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プレイヤー/駿優@しーおーつー! beatmaniaIIDXについて 手はつけてないけど、ちょっとやった事はある。 パーティモードのステージ1をクリアした後 「俺に7鍵は多すぎる」とかいってやめたっけな。 pop n musicについて 5ボタンばっかり。9ボタンはできない。それも凛花ぐらいのレベルばっか。 いまだにGOLD RUSHの最後ができずに困ってる。 DrumManiaについて やってない GuitarFreaksについて やってない DanceDanceRevolutionについて やってない jubeatについて BASICばっかり。今は夏祭り黄に挑戦中。 大好きなEvansの発狂の終わり辺りができずに困ってる。 太鼓の達人について 鬼中堅ぐらい。蛻変とピラメキが大好き。 ピラメキの連打地帯は俺にとっての休憩地帯。 初音ミクACについて 最近やり始めた。Easyばっかで、消失大好き。 モジュールはハクさん。 ミュージックガンガンについて 気分転換にちょこちょこやる程度。 その他 きもいといわれる領域に達したい。
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いきのこりさばいばる【登録タグ No-H い 曲 歌愛ユキ】 作詞:はと 作曲:No-H 編曲:No-H 唄:歌愛ユキ コーラス:初音ミク 曲紹介 救い様のないのは自分だったっておはなし。(作者コメ転載) 作者曰く、タイトルには深い意味はないとのこと。コーラスでは、初音ミクAppend の vivid を使用。 歌詞 Suddenly darkness came again I'll always stand by you Remember don't worry all alone You know stand by each other forever Albert は お菓子好き Biscuit が 主食なの Chocolate も 食べるけど Delicate な お年頃 あぁ E ーな 自由に生きてて あんな Fu に 気ままにいたいな でもね 知らないんだから 今に 倒れるんだから アタシ 助けないからね だけど 居なくちゃ困るの Gabriel は 怠け者 Haircut も 適当で Interview は 上の空 J-pop に 浮かれてる あぁ E ーな 自由に生きてて あんな Fu に 気ままにいたいな でもね 知らないんだから 誰も 構ってくれない アタシ いつも傍観者 みんな 立ち直れるかな Suddenly darkness came again I'll always stand by you Remember don't worry all alone You know stand by each other forever でもね 知らないんだから 誰も 助けてくれない みんな いつも傍観者 だけど 居なくちゃ困るの アタシ 立ち直れるかな アタシ 立ち直れるかな…? Suddenly darkness came again I'll always stand by you Remember don't worry all alone You know stand by each other forever Suddenly darkness came again I'll always stand by you Remember don't worry all alone You know stand by each other forever コメント もっと伸びろ -- 名無しさん (2010-08-29 11 20 57) かわいい曲www こういう風に聞くと救いようのない自分のことについて考えますねえ・・・ユキ曲の中で何でこの曲知らなかったんだろうって思いましたw 隠れているけどボカロ曲の名曲ですよね もっとみんなに知ってほしい・・・ -- 麻里亜 (2011-03-03 05 20 25) 綺麗だしかわいい曲。ハモりのミクもいい! -- 名無しさん (2011-06-29 19 42 33) ユキの声かわいい!ミクのコーラスも綺麗でいい! -- 名無しさん (2011-07-28 16 42 04) ユキ可愛い曲歌えたのかww 歌詞が凝ってていいな。 -- 名無しさん (2011-09-22 03 23 00) この曲でユキにはまりました。v4嬉しい。 -- かりん (2015-11-02 05 19 00) 名前 コメント
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バリバリ、ムシャムシャ。 強靭な顎と鋭い歯で噛み砕き、飲み込む。 腹に収まればまた次へ。 深い森の中、食しているものは家――と言っても木造の家屋ではなく、甘い菓子によって組み上げられた家だった。 そしてそれを食っているのはパラサイト、後藤という生物だ。 後藤の容姿を与えられたのは多ジャンルバトルロワイアルの書き手、【寄生獣】イーボゥ。 第一回放送前に「Ultimate thing」によって、代表作「寄り添い生きる獣たち」によって、後藤の圧倒的にして怪物的な強さを見せ付けた。 渾名に【寄生獣】とある通り、寄生獣勢を強く深く掘り下げてきた書き手だ。 そんな彼が後藤の外見を得るのは、他の選択肢など無いと言っても過言ではない、当然の事だった。 OP会場から森の中へ放り込まれたイーボゥは、腹が減っていた。 両腕、両足、そして頭部に寄生生物を宿した後藤の姿である以上、それを維持するためのエネルギーが必要だったのだ。 故に、食う。 甘い匂いに誘われて辿り着いたその家を、容赦なく食らう。 バトルロワイアルというものの主旨はもちろん理解していたが、今は栄養補給を優先していた。 そうして食い続けていたイーボゥは己が咀嚼する以外の音を耳にし、食事を中断する。 木々を掻き分け、落ち葉を踏み散らす足音。 走っているのだろう、瞬く間に接近してきている。 イーボゥは舌舐めずりをして口の周りの菓子を拭い、右腕を刃の形にして硬質化させた。 後藤の姿であるならば、選ぶスタンスは当然マーダー。 大規模戦闘、強マーダーによる虐殺への憧れもある。 イーボゥが最初に出会う参加者を襲わない理由がない。 問答無用で殺すべく、既に臨戦態勢を取っていた。 だがイーボゥがその刃を振り下ろすことはなかった。 森を抜けてお菓子の家まで辿り着いたその参加者の顔に、見覚えがあったからだ。 ましてその第一声が、 「その姿、【寄生獣】イーボゥか!」 自ロワの人間であると容易に特定出来るものであったならば。 「【誓約者】ダブルエックス、か」 姿を見せたのはジェレミア・ゴットバルト。 ジェレミアが参加するロワは複数あるが、後藤の姿に反応する彼は多ロワの書き手に違いなかった。 そしてパロロワメモリによってその姿に変身するのは、多ロワ投下数トップの書き手【誓約者】ダブルエックスをおいて他にない。 投下数一位の彼が手掛けたキャラクターは多い、だがその中で最も筆を割いたのはジェレミアだ。 共に同じロワで書いていれば、その思い入れは自然と窺い知れる。 ダブルエックスに「是非一度お会いしたかった」と握手を求められ、イーボゥは刃を解いてそれに応えた。 マーダーとして動くつもりではあるが、自ロワの人間をいきなり殺すほどの確固たるスタンスではない。 イーボゥは神出鬼没の書き手――書きたい時に書く。 殺したい時に殺す。 後藤がそうであったように、イーボゥも少なからず気分屋だった。 そして多ロワを寄り添うように支えているイーボゥが、トップ書き手を率先して殺そうとするはずがなかった。 ▽ 【誓約者】ダブルエックスは会場に送られてすぐに走り出した。 目的は一つ、自ロワの書き手に会う。 【ライダー】エウーゴ、【寄生獣】イーボゥ、【世紀王】K.K.、【魔人皇】ジーヴ……あの素晴らしい書き手達が、この晴れ舞台に参加していないはずがない。 ただひたすら、彼らに会って話がしたかった。 ダブルエックスには多ロワのSSを一人で書いていた時期がある。 それは書き手になってほんの数ヶ月の頃の話で、右も左も分からないまま砂漠の真ん中に放り出されたようなものだった。 それでも書き続けているうちに、エウーゴが戻ってきた。 二人で書いているうちにまばらな投下だったイーボゥが本格復帰し、K.K.が、ジーヴが、帰ってきた。 彼らの帰還を読み手達は喜んだだろう。 だが最も喜んだのはダブルエックスだ。 ロワの完結が近付くことよりも、彼らとまたリレーができることが嬉しかった。 だから彼らに会いに行くために走るのだ。 会って「あなたのSSが好きだ」と伝えたい、その一心で。 イーボゥに出会ってから、ダブルエックスは喋り続けた。 イーボゥの持ち味は原作と過去のSSの読み込みの深さ、そしてそれに裏付けられたクロスオーバー。 「再開」から始まる四部作ではnのフィールドとミラーワールド、ローザミスティカとキングストーンといった異なる原作の要素を繋ぎ合わせた。 「SAMURAI X」で枢木スザクと雪代縁に共闘という意外な選択をさせ、二人の間にある『侍』というキーワードによって彼らを掘り下げた。 「寄り添い生きる獣たち」は、それまでに田村玲子が辿った軌跡の全てを昇華させたSSだ。 ダブルエックスはこの「寄り添い生きる獣たち」について特に強く語る。 イーボゥの代表作にして傑作。 初めてのSSで田村玲子を書き、その後も何度も彼女を登場させたダブルエックスにとっては特別なSSだった。 書いてきたフラグが、経験が、あらゆる要素が拾われて、田村玲子は原作にはない最高の結末を迎えた。 書き手にとってこれほど光栄なことがあるだろうか。 ダブルエックスが受けた衝撃の大きさはその後のSSに表れている。 「Re:寄り添い生きる獣たち」。 『返信』を意味する語を冠した同じタイトルのSSを執筆した。 返さずには、書かずにはいられなかった――それほどに尊敬した相手。 ダブルエックスはその相手に、思いの丈をぶつけきった。 しかし、幸せな語らいの時は終わる。 一人ではあるが「自ロワの書き手に会いたい」という願いが満たされて、己の『本分』を思い出したからだ。 語りを終え、一息ついてから言う。 「そういえばここは、書き手ロワだった」 自ロワへ、自ロワの書き手へ、愛を叫ぶのは結構だが、それ以前にロワなのだ。 愛を叫んでいるだけではロワは進まない。 「書き手ロワにも読み手がいる。 読み手を楽しませるのが私達参加者の役目だ」 ダブルエックスは書き手とWiki管理者を兼ねており、SSの収録やエイプリルフール企画も積極的に行なっている。 それは、パロロワがエンターテイメントだから。 SSに限らず、あらゆる形で読み手に楽しんでもらいたい。 一人でも多くの読み手に読んでもらいたい。 そう思えばこそ、ダブルエックスはこの書き手ロワでも積極的に動く――他の参加者の命を刈り取る、話を進めるマーダーとして。 「その姿でか」 「もちろん」 イーボゥの問いに首肯する。 多ロワのジェレミアは一貫して対主催であったが、ダブルエックスが殺した参加者は多い。 対主催もマーダーも、必要とあれば関係なく殺す。 ロワ全体のバランスを考えながら、そうしてロワを動かしてきた。 ここでも同じことをするだけで、マーダーとなることに抵抗はない。 「ジェレミア・ゴットバルトは主のためならば殺人を厭いはしない。 ならば私はマーダーとして多ロワに、そして書き手ロワに忠義を尽くすのみ」 ダブルエックスがジェレミアのような芝居がかった口調と仕草で宣言する。 強者に返り討ちにされようと、描写なく死亡しても構わない。 それで多ロワの宣伝になるならば、書き手ロワが進むのならば。 イーボゥに「ならばここで殺し合うのか」と聞かれると、ダブルエックスは「できればあなたとは後回しにしたい」と苦笑した。 以前後藤とジェレミアとの戦闘を書いており、その力量差を良く知っているからだ。 死んでも構わないとは思うものの、少しでも長く生きた方が多ロワのためになる。 「ここで失礼しよう。 あなたの活躍を願っている」 名残惜しみながら別れを口にし、ダブルエックスはイーボゥのいるお菓子の家を離れた。 ▽ 一晩でも話し続けそうな勢いで、イーボゥのSSについて語ったダブルエックス。 これだけの熱量と思い入れがあればこそあの投下数になったのであろうと、イーボゥは得心する。 ダブルエックスがマーダー。 K.K.もシャドームーン以外の容姿は想像がつかず、恐らくマーダーになるだろう。 エウーゴが対主催になるかマーダーになるかは半々か。 ジーヴがいれば対主催はほぼ確実。 これでイーボゥがマーダーとなると、多ロワの書き手のマーダー率は随分高くなる。 「面白い」 そんなロワが一つや二つあってもいいだろう。 後藤にしては大人しすぎる登場話だったと反省し、イーボゥはお菓子の家を食うのをやめて動き出した。 ダブルエックスがジェレミアに倣い忠義に従ったように、イーボゥも後藤に倣い本能に従う。 即ち「この種を食い殺せ」。 食事を中断したお陰でまだ小腹が空いていた。 その空いた腹に、他の参加者を収めに行く。 【一日目・深夜/D-3/お菓子の家】 【【誓約者】ダブルエックス(◆.WX8NmkbZ6)@多ロワ】 【状態】健康 【外見】ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ 【装備】 【持物】基本支給品×1、不明支給品1~3 【思考】 基本:マーダーとして多ロワに、書き手ロワに忠義を尽くす。 【【寄生獣】イーボゥ(◆EboujAWlRA)@多ロワ】 【状態】健康 【外見】後藤@寄生獣 【装備】 【持物】基本支給品×1、不明支給品1~3 【思考】 基本:小腹が減った。参加者を食う。 031 HEROES ◆時系列順に読む 033 正直自ロワの後続書き手には申し訳ないと思っている 031 HEROES ◆投下順に読む 033 正直自ロワの後続書き手には申し訳ないと思っている 【誓約者】ダブルエックス [[]] 【寄生獣】イーボゥ 083 【寄生獣】イーボゥが一体出た!
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唯「ちーわー、やっと掃除当番終わったぁ。もうヘトヘトだよー…」 紬「お疲れ様。ささ、唯ちゃんも座って。今日はブッシュ・ド・ノエルよ」サッ 唯「おぉ!やったね、私ブッシュ・ド・ノエル大好きだよ!」 澪「そうなのか?それは初耳だな」 唯「うん!だってなんか語感がいいじゃない。ブッってなってドッって」 律「語感かよ…。ほらほら、早く食べて練習するぞ」 唯「待ってよ律っちゃん、まだ一口も食べて無いんだからさ!…あれ、そいやあずにゃんは」 澪「あぁ、梓なら風邪気味らしくて今日は帰るって言ってたぞ」 唯「ほほぅ…」 紬「それじゃ唯ちゃんにもお茶入れるわね」サッ 唯「あ、ちょっと待ってよムギちゃん!ストップ、ストップだよ!」ガバッ 澪「な、なんだよ唯…!いきなり大きな声を出すな」 紬「ど、どうしたの唯ちゃん?」 唯「私、今日はあのカップで飲みたいよ!」ビッ 律「あのって…、アレは梓のカップじゃねぇか。唯は自分の分があるだろ」 唯「そうだけどさぁ。あずにゃんのカップカワイイじゃん!一回飲んで見たかったんだよ。いいかなムギちゃん」 紬「そうね。梓ちゃんは今日はお休みだしね」サッ 唯「やったぁ!ささ、早く注いで!」 ズズズズ… 唯「はふぅ…。うーん、やっぱりあずにゃんカップはひと味もふた味も違うねぇ。紅茶の深みが更に増してるよ」 律「増してねーよ。別に私と一緒の普通のカップだろ」 唯「ふふっ、可哀相な律っちゃん…。あずにゃんカップの素敵さが分からないなんてさ」ズズズズ… 律「分かんねーよそんなの。なんだその哀れんだ目は!」 澪「しかし、プラシーボ効果と言う物もあるしな。唯の言ってる事もあながち間違って無いかもな」 唯「プラシーボ効果…?何なのかなそれは」ズズズズ… 澪「例えば、ただのビタミン剤をクスリだと言われて飲むと普通よりも治りが良くなったりするんだ」 律「は…?なんでだよ、ビタミン剤はビタミン剤だろ。そんなの変らないだろ」 紬「思い込みによる効果といった所かしら」 唯「うーん…、良く分からないけどあずにゃんカップは凄いって事だよね!」 律「なるほどなぁ、思い込みの効果なら唯には絶大な訳だぜ」 唯「ふふふ、律っちゃんには貸してあげないよ。このカップは」ズズズズ 律「いや、別にいらねーし。私にとったら普通のカップだもん」 唯「違うよー、あずにゃんカップは特別なの!普通じゃないんだよ」 澪「はいはい、二人ともそこまで。そろそろ練習始めるぞ」 紬「そうね、じゃあ片付けましょうか。唯ちゃん、カップを取ってくれるかしら?」 唯「あ、ちょっと待ってね。ここにも紅茶がちょっと垂れてきちゃって…」かぷっ 律「何やってんだよ唯?取っ手なんか咥えたら汚いだろ」 唯「汚くないよぅ、この取っ手も猫のしっぽになっててカワイイんだよー」ペロペロ 澪「やれやれ、随分と気に入ったんだな。梓のカップを」 … 梓「ふぇっくしょん!!」 憂「わっ!?梓ちゃん大丈夫?」 梓「うん…。なんか急に背筋に寒気がしちゃって…」 憂「風邪は引き始めが大事って言うからね。今日は、部活を早退して正解だよ」 梓「うん。まぁ、それはそれで心配なんだけどさ…」 純「そだ、丁度いいから駅前のアウトレットモールに行かない?新しく出来たのよ」 梓「あのねぇ…、私達の話聞いて無かったの?部活早退したんだけど」 純「だからじゃない。普段一緒に帰れないんだし、こういう時じゃないとね!」 梓「私はパス…、頭フラフラするし。行きたかっら憂と二人で行きなよ」スタスタ 憂「あ、待ってよ梓ちゃん。…純ちゃん、それはまた今度の休みにしようよ」 純「ちぇっ、仕方ないなぁ。…こら、待ってよ梓!」 =次の日= 梓「くしゅん!」 憂「どう?まだ、治りそうに無いかな」 梓「昨日より大分マシになったと思うんだけ……くっしゅん!」 純「ほほぅ、だったら梓!今日こそは行こうじゃないの、アウトレッ…」 梓「行かない。今日は部室に顔だすから」 純「ちょっと、最後まで言わせてよ!」 憂「部室に…?大丈夫なの、今日も早退した方がいいんじゃないかな」 梓「やっぱり気になるからさ、唯先輩達ちゃんと練習してるのか…」 唯「………………」チラッチラッ 憂「あれ?あそこのドアから何度も覗いてるのってお姉ちゃんかな」 純「噂をすればなんとやらってヤツだね。ほら、行っておいでよ」 梓「私の教室まで来るなんて…。どうしたのかな?」スタスタ 梓「唯先輩、どうしたんですか?こんな所まで」 唯「あずにゃん、どうかな調子は?気になってさぁ」 梓「有り難うございます。まだちょっと頭がフラフラするけど、今日は顔を出しますね」 唯「…………え?」 梓「どうしたんですか?ハトが豆鉄砲食らったような顔して」 唯「ま、待ってあずにゃん!気をしっかり持つんだよ!」バッ 梓「なんですか?別に持ってますよ…」 唯「えっとね…、まだ無理しない方が良いと思うんだよ!風邪は引き始めが大事っていうじゃん!」 梓「いえ、もう大分治りかけてますんで大丈夫ですよ」 唯「そ、そうなの!?だったら、アレだよ。風邪は治りかけが大事っていうじゃん!」 梓「言いませんよ…。どうしたんですか今日は。早く部室に行きましょうよ」 唯「違うんだよ!わたしはあずにゃんの身体を、あずにゃんの未来を心配しているんだよ!」 梓「私の…未来?なんですかソレ」 唯「良く考えてごらんあずにゃん、ここで無理しちゃったら今度の試験に影響しゃうかもしれないんだよ!」 梓「いえ、普段勉強してるんで大丈夫です。…大袈裟ですよ、そんなに心配しなくても」 唯「それは心配だよ!だってあずにゃんは未来の軽音部を担う大切な存在。大切な私の後輩なんだから」 梓「ゆ、唯先輩がこんな気遣いを…。いつの間にこんな大人に」 唯「分かってくれたんだね…あずにゃん!」 梓「…って、そんな訳無いでしょ。そうやってまた練習サボるつもりでしょ。ほら行きますよ」グイッ 唯「はぅ!待って、待ってよあずにゃん!話を聞いて」 スタスタ 憂「お姉ちゃん、どうしたの?廊下で暴れたら危ないよ」 唯「う、ういー!?ナイスタイミングだよ!あずにゃんを、あずにゃんを止めてよ憂!」 憂「えっ!?こ、こうかなお姉ちゃん…?」ガッシ 梓「あ、コラ!?離してよ憂!ズルイですよ先輩」 唯「ういー、あずにゃんは無理して部室に来ようとしてるんだよ!お家まで送ってあげてくれないかな」 憂「あ、うん。分かったよお姉ちゃん」 梓「離してー、離しなさいよ憂!」ジタバタ 唯「それじゃ、あずにゃんお大事にねっ!」ダッダッダッ 梓「待ちなさいよ唯センパイー!」 … 唯「あずあずカップー、あずあずにゃんー♪不思議なカップー、あずあずカップー♪」スタスタ 澪「…うん?どうしたんだ唯。やけに上機嫌じゃないか」 唯「別にぃー、なんでもないよ」 律「とてもそうには見えないけどなぁ。まぁいいや、早速始めようか」 唯「りょーかいだよ律っちゃん!早く、早く!」 澪「珍しいな…。唯がやる気満々だぞ」 紬「そうねぇ。まぁでも良い事じゃないの」 澪「それはそうなんだが…」 唯「はいはいー、それじゃいっくよー!」サッ ジャジャーン… 唯「ふぅ………」サッ 澪「……なっ」 紬「………これは」 唯「ん?どしたのみんな、律っちゃんが豆鉄砲食らったような顔して」 律「どういう意味だよそれ!?っていうかなんでそんなにタイミングピッタリなんだよ、リズムキープとか完璧じゃねぇか!」バッ 唯「え?そんな事言われても分からないよぅ。そんな事より、今日の練習分終わったよね!」 澪「…え?あぁそうだな、やけにすんなり演奏出来たからな」 唯「よっしー!それじゃ、ムギちゃんお茶にしようよ!」 紬「え?あぁ、そうね。今準備するわね」 律「…まさか唯のヤツ。ティータイムがしたいが為にあんな演奏が出来たのかよ」 澪「そんな訳無い……、事も無いな。唯ならばやりかねないかも」 唯「ムギちゃーん、今日もこのカップにお願いー」サッ 紬「あ、うん。分かったわ」サッ コポコポ 唯「おぉ!あずにゃんカップに紅茶がトポポー♪あずあずカップー♪」 律「なるほどねぇ。コイツが唯のお目当てって訳かよ」ズズズズ… 澪「そういえば、梓は今日も休みか?」 唯「そだよー、風邪は安静にしてないとね。ねぇ、あずにゃんカップもそう思うよねー」サスサス 律「やれやれ、ギー太並の溺愛っぷりだな…。唯のプラシーボ能力が羨ましいわ」 唯「はふぅ…!やっぱり美味しいよぅ、あずにゃんカップは」サスサス 紬「まだまだ沢山オカワリはあるからね」 唯「やったー、あずにゃんカップなら何杯でもオカワリできるよ!」サッ 澪「さてと…、そろそろ片付けて帰るとするか」 唯「えー、もう帰るの?もっとあずにゃんカップと一緒に居たいよぉ」サスサス 律「そんなに飲んだらお腹タプタプになっちまうだろ。夜中にお漏らししても知らないぞ」 唯「何言ってるの律っちゃん。もう高校生なんだら、そんなの大丈夫だよー。それにいざとなったら憂がいるしね!」 律「いや、それ大丈夫じゃねぇよ!?憂ちゃんをどうするつもりだお前!」 カチャカチャ 澪「ほらほら、そんな馬鹿な事言ってないで。今日は唯が当番だろ、早くしないと日が暮れちゃうぞ」 唯「あ、そういやそうだったね?それじゃ洗ってくるよ」サッ カチャカチャ 運動部の掛け声であろう鼓舞をぼんやりと耳にしながら、おぼつかない足取りで私は手洗い場にかたどり着く。そして、蛇口から流れる水道の音を辺りに鳴り響かせながら、四つのカップを次々と洗剤を付けたスポンジで擦っていく。 「うんしょっ、うんしょっ…。おわっ、危ない!」 …何度やっても、洗剤を付けてカップを洗うという行為は慣れない。何故かというと、今の状態のカップは酷く滑りやすいのである。 気を抜くとまるで新鮮なネコジャラシの様に私の手のひらから抜け出してしまうからだ。なので、私はこの時ばかりは演奏の時が如く、神経を張り詰めて作業に挑むのである。 「よーし、残りは一つだね。早く終わられないと…」 手を伸ばして、その最後の一つに取り掛かろうとした瞬間、まるで金縛りにでもあったかのように私の身体は動きを止める。しかし、その視線はある一点を凝視していた。 唯「あずにゃんカップ…。はぁ…、やっぱりカワイイよぅ」 まるでギー太を愛でるかの様な手付きで、私は優しく…、そして繊細にあずにゃんカップを手に取る。 「よーし、このカップはより丹念に洗ってあげよーっと。きっとあずにゃんカップも喜ぶよぅ」 「あら、唯じゃない。何やってるの?そろそろ完全下校時刻よ」 私は聞き慣れたその声の方向に、勢い良く振り向く。刹那、足元から激しい衝撃音。 振り向いた目に映ったのは、予想通り和ちゃんであった。 「うん、分かってるよー。このあずにゃんカップを洗い終わったら帰るよ!……ってアレ?」 「あずにゃんカップって、その床で粉々になってるソレ?」 和ちゃんの言葉に、私は足元に視線を向ける。そこには、無残にも砕け散った陶器の欠片があった。 「の、和ちゅあぁぁぁぁぁん!?なっ、なんなのコレ!一体誰があずにゃんカップにこんな酷い事を!!?」 「誰って…アナタじゃないのよ。仕方ないわねぇ、私も片付けるのを手伝ってあげるから」 「ど…ど…どうしよ…。どーしよぅ和ちゃん……」 私の身体の震えは、家電量販店の最新マッサージ器を凌駕する勢いであった。 …… 澪「それにしても遅いな唯…。一体何をしてるんだ」 律「どっかで寄り道してるんじゃねぇの?茶道部の匂いに惹かれてフラフラとか」 紬「そんな、蝶々じゃないんだから。お茶菓子はもう沢山食べたし大丈夫よ」 バッタンー!! 唯「律っちゃぁぁぁぁんっ!どうじよう゛!律っちゃぁぁぁんっ!!」ガバーッ 律「な、なんだぁ?落ち着けよ唯。どうした、なんかあったかの?」 唯「落ち着いてなんか居られないよ!えまーじぇんしーなんだよ!!リッチャンエマージェンシーなんだよっ!」 律「なんだよそのエマージェンシーは…?いいから、何があったんだ」 唯「あずにゃんが……あずにゃんが……」 澪「梓が!?まさか梓の身に何かあったのか!」 紬「それは本当なの!?まさか病気が悪化して入院とか!」 唯「違うの…!そのあずにゃんじゃなくて……あずにゃんカップが。あずにゃんカップがこんな酷い事に…」ガチャガチャ…… 紬「……………あら」 律・澪「……………ぁ」 唯「へ、へるぴみー…リッチャン…」ガクガク 律「お前何やってんだよ!?よりにもよって梓のカップを割るなんて」 唯「ま…、まさかこんな事になるなんて…、どうしてあずにゃんカップなの……。私か律っちゃんのカップなら良かったのにね…」ガクッ 律「いや、良くねぇよ!何さり気なく私もカップも巻込んでんだよ!謝れ、私のカップに謝れ!」 唯「うぅ…、ゴメンなさい律っちゃんカップ」ペコリ 紬「落ち着いて唯ちゃん!カップに謝っても梓ちゃんのカップは返ってこないわ」 律「あーぁ、梓が部室に来たら怒られるぞ。入部してからずっと使ってたもんなぁ」 唯「やっぱりそうかな…?あずにゃん怒るかな…」 律「もしかしたら、唯が夜道を歩いてるときに背後からムスタングで…」 唯「む、…ムスタングで!?むすたんぐで私どうなっちゃうの!?」ビクッ 律「いや、そればっかりは私の口からは…。ただ月の無い夜には気を付けるんだぜ…」ポン 唯「ちょっと!気になるよ律っちゃん!?ねぇ澪ちゃん、月のない夜っていつかな、今日じゃないよねっ!!」 澪「知らないよ、そんなの…。いいから落ち着けって。律も無駄に煽るんじゃない」 律「でもよ、実際問題どうするんだよ。この割れ方はボンドでくっつけるのは無理じゃねーか?」ガチャガチャ 唯「だ、大丈夫だよ!憂はパズルとか得意なんだよ、憂に頼めばきっとなんとかなるよ!」 律「いや、もうパズルってレベルじゃねーぞ。これは考古学クラスなんじゃないか」 唯「こ、考古学!?だったら考古学部に持っていこうよ!」 澪「そんな部ないよ、いいから落ち着けって。なぁムギ?」 紬「はい?何かしら澪ちゃん」 澪「このカップってどこで買ったヤツなのかな?もしかしたら同じヤツが売ってるかも」 唯「そ、そうか!?澪ちゃん流石だよ!あずにゃんカップが無いならあずにゃんカップを買えばいいんだよ!」 紬「えーっと…、どこだったかしら?確か…」 唯「どこかなムギちゃん!?…そうだ、ムギちゃんの事だから海外なのかな!スイス王室御用達のカップ!?」 紬「……あ、そうだわ思い出したわ!」ポンッ 唯「スイスって海外だよねっ!どうしよう律っちゃん、私パスポート持って無いよ!?律っちゃん持ってるかな?海外って何を持っていけばいいの律っちゃん!何が必要なの!」 律「うるせぇよ!どんだけテンパってんだよ!?今お前が必要なモンはパスポートじゃなくて平常心だっ!」 紬「ふふ、安心して唯ちゃん。あのカップを買ったのは国内よ」 唯「…え?それは本当なの!」 2
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http //blog.goo.ne.jp/taezaki160925/e/bdd565d17e4d768965d6a385ab93d253より転転載 真実の攻防 沖縄戦「集団自決」から63年 3部<7> 沖縄タイムス 「正確・人権」に欠ける報道 占領下の呪縛引きずる 米軍上陸を目の当たりにした渡嘉敷島で、愛する家族を手に掛けた当時十六歳の少年、金城重明氏。後にクリスチャンそして牧師となり、沖縄キリスト教短期大学学長などを歴任、“集団自決の語り部”として、多くの書物を残している。 昨年、集団自決に関する教科書検定意見をめぐって沖縄世論が沸騰した中、金城氏は六月二日、那覇市で沖縄タイムス主催のシンポジウム「挑まれる沖縄戦―『集団自決』検定を問う」で、当時の体験を述べた。同紙が六月八日付でその詳細を報じている。 「私たちは日本軍の強制、命令、抑圧によって精神的に追い詰められ、死に追い込まれた。軍の存在なしに住民が自発的に死を選択することは決してなかった」 「私は渡嘉敷島の赤松嘉次守備隊長から直接聞かされたことをはっきり覚えている。『われわれ軍隊は、戦況を報告するため最後まで生き延びなければならないが、住民はそうではない』」 牧師であり、短大の学長経験者でもある氏の発言として、二十万人読者を持つ沖縄タイムスが報じた影響はすこぶる大きい。この発言を真に受ければ、赤松元隊長とは自分たちは何としてでも生き延びる立場だが、「住民はそうではない」すなわち住民は死んでも構わないと語る、卑劣な軍人となってしまう。これは赤松氏の人格にかかわるだけの問題ではない。 つまり、「日本軍は住民を守らない」という左翼の主張に合致し、作家大江健三郎氏が『沖縄ノート』の命題とした「沖縄の民衆の死を抵当にあがなわれる本土の日本人の生」(六十九ページ)を裏付けるものだ。 本当に、金城氏はこのような発言を赤松氏から聞いたのであろうか。 その点を、昨年九月十日、福岡高裁那覇支部の法廷で沖縄戦集団自決訴訟の原告側代理人が、証人として立った金城氏に尋ねた。 すると、金城氏はこの発言をあっさり撤回。「私がふと言った言葉」であり、「これはちょっと削除してください」「私ははっきり言ってない」と弁解した。 シンポジウムの会場で、実際に金城氏は、このような発言をしたかもしれない。だが、偽証罪に問われる可能性のある法廷で、金城氏は「住民はそうではない」という発言を赤松氏はしていない、と訂正したのである。新聞社としては、紙面に掲載した発言内容をいちいち、後日、修正するのはごめん被りたいと思うのは理解できる。 ただ、沖縄タイムスも法廷記録が公になった十月には、金城氏がこの発言を撤回したことを知り得た立場にある。 ところが――。沖縄タイムスが昨年行った集団自決・教科書検定問題のキャンペーン報道をまとめた同社刊『挑まれる沖縄戦』に収録された先のシンポジウムでの、「住民はそうではない」という発言は、削除されずにそのまま掲載されたのだ。 この本は、今年一月三十一日に初版が発売されている。それまでに掲載記事の検討、取材先に記述内容の確認作業も十分できたはずだ。沖縄タイムスは社を挙げてこのキャンペーンに取り組んでいたのだから当然、金城氏が法廷で発言の撤回をしたことも確認したであろう。だが、その上で同社は、社の方針としてこの発言を削除しなかった可能性が極めて高い。 そこには、言論機関として、報道される人の人権への細やかな配慮というものは微塵(みじん)も見られない。沖縄タイムスが、大多数の人の人権に配慮しないというのではない。ただ特定の人に対する人権を、無視するのである。 それは何故か。「軍命令」または「隊長命令」があった、とするような発言、またはこれを肯定する言動は大きく好意的に取り上げる。一方、これを否定する言動は一切無視し、黙殺する。昨年、県庁で会見を開いた座間味島在住の宮平秀幸氏の証言が良い例だ。 非公開だった金城氏の証人尋問での発言撤回についても、そんなことは誰も気付くまいと沖縄タイムスは黙殺したのであろう。それよりも赤松氏を冷酷な人物に仕立てることを選んだのである。 単行本『挑まれる沖縄戦』は、昨年九月二十九日の県民大会参加者の実数が約二万人と判明した後でも、平然と「十一万人」と掲載する。こうした報道の原点には、隊長の自決命令を明記した『鉄の暴風』(昭和二十五年発行)を守るためなら何でもするという意志がうかがえる。米占領下で誕生し、成長した沖縄タイムスは今なお、占領下の呪縛(じゅばく)にからめ捕られ、もがいているように見える。 (編集委員・鴨野 守) (6月22日付 世界日報掲載) 沖縄戦「集団自決」から62年 真実の攻防
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さわ子「澪ちゃんはいいのかしら?」 澪「いえ…、私は部室の戸締まりがあるし…」 さわ子「だったら、私が戸締まりはしておいてあげる。……こう言ったらどう?」 澪「さ、さわ子先生……!」 バタンッ 紬「……あら、アレってまさか」 タッタッタッタッ! 澪「おーい、みんな待って!待ってくれよ、私も行くー!」ダッ 唯「み、澪ちゃんまで…。ありがとうみんな!」 律「店の中で走ったらダメじゃなかったのかー澪!」 さわ子「あ、ちょっと待ちなさい唯ちゃん。これを持って行きなさい!」シュ パシッ! 唯「こ…これは!?電車でもバスでも使える『Suica』!でも、これはさわちゃんのじゃ…!」 さわ子「レンタル料は助手席の、このウーパールーパにしておくわ。持って行きなさい」 唯「あ、有り難う!これで百人力だよ!」 律「はは…、まさかあのぬいぐるみが本当に役に立つなんてな」 さわ子「駅はこの建物の裏手だからね。車に気を付けて遅くならない内に帰るのよ」 唯「りょーかいだよ!よし、行こう!行こうよ皆」 …… ……ブチン 梓「何このドラマ、完全に打ち切りエンドじゃない。最後まで見て損した。はぁ、……退屈。やっぱり無理してでも部活に出れば良かったかな」ゴロン ピロッパッニャー♪ 憂『あ、梓ちゃん!今ちょっと良いかな、寝てたりしてた?』 梓「ううん、ドラマ見てたから大丈夫だよ。何か用?」 憂『うん!お姉ちゃんがそっちに行ってないかな?』 梓「唯先輩?来てないよ。どうかしたの」 憂『実はまだ、お姉ちゃんが帰って来てないの…。電話しても繋がらないし。……迷子になってたらどうしよう』 梓「落ち着きなよ憂。そんな訳無いじゃない、唯先輩はもう高校生なんだから」 憂『で、でも……』 梓「そんな事よりアウトレットはどうだったの?純と行ってきたんでしょ」 ホーホー… 唯「う、ういー!ここ、どこ…、ジャスコは?ジャスコはどこなの。うぃー!」キョロキョロ 澪『よし、大体場所は分かったぞ。皆の携帯に転送するよ』ピッ 紬『…ふむふむ。今の時間から間に合わせ範囲の総合スーパーはこの四つね』 唯『よし、迷ってる暇は無いよ!私は北西のジャスコ、澪ちゃんは南南西の西友、ムギちゃんは東のイズミヤ。そして律っちゃんはココのお値段以上ニトリだよ!」ズビシッ 律『おぉ!唯のヤツなんか凄いな。異様な気迫に充ち満ちているぜ』 紬『本当ね、とっても頼もしいわ!』 唯『甘いね、今の私はただの平沢唯じゃないの…。そう、コマンダーユイなのさ!』 紬『おぉー。それじゃ司令官の唯ちゃん、命令をどうぞ』 唯『時は満ちた、今こそあずにゃんカップをこの手に…。その為にここまで耐え忍んだんだよ!いくよ、皆の衆!』ダッ 律『どうしたんだよ澪?やけに志気が低いじゃねーか!』 澪『………なんか心配だな』 「はぁ…、こんな事ならあんなの言わなきゃ良かった。凄い恥ずかしいよぅ…。とにかくジャスコの位置を確認しないと」サッ ピッ…ピッ……ブチン… 「……え?あれ!?嘘っ、こんな所で電池切れなの!」 カチカチ… 「ど、どうしよう…。これじゃ律っちゃんに電話も出来ないよ!」 ホーホー… 「あぁ…いつの間にか真っ暗だよ。月が出て無いのかな。………うん。月が無い?」 私は自分で口に出した言葉に疑問を覚える。しかし、それがどの単語かを理解する前に私の頭から爪先までを、まるで冷や水を被せられたかの如く寒気が走った。 『唯が夜道を歩いてるときに背後からムスタングで……』 『月の無い夜には気を付けるんだぜ……』 瞬間、私は遥か虚空に目を向ける。その瞳に映った物は黒。呆れる程に黒一色だった。 「月の無い夜……。いや、まさかね。何を驚いてるんだか…。どうせ律っちゃんが脅かしただけだよ…」 私は一度深呼吸を付こうと大きく息を吸い込もうとした。しかし、その行為は私の耳に響いた物音により中断される。 「こんな所に人…?いや、違う。そんなはず無い…。こんな時間にこんな道を通る人なんか居ない。これは…」 吸い込んだ息を吐き出す事さえも忘れて、私はただそこに立ちすくむ。まるで両足を鎖でがんじがらめにされたように……。 「あ……あずにゃんなの……」 私は自分を安心させる為に、その言葉を呟きかける。 有り得ないのだ、あずにゃんがここに居るはずが。 有り得ないのだ、返事が返ってくる事が。 だから、こそ安心できる。今私の頭に過ぎった事はただの妄想に過ぎない、返事が無い事がそれを証明しているのだから。 「……ぃ…パイ…。ゆぃセンパ…」 刹那。私の足は幻想の鎖を引き千切り、猛然と前方を虚空を翔けた。 己に宿る製造本能がそうされるのだろうか、私は自分でも驚く程の速力だった。 「あ、あれは私の知っている中野梓じゃない…。三十六手で必ず私を仕留める、悪鬼。そう、あずにゃんカップの怨念なんだから!」 振り払え、迷いを。振り払え、己の限界を。 でなければ、私はもう二度と演奏をする事は出来ない。 だって…その時には既に私という固体は生命活動を停止してただの蛋白質へと姿を変えて…… 梓「ゴチャゴチャうるさいですッ!止まれって……言ってるでしょ!」ブォン スパコーンッ! 唯「はふぅ!?」ドサッ ガッシ! 梓「やっと、捕まえましたよ!どこまで世話をやかすんですか」 唯「痛たたた…、これはサンダル?それじゃ足があるの!?本当にあずにゃんなの」 梓「だからそう言ってるでしょ!他に誰が居るんですか」 唯「そ、それはそれで具合が悪いよぅ!後一日成仏してくれないかな!?」 梓「だから、私幽霊じゃありませんよ!」 唯「でも、どうしてあずにゃんが私の居場所分かったのさ?」 梓「憂が余りに心配するから、澪先輩に電話したんですよ。そしたら、本当に迷子かもしれないって言うから…」 唯「そ、それでわざわざ私を探しに来てくれたの?」 梓「私だけじゃないですよ。律先輩やムギ先輩も、皆探してくれてるんですよ」 唯「うぅ…、皆の足を引っ張るなんて…。コマンダーYUI失格だよ…」 梓「なんですかコマンダーって?ほら行きますよ」 唯「…え?行くってどこにかな」 梓「向こうですよ。ほら、明かりが付いてるでしょ」 唯「明かり…?あっ、あれはジャスコ!?こんな所にあったの!?」ダッ 梓「あ、ちょっと!?」 ガラガラガラガラ… 唯「シャッ…、シャッターが閉まる。遅かったって言うの……」 梓「私のマグカップですか?別にいいですよ、他を使えば」 唯「えっ!?なんでそれを!もしかしてあずにゃんカップの怨念に…」 梓「違いますよ、澪先輩から電話で聞いたんです。あんまり怒らないでくれって言われたけど…」 唯「それじゃあずにゃん怒って無いの?あずにゃんカップ割っちゃったんだよ!」 梓「怒るよりも呆れてますよ……。そんなに私に怒られるのが嫌だったんですか?」 唯「それもあるけど、あずにゃんが可哀相だったんだもん…」 梓「私が可哀相…?」 唯「だって、あんなに可愛くて素敵なあずにゃんカップを無くしちゃったんだもん…。それも私のせいなんだよ?だったら見つけるしかないじゃない…、たとえ0.01%の確率しか無くても…」 梓「唯先輩…。違いますよ、0.01%なんかじゃありません…」 唯「……え?」 梓「澪先輩やムギ先輩。それにさわ子先生…、皆頑張ってくれたんです。0.05%、それでも見つからないんだったら文句は無いですよ」 唯「で、でも本当に良いの?大事なあずにゃんカップなんだよ!」 梓「そうですね…。でもそんなマグカップよりも、私の為にここまでやってくれる軽音部の皆…。そっちの方が私にとっては何倍も大事なんですよ」 唯「あ、あずにゃん!ありがとうあずにゃぁぁん!」ガバーッ 梓「ふふ…、やっと笑ってくれましたね。やっぱり唯先輩には…笑顔が」 唯「あずにゃん…?どうしたのあずにゃん!」 梓「ごめんなさい、無理し過ぎたみたいでちょっと頭痛が…。少し、休ませてもら…」ズルッ… 唯「あずにゃん、しっかりして!大丈夫なの!」ガシッ … 梓「あ、あれ……。ここは…」パチッ 唯「気が付いたかな?心配したんだよ」 梓「唯先輩のウチですか…。私をおぶってここまで?」 唯「当たり前じゃない。あずにゃんカップの罪滅ぼしだよぉ」 梓「ふふっ…。ありがとうございます、唯先輩」 ガチャリ… 憂「あ!お姉ちゃん、良かった無事だったんだね!」ダッ 唯「大袈裟だよぉういー。私はジャスコに行ってただけだよ」 憂「早く上がって、梓ちゃんも!いま温かい飲み物淹れるね」 憂「それじゃ、お姉ちゃんはずっと梓ちゃんのマグカップ探してたんだ?」 唯「聞くも涙、語るも涙なんだよういー」 憂「……めっ!だよ、お姉ちゃん」ビッ 唯「はふぅ!?な、なんでういが怒るの」ビクッ 憂「悪い事をしたら、まずは謝らないとだめだよ」 唯「そ、そっかー…。ういは厳しいねぇ」 梓「別にいいよ憂。また別の買えばいいし」 憂「そう?ゴメンね梓ちゃん」 唯「うぅ、ゴメンよぅぃー」 憂「でも、お姉ちゃんも今日一日頑張ったしね。ほら、コレ。私からのプレゼントだよ」ガチャガチャ 梓「…プレゼントってそのホットココアなの?」 憂「違うよ。ほら、このお姉ちゃんのカップ、可愛いでしょ」 唯「こ、…この丸いフォルム…。このぷりてぃな取っ手の尻尾…!?」ガタタッ 梓「私のマグカップ!?でもなんで憂が持ってるの!」 憂「なんでそんなに驚いてるの?このマグカップは今日行ったアウトレットモールで売ってたんだよ」 梓「アウトレットモール…。そうか、そういう事だったのね」 唯「ど、どういう事なのかな!?あうとれっとって何?考古学部の事?復元したのかな!」 梓「違いますよ…。ほら、ココアでも飲んで落ち着いてください」サッ ズズズズ… 唯「はふぅ…!やっぱりあずにゃんカップは魔法のマグカップだよぉ」 憂「良く分からないけど、お姉ちゃんが幸せそうで私も嬉しいよ」 =翌日= 澪「アウトレットモールっていうのは、メーカーの訳あり品や半端ものを取扱ってる所だよ」 唯「訳あり品…。そっかー、だから倒産した会社のあずにゃんカップもそこに流れついてたんだね」 律「まさか駅前にそんなモンが出来てたなんて…。知ってりゃ最初からそうしたのにな」 梓「今回ばかりは純の無駄な情報網に感謝ですね」 律「感謝っていやぁ、さわちゃんにもしとかないとな。まだ来ねーのかな」 梓「さわ子先生なら、青い顔して教頭室の方に歩いて行きましたよ。何かあったんですかね」 唯「え…!?あー、うん何だろうねぇ律っちゃん」ガクガク 律「さ、さぁなぁ…、私に聞かれても至極見当が付かないぜ……」ガクガク 梓「……どうしたんですか?ねぇ澪先輩」 澪「ごめんなさい…ごめんなさい…」ブツブツ 紬「さぁ、皆。お茶が入ったわよ。はい、梓ちゃんのあずにゃんカップよ」サッ 梓「ムギ先輩までそう呼ぶんだ…。どうもです」サッ 澪「さて、それじゃ頂こうか」 唯「…………………」チラッチラッ 梓「な、なんですか唯先輩。そう何度もチラチラ見られると落ち着かないんですが……」 唯「え!?違うよぉあずにゃん。気のせいだよぉ」 梓「そ…、そうですか?」ズズズズ… 紬「ささ、今日はチーズスフレよ。沢山食べてね」サッ 澪「おぉ、そうなのか?私はこれ好きなんだよな」ズズズズ… 梓「へー、そうなんですか。それは初み……」ズズズズ… 唯「……………………」チラッチラッ 梓「あーっ、もう!唯先輩、そのカップ貸して下さい!」バッ 唯「え、ちょっと何するのあずにゃん!?」 梓「こうですっ……!」ゴクゴクゴク… 律「こらこら梓、そいつは唯の分だぞ。がっつくなよ」 梓「…はふぅ。す、凄いですよこの唯先輩のカップ!紅茶の味が二倍にも三倍にもなってますよ!」 唯「何言ってるのあずにゃん。これは普通のカップだもん。あずにゃんカップじゃあるまいし」 梓「いいから騙されたと思って飲んで見て下さいよ」サッ 唯「うぅ……」ズズズズ… 律「どうだ唯なんか変った味するか?」 唯「……はふぅ!?」ガタタッ 紬「ど、どうしたの唯ちゃん!大丈夫かしら」 唯「な、何これ!?まるで魔法みたいだよ。あずにゃんカップを凌駕する深い味わい…、これがゆいういカップ!?」ズズズズ! 澪「…おいおい、梓お前一体唯に何をしたんだ?」 梓「別に…、ただ魔法を掛けただけですよ」 律「馬鹿言うなよ、魔法なんてあるわけねーだろ」 梓「ふふっ、ありますよ。プラシーボ効果っていう魔法です」 紬「あ…!な、なるほどねぇ」 唯「ゆいういカップー、ゆいゆいういー♪不思議なカップー、ゆいういカップー♪」ズズズズ 律「……ほんと、思い込みの効果なら唯には絶対だな」 唯「この、ゆいういカップなら何杯でもオカワリできるよぅ!」サスサス =おしまい= 戻る
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「憂鬱だわ…」 新年度早々和ちゃんがそう行ってため息をついた。 真面目な和ちゃんにしては珍しい。どのくらい珍しいかって言うと鼻血や涎出してないムギちゃんに遭遇するくらい珍しい。 しかも登校中にそんなこと言うなんて和ちゃんらしくない。生徒会の仕事で疲れてるのかな? 「なにか悩みごと?私でよければ相談に乗るよ?」 あ、憂に先越されちった。まぁ、ここは可愛い妹に花を持たせてあげよー 「ほら、憂って世界一可愛いじゃない?新入生の中に憂を好きになっちゃう子が出て来たらどうしようって…」 「の、和ちゃん…恥ずかしいよぉ。それに私だって気が気じゃないんだよ?和ちゃんって宇宙一カッコいいからもしも下級生がって…」 「嬉しいこと言ってくれるわね。でも、そうね…せっかく憂がそこまで言ってくれるんだから、 せめてあなたにとって一番カッコいい人間ではいたいわね」 「と言うと?」 「憂以外の子なんかには心動かされないってことよ」 「の、和ちゃん…」 「憂にも世界一可愛い恋人でいて欲しいのだけど、これはわがままかしら」 「わがままなんかじゃないよ!うん、和ちゃんの一番で居続ける自信はあるよ」 わーお、悩みじゃなくておのろけだ~。 なんだかくすぐったいや。妹と親友がいちゃいちゃしてるからかな? りっちゃんと澪ちゃんなら別に平気なんだけどな。ムギちゃんとさわちゃんの場合、あっちの意味で平気じゃいられないんだけど…。 「お姉ちゃんも気をつけたほうがいいよ?梓ちゃん、ちっちゃくて可愛いから…」 「だからってあんたが浮気するのはもっとNGよ、唯」 「そうだよ!お姉ちゃん可愛いから狙われやすいもん。あぁ…心配だなぁ、お姉ちゃん…」 「いけない子ね、憂。唯のことをそんなに気にかけるなんてちょっと妬けちゃうわ」 「も、もう和ちゃん…いぢわるしないでよぉ」 さてまぁバカップルは無視するとして、憂の言うことはもっともだよ。 可愛い可愛い可愛いあずにゃん、私がしっかり守らなきゃだね! というわけでじっせん!その1!! 「あ、唯先輩♪」 まぶしい笑顔で私を迎えてくれたのは、もちろん愛しのあずにゃんだ。 いつもは家の近くで待ち合わせてるんだけど今日は校門前で落ち合った。 メールでそのことをお願いしたら、ちょっと不思議そうにしてたけどちゃんと了解してくれた。 「唯先輩と会える時間が減るのは寂しいですけど、がまんします」って一文に、私、きゅんと来ちゃったよ。 ごめんね、あずにゃん。でもでも、こんな可愛いことされたら…ね。 合流したらあずにゃんと一緒に校内へ…は行かず、新入生たちがたくさん集まってる前で私はついに計画を実行に移すのでした! 「あずにゃん、大好きだよ♪」 「え?はい、私も唯先輩のこと…んむっ!?」 新入生たちの興味が程よく集まった頃を見計らって私はあずにゃんの唇を奪っちゃいました! びっくりしたみたいでちょっとだけ抵抗されたけど、本気のキスだって伝わってからは ちゃんと背中に手を回してくれた。私も同じようにきゅっと抱き締める。 写メを撮る音とか冷やかしの歓声とかキマシタワーって聞こえてきたけど、これも私の計画通り! こうやってあずにゃんとのラブラブな仲を見せつけておけば誰も邪魔なんかしないよね。 「ムギちゃんったらまたビデオ回して。そんなに羨ましいなら、…試してみる?お・な・じ・こ・と」 「さ、さわ子先生たら…お願いします♪」 「じゃあ遠慮なく」 バカップルは無視。ていうかさわちゃんは遠慮しないと捕まるんじゃ… 続いて、じっせん!その2!! 始業式の日から部活見学が始まる。去年は憂と純ちゃんが来てくれたんだっけ。 なんで最初から来てくれなかったのーってあずにゃんに聴いたら、「唯先輩との時間を無駄にした一年前の私をひっぱたきたいです」って言ってたっけ。 えへへ、気にしないでいいんだよ、あずにゃん。これから一生かけて無駄にした時間を取り戻そうね♪ …っとと、思い出に浸ってばかりじゃいられないね。見学者が来たところで作戦開始であります! 「あずにゃん、じゃあふたりきりでちょっと合わせてみよっか」 「はい、いいですよ」 「ふたりで合わせる」っていうのは私たちの合言葉。やること自体は単純で、私とあずにゃんでひたすらジャムるんだけど… 「唯先輩、んっ、ふぅっ…今日は…がん…ばります…ね…んんっ」 「え、へへ…あずにゃんともっともっと…気持ち良く…なりたいもん…んうっ」 私たちの場合、十分二十分とジャムって限界突破する頃には、なんて言うか…こう言う気持ちになっちゃうんだよね。 ふたりの爪弾くメロディが溶け合うみたいに私たちの身も心も溶け合うみたいで… 「はぁはぁ…あずにゃん…もっともっとだよ…もっとあずにゃんが欲しいよぉっ!」 「だ、だめです、唯先輩…ゆい…せんぱ…私、もぉ…トンじゃうぅっ!」 つまりこの作戦、私たちは一心同体なんだよって見学に来た新入生に見せつけるのが大切なんであります! 「おいばか律、お前なに新入生に色目使ってんだよ!そんなことしてると今夜膝枕してやらないからな!」 「ばっか、何ヤキモチ妬いてんだよ澪~。澪に色目使う奴がいないか睨みをきかしてんだよ!」 「り、りちゅう~」 バカップルは無視。ていうか既に膝枕してんじゃん、澪ちゃん。 そして最後の最後。じっせん!その3!! 今日は新歓ライブだ。 私にとってはあずにゃんと出会うきっかけになったような、大切な想い出のある特別なライブだよ。 「一年前、唯先輩がこのステージに立ってくれたから、今、私はここにいるんですよね」 「そう考えると不思議だねー。運命だね♪」 「運命なら私はもっと前に感じてましたよ。学祭ライブのテープ聴いた瞬間にビビッと来ましたもん」 あずにゃんも同じ気持ちでいてくれたんだ。えへへ~、嬉しいな♪ あずにゃんの為にもライブを成功させなくちゃ。それで私たちの為にも最後の作戦を達成しなくちゃ! 途中、「田井中律はすっこめ!澪様ー澪様ぁ~」ってわけわからない妨害があったこと以外はライブは無事に進んでいく。 ていうか、騒いでたのって元生徒会長さんだよね?卒業生がなにやってんのかなぁ… まぁ、「誰がすっこむかってんだ!澪はあたしのもんだ!力ずくで奪ってみやがれ!」っていうりっちゃんの啖呵はかっこよかったけどね。 あ、これ聴いた澪ちゃんが腰抜かして蕩けちゃって一時演奏中断したのはアクシデントって言えばアクシデントかな。 次は私のソロパート。そしてここからが最後の作戦の本番だ。 「みなさん、ごめんなさい!プログラムに一部変更があります!」 突然の宣言にあずにゃんはきょとんとしてる。そりゃそっか、あずにゃんには秘密にしてたもんね。 サプライズを成功させる為にりっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃんには協力を頼んであるんだけどね。 でも、曲が始まったらあずにゃんもきっとわかってくれるはず。ちゃんとついてきてくれるはず。 そうあずにゃんを信じてるから、私は最後の作戦を決行できるんだよ。 「私はこの歌を一番大切な人に捧げたいと思いますっ」 さぁ、行くよっ、あずにゃん! 「題して、あずにゃんに首ったけ!…あずにゃんは私の嫁~っ!」 さぁ心して聴け新入生諸君!あずにゃんは…あずにゃんは…私のお嫁さんなのだぁっ! 私のお嫁さんなのだぁっ! 可愛い -- (名無しさん) 2010-04-18 09 08 16 唯梓サイコー! -- (名無しさん) 2010-07-30 21 23 50 その歌聞かせて〜♪ -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 20 40 34 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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憂「あずにゃんにゃん! あずにゃんにゃん!」 憂「ああ、あずにゃんとにゃんにゃんしたいよぉ…」 ガチャ 唯「ただいま」 憂「あーずにゃん♪」 唯「……」 憂「……」 唯「なにしてるの?」 憂「ちょっと体操してた」 唯「あずにゃんって叫びながら?」 憂「うん」 唯「そっか」 憂「うん」 …… 憂「今日のご飯はカレーだよ」 唯「わーい」 憂「たーんとお食べ」 唯「おいしい」 憂「ありがとう」 唯「ごちそうさま」 憂「お粗末さま」 唯「で」 憂「うん」 唯「さっきのはなに?」 憂「なんでもないよ」 唯「憂はさ」 憂「なに?」 唯「あずにゃんが好きなの?」 憂「……」 唯「そうなの?」 憂「…わからない…」 唯「わからない?」 憂「でもお姉ちゃんがあずにゃんに抱きついてるのみてると」 唯「うん」 憂「ちょっと羨ましいなって思ったり…」 唯「あずにゃんとにゃんにゃんしたいって?」 憂「…うん」 唯「うんじゃなくて」 憂「え?」 唯「あずにゃんとにゃんにゃんしたいの意味を聞いてるの」 憂「あ、それはね」 唯「うん」 憂「…私もわからない」 唯「わからない?」 憂「なんかにゃんにゃんしたいなって思ったけど」 唯「うん」 憂「にゃんにゃんってなんだろ?」 唯「なんだろうね」 憂「お姉ちゃん知らない?」 唯「知らない」 唯「憂は」 憂「うん」 唯「あずにゃんのことが好きなの?」 憂「さっきもいわなかった?」 唯「恋人になりたい?」 憂「わからない」 唯「それもさっきいったね」 憂「恋人ってなんだろう?」 唯「なんだろうね」 憂「女の子が女の子を好きになるっておかしいのかな」 唯「さあ」 憂「お姉ちゃんは彼氏いたことある?」 唯「ないけど」 憂「彼女は?」 唯「ないよ」 憂「あずにゃんとの関係は?」 唯「親友兼後輩かな」 憂「そっか」 唯「っていうかあずにゃんって呼ぶのやめなよ」 憂「やだ」 唯「あずにゃんをあずにゃんってよんでいいのは私だけです」 憂「私も平沢家の一員だよ」 唯「平沢唯だけに許された特権」 憂「じゃあ私もおねえちゃんになる」 唯「なんですと」 憂「ほら、髪を下ろしてこうやって止めたら」 唯「おお、私がもう一人」 憂「そうだ」 唯「うん?」 憂「私明日お姉ちゃんと入れ替わる」 唯「えっ」 憂「小説じゃよくあるでしょ」 唯「双子入れ替え?」 憂「ステップ・ファザー・ステップ」 唯「でも私たちは双子じゃないよ」 憂「でも双子以上に似てるよ」 憂「ギターもお姉ちゃんと同じくらいならできるし」 唯「えっ?」 憂「『演奏が完璧すぎる。おまえ唯じゃないな』だって」 唯「どういうことなの」 憂「律さんがそう言ってた」 唯「りっちゃん酷い」 唯「私の三年間は一体なんだったのか」 憂「まだ二年間しかやってないでしょ?」 唯「そうだった」 憂「お姉ちゃんの真似をする程度なら」 唯「うん」 憂「私、高三勉強だってついていけると思う」 唯「なにそれひどい」 憂「でもこのあいだ勉強教えてあげたの私でしょ」 唯「そうでした」 憂「ちゃんとノート取っとくから」 唯「なら許す」 憂「宿題もやるよ」 唯「さすが憂」 憂「じゃあ入れ替わり決定だね」 唯「でも私の方に不安が」 憂「大丈夫だよ。純ちゃんに話しておくから」 唯「どう大丈夫なの」 憂「お姉ちゃんになりきるためにお姉ちゃんの部屋で寝ます」 唯「おやすみ憂」 憂「違うよ」 唯「えっ」 憂「おやすみなさいお姉ちゃん、だよ」 唯「ああ、入れ替わりだね」 憂「そういうことだよ憂」 唯「じゃあお休みなさいお姉ちゃん」 憂「おやすみ憂」 翌日 律「おっす唯」 憂「おはよう」 澪「おはよう」 憂「おはよう」 紬「おはよう」 憂「おはよう」 さわ子「おはようみんな」 憂「おはようございます」 憂「よく考えたら授業中は憂の方があずにゃんと一緒にいられるよね」 憂「失敗したなぁ」 …… 唯「おはようあずにゃん」 梓「おはようございます唯先輩」 唯「まだちょっと眠いや」 梓「夜更かしでもしたんですか?」 唯「ちょっとね」 梓「そうですか」 唯「うん」 梓「唯先輩のことですからギターでもいじってて遅くなったんでしょうね」 唯「いや、昨日はギー太も憂のなりきりのために取られてたから」 梓「じゃあなんで遅くまで起きてたんです?」 唯「ギー太がなくて眠れなかった」 梓「そうですか」 唯「あ、チャイム鳴っちゃう。三年の教室に戻らないと」 梓「いやいや、入れ替わってるんじゃなかったんですか」 唯「そうだった」 梓「しっかりしてくださいよ」 唯「てへっ」 梓「はぁ」 唯「あれ? 梓「どうかしたんですか?」 唯「なんで私が唯だってわかってるの?」 梓「憂は私のことをあずにゃんだなんて呼びません」 唯「そっか」 梓「はい」 唯「でも昨日はそう呼んでたよ」 梓「呼んでるのは知ってますけど」 唯「知ってるの?」 梓「はい」 唯「隠しきれてないんだ、憂」 梓「でも私のことを呼ぶときにあずにゃんとは言いませんよ」 唯「なんでだろ?」 梓「さあ…。呼び方なんて簡単に変えられないですし」 唯「中野」 梓「はい?」 唯「変えられるよ」 梓「そういう意味じゃなくて」 唯「あずさちゃん」 梓「へ?」 唯「憂は梓ちゃんって言ってたよね」 梓「はい」 唯「それなら私はそう呼ぶよ」 梓「そうですか」 唯「私は憂なんだから敬語なんてやめてよ、梓ちゃん」 梓「わかった」 唯「梓ちゃんのため口って違和感あるね」 梓「そうかな」 唯「タメ口あずにゃん」 梓「なにそれ」 唯「言ってみただけ」 梓「よくわからないよ」 唯「あ、さっきのあずにゃんはノーカウントで」 梓「どうでもいいでしょ」 唯「ホント違和感あるねタメ口」 梓「っていうか女の子がタメ口とかいわないでよ」 唯「敬語の方が梓ちゃんらしいかな」 梓「…」 唯「でも私は憂だからタメ口あずにゃんに慣れないと」 梓「いまのは?」 唯「今のも『タメ口あずにゃん』っていう固有名詞だからセーフで」 梓「そうですか」 唯「っていうか入れ替わりに全然動揺してないね」 梓「昨日連絡があったから」 唯「えっ」 梓「純に連絡してたんでしょ、憂は」 唯「してないよ」 梓「本物の方が」 唯「ああ、そんなこといってた」 梓「でも本物は理由を話してなかったらしくて」 唯「うん」 梓「要領を得ないから私に相談してきたの」 唯「それで?」 梓「それだけ」 唯「それだけ?」 梓「私が知ってるのは入れ替わりの事実だけ」 唯「どんな理由を推測する?」 梓「理由?」 唯「私と憂が入れ替わったことの理由」 梓「単純に遊びとか」 唯「そうかな?」 梓「っていうか憂の方が提案してきたって事実が驚き」 唯「こういうことって大抵私からじゃないかな?」 梓「だから本物の方」 唯「あ、そうか」 梓「なりきるか唯先輩として話すかどっちかにしてよ。さっきから紛らわしい」 唯「ごめん」 唯「ほんとはわかってたり?」 梓「まあだいたい」 唯「いじわるだね、梓ちゃん」 梓「だって」 唯「憂の思いに気づいてるのにそんな」 梓「えっ」 唯「えっ」 梓「思いってなんですか」 唯「えっ」 梓「えっ」 唯「梓ちゃん理由は気づいてるんじゃなかったの?」 梓「昨日律先輩に電話で聞いたら」 律『ああー、明日大事な小テストだからなー』 梓「だから唯先輩が憂にテストを受けさせるためにやったんだろうと」 唯「今日テストだったんだ、知らなかった」 梓「違ったんですか」 唯「私がそんなことするはずないじゃん」 梓「ですよね」 唯「えへへ」 梓「唯先輩がそんないい作戦を思いつくとも思えませんし」 唯「ちょっとひどい」 梓「で、憂の思いってどういうことなんですか? いや、どういうことなの?」 唯「ああ、それはねえ」 梓「はい」 唯「そういえば勝手に言っちゃっていいのかな」 梓「なんで?」 唯「憂の提案した作戦だし」 梓「ばれてるんだからいいんじゃないの?」 唯「いいかな」 梓「いいよ」 唯「だからその」 梓「うん」 唯「憂がね」 梓「うん」 唯「ところで話は変わるけどさ」 梓「突然だね」 唯「梓ちゃんは彼女いるの?」 梓「彼女?」 唯「そう」 梓「私は女だけど」 唯「わかってるよ」 2
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Re:寄り添い生きる獣たち ◆.WX8NmkbZ6 その瞬間は、何の前触れもなく訪れた。 総合病院に集まった八人。 全ての準備を終え、ストレイト・クーガーはズーマーに跨って残る七人に別れを告げる。 七人はクーガーを送り出しながら、自分達もまた動き出そうとする――正門近くでの、そんなやり取りの中。 風を切る音に最初に気付いたのはクーガーだった。 バイクから飛び降り、一番近くにいた上田次郎とLを抱えて飛び退る。 次いでヴァンが宵闇の中で沸いた悪寒に対し動物的な勘で反応し、隣にいたC.C.の手を乱暴に引く。 微かに遅れて水銀燈が羽を広げて宙に舞い上がる。 城戸真司は気付きながら、体の痛みですぐには動けなかった。 それを察した翠星石が真司を突き飛ばす。 この間、僅か数秒。 その数秒の間に、最強の生物が翠星石の頭上に現れる。 「ッ、手が掛かるわね……!!!」 水銀燈が黒い羽根を飛ばして翠星石を押し退ける。 誰もいなくなったその場所に、後藤の巨体が着地した。 衝撃で地面が罅割れるも、当の本人――後藤の表情は涼しげだった。 「ここにいたか」 淡々とした機械的な音声。 直接出会った事があるのがクーガーと水銀燈のみであっても、誰もがすぐに理解した。 これが後藤という生物であると。 クーガーがラディカル・グッドスピード脚部限定を形成し、ヴァンが刀を抜き、真司がデッキを掲げる。 その臨戦態勢に入る為の動作の間に、後藤は躍動していた。 しなやかで、人間のそれを遙かに上回る強靱な筋肉。 その運動エネルギーを最も効率良く利用出来る姿勢と動きを、後藤はこれまでの戦闘から学んでいる。 無駄のない、美しいとすら言える跳躍だった。 後藤の視線の先にはクーガー達から最も離れ、かつ姿勢の崩れていた人物――水銀燈がいる。 標的にされていると気付いた水銀燈は、回避は間に合わないと判断。 大量の黒い羽根を盾のように目の前に展開する。 しかし後藤はそれを、蹴り抜いた。 紙と何ら変わらず、僅かな足止めにすらならず、盾が破られる。 そして盾を破ったのとは別の足が、伸びた。 人間では有り得ない長さの間合い、更に後藤は足裏に鋭い棘を形成して水銀燈の胸を穿った。 後藤は水銀燈の腹部が空洞である事は知っている、故に同じ轍は踏まない。 棘が刺さっても蹴りの勢いは止まらず、水銀燈は病院の外壁へ縫い留められた。 「ぁ……ッ」 掠れた声を漏らすと共に目を見開き、幾度か体を震わせる。 翠星石の方へ向けた視線は弱々しく、口を開きかけるも言葉にならない。 そして水銀燈は動かなくなった。 一瞬、突然の出来事に誰もが放心し動けなかった。 油断していたわけではない。 ただ何ら躊躇も前置きもない殺戮に、誰もが置き去りにされたのだ。 「ああぁぁあああああああああああぁあぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 翠星石の叫びが闇夜に劈く。 地面から生えた蔦が後藤に向かって伸びるが、後藤は事もなげにそれを回避した。 支えを失った水銀燈の体が落下し、地面に叩き付けられる寸前に真司が受け止める。 翠星石が駆け寄ると水銀燈の胸が輝き始めた。 「水銀燈っ、水銀燈っ!!!」 涙を落としながら呼び掛ける翠星石の胸に、水銀燈の胸から生まれた虹色の目映い輝きが吸い込まれていく。 「あ、ぁ、ぁ、あ、」 物言わぬ人形となった水銀燈を前に、翠星石は動けない。 その無防備な背に牙を剥く後藤にクーガーが蹴りを放ち、ヴァンが斬り掛かるがそれぞれ一本ずつの刃で受け止められた。 そして翠星石に迫る残りの二本の刃を止めるべく、真司が割れたガラスにデッキを翳そうとする。 「いけません!!」 鋭い制止の声に動きを止めた真司に代わり、翠星石と後藤の間に割って入ったのはLだった。 女神の剣で後藤の刃を弾き、続ける。 「貴方がここで変身したら、誰がシャドームーンを倒すんですか……!!」 クーガーが後藤の刃を捌き、胴体に蹴りを入れる。 後藤は反対方向に跳んで蹴りの威力を消すが、これで後藤は一同から距離を取る事になった。 そしてクーガーが後藤の前に立ち塞がる。 「行ってくれ。こいつの相手は俺なんだ」 「だけど……!!」 一人残ろうとするクーガーに、真司が食い下がる。 だがクーガーは首を横に振った。 「お前が俺の立場なら、退かないだろ?」 真司は息を飲み込み、何も言えなくなる。 「俺が遅かったせいで、守れないもんばっかりだ。すまん。 だから……こいつと決着をつけるのが俺のけじめで、約束なんだ」 「行ってくれ」と、クーガーはもう一度言う。 自身への怒りで震えて動けなくなった真司に代わり、他の者達が動いた。 上田がデイパックから取り出したトランクに水銀燈を寝かせる。 ヴァンは呆然としていた翠星石を抱えて走り出し、C.C.が水銀燈のデイパックを回収ながら真司の手を引く。 「行くぞ、もたもたするな!」 「……っ」 引かれる力に抵抗出来ないまま、真司は歯を食い縛る。 何も出来ない、その代わりに真司はクーガーの背に向かって叫んだ。 「それ!! 大事に使えよな!!!」 オレンジ色のバイク。 真司が愛用していた品だ。 遠ざかる真司のその声に、クーガーは振り返らずに手を挙げて応える。 隠してあった車の運転席に上田が、助手席にLが乗り込む。 後部座席に真司が乗り、ヴァンはその隣りに翠星石を押し込んだ。 そしてC.C.がエンジンを掛けたバトルホッパーにヴァンが乗り込み、上田はそれを確認してから車を発進させる。 やがてエンジン音が離れ、病院の周囲が静寂に包まれた。 クーガーは「悪いな」と呟きながらズーマーに手を置く。 「車もバイクも実に文化的だが――俺が使うのは一回限りだ」 ズーマーが消える。 目を隠していたサングラスも同様に消失する。 代わりにクーガーの全身、爪先から頭部までの全てが赤紫の装甲に覆われた。 空気抵抗を極限まで抑える流線型。 速さを求めたクーガーのアルターの、本来あるべき姿。 クーガーの命さえ削る最速の力、フォトンブリッツ。 アルター化させるものは、地面だろうとバイクだろうと構わない。 だがアルターは己の欲望、意志、エゴそのもの。 想いの強さが力に直結する。 悪・即・斬を掲げた斎藤一に縁あるサングラスでなければ。 ジェレミア・ゴットバルトから受け取った、城戸真司の愛車でなければ引き出せない力がある。 「待たせたな」 一部始終を見守っていた後藤に呼び掛ける。 二人の戦い、一度目は斎藤一と平賀才人の死で終わった。 二度目は志々雄真実の訪れで中断された。 三度目は今。 四度目はないと、互いに確信している。 託された想いを。 守れなかった、死なせてしまった人々への己の想いを胸に、クーガーは吼える。 「見せてやる……文化の真髄をッ!!!」 ▽ ローザミスティカ。 ローゼンメイデン達にとっての命とも呼べる奇跡の石。 水銀燈のローザミスティカは翠星石と同化した。 同時に翠星石の中に、水銀燈の感情が流れ込む。 シャドームーンに植え付けられた畏怖、踏み躙られたプライド、そして―― ――たった七人の姉妹、どうして嫌いになれるですか。 翠星石の言葉は確かに水銀燈に届いていた。 そっぽを向いて、可愛げのない視線を送って鼻を鳴らして、それでも。 どこかに確かに、姉妹への愛があった。 真司の隣りで、翠星石ははらはらと涙を零す。 胸に宿る四つのローザミスティカの温かさが悲しみをより深いものにする。 運転する上田も動かなくなった上田次郎人形を膝に置き、水銀燈の喪失を噛み締めていた。 シャドームーンを倒す為にと協力を要請したLも、他の三人も、口を閉ざし無言のまま己の無力を嘆く。 だが翠星石の涙には、他にも理由がある。 「いいんですか」と尋ねる上田にLは「いいんです」と簡単に返した。 重苦しい空気。 既に全員が気付いている。 バトルホッパーで並走するヴァンとC.C.はわざと明後日の方向を見て、上田はハンドルを握る手を震わせ、真司は唇を噛み、翠星石は目を伏せる。 「翠星石さん、私は貴女に謝らなければいけません」 そんな空気に気付いていないとでも言うように、普段通りの口調でLが話し始める。 「私の考え方は、貴女には心ないものに映ったと思います。 それに貴女の姉妹を助けられなかった。 ですが、これが私の正義なんです。 ……私の事を、許してくれますか?」 「ぃ、今、そんな話をっ……」 翠星石がスカートの裾をキュッと掴んで言い返す。 しかしLは意に介さない。 「大事な話なんです。 貴女のような可愛らしい女の子に露骨に嫌われて、私はこれでもかなり傷付いたんです。 許してくれるのかくれないのか、どっちですか」 真面目なのか不真面目なのか分からないLの喋りに、翠星石はやはり苦手だと感じた。 それでも顔を上げ、助手席に座るLに向かって言葉を投げ付ける。 「っ……こ、これで許さなかったら……翠星石が悪いやつみたいじゃねえですか……! 許、してやるから……ありがたく、思えですぅ……!!」 「……ああ、それは良かった」 満足げに、うっすらと口元に笑みを浮かばせてLは目を閉じる。 車内に満ちるのは血の匂い。 後藤の刃の一本がLの腹を割いていた事を、全員が気付いていた。 停車させて応急処置をしても手遅れだと分かっていた。 「このっ……バカ……ッ!!!」 この会場に残っていた最後の姉妹と、気に入らないながらも協力し合っていた仲間を一度に失った。 翠星石の涙が落ちていく。 とめどなく頬を濡らしていった。 だが翠星石とて、ただ泣き続けるだけで終わるはずがない。 父より授かった体を傷つけられ、プライドをズタズタにされ、一矢報いる事すら出来なかった水銀燈。 この殺し合いで失われた命に対し誰よりも責任を感じながら、最後まで見届けられなかったL。 二人とは終ぞ分かり合えなかった翠星石だが、彼らの無念に何も思わずにいられるような脆弱さは持ち合わせていない。 それは真司も、ヴァンも、C.C.も、上田でさえも同じだ。 死んだ者達に報いたいという想い。 性格も住む世界も一致しない五人の思いは、確かに一つになっていた。 【水銀燈@ローゼンメイデン 死亡】 【L@DEATH NOTE 死亡】 【一日目真夜中/G-8 総合病院付近】 【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】 [装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石と水銀燈のローザミスティカ@ローゼンメイデン [支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0~1) [状態]身体中に強い鈍痛、疲労(中)、首輪解除済み [思考・行動] 1:真司達と同行し、殺し合いを止める。 2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。 [備考] ※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。 ※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】 [装備]龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎 [所持品]支給品一式×4(朝食分と水を一本消費)、確認済み支給品(0~2) 、劉鳳の不明支給品(0~2)、発信機の受信機@DEATH NOTE 首輪(剣心)、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎 [状態]身体中に激しい鈍痛、疲労(大)、劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感、志々雄への嫌悪、応急処置 [思考・行動] 1:人を守る。 2:右京の言葉に強い共感。 3:翠星石達と同行し、殺し合いを止める。 ※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。 ※クーガー、C.C.らと情報交換をしました。 【ヴァン@ガン×ソード】 [装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK [所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎 [状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲、応急処置 [思考・行動] 0:とりあえず前に進む。 1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。 2:C.C.の護衛をする。 3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパーを返す。 [備考] ※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。 ※C.C.の名前を覚えました。 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】 [装備]:ファサリナの三節棍@ガン×ソード、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ [所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ゼロの仮面@コードギアス、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、 カギ爪@ガン×ソードレイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、白梅香@-明治剣客浪漫譚-、確認済み支給品(0~1) [状態]:健康、首輪解除済み [思考・行動] 0:レナと合流したい。 1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。 2:後藤、シャドームーン、縁、スザク、浅倉は警戒する。 3:ジェレミアの事が気になる。 [備考] ※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。 ※右京、ルパンと情報交換をしました。 ※クーガー、真司らと情報交換をしました。 【上田次郎@TRICK(実写)】 [装備]君島の車@スクライド、ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説) [支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、 上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(1~3)、 銭型の不明支給品(0~1)、ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、水銀燈の遺体 [状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲 [思考・行動] 0:山田…… 1:真司達に協力する。 2:シャドームーンを倒す……? ※東條が一度死んだことを信用していませんが、Lが同じ事を言うのでちょっと揺らいでます。 ※水銀燈のデイパック(支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、首輪×2(咲世子、劉鳳)、 着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、 カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0~1)、ロロの不明支給品(0~1)、 三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル)をC.C.が、 Lのデイパック(支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、角砂糖@デスノート、 情報が記されたメモ、S&W M10(5/6)、S&W M10の弾薬(18/24)@バトル・ロワイアル、首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、 イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、 才人の不明支給品(0~1)、ゼロの剣@コードギアス)を上田が回収しました。 ▽ 「お前は、面白い人間だ」 「そいつはどうも」 後藤のシンプルな感想に、クーガーは素っ気なく返す。 クーガーがこれまでの戦闘で見せていない力、工夫が見られる――後藤は高揚していた。 いつでも動けるように膝を軽く曲げ、相手の動きを待つ。 クーガーは地面に片膝を着き、上体を沈めた。 どんなに鍛えようと訓練を積もうと、生身の人類には決して到達し得ない最速のクラウチングスタートを切る。 地面を抉る程の力強い踏み込み、視線は真っ直ぐに後藤へと向けられていた。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」 最速の走り出しから即座にトップスピードへ。 そしてその速さのまま、後藤に飛び蹴りを入れる。 「確かに、速い」 賛辞に近い言葉を述べながら後藤はギリギリまでクーガーを引き付け、その上で最小限の動きで蹴りを避けた。 避けられても止まる事なく後藤と擦れ違うクーガー。 その背に後藤は四本の刃を同時に叩き付ける。 響くのは肉の裂ける音ではなく金属音。 アルターによって形成された装甲を突破出来ず、刃は弾かれて行き場を失った。 「硬い」 微かな驚嘆の混ざった声には反応せず、クーガーは着地した足の膝を折り曲げる。 勢いは未だ止まらずにガリガリと地面を削っているが、構わずに一気に足を伸ばした。 溜まった力を解放し、跳ぶ。 高く高く舞い上がり、そこから直下の後藤に向かって高速で落下した。 「はぁあッ!!!」 後藤はそれも寸でのところで回避し、クーガーの蹴りは地面を砕くに終わった。 土煙にクーガーの姿が隠れる。 そして後藤の目に、砂塵の壁を破ったクーガーの爪先が映った。 半ば奇襲となったその一撃は、しかし後藤への決定打にはならない。 後藤はクーガーの姿が見えなくなってすぐに刃を盾に変形させて待ち構えていた。 クーガーの蹴りを受け止め、同時に受け流す。 蹴りは滑るように軌道を変え、逸らされた先の地面へ突き刺さった。 クーガーは自身の足の刺さった地面を砕き、後藤の蹴りを避けながら跳躍して距離を取る。 更に爪先でトントンと地面を叩いて挑発した。 「おいおい、逃げるばっかりか? そんなもんじゃあ俺は倒せないぜ」 後藤は気付いていた。 クーガーはこの間の攻防だけで息が上がっている。 フォトンブリッツの性質を知らずとも、それが諸刃の剣である事を観察し考察していた。 このまま長期戦に持ち込めば後藤はクーガーに悠々と勝利出来る、故にクーガーは後藤を挑発して短期戦を狙っているのだ。 「それもそうだ」 そこまで分かった上で、後藤は挑発に乗る。 それは後藤が最強の生物である為だ。 『無敵』ではなく『最強』。 ただ殺すだけでは足りない、ただ食うだけでは足りない。 戦って相手を下し、勝利する。 戦う敵がいない孤独な『無敵』ではなく、全ての敵に勝る『最強』。 ――後藤……排他的なお前ですら、弱者という他者を必要としている……強さを渇望し変化している。 田村玲子の、死の間際の言葉を思い起こす。 後藤の存在は、敵なくしては有り得ないのだ。 敵の全力を叩き伏せた上で喰らい、最強を証明する。 後藤は刃の形を変化させる。 装甲を突破出来なかったのはこれが初めてではない。 場所は同じく総合病院、数時間前に戦ったジェレミアの半身を斬る事は叶わなかった。 だが「斬れなかった」で終わるのでは微温い。 両腕をそれぞれ枝分かれさせて四本腕にしていたが、片方の腕を束ねて強度を上げる。 更に装甲を貫く為に、鋭く変形させていく。 攻撃力を一点に集中させる、西洋の騎士が用いたランスを模した形状へ。 両者が踏み出すのは同時、クーガーが蹴りを、後藤がランス状の腕を振るうのも同時だった。 速さを武器にした者同士の全力の一撃で、辺りに風が巻き起こる。 拮抗した状況から先に引いたのは後藤だった。 強度が足りず砕かれそうになったランスを絶妙のタイミングで引き、クーガーは微かにバランスを崩す。 だがクーガーはそこから敢えて地面に向かって上体を倒し、両手で体を支えた。 そして振り上げた両足で連続して後藤の顎を狙うも、後藤も上体を反らして躱す。 クーガーが腕の力で跳ね、後藤から離れた地点に着地する。 再び仕切り直しとなった。 「まだ、足りないな」 単純に形状を変えただけではクーガーに届かない。 後藤にこそ『工夫』が足りない。 よって後藤は更なる変化を加える。 腕を変形させたランスに、螺旋状の切り込みを入れた。 そして再度踏み込む。 クーガーが繰り出すのは先程と同様の蹴り。 対する後藤は一拍堪えた。 一拍――一呼吸分、遅らせる。 向かってきた蹴りに後藤が下方から膝蹴りを加え、結果クーガーの足は高く振り上げられた。 空いた胴に向かってランスを突き出す。 クーガーは両腕を交差させて構え、それを受け止めた。 それだけでは刺さらないと後藤も理解している。 だから、工夫する。 その状態のまま後藤は、肘から先を回転させた。 「ッ!!」 クーガーの装甲の下から息を呑む音が聞こえる。 後藤は変形を急速に、数秒以上に渡って行う事で人間の使う道具、ドリルを真似たのだ。 突く力に回転の力が加わり、ギャリギャリという耳障りな音と火花が散った。 クーガーが振り上げた足で踵落としを狙うが、そちらは残る二本の腕で受け止める。 そして音が変わる。 バキン、という音がクーガーの腕の装甲を砕いた。 クーガーが体を支えていたもう一本の足を振るい、ドリルを蹴り上げる。 蹴った勢いで離脱しようとするが、出来ない。 二本の腕に受け止められた脚がそのまま絡め取られていたのだ。 地に足が着かない、腕も着かない不安定な体勢。 後藤は腕を振るい、渾身の力に遠心力を加えてクーガーの背を病院外壁へ叩き付けた。 「ガッ……」 外壁に、そしてフォトンブリッツの装甲の背中側に走る亀裂。 クーガーの苦悶の声と体の動きからダメージを確認した後藤は追い打ちを掛ける。 走る速度を上げ、滑らかな体重移動で姿勢を整えた後藤の姿は砲弾に似ていた。 壁に寄り掛かり息をつくクーガーに体当たりを浴びせれば、元より半壊していた壁の亀裂が広がり、砕ける。 壁を突き破り、クーガーは病院内部へ叩き込まれた。 床を転がったクーガーは起き上がらない。 ドリルに突かれた箇所は生身の腕にまで達し出血している。 動けずにいるクーガーを追って、後藤は余裕をもって病院の中へと移動した。 「これは疲れる。 だが、悪くない」 螺旋状の腕に視線をやりながら後藤は言う。 常に回転させていなければ威力を発揮しない燃費の悪い攻撃ではあるものの、確かな成果があった。 人間如きの真似をするのに嫌悪感がないでもないが、『工夫』の一点においては人間が優れている事も認めている。 故に、人間の工具を模倣したこの攻撃方法も悪くないと感じていた。 その間にクーガーが緩慢な動作で立ち上がる。 周囲の床や壁をアルター化させて装甲の亀裂を補強した。 ふらつきながら、それでも後藤に向かい合う。 「まだまだ……足りないな」 「しぶとい人間だ」 後藤が跳ぶ。 天井にぶつかり、天井を蹴る。 壁に衝突し、壁を蹴る。 床に着地し、床を蹴る。 病院の狭い廊下の中で、後藤が縦横無尽に跳ねる。 後藤の速さは空間の限られた屋内でこそ発揮されるのだ。 クーガーと交錯する一瞬だけドリルを回転させ、クーガーの肩を掠めた。 それだけでは装甲は剥がれない、しかし掠り傷も重なれば話は変わる。 腕、肩、脚、背、クーガーに防御され回避されながら、少しずつ削り落として行く。 補ったばかりの装甲は瞬く間に無残な傷に覆われ、やがて剥がれて生身の体が露出した。 しかしそこで後藤は攻める手を緩めた。 喰らい付き引き千切る事も出来る相手を前に、退く。 そして後藤の胸があった箇所を蹴りが掠めて行った。 クーガーは攻撃を受けながら反撃の機会を窺い、後藤が深く踏み込んでくる瞬間を待っていた――後藤はそれを読んでいた。 この程度の浅知恵では後藤には勝てない。 だが、後藤にとっての計算外が一つ。 掠めただけのその蹴りで、後藤は体勢が崩れた。 先程までよりも蹴りの威力が上がっているのだ。 後藤の攻撃を受けて弱っているはずが、逆の事が起きていた。 その崩れた姿勢へクーガーが追撃を加えてくる。 「はああああああああああああ!!!!!!!」 大振りな蹴りの連続。 しかし受け流そうとして触れた腕が弾かれた事で、威力の上昇が偶然ではないと知る。 クーガーの蹴りが遂に後藤の腹を捉えた。 後藤はその一撃に、後方に向かって跳ぶ事で内臓への衝撃を小さくする。 それでも、強い。 後藤は手足を広げ、天井や床に鈎に変形させた手足を突き立てる事で止まった。 パラサイトに痛覚がなくとも、今の一撃が危険なものである事は理解出来る。 後藤が様々な経験や工夫を吸収し重ねる事で強くなるのとは別に、クーガーもまた強化されていた。 「俺はな……負けられないんだよ。 約束を抜きにしてもな」 傷付いた装甲を、クーガーは補わない。 後藤の推測通りノーリスクで出来る事ではないからだ。 ボロボロの姿を隠しもせずに、数分前と同じようにトントンと爪先で床を叩く。 「あの出来の悪いカズマの大馬鹿野郎、勝手にさっさとあっさり死にやがった。 劉鳳や社長なんてとっくの昔だ。 かなみちゃんまで無理したらしい、カズマの馬鹿から妙な影響受けたんじゃないか? かがみさんから任されたってのに、こなたさんは説得出来なかったしみゆきさんもみなみさんも会う前に死んじまった。 ここに来てから会った他の連中だって、今となっちゃあ生きてる奴らの方が少ないぐらいだ」 早口で捲し立てる。 名前を間違えない、間違えても反応してくれる相手がいないこの場では間違える意味が無い。 独り言のように、後藤が聞き取れなくても構わないと言わんばかりに喋り続ける。 「俺はいつ死んだって後悔しない、そういう生き方をしてるんだ。 なのに死ぬのは俺の周りの連中だ、優秀な連中だ、性格の良い連中だ、もっと長生きしなきゃならない若い連中だ、未来がある連中だ。 お前が殺した真紅さんも! 水銀燈さんも! 斎藤さんも! サイトってガキも! 何かやらかしたってんならやり直しゃいいそれが文化ってもんだ、だが死んだらそれすら出来ない!! 俺にはそれが、許せないっ!!!」 クーガーは後藤に返事は求めない。 反省も促さない。 元より期待していない。 早口に、早口に、加速していく。 トントン、と叩いた床が砕けた。 装甲に隠れたクーガーの表情は誰にも見えない。 「俺がどんなに速くなっても死んだ連中は取り戻せない。 けどな今生きてる連中は助けられるんだ、だから俺は速くなるまだだもっとだもっと速くなる。 今の速さでお前が倒せないならもっと速くなってお前を倒して今生きている連中を元の世界に帰してやるのが俺の義務であり責務であり任務であり兄貴分としての役目でありっ、俺のッ、生き様なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」 言い終わるよりも早くクーガーは走り出す。 フォトンブリッツがクーガーの意思に呼応してより鋭いデザインへ変化した。 アルターは己のエゴを押し通す力、想いの力一つで今ある枠を叩き壊す。 意思なくして文化なし、文化なくしてクーガーはない。 クーガーのアルターはクーガーの我を通す為に、意思の力で『進化』する。 一歩一歩が床を踏み砕き、走って生まれた風が壁を崩す。 突き出された蹴りを見て、後藤は――恐怖した。 志々雄によって一度植え付けられた感情、恐怖。 それを思い出した。 三木のように、田村玲子のように、今まで食ってきた生物達のように、死ぬ。 そう想像させる一撃が眼前に迫っていた。 「ガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」 しかし、それで思考停止する後藤ではない。 むしろ逆――恐怖と同時に湧き上がったのは三木を切り取られた際の熱と痛み、怒り。 感情に乏しい寄生生物でありながら、後藤はその昂ぶりを爆発させる。 ――後藤に命じる。 呼び起こされるのは封じられていたはずの記憶。 会場に連れて来られる際に掛けられた、銀髪の少年によるギアス。 ――私に大人しくついて来い。 ――そして会場に着いたら『他の参加者に手加減し』、私の事は忘れろ。 後藤の力に掛けられた制限。 腕を振るう速度、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に縛られていた。 だがギアスは強靭な意思によって解かれる。 ユーフェミア・リ・ブリタニアが一時的であれルルーシュの命令を拒絶したように。 ナナリー・ヴィ・ブリタニアがシャルルのギアスを破って開眼したように。 クーガーが意思の力でアルターを進化させたように、後藤もまた意思の力でギアスを握り潰し、本来の能力を解放する。 後藤は最強の生物。 田村玲子にか弱いと称されながらも多くの命を屠ってきた存在。 ただの人間では太刀打ちしようのないパラサイト達の中でも異端と呼べる、怪物の中の怪物。 クーガーの必殺の一撃を紙一重で躱し、擦れ違い様に露出した肩に刃を突き立てる。 「ぐぁあっ……!!」 如何にアルターが強化されようとその内側は生身の人間だ。 血が噴き出し、スピードも目に見えて落ちる。 その隙を逃さずに後藤は束ねた一本の腕で拳をつくって顔面を殴り抜いた。 ドリルを形成して装甲を突破するよりも、面での衝撃を与えた方が早いという判断だ。 壁に打ち付けられたクーガーの腹に蹴りを入れる。 当然それだけでは装甲に傷は付かないが、壁と後藤の脚に挟まれたクーガーがくぐもった声を上げた。 そして蹴りと拳を浴びせ続ければそれまでの装甲の亀裂が広がっていく。 制限から解放された、常人の目には映る事すら許されない攻撃は緩まない。 だが更に振り抜いた拳を、クーガーは掌で受け止めた。 押す事も引く事も出来ない、動かない。 「言ったろ……俺は負けられないってなぁああ!!!!!」 クーガーが身を仰け反らせ、勢いをつけた額を後藤の額に向かって打ち下ろす。 痛覚のない後藤に対しては無駄な行動、しかし確かに、僅かに後藤は怯んだ。 その僅かでクーガーには充分だった。 残る一方の手で拳を握る。 散弾銃すらも受け止める後藤の『鎧』を打ち砕く為に、強く鋭く速く速く速く速く速く速く速く速く速く。 もっと速く、更に速く。 「俺は俺が選んだ俺の道をッ、貫く!!!!!」 後藤の腹に突き立てるだけでは止まらない。 クーガーは壁に押し付けられた状態から反対側の壁まで突っ込み、逆に後藤を叩き付けた。 後藤の背が壁に達した瞬間、後方へと逃し切れなくなった力が腹へ集中する。 この殺し合いが始まってから、クーガーは背負い続けて来た。 背負うものを増やし続けて来た。 命、約束、信頼。 今ここで勝てなければ背負う全てのものに対する裏切りになる。 もっと速く、もっと速く、その一念がアルターの出力を爆発させる。 「グォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」 「があぁあああああああああああああああ!!!!!」 獣の叫びに似た両者の咆哮。 後藤が口を大きく開け、クーガーの肩に噛み付く。 装甲の上から歯を立て、肉を抉り、骨を砕く。 血を撒き散らしながらクーガーも止まらない。 「お、ぉ、おおおお、おおおおおおおお……!!!!」 もっと速く、もっと速く。 譲れない信念を握り締め、魂に火をつける。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! 」 クーガーの拳が後藤の鎧を穿ち、腹を突き破る。 後藤の背後の壁が崩壊する。 同時に後藤がクーガーの肩を食い破った。 二人が床へ崩れ落ちる。 クーガーのアルターは砕け散って消え、後藤は血を吐いた。 互いに床を血で染めながら藻掻き、立ち上がって相手に止めを刺そうとする。 瓦礫の中から先に立ち上がったのは後藤だった。 心臓を刺され瀕死となった泉新一をミギーが救った時のように、手足のパラサイト達の肉片を腹に集め、強引に補ったのだ。 五体のパラサイト全てを完璧に御する後藤だからこそ出来る荒業で、傷を塞ぎ新たな鎧を纏う。 過剰な出血にざわめく他の四体のパラサイト達を力でねじ伏せる。 そして、腕を刃に変えた。 「人間如きが、ここまで手こずらせるとは――」 「……なぁ、俺は蹴りの方が強いんだ。 何で殴ったと思う?」 瀕死の状態で搾り出される声。 脈絡のないクーガーの言葉に、後藤は首を傾げた。 死に際の戯言だろうと、構わずに刃を振り上げる。 そこでクーガーの手から床にパラパラと零れた何かが目に留まる。 カプセル。 薬品。 他の四体のざわめきは、出血によるものではないと気付く。 後藤は目を見開いた。 「ま、俺の速さなら勝てると分かっちゃいたが……Lの顔も立ててやんなきゃな」 ▽ 「クーガーさん、聞いて下さい。 後藤についてです」 総合病院を出る直前に、Lはそう切り出した。 速さを信条とするクーガーとしては長話を聞く気はなかったが、Lの真剣な表情がクーガーをその場に留めた。 「寄生生物――人間等の他の生物に寄生して生きる生物。 裏返せば、寄生しなければ生きられない生物です。 そして話に聞いた田村玲子さんと後藤の特徴を照らし合わせると、共通して胴体は変形していない。 恐らく消化器系や呼吸器系は人間の体に依存していると、私は推測します」 「速さが足りない。結論は?」 「つまりですね」 最終的に何が言いたいのか、先を急かすとLは言われた通り端的に答えた。 「如何に強くとも、後藤も我々人間と変わらないという事です」 ▽ 後藤の腹を突き破った際、その体内にバラ撒いたカプセル。 Lはカプセルを重ねる事で時間差を作ろうとしていたが、クーガーは手っ取り早くその場でカプセルを握り潰していた。 カプセルの中身はシアン化カリウム――青酸カリ。 胃酸と化学反応を起こし、呼吸器を麻痺させる。 拳に握れるだけ握った、致死量を遥かに上回る量の毒は数分と待たずに対象を死に至らしめた。 「グ、ガ、……」 後藤――五頭が寄生する肉体は死んだ。 しかし後藤は既に人体から自身を切り離していた。 クーガーの体を乗っ取る為、ではない。 最強の生物である為に。 己の中にある本能に、そして生まれた怒りに対し忠実に、クーガーを殺す為に。 刃を生やし、クーガーの首を狙う。 漸く起き上がったクーガーの反応は遅れていた。 「グォアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」 だが後藤にとって予期せぬ方向から衝撃を受け、刃が逸れる。 クーガーは何が起きたのか確認するよりも先に後藤に向かって蹴りを入れた。 弾かれて転がった後藤は再度攻撃を試みるが、クーガーの踵が落ちてくる。 踏み潰され、蠢くうちに乾いていく。 「き……さ、ま……」 後藤の小さな口が憎々しげに言葉を吐き出す。 「たむ、ら、れい、こ……!!」 「言ったろう後藤。 私もお前もか弱い、呆気無い存在だと」 後藤は沈黙する。 何かを叫ぼうとしながら、遂に干乾びて朽ちていった。 【後藤@寄生獣 死亡】 ▽ クーガーは伏していた。 血を流し過ぎた。 アルターを使い過ぎた。 ひたむきな自分が決めた、澱みなく真っ直ぐな道を、最速で駆け抜けた。 己のやるべき事をやり抜いて、もう一片の力も残っていない。 だがクーガーに呼び掛ける声があった。 耳元よりももっと近い、心に直接語り掛けるような距離だった。 「ストレイト・クーガー……だったか」 「誰だ、あんたは」 目を開けると病院ではなく、暗く広い空間にいた。 目の前には一目で人ではないと分かる、奇妙な形状の『もの』が立っている。 生物と呼んで良いのかさえ判別が付かなかった。 しかし目玉があり、口があり、クーガーに対し意思の疎通を図っている。 「頼みがある」 「おーおー、俺の荷物をこれ以上増やそうってか。 いいぜ、言ってみろよ」 どうせ終わった人生だ。 諦めている。 フォトンブリッツを使えばどうなるか、分かっていた事なのだ。 死に体の自分に出来る事があるというのなら、それぐらいやってやってもいいだろう。 一先ずは話半分に耳を傾ける。 『それ』は田村玲子と名乗った。 確かに後藤がその名を口にしていた事を思い出す。 そしてそれはC.C.の口から、ルパン三世と僅かな時間ながら同行していた人物として聞かされていた。 或いはLの口から、杉下右京と敵対した人物として。 クーガーには玲子を判断する為の材料が不足していた。 だが相手の真剣さは確かに伝わってくる。 パラサイトの事。 己の内にあった疑問と、ルパンによって示された回答、自らが至ったもの。 玲子は語る。 自身の死を体感する事で、この世の全てが生きていることを、細胞のひとつひとつが鼓動していたことを知ったのだと。 寄り添い生きる獣たち。 そして取り込まれた後藤の内側で放送を聞き、ルパンの死を知り、玲子は思ったのだ。 「人が死ぬのは……悲しい事だ」 何を今更分かりきった事を、と言っても相手はパラサイト。 むしろ後藤と同族でありながらその感情に至った事を、奇跡と呼ぶべきだ。 田村玲子は多くの人を食って来たという。 だが、人が死ねばそれで終わる。 続きがなく、会話もなく、ただ孤独がある。 それが悲しいと気付いたこのパラサイトは、最早パラサイトよりも人に近いだろう。 もっとも人間とパラサイトを『寄り添い生きる獣』と称した玲子の前では、両者の距離を測る事自体がナンセンスと言えるかも知れない。 「生きてくれないか。 そして出来る事なら私もお前の、人間の隣人として歩ませて欲しい。 私は最強の生物の一部としてではなく、人間に寄り添って生きたいと思う」 最強の生物、後藤を討ち倒した強い人間。 己の意思を貫く強さを持った人間。 「未だに消えない疑問がある。 命の必然性……命はどこから現れ、どこへ消えて行くのか。 お前ならその答えを見せてくれると、信じたい」 己の道を貫くと、最強の生物を前に一歩も退かずに叫んだ人間を信じる。 その信じるという言葉すらも、この玲子というパラサイトの中に生まれたばかりのものなのだろう。 パラサイトとは自我を持って歩き始めたばかりの、赤子に等しい存在なのだから。 「そんなもんはあんたの好きにすりゃあいい……つっても、俺は生憎もう――」 「体の事は私が何とかしよう」 「あぁ?」 「そろそろ、時間だ」 玲子が背を向けて遠ざかって行く。 呼び止めても止まらず、追い掛けようとしても足が動かない。 そしてクーガーは目を覚ました。 目を開けると朽ちかけた病院に倒れていた。 起き上がって見回し、後藤に食い千切られた肩が元に戻っている事に気付く。 肩だけではない、腕も腹も、目立った外傷はどこにもなかった。 アルターを酷使してガタガタになっていた足でさえ、痛みが弱くなっている。 大量の出血で貧血こそ起こしているものの、クーガーは確かに生きていた。 「おいおい……」 死に損なっちまった、と小さく呟く。 死ぬ気で戦ってこれでは、肩透かしもいいところだ。 「はっ……はははは……」 拍子抜けし、笑いが漏れる。 かがみや詩音、こなたは呆れて溜息を吐くに違いない。 ヴァンやC.C.は大して驚かないだろう。 ジェレミアや斎藤なら皮肉を言ってきそうだ。 真司や上田達であれば、恥ずかしげもなく喜んでくれるかも知れない。 「ははははははは、ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」 笑いながら寝転び、仰向けに倒れたまま笑い続ける。 息が苦しくなるまで、どうせ近くに参加者はいないだろうと大声を上げる。 自分でも何がこんなにおかしいのか理解出来なかった。 「ああ……」 笑い疲れ、クーガーは自身の掌を見詰める。 外の街灯の明かりが微かに差し込むだけの闇の中、翳した手の中には確かに血が通っていた。 その手を胸に当てれば、二人分の命を背負った鼓動が力強く伝わってくる。 何人も死なせておいて、不謹慎だと思いながら。 それでも、自分以外の誰かに語り掛けるように言葉にする。 「生きてるって、いいもんだな」 心からそう感じた。 今更、分かり切った事を分かっていなかったのは自分の方なのかも知れない。 「だったらもう少しばかり、走ってやりますか……」 まだ走れる。 ならば走る。 クーガーは走り続ける。 「勿論、最速でな」 【一日目真夜中/G-8 総合病院】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:なし [所持品]:基本支給品一式 [状態]:身体中に鈍い痛み、疲労(極大)、貧血 [思考・行動] 1:生きる。 2:北岡、ジェレミア、つかさ、レナを探す。 ※総合病院にて情報交換をしました。 ※ギアスとコードについて情報を得ました。 ※真司、C.C.らと情報交換をしました。 ※田村玲子が同化して傷を塞ぎました。アルターについては応急的な処置なので寿命が延びる事はありません。 それ以外の影響があるか否かは後続の書き手氏にお任せします。 ※後藤のデイパックが付近に放置されています。 時系列順で読む Back 準備 Next 太陽と月 投下順で読む Back 準備 Next 太陽と月 156 準備 ヴァン 158 太陽と月 C.C. 城戸真司 翠星石 上田次郎 ストレイト・クーガー 163 聖少女領域/贖罪か、断罪か L GAME OVER 水銀燈 151 doll dependence syndrome 後藤