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ラーズアングリフ 機体名 ラーズアングリフ 全長 20.6m 重量 105.2t 主武装 シザースナイフ このナイフ、只のナイフじゃあない。「シザース」ナイフだ。なんとナイフが二本くっついてハサミ状になっているのだ!でもGBAじゃ分かんないよ。ちなみに唯一のP兵器。 マトリクスミサイル 推進力を持った大型の入れ物に小型のミサイルを詰め込んだ物。肩部のシールドのハッチから発射される。Aでは射程3~6と穴がある。弾数4、一回の戦闘で二発ずつ撃つので八発所持してる……ハズ。 リニアミサイルランチャー 携行のミサイルランチャー。穴四つの回転砲頭からミサイルを連発できる。Aでは射程1~5、弾数10で比較的使いやすい武器。Aの戦闘演出では両手に持って片方から10発ずつミサイルを撃っている。つまり二百発のミサイルをなんらかの形で携行して……多分そんな訳はない。 ファランクスミサイル バックパック左部に乗っているミサイルランチャーから雨あられと撃たれるミサイル。弾数は演出20発位×弾数6でいっぱい。とにかく適当にいっぱい。Aでは射程4~7でやっぱり穴があるがFソリッドカノンの次に強い。OG2では何故か放射状の範囲を持つマップ兵器になっている。 フォールディングソリッドカノン(Fソリッドカノン) 右肩に乗っかってる折り畳み式のでっかいキャノン砲。ラーズアングリフ固定の最強装備。OG2では射程は3~10とびっくりするぐらい長い。Aだと射程5~8と穴もびっくりするぐらいデカい。出典元Aでの弾数は5発。だが、今ロワにおいてはOG2仕様の8発になっている。 特殊装備 シールド 携行シールド。Aでの耐久力は1500。リアル系と数値比較するとあまり高いほうではない。 ジャマー いくら装甲の厚いラーズアングリフとはいえこの至近距離でミサイルを食らえば……何ぃ!? ビームコート いくら装甲の厚いラーズアングリフとはいえこの至近距離でビーム(ry 移動可能な地形 空:× 陸:〇 水:〇 地:× 備考 赤い鈍重そうな機体。頭部の形状からコックピットの位置モロバレ。足にキャタピラ付いてます。
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Advanced 3rd ◆VvWRRU0SzU ワインレッドのカラーリングも眩しいF91がJアークの甲板に降り立った。 まるでストライクとその兄弟機、ストライクルージュのようだとキラは思った。 「シャギアさん、来てくれたんですね!」 「別にお前達を助けに来た訳ではない。私は私で、奴らに借りを返さねばならないだけだ」 油断なくゼストとダイゼンガーを見据え、シャギアは戦況を確認する。 ロジャーとアイビスは統夜とテニアに抑えられている。こちらの増援には来れそうにない。 アイビスはともかく、ロジャーの方は劣勢に見える。 同じ陸戦機ではあるが、騎士凰牙とヴァイサーガでは機動性に差があるためかロジャーは統夜を捉え切れてはおらず、細かな損傷が増えていくばかりだ。 なんとか持ち堪えているのは鞭の持つ固有能力らしい幻影、そしてロジャーの腕のおかげだろう。 そして仇たるテニアは、アイビスが技量的に上回っているためかこちらは優勢だ。 しかし時間稼ぎを目的とするテニアと仲間の救援を焦るアイビスでは精神面で前者が勝っている。 どちらも決め手に欠けているというところだ。 次に、眼前のゼストとダイゼンガーを観察。 いくらシャギアが新たな力に目覚めたとはいえ、この二機を同時に相手にするのはきつい。 Jアークの援護があるとはいえ、もう一機は欲しいところだ。 と、遠方で戦っていたサイバスターがこちらへと接近してくる。アキトを撃破したのだろう。 カミーユがここに加わればユーゼス・ガウルンの撃破も可能かもしれない。 だが、先のキョウスケとの戦いでそうだったように、カミーユとシャギアの全力は消耗が大きい。 ユーゼスの機体がキョウスケ並の力を持っているのなら、身動きが取れなくなったところをガウルンに狙われるかもしれない。 やるのなら一撃必殺。ユーゼスとガウルン、もろともに一撃で葬り去るしかない。 Jアークに保管されている反応弾。あれなら可能なプランだが、当然の帰結として爆心地にいるシャギア達も吹き飛ぶことになる。 条件はユーゼス達の機体を破壊するだけの力を持ち、攻撃範囲を任意で指定でき、その上こちらの消耗が少ない――そんな攻撃。 (早速、『アレ』が役立ちそうだな……!) 味方の機体にのみ通じる回線を開く。 ここから先は連携で勝負だ。 「こちらはシャギア、作戦を伝える。 カミーユ、下の統夜とテニアを抑えろ。ロジャー達では分が悪い。 ロジャー、お前は私と共にユーゼスとガウルンを抑える。 キラ、引き続き後方から援護。ただしエネルギーを消費する兵装は使わず言って一定量を確保しておけ。 そしてアイビス、君は一時後退、指定するポイントへ向かえ」 矢継ぎ早に指示を下す。アイビスの機体に座標を転送。 どう言うつもりだ、という声も上がらない。それなりには信頼されていると考えていいだろう。 サイバスターが進路を変更し、凰牙と渡り合っていたヴァイサーガへと斬り込む。 追従していたフラッシュシステム――ファミリア、がテニアを牽制し、その隙にロジャーとアイビスが離脱。 Jアークが後退し、空いた位置をF91が埋めその下方に凰牙が滑り込む。そしてブレンが虚空に消えた。 「おいおい、あんた何でそこにいるんだ? 俺はてっきり、弟を生き返らせようとしてるんだと思ってたんだがな。 それとも死んだ奴の事なんてどうでもいいってか? 薄情な兄貴だねぇ」 「貴様に私達兄弟の何がわかる。たとえ貴様がどう思おうと私の意志は変わらん。それにオルバの事ならお前が心配する必要はないさ。 ――そう、貴様らをオルバと同じ所に……いいや、欠片一つ残さずその存在を消し去ってやるのだからな!」 F91が両手に抜き放ったビームソードとサーベルが唸りを上げる。 過剰なエネルギーを供給され、そのサイズは三倍近くにまで膨れ上がった。 Jアークがゼストへと艦砲射撃を開始し、地を疾駆する凰牙が鞭とハンマーで注意を引く。 フリーになったF91は同じく孤立したダイゼンガーへ。 「動きが鈍い……そこだッ!」 ダイゼンガーはF91の三倍近いサイズ。機動性では遥かにF91が勝る。 一気に懐へ飛び込まれたガウルンは、舌打ちしながらナイフ型へ変形させた斬艦刀で迎撃を図った。 液体金属の剣と荷電粒子の刃がぶつかり合い――拮抗する。 パワーで勝るダイゼンガーは片腕で斬艦刀を振るっているのに対し、F91は両腕でなんとか抑え込んでいる状態。 ガウルンは残る左腕を握り込み、鋭いフックを放つ。 F91は急上昇し避けるが、そこはダイゼンガーの肩にマウントされた熱線砲・ゼネラルブラスターの射線内。 「喰らいなッ!」 「貴様がだッ!」 シャギアの仕込んだ一つ目の『切り札』、発動。 F91の腰部にマウントされた、六基の円盤状フィールドジェネレータ――プラネイトディフェンサー。 それが一気に弾け、F91の前面へと展開。 円盤は互いに位置を調節し、電磁領域を発生させる。 そこにF91のサイコフレームの共振――人の心の光が加わり、莫大な量のエネルギーが流れ込む。 F91がビームシールドを展開し、その周りを周回するディフェンサーが加速、やがて一つの障壁となる。 自身の全長を超える障壁を盾に、ゼネラルブラスターの只中へ突っ込んでいくF91。 ガウルンからは見えなかっただろう。 インベーダーの群れを百単位で消し飛ばす熱線砲の中を、黄金に輝く盾を構え正面から抜けて来るF91の姿など。 「何ィッ!?」 そして、唐突にダイゼンガーの眼前に現れたF91の両手にはヴェスバーの砲門が。 高速で連射されるビームがダイゼンガーの全身に着弾し、フィードバックする痛みがガウルンを灼いていく。 「が……ああああッ!」 「ここまでだ……消えろ、ガウルンッ!」 動きの鈍くなった――その厚い装甲から考えれば、不自然なほど――ダイゼンガーへ、再度抜いたビームの刃を振り下ろす。 「まだ……だぜッ!」 間一髪、その太刀筋の上に斬艦刀が滑り込みF91の刃が押し留められた。 ぎりぎりと、サイズの小さなF91が押し込むという奇妙な形の鍔迫り合いになる。 「クククッ……いいねぇ、ゾクゾクする。あんた、俺の想像とは違うが随分やるようになったじゃねえか」 「褒め言葉だと受け取っておこう。そういう貴様は、機体が変わった割に使いこなせてはいないようだな?」 攻撃を受けた直後や行動に移る瞬間、一呼吸停滞する機動についての事だ。 機体の問題ではないだろう。あの動き、どうもパイロットがまるで自分の身体を操る事に違和感を感じているように見える。 「まあ、ちょいと事情があってな。このまま殺り合ってもいいんだが……残念な事に俺のお目当てはお前じゃないんだな、これが」 「ふん……逃がすと思うのか?」 「最初に会った時なら無理だったろうがな、今のお前ならこうすれば――」 ナイフが大剣へと変化した。 来るか、と思って身構えると、 「――何ッ!?」 大剣が、槍のように『発射された』。 一直線に迫る剣を横に回避。当然、加速のついた剣は彼方へと吹き飛んで行く。 何のつもりだと訝しむ。唯一の武装をこうも簡単に手放す、その訳を。 ビットのように遠隔操縦できるのかとも思ったがそうではない。あれはただ、本当に投げただけだ。 一度発射すれば、突き進んで何かに当たることしかできないはず。 (待て……私の後ろにはッ!?) 振り返る――その先にはJアーク。ユーゼスとの戦いに集中し、迫る大剣に気付かない。 あれ自体は熱を発していないのだからレーダーにも反応しないのだろう。 舌打ちし、F91に後を追わせる。まずいことに剣先はまっすぐブリッジを狙っている。 後方のダイゼンガーを警戒しディフェンサーを配置したが、攻撃は来ない。 (何を考えている……? チッ、しかし今は!) 意識を集中し、ヴェスバーを高速モードに設定。 剣の進路を予測し、ブリッジの20m手前という位置で―― 「間に合えッ!」 発射。 矢のようにJアークを狙った斬艦刀の進路に、それ以上のスピードでビームが割り込む。 一発目。微動だにしない。 二発目。剣先が揺らぐ。 三発目。震動が刀身に伝わった。 そして四発目、ようやく芯を捉えた砲撃は剣に推進力とは異なるベクトルを与えその進路を乱す。 斬艦刀は半端な角度でJアークに衝突し、その船体に喰い込むことなく落下した。 息を吐く間もなく振り返る。だが、同時に違和感も感じていた。 ガウルンがこれだけの隙を見逃すほど間抜けだとは思えない。 なのにシャギアはまだ生きている。追撃らしい追撃もなく、どころか振り返った先にはそもそもガウルンの機体がない。 いや、遠目に後退していく鎧武者が見えた。その方向には統夜もテニアもいないはずだが。 「撤退した、のか? 奴が退く理由などないはずだが」 「シャギアさん、特機が急速に離脱していくのを確認しました。撃破したんですか?」 「いや、押してはいたがそこまでの損傷を与えていないはずだ。何か策があって退いたと見るべきだろう」 「そうですね……でも、とりあえずあの機体は無視していいと思います。こちらの戦闘に加わってもらえますか?」 「了解した」 常になく大人しいガウルンに言い知れない不気味さは感じるものの、あれだけ離れれば致命的な行動はとれないはずだ。 核や長距離砲撃ができる機体ならまだしも、Jアークの甲板に転がっている剣を見るにあの機体は剣戟戦用の機体のはず。 キラの言うとおり、今はより具体的な脅威であるユーゼスを排除する時。 話している間もJアークからは絶えず砲撃が行われているが、ゼストに目立った損傷はない。 それはこちらも同様なのだが、ユーゼスはガウルンにそれなりの期待をしていたのだろう。だから積極的に攻めてこなかった。 しかしそのガウルンがいなくなったとなれば本気で来るはずだ。 ロジャーに無茶を強いた分、ここからシャギアが巻き返さねばならない。 凰牙が飛ばしたハンマーを掴み、ゼストが逆に引っ張り返すのが見えた。 パワーで劣る凰牙はまるで畑の野菜のように引き抜かれ宙に舞う。 腹の砲塔から放たれるダークマター――おそらくはシャギアが乗っていたヴァイクランのべリア・レディファー――を、伸ばした鞭をゼストに巻きつかせ強引に軌道を変えて避ける凰牙。 だがその際ハンマーが巻き込まれ、一瞬で灰燼に帰す。 見て取ったシャギアは咄嗟に斬艦刀を拾い上げ、F91の全身を回して遠心力で持ち上げる。 重さが圧し掛かってくる前に加速。甲板から飛び出すぎりぎりの位置まで加速し、 「受け取れネゴシエイター!」 放り投げた。 大車輪のように回転する大剣がゼストの表面装甲へと突き立った。 そこへ凰牙がゼスト自身の身体を滑り落ちてきて、明らかに自身の全長を超えるサイズの剣へと『着地する』。 落下の勢いを活かし、刀身を蹴り付けた凰牙。 刀身それ自体の切れ味に加え重量400tを超える荷重が高速で圧し掛かり、強固なゼストの装甲をバターのように斬り裂いていく。 「き、貴様らぁっ!」 「どれほど強力な機体に乗っていようと、肝心の中身がお前ごときではな。手を抜いたままで我らを踏み潰せると思ったのか?」 「力に溺れる者はより強い力にて打ち滅ぼされ、呑み込まれる。あなたのことだ、ユーゼス・ゴッツォ」 着地し、斬艦刀を担ぎなおす凰牙。不思議とその姿は様になっているように見えた。 Jアーク、F91、凰牙の三機と相対し、ゼストは確実に疲弊している。 もちろんこちらの消耗も少なくないものの、アキトが敗れガウルンが撤退した今、流れは確実にシャギア達の側にある。 一気に決着をつけようと、無言の内にロジャーとキラがシャギアとタイミングを合わせ動く。 Jアークの反中間子砲が、ミサイルが。 F91のハイパービームソードが、ヴェスバーが。 凰牙のバイパーウィップが、斬艦刀が。 嵐のような攻撃がゼストの全身を少しずつ、だが確実に削り取る。 その渦中――ゼストの中心部で、ユーゼスは、 「……クク、クハハハハッ! いいだろう、認めようではないか。確かに私が甘かった、君達の機体を破壊しない程度に手を緩めようなどと。 これほどの傲慢、私も少々奢っていたのかも知れぬ。まだまだ甘い、目の前のご馳走に我慢できないようではな」 「……降伏する、という事ですか? 協力してくれるというなら、僕達もこれ以上は」 「降伏? フフフ……有り得んな。断じて、否ッ! この私の往く道に後退などないッ! 取り込めんと言うなら仕方ない、全て消し飛ばすまでッ! これだけは使いたくはなかったのだがな……貴様らがそうさせたのだ! 後悔する時間も与えん! 塵一つ残さず――砕け散るがいいッ!」 ゼストが、両腕の爪を伸ばし突き立てる――自身の胴体に。 鋭い刃が装甲を割り、吹き出る体液。否、流体状のラズムナニウム。 巨獣が苦痛の咆哮を上げる。それはまるで、この痛みすらも怒りに変えてお前達に叩き込むという決意の表れのようにも見えた。 「なんだ……何をしているのだ!?」 「キラ、敵機に強力なエネルギー反応を確認した。六つ……、六つのエネルギー源が露出するぞ」 トモロの言葉通り、ゼスト自身の詰めにより強引に割り開かれた胸部から六つの輝きが見えた。 一つ一つが戦艦を動かすに足るエネルギーを発している、円柱形の物体。 それはJアークのデータに残っていた『あるもの』と一致する。 そう、ネルガル重工が建造したオーバーテクノロジーの塊、地球と火星を股に掛けその名を馳せた名艦。 ――ナデシコ級一番艦『ナデシコ』。その心臓部、相転移エンジンと核パルスエンジン。 「テトラクテュス・グラマトン……!」 蒼い輝きが二つ、紅い輝きが四つ。 内部に埋め込まれていたそれらが強引に引っ張り出され、轟音を鳴らしながらその位置をずらしていく。 一つ目の蒼を上に、右下と左下に紅が二つ。 二つ目の蒼を下に、右上と左上に紅が二つ。 互いに繋がる輝きが形成するはヘキサグラム――六芒星。 「空間そのものに干渉する相転移砲の力を以ってすれば、貴様らなど木端も同然! 消し飛ぶがいい!」 ゼストが発するプレッシャーが爆発的に増加する。 その力――Jアークと、サイバスターと、F91と、あるいは先のキョウスケ・ナンブの機体が巨大化したものと。それらを足し合わせたとて届かない――! 「何だ、あの力は……!?」 「エネルギー反応、更に増大。あれが解き放たれれば、このエリア一帯は軽く吹き飛ぶぞ」 「こんな力があるなら……あのゲートだって破壊できるはずなのに! どうしてあなたは!」 「言ったはずだ……これだけは使いたくなかったと。ナデシコから奪った動力炉をフルに使い、それでも一発しか放てない。 一度撃てば蓄えたエネルギーは枯渇し、この形態を維持する力すらなくなる。それだけのエネルギーを喰うのだ。 撃った後に倒される可能性があるから使えなかった――逆に言えば、この一撃で全て消し飛ばせばいいだけの事……ッ!」 「ここにはあなたの仲間が、統夜やテニアだっているんだぞ! それなのに!」 「統夜、テニア、ガウルン、アキト……ふん、所詮は捨て駒だ。私に並ぶ者など――『あの男』を置いて、他にはいないのだッ!」 「貴様一人であの主催者を倒せるとでも思っているのか!?」 「フフフ……その事も考えているさ、ちゃんとな。ネゴシエイター、貴様の持つデータウェポン。その本質は電子生命だ。 たとえ貴様の機体が砕け散ったとしても、物質に干渉する攻撃ではデータウェポンは傷つかない。 貴様という契約者がいなくなればデータウェポンは解放される。どこにいるか知らぬがもう一人の契約者の娘も探し出し、始末すれば……! 銀河を支配する力を持つデータウェポンは全て私の物となる! その力があればゼストは必ず超神へと進化する――絶対の存在となるのだ!」 六芒星が放つ光はいよいよ強まって、今にも溢れ出しそうになる。 止めようとした気配を察したユーゼスは、 「フハハ……無駄だ! これだけのエネルギーが収束しているのだ、貴様らの貧弱な武装では貫けはせん!、」 「キラ、奴の言う通りだ。あのエネルギーは物理的な攻撃をも遮る障壁だ。生半可な攻撃では突破できん。 最低でもサイバスターのコスモノヴァ並の火力が必要だ」 「凰牙のファイナルアタックでは無理なのか!?」 「ダメだ。突破できなければそのエネルギーすら滞留し、奴の力となる。一撃で破壊しなければ」 「じゃあ、カミーユを呼ばないと!」 「待て、あの力は多大な消耗を強いる。今彼に抜けられる訳にはいかん」 カミーユへと連絡しようとしたキラを、一人冷静なシャギアが制止する。 カミーユは今も統夜と剣を交えている。 一体この短時間に何があったのか、蒼い騎士は風の魔装機神と互角にやり合うほどに鋭い動きを見せていた。 剣を交わしたと思えばその姿は陽炎のように揺らめき、サイバスターの背後に。 カミーユのセンスと抜群の機動性を持つサイバスターだからこそその加速についていく事ができる。 地上の、しかも接近戦に置いてはヴァイサーガは今やサイバスターと肩を並べている。 新たに発現したらしいビットは、テニアとそのスレイヴが抑えている。 数にして三対六。個々の力は上回っていても、それを操るカミーユが統夜との戦いに気を取られているためか集中し切れておらず、動きに精彩がない。 「じゃあどうしろって言うんです! 他に方法が……!」 「落ち付け、キラ・ヤマト。戦いとは一手二手先を読んで手を打つものだ。そら――来たぞ。私のもう一つの奥の手だ」 シャギアが指し示す先に現れたのは――バイタルジャンプしてきたネリーブレン。一人後退していたアイビスだ。 ただし、そのブレンが抱えているのはキラとロジャーは初めて見るものだった。 ブレンが背負う、ブレン自身より大きな荷物――ユーゼスが目を剥いた。 「Jカイザーだとッ!?」 「ほう、知っていたか。だとしたら貴様はやはり甘い――こんな大物を、破壊も利用もせずに放りだして行くのだからな!」 「それは奴に……バーニィに破壊されたはずだ!」 「機体の事なら確かに木端微塵だったさ。しかしどういう訳か、この大砲だけは機体が庇うようにして守っていた。 案外、そのバーニィとか言う奴が残したのかも知れないぞ? お前がやってきた事のツケを払わせるためにな!」 Jアークの甲板へF91が着地し、ブレンが運んで来た砲台をその目前に下ろす、というか落とす。 F91が紫電を纏う両腕を振りかぶり、 「カイザァァァァコネクトォッ!」 Jカイザーへと叩き付ける。 カミーユの持つオクスタンライフルと同様、所有機が破壊されたこのJカイザーもまた誰しもが使える武装として開放されたのだ。 だがもちろん、F91単体では莫大なエネルギーを必要とするJカイザーを撃てるはずがない。 シャギアの脳裏に『月の子』と文字が踊る。 この武装はそうやってエネルギーを調達していた。なら話は簡単だ。 月、と言うのも縁起が良い。何故ならそれはシャギア自身にとっても馴染みが深いものだから。 「キラ・ヤマト! JアークのエネルギーをF91へ回せ!」 「えっ……はい、わかりました!」 月の子に匹敵するだけの力は爆発的なエネルギーはここにある。 三重連太陽系・赤の星の遺産。 所有者の命の鼓動――勇気に呼応し、莫大な力を発生させる無限情報サーキット、Gストーン。 そのGストーンをより実戦向きに改良し、破格の高出力を叩きだす規格外のジェネレータ――Jジュエルが。 シャギアの言葉通り温存され、蓄積されていたJアークのエネルギー。甲板に立つF91へと光のラインが走り、流れ込んでいく。 エネルギーを供給され、F91の全身を再び深紅の輝きが包み込む。 翼を広げ、予想される反動に耐える姿勢を取る。 展開された六基のウイング、構えられた巨大な砲身――まるで『あのガンダム』のようだとシャギアは笑う。 ゼストの蓄えるエネルギーからすればごく小さい、しかし一点を突破するには十分すぎる力がJカイザーへと収束する。 ゼストの方はエネルギーがまだ収束しきっていない。 しかし回避するにも機体を動かすだけの力がない。 一撃で葬らんと機体に回すエネルギーを全て攻撃に叩き込んだゆえだ。 「ユーゼス・ゴッツォ……これは貴様の過去だ。貴様が利用し、踏み付け、ボロ屑のように捨てた者達が、貴様を粉砕するッ!」 「馬鹿な……馬鹿な! 今この時になって私を阻むのか、ベガ! バーニィ! 貴様ら如き愚昧が、この私を――ッ!」 泡を喰ったようなユーゼスの声。 ベガ、そしてバーニィという名をシャギアは知らない。 だがわかる事が二つ。 一つは放送で呼ばれた名前である事、もう一つはおそらくユーゼスに利用されたのだという事。 面識もない、さして興味もない。 だが今この瞬間だけはこう思ってやってもいい、とシャギアは思う。 ――お前達の無念、私が晴らそう! この一撃で奴を終わらせる! Jアークからエネルギーを供給される。 騎士凰牙が膝立ちになってF91を後ろから支える。 ネリーブレンがF91の手に自らの手を重ね、少しなりともエネルギーを上乗せする。 キラの、 ロジャーの、 アイビスの、 そして見も知らぬ仮面をつけた女、純朴そうな青年の顔がシャギアの意識を通り過ぎ、 ――マイクロウェーブ、来るッ!―― ――あなたに、力を―― ――月は出ているか―― 「――――〈J〉ジュエルカイザーエクステンションサテライトキャノンッッ!」 フッ、と笑みが零れた。 今だけは、私もお前達に倣おう――! 「発射ァァァァ―――――――――――――――――――――――――――――――――――ァッ!」 →Advanced 3rd(2)
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プロトガーランド 機体名 プロトガーランド 全長 人型形態:3.85mバイク状態:3.96m 全幅1.35m 全高0.94m 主武装 レーザーオーブガン ― 格闘 ― 特殊装備 変型 バイク⇔人型 センサーリダクション センサーを欺くシステム 移動可能な地形 バイク 空 × 陸 ○ 海 ○(ホバー) 地 ×人型 空 ○ 陸 ○ 海 △ 地 × 備考 メガゾーン23内の軍隊が開発した新型兵器、その改修型。メガゾーンのメインコンピュータ・バハムート(時祭イヴ)と連結しており、本機からバハムートへのアクセスが可能。だが、ロワ世界においてはバハムートの存在が確認されてないため意味を為さない。他の機動兵器と比べ、超小型。(テッカマンと同じくらいか?)瞬発力と機動性は他の追随を許さず、少し離れた相手にも格闘を仕掛けられる(射程1~3程度?)ビームガンは腕部に格納されている。遠距離に仕掛けられるほど射程は無いが、その瞬発力と小型による隠密性で相手の死角に回り込めれば勝機はある。いずれの武器も人型形態時のもので、バイク形態時の武装は存在しない。またガーランドの操縦方法だけど、ヘッドコネクターが思考伝達装置になっているらしい。そのおかげで手動操縦と思考による機体制御を組み合わせる事が出来て、複雑な動きを可能とするそうな。また搭乗者が生命の危機に晒された時は自動で人間形態に変形を行うようになっている。動力はガスタービンエンジン。ちなみに人間状態はMS(マニューバスレイブ)、バイク形態はMC(マニューバクラフト)と言う。
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獅子は勇者と共に ◆ZbL7QonnV. 「ひゃーっはっはっはは! 死ねぇ! 死ね、死ね、死ね、死ねぇぇぇぇいっ!」 その巨大な豪腕を振り回し、スターガオガイガーはバルキリーに殴り掛かる。 技も、駆け引きも、何も無い、力と勢い任せの殴打。 だが、ウルテクエンジンのパワーで振り回される巨大な腕は、それだけで巨大な脅威となってアムロの身に襲い掛かっていた。 「くっ……!」 紙一重の所で攻撃を避けながら、アムロは現状の打開策について考え続ける。 状況は最悪とまでは言わないが、かなり劣悪な事に変わりは無い。 バルキリーの火力では、スターガオガイガーの強靭な装甲を撃ち抜く事が出来ない。まして、弾数には限りがある。 それに対して、スターガオガイガーの攻撃はバルキリーにとって一撃で致命打となりかねない。 つまり、このままズルズルと持久戦に持ち込まれるようなことになってしまえば、こちらに勝ち目は無いと言う事だ。 その狂気を孕んだ過剰な攻撃性はともかくとして、ゴステロの操縦技能は決して低くない。 アムロが攻撃を危うげなく回避出来ているのは、スターガオガイガーの攻撃手段が単発的である事が大きい。 バルキリーの機動性に、ニュータイプとしての直感力。二つの利点を活かして回避行動を続ける事は、さして難しいわけではなかった。 もっとも、それとて限界が無くはない。長期戦で集中力に乱れが来れば、いつかは攻撃を避け切れなくなってしまう事もあるだろう。 もちろん、アムロとて“連邦の白い悪魔”と呼ばれたエースである。そう易々と、被弾を許すわけがない。 だが―― 「ちぃっ……! ハエみてぇに飛び回りやがって……! うざってぇんだよ、てめぇはぁぁぁぁっ!!」 あまりにも激しく、そして執拗に繰り返される攻撃を前に、なかなか突破口を切り開く事が出来ない。それが、今の状況だった。 「どうする……いっそ、逃げるのも手だが……」 長高々度の飛行能力ならば、おそらくバルキリーに分があるだろう。 ありったけの弾薬を目晦ましにすれば、それで十分な隙は作れるはずだ。 しかし、この危険な男を野放しにして、本当に良いのだろうか……? ……いや、良くはない。 ニュータイプとしての研ぎ澄まされた神経が、黒い悪意を感じ取っている。 この男は、あまりにも危険過ぎる。今の内に仕留めておかなければ、どれだけの犠牲者を生むか分からない奴だ。 ならば……! 「使うか……? 反応弾を……!」 バルキリーに搭載された最強の武装。その威力は、ガンポッドやマイクロミサイルとは比べ物にならない。 それを直撃させる事が出来さえすれば、この状況を引っ繰り返す事も不可能ではないだろう。 シャアとアイビスは、もう十分遠くに行っているはずだ。 後は反応弾の威力に巻き込まれないだけの、十分な間合いを取れさえすれば……。 「ブロウクン……ファントォォォォムッッッ!!!」 「っ…………!」 唸りを上げて迫る拳。それを回避した所で、アムロは機体の異常に気が付いた。 ほんの僅かにだが、ガタがきている。 片腕を失った状態で、無茶な回避行動を取り続けていたせいだろう。機体のバランスが、ほんの僅かに崩れ始めていた。 「まずいな……早めに勝負を決めなければ……」 ……腹を括る。 機体の不調が、むしろ覚悟を決めさせた。 「畜生がッ……! あの野郎、チョコマカと逃げ回りやがってぇ……!」 バルキリーの機動性に舌を巻きながら、ゴステロは苛烈な攻撃の手を休めようとはしていなかった。 ゴステロとて、無能ではない。あの赤い機体が何かを企んでいる事には、薄々ながら気付いていた。 だが、それがどうした。あの機体が自分に対して有効な攻撃を与えられない事は、これまでの攻防から明らかになっている。 ならば、焦る事は無い。勝利は、じっくりと味わうものだ。逃げる気が無いと言うならば、むしろ自分にとっては好都合というものだ。 あの機体が何を企んでいるかは知らないが、所詮は雑魚の足掻きに過ぎない。 そうだ……このスターガオガイガーの圧倒的な力さえあれば、あんな飛ぶ事しか能の無い機体など敵ではない……! 「おらぁぁぁぁぁぁっ!」 GSライドのパワーに身を委ね、ゴステロは力任せの攻撃を繰り返す。 ……だが、彼は気付いていなかった。 勇気を力の源とするGストーン。ゴステロの歪んだ精神に触れ続けていたそれが、少しずつ輝きを失い始めていた事に……。 「なんだ……? 奴の攻撃……さっきまでと比べて、ほんの僅かに弱まっている……?」 スターガオガイガーの熾烈な攻撃を神業的な機体操作で回避し続けるバルキリー。 機体表面に幾つもの損傷を作りながら、これまで反撃の機会を辛抱強く待ち続けていたアムロは、だからこそ敵機の異常に気付く事が出来ていた。 誘っているのか……? ……いや、恐らくは違うだろう。 あの巨大な機体から湧き上がる悪意は、その勢いを弱めていなかった。 恐らくは、自分でも気付いてはいない。 ならば……仕掛ける好機は、今を置いて他に無い! 「よし……!」 もう殆ど使い果たしてしまったマイクロミサイル。その全てを“一点”に向けて、バルキリーは一気に射出する。 スターガオガイガー、ではない。その足元に広がる荒野に向けて、ミサイルの雨は降り注ぐ。 轟、と大きな音を立て、砂の嵐が巻き起こる。 「なぁっ……!?」 足場に走った衝撃と、巻き上げられた砂の煙幕。その二つに、スターガオガイガーの攻撃が思わず途絶えた。 その隙を見逃さず、バルキリーは遙か高くに舞い上がる。 最大速度で空を切り裂き、赤の戦闘機は迷う事無く“それ”を目指す。 目指す先は、光の壁だ。あの向こう側に抜けてしまえば、反応弾の威力に巻き込まれる事は無い――! 光の壁を抜ける直前、バルキリーは急激に機体を旋回させる。 そして砂煙で隠れた悪意に向けて、最後の切り札――反応弾を撃ち放った。 「これで……終わりだ!!」 閃光、轟音、そして―― その結果を見届ける事無く、バルキリーは光の壁を抜けて行った。 「うおおおおおおっ!?」 足場を走った衝撃に、ゴステロは思わず叫び声を上げていた。 物凄い勢いで巻き上げられた砂煙が、ゴステロの視界を覆い隠す。 目晦ましか――なめた真似を――! 下らない小細工に、ゴステロの怒りは膨れ上がる。 「何か企んでいるとは思っていたが、こんな煙幕程度で俺様を――――!?」 「……やった、か」 反応弾の確かな手ごたえに、アムロは安堵の溜息を吐いた。 恐ろしい敵だった。まるで悪意と憎悪の塊のような、とてつもないプレッシャーを放つ相手だった。 彼が何者で、どんな人生を歩んできたのか、自分には窺い知る事が出来ない。 だが、ろくなものではないのだろうと言う事は、容易に想像する事が出来た。 ニュータイプとしての直感が感じ取った巨大な悪意ばかりではない。 あの男の戦闘技術は、間違い無く数多くの実戦を踏んだ人間のそれだった。 戦う事……いや、相手を痛め付ける事に喜びを見出す危険人物、か……。 もしこの場にカミーユがいれば、こう彼の事を評していただろう。 生きていてはいけない人間、と。 「ともあれ、これで……」 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!」 「――――――――っ!?」 ――それは、完全な油断だった。 輝く壁の向こう側から雄叫びと共に現れた、先程の巨大な機体よりも一回り小さい、スマートな印象の白い機体。 だが、アムロには分かる。あの機体に乗っているのは、先程の機体に乗っていた男と同一人物だ。 この巨大な悪意――忘れられるわけがない! 「っ…………!」 バルキリーを急旋回させ、アムロは迫り来る一撃を避けようとする。 だが、遅い。 ほんの僅かな油断を突かれて、どうしても反応が間に合わない。 「まずい――追い付かれ――――!」 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」 ドゴォォォォォォォ…………! ガイガークローがバルキリーを貫き、赤の戦闘機は炎に包まれた。 ……アムロ・レイは生きていた。 バルキリーが破壊される一瞬前に、緊急脱出装置を起動させていたのだ。 もっとも、それはアムロの命を数分だけ延ばす結果にしかならないだろう。 アムロが爆破寸前の機体から脱出した事は、ゴステロの目にも映っていたからだ。 「ひゃーっはっはっはっは! しぶてえなぁ、お互いによぉ!」 反応弾が命中する寸前に取った行動を思い出しながら、ゴステロは大きく笑い声を上げていた。 砂煙が巻き起こった次の瞬間、ゴステロを突き動かしていたのは動物的な生存本能だった。 ヤバい―― そう思った瞬間にゴステロが取った行動は、ブロウクンファントムを打ち出す事だった。 それも、ただ普通に打ち出したのではない。ブロウクンファントムにプロテクトリングを重ね掛けした上で、渾身の一撃を繰り出していた。 計算しての事ではない。ゴステロ自身、咄嗟の事だ。 だが、結論から言うのなら、その行動は間違っていなかった。 プロテクトリングが作り出す防御の力と、ファントムリングが作り出す攻撃の力。 二つの相反する力は偶然にも巨大なエネルギーのうねりを生み出し、ブロウクンファントムが迎撃した反応弾の威力を大きく削ぐ事に成功していた。 攻撃と防御の力を融合させて繰り出したその一撃は、不完全ながらもヘル・アンド・ヘヴンと酷似した性質の力場を発生させていたと推測される。 無論、このような攻撃手段はガオガイガーに装備されていない。咄嗟の行動が偶然に繰り出させた、イレギュラーな一撃である。 そして、イレギュラー故に、その代償は決して安くなかった。 スターガオガイガーの右拳は、荒れ狂う巨大な力に巻き込まれる形で綺麗に消し飛んでいたのである。 それだけではない。ファントムとプロテクトのリングもまた、規定外の使われ方をした為に、過剰な負荷に耐えられず爆発四散してしまった。 ステルスガオーⅡのウルテクエンジンは臨界直前まで酷使されて、もはや使い物にならなくなっている。 使い物にならなくなった両腕と、リングを失いエンジンが焼け付きかけたステルスガオーⅡ。 心残りが無いではなかったが、この二つはもはや使い捨てにするしか――ファイナルフュージョンを解除するしかなくなっていた。 もっとも、そんな事はどうでもいい。 今のゴステロにとって重要な事は、この溜まりまくった鬱憤をどうやって晴らすか。ただ、それだけなのだから。 「くっ……くくっ! くひゃひゃひゃひゃ! 今まで散々俺様をコケにしてくれやがった罰だぁ……! そう簡単には殺さねぇ! じっくり、たっぷり甚振ってやる!」 「っ…………!」 脱出装置を抜け出たアムロに、ゴステロは狂った哄笑を向ける。 たとえ相手が機体に乗っていなかろうと、ゴステロに容赦する気持ちは無い。 むしろ自分よりも弱い相手を一方的に嬲る事に、ゴステロは歪んだ喜びを憶えていた。 ゆっくりと振り上げられる、ガイガーの足。 ゴステロの企みに気が付いて、アムロは身を起こし走り出していた。 どすんっ……! つい先程までアムロの居た場所に、ガイガーの足が振り下ろされる。 あと一秒でも逃げ出すのが遅れていたら、アムロの身体は潰れてしまっていただろう。 「ははっ! 上手く避けやがったなぁ! だが、次はどうだぁ?」 無力な蟻を踏み潰すように、ゴステロは逃げ惑うアムロを追い駆ける。 楽しかった。 ちっぽけで無力なゴミどもを、圧倒的な優位に立って踏み潰す。 これだ……! これこそが俺様のあるべき姿だ……! 「俺はなぁ……人殺しが! 大好きなんだよぉッ!!」 ひどく歪んだ喜びを憶えながら、ゴステロはアムロをじわじわと追い詰める。 ……愉しみに浸るゴステロは、だからこそ気付かない。 獅子が、怒っている事に。 「はぁっ……! はぁっ…………!」 息を切らせて、アムロは走る。 その顔に、諦めは無かった。 あまりにも絶望的な状況の中で、それでも生き抜く事を諦めてはいない。 ……アムロとて、馬鹿ではない。この状況を好転させる事が不可能である事は、痛いほどに理解していた。 だが、それでも諦める事だけは出来なかった。 それは、何故か? 「っ…………!」 どさっ……! 体力の限界に達した身体が、ついにアムロの足を止める。足元の小石に蹴躓き、アムロは地面に転がった。 「はっはぁ! なんだ、もう終わりかよ?」 「…………」 「ホラ、逃げてみろよ。なんだったら、泣き喚いて命乞いでもしてみるか? ひょっとしたら、俺様の気が変ったりもするかもしれないぜぇ?」 うずくまるアムロを見下ろして、ゴステロは上機嫌な声で言う。 無論、嘘だ。ゴステロがアムロを見逃す事など、万に一つもありえない。 だが、その言葉に騙された馬鹿が惨めったらしく命乞いをする様子を想像すると、なかなか面白そうだった。 「……断る」 「あぁん……?」 だが、アムロは拒絶する。 この悪意で染まりきった男に屈する事は、そう……アムロ・レイの“勇気”が許さなかった。 「お前のような奴に命乞いをするくらいなら……最後の瞬間まで戦って死んだ方がずっとマシだ!」 ――悪の暴力に屈せず、恐怖と戦う正義の気力。 人、それを……“勇気”と言う! 「ああ、そうかよ……なら死ぃ……!? なぁっ、なんだぁ……!?」 突如起こった機体の異常。ゴステロの意思に反して、やおらガイガーは動きを止めていた。 それは、ギャレオンが見せた反逆の意思に他ならない。 勇気ある者達と共に戦い続けた正義の獅子は、ここにきて激しい怒りを抑えきれなくなっていた。 『ガォォォォォォォォォンッッッッ!!!』 獅子は吼え声を轟かせ、邪悪の束縛を引き千切る。 ――そう、フュージョン状態の強制解除。 これまで自分の身体を支配していた邪悪な存在――ゴステロを排除して、獅子は大地に降り立った。 「なっ……! て、てめぇ、このポンコツ、何のつもりだ!? ど、どうして俺様を……!」 ゴステロが上げる怒りの声に、だがギャレオンは応えない。 正義の獅子が見詰める先には、勇気を示した一人の戦士――そう、アムロ・レイの姿があった。 「お前……は…………?」 ……獅子の瞳に覗き込まれて、アムロは獅子の意思を知る。ニュータイプの力が、ギャレオンの意思を感じ取っていた。 そして……。 『ガォォォォォォォォォンッッッッ!!!』 獅子は再度の吼え声を上げながら、アムロの身体を――呑み込んだ! 「フュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! ジョォォォォォォンッッッッ!!!」 「ば、馬鹿なっ……! こんな……こんな馬鹿な事があってたまるかよ!? どうしてだ……! どうして俺様の機体がっ……!」 ギャレオンとのフュージョンを果たした、つい先程まで哀れに逃げ惑っていたはずの無力な男。 この場から逃げ出す事すら忘却し、ゴステロは思わず叫び声を上げる。 どうしてこうなってしまったのか……何が悪かったというのか……! 「……お前の敗因は、たった一つだ」 「ひっ……!?」 つい先程とは逆転した立場で、アムロはゴステロに声を掛ける。 いくら機体が無いとは言え、見逃す気は起こらなかった。 この男を生かしておけば、数多くの悲劇が起こる事は間違い無いからだ。 「お前は……勇者じゃなかった……」 「ま、待てっ! 俺が悪かった……! 謝る! もうしない! だから助け…………ひでぶぅぅぅぅぅっ!?」 ……ガイガー渾身の爪先蹴りが、ゴステロの身体を吹き飛ばす。 奇怪な叫び声を上げながら、狂気のサイボーグは絶命した。 「……よし、これは何とか使えそうだな」 反応弾の着弾地点、ガオーパーツの残骸が転がる中、アムロは辛うじて使い物になりそうな機体を漁っていた。 ステルスガオーⅡ、ライナーガオー。この二つに関しては、完全に使用は不可能となっていた。 だが、運良くと言うべきか。ドリルガオーだけは、何とか破壊を免れていた。 「なるほど……このパーツ、分離した状態でも腕に装着できるのか……」 ドリルガオーがガイガーに装着可能な事を知り、アムロは「ついてるな」と呟きを洩らす。 敏捷性に優れるガイガーだが、いかんせん破壊力に乏しい事は否めない。 攻撃力の不足を補う事は出来ないかと悩んでいたが、どうやらこれで問題も解決出来そうだ。 ついでに言えば、シャアの奴に核ミサイルから乗り換えさせる事も出来る。このドリル、人が乗り込む事も出来るらしい。 唯一残念だった事は、ガイガーの蹴りを受けた衝撃によって、ゴステロの首輪が破壊されてしまっていた事だ。 あの時は冷静な判断力を働かせる事が出来なかったが、今になって思うと惜しい事をしたと思う。 ……もっとも、自分だけが機体に乗った状態で生身の人間を嬲り殺しにするような行為に抵抗があった事は否めない。 いくら相手が信じられないほどの外道であったとしても、だ。 もしかしたら無意識の内に、そんな考えが攻撃に必要以上の力を込めてしまっていたのかもしれない。 せめて苦しむ事の無いよう、一思いに……と。 「過ぎた事を悔やんでも仕方ない、か……」 苦いものを噛み締めながら、アムロは沈痛な声で言う。 そうだ、今は前に進むしかない。あの絶体絶命の状況を生き残れた事だけでも、良しとしておくしかないだろう。 「マッハドリル、装着!」 ふと頭の中に浮かび上がった名前を呼び、ガイガーはドリルガオーを装着する。 思った以上に時間を食ってしまった。シャア達との合流を急がなければ……。 【アムロ・レイ 搭乗機体:ガイガー(勇者王ガオガイガー) パイロット状況:良好 機体状況:機体表面に傷跡(戦闘には支障無し) マッハドリル(ドリルガオー)装着 現在位置:H-2 第一行動方針:シャア達との合流 第ニ行動方針:首輪の確保 第三行動方針:協力者の探索 第四行動方針:首輪解除のための施設、道具の発見 最終行動方針:ゲームからの脱出 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している】 【ゴステロ 搭乗機体:なし パイロット状態:死亡 現在位置:A-2】 【時刻 20 45】 本編112話 失われた刻を求めて
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第三回放送 ◆ZqUTZ8BqI6 また日は沈み、次なる夜がやってくる。しかし、この世界の夜はもう二度と訪れることはない。 比喩ではなく本当に最後の夜が来る。この夜が明けた時、この世界に立つのは誰か。 いや、箱庭世界の夜は明けるのか。澄明は、まだ遥か向こうにも見えない。 『皆さま、お疲れ様ですの。ここまで頑張った人たちは、もう少し。そのためにご褒美があるですの。 何か気になりますの? けど、まずは今回死んじゃった人たちの連絡ですの』 ……ジョナサン=グレーン ……ベガ ……バーナード=ワイズマン ……オルバ=フロスト ……宇都宮比瑪 ……クインシィ=イッサー ……ガロード=ラン 『―――以上、7名が皆様の犠牲となりお亡くなりになられましたですの。ちょっと勢いが落ちちゃってますの。 早く帰りたいならちゃきちゃき殺しちゃうことをお勧めしますの。 ……次は、禁止エリアの発表ですの。 ここまで来て禁止エリアで死ぬなんて恥ずかしいからしっかりメモするべし!ですの。 禁止エリアは……A-1、B-6、E-5、F-1、G-3、G-6の六ヶ所ですの。 それじゃお待ちかねご褒美発表タイムですの。やっぱり目標があったほうがやる気も出ると思いましたので、特別に名簿をプレゼントしますの! 残りの人たち全員の名前が書いてある特注品、受けとってほしいですの。水や火からは離れて待っててくださいの。再度支給はなしですの。 残り人数といる人が分かれば効率もあっぷですの。あと……ちょっと会場に変なのが出ちゃったりもするけど、気にしないでくださいの。すぐに全部いなくなりますの。 あんなのは無視してお隣の人を撃つのに弾薬は使ってくださいですの。武器の弾薬サービスも大変ですの! ――それでは十二時間後、最後の一人として私とお会いできますよう、皆様の無事をお祈り申し上げますの。では』 そう言って、アルフィミィは通信を切る。そしてちらりと、視界の隅の机を見た。 「……あら?ですの??」 そこには、なぜか一枚だけ名簿が残っていた。 【アルフィミィ 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:ネビーイーム 第一行動方針:バトルロワイアルの進行 最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】 備考 転送されなかった一枚は、ユーゼス(首輪の機能停止が原因)の分です。 BACK NEXT もう一つの対主催 投下順 貫け、奴よりも速く もう一つの対主催 時系列順 貫け、奴よりも速く BACK 登場キャラ NEXT 排撃者――裏 アルフィミィ Alchimie , The Other Me
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◆ 素早く、それでいて非常に巧緻に長けた剣閃が迫って来る。受け止め、受け流す。数合切り結ぶ。そして引き際に小さく、それでいて鋭く剣を振るった。空を斬る感触に臍を噛む。 再び距離を開けての対峙。長く細い息を吐く。 手ごわい。少なくとも刃物の扱いに関してはギンガナムを上回り、自身と拮抗していると言っていい。さらに、その妙を得た動きには目を見張るものもある。 黒い機体の後方のただ一点だけを睨みつけ、剣を構える。ギンガナムと他の二機が戦闘を繰り広げている場所だった。そこだけを見ている。目的は一つ。 この黒い機体を避わし、その場へ急行する。 然る後、ギンガナムにこの機体の相手をさせ、他の二人を説き伏せる。それが最善手。 下手にここで戦闘を繰り広げても意味はない。まして、ラプラスコンピューターが破損するようなことがあれば、それは致命的だ。それだけは避けねばならない。 その上で、ギンガナムとあの二人の溝が修復不能になる前に舞い戻らなければならなかった。それが課せられた課題なのだ。 「難儀な話だな……」 「あん? 何がだ?」 「いや、なんでもない」 黒い機体の膂力はギンガナムの機体とほぼ互角。速力と大きさもだ。外見的にも幾らか似通っている。恐らくはこれもガンダムと呼称される機体なのだろう。 力では相手、素早さでは自分ということになる。 全く肝心なときにいない男だ。このような相手こそギンガナムにうってつけであり、黒歴史とやらの知識も役立つというものだというのに。 それを生かすには目の前の男を突破する他ない。 隙は見えない。それでも突破せねばならない。それも速やかに、被害なくだ。心気を澄ませる。掌に刃の重さを感じ、そして、ブンドルは一陣の風となって駆けた。 「悪いが押し通らせて頂く」 「させねぇよ」 ◆ 廃れ、荒れ果てた廃墟で閃光が瞬き、光軸が飛び交う。音響がさらなる音響を導き、廃墟に似つかわしくない喧騒が辺りを支配している。 白桃と浅葱、二色のブレンパワードが織り成す連携を受け、ギンガナムは劣勢を強いられていた。 蒼い機体が視界から消える。ゾクリとしたモノを感じて、振り向き際に左拳を振るった。 頑強な金属音が響き、真っ向から接触する拳と剣。 蒼いほうが動きを変えていた。 それまでの自機の非力さを悟り、単純な押し合いには決して持ち込ませまいとする態度から、真っ向から力勝負を挑むような我武者羅さに変わっている。 二機の足が止まる。押し合い圧し合いの純粋な力勝負。ならばギンガナムに負ける道理はない。 押し切れる。そう思ったその瞬間、白桃色の機体に割って入られ、あえなく距離を取る。 「ちっ!」 蒼い機体がギンガナムを一点に押し留め、足が止まるその隙を白桃色の機体が衝いて来る。それが相対する二機の基本戦術だった。 まったくもってうっとおしい。決め手の放てぬ戦いというのはストレスが溜まるものだ。 だが、ギンガナムは笑っていた。 こういう戦い方もあるのか、という好奇の心が疼いていた。これは一対一では知りえぬ戦い方なのだ。 愉快だった。こみ上げてくる感情を抑えることが出来ない。今、確実に生きていると実感できる。そのことが堪えようもなく愉快だった。 ギム=ギンガナムは、月の民ムーンレイスの武を司り、勇武を重んじるギンガナム家の跡を継ぐべき存在として生れ落ちてきた。 それを当然のように受け入れ、幼少の頃から鍛錬に勤めてきたギムの誇りは、しかし158年前の環境調査旅行を境に裏切られることとなる。 月に帰還したディアナ=ソレルに軍を前面に押し立てた帰還作戦を主張したギムの父の言が、一言の元に退けられたのだ。 同時に『問題の解決に武力を使うことしか思いつかない者は、過去、自らの手で大地を死滅させた旧人類の尻尾である』と言葉を被せられ、ギンガナム家は軍を没収された。 以後、自害した父に代わりギンガナム家を統治することとなったギムであったが、そこには望んだものは微塵も残されておらず、虚しさだけが胸の内を占めていた。 そして、120年前、30代の終わりに差しかかったとき、ギンガナムの鬱屈が限界に達することとなる。離散していた旧臣を集め、クーデターを企てたのだ。 だが、事を起こした末路に待っていたのは無残な敗北だった。結果、形だけの裁判の末、永久凍結の刑に処され、120年の眠りに付くこととなる。 つまり押し込められ、追いやられ、爆発するも報われず、死んだように過ごしてきたのが彼の半生であった。 しかしだ。彼はここに来て生を実感していた。 幼い頃に夢見た乱世がここにある。血湧き肉踊る戦いがここにはある。心憧れた、絵巻物の中の存在に過ぎなかった黒歴史の英霊達がここには存在する。 そして、なによりも今自分は闘っている。闘っているのだ。これほど嬉しいことがあるか。 生まれて初めて、生が実感できる。生きていると思える。幼少の頃に望んだ自分が今ここには存在しているのだ。 だからこそギンガナムはこみ上げてくる歓喜の声を抑えることが出来なかった。 気持ちが高ぶる。全てがよく見える。体に力が漲っているのが実感できた。そして、それに呼応するかのようにシャイニングガンダムの出力が上昇していく。 想いを力に変えるシステム。まったく良く出来た相棒だ、と一人感心する。 相手は二機。蒼が動きを押し留め白桃が隙を衝いて来るのならば、白桃から先に始末するだけのこと。それに白桃の動きは蒼より劣る。サシの勝負で面白いのは蒼のほうなのだ。 蒼が消える。それを合図にギンガナムは猛然と突撃を開始した。 「芸がないな。マニュアル通りにやっていますというのは、アホの言うことだ! このギム=ギンガナムにぃ、同じ手がそういつまでも通用するものかよぉっ!!」 ◇ 突然、弾丸のように突撃を開始したギンガナムを見て、アイビスは考えたものだな、と一人ごちた。 ラキのバイタルジャンプは多少の揺らぎを持たせてはいるものの、死角への移動を基本としている。そして、攻撃は組合に持ち込むための剣戟が主体。 つまり、消えた瞬間に視界が開けている方向に高速で突っ込めば、攻撃に晒される可能性はきわめて低いのだ。そこを衝かれ、なおかつこちらに狙いを定めてきた。 ならばどうする? 決まっている。 (ブレン!) (……) (やるよっ!!) 今度は自分がギンガナムの打撃を受け止め、力勝負に持ち込み、ラキに隙を衝かせる。役どころが入れ替わった。ただそれだけだ。 歯を食いしばり、アイビスは受けの姿勢を取る。巨岩のような圧力を放つギンガナムを目の前に、大地をしっかりと捉え、構える。 「アイビス、受けるな! 避けろっ!!」 クルツの声だったが、遅かった。一度止まった足を動かすには彼我距離が近すぎる。 ならば、とソードエクステンションを両の手で掲げ、受ける。接触の瞬間、刀身を反らし、受け流す。受け流したはずだった。 天と地が逆さまに、視界が反転する。 巨大なダンプ、あるいは列車に撥ねられた人間のように錐揉み回転をしながらヒメ・ブレンが宙を舞う。 ブレンが大地に打ち付けられ、アイビスもまたコックピットにその身を激しくぶつけられる。意識が明滅し、追撃を予想して身を固くした。 が、次の瞬間襲ってきたのはギンガナムの追撃ではなく、クルツの怒声であった。 「馬鹿野郎! 真っ向から受け止めるなんて正気か?」 クルツの顔面越しに投影されたモニターには、ギンガナムと交戦を続けるラキの姿があった。恐らくは追撃をかけられる前に割って入ってくれたのだろう。 結局はまだ足を引っ張っている。その口惜しさが拳を固くした。 「うるさい。ラキは同じブレンパワードで止めてる。なら、私だって……」 「お前には無理だ。あれはお前には向いてねぇ、俺にもだ」 アイビスの抗弁をクルツは軽く受け流す。 そう。アイビスとラキでは受け方が違う。というよりラキの受け方が少々特殊だった。 通常の受けは相手に押し負けぬように足場を、土台をしっかりと安定させて受け止める。 対して、ラキはその場で受けようとせずに前に出る。受けるというよりはぶつけに行っていると言ったほうが正しいのかもしれない。 相手の一番力が乗るところでは決して受けず、前に出ることで打点をずらし、力を半減させ、自身の前に出る力をそこに上乗せさせる。言葉にすればそんなところだろう。 だが、それでようやく四分六で押し切ることが出来る。真っ当な受け方では勝負にならない。 それに互いの足が止まれば、やはりギンガナムの膂力がモノを言う。だから今モニター向うのラキは、受けの後瞬時に弾き、距離を置く戦い方に戻していた。 一機でギンガナムに抗うには、そうする他はない。 (ブレン、悔しいね……あいつらには出来て、私らには出来ない) 俯き、ブレンの内壁に添えた手にギュッと力を込める。 悔しかった。他人には出来て、自分には出来ない。それは落ちこぼれと言われているようで悲しい。悔しい。そしてなによりも自分の不甲斐なさは腹立たしかった。 そんな思いがその手には込められている。 「アイビス、ラキを羨ましがるんならお門違いだ。だが、そうじゃねぇ。そうじゃねぇだろ? ラキにはラキのブレンの扱い方がある。だったらお前にはお前なりのやり方ってもんがあるだろうが。違うか?」 「私なりの……やり方?」 見透かしたように掛けられた声に驚く。考えたこともなかった。 人を羨むのではない自分なりの乗り方。スレイにでも、ラキにでも、誰に対するでもない自分なりのやり方。こんな何でもないことなのに、考えたこともなかった。 No.1に対するNo.4。負け犬という別称。流星という不名誉な字。それらに引け目負い目を感じてきたのは、知らず知らずのうちに誰かに対する自分を意識していた証なのかもしれない。 「クルツ」 「ん?」 「ありがと。ただのスケベ親父じゃなかったんだ」 「おいおい、親父はよしてくれ。俺はまだ二十代だぞ」 「そっちに反応するんだ」 軽口を叩き、笑い、顔を上げる。目にキラリと光が灯る。また一つ憑物が取れた。そんな顔だった。 僅かに見たジョシュアの戦い方は、的を絞らせずに翻弄し攻撃をことごとく避けるものだった。ラキの戦い方は、避けることよりも受けることに重点を置いた戦い方だ。 この二人ですらアンチボディーの扱い方が大きく違う。どちらかが正解というわけではない。アンチボディーと自身の経験との折り合いを付けた場所が、そこというだけなのだ。 ならば自分は……いや、自分とブレンの戦い方は―― (……) (ブレン?) (……) (うん。わかった。やってみよう!) いつからかブレンの声が聞こえるようにもなっている。普通に会話も出来る。そのことに未だ気づかぬまま、アイビスは声を張り上げた。 「いくよ、ブレン!!」 視界の先には、ギンガナムに押しやられ、ついに体勢を崩したネリー・ブレンの姿がある。 そこへ跳び、ネリー・ブレンの真横にジャンプアウトした。叫ぶ。 「ラキ、ブレン同士の手を合わせて!」 「手を?」 「早く!!」 ギンガナムとの距離は既に幾許もない。そんな中、二機のブレンパワードが手をつなぎ、胸を張る。 次の瞬間に顕現するのは二体のブレンパワードが張り巡らすチャクラの二重障壁――ではなく、ただ一重のチャクラシールド。 しかし、二つのチャクラが混ざり合うそれは、強固な分厚い壁である。打ち付けられた拳とチャクラの間で火花が散り、拳を弾かれたギンガナムの姿勢が仰け反るような格好で崩れた。 その瞬間、ヒメ・ブレンは飛び出し、真っ直ぐに距離を詰める。 「ギンガナム、あんたは私の行為を偽善だと言った。でもね、人の為の善と書いて偽善と読むんだ!! なら、私はジョシュアのためにあんたを討つ!!!」 体勢が整う前に畳み掛けると決めていた。擦れ違い様にソードエクステンションによる横薙ぎの一閃。 しかし、ギンガナムもさすがと言うべきか、体勢が不完全ながらも咄嗟にアームカバーを構える。 固い金属音が鳴り、受けたギンガナムの体勢が完全に崩れ、仰向けにひっくり返った。この好機、逃す手はない。 「ラキ、合わせるよ! やり方はブレンが教えてくれる」 「ブレンが? ……ひっつく? くっつくのか?」 二機で小規模なバイタルジャンプを繰り返し、翻弄し、体勢を立て直させる隙は与えない。ラキが次の瞬間何処に現れるのか、それはアイビスにもわからない。 しかし、決め手を放つ瞬間、どこに現れ、どうすれば良いのか、それはブレンが全て教えてくれた。 「1・2・3」 タイミングを計る。体勢の崩れたギンガナムの右後方。ドンピシャのタイミングで二機はそこに現れた。 背中が合わさる。ブレンバーとソードエクステンションが、鏡合わせのように突きつけられる。その動きには寸分のズレさえも存在しない。 「チャクラ」 「エクステンション」 「「シュートオオオォォォォオオオオオオオオオオ!!!!」」 二つの銃口に光が灯り、濃密で重厚なチャクラの波が放たれる。巨大な破壊の力を携えたそれが、堰が決壊し氾濫した濁流の如くギンガナムへと猛進していく。 その光景の最中、突如として覇気に満ちた笑い声が大地を震撼させた。 「ふはははは……。これをおおぉぉぉ待っていたっ!!」 そう。ギンガナムはこのときを待っていた。かつて相対した男が最後に放つはずだった一撃。 それに酷似したこの一撃を真っ向から打ち破ることには二重の意味がある。すなわち、この戦いとあの男との戦い、二つの勝利。 「貴様らが七色光線ならばぁぁ、小生は黄金の指いいいぃぃぃぃいいいいいいいい!!!」 押し包み、瞬く間に呑み込まれて消えるその刹那、ゆらりと起き上がったシャイニングガンダムは左腕を無防備に突き出した。その指間接が外れ、隙間から染み出した液体金属がマニピュレーターを覆い、発光。そして―― 「喰らえっ!!! 必いいぃぃぃ殺っ!!! シャアアアァァァイニングフィンガアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアア!!!!」 その光り輝く左腕が荒れ狂うチャクラの波に真っ向からぶつかった。 真っ直ぐに伸びたチャクラエクステンションが、ギンガナムがいる一点で遮られ四方に拡散する。拡散した幾筋ものチャクラのうねりは大地を抉り、暴れ、阻むもの全てを破壊する。 だが、それで終わりではない。三者の激突は未だ続いている。チャクラエクステンションはシャイニングフィンガーただ一つで抑えきれるほど甘くはない。 強大な圧力に押さえ込まれ、ギンガナムは前に出ることが出来ない。いや、むしろ押されている。 重圧を一点で受け止める左腕は断続的に揺れ、ぶれ動き、機体を支える両脚は爪のような跡を残しながら徐々に後ろへと押し流され、爪跡はチャクラの濁流に呑まれて消え去る。 このままでは押し切られ、呑み込まれるのは時間の問題なのだ。だがしかし、ギンガナムに諦めの色はない。あるのはただ狂気的とも言える喜色のみ。 「ぬううぅぅぅぅぅぅっ!! 見事! まさに乾坤一擲の一撃!! 実に見事な一撃よ!!! だがなあぁぁぁっ!!!! この魂の炎! 極限まで高めれば、倒せない者などおおぉぉぉぉっないッッッ!!!!!」 押し流され続けるシャイニングガンダムの足が止まる。エンジンの出力が上がり続け、背面ブースターが限界を超えてなお唸りを上げる。 「シャイニングガンダムよ。黒歴史に記されしキング・オブ・ハートが愛機よ。お前に感情を力に変えるシステムが備わっているというのならああぁぁぁっ! 小生のこの熱き血潮!! 一つ残らず力に変えてみせよおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」 そのギンガナムの雄叫びを合図に、それは始まった。 機体の色に変化が生じる。白を基調としたトリコロールカラーから、色目鮮やかな黄金色へ。そして、機体を構成する全てのものが眩く発光を始め、闇夜を切り裂くチャクラ光の中に黄金が浮かび上がる。 変化は外見のみに留まらない。充溢する気力を喰らい天井知らずに上がり続ける出力は、計測器の針を振り切り、それを受けた推力は前進を可能にしていたのだ。 「ふはははは……このシャイニングガンダム凄いよ! 流石、ゴッドガンダムのお兄さん!!」 爆発的なスラスター光を背に感嘆の声を上げ、七色の輝きの中に飛び込んだギンガナムは激流に逆らい、遡上を始める。 その様は鯉の滝登り等という生ぬるいものではない。天を衝くが如き勢いと圧力を持って遡上し、そして、金色の光がチャクラの波を衝き抜けた。 「なっ!」 阻むものを失ったギンガナムの突進は、限界まで引き絞られた矢が飛び出すようなもの。 弾ける勢いでヒメ・ブレンの頭部を掴んだギンガナムは一筋の閃光となり、建ち並ぶ廃墟の群を物ともせずに突き破る。そして、その終着でヒメ・ブレンを天高く掲げ―― 「絶っ好調であるっ!!!!」 爆発。轟音を残して頭部を粉砕されたヒメ・ブレンが崩れ落ちる。同時に背後で異音。俊敏に反応し、切り結び、同時に飛び退いた。 ◇ 飛び退き、距離を取ったネリー・ブレンが瓦礫の海に足をつける。息を弾ませ、体を覆う疲労感にラキは顔を歪ませた。白い肌には赤み指し、紅潮している。 虚を衝いたはずの視覚外からの攻撃にも対応してみせる油断のなさ。加えて、奴の言をそのまま信じるのならば、あの闘争心がそのまま反映されるシステム。 つくづく厄介だというのが、率直な感想だった。 そう考えて、ふと自分らも似たようなものか、という思いを抱いた。アンチボディーはオーガニックエナジーを糧に動く。そこには人の放つものも含まれているのだ。 ならば、自分やアイビスの感情もまたブレンに力を与えているのだろう。そう思った。疲労感を押し隠し、気を張りなおす。 (ブレン、すまない。大丈夫か?) (……) (よし) 心を落ち着け、ブレンに声をかけると立ち上がらせる。その姿を前にギンガナムから通信が飛んできた。 「ほう。まだ戦う意志を失わぬか……見上げた根性と誉めてやろう。どうだ? ギンガナム隊に入らぬか?」 「悪いがお断りだな」 「ならば死に物狂いで戦うことだな。それにここで小生を倒せばジョシュアとやらの魂も救われるかも知れぬしなぁっ!!」 「ジョシュアはそれを望まない。人には戦いなど必要ないんだ」 本心だった。ジョシュアの弔いの為と思い定めて戦いはしても、どこか違うという思いは常について回っている。 不意にギンガナムが動く。早い。咄嗟に拳をブレンバーで受け止める。 「それは違うな。人は己の内に闘争本能を飼っている。 それを解き放つために戦いは必要なのだ! その為にこのような場が用意されている!!」 「本能の赴くままに戦い続ける姿のどこに人間らしさがある!」 言葉を返し、弾き、距離を取る。早いがついて行けないと言う程ではない。 揺れ動き、翻弄させるような動きを取りながら、ギンガナムが言葉を吐く。その口調には自身を正しいと信じて止まない傲慢さが込められていた。 「ならば聞く! 水槽の中で飼われている魚のような生のどこに人間らしさがある!!」 「どういう意味だ」 「外敵もなく、餌も十分に与えられ、安全で平和な住みやすい環境。それを世界の全てだと思い込んでいる。まるで飼われた魚の様ではないか。 だがなぁ、人間はそのような環境に息苦しさを覚える。だからこそ、ディアナは地上へ帰ることを望んだ。 だからこそ、このギム=ギンガナムは戦い、戦乱をもたらすのだ。人として生きる為になぁっ!!」 突如動きが変わり、強烈な一撃がラキを襲う。それをブレンバーで受け流し、攻撃に転じながらラキは反論を返す。 ギンガナムの言を受け入れることはジョシュアの、人として生きようとした自分の生き様を否定することだ。それは、死んでも受け入れることはできない。 「それは違う。確かに人は生きるために戦うことがある。憎しみにまみれて道を見失う者もいる。 だけど、それだけが人じゃない。それを私はジョシュアから、人から学んだ」 「だが、貴様は戦っているぞ!!」 受けたギンガナムが言う。シャイニングガンダムとネリー・ブレンの双眸が、ギンガナムとラキの眼光がぶつかり火花が散った。 巨大な重圧を伴ってギンガナムは圧し掛かってくる。そのギンガナムの言葉には迷いがない。だからこそ強く、なによりも危険なのだ。気を抜くと押し切られそうになる。 「そうだ。私は戦っている。私はメリオルエッセ……負の感情を集めるだけの働き蜂。所詮、人にはなれない。だから――」 唇を噛み締めて言う。渾身の力で押し返し、再び距離を取ったところで泣き出しそうになり、思わず言葉を区切った。 人にはなれない。それはある意味では分かっていたことだ。いくら憧れ、恋焦がれようとも、蛾に生まれついた者が蝶になることは適わない。 同じだ。私もメリオルエッセに生まれついたからには、人になることなど適わないのだ。 分かっていた。分かっていたが、どこかでそれを受け入れてない自分がいたことは、確かだった。 それなのに、今自分の言葉で肯定し、受け入れてしまった。それがどうしようもなく悲しい。 でも、それよりも受け入れ難いことが存在する。だからこそ泣き出したい思いで受け入れた。 人は私とは違う。私の周りにいた人は、負の感情を集めるためだけに作られた私に、それだけが人ではないと教えてくれた。 そんな人間が、憧れ恋焦がれた人間が、戦いを自ら望むような者であって良いはずがない。 私の傍にいた人が与えてくれたぬくもりは、そんな人からは決して得られないものだ。そう信じたい。 「だからこそ、貴様は私の手で止めてみせる!!」 「それは結構。だが、できるのか? このギム=ギンガナムをぉ!!」 切り結び、跳び、かわし、攻め、守る。目まぐるしく入れ替わる攻防ではあったが、バイタルジャンプを縦横無尽に駆使して、ギンガナムの動きをようやく幾らか上回れるという状態だった。 初手を合わせたときから比べ、ギンガナムの気力は満ち溢れている。それに伴ってシャイニングガンダムの基礎能力が桁外れに上がっていた。 動きが殆んど互角でも、力では圧倒されている。単機ならまだ渡り合えるという自負があったが、交戦能力を失った味方を二機も抱えていた。それは決定的に不利な要素なのだ。 それでも方法はあった。死ぬ気になればやることができるただ一つの方法が。 (……) (ブレン、落ち着け。仇は私が討たせてやる。それと私に遠慮はするな) (……) (恍けるな。お前が私を気遣ってくれているのは分かっている。でも、それじゃ駄目なんだ) 分かっていたことだ。ネリー・ブレンが自分を気遣い、自分の周辺に集まり渦巻いている負の感情のオーガニックエナジーを主として動いていたことは。 それはラキの負担を減らすためだろう。それに造られた生命であるラキのオーガニックエナジーは、自然の生命に比べると驚くほど希薄で弱いのだ。だがそれでも―― (……) (いいさ。ここで全て吸い尽くしていけ) (……) (すまないな。ありがとう) ブレンの説得を終え、しかし、息をつく暇もない。攻防は続いているのだ。 視界の端でギンガナムを捉えつつ、隙を見て通信をヒメ・ブレンへと試みる。 頭部を失ったヒメ・ブレン相手に通信が繋がるか不安はあったが、程なくそれが要らぬ心配だったということが証明された。通信は繋がった。 「アイビス……無事か?」 「うん。私は大丈夫。でもブレンが……ブレンが私のせいで……」 ギンガナムの攻撃を受けるその一方で盗み見たアイビスの表情は暗く沈んでいる。 アンチボディーは半分機械半分生物という特殊な存在だ。頭部を失うということは死を意味している。 それを自分のせいだと思い込み、責任と重荷を背負い込んでいるといった感じだった。その姿に一瞬頬を緩ませる。 やはり人間は優しく暖かいのだ。ブレンはきっとそんな人の優しさに魅かれたからこそ、人を必要とする体に生まれたのだろう。そう思った。 その一方で、無理だろうなとは思いつつ慰めの言葉をかける。 「気にするな。お前は精一杯やった。だれもお前を責めやしない。お前のブレンもきっとお前を恨んでやしない。 そして、これから起こる事もお前のせいではない。だから、気に病まないでくれ……そうなると、私は悲しい」 「えっ?」 伏せていた顔が上がるのを目の端が捉えた。バルカンを二発三発とかわしつつラキは言う。 「……私のブレンを頼む。こうみえても寂しがりやなんだ。きっとお前の力になってくれる」 「ラキ、あんた……」 「ジョシュアが最後に守った者を私も守れる。それだけで十分だ」 「違う。違うよ……ラキ」 顔を左右にふるふると振るわせるアイビスを無視して、言葉を続ける。 自分の声が湿り気を帯びていくのに辟易しながらも、どうすることも出来ない。 「アイビス、会えてよかった」 「ラキ、ジョシュアが本当に守りたかったのは私じゃない! あんたなんだ!! だから、だから一緒に生き延びよう……二人で生き延びる道もきっと見つかるからっ!!!」 耳に飛び込んできた声にハッと目を見開き、俯いた。出来ることならそうしたかった。でも目の前の現状はそれを許すほど甘くはない。 だから、ラキは一度だけギンガナムから視線を外し、アイビスを見て声を掛ける。努めて明るく、精一杯の笑顔で。 「本当はもっと落ち着いて話がしたかった。でも時間がない。アイビス、お別れだ」 「ラキ!!」 「盛り上がってるとこ悪いがな。お前らは死なねぇよ」 「「クルツ!!」」 突然割って入った声にラキとアイビス――二人から驚きの声が上がった。そんな二人に構うことなくクルツは飄々と言葉を繋げる。 「ラキ、お前がろくでもないことを考えてるのは分かってる。でも悪いな。こいつは俺が貰う。お前はアイビスと行け」 「何、無茶なことを言っている。その半壊した機体でこいつを押さえられるはずがないだろう」 「無理だよ、クルツ。あんた一人ならまだ逃げられる。機体が動くのなら逃げて」 「うるせぇっ!!! うるせぇよ……行きたいんだろ? 本当はそいつと行きたいんだろうが!!!」 「それは……」 言い澱み、覚悟が揺らぐ。 諦めたはずの先を突きつけられ、そこにいる自分を連想してしまい、生きたいという衝動が膨らむ。思わずクルツの言葉に縋りつきたくなり、浅ましいと自分で一喝する。 そんな心の機微を見通してか、クルツは言葉を畳み掛けてきた。 「行けよ。とっとと行っちまぇ! いいか? 勘違いするんじゃねぇぞ。俺はお前の代わりにこいつの相手するんじゃねぇ。誰かの代わりなんて真っ平ごめんだ。 俺は俺が好きでこいつの相手をするんだ。こいつは俺の我侭なんだよ。あいつと一緒に行くのはお前の我侭だ。だったら、我を張れよ。押し通せ。 会ったときからお前は我侭尽くしだったんだ。いまさら変に遠慮なんてしてんじゃねぇっ!!」 「しかし、お前は……」 「俺は俺の我を通してここに残る。お前はお前の我を通してあいつと行く。それで全部まとめてオールO.K。円満解決。大団円だ。違うか? 違わねぇだろ。 分かったか? 分かったら、さっさと行っちまえよ。お前らがいると邪魔なんだよ。気になっちまって、切り札が切れねぇ」 「ならばそのカード、小生が切りやすくしてやろおっ!!」 「ッ!!」 クルツに気を取られすぎていた。気がつけばギンガナムが間近に迫っていたのだ。 近いっ! 近過ぎる。回避も何も、全てが間に合わない。直撃? 当たるのか? くらうのか? くらえば―― 豪腕を目前にぞっと全身が怖気立ち、肝が冷えた。思わず目を閉じ、首を竦める。身を固く小さくして来るべき衝撃に備える。 しかし、その瞬間はついぞ訪れなかった。変わりに怒声が飛んで来る。 「何やってんだ! 早く行け!! ちんたらしてんじゃねぇ! 今すぐ走れ!!」 恐る恐る開けた視界に、いつの間に忍び寄ってきたのか、ギンガナムに背後から組み付くラーズアングリフの姿が映しだされる。 「ク……ルツ?」 「さぁ行け! 行くんだ! 行って、俺の代わりに二人であの化け物に一発かましてこい……頼んだぞ」 目が合い、気圧された。その目には一本の筋が通った、ぴんと背筋の伸びた胸に迫る何かがある。 それに抗おうと胎に力を込めたが、一度揺れた覚悟はそれを押し返すまでの強さを持ってはいなかった。 乾いた口が動く。何度か唾を飲み込み、何度も言葉を喉元で押し殺したその口は、しかし最後には辛うじて聞き取れる程度の声で喉を震わせた。 「……すまない。頼む」 「いいってことよ。任せろ」 陽気な、いつもと変わらぬ声が耳朶を打つ。悲壮さなど微塵も感じさせない、ちょっとした用事を引き受けるような、そんな声だった。 クルツとギンガナムに背を向け、ネリー・ブレンが跳ぶ。 決めた以上、戸惑ってはならない。速やかに動かなければクルツの覚悟に水をさすことになる。それが、似たような覚悟をほんの少し前まで決めていたラキには、痛いほど分かっていた。 ジャンプアウト。物言わぬヒメ・ブレンを抱え上げる。アイビスが文句を言ってきた。その気持ちも、やはり痛いほどに分かる。 だがそれに耳を貸すわけにはいかない。例え恨まれようと構わない、とラキはその場からの離脱を開始する。 普通に長距離のバイタルジャンプを行う余力は、もう残されていなかった。 ◆ 赤い戦車のような人型機動兵器が投げ飛ばされ、瓦礫の海に埋没した ラキとアイビスが離脱を開始して数分。ずぶずぶと上下逆さに埋没していく機体の中、クルツは一人ぼやく。 「やれやれ、こんなつもりじゃなかったんだけどな。こういうのを親心って言うのかね」 本当に初めて会ったときから世話のかかる奴だった。意見は食い違うわ、一度決めたら梃子でも動かねぇわ、自分勝手に動き回るわで、本当に面倒ばかり掛けやがる。 でも気持ちのいい奴らだった。 にしてもついてねぇな。こんなとこに呼び出されてまでして、俺、何やってるんだろうな……。 「……まぁいいさ。悪かぁねぇ」 がばっと起き上がり、コンクリートの破片を跳ね除けながら呟いた。 ああ、そうさ。悪かぁねぇ。女を守って死ぬ。男として最高の死に様じゃあねぇか。あんたもそんな気分だったんだろ? ジュシュア=ラドクリフ。 ふぅ~っと長い息を吐く。横目でちろりとこれから命を賭ける相手を見やり、リニアミサイルランチャーを突きつける。 「悪いな、大将。俺の我侭に付き合ってもらってよ」 「貴様がその半壊した機体で何をするのか興味があってな。だが、空の銃では小生は倒せぬ。そこのところは分かっているのか?」 クルツが最も懸念していたこと、それは無視をされ二人の後を追われることだったが、どうやらその心配はなさそうだった。人知れず胸を撫で下ろす。 敵さんは、こちらの手札に興味津々なご様子。ならどうすればいい? 簡単だ。挑発して好奇心を呷ってやればいい。そうすればもう少し時間を稼ぐことが出来る。 「知ってるか? プロってのは、弾を撃ち尽くしても最後の一発ってのは取っておくもんだ。本当にどうしようもなくなっちまったときに自分の頭を撃ち抜く為にな」 「下らんな。己の頭を自ら撃ち抜くぐらいなら、その一発で相手を倒すことを考えるべきだ。 最後まで相手の喉下に喰らいついて初めて一人前の兵士と言える。貴様もそうだろう……違うか?」 「そういう考え方もありっちゃありなんだが……。勿体つけといて悪りぃんだけど、実は弾なんか残っちゃいねぇんだな、これが」 リニアミサイルランチャーを手放す。瓦礫で跳ねたそれが乾いた音を立てた。 からかわれたとでも感じたのかモニター越しの表情が怒り、睨みつけてくる。想像以上に単純な奴だ、とほくそえんだ。話術では負ける気がしない。 「短気は損気。そう怒りなさんなって……。代わりにギンガナム、あんたには別のもんをぶつけてやるよ」 「ふんっ! 貴様のごとき雑兵の命一つで小生を止められると本当に思っておるのか?」 完全に臍を曲げたらしい男を前に急にクルツの目つきが変わった。 「馬鹿言っちゃいけねぇな。あんたに生き残られちゃ、せっかくのお涙頂戴シーンが台無しだ。 それになぁ、お前さん自分のこと買いかぶり過ぎだ。こちとら戦争屋。弾なんざなかろうが、手前を倒す手段なんざいくらでも思いつくんだよ。塵一つ残さねぇから覚悟しろい」 「吠えたな」 「吠えたさ」 売り言葉に買い言葉。睨み合い。互いの鼻が白み。直ぐに二つの哄笑が廃墟に木霊し始めた。カラッとした笑い声が大地を包む。 「面白い! ならばきっちり殺してみせろよ!!」 「上等だ! そろそろ行くぜ!!」 時間は十分とは言えないが稼いだ。もう巻き込む心配も多分ない。あとは俺が上手くやれば万事オッケー、全ては上手く収まる。 シザースナイフを抜き放ち、握り締める。 接近戦の不利は百も承知。格闘戦における技量の低さは自覚していた。だがそれでもラーズアングリフに残された武器はそれしかない。 「来いっ!!!」 腰を低く落とし、ギンガナムの声を合図に猛然と突進を開始する。敢行したのは命がけの接近戦。 だが、それは余りにも馬鹿げた行為だった。ただでさえ鈍重なラーズアングリフである。脚部を損傷した現在、ギンガナムと比べるまでもなく動きは鈍重を極めている。 動きは鈍く、勢いも無ければ、切れも伸びも無い。ギンガナムから見れば凡庸も凡庸。ただ愚鈍なだけの特攻としか映らなかった。 ゆえにギンガナムは激昂した。軽んじられた。甘く見られた。そういう思いが有り、自尊心についた傷が感情を刺激したのだ。 「どんな隠し玉があるのかと思えば、ただの特攻とは……実に下らん!!」 ギンガナムが動く。ラーズアングリフの鈍重さに比べ、その動きは遥かに素早い。 「小生を愚弄した罰だ!! DNAの一片までも破壊しつくしいいぃぃぃいいいい、鉄屑にしてやるっ!!!」 間合いが瞬時に潰れる。ギンガナムが放った手刀は、頑強な装甲の継ぎ目を狙う一突き。 右胸を貫かれるその寸前、クルツはシザースナイフを投げ捨てた。右腕で逃さぬようシャイニングガンダムを抱きしめる。 「野郎に抱きつくなんざ趣味じゃねぇが……この時を待っていたんだよ!」 「何だこれは! この馬鹿げた熱量は!! 貴様ぁ、一体何をした!!!」 キーボードに指を滑らせ、一つの文字列を叩き込んだ。それは祈祷書の『埋葬の儀式』の一節を捩ったシャドウミラーの自爆コード。 その真髄は機密保持の為、後には何も残さない絶対の破壊。文字通り全てを無に帰す力。 即ちコード名―― ――Ash To Ash―― 「別に大したことなんざしてねぇよ。ただ土に還るだけさ。俺もお前もなっ!!」 勝利を確信し、誇らしげに笑ったクルツを光の海が包み込んだ。 →Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(4)
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護るために ◆tgy0RJTbpA 背の高い木々が乱立する森林がある。 その合間を縫うように陽光が差し込み、薄く森の中を照らしている。 光を受けるのは木々だけではない。 地にひざまずくようにしている緑色と白に塗り分けられた巨人が光の下にあった。 腕の外側、折り畳まれたアームが特徴的な巨人は森林に影を投げかける。 その影に隠れるように立っているのは黒髪の少年だ。少年は腕を震わせ、巨人を殴りつける。 「ざけんな……」 呟くような声だが、力ない声ではない。どこかから聞こえる川音を除けば、他に音は聞こえない。 風さえも、吹いてはいなかった。 「ざけんな、ざけんなッ!」 少年は巨人に思いをぶつけるかのようにして口を開く。まるで、呪詛の言葉を紡ぐようだ。 夢だと思いたかった。悪夢だと信じたかった。 だから、もう一度巨人に拳を叩きつける。返ってくるのは鈍い音と痛みだ。 あくまでこれは現実として、少年――神名綾人にのしかかる。 逃げ出したかった。だが、それは容易ではない。確かな戒めが、ひんやりと首に巻きついているからだ。 常に死神の鎌を首に当てられている。そんな感覚が、現実になったようだ。 とてつもなくリアルだった。 以前、ドーレムによって現実とは違う世界に送り込まれたことがある。 あのときは、リアルではなかったために心を掻き毟られた。だが、今は正反対だ。 あまりにも鮮明なリアリティが、綾人を掻き乱している。 不安だった。そして、その不安を共有出来る人はいない。自分は、一人ぼっちだ。 綾人は思う。朝比奈もこんな気持ちだったのだろうか、と。 そのことを考えた瞬間、綾人は弾かれたように顔を上げる。現実を恐怖するあまり、大切なことを忘れていた。 「朝比奈……」 呟くと、背筋がゾッとした。恐れが原因ではない。ここにいない人のことを想っての震えだ。 今、自分はここにいる。たった一人で、ここにいる。 ならば。 朝比奈浩子は、今も一人で震えているのではないだろうか。 あの部屋でたった一人、孤独と恐怖に押しつぶされているのではないだろうか。 自分たちの住んでいた世界が偽りの箱庭だったこと。心を許せる人がいないということ。 そして――青い血が流れているということ。 知らない世界で、そんなことを心に燻らせ、震えているのではないだろうか。 綾人は巨人に叩きつけたままの手を離し、見上げる。 こんなことをしている場合ではなかった。早く帰って、朝比奈のところに行かなければ。 生き残らなければならない。決めたのだから。必ず護ると、決めたのだから。 だから、戦おう。生き残って、元の世界へ帰ろう。 「護るんだ。俺が、朝比奈を」 力を込め、そう呟く。自分自身を鼓舞するために。決意を染み込ませるように。 「やってやる。やってやるよ……!」 綾人は巨人に乗り込む。護るために、戦うことを決意して。 【神名綾人(ラーゼフォン) 搭乗機体:アルトロンガンダム(新機動戦士ガンダムW Endless Waltz) 現在位置:B-5森林地帯 パイロット状態:健康 機体状態:良好 第一行動方針:帰るために他の参加者を探し、殺す。 最終行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残り、元の世界へ帰る】 【初日:12 30】 BACK NEXT 赤い彗星 投下順 人とコンピューター 仮面の舞踏会 時系列順 ホワイトドール BACK 登場キャラ NEXT 綾人 黄色い幻影
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機体がビルの側面に叩きつけられるのをすんでのところでアムロは回避する。 スラスターを、オーバーヒートを起こさんばかりに放出し、どうにかF-91を破壊から遠ざける。 「これが……ノイ・レジセイアの力だというのか……!?」 圧倒的なほどの強さだった。 今、アムロ達は五機がかりでレジセイアに立ち向かっている。 だというのに、『戦っている』という実感すらなかった。 獣のような読めない動きと異常なまでの俊敏性。そして異常過ぎるスラスターの出力。 直撃を当てることはおろか、小技がかすることさえまれ。 だというのに、当たっても通じない。 しかも、再生機能までついている。 「ハハハ……それが……完全の欠片か……」 「言っている意味が分からないな!」 「分かる必要もない……」 蒼い孤狼のスラスターの横の姿勢安定用ウィングが展開。 鈍重に見える外見からは想像も出来ない程のスピードで疾走を始める。 先ほどシャギアがへし折ったはずの角が再生し、赤熱化だけに留まらず電光を纏い振り上げられる。 目の前で戦っていたフォルテギガスが、その目標だった。 回避が間に合わない。さりとて、援護も間に合わない。 フォルテギガスが腰をおろし、その場で姿勢制御用のフィンを展開した。 そのまま、角を避けて体当たりを仕掛けるつもりだとアムロには分かった。 大型機同士の大質量が衝突し、衝撃波で空気を震わせる。 だが、こう着の後吹き飛んだのはフォルテギガス。 全身から脱落した装甲を周囲にふりまきながら、車か何かにひかれた人のように吹き飛び大地を転がる。 身長は、フォルテギガスは蒼い孤狼の1,5倍もあるにも関わらずだ。 だというのに、フォルテギガスが痩躯の人間、蒼い孤狼は大型トラック。 それだけの差があった。 「脆い……無限ではない……!」 蒼い孤狼の背後に、バイタル・グロウブの僅かな歪みによる光が洩れた。 アムロもそれに合わせて、ヴェスバーを牽制に発射する。 重力を感じさせない軽やかな動きで何度となくアイビスのブレンパワードが切りつける。 着弾するヴェスバーをすり抜けるように何度も何度も。 蒼い孤狼は、その中笑っていた。 蒼い孤狼の左腕が、消える――いや、こちらの認識を超える速度で振るわれる。 バイタルジャンプによる回避は間に合わない。アイビスのブレンが一直線にビルへと激突した。 「ブレンパワード……似ているが……我ほど完全ではない……」 蒼い孤狼には、寸分のダメージも感じられない。 小柄なブレンやガンダムのそよ風のような攻撃では、孤狼という大木を揺るがすことはできない。 蒼い孤狼が、吹き飛ばしたブレンをカメラ追った隙に、 ブレンとガンダムより大きなサイバスターと凰牙が格闘を仕掛ける。 「中尉! あなたはもういないんですかッ!?」 カミーユの言葉をあざ笑う蒼い孤狼。 二人に追撃する形でアムロも操縦桿を前に倒しF-91を動かした。 ギンガナムが遺したビームソードを引き抜く。 「立って、ブレン!」――ブレンも、アイビスの言葉を受けて傷ついた体を動かし、飛び込んでいく。 ニュータイプのアムロには、ブレンの痛みが分かった。 フォルテギガスも、フィガをツインブレード状に変えて切りかかった。 五機一斉の集中格闘攻撃。 「とどけぇぇぇぇ!!」 アイビスの声が、鼓膜を打つ。 回転し唸りを上げる凰牙の拳が蒼い孤狼の顔を。 フォルテギガスのストームブレードが蒼い孤狼の左肩を。 サイバスターのディスカッターが蒼い孤狼の右腕を。 ブレンのソードエクステンションが蒼い孤狼の背中を。 そして、F-91のビームソードが蒼い孤狼の脚部を。 「ハハハ……ハハハハハ……! それが……銀河を変える……力……!? 」 音無き鋼鉄の咆哮。 全身を抑えつけられているのを無視し、体を振るう。 振り回される腕。開口した肩。両腕にある無骨な5連チェーンガンとハンマー。 全身の火器がまとめて火を噴いた。 花火がさく裂したように昼間の明るさに変わる。 「ぐああ……っ!」 千差万別、古今東西の別種の機体が、一様に吹き飛ばされる。 まずい。最初は疲れがなくかわせていたが、全員少しずつ動きが鈍り被弾が増えてきている。 もし誰かが撃墜されれば、即座に詰みだ。 五 対 一 だからこそできている拮抗状態は、あっさりと崩れ去るだろう。 「―――あれさえ決められれば……」 口から自然と漏れる呟き。 ギンガナムを倒したあれを決められれば、おそらく勝ち目も見える筈だ。 今は攻撃を気ままに受けてくれている。 だが、先ほどのシャギアのライアットバスターから分かるように、 おそらく危険な攻撃となれば回避しようとするだろう。 そうなれば、あの異常なスラスターなら緊急回避もたやすいはずだ。 フォルテギガスとサイバスターが何度も果敢に突っ込んでいく。 「弟を殺したことを……後悔するがいい!」 「やっちまえ、シャギアさん!」 「中尉……もう、あなたがいないというなら俺は躊躇しない!」 勝ち目が見えぬまま、突っ込んでいく三人。 アムロは、自分が一歩引いてしまっていることを自覚した。 あれほど我武者羅に突撃できない。冷静な戦略が、などと言いながら下がってしまう。 今、一番エネルギー消費や機体の新しい消耗が少ないのはアムロだろう。エネルギーは8割近く残っている。 ゴッドフィンガーは一撃限りの必殺技だ。気力、エネルギーともにほぼ限界まで消耗してしまう。 つまり、事実上戦線離脱は確実。 だからこそ、アムロは決め切れない。 もしも自分が外せばどうする? それこそ、敗北の決定的な一歩を作ってしまう。 敗北できない戦いなのだ。うかつなことはできようもない。 「飛んで、もっと、もっと――!」 何度もはじかれる二機への追撃を許すまいと、アイビスのブレンが距離を詰める。 その動きは、さながら戦闘機の妖精だ。高速機動と瞬間移動を組み合わせ、一定の距離を保ち蒼い孤狼を翻弄している。 シャアとともに初めて会った時の弱気さと、自信のなさが嘘のようだ。 アイビスも必死に、ひたむきに、ブレンと力を合わせ眼前にある最悪の現実と戦っている。 下手にもらえばそこで終わるというのに、そのことを恐れずに。 ―――俺は、どうだ? アイビスと似たり寄ったりの状況だというのに日和ってはいないか。 戦いに雑念を混じらせれば死ぬだけ。なのに、これはどういうことなのか。 「……届かない……足りない……」 ついに、アイビスが被弾する。 『く』の字に体を降り、吹き飛んで行くブレン。 しかし、それが大地に激突するより早く、凰牙が拾い上げた。 「ごめんなさい……!」 「気にすることはない。君はよくやっている」 凰牙が全体を見据え、腕から放つ竜巻でけん制しては動き回って別の機体のフォローをする。 黒ずくめの伊達男、ロジャー・スミス。交渉術で培った冷静さで、必死に戦っている。 「ロジャー、そちらはどうだ!?」 「まだ、ファイナルアタックを使用するだけのエネルギーは残しているつもりだ。だが……」 ロジャーも、アムロのゴッドフィンガーに似た攻撃としてファイナルアタックを持っている。 だからこそこういう立ち回りをしているのだろう。 だが、という言葉の後はアムロにも分かる。おそらく、同じ苦悩をロジャーも感じているのだろう。 その時、気付いた。ロジャーの腕が震えている。 そのことに、声を失ったアムロを見て、ロジャーは食いしばりながら答えた。 「恐怖は、この謂われのない不条理な感情は、生理反応でしかない。……理性で克服できるはずだ」 ロジャーもまた、蒼い孤狼が口を広げる領域に飛び込んでいく。 蒼い孤狼と凰牙が撃ち合うたびに、火花が散る。その中、何度倒れても起き上がりフォルテギガスが突撃していく。 サイバスターも、不死鳥へ姿を変えて突進する。 誰もが、戦っているのだ。 恐怖そのものと。恐怖を塗りつぶすほどの怒りの中。 恐怖を乗り越えた情熱で。 ―――俺は、どうだ? ただ、気配に呑まれていただけじゃないか? ギンガナムと戦い黒歴史を知り、 ガロードを失ったことを突き付けられ、 シャギアに憎しみをぶつけられ、 目の前の大きな恐怖に呑まれていただけではないのか? キラを戦いに遠ざけた時から何かずれていなかったか? 「情けない奴……!」 かつてシャアに言った言葉がそのまま自分に跳ね返る。 賢いフリ、賢明なフリをして下がって傍観する。若い時、自分が憤った大人の姿そのものではないか。 若者――未来が戦うならば、俺たちはそれを守るのが役目だろう。 だというのに、戦うことそのものを奪ってしまって何の意味がある。 これが年を取るということかと納得まではしたくはない。 だが、それでも。 何度でも立ち上がり勝利を目指す者たちの道を切り開く。 ――それが、俺たちの役目だろう、シャア。 F-91が光輝に包まれる。 展開される三枚のフィン。金色の輝きが、全身を包み込んでいた。 ギンガナムを一方的に屠り去ったバイオコンピューターの最終形態――F-91・スーパーモード。 それが今、蒼い孤狼を前にして再び現出する。 このまま消耗を続けていては、勝ち目はないなんてことは分かっていた。 仮に勝っても、残り二つの壁を越えることなどできようか。 なら、どこかで勝負の流れを引き寄せる一手が必要になるのは当然なのだ。 それを躊躇していた自分をアムロは恥じる。 金色の矢となってアムロは突き進む。蒼い孤狼も危険を察知したのだろう。 目の前に相対していたフォルテギガスを無視し、F-91に向き合った。 その拳を、蒼い孤狼が受け止める。 「これか…… これが……」 蒼い装甲が砕け、中から爆ぜる。それとともに、大地に落ちて音を立てる銃口の花束。 ついに、孤狼にダメージらしいダメージが通った。F-91がビームソードを引き抜き、叩きつけようとする。 だが、それより前に、蒼い孤狼の肩から無数のベアリング弾が飛び出した。 装甲解放、射出のタイムラグは先ほどまでと変わって、まったくない。 F-91のバリアフィールドとクレイモアがぶつかり合う。 「ぐっ……!」 その規格外の巨大なクレイモア。 最初バリアで逸らせたが、徐々に貫通しかねない勢いになっていく。 ベアリングの嵐で動くこともできない。このままでは、やられる。 だがそれも一人だけならば、だ。 F-91のバリアの陰に隠れるようにブレンが現れる。 次の瞬間、バイタルジャンプが再び行われクレイモアの中からF-91を救いだした。 ベアリングをばらまきながら方向転換をする蒼い孤狼。無差別に破壊が周囲にまき散らされる。 しかし、再び破壊がF-91を捕らえるよりも速く、蒼い孤狼の肩が爆ぜる。 離れた場所で倒れながらもオクスタンライフル・Wモードを構えるサイバスター。 その一発が、正確に肩の爆薬を打ち抜き、誘爆させた。 蒼い孤狼は爆発にのけぞる勢いを利用し、武器のハンマーを振り回す。 ハンマーの鎖が、別所から飛んできたハンマーのビームワイヤーにからめとられた。 バランスを崩しつつあった状況のため、踏ん張りがきかずガンダムハンマーはその手から引き抜かれる。 大地にがっしりと足を降ろし、ハンマーのワイヤーを引くフォルテギガス。 行ける、押し切れる! ブレンから離れ、F-91は再び蒼い孤狼の支配する距離へ飛び込んでいく。 「完全に近い……生命の……欠片!」 「うおおおおおおおおおおおッッ!」 ビームソードにその力を収束させる。伸びるゴッドフィンガーソードが、空を割る。 蒼い孤狼もいまだ戦意は失せていない。大地で待つ気もなく、スラスターの加速で空へ走る。 裂帛の勢いで放たれる右手の杭打ち機。凰牙のタービンから放たれる竜巻が、蒼い孤狼をあおる。 大地に足を下ろしてのインファイトなら、この程度ではびくともしないだろう。 しかし、今蒼い孤狼がいるのは空。僅かではあるが風で蒼い孤狼の姿勢が崩れた。 杭打ち機は、バリアを容易に引き裂きはしたが、F-91の本体には届かない。 アムロの目の前にあるのは、がら空きになった蒼い孤狼の胸。 (すまない……今は、そちらごと!) 心の中で、ノイ・レジセイアに乗っ取られた哀れな男に謝罪する。 そして、アムロは赤い球の下にある、コクピットブロックに深くゴットフィンガーソードを差し込んだ。 蒼い孤狼の、全身の間接から光が漏れる。 ゴッドフィンガーソードに、バチリと雷光が起こる。 「これは……!?」 次の瞬間、超高電流がアムロの体を打った。 →moving go on(3)
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ホワイトドール ◆caxMcNfNrg 「これ・・・髭のない、ホワイトドール?」 それが、支給された機体に対する少女の感想だった。 白を基調とした色の機械人形・・・ホワイトドール。 機体の姿形こそ、彼女の知識にあるものとは違うが、 それは少女のよく知る黒歴史の遺産と酷似していた・・・ 数十分後、素早く操縦法をマスターしたソシエは、 南北に走る道路の上空を、南へと向けて下っていた。 (他の人たちと・・・皆と力を合わせれば、あんな化物でも倒せる!) そう、それに、こちらにはホワイトドールがあるのだ。 「髭が無くったって、ホワイトドールはホワイトドールよ!」 少女は知らない。その機械人形は黒の暦に記されているような物ではないという事を。 ―――――――――皆様、類似品にはご注意しましょう――――――――――― 【ソシエ・ハイム 搭乗機体:機鋼戦士ドスハード(戦国魔神ゴーショーグン) パイロット状況:良好(機体がガンダム系だと勘違いしています) 機体状況:良好(AIは取り外され、コクピットが設置されています) 現在位置:E-5空中を南下中 第一行動方針:仲間を集める 最終行動方針:主催者を倒す】 【時刻 12 30】 BACK NEXT 金髪お嬢とテロリスト 投下順 邪龍空に在り 護るために 時系列順 黄色い幻影 BACK 登場キャラ NEXT ソシエ パンがなければお菓子をお食べ
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Night of the Living Dead ◆ZbL7QonnV. ごうごうと燃え盛る炎に呑み込まれ、全てが灰の中に消え去ろうとしていた。 木も、草も、花も、なにもかもが燃え落ちていく。 この場で起きた戦いの痕跡を消し去ろうとするかのように、炎の顎は飽く無き暴食を続けていた。 ……だが、それは如何なる悪魔の導きか。 その燃え盛る火よりも尚紅い機体は、炎の中より起き上がろうとしていた。 ガンダムレオパルドデストロイ―― 本来ならば炎の中に消え逝くはずだったそれは、まるで墓場の底から蘇るゾンビのように、ゆっくりと立ち上がり始めていた。 パイロットであるギャリソン時田の命は、既に無い。マスターガンダムとの死闘によって、とうの昔に失われている。 だから今現在機体を操縦しているのは、彼であろうはずもなかった。 だが、それならば誰が? この劫火に覆い尽くされた森の中、レオパルドを操縦しているのは誰なのか? ……その疑問に対しては、こう答える他にない。 かつてギャリソン時田であり、そして今は不死の怪物になった者、と。 そう。レオパルドのコクピットに居るのは、DG細胞に侵食されてゾンビ兵と成り果てた、ギャリソン時田その人であった。 あの時――マスターガンダムに敗れ去った後、ガウルンに植え付けられたDG細胞は、レオパルドを汚染する事に成功していた。 それも、コクピット内部に放置されていたギャリソン時田の死体ごとである。 その結果、ギャリソンの死体はゾンビ兵に変化。DG細胞の自己再生機能によって回復したレオパルドと共に、今一度の“生命”を得る事に成功したのである。 もっとも、それはギャリソン本人にとっては、望まざるべき事だろう。 かつての記憶も感情も無く、ただ目に付く物を破壊する事しか出来ない、DG細胞の操り人形。 そんなものに身体を作り変えられて、喜ぶ人間など居ようはずもない。 だが、皮肉なものだ。DG細胞に全身を犯された今のギャリソンは、もはや何を思う事も、何を感じる事も無い。 ただ、死体を弄ばされているに過ぎないのだから……。 「……………………」 装甲に穿たれた無数の傷跡が、ゆっくりと銀の細胞に覆われていく。 ずしん、ずしんと重厚な足音を轟かせながら、ガンダムレオパルドデストロイは燃え盛る森を後にしていった……。 【ゾンビ兵 搭乗機体:ガンダムレオパルドデストロイ(機動新世紀ガンダムX) パイロット状況:DG細胞感染 機体状況:ダメージ中、コクピット損傷、全武装弾数残少 ヒートアックスとビームナイフは非装備、DG細胞感染 現在位置:B-5密林(大規模な火災が発生中) 第一行動方針:破壊 最終行動方針:??? 備考:DG細胞の働きにより、機体に自己再生機能が備わりました エネルギーと弾薬は自己再生機能により少しずつ回復していきます ゾンビ兵を排除すれば、レオパルドを他の人間が操縦する事も可能です DG細胞に感染した存在(ガウルン、マスターガンダム)に対して反応を示す可能性があります 機体の形状が変化するほどの自己進化は行いません ギャリソン時田の記憶や戦闘経験は完全に失われています】 【初日 20 30】 本編119話 未知との遭遇