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【登録タグ あるめ@psy その他の文字 曲 氷山キヨテル】 作詞:春風なつき 作曲:あるめ@psy 唄:氷山キヨテル コーラス:初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカ、miki、歌愛ユキ 曲紹介 青い人への嫉妬に身悶えるボカロ先生を楽しんでいただければ幸いです。(作者コメより) 歌詞 秘密のノートに綴る あなたの観察日記 彼と 彼女の 詳細情報が永遠続く 幸せそうに笑うその顔 壊してやりたい 繋ぐ手も 見つめあう視線も 私に向けて欲しいのに やめて、やめて、やめて、やめて どうして私じゃないの どいて、どいて、どいて、どいて そこは私の場所なの びりびりに破いて 捨ててやりたい あなたと彼女の関係全てを 「delete押したら 消えればいい」 そんな私の悪足掻(わるあが)き 秘密のノートに綴る あなたの観察状況 彼と 彼女の 詳細部分が永遠続く 楽しそうに笑うその顔 壊してやりたい 話す相手も 歩幅も距離も 私と一緒がいいのに やめて、やめて、やめて、やめて 見ないで、触らないで どいて、どいて、どいて、どいて あなたには似合わないの びりびりに裂いて 無いことにしたい あなたと彼女の関係全てを 「delete押せば 今までの 記憶 綺麗に 消えればいいのに」 ごめんなさい でも あきらめられないの だから びりびりに裂いて 無いことにしたい あなたと彼女の関係全てを 「delete押したら 消えればいい」 そんな私の悪足掻き 許してください コメント 青マフ「MEIKOさんは、僕の伯母さんですよw」 -- 名無しさん (2011-05-01 12 08 04) この曲大好き(笑) -- 名無しさん (2012-12-22 08 34 04) 名前 コメント
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彼女の母親~ウチの娘だと思って…ね?~ 21 :名無したちの午後:2010/04/04(日) 19 09 37 ID XPcnaGOeO ・彼女の母親~ウチの娘だと思って…ね?~ サンプルの手コキっぽい絵に釣られて購入したが、大外れ。 精液暴発させたチンコを拭いていたら大きくなってしまいフェラで射精させたってだけでした。 他にコキシチュがあるわけでもなく、とんだ無駄遣いだったぜ。 関連レス
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オフの日の昼下がり。 大きな窓から差し込む日差しと、コーヒーの香りが広がる部屋で、ソファにゆったり座って雑誌を読む。 ゆっくり流れるこんな時間が、私は何物にも変えられないほど幸せだった。 そして、その幸せは、隣に愛しい存在が寄り添ってくれているかどうかで、その度合いが大きく変わってくるのだ。 ――― 愛しい緑のあの子がいるかどうかで。 「シェリルさん!」 耳に馴染んだ澄んだ声に名前を呼ばれて、読んでいた雑誌からそっと視線をそちらへ移す。 そこには満面の笑みのランカちゃん。 ソファの上に両手を突いて私を見上げるその姿が、子犬が「遊んで、遊んで」と飼い主にせがんでるそれと重なって、自然と笑みが零れた。 私はどうにも彼女のその姿に弱くて、その姿を見ると、ついついその柔らかな髪を撫でてしまう。 手を伸ばして緑の髪を一つ梳くと、私がいつもそうした時と同じように、ランカちゃんは擽ったそうに肩を竦めた。 「どうしたの?」 髪を弄りながら問いかけたら、ランカちゃんは、ずい、とこちらへ身を乗り出した。 その表情がさっきよりも、何だか得意げになってる気がするのは私の気のせいかしら。 「あの、シェリルさんって、その、……キスとかって、ええっと、経験、多い方ですか?」 その質問の指す意味に、一瞬、髪を撫でていた手が止まった。 ――― “経験”というのは、回数の事を聞いているのだろうか。 その意図を考えたけれど、目の前の彼女は相変わらず嬉しそうに私を見ていて。 質問に何か裏があるとはどうしても思えなかった。 「……少ない方だと思うけど?」 物心着いた頃にはもうこの世界に入っていたし、駆け出しの歌手に恋愛に現を抜かしている暇なんてなかった。 メディアへの露出が増えてからは、それはそれで、違う意味で恋愛はリスクが高いもので。 まあ、それなりの経験もしれいるけれど、同年代の女の子のように自由な恋愛なんて許されなかったから、やっぱりそれに比べたら少ないはずだ。 質問の意味を図りかねて言葉尻を濁したけれど、ランカちゃんはそれで満足したようで。 笑みを更に深めた彼女は、また、ずい、と身を乗り出して、内緒話をするように私の耳に顔を近づけてきた。 彼女の吐息が耳朶をそろりと撫でる。 「シェリルさん、キスはですね」 私以外に聞こえないような小さな声でランカちゃんが話し始めた。 この部屋には私と彼女の二人きりだから別にここまでしなくても構わないのに、と思いながらも、 急な接近に嫌な気なんてこれっぽっちもしなくて、黙って耳を傾ける。 「たまに相手の舌を甘噛みしてあげたり、歯の裏を舌でなぞったりとかしてあげると、 凄く感じるんだって、友達が言ってました」 耳に届いた言葉に、私は、また一瞬反応が遅れた。 離れていったランカちゃんの顔を見やると、どこか得意げな笑顔とぶつかって。 彼女は「知ってました?」なんて、可愛く小首を傾げてみせる。 「……知らなかった、けど」 知ってるいるか、知らないか、で言えば、それは前者。 そんな風に具体的に言葉で教えてくれる人なんて今までいなかったし、 そもそも、そんな事を考えながらキスしたことがなかったから。 しかし、それを私に教えてランカちゃんは一体どうしたいのだろう。 彼女にそんな事を吹き込む友人については、一度よーく話し合わなければならないと思うけれど。 私の答えを聞いたランカちゃんは、得意げな笑みを深めて私を見つめる。 その笑顔からは、自分の知っている知識を披露する以外の目的は見つけられなくて、 本当に、その“キス”について私に教えたかっただけのようだった。 ――― けれど。 私は、その知識に黄色い声を上げて彼女とお喋りをする“友人”という関係ではくて。 キスをする対象の、恋人、で。 ―――― 大人、だから。 だけど。 ランカちゃんの発言に「そうなの」とにっこり笑って流してしまえるほど、できた人間ではないのだ。 髪の上に滑らせていた手を、するり、と項まで下ろす。 そして、そのまま引き寄せて、柔らかな唇に自分のそれを重ねた。 ランカちゃんは大きく目を見開いて、私の二の腕辺りに手を置いたようだったけれど、抵抗はしなかった。 潤んだ瞳を見つめながら、そろり、と唇に舌を這わせる。 途端に、ぴくり、と彼女の身体が震えて、耐え切れなくなったかのように、その瞼がきつく閉じられて。 私はその反応に内心ほくそ笑んで、それに続いた。 多くないランカちゃんとのキスから、彼女が私以上にこういう事に不慣れなのは知っていたから、 怖がらせないように、優しく唇を食んで、舐めて、その扉を開いてくれるようにお願いする。 そうして、薄く開いたそこから、舌を差し入れて、彼女の熱い熱いそれに絡ませて。 ランカちゃんがさっき言っていた事を実践。 もちろん、優しく優しく、丁寧に。 重なった隙間から漏れる鼻にかかったような声が彼女の声が、私の脳を溶かしていく。 熱に浮かされたように角度を変えながら、私は執拗にキスを繰り返す。 いつの間にか、二の腕に置かれてた彼女の手は私の首へ回されていて。 私の腕は彼女をかき抱くようにきつくその身体に巻きついていた。 どれくらい経ったのだろう。 最後に小さく唇の端に口付けて、私は、そろり、と唇を離した。 額を彼女のそれにくっつけ静に息を整えて、ゆっくりと瞼を押し上げる。 一番に飛び込んできたのは、上気した頬のランカちゃん。 彼女の熱く濡れた瞳と視線が交じる。 きっと自分も同じような目をしているのだろうな、なんて考えて、頬が緩むのを止められなかった。 「こういうことかしら?」 さっきの彼女を真似て内緒話をするように囁いたら、ランカちゃんは上気した頬を更に赤くして、 両の眉尻を困ったように下げた。 初々しい表情の中で、唾液で濡れた唇だけが妙に艶かしい。 暫く彼女は目を左右に泳がせていたけれど、観念したように上目遣いにこっちを見やり、 「……こういうことです」 ぽそり、と消え入りそうな声音でそう言った。 おわり 妄想が楽しすぎる。
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注:一部のキャラに倫理観の乱れがあります ーーー 京太郎「そういえば咲、和とくっついたんだよな? おめでと」 咲「はいはい。ジュースで誤魔化すあたり京ちゃんの甲斐性のなさが伝わってくるよね」 京太郎「お前なあ」 咲「京ちゃんは優希ちゃんとどうするつもりなの? さすがにもう気づいてるよね」 京太郎「それなあ……いい奴ではあるんだけど」 咲「和ちゃんに未練引きずってるってわけじゃないよね」 京太郎「もとから高嶺の花で手が届くとも思ってなかったし、アイドルへのそれに近かったっての」 咲「京ちゃんって本当にヘタレだよね。手近なところで妥協すればよかったのに」 京太郎「手近って、誰よ?」 咲「私」 京太郎「おいまて、彼女持ちが何言ってんだお前」 咲「彼女はいても彼氏はいないよ? それにひょっとすると和ちゃんもワンチャンくっついてきたりして」 京太郎「……俺をからかうにも大概にしないと痛い目見るぞ」 咲「ふーん。ヘタレな京ちゃんがどういう目を見せてくれるのか興味あるなー」 京太郎「……」 咲「……」 静寂が室内を満たしたそのあとの出来事は夕日がベッドを差し照らす中で。秘密は夕日だけが知っている。 『咲と彼女と彼氏と』序章、カン
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 もくじ 17-019氏 17-063氏 17-254氏 17-491氏 ▲ 17-019氏 ローンソ×ラヴリーミトンフェア 1 ローンソ×ラヴリーミトンフェア 2 ▲ 17-063氏 とある少年の猛烈恋慕 1 とある少年の猛烈恋慕 2 ~君の瞳に痺れてる~ とある少年の猛烈恋慕 3 ~今すぐキス・ミー~ とある少年の猛烈恋慕 4 ~エイント・ノー・リバー・ワイド・イナフ①~ とある少年の猛烈恋慕 5 ~エイント・ノー・リバー・ワイド・イナフ②~ ▲ 17-254氏 小ネタ 白い友人達の優しさ ▲ 17-491氏 上条さんを悩ませたかったんです 1 上条さんを悩ませたかったんです 2 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 友達ルート? 1 友達ルート? 2 オレと彼女の恋人生活 ▲ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 Back
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498 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 20 48 05.14 ID ZGiKPIg0 『シガレット→しがれっと』第六話 目の前に座る女は長い説明を終えて一息ついた。 一方俺は、彼女の話を素直に信じられずに面食らっていた。しかしこれは夢ではないのだと正座で痺れた両足が語っていた。 もう一度頭の中で、俺が今の彼女の話の中で理解できた部分を繋ぎ合わせて簡潔に纏めてみた。 彼女の元居た世界はこの世界、つまり俺が生きている世界から遠い昔に分裂した別の世界だという。 向こうの世界ではこっちと比べものにならないほど文明が進み、こちらで夢とされている事以上の事が現実として存在しているらしい。 そんな彼女の世界に住む学者たちは、かなり前からこちらの世界の存在を何らかの形で発見した。 そして何年か前にこちらの世界に移動できるパラレルワープという装置が完成し、こちらの世界への干渉が可能になったそうだ。 かくして、こちらの世界で時々起こる不可解な事件こそ、その”干渉”の仕業によるものらしい。 しかし干渉行為の中にはこちらの世界の理を無視するものもあり、彼女の世界の政府はそれを重大な犯罪として罰するようになった。それにより干渉行為は激減した。 それでもごく一部の人間が自らの欲を満たしたいが為に、こちらの世界への干渉が無くなる事はなかった。 そして、彼女の世界で最重要危険人物とされる一人の科学者が数ヶ月前にこちらの世界に逃亡、行方を眩ました。 その科学者はタカサ博士と呼ばれ、生物研究の第一人者であったが、近年は人体実験によりDNAを違法に改造しているとの報告があった。 その報告の後、急いで政府機関が博士の身柄を確保しに向かったが、その時彼は既に姿を消し、後の調査でこちらの世界に居ることが判明した。 そして、大きな干渉を防ぐために少人数で編成された捜索部隊がこちらの世界に派遣され、そのメンバーの一人こそ自分であると彼女は言った。 「難しいが、少しは理解できた・・・・・・と思う。ところで、名前をまだ聞いてなかったけど、教えてくれるか?」 「そう言えばそうね。私の名前はタカサ・カグヤ。年齢はこちらの時間で考えると大体21歳くらいよ」 一目見たときから思ってはいたが、やはり年上らしい。それよりも、彼女の名前に気になることがあった。俺は少し悩んだ後、尋ねてみた。 「ちゃんと話を聞いてくれていたのね、驚いたわ。別に隠すつもりはなかったけど、今アンタが考えているとおり、私はタカサ博士の実の娘よ」 「そうか。自分の父親を追わなければいけないなんて大変だな」 俺の言葉が気に障ったのか、彼女は少しムッとした表情になる。 「捜索隊には私が自分で志願したの。あの男は私と母さんを裏切ったんだもの、ゆるせない」 そう語る彼女の目にははっきりとした憎悪が浮かんでいた。よほどのことがあったのだろう。 それにしても、理由はどうであれ親子が憎み憎まれの関係になってしまうのは悲しいことだと思う。もちろん俺も人のことは言えないが・・・・・・。 499 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 21 27 28.47 ID ZGiKPIg0 「んじゃ、もしかしてそのタバコは博士が作ったものか?」 彼女が手に持っているタバコと言われればタバコに見えてしまうその物体を指さす。 「ええ、これは口にくわえて吸うことにより、体質を変化させ肉体の怪我を治す効果があるの」 でもね、と彼女は続けた。 「アンタは火を付けて吸った。それによりこれの性質が偶然変化してしまい、元と違った効果が出てしまったみたいね」 「そんな馬鹿な・・・・・・」 そして彼女が言うには、俺の体は完璧に女へと変化してしまい、このままいくら待っても元に戻る可能性はゼロに等しいらしい。 俺は目の前が真っ暗になってしまった。このままこうして女として生きていかなければならないのだろうか。 「頼む!そっちの力でなんとか元に戻せないか!?このままだなんてあんまりだ!」 女になり涙腺が緩くなっているのか、俺は頬を伝う涙を感じながら彼女にしがみついた。 しかし、無情な感じで彼女は立ち上がってすがりついていた俺を振り解いた。彼女の表情は見るからに怒りを孕んでいる。 「鬱陶しいわね!泣きたいのはこっちだって同じよ・・・・・・。あの夜、アンタとぶつかりさえしなければあいつを見失うこともなかった!」 ・・・・・・かもしれない、と彼女は小声で付け足した。泣きたいのは彼女も同じみたいだった。 「ここまで知ってしまった以上、アンタもタカサ博士の捜索を手伝いなさい。博士の身柄を確保できればアンタの体だって治せるかもしれないわ」 拒否、という言葉はまったく頭に浮かばなかった。彼女の最後の一言で既に答えは決まっているのだ。 俺は服の袖で涙を拭うと、立ち上がって彼女の目を正面から見つめた。顔立ちはこちらの世界の人間と変わらないが、彼女は真の意味で違う世界の人間なのだ。 本当に全てを信じて良いのだろうか。いや、今の俺は彼女を信じる意外に元に戻る方法はないのだ。 「解った。俺に手伝えることがあるなら、なんだってするさ。でも、家族は巻き込まないと約束してくれ」 こんなおかしな、こちらでは非現実的なことになるのは俺だけで十分だ。 「ええ、約束するわ。けど、貴方から話すのもダメよ。こちらとしてもこれ以上干渉は避けたいもの」 「それと、アンタってのも止してくれ。俺のことは昭人って呼んで欲しい」 そう言って、俺は一回り小さくなってしまった右手を彼女の前に差し出す。 彼女は一瞬疑問を浮かべたが、すぐに納得したように自分の右手で差し出した手を握ってくれた。 「協力してもらうからには甘やかさないからな、昭人」 「善処してみるさ、カグヤさん」 この日、二人だけの、世界を超えた同盟が組まれた。 500 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 21 55 51.08 ID ZGiKPIg0 気が緩んだのか大きな欠伸が出そうになり、慌てて噛み[ピーーー]。時計に目をやると既に2時を過ぎていた。 「眠いの?大体話もしたし、今日はもう終わりにしましょ」 見るとカグヤさんも小さな欠伸を手で隠していた。キツイ性格の割に仕草は可愛いと思ってしまった。 「捜索の手伝いに関しては、朝起きた後にまた話すわね。ところで・・・・・・」 「ん?どうかした?」 「お風呂を借りることはできるかしら。私は寝る前と起きた後には必ずお風呂に入らないとダメなのよ」 お風呂?もしかして彼女の拠点にはお風呂がないのだろうか?別にこの時間なら家族も寝てるし構わないだろう。 「ああ、使って良いよ。家族を起こさないようになるべく静かに入ってくれるならね」 「そ、それくらい心得てるわよ・・・・・・」 とか言いつつも、すぐにでもお風呂に行きたそうにソワソワしている。 とりあえず、下の階にあるお風呂場に隣接した脱衣兼洗面所まで彼女を連れて行く。 お風呂の説明をしようと思ったが、それぐらい知っていると言われ、すぐに追い出されそうになった。 「それじゃ、俺はもう先に寝てるから、好きなだけ入ってよ」 「ありがと、助かるわ」 脱衣所のドアを閉めると、俺は何らかの興奮を感じた。何故なら妹以外の女性が自分の家のお風呂に入っているのだ。 しかし不思議とその興奮はすぐに収まり、覗こうとも思わずにさっさと自分の部屋に戻ってきてしまった。 彼女が風呂から上がるのを待ち、帰りを見送ろうとも考えたが、かなりの眠気に堪らず布団に潜り込む。 彼女には悪いが先に寝かせてもらおう。 「おやすみ・・・・・・」 照明を消し真っ暗になった部屋で、彼女に向けて言った言葉を最後に、俺はすぐ眠りに就いた。 そして、翌日―― いつもと違う窮屈感によって目を覚ますと・・・・・・。 何故か隣で彼女が気持ちよさそうな寝息を立てていた。
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彼女らにできるコト ◆321goTfE72 ◆ ◆ ◆ 「わぁ…きれい…」 あたしの隣でメイド服に身を包んだ美少女、ヴィヴィオちゃんが感嘆の声を漏らした。 あたしたちを乗せた船は水上をゆっくりと移動し、 色とりどりのイルミネーションをあたしたちの視界へと運んできてくれる。 近くで突如水が噴きあがった。 何者かが潜んでいたのかと慌てて呪文を唱えながら身構えるあたしだったが、取り越し苦労だったようだ。 何色ものイルミネーションに水しぶきが照らされ、空間が虹色になっている。 空中に散った水により本物の虹まで見えていた。 周囲の幻想的な雰囲気にあたしの戦いで荒んだ心も癒されていく。 勘違いがないように言っておくと、あたしたちは決して遊んでいるわけではない。 遊園地の調査をするといったが、昼間に来た時に既にドロロと二人であらかた調べたのだ。 しかし、『使えるようなものはないだろう』と思って調べなかった箇所がいくらかある。 それがこういったアトラクションだ。 やがてあたしたちが乗っていた船が発着点に到達する。 このアトラクションにも、仕掛けらしきものも見当たらなかった。 「リナさん!次はあれに行きましょう!!」 そういってヴィヴィオちゃんは指差したのは―――馬や馬車の彫像が円上をぐるぐる回るもの。 やれやれ、とあたしは苦笑しながら ヴィヴィオちゃんに手を引かれそちらのほうに移動し始めた。 落ち着いてこそいたが、情報交換のときに明るい表情をすることはほとんどなく、 話にもほとんど参加してこなかった(会話の内容が彼女が付いてくるには難しかったからかもしれない)。 そんな彼女が…まだ無理している感じはあるが、それでも"表面上"だけでも 楽しそうに、そして友好的に話しかけてくれることは好ましいことではある――― だけども。 大事なことなので2回言っておく。 「まったく、仕方ないわねー」 あたしたちは決して遊んでいるわけではない。 ● ● ● 「ねぇ、リナさん…」 その後もいくらかのアトラクションに乗ったがめぼしい発見は何もなく 次はどの乗り物に乗ろうかと思案していると、 さっきまでのトーンとは打って変わった声で ヴィヴィオちゃんがためらいながらも後ろから呼びかけてきた。 「私…リナさんから見て、みんなに迷惑掛けていると思いますか?」 尋ねてきた内容はそれだった。 『そんなことないわよ』と軽く返そうかと思ったが、振り返った先にいる 彼女の表情は、深刻な顔をしていた。 「ここに来てから私は色々な人に会いました。 けれど、誰も助けることはできませんでした。 私がどうにかできるほど世界は優しくない―――そう涼子お姉ちゃんに言われました」 ぽつりぽつりと彼女は語り始めた。 風が彼女の後ろからあたしのほうへと吹き抜け、あたしたちの髪をなびかせる。 あたしは黙って彼女の言葉に耳を傾けた。 「私にできる最善のことをしていた―――涼子お姉ちゃんはそうも言ってくれました。 けど、それじゃダメなんです。 どんなに私が頑張っても、それでも迷惑をかけるんじゃ…ダメなんです。 だから―――」 「で、あたしが『迷惑だ』って言ったら…ヴィヴィオちゃんはどうするの?」 あたしはわざと彼女の言葉に割り込みこう言った。 子供の愚痴に付き合ってあげるほどあたしは暇でもなければ優しくもない。 「だから、私は"今の"私よりももっと強くなりたいと思ってます」 「口だけなら何とでも言えるわ。 …問題はどうやって強くなるかよ」 今度は語気を強めてちょっときつめに言ってやった。 アサクラも言っていたが、人が『強くなる』のは簡単なことではない。 もしこの程度で折れるぐらいなら彼女が強くなることはないだろう。 ここらへんで殻を破る必要がある。 たぶん、アサクラもそう思って短時間とはいえあえて別行動させたのではないか。 あたしはそういうふうに考え始めていた。 「そこで、リナさんにお願いがあります」 ヴィヴィオちゃんはあたしを見た。 オッドアイの瞳に宿る光が力強い。 彼女が何を言いたいのか予想はついている。 おそらく、こう言うだろう。 「私にレリックを譲ってください!!」 『私に魔法を教えてください!!』と―――って…あれ? 目の前でメイド服のヴィヴィオちゃんが頭を下げているが―――ちょい予定外。 「………レリックって何?」 「リナさんが持っている赤い宝石のことです」 おそらく、あの魔力が詰まった宝石のことだろう。 レリックというらしい。 どうやら、ヴィヴィオちゃんに縁があるもののようだが――― 「嫌よ」 あたしはきっぱりと言った。 「アレがどういったものかは知らないけど、 あたしなりにアレは有効活用しているし、ないと困る。 残念だけどヴィヴィオちゃんにあげることはできない」 「でも、あれがあれば私は―――」 『Stop』 そこで割り込んでくる機械的な第三者の声。 ヴィヴィオの胸のバルディッシュだった。 『Ms.インバース。ヴィヴィオにレリックを渡してはいけません』 「バルディッシュ!!」 バルディッシュが強めの口調で言い、 それに対してヴィヴィオちゃんが珍しく語気を強めた。 今まで必要がないと喋らなかったバルディッシュが割り込んできたということは どうもただ事ではないようだ。 『レリックは超高エネルギー結晶体です。 その性質故、魔力波動などを受けると爆発する危険があります。 かつて、レリックが原因の周辺を巻き込む大規模な災害が幾度か起きました』 ゲゲッ…両手に握って魔力の回復なんかに使っていたが、そんな危険物だったのか。 これからは注意して使うようにしよう。 『ヴィヴィオ。今の貴女が持つには危険すぎます。 また、レリックを埋め込まれた貴女が何をやったか忘れたわけではないでしょう』 「っ…それは…」 『それに、我が主はそのようなことを望んでいない。そう思います』 「………。…ずるいよ、そんなの」 バルディッシュの説得に、ヴィヴィオちゃんは反論したが最後のほうはか細く、 風上にいればほとんど聞こえなかっただろう。 確か、バルディッシュは彼女の母親が使っていたデバイスだったか。 バルディッシュの言葉にどれほどの重みがあったのかはあたしには分からないが… それっきりヴィヴィオちゃんは黙ってしまった。 次に向かうつもりだったアトラクションのほうへと歩き出す。 一応、ヴィヴィオちゃんも後ろをとぼとぼと付いてきてはいるが… うーん、こりは気まずい。 さっきまでのほのぼの~とした雰囲気が見事にぷち壊れてしまった。 さてどうしたものか。 ◆ ◆ ◆ ◆ ヴィヴィオはひどく落ち込んでいた。 一時的とはいえ大人の身体になり、レリックまで見つけた。 これならきっと自分の身を守れる。それだけじゃなく、涼子お姉ちゃんやなのはママだって守れる。 周りにいる大事な人たちを守る力を手に入れることができる。 そう思ったのだが―――。 (バルディッシュまで…あんなこと言うんだもん) きっとバルディッシュなら自分の想いを分かってくれる、協力してくれる。 ヴィヴィオはそう信じていたが現実は甘くなかった。 フェイトママはそんなこと望んでいない。 確かにそうかもしれない。 でも、ママが間違っていると言っても、それがみんなのためになるのなら。 自分で考えて正しいと思ったことのならばやらなくちゃいけないのではないか。 バルディッシュはフェイトママのために作られたデバイス。それができない。 それをするのは娘である私の役目じゃないのか。 ヴィヴィオは落ち込み半分、恨めしさ半分の眼で胸元のバルディッシュを見た。 考えていることを知ってか知らずか、当然無反応である。 「…………………」 そのとき、ヴィヴィオの前方から声が聞こえてきた。 リナが発した言葉なのかも判然としない。 単なる空耳だろうか? 「身の程を過ぎた力は身を滅ぼすわよ」 今度は間違いない。リナが言った。 ヴィヴィオのほうからは前方を歩いている彼女の表情を窺い知ることはできない。 「あたしも経験あるのよ。 自分じゃ扱えないような魔法を無理やり唱えて、危うく世界を滅ぼしかけたこと」 もはや身を滅ぼすとかいう次元ではないが とりあえず誰もツッコミを入れず黙って聞いていた。 「あなたが過去にレリックで何をやらかしたのかは知んないけど――― もしここで厄介なトラブルを引き起こしたりなんかしたら あたしもドロロも、もちろんアサクラも、下手すればみんな死ぬわ」 あまりにそっけないリナの言葉。 そのそっけなさが、逆に『死』が身近なものと感じさせる。 腕章をつけている左腕がズキンと痛んだ気がした。 「アサクラも言ってたけど、人が一段階強くなるのは簡単なことじゃない」 リナは歩みを止め、振り向いた。 それまでの厳しい基調とは裏腹に、彼女は優しい顔をしていた。 「いい、ヴィヴィオちゃん? あなたはあなたができる精一杯を全力でやればいいのよ。 ヴィヴィオちゃんにしかできないことだってあるんだから。 魔法で戦うとか守る、なんてのは…あたしに任せときなさい!」 親指をグッと立てたリナの優しい言葉が染み込むが―――それじゃヴィヴィオは納得できなかった。 「…私にしかできないことってなんですか? 今までも、情報交換のときもそうでした。 私にしかできないことなんて全然―――きゃっ」 ヴィヴィオの言葉は途中で中断された。 ―――何を思ったか、リナがでこぴんしたのだ。 「じゃ、あたしがヴィヴィオちゃんが使える とっておきの魔法を教えてあげるわ。 いい、よく聞きなさい。 ――――――『頑張って!』」 「………はい?」 リナの突飛な行動と突飛な発言により、ヴィヴィオの思考が一時停止させられる。 「オトナってものはね、肝心な時にどーでもいいこと考えていたりするわけよ。 ものすごく強い敵を相手に『こりゃ勝てないわ』と戦う前から諦めたり、とかね。 そういうときに『勝てるよ!頑張って!!』って魔法かけてあげなさい。 本当に力が湧いてきちゃうんだから。 可愛いコにしか使えない高等魔法なのよ」 リナはヴィヴィオの肩をぽんぽんっ、と叩きながら笑った。 負けるつもりで戦えば、勝てる確率もゼロになる。 たとえ勝利の確率が低くても、必ず勝つつもりで戦うっ! これはかつてリナが言った言葉。 しかし、本当に絶望的な戦いのときはリナさえもそれを忘れかけることがある。 それをみんなに思い出させるのには"不屈の心"を示すことが必要だ。 あるときは叱責かもしれない。 あるときは開き直りかもしれない。 あるときは応援かもしれない。 それを示す鍵が何か分からない。 でもヴィヴィオならそれをみんなに伝えられるんではないか。 それが彼女のできる、彼女しかできないことなのではないだろうか。 根拠なんて何もないけど、リナはなんとなくそんなことを思ったのだった。 どれくらいの時間が静かに過ぎただろう。 しばらく呆然としていたヴィヴィオだったが、少しずつ顔が綻んでいく。 「えへへ…ありがとう、リナさん」 胸のつっかえがひとつ取れたような笑顔。 遊園地ではしゃいでいた時よりも幾分清々しいように思える。 「私、みんなに"魔法"かけるよ」 力強い少女の声が朗々と響いた。 「でも"魔法"かけても恥ずかしくないように私も頑張る。 もっと強くなる。少しずつでも、ちゃんと順番追って強くなってく。 リナさんや涼子お姉ちゃんに迷惑かけないように。 なのはママにエヘンと胸を張って会えるように。 フェイトママにもう心配させないように!」 爽やかな笑顔。オッドアイの瞳に映る確かな輝き。 まだまだ小さい彼女に言うには少々難しいことだったかもしれないが、 どうやら余計な心配だったらしい。 大したものね、とリナは素直に感心した。 「…ーー…ー……ーー…」 再びヴィヴィオに背を向けたリナが、ゆっくりと言った。 聞き取れはするのだが、何と言っているのかはよく分からない。 もちろんその言葉の意味もヴィヴィオにはさっぱり理解できないだが――― 「炎の矢(フレア・アロー)!」 リナが『力ある言葉』を放つと同時に、彼女の目の前に燃え盛る炎の矢が生まれた。 そのままにしておくことも消すこともできないのか、とりあえず手近な地面に放つ。 レンガ造りの地面を一か所を黒く焦がし、炎は消え去った。 「この魔法の詠唱は訳すと『全ての力の源よ 我が手に集いて力となれ』ってとこね。 呪文は短いから丸暗記できるだろうし、割と実用的な魔法よ」 そう言ってリナはもう一度ヴィヴィオのほうを見た。 ニヤッともニコッともとれる、不敵な笑みを浮かべて。 「ちょっとヴィヴィオちゃんが考えていたような順番じゃなくなっちゃうかもしんないけど――― 覚えてみる?」 一瞬、何を言われたのかよく分からなかったのか ヴィヴィオはきょとんとしていた。 その瞳が、徐々に輝きを増していく。 「―――よろしくおねがいします!」 深々と頭を下げ、ヴィヴィオが言った。 すぐに使えるようになるかどうかはリナにも分からない。 無駄手間になるかもしれないしそもそも余計なお節介かもしれないが――― 戦場の一端、遊園地の光に照らされた彼女らの顔にはそれぞれの笑みがあった。 【D-02 遊園地/一日目・夜】 【リナ=インバース@スレイヤーズREVOLUTION】 【状態】疲労(小)、精神的疲労(小) 【持ち物】ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱、パイプ椅子@キン肉マン、浴衣五十着、タオル百枚、 レリック@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 遊園地でがめた雑貨や食糧、ペンや紙など各種文房具、 デイパック、 基本セット一式、『華麗な 書物の 感謝祭』の本10冊、 ベアークロー(右)(刃先がひとつ欠けている)@キン肉マンシリーズ 【思考】 0.殺し合いには乗らない。絶対に生き残る。 1.遊園地を調べながらヴィヴィオと行動する。 2.20時が過ぎた頃にはスタッフルームに戻りドロロ達と合流する。 3.朝倉の正体が気になる。涼宮ハルヒについても機を伺い聞いてみる。 4.当分はドロロと一緒に行動したい。 5.ゼロスを警戒。でも状況次第では協力してやってもいい。 6.草壁サツキの事を調べる。 7.後で朝倉と首輪解除の話をする。 8.後で朝倉やバルディッシュとさらに詳しい情報交換をする。 9.時間ができれば遊園地のkskコンテンツにしっかりと目を通しておく。 【備考】 ※レリックの魔力を取り込み、精神回復ができるようになりました。 魔力を取り込むことで、どのような影響が出るかは不明です。 ※ガイバーの能力を知りました。 ※0号ガイバー、オメガマン、アプトム、ネオ・ゼクトールを危険人物と認識しました。 ※ゲンキ、ハムを味方になりうる人物と認識しました。 ※深町晶、スエゾー、小トトロをほぼ味方であると認識しました。 ※深町晶たちとの間に4個の合言葉を作り、記憶しています。 ※参加者が10の異世界から集められたと推測しています。 ※市街地の火災の犯人はもしかしたらゼロスではないかと推測しました。 【ヴィヴィオ@リリカルなのはStrikerS】 【状態】疲労(小)、魔力消費(小)、16歳程の姿、腕章を装備、メイド服の下に白いレオタードを着ている。 【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@リリカルなのはStrikerS、SOS団の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱 メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱 ディパック(支給品一式)、ヴィヴィオが来ていた服一式 【思考】 0.誰かの力になれるように、強くなりたい。 1.リナと一緒に行動する。 2.なのはママが心配、なんとか再会したい。 3.キョンを助けたい。 4.ハルヒの代わりにSOS団をなんとかしたい。 5.スバル、ノーヴェをさがす。 6.スグルとゼロスの行方が気になる。 7.ゼロスが何となく怖い。 8.涼子お姉ちゃんを信じる。 【備考】 ※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。 ※長門とタツヲは悪い人に操られていると思ってます。 ※キョンはガイバーになったことで操られたと思っています。 ※149話「そして私にできるコト」にて見た夢に影響を与えられている? ※ガイバーの姿がトラウマになっているようです。 ※炎の矢(フレア・アロー)を教わり始めました。すぐに習得できるかどうかは不明です。 時系列順で読む Back 彼女らのやったコトNext 鎧袖一触~鎧は殴るために在る~ 投下順で読む Back 彼女らのやったコトNext 鎧袖一触~鎧は殴るために在る~ 彼女らのやったコト リナ=インバース 比較魔法論 ヴィヴィオ
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彼女の想いで――(MAGNETIC ROSE) 後編 ◆EchanS1zhg (彼女の想いで――(MAGNETIC ROSE) 前編へ) 【Accelerator――(光速戦闘) 中編】 「どうしても思い通りにはいかないものね……全く」 半ば、廃墟のような有様と成り果てた警察署の中で、朝倉は天井に開いた大穴を見上げ大きく肩をすくめた。 天井に空いた穴は屋上まで貫通しており、室内に直接空の光景を見せることで建物というものの存在意義を破壊している。 その淵から飛び出している鉄骨はその先端がどろりと溶けており、高温の弾丸がここを通ったと想像するのは容易だった。 勿論、それは朝倉涼子が跳ね返した御坂美琴が放ったあの超電磁砲《レールガン》である。 「ふぅ……少し暑く感じるわ」 言いながら、朝倉は額に浮かんだ汗を制服の袖で拭った。 電磁砲が発射されたせいで室温があがったということもあるが、朝倉自身もオーバーヒート寸前であったりする。 《ベクトル操作》――それが朝倉が最後に計算した情報改変である。 別段、彼女にとってそれは特別難解だというものではない。 今回は跳ね返す規模が大きかったから大計算となったが式そのものは単純であり、後は負荷と効率の問題でしかない。 今回ギリギリだったのは、これは一度限りの手段で、また美琴が電磁砲を使っていなければ勝利はなかったということだ。 大前提として、電流を操作する以上、通常の電撃の槍では跳ね返したところで美琴自身には通用しない。 故に、跳ね返すとするならば警察署の壁をぶちぬいた電磁誘導による超高熱攻撃である電磁砲しか対象はなかった。 また、一度でも反射できることを覚られたら美琴は自滅の可能性のある電磁砲を使いはしなかっただろう。 「結果オーライという言葉はあるけれども、気休めにもならないわね……こんな言葉」 最後の大勝負に美琴が上手く乗ってくれて、電磁砲を使い、それを反射できる可能性は数字にするとどれくらいだったか。 会話を交わしながら算出した数字を思い出して朝倉は目を瞑り、頭をぶるぶると振った。 なにより問題だったのは電磁砲の威力だ。 美琴がこちらを思って手加減していれば、例え反射していても美琴を倒すことはできなかったろう。 逆に美琴が体力を残しており、室内であることも無視して本気の電磁砲を撃ってたら、今頃自分は蒸発していたはずである。 「――倒し損ねちゃうし」 そして、反射はしたものの、朝倉は美琴を仕留めることができなかった。 床を見下ろせばそこに夥しい量の真っ赤な血と、彼女が落としていった左腕が残されてはいるが、しかし彼女自身はいない。 そもそもとして電磁砲を反射されたのだとしたら美琴は熱と衝撃で跡形もなく吹っ飛んでいたはずなのだが、 それに加えて真横に反射された電磁砲がどうして美琴のいた場所から真上に進んでいるのか――? 「…………ごめんなさい。私のせいで、……こ、殺せなくて」 朝倉が振り返ると、そこに今回の決着を文字通り”捻じ曲げて”しまった原因が俯いて塞ぎこんでいた。 歪曲を使う、浅上藤乃である。 決着のつく瞬間。ちょうど目を覚ました彼女は視界の中にいた美琴を反射的に凶(まげ)ようとして、この結果を齎したのだ。 確かに美琴は歪曲の餌食になった。彼女としても避ける余裕はなかったらしく、一部ではあるが身体を捻じ切った。 しかし彼女に止めを刺すはずだった電磁砲もまた衝撃波諸共に曲げられてしまい、天へと打ち上げられてしまった。 結果として、美琴は左腕だけを捻られた後、衝撃波だけをくらって自分が空けた穴から警察署の外へと放り出されたらしい。 そしてその後はまんまと逃げおおせてしまった模様である。 過負荷でダウンしていた朝倉が確認しに行った時には、そこに残されていたのは僅かな血痕のみでしかなかったのだ。 「とりあえず、色々と問題が浮き彫りになったわね。私達」 朝倉はようやく回復してきた力で一気に汗を振り払うと、たった一言でその問題を的確に言い表した。 「――コンビネーションが最悪よ」 【生き残った話――(遺棄の凝った話) 前編】 お昼過ぎののどかな街の風景の中。四角い窓の向こう側に、降参という風に両手を挙げている女性の姿があった。 どうしてか粉々に割れている窓からは風が入り込み、その女性の美しい黒髪をそよそよと揺らしている。 女性の名前はわからない。彼女は必要な時には自分のことを師匠と呼ぶように言い、実際に師匠とだけ呼ばれている。 そんな不思議な彼女は今、表情を浮かべることなくあることを思案していた。 自分の後ろから拳銃を突きつけている少年をどう処分してしまおうかと、そんな物騒なことを。 少年が背後に近づく気配を感じ取れなかったのは何故か。 師匠は窓の外へと向けていた身体を振り返り、簡素な会議室の中にも意外と死角が存在したのだと知った。 それにしても不思議な所はある。もしかしたら仲間の張った結界のせいもあるのかもしれないと彼女はちらりと考えた。 「ここであんたを止めないと、リリアにも危険が及ぶと思うから」 自分に銃を突きつけていた人物は声色どおりの少年であった。 年の頃は先程、弾丸をいくらか見舞った少年と同じくらいかも知れない。 しかしその若さの割りには銃を構える姿も堂に入っており、こちらは素人ではないようだと一目で解る。 銃を突きつけているという状態の優位性を過信してもいない。少年の顔に浮かんだ強い緊張の色が証拠だ。 師匠はその少年を冷静に見つめ、無言で相手が何者かを計る。 「両手を頭の後ろで組んで、床に膝をつくんだ」 少年の要求に対し、師匠は無言と無反応をもってそれを回答とした。 このような場合において何よりも大切な基本は、殺せる相手は殺せる時に殺してしまうことである。 例え今のような状況でなくとしてもそれは人生のほとんどの場面に当てはまる。それを知る師匠は今までそうして生きてきた。 だがしかし、目の前の少年は違う。 殺せる時に殺していない。後ろを取ったのならばそのまま撃ち殺せばよかったのに、しかし彼女はまだ生きている。 別に足を撃つだけでもよかっただろう。何か聞きたいことがあるのならば口だけ残せばよいのだから。 なのに、そうはなっていない。それが何を意味するのか師匠は知っている。おそらくは少年の方も知っているはずだ。 「……言うとおりにするんだ」 でなければ撃つぞ。とまでは言わなかったことに師匠は目の前の少年に10点の評価を与えた。 しかし、その10点という評価は1秒ごとに1点ずつ減じてゆく。そして、0点になれば師匠は動く。 目の前の敵を相手に少年がそれでも撃てないというのなら、その時拳銃は存在しないも同然だと判断できるからだ。 そして、沈黙のままに10秒が過ぎた。銃声は鳴っていない。師匠は五体満足のままで、そして――動き出した。 互いの間に置かれた距離は3メートルほどで、室内としては十分な距離を確保していたと評価できるだろう。 少年が動き出した師匠を見てから反応するまでにコンマ3秒。それから撃つかどうかを決めるのにもうコンマ6秒。 合わせて1秒にも足りない時間だったが、師匠が肉薄するには十分な時間だった。 「くっ……!」 ちょうど1秒後。師匠は左の掌底をフェイントに伸ばした右腕で少年の持っていた自動拳銃を握ることに成功していた。 さてこの次の刹那には、握られてしまった拳銃を手放してしまうかどうかの判断が少年に求められる。 自動拳銃の場合、しっかりとスライドごと握りこまれていてはトリガーをいくら引こうとも弾丸は発射されない。 ならば手放して格闘戦に移るのが常套手段ではあるが、しかしその判断を行う余裕を師匠は少年に与えなかった。 「……――げぅっ!」 少年の口から蛙を踏み潰したような気味の悪い悲鳴が零れ、透明なよだれが床にまき散らかされる。 師匠に拳銃を引っ張られ、反射的に身体が踏ん張ったところに思いっきり体重の乗った前蹴りを腹に叩き込まれたのだ。 身体が裏返るような衝撃に拳銃も手から離れてしまい、結果として少年は最悪の状態で床の上へと無様に転がることとなった。 「――――――――」 唾を飲み込んで咽てしまわないよう、あえて息を殺したまま少年は床の上を転がり体勢を整えようとする。 蹴られた勢いをそのままに受身を合わせて三回転。幸いなことに師匠からの追撃はなかった。 しかし顔を上げたところで少年の身体が絶望に強張る。 彼女は壁際まで転がっていった自分を追うでもなく、ましてや奪い取った拳銃で撃ってくるでもなく、 少年に脅されて手放した機関銃を拾いに元の位置まで戻り、もうすでにそれを手に取りこちらへと向けようとしていたのだ。 例え手痛い一撃を貰っていたとしても格闘戦にもつれこめば十分勝機はあると、少年は計算していた。 相手は自分より体躯の小さな女性であるし、拳銃を奪われたとしても罠を警戒して使わない可能性は十分にあると踏んでいた。 そして実際に、彼女は敵の手にしていた銃はすぐに放ってしまった。ここまでは頭の中にあった可能性の内だ。 後はこういう流れができればそのまま飛び掛ってくるものだと考えていた。 自分が転がって遠ざかるようにすれば、反射的に追おうとするのが自然なのに……しかし彼女はあっさりと銃を拾いに戻った。 少年に与えられた猶予はおよそ2秒ほどはあった。しかし少年はその2秒を空白で埋め尽くしてしまった。 機関銃の銃口はその間にこちらへと向いてしまっている。 今更ながらに、目だけを動かし出口の位置を確認する。たった数メートルの距離だったが、今は何十メートルにも感じられた。 機関銃を構える女性は、ことここに至っても感情を表に現すことはなく無言を貫いている。 まるで人を殺す為の機械のようだと少年は思った。感情もなく、手本のままに人を殺す、優秀な殺人者。 助かるとはもう思ってなかった。最後に残されたほんの一瞬はリリアのことで埋め尽くされる。 今更ながらに後悔。どうしてリリアの名前を口に出してしまったのか。リリアがこの女性に殺されるのだけは嫌だと思った。 どうして”必要”な時に相手を撃つことができなかったのか。命を取り置いておくことなんてできるわけないのに。 もう遅い。ずっと遅かった。遅れた分は取り返そうと走りだしてみたものの、まだどこかに余裕を残していたと―― ――最後の最後の瞬間になって、ようやくそれに気づいた。 決着の瞬間。師匠の顔に怪訝な表情が浮かび――そして幾重にも重なった乾いた破裂音が部屋の中に響き渡った。 「…………………………あれ?」 10秒ほどか、それとも一分はそうしていただろうか、少年は恐る恐ると目を開き、呆けたような表情で辺りを窺った。 そしてもう10秒ほど時間を使って、どうやら自分は殺されなかったのだということをようやく理解する。 まだ耳の中に機関銃の残響音が残っているような気もしたが、部屋はがらんという静寂だけの空間に戻っていた。 「どうして殺されなかったんだ……?」 少年にはその理由が全く思い当たらなかった。 最後の最後に手心を加えられたのだろうか? そんなはずはない。少年は古泉が彼女に撃たれたところを目撃している。 もしかすれば、財宝の隠し場所を知る為に自分を泳がすのだろうか? いや、普通に痛めつけて聞き出せばいいだろう。 「とりあえず、ここを一刻も早く離れないと……」 脱力していた下半身に力を入れて少年は床の上に立ち上がる。 その時、ブーツの底と床とに挟まれたガラス片が砕けてパキリと軽い音を立てた。 振り返れば、背後にあった資料棚のガラス戸が砕けて、あたりにガラス片が散乱してしまっている。 中に入っていたファイルの束にしても被害は免れておらず、撃ちこまれた銃弾に食い千切られバラバラとなっていた。 しかし、こんな被害には何の意味もないだろう。 ただ自分がそうならなかった幸運をかみ締めるだけだと少年はまた振り返る。そして、彼は幸運の正体に気づいた。 「そうか、”君”が助けてくれたのか」 床に転がったままの拳銃を拾い、壊れていないことを確認すると、少年は壊れた窓枠から外へと飛び降りた――。 【彼女の想いで――(MAGNETIC ROSE)】 「師匠ったらどこに行っちゃったのかしら……?」 一応の決着を見た美琴との一戦を終えた朝倉と浅上の二人は、いつまで経っても師匠が戻ってこないということで 階段を使って2階へと上り、片っ端から部屋を覗き込んで、行方知れず(?)となった彼女を捜していた。 「まさか……あの、さっきので師匠さんは……」 「師匠が電磁砲の”流れ弾”で? そんなこと、考えられないわよ」 口ではそう言ってみたものの、もしかしたらそういうこともありうるんじゃないかと朝倉は少し心配になる。 いくら師匠と言えども、所詮は普通に人間でしかない。 あんな、偶然に電磁砲が建物を縦に貫通するだなんてそんなアクシデントを予想できる者などいないだろう。 回避できなかったとしても不思議でないと言えばそうで、むしろだからこそ師匠はこんなことで死んでしまうのではと思える。 仮に2階にいたのが自分だったとしても、あの電磁砲は避けられなかったろうし、当たれば死んでいたに違いない。 「でも、貫通した穴の周辺にはそれらしき痕跡もなかったし……やっぱり師匠がそんなことで死ぬとは思えないわ」 「そうですよね。……そんな事故が起こるわけがないですよね」 別に宝物を探しているという訳ではないので朝倉と浅上の2人は次々と部屋を移動してゆく。 そして、扉を潜る回数が二桁に繰り上がりそうだという頃、彼女らはその部屋に師匠がいた痕跡を発見した。 「ここで戦闘があったみたい。どうやら、古泉くんが言っていた仲間という人がまだ残っていたみたいね」 「じゃあ、師匠さんは、その古泉さんの仲間と……?」 それはどうかしら? と朝倉は部屋を見渡した。 押し倒された事務机に、バラバラに転がっているパイプ椅子。割られた窓に、銃弾を打ち込まれた書類棚。 ここで戦闘があったとありありと分かる散らかぶりではあったが、しかしここには血の一滴も流れてはいなかった。 「師匠が相手を撃って外したとなると、その仲間というのも超能力者だったのかしら……?」 朝倉は銃弾を目一杯叩き込まれた書類棚に近づき、ファイルの中にめり込んだ弾丸をひとつ摘み出す。 それは間違いなく、あくまで他に同じ物を持っている人がいないという前提ではあるが、師匠の銃から出たものだった。 師匠がここで誰かに向かって引鉄を引いたということだけは紛れもない事実らしいとわかる。 さりとて、それだけでは決め手に欠けるとそこを振り向いた時、朝倉は思わぬ人物がそこにいたことに驚いた。 「……どうして、あなたが……――”長門さん”がこんなところにいるの?」 正確に言えば、そこにあったのは長門有希ではなく彼女の”生首”であった。 一見ではわからぬような形で、破壊された書類棚の向かい側にある賞状棚の中に紛れるような形で置かれていたのだ。 図書館でこれを回収してきた古泉がどういう意図でこれをここに隠していたのか、それはもう誰にもわからないし そもそも今ここにいる朝倉と浅上はどうしてこんな所に首があるのかすらわからないが、師匠失踪の答えだけは解った。 「あー……、師匠ったら棚のガラス戸に映った長門さんの生首を見て……」 「そうか、師匠さんって……むぐっ?」 「(言ってはいけないわ。師匠がどこで聞いてるとも知れないし)」 「むぐむぐ……」 やれやれと首を振ると朝倉は窓へと近づき、ぐいと身を乗り出して駐車場の端の方へと視線を伸ばした。 そこには3人が乗ってきたパトカーがまだ止まったままで、よく見れば後部座席にカチカチに表情を固めた師匠の姿がある。 もう一度やれやれと首を振ると朝倉は浅上に師匠を見つけたと伝え、肩をすくめて大きな溜息をついた。 ■ 「さてと……、持っていったら師匠が怒りそうだし、これはここで”処理”してしまわないと」 朝倉は浅上に傍で待っているように言うと、安物のトロフィーが立ち並ぶ賞状棚から長門の首を丁寧に取り出した。 死んでから少なくとも四半日は経っているはずだが、その顔は生前とあまり変わらぬ美しさを保持している。 これは剥製だよと誰かに言われれば信じてしまいそうなくらいに、それは死体であり死体ではなかった。 「あの……それをどうするんですか?」 浅上が様子を窺いながら恐る恐るという風に尋ねてくる。 それはそうだろう。普通、死体などというものに人は興味を抱かない。嫌悪し遠ざけるのが通常の反応だ。 殺人鬼にしても、生きている者を殺すという過程や瞬間にならともかく、死体と成り果てたモノなんかに興味はもたない。 「言わなかったっけ? 私と長門さんは宇宙人なのよ。人間の”フリ”はしているのだけどね」 死体に嫌悪感を抱かないのか、それともそれを死体だと思っていないのか、朝倉は長門の首を机の上に置くと、 彼女の薄い色の髪の毛を掻き分けるように指を挿し入れ、普通であれば脳があるであろう場所を押さえながら目を瞑った。 ほどなくして、朝倉の長門の生首に触れている指先から淡い光が漏れ出してくる。 「”情報”を色々と回収しておきたいのよ。長門さんなら私よりも色々知っているはずだから――」 朝倉は自分の上司に当たるエージェントの記憶情報にアクセスしてそれを読み取ろうとする。 だがしかし、あまりそれは上手くいきそうにもなかった。 彼女が機能を停止していることは問題ではないが、やはり上位の相手である以上、こちらの権限(パスコード)が全く通じない。 しかし、どこかに――せめてここに来てからの記憶でも読めればと朝倉は情報の海の中に手を潜らせ―― 「…………ぅあぐ!」 ――逆に捕らわれ、その身体を振るわせた。 「(トラップ? 誰に向けて? 違う、これはコマンドワード……どうして? 私に? 長門さんは予測していた?)」 【エージェント・PN:[長門有希] はマスターとしてスレイブである エージェント・PN:[朝倉涼子]に行動指針を与える】 【■1_長門有希の存在をあらゆる外敵から防衛する】 【■2_長門有希の計画を妨げる要因に警戒し、これを発見すれば直ちに排除する】 【以上の行動指針はPN:[朝倉涼子]の中にあるなによりも優先され、それはPN:[朝倉涼子]の自己保全も例外ではない】 「(長門さんはもう死んでいるのに? 計画? この命令はいつ作られて――何がどうなって? これは、どうして?)」 「――………………ぅ」 捕らわれていた時間はどれくらいなのか。朝倉は壁に掛かった時計を見て、時間が進んでないことに安堵の息をついた。 そしてそれを確認すると、何事もなかったようにゆっくりと長門の頭から指を引き抜き、もう一度息をついた。 「……なにかわかったんですか?」 「ううん。長門さんったらガードが固くて全然」 浅上の問いかけに朝倉はそう明るく答えた――が、しかし実際はそれとは真逆で、朝倉はこれまでで一番の混乱に陥っていた。 長門が残した情報の中に自分への命令が残っていたことも随分と不可解だが、それよりも解らないことがいくつもある。 「(この長門さんは一体――誰なの?)」 彼女が、”長門有希”であることは確かだろう。しかし、朝倉が知っている長門有希ではない。 自分が消滅している間に何かがあって長門自身が変質させたと見るのが自然ではあるが、それにしても不可解だ。 まずエージェントとしての能力のほぼ全てに長門自身のロックが掛かっていた。能力だけでなく記憶の大部分に関しても同様に。 それはまるで……”長門有希自身が普通の人間として振舞おうとしているかのように”。 恐らく、自分宛への命令はここに関係すると朝倉は考える。 そしてそこからあるひとつの謎に答えが出たことを知った。つまり――”朝倉涼子を再生したのは長門有希”である。 これはもう間違いない、この舞台で行動できる分の情報を新しく付加して新しく作り出したのは彼女に違いない。 「(長門さんの”計画”……、人類最悪の”計画”……、一体、何がどうなって……)」 長門有希の情報の中で断片的に読みこめたシーンの中に、あの人類最悪と名乗る男の姿があった。 ただ彼女とあの男とが対面しているというだけであって、時間も場所も全くの不明であるが、 しかしまさかここに来てからではないと思われる。恐らくは、”これ”が始まる前に”長門有希と人類最悪は出会っている”。 「(”計画”ってなんなのよ。それがわからないと私、動けないじゃない)」 ここが明らかにおかしかった。命令はあるのに、その命令の意味が受ける朝倉にはわからないのだ。 ”計画”だなんて言われても、それに該当するような情報は自身の中には見当たりやしない。 「(……何かが破綻している。けど、何が破綻しているのかすら私には解らない)」 どうやらすぐに解ける謎ではないらしいとし、朝倉は静かに息を吐いて自身を落ち着かせた。 そもそもとしてこの命令自体が、有効であるとは言え間違いの可能性もある。長門有希自身の存在にも疑問点が多い。 「(長門さん不具合を起こしちゃったのかもしれない……)」 朝倉はそれを最もありえる可能性として、第一に置き、その他の可能性を暫定的に過少評価することに決めた。 なぜならば、”それ”はどう考えてもありえないことなのだ。”そんなこと”が情報統合思念体の端末に許されるわけがない。 その存在意義を根底から覆すような”そんなこと”。それは、つまり―― ――長門有希が、涼宮ハルヒの持つ”願望を実現させる能力”を奪い取っただなんてことは。 ■ それから15分ほど後、正午の放送からすればちょうど2時間ほど経った頃。 師匠、朝倉、浅上の3人は警察署の駐車場に止めてあったパトカーの中で合流を果たしていた。 「それでね。私は一度、3人でじっくりと話し合うべきだと思うのよ」 止めてあったパトカーは未だに止まったままで、3人が次にどう行動するかを、主に朝倉の提案により決めようとしていた。 「長くても3日。短ければ次の瞬間には死別する身です。特に親睦を深める意義は感じられませんが」 「何言ってるのよ師匠。今回、私達は警察署にいた得物を仕留めようとして結局一人も殺すことができなかったのよ」 「それはあなた達の不手際でしょう。私が撃ったあの少年はもう今頃は死んでいます」 「警察署の外に出たらノーカンよ。だったら私も殺しているかもしれないし。それに師匠はひとり逃がしたじゃない」 「………………」 「怒らないで聞いてよ」 「ええまぁ、我々の協力体制に有益であり、後に私個人の利益にも繋がると判断できるならば話は聞きましょう」 「うん、それじゃあ……そうね、浅上さんは何か言いたいことないかしら? あなたにも意見する権利はあるわ」 「そうですか? ……じゃあ、私はお昼ご飯が食べたいです」 「補給と休憩をとるついでに話し合いもするというのならやぶさかではありませんね」 「私も賛成。それじゃあ次はご飯食べながら作戦会議よ」 止めてあったパトカーは、5分ほどの短い会話の後、ブロロ……とエンジン音を立てて駐車場から車道へと出て行った。 ■ 「(キョンくん。今だけは少しの間見逃してあげる)」 朝倉はハンドルを握りながら、瀕死の古泉を抱いて走り去った彼のことを少しだけ考えていた。 彼はあの電撃使いの少女から神社へと行くよう指示を受けていた。口ぶりからすれば仲間が待っているのだろう。 傷を負って逃げ出した電撃使いの少女にしても今頃は神社へと向かっているかもしれない。 だが、朝倉はそのことを師匠には伝えないし、自ら赴くつもりもなかった。 「(とりあえず、”計画”ってのが判明しないことにはね。彼や涼宮さんには手は出せないわ)」 長門有希が主導しているならキョンという少年がキーパーソンに充てられている可能性があるし、 涼宮ハルヒについては今現在どういう状態なのか把握する必要がある。 ハルヒに関してはすでに師匠と契約を交わしているからまだいいが、キョンはそうではない。故に今は追わない。 「(まずは私自身の問題を解決しないと……)」 そう思い、朝倉は少しだけ自身の内側へとその意識を向けた。 そこには先程、警察署で”食った”長門の首が情報として存在しており、現在ゆっくりと消化を進めているところだった。 どれくらいかかるか見当はつかないが、もしかすれば有益な情報を得られるかもしれない。 あいにくと長門は自身の力を封じていたので攻性情報の補給にはならず、ならばそこは有機体の作法に倣うしかない。 「あー……、なんだかすごくお腹が空いたわ。ねぇ、師匠は何が食べたい?」 【D-3/警察署付近・路上/一日目・午後】 【師匠@キノの旅】 [状態]:健康 [装備]:FN P90(35/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x17)@現実、両儀式のナイフ@空の境界、ガソリン入りペットボトルx3 [道具]:デイパック、基本支給品、医療品、パトカーx4(-燃料x1)@現実 金の延棒x5本@現実、千両箱x5@現地調達、掛け軸@現地調達 [思考・状況] 基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。 0:食事と休息をとる。 1:朝倉涼子を利用する。 2:浅上藤乃を同行させることを一応承認。ただし、必要なら処分も考える。よりよい武器が手に入ったら殺す? 【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:疲労(大)、空腹、長門有希の情報を消化中 [装備]:なし [道具]:デイパック×4、基本支給品×4(-水×1)、軍用サイドカー@現実、人別帖@甲賀忍法帖 シズの刀@キノの旅、蓑念鬼の棒@甲賀忍法帖、フライパン@現実、ウエディングドレス アキちゃんの隠し撮り写真@バカとテストと召喚獣、金の延棒x5本@現実 [思考・状況] 基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する(?)。 0:食事と休息をとり、3人で作戦会議をする。 1:長門有希の中にあった謎を解明する。 2:電話を使って湊啓太に連絡を取ってみる。 3:師匠を利用する。 4:SOS料に見合った何かを探す。 5:浅上藤乃を利用する。表向きは湊啓太の捜索に協力するが、利用価値がある内は見つからないほうが好ましい。 [備考] 登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。 銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。 長門有希(消失)の情報に触れたため混乱しています。また、その情報の中に人類最悪の姿があったのを確認しています。 【浅上藤乃@空の境界】 [状態]:無痛症状態、腹部の痛み消失 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本:湊啓太への復讐を。 0:食事と休息をとる。 1:電話があればまた電話したい。 2:朝倉涼子と師匠の二人に協力し、湊啓太への復讐を果たす。 3:他の参加者から湊啓太の行方を聞き出す。 4:後のことは復讐を終えたそのときに。 [備考] 腹部の痛みは刺されたものによるのではなく病気(盲腸炎)のせいです。朝倉涼子の見立てでは、3日間は持ちません。 「歪曲」の力は痛みのある間しか使えず、不定期に無痛症の状態に戻ってしまいます。 「痛覚残留」の途中、喫茶店で鮮花と別れたあたりからの参戦です。(最後の対決のほぼ2日前) 湊啓太がこの会場内にいると確信しました。 そもそも参加者名簿を見ていないために他の参加者が誰なのか知りません。 警察署内で会場の地図を確認しました。ある程度の施設の配置を知りました。 ※ 「キャプテン・アミーゴの財宝@フルメタル・パニック!」は警察署のどこかに隠されたままになっています。 【Accelerator――(光速戦闘) 後編】 街は交流と集合の象徴と現実であり、そこには決して同じ形同士ではない人間達が集まり寄り添う。 近づけば触れ合えるが、しかし同じ形でないが故に、そのもの同士の間には埋めることのできない隙間が存在し続け、 集まれば集まるほど、その集合体の中にまるで罅割れのようにその隙間は広がってゆく。 石ころでそうしても同じだ。街の場合もそれは変わらない。そして街の場合、そういう隙間を裏路地などと呼称する。 警察署から這う這うの体で逃げ出してきた美琴は、学園都市にだって存在する裏路地の中をひとり彷徨っていた。 目の前が真っ暗だった。多分、裏路地の中に入ってきたからだと美琴は思ったが、そのせいではないかしれなかった。 足ががくがくといって覚束ない。それは裏路地がグネグネと曲がっているせいかもしれないが、そうでないかもしれない。 頭がガンガンと痛む。裏路地に溜まった生ゴミの腐った匂いのせかもしれいけど、そうでない気もする。 身体がガタガタと震えていた。きっと裏路地には陽が入ってこないからだろう。そうでないのかもしれないが……。 吐き気も止まらないし、嫌なことばかり思いつくし、涙がボロボロ零れるし、口からはちゃんとした言葉が出てこない。 裏路地のせいかもしれない。でも多分、全部そうじゃない。全部自分のせいだった――。 捻り切られた左腕を右手で押さえ、血をばたばたと零しながら裏路地を行く美琴は、フェンスを見つけるとそこに倒れこんだ。 すぐに美琴の額の辺りでバチリと弾ける音がして、金網のフェンスがメキメキと解され、左腕へ茨のように絡みついてゆく。 ほどなくして、絡みつく針金らは左肘の上で環を作るとぎゅうと窄まりとめどなく零れ落ちていた血をせき止めた。 そのままズルズルと地面に腰を下ろすと、美琴はようやく血塗れになった右手を傷口から離した。 血塗れなのは右手だけじゃない。捻りきられた時に噴出した血は全身を紅く染めて、流れ出ていた血に太腿は真っ赤だった。 唯一血に染まっていない顔にしても今は蒼白で、明らかに流した血が多すぎたことを表している。 美琴は緩慢な動作で背負っていたデイパックを下ろすと、また緩慢な動作で中から救急箱を取り出した。 片手だけで美琴はそれを開こうとするが、ずるりと血で滑った箱は手から零れて地面へと落ちてしまう。 落ちた箱はそうしようとしてたように開きはしたが、中身はヘドロに塗れた裏路地の上へと広がってしまっていた。 それでも、美琴はそれだけは取ろうと、震える指先を地面に転がった包帯へと伸ばし―― 「…………ぁ」 ようやく伸ばした指先で触れた包帯はタイヤのようにコロコロ転がると汚水の水溜りに転がり込んで灰色になってしまった。 自分は死んだと美琴はあの時思った。 まるで、あの”最強”みたいに自分の電磁砲を反射されて、コンマ1秒もないそれまでの間に色々なことを思い出した。 しかし、ギリギリのところで死は回避された。別に何をしたわけでもなく、それはただの偶然だと理解している。 だからこそ、心が死んだような気がする。 いつでも、どこでも、誰からも、何度でも、まるで都合のよいヒーローのように駆けつけてくれる”アイツ”。 その期待が叶えられなかったことが悲しいのか、それともそんなものを期待している自分に悲しくなったのか、 心身ともに混濁した今の美琴には答えがわからない。ただグルグルと気持ち悪く、悲しみが沸き続けるだけだった。 ただひとつはっきりしているのは、ここに来てそれを突きつけられ、なんども思い知らされているということ。 「(私……弱い、なぁ………………強く、なり……た………………)」 灰色の混濁に紫電は飲み込まれ、御坂美琴の意識は奈落へと落ちてゆく――。 【D-2/市街地・裏路地/一日目・午後】 【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】 [状態]:気絶、左腕断裂(止血)、貧血(重)、肋骨数本骨折(手当済み)、全身に擦り傷、全身打撲、全身血塗れ、靴紛失 [装備]:さらし状に巻かれた包帯(治癒力亢進の自在法つき)、ポケットにゲームセンターのコイン数枚 [道具]:デイパック、支給品一式×2、金属タンク入りの航空機燃料(100%)、ブラジャー [思考・状況] 基本:この事態を解決すべく動く。 0:……………………。 1:強くなりたい。 2:神社へと帰る。 3:上条当麻に会いたい(?)。 ※ 周囲に応急手当キットの中身が散乱しています。 投下順に読む 前:提督の決断 次:死線の寝室――(Access point) 時系列順に読む 前:零崎人識の人間関係 次:とおきひ――(forgot me not) 前:「つまらない話ですよ」と僕は言う トレイズ 次:キノとトレイズ〈そして二人は探しに行った〉 前:「つまらない話ですよ」と僕は言う 師匠 次:「作戦会議」― IN Bennys ― 前:「つまらない話ですよ」と僕は言う 朝倉涼子 次:「作戦会議」― IN Bennys ― 前:「つまらない話ですよ」と僕は言う 浅上藤乃 次:「作戦会議」― IN Bennys ― 前:「つまらない話ですよ」と僕は言う 御坂美琴 次:人違いメランコリー
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なんという鬱。でも文章力パネェな。 -- (めがね) 2010-09-06 19 56 10 名前 コメント すべてのコメントを見る 友人の財布からお金が減っていくのを見ていると「あんたなにこっちみてんのよ」という顔をしてこっちをむいてきた。 わたしはそんな友人の顔をしらないふりをして顔をそむけた。 友人がわたしのところにもどってきて「あんたなんでこっちむいてたのよ」と、さっきわたしがおもったこととほとんどおなじことをいってきた。 「で、さっきなんでわたしのほうをみてたの?」 「さぁ」 「さぁ?って、あんたがよった行動でしょ」 友人が買い物を終えた後、一緒に帰っていたときのことである。 「人間には行動をとる意味なんてわかってないんだよ」 「ふーん、、、、ちょっとまって」 「いつまでも待つよ」 「なにあんた人の話をねじまげて偉そうにいってんの」 「いつもどうりの狂言」 「狂言?歴史のほう?」 「歴史のほうのやつがわかんないんだけど、、、」 いつもどうりの帰り道はつまらないものだった。 「なんか風景ってみなれちゃうとつまらないね」 「、、、じゃあ、遠回りしようよ。わたしもおんなじこと考えてた」 「、、、、嘘つき」 「嘘じゃないもん」 彼女のくせは、実際は違うのに「わたしもいまそれ考えてた」ということがあることだ。友人つきあいに特化しすぎると劣る。 「そうやってすぐに否定するんだね」 わたしはそう冷たくつぶやいた。彼女はすこし反省した犬みたいな顔してた。片手に持っていた袋の中身の缶詰が実はドックフードなんじゃないか、とか意味わかんないことを思った。 「遠回り、あんていったけどわたしからするとわたしの家はこっちのほうがはやいんだよ」 「ふーん」 なんの自慢なのだろうか。 夏休み手前、わたしと彼女は森の中を歩いていた。 「で、なんでわたしは夏に森あるかなきゃいけないの」 夏は害虫が多すぎる。 「そりゃあんたがいつもの風景がつまらないっていったせいよ」 「、、、そうやって人に罪をなすりつけるのね」 「はぁ?そうはいってないでしょ」 「ケンカしたい気分になってきた」 「、、急に?やっぱりあんた病院いったほうがいいよ」 「ふふふ」 つい数日前「バーチャルバトルゲーム」というものが世間にでて廃止された。「バーチャルバトルゲーム」というのは簡単に説明するとなると有名な作品、「バトル・ロワイヤル」を実際にやる、みたいなじかんじだ。ゲームなのだがバーチャルなので痛覚やらの感覚はまったくといっていいほどにまでリアルだった。 廃止された理由は「バーチャルバトルゲーム」をした人間が人を殺すと事件が一日で何回もあったからだ。どうやら後遺症がひどかったらしくすぐに廃止されたゲーム。そんなゲームを先日わたしはやってきた。 「病院の注射をみたらわたしはきっと壊れるよ」 「、、、なんでよー」 「殺しあう敵の中に注射を使う人がいたの」 「ふーん」 森の中を進んでいくとベンチがおいてあった。 「ちょっと休憩しよう」と彼女は提案してきた。きっとさっき買った食べ物を食べたいのだろう。 わたしは心の中で下校途中に休憩って、なんておもいながら「いいよ」といってベンチに座った。 「やっぱりあんたには生きてる価値がないわ」 森の中で彼女の声が響く。響き終わった後にわたしと彼女の荒い息が森にこだまする。 わたしは森の中で大の字だった。そして彼女はわたしに馬のりになっていた。彼女の手には新品のカッターが握られており、わたしの首に押さえつけられていた。 「やっぱり、っていうことは前前からわたしには生きてる価値がないことがわかってたってことね」 「そうよ、ご名答」 やっぱりわたしには生きている価値はなかった。 「ねぇ、最後に聞いていい?」 「なに?冥途のおみあげ?」 彼女はなぜか正気だった。そして正気なのに冗談をいっていた。 「人間に生きていく価値なんかあるの?」 彼女は冷たい目をしてわたしの目をみて言葉をいいはなった。 「そういうこと気にしてるあんたには生きてる価値ない」 「じゃあ生きている価値がわかったら死ぬ資格なんてなくなって、あなたは殺人犯にならずにすむのね」 彼女はこたえることができなかった。新品のカッターがすこしだけさっきより強く首にささる。 「あんたにも生きてる価値ないんじゃないの?わたしの最初の問いにすらまだこたえられてないじゃん。」 「うるさい!」 血がでた。 「ははは、そうやって逃げるのね」 「うるさいうすさいうるさいうるさいうるさい……」 すこしずつ首にささってくる。 「ははは、がんばって見つけてみてね」 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい……」 生きていく価値なんてない。 彼女の目からはおそらくしょっぱいであろう液体がでていた。 「、、、、なんだかんだいって殺さないのね」 「うるさい!」 血しぶきが飛んだ。白い制服を血が染める。 わたしはやってしまった。 殺してしまった。 生きている価値をじつは一番しっているであろう友人を殺してしまった。 わたしは殺してしまった。 二次元で殺人機になった結果現実でもおなじことをしようとしたわたしこと石田碧、はじめて人を殺した夏のこと。 そして殺した相手は、藍川有希。唯一の友人で恋人だった。
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僕は今、監禁されている。 監禁されているといっても、この屋敷を自由に歩きまわれるし、場合によっては外にも出られる。 しかし、僕は今ある女性によって『心』も『体』も監禁されている。 いや、今。という表現はふさわしくないだろう。 今、そして未来。はたまた永遠に 僕はこのままなのかもしれない。 ことの始まりは、僕がこの幻想郷というところに迷い込んだことに始まる。 確か大学に行くため通勤電車に乗っていて、その電車が猛スピードでカーブを曲がりきれずに脱線・・・したところまでは覚えていた。 しかし、この風景の説明がつかない。そしてこの妙な感じ。 この幻想郷というのは、どうやら自分が今まですんでいた世界とはまったく異質のものであると感じた。 そして、それは僕の目の前に妖怪とも化け物ともいえる存在に出くわした時に確信に変わった。 『fwphfjpわhfqenpgrwahgpr!』 なんともつかないような鳴き声を上げ、僕におそいかかる。 相手は鋭い爪、僕はリュックサックを持った状態の徒手空拳。勝てるわけがない。 僕は一瞬、自分の死を覚悟した。 その時に、弓矢を持って助けてくれたのが、彼女との最初の出会いだった。 彼女の名前は八意永琳(やごころえいりん) その時彼女は、風邪を引いてしまった弟子の代わりに、里に薬を届けに行く途中だったようだ。 僕が事情を話すと、彼女は、『なら私のところに来る?ちょうどお手伝いがほしかったの』ということで、帰る手段が見つかるまで 彼女の住処である屋敷で働くことになったんだっけ。 彼女からこの幻想郷のことを聞いた。そして彼女やその周囲の人物の生い立ちも。 彼女達は月の追っ手から逃れてこの幻想郷にやってきたということだった。 その話の全てに僕は驚きはしたが、それを受け入れることにした。 この世界と、彼女の目を見る限り、彼女の言うことは嘘ではないと思うから。 そして彼女の仕事は薬師・・・平たく言えば薬を調合する薬剤師のようなものだ。 そして彼女は天才的な頭脳を持っており、僕は彼女の知識の多さ・すごさに尊敬させられた。 実は元々僕は医学部で勉強していた身だし、在学中だったといえども知識はあるので、多少彼女の診療の手伝いもさせてもらっていた。 時にりりしく弟子を指導し、時に優しく弟子やみんなに接する。僕はそんな彼女に惹かれて行った。 ある時を過ぎたころから、彼女が僕に薬の調合を教えてくれるようになった。 『あなたは手先が器用で、頭もよさそうだから、薬の方のお手伝いをしてもらうわ』とは彼女の言。 昔とった杵柄とはいえ一応医学部。実際習って見ると、不思議なことは多かったけど、楽しくめきめきと上達していった。 気がつけば、彼女の仕事量の2割くらいを僕が手伝えるようになっていた。 そして、この幻想郷の人々とも触れ合うようになっていた。 僕の帰る方法を見つけてくれるために頑張っている霊夢という巫女さん。そしていつも空を飛ぶ魔理沙という魔法使い。 この永遠亭のウサギや鈴仙やてゐ。そして永琳が護っているという輝夜という少女(彼女はあのかぐや姫だというから驚きだ) そして里のみんな。彼らと触れ合うのは、正直とても心が和み、楽しかった。 日々の生活は、充実していた。 そして、あれはいつものように診察を終えたころだったか。僕が薬品の整理をしていると、彼女・・・永琳がやってきた。 彼女は僕の元に来ると、こう言った。 『あなたがこの幻想郷について、長い時間がたつけど・・・ちょっと聞いていい?」 僕に聞きたいこと?いったいなんですか? 『・・・私のこと、どう思ってる?』 どう思ってる?そりゃ師匠というか、尊敬できる先輩というか・・・ 『そうじゃなくって・・・』 ? 『私のこと、好き・・・だったりする?』 ・・・・・・・・・・えっ? 僕はこのとき、一瞬思考が固まった えーっと・・・好きとは? 『その・・・・私のことを・・・・・・異性として好きかっていうことよ』 彼女は顔を赤らめながら言う。 それって、もしかして・・・僕のことが好きとか・・・・・・? そういうと、彼女は真っ赤な顔をして 『そ・・・そういうことよ・・・あなたはどう?』 彼女は言った。その顔に緊張を成して。 僕ですか・・・・そりゃ・・・・・・・ もちろん。あなたが好きならお受けします。僕もあなたのことが好きです。 僕は答えた。それは嘘偽りない気持ちだった。 彼女は・・・・・・・・・・・・・・・・ 『・・・・・・・・ありがとう。嬉しいわ・・・・・・・・・・・』 彼女は言葉を搾り出すようにそういった。 僕も嬉しいです。あなたのような美しい人に告白されるなんて。 そういうと、彼女は聞いた。 『・・・・ねぇ。なら約束してくれる。私と永遠に一緒にいてくれる。どんなことがあっても私のそばにいるって。離れないって』 彼女は僕に顔を近づけてそう言う。 もちろん、約束します。僕はどんなことがあっても、貴方のことを嫌いになりません。ずっと一緒に居ます。 僕は言った。すると、彼女は僕になにやら液体の入ったビンを渡してきた。 えっと・・・これは? 『嘘のつけなくなる薬、あなたと私のエンゲージリングのようなものよ。私も飲んだから、あなたも飲んでね』 彼女がそういう、『嘘をつけなくなる薬』なんか少女幻想みたいな名前だけど、好きな人から渡されたものだ。まさか悪いものでもあるまい。 そう思って僕はそのビンのふたを開け、飲んだ。すると・・・ 猛烈な眠気に襲われ、僕の意識が遠のいた。 眠気に襲われる寸前、彼女を見た。すると・・・ 『ずーっと一緒に居ましょうね。そう【永遠】に・・・・・』 そう言って、僕に抱きつく彼女の姿だった。 まさかあれが竹取物語で有名な不死の薬『蓬莱の薬』だったとは。後で彼女に聞いて驚いたもんだ。 意識を取り戻すと、僕は病室のベッドにいた。 そして薬のネタばらし。 聞いたときは暴れた。そして嘘だとさえ思った。 しかし彼女も相当昔にその薬を飲んだこと、そして・・・・ ためしにメスで腕に傷をつけた時、一瞬血がにじんだがすぐに元の綺麗な皮膚に戻った時。どうやら彼女の言うことは本当なんだと感じた。 彼女に聞いた。どうしてこんなことをしたのか・・・ すると彼女はこう言った。 『私が好きになった人間は永く生きているから、何人も居たわ。でもみんな儚い命・・・すぐ死んでしまう』 『だから・・・こうすれば一緒に居られると思ったの・・・もう寂しいのはいや。ずっと一緒にいてほしかったから・・・・』 そういって彼女は肩を震わせた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 僕は黙って彼女を抱きしめ、深いキスをした。 薬のエンゲージとは違う、僕と彼女との永遠のエンゲージ【契約】。 そう、僕はこの運命を受け入れた。何もかも・・・彼女と永遠を生きることも そして今にいたる。 日常は何も変わっていない。 彼女の診察の手伝いをして、薬の調合を行い、たまに里に往診に行く。 なにも変わっていない。 ただひとつ変わったことといえば、 博麗の巫女である霊夢に、外の世界に戻らなくてもすんだ。と伝えたこと。 そして、僕自身も外の世界に未練がなくなったということ。 そして・・・ 何をするときにもいつも傍らには彼女が一緒にいてくれること。 最初にも言ったように、僕は監禁されている。 永琳という糸に絡め取られ 今も、そしてこれからも永遠に。 でも・・・・・ 愛している彼女は居る限り、互いに愛し合っている限り・・・これも悪くないんじゃないかな? とも思っている。