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第118話 鎌石村大乱戦 第二幕 ~龍を屠る赤き一撃~(後編) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ (クソッ、視界がぼやける。腕にも力が入らない。結局俺はこのまま誰一人守り抜く事すら出来ずに死んじまうのか…。 クレス悪い…。あれだけ大口叩いて別れたってのに、アーチェの仇を討つ事も、この娘を守る事も出来なかった…) 思い返せばここ最近の記憶は後悔ばかりだ。 村を守れなかった事。再会したクレス達の足手纏いにしかなれていない事。 ここに来てから起きた分校での出来事。アーチェの死。 そしてこの女の子の事。 (せめてアシュトンだけは止めないと…。俺がこの娘に持ってきちまった災いだからな…。 くそっ、俺に力があれば…。何でもいい。俺に力をくれ。この娘を守れるだけの力をっ!) そう俺は願った。神様なんていないって思っている。それでも祈らずにはいられなかった。 心の底からこの女の子を守りたいとそう思った。その思いを遂げる為強く、強く願った。 そして、その願いが何かを起こした。 先程この女の子のデイパックから転がり落ちていた水晶玉が、俺の足元で赤く眩い光を放っている。 (これは…? あの娘の荷物から出てきた…。一体なんだろう?) 俺はそれに思わず手を伸ばした。触れた途端体に何かが流れ込んで来る。 その瞬間。今まで俺の頭の中にあった微かにしかない、 雲の様に掴み所の無い断片的なイメージが、一つ、また一つと、まるで実体を持つかの様に収束していった。 そう、これは特訓の中で浮かんでいた断片的なイメージ。これを習得できればきっとクレス達の助けになれる。 そう感じ、いつも掴もうとしては霞のように消えていってしまっていたその感覚が、今俺の中に確かに一つの形を成して存在していた。 触れていた水晶玉は光を失い、透明な水晶玉に戻っている。 今の現象が俺に何か影響を及ぼしたのかわからない。 わかる事は唯一つ。俺にはまだこの娘を守れる可能性が残されているという事。 矢を構える。 この技に必要なのは送った闘気が拡散しない様に矢に定着させる事。 そして、それを幾重にも重ね合わせ、ただ一点のみを貫く為に研ぎ澄ます。 そう、どんなに強固な鱗に覆われた龍でさえ、その一撃の下に屠る。 そんな意味を込めたこの技の名前は、 「『屠龍』! ぶちぬけぇええええ!!」 解き放たれた赤き必倒の一撃。 俺の想いの全てを乗せた一筋の光がアシュトンに襲い掛かった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「フギャー!(やばいぞアシュトン! 避けろ!)」 (出来ない。体が重くて思うように動かせない。『トライエース』の反動? 違う、もう呼吸は整えられてるし、さっきまでこんなに体が重いなんて事は無かった) ふと、前を見ると女の子と目が合った。その手に持っている杖が輝きを放っている。 (あの娘の紋章術? 重力操作の?) 「ギャース!(チッ、世話の焼ける宿主だ!)」 「フギャー!(全力で行く、踏ん張れよ!)」 ギョロとウルルンが同時に巨大なブレスを真っ直ぐ向かってくる赤い闘気を纏った矢に浴びせる。 それでもチェスターの放った矢は一向に止まる気配を見せない。二人の吐く炎と氷の渦を受けながらも真っ直ぐに迫ってきている。 体は未だにあの女の子の紋章術で動かせない。だから、せめて二人の応援をしようと彼らを見上げた時、僕は自分の目を疑った。 何故かはわからないけど二人の体が透けてきているのだ。 「二人共もう止めるんだ! このままだと君達が魔力を使い果たして消滅してしまうよ!」 こんな事今まで無かったけど、どう考えても今魔力を使い果たそうとしている事が原因なのは明白だ。 「ギャッ(何寝言を言っている)」 「ギャフッ(お前が死んだらどの道俺達も死ぬんだ。無駄口叩いてないで手伝え)」 「駄目だ、あの娘の紋章術の所為で体が動かないし剣も持ち上げられない」 尚も迫り来る赤い闘気を帯びた矢に懸命にブレスを放ち続ける二人。 それでも勢いを少し落とすのが精一杯。確実に僕らの命を奪おうとそれは迫って来ていた。 「ギャギャ(ウルルン)」 「ギャーフ(そうだな…)」 「どうしたのさ? 二人共?」 僕はいつもと違う雰囲気の声を発する二人に急に嫌な感覚を覚えた。 「ギャッギャギャフン(今まで楽しかったぞ。アシュトン)」 「ちょっと!? ウルルン? 何言ってるの?」 「ギャース(このままでは3人纏めてあの世行きだからな。お前だけでも生きろ、アシュトン)」 「ギョロ!? 何勝手な事を言ってるのさ?」 「ギャフフギャフー(なんだかんだ言って俺たちはお前の事が気に入ってるんだ)」 「ギャッギャー(だから、お前にはもっと生きていて欲しい)」 二人が信じられない事を言っている。僕を生かす為に死のうとしている。 止めなくちゃ、そんな事受け入れられるはずが無い。 「待ってよ! また僕を困らせる様な事を言って! お願いだからたまには言う事を聞いてよっ!」 「ギャー(いいか? これを凌ぎきれたら一旦退け。北西の方角から二人。まだ遠いが近づいてきている)」 「ギャッフ(ボーマンが味方を連れて来たとは考えにくい。『トライエース』を撃った疲労状態でこれ以上の戦闘は危険だ)」 もう二人の姿は目を凝らさなければ視認出来ない程に薄くなっている。 「ギョロ! ウルルン! 話を聞けよっ! 僕達はこれからもずっと3人でっ!」 つい語気が荒くなってしまったけど、二人が思い直してくれるならそんな事構わない。 「ギャフー(生きろよ)」 「ギャース(生きろよ)」 そう言い残し二人は更に吐き出すブレスを巨大にさせた。 僕らに迫る矢は漸く止まり、そして纏わせた闘気を拡散させるように巨大な爆発を起こした。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「これで決まって無ければ…」 もう駄目だ、立っているだけで精一杯だ。血と一緒に残された気力も流れ落ちてるみたいだ。 爆煙の先に人影が蹲っているのが見える。 突如として吹いた夜風が煙を晴らしてくれた。 ぼんやりとした視界で捕らえたアシュトンのシルエットに違和感を覚える。 (何かが違う…。いや、それよりも倒せたのか?) しかし、どうやら俺の願いはさっき叶えて貰った分で受付が終了したらしい。 フラリと立ち上がるその姿が見えた。でもおかしい。さっきより小さく見える。 完全に晴れた視界のおかげで漸くその違和感の正体に気付いた。 背中の龍がいないのだ。 「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」 突然叫び声を上げたアシュトンが続けて、ものすごい形相で俺を睨んできた。 「殺してやる! 次に会った時は必ず殺してやるっ! 二人が受けた苦痛を何倍にして味合わせてから殺してやるからなっ!!」 怨念の様なものを込めながら呟くアシュトンを中心に霧が発生したかと思うと、ややあってから霧が晴れた。 その時にはあいつはこの場から姿を消していた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ (なんとか追っ払えたみたいだな…) チェスターが張り詰めていた緊張を解いた瞬間、急に膝がガクリと崩れ落ちた。 前のめりに倒れる彼を受け止めたのは硬い地面の感触ではなく、 何か別のやわらかい、擬音で例えるならフニャンといった感触だった。 「だっ、大丈夫ですか?」 意識を失いかけていたチェスターはその呼びかけで瞼を再び開けた。 その彼の目に飛び込んできたのは (特盛りっ!) 何が特盛りなのかは敢えて説明するまでも無い。 「ごっ、ごめん! 大丈夫、大丈…」 慌てて飛び退いたものだからまたしてもグラリときてしまう。 再び倒れようとするチェスターを受け止めようとしたソフィアだったが、 散らばった瓦礫に躓いてしまい、チェスターを支えきる事は出来ず二人仲良く転倒してしまった。 「ホントッ、ごめん。もう大丈夫だから゛!」 意図せずソフィアを押し倒すような形になってしまったチェスター。 そんな彼の眼前に広がった光景は童顔巨乳美少女のあられもない姿。 激しい戦闘の末所々破けてしまっているストッキング。 チラリと白い下着が見える様に捲くれ上がったミニスカート。 そして、先ほど彼を受け止めた豊かな胸。 その周囲の布地はアシュトンの『ハリケーンスラッシュ』やら何やらを受けて白い肌や下着が見え隠れしている。 更に、チェスターは健全な17歳男子である。目を逸らそうとしてもどうしてもチラチラとそれらに目が行ってしまう。 そう、彼は将来的には仲間内から『スケベだいまおう』というありがたい称号を賜る身。 そんな彼の男としての悲しい性がそうさせるのであった。 (イカン鼻血が…) そして、彼は昏倒した。 ただでさえ脇腹に穴が開いて血が足りない状況だというのに、余計なところからも出血してしまったのだから無理も無い。 チェスター・バークライト享年17歳出血多量にて死亡 【チェスター・バークライト死亡】 ○●○●○●○●○●○●○●○● (ここは…?) 俺はやけに眩しい所に寝転がっていた。 起き上がると鼻からツツーっと鼻血が垂れて来るのを感じ取ったので素早く袖で拭った。 (おかしい、さっきまで夜だったのに…。しかもさっきの女の子がいない) 「チェスターさん」 背後から聞き覚えのある声に呼びかけられた。俺は立ち上がって声の主の方に向き直った。 「お久しぶりです。お元気にしてましたか?」 そう言って礼儀正しい一礼と共に優しい笑顔を俺に向けたのは 「ミント? ミントじゃないか!?」 「はい」 そう、目の前にいるのはサラリと流れるような長い金髪と、聖母の様な微笑みを併せ持つ女の子。 どこからどう見てもあのミントだ。 そして、その横には栗色の髪をした小さな女の子が立っている。 その女の子は俺と目が合うと小さな会釈をしてきた。 俺はその会釈の返答として軽く微笑み返した後に、俺の中に湧き出た疑問をミントにぶつけた。 「どうして死んだミントが俺の前に? 待てよ? もしかして、俺死んじまったのか?」 錯乱する俺の質問に首を左右に振るミント。 「いいえ、チェスターさんはまだ生きていますよ。ただ、近くを通りかかるって話を伺ったものですから。一言挨拶を、と思いまして。 それと、どうしてもあなたに会いたいという人を連れてきました」 そう言ってミントは俺の視界から外れるように横に移動した。 ミントの背後に隠れていた人物が俺の目の前に現れた。 見間違うはずも無い。アイツの姿がそこにはあった。 ピンク色の髪をポニーテールに纏め、その髪と同じ色をした瞳でいつも挑みかかるように睨んできたアイツだ。 「アーチェ!」 アーチェに歩み寄る。話したい事がいっぱいあった。沖木島では再会して直ぐクロードに殺されちまったから。 だけど急に現れるものだから何を話せばいいかわからなくなっちまった。 よく見るとアーチェは俯いて小刻みに震えている。 そうかそうか。俺と会えてお前も嬉しいのか。こういうところはやっぱりかわいいなと思ってしまう。 「アーチェ…」 ズドム! 呼びかけながら一歩踏み出した俺の顔面にアーチェの鉄拳が炸裂した。 2HIT! 3HIT! 「何よ! 何よ! ちょっとあの娘がかわいいからってデレデレしてっ!」 4HIT! 5HIT! 6HIT! 「そんなに大きいのがいいのか!? 大きいのがいいのかぁー!!」 7HIT 8HIT! 9HIT! 「このスケベだいまおう! チェスターなんかーっ!」 訳もわからず連打を浴びた俺はグロッキー状態。頭の周りをヒヨコ達がくるくると回っている。 「巨乳の角に頭をぶつけて死んじゃえー!!」 10HIT! アーチェのアッパーカットが俺の顎にクリーンヒット。俺はマットの上に沈んだ。 「しばらくこっち来んな! 行こっ! すずちゃん! ミント!」 アーチェはそう叫び踵を返すと、ミントの傍らにいた少女を伴って光の中へと消えていった。 「あっ! 待って下さいアーチェさん。それではチェスターさんごきげんよう。クレスさんとクラースさんにも宜しくお伝え下さい」 (えっ!? ちょっとミント! この扱いは酷くないっすか?) そうして俺は、この眩しい真っ白な世界の中で暗闇へと落ちていった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「ってか、待てアーチェ! 巨乳に角なんてないぞ!!」 アーチェに向けて手を伸ばした俺の手は擬音にしてフニュンといった感触のモノを掴んだ。 【チェスター・バークライト生存確認】 次第に覚醒していく意識。今俺の右手に掴んでいるモノの正体を知覚するのに2秒程かかった。 どうやら俺はさっき助けた女の子に膝枕されている状態な様だ。 そして、伸ばした手は彼女の豊かな胸を下から持ち上げている様な格好になっていた。 「キャアッ!」「うわぁ、ごめん!」 慌ててその場から飛び退く俺。しまった。また急に動いちまったら。 「って、あれ? 傷が塞がっている」 「あの…、うなされていた様ですけど大丈夫ですか?」 胸を抱きかかえ、ちょっと涙目になりつつ上目遣いで俺に尋ねてきた。 (何だこれは? 反則だろ…) 「いや! もう! ホント大丈夫だから。それよりも君が傷を治してくれたのか?」 「はい。これを使って」 そう言って彼女はなにやら複雑な構造をした金属の塊を俺に見せてきた。 「もうエネルギーが切れちゃったから使えないけど、まだ痛みますか?」 傷はもう痛まない。服を捲くって確認してみたが綺麗に傷が塞がっている。 (どういった原理か判らないけど、きっとミントの法術を貯めこんでおける道具かなんかなんだろう。っとそれよりも) 「なぁ、君に聞きたい事があるんだ」 突然まじめな顔になった俺にこの娘も表情を強張らせる。 「君言ったよね。金髪の女の子を殺したって。アシュトンから君を守ったけど、事と次第によっては君を…」 殺す。そう続けようとしたが、どうしてもその続きは声に出せなかった。 命がけで守った娘だからだろうか。それとも、ずっとそばにいる長髪の男を守りながら戦っていた姿を見た所為だろうか。 不思議とこの娘が理由も無くあんな惨い殺し方をする訳が無いという確信があった。 少女は目を伏せポツポツと言葉を紡いでいく。 「多分あなたが言っている女の子は私達との戦いで負った傷が原因で亡くなったんだと思います。 でも、そうするしかなかったんです。でなければ私達は皆あの子に殺されていた…」 「ちょっと待ってくれ! あの女の子に? だって君達はそこの男の人と、 もう一人の金髪の男の人も含めて3人もいるじゃないか! それがあの子一人に?」 「そうだ! クリフさん! あの人はとても強いからきっと大丈夫だとは思うけれど、やっぱり心配。助けに行かなくちゃ」 そう言ってこの女の子は横たわる男を背負おうとして 「キャッ!」 つぶれた。 「おいおい、大丈夫か? 君の体格でそいつをおぶってくなんて無理だ。 それよりもさっきの続きを聞かせてくれ。納得できたら俺も手を貸すから」 男の下敷きになったこの娘を引っ張り出して、服についたホコリを払ってやった。 別にセクハラ目的とかそんなんじゃないんだからな。勘違いすんなよ。 「すみません。ありがとうございます。それでは続きですけれど…」 こうして彼女は自分達と金髪の少女との間に何があったのかを俺に話してくれた。 【D-5/深夜】 【ソフィア・エスティード】[MP残量:10%] [状態:疲労中] [装備:クラップロッド、フェアリィリング、アクアリング、ミュリンの指輪のネックレス@VP2] [道具:ドラゴンオーブ、魔剣グラム@VP、レザードのメモ、荷物一式] [行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める] [思考1:レナス@ルーファスを守る] [思考2:クリフと合流する] [思考3:フェイトを探す] [思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:自分の知り合いを探す] [思考6:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい] [思考7:レザードを警戒] [思考8:チェスターを信頼] [備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています] [備考2:ヒールユニット@SO3を消費しました] 【チェスター・バークライト】[MP残量:50%] [状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)] [装備:光弓シルヴァン・ボウ@VP、矢×15本、パラライチェック@SO2] [道具:チサトのメモ、アーチェのホウキ、レーザーウェポン@SO3、荷物一式] [行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)] [思考1:クロードを見つけ出し、絶対に復讐する] [思考2:このままソフィアについて行く] [備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません] [備考2:クレスに対して感じていた劣等感や無力感などはソフィアを守り抜けた事で無くなりました] [備考3:スーパーボールを消費しました] [備考4:レーザーウェポンを回収しました] 【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:40%] [状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中] [装備:連弓ダブルクロス、矢×27本] [道具:なし] [行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する] [思考1:???] [思考2:ルシオの保護] [思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)] [思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:協力してくれる人物を探す] [思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す] [備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます] [備考2:ルーファスの意識はほとんどありません] [備考3:半日以内にレナスの意識で目を覚まします] [現在位置:D-5東部] ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「一体何が起きたっていうんだ?」 E-4を北東方向に突っ切ろうとしていたクロードが、目的地の確認をしようと探知機にスイッチを入れた時だった。 そこに表示されていたのは五つ集まっていた反応の内二つが北西に移動していた。 そしてそれを追う様にして少し離れた位置にあった光点も移動している。 他の三つの光点は位置を変えていない事から何かあった事は明確であった。 それを確認したのが一時間位前の出来事。 そしてD-5に足を踏み入れたので、再確認の為に探知機を起動したクロードは目的地に更なる変化が訪れている事に気が付いた。 「近くに誰かいる?」 目的地としていた三つの反応があった場所には現在二つしか反応が無かった。 そして、おそらくさっきまでその地点にいたと思われる反応が自分の直ぐ近くにあるのだ。 (何があったのかを聞かなくちゃ) 探知機の反応を頼りに周辺を探すクロード。 「この辺りの筈なんだけれど…。うわっ!」 夜の暗闇の所為で足元にあった何かに躓いてしまった。 やけに重たい感触だったのだが、今のは一体なんだろうと振り向いたクロードは驚いた。 「ちょっ!? 君大丈夫? って、アシュトンじゃないか!? しっかりしろアシュトン!」 アシュトンを助け起こし、肩を揺さぶる。 「うっ、クロード?」 目を開けたアシュトンと目が合った。何故倒れていたのか? とか、平瀬村に向かったんじゃないのか? 等の疑問が浮かんだが、 まず最初にクロードはアシュトンの体の変化について尋ねた。 「アシュトン。ギョロとウルルンはどうした?」 二人の名を呼ばれたアシュトンその身を強張らせる。 「…。あいつらが…」 今までクロードが見たことも無い暗い怒りを秘めた表情のアシュトンが先程の戦いで起きた出来事を語り始めた。 「…」 アシュトンの語った内容を聞き終えたクロードは言葉を失った。 「僕行かなくちゃ…」 フラリと立ち上がったアシュトンを慌ててクロードが止める。 「行かなくちゃってどこに? そんな体でどうするつもりなんだよ?」 「決まってるじゃないか、二人の敵討ちだよ。僕はあいつらが許せないんだよ。僕から大切な友達を奪っていったあいつらが。 あの時は二人が逃げろって言ったから逃げてきたけどさ、このままだとあいつらがどこかに行ってしまうからね。 少し休んで疲れも取れたから大丈夫だよ」 「アシュトン、君がどれだけ悲しいのかはよくわかるよ。でもね、敵討ちなんかしてもあの二人は生き返らないんだよ」 (そう、ここで死んでしまった皆も…) 「そんな事はわかってるよ! でもあの二人の為に何かして上げられる事がこれ位しかないんだ! だから僕は行くよ。クロードが止めたって無駄だからね」 それを聞いたクロードは少し悲しげな顔をした。 (あの温厚なアシュトンがこんなにも憎しみに囚われてしまうなんて…。 それにねアシュトン。ギョロとウルルンが命がけで守ろうとした君に対して望む事は、敵討ちとかそんな事じゃなくて、 二人はなにがあろうと君に生き抜いて欲しいって思っているんじゃないのかな?) そう口に出そうとしたがクロードはやめておいた。 今の彼にはきっと何を言っても心に届かない。そう判断したのだ。 だから変わりに 「わかった。僕も行くよ。敵討ちを認めることは出来ないけど、そんな危険な連中を野放しにするなんて出来ない」 アシュトンに対して同行を求めた。 こんなにも危うい状態の友人を放っておくなんて事は彼には出来なかったし、 近くにいればアシュトンの無茶を止める事が出来るかもしれないと思ったからだ。 「そう…。じゃあついて来て、こっちだよ」 アシュトンは剣を掴んで虚ろな眼をしながら北の方向へと歩みだした。 クロードも荷物を纏めてアシュトンの後について行く。 これが良くない兆候だとはわかってはいたものの、今のクロードにはどうする事も出来なかった。 【D-5/黎明】 【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%] [状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)] [装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード] [道具:昂魔の鏡@VP、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)] [行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す] [思考1:アシュトンと共に行動] [思考2:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する] [思考3:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい] [思考4:ブレア、ロキとも鎌石村で合流] [備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません] [備考2:アシュトンの説明によりソフィアとチェスターは殺し合いに乗っていると思っています] 【アシュトン・アンカース】[MP残量:60%(最大130%)] [状態:疲労中、激しい怒り、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲・ギョロ、ウルルン消滅] [装備:アヴクール、ルナタブレット、マジックミスト] [道具:無稼働銃、物質透化ユニット、首輪×3、荷物一式×2] [行動方針:第4回放送頃に鎌石村でクロード・プリシスに再会し、プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる] [思考1:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ] [思考2:プリシスのためになると思う事を最優先で行う] [思考3:ボーマンを利用して首輪を集める] [思考4:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい] [備考1:ギョロとウルルンを殺された怒りが原因で一時的に思考1しか考えられなくなっています] [思考2:イグニートソード@SO3は破損しました] [現在位置:D-5南西部] 【残り21人+α】 第118話(前編)← 戻る →第119話 前へ キャラ追跡表 次へ 第118話(前編) チェスター 第120話 第118話(前編) ソフィア 第120話 第118話(前編) レナス@ルーファス 第120話 第118話(前編) クロード 第120話 第118話(前編) アシュトン 第120話 第118話(前編) アーチェ 第134話 第118話(前編) ミント 第134話 第118話(前編) すず 第134話
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見よ!塾長は紅く燃えている 「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」 「いえ、そのような大きな声を出さなくても聞こえますよ、江田島先生。 むしろ、そんな大声を出せばあたりの人に気付かれ」 「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」 「…………はあ」 エリアでいえば、E-5にあたる川の傍の草原。 そこで、2人の男が会話をしていた。 1人は大柄な体躯に、見事なまでに髪のない頭、それでいて精悍な顔つきで立派なひげに和服を着た男。 もう1人は対照的に、端正な顔つきに金髪の優男といった印象の男だった。 大柄な男、江田島平八と青年、玉藻京介が遭遇したのはついさっきのこと。身構えた玉藻に江田島が「わしが男塾塾長、江田島平八である!!」と叫び、 玉藻が唖然としたところに江田島が自分はこのゲームに乗っていないことを申告。互いに自己紹介を始めたところだった。 ……ちなみに、もう江田島は自分の名前を叫んだのだから、さっきの自己紹介は本当は必要なかった、という ツッコミはしてはいけない。ていうかしても無駄だ。 「私は玉藻京介と言います。童守小学校で教育実習生をしています」 「ほう。教育実習生、ということはお主も将来は教師を目指すものか」 「ええ。今は見習いの身ですが、ね。いつか生徒達に学業を教えたいと思っています。 もっとも……それを叶えるためには、まずここを抜け出さなくてはなりませんが」 「うむ」 江田島はこのゲームに乗るつもりは全くない。 確かに人が生死をかけた戦いで自分を磨くということは知っている。 だが、これはそんなものではない。こんなものではそんなことは望めない、いや望んではいけない。 あのワポルという男はただ楽しみたいだけだ。そのような事は赦せない。 それにあの説明の時を見る限り、明らかに学生が何人か見受けられた。 若者は国の宝。その芽を殺し合わせて絶つなど、断じて赦せん! 「とりあえず、まずは人員を集めましょう。私たちだけではどうしようもありません。 私たちのように、このゲームに抵抗する人間はきっといるはず。その人たちと合流、結託。 それから、この首輪を外す方法なりを模索しましょう」 「うむ。それがよかろう。わしが男塾校長江田島平八である!!」 「それはもういいですから…」 玉藻があきれ果てながら、つっこんだ。 しかし、それはどうやらすこし遅かったらしい。 「ねえ。あんた、すっごい大きな声してるね」 声に2人が振り向くと、そこには白い布だけを羽織った銀髪の少年がいた。 「うむ。わしが「君は何者だい?」ある!!」 江田島の声を玉藻が遮り、少年に問う。 少年はすこし不機嫌な顔になった。 「俺が何者か、かー。……それは俺が一番聞きたいことなんだよ。 俺は自分が何者か分からない。脳細胞がずっと変異を続けててさ、どんどん記憶が失われてくんだ。 どこで生まれたのか、本当の名前がなんなのか、本当の性別も、親も分からないんだ」 「……君は何を言ってるんだ?」 玉藻が少年の奇妙な言動にいぶかしげな顔を見せる。少年はそれを無視して続ける。 「俺は自分が何者か知りたい。その為には、他人と自分を比べてみればいいと思うんだ。そうして自分の正体を探すんだ。 そう、他人の……――とさ」 「?今、何と言―」 次の瞬間、少年は玉藻の目の前まで接近していた。 一気に接近してきた。地を蹴って、ほんの刹那の間に。 (なんという、脚力!まずい、対応が…!) 玉藻が後ろに下がろうとするが、少年はそこで腕を振りかぶり、 玉藻に向かってそれが突き出され― 横からの鉄拳でその腕を防がれた。 「え!?」 「ぬおおおおおおおおお!」 鉄拳の持ち主、江田島が少年の伸ばした腕を殴り飛ばし、殴り飛ばされた腕に吊られて少年も吹き飛ばされる。 が、地面に激突するかと思った時、手を地面につくと、バク転のように体を回転させ、見事に着地した。 着地した少年は、驚いた顔で玉藻の前に出た江田島を見る。 「すげえ……今の力、ただの人間とは思えないよ!あんたもネウロみたいな魔人なの?!」 「魔人……?」 玉藻がその言葉に反応するが、少年はそれを意に介さず、江田島だけを見ている。 「俺のスピードにもついてこれたし……気が変わった。そこのお兄さんにしようかと思ったけど、やっぱあんたにするよ」 少年が身をくぐめるのを確認し、江田島も身を構える。 「玉藻よ。下がっておれ」 「……それがよさそうですね」 玉藻が江田島から距離をとる。この戦いに、自分は邪魔になる。そう悟った。 少年は喜悦に顔を歪ませ、言った。 「あんたの中身を、見せてくれ」 少年が地を蹴り、江田島に肉薄し腕を突き出す。明らかに細い腕、だがその力がとてつもないということは 既に江田島は先の拳で把握していた。少年の手は握り締められてはおらず、むしろ開かれている。じゃんけんで言えば、 グーではなくパー。ただし指を立て、掴むイメージのパーだ それに今江田島の目の前でおこる豪速、怪力が備わり、人間に直撃したならば……人間の肉がまるでワニに噛まれた ようにそがれてしまうに違いない。つまり、あれがどこに当たろうが危険だ。あの腕は、まさしく喰らい付くワニの顎も同然! 「ふん!」 その顎を紙一重でかわし、江田島も鉄拳を打ち出す。だが少年は身軽にそれをジャンプでかわし、今度は怪力の腕を振り下ろす。 江田島はそれを正面から拳で迎え撃つ 江田島の正拳と少年の腕が激突する。少年の開かれた指が江田島の拳に突き刺さる。 華奢な細腕とは思えない力。それが江田島の腕に一気に襲い掛かる。 「凄いなあんた!俺にこんなに対抗できた奴、始めてみた! あんたみたいな奴の中身を見れば、俺の中身もわかるかもしれない……なあ、何者なんだよあんた!ネウロみたいな魔人? まあ、後であんたの中身を見れば済む話なんだけどさ!!」 嬉々とした少年がもう片方の腕を空中で江田島に振りかぶる。もう一つのワニの顎が江田島に襲い掛かる。 「わしが何者か、知りたいか……」 「えっ!?」 が、次の瞬間少年の体勢が空中で崩れた。なぜか。 簡単な話。江田島が少年の指の刺さった拳を一気に引いたのだ。 ただ引いただけではない。それはもう恐ろしいまでの速さ。空中で踏ん張るものなどない少年は引っ張られ、 そして江田島に近づかせられる。 「あ、あんた…!まさか、この為に俺の指を……力を抜いてたのか!?」 全力を出して少年をただ吹き飛ばしてしまったらこうはいかない。肉を切らせて骨を絶つ。江田島は少年の力と自分の力が拮抗 するように、腕の力を調整したのだ。最初の手合いで少年の一撃が自分の全力より弱いと察した江田島は、目算でその力を調整、 ぶつかった時に瞬時に微調整をした。 力の調整、それは江田島ほどの男でなければそうそうできない所業である。 結果、少年は江田島に引き寄せられる。その先に待つのは、江田島の片方の鉄拳。 カウンター。こちらに向かう力と逆の力。その2つがぶつかった時、そのダメージは倍増する! 「わしが男塾塾長」 江田島の拳が少年の胴を直撃し 「江田島平八であーーーーーーーーる!!!!」 華奢な少年の体を紙のようにふっ飛ばし、埋まっていた指をも引き剥がし、少年は川の方へと吹っ飛んだ。 50メートルほど吹っ飛んだ少年の体が、無防備に川へと着水した。 やがて大きな水しぶきが上がったのを見て、江田島は安堵する 「あの者……恐ろしい相手であった。だがどうやら精神は童同然。是非わしが正しき道を導いてやりたいところだった……む?」 揺れる水面を見ていた江田島に奇妙なものが見えた 「あれは……何!?」 それはしゃれこうべ。要は、頭蓋骨。それが川の水面をいくつも揺れて動いているのだ。 さっきの少年のもの?いや、それにしては多い。川を漂い流れるいくつもの髑髏。それは果たして地獄のような光景。 百戦錬磨の江田島といえど、気を揺るがさざるを得なかった。 そして、そのわずかな心の隙を……『彼』は見逃さなかった。 「ぐうううう!!」 咄嗟に、地を蹴った江田島。だが、一歩遅かった。その背中を何かが大きく抉った。 江田島はその痛みに耐え、振り向きざまに拳を繰り出すが、彼はそれを軽々とかわした。 江田島の後ろにいた人物、それは当然1人しかいない。 「玉藻……お主……!」 「一気に致命傷を与えるつもりだったのですが……まさか背後の攻撃に気付くとは思いませんでしたよ」 江田島の怒りの視線を受けてなお、さっきまで友好的であった青年、玉藻京介は血の滴る刀、三代鬼徹を平然と構えている。 その表情には不敵な笑みが浮かんでおり、罪の意識はまるで感じられない。 「江田島先生。あなたはどうやら人間の中でもかなり強力な力を持っている方のようだ。 私はこのようなところで死ぬつもりはないのでね。素直に優勝するとしましょう」 「貴様!!」 裏切りに激昂した江田島が玉藻に向かって走り、拳を突き出す。だが、玉藻は先の少年のようにアクロバットではないものの、 身軽にそれでいて華麗にも見えるほどの動きでそれをかわす。 「おや、江田島先生。さっきより拳が鈍っているようですね。やはり背中の傷はそれなりに影響が出たようだ」 「ふん!!」 玉藻の言葉に答えず江田島は蹴りを玉藻に繰り出す。だが、その時背中の傷から痛みが走った。 「ぐ、ぬ…!」 本来の江田島ならば、これくらいの傷はなんてことはない。なにしろマグナムの一撃にすら耐えられる強靭な肉体だ。 だが、ここでは彼の身体能力は著しく弱まっていた。拳の威力。そして体の強靭さ。しかも理由はそれだけではない。 玉藻の使っている三代鬼徹。これは素でも石斧をたやすく切り裂くほどの切れ味があるが、肝心なのはこの刀が『妖刀』である点である。 「足を止めていいのですか?」 「なに?……!?」 すこし後ろに下がった玉藻を見て、江田島の瞳孔が開いた。さっきまでの玉藻とは明らかに違う点があった。 尾だ。玉藻の尻から金色の尾が生えているのだ。 「その尾は……狐か!」 「そう。教えてあげましょう。私は妖狐。古来より人間達に災厄と混乱をもたらしてきた、妖狐・玉藻です」 妖狐。要は、狐の妖怪である。古来より妖狐は400歳を越えると、人化の術を覚え人に化け人に災いをもたらす事を掟としている。 400歳をこえた彼、玉藻もそれに漏れず、完全なる人化の術を完成させるため、立野広の頭蓋骨を求めて童守小学校の教育実習生としてやってきた。 だが、それを鵺野鳴介に阻まれる。 その時の鵺野に興味を抱き、彼に再び術を仕掛けるがそれも突破され、ますます興味を持った。その矢先の出来事がこのゲームだった 先刻、江田島が気をとられた水面の髑髏。あれは、玉藻の仕業だ。妖狐の術の一つ、『幻視の術』。 古来狐は舞い落ちる木の葉で人を化かす、というのはよくある話。だが妖狐の場合は、木の葉だけに留まらない。 動いている物にならばどんな物にでも幻覚を纏わせる事ができる。 さっきの場合、玉藻は少年の着水によって川に起きた波紋。揺れて動くそれに髑髏の幻覚をつけ、江田島を動揺させた。 その隙に、三代鬼徹で切りかかった。さっきのからくりはこんなところだ。 先の鬼徹に話を戻そう。三代鬼徹は妖刀である。それは所持者が不幸にあったという逸話だけでなく、 これの持ち主ロロノア・ゾロが、目に見えない場所に鬼徹があったにもかかわらずそれを感知できたことから、 妖怪でいう妖気的なものが鬼徹にはあると伺える。 ではそれを妖怪であり妖気を操る玉藻が持てばどうなるか。ただでさえ強力な妖刀が、彼の妖気により強化されてもおかしくはない。 妖気により強化された妖刀、制限により弱まった肉体。この2つの要素が超人、江田島平八の背中に深い傷を負わせたのだ。 「鵺野先生を殺すのは残念ですが、私もここで死ぬつもりはない、もとより人間などに殺されるとは思っていない。 故に、私はあなた達を殲滅する。妖狐のプライドの下にね。もちろんあのワポルという男もただでは終わらせませんが」 「……」 「おや、裏切られた怒りで言葉も喋れなくなりましたか。その背中の裂傷で立っていられるとはたいしたものです。 このまま切り殺してもいいのですが、あなたの格闘術が優れているのはすでに把握しました。 ですから……あなたは一気に焼き殺すとしましょう!」 玉藻の尾が動き、摩擦を起こす。するとそこから炎が起こり、玉藻の周りを螺旋状に包んだ。 『妖狐 火輪尾の術』。妖狐は尾をすり合わせる事で炎を起こし、それを自在に操る。 俗に言う狐火と言う奴だ。ただの炎ではなく、霊的な炎であり、それは全てを焼き尽くすという。 「はっ!」 玉藻が江田島に指を向けると、炎が一気に江田島へと向かう。江田島が逃げる間もなく、炎は江田島の体を直撃した。 「ぐっ!!!!」 「ははははははは!悲鳴をあげないとは驚きましたよ。かつて、多くの霊能力者がこの術に敗れ去った。 ……最近唯一1人だけ、この術に耐え切った男がいましたが……彼は霊能力者であり、白衣観音経を使ってやっとだった。 この意味が分かりますか?江田島先生」 江田島の答えを聞くまもなく、江田島に襲い掛かる炎が強くなっていく。 江田島の服は焼け消え、彼の体がどんどん火傷に包まれていく。 「霊能力者ではないあなたにはこの術に耐えるすべなどありえないということです!」 炎のレベルは既に玉藻に言わせれば『道鏡レベル』に上がっている。道鏡とは奈良時代の僧であり、 要するにその彼が耐えられたレベルの炎、ということである。 江田島の体を灼熱が襲う。江田島の体に激痛が走る。 だが、その江田島の口がゆっくりと動いた。 「……玉藻、よ……一つ、問う……」 「!?ば、ばかな!このレベルで喋れる気力があるというのか!」 江田島の体は炎に包まれている。炎は酸素を消費する。江田島はもはや呼吸すら辛い状態のはずなのに、言葉をつむいでいる。 そもそも、常人ならば既に焼け死んでいるほどの炎のはずだ。 「……教育、実習生、というのは……おぬしの、偽りの、姿か……?」 「……ええ。それがどうかしましたか。そのような物、ある生徒の頭蓋骨を得たいが為の仮の姿! 汚らわしい人間どもなど、私にとってはどうでもいい!」 「そう、か……」 それを聞き、江田島の腕がゆっくり動く。 「まだ動けるとは!ですが、これで終わりです、『空海レベル』!!」 炎が更に勢いを増し、平安時代に天台宗を開いたという僧、空海が耐えられた炎にまで温度のレベルが達する。 江田島の体がどんどん焼け焦げていく。 「これで流石に終わりでしょう。あなたは恐ろしい超人でした。ですが、もうここが限界で……!?」 玉藻の言葉が止まった。いや、止まらざるを得なかった。 江田島の鋭い、威圧を伴った眼光が、玉藻を射抜いていたからだ。 (許さぬ、許さぬぞ玉藻京介!) 江田島は憤怒していた。 教師とは、若人を導く者。若人は、国の希望。若人は、国の未来。その若人を導く教師、それは誇りに溢れなければならない。 だからこそ、許せない。 若人を殺す為に、教師を目指す者を騙ったこの男が。 今から若人の命を刈らんとするこの男が! この男にこのまま殺されるわけには行かない。この炎に焼かれるわけには行かない。 「心頭滅却すれば、火もまた涼し!!」 江田島が叫ぶと、まるで炎が江田島の体を避けるようになった。それはまるで伝説に語り継がれるモーゼのよう。 もっともモーゼが割ったのは水であり、今江田島の体を避けて割れているのは炎だが。 「ば、馬鹿な!私の炎が!! な、なぜ……! !?まさか、あなたは……気の使い手!」 江田島平八は霊能力者ではない。 だが、百戦錬磨の戦士であり、闘士である。その過程で、彼は『気』を会得していた。 その『気』が無自覚か、それとも故意にか、霊的な炎から江田島を守っていたのだ。さながらそれは、『気』の鎧。 ……加えるなら、なにしろ彼は大気圏を突入しても平気だった男。恐らくその時もこの『気』が作用したのだろう。 つまり、肉体が弱まってるとはいえ、玉藻の業火には充分堪えることができたのだ。 江田島が構える。それは拳を打ち出す構え。 「っ!だが、例え気を使えたとしても!全身火傷に背中の裂傷!もうあなたは満足に動けないはず! ならば、私が今直接その心臓を貫いてあげましょう!」 江田島が接近してくる前に、玉藻は地を蹴って突進。三代鬼徹で江田島の心臓を貫く事にした。 妖気を伴った鬼徹の剣速と、満身創痍の江田島の拳、速いのは明らかに前者。玉藻はそう判断した。 (そう、人間如きに、霊能力者でもない相手に、この玉藻が破れるはずがない!) その思いとともに、玉藻は江田島に突進する。 玉藻は焦っていた。いや、動揺していたというべきか、無自覚のうちに。 彼の自慢の術が霊能力者でもない相手に破られた。それは彼のプライドをかなり傷つけていた。 ただでさえ鵺野に敗北してから間がない。その傷はかなり深いものだ。 そのプライドの傷による焦り、それが玉藻の正常な思考力を奪った。 江田島の構えが、玉藻の刀がとどくはるか前で突き出される。 「気が狂いましたか江田島先生!そのようなところでは、拳が届きま――」 彼は油断した。焦りから油断した。 江田島の『気』が腕に収束した事に気づかなかった。 いや、気付いたとしても、江田島はそれを放てないと思ったかもしれない。何しろその腕は、 気で防いだとはいえ、かなりの火傷に覆われているのだから。 「若人の、未来……若人の、希望……絶たせは、せぬ!!」 だが、彼は知らなかった。 目の前の男が何者なのか。 何回も聞いていたはずなのに。 彼は、若人を導く者、その頂点にいる男。 若人を導き、若人の成長を見守る男。 そして、若人の希望を守る漢! 「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!!」 その叫びと共に放たれた拳、そこから放たれた、更なる拳、気でできたその拳が、接近していた玉藻を直撃した。 「なっ!!ば、馬鹿な、この、私が!!!」 『千歩氣功拳』。その技が、玉藻の体を遥か彼方まで吹き飛ばした。 ***** 「ぐっ……まだ、まだ」 江田島は、自分のデイパックと玉藻のデイパックを拾い上げると、ゆっくりと歩き始めた。 衣服はほとんど残っていない、裸同然。その裸の体には見るのも痛々しい火傷が広がり、背中には大きな裂傷がある。 普通の人間なら死んでいて当然の傷。だが、江田島は歩みを止めない 「我が命……風前の灯、なれど……若人の未来の為ならば!この命、まだまだ燃やしつくそうではないか!」 彼はまだ自分にやるべきことは残っていると思った。あの少年も、玉藻もおそらくまだ死んでいないだろう。 それに、まだまだこのゲームに乗った悪漢はいる、彼の勘がそう言っている。 彼は歩む。満身創痍の体。 けれど、歩む。全ては若人の未来のために。 なぜなら、彼は。 「わしは、男塾塾長、江田島平八である!!」 【E-5 川岸・中央部西側 / 一日目 黎明】 【江田島平八@魁!男塾】 【装備】 なし 【所持品】 支給品一式<江田島>、支給品一式<玉藻、地図以外>、不明支給品1~3<江田島>、不明支給品0~2<玉藻> 【状態】:全身火傷、背中に深い裂傷、全裸 【思考・行動】 1:ゲームに反抗し、若人を守る。 ※ 参戦時期は、後続の書き手に任せます。 ※ 江田島の傷はかなりの重傷です。放っておくと命を落としかねません。 ※ 玉藻京介、銀髪の少年を危険人物として認識しました。 **** 「くっ……まさか、妖狐である私が、2度も人間に敗れる、など……」 玉藻もまた江田島ほどではないが、かなりのダメージを負っていた、なにしろ千歩氣功拳が直撃したのだ。 妖狐といえどただではすまない。 「鵺野鳴介……江田島平八……何故だ、何故、人間はあれほどになっても、あんな力が出せる!」 鵺野鳴介は、傷だらけの体で玉藻に立ち向かってきた。結果、彼は一旦倒された。 火輪尾の術で試した時も、彼は生徒を守り、大きな霊力を出して術を破った。 そして、江田島平八。満身創痍だった彼。普通ならば動けないはずの彼が、その力を発揮して玉藻を撃退した。 「知りたい…あの大いなる力の秘訣が……私があの力を、手に入れる事ができれば!」 彼には元から興味があった。鵺野の力への興味が。脆弱で汚らわしいはずの人間が発揮した力の秘密。 その興味は、先の江田島の力によって更に強まった。 「……すこし、方針を変更しましょうか……どの道、これでは満足に戦えない。 回復を待ちつつ、窮地に陥った人間を観察……そして、あの力の秘密を見つけ出す! その後、人間の殺戮を始めましょう」 デイパックは失ったが、地図だけは携帯していたのが幸いだった。それを広げ、潜伏する場所を探す。 「ここから近い場所は……あのビル街でしょうか」 地図で見れば南のほうに、肉眼では左の方に確認できる大きなビル街。 その中でも、二つのビルがくっついているように見える建物が気になった。 「都庁に似ていますが……あのような場所なら、監視カメラなども完備しているはず。 それを掌握できれば、人間の観察も容易になる。それに、高い場所なら眼下で起こった事も見渡せる……」 玉藻は立ち上がると、ゆっくり歩み始めた。 玉藻は気付かない 2人の共通項は『教師』 そして、2人の力の源もまた、近しいものであることに 【E-3 橋の袂 / 一日目 黎明】 【玉藻京介@地獄先生ぬ~べ~】 【装備】 三代鬼徹@ONE PIECE 【所持品】 地図 【状態】:全身への痛み 【思考・行動】 1:都庁に似た建物に潜伏し、窮地に陥った人間を観察。人間の力の秘密を得る。 2:力の秘密を得た後は、人間の殺戮を開始、優勝を目指す。 ※ 参戦時期は、ぬーべーを火輪尾の術で試した直後です。 ※ 首さすまたがなく、自分の髑髏を取り出せないため妖狐本来の姿にはなれません なるには、首さすまたが必要です。 *** 時は僅かに遡る。 「あー、いったー。あのおじさん、本当凄いや。肋骨を折られるなんてネウロ以来だよ」 川、江田島たちのいるところの対岸、そこにさっきの少年、自身の世界で怪盗サイと呼ばれる者はいた。 先の江田島の鉄拳で川にたたき付けられたサイは、激しい痛みに耐えて水中を泳いだ。そして対岸までいき、切り立った崖のようになっている川岸を 痛みに耐えつつ、その怪力で強引によじ登り、崖からあがった後、今陸地をゆっくり歩いているところだった。 ちなみに、江田島たちがそれに気付かなかったのは、川の幅が広く対岸が遠かった事、まだ辺りが暗かった事、何より本人たちがそれどころではなかった事、が起因している。 「にしても、いつもより体が脆い気がするよ……いや、力も弱まってるし、今も回復が遅いなあ。 それでも、もう動けるくらいには治ってるんだけどさ」 ずぶぬれで歩きながらサイは考える。自分の身に起こっていることを。 サイにはいくつか普通の人間と違う点がある。 まず驚異の身体能力と怪力。それはさっき、江田島平八と渡り合ったところから察せられる。 本来なら人間の頭、体を一発で完全破砕できる。 それで、弱まっていてなお、江田島を恐れさせる威力が出る。 次に驚異的回復能力。その自己回復の速さたるや、銃で両足を打ち抜かれても、すぐ後には二階の窓から楽々と逃亡をはたし、 頭を銃でうたれても、腹をナイフで刺されても死なない。サイの身体はそれほどにまで強靭。だが、それもここでは弱まっている。 それでも常人に比べれば回復は速いのだが。 「デイパックの口ちゃんと閉めといてよかったよ。水が入ったら大変だしね……ん?」 呟きながら歩いていたサイは、前方にあるものに気付いた。 桜。綺麗に咲き誇る桜。辺りに花びらが舞い地面を覆い尽くすほど散っている。さながら桜色な絨毯のよう。 その絨毯の上で、少女が一人死んでいた。 一目で死んでいると判断したサイは別に驚きも悲しみもせず、桜の花びらに既にいくらか覆われた、 どこか幻想的なその死体に近づき、その死体をまじまじと見つめた。 「普通の女の子っぽいけど、でもあのおじさんみたいに実は凄いのかも。 ……ま、『見れば』わかるか」 そう言って、サイは腕を振りかぶり、躊躇いなくその豪速の腕を少女に振り下ろした。 もちろん、相手への言葉を忘れずに。 「あんたの中身を見せてくれ」 ***** ボキンメキメキブシャベキピチャ パキンメリメリメリップチュッズパッポキッ ボキ バキン グシャッ ***** 「ちぇっ、結局普通の女の子だった。がっかりだなー」 ミシ ミシ メキ 「やっぱり頭を一発か。顔見知りか、あの子がよほど油断してたのか」 ミシ ミシ メキ 「俺みたいに速い奴かも。俺だって額に銃を押し付けるくらいできるし」 ミシ ミシ メキ 「火傷があったからまちがいないよね。ま、俺には関係ないし」 ミシ ミシ メキ 「ここにいるのって、結構凄い連中ばかりな気がする。そいつらの中身を観察すれば、俺の中身もわかるかも知れない」 ミシ ミシ メキ 「さて、こんな感じかな?」 桜の木の麓、そこに少女が一人立っていた。 黒髪のショートカットに髪留め、愛らしい顔立ちに小柄な体駆。 それは、ここで死んでいた少女、西蓮寺春菜と瓜二つだった。ただし服だけは違う。ピンクを基調としたピンク色の女子高生制服。 童実野高校という学校の女子用制服だった。 「俺の支給品にこれが入っていたのはラッキーだったなー。あー、あー。…声帯の感じから声はこんなものかな」 春菜の姿をしたそれは、彼女によく似た声を出し、そして先ほどまでここにいたサイと同じ口調で話した。 これがサイの特徴の一つ、変装能力。いや、むしろ変形能力と言った方が妥当かもしれない。 サイは細胞の変化が著しい。先にサイが脳細胞の変化を言っていたが、それが一端。細胞は常に変化を続けている。 更に、サイはその変化の方向性を変えることができる。それにより、自身の姿を自在に変えられる。時には140cmの老婆になったことも、 果てには犬にまでサイは変化した事がある。 怪盗サイ。それが彼の呼び名である。ただ、これは略称であり本来の呼び名は、 『怪物強盗X・I』 サイの犯行は誰にも見られない。誰もその姿を目撃できない。陰も形も捉えられない。 正体が分からない、サイの姿は『未知』である。ゆえに『X』。 姿が見えない、サイは『不可視』である。ゆえに『Invidible』、頭文字は『I』。 それを率直に並べて『XI』。続けて読んで、『サイ』。それが、サイの呼び名の語源。 その理由がこの変形能力。誰にでもなれる。だから誰も目撃できない。ただそれだけ。 「口調は、まあ、その辺の女子高生のを見習おうかな。知り合いにあったら、無口でいようっと。 それに、そうすれば相手の反応で本来の性格、口調が把握できるし」 サイはしばらくはこの春菜の姿でいる事にした。 理由は、このゲームの攪乱だ。サイは、他人の中身が見たい。中身を見る事で自分の中身を見つけたい。 ここにいるのはそれにふさわしい人員ばかりかもしれない。 かといって、全員自分の手で殺したい、というわけではない。別に彼は中身が見れればいいので、死んでいても問題はない。 木っ端微塵でもない限り。となれば、ここにいる者をできるだけ混乱させれば、殺し合いは促進するはずだ。 「それには俺のこの能力は向いてる。なにせ、濡れ衣なんてお手の物だし。着せたい奴に化けて誰か殺せばいい。 それに……俺にはアレもあるし」 サイがここに来る直前、その身に取り込んだものがある。 電子ドラッグ。ある教授が作り出したそのプログラム、それは映像プログラム。だが、その視覚情報は人間の脳に多大な影響を与える。 脳内麻薬の大量分泌。それによる身体能力の著しい向上。 そして一番の効果、それは人間の深層心理の犯罪願望を開放する事だ。 たとえ犯罪者の素質がなく、良心的な人間だったとしても、そのプログラムを見せられたならば、誰でも持っているような願望が特化され、 犯罪願望となる。 人は誰でも理性を持つ。電子ドラッグは、犯罪を抑えるその理性を完全に消し去ってしまう。そんな悪魔のプログラム。 それをサイは脳内に持っている。そしてそれを、他人に見せて暴走させる事ができる。 それには目を合わせてかなり相手に近づく必要があるのだが。 これを使えば、たとえやる気のない人物でも、暴れさせる事ができる。サイはそう考えた。変身能力と電子ドラッグ。 この2つを使い分け、殺人者を増やしていこう。そしてそれで増えた死体の中身を、自分が見る。 生来、面倒くさがりなところがあるサイはそう決めた。 そう考え、サイは立ち上がり、桜の下を去る。と、足を止めて振り返った。そして笑顔で言う 「せっかく中身を見せてもらったし、サービスであんたの姿を借りさせてもらったよ 名前も知らないけど……ありがと。じゃあね」 そう言って、前を向くと、今度こそその場から去った。 後に残されたのは、桜色の絨毯と、その上に乗る……『箱』。 それは確かに『箱』だった。立法系の形に、さっきまでサイが来ていた布が包んでいる。一体それは何か。 サイの支給品か?いや、違う。 最後に、サイの犯行について記述しよう。 強盗、と呼ばれるからには何か盗み、怪盗と呼ばれるからには高価な美術品などを狙うと思うだろう。 確かにサイは芸術品を盗む。だが、それだけではない。芸術品が盗まれたところから、さらに1人、 人間が消えるのだ。 それだけではない。後日、その現場にあるものが届く。それが『赤い箱』。 ガラス張りで立方体のそれは、赤いとしか言いようがなく、ただただ赤い。 一体、それはなんなのか……ヒントは、その箱の重量。 その箱の重量は、ガラスを除けば攫われた人間とほぼ同じ。 更にヒントを言えば、細胞のDNAも完全一致する。 ここまで言えば、もう言うまでもない。 届く箱とは、攫われた人間そのものであり、人間がサイにより破砕され、箱に圧縮され成り果てた姿なのだ サイは人間の中身を見たい。余すところなく見たい。だから箱を作る。上下左右前後から見れる『箱』。 その為にサイは人を『箱』にする。 これがサイの犯行の全容である。 花びらが、箱になりはて、布に覆われた『西蓮寺春菜』の上に積もっていく。 たとえ知り合いがそれを見つけても、彼女と気づく事は、まずないだろう。 花びらは、それを哀れむかのように、まだまだ舞い散っていた。 【E-5 桜の木の下 / 一日目 黎明】 【XI@魔人探偵脳噛ネウロ】 【装備】 童実野高校の女子制服@遊戯王 春菜の髪留め 【所持品】 支給品一式 不明支給品(0~2) 【状態】:西蓮寺春菜の姿 肋骨損傷(数時間で回復可能) 【思考・行動】 1:この会場の奴らの『中身』を見て、自分の『中身』を見つける。 2:変身能力で混乱を起こす。できれば集団。自力での襲撃も行動範囲内。 ※ 参戦時期は、HALⅡからHALの目を得た直後です 故に、電子ドラッグを使う事ができます。本来はサイの指令を刻み込む、つまり支配下に置くこともできますが、 制限によりその力は使えず、また効果もそれほど大きくなく、 「犯罪への禁忌感を減らす」、要は相手を犯罪に走らせやすくする程度です。 サイはまだその制限を自覚していません。 ※ ワポルが定期放送で死亡者の発表について触れなかった為、死亡者発表については知りません。 ※ 春菜の名前を知りません ※ 江田島平八を『凄い奴』と認識。 ※E-5に、サイが着ていた布と、箱状に圧縮された春菜の肉塊が放置されています 024 小さな勇士 投下順 026 恐るべき妖刀 023 聞く耳持ちません 時間順 026 恐るべき妖刀 初登場 江田島平八 初登場 玉藻京介 初登場 XI 029 想い人
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Calling ◆.WX8NmkbZ6 場に縁が現れた直後。 空飛ぶホウキで戦線を離脱したレナは、他の参加者の姿を探していた。 ――助けを呼ばなきゃ。 ――ヴァンさんは怪我をしてるんだから、私が何とかしなきゃ。 これまでにレナが出会った参加者は、真紅、後藤、ヴァン、C.C.、ミハエル、東條、縁の七人。 この会場にいる参加者の全てが殺し合いに加わっているわけではない事を、レナは知っている。 同時に殺し合いに加わっている人間が少なくない事も、知っている。 それでも仲間の命が掛かった今、レナは真紅やヴァン、C.C.のような参加者との出会いを信じた。 迷いはあった。 危険人物と遭遇する可能性があったから、ではない。 もし味方になってくれる参加者を発見出来たとしても、本当に助けを求めていいのかを迷っていた。 助けを求めるという事は、戦いに巻き込むという事。 殺し合いが行われている、まず自分の命を守る事を第一としなければならない状況で、それは正しいのか。 仲間を失いたくないという自分の感情一つの為に、他の参加者を危険に晒していいのか。 それでも戦う術を持たないレナには、ホウキを走らせる事しか出来なかった。 無我夢中に進んだ先で出会った蒼嶋と千草は、事情を説明すると二つ返事で応えてくれた。 移動している間に行った情報交換も信じて貰えた。 二人はレナの期待した通りの相手だったと言える。 「逃げろと言ったのに……」 「はぅ~……ごめんなさい……」 C.C.の腹に穿たれた傷は出血が止まっており、服に空いた穴よりも少し小さい。 先のC.C.の説明にあったように再生しているのだろう。 いつもはもっと早く復帰するのにとC.C.は違和感を口にするが、レナにしてみれば死ななかったというだけで安堵に足る。 今は二人で戦いの場から離れる事の方が重要だった。 そして。 レナの思いがもたらした『結果』が、眼前に広がる。 「ちぃちゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!」 C.C.に肩を貸した姿勢のまま。 蒼嶋の叫びを聞きながら。 千草の姿を目に焼き付けながら。 レナは立ち尽くした。 ▽ 千草は手からブラフマーストラを落とし、膝を着く。 ――悔しいなあ……。 ――せめて一発、あいつを殴りたかったのに。 もう死ぬ。 一度死んだ経験があるせいか、千草は自分の終わりを悟っていた。 ――ろくでもないなあ。 ――あたし、まだ十五年しか生きてないのに。 何の為に生きていたのか分からないし、何の為に生き返ったのか分からない。 狭くなり始めた視界に、蒼嶋の顔が映る。 わざわざ自分の為に、シャドームーンの攻撃をかいくぐって駆けつけてくれた――そう思うと申し訳なくなる。 「ねぇ、シュン。 あたし、さ……」 ――ねぇシュン……ぶっ飛ばしちゃってよ。 ――銀色の奴も、東條も、ブイツーも、こんな下らない事してる連中、みんなみんな。 ――あたしの事はもう、いいからさ。 一度あんな死に方をしたのにまた殺し合いに連れて来られて、最悪だと思っていた。 それでも一つだけなら、いい事があった。 「シュン……と……」 その言葉の先が紡がれる事はなかった。 ただ霞む視界の中で、蒼嶋がずっと手を離さなかった事だけははっきり覚えている。 少なくとも、独りぼっちで死ぬわけではない。 最初に死んだ時と同じで、最後に一緒にいてくれる誰かがいる。 ――それがシュンで、よかった。 蒼嶋が気に入らない連中を一人残らずぶっ飛ばして「皆で焼き肉に行こうぜ!」なんて叫んでいる、そんな光景を夢に見る。 夢じゃない、蒼嶋はきっと夢で終わらせない。 そう信じて千草は目を閉じた。 【千草貴子@バトルロワイアル 死亡】 ▽ 「冗談よせよ、目を開けろよ、ちぃちゃん……ちぃちゃん……!!」 無防備な姿を晒す蒼嶋を、東條は黙って眺める。 「英雄なんかじゃない」と、否定された。 これからどうすればいいのか、教えてくれる人はどこにもいない。 その混乱の中で、東條の思考に「英雄を倒せば英雄になれるのではないか」という考えがよぎった。 「強い相手に一歩も引かない」から英雄なら、その英雄に「一歩も引かな」ければ英雄。 その歪んだ思想の下に、東條は蒼嶋へと腕を振り下ろす。 蒼嶋の頭を叩き割るはずだったその手を掴んで止めたのは、シャドームーンだった。 それまで善戦していたヴァンも白髪の男も、既に倒れ伏している。 「……」 シャドームーンは無言で、その銀色の仮面の上からでは表情を読み取れない。 東條は既にシャドームーンの強さと恐ろしさを見ている。 その上で間近に、思う所の知れないシャドームーンを目にするのは恐怖そのものだった。 だが東條は怯まない。 仲村、香川、沙都子、ミハエル、そして「ちぃちゃん」と呼ばれた女を手に掛けた。 強さを手に入れて英雄に近付いた、その自信があるのだ。 裏返せば。 これでもし、強くなっていないのなら。 英雄に近付いていないのなら。 ただの『弱虫』の『卑怯者』なのだとしたら。 これからどうすればいいのか、分からない。 掴まれていない方の手で握ったデストバイザーでシャドームーンを斬り付ける。 しかしシャドームーンはそれをサタンサーベルで容易に止めた。 そして東條の腹に蹴りを入れる。 特に力の籠められていないただの蹴りだが、ライダースーツの上からでもその衝撃は殺されなかった。 シャドームーンがその蹴りの瞬間に東條の手を離すと、東條は十メートル以上吹き飛ばされる。 「ガッ……っぁ……」 差は縮まらなかった。 それを余りに呆気なく、一瞬で思い知らされてしまった。 それでも東條は再び立ち上がる。 (皆、僕の心の中で生きている。 僕が頑張って、会場の皆を救って……英雄に――) パキパキ、と音がした。 見れば腰のVバックルに装填したデッキにひび割れが出来ている。 今のシャドームーンの一撃によるものである事は明らかだ。 「あ、ああああ、あ、」 手で押さえて破損を止めようとする。 これまでに『救った』者の顔を思い出しながら。 これから『救う』者の顔を思い浮かべながら。 しかし努力虚しくデッキは砕け散り、変身が解除された。 デストワイルダーの様子が急変する。 「助けて、助けて仲村君……佐野君――」 追い掛けてくるデストワイルダーに、東條は大切な人達の名前を呼びながら逃げ惑う。 助けてくれる人が、いない。 レナとC.C.が気を失った面々を連れて逃げる背中が見えた。 シャドームーンも最早、こちらへの興味を完全に失ったようだった。 「助けて沙都子、ミハエル君、助けて――」 一歩でもその場から離れようとするが、縁とシャドームーンの攻撃を受けた体は思うように動かない。 大した距離も稼げないうちに、デストワイルダーが東條に追い付く。 「助けて……助けて、助けて下さい、」 腕を掴まれ、引き倒される。 神崎士郎からデッキを受け取って以降ずっと共に戦ってきたデストワイルダーの顔が、すぐ目の前まで迫っていた。 「香川先生――……」 【東條悟@仮面ライダー龍騎 死亡】 ▽ シャドームーンの注意が東條へ逸れてすぐ、C.C.とレナは行動を起こしていた。 C.C.は放置されていた東條のデイパックからフライングボードを出す。 「ヴァン、向こう岸へ逃げるぞ!」 倒れたヴァンのもとへ着くと、その体を背負う形で乗せてボードを浮き上がらせる。 レナもホウキにまたがり、放心している蒼嶋へ手を差し伸べた。 「蒼嶋さん、逃げましょう!」 「けどよ……ちぃちゃんが……」 「早く!!」 蒼嶋はレナの手と千草の亡骸を交互に見比べ、表情を歪ませる。 そして――レナの手を取った。 空飛ぶホウキとフライングボードに二人ずつ乗って、西の海へ去って行く。 その背へシャドームーンがシャドービームを撃つとボードは海へ打ち落とせたが、ホウキは空中で忽然と姿を消した。 気にはなったものの、シャドームーンは追撃や捜索はしない。 死んでいればそれまで、死んでいないならば次に改めて殺すだけだ。 ヴァン、縁、蒼嶋の三人に負わされた傷に触れる。 時間を置けば回復するもので、深くはない。 しかし放送前の戦闘と違うのは、三人が生身の人間だった事だ。 ただの人間達が支給品の効果ではなく己の身一つ、剣一本で世紀王に立ち向かい手傷を負わせた。 それもサタンサーベルを持った状態のシャドームーンに、だ。 その事実にシャドームーンは少なからぬ感銘を覚えていた。 シャドームーンの背後で、最後に残った縁が立ち上がる。 全身に走っていた管はもう見えない。 出血も疲労も一目で限界と分かるものだが、苦しげに息を吐きながらも縁は退く気配を見せなかった。 「ここは見逃してやろう。 消えろ」 シャドームーン自身、何故そんなつもりになったのかは分からない。 少なくとも油断によるものでないのは確かだ。 この殺し合いに、新しい可能性を見出したせいかも知れない。 その声が聞こえていたのかいなかったのか、縁はシャドームーンを相手に一人刀を構えた。 「蹴 撃 ――」 縁が言い終わるよりも早くシャドームーンは縁の眼前に立つ。 拳を一撃腹へ叩き込むと、縁はその場に踏み留まる事は叶わず紙のように吹き飛ばされた。 「次はない。 せいぜいそれまで、残り短い生を謳歌しろ」 世紀王には到底届かない、しかし有象無象と切り捨てられぬ敵。 シャドームーンは亀山薫との交戦から、この会場にいる参加者達をそう評価した。 だがブラックサンやシャドームーンを倒す「万一の可能性」は、起こり得る。 油断と慢心を捨てたからこそ、シャドームーンはそれを認めた。 前の戦闘で、シャドームーンはカードデッキを使って変身する二人を目撃した。 そこからカードデッキは参加者を「一定の強さに変える」、もしくは参加者を「強化する」為の支給品であるという仮説を立てた。 シャドームーンは更に推測を広げる。 もしもシャドームーンに生身で立ち向かったあの三人のような人間があのデッキを用いたら、どうなるだろうか。 前者の「一定の強さに変える」であれば、問題はない。 つまりは引き上げる強さに上限があるという事で、余裕を以て対処出来る事は既に証明されている。 だが後者の「強化する」であれば、楽観視は出来ない。 人間離れした力が更に強化されるなら――ブラックサンやシャドームーンに匹敵しかねないのだ。 故にシャドームーンはこの殺し合いへの警戒を更に強める。 しかし例え創世王の目的が何であろうと、次期創世王はこの自分。 だからこそヴァン達が今後デッキを手にする危険性を鑑みながらも、この場では止めを刺さない。 全て真正面から打ち破って見せる――それは、シャドームーンの世紀王としてのプライドだった。 そしてこの会場でいかなる敵が現れようと、王座を争う相手はあくまで南光太郎だ。 シャドームーンはこのバトルロワイアルへの思いを変化させながらも、宿敵への執念を薄れさせはしなかった。 【一日目午前/F-1】 【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】 [装備] サタンサーベル@仮面ライダーBLACK [支給品] 支給品一式、不明支給品1~3(確認済み) [状態] 疲労(中)、胸とシャドーチャージャーに傷(回復中) [思考・行動] 1:殺し合いに優勝する。 2:元の世界に帰り、創世王を殺す。 3:かなみは絶望させてから殺す。 4:死ななかった五人(ヴァン、C.C.、レナ、蒼嶋、縁)は次に会ったら殺す。 【備考】 ※本編50話途中からの参戦です。 ※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。 ※折れたブリッツスタッフ@ヴィオラートのアトリエ、折れた逆刃刀@るろうに剣心、レイ・ラングレンの銃(60/100)@ガン×ソード、菊一文字則宗@るろうに剣心が放置されています。 ※デストワイルダーの行方は、後続の書き手氏にお任せします。 ▽ シャドービームで撃ち落とされたC.C.とヴァンは大きな波飛沫を上げて海へ落下した。 直撃を受けたボードは砕け、最早本来の役割は果たせそうにない。 ビームの余波で気を失いそうになりながら、C.C.は海中でデイパックに手を入れる。 取り出したのは水中呼吸を可能にするエアドロップ。 とっさの事で一粒しか見付けられなかったが、不死のC.C.には不要の物だ。 思うように身動きが取れない中、ヴァンに向かって手を伸ばす。 ヴァンは連戦で負傷して体力を失っている状態で海中に放り込まれたのだ、このままでは死ぬ。 (起きろ、ヴァン!!) 気絶したままのヴァンの腕を掴んで手繰り寄せ、その口にドロップを押し込む。 (ヴァン、死ぬな!!! お前まで……お前まで私を一人に……!!) ヴァンの手を引き、レナ達を追って西へ泳ごうとする。 しかしC.C.もまた傷の回復が済んでおらず、息が保たない。 ゴボ、と肺に残った空気を吐き出すと、全身の筋肉が弛緩するのを感じた。 (ヴァン――) ▽ (抜刀斎が死んだ……?) シャドームーンが去る足音も聴いていない。 たった今まで続いていた戦いの中、縁の眼にはヴァンも、東條も、蒼嶋も、シャドームーンさえも映っていなかった。 目の前に広がるのはただ、縁の髪が白く染め上がったあの雪の日の光景と―― ――……がみ ――緋村剣心 ――平賀才…… ショックイメージの中で再生された放送。 そして初めに連れてこられた空間。 抜刀斎が、死んだ。 放送を聞いた瞬間に蓋をした、目を逸らした可能性。 姉が殺されたその日から呪い続けた男の、死。 それを信じられずに刀を振るっている間は逃避出来ていた。 しかしそれが終わってしまえば、目を向ける事になる。 (殺し合い…… そんなもので命を落とすような男から、俺は姉さんを守れ、なかった) 殺し合いで死ぬ、殺される。 縁はそんな弱い男からすら姉を守れなかった、最低以下の男になってしまったのだ。 (姉さん……教えてくれ、姉さん……俺は……) 縁の前に現れた巴の幻影は目を伏せたまま、微笑む事はなかった。 【一日目午前/F-1】 【雪代縁@るろうに剣心】 [装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心 [所持品]:無し [状態]:左肩に刺し傷、両拳に軽症、全身打撲、各部に裂傷、疲労(大) [思考・行動] 1:????? [備考] ※殺し合いを認識しました。 ※『緋村剣心』以外の死者の名前、及び禁止エリアの放送を聞き逃しました。 ▽ 千草が死んだ。 蒼嶋はそれが信じられなかった――と思おうとしているだけで、本当は分かっている。 蒼嶋は既に千草の死を理解し、受け入れていた。 そしてそんな冷酷とも言える自分の一面に、嫌気が差す。 「はは……女一人守れない上にこれだもんな……」 涙一つ出ない。 いっそパニックでも起こしていれば、幾らでも悲観に暮れて不幸に酔う事が出来たのに。 弱い自分や殺し合いに参加している者、殺し合いを仕組んだ者への怒りも、沸点を振り切れて逆に冷え切ってしまったようだった。 爪が掌に食い込むまで拳を握るが、その拳を振り下ろす場所を見付けられずに力なく解いた。 「ちぃちゃんが死んだんだぜ……? これじゃホントに、化物みてえじゃねえか……」 挙げ句、千草の遺体を保身の為に見捨てた。 学校が魔界に堕ちた時もそうだった。 人が死んでいるのに――自分が生き残る為なら幾らでも冷静でいられるのだ。 その証拠が手の中にあるデイパックとブラフマーストラ。 千草の亡骸の傍に落ちていた物だ。 「戦うのに邪魔になるから」と事前に千草に預けていた蒼嶋のデイパックもその中に入っている。 あの状況下でもアイテムは見落とさない。 蒼嶋は自嘲し、ますます自暴自棄になった。 「蒼嶋さん……ごめんなさい」 声を掛けられ、そちらへ顔を向ける。 レナの目は濡れて、今にも涙をこぼしそうだった。 「私が見た時はあの銀色の怪物はいなかったけど……それでも分かってたんです。 ……あそこが危ないって。 なのにヴァンさんとC.C.さんを、私の知ってる人達を助けたいって、そればっかりで……蒼嶋さん達を……」 「……巻き込んだ、ってか。 いいよ、もう。 俺も……ちぃちゃんも、危ないの承知でレナについてったんだから」 それを聞いたレナは俯いた。 蒼嶋はレナがそのまま自身を責めて泣き続けるのだと思い、冷めた目で見る。 自分の失敗による犠牲の大きさに、人の死という重さに耐えられる中学生がどこにいるだろう。 しかしレナは制服の袖で目元を拭うと、グッと顔を上げて蒼嶋の目を見据えた。 「……移動、しましょう。 C.C.さん達はまだ来てませんけど……こっち側には後藤っていうバケモノがいるんです。 私達を見付けたらきっと襲ってくるから、隠れないと」 (……おいおい) 「C.C.さん達は、何かあったのかも知れませんけど……絶対来ますから。 それまで、出来る事を考えましょう。 ……千草さんも多分、そうして欲しいと思ってるんじゃないかな……かな」 (おかしいだろ、それ) 「圭一君って、すっごく頼りになる男の子がいるんです。 きっと圭一君も、何とかしようとして頑張ってるから……」 (お前中坊だろ。親のスネかじって、友達と暢気に遊んで、人生バラ色ハッピーな歳じゃねぇか。 俺だって、人の事は言えねえけどさ) 「だから、私達も頑張りましょう」 レナは恐らくただ嘆く、ただ泣く事の不毛さを知っているのだろう。 思い返せば最初に出会った時から、レナの目には涙を擦った痕があった。 この会場で出会った友達を亡くしたと言った。 放送で親しい友達を三人も亡くしたと言った。 その四人の為に泣いて、泣いて――今のレナは、凛と立っている。 (どうして俺の会う中坊はどいつもこいつも、俺より強いんだかな……) 足下をふらつかせた蒼嶋は、レナに支えられながら歩いて行く。 疲れ切って、冷め切って、握り拳一つつくれないまま。 【一日目午前/ F-10 遊園地付近】 【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]:無し [所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン [状態]:疲労(小)、悲しみ [思考・行動] 1:圭一、詩音、C.C.、ヴァンと合流する。 2:蒼嶋と同行する。 3:翠星石と蒼星石も探す。 4:水銀燈、後藤、シャドームーン、縁を警戒。 [備考] ※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。 どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。 ※ギアス、コードについて一定の理解を得ました。 【蒼嶋駿朔(男主人公)@真女神転生if…】 [装備] ブラフマーストラ@真女神転生if… [支給品] 支給品一式×3、どんと来い超常現象全巻セット(なぜベストを尽くさないのか付)@TRICK、スイカ(残り4玉)@スクライド、 庭師の鋏@ローゼンメイデン、鉈@ひぐらしのなく頃に、織田のバイオリン@バトルロワイアル、未確認支給品(0~1) [状態] 各部に裂傷、疲労(大)、全身打撲 [思考・行動] 基本 ブイツーだかなんだか知らんがムカつく野郎はぶっ飛ばす。 0 ちぃちゃん……。 1 狭間は相変わらずの様子ならもう一回ぶっ飛ばす、つーか刺す。 2 一緒にブイツーだかをぶっ飛ばす仲間を集める。 [備考] ※千草が小病院でアイテムを調達しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。 ▽ C.C.が目を開けると、眼前には青い空が広がっていた。 まだ水中にいるのかと訝るが、身体は砂浜に横たえられている。 「ゲホ、ゴホ、……」 飲んだ海水を吐きながら上体を起こす。 視線を落とせば腹部の傷が小さくなっており、時間が少し経過している事に気付く。 服はまだ濡れているものの乾き始めていた。 水中にいたはずが地上に寝かされていたという事は、運ばれたのだろう。 そこまで考えたところで、すぐ傍にいた男の事を思い出す。 「ヴァン!」 見回すとすぐ横に、だらしなく大の字になって寝ている男がいた。 「生きてるか?」 「んん……」 声を掛けるとヴァンはうっすらと瞼を上げる。 普段通りの寝呆けた眼。 ショックイメージで起こした錯乱も、今は落ち着いているようだった。 「あの状態で人一人を抱えてここまで来るとは、大した奴だな。 今回ばかりは労わってやろう」 言って辺りを見回す。 戦闘になったF-1から西へ向かえばワープしてマップの東端に着き、遊園地が見えるはずだ。 そして近くにレナ達もいる。 その確信の下に三百六十度周囲を見たのだが、遊園地のシンボルたる観覧車の姿は見えない。 代わりに、どこか見覚えのある風景がある。 障害物の少ない荒涼とした土地に、離れた場所で細く黒煙を上げる何か――恐らく車だろう。 C.C.とヴァンの現在位置はH-1。 潮に流された後、ヴァンが適当に近くの浜を目指した結果だった。 「……」 シャドームーンから逃げる為に会場のワープを利用しようとしたというのに、マップの西端に戻って来てしまっては意味がない。 しかもレナ達とはぐれてしまった。 シャドームーンが付近にいないのがせめてもの幸いだが―― 「……私は『向こう岸へ逃げる』と言っただろう! お前はまともな方向感覚もないのか、このバカ!!」 「……すみません」 それを言った時、ヴァンは気絶していたのだから責めても仕方がない。 そう承知してはいても、C.C.はその場でヴァンを罵倒せずにはいられなかった。 【一日目午前/H-1 砂浜】 【ヴァン@ガン×ソード】 [装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- [所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード [状態]:疲労(大)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲 [思考・行動] 0:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。 1:レイが気にならない事もない。 [備考] ※23話「みんなのうた」のミハエル戦終了後より参戦。 ※ヴァンはまだC.C.、竜宮レナの名前を覚えていません。 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】 [装備]:無し [所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎 ファサリナの三節棍@ガン×ソード、カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの銃の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、確認済み支給品(0~2) [状態]:疲労(大)、腹部に傷(回復中) [思考・行動] 1:レナ達と合流する。 2:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。 3:後でピザを食べる……つもりだったが、今はそんな気分ではない。 4:後藤、シャドームーン、縁は警戒する。 [備考] ※TURN11「想いの力」終了後、日本に戻る前から参戦。 ※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。 ※フライングボード@ヴィオラートのアトリエは破壊されました。 【チーズケーキ@ヴィオラートのアトリエ】 シャリオチーズを材料に使ったとても美味しいケーキ。 体力・精神力・生命力が結構回復する。 時系列順で読む Back 英雄 Next 遊星よりの物体X 投下順で読む Back 英雄 Next 夢の終わり(前編) 104 英雄 シャドームーン 120 二心同体(前編) 雪代縁 121 彼と彼女の事情 ヴァン C.C. 竜宮レナ 112 Dear you 蒼嶋駿朔 千草貴子 GAME OVER 東條悟
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この病は死に至らず ◆JvezCBil8U 座り込んでいることさえできなかった。 力が入らず、勢いよく上半身が地面に倒れ込む。 エドワードの体から抜け出ていくのは、きっと、目に見えるものだけではない。 薄れていく意識の中で、安藤が何かを言いながら駆け寄ってくるのが見えた。 心配するな、と言おうとして、胃の奥からこみ上げてきた血がごぼりと口から洩れる。 「やべぇな……、死ぬかも」 そんな呟きすら、溢れる血は許さなかった。 体そのものが冷えていく。 痛みさえいつの間にか消えていた。 色々なものが眼前をよぎっていく。 昔の記憶、今の記憶。 ずっと隣を歩いていた弟。 取り戻したかった母。如何とも形容しがたい、父。 師匠からの虐待の日々や、旅の中で出会った人々。 敵として戦った人も、人でなくとも人らしかったものも、己の中にしっかりといる。 遡る時間の中には、特に忘れがたい思い出が焼き付いている。 禁忌の日。燃え盛る家。決意の朝。 踏み出した足と手は鋼に包まれていた。 虚ろな目で、視線を動かす。 ……ああ、そうだ。 この足と手で、ずっとこの道を歩んできた。 この足と手が、ずっとこの背を支えてくれた。 金色の髪が、目の前でなびいた気がした。 その笑顔を救わなければならない。 終わる訳にはいかないと、酩酊する頭でそれだけを形を確かにする。 けれどこのままでは助かるまい。 きっとこの体の死は免れ得まい。 さあ、どうするエドワード・エルリック。 損傷した肉体というハードが、まともな思考を許してくれない。 ……だが、それがどうした? 答えは既に己の内にある。 この島は、ありとあらゆる物質的なモノと数多の魂で編み上げられた巨大な錬成陣だ。 安藤はそこに、三次元の座標という新たな視点を組み込んでくれた。 ……だが、本当にこの錬成陣はそれだけか? 形あるものに、囚われ過ぎていたのではないか? 錬成陣の本質とは、情報の配置だ。 何処に何があるか、それを以って意味を形作る事でこの世の真理を教え説いているものだ。 ……ならば。 形など、物質的な場所など、それに代わる媒体があれば、意味をなさないのではないか。 覚束ない手で、ゆっくりと懐に手を入れ、取り出す。 大丈夫だ。 幸いこれは、壊れていない。 携帯電話を手にエドワードは、咳き込まぬようゆっくりと息を吐く。 思い当って然るべきだった。 情報だけで構築された、情報の為のネットワーク。 ……それは、物質を描いて作った錬成陣などよりも遥かに純度も密度も高い錬成陣となりえるのではないか。 参加者達の使用する掲示板やら何やらは全てカモフラージュだ。 本当に必要なのは、高密度の情報体そのもの。 インターネットこそ、この島の文字通りのライフライン。 アルフォンスは血を媒介にした錬成陣で魂を鉄の鎧に定着させることで、現世に居続けることが出来た。 携帯電話、そしてパソコン。自らの知らない鉄の技術。 それを応用して、この島のネットワークに魂を定着させることはできるだろうか? ……代価として、“扉”を開ける。 肉体など、いくら持っていかれてもかまわない。 元々首輪を外す手段として試みるつもりでいたのだ。 これを機に試してみるのは――悪くない、と思う。 それに、仮に、の話ではあるが。 もし誰かが錬金術を行使してくれれば、またこの体を持って戻ってくることが出来るかもしれない。 のろのろと両手を動かし、パン、と打ち鳴らす。 鋼の手と肉の手、二つが一つになり、ゆっくりと離れて行った。 そのまま両手は、携帯電話に。 ――押し当てる。 光に融けていくのが、最後の感覚だった。 【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 消息不明】 ***** 現場検証を始めてすぐ、鳴海歩はそれに気付く。 「……これは」 東郷の死体のすぐ傍に転がっていた、もう一つの死体。 年端もいかない少年のそれは、見覚えのあるものを握っていた。 「コピー日記……。なんで、これが?」 我妻由乃との邂逅で失ったはずのコピー日記。 それを、この少年が持っているのは、どうしてか。 「……やられた、か?」 無論、あの時学校に置いてきたのをたまたまこの少年が回収したのだろうと考えることもできる。 勿論そんな偶然を信じるつもりはない。 何故なら、コピー日記は一見単なる携帯電話にしか見えない。 当然、この道具の真の価値を知っている者だからこそ、あのどさくさに紛れて持って行ったと考えるべきか。 そうなると、だ。 「こいつが秋瀬或……か」 あの場にいたはずの関係者で、雪輝でも由乃でもないなら、それしか考えられないだろう。 放送の情報があてにならないというのは、掲示板にも書かれている。 あるいは何らかの手段で自分達を誤魔化して、死んだことにしたのかもしれない。 いずれにせよ、この少年はずっとこそこそ裏で動いていたのだ、きっと。 電話越しのやり取りを思い出す。 ……警戒すべき相手だし、実際に言葉という矛を交えたこともある。 だが――嫌いにはなれなかった。 「…………」 黙祷を捧げる。 今できるのは、後はこの少年の遺志を継ぐこと。それくらいだ。 そして、東郷。 この男もまた、最後まで実直に在り続けたのだろう。 ……まさか死ぬなどとは思えなかった。 理性ではなく感情の面で、想像が出来なかったのだ。 「……あんたが死ぬなんて、一体何があったんだ?」 目を閉じ、やはり同じようにする。 目的のために手段を選ばない男だった。 善でもなく、悪でもなく、ただ自分であろうとする存在。 ……ある意味、自分が見てきた中で一番完成された人間だったのかもしれない。 だからこそその力を頼り、危険性を封じる為に、安藤と同行させたのだが。 ……そう、安藤だ。安藤が、ここにはいない。 そのことにうすら寒いものを感じる。 彼の安否はどうなったか。それとも、彼自身がこれを引き起こしたのか。 物言わぬ躯と語らうことで、その片鱗でも拾えればいいのだが。 東郷の死体を見やる。 あんまりにも綺麗に、脳天が撃ち抜かれている。 だが、状況があまりに不自然だ。抵抗の様子が全く見られない。 この狭い部屋の中で、この男が何もできずこうまで圧倒された? ……有り得ない。これほど用心深い偉丈夫が、室内戦で後れを取るはずがない。 何らかの理由で全く抵抗が出来なかったと考える方が妥当だ。 ……そう。 例えば、相手の意識を完全に奪う異能の様な。 しかし、しかしだ。 東郷の死因は、間違いなくこの銃痕だ。 そして自分の知る限り、あの能力はこの口径の銃と同時に扱う事は不可能なはずだ。 と、なると――最低でも一人、共犯者がいることになる。 思い当るのは、やはり先刻の狙撃手だ。 「…………」 知人を疑う自分に、嫌気がさす。 だが、思考を止めることはしない。 それが自分に出来ることだと知っている。 たったひとつの冴えたやりかた、などと、何かを妄信するつもりはない。 ありとあらゆる可能性を試し、足掻き、藻掻き、進んで退いてを繰り返し。 この道の先を知らぬ人間でも、それでもいつか、どこかに手が届くのだ、と。 ――それが鳴海歩なのだから。 頭を振り、検証を続ける。 まだ、あの少年が犯人だと決まった訳ではない。 ……しかしだ。 やはりこの室内は綺麗すぎる。 秋瀬或と、東郷。最低二人はいたはずなのに、どちらか一方すら犯人と争った形跡がないのはやはり妙だ。 「…………?」 視線の先に、弾痕が止まる。 壁にぽっかと開いたそれは、一見流れ弾による産物のようにも見える。 が。 「……血液の飛び散り方と、射線軸が一致するな」 ――壁越しに攻撃した、とでもいうのか? 馬鹿な、と自分の考えを否定する。 完全な盲射ではないか、と。 謎の狙撃手の仕業だとしても馬鹿馬鹿しい。 ……だが、もしそうなら東郷さえ手も足も出なかった理由に説明がつく。 流石に壁越しに正確な攻撃を脳天に食らう、などというのは想像すらできないだろう。 異能による意識の喪失と、壁越しの奇襲。 これらが同時に発生したならば、流石の東郷でもどうにもなるまい。 ……もし、壁越しに攻撃したとして。 予めそこに撃ち込めばこの結果がもたらされると確信していたが如く、 こうも正確に脳天を撃ち抜く――その手段はなんだ? 「…………」 結論ありきで考えている。それは分かっている。 ――誰かに意識を誘導されているのかもしれない。 踊るのは慣れている。……この感覚は、身に染みている。 だが、それでも。自分にはこれしかないのだ。 大きく、ゆっくりと、時間をかけて溜息を。 酸素を取り込み、掻き乱された頭を整調する。 時間が惜しい。 一つの疑問点にかかずらってはいられない。 東郷の躯から、秋瀬或と思しき死体にまた視線を戻す。 「ん……?」 よくよく見ると、握っているモノはコピー日記だけではない。 もう片方の手には、メモ帳が握られていた。 それもわざわざ、自分の血に濡れないように。 「これは……」 ――感嘆する。 そこには数々の、秋瀬或の得た情報や、そこから導いた考察が詰まっていた。 特に最後の方には、錬金術とその視点から見たこの島について詳しく書かれている。 エドワード・エルリックより聴取、と、小さく脇に記されていた。 几帳面なことに、この情報を聞いた時刻までしっかりと。 「エドワード・エルリック……か」 ……この男は、何処にいる? 記された時間からして、まだ遠くには行っていないはずだ。 この惨劇が発生してからの時間は、きっと思うより遅くない。 おそらくは東郷や、安藤とも共にいたはず。 「探してみる価値は……あるな」 書かれている内容は錬金術を不完全とはいえ齧った自分には興味深いものばかりだが、 後で読み返すことにして一旦置いておく。 ……自分の兄の名前が記されていたことも、今は保留だ。 懐に手帳をしまい、次に手を伸ばしたのはコピー日記だ。 これもまた、血に濡れないように気遣われていた。 「……懇切丁寧だな」 苦笑する。 ……この男は、そういう男だ。 僅かなやり取りではあったが、十分に理解させられた。 もしかしたら最初から自分に遺すつもりでこうしていたのかもしれない。 神社で合流というのは、おそらく東郷達から聞いていたのだろうから。 「……っと」 ひらりと、二つ折りのコピー日記の隙間から紙が零れ落ちる。 「なんだ……?」 畳まれたそれを開いてみる。 ――名簿だった。 一部の名前が赤に染まった、名簿。 「……っ!」 不自然なことではない。名簿に記された死人の名前は、赤く染まる。 だが、その中で一つだけ。 染まった方法が、明らかに違うものがあった。 「安藤……!?」 その名前が、真っ赤に染まっている。 この名簿の機能ではない、秋瀬或自身の、血によって。 ――秋瀬或は、探偵だ。 こんな名簿をわざわざ、コピー日記に挟んでおいた、その意図は。 歩の中で、何かがカチリと填まる。 そう、コピー日記だ。 あの秋瀬或が、単に自分が秋瀬或だと自分に伝える為だけに、こんな回りくどいことをした? 否だ。 待て。 待て、待て。自分は先ほど何と考えた? 『予めそこに撃ち込めばこの結果がもたらされると確信していたが如く、 こうも正確に脳天を撃ち抜く――その手段はなんだ?』 ――そうか、と歩はしっかりと、秋瀬或のバトンを受け取った。 「未来日記。……安藤、お前は」 【ゴルゴ13@ゴルゴ13 死亡】 【秋瀬或@未来日記 死亡】 【F-5/神社/1日目/夜中】 【鳴海歩@スパイラル~推理の絆~】 [状態]:疲労(中)、腹部裂傷(小)、貧血、左肩に深い刺創(応急手当済み)、両腕に複数の裂傷 [服装]:上半身裸 [装備]:秋瀬或のメモ帳、小型キルリアン振動機“チェシャキャット”(バッテリー残量100%)@うしおととら、コピー日記@未来日記、風火輪@封神演義 [道具]:支給品一式×3、医療棟カードキー、破魔矢×1、社務所の売り物(詳細不明)×0~3、錬丹術関連の書籍、 手錠@現実×2、警棒@現実×2、警察車両のキー 、詳細不明調達品(警察署)×0~2(治癒効果はない)、 No.11ラズロのコイン@トライガン・マキシマム、居合番長の刀@金剛番長、月臣学園男子制服(濡れ+血染め)、雪輝日記@未来日記 [思考] 基本:主催者と戦い、殺し合いを止める。 0:未来日記を得た安藤と狙撃手の協調への強い疑い。 1:放送の内容やネット情報、秋瀬或のメモについて考察したい。 2:競技場に向かい、趙公明の動向を探る。並行してエドワード・エルリックの捜索。 3:結崎ひよのに連絡を取り、今後の相談をしたい。 4:島内ネットを用いて情報収集。 5:首輪を外す手段を探しつつ、殺し合いに乗っていない仲間を集める。 6:カノン・ヒルベルトの動向には警戒。 7:『砂漠の星の兄弟(姉妹?)』に留意。 8:『うしおととら』と、彼らへの言伝について考える。 9:神社の本殿の封印が気になる。 [備考] ※第66話終了後からの参戦です。自分が清隆のクローンであるという仮説に至っています。 また時系列上、結崎ひよのが清隆の最後の一手である可能性にも思い至っています。 ※主催者側に鳴海清隆がいる確信を得ました。 また、主催者側にアイズ・ラザフォードがいる可能性に気付きました。 ※会場内での言語疎通の謎についての知識を得ました。 ※錬金術や鋼の錬金術師及びONE PIECEの世界についての概要を聞きましたが、情報源となった人物については情報を得られていません。 ※錬丹術(及び錬金術)についてある程度の知識を得ました。 ※安藤の交友関係について知識を得ました。また、腹話術について正確な能力を把握しました。 ※未来日記について、11人+1組の所有者同士で殺し合いが行われた事、未来日記が主観情報を反映する事、 未来日記の破壊が死に繋がる事、未来日記に示される未来が可変である事を知りました。 ※考察に関しては、第91話【盤上の駒】を参照。 ※秋瀬或のメモ帳には、或が収集した情報とエドワードの錬金術についての知見、それらに基づく考察が記されています。 ※神社の石段手前に中型トラックが停められています。 ※ゴルゴ13の死体はブラックジャックのメス(8/10)@ブラックジャック、ジャスタウェイ(4/5)@銀魂、携帯電話(白)を身につけています。 ※秋瀬或の死体はクリマ・タクト@ONE PIECE、ニューナンブM60(4/5)@現実を身につけています。 ※ゴルゴ13の死体の傍にデイパック(支給品一式、賢者の石@鋼の錬金術師、包丁、不明支給品×1(武器ではない)、熱湯入りの魔法瓶×2、ロープ 携帯電話(黒)、安物の折り畳み式双眼鏡、腕時計、ライターなどの小物、キンブリーの電話番号が書かれたメモ用紙)が落ちています。 ※秋瀬或の死体の傍にデイパック(支給品一式、各種医療品、 天野雪輝と我妻由乃の思い出の写真、ニューナンブM60(5/5)@現実、.38スペシャル弾@現実×20、 警棒@現実×2、手錠@現実×2、携帯電話、A3サイズの偽杜綱モンタージュポスター×10、A3サイズのレガートモンタージュポスター×10 永久指針(エターナルポース)@ONE PIECE)が落ちています。 ***** 目の前で、エドワードが撃たれた。 たったそれだけで、安藤は混乱の極みに陥った。 何故? どうして? 誰が? 何処から? 今すぐここから逃げる、という選択肢さえ、考える余裕はなかった。 こんな筈ではない。 こんなの予定にない。 妄信は依存を生み、依存は安寧を育てる。 然らば、依存を失った安寧は淪落するが道理というものだ。 「そんなっ! なんで……!? 駄目だ、こんなの駄目だ! エド、エド!」 半狂乱。 かろうじて理性がアトラスのように自我を支えているだけで、安藤は己の体調をも顧みずエドワードに縋りつく。 捨て去ったと思っていた罪悪感はちっともそんなことなく整然と心に積み上げられていて、あたかも図書館の本棚の如く自分の周りに聳え立っている。 ……ただ整理をつけて、動き回るのに支障はないようにしただけ。 どこまで行っても安藤は、その心は、どこにでもいる普通の人のものなのだから。 「エド、駄目だ! あんなこと言っといて死ぬなよ! お前……っ、ウィンリィさんを守るんだろ! 救うんだろ!? 俺とおんなじで、弟がいなくなって、辛いんだろ? だったら駄目だ! ちゃんと最後まで生き抜いて、あいつを――死んだあいつらを救わなきゃ!」 喚き散らす。 涙と鼻水と血が顔面をぐちゃぐちゃに汚し、ついた膝は泥塗れ。 尊厳とか誇りとか、そんなものとはこの世で一番程遠い姿である。 実に惨めったらしい。 けれど、エドワードはそんなことはお構いなしで。 目の前でごそごそ何かを取り出すと。 「……エ、ド?」 呼び掛けは虚空へ。 エドワードは自分を見てなどいないのだと、脳漿に氷柱をぶっ刺されたように急速に理解した。 これ以上一人相撲を続けることはできず、けれどこのまま黙って何もしない訳にもいかず。 硬直した僅かな間のその隙に、安藤の出来ることは全て終わっていた。 唐突にまばゆい光が目の前で起こり、焼かれないよう一瞬目を閉じる。 とっさに掲げた腕がその動きを止める頃には、事態はとっくに終わっていたのが間抜けな光景ではある。 ちかちかとする視界を無理にこじ開け、目を眇めながらすぐ先のエドワードを確かめる。 「エド?」 返事はない。 急に辺りが冷え込んだように、感じた。 「……え、あ?」 そこに動く影は、もはや安藤一つしか存在しなかった。 エドワードがいた場所には、首輪と、服と、彼の荷物が転がっている。ただそれだけ。 どういうしかけか、機械鎧はそこにはない。 ベージュとハートの携帯電話が、やけに月明かりに輝いていた。 「え……、何、が」 理解できない。 銃で撃たれた、それだけなら理解はできる。 たとえ取り乱してもちゃんと筋道立てて考えられる。 ……もう、安藤の頭は飽和状態だ。故に完全な思考停止に陥る。 倒れた。光った。消えた。 安藤に分かるのはそれだけ、因果も何も見えては来ない。 何も分からず、何もできず、ただそこに立ち尽くしていた。 たった一人で。 ……一人? いや、違う。 ざり、という音が、安藤のすぐ傍から届く。 はっとして顔を挙げる。 佇む影が、静かににじり寄っていた。 まるで幽鬼のように音もなく、しかし、おぞましいほどの笑みをその顔に浮かべて。 「電話をかけてみて正解だったね。 どっちが僕に連絡を入れてきたのか分からなかったから、試しただけなんだけど。 こんなに簡単に君を特定できるとは思わなかったよ」 言葉が出ない。 ああ、神様。それとも悪魔? この出会いで、何を自分に求めているのです? 「やあ……」 たった今殺戮を行ったばかりのその手を柔らかに伸ばし、人好きのする表情で。 それは、告げた。 「初めまして、僕はカノン。カノン・ヒルベルトだ」 【D-4/川辺/1日目/夜中】 【カノン・ヒルベルト@スパイラル~推理の絆~】 [状態]:疲労(小)、全身にかすり傷、手首に青痣と創傷、掌に火傷、“スイッチ”ON [服装]:月臣学園男子制服 [装備]:M16A2(12/30)@ゴルゴ13、理緒手製麻酔銃@スパイラル~推理の絆~、麻酔弾×15、携帯電話(シルバー) [道具]:支給品一式×4、M16の予備弾装@ゴルゴ13×3、パールの盾@ONE PIECE、 大量の森あいの眼鏡@うえきの法則、研究所の研究棟のカードキー、 五光石@封神演義、マシン番長の部品、秋葉流のモンタージュ 不明支給品×1 [思考] 基本:全人類抹殺 1:鳴海歩と合流は保留。通信ネットワークの存在下における最適な殲滅方法を再定義。 2:安藤(兄)への興味。 3:十分なアドバンテージを確保した状態であれば、狙撃による人類の排除。 [備考] ※アイズ・ラザフォードを刺してから彼が目覚める前のどこかからの参戦です。 ※剛力番長から死者蘇生の話を聞きました。内容自体には半信半疑です。 ※みねねのトラップフィールドの存在を把握しました。(竹内理緒によるものと推測、根拠はなし) 戦術を考慮する際に利用する可能性があります。 ※森あいの友好関係と、キンブリーの危険性を把握しました。 【安藤(兄)@魔王 JUVENILE REMIX】 [状態]:全身打ち身(中)、頭部裂傷(小)、腹話術の副作用(大)、魔王覚醒、風邪気味 [服装]:飼育員用のツナギ [装備]:殺人日記@未来日記(機能解放) [道具]:イルカさんウエストポーチ、菓子数個、筆記用具(以上全て土産物)、土産品数個(詳細不明) 水族館パンフレットの島の地図ページ、携帯電話(古い機種) [思考] 基本:脱出の糸口を探す。主催者と戦う。危険人物は可能な限り利用した上で同士討ちを狙う。 0:エドワードの消滅とカノン・ヒルベルトの意図に混乱。 1:首輪を外す手段と脱出、潤也の蘇生の手掛かりを探る。 2:闘技場に向かい、C・公明の企みに介入する。可能ならば病院で治療も。 3:殺し合いに乗っていない仲間を集める。利用できるなら殺し合いに乗っていても使う。 4:歩本人へ強い劣等感。黒幕の一味との疑い。 5:エドの機械鎧に対し、恐怖。本人に対して劣等感。 6:リンからの敵意に不快感と怯え。 7:関口伊万里にやりどころのない苛立ち(逆恨みと自覚済み)。 8:今後の体調が不安。『時間』がないかもしれない。 [備考] ※第12話にて、蝉との戦いで気絶した直後からの参戦です。 ※鳴海歩から、スパイラルの世界や人物について彼が確証を持つ情報をかなり細かく聞きました。 ※会場内での言語疎通の謎についての知識を得ました。 ※錬金術や鋼の錬金術師及びONE PIECEの世界についての概要を聞きましたが、情報源となった人物については 情報を得られていません。 ※我妻由乃の声とプロファイル、天野雪輝、秋瀬或のプロファイルを確認しました。由乃を警戒しています。 ※未来日記の世界と道具「未来日記」の特徴についての情報を聞きました。 ※探偵日記のアドレスと、記された情報を得ました。 ※【鳴海歩の考察】の、1、3、4について聞いています。 詳細は鳴海歩の状態表を参照。 ※掲示板の情報により、ゆのを一級危険人物として認識しました。 ※腹話術の副作用が発生。能力制限で、原作よりもハイスピードで病状が悪化しています。 ※九兵衛の手記を把握しました。 ※月食が"何か"を引き起こしかねないという考察をエドに聞いています。 ※秋瀬或から彼自身の考察や鳴海清隆についての話をある程度聞いています。 ※エドワードと秋瀬或の交渉の中で、エドワードの考察をある程度聞いています。 ※キンブリーと趙公明の繋がりを把握しています。 ※携帯電話(ベージュ+ハート)、エドワードの首輪、エドワードのコートと服、バロンのナイフ@うえきの法則、 デイパック(支給品一式(二食消費)、かどまツリー@ひだまりスケッチ、柳生九兵衛の手記、食糧1人半分、割れた鏡一枚、土産品数個(詳細不明))が安藤の目の前に落ちています。 時系列順で読む Back ギャシュリークラムのちびっ子たち Next 狂い咲く人間の証明 投下順で読む Back ギャシュリークラムのちびっ子たち Next 狂い咲く人間の証明 170 ギャシュリークラムのちびっ子たち 秋瀬或 GAME OVER 170 ギャシュリークラムのちびっ子たち 安藤(兄) [[]] 170 ギャシュリークラムのちびっ子たち エドワード・エルリック [[]] 170 ギャシュリークラムのちびっ子たち カノン・ヒルベルト [[]] 170 ギャシュリークラムのちびっ子たち ゴルゴ13 GAME OVER 170 ギャシュリークラムのちびっ子たち 鳴海歩 [[]]
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Deus ex machina ◆oRFbZD5WiQ 蛇を相手にしているようだ。 弁髪の老人と交戦し数分、Dボゥイはそのような感想を抱いた。 「く――おおおお!」 体が軋み、思考はどこか霞んだように不明瞭となっている。 それでも、退くワケにはいかぬ。その思考が意識を繋ぎ止め、両の腕が剣を振るう力を生み出す。 「ぬるいわぁ!」 されど、相手は蛇。ぬるりと枝を這うように剣の軌道から外れ、拳を振るう。 そして――衝撃。 がは、と肺の空気を吐き出し、ゴム鞠のように後方に吹き跳ぶ。その勢いで廃墟と化した家屋に突き刺さる。 常人なら既に十は死んでいるであろう暴虐。されど、皮肉な事に、彼が憎むラダムの力が命をつなぎとめていた。 「ぎ――ぐ、」 されど、それにも限界は存在する。 コンクリートとて、長い年月の間、水滴を受け続ければ抉れる。それがドリルであれば尚更だ。 そして、あの老人の力はドリルほど生易しいモノではない。 東方不敗――マスターアジア。 その名で呼ばれる老人の拳は、下手なモビルファイター相手ならば十分渡り合える代物だ。それを幾重も受けて、無事で済むはずがない。 その上、Dボゥイは万全ではなかった。貧血、打撲、裂傷――それらが、元々薄かった勝ち目を致命的なまでに遠ざけていた。 「ふん、宇宙人と言うからにはもう少し歯ごたえがあると思ったが――これでは、あの馬鹿弟子の方がまだ見込みがある」 黙れ。 そう呟く気力もない。 聖剣を杖にし、ゆらりと立ち上がる。それは幽鬼のような動き、もはや戦闘に堪えうるのは不可能であるのは、誰の目にも明らかだ。 けれども、意志は肉体を凌駕する。まだ立てる、その思考が体に喝を入れる。 精神論と嘲る事なかれ。強い精神は肉体を超越するという事実は、プラシーボという形で医学にも用いられている。 「――ふむ、その根性だけは認めてやろう。だが、実力が伴っておらぬようだな。 宇宙人よ、Dボゥイよ。貴様には『体』はあっても『技』がない。 身体能力があろうとも、それを生かす技術が存在しない」 確かに、と思う。 自分はテッカマンになれる。テックランサーやボルテッカ、そして、圧倒的な推進力で突貫するクラッシュイントルードなどといった力を振るう事が出来る。 しかし、確かに訓練はしたものの、それは、テッカマンのポテンシャルに頼り切ったモノ。 元来の肉体には、アキのような体術もなければ、ノアルのような銃技もない。 「その肉体だけで勝てると思っておったか、愚か者めが」 迎え撃とうとするが――致命的なまでに遅い。腹部に膝が食い込み、きりもみしながら吹き飛ぶ。窓を窓枠ごと突き破り、ガラスまみれの状態でアスファルトに転がった。 「人には牙がない。爪がない。それ故に、武器を作った、体を鍛え上げた――技を磨いた。 知るがよい、遥か遠方から訪れた来訪者。これが人が生み出した牙、格闘技だ。 流派東方不敗、その身に刻み、そして逝け!」 更にもう一度、一撃を加えられた、ような、気がする。 だが、どこか感覚が曖昧だった。 意識が徐々に遠のいていく感覚。それは甘美な誘惑。苦しみから解き放ってやろうという――死神の誘い。 ――ふざけるな。 そちらに傾きかけた心に喝を入れ、立ち上がる。 瞬間、顔面に拳が突き刺さった。 「ァ――――が!」 それはまるで、なけなしの気力を砕くように。 砕けたアスファルトの上を滑るように吹き飛ぶ。がりがり、という音。石が服を食い破り、皮を切り刻み、肉を食む音。 立ち止まった頃には、リムジンから伸びているような赤いカーペットが敷かれていた。 その上を、あの老人が悠々と歩いている。 全く以って似合わないな、と。酷く場違いな思考が過ぎる。 ――まずいな。 笑みが漏れてきた。今の自分の状態も、目の前の老人も、可笑しくてたまらない。 脳内麻薬でも分泌されだしたのか、痛みも薄く、むしろ快感な気さえする。 その快楽に身を委ねれば、きっと楽に死ねる。この胸の奥底を炙る復讐の炎から解放される。 だが、それを受け入れるワケにはいかなかった。 それは復讐のためであり、そして――あのか弱い少女のためである。 だから、Dボゥイは立つ。背中を真紅に染めながらも。 その姿を、酷くつまらなそうに見やる老人を睨みながら、無意識でも手放さなかった剣を握る。 「――ねえ」 そんな中、いつの間にか隣にいた少女が口を開いた。 ◆ ◆ ◆ その情景は、悲惨を通り越して滑稽なものだった。 絞りカスで戦っているようなDボゥイと、ほぼ万全な状態の東方不敗。 天秤がどちらに傾くかなど、火を見るより明らか。いや、火を見て明らかというべきか。 数回の攻撃で力を使いきったのか、Dボゥイは反撃どころか防御すらマトモに出来ていない。ただただ、ゆらりと立ち上がるだけ。 その姿は、ゾンビ映画を連想させる。 然り。その姿は死体のようで、いつ崩れてもおかしくない泡沫のようで―― 「ァ――――が!」 顔面に拳が突き刺さる。受身を取る事すら許されず、背中を砕けたコンクリート片が散らばる地面に擦りつけながら、こちらに飛んでくる。 地面が赤い。流血と皮、肉、服の破片。それらが散らばる絨毯を、老人は悠々と歩く。 もはや追い詰める必要はない、そう言うように。 然り。ここまでの暴虐を受けて、なぜ抗うというのか。 これ以上、どう抗おうとも侵略めいた拳によって蹂躙されるだけではないか。 (……なんで?) それでも、彼は立ち上がった。 十中八九殺されるこの状況で。座して死を待った方が楽であろう、この状況下で。 分からない。なぜ、彼が立つのか。 そうだ、分からないといえば、自分を殺さなかった事も分からない。分からない事だらけだ。 「――ねえ」 だからだろうか。無意識の内に口が開いていた。 「どうして、そんな風に立っていられるの?」 ああ、と思う。 それはたぶん、似ているからだ。 彼は言っていた。許せないと。不幸を理由にして殺し合いに乗っていることが、俺には許せないのだと。 あの言葉を聞いた時に、なにか、感じ取るモノがあった。 それは――どこか同類めいた何か。 その男が立つ理由、それが、どうしても気になったのだ。 「――これ以上」 噛み締めるように、Dボゥイが口を開く。 それは、舞衣の問いに答えたと言うよりは、自分自身に言い聞かせているようだった。そう、まるで折れかかった心を支えるように。 「これ以上、こぼさない、ためだ」 剣を構える。だが、力が入っていないのか、その重さで前に倒れかけ―― 「失ったモノは取り戻せない。だから、俺は復讐の道に足を踏み入れた。だが――」 ――その寸前で踏ん張る。 その姿は、壊れかけたロボットがダンスを踊っているよう。不安定で、醜く、滑稽で―― 「――それでも、これ以上、大切なモノをこぼしたくないからだ」 ――けれど、心のどこかに訴えるモノがあった。 ◆ ◆ ◆ そうだ、これ以上、何かを失いたくはない。 自分が死ねば、シンヤは用済みとなったゆたかを殺すだろう。 そう、彼女には随分と助けられた。 もっとも、本人は否定するだろう。助けられたのはわたしですよ、と。 ああ、確かに。確かに、肉体的な面で自分は彼女を何度か救った。 けれど、それ以上に、彼女はDボゥイの精神面を救ってくれた。 だから――Dボゥイは老人を睨みつける。 それは、徹底的に抗うという決意。 それは、この命を貴様に渡すワケにはいかぬ、という宣言。 「オ――」 吼える。喉を震わせ、全細胞に告げる。 なにを腑抜けている、血が足りない? 傷が開いた? 疲労が酷い? その程度で眠っているのか貴様らは! どうせ、ここで抗わねば死ぬのだ。なら――全ての力を引き出してみせろ。 そう、徹底的にAngriff! Angriff! Angriff! 剣を以って活路を開くのだ! 「――オォォォオオォォオッ!」 駆ける――否、その速度は普段の歩みよりもなお遅い。 杖をついた老人よりは速いだろうか? その程度の速度でしかない。 「ふん、諦めの悪い。いいだろう、この一撃で――む?」 それは、純粋な疑問だった。 Dボゥイと目を合わせた東方不敗は、ありえない何かを見るような目で瞳を見開いた。 ――なんだ? まるで、『Dボゥイの目が、別の何かに取って代わった』とでも言いたげな瞳。 「貴様、それは一体――」 知った事か。 心中で吐き棄て、剣を振るった。 風を切る音はしない。ゆっくりと振り下ろされていくそれは、スローモーションでも見ているのではないかと思わせる。 しかし、 (なんだ――?) なぜだろう。 今なら、たとえこの速度だとしても威力を発揮できる。そんな気がしたのだ。 誰が言ったわけでもない。強いて言えば、剣の鼓動から感じ取ったというべきか。 つい先程まで感じなかった力の唸りが、他ならぬ自分から注ぎ込まれている――そんな気がしたのだ。 「勝利すべき(カリ)――」 知らず、呟く。 流れ込んでくる名を。檻に囚われた獣を、解放するように。 先程まではなかった感覚に困惑しつつも剣を力強く握るDボゥイ。 その瞳は――確かに螺旋を描いていた。 「――黄金の剣(バーン)!」 そして、光が溢れた。 ◆ ◆ ◆ 突如視界を覆った光は、現れた時と同じように唐突に消えた。 そっと、瞳を開く。 「なに、これ」 舞衣の瞳に飛び込んできたのは、大地に穿たれた巨大なクレーターだった。 見渡すと、辺りはもうもうとした土煙で覆われていた。近くは見えるのだが、遠くは全く見えない。 事実、舞衣が向いている方角――即ち、北で遠く見えていた学校も、今は輪郭すら掴めない。 大きさは、大体一般家屋一つ分。恐らくは、先程まであの二人がいた場所。 なら、あの二人は? 「あ――」 視線を彷徨わせると、すぐ近くで倒れているのが見て取れた。 恐らくは、この衝撃で吹き飛ばされたのだろう。 恐る恐る、彼に近づく。 幸いな事に、生きてはいるようだ。打撲こそ多いものの、裂傷が少ないのが幸いした。止血さえすれば、命を取り留める事はできるだろう。 そこまで考えて、ハッとした。 「なんで助ける事を前提に考えてるのかな……」 それは――たぶん、憧れめいたモノを抱いたから。 あの背中は、自分と同じでありながら、けれども決定的に違うモノがあった。 それを、知りたい。 同類めいた自分たちが、けれども別の道を進んだワケ。その答えが欲しい。 それさえあれば、この揺らぐ心も収まるのではないか、そう思ったのだ。 そっと抱きかかえようと屈み込み、 「中々の威力。少々肝を冷やしたわ」 しわがれた声に体を硬直させた。 ありえない、だって、あんな威力の破壊を受けて、生きているはずがない。 だというのに、 「なん、で」 あろう事か、その老人は傷一つ負ってはいなかった。 「馬鹿者が。どれほど威力があろうとも、直撃さえ受けなければ傷付かん。 ましてや、振り下ろすだけで精一杯といった風体の者が放つ衝撃波など、見ずとも避けられるわ」 Dボゥイの『変化』に気づき、それがなんであるのか悩んでいる最中、彼が剣を振り下ろそうとした。 しかし、その剣が先程とは違う『気』めいた何かを纏っている事に気づき、剣の直線状から退避。すると、濁流の如く全てを押し流す衝撃波が、脇をすり抜けていった。 つまりは、ただそれだけの事。 本人すら気づかなかった螺旋力の覚醒。しかし、それも見当違いの方面に発揮されただけに終わったのだ。 必殺の一撃が外れた今、その効果はゼロどころかマイナスだ。 螺旋の力で増大した体力と力。だが、その力は魔力の代用品として聖剣に注ぎ込まれ枯渇、そして訪れたのは気絶という眠りだ。 これならば、まだ覚醒しない方が望みがあっただろう。 「失望したぞ、娘。よもや、ここに至って男を救おうとするとはな。 悲しみのままに罪無き子供を殺し、しかし数刻で心変わりするとはな。 外道を行い、けれど人を救う。その矛盾、真に人間らしい」 だが、と吐き棄てるように呟き。 「だからこそ、醜い」 え? と声を出す暇もない。 瞬時に間合いを詰めた東方不敗は、撫でるような滑らかな動きで拳を放つ。腹部にめり込む、破壊の鉄槌。 「ぐ――げ、ぇ」 カエルが潰れたような声と共に、血の混ざった胃液を吐き出す。 吹き飛ばなかったのは、きっと手加減されたからだろう。でも、なぜ? 「気が変わった。先に貴様から殺してくれよう」 髪の毛を乱暴に捕まれ、持ち上げられる。 ああ、そうか。手加減されたのは、ダメージを与えて動きを止め、かつ、遠くに吹き飛ばさないため。 動きが止まった自分を、確実に殺すため。 ああ、殺される。 恐らく、生身の自分では、ものの一撃で消し飛ぶだろう。 (でも、それもいいのかも) 死後の世界。 もし、そんなモノがあれば、きっとそこはこんな世界よりも幸せな場所に違いない。 だって、ここには辛い事しかない。 けれど、死後の世界に行けば、弟がいる、シモンがいる、なつきがいる。 自分が亡くしたモノ、その全てが、在る。 ならば、それでもいいじゃないか。 そう思って、舞衣は瞳を閉じた。 訪れる死を受け入れるために。 ◆ ◆ ◆ 機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナ。 物語が解決困難な局面に陥った時、脈絡もなく絶大な力を持った『神』が現れ、それを解決する演劇の手法である。 だが、それは好まれぬ手法でもある。 伏線もなしに登場するそれは、超展開と揶揄される事も少なくない。 ――しかし、である。 物語の登場人物にとって、そのようなモノは関係ない。 たとえ、神にも似た解決策に伏線があろうとも、登場人物がそれを自覚していなければ、彼にとってそれはデウス・エクス・マキナとなるのではないか? そして、鴇羽舞衣は、東方不敗マスターアジアは知らない。 ロイ・マスタングという男がDG細胞に侵されている事も、 彼がスバル・ナカジマの仲間を殺戮した事実も、 デパートで彼と彼女の戦いが起こっている現実も、 ――――スバル・ナカジマという少女が、己の力と宝具の力を最大限に用い、爆発的な閃光と共に付近を薙ぎ払った現実も。 全ては二人には知りえない事であり、脈絡のない神の光臨であった。 ◆ ◆ ◆ 瞬間、黒い視界が白に塗りたくられた。 閉じた目蓋の中ですら、「眩しい」と知覚できる暴力じみた閃光。 だが、彼女は幸いに瞳を閉じ、その上、デパートの方面――即ち、光源から背を向けていた。 しかし、東方不敗は違った。 光源の方角に体を向け、目を開いている状態。あの爆発的な光を、直視してしまったのだ。 「ぬぐォおおおおおおおおおおォ! ぐ、目が、目がァァあああ!?」 もし、彼に制限が加えられてなければ、いち早くそれに気づき、瞳を閉じる事もできたかもしれない。 だが、現実は非情であり、死を運ぶはずであった老人は、瞳を押さえ、苦しみ悶えている。 (……なによこれ。まるで) まるで、死後の世界の誰かが、自分に対して『生きろ』と背中を押しているようではないか。 そう、これ以上ない、という程の隙。これを逃せば、自分は殺されるだけだ。 だが、決心がつかない。心の中ある死の誘惑が足を縛る。 しかし、ふと思い出す。 足元で倒れる彼、Dボゥイ。 彼の話を聞きたい、そう思ったのではないか? そこまで考えて、舞衣は彼を背負い、ゆるやかに移動を始めた。 けれど、その速度は致命的なまでに鈍い。 振り向けば、背後で悶え苦しむ老人の姿は、未だ近距離と言っても差し支えのない距離だ。 「はや――くっ」 叱咤するように呟き、足を進める。 だが、いかにHiMEの彼女とて、生身の能力は一般女子高生と大差はない。 そんな彼女が、筋肉質な男を背負い、かつあの老人が回復する前に逃げ去る事は出来るか? ――不可能だ。 そもそも、彼女の疲労は既に限界であり、自分だけ走って逃げるという選択肢も危うい状態だ。 せめて――せめてエレメントが使えれば。 あれがあれば飛べる。走るよりずっと速く移動が出来る。 けれど……あの力は、今は使えない。 歯を食いしばる。結局、自分はなにもできない。奪われるのを待つしかできない――! ――轟、と。 聞きなれた音が、確かな温かみが、両の腕に宿った。 「え……?」 両腕の腕輪。彼女の力、エレメントの姿がそこにあった。 失ったのではないのか、使えなくなったのではないのか。 だが、考えている暇はない。腕に巻かれたそれに力を込める。すると、彼女に答えるように腕輪は炎を纏いながら高速回転し――彼女を動かした。 本来は飛べるのだが、今はなぜだか能力も低下しており、その上、男一人分の重量を背負っている。この速度で移動できるだけマシと考えるべきか。 風を切って移動しながら、舞衣は炎を用いてDボゥイの背中を、傷口を軽く炙る。 医者に見せたら怒られそうな処置ではあるが、治療道具も治療する暇もない今、それも致し方がない事だ。 もっとも、いずれは薬品などで消毒などをしなくてはならないだろうが。 だが、病院は駄目だ。あちらは、あの閃光が吹き出した方向。下手にそちらに向かって戦闘に巻き込まれれば、今度こそ助からない。 なら――学校だ。 あそこには保健室がある。もちろん、設備は病院などとは比べるまでもないが――贅沢は言えない。 「でも」 自分と彼との違い、それを聞いて、一体どうなるのか。 ……分からない。少なくとも、今は。 そうこうしている内に、学校はすぐそばまで近づいてきていた。 ◆ ◆ ◆ ――――HiMEの能力は、 大切なモノ(者、物)を媒介にし、自らの意志でエレメントやチャイルドを具体化することが出来る力だ。 故に、彼女が心を閉ざした為に、大切なモノという機動キーが鍵穴に差し込まれなかった。 鍵穴をちょうど悲しみのガラスで覆ってしまった、そのような形で。 だが――Dの青年との会話によって、僅かながらに心を開いたのだ。 ……そう、開かれた。 明けぬ夜はないように、閉ざされたままの心もまた、存在しないのだ。 けれども、それはあくまで僅かにだ。 彼女が心を完全に開くか、再びガラスで覆ってしまうかは――彼女の背で眠る、Dの青年の行方次第だ。 彼のDが彼女にとって、Dreamなのか、Deadなのか、Dangerousなのかは――まだ、誰も知らない。 そう、それは機械仕掛けの神とて同じ。 物語は進んだ、解決不能な命題はとある少女の最期の光で取り払われた。 これ以降は、彼の神が介入する余地はない。 二人の影は、未だ筋書きの定まらぬ物語を、ただひたすらに突き進んでいた。 【B-6/学校校門前/一日目/夕方】 【鴇羽舞衣@舞-HiME】 [状態]:疲労(大)、全身各所に擦り傷と切り傷、腹部にダメージ、罪悪感 [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考]: 1:Dボゥイの治療 2:1の後、彼の話を聞きたい 3:その後、自分の在り方を定める [備考] ※カグツチが呼び出せないことに気づきましたが、それが螺旋王による制限だとまでは気づいていません。 ※静留にHiMEの疑いを持っています。 ※チェスを殺したものと思っています。 ※一時的にエレメントが使えるようになりました。今後、恒常的に使えるようになるかは分かりません。 【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】 [状態]:左肩から背中の中心までに裂傷(開いた後、火で炙って止血)、右肩に刺し傷(応急処置済み) 全身打撲(大)、貧血(大)、腹部にダメージ、 背中一面に深い擦り傷(火で軽く炙り失血は停止)、気絶 [装備]:なし [道具]:デイバック、支給品一式、月の石のかけら(2個)@金色のガッシュベル!! [思考] 基本:テッカマンエビル(相羽シンヤ)を殺し、小早川ゆたかを保護する 1:………… 2:ゆたかと合流する 3:テッククリスタルをなんとしても手に入れる 4:極力戦闘は避けたいが、襲い掛かってくる人間に対しては容赦しない 5:再びシンヤとテッカマンの状態で闘い、殺害する [備考] ※殺し合いに乗っている連中はラダム同然だと考えています ※情報交換によって、機動六課、クロ達、リザの仲間達の情報を得ました ※青い男(ランサー)と東洋人(戴宗)を、子供の遺体を集めている極悪な殺人鬼と認識しています ※シンヤが本当にゆたかを殺すと思っているため、生への執着が高まりました。 ※恐らくテッククリスタルはどちらを使ってもテックセットが可能です。またその事を認識しています ※ペガスが支給品として支給されているのではと思っています。 ※螺旋力に目覚めた事実に気づいていません。 【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】 ――螺旋力覚醒。 ◆ ◆ ◆ 「ぬかったわ。まさか、あのような事が起こるとは」 瞳の焼ける痛みも治まり、辺りを見渡すが、当然の如く辺りに人影はなかった。 光が飛び込んできた方角に視線を向けると、先程までは見えていたデパートが消滅している。 「……モビルファイターでも支給されたか、はたまた宇宙人の能力の類か」 どちらにしろ、対人には過ぎた威力だ。 それが如何なる状況で行われたモノか、興味があるが――それ以上に、 「Dボゥイ、奴の瞳は確かに……」 ――ドリルの先端のような模様を持った瞳。別の表現をするならば、螺旋の瞳。 それが、気になった。 螺旋王ロージェノムが最初に言った、螺旋遺伝子の選定という言葉。 まさかとは思うが、あれが奴の言う螺旋遺伝子とやらなのだろうか。 しかし、分からない。 たとえ、推測が正しかったにしろ、なぜあのような状況下で力を使いだしたか。 奴に力を出し惜しみする余裕など、カケラもなかったはずだ。 「……なんらかの要因が引き金となり、その力が表に出てくる――それが妥当か」 もっとも、その『なんらかの要因』については皆目見当も付かないのだが。 ふむ、と小さく息を吐き、地面に落ちた剣を握る。 やはり、剣は光らない。 それが当然だ、というように鈍い光沢を放つそれをデイバックに仕舞いながら、最強の老人は呟いた。 螺旋遺伝子に目覚めた――と思われる――Dボゥイが使ったとき、この剣は莫大な力を発揮した。自分が握っても無反応だというのに、だ。 即ち、これは螺旋遺伝子とやらの力を伝達する、言わば砲身のようなモノだろうと当たりをつけた。 もし、その仮説が正しければ、螺旋遺伝子を発現させた者はこれを扱えるという事になる。 これを扱える者に出会えば、螺旋遺伝子の解明も進み、螺旋王とやらの思惑も理解できるかもしれない。 そのために、Dボゥイで実験をしたいところだったが――追撃をかけようにも完全に見失っている。 ふむ、と小さく息を吐き、遥か遠方に視線を向ける。 そう、自分の目を焼いた光の元へ。 「デパートに行くとしよう」 あの状態だ、病院に行っているとも考えられなくもないが、そのような分かりやすい場所には逃げ込まないだろう。 ならば、少なくとも場所は確定している光の元を目指すのが利口だ。 そうと決まればここに留まる道理はない。地面を蹴り、跳躍。原型を保っていた家屋に足をのせ、リズミカルに跳んで行った。 【C-6中央部/市街地跡/一日目/夕方】 【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】 [状態]:全身、特に腹にダメージ、螺旋力増大? [装備]:マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム [道具]:支給品一式、カリバーン@Fate/stay night [思考]: 基本方針:ゲームに乗り、優勝する。 1:E-6に向かい、光の原因を探る。 2:情報と考察を聞き出したうえで殺す。 3:ロージェノムと接触し、その力を見極める。 4:いずれ衝撃のアルベルトと決着をつける。 5:できればドモンを殺したくない。 ※137話「くずれゆく……」以後の行動は、騒動に集まった参加者たちの観察でした。 ※137話「くずれゆく……」中のキャラの行動と会話をどこまで把握しているかは不明です ※173話「REASON(前・後編)」の会話は把握しています。 ※螺旋王は宇宙人で、このフィールドに集められているのは異なる星々の人間という仮説を立てました。 本人も半信半疑です。 ※Dボゥイのパワーアップを螺旋遺伝子によるものだと結論付けました。 ※螺旋遺伝子とは、『なんらかの要因』で覚醒する力だと思っています。 ※ですが、『なんらかの要因』については未だ知りません。 ※視力については問題ないようです。 時系列順で読む Back 刑事と婦人と不死の少年は三人の奇人を前に沈黙する(後編) Next 螺旋の力に目覚めた少女 投下順で読む Back シャドウ・ラン Next 螺旋の力に目覚めた少女 184 こころの迷宮 Dボゥイ 218 夢‐‐。涙…… 184 こころの迷宮 鴇羽舞衣 218 夢‐‐。涙…… 184 こころの迷宮 東方不敗 205 爆心地のすぐ傍で
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キィン、ガキィンと鋼がぶつかり合い、火花が飛び散る。 誰もいない役所の一階には、その音だけが響いていた。 明智光秀と空蝉。 戦国武将と侍が、互いの矜持と剣技の全てを、ぶつけ合っていた。 しゃきん、と光秀のバルキリースカートは一本一本の軽さを活かし文字通り四方から空蝉を攻め立てる。 が、空蝉のブロードソードはその重厚な一薙ぎで四本の脚を一掃する。 互いの力が、互いの技が文字通り火花を散らし合っていた。 「ハァっ!!」 「そぉらよぉ!!」 空蝉の大きく振りかぶった左から右への一閃は、光秀のバルキリースカートを弾き飛ばす。 だが光秀ははじかれた衝撃をもって後ろに大きく飛びのき、制空権を脱する。 「……今のは、少々ヒヤッとしましたよ。」 「…テメーもな。」 光秀の胸に一の字が引かれ、そこから血がたらりと溢れだす。 が、それとほぼ同時にぶしゅう、と空蝉の右肩が裂け、血が噴き出す。 これは、まぎれもない『死合い』。 片方か、もしくは両方の命の終焉をもってピリオドがうたれる闘いであった。 光秀も空蝉も、最初の一合でそのことを十分に理解していた。 二人とも、幾多の戦闘を繰り広げて行くうちに、自然とそれが理解できる境地まで達していたのだ。 「…ククク……」 「何が可笑しいんでい。」 「私は…愉しくて愉しくて、仕方が無いのですよ…!ああ、実に、実にすばらしい……!こんなに愉しいのは、いつ以来だろう……!」 胸から血を流しながら、光秀は思い切り後ろに反りかえり、笑った。 その様に空蝉の背に、ぞわりとした悪寒が走る。 「…気にくわねぇな、てめぇ。」 「何をおっしゃいますか、あなたも私と同じように、人をお斬りなさる癖に…!」 「テメーと一緒にすんじゃねえ。」 天井に向けられていたブロードソードの切っ先が、光秀に振り下ろされた。 「おじさん、大丈夫?」 「…痛ぇ……うう…」 「喋るな長谷川、傷に触る。」 環樹雫、灰原由起夫の二人は、傷を負った長谷川の治療のために彼を抱えて学校まで向かっていた。 だが長谷川の傷は深くはないものの激しく動くことはできず、途中住宅街のとある一軒家に入って長谷川の治療をしていた。 家の中には治療に役立ちそうな薬品の類はなかったものの、幸い清潔なタオルがあったのでそれを包帯代わりに傷口に当てて応急処置とした。 「…空蝉さん、大丈夫かな。」 「……」 灰原の脳裏に、光秀のあの残虐な笑みが浮かぶ。 何人も、それこそ数えきれないほどの人間を殺めてきたものの恍惚としたあの目は、思い出しただけでも震えが止まらなくなる。 あんな人間がこの世にいるのだろうか。 だが現にこうして、危うく殺されるところだったし長谷川は傷を負ってしまった。 その事実が、灰原の心に不安と焦燥感を募らせていく。 (梢……白鳥……無事でいてくれよ……!) 灰原にできることは、祈ることだけだった。 「ぐっ……!」 「おやおや、どうなさいました?まさかこの程度だとおっしゃるのですか?」 空蝉と光秀の違い、それは闘いに身を投じた年季の差。 その年季の差は多ければ多いほどに闘いには有利になることもあるが、その年季の差が今まさに空蝉を苦しめていた。 今年で重ねた齢は五十六の空蝉には、体力の限界が訪れようとしていた。 一方の光秀はまだ若く、ましてや手持ちの武器は空蝉のブロードソードよりも出が早いバルキリースカート。 一時は互角な戦いを繰り広げていた空蝉の肉体に細かな傷が徐々に増えて行き、やがて小さかった傷は大きくなっていく。 ついには屈強な空蝉の膝をつかせるまでにその傷は多く、深くなっていた。 「まだですよ。」 しゅん、と稲妻のごとき速さでバルキリースカートの一本が空蝉の胸を突き刺さんと迫る。 一瞬反応が遅れたもののその刃は急所を切り裂くことはなかった。 だが―― 「くっ……畜生…!」 左腕に深々と突き刺さった鎌の刃先から、たらりと鮮血が溢れ出る。 刃が深々と刺さり、アームの距離が互いの距離となった。 もうこうなってしまっては光秀にただ殺されるのも時間の問題だ。 「…あなたは、とてもお強い方でしたよ……ですが、もはやこれまでです。」 そう言うと、光秀は残ったバルキリースカートを一斉に空蝉に突き刺そうとした。 だが、光秀は一つ誤算を抱いていた。 それは、空蝉という男の性格。 「ざけんなああああああああああ!!」 天井を向いていたブロードソードの切っ先が、円を描くようにふわりと動いた。 と、次の瞬間空蝉の胸元に迫っていたバルキリースカートがガキィン、と派手な音を立てて吹き飛ばされた。 ブロードソードの重厚な横薙ぎが、細い鎌を弾き飛ばしたのだ。 (…上か!?) 咄嗟に身をかわそうとした光秀だったが、アームの一本が空蝉の左腕に突き刺さっていてうまく動くことができない。 それでも何とか無理やり身を引っ張り、次に来るであろう攻撃を予測し身をひねる。 だが、その刃は光秀の想像とは反対の場所から来た。 「おらああああああああああ!!」 下から斬り上げの連撃。 上からの斬り下ろしを予想していた光秀はかわしきれずに、胸に袈裟の傷ができる。 「もういっちょおおおおおおお!!」 もう一度、下段からの斬り上げが光秀に襲いかかる。 バルキリースカートのアームに縛られた制空権を、ブロードソードの大きな刃が走った。 「武装錬金、解除!!」 一瞬にして、バルキリースカートが解除され、二人をつなぐアームが消えた。 つなぎとめていたモノの消失に、二人はバランスを崩し投げだされる。 その均衡の崩壊が、結果的に光秀も空蝉も救っていた。 「……ああ、良い!!実にすばらしいですよ空蝉さん!!もっと、もっと殺し合いましょう!!」 「…生憎俺はそんな趣味は持ってねえんだよ、さっさと逝け。」 ぎらりと、刃のように鋭い空蝉の視線が光秀を刺す。 同時に、舐めまわすような光秀の視線が空蝉に向けられる。 「……ふ、ふふふ…」 「…終わりにするぞ、光秀。」 力ももう入らなくなってきている両の腕に気合を込めると、空蝉はブロードソードを握りしめ光秀に斬りかかった。 だが、光秀は懐からとあるものを取り出そうとしていた―― 誰もいない住宅街を、一人の少女――環樹雫が歩いていた。 (空蝉さん…) あの時、自分は心のどこかで恐れを抱いていた。 だから、空蝉さんは私に戦う事を許さなかったんだ。 でも――あの変態は、勝てる勝てないとかそういう次元のところに存在しているような人間だとは思えない。 それこそ、絶対的な存在のように雫には思えた。 絶対的な死を司る存在――言うなれば、死神。 雫の記憶の中の変態は、それによく似ていた。 (……でも) 雫が手に握っているのは、ハリセンではなく真剣。 傷を負った長谷川の荷物から譲ってもらった、六爪の一本。 ずしりと手に食い込む重みを持った真剣は、剣道で段位を持っている雫の心に何か勇気を与えているかのようでもあった。 (……あたしも、戦うべきなのかな…?) 鞘から刀身を引き抜くと、きらりと刀身が日の光を反射し煌めいた。 これがあれば、私の力があれば、空蝉さんを助けてあの変態をやっつけることもできるかもしれない。 だが、できないかもしれない。 それに、今雫には傷を負った仲間がいる。 その仲間を放っておいて負けてしまうかもしれない闘いに行くのは果たして良い事なのだろうか? 普段奔放な彼女らしくもなく、雫は考えを重ねていた。 だが、その考えを破る轟音と閃光が、雫の目の前で起こった。 光秀は、バルキリースカートを解除し丸腰になっていた。 それは、絶好の機会だった。 先程まで苦しめていた武器を自ら降ろしたのだ。 この機会に攻めないでいつ攻める? ――そう考えてしまったのが、空蝉の敗因だったのだろうか。 普段の空蝉であるならば、相手の様子をよく観察していただろうに、傷で大量に血を失ったことが彼の身体を焦らせたのか、それとも単に光秀が気に入らなかった感情が暴発したためか。 空蝉は、不用意に光秀に斬りかかっていた。 斬りかかったその瞬間、光秀は小さな爆弾をこちらに投げつけていた。 咄嗟にかわしたものの、その爆弾が爆発した瞬間に強烈な閃光と轟音が鳴り響き、灼熱が空蝉の身体を焦がした。 閃光は空蝉の眼を潰し、轟音は空蝉の鼓膜を破り、灼熱は空蝉の肌の感覚を奪う。 更にもう一発、爆弾が爆発した衝撃を空蝉はその身に受けた。 「………私の、勝ちですね。」 地の底から滲み出るような、そんな不気味な声がかすれかすれに聞こえたような気がした。 もう何も見えない。 もう何も聞こえない。 もう何も感じられない。 それでも、それでもなお空蝉は立ちあがった。 自分に対する不甲斐なさに、自分の無力さに、震えながら立ちあがった。 そして 明智光秀という、強敵に一矢報いんとするために、武器も何もかも持たずに空蝉は立ちあがった。 いや、空蝉にはただ一つだけ持っていたものがあった。 それは―― 侍としての誇り。 「…武装錬金。」 しゅる、とバルキリースカートのアームが再度装着される。 もう殆ど死んだも同然の空蝉の胸に、鋭い刃が深々と突き刺さった。 「……ち、く、しょう……」 こうして、空蝉という侍は死んだ。 「……バラさん。」 「…まだ起きるな長谷川。傷に触る。」 「んな事言ってもよぉ…このまま足手まといになるのはいやなんだよ。」 「……雫、遅いな…」 見回りに出た雫はまだ帰ってこない。 六爪の一本を貸したし、彼女自身剣道の段位持ちだと言っていたから(正直眉唾だったが)、よほどの事が無い限り大丈夫だと、そう信じたい―― だが、それでも灰原は心の奥底に沈んだ不安感をぬぐいきることができないでいた。 灰原としては、仲間は多い方が安心感も出るし、何より梢達を探すのに人では多くても多すぎることはない。 「…迷子にでもなったか?」 「いやそんな」 そんなはずはないだろう、とそう言おうとした瞬間。 轟音が響いた。 「!?バラさん!」 「くっ!!」 取るものもとりあえず、灰原は外に飛び出した。 飛び出した瞬間、もう一発爆発音が響いた。 響いた方向に目を向けると――そこは役所からここまで逃げてきた道だった。 「…雫!!雫!!どこに行ったんだ!!雫!!!」 誰もいない住宅街に、灰原の叫びだけが木霊していた。 「…あ、ああ……」 目の前で、人が死んだ。 それも、さっきまで一緒に行動していた空蝉が、死んだ。 呆気なく、呆気なく死んだ。 ついさっき現れた、銀髪の変態に体中を貫かれて、殺された。 「…おや、先ほどのお嬢さん。忘れ物ですか?」 「……許さない。」 ごう、と雫の身体が光に包まれる。 緑色だった髪はくすんだ白色になり、ぶわっと広がる。 白い光に包まれた身体は、露出の多い煽情的な衣装に包まれた。 手に持っていたはずの六爪の一本はいずこかへと消え――雫の手の中には、二本のオーラをまとったハリセンが握りしめられていた。 「ほう、これは面妖な。」 「…絶対に、絶対に許さないんだから!!」 怒りの形相をそのままに、雫は光秀に飛びかかって行った。 【空蝉@ブシドーブレード弐 死亡】 【F-3役所/1日目午前】 【明智光秀@戦国BASARA】 [状態]:ダメージ(大)、胸に裂傷(大、小一つずつ)、全身に細かい裂傷多数、精神高揚 [装備]:バルキリースカート@武装錬金、袴はいてない [道具]:ひかり玉@忍たま乱太郎、基本支給品一式(アイテム確認済み)、小林の支給品一式(アイテム確認済み) [思考]1:目の前の少女(雫)と殺し合いを楽しむ。 2:いずれ政宗、幸村、小十郎とも戦いたい。 3:もっともっと殺し合いを楽しみたい。 【環樹雫@カオスウォーズ】 [状態]:激しい怒り、リアライズ中 [装備]:オーラハリセン@カオスウォーズ [道具]:なし [思考]1:光秀と闘う、絶対に光秀は許さない。 2:兵真を探す。 3:メガネの男(日野)はぶっ飛ばす。 [備考]:第9章、ライゲンとの最終決戦直前からの参戦。どの技を装備しているかは不明。 激しい怒りのため、色んな事を忘れている可能性があります。 六爪の一本@戦国BASARAを装備していましたが、リアライズに伴いオーラハリセンに変化しました。 【E-4住宅街/1日目午前】 【灰原由起夫@まほらば】 [状態]:疲労(中)、精神の動揺(小) [装備]:流星ジョニー@まほらば、六爪の一本@戦国BASARA、寸胴鍋@現地調達、プラスチックのまな板@現地調達、鍋のふた@現地調達 [道具]:基本支給品一式(食糧小消費)、ヴァージニアメンソール@BATTLE ROYALE、詳細名簿@現実、六爪の一本@戦国BASARA、雫の支給品一覧(アイテム未確認) [思考]1:雫、どこに行ったんだ!? 2:学校へ逃げ、長谷川を治療する。 3:梢をはじめとした、鳴滝荘の住人を捜索して保護する。 4:初老の侍(空蝉)に感謝、でも…… 5:殺し合いから脱出。 [備考]:忍術学園の情報を得ました。 【長谷川泰三@銀魂】 [状態]:腹部に切り傷(命に別条はない、応急処置済み)、精神の動揺(小) [装備]:六爪の一本@戦国BASARA、行平鍋@現地調達、鍋のふた@現地調達 [道具]:基本支給品一式(食糧小消費)、ヴァージニアメンソール@BATTLE ROYALE、ライター@現実 [思考]1:…死にたくない…… 2:銀さん達と合流したい。 3:鳴滝荘の住人は保護したい。 4:メガネの男(日野)に対抗したいが策は思いついていない。 [備考]:忍術学園の情報を得ました。 [備考]:ブロードソード@ブシドーブレード弐は役所の一階に放置されていますが、ひかり玉の爆発でほぼ使い物にならなくなっています。 空蝉の基本支給品一式とミコシサマ@クロックタワーゴーストヘッドは燃え尽きました。 【支給品情報】 【ひかり玉@忍たま乱太郎】 小林あかねに支給。 忍術学園六年い組の生徒、立花仙蔵特性の焙烙火矢。 劇場版アニメ忍たま乱太郎で使われたもの。 仙蔵の特殊な調合により、普通の焙烙火矢よりも光が強い。 044 侵略する狂気 投下順 046 ネガポジ 044 侵略する狂気 時系列順 046 ネガポジ 036 剣と鎌と 前編 空蝉 GAME OVER 036 剣と鎌と 前編 明智光秀 [[]] 036 剣と鎌と 前編 環樹雫 [[]] 036 剣と鎌と 前編 灰原由起夫 [[]] 036 剣と鎌と 前編 長谷川泰三 [[]]
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ただ撃ち貫くのみ ◆1sC7CjNPu2 Dボゥイと小早川ゆたかは自然公園を出てB-6にある学校を目指すことにした。 ゆたかの友人が全員女子高生なので、安直だとは思ったが学校に集まるだろうと思ったからだ。 そして現在、二人はD-6の道路のちょうど真ん中あたりを歩いていた。 辺りは住宅団地のようで、無人のビルが並んでいた。 途中で轟音が聞こえゆたかが怯えたりもしたが、それ以外は特にこれといったことはなく順調だった。 「・・・・・・大丈夫か?」 「あっ!はい!大丈夫です!」 Dボゥイの問いに、ゆたかは過剰に反応して答えた。 自然公園を出てしばらくしてから、ゆたかは気がついたのだ。 ――抱きしめられちゃった。 初対面の男性に、思いっきり泣きながら。 思い出してすぐにゆたかの顔は火が出るほど真っ赤になった。 ゆたかには男性と交際した経験はない。しかし女子高生である以上、周囲からそれとなくそういった情報は耳に入ってくるものなのである。 チラッとDボゥイの顔を見ると、彼は怪訝そうにこちらを見返した。 あわててゆたかは顔をそらす。 ただ抱きしめられただけである。 キスしたわけでもなく、恋人の抱擁でもなんでもなく、事実泣いている子供を慰めるためのものなのである。 ただそれだけなのだが・・・・・・やはり恥ずかしいのだ。 ■ 原因であるDボゥイは風邪でも引いたかと心配していた。 ――足つきはしっかりしているし、勘違いだろうか? そこでDボゥイは軽く頭を振った。 自分が思った以上に、このゆたかという少女に入れ込んでいると感じたからだ。 ごまかすように、これからのことを考える。 少しペースが遅いが、ここでゆたかに無理をさせて体調を崩させるわけにはいかない。現状でそれは命取りになる。 実は途中でゆたかを背負っていくかとも提案したが、なぜかすごい勢いで却下されてお流れとなった。 ――今はこれでいい、問題はシンヤのことだ。 シンヤを、ラダムのテッカマンを殺す。それは絶対にDボゥイには譲れないことだった。 そして、その戦いにゆたかを巻き込むことはできない。それもまた、譲れないことだった。 「ゆたか」 「あっ!はい!」 「俺は、君を君の友人か、信頼できる人物に預けたら別行動を取る」 結局、Dボゥイの出した結論はそんなものだった。 Dボゥイがゆたかの近くにいることは、彼女を守ることには繋がらない。 Dボゥイ自身がシンヤを殺そうとするように、シンヤもまた、Dボゥイを殺そうとするだろう。 ゆたかの近くにいれば、必ず巻き込んでしまうことになる。 そして、復讐の鬼となったDボゥイはシンヤと殺し合いを演じることになる。 その光景は、ゆたかには見られたくなかった。 ■ ゆたかはその言葉で、浮ついていた心を一気に現実に引き戻された。 「なんで、ですか?」 「俺の都合だ、君には関係ない」 ――そんなこと言われても、困ります。 困惑するゆたかを尻目に、Dボゥイは歩き続ける。 ゆたかは慌てて声をかける。 「ええと、Dボゥイさんはこのゲームに乗っていないんですよね?」 「ああ」 「それじゃあ・・・・・・え~と」 そこでゆたかは、自分がこのゲームから脱出すると決意したものの、具体的なことをまったくといっていいほど決めていないことに気がついた。 ええと、まずはお姉ちゃんやかがみさん、つかささんと合流して・・・・・・ そうだ、人を集めるんだ。 私一人じゃ何もできないけど、沢山の人がいればきっとどうにかできる。 よし、と気合を入れてゆたかはDボゥイに思いついたこと伝えた。 「あの、一緒に逃げましょう」 「は?」 「・・・・・・ああ!ちっちちちっちちち違いますえとえとそういう意味じゃなくて!」 ゆたかは自分の失言に再び顔を真っ赤に染めた。 Dボゥイはゆたかを、流石に困った表情で見つめていた。 ――やはり風邪か? そう思い自分のデイパックの中から支給品の一つである赤いマフラーを取り出し、ゆたかの首にかける。 首輪が邪魔だが、無いよりはましだろう。 「落ち着け」 「はっ、はい。・・・・・・落ち着きました」 ゆたかは大きく深呼吸をして自分を落ち着かせた。 とはいえ恥ずかしさは残っており、その顔はまだ赤い。 ゆたかは一度自分の言いたいことを整理して、今度こそ言いたいことを伝えた。 「あの、私と一緒にこのゲームから脱出するのをお手伝いしてくれませんか」 ■ Dボゥイは表情には出さないものの内心では困っていた。 ――口に出したのは早計だったか? 必要以上になつかれないようにと、先に伝えたのが間違いだったかもしれない。 いずれ離れるということを伝えておけば、別れる時にそう騒がれないだろうという打算もあったのだが。 「悪いが、断る」 「な、なんですか?」 これは思ったより面倒なことになったか? ゆたかの困った顔を見ながら、短くため息をつく。 Dボゥイがこれからゆたかを説得するにしろ、ごまかすにしろ、不必要な労力を費やすことを想像して少し後悔した。 そんな時に、そいつは現れた。 「おやおや、喧嘩はいけないな」 男はふざけた調子で二人の前に現れた。 まるで待ち伏せしていたように、道路の曲がり角から出てきたのだ。 右手でパールグリーンの中折帽(なかおれぼうし)を押さえ、左手をクリーム色のスーツのポケットに入れて腰を少し低く落としている。 今にでもスリラーでも踊りそうな雰囲気だ。 しかしちょっぴり期待したゆたかの予想は、裏切られることになる。 男は右手を帽子から離すと、ゆっくりと親指と中指とを合わせた。 「どれ、私が二人の仲を取り持ってあげよう」 Dボゥイは腰の後に手を回し、ゆたかから譲り受けたM500ハンターを取り出した。 こいつは敵だ。そう確信できるほどの邪気が目の前の男から溢れ出していた。 ■ 素晴らしきヒィッツカラルドは自分の幸運を、信じてもいない神に感謝していた。 見るからに普通の少女に、見たところ少々訓練を受けた程度の青年、先ほどの口直しにはちょうどいい。 ヒィッツカラルドは国際警察機構のエキスパートでもない限り、生身の人間に負けるはずなどないと思っていた。 古墳の件については例外だ。負けたわけでもないし、あのV字の物体は人間ではない。 「二人ともここで真っ二つになれば、もう離れることもないだろう?」 さあ、狩を始めることにしよう。 ヒィッツカラルドが右手の指をパチンッと鳴らした瞬間、Dボゥイはゆたかを抱えて駆け出した。 戦士としての直感が、あれを危険だと感じたのだ。 事実、数秒送れてDボゥイがいた地面に亀裂が生じた。ヒィッツカラルドの放ったカマイタチだ。 駆けながら、Dボゥイは適当に狙いをつけて発砲した。 当たれば御の字の牽制、しかしその銃弾は再びヒィッツカラルドが指を鳴らしたとたんに真っ二つになった。 常識外れな現象を、Dボゥイは驚いたものの静かにその事実を受け止めながら走った。 とりあえずは、遮蔽物のあるところへ。 ――ほう、手加減したとはいえよくぞ避けた。 ヒィッツカラルドは素直に感嘆した。 カマイタチで裂傷を作り、じわじわと恐怖を味わわせてやるつもりだったがまさか避けられるとは思ってもみなかったのだ。 そして銃弾を真っ二つにしてやったときも、しっかりとこちらを観察していた。 どうやらあの青年は思った以上に修羅場をくぐり抜けてきたようだ。 ――面白い、すぐに終わってしまっては味気がなさすぎる。 ヒィッツカラルドは余裕をもって二人の後を追い始めた。 ■ 現在地はD-7のちょうど真ん中あたりだろうか。 近くに自然公園があるためか、もしくはここも自然公園の一部なのか、そこは森といっていいほど緑に恵まれていた。 当然のように、遮蔽物になりえる木は大量に存在した。 木々の間に滑り込み、二人はひとまずの安息を得る。 「Dボゥイさん、あの人、なんで」 「静かに」 ゆたかは震えていた。 何が起きたかはよく分からなかったが、問答無用で殺されそうになった。それだけは理解できた。 そして理解できなかった。なぜこうも簡単に人を殺そうとするのかが。 そのことを問おうとしたのか、それとも慰めてほしかったのか、ゆたかが口を開いたその瞬間のことだ。 カマイタチが、近くの木の枝を切り裂いた。 「そういえば、まだ名乗っていなかったね」 ゆたかは恐怖した。 口を開いたならば、自分たちの潜んでいる場所が知られたなら、あっというまに切り刻まれてしまうのではないか。 どうしてか、悪い方向にばかり想像が広がってしまう。 そんなゆたかの様子を知ってか知らずか、ヒィッツカラルドは今更な自己紹介を始めた。 「私の名は素晴らしきヒィッツカラルド、君たちの仲人だ。冥土の土産にでも覚えてくれたまえ」 パチンっと指を鳴らす音が響き、今度は近くの木が輪切りになった。 遮蔽物に意味は無いと、暗に言っているのだ。 Dボゥイはゆたかを低く伏せさせて、問う。 「何で俺たちを襲う!」 「それは本気で言っているのかね?」 ヒィッツカラルドは小馬鹿にしたように答えた。 殺し合いに乗っている。そいうことなのだろう。 「お前は、殺戮と破壊を楽しむというのか!」 「ああ!楽しくてしょうがないよ!」 パチン、パチンと次々に右手の指を鳴らす。そのたびに木は削られ、枝葉は切り落とされた。 「・・・・・・そうか、お前も、ラダムと、同じか」 ゆたかは思わず顔を上げ、Dボゥイを見た。 そこには怒りや憎しみ、悲しみや後悔、様々な感情が込められていた。 ――理不尽に、全てを奪っていく悪魔。貴様はそれと同じだ! ゆたかには、Dボゥイが、自分を優しく抱きしめてくれた青年が、まったく別の生き物に見えた。 ゆたかは知らない。全てを奪われて復讐に身を焦がす人間を、彼女は見たことが無かったのだ。 Dボゥイがゆたかに告げる。 「俺があの男の相手をしている間に、君は逃げろ」 一人ぼっちになった気がした。この場所には、もう怖い生き物しかいないような気がした。 ゆたかは怖くて肯くことしかできなかった。 ■ 怒りに支配されながらも、Dボゥイは冷静であった。 冷静に、ヒィッツカラルドをどう殺すかを考えていた。 ――あれは見えない何かを、指を鳴らすことで打ち出している。 ――そしてさっきから乱発しているところを見ると弾は無尽蔵か、それに近いほど保有している。 流石に指を鳴らしてカマイタチを発生させているとは分からなかったが、Dボゥイの考察は正解に近かった。 少し考え、Dボゥイはおもむろにデイバックから紙のぎっしりと詰まったトランクケースを取り出し軽く蓋を開ける。 銃は再び腰の後に差し込む。アレに対しては銃弾は無駄弾になるだけだと判断したのだ。 「俺がトランクを投げたら全力で走れ」 それだけをゆたかに告げ、トランクケースをヒィッツカラルドの頭上に目掛けて投げた。 トランクの容量を越えるような紙が舞い、森を白く染める。常識外れの紙ふぶきだ。 「行け!」 ゆたかに向かって叫び、デイパックに片手を突っ込みながらDボゥイは駆け出した。 飛び出したDボゥイに向けて、ヒィッツカラルドが右手の指をパチンとさせる。 思った通り、見えない刃が紙を切り裂きながら飛んできた。 ――見えていれば、対処のしようはいくらでもある。 カマイタチは一発撃ってから、次の発射までわずかな時間があった。 そして、カマイタチが発射される瞬間はあまりにも分かりやすかった。 一発目、二発目、三発目とやり過ごし、ヒィッツカラルドに迫る。 ――妙だ あまりにも簡単に踏み込ませすぎる。 だが今更退くことはできない。後退すれば敵に狙い撃ちされるだけだ。 そこで、Dボゥイは自分が罠にはまったのだと悟った。 ■ 「なるほど、孔明の気持ちが少しは分かった気がするよ」 ヒィッツカラルドは愉快だった。適当な罠をはったら、愚かな獲物はみごとに食らいついてきたのだ。 ヒィッツカラルドは『左手』をポケットから取り出し、親指と中指を合わせる。 ヒィッツカラルドは、二人と出会ってから今まで右手でしかカマイタチを打ち出さなかった。 たまたま思いついたことだった。弱者をいたぶるための罠として。 獲物はもう逃げられないところまで来ていた。 Dボゥイはヒィッツカラルドが左手を出したのを見ると、即座に次の行動に移った。 デイパックに突っ込んでいた手には、テッカマンアックスのテックランサー――片刃のハルバードが握られていた。 人の手に余るこいつをデイパックから抜き出し、そのままの勢いでヒィッツカラルドに叩きつけるつもりであったがもう猶予はない。 距離は足りない。しかし、まだ手はある。 「食らえ!」 Dボゥイはデイパックからアックスのテックランサーを抜き出し、そのままヒィッツカラルドに向けてハンマー投げのように投擲した。 大きく重いそれはそれほど遠くには飛ばない。しかしヒィッツカラルドまでには充分届いた。 「残念だったね」 届くには、届いたのだ。 しかしそれはヒィッツカラルドには滑稽なほど遅く鈍く、紙一重で避けるには充分すぎたのだ。 ヒィッツカラルドが投擲でバランスを崩したDボゥイに向けて指を鳴らす。 とっさに身をよじったものの、今度は避けることはできなかった。 「・・・・・・ふむ」 ヒィッツカラルドはDボゥイの捨て身の攻撃を紙一重で避けたものの、不満げだった。 足元にはヒィッツカラルドの支給品が転がっている。投擲でデイパックを切り裂かれたのだ。 その中には月の石も含まれており、残念なことに三つほど瓶が割れていた。 本来ならば、彼にこのようなミスはない。 しかし螺旋王が施した制限が、ヒィッツカラルドの見切りを乱したのだ。 ――まあいい、もともと私には必要ないものばかりだ。 デイパックもこいつらから奪い取ればいいだけの話。 そう結論付けたが、ヒィッツカラルドは月の石を一つ拾いスーツの内ポケットに入れる。 少々、もったいない気がしたのだ。どうせすぐに効果が消えるのなら、有効に使った方がいいだろう。 気を取り直し、ヒィッツカラルドはDボゥイに止めを刺すために近づく。 あと少しといったところで、ヒィッツカラルドの前に一人の少女が立ちふさがった。 小早川ゆたかだった。 ■ 時間は少し遡る。 「行け!」 そう言われても、ゆたかの足は一歩も前に出なかった。 一人になることが、怖かった。 何も考えられなかった。 ただ、何も分からないことも怖くて木からひょっこりと顔を出して様子をうかがったのだ。 そして、ゆたかの目にDボゥイが倒れ伏す姿が映った。 ごちゃごちゃの飽和状態だったゆたかの頭の中で、たった一つだけ言葉が響いた。 ――嫌だ 優しい人は怖い人だった。怖い人だったけど優しかった。 そう、優しい人だったんだ。だから私は信じることにしたんだ。 それで、みんなで帰ろうって決めて・・・・・・みんな、お姉ちゃんにかがみさんにつかささん。 それと、Dボゥイさんも。 ――こんなの、嫌だ! 私は帰りたい。みんなと帰りたい。 こんな所で死にたくない。死んでほしくない。 私は・・・・・そうだ、私はDボゥイさんのことを何も知らないし、私もぜんぜん話してない。 ――よく分からないけど、こんなの、嫌だ! それはパニックに似ていたかもしれない。 支離滅裂な思考で、普段なら考えられないような行動をとってしまう。 Dボゥイの元に駆け出したゆたかは、何も考えてなどいなかった。 ■ Dボゥイを守るように立ちはだかったゆたかは、大きく腕を広げて真っ直ぐにヒィッツカラルドを見つめた。 それだけだった。 ヒィッツカラルドは訝しげな顔を見せたものの、それは次第に笑みに変わった。 「・・・・・・ふ、ふはははははは」 ヒィッツカラルドのテンションは上がりっぱなしだった。 ――この二人は、なんと私を楽しませてくれることか! 「くあっはっはっは!あーはっはっはっは!」 ヒィッツカラルドは大きく背をそらし、頭に手を当てて嗤った。 あまりにもおかしすぎて腹を曲げ、指をさして嗤った。 そしてひとしきり嗤い終えると、両手を指を鳴らす構えに戻す。 もう十二分に楽しんだ、そろそろ終わりにしてやろう。 「よかろう、ではそこの男と一緒に・・・・・・むっ?」 真っ二つにしてやろう、と続けようとしたヒィッツカラルドはあることに気がついた。 ゆたかの胸にあるドリルのようなアクセサリー、がうっすらとだが光っているのだ。 ――確かあのVの男は『心の力』がどうだとか言っていたな。 結びつけるのは早計かもしれないが、確保しておいて悪いことはあるまい。 ヒィッツカラルドは構えを解くとゆたかとの距離を詰める。 ゆたかは一歩だけ後ずさるが、自分の後にDボゥイがいることを思い出すと気丈にもヒィッツカラルドを睨みつけた。 その姿を見たヒィッツカラルドに、段々と嗜虐心が湧き上がってきた。 ――ゆっくりとくびり殺してやろうか コアドリルに伸ばそうとしていた手の行き先を、ゆたかの首に変更した。 マフラー越しに掴んだところで、首輪の硬い感触が手に伝わる。 そのまま首輪を掴んでゆたかを空中に吊り上げ、ヒィッツカラルドは思いついた。 「首輪を真っ二つにしてみるのも、面白そうだな」 はたして首輪は爆発せずに残るかどうか。その可能性は限りなく低いだろう。 ――だが、何事も試してみないと始まらないからな。 首輪を真っ二つにする瞬間を想像し、ヒィッツカラルドは大いに嗤った。 ■ Dボゥイは死に掛けていた。 カマイタチの一撃は、いったいどんな理屈かDボゥイを切断するまでにはいかなかった。 ひょっとしたら、これがロージェノムの言っていた制限なのかもしれない。 しかし肩から背中まで走ったその裂傷は、紙で白く染まった大地に赤い血の海を作っていた。 死への恐怖があったが、不思議と安らぎもあった。 これ以上戦わなくいい。もう休んでもいい。奇妙な誘いだった。 Dボゥイがその安らぎに身を任せようかと思ったその時に、嗤い声が聞こえた。 ――人が気持ちよく寝るっていうのに、耳障りだな。 そう思いDボゥイはうっすらと目を開け、覚醒した。 また繰り返すつもりか、俺は。 立ち上がって命をかけるだけの理由は、そこにあった。 身体が痛い。 ――どうにかなる 血が足りない。 ――それがどうかしたか。 これ以上は死んでしまう。 ――また、俺は大切なものをこの手から取りこぼすのか? 「これ以上、貴様のような悪魔に、くれてやるものなどあるものか!」 ゼロから、トップへ。 死に掛けの身体を無理矢理起こし、距離を詰めるため全力で駆け出した。 ■ ヒィッツカラルドはそれを詰まらなさそうに眺めていた。 所詮は死にかけ、しかも馬鹿正直に一直線に向かってくる。 指を一度鳴らしただけで、また地面に這いずるだろう。 ――少々興ざめかな? そんなことを思いながら空いている方の指を鳴らそうとした時、ゆたかを吊り上げた腕に何かが刺さった。 ゆたかは無我夢中だった。 Dボゥイが生きていた、それは嬉しい。 けれどこの危険な男は、またDボゥイを傷つけようとしている。 ――なんとか、なんとかしなくちゃ。 必死に考え、とっさに身近なものでヒィッツカラルドの腕を突き刺したのだ。 後のことを考える余裕は、ゆたかにはなかった。 「Dボゥイさん!」 どんな意味で叫んだかは、ゆたか本人にも分からなかった。 生きてほしかった。生きたかった。 みんなで帰りたかった。 その思いは、螺旋力となってヒィッツカラルドを貫いた。 ■ ヒィッツカラルドは自身に起きたことが信じられなかった。 ――なんだ!これは! ヒィッツカラルドの二の腕、コアドリルが突き刺さった場所に風穴が空いていた。 手に力が入らず、ゆたかが解放される。 「きゃっ!」 ゆたかはろくに着地もできず尻餅をつき、自らの行為に呆然とした。 ただのアクセサリーだと思っていたものが、まったくの別物だとやっと気がついたのだ。 「貴様ぁ!」 ヒィッツカラルドは激昂した。 油断した自分が悪いのだが、愉快な気分に一気に水をさされたのだ。 この責任を取ってもらおうと、無事な方の手で指を鳴らそうと構えた。 そして、Dボゥイの握るM500ハンターがヒィッツカラルドの額に押し付けられた。 「零距離、とったぞ」 火薬の音が響く。 銃弾はヒィッツカラルドの骨を砕き、肉を抉り、脳を滅茶苦茶に掻き回した。 ――馬鹿な、十傑集の私がこんなところで! その答えは、簡単だった。 素晴らしきヒィッツカラルドは単に遊びすぎたのだ。 ■ Dボゥイは銃弾を受け倒れたヒィッツカラルドに重なるようにぶっ倒れた。 カマイタチの傷跡は相変わらず血を流しており、しかも短い距離とはいえ全力疾走をしたのだから当然といえる。 「Dボゥイさん!」 頭に血が回らなくて、誰の声か分からなかった。 ただ、今度こそ守れたような気がした。 そこまで考えて、Dボゥイの意識は闇に沈んだ。 「Dボゥイさん!Dボゥイさん!」 人を傷つけたことも、人が死んだこともゆたかにはショックだった。 でも今は全て後回しだ。逃避かもしれないが、今はDボゥイのことが心配だった。 そして、何回目になるか分からない衝撃を受けることになった。 「え、傷が・・・・・・」 Dボゥイの傷は、ゆっくりとだが回復していたのだ。 もっとも血が止まっただけで、傷は生々しく残っていたのだが。 ――Dボゥイさんって何者なんだろう? 目が覚めたら、もっと話し合おう。 私のこととか、私の友達のこととか、学校のこととか話してみよう。 それから、あらためてお願いしてみよう。 一緒に帰ろう、て。 そこまで考えて、小早川ゆたかの意識は闇に沈んだ。 安心した瞬間に気が抜けたのだ。 普段のゆたかでは考えられないほど動き回ったのだ。その反動だろうか。 ゆたかはゆっくりと仰向けになって寝転んだ。 ■ 死に絶えたヒィッツカラルドの内ポケットの中で、月の石のかけらは徐々にその光を失っていた。 Dボゥイを回復させたのは、月の石のかけらの効果だった。 ヒィッツカラルドに倒れ込んだDボゥイが偶然にも光を浴びた、それだけだった。 月の石のかけらはついにその光を失い、ただの石に戻った。 墓石にしては、その石はあまりに小さかった。 【D-7/住宅団地/1日目/早朝】 【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】 [状態]:左肩から背中の中心まで大きな裂傷、吹き飛ばされたときに全身に打撲 [装備]:M500ハンター(残弾、3/5)、テッカマンアックスのテックランサー(斧)@宇宙の騎士テッカマンブレード [道具]:支給品一式 [思考] 1:今は眠る 2:テッカマンエビル、相羽シンヤを殺す 3:2を果たすためなら、下記の思考を度外視する可能性あり 4:ゆたかを知り合いか信頼できる人物にゆだねる。 5:ゲームに乗っている人間を殺す [備考] :殺し合いに乗っているものはラダムと同じだと結論しました :テッカマンアックス撃破後、身体が蝕まれる前ぐらいを意識しました 【小早川ゆたか@らき☆すた】 [状態]:肉体的にも精神的にも疲労大 [装備]: [道具]:支給品一式、コアドリル@天元突破グレンラガン、鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損] [思考] 1:今は眠る 2:みんなでこのゲームから脱出 3:Dボゥイさんの目が覚めたら色々お話をする(脱出を手伝ってもらう) 4:泉こなた、柊かがみ、柊つかさを探す [備考] :コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました。 【素晴らしきヒィッツカラルド@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 死亡】 ※Dボゥイとゆたかはお互いが別の世界から集められたと気がついていません。 ※D-6の団地の一部に大量の紙が散らばっています。 ※ヒィッツカラルドの支給品(0~1)が近くに転がっています。 ※月の石のかけら二個(@金色のガッシュベル!!)も上記と同様に転がっています。 ※紙の入ったトランクケース(@R.O.D)は少々の中身を残して近くに転がっています。 ※ヒィッツカラルドはフィーロの帽子(@BACCANO バッカーノ!)をかぶったままです。 時系列順で読む Back その名は絶望 Next 蘇れ、ラピュタの神よ 投下順で読む Back いろいろな人たち Next この手に堕ちた腐りかけの肉塊 002 この血塗られた指先で救えるのなら Dボゥイ 106 悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱 002 この血塗られた指先で救えるのなら 小早川ゆたか 106 悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱 004 人の名前を変えんじゃねえ!!(後編) 素晴らしきヒィッツカラルド
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使用上の注意をよく読んでください ◆JZARTt62K2 城の二階、書庫。 大理石造りの床に、煉瓦の壁。埃が積もった本棚と、何千冊もの蔵書。 ひんやりとした雰囲気に覆われた知の宝庫は、石を主体としたロマネスク様式を思わせる。 明かり取りの窓から差し込む光が闇を切り裂き、かろうじて書庫を『薄暗い』状態に保っていた。 黙然とした部屋の雰囲気は、やや陰鬱で重苦しい。悪魔をモチーフにしたであろう絵画も、不気味さに拍車をかけている。 だが、完全に無音というわけではない。 もしこの場に第三者がいて、耳をすましたならば、二人分の薄い呼吸音を聞くことができるだろう。 手負いの、二人の少女の吐息が。 「薫、いい加減起きぃや……。このままやとウチ、不安になってまうやないか……」 野上葵の疲れきった声が、目を閉じて横になっている赤髪の少女へと降りそそぐ。 二人がこの書庫に隠れ潜んでから数時間、葵はずっと親友の看護を続けていた。 自らの左足を喪失したことなど気にも留めずに、だ。 だが、赤髪の少女は一向に目を覚まさない。その現実は、葵に激しい疲労感を与え始めていた。 身体ではなく、精神にかかる蓄積疲労。思考は黒い螺旋を描き、ネガティブな方向へと沈んでいく。 もし、身体に重大な障害が残っていたら。もし、このまま目覚めなかったら。 もし、死んで―― 「あかん!」 葵は悪夢を振り払うように頭を揺らすと、親友の身体をしっかりと抱き締めた。 いくつも重ねたシーツの皺が大きく歪み、隙間から素肌――全裸である――が覗く。 「そんなこと、絶対許さへん……なあ、そうやろ薫……殺しても死ななそうなあんたが、こんなつまらん死に方するはずないもんな……」 何度語りかけても、相手は返事を返さない。それにもかかわらず、葵を言葉を絶やさなかった。 まるで、そうしないと自分が壊れてしまう、とでも言うかのように。 野上葵は、繰り返し、繰り返し、孤独な人形劇を演じ続ける。 一体どれくらいの時が過ぎたのだろうか、二人の身体はいつしか汗まみれになっていた。 ぶつぶつと呟いていた葵は一旦言葉を区切ると、親友の汗を拭うため、予備のシーツに手を伸ばす。 指先がシーツに触れようとしたそのとき、伸ばした手がビクリと震えた。 廊下に通じる扉の向こうから、たっ、たっ、たっ、と響く足音を、葵の耳が感知したのだ。 石畳が交互に叩かれ、軽いリズムが刻まれている。 足音はしだいに大きくなり、誰かが書庫に近づいてきていることは明らかだった。 「そろそろ、引き際やな」 この城が危険だということはわかっていた。なにしろ、レミリア・スカーレットという危険人物の居城なのだ。 極めて危険な場所だということはわかっていて――だからこそ、葵は城に留まった。 気絶していた葵にトドメを刺さなかったことから考えて、レミリアは積極的に殺し回る性格ではない。 ただ、妹の性格と本人の雰囲気から想像するに、安心や信頼とは真逆の存在だ。 敵対する者や目障りな者に対しては、攻撃することを厭わないだろう。 だからこそ、である。 この城にいれば、少なくともレミリア以外の危険人物から身を守れる確率は高くなる。 気絶した薫を背負って消耗した身体で外に出るよりも、この城に隠れていたほうが安全だと判断したのだ。 注目を集めるであろう戦闘跡を避け、人気のない書庫に篭ってからから三時間強が経過したが、幸運なことに誰も書庫には近づいてこなかった。 葵の判断は間違っていなかったと言える。 だが、それもここまで。 盾として利用するとはいえ、レミリアが『絶対に会いたくない危険人物』であることに変わりはないし、 書庫に近づいてくる足音がレミリアのものでなかったとしても、そいつが殺人者でないとは限らない。 気絶した薫を抱えたまま戦うわけにはいかないし、交渉という危ない橋を渡ることも避けたい。 ならば、どうする? 「ベタやけど、三十六計逃げるに如かず、やな」 僅かな記憶を引き摺り出し、足音の間隔が紫穂のものでないと確認した後、葵は『親友』の身体を抱きかかえた。 「ホンマはあんたが起きてから紫穂探そ思てたんやけど……しゃあない、ウチ一人でも探し出したるわ! だから薫、少しだけ我慢してな。寝てるとこ悪いけど、飛びまくるで!」 ※ ※ ※ ※ ※ 瞬間移動能力が空間を歪め、二人の姿が瞬時に掻き消える。 託卵に気付かぬ哀れなモズが、カッコウの子供をおぶって空を飛んだ。 二羽の鳥が飛び去った巣に、動くものは残っていない。だが、それも一瞬のこと。 書庫から二つの気配が消えると同時、ギィ、と音を立てて扉が開いた。 入れ替わるように入ってきた獣耳の少女が、書庫の中をキョロキョロと見回す。 そのまま部屋の中に入り、尻尾をピコピコさせながら壁沿いをぐるっと一周。 机の下を覗き込み、椅子をどかし、絵画の裏を確かめ、書庫の中を走り回った。 「ん~~~」 それだけでは物足りないと思ったのか、少女は本棚の本を抜き出し始めた。 『闇の開闢』というタイトルの本を一冊抜いて奥を覗き込み、誰もいないことを確認する。勿論、誰もいない。いたら怖い。 続けてもう一冊『私と魔界』、また一冊『魔界魔蟲大全』、更に一冊『ザベル=ザロック全アルバム紹介』…… 抜き出された本は山のように積み上げられ、いつ崩れてもおかしくないような状態になっていた。 そして、その山の登頂に、恐る恐る本を乗せようとする少女が一人。 新たな重量を加算された山はしなるように揺れ―― 「……お~~~」 しかし崩れず、その標高を一段階伸ばすことに成功した。 ……おそらくこの少女、本来の目的を完全に忘れている。 「アルルゥ、ここにいるんですか? 東側の部屋は全て調べ終わり……って、何をやっているんですか一体……」 開けっ放しになっていた扉から、髪を片側だけ結んだ少女の顔が覗いた。 新たに書庫に入ってきた少女は、本で遊ぶ少女を咎めた後、積み上げられた本の山を本棚に戻していく。 「本は積み上げるものではなく、読むものです。まあ、私もあまり読んだことはありませんが」 「ん、わかった」 アルルゥと呼ばれた少女はその言葉に頷き、髪を片側だけ結んだ少女を手伝い始める。 床に散らばった全ての本を二人がかりで片付けた後、ようやく本題が切り出された。 「それで、西側の部屋に人はいませんでしたか?」 「う~~~、いなかった」 「そうですか……では、食堂に戻りましょう。レミリアさんに報告です」 「ん!」 二人の少女は互いに視線を交わすと、並んで書庫を出て行った。 ギィ、と音を立てて扉が閉まり、二人分の足音が遠ざかる。 後に残されたのは静寂と、怪しく目を輝かせる絵画の悪魔のみ。 ※ ※ ※ ※ ※ 「じゃああなたたち、外に出て行って探してきて頂戴」 食堂に戻ったプレセアを待っていたのは、倣岸不遜なレミリアの命令だった。 『城の中にまだ瞬間移動娘がいるかどうか探してきなさい』という命令に続く、二つ目の命令。 別に文句があるわけではない。どうせ、ジーニアスを探すために島中を回る予定だったのだ。 ただ、疑問が一つだけ。 「貴女は、一緒に行かないのですか?」 妹を探すことが目的のレミリアは、率先して動くものだと思っていた。 しかし、当の本人はゆったりとした動作で紅茶を啜っており、動く気はさらさらないように見える。 「とりあえず、放送まで動く気はないわ。それに、城を空にするわけにはいかないだろ」 微妙に焦げ付いた指先を隠しながらレミリアが答える。 余裕綽々といったレミリアの態度に、プレセアは小さな溜息を吐いた。 実の妹がどんな目に合っているのかわからないのに、不安にはならないのだろうか? 自分だったら、間違いなく恐慌状態に陥っているだろう。 「探し出す対象は瞬間移動娘とフランで、特徴はさっき教えた通り。さあ、行け」 「おー」 「……わかりました」 一緒にいる時間は短いものだったが、レミリアの性格は大体把握した。 彼女に悪気はない。ただ、レミリアにとって当たり前の言い方をしているだけだ。 助けてもらったのは事実だし、素直に従っておくのが一番だと判断する。 どの道、アルルゥを一人で行かせるわけにはいかないからだ。 島には危険人物が何人もうろついている。四本のブレードを持った少年や、念動力を使う少女や――私や、アルルゥといった危険人物が。 一人でうろつくことなど、自殺志願以外の何物でもない。 それにもかかわらず城の探索を二手に分かれて行ったのは、 数時間気絶していたレミリアとアルルゥが殺されていなかったことから、他の参加者が城にいないと考えたからだ。 だが、城の外は違う。いつ、どこで、誰が、どんな手段で襲ってくるか全くわからない。 いくら魔獣を使役できるとはいえ、奇襲攻撃を受けたらすぐに殺されてしまうだろう。 だからこそ、私が傍にいる必要がある。術士を守るのは戦士の役目だ。 「放送前には必ず帰ってきなさい。良い茶葉や菓子を見つけたら持ち帰るのも忘れずに」 暢気ぶりが天を貫きそうなレミリアの台詞を背中に受けながら、プレセアは食堂を後にする。 生乾きの服が肌に張り付いて気持ち悪いが、そこは我慢だ。 先走って駆け出そうとするアルルゥを手で制しながら、もう片方の手で鉄槌を引っ張り出す。 この先、絶対に油断はできない。安全な城から外に出れば、悪意蠢く広大なフィールド。 戦士が一人、術士が一人。パーティーの人数は少ないが、今までの冒険と何も変わらない。 束の間の憩いはもう終わり。ここからは、戦争だ。 ※ ※ ※ ※ ※ 「どうやら、行ったようね」 城を出て行く二人を食堂の窓から見送ったレミリアは、誰にともなく呟いた。 食堂で最も大きい椅子に座った姿は、一言で言うと――不審者。 プレセアから返却されたシルバースキンを着込んだ姿は、お世辞にも高貴とは言い難い。 テーブルクロスを纏ったままで長時間いるのは流石にどうかと思うし、元々着ていた服は生乾きだ。 となれば選択肢は一つに限られ、レミリアは『それ』を着込んでいた。 日光すら防ぐ鉄壁の防具は、あらゆる意味で便利な代物だ。便利な代物なのだが―― 「動きにくい……」 そう、だぶだぶで動きにくいのだ。その上、見た目が異様に恥ずかしい。元々の持ち主のセンスは最悪だと思う。 これが、レミリアが外に出たくない理由である。 プレセアとアルルゥを追い払ったのも、この姿を見られたくなかったからだ。 こんな、威厳とは540°違う姿を民衆に見られてしまったら、恥ずかしさのあまり命を絶って死後の世界に赴き、、 妖夢をぶち倒した後で復活して、目撃者を全員葬り去ってしまうことだろう。中盤の行為に意味はない。 服が乾いて夜になれば自由に動けるのだが、今はどうしようもない。 プレセアからの貢物である思い切り鋏を片手で弄びながら、レミリアは足をぶらぶらさせた。 暇だ。 「お茶でも飲むか……ん?」 足の爪先が何かに触れ、カサリと紙が滑る音。 興味を引かれて拾い上げると、その紙は支給品の説明書だった。 「これは、アルルゥが持っていた魔石の説明書か……どれ」 暇潰しに広げた説明書。そこには―― ※ ※ ※ ※ ※ 「アルルゥ、あまり私から離れてはいけません」 「プレセアおねーちゃん、はやくいく!」 「聞いていませんね……」 城の跳ね橋を歩きながら、困ったような顔で先行するアルルゥを見つめる。 元気があるのはいいことだが、術士が先走っていいことなど何一つない。 何と言って注意すればいいかと迷っているうちに、跳ね橋を渡り切ってしまった。 目の前には赤茶けた道が真っ直ぐに伸びていて、その向こうでは川が流れている。 人影は見えず、いきなり敵と接触する可能性は低そうだ。 とはいえ、困った。どこから探していいのか見当がつかない。 「アルルゥ、どこから捜索を始めたいですか?」 「もり!」 試しにアルルゥに聞いてみると、速攻で答えが返ってきた。 「何か、思い当たる場所でも?」 「アルルゥ、もりのなかはしるのとくい」 理由はそれだけらしい。 アルルゥに聞いたのがそもそも間違いだったと思いかけて、ふと考える。 自分達に有利なフィールドで戦うのは、あながち間違っていないのではないかと。 お茶会の最中にアルルゥ自身から聞いたことだが、アルルゥは『森の母』と言われる存在だという。 森の気配を読み、森の中に隠れている異物を探知できる――そんな能力を持っているという話だ。 自分も森で木こりの仕事をしていたから、森には人一倍詳しい。 ならば、二人の力を最大限発揮できる森の中を探索したほうがいいのではないだろうか。 「……アルルゥ、あの辺りの木に鳥がいるかどうかわかりますか?」 「ん~~~、あっちのきににわ、こっちのきにいちわ、そっちのきにいちわ、いる」 「そうですか」 アルルゥの答えを頭に収めた後、おもむろにハンマーを振り上げる。 狙うは、地面。 「爆砕斬ッ!」 鉄の顎が土を喰らい、食い散らかされた茶色の欠片が前方に飛び散る。 それと同時に、地面を伝わった破壊の衝撃が森を打ち揺らした。 前方の木々からバタバタと飛び立つ鳥は、一羽、二羽……合計四羽。 どうやら、アルルゥの言は本当のようである。 これで方針は決まった。 「わかりました、それでは森に向かいま……どうしました?」 「プレセアおねーちゃん、いじわる」 見ると、アルルゥがジト目で見上げている。 無闇に森に衝撃を与え、鳥達を驚かせたことに怒っているらしい。 「すみません、アルルゥの力を一度見てみたくて……」 「う~~~」 言い訳抜きで謝ってみても、アルルゥは唸り声を上げるばかり。 どうやら、完全に機嫌を損ねてしまったようだ。 そっぽを向いたアルルゥは、さっさと森の中に入っていってしまった。 慌ててその後を追いながら、自然と笑みが零れてくるのを感じる。 (懐かしいですね) オゼットの村でホレスとジャネットの世話をしているときも、こんなことが何度かあったような気がする。 不意に、まだ幸せに暮らしていたころのオゼットでの生活を思い出しかけ、すぐに頭を振って幻想を追い払った。 時は戻らない。それが、自然の摂理。 それでも、いや、それだからこそ、アリシアの蘇生を願ってしまった。 ジェダの能力に一縷の望みを託し、自然の摂理を打ち砕くことができるのではないかと夢を見た。 今となっては、その思考が間違ったものだとはっきりわかる。 大切な仲間であるジーニアスや『お姉ちゃん』と呼んでくれるアルルゥを殺すことなど、今の自分にはできない。 二人を殺してしまうくらいなら、あの世でアリシアと再会したほうがマシだ。 ――ならば、もし二人が死んでしまったら、私はどんな選択肢を選び取るのだろうか。 (馬鹿馬鹿しい) 最悪の妄想から脱却し、遠のき始めたアルルゥの背中を追う。 余計なことを考えている暇はない。今は、一刻も早くジーニアスと合流することが先決だ。 フランドール・スカーレットと瞬間移動を操る少女の捜索も忘れずに。 「待ってくださいアルルゥ、探索の前にフォーメーションの確認だけしておきましょう」 「…………」 「私の食料をあげます」 「する」 ※ ※ ※ ※ ※ 城の食堂で、海賊風の衣装を纏った変質者――レミリア・スカーレットが、鋏を回転させていた。 持ち手の部分に人差し指を入れられ、大きく開ききった鋏は、風車のように円を描いている。 玩具のようにぞんざいに扱われているその鋏の名は『思い切りハサミ』。 二つの刃で迷いを切り取り、プレセアとアルルゥを凶行に走らせた危険な道具。 開ききった鋏が閉じられてレミリアの『迷い』が断ち切られたとき、どれほどの惨事が起こることか……。 当のレミリアはそんなことなど気にも留めず、拾い上げた説明書に目を通している。 「ふーん、『幻獣界メイトルパの召喚獣を呼び出し、敵を攻撃する道具です』ね。特殊なスペルカードみたいなものか。 ん、追記があるな……」 但し書きにはこう書かれていた。 『なお、召喚獣は攻撃にしか使えず、呼び出すとすぐに攻撃動作をして、その後帰ってしまいます』 『召喚獣を乗り物にしたり、召喚獣を策敵目的で使うことはできないのでご注意ください』 『この支給品は実際のゲーム中の効果を再現しています。支給品に不具合があった場合、ごめんなさい。賠償請求は受け付けません』 ふざけた注意書きだった。三行目が特に。 「攻撃にしか使えない、ねぇ」 どうでもよさそうに呟きながら、レミリアは説明書から指を離す。 手から離れた紙片が、空中でくるりと一回転した。 「……あの子達は、ちゃんとこのことを理解しているのかしら?」 ※ ※ ※ ※ ※ 「前衛は私が務めますから、アルルゥは召喚術で援護してください」 「ん」 「先に不審な人間をを見つけてしまった場合は、とりあえず私のところまで逃げること。 ただし、危ないと思ったときは即座に召喚術を発動させてください」 「……おう」 「できれば攻撃は控えるようお願いします。あの魔物が目の前に現れるだけで大抵の人間は怯むでしょうし、こちらの勘違いということも有り得ます。 フードの少女達を襲ったことで、私達は何人かに危険人物と見なされているはずです。これ以上敵を増やしたくありません」 「……ん~~~」 「召霊術を使い始めたばかりのしいなさんも、旅の中で自在に精霊を使役できるようになりました。 精霊と魔物という違いはありますが、召喚術が使える以上、アルルゥが召喚獣を自在に扱うことは可能なはずです」 「わかった!」 ――理解してなかった。 【F-4/森/1日目/午後】 【プレセア・コンパティール@テイルズオブシンフォニア】 [状態]:体力消耗(小)、軽度の貧血、右肩に重度の裂傷(処置済+核鉄で、なんとか戦闘可能なまでに回復)。 ツインテール右側喪失。思いきりハサミにトラウマ的恐怖。 [装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA’s、エクスフィア@テイルズオブシンフォニア [道具]:カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA’s、支給品一式(生乾き、食料-1) [服装]:冒険時の戦闘衣装(ピンク色のワンピース、生乾き) [思考]:ブレードの少年には特に気をつけましょう…… 第一行動方針:森を散策して、ジーニアス、フランドール、瞬間移動娘(葵)を探す。 第二行動方針:放送前には城に帰還して、レミリアと合流。 基本行動方針:ジーニアスを探す。ジーニアスとアルルゥが生きている間はゲームに乗らない。 ※プレセアはアリシアの死を知った以降から参戦。 ※グラーフアイゼンはこの状況を警戒しています。 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]:軽い疲労、頭にたんこぶ。 [装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3 [道具]:基本支給品(食料-1)、クロウカード二枚(バブル「泡」、ダッシュ「駆」) [服装]:民族衣装風の着物(普段着) [思考]:ん~~~……(フォーメーションについてあまり理解していない) 第一行動方針:プレセアと一緒に森を探索する。怪しいやつが出たらタマヒポを召喚して動きを止める。 第二行動方針:イエローや丈を捜したい。放送前には城に戻る。 基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。 参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後 [備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。 ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。 サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。このことをアルルゥは理解していません。 【F-3/城の外/1日目/午後】 【野上葵@絶対可憐チルドレン】 [状態]:左足損失、超能力の連続使用による微疲労、精神的疲労、強い決意 [装備]:無し [道具]:支給品一式、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心 ベルカナのランドセル(基本支給品、黙陣の戦弓@サモンナイト3、返響器@ヴァンパイアセイヴァー) [思考]:待っとれよ紫穂! 第一行動方針:薫を守りながら紫穂を探す 第ニ行動方針:できれば薫は安全な場所に避難させたい 第三行動方針:レミリアかフランドールに出くわしたら、逃げる 第四行動方針:逃げた変質者(ベルカナとイエロー)は必ずぎったんぎったんにしたる 基本行動方針:三人揃って皆本のところに帰りたい [備考]:ベルカナが変身した明石薫を本物だと思い込んでいます。 イエローをサイコキノ、ベルカナも何らかのエスパーと認識しました。 なお二人が城戸丈を猟奇的に殺害し、薫に暴行をしたと思っています。 テレポートについて 葵のテレポートは有効活用すると「装備取り上げ」や「石の中にいる」が強力過ぎと判断し 「意識のある参加者(&身に着けている所持品)は当事者の同意無しでは転移不可」として描写しています。 【偽明石薫(ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT)】 [状態]:気絶、明石薫に変身中。左腕に深い切り傷、全身に打撲と裂傷(応急手当済み)、 あばら骨数本骨折(他も骨折している可能性あり)、出血による体力消耗 [装備]:全裸(シーツを何重にも羽織っている)、 [道具]:なし [思考]:………… 第一行動方針:明石薫のふりをして、この場を切り抜ける 第二行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない) 第三行動方針:仲間集め(イエローと丈の友人の捜索。ただし簡単には信用はしない) 基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア 参戦時期:原作7巻終了後 [備考]:制限に加え魔法発動体が無い為、攻撃魔法の威力は激減しています。 変身魔法を解除した場合、本来の状態(骨折数箇所、裂傷多数、他)に戻ります。 「シェイプ・チェンジ」について 明石薫に変身しています。持続時間は永続(本人の任意で解除)で精神以外は完全に薫です。 超能力もコピーされていますが、経験不足なので消耗は激しい上、使い分けは出来ません。 【F-3/城内の食堂/1日目/午後】 【レミリア・スカーレット@東方Project】 [状態]:魔力消費(中) [装備]:飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心、シルバースキンAT(ブラボーサイズ)@武装錬金 [道具]:支給品一式(食料-1)、思いきりハサミ@ドラえもん、クロウカード1枚(スイート「甘」) [服装]:シルバースキンAT(シルバースキンの下は全裸、服は洗って干している) [思考]:ひとまず放送を待つか。 第一行動方針:お茶を飲みながら放送と夜の訪れ、及びプレセアとアルルゥを待つ。 第二行動方針:フランを知っている瞬間移動娘、及びフランをプレセア達に探させる。 第三行動方針:服が乾き、なおかつ時間があり、更に気が乗っていたら爆薬で加速の実験をする。 基本行動方針:フランを捜す。ジェダは気にくわない。少しは慎重に、しかし大胆に。 [備考]:思い切りハサミを片手で弄んでいます。うっかりすると音が出るかもしれません。 ≪102 気まぐれな楽園 時系列順に読む 129 『』shift≫ ≪107 デカイ悩みなら抱えて進め 投下順に読む 109 出会いはいつも最悪で≫ ≪102 気まぐれな楽園 プレセア・コンバティールの登場SSを読む 140-2 Frozen war/冷戦≫ ≪102 気まぐれな楽園 アルルゥの登場SSを読む 140-3 Firing line/火蓋≫ ≪097 エスパー・フィーバー 野上葵の登場SSを読む 140-3 Firing line/火蓋≫ ≪097 エスパー・フィーバー ベルカナ=ライザナーザの登場SSを読む 140-3 Firing line/火蓋≫ ≪102 気まぐれな楽園 レミリア・スカーレットの登場SSを読む 140-3 Firing line/火蓋≫
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落陽に帰り道は見えるのか 崩壊した村をすさまじい速度で駆ける影が1つ。 音速の貴公子こと漆黒の翼のリーダー、グリッドは中央地区へ向かうべく、自慢の足で走り抜けていた。 背にはメルディを負ぶさっている。腕が1本しかないため、残った手を彼女の臀部にあて、 彼女には服をぎゅっと掴んでもらうことで何とか背負うということが成立していた。 恐らくキールがこの事実を耳にしたら、グリッドは半殺しにされるか、もしくは本当にあの世行きになるだろう。 しかし、メルディの体勢はそれでも時折不安定になり、グリッドの速さもあってか、彼女は常に強く服を握っていた。 彼女の肩にポジションを取るクィッキーも、重傷であるにも関わらず必死にしがみついている。 天使となって感覚を失ってしまったグリッドがこのことに気付くのは、走ってしばらく後のことである。 ちらりを後ろを振り返ると、懸命にしがみつく彼女とクィッキーの姿が目に入って、慌てて彼は速度を落とした。 そしてもう1度体勢を直し、今度は少し速度を落として走り出した。 それでも速さだけはごく一般的な成人男性と比べたら相当のものである。 このときばかりは感覚の消失を少しばかり恨めしく思った。 「すまん、メルディ。気を遣えなくて」 「……ダイジョーブ。メルディも走ったら、きっと追いつけないから」 メルディの語調は静かというよりはどことなく暗く、遠回しに背負われている自分の無力さを伝えているようだった。 グリッドは、珍しく彼女にだけはどんな言葉をかければいいのか分からないでいた。 自分の願いというものが、彼女にはあるのだろうか? いつかのヴェイグの話で、元々彼女はとても元気で明るいと聞いた。 だが、今の姿しか知らないグリッドは、塞ぎ込んだ彼女をどうすればいいのかも分からない。 ろくに会話することさえも、メルディはずっとキールに付いていて自分はすぐ洞窟へ向かったのだから、実際今回が初めてのようなものだ。 自分の不甲斐なさに奥歯を噛みしめる。 過程はまるっきり別物であるにしろ、「無自覚に人を殺した」という点では、この2人に共通するものはある。 そしてそれを知った後、陰鬱に塞ぎ込んでしまったという点も共通している。 だが、彼と彼女は違う。似ているようで、ベクトルの向きは全く別物だ。 手段の直接性と間接性も、何に苦しんでいるのかも、自分を取り戻したか否かも――どんな言葉をかければいいのか分からないわけだ。 グリッドは、彼女をどうにかしたいと思いつつ、どう励ませばいいのか分からなかった。 言葉が届くかどうかというよりは、自分が差し挟んでいい問題だと思えなかった。 自分は彼女と感覚を共有できたとしても、戻るための道筋がまるで違う。 方法が違うのだから、アドバイスをしたとしても彼女のためになるとは思えなかったのだ。 それほど彼女の瑕疵は深い。だからといって、簡単に「はいそうですか」と言える人間でも、グリッドはないのだが。 夕闇の弱々しい光が街路を気持ちばかり照らす。 光よりは闇の方が濃くなってきた村では、前方も暗くなりはじめ、視界が悪い。 体温を奪い去っていくような夕方の風も、この闇から生まれてきたのではないかと思える。 荒廃した村では何の違和感もなかった。気分が悪いと、グリッドは心中で吐き捨てた。 「メルディ、マジカルポーチの様子は?」 「何もないな。何も出てこないよ」 「つっまんねーな。こう、ステーキとか景気よく出ないもんかねえ。黄色いケーキだっていいぞ。 ああ……ボルシチか、ビーストミートのポワレでもいいな。こう寒いとあったまるモンがいい」 その言葉にメルディは何も返さなかった。ただぎゅっと服を掴むばかりで、何かにぐっと堪えるようだった。 「……ダメだよ。きっといい結果なんて出ない。メルディの手は汚れてるんだから」 「ほう、その汚れた手で俺を掴んでくれてるとは、ありがたいこった」 彼女は手離そうとしたが、グリッドが速度を上げたため服を掴んでいらざるを得なかった。 「どうなるか分かんねえだろ。どうなるか分かんねえから、色々やるんだろ? 端っから読めてたらつまらんだろ」 グリッドが意気揚々と言う中、彼女は目を逸らすように顔を服に埋めていた。 深い橙色の髪が少しばかり見えるが、その奥で彼は何の疑問の浮かべず、とても輝かしく笑っているのだろう。 それくらいは彼女にも想像することができた。想像でも眩しかった。 この村の塵にまみれ澱んだ空気の方が、まだ自分には合っているのだと彼女は思う。 今も呼吸することさえ辛いが、晴々として澄みきった空気を吸う方が、きっともっと辛いだろうから。 涼やかな大気を吸い込んだときの心地よさが懐かしい。 セレスティアはいつも暗かったけど、インフェリアは空が青くて綺麗だったっけと、彼女の中で痛みに似たものが過ぎった。 その空の下で、あの3人はよく笑っていた気がする。 自分もその笑顔を奪ってしまったのだから、もうそれを見ることは叶わない。 だが、思い出すことはまだできる。瞼の裏に浮かぶ光景を思い出しながら、共に笑うことが――――できなくなるのは、怖い。 彼女が持っていたポーチから何かがぽんと飛び出て彼の後頭部に直撃した。 痛みこそないものの頭が下に向き、視界が激変したおかげで彼は見事につんのめった。 空を舞った何かをキャッチするメルディ。 「ニンジンな」 「っはあ? ニンジン? こう走らされてても、いくら何でも馬じゃねえぞグリッド様は」 1度メルディを降ろし、再度負ぶり直そうとした彼はメルディの方を向いた。 彼女は何故か飛び出してきたニンジンを見つめていた。 「でも、ボルシチの材料だよう」 彼女の言葉にはっとし何かを閃いた彼は、汗も出ない身体で指をぱちりと鳴らした。 「ちょっとずつ、ちょっとずつ、ってことだな」 静けさの支配する場所で、2人の青年が空を見上げていた。 夕焼けの空に時折走る閃光に、空にたなびく飛行機雲。 草葉がそよぐだけの静寂とは裏腹に、音もなく飛び散る火花の激しさは戦闘の激しさを物語っていた。 2人のうちの1人が不安そうな表情を見せる。そして片手に持った懐中時計に目をやる。 時は17時半過ぎ。ともすれば「もう18時か」と呟いても差し支えない時間の頃合だ。 互いが持っている情報を一通り交換していたため、知らぬ間に時間は過ぎ去ってしまっていた。 それからは時折言葉を挟む程度の沈黙が続き、夕方の風が心に冷たさを吹き込ませていた。 青年がタイムリミットという禁忌をを知りながら、時計に意識を伸ばしてしまったのはそのためである。 かの地は18時の放送と同時に封鎖される。 もしその前にエリアを抜けることができなければ、そこに命があるのなら容赦なく終わってしまう。 しかし、未だ終わりの見えない戦闘の気配が、青年の不安を駆り立てる。約束は果たされることなく終わるのかと。 「少しは落ちつけよ、ヴェイグ。お前らしくないぜ?」 傍らに座り込むもう1人の青年が語りかける。 ぽん、とどこからか緑の髪と同じ色の草を取り出して、風来坊がするかのように茎を口にくわえる。 「お前こそ妙に冷静だな、ティトレイ。らしくもない」 正反対の言葉を全く同じように言った。 ティトレイと呼ばれた青年は茎をたばこのように指で挟んで、やれやれといった顔をした。 小さく顔を上げて空に視線を移し、人工的に生まれた星の瞬きを眺めると、ティトレイは表情を真摯なものに変えた。 「あれはカイルの戦いだ、俺たちが口を挟んでいいことじゃない。あいつが俺らの戦いを黙って見ててくれたように」 「だが……」 「お前な、待つって決めたんだろ? 男ならびしっと約束は守れよな。もちろんカイルもだ。 男には、誰にも邪魔されない戦いってのがあるもんだぜ」 諭すかのように指を突きつけてティトレイは言う。 それは単にお前の理論ではないのかと、ヴェイグと呼ばれた男は口を挟みそうになったが、 邪魔をしてはいけないという思いは共通していた。 それでもカイルの行方を不安に思ってしまうのは、もはや彼の性なのか、年上の銀髪の男の宿命なのか。 ――――両足骨折。睾丸破裂。裂傷多数。単純に考えて、戦闘をできる身体ではない。 いくらディムロスがいるとはいえ、今しがた空の向こうで行われているような激しい戦いのやり取りは出来ないはずだ。 ……単純に考えて。 だが、現にカイルはそれをやってのけている。 どれだけの負担ががあるのかは分からないが、ただでは済まないことだけは、遠目に見ている2人にも分かった。 間違いなく、相応の動きに対する代償はある。 ましてやあんな煙さえ上げるほどの機動をカイルとディムロスは見せたことがない。 そして、そこにいるのだろうミトスもそれに応戦している。いや、相手の方が上手だろうか。 どれほど本気を出さねば戻ってこれないのか――戦闘が続いているのを見る限りまだ生きてはいるようだが、 それもいつ、どこまでか、不安になるのも仕方がなかった。 「今のカイルに、ろくに戦える力が残ってると思うか?」 錬術を発動させ、心持を隠すように傷の回復に努めるヴェイグ。 このような自己治癒の術が自分たちにはあるからいいものの、カイルは傷を癒す手段がほとんどない。 ティトレイもまたヴェイグを真似て術を発動させる。 「うーん、カイルのことは詳しく知らねえから何とも言えねえが、 いくら機動力があっても術だけでミトスに対抗するのは相当厳しいと思うぜ」 夕日の赤の中でもしっかりと浮かぶ青いフォルスの光。 その強い輝きは絢爛たるものだったが、反して彼らの心中には陰りが落ちる。 ミトスに関しての情報は、朝方にロイドからも聞いている。 おまけにティトレイは実際にミトスと2度対峙しており、それを踏まえての発言だ。 状況をしっかりと見極め、冷静な判断をした上で効率的な行動に出る。 権謀を謀るデミテルと共にいた青年にとって、この考え方は紛れもなく島に来て学んだ糧だった。 「けど、だからってそれでくたばるタイプでもないだろ、あいつ。やる時はやるし、土壇場で力を出すやつだな。俺もしてやられたし」 だが、同時にこの青年はティトレイ・クロウというヒトだった。 持ち前の前向きさで渦巻く不安を一気に吹き飛ばせる男だった。 ヴェイグは驚いたような目でティトレイを見ると、にかっと歯を見せた笑顔を浮かべていた。 大した面識もないカイルのことを何故こうも断言できるのかと、思わず溜息をつきそうになる。 (土壇場、か。だが、確かに一理ある。リオンの時も、シャーリィの時も、決定的な一撃を与えていたのはあいつだ) けれども、土壇場というのは比較的刹那のもので、長く続けばそれは全くの別物だ。 単なる不利――その一言に落ち着くのである。 そして、今のカイルが不利などという状況に収まれば、間違いなく勝てない。そうヴェイグは思い込んでいた。 要するに、約束は信じるにはとても弱々しいものなのだ。 だが、そういえば「死なないで」という確証の持てない約束をしたのは誰だっただろうかとふと思った。 その誰かはこれまでの死地をくぐり抜けて何とか守ってきた。 思い出して、ヴェイグは苦笑めいたものをこぼす。しかし、それは確かに「笑い」だった。 「そうだな。そう思う」 「だろぉ? そうでなくたって人はギリギリのところでこそ力を発揮するもんなんだよ。例えば、俺とか」 ヴェイグの言葉を聞き、笑いながらヴェイグの背中をばんばんと叩くティトレイ。 普段身に付けている胸甲がない分、叩く強さが負傷した身には少し堪えたが、それも懐かしいものと思えば別段気にはならなかった。 「確かにお前はサウザンドブレイバーの射角を変えていたな」 昨夜のことを思い出し、あの激動の光景を瞼に浮かべる。 目まぐるしく変わっていった情勢を思い返すだけで眩暈がしてくる。そして、罪悪感も。 自分の意識と身体が噛み合わない思考の狭間で、ヴェイグはふと違和感を覚えた。 そして記憶を掘り返し、あの記憶は紛れもなく真実だと確認する。 自分の身にも起きた「それ」を思い出し、やはり間違いないと自分の中で言い聞かせる。 生じた違和感は、疑問から不安へと変化していた。 本来なら「それ」は、ありえないはずなのだから。 否、何故今になって疑問を覚えたのだ。たったさっき、自分はすぐ近くの相手にやってみせたではないか。 「……ティトレイ」 「ん? 何だよ」 ただでさえ低い声が更に低くなり、威圧感を生み出した。 相手の真剣そうな声音を微妙なニュアンスとして受け取ったティトレイは、表情を硬くして相手の方を見返した。 名を呼んだが、ヴェイグは隣の親友の方を見ずにただ前方を見つめていた。 はっとしたような、呆然自失としたような、どこか別のものを視野に存在させているような顔つきだ。 ヴェイグは息を吸うことを思い出したように1つ咳を払い、ティトレイの方を向いてはっきりと言った。 「……俺たちは何故、聖獣の力を使える?」 中央地区へと到着していたグリッドは非常に焦っていた。探しても探しても椅子が見つからないのである。 このままでは四つん這い(正式には3)で人間椅子にされるどころか、言葉で責めて責めて責められて膝を抱えておしまいある。 まあ人間椅子になってもわざと身体をずらしてキールを転げ落とさせるのも面白いかなと思ったが、 それこそ今度は怪我をしたキールのために「歩く人間車椅子」にされそうな予感あらため悪寒がしたので、止めておくことにした。 子供にパパ、パパなどと呼ばれながらするならまだいいものの、誰が一体キールのためにそんなことをするものか。 自分は乗られる側ではなく乗る側なのである。あ、でも子供がキールみたいな奴だったらどうしようか。 とはいえ、そんな悪策あれこれを考えていても、見つからないものは見つからない。 まるで瓦礫の市場のようになってしまった中央広場では、完全な形をした椅子を見つけることすらままならない。 あったとしても脚が焦げてぼろぼろになっていたり、座ったら穴が空いて下半身が埋もれてしまいそうなものばかりである。 広場という性質上、民家がただでさえ少ないのだから、グリッドが焦るのも仕方がなかった。 「あー、俺の人生終わるよコレ。四つん這いなんかになったら羞恥心にTP使ってゲームオーバーだよマジで」 柄にもなくとぼとぼと俯いて呟くグリッド。 彼の様子をじっと見ていたメルディは、とてとてと歩いて傍にあった瓦礫の山に手をかけた。 「メルディ、大丈夫だ! 俺のせいでお前に小さな傷1つでもつけたって知られたら、俺キールに殺されっから!!」 「ロイドやコレットだったら、グリッドがこと手伝うよ、きっと。だから気にしなくていいな」 必死に止めるグリッドをよそに、彼女は手を止めようとしない。 まるで手を動かす理由をこんながらくたの山の中から見つけようとするかのような姿に、彼はメルディの手首を掴んだ。 「ロイドやコレットがするから、お前もするのか? そりゃあ唯のおままごとだろ。 他人がするから自分もする、なんての駄目過ぎるだろ」 その言葉は今のメルディの状態を鑑みれば酷なものだったが、それでも彼は伝えなければならないと思った。 案の定、彼女は黙り込んでしまった。瓦礫にかけた手が強く握られている。 下手すればその僅かな振動でもこの無骨な物質の山は崩れてしまうのではないかと、そう思わせる強さだった。 自分の情けなさを糾弾された恥よりも、あたかもロイドとコレットのことを侮辱されたような気がしたのだと、グリッドは悟った。 確かに彼女の行為は真似めいたものかもしれなかった。だが、それでも2人の心だけは汚されるものではない。 何より、そう思ったメルディの心はばらばらに切り刻んでいいものではないのだ。 手首にかけていた手を離し、彼も民家の残骸に手を伸ばす。 「ま、動かないよりはよっぽどマシか。そうしたい、って思ったのは自分だもんな」 がちゃがちゃと宝物でも見つけようとするようにグリッドは手を動かして山をあさる。 夕日の中、2人並んで大きなゴミを除く光景は何ともおかしかった。 「……メルディ、何がしたいかまだ分からないな」 「んん、俺もよく分かる。何をしても、結局ただのフリじゃないかって気がしてな。だからお前にさっきあんなことを言った。すまん」 「メルディも、フリか?」 「いや、違った。確かにロイドやコレットの真似かもしれないが、そこには確かにメルディの意思があった。 そこが俺とは違った。俺は自分すらなかったから、ただのフリだった」 「……よく分かんないな。メルディと、グリッドは違うか?」 俯くメルディにグリッドはにやりと笑う。 「違うね。そりゃもう190度くらい違う。それだけ自分で決めるってのは重いんだ。それに言ったじゃないか、あいつの傍にいるって」 下卑たいやらしい笑みを浮かべると、メルディの頬にほんのり赤みが差したような気がした。 というのも、単に夕日の光が広がっていたからそう見えたのかもしれなかったからである。 メルディは黙り込んだまま、作業に没頭するように残骸をあさった。それを、手を止めたグリッドは無言で見ていた。 自分が手を動かさずとも、メルディはちゃんと自分の手で探してくれているからだ。 先刻ユアンの記憶を垣間見て、否、混同しかねたことを思い出しながら、グリッドは彼女の後ろ姿に自分を重ねようとしていた。 ――とはいえ、傍から見れば唯のサボリなのだが。 「あ、グリッド。椅子、椅子があったな」 「本当か!?」 積もっていた瓦礫は周囲に散らばり、山があった場所には四本足で背もたれのある椅子が横たわっていた。 椅子の上に残っているがらくたをグリッドが除け、椅子を立たせる。 埋もれてこそいたが、元々頑丈な素材だったのか、これといった損傷はなかった。 脚の長さが合っていないのか、少々がたついてしまうことが唯一惜しかったが、キールも及第点を出してくれるだろう。 思わずにんまりと笑うグリッド。 「上出来だメルディ。頑張ればお天道様はちゃんと見ててくれるってこったな。これで脱・羞恥プレイ!」 グリッドの言葉を理解できていないのか、メルディは高々と腕を掲げるグリッドをきょとんとして見ていた。 そんなことも露知らず、グリッドは椅子を片手で担ぎ上げ、瓦礫のない平らな場所へと置いた。 1度周りを見渡し、まだキールたちが来ていないことを確認して、怪しげな笑みを浮かべる。 「メルディ、ちょっとあっち向いててくれないか?」 彼が指差した方向に、メルディは怪訝に思いながらも振り向く。 グリッドはどこぞの女神の生まれ変わりの少女のような、とても褒められたものではない笑みを上げた。 (ジファイブ市街戦トラップマスターのグリッド様を嘗めるなよォ……? 何なら命かけてこれに電撃流したっていいんだぜェ?) グリッドは手の中で転がしていたそれを、数個椅子の上へと置いた。 この島で4人、共にいた漆黒の翼のなごりが悪い形で発現されようとしていた。 ちなみに、これは古典的でありながらもなかなかの痛みを発させるのだが、 当のターゲットには通じなかったことはまた別の話である。 グリッドは空を見上げ、ある1点に目を移す。 どうみても自然に発したものではない多くの線状の雲が、赤い空を横切るように伸びている。 少なくとも、グリッドの才覚からすればきな臭さを嗅ぎ取るには十分過ぎたものだった。 ヴェイグの問い掛けを聞いたティトレイは面食らったような顔をして、そのまま沈黙してしまった。 どうやら自分が聖獣の力を行使したときのことを思い出しているらしく、腕を組んでうんうんと唸っている。 否定の声をすぐに上げないあたり、ティトレイにも思い当たる節があるのだろう。 確かに、聖獣の力については先程の情報交換でも話題の端にも上がらなかった。 それほど無意識の存在であり、認識の外にある当たり前のものだったのだ。 腕をほどき、口にくわえていた草を指でいじる。既に噛み過ぎて茎の根元はぼろぼろになっていた。 「確か、聖獣って俺たちがユリスを倒した後、カレギアを離れたんだから……使えないはずだよな?」 「そうだ。だが、現にこうして俺は使えている」 矛盾しながらも、確かに存在する事実。 異世界の人間が多く集まるこの世界には自らのあずかり知らないものや知識も多々あったが、 それでも自分たちの世界に関わることでは話が変わってくる。 「俺はあんな状態だったから、正直気にもしなかった……何でだ? 何で、使えるんだ?」 「分からない。……俺はこの島に来て、1度だけ……シャオルーンの声を聞いたような、気がする」 「シャオルーン? まさか、この世界に聖獣が来てるってのかよ?」 ティトレイの突飛な声にも、ヴェイグは首を横に振るばかりだった。 聞こえたというのも意識が朦朧とした時のことで、今は特に聞こえるわけではない。 理由も分からない上、いくら可能性を考えたところで当人たちから明確な答えを聞けないのでは、それらが推論の域を出ることはなかった。 旅を経るごとにうまく操ってきたからか、聖獣の力をこの世界で初めて意識したのは、 混濁した意識の中、ハロルドの手を止めようとしたときだ。 もっとも、あのときはそのまま気絶してしまったため、詳しく覚えてはいない。 その後イ―フォンの闇の力を使うティトレイと遭遇し、やっと明瞭に聖獣の力の存在を認識した。 違和感――というものがなかったわけではないが、状況の難解さがそんな暇を与えず、何より使わざるを得ない理由ができた。 だからこそ、今まで聖獣の力を使用してきたのだ。 ただの、存在は分かっていても、何故かというその理由にまで意識が向かなかっただけの話。 「でも、ま、理由が分からなくても実際使えるなら、それに越したことはねえんじゃないか? リバウンドもあるみたいだし、聖獣の力なのは本当みたいだ」 そんな自分の思考とは正反対に、あっけらかんとティトレイは朗笑を浮かべて言った。 考えても意味がないとでも主張するかのような結論に、深く考えている自分が馬鹿にされているような感覚に陥った。 「本当に頼ってもいいのか? 考え方によっては、得体の知れない……」 「おいおい、その得体の知れない力で俺を元に戻そうとしたヴェイグさんが言うなよ」 思わず押し黙ってしまったヴェイグはそのまま言葉を引っ込めるしかなかった。 確かに、使えるものは使っていった方がいいというティトレイの言説は、こんな状況下に放り込まれたこともあり、理にかなっている。 それでもヴェイグは、問題が解決したからこそ、歯と歯の間に何かが挟まったときのような不良感を覚えていた。 かつてジューダスと共に行動していたときもフォルスのことを聞かれ、更には首輪の解除方法にある程度の目処をつけたようだった。 考えたこともなかったが、もしかしたら自分たちの力は、自分たちが思っている以上に謎を秘めているのかもしれない。 「……けど、そうだな。おっさんは俺の力にかなり興味あったみたいだし。そんなに他の世界のとは違えのか……?」 ヴェイグの考えを読んだように、ティトレイが独り言をこぼす。 「あー、考えても分かりゃしねえ。こういうのは頭いい奴の仕事だよな!」 ふんぞり返って頭を組んだティトレイに、ヴェイグは「そうだな」と一言答えた。 頭のいい奴、と考えキールを連想した。 そうして西の状況と、自分を中央に向かうよう指示したキールに少しの不安を覚えた。 今頃あっちはどうなっているのか、まさか全員クレスに殺されてしまっているのではないか――そんな根拠のない不安ばかりが募った。 本当は、カイルを待つためとはいえここに残っているべきではないのだ。 ティトレイを引き連れて西に向かった方が、ロイドたちの手助けになる。 それにティトレイはクレスと組んでいたのだから、もしかしたら説得も可能かもしれない。 (そうだ、その方がよっぽど合理的じゃないか) ――――それでも自分の足は動こうとしなかった。 死体の山から目を逸らしたいのか、それとも仲間たちを信頼しているからなのか。 何にせよ、自分の身体はどうしようもなく不器用だった。 無事に椅子を設置し終えたグリッドたちは、改めて北地区へと向かっていた。メルディを背負い疾走する。 これまで落とし穴に引っ掛かっていないのは、彼の運がなす技か、それとも落ちる前に穴を通り抜けてしまっているからか。 天使化による強化は破壊的と言えるまでの力を引き出させていたが、肝心の背中の羽はただのお飾りなのか、 風にそよいで悠然としているだけだ。 背中のメルディが触れてみても後天性の羽であるため、簡単にすり抜けてしまう。 「グリッドのはロイドが翼よりちっちゃいんだな」 「甘いなメルディ。俺の翼は目に見えないところにあるんだぜ!」 「ううん、グリッドのはこのサイズな。でも、それでもグリッドは飛べてるよ」 あっさりと言われてしまったグリッドは頭をうなだらせ、本来感じないはずの重さがぐっと増したように感じたが、めげずに走り続けた。 住宅街を駆け、いくつかの倒壊した家屋が現れ始める。 そして村というくくりが終わりそうになり、軒のラインが切れた頃、目の前に見えてきたのは石に腰かける2人の青年―――― 「やあっとグリッド便終了だ。お届け物はモノじゃなく言葉、ってな」 とはいえただの言伝の上にモノもあるんだが、と付け足してから、グリッドは大きく息を吸い込む。 そして思いっきり叫んだ。 不安の影に囚われていた中、グリッドたちの訪問はヴェイグにとって僥倖だった。 腕が1本なくなっていることに驚きもしたが、当人はけろっとした表情で 「あー腕持ってきてヴェイグにくっつけてもらえばよかったかなー」などとのたまうものだから、ヴェイグの心配はあっけなく吹き飛ばされた。 それに、ティトレイが普通に行動を共にしていることに驚いたのは相手も同じだった。 北地区でのことを話すと、グリッドは笑ってうんうんと頷いていた。 そして、その笑顔ががらっと変わって、西ではロイドが死んだことがヴェイグ達に伝えられた。 ロイドたちを見捨ててきたも同然であるヴェイグは、複雑な思いを抱えながらも何も言うことが出来なかった。 自分を支えてくれた仲間の1人だというのに、最期に立ち会うこともなかった。得も言われぬ罪悪感が心中を漂う。 「そんな顔をするんじゃない。ここに来たのはお前の意思だろう。なら、悲しみはしても後悔はするんじゃない」 そう言うグリッドの表情も、眉間に皺が寄せられ、ぐしゃぐしゃになりかけていた。 少なくとも、遠くから守れなかったことよりも、その場にいて仲間を目の前で殺される方が辛い。 その発想に至ってヴェイグは申し訳なさげに俯いた。 「クレス……やっぱりあいつ……」 「クレスは俺とキールのユニゾンアタックで撃破した。……と、ティトレイだったか。1つ話がある」 手早くメルディを降ろし、つかつかと近寄るグリッド。ティトレイが返事の音を作る前に事は終わっていた。 一閃。 まさにそう例えてもおかしくはない左からのストレートが、ごうを音を立ててティトレイの頬をえぐっていた。 不意の攻撃と殴打自体の速さも相まって、ティトレイは受け身を取ることもなく地に転がった。 ヴェイグとメルディも多少なりとも驚いた顔をしていた――とはいえヴェイグはユニゾンアタックについて聞いた時点で驚いていた――が、 何よりも驚いているのはティトレイ自身だった。 「昨日はどうもお世話になりました。あんな超弩級の砲撃に、毒まで喰らわせおって!!」 「い、いや秘奥義はともかく、毒はおっさんがしたことだろ!?」 反論する前にもう一撃。半身を起こしたところで今度は裏拳で反対側に喰らい、両側とも赤くなってしまっている。 一方的な加虐にティトレイも怒気をはらんだ目つきでグリッドを見るが、当人は気にも留めず、目を閉じて鼻から息をもらした。 「……今のはジェイとヴェイグの分だ。2人でこの一発でおしまい」 噛みつかんとまでに膨れ上がっていた怒気が、すっと冷めていったようにヴェイグは思えた。 この言葉に驚愕したのは何もティトレイだけではなく、ヴェイグもその1人だった。 ジェイを死なせてしまったのは誤殺した自分が原因だと考えていたのに、グリッドは遠慮もなくティトレイを殴った。 確かにあの状況を招いたのはティトレイだ。だが、実際問題歩いていただけで、何の手も出していない。 むしろ殺されようとする側だったのだ。ヴェイグからしたら、何故こう非を咎められるのか、訳が分からなかった。 ――いや、もしかしたら。ヴェイグの中で1つの光景が蘇る。 グリッドは、ジェイが死ぬ状況を招いたことを責めているのではないのかもしれない。 それなら単に「ジェイの分」と、自分を含める必要はないのだから。 ティトレイは何も言わず沈黙していたが、殴られた頬に触れた後、ぱんぱんと両手で2回叩いた。 心なしか、左頬の方が赤く腫れている。 「分かってるぜ。俺はもう、嘘はつかないって決めてんだ」 それを聞いて、にやりとグリッドの口角が上がる。 「我らが新生・漆黒の翼はバトルロワイアルに抗う者なら誰でも入団可能である。というわけで! お前は今日から一員だ」 「勝手に決めんなよ! ……でも漆黒の翼ってあれだろ、ギンナルたちのだろ? なら結構楽しそうかもな」 あれを楽しそうと思う感覚がどうかと思うが、とヴェイグは呆れそうにもなったが、それでも気持ちは重苦しいものではなかった。 グリッドのこの才能は以前からもあったような気がするが、どこか違うように思えると、ヴェイグはリーダーを見ながら耽っていた。 「で、お前は何しに来たんだよ?」 「おお、そうだった。収集命令だ、キールが中央に集まれと」 その言葉を聞いても2人の表情はいまいちぱっとしなかった。 カイルのことを既に聞いていたグリッドは片腕でぽりぽりと頭をかいて、弱った様子を見せる。 「まあ、カイルも連れてこいと言っていたからな。分かった、だが必ず5分前には広場に来い。それともう1つ、条件がある」 グリッドはサックから、キールに渡された首輪とメモを取り出す。何も言わず、ヴェイグたちの方へと差し出す。 「……これを、どうしろと?」 「知らん。キールから言われたんだ。詳しくはそれを見ろ。あと、できればお前よりティトレイの方がいいとも言っていた」 「はあ? 何で俺が?」 「だから知らん」 鼻息を荒くし何故自信満々に語るグリッドに、ヴェイグは頭痛を起こしそうになったが、 とりあえず首輪を1つ受け取るとそれはティトレイに渡し、言われた通りにメモを見た。 内容はフォルスに関する記述ばかりで、大抵が以前キールに話したことばかりだ。 首輪と一緒に渡されたものの、首輪の構造などが書かれたメモは一切ない。 少なくとも、キールは首輪の解除方法を求めているわけではないのだろう。 メモの端々に書かれている追記にも、他系統の術との比較など、フォルスの特異性に関しての記述が目立つ。 (ティトレイも以前、ミトスの指示でフォルスによる首輪の爆破を行ったと言っていた。 キールもミトスも、あのデミテルも……やはり、フォルスは何か他とは違うのか……?) 沈黙したままヴェイグは一考する。 先程まで頭のいい人間の仕事だと思っていたことが、その人間から逆に返し手を食らってしまった。 ただ、わざわざあのキールが頼むということは、やはりキールだけでは出来ないことなのだ。 となると、やはり自分たちにしかないものを必要としているということなのか。 北の空に目を移すと、なおも光は絶えていない。むしろ、更に激しさを増しているようだ。 発生した雲や、明らかに一部帯だけにかかっている靄。 カイルとミトスは、互いの全力を出し合ってぶつかっているのだろう。 そうそう終わるものではないと、嬉しいのか悲しいのか分からずにそう思った。 「恐らく、これで俺たちの力を試せということなんだろう。引き受ける」 「そうか、助かる。じゃあ俺たちは……」 「いや、待て」 立ち去ろうとするグリッドを引き止めるが、ヴェイグの視線は彼ではなく、 その後ろで1人クィッキーの傷を看ているメルディへと向けられていた。 ぼんやりと青い毛並みを撫でていた彼女は、その視線に気づいたのか、ゆっくりと陰った瞳を3人の方へと向けた。 ヴェイグの隣にいたティトレイが、少しだけ瞳を大きくする。そのことに気がついたのは誰もいなかった。 「メルディ、こっちに来てほしい」 不思議そうな面持ちをしながら、メルディはクィッキーを肩に乗せて近寄る。 1歩分の距離を空けて立ち止まったが、ヴェイグは小さく手招きをして更に呼んだ。 手を伸ばせば簡単に顔に触れられる距離にまでなり、ヴェイグはティトレイの方に振り向く。 そして、キールに渡されたメモの一文を指差して示す。 『メルディの首輪をフォルスでコーティングしてほしい。変な気は起こすな。下手なことはするな。 ヴェイグなら外側を氷で、ティトレイの場合はヴェイグと同程度でいい。それ以上のことをしたら殺す』 大変物騒な内容である。自分が離れている間に一体何があったのかと疑いたくもなる内容である。 そこまで言うなら頼まなければいいのに、とさえ思ってしまう。 ヴェイグはティトレイの方を見たまま動かない。 「……俺の方がいいって、そういうことかよ。ヴェイグじゃ凍傷とかしちまいそうだもんな」 重たい息をついて、メルディの方へと向き直るティトレイ。 曇り切ってしまった深紫色の瞳は、彼には見るに堪えないものだった。 彼女の表情は鏡に見立てたガラスのようで、いつか見た自分の表情と全く瓜二つだったのだ。 かつての姿を想起させる彼女の姿に、こんな顔をしていたのだと胸が苦しくなる。 何よりも――何故そうなったのかまでは分からずとも――彼女は深い絶望を抱いているのだと分かるのだ。 それだけではあるが、それがどんなに辛く苦しいのかは、ティトレイも分かっている。 「……あんた、俺に似てるな」 聞こえるか聞こえないかの境目くらいの声量でティトレイは言う。 「大丈夫、諦めさえしなければ、絶対何とかなる」 それでも、届かないと思うのは何故なのか。 当然だ、その人にはその人の問題があり、それは自ら乗り越えていかなければならないのだから。 自分にできるのはせめてもの励ましくらいだ。きっと、届きはしないだろう。彼女の目は変わらない。 だが、言うことにこそ意味がある。自分がその証人だと、ティトレイは分かっていた。 フォルスを発動させ、首輪に蔓を巻きつけていく。おまけにティートレーイの花を一輪つけてあげた。 少し息苦しいのではないか、と思ったが、それはメルディの表情には表れなくてうかがい知れなかった。 「こんなもんでいいのか? イマイチよく分かんねえんだけど」 確かに、これが一体どんな影響を及ぼすのか、正直3人には皆目見当もつかなかった。 しかしこれ以上すれば逆にこちらがキールに首を飛ばされてしまう。 ましてや、首輪に手を出すというのは、普通に考えれば度胸のいることなのだ。 下手すれば爆発しかねないものを、何故わざわざ空の首輪ではなくメルディの首輪で確かめたのか、ヴェイグには疑問を禁じ得なかった。 「まあ、これで用件はおしまいだな。再度通告だが、時間までには必ず来い。それ以上は保障できんとのこと」 「……分かっている」 返事を受け取ると、グリッドは再度メルディをおぶり、中央に向かって走り出した。 最後に見たグリッドの表情は、陰りのない不敵な笑顔――だったように思う。 すぐに小さくなっていく後ろ姿を見送りながら、ヴェイグは背に広がる空の向こうのことを考えた。 果たして、時間通りに戻ってくることは出来るのだろうか、と。 さっきまで手に持っていた首輪が、形もないのに急に手の中にあるような気がしてきて、ずしりと更に重くなった。 密接に肌とくっつきそのまま身体の一部となって剥がれなくなってしまうようだった。 時間と、たった1つしかない掛け替えのない代償を自分に伝えてきている。 周りに漂う時間がどんどん遅延していき、手袋の中でゆっくりと汗が流れる。 思考と自分という存在だけが、やけにくっきりと浮かび上がっている。 自分の中で、どこか「大丈夫」だという気持ちがあった。 だが、突如突きつけられた時間という現実は、周りの空を冷たく、渇いたものにしていった。 そして何よりも、犯した罪はなおも自分にこびり付いているのだと、嘲り笑っていった。 グリッドたちの帰っていく最後の姿が目に映る。 今の自分の表情はあいつとは全く違うのだろう、とヴェイグは思った。 カイルは本当に戻ってこれるのか――――自分は、戻れるのだろうか。 遠くから聞こえた爆発音に、ヴェイグは我に返ったように身体を震わせた。 音がした方向を見ると、ティトレイが自前の弓を構えており、その前方には地面が焦げ付いたのだろう小さな跡が残っていた。 視線に気づいたのか、ティトレイは振り返ってヴェイグの方を見た。 「ヴェイグ? どうしたんだよ、ぼーっとしちまって」 まだぼんやりとした表情を浮かべていたのか、ティトレイは驚きと心配が混ざったような面持ちだった。 何も言わず焦げ跡の方を見ると、「ああ」と首を振りながら言い、そのまま言葉を続けた。 「早いとこ、これやっちまった方がいいんじゃねえかと思って。カイルたちがいつ帰ってくるか分かんねえんだから。 にしても意外とこれあっけなく爆発するんだな。俺が前やった時はもっと違ったのに――――」 爆発後を指し示しながら説明するティトレイの言葉も、ヴェイグには残骸としてしか頭に残らなかった。 どうしても、先刻の感覚が心身にこびりついて離れない。 昨夜の海岸で首輪を爆発させたときのことを語っていたティトレイも、親友の異変に勘づいたのか、 いつもは快活明瞭な笑顔を珍しく曇らせた。 「……俺、何となくだけどよ、今だけはお前が考えてること分かるよ」 そう呟いて、ティトレイはグリッドたちが消えていった街路の方へ顔を動かした。 姿はもう消えてしまっているが、網膜に焼きついた残像として、後ろ姿と影の幻が道に浮かび上がる。 「多分、俺も同じことを思ったんだ」 ヴェイグは答えはしない。少なくとも、何か言葉を発してしまったら、 この島に来て自分の中で欠けてしまったものはあるのだと、痛烈に感じてしまうから。 ティトレイも言葉を促すようなことはしなかった。欠落は2人とも同じことが言えた。 近くの岩にティトレイは腰かける。再び草を出して、それで口に鍵を掛けるように口内に差し込んだ。 周囲には夕闇と静寂だけが満ちる。それでも、赤い空に浮かぶ戦いの軌跡は消えそうにない。 帰ってこない空の星々、帰っていく後ろ姿、それらを思い浮かべながら、 2人は懐かしい世界の風景に自分の姿を重ねることがどんな意味を持つのか、浮かんでは消える思いを定めようとしていた。 【グリッド 生存確認】 状態:HP15% TP10% プリムラ・ユアンのサック所持 天使化 心臓喪失 自分が失われることへの不安 左脇腹から胸に掛けて中裂傷 右腹部貫通 左太股貫通 右手小指骨折 左右胸部貫通 右腕損失 習得スキル:『通常攻撃三連』『瞬雷剣』『ライトニング』『サンダーブレード』 『スパークウェブ』『衝破爆雷陣』『天翔雷斬撃』『インディグネイション』 所持品:リーダー用漆黒の翼のバッジ 漆黒の輝石 首輪×3 ジェットブーツ ソーサラーリング@雷属性モード リバヴィウス鉱 マジックミスト 漆黒の翼バッジ×5 基本行動方針:バトルロワイアルを否定する。現状ではキールの方策に従う。 第一行動方針:メルディを連れて中央広場に向かう 第二行動方針:キールにヴェイグたちと首輪のことを説明する 現在位置:C3村北地区→中央広場 【メルディ 生存確認】 状態:TP35% 生への失望?(TP最大値が半減。上級術で廃人化?) 神の罪の意識 キールにサインを教わった 首輪フォルス付加状態 所持品:スカウトオーブ・少ない トレカ カードキー ウグイスブエ BCロッド 双眼鏡 漆黒の翼のバッジ クィッキー(戦闘不可) マジカルポーチ ニンジン 基本行動方針:本当の意味で、ロイドが見たものを知る 第一行動方針:グリッドと共に中央広場に戻る 第二行動方針:キールを独りにしない 現在位置:C3村北地区→中央広場 【ティトレイ=クロウ 生存確認】 状態:HP20%(動くまで回復継続中) TP35% リバウンド克服 放送をまともに聞いていない 背部裂傷 不安 所持品:フィートシンボル メンタルバングル バトルブック(半分燃焼) チンクエディア オーガアクス 短弓(腕に装着) 基本行動方針:罪を受け止め生きる 第一行動方針:カイルの帰還を待つ 第二行動方針:ミントの邪魔をさせない 現在位置:C3村北地区 【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】 状態:HP25% TP25% 他人の死への拒絶 リオンのサック所持 刺傷 不安 両腕内出血 背中3箇所裂傷 胸に裂傷 打撲 軽微疲労 左眼失明(眼球破裂、眼窩を布で覆ってます) 胸甲無し 所持品:忍刀桔梗 ミトスの手紙 漆黒の翼のバッジ ナイトメアブーツ ホーリィリング 基本行動方針:罪を受け止め生きる 第一行動方針:カイルの帰還を待つ 第二行動方針:ロイド達の安否が気になる 第三行動方針:カイルに全てを告げる 現在位置:C3村北地区 ※この後、ヴェイグとティトレイは356話のポプラおばさんの話に繋がる形になります。 前 次
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第129話(後編) とある癒し手達の戦場 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 『いくぞ!』 合図と共に俺とルシオが同時に動き出す。 そんな俺には金髪が、ルシオの方には髪が長い方の女が張り付いた。 今こいつを相手してやる時間は無い。後ろからさっきの様な魔法が飛んできたら厄介だからだ。 だが、幸いな事に戦場は俺向きになってくれていた。狭い路地ではなくなり開けた空間になっている。 今までは真正面から突っ込まざるを得ず、自慢の俊足を生かせなかったが今は違う。 360度あらゆる角度から標的に迫れる。それに刀身ではなく柄を握れる様になったのがでかい。 さっきまでは思いっきり握る事が出来なかった為、競り合った時に負けていたが、しっかり握れる様になった今の俺に力押しですら負ける要素は無い。 正面から突っ込むと見せかけて瞬時に相手の後ろを取る。俺達エインフェリアが持つ戦技の一つ『ダーク』だ。 標的がこちらに振り返るがもう遅い。 下段に構えた右手で一閃。ここで相手が超反応を見せる。手にした短刀で受け止めずに身を捻りこちらの切っ先をかわす。 斬撃の軌道をひるがえして、真一文字の横薙ぎに切り替えた。更にワンテンポ遅れて左手を振り下ろす。 尚もこの金髪は足掻く。 身体を沈ませ横薙ぎを回避。更には短刀で左手からの斬撃も防がれ、同時に奴からは足払いが仕掛けられた。 その足払いを跳躍と共に飛び越え無防備を晒す顔面に膝蹴りを叩き込む。 だが、無理な体勢からの反撃だった故に、思う様に力を込める事が出来なかった。 即座に体勢を整えた男から獅子状の闘気が放たれた。 まだ空中にいる俺は回避が出来ない。直撃だけ間逃れる様に剣を交差させる。 吹き飛ばされる俺に追撃が迫る。先ほど飛ばしてきた地を這う斬撃だ。 少々厄介だが、俺にだってこの程度の芸当は出来る。左右の剣を振り『スプラッシュ』を飛ばす。 一撃目で相手の剣圧を打ち消し、もう一発が金髪目掛けて飛んでいく。 今はこれでいい。 何度も言うがこの金髪を今相手にしてる時間は無い。こいつの足止めさえ出来ればそれでいい。 その間にあの魔法使いを殺しにいける。 丁度一直線に並ぶ様な構図の真ん中に俺がいる。最早金髪の位置からでは俺を阻めまい。 一気に間合いを詰めようと駆け抜ける俺に迎撃の構えを見せる女。 だが、そんな中思いも寄らない人間が視界の端に移った。 ミランダである。 丁度崩れたブロック塀の一角。こいつらが出てきたのと同じ民家からあの女が何度も後ろを振り返りながら出てきたのだ。 (あの女っ! いなくなったと思ったらこんな所に! それよりも不味い。 あの家から出てきたという事はこいつらと組んだという事か…。傷を癒す力をこいつらに使われたらジリ貧になる) 優先目標を変更。まずはミランダだ、位置的にも近い。 剣の間合いへと迫る俺に漸く気付いたミランダが驚愕の表情を浮かべる。 身に迫る恐怖に体を強張らせ硬直しているミランダに容赦なく剣を叩きつける。 だが、 「ミランダっ!」 奴の名を叫びながら魔法使いが身を挺してミランダを庇った。 ミランダを押し退け、入れ替わる様に俺の剣閃をその身に浴びる女から血飛沫が上がった。 (即死とはいかんが十分だ。このまま止めを刺してやる) 再度剣を振るおうと振りかぶった俺の目の前の空間が眩い光を放った。 その光の中から金髪の剣士が飛び出してきた。 (こいつは転移が使えるんだったな…) 俺の剣閃を受け止めたこいつが凄まじい形相で睨み付けてきた。 俺はそんな目の前のこいつに嘲笑混じりに言い放った。 「今度は守れなかったみたいだな」 「何だとっ!?」 怒れる瞳で俺を射抜いてくるが、それは純然たる事実であった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 暖かな液体が私の身体を濡らしていく。 白を基調とした修道服を染め上げていく赤が、その液体の正体を物語っていた。 (これは…血?) そう、これは目の前に崩れ落ちた私と同い年位の少女の体から今も尚噴き出している。 この場にいる全ての者達を吹き飛ばす爆弾を仕掛けた私の事を、その身を挺して庇った少女が流している。 「ミラ…ンダ…逃…げて…」 尚もこの少女からは私の身を案じる言葉が投げかけられる。 (どうして? まだ会って1時間も経っていないのに…どうしてここまで出来るの? 交わした言葉は一言二言だというのに…) 震える手で抱きかかえてる身体が物語っている。今すぐにでも傷を塞がなければこの子は助からないと。 その光景を眺め呆然としている私に、私の中の一人が語りかけた。 放っておいて早く逃げましょう。どうせ爆弾でここの皆さんは死ぬのです。例え爆弾で死ななかったとしても、いずれは死ぬのです。 神の使いはこの島で生き残れるのは一人だけだとおっしゃいました。何故ならそれが神の御意志だから。 仮にこの方を今ここで癒してもルプス門の時と同様に、再び死の恐怖に晒す事になるだけ。 だから逃げよう? その言葉に耳を傾けつつも私は動けないでいた。何故なら私の手の中にいる少女の身体が懸命に生きようとしているから。 全ての生きとし生けるものに備わっている生存本能が、彼女を延命させようと健気に働いている。 そう、この子は救いを求めている。敬虔なオラシオン教団の修道女であるこの私の目の前で救いを求めている。 それも私を庇ってこんな目に遭ってしまったこの子が。 そんな彼女を救わずして何が癒しと言えるのでしょうか、何が安らぎと言えるでしょうか? 目の前で救いを求めている少女を救えずして、この世の全てに癒しと安らぎをもたらす事が出来るの? そんな事出来る訳がありません。 「神よお許し下さい…。例え、この行為が神の御意志に背く様な罪深い行いだとしても。私はこの方を救わずにはいられないのです」 神に許しを請いながら、今まで何千何万回と繰り返してきた祈りの動作に移る。それと共に傷を癒していく聖なる輝きが彼女を照らしだした。 奇跡の光を浴びる傷口が、今まで治してきたどんな傷よりも早く治癒していく。 「ミランダ…? 貴方…その力…」 (まだ喋ってはいけません。じっとなさってて下さい) 祈りを中断する訳にもいかず、変わりに目で彼女に語りかける。 「危ない…から…早く逃げ…」 (絶対に貴方を癒してみせます。だからお願いです。じっとしてて下さい!) もう少し。後もう少しなのです。体の奥まで切り裂いたこの傷をもう少しで塞ぐ事が出来ます。 そうすればこの子を救う事が出来る。なのにどうして? 神よこれが貴方に背いた私に与えられる罰だというのですか? 目の前。私達を見下ろしている人影。それは先程までクレスが足止めをしていた洵。 刀身を赤く染め上げる血を滴らせながら彼は剣を振り上げている。 少し離れた位置で地に伏していたクレスが、こちらに駆けつけようとしているけれど間に合いそうにない。 だけれども、まだこの祈りを中断する事は出来ません。塞ぎきれていない傷が体の中で内出血でも起こしてしまえば命に関わります。 逃げなさい!と私の生存本能が告げている。祈りを止め直ぐにでも逃げろと大声を上げている。 確かにそうすれば私は助かるでしょう。この子を置いて逃げ出せば、まず洵は彼女を殺すでしょう。 その間にクレスが駆けつける事が出来ます。その後は彼に任せておけば私は助る。 だけれど、例えそうだとしても、私は祈る事を止めない。止められるはずがない。 命に関わる様な傷は後もう少しで塞げる。だから止める訳にはいかないんです。 「結局は邪魔な存在になったかミランダ…」 冷酷な眼差しを向ける洵が私に向かって呟いた。 避ける術は私にはない。 振り下ろされる剣をただ黙って見つめる事しか出来ない。 刹那。閃光が糸状に走った。 いつの間にか剣を振りきっていた洵。 それをじっと眺めていた私の視界がぐらりと揺らいだ。 癒しの光を浴びせていた少女の胸が次第に近付いていく光景を見て、漸く私は自分の首が切り落とされた事を悟った。 意識を失う寸前に見た彼女の傷口は完全に消えていた。その事実が死に逝く私にとって唯一の救いだった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「ミランダー!!」 彼女の名前を叫ぶクレスの声。 傷口はもう痛まない。次第にはっきりしていく視界と意識の中、目の前の光景に唖然とした。 ミランダの服を着た体がそこにはあった。但し頭があるべき場所にない。その頭部があるのは横たわる私の胸の上。 「いやあああぁぁぁぁぁっ!」 思わず命を賭して私の傷を治してくれた相手だという事も忘れてそれを払い除けてしまう。 地面を転がる頭が私を見つめる様に止まった。 「どうしてこんな酷い事をするの? 私は貴方を助けてあげたのに」 そう言われた気がした。 「違う…、違うの…」 とてつもない罪の意識が私の体を地面に縫い止める。ぺたりと座り込む格好で呆然とミランダの頭を見つめていた。 心の中では弁解の様な謝罪が繰り返されている。直ぐ近くに迫る危険にさえ気付かずに。 「傷が治ったか…。まぁいい。ならばもう一度斬るだけだ」 そう呟いた男の声を聞いてそちらを振り向いた。 私が見上げる男は剣を振り上げている。 (もう…いいよ…) その姿を見て私は純粋にそう思った。命の恩人にあんな仕打ちをする醜い自分なんて生きている価値はない。 それにクロードやアシュトンの事も考えたくなかった。いっその事殺してもらった方が楽になれる。 そう思って自らの運命を受け入れる様に瞳を閉じた。 「その子から離れろぉっ!」 叫ぶ声。閉じた目を開くと目の前には輝く金髪と赤いバンダナを付けた男の子が立っていた。 一瞬クロードかと思ったけど違った。クレスが私を守る様に立ちはだかってくれている。 でも、もういいのに…。私の事なんて守らなくていいから… 「立つんだっ! レナッ!! そこから逃げて! 早くっ!」 相手と鍔迫り合いを行うクレスが、尚も私に向かって叫ぶ。 だからもういいって言ってるじゃない。それにね、つらいの…。もう何も考えたくない。 きっと生きていても私は何もする事が出来ない。 「僕達には君の力が必要なんだ! だから立ち上がって! 生きてくれ! レナッ!!」 (必要? 私の力が? そうか…さっきマリアが言ってた。私の力は首輪を外すのに必要だって。 だから勝手に死ぬ事すら許さないって。あるのかな? 私にしか出来ない事…) そこでふと思い当たる事があった。鷹野神社でレオンが紙に書いていた物。 死んで間もない人の首輪に付いた結晶体。 丁度私の目の前に…。 そこまで考えて私は身震いをした。 (そんな恐ろしい事出来ない。これ以上ミランダの遺体に何かするなんて。それは命の恩人にする様な真似じゃない) でも、これを調べれば首輪を外せるかもしれない。 多くの人を救えるかもしれない。殺し合いだって止められるかもしれない。 従わなければ首輪を爆破される。そう思って殺し合いをしている人だっているかも…。 私の気持ちは揺れ始めていた。ミランダの遺体を辱める様な行いはしたくない。 だけど、その先の無数に広がるもしもが、私の体を後押しする。 出来ない…。いやだ…。やりたくない…。 否定的な言葉が胸中を駆け巡っているのに、とうとう立ち上がってしまった。 ゆっくりと歩み寄りミランダの頭を見つめる。 「来ないでっ! 何をするつもりなのっ!? もうこれ以上私に酷い事しないでっ!!」 虚空を見つめるその瞳が私に向かって叫んでいた。 その言葉の一つ一つに胸の奥をえぐられるような痛みを覚えつつ、私は決心して未だに温もりが残るミランダの頭を拾い上げた。 「ふざけるなっ! これが心のある人間のする事なのかっ!! お前なんて助けるんじゃなかった! 呪ってやる! 絶対に呪ってやるっ!!」 怨嗟の声を聞きながら指を首輪にかける。 (恨むなら恨んで下さい。それでも…それでもやっぱり私は…) 「救いたいのっ! 助けを求めてる人達をっ! 一人でも多く! だから、だから…」 思い切って引っ掛けていた指を引く。するりと首輪が抜けて私の手の平に乗っていた。 そっとミランダの頭を身体の所に持っていってから首輪の内側、結晶体やその他レオンが書き込んでいた不明点を解き明かすべく指を這わしていく。 頭に叩き込んだ図面を頼りに指を動かし、結晶体が放つ紋章力の質や流れ等を読み取っていく。 どんどん埋まっていく図面の中の赤い文字。両の手を血で真っ赤に染めながらも私は作業を進めていった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「しっかし、どこ行っちゃったんだろ? ミランダ」 最後の信管を抜き取ってから結局私は居間に戻ってマリアの言ってた銃を作っていた。 最後のグリップ部分のネジを締めた丁度その時。 バンッ!と力任せにこの家のドアが開かれた。 (敵!?) 咄嗟に出来たての銃と『マグナムパンチ』のコントローラーを握り締め立ち上がる。 (居間の入り口は一つだけ…。来るなら来なさい! このプリシス様がぶっ飛ばしてやる) 「プリシスっ!! 何か書くのを貸して!!」 居間に飛び込んできたのはレナだった。 服と両手は血だらけで、その右手には血まみれの首輪が握られていた。 「ちょっ! レナ!? どうしたのさ? それ」 「いいから! それよりも早く書く物を!!」 レナの様子が尋常ではない。 取り敢えず言われた通り紙とペンを手渡す。 するとレナは何かに取り憑かれた様に紙に何かを書き込んで行く。 至る所に血がこびり付いたりしているが、それでも構わず手を動かしていった。 横からそれを覗いた私は声を失った。 (これって首輪の結晶体の構造式? それにこっちは回路に流れる紋章力の数式? まさか…) レナが持ってきた首輪を見つめる。 それに付着している血液は随分と真新しい。 (誰かが…死んだの? 誰? マリア? クレス? それともミランダ?) 居ても立ってもいられなくなってきた。外では仲間達が戦っている。 (私も…私も力を貸さなくっちゃ!) 「レナ! その作業を続けてて! 私みんなを助けてくる!!」 「待ってプリシス! もう終わったわ。貴方は一刻も早くあれを完成させて! マリアには私が代わりにそれを届けるから。プリシスも自分にしか出来ない事に専念して」 私にしか出来ない事…、それは当然首輪の解除装置の作成だ。 ここまで詳細がわかれば試作品の解除ツールに数式を打ち込むだけで完成するはず。 私はレナの言葉にうなずき返し、完成したばかりの『サイキックガン』をレナに手渡した。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ (くっ、なんて事なの?) なんとか茶髪の剣士の振るう剣を、弾が切れてただの鈍器と化したライフルで打ち払う。 少し前に背後からクレスとそれに遅れてレナの絶叫が聞こえてきた。 ミランダが彼らの目の前で侍男に殺されてしまったのだ。 (私が指揮を取る以上、不要な犠牲なんて絶対に出させない! なんて言った結果がこのザマ…) 「痛っ」 今は自分の不甲斐無さ嘆いている場合じゃない。 私がやられてしまったら、戦局がもっと悪くなってしまう。 振るわれる攻撃を砲身を振るって逸らしていく。 なんとか致命傷は負わないでいるけれど、完全に防戦一方になっている。 剣のリーチを掻い潜って私の蹴りの間合いまで踏み入る事が出来ない。 普段は懐に入られてしまった時の自衛用に繰り出すため身に付けた体術だ。相手を攻め崩す為のものじゃない。 苦し紛れにライフルを振り回しても剣術の心得がある相手に通用する訳も無い。 (プリシスまだなの? これ以上は持たせられないわ) 「これでも…」 目の前の剣士が刀身に電撃を纏わせている。 (まずい、避けきれない!) 「食らえ!」 「っああああぁぁぁっ!」 私の体を高圧の電流が駆け抜けた。しかもその衝撃で思わず武器を取り落としてしまう。 迫る追撃を痺れて自由の利かない体でただ眺めているしかなかった。 (こんな所で…。私はまだやれるのにっ!) 絶望的な死を前にしても尚私は尽きる事のない闘争心をむき出しにしている。 (普通だったら悲鳴の一つでも上げる所なんでしょうけど、良かったわ。そんなみっともない真似をせずに済んだみたいね) 逆袈裟に斬り付けられる斬撃。もう回避も間に合わない。 一瞬で私の体は断ち切られ両断されてしまうだろう。 その運命を受け入れようと硬く目を閉じた。だが、いつまでたっても構えていた瞬間が訪れない。 恐る恐る目を開けると、そこには紋章術で作り出した障壁で私の事を守っているレナがいた。 「自分のやるべき事をやれば勝てるって言ったのはマリアでしょ? そう簡単に諦めないでっ!」 身体に自由が戻っている。どうやら駆けつける一瞬前に浄化の紋章術もかけていてくれたのだろう。 そんな私にレナが目で合図をよこす。彼女のミニスカートの右ポケット。そこからフェイズガンのグリップが飛び出していた。 即座にグリップに手を伸ばし彼女のポケットから取り出す。手に馴染むこの感じ。プリシスはばっちり仕事をこなしてくれたみたいだ。 (だったら、私も私の役目を果たさないとね!) 障壁に叩きつけられている刀身目掛けて発砲。光弾を受けた刀身ごと茶髪の剣士が後方へと吹っ飛んでいった。 (威力も申し分無し。これならいけるわ!) 【F-01/早朝】 【クレス・アルベイン】[MP残量:40%] [状態:体の至る所に掠めた程度の切り傷] [装備:護身刀“竜穿”@SO3、ポイズンチェック] [道具:カラーバット@沖木島] [行動方針:皆を救うためにルシファーを倒してゲームを終了させる] [思考1:仲間を守る(特にマリアを)] [思考2:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)の対処] [思考3:チェスターを説得する] [思考4:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つ] [思考5:次の放送後に鎌石村方面に向かう] [現在位置:平瀬村の民家B外 『スターフレア』でほぼ更地になった一帯] ※プリシス達の持つ首輪の情報と鷹野神社の台座の情報を聞きました。 【マリア・トレイター】[MP残量:85%] [状態:電撃による軽い火傷 右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘にやや難有] [装備:サイキックガン(フェイズガンの形に改造):エネルギー残量〔10〕[90/100]@SO2] [道具:荷物一式] [行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる] [思考1:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)の対処] [思考2:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つが、正直期待はしていない] [思考3:次の放送後に鎌石村方面に向かう] [思考4:戦闘終了後ブレアを確保したい] [現在位置:平瀬村の民家B外 『スターフレア』で被害を受けていない一角(道幅が狭い)] ※クレスに対し、絶大な信頼をおいています。 ※高い確率でブレアは偽者だと考えています。 ※プリシス達の持つ首輪の情報と鷹野神社の台座の情報を聞きました。 ※マリアの考察 自分たちはFD世界から観測できるエターナルスフィアではなく、 別の平行世界の(ED空間から独立した)エターナルスフィアに存在している。 ルシファーはエターナルスフィアそのものになった(ブレアの言葉から)。 そのため、万物を実現する力を手に入れた ルシファーは本来のFD空間におらず、ES内に自分が創造した仮想のFD空間に存在している。 ルシファーはエターナルスフィアと融合したことに気付いていない。 ルシファーの居場所さえ特定すれば、フェイト、マリア、ソフィアの能力は重要ではないと考えています。 【レナ・ランフォード】[MP残量:25%] [状態:仲間達の死に対する悲しみ(ただし、仲間達のためにも立ち止まったりはしないという意思はある)、 精神的疲労極大、ミランダが死んだ事に対するショック、その後首輪を手に入れるため彼女に行った仕打ちに対する罪悪感] [装備:魔眼のピアス(左耳)@RS] [道具:首輪、荷物一式] [行動方針:多くの人と協力しこの島から脱出をする。ルシファーを倒す] [思考1:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)の対処] [思考2:次の放送後に鎌石村方面に向かう] [思考3:レオンの掲示した物(結晶体*4、結晶体の起動キー)を探す] [思考4:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考5:アシュトンを説得したい] [思考6:エルネストに会ったらピアス(魔眼のピアス)を渡し、何があったかを話す] 【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%] [状態:アシュトンがゲームに乗った事に対するショック(また更に大きく)、クロードがゲームに乗った事に対する(ry、ボーマンが(ry] [装備:マグナムパンチ@SO2、盗賊てぶくろ@SO2] [道具:無人君制御用端末@SO2?、ドレメラ工具セット@SO3、解体した首輪の部品(爆薬を消費。結晶体は鷹野神社の台座に嵌まっています)、 メモに書いた首輪の図面、結晶体について分析したメモ荷物一式] [行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを倒す] [思考1:首輪を解除する装置を作成する] [思考2:次の放送後に鎌石村方面に向かう] [思考3:レオンの掲示した物(結晶体*4、結晶体の起動キー)を探す] [思考4:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考5:クラースという人物も考古学の知識がありそうなので優先して探してみる] [備考1:レナが解明した結晶体の内容によって制御ユニットをハッキングする装置はほぼ完成(後はプログラムのソースに数値を打ち込むだけ)] 【洵】[MP残量:10%] [状態:手の平に切り傷 電撃による軽い火傷 全身に打撲と裂傷 肉体、精神的疲労大] [装備:ダマスクスソード@TOP,アービトレイター@RS] [道具:コミュニケーター@SO3,アナライズボール,@RS,スターオーシャンBS@現実世界,荷物一式×2] [行動方針:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする] [思考1:金髪剣士達を倒す(まだ増援が出てくるかもしれないと警戒はしている)] [思考2:ルシオ、ブレアを利用し、殺し合いを有利に進める(但しブレアは完全には信用しない)] [思考3:他の事は後で考える] [備考2:ブレアの荷物一式は洵が持っています] [現在位置:平瀬村の民家B外 『スターフレア』でほぼ更地になった一帯] 【ルシオ】[MP残量:5%] [状態:身体の何箇所かに軽い打撲と裂傷 肉体、精神的疲労大] [装備:アービトレイター@RS] [道具:マジカルカメラ(マジカルフィルム付き)@SO2 コミュニケーター, 10フォル@SOシリーズ,ファルシオン@VP2,空き瓶@RS,グーングニル3@TOP 拡声器,スタンガン,ボーリング玉@現実世界,韋駄天×1@SO2,首輪,荷物一式×4] [行動方針:レナスを……蘇らせる] [思考1:青髪女達に対処(まだ増援が出てくるかもしれないと警戒はしている)] [思考2:洵と協力し、殺し合いを有利に進める] [思考3:ブレアから情報を得る] [思考4:他の事は後で考える] [備考1:ロキの荷物を回収しました] 【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%] [状態:気絶中 腹部の打撲 顔や手足に軽いすり傷] [装備:無し] [道具:無し] [行動方針:参加者に出来る限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい] [思考1:???] [備考1:ロキが死んだ事は知りません] パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔0/100〕@SO3 セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔0/100〕@SO2 万能包丁@SO2がそれぞれ平瀬村の民家B外 『スターフレア』で被害を受けていない一角(道幅が狭い)に落ちています。 【ミランダ・ニーム死亡】 【残り17人+α】 第129話(中編)← 戻る →第130話 前へ キャラ追跡表 次へ 第129話(中編) クレス 第131話 第129話(中編) レナ 第131話 第129話(中編) プリシス 第131話 第129話(中編) マリア 第131話 第129話(中編) ミランダ ― 第129話(中編) 洵 第131話 第129話(中編) ルシオ 第131話 第129話(中編) IMITATIVEブレア 第131話