夫です」 キョン「!? い、いつのまに!?」 古泉「外にタクシーが止まってますよ。行き先も、料金もすでに僕の機関が……zzz」 キョン「……寝言ばっかりだな」 ハルヒ「ごめん、キョン君? 一緒に来てほしいトコがあるの」 キョン「今から? まあ……うん、わかったよ」 911 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 02 41.20 ID OKJEjsli0 キョン「本当にタクシーが止まってるとは……」 ハルヒ「こ、古泉君のおかげ?」 キョン「多分な。まあ、気持ち悪いけど男からのクリスマスプレゼントってやつか」 ハルヒ「あのね」 キョン「うん」 ハルヒ「あたしのクリスマスプレゼント……今から行くトコに置いてあるんだ」 キョン「?」 ハルヒ「折角だから、そこで渡せばって、みくるちゃん達が」 キョン「……ドコ?」 キョン「ここは……学校?」 ハルヒ「うん」 キョン「でも、こんな時間だし開いてないんじゃ」 ハルヒ「鍵、貰ってるんだ。なんか防犯も切ってるって鶴屋さんが」チャラ キョン「あの人もナゾだな……で、この中なんだな」 ハルヒ「うん。こっち」 913 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 07 27.79 ID OKJEjsli0 キョン「部室?」 ハルヒ「…」 ガチャ ハルヒ「あった」 キョン「…」 ハルヒ「……キョン君」 キョン「うん」 ハルヒ「あの……ここはあたしとキョン君の関係の、始まりの場所」 キョン「……そっか。SOS団の部室だもんな」 ハルヒ「ここからあたしはキョン君に、色んなモノを貰ったの」 キョン「…」 ハルヒ「形があるものや、ないもの。全部あたしが欲しくて、手に出来なかったモノ」 ハルヒ「ずっと憧れた。こうやって、誰かと心が通じ合うってことに」 ハルヒ「だけど……それも、全部キョン君がくれて、あたしはなにも努力しなかった」 キョン「そんなことない。ハルヒはちゃんと」 ハルヒ「ううん。どんなときでも、全部誰かに助けてもらって……自分から勇気を出したことなんてなかったんだよ?」 キョン「…」 ハルヒ「だから、今……あたしは初めて、自分の力でキョン君に告白します」 キョン「!」 917 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 10 47.21 ID OKJEjsli0 ハルヒ「……キョン君」 キョン「…」 ハルヒ「言うのが怖くて、だけど言わなくても満足で……」 ハルヒ「ちょっとだけ、ズルして忘れたフリしてた」 ハルヒ「だけど、ちゃんと言うね。だから……受け取ってください」 ハルヒ「あたしは、キョン君のことが好きです」 キョン「……ハルヒ」 ハルヒ「キョン君のこと……好きだから……これからも、あたしの傍にいてください」スッ キョン「……手袋と……帽子」 919 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 13 52.10 ID OKJEjsli0 ハルヒ「あたしもセンスないから……そんなのしか、あげられないけど」 キョン「なに言ってるんだ。凄い嬉しいよ。今まで貰ったどんなモノよりも嬉しい」 キョン「だけどハルヒ」 ハルヒ「えっ?」 キョン「その……ちょっと待ってほしい」 ハルヒ「なっ、なに?」 キョン「……俺は、ハルヒの思ってることがわかるって言ったよな」 キョン「ハルヒの考えてることと、同じこと考えてるって」 ハルヒ「……うん」 キョン「だから、俺も。俺もハルヒに言うことがあったんだよ」 ハルヒ「!」 キョン「ネックレス。外してみて」 ハルヒ「これ? う、うん」 923 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 19 38.14 ID OKJEjsli0 キョン「それさ。ハートのトップとリングって言ったけど……別物なんだよ」 ハルヒ「えっ? ど、どういうこと?」 キョン「実はさ」スッ ハルヒ「あ……それ……えっ?」 キョン「リングはリングで、違うアクセサリーなんだ。これと、ペアリング」 ハルヒ「…」 キョン「授業中とか、着けてられないだろ? だから、こうすればさ……隠せるかなって」 キョン「これをな、ハルヒに渡して……そっちのを俺が貰う」 ハルヒ「キョン君……んっ」 キョン「本当は俺から言いたかったんだけどな。まあ、うん。聞いてくれ」 キョン「ハルヒ、大好きだよ。俺は……ハルヒのこと、愛してる」 ハルヒ「キョン君、んっ、キョン……君っ」 キョン「もう曖昧な関係は終わりだ。これからは……ずっと、俺の好きな人として、俺の傍にいてください」 ハルヒ「……はいっ……あたしも、ひっく……大好き!」 925 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 24 53.68 ID OKJEjsli0 キョン「おいおい、なんだよ? そんなに泣かなくてもいいじゃんか」 ハルヒ「むっ、無理だよ。だって、だってこんなのっ」ポロポロ キョン「うん……ずっと言わないままだったもんな。ごめんな」 キョン「いつから好きになってたかなんてわかんないけどさ? だけど、今確かにハルヒが好きだ」 ハルヒ「あたしも……キョン君のこと、大好き」 キョン「ただの団員が、SOS団の団長にこんなこと言うのはおかしいかもしれないけどな?」 ハルヒ「そんなことないよ。だって、キョン君がいないとSOS団も存在しなかったもん」 キョン「……そうだな。俺とハルヒが居たから、ここにSOS団ができたんだ」 キョン「なぁハルヒ。もう一つさ、プレゼントがあるよ」 ハルヒ「? なに?」 キョン「ハルヒだけじゃなくさ……できれば、大勢の人にあげたい」 ハルヒ「……?」 キョン「また二人で、祈ってみよう。今度は雪が降るようにってさ」 ハルヒ「雪……うん。やってみる」 キョン「こっちおいで」 928 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 28 00.22 ID OKJEjsli0 朝倉「なんなのこれ。なんで星空が桃色なの?」 長門「……過去最大級の閉鎖空間」 朝倉「これ大丈夫なのかしら」 古泉「うーん……どうなんでしょうねぇ」 朝倉「ちょっと、なんとかできないの?」 古泉「これが、組織とも連絡が取れませんで」 みくる「わ、私も無理ですぅ……」 長門「……ダメ。通信も遮断される」 朝倉「おっかしいわねぇ。これ、ゲームオーバーなの……あれっ?」 長門「……冷たい」 朝倉「これは……雪?」 みくる「もっ、桃色の雪ですね」 古泉「なんと……もしやこれも」 932 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 32 39.25 ID OKJEjsli0 キョン「! おぉ、ハルヒ。窓の外」 ハルヒ「……なにこれ? 桃色……綺麗」 キョン「すごいな。なんだこの雪」 ハルヒ「本当に雪?」 キョン「触ってみればいい。ほら」スッ ハルヒ「……冷たい」 キョン「雪だな。はは、なんかよくわかんないけど凄い現象だな」(これは……大丈夫なのか?) ハルヒ「冷たいけど……暖かい。柔らかくて、なんだか安心する」 キョン「…」 ハルヒ「ふふっ。あたしとキョン、まるで変な神様になったみたいだね」 キョン「変じゃないさ」 ハルヒ「?」 キョン「とっても可愛い……寂しがりで臆病で、甘えんぼな神様だ」 ハルヒ「…」 キョン「唇に雪、ついてるぞ」 ハルヒ「……とって」 キョン「…」クッ ハルヒ「……大好きだよ」 キョン「あぁ、わかってる……これからもずっと一緒だ、ハルヒ」 934 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 36 16.41 ID OKJEjsli0 鶴屋「……にょろっ!」 鶴屋「? 夢? あれ、ここは……」 鶴屋「おーい、皆起きておくれー」 古泉「んn」 みくる「ふぇ……朝ですかぁ」 朝倉「んー。何時今?」 長門「……靴下にガムが……」 鶴屋「んー、なんか変な夢を見たよ?」 みくる「夢?」 鶴屋「空が桃色になって、ピンク色の雪が降ってたのさ!」 古泉「……なんですかそれ?」 朝倉「夢ね。それは間違いなく夢だわ」 長門「……一人消し忘れた」 朝倉「ガム没収するわよ」 長門「なんでもない」 みくる「? あ、涼宮さん達まだ寝てる」 936 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 39 37.28 ID OKJEjsli0 朝倉「あらあら、ひっついちゃってまあ……」 みくる「手まで繋いじゃってますね」 鶴屋「なんかとってもいい寝顔っさ!」 古泉「……ん?」 長門「?」 みくる「二人共……こんな指輪してましたっけ?」 ハルヒ「キョン君……好き」 キョン「……ハルヒ……んー」 940 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 43 22.48 ID OKJEjsli0 朝倉「観察終了。結局のところ、この二人を引っ付けてたのは」 長門「甘味」 朝倉「そうとも言える……って、違うでしょ」 長門「?」 朝倉「涼宮さんに不思議な力があったとしても、やっぱりそれは一人じゃ使えないのよね」 長門「それには、彼が対の存在となって必要」 朝倉「そう。どこまでいっても、好きあった存在同士を動かせるのは一つの感情だけ」 長門「…」 朝倉「もしかすると、涼宮さんの存在はそれを全生命体に教える為にあるのかもね」 長門「難しい問題」 朝倉「かもね。ま、とにかく幸せそうなら……私も満足だわ」 長門「ハッピーエンド?」 朝倉「いいえ。ここからが、この二人のスタートライン。やっと恋人だもの」 長門「……理解」 942 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/11/17(月) 09 44 46.74 ID OKJEjsli0 朝倉「うん、優秀ね。じゃあ最後に……とっておきのシナモンガムをあげる!」 長門「!!」フルフル!フルフル!! 朝倉「うん、それ無理♪」 終。 947 名前:ハルヒはキョンの嫁 ◆UBgxfb/oXY :2008/11/17(月) 09 47 22.23 ID OKJEjsli0 ギリギリ。あぁ、そうこれで終わりだよ。 時間を気にしたおかげで、少し急ぎ足になったかとは思いますが…… 二人が幸せなら、俺はそれで満足だよ!ハルヒ可愛い! もう大人しいハルヒは封印……かな……? こんだけ書くといつものハルヒを書きたくてしょうがないや。 まあ、そうなったらまた見てもらえると嬉しいね。 そんじゃ寝るよ。 ありがとうございました。 ハルヒはキョンの嫁。間違いない。 ノシ 前へ 戻る 次へ
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日記/2011年01月23日/黒光りするなんとか 2011-01-24 ヤツは冬なのに雪なのに出てきます。 暖房で部屋が温まるとゆっくりとした動きのヤツが。 ただ、それだけ。 画像は……載せられませんなぁ。 撮りたくないもの。 見たくないでしょ?。 ゴキブリの大群 名前 コメント ◇◆前へ/次へ/目次へ
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555 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 14 05 ID KgIpHWOW ――あなたみたいな人間が誰かに好かれるなんて、不可能よ。 何の変哲も無い、いつもの朝方の教室でのことだった。 ホームルーム前の教室は相変わらず賑やかで、あちらこちらと会話が生まれ、正に談論風発としている。 そんな中、私は彼等の輪の中に入ろうという気も起きず、深海魚のようにじっと座って、ぼんやりと何処か遠くを眺めていた。 そんな風にしていたのがいけなかったのかもしれない。 不意に昨日の言葉が頭を過り、私は顔をしかめたのだった。 ハァと、恋する乙女のような物憂げな溜め息をしてから、眉間の辺りを指で揉む。気分は一向に良くならない。 久しぶりの斎藤ヨシヱとの邂逅は、私にとってはもはや消し去りたい過去のひとつになっていた。 昨日のことは、何度思い出しても恥ずかしくなる。柄にも無く感情的になって、自分の内面の一角を安々とさらけ出してしまった。あのことは確実に、私の黒歴史の一ページに刻まれたことだろう。 ああ、駄目だ。 考えれば考えるほど、心がむずむずとこそばゆくなる。しかし逆に彼女のことを考えないように意識すると、より一層濃く残滓するのだ。 まるで呪いだな、と私はうんざりした。 斎藤ヨシヱと会った後は、いつもこうだった。 彼女はいつも、私の仮面の下の素顔を暴こうと何らかの揺さ振りをかけてくる。 しかも嫌らしいことに、彼女ならそんな仮面簡単に剥がせる筈だろうに、あえてそうしないのだ。じわりじわりと私を追い詰め、いつもギリギリのところで手を引く。 そういう人を手玉に取っているような行動は、はっきり言って腹が立つものだった。自分が道化のような気がしてならないからだ。 あのサディストめ、と私は心中毒づいたが、懲りずに茶道室へと通い続ける私も、またマゾヒストなのかもしれないと思い直し、再び苦い気持ちになる。 とにかく、昨日のことは早く忘れるが吉だ。 私はいやいやするように、軽く頭を振るのと同時に雑念をも振り払った。 そして、何気なく前を見る。 と。 そこに、見覚えのある背中を見つけた。 小動物を思わせる雰囲気を纏ったその背中は、間違いなく彼女だろう。 田中キリエ。 確か、昨日は風邪を患わって休んでいた筈だが、どうやら無事に回復したらしい。 本人は、身体が弱く欠席することが多いと言っていたけれど、あまり病を長引かせるタイプでもないみたいだ。 556 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 15 15 ID KgIpHWOW それにしても。 たった一日会わなかっただけというのに、彼女を見るのも随分と久しい気がする。 そう思えるということは、田中キリエは私が想像しているよりもずっと大きい存在になっているのかもしれない。 私が無意識にじぃと見つめていたせいだろうか。 突然、彼女が後ろを振り返った。 必然と目が合う。 そのまま目を逸らすのもアレなので、私はニコリと微笑んで会釈した。 すると、田中キリエもはにかみながら会釈を返してくれる。その笑顔に病の余韻は伺えない。 よかった、ちゃんと治ったみたいだ。 私は安心し、それで朝の挨拶も終わりだと思ったのだが―― あれ? 何故か、彼女はまだ私のことを見つめていた。 何かを期待するような、もしくは示唆するような、そんな視線を私に寄越し続けている。 どうしたのかしら。 不思議に思って私も目を離せずにいた中、ガラガラとしたローラー音と共に教室のドアが開いた。 担任が入って来た。 早く席に着け、という鶴の一声によって散らばっていた生徒達も自分の席へと戻っていく。 私も田中キリエもそこで視線を離した。 それから、朝のホームルームが始まったのだが、 「…………」 まだ、見てる。 彼女は、担任の目を盗んではチラチラと私の方を見ていた。 もしや、私の顔に何かついているのか。 そう思って自分の顔をぺたぺたと触ってみたけれど、特に変わったものはついていないように思えた。ついているものといえば、馴れ親しんだ形の悪い目や鼻や口ぐらいだ。 うーん。 私は困ったように頬を掻く。というか実際困っていた。 しばしの思案の後、結論を出す。 無視しよう。 正直、自分からわざわざ、一体全体どうしたのですかと聞きに行くのも面倒臭いし、それに彼女だって子供じゃないんだから、用があるのなら自分から言ってくるだろう。大して気にすることでもない筈だ。 なので、私は担任の話に集中することにした。 なんの面白みの無い平板な声が耳に届く。 期末テストが近いせいか、担任の話は全てテスト関連の話だった。テスト対策や日程について、しつこく生徒達に聞かせている。少しでもクラスの平均点を上げたいのだろう。 私はテストの杞憂よりもむしろ、もうそんな時期になるのか、という時の流れについて驚いていた。 557 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 16 46 ID KgIpHWOW 中間テストをやったのもついさっきのような気がしているのに、もう期末が始まってしまう。まるで私だけが流行に乗り遅れてしまったみたいで、妙な孤独感を感じた。 私は、おもむろに窓の外に目を向ける。 夏の間は緑色に繁っていた桜の木も、今では木の葉ひとつ無かった。 時間は、たしかに流れていっているのだ。 期末テストが終われば、冬休みが始まし。冬休みが終われば、新学期が始まるし。そして新学期が終わる頃、卒業式が行われる。 そして卒業式が終われば――上級生である斎藤ヨシヱは、この学校を去っていく。 そんなことを考えている時。私はなんとも言えない複雑な気持ちになる。 私と彼女の関係は、一言で表せない程に目茶苦茶なものだ。 一応、友人関係ということになってはいるが、実際はポケットにつっこんだイヤホンのコードみたいに、私達の関係はこんがらがっている。 なので私には、彼女が卒業するのは悲しいことであるのと同時に、嬉しいことでもあるのだ。矛盾した言い方であるが、他に適した表現も見つからないので仕方ない。 そういえば、斎藤ヨシヱは進路はどうするのだろうか。 無難なのはやはり進学だが、彼女が大学生っていうのもなんだかイメージが湧かない。そもそも、高校生である今でも違和感を感じているというのに。斎藤ヨシヱは、あの達観している態度のせいかやけに年上に見えるのだ。 まあ、いいか。 今度まとめて聞いておこう、と私は思った。 そんな中でも、視線の矢は未だに私を捉え続けていた。 結論から言えば、無視出来なくなった。 田中キリエは、一限目の数学の時も、二限目の日本史の時も、三限目の現代文の時も、ずっとずっと私のことを見続けていた。 しかも彼女の見方の巧みなことやら。 田中キリエの座る最前列の廊下側という位置上、後列にいる私を見るためには否が応でも後ろを振り向かなくてならないのだが 彼女は周囲の人間が気をそらしたその瞬間を見計らって後ろを振り返るという高度な技術を駆使しているため、私以外の人間は気付いた風ではないのだ。 そんな状況に、思わず私も眉根を寄せる。 こうも見られてしまっては、全く授業に集中出来なかった。 ここまでくると、もはや盗み見というより、むしろ監視だ。気分はまるで看守と囚人。 558 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 17 47 ID KgIpHWOW 正直、ウザい。 ノートも中途半端にしかまとめられてないし、言いたいことでもあるのなら、さっさと言ってしまえばいいのに――と。 そこで漸く、私は気付く。 そうか。したくても、出来ないのか。 田中キリエの恥ずかしがり屋、常に一歩引く控え目な性格を考えると、クラスメイトの目がある教室内で異性の私に話し掛けるなど、到底出来ることではない。 あまり付き合っていることを公言したいような子にも見えないし、むしろひた隠しにしたいタイプだろう。変に話しかけたりして、私達の仲を疑われるのは避けたいはずだ。 まあ、そうとわかれば話は早い。 人目がある所が駄目ならば、人目が無い所に行けばいいまでだ。 私は三時間目が終了すると、ひとり教室を出た。 後ろを見てみると案の定、田中キリエがひょこりと顔を出していた。それから、距離を置いてトコトコとついて来る。 どうやら私の予想は当たっていたらしい。珍しく、今日は冴えている。 私は、彼女がついてきてるかどうかを確認しつつ、非常階段を目指した。 学内で人気が無いとこといえば、あそこぐらいしか思い付かないし、ここ最近は中々の頻度でお世話になっているため、へんな愛着が沸いてるからだ。 そして暫く歩いていると、非常階段前に着いた。 想定通り、周りには私以外誰も居なかった。遠くから生徒の騒ぐ声が辛うじて聞こえるくらいで、後は静かなものだ。この場所なら、彼女も気兼ねなく用件を話すことが出来るだろう。 田中キリエは遅れてやって来た。 「あの、なんだかすいません。気を使わせちゃったみたいで」 彼女はぺこりと頭を下げる。 「いえいえ、気にしないでください。それよりも、何か私に言いたいことがあるのでしょう?」 「うっ、うん」 私がそう聞くと、田中キリエは急に顔を赤らめたり指を弄ったりと、もじもじし始めた。 こうなってしまうと彼女が長いことは、今までの経験から知っていた。 のんびりと話を切り出してくるのを待つことにする。 「あの、よかったら……」 蚊の鳴くような声で、彼女は切り出した。 「よかったら、お昼ごはん一緒に食べませんか……?」 「お昼ごはんですか?」 「はい。鳥島くんがよかったらでいいんだけど」 「いや、全然大丈夫です。うん、そうですね。お昼ごはん、一緒に食べましょう」 559 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 19 28 ID KgIpHWOW 私がそう言うと、田中キリエの顔が太陽みたいにパーっと明るくなった。それからありがとう、と言って身体をくの字に曲げる。 昼食ぐらいで大袈裟な人だ。 それにしても、そんなことが言いたいがために授業中あんなに見ていたのか。 「それじゃあ、場所は――」 と、田中キリエが言いかけたところで予鈴が鳴った。 時計を見れば、もうそろそろ戻らないとマズイ時間だ。 「教室に戻りましょうか。昼休みになったら、またここで落ち合いましょう。場所についてはその時に教えてください」 こくりと頷き、了承してくれた。 「後、それと」 私はポケットから携帯電話を取り出すと、苦笑混じりに言った。 「これからは何か言いたいことがあったら、メールにしてくれると嬉しいです。その、授業中にあんなに見られると、あまり落ち着かないので」 私の進言に彼女は、あっと目を開いて赤面した。そして、呟くようにゴメンナサイと言う。 やはり、メールをするという発想には至らなかったみたいだ。 そんな田中キリエを見て、可愛いらしい人だな、と私は頬を緩ませた。 昼休みになって、私は購買部へ赴き昼食を購入した。 残念なことにカレーパンは残っていなかったので、メロンパンとコーヒー牛乳を代替品にする。 購入品の入ったビニール袋を片手に引っ提げて、私は足早に階段を登っていった。 いつもならそのまま教室に向かうのだが、今日はちょっとだけ進路を変えてみる。 自分の教室がある階をさらに飛ばして、私はさらに上へと昇って行った。 目指す先は、屋上だ。 「お昼は屋上で食べませんか?」 四時間目が終わった後。 非常階段の前で再び田中キリエと落ち合うと、彼女は迷わず屋上を指定した。 我が校では、他の高校と比べ珍しく、一般の生徒に屋上が開放されている。 そのため、春や秋などの屋外ですごしやすい季節には、沢山の生徒が屋上で食事をしたり、お喋りをしたり、告白をしたりと中々の賑わいをみせる場所なのだが、生憎今の季節は冬だ。おそらく、屋上には人っ子ひとり居ないことだろう。 確かに人気は無い。 屋上ならば、彼女も気兼ね無く私と共に昼休みを過ごせることだろう。 確かに人気は無い。無いけど。 560 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 20 39 ID KgIpHWOW 「屋上ですか……」 正直、彼女の提案は私としてはかなり頷き難いものであった。 前々から言っていることなのだが、私は根っからの寒がりなのである。 この季節に屋上など行ったら、ヘタしたら凍死してしまうかもしれない。 ということなので、さすがの私も反論を試みようと口を開いたが、何故か肝心の言葉が何も出てこない。屋上以外に昼食をとれる場所が何も思い付かないのだ。 結局、私は渋々承諾することになった。渋々と言っても、もちろん顔や態度には出していないけれど。 そして話し合いの結果、弁当持参の田中キリエは先に屋上で待ち、私は購買部で昼食を購入してから屋上に向かうということになったのだった。 階段を昇り終え、踊り場に辿り着いた。 踊り場に田中キリエの姿は無かった。 此処に居ないということは、おそらく先に屋上で待っているのだろう。 というか、いっそこの踊り場で食事をしてもいいんじゃないのか、と私は思った。 埃っぽいのさえ我慢すれば、問題など全く無いのに。わざわざ屋外で食べる意味がわからない。 けど、そんな文句を言ったって仕方がない。 私は、屋上へと通じる重い鉄製の扉を押し開けた。 開け放たれた扉の隙間から、しんしんと冷え込んだ空気が漏れ出してくる。それだけで嫌になる。 そして、屋上に足を踏み入れた。 「寒い……」 思わず呟く。 わかってはいたことだけど、やはり屋上は寒かった。 寝る時に湯たんぽが欠かせないような自分には、この寒さは中々厳しい。 私はぶるぶると震えながら、辺りを見回した。 春や秋には賑わう此処も、今では誰も居なかった。檻のように囲んでいる転落防止のフェンスと、落書きだらけのベンチが数個設置されているだけだ。 周囲に田中キリエの姿は見えない。 「あっ、鳥島くん。こっちこっち」 と、聞こえてくる声は後ろからだった。 振り向くと、田中キリエは屋上内の隅にある貯水タンクの辺りでちょこんと座っていた。 なんでそんな所に、と私は疑問に思ったが、理由はすぐにわかった。 暖かい。 そこは、ぽっこりと突き出た踊り場の壁と、貯水タンク等がうまい具合に風を遮って、まるでかまくらのような暖かさがあったのだ。 助かった、と私は胸を撫で下ろす。ここならまだ我慢出来ない程ではない。 それにしても、田中キリエも事前に調べていたみたいに良い場所を知っている。 561 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 22 19 ID KgIpHWOW 私は彼女の側に歩み寄ると、その隣に腰を下ろした。 その時、田中キリエがさりげなくハンカチを敷いて、私のズボンが汚れないようにしてくれた。気が利く子だな、と感心した。 「それじゃあご飯にしよっか」 と言って、カバンの中から弁当箱を取り出し、さあ昼食だとなる筈だったのだが、彼女が突然あっと悲鳴を漏らした。 「どうしたんですか?」 「水筒、教室に忘れてきちゃったみたい……」 弁当箱は持ってきているのに水筒を忘れるなんて……。彼女も案外マヌケなことをする。 朝の睨めつけの一件もそうだけど、田中キリエは意外とドジをやらかす娘なのかもしれない。 「今から水筒取ってくるんで、先に食べててください」 彼女はそう言い残すと、すくっと立ち上がり、お尻をはたいてから慌だたしく駆けて行った。 そんな田中キリエの背中を見送る。 「それじゃあ、先に食べるかな……」 お腹も空いていたので、私は彼女の言葉に甘えることにする。 ビニール袋からメロンパンを取り出し封を開けようとしたのだが、その時ふと彼女の学生カバンが目に入った。 チャックが開いたままのカバンの中からは、携帯電話が覗いている。もう何世代か前の、既に型落ちしてしまったスライド型の機種だ。 「…………」 ふと閃く、ある考え。 私は、意味ありげにその携帯電話見つめる。 そして幾らかの逡巡の後、私はその携帯電話を利用することにした。 学生カバンの中に手を突っ込み、そのままの状態で携帯電話を操作する。これなら、田中キリエが戻ってきても直ぐにごまかせるだろう。 他人の携帯電話の慣れない操作に戸惑いながらも、私はなんとかメニュー画面を開いた。 あった。 私は画面に映るアドレス帳の項目を見つけると、迷わずそこをクリックした。 田中キリエは意外と早く帰ってきた。 右手には忘れ物であろうピンク色の水筒が握られていて、急いできたせいか軽く肩を上下させている。 「先に食べてて良かったのに……」 田中キリエは、手中にある封の切られていないメロンパンを見て、申し訳なさそうに言った。 「まあ、そういうわけにもいかないと思いまして」 私は曖昧に笑ってごまかす。 「食事は一人で摂っても美味しくないものですよ。それに、せっかく屋上まで来たんだから一緒に食べたいじゃないですか」 なんていい感じに締めて、私は横に座るよう促した。 562 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 23 39 ID KgIpHWOW 田中キリエは水筒を地面に置いて腰を下ろした。 「それじゃあ、今度こそお昼だね」 彼女はそう言って、学生カバンを膝上に乗せた。そして、弁当箱を取り出そうとカバンの中に手を伸ばしたのだが――不意に動きが止まった。 「どうしたんですか?」 コーヒー牛乳にストローを挿しこみながら、何気なく聞いてみる。 「鳥島くん、もしかして私のカバンいじった?」 「カバン、ですか?」 私はきょとんとした表情で田中キリエを見た。 「いえ、特に何もしていませんけど……。どうかしたんですか?」 「そう、だよね……。ううん。別に気にしないで。多分、私の気のせいだと思うから……」 そうは言うけれど、彼女は中々会得がいかない様子であった。訝し気にカバンの中を覗き続けている。 それから漸く諦めたのか、やがてカバンから弁当箱を取り出した。それは彼女の身体に比例した、とても小さな弁当箱だった。 「お弁当は自分でつくっているんですか?」 「うん、一応」 「すごいですね」 「そんなことないよ。お弁当をつくるなんてことぐらい、みんなやってることだし」 と言いながら、彼女は弁当箱を開けた。 私も自然と視線を移す。 「へぇ」 思わず感嘆の息が漏れた。 田中キリエの弁当は凄く美味しそうだった。 油物と野菜のバランスがいい上に、見た目の色合いもきちんと考えられていて、一目見てそれが美味しいということがわかるような、料理のお手本みたいな弁当だった。高校生の弁当にありがちな、冷凍食品の類も見当たらない。 「料理、上手なんですね」 お世辞とか抜きに、心からそう思った。 「そんなことないよ」 しかし、田中キリエは困ったように謙遜する。人に褒められるのが苦手なのか、早くその話題から逸れてほしそうに見受けられた。 「そういう鳥島くんは、いつもお昼は購買部で買ってるよね」 「そうですね」 「お弁当にはしないの? 家族の人につくってもらうとか」 「出来ればつくって貰いたいんですけど。残念ながら、家族はみんな朝忙しいんで、弁当をつくる暇なんてとてもとても」 と言いながら、私は妹の鳥島リンのことを考えた。 そういえば、リンちゃんは昼食はどうしているのだろうか。彼女も結構器用な人だし、案外自分で弁当をつくっているのかもしれない。 563 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 24 54 ID KgIpHWOW 「それならさ」 と、田中キリエがもじもじと太股を擦り合わせながら言った。 「……よかったら、私が鳥島くんのお弁当つくってこよっか?」 「えっ?」 思わぬ提案に、私は目をパチクリとさせる。 「そんな、悪いですよ」 まず口から出たのは遠慮だった。 弁当をつくって貰うこと自体は、私としては願ってもない提案ではあったが、朝一番から彼女にそんな労苦をいとわせるのはさすがに気が引けた。 「全っ然っ悪くなんかないよっ!」 しかし田中キリエは即座に否定する。 「私のお弁当をつくるついでだしさ、手間とか全然かからないから全然平気。というか、鳥島くんはそんなの全然気にしなくていいよ。本当、全然全然」 全然を連呼する彼女である。 「ああ、でも、その代わり私と同じメニューになっちゃうけど、それでも大丈夫かな?」 どうやら弁当をつくること自体は、もう決定事項らしい。 「そんなそんな。いやあ、嬉しいなあ。それじゃあ、お願いしてもいいですかね?」 「うんっ」 田中キリエは、満面の笑みで快諾した。 私も嬉しくなって、思わず鼻歌でも歌いたくなった。 誰かにご飯をつくってもらうなんて随分と久しぶりだ。彼女の料理の腕は目の前の弁当で証明済みだし、これから昼食は楽しみになるぞ。 ニコニコと微笑みながら、メロンパンをかじる。 恋人を持つのも、そんなに悪くないかもしれないな。 私は初めて田中キリエの存在に感謝した。 それから、私達は弁当をつつきながら談笑に勤しんだ。 私にとって意外だったのは、田中キリエとの会話が弾んだことだった。 私はどちらかと言えば口ベタなほうなので、正直気まずい雰囲気になるんじゃないかと危惧していたのだが、それもどうやら杞憂に終わったらしい。 彼女はかなりの聞き上手だったのだ。 私の何でもない話にも丁寧に相槌を打ち、それに聞くばかりではなく、自分の意見も織り交ぜて返答するので自然と話が続く。それこそ、会話はボールのようにポンポンと弾んだ。 自分にとって、彼女との会話の持続が一番の懸念材料だったのだけに、私はひどく安心した。 そのせいか、多少気が緩んでいたのかもしれない。 気が付けば、彼女のことを話に持ち出していた。 564 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 26 38 ID KgIpHWOW 「そういえば田中さんって、マエダさんと仲が良いんですよね」 「えっ?」 私の口からマエダカンコの名前が出たのが意外だったのか、田中キリエはただでさえ大きい瞳をさらに大きくさせる。 「マエダさんって、もしかしてカンコちゃんのこと?」 彼女の問いに私が首肯してみせると、田中キリエは嬉しそうに破顔させた。 「うん、カンコちゃんとは凄く仲が良いよ。私にとって、一番の仲良しさんじゃないかな」 一番の仲良しときたか、と私は思った。 実を言うと私は、田中キリエとマエダカンコが本当に友人関係なのかを疑っていた。 二人は見ての通り全くタイプの異なる人間だし、マエダカンコの異常愛もあるから、マエダカンコが一方的に田中キリエに好意を寄せているというセンもあったが、今の証言でそれも消滅した。 「マエダカンコって、漢字ではどう書くんですか?」 いい機会だと思って聞いてみる。 すると、田中キリエは空中に人差し指を掲げて、まるで虚空に浮かぶ用紙にでも書くように、つらつらと文字を連ねていく。ちゃんと鏡文字になっていないあたりの配慮が、実に彼女らしい。 やがて、文字を書き終えた。 “前田かん子” 空中に刻まれたその文字を、私はじっくりと見つめる。 その時初めて、本当の意味で彼女の名を知った気がした。 「彼女とは、何時からの付き合いで?」 私はさらに質問を重ねていく。 「えーっと、かん子ちゃんとは中学校からの付き合いになるのかな。て言っても、最初は全然話したりしなかったんだけどね。けど、あることがきっかけでそれから凄く仲が良くなったんだ」 「そのあることとは具体的に?」 私は身を乗り出すようにして、さらに質問する。 我ながら多少強引過ぎるとも思うが、しかし前田かん子の情報はよく聞いておきたかった。 これから、彼女の存在は嫌でも大きなものになっていく。 けれど、私は前田かん子のことをあまりに知らない。知っていることと言えばせいぜい、田中キリエに抱いている異常なまでの愛情と、胸が大きいことぐらいだ。 クラスの人間に聞くという選択肢もあるが、それでは些か信憑性に欠けた。 噂というのはたいてい何かしらの脚色がされて、妙な尾ヒレがついているからだ。 それに比べ、田中キリエから得られる情報は確実である。 なんせ、前田かん子の一番の友人を自負しているのだ。彼女からなら何の誇張表現の無い、ありのままの情報が得られる筈だ。 565 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 27 48 ID KgIpHWOW 「鳥島くん」 と、耳に届いたか細い声で我に返る。 少しがっつき過ぎたか。 そう思って、すいませんと謝りながら後ろへ身を引いたのだが――今度は逆に、田中キリエが私の方に身を乗り出してきた。 あまりに突然のことだったので、私はそのまま体勢を崩し仰向けに倒れた。彼女はその上に乗っかるような体勢をとって私を見下ろし―― 「ねえ、鳥島くん。どうしてそんなに、かん子ちゃんのことを知りたがるの?」 ――静かに詰問した。 思わず、戦慄する。 田中キリエの顔からはいつの間にか、およそ表情と呼べるものがごっそりと抜け落ちていた。のっぺら坊のような無機質な顔で私を見つめる。 人間ってこんな顔も出来るんだな、と少し感心した。 「大して深い意味はないですよ」 しかし私の態度に変化は無い。 「ただ、前田さんってこの学校じゃ凄い有名人じゃないですか。だから、どんな人なのかなってちょっと気になっただけで他意は無いですよ」 田中キリエは私を見下ろしながら、そうなんだ、と短く言った。そのくせ、彼女はこれっぽっちも納得していないように見えた。 「でも、おかしいなあ」 わざとらしく小首を傾げてみせる。 「どうして鳥島くんは私とかん子ちゃんが友達だってことを知っているのかな?」 「それは――」 この時、私は何故かこの質問に対して妙な間を置いてはいけないと思ってしまった。いや、思わされてしまった。 そうしなければ怪しまれるぞ、と。 なので、気がつけば私の舌は私の意思とは無関係に、自分勝手に言葉を紡ぎだしていた。 「それは、クラスの人達が話しているのを小耳に挟んだんですよ。前田さんと田中さんは仲が良いって――」 あっ。やっべ。 言ってから気付く。今の発言はマズった。 私は慌てて口を塞いだが、もう遅い。 田中キリエも勿論、今の失言を見過ごす訳が無く 「おかしいなあ」 とまた呟いた。 「……何がおかしいんでしょうか?」 私は半ば諦め気味に彼女に問いた。 566 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 29 02 ID KgIpHWOW 「だって私、この学校では私とかん子ちゃんが友達だってことを誰にも言ったことが無いんだもの。だから、クラスの人達がそんな話をしている筈が無いんだけどなあ。 「しかも私、かん子ちゃんに学校で話したことも一度も無いんだよね。かん子ちゃん学校で話しかけられるのスゴイ嫌がるから。だから、もし会っても無視しろってきつく言われてるんだ。 「もちろん、かん子ちゃんのことは鳥島くんにも話したことないよね。ねぇ、鳥島くん。なのに、なんであなたは誰も知らないことを知っているのかな?」 思わず、溜め息を漏らしそうになる。 さあて、どうするかな。 「でもそれって、あくまで田中さんが話していないだけですよね」 意味無いとはわかっているが、一応形ばかりの反論をしてみる。 「あなたたちの話をしていたその生徒が、偶然街中で二人でいるところを目撃したのかもしれないし、それとも中学時代のことを知っていたのかもしれない。例え田中さんが話していなくたって、二人の仲を知る可能性はいくらでもありますよ」 「うん。そうだね」 田中キリエはあっさりと同意してみせる。 「確かにその可能性もあるけど、それだと話がますますおかしくなるんだよね。さっき鳥島くんも言ったように、かん子ちゃんってこの学校じゃスゴイ有名人なんだ。学校の皆が、かん子ちゃんの一挙一動に注目してる。 そんな注目を浴びてるかん子ちゃんに友人が居ることが、しかも同じ学校に通っていることが判明して、何も起こらないと思う? 普通は何らかのアクションが起こる筈だよね。 まず起こるのは、間違いなく話の伝播。話は人から人へとどんどん伝わっていって、やがて学校中に広まる。そうなったら、私も今頃はかん子ちゃん並の有名人になってる筈だよ。あの前田かん子の親友の田中キリエだー、ってね。 「けど、もちろん私は今有名人なんかじゃないし、誰かにかん子ちゃんのことを聞かれたこともない。ということはイコール私とかん子ちゃんが友人だってことは、学校の誰も知らないってことになる。そうだよね?」 だーよね。私もそう思います。 ああ、本当どうしようかな。 「ねぇ、鳥島くん」 彼女に呼ばれて視線を上げる。 眼鏡の奥の田中キリエの瞳は、マジックで塗り潰したみたいに真っ黒で、光が無い。 567 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 31 11 ID KgIpHWOW 「答えてよ。どうして私とかん子ちゃんのことを知っていたのかを」 「…………」 「ねぇ。ねぇ。ねぇ。ねぇ。何か言ってよ」 「…………」 「鳥島くん。黙ってたら私、なーんにもわかんないよ」 「…………」 「どうして? どうして? どうして知ってたの? 鳥島くん?」 「…………」 「何で? 何故? どうして? どのようにして? 何処で? 何時知ったの? 鳥島くん?」 「…………」 「ねぇ、鳥島くん。言ってくれないなら、私――」 「……放課後」 「えっ?」 「放課後、一緒に帰りましょうか」 「ほうかご?」 「はい。放課後です。実を言うと私、一度でいいから女の子と一緒に下校してみたかったんですよ。いやぁ嬉しいなぁ、やっと長年の夢が叶うのかぁ。長かったなぁ」 「鳥島くんっ! 私は――」 「それとも」 私は有無を言わせぬ鋭い瞳で、田中キリエを捉える。 「もしかして、私と一緒に帰るのが嫌だったりします?」 「そっ、そんなことないよ! 私も鳥島くんと一緒に帰りたい!」 「それなら、良かった」 私は安堵したように、ふぅと息を吐いた。 と、そこで屋上に設置されているスピーカーからチャイムの音が鳴った。古くなっているせいか、不自然に音が割れていた。 「チャイムも鳴ったみたいですし、そろそろ教室に戻りましょうか。田中さんは先に帰っていてください。一緒に帰っているところを、誰かに見られるのは不本意でしょう?」 「へっ?あっ、うん。わかった」 「放課後については、後でメールしておきます。それでいいですね?」 「うっ、うん」 「それでは、また放課後に」 私は片手を上げて、ひらひらと手を振った。田中キリエに余計なことを言わせる暇は与えなかった。 彼女は学生カバンを肩に引っ提げると、足早に屋上を出て行った。 と思ったが、最後にドアの前で立ち止まり、私のことを見た。 田中キリエは何も言わない。 私も何も言わない。 私達は黙って見つめ合う。 そして、彼女はやおら屋上を出て行った。 568 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 32 44 ID KgIpHWOW 田中キリエが行ったのを確認してから、私は忌ま忌まし気に言葉を吐き捨てる。 「最悪だ」 本当に最悪だった。 どうして私はあの時、たまたま二人のことをクラスで聞いたなんて変な嘘をついてしまったのだろうか。私があそこで嘘をつく必要など、これっぽっちも無かったのに。 そもそも、私と前田かん子の間に面識があるのはもはや周知の事実なのだ。 田中キリエは学校を休んでいたから知らないだろうけど、前田かん子は一昨日、昼休みに私を拉致したり、放課後に堂々と教室に登場したりと、もはやクラスどころか学校中の人間が私達の関係を認知している。 だから私はあの時、ありのままのことを言っておけばよかったのである。私と前田かん子の関係について。なのに変に焦ってしまった揚句、失言した。こんなくだらないミスをするのは、本当に私らしくなかった。 ミスの原因はわかっていた。 彼女のせいだ。全部あの茶道室の魔女のせいなのだ。彼女に会ってからの私は、本当におかしい。まるで平均台の上を歩いているみたいに、精神が安定しない。 私は腕時計の針を気にしながら、今後のことを考えた。 今回のことで、田中キリエの中に私に対する猜疑心が生まれたのはまず間違いないだろう。 問題はその猜疑心が今後どう動き、私にどのような影響を与えるかである。まあ、上手い方向には動かないと思うけど。とにかく、そのことについては用心しておくに越したことはない。 私はそこで大きく伸びをした。 それなら、さっさと切り替えよう。幸い、覆水盆に返らずって程の失敗でもないし、私ならいくらでも軌道修正出来るさ。次だ次。 反省終了。 私は教室に帰ろうと立ち上がった。 その時。 ポツリ、とコンクリートの地面に黒い染みが出来た。 雨かしら、と思って空を見上げたが、頭上には雲ひとつ無い冬晴れの空が広がっている。 どうやら、地面に落ちたのは私の汗のようだった。 569 :私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo :2010/10/20(水) 12 33 50 ID KgIpHWOW 「おかしいな……なんで汗かいてんだろ」 冬なのに。私は根っからの寒がりだというのに。なのに、どうして汗なんか。 制服の袖で額の汗を拭うが、汗は一向にひかない。 もしかして恐れているのだろうか、と私は思った。 けれど、何に? 最初に思い浮かんだのは、やはり田中キリエだったが、私は直ぐに思いなおす。 彼女だけは有り得ない。 確かに、先程の田中キリエの勢いには目を見張るものがあったが、突き止めてしまえばあんなもの只の嫉妬でしかない。 そりゃ、自分の恋人が他の女のことを聞いたりしてたら、不快になるに決まっている。しかも聞いている相手が他ならぬ恋人自身なのだ。田中キリエが怒るのも無理ないだろう。 だったら、なんだ? なんで、私はこんなに震えているんだ? 「あっ」 そして、私はこの感覚が初めてじゃないことに気づき、さらに震えた。 なんで、今さら? 高校に入ってからはめっきりなくなったじゃないか。もう、終わったと思ったのに。 “やっと、わかったと思ったのに――” くらり、と湯あたりをしたみたいに視界が廻る。そのまま倒れるんじゃないかと思ったが、なんとか踏ん張ってくれた。 私はかぶりを振る。 いや、落ち着け。呑まれるな。 こんなの、気のせいだ。少し考え過ぎてるだけだ。汗をかいてるのだってきっと、さっきのやりとりで疲れただけだ。 だから、落ち着け。私はもう、わかってるんだ。 私は一度深呼吸をしてから、今度こそ屋上を出て行った。その足どりに、不安は見えない。 なのに、教室へ帰る間ずっと、汗は拭っても拭っても際限なく溢れてきた。
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止まらない歯車 赤色の髪をした男――-クラトスはその光景にしばし呆然とする。 手前には誰だか知らない剛感な男が立っている。すでに息はないようだ。 「コングマン・・・さん」 隣の少女――-リアラが呟く。そうか、この男がコングマンという奴か。 そしてその奥にいる二人、見知らぬ男性の上を覆い被るようにして倒れている少女を目にする。 視認すると、すぐさまコングマンの横を通り過ぎ、少女の下へと駆け寄る。リアラもその後に続く。 だがもう一人後ろにいた男、サレだけはこの拷問部屋と思わしき部屋の唯一無二の出入り口から動こうとはしなかった。 「神子よ、大事は無いか」 上半身を起こし、呼びかけるが意識はない。どうやら深い眠りについているだけで、傷らしい傷と言えば肩に見える銃による損傷だけだ。 だが、クラトスもリアラもつい目はもう一人の青年の方へと向いてしまう。その顔は赤や紫に腫れ上がっており、とてもじゃないがまともに見られる状態ではなかった。 だがかろうじて息はある。それだけが唯一の救いか。 「リアラよ、治癒魔法は使えるか」 「あ、ハイ。晶術でよければすこしだけなら・・・」 「ではその青年の手当てを頼む」 言うなりクラトスはコレットを支えている腕とは逆の腕をかざし、コレットの治癒を始めた。 『ファーストエイド』 リアラも両手をかざし、青年へと癒しの力を注ぎこむ。 『ヒール』 緑の癒しの光を発する中、サレだけは不気味な笑みを浮かべていた。 「さて」 言ってサレはそこらじゅうにある壁に入ったヒビを見る。どうやら今さっき出来たものだということは理解した。 かなりの衝撃があったのだろう。もうこの城を支えているのが不思議なくらいの破損率だった。 これじゃ壊してくださいと言っているようなものじゃないか・・・。 サレは一人クスクス笑い、必死になって回復に専念している二人を見やる。 ―――するべきことは決まった。当初の目的とは違うが、ここで葬り去っておくのが得策だろう。 二人に背を向け出口を目指す。外に出て、嵐のフォルスでこの城ごと・・・ 「無駄なことはやめておくのだな」 後ろから、重低な声が降り注ぐ。サレはその足を止めた。 「何のことかな」 サレはとぼける。とっさの計画までもおじゃんにされたら元も子もない。 振り向いてクラトスを見る。だがクラトスはコレットの治癒に専念し、背だけでサレと会話する。 「崩落させたいのならあとにしてくれ。それとも、私たち共々じゃないと満足せぬのか」 その態度に、サレの怒りが沸々と湧き上がってくる。 だがここでキレるような奴はただの三流のやりかただ。 ふっと笑いを零し、気分を落ち着かせる。 「何言ってるのさ。そんなこと僕がするわけ無いだろう?」 「ふん。ならいい」 それからクラトスは一言も話さない。だが治癒魔法を施しているその背中にも、隙という隙はまるで無かった。 なんだこいつは・・・後ろに目でもついているのか。 サレはその腰に携えている剣に手を置き、それ以来動けなかった。 「がはっ!!」 「きゃっ!」 急な呼吸を再開した青年に驚いたリアラだったが、それが確実な生命維持の行為だと判ると安堵の息を漏らす。 今の今までヒューヒューとしか息をしていなかった青年はここにきてやっとまともな呼吸を開始する。 だが逆にリアラの息は乱れ、疲労が蓄積する。加えて、先ほどの放送による精神的ダメージもその比ではなかった。 ―――ロニの名前が耳に入った この拷問部屋にたどり着く少し前にその放送を聞いた。 それによって今が朝の6時だということも確認した。 そしてその後の死亡者発表、それを聞いて足が崩れそうになった。 だけど、隣にクラトスさんとサレさんがいてくれたおかげで、リアラは自分を見失わずに済んだのだ。 今は一刻もカイルに会うために。その信念がリアラの背中を後押ししていた。 だから、ここで倒れるわけにはいかない・・・ここで息絶えようとしている人を見過ごしてはならない。 もう、このゲームの歯車は動き出して後戻りできないのかもしれない。 けど、今生きているのだから今を信じないでどうする。 自分に言い聞かし、再度治癒魔法を青年にかける。充分酸素を取り込んだのだろう。青年の顔色は徐々に血の気を帯び始めていた。 「良かった・・・」 そういい残し、リアラは横にうな垂れる。 一度のヒールでは青年の体力は回復しきれなかったので連続晶術を施したのだが、流石に精神、身体ともに疲労のピークに達したようだった。 「すいません・・・クラトスさん・・・」 コレットの回復が終わったのか、リアラの額に手を置いて優しい声で気分を宥める。 「いや、よくやった。今はゆっくり休むといい」 「ハイ・・・」 そう言ってリアラの瞼は閉じ、しばしの休息を得た。 コレットの傷自体は治ったものの、その体はやけに熱い。 この発熱のしかたは天使化によってほぼ抑えられているようなもの。もしこのまま大きな怪我でもしたらそれこそ天使特有の暴走をするところだっただろう。 発熱自体は時間経過とともに薄れていく。そのことはクラトス自身がよく知っていた。 リアラが回復させた青年も今は穏やかな呼吸の下に眠っている。コレットも熱を発しているので苦しそうではあるがしばらくは安全だろう。 さて、残るは・・・ 「どうやら皆眠ったみたいだねぇ」 もう一人の男、サレがその口を開く。やれやれと言った感じで両手を肩の上まで挙げている。 その言葉を聞くと、クラトスは振り向き立ち上がりサレの下まで歩き出す。 「おや、何の用かな」 「貴様に聞きたいことが山ほどある。着いて来い」 サレの横を通り過ぎ、1階へと足を向ける。 「・・・ちっ」 舌打ちをしてサレは渋々その後ろをついていく。 まぁいい。今はこの男をどうするかだな。 そう思ったサレは剣に手を置いたままクラトスと共に地上へと向かった。 【クレス 生存確認】 状態:瀕死 意識不明 顔の腫れ TP消費(中) 所持品:ダマスクスソード バクショウダケ 忍刀血桜 第一行動方針:不明 第二行動方針:ミント、アーチェ、モリスンと合流 第三行動方針:サレと合流 第四行動方針:仲間と最後まで生き残る 現在位置:E2のイーツ城地下拷問部屋 【コレット 生存確認】 状態:TP半分 発熱 大疲労 所持品:なし(コングマンにより鞄ごと没収) 第一行動方針:取り敢えず生き残る 第二行動方針:クレスを守る 第三行動方針:仲間(Sキャラ及びクレスとサレ)との合流 現在位置:E2のイーツ城地下拷問部屋 【サレ 生存確認】 状態:無傷 所持品:ブロードソード 出刃包丁 第一行動方針:クラトスの始末 第二行動方針:コレット、クレス、クラトス、リアラを利用する 第三行動方針:ティトレイの始末 現在位置:E2の城地下 【リアラ 生存確認】 状態:休眠状態 所持品:ロリポップ ???? ???? 第一行動方針:不明 第二行動方針:カイルを探す 第三行動方針:避けられない戦いは戦う 現在位置:E2の城地下拷問部屋 【クラトス 生存確認】 状態:足元の火傷(小) 所持品:マテリアルブレード(フランベルジュ使用) 第一行動方針:サレへの対処 第二行動方針:カイルを探す 第三行動方針:コレットが気になる 第四行動方針:ロイドが気になる 現在位置:E2の城内部 前 次