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480: 名前:+椎名+☆2011/12/28(水) 11 54 05 「はぁっ……!」 私は目を覚ました。 …夢? 私は気がつくと汗だくになっていた。 そしてそばには鈴地とリリスちゃん。 「雪奈、大丈夫か?」 「雪奈ちゃん、うなされてたよ…それにすごい汗……」 私は二人の顔を見ると少し安心した。 「うん、大丈夫…でもどうして?」 「もう8時過ぎてるのに雪奈ちゃん来ないから心配になって…」 そっか… 8時…つまりもうここでも殺せることができる時間帯。 顔を知られた私を心配して…… 「…今日から…3日目だっけ…?」 そういえば忘れてた。 このゲームは7日間、 7日間の醜いゲームなんだ。 7日間で殺し合うゲーム…… 「雪奈、俺の後ろに隠れててもいいんだぞ?」 「ううん、それに鈴地も顔知られてるから危険でしょ?」 今私達のチームで顔を知られているのは私と鈴地だけ。 そして相手は正式発表じゃないけど十六夜君… 残り人数は参加者が6人、 管理人チームが5人… 少しこちらが有利だ。 でもまだわからない。 正式発表じゃないから私達以外は十六夜君の事を知らない。 ここは…協力してもらおうかな… でも誰に…… 485: 名前:+椎名+☆2011/12/31(土) 14 58 35 「…あのー、葉山さん。ちょっといい?」 …? 教室に向かう途中、誰かが私を呼び止めた。 確か…同じチームの…… 「安部さん?」 安部さん… このゲームが始まってから話はあまりしてないけど… 深刻そうな顔をしてる。 「ちょっと話があるんだけどいいかな?」 私は安部さんに連れられて安部さんの部屋に行く。 とりあえず安部さんは相手にまだ知られていない。 だからここが安心なのだろう。 部屋は窓も扉も完全に閉めきり、 誰も来ないように鍵も閉めてある。 誰も部屋の近くにいないことを確認すると ベッドに座り、話をし始める。 「ねえ、1つ聞いていい?」 「何かな…?」 「…何であの人と一緒に行動してるの?」 あの人…? 「あの人って?」 「あのリリスとか言う人。敵チームなんでしょ?」 …! そういえばみんなあの日のことを知らないんだ… だから敵と一緒に行動してる理由なんてわかるはずもなかった。 491: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 14 15 59 私は安部さんに全て話した。 あの夜に起こった殺しあいのことも。 「ふーん…そんなことがあったんだ」 「うん…だからリリスちゃんは…」 「信用出来ない」 「えっ…?」 「敵だったんでしょ?なら信用出来ない。 いきなり仲間になって…不意打ちとかあるかもよ?」 「そんなことない!それにリリスちゃんは もうゲームに参加できない…」 「嘘だったら?」 嘘…? 「参加できないとか言うのが嘘で 実は殺そうとして騙してるんじゃ…」 「それはない!」 私は強く口論した。 ありえない。リリスちゃんが騙すなんて… 絶対…ありえない! 「なんで言いきれるの?確証はないんでしょ? 敵なんか信用したら自分が殺されるのよ? それに、暁君の腕の怪我…あれ、あの人がやったんでしょ? それに田中君の殺し方も…残虐だったじゃない」 「………」 私は黙っていた。 確証はない。 腕の怪我も田中君のことも事実だ。 でも…嘘をついてるようには思えない。 だって…弟想いのいいお姉ちゃんだよ? 「…葉山さんは同世代の友達と思ってるんでしょうけど… 私は絶対あの人のことなんか信用しない」 ……ん? ちょっと待って…… 「あの…安部さん?」 「ん…何?」 「リリスちゃんは同世代じゃなくて24歳だけど……」 「え…」 安部さんは硬直する。 私も最初は同じ年頃と思ったけど… 「は?24!?敵のうえに年齢までさばよんでるの!? 結構歳いったおばさんじゃない!」 「…おばさん?」 その時、入り口のドアが開いた。 そこにいたのは…不気味に微笑むリリスちゃん… ってか怖い! 「ちょっと…あんた鍵かけて…」 「鍵?あー…これで開けちゃった♪」 リリスちゃんの手には針金… ってか泥棒紛いすぎる! 「そんなのどこから…」 「それより、安部さんだっけ?私のことなんて言ったのかな? お…?」 リリスちゃんは安部さんが逃げないように袖を握る。 それも今にも引きちぎれそうな力で… それにリリスちゃんの顔は異様なほど笑ってる。 「お…お……」 「『お』…?」 「お…姉さん…かな?」 「…合格!」 袖を放す。 安部さんはこっちにぺこと軽くお辞儀して部屋を出ていった… よほど怖かったんだね…… あれ?でも……聞いてたってことは… 「リリスちゃん、聞いてたの?」 「…うん、最初からね。雪奈ちゃん達が部屋に入っていくのを見 て…ね。 でも大丈夫。…私が敵だったのも…二人のことも本当だし…」 そう言って一足先に部屋を出ていく。 その背中はどこか悲しそうな感じがした。 492: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 14 47 33 ~リリスside~ 私達は先に行こうとした。 でも雪奈ちゃんがさっきから追いついて来ない。 私は気になって引き返した。 すると誰かに話しかけられているのを見た。 こっちのチームの子じゃない… あれは…十六夜に襲われてた女の子? すると、彼女と雪奈ちゃんはとある部屋に入っていった。 鍵もかけているみたい… 私はドアにもたれかかってずっと話を聞いてたの… 聞くつもりはなかったけど… その話は私のことについてだとわかった。 あの子は…私を信用できないって言ってたっけ…… 「それに、暁君の腕の怪我…あれ、あの人がやったんでしょ? それに田中君の殺し方…残虐だったじゃない」 残虐… 聞き慣れてるはずの言葉なのに深く突き刺さる。 いや、何か違う… 聞き慣れてるけど…管理人チームに言われる『残虐』と この子達に言われる『残虐』は何か違う… 私は…田中君を殺すことを楽しんでいた。 最後は…首を切り落とした…… そして暁君も…痛かったのかな… だめだよね…人殺しを楽しむなんて… 私には…あの子達といる資格なんてない。 そういえば…十六夜も言ってたっけ…… 『管理人チームのメンバーを相手に全員教えると 裏切り者として…本当に死ぬ』 管理人の力でも生き返ることが出来ない。 本当に死ぬ…… …私は……それを…する。 本当に死ぬのは怖いけど… あの子達と一緒にいたら…… …ううん。もう…いいんだ… …敵なのにあんなに仲良くしてもらって… 私には幸せすぎることだよ… その幸せをくれた雪奈ちゃんと暁君には…勝ち残って欲しい。 でも…いずれは…… ううん、今は考えないことにしよう… 龍…ごめんね? もう一度この世界に生かしてあげられなくて… 代わりに…龍が寂しくないように お姉ちゃんもそっちに行くから…… 493: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 14 58 30 私達はその後教室に向かった。 …昼休み…… 昼休みに…管理人チーム全員の名前を教える。 今は丁度9時。 そして昼休みは12時半。 12時半の昼休みに全員の名や場所を教えると… 最後の一人を言い終えた時、 その命は尽きる。 二人の前で…死ぬのかな…… 二人はどう思うのだろう。 いっそのこと二人の前で消えるより どこかで一人で消える方が… 二人も悲しまないかな。 そもそも悲しんでくれるかな… …でも二人のためなら仕方ないこと。 私の命が尽きるまで…あと2時間半。 494: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 15 10 28 ~雪奈side~ 今は一時間目の途中… さっきの話を聞いてからリリスちゃんは上の空。 やっぱり…辛かったのかな… 信用されないことは辛いよね。 リリスちゃんはペン回しをし始めた。 が、いつもとは違い、落としまくる。 よほど気になってるのかな… でも私は信じるから… なら今までよりさらに信じないと! 「では、ここを…葉山さん」 「え?」 いきなり当てられ、私はびっくりして立ち上がる。 全然聞いてなかった… リリスちゃんも鈴地もこっちに注目している。 「えーと…あ、アイドントノウ?」 「…葉山さん、今は理科ですよ……」 先生に呆れられ、生徒達も笑う。 しかも質問にI don t khow(私は知りません)と答えたのだ。 笑うに決まってる。 「ふふっ…」 あっ… リリスちゃんも笑ってる! …よかった……間違えて。 いや、よくないのか… 495: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 15 24 28 休み時間… 「雪奈ちゃん、何?アイドントノウ?って!」 「本当、俺より一個年上なのになー」 う… 「い、いや!話聞いてなかったの!」 もう… まさかこのゲームでバーチャルにまで笑われるとは… 「くくく…やべ、腹いてぇ…」 「れ、鈴地酷い!ふーんだ!もういいよ。 次の授業さぼってやるー!」 私はそう言って教室を飛び出した。 酷いよ…あの二人! そんなに笑わなくても… さぼるって言ったけど…どこで… そうだ、屋上……! あそこならサボるのに最適! 何度かサボったことはあるけど… 保健室は消毒液臭いから…苦手かな。 でも…それ以外になぜか保健室が嫌い… 小さい時も身体測定とかで泣いてたとか言われたし… とにかく保健室は…なんか嫌い。 だから屋上でサボる! 496: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 15 37 40 ~リリスside~ ふふ… さっきの雪奈ちゃんの珍回答面白かったなぁ。 明るい気持ちになれた気がする。 でも…雪奈ちゃんサボりに行っちゃった。 「もう、暁君が笑うから…」 「赤星だって笑ってただろ?」 だって面白かったんだもん。 やっぱり、雪奈ちゃんには周りの人を明るくする力があるのか な。 でも、サボりに行っちゃった。 私が死ぬまでもっと一緒にいたいのに… 二人と… 「ねえ、暁君。大丈夫かな?」 「ん?雪奈か?心配ねーだろ。 保健室なんか怪我する奴くらいしか来ないし」 保健室かー… 私もサボりに行きたい… 雪奈ちゃんと一緒にいたいな…… 「ねぇ、暁君もサボりに行く?」 「あー、俺はサボりたいけど…… サボりすぎて成績不良だから…」 頭いいのに成績不良って… まあいいや。 なら…私も雪奈ちゃんが帰ってくるのを待とう。 『キーンコーンカーンコーン』 授業開始のチャイムが鳴る。 今は…9時55分。 少しずつ確実に死へと近づいている。 私の命が尽きるまで…あと2時間35分。 7日間の醜いゲーム。 続き29
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1: 名前:モネカ☆09/14(火) 21 07 17 今日も放課後の教室から聞こえる…… 「1枚2枚3枚4枚…あと28枚足りな~い!」 CAST 野々村陽菜 〔ののむらひな) 内緒で漫画家をやっている。 自分を見立てた漫画を描いている。 黒川瞬希 〔くろかわしゅんき) イケメンツインズの一人。 2: 名前:モネカ☆09/15(水) 17 22 37 陽菜からの目線 「どーしよどーしよどーしよぉ!?」 あたし陽菜! 新人漫画家です! だけど恋に輝く乙女でもあるのです! でも明後日〆切りなのに28ページも書いてないんです! 「や、やばいぞ。これは史上最強にやばいぞ!」 「だれか居るのか?あけるぞ。」 3: 名前:モネカ☆09/15(水) 17 52 04 「あっ!待ってください!」 急いでかたずけなきゃ! 「どうぞ。」 「入るぞ。」 ビ、ビックリした~。 「お前今何か隠しただろ?」 「そ、そんなことありませんよぉ?」 「じゃあ手出してみ?」 「わかりました。ほら!」 ドサドサッ あ……落ちちゃった。 どうしよう。 「ほーら。なになに?」 見られちゃったぁ! 「お前漫画家ごっこしてんのか?漫画家には絶対なれないのに。」 「あ、あたしは正真正銘漫画家です! 言っちゃった……。 「マ、マジで!?」 「はい……?」 な、なんだろう? 「俺、一回だけでいいから漫画家に会いたかったんだ。」 「そ、そうなんですか……」 こんなカッコイイ人に「会いたかったんだ」なんて言われると好きになっちゃうよ~! 「握手してくれ!」「その前にこのこと絶対に誰にも言わないでください。」 「わかったから。な?」 ギュッ 暖かい……。 この気持ちは何?好きになったの? …… すきになったんだ! 「名前はなんていうのですか……?」 「あぁ。俺は黒川瞬希だ。」 瞬希くんか。 4: 名前:モネカ☆09/15(水) 17 54 08 瞬希くんのためにも頑張ろう。 続く 6: 名前:モネカ☆09/16(木) 18 30 55 ー瞬希からの目線ー 初めて会ったんだよな~。漫画家。 あいつを見てるとますます漫画家になりたくなるな。 俺はそう思っていた。 「よし!そうと思えばまず行動だ!」 俺は急いで着替え、しん●くにいった。 「あった!まずこれから買わなきゃ。」 漫画家になるための参考本を手にとってかごに入れた。 ウイーン 自動ドアをスッと通り抜けて家まで走る。 「ついたー。」 目の前には大きな平屋の家が建っていた。 その家には陽菜が住んでいる。 ピーンポーン 「は~いどちら様ですか?」 この声は確かに陽菜だった。 「俺です!黒川です!」 「く、黒川君!?何で家知ってんの?」 「まあまあそこはいいから。」 俺は決心をきめ、言った 「明日土曜日ですので原稿の手伝いさせてください!」 「お、お願いします!手伝ってくれるなら!」 やった~!俺!明日手伝えるぞ! 「じゃ、じゃあな」 照れくさいけど手伝えるならそれでいい。 7: 名前:モネカ☆09/17(金) 19 50 46 陽菜の目線 「今日は瞬希くんが来る日だよね……。」 わたしは緊張しまくっていた ピ~んぽ~ん 「俺だよ~!」 「……!は~い!」 ちょっとびっくりした! まず開けて上がらせるんだよね。 「上がって!」 「うん!」ギュッ 「ひゃっ!」 そんなに握られるとドキドキ感が伝わっちゃうじゃん 「ご、ごめん」 「だいじょうぶだから。」 今から原稿書くのに集中だ……! 9: 名前:モネカ☆09/18(土) 09 39 31 カリカリカリッ サッサッサッ 陽菜の部屋から丸ペンの音と筆の音がまじりあう。 「つか、これどっかで見たことある女の子じゃね?」 「ギク……!」 その絵は陽菜そっくりの女の子の絵だった。」 「うーンどっかで見たことあるんだけどなー。」 「さあ?まあ私の絵ですから……」 〔どうしよう!?話をそらせなきゃっ!〕 「そんなことより原稿に集中集中!」 「そうだな!」 危なかった~! 「3枚目終了!」 「ですね~!瞬希君!」 ビビった陽菜であった……。 12: 名前:モネカ☆09/18(土) 11 10 44 「瞬希くん27枚目突入したよ~~!?」 「やったな!」 陽菜と瞬希は喜んだ。 だが2人は気付かなかった。このあと災難が起きることに… ―――――――――――― こんにちは! もう一人登場人物がふえます! 村井甜羅 〔むらいてんら〕 この子も漫画家で瞬希の幼馴染だった。 陽菜の向かいの家に住んでる。 甜羅もだれにも漫画家ってことは話していない 美少女だ 続き ピ~んぽ~ん 「はーい!」 陽菜が勢いよく開けると 村井さんがいた。 「こんにちは!さっきお母様が出って言ったから 1人かな?って思ってきたんだけど…。」 ドアの向こうに村井さんがいた。 瞬希が部屋から出てきた 「陽菜さんだ……れ?って甜羅!?」 「瞬希!?」 「瞬希さん知ってるんですかぁ!? 14: 名前:モネカ☆09/19(日) 12 08 02 甜羅からの目線 やっぱり……瞬希さま 15: 名前:モネカ☆09/19(日) 12 14 59 瞬希様が来ていたのね! でもあたしたちの間に邪魔ものが入りやがった! そうだ!陽菜からみて瞬希様を悪者っぽくすれば 陽菜は離れるでしょーね! あったまいい~! 「いたの!?瞬希!」 「お、おう!」 「村井さん!瞬希君のこと知ってるんですか!?」 「マ、まあ、幼馴染だからね!」 「あ、あがってください!」 「ひつれいします!」 さああたしの出番よ! 16: 名前:モネカ☆09/19(日) 14 36 24 甜羅からの目線 「い、今漫画を描いていたところで……。」 「気にしないでね!そういえばトランプしない?」 「うん!2階にあるから取りに行ってくるね。」 今から作戦に入んないと! がたっ ガシャン 「こ、こぼれちゃった~!どうしよう!」 かけね。さあ瞬希様はなんて言うでしょう! 「だ、大丈夫か?俺が何とかするから。」 やっぱり。私の思うとおりだわ! 「持ってきたよーってどうしたの!?インクがこぼれてるよ!?」 「俺がこぼしたんだ。」 フン!どうよ!嫌うでしょ! 「大ジョーブ!気にしないで!」 はあ!?インクがこぼれたのよ!?怒んないの!? 「じゃあ拭いたらやろっか。」 ―――――…… 「じゃあまたね~!」 これで二人っきり。 「明日瞬希くん宅行っていい?」 「おう!いいぞ!」 やった!これであなたは私のもの! 20: 名前:モネカ☆09/20(月) 12 31 24 瞬希からの目線 今日は甜羅がくるな~ 最悪。断わっておけばよかった……。 しゅーんきくん!てーんらだよ! 来た……。うぜ~……。 「おう!あがれ!」 21: 名前:モネカ☆09/20(月) 12 43 57 「ひつれいしまーす!」 ―……… 「あのねぇ。あたしねぇ瞬希さまにぃ お話があるのぉ。聞いてくれるぅ?」 実はこいつ、おれの前だけぶリっこ口調なんだ。 うざったるい。 でも普通に返さないとやばいから…… 「いいぞ!何でも聞いてやる!」 「あたしねぇ瞬希様とぉやってみたいなぁ~。」 は?こいつ何言っちゃってんの? 俺は当然 「ごめんな!無理だよ~!ごめんな!」 こうやって断んないとやっばいことがあるんだよな~。 22: 名前:モネカ☆09/23(木) 09 40 22 瞬希からの目線 「もう帰れ!」 「なんでぇ~?」 「用事が出来たんだ。」 「じゃあまたね♪」 ガチャ あぶねー。断わっといてよかった。 今度から俺の家には上がらせねー。 「バイバイ!瞬希くん!」 うぜー。 「おう!じゃ、またな」 甜羅からの目線 「バイバイ!瞬希くん!」 どうしてなの?私の気持ちなんかちっとも分かってくれない……。 「ただいまー」 「おかえりなさい。甜羅。」 お母さんは何も言えないさえない母。 「ただいま。お母さん。」 帰ってきちゃった。 いいお父さんぶリしてるうざい父。 「たっだいまー!わぁ!いい匂い!」 かわいこぶってる姉。 みんなみんな大っ嫌い!うざいのよ! 「甜羅!かえってたの!?いってよー!」 「甜羅ー!綾羅ー!手を洗って夜ごはん食べるわよー」 「甜羅。お父さんは先に風呂入ってるからな。」 みんなあたしのこと嫌いなくせにあたしに気を使ってるし。 分かりやすいんだよ!?あたしのこと嫌いって。 みんなみんな消えれば瞬希様はわたしのもの……なのに。 24: 名前:モネカ☆09/24(金) 20 34 10 甜羅の目線 ――――朝―――― 「おはよう!陽菜ちゃん。」 きゃ!びっくりした~。 「おはようございます!甜羅さん。」 「あのね。いい話を持ってきたんだけど……。」 「なんですか?」 なんだろう? 「あのね。あなた瞬希君スキでしょ?」 え……?何で知ってんの? 「そ、そんなことないですよ~!」 「本当のこと言ってみ?」 いおうかな……?言わないかな……? 「もういいます!好きです!」 あーもう後戻りできん! 「やっぱりね~今度家来なよ。」 「わ、わかりました。」 陽菜はそう約束して走って行った。 その陰で瞬希がみていた。 「アイツやベー。今度着いてみよ。」 25: 名前:モネカ☆09/24(金) 21 00 46 甜羅からの目線 翌日…… 「こんにちは!甜羅さん。おじゃましますね。」 「あがってあがって!」 ここから始まるわ! 「ちょっとジュースを取りに行ってくるね。」 私の計画はジュースを取りに行くときに机に包丁を出す。 そして次にわざと陽菜の服にこぼして付近を取りに行く。 ついでに包丁も、持っていってあわてている陽菜の後ろから刺す。 これで完璧♪残るは実行。 「はい。ブドウジュースだけど大丈夫?」 「大丈夫です。ありがとうございます。」 ガタッ バシャッ 「うわ!ごめんなさい!陽菜ちゃん大丈夫?」 「家々大丈夫ですよ。布巾を持ってくれば……。」 思い通り思い通り! 「そうだね取ってくるわ。」 実行開始。 カタンッ ドキッ 「あーどうしようお母さんに怒られ……?」 後ろを向いてたのにいきなりこっちを向いてしまった。 「どうしたですか?包丁持って……。」 くそ~!予定外だ!でも…… 「なんでだと思う?それはねあんたがうざいから……」 「ちょ、ちょっと待ってください!なんなんですか?」 甜羅は陽菜に包丁を向ける。 「あたしもね、漫画家なの。だけどあんたが入ってきて 売れなくなったの。しかも瞬希も取られて最悪なの! あんたがいるから幸せが逃げたのよ!」 これからどうなるんだか…… {ひみつのトビラ} 続き1
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ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 メトロイド ドレッド攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【まおりゅう】最強パーティー編成とおすすめキャラ【転スラアプリ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) Among Us攻略Wiki【アマングアス・アモングアス】 - Gamerch(ゲーマチ) マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」:時事ドットコム - 時事通信 マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」 - PR TIMES 【Apex Legends】ヴァルキリーの能力と評価【エーペックス】 - Gamerch(ゲーマチ) モンハンライズ攻略Wiki|MHRise - AppMedia(アップメディア) 【ウインドボーイズ】リセマラ当たりランキング(最新版) - ウインドボーイズ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ポケモンBDSP(ダイパリメイク)攻略wiki - AppMedia(アップメディア) SlackからWikiへ!シームレスな文章作成・共有が可能な「GROWIBot」リリース - アットプレス(プレスリリース) 【ウマ娘】ナリタブライアンの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】ヒシアケボノの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】フジキセキの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) ドラゴンクエストけしケシ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】スコーピオ杯のコース解説と強いスキル - Gamerch(ゲーマチ) サモンズボード攻略wiki - GameWith 【スタオケ】カード一覧【金色のコルダスターライトオーケストラ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スマブラSP】ソラのコンボと評価【スマブラスペシャル】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ブレフロレゾナ】リセマラ当たりランキング【ブレイブフロンティアレゾナ】 - ブレフロR攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】サーナイトの評価と性能詳細【UNITE】 - Gamerch(ゲーマチ) 仲村トオル、共演者は事前に“Wiki調べ” - 沖縄タイムス 【ENDER LILIES】攻略チャートと全体マップ【エンダーリリィズ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】あんしん笹針師の選択肢はどれを選ぶべき? 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1: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/26(月) 17 36 46 彼らは何をしているのか分からずにいるのです Father, forgive them; for they know not what they do. † † † これは一般の「― Desire ―」と「RELAYS - リレイズ -」に登場するキャラ達でのコラボ作品です。 BLから派生したので若干そういう風に見える場面もあるかも知れませんがそういった表現が苦手・駄目だと言う方は回れ右でお願いします(あからさまな表現はありません)。 尚、登場キャラクターの性格や言動が本編と異なる場合もあります。ご了承下さい。 「― Desire ―」のかなり重要な部分のネタバレも含まれてたりするのでその辺もご理解の上でどうぞ。 苦情は基本受け付けませんのであしからず☆キラッ 2: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/26(月) 22 47 32 何の音も聞こえてこない耳鳴りがしそうな程の静寂に包まれた懺悔室に、一人の青年が跪いていた。 短く切り揃えられた銀髪は薄暗い懺悔室の中で、まるで月明かりのようにぼんやりと朧気に浮かんで見える。 そんな闇夜に浮かぶ青白い月のような銀髪とは違い、彼の身体は黒いロングマフラーや黒いロングコート、黒い革手袋等の黒衣で覆われている。僅かに見える肌もまた、白かった。 微動だにせずに跪く青年――ソーマはただ何も言わずに手を組んでいる。 何も言わずに、というのは語弊があるかも知れない。彼の口は何かを呟くように僅かに動いている。ただ声が出ていないだけ、声が聞こえないだけだ。 その様は普段の彼からは考えられないようなもので、もしもこの場に彼をよく知る人間が来れば一体どうしたんだと驚いてしまう物だろう、という程だった。 3: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/26(月) 23 07 50 夢遊病の患者さながりにふらふらと覚束ない足取りで廊下を進んでいる男――デザイアは欠伸を噛み殺しながらある男を捜していた。 夜も深まった時分、草木も眠る丑三つ時。 神父と言う職業柄自然に規則正しい生活が身に付いてしまっているデザイアからすればこの時間は特に眠くなる時間だった。だが今回に限っては色々とやる事が重なりこんな時間まで起きる羽目になっていた。 それでも廊下をうろついている理由は先に述べた通り。 ここに宿泊している筈の男の一人――ソーマを捜していた。 先程用心の為に部屋を覗いた時何故だか姿が見えなかったのだ。 ふと、デザイアは地下にある懺悔室へと繋がる階段の前で立ち止まり眠気で鈍い思考を働かせる。 「……まさか、な」 ぼそりと呟き、地下へと繋がる階段を一歩一歩下りていった。 最下まで下り、普段なら完全に閉まっている筈の扉が僅かに開いているのに気付きデザイアは溜め息を吐く。 何をしているのかと中を覗いて、デザイアは驚いた。 4: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/26(月) 23 12 11 懺悔室の外から僅かな足音が聞こえてくるが、それにもソーマは顔を上げようとしない。別に誰が入ってこようが構わない。 というより、勝手に懺悔室に入り込んでこんな柄にもないことをしているのは自分なのだからそんな事を言えるわけでもない。 だからといって、この懺悔室――もとい教会の主である男に謝る気は更々無いが。 僅かに扉を開いておいた所為か、やはりここに自分が居る事は解ってしまったらしい。別にそれを狙ったわけでもない。 ソーマは今まで静かに細く、それでいて深かった呼吸を徐々に普段通りのものへと変えていく。 背後に気配を感じながら、彼は溜め息を吐いた。それと同時に何かが込み上げてくるが、それも無理矢理押し留める。 こんな物は自分に似合わない。似合わない、という以前に“必要ない”。感情も感傷も涙も何も自分には要らない。 まるでそれを必死で押し殺そうとしているかのように、ソーマは組んでいた手に力を込めた。 5: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/26(月) 23 20 31 懺悔室の中を覗き、そこにあった姿には見覚えがあった。 というよりも探していた人物――ソーマその人で、デザイアは無事な姿が確認出来た事もあり無言で立ち去ろうとする。 自分は何も見ていない。そう自分に思い込ませ、くるりと扉に背を向けた。 誰にだって知られたくない事はある。自分だってそうだ。 だからここは何も見なかった事にして立ち去るのが正しい。 此処で中に入ってソーマに何を言えば良い。何をしていた? 懺悔だろう。こんな場所で、跪いてする事と言えばそれ以外に思いつかない。 「ふぅ……」 デザイアは小さく息を吐くと下りてきたばかりの階段を上ろうと一歩、足を踏み出した。 6: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/26(月) 23 21 55 「――待て」 息を吐く声、それと恐らく懺悔室に背を向けて階段を上る為に踏み出した足音。 それを聞き、ソーマは短く制止をかけるとゆっくりと立ち上がる。その動きはどこかふらついており、倒れてしまうのではと心配になる程だった。 彼は服を軽く手で払うと、振り返らないままで扉を隔てた向こうに居るであろう男に言葉を紡ぐ。 「ここまで来て、どこに行くつもりだ? 俺を捜しに来たと言うのなら、そのまま来ればいい」 彼が自分を探しに来たこと等解りきっている。大方自分に気を遣ってここは離れようと思ったのだろうが、ソーマにとってはそんなものも必要なかった。 7: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/26(月) 23 34 42 ソーマに中から呼び止められ、デザイアは思わず舌打ちしたくなった。 人が折角気を使って立ち去ろうとしているのだから素直に甘えれば良いものを。 デザイアはぶつけようのない苛立ちを表情にありありと浮かばせながら懺悔室の扉を開けた。 「何勝手に入ってるんだよ」 あえて普段通りの、神父とは思えない傲慢な言い方でそう口にしたのはデザイアなりに気を使った結果だった。 8: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/26(月) 23 38 52 彼が自分に気を遣ってくれたのは解っている。だがそれに甘えるような真似はしたくなかったしする気もなかった。 今までほんの僅かに開けられているだけだった懺悔室の扉が開けられ、光が入ってくる。 ソーマは緩やかな動きで振り返り、前髪で隠されていない右目に男――デザイアの姿を映す。 自分とは対照的な金髪に白い神父服は正しく神父というような格好だったが、その言葉は全く持って神父とは思えない程に傲慢だった。 だがそれがデザイアという人間だし、元から殆ど他人に興味のないソーマにとってはどうでもよかった。 「……貴様を見付けるのが面倒だった。それに許可を取らずとも入って祈りを捧げられて懺悔をできる。それが “教会”だろう?」 喉の奥で笑い、ぎこちなく笑みを浮かべたソーマの頬に何かが伝う。 勿論雨でもない。今までのように血でもない。それは彼が理解できないだけで“涙”だった。 9: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/26(月) 23 54 19 正論を言われたのがまたデザイアの癇に障った。 「だからってな、一言くらい声を掛けようと思え」 喉で笑い、下手な笑顔を作ろうとするソーマは見ている此方が顔を顰めそうになる程に痛々しかった。 本人は気付いているのか定かでは無かったが、その頬に伝ったものもデザイアは見なかった事にする。 拭えという事も口にはしない。 「ちょっと顔貸せ。説教してやるクソ餓鬼」 ふんっ、と鼻を鳴らし、デザイアはソーマに背を向けると階段を上っていった。 10: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 00 00 35 声を掛けるということを考えなかった訳ではない。それでも眠りが浅くそこまで睡眠を取らずとも大丈夫な自分とは違い、デザイアは自分が部屋を出て行く時点で既に眠っているものだと思っていた。 眠りを妨げるような真似はしたくなかった、と言えばデザイアのことを考えているとも取れて聞こえがいいが、実際はただ単に自分という人間が懺悔室等という似合わない所に行くのを悟られたくなかっただけだ。 所謂、自分の下らなすぎるプライドだ。 糞餓鬼、と称されたソーマは若干不服そうに眉を顰めるも言い返すこともなく、デザイアに続いて懺悔室を出て行く。 最後に律儀に扉を閉め、ソーマは階段に足をかけた。 11: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 00 04 35 後ろから付いて来るソーマの気配を感じながらわざとゆっくりとした歩調で礼拝堂へと向かう。 この間にもソーマが色々整理をつけられれば良いし、自分も説教の内容を考えられる。 デザイアは階段を上り終えるとソーマが来るまで待ってから礼拝堂へと向かい歩を進めた。 12: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 00 11 23 ソーマが歩を進める度、足音が反響して消えていく。 自分を待っているらしいデザイアの姿を僅かに視認し、彼は歩く速さを若干速めた。 階段を上り終え、どうやら礼拝堂に向かっているらしいデザイアと並んで歩く。 デザイアは何を考えているのか一言も言葉を発そうとしない。別に自分は沈黙を気にするような人間ではないが、何となく今回だけは居心地が悪かった。 「……俺が懺悔室に居る等、笑い話でしかないな」 自虐的な言葉を吐き、ソーマはマフラーに手を掛けると僅かに緩める。その後すぐに黒い革製の手袋を外し、それをコートのポケットに入れた。 13: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 00 21 28 お互い無言のまま歩いているとふと、ソーマが口を開いた。ソーマが声を掛けてくるとは思っておらず驚いたが、表には出さない。 ソーマが似合わない自虐的な事を口にしたのにも驚いたがやはり表には出さなかった。 「なんだ。笑って欲しいのか」 敢えて感情を読ませない声色でそう口にする。 自虐的な事を言いたくなる気持ちも分からなくはない。自分だって過去を振り返っては自嘲したり悔やんだりする事もある。 自分にそんな事が似合わないのも十分承知済みだ。 「人間、誰にだって悔やんでも悔やみきれない事がある。神父の俺が言うんだ、間違いない」 14: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 00 22 56 「……別に。笑いたかったら嗤え」 笑われても別に構わない。そんなことは気にしないし、自分でも十分似合わないと解っている。 デザイアの口から出た言葉に、ソーマは一瞬怪訝そうな表情を垣間見せたもののすぐに無表情へと戻る。 「……神父か。貴様にとっては神父などどうせ肩書きでしかないだろう」 こんな傲慢な神父が居たら、世の中の何人が神父になれることだろうか。尤も、デザイアが他人には聖人君子の仮面を被っている事など熟知しているのだが。 理由を聞いてこない事には若干驚いたものの、ソーマはほんの少し肩の力を抜くとぽつりと漏らす。 「…………例えば、“何の助けにもなれずに両親を目の前で殺害されて数年前から戦場に立ち続けた挙げ句、自分の師すらも自分の手で殺す”――という事等もか」 悔やんでも悔やみきれない事、それならば沢山ある。ソーマは淡々とした口調で、それだけをデザイアに告げた。 15: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 00 25 56 笑いたければ、ならば自分は笑わない。 デザイアは口にこそ出さないものの心の中で返事をする。 神父を肩書き、と言われ少し癇に障ったが自分の本性を知っている人間から見ればそう思われても仕方のない事だ。 ソーマが他にも失礼な事を考えているような気がしたが、ソーマが漏らしたその内容にすぐにどうでも良くなった。 例えば、とは言っているがきっとソーマ自身が悔やんでも悔やみきれないのがそれなのだろう。 「……例えばの話らしいが、ソイツにとって悔やみきれないんだから “そう”なんだろ」 淡々とした語調なのがまた痛々しい。 子供のくせに他人の助けを拒絶し、変に片意地を張っているソーマを見ていると昔の自分が重なるようだった。 「……俺の母親も随分前に死んだ。父親は顔すら知らない」 独り言のように口にしたデザイアの声色こそは平坦だったが、その表情はどこか憂いを含んでいた。 16: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 00 31 03 両親は自分を守る為に目の前で殺された。今でも時折夢に見る。結局自分は足手まといにしかなっていなかったのかもしれない。 いつからか自分は戦場で他人の命を奪う事にも何も思わなくなっていたし、依然として悲しみや涙というものも理解できない。喜怒哀楽が殆ど無い、というのは自分でも理解していたが、“哀”だけはどうしても何をしても解らない。 幼少期に一度全てを無くした自分に、もう一度全てを教えてくれたであろう師すらも自分はこの手で殺したのだ。あの時の自分は何だったのか、と思い出す度に嫌になる。 他人の助けも要らない、他人も要らない。他人に興味もない。周囲の人間は所詮赤の他人でしかないのだから、どうでもよかった。 デザイアの平坦な声を聞き、ソーマはゆっくりと彼を見る。 憂いを含んだような表情に、ソーマは感情が籠もっているのか籠もっていないのかよく解らない瞳に何らかの感情を込めてデザイアの目を見た。 17: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 00 41 47 顔の片側にソーマの視線を感じるがデザイアはそちらを向こうとはしなかった。 聖母と同じ名をして、自分に“欲望”と言う意味の『デザイア』という名を与えた美しかった母。 その母が亡くなった時の事を思い出すのは今でも辛い。 父は物心がつく前から既に居なかった。顔どころか名前すらも知らない。ただ、自分と同じ金色の髪と暗い青色の瞳を持っているのを母から聞かされた事があるだけ。 自分と同じ色と言えば、ソーマとは別にここに泊まっている男も金髪碧眼だったな、とデザイアはふと思った。 と、同時に初めてその男に会った時に胸を過ぎった嫌な感覚。予感、と言うのだろうか。それも思い出す。 出来る事なら余り関わりたくないと思った程だったが、時間が経つにつれきにならなくなっていった。だがここに来て再び胸の奥に黒いもやもやした感覚を覚えデザイアは顔を僅かに顰めた。 18: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 00 50 16 デザイアが僅かに顔を顰めたことに、ソーマは訝るように眼を細めるもすぐに彼から視線を外す。 思い出すのも嫌な事柄をわざわざ訊こうとも思わない。それに自分には関係のないことだ。そう割り切る以外に方法はない。 デザイアの過去を聞き出してそれをしっかりと受け止められるほど自分が強いとも思わないし思えない。どんな言葉を他人にかけたらいいのかも解らないのだから、聞いても自分は何も出来ない。 聞くだけでも助けになる、なんて言葉があるが、あれは所詮自己満足でしかないだろうに。 自分の足下に落としていた視線を平行へと戻せば、視界に礼拝堂に続くと思われる両開きの扉が入り込んできた。 「……どうだ、説教の内容は固まったか?」 まるで小馬鹿にするようにソーマはデザイアに言い、僅かに口角を吊り上げた。 19: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 00 53 58 考え込んでいたところで不意に声を掛けられデザイアははっとする。 いつの間にか俯き気味になっていた顔を上げればそこには居住区の方から礼拝堂へと続く扉。 どこかこき下ろすように口にしたソーマに腹を立てる事も無く、デザイアはソーマと同じように口角を持ち上げ、言い放ってやった。 「覚悟しとけ。泣いたって許さねぇからな」 そう言って礼拝堂への扉を開けたデザイアは誰も居ないと思っていた礼拝堂に人の姿があった事と、その人物に瞠目した。 「……ミスター・デイヴィス。こんなお時間に如何されたのですか?」 だがすぐに表面を取り繕うと、そう、彼――ソーマとは別にこの教会に泊まっていた自分と同じ髪と瞳の色を持つジャック・デイヴィスに声を掛けた。 20: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 01 03 55 自分が泣くわけがない。というより、泣き方すら知らない。 ソーマはデザイアに目を合わせ、楽しそうに眼を細めた。この男がどこまで自分に説教できるか、それが気になるし見物だ。 デザイアの背後に立つ形で、彼が扉を開け放つのを待つ。 と、そこで突然デザイアの態度や声音、口調が急変したことにソーマは外していた視線を彼に向ける。 彼がこの仮面を瞬時に付ける時は、本性を知らない人間がこの場にいるときと決まっている。ならば誰なのか、とソーマもデザイアに習って礼拝堂へと視線を向ける。 そこに居たのはデザイアと同じような金髪の男で、ソーマ自身見たこともない男だった。 先程デザイアは彼をミスター・デイヴィスと言っていたが、一体彼は誰なのだろうか。だからといって訊くことも出来ず、ソーマは不意に再び視線を外した。 21: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 01 18 49 「神父様……」 ジャックの方も、突然デザイア達が現れたのに驚いたようだった。 座っていた木製の長椅子から立ち上がろうとしたのをデザイアは無言のまま視線と手をそっと差し出す事で制止する。 再び腰を下ろしたジャックにデザイアは微笑みかけると、静かな声で「どうされたのですか?」と再度問いかけた。 ジャックは四十代半ばで、妻と息子が居るとデザイアに話していた。昔、戦時中に自分の犯した罪の数々を悔い、こうして様々な場所にある教会に足を運んでは祈りを捧げているらしい。 「祈りを、捧げておりました……」 「……そうですか。神はどんな事でも、心から悔い改めようとすればきっと赦してくださいますよ」 デザイアの言葉を聞き、ジャックがそれまで思いつめていた所為か固くなっていた表情を僅かにだが和らげる。 それから、デザイアに自分の罪を聞いて欲しいと訴えてきた。 それはデザイアも役目の一つであるし、構わなかったのだがソーマが居る。ソーマの方は興味が無いと気にしなさそうだったが、ジャックの方はどうだろうか。 人にはなるべく聞かれたくない話だろうし、ここは悪いがソーマには席を外して貰おうか等思案した。 「ええ、それは構いませんよ。ですが彼が――」 ソーマを振り返りそう言いあぐねたデザイアにジャックはソーマさえ良ければ差し支えない、と口にした。 そう言うことなら、とデザイアは再度ソーマを振り返り尋ねる。 「ソーマ。構いませんか?」 ソーマは自分の本性を知っているが、ジャックの見ている手前迂闊には本性を出せない。 その所為か、振り返ったデザイアの表情はジャックからは見えないのを良い事にこの上なく不服気だった。 22: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 01 22 36 デザイアの紡ぐ言葉、もといその声音にソーマは思わず噴き出しそうになるのを必死で堪える。ここで笑ったら色々な物が水の泡になりかねない。 勿論自分は何故デザイアが聖人君子の善人であるという仮面を被って対応しているのかは解らない。確かに神父になるには彼の元々の性格では無理だろうが、それ以前に何故神父になろうと思ったのかも。 別に自分はどうでもいい。男――ジャックがどんな罪を犯したのか聞いても別に気にしないし、興味もない。 口調は今まで通りにしても、表情がまたこれ以上なく不服そうなデザイアにソーマは僅かに口角を吊り上げる。 「……別に興味もない。勝手にしろ」 自分のことを知らない他人が居ようが、自分は態度を改めるつもりはない。 自分のような人間が神父と一緒に歩いているなんて、それこそ笑い話にしかならないだろうなとソーマは心の中で自嘲めいた笑みを漏らした。 23: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 01 31 40 自分の思っていた通り「興味がない」と答えたソーマにデザイアは素早く表情を変えるとジャックに向き直る。 正直、ソーマが口角を吊り上げたのには気付かなければ良かった、とデザイアは心の中で盛大に舌打ちを打った。 ジャックに向き直った際の、どこか慈愛の滲むその表情はデザイアの本性を知っている者が見たら信じられない、と思うようなものだ。 こうでもしていないと色々と面倒なのだから仕方が無い。 「――ではミスター・デイヴィス。話をお聞かせ下さい」 そう促され、ジャックは一つ頷くとぽつぽつと今にも消え入りそうな程の声色で話を始めた。 24: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 01 38 21 ソーマはジャックの話す話を殆ど、というか7,8割ほど聞き流していた。 他人の罪にそこまで興味はない。興味をそそられもしない。だからこそ聞き流してどうにか間を保つことを選んだ。 ただ、どうしてもソーマはこの男の何かに引っ掛かる。デザイアと同じ髪の色に瞳の色、何か裏があるんじゃないか、と。 まあだからといって、恐らく自分はどうもしない。 ソーマは何もせず、というかすることもなく不意に息を吐いた。それにしても、いつまでこの話は続くのだろう。 25: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 01 53 02 デザイアはジャックの話を聴きながら混乱していた。 ジャックの“懺悔”の内容というのがデザイアが幼い頃、今は亡き母から聴かされた話と酷く似ていたのである。 そんな訳がない。そんな偶然があってたまるか。とデザイアは木製の長椅子の腰掛け、膝の上で手を組むジャックを見て思う。 しかし聴けば聴くほどそれは確信へと繋がった。 戦時中に襲った村の人々を虐殺し、村の若い娘に乱暴を働いた。娘に至っては村を離れる際に村に捨て置いた。 初めてジャックを見た時の嫌な予感はこれか。 デザイアは自分と同じ色の髪と瞳を半ば呆然と見つめながら思った。 「あ、貴方が……その、暴漢して、しまったその女性、名は何と言ったか覚えていますか……?」 震えが止まらない。今にも気がどうにかなってしまいそうだった。 「もしや、マリア……という名では……っ」 違うと、マリアではないと言ってくれ。 半ば確信がある状態で尋ねておきながらデザイアの心はジャックが「違う」と口にしてくれるのを望んでいた。 だがデザイアの口からマリアの名前が出た瞬間、ジャックの表情が豹変したのにデザイアは無惨にも気付いてしまう。 「何故、神父様がそれを……」 それはまさしくジャックが罪を犯してしまった相手の名がマリアである事を肯定する言葉だった。 ふと何かが落ちる音を耳が拾い、はっとデザイアが我に返る。 側には先程の音の正体であろう自分の物である聖書が落ちていて、デザイアは椅子に腰掛けていたジャックの服の襟部分を掴んでいた。 自分のと同じ忌々しいブルーの瞳が自分を映す。 「テメェか……っ、テメェがマリアを他の仲間と輪姦した野郎かッ!」 デザイアが怒声をあげる。 自分は暴漢を働いたと言っただけで輪姦までしたとは言っていない。 ジャックは自分が言っていない事まで口にしたデザイアに瞠目する。 未だ混乱する頭でなんとか搾り出すように口にしたデザイアにジャックもまた、混乱した頭でなんとか言葉を紡いだ。 「何故……貴方がそれを、知っているのだ…………」 26: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 01 58 51 今まで興味なさそうにデザイアとジャックから視線を外して話を聞いていたソーマが、デザイアの怒声と聖書の落ちる音を聞いてやっと視線を向ける。 どんな流れでそうなったのか知らないが、デザイアはジャックの胸倉を掴んで怒鳴っている。 「……落ち着け、デザイア」 ソーマは盛大に溜め息を吐くと、ジャックの胸倉を掴む彼の手を引き剥がすような真似もせず、ただ傍観しているだけで口を開いた。 普段ならば名も呼ばずに“馬鹿”とでも一蹴するところだが、この空気でそんな事も出来ない。変なところで几帳面だと言われても気にしないから別に構わない。 ソーマは足を組んだ膝の上に手を組んで置くと、ジャックを一瞥する。 「…… 何がどうなったか説明しろ。生憎興味のない事は聞き流す質だからな、理解できない」 明らかにソーマ自身に非があるが、それを認めさせない程に彼は傲慢に言い放つ。 ジャックの罪だの懺悔だのに対しての興味はなかったが、デザイアがここまで激高したというのならば話は別だ。 27: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 02 15 05 デザイアは背後でソーマの声がするまでソーマもこの場に居る事をすっかりと失念していた。 ジャックの襟を掴む手はデザイアの指が真っ白になる程で、ジャックの方はといえばデザイアの豹変振りとソーマの問いに見るからに戸惑っている。 ふいに、襟を掴んでいたデザイアの手から力が抜けた。 ふらふらと覚束ない足取りで玄関から見て正面に鎮座する祭壇に背を凭れ、手で顔を隠しつつ項垂れる。 ジャックが暫しの間を置いてソーマの問いに漸く首だけを振った。見るからに困惑した表情でソーマとデザイアを交互に見遣る。 すると祭壇に凭れ俯いていたデザイアがゆっくりと顔を上げ、座っているソーマを見遣った。 その表情は今にも泣き出しそうなのを必死に堪えているようにも見える、言うなれば泣き笑いだろうか。 そんな悲痛な面持ちでデザイアはソーマを見遣り、どこか困った風に口を開く。 「ソーマ。さっき教えただろ? 俺は父親の顔を知らないってさ。アレ、実はな俺が俺の母親――マリアが暴漢に襲われて出来た餓鬼だからなんだ」 デザイアがゆっくりと話し出したそれは、普段なら小説や何かで無いと聞かないような悲惨な内容で、たった今ジャックの話したそれと酷似していた。 それをデザイアは口元に歪な笑みを浮かべながら話していく。 それを聞くソーマの反応にまで気を回す余裕はなかったが、不思議とジャックが動揺したのは分かった。 話が進むにつれ徐々にデザイアの声が小さくなっていく。 「――でな。その中で俺と同じ金髪碧眼だったのは一人だけだったらしい。他の奴は髪か瞳に茶色が混じってたんだと。という事は――」 ふとデザイアが言葉を切り、ジャックに視線を向けた。 ジャックに視線を流せばそこには真っ青になり、「信じられない」と言わんばかりの表情をしたジャックの姿。 デザイアはわざとジャックに微笑んでみせる。 信じられない位穏やかなその笑みにジャックは一瞬昔自分が暴漢した女の面影が重なった気がした。 「――ソーマ。親父が、見つかった」 28: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 02 22 55 自分がここに居ることすら忘れてしまうほど、デザイアはショックを受けていたらしい。ソーマはさほどそれを気にすることもなく、ジャックが首を振ったのを見て舌打ちした。 そんな不機嫌さも、デザイアが見せるとは思えない表情を見てすぐに消え失せる。 ソーマは表情を変えることも、相槌を打つこともせずにただ彼の話を聞き続ける。気軽に相槌を打てる話でもない。 自分が先程過去を示唆したときにはデザイアは自分に言葉を書けてくれた。それでも自分はそれができない。だから、ソーマはただデザイアを見据えていた。 それでも、少なからず動揺を感じていたのは確かな事。まるで作り話としか思えないデザイアの話は、ソーマの精神をこれ以上なく掻き乱した。 自分とは比べものにならないような話だ。何だ、彼の人生は。彼の生まれた意味は。常人であれば最後まで聞くことすらできないかもしれないくらいに陰惨な話。 両親を目の前で殺されて自分も殺されそうになって、気付けばもう戦場で戦っていて普通に人間を殺していて、挙げ句の果てには尊敬するであろう師すらも自分の手で殺した。 そんな自分の過去なんて、デザイアの母の話の前では霞んでしまうように思える。 微笑んだデザイアが何となく泣いているように見えたのは気のせいか。彼の頬に涙は一筋も流れていないし、逆に穏やかな表情で居る。 デザイアの話、最後の一字一句まで聞き届けてから、ソーマは細く長く、静かに息を吐いた。 「……そうか」 それから感情の読み取りづらい目をジャックに向け、これまた平坦な口調で問う。 「……本当の話なんだろうな?」 29: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 02 25 05 デザイアが、他人に自分の過去を話したのはこれが初めてだった。 聞いていて気分が良いものでは無いのは分かっているし、何より自分自身が未だ整理しきれていない部分がある。そんな状態で話しきる自信が今までになかったのだ。 だが今回は不思議とすらすらと言葉が出てきた。 ソーマが黙ったまま聞いてくれていたからだろうか。ここで相槌などを打たれたり、変な同情をされたら最後まで話せてはいなかっただろう。 “親父”と言った瞬間のジャックの表情は一生忘れられないと、デザイアは思った。 「私、の、息子……?」 ソーマに再度問われたジャックはデザイアから視線を外さないまま独り言のように呟く。 デザイアは何も言わずただ微笑を浮かべているだけだった。 30: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 02 38 07 自分の問いに答えることもしないジャックを、ソーマは何の感情も籠もっていないような目で見る。 当たり前と言えば当たり前の事だが、この男は今の状況が理解できていないらしい。 デザイアに視線を向ければ、彼は未だに微笑を浮かべているだけで何も言おうとはしない。頷くことも否定することもしなかった。 デザイアに同情を向けるつもりはない。彼もそんな物は臨んでいないだろうし、他人を憐れむ心も殆ど持ち合わせていないと思える自分には無縁のことだ。 それでも、ソーマは心の中に徐々にジャックへの何らかの感情が湧いてくる事に気付く。 恐らくデザイアと彼の母親を酷く苦しめた――恐らくと言っても、彼の母親に至っては確かではあるが、その人間が今までのうのうと生きてきた。 この胸の内にある感情を表せば、“怒り”だろうか。それも普通のではなく、激情と表すのがいい程の。 ソーマは先程息を吐いたのとは全く違い、盛大に溜め息を吐くと突然ジャックの襟首を掴み、適当に壁へと投げ飛ばした。 31: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 02 43 21 「――ッ!? あぐっ!」 ソーマに投げ飛ばされたジャックは背中を教会の壁に強く背中をぶつけ呻き声を上げる。 デザイアはと言えば、ソーマの突然の暴挙に微かに目を瞠った。 しかしこうなったソーマがそう簡単に止められないのを知っているデザイアはどうしようかと思案する。だがふと、ジャックを助けようとしている自分への違和感に気付いた。 何故自分は憎い筈の男を助けようとしている? 何故いっその事自分の手で始末してやろうと思わない? そんな、到底答えの見つからないような問いを自分に繰り返す。 ジャックが死んだところで少なくとも自分は何も思わない。幾ら血が繋がっていようとも自分からすれば所詮、赤の他人だ。 この世で一番強い繋がりだろうが自分には関係が無い。 幼い頃、無駄だとは分かっていながらも愛する母親以外にも望んだこの繋がりなど、成長した今、デザイアには必要が無かった。 「マリア……俺はどうすれば良い」 教えてくれよ、母さん―――― 32: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 02 50 59 ソーマは呻き声を上げたジャックの首を容赦なく掴み、壁へと縫いつける。 先程まで何の感情も籠もっていなかった瞳が、今は殺意で煌々と輝いていた。 「……貴様とは直接関係はない。間接的な関係もない。今出会ったばかりだからな」 無理矢理に感情を押し殺しているといった声で、ソーマは淡々と言葉を紡ぐ。 首を掴む手に更に力を込めながら、彼は真っ直ぐジャックを見据えて言葉を続けた。 「他人を苦しめた人間が今までのうのうと息を吸って生きてきた。デザイアがそれを許そうが神がそれを許そうが関係ない」 そこでデザイアの呟きが聞こえてきたが、それすらどうでもいい。そう、どうでもよかった。今の自分にとってはただの音としか捉えられなかった。 ソーマはそこで柄も刃も全てが白い、どこか神秘的な雰囲気すら感じさせる大鎌を男の首にかけていない左手に瞬時に発現させ、持つ。 「悪いが、俺は貴様のような屑を許す気はない」 はっきりと、今度は僅かに声を張り上げてソーマは言い、大鎌を振り上げた。 33: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 03 04 42 壁に縫い付けられた際に後頭部を背後の壁に強くぶつけ、目の前に火花が散る。 どう考えても悪いのは自分だ。 ジャックはデザイアの事で“友人”であるソーマが怒るのは無理ないと思った。 「――っ?」 淡々を言葉を発するソーマも霞む視界で見つめていたジャックは、一瞬何が起こったのか理解が出来なかった。 目の前に迫る男の手に突如として現れた大鎌。 原理など分からない。 例え頭をぶつけておらずとも、首を絞められておらず意識が混濁状態でなくとも、今目の前で起きた不可解な現象を説明しろと言われても出来なかっただろう。 ジャックは振り上げられた大鎌をただただ視線で追う事しか出来なかった。 34: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 03 19 55 ジャックが殆ど抵抗してこない事を良いことに、ソーマは鎌を一閃させる。 一瞬遅れて何かが落ちるような音が響き、更には何か粘着質な液体が落ちるような音も響き渡った。 その液体はソーマのブーツも汚し、濡らしていく。飛び散ったそれが、彼のコートやスラックス、手も汚していた。 目の前で両親が死んだときに浴びた。この手に武器を持ったときから最早見慣れた。手を濡らす感覚にも、鉄臭い匂いにも血生臭さにも慣れた。 ソーマは足下を赤く染めた血にびしゃりと音を立て手足を踏み出し、殊更に“自分がジャックの両足を切断した” という事を誇示した。 35: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 03 32 17 「あっ……っ?」 ジャックが鎌が振り下ろされた先へとゆっくりと視線を下ろす。 そこにある筈のものがなく、すぐ側に転がる二つの塊と自分の真下にある真っ赤な水溜り。自分の下半身と二つの塊の間には細い糸のようなものが引いている。 そして、自分で自分の身体を支えられなくなった事に数秒遅れてジャックは状況を理解した。 「あ……あ゛あ゛ああ゛ぁ――!!」 途端に自分を襲った焼け付くような痛み。いや、痛みなどと生易しいものではない。激痛と言ってもまだ足りず、ショック死しなかったのが不思議なくらいだった。 喉が張り裂けんばかりの、それこそ断末魔のような悲鳴が教会の壁に反響する。空気がビリビリと震える。 鉄分と脂分の混ざった酷い臭いが鼻をつく。 デザイアと言えばそんな光景も音すらも感じていないような虚ろな表情で居る。 最早ソーマを止めようとか、無意味な自問自答をする事も考えてはいなかった。 36: 名前:赤闇 (AldickGl/2)☆04/27(火) 03 50 54 血の臭いに顔を顰めることもなく、ソーマはジャックの切り落とした足を踏みつける。 残っていた血が溢れ出し、更に血溜まりが大きく、濃くなっていく。それを醒めた眼で見て、ソーマは僅かに眼を細めた。 それからジャックの首から手を離し、水溜まりに落ちるような格好にする。 「……逃がすわけには行かないからな。どうだ、足を無くした気分は」 血で赤く濡れた白い鎌を左手に持ったまま、彼はジャックに何のことでもないように問い掛けた。 足を切断しただけではまだ足りないとでも言いたげに、ソーマは更にその傷口にも鎌の刃を突き立てる。 綺麗に切断された、とも取れていた傷口をこれ以上ないほどに壊してから、彼はジャックの顔を見た。 「痛いか?」 37: 名前:灰人 (DesireLAOU)☆04/27(火) 04 01 43 不意に首への圧迫感が薄れた。首から完全に手を離されジャックは真っ赤な水溜りの中に落ちる。ビシャッ、と液体の飛び散る音と、大きな物体――両足を失ったジャックの身体が床にぶつかる鈍い音が教会全体に響いた。 その音の余韻が残っている間に、ジャックの瞳から堰を切ったように涙が溢れ出てきた。自分の意思ではどうにも出来ない。 顔を涙と唾液でぐしゃぐしゃにしながら獣の唸り声のような声を漏らしながらジャックは床に蹲っている。 確かに逃げようとしてもこの痛みじゃ動く事さえ出来ない。ほんの僅かに身動ぐだけでもとんでもない激痛が身体中を駆け巡った。 「あ゛ぐぁぁ゛……ぐぅ゛ぅ゛」 加えて足の切断面をぐちゃぐちゃにするように鎌の切っ先を突き立てられ一際甲高い絶叫を迸らせた。 ソーマが何かを言った事さえ分からない。ただただ痛くて苦しくて狂ってしまいそうだった。 それでも人間というのは意外にもしぶとく、まだこうして意識を保っていれる。 だが血を流しすぎたショックで身体がビクビクと痙攣を始めた。 陸に上げられた魚、若しくは極刑の電気椅子に座らされ電流を身体に流された死刑囚の如くジャックの身体が血溜まりの中で跳ねる。 ソーマが見遣ってくるがジャックの濡れた目は虚ろで何も映さない。 デザイア――自分の息子の姿すらもジャックには最早認識出来なかった。 神よ彼らをお許しください 続き .
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329: 名前:+椎名+☆2011/09/07(水) 18 13 08 ~宮本side~ あれは五年生の時。 私は親の事情でいろんなところに転校を繰り返した。 おかげで友達が出来てもすぐ転校して離ればなれ… だから私に友達と呼べる本当の友達はいなかった。 でもね、ある日私に好きな人ができた。 暁鈴地君。 彼は男女共に人気で頭もよかった。 私は暁君をじっと見つめてた。 いつもいつも遠くの方から。 そしてある日。 また引っ越しすることになったの。 「…転校しても元気でね」 「…うん…」 悔しかった。 親の理由で転校を繰り返して何も出来ない… 本当に好きな人がいる学校にさえもういられない。 その時それを見ていた暁君が近づいて来て声をかけたの。 「なあ、あんたさ、親の理由で転校繰り返してるって本当?」 「うん…」 「この学校にいたいなら… 親を説得すればいいじゃん」 こんな事言われたのは初めてだった。 「いざとなったら俺も一緒に行ってやるよ」 そう言って微笑みかけてきた。 優しいな… 説得か。 よし、してみるだけしよう! そう思って私はなんとか頑張って説得したの。 1時間ずっとお父さんに頼み込んでみたの。 そしたらお母さんとここに残っていいって…… 暁君のおかげだよ。これも。 その時から暁君とはあまり話していないが 暁君の事を私は頑張って追いかけるようにした。 332: 名前:+椎名+☆2011/09/08(木) 20 08 46 私は他の男子には目もくれずただ暁君だけを見ていた。 私を救ってくれた。 おかげで転校せず、友達と呼べる本当の友達ができた。 でも中学に上がった時だった。 山下佳暖という女が現れた。 どうやら転校してきたようだった。 そして初めて出会ったにも関わらず。 みんなの目の前で 暁君に抱きついた。 「うわ!なんだよお前!?」 「ごめんごめん。君かっこよかったからさ。 ねえ、私は山下佳暖。君は?」 「俺は暁鈴地。じゃあな山下」 その時暁君は大胆すぎる山下さんにイライラしてあしらってい た。 「ふふ、冷たいなぁ。でも可愛い」 「…あぁ!?お前馴れ馴れしいぞ!」 そして暁君は怒って行ってしまった。 誰でもあんなことしたら怒るだろう。 馬鹿だなぁ。 でも山下さんはそれを続けていた。 するといつの間にか暁君は山下さんとよく話すようになってい た。 「…ふふ、鈴地面白い」 「余計なお世話だよ…」 そして私は どんどん暁君から遠くなっていく気がした。 …このままの気持ちは嫌だ… 告白…しよう…… 333: 名前:+椎名+☆2011/09/08(木) 20 23 39 そして私は暁君を放課後に教室に呼びだした。 「…何?宮本さん」 「あ、その…えっと…暁君。小学生の時は…ありがとう…」 暁君はあぁ、と思い出したようでにこっと笑う。 「ああ、大したことしてねえけど」 「…ううん、嬉しかったの。 …あの日以来、ずっと暁君を見てた。 私は…暁君の事が……」 ガラッ その時、教室の扉が開く。 山下…さん…… 「告白のところごめんね?」 …!? 聞いてたの…? 「委員会終わったから帰ろ?」 山下さんは暁君の手を引っ張った。 「え?ちょ…待てよ…あ、ごめんな宮本さん」 教室にはただ私一人が残った。 告白を……邪魔…されたの…? ……私は…告白をして…気持ちを…どうにかしたかった… なのに…あの子は…あいつは…… 私の告白をまるで今まで聞いていたかのように… 許さない。 私の気持ちを踏みにじって…! その日から私は 山下佳暖を痛めつける方法を考えた。 そして…今がその時……! 337: 名前:+椎名+☆2011/09/11(日) 12 42 07 私は…告白をこいつに邪魔された。 そしてこいつは痛い目見ないとわからない。 だから…私は女子達に水をかけたりするのを頼んだ。 そう、いじめの主犯は私…… 女子達は山下をいじめてと頼むと喜んで承諾してくれた。 みんな…進んでこいつをいじめるのに協力してくれた。 別に暁君を奪いたい訳ではない。 こいつに復讐さえできればそれでいい。 暁君を遠くから眺めているだけでいい。 けどいつも見ていると視界に目障りな奴が入ってくる。 そいつを消したい。 目障りなんだよ。 存在自体が。 私は山下の髪を引っ張る。 「痛いなぁ」 こんな状況でもまだ笑ってる。 気持ち悪い。 私は思いっきり床に叩きつける。 顔面ヒットって感じね。 「痛いなぁ。でも鈴地はこんなので私を嫌いにならないよ?」 顔から血を出して言うことじゃないでしょ。 ていうか…キモい。 鈴地鈴地うるさいんだよ。 そうだ。 暁君に嫌われるくらい顔をぐちゃぐちゃにしてやればいいんだ。 私は何度も何度も山下の顔を 固くてく冷たい床に叩きつけた。 顔が醜くぐちゃぐちゃになるまで。 338: 名前:+椎名+☆2011/09/11(日) 12 57 23 チャイムが鳴る。 でも授業なんかどうでもいい。 私はこいつの顔を潰す。 山下の顔はすでに血だらけで多分鼻の骨は折れてるだろう。 ははは、ざまぁ。 もっと潰してやるよ。 まぁ元々潰れた汚い顔だけどさ。 気に入らないんだよね。 なんでこんな奴が暁君と…… そうだ、いいこと思いついた。 私は制服のポケットからライターを取り出す。 元々こいつのノート類全部燃やしてやろうと持ってきたけど… どうせなら残るような傷を作ればいいよね? ジュボっ… 私はライターの火を ゆっくりと山下の顔に近づける。 346: 名前:+椎名+☆2011/09/15(木) 20 18 12 …! 私は手を止めた。 なぜなら屋上の入り口に誰か立っているからだ。 「…あれ?やらないの?燃やすんでしょ、 その子の顔をさっ♪」 ここの生徒ではない… というか…見たことがない。 それに止めないの? 「…止めないんですか…?」 「…なんで?楽しいじゃん。血だらけの顔を燃やすなんてさ」 何この人…危険かもしれない…… 「やだなぁ、警戒しないでよ。敵じゃないよ?」 私は一歩近づく彼にライターを向けた。 「ふふ、可愛いな。だから面白いんだよね」 「…?」 この人馬鹿にしてるの? 「…あなたも…燃やしますよ……」 すると彼は高らかに笑う。 その声は屋上に響いた。 「はは、頼もしいなぁ。言ったろ?敵じゃないって。 僕のことは十六夜って呼んでよ」 い…十六夜? やっぱり聞いたことない… 私が山下の方に顔を向けると動かない。 どうやら気を失っているようだ。 「早く燃やさないと誰か来るかもよ?」 「…今は授業中なのに誰も来る訳……」 「暁君」 …! 「彼女の彼氏の暁君なら来るかもね?」 そんな…暁君に見られたくない… 暁君に…幻滅されたくない… 暁君に……嫌われたくない! 「へーえ、燃やさないの?じゃあ僕が燃やすよ」 十六夜は私のライターを取り上げて火を出す。 そして山下の胸ぐらをつかんで顔に近づけた。 「……ま、待ってよ…!」 「あれ?何?この醜い顔潰したいんでしょ?」 「………」 いきなり出会った奴がまさか… それに…もういい。 「あ、飽きました…」 私がそういうと彼は僅かな微笑を見せる。 「飽きたんだ?じゃあさー………」 「……!」 その一言で 私は彼についていくことにした。 347: 名前:+椎名+☆2011/09/15(木) 20 26 48 ~十六夜side~ ふふふ、面白い光景が見れそうだったのに。 真面目そうな女の子が嫌われ者で不思議っ子の女の子の顔を燃や そうとしてる。 でも彼女は燃やさなかった。 あーあ、残念。 面白いものが見れそうだったのに。 彼女は僕を警戒してる。 だから…… 「じゃあさー……」 僕は彼女の耳元で言う。 すると彼女は改心した。 ふふふ、これから楽しくなりそうだな… 不思議っ子の彼女。 理想のかっこいい彼氏。 そして恋心を抱く遠き存在の子…… あはは、こんなにうまい三角関係はないよ。 だから徹底的に遊んであげるよ。 まあ飽きたら殺しちゃうかもね? 覚悟してね。 僕の新しい玩具の『宮本さん』? 352: 名前:+椎名+☆2011/09/18(日) 22 47 26 ~宮本side~ フフフ… そうだよ。 そうだったんだ。 あの人の言うことは間違っていない。 正しい… なぜ今まで気づかなかったのだろう…? 十六夜って人はただ一言しか言ってない。 私はそれで気がついたの。 『飽きたんだ?じゃあさー… 愛を行動で示したらどうかな?』 愛を行動で示す… そして彼はナイフを渡したの。 そう、暁君をこれで… そうすればずぅっと私のもの… 私だけの…暁君。 私が暁君に愛の傷をつける…。 私が彼を殺した瞬間から山下は暁君の彼女じゃなくなる… 本当に…私の暁君になる。 私だけの…私色の暁君。 私はあなたの全てが欲しい。 あなたの思いも。 あなたの気持ちも。 あなたの心も。 全て私のものにしたいの… だから…死んでくれる? 暁君。 ごめんね? これは私の愛情表現なの。 353: 名前:+椎名+☆2011/09/18(日) 23 02 36 私は山下を置いて保健室に向かう。 サボるの。 別にどうでもいいの。受験なんてまだまだだし。 それに今はどうでもいい。 暁君を殺したいの。 憎いわけじゃない。 愛しているから。 山下みたいな女に暁君は渡せない。 あいつは暁君を振り回しているだけ。 あんなやつ彼女にふさわしくない。 私の方が彼を愛している。 暁君が私のものになれば山下も苦しむ。 あはははははははははは! 山下!お前なんて苦しんでしまえ! 苦しんで…消えてしまえ! あはははははははは! 7日間の醜いゲーム。 続き21
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295: 名前:HARU☆03/07(月) 17 05 10 触れた唇から少しだけとくとくとジュースが流れてくる 焦ってごくん、と飲み込む 「な…っ、ジュース含んでたなんて聞いてない!」 「口の中にないなんて言ってませーん」 ぺろっと自分の唇を舐める奏太くんの姿が色っぽくて なんだか少し厭らしくて…、かぁっと自分の体温が上がる か、完全に悪戯されてる 「みんながいると可愛い奏太くんなのになあ」 「人前はそりゃ…ね」 と、目線を下に反らす奏太くん あらま、可愛い 「まあ私はどっちも奏太くんだから好きだけどねっ」 「…また殺し文句」 いひひ、と笑うと困った様子で奏太くんは照れる そういうとこもひっくるめて全部好きだからね? 297: 名前:HARU☆03/07(月) 17 33 20 「へー、試着に撮影ねえ。芸能人みたいだな」 朝学校でのりに昨日あったことを話す 八尾くんに告白されたことは言ってない だって私がぺらぺら話したらいけないかなって 「あ、でねっ。奏太くんにお兄さんがいたのっ」 「ほお、意外だな」 インパクトの強いナンパ的お兄さんだったけど と、心の中に納める のりは肩肘ついて「似てた?」と聞いてくる 「外見も中身も真逆っぽかった。大学一年って言ってたかな?」 「あれだね、くるみ。そのお兄さんと奏太くんの間で 取り合いとか始まるパターンだ。少女漫画だな」 はは、と楽しげに笑うのり 完全に他人事だと思ってんな… 「八尋さんは私をただからかって遊んでるのっ」 「…八尋?」 「あ、奏太くんのお兄さんの名前」 八尋さんの名前に反応するのり 急に黙って少し考える素振りを見せる 「のり?」 「…………」 「のりっ!」 「…あ、何?」 何事もなかったかのように返事をする 「八尋さんのこと知ってるの?」 「いや。珍しい名前だから気になっただけ」 にこっと笑うのり 超気になるんですけど… 298: 名前:HARU☆03/07(月) 18 47 37 のりにもう一度聞こうとすると担任の先生が教室に入ってきた 聞きたい言葉を止め、自分の席に戻ろうとする 「おはよ、相沢」 その途中で八尾くんに挨拶される いつも通りに笑う八尾くん 「おはよっ」 私もいつものように笑う 二人の間にあったことなんてクラスのみんなも知らないこと でも心地がいいと感じるのは私だけかな? なんて思いながら席に着き、八尾くんの方を見ると にこっと楽しそうに、そして少し悪戯気に笑っていた いつもの、…ううん 今までより良い関係だなあ ふふ、とにやける口を手で隠して教卓で話す先生の方を向いた そしてさっきののりの反応を思い出す 八尋さんの名前を出した時の間とか、伏せた目とか… のりはいつも聞き手役で自分の話はあまりしない 彼氏がいたことも何度か知ってるけど自分からは話したがらない 本人曰く「相手がどう思ってるかなんて興味ない」とか ざっくりした性格に合った格好いい台詞を言っていた気がする 「考えすぎ…かな」 そりゃ考えもするよ のりがいつもののりじゃないなんて見たことなかったから 299: 名前:HARU☆03/07(月) 19 11 21 「あれ、くるみじゃん」 うがっ、と心の声で叫ぶ 学校の帰り道に買い物をしていたら街でばったり八尋さん こっちに寄ってくる 「くるみ知り合い?」 「…奏太くんのお兄さん」 へえ~、と一緒に買い物してる満里奈は頷く 八尋さんが近づいてくると無意識に構えてしまう 「そんな構えないでよ。ちゅーした仲じゃん」 「ちゅう!?くるみあんた「わぁあぁ!違う!ほっぺ!」 「しかも八尋さんが勝手に!」と焦って説明すると 満里奈は「なーんだ」と軽くほっとする あ、危ない…、この人なにさらっと言ってんだか 「奏太は?」 「部活です、知ってるでしょう…」 「うん。聞いてみただけ」 にこっと笑う八尋さんの真意が全く読めない するとポケットから飴を取り出し、渡してくれる 「はい、お友達も」 「わ、ありがとうございます」 「なんだか餌付けされてるみたいです」 少し不満気に言うと、「子猫だもんね」と意味のわからないことを言われた からかって遊んでるな… 「あ、八尋さんに一つ聞きたいんですけど」 「何?彼女ならいないからいつでもいいよ」 「違いマス」 両手を広げて「おいで」と笑って言う八尋さんにきっぱりと断る 聞きたいことはもちろん、 「倉重紀子、って知ってますか?」 304: 名前:HARU☆03/08(火) 19 59 21 「知らん」 ガタッと拍子抜けする 光の早さで即答され、返答を待つ時間さえなかった 満里奈は「のりがどうかしたの?」と聞いてくるが 完全に私の勘違いだったのかな、とすら思ってしまう 「何、その子可愛いの?」 「なんでもないです、私の勘違いです」 なんだ、違ったのか じゃあ、のりの"八尋さん"って違う人のことか その後八尋さんと街で別れて、満里奈と買い物を終えて帰宅する 夕焼けが綺麗で、奏太くんに会いたいな、とか思ってしまう そしてやっぱりのりの事が気にかかる 私の知ってる八尋さんじゃなくても、のりは"八尋"という人に何か想いがある のりの今日の様子が証拠というわけじゃないけど 友達をやってきた私の勘 踏み込んでいいものかどうかまではわからないけど… 305: 名前:HARU☆03/08(火) 20 41 46 くるみと別れた後、八尋は携帯を取り出し、発信ボタンを押す 何回かのコールの後に機械音がし、「もしもし」と相手が応える 「もしもし、俺」 『……八尋』 「なんかお前のこと聞かれて懐かしくなった」 『今更何の用』 電話の主は重い声を出す 八尋は街の声を背景に穏やかに話をする 「ねぇ、今何してんの?」 『そうやって都合良く呼び出すんだな』 八尋は目を閉じて笑う 「会いたいんだけど、紀子」 『会いたいなら八尋が来なよ』 八尋の電話の相手は紀子、"のり"だった 相変わらずの強気なのりの発言にははっと笑い、 「いいよ、お前の裏の公園ね」 と言い、電話を切ると公園へと足を進める 306: 名前:HARU☆03/08(火) 20 58 55 八尋が公園に着くと、既にベンチに座っているのりの姿があった のりが八尋に気付くと「遅い」としかめっ面で言う 「いや、俺急いで来たんすけど。つか紀子は家から超近いじゃん」 「私より2つも年上なんだから大人の余裕を持て」 「ひでぇ」 八尋はそのままのりの横に腰をかける 先に口を開いたのはのりだった 「くるみが私の名前出したんだろ?」 「あ、やっぱ友達なんだ」 「くるみの話聞いてもしかしてと思ったけど…、 八尋ってやっぱりあんたのことだったわけか」 ふう、とため息をつくのり くるみが話した"八尋"のこと、自分の様子をくるみが気にかけていたこと のり自身も気にかけ、くるみのことだから八尋と接触したら 間違いなく自分のことを八尋に聞くだろうと直感で理解していた それがこんなにも早いとはのりは予想外だったが 「で、今更何の用なわけ?もう半年も前のことを」 「だから言ったじゃん、会いたくなったって」 「私はあんたの都合の良い人形じゃない」 紀子と八尋 全ては半年前の話だ 307: 名前:HARU☆03/08(火) 21 14 26 紀子と八尋は半年前の恋人同士 きっかけはごく普通、友達の彼氏の友達 「紀子の気強いとこ好き」 八尋は女遊びが激しかったが紀子と付き合い始め、変わった 紀子だけを大切にするようになった 順調だった 「八尋の女はあんただけじゃないよ」 八尋の過去の女の一人が錯乱状態で紀子の元に訪れた 幸い怪我もなく事は済んだが、急に八尋から紀子への連絡が途絶えた 着信拒否をされ、八尋の友達にさえ連絡を拒まれた 自然消滅という名の"別れ"だった それから紀子から連絡をすることも八尋から連絡がくることもなかった * 「あんたが奏太くんの兄だなんて初知りだけどね」 「弟をいちいち紹介するのも変でしょ」 公園に夕方のサイレンが響く 遊んでいた子ども達は親に連れられて帰って行く 「くるみには手ぇ出すなよ」 「なんで?」 「いろいろあって頑張って、今奏太くんと幸せなんだ」 「優しいね、紀子は」 穏やかに、優しい八尋の声が香りを残す 308: 名前:HARU☆03/08(火) 21 32 12 「なんで急に連絡切った…」 「…気まぐれ?」 パンッ…、とのりが八尋の頬を叩く音がする 八尋は「痛いよ」と笑う 「…あんたのそういうとこが嫌いだった」 「うん」 「肝心なとこは何も話さないではぐらかして、ただ笑って…っ。 全部一人で片付けようとして心配かけないようにそういう時だけ大人ぶって!」 普段感情を表に出さないのりが怒り、不満をぶつける 「俺はもっとそうして欲しかったよ」 「……は」 のりの背中に手を回し、優しく抱き締める 「もっと紀子にはそうやって怒って欲しかったし、時には泣いて欲しかった」 時間が半年前に戻ったような気がした 「俺の過去の過ちに紀子は巻き込みたくなかった。巻き込まれても 「平気」、って紀子は笑ってて俺よりずっと大人に感じてたんだ」 「じゃあ何…、巻き込みたくないから私を遠ざけたって言うのか…っ?」 声が震える 半年前の気持ちが押し寄せてくる 「なかなかかっこいいことするでしょ、俺」 あははっと笑う八尋 時間がゆっくりと戻っていく 309: 名前:HARU☆03/08(火) 22 12 33 「くるみから紀子の名前が出た時、ぶっちゃけ嬉しかった」 八尋の腕に力が入り、のりを引き寄せる 「まだ紀子が俺のこと気にかけてくれてるんだーって」 「…ムカつく」 「いいと思わない?俺と紀子が結婚したら 奏太とくるみは紀子の弟と妹になるんだけど」 ゴツッと八尋の額に頭突きをする 痛そうに額を押さえる八尋 「ばーか、誰があんたと結婚するかっての」 「え、まじ?俺紀子しかいないんだけど」 その八尋の言葉にあははっ、と笑う 紀子は八尋の額にでこぴんをして、 「仕方ないなあ」 と幸せそうな笑顔で言う 半年の歳月を経て、解けていた糸が再び紡がれる 316: 名前:HARU☆03/11(金) 19 29 43 「えぇっ!?八尋さんの彼女!?」 「正確には元彼女」 学校に着くなり、のりから話があると言われた そして急な衝撃的の告白 開いた口が塞がらないとはこのことだ 何かしら繋がりがあるとは思ったけど…、予想外すぎる 「え、でも昨日街で八尋さんに会った時にのりのこと聞いたら 知らん、って即答されちゃったんだけど…、えぇ?」 「さあ、特に意味はないんじゃない?」 ふふ、と笑うのり 八尋さんのこと、好きなんだなあとわかる 「くるみにはお礼言わなきゃな」 「え?」 「くるみが私のこと八尋に聞いたから、八尋も私のことを思い出した。 ―――ありがとう」 のりの"ありがとう"には重みを感じた 私が何気なくしたことがのりと八尋さんの為になってた 二人の間に何があって何を乗り越えたのかは知らない …ううん、きっと私が知るのはもったいないかな 「のり、もっと正確には?」 「―――彼女」 いつも頼りになる姐御肌ののり でもそう言ったのりの笑顔は今までで一番可愛かった 317: 名前:HARU☆03/11(金) 19 56 09 大切な友達が幸せって私も幸せになるんだ 「あ!じゃあ八尋さんとのりが結婚して奏太くんと私が結婚したら のりは私と奏太くんのお姉さんになるんだねっ。わあっ、すごいっ」 「ぷっ、あはははっ」 あ、れ? 私なんか変なこと言ったかな? のりがすっごい笑ってるんですけども…、 「八尋と一緒のこと言うんだなあ」 「え?嘘ぉっ?」 楽しげに笑うのり でも本当にそうなったらいいなって思うよ? 「今更八尋に会えるなんて思ってなかった。だから今すごい嬉しい」 「なんかいいね、のりが八尋って呼ぶの」 「そ?別に普通だよ」 普通じゃないよ きっとのりが八尋さんの名前を口にするのは必然だったんだよ 「本当におめでとう!」 ずっとずっと二人を応援するよ 320: 名前:HARU☆03/11(金) 23 10 03 放課後になると急いで準備をし、門に向かう 既に門で待ってる人が見える 「奏太くーんっ」 「だから離れて下さいって!」 変わらずぎゅうっと腕に抱きつく 奏太くんの部活がお休みで二人で帰るのすっごく久しぶりだもんっ すっごくすっごく嬉しいんだもんっ 「あのねっあのねっ、話したいことあるのっ」 「…何ですか?」 とりあえず人前なんで離れて下さい、と奏太くんは付け足す むう、としながらも渋々離れて歩き始める 「八尋さんとのりがね、付き合い始めたのっ」 「はあっ!?」 明らかに批判的な声をを出す奏太くん のりと話したことをそのまま奏太くんに話すと、どうにも腑に落ちない様子 「えー、八尋がー。のり先輩とかもったいない」 「そうかな?私はすっごくお似合いだと思うよ?」 「んー…、ま、いいか」 悩ましげな顔から急にあっさりとする およよ?急変した? 「なんだ、結局祝福してるんじゃんっ」 「だってくるみ先輩に手出されなくてすむでしょ」 どっきゅーん! か、可愛いすぎる…っ 「…見ないで下さい」 「ちょ、さっきの言葉もう一回」 嫌です、とはっきり断られた …けど、想われてることに愛を感じマス。 321: 名前:HARU☆03/11(金) 23 21 34 少し街に寄り道して帰ることにした 学校帰りに二人きり 「デートだっ」 「そんな大層なもんじゃ…」 「いーのっ」 今日の私は気分が良い 学校も嫌なことなかったし、のりも幸せだし 奏太くんと一緒にいられるし 「にやけすぎ」 なんて注意されるくらい 人が少し多くて背の小さな私ははぐれそうになる するとさり気なく私の手を握るもう一つの手 「離れないで下さいよ」 「は、はい」 人前で繋ぐのは嫌がる奏太くんが自ら私の手をとってくれる 驚いてきゅんとして、つい返事がぎこちない敬語 私、またにやけてない? 信号が赤から青に変わる たくさんの人の中を同じように歩く 同じように渡る ―――はずだった "神様なんて大嫌い" 324: 名前:HARU☆03/12(土) 17 39 52 神様なんて大嫌い 繋いでいた手がどうなったか私にはわからない 信号は青に変わっていた 誰かが危ないと叫んだ時には、大きな音と鈍い痛みしか実感できなかった そして遠くで聞こえるたくさんの慌ただしい声 痛い、頭が、身体が痛い * 「くるみ…っ、」 白い天井、お母さんの顔 薬の匂い…、頭がぼーっとする ―――…私 急に意識がはっきりとしてベッドから勢いよく起き上がる すると頭に痛みが走り、顔を歪めながら声を堪える 「無理しないの!頭を打ってるんだから…」 身体を見ると頭を打った以外にも軽く傷の手当てがしてある 「脳震盪起こしてるからまだ休みなさい」 そうだ、確か横断歩道に向かって乱雑した車が突っ込んできて… ―――奏太くんは? 萌えます。年下男子 続き12
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1: 名前:サスライ☆12/17(金) 19 26 23 むかしむかし、あるところに大冒険をした3人の旅人が居ました。 気丈なジュウザ。 優しいサーパ。 陽気なハンプティ。 これは、そんな3人が別れてから数年後の、むかしむかしでは無い話。 2: 名前:サスライ☆12/17(金) 19 51 34 第一章 ササヤキ 風が吹く。その風は何処から来たのか、聞いても答える者は無いが、フィクションの制限されたこの町では、聞いたらかなり危ない人に見られる。 だから風に頬が当たれば鬱陶しいな程度にしか思えなく、しかし発散する場も無いので『彼女』は溜め込んでポケットに手を入れてズンと歩くしかなかった。 白い肌に紅い目と、銀髪がよく似合う娘だった。右目を髪で隠すのは思春期特有のオリジナリティで特に意味は無い。 小柄な身体を寒さに歯まで震わせて、嫌だと感じて愚痴を吐こうにも声が出ない。 ならば一刻も早く家に帰りたいのかと言えばそうでも無かった。 家に帰っても自分の気持ちを解ってくれる人なんていない。 家に帰っても何も無い。 国の中でも特権階級の過ごす事が出来る町。ここでは外の様に飢餓に苦しむ事もミサイルの直撃を受ける事も無い。 しかし自由は無くて、個性は奪われる。 彼女にとって家に帰ると言う事は、玄関で靴を脱ぐ様な物だった。 3: 名前:サスライ☆12/18(土) 12 18 14 彼女が曲がり角に差し掛かった時だった。何時もなら何も感じず通り過ぎる筈だが、今日は何かが違った。 囁く(ササヤク)様な声がする。聞き覚えの無い様で、しかし聞き覚えのある声色が。 「クックック。たまには曲がってみたらどうかな?」 人を喰った様な口調だ。未知に対してゾワリとした感覚が足の爪先から首の付け根まで伝う。 周りを見回すが、それらしい人影は無い。精々電灯に群がり、しかし行き場を失って右往左往している虫影が見つかる程度だ。 「だれ、そう誰ですか。こう言う人を脅す行為は条例により暴力と同様と見なされますよ!?」 必死に自分が今まで絶対無敵の最強武器だと思っていたものを振り回す。 しかし、もしこれが人に届いたとしても何の関わりの無い他人を『助けるなんて利益の無い事』を、人に襲われる恐怖を知らないこの町の住人が行うだろうか。 もし行政に届いたとして、自分で考え上の許可を取らず人のもとに駆け付ける人間がどれ程居るだろうか。 「やだなぁ、居るじゃないか、もう解ってるじゃないか。それを認めないだけじゃないのかな。 アンタの頭の中に直接響くこの声が、声色が。 そう、私はアンタ自身だ」 どこかで聞き覚えのある声だ、だってそれは自分の声なのだから。 4: 名前:サスライ☆12/18(土) 22 56 50 彼女は自分の脳がおかしくなったのだと思った。そして、この世の終わりの様な恐怖にかられる。 これが治療出来る範囲なら良い、入院すれば良いだけだ。 しかし、治しようの無い人間は、隔離治療して手の打ちようが無ければ『外の世界』に放り出される。 だって、法に殉じる『立派な大人』になれないのだから。 『外の世界』は学校で習っていないからよく分からないし、必要が無いから知ろうともしなかったが、そこは野蛮人しか居なくて人殺しなど日常茶飯事の事だとか。 「クックック、どうした?『私』、そんな頭を抱えていては下しか見えないよ?」 「五月蝿い。消えろ。お前が現れたせいで私はどうしようも無いんだ」 「……そうだなぁ、一つだけ方法があるよ」 「ホント!?」 彼女は目を見開き希望の光よろしく月光を顔に浴びる。ロクに自分で考えもしていなかったのに。 囁き声の主はそれを解っていながらも溜め息一つ。こいつは悪い意味で頭が良いけど馬鹿だなあと。 「うん、今日から暫く私の言う事を聞いてくれたら良いよ」 「うんうんするする。それで、何をすれば良いの?」 「じゃあ、目からピーナッツを食べて鼻からスパゲティを吸ってみよう」 沈黙。 電灯は相変わらず虫が群がり行き場を失う。その下に生える植物も常に光を与えられているから花を咲かせる時間が分からなくて行き場を失っている。 彼女もそんな気持ちだ。だから叫んだ。狂っていると思われる事を省みずに。 「出来るかボケェ!」 5: 名前:サスライ☆12/21(火) 00 32 56 「……と、言うのは冗談で」 「マジで怒るよ?」 地獄の底から深く呟いた。囁き声の惚(トボ)けた口調がかえって怒りを蒸し返す。 「一瞬本気にしたクセにー」 「え、アンタ何で解るの!?」 「そりゃ、私はアンタだからね。色々解るさ、例えば……」 テスト前、頭に一気に勉強を詰め込んだ様な痛みが疾り、脳裏に残るは赤裸々な過去の記憶、通称黒歴史。それは色々な意味で自分だと思いたくないと言う感情を作り出すには十分だった。 苦虫を噛み潰した様な顔をする彼女は割と平然とした感情で、しかし迷惑にならない様なのか保守的思想によるものなのかボソリと言葉を吐いた。 「……アンタは、『ササヤキ』だ」 「私の名前か。やれやれ、面倒な不思議ちゃんだ」 ムスッと頬を膨らます。軽く応えるササヤキに今の自分の必死さを伝えたいし殴りたい。そもそも何が不思議なのか。 「だってもう一人の自分にボソボソ語りかけるってドコの不思議ちゃん?それとも中二病? ウヒャヒャヒャヒャ」 胃が痛くなったと同時にこれに慣れるには随分手間隙かける必要がありそうだ。笑い声が心の底から鬱陶しいと思ったのは初めてかも知れない。 「まあ、良い。行くよ」 「おや、曲がり角に曲がるのかい、『メイ』。クックック」 「五月蝿いなぁ、アンタが言ったんでしょ」 こうして彼女、メイは産まれて初めてのルール違反をするのだった。 8: 名前:サスライ☆12/21(火) 11 35 01 言葉だけで解ったと言う人程、実は解っていない。 例えば、勉強ばかりゲームばかりの人間が論争の果てに一方が『俺を殴れ』と言う、それは殴られれば許されると解釈している。しかし、何故殴るかを解っていない。 拳を欲望を吐き出す手段としか捉えていない。それは殴った事も殴られた事も無いからだ。 その様にメイも何故街灯があるかが解っていない。暗闇を照らすのは知っているが、何故暗闇を照らすかを知らないのだ。 「な、何か話なさいよ。ササヤキ」 「クックック、鬱陶しいんじゃ無かったのかにゃー」 頬を電流の様な感覚が伝い、腿(モモ)が震える。 メイは暗闇がどれ程怖いかを解っていなかった。だから、路地裏も精々薄暗い程度と高をくくっていたらこの有り様だ。 「じゃあ引き戻せばいいんじゃないのお?チキンのメイちゃん」 「五月蝿い、私がこんな不幸なのはみんなみんなアンタのせいだ」 暗闇で怯えパニックを起こすメイの死角で、黒猫が塀の上で欠伸をしていた。月光を背にするシルエットには余裕が感じられる。 「ふうん、まあ良いんじゃないの。メイがそう思うなら」 「何、どう言う意味!?」 その言い争いは直ぐに終わる事になる。 黒猫が塀からピョンと飛び降りて何処かへ逃げた。途端、調度メイの正面の塀に何かがバンと叩きつけられる。 それは人だった。 11: 名前:サスライ☆12/22(水) 19 50 35 人がコンクリートの塀に叩きつけられれば服が波紋を描く。その服が群青だから、波紋と聞くと水を連想してしまい、すると人体の弾力に目が行き改めて水分量からこれは人体なのだと認識する。 そしてそれは、見覚えのある格好だった。 「あらら、お巡りさんが塀にぶっ飛ばされてるねえ。窓に突進のカブトムシもビックリだ」 「もうカブトムシの時期は過ぎてるよ。いや、そんな事はどうでもいい。 警察が暴力にあってる!?」 ズルリと身体が塀に沿って尻から落ちる名無しの警察。警棒やら金属製の、重量感ある音がした。 警官の正面、曲がり角の更に脇道、闇の向こうからカツカツと革靴の音が近付いてくる。 警官が顔を上げると同時に、顔面に革靴の裏側が叩き付けられた。尚、革靴は引く力が強い為、裏底は厚いゴム等強固な素材で出来ている場合が多い。 それが革靴が地面を叩く音が無くなって直後から行われた。つまり、この蹴りの主はメイが姿を確認する間も与えず、面を上げたばかりの警官に素早く蹴りを文字通り見舞ったと言う事だ。 暗闇に目が慣れてきた為かその姿が確認出来る。 「いや、まあ、慣れてなきゃ警官も確認出来ないから当然っちゃ当然なんだけどね。ウッシッシ」 ササヤキがメタ発言をするがスルーの方向でいこう。 月光を背にする黒髪の持ち主は、黒いスーツを手本の様に着た男性で、年齢はよく解らない。只、中性的な美貌があった。 普通の格好、普通の背だけに黒革の眼帯と腰に差した日本刀がかなり目立ち、彼の『恐怖』を引き立てていた。 12: 名前:サスライ☆12/24(金) 22 25 27 目的を違えた見開いた目同士が合う。スーツの男は視線から殺気を放つ為に、メイはそんなスーツの男の殺気に仰天していたからだった。 すると直ぐにスーツの男はメイへの視線を外して背中をメイへ向ける。悲鳴を上げる事も出来ず、膝から情けなく地面にへたりこんだ。 スーツの男が向かう先は蹴り飛ばした警官の居る場所の更に奥で、ズングリとした影が見えて、目を凝らせば、それが別の人と解った。詳細は不明。 スーツの男が刀の柄に手をかけて、スラリと美しい線を描いて抜く。月光に照らされる金色の曲線は、ゾクリと官能的だった。 その時、ササヤキが口をメイの脳内にはさむ。相変わらず惚けた口調で、残酷な内容を。 「あらま、あの人ガチで殺す気だねー。お巡りさんも動けないし、こりゃオワタ」 するとメイの中で感情が落ちて冷たい感覚になる。結局自分は何も出来ない人間なのだと。 それで良い、ここで傍観者をしていれば明日も何事も無く何時も通りだし、自分はこんな事に人生を無駄にする訳にもいかない。どうせ、時間が解決してくれるじゃないか。 が、思っている事とは裏腹に感情は高ぶり初めていた。ササヤキが冷やかしたから、昔の思い出があるから、将来を考える癖でもあるのか原因は不明。 どうでも良い訳無い、事件その物は時間が解決してくれても、自分の中でそれは時間と共に、後悔と言う形で大きくなるだろう。 どうせ、あの曲がり角を曲がった時からルール違反をしているんだ。ルールが無いなら自分の正義に従うしか無いじゃないか。 人を殺したく無い。 その正義を背負い、生まれて初めて彼女は、『選択』した。 13: 名前:サスライ☆12/25(土) 14 29 58 メイの駆け足にスーツの男は反応。一瞬メイの方向へ視線をずらした。 その隙を以て、今から斬られようとしていた人影の運命が変わる。懐に手を入れて、クロガネの金属光沢を放つ塊を取り出した。拳銃だ。 銃口がスーツの男に向けられると同時に、メイがスーツの男の脇腹に勢い良くタックルした、怖いとか感情は不思議と無かった。 「……邪魔だ!」 それは片手で磁石の反発よろしく弾かれる。 その流れでスーツの男は片手で刀を振る、一閃は拳銃をバターの様に飛び出す最中の鉛弾ごと叩き斬った。 さて、一方弾かれたメイは警官の方向に飛ばされていた。そんな彼女の視界に飛び込んでくるのは、スーツの男に向けたのか警官の構えた拳銃。 「うわぁ、リボルバーかっちょえ~。それに私、殺されちゃうけど」 このササヤキのぼやきにメイは無言だった。反論する余裕が無かったと言えばそれまでだが、何故か同意見でもあったのだ。 もう駄目だ。そんな時だ。 拳銃が突然、潰れた。これは抽象的表現では無くて、突然拳銃の中に強力な重力が発生したかの様に物理的に潰れたのである。 もはや拳銃と呼べないそれを構える警官に、今度は見えない力が顎に叩きこまれ、奥歯を一本吐いて、彼は気絶する。 塀の上にはまた猫が居て、ズングリした人影は消えている。そして道に立つスーツの男には一つの変化があった。 眼帯を取っていたのだ。それを見て、メイは今度こそ恐怖を感じた。 14: 名前:ササヤキ☆12/25(土) 19 47 18 スーツの男の眼帯の下は化け物の目だった。爬虫類の様な棒状の瞳の周りに赤目があった。白目は無く、変わりに墨で染めた様に真っ黒だ。 そして、目の周りに静脈血管の様な隆起が亀裂よろしく、はしっている。 それでも人間の方の冷めた目で、スーツの男はメイを見て、ポツリと呟く。 「……怖く無いのか?」 「怖いですよ。それより、さっきの人はどうなりました?」 メイは冷静だった。この状況を焦ってもどうしようもない。一回頭に血が昇ってバランスを保つ為かも知れない。 これは授業が解らなくても諦めず集中して聞き続ける事で、無駄な力が入らなくなり頭に入り易くなる事に似ている。 スーツの男は鼻息で行うをため息を一つ。刀を鞘に納めると、肩の力を抜いた。 「逃げたぞ。で、何故貴様は奴を助けた」 「人が死ぬのは誰だって嫌ですよ」 スーツの男がその言葉を聞くと、今度は口からため息を吐く。そして地面に落ちていた眼帯を拾い、着け直す。 相手も解ってくれたのかなと考えるメイに、ササヤキが囁いた。 「いや、単に呆れているだけじゃない?都合が良すぎる考えだって」 脳内でそんな事無いと返事した。 15: 名前:サスライ☆12/26(日) 09 15 39 「……呆れたな」 やっぱ呆れてた。目に見えぬ2対1で負ける構図にメイは項垂れる(ウナダレル)しかない。 「何が呆れるんですか、誰かを生かす事は間違っていますか」 「では貴様は、そいつが生きてるお陰で沢山の人が死んでも良いのか?良い訳無いだろう、貴様の理屈で言うとな」 さて、メイが住んでいる『この国』には『隣国』がある。「全ての人間を平等に」をスローガンに掲げた党が立ち上げた国だ。しかし、他の思想に対する弾圧力も一部では有名である。 近年、どうも景気が良いらしく、力を付けているとの事。 拳銃を犠牲にズングリした人影が逃げた闇をスーツの男が眺めると、再びメイを見た。 「さっきお前が助けたのは、隣国の工作員だ。この国と戦争を起こす為の理由作りのな」 メイはその一言で血の気が引く。一瞬、余りにも非日常過ぎて非現実に思えた。しかし叩き斬られた拳銃と血塗れでピクピクしている警官を見ると、逆に非日常がリアルに思える。 「……ジュウザ」 「は?」 スーツの男の突然の台詞にポカンと聞くと、付け加えられた。 「俺の名前だ、貴様はヤツを逃がした。 ……手伝って貰うぞ」 16: 名前:サスライ☆12/28(火) 00 04 21 路地裏に、門番の如くズンと立ち塞がり存在する石の塊が、得てして文明社会の光の裏側に存在する。 それは望まれて産まれ、しかし時が経つにつれて邪魔だと罵られて棄てられた。昔の物なのでコンクリートの表面は、ややパウダー状になっていて、空気は無機に満ちている。 死んだ文明。それを人は『廃ビル』と呼んでいる。 メイはそんな廃ビルの一室にジュウザと一緒に来ていた。何があっても自分は悪く無い、こうなったのはジュウザとササヤキのせいだ。そう、自分に言い聞かせる。 あの後、巻き込むとは何事とジュウザに抗議したが溶ける程呆れた顔で 「貴様の考えは、まるでデコレーションケーキの砂糖人形の様だな」 と、言った。笑いをこらえるササヤキを無視してどういう事だと抗議すれば、続ける。 「デコレーションケーキの砂糖人形の様に甘いのもだが、貴様は結局小綺麗なケーキの上に立つ考えしか出来ない」 ジュウザは、闇の向こうまで歩き、途中で止まって振り向かずに口だけ動かした。 「まあ来い。貴様が助けた奴がどんな人間か教えてやるから」 「あらあら、素敵なデートのお誘いだねえ。ここまで来ちゃったら行くしかないかなあ」 他人の言葉が生み出した、自分の心の波に流されて、今メイは此処に居る。 別に義務でも無いのに。 17: 名前:ササヤキ☆12/29(水) 00 02 22 ジュウザは刀を抜く。どう抜いたかは解り、スローモーションにすら見える筈なのに抜く瞬間は見えない。何故なら、とてつもなく速い動きだが、そこに無駄が無いからだ。 ユラリと刃を上に向け、手の甲を峰に添える。牙突、つまり突きの構えだ。 「クックック、こりゃ偉いもん見れるかもねえ」 ササヤキは不安な事を言った。ふざけた口調なのが他人事を引き立てていてメイにとっては憎たらしい。「なあ、メイ。アンタも私なら解らないかい?さっきの拳銃が潰れたあの力の波動を」 確かにメイは肌に突き刺さる感じがある。それは肌にぶつかっても広がらず、冷たい針の様だ。 しかし波動を感じるだとかそんな物は漫画の中のお伽噺に過ぎない。漫画なんてメイの常識では中学生で卒業する子供の玩具だ。 「クックック、そうやってアンタは何時も自分を誤魔化している。 そうやってアンタは自分を良くしか見せない。 気付いているじゃないか、この『波動』が何なのか」 「何なの!?勿体ぶらないでよ、馬鹿にしてんの」 集中して刃と一体化しているジュウザに声は届かないが、ササヤキには届く。 ササヤキは、言った。 その力はお伽噺なんかじゃない。その力はメイが何時も内側に持っている。その力の正体は、薄々形容表現を考える内にメイは気付いていた。 「……『憎しみ』さ。クックック」 途端、ジュウザの『憎しみ』を垣間見る事になる。 18: 名前:サスライ☆12/30(木) 13 14 08 ジュウザは添えた片手を発射台にして、突きを放つ。誰も見えない上に向かって。 うわあ、この人危ない人だよ、脳とか。と、一瞬考えるメイだが、その考えは即座に断ち斬られた。 天井に突きが貫通した跡が見えるのだ。 「エネルギー波を刀から放出したってトコかなあ、クックック」 そんな非現実的な事あるものかと突っ込みたいが、ササヤキをはじめとする非常識のバーゲンセールの存在がそれを否定する。 そしてジュウザが刀を脇構えにすると口を開く。 「……この刀は、感情を力に変換出来る。今放った憎しみからは、決して逃げられない。 憎しみは常に、誰かに向かっているからだ。怨念とも言うな」 天井の割れ目にヒビが入る、ヒビが一定の大きさに達すると天井その物が砕けた。大量の瓦礫が降り注ぎ、ジュウザはそれに刀を振るう。 弧は広がり、ジュウザとメイを覆う目に見えないが確かな盾になった。常に辺りに気を配って、自分を殻に閉じ込める。その感情を人は『恐怖』と呼ぶ。 大量の瓦礫が大量のパウダーを撒き散らして、煙いなんて無いかの様に涼しい顔で瓦礫の中心にジュウザは腕を突っ込んだ。 「さて、この辺にさっきの工作員は居る筈だな。 ……天井に、同じ感情と力の流れ。所謂『気配』を感じれた」 19: 名前:サスライ☆01/01(土) 17 41 51 瓦礫から片手で引っ張り出されたのは、全身をローブで覆った小柄な人だった。ローブは若葉色で、淡い色は暗闇に同調し易く出来ている、黒いと月光を反射して逆に目立ってしまうのだ。 どうやらこのヒラヒラがズングリの正体で、実際はもっと細いと予想される。 布に血がベットリ付いて足に貼り付き、細い曲線を描いていて、メイはそう感じた。 ジュウザがローブに手をかけると一気に引っ張る。破れ難い特殊な繊維で出来ていたが、ジュウザの力で直ぐティッシュペーパーの様に破れる。ジュウザの刀の能力は、刀以外にも適応されるからだ。 では何故、ローブを脱がせるか。服とは精神的な鎧であり、人との壁でもある。だから服を着込んでいると威圧感があるし、着てる側としては何か安心する。 つまり、尋問するのは服を脱がせた方が良い。 孵化よろしく中から現れたのはメイと同じ位の少女で、黒いタンクトップと迷彩カーゴパンツと言ったシンプルな服装。 茶髪をショートに切っており、顔の形は良いくせに色気は無いが気高さは感じる。所謂『格好可愛い系』だ。 ジュウザは問い、彼女はジュウザの予想通りに、しかしメイの予想外に応える。 「……さて、言い残した事はあるか?」 「この世を乱す害悪め、お前は死語己の罪の重さに地獄の業火にて焼かれるだろう」 「……そうか。では、尋問を開始する」 ジュウザは変わらない。警官の顔を血塗れにした時も、メイに憎しみを向けられた時も、そして今も。 無理矢理言うなら『歪み無い系』だ。 20: 名前:サスライ☆01/01(土) 22 13 12 メイは目を閉じる。決して変わらぬジュウザの姿に恐れているからではない。 メイは耳を塞ぐ。決して耳障りな風音を鬱陶しがっているからではない。 メイは今日、学校で何があったか考える。そう言えば先生が誤字をしていたっけ。しかし決して授業の復習をしたいからでは無い。 「クックック、無駄だよ。君がそう逃げた所で何も変わらない」 ササヤキに思わず薄ら目を開けた。天丼ネタよろしく変わらない風景が目の前にある。 全裸に剥かれた同世代の女性。それの両手首を片手で掴んで持ち上げるジュウザ。 そして、クラスに一人は居る様な無愛想な表情を変えずに、もう片手で拳を作る。 「……さて、貴様の目的は何だ?」 すると女性はジュウザに向かって、ジュウザ並みに無愛想な顔で唾を吐く。そしてザマアミロとガキ大将な台詞が似合う顔をしていた。カメラ目線とも言う。 「……そうか」 特にジュウザは表情を変えずに腹に拳を釘の様に打ち込んだ。女性は目を見開いて、口を大きく開き先程よりも大量の唾を吐く。 唾が大量に顔に付いてもジュウザは歪み無い。だから淡々と言葉を紡ぐ。 「……さて、貴様の目的は何だ?」 この『作業』がずっと続いていた、しかし不思議な事に一番はじめにそこから逃げ出したのはメイだった。ササヤキは続ける。 「だから無駄だって、君がどんな逃げたトコロで、君が生かした人が生きる事で酷い目に合う事は変わらない。 そんでさ、『私』にそれを止める手段は無いんだよ」 21: 名前:サスライ☆01/01(土) 22 55 55 マオ。それが今ジュウザに尋問されている女性の名前だ。工作員としての成績は、あまり良く無くて、何時でも切り離せる様に工作の先駆けに使われる事が多い。 逆を言えばマオが居ると言う事は何かが起こる前兆であり、こうして何を隣国が企んでいるかを問い詰める。 「さて、腹を殴るのも飽きてきたし趣向を変えてやろう」 ジュウザは少し血の付いた拳の人差し指でマオの左足を指す。次に右足、次に左腕、次に右腕、最後に顔面だ。 「……5回、チャンスをやろう。今指差した順番で骨を折っていく。 5つ目の意味は、解るな?」 しかしマオは、だからどうしたと言わんばかりに、他人事の目をする。 自覚しているのだ、自分の価値を。それでいて組織から離れる意思は無い。何が彼女をそうさせるのか。 「だからどうした。お前が私をお前の悪質な趣向で痛め付けた所で私の心は穢れない。 何でも力でどうにかなると思うなよ、野蛮人! ……アグゥ」 かなり速く、手刀で左足をトンと重く叩く。すると空手の演武の手刀で板が割れる様に、もしくはポッキーが折れる様に、あっさりと左足に第三の関節が出来た。 ただしそれは本人の意思では動かない上に、在るだけで激痛を伴う不便な物だが。 「……さて、次は右足か。心が痛むな」 「ふん。お前の考えている事なんてクズだ。そんな使えない物に我が誇り高き思想は屈しない」 「……そうか。お前等の思想は確か『全てを平等に』だったな」 右足にも第三関節が出来る。どんな人間にもどんな生き物にもどんな事象にも平等にジュウザは変わらない。 22: 名前:サスライ☆01/02(日) 12 01 22 あの化け物の目だ。ジュウザは眼帯に手を掛けて、あの時メイの見た目で、マオを見る。 こうする事で己から人間性を遠ざけさせ、絶望感をマオに与える。 「……さて、今の貴様の痛みは筋と神経が延びる事による痛みだ。 これで両腕を折られるとな、貴様の全体重が筋と神経を一気に伸ばす。 ……さて、貴様の目的は何だ?」 マオは冷や汗をかきながら少しだけ口ごもり、しかし直ぐに口を開き満面の笑みで舌を出す。アカンベエだ。 左腕が折れる。ぶら下がり状態のマオが傾き、彼女は痛みを堪える為に下唇を噛んだ。直ぐ様ジュウザは、やや早口で質問する。 「貴様の活動は今まで筒抜けだったしかし捕らわれなかったのは単に身近にもっと重要度の高い奴が居ただけでそれでも貴様の国は貴様等を酷使する」 「あ、早口になった。悔しいんだろう、所詮は義も無い単純な思考だな」 体重で延ばすのは一瞬の事なので、痛みに慣れさせる前に質問を早めただけだが、どうやら調子付かせてしまったらしい。そう思い、右腕も折った。 「……ギャアアアア!」 地獄の奥まで響くと言うが、正直地獄を見た事が無いから解らない。只、耳は勿論口や鼻と言った穴と言う穴から入り下腹の奥まで響いた声だった。 「クックック、ならば地獄とは案外私達の中にあるのかもねぇ」 23: 名前:サスライ☆01/02(日) 15 37 02 メイは涙と鼻水を垂れ流しながらジュウザに向かって駆け出した。そして叫ぶ。ササヤキの言葉なんて知らない、自分の正義に従うだけだ。 「もう止めてよ!アンタ何で平気な顔してそんな事出来るの!?」 「……これが平気に見えるか」 ジュウザは飽きてきたコーヒーブレイクと変わらない様な表情を変えずに、化け物の目をメイに向ける。 淡白な顔と、今にも爆発しそうな顔が同調した顔は確かに怖い。しかしメイはそれには恐れなかった。 「ああ、だからアンタはおかしい。人を傷付けて平気な人間なんか居る訳無いだろ、例えそれが沢山の人間を殺す事になっても平気なのはおかしいんだ。 どうせロクな教育を受けたんじゃ無いんだろう、外の世界は暴力的な事を庇護する出版物が溢れているらしいからな!」 言い切る。メイの中には震えるような恐怖感がドッと流れ込んで来るが、それでもやり切ったと言う爽快感があったから平気だった。そして、その爽快感は人生最大の物だったので死んでも良いとすら思えた。 そんなジュウザは囁く様に言葉を作っていく。 「……いや、俺は勉強ばかりでそんな物に接する暇も無かった。 そしてこれは、出版物も流通しない紛争地帯の兵士から学んだ物でな」 口をグッとつぐんだ彼女の脳内に、ササヤキ声が聞こえる。 「クックック。結局人間なんて、その程度の暴力的な生き物なんだろうねえ。 だって何も無くても無くならないのだから」 24: 名前:サスライ☆01/07(金) 01 31 14 ジュウザとは、実は本名では無い。その心を力に変える妖刀を持つ者の称号だ。 漢字では『獣座』と書き、『座』とは玉座。つまり王である事を差す。そして獣辺に王と書き『狂』。 では何故、その刀の持ち主は狂っていると言われるか。狂いとは極端に尖った感情であり、更にそこまで感情が強くなければ妖刀は使いこなせない。 「……化け物」 「違う。人間だ。未熟で、ちっぽけで、矮小で、惰弱な人間だ」 ジュウザの技は居合に似て、感情を内側に貯めて、一気に放出する。 もしも内側に貯めなければどうなるか、感情が表に出る事になる。 「貴様にこれが化け物に見えるならば、それは貴様が人間の本当の感情に触れていないだけだ」 憎しみ、怒り、悲しみ、傲慢、癇癪、様々な感情がジュウザの眼帯を外した目を中心に表に出る。 沢山の瘤が膨れ上がり、人面相が出来、沢山の刺が生えて触手が蠢く等、感情が顔の肉を変異させて表に出る。 「俺は平気なんかじゃ無い。平気なんかじゃ……無いんだ」 化け物の目から一滴の血の涙が流れる。 彼は何時も眼帯を付けている。つまり常に抑え切れない感情があると言う事だ。ならば彼が感情を抑えていないと言えば、そんな事は無い。 拳銃を殺意でバターの様に斬り、憎しみでビルの天井を崩す程の感情が内側に渦巻いている。 それ程の感情に呑み込まれ発狂しまいと抑えているそれは、皮肉にも狂気の沙汰だった。 25: 名前:サスライ☆01/07(金) 13 00 16 ジュウザがマオに向き直ると、拳を開き親指以外の指を合わせてピンと張る。 拳よりも殺傷力の高い貫手だ。これに頭を貫かれれば、即死である。 「……さて、貴様の目的は何だ?」 「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!」 「……そうか」 構造以外変わらぬ顔で、ジュウザは手をマオの方へ突き出し、当てた。 自転車のタイヤのチューブが爆ぜた様な音がして、ジュウザの手首の辺りからは数滴の血が飛び散る。 ダラリと力を喪う肩と、太股。慣性にならって折れた部分がブラリブラリと夕方の公園のブランコよろしく揺れていた。 一部始終をメイはボウと見るしか出来なくて、何も考えていなかったせいかスンナリ事実を受け入れる。 彼女の脳裏にこびり付いたのは叫んでいるマオの表情で、大きく見開きつつも不安気な目でジュウザを見て、歯を剥き出して笑っていた。 「クックック。結局、助けられなかったねえ」 「狂っている、みんな、狂っている」 メイは両手で額を覆い、下を向いて呟いた。 「ジュウザも、あの女の人も、そして、『アンタ』も! 何なんだ、突然人の頭にズカズカ入って来ては狂気の選択しかしない。アンタは何なんだよ」 ササヤキに叫ぶメイ。ジュウザから見たら危ない人にしか見えないが、彼は苦笑いも勿論浮かべない。その感情で能力を使うととんでもない力になりそうだが。 チッチッチと人を見下した様に相づちを打って、ササヤキは相変わらずメイの声で言う。 「クックック。 何を言ってるんだ、私はアンタだ。私は、普段アンタが裏で思っている事が表れた存在に過ぎない。 選んだのはアンタだ。ならばアンタは狂いたかったんだよ。 何時も周りと足並み揃えて、そして貯まるストレスに蓋をしてきた。その結果が狂気だよ、メイ」 26: 名前:サスライ☆01/08(土) 14 23 00 一拍置くと、ジュウザの顔はメイの知る顔に戻っていて、相変わらず無表情でマオを地面に横にすると、ローブを着せた。 「何で、そんな事するの?」 「……コイツには何も無いからだ。コイツ、最後まで俺を見ていたよ。 普通こう言うタイプは最後は自国に万歳とか言ったり抵抗したりして果てるタイプなのに」 自分の世界に狂えるのは、自分の世界に誇りがあるからだ。が、そうでも無いのにそれらしくなるパターンがある。 それは自分の狂信的な世界以外の生き方を知らない人間だ。 自分の世界に誇りは実は無いが、周りが狂信的で、他を知らないから狂信的な態度である事が正しいと思い込んでしまう。だから薄々おかしいと感じつつも、周りに流されて従ってしまう。 こうして一つの事ばかりにズルズル生きてきて、アイデンティティーを与えられるしかない人間になるのだ。 「……これが正しいか。否、こんな人間を生み出してはいけない。 だから俺は隣国と戦うし、コイツを助ける」 メイは息を飲む。隣国の存在にでは無くて、自分にも当てはまる事が多々あるからだ。 そしてメイは目が点になる。今確かに『助ける』と言ったからで、よく見るとマオの頭から血は出ているが、気絶してるだけで息はある。 ジュウザがマオの最後の表情を見た瞬間、凄まじいスピードで貫手を掌打に変えたからで、チューブが割れる様な音も、少量しか出ない血もその為だ。 27: 名前:サスライ☆01/10(月) 01 09 19 筆者が思うに、安定を求める人が死ぬ時、最期に見ようとするのは自分の興味の対象では無いだろうか。 人は生まれたからには足跡を残したくて、興味のある物を極めようとする。 それは挫折し、諦めても死んでいないが外的環境が生き返るのを許してくれない。何かを成すには今を捨てなければいけない。 だから何時か暇が出来た時にでもやろうかなと取って置き、いざその時になると時間は使い果たされている。 普通に生きてもそうなのだ、志半場で倒れるならその無念は尚更だろう。 それなのに、マオは最後までジュウザだけを見ていた。つまり彼女には何も無かったのだ、好きな事も。 「……コイツ、最後まで理想も見ずに俺しか見ていなかったのに罵倒しか言えないんだ」 ジュウザは折った腕に手を当てる。すると、高速映像を見るかの様にムクムクと骨折が治っていった。 メイは驚く、コイツは人を傷付ける以外の事も出来たのかと。 尚、今ジュウザがマオに放っている癒しの感情は『慈愛』。だから、実は受ける側も受け入れる心が無ければ不可能な技だ。 マオは、心に飢えていただけだからだ。例えそれが愛でも憎しみでも殺意でも。 28: 名前:サスライ☆01/12(水) 19 18 44 メイの頭の中で、ササヤキが話しかける。それはジュウザがマオを治療し終わった後の事だ。 なんとジュウザはマオをメイの家で保護してやれと言ってきたのだ。 メイはササヤキの声を聞いていて、正論だと感じた。何故なら自分自身が話し掛けているのだから。 「クックック。捨てちゃえよ、厄介事なんてあるだけ害だろう。 大体そんな危険な人、ジュウザが預かるべきじゃないか。 理由も話さないんだ、預かる義理も義務も無いよ」 何か面倒事に巻き込まれたら周りの人に迷惑になるかも知れない。 自分には自分の生活を守る必要がある。助けたからって崩壊するまで付き合う必要なんて無い。 それでも、メイは預かる事を考えていた。それは同情かも知れないし好奇心かも知れない。様々な感情が怨念の様に腹の中で渦巻いていた。 それでも、メイはササヤキに話しかける。それは凹凸ない滑らかな感情で、腹の中の渦巻く考えなんて小さな物に過ぎない。 「預かるよ。人を信じられなくなったら、終わりだからさ」 ジュウザは何処の誰かも解らない。しかし彼は偶々会ったに過ぎないメイを助けて、敢えて残酷性を見せる事で警告し、そして敵に対して慈愛の心を送る事が出来た。 メイにはどう考えてもジュウザが自分の事を何も考えていないと考えられなかった。 29: 名前:サスライ☆01/13(木) 01 17 49 メイが預かると言った時、ジュウザの複雑な感情が入り乱れる心の中で、歓喜の感情が多くを占めた。尤も、『オモテ』に出さないので伝わってはいないが。 まだ、何も言っていないのに、自律的に考える人間が少ないこの街で、意見が合ったのに感動したからだ。 取り敢えず、真意を伝えておく。 「……そうか。 俺はソイツから情報を掴めなかったから、隣国で情報を集めるので、忙しくなる。 ……ソイツを暫く預かってその際、面倒事もあるだろう。だから『コイツ』を頼れ」 スーツの内ポケットからメモ帳を取り出して、それに思い出を込める。すると、メモ帳に男の写真が浮かび上がってきた。 黒髪を後ろで三つ編みにした、西部劇にでも出てきそうな格好の男だった。 皮のカウボーイハットに羽を付けて、皮のマントを羽織っている。 口には葉の付いた草を喰わえ、無精髭を生やし、目付きと相まって大分ワイルドな印象だ。 「……名前はハンプティ。旅人だ。 俺の仲間でこの町の×××ホテルの×××号室に滞在してる」 メイは写真を受け取ると、ジュウザは隣国に向かう為に背中を見せる。 何故、警官も襲われたのか、何故、自分に預けたのか、何故、この写真の人は草を喰わえているのか様々な謎が残ったが、ジュウザが最後に振り向かずに言った一言が印象的だった。 「……ありがとう」 30: 名前:サスライ☆01/13(木) 01 20 17 †††第一章・完††† 風来坊いろは唄 続き1
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2: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 16 44 54 ひとつ付け加え! カラダ小説版ですが、ストーリー重視なのでとにかくいっぱい裏が読みたい!という方にはおすすめできないかもです… * young leaf * 今日から、この学校に通うのか……。 私は橋場莉恵。 顔は、絶世の美女ではないが不細工でもない。要するに普通。 スタイルに至っても普通だが、残念ながら水着がよく映えるような体型ではない。 ここ、西南高校の2年生だ。 といっても、今日から通うことになるのだけれど。 私は中学2年から去年までの二年間、カナダのバンクーバーに住んでいたため編入ということになる。 まあ、それに関する説明は後々物語の中で! 「それにしても……何てでっかいの、この学校は」 私の目の前にどーんとそびえ立つ校舎。某ドラマのお嬢様学校を思い出させる。(何のドラマかって?それは御想像にお任せします) あっちにいたときも、それなりに綺麗な学校ではあった。 けれど、大きさが全然違う。それに、校舎の建ち方もなんだか洒落ている。 普通、校舎って四角っぽい(?)形だけど、この学校は丸いというか。 「∞」のマークのように二つの丸い校舎が繋がっているといえばいいだろうか? 恐る恐る門を潜り、玄関から中に入り職員室を探す。 (き……緊張する) 昨日の夜もずっと心配で寝られなかったんだってば! どうしよう、もしクラスにいかにもみんなのボス的な子がいたり、恐ろしい鬼のような形相のヤクザがいたらあああああ!!! (……というか、) いつまでたってもたどりつかないんですけど。職員室に。 さっき校内の地図見たのに!どうして着かないんですか! この学校、建物が丸いから方向感覚失うんだよきっと……。 こ、このままじゃ間に合わない。編入して初日から遅刻とかいう大失態だけは免れなくては。 そのとき、ふと物音がした。そちらのほうに顔を向けると、そこには 『生徒会室』 ドアにはそう書かれている。 3: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 16 56 12 (しめた!ここにいる人に聞こう) 普段の私なら、いきなり知らない学校(といっても今日からここは自分の学校)の生徒会室に入ることを躊躇うだろう、というか普通生徒会室なんかには近寄らない。 だけど編入初っ端の大ピンチに陥っている今、そんなことに構っている暇はない。 「……」 やっぱり、中から音がする。 私は一瞬そのドアを睨んで、ドアをノックした。 ――コンコン ドアが開く瞬間を今か今かと待つ。生徒会室ってことは、中にいるのは生徒だよね?多分。生徒会っていうのは、学校をまとめ様々な企画を提案し実行する、責任感の必要な組織ということで。私みたいな可哀そうな迷える子羊を見たら、助けてくれるに違いない!(自分が方向音痴なだけ) ……そう思っていたのだが、 「遅くない……?」 気づいてないのだろうか、誰も出てくる様子がない。 依然として中に誰かがいる気配はするのだが。 どうしよう、困った。早くしてくれないと…… コンコン! さっきより大きくドアをノックしてみる。結構強く叩いたからもう気づいたかな……。 そう思いまたしばらく待ってみるも、 (駄目だ、やっぱり出てこない。埒が開かない!入っちゃえ) 元々短気な私の性格に加え、急がなければいけない状況だということが手伝って中に入ることにした。 だってどうすんだよ、いきなり遅刻したら。 明らかに中に誰かいんのに無視するからだぞこのやろう! ガ チ ャ ッ 「あの、すみませっ…… !!!!!!!???」 4: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 17 18 53 扉を開けた瞬間、言葉の通り私はフリーズした。 だって……だって 「ふっ……あ、ぁ、駄目だよぉ……」 「駄目だァ?こっちの口は素直なのによ」 くちゅっ (いやああああああああ!!←莉恵の心の叫び) 「はぁぁっん……も、意地悪……」 (何これ何これ!!何がどうなってんの!?なんか男が女に被さってるし!!しかもなんで二人とも制服脱ぎ散らかしてんの、ていうかあんたらここ学校でしょうがーーーー!!!) ピシャン!! 人生で一番くらいに焦って私は今まで生きていた中で一番の 速さでドアを閉めた。 「!!」 ドアを閉める瞬間、四つん這いに女の上に被さっていた男の顔がほんの少しこちらに目を向けた。 もっとも、私が気付いたと同時にドアを閉めてしまったのだけれど。 (め、目つき悪っ!!目で人殺せるんじゃないの!?嫌な奴) 心臓がドキドキ煩く鳴りやまない。 あまりにも刺激的すぎる光景を目の当たりにし、私はしばらく動けずにいた。 (……は、離れなきゃ。ここ) やっとのことで立ち上がり、私はふらふらとその場を後にした。 どこをどう歩いたのか自分でもよく分からないが、私は無事職員室にたどり着いたらしい。『教員室』と書かれた部屋の前に立っていた。 「失礼します……」 さっきあんな場面の中に入っていったのだ、初めての職員室(この学校では教員室だっけ?)に入るなんてどうってことない。ああ、変な経験をした。 「あ、橋場さん?」 「ははははい!」 いきなり声をかけられ思わず変な返事をしてしまった。恥ずかしい。 「そう、あなたが橋場莉恵さんね。私は2年3組の担任、笹野由佳です、よろしくね」 「は、はい!あの、じゃあ私は3組ですか……?」 「ええそうよ。そろそろ時間だし、もう行きましょうか」 「はいっ。よろしくお願いします」 綺麗な先生だなあ。色白で小柄でほっそりしてて、少しウェーブがかった長い黒髪をひとつに束ねている。それに、優しそうな目。私、何とかやっていけそうな気がする。 「じゃあ、行きましょう。教室までの道、頑張って覚えてね」 「は、はい」 私は先生の後をついて廊下を歩いた。ふと横を見ると、クラブ活動の実績の賞状などがたくさん掲示されていた。 中でも…… 「バスケ部、多いんですねー……」 「ええ、そうよ。うちの学校は全国制覇何回もしてるのよー」 「ぜ、全国制覇!?」 す、すごい……。すごいよそれって! 「キャプテンもまたすごい人なのよね……あ、ここよ三組」 「え!?」 み、道ちゃんと覚えてないんですけど。汗 「じゃあちょっとここで待っててね」 「はい……」 シーーン 私は一人廊下に取り残された。 これからこの教室に入るのだ、とはっと気付いた。 何せ朝からあんな……場面を見てしまったのだ、クラスの心配なんて頭から吹き飛んでしまっていた。 (お、思い出してしまった……) 自然と頬が熱くなってくる。ああもう! 私が一人百面相していると、先生が教室から顔を出した。 「さ、入って」 え、嘘、まだ心の準備出来てないんだけど!! 5: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 17 38 44 こ……これってよくある、お決まりの転入生登場シーン!? や、やだなあ期待されてそうで……仕方ないけどさ……。 ま、いいや。私はカナダで生活出来たんだもん、日本で生活出来ないわけがない! がらがら…… 情けない音を立てながらドアを開ける。 私は出来るだけ下を向かないように生徒たちの方を見て教室に入った。 (うわあ、好奇心旺盛な顔ばっかりだこと…… ん?一人寝てる奴いるじゃん。なんか、寝られるとそれはそれですごい腹立つなあ) 「橋場莉恵です。カナダに二年間住んでいました、これからよろしくお願いします!」 一気にここまで言った。噛まずに言えて良かった……と内心ほっとしている私。 パチパチパチ……と皆が拍手してくれる。やばい、これだけなのにすごい嬉しいよ。(それが社交辞令みたいなものでもね) 「じゃあ、橋場さん、あの角の席に座ってね」 指定された席まで歩く。そしてそのまますぐに授業が始まった。 すると、隣の席の女の子が勢い込んで話しかけてきた。 「ね、莉恵って呼んでもいい?」 茶色がかった髪に気の強そうな瞳。意志のはっきりしてそうな子だ。私はこういう子が嫌いじゃない、むしろ好きなほうだ。 「うん!全然いいよ」 「あたしは並河沙耶。普通に沙耶って呼んで!」 「ありがとう、よろしくね?」 「こちらこそー」 私は友達を作るのが苦手なタイプではないけど、さすがにちょっと不安だったから沙耶がこうして声をかけてきてくれたことはとても嬉しかった。 その後、私のカナダでの生活のことを色々と話したり、好きな音楽や芸能人など趣味の話もした。 初めての授業なのにあまりまじめに受けなかったけど、授業以上にとても大切な時間になったと思う。 初対面なのに、そう思えないほど打ち解けることが出来た。 (ありがとう、沙耶) 私は心の中でそっと呟いた。 6: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 17 55 23 翌日。 「おはよー莉恵ちゃん」 「おはよう」 朝休みから、結構色んな子が話しかけてくれた。 もう高校生だしね、みんな仲良いんだなー。 なんて、平和な日常を過ごすことになると思っていた私。 事の起こりは昼休みだった。 「あ、あたし教員室に呼び出し食らってたんだった!ちょっと行ってくるわー」 クラスの何人かの女の子達に混ぜてもらいお弁当を食べていると、沙耶がそういってその場を去った。 沙耶は、いわゆる問題児の一人だ。(笑) 決して悪い子じゃないんだよ?他の人よりちょっと髪が茶色かったり、スカートがミニだったりね。その辺の生徒指導を受けるんだろう。(本人いわく慣れてるらしいが) 「頑張ってねー」 「あ、橋場さーん」 「はい?」 教室のドアのところにいたのは担任の由佳先生。 普通教師のことは名字で呼ぶんだろうけど、みんな先生のことは「由佳先生」って呼ぶ。 私はお弁当をしまってそっちに行った。 「今時間大丈夫?あのね、ちょっと生徒会室に行ってほしいの……ていうか行ってもらわないといけないというか」 「せっっ生徒会室ですか!!!??」 頭の中に浮かんでくるのは昨日の朝の、生徒会室での(←これ重要)アレ。 あそこに行くのか……でも、どうして? 「実は……うちの学校の生徒会長は、教師と互角の権利を持つっていう決まりみたいなものがあってね。これから色々とお世話になると思うから、挨拶に」 ちょっと待てい!!何、その変な規則!? 第一、もう二度とあそこに行くのは避けたいと昨日思ったばっかりなんですが。 「い、行かないと駄目なんですか……?」 「んー……行かないときっと後々大変よ~?」 「い、行きます」 なんだか由佳先生が一瞬ブラックに見えました。 優しい人がああいう顔をすると怖い。 「あ、ちなみに生徒会長うちのクラスの人だからね」 そう言い捨てて先生はひらひらと手を振って行ってしまった。 へ!?そ、そうなの?早く言ってよ……なんか由佳先生も謎な人だ。 この学校、結構賢い学校なのに、変な規則もあるもんだなあ。 (仕方ない、行こう。 あれ、普通生徒会長って三年生じゃないのかな……) ひとまず私は先生に教えてもらった通り、生徒会室の方に向かった。 これからどんな出来事が待ち構えているか何て、何も考えずに。 7: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 18 25 01 (来てしまった) 私、さっきから生徒会室の前で迷っています。 だって、この前不意打ちであんな場面に出くわしてしまったんだよ。誰が好き好んで入りたいと思うだろう。 ……でも、入らなきゃいけないんでしょ? ブラックな笑顔の由佳先生が頭をよぎる。 全身に鳥肌が立った。もう、わかったよ! こんこん がちゃっ 「失礼しまーす……」 小さくなりながら入ったものの、誰もいない。 なんだ。あんだけ悩んだのに拍子抜けじゃないか。 先生、今なら会長いるはずって言ってたのに……。 これを良いことにもう逃げちゃおうか? ふと目をやるとそこにはふかふかそうなソファーが一つ。 (豪華すぎるよ……生徒会室に) 絨毯まで敷いちゃってるよ。ちょ、おかしくない? 教師と互角の権限っていうわけのわからない制度のおかげか。 そう思いつつ何気なくソファーに腰掛けてみたとき。 隣にもうひとつドアがあることに気付いた。 生徒会室の中に、さらに奥につながるドアがあるってことね。 「あ……そこにいるのかも」 バタン!! 「ひっ!?」 何の前触れもなく、そのドアが開いた。 突然のことに驚き、私は反射的に身を縮めそちらに顔をやる。 (えーーっと……) だ、誰だっけ……この人。 思わずその顔に見惚れてしまった。 いまどき死語かもしれないけど、かなりのイケメン。 も、もしかしてこの人が、生徒会長!? それにしても、どっかのヤンキーみたいな目して…… (………あ、あああああああ!!) お、思い出した! 「あ、あんたこの前のっ……」 私の口からそんな言葉が勝手にこぼれ出てきた。 あ、馬鹿私。 「あァ?」 ……もう皆さんお察しでしょう。そう、こいつはこの前この場所でピーーーを行っていた……あの目つきの悪い男。 た、確かに生徒会室に居たけど……まさかあんなやつが生徒会長だったなんて。 「お前」 びくっ 「はいいい!」 私何度びくついているんだろう。 あ、初めて声聞いた。 「俺、入ってきても良いなんて一言も言った覚えないんだけど」 ……え 8: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 19 13 44 (な……) 声のトーンが低い。 ちょ、ちょっと……やばいんじゃないのこれは!? 「ごめんなさいっ」 とりあえず謝っておこう……何もしないよりは、うん、このほうがいい。 「で、お前は?」 こいつ……同じクラスなんじゃないの?なんで知らないわけ!?超失礼。よくこれで生徒会長なんて務まるな。 あ、もしやあのとき教室で寝てたのはこの男か。 「昨日この学校に来た……橋場莉恵です」 「……」 「……」 「……」 何この沈黙。 私すっごい見られちゃってるよ。こんなに(言うのも嫌だけど)美男子に見つめらるの、慣れてないから。 視線が痛い。 「わ、私もう帰っていいですか!?」 なんかこの人怖いし、危険そうだし。早々退散しよう!! 「いや。出ていけとも誰も言ってないはずだけど?」 そいつはにっと笑った。 わ、笑ってるし……は、腹立つ!! 「大体、人に名乗らせといて自分はっ……」 ぷつんと来た私の怒りの言葉は、ここで途切れてしまった。 男が近寄ってきたからだ。目が怖い!!怖いですってば!! 「あのさ、あんた誰に口聞いてるか分かってる?」 「……?」 「生徒会長の俺にそんな口聞いていいのかねー」 言いながら、ハッとそいつは小馬鹿にしたように笑いやがった。 そうか、この学校の生徒会はおかしいんだ。とか考えてる場合じゃなくて! 「ご、ごめんなさい……」 「まあ、お前女にしては度胸あるし見逃してやろっかなーとも思ったんだけどな」 はい? 「なんらかの形で責任とってくんねえ?」 「責任って……」 「体で責任とってもらおっかなー」 (はああああ!?何言っちゃってんの!?こんな俺様キャラ漫画にしか実在しないと思ってた) 「変な冗談やめてよね!だから、そっちも名前くらい名乗りなさいっての!変態!」 ここまで言ってから私は後悔した。 切羽詰まると、後先考えず先に言葉が出てきちゃうんだよね……私。(涙) 「相川響」 いきなりそいつが口を開いた。 「へ?」 「へ?じゃねえよ、この間抜け面が」 「間抜っ……!!!」 な、何が起こったのか分からない。 気づけば目の前にはこの男のドアップ。後ろには天井。背中にはやわらかいクッションの感触。 男のくせに睫毛長くてうらやましい……じゃなくて!! 「な、な、なにすんの!!」 「言ったろ。体で責任とってもらうって」 またしてもそいつがにやりと意地悪そうに笑った。 こいつめ……!! 9: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 19 27 29 「……っ」 押し倒されて、さすがに身の危険を感じる。 怖い。 抑えつけられているから動くことさえ出来ない。力強すぎるよ…… 「それじゃあ」 「!?」 動けなくなった私を良いことに、男…相川響が私の制服に手をかけた。 やっやばい!このままじゃ私本当に…… とっさに私は口を開いた。 「お、お願いします!!なんか他のことしますから!!これだけは……」 最後の方は消え入りそうな声になったが、何とかそう言った。 とっさの言い訳には、これが精一杯だ。 すると、相川の手が意外にもあっさりと止まり、私はほっとする。 (良かった……) そう思ったのもつかの間。 「言ったな?」 ぐいっ 相川がさらに身を乗り出してきた。 ちょ、ちょっと!!顔、近すぎるってば!! 「~~っ//」 「顔赤くなってるし」 「違っ……」 「惚れた?」 「なっ……誰があんたなんかに!この自意識過剰男!とにかく離れっ…んんっ!」 それ以上離せなくなった。 口が、塞がれていたから。 「んーっ!!」 いきなり舌が入ってきた。苦しい。息が出来ない。 「はっ……あ」 口内を隈なく舐めまわされ、吸われ、めちゃくちゃに犯される。 い、嫌だ……なのに、油断しているとこいつの波に吸いこまれてしまいそうになる。経験が多くはない私にだってわかる、こいつ、キスむちゃくちゃ上手いんじゃないだろうか。 「―-っはぁ!!!」 どれくらい時間が経ったのか分からないが、ようやく解放された。 10: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 19 28 03 「……っ」 押し倒されて、さすがに身の危険を感じる。 怖い。 抑えつけられているから動くことさえ出来ない。力強すぎるよ…… 「それじゃあ」 「!?」 動けなくなった私を良いことに、男…相川響が私の制服に手をかけた。 やっやばい!このままじゃ私本当に…… とっさに私は口を開いた。 「お、お願いします!!なんか他のことしますから!!これだけは……」 最後の方は消え入りそうな声になったが、何とかそう言った。 とっさの言い訳には、これが精一杯だ。 すると、相川の手が意外にもあっさりと止まり、私はほっとする。 (良かった……) そう思ったのもつかの間。 「言ったな?」 ぐいっ 相川がさらに身を乗り出してきた。 ちょ、ちょっと!!顔、近すぎるってば!! 「~~っ//」 「顔赤くなってるし」 「違っ……」 「惚れた?」 「なっ……誰があんたなんかに!この自意識過剰男!とにかく離れっ…んんっ!」 それ以上離せなくなった。 口が、塞がれていたから。 「んーっ!!」 いきなり舌が入ってきた。苦しい。息が出来ない。 「はっ……あ」 口内を隈なく舐めまわされ、吸われ、めちゃくちゃに犯される。 い、嫌だ……なのに、油断しているとこいつの波に吸いこまれてしまいそうになる。経験が多くはない私にだってわかる、こいつ、キスむちゃくちゃ上手いんじゃないだろうか。 「―-っはぁ!!!」 どれくらい時間が経ったのか分からないが、ようやく解放された。 12: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 19 52 40 「こんなことすんの初めてだったか?つーかお前こそ、人がナニしてるときに盗み見してるんだ、変態には変わりねーだろ」 な、ナニって……。もしやこいつあのときのことを! 「最低!!あんなことをこの場所でしてる方が悪いんでしょ!てか、見てないから!!」 何から何まで失礼な。ほんとになんて男!! 「ん?あんなことって何だよ」 「っ、それは、」 「ククっ……」 喉の奥で笑われる。私は羞恥やら怒りやらで顔を真っ赤にさせた。もう、すべてに突っ込むのも疲れたよ。 「……で?あんた、体で責任とるかわりに何してくれるわけ」 え……キスでチャラじゃなかったんですか。泣 自分が言ったことだけど、いまさらながら後悔する。 嫌だよ、こんな男に何しろってんだ……。 私が何も言えずに黙っていると、 「バスケ部のマネージャー」 相川が不意に口を開いた。 「え?それって」 「だから。お前明日からバスケ部のマネージャーな。なんか文句あるか」 ……そんな目で言われたら文句なんて言えませんよ。 まあ、どうせ今から入る部活なんて考えてなかったし……別にいっか。 結構怒らせてしまった気がするんだけど、こんなことで良いんだ。 「じゃあ明日の昼部室まで来いよ。色々説明すっから」 ん……?てことは 「バスケ部なの?……会長は」 面と向かって何と呼んだら良いか分からず、会長なんて呼んでしまった。 我ながら、明らかに不自然すぎる。 「なんだその堅い呼び名は。響でいい」 相川、じゃない響がしかめっ面をしてそう言った。 うっ……やっぱり。 ていうか、名前で呼ぶのって……ちょっと恥ずかしいじゃん。心の中でしか呼んでやんないから、絶対。 「俺はキャプテンだ。バスケ部のな」 う…嘘!こいつ、2年の分際で生徒会長兼キャプテン!?何してこの地位(?)を手に入れたんだろう。聞いてみたいが怖い。 「あ、あと生徒会長と同じくキャプテンに逆らったらどうなるか分かってるよな?」 響が有無を言わせない黒い笑顔で私を見た。 「っ……ハ、ハイ」 「ふん。じゃあな、莉恵」 言いたいことだけ言って響は部屋を出て行った。 (気安く名前で呼びやがって……) 橋場莉恵、16歳、高校2年生。 これからの生活、先が見えません……泣 13: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/08(木) 22 20 44 ――昼休みが終わり、午後の授業もすべて終わった。 全員が帰り支度を始める。 ほんとだ、響の奴居るんじゃん。なんで私気付かなかったんだろう。 (……あ、今こっち見た) 目が合ったから私は思いっきり目逸らし攻撃をしてやった。 その後で盗み見ると、あの小馬鹿にしたような笑みを薄らと浮かべているのが分かった。何だか悔しい。ああ、私あいつのこと嫌い。 「莉恵ー!あたしが教員室いたときどこ行ってたんだー? 探したのに」 ぼーっと考えていたら沙耶に声をかけられた。 ……これ、説明しなきゃ駄目?すごく言いづらいんですけど……。 「あ、えーと……」 何か認めたくないなあ…… 「せ、生徒会室?みたいな?」 みたいな?って、私はどこのヤンキー女子高生だ。 自分で言ってて悲しくなってきた。どこまでも私を振り回すあいつのせいだ、何もかも。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・マジで!?」 沙耶、口がぽかんと空いちゃってます。 「そっそうだけど……」 「何で!?理由は!?」 沙耶の勢いに飲まれて、私は一通り説明した。 あのわけのわからない規則のことを強調して、詳細は伏せておいた。(詳細がどういう内容かは分かるよね) 別に沙耶に言うのが嫌なんじゃなくて、私の中で整理がしたいだけだから!まだ人に言えるほど私も事実を受け入れられてないんだ!ごめんよ、沙耶。 あ、けどこれは一応言っておくか。 「あと、私バスケ部のマネージャーになっちゃったんだよね」 「「「えええ!!???」」」 ガタ、と机から立ち上がる子、茫然として荷物をぼとぼとと落とす子、ただただどこか遠いところを見ている子。 沙耶はというと、さっきより口の開き具合が大きくなっていた。 あんたら全員盗み聞きかい! それはともかく、この子達驚きすぎじゃないだろうか。だ、大丈夫かなこの子達? 14: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/09(金) 21 37 36 教室からどんどん人が居なくなって、残っているのは私たち女子数名だけになっていた。 「なっ何、みんなちょっとオーバーだって……」 「りり莉恵ちゃん、それって本当なの!?」 私の声をかき消して、今まで話したことのない女の子がすごい形相で聞いてきた。 「う、うん……。そうだけど」 「すごいよそれって。あの人が認めるなんて……」 みんな響のことを「あの人」って呼んでるけど、彼は一応同い年の同じクラスだよね?すっごいお偉いさんみたいになってるじゃん……。 「沙耶、どういうこと?」 「えっと、要するにまあ簡単に言うと、相川くんって生徒会長じゃん?その会長が気に入った子じゃないと、マネージャーは入れないって前から宣言してたの。 今までも何人かマネージャー志望の子達が居たんだけど、みんな駄目で。最近はほとんどの子が諦めてたみたいね。 何がすごいかっていうと、あの自己中な会長があんたを選んだってこと。あんたにその要素があるっていうことがね」 沙耶が一息でここまで言った。頭が追いつかない。とりあえず、相川響はやはり自己中だったということが分かった。 「しかも、莉恵ちゃん!大変なのはここからだよ、相川くんってすごいかっこいいでしょ。きっと莉恵ちゃん、みんなに妬まれると思うよ。ライバル多し!」 さっきに話しかけてきた、栗色のふわふわしたショートヘアの女の子だ。(お人形さんみたい、目くりくりだ) 「ラ、ライバルって私はそんな」 「莉恵。あんたはそうでも周りは違うの!そんだけバスケ部のマネさんってのは神聖なのよ」 神聖って……!ここの学校、どこまで私に突っ込みをさせる気だ。呆れた……。 「いくらなんでも大げさでしょ。マネージャーでしょ?」 「それが違うんだよぉ!!莉恵ちゃん、これからバスケ部と一緒に寮生活することになるんだよ?まあそれだけ命かけて練習してるクラブなんだから、当然のことだけどね」 ……私、今すごいこと聞いちゃったような気がする。 何て?寮?寮生活?同じ屋根の下で生活しろと……?あいつと? 「ま、まじですか……」 「まじです!大まじです!莉恵、とにかくこれからは周りの女子の目と、自分の仕事を気にしないとね」 「は、はあ」 何だか想像以上に大変だ。 15: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/09(金) 21 54 20 「ただいまー」 ガラガラ、と今時少なくなってきたスライド式のドアを開く。 私はひとまずどさっと荷物を自室に置き、母が居るであろう台所へと向かった。 「あ、おかえり莉恵。どうだった?今日の学校は」 「……………………楽しかった。うん」 「……何よ今の間は。 あ、そういえば莉恵部活とか入るの?」 い……いきなり聞かれちゃったよ!私の悩みの根元をいきなりぐわしとつかむなんて。母親って恐ろしい。 「あー、バスケ部のマネージャーをすることに」 「バスケ部?あら、西南高校ってものすごく強いんじゃない?」 「え。お母さん知ってたの?」 「知ってるわよもちろん。有名じゃない」 そうなんだ。私が知らなかっただけなのか。 と、そうじゃない。言わなければいけない本題は、 「それがね、うちのクラブ全員寮「あー、そういや西南のバスケ部は寮って決まってるんだったかしらねー。荷造り出来た?」 「……はい?」 え、お母さんどんだけ情報持ってんの。 しかも、反論なし!?もう寮に入る前提じゃないの! 「けっけどいきなり寮なんて」 「大丈夫大丈夫。あんたが勉強を頑張ったおかげで学費は半額免除だし、寮はそんなに高くないのよ」 そう、私は勉強には自信がある。カナダに行ってから、日本に帰って来たときに周りと差がついたら嫌だったから必死で勉強した。 「いいの……?」 「もちろん。全国レベルの部活に参加出来るなんて、そうそうないわよ。もちろんすごく良い経験になるだろうし」 私が言ってるのはそういう意味じゃない。バスケ部は「男子バスケ部」だということを分かっているのでしょうか。 まぁ、どっちにしろ入らないといけないんだし。変に反対されるよりはこのほうがいいか。 「ありがとう。 それで、お父さんには……」 私がそう言うと、お母さんは一瞬黙りこんで、 「……お母さんから言っておくわ。心配しないで」 「そう……」 どうせお父さん、ウチにいないしね。 「じゃあ莉恵、どーんと行ってきなさい!ほら、荷造り荷造り!」 「わわっ」 一瞬前の重い雰囲気はどこへいってしまったのやら、私は台所を放り出された。 んもう、分かってるよ……。 16: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/09(金) 22 06 11 ――翌日、昼休み。 (来ちゃったよ、この時間が) 只今私、「バスケ部」と書かれた部屋の前に立っております。 あれ?前にも似たようなことなかったか?確かあのときもノックをしようかと躊躇っていて、 「失礼しま「バ ン!!」い″っ…!?」 ……今までと違い、すぐにドアが開いてくれた。いきなり目の前のドアがこちら側に開き、私の頭にドアが見事に突っ込んだのだ。いいいいい痛い!!一瞬頭が真っ白になったような気がする。私は力なくへなへなとそこに座りこんだ。 「や、やっべ……わ、悪ぃ!だ、大丈夫か?」 そのドアを開けた張本人らしき人物が焦って私の顔を覗き込む。 「……大丈夫なわけないでしょうがぁ!!」 「うおっ!?」 いきなり切れた私に若干驚いた様子の男。もう、フェイントすぎるでしょ。最悪だ。 「……ん、あんたもしかしてあれか?マネージャーになったっていう」 「……そうですけど」 「まじでか!とりあえず入れよ」 ぐいっ 「うわっ」 私は部室に引き込まれた。と同時に思った第一印象、それは 「うっ……臭っ!!!!」← 何これ、掃除してんの!?床にはゴミというゴミやら教科書やらタオルやらが散乱している。この部屋絶対元は綺麗でしょ。何をどう間違ってこうなってしまったのだろう。 この匂いの原因は壁にかけられた練習着だろうか……。 「遅い」 ふと前を見ると、そこには響がいた。 悪かったねっ……。 そんなことを思いながらあたりを見渡すと、そこに居るのは20人ほどの部員達。 17: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/09(金) 22 16 15 「おい、響!マネージャーだよな?」 「あぁ。……ほら、自己紹介しろ」 相変わらずこの態度。 相手が生徒会長だということも忘れて、私はキッと響を睨んでやった。 「……(笑)」←響です 何笑ってんのよ……! 「二年三組の橋場莉恵です。これから頑張るんでよろしくお願いします」 私はそう言って軽く頭を下げた。 「よろしくなー莉恵ちゃん!あ、莉恵って呼んで良い?」 そう軽々しく声をかけてきたのはさっき私のおでこにドアをぶつけ、部室に引き入れてきた男子。痛かったんだからねさっきのあれ……。ちっとも気にしていないらしい。 「俺は神谷駿。2年5組、よろしくな!」 「よ、よろしく」 他の部員も口ぐちに言ってきた。 「よろしくーっ」 「頑張ってくれよ、てかマネとかかなり久々だな」 「あとさ、莉恵」 駿が話しかけてきた。 「俺、これでも副キャプだから。分かんねえことあったら俺に聞いてもいいからな?」 「……うん!ありがとう」 なかなか親切だ。うん、さっきの恨みは大目に見てやろう。 「そういえば、なんでキャプテンも副キャプも二年なの?」 「三年生の先輩は、ほとんどもう学校外のチームに所属して練習してるんです」 一年生らしき子が教えてくれる。なるほど、そうだったんだ……。ひとつ謎が解けた。 こうして、私は西南高校バスケ部の一員になった。 18: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/10(土) 21 23 19 「橋場!これもまた洗っといてくんねえ?」 「あ、飲み物も持って来て。減って来た」 「おい、俺ずっと順番待ちしてたんですけど」 「お前は優先順位っていう言葉を知らんのかぁ!!」 ……さながら戦場です。 私は来週から正式に入寮することになった。もうそろそろ荷造りも終わるし、準備は着々と進んでいる。 とりあえず、今は普通に自宅から学校に通い、バスケ部のマネージャーとして働いている。とはいっても、雑用の量がはんぱないので私から言わせると奴隷のようだ。 男どもがなにやら言ってるけど、私はというとやっぱり壁際にかかっている練習着のユニフォームが気になる。(あの臭い) 「……あの」 「何」 とりあえず、一番近くに居た響に声をかけてみるも、 ……やっぱりまだ怖い。(泣) 「ユ、ユニフォーム!壁際の。あれ、洗わなくていいの?ていうか洗っていい?」 「あー。そういえば一カ月くらい前からあの状態だった気がする」 いっ一カ月…… 恐ろしい日数が私の頭の中をぐるぐると回る。 「あ、あれ着て練習するんでしょ!?いいの!?」 「着れりゃーいいんだよ」 そう言ってるわりには、みんなあれとは別に練習着用意してるよね。 私は今日の練習が終わったらそれを一番に洗うことにした。 「あ、あと」 「はい?」 「お前、寮に入ってからの仕事とか、何があるか分かってんのか?」 「えーっと……」 「はいはいっ俺がまとめて説明してやるよ!」 駿が割り込んできた。テンション高いですね……。 19: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/10(土) 21 40 52 「まあ、土日の練習とかは基本いつもと一緒だけど。変わることといえば、試合前の朝練参加とかだな」 「朝練?」 「おう。寝坊すんなよ、寝坊したら襲いにいって「目覚まし大音量でかけるから!」 まったく、このチャラ男&変態め! だけど、見たところ軽そうに見えるこの駿だけど、本人がどれだけ真剣にバスケに取り組んでいるのかは、彼を見ていれば一目瞭然。 彼だけじゃない。他の部員も、このバスケ部の全員がそう。みんな、このクラブに所属していることを誇りに思っているんだなあって思う。それくらい皆仲が良くて、本当に頼もしい。 もちろん、あの響もね。 「あと」 響が口を開いた。 「俺が忙しいとき、身の回りの世話よろしくな」 そう言って、にやりと笑った。 「へっ?なんで私がそんなこと」 「気に入ったから」 「気に入った?」 「おう。それにお前あのとき俺に対して失礼言ってたからな」 あのとき……って、生徒会室での云々のことですか。 まだ根に持ってたの、この男!しつこい男は嫌われるんだよ、知ってる? 「あのときは散々謝ったでしょ!しかもマネになったらチャラだとか言って」 「あー、そんなに言うなら無理やりにでも最後までヤっちまえば「わあああああ!!」 ほ、他の部員の前でそんなことを簡単に口走ってもらっちゃあ困る! か、顔熱くなってきた。 「何なに?」 さっそく駿が突っ込んできた。突っ込まなくていいから! 「な、何でもない!わ、私飲み物汲んでくるから!」 赤くなった頬を隠すように押さえながら、私はそう言ってバタバタとその場を離れた。 「何?お、お前まさかもう莉恵に手ェ出したわけ?」 「いや、出してねえよ。つーか俺はそんなに軽い男じゃねえ」 「(……さっきあんなこと口走って、よく言うよこの男)」 駿くんにはすべてお見通しの響くん 20: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/10(土) 21 48 59 「よいっしょっと……。これで全部!」 部活が終わって、私は家から寮にすべての荷物を運び終えた。 これで今からでも、すぐに生活が始められる。入寮は来週からになってるけど、今日から入ってしまっても大丈夫ならしい。 「橋場ー!」 「はーい!」 私を呼んだのは、バスケ部顧問かつコーチのベテランの斎藤大輝先生。 ベテランっていっても、おじさんというわけじゃない。だけど、我が校のバスケ部がここまで強くなったのはこの人のおかげだと言っても過言ではないらしい。 「えーっと、部屋はB棟の201室な。鍵がこれ。で、これ地図だから渡しとくな。頑張ってくれよ」 「はい、ありがとうございます!」 ここはロビーなので部屋に荷物を移動させなければいけない。 私は地図を広げた。 ちなみに、この学校にはもちろん一般生徒用の寮もある。一般生徒は基本A棟で生活している。B棟は、バスケ部+一般生徒少数という感じだ。 (201……と。て、あれ?周りバスケ部ばっかりじゃん) 当然と言えば当然のことだが……男女分けとかしてないの!? り、リアルに襲われたらどうすんの……とか思ってみたり。 ぶつぶつ言いながら歩いていると、「201」と書かれた部屋に到着。 がちゃっ 「おー、結構広いんだ……しかも綺麗」 young leaf 続き1
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番外編⑥ ※コラボネタです。 文:かずい様 コラボ作品:「どうして 変態 なんですか」 《小5 愁目線》 「ねーねー、六年生にめちゃくちゃカッコいいけどめちゃくちゃ変な人がいるんだって!」 近頃の女子の間で話題となっていることだ。 「変ってどういう風に?」 僕はその人を知っている。 「何かねー、プール全裸で入ってたり男の子でも先生でもセクハラしたりするらしいよ」 「何それ! キモー」 …嫌というほど。 「もう、いい加減にしてポスター作ってよ!」 「愁が裸でオレの上にまたがっててくれたら3分で作り上げてやるよ」 中田慎也は僕の一つ上の先輩。で、同じ保健委員。 "手を洗いましょう"と生徒に呼びかけるポスターを製作するために教室に二人残っているわけだ。 が、実際作っているのは僕一人。 中田くんはというと、 「触らせろよ少しくらいー」 意味無く僕にセクハラもどきをしてくる。 「こーんなキレイな顔してるんだから、触んなきゃもったいないぜ」 「ワケわかんないこと言ってないで手伝ってってば。帰られなくなるよ?」 「愁となら学校にお泊りでもいいぞ?」 中田くんは常にこんな感じだ。 しかも僕だけにじゃない。誰にでも。 僕は仕方なく何されても中田くんを無視することを決め、ポスター製作に専念した。 「ちっ、つまんないなー。あ、そだ」 無視無視。いちいち取り合ってたら時間がどんどんなくなってしまう。 「オレも手伝う。そのかわり3分以内に終わればお前の身体のいたるところを触らせてもらうからな」 無視だ、無視! 聞こえないフリをしていればいい。 だが中田くんが色マジックを持ち、下書きの鉛筆をなぞり始めたのは視界に入り、無視できなかった。 キュッキュッと敏速に、だけど正確に色を塗っている。 器量が良いというのだろうか。動かす手は早いのだけど少しもはみ出さない。 それに五種しかない色を丁寧に使いこなしてポスターを色鮮やかに見せている。 僕は思わずただボーッと見とれてしまっていた。 「よし、終わった。約束どおり3分以内だ」 確かに…3分、掛かっていない。でもポスターは完璧だ。 「じゃ、愁。覚悟しろよな?」 「僕は了承してない!」 身の危機を感じて隣の机に置いてあったランドセルを背負う。 逃げる準備。 「はぁ」 思い出したくもない昔のことを突然思い出してしまって俺は溜め息をついた。 「しゅ…愁ちゃん、どうしたの?」 隣で俺が教えつつ算数の問題を解いていた直人が恐々と俺を見つめた。 「あぁ、何でもないよ。ナオのせいじゃないから大丈夫」と言って直人の頭を軽く撫でてやる。すると彼の幼顔に笑顔が戻った。 「ふふっ」 直人の笑顔につられてか俺も思わず笑っていた。 「え、何?」 「いや? ナオの顔見てると嫌なこと全部忘れるなぁ、って思ってさ」 俺のこの言葉に、直人は可愛らしい満面の笑みで返してくれた。 「オレだって愁ちゃんの顔見てたら嫌なことぜーんぶ忘れられるよ!」 番外編⑦ ※質問お題に答えたときの物です。 お題提供:灰人様 1.先ずはそれぞれお名前をお願いします。 愁「南川愁です」 ナ「柊直人です」 2.受け攻めはどっち? 愁「……あ、これソッチ系の質問なんですか?」 ナ「ど、どうしよう愁ちゃん(動揺」 愁「もう呼び出された以上答えるしかないみたいだね(溜息」 ナ「うぅ……。愁ちゃんが攻めで……オレが受けです」 3.その位置で満足してる? 愁「俺はしてるけど……ナオはしてないんでしょ?」 ナ「え!? 何で!? してるよ!?」 愁「だって――」 4.逆とか…アリだったり? 愁「あ、ちょうど良いタイミングでこの質問来た(苦笑」 ナ「……あの時はオレ結局上になれなかったけどね」 愁「そうそう、頑張ってたけどね」 ナ「っ、次こそ絶対愁ちゃんを気持ちよくさせるもんっ!」 5.恋人さんとのエッチは気持ち良い? ナ「なんか……内容がどんどん過激になってない?(怯」 愁「まだ5問目とか……。何問あるか知らないけど、この後が心配になってきた……」 ナ「もう早く終わらせよう、愁ちゃん! 気持ちいいですっ!」 愁「!?」←(突然の発言に驚 ナ「ハイ、愁ちゃんは!?」 愁「……気持ちいいです」 ____________ (ああ、こいつら答えさせにくい~!!! あ、そうだ!!) 蝶々「はいはい、お二人さんこの辺で喉が渇いてきたでしょ? これでもお飲み」 愁・ナ「「あ、ありがとうございます(受け取ってゴクリと飲む」 愁「……っ!! これ、何!?」 蝶々「え、テキーラだけど(ニヤニヤ」 愁・ナ「「ちょ……!! …………ひぃっく」」 (以下、淫乱とSに性格豹変で) __________________ 6.ぶっちゃけエッチ好き? ナ「……勿論好きらよねえ(愁の首に腕回し」 愁「好きに決まってるでしょ?(ナオの腰に腕回し」 7.お互いの良い場所は知り尽くしてたりする? 愁「勿論。たとえばこことか……(耳朶咬み」 ナ「ん…やぁ、オレも知ってるもん!」 愁「へえ、どこだっけ」 ナ「内腿のホクロでしょ? 後で舐めてあげるっ(悪戯っぽく笑」 8.プレイを全体的に考えてSM度は高い? 愁「別に普段はしてないよ、でも今日はしてあげてもいいかもね(冷たく微笑」 ナ「……痛くしなかったら良いよ?(挑発的な目」 愁「コッチとしては泣いたりした方が燃えるのに(プチプチと直人のシャツのボタンを外す」 9.攻めさんは調教とか開発とかしちゃってる? 愁「調教もなにも……俺が一から教えてあげたからね(首筋舐め」 ナ「ぁっ……んん、はぁん」 愁「これだけで感じてんの?」 ナ「もっとぉ……」 愁「……あ、俺達にはお構いなく質問どうぞ」 10.じゃあ受けさんが逆に教え込んだりした事とかってある? 愁「ホラ、聞かれてるよ(脇腹なぞる」 ナ「んぁ、ん……ないです」 11.今までに特殊なプレイをした経験は?(薬、コスプレ、緊縛、等) 愁「特殊プレイなんてしたっけ(愛撫止め」 ナ「あぅ……もうやめちゃうの?(物欲しげな目) えっと……トラの格好とか着物姿ならしたことあるけど」 愁「今もしてんじゃん」 ナ「ふえ?」 愁「公開エッチでしょ(口の端上げて笑」 ナ「あ、そっか。ね、愁ちゃん答えたから続き……」 12.じゃあこれからヤってみたい、と思うプレイは? 愁「別にもうほとんどしたけどね」 ナ「愁ちゃ……早く」 愁「まだ」 ナ「今、焦らしプレイしてるでしょ……?」 愁「あ、バレた?」 13.相手がする仕草なんかで一番こう…ムラッ、とくる仕草は? ナ「んー……髪の毛掻き上げる時かな」 愁「じゃあ、絶対今日はしないでおくね(微笑」 ナ「むぅ……。愁ちゃんは?(上目遣い」 愁「その上目遣い(愛撫再開」 14.受けさんから誘ったり襲ったりする事ってある? ナ「んっ、はぁ、んん……もっと」 愁「この通りです」 15.最後に相手にこれだけは言っておきたい! 今の内にどうぞ。 愁「もう入れていい?」 ナ「んゃ、ぁっ、んん……!はや、く……きてえ!」 16.お疲れ様でした。何か一言あればどうぞ。 ナ「ああん! ああッ、あッ、や、んん!!」 愁「……いつまで見てるんですか? 邪魔なんですけど」 番外編⑧ ※コラボネタです。 文:かずい様 コラボ作品:「護ってやります」 「ねぇ名前、何て読むの?」 入学式の時に一番最初に奈央に話しかけたのが亀依だった。 "桜井奈央"と決して読みに苦しない名前のはずなのに、きっかけ作りなのだろうか。 「あ、さくらいなおって読むよ。貴女は…せのお…」 生物の亀に、人偏に衣と書いての依。こちらは打って変わって変わった漢字を持っている。 「きい、だよ。よろしくね」 「うん、こっちこそよろしく。亀依ちゃんか~、可愛い名前だね!」 「ホント? ありがとっ! 奈央ちゃんも可愛いじゃん」 桜井と妹尾。出席番号が一つ違いの彼女らはすぐに仲良くなった。 日付変わって登校二日目。 亀依には既に他の友達が複数出来ていた。 「おはよー奈央ちゃん! こっち来て一緒に喋ろ」と教室に入ってきた奈央を手招く。 奈央が招かれたグループは、登校二日目というのに派手な格好で、いわゆるギャルっぽいグループだ。 「おはよう。あたし桜井奈央って言うの」 ニッコリと笑って挨拶をする奈央に帰ってきたのはひんやりとした視線だった。 一人ずつ名乗って簡単な自己紹介が終わると彼女達は奈央に見向かなくなった。 (…あれ? 何か気に障るようなこと言ったかな??) 非はないはずだが相手の態度を見ると自分が悪いのではと思ってしまう。 結局その時、はきはきした性格の奈央でさえ会話のタイミングがつかめない内に朝礼開始を告げるチャイムが鳴った。 まず、一時間目はオリエンテーションだ。 簡単に授業の説明をしたあと、各人の係りを決める。 「じゃ、学級委員やりたい人いるー?」 教壇の前で先生が生徒達にそう振った。 皆しーんと静まり返り、俯いたり頬杖つくだけで黒板を見ようとしない。 どこの学校でも、大体初めはこんなものである。 と、そこへ。 「はーーい、あたしがやります!!」 奈央の後ろで声と手が挙がった。 言われてもいないのに立ち上がって、ただにこにこと微笑んでいる。 「奈央ちゃんも一緒にやろうよ」 「え、あたし?」 突然指名されてシンとした教室内だと忘れて奈央はマヌケな声を出してしまった。 そんな奈央の腕をぐいと引き、亀依は無理矢理立たせようとしている。 「じゃあ妹尾さんと桜井さんでいいと思う人、手挙げてくれる?」 先生が前でそう言うと、満場一致で学級委員は二人に決定した。 「そんな…あたし何も言ってないよぅ」 入学式から約一ヶ月が過ぎようとしていた。 奈央と亀依は相変わらず仲良いが、奈央は亀依が馴れ合っているグループから無視に近いことを受けているのも相変わらずだった。 いや、というよりも奈央はクラスに溶け込めていない感を味わっていた。 話しかけても例のグループが取り合ってくれないのも勿論、他のクラスメートもどこか態度がよそよそしい。 唯一普通に喋りあえるのが亀依だが、その亀依は例のグループと仲がいいのだ。 しかも亀依が居る時の例のグループの奈央に対する態度は問題ない故、奈央が無視されているということに気付いていないようだった。 委員の話だが。 亀依によってほぼ強制的に決められてしまった学級委員とはいえ決められたものなのだからと奈央はきっちり業務をこなした。 「すまねぇ奈央ちゃん。あたしは今日、百合ちゃんたちと約束があるですので奈央ちゃんと一緒に帰ることができないであります」 制カバンを引っさげ、変える準備万端の亀依が奈央に告げた。 亀依は何故か変な喋り方をするときがある。 アニメのキャラの喋り方や方言などをミックスしたような喋り方だ。 ちなみに百合ちゃん、とは例のグループのリーダー的な存在の女の子だ。 「そっかーじゃあまた明日ね、バイバイ」 「さらばですよ」 お互いに手を振ると、二人は真逆の方向へ歩いていった。 "百合ちゃんたち"との約束とは、ショッピングモールでの買い物だったらしい。 「ねえねえ亀依ちゃん、これ良いよね?」 「これも可愛いよね~すっごい欲しー」 「あ、これ色良くない?」 彼女達は次から次へ、服やアクセサリーや化粧道具などを買い物かごに放り込む。 中には高価そうなブランド物もあった。 「亀依ちゃ~ん」 「あたしたち友達でしょ?」 「買ってくれない? 亀依ちゃん家お金持ちだからこれくらい楽勝っしょ?」 そう、亀依の父は食品会社を主体とするグループの総帥だった。 簡単に言えば財閥、もっと砕けて言えば超お金持ちってところだ。 「い…いいっすよ~」 外面は笑顔だが内心はヒヤヒヤしているに違いなかった。 元はといえば亀依が最初に彼女達に、奢ってあげると持ち出したのだ。 友達だし、ニ、三品ならまあ良いかと軽く考えていた。 しかしその額は日に日に増えていき、5万円を越すことももう珍しくなくなってしまった。 (別に良いよね? 百合ちゃんたちは友達だし、あたしの口座に入ってるお金だから自由に使えるし…) 彼女はそう思うしかなくなっていた。 ある日。奈央は学級委員の仕事を亀依と残って行っていた。 「じゃああたし、遠足のしおりコピーしてくるってばよ」 「はいはい、ナルトは良いからさっさと行っておいで」 意味無く敬礼もする亀依を軽く奈央は受け流す。 「奈央ちゃんはホッチキスとか用意しておいてね。ちゃちゃっと終わらせてすぐ戻って来るね!」 「わかった。行ってらっしゃい」 亀依に手を振ると奈央は自分達の教室に向かった。 教室の近くまで来ると、終礼は大分前に終わったのにまだ明かりが点いているのに気付いた。 (まだ誰か残ってたんだ) 終礼が終わるとすぐに自治会室に呼び出されたので、奈央はそのことを知らなかった。 「ってかさー」 今までの会話は聞こえなかったのに、その声だけ妙に大きく聞こえた。 百合の声だ。他の女子達も居て、携帯を弄りながら何か喋っている。 次に出た言葉に、奈央は驚いた。 「桜井ってうざーい」 ある程度わかっていたことなので驚いた、というよりショックを受けたという感じだろうか。 「わかるぅー。何かすげー優等生気取ってる感じするよね」 「そうそう、絶対先生とかに媚ってるんだって」 「うざー。そういうのって絶対クラスに一人はいるよね」 「うん! いいんちょ的な?」 「キモイキモイ」 数々の胸を突き刺すような言葉の後の嘲笑。 奈央はそれを目の当たりにしてしまって涙がこぼれそうになった。 (泣くことないじゃん。あたしは悪くないもん!) そう思って自分を奮い立たせようとするけど、やっぱり弱い部分の方が強力になって涙があふれ出てきた。 拭えど拭えど容赦なく出てくる。 「あとさ、妹尾ってホントバカだよね~」 「友達だよね~? とか言ったらすぐお金出してくれるもんね」 「明日コーチのカバン買ってもらおうよ」 「あのマスコット可愛いよね~」 (亀依ちゃん…?) 亀依の話が出ると、奈央の涙は止まった。 (もしかして、岩瀬さんたちに利用されてるんじゃ…) 意を決し、もう一度目をこすって頬をぱちんと叩くと奈央は教室に入った。 「っちょ、桜井じゃん…」 百合たちは勢いよく扉を開けた向こうに立っていた奈央に驚く。 と同時に先ほどの悪口を聞かれたかもしれないとバツの悪そうな顔をした。 「あ、岩瀬さんたちまだ残ってたんだね」 無理して笑顔を作ってみるが、眉毛が八の字に曲がっていた。 百合グループは奈央に対しては何も言わず、仲間内でこそこそと話しながら教室を出て行った。 彼女達が出ていたのを確認すると、用具が入っているロッカーからホッチキスを出した。 更に二人で作業しやすいよう机の配置を変える。 「奈ー央ーちゃんっ、コピーできたですよ!」 教室の扉が開いて亀依が入ってきた。 「あーコピー後のこのあったかさは良いなぁ。プリントたちのぬくもりが感じられるんだぜ」 刷ってきたA4版の紙の束に亀依は頬をすり寄せる。 「亀依ちゃん、ありがと」 用紙を受け取ると机の上に置き、ホッチキスを隣に置いて奈央は静かに座った。 「ねえ、亀依ちゃん」 もくもくと作業を続ける中、奈央がふと声を漏らした。 「なぁに?」 「岩瀬さんたちと…ほ、本当に仲良いの?」 「うん、友達だよ。明日も一緒に買い物行くんだ。奈央ちゃんも一緒に行く?」 「行きたくない」 聞こえるか聞こえないかの小声で呟き、奈央はしおり作り作業を止める。 「もう岩瀬さんたちと仲良くしないでよ! それが嫌ならあたしになんか喋りかけないでっ!」 「何で? 皆で仲良くすればいいじゃない」 「皆で仲良く? 本当にそんなことできると思ってるのッ!? 亀依ちゃんだって…亀依ちゃんだって、岩瀬さんたちに利用されてるだけのくせに! 本当の友達なんていないくせに!」 と、次の瞬間には大声を上げた。 奈央はこんなことを言う人間ではない。何かが爆発したようだった。 すぐに自分の言った言葉に後悔する。 「ご、ごめんね。ホントにごめん、そんなこと言うつもりじゃ…」 「あははー。やっぱりねー、そうじゃないかと思ってたんだよね~」 困ったように笑いながら後頭部を掻きあげて亀依は言った。 「社長のムスメって言った途端にころっと態度変わったし、ショッピングしか遊びに行ったこと無いしぃ…。百合ちゃんたちはあたしじゃなくってあたしのお金が好きなんだって分かってたけど…。でも、認めるのはすごく嫌だったの。だって…本当に友達いないってことだもん…」 亀依の表情はみるみる泣き面に変わった。 「亀依ちゃん、ごめん。本当にごめんね」 「そんなの気にしてないよぅ。それより、本当にあたしは本当の友達がいないの? じゃあ奈央ちゃんは本当の友達じゃないの? そう言われたのが悲しいの…」 涙がニ、三滴スカートにこぼれ落ちた。 「亀依、ちゃん」 「あたしは本当の友達だと思ってるもん…」 奈央は微笑すると、泣いている彼女を抱きしめた。 「友達に決まってるじゃん! さっきのは間違えちゃったの」 「わあああん奈央ちゃん大好きーッ」 亀依も抱きしめ返したのは言うまでもない。 「いきなりの告白!! そんなことより早くしおり作って帰ろ? あ、そだ。帰りにクレープ食べて帰ろうよ」 「うん」 番外編⑨ ※完結後の話です。 《直人目線》 ――愁ちゃんとの再会から数週間。 現在オレは何をしているかというと、もっぱら語学勉強中。 一応伯父さんのツテで日本人スタッフが沢山いる事務所で働かせてもらっているから日常生活に支障はないものの本当に難しい。 英語が公用語じゃないって……中高6年ホント何のために勉強してたんだろう……。 バタバタと慌ただしく過ぎていた日々もようやく落ち着き始めた頃、愁ちゃんが折角こっちに来たんだし、と言うことで街の観光スポットを案内してくれた。 日本だと世界遺産って滅多に見ることが出来ないけど、さすがヨーロッパ。 至る所に名所があって、そのどれもが教科書とかで見たことあるような有名な場所ばかり。 一日中移動し続けてもまだ見終わらなくてヘトヘトになったオレの手を引っ張りながら、愁ちゃんが笑う。 「じゃあ、今日はここで最後にしようか」 「これ……教会? ここも有名なの?」 愁ちゃんに連れられ入り口の扉をゆっくりと押し開ける。 開けた途端内部からひんやりと独特の冷たい空気が流れ、厳かな雰囲気が肌で感じ取れる程。 足を進めると中は想像以上に広く、アーチ型の天井がいかにも西洋風らしい。 薄暗いのにそんなに暗く感じないのは辺りに灯された無数の蝋燭と、上部に見える多彩なステンドグラスから月灯りが入ってきているからだろう。 壁から天井へと一面に施された繊細な装飾に目を奪われながら中央へと進むと、赤い絨毯の上に置かれた小さな祭壇が目に入った。 「もう遅いから今は誰も居ないけど、街で一番有名な教会なんだよ」 「……すごい…・・綺麗だね」 周りに気を取られながら後ろに下がったため、愁ちゃんの胸に背中がトンと当たる。 振り向けばオレの顔のすぐ近くで愁ちゃんがニコリと微笑んだ。 優しく抱き寄せられ、促されるまま身を預ければ首元から愁ちゃんの香りがふわりと香る。 ……うわ。ダメだ。 懐かし過ぎて何故か無性に泣きそうになる。 涙腺が弛んだ顔を見られたくなくて、オレは愁ちゃんの胸元にギュウと顔を押しつけた。 「最初にここに来た時、ナオに見せたら絶対喜ぶだろうなあって思った」 「うん……本当に……ほんと……会いたかったよ……」 「ナオ、こっち向いて?」 そう言って愁ちゃんはオレの両頬に手を添えると、目線が合うように上を向かせる。 愁ちゃんはいつも通り優しい表情だったけど、オレは必死で泣くのを堪えてたから多分変な顔だったと思う。 あ、キスされる。 愁ちゃんの顔が更に近くなった瞬間ギュッと目を瞑る。 …………。……あれ? ……され、ない? しばらく時間が経っても何も反応がない事に不安になったオレは恐る恐る瞼を開く。 と、同時にチュと唇に温かい感覚。 「……ッ!?」 「好きだよ」 時間差でされて思わず照れてしまうと、愁ちゃんはやっぱり可愛い、と悪戯っぽく笑った。 く、悔しい……! オレが泣きそうになってたからわざととは言え、またしても愁ちゃんに子供扱いされてしまうのはやっぱり悔しい。 そりゃ小学校の時は良く照れてたけど、一応今はもう立派に働いてるんですよ? そんな事を思いながら、オレはすっかり泣く事も忘れてキッと愁ちゃんを睨む。 「あのねぇ! オレを可愛いとか言うの、もう愁ちゃんだけだよ」 「そう? 俺にとってナオはいつまでも可愛い恋人だよ」 ……もう、顔から火が出そうです。 照れる様子もなくさらりと答える様子は昔から変わっていなくて。 火照った顔を誤魔化そうとオレは愁ちゃんから身体を離すと、床に置いてあった鞄に手に持っていたパンフレットや地図をおもむろに詰め始めた。 「え……えーと、そうだ、もう時間も遅いし帰ろっ! オレ、この後も勉強あるしっ!」 自分でも何でこんなに照れているのか判らない。 ただ、愁ちゃんと一日中二人で居るのはまだ過剰反応してしまうというか……。 嬉しいはずなのにその感情を上手く伝えられない自分がもどかしい。 不意にナオ、と呼ばれて顔を上げると流暢な口調で愁ちゃんが言葉を発した。 「――Wil jij met me trouwen?」 英語じゃない発音。 短かったためかろうじて聞き取れたものの、語彙力がないから意味が全く解らない。 きょとんとした表情で愁ちゃんを見詰める。 「へ……? 今……何て言ったの?」 「さあ……家に帰ってから辞書で調べてみたら?」 「…………?」 × あー……今日はほんっと疲れたあ……。 もちろん足も疲れたけど、精神的にも何だか泣いたり照れたり忙しい一日だったな……。 ご飯を食べて、お風呂に入って、さあ寝る前にもうひと勉強、と言うところである事をハタと思い出す。 ――そう言えば、あの時言われた言葉はどういう意味だったんだろう? 確か、ト……トラウエン? とか何とか……。 机の上に置いてある辞書を開き、勘を頼りに引き始める。 多分“tr”で始まるだろう、ぐらいの適当な考えのままパラパラと頁を捲っていく。 ……愁ちゃんはすごいなー、なんであんなにペラペラ喋れるんだろうなー。 しかもこっちで医者って……凄すぎてとてもオレが追いつけるレベルじゃ…………あ、あった。 ――――和訳を見た瞬間のオレの驚きと言ったら、もうここには表現できません。 リビングで本を読んでいた愁ちゃんがいきなり飛び込んできた余りのオレの慌てぶりに逆に動揺した程。 「ナオ? なっ……何? どうしたの?」 「しゅ、愁ちゃ!! 何で……っ!? アレ、あの! 辞書! ええっ!? ちょっ、意味がっ!?」 支離滅裂な言葉に愁ちゃんはやっと状況を理解したらしくクスクスと笑った。 多分、今、人生で一番顔が赤い自信がある。 後になって考えれば、なんでこんな大事なこと日本語で言ってくれないの、とか、もしオレが辞書で調べなかったらどうするつもりだったの、とか言いたいことは沢山あったはずなのに、もう頭がぐちゃぐちゃでただ愁ちゃんを見詰めて口をパクパクさせるのが精一杯。 「……で、答えは? 直人さん」 いつも“ナオ”って呼ぶくせに、こんな時だけ大人扱いしないで欲しい。 勿論そんな切り返しも思いつかなかったオレは、途切れ途切れにようやく喉から声を絞り出した。 「よ、よろしく……お願い、しま……す」 その言葉を聞くなり愁ちゃんはオレの腕を引いて抱きよせると、今度は深く唇を重ねられた。 ――まさか、今日……プロポーズされるなんて本当に夢にも思わなかった。 × × × ※後書き。 訳は「……俺と結婚してくれる?」ですね。 ちなみにオランダ語です。 番外編⑩ ※コラボネタを私も書かせて頂いた時の物です。 コラボ作品:「どうして 変態 なんですか」 シーン1 ――此処はとある高級ホテルの一室。 大きめの広間にはビュッフェ形式の豪勢な食事がずらりと並べられ、部屋の各所には読者より今宵の為に届けられた祝いの花束が飾られている。 その部屋へ扉を開けて入ってきたのは、差出人不明の招待状を手にした一組のカップル。 何故か正装着用と指定がされていた為どちらもスーツにネクタイ、胸にはチーフを差している。 広間の壁に取り付けられた垂れ幕を一目見るなりこのパーティーの趣旨を理解し小さく溜息を吐いたのは愁。そしてその横で小首を傾げるのは直人であった。 垂れ幕にはでかでかとこう書かれていた。 ―コラボだよ! 4人で絡め!―……と。 「何これ……?」 すぐに愁に答えを聞こうとしたものの、先程自分達が入ってきた扉の反対側からボソボソと男性同士の話し声がして直人は訝しげに後ろを振り返る。 小さく聞こえる会話からしてどうやら彼等もこのパーティーの参加者であるようだった。 「部屋……ここだな」 「正装してまで参加しなきゃなんないこのパーティーって何なんだ? しかも絶対参加って……意味がわからん」 「まあ入ってみれば判るだろ。入るぞ」 「お、おい! 慎也ッ」 迷う様子もなく扉を開けた慎也の背中越しに旭がひょいと首を出すと思いがけない人物が目に入り旭は思わず目を瞬かせた。 慎也と言えば特に驚きもせず久しぶりに会った幼なじみに対して嬉しそうに笑いかける。 「愁。久しぶりだな」 「旭さん、お久しぶりです。この度はご結婚おめでとうございます」 話し掛けたのは慎也であるにもかかわらず、愁はまるで慎也など視界に入っていないように後ろの旭に向かってニコリと微笑みながら挨拶を行った。 「あ、ありがとう。……てかそっちも結婚したって慎也から……」 「しかも医者になったんだろ? お前毎日一体どんなプレ――げほっ!」 「急に日本に呼び出されて何事かと思いましたけど、こういう事だったんですね」 ちょっとした冗談であるのに愁には完全無視を続けられ、旭には背中を思い切り叩かれた慎也はやれやれと肩を竦める。 自分が黙った後も二人はまだ社交辞令的な挨拶を続けていて、それがいかにも日本人らしくて慎也は内心苦笑した。 手持ちぶさたになり周りを見渡せば愁の横でまだ状況が良く飲み込めてない直人と視線が重なる。 慎也がにっこりと微笑みかけると直人はぎこちなく頭を下げた。 「直人君、久しぶりー」 「えっと、中田さん……でしたよね。お久しぶりです」 「背伸びたねー。昔はもっと可愛らしかったのに……やっぱ従兄弟だけあってどことなく愁に似てきたよね」 「え!? そうですか?」 慎也としては特に褒めたつもりでは無かったのだが、直人にとっては最高の褒め言葉。 その一言で子供の頃慎也に“イタズラ”された事も忘れたようで直人は嬉しそうに照れ笑いをする。 ――そんなこんなで半ば強制的に久しぶりの再会をした四人。 いつまでも立ち話をするわけにもいかず、しばらくしてから四人は中央にあった円卓に座ると、用意されていたグラスを片手に一斉に言葉を発した。 「カンパーイ」 「乾杯」 「かんぱい」 「カンパイ!」 × シーン2 直人×旭 「これ美味しい!」 「え、どれどれ?」 「あっちに在ったローストビーフですよ」 「あー……ちょっとだけ食べたいけど……もういちいち席立つのが面倒くさくなってきた」 旭の言葉を受けて直人は自分の皿から少し切り分けて旭の皿へと乗せる。 「じゃあ、オレの一口あげます」 「ありがとう。……あ、旨い!」 ほのぼのとした雰囲気にお互い顔が弛む。 妹が居る旭にとって直人が話しやすいのは勿論、直人にとっても旭はどことなく拓也と似ていてあまり年の差を感じることなく話すことができ、二人の会話は先程から途切れることなく続いていた。 「直人君さ、勉強の方どう?」 「大分リスニングは出来るようになってきたんですけど、いざ自分が喋るとなるとやっぱりまだパッと単語が出てこなくて」 「そうそう! 買い物とかは良いんだけど難しい話になるとつい慎也に頼っちゃうんだよな」 「そうなんです! オレもすぐ愁ちゃんに……熱ッ」 二人の語学力が伸び悩んでいる一番の原因は、おそらくお互いの恋人の過保護過ぎる愛情の所為だろう。 現に今も話に夢中でスープを零してしまった直人に気付いて、横に座っていた愁がすぐに対処を行う。 水で濡らしたタオルでスーツを拭いながら愁は心配そうな表情を浮かべた。 「ナオ、火傷しなかった?」 「うん。大丈夫。……染みになっちゃうかな」 「これ位なら大丈夫だと思うよ」 「ほんと? 良かった……。スーツって着慣れないからなんか動き辛いよ」 見るからに仲が良さそうな二人を旭は微笑ましく眺める。 と、同時に少し羨ましくもあった。 慎也がもう少しだけまともだったら自分も直人君のように素直に反応できるのに……。 そんな旭の心境を知ってか知らずか、隣に座っていた慎也が徐ろに旭の顎にクイッと手をかける。 「旭、ソース付いてるぞ」 そのまま旭が反応するより速く顔を近づけると、慎也は旭の口元を舌で舐め取った。 旭の顔がカアッと一瞬で熱くなる。 人前でされた事に激しい羞恥を覚え、旭は慎也を突き放すと慌てて口元を手で拭った。 「……ばっ!! おまッ!? 人前でな、な、なんて事を!?」 「隙を見せたお前が悪い」 「し……死ね!!」 その仲睦まじい様子を見て、今度は愁と直人が顔を見合わせてクスクスと微笑み合った。 × シーン3 慎也×愁 旭と直人が楽しそうに会話をしながらデザートを頬張っている中、慎也と愁はすでにテーブルを離れ、部屋にあったチェスをしながら暇を潰していた。 愁も慎也もどちらも飛び抜けて頭が良い。 慎也に「やらないか」と誘われた時、愁は断ろうかとも考えたが純粋にどちらが勝つだろうという興味もありこの勝負を受け入れたのである。 「そんな冷たくしなくてもいいだろ。お互いもう相手が居るんだし」 「……旭さんがどんなに心の広い人か想像つくよ」 愁の言葉の冷たさに比例するように動かした駒が慎也の駒を奪うと、慎也は楽しそうに頬杖を附いて少し考えてからまた一つ駒を進める。 「直人君さっき言ってたぞ。“愁ちゃんはいつもすごく優しいですよ”って。……裏の顔を知らないって恐ろしいもんだな」 「まあ確かにナオ以外に何て思われようと別にどうだっていいけど……慎也はまた特別嫌いだから」 「愁に特別扱いされて嬉しいよ」 ニッコリと微笑みながら嫌みを言う愁に向かって慎也もまた極上の笑顔で切り返す。 「愁って受けになると絶対クーデレタイプだよな」 「そうやって何でもかんでも変なジャンルに分けるのは止めてくれますか変態さん」 ギスギスした雰囲気の中、お互い一歩も引かず戦いは静かに続いている。 中盤まで来て、ふと慎也が思いついたように口を開いた。 「そうだ。この勝負、罰ゲームは何にしようか?」 「……慎也にとって恥ずかしい事なんてある訳?」 「無いな。でも俺が勝ったら愁にやって欲しい事は沢山あるぞ」 愁から奪った駒を揺らしながら慎也が意地悪く笑うと、愁の頭の中に小学校の時の苦い過去が蘇り、愁はギクリと肩を上げる。 慎也が言った事を絶対実行に移すタイプなのは嫌と言う程知っている。 ……これは絶対に負けるわけにはいかない。 愁は軽い気持ちで勝負を受けた事を今更ながら後悔した。 数分後。 デザートを食べ終えご機嫌の旭と直人が二人の側まで近寄ってきた。 「二人とも何してるの?」 「……チェスとかお前らどんだけ格好つけてんだよ」 揶揄い半分の旭の言葉に慎也は顔を上げ、楽しそうな声を出す。 「今勝負してんだよ。で、負けた方が罰ゲーム」 「へー、罰ゲームって何するの?」 素直に反応した直人の横で、先程慎也にキスをされて疑心暗鬼になった旭が突如大きな声で驚いたように声を上げた。 「まっ……まさか……負けたペアが人前でヤるとかじゃねーだろーなッ!?」 旭以外誰一人、その時は慎也でさえもそんな事思っていなかった。 まさかの旭の発言にそれぞれの反応はバラバラだった。 直人は一瞬で顔を真っ赤にさせ、愁は驚いたように目を見開き、慎也は吹き出してケラケラと横を向いて笑っている。 自分がとんでも無いことを口走った事にようやく気付いた旭は慌てて手を振って弁明をし始めた。 「ち……違うッ! 垂れ幕があったから……!!! け、決して俺がヤリたいとかそう言う意味じゃ……!!」 「旭が良い罰ゲームを思いついてくれたんでこれで決定だな」 ――まだ口に手を充てて笑っている慎也を見ながら、旭はその場に小さく丸まって自分の馬鹿さ加減を心底反省した。 × シーン4 「……ステールメイトか。考えたな、愁」 「まあね。あー……疲れた」 愁は大きく息を吐くとソファに寄りかかって伸びをする。 たかが遊びのゲームに愁が今までこれほど頭を使った事があっただろうか。 この危機的状況を回避すべく愁が考えた事は一つだった。 ――引き分けにすること。 本気で勝ちに来ている慎也に対して引き分けにするためには愁は何百という手を先読みして駒を動かさねばならず、終盤は隣の直人の声援も耳に入らない程だった。 「チェスのルール良く知らなかったけど……引き分けとかあったんだな」 「よ……良かったあ!」 安堵の表情で旭と直人が胸を撫で下ろす。 「じゃ、引き分けってことで仲良く4Pでも……」 「慎也。お前はもうホント黙れ。頼むから黙れ」 「愁ちゃん、4Pって何?」 「……ナオは全く知らなくて良い言葉だよ」 ――久しぶりに会っても相変わらずの四人。 こうして、宴はまだまだ続いていくのであった。
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179: 名前:乃愛☆03/21(日) 18 20 06 でぃあ*真子v ちょ、ちょw 一応← 雄輔ふぁんもいるんですからNEw コメアリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪ でぃあ*名無しさん様 あげアリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪ ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 「 あ、あたし帰ってもいい? 」 これ以上、雄輔くんと居ちゃいけないような気がする。 …というか、あたしが一緒に居たくないっていうか。 「 え、何で?体調でも悪くなった? 」 明らかに動揺している雄輔くん。 驚いて上半身を起こしている。 「 あっ…いや、そうゆう訳じゃないんだけど… 」 焦って否定をするあたしを見て、雄輔くんは ふわぁっと極上の笑みを浮かべた。 「 そっかぁ…、良かったぁ 」 どきっ ………っ! 雄輔くんの笑みに反応してしまったあたしの心臓。 止まれ、と思うほど動きは激しくなっていく。 何で?どうして―… あたしが… あたしが好きなのは啓斗くんだけなの! 「 たたた体調は悪くないんだけどねっ… その…お母さんが心配するかなぁ、て思って! 」 鳴り止んだ心臓をチャンスとして、 あたしは早口でペラペラと話した。 平気で嘘をつくあたしを、雄輔くんは何故か 悲しそうな顔をして見ていた。 そんな顔で見ないで―… 可哀想、みたいな顔しないで―… 「 分かった… 」 そして、ぼそっと呟いた一言。 心臓がズキッと激しく痛んだのもその時。 「 ん…じゃあね! 」 部屋を出るときに、最高の作り笑いを雄輔くんに見せた。 “有難う”最後に雄輔くんに言われた―… その“有難う”にはどんな意味があるの? 看病してくれて“有難う”? 話を聞いてくれて“有難う”? お願い通りお店に来てくれて“有難う”? それとも―… ― お店から出ると、外はすっかり夜になっていた。 昼にはたくさんいた子供達の姿も、 夜になると代わりに大人達が動き始める。 そんな中にいる子供のあたしって…… 物凄く、浮いちゃったりしてる? ドンッ 「 きゃっ! 」 突然肩に激痛が走った。 その反動で道端に転んじゃったし……。 「 いってえな!ボサっとしてんなよ、ブス! 」 怒鳴り声がする方を見上げてみると、 そこには金髪ロンゲの20代くらいの男の人。 隣には、茶髪で髪を立てている同じく20代くらいの友達。 「 ごっ…ごめ、ごめんなさいっ… 」 あたしは両手で顔を隠すようにしながら、 座ったまま、涙目で謝った。 「 まじ痛いんだけどぉ、慰謝料貰うよー 」 男は笑いながらそう言って、どこかの建物と 建物の間のごみ箱が置いてあるような隅へと、 あたしの腕を力強く掴み、向かいながら言った。 何故かそこには弱々しいライトが掲げてあった。 「 んー?明るいところで見ると… あんた、結構…いや、めっちゃ可愛いじゃん 」 男達は舐めるようにあたしの頭のてっぺんから足先まで見つめた。 「 いっ…慰謝料は……その 」 「 あー、慰謝料はいいよ 」 ぶつかった男はにこっと優しい笑みを浮かべた。 あ…、良かったぁ。この人良い人だったんだぁ。 「 本当で「 ただし! 」 喜びながら問いかけるあたしの言葉を遮って、 男はさっきの笑みから一点、悪魔のような笑みを浮かべた。 「 やっぱり、いてぇから… 」 男は肩を見てから、あたしの顎をくいっと持ち 自分の顔を近づけてきた。 「 やっ… 」 あたしは刃向かうように顔を逸らしたが、 男の手によって、やはり引き付けられてしまった。 「 体で払ってもらおうか? 」 気づけば逃げ場は無くなっていて、きょろきょろしていると、男はあたしのお尻を撫でてきた。 「 やぁっ! 」 だ、誰か……助けてっ! 183: 名前:乃愛☆03/23(火) 19 07 40 でぃあ*葉月さま 結「 葉月ちゃん、有難うっ! 」 うちからも有難うですっ笑 ですねえ…、ここはやっぱり啓斗に行かせたいな♪v ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 「 そんなに嫌がるってことは処女? 」 もう1人の男が壁に寄りかかって、けらけらと笑いながら言った。 処女では無いけど、そんなこと聞かれて答える勇気なんて あたしにないよ…。 「 え、何っ。黙ってるってことは…やっぱり、そうなの? 」 あたしを押さえつけている男が目を丸くした。 処女は面倒、とか言うし……嫌ってくれるよね? 「 良かったじゃん、お前。 処女とヤッてみたいとか言ってなかったっけ? 」 壁に寄りかかっている男がすっとあたしに近づきながら言った。 そして、くいっと顎を持ち上げると耳を舐めてきた。 「 ひゃっ…! 」 いきなりのことで驚きの声を上げてしまった。 あたしの反応を面白がっているのか、 男はあたしの首筋を舐めてきた。 嫌っ…、気持ち悪い…! 「 や、止めてっ! 」 「 おー、ピンクのパンツ 」 気づけば、もう押さえつけていた男が あたしのスカートをめくっていた。 「 やだっ!離してっ…止めて! 」 じたばたと手足を動かし、脱出を試みるが 2人の男に押さえつけられては、もうどうしようもない。 あたしのパンツを見た男は、無理やり足を開かせようとしてきた。 「 やっ…、止めっ…んん! 」 大きな声を出して、周りの人に気づいてもらえるように 努力をしたが、すぐに耳を舐めてきた男に口を塞がれた。 塞がれた手に噛み付こうと思った瞬間、 全身に電流が流れたような感覚があたしを襲った。 下をバッと見ると、男はあたしのあそこを舐めていた。 嫌と思っているのに足の力が抜けてきた。 立っているのがやっとになったあたしは、 抵抗も出来ないくらい2人の男に染まっていった。 「 大分、大人しくなってきたな 」 あたしの口を塞いでいた男も、いつしか手をどかしていた。 そして、あたしの胸を後ろから触っていた。 もちろん、もう1人の男はあたしのあそこを舐めていた。 「 あっ…、やぁん!イクッ、イッちゃう! 」 次第に望んでない言葉があたしの口から次々を出てきた。 そして、あたしは2人によってイかされてしまった。 電流が体中に走ったような感覚が、まだ残っている中 かちゃかちゃ、という何かが外されている音がした。 そして、体をぐいっと持ち上げられると紐のようなもので 両手を頭の上で結ばれた。 その時、あたしのあそこに男のものが入ってきた。 「 あああああっ! 」 ものすごく早いスピードで男は腰を動かした。 そして、1分もたたないうちにあたしはイッてしまった。 駄目って分かっているのに、体は正直。 こんな、汚い男達にヤられて……あたしイッてる。 男のものはあたしの体から出ないで、 もう1人の男のものがあたしのお尻に入った。 そして、2人別々に動かし始める。 「 やっ、あっ、あんっ、あんっ…! 」 あたしはやはり立っていることが出来ず、 2人に支えてもらいながらのSEXだった。 191: 名前:乃愛☆03/31(水) 13 53 19 でぃあ*mikiさん・葉月・あさん・卍樹里.さん・彩実さん・あささん・ありさ 有難うございますっ。 頑張ります♥♥ ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 「 楽しかったよ 」 あの後、数十回のSEXを続けてしたらしい。 あたしの記憶は途切れ途切れでよほど体が悲鳴をあげていたことが分かった。 「 …… 」 2人が消えた後、あたしはゆっくりと立ち上がり ばらばらに捨てられていた服を着た。 「 ふえ……うっ…ひっく…… 」 暗闇に浮かぶ沢山の車のライトやお店の電気が眩しいと感じる頃、あたしは大粒の涙を 1人で歩きながら流していた。 汚い……汚いよぉ……。 ごめん、ごめんね…啓斗くん。 あたし……心も体も汚れちゃったよ。 気づけば自分の家についていた。 家には誰も居なくて、とても寂しかった。 「 ……シャワー 」 啓斗くん以外に触られた体を…綺麗にしたい。 あたしは、すぐにシャワーに向かった。 痛いくらいに体を擦り、汚れを落とそうとした。 でも……体が綺麗になっても、心は汚いよ。 ……心は………洗えない。 そう思ったとたん、止まった涙がまた流れ始めた。 あたしは汚れた女―… 197: 名前:乃愛☆04/01(木) 17 55 06 でぃあ*卍樹里.さま 本当ですよ-、書いてて可哀想になってくるww 何か乃愛が小説書くとどうしても感動系になってしまうのですww でぃあ*葉月 見てらんないっ…!?Σ、 ちょ、ちゃんと見てくださいねえww でぃあ*ありさ 確かに可哀想…、でも乃愛は止めませんww 結夏がどれだけ頑張るか…楽しみです♫*. でぃあ*彩痲さま 続き気になりますか!?Σ、 アリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪ でぃあ*kさま 気になりますかぁ!? 大丈夫ですか、目悪くないですか!?ww((ヒデ/、 最近、結夏Sideばっかりですけど… 皆さん我慢してくださいww ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 「 ん… 」 歪んだ天井があたしの目に入った。 カーテンの方を見ると隙間から光が差し込んでいた。 自然に寝て、自然に起きちゃったんだなぁ…。 …!? 枕に手を置いて、起きようとすると手を置いた枕が 異様に冷たく濡れていることにあたしは気づいた。 これ…もしかして? あたしの涙―…? すっと手を目元に近づけると、 まつげがパリパリと変に乾燥していた。 枕元にあった、手鏡を取り自分の顔を見ると、 そこには醜いあひるの子にも負けないくらいの酷い顔。 泣いたという事実がすぐに分かる、腫れて赤くなった目とまぶた。 夜も泣いていたのか涙が頬を伝っている後…くっきりと残っている。 やだ……、こんなんじゃ啓斗くんに会えない……。 …!? 何勘違いしてるの、結夏! 昨日色々考えて決めたじゃない。 ……空公園には行かない、って………。 啓斗くんには会わない、って………。 今、10 00。 待ち合わせまで後…8時間後。 202: 名前:乃愛☆04/09(金) 19 58 09 でぃあ*ありさ 頑張りますっ。 コメアリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪ でぃあ*葉月 行くといいねえ← コメアリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪ でぃあ*みうみうさま 会って欲しいですねえw コメアリ(●´・ω・)(●´_ _)ガト♪ でぃあ*ももさま 決して放置ではありません。 色々と用事があったので更新する機会が無かっただけです。 それに、事前にお知らせしていたはずです。 更新が遅くなっていく、と。 あと、お願いです。無駄にEnterを押して、真っ白にするのは止めてください。 それに、これからもここには来ます。 ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 「 あ、おはよう。結夏 」 リビングに向かうと、トーストにかぶりついている姉、結愛の姿があった。 「 おはよう、お姉ちゃん 」 あたしは、呑気なお姉ちゃんの姿を見てふわっと自然に笑みがこぼれた。 癒し系なんだな、きっと…。 あたしは1人で納得をすると、コップにジュースを入れて、 少しずつ飲みながら自分の席に着いた。 「 んぐっ…!んんんっ 」 お姉ちゃんは途端に苦し気な声を出した。 見ると、胸元をドンドンと叩いて目をぎゅっと瞑っている。 「 ああああっ!これ、これっ 」 あたしは自分が飲んでいたジュースをお姉ちゃんに グイッと近づけて背中を擦ってあげた。 「 ん~っ…、ふはぁ… 」 ゴクン、という大きな音と共に お姉ちゃんの顔は和らいだ。 どうやら、命に別状は無かったようだ。 あ…ちょっと大袈裟だったかなぁ? 「 もー、何か食べるんだったら飲み物も準備しておきなよねっ! 」 あたしは溜息をしながら、軽くお姉ちゃんを睨み付けた。 お姉ちゃんは申し訳なさそうな顔をして、両手を顔の前に当てた。 「 ごめんねっ、つい… 」 にこっと天使のような笑みを浮かべたお姉ちゃんは、 男子にモテそうな顔をしていた。 スポーツ万能だし…、後は勉強だけかな? あたしは、また食べ始めているお姉ちゃんを見ながら、 どうでもいいことを考えていた。 …っていうか、いつまで食べてるんですか? パンの袋を見ていると、6枚入りのパンが4枚無くなっていた。 あたしの視界に、白くて細い腕が入った。 パンッ 「 いっ…たぁ 」 あたしは、パンを取ろうとしたお姉ちゃんの手を叩いた。 お姉ちゃんは潤んだ瞳であたしを見ながら、叩かれた手を擦っていた。 「 食べすぎ!あたしの分、無くなっちゃうじゃん? 」 頬をぷくっと膨らませてあたしは言った。 「 だぁって…「 だってじゃない! 」 あれ…、これって親と子供みたいじゃない? これじゃあ、どっちが姉か妹か分からないよ…。 「 今日、部活なんでしょ? 食べすぎると体動かないよ? 」 「 でも、運動するとお腹空くじゃん! 」 パンを乗っけていたお皿などをキッチンに持って行きながら、ぶつぶつと愚痴を言うお姉ちゃん。 「 良いから、とっとと部活に行く! 」 2杯目のジュースを飲みながら、あたしは 今日の予定を見た。 「 結夏、今日一日中家にいんの? 」 お姉ちゃんは、部活専用の服を着ながら言った。 どうやら、ジャージのチャックの長さを気にしているようだ。 お姉ちゃんの言葉に、心臓がギクッとする。 何て、素直な心臓なんだろう…。 そうだよ、お姉ちゃんの言う通り… あたしは今日一日中、家に居るんだよね? 「 え、あ………ううんっ! と、友達の家に行くかもしれない! 」 「 ふーん、ま…楽しんでおいで 」 お姉ちゃんは最後に、にこっと微笑むと 家の扉をバタン、と閉めて出かけて行ってしまった。 行っちゃった……。 ……じゃなああい! 何、嘘ついちゃってるのあたしっ。 友達の家なんか行かないしっ。 家って言うか約束もしてないしっ。 なななな何で!? 何で、嘘ついてるの? 頭で駄目って思ってても、 体が言うことを利かないよ―… 205: 名前:乃愛☆04/10(土) 17 48 54 でぃあ*葉月 注意…感─☆* ;。(○`・∀´・)ゞ★* ;。─謝デス!! うん、頑張るね゜*(◎ 凵`圉)★ 結愛「 可愛くないよ~、でも有難うッ♥♥ 」 ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ お姉ちゃんが部活に向かってから数分後。 あたしは適当に朝ご飯を済ませ、 自分の部屋でゴロゴロしていた。 6 00に空公園… 6 00に空公園… あたしの頭の中には携帯越しの啓斗くんの声が何度も響く―… 行きたい……… 本当は行きたいの…。 でも、あたしは昨日……体も心も汚れちゃったから。 名前も知らない人で感じちゃったから。 だから……だから…… 真っ白な啓斗くんを、 道ずれにする訳にはいかないの…! 真っ黒になるのは…… あたしだけでいい。 痛い思いをするのは…… あたしだけでいい。 辛い思いをするのは…… あたしだけでいい。 あたしは呪文のように何度も繰り返した。 そして、以前啓斗くんが取ってくれた人形を ぎゅ…っと強く抱きしめた。 これが……啓斗くんだったらいいのにな。 そう思いながら、あたしはベットの上で丸くなった。 そして、瞳からは大粒の涙が流れ始めた―……。 207: 名前:乃愛☆04/11(日) 13 53 15 でぃあ*葉月 結夏「 あたしのこと.考えてくれて有難うっ。 でも…これ以上.啓斗くんに迷惑かけられないよぉ… 」 本当ですよねっ!、 傷つけた奴、ボコボコにしたいんですけどっ。← ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 数分、ベットで泣いたあたしは 上半身を起こして人形を見た。 話すだけにしよう―… 話したいことをあたしの台本通りに読もう。 啓斗くんの目を見ないで……。 ―そして……。 堅く決心したあたしは深い溜息をした。 そして、これ以上啓斗くんに関わらない。 あたしが汚い女って知られちゃう前に、別れを告げよう。 “ もう、一緒にはいられない ” ……って。 やだ……、この言葉を考えただけで涙が出るよ。 この涙の意味は何なんだろう………。 別れるから……? ―違う。 この涙は……… 〔 ピーンポーン… 〕 家に鳴り響く音で、あたしは我に返った。 あたしは、ゆっくりと立ち上がった。 「 はい…? 」 扉越しに弱々しい声で、尋ね人に問いかける。 「 あ・た・し 」 ふざけた様な甲高い女性の声。 この声ってもしかして…。 あたしは勢いよく扉を開けた。 「 やっほ! 」 目の前には片手を上げて、簡単に挨拶を済ませ、 あたしの悩みも吹き飛んでしまいそうな笑顔の持ち主が立っていた。 「 ゆ…優莉? 」 そう…、その笑顔の持ち主とはあたしの親友だった。 「 元気にしてた? 」 優莉のやわらかい笑みを見て、 自然に、涙が溢れてきた。 優莉はあたしが泣いているのを見て一瞬目を丸くして 驚いたが、すぐに温かい手であたしを包み込んでくれた。 そして、優しく背中をぽんぽん…と叩いてくれた。 「 俺だけのプリンセス 」 続き11