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本編SS目次・投下順 0~50話までの本編SS
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試験開始 「“悪”——だね」 深夜の、市街地。 一つの建物の壁を背にして、零崎双識は呟いた。 似合わない背広に針金細工のような体躯を包み、似合わない銀縁眼鏡を装着し、似合わないオールバックにした髪を風に揺らしながら、零崎双識は呟いた。 「人を集めて殺し合いをさせる——まごうことなく、悪そのものだ。あの影谷……だったかな? あの男も死んでしかるべき『不合格』だったが、水倉神檎とやらもだね。こんなことを考える云々以前に、あんなに可愛い家族を大切にしない人間は『不合格』だ。 あの女の子……赤、赤か。ひょっとして《死色の真紅》、彼女もどこかにいたりするのかな? だとしたら是非お目にかかりたいものだね。うふふ。 ああ、でもそれより優先すべきものはたくさんある。うふ、感じる感じる、これは家賊がいるな。参ったね、私は平和主義者だからいいものの、他の零崎一賊なんて何をするか分かったものじゃない。 勿論皆は好きに行動すればいいんだけどね、私はどうしようかな? 私の可愛い家賊の中で、一体誰がここに連れてこられたのやら。私としたことが、あの状況とはいえ、家賊を一人も見つけられなかったなんてね。うふふ、妹がいればいいんだけど。 ……それにしても」 長い独り言をぷつり、と止めて、双識は首を傾げる。 顎に手を当て、心底不思議そうな表情で、自分に向かって語りかける。 「一体どうして、私は生きているんだろう?」 それは奇しくも、同じ時刻に別の場所で、同じ一賊の別の人物が呟いた言葉と酷似していた。 零崎双識は夏の前、死んだはずだった。 殺し屋に刺されて。 内蔵を貫かれて。 可愛い弟の傍で。 可愛い妹の傍で。 最悪で最善の死を迎えた。 偶発的で必然的な死を迎えた。 当然に完全に双識は死んだ。 零崎双識は、確かに死んだ。 双識は、それを覚えていた。 「うーん……生き返った? あながちそういうのも、ナシではなさそうだよね。わざわざ殺し合いを演じさせるために生き返らせるなんて、ご苦労なことだ。まあ今の所どうでもいいか」 自身の生存に関する疑問を、双識はあっさり投げた。 しかしそれは、けして彼が浅慮だということを示すものではない。単なる、優先順位の問題だ。 殺し合いの場に送りこまれたらしい家族のこと。 死んだはずの自分が生きていること。 どちらがより大切か、双識にとっては明確過ぎるほど明確だ。もとより彼には、家族のこと以上に大切な思考などありはしないのだ。 「別に、放っておいてもいいだろうけど……」 双識は、家賊のことをほとんど心配していない。 零崎一賊、《殺人鬼》。 双識が誰より信頼する家賊は、何より愛する家賊は、こんな状況に放りこまれたからといって命を奪われるような集団ではない。 だが。 この状況が酷く異常であること。そして長引き消耗戦となれば、一賊の誰もにとって不利であること。 そのことも、双識は同時に理解している。 「……ここは素直に、探しに行こうかな。人識君か伊織ちゃんか……どちらかがちゃんと《自殺志願》を持っているのかな? 伊織ちゃんのほうが可能性は高そうだけど。アスやトキがいたら、面白いことになりそうだ」 うふふ、と。 双識が笑い、 建物から背を離し、 家族の居場所を教える勘に従って歩き出そうとした、 その時。 ——それは、殺気だった。 殺意、あるいは戦意を明確に持つ気配だった。 それを感じた、と意識する前に、既に双識は振り向いている。 「……おや?」 横手の細道。 刺すような殺気に反したふらりとした足取りで、ぼんやりとした表情で、一人の少女が、現れた。 「……ゆらぁりぃ」 髪は、散切り。ぼろぼろに切り裂かれた、セーラー服。その制服が見覚えのあるものであることに、双識は気づいている。 「ゆらり……ゆらり」 手はなぜか、後ろ手。 そして彼女は右足首のやや上に、タイツの上から刃物で切ったような浅い傷を負っていた。乾き始めて間もないことが容易に分かるその傷は、生々しい傷口を晒している。 しかし、それ以外には何の外傷もない。 「その怪我はどうしたんだい?」 ゆらゆらと揺れていた少女が、止まる。 「……ぴたり」 一瞬の、静寂。 双識と少女は、向き合う。 「……一応、自己紹介、しておきます」 先に億劫そうに口を開いたのは、少女だった。 双識の質問は綺麗に無視された。 「あたし、西条玉藻ちゃん……です。人がいたから、来てみたんですけどぉ……今回って、ずたずたにして、いいんでしたっけ……?」 物騒なことを、少女——玉藻はさらりと口にする。 その物騒なことを簡単にやってしまいそうな雰囲気を、彼女は持っていた。 それは一歩別のほうへ踏み出せば。 零崎に為っていても、おかしくないような。 「何にも命令、ないってことは……好きにし」 玉藻はそこで一旦、「ゆらり」と呟いて休憩を挟む。喋るのは苦手らしかった。 「てもいいのかな。じゃあ……玉藻ちゃん、行きまあ」 「いやいやいや、ちょっと待った」 そのままストレートに不穏な結論へ至りそうだったので、双識は口を挟む。 その辺りこそ、彼が変わり者と言われる所以だろう。双識は、自称白い鳩のような平和主義者なのである。基本的には。 「……なんですかあ?」 玉藻の胡乱そうな声を浴びつつ、双識はやれやれと首を横に振った。 「全く……それが悪いと言うつもりはないけど、同じ女子校生とはいっても、子荻ちゃんとは全然タイプが違うな。君もその制服を着ているなら知っているんじゃないかな? 萩原子荻ちゃんのことだよ」 「……しおぎ、せんぱい」 「今何年生だったかな。私は結構仲が良かったんだよ、うふふ」 玉藻のぼやりとした目が、宙に止まる。停止。何か思い出そうとしている、ならいいのだが、表情からは何も読みとることができない。 一方で双識は、あの髪の綺麗な《策師》の少女を思い出していた。 常に別の場所、一つ上の場所に立っているかのような。 僅かばかり弟に似ている気もする、少女。 こんな状況にも関わらず、双識は思わず笑みを浮かべた。 やがて、玉藻の身体が再びふらりと揺れる。 「ええと……あなたは、先輩の、知り合いで」 「そうそう」 「あたしは、邪魔、先輩の……悪いことの邪魔、しちゃ駄目で」 「悪いことねえ。まあ、悪いといえばそうなんだろうね」 「子荻先輩はあ……あんまり、教えてくれないから……関係者は、駄目なんだっけ……」 首を傾げて、「ゆらあり」と玉藻は呟く。 「あなたは子荻先輩の知り合い」 戻った。 だが——それでも、玉藻の中では答えが出たらしい。 どこか残念そうに、彼女は身体を揺らす。 「……ゆらり。じゃあ、ずたずたにするのは、駄目……ぶーです。あたしもまだ、我慢できないってほどじゃ、ないですし……殺さないどいてあげます」 それは。 本当に、零崎であってもおかしくないような言葉だった。 しかし双識は、彼女がけして「妹」にはならないであろうことも、なぜか察していた。 ゆらぁりぃ、と。 玉藻は何の躊躇もなく双識に背を向けて、 「——待った、玉藻ちゃん」 呼びとめたのは、双識だった。 僅かに険しい顔をして、振り向く少女を見据える。 「……ちゃん付けで呼ばないでください……初対面ですよう」 「君、“それ”をどこで手に入れた?」 今度は、玉藻の言葉を双識が無視する。 先程とは全く逆のパターン。 それほどに。 双識にとって、それは重要な問いだったのだ。 背を向けた西条玉藻が、後ろに回した両手に持っていたものは。 一見してナイフのようなそれは。 双識の愛用の武器——否、元愛用の武器《自殺志願》。 それを、二つに分解したものだった。 しかし双識の問いは、玉藻が自分の武器を持っていたために出たものではない。それは確かに重要ではあるが、その程度のことで、双識は深刻になったりはしない。 玉藻が、“妹に渡したはずの武器”を持っていたからこそ——双識は尋ねたのだ。 最悪の事態をも、想定して。 「これはあたしのとこにあったんだから……あたしのです」 しかし玉藻から帰ってきた答えは、双識の不安をあっさりと打ち破った。 そんな嘘をつくような少女ではないだろう、と双識は判断し、それを信じることにする。 「ちゃんと……き」 更に言葉を続け、玉藻は休息。 既に双識の危惧していた事は回避されていたのだが、一応彼は最後まで話を聞く。 「れるかだって……自分で、試したんです」 それだけを言って。 玉藻は、再び双識に背を向ける。 その言葉の示す所に思い至ると、さすがに双識も驚きを禁じえなかった。ゆらゆらと歩み去る後ろ姿を見ながら、苦笑する。 彼女は、試したのだ。 《自殺志願》が武器として機能するかどうか——自分の足で。 双識は理解する。 玉藻が、“妹”にはならないだろうと思った訳を。 彼女は飽く迄、戦う。戦うために、存在している。 零崎一賊は殺人をする——《殺人鬼》 西条玉藻は戦闘をする——《狂戦士》 その違いは微細で、その違いは絶大だった。 双識は殺人鬼である。 マインドレンデル、《二十人目の地獄》などの異名を持つ零崎一賊の長兄であり、一賊屈指の実力者にして切り込み隊長だ。 双識には、玉藻を殺して《自殺志願》を取り戻すという選択肢も確かに存在した。他の零崎一賊ならば、ほとんどの者はそうするだろう。 しかし、双識はそれを選ばなかった。 理由の一つには、察するに玉藻もかなりの戦闘能力の持ち主であり、殺し合いをすれば双識も痛手は避けられないだろうという予測がある。双識はこんな序盤から、怪我をするわけにはいかないのだ。 そしてもう一つには、《策師》の少女の存在がある。 双識は、見ていた。 家族の誰をも視界に収めることはできなかったが、あの白い部屋で、双識は確かにあの髪の綺麗な少女を見つけていた。 彼は、興味があったのだ。 あの少女のフィールドに、この状況がどのように展開されるのか。彼女が何をして、何を成すのか。 そして、家族に害が及ばない限り、彼女の邪魔をしたくはなかったのだ。《策師》と出会えさえすれば、玉藻はおそらく重要な一つのピースになるだろう。 「……うふふ。まあ、《自殺志願》を持たない方が強いと言われる私だ。寂しいが、しばらくは預けておこう」 笑みを刻み、双識は呟く。 遠ざかる玉藻を、見つめて。 そしてふと、眉をしかめ、深刻な表情を浮かべた。 「それにしても……スパッツではなくタイツときたか。判定の難しい所だな」 繰り返して言うが、零崎双識は殺人鬼である。 マインドレンデル、《二十人目の地獄》などの異名を持つ零崎一賊の長兄であり、一賊屈指の実力者にして切り込み隊長だ。 【1日目 深夜 E-6から移動中】 【西条玉藻@戯言シリーズ】 [状態] 右足首付近に裂傷(軽傷) [装備] 自殺志願(二つに分解)@人間シリーズ [道具]なし [思考] 基本 ゆらぁりぃ 1 ずたずたにしたい……段々我慢できなくなるかも 「クビツリハイスクール」以前です。 西条玉藻のデイバッグ(装備を除き支給品が全て入っている)は、エリア内のどこかに放置されています。 時間は少し、遡る。 双識がしばらく背を預けていたまさにその建物。 二階の窓から双識と玉藻の姿を覗く、一人の少女がいた。 この二人に完全に悟られないでいることから、彼女もかなりの戦闘センスの持ち主であることが窺い知れる。 その少女は、小学生と言っても通用しそうな幼い顔に、驚愕の表情を浮かべていた。 (……どうして、ですか) 窓枠を掴む指は色を失い、 見開いた目を外へ固定して。 (どうして……玉藻ちゃんが生きてるですか) ——その少女は二月ほど前、西条玉藻を殺していた。 そっと、ジグザグに、殺していた。 落とした玉藻の首を、彼女は確かめていた。 それなのに、そんなことなどまるでなかったかのように、死んでなどいないかのように、玉藻は外に立っている。 全く、変わらない様子で。 言葉まで聞き取ることはできないが、確かに生きて、動いている。 (……おかしいです。ずっと、おかしいことばっかりです) 少女は、耐え続ける。 じっと、そこで耐え続ける。 気配を消し、意識を絞る。 息を潜め、口を噤む。 やがて——西条玉藻が道の一方へ消え、針金細工のような男がもう一方へと消えた時、少女は深く、ため息をついた。 「やっと行ったですか……」 うう、と大きく背伸びをして、少女は肩や首を回す。 そして辺りを見まわす。 特別な物は何も見当たらない、どこにでもありそうな小さなオフィスだ。 少女の足元には、全開になったデイバッグとその中身がぶちまけられている。少女が意図的にやったわけではなく、たまたまそうなってしまっただけだ。 「まずは……糸を探さなくちゃですね。それがなきゃどうしょうもないです。家探しはちょっと気が引けるですけど、特急事態だと思って頑張るですよ」 自分の気持ちを紛らわせるように、少女は声に出して行動を確かめる。 彼女の語句の用い方の間違いを指摘してくれる人物も、周囲にはいない。 少女は、《曲弦師》 糸を自在に操る能力の持ち主だが、不幸にしてデイバッグには曲弦糸に代わりそうな物が入っていなかった。 少女は、天井を仰ぐ。 「……師匠。潤さん」 呟くのは、先程の部屋で目にした、二人の知人の名だ。 やがて振り払うように首を左右に振り、少女は動き始める。 動き始めながら、呟く。 「一人は……寂しいですよ……」 ——ジグザグ、紫木一姫、行動開始。 【1日目 深夜 E-6】 【紫木一姫@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)確認済 [思考] 基本 他人は信用せず、生き残る 1 使えそうな糸を探す 2 人殺しは厭わない 3 可能なら師匠、潤さんと合流する 「ヒトクイマジカル」直前です 時間軸の交錯に感づいたかもしれません 双識は、歩く。 家族の気配に向かって。 その足取りに、迷いはない。 「……うふふ」 歩きながら、笑う。 余裕の笑みを、浮かべる。 「私達は監視でもされているのかな? ちゃんと声が届いていないと、私はまぬけ以外の何者でもないんだけどなあ」 針金細工のような細く長い輪郭の影が、月明かりに照らされ、道に伸びる。 「それでも、まあ……お約束だろうしね。締まりも悪い。実技試験はもうちょっと先になるだろうけど」 双識は一際、笑みを深くした。 そして一人、天を仰ぐ。 「——零崎を始めよう」 【1日目 深夜 E-6から移動中】 【零崎双識@人間シリーズ】 [状態] 健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3) [思考] 基本 家族と行動を共にする 1 家族の気配に向かって移動 2 自分からは仕掛けないが、無論一賊に仇なす者は皆殺し 3 水倉神檎を「一賊に仇なした者」として認識 軋識(軋騎)のいる北、伊織のいる北東、人識・曲識のいる南、いずれかに向かっています。 008← 009 →010 ← 追跡表 → ― 西条玉藻 ― ― 紫木一姫 ― ― 零崎双識 020
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【名前】傍系の病院坂迷路 【出展】世界シリーズ 【種族】人間 【性別】男 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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【名前】匂宮出夢 【出展】戯言シリーズ 【種族】人間 【性別】 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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【名前】真庭鳳凰 【出展】刀語 【種族】人間 【性別】男 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ [[]]→ 【特異能力】 【備考】
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逢魔が時(大凶刻)《後編》 「随分とまあ、ごてごてとした屋敷だな……」 「それ、あんたが言っていい台詞じゃないでしょうに」 とがめの呟きに、否定姫が速攻で突っ込みを入れる。とがめの住んでいた屋敷を指して言っているのだろう。 しかし当然、豪奢に見えるのは外側だけだった。 兵どもが夢の跡。その言葉に違わず、屋敷内は見事に荒涼としていた。とがめや七実、ともすれば否定姫にとっても見慣れぬ洋風の建築様式ではあるが、こうも内部が破壊しつくされた建築物をして様式もへったくれもあったものではないだろう。 入口付近はまだ元の形を維持できている程度ではあったのだが、奥に行けば行くほどその破壊具合は凄惨さを増している。 瓦礫の山というよりは、瓦礫の海といったほうが適当かもしれない。壁も扉も天井も調度の類も、あらゆるものが壊され、崩され、砕かれ、潰され、それらの残骸がいっそ芸術的なまでに床一面を覆い尽くしてしまっている。もとの形などわかるはずもない。わかるのはせいぜい材質と、この建物は爆撃に耐えうるほどの強度を有していない、ということくらいだ。 「暴れも暴れたりだな……倒壊していないのが、これだと逆に不思議なくらいだ」 七実を除けば、ここで戦闘を交わしていたのは四人。たった四人が暴れまわった程度でこの惨状である。 しかも七実の話によると、その四人全員がほぼ徒手空拳で闘っていたというのだから恐るべしだ。 「まにわにの忍者さんは言うに及ばずですけれど――」瓦礫の海を越えながら七実が言う。「他の皆さんも、それに優るとも劣らずの使い手さんたちでしたね。一進一退、引きも切らずの見事な攻防でした」 「そんな連中を、そなたはひとりで一蹴しておるわけなのだがな……」 加えてその四人の戦闘技能のほとんどは、七実の持つ技術――見稽古によって、既に取り込まれてしまっていることだろう。 つくづく化物と言わざるを得ない。 ……いや、化物すらも凌駕する――天才か。 「まあ、仕留められたのはひとりだけでしたけどね、結果だけをいえば失敗ですよ。……あの女が邪魔さえしなければ、あとひとりくらいは逃がさなかったのに。残念です」 「……空蝉、とかいう術を使うのだったか? そなたの話を聞いた限りでは、忍術と同じようなものだという印象を抱いたが……変わり身の術と似たような技術なのだろう?」 「構造としては、まあ同じようなものでしたね。素晴らしい技術でしたけど、種も仕掛けもある分、いちど仕組みが割れてしまえば以外に脆い――というのが非常に残念な点でした」 すぐに看破できてしまいましたし、と七実は言った。 まあ、それはそうだろう。 変わり身の術とは、要するに敵の盲点を突く、相手の眼を欺くための忍術だ。 盲点を突く。 眼を欺く。 鑢七実を相手に、これほど虚しく響く言葉もそうあるまい。 「あ、そういえば」と、とがめたちのほうを軽く振り返る七実。「先ほど少し、話しそびれていたことがあったのですが」 「…………?」 話しそびれていたこと? 「七花のことか?」 「いえ、この首輪のことです」 そう言って、こんこんと指先で自分の首輪を叩いて見せる。 「島でこの首輪についてお話しした時に、わたしは確か、中身を見ないことには詳しいことはわからない――と言いましたよね」 「言っていたな」 実際のところ、それがとがめにとって一番不気味に感じている点なのだが。 わからない、と言ったのだ。 あの鑢七実が、目前の物をして、わからないと。 「それがどうかしたのか? ……というか、その首輪の中身を調べるために、わざわざここまで歩いてきたのだろう?」 「見てました、実は」 「は?」 見ていた? 「見ていたとは――何を」 「ですから、この首輪の中身的なもの――みたいな?」 「みたいな?」 疑問形? 「……どういうことだ? 中身を見たって、いったいどこで、どうやって――」 「覚えていませんか? とがめさんたちも見ていたでしょう? あの奇妙な白い空間に、まにわにの忍者さん達が勢ぞろいしていたのを」 「あ――ああ、」 成程、ととがめは思った。 最初にとがめたちが連れてこられた、あの奇妙な白い空間での出来事。 真庭忍軍十二頭領――あの空間に並んでいた連中の頭部のうち、九つを一瞬にして消し飛ばしてみせたあの爆発。あれは確かに、この首輪によるものだった。 立て続けに九回の爆破。今でも鮮明に思い起こすことができる。 あの爆発のことを、七実は言っているのだ。 爆破が首輪の機能の一部ならば、その仕掛けは当然首輪の内側に組み込まれているはず。それが発動したとなれば、必然、爆破の残骸という形で中身が外側に晒されることになる。 見て――いるのだ。 「あの時に、首輪の中身を見たということだな? しかし、なぜ早くそれを言わなかったのだ。それを見るためにわざわざここまで来たというのに、余計な手間ではないか」 「見たとはいっても、所詮は爆発の残骸でしたから。結局それほどのことはわからなかったんですよ。爆発の規模や種類なんか、わかったところで何の役にも立ちませんしね」 「むう……」もっともな言い分だった。普通に考えれば、粉微塵に吹き飛んだ物の仕組みを後から見て分かれなど、無茶な要求もいいところだ。「……何か見えなかったのか? 些細なことでも、有益な情報になりそうなものは」 「うーん。何というか、ここへ来てからいまいち調子がおかしいんですよね、わたしの眼。以前と比べて、見定めがうまくいかないというか……眼にごみでも入ったんですかね――」 ごしごしと目元をぬぐう七実。そんな原始的な理由で見損なわれてたまるか。 「ですから、わたしがあの時に見ることのできた情報といえば、どれもまだ確信的に言えないようなものばかりなんですよ。どちらかといえば、印象に近い段階というか。だからどうしても予断で話すことになってしまうので、ちゃんと調べてからお話ししようかと思っていたのですけれど――」 なるほど、裏付けがとれていないがゆえに、話すのを保留していた――ということか。 しかしそれでも、情報は情報だ。 「別にそれで構わぬよ。そなたの印象ほど、信頼できるものもないからな」 言いながらもとがめは、あの時の、赤い服の男と真庭蝙蝠との会話を思い出していた。 バランス――均衡、配分を保つための制限。 まさかあれが、七実に対しても――? 「わかりました」と七実は言い、「では、わかっている範囲で説明させていただきます。まず問題の爆破の仕掛けに関してですけれど、どうやら首輪の中をぐるっと一周するように、環状に仕掛けが施されているようですね。どこか一ヶ所でも連結が途切れてしまうと爆発するようにできているようです。――まあ、これはわざわざ言わなくとも予想できることかもしれませんが」 確かに、とがめにもそれは聞く前から見当はついていた。一部でも断ち切られれば作動する仕掛け。外すことはおろか、解体することも容易ではない作りというわけだ。 「じゃどうするの? 中身調べるっていって、壊したら爆発するんじゃ調べる以前の問題じゃない」 「解体する前に、爆破の仕掛けのほうだけをどうにかできる手段があればな……」 「例えば?」 「……外側から電気を流し込んで、仕掛けを故障させるとか」 「はい却下ー。流した瞬間爆発する可能性大よそんなもん」 「なんだ、きさまには何か妙案があるというのか」 「さあ? どうしましょう七実さん」 「さあ? どうしましょうとがめさん」 「…………」 丸投げ式。 首輪の仕組みを調べるために解体しなければならないのに、解体するためには首輪の仕組みを知らなければならない。堂々巡りだ。 とがめは余計な手間だとは言ったが、このままでは無駄な手間になりかねない。 「まあ、そう簡単に外せたら苦労はいらないわよね」否定姫が言う。「とりあえず調べるだけ調べてみて、最悪、首輪の回収だけでもしておけばいいでしょ」 いいのか、と少し思ったが、妥当な線としてはそんなところなのかもしれない。 というか、何かもう色々と大雑把すぎる。 命がかかっていたはずではなかったのか。 廊下をしばらく歩いたのち、七実が瓦礫の山の前でふいに足をとめる。ぶん、と腕を振るうと、積み重なっていた瓦礫が音を立てて吹き飛び、その向こうに一枚の扉が現れる。 「この部屋です」 広い部屋だったが、そのぶん破壊の跡も一入だった。明かりがなく、足下がかなり見えづらい。光源となるべきシャンデリアが瓦礫の一部と化しているせいだろう。 「この暗闇の中で瓦礫の上を歩き回るのは危険だな……目が慣れるまで、ここでしばらく――」 言いかけた瞬間、顔へ唐突に光が浴びせかけられ「うわぁあぁ!」と思わず叫んで顔をそむけるとがめ。何事かと目を戻すと、いつの間にか七実がこちらを向いて目の前に立っている。その手には、光を放つ円筒形の何かが握られていた。 「荷物の中に入っていました。灯りとして使う道具のようです」 言われて、とがめも自分の荷物の中からそれと同じものを取り出してみる。七実のいう通りに操作すると、先から光の筋が放たれる。なるほど、これは便利だ。 「見て見てー、幽霊ー」と自分の顔を下から照らして遊んでいる否定姫をとりあえず無視し、慎重に足下を照らしながら瓦礫の上を進んでいく。 目的の「もの」はすぐに見つかった。 若草色の着物を着た、首から上が粉々の肉塊と化している、女の死体。七実から聞いていた通りの造形。 闇口憑衣の死体だろう。 首輪はすでに千切れた首から滑り落ち、瓦礫とどす黒く変色した血肉にまみれて転がっていた。七実はそれを特に何の感慨もなさそうにひょいと拾いあげ、光をあてながら目の前にかざす。 「生きた人間に、完全に気配を消すことが不可能なように――」じぃっと、内側まで抉り、覗き込むような眼で、「造られた物にも、綻びは必ずできる。どんなに完璧に近いものでも、隙は必ずあるはずです」 観察に入った七実から視線を外し、とがめは闇口憑衣の死体に目を落とす。 この闘いが「本物」である証拠だ。 なぜ自分がこんな闘いに――などという栓のない思考については、とがめは既にうっちゃっているが、この女はどんな心情をもってして、この闘いに挑んでいたのだろうか。 七実から聞いたところによると、この女は瀕死の重傷を負わされてなお、七実の足を掴み、戦闘の意志を見せたのだという。 そこまでする意味が、彼女にはあったのだろうか。彼女にとっての何が、それほどまでに強固な意志を自身に持たせたのだろうか。 自尊心? 使命感? 忠誠心? 何にせよ、事情をしらぬとがめに推察できたことではないが……。 「…………ん?」 「何? どうかした?」 「…………いや」 横から訊いてくる否定姫に首をふって、もう一度、目の前の死体に意識を戻す。死体の全身がよく見えるように明かりを照らし、七実と同じように、その若草色の着物をじっと見つめる。 目の錯覚だとは思うが、今、ほんの一瞬だけ―― 死体が――動いたような。 「分かりました」 「え?」 七実の声だった。視線は変わらず首輪へと向けられている。 「何か分かったのか、七実」 「ええ、この首輪の外し方が」 「はぁ!?」 さらりと。 あまりにもあっけなく、七実はそれを口にした。 「ほ――本当か?」 「ええ、今度こそ間違いなく。やはり爆破の瞬間を見ていたのが幸いしましたね。あの時に見ていたものと合わせて、ようやく全体の構造を見通すことができました」 「………………」 こんな、こんな簡単に……? 拍子抜けというか、もう逆にびっくりだ。 「馬鹿な……こういう大事なことは、最終話近くになってようやく判明するのが常識のはずではないか…………」 「はい?」 「あ、いや……何でもない」 何だろう、今の台詞は。 無意識のうちに口に出していた。 「じゃあ――」 じゃあ今すぐに外してくれ、と言おうかと思ったが、方法をまず確認しておくことにした。疑うわけではないが、あっさりすぎて信用するに足りない。 「――どうやって外すのか、まず説明してくれぬか」 「わかりました」確認のためか、首輪に顔をよく近づけ、「要するに、この首輪は――――」 言いかけた、その瞬間。 ぼぅん、と。 くぐもった音とともに、七実の持っていた首輪が爆発した。 「……………………え?」 ぐらりと、七実の身体が斜めに崩れ落ちる。 小規模な爆発だったが、それはあくまで殺傷目的の爆発。首輪を握っていた右手も、観察のために近付けていた顔面も、当然、無事で済むはずもなく―― 「…………な、」 どさり。 闇口憑衣の死体と並ぶようにして、瓦礫の上へと倒れこむ、七実の身体。 火薬の臭い。血肉の臭い。 右腕と、頭部の前半分を破壊され、鑢七実は絶命した。 「…………な、…………な、…………な、」 なんだこれは。 落ち着け。落ち着け。とがめは自分に言い聞かせる。冷静に、冷静に考えろ。冷静に、状況を把握しなくては―― しかし、状況はとがめを落ち着かせてはくれなかった。 ぼぅん、と、二度目のくぐもった爆発音。 反射的に明かりを音の方へと向ける。ぼんやりとした光の中に、否定姫の姿が浮かび上がる。 ただし、首から上を除く。 金色の髪も、青色の瞳も、そこには跡形すらない。歪に抉れた首の根本からぷしゅううううぅぅぅぅぅぅぅぅと噴水のように大量の鮮血が溢れ出し、エプロンドレスを真っ赤に染め上げていく。 べしゃりと、七実と折れ重なるようにして、否定姫もまた瓦礫の一部となった。 「…………!」 とがめはもはや絶句していた。 鑢七実と否定姫。 つい今まで会話を交していたはずのふたりは、一瞬にしてただの肉塊と化した。 爆発音の余韻が、頭の中でわんわんと反響する。目眩がするのはその音のせいだけではないだろう。 ……なぜだ? なぜ首輪が爆発する? それも片方は、既に死んでいる者の首輪が。 ――いや、そっちのほうはむしろ説明がつく。七実はその首輪を使い、解体の仕方を実演しようとしていたところだった。とがめの見た限りではまだ何かをしたようには見えなかったが、もしあのとき七実が「何か」をして、それが首輪の内部を刺激したとなれば、必然、仕掛けを作動させてしまうことになるだろう。 腑に落ちないところがあるとすれば、その場合だと七実の見定めが誤っていたということになる。ああも確信的に「分かりました」と言っていたにもかかわらず、解体に失敗したというのが納得いかない。 相手はあの七実なのだ。 誤爆などで死ぬ器だとは思えない。 仮にそうだったとしても、それでは否定姫の首輪が爆発したことに説明がつかない。首輪に触れてすらいないのだから、誤爆のしようがあるまい。 だとしたら……どうなる? 可能性。 妥当性のある可能性。 「…………まさか」 首輪の爆破。 それを見るのは、これで二度目だ。 一度目は? 一度目は、何が首輪を爆発させた? 真庭蝙蝠。 これはまさか、あれと同じく―――― 「脱獄囚は即ち死刑――そんなことすら理解していなかったのですか、貴女達は」 「――――!」 誰かいる! 身構えたとがめに、黒い人影が覆い被さるように組みつく。抵抗する間もなく瓦礫の上に仰向けに倒され、衝撃に軽く絶息する。 ぴたり、と。 首にかけられる、ひやりとした両手。 当然、首輪を避けて、素肌に直接。 死体のような、体温の伝わらない手のひら。 「…………ぐ、」 動けない。 腕の力は大したことはないが――いや、これは手加減しているのだろう。振りほどけない、そして息の根を止めないぎりぎりの力で絞め付けているようだ。 「まあ、状況に逆らって逃げ出そうとするのも分からなくはない。それは恐怖から来る本能、防衛意識の現れだ。しかし、やはり迂濶と言わざるを得ないな……愚かとまでは言わないが」 ほとんど独り言のような喋り方。 声の聞こえ方から、その声の主と、とがめを絞め付けている人物が別であることに気付く。 ……二人いるのか? 暗闇の中、ぼんやりとしか見えない人影は一言も声を発さず、男かも女かも知ることができない。すぐ目の前にいるのに、顔の輪郭すらも曖昧な、虚ろな暗影の集合体。 「ねえ貴女――白髪の美しいお嬢さん。人にはすべて、与えられた役割があるべきだと、そうは思いませんか?」 ……何を言っている? 「あの人も、僕に役割を与えてくれた。しかし僕は、その役割に甘んじることができなかった。僕の思う方法で、あの人の望むものを見せてやろうとした。でも結局それはあの人が望んでいたものとは違っていて、結果的に裏切りになってしまったんだけどね……まあ、それも僕にとってはむしろ望むところだったさ。僕はその選択を後悔してなどはいない。自分の役割をまっとうしたのだと、そう信じている」 囁くように、声だけが聞こえ続ける。 すぐ近くにいるはずなのに、どこから話しているのかすらも分からない。 「しかし――僕はその代償として、果たすべき役割を失った。……いや、果たすべき役割を果たすための能力を失った。それは僕にとって、存在理由を失うに等しかった。恐怖だったよ……首を落とされるより、手足を潰されるよりも激しい喪失感に、僕は苛まされることになった。あの時に、僕は一度死んだ。……死んだも同然だった」 ……何を、 「死とはそういうことですよ、白髪のお嬢さん。しかし、僕は今生きている。生き返ったんだ。力は再び僕のものとなり、僕は再び存在理由を得た。役割を与えられたんだ。この戦場の中で、僕の果たすべき役割を」 ……何を言って、 「僕は感謝している。この殺し合いを主催した人物に。そして僕を、参加者のひとりとして選んでくれたことに」 ……こいつは一体、何を言っている? 「だからこそ、僕はここでも与えられた役割を全うしなければならない。貴女だってそうだ、白髪のお嬢さん。逃げてはいけない。これは生き残るための義務のようなものだ。義務を果たさぬ者に、生きる権利は与えられない。ただ殺されて、死ぬだけだ」 「く……は…………っ」 じわじわと。 とがめの首にかかる力が増していく。 「決断の時だ、白髪のお嬢さん」 とがめの手に、何かが握らされる。細長く、しかしずしりと重い、ちょうど片手で握りこめる形状をした何か。 なぜかその感触だけで、それが小刀であることが明確に理解できた。 「殺らなければ殺られる。死にたくなければ、その小刀で目の前の相手を殺すんだ。それは貴女にとって権利を獲得するための手段であり、同時に果たすべき役割でもある。誰にも憚ることはない。さあ、生か死か。自分のその手で選ぶんだ」 ぎちぎちぎちぎち。 その言葉を合図にしたように、首への圧力が一気に強まる。 今度こそ本気の――本物の殺意を感じさせる力。 同時に、とがめの右手が小刀を強く握りこむ。 ぶつぅん、と、頭の中で何かが弾ける感覚。 「…………っ!!」 躊躇はなかった。 渾身の力をこめて、小刀を相手の胸部――心臓のあたりを狙い、一気に突き立てる。 血とともに、肉を破壊する生々しい感触が小刀を経由して、右手へと伝ってゆく。 人影は、びくんと身体を大きく痙攣させ、直立の姿勢のまま一瞬だけ固まり、そのまま断末魔も最期の抵抗もなく、あっさりと瓦礫の上に崩れ落ちた。 「かはっ……はあ……っ! ごほっ!」 喉をおさえ、苦しげに呼吸を整えるとがめ。頭がくらくらする。酸素か、血液か。どちらにせよ、あのまま絞められていたら確実に脳内部から死んでいた。 「お見事だ。よくやったよ、白髪のお嬢さん」 ぱちぱちぱち、と、乾いた拍手の音。 「これで貴女は、生き残る権利を得た。その首輪ももう大丈夫だろうね。そこに転がっている二人のように、首を吹っ飛ばされるようなことはもうないだろう」 「…………誰だ、きさまは」 ふらつく足で、とがめは無理矢理に立ち上がる。小刀はまだ、右手にしっかりと握られている。 「見えない所からこそこそと……不愉快極まりないな。話があるなら、直接わたしの前に出てきてみろ。顔も見せられぬような相手と、わたしはこれ以上話すつもりはない」 静かに虚勢を張る。 内心では、殺されかけた恐怖に加え、今の状況にも相手の言葉にも理解が追いつかず、焦燥状態だった。 「逃げも隠れもしないよ。僕はここにいる」 今度ははっきりと、声のする方向がわかった。とがめが小刀を突き刺した死体、それを挟んだ向こう側に、ひとりの男が立っていた。 姿を表した気配すらなく。 まるで、初めからそこにいたかのように。 「はじめまして、と言っておこうか」 とがめと対峙したその男は、微笑とともに名乗りを上げる。 「僕は時宮時刻という」 「…………」 とがめの前に姿を表して尚、男――時宮時刻の醸し出す雰囲気は、余裕の一言に尽きる。 「乱暴な真似をしたことについては謝罪しよう。『それ』を見せてくれないことには、僕としては安心できなかったんでね。不意打ちで暴力的な手段を使わせてもらった。悪かったとは思うが、しかしこれは貴女のためでもある」 「だから……きさまの言動はさっきから訳がわからぬのだ。苛つかせるのが目的でなければ、そして会話が目的だというのなら、もう少し分かる言葉で話せ」 言いながらもとがめは、頭の中で思考を展開する。自分と相手との距離、相手の持っている円筒形の灯り、自分の持つ小刀、死体の位置、出口の位置と、そこまでの距離、方々に意識を巡らせる。 「何なのだこれは……わかっているというのなら説明しろ。何者だきさまは。何の目的でここにいる。さっき、わたしに何をした。今わたしを襲ったのはきさまの仲間か。なぜ……このふたりは死ななくてはならなかった」 最後の質問については、実際のところ予想はできていた。襲われる直前に思い到った可能性。加えて、時宮時刻の語っていた言葉の一部。 脱獄囚は即ち死刑――。 首輪を外すという行為が、主催者側への反抗と見なされた――ということなのだろうか。 しかし、訊かずにはいられなかった。言葉を止めてしまうと、内側から沸き上がるどす黒い何かに自分が飲み込まれてしまいそうな気がした。 しかし時宮時刻は、そんなとがめに対し、ゆるりと首を横に振ってみせる。 「そのふたりは、死んでなどいない」 「…………何だと?」 「死んだのは貴女のほうだ。白髪のお嬢さん」 その呼称をもう一度でも使ったら「その呼び方はやめろ」と言い放って堂々と名乗りを上げるつもりでいたのだが、相手の言葉にまたも理解が追いつかなくなり、絶句してしまう。 「……だから、何を、言って――」 「残念だが、僕は貴女と会話することを目的とはしていない。僕の目的は既に終了している。貴女が自分の中の攻撃性を発露させた、その瞬間にね。貴女は自分自身を犠牲に、自分が生き残る権利を得た。今の貴女として、生きることを選んだ」 「何をいっておるのだ! きさまは!」 とがめは怒号を放った。 堰を切ったように、激情の奔流が全身を支配してゆく。怒り、敵意、そして殺意。あらゆる攻撃的な感情が、とがめの身体を動かしていた。 「答えろ! 何なのだきさまは! 死んでいないだと!? ではこの死体は何だというのだ! 死んだのはわたしのほう!? ふざけた事を吐かすのも大概にしろ! 何が生き残る権利だ! 何が果たすべき義務だ! これ以上訳の分からぬ言葉で煙に巻こうというのなら、その不愉快な舌ごときさまの身体を八つ裂きにする!」 小刀を振りかざし、修羅の如き様相で時宮に詰め寄るとがめ。 血走った両眼は、もはや溢れんばかりの殺意で満ち満ちていた。 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す! こいつを殺す! とめどなく噴き上げる、火炎のような殺意。 方々に巡らせていたはずの意識も、今や目の前の相手にだけしか向いていなかった。 ほとんど盲目的なまでの破壊的な意識に身を委ねるようにして、とがめは小刀の切っ先を、殺意とともに時宮時刻に向ける。 「『それ』が、今の貴女だ」 そんなとがめとは対照的に、時宮時刻は全く揺るがなかった。 涼しげな顔で、自分に向けられる暴力の視線と凶器による威嚇を軽くいなす。 「貴女が殺したのは貴女自身だ、と僕は言っている」 そう言って、時宮時刻は足下に光をあて、目の前の死体――とがめが小刀を突き立てた人影を照らし出す。 「貴女の手によって、理知的で理性的な貴女はこの世から永久追放され、攻撃性と破壊衝動に満ちた貴女が、今の貴女として残存した――平たく言えば、そういうことさ」 闇の中に浮かび上がった死体の容姿を、とがめは視界に捉える。 心臓のあたりを大量の血で染め、人形のように空虚な顔をした死体。それが誰なのかは、記憶を探るまでもなくはっきりと分かった。 見覚えがあるどころの話ではない。 小柄な体躯。絢爛な衣装。肩口で揃えられた白髪。 それは明らかに――とがめ自身の死体だった。 ――――――――――――。 とがめの意識が暗転する。 ◆ ◆ ◆ 「今度はどうやら、うまくいったようだね――」 時宮時刻は、自分が成した作業の結果をじっくりと確認しながら、そう言った。 言葉の内容とは裏腹に、その表情には満足感や達成感などの自惚れた感情は一切見受けられない。それは彼にとって、この程度の作業が「瑕疵なく成し遂げて当たり前」のものであり、また今までに何度となく繰り返してきたものであったからに他ならない。 「しかし、念には念を入れておいて正解だったのかな。特に、この黒髪の女性。控え目に見てもただ者じゃあない……恐怖を感じないというより、恐怖という感情そのものが欠落しているような人間、といったところか。僕にとって――僕らにとって、ピンポイントで相性の悪いタイプの人間だね……まあ、それならそれでやりようはあるが」 時宮の視線の先には、先ほどこの部屋に入ってきた三人の女性が、一言も言葉を発さずに佇んでいる。 無論、三人とも死んでなどいない。 とがめも、否定姫も、鑢七実も。 心臓を貫かれてもいないし、首を吹き飛ばされてもいないし、顔面を破壊されてもいない。首輪も勿論、装着されたままだ。 ただ、三人が三人とも魂の抜けたような無表情で、虚ろな目をしている。 あたかも人形のように。 「単純な方法でこそ先手を取りやすく、成功しやすい――まさに初心忘るべからず、だ」 驚愕法、と呼ばれる催眠導入法がある。 突然相手の目の前に手をかざしたり、大きな音を立てたりすることで、対象者を呼び名の通りに驚愕させる。それによって意識に一瞬の空白を作り、その隙をついて暗示を浸透させる、という手法。 催眠の誘導法としては、初歩中の初歩の技術。 三人が部屋に入った直後、とがめの顔に突然浴びせられた光。あの光は、七実の懐中電灯からのものではなかった。 あの瞬間に、時宮時刻は想操術を施したのだ。 それも、三人同時に。 「まっすぐこの部屋へ向かってこられた時には少々気を張ったが……結果的にうまいこと待ち伏せの形にできたのは幸運だった。手間が省けたと言うべきなのかな――」 かつてとがめは、鑢七実の『眼』を制するための奇策として、暗闇という効果を利用した。 時宮時刻が七実の能力を知らない以上、これは偶然と言わざるを得ないのだが――時宮時刻もまた、同じ効果を利用したのだった。 奇策士とがめは、暗闇による一瞬の死角という形で。 時宮時刻は、暗闇の中での一瞬の閃光という形で。 完全無欠の『眼』に風穴を空け、そこから一気に瓦解させてみせた。 忍法足軽により、限界近くまで身体が疲労しきっていたこともまた、術の効き目に拍車をかけた要因のひとつ。 時宮時刻。 想操術専門集団『時宮』の実力者にして追放者。 止めを刺すには十分な――彼もまた、異形の能力の持ち主だった。 鑢七実。 その究極の『眼』によって、あらゆるものを見通し、見定め、見極め、見取ってきた彼女が、他人の『眼』によって支配されるというのは、皮肉という以外にないだろう。 もしかしたらそれは、単に相性の問題だったのかもしれないが。 七実の『眼』が、相手の能力を見極め、飲み込む性質を持つものであるのに対し、時宮時刻のそれは、相手の内部に浸透し、内側から支配する性質を持つもの。 受け取る視線と、放つ視線の違い。 更にもうひとつ。 時宮時刻の使用した技術は、対象者と目を合わせると同時に術を施すことのできる、いわゆる瞬間催眠と呼ばれる種類の能力である。鑢七実の技術――見稽古は、その技量こそ途方もないものではあるが、かといって見た瞬間にそのすべてを取り込むことのできるようなものではない。 僅かなりとも、時間が必要なのである。 見切り――見極め――見取るまでの観察時間が。 一度見れば大抵は、二度見れば磐石に――である。 更に穿ったところまで言うなら、ゲームバランスを維持するための処置として、彼女の天才性そのものにある程度の制限が加えられていた、ということも挙げられるが――そんな理由付けはもう、どうでもいいことだろう。 そんな理屈に、もはや何の意味もありはしない。 あるのはただ結果のみ。 とがめも、否定姫も、鑢七実も。 それぞれがそれぞれの幻術の中で、自らの精神を破壊され―― 支配という名の、敗北を喫した。 「くだらないな……うん、我ながらくだらない。もともと適当に言った言葉とはいえ、実にくだらない」 三人が不承島から出てしまったことは、結果からいえば失策だった。 容易には渡ってこれない――よしんば渡ってこれたとしても、待ち構えている側としてはいくらでも対処のしようのある、いわば三人にとってこれ以上ない安全区域である不承島から、いくら脱出の策を練るための情報集めという目的があったところで、安易に外に出るべきではなかったのだ。 「果たすべき役割、生き残るための義務、自分の存在理由……確かにくだらない。そんなことは、僕にとってもどうだっていいことなんだ」 ただの戯言だ、と時宮は言う。 「僕はただ、僕自身の目的を、僕自身の手で成し遂げる。それだけだ」 西東天――十三階段と呼ばれる組織を作り、世界の終わりを目論んだ、人類最悪の遊び人と自らを呼称する男。 そんな人間の思想に唯一、心の底から純粋に共感し、同調した男――。 「さてと、貴女達の実力が如何ほどのものか、とくと見せてもらうとしようか。遠慮はいらない。急ぐ必要もない。――ここからは永久に、殺戮の時間だ」 世界の終わりを望む男、時宮時刻。 彼の蒔いた戦乱の火種は、緩慢に、しかし確実に、音を立てて燃え広がりつつあった。 【1日目 早朝 赤神イリアの屋敷 H-4】 【時宮時刻@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 世界の終わりを見る 1 操想術を使い殺し合いを促進させ、世界を終わらせることが出来る者を探す 【鑢七実@刀語シリーズ】 [状態] 想操術による精神支配 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2)、キスショットの心臓 闇口憑依の支給品(確認済み) [思考] 基本 1 2 3 【とがめ@刀語シリーズ】 [状態] 想操術による精神支配 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 1 2 3 【否定姫@刀語シリーズ】 [状態] 想操術による精神支配 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2) 防弾エプロンドレスと黒縁メガネ(装備中)@戯言シリーズ [思考] 基本 1 2 3 026← 026 →027 ← 追跡表 → ― とがめ ― ― 否定姫 ― ― 鑢七実 ―
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偽装観(疑想感)《前編》 「さて」 さて、という言葉を会話の切り出し文句に使用するというのは、探偵小説のセオリーに対する皮肉を孕んだかの有名な格言の示すとおりに、文章におけるオリジナリティの乏しさと一種の語彙の少なさを露呈する恐れのある、古典的な言葉遣いとして認知している人間は実のところそれなりに多い―――ということは恐らくないだろうが、とにかくそんな思考も考察も一切なく、奇野の隣に座る少女――萩原子荻はごく自然な口調で話を開始した。 「竹取山の麓においてこのゲームの主催者のささやかな配慮としてセッティングされていたと思われるジープを見事発見・獲得した私たちはそれに乗って竹林から森の中へと移動し、今現在進行方向上にある研究施設なる場所を当面の目的地として移動しているわけですけれど、異論はありませんね?」 「………セリフがえらいこと説明臭いのは異論の対象になるのか?」 「テンポ重視です」 何だそれ。 ジープの運転席に座っている男――奇野は、あたりの大木に注意を払いながらハンドルを左右に回す。ヘッドライトに照らされて見える景色は、草と木と砂利の埋まった土ばかりで、到底道と呼べるようなものではない。普通の車であれば、走ることもままならないような悪路だ。 子荻の指示により、スピードはあまり出ていない。安全のためというわけではないだろうが、今ここに限っては、その理由でも間違いではないのかもしれない。 「同じ風景ばっかで方向感覚狂うな――この方向でいいのかよ?」 「問題ありません。少し迂回する形にはなりますけど、傾斜の方向にそって行ったほうが効率もいいでしょうし」 地図も、どころかコンパスすら見ずにそんなことを言う子荻。 さっきからずっと、手元でシャープペンシルをカチカチ言わせて遊んでいる。 「目的地に異論はないけどよ」ハンドルを切りつつ、奇野が疑問を呈する。「そこに着いたら、何する予定なんだよ」 「とりあえずは調査、探索、情報収集ですね。またなにか、面白いものでもあれば見っけもんですけど――」 くるり、と指先でシャープペンシルを回転させながら言う子荻。 「ビギナーズ・ラックに期待するのは一度だけにしておきましょう。あらかた調査が終了したら、すぐに次の場所へ向かう予定です」 「ふぅん?」奇野は少し訝しげに声の調子を上げ、「そこに腰据えて待ち伏せるとか、そういうのはないのか」 まだ誰にも荒らされていない場所だとするなら、そこを拠点になるべく動かないというのも手のひとつだと思うのだが。 「それも有効でないことはないですけれど」疑問を予想していたかのように、するりと答えを返す子荻。「今の時点では、あまりお勧めできない策ですね」 「何でだ」 「まず理由のひとつとして、私たちには『眼』があります。それから『足』も」 子荻はポケットを指で弾く仕草を見せる。『眼』というのは、あのレーダーのことを言っているのだろう。 『足』というのは、このジープのことか――。 「これほどに使える機動力を手に入れて、ひとところにジッとしているというのもナンセンスでしょう。いつまで留まっていられるかどうかも分かりませんからね。地の利を得ようというならむしろ、ひとつでも多くの場所を把握しておく方が後々のためにもなります。ウォーゲームのマッピングよろしく、ね」 ゲーム――またその言葉を使うのか。 そしてさらに『眼』ですが――と子荻は続ける。 「遠くからでも、相手のいる位置がある程度把握することができる以上、相手の先をとるのはそう難しいことではありません。堅牢な城壁に頼る必要なく、私たちは迎撃の体制を整えることができる」 アドバンテージがあります。 子荻はそう言った。 「だから私たちに限っては、こんな森の中の施設で待ち伏せなんてしても、得られるメリットは少ないというわけです。精々、リスクが少ないという程度のことですね」 「成程――ね」 一応、納得した風を装った奇野だったが、内心ではいまいち釈然としていないところが大きかった。 それは一所に留まる必要性がないことを示す理由であって、待ち伏せという選択を否定する理由にはなりえないんじゃないか――? その疑念は間違ったものではなかったが、奇野がその考え方に対し違和感を拭いきれなかったのは、子荻が有効だと考える戦略の方向性が、奇野の持つ性質と噛み合わないことが原因としてある。 『呪い名』という、性質。 ――精々、リスクか少ないという『程度』のこと――― 奇野と子荻の戦闘に対する意識は、まるで別物といってもよい。 「僕としてはむしろ、籠城作戦のほうを推したい所ですけれどね」 奇野の疑念をあっさりと代言するような声に、子荻は後部座席を振り返り、奇野はバックミラーに目を向ける。 「どうにも体調が優れないもので。今はあまり、あちこち動き回ったりしたくない気分なんですよ。本調子に戻るまでは、なるべくジッとして過ごしたいところですね」 わざとらしく疲れた声。仮病を使おうとする子供のようだった。 「あら」そんな様子を気にとめる気配もなく、子荻がそれに応じる。「それは私たちに対する恨み言でしょうか? 石凪さん」 「いやあ、そういうつもりで言ったわけではありませんけど」 くすりと、口の端だけで笑い、 「何しろつい先程まで生死の境をさまよっていたも同然の身ですから。そういうつもりで言ったほうが、むしろ間違いではなかったかもしれませんね」 「安心してください石凪さん。今はちゃんと生きていますから」 「理解してますよ。生きてなければ、僕はこんなに不調を感じてはいませんからね」 「そうですか。一応、後遺症が残らない程度には治療してさしあげたつもりですけれど」 お互いに、とてもいい笑顔を向け合う二人。 恐ろしいくらいに含みのある笑顔ではあるが。 「………」 数時間前、奇野と子荻があの竹林の中で邂逅を果たしたすぐ後に、二人はこの少年――石凪萌太と出会った。 否、出会ったというのは正しくない。奇野たちと同じく竹林の中をさまよい歩いていた石凪萌太を二人が一方的に発見し、石凪がそれに気付くより先に二人が攻撃を仕掛けた――というだけのことだ。 攻撃に際し、子荻が『生け捕り』を提案したとき、奇野は確かに戸惑いを感じた。 中途半端だと思ったのだ。 この状況で、リスクを負ってまで生け捕りにするメリットがあるのかと。不意打ちまでふっかけるくらいなのだから、殺してしまうべきではないのかと。 結果的に、生け捕りには成功したのだが。 今のところ、それが正しかったのかどうか、奇野には判断がついていない。 なぜなら奇野は、会話のひとつも交すことなく、どころかまともな戦闘と呼べるようなものさえ行わないままに、石凪の身体を封じてしまったのだから。 有無を言わさず、というやつである。 奇野の能力――『病毒』を持ってして。 呪い名がひとつ、『奇野』に属する人間は、その身体に膨大な量の毒物を仕込んでいる。 微毒から猛毒まで。 既知のものから未知のものまで。 ありとあらゆる種類の、毒を。 その能力の凶悪さは、意識を取り戻す前の石凪の症状を見れば、火を見るより明らかである。 ただし奇野が勝利(と呼んでいいものかどうかも怪しいが)を収めることができたのは、その能力のおかげというわけではない。 子荻のおかげだ。 萩原子荻の弄した策が、見事なまでに物を言った。 完全なる不意打ち、芸術的なまでの騙し討ち。 勝負ですらなかった。 甲虫を捕えるが如き容易さで、子荻は奇野を『使い』、見事標的を生け捕りにしてみせた。 雀の竹取山という、彼女にとって「地の利」に恵まれた場所であったとはいえ――― 萩原子荻。 『策士』としての技量は、尋常ではない。 「まあ、前提だけで考えすぎても仕方ありませんけどね」 子荻は事なげに言う。 「石凪さんの言うとおり、闇に伏して待つのもひとつの手であることは事実です」 戸惑いを感じたと言えば、それは後部座席で優雅な笑顔を浮かべているこの男――石凪萌太に対してもあった。 今さっき生死の境がどうこうとか言っていたが、奇野が石凪に使用した『毒』はそれほど悪質な類のものではない。即効性で意識レベルを極端に低下させることはできるが、いわば麻酔に近い働きをするもので、解毒剤を使用せずとも、数十分から数時間で自然と回復する程度の持続性しかない。 だから実際には子荻の言ったような『治療』など行ってはいないし、後遺症など残ることもまずない。つい数十分前に自力で回復し、正常な意識を取り戻したばかりである。 そうして目を覚ました石凪に対し、子荻はさっそくといった感じで、奇野にしたのと同じような『交渉』を持ちかけた。 あまりにもあっさりと、側で聞いていた奇野が呆気にとられてしまったくらいにあっけらかんと。 私たちと一緒に行動しませんか―――と。 そして結果、『石凪』は――― ――構いませんよ。 ――ちょうど、誰かと組みたいと思っていましたから。 ――むしろこっちから頼むところです。 あまりにもあっさりと、奇野たちとの共同戦線を受け入れた。 何なんだ? こいつらは――― 「ああ、いや、さっきのはほんの軽口ですから、どうか気になさらず」 少年――石凪は言う。 「さっき見せてもらった地図ですけれど、いくつかこの目で確認しておきたい場所がありましたから――できるなら僕も、積極的に移動する方針に賛成です」 「そうですか。じゃあ――」 奇野は、自分の隣に座っている少女に対しどういう感情を抱けばいいのかどうか分からなくなってきていた。 ありきたりで、適当で、ざっくばらんで、場当たり的なように見えて――― それでいて、うまくいく。 手中に収めるが如く、思いの通りに事を運ぶ。 一見すると、何も考えていないようにすら見えてきてしまうくらいに。 「奇野さんは、どうされますか?」 だから奇野は、 「俺も別に、それで構わねーよ」 だから奇野は、考えることをやめた。 「今は行き先でグダクダしててもしょうがねーでしょ。どのみち行きあったりばったりに近いんだから、サクサク行こうぜ」 詳しいことはその後でいいだろ、と、奇野は適当な感じでまとめた。 今はまだこれでいい。今は迷う必要なんてない。疑惑なんて、最初からあってないようなものだ。 考えるな、戸惑うな、躊躇するな、思考に足を取られるな。 生き残るためには、今はこれでいいはずなんだ。 「では、満場一致で決定ということで」 かちり。子荻の手元でシャープペンシルが鳴る。 「迷わず惑わず、行くとしましょう」 話している間に、東のほうからうっすらと空に色が付き始めてきているのが木々の隙間から見えていた。あと一時間もすれば十分な明るさが得られることだろう。 そうすれば一層、他の参加者とのエンカウント率も高くなってくる。 本当の戦いは、まだこれから先か―――。 それからしばらくは、ただの雑談の時間となった。 「それにしても、山道の運転は疲れますね」 「否定はしねーけど、運転してるのは俺だからね」 「助手席には助手席なりの苦労があるんです」 「ほう、何だろな」 「ガタガタしてお尻が痛いです。何とかしてください」 「助手席関係ねーだろ! しかも確実に俺のせいじゃねえ!」 「僕としても何とかしてほしいものです。車に酔う体質ですので」 「文句あるなら運転代われ」 「奇野さん、着くまで寝てていいですか。私、もう眠くて」 「寝たら死ぬぞ」 「おやすみなさい」 「起きろコラ」 「じゃあ僕も。おやすみなさい」 「てめーら!」 言いあっている内に、唐突に道が開けた。森を分断するような一本道が、月の降りていく方向へとまっすぐに上りの傾斜を作っている。 その向こうに巨大な壁のようなものがそびえ立っているのが、薄闇の中にぼんやりと浮かんで見えていた。 ◆ ◆ ◆ 「まるで城壁ですね」 目の前にそびえ立った無骨なコンクリートの壁を見上げながら、萩原子荻は呟いた。奇野はどちらかというと、城塞よりも刑務所あたりを連想するなと思っていた。どちらにしても、第一印象としてこの向こうにまっとうな施設があるなどとは普通思うまい。 鋼鉄性の絶縁扉を抜けて中に入ると、研究棟らしき建造物が正面に見えた。窓も何もない、巨大なサイコロのような建物が並んで四つ、静かに存在している。 「堕落三昧斜道卿壱郎研究所――正式名称、斜道卿壱郎数量論理学術置換ALS研究機関。知ってるというほどでもありませんが、話に聞いたことくらいはあります。あの玖渚機関の息のかかった、随分と『閉鎖的』な研究施設―――まあ、ここが本物かどうかは分かりませんけどね」 歩きながら子荻が独り言のように言うのを、奇野は隣で聞いていた。やたら強調して言ったように聞こえたが、研究所が『閉鎖的』なのは当たり前のことなんじゃないのか………? 壁内部の敷地面積は思っていたほど広くなく、徒歩での探索も可能そうだった。ちなみにジープは入口から少し離れたところの森の中に駐車してある。一応できる限り目立たないようにはしたつもりだが、あのでかい車体では気休め程度にしかならないだろう。 「研究所っつーと、何か怪しい匂いがするよな」 「そうですか?」 「山奥の研究所にはロマンが詰まってんだよ」奇野はなぜか嬉しそうだった。「エイリアンみたいな実験動物がケージの中にひしめいてたり、秘密の地下室に人食いゾンビの群れが蠢いてたり、変質したミトコンドリアが巨大化して襲いかかってきたりするんだよ」 「変質したミトコンドリアがロマンですか」 軽く引いたような笑いを浮かべる子荻。 イメージが貧困すぎる。 一番手前の建物の前まで到着すると、子荻は奇野と石凪のほうを振り返り、 「では、各々の調査対象を決めましょうか」 と、自分の後ろを右手で示す。 「まずは建物の内部。あまり時間を割くのもアレですし、一棟につき約三十分の割り当てでいきましょう。私が一番手前のこの建物を担当しますから、奇野さんは二番目、石凪さんは三番目をお願いします。三十分経ったら、またここに集合ということで」 「あれ………? 皆バラバラに調べんの?」 「そのつもりですけれど、何か」 問題でもございますか、と言わんばかりに小首を傾げる子荻。時々こういう仕草を見せられると、何かわざとやっているようで微妙に腹立つ。 いつ何が起きるか分からないし、いつ敵が来るのかも分からないような状況なんだから、全員一緒に行動したほうが安全なんじゃないのか―――と奇野は思っていたが、それを台詞として口に出してしまうと、自分がヘタレチキン的なポジションに格付けされてしまうような気がしたので、とりあえず発言するのはやめておいた。 こんな所で単独行動とか、死亡フラグの臭いがプンプンするんだけどな………。 どうやらこの女子高生、ミステリの類は嗜まない種類の人間であるらしい。 「ただそうすると、突然の敵襲が心配ですね」 口を開いたのは石凪だった。 「簡易レーダーを持っている子荻さん以外の僕たちに敵の接近を察知する術はありませんし、互いの連絡手段もない。この状況でバラバラに行動するというだけで既に危険な香りがするのに、不測の事態に対し無防備すぎると思います。正直なところ不安です」 「………」 またしても、奇野の押し留めた不安をあっさりと代言してしまう石凪。 何この得も言えぬ敗北感。 「心配無用です」 そういって子荻は、デイパックから長い黒色の物体を取り出した。腕よりも長いそれを、平然と奇野たちの目の前に掲げる。 「確認し次第、私がすべて迎撃してさしあげますから」 「………」 狙撃銃――いわゆるスナイパー・ライフル。 もともとは石凪萌太のデイパックに入っていた武器だったが、気を失っている間に子荻がこっそり掠めとっていたものだ。「私は普通の女子高生ですから」などと言っていた少女はどこへ行ったのやら。奇野は微かに苦笑した。 石凪がさらにもう一歩踏み込む。 「僕ら以外の参加者がもともとこの場所にいて、既にトラップが内部に仕掛けられているという可能性は?」 「時間的に見てまずありえませんね。私たちがこのエリアに入ってきたのが、午前4時13分22秒。開始時刻が午前零時ですから、 所要時間もそれと同じ。その時点で確認しましたが、レーダーが示す同エリアの反応は私たち3人だけのものでした。そんな短時間に気の利いたトラップを仕掛け、あまつさえエリア内部から脱出するなんて芸当、よほどの変態でない限り不可能です」 ちょっと待て、何でトラップの話に変態が関わってくるんだ。 「さらにもうひとつ、わざわざトラップを仕掛けてまで造り上げた領域を、速攻で捨てて外へ移動する理由がありますか?相手は敵がレーダーを持っているなんて思ってもみないでしょうし、それこそ相手が罠にかかるまで『籠城』することを選択するはずです。 そもそも私なら、入口にこそ罠を仕掛けるでしょうね」 ああ………だから扉抜ける時「お先にどうぞ」とか言って先に行かせたのね………。 さりげなく人を毒味役に使いやがって。 ちょいちょい抜け目無え真似すんなこの女。 「他に質問は?」と尋ねる子荻に、奇野は無言で、石凪は肩をすくめてそれに応える。奇野としては質問がないというより、突っ込み所を整理しきれなかったといった感じだったが。 「では時間も惜しいですし、探索開始といきましょう。鬼の居ぬ間に御神託――ところで奇野さん、神を信じますか?」 「はあ?」 宗教勧誘? いきなり何言い出すのこの娘。 「いや……信じてはいないけど」 そうですか、とにっこり笑い、おもむろに顔を近づけてくる子荻。そして、 「ひとつ約束してください」 奇野の耳元で、そっと囁くように、 「何があっても絶対に、私を疑うことを止めないでください」 と、言った。 奇野が尋ね返す間もなく、子荻は長い黒髪をふわりと翻しながら背を向け、サイコロめいた建物の中へすたすたと入っていってしまった。 「………?」 奇野は首を傾げた。 何だ、そりゃ? 信じてくださいでも、疑わないでくださいでもなく―― 疑うことを、止めるな――? どういう意図の言葉だ、それは………。 ぽん、と、 唐突に肩を叩かれ、思わずびくっと身を震わせる。振り返ると、いつの間にか背後に移動してきていた石凪萌太が、奇野の肩に手を乗せながら、影を含んだ笑顔を浮かべていた。 「僕たちも行きましょう。いろいろと不安はありますけど、外部からの不安要素については、あの娘に任せておくことにしましょう。見た感じ、ただ者という訳ではなさそうですし――」 信じましょう、と石凪は言い、奥の方へ続いて並ぶ建物へ向かって、足を進める。 「信じましょう――ね」 奇野はその言葉を反芻してから、前を歩く少年の後に続いて歩き始めた。 信じろと言われて信じることは、不可能に近く難しい。なのに疑うことは、言われなくともこんなに自然。 疑惑は無限で、信仰は一瞬。だから即物的な人間ほど、信じるということに幻想的な価値を見い出そうとする。 疑わない自分を信じ、信じ続ける自分を疑わない。盲信という名の無限の中で、倒錯しきった価値感に溺れ続ける。 信用とはただの無関心だとは、よく言ったものだ。 「ただ疑うのもただ信じるのも、結局はバカのすることなんだよな……」 奇野は誰にともなく、そう呟いた。 適当な言葉だった。 ◆ ◆ ◆ 二人とも無言だった。 萩原子荻が第一棟内に入ってから、奇野と石凪は互いに一言も喋らず、次の建物へ向けて歩いていた。単に交わすべき言葉がなかっただけなのかもしれないし、何か言うべきことがあったからこそ、あえて何も言わなかったのかもしれない。 もっとも現実的に考えれば、互いに警戒し合っていただけのことなのかもしれないが。 『殺し名』――石凪萌太。『呪い名』――奇野頼知。 異端中の異端と、異形中の異形。 沈黙を生むには、十分に足る組み合わせ。 「………」 奇野は自分の能力について、子荻には既に(曖昧にではあるが)話してある。子荻が竹取山の中で論じていた、参加者のバランスと制限についての話は、奇野の持つ能力が健在だったことを根拠としたものだったのだろうが――ただ奇野は、その話に関わる最も重要な部分をひた隠しにしている。 奇野は自分の身体に制限が加えられていることに、ゲームの最初から気づいていた。 今の奇野頼知が使用できる――他人に『感染』させることのできる毒物の種類は、通常の時と比べ、極端に少なくなっている。使用できないと言うより、単純に『ない』のだ。すっぼりと抜き取られたように、大量の『毒』が奇野の体内から消滅させられている。 こういうのも一応、解毒というのだろうか。 奇野が使用することのできる『毒』の数は、今や百種類にも満たない。 体力のほうには、何の制限も加えられていないとはいえ――― 奇野にとっては、圧倒的すぎる制限である。 だがそれは同時に、奇野を安心させる材料でもあった。奇野にこれほど絶大な制限が加えられているということは、他の参加者――例えば隣にいる『石凪』にも、同様に制限が加えられているということ。実際、奇野たちがこの石凪を仕留めることができたのも、不意打ちの策が成功したことの他に、『殺し名』としての戦闘能力がある程度削がれていたことがあるのだろう。 加えて今は、回復してきているとはいえ、奇野の『病毒』が効いている。 油断さえなければ、簡単に殺されることはないはずだ。 「………ふぅ」 考えている間に、第二棟――奇野に割り当てられた建物の前に到着する。第一棟より一回り小さい。入口の造りは同じで、見た目としては自動ドアのような感じなのだが、どうやら手動で開ける必要があるらしい。扉の脇に数字キーのついたパネルのようなものが設置されていたが、押してみても何の反応も示さない。機能していないのだろうか。無言のまま中に入ろうとしたところを、「ところで奇野さん」と、後ろから唐突に呼び止められる。 奇野はとっさにサングラスを装着し、それをつい、と軽く押し上げながら、長髪を風になびかせるようにして振り返る。 「ヘイ、何かなボーイ」ばさあっ、と前髪を派手にかき上げ、「ひょっとして今、俺の名前を呼んだのかい?」 「無理矢理にキャラ作ろうとしなくてもいいんですよ」 ぐさっ。 「あのお姉さん――萩原さんですけど、気をつけておいたほうがいいと思います」 くそ、火傷覚悟で頑張ったのに。 氷河期召喚しちまったじゃねえか。 「あー……気をつけるって何に?」 「あの人は少なくとも、僕たちと相互関係を築こうなんて微塵も思ってはいませんよ。言っていることが、嘘とか本当とかの次元じゃないんです。魂がまるで籠っていない」 「………さっきは、信じましょうとか言ってなかったっけか?」 「信じたほうが効率的だったというだけの話です。数の利が欲しいのは僕も同じですし――今はなるべく、誰とも戦いたくはないですから」 「………死神が」 「元・死神ですよ、奇野さん」 石凪は笑う。笑顔の他に、表情を知らないといった風に。 「何を殺し、何を殺さないかは僕自信が決めます。『殺し名』も『石凪』も関係ない。こんなゲーム、真面目に参加する気なんて最初からありませんよ。ただ――」 あなたはどうか分かりませんけどね、奇野さん――と、石凪は静かに言う。 笑顔だが、目が笑っていない。 射すくめるような視線を、遠慮なく飛ばしてくる。 「………何だかんだ言って、結局根に持ってんのか?」 少し考え、奇野は虚勢を張ることにした。 「熱くなんなよ、ガキ。こーゆー場合、『内輪揉め』が一番の死亡フラグだってことくらい分かってんだろ? 無駄なことに燃料使うなって。今はお互い――」 「浅野みいこ」 不自然なくらいに感情の籠らない声。 「覚えていますか? この名前」 「………?」 浅野――みいこ? 誰だ? 聞き覚えはある………ような気はする。それも割と最近。みいこさん――誰かがそう呼んで………みいこさん………みいこだから、みーちゃ―― 「あ」 「いつぞやは、僕の身内がお世話になりました」 ぺこりと、慇懃に頭を下げる石凪。奇野にはもちろん、その仕草は皮肉以外の何にもとれない。 ………身内だと? 「誤解しないでくださいね。別にそのことを理由に、あなたとここで敵対しようだなんて思ってはいませんから。それとこれとは別、というやつです。ただあなたにとって、僕は全く縁のない相手ではないということを、ゆめゆめお忘れにならないよう………ああ、それとついでにもうひとつ」 そして実際、ただのついでと言わんばかりの軽い口調で、 「哀川潤もここに来ていますよ」 「………!」 「心ばかりの忠告ですけれど――哀川潤はおそらく、あなたを敵視するでしょう。十三階段の十二段目、《病毒遣い》、奇野頼知をね。後から恨み言のないように言っておきますが、僕は彼女を敵に回してまで、あなた達と仲良しこよしでいるつもりはありませんよ。僕が誰を殺すかと同じく、誰を味方とするかもまた、僕自身で判断させていただきますので、そのつもりで」 言うだけ言って、石凪は奥の建物の方へと向けて歩き始めた。すたすたと、軽やかな足取りで奇野から遠ざかっていく。 「………………けっ」 そんな後ろ姿を最後まで見送ることなく、奇野は目の前の無骨な絶縁扉に手を掛けた。 ずずぅ、という重々しい音とともに扉が開かれ、内側と外側の絶縁が解き放たれる。ひんやりとした風が中から吹き付け、それが肌を僅かに粟立たせる。 いっそのこと、異界にでも通じてりゃいいのに―――そう奇野は思い、中へと一歩、足を踏み出した。 それもまた、貧困な発想だった。 020← 021 →021 ← 追跡表 → ― 奇野頼知 ― ― 萩原子荻 ― ― 石凪萌太 ―
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【名前】水倉神檎 【出展】新本格魔法少女りすか 【種族】魔法使い 【性別】? 【声優】 【年齢】 【外見】 【性格】 【口調】 一人称: 二人称: 【呼称】 [[]]→ 【特異能力】 【備考】
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/4398.html
156 名前: NPCさん 04/09/12 11 54 12 ID ??? トーグスレにて、 海外の日本の差別ネタサプリ(国内発禁、そのせいで国内サポートが 不可能になった)を持ってることを自慢したがるヤツが出て、困って います。 つまらんことはやめろとか言うと、英語コンプレックスがあるとか、 「そういう話も、さらりと受け流す寛容さが、TRPGには必要だ」 とか、「差別ネタを、人に見せたい自分を特別視するのは、同じ差 別だ」とか言い出してます。 困ってます・・・。 159 名前: NPCさん 04/09/12 12 42 53 ID ??? 156 西尾玄一? 160 名前: NPCさん 04/09/12 13 03 52 ID ??? 156,159 本当にリアルで西尾玄一と知り合いなのならば… 殺せ。俺が許可する。方法は問わない。とにかく確実にな。 161 名前: NPCさん 04/09/12 13 11 31 ID ??? 西尾玄一って誰さ? Goole先生に聞いても教えてくれなかったよ。 162 名前: NPCさん 04/09/12 13 28 20 ID ??? ../1068/1068466676.html#485 この辺か? 163 名前: NPCさん 04/09/12 14 03 31 ID ??? うむ西尾玄一が困ったちゃんだと理解した。 ここで語るとスレ違いだが。 164 名前: NPCさん 04/09/12 14 10 31 ID ??? 161 元wォーロック誌編集で、オレ式洋ゲー厨の老害DQN。 編集時代にライターの原稿を勝手に書き換えてヤスキン批判したり、Torg翻訳の 妨害に自作訳や個人輸入したサプリを許可なく販売したり、と悪行は枚挙に暇がない。 なお馬場尊師も西尾の配下。馬場理論はもともとNifty内での西尾とMヴィエの派閥 争いの際に、西尾側についた尊師が細江叩きのために捻出したもの。 スレ32