約 24,298 件
https://w.atwiki.jp/yasasii/pages/202.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5053.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2700.html
https://w.atwiki.jp/animechikan/pages/69.html
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 31 43.74 ID QUfxf/qu0 長門は一時期、痴漢に悩んでいた。 毎日、通学電車でお尻を触られた。痴漢はどんどんエスカレートした。 怖かった。悔しかった。 どうしてもその存在を消したかったが、許可は出なかった。 学校に行くのが憂鬱だった。 しかし、最近は全く遭わない。 おそらく、車両や時間を不規則に変え始めたのが功を奏したのだ。 情報操作は得意。長門は痴漢を撃退したかのような誇らしさを感じていた。 怠っていた涼宮ハルヒの観察も再開しなければ。朝倉も退屈しているだろう。 長門は安心して電車に乗り込んだ。 前にいる女の子、どうも様子が変だ。 唇を噛んで、何かに耐えるような・・・ その背後には男が体を密着させている。 長門「あれはまさか・・・痴漢」 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 36 01.05 ID QUfxf/qu0 俺は順調に一ノ瀬ことみを育てていた。 とくに狙いのない日は、ことみを待ち伏せして痴漢するようにしてきた。 じっくりとソフトな痴漢を繰り返しながら、少しずつエスカレートさせる。 ことみはその高い学習能力で、徐々に痴漢に慣れていった。 さすがに嫌悪感は消えないようで、痴漢を避けようとはする。 時間をずらしたり車両を変えたり、最後に電車に乗り込もうとするなどの努力は見られる。 それでも、やはり触られてしまうと抵抗はできないようで、 今ではスカートの中に手を入れてもまっすぐに立ったまま耐えられるようになった。 我ながらうまくやったものだ。 ことみの能力なら、きっと毎日パンティを下ろしても耐えられる程度には成長するだろう。 大きくて張りのあるお尻が、じきに俺の玩具になる。俺は心がうきうきするのを抑えられない。 今日も早めにホームに行き、ことみが来るのを待つ。 意外な姫が階段を上ってホームに立った。・・・かなり久しぶりな顔だ。 長門有希。 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 41 57.40 ID QUfxf/qu0 はからずもかがみんを登校拒否に追い込んだ直後に、数日にわたって俺の姫を務めた子だ。 最終的には、パンティの中で射精してスカートで拭き取るという、俺の願望を実現してくれた優秀な姫だ。 小さくて硬いお尻の感触が両手によみがえる。 そうだな・・・せっかく久しぶりに会ったんだ。今日は長門を可愛がるか。 そのすぐ後から、ことみが階段を上ってくる。 む・・・迷うところだ。長門か、ことみか。 いずれも安全パイ、いやパイだけでなくケツも安全なのだが、安全な娘だ。 そうなると両手で同時痴漢といくか。 いや、今日はことみを責めよう。 痴漢というものについて、新しい知識を植えつけてあげよう。 教えるのは・・・非常勤講師、長門だ。 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 48 01.62 ID QUfxf/qu0 電車がやってくる。長門が人波と共に電車に乗り込む。 俺はその後につけて、ことみを車内に押し込んでいく。 ことみは少し体をひねって抵抗するが、強引に押し込んでやればわけない。 長門は電車の角に位置取り、体を回転させて壁を背にした。 なるほど、痴漢対策か。成長したな。 俺はことみをその前に押し込む。 俺の前にことみがいて、右側に長門がいる。そんな位置で電車の扉が閉まった。 今日の俺の狙い。俺のことみに対する痴漢を、長門に見せるのだ。 長門は声をあげることはない。 長門と茅原みのりに同時痴漢した際は、互いに痴漢に遭っていることに気づきながら、 結局互いを助けることも助けを求めることもできず、並んでうつむいて耐えるだけだった。 平野綾に痴漢したときも長門に見せつけたが、やはり見ているだけだった。 そして、長門が痴漢に気づきながら助けないことを、ことみに気づかせる。 「この人・・・気づいてるのに、見てるだけなの」 「やっぱり・・・声をあげても、きっと誰も助けてくれないの」 「我慢しなきゃなの・・・」 こういう筋書きだ。さあ長門、先輩として立派に特別講師を演じてくれよ。 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 53 17.11 ID QUfxf/qu0 電車が動き始めると同時に、俺は両手でことみのお尻を包む。 そしていきなり、うにうにと優しく揉んでやる。 ことみは身じろぎもしない。乗り込むときに痴漢の存在には気づいていたはずだ。 ちょっと前ならびくついて触る前からガタガタ震えていたところだろう。お前も成長したな。 俺は教え子を見守る師匠のように、愛でるようにお尻を揉んでやった。 ことみのお尻は俺の指に押し込まれてはプリプリとした弾力で押し返す。 さらに、指をお尻に押し付けながら動かして、スカートをめくっていく。 俺の指は簡単にスカートの中に入りこんで尻たぶに触れる。 吸い付くような感触。ことみの意志とは裏腹に、刺激を求めるかのように俺を誘惑する。 はらりとスカートをめくって手のひら全体を侵入させる。 手のひら全体でことみの生パンを包む。柔らかくて暖かい。 ことみは相変わらず無反応。いきなりこれだけのことをされても無反応である。 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 59 01.02 ID QUfxf/qu0 俺は横目で長門を見下ろす。無表情だ。 まずは長門の目を引かなければならない。 俺は周囲に注意しながら、不自然に右腕を動かした。 同時に、ことみの尻たぶをこちょこちょと指で刺激する。 少し変則的な俺の責めに、ことみはうつむけていた顔を少しだけ上げた。 そしてまたすぐにうつむいてしまった。 長門のほうも無表情のままだ。何か考え事でもしているのだろうか。 ことみのお尻を揉みながら長門の注意を惹こうとする。 ちょっと直接的なやり方だが・・・まあ長門なら大丈夫だろう。 俺は右ひじをくいくいと動かして、長門の体をつついてやった。 ぽふぽふ、と長門の左腕に俺のひじが当たる。 長門はふっと自分のひじに目をやった。よし、今だ。 俺は少し体を右に開いた。死角になっていたことみのお尻が長門の視野に入る。 長門は下を向いたまま、ぴたりと停止した。よし、気づいたな。 長門には、ことみのスカートが不自然にめくれて、その下から俺の手首が出ているのが見えているはずだ。 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 04 25.54 ID QUfxf/qu0 長門「あれはまさか・・・痴漢・・・ん」 ぽふぽふ、と腕に何かが当たる。長門は下を見た。 そこには・・・すさまじい光景が広がっていた。 やはり、痴漢だ。しかもスカートに手を入れられている様子だ。 嫌な光景だ。辛い記憶が生々しくよみがえる。 それとともに、長門は「私でなくてよかった」と思った。 やはり痴漢はいる。自分はこのところそれを完璧に避けている。 見れば、くびれた腰に大きなお尻。胸もかなり大きいようだ。 見るからに魅力的な娘だ。そんな体を痴漢に好きなようにされるなんて・・・ その娘はまっすぐに立って反応しない。その気丈さが哀れさを増長した。 可哀想と思いながらも、やはり怖くて助けられない。目の前に痴漢がいるのだ。 変な素振りを見せたらまた・・・ お尻に生暖かい感触がよみがえる。塗りたくられた、あのぬるぬるしたその液体・・・ 長門にはとても声を上げることはできなかった。 ただ、なんとなく目を離すこともできず、その光景を見守った。 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 09 39.77 ID QUfxf/qu0 長門・・・気づいたようだな。しかも俺の痴漢行為を凝視しているようだ。 興味があるのか?そんならお前にもやってやるぞ? ずいぶん間が開いたけど、あれだけのことをされたんだ。忘れるはずもないよな。 あのときと全く同じ恐怖と屈辱を、また味わわせてやろうか? まあ、今日というわけにはいかないがな。今日はこいつを教育してやるんだ。 俺はスカートに右手をかけ、するすると持ち上げた。 そして、俺の腰とことみのお尻の間に挟む。ことみのスカートは完全にめくれあがった。俺も視線を下にやる。 大きくくびれた腰の下、スカートの隙間に、白いパンティが大きく膨らんでいるのがわずかに見えた。右ケツの丘だ。 ことみは、変わった責めに驚いたのか腰をひねる。しかし、その抵抗も控えめだ。 左手でぐいぐいと左ケツを揉む。少し乱暴にすると、ことみは抵抗をやめてうつむいた。 長門は相変わらず停止してうつむいている。 この娘。いいだろ、この体、この我慢。 俺は子供が玩具を自慢するように長門に見せつける。 右手の人差し指を立てて、ことみのお尻にぐるぐると花丸を書いた。 ことみはぞくぞくと震えた。指先での責めにはまだ慣れが不足している。 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 15 12.39 ID QUfxf/qu0 さて、次はことみが長門に気づかなければならない。 しかし俺はあせらない。もう少し深入りしてみよう。 生パンごしにお尻を揉むくらいは、もうことみには当然の責めだ。 もう少し恐怖を与えて、そこで長門が傍観していることに気づく。 そのほうが絶望感も強くなるはずだ。同時に、諦観もだ。 もちろん、今後のために必要なのは後者である。 さて、そうなると谷間攻めか生尻責めかが問題だ。 パンティを下ろしてしまうのはまだ早い気がする。 となれば・・・ Tバック責めだ。 パンティを食い込ませてTバック状にすれば、谷間を刺激しながら生尻を堪能できる。 長門から見てもそれなりに迫力のある責め方になるはずだ。 善は急げ。俺はするすると両手を動かして、パンティのすそをつまんだ。 ことみの尻肉に押し込まれたゴムをつまんで、その中に指を侵入させる。 そして俺はゆるゆると両手を持ち上げていった。 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 20 54.99 ID QUfxf/qu0 ことみは少し腰を動かしたが、抵抗というほどではない。 脚も震えていないし、落ち着いている。よしよし、いいぞ。 俺も視線を下にやる。邪魔なスカートを手首で持ち上げてやる。 さっきパンティに包まれていた丘が、今はその素肌を晒している。 それを包んでいるのは俺の指。横には長門がかばんを抱えているのが見える。 俺と長門にだけ開かれた痴漢鑑賞ゾーン。長門は食い入るように見つめている。 むしろ長門は、痴漢ゾーンを死角にするのに一役買っている。 普通、自分の痴漢行為の光景を見ることなどできないものだ。 今は、長門の体が壁になっているおかげで、少し体を開いて隙間を作ることができる。 長門よ、お前は無意識とはいえ俺の痴漢行為に協力しているんだぜ。 この娘がどんな辛い思いをしているか。経験者のお前になら分かるだろう。 見ているだけでいいのか?助けてやらなくていいのか? 薄情なやつだ。もうお前も共犯みたいなもんだぜ。 しかし長門が声を上げる可能性は考えにくかった。 俺はまたつんつんとひじで長門をつついた。 声を出すなよという牽制と、壁になってくれてありがとうという感謝と、 お前も共犯だという侮辱。どれもおそらく伝わってはいないだろう。 長門は腕を少し動かして俺を避け、なおも痴漢行為を見つめていた。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 26 19.97 ID QUfxf/qu0 プリプリとしたことみの生尻が俺の指を刺激する。 指が吸い付くようなもちもちした質感や指が埋もれこむような柔らか味はない。 その代わり、さらさらした感触と張りがある。これがことみのお尻の魅力だ。 これだけ大きなお尻でこれだけの張りがあるのは素晴らしい。 俺の姫は我慢強くて痴漢しやすいだけでなく、お尻自体も一級品だ。 時間をかけてでも痴漢奴隷に育てる価値がある尻だ。 いや、この性格にこの尻。痴漢奴隷にしないという選択肢は考えられない。 俺はことみの生尻を揉んでやる。ことみはお尻を硬直させた。 その緊張をほぐすように、優しく揉んでやる。 爪を立てるなど、相手に痛みを与える痴漢もある。 抵抗を奪う方法のひとつでもあるし、それ自体が俺の満足感にもつながる。 しかし、ことみについてはあくまで優しく扱う。 鋭意育て中の大切な姫だ。慈しむように両手をうにうにと動かして揉み解す。 こうしてやると、少しずつ尻肉の表面に柔らか味が出てくる。 じんわりと汗がにじんで、擬似的にもち肌を作り、俺の指に吸い付いてくる。 一粒で二度オイシイ。 さすが俺が目をつけた姫だ。触るごとに可能性が広がる感じがする。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 32 00.22 ID QUfxf/qu0 さて、のんびりしている暇はない。時間は限られているのだ。 谷間を攻めていこう。ただし、指では責めない。 長門に見せつける意味もこめて、もう少しいやらしい責め方をする。 ことみのお尻の谷間に埋もれたパンティ。これを使っていく。 俺は右手をことみのお尻から離した。長門はそれを見つめている。 これから何が起こるか気になるか?・・・いや、お前なら想像がつくだろうな。 お前にもこの責め方をしたことがあったっけ。お前は泣いちゃったんだっけ? クールで無口なアンドロイドも、まあ俺の前ではか弱い少女ってことだ。 あと、便利な道具だな。現に今、ことみの教育に役に立とうとしている。 俺はいいものを作ってくれた統合ナントカ体に感謝した。 左手でことみの生尻の肌触りを楽しみながら、右手をお尻の真ん中に動かしていく。 そして指を立てて、人差し指を右側の、中指を左側のパンティのすそにひっかける。 今日は少し小さめのパンティを履いているようだ。ゴムが尻肉に食い込むくらいの。 ことみが選んだそのパンティが、今となってはことみを傷つけていく。 俺は指を押し込んで、二本の指でパンティをつまみあげた。 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 37 00.49 ID QUfxf/qu0 そろそろ電車が減速し始める。ちょいと生尻を楽しみすぎた。 しかし、お陰でことみのお尻はよく解れているし、ことみの我慢も確認できた。 俺はくいくいと控えめにパンティを引張った。 ことみはびくんと反応した。そして控えめに腰を振る。 しかしパンティはしっかりと俺の指にかかっている。 腰を振れば、逆に股間のパンティはぐいぐいと奥に押し込まれてしまう。 ことみは腰を止めてうつむいた。肩が細かく震えている。 まあ上出来だ。 俺はぐいぐいと少しずつパンティを引張る力を強くしていく。 長門に見せつけるように、ぐいぐいと左右に動かした。 ことみは全身を硬直させて耐えている。 さて、そろそろいいだろう。ことみに長門の存在を教えてやることにする。 俺はパンティをぐいっと強く左に引張った。 ことみは少しよろめいて体を右に向け・・・停止した。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 39 30.19 ID QUfxf/qu0 い、痛いの、ちょっ・・・! あ、あれ、この娘・・・ 見えてる。見えてる、はずなの。 というより、見ているの。私のお尻を見てるの。 一昨日は羊を見たの。昨日は鹿。今日は痴漢・・・ なんて洒落てる場合じゃないの。 助けて・・・助けて! 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 43 22.85 ID QUfxf/qu0 気づくとその娘は私を見ていた。目と目が合う。 訴えるような、潤んだ目で私を見ている。 その意図は簡単に読み取れた。助けを求めている。 たしかに長門自身も、痴漢に遭う辛さは知っている。 今勇気を出して声を上げれば、いやこの大きなお尻と痴漢の手の間に手を入れれば、 この哀れでかわいらしい彼女を助けることはできる。 でも、そんなことをしてこの痴漢を逆上させたらどうなるか・・・ お尻の谷間でどくん、どくんと脈打って熱い液を吐き出す太いもの・・・ 長門の脳裏に、また生々しい記憶がよみがえる。 ごめん・・・長門はたまらずに目をそらした。 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 48 59.97 ID QUfxf/qu0 ことみと長門の目が合う。しばし見つめあった後、長門はふいと目をそらした。 その瞬間、ことみの全身が脱力した。 うつむいていた顔が天を仰ぐ。硬直したお尻がふわりと緩み、ぐいと俺の左手に押しつけられる。 あきらめた。絶望、悲愴、人間不信。それら全てに対する諦観。 その瞬間、ことみは完全に俺のものになった。 電車が減速を始める。よろめくことみの体重を、お尻の谷間に挟まったパンティで支えてやる。 俺の指の中で、ことみのパンティがきりきりと軋む。 ことみにはかなりの痛みがあるはずだ。それなのに、ことみはふわふわとして落ち着かない様子だ。 姫がこんな状態になるのは初めてだ。 教育成功。 ことみは今、幸せでも不幸でもない。 ただ痴漢に体を弄ばれながら、あらゆる事実が時間の河を流れていくだけだ。 俺はしてやったりの笑みを浮かべて長門に目をやった。 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 53 17.65 ID QUfxf/qu0 長門はただ唖然としてその娘を見つめた。 娘の顔から表情が消えた。だらしなく口を開け、焦点の合わない目で斜め上を見つめている。 その両目からとめどなく涙が流れる。口辺からはだらしなくよだれが垂れる。 地獄。この娘は地獄を見ている・・・ 長門はその状況が空恐ろしくなった。 私が見捨てたからだ。この娘を壊してしまったのは私かもしれない。 今なら、今ならまだ間に合うかもしれない。長門は必死に自身を鼓舞した。 それ以上に切実に、私は絶対にこんな目に遭いたくないと思った。 またお尻に生暖かい感触。 うにうにと動く痴漢の指が、まさに今触られているかのように生々しくよみがえる。 とても見ていられない・・・長門は全身を硬直させ、うつむいてぎゅっと目を閉じた。 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 13 00 14.28 ID QUfxf/qu0 電車が停車する。ことみはまだ自分を見失っているようだ。 人波がホームに流れ出す。ことみはふらふらした足取りでそれに押された。 このままでは未完成だ。俺は画竜点睛を行う。 ふらふらと前に進むことみ。俺は指にかけたパンティをぐいと引張った。 ことみはぐらりとよろめいて、俺にどさりとぶつかってくる。 自失状態のことみの目を覚ます、最後の痛み。同時に俺はするりとことみのお尻から手を離した。 ことみは我に返ったように一瞬全身を硬直させ、今度はしっかりした足取りでホームに降りた。 理想的。完璧なゲーム運びだった。今なら落合監督と張っても負ける気がしない。 ことみは逃げるように足早にその場を去っていく。 長門に目をやると、長門もまたことみの後姿を見つめている。 俺の悪戯心が頭をもたげる。そうだな、最後にちょっと驚かせてやろう。 俺は右手をするりと長門のお尻に伸ばし、さらりと撫でてやった。 小ぶりで、硬くて、形のいいお尻・・・そういえば久しぶりの再会だ。 長門はびくんと極端に跳ね上がり、小走りにその場を去った。 俺はその後姿を感謝をこめて見守った。 ことみはまだやれる。次はパンティずりおろしにも唇を噛んで耐えるだろう。 俺は充実した気持ちで、ことみの生尻の感触を指に焼き付けながら、ゆるゆるとホームを歩いた。 一ノ瀬ことみ編 終了
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/33.html
教室では陰湿ないじめを受け続ける長門にとって、 SOS団の部室だけは唯一休息出来る場所であった。 放課後になり、部室にやってきた長門 いつもなら一番乗り・・・しかし今日は初めて見る人が既にいた 綾波「・・・・・・」 長門「(誰だろうこの人・・・)」 綾波「・・・・・・」 長門「・・・・・・」 ガチャ ハルヒ「あ、ユキ来てたの?そこにいるのは綾波レイさん。なんとエヴァのパイロットなんですって! 無口キャラは二人もいらないから、ユキは今日からもう来なくていいわよ。」 唯一の居場所も、私にはもうない・・・ ~放課後の文芸室~ ガチャッ 部室にはキョンのみで、机に突っ伏した格好でうたた寝をしていた 長門(寝ている。涼宮ハルヒという存在と常に行動をともにすれば、疲れるのだろう。」 キョンを起こさないように、静かに定位置のイスに座り本を読む長門 長門(ふぅ、今日はこの人以外誰も来ない・・・。それよりも少し冷えるのが気がかり。) キョンが風邪を引かないようにと優しくカーディガンを掛ける長門 数十分後、目を覚ますキョン キョン「寝ちまったか。長門だけか?ん、このカーディガンはお前が掛けてくれたのか、ありがとう。」 長門「べ、別にあんたのために掛けてあげたんだじゃないんだかねっ///」 女子G「え!?…な、なんですか?長門さん…」 長門「ゴミ捨て、手伝う」 女子G「ホント迷惑だからやめてもらえませんか…? は、話しかけないでください…」 長門「…」 数日後 女子A「Gなんか最近臭わない?ww」 女子G「え?そうかな?…わかんないけど」 女子B「あんた長門の臭いがすんのww近寄らないでよwwww」 女子G「え…そんな」 女子C「ほらほらwwキモいって!あっちいけよwww」 女子G「う…」 長門「…」 長門「・・・」 この地球という惑星の有機生命体は必要以上に馴れ合う事を望むようだ。 部室の窓枠から眺める中庭には少数のグループが色とりどりの食事を囲んでいる。 長門「・・・」 決してその者達を羨望の眼で見ているのではない。 ただ、何故むざむざ限られた時間を他人と一緒に居る事に使うのか、依存するのか、私には分からない。 決して羨ましいという訳ではない。 ただ、何故そうするのか気になるだけ。 そう、それだけ。 長門「・・・?」 ふと顔を見上げるといつのまにか彼が何故か彼が来ていた様だ。 「あーっ・・・ここで飯食っていいか?教室で食ってたらハルヒが五月蝿いんだ。」 そうやって引きつった顔をしながら微笑む。 何故か私の胸のつかえが和らいだ気がした。 ハルヒ「みんな遅いわね~!今日は用事あるから私は帰るわ!」 ―――ガチャ キョン「なんだ、長門。お前だけか?」 長門「………コクリ」 キョン「そうか。じゃまた明日」 ―――ガチャン ―――ガチャ 古泉「おや、長門さんひとりですか」 長門「………コクリ」 古泉「では、また」 ―――ガチャン ―――ガチャ みくる「長門さんひとりなんですか~?」 長門「………コクリ」 みくる「じゃあ今日は帰りますね~」 ―――ガチャン 長門「………(………私じゃダメなの」 女子K~P「今日はどうやってあの本の虫で遊ぼうかしら・・・・」 ガラガラ 教室のドアをあけるとそこには・・・・・・・・ 身長2M 体重150㌔の マッスゥル長門が!! マッスゥル長門「Hey Girls It,s show time!!!」 その後は語るまでも無い 女子K は首をネジリとられ胴体が行方不明 女子L は精神病院で「足音が聞こえる」と言い残した後に行方不明 女子M は両親と妹と家庭教師が行方不明 女子N は樹海で行方不明 女子O は毎日悪質なイタ電がつづいて引っ越すはめに・・・ 女子P はスカイダイビング中に行方不明 マッスゥル長門「オレガ正義DAあああAあAAAA!!!!!!」 長門「あっ・・・!?」 長門はいつものように席に座ったつもりだった。 しかしなぜか椅子にオセロが置いてあり、長門はそれを崩してしまった。 キョン「あ・・・それは」 どうやらキョンと古泉が対戦中のオセロだったのだが、途中でやめて置いておいたものらしい 机に空きが無かったため、椅子に置いたようだった 古泉「いけませんねー長門さん。あなたはオセロを崩すことで、対戦に使った今までの時間を僕達から奪ったばかりか、これから白熱する楽しい時間まで奪ったのですよ」 長門「・・・ごめんなさい」 キョン「おい、あれ俺が角4つ取ってたぞ?」 古泉「長門さんを庇う必要はないですよ!そうですね、長門さんには罰として、窓から『びっくりするほどユートピア』と3回、大声で叫んでもらいましょう」 長門「・・・そんな」 古泉「おや?あなたはそれほどの罪を犯したはずですが?」 そこまで言われると、長門はうつむき加減で窓を開けた 長門「びっくりするほど・・・ボソボソ」 古泉「ダメですね~、何を言ってるか分かりませんよ」 長門「びっくりするほどユートピア・・・」 古泉「声が小さすぎますね。長門さん?あなたは自分がしたことを分かっているのですか?オセロをぐちゃぐちゃにしたんですよ?」 長門「・・・ううっ」 長門はついに泣き出してしまった 古泉「ほらがんばって!オ・セ・ロ!オ・セ・ロ!」 長門「びっくりするほど・・・ううっ・・・びっくりするほど・・・ひくっひくっ」 久々の街中不思議発見ツアーでクジの結果キョンと長門はペアになった キョン「よーし、じゃあどっから不思議探すか~?」 長門「・・・」 キョン「あっちのデパートとかよくないか?」 フルフル、わずかに首を横に振る長門 キョン「じゃああっちの小川かな~?」 フルフル キョン「じゃあ、向こうのスーパーが怪しいかもな!」 長門「・・・・・・。」 一瞬沈黙が流れる キョン「嘘だよ。図書館行きたいんだろ?」 キョンが笑いながら長門の方を向くと長門は少しふくれた顔ですたすたと歩いていってしまった キョン「おい、長門!まてよ~!」 もちろん図書館の方にむかって 谷口「くっ!なんて締まりがいいんだ!」 キョン「体ごともっていかれそうだ!うっあああいくう!」国木田「あふぉっ!」 長門「・・・ユニーク。」 シン○○ー社エレベーター いつ頃からだっけか? SOS団が結成から1年半以上経った今 俺と長門は付き合っていた ちなみに部室には二人しかいない 長門「何見てる?」 長門はそういいながら俺のパソコンを覗き込んだ 俺の視線の先にはMIKURUフォルダ・・・ キョン「うわっ!これは!」 長門「・・・」 長門は顔を強張らせると俺からマウスを奪い、フォルダをさっとごみ箱にいれた キョン「有希・・・怒った?」 長門は何も答えないどころか、そっぽを向いて俺の顔すらみない キョン「まったく・・・しかたないな」 そういうと俺は、ごみ箱の中のMIKURUフォルダを元の場所に戻し、それを開いた キョン「ほら、中身見てみろよ」 俺がMIKURUフォルダを開くと、中からは俺と長門が二人で映っている写真や、長門だけが映っている写真が出てくる 付き合ってから撮った写真たちだ キョン「ふふっ、なに勘違いしてるんだか」 長門「・・・」 ギュッ!! 俺の背中に強い衝撃がはしった キョン「いてえっ・・・!!!!」 長門におもいっきり背中をつねられた それでも思わず笑いがこみあげてしまった こんな意思表示をする長門を、昔の俺が想像できただろうか?いや、とてもだね キョン「ははっ!楽しいな、有希」 長門「・・・もう」 ある日、なんとなくだが俺は長門をいじめてみたくなった 長門はまともに料理をしないしな、ちょっといじってみるか キョン「そういえば、みくるさんはとぼけてるけど結構料理うまいらしいぞ」 長門「・・・そう」 キョン「ハルヒも鍋だけど、あれはうまかったもんな~」 長門「・・・」 キョン「やっぱ女の子は料理が上手い子がいいよな~」 長門「・・・そう」 キョン「あれ?そういえば長門ってはじめて俺にだしてくれた料理なんだっけ?」 長門「・・・」 別に怒ってないように見えた長門だったが、 この日をさかえに、毎日帰りに手料理の夕飯を食わされることになった いや、嬉しいけどな ハルヒ「みんな!新しい部室が見つかったわよ!」 キョン「なんだ急に。」 ハルヒ「冷暖房完備で広さはここの2倍よ!」 キョン「そんな部屋がこの学校にあったとは驚きだな。」 ハルヒ「いいから早く移動するわよ!あ、有希、今までありがとね。あなたはここに残っていいから。」 古泉「長門さんは元々文芸部員ですしね。」 みくる「仮団員お疲れ様でした♪」 キョン「これで一人でゆっくり本が読めるな、長門。」 長門「………」 朝、登校 靴を履き替えようとするも、内履きは無く汚物 仕方なく靴を持ち、来賓用のスリッパで教室へ 教室について席を見る 椅子の上には濡れた雑巾、机の上には動物の死骸 濡れた雑巾をどけると下には画鋲 動物の死骸をビニールで包み、中庭へ埋める 戻ると再び椅子に雑巾、机の上には色あせた「死ね、ゴミ、etcetc」の上に 「外道」「鬼畜」「精神異常者」「カルトは死ね」の文字 A「きもーい・・・」 B「最悪ぅ・・・」 長門「・・・」 黙々と椅子を掃除し、机はそのままに授業開始 実験を行う授業、別教室へ移動してグループ分けをして着席 ガスバーナーを使用した実験 C「こうして、こう緩めて、こうっと」 長門「・・・あうっ!」 D「おし、ついたついた」 長門「つっ!」 ガスバーナーに火をつける時、故意にこちらへ向けられて腕を火傷 更に火がついたままのマッチを投げられて火傷 雨が降ってきた 教室に戻り体育の準備 雨が降って来たので体育館での授業 体操服に着替えて体育館へ バトミントン、顔に向かってシャトルが飛んでくる E「ほらっ!そーれ!」 F「いくよー!」 G「あっ、すべったぁ」 長門「ぐっ!」 ラケットが高速で腹部に直撃 体育から戻ると制服が無い 探すがどこにも無く、時間が無いのでそのまま授業を受ける 先生「おい長門、なんだその格好は」 長門「・・・制服がなくなりました」 先生「なに?もう少しマシな言い訳したらどうだ」 長門「事実です」 先生「もういい、廊下で立ってろ」 長門「・・・」 クラスメイトの嘲笑を受けながら廊下へ 長門「私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」 キョン「は?」 みくる「何言ってるんですかぁ?」 古泉「最近暑くなってきましたからねぇ。」 ハルヒ「有希、あんた明日から来なくていいわ。」 長門「話を聴いて欲しい・・・」 生徒A「は?何こいつきもーい」 長門「友達になって欲しい」 長門「え?でもあたしでいいの?」 長門「うん。あなたじゃなくちゃダメなの」 長門「しょうがないなー。あたしでいいんなら、これからもよろしくね!」 長門「うれしい・・・ありがとう・・・よろしくね」 生徒A~E「( ゚д゚ ) 」 長門「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」 ハルヒ「ちょっと有希、そのわけわかんない呪文唱えるのやめなさいよ!」 キョン「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」 ミクル「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」 古泉「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」 ハルヒ「ちょwwwwwみんなwwwwww」 A「長門ってキモくなーい?」 B「マジキモイよねーwww」 C「なんで生きてるのって感じじゃない?」 長門「……快感」 A「おい長門、お前くせぇんだよ!」 B「目障りだから消えろよ!」 長門「………」 A「おい何とか言えや!」 C「お前らやめろよ!長門さんをいじめるな!」 長門「……(チッ、邪魔しやがって)」 今日は長門が俺の家にやってきた キョン「ただいまー」 長門「・・・おじゃまします」 すると妹が二階からかけ降りてきた 妹「お兄ちゃん御帰り~!!あれ?有希ちゃん?」 そうか、こいつには言ってなかったな キョン「ああ、俺とゆ・・・長門は付き合いはじめたんだ」 妹「そうなの!?」 長門を睨みつける妹・・・なんだかなぁ 妹「でもキョン君は私のだから!」 キョン「おいおい・・・」 妹「有希ちゃんみたいに本ばっか読んでる根暗にはあげないんだからね!」 妹「それに胸もないし愛想もないし!キョン君には不釣合い!」 長門「・・・(これもまた快感)」 キョン「あ、あのう・・・?呼吸荒くなってません?」 新ジャンルってこうですか? わかりません>< ハルヒ「有希!!何遅刻してんのよ!」 キョン「長門最近おかしいぞ?ちゃんとしろよ」 長門「・・・(ああ・・・いい・・・)」 ハルヒ「なんか変じゃない?有希」 古泉「説明しましょう。長門さんはクラスで苛められたことをきっかけにMに目覚めてしまったのです。ずばり今もご満悦といったところでしょう」 ハルヒ「うわっ・・・キモッ!」 キョン「最低だな・・・」 みくる「長門さん・・・不潔です!!」 古泉「全くですね」 長門「・・・(あああっ!!いい・・・!!もっといい・・・!!濡れちゃう!もっと罵倒して!!)」 キョン「・・・だれも来ないな」 長門「・・・」 キョン「帰るか・・・」 長門「・・・」 キョン「長門、それじゃ、な」 そう言ってキョンは部室の外へ 長門「・・・、一緒に、図書館の約束・・・」 少し寂しそうに立ち上がり、部室の電気を消して玄関へ キョン「お、やっと来た」 長門「あ・・・」 キョン「俺、返す本を教室に忘れてたから先に出たんだけど」 長門「・・・」 キョン「長門来ないから忘れたのかと思って焦った・・・」 長門「・・・忘れない」 キョン「分かってる、反応してくれないからちょっとイタズラしただけだ」 長門「・・・」 キョン「さ、さて、図書館閉まっちまうから行こうぜ」 長門「・・・」 その後、少しだけ寄り添う距離を縮めた二人が 穏やかな雰囲気の中で歩みを進めていた ピンポーン 長門「?」 キョン「お、おぅ、長門・・・俺だ。近くまで寄ったもんだからさ、お茶でも飲ませてもらおうかなって・・・」 長門「・・・」 キョン「・・・ダ、ダメか?」 長門「入って」 キョン「すまないな、急に尋ねてきたりして」 長門「・・・いい」 コトッ キョン「おぉ・・・ありがとな」 長門「・・・」 キョン「・・・」 長門「・・・それ何」 キョン「あ、あぁこれか?これはツタヤで借りてきた映画だよ」 長門「・・・映画」 キョン「・・・長門は映画とか見ないのか?」 長門「(こくっ)」 キョン「じゃあ、一緒に見るかこれ。アクション系だから退屈しないと思うぞ」 長門「・・・そのディスクを読み取る装置と映像出力装置、モニターは所持していない」 キョン「あ、そういやそうだったな・・・」 長門「・・・」 キョン「そうだな・・・俺んち・・・来るか?」 長門「・・・(コクッ)」 ~キョン部屋~ キョン「どーぞ」 長門「・・・」 キョン「・・・なぁ長門」 長門「?」 キョン「鍵・・・閉めてもいいか?」 長門「?」 キョン「いや、あの・・・妹が入ってきたら困るだろ?」 長門「・・・別に構わない」 キョン「・・・」 長門「どちらでもいい」 キョン「お、おぅ」 カチャリ キョン「(けっこー熱心に見てるな・・・)」 長門「・・・」 キョン「ふわぁ~っ・・・」 長門「・・・」 キョン「なぁ長門、これおもしろいか?」 長門「・・・」 キョン「(無視かよ!)おーーい・・・」 チラッ 長門「静かに」 キョン「あ、あぁ、ごめんな・・・」 長門「・・・」 キョン「・・・」 ユサユサ キョン「・・・んっ・・・な、なんだ?な、長門?」 長門「・・・終わった」 キョン「え?もしかして俺・・・寝てたのか?」 長門「(コクッ)」 長門「ずっと寝てた」 キョン「・・・すまん」 長門「おもしろかった」 キョン「へ?」 長門「映画・・・とても」 キョン「そ、そうだったか!じゃあまた今度見るか?」 長門「(コクッ)」 キョン「(長門が興味示すなんて・・・珍しいな)」 長門「何か・・・お礼がしたい」 キョン「ん?」 長門「・・・」 キョン「あー・・・そんな気にすんなよ。長門には何度も命を助けてもらってんだからさ」 長門「気にしてない」 キョン「へ?」 長門「あなたの命を助けたことを前提にお礼をしたいわけでなく、この映画を見せてくれたお礼をさせてほしい、と言っている」 キョン「そ、そうか・・・」 長門「・・・(ジーッ)」 キョン「わ、わかったよ・・」 長門「・・・何がいいの?」 キョン「何がいいって言われてもだな・・・う~ん・・・」 長門「・・・(ジーーーーッ)」 キョン「え、えーと・・・なんかいい案でもあるのか?」 長門「ある」 キョン「・・・じゃあ長門に任せるよ」 長門「・・・了解」 長門「・・・」 ぎゅっ キョン「っ!」 長門「・・・」 キョン「お、おい長門?」 長門「何」 キョン「こ、これは・・・?」 長門「映画のラストシーン」 キョン「あ、あぁ・・・そういうことね。」 長門「主人公・・・喜んでたから」 キョン「でも、座りながら抱きついてはいなかっただろ?」 長門「・・・」 キョン「・・・まぁいいけど」 長門「・・・(ジーーーーッ)」 キョン「えぇと・・・ラストシーンには、まだ何かあったりするのか?」 長門「(コクッ)」 キョン「・・・・・・す、するか」 長門「・・・」 長門「あなたがしたいなら」 キョン「・・・い、いいのか?」 長門「(コクッ)」 キョン「じゃ・・・するぞ?」 長門「・・・」 キョン「え~と・・・あの・・・」 長門「何」 キョン「目、閉じてくれ・・・集中できん」 長門「・・・了解した」 キョン「んっ・・・いくぞ?」 長門「・・・」 チュ 長門「・・・んっ」 キョン「・・・」 今日も俺はSOS団の部室にやって来たのだが キョン「まだ誰も居ないのか。」 そう呟いて椅子に座った時。 ジャーン!ジャーン!ジャーン!(がちゃ) キョン「げぇっ!長門!」 長門「…。」 キョン「あ…すまん、つい…。」 長門「落ち着いて。これは急進派の罠。」 女子C「クスクス、また長門さん一人で本読んでるわ~」 女子D「あんな青春で面白いのかしら~、クスクス」 女子E「シッ!長門さんにきこえちゃう、クス」 女子F「クスクス、ほらなんかこっち見てるわよ~」 長門「よい教科書だな、少し借りるぞ」 少女C~F「凄ぇ、あの長門、落ちながら戦っている…」 古泉「うおっ、まぶしっ」 女子C「クスクス、また長門さん一人で本読んでるわ~」 女子D「あんな青春で面白いのかしら~、クスクス」 女子E「シッ!長門さんにきこえちゃう、クス」 女子F「クスクス、ほらなんかこっち見てるわよ~」 ハルヒ「みんな!新しい部室が見つかったわよ!」 キョン「なんだ急に。」 ハルヒ「冷暖房完備で広さはここの2倍よ!」 キョン「そんな部屋がこの学校にあったとは驚きだな。」 ハルヒ「いいから早く移動するわよ!あ、有希、今までありがとね。あなたはここに残っていいから。」 古泉「長門さんは元々文芸部員ですしね。」 みくる「仮団員お疲れ様でした♪」 キョン「これで一人でゆっくり本が読めるな、長門。」 長門「………」 長門(ふ……計画通りだ…これでこのノートの価値も分かってきた。) そしてその夜、長門は一人暗い自宅で黒いノートに女子達やハルヒ達の名前を書いていた 女子C「クスクス、また長門さん一人で本読んでるわ~」 女子D「あんな青春で面白いのかしら~、クスクス」 女子E「シッ!長門さんにきこえちゃう、クス」 女子F「クスクス、ほらなんかこっち見てるわよ~」 長門「・・・」 ―――「ドゴーン!」という爆発音、 イジめをする女子グループの姿は消えていた メイトリクス「どこで使い方を習った?」 長門「・・・説明書を読んだのよ」 女子C「クスクス、また長門さん一人で本読んでるわ~」 女子D「あんな青春で面白いのかしら~、クスクス」 女子E「シッ!長門さんにきこえちゃう、クス」 女子F「クスクス、ほらなんかこっち見てるわよ~」 長門「・・・」 ―――すると空から三つの火柱が女子達に降り注ぎ全てを消した SDK「いじめっ子がいる限り、俺は何度でも現れる。」 長門「……別の封鎖空間から現れた存在を確認。」 赤く染まった空の下、本日のSOS団の活動を終えた長門は ひとり帰宅の途についていた。 その歩を進める右足の膝には、今日の体育の授業のマラソンの時に 転んだ時にできた痛々しい生傷が残っている。 足の遅い長門は、前を走る他の生徒達に次々と追い抜かれ、 一周遅れにされていったが、その生徒達の中の一人が、 追い抜く際に、彼女のことを邪魔だと後ろから突き飛ばして転ばせたのだった。 (なぜ、クラスの人間達は私を拒絶する… 人間は自分達と異なる存在を否定する。 私が、読書行動ばかり取るのがいけない… それとも、言語発声頻度が著しく低いのがいけない… でも、そういった特徴を持った人間は他に何人もいる。 なのに、私だけ… 今日の持久競争だって、私は極端な位置にはいなかった。 私より後ろを走っていた人間も何人かはいたのに、 なのに…) ???「フギャッ!!」 長門「!」 そこで、突然足元から聞こえた奇声で、 長門は思考の世界から現実へと一気に引き戻された。 声の主は一匹の猫だった。 どうやら、ボーッと歩いている途中で、 道端で眠っていた猫の尻尾を踏み付けてしまったらしい。 猫「フシューッ!」 その猫は気が強いのか、逃げ出さずに尻尾を立てて威嚇している。 長門「………」 長門は、常人には見分けが付かないほど微妙な表情の変化だが、 普段よりほんの少し歪んだ顔で、威嚇している猫と向き合ったまま しばらく固まっていたが、 やがて何かを思いつくとガサゴソと自分の鞄を漁り始めた。 そこから取り出したのは昼食の余りのメンチカツパンだった。 その端を千切って猫に差し出す。 長門「これ…」 パンを一瞥した猫は威嚇体勢を解かないまま、 ゆっくりと彼女の差し出したパンに近づいてくる。 そして… 猫「ガブッ」 長門「!」 猫が噛み付いたのはパンではなく、 パンを差し出していた長門の手だった。 そして、驚いて長門が落としてしまったパンの切れ端を 後ろ足で踏み付けると、猫は近くの草むらへと姿を消してしまった。 長門「………」 取り残された長門はその場で少しの時間立ち尽くしていたが、 やがてまた、夕焼け空の下をとぼとぼと歩き始めた。 題「ぬこにまで拒絶される長門」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1242.html
Extra.4 喜緑江美里の報告 こん××は、皆さん。 ご存知の通り、長門さんが自分の分の報告で精一杯の状態なので、代わりに今回はわたし、喜緑江美里が報告します。 題するなら、そうですね……『朝比奈みくるの死闘』とでもしましょうか。なお、わたしは長門さんほど現地語の表記に慣れていないので、一般的な表記で報告します。 何分このような形での報告は慣れていないので、至らない点もあるかとは思いますが、よろしくお願いします(任務の一環として、議事録はよく取ってるんですけどね。)。 文芸部部室。地響きがしている――と思ってください。そして人の声。激しい物音。 ふむ。もうしばらく掛かりそうですね。 遮音領域を展開しているので周囲に音が漏れることはありませんが、このままではわたしもここを離れられません。この部屋に集う面々には、長門さんに足止めしてもらうようお願いしてあります。その他に人が来ることは、まずないでしょう。もし来ても、それはその時にわたしが対応すれば良いでしょうし。 それでは、こうなった発端から、順を追って説明していきましょう。 時間は、放課後直後。涼宮ハルヒが来ているこの部屋に、朝比奈みくるがやってきたところから始まります。 ………… ……… …… … (一度使ってみたかったんですよね、この三点リーダの連続。) 「あれ? 涼宮さん、今日は早いですね?」 「なあに、みくるちゃん? あたしが早く来てたら何か問題があんの?」 「ひっ!? い、いえっ、そんな訳じゃ……」(ひぇぇぇ……今日の涼宮さん、何かすっごく機嫌が悪い……) 彼女は恐る恐る鞄を置いた。 「あの、えっと、着替えますね……」 「みくるちゃん、今日は新しい衣装に挑戦してみましょうか。」 「え……新しい衣装、ですか?」 「そ。」 と言って、ハルヒはある物をみくるに示した。みくるの目が見開かれる。 「ちょ、ぇゑゑゑ!? それって!?」 「スクール水着。」 と簡潔に答えるハルヒ。 「これで男共を悩殺しなさい。」 「そそそそそそそそんなぁああああ!? い、いやですうう!!」 「うるさいっ! 良いから着替える!」 そう叫ぶとハルヒは、みくるの制服に手を掛けた。 「い、いやぁぁぁぁっ!! それだけは、それだけは!!」 その時、嫌がるみくるの肘が、ハルヒの鼻を捉えた。 「つっ……!!」 見る間に吹き出す鼻血。 「あっ……! ご、ごめんなさい、すぐ手当てを……」 「触るなっ!」 「ひっ!?」(うわー、どうしよう……涼宮さん、本気で怒ってる……) 床にいくつかの赤い斑点が作られる。部室をハルヒの不機嫌オーラが満たしていく。みくるは怯えている。 「みくるちゃん……あんた随分偉くなったもんね……」 「ひっ!? そ、そんなこと……」 「ちょっと可愛くて胸が大きいからって、調子乗ってんじゃないの? 図に乗るのも大概にしなさいよ?」 「ち、違いますぅ!!」 「何、そのぶりっ子。男に媚売ってんの?」 「そ、そんなんじゃ……! これは元から……」 「はぁ? 何だって!?」 「う……元からの……元からのものなんですっ!!」 「へぇ~、元から媚売るような口調なんだ? なんだ、生まれついての×××ってわけだ。」 「!! な、何てことを……!!」 「うるさい! あんたなんか、男に媚び売るしか能がない役立たずのくせにっ! 身の程を弁えなさいっ!」 「!?」 みくるが硬直する。 「……やく、たた……ず……?」 「そうよっ! 考えてもみなさいよ! あんた、これまでイベントやら何やらで、一体何してきた!? いつもいつもいつも、おろおろおどおど、キョンにフォローされてばっかりじゃないの! あんたの色香に迷って世話を焼くキョンもキョンだけど、そうやって女を武器に男を惑わすあんたを見てると、ムカムカすんのよ! 汚らわしい!! この×××っ!」 「あ……あたしは……」 「ふん! 泣けば許してくれるのは、すけべな男だけよ!」 「……じゃ、ない……」 「はぁ~ん? 聞こえんなぁ~!?」 「……あたしは……あたしは……っ!!」 みくるはハルヒを真っ直ぐに見据えて叫んだ。 「役立たずなんかじゃないっ!!」 ぱぁん。 みくるの右手が閃き、ハルヒの左頬を正確に捉えた。 「くうっ……今のは効いたわ……」 ハルヒはのけぞりながら呟いた。 「さて、みくるちゃん……団長であるこのあたしに、ここまでのことをしてくれたんだから、当然、覚悟はできてるんでしょうね?」 ハルヒは、仕事に着手した世界随一の狙撃手のような目でみくるを睨み付けた。 「ひくっ!? い、ううっ……」 「役立たずのくせに、生意気なのよあんたはぁぁぁぁ!!」 ハルヒの右正拳突きがみくるのみぞおちにめり込む。 「ぐっ……!」 「鼻血出したあんたの顔はぁぁ! さぞ間抜けでしょうねぇぇぇぇ!!」 今度はハルヒの左肘が、みくるの鼻を直撃する。見る間に鼻血を吹き出すみくる。 (何で……何でこんなことに……お願い……正気に戻って、涼宮さん……) 「何よ、その目はぁぁ!! 気に入らないっ!!」 ハルヒの右後回し蹴りがみくるのこめかみを撃ち抜いた。 「へぇ、まだ立ってられるとはねぇ……執念だけは、それなりにあるんだ。」 ハルヒは余裕の笑みを浮かべる。 「それも、いつまで持つかしら。」 ハルヒの右中段蹴りがみくるを襲う。 次の瞬間。 ハルヒの体が宙を舞った。 ハルヒは混乱していた。何が起こったのか分からない。みくるは、さっきまでハルヒが立っていた位置に、前傾して両手を前に突き出した姿勢で止まっていた。 「さっきから……黙って聞いてれば……人のこと散々好き放題言ってくれて……」 「へぇ、このあたしに楯突こうっての?」 ハルヒは起き上がりながら言った。 「ばかにしないで!!」 と叫ぶみくる。 「あたしだって、あたしだって……」 肩を震わせながらみくるは叫んだ。 「怒るときは怒りますっ!!」 みくるは……キレていた。 「役立たずかどうか、あなたの身体に教えてあげますっ!!」 「上等じゃない……」 部室は、二人から立ち上る闘気で満たされていた。 「今日という今日は、あんたの身体に役立たずの刻印を刻み込んだらあぁぁぁ!!」 二人が交錯する。 ………… ……… …… … という具合に二人の空前絶後の大喧嘩が始まって、今に至る、というわけです。 はっきり言ってこれは、一般的な地球人の女の子同士による喧嘩の範疇を超えています。 涼宮さんは、優れた身体能力の持ち主。女子格闘技大会に出たら、簡単に世界一になれるでしょうね。 そして朝比奈さん。意外に思われるかもしれませんが、彼女は強いんですよ? 何せ時間移動を行う身ですから、彼女達のいる時間平面で使われている便利な道具が、移動先でいつもいつも使えるとは限りません。故障でもしたら、大変です。 そこで彼女達は、特殊な訓練を受けています。主にサバイバル方面で。その中の一つに、武術があります。人間にとって、最後に頼れるのは己の肉体なんですね。男性も女性も、服を着ていれば分からない状態を維持したまま、鍛錬を重ね、『鋼の肉体』を作り上げます。もちろん、幼いとはいえ、彼女も時間移動を行って涼宮さんの監視を行うくらいですから、相当鍛えています。普段は彼女達の言う『禁則事項』に該当するので、身体能力は制限されているようですが、今回彼女は回し蹴りをもらって、生命の危機を感じ、制限が外れたようですね。 ……もっとも、どうやらそれだけでもないみたいですが。その辺りの人間の感情については、長門さんの方が詳しいと思うので解説は譲りますが、わたしにも分かる範囲で言うと、朝比奈さんも表には出しませんが、涼宮さんに含むところがあった。それが今回爆発した、ということでしょう。 それでは彼女達の闘いの流れをお伝えします。敬称略です。 最初は、まだまだ無駄な動きの多い、喧嘩の動きでした。二人でお互いの頬を張り合いながら、怒鳴り合っています。 「この××! ×××! ××が××のくせに××なんて、×××!!」 「(禁則事項)が(禁則事項)だからって、(禁則事項)よっ!!」 上手く言語化できません。ひどい悪口雑言だと思ってください。だんだん過熱した彼女達の動きが鋭くなっていきます。 張ろうとしたハルヒの手首を取って、みくるが逆向きに捻りました。すんでのところでハルヒが振りほどきます。 その隙を突いて、みくるのローキック。これは防ぎます。ハルヒは一歩踏み込んで……猫だまし。みくるの動きが一瞬止まりました。 そのままハルヒはみくるを掴んで豪快に背負い投げ。長机ごと吹き飛ばされるみくる。立ち上がろうとするみくる目掛けて、ハルヒのドロップキック。容赦ない攻撃ですね。 みくるは本棚に叩き付けられました。ハルヒの左正拳突きが追加されます。その瞬間、みくるが動きました。ハルヒの正拳を頭突きで迎撃します。苦悶の表情を浮かべるハルヒ。 解説すると、人間の頭にある骨、頭蓋骨は、最も重要な器官が集中する頭部を保護するため、とても硬く頑丈にできています。殴られ続けるのは危険ですが、防具を何も着けない拳に頭突きで対抗するのは、とても有効な技なんです。あの様子だと……ハルヒは手を骨折したでしょうね。 拳を押さえたために低くなったハルヒの脳天に、みくるの踵落としが突き刺さりました。たまらず倒れるハルヒに、馬乗りになったみくるの拳の雨が降り注ぎます。ハルヒは頭部の防御で精一杯です。上がりきったハルヒの脇を差したみくるは、ハルヒの腕を取ると、一気に極めに行きました。腕拉十字固め。きれいに決まりました。 しかしそこが闘いの非情な所。みくるはハルヒに降参させる機会を与えようとしたのでしょう。肘を一気に折ることはしませんでした。ハルヒには一瞬の余裕が生まれます。ハルヒは迷わず、みくるの脚に噛み付きました。これは『試合』ではありません。『死合い』です。非情になりきれなかったところが、みくるの弱点だったと言えるでしょう。とても彼女らしいですけどね。 一瞬、極める力が弱まりました。すぐにハルヒは脱出します。一気に立ち上がると、みくるにストンピング。本気です。わき腹にもトーキックを入れていますね。みくるに降り注ぐハルヒの足の裏。しかし顔を踏みつけようと、一瞬予備動作が大きくなったのが命取り。 みくるはハルヒの踏みおろす足を捕まえることに成功します。そのままヒールホールド。今度は一切の余裕を与えなかったみたいです。一瞬でハルヒの膝が破壊されました。 再びマウントポジションを取ろうとするみくるにハルヒの目潰し……はかわしましたが、その隙にハルヒはみくるを右腕一本で引き倒します。こんな豪腕にネクタイを掴まれて締め上げられる彼も大変ですね。 ハルヒが上になりますが、もはやほとんどまともに動けません。膝が破壊されていて踏ん張れないので、殴っても大した威力がありません。殴る方が疲れるだけです。 すると彼女は何を思ったか、みくるの豊かな胸を鷲掴みにしました。 「……羨ましい。ああ羨ましい。羨ましい。」 とブツブツ呟くハルヒ。 「痛っ! 離してっ!!」 「このでかい胸……!!」 ハルヒは掴む力を増します。 「あたしにも分けろ――――――――!!」 「それが本音かぁ―――――――――!!」 みくるの拳がハルヒの顎を捉えますが、ハルヒは破壊された膝でみくるを挟んで離れません。何という執念でしょう。再び掴みかかったハルヒは、突然みくるの唇を奪いました。 「んむっ!? んううぅぅ~~~~~!!」 混乱のあまり、みくるの動きが止まります。ハルヒは口付けをしながら、器用にみくるの頚動脈を圧迫しています。苦悶と恍惚が入り混じった表情になるみくる。 余談ですが、このように絞め落とされる瞬間、人間は快感を覚えるのだそうです。 やがて、みくるの身体が動かなくなりました。『落ちた』ようです。 「ぷはっ……やった……!?」 勝利の雄叫びを上げようとした瞬間、ハルヒの身体は崩れ落ちました。 何という執念でしょう。意識を失う瞬間、みくるは四本貫手をハルヒの右脇腹に突き立てていたのです。そこにあるのは、肝臓。人間の急所です。脳内物質の影響でダメージに気付かなかったハルヒですが、みくるを絞め落とし、勝利を確信した瞬間、脳内物質の影響が切れたのでしょう。一気にダメージが押し寄せたのでした。 1R5分19秒、ダブルK.O. タイミングとしてはハルヒの勝ちでしょうが、みくるの有効打撃は落ちる前に入っていた点、そして何より二人の死闘に敬意を表して、ドローということにしましょう。現に、闘いが終わって立っている者はいなかったのですから。 さて。物音が止んだので、わたしも中に入ることにします。 部屋の中は惨劇と言っても良い有様です。机は飛び、本は散らばり、あちこちに血痕があります。お掃除が大変ですね。本と壁に付いた血痕だけは消去することにしましょう。掃除しても取れませんからね。後はそのままにします。部屋の様子が彼女達の記憶と大幅に違ってしまうといけません。 さて、お二人さん。そろそろ目を覚ましてくださいな。 「ん、んううう……」 「あ、ふあああ……」 「どうしたんですか!? 一体何があったんですか!?」 わたしは、さもこの部屋の惨状を見て驚いたように装います。 「んあ、あれ? 確かあなたは……」 「生徒会書記の喜緑江美里ですっ! 一体これは何の騒ぎですか!?」 「ああ、えっと……」 涼宮さんは、朝比奈さんを見ながら言いました。 「ちょっと彼女と、友情を深め合ってたのよ……」 「どんな深め合い方ですか!?」 「あのぉー、それは。」 と朝比奈さん。 「ちょっと言葉だけでは伝え切れないことがあって、その。」 「拳で語り合ってたのよ。」 そう言うと二人は、血まみれの顔で見つめあいました。 「やっぱり涼宮さんには敵いませんね。」 「いやいや、みくるちゃん、あんためちゃくちゃ強かったわよ。」 涼宮さんは、そう言うと朝比奈さんを抱き起こしました。 「ごめんね、あたしの身勝手で酷いことして。」 「いいんですよ、涼宮さんの身勝手は今に始まったことじゃないですし。」 「お、みくるちゃん。言うようになったわね~」 「はい。言いたい事言って、思いっきり殴り合って、なんかすっきりしちゃいました。」 朝比奈さんは、片目を閉じながらぺろっと舌を出しました。 「あんまり言いたいことを溜め込むのは、良くないですね。」 そして朝比奈さんは、涼宮さんの頭を抱き締めて言いました。 「それにしても、涼宮さん。あたしの胸が羨ましかったんですかぁ~。涼宮さんもスタイル良いのにな。」 「それは……」 「キョンくんの視線ですか?」 「!? ば、ばか、ち、違うわよっ!!」 「うふ。ここまで語り合った仲ですよ? 今更隠し事はなしです。」 「むー。」 涼宮さんは、顔を真っ赤にして黙り込んでしまいました。朝比奈さんはそんな彼女を見て優しく微笑んでいます。 二人とも、顔も血まみれで、ボロボロなんですけどね。二人はとても仲が良さそうに見えます。人間の言葉で言うと、『雨降って地固まる』ということでしょうか。雨の降り方が半端じゃないですが、それも涼宮さんだからでしょうね。 「……とにかく、二人ともすごいことになってます。保健室に行きますよ?」 『はぁい。』 二人の声が見事に揃いました。本当に仲良しさんですね。 (了) 文責:喜緑江美里 (補注) 今回、なぜ涼宮ハルヒがここまで暴走したか、不思議に思われるかもしれない。そもそもの原因は、雪山の事件の時と同様、広域体宇宙存在によるコンタクト。今回彼らは、SOS団を仲違いさせ、その反応を観測しようとしたと思われる。しかし、そこに涼宮ハルヒの意識が加わり、ややこしいことになった。 彼女の意識は、仲違いをさせるという意思を感じ取り、とっさにあるものを連想した。それは、『少年まんが』。そこには、夕日を背に、拳で熱く語り合い、友情を深めるという定型が記されている。 それに巻き込まれたのが朝比奈みくるだった。 こう表現すると、彼女にとっては不運だったとしか言いようがない。しかし、実は彼女にもストレスが溜まっており、放置しておくのは良くない状態だった。今回の事件は過激だったが、結果的に朝比奈みくるのストレスをも解消し、正に少年まんがに記された通り、以前より強固な友情で、涼宮ハルヒと朝比奈みくるが結ばれることに役立った。 レアケースだが、このような場合もあるという貴重な例と言えよう。 なお、喜緑江美里は、致命的な損傷以外は彼女達の治療を行っていないが、これも彼女達の記憶との整合性を保つための処置である。 補注文責:長門有希 「報告しときましたよ。」 「ありがとう。協力に感謝する。」 ここは、長門さんのマンションの部屋。わたし、喜緑江美里は、長門さんの代わりに報告を行ったことを伝えるために来ています。わざわざ対面しなくても情報は伝えられるのですけど、長門さんの様子を見たかったこともあって、訪ねてみました。 「長門さんの方は、報告は順調?」 「…………」 首を横に振る長門さん。 「頭の中の情報を文字にするのは、難しい。」 「現地語で報告してるんでしたっけ? 大変ですね。」 「大変。それに……わたしに起きていることを報告するのは、何となく恥ずかしい。」 あらあら。『恥ずかしい』ですか。インターフェイスに、そのような概念が生まれるとは驚きです。わたしにもそのような概念を理解する日が来るのでしょうか。何だか、長門さんがちょっとだけわたし達より進んでいるような気がします。 さて、用も済んだし、お暇することにしましょう。 「待って。」 「何ですか?」 「お礼がしたい。食べていって。」 「あら、夕食をご馳走してくれるんですか? やっぱりカレーでしょうか。」 「そう、カレー。」 と長門さん。 「ただし今回は、香辛料の調合から行った本格派。自信作。」 何となく、長門さんの無表情が、得意気に見えます。 「一人より、二人で取る食事は、美味しい。」 そう言って長門さんは、台所へ向かいました。 「……あなたにも、それを知ってほしい。」 小声で長門さんは、そう呟きました。 【参考:Report.17 長門有希の憂鬱 その6】 |目次|Extra.5→|
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1164.html
長門「・・・」 パタン キョン「さてと・・・帰るか」 長門「(コク)」 キョン「・・・」 スタスタ 女子A「あぁ~長門さん、男と帰ってるぅ!まじきも~!」 女子B「うっそ?あの長門さんがぁ?」 女子C「マジだぁ!あの男の子かわいそ~・・・」 キョン「(なんだあいつら)」 長門「・・・」 スッ キョン「お、おい長門、なんで俺に隠れるんだ?」 長門「・・・」 ギュッ キョン「・・・あいつらとなにかあったのか?」 長門「・・・」 長門「何も・・・ない」 キョン「・・・じゃあなんで俺の裾を握ってるんだ?」 長門「・・・」 キョン「なぁ・・・長門、たまには俺にも頼ってくれよ」 長門「あなたに頼る必要性がない」 キョン「・・・」 女子A「うっわ、長門さんあれで隠れてるつもり?」 女子B「全然バレバレなんだけど」 女子C「まじきもー!ねぇ、ちょっと写真撮っとこうよ」 カシャカシャ キャハハ キョン「っ!あいつらッ!」 長門「!」 ガシッ キョン「お、おい!なんで止めるんだっ!」 長門「・・・ダメ」 キョン「離せよっ!」 長門「・・・許可できない」 キョン「な、長門・・・」 女子B「キャハハッ!あたし10枚も撮っちゃったよ!」 女子A「うっそ!?見せて見せて!」 女子C「うっわーーきもすぎ!写真写り最悪ジャン!」 女子A「これチェンメで流そうよ!!」 女子B「それいいね~」 キャハハッ・・・・・・・ 長門「・・・」 スッ キョン「なんで・・・止めたんだ」 長門「・・・」 キョン「長門・・・俺をかばったのか?」 長門「・・・彼女たちが保持している私たちの画像データは、今日中に削除しておく」 キョン「!?」 長門「あなたに・・・迷惑はかけない。心配しないで」 キョン「お、おいっ長門!俺はそんなこと言ってるんじゃ・・・」 長門「・・・もうあなたとは一緒にいない方がいい・・・」 スタスタ キョン「長門!?ちょ、ちょっと待てよ!」 次の日 キョン「あれ?長門は・・・?」 みくる「え?えぇと・・・今日は長門さんお休みだそうです・・・」 キョン「あいつが休み?あの、朝比奈さん・・・なんでか知ってますか?」 みくる「・・・し、知らないです」 キョン「風邪かな・・・情報統合思念体でも病気になるんでしょうかね?」 みくる「・・・」 キョン「(もしかして・・・昨日のことか?)」 ハルヒ「やっほーーー!ってあれ?有希は?」 キョン「ん?お休みだそうだぞ?」 ハルヒ「うっそ?あたし今日昼休み見かけたけど・・・」 キョン「え?でも朝比奈さんが今日休みだって」 みくる「・・・」 ハルヒ「みくるちゃんが?」 みくる「・・・うっ・・・」 キョン「!?」 ハルヒ「ちょ、ちょっとみくるちゃん!?どうしたの!?」 みくる「ふ、ふぇぇ・・・んっ・・・」 キョン「あ、朝比奈さん!?」 ガチャ 古泉「こんにちわ・・・って、なんですかこの騒ぎは」 キョン「朝比奈さん?何かあったのですか?」 古泉「キョン君、どうかなされましたか?」 ハルヒ「ちょっと!古泉君邪魔!」 古泉「いたっ・・・ふぅ・・・僕は蚊帳の外ですか。・・・あれ?そういえば長門さんの姿が見当たらないですね」 ハルヒ「みくるちゃん、落ち着いて・・・一体何があったの?」 みくる「ひっ・・・ひくっ・・・」 キョン「おい古泉、今日長門を見かけなかったか?」 古泉「長門さんを?ええ、それならさっき見かけましたけど」 キョン「なっ!?ど、とこで見た!?」 古泉「ととっ・・・ちょっと落ち着いてくださいよ」 キョン「いいから早く話せ!」 古泉「なんだか3人の女子と口論していた様な雰囲気でしたよ・・・」 キョン「さ、3人だと!?」 ハルヒ「ちょっと・・・みくるちゃん、どういうことよっ!?」 みくる「ぐすっ・・・長門さんのこと・・・いじめてた・・・女の子が・・・私に・・・」 キョン「ま、まさか・・・」 みくる「長門さんは・・・学校を休んでるって・・・皆に伝えろって言われて・・・私怖くて・・・う、うわぁぁんっ」 キョン「くそっ!」 バタンッ ハルヒ「ちょっと!?キョン!!!」 女子A「ねぇ長門さん、あんまり調子乗らない方がいいよ?」 長門「何が」 女子B「はぁ?何とぼけてんの?昨日のことだよ!」 バンッ ドサッ 長門「・・・」 女子C「あんた男の子と一緒に歩いてたじゃん!?」 長門「・・・」 女子A「長門さんが青春感じるのなんて百万年早いと思うんだよね~っ」 女子B「キャハハッ!それ長すぎーーっ!」 バシッ 長門「っ・・・」 バシャ! 女子A「とりあえず・・・今日はこれで許してあげるからね~」 女子B「キャハハハッ!びしょ濡れじゃん!さむそ~っ」 女子C「つぅーっことで、あんたが今度男の子と歩いてたら・・・ただじゃおかないからね~♪」 キャハハハッ・・・ 長門「・・・冷たい・・・」 長門「・・・」 長門「部活出ないと・・・」 キョン「ハッハッハッ」 長門「・・・あ」 キョン「はぁはぁはぁ・・・っっ!な、長門!!!」 長門「・・・」 キョン「お、おいっ!びしょ濡れじゃないか!」 長門「・・・」 キョン「だ、誰がこんなこと!!」 長門「・・・」 キョン「く、くそっ!!!ち、ちきしょうっ・・・・・ぐっ・・・」 長門「・・・なんで泣くの」 キョン「っ・・・」 長門「・・・」 キョン「俺は・・・長門に何も・・・してやれなく・・・て・・・」 長門「・・・」 キョン「男のくせに・・・長門に何度も助けられてるのに・・・最低だ・・・」 長門「泣かないで」 キョン「うっ・・・ぐっ・・・・」 長門「・・・泣かないで」 ハルヒ「はぁはぁ・・・キョ、キョン!?」 キョン「・・・ハル・・・ヒ・・・」 ハルヒ「ど、どうしたのよ!?」 長門「・・・」 ハルヒ「有希!?ちょ、ちょっと!びしょ濡れじゃない!?」 キョン「・・・俺のせいだ」 ハルヒ「えっ?」 長門「・・・違う」 キョン「いや、俺のせいなんだ・・・長門のこと・・・グッ」 長門「・・・」 長門「今日は・・・帰る」 ハルヒ「ちょっと?有希!?待ってよ!?」 長門「ついてこないで」 ハルヒ「ゆ、有希?」 ハルヒ「キョン・・・一体どうしたって言うのよ?」 キョン「・・・くっ・・・」 ハルヒ「キョン・・・ねぇってば・・・」 パタパタッ みくる「す、涼宮さぁんっ!」 ハルヒ「みくるちゃん・・・」 みくる「さ、さ、さっき長門さんがびしょ濡れで歩いてて・・・」 ハルヒ「知ってるわ」 みくる「どどどーしよ・・・わ、わたしのせいで・・・長門さんが・・・」 ガシッ みくる「!?」 ハルヒ「泣かないでっ!」 みくる「は、はいっ」 ハルヒ「・・・キョン?」 キョン「・・・なんだ」 ハルヒ「有希は・・・いじめられてるの?」 キョン「・・・あぁ」 ハルヒ「・・・許せない」 キョン「・・・」 ハルヒ「少しおとなしい子だからって、あんなひどいことするなんて・・・」 キョン「・・・」 ハルヒ「みくるちゃん」 みくる「は、はひっ」 ハルヒ「奴らの顔覚えてる?」 みくる「え、えぇと・・・多分・・・」 ハルヒ「探しに行くわよっ!早くっ!」 みくる「はわわ!そ、そんな強く引っ張らないで!」 ハルヒ「キョン、あんたも来なさいッ!」 キョン「・・・」 ハルヒ「ちょっと!?聞いてるの!?」 キョン「・・・長門」 ハルヒ「キョン?」 キョン「・・・長門は・・・」 キョン「長門は俺が守る」 ハルヒ「・・・っ!?キョン!?どこ行くの!?」 みくる「キ、キョン君!?」 長門「クシュッ」 長門「・・・あ」 キョン「はぁはぁ・・・」 長門「何」 キョン「・・・だ、大丈夫か?」 長門「大丈夫・・・クシュッ」 キョン「風邪・・・ひくぞ」 長門「情報操作すれば大丈夫」 キョン「ほれ」 スッ 長門「これは?」 キョン「・・・これ着ろ」 長門「・・・(コクッ)」 キョン「・・・少し大きすぎるな」 長門「大丈夫」 キョン「・・・」 長門「・・・暖かい」 キョン「そ、そうか?」 長門「(コクッ)」 キョン「なぁ、長門」 長門「?」 キョン「俺は・・・お前に何もできないけど・・・もし本当につらくなったら、俺に言ってくれ」 長門「・・・」 キョン「大したことはできないけど・・・俺、頑張るからさ」 長門「(コクッ)」 キョン「・・・ごめんな」 ギュッ 長門「?」 キョン「・・・これでもっと暖かくなるだろ?」 長門「あまり・・・変わらない」 キョン「そ、そうか?・・・すまない」 長門「別にいい」 ギュッ 長門「・・・ありがとう」 2話
https://w.atwiki.jp/animechikan/pages/78.html
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 31 43.74 ID QUfxf/qu0 長門は一時期、痴漢に悩んでいた。 毎日、通学電車でお尻を触られた。痴漢はどんどんエスカレートした。 怖かった。悔しかった。 どうしてもその存在を消したかったが、許可は出なかった。 学校に行くのが憂鬱だった。 しかし、最近は全く遭わない。 おそらく、車両や時間を不規則に変え始めたのが功を奏したのだ。 情報操作は得意。長門は痴漢を撃退したかのような誇らしさを感じていた。 怠っていた涼宮ハルヒの観察も再開しなければ。朝倉も退屈しているだろう。 長門は安心して電車に乗り込んだ。 前にいる女の子、どうも様子が変だ。 唇を噛んで、何かに耐えるような・・・ その背後には男が体を密着させている。 長門「あれはまさか・・・痴漢」 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 36 01.05 ID QUfxf/qu0 俺は順調に一ノ瀬ことみを育てていた。 とくに狙いのない日は、ことみを待ち伏せして痴漢するようにしてきた。 じっくりとソフトな痴漢を繰り返しながら、少しずつエスカレートさせる。 ことみはその高い学習能力で、徐々に痴漢に慣れていった。 さすがに嫌悪感は消えないようで、痴漢を避けようとはする。 時間をずらしたり車両を変えたり、最後に電車に乗り込もうとするなどの努力は見られる。 それでも、やはり触られてしまうと抵抗はできないようで、 今ではスカートの中に手を入れてもまっすぐに立ったまま耐えられるようになった。 我ながらうまくやったものだ。 ことみの能力なら、きっと毎日パンティを下ろしても耐えられる程度には成長するだろう。 大きくて張りのあるお尻が、じきに俺の玩具になる。俺は心がうきうきするのを抑えられない。 今日も早めにホームに行き、ことみが来るのを待つ。 意外な姫が階段を上ってホームに立った。・・・かなり久しぶりな顔だ。 長門有希。 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 41 57.40 ID QUfxf/qu0 はからずもかがみんを登校拒否に追い込んだ直後に、数日にわたって俺の姫を務めた子だ。 最終的には、パンティの中で射精してスカートで拭き取るという、俺の願望を実現してくれた優秀な姫だ。 小さくて硬いお尻の感触が両手によみがえる。 そうだな・・・せっかく久しぶりに会ったんだ。今日は長門を可愛がるか。 そのすぐ後から、ことみが階段を上ってくる。 む・・・迷うところだ。長門か、ことみか。 いずれも安全パイ、いやパイだけでなくケツも安全なのだが、安全な娘だ。 そうなると両手で同時痴漢といくか。 いや、今日はことみを責めよう。 痴漢というものについて、新しい知識を植えつけてあげよう。 教えるのは・・・非常勤講師、長門だ。 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 48 01.62 ID QUfxf/qu0 電車がやってくる。長門が人波と共に電車に乗り込む。 俺はその後につけて、ことみを車内に押し込んでいく。 ことみは少し体をひねって抵抗するが、強引に押し込んでやればわけない。 長門は電車の角に位置取り、体を回転させて壁を背にした。 なるほど、痴漢対策か。成長したな。 俺はことみをその前に押し込む。 俺の前にことみがいて、右側に長門がいる。そんな位置で電車の扉が閉まった。 今日の俺の狙い。俺のことみに対する痴漢を、長門に見せるのだ。 長門は声をあげることはない。 長門と茅原みのりに同時痴漢した際は、互いに痴漢に遭っていることに気づきながら、 結局互いを助けることも助けを求めることもできず、並んでうつむいて耐えるだけだった。 平野綾に痴漢したときも長門に見せつけたが、やはり見ているだけだった。 そして、長門が痴漢に気づきながら助けないことを、ことみに気づかせる。 「この人・・・気づいてるのに、見てるだけなの」 「やっぱり・・・声をあげても、きっと誰も助けてくれないの」 「我慢しなきゃなの・・・」 こういう筋書きだ。さあ長門、先輩として立派に特別講師を演じてくれよ。 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 53 17.11 ID QUfxf/qu0 電車が動き始めると同時に、俺は両手でことみのお尻を包む。 そしていきなり、うにうにと優しく揉んでやる。 ことみは身じろぎもしない。乗り込むときに痴漢の存在には気づいていたはずだ。 ちょっと前ならびくついて触る前からガタガタ震えていたところだろう。お前も成長したな。 俺は教え子を見守る師匠のように、愛でるようにお尻を揉んでやった。 ことみのお尻は俺の指に押し込まれてはプリプリとした弾力で押し返す。 さらに、指をお尻に押し付けながら動かして、スカートをめくっていく。 俺の指は簡単にスカートの中に入りこんで尻たぶに触れる。 吸い付くような感触。ことみの意志とは裏腹に、刺激を求めるかのように俺を誘惑する。 はらりとスカートをめくって手のひら全体を侵入させる。 手のひら全体でことみの生パンを包む。柔らかくて暖かい。 ことみは相変わらず無反応。いきなりこれだけのことをされても無反応である。 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 11 59 01.02 ID QUfxf/qu0 俺は横目で長門を見下ろす。無表情だ。 まずは長門の目を引かなければならない。 俺は周囲に注意しながら、不自然に右腕を動かした。 同時に、ことみの尻たぶをこちょこちょと指で刺激する。 少し変則的な俺の責めに、ことみはうつむけていた顔を少しだけ上げた。 そしてまたすぐにうつむいてしまった。 長門のほうも無表情のままだ。何か考え事でもしているのだろうか。 ことみのお尻を揉みながら長門の注意を惹こうとする。 ちょっと直接的なやり方だが・・・まあ長門なら大丈夫だろう。 俺は右ひじをくいくいと動かして、長門の体をつついてやった。 ぽふぽふ、と長門の左腕に俺のひじが当たる。 長門はふっと自分のひじに目をやった。よし、今だ。 俺は少し体を右に開いた。死角になっていたことみのお尻が長門の視野に入る。 長門は下を向いたまま、ぴたりと停止した。よし、気づいたな。 長門には、ことみのスカートが不自然にめくれて、その下から俺の手首が出ているのが見えているはずだ。 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 04 25.54 ID QUfxf/qu0 長門「あれはまさか・・・痴漢・・・ん」 ぽふぽふ、と腕に何かが当たる。長門は下を見た。 そこには・・・すさまじい光景が広がっていた。 やはり、痴漢だ。しかもスカートに手を入れられている様子だ。 嫌な光景だ。辛い記憶が生々しくよみがえる。 それとともに、長門は「私でなくてよかった」と思った。 やはり痴漢はいる。自分はこのところそれを完璧に避けている。 見れば、くびれた腰に大きなお尻。胸もかなり大きいようだ。 見るからに魅力的な娘だ。そんな体を痴漢に好きなようにされるなんて・・・ その娘はまっすぐに立って反応しない。その気丈さが哀れさを増長した。 可哀想と思いながらも、やはり怖くて助けられない。目の前に痴漢がいるのだ。 変な素振りを見せたらまた・・・ お尻に生暖かい感触がよみがえる。塗りたくられた、あのぬるぬるしたその液体・・・ 長門にはとても声を上げることはできなかった。 ただ、なんとなく目を離すこともできず、その光景を見守った。 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 09 39.77 ID QUfxf/qu0 長門・・・気づいたようだな。しかも俺の痴漢行為を凝視しているようだ。 興味があるのか?そんならお前にもやってやるぞ? ずいぶん間が開いたけど、あれだけのことをされたんだ。忘れるはずもないよな。 あのときと全く同じ恐怖と屈辱を、また味わわせてやろうか? まあ、今日というわけにはいかないがな。今日はこいつを教育してやるんだ。 俺はスカートに右手をかけ、するすると持ち上げた。 そして、俺の腰とことみのお尻の間に挟む。ことみのスカートは完全にめくれあがった。俺も視線を下にやる。 大きくくびれた腰の下、スカートの隙間に、白いパンティが大きく膨らんでいるのがわずかに見えた。右ケツの丘だ。 ことみは、変わった責めに驚いたのか腰をひねる。しかし、その抵抗も控えめだ。 左手でぐいぐいと左ケツを揉む。少し乱暴にすると、ことみは抵抗をやめてうつむいた。 長門は相変わらず停止してうつむいている。 この娘。いいだろ、この体、この我慢。 俺は子供が玩具を自慢するように長門に見せつける。 右手の人差し指を立てて、ことみのお尻にぐるぐると花丸を書いた。 ことみはぞくぞくと震えた。指先での責めにはまだ慣れが不足している。 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 15 12.39 ID QUfxf/qu0 さて、次はことみが長門に気づかなければならない。 しかし俺はあせらない。もう少し深入りしてみよう。 生パンごしにお尻を揉むくらいは、もうことみには当然の責めだ。 もう少し恐怖を与えて、そこで長門が傍観していることに気づく。 そのほうが絶望感も強くなるはずだ。同時に、諦観もだ。 もちろん、今後のために必要なのは後者である。 さて、そうなると谷間攻めか生尻責めかが問題だ。 パンティを下ろしてしまうのはまだ早い気がする。 となれば・・・ Tバック責めだ。 パンティを食い込ませてTバック状にすれば、谷間を刺激しながら生尻を堪能できる。 長門から見てもそれなりに迫力のある責め方になるはずだ。 善は急げ。俺はするすると両手を動かして、パンティのすそをつまんだ。 ことみの尻肉に押し込まれたゴムをつまんで、その中に指を侵入させる。 そして俺はゆるゆると両手を持ち上げていった。 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 20 54.99 ID QUfxf/qu0 ことみは少し腰を動かしたが、抵抗というほどではない。 脚も震えていないし、落ち着いている。よしよし、いいぞ。 俺も視線を下にやる。邪魔なスカートを手首で持ち上げてやる。 さっきパンティに包まれていた丘が、今はその素肌を晒している。 それを包んでいるのは俺の指。横には長門がかばんを抱えているのが見える。 俺と長門にだけ開かれた痴漢鑑賞ゾーン。長門は食い入るように見つめている。 むしろ長門は、痴漢ゾーンを死角にするのに一役買っている。 普通、自分の痴漢行為の光景を見ることなどできないものだ。 今は、長門の体が壁になっているおかげで、少し体を開いて隙間を作ることができる。 長門よ、お前は無意識とはいえ俺の痴漢行為に協力しているんだぜ。 この娘がどんな辛い思いをしているか。経験者のお前になら分かるだろう。 見ているだけでいいのか?助けてやらなくていいのか? 薄情なやつだ。もうお前も共犯みたいなもんだぜ。 しかし長門が声を上げる可能性は考えにくかった。 俺はまたつんつんとひじで長門をつついた。 声を出すなよという牽制と、壁になってくれてありがとうという感謝と、 お前も共犯だという侮辱。どれもおそらく伝わってはいないだろう。 長門は腕を少し動かして俺を避け、なおも痴漢行為を見つめていた。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 26 19.97 ID QUfxf/qu0 プリプリとしたことみの生尻が俺の指を刺激する。 指が吸い付くようなもちもちした質感や指が埋もれこむような柔らか味はない。 その代わり、さらさらした感触と張りがある。これがことみのお尻の魅力だ。 これだけ大きなお尻でこれだけの張りがあるのは素晴らしい。 俺の姫は我慢強くて痴漢しやすいだけでなく、お尻自体も一級品だ。 時間をかけてでも痴漢奴隷に育てる価値がある尻だ。 いや、この性格にこの尻。痴漢奴隷にしないという選択肢は考えられない。 俺はことみの生尻を揉んでやる。ことみはお尻を硬直させた。 その緊張をほぐすように、優しく揉んでやる。 爪を立てるなど、相手に痛みを与える痴漢もある。 抵抗を奪う方法のひとつでもあるし、それ自体が俺の満足感にもつながる。 しかし、ことみについてはあくまで優しく扱う。 鋭意育て中の大切な姫だ。慈しむように両手をうにうにと動かして揉み解す。 こうしてやると、少しずつ尻肉の表面に柔らか味が出てくる。 じんわりと汗がにじんで、擬似的にもち肌を作り、俺の指に吸い付いてくる。 一粒で二度オイシイ。 さすが俺が目をつけた姫だ。触るごとに可能性が広がる感じがする。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 32 00.22 ID QUfxf/qu0 さて、のんびりしている暇はない。時間は限られているのだ。 谷間を攻めていこう。ただし、指では責めない。 長門に見せつける意味もこめて、もう少しいやらしい責め方をする。 ことみのお尻の谷間に埋もれたパンティ。これを使っていく。 俺は右手をことみのお尻から離した。長門はそれを見つめている。 これから何が起こるか気になるか?・・・いや、お前なら想像がつくだろうな。 お前にもこの責め方をしたことがあったっけ。お前は泣いちゃったんだっけ? クールで無口なアンドロイドも、まあ俺の前ではか弱い少女ってことだ。 あと、便利な道具だな。現に今、ことみの教育に役に立とうとしている。 俺はいいものを作ってくれた統合ナントカ体に感謝した。 左手でことみの生尻の肌触りを楽しみながら、右手をお尻の真ん中に動かしていく。 そして指を立てて、人差し指を右側の、中指を左側のパンティのすそにひっかける。 今日は少し小さめのパンティを履いているようだ。ゴムが尻肉に食い込むくらいの。 ことみが選んだそのパンティが、今となってはことみを傷つけていく。 俺は指を押し込んで、二本の指でパンティをつまみあげた。 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 37 00.49 ID QUfxf/qu0 そろそろ電車が減速し始める。ちょいと生尻を楽しみすぎた。 しかし、お陰でことみのお尻はよく解れているし、ことみの我慢も確認できた。 俺はくいくいと控えめにパンティを引張った。 ことみはびくんと反応した。そして控えめに腰を振る。 しかしパンティはしっかりと俺の指にかかっている。 腰を振れば、逆に股間のパンティはぐいぐいと奥に押し込まれてしまう。 ことみは腰を止めてうつむいた。肩が細かく震えている。 まあ上出来だ。 俺はぐいぐいと少しずつパンティを引張る力を強くしていく。 長門に見せつけるように、ぐいぐいと左右に動かした。 ことみは全身を硬直させて耐えている。 さて、そろそろいいだろう。ことみに長門の存在を教えてやることにする。 俺はパンティをぐいっと強く左に引張った。 ことみは少しよろめいて体を右に向け・・・停止した。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 39 30.19 ID QUfxf/qu0 い、痛いの、ちょっ・・・! あ、あれ、この娘・・・ 見えてる。見えてる、はずなの。 というより、見ているの。私のお尻を見てるの。 一昨日は羊を見たの。昨日は鹿。今日は痴漢・・・ なんて洒落てる場合じゃないの。 助けて・・・助けて! 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 43 22.85 ID QUfxf/qu0 気づくとその娘は私を見ていた。目と目が合う。 訴えるような、潤んだ目で私を見ている。 その意図は簡単に読み取れた。助けを求めている。 たしかに長門自身も、痴漢に遭う辛さは知っている。 今勇気を出して声を上げれば、いやこの大きなお尻と痴漢の手の間に手を入れれば、 この哀れでかわいらしい彼女を助けることはできる。 でも、そんなことをしてこの痴漢を逆上させたらどうなるか・・・ お尻の谷間でどくん、どくんと脈打って熱い液を吐き出す太いもの・・・ 長門の脳裏に、また生々しい記憶がよみがえる。 ごめん・・・長門はたまらずに目をそらした。 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 48 59.97 ID QUfxf/qu0 ことみと長門の目が合う。しばし見つめあった後、長門はふいと目をそらした。 その瞬間、ことみの全身が脱力した。 うつむいていた顔が天を仰ぐ。硬直したお尻がふわりと緩み、ぐいと俺の左手に押しつけられる。 あきらめた。絶望、悲愴、人間不信。それら全てに対する諦観。 その瞬間、ことみは完全に俺のものになった。 電車が減速を始める。よろめくことみの体重を、お尻の谷間に挟まったパンティで支えてやる。 俺の指の中で、ことみのパンティがきりきりと軋む。 ことみにはかなりの痛みがあるはずだ。それなのに、ことみはふわふわとして落ち着かない様子だ。 姫がこんな状態になるのは初めてだ。 教育成功。 ことみは今、幸せでも不幸でもない。 ただ痴漢に体を弄ばれながら、あらゆる事実が時間の河を流れていくだけだ。 俺はしてやったりの笑みを浮かべて長門に目をやった。 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 12 53 17.65 ID QUfxf/qu0 長門はただ唖然としてその娘を見つめた。 娘の顔から表情が消えた。だらしなく口を開け、焦点の合わない目で斜め上を見つめている。 その両目からとめどなく涙が流れる。口辺からはだらしなくよだれが垂れる。 地獄。この娘は地獄を見ている・・・ 長門はその状況が空恐ろしくなった。 私が見捨てたからだ。この娘を壊してしまったのは私かもしれない。 今なら、今ならまだ間に合うかもしれない。長門は必死に自身を鼓舞した。 それ以上に切実に、私は絶対にこんな目に遭いたくないと思った。 またお尻に生暖かい感触。 うにうにと動く痴漢の指が、まさに今触られているかのように生々しくよみがえる。 とても見ていられない・・・長門は全身を硬直させ、うつむいてぎゅっと目を閉じた。 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 13 00 14.28 ID QUfxf/qu0 電車が停車する。ことみはまだ自分を見失っているようだ。 人波がホームに流れ出す。ことみはふらふらした足取りでそれに押された。 このままでは未完成だ。俺は画竜点睛を行う。 ふらふらと前に進むことみ。俺は指にかけたパンティをぐいと引張った。 ことみはぐらりとよろめいて、俺にどさりとぶつかってくる。 自失状態のことみの目を覚ます、最後の痛み。同時に俺はするりとことみのお尻から手を離した。 ことみは我に返ったように一瞬全身を硬直させ、今度はしっかりした足取りでホームに降りた。 理想的。完璧なゲーム運びだった。今なら落合監督と張っても負ける気がしない。 ことみは逃げるように足早にその場を去っていく。 長門に目をやると、長門もまたことみの後姿を見つめている。 俺の悪戯心が頭をもたげる。そうだな、最後にちょっと驚かせてやろう。 俺は右手をするりと長門のお尻に伸ばし、さらりと撫でてやった。 小ぶりで、硬くて、形のいいお尻・・・そういえば久しぶりの再会だ。 長門はびくんと極端に跳ね上がり、小走りにその場を去った。 俺はその後姿を感謝をこめて見守った。 ことみはまだやれる。次はパンティずりおろしにも唇を噛んで耐えるだろう。 俺は充実した気持ちで、ことみの生尻の感触を指に焼き付けながら、ゆるゆるとホームを歩いた。 一ノ瀬ことみ編 終了
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4588.html
私にはもう以前のような力はない。 高校卒業と同時に涼宮ハルヒの力が失われ、情報思念体は私を回収する意向を示した。 だが、私は断った。…彼と離れる事が嫌だったから。 情報統合思念体はこのエラーをバグととらえた。そう通告された時、私は消されることを覚悟した。 だが、消されたのは私の力だけだった。同時に、私の体をただの人間と全く変わりないものにして最後に言い残した。 『卒業祝いとして受け取りたまえ』 今、私は彼と共に過ごしている。 大学卒業後、彼はサラリーマンとして働いている。私を養う為に。 私はもう長門の姓ではない。左手の薬指には彼から贈られた指輪が光っている。 朝は彼より早く起き、食事を作ってから彼を起こし、支度を手伝う。 お弁当を渡し、彼は出掛ける前に必ずキスをしてくれる。 朝食の片付けが終わると他の家事に取り掛かる。以前の私の部屋とは違って物がたくさんある分掃除が少し大変。だけど、とても楽しい。彼が帰って来て気持ちよく過ごす姿を見たいから。 昼食は朝作ったお弁当の残りを食べる。冷えてもおいしい料理をもっと勉強して彼が仕事を頑張れるようにしてあげたい。 少し昼寝をしたら、夕食の買い物に出掛ける。近所の奥様方が話しかけてくる。 私は高校時代よりはおしゃべりになったほうだと思うし、表情も豊かになったはずだけど、彼女たちには上手く伝わらないようだ。少し残念。 今日、私はある計画をしてある。結婚してから一年も過ぎている。私は彼がテレビで子供を見るたびに切なそうな表情をしていたのを見逃さない。 精がうんとつく料理を作ろう。明日は休日だから。彼が一晩中愛してくれるように。 「ただいまー」 彼が帰ってくる時刻には私は玄関に立っている。今日は予定より10分早かった。いつもより気持ちが急いて15分前から待っていたのが功を成した。 「…ご飯?お風呂?」 鞄を受け取って浮き立つ気持ちを抑えながら聞いた。 「…どうした有希。今日はいつもよりご機嫌そうだな。何かいい事あったか?」 ネクタイを緩めながら笑顔で聞いてきた。私を理解してくれるのはやはり彼だけだ。胸が締め付けられてむず痒くなるような気持ちになった。 「…特に。」 あえて隠した。私にとっていい事があるのはこの後だから。 「…こりゃまた豪勢な夕飯だな。ほんとに何もなかったのか?」 「………」 ただ微笑んで彼を見つめる。…愛しい人。私の作った夕食を美味しそうに食べてくれる。嬉しくていつもより食が進んだ。 食べ終わるといつも彼はソファに座ってテレビを見るのだが、片付けを手伝ってくれた。 「いや、なんだ。…いっぱいだったから片付けが大変だろうと思ってな。」 「………そう。」 抱き着いてほお擦りしたくなる気持ちを必死に抑える。 彼がお風呂に入っている。私はその隙に寝具の周りを今一度整理した。今日、避妊具は必要ない。箱をテレビの後ろに放り投げて彼に見つからないようにしておく。 …なかなか出てこない。気がつけば私は自分の着替えを持って脱衣所に立っていた。 中から彼の鼻歌聞こえてくる。とてもご機嫌。つい私も嬉しくなる。 「ふふふーん…でかい肩パッドー…♪」 カチャリ 彼はとても驚いた顔をしている。鼻歌も止んだ。 「背中…流します。」 「あ…ああ、ありがとう。」 彼は下半身を手で隠しながら湯舟から出た。何度も見てるのに。ユニーク。 シャコシャコ 広い背中。丹念に洗いながら、彼の男としての魅力に顔を紅潮させられる。 「…驚いたぜ、俺が誘わずに一緒に風呂入ったことなんかなかったからさ。」 「………。」 「思えばつい最近一年が過ぎたんだよな。結婚記念日にはちょっと豪華な店に外食して…後から目玉が飛び出たぜ。」 「……美味しかった。」 「まぁな、なんだかんだで値段は正直だ。また行こうな。」 彼からは見えないが、コクリと頷いた。また誘ってくれて嬉しかった。 「…有希?」 彼を後ろから抱きしめた。…もう、我慢できなかった。彼の首筋に舌を這わせた。 「…うわっ、………どうしたんだ有希。」 何も答えない。恥ずかしいから。 「……ははーん…。」 高校時代の鈍感さは今の彼にはほとんど見受けられない。あの頃のように苛立ちを覚えていたのが懐かしい。 「…それでご機嫌だったんだな?……出るか?」 「………先に出て…待ってて。」 私は体を丹念に磨いた。髪はいつもより長めに、体は3回隅々まで洗った。これから彼に愛されると思うとそうせざるを得なかった。 脱衣所できちんとドライヤーで乾かし、綺麗にとかした。 寝室に向かう前に、リビングに置いてある彼お気に入りのコロンを少しかける。 それから少し思い立った私は、空き部屋に入り、クローゼットを開く。今では一着しか残していない、懐かしい制服。 あの頃のように、激しく…愛してもらいたい。 制服に身を包み、大胆に下着は着けずに寝室の扉を開けた。 「…ああ、遅かった……な……」 私の姿を見て彼は硬直している。口の端だけがひくひくと動いている。 やり過ぎただろうか…。不安になってきた。そう思うと急に恥ずかしくなってきた。この場から逃げ出してしまいたい。 後ろ手にノブを掴むと、彼は麻痺から開放され口を開いた。 「…懐かしいな、その制服も…。…こっち来いよ。」 ちょい、ちょいと手を招いて自分の隣をぽんぽんと叩いている。 ぎくしゃくしながら彼に近付き、隣に腰掛ける。こんなに緊張したのは初夜以来だ。 「…かわいいな、有希は。あの頃とずっと変わらない…。」 肩をぐっと抱いて私の耳元で呟いた。ぞくぞくと背筋に快感が走る。 彼はそのまま私の耳に息を吹き掛け、耳たぶを甘噛みしてきた。体が芯から熱くなる。 「明日は休みだし………今夜は……」 「………最初から、そのつもり。」 彼は少し呆気に取られた顔をする。自分で言っておいて恥ずかしい。顔が熱くなる。 「…そうか、じゃあ…」 濃厚なキスをしてくれた。 「激しくいくぜ」 ベッドに押し倒された。強引な彼に愛されるのは初めてで胸がドキドキしてきた。 キスをしながら私の胸をまさぐって、彼はすぐ異変に気付いたようだ。 「…着けてないのか。」 私はキスを返して質問は無視してこう返答した。 「………赤ちゃん…欲しい…。」 「…なんだそりゃ、答えになってないぜ?」 彼の手を取って私の下半身へ導く。 クチュリ… 「…こういうこと。」 彼はしばらく視線をきょどきょどと泳がせたが、私の頭を撫でて全身を強く抱きしめてくれた。 「…いっぱい気持ち良くしてやるからな。」 抱きしめたまま、彼の指は私の秘部を掻き回した。 強い刺激の度に声が漏れる。なんとか抑えようとして彼の背中に爪を立ててしまった。 「…ごめんなさい。」 彼の胸板に顔を埋めたまま謝る。ここで止められたら私はどうかなってしまうから。 「…ここがいいのか?ん?」 彼は意地悪い声を出しながらより強く掻き回した。 「あぁっ…うんっ…きもちいい…」 恥ずかしい。顔から火が出そうだ。 彼は私の足を開かせて下半身に顔を埋めた。 ふと、秘部にさっきの何倍もの快感が走った。思わず足を閉じて彼の顔を挟んでしまった。 「……ごめんなさ…」 「…今日は一段と感じやすいんだな、有希は。」 謝りきる前に彼は優しく声をかけてくれた。 「…かわいいぞ。」 「…あなたのも、気持ち良くさせて。」 私は彼の上に跨がってお互いを舌で愛撫できる体勢を取った。 愛しい彼のペニスを口に含み、舐めまわす。 彼の愛撫が強烈過ぎて、しばしば私は動きを止められた。 その様子が彼を興奮させるのか、私が感じる部分を執拗に攻めてきた。 「あっ……ああぁっ…!!」 イってしまった。 オルガズムのせいで軽い眠気を感じたが、眠っている暇はない。 彼は覆いかぶさって私の胸を揉む。さほど大きくない、普通の人間になってからややコンプレックスのように感じていた胸。 そんな気持ちはこの時には無くなっている。今の私は獣と一緒。雄の彼に後ろから犯されて孕ませられようとしている雌。 「くっ…有希ィ…っ!」 「膣内に…出して…!アアァァッ…!」 自分でも驚くくらい大きな声を出して彼と共にイった。 膣内に彼の精液が注ぎ込まれる。勢いよく出される度に彼の体が痙攣する。 出し終えてしばらくするまで、私達は一つになったままでいた。 そのまま、ベッドに倒れ込む。 言うことを聞かない体を必死に言い聞かせて私は彼の胸元まで動いて力無く抱きしめる。 彼は私より強く抱きしめてくれた。彼の顔を見つめる。 私が普通の人間にきっかけを与えてくれた愛する人の顔がある。慈愛に満ちた表情で私を見つめている。 「…好き。……大好き。」 「ああ…。」 「…大好き。」 「おう…。俺もだ。」 さらに強く抱きしめてくれた。 「…夜は長いぞ…。俺は…まだまだ…愛し足りてないぜ。」 長い濃厚なキスをした。 私は汗だくになった制服を脱ぎ捨てると、彼の上に跨がって快感を貪り続けた。 次の日、何度やったか覚えてないけれど、目覚めたら彼は隣にいなかった。 「…あなた?」 返事はない。 シーツを掴んで物寂しさを紛らわせる。 …駄目。寂しくて涙が出そう。 彼はどこ…? あれは夢…? カチャリ 「…あぁ、起きたか。」 寝室の扉が開いて彼が入ってきた。両手にはマグカップがある。 「…いい香り。」 「さっき煎れたばかりだ。飲むだろ?」 コクリと頷く。彼はベッドの横に椅子を置いて私にマグカップを手渡し、腰掛けた。 「……ここ。」 昨夜のようにぽんぽんと隣を叩く。彼はふっと笑うとそこに座った。 「…?泣いてたのか?」 いつの間にか私の頬に涙が伝っていた。 「…今までのことが夢の中の出来事だったんじゃないかと思って…。…現実だったみたい。」 くくっと笑うと彼はマグカップを傾けた。 「俺もな…夢なんじゃないかと思うぜ。…有希が俺の奥さんなんてさ。」 「…現実。」 「ああ、現実だ。…俺は…幸せ者だ…。」 「…私も。」 彼はまた少し笑うと、ぐいっとマグカップを傾けて、立ち上がった。 「朝飯は俺が作ってやるよ、何がいい?何でもいいぜ!」 「…カレー。」 「朝からか!?」 「何でもいいはず。」 困ったようにぽりぽりと頬を指でかくと、にっと笑って 「よぉし、美味いのを用意してやるぜ、待ってろよ!」 ビシッと私に向けて親指を立てて、頬にキスをしてから寝室から出ていった。 彼は見てないけれど、私も親指を立て、彼が煎れてくれたコーヒーを静かに嗜んだ。 化粧台に映った裸の自分の体をベッドから見る。 首筋、胸、腕。所々にキスマークがついている。 しばらくは長袖の服を着なければならない。 「困った主人…。」 思わず漏れ出たその言葉に驚き、それからその響きに幸せを感じた。 時計を見る。まだ5時だった。 彼の脱ぎ捨てられていたシャツを着て、窓辺に立った。 春とはいえ、まだまだ朝は寒く、窓は白く曇っていた。 指で、傘を描き、私の名前と彼の名前を書いて、最後に傘の上にハートを描いた。 なんだか気恥ずかしかったけれど、消さずに残しておいた。 すぐに消えてしまうだろうけど、跡は残る。彼はこれを見たらどう言うだろうか? 悪戯をする子供はこんな気持ちなのだろう。 毎日がときめきで満ちている。彼のおかげで。 彼は今頃また新しいときめきを用意してくれている。 呼ばれるまで待とうか、それとも…? …彼に……伝えたい、今の気持ちを。 寝室の扉に手をかける。 「有希、待ってろよ、まだ時間かかりそうだ。」 キッチンで私のエプロンをつけて調理している彼を後ろから抱きしめた。 「…有希?」 「あなた…ありがとう。…愛してくれて…。私は…」 彼は振り向いて私の手を取った。 「「死ぬまであなたを愛し続けます」」 それは 私たちの プロポーズの言葉。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5448.html
第一章 冷え切った坂道を登る。歩く度に吐く息は白い煙となって冷たい冬の外気へと消えた。 寒さをしのぐためカーディガンに首をうずめる。わたしの通う高校である北高は、この山の頂上にあった。 結局、朝の奇妙な感覚は次に起きたときにはなくなっていた。少し残念だったけれど、あの物語の続きはあの感覚がなくてもきっと書ける。そんな予感がした。たぶん、あの感覚はその文章の鉱脈を見つけるためだけの役割だったのだろう。それを、たとえカオスであってもちゃんとした形にするのはわたし自身の仕事なのだ。 坂の上の北高に目を戻した。 朝のことを考えると頭が疼くような気がする。しばらく考えるのはやめようと思った。 気を紛らわすために誰かと話すのも今日に限っては悪くはなかったけれど、あいにく横で歩いているはずの朝倉涼子はいなかった。 今日はわたしと同じような生徒がちらほらと目につく。つまり、ひとりで歩いている生徒だ。一週間ほど前から学校内で風邪が流行り始めていたが、今週になって欠席者が一気に増えたらしい。マスクをしている姿も見受けられる。 朝倉涼子もまた風邪引いていて、数日前から学校を休んでいた。わたしは不謹慎なことにそれが嬉しくもあったが、今は少し残念だった。 わたしは人と話をするのが得意ではない。また、好きでもない。 話すことで相手を気まずくさせてしまうのが嫌だったし、そのせいで自分も気まずくなるのが嫌だった。できればお互い何の遠慮もいらず黙りこくってしまうのが一番いいことのように思われたが、お互い遠慮しないで黙るということの難しさをわたしは知っていた。まともな人間ならふたりして黙っていればよけいに気まずくなってしまう。その時点で両者の間には遠慮というものが生まれているのだ。とても残念だ。慣れてしまえば沈黙ほど穏やかで秩序あるものはないのに。 わたしにはまだ、沈黙を共有できる仲間がひとりとしていなかった。 朝倉涼子――彼女はわたしと沈黙こそできないものの、話していても気まずくならない数少ない人間だった。だからこそ、住んでいるマンションが同じという理由があったとしても、毎日一緒に登校しているのだ。 しかしながら、そうはいっても見た目の事実を裏返してしまうと彼女をその中にカウントしていいものなのかもあやふやになる。 なにしろ彼女は、自分から話しかけてきてはわたしの蚊の鳴くような声の返答を待ち、また自分の意見をべらべらと喋るような女子なのだ。あれではほとんどひとりで喋っているのと変わらない。わたしは専ら聞き役だけれど、それでもまだ聞き役といえるならましなほうだ。下手をするとわたしは彼女の独り言の聞き役になってしまう。もちろん独り言に聞き役なんかはいらないから、そうなったらわたしは不要な存在になってしまうのだ。 しかし彼女でさえ、今日は横にいて欲しかった。どんな話題でもいいから喋っていて欲しかった。朝の感覚を紛らわせるには誰のどんな話題でもいい。もちろんあの奇妙な感覚を共有してくれとは間違っても言わない。 何となく、あの感覚は早く霧散させた方がいい気がしたのだ。いつもと違うのはどんな些細なことでも気になる。朝起きるのがいつもより少し早かったとか、いつも冷凍食品の朝食がコンビニ弁当だったとか、もちろん、いつも隣を歩いているはずの女子生徒がいなかったとか。いかに小さな違いでも、その違いが大量に集まれば、そこには恐ろしささえ見え隠れするのだ。 朝倉涼子が今日はいない。 小さな日常が崩壊する音が聞こえた気がした。 やがて学校に着くとわたしは、靴箱を通って廊下を過ぎ、教室に入った。一年六組の教室だ。わたしは席に座ると後ろを振り返った。 教室の後ろに掲示されているカレンダーは十二月のものになっていた。二十四と二十五がクリスマスイブとクリスマスで、カレンダーの挿絵の部分にはサンタとトナカイが描かれている何の面白みもないカレンダー。この国の国民は十二月というとクリスマスしか頭にないのだろうか。カレンダーの絵はクリスマス一色だし、街のどこへ行ってもクリスマスソングが流れている。店頭にはケーキが並び、クリスマスの夜には大量の人々がメリークリスマスと聖夜を祝って大騒ぎするだろう。キリスト教信者でもないというのに。わたしの過ごすクリスマスは他の高校生のクリスマスとは違って、いつも静かだった。 北高でもあと一週間も経てば冬休みになる。つまり、クリスマスの前に冬休みがやってくることになる。そんなことまでが、学校側の生徒のクリスマスを思いやった取り計らいだとは思わないけれど、何だかあまりいい気分ではない。 そういえば今日は何日だっただろう。わたしはカレンダーに目をやった。曜日からすぐに見つかった。十二月十八日。それが今日の日付だ。 冬休みという単語が六組の生徒の気分を浮き立たせているようだった。わたしは前を向いて六組の様子を眺めた。しかしその六組も今週に入ってからは勢いがないようだ。 風邪の影響だった。六組は日に日に空席が目立つようになっている。インフルエンザではないがこの冬の風邪はタチが悪い。なんならクリスマスも風邪多数で延期になればいいのに。 そういえば、風邪は隣の五組が特にひどいらしい。朝倉涼子も五組の生徒だった。 「…………?」 そんなことを考えながら机の中を探っていた手が突然、奇妙なものにぶつかった。何だろう。固い板のようなものだ。取り出すと、それが黒い色をしていることがわかった。黒くて薄っぺらな板。重量はそんなにないが、固い感触がした。 こんなものを机に入れた覚えはない。見た覚えもないし、これが何なのかも解らない。誰かが間違ってわたしの机に入れてしまったのだろうか。 どうしようかな、そう思ったときだった。 突如として猛烈な頭痛がわたしを襲った。その時は声をあげないようにするのが精一杯だった。 金属バットで殴られたような激しい痛み。そして耳鳴り。脳味噌をかき混ぜられたような吐き気。それらが一気にやってきてわたしをぶちのめした。それが来るからといって心の準備をする時間の余裕はまったくなかった。 目眩のように教室の風景がごっちゃになってぐるぐると回っている。前の黒板と後ろの黒板が溶けて一緒になり、教室中の机が一点に吸い寄せられた。わたしもまたそこへ吸い寄せられていく。ブラックホールみたいだ。 今まで体験したこともない激しい感覚だった。頭がパンクしそうだ。わたしは思わず耳を押さえ、頭を抱えて机らしきものにしがみついていた。こうでもしていなければ身体ごとどこかへ吹っ飛ばされそうだった。 目の前が暗転した。光が消えた。 どこかへ流されている感じがする。波間に漂っているのか、あるいは海の中を漂っているのか。わたしはゆらゆら浮いたり沈んだりしていた。 音は消え、目が映しているのは黒一色の風景だ。その空間をわたしは彷徨っている。わたしの身体は縦になり、横になり、ぐにゃりとひん曲がり、細長く伸びて、また縮んで、まるで変幻自在なアメーバのようにありとあらゆる形になった。すべての感覚は消え失せ、においも感触も解らなかった。しかもその間も、わたしはどこかへと黒一色の海の中を流され続けているのだ。 どのくらい経っただろう。永遠の時間が経過したようにも感じるし、実はほんの一瞬の出来事だったようにも感じる。 わたしは机の上に上半身を投げ出した状態で目を覚ました。二、三人の女子が近寄ってきていた。 「……長門さん、大丈夫?」 そのうちのひとりの問いかけに、わたしは聞こえないような声で、 「だいじょうぶ」 とだけ答えた。彼女たちはひどく驚いた表情を顔に張り付かせて、口もとを手で押さえている。それはそうだろう。いつもわたしは絶対に机に伏せるようなことはないのだから。寝ているくらいなら本を読んでいる方がいい。それがわたしだ。 彼女たちはわたしがそれ以上何も言う気配がないと解ると、さっと教室の片隅へ戻っていった。 何だったんだろう、今のは。 もう吐き気はしない。もちろん目眩もない。ただ少しだけ、頭がくらくらして重いような気がする。立ち上がればたぶん、ふらふらして倒れてしまうだろう。高熱を出しているときみたいだ。もちろん今のわたしに熱はなかったけれど。 ふと思い出してさっきの黒い板を探すと、それはわたしの足許に落ちていた。何だかひどく不気味だ。これを手に取ったら急に目眩がしたのだ。それが原因ではないのかもしれなかったけれど、何だか手に取る気がしなくて、わたしは足許に黒い板が落ちていることに気づかないふりをした。 目眩だったんだろう。 わたしはそう決めつけた。そんなことがあっても別におかしくはない。しかしそれは、おかしくないという程度の言い訳にとどまっているだけで、まったく現実味を帯びていない答えだった。目眩とは根本的に異なっている。脳味噌をかき混ぜられたような感覚。頭が重くて疲労感がある。大量の情報を一気に流し込まれたように。 本を読もう。心を落ち着けたい。 はっきりしないもやもやが残る頭でわたしは鞄の中から一冊のハードカバーを取り出した。二段組みの本でよかった。満足がいくまで文字の海に溺れることができる。 海外SFの本だった。わたしは分厚い表紙を開いて、目を文字の上に這わせた。 地球に原因不明な異常現象が次々と現れる、という内容だった。世界の終わりというパターンはSFとしては珍しくない。ストーリーも実に陳腐なものだ。しかし退屈はしない。ストーリーが陳腐だとしても、それは似たような世界が多めにあるだけだからだ。 海上で燃え上がる船。木がなぎ倒されるような大風。何週間も降り続く雨。相次ぐ謎の巨大地震……。二十何世紀かの地球に、突如としてそんな奇怪な現象が続いた。 世界中の人々はその謎の現象に底なしの恐怖を覚え、事態が早く収まることを祈った。世界中の学者は原因の解明にありとあらゆる手段を尽くした。国家の政治と経済は混乱し、世界各地で火事泥棒のような犯罪が相次ぎ、降り続く雨や大地震で大量の生物が死んだ。 最後の審判。 人々は終わりの見えない恐怖の日々を、ゾロアスター教などの最後の審判になぞらえてそう名付けた。それは、審判はいつか必ず終わるという人々のあまりにも消極的な希望を託した名前だった。悪が滅びればすべては静まるのが最後の審判だ。メディアが宗教で信仰されている最後の審判の内容を真面目に報道しているくらいだから、もはや神頼みとしかいいようがない。 でもその気持ちは何となく解る気がした。原因は解明されず人口は減り続ける。そんな状況の中で人々が頼れるのはもはや宗教的信仰だけだったのだろう。 しかし非情にもその異常現象は終わることなく続いた。全人類は絶望した。誰もが暗い未来予測を胸に抱いていた。 つまり、人類は滅びるということを……。 といったところで、六組の担任教師が入ってきて朝のホームルームが始まってしまった。先を読みたかったけれど、我慢して本を閉じ、机にしまった。ふと視線を落とすと足許にはまだあの黒い板が落っこちている。しかし拾いはしなかった。清掃のときに誰かが片づけてくれればいい。一日中足許にこんなものが転がっているのは少し不愉快だけれど、まあ仕方がない。わたしはこの板のことを気にするのをやめにした。 ホームルーム中、わたしはずっと今読んだハードカバーのことを考えていた。原因不明の超常現象とやがて訪れるはずの人類の滅亡。突然、日常から非日常へと変化した世界。いったい誰がそれをもたらしたのだろう。 日常の事象が非日常のものに変わるとき、そこには必ず何かしらの力が及ぼされている。原因のない変化はありえない。 ハードカバーの中にそんな一文があった。超常現象の原因を解明しようとする学者たちの場面だった。 そんな大きな区切りでなくてもいい。わたしはそう思った。 日常のちょっとしたことが、ある日少し変わっていたとしても、そこには必ず理由があるのだ。自然的な力か人為的な力か、どちらにしろ日常的ではない力が働いていたから結果が変わり、日常ではなくなるのだ。 このハードカバーの物語の世界も、所詮はつくりものに過ぎなくても、その確固たる法則に影響されている。必ず何かしらの理由があるのだが、しかし今わたしが読んでいる段階では、まだそれが解明されていないだけなのだ。 ではいったい誰がそんなことをしたのか。あるいは何がそんな異常現象をもたらしたのか。わたしは再度その質問を自分に投げかけた。 実はわたしには、その答えが見えていた。 見えていた、というのは正確ではない。そこはかとなく、こうではないか、これはありえると感じる可能性がわたしの中に存在していたのだ。 それは今日の朝、わたしが意味不明の文章を連ねていたときの感覚に似ていた。最初からあったけれど気づかなかったものに初めて気づいたとき、わたしはハッとする。新たな鉱脈を見つけたというささやかな喜びを見いだす。 もはや妄想に近い答えだった。けれど別に異常なことだとは思わないし、恐ろしいとも思わない。それはもともとわたしの中にあった物語なのだ。 そう、わたしにはあのハードカバーの世界を非日常に変えてしまった犯人が解っていた。しかも賭けてもいいけれど、その犯人の名前はわたしが今まで聞いたこともないような名前だったのだ。それは唐突にわたしの中にあった。 ホームルーム中ハードカバーの中の世界について考えていると、その名前は自然と現れたのだ。それこそ、わたしが生まれる前からずっと存在していた逆らいがたい定義のように。彼らは荘厳な響きをもってそこにいた。 その犯人の名前。言葉というべきか。犯人は宇宙人なのだ。 情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。 彼が、あるいは彼女が、それをした。 しかし今日は本当におかしい。どうかしてしまっている。 わたしは廊下を歩きながら頭の中でまたその呟きを繰り返した。 朝、早起きして散歩に出て、パソコンで奇妙な感覚を文章にして、登校した学校で強烈な目眩を感じて机に伏せ、しまいにはまだ結末を読んでいないハードカバーの犯人当てまでしてしまう始末だ。それも、その犯人名にしたってまったく聞いたことのない単語の羅列なのだ。 ぼんやりと眺めている世界が霞んでひどく遠くのものに見える。いつもと変わらない世界のはずなのに、今日は傍観者になった気分だ。 もしかすると、これは非日常の息吹なのだろうか。考えているうちにそんな結論に至った。 日常のちょっとしたことが、ある日少し変わっていた。朝、起きたときの感覚。滅多にない目眩。聞いたこともないような単語の羅列。これらはわたしにすればすべてがイレギュラーな、非日常のことと言っても過言ではない。 だとしたら、わたしのこの非日常も何かしらの力が及んでつくられたものなのだろうか。 そう思ったところでわたしは見飽きた木製の扉の前に到着した。扉の上のプレートには文芸部と書かれている。 わたしはとりあえず、その自問に対する回答を先送りにした。 ここは特別教室の活動場所を持たないクラブや同好会の部室が集まっている部室棟だ。通称は旧館。わたしはこの部屋のただひとりの住人で、ただひとりの文芸部員だった。 今は昼休みだ。 わたしは昼休みになると大抵、部室へと向かう。昼食を食べるついでに少し文章を書き進めておきたいからだ。 ドアノブを回して扉を開ける。パイプ椅子に腰を降ろし、長テーブルに置かれたパソコンの電源をつける。何度となく繰り返してきたことだ。この部室だけはいつもと同じ空気を纏っていた。 ひとりだけれど、そのことを寂しいと思ったことはなかった。少なくとも文章を書き、物語の形にする作業をこなすだけなら、むしろひとりだけの方が都合がいい。本を読むにしてもまわりに誰かがいたら緊張してしまう。 文章を書くのに人の目を気にすることほど非合理なことはない、とわたしは思っている。あるいはあるとしたら、知らず知らず人の目を気にしてしまうわたしの心だ。ただしその心をコントロールすることはわたしにはどうしても不可能だと解っているから、条件の方を変化させる。だからわたしは本を読むときここに来るようにしているし、文章を書くにしてもひとりになれるこの場所がいいのだ。 わたしは購買で買ってきたパンを食べながら、先日書き終えたSFを丁寧に推敲した。間違った表現を直し、状況が手に取るように伝わる表現に変える。ところどころに非日常的表現をちりばめた。そしてあの法則に従って、日常を非日常に変化させうる自然的なり人為的なりの要因を描写する。同じようで何かが違う世界。読んでいると「あれっ?」と疑問を持つ物語。それが、わたしの書いたSFだった。小気味のいい沈黙に抱かれながらわたしはしばらくパソコンを見つめていた。 パンを食べ終えて推敲に一旦区切りがついたところで、ふと朝のあの物語の続きを書いてみようかという気になった。気まぐれな気分だ。 それを書くための気力ならば充分にあった。白い画面を凝視していれば文章は自然と浮かんでくるに違いない。問題は書くか書かないかなのだ。わたしにしたら、あの文章の続きを書くことには自制をきかせたかった。これ以上日常をねじ曲げたくない。 しかし迷った末、わたしは書くことにした。 というよりも、気がついたら手が勝手に動いていたのだ。気がついたら、パソコンのまっさらな新しい画面に文字が連なっていた。仕方がないからわたしは続きを書き始めた。 ピアニストが手を滑るように動かしてピアノを弾きこなすように、わたしの手も芸術的にキーボードの上を踊っては相変わらずわけの解らない文章を紡いでいく。文体は朝のままだ。何しろこの物語を書くために必要な奇妙な感覚は、いつでも取り出せる引き出しの中に大切にしまってある。書こうと思ったら取り出せばいいのだから簡単だ。わたしの手はかつてないほどの軽快なリズムを刻み、次々と物語を生み出していった。 その時まで、私は一人ではなかった。多くの私がいる。集合の中に私もいた。 氷のように共にいた仲間たちは、そのうち水のように広がり、ついには蒸気のように拡散した。 その蒸気の一粒子が私だった。 私はどこにでも行くことが出来た。様々な場所に行き、様々なものを見た。しかし私は学ばない。見るだけの行為、それが私に許された機能だ。 長い間、私はそうしていた。時間は無意味。偽りの世界ではすべての現象は意味を持たない。 しかし、やがて私は意味を見つけた。存在の証明。 ここまで書いたとき、わたしの胸は深い感慨によって満たされていた。 この『私』というのは、きっと幽霊のような目に見えない存在なんだろうとようやく気づいた。あるいは宇宙人だ。機械のようなアンドロイドかもしれない。少なくとも人間ではない。 学ばない。見ることだけが許された行為。 学ばない、または学べない。だとしたらどちらにしろ、ひどく無機的な存在なのだろう。 ちょうど、そう、あれだ。情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースのような。 しかし口にすると癖になる言葉だ。対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。いったいこれはわたしのどこから生まれてきたのだろう。しかもこの単語は不思議なことにこの物語の雰囲気にとても似合っている。 いけない。余計なことに気を取られていてはだめだ。わたしは意識を集中させ、わたしが綴った文章に目を戻した。 長い間、私はそうしていた。時間は無意味。偽りの世界ではすべての現象は意味を持たない。 しかし、やがて私は意味を見つけた。存在の証明。 さて、この『私』の言う意味とは何なんだろう。時間も現象も無意味の偽りの世界で『私』が見つけだした意味。そしてそれこそが、その世界における『私』の存在の証明になっているらしかった。 存在の証明。聞いたことのある言葉だ。わたしの場合、それは文章を書くことだった。わたしはここにいるという叫び。それが誰かに伝わったとき、わたしの存在は証明されたことになるのだ。だから、というほどわたしは厚かましくないけれど、わたしは文章を書いているのかもしれない。 物質と物質は引きつけ合う。それは正しいこと。私が引き寄せられたのも、それがカタチを持っていたからだ。 光と闇と矛盾と常識。私は出会い、それぞれと交わった。私にその機能はないが、そうしてもよいかもしれないことだった。 仮に許されるなら、私はそうするだろう。 待ち続ける私に、奇蹟は降りかかるだろうか。 ほんのちっぽけな奇蹟。 さらに書き進めた。たった数行。 でも、ここまで書くと『私』の存在の証明が何だったのか解るようになった。少なくともわたしには理解できた。この一人称の文章はひどく無機的だけれど、それは『私』が人間ではなくて、人間にはあるはずの機能と概念を持っていなかったからなのだろう。 何のことはない、『私』は恋をしているのだ。 もちろんその恋は人間同士の甘い恋ではない。個人を個人と認識して、『私』と相手が交わるという程度の無機的で原始的な恋だ。人間同士だったら友達との付き合いに相当するだろう。 ただし、それが『私』には存在の証明になり得たのだ。自分は他の粒子――氷のようにいて、水のように広がり、蒸気のように拡散した仲間の粒子――とは違うということを証明するだけならば。そのためには、『私』という個人の存在を認めてくれる誰かが必要だったのだ。それは人間にも言えることだ。人間にしたって自分の存在を証明できるのはお互いが依存し合っているからに過ぎない。 しかし、どうやら『私』にはそのことが解らなかったらしい。もしかすると解っていたのかもしれないけれど、言葉という手段を用いて他の誰かに説明することはできなかったのだ。だから、『私』の恋に関する部分の描写はとても曖昧で独特な表現になっている。 物質と物質は引きつけ合う。それは正しいこと。私が引き寄せられたのも、それがカタチを持っていたからだ。 引力の理論を使って恋を説いている。なかなかおもしろい。 しかし、ということは『私』はこの時点で幽霊ではなくなっていたわけだ。物質と物質、とあるから片方は『私』で間違いない。つまりこの時『私』は物質としてカタチある何かになっていたのだ。ここにおいてもはや『私』は無機ではない。有機になっていた。 さらに『私』は驚いたことに最後の部分で希望までも見いだそうとしている。しかもそれはとても積極的な希望だ。ただ待つだけという存在である『私』に奇蹟が降りかかることを願っている。人間にはある機能を持たない『私』にとって、存在の証明以上の何か――わたしはそれを感情だと思っているが――をつかむために望みをかけられるのは、奇蹟しかありえない。 奇蹟。常識では考えられないような不思議な出来事。 もしかすると『私』は人間に限りなく近い存在なのかもしれない、と思った。あるいは特定の機能だけが損失した人間なのかもしれない。まわりにありふれた人間と同化すること。人間でさえ自分の存在証明なんかできていないのに、それを越えて感情らしきものを手に入れようというなら、それは相当人間に近い存在でなければ不可能だろう。そもそも人間以外の動物は感情なしでも生きているのだから、感情は不必要といえば不必要な代物なのだ。『私』が感情を欲しがるのだとしたら、その目的は人間と交わるということをおいて他にない。 待ち続ける私に、奇蹟は降りかかるだろうか。 ほんのちっぽけな奇蹟。 わたしは満足して文章を保存し、パソコンの電源を切った。本当にわたしが書いている文章だとは信じられなかった。最初からどこかにあった文章を写しているだけのように思われた。 しかし、これは間違いなくわたしの物語なのだ。わたしのどこかにこんな物語が埋もれていた。今日になるまで気づかなかったけれど。 わたしは本棚から適当な本を選びだしてパイプ椅子に座り直した。昼休みが終わるまではここで本を読んでいよう。わたしは眼鏡を押さえて本に目を落とした。 ――その時だった。 何の前触れもない。予感も予兆も皆無だった。向こう側から知らせてくることもない。ノックすらなかった。 わたし以外誰も開けないはずの部室の扉が、勢いよく開けられたのだ。 バン、という効果音がした。それは今日、危うかった日常がいよいよもって崩壊した音だった。もしかすると銃で撃たれたんじゃないかと疑った。 「…………!」 違った。 そして見た。 ドアに手をかけた人影。焦りと不安と驚きをごっちゃにしたような表情で口を開け、わたしを凝視している男子生徒を。 「いてくれたか……」 彼は安堵の息とも溜息ともつかぬものを吐き出しながら後ろ手に扉を閉めた。わたしは状況が飲み込めない。今彼が言った言葉の意味も、理由も、そしてなぜ彼がここにいるのかも。わたしはただ驚くことしかできなかった。おそらく顔には驚きを隠しきれずに表情が出てしまっているのだろう。感情を抑え込み、表情を変えないようにして、ひっそりとひとりで生きられるよう今日まで努力してきたのに。わたしのその努力はあまりにも唐突で意外な来客によってもろくも打ち砕かれた。 茫然。そんな言葉が似合う。男子生徒にいきなり部室に飛び込まれた状況で、わたしはどう反応すればいいだろうか。 「長門」 彼はわたしの名前を呼びながら、ゆっくりとテーブルに近寄ってきた。彼は何とも言えない、苦しそうな表情をしている。額に汗が滲んでいた。 「なに?」 わたしはどうしようもなかったけれど、しかしわたしの名前が呼ばれたからにはと思って一応返答した。 「教えてくれ。お前は俺を知っているか?」 そう言われてわたしは下がり気味な目線をできるだけ上げて、彼の顔を見た。目が合わないように気をつけ、眼鏡のツルを押さえながら。 見覚えのある顔だった。 「知っている」 再び視線を下げる。それだけ言うのが精一杯だった。彼はとたんに明るい表情になった。何なんだろう、彼は。 「実は俺もお前のことなら多少なりとも知っているんだ。言わせてもらっていいか?」 「…………」 「お前は人間ではなく、宇宙人に造られた生体アンドロイドだ。魔法みたいな力をいくらでも使ってくれた。ホームラン専用バットとか、カマドウマ空間への侵入とか……」 何なんだ。わたしは予想外すぎる状況に目と口を開いて彼の言葉を聞くしかなかった。もちろんホームラン専用バットやカマドウマ空間なんて単語に聞き覚えはない。 しかも宇宙人ときた。アンドロイド。あれだ。対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。奇妙な偶然の一致。 どうやら日常と非日常の小さな違いは、修正のきかないところまで広まってしまったらしい。普段はありえないわたし以外の誰かが部室に入ってきたのだ。しかも彼はまるで狂言みたいなことを言っている。もはや日常とは言えないだろう。わたしは彼と目を合わせてしまわないよう気をつけながら、そんなどうでもいいことを思った。 「……それが俺の知っているお前だ。違ったか?」 「ごめんなさい」 声が震えていた。男子生徒と話すのは滅多にないことだけれど、もう意を決するしかないようだった。 「わたしは知らない。あなたが五組の生徒であるのは知っている。時折見かけたから。でもそれ以上のことをわたしは知らない。わたしはここでは、初めてあなたと会話する」 多量のセンテンスだった。相手にこちらの意図が伝わるように話すのは、わたしにとってあまりにも難しい。 そしてまた、そう断言することがわたしに何かを求めているらしい彼を落胆させてしまうのは、何だか彼が気の毒だった。 「……てことは、お前は宇宙人じゃないのか。涼宮ハルヒという名前に何でもいい、覚えはないか?」 「宇宙人」 わたしは彼の意図が解らなくなって面食らい、思わず彼の言葉を反芻し、次にどうつなげようか少し迷った。しかしわたしが伝えるべきことは事実でしかない。彼はわたしの妄想を聞きたがっているわけでも何でもない。だからわたしは事実を答えることにした。 「ない」と言った。 「待ってくれ」 彼は混乱した様子で頭をかきむしった。わたしのあまりにも短い一言が、彼には大きすぎるダメージを与えてしまったらしかった。 「そんなはずはないんだ」 彼はテーブルを迂回してわたしの側に歩み寄ってきた。 わたしはどうしていいか解らなくなって、震える指で本を閉じた。分厚いハードカバー。わたしは尋常でない様子の彼が近寄ってくるのを見て、反射的に椅子から立ち上がると一歩退いた。彼が何を考えているのか解らないし、わたしに何を求めているのかも解らない。わたしが宇宙人ならばよかったのだろうか。 彼はわたしの肩に手を置いた。わたしの小さな肩は彼の手ですっぽりと覆い隠されてしまう。がっしりした大きな手だ。強い力がこもっていた。 ふと目を上げると、彼と目が合ってしまった。彼は寂しそうで追いつめられた表情をしていた。それがたまらなく嫌でわたしは目を逸らした。頬は赤くなってしまったのかもしれない。冷たい部室の中で、制服越しに彼の体温が浸みた。 「思い出してくれ。昨日と今日で世界が変わっちまってる。ハルヒの代わりに朝倉がいるんだよ。この選手交代を誰が采配した? 情報統合思念体か? 朝倉が復活しているんだからお前も何か知ってるはずだ。朝倉はお前の同類なんだろう? 何の企みだ。お前なら解りやすくなくとも説明はできるはずだ――」 世界が変わる。そして情報統合思念体。わたしが生み出したはずのその言葉に愕然としながらも、わたしは口を開けなかった。 彼の剣幕にすっかり圧されて、背が壁に付いてしまっている。彼の手は、おそらく知らず知らずだろうけれど力が強くなっていって、ぎゅっと掴まれているわたしの肩はひどく痛い。わたしの白かった頬には間違いなく朱が差してしまっている。なるたけ何の感動もなく生きようとしてきたのに。 「やめて……」 わたしは絞り出すようにして何とかその意思を彼に伝えた。そのたった一言で彼は我に返ったようだった。彼は打ちひしがれた様子でわたしから二、三歩離れた。 その時、わたしは彼が根っから優しい人間なのだろうと確信を持った。おそらく彼とわたし――この場合のわたしは彼が知っている、あるいは知っていたらしい宇宙人のわたしだけれど――には強い絆があったのだ。彼はその『わたし』をとても大切にしていたに違いない。 「すまなかった」 彼は神に懺悔する聖職者のように両手を天に掲げた。 「狼藉を働くつもりはないんだ。確認したいことがあっただけで……」 茫然自失とした様子で後ずさりする。彼の精神はひどく傷つけられてしまったらしかった。彼は今までわたしが座っていたパイプ椅子を引き寄せ、軟体動物のようにぐにゃりと腰を下ろした。わたしはどうすることもできず、壁にくっついて、不幸な運命を背負わされてしまったらしい彼に視線を注いでいた。もちろん、目を合わせないように気をつけながら。 彼が黙って部室内を見回しているので、わたしには少し状況を整理する余裕ができた。 気になるのは彼の発した情報統合思念体という言葉だった。次いで世界が変わっているということ。 彼は焦っているようだった。それはそうだろう。昨日と今日で世界が変わっていたら相当びっくりする。彼は、どうやら本当にその状況下に立たされているらしかった。わたしの場合、日常の小さなことが少し変わっていただけだったけれど、彼の場合は違うのだ。彼の話の端々から、彼はどうやらこの学校に涼宮ハルヒという名前の女子生徒がいたと思いこんでいるらしかった。あるいは、いたのだ。彼が昨日まで住んでいた世界には。 そしてわたしは、その世界では宇宙人だった。情報統合思念体。ヒューマノイド・インターフェース。わたしが生み出したと思ったそれらも、彼の世界には存在していたのかもしれない。 だとしたら、わたしは何なんだろう。彼が別の世界から来たのだとすればわたしはそれで構わない。もし彼が昨日まで別の世界にいたとしても、わたしに不都合が生じることはない。 問題はわたし自身だ。なぜこの世界の住人であるはずのわたしが、別の世界の話を知っているのだろうか。情報統合思念体。彼は確かにそう言った。今日の朝からの奇妙さを考えれば、これが偶然だとは思えなかった。 わたしは、誰だ? 「ちくしょう」 部室全体に這うような目を走らせていた彼は、やがて頭を抱えた。しかし何分かそうしていた後、次に顔を上げたとき、彼は明るい顔をしていた。微笑さえも浮かべてわたしを見た。 違うのだ。明るい顔をしようとしていただけだ。わたしには解る。彼の目は曇った窓ガラスのように失望と絶望の闇を漂っていた。 わたしは彼のその顔を見て動けなかった。この暗い状況で、彼さえも何が何だか解らないような状況で、それでも彼はわたしに対する配慮を忘れないのだ。仮面だったとしても微かな笑いをもって応えてくれる。本来ならわたしが気遣ってやらないといけないのに。わたしの眼鏡は少しズレていたけれど直す気にはなれなかった。 「すまん」 彼はまた謝って立ち上がった。たたんだ状態で立てかけてあったパイプ椅子を持ってきて部屋の中央へと移動すると、また腕に頭をうずめた。おそらく彼は、彼がわたしの椅子を奪ってしまっていたことに気づいたのだろう。 わたしは彼のその何気ない気遣いに何か好意のようなものを感じた。この人とだったら一緒にいてもいいかもしれないという、くだらない予感だ。そんなことを思っている場合ではないし、第一彼はわたしを見ていない。わたしの奥にいるかもしれない、彼の世界の『わたし』を見ているのだ。 でも、その世界の『わたし』とここにいる彼がうまくいっていたのだとしたら、それも解るような気がした。わたしが宇宙人であったとしても彼への好意は変わらないのかもしれない。 そう。仮に許されるなら、私はそうするだろう。あのおかしな物語にそんな一文があった。 「うん?」 彼が突然、頭を抑えていた手を動かした。 「違う」彼は続けて、 「パソコンだ」 と言った。彼が旧型の古いパソコンに目をやったのでわたしもつられてそちらを見る。このパソコンはわたしが文章を書くときにしか使っていない。それでも彼が望むものはこの中にあるのだろうか。 わたしが再度彼を見るとまた目があってしまった。わたしはすかさず視線を床に落とす。また頬が淡く紅潮してしまったかもしれない。わたしは困惑し、やり場のない目を泳がせた。 「長門」 そのうち彼が立ち上がった。わたしは注意深く彼の胸のあたりに焦点を合わせる。彼はパソコンの背面を指さしていた。 「それ、ちょっといじらせてもらってもいいか?」 彼は好意的な声でそう言った。 まいったと思った。誰かにわたしの書いている物語を見られたくない。それはわたしの切実な願いだ。もしこの場で彼にわたしの物語を見られてしまったら、わたしはその物語を読むたびに彼を思いだしてしまい、きっと続きなんか書けないだろう。しかし、この彼の希望を無下に断ることはわたしには絶対にできなかった。 「待ってて」 わたしは椅子をパソコンの前に持っていき、本体の電源スイッチを押してから座った。OSの立ち上がる時間がやたらに長く感じてわたしは焦らされた。こんなことなら最初から電源を切らなければよかった。 OSが立ち上がるとわたしはマウスを素早く操作し、書き終わったSFと今まで書いていた奇妙な物語を呼び出した。SFはファイルごとごみ箱に移動し、あの物語の方は保存しないで削除した。SFのほうはあとで取り出せばいいが、あの物語を破棄することには、驚いたことに何の躊躇いもなかった。この文章を消しても、また家で同じものがいくらでも書けそうな気がしたのだ。 「どうぞ」 彼に目を向けず、小さな声で言って、わたしは椅子から離れて壁際に立った。 「悪いな」 彼はさっそくモニタをのぞき込んだ。その様子をわたしが見ていると、彼はどうも何かのファイルを探し求めているらしかった。しかしやがて「ねえか……」と呟くように言うとがっくり肩を落とした。振り返った彼は落胆しきって逆にふっきれてしまったような表情をしていた。 昨日とは違う世界に飛ばされてしまったらしい彼の、わたしは何の力にもなれなかったらしい。そのことが少し残念だった。 「邪魔したな」 彼は言った。疲労しきった声だった。 彼の背中は扉へと吸い寄せられていく。このまま帰ってしまうつもりらしかった。 そして彼の手がドアノブに触れた瞬間、わたしは唐突な焦りを感じた。違う世界から来て、わたししかいないはずの文芸部室に飛び込んできた男子生徒。今のこの部屋の住民はわたしだけだけれど、この場所は元の世界にいた彼にとっては意味ある場所だったのだろう。そうでなければ何の目的もなしにここを訪れたりはしない。涼宮ハルヒといったか。さわやかな高音を鳴らして揺れる風鈴のような、小気味のいい発音の名前だ。もしかすると彼と、彼が探しているらしい彼女はあちらの世界ではこの部屋の住人だったのかもしれない。 だったら、とわたしは思った。 せめて、異なる世界だとしても、この部屋に来ることができる口実を彼に与えたかった。彼のあの優しい性格なら、きっとわたしが自分とはいたくないだろうと思って遠慮してしまうに違いない。そんなことはさせたくなかった。 そして何よりも、わたしの気持ちがそちらを向いていた。彼ともう少しいたい。わたしが今まで人間に対して感じたことのないおかしな感情だった。それは、彼にとっては迷惑以外の何者でもないかもしれない。けれどわたしの気持ちと彼の意思は違う。わたしは彼に好意を抱いていた。そうだ。仮に許されるなら、私はそうするだろう。 実際にはそんなことを考えている余裕なんてなかった。彼がドアノブを回して部室から出て行くまで三秒とないのだから。だからその時は、わたしはわたしが出した結論だけを信じることにした。こんな長くてややこしい心理は後でその時のことを振り返って出した答えでしかない。 わたしはその背中に声をかけた。 「待って」 聞こえるかどうか解らないほど小さな声でも彼は立ち止まってくれた。彼は小さな声を聞き取るのに慣れているのかもしれない。わたしは彼が振り返ったのを確認して、何も言わず本棚の隙間から藁半紙を引き出した。そして、目を合わせないように気をつけながら、彼の足もとに目を落として、それを差し出した。 「よかったら」 片手を差し出す。 「持っていって」 それは白紙の入部届けだった。 彼が出ていくと、部室にはうそ寒い冬の空気とわたしだけがひっそり取り残された。文章を書いていたときや彼がいたときには気づかなかったが、今になって急に寒さが身に染みだした。身震いしてカーディガンを羽織り直す。物音はなくなり、その分、窓の外を吹きすさむ風がいくぶん荒れたようだった。パソコンは電源がついたまま、彼が操作し終わったままの状態で静止している。扉はもう音を立てて開いたりはしない。 ひとりだけの部室が何だかもの寂しく感じられた。 わたしは手持ちぶさたになって、何度か部室と廊下を行き来した。コツコツという乾いた足音だけがわたしの耳に響く。暇なときわたしは本を読むようにしているけれど、今は机の上に放置されたハードカバーを手に取る気分ではなかった。 誰かと一緒にいたり、会話をしたりというのはわたしにとっては大きすぎる意味を持つ。それはもはや非日常の域に達していた。日常ならば、わたしは誰とも一緒におらず、誰とも会話しないのだ。だからわたしは稀に誰かと会話したりすると日常を失って困惑する。それこそ本も読めなくなるくらいに。そんなときにわたしは、ただぼんやりと窓の外を眺めていることぐらいしかできなかった。会話の内容を何度も何度も、壊れたテープのように反復しながら。 けれどわたしはそのことを悪いことだとは思っていない。今はまだできないけれど、それがわたしにとって生きているということと存在しているということの証明になるのだとしたら、それは歓迎されるべきことだった。 そんなことを考えながらわたしはまた部室の敷居を越える。 わたしが部室と廊下を行き来しているうちに、現実はだんだんと温度を下げていった。ひんやりと、無情に。やがてそれは氷のように冷たくなって、わたしは現実味と冷静さを得た。高揚していた気分がすうっと退いていくのを感じると、部室に入り、ドアを閉めた。 パソコンはまだ静かな音を立てていた。わたしはそこに、さっきまでいた彼がパソコンを操作している姿を重ね合わせた。焦ったような顔。そしてわたしに向けられた微笑み。 考えれば考えるほど、彼の姿は夢のもののように薄くなり、わたしから遠ざかっていく。はかない幻想。 そうか。わたしは幻想を見ていたのかもしれない、とそんなことまで思った。違う世界から来た男子生徒が、文芸部室に飛び込んできて、わけの解らない質問をして帰っていった。なるほど聞くからに嘘のような話だ。もしかするとわたしの希望と非日常の影が手を組んで、わたしにありもしない人物の幻影を見せていたのかもしれない。 しかし、そんなことはありえないはずだった。部室には彼が現実ものだったという証拠がある。この部屋のパイプ椅子は二個広げられているし、彼の操作したパソコンはそのままで、入部届けは一枚減っている。彼は確かにここにいたのだ。 しかし彼が存在する人物だからといって疑問が解決したわけではない。むしろややこしくなってしまった。 わたしは窓辺に歩み寄り、冬空を眺めながら、改めてその謎に取り組むことにした。彼のことは彼のことで彼がうまくやっている。わたしが考えなければならないのはわたしのことだった。 さっきからずっと引っかかっていること。情報統合思念体。それはわたしの頭の中の存在のはずだった。どこかの書物に載っていたということはないし、宇宙に彼方にそんなものがいるともまだ確認されていない。わたしの完全オリジナルだった。それなのに、彼はわたしとまったく同じ単語を口走ったのだ。情報統合思念体。聞き間違いでもなく、彼が言い間違いをしたわけでもないようだった。 考えれば考えるほど不思議で仕方ない。なぜ彼はわたしの頭の中の存在を知り得たのだろうか。あるいはその情報統合思念体が彼の世界に存在しているのだとしたら、なぜわたしは彼の世界のことを知っていたのだろう。 わたしは、わたしが情報統合思念体のことを知った瞬間を思い出してみることにした。自分の記憶をまさぐる感覚。この感覚がわたしは好きではない。過去を振り返ると無条件に頭が痛む気がするのだ。 その単語を思いついたのは今日の朝のことだった。今日の朝、わたしがちょうど読んでいたハードカバーの犯人が、情報統合思念体に造られたヒューマノイド・インターフェースに違いないと思ったのだ。直感だった。長い間忘れていた言葉がちょっとした拍子に思い浮かぶように、情報統合思念体とヒューマノイド・インターフェースもあのハードカバーを読んでいたらふと思い浮かんだのだ。日常に力を及ぼして非日常へと変えた犯人。それが情報統合思念体に造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースだった。 しかし、そのハードカバーのことはたいして重要ではない気がした。わたしの頭にあまりにも強烈な直感が走ったので、つい、できあいの物事とからみつけてしまっただけだ。今、冷静に考えると、彼らはあのハードカバーの犯人ではないし、あのハードカバーの世界には存在すらしていないように思われた。情報統合思念体に造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。ただそれだけが重要だった。 そもそもその単語はどんな意味を持っているのだろう。情報統合思念体。ヒューマノイド・インターフェース。わたしはまず、その曖昧な意味を持つ語句に定義をつけようとした。いや違う。定義ならすでにそこにあった。わたしはそこにあった既成の定義をすぐさま探し出してしまったのだ。 銀河系、それどころか全宇宙にまで広がる情報系の海から発生した肉体を持たない超高度な知性を持つ情報生命体。それが情報統合思念体で、そしてそれに造られたヒューマノイド・インターフェース。人型端末。つまり人間の姿をした宇宙人だ。 宇宙人。 そういえば、とわたしは彼との会話を思い出した。彼はしきりに宇宙人のことを気にしているようだった。最初に入ってきたときは、わたしのことを宇宙人と勘違いしたし、事実彼が住んでいた世界で『わたし』は宇宙人だったらしい。 もしかするとその世界の『わたし』というのはヒューマノイド・インターフェースではないだろうか。わたしと『わたし』の姿は同じだったようだから、『わたし』が宇宙人で人型端末という条件にも合致する。なるほど、だとしたらたとえ世界が違っていても『わたし』であるところのわたしだったら、情報統合思念体やらヒューマノイド・インターフェースやらといった言葉を知っていても不思議ではない、かもしれない。 もちろんそれは何の根拠もない予測に過ぎない。間違っていると誰かに指摘されれば、わたしは素直に間違いを受け入れるだろう。なにしろそれはあまりにも大それた妄想だったのだ。『わたし』がヒューマノイド・インターフェースであるとしたら、わたしがそのことを知っているということはこの世界とあちらの世界の接点にもなり得るし、だとしたらわたしの存在までもが脅かされる予感がした。わたしこそが長門有希だというアイデンティティが崩壊しそうだった。 だからわたしとしては、こんなストーリーは妄想であって欲しかったし、情報統合思念体やヒューマノイド・インターフェースなんてものはわたしの頭の中だけの存在であって欲しかった。 しかし希望と現実は異なる。わたしの希望がそうだったとしても現実は今、氷のように冷たくなっているのだ。現実味と冷静さを取り戻した代わりに、わたしには凍てつく刃が突きつけられていた。 結局、この疑問にも明確な答えは出せなかった。しかし当然といえば当然だ。ここと違う世界、パラレルワールドのことなんか解るわけがない。解るとしたら、それこそわたしの存在がこちらの世界のものなのかあちらの世界のものなのか曖昧になってしまう。 明確な答えは出なかったし出る予定もなかったけれど、しかしわたしはこのことを考えずにはいられなかった。彼が口にした情報統合思念体という言葉。そして彼はこことは異なる世界から来ているらしいという事実。わたしはひとりで部室の戸締まりをしている間も、暗く寒々しいコンクリートの夜道を歩いているときも、家に帰ってレトルトの夕食を準備しているときも、お風呂に入っている間でさえ、そのことを考えていた。おかげでお風呂から出てきてもちっともリラックスできず、寝る前にはくたくたに疲れ果てていた。本を手に取る気も、パソコンを立ち上げる気もしなかった。 「長門有希」 布団に入って電灯を消してから、一度だけそう呟いてみた。涼宮ハルヒとは違い、はかない響きを持つ名前だ。長門有希。何の意味もないモノローグ。宇宙空間にまで拡散するはずだったわたしの声は、すぐ目の前に壁に衝突して吸い込まれてしまった。 この叫びは誰も知らない。わたしはここに存在しているのに。いや、もしかすると彼ならば解ってくれるかもしれない。けれど彼はこの世界の住人ではなかった。 そのことがますますわたしを意気消沈させ、わたしの存在に靄をかけた。