約 24,298 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1171.html
4月第1週 今日から高校生。 本が好きだから文芸部に入る。 でも部員はわたし一人。 暇だから部室にあったパソコンで小説でも書く。 恋愛小説。登場人物はわたしと一目ぼれした5組の男子。 「長門好きだ。」 「私も好き。」 あとが続かない。才能のなさに絶望する。 4月第3週 わたしの好きな人のあだ名はキョンというらしい。 本名はわからないけど、それでいいかなと思う。 小説もわかりやすく名前を入れてみる。 キョン「長門、好きだ。」 わたし「わたしも好き。」 ちょっと心が温かくなった気がする。 5月第2週 恋愛小説なのに感情が無い。 ためしに顔文字を入れてみる。 キョン「長門、好きだ!( ゜д ゜) わたし「私も好き(///)」 ちょっとは感情が入ったかな? 6月第2週 いろんな本を読んで私なりに小説の勉強をしてみた。 その場の説明や雰囲気なんかをセリフの合間に入れる、 「地の文」というのが足りなかったみたい。 ちなみに本を図書館で借りてくる時、キョンに偶然助けてもらった。 やっぱり私はキョンのことが・・・・・・ ある日の放課後、わたしが物質で本を読んでいた。、 5組のキョンが訪ねてきた。 いきなり多くな声で言った。 キョン「長門、好きだ!」 わたしは嬉しかた。わたしは言った。 わたし「私も好き。」 いつも読んでいる本たちにちょっと近づけた気がして嬉しい。 7月第1週 今更タイトルが無いのに気付いた。 でもいいタイトルが思いつかない。 しょうがないから「無題」としておく。 あと、見直してみたら誤字があった。 直さなきゃ。 「無題」 ある日の放課後、わたしは部室で本を読んでいた。 5組のキョンが訪ねてきた。 いきなり大きな声で言った。 キョン「長門、好きだ!」 わたしは嬉しかった。わたしは言った。 わたし「私も好き」 9月第1週 夏休みが終わった、久々の部室。 夏休みの間にいっぱい本を読んだ、 いろんな本を読んでみて気付くことが山ほどある。 今までわたしは読んでいなかったみたい。 あんなに多くの本を読んだというのに。 「無題」 ある日の放課後、日は大分傾きかけ、部室の中を赤く染める。 その中で一人私は本を読む。 それが私の部活動。 いつもと変わらぬ一人での部活。 でも今日は少し違った。 突然部室の扉が開き、一人の男子が顔をのぞかせる。 「長門、今時間いいか?」 その男子の名はキョン。私の好きな人。 キョンは周りに誰もいないことを確認して、 私を見つめ、そして決心したように大きな声で私に言う。 「長門、俺はお前のことを好きになってしまった」 嬉しい、夢のような言葉。上手く返事が言葉に出来ない。 やっとのことで返事を口から取り出す。 「私も好き・・・」 そして二人の影は一つになる・・・・・・ 10月第4週 さぁ、この小説を完成させよう。 タイトルはいろいろ迷ったけれど、 「無題」のままに決めた。 「無題」 私には好きな人がいる。 高校生になったばかりの私が、入学式の時に見かけた一人の男子。 ――ひとめぼれ これが「ひとめぼれ」であることに気付いたのは入学式が終わり、HRが終わり、家に帰り、布団に入った頃。 その人の名はキョン。本名は知らない。でも本名以上に知られた名前。 わたしは彼のことをいつも思っていた。 でも彼はわたしのことをどう思っているのだろう? 一度図書館であった時も優しくしてくれた。 でもそれは誰にでも見せる優しさ? 不安―― わたしはその不安を消すために、本の世界へと没頭する。 本の世界なら誰もがヒロインになれる。 でも内心は……このままじゃいけないと思っていた。 誰かにわたしの固く閉まった扉を開けてもらい、 広い世界へと飛び出したいと思っていた。 でもわたしにはその勇気がなかった。 今日も一人私は本を読む。 それが私の部活動。 いつもと変わらぬ一人での部活。 突然部室の扉が開いた一人の男子が顔をのぞかせる。 キョン――? 「長門、今……時間いいか?」 私の好きな人がぐるりとあたりを見渡したかと思うと 私を見つめ、そして決心したように大きな声で私に言った。 一生記憶に残るほどの大切な言葉を。 「長門、俺はお前のことを好きになったみたいだ」 今まで固く閉ざされていた心の扉は開かれた。 その鍵となる夢のような言葉。 上手く言語化できなかったけれど、やっとのことで返事を口からつむぐ。 「私も好き……」 あとはまるで自動的に決められていたかのように、 自然に二人は引き寄せられる。 赤く染まった部室の中で二人の影は一つになった…… 「キス……」 「いきなりだったか?」 「ううん」 本当は遅すぎたくらいだ。 「もう一度」 キスをする。二人の気持ちを形に変える。 「長門、これからはずっと一緒だ。いろんなことをしよう。いろんな所に行こうな」 今度はわたしが主人公。 Fin 書き終わって満足感とひとかけらのむなしさが横切る。 これが現実になったら…… 12月18日 キョンが部室にやってきた。 小説が現実化したかとびっくりしたが、キョンの様子がおかしい。 わたしが宇宙人?世界が変わってしまった? 理解できない。でも何か頭の片隅でチカチカと引っかかるものがある。 わたしは何かを知っている?でも今は何もわからない。 でもキョンの力になりたい。協力したい。 キョンはパソコンを見せて欲しいといった。 わたしの恥ずかしい小説がいっぱい入ったパソコン。 なんとか待ってもらって、古いものは消したけど、 見られやしないかと気が気でない。 結局私の小説は見られなかったけど、キョンも収穫がなかったみたい。 肩を落として帰ろうとするキョンをとっさに呼び止めた。 ここで何も言わずに別れたら一生会えなくなると思ったから。 私はキョンに渡した。白紙の入部届。 少しでも近くにいられるように、少しでも力になれるように。 わずかな期待を込めて。 12月19日 今日もキョンが部室にやってきた。純粋に嬉しい。 しばらく部室を眺めていたけど、キョンが部室にある本に興味を持ってくれた。 本を見ながら私に「小説は書くのか?」と聞いてきた。 心臓が止まるかと思ったけど、つとめて冷静に「読むだけ」とだけ答えた。 でも動揺が隠せられたかは知らない。 その後は微妙な沈黙が部室を覆う、いつもの一人だけの沈黙とは違う、張りつめた沈黙。 でもちょっとだけあたたかな気がする沈黙。 その沈黙を破ったのはキョン。「これ書いたのはお前か?」 『プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後』 確かに私の字に見える。でも何か違う。まるで違う世界のわたしみたい。 キョン君は必死に何かを考えているみたいだった。 わたしは読書に戻ろうとしたができない。 昨日と一緒。このまま放置したらキョンは違う世界に行ってしまう。 帰宅のとき、わたしは最大の勇気を振り絞る。 「来る?」「わたしの家」 その晩は途中邪魔さえ入らなければ最高の夜。 少しだけ距離が近づいた気がした。 少しだけ、少しだけ―― その思いを小説に込めよう。この消えない不安を吐き出すためにも。 「無題」 ある日突然世界が変わる。 そんなこと現実には起こるはずがないと思っていた。 わたしがいつも読んでいる本の中だけの出来事。 そんなことが起こるわけないと思っていた…… わたしが高校生になった時、微かに変わる予感がした。 それはあまりに突然で、でもとてもゆっくりで。 それはとても新鮮で、でもなぜか懐かしい。 不思議な気分で一日が過ぎて、夢の世界へ旅たつ直前。 わたしはわたし自身が何を感じとったのかを理解した。 ひとめぼれ―― そうだわたしは恋をしたんだ。 でもわたしは恋をしたとわかっていても、 それを打ち明けることなど出来なかった。 世界はやはり変わらない…… 例えそれが苦しくても、悲しくても、辛くても。 わたしは世界を変えることが出来なかった。 キョン―― わたしの好きな人の名前。みんなが彼を呼ぶ名前。 それが本名なのか、あだ名なのか。 そんな事はどうでもよくて。 ただ彼のことがわかることが、嬉しかった。 世界が少し変わる気がして。 彼とわたしはたびたび出会う。 通学路で、学校で、グランドで。 でもわたしは遠くから見ているだけだった。 ある日、図書館で出会ったときも、 わたしは何も出来なかった。 でも彼はわたしに優しくしてくれた。 そう優しくしてくれた。 でも。 彼は誰にでも優しい。 その優しさはみんなと同じ。 不安、不安、不安。 わたしの心はかき乱される。 結局私は何も出来ない。 本の中のヒロインにはなれない。 今日もわたしは本を読む。 それがわたしの部活動。 一人で寂しく本を読む。 いつもと変わらぬ部活動。 ヒロイン達にあこがれながら。 決して変わらぬこの世界を生きる。 ある日突然世界が変わる。 そんなこと現実には起こるはずがないと思っていた。 わたしがいつも読んでいる本の中だけの出来事。 そんなことが起こるわけないと思っていた…… 真っ赤になった部室の扉が開く。今まで勝手には開くことのなかった扉。 それは夕日に照らされながら、そこにいる人を包み隠す。 そこにいた人の顔はなかなか見えなくて。 誰かわかったあともなかなか信じられなかった。 キョン――? そこにいる彼はとても不安そうで。迷っているようで。でも力強くて。 ふと、わたしは彼がわたしが欲しかった物を持っている気がした。 「長門」 彼はわたしをまっすぐに見つめる。 「今、時間いいか?」 それはとても力強い声。世界を変える力を持つ声。 「長門、俺は長門のことが好きだ」 ある日突然世界が変わる。 そんなことが現実に起こる。今現実に起こっている。 わたしがいつも読んでいる本の中のようなことが。 そんなことが起こるわけ無いと思っていたのに…… 沈黙が世界を包み込む。 キョンは不安そうにわたしを見つめる。 このままだと――世界は再び元通り。 返事を――言わなきゃ――何を――言うのか――? 「わたしも好き」 やっとの事でそれだけが口からこぼれ落ちる。 キョンはわたしの返事で180度表情が変わった。 心の底から光る笑顔。 そのままキョンはわたしに近づいて…… わたしもキョンに近づいた。 それはまるで磁石のように。 まるで決まった運命のように。 二人は互いに引き寄せられる。 「キスしてもいいか?」 「うん……」 二人の愛が形に変わる。 一生変わらぬその愛を。 世界を変えてよかった。 わたしはこんなにも幸せだ。 キョンとわたしだけが ――キョンとわたしだけが この世界にいる。 キョンはわたしを選んでくれた。 ――キョンはわたしを選んでくれる。 世界を変えて、キョンを手に入れる。 ――世界を変えて――キョンを ――わたしと一緒に ――永遠に キョン――大好き―― ――2月下旬 生徒会の圧力により文芸部の機関誌を作ることになった。 わたしの担当は「幻想ホラー」小説など初めて書く。 でも―― パソコンを開いたら、何かとても懐かしい気がした。 ずっと昔、必死に小説を書くために頭を悩ませた記憶。 存在しないはずの記憶。 わたしは書き始める。 ――わたしは書き始める。 タイトル「無題」…… END
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5271.html
便利さ ☆☆☆☆☆ 冷静さ ☆☆☆☆☆ 胸 ☆ 対主催→対主催→対主催→3人に分裂して融合→暗黒面が生還→宇宙に追放→ゲーム脳→序盤で死亡→月島さんのおかげ→おっぱい星人 涼宮ハルヒシリーズのヒロインであり宇宙人。貧乳+綾○系キャラがうまくマッチしており同作品のヒロイン中で一番人気。 詳細は省くがハルヒの登場人物の中でもかなりチートな能力を有しておりその超能力であらゆる事件を解決するドラえもん的な存在でもある。 おかげでカオスロワの参戦回数はトップクラスである。 一期 三日目から登場。ハクオロと共にSOS団の仲間を探すことに。 特に目立ったことはしていないが、基本的に大体のEDでは生還している。 二期 ここでも対主催。「なんだってー!」で有名なMMRキャラと絡む。 マーダー化したエルルゥを返り討ちにしたところで二期での出番終了。 四期 二日目から登場。源頼朝やドナルドと組み、6/とかがみを捕まえて主催に突き出そうとしている。 禁止事項に触れて仲間共々死んだり復活したり死んだりとなかなかカオスな目にあっている。 最終的にはシャナに対して弾幕攻撃を行い、「飛び道具禁止」に触れて死亡。 五期 10期以外では一番目立っている長門。 こなたと同様ややこしいことに三人登場するが、やはりややこしかったのか融合して後述の真・長門になる。 朝倉さんやディアボロモンをはじめ、長門に萌えている参加者が複数人存在する。 本家長門 原作の長門。いきなり自分が三人いるという状況にも冷静に対処するが、すぐに暗黒長門に殺される。 後にらき☆すたはウザイ同盟穏健派により復活する。 最終的に仲間を殺されたショックで暴走してマーダー化するも、気絶したところを真・長門の融合素材に。 暗黒長門 某動画の「愛しの彼が振り向かない」ネタから生まれたヤンデレの長門。奉仕マーダーとなる。(対象はキョン) ディアボロモンやらき☆すたはウザイ同盟過激派と組み、目障りなハルヒを抹殺しようと企む。 ディアボロモンと組んでなかなかいい雰囲気になりつつマーダー路線に走るが、最終的に真・長門の融g(ry 消失長門 原作「涼宮ハルヒの消失」に登場する長門。 どうしてこうなったのか経緯は省くが、能力の無い普通の大人しい女の子である。 アカギ、朝倉さん、千秋と合流して長く行動を共にした。バトロワ原作の中川典子的なポジションであった。 後に朝倉涼子と結婚する。(女同士なのに)アーマゲモン(元ディアボロモン)戦の最中で朝倉さんの手により他の長門と融合し真・長門になる。 真・長門 1068話で朝倉さんによって三人の長門が一つになった真の長門。らきロワに参加したのはこの子。 本家長門の冷静さや能力と消失長門の人間らしさが一体化したパーフェクト長門である。あれ?暗黒長(ry その後の主催戦でも活躍し最終的に結婚相手(朝倉さん)共々生還。 後に就職してサラリーマンになったりと男扱いされる。 六期 5期ED後の真・長門は序盤に登場し、襲い来る敵を倒しつつやっとこさ自宅に帰るが、自宅にいた岩崎みなみに殺害される。 その後は中身は長門で外見はみなみというカオスな状態で復活されるが即ズガン。 前期で融合されたはずの暗黒長門も何故か登場。ディアボロモンと結婚しつつもキョンのことは諦めていない様子。 最終的にディアボロモンや松岡修造と共に主催との最終決戦に参加する。 七期 真・長門は婦女強姦罪により宇宙に追放される。 後にイナバ物置製作所社長と共に新惑星に戻ろうとするが、途中でカーズに捕食される。 「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」の方のゲーマー長門も参戦。 その能力で同じくゲーマーである有野課長をチート化させるがおいたが過ぎたため首輪に粛清される。 八期 序盤に消失長門が黒化したみくると組むがすぐに用済みと見なされて殺される。 九期 エンドレスエイトでの無限ループつながりでシュタゲの岡部倫太郎やまどマギのほむほむと行動する。 その後月島さんに洗脳される。ズルして人数分の航空券を手に入れてアメリカを脱出。 脱出後はアンゼロット、まどかと行動する。 最終的に蟲毒で赤座あかりにより殺害される。 十期 おっぱい狩りと化してしまった。常にチチをもげ!を歌っている。 最初に5期で結婚してた朝倉さんの胸を文字通りもぐ。んでもって殺害。二番目に影薄同盟の小町の胸を狙うが、黒子と日之影を負傷させるも撃退される。(ついでにGN電池を殺害) チチをもげ!を歌いながら凶行に走る様はどことなくシュールである。キャラ崩壊というレベルではない。 さらに、ハルヒを襲っていたニホンザルを殺害し、彼女を安心させて隙を作ってからチチをもいだりもした。 しかし、黒神めだかと野比玉子のチチをもごうとした所を未知やすえに虐殺されてしまった。 まとめと今後について ご覧の通りトップクラスの参戦回数を誇るが、キャラ崩壊はほとんどなく安定気味(ただし10期を除く)。 だがそれが災いしてかネタにされることはあまりないためたくさん参戦しつつも目立つことはあまりない。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/37.html
キョン『不本意だが、ここは長門をいじめるスレらしい』 長門『そう』 キョン『というわけでいじめたいと思う』 長門『……………』 キョン『ペチャパイ』 長門『………』 キョン『…………』 長門『……私の胸は』 キョン『?』 長門『バストサイズ10から200まで調節可能』 キョン『!!!!!』 古泉『………(////)』 キョン『不本意だが、ここは長門をいじめるスレらしい』 長門『そう』 キョン『というわけでいじめたいと思う』 長門『……………』 キョン『マグロ』 長門『………』 キョン『…………』 長門『……あなたが』 キョン『?』 長門『知らないだけ』 キョン『!!!!!』 古泉『………(////)』 キョン『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』 長門『朝比奈みくる』 みくる『ひゃ!!はい!!??』 長門『私のバストサイズは10から200に調節可能とキョン君に教えたら口を聞いてくれなくなった』 みくる『そ、そうですか…(200って…)』 長門『どうすればいい』 みくる『どうすればって…』 長門『…………』 みくる『最大限に調節して見せてあげれば…彼も男性ですし…』 長門『そう…』 長門『キョン君…』 キョン『!!…………あ、あぁ長門…なんだ』 長門『見て…私の胸』 キョン『!!!…な、なんだいきなり』 長門『いいから』 キョン『………』 キョン『…………(ソーッ)……細!!!!』 長門『バスト10cm、最大限の私…』 キョン『いやいやいやそれはヤバいだろ細すぎだろ!!』 古泉『おや長門さん、いつの間にやらスリムになりましたね』 キョン『スリムとかの問題じゃねえ!!!!てか古泉!長門の肩を叩くな!折れる折れる!!!』 ポキッ 長門『………あ』 キョン『!!!!!』 古泉『おやおや、はっはっはっは』 キョン「・・・(長門をいじめる・・・?相手はあの長門だぞ、ちょっとやそっとのことで動じるとは思えんな)」 長門「・・・」 キョン「・・・(しかし長門がなれていない事なら・・・いじめることも可能!!)」 長門「・・・」 キョン「長門、ちゅーしようぜ!」 長門「・・・」 キョン「なーんちゃって嘘ぴょ~んアバババ」 長門「・・・」 キョン「・・・」 長門「・・・そう」 キョン「ちっくしょー!!!!!!!!!!!!!!!」 キョン「暑いな…」 みくる「そうですね」 キョン「今年の夏は少々頑張りすぎだ…どうなってんだ…」 みくる「いったい今何度あるんでしょうね」 長門「…今のこの部屋の温度は26.…」 キョン「それ以上言うな!余計熱くなる」 長門「……。」 キョン「……。」 みくる「……。」 長門「湿度は…」 キョン「言うな!」 長門「……。」 キョン「……。」 みくる「……。」 長門「…(ウルウル)」 キョン「すまん!悪かった!俺が悪かった!!知りたい!!今の室温湿度がすごく知りたい!!」 長門「…大丈夫。。あなたの言い分は分かる。知れば熱くなる。だから言わない。」 キョン「…そうか。。すまん。。。」 長門「いい…」 ガチャ 古泉「こんにちは。いやぁ今日は死ぬほど熱いですね!室温26.5の湿度60%ですよ!」 ハルヒ「棒を口の中に突っ込んで動かして、最後に白い物を出すのな~んだ?」 長門「フェ………」 ハルヒ「フェ、なに?ほらほら早く言いなさい!!」 長門「………………………」 長門「……うまく言語化できない」 ハルヒ「んー残念!ハミガキよ」 ―休み時間の教室― 長門「か、返してください・・・」 机に座り数人の女子も囲まれた長門が下を向きながらそう小さく呟いた そのグループの中心人物であろう女子の手には長門のいつも読んでいるお気に入りの本が握られていた 女子B「なぁ、お前いつも一人でいて友達いないの?」 女子C「お前がいるとクラスの空気が暗くなるから学校に来ないでくれるかな」 長門「・・・」 クラスメイトは誰一人助けることなく傍観者を決め込んでいる 女子A「はぁ、すぐだんまりで本当に気持ち悪いな」 ホイッ長門の本が窓から捨てられる 長門「ぁ・・・」 女子「ホラホラ、すぐ拾いに行かないと踏まれるぞ(ニヤニヤ」 パタパタ 大急ぎでクラスを出て行く長門をその女子グループはニヤニヤと笑いながら見送った ――放課後の部室にて―― キョン「なあ長門、何読んでるんだ?」 長門「………非ユークリッド空間における一般的――」キョン「すまん。やっぱ答えなくていい」 長門「……」 (数分後) 鶴屋「やっほー長門っち!今日は何読んでるのー?」 長門「…ダレン・s――」鶴屋「っとそれどころじゃなくて!ハルヒっちたちどこにいるか知らない?」 長門「……(体育館を指差す)」 鶴屋「サンキュー!!またねー!」 (数時間後) 古泉「おや、長門さんお一人ですか。せっかく面白い情報を仕入れたのですが ところで長門さんはいつも難しそうな本を読んでおられますね。 漫画などは読んだりしないのですか?中々面白いですよ」 長門「…(何か言いかける」古泉「(キュピーン)この匂い、足音の間隔…キョンたん!!?」 古泉「キョンたーん!!(部室を飛び出し走り出す」 長門「……」 キョン「うわ、古泉!?よせ、引っ付くな!!」 (キョンたちが部室に入ってくる) キョン「なんだ長門、まだ本読んでたのか。面白いか?」 長門「……ユニーク。」キョン「そうか。」 ─部室にて─ 長門は今日も部室の隅でオブジェと化していた。 キョン「よっ、長門。今日も読書か?」 長門「………。」 キョン「思うんだが、長門が地球にある本を見て、何を得る事があるのか?」 長門「ある。」 キョン「ふーん、得る事ってなんだ?」 長門「………。」 キョン「………。」 長門「………。」 キョン「………。」 長門「なに?」 キョン「えっ?いや、得る事…。」 長門「…禁則事項。」 キョン「うざっ!」 長門「………。」 キョン「長門お前はおちんちんついてるか? 長門「ついてない キョン「俺はついてるぞ 長門「不公平 キョン「長門も欲しいか? 長門「コクリ キョン「何が欲しい? 長門「おちんちんほしい キョン「もう一回言ってみろ 長門「おちんちんほしい 長門「あ……」 キョン「どうした」 長門「不公平」 キョン「おちんちんか?」 長門「違う」 キョン「?」 長門「貴方にはおっぱいがない」 キョン「あぁ、確かに」 長門「ほしかったら、おっぱいほs」 キョン「でも長門は胸ないから大丈夫だな」 長門「………」 長門「あ……」 キョン「どうした」 長門「不公平」 キョン「おちんちんか?」 長門「違う」 キョン「?」 長門「貴方は頭が悪い」 キョン「あぁ、確かに」 長門「認めるなら、勉強」 長門「Ta=αTc+(1-α)Tm」 キョン「Ta=αTc+(1-α)Tm……」 主「おっぱいくらいパパがおっきくしてあげるよ~!」 長門「拒否する」 主「そぉ~・・・えっ!何で何で!?」 長門「あの人の愛撫で発育させる」 __,冖__ ,、 __冖__ / // ,. - ―- 、 `,-. -、 ヽ └ァ -- 、 〔/ / _/ ヽ ヽ_ _ノ)_ノ `r=_ノ / / ,.フ^ ー- j __,冖__ ,、 ,へ / ,ィ / 主\ `,-. -、 ヽ く ´ 7_// / _/^ 、`、 ヽ_ _ノ)_ノ \ / / / _ 、,.;j ヽ| n 「 | /. | - =-{_ヽ{ ll || .,ヘ / ,-、 | ,r / ̄ ‐-..,フ! ll ヽ二ノ__ { / ハ `l/ i i _ `ヽ l| _| ゙っ  ̄フ.rソ i l r ,..二 ァ ,ノ |l (,・_,゙ / { ノ l / ´ 〈/ / ll __,冖__ ,、 - ; | ! i { l| `,-. -、 ヽ \ l l ;. l | | ! |l ヽ_ _ノ)_ノ トー-. !. ; |. | ,. -、,...、| l ll __,冖__ ,、 |\/ l ; l i i | l ll `,-. -、 ヽ iヾ l l ; l | { j { |l ヽ_ _ノ)_ノ { |. ゝ ; i ` ー‐- } . n. n. n l | . \ ヽ、__ ノ |! |! |! l | . `ー-`ニ ブ o o o ,へ l . | 長門「あ……」 キョン「またおちんちんか?」 長門「違う」 キョン「?」 長門「谷口がこっち見てる」 谷口「( ゚Д゚ )」 キョン「こっちm…あっ」 キョン・長門「谷口チャック開いてる」 一日目のSOS団ミステリーツアーの予定も終えてSOS団+鶴、国、妹、チャックたちは旅館に戻って来た 旅館につくとどうやら丁度ご飯の用意が出来ているらしい みんなは食堂へ向かった 「……美味しそう」 長門がそう呟く程美味しそうなオカズがテーブルに並んでいる それじゃご飯を盛って……と思ったら茶碗が差し出された どうやら炊飯器に一番近い長門が俗言うお母さん役になってしまった 結局、みんなのおかわりなどを盛っている間にオカズは全て食べられてしまった その日長門は自分の涙をオカズに一人でご飯を食べたという。 END 長門「ハッ・・・!」 キョン「どうした長門?」 突然気付いたように長門は自分の胸をまさぐった 長門「乳房の再構成を忘れた」 キョン「・・・もとから無いだろ」 長門「・・・・・・」 次の日 ハルヒ「ちょっと有希!どうしたのその胸?!みくるちゃんより大きいわよ?!」 長門「・・・チラッ」 キョン「・・・(気にしてたのか・・・)」 みくる「長門さん長門さん」 長門「?」 みくる「どうして長門さんは胸がないんですかぁ?」 長門「!?」 みくる「どうしてですかぁ?」 長門「………個性」 みくる「ププ…ペチャパイが個性?笑わせてくれるですぅ」 長門「………うっ」 みくる「あれれぇ?泣いちゃうんですかぁ?」 長門「泣かない」 みくる「プププ!目に涙が溜まってますよぉ」 長門「……泣かない」 みくる「あ、そういえば昨日キョン君とキスしちゃいました」 長門「!?」 みくる「嘘ですけどねぇ」 長門「……ヒック…ヒック」 みくる「プププ~!泣きやがりましたぁ」 もし、長門が J( A`)し だったならの妄想… J( A`)し「…( ぁぁ、どうせ友達も部員もいないし本でも読もうかな… )」 J( A`)し「…( なんだこれ、全然面白くない…ニーチェ全集…。 )」 J( A`)し「…( っていうか暇だな…入学早々何やってんだ、私… )」 バタン!!! ΣJ( A`)し「…( ちょ…もしかして新入部員さん?! )」 ハルヒ「そこのあなた、この部室暫く借りるわよ! いいわね!」 J( A`)し「…( …ハ? )」 バタン!!! J( A`)し「…( …一体なんだったんだの…? )」 J( ∀`)し「…( …ま、いいか… )」 J( A`)し「読んで…」 キョン「うん」 キョン宅にて キョン「なんだ?この栞…。キメエwww」 公園にて J( A`)し「…(来ない…)」 J( A`)し「飲んで…(話しかけるタイミングが…)」 キョン「ああ。」 一杯目 J( A`)し.。oO(勢い連れ込んでしまったけど…) 二杯目 J( A`)し.。oO(どうしよう…キモイとか思われてるのかな…) 二杯目 J( A`)し.。oO(間が…氏にたい…) キョン「で、話ってなんだ?」 J( A`)し「私と涼みやハルヒは普通の人間ではない…」 キョン「いや、分かってるから。用がないなら帰っていいか?」 J( A`)し「…私、統合思念体のインターフェイス…」 キョン「は?何電波な事言ってるんだ…じゃ、俺帰るから」 J( A`)し.。oO(氏のう、キョン君が帰ったらすぐ氏のう…) コンピュータ研部長(以下コ長)「ノートパソコン4台でどうだ?」 ハルヒ「もし私たちが負けたら、この子あげるから」 J( A`)し「…(ぇっ…ぇ?)」 コ長「いや、それは勘弁してくれ」 ハルヒ「やっぱり長門じゃダメか…みくるちゃんなら?」 コ長「長門よりは数億倍いいが…」 J( A`)し「…(私って…)」 J( ー`)し「情報結合を解除する!!!(決まった…!)」 朝倉「私に勝てる訳無いわ。ここは私の場所だもの。」 キョン「頑張って、あさく…ゲフンゲフン、長門」 J( A`)し「…(でも、キョン君を守らなきゃ…)」 朝倉「死になさい(笑)」 J( A`)し「どひゅっ!!!」 キョン「おい、長門、大丈夫か?」 J( A`)し「…終わった」 朝倉「あら、負けちゃった…」 キョン「!!!長門、お前のことはこの際どうでもいい、朝倉を助けるんだ!!!」 J( A`)し.。oO(それはもう無理だよ、キョン君…) 朝倉「ある意味私の勝ちね(笑)」(消) J( A`)し「…(カマドウマ…)」 古泉「では、倒しちゃえばいいんですね?」 J( A`)し「…うん。」 古泉「長門さん、このくらいの相手なら貴方は要りません。下がっていてください。」 J( A`)し「…(古泉君まで…実力 だけ なら私の方が上なのに…)」 J( A`)し「…(ぁっ!キョン君とみくるちゃんが危ない!!!)」 キョン「!!!斥力場?!!!」 みくる「ひゃーん!!!」 みくる「ありがとう、古泉君…」 古泉「どういたしまして(笑)」 J( A`)し「…」 SOS団の不思議探索で一緒になった長門と、俺は図書館に向かった。 長門は俺が話しかけても キョン「本好きなのか?」 J( A`)し「…割と」 といった感じで会話にならない。 まぁ、友達が居なくてもう三年間も殆ど喋ってないらしいから仕方がないか。 長門は図書館でサルトルとアーサー・C・クラークを借りた。 しかし、俺は見逃さなかった。彼女が二冊の本の間に隠すようにして 「ともだちのつくりかた」と言う本を持っていたところを。 キョン「おい、その本ありえないだろ」 J( A`)し「…ごめん、返す。(でも、本がないと友達作れない…)」 キョン「いや…そういう意味じゃ…」 J( A`)し「…ううん、返す。(やっぱり…変だよね、こういうのって…)」 キョン「…そうか。いや、長門、もし俺でよければ友達になってやるし」 ΣJ( ∀`)し「…そう、貴方と私、友達…友達…初めての…うっぅっ(泣)」 キョン「…(なんか、変に懐かれそうで怖いんだが…)」 J( ∀`)し「…」 ハルヒ「あんた、最近やけに楽しそうね。」 J( ∀`)し「…」 ハルヒ「返事しなさいよ!」 J( ∀`)し「…うん」 ハルヒ「どうしてなの?いつもつまらなさそうにしてるあんたが。」 J( ∀`)し「…キョン君が私の友達になってくれたから」 ハルヒ「ぇ?あいつそんなこと言ったの?全くお人好しなんだから。」 J( ∀`)し「…」 バタン キョン「ハルヒ、居るか?」 ハルヒ「あんた、長門の友達になったの?あのやばいのと?」 キョン「コソコソ…(シーッ、あそこでああ言わないとマジで自殺しそうなオーラが…)」 ハルヒ「コソコソ…(ぁー、確かにやばいもんね。私もちょっとは優しくしてあげた方が良いのかな?)」 J( A`)し「…聞こえてる(私の高すぎる探索能力が憎い…)」 キョン&ハルヒ「!!!耳良過ぎ!!!」 ∥ J( A`)し SOS団のみんな… ( ) 本当はみんなと居る時、 | | | 私とっても楽しかったんだよ… | ありがとう、そしてさようなら… / ̄ 56時間後 J( A`)し「ゲフゲフッ…ゲホゲホゲホ…(そうだった…私…首吊ったくらいじゃ死ねないんだ…)」 ( A`)「かーちゃんは無口だったけど俺には優しかった。 でも、近所のハルヒ婆ちゃんがの葬式の次の日、俺に言ったんだ…。 『任務が終わったから私も消えなきゃ…』ってな…。 よくわかんねーけど、情報結合が解除されるとか言ってたと思う。 頭がどうかなったのかと思ったら、『…冗談、ただの末期癌』って言った。 ちっともただじゃねーよ…。それから一週間かーちゃんは生きた…。 逝く直前『ドクチャン、SOS団のみんな、ありがとう』と言ってた…。 あんなに生意気だった俺や、苛めてたSOS団にありがとうだなんて…。 涙が止まらない。うっぅっ…。」 (上の続き) ( A`)「かーちゃんは無口だったけど俺には優しかった。 でも、近所のハルヒ婆ちゃんがの葬式の次の日、俺に言ったんだ…。 『任務が終わったから私も消えなきゃ…』ってな…。 よくわかんねーけど、情報結合が解除されるとか言ってたと思う。 頭がどうかなったのかと思ったら、『…冗談、ただの末期癌』って言った。 ちっともただじゃねーよ…。それから一週間かーちゃんは生きた…。 逝く直前『ドクチャン、SOS団のみんな、ありがとう』と言ってた…。 あんなに生意気だった俺や、苛めてたSOS団にありがとうだなんて…。 涙が止まらない。うっぅっ…。」 :ねぇ、あのコ暗くない? :っていうか反応したこと見た事ない。 :ケシゴムのカスでもブツけたら反応するんじゃない?w :当たったら10点ねw :頭に乗ったら100点にしない?w :ヤバイ、それウケるwwwwwww 長門:……… 「くらえ、バーカ」 ひゅっ ぱしっ 長門「なんだ、消しゴムか…」 「くらえ、バーカ」 ひゅっ ぱしっ 長門「マッガーレ」 「うわっ!戻ってきて目に入った!」 「口に入った!」 「尿道に入った!」 「アナルだけは!アナルだけは!」 「くらえ、バーカ」 ひゅっ ぱしっ 長門「・・・・サッカーボール?」 「おんみょうだんをくらえー」 ひゅっ 長門「……。」 「エターナル!」 「フォース!」 「ブリザード!」 「あいては死ぬ」 長門「……。」 「長門そういえばお前だけどうして冬服なんだ?」 「そういえば長門さんだけ冬服ですね」 「そうそう、それ気になってたんだけど有希なんで冬服なの?」 「長門さん冬服は嫌いですか~?」 ちょっとした疎外感、別に夏服は必要ない うん、私は大丈夫、別に寂しくなんかない、寂しくなんか…… ……お父さんへ「夏服をください」 「ところで長門。これを見てくれ」 ”これ”とは部室の一角のインターネット専用と化しているパソコンのことだ。 俺はブラウザを開き、あるページを開き長門に見せた。ブラウザのタイトルにはこうある。 長 門 有 希 を い じ め る ス レ(涼宮ハルヒ) 「俺が立てたんだwwwwwwwwwww」 「お前かよwwwwwwwww」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2724.html
Report.25 長門有希の憂鬱 その14 ~喜緑江美里の革命~ わたしの詰問を受ける間も何一つ表情を変えなかった喜緑江美里は、やがて静かに口を開いた。 「ねえ、長門さん。わたし達が『望み』を持つことは、許されない行為だと思いますか?」 江美里の様子がおかしい。 「人間のように、誰かと一緒にいたいと思うことは、異常動作ですか?」 声が震えている。 「無くしてしまったものを取り戻したいと思うことは、ありえないことですか?」 目が潤みだした。 「そのためになら、どんなことでもしてやろうと思うことは、おかしいことですか?」 やがて…… 「泣いているの。」 「ええ、そうです。泣いています。」 彼女はいつもの微笑を顔に貼り付けたまま泣いている。 「わたしが泣くことは、いけないことですか?」 彼女の目からは大粒の涙が零れている。 「ただ観測と事後処理だけしていれば良いのですか?」 涙はその量を増していく。 「それならなぜ、わたしにそのような機能が付いているのですか?」 涙が止まる気配はない。 「泣けば泣くほど、『悲しい』のです。『苦しい』のです。」 時々しゃくり上げながら、 「泣いてはいけないのなら、そのような機能など最初から付けなければ良いのです。」 彼女が涙を流しているところも、 「こんなに『悲しい』なら……こんなに『苦しい』なら……涙など……涙など要らないのに!!」 このように声を張り上げる場面も、初めて見た。 わたし達三体の端末は、揃って『泣く』機能を持っていたことになる。確かにおかしな話。 朝倉涼子なら、まだ分かる。彼女は怪しまれず物理的に涼宮ハルヒに近付くために、人間と同等の動作ができなければならなかった。だから人間の仕草を細かく研究して動作が設定されていた。恐らくわたし達の中で最も人間らしい行動をしていただろう。 しかし、それもあくまで上辺だけ。今なら分かる。実際にはその仕草の基となる、人間の『感情』を理解していないので、恐ろしくその場に不似合いな仕草であっても平気で行った。笑顔のままで人間を殺そうとするなど、通常の人間にはありえない行動。 わたしはどうか。涼宮ハルヒを観測し、入手した情報を情報統合思念体に報告することが、わたしの存在理由。彼女の嗜好を考慮し、わたしは『無口で無表情な読書少女』として設定された。『彼』の言葉を借りれば、『部室の備品』、『置物』と呼ばれるほど、存在感も動作もない個体だった。わたしは論理的に彼女に近付くために、極力観測に影響を与えないような性格付けがなされた。何にも動じることなく、何も動かすことなく、淡々と事実を記録し、報告し続けること。そのような動作を期待されて配置された。 しかし、わたしは壊れた。観測対象の能力を盗み出し、情報統合思念体を消滅させ、世界を改変した。『彼ら』とわたし自身の手によってその異常動作は修正されたが、その件で一時はわたしの処分も検討された。結局処分は、『彼』の恫喝によって見送られることとなり、わたしは未来の自分に対する同期機能を封印する代わりに、より広範な自律行動の権利を得た。 そのようなわたしの監査役に選ばれたのが、江美里。 彼女は、周囲の人間の意識に上ることなく完全に気配を消し、その環境に溶け込む能力に長けている。人間の言葉で表現するなら『隠密』か。 彼女は完璧だった。情報統合思念体の意思に基づき、職務を忠実に全うした。わたし達三体の端末の中で、最も端末らしい個体と言える。……それが当たり前で、わたしと涼子の二体が、あまりに端末らしくないだけかもしれないが。 しかし、わたしは思う。涼宮ハルヒに関わったもの達は、人間非人間生物無生物を問わず、すべての存在が変容している。その事実から考えれば、江美里もまた、変容していることは十分に考えられる。 職務に忠実な、優秀で完璧な端末から、全く別の存在へ。例えば……不幸な事故と心の行き違いで退学せざるを得なくなった友人のために、方々に掛け合って誤解を解き、復学を勝ち取ろうと懸命に地道な活動に取り組む、健気な少女という存在へ。 今目の前にいるのは、圧倒的な権力を前に、たった一つの小さな願いを叶えたいだけと涙する、一人の無力な少女。わたしにはそのように思えた。少なくとも、無限に近いような能力を持つ、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスには思えなかった。 このような時どうすれば良いか、今のわたしには分かりきったこと。わたしは江美里に近付くと、未だ泣き止まない彼女を抱き締めた。 「ひっく、うう……何の真似ですか?」 「人間の真似。」 「なぜこのようなことを……ひっく。」 「あなたも、わたしに同じことをした。」 「確かに、うっ、しました。でもそれは……ほんの戯れで……」 「それは嘘。この方法は、人間にとって、とても効果がある。」 「そうですね……ひっく。でも、わたし達は人間では……」 わたしは、江美里を抱き締める腕に、更に力を入れた。 「この行為に効果があることは、実感として人間から学んだ。わたし達はインターフェイス。人間でも、情報統合思念体でも、どちらでもない。どちらかの流儀だけに合わせる必要は皆無。様々な手段から、最も効果の高い手段を選択するべき。それだけのこと。」 わたしは、このことを人間から強く学んだ。 「わたし達のこのような行動を、『感情』によるものだと仮定するならば、情報統合思念体は、そのような情報の取り扱いには不慣れ。一方人間は、そのような情報の取り扱いには長けている。ならば、人間の用いる手段を採用すれば、効果的。」 「わたしは……わたしは……っ!」 「一つ言っておく。情報統合思念体にとって、人間『ごとき』、取るに足らない存在だった。しかし今や、自律進化の可能性を、一人の人間『ごとき』の能力に託している。しかも、その一人の人間『ごとき』の能力によって、情報統合思念体自身が消滅させられたこともある。」 その能力を盗み出したわたしによって。 「情報統合思念体『ごとき』など、その程度の存在。どちらにも得手不得手がある。人間『ごとき』のように、泣いたり叫んだりすることを恥じる必要はない。人間『ごとき』のように、慰められて泣き止むことを拒む必要はない。それは人間『ごとき』に対する『敗北』を意味しない。極めて自然なこと。合理的なこと。そのような手段を採用しない理由はない。それに、『敗北』という意味では、一人の人間『ごとき』の能力に自らの未来を託し、その能力によって消滅させられ、それを実行した『危険な』端末一体さえ、『鍵』となる人間『ごとき』に恫喝されて処分できないでいる時点で、既に完全に『敗北』している。」 江美里は目を見開いていたが、やがて彼女の身体から力が抜けた。 「ふふ、ふふふ……確かに、とっくの昔に、我々は『敗北』してるんですよね……」 力なく江美里は呟いた。わたしにしがみ付く力さえ残っていない様子。わたしは江美里を抱きかかえながら椅子に座った。 「『我々』ではない。『情報統合思念体』。」 「同じことでしょう?」 「違う。」 わたしは明確に否定した。 「わたしは、わたし。パーソナルネーム長門有希。」 「意味が……分かりません。」 「先ほど言った通りのこと。」 わたしは江美里の髪を撫でていた。全体的に緩やかに波打つ、豊かで艶やかな、美しい髪。彼女の『美しさ』を構成する要素。わたしや涼子とは違う、彼女だけの特徴。その点だけでも、わたし達はそれぞれ違う特徴を持っている。『個性』を持っている。 「同様に、あなたは、あなた。パーソナルネーム喜緑江美里。『情報統合思念体』ではない。」 「何を……言っているのです……」 「あなたも、わたしも、インターフェイス。情報統合思念体と同一の存在ではない。だから、決して情報統合思念体と同様に振舞うことはできないし、その必要もない。」 わたしは江美里の背中に回した腕に力を込めた。 「泣きたいなら、泣けば良い。泣くことができるなら、泣いた方が良い。」 「…………」 「泣くことができなかったわたしは、壊れた。」 「……ふ……っ、くううっ……」 江美里の身体が震える。 「――――っ!」 空気を搾り出すような音から、やがて『人の泣き声』に変わった。 「うああああ――――…………」 顔をくしゃくしゃに歪め、大粒の涙をぼろぼろ零し、力の限り叫ぶように、江美里は泣き出した。彼女の嘆きか、叫びか。あるいはそれは、人間がこの世界に生まれて初めて上げる『産声』のようなものだったのか。彼女はこの世界に創造されてから、初めて声を上げて泣いたのかもしれない。 泣き疲れてしまうまで、彼女の泣き声は続いた。泣き止んだ彼女は、普段の『貼り付けた』微笑とは違う表情をしていた。 「……このように思うことは、間違っていないと言いたいのですね。」 わたしに抱きかかえられながら、いつもの穏やかな口調に戻って、江美里は呟いた。 「大事なもの、無くしてしまったもの……朝倉涼子を取り戻したい、と。」 自らに言い聞かせるように。 「あなたがそのように思うのなら、あなたはそういうふうにできているということ。あなたに責任はない。そのように作ったのは、情報統合思念体。」 「なるほど……確かにそうですね。わたしは情報統合思念体によって作られた、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。もしそのインターフェイスが『嘆き』、『悲しむ』ようなことがあったなら、それは創造主たる情報統合思念体の、不適切な設計が原因と言えますね。」 「あるいは、最初からそのように作られたのかもしれない。」 わたしの言葉に、江美里は目を丸くした。 「わたし達インターフェイスが、泣いたり、笑ったり、するように、ですか?」 最近わたしはそのように考えている。人間で言う『感情』に振り回されて危険な動作をすることも、すべて織り込み済みの設計なのではないかと。 「……ということは、結局わたし達は、情報統合思念体の掌で踊らされているだけということですね。」 江美里は、やや落胆した声で言った。 「もっとも、それでこそインターフェイスなのでしょうけれど。」 「情報統合思念体は、人間の『感情』を理解できない。肉体がないから。その情報を補完するために、肉体を持ったわたし達が作られたのかもしれない。ならば、人間のように『感情』を重視し、時には『感情』に振り回されることこそ、情報統合思念体の『願い』なのかもしれない。だから、」 わたしは江美里の瞳を見つめた。 「あなたは、あなたが思うような行動を取れば、それで良い。」 それがわたし達の存在意義だから。わたし達はそういうふうにできているから。 「ふふふ……不思議なものですね。わたしは長門さんの監査役なのに、その長門さんに教え諭されているのですから。」 江美里は力強くわたしに抱きついてきた。 「そう、そうですよね。そういうふうにわたし達はできているんですよね。それが本当かどうかは、わたし達には検証できませんから、そうだと思って行動するしかないんですよね。」 江美里は、自分に言い聞かせるように、何度も何度も呟いた。彼女には、自らの意思で行動することへの理由付けが必要だった。逆に言えば、その理由さえ与えてしまえば、彼女の自律行動を阻むものはなくなる。 「分かりました。わたしは、わたしが思うように行動することにします。情報統合思念体がすべての考えをわたしに開示しないのですから、一端末としては、備えられた機能に基づき行動するしかありません。もし備えられた機能である『感情』に基づいて行動することが困るというのなら、それはそのようなものを備えさせた、設計者である情報統合思念体自身の責任ですものね。」 江美里は普段の調子を取り戻したように思えた。 「そう考えると、今後の行動方針も立てやすくなります。このように考えられるようになったのも、長門さんの助言のおかげですね。ありがとうございます。」 そう言うと江美里は、晴れ晴れとした実に良い笑顔でわたしに口付けをした。……わたしの唇に。 「……今の行動の意味は。」 「わたしの感謝の気持ちです。」 「……そのような場合は、頬又は掌にするものと把握している。」 「それがわたしの『特別な感情』だと言ったら?」 「……!……」 「ふふふ、冗談ですよ。……もしかして、怒ってますか?」 「……少しだけ。」 「あらあら。それは一体何の『感情』に基づいたものなのでしょうか。」 ………… 「いひゃい、いひゃい、ひゃめへ~」 【痛い、痛い、やめて~】 「……ここはふざける場面ではないと思われる。」 わたしは再び、江美里の口に両手の指を突っ込んでいた。 「また、そのような行為は、軽々しく行うべきではないと理解している。」 「わひゃひまひた~、ひょへんなはひ~、ほうひはへんはは~」 【分かりました~、ごめんなさい~、もうしませんから~】 わたしが指を引き抜くと、江美里はまた頬をさすりながら、 「ふう。でも、わたしが長門さんに対して『感謝の気持ち』を持っていることは本当ですよ。」 そして彼女は、更にこう付け加えた。 「ある『人物』を、何とか取り戻したいと思っていることも、本当です。そして、そのためにならどんなことでもしてやろうと思っていることも。」 なぜわざわざ、このような情報統合思念体への『反乱』とも取れるような報告を行っているのか、また、『反乱』だとしたら、なぜわざわざこちらの手の内を見せるようなことをしているのか、情報統合思念体は不思議に思っているかもしれない。 これにはもちろん理由がある。それは、わたし『達』が、この『反乱』の『成功』を確信しているから。 もしこれが『反乱』ではなく、情報統合思念体にとっての既定事項であるならば、そもそも『失敗』はありえない。その場合、この報告は情報統合思念体の『願い』が叶ったことを意味し、情報統合思念体への『祝辞』となる。 そしてもしこれが本当に『反乱』であるならば、もはやこの『反乱』は情報統合思念体には止められない。手遅れ。わたし達は既に『勝利の鍵』を手にしているから。その場合、この報告は情報統合思念体への『宣戦布告』となり、同時にわたし達の『勝利宣言』となる。 わたし達は、次のようにして『勝利の鍵』を手にした。 江美里が泣いて決意を表明した翌日。SOS団のメールアドレス宛に、初めてメールが届いた。差出人は“RYOKO.A”。 ――検索して見付けました。とりあえずこちらに送ってみます。 ――できれば涼宮さんの直通アドレスを教えてもらえると、嬉しいな。 ――朝倉 涼子 メールヘッダ等は、カナダから送信されたことになっていた。 このメールを読んだ涼宮ハルヒは、大層喜び、早速自分のメールアドレスから返信したことは言うまでもない。そして、そのメールが誰に届いたのかもまた、言うまでもない。 現在、映画の撮影日程と朝倉涼子の帰国日程の調整は、順調に進捗している。 わたし達は確信した。 涼子は呼び覚まされる。『革命』は近い。 ←Report.24|目次|Report.26→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2819.html
Report.25 長門有希の憂鬱 その14 ~喜緑江美里の革命~ わたしの詰問を受ける間も何一つ表情を変えなかった喜緑江美里は、やがて静かに口を開いた。 「ねえ、長門さん。わたし達が『望み』を持つことは、許されない行為だと思いますか?」 江美里の様子がおかしい。 「人間のように、誰かと一緒にいたいと思うことは、異常動作ですか?」 声が震えている。 「無くしてしまったものを取り戻したいと思うことは、ありえないことですか?」 目が潤みだした。 「そのためになら、どんなことでもしてやろうと思うことは、おかしいことですか?」 やがて…… 「泣いているの。」 「ええ、そうです。泣いています。」 彼女はいつもの微笑を顔に貼り付けたまま泣いている。 「わたしが泣くことは、いけないことですか?」 彼女の目からは大粒の涙が零れている。 「ただ観測と事後処理だけしていれば良いのですか?」 涙はその量を増していく。 「それならなぜ、わたしにそのような機能が付いているのですか?」 涙が止まる気配はない。 「泣けば泣くほど、『悲しい』のです。『苦しい』のです。」 時々しゃくり上げながら、 「泣いてはいけないのなら、そのような機能など最初から付けなければ良いのです。」 彼女が涙を流しているところも、 「こんなに『悲しい』なら……こんなに『苦しい』なら……涙など……涙など要らないのに!!」 このように声を張り上げる場面も、初めて見た。 わたし達三体の端末は、揃って『泣く』機能を持っていたことになる。確かにおかしな話。 朝倉涼子なら、まだ分かる。彼女は怪しまれず物理的に涼宮ハルヒに近付くために、人間と同等の動作ができなければならなかった。だから人間の仕草を細かく研究して動作が設定されていた。恐らくわたし達の中で最も人間らしい行動をしていただろう。 しかし、それもあくまで上辺だけ。今なら分かる。実際にはその仕草の基となる、人間の『感情』を理解していないので、恐ろしくその場に不似合いな仕草であっても平気で行った。笑顔のままで人間を殺そうとするなど、通常の人間にはありえない行動。 わたしはどうか。涼宮ハルヒを観測し、入手した情報を情報統合思念体に報告することが、わたしの存在理由。彼女の嗜好を考慮し、わたしは『無口で無表情な読書少女』として設定された。『彼』の言葉を借りれば、『部室の備品』、『置物』と呼ばれるほど、存在感も動作もない個体だった。わたしは論理的に彼女に近付くために、極力観測に影響を与えないような性格付けがなされた。何にも動じることなく、何も動かすことなく、淡々と事実を記録し、報告し続けること。そのような動作を期待されて配置された。 しかし、わたしは壊れた。観測対象の能力を盗み出し、情報統合思念体を消滅させ、世界を改変した。『彼ら』とわたし自身の手によってその異常動作は修正されたが、その件で一時はわたしの処分も検討された。結局処分は、『彼』の恫喝によって見送られることとなり、わたしは未来の自分に対する同期機能を封印する代わりに、より広範な自律行動の権利を得た。 そのようなわたしの監査役に選ばれたのが、江美里。 彼女は、周囲の人間の意識に上ることなく完全に気配を消し、その環境に溶け込む能力に長けている。人間の言葉で表現するなら『隠密』か。 彼女は完璧だった。情報統合思念体の意思に基づき、職務を忠実に全うした。わたし達三体の端末の中で、最も端末らしい個体と言える。……それが当たり前で、わたしと涼子の二体が、あまりに端末らしくないだけかもしれないが。 しかし、わたしは思う。涼宮ハルヒに関わったもの達は、人間非人間生物無生物を問わず、すべての存在が変容している。その事実から考えれば、江美里もまた、変容していることは十分に考えられる。 職務に忠実な、優秀で完璧な端末から、全く別の存在へ。例えば……不幸な事故と心の行き違いで退学せざるを得なくなった友人のために、方々に掛け合って誤解を解き、復学を勝ち取ろうと懸命に地道な活動に取り組む、健気な少女という存在へ。 今目の前にいるのは、圧倒的な権力を前に、たった一つの小さな願いを叶えたいだけと涙する、一人の無力な少女。わたしにはそのように思えた。少なくとも、無限に近いような能力を持つ、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスには思えなかった。 このような時どうすれば良いか、今のわたしには分かりきったこと。わたしは江美里に近付くと、未だ泣き止まない彼女を抱き締めた。 「ひっく、うう……何の真似ですか?」 「人間の真似。」 「なぜこのようなことを……ひっく。」 「あなたも、わたしに同じことをした。」 「確かに、うっ、しました。でもそれは……ほんの戯れで……」 「それは嘘。この方法は、人間にとって、とても効果がある。」 「そうですね……ひっく。でも、わたし達は人間では……」 わたしは、江美里を抱き締める腕に、更に力を入れた。 「この行為に効果があることは、実感として人間から学んだ。わたし達はインターフェイス。人間でも、情報統合思念体でも、どちらでもない。どちらかの流儀だけに合わせる必要は皆無。様々な手段から、最も効果の高い手段を選択するべき。それだけのこと。」 わたしは、このことを人間から強く学んだ。 「わたし達のこのような行動を、『感情』によるものだと仮定するならば、情報統合思念体は、そのような情報の取り扱いには不慣れ。一方人間は、そのような情報の取り扱いには長けている。ならば、人間の用いる手段を採用すれば、効果的。」 「わたしは……わたしは……っ!」 「一つ言っておく。情報統合思念体にとって、人間『ごとき』、取るに足らない存在だった。しかし今や、自律進化の可能性を、一人の人間『ごとき』の能力に託している。しかも、その一人の人間『ごとき』の能力によって、情報統合思念体自身が消滅させられたこともある。」 その能力を盗み出したわたしによって。 「情報統合思念体『ごとき』など、その程度の存在。どちらにも得手不得手がある。人間『ごとき』のように、泣いたり叫んだりすることを恥じる必要はない。人間『ごとき』のように、慰められて泣き止むことを拒む必要はない。それは人間『ごとき』に対する『敗北』を意味しない。極めて自然なこと。合理的なこと。そのような手段を採用しない理由はない。それに、『敗北』という意味では、一人の人間『ごとき』の能力に自らの未来を託し、その能力によって消滅させられ、それを実行した『危険な』端末一体さえ、『鍵』となる人間『ごとき』に恫喝されて処分できないでいる時点で、既に完全に『敗北』している。」 江美里は目を見開いていたが、やがて彼女の身体から力が抜けた。 「ふふ、ふふふ……確かに、とっくの昔に、我々は『敗北』してるんですよね……」 力なく江美里は呟いた。わたしにしがみ付く力さえ残っていない様子。わたしは江美里を抱きかかえながら椅子に座った。 「『我々』ではない。『情報統合思念体』。」 「同じことでしょう?」 「違う。」 わたしは明確に否定した。 「わたしは、わたし。パーソナルネーム長門有希。」 「意味が……分かりません。」 「先ほど言った通りのこと。」 わたしは江美里の髪を撫でていた。全体的に緩やかに波打つ、豊かで艶やかな、美しい髪。彼女の『美しさ』を構成する要素。わたしや涼子とは違う、彼女だけの特徴。その点だけでも、わたし達はそれぞれ違う特徴を持っている。『個性』を持っている。 「同様に、あなたは、あなた。パーソナルネーム喜緑江美里。『情報統合思念体』ではない。」 「何を……言っているのです……」 「あなたも、わたしも、インターフェイス。情報統合思念体と同一の存在ではない。だから、決して情報統合思念体と同様に振舞うことはできないし、その必要もない。」 わたしは江美里の背中に回した腕に力を込めた。 「泣きたいなら、泣けば良い。泣くことができるなら、泣いた方が良い。」 「…………」 「泣くことができなかったわたしは、壊れた。」 「……ふ……っ、くううっ……」 江美里の身体が震える。 「――――っ!」 空気を搾り出すような音から、やがて『人の泣き声』に変わった。 「うああああ――――…………」 顔をくしゃくしゃに歪め、大粒の涙をぼろぼろ零し、力の限り叫ぶように、江美里は泣き出した。彼女の嘆きか、叫びか。あるいはそれは、人間がこの世界に生まれて初めて上げる『産声』のようなものだったのか。彼女はこの世界に創造されてから、初めて声を上げて泣いたのかもしれない。 泣き疲れてしまうまで、彼女の泣き声は続いた。泣き止んだ彼女は、普段の『貼り付けた』微笑とは違う表情をしていた。 「……このように思うことは、間違っていないと言いたいのですね。」 わたしに抱きかかえられながら、いつもの穏やかな口調に戻って、江美里は呟いた。 「大事なもの、無くしてしまったもの……朝倉涼子を取り戻したい、と。」 自らに言い聞かせるように。 「あなたがそのように思うのなら、あなたはそういうふうにできているということ。あなたに責任はない。そのように作ったのは、情報統合思念体。」 「なるほど……確かにそうですね。わたしは情報統合思念体によって作られた、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。もしそのインターフェイスが『嘆き』、『悲しむ』ようなことがあったなら、それは創造主たる情報統合思念体の、不適切な設計が原因と言えますね。」 「あるいは、最初からそのように作られたのかもしれない。」 わたしの言葉に、江美里は目を丸くした。 「わたし達インターフェイスが、泣いたり、笑ったり、するように、ですか?」 最近わたしはそのように考えている。人間で言う『感情』に振り回されて危険な動作をすることも、すべて織り込み済みの設計なのではないかと。 「……ということは、結局わたし達は、情報統合思念体の掌で踊らされているだけということですね。」 江美里は、やや落胆した声で言った。 「もっとも、それでこそインターフェイスなのでしょうけれど。」 「情報統合思念体は、人間の『感情』を理解できない。肉体がないから。その情報を補完するために、肉体を持ったわたし達が作られたのかもしれない。ならば、人間のように『感情』を重視し、時には『感情』に振り回されることこそ、情報統合思念体の『願い』なのかもしれない。だから、」 わたしは江美里の瞳を見つめた。 「あなたは、あなたが思うような行動を取れば、それで良い。」 それがわたし達の存在意義だから。わたし達はそういうふうにできているから。 「ふふふ……不思議なものですね。わたしは長門さんの監査役なのに、その長門さんに教え諭されているのですから。」 江美里は力強くわたしに抱きついてきた。 「そう、そうですよね。そういうふうにわたし達はできているんですよね。それが本当かどうかは、わたし達には検証できませんから、そうだと思って行動するしかないんですよね。」 江美里は、自分に言い聞かせるように、何度も何度も呟いた。彼女には、自らの意思で行動することへの理由付けが必要だった。逆に言えば、その理由さえ与えてしまえば、彼女の自律行動を阻むものはなくなる。 「分かりました。わたしは、わたしが思うように行動することにします。情報統合思念体がすべての考えをわたしに開示しないのですから、一端末としては、備えられた機能に基づき行動するしかありません。もし備えられた機能である『感情』に基づいて行動することが困るというのなら、それはそのようなものを備えさせた、設計者である情報統合思念体自身の責任ですものね。」 江美里は普段の調子を取り戻したように思えた。 「そう考えると、今後の行動方針も立てやすくなります。このように考えられるようになったのも、長門さんの助言のおかげですね。ありがとうございます。」 そう言うと江美里は、晴れ晴れとした実に良い笑顔でわたしに口付けをした。……わたしの唇に。 「……今の行動の意味は。」 「わたしの感謝の気持ちです。」 「……そのような場合は、頬又は掌にするものと把握している。」 「それがわたしの『特別な感情』だと言ったら?」 「……!……」 「ふふふ、冗談ですよ。……もしかして、怒ってますか?」 「……少しだけ。」 「あらあら。それは一体何の『感情』に基づいたものなのでしょうか。」 ………… 「いひゃい、いひゃい、ひゃめへ~」 【痛い、痛い、やめて~】 「……ここはふざける場面ではないと思われる。」 わたしは再び、江美里の口に両手の指を突っ込んでいた。 「また、そのような行為は、軽々しく行うべきではないと理解している。」 「わひゃひまひた~、ひょへんなはひ~、ほうひはへんはは~」 【分かりました~、ごめんなさい~、もうしませんから~】 わたしが指を引き抜くと、江美里はまた頬をさすりながら、 「ふう。でも、わたしが長門さんに対して『感謝の気持ち』を持っていることは本当ですよ。」 そして彼女は、更にこう付け加えた。 「ある『人物』を、何とか取り戻したいと思っていることも、本当です。そして、そのためにならどんなことでもしてやろうと思っていることも。」 なぜわざわざ、このような情報統合思念体への『反乱』とも取れるような報告を行っているのか、また、『反乱』だとしたら、なぜわざわざこちらの手の内を見せるようなことをしているのか、情報統合思念体は不思議に思っているかもしれない。 これにはもちろん理由がある。それは、わたし『達』が、この『反乱』の『成功』を確信しているから。 もしこれが『反乱』ではなく、情報統合思念体にとっての既定事項であるならば、そもそも『失敗』はありえない。その場合、この報告は情報統合思念体の『願い』が叶ったことを意味し、情報統合思念体への『祝辞』となる。 そしてもしこれが本当に『反乱』であるならば、もはやこの『反乱』は情報統合思念体には止められない。手遅れ。わたし達は既に『勝利の鍵』を手にしているから。その場合、この報告は情報統合思念体への『宣戦布告』となり、同時にわたし達の『勝利宣言』となる。 わたし達は、次のようにして『勝利の鍵』を手にした。 江美里が泣いて決意を表明した翌日。SOS団のメールアドレス宛に、初めてメールが届いた。差出人は“RYOKO.A”。 ――検索して見付けました。とりあえずこちらに送ってみます。 ――できれば涼宮さんの直通アドレスを教えてもらえると、嬉しいな。 ――朝倉 涼子 メールヘッダ等は、カナダから送信されたことになっていた。 このメールを読んだ涼宮ハルヒは、大層喜び、早速自分のメールアドレスから返信したことは言うまでもない。そして、そのメールが誰に届いたのかもまた、言うまでもない。 現在、映画の撮影日程と朝倉涼子の帰国日程の調整は、順調に進捗している。 わたし達は確信した。 涼子は呼び覚まされる。『革命』は近い。 ←Report.24|目次|Report.26→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/36.html
ハルヒ「いちぃ!」 キョン「に」 みくる「さ、さぁ~ん」 長門「………よん」 古泉「ダウト」 長門「………」 古泉「では私から。ご」 ハルヒ「ろくぅ!」 キョン「なな」 みくる「は、はちぃ」 長門「………きゅう」 古泉「ダウト。9は私が4枚持ってるんです」 長門「………」 古泉「では、じゅう」 長門「ダウト………」 古泉「残念。10です」 長門「………」 古泉「ふぅ・・・さすがに手が痛くなってきましたね」 そう、古泉は部室で長門におしりペンペンをしていたのだ。しかし古泉の右手も真っ赤、さすがに疲れてきたようである。 古泉「しかたない、次のお仕置きはこれです」 そういうと古泉は長門の上の制服も脱がし、大の字に床に寝かせ、両腕をとじられないように縛った 古泉「キョン君も入ってきてください」 キョン「おっおう・・・」 しかめ面したキョンが部室に入ってくる 長門「いや、みないで」 キョン「・・・。」 古泉「さて、次のお仕置きは、レディーが一番恥ずかしがる、脇の下クンカクンカです!!」 長門「・・・そんなっ!!」 キョン「ええっ!!?」 そういうと古泉は、動けない長門に近づき、脇の下に鼻をあてはじめた 古泉「クンカクンカ!クンカクンカ!いいですね~この少し酸味がかったすっぱい臭い!!最高です」 キョン「・・・お・・・おい古泉」 古泉「さあ、あなたも早く!!クンカクンカです!クンカクンカですよ~!!」 キョン「く・・・くんか・・くんか。くんかくんか」 古泉「いいでしょう~?いいでしょう~?クンカクンカ!クンカクンカ最高です!!!」 長門「・・・いや・・・やめて・・・」 長門へのお仕置きはまだ続くのであった キョン「うわぁぁぁぁああ!誰だマイマヨネーズにこんにゃくゼリー入れたバカは!」 長門「…(布教活動)」 キョン「長門よ」 長門「・・・何」 キョン「その本ちょっと貸してみろ」 長門「・・・」 キョン「ほらいいから貸せ」 長門「・・・あ」 キョン「(ビリビリビリ)」 長門「・・・」 キョン「続きが読みたいなら図書館まで行ってこいよ。つーか今行ってこい。邪魔だから」 長門「・・・」 キョン「じゃあ俺は適当に本を見て待ってるから。」 こくりと頷く長門。何となく隠れて観察し始める俺。 …お、借りる本を決めたみたいだ。 隠れながら様子をみ続ける。 とてとてとて とてとてとて とてとてとて… ?何で長門は走って… とぼとぼ… 急に落ち込ん…………あああああ俺を探してるんじゃないかっ!! キョン「(がちゃ)」 長門「(さっ)」 キョン「ん?今なんか隠さなかったか?」 長門「・・・何も」 キョン「嘘つけ。見せてみろ」 長門「・・・」 キョン「眼鏡?なんだ珍しいな。やっぱりかけた方がよく見えるか?」 長門「(コク)」 キョン「だったらかければいいじゃないか」 長門「・・・あなたが眼鏡はかけない方が可愛いって言ったから」 長門「…………」 キョン「今日は二人だけ……さてどうしたものか」 長門「…………」 キョン「…………」 長門「…………」 ぴとっ キョン「な、な何だ長門!?突然くっついてきて!」 長門「…………ちょっとだけ」 すりっ キョン「……これだけだぞ」 長門「……(コクッ)」 ぎゅっ 女子A「ねー、しってる?長門さんって殴っても全然痛がらないのよ??」 男子A「へーマジ?俺今ストレスたまってるんだよね~、試していい?」 女子A「ぜ~んぜんOKでしょ、ね!長門さん」 長門「・・・・・」 女子A「OKだってさ、ほら」 男子A「でもやっぱ長門にはできればさわりたくねぇーなー!!根暗がうつるし」 女子B「きゃはは、それいえてる~」 男子A「でも一応蹴っとくか!おら」 椅子から転げ落ちる長門 女子C「きゃははは!ホントに痛がってないね~、手加減してあげたの??やさしい!」 男子A「まぁな、でもホントに痛がらねーのな。なんかムカツかね?」 女子B「ムカツクムカツク」 椅子を直してもう一度座ろうとする長門 男子A「おっら!」 机ごと蹴られて悲惨な状態の長門 男子A「マジウゼー!!死ねばいいのにな!!」 女子A「ちょっと、やりすぎじゃない!?でも、長門だしいっか」 女子B「いこいこ」 女子C「でさでさ、さっきのクレープ屋のはなしなんだけど~―」 長門「・・・・・・・ほろり」 長門「・・・・・・・・」 ペタペタペタ キョン「どうだ長門、怖いか?」 ペタペタペタ ハルヒ「全くいい気味だわ」 ペタペタペタ 長門「・・・・・・・・」 ペタペタペタ・・・・・・ 古泉「遅れてスミマセン。こんにゃくたらし棒の修復に時間がかかってしまいました。」 ハルヒ「ちょっと有希!胸のサイズ測らせなさいよ!」 長門「・・・・恥ずかしい」 みくる「測りましょうよ~私も無理やり測られたんですよ」 ハルヒ「いいじゃない!こうなったら実力行使よ!」 長門「・・・・ダメ」 ハルヒ「いいからいいから♪みくるちゃんメジャーもってきて!」 長門「・・・・無理」 ハルヒ「有希も諦めなさい!」 長門「・・・・めろ」 ハルヒ「さ~て測るわよー!」 長門「や め ろ !!!!」 ハルヒ・みくる「!!」 説明しよう 修学旅行等で女子が胸のサイズについて話し出し、貧乳の人を馬鹿にして盛り上がっていたら その人がいきなりキレだしてわきあいあいしていた空気が一気に気まずいものになってしまった 今まさにそれと同じ現象が起こったのだ!! ハルヒ・みくる「すみませんでした・・・・」 VS朝倉の後 キョン「大丈夫か長門?!」 長門「大丈夫・・・ハッ」 しまったという風に股間をまさぐる長門 長門「陰毛の再構成を忘れた」 キョン「そんなことか・・・それにパイパンの方がいいと思うぞ。俺はパイパン属性なんだ。」 長門「パイパン属性って?」 キョン「いや気にしないでくれ。俺の妄言だ。」 『涼宮ハルヒの陰毛』 ハルヒ「あたしとした事が重大なことを忘れていたわ」 キョン「何の話だ」 ハルヒ「SOS団員の身元調査よ!」 キョン・みくる・古泉「!!」 長門「・・・」 ハルヒ「DNA鑑定するから、明日までに各自陰毛を提出しなさい!わかったわね!?」 キョン「ちょ、おまえn」 みくる「ふ・・・!」 古泉「涼宮s」 長門「無理」 長門「パイパン」 キョン「あれ、ケガしてるぞ、大丈夫か?」 長門「うん」 キョン「痛くないのか・・・・?」 長門「・・・」 キョン「ケガ、、一瞬で治せないのか?」 長門「治せる、けど沢山の人に見られたこの程度の事実を情報操作はしないようにしている。」 キョン「そうか、、、」 キョン「でもお前ほどの者がどうやったらケガするんだ?」 キョン「いじめぐらいしかねーなーw」 長門「・・・・」 キョン「でも長門をいじめるなんて無理な話だな(笑」 長門「・・・・」 キョン「もし虐められたり何かあったら言ってこいよ、助けてやるぜ」 長門「そう。」 キョン(あれ、長門はなんで泣いてるんだ?まぁいいか。 あぁ、朝比奈さんをデート誘うのいつにするかな~) キョン「そうそう、この店スイーツが美味いんだってよ。」 長門「そう・・・。」 キョン「今度の日曜SOS団のみんなで行こうか。」 長門はゆっくりと首を横に振った キョン「あれ、甘いものとか嫌いなのか?」 長門「別に・・・・。」 キョン「他になんか用事でもあるのか?」 長門「別に・・・・。」 キョン「じゃあどうして?」 長門「スイーツは食べたいけど、涼宮ハルヒと仲良くしてるあなたを見るのは辛い・・・・。」 キョン「長門・・・・。」 キョンはそう呟くとゆっくりと長門のヴァギナに己のペニスを挿入した。 ふと思い付き、長門に嫌がらせをする事にした。 いつものように本を読んでいる長門。まずは読書の邪魔だ。 キョン「長門。買い物に付き合ってくれないか。」 承諾した長門。本を閉じ鞄にしまった。 キョン「これなんかはどうだ?」 長門「推奨しない。中の構造が雑で長くもたない。」 …つい買い物に集中して嫌がらせを忘れていた。不覚だ。 帰り道、不審者が現れないよう長門につきまとう。その間質問責めをする。 返答を考慮して次の嫌がらせを考える。次に嫌がらせをする日が楽しみだ。 長門「だから私がそうs…」 キョン「…ん?」 ハルヒ「有希?」 長門「……。」 ハルヒ「ちょっと有希!! 大丈夫!!?」 古泉「どうされましたか?」 キョン「わからん…長門が急に喋らな…」 ハルヒ「息してないわ…。呼吸してない!!!」 みくる「えぇ!!?」 キョン「長門!! どうしたんだ長門!!」 ハルヒ「古泉君!早く救急車!!!」 古泉「はい!」 みくる「うぅぅ~長門さん……」 キョン(どういう事だ…情報思念体から何かが…) キョン(ん? 長門の背中に…フタ? 何だこれ) パカッ キョン「………朝比奈さん。」 みくる「はいっ!!?」 キョン「単3電池ありませんか?」 先週のテストでとうとう赤点を取ってしまった俺は放課後、性徒指導室に呼び出されていた。 岡部「最近のお前はまるでなってない、特に涼宮ハルヒとかいう女子と関わってから特にな… なんだ、この成績は。学校をバカにしているのか?」 別にバカにしているつもりはないのだが… キョン「はぁ…」 岡部「たくっ、これはお前のために言っているんだ。SOS団などといういかがわしいものは辞めてハンドボール部に入りなさい。いいぞハンドボールは!むはぁw」 そういうと岡部おもむろに俺の大事なところをわしづかみした。 岡部「おやwこんなとこにボールがwwwほれほれほ~れwww」 キョン「うぁ、や、ん、やめ、や、キモヂィィイィ先生キモヂィィイィよぉおおお」 俺はハンドボール部に入部した。生徒と教師、男と漢、そんな障害なんて関係無い。 なぜなら――俺は岡部を愛しているからだ―― special end …何で今日は長門以外来ないんだよ!? キョン「…暇だな」 長門「そう」 キョン「…(チンコで頬をつんつん)」 長門「…(ぺら)」 つんつん 長門「…」 つんつん…あ、こっち向いた。 長門「…(微妙に困った表情)」 俺は、ずっと彼女を見つめている。 いつもいつも、指定の席で本を読んでいる彼女。 何故だろう、俺は彼女を抱きしめてあげたくなる。 その小さな体を、優しく包み込みたくなる。 もはや涼宮ハルヒの事など、どうでもよかった。 俺はただ、彼女を守りたい。 彼女と一緒にいたい。 いつか、俺のこの想いが伝わるといいのだが…… キョン「おい古泉。何言ってんだ」 小泉「僕も、そろそろ新しいキャラに変えた方がいいかと思いまして」 文化祭も無事に終了して三週間程。いつも通りに部室に来た時の事だ。 「淡ーいゆーめーのー」 ん? 「うつーくしさーをーえがーきながらー」 何だ?ハルヒが歌っているのか? 特に深く考えずドアを開けた。 長門「き、ず、あ、とーなぞ………」 キョン「…。」 長門「………る……。」 …もしかしてあの場で歌いたかったのだろうか。 キョン「いい声だな。」 と声をかけると急に長門は口を激しく動かし消えた。 長門の声が頭の中でリピートされる。 キョン「…大きい声も出せたんだな。」 …二人きりになったら聞かせて欲しいと頼み込もう。そう思った。 キョン「暑いな。」 長門「……(コクリ)……」 キョン「初夏の足音が聞こえるな。」 長門「初夏に足音はない。」 キョン「………笑うところか?」 長門「笑うところ。」 キョン「……」 長門「……」 長門「グフとは違うのだよグフとは」 キョン「……」 キョン「……フグ」 長門「……刺身こんにゃく」 長門「フグとは違うのだよフグとは」 キョン「……」 長門「・・・・・にょろ」 キョン「・・・・・・・」 長門「・・・・・めがっさ羞恥」 キョン「・・・・・・・」 キョン「…」 長門「…」 キョン「…」 長門「ピーピーピーバッテリーが残りわずかです。充電して下さい。」 キョン「…」 長門「…」 キョン「…」 長門「…帰る。」 キョン「あぁ…それが賢明だ。」 長門「…」 古泉「あの巨人のことを我々は《海人》とよんでいます。」 キョン「…」 古泉「《海人》は涼宮さんの家の夕飯に魚料理が出ると出現します」 キョン「……」 古泉「放っておくと世界のお魚が乱獲により絶滅してしまうでしょう」 キョン「………」 古泉「ですから我々機関、【お魚君の芸風を見守る会】は《海人》と血で血を洗う戦いをしているのです」 キョン「…………へぇ」 キョン「なんだありゃ!?」 古泉「カマドウマですね」 キョン「見ればわかる!」 長門「あの中に部長氏はいる」 古泉「なるほど、つまりあれを倒せば部長氏を取り戻せる……幸いここでは不完全ながらも僕の力が使えるみたいですしね。」 キョン「ならはやくやれ!」 古泉はいつものうさんくさい笑顔を俺に向け。股間からニューナンブを取り出すとカマドウマに向き直り叫んだ。 古泉「ふんもっふ!」 古泉が例の赤玉(ゴルフボール大)をニューナンブから発射し見事カマドウマに命中した。 キョン「ふもっふもふもふ(やったか)!?」 古泉「………ヤッチマッタorz」 キョン「俺眼鏡属性無いし。」 長門「眼鏡属性って何?」 長門「眼鏡萌のことだ。まあ俺は、眼鏡かけてない長門の方が百万倍萌えるがな」 長門「そう」 キョン「………」 長門「………」 長門「・・・・・・・」 キョン「・・・・・・・なぁ」 長門「・・・・なに」 キョン「これを見てくれ」 長門「うああああああああああああああああああああああああ」 キョン「よお長門」 長門「なぜ・・・あなたがここに」 キョン「お前こそ何やってんだ」 長門「・・・散歩」 キョン「日本語でおk」 長門「ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 長門「眼鏡が…ない。眼鏡の捜索を開始する。」 o-o、 ( A`) メガネメガネ… ノ ノ)_ キョン「長門……頭だ、頭。」 長門「頭……目標変更。」 o-o、 ( A`) アタマアタマ… ノ ノ)_ キョン「……。」 ぷ~ん キョン「・・・・・・・・」 長門「・・・・・・・・」 パシッ! キョン「くそっ!」 長門「・・・・・・・・」 ぷ~ん キョン「・・・・・・・・」 長門「・・・・・・・・」 ぷ~ん キョン「・・・・・・・・」 長門「・・・・・・かゆい(ポリポリ)」 キョン「なあ長門。幽霊が実在するか解るか?」 長門「…。(じー)」 長門、なんで俺の肩を見る。 長門「知らない方が良い。」 キョン「…そうなのか。」 長門「そう。」 キョン「…。」 長門「…。」 キョン「なあ長門、何読んでんだ?」 長門「『膚の下』。『あなたの魂にやすらぎあれ』『帝王の殻』から続く、戦闘妖精雪風でおなじみのハードSF作家・神林長平の火星三部作の最終巻で、時系列的に言うと『あなたの魂にやすらぎあれ』が最後なんだけど並びが変わっ キョン「すまん、ちょっと用事思い出したから行ってくる。ゴメンな」 長門「…そう……」
https://w.atwiki.jp/nagato3/pages/15.html
部室の前に到着して、急いでドアノブを回そうとした自分の手を、俺はギリギリのところで思いとどめた。 そうだ。忘れるな。今ここはSOS団の部室なんかじゃない。そんな部活は存在しない。 ここは……文芸部の部室なんだ。 「ふう……」 一度ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ちつかせてから、目の前のドアを見据え直す。 今回は……いきなり襲いかかるようなマネはしないようにしないと。 握りしめた拳の中で汗がジンワリと噴き出てくるのがわかった。 もう一度大きく深呼吸をする。 ……くそ…緊張するな…… だけどこんなところで立ち止まってるわけにはいかないんだ。 トントン 小さく二回、ノックする。返事はない。 だが俺はかまわずに金色の冷たいノブを回して、ドアを開いた。 「長門……」 「……」 長門はやっぱり、そこにいた。 パイプ椅子に座って、本をその両手に持って。いつも通りの格好で。 窓から射す夕日が反射して、うまく表情を見ることができない。だけど、どうやらメガネはかけているようだった。 「……」 その瞬間。半年前のあのできことが…… いや、あの時の長門の姿が、フラッシュバックのように鮮明な映像となって俺の頭の中で蘇った。 「……」 無理やり掴んだ俺の腕の中で、怯えるように震えていたあの時の表情。 顔を薄っすらと赤く染めながらも、ひたすら本を読み続けていたこと。 俺があいつの家から帰ろうとした時、服を掴んで引き止めてくれたこと。 白紙のまま返した入部届けを見て、泣き出しそうになっていた時の表情。 ……そして…… 一度も見たことのなかった、あの笑顔…… 「なが……」 俺がもう一度その名前を呼ぼうとした時、長門はすっと静かな動作で椅子から立ち上がった。 「な……」 「どうして……」 「……あなたが、ここに……」 そう言って長門が一歩前へと踏み出したおかげで、俺はようやく彼女の表情を確認することができた。 あの時と同じだ。口がわずかに半開き。そして、必至に冷静さを保とうとしているようだが、明らかに驚いているのがその顔に表れている。 こんな表情……本当の世界の、宇宙人のあいつなら、絶対に見せることはない。 それを見て確信した。間違いない。この長門は…… あいつのバグ……いや違う。そう、あいつの願望、本心が作り出した、あの時のあの世界の長門だ。 ホントにわずかな……たったの三日間だったけど、共に過ごした。 宇宙人でもなければ万能でもない、ちょっとシャイな、ごく一般的な文芸部員の女の子。 「……」 ……なぜだろう。胸が熱くなった。 たまらず涙が頬を伝った。 「……」 止まらなかった。 「くっ……ズズッ…」 拭っても拭っても、決壊したダムのような勢いで涙は勢いよく溢れ出てくる。 どうして……こんなに涙が出てくるんだ? 「…あ…ははは……ごっ、ごめん…」 ……そう。 懐かしかったから……いや、嬉しかったから。 俺は……もう一度会いたかったんだ。 長門に……いや、この子に。 あの時エンターキーを押して、俺は元の世界へ帰ることを願った。だけど…… また、会いたかったんだ…… 「グズッ……ズズッ…」 窓から差し込む夕日を後ろに背負う長門の姿が、ユラユラと霞んで見えた。 「……どうして……」 「え…」 「どうして泣いているの……」 「あっ、わ、悪い…」 俺は慌てて上を向き、目頭を親指と人差し指で押さえて、必死に零れ落ちる涙を抑えた。 「……」 …少しの間、オレンジ色に染められて幻想的な雰囲気をかもし出している部室の中に、沈黙が落ちた。 上を向いて嗚咽をこらえる男に、それをボンヤリ眺める女の子。はたから見れば、それはなんとも奇妙な光景だったことだろう。 「……ふうーっ……」 …どうやら、なんとか収まったようだった。 「……悪くない」 「え?」 「泣くこと……」 「あ……」 「別に……悪くない……」 長門がポツリと呟いたのをなんのことかと思ったが、どうやら30秒ほど前の俺の言葉への返事だったらしい。 「はは…」 それでまた少し嬉しくなった。なんとも長門らしい返答だ。 こっちの。 「あ、あのさ長門…」 「……」 「俺のこと…覚えてくれてるか?」 「……」 「……覚えてる」 「そ、そっか……」 「……」 「はあ……ははは。よかった。ちょっとだけ安心したよ」 べつに事態が好転したわけではない。帰るための手がかりが見つかったわけでもない。 だけど、それなのに……長門が覚えていると言ってくれたことは、地獄の淵にいた俺の手を、強く握って這い上げてくれたような気持ちにさせてくれた。 こいつには……なんの力もないのに…… それなのに、どんな時だって長門の言葉は、俺に勇気を与えてくれる…… それはこっちの世界だろうがあっちの世界だろうが、変わらない…… ドクン… 「……」 …なんなんだろう。この気持ちは。 わからない……けど、今は深く考えないことに…しておこう。 「……もう」 「?」 「もう……来ないかと思ってた」 「え? どうして?」 「……」 もう来ないって? どうしてそんなことを言うんだろう。 俺のことを知っているってことは、あの事件があってからこの半年あまりの間だって、俺は存在していたということになる。よな? そしてきっと、俺はあのエンターキーを押した瞬間に、こっちの自分に……そう、 こっちのやつらから見たらいつもの俺へと戻ったんだと思う。この世界が存在を続けているわけなのだから。 そしたらきっと、あの場にいたハルヒ達とまたSOS団を校外にだろうが作りあげて、苦労しながらも面白おかしくやっているんじゃないかと思っていた。 そしてそこには、きっとここにいる長門の姿もあるものだと…… 「な、なあ。なんでもう来ないと思ってたなんて言うんだ? 俺、もしかして、おまえと会ったの久し振りか?」 俺の言葉に長門は困惑したような、訳がわからないといったような表情をあの時と同じように見せていたが、 しばらくの間を置いてから、コクリと小さく頷いた。 「な、なんでだ? す、スマン。あの……できたら、去年の12月20日、あの日──」 「…あの、俺がお前に入部届けを返したあと、あの後、いったい何があったか、教えてくれないか…」 「……」 長門は…俺が元の世界へ帰った日から今日までのことを、ゆっくりと静かな口調で詳しく教えてくれた。 あの後、パソコンのエンターキーを押した途端、俺はまるで糸が切れた人形のように派手にぶっ倒れたらしい。 だが、しばらくしてから保健室の布団の中で目を覚ました。…どうやらそこまで運んでくれたのは長門のようなのだが… そして、キョロキョロと辺りを見回したあと、長門に一言礼を言って、恥ずかしそうに帰って行ったそうだ。 そしてそれからというもの、文芸部の部室へは顔すら出していないらしい。 ハルヒも、長門が俺を見舞い終わってから部室に帰ってきたら、どこにもいなかった。無論、古泉も、朝比奈さんも。 そいつらももうそれ以来やってくることはなかったそうだ。 なんじゃそりゃ。 「……」 ……何考えてんだよ……こっちの世界の俺は…… いや、ハルヒもだ。あれだけ大騒ぎしていたのに、ちょっと面倒なことになったから顔すら出さないってのか? ふざけんなよ。 くそっ。こんな寂しそうな長門を一人にして放っておくなんて……死ね、俺。 「……それから」 「それから?」 「…か…」 「……付き合っている人も、いるみたいだった……」 …… 「……は?」 「…付き合ってる人…」 「……」 「な、なんだって?」 「……」 ……つ…… ……付き合ってる人って……つまり…… ……彼女って、ことか…… 俺が? 「…えー……あー、うーん……」 「?」 「スマン。あの…なんか変な質問なんだが……いや、変な質問なのは最初っからだが…」 「…俺はいったい、誰と付き合っていたんだ?」 「……」 長門はなぜかうつむくと、消え入りそうなくらい小さな声で言った。 「…あたしの知らない人…」 「え?」 「元…8組の人…」 「……」 元……8組……? 誰だろう? 8組なんて一回も行ったことがないぞ。一人の名前も顔も思い出せない。 クラス構成は9組以外は特に変わってはなかったはず……ってことは、こっちの俺だって同じはずだ。 ちくしょう。それなのに俺はそんなクラスの子とうまくやったってことなのか。信じられん。 「……キレイな人だった……」 「……」 ……ますます信じられん。 このクソ野郎。長門のことを放っておいて何自分だけヨロシクやってやがんだ。 覚えのないことで自分自身に腹を立てるというのは何とも妙な感覚だったが、とにかく、むかついた。 「でも……」 「…今は、知らない」 …もうとっくに別れていることを、本気で望む。 じゃないと明日からますます面倒なことになってしまいそうだ。 ……しかし…… 「……」 ……自分自身のことを聞くなんて、まるで病院から抜け出してきた記憶喪失患者みたいにわけのわからないことを俺はしているのに…… それでも長門は…何も聞かないんだな…… それがとても不思議だった。 …もしかしたら。 こいつは…今までの、こっちの世界の俺と今ここにいる俺は別人で… そして、あの三日間をいっしょに過ごした俺こそが、今ここにいる俺と同一人物だと言うことに気付いているのかもしれない。 …気付くはずはない。 なぜなら、今ここにいる長門は、空間移動なんかとはまったく無縁の普通の女の子だからだ。 しかしそれでもこいつなら……長門なら、もしかすると感覚的に気付いてくれているのかもしれない。 長門なら。 ……もしホントにそうなら、大変助かるんだが…… 「あっそうだ!」 そこまで考えて、俺はようやく重大なことを思い出した。 ここに、この部室に俺がやって来たもう一つの理由。 現実の世界からの、長門の助け。 ガタッ! 俺は大きく飛び込むように踏み出して、窓際にたたずんでいた長門との距離を一気に縮めた。 「…!!」 …しまった。眼前の長門が怯えたような顔をしている。 またあの時のように襲われると思ったんだろうか。そんなつもりじゃないんだ。 「…長門」 「……」 「…パソコン、借りていいか?」 「え……」 「あ……うん……」 長門は思い出したように一度だけ頷いた。 「悪い」 相も変わらず古臭い旧型パソコンの電源を急いで入れる。 やっぱり変わってないな。SOS団の新型より、三世代ほど前の代物だ。 古泉がこれを見たときにアンティークものだと言っていたっけ。 ウイイイイイイイインン… パソコンはガタガタと嫌な音を上げながら、イライラする、まるで牧場にいる牛のようなのんびりとしたスピードで、ゆっくりゆっくりと起動を始めた。 俺を怒らせるためにわざとやっているんじゃないかと言いたくなってしまうような遅さだ。 「あっ待って」 ようやくパソコンが完全に立ち上がった時、俺が掴んでいたマウスを横から手を出してきた長門が奪った。 そしてパソコンとは正反対のもの凄いスピードで、デスクトップに出しっぱなしになっていたフォルダをマイボックスにしまいこんでいた。 「……」 …前も同じことやってたな。 「…何しまったんだ?」 「……」 「…自分で書いた小説?」 そう俺が言った瞬間、長門の顔がまるで勢いよく火がついたように、ボッと赤くなった。 「…違う」 少し荒い息を吐きながら、真っ赤な顔をして必死に否定する長門。 そりゃ、さすがにバレバレだよ。嘘を見抜くことは得意なんだ。 「嘘だ」 「…嘘じゃない」 「小説だろ?」 「…違う」 「嘘つけよ~」 「…嘘じゃない」 同じ言い訳を繰り返す長門を見て、ああ、やっぱりこっちの長門は普通の女の子なんだなと改めて思った。 それも、とびっきりにかわいい。 「なあ、今度読ませてくれよ。前から読んでみたかったんだ。頼む」 「……」 「…わかった」 「ホントか? 約束だぞ!?」 「約束する」 俺は笑った。長門も恥ずかしそうだったが、どこか嬉しそうな表情だった。 「!!」 その瞬間、視界の横で、起動していたパソコンの画面が急に真っ暗なものへと変わった。 停止した? …いや、違う。 この画面は。 何秒かの間があってから、その真っ暗な画面の中に白色の文字で、自動的にタイプが始まった。 YUKI・N> やっぱり…予想した通り。 長門。そっちでもおまえは見ていてくれたんだな。ホントに頼りになるヤツだ。 この画面と文字になるのも何度目のことだろう。俺にとってはすっかりお馴染みだから驚くこともない。 それにしてももうヒントなんて、今回は随分気前がいいじゃないか。 >そこはパラレルワールド 「パラレルワールド…?」 パラレルワールド。 ついさっき、耳にした言葉だった。さっきもさっき、今日の昼休みだ。 あっちの朝比奈さんがご飯を食べながらも、熱く語ってくれた。 >あの時あなたが、別のキーを選択した世界の未来。 「別のキー…」 別のキーってのはもしかして、脱出プログラム作動させる時の、エンターキーとは違うキーってことか。 …俺が選んだのとは別の、宇宙人も未来人も超能力者も、そして神様もどきみたいなヤツもいない、平穏な世界。 朝比奈さんの長い講釈をぼんやりと思いだした。 「キョン君にもありますよね? 二者択一の選択を迫られて、どちらかを選んだということが。 そしてその選択の結果を悔やんだこともありませんか? 間違ったーっとか、ああこうしていればなあ、とか。 そんな失敗や成功を経て辿り着いたのが今のわたしたちの世界というわけなんですけど、実は別の方を選んだ場合の未来も、ちゃんと存在してるんです」 「ほうほう」 「間違ったほうの世界、正しかったほうの世界。世界は、何通りも存在してるんです。あたしたちがいる世界だけが現実じゃない。わかりますか?」 …なるほどね。 ここは、俺がエンターキーを押さなかった世界。 どういうわけか押したはずの俺が、押さなかった方の世界に迷い込んじまったってわけか。 黙って考え込んでいると、再びスクリーンにタイプが始まった。 >さらにその世界の中でも、何通りにも枝分かれする未来の一つ。 「その世界で、何通りにも…?」 どういうことだろう。俺は考えた。 それは、俺がこの世界を選択するエンターキーを押した後から、その後の未来のことだろうか。 その後の世界も、何通りにも分かれているということだろうか。 つまりもしかしたら、平穏な中でも俺達はあの時集まったハルヒや古泉や朝比奈さん、そして長門たちと、SOS団を組んで活動していた未来もあるということだろうか。 たとえ神様や宇宙人や未来人や超能力者がいなくても。 そしてそれは、俺がエンターキーを押す直前に、泣き出しそうな表情の長門の見て、そうなって欲しいと強く願った未来だった。 そうだ。きっとあるはずだ。そんな未来だって。 今の一人ぼっちの長門は…あまりにも寂しすぎる。 こんな世界だけがたった一つの現実なんて、そんなことあっていいはずがない。朝比奈さんだって言っていたじゃないか。 「……」 横を向いて、長門の顔を見た。茫然とした、無垢な表情だった。 …そうだ。あるさ。きっと。 「…でも」 俺にはどうしてもわからなかった。 カタカタカタカタ >どうして俺は、こっちの世界にまたやってきちまたんだ? 直接キーボードを叩いて文字を入力した。これがこっちから自分の意思を長門に伝える唯一の連絡方法だ。 >前回はおまえの意思で俺をこの世界に送った。でも、今回は違うだろ? なぜだ? 何秒かしてから再び返信がくる。 >わたしにもわからない。 わからない…? おまえが作った世界じゃないか。 カタカタカタカタ >どういうことだ? >わからない。でも、帰還方法はある。 「…え…!?」 >あるのか!? 戻る方法が? >ある。ただし少し時間がかかる。 「時間…」 時間ってなんだ。まさか五年とか十年とか言うんじゃないだろうな。 >どれくらい? >一週間。その時またそこいて。あなたを連れ戻す。 「一週間…」 俺がそう小さく呟いた途端、今まで写し出されていた文字が画面の上から全て消えた。どうやら本当に電源が落ちてしまったらしい。 いくらキーボードを叩いても、スクリーンは真っ黒のままだった。 「一週間か…」 うん。 べつにたいした時間じゃない。この前だって、一瞬に感じたけど三日もここにいたんだから。 よかった。あいつが…長門が断言したんだ。絶対間違いはないだろう。今回は安心してもよさそうだ。 「YUKI・N…」 「?」 「…わたしの名前…」 横で長門が青い顔をしながら俺に聞いた。 「…どういうこと?」 「え、あ、ああ、うん。これにはその…もの凄ーい深い事情があって…」 「深い事情…?」 「ああ。深いっていうかめんどくさいっていうか…で、でも、もう大丈夫。全然なんてことなかったからさ。はははは」 「……」 そう言うと、それ以上長門は何も追求してこようとはしなかった。 そのサッパリしたところがこいつのいいところだ。こっちでも、あっちでも。 「さーて」 俺は緊張の解けた身体を、ゆっくりと椅子から持ち上げた。 窓からもう半分沈んだ夕日を眺め見る。辺りの色はいつのまにか紫色へと変わっていた。 「どーすっかなー」 うんと背伸びしてから、間抜けに言った。 一週間の猶予。俺はその時間を、いったいどうやって過ごすべきなのだろう。 どうやって過ごせと言うのだろう。 …決まってるさ。 「あ、あのさ長門」 一言言ってから、俺は長門の目を見つめた。 すると長門は、たったそれだけのことでまた薄っすらと頬を赤く染め、下を向いて黙り込んでしまった。 「あの…」 「…何?」 「…入部届け、あるか?」 「…!」 俺がそう言うと、うつむいていた顔を長門はゆっくりと上にあげた。 そして今度は向こうから、俺の目を力強く見つめてきた。 「…ある」 「悪い。また一枚、くんないかな?」 「待って」 そう言うと、勢いよく傍の机の中をあさり始めた。 その様子を眺めながらふと横の棚を見ると、白紙の入部届けの束がキレイに揃えて置かれているのを俺は見つけた。 「あ、長門。ここに…」 「あった」 顔を上げた長門がその手に持っていたのは、クシャクシャの、白紙の入部届けだった。 「…そんなに必死に探してくれたのは嬉しいけど、ここにほら、新しいやつがたくさん──」 「あなたの」 「…え?」 そう言って長門が俺の傍へとテコテコと駆け寄ってきた。そして、すっと俺にそのクシャクシャの入部届けを差し出した。 それを見て、俺の胸に衝撃が走った。 「…まさか、これ」 「あなたの」 …この入部届け… 「…あの時の…」 コクリ 「……」 信じられなかった。 半年も前の、何も書かれていない入部届け。 しかもあの時俺が乱暴にポケットにしまったから、それでこんなにクシャクシャになってしまっているんだろう。 そんなものを、今まで大事に取っておいてくれたなんて… 「…な…」 「長門…」 長門は再び、照れたような顔をして下を向いた。 ズキンッ その時、俺の胸に中に小さな、でも鋭く尖った痛みが走った。 俺を…こんな冷たい俺のことを、ずっとずっと待ってくれていた、目の前で俯うつむく小さな彼女。 …今すぐ抱きしめてしまいたい衝動に駆られる。 「……っ」 だけど俺は、自分の腕をを強く握って、ぐっとそれを抑え込んだ。 「…えと」 「?」 「あ、ありがと長門。あと…ついでに、何か書くもんあるかな?」 「ある」 そう言うと、長門は制服のポケットからゴソゴソと鉛筆を取り出して俺に渡してくれた。 「さ、サンキュ。えーっと、それじゃあ……はい、これ!」 「……」 「前に一回破棄しちゃったけど…今回はちゃんと正式に、文芸部に入部したい」 「……」 俺は一つ息を吐いてから、静かに続きの言葉を言った。 「許可して…」 「…くれますか?」 「……」 …一瞬の沈黙。 だけどすぐに、その沈黙を破って彼女は言ったんだ。 そう。ただ言ったわけじゃない。薄っすらとだったけど、あれは、確かに… 「認めましょう」 ──それは ずっと……俺が求めていたものだった。 エンターキーを押して、元の世界へ帰ってきて、たった一つ。ずっと、ずっと悔やんでいた。 もう一度だけ、見てみたかった。 長門の、優しい笑顔だった。 ──翌日。 「ふわぁ…」 重たい身体を布団から起こした俺は、眠い目を擦りながら自分の部屋の中をキョロキョロと見回してみた。 「……」 特に変わったところはない。 いつも通りの、何のおもしろみもない俺の部屋だ。 「…夢…」 …だったのか? もしかして。 だとしたら、随分リアルな夢もあったもんだ。こんなにリアルな夢はハルヒと閉鎖空間に閉じ込められた時くらいのもんだ。 まああれはどうやら夢じゃなかったようだが。 「おはよ~キョンくん~」 「ん…おはよ」 廊下で俺のことを滑るように追い抜いて行った妹が笑って朝の挨拶をした。 「…うーむ」 家族に特に変わった様子はない。猫のシャミにも別段変化はない。 前来た時もそうだったけど。 それにしても、これじゃ本当にまた別の世界にやってきてしまったのかよくわからないな… そう思っていたのが、焼けるような気温のなか教室にたどり着いくと、そんな甘い考えは通用しないのだとさっそく思い知らされた。 「あら、おはようキョン君」 「…おはよう」 ハルヒの代わりに朝倉がいるのだ。 「昨日もちょっと変なこと言ってたけど、今日は大丈夫?」 「大丈夫だよ」 …ふう。 こいつの顔を見ると、心底疲れる。 どうやら殺されかけたとかそういうのを抜きにしても、どうやらこいつとは根本から合わないようだ。 「しっかしよ~昨日の地震にはホントびっくりしたよなぁ」 横の席で谷口がいつものおちゃらけた口調で言った。本当にびっくりしたようにはとても思えない言い方だ。 だが…しかし。 「そう」 「?」 地震だ。 「……」 昨日学校から自宅に帰ってきたあとも、俺は眠らずにいろいろこの世界にやってきてしまった原因を考えた。 あの時長門が作り上げた世界の、その未来。このパラレルワールドへ俺が再び飛ばされた理由を。 やはり、あの地震が直接的な原因だとしか考えられない。 あの直後に俺は朝比奈さんにビンタで吹っ飛ばされ、教室からはハルヒが消えた。 そして代わりのポジションに朝倉がいて、長門はかわいらしい女の子になってしまっていた。 きっとあの時の巨大地震の影響で、世界が微妙におかしくなったんだ。 「うーん…」 「なんだキョンさっきからよぉ。便秘かぁ?」 「違げーよっ」 「昨日もなんかおかしかったもんねー。今日は大丈夫なの?」 「朝倉と同んなじセリフ言うな」 …ま、 考えてもしかたがないか。どうせ、どうやったって俺のこのチンケな出来の頭じゃ、理解できる範疇を超えた問題なんだろう。 それに、今回は前回と違って、考えたり悩んだりする必要も特にないんだ。 必ず迎えが来ると決まっているのだから。 「だけどあんだけでかい地震でよくこのボロ校舎がぶっ潰れなかったよな。ちょっと感心したぜ」 俺が考えたことと同じことを谷口は言った。どうやら思うことは皆一緒のようだ。 「というより、学校だけじゃなく他のどこでも物理的な被害はなかったみたいだよ。変な話だよね、いいことだけどさ」 「うーん不思議だなぁ」 確かにそりゃ不思議だ。 俺がこっちに飛ばされてきたことともしかしたら関係あるかもしれない。 …と思ったが、それ以上深く考え込んでしまう前に、自分の思考回路をストップさせることにた。 いいんだよ、そんなことは。どうでも。 キーンコーンカーンコーン 放課後の始まりを告げるチャイムが鳴った。 何も考えていなかったから、今日も授業が終わるのが大変早かった。 「…そ」 今の俺は、そんなことを考えてる余裕なんてどこにもないんだよ。 コンコン 見慣れた、いつもなら何の遠慮もなしに開けるはずのドアを、軽い力でノックする。 「はい」 中から小さな声で返事が返ってきた。 「俺だ。入っていいか?」 「…どうぞ」 「ん、それじゃ」 ガチャリ… 長門は、今日もいつも通りに窓際に置かれたパイプ椅子に腰掛け、分厚い本を読んでいた。 「…こんにちわ」 「…こんにちは」 俺がそう挨拶をすると、彼女はこっちを向いてから、やっぱり赤い顔でうつむいて、でも、どこか嬉しそうな声で、俺にも挨拶を返してくれた。 だけどたったそれだけのことで、俺の心は心底胸いっぱいになるほどの充実感で満たされた。 だって、俺がいた世界の長門がこんな風に優しく返事を返してくれるなどということは、どう間違ったってありえないから。 その挨拶の一つ一つが、俺にとっては信じられないくらいの希少価値があるものなんだ。 そうだ。 俺が今、何よりもしなくてはいけないこと。 それは、このたった一人の健気な文芸部員の心の隙間を、少しでもいいから埋めてやることだ。 寂しさを紛らわせてやることだ。 たったの一週間。本当にたったそれだけの短い間だ。けれど… それでもいい。 俺ができるだけのことは、全てやってやる。 「…あの」 「ん?」 長門は開いていた本に栞を挟んで閉じてから、それを机の上に置くと、モジモジとした様子で言った。 「今日…図書館に…」 「あ、ああ。図書館行くのか? うん、いいよ、行こう行こう」 「ええ」 長門の表情が、たったそれだけでパッと明るいものへと変わる。 …それを見て、俺はようやく本当のことに気付いた。 「……」 …長門のために、とか、寂しさを紛らわせてあげる、とか… かっこいいようなことを言っていたけど、本当は違うんだな。 俺はただ、こいつと、この世界の、普通の女の子の長門と、いっしょにいたいだけなんだ。 もう一度、いや何度だって、あの儚げで優しい笑顔を見てみたいと思っているんだ。 こいつの喜んでいるところが見たいんだ。 学校を出ると、陽は低くなり始めていたけれど、それでもじわっと肌に絡みつく蒸し熱い気温は未だに保たれたままだった。 そんな中を俺と長門とは二人並んで、例の地獄坂を、ゆっくりと歩て下っていく。 途中、二人の間にはまったくと言っていいほど会話はなかった。 だけど俺は、別にそんなことは別段気にもならなかった。なぜならそれは重苦しい、気まずいといった類の空気の沈黙ではなくて、 どこか落ち着いていて、なんと言ったらいいか、その場にいるだけで幸せを感じられるような沈黙だったからだ。 いっしょにいるだけで。 「…なに?」 「えっ? あ、いや、なんでも…」 い、いかん。ついうっとり見とれてしまっていた。 なんだがいっしょにいればいるほど、長門のことが可愛く見えてきてしまうような… なんなんだ、いったい。 一時間と少しほど歩いて、ようやく見覚えのある図書館の前に俺たちは到着した。 そう。本など滅多に読まない俺だが、この図書館にだけは前にも一度来たことがある。それはハルヒ達SOS団全員で不思議探しをするために町へと出たとき。 クジ引きで長門とペアになった俺が暇つぶしをさせてあげるために、この図書館へと連れてきてあげたのだ。 「ふうー…」 中に足を踏み入れた途端、ちょうどよい涼しさのエアコンの風がふんわりと俺の身体を包み込んだ。 まるで天国へやってきてしまったのかと錯覚してしまうほどの気持ちよさだった。 「閉館までまだけっこう時間あるみたいだから、長門、ちょっと休もう…」 そう言って横を向いた時には、すでにそこに長門の姿はなかった。 「あ、あれっ?」 慌てて辺りを見回して探すと、すぐに見つかった。 彼女はこことは少し離れた場所の棚の前で、目をキラキラと輝かせながら本を手当たり次第に物色していた。 「…熱心ですねぇ」 そう呟いた自分の口調が、なんとなく古泉のようになってしまっていることに俺は気がついて、ちょっと愕然とした。 くそ…いつの間に。やっぱりいつもいっしょにいて話しをしていると、知らぬ間に影響を受けてきてしまうものなのかもしれない。 あいつみたいなしゃべり方になっちまうのか……なら、前髪ももっと伸ばした方がいいのかな? だけど俺はなぜかそれが少しだけおかしくなって、ふふっと自嘲気味にかすかに笑ってしまった。 「しかたない…ちょっとソファで休んでるか…」 ツンツン 「ん…ムニャ…」 ツンツン 「んん…? あ…あ、あれっ?」 「起きて」 「おわっ!」 ふと気が付くと眼前に長門の顔があった。 「な、長門っおまえ何やって…!」 「もう閉館」 「え?」 そう言われて、慌てて振り向いて壁に掛けられている時計を見上げた。 本当だ。俺がソファに座ってからすでに一時間ほど経過してしまっている。いつの間にそんなに時間が経ったってんだ。 「す、すまん。ちょっと休むつもりがこんな熟睡しちゃって…」 「かまわない」 「もう、本はいいのか?」 「ええ」 そう言って、長門はその手に持っていた本をスッと俺の目の前に差し出してきた。 4冊の分厚い、なんとも難しそうなタイトルとカバーをした、まるで辞典のような本が俺の視界に飛び込んできた。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1167.html
妹「キョーンくん!朝だよー!」 キョン「・・・あー」 妹「ほらー!早く起きてー!」 キョン「いって!わかったわかった!」 妹「はぁやぁくー!」 キョン「ふぁー・・・」 キョン(長門のこと考えてて・・・よく寝れなかったな) 妹「キョン君?目真っ赤だよ?」 キョン「あー、なんでもない。それよりほら、朝飯だ」 妹「うんっ!」 学校 キョン「うーす、ハルヒ」 ハルヒ「・・・」 キョン(また機嫌悪そうだな・・・いつものことか) ハルヒ「・・・ねぇ、キョン?」 キョン「ん、何だ?」 ハルヒ「有希、いつになったら帰ってくるんだろ」 キョン「長門か?確か2、3ヶ月って言ってたぞ」 ハルヒ「・・・ふーん」 キョン「なんだよ突然」 ハルヒ「う、うるさいわね。あんたには関係ないのっ!」 キョン「っと、はいはい」 ハルヒ「・・・ふんっ」 ガラッ みくる「はぁはぁはぁ・・・キョ、キョンくぅん!」 キョン「・・・朝比奈さん?」 パタパタ みくる「ひぃひぃ・・・」 ハルヒ「ちょ、ちょっとみくるちゃん!?こんな時間にどうしたの?もう授業始ま・・・」 みくる「と、とにかくキョンくん!一緒に来てください!」 キョン「へ?なんで俺が・・・ってて!」 みくる「はやくしてくださぁい!」 キョン「わ、わかりましたからそんなに引っ張らないで下さいよ!」 ハルヒ「みくるちゃん!?どういうこと・・・」 バタン ハルヒ「・・・なんなのよ」 みくる「はぁはぁ・・・」 キョン「えーと、なんですか?こんな所に連れ出して」 みくる「た、大変なんですよぉ!緊急事態です!」 キョン「へ?緊急事態?」 みくる「その、朝倉さんが・・・」 キョン「え?」 みくる「だから朝く・・・わわっ! キョン「あ、朝倉!?ちょっと、今何て言いました!?」 みくる「ひっ!ちょっと落ち着いてキョンくん・・・ひゃ!」 キョン「朝倉が何なんですか!?」 みくる「えと、その・・・こっちに戻ってきたみたいなんですよぉ!」 キョン「な・・・マジですか!」 みくる「マジです・・・大マジです」 キョン「なんで朝倉が・・・」 みくる「前に長門さんから話は聞いてました・・・キョンくん殺されそうになったって・・・」 キョン「その情報は誰から?」 みくる「えと・・・その、禁則事項ですぅ・・・」 キョン「アレですか?未来の偉い人とかそんなのからですか?」 みくる「そ、そんなところです・・・」 キョン「くっそ・・・今朝倉がどこにいるかわかりますか!?」 みくる「それはちょっと・・・ってキョンくん!?どこ行くんですか!?」 キョン「朝比奈さんは古泉にこのことを伝えてください!俺は長門のところに行って来ます!」 みくる「そんな!一人じゃ危険すぎますよ!キョンくん!!」 キョン「くっそ!」 キョン「はぁはぁはぁ・・・」 ピンポーンピンポーンピンポーン キョン「くっそ・・・出ろよ!長門!」 ガチャ キョン「!」 長門「・・・」 キョン「長門!俺だ!」 長門「何」 キョン「とりあえず中に入れてくれ!」 長門「・・・なぜ」 キョン「いいから!」 長門「・・・」 ガーッ キョン「はぁはぁ・・・」 長門「何」 キョン「あ、朝倉はこなかったか!?」 長門「・・・朝倉」 キョン「そうだよ、朝倉涼子! 長門「・・・来てない」 キョン「そう・・・か・・・ハァー・・・」 長門「朝倉涼子は消えた。私が情報連結を解除したはず」 キョン「朝比奈さんがな、戻ってきたって」 長門「・・・朝比奈みくるが」 キョン「ああ・・・理由はよく分からないけどな」 長門「・・・理由」 キョン「ふー、とりあえず安心したよ・・・無事でよかった」 長門「・・・」 ヴーヴー キョン「なんだ?」 長門「・・・電話」 キョン「あ、ああ。俺か」 パカッ キョン「なんだこの番号?」 長門「・・・っ!」 キョン「もしも・・・」 長門「出ちゃダメ」 キョン「へ?」 ?「・・・ふふ、見ーつけた」 キョン「!」 バチッ! キョン「いでっ!」 長門「・・・特定された」 キョン「な、なんだよ突然」 長門「・・・来る」 キョン「来る?何が来r」 ドォォォオオオォオオオンッ!! キョン「うおぉぉぁっ!」 長門「っく・・・」 オォォォ・・・・ 長門「・・・なぜここへ」 朝倉「ふふ、お久しぶりね。長門さんに・・・キョン君♪」 5話
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1159.html
梅雨も明け、湿度の暑さから解放され、普通の猛暑に苛まれようとする現在。 今日も懲りずに俺は元・文芸部室、現・SOS団部室で古泉とお茶を啜りながらカードゲームをする。 現在、部室には俺、古泉、朝比奈さんが居る。 …珍しく長門が居ない。 「やっほー!ごめんごめん、遅れちゃった!全員――有希は?」 いつもの如く、スーパーハイテンションでドアをぶち破るかの様に登場するハルヒ。 長門が居ないコトにはすぐ気付いたようだ。 「長門さんなら……」 古泉が、カードを1枚山札から取りハルヒに会釈をし口を開けた。 「職員室ですよ。」 クスッと軽く笑いながら答えた。 「あらそう。珍しいわね。」 俺も思ったな。というか、古泉。俺達にも言わないか?普通。 何で知ってるんだ? 「今日は、日直でしてね。日誌を返しに言った時にすれ違いまして。 理由は聞いてませんが、長くなる、とのコトで。」 古泉は、弱々しい怪物カードを生け贄に、中級怪物をセットする。 「へぇ。」 俺は1枚引き、呪文カードでその怪物を破壊し、直接攻撃。 俺の勝ち。無敗伝説更新中。 古泉は、残念と思っているのか苦笑し、カードを集めてケースに入れる。 「仕方無いわね。…と言っても、今日はオフにしようと思ってたから。解散!」 ……珍しいな。今日は、珍しさ2本立てか。 ハルヒはそれだけを告げて、我先と帰ってしまった。 「…それでは、僕達も帰りましょうか。」 しばらくの沈黙の後、古泉がそう言った。 そうするか。暇だしな。 「あっ、それじゃあ長門さんには私から……」 「いいですよ。俺が言いますよ。」 朝比奈さんにわざわざ言わせなくても良いだろう。 長門が職員室に行った理由も気になるしな。 「え?…じゃあお願いしますね。」 朝比奈さんが満面のスマイルを放ってそそくさと帰ってしまった。 ……今日メイド服見てなかったな…。 俺は、くやしながらお茶を飲み干し、水洗いした後、盆の上に置いて古泉と職員室に向かった。 職員室前。 まだ長門って居るのか? 「いるでしょう。僕達は部室への道を逆に来たのですから。」 ピルルルルル、 携帯の音が鳴った。 古泉のポケットからだ。 「……」 今さっきまでの笑いとは違い、真剣な表情になる。 「 アルバイト か。」 「ええ、スミマセン。」 手を垂直に立て、謝って古泉は帰った。 「さて、俺も長門の様子を見るか。」 扉に手を掛けようとした。 ―――ん? 扉と壁の間に、紐が垂れていた。 ギッ、と軽く扉を開けて確認するとソレは見覚えのある栞だった。 栞にはワープロで打ったような書体を赤いインクで書かれていた。 否、インクではない……血。 所々血液が落ちた形跡がある。そして、これは確実に長門。 文面は―――― 『gymnasium back』 ―――体育館裏。 俺は、栞を握り締め体育館裏へ直行した。 体育館裏。 既に言葉にするのもシンドかった。 職員室と体育館は正反対だからな。 ソコで俺が見たモノは…… 違う高校の不良と思われる2人とボロボロの長門。 唇に血が乾いた痕があった。 「なんだぁ!?テメェ!!」 俺は唇を噛み締めていた。 意識が別の意味で朦朧とする。 頭の中を血液が音速で循環する。 右拳を上げた。 不良はファインティングポーズを取る。 ゴッ! 1回の跳躍で、1人の左頬を殴り飛ばした。 フェンスに直撃し、うつ伏せの侭動かなくなった。 「テメェ!」 もう1人が後ろから殴りかかる。 ブンッ! 横振りの拳を俺はしゃがんで180度回転。 拳を上に上げアッパーで顎を直撃させた。 不良2人は動かなくなり、俺は怒りが治まって来た。 長門は無表情で、地面を見ていた。 「長門…?」 「………」 読書をしている時のように無言で、俺と眼を合わせてもくれない。 ……俺は頭の中で最悪の状態を構築させていた。 ツゥと頬を水が伝った。 パシャリ。 ジィー、 壁に凭れている長門の右、長門を見ている俺の左からシャッター音が聞こえた。 …ん?、と見ると、ポラロイドカメラが、壁から飛び出していた。 「ふっふーん♪キョンってバカねぇ。」 リボンの黄色が明るく見える。 …ちょっと待て。ピンクがかった髪のお方と、右分け茶髪の野郎、それに灰色の髪の人も居るぞ? 「ごっ…ごめんなさい。」 「素晴らしい出来でしょう?」 「………」 どーみても、SOS団ご一行にしか見えません。 俺の眼の前にいる長門の頬を触れてみる。……冷たいな。 「僕の血縁に人形職人が居ましてね。先日のお礼に、と言われまして。」 「それを古泉クンから聞いて閃いたの!」 いらんコトをしてくれたな。 ハルヒは右手に写真を持ってヒラヒラと風に当てていた。 「乾いてきた乾いてきた♪キョンのバカ面ー。」 「おい!!ちょっと待て!!」 ハルヒを睨み付ける。 横に居た朝比奈サンが驚いて、半泣きになってしまった。しまった。 「なによ。」 「何処から冗談だ。」 「全部よ。私が入って来てから。あーそれと、有希が遅いのは今朝から頼んだの。」 なんてこった。 というか、バカ面言うな。必死なんだぞ。 「それじゃあ、私達は本当に帰るから。有希人形よろしく。」 手を振って、ハルヒは帰ってしまった。 不良はなんだったんだ? と、思ってると不良が目を覚ましてきた。 「いっつ……こっちは芝居でやってたのにな。」 「『機関』の俺達が精進不足だったんだよ。」 やっぱ『機関』か。古泉ばっかじゃないか。血縁も嘘だろう。 「それじゃあ、俺達も帰ります。…えーと…キョンくんだっけ。」 お前もソレで呼ぶか。止めてくれ。 「人形はこのゴミ袋で包んで、粗大ででもどうぞ。」 そりゃあ、ありがた……くねぇ。 とりあえず貰ったけど。 1人は手を振りながら2人は帰った。 俺はしばらく無言で立ち尽くした後、ゴミ袋に長門人形とやらを包んで持って帰った。 粗大の日は2日後だった。 下り坂が不幸中の幸いだったな。 歩いて、チャリを走らせ。 俺は、黒いゴミ袋を担いで家に帰った。 玄関で靴を脱いでいると、妹がシャミセンと現れた。 「何コレー?」と聞きながら、ゴミ袋の中身を見る。 しまった、浅墓過ぎた。 俺が、手を伸ばした時は既に遅し。 中身を見て、俺の見て。もう1度中身を見て妹は去ろうとする。 俺は、捕まえてウメボシをしながら「誰にも言うんじゃねぇぞ?」と脅しかけて了解させた。 妹が俺のサイフを削る糧の一部になったのは言うまでも無かった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4285.html
私にはもう以前のような力はない。 高校卒業と同時に涼宮ハルヒの力が失われ、情報思念体は私を回収する意向を示した。 だが、私は断った。…彼と離れる事が嫌だったから。 情報統合思念体はこのエラーをバグととらえた。そう通告された時、私は消されることを覚悟した。 だが、消されたのは私の力だけだった。同時に、私の体をただの人間と全く変わりないものにして最後に言い残した。 『卒業祝いとして受け取りたまえ』 今、私は彼と共に過ごしている。 大学卒業後、彼はサラリーマンとして働いている。私を養う為に。 私はもう長門の姓ではない。左手の薬指には彼から贈られた指輪が光っている。 朝は彼より早く起き、食事を作ってから彼を起こし、支度を手伝う。 お弁当を渡し、彼は出掛ける前に必ずキスをしてくれる。 朝食の片付けが終わると他の家事に取り掛かる。以前の私の部屋とは違って物がたくさんある分掃除が少し大変。だけど、とても楽しい。彼が帰って来て気持ちよく過ごす姿を見たいから。 昼食は朝作ったお弁当の残りを食べる。冷えてもおいしい料理をもっと勉強して彼が仕事を頑張れるようにしてあげたい。 少し昼寝をしたら、夕食の買い物に出掛ける。近所の奥様方が話しかけてくる。 私は高校時代よりはおしゃべりになったほうだと思うし、表情も豊かになったはずだけど、彼女たちには上手く伝わらないようだ。少し残念。 今日、私はある計画をしてある。結婚してから一年も過ぎている。私は彼がテレビで子供を見るたびに切なそうな表情をしていたのを見逃さない。 精がうんとつく料理を作ろう。明日は休日だから。彼が一晩中愛してくれるように。 「ただいまー」 彼が帰ってくる時刻には私は玄関に立っている。今日は予定より10分早かった。いつもより気持ちが急いて15分前から待っていたのが功を成した。 「…ご飯?お風呂?」 鞄を受け取って浮き立つ気持ちを抑えながら聞いた。 「…どうした有希。今日はいつもよりご機嫌そうだな。何かいい事あったか?」 ネクタイを緩めながら笑顔で聞いてきた。私を理解してくれるのはやはり彼だけだ。胸が締め付けられてむず痒くなるような気持ちになった。 「…特に。」 あえて隠した。私にとっていい事があるのはこの後だから。 「…こりゃまた豪勢な夕飯だな。ほんとに何もなかったのか?」 「………」 ただ微笑んで彼を見つめる。…愛しい人。私の作った夕食を美味しそうに食べてくれる。嬉しくていつもより食が進んだ。 食べ終わるといつも彼はソファに座ってテレビを見るのだが、片付けを手伝ってくれた。 「いや、なんだ。…いっぱいだったから片付けが大変だろうと思ってな。」 「………そう。」 抱き着いてほお擦りしたくなる気持ちを必死に抑える。 彼がお風呂に入っている。私はその隙に寝具の周りを今一度整理した。今日、避妊具は必要ない。箱をテレビの後ろに放り投げて彼に見つからないようにしておく。 …なかなか出てこない。気がつけば私は自分の着替えを持って脱衣所に立っていた。 中から彼の鼻歌聞こえてくる。とてもご機嫌。つい私も嬉しくなる。 「ふふふーん…でかい肩パッドー…♪」 カチャリ 彼はとても驚いた顔をしている。鼻歌も止んだ。 「背中…流します。」 「あ…ああ、ありがとう。」 彼は下半身を手で隠しながら湯舟から出た。何度も見てるのに。ユニーク。 シャコシャコ 広い背中。丹念に洗いながら、彼の男としての魅力に顔を紅潮させられる。 「…驚いたぜ、俺が誘わずに一緒に風呂入ったことなんかなかったからさ。」 「………。」 「思えばつい最近一年が過ぎたんだよな。結婚記念日にはちょっと豪華な店に外食して…後から目玉が飛び出たぜ。」 「……美味しかった。」 「まぁな、なんだかんだで値段は正直だ。また行こうな。」 彼からは見えないが、コクリと頷いた。また誘ってくれて嬉しかった。 「…有希?」 彼を後ろから抱きしめた。…もう、我慢できなかった。彼の首筋に舌を這わせた。 「…うわっ、………どうしたんだ有希。」 何も答えない。恥ずかしいから。 「……ははーん…。」 高校時代の鈍感さは今の彼にはほとんど見受けられない。あの頃のように苛立ちを覚えていたのが懐かしい。 「…それでご機嫌だったんだな?……出るか?」 「………先に出て…待ってて。」 私は体を丹念に磨いた。髪はいつもより長めに、体は3回隅々まで洗った。これから彼に愛されると思うとそうせざるを得なかった。 脱衣所できちんとドライヤーで乾かし、綺麗にとかした。 寝室に向かう前に、リビングに置いてある彼お気に入りのコロンを少しかける。 それから少し思い立った私は、空き部屋に入り、クローゼットを開く。今では一着しか残していない、懐かしい制服。 あの頃のように、激しく…愛してもらいたい。 制服に身を包み、大胆に下着は着けずに寝室の扉を開けた。 「…ああ、遅かった……な……」 私の姿を見て彼は硬直している。口の端だけがひくひくと動いている。 やり過ぎただろうか…。不安になってきた。そう思うと急に恥ずかしくなってきた。この場から逃げ出してしまいたい。 後ろ手にノブを掴むと、彼は麻痺から開放され口を開いた。 「…懐かしいな、その制服も…。…こっち来いよ。」 ちょい、ちょいと手を招いて自分の隣をぽんぽんと叩いている。 ぎくしゃくしながら彼に近付き、隣に腰掛ける。こんなに緊張したのは初夜以来だ。 「…かわいいな、有希は。あの頃とずっと変わらない…。」 肩をぐっと抱いて私の耳元で呟いた。ぞくぞくと背筋に快感が走る。 彼はそのまま私の耳に息を吹き掛け、耳たぶを甘噛みしてきた。体が芯から熱くなる。 「明日は休みだし………今夜は……」 「………最初から、そのつもり。」 彼は少し呆気に取られた顔をする。自分で言っておいて恥ずかしい。顔が熱くなる。 「…そうか、じゃあ…」 濃厚なキスをしてくれた。 「激しくいくぜ」 ベッドに押し倒された。強引な彼に愛されるのは初めてで胸がドキドキしてきた。 キスをしながら私の胸をまさぐって、彼はすぐ異変に気付いたようだ。 「…着けてないのか。」 私はキスを返して質問は無視してこう返答した。 「………赤ちゃん…欲しい…。」 「…なんだそりゃ、答えになってないぜ?」 彼の手を取って私の下半身へ導く。 クチュリ… 「…こういうこと。」 彼はしばらく視線をきょどきょどと泳がせたが、私の頭を撫でて全身を強く抱きしめてくれた。 「…いっぱい気持ち良くしてやるからな。」 抱きしめたまま、彼の指は私の秘部を掻き回した。 強い刺激の度に声が漏れる。なんとか抑えようとして彼の背中に爪を立ててしまった。 「…ごめんなさい。」 彼の胸板に顔を埋めたまま謝る。ここで止められたら私はどうかなってしまうから。 「…ここがいいのか?ん?」 彼は意地悪い声を出しながらより強く掻き回した。 「あぁっ…うんっ…きもちいい…」 恥ずかしい。顔から火が出そうだ。 彼は私の足を開かせて下半身に顔を埋めた。 ふと、秘部にさっきの何倍もの快感が走った。思わず足を閉じて彼の顔を挟んでしまった。 「……ごめんなさ…」 「…今日は一段と感じやすいんだな、有希は。」 謝りきる前に彼は優しく声をかけてくれた。 「…かわいいぞ。」 「…あなたのも、気持ち良くさせて。」 私は彼の上に跨がってお互いを舌で愛撫できる体勢を取った。 愛しい彼のペニスを口に含み、舐めまわす。 彼の愛撫が強烈過ぎて、しばしば私は動きを止められた。 その様子が彼を興奮させるのか、私が感じる部分を執拗に攻めてきた。 「あっ……ああぁっ…!!」 イってしまった。 オルガズムのせいで軽い眠気を感じたが、眠っている暇はない。 彼は覆いかぶさって私の胸を揉む。さほど大きくない、普通の人間になってからややコンプレックスのように感じていた胸。 そんな気持ちはこの時には無くなっている。今の私は獣と一緒。雄の彼に後ろから犯されて孕ませられようとしている雌。 「くっ…有希ィ…っ!」 「膣内に…出して…!アアァァッ…!」 自分でも驚くくらい大きな声を出して彼と共にイった。 膣内に彼の精液が注ぎ込まれる。勢いよく出される度に彼の体が痙攣する。 出し終えてしばらくするまで、私達は一つになったままでいた。 そのまま、ベッドに倒れ込む。 言うことを聞かない体を必死に言い聞かせて私は彼の胸元まで動いて力無く抱きしめる。 彼は私より強く抱きしめてくれた。彼の顔を見つめる。 私が普通の人間にきっかけを与えてくれた愛する人の顔がある。慈愛に満ちた表情で私を見つめている。 「…好き。……大好き。」 「ああ…。」 「…大好き。」 「おう…。俺もだ。」 さらに強く抱きしめてくれた。 「…夜は長いぞ…。俺は…まだまだ…愛し足りてないぜ。」 長い濃厚なキスをした。 私は汗だくになった制服を脱ぎ捨てると、彼の上に跨がって快感を貪り続けた。 次の日、何度やったか覚えてないけれど、目覚めたら彼は隣にいなかった。 「…あなた?」 返事はない。 シーツを掴んで物寂しさを紛らわせる。 …駄目。寂しくて涙が出そう。 彼はどこ…? あれは夢…? カチャリ 「…あぁ、起きたか。」 寝室の扉が開いて彼が入ってきた。両手にはマグカップがある。 「…いい香り。」 「さっき煎れたばかりだ。飲むだろ?」 コクリと頷く。彼はベッドの横に椅子を置いて私にマグカップを手渡し、腰掛けた。 「……ここ。」 昨夜のようにぽんぽんと隣を叩く。彼はふっと笑うとそこに座った。 「…?泣いてたのか?」 いつの間にか私の頬に涙が伝っていた。 「…今までのことが夢の中の出来事だったんじゃないかと思って…。…現実だったみたい。」 くくっと笑うと彼はマグカップを傾けた。 「俺もな…夢なんじゃないかと思うぜ。…有希が俺の奥さんなんてさ。」 「…現実。」 「ああ、現実だ。…俺は…幸せ者だ…。」 「…私も。」 彼はまた少し笑うと、ぐいっとマグカップを傾けて、立ち上がった。 「朝飯は俺が作ってやるよ、何がいい?何でもいいぜ!」 「…カレー。」 「朝からか!?」 「何でもいいはず。」 困ったようにぽりぽりと頬を指でかくと、にっと笑って 「よぉし、美味いのを用意してやるぜ、待ってろよ!」 ビシッと私に向けて親指を立てて、頬にキスをしてから寝室から出ていった。 彼は見てないけれど、私も親指を立て、彼が煎れてくれたコーヒーを静かに嗜んだ。 化粧台に映った裸の自分の体をベッドから見る。 首筋、胸、腕。所々にキスマークがついている。 しばらくは長袖の服を着なければならない。 「困った主人…。」 思わず漏れ出たその言葉に驚き、それからその響きに幸せを感じた。 時計を見る。まだ5時だった。 彼の脱ぎ捨てられていたシャツを着て、窓辺に立った。 春とはいえ、まだまだ朝は寒く、窓は白く曇っていた。 指で、傘を描き、私の名前と彼の名前を書いて、最後に傘の上にハートを描いた。 なんだか気恥ずかしかったけれど、消さずに残しておいた。 すぐに消えてしまうだろうけど、跡は残る。彼はこれを見たらどう言うだろうか? 悪戯をする子供はこんな気持ちなのだろう。 毎日がときめきで満ちている。彼のおかげで。 彼は今頃また新しいときめきを用意してくれている。 呼ばれるまで待とうか、それとも…? …彼に……伝えたい、今の気持ちを。 寝室の扉に手をかける。 「有希、待ってろよ、まだ時間かかりそうだ。」 キッチンで私のエプロンをつけて調理している彼を後ろから抱きしめた。 「…有希?」 「あなた…ありがとう。…愛してくれて…。私は…」 彼は振り向いて私の手を取った。 「「死ぬまであなたを愛し続けます」」 それは 私たちの プロポーズの言葉。