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160: 名前:乃愛☆02/19(金) 18 55 07 「 …たしは… 」 「 え? 」 下を向き、小さく呟いたあたしの顔を覗くように 盤常さんは聞き返してきた。 「 あたしはっ!えっちがしたいから啓斗くんと付き合ってるんじゃない!! 」 キッと力強く盤常さんを睨んだ。 盤常さんはぽか~んと口を開けて驚いている。 あたしは近くのテーブルにあった飲み物を手に取り、 ぐいっと一気に飲み干した。 「 はぁ、はぁ…… 」 分かる―… 今、あたし絶対顔真っ赤だ。 「 ふ、ふん。何よ、いきなり熱くなっちゃってさぁ 」 動揺を隠すように、いきなり強い態度になる盤常さん。 でも、眉毛がピクピクと動いているのが分かる。 「 何よ、何よ。もう、イライラするっ… 」 独り言のようにブツブツと何か言っている盤常さんを、 気づけば周りのお客さんや執事さん達は冷ややかな目で見ていた。 「 何見てんのよ!! 」 やっと周りに気づいた盤常さんはギロッと 周りにいた人を睨み付け、怒鳴った。 驚いた周りの人はすぐに目線を逸らし、 慌てて自分達の世界に入り込んでいった。 「 もういい…、とりあえず落ち着きたいから 空海か海斗、どっちか相手して 」 命令口調で空海と海斗を見て言った。 だが、2人は黙ったまま。 「 聞こえなかったの?相手をして、と言ってるの 」 それでも返事も何もしない2人。 まず、目線も合わそうとしていない。 「 執事ならお嬢様の言うことを聞きなさい! 」 ビリリッと電流が体中に流れるような大きくて 迫力のある、盤常さんの声。 いつも見ている学校でのギャルさとはまったく違う。 …というか、普段の学校での盤常さんを見た後に 今のお嬢様風盤常さんを見ると、別人って感じがすると思う。 盤常さんはやっぱり周りの人の目を引きつけてしまった。 また盤常さんは周りをギロッと睨み付けた。 「 はい…、畏まりました 」 ぼそっと笑顔のない海斗さんの返事。 「 分かったよ… 」 空海さんの幼い笑みもない。 何でそんなに盤常さんの接客が嫌なのかな? さっき、盤常さんの本性が分かってしまったから? でも…盤常さんがお店に入ってきたときから、 2人は少し困った顔をしていたような…? …ってことは今回だけのせいじゃないんだ。 どうして、そんなに嫌がるんだろう? 161: 名前:乃愛☆02/23(火) 19 03 02 「 では、結夏様…失礼します 」 「 じゃな 」 少し寂しげで元気のない言葉を貰ったあたしは 何故かその場から動けなくなってしまった。 …というか、動きたくなくなった。 「 ねえ… 」 あたしはある一点を見つめたまま雄輔くんに声をかけた。 「 ん? 」 雄輔くんは覗き込むようにあたしを見て首を傾げた。 「 あの2人…盤常さんの接客をさ… 」 「 うん? 」 途中で問いかけた言葉を止めたあたしに 優しく、続きを求めてくる雄輔くんの顔を見て あたしは続きを話した。 「 2人さ、盤常さんの接客嫌がってない? 」 「 …!? 」 目を丸くして驚く雄輔くん。 「 …んんっ。そんなこと無いんじゃない? 」 軽く咳払いをして、泳いだ目を隠すように あたしとはまるで目を合わせようとしていない。 「 結夏に……嘘、つかないで? 」 きゅるんと、子犬のような潤んだ目で 雄輔くんを見つめてみる。 「 結夏… 」 「 雄輔くん… 」 お互いに名前を呼び合う。 この勝負…… 「 分かった、全部話す!! 」 あたしの勝ち。 やっぱり結夏必殺「子犬の瞳」には誰も勝てない。 あたしは満面の笑みを浮かべると、 「何処か空き部屋無いの?」と首を傾げて問いかけた。 「 あるよ 」 雄輔くんはあたしの手をぎゅっと握り締めて、 空き部屋へと案内してくれた。 「 綺麗!ここ本当に空き部屋? 」 あたしは部屋中を見渡した。 そこにはベットも冷蔵庫もシャワールームもある。 「 ん 」 短く返事をする雄輔くんの顔は…何だか青い? 「 ゆ、雄輔くん? 」 あたしはソファに座りながら雄輔くんの顔をうかがった。 「 な…に? 」 よろっと倒れこむ雄輔くんが、 何故だかあたしにはスローモーションに見えた。 「 雄輔くんっ! 」 思わず大きな声を出してその場に立ち上がった。 雄輔くんの体は丁度あたしの体に吸い込まれるように来た。 ドサッ 「 きゃっ! 」 支えるつもりだか、あまりにも雄輔くんの体が大きくて 支えきれず、あたしもよろけて一緒に転んでしまった。 痛みは無く、ソファに座ってて良かったと思った。 っていうかこの体制…… や…やだ……。 この状態ってすごく…嫌……。 今の状態はあたしが雄輔くんに覆いかぶされている状態。 ちょっと………恥ずかしいかも……。 …ってそんなこと言ってる場合じゃない! 「 ゆ、雄輔くん?雄輔くん? 」 ぐたっとあたしの体に寄りかかっている雄輔くんの両肩を触り、ポンポンと何度か叩く。 反応は無し……。 あたしは優しく雄輔くんをソファに寝せて、 ベットにあった枕と毛布を取り雄輔くんの元に戻った。 「 ちょっと…頭、上げまぁす… 」 一応ぼそっと確認。 頭を両手で持ち上げて枕を置く。 髪……さらさらだぁ。 そして、上から毛布をふわっとかける。 …よし。一応OK。 雄輔くん、どうしたんだろう? あたしは自分のおでこと雄輔くんのおでこの熱さを比べるために両方にあたしの手を当てた。 あたしの方が温かい。 むしろ、雄輔くん冷たすぎるような? もしかして…貧血、とか? ど、ど、ど、どうしよう! 貧血の時って何すればいいのかなぁ? えっと、えっと…体を温めてあげるとか? うわぁぁん!こうゆうときってどうしたらいいの? 162: 名前:乃愛☆02/24(水) 18 40 08 「 ん…… 」 おろおろして部屋中を歩き回っていると ソファの方から雄輔くんの起きる声がした。 「 大丈夫!? 」 慌てて大きな声を出して駆け寄る。 「 ん…、気にしないで 」 まだ眠そう…というか、辛そうな雄輔くん。 あたしに心配かけないように無理に笑ってくれてるんだよね? 今にも泣きそうな目で雄輔くんを見つめると、 雄輔くんはにこっと無理に微笑みながらあたしの頭を優しく撫でた。 「 病気……なの? 」 首を小さく傾げて、あたしは雄輔くんに問い詰める。 雄輔くんは無表情…、違うんだ。 「 ごめ…言いたくないなら「 俺… 」 あたしの言葉を遮って何かを伝えようとする雄輔くん。 「 俺…小さい頃体が弱かったんだ 」 1人言のようにぶつぶつと呟く雄輔くん。 その言葉一つ一つに重みがある感じ。 「 すぐ風邪になるし、高熱なんてしょっちゅうだった。 やっと学校に行けても友達は誰もいない。 俺が休んでいる間に皆仲が良い人を見つけたから… 学校で1人の時、あんな小さかったのに、自分が消えてしまっても良い… そう思ったくらいだったんだ 」 あたしが話す隙が無いくらいのすごい早口。 気のせいだろうか、雄輔くんの目尻から光るものが見えるのは。 次の瞬間。 雄輔くんの目からは涙が溢れた。 「 でも…「 もういいッ! 」 いつしかあたしは雄輔くんの言葉を遮り 止めるように抱きついてしまった。 「 もう…いい…。 そんなこと…思い出さなくて…… 」 慰めるつもりがあたしが泣いてしまった。 だって…もういいじゃん。 そんな辛いこと何て思い出さなくて良い。 「 なーんで結夏が泣くんだよ 」 笑っているように話すけど、雄輔くん……。 抱きしめてるんだから、分かっちゃうよ? 声も…体も震えてるよ? 「 っ… 」 あたしは何も言えず、泣いたまま 雄輔くんに抱きついた。 駄目だね、あたし…。 こんな時に優しい言葉をかけてあげなくちゃ行けないんだよね? ごめん…、雄輔くん。 ここにいたのが大人のあたしじゃなくて…。 一緒になって泣いちゃうような奴でごめんね? 163: 名前:乃愛☆02/25(木) 18 11 23 啓斗Side ピピピッ…… 俺は心を落ち着かせて結夏に電話をした。 1コール…2コール…3コール…… 《 …っ、はい! 》 「 結夏? 」 慌てているような結夏の声。 《 けっ、啓斗くん? 》 やっぱり…慌てているというより、 焦っている様子。 「 何、どうしたの? 」 《 えっ…何が…《 結夏ぁ、水取ってー 》 ……!? 確かに、した。 男の声―…… 《 ちょ、ちょっと待っててー! ご、ごめんね。啓斗くんっ 》 そう言って結夏は携帯を切った。 な、なんだったんだ…今のは。 あの……男の声は誰…? 俺は携帯を握り締めた。 頭の中はあの声の主のことだけ……。 一体、結夏は何処にいて、誰といて、何をしているんだ? 軽くもやがかかったまま、俺は家に着いていた。 家に着いてからも頭にあるのはあの声だけ。 俺は結夏にもう一度電話をした。 ………出ない。 《 留守番電話サービスに接続します… 》 すぐに留守電になってしまう。 結夏……何ででないんだよ。 169: 名前:乃愛☆03/10(水) 17 39 07 皆様え*. やっと用事が終わりましたv これからバンバン更新していきたいと思いますbb* コメやアドバイス募集していますので☆ ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 結夏Side 啓斗くんとの会話も出来ないまま、 どんどんと具合が悪くなっていく雄輔くんの看病を あたしは今までに無い位必死にやった。 やがて雄輔くんが寝息を立てているのに気づいたあたしは、 雄輔くんが寝ている部屋から一番遠いと思われるトイレに向かい、啓斗くんに電話をした。 《 結夏!? 》 驚いたような大きな声。 「 うん、さっきはごめんね? その……途中で電話切っちゃって 」 《 ………うん 》 何故か少しの間が空いてからの返事。 何か…怒ってるのかな? 《 なぁ…、さっきの…… 》 「 ん? 」 ぼそぼそと何かを呟いている啓斗くん。 《 さっきの……男の声…誰? 》 さっきの…男? もしかして、雄輔くんのこと? 「 水取って…っていうやつ? 」 《 うん 》 不安気に問いかけた返事は即答だった。 「 それ…雄輔くんだよ 」 恐る恐る雄輔くんの名前を口に出す。 一回、雄輔くんとあたしがここで愛の無い行動をしていたのは、電話を通して知ってると思うから…。 もしかしたら…怒るかも。 《 何で? 》 予想外の声のトーン。 怒るような大きい声でもない。 まるで最初から知っていたかのような、 冷静で短い返事。 「 えっと…最初から話すと長いんだけど…… 」 あたしは今まであったことをすべて話した。 家にいたら雄輔くんが連絡をしてきて、呼び出されたこと。 雄輔くんのバイト先で盤常さんに会ったこと。 バイト先のあの部屋でいきなり雄輔くんが倒れたこと。 そして……雄輔くんの辛い過去のこと。 啓斗くんは何も言わず、ただ黙っていた。 《 何で……? 》 かすれて消えそうな弱々しい啓斗くんの声。 「 え…? 」 《 何で結夏は雄輔のバイト先に呼ばれて行くんだよ! 》 冷静な声から打って変わって怒鳴るような大きな声が放たれる。 そんな声に一瞬ビクッとしてしまうあたし。 そうだよ……、何であたしここに来たの? 暇だから来る…、そんなのおかしいじゃん。 一回、あたし達あんなことだって会ったのに… 隙がありすぎだよ、あたし…。 そう考えると、気づけばあたしの瞳からは大粒の涙。 「 ごめ…ヒック……ごめん…うっ… 」 《 何がごめんなの? 》 「 ごめん…っ……ごめんなさっ…ヒック… 」 啓斗くんの質問にも答えることが出来ない。 《 何がごめんなのかって聞いてるんだよ! 》 またもや啓斗くんの大きな怒鳴り声。 《 …何で、泣くんだよ 》 さっきまでは大きかった啓斗くんの声は、 また弱々しくなり、心なしか震えている気がする。 《 雄輔と一緒にいること? 》 「 啓斗くんを……裏切ったこと 」 2人の間に沈黙が加わる。 長い沈黙を破ったのは啓斗くんだった。 《 そうだよ……、俺裏切られたんだよな? 》 「 …ごめ…なさいっ… 」 《 なのに、何でだろう。 こんな最低な女なのに…俺…… まだ、結夏を愛してるなんて 》 「 っ…! 」 少しずつ止まりだした涙が一気に零れ落ちてくる。 何で……、何でこんなあたしを愛してくれるんですか? こんな、裏切り者をどうして………。 《 明日、午後6時…… 》 「 え…? 」 いきなり言われた日時。 今のあたしには呪文のようだよ…。 《 もし、俺が好きなら……… その時間に、空公園に来て 》 「 ……… 」 《 信じて待ってる 》 ピッと言う会話が閉ざされた音が聞こえて我に戻った。 そんな優しい言葉、あたしにかけないでよ…。 好きだよ…、大好きだよ…。 啓斗くんを愛してるよ………。 172: 名前:乃愛☆03/12(金) 19 22 20 でぃあ*真子 さっそく呼び捨てにしちゃいましたぁ(⋈¨●)♡← いいところで終わると、読者が増えるのですよ((腹黒/ でぃあ*理沙さま 頑張ります!! 続きは今から書きます。 またコメ+ ゚ *。(●´Д`人´Д`●)。* ゚ + ょろちく♪ ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 啓斗Side 携帯を切った俺の心には靄がかかっていた。 明日……結夏は待ち合わせの時間に来てくれるのか? 今の俺は、有り得ないほど弱々しい。 不安だけでいっぱいになりそうな俺の心と体。 結夏……、 不安な俺から自身で満ち溢れている俺に変えてくれ。 どうか、お願いだから……。 俺に結夏を信じさせて――…。 「 はぁぁ… 」 俺の口からは大きな溜息だけ。 ベットにぼすっと寝っ転がると、俺は腕で目を隠した。 ― 「 ん…… 」 目の前には歪んだ天井。 俺…あのまま、寝て……? 少し冷えている体をむくりと起こすと、 俺は目を何度か擦り、部屋から出た。 たまたま目に入った携帯。 手に取り、開くと…… メールも電話もない。 少し、がっかりする気持ちが現れる。 期待した俺はやっぱり可笑しい。 どうして、まだ結夏を信じることが出来るんだ? 自分が自分じゃないみたいだ……。 よく“自分のことは自分が一番分かってる”って言うけど、 俺はその逆だな。 “自分のことは自分が一番分からない” また深い溜息をした俺は、改めて部屋を出て 階段を降りて誰も居ないと思われるリビングに向かった。 リビングにある大きな黒いソファに座った俺は、 さっき寝たにもかかわらず、また横になってしまった。 こんなとき……したいことが何も見つからない。 こうゆうときに限って、何も手につかないんだな。 結夏……愛してる。 174: 名前:乃愛☆03/12(金) 21 31 19 でぃあ*しゃー(・∀・)さま お、面白くないですょΣ!?!? 出来たら切ない系にしてきますww でも、myが書くと…なんでかカラダ系より切ない系へGO!してしまうのです…笑 ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ▷▫◁ஜஂ▶▪◀ஜஂ 結夏Side 「 雄輔くん、体調どう? 」 まだ泣き足りない気持ちを抑えて、 あたしは雄輔くんがいる部屋に戻った。 ソファに近づくと、すぅすぅ…と雄輔くんの寝息が聞こえた。 寝てる…のかな? 電話来たときも寝てたけど、結構ぐっすり眠れてるんだ。 雄輔くんの寝顔を見て、ふっと顔が緩んだ。 可愛い…子供みたい。 …はっ! こうゆう態度が悪いんだよね? こう…誰に対しても甘いのはいけないんだよ…。 「 ん…… 」 ごそごそと雄輔くんが動き出した。 や、やばっ…!五月蝿かったかな? あたしは慌てて口を両手で押さえた。 やがて、雄輔くんの動きはピタリと止まった。 間一髪……、何か雄輔くんて寝起き悪そうなイメージだし。 あ…ごめん、失言。許して雄輔くん。 「 …!? 」 油断していたあたしの腕をグイッと引っ張られた。 引っ張られている方を見ると、明らかにやっているのは雄輔くん。 あれ…?でも、目は瞑ってる。寝てるの…? 「 ゆ、雄輔くん…? 」 腕をぎゅっと掴まれたまま、あたしは寝ている雄輔くんの上に乗ってしまった。 「 お、重いから…ね。離して… 」 雄輔くんから離れようと、掴まれている腕を動かすが… 寝ているはずの雄輔くんの腕は全く動かない。 「 雄輔く…きゃっ! 」 振り払おうと決意したそのとき、あたしの腕を掴んでいた手と反対の手があたしの腰まわりを押さえた。 やっ……これは、まじでやばいっ! 175: 名前:乃愛☆03/13(土) 15 37 51 「 んん……って結夏!? 」 やっと目を覚ました雄輔くんは顔を赤くし、驚いている。 こんなんじゃ勘違いされるに違いないっ。 「 あ、おはよー 」 あくまでも冷静に返事をする。 思い切り否定すると、逆に…って感じだし。 「 あの…さ 」 雄輔くんが頭をぽりぽりとかいて何かを言おうとする。 「 はいっ? 」 あたしは首を傾げると、目を丸くした。 「 お…降りてくれる? 」 「 え 」 あたしの動きがピタッと止まる。 降りる…って、ええええええええッ!? 「 ご、ご、ご、ご、ごめんッ! 」 あたしは慌てて降りようとして、バタバタと体を動かす。 2人が横になるのには、狭いソファにも関わらず動いたあたしは馬鹿だった。 案の定、あたしはバランスを崩しソファから落ちそうになる。 「 危なっ…! 」 ガタガタッ 落ちそうになるあたしの腕をグイッと引っ張り、 少しでも振動を抑えようとしてくれた雄輔くんも、 バランスを崩し、2人ともソファから落ちてしまった。 「 いったぁ… 」 「 …ってえ 」 2人ともぶつかったところを手でさすっている。 そして、不意に目が合うと…… 2人の距離は縮まってく。 や…やだ、何で心臓の動きが早くなるの? し、静め!心臓よ、雄輔くんに聴かれたら―…! 「 大丈夫か? 」 「 いたっ! 」 雄輔くんはけらけらと笑ってあたしのおでこをデコピンした。 何だ、デコピンかぁ……。 む? 何だって何、何だって! 何で残念がってるわけ? 期待……してたとか? でも、相手は雄輔くんだよ? あたしには最高の彼氏もいるのに…。 「 俺だけのプリンセス 」 続き10
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220: 名前:+椎名+☆2011/08/01(月) 18 50 15 山田side 俺は解放されると佐野を銃で殺した。 ざまあみろ。 この俺を・・けなしよって。 俺は警察トップ。 お前は所詮人民。 今までこきつかってくれたお礼だ。 ははは!すがすがしいな。 佐野は動かない。 本当に死んだんだな。この殺人鬼は。 「まあいい」 俺はしばらく休暇をとっているからどうなっているかな。 そろそろ戻るか。 その時、インターホンが鳴る。 しかたねぇ、殺したことばれたくないしでるか。 「はい」 「警察です」 !? 警察? 何で・・・ あ、こいつの人殺したのがばれたんだな。 「あぁ、お前たち」 「15時57分、山田哲自逮捕」 は? 「おい、お前ら何してる」 「あなたには学校の毒殺容疑と佐野蘭さんの殺害容疑がかかっています。 電話を通して全て聞きました」 なに? あいつ、はめやがったのか・・・ くそ!許さん。 絶対に・・! 俺はその日から生き地獄を見ることになった。 222: 名前:+椎名+☆2011/08/01(月) 19 00 22 現在にもどります。 嫌な思い出ね。 もう手っ取り早く殺してあげよっと。 こんなこと思い出させた雪奈ちゃんが悪いのよ。 そう、今は管理人サンに恩返しするために相手を殺す。 ちゃんとりっぱな理由がある。 そして・・・管理人さんが言ってたアレを・・・ アレをもらうのよ。 そうすれば龍は生き返る・・! 何か得を得るためには何か犠牲が必要なのよ。 ごめんね、雪奈ちゃん。 あなたと・・・・いや、なんでもないわ。 今は・・・あなたと暁君を赤星リリスとして殺すわ。 224: 名前:+椎名+☆2011/08/01(月) 19 19 21 注意、ここからちょい恋愛入ります(注意なのか・・?) 雪奈side 「・・・」 「・・・」 まだ沈黙が続いている。 だめだ・・・やっぱりこの気持ち、私好きなんだ・・・ でも暁君みたいにかっこよくて頭のいい絵にかいたような子と 私みたいな平方根もできない奴がつりあわないよね。 でもやっぱ好きだ・・・ 暁君のこと。 二人でいるとどきどきして、胸が締め付けられる。 それに教室で二人っきりって・・・ 私別の意味で死ぬかも。 「・・・暁君。本当にだいじょうぶ?」 「え?」 うわわぁ・・何いってんの私!さっきも言ったじゃん! 「あぁ、サンキューな。葉山って・・その、優しいな」 やさっ・・!? 優しくなんて・・・ 「ごめんね、私のせいで怪我したのに」 私が怪我をさせたも同然だよ・・・ 本当に最低だよね。 「何いってんの?」 え? 「お前のせいじゃない、俺が勝手に突っ込んで怪我したんだ。 だからそんな風に自分を責めるなよ・・・ それに言ったろ? 何かあったら呼べって・・・」 ! 「一人で抱え込むなよ。 それとも俺じゃたよりないか?」 たよりない・・? そんなことない! 真っ先に駆けつけて来てくれたもん・・! むしろ心強いよ・・ 「そんなことない!助けてくれたもん・・だから・・・」 「そうか、よかった」 私の言葉を遮る。 そして私の頭を撫でる。 「お前は一人じゃねぇ。 少なくとも俺がそばにいるからな」 232: 名前:+椎名+☆2011/08/05(金) 17 21 57 ! な、ななな、なんでそんなことこの場で言えるの? でも嬉しい。 そばにいてくれる・・・ 一人じゃない。 私の片思いでもいい。 私は自分に素直になる。 だから・・私は暁君が好き。 でも・・・ 「暁君、どうして私を助けてくれるの?」 「えっ・・おまっ、そんなこと聞くか?」 暁君は目をそらす。 そして小声でつぶやく。 「・・・葉山が好きだからだよ・・」 ! 戦場に芽生えた恋は今、大いなる実りをつけた・・・ 236: 名前:+椎名+☆2011/08/12(金) 16 39 30 これって・・・リョウオモイってやつだよね・・・ 嘘・・・まさか暁君が・・・ 「・・・もういい!はっきり言う。 俺は葉山のことが好きだ!」 告白・・・された? えっ?ど、な、その・・・ 「つ、付き合ってください」 !!! 本格的に告白された!? は、早く返事しなきゃ! 「わ、私も・・・!?」 言いかけると暁君に手で口をふさがれる。 「返事は帰ったら聞く。だから・・・ 俺の告白、預かっといてくれないか?」 だめ・・・もうきゅんってしちゃう。 こんなにどきどきしたの初めて・・・ 「は、はぃ・・」 返事。 もちろんYESだ。 私も暁君が好き。 この想いはずっとかわらないと思う。 「はぁい、ラブラブなとこ邪魔してごめんねぇ?」 !!! リリスちゃんがナイフをギラギラ光らせて教室の中に入ってくる。 「べつにいいぜ?もう告白したし」 「!」 「あらそう、返事は?」 「それは帰ったら聞く」 「へぇ、ロマンチック。 でも私が帰してあげないわ」 237: 名前:+椎名+☆2011/08/12(金) 16 47 03 リリスちゃんは笑いかけて言う。 「雪奈ちゃん、1つ言うわ。 他人は他人よ」 それだけ言うと私達のほうに走ってくる。 「葉山!走れ!」 「うん!」 私達は立ち上がり、別々の方向に走る。 「ちっ、ちょろちょろと」 リリスちゃんは暁君に狙いを定め、襲い掛かった。 暁君はその場にあった机をリリスちゃんの方にガン!と飛ばす。 リリスちゃんの足に当たり、立ち止まる。 「・・・・った・・・ふふ、そうこなくっちゃね」 ますます笑みが増えた。 どうしよう・・・ 今度は私がなんとかしないと・・! 暁君は怪我もしてるし、そんなに体力は持たない。 私はポケットをあさると、小型ナイフを見つけた。 これで・・リリスちゃんを刺すの・・・? 240: 名前:+椎名+☆2011/08/13(土) 12 50 23 このナイフでリリスちゃんを殺せば・・・ 暁君は助かる。 でも・・・リリスちゃんは・・・ 「・・・・」 「葉山!?立ち止まるな!」 「見ててね?雪奈ちゃん、 だーいすきな人が目の前で死ぬ姿を」 そうだ。 考えている間も この地球はまわってる。 時間は流れ続けている。 こうして考えている間にもリリスちゃんは暁君を殺しにかかってる。 早く決めないと・・・ そうはわかっていてもなかなか自分の意思で決められない。 暁君は私の好きな人。 そしてリリスちゃんは大切な1人友達だと思ってる。 友を殺して暁君を助けるか・・・ 友を見逃し、暁君が死ぬのを黙ってみているか・・・ 私は・・・・ どちらもすることができない。 たとえ無くても・・・ 私は2人が助かる方法を考えたい。 誰も・・・どちらも死なない方法を。 7日間の醜いゲーム。 続き15
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41: 名前:乃愛☆11/22(月) 18 32 45 結夏Side 口の中に出された大量の精子。 お世辞でも美味しいとは言えない…。 結夏は、舌をちろりと出して 可愛らしく微笑む。 「 んー…いっぱい出たねっ 」 「 あ~…可愛すぎっ! 」 啓斗は、結夏を押し倒すと 馬乗りになり、上から被さった。 「 結夏にも気持ち良いことしてやるよ… 」 そう言って、啓斗は結夏の閉じていた足を 無理やり開かせた。 「 びちゃびちゃじゃん… 」 「 やあっ…! 」 啓斗は、結夏の足をM字にさせると 溢れ出している蜜を中指ですくった。 「 ほら、見ろよ 」 啓斗はそう言って、結夏の目線を捕らえると 目の前で、中指に付いた蜜を舐める。 「 っ……! 」 恥ずかしがる結夏の顔を確認した啓斗は、 ぷっくりと膨らんだ陰核にそっと触れた。 「 はぁんっ! 」 少し触っただけなのに、結夏は腰を浮かせて 甘い声を出す。 啓斗は、その反応を見て面白く思ったのか 突然、陰核を触る手を早めた。 シュシュシュ… 人差し指と中指で、陰核を擦らせる。 「 やあぁんっ…あぁんっ! 」 「 舐めちゃおうか… 」 啓斗はそう言うと、結夏の股に顔をしずめる。 陰核だけを刺激するかのように、舌先を使ってちろちろ…と舐める。 「 あっ、んはぁ!! 啓っ…んっ! 」 今度は、全体を舐めるように下から陰核まで ぺろー…と蜜をすくい上げるように舐める。 「 んん…あぁん…! 」 身体をよじらせた結夏は、 舌が陰核に触れた瞬間に声を大きくする。 続いて、啓斗は結夏の陰核だけを吸い上げる。 「 ひうぅんっ! 」 結夏は、腰を浮かせて止めようとするが 啓斗は吸うことを止めようとしない。 最後に啓斗は、水音が結夏に聞こえるように わざとらしく音を立てて吸ったり舐めたりする。 「 チュパ……ジュル…ジュルルル… 」 「 ん…あぁ…はあぁん…! 」 啓斗の涎と結夏の蜜でどろどろとなった、 結夏のアソコは男の理性を露にさせる。 42: 名前:りの☆11/22(月) 23 26 38 HOST ser355289013280607_docomo.ne.jp 『鬼ごっこ』って言う小説を書いている"りの"です^^ まだまだ素人ですが、良かったら見てみてください! "俺だけのプリンセスⅠ"も見ました! すごく面白いしドキドキしちゃいます(笑) 更新楽しみに待ってます^^ 頑張ってください! りのでいいですよ☆ 46: 名前:乃愛☆11/29(月) 19 16 39 結夏Side 啓斗の行為がいつもより激しい―… そう思うだけで、結夏のアソコは熱くなり 中からは蜜が溢れ出してくる。 「 …気持ち良かった? 」 唇に少し付いていた結夏の蜜を、 啓斗は誘うように舌で舐めた。 「 っ…! 」 忽ち結夏のアソコはじん…と熱くなり 土の色がどんどん変わっていく。 啓斗は結夏のそんな些細なことにも 反応し、悪魔のような笑みを浮かべた。 閉じていた結夏の足を無理やり開かせると、 大きくなった自分のものを、結夏の入り口に当てる。 大きく目を見開いた結夏の陰核を、 自分のものの先で弄る。 「 んっ…! はぁん… 」 「 最初はこんな所に人は来ないと思ったけど、 時間的にそろそろ来る人もいるかな…? 結夏のエロい声に誘われて…皆寄ってくるかも… 」 わざとらしく焦らしながら、 結夏の反応を確かめる啓斗。 「 やぁんっ…、啓…恥ずかしっ…! 」 啓斗は、結夏の言葉を耳に入れると ゆっくりと根元まで挿入した。 「 はぁぁん…! 」 「 俺のものを根元までしっかりと咥えた結夏のアソコを、 通りかかった人に見られたり…。 混ざり合った液がグチョグチョになってるのを、 分かられちゃったら、結夏はどうする…? 」 啓斗は、ゆっくりと腰を動かしながら 結夏の耳元で、言葉攻めをしていく。 「 あっ…んぅ……、あぁっ…! 」 言葉が耳に入っているのか、結夏の中は 啓斗のものが抜けないほどにきゅうっ…と締まった。 「 エロい結夏を見たいな…? 」 そう言うと、啓斗は一度結夏の中から 自分のものを抜いた。 54: 名前:乃愛☆12/18(土) 19 24 23 結夏Side えっと…啓斗の言っている意味が理解出来ない…。 十分、今のままでエロいと思うんだけどなぁ。 「 どうすればいいの…? 」 戸惑い気味にそう問いかける私を待っていたかのように、 啓斗はにっこりと悪魔のように微笑んだ。 「 んー…じゃあ、自分でシてよ 」 天使のような微笑みも、その言葉によってかき消される。 私の思考は一気に停止した。 「 …へ? 」 「 ほら、早く 」 啓斗は目の前で、横になると 準備満タンという顔で私を見ている。 「 う゛…… 」 これはもう、否定出来ない感じですよね? 私は溜息をつくと、啓斗の上に乗った。 大きくなっている啓斗のものを触り、 自分の穴へと近づける。 「 ん……はぁ…っ! 」 先だけが入り、思わず確認したくなり下を向く。 それを阻止するかのように、啓斗は上半身だけを 起こすと、私の頬に触れた。 「 顔…良く見せて? 何の為に、この体勢にしたと思ってんの? 」 啓斗はそう言うと、先だけ入った自分のものを 腰を浮かせてグッと入らせた。 「 あぁんっ!! 」 体を後ろに反らして胸を張る私。 嫌でも奥に入ってくる…。 「 自分で動かしてよ 」 啓斗は、私の乳首を指先で転がしながら 満面の笑みを浮かべてそう言った。 「 んっ…んっ…あぁ…っ! 」 ゆっくりと腰を動かす。 段々と息が上がり、周りが見えなくなる。 乃愛:12/27(月) 14 45 59 「 やぁっ…! あっ…駄目ぇ…!! 」 「 駄目じゃないだろ? 本当は気持ち良いくせに… 」 少し埃っぽい、資料室にいやらしい水音と、 可愛らしい喘ぎ声が響き渡る―… 「 んうっ…、はぁっ…!! 」 真っ白な肌が、どんどん赤く染まっていく。 荒い息と、潤んだ瞳が男の理性を崩していく―… 「 啓斗っ…激しいっ、あ…あぁん!! 」 自分の肩辺りを掴む彼女の手。 爪が、肌に食い込むと同時に彼女の声は大きくなった。 「 激しいくらいが好きだろ? 」 そう、耳元で囁けば彼女の声は 一層大きく高くなる。 「 あ、あぁっ!! 駄目、駄目ぇっ…! イッちゃ…イッちゃうよぉっ…!! 」 彼女の中が、急にぎゅっ…と引き締まる。 「 あっ、あっ…あぁあああっ!! 」 彼女の身体は見事に弓のように反り、 大きく震わせて絶頂に達した。 乃愛:12/31(金) 10 03 04 啓斗Side 「 なあ、結夏 」 「 ん? 」 服を着ている結夏に向かって、 俺は欠伸をしながら声をかけた。 「 お前、最近声デカいよな? 」 「 ふえっ!? 」 俺の言葉を耳に入れた結夏は、 顔を林檎のように真っ赤に染めた。 「 ほら、今もデカい 」 「 あ…、そっち……? 日常的に声が大きくなってる、ってこと? 」 一人で騒がしくなったかと思えば、 自分で勝手に解釈している結夏。 「 …え、何々ー? そっちってどっちー? 」 俺は、にぃ…と厭らしく笑いを浮かべながら、 服を着終えた結夏に後ろから抱きついた。 「 きゃっ…!! な、何でもないっ…! 」 「 何でも無くねぇだろー? 言わないと、もう一回犯すぞ 」 結夏の耳元で、息を吹きかけながら ゆっくりと…低く、甘く囁く俺。 「 ……っ! 」 それでも何も話そうとしない結夏。 「 もしかして、もう一回犯して欲しいわけ? 」 「 なっ…違…っ!! 」 前を向いていた結夏の顔は、 俺の言葉によって、後ろに向けられた。 否定をしようとする結夏の口を、 自分の口で塞ぐ俺。 「 んっ……! 」 「 …口、開けて? 」 小さく首を傾げながらそう言えば、 結夏は恥ずかしそうに、ほんの少しだけ口を開いた。 「 いただき… 」 「 んっ、……ちゅ…んぁ…… 」 厭らしく絡まる俺の舌と結夏の舌。 そして、2人の唾液が混ざった銀色の糸。 「 んん…ふぁ……、ちゅ……はぁ…っ 」 「 …ちゅ……、結夏…… 」 やっと離れた2人の間には、光が当たって輝く糸。 これは、愛し合った小さな証拠の1つ。 「 …何も答えないから、お仕置き 」 「 っ…! 」 俺の言葉に耳まで赤く染める結夏。 「 …あれ?もしかして、お仕置きなのに、 喜んじゃったりしてた…? 」 「 喜んで無いよ…っ! 」 結夏は、顔を前に戻すと俺から強引に離れた。 …ったく、素直じゃねぇんだから。 乃愛:01/09(日) 18 48 48 結夏Side 学校なのに、あたしと啓斗は資料室や図書室、屋上などで 毎日と言っても良いほど、えっちなことをしている。 駄目…そう思っても、啓斗の色っぽい顔や 眉間に皺を寄せて少し苦しそうな顔を見てしまうと、 つい抵抗することが出来なくなってしまう。 「 昼飯、一緒に食おうな? 」 資料室の扉をゆっくりと開いて、廊下に人がいるかを 確認する啓斗の後ろに立つあたし。 「 うんっ…、何処で食べるの? 」 廊下に出た啓斗に続き、あたしも教室から出ると 啓斗の隣に並び、小首を傾げた。 「 んー…、その時の気分…だな 」 口の端だけをクイッと上げて笑う啓斗の顔に、 思わずきゅん…としてしまうあたし。 「 今日ね、啓斗の分までお弁当作っちゃったの。 ……食べて、もらえる…かなぁ? 」 あたしはお昼はいつも自分で作ったお弁当だけど、 啓斗はいつもパンとかお握りとか…買ったものばっかり。 今までずっと気になってて…とうとう、作っちゃったんだよね。 「 まじでっ?! うわ、めっちゃ嬉しい! 」 子供のように目尻に皺を寄せて笑う啓斗。 本当に喜んでいる姿を見ると、作った甲斐があるなぁ…って思う。 教室に戻ると、授業はちょうど終わっていて 先生には怒られずには済んだ。 乃愛:01/09(日) 18 56 41 ―お昼。 あたしと啓斗は、4階まで階段をのぼり 誰もいない屋上でお昼ご飯を食べることにした。 「 はい、これ……どうぞっ 」 「 お、さんきゅ 」 あたしが差し出したお弁当を、啓斗は手に取ると 嬉しそうな顔をして、お弁当を開けた。 「 おお~っ! 」 お弁当の蓋を持ったまま、目をキラキラと輝かせる啓斗。 「 んじゃ、いただきまーす 」 用意したお箸を手にした啓斗は、お弁当の中にある "玉子焼き"に手を伸ばした。 啓斗の口の中に入った黄色い"玉子焼き"。 これは、結構自信作なんだけどなぁ……。 玉子焼きって、甘い派としょっぱい派に分かれるけど… あたしの玉子焼きは甘い派。 自分がお菓子みたいな甘いものが大好きだから、っていうのもあるけど、 他のおかずがしょっぱいから…っていうのが一番かな? 「 …、ど…どうでしょうか? 」 黙って玉子焼きを口に含んでいる啓斗に あたしは思わず声をかけた。 「 ……まい 」 「 え? 」 「 めっちゃ美味い! 俺、玉子焼き甘い派なんだよ! 」 喜んで、残りの玉子焼きを口に放り込んでいく啓斗。 自分の手作りのものを喜んで食べてくれる彼氏がいるって、 幸せ……うん、幸せだなぁ…。 乃愛:01/12(水) 18 39 01 ご飯を食べ終えて、授業は午後に突入した。 お昼が終わってすぐの授業って、お腹がいっぱいになって、 眠くなるから、あたしは苦手なんだよなぁ…。 + そんな午後の授業は高校3年生となったあたし達にとって、 とっても重要なことだった。 『 進路 』―…… 「 えー、3年になったお前達には そろそろ進路について考えて欲しいと思う。 」 教卓の前に立つ先生は、手に紙とチョークを持っている。 うう…、進路とか面倒くさいなぁ…。 「 今から、進路調査表を配るぞー。 大学に行きたいんだったら、大学って書け。 就職したいんだったら、就職って書け。 」 何て分かりきったことを簡潔にまとめて 言っているんでしょう、うちの先生は……。 配られた紙には第3希望まで書けるようになっている。 あたしは、筆箱からシャーペンを取り出し考える。 就職かぁ…、最近は大学出てからじゃないと 良い仕事も無いんだよね…。 やっぱり、大学進学かなぁ……。 「 啓斗はどうするの? 」 「 んー、あー…俺? 」 眠そうな顔をしている啓斗に、そっと声をかける。 「 まあ、普通に大学進学じゃね? 」 「 ふぅん…、やっぱそうだよねぇ… 」 「 あ、俺の嫁になる? 」 「 はぁっ?! 」 啓斗の突然の言葉に、顔を真っ赤に染めるあたし。 お、お嫁さんって……それじゃあ、あたしの就職先は 啓斗のお家ですかぁーっ?! 「 家事全般は勿論のこと、夜には性欲を満たしてもらわないとなぁ…? 」 「 …っ! 」 ぼぼぼっ、と更に顔が赤くなるのが分かる。 よ、夜と言いますと…やっぱりえっちなこと? 朝も昼も夜も啓斗と一緒だったら、 あたしの身体はもたないよぉーっ!! 乃愛:01/12(水) 18 43 12 「 まあ、すぐには決まらないと思うがな。 一度、家に帰ってゆっくり考えて、 家の人とも話し合って決めてくれ。 」 結局決まらなかったあたし……。 うう…、どうしよ…。 「 なあ、結夏。 」 「 んー? 」 授業が終わり、リップを塗っているあたしに声を かけながら、欠伸をする啓斗。 「 放課後、俺ン家来ねぇ? 」 「 啓斗の家? 」 "何しに?"と付け足すあたしを見て、 不敵な笑みを浮かべた啓斗。 うっ…嫌な予感…! 「 そりゃ勿論、激しいSEX。 」 「 っ…! 」 堂々とした顔つきで、そう言った啓斗。 「 え、えっとぉ… 」 「 来たくねぇの? 」 うっ…、そんな子犬みたいな可愛い目で あたしを見ないでよーっ…! 「 行く… 」 断りきれないじゃん…! 乃愛:01/12(水) 18 51 09 ―放課後。 「 さ、シようぜ。 」 気づけばあたしは、啓斗の部屋にあるベットに座っている。 あれ……、ほぼ強引に連れて来られた気がするなぁ。 色々なことを、ぼーっとしながら考えていると いきなり押し倒されて、バンザイ状態のあたし。 あたしの上には、馬乗りになった啓斗。 ええっ…もう、スタート?! 焦ったあたしの両手首は、何故か何かによって きつく縛られていた。 「 えっ…、これ何っ?! 」 上で結ばれた両手首を上目で見るあたしを見た 啓斗は、満足そうな顔をするとポケットから目隠しを取り出した。 「 えっ…やっ…啓斗?! 」 あたしは、啓斗の持っていた目隠しによって 視界を塞がれてしまった。 ど、どうしよう…。 突然、首筋に啓斗の舌が当たった。 その舌は、首筋をつー…と伝うと、あたしの耳を舐めたり、甘噛みをした。 「 っ…あ… 」 何も見えないから、何時どんな風に 何処を触れるか分からないため、不安でしょうがない。 「 今日は、結夏をたっぷり愛してやるよ… 」 耳元で囁いた啓斗の少し掠れた低くて甘い声。 「 俺だけのプリンセス 」 Ⅱ 続き2
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2: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 21 48 「加藤先輩…」 可愛い天使が頬を染める。 「付き合ってください。」 可愛い天使が手を差し伸べる。 なんて可愛い天使なのだろう。 目の前の少女は僕を見つめている。 僕は君を幸せに出来るだろうか――― 5: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 24 06 「穂水…。」 僕は右手を頭の後ろへ。 「僕なんかでいいの?」 自分でも赤くなっているのが分かるくらい頬が熱い。 天使―穂水は小刻みに震えている。 「せ、せ、先輩じゃないとだめなんです…。」 そういうと穂水は口を噤んでしまった。 少しの沈黙の後。 「ぼ、僕でよければ…ってか、付き合ってください。」 何を言ってんだ僕は。 緊張の糸が解れて穂水も僕も笑みが零れた。 「先輩。」 天使が笑っている。 「ん?」 天使が見つめてる。 「大好きです。」 天使が目を瞑る。 「僕もだよ。」 僕は天使の綿の様に柔らかい手を取り、 それ以上に繊細な天使の唇へ自分の唇を優しく触れさせた。 その日は手を繋いで水穂を家まで送って ニヤニヤしながら自宅へ帰った。 ぼ、ぼ、僕に彼女が出来た!!!! 6: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 25 07 家に帰り自分の部屋へ直行。 随時電源ONのパソコンの椅子へ。 そしてインターネットマークをクリックして、 お気に入りを開く。 「アニメ弱愛者専用チャット」 をクリックして少し待つ。 パステルピンクのトップページが開いて 鼻を鳴らしながらIDとパスを打つ。 そして観覧者数を確認してから、 「魔法少女パルリンチャット」 をクリックして 横にあるパルリンの大きな人形を膝に乗せる。 この人形は人間と同じくらいの大きさで、 胸に柔らかいボールのようなものを入れていたり、 性器の毛やクリちゃん、膣口なども細かいところまで 修飾が施されていて、 オナニーなどに使えたりする優れものなのだ! その人形の胸を揉み解しながら、 「誰か居ませんか?」 と打つ。 するとすぐに返事が返ってきた。 「私でよければ☆」 僕は女性だということへの興奮を抑えながら 落ち着いて返事を返した。 「全然OKっす。年齢は?」 それからその女性とのチャット会話が始まった。 7: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 25 47 「16です♪」 おお!っとか思いながら自分の年齢を打つ。 「僕は17!!!一つしただなw」 「はぃ。そーですねぇ。」 なかなか可愛い反応だな。 僕的には好きだな。 「魔パルの誰が好き?」 魔パルとは「魔法少女パルリン」の略である。 魔法少女パルリンとは深夜アニメの一つで マイナーなアニメ好き(ヲタクとかいうやつかな?) のなかで絶大な人気を集めている神アニメなのだ! そのファンが集まるのがこのチャット。 みんな「うはうは」言いながら打ってるらしい(笑) まぁ僕もその一人なのだが。 でも、女性の魔パルファンは珍しい。 パルリン友達―パル友はこのチャットの中で587人居るが、 女性はたった2人だけ。 もしこの子と友達になれたら3人になる。 友達になれたらいいな。 って考えているうちに 「ミミリンですかね?」 「パル王さん?」←パル王とは僕のHN! 「トイレですかぁ?」 「おーい」 「落ちた?」 というスレが10件ほど打たれていた。 「あ、ごめんごめん(汗)」 と打つと 「あはは、オナってた?」 と冗談混じりに返ってきた。 だから 「うん。ごめん。」 と打つと 「いやーん。いやらしーww」 と。 まだまだこんな会話が続きそうだ。 10: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 27 55 「イった?」 「いや、まだw」 ここでは魔パル話よりエロ話が繰り広げられることが多い。 まあ、魔パルを見てる時点で相当なエロだからな。 「パル王さん、本名教えてくれませんか?」 チャットエッチを始めるためか、 本名を聞いてきた。 が、僕は外の世界(現実)では 『容姿端麗、成績優秀、それプラ穏やか』 という完璧な衣を纏っているので パパパパッパパァン! 偽名~。 大抵の人はこのチャットの中では 本名といわれれば嘘を附き、 偽名を名乗るのだ。 「章太。」 草太の草冠を変えて、 「章」にして、 章太。 こんな感じで名乗っておいた。 「そっちは?」 鳳香というHNの女性に尋ねると驚く返信が。 「風香!」 穂水?穂水風香か!? 僕の脳裏にはそれしか掠らなかった。 「へぇ。可愛い名前だなぁ。」 敢えてこう返す。 「ありがとうございます((はぁと」 でも、あの風香ちゃんがこんな所にくる筈がない! ……でも。 この僕も外の自分とは違うこの顔。 有り得るかも知れない。 明日。 行ってみよう。 穂水の家に。 その日は『友達認証』を送りあって、 画面を閉じた。 11: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 28 36 「ふわぁ。」 ベッドの下にはパルリンの人形が。 時計、時計、時計………。 ―――8時59分 ……今日は、土曜日で合ってるよな。 記憶が確かでない。 僕は……。 携帯を開くと新着が一件。 名前は「風香ちゃん」。 ああ。 僕は彼女が出来たんだっけ? 自覚が………。 もしかしてデェトだったんじゃなかったっけ。 とりあえずめーるを開く。 ---------- おはようございます! えっと、今日って 10時からで 合ってますよね? すごく楽しみですね♪ じゃ、あとで。。。 ---------- じゃ、じゅうじ? や、やばい。 いそげっっっ! とりあえず、 そこらへんにある服をチョイスして 財布の中を確認してから 家を出た。 12: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 29 12 「ふぅ。」 待ち合わせ場所には穂水はまだ来ていなかった。 上がっている呼吸を整え、 少し紳士的に振舞おうかと悩む。 でも、彼女ならそうやって固めなくてもな。 とか考えていると、 ふわふわした見るままの天使が現れた。 「すいません。まちましたぁ?」 薄い桃色のワンピースを装った穂水が掛けてきた。 本当にふわふわという表現があっている。 もうまさに天使に見えてきた。 「だいじょーぶ。ほんとにいまきたとこ。」 生憎これが本当なのだ。 「じゃ、いこーか。」 13: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 29 43 「せ、先輩…すっごいお洒落ですねぇ。」 赤面しながら言う穂水は緊張を丸出しだ。 「そうかなぁ?」 僕の格好は。 ストライプの半袖のワイシャツに 銀ピンを着けていて、 下は深い青のジーパンを履いており、 脹脛の所で折っている。 サンダルは茶色い皮のビーサン。 イメージ的にはラフな感じを求めたのだが、 どちらかというと清楚系になってしまった。 しかし、そう言う穂水も穂水である。 ワンピースを一着纏っているだけだが、 それが似合っていてすごく可愛い。 ポシェットはアイボリーに近い毛糸で 修飾が施されていて、 雰囲気にはピッタリだ。 靴は茶色の柔らかいパンプスを履いていて これもまたグーだ。 髪もふわふわしていて これといった欠点はない。 本当に天使みたいだなぁ こんな子が 魔法少女パルリンを プレイしているのか……!? 14: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 30 22 「あ、ここ。」 少しばかり歩くと見慣れた建物が現れた。 「すっげー美味しいんだよ。」 イタリア料理のお店。 「た、高そうですよ…」 穂水は目を丸くするが、 「そんなことないよ。ファミレスに近い感じのお店。」 ニコッと笑って穂水の笑顔を招く。 「じゃ、はいろっか。」 さっと穂水の手を取り、 店の入り口へ。 「あ、そーちゃん!」 なーんて声も軽く交わして、 一番奥の席へ歩く。 穂水は僕の手をぎゅっと握り締め、 俯いている。 穂水の反応はなかなか可愛い。 すぐ真っ赤んなって、 すぐ俯く。 そんな穂水を見ていると 自然と笑みが零れて 和む。 席に着くと、穂水がおどおどしだした。 「だいじょーぶ。」 心から微笑める。 「は、はぃ。」 「何にする?」 僕は慣れた手つきでメニューを開く。 中央に定食や単品メニュー。 左側にはドリンクとデザートが記されていて、 反対側は季節のお勧めメニューがズラリ。 「ん~。」 穂水が迷っているようだったから 「僕はカレーにするよ。」 と口角を上げる。 すると穂水は 「じゃ、あたしもそれで…。」 と笑みを返す。 「じゃ、呼ぶね…」 チャイムが鳴り、定員がきて、 「季節のカレー二つ。」 といい、メニューを閉じた。 15: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 32 08 「穂水…。」 定員が水を持ってきた後。 「風香ってよんでいい?」 敢えて親近感を掴もうとする。 「っう、えぇと……あのぉ…その……」 どぎまぎしながら最後に可愛い一言。 「すんごい。うれしーです…。」 ほんと、和む。 「じゃ、僕のことは草太ね。」 意地悪く微笑むと予想通りの反応。 「っえ!?せ、先輩?」 可愛いなぁ。 「うん。緊張が取れたらでいいよ。」 ほんと、抱きしめたくなる感じ。 「っはい!!」 満面の笑みで頷いてくれた。 「季節のカレーでーす。」 カレー皿を二つ持った自分の叔母が登場。 「ぅわぁぁ。」 風香は嬉しそうに笑う。 「なぁに?彼女?」 叔母は悪魔の笑みを浮かべて、 僕につんつんしてくる。 「はい。そーでーす!」 態と偉そ振ると、叔母は何度か頷いた。 「じゃ、葉子に連絡しておきまーす。」 「っえ!?ちょっと…それは!!」 葉子とは自分の母親である。 僕が一人暮らしを始めた頃から連絡を全く取っていない。 「花子さーん!!!!」 もう、花子さんはくるくる回りながら 厨房に入ってしまっていた。 「はぁ。」 顔を上げると風香が微笑んでいた。 「楽しそうだね。」 その言葉もまた、 僕を笑顔にしてくれる言葉。 「いやいや。うるさいだけだよ。」 二人で笑いあいながら 色々なことを話し始めた。 16: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 32 44 「風香。」 一瞬びくっとして目が合う。 「可愛いな。」 自然とそんなことを言っていた。 「二人っきりだったらすでに襲ってるよ。」 風香はまた赤面する。 そして、僕は一番気になっていることを 尋ねた。 「どうして、僕なんかを好きに?」 答えはもう分かってる。 どうせ「顔がかっこいいから」とかだろ。 今まで付き合ってきた女は いつもそうだった。 顔しか見てくれない。 趣味も打ち明けられない。 彼女と呼べるのかさえ分からなかった。 でも、風香は違っていてくれた。 「ちょっと長くなるんですけどいいですか?」 僕は黙って頷いた。 17: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 33 11 ~風香side~ 桜満開の日。 藤堂高校の入学式が行われた。 「背、のびたぁ?」 「制服に合ってるよ!」 親友の莉子と真由は同じ高校を受験して、 三人とも受かった。 合格発表の日にはみんなで 笑いながら泣いて 食事に行った。 「風香~。クラスはなれたね。」 真由が抱きついてくる。 「会いに行くから大丈夫!」 クラスが離れたら壁が出来てしまうのも知ってるけど そう言ってないと真由が可哀そう。 「二組の方は名前順に二列に並んで着いてきて下さい。」 案内してる先輩はすごく適当で説明とかよく分からなくて みんなダルイ空気を醸し出していた。 「敦也。もっとちゃんとしてあげろよ。 みんな困ってんじゃん。」 保健室の前で一人の先輩が現れた。 あたしと同じ事考えてる……。 そんな些細なことが無性に嬉しくて一人でにやついていた。 「ここは保健室。四時間目までしか先生は居ないから お昼休みからはここで性行為をしてもいいぞー。」 周りの男子は爆笑。 さっきまで案内していた男子も 「そんなんでいいのかよ。」 と吹き出した。 「ちゃんと説明してるだろ。」 ズッキューーーーーン!!!! え、笑顔が……格好いい。 し、しかもしかっりしてるのにジョークが通じる…! その一瞬であたしは先輩に恋に落ちた。 「でもさぁ。一目惚れっぽくない?」 次の日、昼休みでその気持ちを全部 真由と莉子に伝えた。 「あたしは、外見で判断したくないんだけど…」 一目惚れって言ったら顔で判断してるように見えるし。 「でも好きになっちゃったんでしょう?」 最後の一言は黒い長い髪を下ろしている莉子である。 「じゃ、別にいいよね。」 そして大人っぽい真由。 そして先輩への片思いが始まった。 18: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 33 37 「体育祭の役員を決める。」 待ちに待ったこの日!!!!! 体育委員長の先輩が挨拶に回ってくるのだ! 「じゃ、とりあえず体育委員は決まりで、 …ほか。立候補は?」 少しの沈黙の間に莉子と目で合図をして、 「「はい!あたしたちやります!!」」 っと叫んだ……っと同時に先輩が戸を開けた。 そして私たちを見て一言。 「今年は良い子達ばかりで楽しい体育祭になりそうだ。」 微笑む先輩はやっぱり愛しくて 大好きだった。 「じゃ、4人決まったから、 体育役員の加藤君に注意事項などを言ってもらう。」 先生は先輩に「よろしく」っといって教室から出て行った。 「えっと、僕は前期体育委員長を勤めさせてもらう 加藤 草太といいます。」 へぇ。 加藤先輩かぁ。 「まず、プログラムを順に言います……」 そして、先輩はみんなの眼を見ながら一通り、 説明を終えた。 19: 名前:きゅん☆12/19(日) 00 34 38 「じゃ、役員の子達は放課後教室に残っててね。」 といい、先輩は教室を後にした。 「やっぱいいじゃん!ってか性格もよさそうじゃん!」 次の休み時間、いつもの三人でまた先輩のことを。 「しっかりしててそのうえ面白い…」 「そして容姿端麗、成績優秀、それプラ穏やかっていう。」 「何それ!?どこの情報よ?」 ぎゃーぎゃーいってるとチャイムがなる直前になっていた。 「じゃ、じゃーね!真由!!」 莉子に手を引っ張られながら教室へ飛び込む。 ――ドンッ 飛び込んだ拍子に、 あたしは誰かにぶつかってしまった。 「ご、ごめん…」 しかし顔を上げると愛しい目上の人が。 「…なさい!!!」 急に頬が熱くなって、 足が縺れてしまった。 そう。 目の前に居るのは愛しくて大好きな加藤先輩。 「大丈夫?」 「っあ!」 倒れてしまいそうになった瞬間、 先輩が莉子が離したばかりの左手を掴んだ。 そして、あっという間に しっかりとした先輩の胸に引き寄せられる。 「すいません…。」 慌てて退く。 すると先輩の骨っぽい手が あたしの頭の上に伸びてきた。 「廊下は静かに歩きましょう。じゃね。」 そういい、先輩はあたしの肩を 2度叩いて、行ってしまった。 席に着くとチャイムが鳴った。 周りの女子に冷やかされて 大声で怒鳴ったので 社会の先生に怒られてしまった。 でも、すごく幸せな気分だった。 可愛い君を 続き1
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31: 名前:サスライ☆09/28(火) 13 06 46 †7年前† 着流しの上に、ポンチョ式の厚手のマントを着て、暫く切っていないであろう髪は、革のバンダナを何重にもターバンの様に巻いて乱暴に纏め上げられていた。 補修跡が目立つ革靴を鳴らし、右手で樫の杖を突いて歩く。左手は長すぎる着流しの袖の下に隠れて見えない。 黄桜18の頃の姿だ。細面なのは変わらないが動きに無駄が無く、全体的に落ち着いた印象がある。 特にやりたい事も無く、宛の無い旅を続けながらギルドを通してのフリーの傭兵業で毎日を食い繋いでいた。 3年前とそれは雲泥の差で、改めて七海を連れて来なくて良かったと感じる。未だに思う。 だから『本当にアレで良かったのか』の答えは出ていない。しかし今はソレを、一時の気の迷いと自分に言い聞かせてまた歩く。 ギルドに行って先ず見るのは、どの様な仕事では無くて、今世界がどの様に動いているかの無料新聞だ。 傭兵と言うのは兵の名の通り、戦場に駆り出される事が多く、それでいて生きていなければ金は手に入らない。 だから、より勝機のありそうな方につく。ギルルの里に居た頃は仕事は上から決められていたが、独りでは勿論そうはいかない。 そして、どれだけ組織と言う物の中において自分がどれだけ分け前を損していたかに気付かされるのだった。 32: 名前:サスライ☆10/01(金) 07 32 09 大抵傭兵ギルドは、登録の酒場で会員証を見せると通してくれる。表で経営している賞金稼ぎギルドと違い、傭兵は収入が高い分臭い仕事が多いからだ。 尚、傭兵ギルドは公立では無くて大手マフィアや有力武器商人等の私立経営になっている。 酒場の奥の従業員専用扉の更に奥。地下へと続く扉があって、やや軋む階段を12段程降りれば、ホテルのロビー程の空間がある。 電灯の光の中を歩き新聞をとって、酒場の使い回しテーブルセットに向かい椅子にドッカリ座ればそれで中堅傭兵の完成だ。 そんな新聞を読む黄桜の席の向こうに座る人影が新聞の文字を遮ったので、眉間に皺を寄せてそちらを見た。 「あ゛? ちょっと新聞見えないんだけど」 このメンチを切っていると言っても差し支えない行為。実は黄桜の『挨拶』だ。 これで人間の器を計り、あわよくば次の仕事でペアを組む。喧嘩を買う様な奴は半人前、無視して一人前。 「おいおい黄桜、お前も偉くなったなぁ。こんなトコで喧嘩したら会員証取り下げられんぞっての」 そして笑った上に言葉で反撃出来て一流だ。黄桜はこの声に憶えがあったので顔を上げる。そこには旅の途中で見知った、師匠とも言える一流傭兵が居た。 「あ、チョーさん。ちわっス」 33: 名前:サスライ☆10/02(土) 07 41 31 今、黄桜達が滞在中のこの国ではちょっとしたお祭り騒ぎが起こっている。 革命が成功し、人民主権の新政府を樹立。それ故に価値観がすげ替わり、混沌とした灰色の状態になった。 今、この国ではちょっとした摩擦による、内乱が起こっているのである。 無愛想な顔で目線だけスゥと動かし、新聞を読み進めると更に詳しい事が解る。 元々、この国は主権が二つあった。武力で主権になった物と思想で主権になった物だ。 思想派は殆ど表に出ず、武力派が長い時間国を治め、際立って戦争も無かった。 が、相次ぐ新技術、外国への驚異に旧式武装の軍では対応出来ず思想派も表に出てこない。 煮えくり返った人民が思想派に政権を戻すと言う大義名分を建てて、革命が起こったのだった。つまり、今内乱で新政府軍が相手にしているのは武力派の旧政府軍だ。 「ふぅ、なんか旧政府軍は人が足りなくて火の車らしいな」 チョーさんは煙管(キセル)に火を点けてモヤモヤした考えを吐き出す様に、煙を出し、それ故に顔によらず聡明な考えを出す。 「あれ、そうなんスか?流石チョーさん、何でも知っているっスね」 「……まあ、そうしといて。取り敢えず元々人が少ない上に、新政府軍に地力で負けてるらしい」 これで黄桜には大体の行動方針が決まった。一流傭兵のチョーさんとペアを組んで新政府軍に味方すれば良い。 34: 名前:サスライ☆10/02(土) 08 13 36 さて、チョーさんとはどの様な人物かについて少し説明しよう。 そこまで大きくないが引き締まった筋肉を有している中年男性で、重火器の取り扱いに長けている。 黄色い肌と真っ黒い髪は、黄桜の知る人種に当てはまらなくて本名も不明で何者かはよく解っていない。 しかし、その強さは本物で先程述べた重火器の使用は勿論、修理技術、更に医療技術まで身に付けているモンスターだ。 そう言う訳で、黄桜は何としてでもチョーさんとペアを組みたい。交渉は既に始まっている。 チョーさんは自由奔放な性格で、破天荒な気がある為に中々掴めない。 「まぁ、俺にも新聞見せてくれよ」 「ハァ、別に良いですけどもう読む必要無いんじゃないですか?」 「気になるんだ。新聞の4コマが」 黄桜は苦笑いで新聞を差し出す。別に黄桜は興味無いが、ここの4コマ『シャブ小僧』は無駄にクオリティが高く、楽しみにしている者が多い。 傭兵と言う性格上、恥ずかしがり隠れて読む者が後を断たないが、それを知っているからこそチョーさんは堂々と読む。 「チョーさんって、結構オープンッスよね。何か隠し事とか無さそうです」 先ずは身近な話題から入り、契約まで誘導する。褒めれば案外のめり込み易い。 「いやそうでも無い、俺だって隠し事の一つや二つあるさ」 「またまた御謙遜を。あ、もしかして名前とか?」 「いやいや、お前が新政府軍に就こうと、ペアを申し込んで来ても断ろうって事とかさ」 まるで4コマの様にあっさりと行動を読まれていた。ならば、何故ギルドに来たのかと聞いてみる。 一番大きく、美味しい仕事を放って何がしたいと言うのか。 「4コマ読みに来ただけだな」 たまにチョーさんは、凄い単純思考なのか凄い理論思考なのか解らない時がある。取り敢えず、黄桜は肩が骨粗鬆症になる気分なのだった。 35: 名前:サスライ☆10/04(月) 11 54 02 殺人は犯罪だ。その犯罪が許される所、それが戦場だ。 「全く、イカれている」 血の混ざった消炎の臭いを嗅ぎながら、黄桜はボヤく。しかし其処に自らの意志で立っている彼もきっとイカれているのだろう。 しかし彼は迷いがあった、其処に立つ度に七海の事を思い出すのだ。 これで良いのか。都合が悪ければ消すのが本当に正しい事なのか。 桜の花弁の火傷痕が脳裏を過る度に、何時も危ない目に合う。いっそ、この想いも消してしまえと感じる日もあるがそれは出来ず、自分の弱さを再確認した。 「イカれている?違う、死に場所を探しているんだ」 と、向こうから声が聞こえる。それは今敵対している敵の声。敵は、続けた。 「此処で生き延びても旧政府が全てだった彼等に何が残る?だったら、この場で歴史の舞台から引いた方が良い。誇りを抱いてな」 その飄々として掴み所の無い口調は馴染みのある声。黄桜は、敵に向かって言う。 「じゃあ、貴方は何でソッチに居るんで?チョーさん 貴方はこの国の歴史の舞台から関係無い筈だ」 言われた敵……チョーさんは肩の力を抜いて、答えた。 「俺はな、知ってしまったんだ。この仕事を続けても、何も背負っていない奴の先には何も無い。 そんな虚しい人生、せめて何かを背負っている人間の中で死にたいもんさ」 36: 名前:サスライ☆10/05(火) 19 51 23 チョーさんのマシンガンが唸りを上げて大量の鉛弾を放つのが、戦闘開始の合図だった。 黄桜はそれを横に走る事でかわし、弾切れと同時に一気に距離を詰める。 樫の杖でチョーさんの利き腕目掛け、思い切り突いた。 利き腕を支配しているマシンガンは使えない、そして手の甲粉砕骨折等で片手を封じればガンマンは終わる。 「なあ、下らねぇと思わねぇか。この戦いは」 チョーさんは余裕の口調で笑いながら言葉を出す、見ればマシンガンのグリップで杖を受け止めていた。押す力同士の力比べになる。 「下らねぇなら、止めませんか?」 「お前は何も解っていないな。言っているのは俺達の闘いなんかじゃ無いんだ」 チョーさんは突然グリップを捻った、だから杖も捻り上げられてフリーになった腹にグリップで突かれる。一連の流れはまるで、銃で杖術をしている様だった。 腹に衝撃が入ったせいで、ろくに喋れない黄桜に、上からチョーさんは語りを続ける。 「新政府だ誇りだなんだ言っても、つまりは弱い者虐めだ。そして、俺等傭兵はそれに荷担しているハイエナだ」 呼吸が戻ったのを見ると、敢えてチョーさんは弾を籠めずにグリップで足元を狙う。 それをジャンプして避けると、読まれていたのかグリップは地面について棒高跳びの原理で垂直蹴りを顎に当てられた。 ゴム底の蹴りは重く、平衡感覚が保てないグニャグニャの景色でチョーさんの声が違う。 「仕方ない事とは言え、いい加減自分のやっている事に虫酸が走ってきてな 俺達みたいな弱い人間が虐めの荷担で甘い汁を吸うのっておかしいと思うんだ」 37: 名前:サスライ☆10/11(月) 18 59 59 寒天みたいな世界を振り払い、黄桜は片手で杖を構える。下段の防御の型だ。 グリップファイトはリーチが短いので下手に突撃すれば反撃を喰らうし、銃は間合いが悪い。 その点で黄桜の取った構えは正解と言えるが、チョーさんは呆れた顔をしていた。 「ハァ……。 俺さ、結構マジなんだけどな」 「俺の杖術を舐めると痛い目みますよ」 「解っていない、解っていない。そんなんだから、お前は俺に勝てないんだ」 何処が不満だと言うのだろう、本気を出せと言う意味では、実は左手を使わない事を言われた時、左手は過去に自分で切り落としたと言った。 つまり、これが今自分の出せる最強の型だ。 溜め息一つ、チョーさんが銃を片手に、マガジンを片手に迫ってくる。これならグリップファイトをしながらマガジンを詰め込み奇襲が出来る。 しかし、それを阻止する手段が一つ、黄桜の頭の中に浮かんでいたのでそれを行った。 先ず、捻りを加えた突きをチョーさんの首に放つ。勿論、頭を横に振って避けられるがそれで良い。 何故ならこの杖は実は仕込み杖。捻る事で鞘が外れる仕組みになっている。 慣性を利用して虚空の彼方へ勢い良く飛んでいく鞘。故にチョーさんの首筋には研ぎ澄まされた刀があった。 これを引けば、チョーさんの首は落ちる。 「だから言ったでしょう、痛い目見ると」 38: 名前:サスライ☆10/14(木) 00 04 16 経験豊富なチョーさんは気付いていた、黄桜が奥の手を持っている事に。 杖に隠せる武器は多々あり、銃も考えられた。実際スパイが暗殺に使う傘型銃もある位だ。 しかし銃を身体の一部として使える本能はそれを否定、ならばサイズ的に刀が現実的だ。 さて、雑誌等では日本刀が金属を叩き斬る動作があるが、仕込み刀は別だ。 杖に収納する故に重さが足りないからだ。所謂、普通の傘と折り畳み傘の違いだ。 そこでチョーさんはマガジンを取り出した。それは、銃を長い戦いで知り尽くした彼だから出来る防御。 「そうだな、痛い目みるな。自分を過信したお前がな」 チョーさんの首の真横に軽くアンダースローで投げられたマガジンがあり、それが斬撃を防いでいた。 そしてグリップが腹を突き、しかし今度は再起不能に成る程の適度な力だ。 鯖折りを思い出す「コキリ」とした鈍い音と、風穴が開く様な感覚が黄桜を襲って、黄桜は地面に倒れる。 薄れいく意識の中で、チョーさんの最後の言葉を聞いた。 「左手、使ってたら互角だったかもな」 二つ思う。なんだバレていたのかやっぱチョーさんはスゲェなぁ、との感嘆。 そして、強い人とは本気で戦わなくちゃ勝てないし失礼だ。しかし本気で戦いたく無い、それは我が儘なのだろうかと言う疑問。 何故か瞼を閉じればあの日の七海の顔が浮かんで、そのまま意識を失って目が覚めたら安全な所に運ばれていた。 恐らくチョーさんの仕業だろう。が、その後はチョーさんの姿をてっきり見なくなった。 39: 名前:サスライ☆10/14(木) 20 19 09 †四年前† ワイワイガヤガヤと雑音賑わす荒れくれ者に混ざって、小汚ない初老の男がテーブルに座っていた。向かいには使い古された黒いマントの黄桜が座っている。 目に最早生気は感じられない。しかし、生きている。 チョーさんに負けたあの日から、何故か傭兵を出来なくなった。左手も怖くて使えないままだ。 初老の男は情報屋だ、だから情報を提供する。情報の内容は、高価な荷物が運ばれる道のりについてだ。 黄桜21歳、山賊をしている。 しかし黄桜は山賊として異質だ。荷物に興味は無くて、寧ろその護衛に興味があるのだ。 高価な荷物には強力な護衛が付く。その護衛を左手を使わず、殺さずに倒す事を奪うよりも目的にしていた。 殺す事も出来ない、本気になる事も叶わない、欲望に身を任せる事も出来ない。自分をそう思っていて、そんな人間の成れの果てがこの姿だ。 あらゆる事の自分に対しての問いに答えない人間の成れの果てだ。 殺そうと思えば自分に命を奪う権利があるのかと問いがある。 本気になろうと思えば、この力はそんな事の為に存在するのかと言う問いがある。 欲望に身を任せようと、荷物に同行していた女を陵辱してやった、しかしここぞと言う時に焔の、そして七海の笑顔が横切って冷めてしまう。 何の為に生きているのか、俺が何をしたと言うのか。 問えども答える者はおらず、只、情報屋の耳障りな声が頭に入ってくるだけだった。 40: 名前:サスライ☆10/14(木) 20 57 53 舗装もされていない土の道があった、両脇には森があり、舗装しようにも木材の権利が入り組んでいる為に中々うまくいかない。 だからこうして山賊に襲われるのに最適な環境が出来上がった。 今日、荷物の護衛をしていた人間は某国で英雄と呼ばれていた人間だ。文章が過去形なのは、それが既に倒されてしまって立つ事もままならない状態だからだ。 「アーデルハイト・ベーレンドルフ……僅か15で頭角を出し、18で英雄。現在21か……」 意識があり、気丈な光を宿した瞳で睨み付けるアーデルハイトを、死んだ魚の様な目で上から眺める黄桜は、情報屋から得た情報を言ってみた。 「くそっ、貴様が『英雄狩り』の黄桜か!」 「ああそうさ。運が無かったな、英雄狩りをする前に会っていたら勝てたかも知れないな。 経験が薄かったから」 『英雄狩り』とは、黄桜の異名であり、彼の起こす独特な行動だ。強者とは英雄である事が多い、故に付いた異名である。 最も、黄桜の様に力があっても英雄になれない人間は沢山居るが。 「何故だ、何故そこまでの力を、たかが山賊に使う。神はそうは望んでいない筈だ」 「……山賊意外に使ってみたら、こうなった。どうも神様ってのは俺が嫌いらしくてな」 フゥと息を吐いて、貨物馬車に近付く。その時、やや高めの更に高ぶった大声がした。 「うわああああぁ!」 それはアーデルハイトが黄桜に向かい渾身の力で起き上がり、短刀で突進する為に気合を入れる為の大声。 何かの記念品だろうか、飾り気のある短刀は、黄桜の直ぐ近くに迫っている。 41: 名前:サスライ☆10/14(木) 21 27 51 黄桜に迫る短刀は、まるで予知されていたかの様に軽く避けられて、短刀を持つ手首を掴まれた。 呆然唖然と目を丸くするアーデルハイトに、黄桜は答える。 「動けない時、なるべく力を使わず素早く起きれる様に重心を後ろにズらしていたろ。 こんな事やってるから俺自身似た状況になるのが多くてな」 淡々と説明される頃には、短刀が落ちて乾いて澄んだ音が地面に伝わった。しかし、アーデルハイトの目には絶望の色は見えない。奥の手がある訳では無いのにだ。 「何故、諦めない。最早お前には何も無いのだぞ。もしかしたら、『犯される』かも知れんぞ?」 余談だが、アーデルハイトとはドイツの女性名である。勿論男性のパターンもあるので、どちらにも使える名前だが。 「では、絶望したら強くなるのか。諦めたら進展するのか。 私は僅かな希望に懸けようと思うのだ。それに、お前は私を犯せない」 絶望どころか、挑発的に笑いかけるアーデルハイトは言い合うだけ意味が無いと判断した無表情の黄桜に言葉を続けた。 「私は知っているぞ。お前、粗チンで不能らしいな」 「……!?一体誰がそんな事を」 「おやおやぁ、冷酷無比の英雄狩りが耳まで赤くするとはなぁ。 お前、陵辱しようと服を破いて自分も脱いだまでは良いが勃たなかった上に粗チンだったと被害者の女性は言っておるぞぉ」 目を弓にしてウケケと憎たらしく笑うアーデルハイトは、年相応の愉快さがあり、顔を赤くして目を丸くする黄桜は年相応の純粋さがあった。 42: 名前:サスライ☆11/01(月) 01 15 58 手首を掴んだまま顔を赤くしている黄桜にニヤニヤとしているアーデルハイトは、最早敵を見る目をしていなかった。 だから彼女は英雄足りうる存在なのかも知れない。倒すのでは無くて、勝つ事が出来るのだから。 彼女は雰囲気をゴロリ変え、しかし出来る限り優しい表情と声で言う。きっと自分がそうされたら嬉しいだろうから。 「もう、『英雄狩り』なんて止めないか?私の方からも言ってみる、上手くいけば城の兵士に出来るかも知れない」 「今更、引き返せと」 「引き返すんじゃない、初めるんだ。終わりは、初まりなのだから。 君はそんな事を本当は望んでいない」 今まででも何べんも同じ感情に見舞われたが、今回は特別それだ。 コイツはもしかしたら、お人好しなのかも知れないと言った感情が高ぶり、怒りを通り越して呆れが湧き出る。 「ふん、お前に俺の何が解るんだ。所詮は正義気取りの偽善者ではないか」 するとアーデルハイトはニカリと笑い、黄桜は難解さに頭を抱えたかったが体制的にそれは出来ず、只薄気味悪さが背筋を走る。 「そうかも、知れない。だが、自らの正義を肯定出来ないより遥かにましだ。 己も信じられない人間が正義を語るべきでは無いだろう」 薄気味悪さは、そのまま氷柱になり、心臓をグサリともチクリとも、或いはその両方が一気に貫く。 43: 名前:サスライ☆11/01(月) 01 33 02 アーデルハイトは、目を見開いている黄桜の顔を見て正しさを肯定すると、沈黙と言う回答に答えた。 「君は、まだそうして誤りに傷付く事が出来る。 まだ、笑う事が出来る。 人の立場を考えて話す優しさがある。 やり直せない訳無いではないか」 それは何故だが必死で、背景を感じられずに得なく、もしかして15で英雄になるにも大層な理由があるのかも知れない。 しかし黄桜も理由があるのは同じだった。目の前の少女と同じく、此処に在るには大層な理由があった。結局は、同じ年齢の同じ人間で、環境が違うだけなのだ。 だから黄桜には黄桜の大層な理由がまた脳裏を横切る、そこには七海の笑顔があった。アーデルハイトのダイヤモンドの様に固い意志の目と重なっている。 「私も許してもらう様に必死に懇願する!絶対だ」 『貴方は次期里長で無ければ十分過ぎる戦力になる』 何処からもなく声が聞こえる、そして黄桜の深層心理は従えと言う。 「それまで護ってみせる、人を護れない英雄に価値など無い」 『じゃあ、私も貴方の旅に付いて行きます』 重なる、重なるから自然と手が動く。左手が動く。 「『ごめんな』」 それは、誰に言った言葉だろう。彼が何をしたと言うのだろう。 44: 名前:サスライ☆11/01(月) 01 50 02 †現在† 英雄狩り・黄桜は、最後の英雄アーデルハイトを刈って以来姿を見せなくなっていた。 現地に遺されたアーデルハイトの遺体には軽い火傷がある程度で際立った外傷は見られなかったそうだ。 そんな営業停止して存在も忘れかけられている黄桜だが、莫大な褒賞金は未だに存在している。被害者が被害者だけに野放しにしては面子に関わる。 が、捕まらないのは英雄狩りの恐怖だろう。人は誰しも誰かの背中を追って生き、その追うべき対象が殺される様な人間はどれ程強いのかと言う恐怖である。 しかし敵討ちが後を絶たないのも確かで、そう言った者達は帰って来ないのも懸賞金と恐怖を上げる切っ掛けになっている。 『所詮人は自分の命が惜しい』 酒場から出た彼女に先程の情報屋の言葉が過る。しかし、ダイヤモンドの意志を継ぐ彼女にとってそんな物でしか無くて一瞬で振り払われた。 誰かがやらなければいけない。 これは私情は関係無く見えるが、随分な私情だ。私情とは突き詰めれば公的な感情になるのだから。 つまるところ、胴着服の彼女は随分な情熱家と言える。 「……貴方は、私が止める。この、千鳥が!」 黄桜が里を出たのは性別不明の5歳の頃、今ではポニーテールをなびかせる凛々しい女性となっていた。 45: 名前:サスライ☆11/01(月) 02 08 02 サラサラと流れる川が人里離れた山の奥にある。それに糸を垂らして釣りをする人影一つ。 木綿の着流しを纏った黄桜で、その風貌は世捨て人と言った所。左手はやはり包帯に覆われている。 溜め息一つ吐いて、ビクに何も入っていない事を再確認すると、また釣りに戻った。 「何が悪いんだろうなぁ、餌かな、釣り方かな、ポイントかな?」 「必要とされない所に生物の居場所は無い。魚は本能的に知っているのでしょう」 体勢も顔の向きも変えずに、ボンヤリと川の流れを見ている彼は、背中からの声に特に驚きもせずに、川に流す様に言う。この川でみんな洗い流せれば良いのに。 「いやいや、結構重要だよ、だって魚が取れなきゃ俺は飢えて死んじゃうかも知れない」 「では貴方はそれを望んでいるのでしょう。 だから……大人しく倒されろぉ!」 活き活きした悲鳴が背中にかかり、蹴りが黄桜の後頭部を直撃した。川に水柱が上がり、数匹の魚が宙に舞い上がる。 水面の隆起部先端から割れて出てきた黄桜はペッと水を吹くと、蹴り飛ばした張本人を見た。 「んーと、身体強化の蹴りにギルルの古武術。懐かしいな。ねぇ、千鳥よ」 黄桜の目の前には武術の型を取る千鳥が在る。 46: 名前:サスライ☆11/01(月) 02 31 19 蹴られる瞬間に、黄桜は後頭部を身体強化と同じ原理で、精霊の加護を用いて防御していた。だから水柱が上がる程の蹴りもどうと言う事は無い。 千鳥はそう考えて、やはり一筋縄ではいかない相手だと演武を一通り行った後、再び型を取ると黄桜がオヤと感じるから口に出す。 「あれ、それってギルル古武術をアレンジしてんな」 「ふ、作用。これぞギルル流千鳥門。通称『千鳥流武術』です!」 「うわぁ、だっさ……」 「うっさいな。何時か軍の正式採用になる程メジャー武術になると思いたい」 千鳥はそう言って、駆ける。只、駆けるのでは無い。なんと水の上を駆けた。 一瞬のインパクトに身体が固まった黄桜は、そのまま跳び蹴りを狙われるが意識を取り戻し右手で受ける。 川の向こう側まで蹴り飛ばされ、しかし受け身をとった黄桜は右手のみをレイピアよろしく突き出して、ニヤリとする。 「それが千鳥の精霊の加護か。水を操る、そんなトコか?」 「残念ながら、ハズレです」 千鳥が遠くから正拳突きを放った、勿論突きは届かない。が、衝撃波が黄桜を襲う。 そのスキに後ろに回りこんだ千鳥、経験からか同門からか一瞬で予想がついた黄桜はそこに回し蹴りを放つ。が、まるで鋼を蹴った様に効かないではないか。 バックステップで距離を取ると、黄桜は冷や汗を拭い、しかし昔読んだ能力大全から千鳥の能力を推理した。 「成る程、お前の精霊の加護。それは、『四聖咆哮』。 超身体強化だな」 47: 名前:サスライ☆11/01(月) 02 54 32 水を走るのは、沈むよりも速く走ったから。衝撃波は、拳速が生み出す風。鋼の堅さは、強力な身の引き締め。 千鳥は、精霊の加護の才能が無くて落ちこぼれ扱いを受けていた。しかし、基本が異様に高い事を利休に認められる。 その結果、能力が無いのでは無くて身体能力を究極に高める能力だと知った。 彼女はそれを以て頭角を表し、『男だったら次期族長』と里から認められる程に成長した。 しかし彼女はそれを里の為に使わず、ある日忽然と姿を消す。その後は『正義の味方』として世界を回っていた。 黄桜を探す為に。 「アーデルハイトさん、あれは何故火傷で死んだのですか?貴方の能力はそこまで殺傷能力は無い」 「お前に言う必要なんか無いだろ」 「ありますよ、だって、あの人は……大事な仲間だったんだから」 今にも泣きそうな雰囲気を纏う彼女を遠目に見て、溜め息一つ言ってやる。 「ショック死だよ。 アイツ、俺の能力に侵されつつある中で、無理矢理ショック死しやがった」 千鳥は肩の力を抜いて、口に笑みを浮かべる。表情は遠目なのでよく解らない。 「ああ、そうか。アイツは自分で無いなら死んだ方がマシって言う奴だからなぁ、そうかそうか。 アハ、アハハハハ……」 そして、下唇を噛み千切った。 「ふざけんなテメェ。神聖な精霊の加護を何だと思ってやがんだ!」 拳を顔面に受ける黄桜、しかし表情は冷たい。やせ我慢しているだけだが。 「神聖か、俺にとっちゃ悪魔だよ。例え、神様がくれた物だとしてもな」 48: 名前:サスライ☆11/01(月) 03 24 38 やせ我慢の状態から黄桜は千鳥の拳に噛み付いて固定し、左手で千鳥の頭を掴んだ。左手の包帯が全て灰になり、下から生身の腕が出てくる。 「どんなに人間が強かろうが、悪魔には勝てないんだ。この俺みたくなぁ!」 「そうでも、無いですよ」 「何っ!?」 黄桜に頭突きを喰らわせる。そして頬に蹴りを入れて、噛み付きの束縛を解除。地面にバウンドしたのを掬い上げて、逆ベクトルから殴りかかる。 「ギルル流・『流れ落とし』!」 思い切り血を吐いて地面に改めて叩きつけられる黄桜。 身体強化とは、力が上がるに限らず内臓の力も上がる。当然脳の力もだ。それを利用し、千鳥は忘れた途端に記憶の欠片から思い出して高速で修復したのであった。 こうして、彼の戦いは終わった。 ††† 「なあ、千鳥。俺さ、思うんだ。もしかしたら強くなるには一人じゃ駄目なんじゃないかって。 だってさ……素直にそう思える今、もう七海の顔が脳裏を横切る事はあんま無いんだ」 地面に仰向けのままの黄桜が体育座りでチョコンと座る千鳥に言う。 千鳥の顔は黄桜によく見えない、しかし彼の顔は晴れ晴れとしていた。 「あのショック死の後な……、俺は山に籠った。何でかなぁ、きっと最後のチャンスを逃して居場所を失ったのを本能的に知ったんだろう。 七海の記憶を奪った『あの日』をやり直すチャンスをさ」 千鳥は口をモゴモゴさせる、黄桜は只、「泣くなよ」と笑顔で言った。 黄桜の顔に雫が落ちる。 「全く、お前は何時までも泣き虫だなぁ。 精霊の加護を信じるんだ、だってそれは神の力でも悪魔の力でも無くて……」 笑顔のまま、彼は息を引き取った。千鳥が黄桜に会いに来たのは、里の為なんかじゃ無いと言う事を伝える前に。 そう、『倒しに来た』のでは無い。千鳥は『会いに来た』のだ。 完
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182: 名前:+椎名+☆2011/07/26(火) 18 13 23 「ただいま・・っと」 家に帰っても誰も出迎えてくれない。 いつもなら龍が迎えてくれるのに・・・ あいつらのせいで・・もう龍の声も・・姿も・・二度と見れない。 絶対許さない。 許さない。 許サナイ。 来世も・・そのずっと先も。 そう思っているとリビングから声が聞こえる。 私の声だ。 「グス・・龍、龍ぅ・・グス・・・・」 そう、これはテープだ。 これを近所にかすかに聞こえるくらいの音量でかけておいた。 もちろん何度もリピートさせて・・・ だってあいつらを殺したのは龍を殺された恨みと見られちゃって私を疑うだろうし。 近所で一日中泣いてるアリバイだよ。 私はまだ・・死ぬ訳にはいかない。 気に入らない奴らを殺すまではね。 183: 名前:+椎名+☆2011/07/26(火) 18 34 38 次の日、 予想通り私の下に真っ先に警察が来た。 こいつらの頭って小学生以下ね。 「佐野蘭さん、警察です」 私は少し悲しげな顔で警官を見た。 「・・はい、何でしょうか・・?」 警官が口にしたのはやはりあいつらの事だった。 「昨夜、RIDEと言う怪しい店で殺された男が13人見つかりました」 私は演技に拍車をかける。 不機嫌そうに答えた。 「・・・だから何ですか?」 「昨日の晩、何をしてたか聞きたい」 ほら、やっぱ私を疑ってる。 警察は人間の屑の塊だよ。 「・・は?それって私を疑ってるんですか?」 怒ったような素振りを見せ、挑発した。 「龍君を殺されて憎かったんだろ。 お前があの男達を殺したんだろ!」 こいつあったまきた。 調子に乗りすぎだろ。 「ちょっと!やめなさいよ!」 玄関でもめているのを見て近所の人が止める。 「蘭ちゃんは龍君を殺されて・・昨日夜遅くまでずっと泣いてたのよ。 弟を・・たった一人の家族を失った子を疑うなんて最低よ!」 「私も聞きました。龍君の名前を何度も呼びながら泣く声が」 「私もです」 近所の人が次々に嘘のアリバイを言う。 これで警察の人気もがた落ち・・信じてもらえないかもね。 「ちっ・・」 舌打ちをして警官はパトカーに乗り、どこかへと行ってしまった。 「あの、皆さんありがとうございます」 ! 「いいのよ。蘭ちゃん・・気の毒だったわね」 やめて・・・ 「困ったことがあったら言ってね?」 やめて・・! 「蘭ちゃんの力になるから・・」 そんな同情の目で私を見ないでよ! 同情なんてしないでよ! 184: 名前:+椎名+☆2011/07/26(火) 18 45 43 同情なんていらないの・・ 誰も私の悲しみなんてわからないから・・ 「しかし酷いわね、あの警官。警察のトップとは思えないわ」 トップ・・? 何それ。 どこがトップなの? ! そうか。 あいつも殺せばいいんだ。 私は気がつけば気にいらない奴は殺して済ませようとしていた。 どうせなら苦しんでほしい。 極限までね。 その日、私はパソコンであいつのことを調べた。 パソコンはたまにバイトで使っていたが最近は使っていない。 「○○警察・・と」 検索すると○○警察のホームページが出てきた。 そこにはあの男の写真と名前がかいていた。 「山田哲自・・気に入らない名前。どうやって苦しんでもらおうかな」 そうだ、いいこと思いついたかも。 山田・・お前には死んでもらうから。 185: 名前:+椎名+☆2011/07/26(火) 18 59 11 その日私はいろいろ使えそうな道具をそろえた。 睡眠薬、ロープ・・・それにムチとか。 何するかって? 私に従ってもらうの。 さてさて、目をつけてた奴に従うのってどんな気分かな? さぞ屈辱でしょうね。 私はあいつが見回りする時を見計らって差し入れを用意する。 睡眠薬入りのね。 あいつはみまわりは一人でするらしいから都合いいのよね。 私の予想ならもうすぐ来るはず・・・ 私はかつらをかぶり、靴で背丈を変えてさらに服も着替えた。 男の変装。 靴見られたらばれるけど夜だしだいじょーぶでしょ。 と思っているうちに来た! 私は山田が運転しているパトカーに手を振る。 「はい?何ですか?」 良い子ぶっても、正体は知ってるのよ? 「あの、タクシーと間違えました・・」 「・・そうですか」 少し切れ気味に言う山田。 何きれてんの・・ 今すぐ殺してもいいのよ? 186: 名前:+椎名+☆2011/07/26(火) 19 18 55 「では、失礼します」 は? もう行くの? 予想よりはやい・・仕方ない! 「あの!」 「!!」 私は声を高くした。 「・・女の方でしたか」 「男にみえますか・・すみません」 「あ、いいえ。あの、よろしければお送りしますよ」 女には優しいのね。 くだらない奴。 「いいのですか?」 「はい」 まぁいいわ。 乗り込めたし。 私は予定通りすすめた。 「あの、もしよろしければケーキをお礼に」 「いえいえ。おかまいなく」 いや、無理やりにでも食べさせる! こうなれば恥ずかしいけど。 「いえ、どうぞ」 「・・!で、では・・」 無理やり口元に持っていく。 ちっ・・これもこいつを殺す・・いや、苦しめるため。 仕方ない。 「どうですか?」 「美味しいです」 山田は上機嫌。 笑った顔は気持ち悪い。 しばらくすると睡眠薬が効いてきたのか、眠そうにする。 「・・あら、うとうとしてますよ?車を止めてお休みになられては? よければ私が運転しますよ」 「いえいえ・・・それは・・」 と、言ってる途中で眠ってしまった。 私が指定した場所は近くの空き地。 ここから家に運んで・・・ ここからはお楽しみ・・ね? 187: 名前:+椎名+☆2011/07/26(火) 19 27 49 私は車のエンジンを止めた。 まぁ適当に押したらとまっただけだけどね。 私は山田を私の家まで引っ張る。 重たい・・食いすぎだろ。 私は家に着くと口にガムテープをはる。 さらに山田の持ち物を取り上げて手錠をかける。 足は・・ロープで縛っておくか。 え?こいつはまだ殺さないよ? こいつには龍の学校の奴らを殺すのを手伝わせるから。 で、私はこいつに殺されるの。 警察が罪もない人を撃ったとなればどうなるかな? 人生はどん底から始まるでしょうね。 あー楽しみ! 192: 名前:+椎名+☆2011/07/30(土) 15 20 57 「うぅ・・」 暗い私の家の中で山田が目を覚ます。 「オハヨウゴザイマス、山田さん?」 「うぅんーーっ!んーっ!」 ガムテープを貼っているのでうまく喋れてなかった。 私はかまわず話を続ける。 「聞いて?私ね、あなたが憎いの。龍を侮辱したあなたが。 だから殺そうと思うの」 「・・!」 山田は殺すと聞くと汗を流し、目を見開いて恐怖の色がうかぶ。 「でも、もし私の言うこと聞いてくれるなら開放してあげる。 あ、大声をだして逃げ出そうとしたり私のいないとこでいらないことしたら殺す」 私は山田の取り上げた銃をちらつかせる。 山田は必死に首を縦に振る。 「素直でいい子ですね、山田さん。ほら、ガムテープはずしてさしあげます。 おびえないでくださいよ」 私はガムテープをはずした。 そしてもう片方の手には銃をかまえていた。 「--っ!」 「・・山田、あんたには命令するまでここにいてもらうから」 私が案内したのはひとつの部屋。 外から鍵をかけるタイプの部屋。 以前は倉庫としていろんなものを入れてたが最近片付けをして物を結構捨ててしまった。 ここなら十分でしょ。 さてと、ここからがお楽しみよ。 193: 名前:+椎名+☆2011/07/30(土) 15 47 39 まずは・・手始めに万引きでもさせようかな。 いきなり殺す手伝いさせてもし従わなかったら。 そのことも考えないとね。 だからテストしないと。 「山田」 「はいっ!」 私は勢いよく扉を開ける。 おびえすぎ・・敬語になってるし。 「あんた、今からコンビニ行って万引きしなさい」 「えっ?」 刑事が万引き・・・なんてどんなに屈辱かな? 「わかった?」 「・・・はい」 私はさきほどのパトカーに乗る。 5分ほどでコンビニに着いた。 「じゃあペットボトル。あんたとあたしの分盗んで来なさい。 まぁ警察が万引きするとは思えないからだいじょうぶだと思うけど」 私は微笑むと耳元でささやいた。 「失敗して見つかったら・・顔は知れてるから一発でわかるよ? 多分クビかも・・いや、人に信用されないかも」 そうささやくとびくっと反応し、また首を縦に振る。 「よし、じゃあ適当になんか買ってついでに盗みなさい」 「はい」 山田は車から降りるとコンビニに走って行く。 私はその様子をパトカーの中からじっと見ていた。 194: 名前:+椎名+☆2011/07/30(土) 16 02 13 山田side くそ・・なんで俺がこんなことを・・・ 全部あの・・佐野姉のせいだ! なぜあんなガキに従わないといけないんだ・・・ 俺は警察トップだぞ・・!? でも今はあいつの飼い犬。 従わなければ・・殺される。 でも生きていればいつでも殺す機会はある。 だから開放された時、佐野姉を・・殺してやる。 今は我慢して言うことを聞くか。 たかがこんな事で済みそうだしな。 やはり考えることはガキか。 俺はコンビニに入る。 「いらっしゃいま・・あ、山田さん。お疲れ様です」 店員が言う。 まぁ俺の顔は知れ渡っているだろう。 俺はとりあえず愛想笑いをする。 そうだな・・おにぎりでも買っていくか。 俺はおにぎりを6つ取る。 いよいよ本題。 俺は後ろの飲み物のところに行く。 あいつのは炭酸のソーダでいいか。 俺はソーダを取り、ビールを取った。 俺はカメラのないところへ行き、鞄に入れる。 あいつも言っていたが・・もしばれたら・・・・ 「お仕事お疲れ様です。675円です」 「あぁ・・」 俺は千円を渡し、おつりの325円を財布にしまう。 ばれてないだろうか・・・ 「ありがとうございました」 ほっとして急いでコンビニを出ようとした。 「あっ・・山田さん」 店員に呼び止められ、びくっと立ち止まる。 「お仕事頑張ってください」 何だ・・ばれてないか・・・・ 「あぁ、ありがとう」 また愛想笑いをすると足早にその場を立ち去った。 195: 名前:+椎名+☆2011/07/30(土) 16 07 43 リリスside しばらく待っていると山田がコンビニから出てくる。 「お疲れさん」 「盗んで・・来ました」 山田は鞄から飲み物を取り出す。 「ふぅん・・・いいわ。合格」 「・・え?」 山田は驚いた顔を見せる。 「あれ?こんなので済むと思ってたの? あんた・・今のはちゃんと従うかのテストよ? これからは人を殺すのを手伝ったりしてもらうから」 「・・・!」 言い終わると私はソーダを一口飲む。 ね、覚悟してなさい。 これからあんたを徹底的に苦しめるから。 7日間の醜いゲーム。 続き12
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184: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 21 50 02 「……え」 明るい光の下で、晒される顔。 (ま、まだ涙乾いてなかった?今の駿達とのやり取りですっかり分からなくなったかと思ったのに……あ、目腫れてるのか) 何て考えながら、響の顔を見つめ返す。 「どうした。また何かあったか?」 その顔に、声に、瞳に、表情に、 自分の身に何が起こったのか分からないけど、 「――……」 「おまっ……な、何また泣いて」 (あれ……?) 安心してしまった自分が居た。 (ほらまた涙が溢れ出す) (なんで、どうして、) 185: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/29(日) 22 04 18 最近自分がおかしい。中学のときまでは、こんなによく泣く子じゃなかった。泣くことを堪えるのが普通だと思っていたから。だけど、今は何だろう。涙を止める術をこの数ヶ月間で忘れてしまったのだろうか。 「っ!!ちょ……」 気付いたら体が浮いていた。なぜか私は今、響に後ろ向きに担がれている。まるで大きなカバンを肩にかけてるみたいに運ばれて、荷物のようだ。 がちゃっ 後ろ向けのまま暗い部屋の中に入った。多分、響の部屋だと思う。 そこでようやく下ろしてくれた。パチっと電気が付いて、部屋の窓側の方向に体を向けると。 「わあ……すごい」 窓からちょうど見えたのは、海だ。私の部屋とは違って海側に接しているこの部屋。そしてホテルの明るい電気が海で反射していてきらきらしている。その輝きが空まで続いていた。 未だ頬を伝う涙も忘れられるくらい、清々しい光景だ。 「それで、あんなとこで何してたんだ?」 私としてはどうしてこの部屋に自分が居るのかが疑問なんだけど。 海をぼーっと見つめたまま、話した。 「信に」 「水嶋?」 「うん。 告白された」 「!?」 後ろで響がどんな表情をしているのかも知らず、私は言葉を続けた。 「それで……私は傷つけてばっかりで、悪い事ばっかりで」 治まり掛けていた涙が再びぽろぽろと零れ出す。 「響のこと好きなのかって聞かれた。あと何で私が前に振ったのかとか色々分かってるって感じで、けど向こうは笑って本当に馬鹿みたい」 堰を切ったように言葉が止まらなくなった。ああ、何をこんな話べらべら話してるんだろう。私こそ馬鹿だ。 「……ちょっと待て」 低い声が静かな部屋によく響いた。 191: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/30(月) 21 34 57 「……何?」 突然響の周りの雰囲気が変わったような気がして、思わず聞いた。 「何て答えた?」 「え?」 何て答えた……って、一体何に。 訳がわからない、という顔をしている私に、響ははあとため息をつき、苛々した様子で言った。 「好きかっていう質問。何て答えたんだよ」 「あぁ……」 急な質問に多少驚きつつ、答える。 「分かんない……って、言った」 一瞬驚きで止まっていた涙が、話した反動でもう一筋流れる。 おかしい、本当にどうかしてしまってる。また熱でもあるんだろうか。胸がわしづかみされているみたいに痛い。苦しい。 「ひ、響……なんか、私変だよ……」 ぽろぽろと懲りずにまた涙を流し始めてしまう。響は無言でそんな私の側に来て、涙を拭ってくれる。その想像以上に優しくて温かい指先に、不意に心臓が高鳴るのを感じた。 (な、何で……) ドクン ドクン 煩い、心臓。静まれ、心臓。 ドクン ドクン ……音が、早い。それに、痛い。 193: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/30(月) 21 50 10 「おい」 突然俯いてしまった私を見て、声をかけてくれる。どことなく心配そうな声音に聞こえるのは気のせいだろうか。 「どーしたんだよ」 (だ、駄目) 心の中で一人葛藤している私に気付くはずもなく、さらに声をかけてくる。 「マジでらしくねーぞ、お前。向こうを傷つけたこと、まだ悔んでんのか?」 (駄目だって。 それに、確かにそうだけど……違う) 違う、違う。 この人のせいだ。 私はこの人のせいで、泣いている 「莉…「だ、駄目だってば」 「は?」 それ以上声をかけないで、話さないで。なんだか自分が壊れてしまいそうだ。 よっぽど様子がおかしかったのだろう、響が不意に私の顔を覗き込んだ。 (!!) 「……!み、見ないで」 「お前……」 驚いたような顔をしてこちらを見るその人と、目が合った。 194: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/30(月) 22 00 42 ぱっと顔を背けるが、後の祭りで見られてしまっただろう。驚いたような響の表情が手に取るように分かる。 自分でもびっくりするくらい、顔が熱い。だから絶対、今の顔は真っ赤だというわけで。加えて未だ心臓がドキドキ鳴っていて落ち着かない。 「……っ」 「……」 こんな顔(しかも泣き顔)を見られて恥ずかしくないわけがないので、そのまま俯く他に為す術がなかった。 どうしよう、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。何か言わないと。 迷っていると、この沈黙を向こうの方が破ってくれた。 「……何時の間に」 「……?」 「そんな『女』の表情(かお)をするようになった?」 「え―――っん!!」 私の言葉は響の唇によって飲み込まれた。 「ちょ、……んぅ……!!」 今までにないくらいの激しい口づけ。角度を変えて何度も貪るように口内を犯される。堅く閉じていた唇はいとも簡単に割られ、熱い舌の侵入を許してしまった。 「んっ……はぁっ……」 息が詰まってきて、腰が砕けそうになるとしっかりと腰と背中を支えられる。キスを続けたまま、少しだけ引きずられたかと思うと、二人が密着した状態のままでいつの間にかベッドに倒れ込んでいた。 * ちょ、本当中途半端ですみません。この先は慎重に話を進めたいので(←)今日はここまで……。 198: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/02(水) 22 17 37 くちゅっ……と、時折水音が鳴り響いている。 「んっ……はっ……」 ベッドに組み敷かれた状態で、必死に激しい接吻の中呼吸をしようと試みる。酸素が足りない、欲しい。 何も考えられなくて、相当時間が経っていたと思う、やっと唇が離れた。それでも名残惜しそうにツーっと銀色の糸が二人を繋いでいる。 はあはあと息も荒く、動く気力さえ失ってぼーっと響を見上げていると私の上に本格的に覆いかぶさって来た。両手を相手に握るように重ねられ、乗られているので身動きが出来ない。 「何、して……!響!」 ようやくはっと我に返って私は声を上げた。 「だ、駄目だってばっ……」 響が私の首元に顔をうずめてちゅ、ちゅ、という軽い口づけを何度も何度も落とす。顔の辺りに当たる髪の毛がくすぐったくて、身を捩っていると突然首筋にチクリという痛みが走った。 その痛みでまた私は我に返る。 「ま、待って!!」 本当にこのペースだと、ヤバい。今みたいにこのままこの人の波にさらわれるか、必死で抵抗するか。私にとっての選択しはただ一つ、相当頑張らないと。 せめてもの抵抗で動かない体を無理に動かそうとすると、今度は首筋をぺろりと温い舌で舐められる。 「ひゃっ……ね、いきなりどうして……!」 「……悪ぃ。止まんねーかも」 「あっ……!?」 寝巻用の備え付けの浴衣の胸元を肌蹴させられる。 「やだ、む、無理だって……!」 口ではそう言うが、実際動けないので本当に口だけだ。 ……しかも、お風呂上がりだったからブラ付けてない。この浴衣は意外と分厚いから今まで大丈夫だったのに。最悪…… 「嫌ってば……!!」 半分涙目で訴えると、ぴくりと響の手が止まった。 199: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/02(水) 22 23 15 手が止まった。今しかチャンスはない。 「何でこんなこと……こ、こういうことは、普通好きな人と……「じゃあなればいいだろ」 「え?」 「好きになれよ。問題ないだろ」 挑戦的な笑顔。例えるならば、試合中に「これは、いける」と確信したときの自信めいた強気な顔。そんな顔を至近距離で見せられ、また心臓が高鳴る。反抗しなきゃいけないのに、抵抗したいのになぜか出来ない私を良いことに、響はまた止まっていた手を動かし始めた。その手にまた私はパニックに陥る。 「俺は、」 「やっ……ど、どこ触って」 さっきから言葉は半分しか耳に入ってきていない。 「嫌いじゃないぜ。莉恵」 「んっ……!!」 206: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/04(金) 22 06 40 「やっ……んー!ちょっ……」 「やっぱCの上くらい?でかいよなァ、ここは。着やせするタイプか?」 「う、うるさ……!やめっ」 両胸を大きな手で掴まれ、やわやわと揉まれる。自分のものとは思えないような声が時折出て嫌になる。抵抗しようと手を伸ばしたら、響の片手によって私の両手はまとめて捕えられた。そのまま両手を頭の上に持っていかされる。 もがいても暴れても、所詮は男と女の力は歴然だ。 (恥ずかしすぎるってこんな格好!) 今や浴衣はほぼ完全に前が開いていて、上半身裸に等しい状態なのだから。元々明るい電球をつけていなくて良かった。それでもオレンジっぽいぼうっとした光があるが。逆にこの暗さ加減、怪しい気がする。 「あぁっ……!」 いきなり胸の先端を指でぐいっと押され、体がびくんと跳ねる。それを見た響は同じことを何度も繰り返し始めた。 「やあっ……だ、めだって……っ」 「ここは喜んでるみたいだけど。硬いし」 ぎゅ、と摘まれて思わず顔を顰める。声が出そうになった瞬間、唇を奪われた。その声を飲み込もうとするように。 「んっ」 さっきよりは穏やかに、しかし私にとっては激しいくらいのキス。 その間に響の手は下腹部辺りをなぞり、浴衣を脱がせるように体全体を撫で上げた。 (や、やば……ほとんど脱がされてる) 207: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/04(金) 22 12 55 何か言いたいことは山々なのだけれど、唇がふさがっていて。情けない事に、力が抜けてしまっていてこれ以上抵抗するのも難しくなってきていた。 「……っ!んーっ」 太ももの辺りをさまよっていた手が、下着越しに秘部を捕えた。腰が逃げようと動くが、許さないというように割れ目をゆっくりとなぞられた。 「んはぁっ!あぁっ……嫌……!」 ようやく解放された唇から洩れる声。 「嫌?説得力ねーな、結構濡れてんぞ」 「なっ……ち、違」 「違うことないって」 分かってる、そんなことは自分が一番。体の中心が熱い。そこから熱いものが外に向かって流れだしていることも。 「やめっ……!おかしく、なっちゃ……!!」 「壊れろ。壊れた莉恵が見たい」 「馬鹿っ……ひ、ひゃぁ!?」 下着の横の隙間から指を滑り込ませてきた。その手がゆっくりと秘部を弄り始める。その瞬間、体が何だかふわふわしたような、それでいて一気に脱力するようなよく分からない感覚に襲われた。 (な、何、これ……) ぞくぞくする。桐生のときと全然違う、浮いているみたいな。 213: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 18 18 「あぁっ……ん」 腰に力が入らない、がくがくしてきた。こんなの初めてだ、一体どうしてしまったんだろう。 これ以上響に手を動かされてはたまらないので、知らず知らずのうちに太ももに力を入れてぎゅっと手を挟んでいた。 「そんなに良い?」 「ち、ちがっ……ひ、びき!」 「ん?」 「手、止めて……何か変!おかしい、私! 力入らな……頭真っ白で……っひぁ!?」 くちゅくちゅと微かな水音を立てて、指が秘部に押し入ろうとしてきた。滑りが良いせいか以前ほどの痛みはないけれど……本当にやめて、壊れてしまう。 「ね、駄目だってっ……!」 「世間では」 耳元で囁かれ、体全体がびくっと反応する。 「それを『気持ち良い』って言うんだけど。知らねーのか?」 「んうっ……!」 ぴちゃぴちゃという厭らしい音が耳障りだ。抵抗する術もなく、ただただ喘いでいるだけのこの状態、穴があったら入りたいくらいだ。 「っ……!!あぁっ」 ぐっと一気に指を奥に指し込まれ、それと同時に体に電気が通ったような感覚がした。一気に息遣いも荒くなる。 「……ここか」 「あぁっ……ん、や、嫌っ……!!止めて……!!」 冷静な声が聞こえて、はっと自分の意識を取り戻し必死の思いでそう請うと。 ピタ (……え?) 214: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 25 50 文字通り、響の指がぴたりと止まった。妙な静けさが戻った室内に、はぁはぁという自分が息をする音だけが聞こえる。 (……止まった) 「ど、どうして……?」 思わずそう口走って、言ってからしまったと思った。 「どうしてって、お前がしつこく頼むからだろ」 ニヤリと笑って言ってくる。賭けてもいい、絶対、絶対に確信犯だこれは。 「今更何でって言われてもなぁ? その口で頼めるんなら、止めないこともねーけど」 「……っ」 カアっと顔が熱くなるのを感じた。こんなんじゃ、まるで私が触ってほしいみたいだ……。そんな恥ずかしい真似、出来るわけがない。 だけど、 (おかしい。変、ありえない。なんで私……) 「どうなんだ?」 黙っている私を見て問いかけてくる。何も言い返せないでいると、ねっとりと胸を舐めあげられた。 「んゃっ……!」 「黙っててもわかんねーぞ」 顔を近づけられ、そう囁かれた瞬間、私の中で何かが弾け飛んだ。とうとう頭がおかしくなったのかもしれない。 「……いで」 「え?」 「と……止めないで……響」 震える声でそう頼む。 215: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 32 25 「よく出来ました」 言い終えた途端、ものすごいスピードで指を入れたり抜いたりしだした。当然それに私の身体がついていけるはずもなく、 「んあぁっ……!ちょ、待……!!」 「無理」 「はぁっ……はぁっあぁ……!」 さっき見つけられた敏感な箇所ばかり攻められ、早くも体が限界に近い。だけど、頭に浮かぶのは嫌とか拒否とかそういう類のものではなかった。 「ん、や……!はぁっなんか……」 くちゅくちゅと絶え間なく、さっきよりも遥かに大きな音が響いた。それすら気にならないほど、何か巨大な波に飲み込まれていく自分自身を感じる。 「も、駄目っ……!!んっあぁっ……!!!」 体が大きく仰け反り、それと同時にすーっと頭の中が白み始める。そこでぷつんと私の意識は途切れてしまった。 216: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 40 14 ―――――…… 「……ん」 重い瞼を薄らと開けると、白い天井が目に入る。知っているような知らないような部屋だ。あぁそうそう、今合宿中で。けど私こんな部屋に泊まってたっけ……? しかもなんだか動きづらい。 外からは眩しいくらいの日差しを感じる。 今何時だろう。 そう思ってふと視線を横に向けると。 「っ………!!??」 (が、頑張った!!よく声抑えたよ私!!) 何故かというと、隣には我らがキャプテン且つ生徒会長の相川響の顔(ドアップ級)が。寝起きには少々刺激がキツイ。← そしてさっき動きづらいと思った正体は、この男だった。 (どこに手回してんのよ!!) 腰のあたりに両手を回され、ご丁寧に足(しかも両足)まで絡まっている。な、何このいかにも『昨夜如何わしい行為が行われていました』みたいな…… 「……あぁぁぁ!!??……う、嘘、え、けど確かに私昨日ここで……。 え、本当に?ど、どうしようどうしようま、まだ死にたくないよ誰か助けてぇぇぇ!!!」 「……うっせぇぇええええ!!!」 217: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆12/08(火) 21 46 20 ……耳がキーンって言ってる。絶対この人の声のほうがうるさかった、今。 それにしてもなんだかすーすーする。肌寒いっていうか。……肌寒い? (えぇえ何この格好!?) よくよく見てみると、身体に浴衣を緩く羽織っているだけのような状態。もちろん前は閉まっていない。 (む、胸とか丸見えだし……) 響はというと、いつ脱いだのやら上半身裸だ。こんな状態で今まで寝ていただなんて、安らかに夢の中へと旅立っていた自分が信じられない。 「……おい「さっさようなら!」 慌ててベッドから抜け出そうと試みたが、あっさりと腕を掴まれて布団の中にダイブしてしまった。 「ひゃっ……!」 その拍子に響の身体に、私は倒れこんでしまって。正確に描写すると、私の胸が、直接…… 「あー……柔らけぇ」 「変態!!馬鹿!!離してよ!!」 大声で罵りつつ、私はさーっと青くなって昨日の晩の出来事を思い出していた。思い出したくない、けど考えないと。 (ま、まさか……私、最後まで、シ……シちゃった?) young leaf 続き10
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117: 名前:浅葱☆09/05(日) 10 35 44 優奈ちゃんの、躊躇いも無い声が真っ直ぐに私の耳に届いて、消えた。 覆っていた手を離し、視線を優奈ちゃんに向けた。 「ウイは、我慢しすぎだと思うよ」 その一言は、素っ気無い言葉のようで、優奈ちゃんの優しさが込められていた。 「チアキは待ってるよ、ウイのこと。ウイが苦しんでることも分かってる。……ウイの気持ちも分からないわけじゃないよ。でも、これはウイの人生だから、ウイの好きなように生きても良いんじゃないかな」 優奈ちゃん――……。 視界が滲む。 最近泣くことが多くなった気がする。 「優奈ちゃん……私、良いのかな? 蓮君……許してくれるかな?」 「そんなの分かんないよ。優奈には分かんない。でも、レン君、ウイのことを憎んだり恨んだりはしてないと思う」 「……本当……?」 優奈ちゃんの言葉の一つ一つが重く圧し掛かってくる。 でも、決して苦しいわけじゃなくて、優奈ちゃんの優しさの重みだ。 「チアキのところ、行かなくて良いの?」 ハッと気づいて立ち上がる、が、心にブレーキを掛ける。 「私、良いのかな。津田のこと散々傷付けてきたのに……」 「さっきも言ったじゃん。チアキはウイのこと待ってるよ」 「……会いに行って、良いのかな」 「ウイ、会いに行かなきゃ後悔するよ!」 優奈ちゃんに背中を押され、「有難う」と言って歩き出した。 それがいつの間にか小走りになり、最終的には全力で走っていた。 会わなきゃ、津田に。謝らなきゃ。 そこで、ハッとして、足を止める。 ……その前に、会わなきゃいけない人が居る。 意を決して、止めた歩を進めた。 118: 名前:浅葱☆09/06(月) 18 51 50 ピンポーン 前来た時とは違う緊張が、私を襲う。 「はーい! ……あら、憂ちゃん。また来てくれたの?」 「今日は。あの……、蓮君のお墓って、何処にあるんですか……?」 突然来て、そんなことを訊いて失礼だったかな、と思ったけど、蓮君のお母さんは快く教えてくれた。 教えてくれた場所が書かれた地図を手に、蓮君のお墓へ向かった。 「此処だ……」 歩いて数分のところに、それはあった。 『杉野森家之墓』 と書かれたお墓を発見する。 深呼吸して、蓮君に語りかけるように、話し始めた。 「……蓮君、私ね、好きな人が出来たの」 聞いていますか? 蓮君。 「その人のこと、初めは最低な奴だって思ってた。 でも、いつも迷子になる私を見付けてくれて、私のこと、大事だって、言ってくれた」 もう、懐かしい。 そんなに月日は経ってないのに。 鼻の奥がつんとした。 今、泣いちゃ駄目だ。 「私も……その人のこと、大事にしたい……っ」 私の、津田への想い。 「……ねぇ、蓮君。 私のことを憎んでる? ……恨んでる? ごめんね、蓮君は私のこと、守ってくれたのに。 でも私、もう我慢したくない。 自分の人生だから……好きなように生きてみたいの」 我が儘かな? 心の中で独りでに呟く。 「でも蓮君なら許してくれるって、私の気持ち……分かってくれるって、信じてる。 有難う、私のこと守ってくれて……。 こんな言葉じゃ言い表せないくらい、本当に感謝してる。 ……でも、私生きてみるね。精一杯生きてみる。 それで、私なりに頑張ってるって思えたら、また此処に来る。 そのときは、その人と一緒に来るね。 蓮君にも見て欲しいから。私が好きになった人のこと……。 ……ね、約束だよ」 そっとお墓に触る。 涙は流さない。 これは始まりだから。 またね、と心の中で告げ、愛する人の元へ駆け足で向かった。 119: 名前:浅葱☆09/11(土) 11 26 31 津田の家は、灯りが付いていた。 そういえば、津田の家に両親は居るのだろうか。 だったら今からの訪問は迷惑だろうか。 でも、迷っているわけにもいかない。 ドキドキしながらインターホンを押した。 物音。 ガチャ、と扉が開いた瞬間にそこに居たのは津田だった。 ――上半身裸で。 「憂!?」 「つ、津田、なんで裸……っ」 「あ、悪い。今風呂入ってたから」 そう言われれば髪が濡れている。 っていうか、色気がヤバいのだが。 「そ、そうなんだ……っ」 「……なんで来てくれたの?」 「え!? あ、えと、あの……」 「……会いに来てくれたの?」 取り敢えず首を縦に振る。 多分、というか絶対、私の顔は赤い。 「なんで逃げたの?」 「……」 「ごめんってどういうこと?」 「……」 「なんか言えよ」 「……」 「……俺のこと、好き?」 どき、と胸が高鳴った。 今、言わなければ。 私はそれを伝えにきたんでしょう? 「……うん」 津田は何も言わなかった。 顔を上げ、津田の目を見つめて、言う。 「好きだよ」 125: 名前:浅葱☆09/13(月) 21 53 37 すると、津田の顔が一瞬にして赤くなった。 その変化に今度は私が驚いた。 「……津田、顔、真っ赤」 「……憂の所為だよ、馬鹿」 「なっ、何回馬鹿って言う……!?」 腕を引っ張られ、強引に家の中に入れられた。 津田が勢いよく玄関の扉を閉める。 それと同時に唇に生温かい感触。 「ん、……っ」 津田の濡れた髪が顔にかかって、私の顔を濡らす。 そういえば家の人は居ないのだろうか? さっきから人の気配を感じない。 考えていたら唇が離れた。 「……っ、冷たいってば……」 「あ、わり」 津田が、タオルで髪を拭きながら、 「……上がってく? てか」 津田の次の言葉を待つ。 「……泊まってく……?」 「え、」 「あー別にヤろうとかそういうんじゃないから。ただ、一緒に居たいっつーか」 無意識にホッとする。 一瞬考えて、ゆっくり頷いた。 126: 名前:浅葱☆09/13(月) 22 11 21 「じゃあ、上がって」 「あ、でも津田……っ」 先ほどからずっと気になっていたことを訊いてみようと口を開いた。 「その、家族の人、とかは? 居ないの?」 あんまりプライベートだったかな、と思ったが、訊いてしまったものは仕方ない。 少しドキドキしながら津田の返答を待った。 「あー……うん」 ……やっぱり、聞いちゃいけないことだったかな。 「……津田、ずっと1人暮らしなの?」 「うん」 「……寂しくない?」 通されたのはリビング。 結構広い。 こんなところに一人暮らし……津田の家ってお金持ちなのかな……? 「座ってて」と言われ、ソファーに座る。 わ、ふかふか。 「寂しくねぇけど、たまに……俺はなんでこんなとこに居るんだろうな、って……思う」 この前と同じように目の前にお茶を出された。 津田が横に座る。 「……ごめんね」 「だから、そのごめんってなんなの?」 笑いながら言う。 「あ……あの、津田のこと、傷付けちゃったから……ごめんって、思って……」 「……うん、傷付いた。だから」 津田がこっちを見て、微笑む。 ていうかニヤニヤしてる。 このパターンは…… 「憂が癒して?」 やっぱり……!! 「え、つつ津田!?」 「何?」 はい、今のこの状況を説明しましょう。 目の前に津田の顔。 頭の真横に右手、脇腹の真横に左手。 ……つまり、逃げられない状況。 132: 名前:浅葱☆09/21(火) 19 04 21 「さ、さっきそういうことしないって言ってたじゃん!」 「あぁ、でもキスなら良いでしょ?」 「良いとか、私了承してな、!」 言い終わる前に口を塞がれる。 ちょっとは私の話を聞けぇ!! 「っふ……ん、ん……」 流石に限界だと思い、胸板を押す。 名残惜しそうに透明な糸が繋いだ。 「も、いきなり……っ」 「エロいね」 「何処が!!」 「憂の全部が」 そう言うと、津田の人差し指が私の唇を塞いだ。 「憂のこの唇、とか、」 私の身体の至る所に触れられる。 「キスだけで涙目になってるとことか、真っ赤になったほっぺとか、真っ白な鎖骨とか……――」 津田の口角が上がり、ふ、と微笑った。 「可愛くて、――穢したくなる」 私の首筋に顔を埋めた。 さらさらな髪が頬に当たってくすぐったい。 刹那、首筋にちくりという痛み。 思わず「んっ」という声が漏れた。 「あーもう手出さないつもりだったのになぁ」 津田のその言葉で一瞬にして我に返る。 私が口を開こうとするより先に、津田が告げた。 「ごめん」と。 133: 名前:浅葱☆09/21(火) 19 13 15 「え――……っちょ、」 津田が軽々と私を持ち上げた。 これは所謂お姫様だっこという奴ではっ ……って、そんなこと考えてる場合じゃない。 これはマズイ、この状況は完璧マズイ。 だって、ベッドの上とか、絶対、“そういうこと”でしょう。 「つつつ津田っ、津田!?」 抵抗の言葉が出て来ず、津田の名をひたすらに呼んだ。 だが、津田の耳には届いていない様子。 こういうことしないって言ったのに……! 私が抵抗しないことを確認したのか、丁寧に制服を脱がし始めた。 あんまりするする脱がされてくもんだから自分が何をされているのか気付くのに数秒かかった。 「や、待って、津田っ、待っ……!」 唇を津田の唇で塞がれる。 こうなると、漸く述べられた抵抗の言葉など無意味に等しかった。 長かったキスが終わると、私はもう裸で、恥ずかしくて隠れようにも何処にも隠れられそうになかった。 津田の手が、乳房を捉え優しく揉みしだく。 先端の突起を舌でねっとりと舐め上げ、上目遣いで私の様子を窺う。 「ん、あ……っ」 我慢してもやっぱり出る声が恥ずかしい。 そんな私を見て嬉しそうな顔をする津田にも少し腹が立つ。 ……こういうことしないって言ったくせに!! 134: 名前:浅葱☆09/21(火) 19 33 42 すると、津田の少し冷たい指先が私の秘部に触れた。 突然のことに身体がビクンと跳ねた。 「あ、っ」 もう充分濡れていた私のそこに指を埋めていく。 それだけで、もう声が出てしまう。 津田の指、一つ一つに身体が反応してしまう。 同時に胸の突起と秘部の蕾も弄ばれる。 ビクビクッと、身体が仰け反り、私は絶頂を迎えた。 そして、部屋にカチャカチャという音が響く。 それはこれから私たちが一つになる合図だということを言葉も無く告げていた。 一気に身体に緊張が走る。 分かってるけど、津田のことが好きだけど、――怖い。 どうしよう、怖い。 自身にゴムを装着した津田が、それを秘部に宛がう。 どうしよう、未だ、心の整理がついてないのに――。 ……そう思っていたら、津田の動きが、止まった。 「……? 津、田?」 すると突然視界が先ほど見ていた景色と変わる。 温もり。 あぁ、……私、津田に抱き締められてるんだ。 「ごめ、ごめん……怖かった、よな。……本当にごめん……」 弱々しい津田の声。 一体何があったのだろう。 何が津田をこうさせた? 「だから、だから泣くな」 137: 名前:浅葱☆09/25(土) 16 03 10 ……泣く? 私、泣いてる? 「ごめん、今日はちょっと、久し振りに憂と一緒に居られて、憂が好きって言ってくれたから、浮かれてた」 何度もごめん、ごめんと謝る津田に私は何も言えず、ただ抱き締められているだけだった。 「ちょっと、もっかい風呂入ってくるわ。頭冷やしてくる」 そう言って、立ち上がろうとした津田の腕を、殆ど無意識で掴む。 驚いた顔を此方に向ける津田に、何を言えば良いのか分からず俯いた。 ぽんぽんと頭を軽く叩かれる。 考えるよりも早く、声が出た。 「い、いよ!」 津田が再び驚いた顔で私を見る。 自分の言った言葉に恥ずかしくなり、津田の顔など見ずに言葉を続けた。 「ごめん、ちょっと吃驚して、それで泣いちゃっただけだから! もう、だ、大丈夫、だから! だから……その、あの」 言葉が続かない。 なんと言えば良いんだろうか。 「……っ、が、我慢しないでっ……!」 私の、精一杯の言葉。 恥ずかしくて、恥ずかしすぎて、目を堅く瞑る。 ふと、唇に違和感を覚え、恐る恐る目を開いた。 目の前に、津田の顔。 あ……キスされてるんだ。 唇と唇が触れ合うだけのキス。 だけど、凄く心地よかった。 138: 名前:浅葱☆09/25(土) 16 16 11 唇が離れ、目が合う。 照れくさかったけど、不思議と笑みが零れた。 「……でも、良いの? 憂」 「う、うん。平気。全然大丈夫」 「馬鹿、強がんなよ。止めたくなったら直ぐ言えよ」 ……馬鹿は津田じゃん。 途中で「止めたい」なんて言ったら辛くなるのは津田でしょう? 私、津田にいっぱい辛い思いさせたから、少しでも幸せになってほしいの。 「大丈夫」 深呼吸して、もう一度口を開いた。 はっきりと、津田に届くように。 「津田のこと、大好きだから」 津田の顔が一瞬にして赤くなったのが、薄暗い部屋でもはっきりと分かった。 恥ずかしさを隠すかのように、再び私の秘部に自信を宛がった。 「良い……?」 「うん」 ゆっくり、だけど確かに、津田のモノが徐々にナカへ入ってくる。 「ぅ……い、痛、っ」 下腹部に激痛が襲う。 目を堅く瞑り、痛みに耐える。 「は、憂、こっち、見て……っ」 恐る恐る目を開ける。 そこには先ほどの照れた顔とは打って変わって、顔を顰めた津田が居た。 津田のこんな表情、見たの初めてだ……。 139: 名前:浅葱☆09/25(土) 16 34 08 「ん……っふ」 すると、突然キスをされた。 深いキス。 「んん、っ」 唇が離れる。 キスばかりに気を取られていた所為で、津田のそれが私のナカへ入りきっていることに気が付かなかった。 「憂、大丈夫? 動く、よ?」 津田がゆっくりと動き始めた。 それでも未だ怖くて、やっぱり身体が強張る。 「憂、力、抜いて」 津田自身も余裕がないのだろうか。 途切れ途切れに聞こえた言葉を、私は素直に実行できなかった。 否、実行しようと試みたものの、出来なかった。 「や、無、理……っ」 “初めて”を言い訳にしたいわけでもなかったが、初めての私がどれだけ努力してもそう簡単に力など抜ける筈もない。 それどころかますます身体は強張るばかりだった。 シーツをギュッと掴む。 「憂、好きだよ」 「え……」 津田の突然の言葉に驚き、一瞬力が抜けたのを津田は見逃さなかった。 ピストン運動を始める。 それによって私に快感が襲ってきた。 「あっ、あっ、駄目……!」 津田に奥を突かれるのと比例して声が出るから恥ずかしい。 快感で頭がおかしくなりそうだ。 思わず、津田の首に手を巻き付け、津田に抱きついた。 「津田っあぁ、っ」 「憂、千昭って、呼んで……っ」 津田の言葉を素直に受け取る。 「ち、あきっ、千昭……! んぁあっ」 私がそう言ったことに満足したのか、津田が腰の動きを速めた。 「あっ、ぁ、駄目……! 千昭、っ!」 そして津田が自身をギリギリまで抜き、一気に突き上げた瞬間―― 「あぁあ……っ!!」 「イッ、……!」 大きな波のようなものが、私を襲い、今まで感じたことのない快感が私の身体に廻った。 そして、大きな嬌声を上げ、私たちは2人同時に果てた。 140: 名前:浅葱☆09/27(月) 19 29 33 目覚めると、一番最初に見慣れない天井が目に入った。 辺りを冷静に観察する。 そういえば、泊まったんだっけ……。 起き上がろうとすると、下腹部がズキと痛んだ。 でも、決して不快な痛さではない。 これは――私が今幸せだっていう証拠だよね。 再びベッドに寝転ぶ。 私の横には無防備な寝顔を見せる津田が居た。 ……私、津田と―― そう思うと、急に恥ずかしくなり、布団を頭まで被る。 そういえば今日は休日だったな……。 暫く津田の寝顔を眺めていたら、津田が小さな声を出して目を開けた。 「……憂……?」 「……津田、起きた……?」 「…………うん」 なんか津田が可愛い……。 思わず笑顔になると、津田が気に食わなかったのか、「何?」と不機嫌そうな顔で言った。 「なんでもない」と答える。 「なんか、身体べたべたする」 そう言われればなんだか私も身体がべたべたするような。 ……汗? 「……風呂、入る?」 「え」 私の返事を待たずに、「お湯沸かしてくる」と言って、腰にタオルを巻き、部屋を出て行った。 津田が出ていった扉を数秒見つめ、ふぅ、と溜息を吐き、ベッドに倒れ込んだ。 なんだか、色んな事が一気に起きて、ちょっと混乱してる。 本当は何一つ解決なんかしてないんだけど、でも、幸せ。 ……幸せ。 そして暫くすると、津田が戻ってきた。 「行くぞ」 そう言って、裸の私をお姫様だっこした。 「えっ……ちょっと! まま待って!!」 落とされぬよう、津田の首に手を回して暴れる。 「ったく、黙ってて」 「だだだって……っ恥ずかしいって!」 「昨日全部見たって」 「そ、それとこれとはっ」 せめて身体を見られないように津田にしがみつく。 お風呂場の扉を開けると、もあっとした空気が私たちを包んだ。 広いなぁ、と思ったのが、一番の感想。 浴槽のお湯に2人で浸かるとちゃぷ、という音がした。 ……これ、凄く恥ずかしいんだけど……! 143: 名前:浅葱☆10/01(金) 22 09 08 身体を見られたくなくて、津田に背を向ける。 すると後ろからあからさまに不機嫌そうな声が飛んできた。 「……なんでそっち向いてんの」 「だだだって、恥ずかしいじゃん!!」 膝を抱えて、丸くなる。 少しの沈黙の後、津田が私の名前を呼んだ。 「憂」 「な、何?」 「キスして?」 「は!?」 「俺、今凄い憂にキスされたい。キスして」 「むむ無理だって! 絶対無理!!」 「なんで」 「は、恥ずかしいでしょっ」 「俺はいつも憂にしてんのに……」 「だ、だって津田は余裕な感じじゃん」 「んなことねーよ」 「嘘」 「ホントだって」 絶対嘘だ。 だって津田はいつも余裕で。 私ばっかり追い詰められて。 津田の言葉をもう一度否定しようとしたら、思いがけない言葉が聞こえてきた。 「……お前にするときはいつも緊張してんだから」 ……え? 津田の方を見ると、照れているのか、お湯の熱によって火照っているのか顔が赤い。 「こっち見てんじゃねぇよ」 leave 続き6
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166: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 10 53 08 蓮くんと武塔先生がギャーギャー言っていると…。 「何抜けだしてるですか、武塔先生なのですよ」 なんと、花ちゃんが武塔先生を追っかけてきた。 あの小っちゃい花ちゃんが!! ムスッとした顔で武塔先生を見つめる。 「武塔先生、そんなに元気なら学校に戻って仕事なのですよ~」 そう言って、武塔先生の服の襟を掴んで 引きずりながら行ってしまった。 「花先生~~~」 悲しい叫びだけが響いた。 「やっとうるさいのがいなくなった」 「先生をそんな風に言っちゃ可愛そうだよ?」 「別に可哀想も思わないな」 「もー」 お互いに長いつきあいだから、 こういう口論にいたっては情がないのかな…? そうなると、武塔先生が可愛そうに思えてくる。 「おい」 「ん?」 「あした、お前の家に迎えにいく」 「本当!? ありがとう!!」 「寝坊したら、俺専用パシリな」 「だいじょーぶ!!絶対ない!!」 「待ち合わせ時間は10時だ。 9時には迎えに行くから、待ってろよ?」 「うん! あ、家についたよ!」 「ここがお前の…」 「小っさいけどね~」 「いや、結構でかいんじゃねーかな」 「そんなことないよ。じゃ、また明日! 送ってくれてありがとう!」 「あぁ、じゃあな」 スタスタ… 私は蓮くんの姿が見えなくなるまで、 家の中には入らなかった。 蓮くんと明日、もっと距離が縮まりますように…。 170: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 13 04 04 ~翌日~ とうとうこの日がやってきた。 遊園地の日---。 蓮くんが迎えに来てくれるから、 道に迷う心配はない。 それに、少しでも一緒の時間を過ごせる。 お母さんは長期出張でいないし、 お父さんは海外でお仕事。 ほぼ一人暮らし感覚。 ピーンポーン… 蓮くんだ!! 「はーい」 ガチャ… 「迎えにきた」 「準備はできてるよっ!行こうか!」 戸締りをして、家を出た。 今日の天気は、晴天。 何をしても上手くいきそう。 「お前、俺だけ見てろよ」 「どうして?」 「どうしてもだ。 蒼太のこと見てたら、 パシリやらせるからな」 「何で半分脅しなの…」 「いじりがいがあって、楽しいから?」 「ドSだぁぁぁぁぁぁ」 「うるせぇ。…あれ、蔵間じゃねぇか?」 「え? どこどこ~?」 遊園地の入り口に、蔵間くんが立っている。 雰囲気が大人っぽくて気づかなかった。 「あ!! 蓮、舞ちゃん!!」 「蔵間くん、おはよう」 「おはよ!蓮とのデートはどうだった?」 「で、でーと!!??」 「おい、蔵間」 「はいはい、ごめんね~」 笑いながら私の頭を撫でる。 子供じゃないよ!! 「あ、みんなおはよう」 「蒼太くん、おはよう」 「舞ちゃん、おはよう」 「意外と早く来るんだな」 「蓮こそ、舞ちゃんのお迎えなんてずるいね~」 二人の間に火花が散っている。 蔵間くんはやれやれ…と肩を落とした。 「火花散らしてないで。時間なくなるよー?」 「チッ…。舞、最初は何に乗るんだ?」 「んー、そうだなー…」 「メリーゴーランドでもいいよ、俺は!」 さすが可愛さもある、蒼太くん。 女の子の好きな乗り物も乗れるなんて!! 「俺はお前が楽しんでくれんなら、乗ったって構わねぇ」 蓮くんの意外な発言に、驚いた。 「え、蓮くんいいの?」 「仕方なくだ。早くしろ」 「うん!」 そうして悩んだ結果、 私はジェットコースターに乗ることに。 二人ずつ座るから席をじゃんけんで決めることに。 私の隣は… 「舞ちゃん、よろしくね!」 蒼太くんになった。 蓮くんと一緒じゃなくて、ちょっと残念。 「うん、よろしく」 「何で男と座らなきゃなんねんだよ…」 不機嫌な蓮くんに蔵間くんが言う。 「それは俺もだよ。ま、お互いさまね」 ジェットコースターが動く。 「私、ジェットコースター大好きなんだ!!」 「そうなの? なら、気が合いそう!!」 蒼太くんが嬉しそうに言う。 ジェットコースターが徐々にてっぺんへ上がっていく。 そして---。 「きゃーーーーー!!」 思いっきり叫ぶ!! もう最ッッッッッッッ高!!! ~広場~ 「あぁ~、超楽しかった!!」 「うん、最高だった!!」 蒼太くんもすごく楽しそう。 でも、蔵間くんと蓮くんは違った。 「男の隣で何も楽しくねぇよ」 「蓮の隣は二度といやだね…」 二人に何があったかは、 分からないけれど楽しそうじゃないのは分かる。 171: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 14 07 52 ~メリーゴーランド~ 次はメリーゴーランド!! 私は馬車にのりたくてウキウキ!! 隣のお相手は蓮くん! 「ねぇ、何かあの人かっこよくない~?」 「いやだぁ~!めっちゃタイプ!」 まわりにいる女の子たちの黄色い声。 「ほら、早く乗れ」 「あ、うん!」 ガチャンッ! メルヘンチックな音楽をバックに、 私はお姫様気分を味わう。 その正面で、蓮くんはじっと見つめている。 「ふぅ~!超楽しい!!」 「お姫様気分か?」 「うん!お姫様!王子様がいないけどねー」 「いるじゃねぇか」 「え…んン!?」 それは突然のことだった---。 蓮くんが私の唇にキスをした…。 別に嫌じゃなかったけど、 告白もしていないのにされるのは嫌だった。 ドンッ! 私は抵抗して蓮くんを突き倒した。 「…っはぁ。何すんの、蓮くん!!」 「…ってぇ。キスに決まってんだろ」 「どうして…」 「俺が舞のこと、好きだから」 「え…」 「前にも言ったろ」 「でも、イキナリ…」 「じゃぁ、蒼太なら許したのかよ?」 「そ、そういうわけじゃ…」 「なら、何なんだ」 「それは…」 ガチャンッ! “お下りのお客様は、焦らずにお下りくださいませ” 「タイムオーバー」 スタスタ… 蓮くんは一人で先に降りてしまった。 私はちゃんと向き合って、 告白した後にキスをしたかった。 ちゃんとしたデートのときに、キスしたかった。 「ごめんね…蓮くん…」 蓮くんの背中につぶやいた。 172: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 14 17 37 ~観覧車~ 蒼太くんの希望で乗ることになった観覧車。 私はさっきのことで頭がいっぱい。 蓮くんは一人でどこかに行っちゃうし…。 「気にしないで、舞ちゃん」 蔵間くんが優しい言葉をかけてくれる。 「うん…」 「さ、舞ちゃん一緒にのろ?」 「そ、だね…」 蔵間くんは蓮くんを探しに行ってくるから、 観覧車には乗らない。 「じゃ、楽しんでね」 「うん。ごめんね、蔵間くん」 「蓮の勝手な行動だから、謝んなくていいよ」 「舞ちゃん、乗ろ?」 「うん」 私と蒼太くんに手を振ってから、 蔵間くんは遊園地の広場へと姿を消した。 173: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15 05 53 ~観覧車の中~ しばらくの沈黙。 蒼太くんは心配そうに私を見る。 「蓮がそんなに気になる?」 「え…」 「舞ちゃんは分かりやすい」 「…うん」 「いきなりキスされて、 そのまま流されるような人はいないから 舞ちゃんは正しいと思うよ」 「…うん」 「でも、後悔してるんだ?」 「あのとき、受け入れればよかったのかな?」 「うーん…。無理やり受け入れるのはできないんじゃないかな」 「そうだよね…」 「せっかくの遊園地なのにね」 「…」 「俺が先に舞ちゃんとっても、 文句ないって態度かな蓮は…」 「っ…」 「泣いてもいいんだよ?」 「っ…ふっ…」 「俺、片思いじゃん。 舞ちゃんになら胸貸してあげるからさ」 「そ…たく…ん」 「俺ならこんな風に舞ちゃんを泣かせないから」 「うん…」 「考えといてね。俺が彼氏になることも」 「…う…ん…」 「あと10秒で下に着くね」 「やだ…。涙拭かないと…」 私が立って、カバンからティッシュを取ろうとしたとき…。 ガタンッ! 間違えて足を崩して、蒼太くんを押し倒してしまった。 「うわっ!」 ドンッ! チュッ その衝撃で蒼太くんにキスをしてしまった。 その瞬間、ドアが開き… 「お疲れさ…きゃっ!」 「舞ちゃん、蓮連れてきたよー…」 「っ!!!!!」 ドアを開けてくれる女の人が声をあげる。 蔵間くんは絶句。 蓮くんは私と蒼太くんの状況に驚いている。 ダッ--- 「蓮くん!!待って!!」 ダッ 私は蓮くんに誤解だと伝えるために、 走り出した。 174: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15 25 40 「待って!!待ってよ!!蓮くん!!」 ガシッ 蓮くん腕を力いっぱいに掴む。 「あれは誤解なの!足を崩して…」 「俺には嫌だとか言っといて、 本命のやつには自分からすんのかよ…」 蓮くんが低い声で言う。 「え…?」 「最初っから蒼太が本命なら、 俺が来る意味も迎えに行った意味もなかっただろ」 冷たくて消えそうな声で私に言う。 それでも私は誤解を解こうとした。 「違うの!あれはね、私が間違って---」 「俺の気持ちを弄(もてあそ)んで、楽しかったか…?」 ズキンッ!! 心が張り裂けそうだった。 好きな人に、愛しい人につくり笑顔で言われるのは、 私にとって絶望のようなものであった。 「蓮…く…」 「もう近寄んな。顔も見たくねぇ」 ダッ… 蓮くんは低く、悲しい声で言って走り去った。 追うことができない私は一人、涙を流す。 待って…。待ってよ、蓮くん…。 お願いだから…私の話を聞いて…。 一人になった私をさらに悲しくさせるように、 空からは大粒の雨が降ってきた---。 175: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 15 44 59 ~蓮side~ 「もう近寄んな。顔も見たくねぇ」 俺は舞の話も聞かずに、 走り出してしまった…。 あの状況を見て、誤解だなんて思えねぇよ。 違うと思いたいけど、思えないんだ。 このままつらくなんのは耐えらんねぇから、 お前を突き放したんだ。 舞、どんな顔してただろ…。 でももう、そんなこと関係ねぇ。 俺はもう、アイツの顔は見たくないんだ。 早く俺の脳内から、存在を消すんだ。 遊園地に何を期待した? アイツに何を期待した? もしかしたら、フラれるってことも考えただろ? 分かってたけど、自信があった。 自信があったからなお、傷いたダメージは大きい。 もう、関わらないようにするんだ。 俺は不良。 女なんていらねぇだろ。 あんなやつ、早く忘れるんだ。 何度も自分に言い聞かせた。 俺の目が熱くなる。 大雨が頬を伝うように、 舞への思いも流されればいいのに。 雨の中、俺は走りつづけた---。 176: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 16 00 26 ~舞side(普通視点)~ 私は大雨の中、 傘もささずに歩いていた。 道行く人々に、哀れな目で見られた。 路地裏に座り込んで曇天の空を見上げた。 「バカだな…」 蓮くんにあんなこと言って、 蒼太くんとキスしてるってなったら 誤解も何も、信じらんないよね…。 蓮くんを傷つけたのは、私---。 一番つらかったのは、蓮くんだよね…? ごめんね。私が矛盾してるって言いたいんだよね? 分かったよ? もう顔を合わせたりしないよ。 近寄ったりしないよ。 「さようなら、私の好きな人…」 路地裏の黒猫につぶやいた。 177: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 25 06 ~翌日~ 「あ!!舞ちゃん!!」 教室に入ると、 蒼太くんが心配そうな顔で私に話しかけた。 「昨日、大丈夫だった?」 「ごめんね、なんかあんな感じになっちゃって…」 「やっぱり、蓮とは話せなかった?」 「うん…。話すら、聞いてもらえなかった。 でも、いいんだ。これが私の犯した罪だから…」 「舞ちゃん…」 「舞、何があったんだよ?」 康介が尋ねる。 鈴音も心配そうに見つめた。 「なんでもないよ」 「でも…」 「いいんだって。私が悪いんだし…」 ふと蓮くんの机を見る。 まだ学校には来ていない。 「舞、つらくなったら保健室に行きなよ?」 「ありがと」 つくり笑顔で鈴音に言う。 蓮くんには二度と振り向いてもらえない。 分かってても、涙がでてくる。 178: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 32 53 ガラッ 蓮くんが教室に入ってきた。 私は胸が熱くなって、 我慢できず教室を飛び出した。 蔵間くんは私を見た後に、蓮くんを見た。 「蓮…」 「……」 それだけが耳に残っていた。 ~保健室~ 保健室の先生に頼んで、 少しだけ休ませてもらうことにした。 「あなた、無理しすぎじゃない?」 保健室の女の先生が私に言った。 「ちょっと疲れてるだけですよ。 寝ればすぐに治ります…」 「そう? 相談なら先生に何でも言ってね」 先生は職員室に戻って用事を済ませてくるらしい。 また一人になった…。 「どうして、こんなに苦しいの…?」 蓮くんへの伝えきれなかった思いが溢れ出す。 ガラッ ふいに保健室のドアが開いた音---。 私は急いでかけ布団をかぶった。 180: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 48 04 「舞ちゃん?」 声の主は、蔵間くんだ。 「蔵間くん?」 私は飛び起きて、蔵間くんの姿を探す。 「いたー!」 「蔵間くん…」 「よかった。 昨日の話、蓮に無理やり吐かせた」 「え…」 「舞ちゃんは悪くないよ」 「っ……」 「蓮が怖がってるんだ。 自分に自信がなくなってね」 「もう関わらないよ」 「え?」 「蓮くんに顔も見たくないっていわれたから」 「うーん…」 「私ね、海外に行こうと思ってるの」 「えっ…」 「お父さんが海外にいるんだけどね、 一緒に住まないかって連絡あってさ…」 蔵間くんは私のことを切ない目で見る。 「そんな悲しい目で見ないでよ。 そうすればさ、蓮とは関わりもなくなるし…。 昨日の事でこうなったわけじゃなくて、 私が前から悩んでたことだから」 本当は全部ウソ。 お父さんにはこっちでガンバレって言われてる。 前から悩んでなんてない。 私自身が蓮くんを苦しめる存在なら、 相手がいなくなるより自分から 身を引いた方がいいと思ったから。 そうすれば、顔もあわせなくていいし近寄ることもない。 私は自分の本当の気持ちを押し殺した---。 182: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 17 55 45 「それが、舞ちゃんの本心?」 私は少し考えて首を縦に振った。 「そっか…。蓮にはこのこと…」 「言っても蓮くんには関係ないから、 判断は蔵間くんに任せるよ」 つくり笑顔…。 やだ、私…ちゃんと笑えてるのかな… 蔵間くんが何かを言いかけたけど、 分かったと言って保健室を去った。 183: 名前:雷蓮☆2011/07/29(金) 18 06 38 ~蓮side~ 俺はまだ、舞のことが忘れられずにいる。 あの日の夜、どうしても離れなかったあの光景。 思い出したくない嫌な記憶。 「クソッ!!」 ガンッ!! 「蓮、ものに当たるなよ」 「分かってるよ」 蔵間に何が起きたかを、すべて話した。 舞の話を聞かなかったことと、 無理やりキスしたことを説教された。 俺だって…悪いと思ってたんだ。 「蓮…」 蔵間が教室に戻ってきた。 「本当に舞ちゃんとは縁を切ったんだね?」 「……あぁ」 「本当に?」 「いいんだよ、もう」 「…分かった。じゃあ何も言わないよ」 「…」 蔵間は何か言うことあったのか? 聞きたかったけど、聞けなかった。 舞に昨日、本当は何があったか聞きたい。 だけど、あんなこと言っておいてそれはないよな。 寂しい気持ちと愛しい気持ちを押し殺した。 なぁ、舞…。 もう一度、お前と話したいって言ったらお前は何て言う? 教室のドアを見て、舞が戻ってこないか見つめる。 186: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15 03 32 ~舞side(普通視点)~ 私は蔵間くんが去った後、 いつの間にか寝てしまった。 誰か来てくれたのだろうか、 私のカバンが置いてある。 あれ…? 何でカバンが…? もしかして、もう放課後!? ガバッ 急いで体をおこし、時計を見てみると… “16時” 嘘でしょ…。 完璧に授業でてないじゃん! 後で鈴音にノート見せてもらおっと。 服装の乱れを直し、カバンをしょって保健室を出る。 「爆睡だったんだね?」 蒼太くんの声だ。 でも、その姿が見当たらない。 「蒼太くん? どこにいるの?」 「下、下~」 「した?」 言われたとおりに下を見ると、 蒼太くんが保健室の入り口の、 ドアの前でしゃがんでいた。 「わっ」 「驚いた~?」 ニッと笑って見せる蒼太くん。 もしかして、私が出てくるのをずっと待って…。 「待っててくれたの?」 「部活帰りにちょっと休憩してただけ」 蒼太くんの優しさが胸いっぱいに広がる。 「ありがとう」 ちょっとおかしくって笑っちゃった。 「何で笑うんだよ~」 「なんか、可愛くって」 「可愛いくて悪かったねー」 私を元気づけてくれてる。 本当に蒼太くんには感謝しなきゃな。 「よかったら、一緒に帰らない?」 「え、俺といいの?」 「蒼太くん、待っててくれたんでしょ?」 「あー…バレちゃってた?」 彼は恥ずかしそうに言う。 「じゃ、行こうっか」 「うん!舞ちゃん、転ばないようにね」 「わ、私そんなドジじゃないもん!」 こういうやりとりをしてると、 思い出してしまう。 愛しいあの人との会話。 忘れたくても、脳が消去してくれない。 蒼太くんに言わなきゃいけないよね。 私の本当の思いを。 言わなかったら蒼太くんの心を弄んでることになる。 冷えた風が吹き抜ける廊下に、 一つ、愛しい人の影---。 187: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15 11 18 「っ!!!」 私は硬直した。 正面から蓮くんが歩いてくる。 「舞ちゃん、どうしたの? ……蓮…」 かすかに手の震え。 心が張り裂けそう。 彼との距離が縮まっていく。 私の心拍数は、尋常じゃないくらいスピードをあげた。 ふと、昨日の光景が脳裏をよぎる。 “もう顔も見たくねぇ” すべてを絶望に染め上げたあの一言。 でも、私は伝えなきゃいけない。 もう海外に行くことは決めた。 最後に、誤解だけは解いておきたい。 気づいたら蓮くんの手を握ってた。 188: 名前:雷蓮☆2011/07/30(土) 15 31 45 「……何だよ」 蓮くんが低い声で威嚇する。 私はそんなことで引いてはいけないと思った。 「誤解だけ、解いておきたいと思ったの」 真剣な顔で蓮くんを見つめる。 でも、彼はこっちを向いてくれない。 「俺がお前に話すことはねぇ」 「せめて、私の話を聞いて」 「嘘じゃねぇのか?」 「え…?」 「昨日、俺のこと突き飛ばしたくせに 蒼太だったらいいってことだよな?」 「それは違う」 「何が違うんだよ。信じろってのか?」 「うん」 「今更…天然にもほどがあるぜ」 「蓮くんに会ったり、 話しかけるのはこれで最後にする」 「……は?」 「だったら、別に文句ないでしょ?」 「なら、一刻も早く消えてくれ」 ズキンッ! 「蓮!!そういう言い方は最低だぞ!!」 「本当のことだ。 俺はお前に話なんかないし、 聞くこともまったくないんだよ」 「蓮!!」 「分かったか、天然女」 「……もう、いい…。 明日から会うこともないし、話すこともない。 今までありがとう…」 「あぁ、じゃあな」 「さよなら…元気でね」 ダッ!! 「あ、舞ちゃん!!」 「……」 「蓮!!お前、好きなんじゃなかったのかよ!!」 「このままこういう関係だったら、 アイツを苦しめるだけだ」 「だからって、もっと違うやり方があったんじゃないのか!?」 「あるわけねぇだろ。昨日、あんなっこと言っといてよォ…」 私は一人、学校を飛び出して家に向かった。 心がバラバラで修復不可能になりそうで、怖かった。 明日、私は海外へ旅立つ。 二度と見れなくなる蓮くんの顔…。 未練はもうない。 あそこまで言われたら、さすがの私も言い残すことはない。 君を好きになる5秒前 続き6
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142: 名前:時雨☆10/20(火) 19 09 44 病んでないようで病んでる感じ…?← ところで自分の思いなんかを紙に書いたりするのって鬱とかに良いらしいですね。(関係ないですけど) これって携帯に打ったりするのでも良いんですかね?←聞くな にしても短いな、これまた←脈絡無すぎ ※※ 【屈折脳内トリップ】 自宅の寝室。ベッドの上。 なにをするでもなくベッドの上に座りながら背中に感じるもう一人の体温に身を委ねて目を閉じる。 たったそれだけの事なのに温かい。 不意に自分の手にあいつの手が重なって当たり前のように指同士が絡んで。 見なくても分かる。あいつはきっと笑ってる。だってオレも笑ってるから。 オレより一回りくらい大きなあいつの背中に凭れながら、ただただ時間が流れるのを静かに感じるのはオレだけの特権。 一定の間隔で時を刻む針の音だけを聞きながらオレは一人思考の中へと飛び込むんだ。 退屈過ぎる日常。 鬱屈した毎日。 窮屈な世界。 そんな現実から少しでも離脱する為にリアルからほんの少しの間離れて夢の中へとトリップ。 そんな精神破壊を望んだような現実逃避からオレを現実へと戻すのは飛び込む前のあいつとの繋がり。 「…… おかえり」 「あぁ、ただいま」 そしてオレは今回もあいつの手によってコッチの世界へと帰ってくる。 目を開ければ閉じる前と何も変わってない風景が目に入って。オレの脳内はすぐに空想から現実へとスイッチが切り替わる。 「今回はどんな事してきた?」 「うん? あぁ、今回はな--」 それは精神安定剤にも似た脳内での話。 143: 名前:時雨☆10/21(水) 17 57 43 【お兄ちゃんの受難】 「涼ー! りょーうー? りょーおーってばぁー!」 「……」 まさかのシカト!? お兄ちゃん悲しい! 何度も呼んでるっていうのに同じ顔した弟はこっちを見向きもしない。忙しいんならまだしも、雑誌を読んでるだけなのに、だ。 あ……。俺泣きそ……。 「無視しないでー! 俺寂しくて死んじゃうからぁー! りょおちゃー、げふっ!?」 「『ちゃん』付けすんな。つか、オマエはそんな繊細じゃねぇだろ。兎に謝れ」 俺はこの時初めて知ったんだ。雑誌で人を殺せるって。俺死んでないけどね。 というか涼くん。双子だけど一応お兄ちゃんを足蹴にするのはいい加減やめてくれないかな。地味に痛いよ。 「だって涼が返事しないからっ!」 「黙っとけ。早く兎に謝れや」 「兎さんごめんなさい! ほら、謝ったよ。これでいい!?」 全くわがままなんだからこの子は! これだから末っ子って嫌なんだよね。なんでも自分の思い通りにならないと気が済まない感じ!? 「お兄ちゃんそんな子に育てた覚えありませんよ!」 「俺もオマエに育てられた覚えはねぇ」 いやまぁ、そうだけどね。双子なんだから育てるとか有り得ないんだけどね。 ジョークだって分かるでしょ? なんでそんな、そんな蔑むような目付きで見下されなきゃならないの? 実の弟にさ。 相変わらず俺を踏み付ける涼に本気で泣きそうになる。 「涼ちゃんのばか……」 「あ゙ぁん? なんか言ったか? 馬鹿野郎」 「聞こえてるじゃん!」 そんなツッコミを入れたのと同時に俺の身体を踏み付ける足に更に力が加わった様な気がする。 え。嘘、俺潰れちゃうじゃん。 「潰れちまえ。明日生ゴミに出してやる」 「ぎゃーっ! 内臓、内臓でちゃう! リアルに「内臓がないぞう」とか寒い事になるからぁっ!」 「安心しろ。今更だし手遅れだ」 ちょっ、それどーゆー意味!? 確かに今のは自分でも酷いと思ったけどさ。今更とか手遅れとか、それは幾らなんでも酷いでしょ!? 涼の俺に対する暴言と言う名の愛情表現は時たま行き過ぎる。……いや、いつも行き過ぎてる。でもなんだかんだ言ってこーやって俺に構ってくれてる訳だから、ほんと良い子だ。 「愛が痛いよ……グスン」 「はあっ? どこに愛があるんだよ。一回病院行って来い」 ……うん。きっと照れ隠しだよ。 本音じゃ……ないと思う。 ※※ 双子第二弾!! 病んでませんd(・ω・´) だがグダグダだ!!(殴 あれ、そういえばBL要素が…← ウチの双子、特に爽ちゃんはこんなです← よし、“いつか”イチャイチャさせよう!! ところで最近ネタが降りて来ないっ!! 書く気力とかいうか製作意欲も、ね← スランプなんてそんな大層なものじゃないですよ?? 言うなればトランプです。はい意味不明。 字が似てるだけじゃんか←(殴 なんかネタ無いかな…… 監禁 性奴隷は筆が止まってるし……さっさと書き上げないとorz あ。愚痴ってすいません。m(_ _)m しかも長いorz て、ここまで見て無いか。でも一応。 144: 名前:時雨☆10/21(水) 18 56 59 再び病み(狂?) ※※ 【黒い雨】 「殺したいくらいキミを愛してる」 彼は極上の笑顔でそう言った。 「…… そう。それで?」 「キミを俺以外の奴の目に触れさせたくないんだ」 そう言う彼の目は冗談を言ってるようにはとてもじゃないけど見えない。 「キミの声も俺以外に聞かせたくない」 「うん」 手が伸びてくる。ボクの頬に触れた手は温かくて、優しく撫でられる感覚がくすぐったい。 ボクは頬を撫でる手に自分の手を重ねて目の前にいる彼を見つめた。 「…… だから、殺しちゃったんだね」 彼の足元には今じゃただのたんぱく質の塊となってしまった、ボクの可愛がってた野良猫。 最近迷いこんできてきたのに餌をあげたら懐かれて、野良猫の割りには綺麗な猫だったからたまにお世話してた。 それが今は地面に横たわって、お腹からは血が口からは泡も吹いてる。 「そうだよ。駄目だった?」 彼は無邪気な子供みたいに、そう、聞いてきた。 ちっとも自分が悪いとは思ってないみたい。 「……ねぇ、ボクの事あいしてる?」 「愛してるよ」 いつからこの人はこんな風になってしまったんだろう。 「だったらさ、ボクのお願い聞いてくれるよね?」 「もちろんだ」 いつからボク達の関係はこんなにも腐蝕していってしまったんだろう。 「それなら--」 ボク達の声は突然降ってきた雨の音にかき消されてしまう。 雨はボク達を容赦なく濡らしていった。 それでもボク達は雨が降る前と変わらない態度で話を続ける。 「--ね? 良いでしょ?」 その雨は僅かながらも、確実にボクの心の中を浸蝕していった。錆び付いたボクの心を更に浸蝕していき、そして更に腐蝕が進む。 当の昔に腐りきってしまったボクの心はもう何も感じない。 「ボクの為に、死んでくれるよね?」 最後に見た彼の驚愕に歪んだ顔と、最後の瞬間の安らか顔を、ボクは一生忘れないだろう。 いつしか彼だけじゃなくボクまでもどこかおかしくなっていたのかも知れない、なんてボクは虚ろながらも思った。 一度壊れてしまったものはもう完全に元には戻らない。 だからボクは壊れたまま生きていく。今日みたいな黒い雨に浸蝕されながら。 「君は埋めてあげるからね。猫くん」 ボクは これからも黒い雨にうたれていく。 147: 名前:時雨☆10/22(木) 17 57 34 【貴方の心臓に触れたい】 「--なんでまたそんな事を思った訳?」 まず、俺が奴にそれを言われて思った事は『幾らなんでも無理だろう』だった。 心臓の鼓動を感じたいだとか、鼓動を聞きたいとかだったら出来なくもないけど触れたいとなると話は別だ。 俺に死 ねって言ってるようなもんだ。 「貴方を理解するにはそれが一番なんじゃないかと思ったんです」 「理解ってなぁ……」 元から何を考えてるのか分からない奴だったけど、ここまでとは思わなかった。大体どうすればそんな答えに辿り着くのかが俺には理解出来ない。 「貴方をもっと理解したい。好きだから」 「むしろ、俺がお前を理解したいよ」 恥ずかしげも臆面もする様子もなくはっきりそう言った奴に対して思わず溜め息と共に出た言葉。奴を見れば奴は何故だか自分の胸、丁度心臓の辺りを見つめていた。 暫くすれば奴が自分の心臓の辺りに手を重ねて、俺の方を真直ぐ見据えてくる。 「僕の心臓に触れれば解りますか?」 「は、?」 「貴方に理解して貰えるなら僕は喜んでこの心臓を貴方に差し出します」 悪い冗談だと思った。いや、冗談だと思いたかった。 こいつは何を馬鹿な事を言ってるんだろう。例え心臓に直接触れた所で何も分かる筈がない。というより、そんなものに触れるだなんて考えただけで胃液で口の中が酸っぱくなる。 早い話、ふざけんな。 「要らねぇよ、そんなもん。むしろ余計分からなくなりそうだ」 「そう、ですか……」 どこか残念そうな雰囲気には敢えて気付かない振り。 心臓に触れるとか差し出すとか、そんな事あってたまるか。 「でも、僕は貴方の心臓に触れたい……」 「諦めろ。そんな事して、例え理解出来たとしてもその後が無いだろ?」 「あ……」 まるでそんな事気付かなかったと言わんばかりの反応。目先の事ばかりに気を取られて、大事な“解った後”の事を見落としてたみたいだ。 「すみません、今の話忘れて下さい……」 「ん。了解」 自分で言っといて、しゅん……、なんて悪い事して怒られた子供みたいに項垂れる奴に俺は本気で呆れた。 「俺の事、理解っていうか、ただ知りたいんだろ?」 「え? あ、はい……」 「だったら。とりあえず、ほら」 「ぅ、わっ!?」 俺よりほんの少しだけ背の高い奴の頭を俺の胸に押し当てる。 丁度俺の心臓の辺りに持っていったからしっかり聞こえてる筈だ。 「聞こえるか? これが、俺が生きてるって証だ。これで一つ俺が解ったろ?」 我ながら恥ずかしい事を言ってる気がするけどこいつの為だと思えば致し方ない。心臓を差し出すのに比べれば遥かにマシだからな。 「はい……生きてます」 「なんだそれ」 またもなんか微妙な発言をしたこいつに笑う。そうすれば俺に釣られて頬を僅かに緩ませたその顔に、不覚にもそれまで一定のリズムを刻んでいた俺の心臓がリズムを狂わせる。 それはもちろん相変わらず俺の胸に顔を埋めてる奴にも伝わって、俺は有り得ないくらい恥ずかしくなった。 「貴方は意外と判りやすいんですね」 「うるせぇ! 余計なお世話だ!」 「すみません。でもそんな貴方も、僕は好きですよ」 そんな言葉は俺の羞恥心をより煽るだけで、それもあって話を長引かせたくない俺は強引に身体を離して会話も終了させた。 もしも心臓を差し出されたら。 なんて、俺はこれからも一生考えない。 150: 名前:時雨☆10/22(木) 21 19 04 タイトルこんなですけど病んでません。 ↑あれ。前にも逆の意味で言ったな…← それにタイトルも別に病んでない…?← ダメだ、頭ぐちゃぐちゃだorz← ※※ 【左の臓器が熱いんです】 週末の昼食時となれば駅前や駅周辺は余程田舎などでは無い限り人で溢れ返る。 特にこの時間ならファストフード店なんかは店内が人でごった返していた。 この大形チェーンのファストフード店ももちろん例外でなく、人がぎゅうぎゅう詰めとは言わないまでにも店内は収納率100%を超え座席につけていられる事が大袈裟ながらも奇跡に等しかった。 「--僕は病気なのでしょうか」 人がこれでもかという程ひしめく店の隅の席。向かい合って座る同級生にそう聞かれた海人は一瞬意味が判らず「は?」と口を半開きにさせて固まった。 しかし相手は神妙な面持ちで揃えた両膝の上に拳を作った両手を置いていて、海人もすぐに真面目な表情になる。一つ深呼吸をしてから落ち着いた声色で悩ましげな同級生、実に尋ねた。 「どうしてそんな事を思ったんだ?」 「その……胸が痛くなるんです」 「病院には行ったか?」 実が首を振る。 隅にあるこの席は出入り口からは死角になるのに加え、今の時間混雑している店内で隅に居る二人の男子学生の事なんて誰も気には留めなかった。 それを判っていても、公共の場では普段よりも話す声が押さえられるのは仕方の無い事だ。 「違うんですっ……胸が痛くなるのは、その、ある人と一緒に居る時だけで……っ」 最後まで聞く前に事を察した海人は思わず溜め息を吐いたが、取り敢えず全てを聞いてからにしようと実に先を促した。 先を促された実は俯き加減気味に、チラチラと何度か海人の様子を伺う様子を見せながらポツポツと話しだす。 実の“ある人”というのは、海人からすれば名前を伏せるまでも無い事だったが、敢えて海人はそれには触れない。 「その人と居ると緊張して、う、上手く喋れなくなって……頭が真っ白になってっ」 ついには耳まで真っ赤になってしまった実。ただでさえそういう類のものが苦手な実から、その必死さが伝わってきたからこそ、海人は実の話を黙って聞いた。 「それってさ、この辺が特に痛くない?」 頃合を見計らって海人が実の胸の辺りを指差し、実がえ? と言う様な表情を見せて小さく頷く。 「そうなんです……左の臓器、心臓が熱くなるんです……」 「病気なのでしょうか」と相変わらず不安げな実に、海人は遂に表立って溜め息を吐いた。そして真直ぐに実を見つめ、口を開く。 それってさ、 ぶっちゃけ“恋”だよな? 153: 名前:時雨☆10/23(金) 17 44 44 【これでおあいこね】 俺は所謂“ネコ”って奴。つまりは掘られる側だ。仕方なくその位置を受け入れて居る訳なんだけど、やはりヤられっぱなしって言うのは気に入らない。 俺だって男なんだ。たまにはガンガン攻めてみたい。 とは言っても、俺の恋人ってのは近年稀に見る鬼畜でサドで。押し倒してやろうものなら怖い “お仕置き”なんかが待っているに決まってる。 「……なぁ、横になってくれよ」 「はぁっ? なんで」 そこで俺は考えたんだ。 俺だけでガンガン行くのが無理なら、同じ条件の中で俺が頑張れば良いんじゃないかと。 それで意を決して頼んでみてるんだけど思った通り、そいつはあからさまに面倒臭そうな顔をした。 「だから俺が上になって奉仕するって言ってんの!」 どうしても理由を喋らそうとされて、半ば自棄になりながら一息で言い切る。言ってからの羞恥が半端じゃない。 「へぇー? 珍しいな、マグロのお前が」 「誰がマグロだっ!」 動きたくても動けないようにしてんのはそっちだろ! って、言えるもんなら言ってやりたい。 でも、こんな事言ったらこいつが機嫌を損なうのは今までの経験上明確で。俺は喉元まで上がってきた言葉を必死に飲み込んだ。 「良いぞ? 今回は俺の上に乗るのを許可してやる」 「ど、どうも……」 いつでもどこでもどんな時でも俺様なのは今更だ。耐えろ、耐えるんだ俺! 自分に言い聞かせてそいつの上に乗る。 丁度俺の目の前にあいつの、あいつの目の前に俺の股間がある訳で。俺は手早く目の前のそれを寛げてやった。 「っ……」 無意識に喉がなる。俺のも標準以上だと思うけどこいつのはそれ以上。規格外だ。 全然兆しを見せていない状態でもずっしりと質量がある。 「早く舐めろよ。奉仕シてくれんだろ?」 「わ、分かってるって」 別に言われたから舐めるんじゃねぇぞ! 「っ、ン……」 最初から口に収まりきらないサイズのそれの全体に舌を這わせて濡らして、全部は無理だから先っぽだけ口に含む。 ちゅ、ってわざと音を立てながら吸ったら口の中のそれが少し硬くなった。 「んふ……っむ」 口の端からタラタラ唾液が零れるけど気にしてらんない。顎がつりそうなくらいデカいそれを喉の奥まで銜えて、頭を動かせる。ずぼすぼAVみたいな音がして、それのせいでの興奮とちょっとした酸欠状態に頭が白くなってきた。 どんどん自分の口の中で育ってくるそれに初めて俺が一方的にこいつにしてると思ったらもう止まれない。口の中に広がる特有の苦味なんて気にならない位、俺は夢中になった。 「なんだお前。俺のしゃぶって勃たせてんのか? とんだ淫乱だな」 「ふぅ……あ、むぅんん……っ」 俺の下であいつが言った様に確かに俺のは下着の中で窮屈そうにしてる。 なんで俺の方が焦れてんだよ……っ。 「っふ。あ、おねが……俺の、舐めてっ」 「はぁっ? お前が俺の奉仕するって言ったんだろ?」 「でも、我慢できな……っ」 腰を揺らして解放を求める。 覗き込めば呆れたように溜め息を吐いたのが見えた。 「仕方ねぇな。お前もほんとに頑張ってるし、これでおあいこだ」 「ひぁぅ! んぁぁ……」 漸く解放された俺のが勢い良く外気に、そいつの眼前に晒される。 圧迫感がなくなって、息を吐いてから俺は再び目の前の雄に顔を近付けた。 俺が銜え込み直したのと同時に俺のも銜えられた。 「ぁふぅ……ンぅあっ、はふ」 取り敢えず、先に一人でイって怒られないように頑張ろうと思った。 こいつのフェラって舌の動きとかマジ有り得ねぇから。 こいつはおあいこなんて言ったけど、どう考えても俺の方が貰ってばっかな気がする。 だって俺、もうイキそうだから。 もう頭が真っ白だ。 ※※ 俺様好きなんです!!←聞いてない 言葉責めとか好きなんです!!←だから聞ry 強気受けとか好きなry← 眼鏡も好ry← 皆様はどんなのが好きなんでしょう??(ぇ 166: 名前:時雨☆10/24(土) 13 56 14 【我、精神破壊ヲ望ム】 此処に連れて来られてからどのくらいがたったのだろうか。時計も窓も無い部屋ではただ徒に時が過ぎていく内に時間の感覚も狂っていってしまう。 実際のものはどうなのか知らないが、テレビのドラマなんかで見る刑務所の独房の様な部屋。家具は必要最低限のものしか置かれず、トイレなんかも下半身が漸く隠れる程の仕切りがされているだけだ。 しかも俺は部屋の隅にあるパイプから伸びる鎖に犬みたいに繋がれている。 「やぁ。気分はどう?」 本当に突然。何の前触れもなく拉致同然に俺を、こんなお世辞にも良いとは言えない部屋に閉じ込めたのはこの男。名前なんて知らないし知りたくもない。 部屋に入って来たのと同時に睨み付けてやるけど男は涼しい顔して笑いやがる。 「良い訳ねぇだろ。クソ野郎」 「あぁ、駄目だよ? そんな乱暴な口利いたら。……性奴隷の分際でさ」 「っ、誰が性奴隷だよ!」 思わず叫んだけど俺はすぐに後悔した。男がこっちに近付いてくる。後ろに逃げようとしてもすぐに背中が壁について、逃げる事はもちろん距離をとる事も出来なくなった。 「君にはいい加減自分の立場を分かって貰わないといけないね」 「いやだ、いや……来るなっ」 男の指先に顎を掬われる。半ば強制的に上を、男の顔の方を向かされて、男の鋭い眼光に蛇に睨まれた蛙の如く目を逸す事が出来ない。 その目に見つめられて、俺が此処に閉じ込められてからの事がフラッシュバックする。思い出したくもない悍ましい光景に歯がガチガチと音をたてる。 「あぁ、そんなに怖がって。可愛いね」 クスクス笑われたと思えば不意に俺の唇に男のそれを押しつけられた。ヌルリと柔らかいものが口内に侵入してきて蹂躙される。 肩を押して逃れようとしてもビクともしなくて、ついに息があがってきた。意識が朦朧とする。 舌に噛み付こうかとも思ったけど前にそれをやって殴られたから出来ない。 「んんっ……っ、ぶはっ」 漸く解放されて、肺一杯に酸素を取り込む。肩を激しく上下させてれば、俺の着てるシャツに手を掛けられた。ハッとしたけど抵抗する間もなくあっという間に脱がされて、男の手が俺の素肌を撫でる。 「やめっ……触んな、っ」 「酷くされたくなかったら黙ってなさい」 酷いのは、痛いのは、苦しいのは嫌だ。でもこのまま良い様にされるのも御免で、俺はどうすれば良いのか判らなくなる。 前回の時もその前も。俺はこうやって訳が判らないまま犯された。あんなのはもう嫌だ。 「い、や……酷く、しないで……っ」 「大丈夫、大人しくしてくれれば君もヨくしてあげるからね--」 「ひぃっ! ぁっ、やぁっ」 俺の内部を男のソレが蹂躙する。ろくな抵抗をしなかったせいか今までのより幾分もマシだったけど嫌悪感は完全には拭えない。 それでも触られれば感じてしまうのが男の悲しい性だ。 「嫌なの? 君のココはこんなになっているのに」 一番言われたくない言葉。嫌でも自分の状態が分かってるから尚更男の言葉は聞きたくなかった。 もう何度かイカされてぐちゃぐちゃになってる俺のを見せつけられながらゆっくり扱かれる。 「あっ……ひっあ」 頭では恥ずかしくて屈辱的でやめて欲しいのに身体はそれに反して貪欲なまでに快楽を求める。 それこそ、忌々しい程に。 「も、っぁ、やだ……ぁっ」 「嫌だとか言って、感じて射精してるのは君だよ? ナカだって熱くうねってる」 「ひ、ぃぁ……んあぁぁっ!」 言われた側からまた欲を吐き出して。俺はこのまま死ぬんじゃないかと思った。 いや、むしろその方が楽になれるのかもしれない。 こうして捕まったまま、いつしか誰からも忘れられて挙げ句の果てにはこの男にも見捨てられたりなんかしたら、それこそ人としての俺は終わりだ。 きっと耐えられない。 「ぃ、やだ、やだぁ……っ! いやぁ……」 「あぁ、とてもイイ声だ。もっとその声を聞かせてよ」 俺は此処に連れて来られてから初めて死にたいと思った。この男を殺したいと思った事はあっても、自分が死にたいとは思わなかったのに。 でもこんな、男の矜持を土足で踏み躙られるなんていう屈辱感に加え、いつ訪れるかも判らない恐怖に耐えないといけない位ならいっそ死ぬか、完全に壊れてしまった方が幾らもマシ過ぎる。 「殺せ、よ……っ。も、死んだほ、うが、マシだ……っ!」 絞り出す様に漸く発したそれに、今まで遠慮無く俺を揺さぶっていた男の動きが止まった。 「殺せっ……俺を、殺せぇ……っ」 唇を切れてしまうんじゃないかと思う程の強さで噛む。 ふと、動きを止めていた男がゆっくりと動く気配がした。 耳朶に熱い息が掛かり、ねっとりとしたものが這う。それが男の舌だと理解した瞬間男の声が俺の鼓膜を震わせた。 「君は本当に面白いね。ますます手放せなくなったよ」 何が面白いのか、楽しそうにクスクスと笑う声。 「駄目だよ。絶対に殺してあげたりなんかしないんだから。君は、一生僕の性奴隷として生きていくんだ。一生、ね--」 その言葉を脳が理解する寸前、俺の中で何かが音をたてて壊れた気がした。 身体モ精神スラモ壊レタラ、 ソレハモウ、 タダノ人形ニシカ過ギナイ。 デモ、“壊レタイ” ノ望ミハ叶ッタ。 ※※ これは監禁で性奴隷だと主張します!←オイ だって監禁も性奴隷も書いた事無かったんですもん!しかも何このオチ。カニバリズムの時と同じやっちゃった感バリバリですよ! タイトル負けしちゃってるね、うん…orz 誰か私に文才をーっ!((うるさい もう…いっそ死んでお詫びしたいorz←ウザイ 169: 名前:時雨☆10/24(土) 19 42 24 【感じやすくなってる?(目隠し)】 最近マンネリ化してる気がする。 なにがって? もちろんセックスがだよ。 だから俺、思ったんだよね。 「…… 目隠ししない?」 「え? や、やだよ……っ」 思った通り、怖いのか中々了承してくれない恋人。 ふるふると首を振って真ん丸で大きな目を潤ませる。 「大丈夫。本当に嫌になったら取るから」 そう言えば、俺に譲る気持ちが無いのを感じ取ったのか「絶対だよ?」なんて念をおしてから目隠しを自分で着けた。 「じゃ、するよ?」 「ぅ、うん……ひゃっ」 五感の一つを奪ったせいか、脇腹を少し撫でただけで身体を揺らして逃げようとする。 逃げようとするのを腰を掴んで阻んで、緊張してるせいで勃ち上がってる胸の突起を尖らせた舌で嬲れば、思った以上の反応が返ってきた。 「んぁあっ……ぁん」 あんなに緊張してたのに、いつも以上に甘い声をあげて。もちろん嫌がる様子だってない。 「いつもより良い反応するね?」 感じやすくなってる? どうやらマンネリ解消は成功らしい。 ※※ 目隠しも好きな私←((雑食過ぎるだろorz 欲を言うなら目隠しに後ろ手で縛られて、ボールギャグ噛まされればもうOK!!((殴 しかも加えてイマラt(ry((殴 蹴 だって萌えませんか!?!?(殴 あぁー……こんなの読みたいな……← 173: 名前:時雨☆10/25(日) 14 18 35 【第二ボタンはいらないから学ランちょーだい】 卒業式を数週間後に控え、準備やらなんやらで忙しいこの時期。それこそ猫の手も借りたいくらいに。 「なーおちゃん」 オレが一人、生徒会の執務机に向かっていた所でどう考えても今、この場では場違いな明るい声。 オレが一瞬イラッとしてしまったのは仕方ない事だと思う。 「今忙しいんだ。後にしてくれ」 「もうっ、可愛い顔が台無しだぞ?」 イラッ。 ただでさえオレ以外の役員が出払っていて大変なのに、余計な奴が来た上に満面の笑みでオレの眉間を指で突いて。 オレの執務に影響が出る事間違い無しじゃないか。 「……」 「そんな怖い顔しないでよ。尚ちゃん」 「“尚ちゃん”と呼ぶな。後輩のくせに」 「わっ。尚ちゃんってばそんな事気にしちゃうの? 心狭くない?」 後輩のくせにオレを“尚ちゃん”呼ばわりするこいつは辻嶺 陸。 成績良し、運動神経も良し。その上顔も良しで嫌味な奴だと言われそうなこいつは交友関係も悪くなくて。それでも生徒会の役員でもないのにこの生徒会室に入り浸っているから、オレからすれば立派な問題児だ。 「うるさい。余計なお世話だ」 「あ。これって卒業式のやつ~?」 「……」 自分から話題を振っておいてこの態度。 こいつは一体何がしたいんだ。 「来年は尚ちゃんも卒業かぁ~」 「気が早いな。お前は」 「お前じゃなくて“陸”でしょ? 尚ちゃんってば」 人懐っこい笑顔を向けてくるこいつにさっきまでのイライラが嘘みたいにどうでも良くなる。これは一種の才能なのかも知れない、なんて思った。つくづく嫌味な奴。 「卒業式といえば第二ボタンだよね」 「あぁ、そうだな」 もうこいつの事が半ばどうでも良くなってきたオレは、視線を書類に落としたまま陸の言葉に適当に相槌を打っていく。 そんなオレを特に気にする様子もない陸はどんどん会話を進めていった。 「--だからさ。尚ちゃん、来年は学ランちょーだいね」 「あぁ、そうだな……、は?」 ちょ、ちょっと待て。今こいつはなんて言った? 学ランをくれだと? どうしてそうなるんだ? 「やった! 約束だからね?」 「ちょっと待て! 全く意味が分からないんだが、どうしてお前に学ランをやらないといけないんだ!?」 思わず椅子から立ち上がってしまう。 だって意味が分からないだろ? 第二ボタンならまだしも、どうして学ランをやらないといけないんだ? 見れば頬を膨らませている陸。どうやらオレがしっかりと話を聞いていなかった事に腹を立ててしまったらしい。……が、今はそんな事はどうでも良い。 「だーかーらー、尚ちゃんの第二ボタンなんて競争率高そうだから諦めるの」 「はぁ?」 「ね? だから」 第二ボタンはいらないから学ランちょーだい。 オレは本気で頭を抱えたくなった。 この次の年、 オレは学ランと共に貞操までもを この嫌味な後輩に奪われる事になる-- ※※ 後輩×先輩。 随分前(そうでもないか?)に書いてリア友に献上したやつを蔵出し(笑)← なんだコレは。拙すぎる。今も酷いがこれは更に酷いww← あ。怜様のリクエストのはまた別に現在頑張って執筆中ですので!! なんか“執筆”って格好いry(殴 180: 名前:時雨☆10/25(日) 22 03 47 あぁ… 久し振りに甘いのです。ここ暫くの反動で砂吐きそうな位甘いのです←多分 何故こんな時間に、気分です←オイ そして書いた私が一番恥ずかしい← ※※ 【甘いね】 「じー……」 さっきから物凄く視線を感じる。 その視線の主と理由を分かってるだけに俺からすれば可愛いもんなんだけど。 こう、何十分も見られてるとさすがにコッチから声を掛けなきゃいけないんだろうか、とか思う訳だ。 しかもついには口で「じー」って言っちゃってるし。むしろこれは“声を掛けろ”って意味なんじゃないのか? というかそうだろ。 「……どうしたの?」 「飴。いいな!」 意を決して聞いてみれば、欲しい玩具を見つめる子供みたいに俺の手元を見る彼。 俺の手の中には彼の言う通り小さな飴玉が握られてて。 もう、あれだ。目が語ってる。 「欲しい?」 「良いの!?」 うん。というか、狙ってるの隠す気無かったよね? 内心苦笑いしながら握り締めてた掌を開いて飴玉を差し出す。 「好きなのあげる」 そう言えば更に瞳をキラキラさせて、俺の手から二個、飴玉を取った。 「ありがとな!」 「うん。二個で良いの?」 「おう! おれはりんご味貰う!」 俺はつい首を傾げてしまった。彼の手にあるのはりんご味の飴玉とみかん味の飴玉の二個だ。 「いっただきまーす!」 「ねぇ、みかんは……ん!?」 大きな口を開けてりんご味の飴玉を頬張った彼にみかん味の方を聞いてみたら口に何かを突っ込まれた。 口の中に広がるのは甘いみかん風味で。 目の前にはしてやったり顔の彼。俺はつい小さく噴き出した。 「甘いや……」 もちろん飴玉も甘かったけど、 飴玉よりも君の方が甘いかもしれない。 ※短編だらけ※ 続き4