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紅魔館緊急対策本部にて パチュ大佐「このままでは幻想郷があの邪神に征服されかねないので ジャンプゲート&スキマ経由で大佐と神主をよんだわ」 大佐「大佐ことシュバルリッツ・ロンゲーナだ」 神主「神主ことZUNです、勝てば酒が飲めると聞いて」 魔理沙「流石、パチュリー格が違うぜ」 パチュ大佐(これで勝負方法がガチ弾幕or飲み比べならば大佐と神主の勝ちは確定…) 535 名前:名前が無い程度の能力[sage] 投稿日:2008/09/29(月) 22 28 16 ID xusxkrgs0 飲み比べ パチュ大佐(勝ち確定ね…!) スピリタスで 一同(神主除く)「工工エエエエ(´Д`)エエエエ工工」 大佐「許されざる反逆行為といえよう」 神主「…」 パチュ大佐「度数96度って…」 魔理沙「もはや飲み物でもなんでもないな…」 一方妖怪の山では… 静葉が神奈子や諏訪子をも超える神になっていた 信者A「静葉様!(首領蜂ュ隊によって規制されました)して下さい!!」 信者B「静葉様!(首領蜂隊によって規制されました)して下さい!!」 早苗「静葉様!(諏訪子によって規制されました)して下さい!!」 神奈子「静葉様!(諏訪子によって規制されました)して下さい!!」 以下略のような状況になっていた 諏訪子「欝だ、死のう」 乗っ取られた神社の影で諏訪子はふとこう思うのであった… さて、肝心のジャッジだが予想に反してなんと静葉が勝ってしまった その理由はこうである 勝負開始10分前… 静葉「今回の勝負、負けてくださったら神徳で無限にお酒差し上げますよ」 神主「よろしい、ならば負けよう」 静葉(計画通り…) しかし一方の大佐はというと 静葉「もし負けてくださったら私の神徳であなたの計画を成功させることも出来ますが…」 大佐「だが断る」 流石大佐である 結局、 神主が試合放棄してしまい 残った大佐一人では勝つことが出来ず静葉の勝ちとなったのであった… と言いたいところだが、 この話には続きがある 翌日になって参加者全員および試合会場にいた人全員が 大佐と神主の勝ちと言ったのである 試合内容を収めたビデオにも 確かに神主がものすごい勢いでスピリタスを飲む様子が記録されている それに勝ったはずの静葉も 「神主と大佐には敵わない」とインタビューで答えている また試合結果にも神主と大佐の勝ちとなっている いったい何故?まさか… 小悪魔「ジャンプゲート使って過去改竄余裕でした^^;」 後日談… 小悪魔「ということで私が過去改竄したので大佐と神主の勝ちとしておいて下さいね(はあと)」 魔理沙「パチュリー…、静葉うんぬんよりこいつをどうかしろ…」 パチュリー「これはこれで非常に便利なのでパス」 魔理沙( ´・ω・`)ショボーン… パチェ大佐 パチュリー 大佐 小悪魔 神主 静葉 飲み比べ 1対2
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早苗8 うpろだ1447 「お世話になりました」 荷物をまとめ、守矢の神社の玄関でそう告げたとき、神奈子も諏訪子もなにやら怪訝そうな顔をしていた。 視線の先を確認してみても、着慣れた服と少ない荷物をまとめたカバンがあるだけで、他に変なところはない。けれど再びあげた視線には、やはり怪訝そうな二人の顔が並んでいた。 「いや○○、あんたいいの? しばらくといわずここにいてもいいんだけど」 「そうそう、別に急に出て行くことなんてないんだよ?」 腕を組み、考え込むように呟く神奈子と、同じく首をかしげている諏訪子。 何故二人ともそんなことを言うのか。少し考えて、答えに思い当たった。 心配してくれているのだ。『外の世界に帰ります』などと急に言い出した自分を。 「こっちに迷い込んでから三ヶ月近くもお世話になっちゃいましたけど。ありがとうございました。楽しかったです」 ぺこりと一礼し、大きく息を吸う。それだけで、気持ちは穏やかになった。 外の世界に疲れてあてもなく樹海に迷い込んだ自分。気がつくと辺りの景色は一変し、見たこともない凶暴な化け物が次々と襲い掛かってきた。恐怖でただ逃げ惑い、ついに追い詰められてしまったが、気がつくと化け物は消えていた。彼女達に救われたのだ。 そうしてみたこともない神社に住み込むこと三ヶ月。いい経験ができたとは思っている。けれど、それももう終わりにしなければならなかった。 「一応護符も持ちましたんで、妖怪に襲われることはないと思います。……じゃ、行きますね」 少しだけ名残惜しさを感じながら、再度二人に礼をする。 「うーん。しょうがないねぇ。せめて後一日いれば宴会開いてやれるんだけどねぇ。挨拶もまだなんじゃないか」 「何より早苗に――」 「失礼します」 その先の言葉が発せられるより早く、カバンをひっつかんで玄関を出た。 境内には落ち葉がつもり、時折吹き抜ける風がそれらを舞い上げている。そんな光景を見ていると、胸に僅かな痛みが走った。それは秋の風と相まった肌寒さとなって体を揺さぶってくる。けれど足は止めなかった。 思い返せば先ほどの光景。おそらく残された二人は唖然としていることだろう。少し悪いことをしたか、そんな風に考えながら、鳥居をくぐる。 途中、僅かにかき集められた落ち葉と、投げ捨てられた箒が目に入ったが、あえて見ぬふりをした。 「そう、思い残すことはなにもない。帰るんだ」 誰にでもなくぽつりと呟いた言葉は、秋の空に吸い込まれて消えていく。それでも、自らの心を落ち着かせるのには十分だった。 誰に言うでもなく、「よし」と呟いて気合を入れる。そうして、山の反対側、幻想郷の中心とは違う方角に向かって歩いていった。 ※※※ 「別れよう」 そう言った時、境内の掃除をしていた早苗は動きを止め、驚きの表情と共にこちらを見つめてきた。 なんで、といいかけた口が途中で止まり、すぐに寂しそうな笑みに変わる。 「え、ええと……いやですねぇ○○さん。急に冗談でおかしなことをいいだすなんて……」 冗談だと判断したのだろう。それも当然だ。急にこのようなことを言われて、真正面から受け止められる人間はそう多くない。 けれど、それは残酷な事実だった。 「おかしなことじゃない」 「え……」 緩みかけていた表情が、再び凍りついた。 「なん……で?」 「俺、お前のこと、好きじゃなかったんだよ」 早苗の時間が完全に停止する。その顔から血の気が引いていくのが解ったが、引くことはできなかった。 「なんていうか、勢いでさ。ついお互いに告白しあってオーケーとかしちゃったけどさ……」 すぅ、と息を吸い込み、一気にまくし立てる。 「間違いだったんだ。別れよう」 その言葉は思いのほか簡単に、口から漏れていた。 これで終わりだ。そんな事実だけがぽっかりと穴の開いた心に残り、虚しさを全身に募らせていく。 「え……あ……」 早苗の口から、言葉にならない音が漏れた。 次にくるのは罵倒の言葉か失望の言葉か。思わず身を硬くしたが、呆然とした早苗は、ただ口を開けたままこちらをみつめているだけだった。 恐らく、現実を受け止められていないのだろう。 「……早苗」 促した言葉に、早苗の体がびくりと震えた。 「いや……です」 か細く、途切れそうな声で、拒絶の意思が返る。 「早苗……」 「嫌です!!」 そこで、今まで溜まっていたものが全て爆発した。 早苗の握っていた箒が、甲高い音を立てて石畳に叩きつけられる。 普段の姿からは想像もできないほどの大声が境内に響き、思わず身を引きそうになったが、なんとか堪えた。 ここで逃げるのはいけない。それこそ最悪である。責任は自分にあった。 「私覚えてます……貴方がきてから一ヶ月と半分の夜です! ずっと一緒にいる、って言ってくれたじゃないですか! 約束してくれたじゃないですか……」 つっかえながらも、その思いを吐き出す早苗。だが、最後のほうは言葉になっていなかった。 がっくりと肩を落とし、うつむいたまま小刻みに肩を揺らしている。 できることならすぐにでも抱きしめてやりたかった。嘘だといってやりたかった。 でも、それは許されなかった。 「……早苗、恋じゃなかったんだ」 早苗の体がびくりと跳ねる。そのこぶしは硬く握り締められ、指がうっ血したような色に染まっている。 「俺の勘違いなんだよ……幻想郷に来て、慌ててて、ほら、吊り橋効果っていうだろ?」 自分は慌てていたのだ。混乱していたのだ。そうジェスチャーで示し、早苗に伝える。 それでも、早苗は目を瞑り、まるでいやいやをするかのように小刻みに頭を揺らしていた。 「なぁ……」 辺りに沈黙が降りる。 その問いかけから、どのくらいの時間が経っただろうか。 急に、早苗が動いた。 「わかり、ました……」 虚ろな目が閉じられ、背が向けられる。 「早苗」 思わず伸ばしそうになった手を引っ込め、搾り出すように呟く。 その呼びかけに、今まさ歩き出そうとしていた小さな体が止まった。 「幸せに、な」 「――っ!!」 直後、猛烈な風が境内を吹きぬけた。 舞い上がった落ち葉が渦を巻き、完全に視界を埋め尽くす。 その直前、駆け出す早苗の目に光るものが見えたのは気のせいだったのか。 気がつけば舞い上がった葉は地面に落ち、石畳の上に投げ出された箒だけが悲しそうに転がっていた。 ※※※ 昼でも太陽が届かない薄暗い小道を歩き、目的地を目指す。 出発前、神奈子に聞いた話では、この先にある結界が薄くなっているとのことだった。 『歩いていれば自動的に向こう側にいけるでしょうよ』 怪訝そうな表情をしたままそう呟いた神奈子の顔が脳裏に浮かび、僅かに名残惜しい気持ちになる。けれど、もう戻れなかった。 「今頃外はどうなってるかな……ひょっとしたら死亡届出されてたりして……」 半分自殺するつもりで樹海に入った以上、捜索願が出されていても不思議ではない。もし生きてもどったらどうなるのだろうか。そんな他愛のない事を考えながら、足を進めた。 「でも、楽しかったよな」 一歩、また一歩と足を進めると、浮かんでくるのは外の世界のことではなく、短い間だけ過ごした幻想郷のことだった。 神奈子、諏訪子、そして早苗と過ごした忙しい日々が脳裏を走り、口元に僅かな笑みが浮かぶ。 「最初は慣れなかったんだっけな。周りは妖怪ばかりだし、あの二人も神様とか言っててどっか人間離れしてたし」 一番最初に神社に招かれた時は、驚きと戸惑いの連続だった。 フレンドリーに接してくる妖怪にどう接していいのかもわからなかったし、その中に神様がいると知ったときには度肝を抜かれたものだ。 実際、取って食われるかもしれないと思っていたことは否定できない。 「でも、案外早く馴染めたよな……早苗の、おかげだ」 だが、そんな差を埋め、間を取り持ってくれたのが早苗だった。 おかげで多くの妖怪と話すことが出来、親しくなれたのだと思っている。彼女の協力が無ければ、たった三ヶ月で幻想郷中を見て回ることなど不可能に近かった。 「そういえば、あいつも外の人間だったんだっけな……」 早苗もまた、外から来た人間だった。 いつかの宴会で聞いた、幻想郷に来た理由。 『私、もっと沢山の経験をしたいなって、思ったんです』 それは、早苗の『夢』だった。外での日常から離れ、幻想郷というまったく新しい土地で生きていくことを選んだ少女。 神奈子も諏訪子も信仰のためだけにこちらに来たわけではない。彼女達もまた、早苗のことを大切に思っていた。だから二重の幸せがあったことだろう。 早苗の夢は叶っていたのだ。 「俺が来るまでは」 握り締められたこぶしが、軋んだ音を立てる。それでも、足だけは変わらずに前に進んだ。 助けられて、一緒に生活して、いつの間にか早苗のことが好きになっていた。彼女が外の人間だったからなのかはわからない。けれど、当時はそんなことはどうでもよかった。ただ一緒にいられればよかったのだ。 それは、早苗も同じだったらしい。結局、気がつけば一ヶ月半の後、互いに告白して付き合うことになっていた。 「でも、よくなかった」 それが大きく変わったのは、守矢神社に外来人が住み着くようになってから早苗の生活が大きく変わったと、妖怪から聞かされた時だ。 その妖怪に、悪気などこれっぽっちもなかっただろう。だが一連の騒動を引き起こした本人だけは、気が気でなかった。実際、早苗はべったりだったのだから。 外来人とずっと共にいれば、その分幻想郷で自由に、多くの新しい経験をする機会は失われてしまう。 自分がいることで、大好きな人の夢が阻まれる。 「そんなこと、許されるはずがないじゃないか」 歩みが止まった。 好きだった。 嫌いになんてなるはずがなかった。 ずっと一緒にいたかった。 けれど、こうしなければならなかった。 それが、彼女の――早苗のためだと誰よりも知っていたからだ。 「そうだよ……」 拳を握り、歯を食いしばる。 「こうしなきゃいけないんだよ」 足を踏み出す。 一歩、また一歩と、徐々に速度を上げ、ただひたすら目的地に向けてひた走る。何も考えないように、足と手だけを動かして。 流れた一筋の涙が、鼻筋を伝ってあごに流れる。 「ちくしょう……」 直後にもれた嗚咽は、言葉にならないうちに潰れて消えていった。 ※※※ 森を抜けた先は、小さな草原になっていた。 ひざくらいまで伸びたススキのような草が、穏やかな風に揺られて左右に揺れている。それらが茜かかった夕日に照らされている様は絶景というにふさわしかったが、今はそんなことを気にかけている余裕はなかった。 「はぁ、はぁ、はぁー……」 張り裂けそうなほどの鼓動が全身を叩き、視界が激しく明滅しているかのような眩暈が襲ってくる。 思わず、やばい、と思った時には、草原の真ん中の辺りで盛大に倒れこんでいた。 全身を震わせ、大きく息を吐く。わき目も振らずにここまで全力疾走してきたおかげで、顔は汗でいっぱいだった。それに加えて、今は涙と鼻水までついている。 「はっ、だせぇな俺も」 考えていないようで、ずっと早苗のことを考えていた。 何度も何度も後悔し、振り向きそうになりながら走ってきた。その結果がこれだった。 「やっぱ、だめだ。好きだよ。クソ……」 ふらふらと立ち上がり、空を見上げる。 「俺は、早苗が、大好きなんだよぉぉ!!」 そして、夕日に向かって思いっきり叫んだ。 結局、最後まで嘘なんてつけなかった。 それが情けなくて、どうしようもなかった。 「はは、だせぇ」 草原に腰を落とし、沈み行く夕日を見つめる。 「タオル……」 とりあえず顔をふこう。そう考え、引き寄せたカバンをさぐる。 だが、肝心のタオルが見当たらなかった。神社に忘れてきたのかと思ったが、思えば身一つで幻想郷にやってきたのだから当然だった。 「俺……どこまでもダメだな」 一つため息を吐き、空を見上げる。 「はいどうぞ」 と、気がつくと、そんな掛け声とともに目の前にタオルが差し出されていた。 「お、助かった。ありがとう」 ちょうど良かった。そんな考えが頭をよぎり、タオルを手に取る。涙と鼻水で濡れた顔をふくと、どこか懐かしいような香りが鼻腔をくすぐった。 「あれ、これ早苗の――て、おあ!?」 見上げれば、そこに早苗がいた。まるでいつもと変わらず、笑顔を張り付かせたままで。 一つ叫んだ後、のけぞるように倒れ、草原を転がる。それで距離は少し離れたが、混乱した頭はしばらくおさまりそうもなかった。 「な、な、なんで――」 「神奈子様に教えてもらいました。こっちの結界がゆるいと、○○さんに教えたそうで」 そう言った早苗の顔に、神社での悲しみの色はなかった。 「い、いや、そうじゃなくて――」 なんでここにいるのか。なんでついてきたのか。 言いたいことは決まっていたが、訊けなかった。言葉がでなかった。 顔が真っ赤になり、しどろもどろでわけの分からない嗚咽だけが漏れる。 「なんでここにいるか、ですか?」 「イエスイエス!」 「それは確かめたかったからですよ」 小さく微笑んだまま、早苗が一歩、足を踏み出してくる。思わず起き上がって駆け寄りたい衝動にかられたが、すんでのところで押さえ込んだ。 「あの時、○○さんは辛そうでした。だから、本当は別の理由があるんじゃないかって」 もう一歩。だんだんと早苗が近づいてくる。 「だ、だめだ。きちゃだめだ」 「――どうしてですか? さっき思いっきり叫んでたじゃないですか」 どうやら完全に聞かれていたらしい。けれど、今引くわけにはいかなかった。これは早苗のためなのだ。 「お前の夢ってなんだよ。幻想郷で、外の世界で出来なかったことをやろうとしたんじゃないのか? そんな経験は、俺がいたんじゃできなくなっちまう」 早苗の歩みが止まった。 「……○○さん。だからあんなこと――言ったんですか?」 「そうだ。お前はこの幻想郷で、新しいことを沢山経験しなきゃいけないんだ。それができるんだ!! こんなダメな男おっかけてないで――」 「ダメなんて言わないで下さい!!」 その叫びに、全身が固まった。 「私が自分で選んで、自分で好きになった人です。ダメだなんて言わないで下さい」 「早苗……」 「確かめたかったとか、嘘です」 今まで笑顔を保ってきた早苗の表情が、歪んだ。 「○○さんに告げられた時は悲しくて、切なくて、どうしようもなくて――でも受け入れないといけなくて」 拳を握り締め、搾り出すように告げる。 「私は貴方と一緒にいたかった。気がついたら、追いかけてた……離れたくなかった」 「……ごめん」 「でも、私は○○さんが幻想郷を出ることを、止めたりしません」 早苗が目をあげ、じっとこちらを見つめてくる。 「私が、貴方の傍に行きます。幻想郷の外でも、中でも、どこまでもついていきます。それが、私の夢、望んだことなんですから」 胸の鼓動が大きくなった。 今まで押さえつけていた感情が怒涛の如くあふれ出し、頭と心を埋め尽くしていく。 「だから、ずっと一緒にいてください」 そこにきて、今までずっと押しとどめていた意思の結界が、跡形もなく崩壊した。 もう、我慢できそうもなかった。 「はは……馬鹿だな俺……結局、一人で暴走して……」 ふらふらと立ち上がり、早苗を見つめる。 「そんな○○さんも嫌いじゃないですよ」 早苗も、じっとこちらを見つめていた。 ふらつく体で足を進める。 「ごめんな。酷いこと言ったし、待たせちまったし……」 「いえ、私も余計なことを言ってしまったかもしれません。でも――」 その笑顔が、涙で歪んだ。 「少しだけ、泣かせて下さい……」 そこから先は、互いに言葉にならなかった。 体が動く限り全力で走り、早苗に駆け寄ってその小さな体を抱きしめる。 「早苗……ごめん……」 「○○さん、○○さん……○○さ……ん」 泣きじゃくりながら名前を連呼してくる早苗。その暖かさを感じながら、もう二度と繰り返すことはしないと、固く心に誓った。 彼女を幸せにすること。それが己に出来る、最善のことなのだから。 ※※※ 「おーおー。とんでもないバカップルだわ」 「ねー、だから言ったじゃない。問題ないって。神奈子は心配性だねぇ」 守矢の神社、縁側。そこでお茶を飲みながら神奈子は手のひらサイズの鏡を覗き込んでいた。 映っているのは、黄金色に染まった草原と、一組の男女。どちらも己がよく知っている人間だ。それが今、熱い抱擁を交わしている。 なるべく意識しないようにはしようとしていたが、これだけ見せ付けられると妬けないはずもなかった。 「さて、じゃあ準備しましょうか」 つとめて平静を装いながら、鏡を裏返す。 すぐそばでごろごろしていた諏訪子が不思議そうに見つめてきたが、無視して次の言葉を紡いだ。 「宴会よ。早苗と○○のお祝い。まぁ間違いなく帰ってくるでしょうし」 「え? 早苗と○○のお祝い+自分の失恋パーティじゃなくて?」 「……諏訪子」 意識しないようにしていたのに、直接指摘されると気分がよいものではない。 とはいえここで諏訪子に弱いところを見せるのも嫌だったので、神奈子は開き直ることにした。 「そうよ。悪い? 私は○○が好きだったけど、早苗のほうが遥かに愛されてたみたいだし」 「んー、いや別に」 ごろごろ転がった諏訪子がぴょこんと跳ね起きる。 「じゃあ、早苗と○○お祝い+二柱神残念でしたパーティだね」 「あんた……」 「じゃ、私は逃げる」 「あんたも○○のこと好きだったんじゃない!!」 そのまま走り去る諏訪子に向けて、精一杯大声で返してから、もう一度鏡を見た。 これからはもっと忙しくなるだろう。それでも楽しい日々が帰ってくることは間違いない。 「さて、宴会宴会」 各方面での宣伝もかねて、天狗でも呼ぶか。そんなことを考えながら、神奈子はその場を後にする。 最後に見た鏡の中には、いつまでも抱き合う幸せそうな二人が、確かに映っていた。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 新ろだ90 「こんちわ早苗さん。相変わらず元気そうで何より」 「はいこんにちわ、○○さん。お陰さまで。今日は一体どうしたんです?」 早朝にも係わらず、何所からともなく俺、守矢神社に参上。まあ空からな訳だが。この神社立地条件悪すぎるんだよ……。 飛べる理由? 無事にここまで来れる理由? 素敵マジックアイテムと早苗さんが顔を利かせてくれたおかげです。 さて、突然の客にも礼儀正しく笑顔で挨拶してくれる早苗さん。ほんとよく出来た子だ。どこかの紅白に見習ってもらいたい。 「ちょっと早苗さんと世間話でも、とね」 「ふふっ、わざわざこんな所までありがとうございます」 ああ、ちなみに俺と彼女の関係であるが、同年代の友人、といった感じである。 同じ「外」出身者故、共通の話題も少なくなく、年が近いという事もあり、彼女との気楽な会話は結構楽しい。 勿論最初は向こうが現人神とかいう大層な人らしいんで、愚鈍な凡人らしく畏まってみたりした。 でもよく考えたら魑魅魍魎が跋扈する幻想郷で現人神くらい可愛いもんだ。と即断。素で応対する事を決意。 当の早苗さんはいきなり180度変わった俺の態度に俺に数瞬面食らったようだったが、何がお気に召したのかすぐに破顔していた。 以来紆余曲折を経て、親友以上恋人未満といった感じの交友関係を築いている。もう一歩先に行きたいと思わないでもないが。 ああ、そうだ。今日はそのもう一歩先に進む為に此処まで来たんだっけ。 いつも通り適当な雑談を交わし、タイミングを見計らって話しかける。 「早苗さん早苗さん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな」 「お願い?」 「そう。早苗さんにしか頼めないお願い」 「私にしか頼めないお願い!? お任せください○○さん! この東風谷早苗の力を以ってすれば、そこら辺の異変は即解決ですよ!」 なんか今日の早苗さん、妙にテンション高いな……。 最近地下に潜ったとかいう霊夢に対抗心でも燃やしてんのかね。 「いや、異変の解決じゃないよ。もっとプライバシー的な事」 「プライバシー、ですか……それでも気にしないで何でも言っちゃってください。私と○○さんの間柄じゃないですか」 まだ何の話かも言ってないのに太陽のような笑顔で快諾する早苗さん。 聞くだけならタダとはいえ、ホント可愛いなあオイ。 でもこの場合、気にするのはむしろ俺の方だと思うんだ。 「じゃあお言葉に甘えて……」 「はい、どうぞ」 「早苗さんさ、学校の制服ってこっちに持ってきてる?」 「学校の制服ですか? そりゃまあ、ありますけど。それがどうかしました? ……あ、えっと……い、幾ら○○さんのお願いでも、公開生着替えなんかしませんよ?」 俯きながらモジモジと指を合わせ始めた。何か盛大に勘違いしてるな。 恐るべし天然巫女早苗さん。普通に萌える、ってそうじゃない。 なんだよ公開生着替えって。彼女でもない人にいきなりそんな事頼む奴は変態すぎだろう。いやちょっとは見たいけどさ! 流石は学校の通信簿に「人の話はちゃんと最後まで聞きましょう」と点けられていたらしい早苗さんだ。 これはちょっと仕返しせねばなるまい……。 「腋見える巫女服着てるのに?」 「うっ……これは、その、ほら、アレですよ。仕事着ですから! いやらしい目で見たりしちゃいけないんです!」 俺のちょっと意地悪な指摘に今自分がどんな格好をしているのか思い出したらしく、真っ赤になってうろたえはじめた。 視線から隠そうと必死に腋を絞めるその姿は小動物を連想させ、否が応でも嗜虐心と保護欲を抱かせる。 しかし慣れとは恐ろしい。今や何の抵抗もなくこの格好をしているのだから。 今の彼女がもし「外」でこの格好のまま外に出れば、所謂「その筋の人」としてドン引きされる事請け合いだろう。某所を除けば。 ……脱線しすぎだな。これだから天然って奴は恐ろしい! 結婚してくれ! 「もう、巫女服の事はどうでもいいじゃないですか! それで、私の制服がどうかしました?」 「着て欲しい。早苗さんとデートする時に」 「駄目っ! 幾ら○○さんの頼みでも、まだ私達(ゴニョゴニョ)だってしてないじゃないですか! そういうのはもっとお互いを知り合ってからじゃないと(ゴニョゴニョ) ……ってはい? 公開生着替えじゃないんですか?」 「早苗さんが普段俺の事をどう思ってるのか良く分かったよ。 いや、別にいいんだけどね? うん、これっぽっちも気にしちゃいないから!」 「……め、面目ないかぎりです。で、公開生着替えじゃないなら一体なんなんです?」 「お願いだから人の話はちゃんと聞いてくれ……」 ジト目で睨むと所在なさげに縮こまってしまった。その姿は(ry あと早苗さん。涙目で目を逸らさないでほしいな。かえって萌えるから。 「ふう……。だから着て欲しいんだ。制服。早苗さんの。早苗さんとデートする時に」 「…………」 無言。あれ、地雷踏んだ? マジで? 呆然とこっち見てるんだけど! くそっ! 時期尚早だったか! 「……で」 「……早苗さん?」 「で、ででっでででデートでででですか!? わわわわわわ私と!? くぁwせdrftgyふじこlp」 ……うわあ。 なんか凄いテンパってる。 「あー、早苗さん?」 「……デート。私と、デート? ○○さんと……?」 「駄目かな?」 「(ええはいいつでもなんでもばっちこいですよ制服着用なのがちょっと気になりますがまあこの大事の前に服装など瑣末な問題に過ぎません っていうか私は貴方と初めて会った時からこの時が来るのを今か今かと待ち続けてたんですよまさしく一日千秋ってやつですね にもかかわらず○○さんったら私が幾らモーションかけてもまったく反応してくれやがらないもんですからね泣きますよ それとなく胸当てた時完全スルーされたのは女の矜持とかプライドとかなんとか砕かれちゃって三日はご飯が喉を通りませんでしたとも 最近は○○さんは男色の気でもあるんじゃないかと心配になってた所ですああでもやっぱりいざこうやって誘われると凄く嬉しいです○○さんありがとうございます)いえ、私なんかでよければ喜んで!」 凄い気迫でOKされた。 素直に嬉しいのでここは喜んでおこうと思う。 ……いやっほおおおおおおおおおおおおおうう!!!!!!!! ─────────────────────────────────────────────────────────── 新ろだ142 じゅーじゅー…ぐつぐつ… 肉の焼けるにおいが香ばしい。 あめ色に変わる野菜の煮える音が心を躍らせる。 秋も深まる守矢神社、その居間にて。 そこにはテキパキと調理する巫女を尻目に鍋を覗き込んですっかりアホの子になる一人と二柱がいた。 そう、今日の晩御飯は早苗謹製のすき焼きだ! 最も、俺たちがここまではしゃぐのには訳がある。 俺たちにとって、なんと牛肉を食べるのは一月ぶりなのだ。 なぜなら、この守矢神社の経済状況は非常に厳しい。 まあ、こんな妖怪の山の上まで人間が賽銭を入れに来るはずがないので当然である。 そしてこの幻想郷において、牛肉はあまりメジャーな食材ではなく、とても高価な食材である。 山の妖怪達に信仰が広がりつつあるとはいえ、供物は魚や野菜、穀類ばかり、稀に野鳥類の肉があるくらいだ。 結果、毎日の食事はメタボリックの欠片もねえヘルシーさを誇っていた。 …いや、そりゃ早苗の料理は美味いよ、美味いけどな…? でも外来人かつ健康な若い男性である俺はたまには肉の塊に齧り付きたくなるわけで… そんなわけで、俺は鍋を前に小躍りせん勢いだった。 最もそれは肉食獣の神様二柱も同じようで… 「早苗~まだ~?」 「もう少し待ってくださいね、諏訪子様」 「あーうー、この香り、待ちきれないよう」 すっかり臨戦態勢に入った諏訪子様の構えた箸が鍋の上を旋回している。 確かに、すき焼きのこの香りは殺人的だと思う。 かくゆう俺ももう我慢の限界である。 今にも鍋に襲い掛からんとする箸がうずく。 「ちょっと諏訪子、はしたないわよ」 そういいつつ鍋をずらす神奈子様。 鍋が諏訪子様の箸の射程から外れた。 「そんなにがっつかないで少しは落ち着きなさい」 そういって窘める神奈子様だが、何気に鍋を自分の方に引き寄せてないっすか? しかも妙ににやついてるような気が… 「そうそう諏訪子様、フライングは厳禁だぜ。神奈子様も」 そうはさせじと釘を刺す俺。 平静を装って鍋を真ん中に戻す。 いまチッとか聞こえたような気がしたがきっと気のせいだ。 「でもそういう○○も人のこといえないんじゃない?」 すっかり見透かしたような諏訪子様が突っ込んでくる。 「もう我慢の限界って顔してるけどなあ?」 そういって隣からしなだれかかってくる諏訪子様。 そのいたずらっぽい視線に俺は察した。 これはあれか、乗っかれということだな…! 「ああ、俺はもうこの欲望を抑えきれない」 ずっと右手を押さえつけていた理性がもはや限界に達しようとしている。 俺は諏訪子様をじっと見つめて言った。 「○○…」 諏訪子様もそんな俺を熱っぽい眼で見つめる。 「○○…そんなに食べたいんだったら…私は、いいよ…?」 いつも陽気な諏訪子様がはにかみながら、上目遣いでかすれる様にささやく。 …その様子に、枷は砕け散った。 「ああっ、女神さまっ!」 鎖から解き放たれた獣となった俺は、がおぉぉと諏訪子様に襲い掛かった。 「きゃー、○○にたーべーらーれーるー!」 あくまでも悪乗りして嬌声をあげる諏訪子様。 すき焼きを散々お預けを喰らって欲望の権化と化した我が右手は、そこにある『肉』を貪り尽くさんとし… ごぅっ!! その瞬間、室内のはずなのに確かに風が吹いた。 一瞬にして固まる俺と諏訪子様。 ギギギと首だけで振り返ると、そこには全身から気流を渦巻かせた早苗がいた。 「お 行 儀 が 悪 い で す よ お 二 人 と も」 「は、はひ、ごめんなさい…」 「や、やだな早苗、冗談だよぅあはは…あははは…」 こ、怖えぇ… 乾いた声で返事をし、すごすごとコタツに戻る俺たち。 うん、早苗を怒らすのはヤバイ。 素敵な守矢神社ライフを送るために必須な教訓が、また一つ俺の心に刻まれた。 「もう…ほら○○さん、出来ましたよ」 「おっ、ありがとう」 早苗がため息をつきつつ椀に取り分けてくれる。 肉を溶き卵につけ、いざ今こそ口へ…! ブッラボオオオォォォォ!! こいつはすばらしいぞぉぉぉぉ!!!! 俺の魂が絶叫を上げる。 俺は思わずPKを決めたサッカー選手のように天を仰いでガッツポーズをしていた。 「ちょ、ちょっと○○さんどうしたんですか…?」 早苗が驚いて尋ねてくるが、俺はそれどころではない。 脂の甘み、肉の旨み… ああ牛肉…これが夢にまで見た一月ぶりの牛肉だ…! 「あぁ…ありがとう早苗。ありがとうやっぱり早苗は料理の天才だ…」 自分でも何を言ってるか分からないがとにかくあふれ出る感謝の心をぶちまけながら次々と口に運ぶ。 早苗が若干引いてるような気がするがそんなの関係ねぇ! あっという間に椀を空にしてしまった。 「早苗、おかわり!」 椀を天高く突き上げる俺に呆れながらも受け取る早苗。 「もう、そんなにがっついちゃお行儀が悪いです」 「いやぁ、早苗のすき焼きが余りに美味いからつい…」 「そんなこと言っても何も出ませんよ…? でも喜んでもらえてよかったです」 苦笑しながらもまんざらではなさそうな早苗。 頬がかすかに染まってるのがくそう可愛いぞこいつめ! 「そんなに焦らなくてもお鍋は逃げませんから…あら?」 新たによそってくれる早苗だが、戸惑いの声と共に止まってしまった。 ??? 俺もつられて鍋の中を覗き込んでみる。 するとそこには …白菜…ネギ…豆腐…人参…シイタケ…しらたき… ……あれ? 肉 が な い ッ ッ ! な、なぜだ? さっき俺が鍋に大量に肉を投入したはずだ。 そんなにすぐになくなるはずが… 「いやー…もぐもぐ…やっぱり早苗の…ぱくり…すき焼きは最高だねえ…はぐはぐ…いくらでも食べれちゃうよ…もぐもぐ…」 ふと左隣を見ればその椀にうず高く積まれたあめ色の恋人。 あ ん た の せ い か ッ!! 俺の殺意ギンギンの視線に気付いたのか、諏訪子様がニヤリと笑った。 「おや~? ○○も食べたいのかなぁ? 仕方ないなあ、食べさせてあげよう」 そういって口に牛肉を半分くわえ、こっちにほれほれ~と突き出してきた。 …… OH! なんて甘美な誘惑…! 今にもむしゃぶりつきたい気分だぜ! …でもな諏訪子様、学習はしたほうがいいと思うんだぜ? 「す わ こ さ ま? ○ ○ さ ん?」 ホラネー? …って俺もですか!? いや俺は今回は誘惑に耐えましたよ! 俺はいつも早苗ひとすじd ………… アッー! そして愛しの緑の容赦ない怒りが俺と諏訪子様に炸裂するのだった…トホホ… 5分後、やっと俺と諏訪子様は早苗のお説教から解放された。 くそぅ…俺は何も悪くないのに… まあここは気を取り直してすき焼きを堪能せねば。 鍋に肉を投入しようとして大皿に箸を伸ばす俺たちだが、カツンという音と共に皿に箸が弾き返される。 あれ…? 思わず顔を見合わせる俺と諏訪子様。 そして再び視線を大皿へ向け… 「ああっ!」 その悲痛な声を上げたのは果たして俺か諏訪子様か。 も う 肉 が な い ッ ッ !!! ば、ばかな…!? さっき見たときはまだ大量に肉があったはずだ…! ハッとして神奈子様を見ると、そこには楊枝を手に茶を飲むお姿が。 「久しぶりのすき焼きは最高ね。堪能したわ」 …… て め え の せ い か あ ッ ッ!!! 俺たちの殺意MAXの視線に気付いたのか、神奈子様がニヤリと笑った。 「あら? 貴方達は楽しめなかったのかしら? こんなに美味しかったのに」 ええ、おかげさまでね。 その言葉に俺の怒りの波動が噴出せんとするが、その前に諏訪子様が臨海を突破したようだ。 「神奈子みたいな年増はそんなに脂を摂らないほうがいいんじゃないの? 肉よりも野菜のほうが身体にいいと思うけど?」 きゅうしょにあたった! こうかはばつぐんだ! 諏訪子様の強烈なボディーブローが神奈子様に激しくめり込んだ。 しかし神奈子様も負けてはいない。 仰け反りながらもクロスカウンターを繰り出す。 「…確かに諏訪子は色々と肉が必要のようねぇ。でも必要のない所ばかり膨らんでるんじゃない? そんな事だから早苗にとられるのよ」 かなこくんの強烈なボレーシュート! おおっと! すわこくん吹き飛んだぁぁぁー!! …ってか最後のはどういう意味だろう。 「ほう…面白いことを言ってくれるじゃない神奈子」 俺が最後の言葉の意味を考えてる間に諏訪子様が怒気を立ち昇らせながらゆらりと立ち上がった。 「あら、久しぶりにやるのかしら? 確かに食後に運動は必要ねえ。健康的な体型を維持するためにも」 神奈子様も挑発しながら立ち上がる。 ぴっきいいぃぃぃん! あ、やばいこれは空気が変わった。 おろおろする早苗を尻目に二柱の視線が交錯し… …決闘準備(Border Of Duel)… 開始(Start)!! 次の瞬間、二人が障子を吹き飛ばして庭に飛び出し、いつもの弾幕ごっこが始まったのだった。 居間に残され、呆気にとられる俺たち。 庭から爆音が響いてくる。 山坂と湖の権化 VS 土着神の頂点 かつて神話に唄われた、諏訪大戦が今ここに再現しているのだ。 …ただしその原因はすき焼きの肉が原因だが。 うわっ! アホらしい! あまりのスケールの小ささに悲しくなっていると、横で早苗がはぁぁぁぁと海よりも深いため息をついた。いや、幻想郷に海はないけどな? それにしても早苗には苦労かけるねぇ。 …まあほとんどの原因は俺と諏訪子様だがそれは内緒だ。 「…お二人はもう放って置いて私たちはお鍋の続きを食べましょう」 早苗はそういって再び鍋に火を入れる。 「あれ、でももう肉は残ってないんじゃ…?」 そう、そういえば結局俺は最初の一杯分しか肉が食えなかったのだ。 冷静に思い返すと再び絶望の悲しみに包まれる。 そうしていると、早苗がコタツの脇から包みを取り出した。 「うふふ…こんなこともあろうかと少し残してありました。じゃん!」 早苗がいたずらっぽく微笑みながら包みを開く。そこには…! 「うおおおぉぉっ! 肉っ! お肉ッッ!!」 宝石のように赤く輝く牛肉が鎮座していた。 「ほら、落ち着いてください…。今焼きますから」 アホのようにはしゃぎまわる俺を苦笑しつつなだめつつ、早苗は肉を焼き始めた。 そう、もう邪魔者(?)はいない。ここからは俺と早苗のターンだ! そうして、俺は早苗のすき焼きを心行くまで満喫したのだった。 「ふぃーー ああ喰った喰った。ご馳走様」 「はい、お粗末さまでした」 すき焼きのあとのうどんは最高だと思いますはい。 これを喰ってこそ最後が締められるというものだ。 「はい、どうぞ○○さん」 早苗が茶を注いでくれる。 うーん、気がきくぜ流石は早苗。 ごくごくごく、ぷはーと一気に飲み干す。 うむ、我ながらおっさんくさいぜ。 それにしても、今更といえば今更だが俺には一つ疑問に思っていた事があった。 「なあ、早苗」 「はい、なんですか?」 「今月、結構家計厳しいんじゃなかったっけ? なんで今日はこんなに奮発を?」 そう、先ほど言ったとおり守矢神社の家計は非常に厳しい。 俺が里の行事の手伝いに行ったり、早苗が神事を執り行ったりするものの、今月は依頼が少なかったのだ。 早苗が家計簿を眺めて眉をしかめる姿を見るの珍しいことではなかった。 「そ、それは…」 何故か早苗は言いづらそうだ。 こちらをちらちらと上目遣いに見ながら頬を染めている…? 「それはですね…今日は○○さんが私たちと暮らし始めてからちょうど一年だからです…」 そう言われて思い出す。 そういえば、去年、俺が幻想郷に迷い込んだのは紅葉の綺麗な秋だった。 そして、守矢神社に辿り着き、紆余曲折あって早苗たちと一緒に住む様になったのはこれくらいの頃だったはずだ。 そうか、あれからもう1年が経ったのか。 それにしても、俺自身がすっかり忘れていたのに早苗はちゃんと覚えていてくれたんだな… すっかり感慨深い気持ちになる。 「○○さん、これからもずっと私と一緒に居てくれますか…?」 そんな俺を見上げてはにかみながら問いかける早苗。 あ、うんこれはキた。 「きゃっ!」 驚きの悲鳴を上げる早苗。 俺は自分でも無意識のうちに早苗を思いっきり抱きしめ、押し倒していた。 目の前に真っ赤になった早苗の顔がある。 「もちろんだ。ずっと一緒に生きよう、早苗」 この一年間、早苗たちと過ごした毎日は輝かんばかりに素敵な日々だった。 俺は、これからもこの腕の中の大切な人と人生を送って行きたいと心から思った。 顔を近づけると、早苗が瞳を閉じる。 俺も眼を閉じ、唇を近づけ… 「すとおおおおおおおぉぉぉっぷ!! そこまではまだ許してないわよッッッッ!!!」 無粋な神奈子様の声に遮られた。 「どうどう、お父さん落ち着いて」 「誰がお父さんかっ!」 なだめようとする諏訪子様にヒートアップする神奈子様。 俺たちはすっかり興を殺がれ、顔を見合わせて苦笑した。 そうだ、早苗とキスできなかったのは心残りだが、それはまた後でいくらでもできる。 俺たちはこれからもずっと一緒に暮らしていくんだからな。 …まあ、まずは暴れ狂う神奈子様を何とかせねば… 俺は早苗の手を握ると、二人で神奈子様を鎮めにかかった。 ───────────────────────────────────────────────────────────
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博麗 霊夢 霧雨 魔理沙 秋 静葉 秋 穣子 鍵山 雛 河城 にとり 犬走 椛 射命丸 文 東風谷 早苗 八坂 神奈子 洩矢 諏訪子
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関係あるとみられるもの 八坂神奈子・洩矢諏訪子(東方風神録ほか) 所在地 長野県岡谷市川岸上1丁目(JR岡谷駅から徒歩15分程度。洩矢神社からJR線を横断する歩道橋と天竜川を越えて徒歩10分程度) 藤島神社 諏訪の国譲りの伝説については幾つかの説があるが、その中の一つとしてこの藤島神社と天竜川を挟む対岸の洩矢神社の地を 外来の神・建御名方命と土着神・洩矢神の両陣営の対峙した場所としているものがある(ただし双方とも度々遷座をしていて元の場所ではない)。 藤島神社は、建御名方命の諏訪入りの地とされ、市指定の史蹟にもなっているが、洩矢神社が本殿と敷地をしっかりと残しているのに対して、 藤島神社は県道の脇の一角に祠を残すのみとなっている。 両陣営の対峙した場所という謂れの為か、祠は県道に背を向けて天竜川の向こうにいる洩矢神社に視線を向けている。周囲は印刷会社の 敷地であるが、その視線の通る場所だけは建物も建てられておらず、視界を妨げないようにされている。 東方Projectでは、洩矢神社と併せて洩矢諏訪子のスペル『諏訪大戦~土着神話vs中央神話』の元ネタと考えられる 建御名方命と洩矢神の戦いにまつわる地と推定され、この藤島神社は八坂神奈子側の陣営という見方ができる。 注意事項(必読) 近隣は住宅と会社が存在する場所であり、また洩矢神社から当社に行くルートは住宅地の中を突き切ることになので、 移動に際しては迷惑にならないよう気を付けましょう。 祠しか残っておらず、普通に歩いていると見落としかねないので、事前に場所を確認しましょう。 名前
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風神録 静葉 穣子 雛 にとり 椛 文 早苗 神奈子 諏訪子 編集
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はぁッ、はぁッ、はぁッ…… 息が乱れる。脚が引きつりそうになる。 こんな全力で走ったのは久しぶりだ? こんな状況でも場違いな考えが浮かぶ。 非常識すぎて正常な感覚が麻痺してるのかもな。 俺はどうしてこんなところにいる? そもそもここはどこなんだ? なんで化け物に追いかけられてんだ? 全てがわけがわからないことばかりだ。 そう、俺はバイトに遅刻しそうになって急いで駅に向かってたはずだ。 それで、横断歩道を渡ってる途中にいきなり周りが真っ暗になって、気付いたら紅葉の綺麗な山の中?にいた。 そのままわけも分からず彷徨っていたらいきなり横から化け物が飛び出してきやがった。 猿のような身体に、牛のような頭で、俺よりも二回りはでかかった。 見た瞬間に分かった。こいつからは逃げるしかないと。 俺は飛びのくようにその場から逃げ出し、結局その化け物との追いかけっこを続けている。 ハハ、状況を整理してみたら余計わけわかんねぇ。 こういうときは天の声が説明してくれるのがお約束じゃないのかよ。 …ただ、そんな俺でもわかってることは一つだけある。 あの化け物に追いつかれたら死ぬってことだ。くそったれ。 俺は悪態をつきながら走り続ける。 やがて、そんなまま何分がすぎただろうか、茂みを抜けると一気に前が開けた。 大きな鳥居…石畳の地面…木造作りの建物… ここは…神社か…? 一瞬戸惑って立ち止まる俺。 「あら? 参拝の方ですか?」 そんな俺に声が投げかけられた。 慌てて振り返ると、そこには竹箒を持った女の子がいた。 緑の長い髪をお下げにして、白と青のワンピースのようなゆったりした服をまとっている。 やっと人に会えた…そんな安心感に包まれるも一瞬、次の瞬間には背筋が凍りつく。 そうだ、今は化け物に追いかけられているんだ。 このままでは、この女の子も巻き込んでしまうじゃないか。 どうする? 一体どうすればいい? 日頃ろくに使っても居ない頭をフル回転させる俺。 …だが、答えなんて一つしかなかった。 俺があの化け物を反対側に引き付けて逃げるしかない。 『正気か?』『自殺するつもりか?』 俺の中の冷静な部分が止めろと叫んでいる。 だがもう、迷ってるヒマなんてない。 自分のせいで無関係の女の子を巻き込んでしまうのだけは絶対にイヤだ。 俺は覚悟を決め、後ろを振り返った。 「あの…?」 女の子が戸惑ったように呼びかけてくるが、それに答えてる余裕なんてない。 「すぐにここから逃げろっ!」 俺は女の子にそう叫ぶと、化け物の来た方に向かって駆け出した。 「あ、ちょっと…!」 後ろから聞こえる女の子の声を背に、俺は茂みへと飛びこんだ。 ~ 『神々に恋した幻想郷』 ~ 今向かってきた方向に向かって俺は駆ける。 …かつて聞いたことのないうなり声が聞こえる… …草木がなぎ倒される轟音が響いてくる… …大地が踏み荒らされる地響きがする… それは、俺の『死』がこちらへと近づいてきているということだ。 だが、俺だってみすみす死のうというつもりなんて毛頭ない。 何が何でもヤツをやり過ごして逃げ切ってみせる。 俺はしぶとさと悪運だけは自信があるんでね。 俺は側に落ちていた丸木の棒を拾って構えた。 恐怖で砕けそうになる膝に気合でムチを入れる。 深呼吸し、神経を研ぎ澄ます。 ミシッ、ミシミシッ! 音が…近づいてくる… 近い…もうまもなくだ…! バキッ! バキバキャッ!! 来るッ…! そして、とうとうヤツが木をなぎ倒して飛び出してきた。 俺が諦めたと思ったのだろうか? 歓喜の雄たけびをあげて飛び掛ってくる。 だがお生憎様。俺はそんなに簡単に喰われやしないぜ。 最初の一撃、それさえしのげれば何とかなるはずだ! 「このおぉぉぉぉっ!!」 俺も気合負けしないように雄たけびを上げて振り下ろされる爪に向かって丸木を繰り出す。 ガキィッ!! 軋む音が響き、丸木とヤツの爪が噛み合った。 ヤツも獲物に反撃されるとは思っていなかったのだろう。 バランスを大きく崩し、横の木に突っ込んでいった。 よしッ! うまくいった! 今の隙に振り切ってしまえばいい! 俺は全力で駆け出し… …そして、膝がカクンと抜け、そのまま前に倒れこんだ。 あれ…? 俺は何で倒れてるんだ? 急に感じた違和感にふと胸元を見ると、ジャケットが大きく裂けて血が噴き出していた。 手元を見ると、丸木が中ほどからすっぱりと斜めに断ち切られている。 …ははっ、なるほど。どこまでも常識外ってわけか。 文字通り本当に『化け物』だぜ… ガサリと音を立てて、ヤツが立ち上がる。 怒りの気配を撒き散らし、ゆっくりと近寄ってくる。 だが俺の足は…動かない。 切り裂かれた胸が今更のように痛みだし、俺の意識を奪っていく。 ヤツが爪を振り上げ、そしてその爪がゆっくりと迫ってくるのが分かる。 交通事故の直前には世界がスローモーションになる、なんていう話は本当だったんだな… 今更ながらどこか見当違いのことが頭をよぎる。 俺はそのまま、薄れていく意識にあわせて眼を閉じた。 …暗闇の中、身体に風を感じる… …やわらかな風が頬を撫でていく… …赤子が母親に抱かれ、撫でられているような暖かな風… …俺はもう死んだのだろうか?… …ここはいわゆる天国ってやつなのか?… …そういえばあの女の子は無事に逃げられたんだろうか?… 夢見心地の中、様々な考えが心をよぎる。 だが次の瞬間、それらの考えを吹き飛ばすような、天国には不釣合いな醜い悲鳴が聞こえた。 慌てて眼を開けると、眼前に迫っていた爪が腕ごと引きちぎれ、明後日の方へ飛んでいく。 な…に…? 目の前の光景に絶句する。 次の瞬間、俺を包んでいた風がほどけると、ヤツに向かって絡み付いていった。 まるで鋭い刃でもついているかのような風の渦が、ヤツの全身を細切れに解体していく。 なんだ…これは…? 今起きている事が理解できない。 俺は言葉を発することも忘れ、呆けたようにヤツの末路を眺めていた。 安心からか、再び意識が薄れてくる。 かすむ視界の中、空から風に包まれた少女が舞い降りてくるのが見えた。 あれは…天使か何かか…? 緑の髪をなびかせ、ゆっくりと降りてくる姿は神々しくもあり… そのまま俺の意識は闇へと沈んでいった。 ……う…… 意識が浮上してゆく。 まぶたに光を感じ、ゆっくりと眼を開ける。 そこは、見たことのない場所だった。 回りを見渡すと、和室…?の部屋のようだ。 畳に敷かれた布団の上に寝かされている。 意識がはっきりしてくるにつれて、段々記憶が戻ってくる。 そうだ、俺はいつの間にか謎の山道にいて、化け物に襲われたんだっけ。 んで、ヤツにやられて、胸を斬られて。 もうダメだと思ったら不思議な風がヤツをみじん切りにして空から女の子が… …わけのわからん記憶だ。 普通なら変な夢を見た、で終わるところだろう。 だが、胸の傷からくる痛みが、これが夢なんかではないことを示していた。 胸の傷は手当てされている。 誰かが俺を助けてくれたんだろうけど…あの女の子が…? いやいやそもそもあの女の子がどうやってあの化け物を… そうして悶々と考えていると、スッと音がして障子が開き、女の子が入ってきた。 「あ…! 気が付いたんですね、よかった…」 女の子は俺が起きてるのを見ると、微笑んだ。 緑の髪をした、可愛らしい娘だ。 …ってか、この娘は逃げているときに神社?で会った娘だな。 ということはここはあの神社なのか…? 聞かなくちゃいけないことがいっぱいあるようだ。 「えっと…君は? 俺は君がたすけ…ってて!!」 「あ、まだ動いちゃダメですよ! 貴方は三日間も寝ていたんですから」 立ち上がろうとして、胸の痛みが走る。 慌てて俺を止める女の子。 混乱する俺に、彼女は状況を説明してくれた。 「私は東風谷早苗と言います。この守矢神社で風祝…巫女のようなものをやっています」 彼女の説明を聞くに、ここは幻想郷とかいう俺の住んでた世界とは別の場所らしい。 博麗大結界とかいうバリアに囲まれた世界で、普通は出入りすることはできないらしい。 で、俺が妖怪に襲われていたので彼女が風を操る術で助けてくれたと、そういう話か。 …なんの冗談だ?と言いたいがさすがにここまで非常識が続くと信じざるを得ない。 しかし参ったな…、異世界ときたもんだ。 まさかもう二度と帰れません…とか? 「いえ、大丈夫ですよ! 結界を管理しておられる方がいますので、迷い込んだ方はその人にお願いして帰るのだといいます。ですから、安心してください」 俺の不安そうな様子を見て取ったのか、にっこり笑顔で言ってくれる。 優しくて、暖かい春の日差しのような笑顔。 その笑顔に、心の中の不安が取り除かれていくような感じがする。 俺は思わず、早苗さんの笑顔に見とれていた。 「あ、あの…?」 俺の不審な様子に早苗さんが戸惑ったような声を上げる。 その声にハッと我に返る。 「あ、うん、ごめん。ちょっと突然いろんなことがあったから混乱しちゃって」 ハハハと笑って誤魔化す。 早苗さんも納得してくれたようだ。 「うふふ、傷が治るまでゆっくりしていってくださって大丈夫ですから。しっかりと治してくださいね」 助けてもらった上にこんなに親切に手当てまでしてくれて… 本当にいい娘だ… 俺はその好意に感動し、同時にふと大事なことに気付いた。 そう、まだ俺はこの娘にちゃんとお礼をいってない。 「そうだ、まだちゃんと言ってなかった。早苗さん、俺を助けてくれて本当にありがとう」 そういって、深々と頭を下げる。 早苗さんは俺のいきなりの様子に少し驚いたような照れたように両手をぱたぱたと振った。 「そ、そんな…別にたいしたことじゃありませんから。それに、私のことは早苗、で結構ですよ。敬語で呼ばれるのは…その…慣れてないので…」 恥ずかしそうにいう早苗。 俺も、出会ったばかりの女の子を名前で呼ぶのには少々照れくさい… しばし微妙な空気が二人の間を漂い…彼女がそれをかき消すように話を変えた。 「あ、そうだ○○さん。お腹がへっていませんか?」 その言葉に、思い出したように腹が空腹を訴える。 三日間寝てたってことは当然その間喰ってなかったってことか… うなずく俺に早苗はクスリと笑った。 「それでは、何か用意をしてきますね」 そういって部屋を出て行く。 そしてほどなくして、背の高い女の人と一緒に戻ってきた。 「ふむ、無事に意識がもどったようね」 「この方は、この神社が祀っている八坂神奈子様という神様です」 紹介してくれる早苗。 神様… 本物の神様をこの目で見られるとは思わなかったが… でも確かに、普通の女の人とは違う威厳のようなものを漂わせている。 俺も神奈子様に自己紹介をすると、神奈子様は笑って鉢を差し出した。 「この神の粥には回復力を高めるご利益があるわ。しっかりと食べて傷を治しなさい」 そういって、鉢を渡してくれる。 鉢をのぞくと、実にうまそうなお粥がホクホクと湯気を立てている。 見た目は普通のお粥にしか見えないが… 何はともあれとりあえず頂いてみよう。 俺はスプーンを手にとって、粥を口に運ぼうとして… …あれ? 右腕が胸元より上まであがらない…? どうやら化け物と打ち合ったときに肩を捻挫なり脱臼なりしてしまったのか、ぷるぷる震えて今ひとつ力が入らない… なんとか口に運ぼうとしても届きそうで届かないのがもどかしい。 くそっ、折角うまそうな粥があるのに喰えないなんて! しかし、こんなことで諦めてたまるか。 こうなったら、一気に力を入れて…! ビキッ! スプーンを構えて、一気に口へと運ぼうとしたとき、右腕に電撃のような痛みが走った。 カッシャーン! 「ぶあちぃっ!!」 痛みに思わずスプーンを取り落としてしまった。 こぼれた粥が太ももに落ちて超熱い。 「あらあら、何をやってるのかしら」 その様子を見て苦笑する神奈子様。 いや、わざとやってるわけじゃないんですけどね… しかしコイツは参ったな… こうやったらちょっと行儀は悪いけど口を鉢へ直接… 「あ、あの…」 俺がどうやって喰おうか考えていると、横手から袖をひっぱられた。 「ん? ああごめんね早苗、こぼしちゃって…」 「い、いえそれはいいのですが…えっと…」 言葉を濁す早苗。 …? なんか顔が赤いようだが…照れてる…? 「あの…もしよかったら…食べさせてさしあげましょうか…?」 ………… た べ さ せ て あ げ る ? 早苗の言葉に完全フリーズする俺。 食べさせてやるってアレですか? 男なら人生で一度はやられてみたいアレですか!? =========================== 俺妄想中 ================================= ガチャ 『ただいまー、今帰ったぞ早苗』 帰宅する俺を新妻の早苗はにっこり笑って出迎えてくれた。 『おかえりなさい、あなた。今日もお仕事お疲れさまでした』 この笑顔の為だけにでも俺は一日頑張ったかいがあるというものだ。 そして、早苗は頬を赤らめると、こう言うのだった。 『あの…あなた。お食事にします? それともお風呂がいいですか? それとも…わ・た・し?』 そんなの決まってる。 もちろん俺の答えは… =========================== 妄想ここまで ============================== って違うだろおれぇぇぇ!! 不埒な妄想を慌ててかき消す。 あまりに衝撃的な言葉に理性が吹き飛んだようだ。 そっちじゃなくてコッチだろ!! 嬉し恥ずかしアーンってやつだ… しかし自慢じゃないが、今までロクに女の子と付き合うこともなかった俺にそんなことをしてもらった経験があるわけもなく… まさか、こんな可愛い女の子に人生初アーンをしてもらえるなんて、そんな夢みたいなことが… 意識すると、たまらなく恥ずかしくなってきた。 本当にこんなことがあっていいのか…? だってあのアーンだぞ!? 「あ、あの…イヤならいいんですけど…その…た…食べにくいかな…って…」 フリーズした上に挙動不審に悶えまくる俺に、早苗はすっかり縮こまったように後ろにさがっていく。 そんな早苗の姿に… 「是非お願いします!」 理性よりも先に、本能が力強く答えていた。 「あ、あの…それじゃあいきますね…?」 「お、おう…よろしく…」 いかん…思わずどもってしまった。 恥ずかしそうな表情の早苗がスプーンに粥をすくい、自分の口元でふーふーとしている。 薄紅色の唇が実になまめかしくて…スプーンよりもそっちにむしゃぶりついてしまいそうだ。 「は、はい、あーん…」 差し出されたスプーンが羞恥にふるふると細かく揺れている。 早苗の顔はすでにゆでだこのように真っ赤だ。 俺の顔も…どんどん熱くなっていくのが分かる。 照れくささを押し隠すように、そのスプーンにパクリとかぶりついた。 「ど、どうですか…?」 不安そうに尋ねてくる早苗。 その言葉に俺は… 「う、うんまいぞぉーーーっっ!!」 思わず歓喜の叫びをあげていた。 いや、これがホントうまい。 ほどよい塩加減に米の甘み、それに何か言葉では言い表せない暖かいパワーのようなものが身体に満ちていくのを感じる。 全身の細胞が活性化していくような感じがする。 これがそのご利益ってやつなんだろうか? それに…早苗に食べさせてもらっているというのがさらに旨み当社比50%増。 俺の反応に早苗はクスッと微笑むと、また次を差し出してくれる。 親鳥にせがむ雛鳥のようにパクつく俺。 そんな俺たちを、神奈子様が微笑ましげな様子で見守っていてくれた。 腹がいっぱいになると、再び眠気が押し寄せてくる。 横になると、早苗が布団をかけてくれる。 俺はそのまま、眠気に逆らうことなく眼を閉じた。 こうして、俺の守矢神社生活第一日目は、終わりを告げるのだった。 日が変わり、その翌日。 俺は縁側に座り込んでぼけーっとしていた。 やっと立って歩けるようになったものの、まだ激しい運動は止められている。 しかし、一日中ずっと布団に入りっぱなしというのも退屈で…結局日向ぼっこに落ち着いた。 まあ、あんまり変わらないっちゃ変わらないんだが、屋内に引きこもっているよりかはずっと健康的だろう、多分。 ぼーっと遠くを眺める。 空は見事な秋晴れに透き通っていて、雲ひとつない爽やかな青が遥か遠くまで続いている。 前を見てみれば、この縁側の少し向こうが切り立ったガケになっており、山の遥か下の方まで見下ろせる。 もちろん視界を遮る高層建築なんてものはどこにもない。 広大な山肌が、長く細く続いている谷川が、そして小さく人里の集落のようなものが広がっていた。 なんて景色だ。 こんな絶景はいまや外の世界じゃごく限られた場所でしか見ることは出来ないだろう。 少なくても、俺にとっては今までの人生で最高の景色だと断言できる。 空気もうまいし、これはこれで貴重な体験なのは間違いない。 うん、まあ成り行きとはいえ折角この幻想郷に来たんだ、今のうちにこの偉大なる大地を満喫しておこう。 俺はそう前向きに考えることにした。 よし、そうと決まればさっそくこの神社を探検してみよう。 文字通り”秘境探索”なわけで、まるで少年に戻ったかのように妙にワクワクする。 そう思って、立ち上がった時、 「あれ~? 君はどなたかな? もしかして参拝の人?」 後ろから声がかけられた。 振り返ると、そこには黄金色の髪の毛にカエル?のような帽子をかぶった愛らしい女の子がいた。 今の話し振りからすると、ここの神社の人っぽいが…早苗の妹さんだろうか? 「いや、俺はちょっと事情があって早苗に助けてもらった居候だよ」 とりあえず返事をしてみる。 「あー君がそうだったのか! 私昨日は出かけてたから知らなかったよ」 女の子は俺の言葉にそういってあははと笑った。 輝く太陽のような眩しい笑顔、ハッキリいって超可愛らしい。 「それで、今は何をしてるのかなあ?」 興味津々という様子で小首をかしげて尋ねてくる。 「いやーヒマだからちょっと神社を散歩でもしてみようかなってね。する事がなくて退屈でさ」 別にやましいことをしてるわけでもなし、正直に話す俺。 すると女の子は、遊び相手を見つけたとばかりぱぁっと顔を輝かせた。 「そう、それじゃあ私も退屈だったし、案内してあげよう!」 そういって俺の腕に抱きついてくる。 「い、いや別に悪いし…」 思わずどもってしまう俺。 くっついてきた女の子の体がやわらかくて気持ちいいなんて死んでも言えない… 俺は、ロリコンなんかじゃないぞ…! …多分… 誰ともなしに言い訳をする俺。 「遠慮なんていらないよ! それレッツゴー!!」 そんな俺の動揺をよそに手を引いて歩き出す女の子。 …聞いちゃいねえ。 ふぅとため息をつく。 でもまあ、よく考えれば別に無理に断る必要もなかった。 こう見えても子供と遊ぶのは嫌いじゃないしな。 それに、ヒマでしょうがないのも確かだ。 折角だからあの子に案内してもらうのも悪くない、そう思いなおして女の子についていった。 それから一時間、俺たちは神社の側の湖の水辺を歩いたり、裏手の柿の実をもいだり、栗拾いをしたりして遊んだ。 女の子は実に良く笑うとてもいい子で、俺もつい時間を忘れて年甲斐もなくはしゃぎ回ってしまった。 あっというまに時間が過ぎ去り、二人で手をつないで最初の縁側へと戻ってきた。 「うん、外は大体こんなもんかなあ」 そういって笑う女の子に、俺は今更ながらまだ名前を聞いていなかったことを思い出した。 この子のおかげで楽しい時間を過ごす事が出来たんだし、ちゃんと名前を聞いてお礼を言わなければいけない。 俺はかがみこんで女の子と視線を合わせると、帽子を取り、その金糸のような髪を優しく撫でた。 サラサラの髪からお日様の香りがただよってくる。 「わひゃ!」 驚きの声とともに固まってしまった女の子に、心を込めてお礼の言葉を告げる。 「お嬢ちゃん、本当にありがとうな。すごく楽しかったよ」 俺の言葉に、照れたように顔を赤らめる様子が実に可愛らしくて微笑ましい。 俺が女の子の髪を撫で続けたまま、名前を聞こうとしたそのとき、前から箒をもった早苗がやってきた。 「おや、○○さんはこんな所にいらっしゃったんですね。それに洩矢様も…あら?」 俺たちに気付いて声をかけてくる早苗だが…途中で言葉を途切らせると、なんとも言えない微妙な表情で固まってしまった。 …? 早苗の反応がおかしいが…? 俺が妹さんの髪を撫でてるのがそんなにまずかったんだろうか? そこではじめて、今かけられた言葉の違和感に気付く。 …もりやさま? もりやさまって誰だ? もちろん俺じゃない…となると、この子…?? 「あれ、早苗の苗字って東風谷じゃなかったっけ? この子は早苗の妹さんじゃなかったのか?」 湧き上がった疑問をぶつけてみる。 「い、いえ違いますよ! その方は洩矢諏訪子様といって、この守矢神社が祀っている二柱の神様のうちの一柱です…」 慌てたように呆れたように答える早苗。 カミサマ? カミサマ = かみさま = 神様…!? 「な、なんですとぉーーーーーーーーーーーぅっっっ!!!」 俺は瞬時に飛びのいた。 ま、まさかこんな可愛らしい女の子が神様だって!? 神奈子様はいかにもという威厳があったけど、この子からは微笑ましさしか感じないぞ。 …というか、俺はもしかして…いやもしかしなくてもトンでもなく失礼なことをしたのではっ!? 「こ、これは神様とは知らず失礼なことをしましたーーッ!」 慌てて平伏する俺。 これは祟られたり神罰の雷がどどーんと落ちてきたりするんだろうか…? いったいどんな罰が下るんだろうと内心冷や汗でまくりの俺。 早苗もどうやってとりなそうかとおろおろしている。 「あ、うん…まあ…いちおう…」 そんな俺を諏訪子様は俺の態度の変化についていけないという様子でぽかーんと見下ろしていたが… 「ぷっ…!」 「ぷぷっ、あはははははははっ!! いいよいいよ別にそんなに畏まらなくても!」 いきなり吹き出すと、そのまま大爆笑をはじめた。 …? これは怒ってないんだろうか…? 「あはっ…ははははっ!! 神様だなんていってもそんな偉いわけじゃないんだから、怒ったりしないよう! …それにしてもさっきの君の表情…あははははっ!!!」 腹を抱えて笑い転げる諏訪子様。 その笑い顔は、さっき俺と遊んでいたときに見せてくれた太陽のような笑顔だった。 そして笑いながら、再び俺の腕に抱きついてきた。 「気に入ったよ! ねえ今度は私の部屋に行って遊ぼう!!」 そういいながら俺を引っ張る。 俺は怒ってなくてよかったという気持ちとそれでいいのかという気持ちが交じり合って釈然としない思いで引っ張られるがままに歩いていく。 そんな俺たちを…早苗はもう何といっていいか分からないという表情で唖然と見送ってくれた。 そうして結局その日は、日が暮れるまで諏訪子様と一緒に遊んだ。 まさか諏訪子様の部屋に各種おもちゃから歴代TVゲーム機が勢ぞろいしてるとは夢にも思わなかったが… だって、毎日することがなくて退屈なんだもん、とは諏訪子様の弁である。 ちなみに、この幻想郷で電気が通じるのかという疑問には、なんでも幻想郷でも河童たちは多少科学力が進んでいるらしく、そこから電気を引いているそうだ。 でも、電気の供給量の関係で一日一時間しかゲームをさせてもらえないのが不満らしい。 あの計画がうまくいけば…!なんていって怪しい笑みをもらす諏訪子様は何かたくらんでいるようだが… まあ、何にせよこんなに気さくで可愛らしくてTVゲーム好きな神様がいるとは予想だにしなかった。 幻想郷では俺の常識は通用しない、幻想郷の深遠さを改めて思い知らされる俺だった。 そして、数日後。 早苗の甲斐甲斐しい手当てと、神奈子様の神徳のおかげもあって、俺はすっかり回復していた。 「うん、これでもう大丈夫ですね。痛いところとかはありませんか?」 早苗が包帯をほどいてくれる。 胸の傷は、もう完全に消えていた。 コキコキと肩を動かしても特に痛みとかは感じられない。 「大丈夫だ、本当にありがとう早苗」 「いえいえ、傷ついた人を助けるのも私たちの役目ですから」 早苗が笑顔で言ってくれる。 この笑顔は本当に癒されるぜ。 「ケガも治りましたし、○○さんは外の世界へ帰らないといけませんね。さっそく結界を管理している霊夢さんのところへとお連れしますね」 そうだった。傷が治ったら外の世界へと帰るんだったな。 早苗のこの笑顔が見れなくなってしまうのはちょっと残念な気がする。 でも…俺は外の世界の人間だ。 バイト先の店長にも謝らないといけないし、大学の友人だって心配してるだろう。 このままここにいれば、ますます帰りにくくなってしまうし、早苗たちにも迷惑をかけてしまうことになるしな。 荷物(といっても身の回りのものだけだが)をまとめ、鳥居まで見送りに来てくれた神様達に挨拶をする。 「それじゃあ、本当にお世話になりました」 そういって、二人に頭を下げる。 「気にしなくていいわ。私達も新鮮だったしね」 そういって笑ってくれる神奈子様。 「ええーもう帰っちゃうの? もう少しいてもいいのにー!」 諏訪子様はちょっと不満そうだ。 はは、諏訪子様の遊びに付き合えるのは俺しかいないからなあ。 早苗も、神奈子様もいかにもTVゲームなんてやらなさそうだし。 まさか神様がゲーマーだというのは意外だったが。 「それじゃ○○さん、行きますね。八坂様、洩矢様、行って参ります」 早苗が俺の手を握る。 柔らかくて暖かい手だなあ、なんて思ってるうちに俺の体が風に包まれた。 そのまま、空へとゆっくりと浮かんでいく。 そうだ…この俺を包む暖かくて優しい風には覚えがある。 俺が化け物にやられたときに、俺を守ってくれた風だ。 これが幻想の、神の風というものなのか。 生身で空を飛ぶのはもちろん初めての体験だ。 飛行機にのったことはあるが、こんなふうに全身で風を感じることなんてない。 空は遠くまで青く抜け、遥か彼方まで続いている。 下を見れば、山の木々が一面の紅葉の絨毯となり、艶やかな色彩を作っていた。 これが…俺たち外の人間が既に忘れてしまった本当の大地と空。 外の『自然公園』などというものとは次元の違う本物の自然。 その風を操る、ということはまさに神の所業なんだな。 俺はかつて人間が畏れ、信仰したというものが少し分かった気がした。 そして、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。 この本物の自然の中でもっと生活したいな…なんて感傷的な気分になるのだった。 結論から言うと、俺の感傷は杞憂だった。 「無理ね。その人を外に出すことは出来ないわ」 開口一番、紅白の巫女に言い切られた。 「この間、阿呆な天人が神社を壊してくれて、折角直ったと思ったら今度は紫が壊してくれたせいで、結界の制御が不安定になっているのよ。 今無理に開け閉めを行えば、結界に損傷を来たす恐れがあるわ。結界が安定化するまで…そうね、三ヶ月くらいは無理ね」 三ヶ月ですとー! そいつは困った。 「そ、それじゃ。代わりに紫さんにお願いしてもらうことってできませんか…?」 早苗がそういってくれるものの 「紫ならもう冬眠に入ったわよ。…ったく、壊すだけ壊しといて自分は治そうともしないんだから」 不機嫌そうな紅白の巫女に一刀両断された。 ぬーん、なんてこった。 三ヶ月かー…さすがにバイトクビだなあ… 「すみません…○○さん…」 早苗が申し訳なさそうに謝ってくる。 いや早苗は何も悪くないだろう、常識的に考えて。 それにしても、三ヶ月どこで暮らそう… そう、一番の問題はそれだな。 流石にこれ以上ずっと守矢神社にお世話になるのも悪いし… 「お断りよ。ただでさえ神社の色々な物を壊されて生活に困ってるんだから。居候なら他を当たりなさい」 紅白の巫女と視線があった瞬間、先制攻撃をブチかまされた。 まだ何も言ってないんですがね。 やっぱりここは人里の方にお願いして、バイトでもさせてもらうしか… 「あの…もしよかったら、また私たちの神社に来ませんか?」 そんな俺の様子を見かねたのか早苗が救いの手を出してくれた。 早苗…なんて優しい子なんだ…。 でも、さすがにこれ以上お世話になりっぱなしってのは申し訳ないし。 「そんなことありません! 洩矢様もきっと喜んでくださいます!」 力説する早苗。 そこまで言ってくれるなら…お言葉に甘えようか。 正直いってありがたいしな。 かくして、俺の幻想郷ライフは三ヶ月間延長となった。 ──────────── 守矢神社で暮らし始めてから一週間がたった。 俺は、早苗の手伝いをするようになっていた。 もちろん、神事に関わる事は俺は何も出来ないが、力仕事や雑事程度はできるだけ引き受けるようにしていた。 理由は二つある。 一つはもちろん、暇だったからだ。 最初の数日は、早苗に病み上がりなのだから安静にしてくださいと言われたので大人しくしていたのだが… 何せこの神社には娯楽がない! テレビはあるが、幻想郷でそんなものが映るはずもなく… 本はないかなと思ったら信仰がどうの人の心理がどうのという難しそうな本しかなく… 諏訪子様と一緒に遊びもしたが、ゲームは一日一時間の制限があるし… 神社の回りには山しかなく…しかも下手に外へ出ようものなら化け物がいるし… 人里まで行こうにも徒歩で何時間かかることやら…しかも化け物が… と、こういうわけだ。 諏訪子様がいつも退屈そうにしている理由が実に良く分かった俺であった。 そしてもう一つは、いつも一生懸命な早苗を見ていると何もせずにはいられなかったからだ。 早苗の朝は早い。 俺たちの誰よりも早く起きて、朝食を作ってくれる。 昼は里へ行って神事を執り行ったり、信仰を集めるために縦横無尽の働きっぷりだった。 そして夜は、遅くまで自己鍛錬と学習… それらの時間の合間に、炊事洗濯などの家事全般を全て一人でこなしている。 そんな早苗を見ているうちに、何もしていない自分が恥ずかしくなり、また俺も手助けしたいと思うようになったのだ。 結果、俺は恐縮する早苗に半ば無理に頼み込んで、仕事を手伝わせてもらうようになった。 そんなある日のこと、早苗が祭りをやりたいと言い出した。 人里に、守矢神社の分社を設立するにあたって、祭りを行うことで村人に浸透させようという目的のようだ。 厳しい冬の間無病息災で過ごせるように、神奈子様の神徳で加護を与えるという趣旨で、信仰も集まるだろうということである。 神奈子様も諏訪子様も反対がなく、もちろん俺も異存がなかった。 そしてそれから、俺たちは祭りの準備に向けて動き始めた。 村長と交渉し、広場を提供してもらい… 村人たちと計画を吟味し… 手伝いの人々を動員して分社を建立し… 忙しいながらも充実した日々が過ぎていく。 何か大きな目標があり、それに向かって突き進んでいくというのがこんなに心地いいものだとは知らなかった。 それは、外の世界で半ば惰性で毎日大学へ行っていた時には、決して味わえなかった日々だった。 そしていよいよ、冬祭りを翌日へと迎えた。 とうとう、ここまでやってきた。 分社は無事に完成したし、村人と計画を煮詰めるのもすませた。 ここまで来るのは大変だったが、やりがいもあった。 これで無事に祭りを成功させる事ができれば、村人達の信仰を大いに集める事が出来るだろう。 信仰を集めるというのがどう大切なのかは俺には良く分からないが、この祭りにかける早苗の情熱は並々ならぬものがあった。 だから、俺はその早苗の願いを成就させてやれればと思って、ここまで頑張ってこれたのだ。 さて、今日の仕事は村人達と一緒に屋台の最後の仕上げをする事だ。そのために諏訪子様と里に行かねば。 そう思って、出発するための準備をしている時、それは起こった。 リンリンリンリン!! 境内に響くベルのような音。 …? これは何の音だろう? まさか電話はないだろうし… 俺が戸惑っていると、硬い表情の早苗が飛び出してきた。 「何者かがこの神社に近づいてきています。私はこの神社を守るものとして、迎え撃たねばなりません」 深刻そうな口調の早苗に対して、おーがんばれと気楽に答える俺。 俺は、全く心配などしていなかった。 だって、あんな化け物をあっさりと細切れにしてのける早苗だ。たとえどんな化け物が来ようと楽勝だろう…と。 だが、俺は忘れていたのだ。 この幻想郷では、俺の常識なんて全く通用しないってことに。 だから…俺は自分の目の前の光景が信じられなかったんだ… カッ!!! 空を光が切り裂いていく。 あまりにも圧倒的で、暴力的な光の奔流。 それが早苗の神風を、護符を、防壁を、行く手の全てを薙ぎ散らしていく。 そして…その直撃を受けた早苗がゆっくりと堕ちて来るのが目に入って…俺はやっと我に返った。 「早苗ッ!!」 咄嗟に走りこんで早苗を受け止める。 息は…ある。気を失ってるだけだ… だが腕の中の早苗は全身の服があちこち焼け焦げて、あの光の凄まじさを物語っていた。 …あまりにもショックが大きすぎて理解できない。 早苗があんなにもあっさりと…しかも相手が妖怪どころか、早苗と同じくらいの女の子だったなんて。 俺はそのまま、魔女が神社の供物を持ち去るのを呆然と見続けることしか出来なかった。 「………う……ん……」 寝室に運び込んで神奈子様が治療すると、程なく早苗は目を覚ました。 「早苗、大丈夫か?」 俺の声にこちらを向く早苗。 「あれ…○○さん…? 八坂様に洩矢様も…?」 早苗はしばらくぼんやりとしている様子だったが、次第に意識が戻ってきたのか表情を曇らせた。 「○○さん…私はまた負けてしまったんですね…」 「ああ…」 その言葉にうつむく早苗。 なんて言葉をかけてやればいいのか見つからない。 あの光景は、俺にとっても衝撃が大きすぎた。 「八坂様、私がふがいないばかりに…申し訳ありません…」 「気にしなくていいわ。それよりも今日はゆっくり休みなさい」 起き上がって詫びようとする早苗を、優しく布団へ押しとどめる神奈子様。 それでも、早苗の面持ちは暗いままだ。 「はい…すみません…八坂様…」 早苗はそういって布団をに入ろうとするが、ハッと弾かれたように立ち上がった。 「そうだ、お祭りの準備が!! …痛っ!」 そのまま布団へ崩れ落ちてしまう。 …そうだった。 今の今まで頭から完全に飛んでいたが、祭りは明日に迫っているんだ。 …しかし…早苗のこの様子では… 「明日の祭りは中止ね」 神奈子様の冷静な声が響く。 やはりそうせざるを得ないのか…? 「そんな…」 絶望の表情を浮かべる早苗。 正直、今までこれを目標に早苗と頑張ってきた俺としても悔しい。 何とか…ならないのか…? あ、そうだ! 早苗が無理でも神奈子様や諏訪子様が直接神徳を与えればいいんじゃないか! 俺のひらめきにも、神奈子様は苦々しげにかぶりを振った。 「私たちはまだ村人達に広く認知されていない…。今の私たち程度の力では、神社や早苗という媒介を通してでしか他の人間を守護することはできないのよ…」 悔しそうに言う神奈子様。 「やっぱりダメです! ここまで来て急に中止なんてしたら、村の方たちの信仰が…っ!!」 食い下がる早苗。 その気持ちは俺にも分かる。 ここまできてドタキャンしたら、信用を失うのは間違いない… が… 「祭りはまた次の機会にすればいいのよ。それよりも、今は早苗の身体を治す方が先でしょう?」 諭すように言う神奈子様。 確かに…正論だ。 ここで無理をして早苗が体を壊したりしたらそれこそ信仰どころじゃない。 仕方ない。俺も諦める決心が付いた。 「神奈子様の言うとおりだ。祭りはまたやり直せばいいんだし、今は休んで…」 俺は神奈子様に同調しようと口を開き… 「それじゃあ間に合わないんですっ!!」 早苗の叫び声にかき消された。 さ、早苗…? 驚きに思わずたじろく。 早苗が声を荒げるのなんてはじめて見た。 「今やれなかったら…次はいつできるか…。いえ、もう二度と出来ないかもしれません! そうなったら…八坂様と洩矢様は…!!」 今までに見たことないような剣幕で取り乱す早苗。 一体どうしたというんだ? 呆気にとられる俺。 「私たちはまだ大丈夫だから気にしなくていいのよ。聞き分けなさい、早苗」 神奈子様がなだめようとするものの、早苗は火がついたようにヒートアップしていく。 「私が未熟なばかりに…お二人はどんどん信仰を失って…! このままじゃお二人とも…!!」 早苗はそこで一度言葉を切ると、悲痛な声で叫んだ。 「私が、私なんかが風祝じゃなかったらよかったのにっ! 八坂様にお仕えするのが私じゃなかったら、八坂様だって…っ!!」 早苗が感情を爆発させたそのとき… パァン! 乾いた音が響き渡った。 「あ……え…?」 早苗が呆然とつぶやく。 俺も、諏訪子様も、完全に凍り付いて動けない。 何か、何か言わないと。 この空気を…動かさないと。 そう思っているのに、気持ちだけが空回りして言葉が出てこない。 とりあえず口を開こうとして…ハッと息を呑む。 神奈子様が…いつも包容力のある笑みを浮かべていた神奈子様が… …その目に、涙を浮かべていたのだ。 それは早苗も諏訪子様も同じだったようで… 神奈子様は立ち上がると、固まったままの俺たちを置いて部屋を後にした。 「神奈子!」 諏訪子様が弾かれたように硬直から解けて立ち上がる。 早苗をお願い、と俺の耳に囁くと、慌てて神奈子様の後を追っていった。 ………… 気まずい沈黙が俺たちを包んでいる。 取り乱す早苗も、涙を浮かべた神奈子様も、今までにまるで見たことのないものだった。 正直、衝撃的な出来事が余りに続きすぎて、頭が混乱している。 でも…このまま黙ってお見合いをしているわけには、いかないな… 意を決し、早苗を刺激しないように優しく話しかける。 「早苗、どうしてそんなにこだわるんだ? ここまで一緒にやってきて中止するのは俺も悔しいけど…また今度やり直せばいいじゃないか。 村長さんには俺も一緒に謝るからさ」 俺の言葉にやっと硬直が解けたのか、再びうつむく早苗。 「毎日…夢を見るんです…」 ポツポツと、かすれるように話し始めた。 「八坂様も、洩矢様も…消えてしまうんです…。私のせいで…私がダメなせいで…」 消える…? 消えるってのはどういうことだ? 愛想を付かされてしまうってことだろうか? でも、神奈子様たちに限ってそれはないと思うが… 「私、現人神だなんて、自分の力を過信してて…幻想郷ならきっとすぐに信仰が集まるだろうって…。 でも、実際は霊夢さんには一蹴されて…魔理沙さんにもまるで相手にされなくて…。それどころか、天候の異変の時には異変にすら気付けなくて…! 私は、この幻想郷のことなんて何一つわかっていなかったんです…!」 それは俺も同じだ。 俺もここにきて、外の世界の俺の常識は幻想郷ではまるで役に立たないということを散々思い知らされたからな。 「そうして私が負けるたびに、八坂様の威光はどんどん失われていって…」 早苗の声が涙混じりになる。 「それでも…八坂様はいつも私を励ましてくださって…私を見捨てずに稽古もつけてくださっていたのに…! なのに、それなのに私はなんてひどいことを…! お二人に嫌われてしまったら、私はこの幻想郷で本当に一人ぼっちに…っ!!」 早苗は搾り出すように言うと、肩を震わせて泣き出した。 そんな早苗の姿を見て俺は… 自分でも無意識のうちに、早苗の細い肩をぎゅっと抱きしめていた。 「…っ!」 早苗がビクッと身じろぎするのに我に返る。 俺は、一体何をやっているんだ。 恋人でもない女の子を、相手が弱ってるのをいいことに突然抱きしめるなんて。 …嫌われたって文句は言えないな、と、頭の端の冷静な部分が告げている。 だが幸いなことに、腕の中の早苗は振りほどこうとする気配はない。 そのまま、俺の腕の中で大きな声をあげて泣き続けている。 そのことに、ほんの少しだけ安心する。 俺は早苗の背中をあやす様に撫でた。 「大丈夫、神奈子様が早苗を嫌いになることなんてあるもんか。それに…もし万が一そんなことがあったとしても、その時は俺が早苗の側にいるから」 俺はなんて無責任なことを口走っているんだろう。 あと二ヶ月経って、結界が安定化したら俺は外の世界に帰ってしまうというのに。 それでも…そんなことは頭では理解していても… 今にも消えてしまいそうな早苗を前に、俺はそう言わずにはいられなかった。 俺はそのまま、早苗が泣き疲れて寝てしまうまでずっとそうしていた。 寝入ってしまった早苗を布団に戻し、部屋を後にする。 いろいろな気持ちが頭の中を走り回って…思考がぐちゃぐちゃだ。 でも…まずしなければいけないことがある。それだけはハッキリしている。 早苗が、何故あんなにも信仰を集めることにこだわるのか。 さっきの早苗の説明も今ひとつ要領を得ないものだった。 この事態を打開する鍵はきっとそこにあると、俺の直感が告げている。 まずは、その理由を知るところから、始めなければいけない。 境内を探していると、果たして目的の諏訪子様を見つけた。 池の淵の石に腰掛けて、寂しそうに水面を眺めている。 「早苗は…?」 目が合うなり問いかけられる。 「寝たよ」 そう答えてその隣に腰を下ろした。 諏訪子様は再び視線を水面に戻して黙り込む。 諏訪子様も、さっきのあの出来事に心を痛めているんだろう。 いつも元気な諏訪子様が沈み込んでいる姿はより痛々しく目に映る。 ここは…ストレートに聞いてみるしかなさそうだな。 俺は意を決し、口を開いた。 「諏訪子様、早苗がどうして信仰を集めることにあんなにこだわるのか、教えてくれないか?」 俺の問いに、戸惑ったように言葉に詰まる諏訪子様。 「これは私たちの問題だから…○○は知らない方がいいことだよ…」 そういって視線をそらす。 が、俺もここで引き下がるわけにはいかない。 「信仰に対する早苗の様子は尋常じゃなかった。何か、俺が知らない事情があるんじゃないのか? 俺は仮とはいえ今はこの神社の住民だ。 こんな悲しそうなみんなを見て、一人だけ何も知らないではいられない!」 頑として言い張る俺に尚も渋る諏訪子様だったが… 俺が引く気配がないと諦めたのか、一つ大きな息を吐くと説明をしてくれた。 そう、人間と神様の関係について。 神様は、人間から信仰されることで力を得る。 そして、それによって様々な奇跡や、神徳を振るって人間を守護する。 そしてそれがまた信仰を高めていく。 …しかしその一方で、信仰を失った神様はどうなるのか。 信仰を失えば、次第に力を失い、最終的には消えてしまうのだ。 それが人間とは違う形の神の死、寿命なのだ…と。 そして、神奈子様たちは外の世界で信仰を失い、新たな信仰を求めてこの幻想郷にやってきたのだということを。 …そういう、ことだったのか。 消えると言うのは単に愛想を付かされると言う意味じゃない。 文字通り、本当に消滅してしまうと言う意味だったんだ。 だから、早苗はあんなに必死だったんだな… 全てを理解して、改めて事態の深刻さにため息がこぼれる。 このままでは、遠からず神奈子様たちは消えてしまう。 だからと言って、早苗が無理をして傷つくことは二人の望むところではないだろう。 一体、どうすればいいというのだろう。 「でも、本当は…幻想郷には来ない方が良かったのかもしれないね…」 考え込む俺に、諏訪子様はぽつりともらした。 「外の世界に信仰が失われたのは、つまるところ今の人たちにはもう神様なんて必要ないって事なんだよ。 それならば、時代の変化と共に消えていくのもまた摂理だったのかも」 そんなことは…!、と反論しようとして言葉に詰まる。 確かに、俺自身、外に居たときは信仰心なんて欠片も持ち合わせていなかったのだ。 正月に神社に詣でることはあっても、本気で神を畏れ敬っていたわけじゃないし、むしろ自分に都合のいいときだけ神頼みする程度の存在でしかなかった。 外の人間にとって、もう神様がその役割を終えつつある、というのは事実だった。 歯噛みする俺に、諏訪子様は続けた。 「先代の風祝…早苗の両親が事故にあった時だって、私は側にいたのに…治療してあげるだけの力すらなかった。 神様なんていっても、自分たちに仕えてくれる人間すらロクに守ってあげられない、無力な存在なんだよ…」 自嘲気味につぶやく諏訪子様。 そんなの諏訪子様のせいじゃない! 事故は運なんだから誰かが悪いわけじゃない! と、そう言ってあげたかった。 でも、人間にとってはそうでも、その”天運”自体を司る神様にとってはどうなんだろう? 神様の悲哀に、俺が口を挟む資格があるのだろうか? 「それでも、早苗は私たちを恨むこともなく真っ直ぐ育ってくれて…ずっと仕えてきてくれたのに…。私たちが幻想郷に連れてきたせいで、大切な友人すら失った。 本当は、幻想郷に来る必要だってなかったのに!」 …え? 諏訪子様の言葉に違和感を覚え、思わず聞き返す。 だって、外の世界じゃ存在が危うくなったから、信仰を求めてこっちへとやってきたんじゃなかったのか…? 「神奈子は私に気を遣って言わなかったけど…信仰が失われたとはいえ、まだ神社を参拝する人はそこそこはいたし、表の神様の神奈子の存在を維持することだけなら 十分に出来ていたはず。でも…神奈子は私のために神社を転移させた」 そういって、肩を大きく震わせる諏訪子様。 「結局、私はまた、早苗から大切な人たちを奪った! 風祝なんかじゃなくたって、早苗は普通の女の子として生きていけたのに、私たちの我侭に巻き込んだ! これ以上、早苗を傷つけ続けるくらいなら、いっそ私はここで消えてしまったほうが…!!」 諏訪子様が、泣いている。 いつも陽気だった諏訪子様が。 そんな姿を前にして、俺の中に湧き上がってくるこの感情は… それは、怒りだった。 諏訪子様に対してじゃない。 早苗に対してでもない。 神奈子様ももちろん違う。 誰に対してでもない、やり場のない怒りが俺の中を渦巻いていた。 早苗も、神奈子様も、諏訪子様も、みんなみんな互いのことを大切に想いあっているんじゃないか。 それなのに、どうしてこうなる? 想いあっているのに、想いあっているせいで、自分で自分を傷つけあうなんて、そんなことあってたまるものか! 「それは違うっ!!」 俺は思わず、大きな声で諏訪子様の話を遮った。 「○○…?」 俺の剣幕に驚いたような表情を見せる諏訪子様。 「諏訪子様が消えたほうがいいなんて、そんなこと絶対あるもんか!!」 そうだ、確かに俺には神様の気持ちは分からない。 諏訪子様の抱える悲しみを理解してあげることは出来ない。 でも…人間の気持ちならば。 早苗の気持ちなら、理解する事が出来る。 「この一ヶ月、ここで一緒に暮らしてきた俺だからわかる! 早苗も、神奈子様も、諏訪子様も、三人は本物の家族だった! その家族が消えてしまうなんてことを、早苗が望むはずがない!!」 そう、俺の両親は仲が悪かった。 直接的に喧嘩をしていたわけじゃない。 でも、互いにとって互いは無関心。 必要なこと以外、会話すらかわすことはない。 もちろん、一家団欒なんてろくすっぽ記憶にない。 俺はそんな生活がイヤで、大学から一人暮らしをするようにしたのだ。 だから…そんな俺にとって、守矢神社でのこの一ヶ月は、本当に心地よかった。 正直、これだけの絆で結ばれた三人を羨ましいと思った。 家族の暖かさっていうのを、初めて知った。 だから…暖かいこの家族がこのまま壊れてしまうなんて、許せるわけがない! 「でも…それじゃどうしろって言うのよ! 今の早苗にこれ以上私のために信仰を集めろだなんて言えないよ…! もしそんなこといったら早苗は絶対にもっと無理する! それで…それで早苗に何かあったら私は…っ!!」 膝に顔を埋めて泣き叫ぶ諏訪子様。 …それはきっとそうだ… あの早苗の様子じゃそれこそ自分の身体を一切省みずに死に物狂いで行動するだろう。 その結果は…考えたくもない。 くそ…本当にどうしようもないのか? 考えろ、俺!! どうすればいい? 一体どうすればこの家族を守る事ができる? このまま明日の祭りが流れてしまえば、きっと次は困難になる。 その間に諏訪子様に万が一の事があれば、きっと早苗は自分を責める。 責任感の強い早苗のことだ、一生自分のことを赦そうとしないだろう。 かといって、祭りを強行して早苗に何かあれば、今度こそ諏訪子様の心は壊れてしまう。 三すくみだ… このままでは、誰かを守るためには誰かを犠牲にしなくちゃいけない。 三人の誰もが悲しむこと無しに、事態を打開する方法は… そこまで考えて、ふと自分の思考に疑問を抱く。 三人…? ……あ!! 次の瞬間、俺の脳裏に、あるアイデアがイナズマのごとく走り抜けた。 いや、アイデアなんていえるものじゃない。 非現実的だ。非論理的だ。机上の空論もいいところだ。 でも…もう他に手はないし迷ってる時間もない! 俺は決意し、それを諏訪子様に告げる。 「だったら、俺が諏訪子様の為に信仰を集める! 早苗の代わりに俺が明日の祭りをやるっ!!」 「は…?」 俺の言葉に、諏訪子様は愕然と目を見開いて間抜けな声を漏らした。 そりゃあそうだろう。 自分でも何を言っているんだと思う。 空も飛べない、何一つ力も使えない、そんな俺にどうして早苗の代役が務まるというのか? だが、それでも俺は本気だ。 「諏訪子様っ! 俺に力の使い方を教えてくれ! 例え明日一日だけしか使えなくてもいい! 徹夜の特訓でもなんでもいいから、明日の祭り、それを乗り切れる為だけの方法を俺に教えてくれっ!!」 そう、早苗たち三人が動けないのなら、答えは一つしかないじゃないか。 四人目の人間が、この俺がやるしかないんだ。 諏訪子様に詰め寄る俺に、諏訪子様はしばらく魂の抜けたように固まっていたが… 「どうして、○○はそこまでしてくれるの…?」 心から不思議そうに、尋ねてきた。 はて、なんでだろう? 問われてふと自問する。 内側で暴れる感情に押し出されて勢いで言ってしまったものの、冷静に考えれば俺は相当無茶苦茶なことを言っている。 俺がやるしかないという使命感…? それは…ある。 この三人の絆が空回りしていることに対する義憤? それももちろん…ある。 だが、本当にそれだけか? 俺はこの一ヶ月の幻想郷での想い出を反芻する。 …風を操り、化け物を打ち倒す早苗の、神々しさに憧れた。 …早苗の優しい笑顔に、癒された。 …いつも一生懸命に信仰を集めようと頑張る早苗を、手伝ってあげたいと思った。 …早苗が魔女にやられるのを見て、守ってやれないのを歯がゆいと思った。 …涙を流す早苗を見て、慰めたいと思った。 …諏訪子様たちを失って早苗が悲しむ姿なんて、見たくないと思った。 そう、俺の思い出の中心には、いつも早苗がいた。 ああ…そうか。 理由なんて、簡単なことだったんだ。 今更のように気付く。 俺は、早苗が好きなんだ。 初めて早苗に助けられたその瞬間から、俺は早苗に惚れていたんだ。 諏訪子様に、俺の『理由』を告げる。 その『理由』に、諏訪子様は驚いたような、呆れたような、それでいて嬉しそうでもある、複雑な表情を浮かべていたが… 「わかった、それじゃ○○に力を授けてあげる」 ふぅと息をつくと、力強く言ってくれた。 「でも!」 急に真剣な顔になった諏訪子様が、小躍りしそうになった俺を押しとどめる。 「後戻りは…できないよ…?」 今まで諏訪子様から聞いた事がないような、冷たい、静かな、声。 「力を持つということは、それに伴って相応の危険も増えるということ。力を正しく扱えなければ、自らの力によって自滅することだって、ある。その覚悟は…あるの?」 試されている。 幻想の力を持つということの意味と、その覚悟を、俺が本当に理解しているかどうか。 俺はそう直感した。 もしここで俺が少しでもためらえば…きっと諏訪子様は俺に力を与えてはくれないだろう。 でも…たとえどんな危険があろうとも、俺は早苗を、早苗たちを守りたい! 「ああ、覚悟はついてる」 俺は瞬時に頷いた。 諏訪子様はしばらく、まっすぐな瞳で俺をじっと見続けていたが… 「わかったよ」 そういって微笑んだ。 諏訪子様に言われるままに、その前に片膝を付いて目を閉じる。 その両肩に、諏訪子様の手が置かれた。 ゴクリ、と喉が鳴るのがわかる。 これから、諏訪子様の力が俺に授けられるという。 一体、どんな儀式なんだろうか…? 眼を閉じて見えないだけに、余計気になる。 そんな俺の顔に、不意に暖かい息がかかるのを感じた。 息…? 俺が疑問に思うまもなく… 次の瞬間…俺の唇に暖かくて柔らかい何かが触れた。 え…!? 反射的に目を見開くと、すぐ目の前に瞳を閉じた諏訪子様の顔がある。 ミルクのような、甘い香りが俺の鼻をくすぐる。 …儀式はどうなったんだ…? …なんで俺は諏訪子様とキスしてるんだ…? …俺には早苗という心に決めた人が… …女の子の唇って柔らかいんだな… …なんていい香りなんだろう… 一瞬にして様々な思考が俺の頭をぐちゃぐちゃに駆け回る。 そして俺はそのまま、自分の視界が真っ白に染まっていくのを感じていた。 泳いでいる。 海? 河? まさかプールじゃないよな? 翡翠色と、黄金色に輝く光の中を、俺は泳いでいる。 ここは…どこだろう? 俺を包む、優しくて暖く、どこか懐かしいような光。 赤子が母親の腕に抱かれているような、心地よい感触。 それは、かつて早苗の風に包まれたときの感触に似ている。 でも…この光から感じるイメージは早苗じゃ…ない。 根拠はない。でもなぜかわかってしまう。 早苗よりも…もっと成熟した母性… この光は、早苗じゃない気がする。 ふと、かぐわしい香りに気付く。 これは…そうだ。 ついさっき間近で感じたばかりの…甘い香り。 その瞬間、俺は分かってしまった。 俺は今、諏訪子様の中にいるのだと。 これが神の手に抱かれるということなのだと。 視界が元に戻っていく。 気がつけば、目の前にはにかんだ諏訪子様がいた。 瞳を潤ませ、頬を染めて蕩けるような笑顔を浮かべている。 その表情を見た瞬間、ドクンと心臓が高鳴った。 やばい…なんて可愛らしさだ… 早苗への愛を誓った直後だってのに、早くも心がぐらついているのが分かる。 まさか、あの諏訪子様に… 姉のようであり、同時に妹のようでもある諏訪子様に… 動揺しまくる俺を前に、諏訪子様は表情を引き締めて高らかに告げる。 「○○、この瞬間から貴方は私の覡(かむなぎ)になりました。貴方は私の手足となって私の奇跡を代行し、信仰を集めなさい。 その代わり、私は常に貴方の行く先を導き、あらゆる傷から貴方を守り、あらゆる敵を討ち滅ぼす事を、この洩矢諏訪子の名のおいて約束しましょう」 そのお姿は、普段の気さくな諏訪子様からは想像できない、まさに神たる威容に満ちていた。 そしてその言葉に、気付く。 俺の胸の中、心の奥底に、翠と金の光が輝いていることに。 俺の心と、諏訪子様の心がつながっているのがわかる。 そして、やっと実感した。 俺は、洩矢諏訪子様、この女神様に仕える神官となったのだと。 「はい、洩矢諏訪子様。俺の命続く限り、あなたに仕えることを誓いましょう」 恭しくひざまずいて、誓いを交わす。 諏訪子様は満足げにうなずくと、胸に手を当てていたずらっぽく微笑んだ。 「うん、よろしくね○○。私のこと裏切ったら祟り殺しちゃうぞ」 その仕草がまた可愛らしくて俺は… …っといかんいかん! またぐらつくところだった。 俺は早苗ひと筋ひと筋! 両手で頬をぱしんと叩いて心を静めた。 さて、これで俺はめでたく幻想の力を得る事が出来たわけだが… しかし、俺にはもう一つやらなければいけないことが残っている。 そう、明日の祭りを俺がやると言うことを、早苗に伝えなければいけない。 きっと、早苗は反対するだろう。 自分のせいで俺を巻き込んだと、早苗は考えるだろう。 でも、そうじゃない。 俺が自分の意思で、決断したんだと言うことを。 そして…俺の早苗に対する想いも… それら全てを、早苗にぶつけないといけない。 …今更のように気付いたけど、早苗が俺の想いを受け入れてくれる保障なんてどこにもないんだった。 というか、ここまで決意して諏訪子様から力まで授かっておいて、これで早苗に振られたら俺はただの⑨だよな…? 考え始めるとどんどん不安になってくる。 俺にとって早苗は大切な女の子でも、早苗にとって俺はただの居候なのでは…? むしろ俺が一人で舞い上がってるだけじゃね…? もし断られたら…そのあと一緒に住むのも気まずいだろうし… あーダメだダメだ! どんどん悪い方向へ考えが驀進していく。 表情をすっかりネガティブフェイスに変えて身悶えしまくる俺を見かねたのか、諏訪子様が俺の背中をばしこーんと叩いた。 「だーいじょーぶっ! 早苗は絶対、○○の事が大好きだから! だから自信を持って行って来なさい!!」 そう励ましてくれる。 言葉だけじゃなく、心の中からも諏訪子様の気持ちが溢れてきて俺を勇気付けてくれる。 そうだな。 ここでウジウジしてたって前に進まない。 俺はもうすでに一世一代の決断をしたんだ。 ならばあとは一気に突き進むだけだ! 「ああ、ありがとう諏訪子様」 「どういたしまして」 その諏訪子様の笑顔を胸に、俺は決意を新たにした。 そしてその夜。 社の縁側を歩く。 澄んだ空に見事な月が輝いている。 もう早苗は起きているだろうか? 早苗の部屋の前まで来ると、障子から光が漏れていた。 「早苗、ちょっといいかな?」 すぐに反応があった。 「○○さん? はい、どうぞ」 その言葉に、障子をあけて部屋に入る。 早苗は布団に入ったまま、本を読んでいた。 こんな時までいつもの勉強か… 本当にこの娘は… 感心し、呆れもし、痛ましくも感じる。 これまでずっと、こうやって自分を追い込み続けてきたんだな。 だから…これからは俺が支えてやらないと。 早苗は、俺の顔を見るなり顔を赤らめた。 「あの…さっきはすみません…でした…」 その反応に俺も急に気恥ずかしさがこみ上げてくる。 そういえば俺は早苗をいきなり抱きしめると言う暴挙に出たんだった… 「い、いやこちらこそ…その…いきなりごめん…」 思わず視線をそらしてしまった。 自分の頬が熱くなっているのが分かる。 その様子に早苗もますます照れてしまった。 二人で顔を見合わせたままハハハと乾いた笑いをもらす。 この甘酸っぱい空気にずっと浸っていたい気持ちもあったが… …そういうわけには、いかない。 俺には早苗に伝えなければいけない大切なこと…ある意味俺の今後の命運を左右する、とっても大事なことが、ある。 俺はコホンと一つ咳払いをすると、表情を引き締めた。 「早苗、明日の祭りの事なんだけど…」 一瞬にして空気が変わったことを察したのか、早苗も真剣な表情になる。 「…はい」 早苗はどう思っているんだろう。 まだ、自分を責めているんだろうか? でも、これからは早苗にそんな思いはさせない。 「明日の祭りは、俺がやるから」 早苗を見つめて、そう言い切った。 「えっ…?」 流石に俺のこの言葉は予測していなかっただろう。 俺が何を言っているのかわからないといった様子の早苗。 しかし、やっと俺の言葉を理解してきたか、みるみるうちに悲しそうな表情になった。 「それは…無理です…。明日のお仕事は、力の使えない○○さんでは…」 俺がなにもわからないまま、勢いだけで言っていると思っているんだろう。 だが、もちろんそうじゃない。 俺は無言で早苗の言葉を遮ると、その前に掌を差し出した。 俺の意図が分からず困惑顔の早苗を前に、心の奥に意識を集中する。 俺の心の底、そこにある輝きへと手を伸ばす。 ボゥッ! 俺の掌に翡翠色の光が灯る。 魔術として何の精製も加工もされていない、むき出しのままの諏訪子様の霊力。 「どうして…?」 その輝きを目にして、愕然とした表情でかすれた声をもらす早苗。 「諏訪子様から力を授かったんだ」 早苗は俺の言葉を反芻すると、急激に険しい表情になった。 「どうして…どうしてそんな危険なことを!」 叫ぶような早苗。 だが、もう俺は怯まない。 「力が、必要だったからだよ」 俺の言葉に沈痛な表情を浮かべる早苗。 「そんな…私…私また○○さんを巻き込んで…。無関係な人なのに、こんな…こんな危ないことに…!!」 両腕で自分の胸を抱きしめる早苗。 そんな早苗に俺は… 「違うっ! 違うよ早苗っ!!」 再び、早苗の身体を抱きしめた。 本日二回目の抱擁。 腕の中でビクッと硬直する早苗。 何もかも、朝の時の再現だ。 だが…その時と決定的に違っているものがある。 それは…俺の気持ち。 あの時は、ほとんどとっさのことだった。 ただ泣いてる女の子をそのままにしておきたくないという、ただそれだけの気持ちだった。 だけど、今は違う。 今の俺には、早苗が愛しいという確かな気持ちがある。 「違うんだよ早苗。俺は巻き込まれてなんかいない。俺が、俺自身の意思でやりたいから力を授かったんだ」 一言ずつ、確かな意思を言葉に乗せて放つ。 腕の中の早苗に伝わるように。 「それに、無関係なんて悲しいな。俺は、今はこの神社の一員だと思ってる。だから、みんなの助けになりたいと思ったんだ。早苗には、迷惑だったかな…?」 これは自分でもちょっと卑怯な聞き方だとは思う。 優しい早苗が、迷惑だなんていうはずがない。 でも、まずは早苗に落ち着いて話を最後まで聞いてもらう必要がある。 果たして、早苗は慌てたような反応を見せた。 「そんな…迷惑なんかじゃないです…。でも…それでも…どうしてそこまでしてくれるんですか…?」 これもまた本日二度目の問いだ。 今日一日の、いやむしろここに来てからの俺の一ヶ月の全てが凝縮された俺の答え。 …不安は、ある。 だけど、それ以上の勇気が心の底からわきあがってくる。 俺は、抱きしめていた早苗を離すと、その肩に両手を置き、そしてその瞳を真っ直ぐに見つめ… そして、俺の中にある全ての想いを胸に、大きく息を吸って… 「それは、俺は早苗の事が好きだから」 はっきりと、大切な人に告げた。 早苗の目が見開かれる。 息を呑む音が聞こえる。 「急にこんなことを言ってごめん。迷惑ならはっきりそういってくれても構わない。 でも、俺は早苗が本当に好きだから、早苗が一人で大変なことを頑張ってるのをただ横で見ているだけなのはイヤなんだ! 俺も、早苗の隣で、早苗の力となって支えたいんだ!!」 矢継ぎ早に想いをぶつける。 早苗は俺の言葉を受けても…何も話さない。 不安が…広がってくる。 OKなのか…? それともダメなのか…? 早苗の答えは…どっちだ…? ポタリと、肩に置いた手の甲に雫を感じる。 …早苗の頬を、涙が流れている。 「…っ……ひくっ……!」 早苗の嗚咽が、もれる。 早苗が…泣いている…! 「どうして…そんなことをいうんですか…?」 その言葉が耳に届いた瞬間、俺は心が凍りつくのを感じた。 咄嗟に、早苗の身体を離す。 「あ…その…早苗……えっと…ごめんな? そうだよないきなりこんな事言われても困るだけだよなハハハ! だから早苗はなにも悪くないしイヤなら別に気にしなくていいんだはっきりそういってもられれば、うん!」 自分でも何をいっているかわからない。 それくらい頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。 ただ…自分の中にぽっかりできた空洞感だけははっきりと隠しようがなかった。 「……んです……」 早苗が涙でつまった声で何かをつぶやく。 「え…?」 耳をそばだてて聞き返す俺。 「……違うんですっ!!」 「うおっ!?」 次の瞬間、早苗が飛び込んできた。 俺の腕の中、俺の胸の中に飛び込んできた。 「私…本当はずっと…ずっと前から○○さんを…! でも…そのうちお別れしなくちゃいけないからって…そう思ってたのに…どうしてそんなこと言うんですか…! そんなこと言われちゃったら…私…わたしぃ…っ!!」 その言葉に、ハッとする。 俺の手に流れてくる涙が…暖かい。 早苗の想いが、伝わってくる。 いつのまにか、俺も涙を流していた。 「私…弱いから…きっと○○さんにいっぱい迷惑かけちゃいます…! それでも…いいんですか? 私、○○さんを頼っても…いいんですか…? ○○さんに甘えても…いいんですか…!?」 返事の代わりに、腕の中の早苗の身体を、ぎゅっと抱きしめる。 三度目の抱擁。今度は早苗も身体を強張らせなかった。 抱きしめた早苗の細い肩。 今までこんな小さな身体に、いろんなことを全て背負ってきたんだな… 俺の心の中に、改めてこの愛しい女の子を一生かけて守っていきたいという想いが生まれた。 「早苗…今まで一人でよく頑張ってきたな。でも、これからは早苗の背負ってるものを俺にも半分背負わせてくれよ…。これからは、ずっと早苗と一緒にいるから…」 早苗の髪を撫でながら、耳元で囁いてやる。 早苗はその言葉に、俺の胸に顔をうずめて… 「うっ…あぁぁ…うわあぁぁぁあんっっ!!!」 思いっきり、泣き出した。 俺はそのまま、早苗を抱きしめて撫で続ける。 二人の想いが…やっと…やっと通い合った瞬間だった。 俺の、今までで最も長く、最も大切な一日が、終わる。 こうして、俺と早苗は晴れて恋人同士になることができたのだった。 ───────── 祭りは神奈子様と諏訪子様の助けもあって何とか無事に終わり… それから、俺と早苗の修行の日々が始まった。 信仰集めの合間に、俺は諏訪子様に、早苗は神奈子様に稽古をつけてもらう。 白狼天狗の兵士に、剣の戦い方も教わった。 まあ、正直修行の時の諏訪子様は鬼だった… あんな愛らしいお姿であの鬼畜な弾幕… 1枚目のスペルカードすら…ぐふっ。 そして、さらに一ヶ月ほどたったある日…とうとうその日がやってきた。 早苗たちといつもの朝を過ごしていると、居間に警報が鳴り響く。 これは…侵入感知結界に反応アリだ! 社を警備している妖精や式の毛玉たちが次々と蹴散らされていくのがわかる。 侵入方向を眺めれば、箒に跨った少女が凄まじいスピードでこちらへと接近してくるのが見えた。 間違いない、白黒の魔女、霧雨魔理沙だ。 とうとうおいでなすったな…! 自分の心が奮い立っていくのを感じる。 部屋の隅に立てかけてある木刀を手に取り、軽く振ってみる。 思えば、この二ヶ月は本当に色々な事があった。 …幻想郷に迷い込み、化け物にやられそうになって早苗に助けられたこと… …早苗たちとの生活を通して、この幻想郷で暮らしたいと思うようになったこと… …諏訪子様の使徒になり、力を授けられたこと… …早苗と心を通わせる事が出来たこと… …早苗と二人で必死になって信仰を集め、力をつけるために修行をしたこと… たった二ヶ月の時間なのに、今までの人生全ての中で最も充実した時間だった。 これは、俺たちが成長してきた集大成を出し尽くすチャンスだ。 …それに何より、魔女には早苗が大きな借りがある。 今まで好き放題やってくれた分、まとめて三倍返しで叩き返してやる。 早苗の方を見れば、少し緊張したような、硬い表情をしていた。 気負いすぎているのだろうか、早苗の悪いクセだ。 「早苗、大丈夫だ」 俺は早苗の緊張をほぐそうと話しかけた。 「今度こそ、俺たちの神社を荒らす魔女を懲らしめてやろうぜ。この一ヶ月、一緒に修行してきた俺たちならどんな相手だって負けはしないだろ?」 俺の問いかけに早苗は微笑み、はい!と大きく頷いてくれた。 よしっ、これなら大丈夫だ! 俺は改めて気合を入れなおすと、早苗と共に空へと舞い上がった。 立ちふさがるように浮かぶ俺たちの前で、魔女は停止した。 お互い十メートルほどの距離をはさんでにらみ合う。 こうやって近くから見ると、改めて化け物ぶりが分かる。 小さな体から、暴風のような魔力があふれ出しているのが見える。 …だが、俺も以前の『化け物』相手に何も出来なかった俺とは違う。 俺たちが二人で積み重ねてきたものを出せれば、遅れをとることはないはずだ。 「参拝にしては乱暴ですね。神前では静粛にしてください」 「残念ながら私は無神論者なんだ。今日はまた食い物を借りに来ただけだぜ」 早苗の威圧にも動じず、軽く流す魔女。 「そうですか…。参拝客でないのならば実力でお引取り願うしかなさそうね」 「ほう、この間私にこてんぱんにやられた割には随分な言いようじゃないか。やめとけやめとけ、無駄な怪我をすることになるぜ」 魔女はあくまでも余裕の表情を崩さない。 自分が負けるはずがないと確信しているのだろう。 「私は以前の私とは違います。この間と同じようにはいきません」 早苗の徹底抗戦の意思に、魔女は笑みを深くした。 「へえ…、まあ結果は見えているが、売られた喧嘩を買わなけりゃ女が廃るってもんだな。いいぜ、やってやるさ」 そういって、構える魔女。 魔女の全身から溢れる魔力が、周囲に渦巻いていく。 こちらも同様にそれぞれの武器を構え、霊力を練りはじめた。 「今日という今日こそは、神聖な社を散々荒らしまわってくれた貴女に神罰を与えます!」 「やってみな、やれるもんならなっ!」 その応酬が、合図だった。 早苗と魔理沙が神風弾と魔力弾を同時に放つのを皮切りに、弾幕決闘が始まった。 「てえぃっ!!」 ひゅっ! 渾身の気合を込めて振り下ろした木刀がむなしく空を切る。 くそっ、今のを避けるか…!? 内心歯噛みする俺。 今のは早苗の弾幕を回避した瞬間に出来た隙を狙った一撃だった。 我ながら完璧なタイミングの連携だと思ったのに、当たる直前に箒から魔力の噴射炎をほとばしらせたアクロバティックな動きで避けられてしまった。 魔女はその圧倒的パワーもそうだが、反則的な機動力も脅威だ。 二人がかりで猛攻をかけているものの、未だに一撃とて捉えきれない。 最も、決め手を欠くのは魔女のほうも同じだった。 隙を晒すのを嫌ってか、大技を撃つ事が出来ずに散発的な攻撃に終始している。 そのため、彼女の最大の売りである火力の高さを十分に発揮する事が出来ないでいた。 結果、戦況は拮抗し、持久戦へともつれ込んだ。 そんな状態がどれくらい続いただろうか。 膠着状態に先に焦れたのは魔女の方だった。 俺の攻撃をかわすと同時に大きく距離をとり、こちらへ振り返って両手を前に構えた。 その手には、膨大な魔力を漲らせた八卦炉が握られている。 「ちょろちょろと鬱陶しいヤツだ! こいつで吹き飛ばしてやるぜ!」 八卦炉に魔力が収束していき、虹色の光が灯る。 こいつは…この間早苗がやられた魔砲だ! 俺のほうを先に撃ち落すつもりか。 あの恐ろしい大火力だ、直撃を受ければ一溜まりもない。 しかし、いくら俺とてこんな真正面から撃たれれば避けるのはたやす… 回避運動を取ろうとして、ハッと気付いた。 いつの間にか、早苗が射線上に捉えられている! 俺が避ければ、早苗が直撃を受けてしまう。 …なんてヤツだ。 俺たち二人がかりの攻撃を受けながら、俺たちを誘導してたってのか。 「ははッ、かかったな! 王手飛車取りってヤツだぜ!!」 魔女が勝ち誇って叫ぶ。 この間合いではもはや剣は間に合わない。 避けることも出来ない。 確かに、お手上げだ。 「いくぜ! 恋符『マスター…』!」 八卦炉の光が眩しさを増し、今まさに放たれんとする。 …だがな魔女、かかったのはお前の方だ。 俺はこの瞬間をずっと待っていた! 胸ポケットに入れていた”それ”を引き抜く。 俺の心の奥、諏訪子様と繋がっているのを感じる。 たった一枚の小さなカード、これがその証だ。 これが俺の唯一、文字通りの切り札だ! - 神具『洩矢の鉄の輪』 - 高らかにスペルカードを宣言し、諏訪子様から借り受けた神器を喚び出して魔女へと投げ放つ。 それは諏訪子様のと比べれば悲しいほどに弱々しかったが、今の俺にはこれで十分! キィン!! 俺がまさかスペルカードを使うとは、予想だにしていなかっただろう。 完全に不意を突かれた魔女の八卦炉に直撃し、弾き飛ばした。 「なっ、なにッ!?」 驚愕の声をあげる魔女。 切り札を失い、流石のヤツといえど狼狽を隠せない。 今だッ!! 木刀を構え、突っ込む。 魔女は慌てて箒を構えるが、もう遅い! この間合いなら、逃がさない! 俺は勝利を確信し、ヤツの顔を見ると…ニヤリと笑っていた。 え…? イヤな予感が背筋を走り… - 光符『ルミネスストライク』 - ドゥン!! 「かはっ!」 大地に叩きつけられ、肺から空気が絞り出される。 魔女の箒から撃ち出された巨大な星弾に、咄嗟にガードした木刀を砕かれ、吹き飛ばされた。 …くそっ、詰めが甘かった… 魔砲を封じただけで安心したのは早計だったか。 自分の油断が悔やまれる。 だが…それでも最低限の仕事だけは果たしたぜ。 仕上げは任せた、頼んだぞ早苗! - 秘法『九字刺し』 - 早苗のスペルカードがすかさず発動し、スペルの反動で完全に動きを止めた魔女を霊気の檻に閉じ込めた。 「くっ…!」 魔女が焦った様子で魔力弾を放ち、強引に檻を破ろうとするが…無駄だ、魔砲のないお前にはもはやこいつは壊せない! そして、続いて放たれた神風弾が渦を巻いて身動きの取れない魔女に襲い掛かる! ヤツのパワーも、スピードも奪い去った。 今度こそ、今度こそ絶対にっ! 「行けえぇぇぇっ!!」 俺の祈るような叫びと共に、神風弾が魔女に迫り… - 彗星『ブレイジングスター』 - 魔女を包む暴力的な光によって吹き散らされた。 自身がそのまま光の奔流と化すと、檻を突き破って飛び出していく。 ……マジかよ…… ここまで追い込んで…まだこんな手を隠し持っていたっていうのか… 脱力感に俺はがっくりと膝を付いた。 早苗もまた、失望と落胆の表情で動けずにいる。 「…驚いたぜ。まさか私が奥の手を出させられるとはな」 スペルを解除した魔女が、早苗の前に舞い戻る。 「お前達も中々頑張ったが…勝負は私の勝ちだ」 魔女も肩で息をしているものの、その突き出した手には魔力の光が灯っている。 一方の早苗はもはや先ほどのスペルで霊力を完全に使い切ったか、動けない。 くそっ、あれだけ修行して、ベストも尽くしたというのに、勝てないなんて… 絶望感に包まれる。 だが、これが現実だ。 木刀を砕かれ、唯一のスペルカードも既に使い切った俺には、もはや対抗する手なんて… 膝を付いたまま、空を眺めて… …あった。 まだ一つだけ最後の手が。 今の俺たちが勝利するための、唯一の手段が! 「どっせえぇぇぃっ!!」 残る力全てを振り絞り、空へ飛び出す。 全速力で魔女へと突っ込み、箒へとしがみついた。 「!?」 「○○さん!?」 思わぬ乱入に驚きの声を上げる早苗と魔女。 俺は構わず、そのまま魔女の箒を押して飛び続ける。 「お前…何を…? 悪あがきなら…」 戸惑いの声を上げる魔女だが、そこでやっと気付いたようだ。 そう、俺たちの向かう先には、魔女の彗星に吹き散らされ、明後日の方向へ消え行く早苗の神風弾が!! 「なっ、お前まさか!?」 魔女は慌てて方向を変えようとするが、そうはさせない。 箒をがっしり抱え込み、推力を押し殺す。 「これが、本当のカミカゼだ!!」 ヤケクソで笑いながら叫ぶ。 「ま、待て! 落ち着け! いのちをだいじにーーーッ!!!」 ピチューン×2 ………… 「……っ! …さんっ!」 声が聞こえる。 いい香りがする。 ああ、そうだ…この香りはいつもの…早苗の香り…だ。 眼を開けると、すぐ近くに早苗の顔があった。 頭の下に柔らかいものを感じる。 「良かった…○○さん…」 よう、と手を上げようとして痛みが走る。 気付けば手だけじゃなくて体中が痛い。 流石に無理をしすぎたかー… 痛みの中ぼんやりと思う。 「はは…俺たち勝ったぜ、さな…うぷっ!」 そう言おうとしたとき、早苗に思いっきり抱きしめられた。 普段なら大喜びするところだが、全身の傷に響く響く。 ってかちょっと強すぎですよ…いてててて!! ちょっと緩めて…と言おうとして、早苗の体が震えているのに気付く。 「どうしてこんな無茶なことしたんですか…! 私、○○さんが死んじゃったかもって…!!」 見れば、早苗の瞳は涙にぬれていた。 「私…あなたがいなくなってしまったら、もう生きていけません…。ダメになってしまったんです…! だから…だからっ…ううぅぅ…」 俺の頭を抱いて嗚咽を漏らす早苗。 早苗と触れ合っている所から早苗の想いが伝わってくる。 俺はその姿に、勝利の喜びよりもむしろ愛しさとすまなさで胸が一杯になった。 痛む手をなんとか動かして、早苗の背中を撫でてやる。 「ごめんな早苗…。俺は早苗、誰よりも大切な女の子の為にも絶対勝ちたいと思ったんだ。でも、これじゃダメなんだな。結局早苗を泣かせただけだった。 だから、俺もっと強くなれるように頑張るよ。俺も早苗も、どちらも傷つかずにすむように」 涙をぬぐってやると、早苗も微笑んでくれた。 「はい…私ももっと強くなります…、○○さんを守れるように」 抱きしめあって、早苗の暖かさと柔らかさを堪能する。 心が安らぎ、ずっとこうしていたくなる。 「おお暑いぜ暑いぜ。ここは夏に戻ったのかね」 そんな俺たちに、茶化すような声がかけられる。 …そういえばすっかり存在を忘れていた。 俺と同じように全身ボロボロになった魔女が箒を引きずって歩いてくる。 思わず身構える俺たちに魔女は苦笑して、手をヒラヒラと振った。 「あーよせよせ、もうやるつもりはないさ。今日は私の負けだ。おとなしく帰るぜ」 その言葉にホッと安心する。 魔女はそんな俺たちを尻目に出口の方へと歩いていき、と思ったら鳥居のところで立ち止まった。 「そういえば、言い忘れていたぜ」 出口のほうを向いたまま、言葉を投げかけてくる。 「正直言って今まで私は、お前達は所詮は神の腰巾着だと見くびっていたよ。だが、そうじゃなかったんだな。悪かったな、謝るぜ」 驚きに言葉を失う俺たち。 あの倣岸不遜な魔女からこんな言葉がでるなんて。 「だが、慢心するなよ。私は借りはかならず返す女なんだ。次にやるときに私をがっかりさせてくれるなよ、○○、早苗?」 魔女は振り返ると、ニコリと青空のようなさわやかな笑顔を向けてきた。 それを見て、魔女…魔理沙が多くの人間や妖怪に好かれる理由が少し分かった気がした。 「それじゃ、またなっ!」 魔理沙が麓の方へと去っていく。 『あ~私のために魔砲に飛び込んでくれるような男はいないもんかね~』なんて言ってるが…その愛情はどうなんだ? まあでも…俺も早苗のためなら火の中水の中魔砲の中飛び込むな、うん。 やっぱ人のこといえないな。 それだけ惚れてしまったんだ、当然当然。 …でも、もし魔砲に飛び込むとしたら、その時は真正面から受け止めてやる。 捨て身じゃ早苗は守れない。今日のことでよく分かった。 そのためにも、早苗と二人でもっともっと強くならないとな。 「よ…っと…」 早苗の手を借りて起き上がる。 体のあちこちは相変わらず痛いが大きなケガはないようだ。 これならすぐに治りそうだな。 「早苗、○○、成長したわね」 「いやー二人ともお疲れ! いい戦いだったよ!」 社の方から神奈子様と諏訪子様がやってくる。 「早苗、貴方はこの一ヶ月で本当に強くなったわね。早苗が風祝として私たちに仕えてくれることを本当に誇りに思うわ」 俺たちの前までくると、神奈子様はそう言って早苗を抱きしめた。 「神奈子さ…ま…、ありがとう…ございます…」 早苗は感極まって、嬉し涙に言葉を詰まらせる。 二人はそのまましばらく抱き合っていた。 いやー実に感動的な光景だ。 その光景を眺めていると、くいくいと裾を引っ張られた。 「神奈子がうらやましい?」 下を向けば、諏訪子様がニヤニヤとして俺の顔を見上げている。 …まあ、確かにちょっとは。 でもまあいいんだ。俺はいつでもできることだし。 そうやって惚気る俺に、諏訪子様はうわーなんだこいつという真っ白い視線で応えてくれた。 …でも、そうだ。俺も諏訪子様にちゃんと言わなくちゃいけない。 俺は諏訪子様の方に向き直って頭を下げた。 「諏訪子様、ありがとう。諏訪子様のおかげで俺はここまで強くなれた」 それに、諏訪子様から授かったスペルカードがなかったら魔砲を封じることも出来なかったしな。 「○○…」 諏訪子様は急に真面目になった俺のその言葉に少し驚いた様子だったが、すぐに満面の笑みを浮かべた。 「嬉しいこといってくれるわね。それでこそ私の覡として相応しいよ!」 諏訪子様が勢いよく飛びついてくる。 俺も諏訪子様を抱きとめて… グキ イヤな音が…した。 その音の発生源は俺の腰で…そこから背骨を通って全身にイナズマががg そうだよね、二回も地面にモロに叩きつけられたもんね。 腰にダメージいっててもおかしくないですよね、わかります。 「この特別サービスのスペシャル神徳で傷の回復力も三倍に! …あれ? ○○?」 ゆっくりと、体が後ろに倒れていく。 のけぞって見える空は憎たらしいほど爽やかだった。 「ちょ、ちょっと○○!!」 「○○さんっ!? しっかり!!」 「早苗、諏訪子、早く布団に運んで!!」 …そうして、俺はぎっくり腰で全治二週間になったのだった。 そして時は過ぎ… ざっ、ざっ、ざっ… 雪を踏みしめて境内を歩く。 今日、俺は決めなくてはいけない。 前に博麗神社を訪れてから三ヶ月、結界の修復が完了したのだ。 「で、どうするのかしら? 帰るの? それとも残るの?」 博麗の巫女が問いかけてくる。 俺のこれからの人生を決める重要な決断の時だ。 …だが、俺の答えはもうすでに決まっている。 後ろを振り返って共に来てくれた人たちを見渡す。 早苗と目が合うと、にっこりと微笑んでくれた。 諏訪子様と目が合うと、はやく言えとばかりに大きく手を振ってくれた。 神奈子様と目が合うと、大きく頷いてくれた。 もう、何も迷うことはない。 「俺は、ここに残る。早苗達と一緒に、幻想郷で生きる」 俺はきっぱりと、自らの出した答えを告げた。 「本当にいいのね? 後で気が変わったから帰せと言われてもそれは無理よ?」 念を押すように尋ねてくる巫女。 それでも、俺の答えが変わることは決してない。 「ああ、構わない」 俺の答えに、巫女はふんと鼻を鳴らした。 「物好きもいるものね。まあ、好きにしなさい」 そういってきびすを返し、社へと戻っていく。 俺はそれを見届けて、振り返った。 そこには、俺の大切な人達がいる。 「さあ、帰ろう早苗。俺たちの守矢神社に!」 そういって手を差し出す。 「はい、○○さん!」 早苗は俺の手をしっかりと握って、満開の笑顔を浮かべてくれた。 二人で手をつなぎ、空へと浮き上がる。 見渡す限りの空と大地、体全体に感じる風はかつて感じ、俺が畏れた本当の自然だ。 そう、これから、俺の新しい人生が始まる。 早苗と、諏訪子様と、神奈子様と、四人で暮らしていく生活が。 この、俺が神々に恋した幻想郷で! 新ろだ202,203,206 ───────────────────────────────────────────────────────────
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それでも、人生にイエスという。 ◆m0F7F6ynuE 私は、遠く去っていく背中を見送る。 もしかしたら、彼女はただ生きることを諦めただけなのかも知れない。 それでも信じたかった。 生きてまた帰ってくると、信じたかった。 数刻前、放送直後- 古明地さとりと私、上白沢慧音は、二回目になる放送を黙って聞いていた。 ルーミアは、残り少なくなった『お弁当』をちびちびつまみながら。 そして、東風谷早苗。彼女は地面に座り込み、カタカタ震えながら、拳を握りしめて、ただ何かに耐えていた。 何も言葉は交わしていない、でも、その原因はわかる。 『八坂神奈子』 彼女の仕える、守矢の神。その名が、今の放送で呼ばれた。その意味するところは言うまでもない。 道中、何度もその八坂の神と、もう一柱の洩矢の神のことを早苗から聞かされた。 「神奈子様と諏訪子様がいれば、大丈夫。」 そう言い切った時の彼女の眼は、この酷い状況の中でも輝いていた。 彼女の希望そのものだった、強大すぎる風神。その、死。希望を一つ失った彼女の心境は、計り知れない。 私だって、ショックを受けていないわけじゃない。よく里に顔を出していた妖夢と、人形劇を披露してくれた魔法使いのアリス。恵みをもたらし人々から厚い信仰を受けていた豊穣の神、穣子様。皆の笑顔が浮かんで消えた。 本当に、みんな死んでしまったのか?いくらだって疑いたい、否定したい。夢ならさめてほしい。 でもそうやって現実逃避し始めるたびに、パチュリーの死に顔が脳裏によみがえってくる。生温かい血液の感触を嫌でも思い出す。 誰も何も言わない、早苗の堪えたすすり泣きの声だけが響く空間で、私の思考は同じところをぐるぐる廻る。 そのうち、しびれを切らしたらしいルーミアが、骨だけになった「お弁当」にごちそうさまを告げた後、 「まだここにいるの?行かないのー?」と言い始めた。 早苗のことを考えると、もう少し待ってあげたかったが、最初に動いたのは意外にも早苗だった。 「もう、いいのか?」 「はい、すみませんでした…もう大丈夫です。」 早苗は気丈にも笑って言った。 すると、さとりが辺りを警戒しながら、荷物をまとめ始めた。 「なら、動きましょう。泣くのを続けるにしても、こんなところにいつまでもいたら、誰かの的にされかねません。」 少し冷たい言い方だが、正論だ。今の私たちには、襲撃されても身を守る術がほとんどなかった。制限解除装置はあったが、まだ使えないのかどこを押しても反応しない。今襲われたら冗談でなく全滅しかねない。 私たちは十分に警戒しながら、博麗神社へと急いだ。 博麗神社の大階段は、長い。 普段なら皆空を飛んで神社へ行くため、私以外の三人は徒歩で行くのが初めてだったそうだ。 私だって、里の人間を案内する時以外は歩いてなんて行く気がしない。それくらい長い。これだから人が余計に近寄らないのだ。 そんなことを考えていたら、ルーミアがいきなり走り出した。なんだなんだと私たちは慌てて階段を駆け上ると、ルーミアが何かで遊んでいた。 「なんだこれ!目玉ついてるー。食べられるかなぁ?」 きゃはは、と笑うルーミアが持っていたのは、よくわからない目玉のついた、汚れた黄色い帽子。はて、この帽子はどこかで… 「それ、まさか…諏訪子様!!!!」 「すわこ?この帽子がすわこなの?」 「貸してっ!!」 悲鳴を通り越し、もはや絶叫に近い声をあげ、早苗がルーミアから帽子を奪いとった。そうだ、この特徴的な帽子の持ち主は、先の守矢の神のうちのもう一柱、洩矢諏訪子様だ。 帽子は赤く汚れていた。見れば、階段も赤い液体で濡れている。これは…血なのだろうか?なんだか違和感のある血だ、うまく言えないけれど…。 「諏訪子様!!!いらっしゃるのですか!?諏訪子様!!!!!」 早苗が完全に取り乱し、辺りかまわず叫び出した。まずい、神社に誰かいたら、これじゃいい的だ!。 「早苗さん、落ち着いて。その洩矢の神の名前は、さっきの放送になかったでしょう?」 「早苗、まず神社に行こう。もしかしたら神社にいるかもしれないだろう。」 さとりと二人がかりで早苗をなだめるが、早苗は私たちの手を振り払って、先に階段を駆け上がってしまった。 「一人じゃだめです、早苗さん!」 「クソっ!ルーミア、早く来いっ!!」 「はぁーい。」 神社に着くと、早苗が境内でへたりこんでいた。 「…出でよ、『スカイサーペント』…」 早苗は、震える手で二匹の蛇を召喚したが、その蛇も少し空中にとどまった後、何もせずかき消えてしまった。 私は早苗に駆け寄り、いつでも弾幕を撃てるように準備し襲撃に備えたが、早苗が「大丈夫です…」と、私の服を引っ張った。 「神奈子様の蛇が、全く反応しませんでした…この付近には私たち以外誰もいません…諏訪子様も…いません…。」 そう言い終えたあと、力を使い果たしたのか、早苗の体が崩れた。慌てて早苗の体を支えたが、顔色が悪い。 遅れてさとりとルーミアがやってきた。私はさとりに、他に人はいないらしいこと、先に社務所の中に行って、何か食べられるものと布団がないか探してきてほしいことを伝えた。 さとりはすぐに状況を理解してくれ、社務所へ急ぐ。 私は早苗を後ろに背負い、ルーミアに見張りを頼んで、早苗の負担にならないようゆっくりとさとりの後を追った。 博麗神社、社務所。ここは霊夢の住居も兼ねている。いつも縁側で茶を飲んでいる呑気な巫女の姿は、今はここにない。 霊夢がいつも使っていたらしい布団に、早苗を寝かせた。 食料の類は全く残っていなかった、とさとりが申し訳なさそうに言う。おそらく主催者が全て片付けてしまったのだろう、気にするなとさとりに声をかけ、視線を再び早苗に戻す。 体が熱い、おそらく熱が出ている。濡れた手ぬぐいで汗をぬぐってやっているのだが、あまり効果がないようだ。 「少し前から体調を崩していたみたいですし、立て続けにショックな事があって、疲れてしまったのでしょうね…。」 「あぁ、あまりこの子は心が強い方ではない…むしろ今まで良く頑張ったさ…」 しばらく早苗の様子を見ていたが、熟睡し始めたようで、規則正しい寝息が聞こえてきた。 今なら、尋ねても大丈夫だろう。 「そういえば、確かめておきたいことがあった。」 「何でしょう、慧音さん。」 「言わない方がよいんだろうと思って言わなかったが、ね。『火焔猫燐』殿。」 さとりの顔をじっと見つめ、問いかける。 私は、幻想郷の歴史のほぼすべてを知っている。無論、地底へ向かった一部の妖怪たちの経緯も知っている。 私の記憶が正しければ、この妖怪の名は『燐』ではなく… 「…ご存じでしたか。」 「地霊殿の主、古明地さとり殿…であってるのかな?」 「その通りです。…偽って申し訳ありません。」 「いや…しかし、何故?」 「さとりを…」 さとりは一瞬だけ寂しそうな顔を見せ、しかしすぐに無表情に戻り、 「さとりという妖怪をご存知なら、おわかりでしょう。このゲームの中で嫌われ者というのは、それだけでハンディです。…正直、怖かったのです。」 「なるほどね…」 「大丈夫ですよ。今は能力の制限がかかっているせいで、かなり集中しないと読めませんし、読めてもぼんやりとしかわかりません。」 さとりがフォローを入れるが、私はおそらくそうだろうと予測が出来ていた。実際、私も何度か自分の歴史を食べて姿を隠そうと試みたが、全く力を使えなかったのだ。 しばらくして、さとりが立ちあがった。 「…少し、ルーミアの様子を見てきます。…あの子の怪我の様子が気になりますし。」 ケーキあげたら喜ぶかしら、と自分のスキマ袋からケーキを少し取り出して、さとりは外へ出て行った。 それからまたしばらく経った頃、 「…ここは。」 小さく声が聞こえた。 「早苗?気がついたのか。」 体を起こそうとする早苗をやんわりと抑える。少しぼんやりとしながらも、意識はちゃんとしているようだった。 「ここは博麗神社の社務所だ。まだ熱があるんだから、あんまり動くなよ。」 「どれぐらい経ちましたか。」 早苗は、はっきりとした声でたずねる。 「えっと、半刻も経っていないはずだが。」 「そうですか…わかりました。」 ぐっと、また早苗が身を起こす。 「おい、大丈夫なのか?」 私が心配するのをよそに、早苗はしっかりを私を見据えて、言った。 「慧音さん、お話があります。」 「二柱を探しに行く!?」 あの後、外へ出たさとりを呼び戻し(ルーミアはケーキを食べるのに夢中で呼んでも来なかった)、さとりと二人で早苗の話を聞いた。 曰く、早苗はこのまま博麗神社には留まらず、二柱を探しに出るという。 「そうです。血はまだ固まっていませんでした。まだ諏訪子様はこの近くにいらっしゃるはずです、まず諏訪子様を探します。」 「おい待て、無茶を言うな。まだお前は熱が下がっていないんだぞ。顔色もまだ悪い。」 「そんな状態で、一人で行かせるわけにはいきません。せめて体力が戻ってからにしてはどうですか。」 まだ少しフラフラしている早苗を、私たちは必死に止めた。だが、早苗は聞く耳を持たない。 「いえ、こうしているうちにも、諏訪子様は苦しんでいるのかもしれないのです。それに…神奈子様を探して…神奈子様をこの目で見ないと。」 言葉を絞り出すように、早苗は続けた。 「先ほど、神奈子様の蛇を呼びましたが、あれが私に遺された最後の力だったようです。 本当に神奈子様が…黄泉路の向こうへと…逝って…しまわれたのかどうか……。」 震える手を押さえて、うつむいていた顔をしっかりと上げ、言い切った。 「私は、それを確かめなければならないのです。それが、風祝たる私の役目です。」 「それでも、倒れた人間をそのまま放りだすことなんて…!」 思わず、私は早苗の方に身を乗り出したが、さとりが腕を伸ばし、私を制した。 さとりは、じっと早苗を見据え、 「…銃は今、ありません。制限解除装置も使えない。それでも、ですか。」 「はい。」 「最悪、死にますよ。それでも?」 「はい。」 さとりは、遠慮なく早苗に問いかける。早苗も、迷わず答える。 「立ち止まれないんです、私は。確かに死ぬかもしれません。それでも、やらなきゃいけないことがある。 私はこの幻想郷に来た時から、神奈子様と諏訪子様、二柱と共にあることを選んだんです。そこから逃げたしたところで、私には何もない。 それこそが私の死なんです。たとえ結果が最悪でも、私は、私だけは、そこから目をそらすことは許されないんです。」 さとりは、早苗の訴えを、黙って聞いていた。そして、私に向き直り、 「…慧音さん、早苗さんに何か役に立つものを探してあげましょう。」 「お、おい!」 説得するんじゃないのか!?さとりに何か言おうとしたら、さとりが私を制するように、言った。 「もう…彼女の心は、折れません。」 結局、私たちは早苗に、台所にあった包丁を3本あったうち、1本渡した。そして3人の荷物を整理し、私の持っていた魔理沙の箒と、さとりが持っていた上海人形を早苗に渡した。 早苗の荷物の中には、妙な行燈があった。あまり使い道もないので、これは神社に置いていくことにした。 早苗が出発する寸前、神社の裏でがさごそと何かをしていたルーミアが、一緒に行くと言い出した。曰く「ここにずっといるの、つまんない。」 若干の不安はあったが、ルーミアは銃を持っている。残っていたさとりのケーキを全て渡して、早苗を守ること、早苗を食べないことを約束させた。さとりのケーキがいたくお気に召したらしい、ケーキくれるならまぁいっか、と了承してくれた。 そして早苗は、諏訪子様と神奈子様を見つけたら、ここに戻ってくること。それと、道すがら協力してくれそうな人物に遭遇したら、ここの場所を教えることを約束してくれた。 そして時間は冒頭に戻る- 「なぁ、さとり。これで、よかったんだろうか。」 並んで、早苗を見送るさとりに声をかける。 「私たちは、早苗たちを死においやったのでは、ないのだろうか…無理にでも止めるべきだったんじゃ…」 「いえ、それでも彼女は行ってしまったと思います。」 「そうだろうか…。」 悩む私に、さとりが悲しそうに言う。 「彼女の中を、少しだけ見せてもらいました…やはりほとんどわからなかったんですけど、ひとつだけ、わかったことがあります。 …彼女の心象風景…心に広がる世界は、無限に広がる空と大地。一点の曇りもなく、草原が風に揺れる素敵な世界。 しかし、それだけしかないのです。どこまでいっても空と土。彼女を彩るものは、他に何も、ないんです。 だから、ここで彼女を止めることこそが、彼女を殺すこと、だったかもしれません。」 きっと、これでよかったんです。 さとりは、小さくそう言った。 わかったよ、もう何も言わない。 それならば、必ず。 必ずもう一度、ここに帰ってくるんだ。 いくらだって待っていてやる。最後の、最後。すべてが終わる瞬間まで。 お願いだから、生きるため選んだ道で、死ぬな。たとえお前にもう何も残らなくても、お前の心の中が荒野になってしまっても… 一緒に生き残って、私たちが、お前の心に花を植えてやる。 だから、死ぬな。 帰っておいで、早苗。 【G-4 博麗神社 一日目 真昼】 【上白沢慧音】 [状態]疲労(小) [装備]包丁 [道具]支給品一式×2 [基本行動方針]対主催、脱出 [思考・状況]1.さとりと共に、博麗神社で脱出に協力してくれる人妖を待つ 2.1が失敗した場合には永遠亭に向かい、情報や道具を集める しかし、出来る限り神社で早苗を待ちたいので、博麗神社での待ち合わせが完全に不可能になった場合のみ動く 3.主催者の思惑通りには動かない [備考] ※さとりが早苗とルーミアに名前を偽っていることを知っています 【古明地さとり】 [状態]:健康 [装備]:包丁 [道具]:基本支給品、にとりの工具箱 [思考・状況] 基本行動方針 殺し合いには乗らない 1.慧音と一緒に博麗神社で脱出に協力してくれる人妖を待つ。ただし自分に都合のいい人妖をできるだけ選びたい。 2.空、燐、こいしと出合ったらどうしよう? また、こいしには過去のことを謝罪したい [備考] ※ルールをあまりよく聞いていません(早苗や慧音達からの又聞きです) ※主催者(八意永琳)の能力を『幻想郷の生物を作り出し、能力を与える程度の能力』ではないかと思い込んでいます ※主催者(八意永琳)に違和感を覚えています ※主催者(八意永琳)と声の男に恐怖を覚えています ※森近霖之助を主催者側の人間ではないかと疑っています 博麗神社、大階段。 慧音たちと別れた早苗とルーミアは、おそるおそる魔理沙の箒にまたがった。 着ているものも魔理沙の服であるので、なんとなく気恥ずかしさを覚えながらも、箒に二人でまたがりながら、空を飛ぶイメージを頭に描いた。 刹那、ふわっと体が浮き上がる。これなら普段どおりに飛べそうだ。 階段に沿って滑るように飛ぶ。 まずは諏訪子様を探さなきゃ。森の中はさすがにスピードを出して飛ぶことはできないだろうけれど、歩くよりは体力を取られないはず。 早苗はそう考え、ルーミアにも協力を求めた。 「ねぇ、ルーミア。探している方がいるの、手伝ってくれますか?」 「んー、お手伝いの約束したしね。楽しそうだし、いいよ!」 「ありがとう。貴女と同じぐらいの背丈の、金髪の女の神様を探しているの。紫色のワンピースを着ているのよ。」 「わかった!いたら早苗に言えばいいね?」 「はい、頼みますね。」 わははは、とルーミアは楽しそうに笑う。 「あのね、早苗。あとで戻りたいところがあるんだ!道を教えるから、そこ寄ってー!」 「いいですよ、諏訪子様を見つけたあとでよければ。」 「うん。えへへ、気になるところがあるの。見に行きたいんだ。」 「あら、何ですか?」 「秘密!」 くすくすとルーミアが笑う。 早苗は、そんなルーミアを見て、ここが殺し合いの場であることを一瞬疑いそうになっていた。 でも、もし。 諏訪子様にお会いすることが叶わなかったら。 諏訪子様と神奈子様が…本当に死んでしまっていたら。 その時は、きっと私はお二方に殉ずるのだろう。 どこまでもついていくと、元の世界を捨てた時、誓ったのだから。 早苗は、ある種の確信を持って、そう考えていた。 ごめんなさい、慧音さん、燐さん。 私は、そちらに帰れないかもしれません。 でも…最後の最後まで、あがいてみようと思います。 「神社にも後で戻りたいなぁ。アレどうなるかな、えへへっ!!」 ルーミアの独り言は、早苗には聞こえなかった。 【G-4 博麗神社大階段 一日目 真昼】 【東風谷早苗】 [状態]重度の風邪、精神的疲労 [装備]博麗霊夢のお払い棒、霧雨魔理沙の衣服、包丁、魔理沙の箒 [道具]支給品一式、制限解除装置(現在使用不可)、魔理沙の家の布団とタオル、東風谷早苗の衣服(びしょ濡れ)、上海人形、諏訪子の帽子 [思考・状況]1.まだ近くにいると思われる諏訪子を探す 2.神奈子の行方を探す 3.信用できる人妖に出会ったら、慧音たちのことを伝えて協力してもらう 4.諏訪子も神奈子も助からなかったら、自決も辞さない。ただしそれは最後の選択肢。 [備考] ※古明地さとりの名前を火焔猫燐だと勘違いしています 【ルーミア】 [状態]:懐中電灯に若干のトラウマあり、裂傷多数、肩に切り傷(さとりにより、応急手当て済み) [装備]:リボルバー式拳銃【S W コンバットマグナム】6/6(装弾された弾は実弾4発ダミー2発) [道具]:基本支給品(懐中電灯を紛失) .357マグナム弾残り6発、咲夜のケーキ(残り1つ) 不明アイテム0~1 [思考・状況]食べられる人類(場合によっては妖怪)を探す 1.ケーキをもらってしまったので、とりあえず早苗と一緒に行く 2.早苗の用事が終わったら、最初に仕掛けた地雷がどうなっているか確かめに戻る 3.日よけになる道具を探す、日傘など [備考] ※古明地さとりの名前を火焔猫燐だと勘違いしています ※ルーミアの「張力作動式跳躍地雷SMi」が、博麗神社周りの林のどこかに仕掛けられました。このことを慧音たちは知りません。 ※人魂灯は博麗神社の賽銭箱前に安置されています 105 ウソツキウサギ 時系列順 107 幽霊がいるとして人生を操作しているとしたら 105 ウソツキウサギ 投下順 107 幽霊がいるとして人生を操作しているとしたら 92 Gray Roller -我らは人狼なりや?-(後編) 上白沢慧音 111 少女、さとり 92 Gray Roller -我らは人狼なりや?-(後編) 古明地さとり 111 少女、さとり 92 Gray Roller -我らは人狼なりや?-(後編) 東風谷早苗 109 崇拝/Worship 92 Gray Roller -我らは人狼なりや?-(後編) ルーミア 109 崇拝/Worship
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作品一覧 作品一覧(プチ) 作品一覧 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 稗田さんちの阿求さん 39 博麗さんちの霊夢さん 39 桃色幻想郷縁起(分類文芸、娯楽書) 39 人形師と少女 39 春萌えて夏の盛りは一時ぞ秋に実りて、冬に死ね 39 霊夢主義 40 博麗幻想郷 40 発狂した永遠 40 永遠の苦行。不死の幸福。半獣の懊悩。 40 永遠亭精神衛生悪化阻止失敗 40 今この時を永遠に 40 西行幽明郷 40 十六夜咲夜の門番考察 前 41 十六夜咲夜の門番考察 後 41 Very very sweet Cookie 41 腐れ爛れた夢現の狭間で 前編 41 腐れ爛れた夢現の狭間で 後編 41 蓬莱人 稗田阿求 前編 42 蓬莱人 稗田阿求 後編 42 メランコリック 前編 43 シリアス メディスン、霊夢、紫、 メランコリック 後編 43 シリアス メディスン、霊夢、紫、 少女の現 前編 44 シリアス アリス、魔理沙、霊夢、パチュリー、永琳 少女の現 後編 44 シリアス アリス、魔理沙、霊夢、パチュリー、永琳 血描写有り 東方の地に風が吹く 前編 44 シリアス 早苗、神奈子、諏訪子 東方の地に風が吹く 後編 44 シリアス 早苗、神奈子、諏訪子 空に咲く華 前編 47 空に咲く華 後編 47 現創の九 前編 58 100kb 現創の九 中編 58 77kb 現創の九 後編 58 49kb 獣の見る夢 74 思念考~卵の中の幻想郷~前編 76 思念考~卵の中の幻想郷~後編 76 作品一覧(プチ) タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 ちるのの プチ15 『山なし』東方『オチなし』白書『意味なし』 プチ16 夢オチ プチ16 春度高めて世は美し プチ17 女神の包容力とはつまり胸である 風神録地獄変 プチ19 お前の正月で宇宙がやばい プチ23 死して屍拾うもの在り プチ23 残酷型閉鎖精神解放選択肢 プチ59
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TOP>稼符定期大会>星蓮船 稼符定期大会 星蓮船 ~2010年前期~ << 紅魔郷 妖々夢 永夜抄 文花帖 風神録 地霊殿 星蓮船 ダブルスポイラー >> 2010年前期 2009年後期 >> +288回大会 6月第4週【キャラ指定無し】 稼符定期大会6月第4週 星蓮船【キャラ指定無し】結果発表 一位を目指した皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 1,792,155,850点 EOH氏 (蛙符) 2位 1,233,430,890点 よっけ氏 (恋符) 3位 1,114,872,040点 りゃー氏 (霊符) 4位 1,078,721,050点 WQN氏 (蛙符) 5位 986,034,580点 あろえちゃん氏 (霊符) 6位 932,249,700点 テン氏 (夢符) 7位 856,197,320点 WQN氏 (蛇符) 8位 799,865,700点 Naut氏 (夢符) 9位 308,094,350点 WQN氏 (夢符) 10位 226,727,430点 tomo氏 (魔符) ●Hard部門 1位 986,374,750点 JWF氏 (蛙符) 2位 259,928,880点 Kause氏 (夢符) 3位 217,472,950点 AKAIAITU氏 (恋符) 4位 213,590,430点 K・G氏 (夢符) 5位 194,863,380点 K・G氏 (蛇符) ●Normal部門 1位 2,560,531,070点 HLN氏 (蛙符) 2位 2,204,563,490点 サミー氏 (蛙符) 3位 1,811,401,840点 K・G氏 (霊符) 4位 232,847,780点 K・G氏 (霊符) ●Easy部門 1位 1,744,775,130点 HLN氏 (蛇符) 2位 1,539,710,600点 coa氏 (霊符) 3位 1,428,551,590点 Akino氏 (蛇符) 4位 1,418,683,680点 Akino氏 (魔符) 5位 1,354,719,440点 st65氏 (蛇符) 6位 1,344,947,670点 K・G氏 (蛙符) 7位 33,249,750点 がらい氏 (蛙符) ●Extra部門 1位 606,714,600点 ポンデスイカ氏 (夢符) 2位 606,507,320点 NIL氏 (蛙符) 3位 557,010,320点 ポンデスイカ氏 (恋符) 4位 494,397,160点 Rei氏 (蛇符) 5位 286,737,770点 Kause氏 (夢符) 6位 254,025,340点 HLN氏 (蛇符) 7位 242,239,680点 Ake氏 (霊符) 8位 164,972,800点 Yuki氏 (蛙符) 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には魔界の招待券が贈呈される模様です。 +287回大会 6月第3週【蛙符】 稼符定期大会6月第3週 星蓮船【蛙符】結果発表 奇跡で梅雨入りを防いだ皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 2,453,684,360点 jugem氏 2位 2,087,115,470点 jad氏 3位 1,204,937,980点 BaitySM氏 4位 1,018,115,600点 なおきLC氏 5位 274,821,600点 aya氏 ●Hard部門 1位 1,548,695,840点 NIL氏 2位 287,780,560点 HLN氏 ●Normal部門 1位 1,493,104,620点 K・G氏 2位 1,209,489,310点 pockly氏 3位 776,808,890点 けーてん.氏 4位 462,256,570点 フィスティ氏 ●Easy部門 1位 1,789,184,440点 EOH氏 2位 1,338,121,030点 Akino氏 ●Extra部門 1位 543,292,850点 もみぢ氏 2位 231,506,260点 K・G氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には諏訪子様からの弾幕が贈呈される模様です。 +286回大会 6月第2週【恋符】 稼符定期大会6月第2週 星蓮船【恋符】結果発表 皆さんはこちら。 ●Normal部門 1位 910,318,920点 けーてん.氏 ●Easy部門 1位 1,410,046,520点 Akino氏 ●Extra部門 1位 468,490,210点 2氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には■が贈呈される模様です。 +285回大会 6月第1週【キャラ指定無し】 稼符定期大会6月第1週 星蓮船【キャラ指定無し】結果発表 がむしゃらに稼いだ皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 1,601,989,920点 jad氏 (恋符) 2位 914,316,420点 BaitySM氏 (魔符) 3位 475,971,100点 Rix氏 (魔符) 4位 357,271,380点 TASUKU氏 (恋符) ●Hard部門 1位 2,269,561,880点 EOH氏 (蛙符) 2位 640,490,710点 なおきLC氏 (蛙符) 3位 228,590,250点 you-ring氏 (蛙符) 4位 196,557,590点 Lotus氏 (夢符) ●Normal部門 1位 1,018,467,760点 not氏 (蛇符) 2位 1,017,838,750点 pockly氏 (蛙符) 3位 926,528,820点 pockly氏 (蛙符) 4位 227,828,500点 K・G氏 (夢符) ●Easy部門 1位 1,923,821,640点 LYX氏 (恋符) 2位 1,575,543,740点 アーたん@ジグ氏 (蛙符) 3位 1,417,791,670点 アーたん@ジグ氏 (魔符) 4位 1,346,191,160点 Akino氏 (魔符) 5位 1,325,370,530点 アーたん@ジグ氏 (恋符) 6位 1,228,526,090点 Akino氏 (蛇符) 7位 1,048,053,010点 No Name氏 (蛙符) 8位 1,009,658,060点 No Name氏 (恋符) 9位 997,260,380点 Akino氏 (恋符) 10位 476,940,110点 Shigure氏 (蛙符) 11位 252,054,800点 HNC.氏 (蛙符) ●Extra部門 1位 623,067,590点 nyamu氏 (蛙符) 2位 435,822,710点 ヤエハ氏 (霊符) 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方にはとびっきりの弾幕が贈呈される模様です。 +284回大会 5月第5週【霊夢B】 稼符定期大会5月第5週 星蓮船【霊夢B】結果発表 また魔界か・・・という皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 2,212,846,010点 shin氏 2位 347,308,610点 へかて氏 3位 287,017,710点 tomo氏 ●Hard部門 1位 337,008,930点 wreath氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には魔界の御みあげ6点セットが贈呈される模様です。 +283回大会 5月第4週【早苗A】 稼符定期大会5月第4週 星蓮船【早苗A】結果発表 エアコンを求めた皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 1,359,131,760点 jad氏 2位 259,719,430点 tomo氏 ●Normal部門 1位 848,866,320点 けーてん.氏 ●Easy部門 1位 1,363,952,330点 サミー氏 ●Extra部門 1位 459,241,220点 L氏 2位 331,684,280点 katu氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には涼しくなるもの1点が贈呈される模様です。 +282回大会 5月第3週【霊夢A】 稼符定期大会5月第3週 星蓮船【霊夢A】結果発表 魔界を荒らした皆さんはこちら。 ●Normal部門 1位 1,443,647,990点 K・G氏 2位 642,141,520点 けーてん.氏 ●Easy部門 1位 1,088,621,400点 Akino氏 2位 212,857,180点 HNC.氏 ●Extra部門 1位 463,590,650点 L氏 2位 307,060,280点 pizza氏 3位 296,966,740点 ASL氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には魔界からの苦情が贈呈される模様です。 +281回大会 5月第2週【キャラ指定無し】 稼符定期大会5月第2週 星蓮船【キャラ指定無し】結果発表 封印を解いた皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 1,518,638,340点 NIL氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 980,485,350点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 612,467,430点 11氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 4位 605,220,540点 サミー氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 553,961,070点 Naut氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 6位 406,409,050点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 7位 367,160,770点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 8位 309,024,700点 ns氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 9位 295,716,190点 ns氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 10位 230,297,890点 TASUKU氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 11位 218,403,200点 TASUKU氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) ●Hard部門 1位 1,952,291,300点 EOH氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,274,607,850点 Shin-5氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 3位 1,155,625,740点 BaitySM氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 4位 1,139,750,220点 BaitySM氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 1,010,785,390点 BaitySM氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 6位 984,261,280点 BaitySM氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 7位 335,130,950点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 8位 317,576,460点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 9位 282,728,060点 K・G氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 10位 234,544,170点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) ●Normal部門 1位 1,582,822,590点 ななしーLCC氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 869,567,980点 Akino氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 3位 819,735,150点 けーてん.氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 4位 738,166,110点 けーてん.氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 5位 722,539,150点 Akino氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 6位 715,054,230点 Akino氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 7位 194,844,930点 反魂蝶氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) ●Easy部門 1位 1,501,804,580点 Dream Dweller氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,299,949,370点 Akino氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 1,191,179,810点 サミー氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 4位 1,096,996,530点 Akino氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 5位 296,335,780点 WORLD氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 6位 215,427,770点 WORLD氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 7位 215,071,220点 WORLD氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 8位 202,362,780点 WORLD氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 9位 200,927,450点 WORLD氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) ●Extra部門 1位 641,702,580点 nyamu氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 625,701,590点 ガンダールヴ氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 328,587,880点 おたわ氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 4位 166,520,700点 katu氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には聖様の説法が贈呈される模様です。 +280回大会 5月第1週【魔理沙A】 稼符定期大会5月第1週 星蓮船【魔理沙A】結果発表 船から何かを盗もうした皆さんはこちら。 ●Hard部門 1位 722,197,580点 NAOKI氏 ●Normal部門 1位 1,191,015,160点 たくあん氏 2位 683,002,440点 Akino氏 ●Extra部門 1位 225,915,170点 NAOKI氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には錨が贈呈される模様です。 +279回大会 4月第4週【魔理沙B】 稼符定期大会4月第4週 星蓮船【魔理沙B】結果発表 小傘と戯れた皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 298,053,920点 KASS氏 ●Hard部門 1位 950,183,670点 Shin-5氏 ●Normal部門 1位 1,383,968,310点 Shin-5氏 ●Easy部門 1位 836,004,840点 けーてん.氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には小傘と相合傘出来る権利が贈呈される模様です。 +278回大会 4月第3週【早苗B】 稼符定期大会4月第3週 星蓮船【早苗B】結果発表 諏訪子様の冬眠から起こそうとした皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 2,217,075,560点 jugem氏 2位 490,582,620点 NAOKI氏 3位 371,288,090点 POLA氏 4位 326,194,490点 KASS氏 5位 251,080,270点 POLA氏 ●Hard部門 1位 1,335,870,860点 pndsng氏 ●Normal部門 1位 752,205,520点 けーてん.氏 ●Easy部門 1位 167,469,200点 BAO氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には諏訪子様の帽子(レプリカ)が贈呈される模様です。 +277回大会 4月第2週【魔理沙A】 稼符定期大会4月第2週 星蓮船【魔理沙A】結果発表 レーザーに視界を阻まれた皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 444,089,690点 NAOKI氏 ●Hard部門 1位 283,731,740点 star氏 ●Normal部門 1位 1,144,245,330点 Shin-5氏 2位 1,117,122,460点 K・G氏 ●Easy部門 1位 1,260,196,160点 K・G氏 ●Extra部門 1位 640,990,180点 水月氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方にはファイナルマスタースパークが贈呈される模様です。 +276回大会 4月第1週【早苗A】 稼符定期大会4月第1週 星蓮船【早苗A】結果発表 ■した皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 580,668,360点 NAOKI氏 ●Hard部門 1位 835,976,310点 K・G氏 ●Normal部門 1位 1,315,845,840点 K・G氏 2位 734,037,580点 けーてん.氏 ●Easy部門 1位 778,677,960点 けーてん.氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には■が贈呈される模様です。 +275回大会 3月第4週【魔理沙B】 稼符定期大会3月第4週 星蓮船【魔理沙B】結果発表 命蓮寺のお手伝いをした皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 1,863,144,410点 yukarin氏 2位 252,555,830点 かれん氏 ●Hard部門 1位 1,987,787,410点 yukarin氏 ●Normal部門 1位 1,462,798,210点 seto氏 2位 1,192,782,290点 K・G氏 ●Easy部門 1位 1,365,177,550点 Yyk氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には法界の火が贈呈される模様です。 +274回大会 3月第3週【早苗B】 稼符定期大会3月第3週 星蓮船【早苗B】結果発表 沢山南無三した皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 878,761,910点 あかか氏 2位 375,892,440点 K・G氏 ●Hard部門 1位 1,300,964,230点 K・G氏 2位 362,719,480点 TASUKU氏 ●Normal部門 1位 2,020,345,900点 SORA氏 2位 1,743,223,450点 seto氏 3位 1,709,007,850点 sammy氏 4位 1,673,795,980点 NIL氏 5位 1,528,154,560点 pndsng氏 ●Easy部門 1位 183,970,690点 NAG氏 ●Extra部門 1位 178,059,060点 けーてん.氏 2位 161,705,360点 Shigure氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には命蓮寺住職の座が贈呈される模様です。 +273回大会 3月第2週【キャラ指定無し】 稼符定期大会3月第2週 星蓮船【キャラ指定無し】結果発表 春の湊に舟の影を見た皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 2,675,907,240点 へかて氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,174,416,130点 NSR氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 3位 725,600,890点 BaitySM氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 4位 686,836,150点 BaitySM氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 5位 654,134,680点 jad氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 6位 509,735,530点 ちるわた氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 7位 423,227,170点 NAOKI氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 8位 410,756,260点 白花氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 9位 319,802,450点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 10位 285,267,250点 TASUKU氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 11位 269,768,010点 アケ氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 12位 266,729,760点 ns氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 13位 264,220,200点 POLA氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 14位 224,944,140点 てぃふ氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) ●Hard部門 1位 1,139,201,300点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 938,435,510点 TASUKU氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 3位 857,080,190点 TASUKU氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 4位 819,654,630点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 5位 576,899,200点 Shin-5氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 6位 316,782,400点 Flime氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 7位 275,205,130点 TASUKU氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) ●Normal部門 1位 1,306,281,520点 TASUKU氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,222,573,720点 seto氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 3位 754,362,230点 Komachi5氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 4位 743,752,530点 けーてん.氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 240,443,610点 J氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 6位 177,961,150点 ルゐ氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 7位 160,695,940点 niki氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) ●Easy部門 1位 1,332,256,740点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,021,502,350点 ZWY氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 1,004,488,480点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 4位 901,559,500点 SIQ氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 804,637,410点 KTR氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 6位 686,590,470点 KTR氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 7位 609,754,920点 けーてん.氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) ●Extra部門 1位 664,816,470点 nyamu氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 592,074,570点 NSR氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 3位 500,120,660点 Aten氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 4位 434,337,310点 koriky氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 5位 328,897,280点 YABU氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方は次回自己ベストを更新する模様です。 +272回大会 3月第1週【早苗A】 稼符定期大会2月第1週 星蓮船【早苗A】結果発表 命蓮寺に雛祭りをしに行った皆さんはこちら。 ●Normal部門 1位 2,196,933,260点 ひろなex氏 2位 1,215,638,420点 tos氏 3位 588,834,440点 けーてん.氏 4位 231,752,630点 megane氏 ●Easy部門 1位 1,249,826,460点 K・G氏 2位 714,508,320点 けーてん.氏 3位 581,126,480点 フィスティ氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には白蓮特製雛人形が贈呈される模様です。 +271回大会 2月第4週【霊夢B】 稼符定期大会2月第4週 星蓮船【霊夢B】結果発表 命蓮寺に遊びに行った皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 226,917,130点 coa氏 ●Hard部門 1位 513,598,050点 TASUKU氏 ●Normal部門 1位 463,973,590点 けーてん.氏 2位 234,700,310点 POT氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には最大得点1000が贈呈される模様です。 +270回大会 2月第3週【早苗B】 稼符定期大会2月第2週 星蓮船【早苗B】結果発表 白蓮様にチョコをもらいに行った皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 980,065,120点 びーだま氏 2位 706,460,700点 hydrogen氏 ●Hard部門 1位 673,632,550点 sammy氏 ●Normal部門 1位 1,030,663,420点 びーだま氏 2位 383,123,960点 けーてん.氏 3位 200,406,880点 小太刀氏 4位 177,132,350点 POT氏 ●Extra部門 1位 581,333,610点 nyamu氏 2位 338,138,580点 TANBO氏 3位 201,453,800点 POT氏 4位 159,932,150点 No Name氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方にはエア巻物チョコ(義理)が贈呈される模様です。 +269回大会 2月第2週【キャラ指定無し】 稼符定期大会2月第2週 星蓮船【キャラ指定無し】結果発表 白蓮様にチョコをもらう約束をしに行った皆さんはこちら。 ●Lunatic部門 1位 536,521,750点 YUU氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 2位 375,069,490点 NAOKI氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 3位 325,252,910点 croix氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 4位 301,850,320点 croix氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 5位 282,510,770点 Shigure氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) ●Hard部門 1位 245,869,100点 K・G氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) ●Normal部門 1位 2,025,936,130点 coa氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 2位 1,651,252,460点 SA.氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 1,636,963,390点 ハズレ氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 4位 840,938,980点 Shin-5氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 5位 520,462,650点 NoBomb氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 6位 395,992,310点 OML氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 7位 32,105,070点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) ●Easy部門 1位 1,836,101,690点 ひろなex氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,534,803,280点 BAO氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 671,028,050点 darkfall氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) ●Extra部門 1位 591,026,750点 nyamu氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 468,297,120点 はし@水銀党氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 462,216,400点 びーだま氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 4位 160,675,250点 うい氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には命蓮寺特製するめが贈呈される模様です。 +268回大会 2月第1週【魔理沙A】 稼符定期大会2月第1週 星蓮船【魔理沙A】結果発表 命蓮寺で豆をまいた皆さんはこちら。 申請はありませんでした 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には空豆が贈呈される模様です。 +267回大会 1月第4週【早苗A】 稼符定期大会1月第4週 星蓮船【早苗A】結果発表 魔界を駆け抜けた皆さんはこちら。 ●Normal部門 1位 1,365,373,700点 JWF氏 2位 974,876,810点 K・G氏 3位 441,941,160点 Shin-5氏 ●Easy部門 1位 1,097,799,680点 BAO氏 2位 379,322,350点 ななまる氏 ●Extra部門 1位 205,067,430点 OML氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には平安京の悪夢が贈呈される模様です。 +266回大会 1月第3週【霊夢B】 稼符定期大会1月第3週 星蓮船【霊夢B】結果発表 冬の法界を訪問した皆さんはこちら。 ●Hard部門 1位 815,300,190点 U1氏 2位 238,394,340点 AKAIAITU氏 ●Normal部門 1位 779,636,540点 K・G氏 ●Extra部門 1位 406,237,060点 shin氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には次回集計をやってもらう予定です。 +265回大会 1月第2週【魔理沙B】 稼符定期大会1月第2週 星蓮船【魔理沙B】結果発表 新年となり、いろいろアレだった皆さんはこちら。 ●Hard部門 1位 268,457,900点 explosion焔@TLS氏 ●Normal部門 1位 246,274,590点 Hiro氏 ●Extra部門 1位 453,756,710点 yuki氏 2位 313,845,530点 Dide氏 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方は次回もTOPになる模様です。 +264回大会 1月第1~2週【キャラ指定無し】 稼符定期大会 年末年始特別スコアアタック大会 星蓮船 結果発表 ●Lunatic部門 1位 764,616,000点 U1氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 2位 664,331,800点 U1氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 3位 527,695,810点 U1氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 4位 471,369,570点 あかか氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 350,084,730点 SGY氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 6位 347,287,850点 ns氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 7位 318,933,710点 あかか氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 8位 293,514,510点 白花氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 9位 290,155,480点 175氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 10位 272,853,900点 POLA氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 11位 245,212,140点 YUU氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 12位 235,386,120点 BIT氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) ●Hard部門 1位 649,314,390点 U1氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 2位 640,496,370点 U1氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 3位 388,301,870点 sachi(ヒロカワ)氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 4位 302,842,550点 K・G氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 5位 243,436,640点 フィスティ氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 6位 241,080,560点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 7位 199,639,300点 BIT氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 8位 165,734,700点 ソロ氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) ●Normal部門 1位 1,901,387,220点 mzn氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 1,424,755,490点 ハズレ氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 3位 1,255,890,060点 JWF氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 4位 1,190,739,350点 sammy氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 989,802,510点 not氏 (東風谷早苗 ~ 神奈子様の仰るとおりに) 6位 851,677,440点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 7位 661,016,540点 Kg氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 8位 446,020,440点 M氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 9位 257,470,960点 POLA氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 10位 240,871,560点 muzzy氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 11位 209,889,710点 stelletta氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 12位 195,865,730点 stelletta氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 13位 144,478,730点 うい氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 14位 58,983,090点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) ●Easy部門 1位 1,515,175,370点 dai氏 (霧雨魔理沙 ~ 何だか判らない物に興味津々) 2位 1,425,489,600点 BAO氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 3位 962,929,510点 sammy氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 4位 796,398,950点 K・G氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 5位 24,200,990点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) ●Extra部門 1位 580,737,820点 nyamu氏 (東風谷早苗 ~ 諏訪子様の仰るとおりに) 2位 410,075,950点 maccha氏 (博麗霊夢 ~ めざせ宝船、一攫千金!) 3位 221,779,260点 shin氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 4位 149,193,710点 K・G氏 (博麗霊夢 ~ また妖怪の仕業ね!) 5位 117,121,150点 star氏 (霧雨魔理沙 ~ 宝船だとしたらお宝が有る筈だ!) 参加者の皆さんお疲れさまでした。 各部門TOPの方には白蓮からお年玉が贈呈される模様です。 2010年前期 2009年後期 >> << 紅魔郷 妖々夢 永夜抄 文花帖 風神録 地霊殿 星蓮船 ダブルスポイラー >>
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「『見知らぬ場所』だ。急に呼び出されたから驚いたが……」 A-2エリアとA-1エリアの中間地点。 藍色のセミロングヘアの女性が辺りをゆっくり見回し、佇んでいた。 まず目を引くのが、背中に取り付けられた大きな注連縄の輪。 他にも頭、腰、腕など、至る所に注連縄が巻かれている。胸には古代風の装飾の鏡が輝いている。 その奇抜とも表現できる威容は、20歳前後の若い女性にしか見えない彼女が、 『人ならざる存在』であることを表現する為に自ら考案したものなのだろうか。 「私が噂に聞いていた幻想郷とは、随分と話が違うな……」 八坂神奈子が呼び出されたのは、信仰心を求めて幻想郷にその居を移してから間もない頃のこと。 幻想郷の神社、博麗神社に使いとして派遣した早苗の帰りを待っていた時のことだ。 『この土地の信仰を頂く』と聞いたら、博麗神社の巫女が私の元に殴りこんでくるかも知れない。 そう予想して、幻想郷で広く行われていると聞いた 『スペルカードルール』による戦いの準備に余念がなかった神奈子。 彼女が『来るべき戦い』に備えて『スペルカード』の開発を行っていた時、突如ゲームの開始が告げられた。 (聞いた話と随分違うが……これが幻想郷の『定め』か。 ……この国にまだ人身御供の習わしが残る土地があったとはな) 神奈子の脳裏に蘇るのは過去の記憶。 神々が今よりずっと栄えていた頃の記憶。 その頃、人の命は今よりもずっと軽かった。 神の気紛れとされていた天災を鎮めるため、生きた人間を火で焼いたり、 水に沈めたり、土に埋めたりといったことが当然のこととして行われていた。 ……神のために生命を捧ぐ儀式は確かに存在していたのだ。 (こうして我々を知らぬ間に連れ出すとは……。 まさか『神隠し』に遭わされる側に回るとは思わなかったが…… それだけの事を為すあの男たちが、幻想郷の最高神なのだろうな…… 我々は、その神々への生贄として捧げられた、ということか) そしてしばらく彼女は目を瞑って思考し……。 「行くか」 と、短くつぶやいたのだった。 神奈子がデイパックの中から取り出し、ガチャリと右肩に担ぐのは、オンバシラ、ではなく、 いくつもの砲身が束ねられた機関銃……いわゆるガトリング銃だ。 外界のある国で歩兵用の機関銃として試作されたが、 反動が強すぎて人間には取り扱い不可能とされ、お蔵入りになっていたシロモノだ。 口紅のような弾丸がずらりと並んだ給弾ベルトを肩に掛け、神奈子は歩き出した。 「これが幻想郷のしきたりだというなら……私もそれに従わねばな」 未だ幻想の残る地、幻想郷。 それを維持するためのシステムが、こうした『生贄の儀式』であるのだろう。 『郷に入れば郷に従え』。新参の神奈子も、それに従うだけのこと。 『つい最近』までは日本のそこかしこで行われていたことだ。そこまで抵抗は感じない。 ただ一つ、気がかりがあるとすれば……名簿にも記されていた、『家族』の名だ。 (東風谷早苗。 風祝の家系に生まれたというだけでこの様な仕打ちに遭うのは、 この時代に生まれた彼女にとっては少々過酷だろう。 せめて、私の手で苦しませずに葬ってやらなければ。 そして、洩矢諏訪子。 思えば長い付き合いだったが…… 『あの時』の決着をつけるべきが来たのだろうな) この殺し合いが幻想郷に生きる上で避けられぬ物だというなら…… せめて家族同然に生きてきた二人だけはこの手で逝かせてやりたい、そう思う神奈子だった。 時間軸のズレによって、幻想郷のシステムを誤解してしまった戦神、八坂神奈子。 彼女に果たして幻想郷の『正しい姿』を知る機会は与えられるのか? それとも…… 【A-2エリア北端・草原/深夜】 【八坂神奈子@東方風神録】 [状態]:健康 [装備]:ガトリング銃@現実(残弾100%) [道具]:基本支給品、不明支給品1個(ジョジョ・東方・確認済み) [思考・状況] 基本行動方針:主催者への捧げ物として恥じない戦いをする。 1:洩矢諏訪子を探し、『あの時』の決着をつける。 2:東風谷早苗を探し、苦しませずに殺す。 [備考] ※参戦時期は東方風神録、オープニング後です。 ※参戦時期の関係で、幻想郷の面々の殆どと面識がありません。 東風谷早苗、洩矢諏訪子の他、彼女が知っている可能性があるのは、妖怪の山の住人、結界の管理者です。 (該当者は、秋静葉、秋穣子、河城にとり、射命丸文、姫海棠はたて、博麗霊夢、八雲紫、八雲藍、橙) 支給品紹介 <ガトリング銃@現実> 6本の砲身を束ねることで銃身にかかる負荷を軽減し、連射力を向上した機関銃。 このガトリング銃は、アメリカ軍の試作品・XM214を元にしたものである。 但し現実に開発されていたXM214と違い、駆動用のバッテリーは必要としない。 だがそれでもなお、重量過多、反動が大きすぎるなどの理由で、人間が取り回すのは困難な代物である。 045:Strong World 投下順 047:名前のない怪物達 044:最初のトリニティストーリー 時系列順 049:”HAIL”2U! 遊戯開始 八坂神奈子 067:弱さを乗り越えて。偉大なる夜を越えて