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翌日、キュルケは昼近くに目を覚ました 寝ぼけた頭で先ず今日が虚無の日であることを思い出し、次に今や焼け焦げた風穴と 化した窓を見て昨夜の事を思い出した 「そうだわ、ふぁ・・・・。色んな連中が顔出すからふっ飛ばしたんだっけ」 そして壊れた窓のことなど毛ほども気にかけず、起き上がると先ず化粧を始めた 今日はどうやってヴァニラを口説こうかと考えるとやる気がムンムン湧いてくる キュルケは生まれついてのスタンド使・・・・もとい狩人なのだ 化粧を終え、ルイズの部屋の扉を叩く その後キュルケは顎に手を置いてにっこりと微笑む ヴァニラが出てきたら抱きついてキスをする ルイズが出てきたらどうしようかしら、少しだけ考えるが (そのときは、そうね・・・) 椅子に座っているであろうヴァニラに流し目を送って中庭でもブラブラしていれば向 うからアプローチしてくるだろう キュルケはよもや自分の求愛が拒まれるとは露ほども思っていないのであった(昨夜 のはノーカウントらしい しかしノックの返事は無い 構わず開けようとするが鍵がかかっていた キュルケは禁止されているにも関わらず、『愛の情熱はすべてのルールに優越する』 というツェルプトー家の家訓に従いなんの躊躇いも無くドアに『アンロック』の呪文 をかけた 鍵が開く音がすると勢いよくドアを開けるが 「あら?」 部屋はもぬけの殻だった 「相変わらず色気のない部屋ね・・・・」 キュルケは部屋を見回し、ルイズの鞄が無い事に気づいた 虚無の曜日なのに鞄が無いという事はどかかに出かけたのであろうか、 そう思い今度は窓から外を見回した 門から馬に乗って出て行く二人の人間が見える 目を凝らせば果たして、それはヴァニラとルイズであった 「なによー、出かけるの?」 キュルケはつまらなそうに呟き、それからちょっと考えるとルイズの部屋を飛び出した ヴァニラを伴ったルイズはトリスティンの城下町を歩いていた 学院からここまで乗ってきた馬は町の門のそばにある駅に預けてある 「狭いな」 物珍しそうに辺りを見回したヴァニラが呟いた 白い石造りの街はまるで話に聞くテーマパークのようだ 魔法学院に比べると質素ななりの人間が多い、皆平民なのだろう 道端で大声を張り上げて果物や肉、籠などを売る商人たちの姿が ヴァニラに何処と無くエジプトの情景を思い起こさせた 「狭いってこれでも大通りなんだけど」 「これで?」 道幅は5メイルもない そこを大勢の人が行き来するものだから歩くのも一苦労である 「ブルドンネ街。トリスティンで一番大きな通りよ、この先にトリスティンの宮殿があるわ」 「ああ、有事の時の備えという訳か」 確かに道が広いと街中が戦場になれば守るべき箇所が増え敵の侵攻が容易になる、 もっともこの場合は技術レベルの問題もあるのだろう 「ほら、さっさと行くわよ」 一人納得するヴァニラを引っ張るようにしてルイズは狭い路地裏に入っていく 悪臭が鼻を突き、ごみや汚物が道端に転がっている 「・・・・不潔な」 「だからあまり来たくないのよ」 ルイズは四辻に出ると立ち止まり、辺りをきょろきょろと見回す 「ピエモンの秘薬屋の近くだったからこの辺りなんだけど・・・・」 それから一枚の銅看板を見つけ嬉しそうに呟いた 「あ、あった」 ヴァニラが見上げると剣の形をした看板が下がっていた どうやらそこが武器屋であるらしい 店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの灯りが燈っていた 壁や棚に所狭しと剣や槍が並べられ、立派な甲冑が飾ってある 二人の客に気づいた五十がらみの店主が店の奥から胡散臭そうに見つめ、 ルイズの紐タイ留めに描かれた五芒星に気づくとドスの利いた声をだす 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさぁ。お上に目をつけられるよう なことなんかこれっぽっちもありませんや」 「客よ」 ルイズは腕を組み、その台詞を一蹴するように言った 「こりゃおったまげた、貴族が剣を!おったまげた!」 「どうして?」 「いえ若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下 はバルコニーから手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」 「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」 「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」 主人は商売っ気たっぷりにお世辞をいい、それからヴァニラを見上げるように眺め、 ごくりと息を飲んだ 「・・・・剣をお使いになるのはこの方で?」 ルイズは頷き肯定する 二人のやりとりを他所に店内へ品定めするように鋭い視線を巡らすヴァニラには 相当な威圧感があった 「私は剣のことなんかわからないから適当に選んでちょうだい」 主人はいそいそと奥の倉庫へ消えるがその背中は心なし煤けていた気がするが、 多分気のせい 「おっかねぇ客だ。適当にふっかけてとっとと帰らせるとしよう。 それに売れりゃ儲けものだ」 僅かに身震いすると出来るだけ見栄えのする剣を選んで店に戻る 「これなんかいかがです?」 見事な剣だった 1,5メイルはあろうかという大剣 柄は両手で扱えるように長く、立派な拵えである 鏡のように諸刃の刀身が光り、見るからに切れそうである 大剣としての本来の目的からは外れているようだが戦争に行く訳ではないのだ、 あまり関係ないだろう 「店一番の業物で、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の傑作で。魔法が かかってるから鉄だって一刀両断でさ。使い魔の旦那なら腰から下げれやしょう」 勿論嘘なのだが店で一番立派という点では偽りは無い 店主はチラチラとヴァニラの顔色を窺うが興味が無さそうに一瞥をくれただけだった しかしルイズ乗り気だった、店一番と店主が太鼓判を押したのが気に入ったらしい 貴族はなんでも一番でないと気がすまないのである 「おいくら?」 「エキュー金貨で二千、新金貨なら三千」 「立派な家と森つきの庭が買えるじゃないの」 ルイズは呆れていった ヴァニラが生徒から巻き上げた金でも足りそうにない ルイズが店主に何か文句を言おうとするがそれは叶わなかった 「帰りな素人さんどもよ!」 突然誰かの声がし、弾かれたようにヴァニラが店内を見回すが店の中には三人しかいない 「誰だ?」 ヴァニラが眉間に皺を寄せ警戒していると店主が怒鳴り声を上げた 「やいデル公!お客様に失礼なことを言うんじゃねぇ!」 「デル公?」 見れば乱雑に積まれた剣の山の一本が、錆の浮いたボロボロの剣が喋っている 「それってインテリジェンスソード?」 ルイズが当惑した声をあげる 「そうでさ若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。 こいつはやたらと口は悪いは客にケンカ売るわで閉口してまして・・・・」 「まるでアヌビスだな・・・・」 ヴァニラは今頃ナイルの川底に沈んでいるだろう、或いは平行世界で虐げられている スタンドの名を呟くとその剣を手に取る 「おでれーた、てめ『使い手』か」 「『使い手』?」 「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい、てめ俺を買え」 偉そうにいう剣にどうしたものかと暫し悩んでいたが 「おい、こいつでいい」 ルイズに向き直り錆だらけの切っ先を向ける 「え~~~~~~~~?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」 ルイズは心底嫌そうである 「こいつは何か知っているようだ。帰るための方法を探す役に立つかも知れん」 「立たなかったら?」 汚いものでも見るような目で剣を見るとヴァニラの顔を見上げる 「消し飛ばす」 「ならいいわ」 流れるような一連の遣り取りにデル公と呼ばれた剣は凍りついたように黙り込み 「店主、これにするわ」 「ちょ、ちょっと待った!やっぱ無し今の無しぃぃぃぃぃぃッ!」 盛大な悲鳴を上げた 「それなら百で結構でさ」 「安いじゃない」 「こっちにしてみりゃ厄介払いみたいなもんでさ」 店主はひらひらと手を振りながら言った 支払いを済ます間じゅう剣は騒いでいたがヴァニラ、ルイズ、店主の三人は奇妙な連帯感で無視していた 「毎度」 剣を取り、鞘に収めるとヴァニラに手渡した 「こいつの名前はデルフブリンガー、名前だけは一人前でさ。どうしても煩いと思っ たらこうやって鞘に入れれば大人しくなりまさぁ」 ヴァニラは頷いて剣を受け取ると腰から下げる 斯くしてインテリジェンスソード、デルフブリンガーは無事ヴァニラ・アイスのもの となり、デルフブリンガーは騒いでも聞き入れてもらえないので、考えるのを止めた To Be Continued...
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「またあんた!?」 開けっ放しにしていたチェストを閉じようとして、そのチェストの中に仁王立ちしている存在に気づき叫ぶ。 驚きながらも、三度目の接触にフーケは即座に対応した。 すぐにUターンして窓を突き破り、外に飛び出す。 地面を転がりながらルーンを唱え、起き上がるころには宝物庫を破壊した時と同じ巨大ゴーレムが現れる。 間髪いれずゴーレムを動かし、小屋を叩き潰す。 『破壊の杖』も中にはあるが、そんなものよりも今はあれを仕留めるほうが先決だ。 超巨大ゴーレムの一発でもともとぼろかった小屋は、ほとんど全壊した。 だがおまけにもう一発。 ドォンという音ともに、砂煙が舞う。それが消える頃には小屋はすっかり消え去り、クレーターが生まれていた。 「やった……?」 緊張を込めつぶやく。変態は逃げる暇も与えられずに、小屋と一緒に潰れたはずだ。 だがフーケは全く手ごたえを感じていなかった。冷や汗が吹き出てくる。 (どこにいるんだい……たくッ急に現れたり急に消えたり……こっちの話を全く聞かないタイプね……嫌いよ) 360°前方向に感覚を向けながら、ニヤリと笑う。少しずつだが動悸も収まってきた。 冷静になれ。もう何度目か分からないその言葉を心の中で繰り返す。 冷静に…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に… 「フフッ」 思わず口の端を歪ませて笑う。 探す必要も無く、変態は立っていた。ゴーレムの股の間に。 ボッーと立ったまま、こちらを睨んでいる。 冷静に! 「つぶれな!」 派手な音を立ててゴーレムに亀裂が入っていく。変態が音に反応して上を向いたちょうどその時、ゴーレムが崩壊を始めた。 今度は確実に巻き込まれるところを見届ける。確実に潰れた。 さらにその上に大きな岩が覆いかぶさっていく。 さらにさらに崩すだけでなく、フーケは岩と岩の間の隙間を錬金で埋めていく。 しばらくするとあっという間に小高い丘が完成した。 ふたたび森に静けさが戻る。空気はピンと張り詰めたままだ。 フーケはさらに杖を構えながら、じっと待つ。 十秒……勝ったはずだ……十五秒……あれで死なないはずがないじゃないか……二十秒……(杖を握る手はさらに強くなる)……二十五秒……なんで…… ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………… やはりなんの前触れも無く、潰れたはずの変態は小高い丘の上に出現した。 まるで地面から生えてきたかのようだ。 月をバックにこちらを見下ろす様は、ある一つの単語を連想させる。 (悪魔……!) いつもなら鼻で笑うであろうそんな考えを肯定するかのように、目の前の存在は地獄の底から発するような唸り声を上げる。 「オオオ……アアアア!……うおおおおおおおおああああああああああああ!!」 それをフーケはまるで他人事のように聞いていた。体が麻痺したように動かない。思考が追いつかない。 冷静に…冷静に…冷静に…逃げなきゃ…冷静に…冷静に…冷静に…冷静に……逃げなきゃ……逃げなきゃ逃げなきゃ 杖を握る手が目に見えて震え始めた。だがフーケ自身は全くそのことに気づかない。 「うあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「ひっ」 へたりとその場に腰を落とす。 悪魔は尚もうめき声を上げながら、丘の上で暴れている。その体をポロポロ崩しながら。……崩しながら? フーケはそれに気づいたとき自分が泣いているせいだと思った。涙で視界が歪んでいるからだと。 彼女のわずかに残った冷静な部分が、彼女の細い指を自分の瞳に触れさせた。 濡れてない。自分は泣いてなんかない。 …………ブラック・サバスは本当に崩れ始めていたのだ。 崩壊するゴーレムの隙間を縫うようにして避け、錬金によって埋められる前に丘の上に這い出た。 そこまではよかった。 だが人工的に作られた丘の上には影を作るものは存在しなかったし、二つの月の光はブラック・サバスにとってはいささか暴力的だった。 元の世界にいたころの月光とは比べ物にならないそれは(といってもブラック・サバスが覚えてることなどほとんど無いが) ブラック・サバスを苦しめ、確実にダメージを与えていく。 ブラック・サバスは派手にこけた。足がもげたらしい。それでもガリガリと地面でクロール泳ぎをするように動き回る。 だが半径数メートル内に逃げ場所は無かった。…………いや「いた」。 ブラック・サバスは改めてフーケを見据える。腕だけのほふく前進でフーケの所まで近づいていく。 「アアアアアアアアアア…………!!」 「うわ」 こちらが近づいていることに気づいたのか、フーケも尻餅をついたまま後ずさりしていく。 距離がジワジワと縮まっていく……。 手を伸ばす…が………限界……うう…消える……。 「が…………ま…………」 最後まで残っていたブラック・サバスの仮面も、闇に溶けていくように消滅した。 はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………… 真夜中の森に、フーケの荒い呼吸音だけが一定の間隔で聞こえる。 力無くよろよろと立ち上がる。 変態のような悪魔……いや、悪魔のような変態?……は唐突に現れ、唐突に消えた。 もっとも今もどこかで息を潜めて、チャンスをうかがっているのかもしれないが。 だが、フーケの目の前で消えた時の様子は、今までに無い切羽詰ったものがあった。 「なんだったんだい……」 力無くうめいて、広場を見渡す。 小屋があったところにはクレーターができ、その横には小高い丘ができている。 これらは全て、あれを倒すためにしたことなのだが…… 奴はそれらを物ともしていなかった。 宝物庫前での攻防と同じだ。全くなすすべが無かった。 「なんなのよ」 再び愚痴る。それしか今はできそうに無い。 ドッと疲れが出てきた気がする。体が異様に重く感じた。 だが、すぐにでも移動しないといけない。 あれが変態か悪魔かは知らないが、魔法学院の「誰かの使い魔」なのは確かだろう。 だとしたら現在進行形で状況は悪化している。すぐにでもさらなる追っ手が来るかもしれない。 使い魔とその主は感覚を共有できるからだ。 すでに使い魔の主はフーケがロングビルであることも、この場所にいることも知ったかもしれない。 先刻までは学院のメイジ程度なら相手にしても余裕だと考えていたが、状況が変わった。 奇襲をかける側から、奇襲をかけられる側になってしまったのだ。 もう学院には戻れない。 フーケはさっさと『破壊の杖』を回収して逃げることを選択した。 「ミス・ロングビルともサヨナラね」 全壊している小屋跡を見て、『破壊の杖』も壊れていないことを祈りつつ、魔法で探索を始めた。 「おーい起きろー」 「…………むにゃ……あと5分……」 ルイズはまだ意識が夢の中にある状態でなんとか返事をした。 「そう言って起きれる奴はいねーんだよ!」 ……もう、うるさいわねサバス……いつの間にそんなにペラペラしゃべれるようになったのよ……うん? 「サバス!?」 ガバッと跳ね起きる。 が、いつもベットの横で立っているルイズの使い魔はいなかった。 「俺だって!相棒はまだ帰ってねーよ」 「そう……あー…いつの間にか寝ちゃってたんだ」 ルイズたちがフーケを逃した後、多くの教師や生徒達が集まり大騒ぎとなった。 目撃者であるルイズたちは、次の日学院長室で詳しい説明をすることになり、とりあえず各自部屋に戻る。 ルイズは途中で地面に刺さっていたデルフを回収し、部屋に戻るまでどっちが役に立たなかったかで口論になった。 部屋に戻るとルイズはまず『再点火』して、ブラック・サバスを呼んでみる。 ブラック・サバスは光に触れたり、影から出たり、ルイズの爆発に巻き込まれると消滅してしまう。 そんなときでも、慌てず『再点火』すればすぐに現れる。 だが、今回はブラック・サバスは出てこなかった。 つまり、今もどこかで「行動中」ということだ。 恐らく、ルイズの命令に従いフーケを追っているだろう。 (感覚の共有ができれば、何をしているのか分かるのに) それができないことに歯がゆい思いになる。 火を点けては消し、点けては消す。それでもブラック・サバスは現れない。 そうこうしているうちに、睡魔に負けて寝てしまっていたようだ。 「で、これから上の奴らに報告しに行くんだろ?その前に相棒呼んでみようぜ」 昨日のことを少しずつ思い出していたルイズを現実に戻すように、デルフが明るい声で提案する。 「そうね」 ルイズは言われるままに、ネックレスの『装置』に手をやる。 一度大きく深呼吸して、『再点火』する。 まだカーテンを開けてない薄暗い部屋が、いっきに明るくなった。 そして………… 「『再点火』したな!」 全く変わりない姿が出てきたことに、ホッとする反面、残念に思う部分もあった。 「おかえり。フーケは?」 「…………」 「フーケは?」 「…………」 「…………」 登場ポーズのまま固まるブラック・サバスの様子に、ルイズは予想が当たっていたと確信する。 「逃がしちゃったのね…………まぁ別にいいわ」 「ほー、おでれーた。もっと怒るかと思ってたけどな」 実際ルイズは怒っていなかった。 むしろ怒りの対象はブラック・サバスにでは無く、不甲斐ない自分に対してのほうが大きかった。 使い魔ばかりに働かせるわけにはいけない。 魔法が使える者を、貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのだ。 この後、キュルケたちとオールド・オスマンに報告しに行く。 もしその時、フーケ捜索隊でも作られるなら、真っ先に自分が名乗りを上げようと考えていた。 「その…フーケを逃がしちゃったのは……私もだから…一晩中追いかけてたんでしょ?むしろ……ご苦労様」 すこし照れながら言うルイズ。静かに聞いているブラック・サバス。 「あ、でも!サバス!デルフを捨てたのは駄目よ!それとこれとは別。これは怒ってるんだからね」 「え」 ルイズの意外な言葉に反応したのは、デルフだった。 「せっかく私が買ってあげた剣を、すぐに捨てるんじゃないの!」 「あ、そういうこと」 「それ以外に何があるのよ」 ルイズはデルフを持ち上げながら、尋ねた。 「いや、俺の活躍とかを考えてくれたのかなーとか」 「そんなわけないでしょ。だいたいあんたは報告役なんだから、常に一緒にいなさい。ほら、サバス口開けて」 何気に酷いことを言うルイズの言われるとおり、ブラック・サバスは口を開けた。 「…………もう何か入ってる」 ルイズは口の中を覗きながら呟いた。 「何コレ?」 勝手に口の中からそれを引っ張り出してみる。 金属製の筒。いつも思うのだが、口の中にこんな長い物が入るのは、どういう仕組みだろう。 「変なもの拾っちゃ駄目だって言ってるでしょ」 意味は無いのだろうけど、一応注意しておく。 改めてデルフを突っ込もうとすると、デルフがその奇妙な筒に反応した。 「おでれーた。その分けわかんないのは武器だぜ」 「武器?なんで分かるの?」 「その筒をもう一回相棒に渡して、それからネックレスを見てみな」 言われるままに筒を口の中に入れ、ネックレスにした『装置』を見てみる。 「あ、ルーンが光ってる。どういうこと?」 「前にも言ったろ。相棒は使い手なんだよ。…………あれ?言ったっけ? とにかく、相棒は武器を持ったら……相棒の場合は口に入れたら、そうやってルーンが光んだよ つっても、普通は左手に出るんだけどな。俺を昔使ってた奴にも同じようなのがいた気がする」 「ふーん。よく分かんないけど……」 ルイズは使い手の説明よりも、筒が武器であることに興味がいっていた。 「じゃあ、これもしかしてマジック・アイテム?」 期待を込めて尋ねる。 ……もしかしたら……もしかしたらだけど……これがフーケの盗んだものじゃあ……!? 「それはねーな。魔力の無い相棒が武器として使えるってことは、いわゆる普通の武器ってことだ。 それを手にはめて殴ったりすんじゃねーの?」 あっさり否定される。 「何よ……もうちょっと夢見させてくれても………」 「何ブツブツ言ってんだ?そうだ相棒。これの使い方分かんだろ?見せてくれよ」 デルフは同じ武器として、筒のことを知りたいようだ。 言われたブラック・サバスはルイズの顔をじっと見ている。 (もしかして私の許可待ってんのかしら) だとしたら特に否定する理由も無いなと、軽い気持ちで考える。 「私も見てみたい。見せて」 ルイズのその一言でブラック・サバスは動きを見せる。 口の中から筒を三分の二ほど出して、なにやら色々いじっている。 その動きに全く迷いは無いようで、早かった。 「殴ったりするみたいじゃないみたいね」 嫌な予感がしつつ、手元のデルフに聞く。 「そ、そうだな」 「サバス、やっぱりや」 しゅぽっ。 そんな軽い音と共に、ブラック・サバスの口から…いや、筒の中から白煙が飛び出す。 それは部屋の窓を割りそのまま飛び出していった。 数秒後。爆音。閃光。衝撃。 そして静寂。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「おでれーた…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 To Be 。。 「…………サバスは…………」 「…………洗濯にいった…………」 To Be Continued 。。。。?
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その日、マルトーに夕食を御馳走になった後、年代物が手に入ったといって振舞われたワインに気をよくし、ついつい長居をしてしまったヴァニラが部屋に戻ると、既にドアに鍵が掛けられていた 「おい、ここを開けろ」 酒精のおかげで多少おおらかになったヴァニラは即座にプッツンする事は無かったが多少いらついた口調でドアをノックする が、反応は無い 気配を感じる以上中にいるのだろうが寝ているのか無視しているのか・・・・恐らく後者だろう しかも足元には御丁寧に綺麗に畳んだ毛布まで置いてある ヴァニラは知る由もないが食事を終え部屋へ戻ったルイズは部屋にいない使い魔を探しに出て、ヴァニラが厨房でシエスタやマルトーたちとささやかな品評会を催しているのを見て機嫌を損ね、このような行動に出ていた しかし先記した通りヴァニラはそのことを知らない、つまりまたルイズの高慢さから出た自分勝手な行動だと認識する・・・・つまり挟み撃ちの形にならない バリバリとドス黒いクレヴァスが口を開け始め新しい入り口を新設してやろうか等と思い始め、即座に行動に移そうとしたのとほぼ同時に、廊下の向うからペタペタと四足歩行生物の足音が聞こえてきた 「む?」 クリームの口内へ潜り込もうとしていたのを中断し、音の方へ顔を向けると廊下の暗がりから微かに光る一対の瞳と、赤々と燃える炎が近づいてくる 「お前は・・・・」 それは今までこそこそと影からヴァニラを監視していた爬虫類 堂々と姿を現したのを戦意アリと認識したヴァニラがクリームを飛ばそうと身構える が、相手はそれを否定するように首を振り、きゅるきゅると人懐っこい鳴き声を出す 何故かヴァニラはその鳴き声の意味が理解できたような気がし、しゃがんで視線を合 わせ、問いかけてみた 「お前は・・・誰の使い魔だ?」 「きゅるきゅる」 その問いに答えるようにサラマンダーはルイズの隣の部屋へ平べったい顔を向けた 「・・・・・隣か、迂闊だったな」 眉間に皺を寄せ、苦々しく呟くヴァニラを他所に、サラマンダーはついて来いと催促 するようにヴァニラのジャケットの裾を引っ張る 「・・・いいだろう、何の用か知らんが理由も聞きたい」 ヴァニラは軽く溜息を漏らし、隣室のドアをノックする 「どうぞ」 返って来た女の声に、女子寮なので当然といえば当然だが――呼吸を整えると不意打ちに身構えつつドアを開け、足を踏み入れる しかし、部屋の中は真っ暗だった ヴァニラの後からついてきたサラマンダーの周りだけぼんやりと明るく光っている DIOの館で暗闇には慣れていたが召喚されて以来光のある生活が当たり前になっていた ヴァニラには先の見通せないでいた 不意打ちに備え急所を庇うようにクリームを展開させるが魔法の変わりに女の声が聞こえてきた 「戸を閉めて?」 ヴァニラは言われた通りにした 逃げ道なら簡単に作れる 「ようこそ、そして初めまして・・・・でもないわね。こちらにいらっしゃい」 「この蜥蜴を通してみていたのか?」 その場から動かずヴァニラは淡々と訊ねる ここは既に相手の領域、これ以上主導権を奪われるわけには行かない 相手が戦うつもりであると信じ込んでいるヴァニラは臨戦態勢だった 「ええ、それに直接見ることもあったわ。ねぇ、そんなに堅くならないでこっちにいらっしゃいな」 地の利と視角、絶対有利なはずのこの状況で攻撃もせず、誘うような相手の声にヴァニラは漸く疑問を持ち始める 「しかし暗いぞ」 指を弾く音が聞こえた すると部屋の中に置かれたいたロウソクが一本ずつ燈っていく ヴァニラの近くに置かれていたロウソクから順に火は燈り、ベットの傍のロウソクがゴールだった 道のりを照らす街灯のように、ロウソクの灯が浮かんでいる ぼんやりと淡い幻想的な光の中、ベットに腰掛けた褐色の肌に深紅の瞳と頭髪を持つ女の悩ましげな姿があった ベビードールというのだろうか、そういう誘惑するための下着を着けている・・・・ というかそれ以外はなにもつけていない それを見たヴァニラの感想は (・・・・・・・・痴女か?) 冷めていた 何せDIOの配下に扇情的な衣装の女が一人いたうえに食料の女たちも似たり寄ったりで今更動じる事は無かった だが殆ど透けたような生地の下着を持ち上げる盛り上がりには多少驚いたが そのベクトルもルイズと同い年でどうしてここまで違うのかという ルイズが聞いたら激怒するであろうものだった 勿論学園のシステム上同学年であっても年齢は違うのだが それにしてもこの差はないだろう 女はヴァニラの視線を勘違いしたのか微笑み、名乗った 「名乗るのが遅れたけど私の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー、キュルケと呼んでくださってけっこうよ?」 名乗る際にクセなのか軽く前髪を掻き揚げるが、その動作すらも計算したように悩ましげな様子を見せる 「ではキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプトー嬢、既にご存知だろうがこのヴァニラ・アイスに何のようだろうか?」 一度聞いた名前を一字一句間違えず返し、軽い皮肉を込めて訊ねる 「あん、つれない人ね。そんなところに突っ立ってないで、いらっしゃいな」 キュルケはヴァニラの問いに答えず色っぽい声で誘う 望む答えが得られず軽い落胆の溜息を吐くとヴァニラは諦めたよう、誘われるままにキュルケの元へ向かった 「座って?」 ヴァニラは言われたとおりにキュルケの隣に腰掛けた 裸に近いキュルケの隣にいても至って平静を保っていたが流石に多少の興味は湧き ・・・・・DIOの姿を思い浮かべると即座に消えた 「改めて聞くが、何の用だ?」 至って平静を保った声でヴァニラが言った 燃えるような赤い髪を優雅に掻き揚げ、キュルケはヴァニラをみつめる ぼんやりとしたロウソクの灯に照らされたキュルケの褐色の肌は野性的な魅力を放ち、ヴァニラ以外の誰かをどうにかしそうになる キュルケは大きく溜息を吐き、そして悩ましげに首を振った。 「あなたは、あたしをはしたない女だとおもうでしょうね」 「まったくだ」 「思われても、しかたがないの。わかる?あたしの二つ名は『微熱』」 「知らん。熱なら水でも被って醒ませ」 突然の口上に呆れたように受け答える 「あたしはね、松明みたいに燃え上がりやすいの。いきなりこんな風にお呼び出ししたりしてしまうの。わかってる、いけないことよ」 「理解していて抑えられないのか、最低だな」 ヴァニラは早く解放されて適当に相槌を打った 正直相手の意図がさっぱり読めない 読めないのが逆に恐怖になりつつある 「でもね、あなたはきっとお許しくださると思うわ」 キュルケは潤んだ瞳でヴァニラを見つめた 確実にヴァニラが言った事を理解していない 「・・・・・・・・何故?」 キュルケはすっとヴァニラの手を握ってきた 一本一本、ヴァニラの手を確かめるようになぞり始めた ヴァニラの背筋に悪寒が走った 「恋してるのよ。あたし。あなたに。恋はまったく、突然ね」 「まったく突然だ。ところで帰っていいか?」 ヴァニラは真顔で切り返すがキュルケの顔は真剣そのものだった 「あなたが、ギーシュを倒した時の姿・・・・。かっこよかったわ。まるで伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ!あたしね、それを見て痺れたのよ。信じられる!痺れたのよ!情熱!あああ、情熱だわ!」 「・・・・情熱か、で?」 「二つなの『微熱』はつまり情熱なのよ!その日からあたしはぼんやりとマドリガルを綴ったわ。マドリガル、恋歌よ。あなたの所為なのよ、ヴァニラ。あなたが毎晩あたしの夢に出てくるものだから、フレイムをつかって様子を探らせたり・・・・。ほんとうにあたしってばみっともない女だわ。そう思うでしょう?でも、全部あなたの所為なのよ」 ヴァニラはなんと答えればいいのかわからずにじっと座っていた とうか答える答えない以前に言い知れぬ恐怖を感じていた キュルケはヴァニラの沈黙をイエスと受け取ったのか、ゆっくりと目を瞑り唇を近づけてきた 確かにキュルケは魅力的だ カリスマ性こそ比べるべくも無いが女性という点ではDIOより明らかに魅力は上のはずだ、ヴァニラも男である どうせ元に戻る当ても無い、このまま流されてしまうのもありか、などと一瞬浮かぶが・・・・・キュルケの肩を押し戻した なんとなく、悪い予感がした どうして?と言わんばかりの顔でキュルケがヴァニラをみつめる ヴァニラはキュルケから目を離さず 「つまり今までの話を要約するとお前は惚れっぽい」 それは図星のようでキュルケは顔を赤らめる ヴァニラにしては何を今更、といったところだが 「そうね・・・・・。人より、ちょっと恋ッ気は多いのかもしれないわ。でもしかたないじゃない。恋は突然だし・・・・」 キュルケがその台詞を言い終わらぬうちに、窓の外が叩かれた そこには恨めしげに部屋の中を覗く一人のハンサムな男の姿があった 「キュルケ・・・・。待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば・・・・」 「ペリッソン!ええと、二時間後に」 「話が違う!」 ここは三階だがどうやらペリッソンと呼ばれた生徒は魔法で浮いているらしい キュルケは煩そうに胸の谷間に差した派手な魔法の杖を取り上げると窓のほうを見もしないで杖を振る その動きに同じてロウソクの火から炎が大蛇のように伸び、窓ごと男を吹き飛ばした 「まったく、無粋なフクロウね」 ヴァニラはすっかり元のように冷め切った目でその様子をみつめていた 「でね?聞いてる?」 「今のは?」 「彼はただのお友達よ。とにかく今、あたしが一番恋してるのはあなたよ。ヴァニラ」 キュルケはヴァニラに再び唇を近づけた しかしそれを阻むように今度は窓枠が叩かれた 見ると悲しそうな顔で部屋の中を覗き込む精悍な顔立ちの男がいた 「キュルケ!その男は誰だ!今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」 「スティックス!ええと、四時間後に」 「別けはともかく理由を言えッ!」 怒り狂いながら男は部屋に入ろうとするが再びキュルケが杖を振ると同じようにロウソクの火から生まれた蛇が男を飲み込み、地面に落ち ていった 「・・・・今のも友人か?」 「彼は、友達というよりはただの知り合いね。とにかく時間をあまり無駄にしたくないの。夜が長いなんて誰が言ったのかしら! 瞬きする間に太陽はやってくるじゃないの!」 キュルケはヴァニラに唇を以下略 今度は窓だった壁の穴から悲鳴が聞こえた 既に予想はついていたが、ヴァニラは呆れたように窓の外に目を向ける 窓枠で三人の男が押し合いへし合いしている 三人は同じに同じ台詞を吐いた 「キュルケ!そいつは誰なんだ!恋人はいないって言ったじゃないか!」 「マニカン!エイジャックス!ギムリ!」 今まで出てきた男が全員違うのにヴァニラは感心した (まるでホルホースだな。あいつはきちんと折り合いをつけてそうだが・・・) 「ええと、六時間後に」 キュルケが面倒そうにいうと 「朝だよ!」 三人は仲良く唱和した キュルケはうんざりした声でサラマンダーに命令した 「フレイムー」 きゅるきゅると部屋の隅で寝ていたサラマンダーが起き上がり、三人が押し合っている窓だった穴に向かって炎を吐いた それをもろに浴びた三人は仲良く地面にキッスすべく落下していく 「今のは?」 ヴァニラは分かりきったことを敢えて尋ねた 「さあ?知り合いでも何でもないわ。とにかく!愛してる!」 キュルケはヴァニラの顔を両手で挟むと真っ直ぐに唇を奪おうとする その時、ドアが物凄い勢いで開けられた 正しくは内側に向かって吹き飛ばされた また男か、と思ったら違った ネグリジェ姿で杖を持ったルイズが立っている キュルケはちらりとルイズを見るがドアが吹き飛ばされたにも関わらずそのままヴァニラの唇を奪おうとするが、ルイズが杖を振り上げた のを見てヴァニラがキュルケを突き飛ばす、 それに僅かに一瞬遅れて先程まで二人の顔のあった場所の延長線の壁が爆発した 「キュルケ!」 小さく舌打ちし、艶やかに部屋を照らすロウソクを一本一本忌々しそうに蹴り飛ばしながら、ルイズは二人に近づいた ルイズは怒る男口より先に手が動き、さらに起こると手より足が先に動くのだった ヴァニラに似ている気がするがきっと気のせいだろう キュルケは起き上がりながらルイズに今気づいたように顔を向ける 「取り込み中よ。ヴァリエール」 「ツェルプストー!誰の使い魔に手を出してんのよ!」 ヴァニラは我関せずといった様子で成り行きを見守っている ルイズの鳶色の瞳は爛々と輝き、火のような怒りを表している 「しかたないじゃない。好きになっちゃったんだもん」 キュルケは両手を上げた ヴァニラは二人の間に挟まれ心底面倒臭そうにしている 三人の温度差が物凄く激しい、ひょっとしたら陽炎が出来ているかも知れない 「恋と炎はフォン・ツェルプストーの宿命なのよ。身を焦がす宿命よ。恋の業火で焼かれるなら、あたしの家系は本望なのよ。 あなたが一番ご存知でしょう?」 キュルケは上げた両手を竦めて見せた ルイズの手がわなわなと震える 「きなさいヴァニラ」 ルイズはヴァニラをじろりと睨む それに応じるようにヴァニラは立ち上がり、それを見ていたキュルケが追いすがるように裾を掴む 「あら、お戻りになるの?」 キュルケは悲しそうにヴァニラを見つめる キラキラとした目が、悲しそうに潤む 「・・・・・・」 だがヴァニラは可哀想だけど明日には以下略な目で見るとルイズに促されるままにさっさと歩き出した 部屋に戻ったルイズは身長に内鍵を閉めるとヴァニラに向き直った 「まるでサカリのついた野良犬じゃないの~~~~~~~~~ッ!」 声が震えている ルイズは怒ると口より先に手が動き、手より先に足が動く、もっと怒ると声が震えるのだ その震える声でツェルプストーとヴァリエールの長きにわたる因縁を語り始める ヴァニラは初めは面倒臭そうにしていたがどうやらDIOとジョースター家のような関係なのだと理解した したのだが (それは殆ど逆恨みじゃないのか?) 領土の問題は別として恋人云々の話は明らかに逆恨みだ しかも寝取られたということは開いてのほうが魅力的だったということだろう このヴァニラ、どこまでもドライだった 一頻り文句をぶちまけ、乗馬用の鞭を振るうだけ振るったルイズは肩で息をしながらヴァニラを睨みつけている まだ何か言う事はないかと必死に考えているようだが怒り心頭の頭では何も浮かばないらしい 因みに鞭は振り下ろす度に先端を削り取られ今は持ち手以外残っていなかった、勿論ヴァニラにかすりもしていない 「そうか、わかった。今後気をつけよう」 そのタイミングを見計らったようにヴァニラが頭を下げる それでも何か言おうとするが文句を言い尽くしてしまった後では何も出てこない 「そ、そう。分かればいいのよ!」 仕方なく威厳を保つようにちっぽけな胸をそらしてみせた 「今度から何かあったらきちんと断りなさいよ、脅してもいいわ」 ルイズは物騒なことをぬかしたが、流石にクリームで消し飛ばしたとあっては責任問題としてルイズにも累が及ぶ、暫し考え 「あんたに剣を買ってあげる」 「剣?私には必要ない」 ヴァニラは即答するが 「いいから持ちなさい、あんたいつかあのわけの分からない力で人を殺しそうで見ちゃいられないのよ」 先程隣人の顔面に向けて失敗魔法をぶつけようとした人間の台詞とは思えない 「明日は虚無の曜日だから街に連れてってあげる」 ヴァニラの意思を無視して明日の予定を決めるとルイズはベットに潜り、灯りを消す 「おい、私は中で寝ていいのか?」 「いいわよ。またキュルケに襲われたら大変でしょ」 ヴァニラの問いに面倒臭そうに答えると程無くして静かな寝息を立て始めた 灯りの落ちた部屋で小さく溜息を吐き、ヴァニラは毛布に包まって横になる まだ何か嫌な予感がするが、きっと気のせいだと言い聞かせ、そのまま眠りに落ちた To Be Continued...
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翌日。いつものようにフレイムをギアッチョの監視に行かせたキュルケは、彼らが馬に乗ってどこかへ出掛けた事を知った。ここ数日でギアッチョを危険だと感じた事はなかったし、もうぶっちゃけ監視とかしなくてよくね?時間の無駄じゃね?と思いつつあったキュルケだが、学院外に出るという今までに無いパターンだったので念の為もう一日だけ監視を続行することにする。 キュルケが急いで支度を済ませて廊下に出ると、ルイズの部屋の前で棒立ちしていた男と眼が合った。松葉杖をつき、服の下からは包帯が見えている。ギーシュ・ド・グラモンその人であった。 「・・・あなた何してるの?」 キュルケはいぶかしげに尋ねる。 「・・・や、やあキュルケ ちょっとルイズに用があるんだが・・・まだ寝てるのかここを開けてくれなくてね・・・」 ギーシュはばつの悪そうな顔をしながら答えた。 「用?あなたがルイズに?またあの子に何かしようとしてるんじゃないでしょうねぇ」 「そ、それは違う!僕はただルイズに謝ろうと・・・」 聞けばギーシュは二股をかけており、そいつがバレた上にビンタでフられてムカムカしていたところにルイズとぶつかってモンモランシーの為の香水がブチ割れて、彼は怒りで周りが見えなくなってしまったのだという。 「・・・呆れた 完全に逆恨みじゃない あなた貴族としてのプライドってものがないの?」 二股のくだりだけはキュルケに文句を言われる筋合いはないはずだが、概ね正論だったのでギーシュは黙って耐えた。 「それで、謝りたくてやって来たんだが・・・」 「ルイズならもういないわよ」 「な、なんだってーーー!?」 物凄い顔で驚くギーシュにキュルケは溜息を一つついてから、 「ルイズと一緒にギアッチョもいるんだからどっちか一人は気付くでしょ 常識的に考えて・・・」 とのたまった。その「ギアッチョ」という言葉に、ギーシュの体がビクリと反応する。 「・・・そ、そそそういや彼もいるんだったねぇ・・・ハハハ・・・ハ・・・」 ギーシュにとってギアッチョは相当トラウマになっているようだった。ヒザが滑稽なぐらいガクガク笑っている。 あんな目に遭っておいてトラウマになるなというほうが無理な話ではあるが。 「私はこれからタバサに頼んでシルフィードでルイズ達を追いかけるつもりだけど・・・あなたはどうする?」 キュルケの助け舟に、「是非とも一緒に・・・」と叫びかけたギーシュだったが、 「・・・ちょ、ちょっと待ってくれたまえ ルイズ『達』ということは・・・」 「勿論ギアッチョもいるわよ」 ビシッ!と心臓が凍った音が聞えた。ギーシュは「・・・あ・・・あう・・・」とまるで懲罰用キムチでも食らったかのように呻いている。 そんなギーシュを見てキュルケは更に溜息を重ねると、 「どの道ギアッチョはルイズの使い魔なんだから、いつでもあの子と一緒にいるでしょうよ ルイズが一人になる隙をうかがうよりは今特攻したほうがスッキリすると思うけど?」 生きていればね、と小さな声で付け加えてギーシュを見る。 「き、聞えてるぞキュルケ!やっぱりダメだ・・・ここ、こっそりルイズに手紙を渡して人気の無いところへ呼び出して・・・」 常軌を逸した怯え方である。殺されかけたという事に加えて、自分の魔法をことごとく破られ跳ね返されたという事実が彼の恐怖を加速させていた。 キュルケは呆れを通り越して哀れになってきたが、いい加減出発しないとシルフィードでもルイズ達を見失うかもしれない。 これを最後にするつもりでキュルケはギーシュに発破をかけた。 「あなた少しは男らしいところ見せなさいよ こんなところをあの使い魔が見たらまた『覚悟』が無いとか言われるんじゃあないの?」 「――!」 その言葉に、ギーシュは動きを止めた。彼は何かを考え込むようにわずか沈黙し、真剣な眼でキュルケを見る。 「・・・ねぇ君 『覚悟』って一体何なんだろう」 先ほどまでのヘタレ具合とは一転、彼の眼には苦悩の色が浮かんでいた。 「あの男――ギアッチョに言われたことがずっと耳から離れないんだ 『覚悟』って何なんだ?彼と僕と、一体何が違うんだ? ギアッチョと僕を隔てる、絶対的な何かがあるのは解る だけど一体それが何なのか、いくら考えても答えが出ない」 ギーシュの懊悩は、キュルケには解らない。あの男の真の凄み、そして恐ろしさは、対峙してみなければ理解は出来ない。ギーシュはそう知りつつも、誰かに疑問をぶつけずにはいられなかった。例えギアッチョと同等の能力を持っていたとしても、 自分は永遠に彼に勝つことは出来ない。そうさせる何かが、あの使い魔にはある。 自分にはそれがない。その事実がただ悔しかった。 「あの決闘で――自分がどれほど自惚れていたのかを思い知らされたよ」 ギーシュはうつむいて言葉を吐き出す。 「・・・そして どれほど愚かだったのかも」 なまじっか顔と成績がいいばっかりに、高く伸びていたギーシュの鼻をヘシ折れる生徒は存在しなかった。そのギーシュを完膚なきまでに叩きのめしたのは、タバサでもキュルケでも、マリコルヌでもモンモランシーでもなかった。 ゼロと蔑まれていた少女、その人間の、しかも平民の――加えて言うならば顔もよくはない――使い魔だったのである。 ギーシュのプライドは粉々にブチ割れた。そして同時に、自分がどれほど他人を見下していたかを理解した。 「こんな屈辱に――ルイズはずっと耐えてきたんだ ・・・僕は 僕はどうしようもなく馬鹿だった」 彼女に謝罪しなければならないと言うギーシュの眼は、紛れもなく本気だった。 タバサはキュルケ達の頼みを快諾した。他でもない唯一の親友キュルケの頼みだという事もあるが、あのギーシュがそりゃもうジャンピング土下座でもしそうな勢いで頼み込んで来たのである。 それも己の利益の為ではなく、純粋に少女への謝罪の為とくれば、いくら虚無の曜日とはいえタバサも力を貸すにやぶさかではなかった。 そういうわけで彼女達は今タバサの使い魔である風竜、シルフィードに乗ってルイズ達を追っている。竜の背中でタバサは中断していた読書を再開し、キュルケはしきりとシルフィードを褒め称え、ギーシュは勢いで飛び出してきたもののやっぱりギアッチョが怖いらしく、時折キュルケの口からギアッチョの名が出る度にビクビクと震えていた。 「ギーシュ あなたいい加減腹をくくったら?」 ちょっと男らしい事を言ったかと思えばこれである。キュルケはまたも呆れていた。 「そ、そんなこと言ったって怖いものはしょうがないじゃないか!自分の魔法で全身蜂の巣にされる恐怖が君に分かるかい!?」 ギーシュがまくし立てると、 「自業自得」 タバサが活字に眼を落としながら呟く。それを聞いたキュルケが思わず噴き出し、ギーシュはもういいよとばかりにがっくりと肩を落とした。
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最近のシエスタは朝ブラック・サバスと一緒に洗濯をすることが日課となっていた。 ブラック・サバスは影の中しか移動できないため、誰かが水汲み場まで一緒に移動してやらないといけないのだ。 別にシエスタがやることではないし、誰に頼まれたわけではないのだが 決闘の日以来、ルイズとブラック・サバスには何かお礼をしなければならないと考えていたので シエスタは自分から進んでこの役目を買って出た。 それでも最初は緊張しっぱなしであったが、さすがに毎朝毎朝いっしょに肩を並べていると慣れてくる。 今では、軽い世間話などしながら作業を進めている。 と言ってもブラック・サバスは何も話さないし、相槌すら打たないのだが。 シエスタの話が一段落するまでその場を離れないところをみると、一応話は聞いてるらしかった。 そういうわけで、今日も日陰になる場所でブラック・サバスを待っていると、背後に気配を感じる。 後ろを向くと、いつも通りの格好で、いつも通り神出鬼没の使い魔がそこに立っていた。 「おはようございます。サバスさん。今日もいい天気ですね」 笑顔でまずは朝の挨拶。いつもならこのまま二人で水汲み場まで歩いていくのだが、その日は違った。 「おでれーた!相棒!おめー朝から人間の娘っ子とデートかよ!」 ……………………しゃべった!!! シエスタはまさに目が点状態でブラック・サバスを見つめる。 しゃべりましたよね!?今なにかフレンドリーに話しかけてきましたよね!? 混乱中のシエスタに助け舟を出したつもりかどうかは分からないが、ブラック・サバスは半開き気味だった口をさらに開ける。 暗闇の中から何か棒状のものが、にゅるにゅると伸びてきて、シエスタの顔の前で止まった。 「落ち着けって!しゃべったのは俺だよ!」 なるほどしゃべったのはブラック・サバスではなくて、剣だったのか。 ……………………剣がしゃべってるーー!!? さらなる混乱におちいるシエスタに、デルフが意気揚々と語りかける。 「誰だ?って聞きた……な表情してるんで自己……させてもらうがよ。俺ぁ……かい焼き……フリンガー 城下町の………からピンクの………の娘っこに買われて…………オーイ」 ブラック・サバスの口から、剣が出たり引っ込んだりしながら話しかけてくる。 剣が口の奥に行ったとき声がくぐもって聞き取りづらい。 …………シエスタはすでに逃げていたので関係なかったが。 「おかしいな相棒。掴みはばっちりだと思ってたんだが、何がいけなかったんだろうな」 デルフは相変わらずピストン運動をしながらブラック・サバスに尋ねた。 (ちくしょう!あのエロジジィ!) ミス・ロングビルはその清楚な顔を怒りで歪ませ、廊下を早歩きで歩いている。 彼女の怒りの理由はもはや常習的になっている、オールド・オスマンからのセクハラ行為に対してだ。 元々彼女がこの由緒正しい名門トリステイン魔法学院の院長秘書というポストに着けたのは、オスマンからのセクハラが原因だ。 学院の宝物庫にあるという「破壊の杖」を頂くために、まず色仕掛けを使ってでも院長に近づくことが先決と考えていが こっちが色仕掛けをする前に、向こうから尻を触ってきたのは誤算だった。 秘書になってからというもの、毎日毎日尻を触られ、胸を揉まれ、部屋を覗かれ、下着を覗かれetcetc…… さすがに我慢の限界だった。 すでに宝物庫の壁が物理的な衝撃に弱いという情報は、ハゲから得ている。 後は実行に移すだけだが、ここで焦っては元も子もない。 せっかくここまで屈辱に耐えてきたのだ、絶対に成功させなくてはならない……! そんなことを考えながら歩いていると、前方から声が聞こえてくる。 「どうした相棒?なんで止まるんだ?……あぁ影が途切れてんのか。 ……そうか、いつもはあのメイドの娘っ子に連れて行ってもらってたんだな」 最初ロングビルは前にいる存在を、黒いマントをしているので2年生のメイジかと思った。 しかし妙だ。マントの色が黒すぎる。似ているが正規のマントではないようだ。 それにさっきから誰としゃべっているのだろうか。それとも独り言か? どちらにしろロングビルは関わりにならないほうがいいと判断する。 遠回りになるが、行きたい場所へはこの道を通らなくても行ける。さっきまで歩いていた道を戻ろうときびすを返し…… 「きゃあ!!!」 悲鳴をあげ、尻餅をつく。 きびすを返した先。さっきまで誰もいなかったはずのそこには、人っぽいなにかが立っていた。 後ろを振り返ると、さっきまでいた黒マントが消えている。あの一瞬で回り込まれたとでもいうのか!? 「チャンスをやろう!」 そう言って手を伸ばしてくるこの存在を、ロングビルは変態だと認識した。 「いや!」 思わず後ずさる。それを見た変態の口が開き、中から棒状の物……正確には剣の柄の部分が出てくる。 「バカ!相棒!そんな言い方じゃあ変態と思われるだろーが!おいねーちゃん頼みがあんだけど…あれ?」 ロングビルは全てを聞く前に行動を開始していた。 盗賊『土くれ』のフーケの最後の切り札。それは『逃げる』!! ロングビルは窓を突き破り、外へと飛び出した。この廊下は2階だったのだが、メイジにとってそれは関係ない。 「レビテーション」を唱え安全に地面に着地するやいなや、一目散に走りだす。 どこでもいい、もうここにはいたくない。こんな学院からさっさと離れてやる! 『土くれ』は今日中にでも破壊の杖を盗み出すことを決意した。 ルイズは中庭で一人作業に没頭していた。 木の棒を十字に組んで、地面に刺す。 横棒の端にシエスタから借りたボロボロの作業用の手袋をはめ 縦棒の先には、布袋に藁を詰めて丸めた物を紐で縛って取り付ける。 そして布袋に簡単な似顔絵を描く。いわゆるカカシという奴だ。 少しマヌケ面になってしまったが、良しとしよう。初めて作った割にはなかなかいい出来だと自画自賛する。 後は使い魔とうるさい剣が来るのを待つだけだ。 ルイズは胸元にある『再点火装置』を握った。 紐を通す穴を錬金で作ってもらい、ネックレスのようにしたのだ。 ついでに固定化もしてもらったので強度も少しあがっている(ギーシュにやらせた)。 「まったく……主人を手伝わないで、またどこかほっつき歩いてんのかしら」 ブツブツと文句を呟く。 最近は言うこと聞くようになったと思ったら、このザマだ。最もあれらがいたとしても、この作業を手伝えると思えないが。 「いたいた。ルイズ!」 聞き覚えのある声。ルイズが後ろを振り向くとキュルケとタバサがこちらに近づいてくる。 「キュルケ……とタバサ……あんたたちなんでここにいるのよ」 心底嫌そうな顔で二人を見る。 この二人とは決闘以来よく会うようになっていた。といってもキュルケとはいつも口喧嘩だし、タバサは何もしゃべらずそこにいるだけだったが。 しかし今は会いたくなかった。というか見られたくなかった。 使い魔と一緒に秘密特訓をする所を見られるなんて誰だって嫌だろう。私だって嫌だ。 というわけでルイズはこの二人になんとか帰ってもらおうと考えていたのだが。 「秘密特訓するんだって?精が出るわね~」 「努力するのはいいこと」 「な!なんであんたたちがそのこと知ってんのよ!!」 思わず声が大きくなる。 キュルケは何でもないような顔をして答えた。 「聞いたの。あんたの使い魔の剣から」 それを聞いたルイズはしばらく固まった後、嘆息をひとつしてうめいた。 「サバス、デルフ……いるんでしょ……出てきなさい」 その言葉に従いキュルケの影からニュッとブラック・サバスが現れる。 「…………まずはあんたたちの言い分を聞きましょうか」 「ここまで来るのに手間取ってたらよー。このねーちゃんが影貸してくれるっていうからホイホイ付いてきてもらったんだわ」 デルフが口の中からカタカタと答える。 「なんでキュルケが特訓のこと知ってんの?」 「それは相棒が」 「サバスがしゃべるわけないでしょ!この馬鹿剣!やっぱあんたなんか買わなかったらよかった!」 剣に怒鳴りつけるルイズに、ブラック・サバスが手を上げる。 まるで、まぁまぁ落ち着いてというジェスチャーのように見えた。偶然だろうが。 「あんたもなんでよりによってキュルケの影に入るのよ!」 使い魔&魔剣のコンビをしかり付ける親友を見ながら、キュルケは苦笑する。 「言ったら手伝ってあげたのに。こんな不細工なカカシまで作っちゃって」 「不細工とはなによ!」 今度はキュルケと始める。タバサはまた長くなりそうだと空を見上げた。二つの月が綺麗に輝いている。 「!!」 経験が生きたのかどうかは分からないが、その気配に最初に気づいたのはタバサだった。 慌てて後ろを振り向く。 それに釣られた残りのメンバーも振り向き……巨大なゴーレムの姿を確認した。 唖然とするこちらの存在に気づかないゴーレムは、塔の壁を派手な音を出しながら殴り始めた。 「な、なにしてんの」 声の震えるルイズに対して、冷静にタバサが答える。 「宝物庫。あれだけ巨大なゴーレムを操れるのはトライアングルクラス」 「泥棒…………で巨大ゴーレムってもしかして………『土くれ』のフーケ!?」 「サバス!」 ルイズはブラック・サバスの口に手を突っ込み、デルフを引き抜いた。 そして鞘から抜き出し、また突っ込む。ただし今度は刃の方が口から飛び出すような向きで。 「特訓の成果を見せる時ね」 「まだなんにもやってねーと思うんだけど」 デルフのつっこみは口の中で空しく響いただけだった。 To Be Continued 。。。。?
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朝になってアルビオンへ出発するため正門にでる。 おれの荷物はデルフリンガーのみだ。 ルイズは旅用の荷物のほかに王女から預かった『水のルビー』とやらを持っている。 バナナはおやつに入る?って聞いたら怒られた。これは遠足じゃないらしい。 お、ギーシュがやってきた。さあ出発だ。 「お願いがあるんだ」 と思ったら何か話があるらしい、空気を読め、まったく。 「僕の使い魔を連れて行きたいんだが、良いかい?」 まったく、そんなことかよ 「ダメだ」 「何で!?せめて見てからでも良いじゃないか!」 「ダメだ」 「ヴェルダンデ、出てきてくれ」 そういってギーシュが地面を足で叩く。話を聞け。 すると大きなモグラが現れた。 「これが僕の可愛い使い魔、ジャイアントモールのヴェルダンテさ!」 「なるほど、で味は?」 「食べる気かい!?そんなことしちゃダメだよ!」 食ったらウマそうなんだがなぁ 「アルビオンに行くのよ、そんなの連れて行くなんて、ダメよ」 今まで黙ってたルイズが口を挟んできた。 「そんな…お別れなんてイヤだよヴェルダンテ…」 ギーシュが悲しそうな声で言う、だがそのモグラはルイズに向かって突進した。 そのままルイズを押し倒す。 「おお、これは中々見ごたえがあるな」 それを見たギーシュの感想がこれだ。まったくそのとおりだ、ある意味官能的で実に良い。 「あんたたち!早く助けなさいよ!」 えー、もっと見たいのに。 「このモグラ!姫様から頂いた指輪に鼻をつけないで!」 指輪?水のルビーか? 「ああなるほど、ヴェルダンテは宝石が大好きだからね」 よし、ならこいつは部下にしよう。ついでに後で盗む予定のルビーの罪もなすりつけよう。 さて、そろそろ助けようかな、でもルイズはどうせ感謝しないだろうしどうしようかな。 あ、今の右ストレートは痛いぞ~、助けるのはモグラの方だなこりゃ おれがそのまま傍観するか否かを決めかねていたら強い風が吹いてモグラを吹き飛ばした。 風の魔法か?おれが辺りを見回すと。 おっさんがいた。 そのおっさんはアンリエッタが来る時にルイズが見ていたおっさんだった。 「貴様、僕のヴェルダンテに何をするんだ!」 ギーシュが騒いだ。うるせーなあ。 「僕は敵じゃない。魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルドだ。」 なるほど、おれ達だけじゃ不安だから援軍としてやってきたって事か、だが納得できない事がある。 「敵じゃないのに何故攻撃した?」 敵じゃないならモグラを吹き飛ばす理由などない。これは絶対に不自然だ。 「すまない。婚約者が襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 そうかヴェルダンテの婚約者だったのか。変わった趣味だがそれなら納得だ。 「ワルド様!」 いきなりルイズが声を上げた。ちゃんと謝っとけよ、お前はコイツの婚約者をボコボコにしてたんだから。 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」 あ、婚約者ってルイズの方か、なるほど婚約者が犯罪者にならないようにモグラを吹き飛ばしたのか。 って納得いかねぇーーーー! なんでルイズが婚約してるの!? モグラじゃなくてルイズ!?ありえねーだろ!あ、モグラの方がありえないか。 つまりお前はロリコンか?ロリコンなのか?おれもだ! おっと混乱しちまった。 おれはロリコンじゃないぞ、ロリコンでもあるってだけでそれ以外もオッケーだ。 だがコイツは真性のロリコンだ。間違いない。 話が脱線したな、元に戻そう。 そのロリコンはルイズを抱え上げ、 「彼らを紹介してくれないか?」 と言った。紹介くらいならまだ良い、だがおれをそっちの道に引きずり込むなよ。迷うから。 「ギーシュ・ド・グラモンと使い魔のイギーです」 ギーシュは頭を下げ、おれも一応下げておいた。目を付けられたくないからな。 「この犬がルイズの使い魔かい?フーケを捕まえた時は大活躍だったらしいね」 まあな、スゴイだろ。でもロリコンのほうがスゴイな、絶対。 「さて」 そういってワルドは口笛を吹いた。その口笛が合図なのかグリフォンが現れた。 そのグリフォンにルイズを抱えたまま跨り、杖を掲げて叫んだ。 「では諸君!出発だ!」 ロリコンのクセに仕切るな。 後で上下関係をハッキリさせてやるぞ。 おれはそう誓いながら馬に乗り込み(もちろん部下にしてある)出発した。 To Be Continued…
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「決闘だ」 デルフリンガーを買いに行ってサボった事をコルッパゲに怒られた翌日。 朝の食堂でギーシュが億泰に言ってきた言葉がコレだった。 それを聞いてにわかに周囲は白熱しだし、ルイズとシエスタが頭を抱える。 「よし!散れ!散れ!散れ!散れ!散れ!散れ!」 「残れ!残れ!残れ!残れ!残れ!残れ!残れ!三日だけ!」 「たかだか平民に決闘て……常識的に考えろよギーシュ」 「いやいや、ここは貴族が上!平民が下!を植えつけるべきだろ」 「おとなしくナンパしてろギーシュ」 一方、億泰とデルフリンガーは訳の分からない、という顔をしていた。 「なんでだ?」 「いきなりなんでぇ、貴族の坊主」 一斉に全員がコケた。 「な、なんでもないだろう! 昨日僕を気持ち良くなる位に清々しくボコボコにしておいて! 魔法さえ使えずに負けたのは僕のプライドが許さない、だから正々堂々決闘だ!」 「はぁ……まーいーけどよ」 「よし、ならばヴェストリの広場で待っている!すぐに来るんだ!」 そう言うなりギーシュはさっさと出て行った。 「ワザワザ売られた喧嘩買ってどうすんのよこのバカ! あー、もう!剣は確かに買ってあげたけどね。 しなくていいならしない方選びなさいよ!」 「ほんと、本当です!バカです億泰さん!」 「確かにオレは頭悪いけどよォ~~、『罪』ってのはよぉ~そうなるような事をしてりゃあよぉ~ どっかから廻りまわって『罰』がやって来る物だからなぁ~ オレのした事の結果なら受けてやるのが道理ってもんよ」 そう言うと、唖然とする二人を置いて 決闘の見物へ行こうとする集団について億泰も歩き出す。 その背中に、ルイズは一言だけ声をかけた。 「貴族の決闘は杖を落とした方が負けよ。 完全に倒す必要なんて無いんだから」 「あの……ミス・ヴァリエール?」 「なに?」 「億泰さんって本当にただの平民なんですか?」 「私にもわかんない……」 「そうですか……」 やがて通路を曲がって億泰の姿が消えたころ、二人はそう言葉を交わした。 「さあ諸君!決闘だ!」 いつの間にか集まってきた群集でごった返すヴェストリの広場にギーシュの声が響く。 普段は閑散としたこの広場だが、今は一種の熱気に満ちている。 「決闘っていうか雪辱戦?」 「復讐?」 が、決闘の挨拶で湧き上がる歓声には幾分疑問の声が混じっている。 白熱というには随分と足りないようだ。 だが、ギーシュはそんなのは聞いていない事にした。聞きたくなかった。 「よく来てくれたね……感謝するよ。 今度は魔法を使わせて貰う、もう負けはしないさ。 さあ、君も剣を抜きたまえ」 華麗にスルーする事に成功したギーシュは薔薇の造花を振るい、花びらを一枚地面に落とす。 舞う花びらは地面に落ちると、甲冑を着た女戦士の像へと変わった。 朝日を受けて青銅でできたその体がきらめいている。 「別にオレはこのままでいーぜ? さっさとかかってきなよ」 「いや、相棒!抜けよ!抜いてくれよ!使ってくれよ!」 一方、対峙する億泰は余裕の表情だった。 むしろ武器のデルフリンガーの方が余裕が無いくらいだ。 本来貴族のギーシュが浮かべるべき表情に、ギーシュは何故か一抹の不安を覚える。 「強がりかい? 僕は昨日の負けを清算できればいいんだ。 二つ名『青銅』の名の通り、青銅のゴーレム『ワルキューレ』でお相手しよう」 女戦士のゴーレムが、億泰へと突っ込んでくる。 その右手を振り上げ、まさに鉄槌のごとく腕を振り下ろす……! 「『ザ・ハンド』!」 億泰がその名を呼ぶやいなや、どんな腕よりも恐ろしい右腕がワルキューレを抉りとった。 独特の音が辺りに響き、右腕から胸を通り、反対側まで『削り取られた』ワルキューレが静かに倒れる。 「オメーもマジならよォー、こっちもマジにやらねーと失礼ってモンだよな? だから、マジになるぜェ~~~~!」 億泰の声が、その様子に静まった広場に響く。 それを皮切りに観衆がざわめきはじめる。 「な、なんだあの平民!?何を?」 「まさか、魔法を!」 「いや、杖どころかたった一言しか言ってなかったぞ!?」 「先住魔法か!?」 「いや、でもあの平民から出てる『もや』みたいなのは一体!?」 ギーシュは混乱していた。 当初の予定では一体のワルキューレで適当に翻弄して土下座して謝らせるだけで終わらせるつもりだった。 そんでもってその勢いでモンモランシーとよりを戻すつもりでさえいた。 平民だというのに何の遠慮もなくブン殴ってきた億泰の性格に、少なからず好感も持っていた。 貴族と平民の間の絶対的な差も考えの根底に根ざしていた。 しかし、アレはなんなのだ。 億泰から出ている『もや』のような何か。 人型をとっているらしいが、何故か空気のゆらぎ程度にしか見る事のできない何か。 それが、一発でワルキューレを『切り裂いた』。 そうとしか思えなかった。 「一体何をしたんだ使い魔!? その『もや』みたいな物は何なんだ!」 「そうだぜ相棒!オメー一体何を!?」 億泰は最初から全く変わらないポーズでギーシュへと目を向ける。 デルフリンガーについては後で説明すればいいかな、と思ってあえて無視した。 「ほー、完全じゃあねーみてーだが見えてンのか。 世界が違うからなのかなー、中途半端みてーだけど。 ま!考えると頭痛くなるしやめとくぜ」 「見え……? だ、だからその正体は一体!?」 「『魔法じゃあねえ』。そこまでだ。それ以上親切に教えるバカはいねーよ。 そんなくれーで自分から吹っかけた喧嘩中断するってーのか? ほら、近づいてきなよ」 「わ、ワルキューレ!」 一歩踏み出した億泰に、あわててギーシュが薔薇を振る。 花びらが溢れ、六体のワルキューレが現れた。 そして、地面から更に錬金された武器を手に掴む。 もう余裕とかちょいととかいうのは無しだ。 目の前に居るのはただの平民ではない。 メイジ、それも自分よりも格上を相手にするつもりでも良いのかもしれない。 「やれ、ワルキューレ!」 二体のワルキューレが左右から億泰へと切りかかる。 タイミングも完全に同時、避ける事も受け止めることもできない威力で振り下ろされる剣。 しかし、ほれっという億泰の声と共に片方の頭が消え去り、もう一体が物凄い力で倒される。 倒されたワルキューレの顔には足の形が深々とつけられていて、蹴られたのだと分かった。 「ん~、金属の塊にしちゃー予想外のスピードだけどよォ~~~。 承太郎さんの『スタープラチナ』やクソッタレの『チリ・ペッパー』はおろか…… 俺の『ザ・ハンド』や康一の『act3』よりもおせえよ」 そう言うのと同時に『もや』が倒されたワルキューレの頭を踏み砕く。 「そういやよー、オメーシエスタにまだ謝ってなかったよな? 傷ついたレディが二人とか言ってたけどよォー、 どー見てもあの時一番傷ついてたのはシエスタだよなー! 俺が勝ったらちゃんと謝ってもらうぜェー!」 「っ!」 ギーシュが杖を振り、砕かれたワルキューレの破片を『レビテーション』で持ち上げる。 それを億泰の方へと勢いを付けて放り、更に四体のワルキューレで同時攻撃を仕掛けた! 「真正面から何体来ても無駄だぜェ~! 削り取ってやる!」 「フ、ただ真正面から突っ込むだけだとでも思ったのかい! 『錬金』を食らえ!」 ギーシュの本命はワルキューレによる攻撃ではなく、『破片』の方だった。 ワルキューレが三体破壊された所に、青銅の塊が『錬金』されて砂の塊に変わり億泰の顔へと襲い掛かる! 「う……イデェェエェ!」 思いっきり引っかぶった億泰は目を瞑ったまま『ザ・ハンド』の腕を振り下ろす。 しかし、その腕が最後の敵を削り取ることはできなかった。 ただ、舞う砂を削って空間を作っただけだ。 それを見てギーシュはニヤリと笑みを浮かべる。 「そして!この砂で理解ができた! 君のその力!大体人の姿をしているがどうやら殆ど遠くへは行けないな! 行けるならば最初から僕を攻撃していた! そして、右腕にさえ気をつければ怖くないようだ!」 『ザ・ハンド』の右腕を逃れたワルキューレが億泰へと剣を突き立てようとする。 「空振りした所ならこの剣は避けられまい!勝った! アホの使い魔、完!」 喜びながら電波を受信したギーシュだったが、その喜びは億泰の余裕タップリの声に中断される。 「五十点って所だなァ。 甘いぜオメーは。空振りしたって『空間を削っている』んだぜ! そしてェ、削った空間は閉じ……オメーは最初から全く動いてね~~~」 「何を言って……ハッ!」 その瞬間、ギーシュの腕から杖がすっぽ抜け、億泰の手に収まった。 同時に、ワルキューレの動きが止まり、不自然な姿勢のワルキューレはバランスを崩して横へ倒れる。 「瞬間移動って奴さァ~~~」 その様子を見て観衆は沸いた。 急に広場がざわめきだす。 「へ、平民が杖を奪ったぞ!?」 「って事はギーシュの負けか!」 「俺……ひょっとして要らない子か?」 デルフリンガーの嘆きはそっと広場の騒ぎに掻き消えた。
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ルイズに召喚された次の日、ヴァニラはルイズよりも早く目覚めた 昨夜用意されていた干草のベットを見るとムカっ腹にきてまたルイズを粉微塵にしそうになったが 代わりにその干草を消し飛ばし警告に換え、壁に背中を預けて眠った ルイズは何か言おうとしたが壁の穴を見て思い直したらしく、額縁ずらして穴を塞ぐと大人しくベットに潜り込んでいた ヴァニラは肩を揉み解しながら眠っているルイズへ近寄り 「おい、朝だ起きろ」 不遜にもベットを蹴って揺り起こす しかしッ 「う~ん?揺らすんじゃないわよ犬、ちゃんと歩きなさい・・・」 何の夢を見ているのか、もごもごと口の中で呟くと更に布団に潜り込んでしまった 「いい加減にしろ、次は引っくり返すぞ」 唯でさえ低い声を一層低くし、本当に引っくり返してやろうかとベッドの縁に手を掛けるがその前にルイズが跳ね起きた 「ちょ、ちょっと起きる!起きるわよッ!」 気持ちよく夢を見ていたところを起こされ多少不機嫌だが朝っぱらからベッドの下敷きにされては堪らない 椅子に腰を下ろした使い魔を尻目に大人しく着替え始める 昨夜のうちは着替えさせようか等と甘いことを考えていたがコイツが大人しく従うとは思えない (見てなさいよ、食事の席で思い知らせてやるんだから) いそいそと着替えながら黒い笑いを浮かべるルイズを他所に、ヴァニラは甲斐甲斐しくも元の世界にいる主の無事を祈っていた To Be Continued...
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フーケ騒ぎも一段落して、おれの生活も落ち着いてきた。 まあ慣れてきたとも言うがそんなことはどうでもいい。 今回はそんなおれの一日を紹介しよう。 まず朝。おれはルイズの使い魔(まだ認めてないが)なのでルイズを起こさなければならない。 そんな訳で床で寝ているルイズに奥義暗黒吸魂輪掌破を叩き込む。 ルイズが起きたのを確認し、 「おはようございますご主人様。では食事にいってきます」 何をされたか分かってない内に逃げ出す。さあ朝飯だ。 「はい、どうぞ。よく味わってくださいね」 朝飯は最近シエスタからもらっている。ギーシュを倒した事への感謝らしい。 普通に使い魔用の食事より美味いのでこっちからもらう。 朝飯が終わったらルイズに合流するのだが、合流する場所は他の使い魔と同じく食堂の入り口だ。 「よっす」 「……」 無言で睨んで来る。おれはそれを無視してルイズの後ろについて行く。 教室でおれはルイズの斜め後ろに陣取る。ここなら蹴られることも無いからだ。 基本的に授業中はおれは横になって過ごすのだが、たま~にマズイことになる。 いつかみたいに大怪我するかもしれない危険があるのだ。 それはルイズの魔法だ。前にも言ったと思うがルイズは爆発の魔法が使える。 いや、正確にはそれしか出来ないのだ。 もっと言わせてもらえば爆発する魔法なんてものは無く、すべて失敗らしい。 失敗すれば爆発するってのもおかしな話だがそんな事も言ってられない。 逃げなきゃ爆発の衝撃を受けるからな。そして今日もそうだった。 「先生!わたしがやります!」 おっとルイズが実技をやるらしい。それを聞いたおれはルイズの机の下に隠れる。 これで準備完了。いつでも来いってんだ。 そしてまあ案の定爆発騒ぎを起こすルイズ。 あんな棒切れ一本でテロ行為が出来るんだからたいしたもんだ。 だがおれはそう呑気にしてられない。次の行動に移らなければ。 ルイズに近寄り、こう言う。 「ご主人様!今の爆発で怪我をしたので治療してきます!」 そして教室を抜け出す。こうしないと片付けを手伝わされる。そんなの嫌だ。 さて、思いがけず暇になったので学院をうろつく。 おろ?アレはオスマンだ。アイツは声がむかつく。 なので走り寄って頭に飛びつき、髪をむしりながら屁をこく。 満足した。 しばらくうろつく。 廊下を歩いているとマリコルヌを見つけた。やっぱり休講になったらしい。 走り寄って頭に飛びつき、髪をむしりながら屁をこく。 満足した。 またしばらくうろつく。 階段を下りているとコルベールを見つけた。髪がないので無視する。 畜生。 もっとしばらくうろつく。 厨房のちかくで厨房の主、マルトー親父を見つけた。たまに餌をくれるので挨拶だけして通り過ぎる。 仕方ない。 まだまだうろつく。広場に出た。 あ、ギーシュだ。 問答無用でザ・フールをブチ込む。 最高だった。 昼食の後は午後の授業なのだが今日は気分じゃないので中庭で手下探しだ。 お、なんか良さそうなヤツ発見。鳥だ。 空を飛べるのはシルフィードがいるがこいつは鷹だからそう大きくない。 偵察や連絡など凡庸性はこちらが上だろう。 早速声をかける。 「おい、お前おれの弟になれ」 直球。おれが女なら惚れてるね。 ちなみにシルフィードはこうやって落とした。 「…お前がイギーか?手下を増やしているという?」 「ああ、そのイギーだ」 「仲間を集めて何をする?」 「この世界に知らしめるんだ。おれの存在を 使い魔の頂点たる者がいるって事を!! 誰もおれに逆らえなくなる 確実に世界は(おれにとって)良い方向に進んでいく」 「そしておれは使い魔界の神となる」 「まあ、目標が大きいのは良い事だが…おれは自分より弱い者につくつもりは無い」 「なら勝負しようぜ。お前の能力は欲しいからな」 「…いいだろう」 そして戦闘が始まった。 まあ予想していた通りだがなかなか強い。 空を飛ぶ相手との戦いが厄介な事は知っている。 あの時は片足を失ったが別にこいつはスタンド使いじゃあない。 あの氷野郎よりは楽だろう。 と思っていたのだが、氷とかの能力が無い分確実にヒットアンドアウェイを繰り返してくる。 それも中々速い。ザ・フールで倒すには加減が難しそうだ。 こっちも空中戦に切り替えるか。 「ザ・フール!」 スタンドで地面を蹴り、大ジャンプ。 そのまま飛行形態にして飛ぶ。 「そんなことが出来たとはな…」 「スゴイだろ?部下になるか?」 「まだ勝負は終わっていない!」 空中戦は専門でないため流石にヤツのほうが速い。 「空での戦いは風を味方につけた方が勝つのだ!」 もっともだ。だがそんな器用な事はおれには出来ないので、狙いは一撃必殺のみ。 左からの攻撃。まだだ。 右斜め前からの攻撃。これでもない。 背後からの攻撃。これも違う。 正面からの攻撃。これだ! 「ザ・フール!」 砂の檻を作り正面から来た奴を捕獲し、グルグルぶん回しながら下に突っ込む。 高度は50メイルくらいなのでザ・フールで防御するのも忘れない(もちろん鳥公も一緒に)。 「イギー・トルネード!」 地面に叩きつけられるヤツとおれ。 落下のダメージは砂で吸収したのでそれほどではないがかなり回転させたので意識が朦朧としてるらしい。 「おれの勝ちだな。」 「まさか…風を味方につける…どころか突き破るとはな。…おれの負けだ。」 よし、三人目の仲間だ。それはそうと落ち着いてから話せ、聞き取りにくいぞ。 気分がいいまま部屋に戻る。今日はいい仕事をしたぜ。 「バカ犬。ど・こ・に。行ってたのかしら?」 あ、ルイズの事忘れてた。 なんとかごまかさねば 「テヘッ☆」 可愛い仕草。おれなら間違いなく落ちるね。 結果?傷が増えたよ。 To Be Continued… 鷹のリョウ―イギーの仲間になった
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朝食も済ませ、つやつやとした顔色のルイズは、キラークイーンを従え教室へと向かっていた。 余談だが、朝食の席でルイズがキラークイーンに食事が必要かどうか試すために与えたパンの欠片は、やはり必要ないと判明。 ついでとばかりに能力実験も行い、爆弾にされ投げ捨てられた。 ・・・それがギーシュの朝食に当たり、彼のそれが吹き飛んだことはまた、別のお話。 ここでは彼の色男っぷりが上がったということだけを記しておこう。 「ああん、ワイルドなギーシュも素敵よぉ~」 「ケホッゴホッ・・・ありがとう、モンモランシー。しかし一体何なんだ?」 ・・・ケッ!色気づきやがって・・・おっと失礼。続きといきましょうか。 そんなこんなで扉の前。 教室へ入ったときのみんなの反応を想像(多分に妄想を含む)しながら、 そのためににやつく顔を必死で抑え・・・ざわめく教室へと踏み込む。 ・・・。 それまで騒がしかったその場が一瞬、静寂に包まれた。 「ゼロが成功・・・。」 「ありえねえ・・・。」 「しかもわりとまともな・・・。」 しかしそれも一瞬のこと、すぐに失礼にも程がある声がいくつも聞こえてきた。 妄想世界の住人となっていたルイズには少々キツイ洗礼である。 しかしさすがにゼロと呼ばれ続けた少女。 このような場合を無意識に想定していたためか、いきなりブチ切れるといった失態は見せない。 しかしくやしいものはくやしいし、ムカつくものはムカつく。 内心は穏やかではなかった。 その怒りは授業の最中にも燻り続け、普段ならばありえない態度となって表れていた。 「ミス・ヴァリエール?ちゃんと授業に集中なさいね。」 「あ・・・すみませんでした・・・。」 「ルイズ~授業くらいはちゃんと聞けよな、ゼロのルイズの唯一のと・り・え・なんだからさぁ~。」 「こ、この・・・風邪ッぴきの分際でッ・・・!」 「僕はッ!風上だッ!二度と間違えるな!」 「あらあら、間違えるなと言うのなら、やっぱり風邪っぴきよ。」 「風上だと言っているッ!!」 「お二人ともいい加減になさい!誇り高き貴族たるもの、そのようなくだらない言い争いは控えるものです。」 「「・・・すいませんでした。」」 「よろしい。では・・・ミス・ヴァリエール。話を聞いていなかった貴方に錬金を命じます。 それで帳消し、ということにしておきますから。さて、何か聞いておくことは?」 「いえ、問題ありません。」 「先生ッ!?それは・・・危険ですっ!!」 「そうです、なんなら代わりに僕がっ!」 キュルケを筆頭に皆が叫ぶ。 「黙りなさい!・・・先生、この私にお任せを。」 優雅に一礼すると、ルイズは教卓に歩み寄った。背後にはキラークイーンが憑いている。 「ときにミス・ヴァリエール・・・先ほどから気になっていたのですが、何故使い魔を?」 「そういう性質なんです。」あらヤダ。この娘、嘘ついた。離れてもムズムズするだけなのに。 カワイソーだけど数秒後には粉微塵になってるのね・・・という視線が幾つもそそがれている石ころ。 だがそれも少しの間だけのこと、ルイズが杖を構えるころには皆、机の下に避難していた。 一部、教室外に逃亡した者もいるようだ。 そして・・・ついにルイズが魔力を込めて呪文を唱えたッ! ドッグォオ~ン!! 石が爆ぜ、机も巻き込んで吹き飛んでゆく! ミセス・シュヴルーズも吹っ飛んだ!さながら壊れた人形のように! ルイズにも破片が襲い掛かる! しかし・・・キラークイーン! この程度の衝撃、破片など恐るるに足りぬ!見事に全てを防ぎきった! 「・・・ちょっと失敗しちゃったみたいね。」 「「「「どこがだっ!」」」」生き残りからの突っ込みが入る。 幸運にしてミセス・シュヴルーズは気絶しただけであり授業は中止。 元凶であるルイズに下った罰は教室の掃除であった。 「細かいのはいけるとして、こういう大きいのは・・・キラークイーン、まとめてやっちゃえ!」 使い魔を駆使して掃除を終えたルイズは、しかし昼食に間に合うことはなかった。 「うぅ・・・お腹空いた・・・。」まるで幽鬼だ。 ふらふらと行くあてもなく彷徨うルイズ。行き着いた中庭で落ち込んでいた。 「あ、あの・・・。」 今にも誰かを道連れに自殺しそうな雰囲気のルイズに、一人のメイドが声をかけた。 何のことはない、メイド仲間に無理矢理行かされたのだ。 ↓経緯 「彼女よね?食べそびれたのって。何かお出しした方が・・・。」 「で、でも恐い・・・。」 「シエスタァ・・・お願い。」 「わっ私ですか!?」 「「「お願い!」」」 「うぅ・・・。」 かくして彼女に白羽の矢が立った。