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トイレから部屋に戻ったルイズは、昨日呼び出した使い魔について考えていた (朝食は抜いた、死体は芯まで凍っていた為、血こそ飛び散らなかったものの食欲が消えるには十分だった 粉々になった死体は部屋に戻ると昨日の様に消えていた、消えて無かったら今頃いい感じでスプラッタだったろう) おかしい、落ち着いて考えてみると確かにおかしい 死体が消えるのもそうだけど、死んだ筈なのに再び召喚されるっていうのは如何考えてもありえない 死んだ、自分の目の前で死んだ、なのに召喚されて動いて喋っていた 屍生人?吸血鬼?アヴドゥル?どれも違うように思える それよりも「死んでも召喚されれば生き返る」のではないか? そう思えた もう一度呼び出してみれば分かるかもしれない 疑問を確かめるべく、三回目の召喚を行う これであの男が出てくれば確定だ、自分が呼び出したのは只の平民などではない 何か力を持った存在なのだ、馬鹿にされる様な使い魔等ではないのだ そう思うと落胆していた気持ちが高揚していくのを感じた 「あらためて、アンタ誰」 「…ディアボロだ」 過去2度の召喚と同様に杖の先に現れた男は落ち着いていた 絶え間無く周囲を見回し警戒していること隠さなかったが、こちらを見て怯えるということは無かった ディアボロの落ち着きを見て取ったルイズは ディアボロを召喚したこと、ディアボロが使い魔であること、使い魔とは何であるかを説明した 「自分の置かれた立場が分かったわね」 「じゃあ私の疑問に答えて貰えるかしら 彼方は何故生き返ったの? 前に呼び出した時は確かに死んでいた筈だわ 甦る力があるの?それとも死んでいなかったの?」 ディアボロは警戒を解かぬまま口を開く 「…私はある戦い以来、何処から来るか何時来るか分からない死に襲われ続けている」 「一度死んでもそれで終わりではない、場所が変わり時が変わりまた死が襲ってくる」 「…まるで死の呪いね」 「ルイズ…だったな」 「お前の話は理解できた、だがそれはお前の都合であり私には関係の無いことだ 使い魔が欲しいのなら別のを探すんだな」 この男の言葉には凄みがある、言葉を裏打ちするだけの力を持っているのだ 逃す訳には行かない ここで逃せば自分は本当に何も無い「ゼロ」になってしまう しかしこのままでは引き止められない ルイズは何かこの男を留めて置けるなにかはないかと必死に頭を働かせた 力?金?カラダ?いや違う 男の喋った言葉の中にあったそれに気付く、思いつくままに口を動かす 「死ぬ度に時間と場所が変わる、そう言ったわね」 「それならばあれほどまでに周りを恐れていたのは分かるわ」 「何も分からぬままいつまでも流され続ける、これほどの恐怖は無いものね」 「でも、今の彼方は落ち着いている、死を恐れているものの落ち着いているわ」 「それは安心したからじゃあないかしら、状況が理解できる範囲にあることに」 「私に呼ばれてから別の場所で死んだことはあった?無いんじゃないの?」 「それは契約を結んだことで呪いに変化があったと考えられるわ」 「だから私の元を離れたり、私を殺したりすればその安心は失われるかもしれないわよ」 「何処とも知れぬ場所で永遠に死に続ける、そんなのに耐えられるかしら」 一気にまくし立てたルイズは息を整え、最後の決め手と言わんばかりに言い放った 「これは機会よ!慈悲深い御主人様が与えた最後の機会! 逃したならもう二度と救われることは無いわね」 ディアボロがルイズを見る 「よく喋る口だ…つまり利害が一致した訳だな、お前は使い魔が欲しい、私は平穏を必要としている いいだろう、使い魔になってやろうじゃあないか」 ルイズは笑みを浮かべた やった、ほとんどでまかせだったがこの男は使い魔になると言った ディアボロの言葉遣いや態度は気に入らないが、とにもかくにも使い魔を得ることが出来たのだ 「じゃあ行くわよ、ついて来なさい」 「何処にだ」 「教室によ、使い魔は主と行動を共にするものよ」 教室は大学の講義室という風だった 何か異なることといえば生徒達が皆何かしら生き物を従えていることだろう 道すがら見かける様なものもいれば、動物園で目にするようなものもいる ディアボロの目を引いたのは中でも物語の中でしか存在し得ない筈の生き物達だ (ここでは幻獣と称するらしい、ルイズの話の中で出ていた) (イタリアではないことだけは確からしいな) この小娘に出会ってから2度死んだ、死んだ次の場面は2度とも小娘の前だった 今までこんなことは無かった、時間も場所繋がり無く変わり訳も分からぬまま死を繰り返した 小娘のでまかせを思い出す 確かに以前の状態に戻らないという保証は無い 認めたくは無いが自分はあの小僧に破れ絶頂から転げ落ちてしまったのだ 今は崖に生えた細い枝に服が引っ掛かった様な極めて不安定な状態だ 少しでも重心を崩せば再び奈落の底へと転落してしまうだろう しっかりと三点確保を維持しながら崖を上らねばならない 迂闊な行動は出来ない 絶頂であり続ける為には… 「コッチヲ見ロォ~~ッ」 「ん………?」 顔を起こしたディアボロに散弾の様な石の破片が突き刺さり、ついで爆風が体を粉々に吹き飛ばした ■今回のボスの死因 ルイズの失敗魔法の巻き添えで爆死
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まあ、なんだ。 結局さっきの一件はおれの『おいた』で済まされた。 おれはコレに納得がいかない。 何故ならその言い方ではおれが悪いことをしたみたいだだからだ。 まあその後ピンクの髪の女に連れられているって訳だ。 本心ではもっと胸のあるヤツがいいんだが、嫌な予感がするのでそれは黙っておく。 そしてどうやらここは異世界で魔法があるらしいところまで理解した。何故かおれの手も直っている。 「さて、とまずはアンタの名前ね」 「イギーだ。それが俺の名前」 「そう、イギー。よろしくね」 そう言われても状況がサッパリなんだが、おれがそう言うと 「状況って、アンタは私の使い魔になったのよ」 なんて返してきやがった。 使い魔ってのは何だ?と聞くと 「使い魔は使い魔よ」 あーあーこれだから人間は、説明になってないじゃねーか。 「使い魔って言うのは主人のメイジ、つまり私ね、が使役する絶対的な主従関係で成り立つ動物や幻獣のことよ」 ウィキペディアで調べた様な答えだな。 「とにかく!アンタは私に絶対服従!いいわね?」 「よくない」 誰がこんな貧乳なんかに服従するか 「………」 あれ、黙っているぞ?そんなにおれが否定したのがショックだったのか? 「だ……うよ」 ん? 「誰が貧乳よ~~~~!」 やべえ、つい言っちまってた! おれは自分の身を守るためベッドの下に飛び込む。魔法を使われたくないのでついでに杖も持っていく。 「あ!出て来なさい!このバカ犬!」 無視する 「杖を返しなさい!」 無視する 「さっさと出て来い!」 アーアー聞こえなーい 「いい加減にしなさい!」 そういってベッドの下に手を突っ込んでくる。今だ! おれはベッドの反対側から出てそのまま部屋を飛び出す。脱出成功! とはいかなかった。 「ドアが開けられねえ……」 クソッ!こんな時はあのブ男が開けてたのに! そしておれは殺気を感じた。後ろに振り向き 「いやあご主人様!今日も綺麗ですね!」 とりあえず褒めてみる。 「ありがと。出会ったのは今日だけどね」 もっともなお言葉で。 そして散々鞭で叩かれる。その最中に気絶しちまった。 「まったく…目覚めたら従順になってればいいけど」 そう言うルイズ。 絶対ならないぞ、おれは。 鞭で叩くようなやつに従うつもりは全くない。 「そろそろ寝ましょ」 そうしろそうしろ 「えーと着替えは…」 ム!覗けるのか、と思ったがあんな貧乳に興味はない。さっさと寝やがれ。 しばらくしてルイズが眠る。 それを確認しておれはベッドの下から出る。 「ザ・フールをおとりに使ってよかったぜ」 何か罰を与えないと気がすまないって感じだったからな。 おれは叩かれたくないのでザ・フールで自分の形を作ったって訳だ。(もちろんベッドから出るとき入れ替わった。) さて、おれも寝るか ベッドからルイズを下ろす。ルイズより早く起きて床にいれば寝相のせいになるだろう。 このベッド結構寝心地いいなぁ。 今日は疲れたので良く寝れそうだ。 To Be Continued…
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『NINKU―忍空―』から、キャラ『風助』を召喚。 原作FIRST STAGE終了後、釈迦の証を所持している状態です。 1章 輝きは君の中に 風の使い魔-01 風の使い魔-02a/b 風の使い魔-03a/b 風の使い魔-04a/b/c/d
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康一達がマリコルヌに地獄を見せていた同時刻、本塔の最上階にある学院長室で、ちょっとした騒ぎが起ころうとしていた。 トリステイン魔法学院の学院長を務めるオスマン氏が、白いひげと髪を揺らして、退屈そうにしていた。 「暇じゃのう……」 オスマンは、机に手をつきながら立ち上がり、理知的な顔立ちが凛々しい、ミス・ロングビルに近づいた。 椅子に座ったロングビルの後ろに立つと、重々しく目をつむった。 「こう平和な日々が続くとな、時間の過ごし方というものが……」 「オールド・オスマン」 オスマンが、年季の入ったしわをよせながら重々しく語ろうとするが、ロングビルによって遮られる。 「なんじゃ?」 「暇だからといって、わたくしのお尻を撫でるのはやめてください」 オスマンは口を半開きにして、耳をロングビルに向けながら聞く。 「え? ポッポ ポッポ ハト ポッポ?」 「都合が悪くなると、ボケた振りをするのもやめてください」 どこまでも冷静な声でロングビルが言った。 オスマンは深くため息をついた。そして真剣な顔をしながら語る。 「そういえば、昨日召喚されたという平民の少年はどうしてるんじゃろうな? 後で様子でも……」 「少なくとも、私のスカートの中にはいませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」 ロングビルの机の下から、小さなハツカネズミが現れた。 オスマンの足を上り、肩にちょこんと乗っかって、首をかしげる。 「気を許せる友達はお前だけじゃ。モートソグニル」 そう言って、ネズミの前にナッツを振る。 「ほしいか? カリカリの欲しいじゃろう? なら報告をするんじゃ」 ネズミは、ちゅうちゅうと鳴きながら、オスマンに耳打ちした。 「そうかそうか、白か。純白か。よーし、よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし! よく観察してきたのう、モートソグニル! 褒美をやろう。いくつ欲しいんじゃ? 二個か?」 ネズミは、顔を横に振って、ちゅーうちゅうちゅうちゅう! と鳴いた。 「三個欲しいのか? カリカリのを三個……。いやしんぼじゃのう! よし、三個くれてやろう!」 ロングビルが眉をぴくぴくとさせながら、その光景を見ていた。 「オールド・オスマン」 オスマンは、ネズミに向かってナッツを放り投げながら聞く。 「なんじゃね?」 「今度やったら、王室に報告します」 その言葉を無視するかのように、オスマンはネズミと戯れていた。 ネズミが手を使わずに、全てのナッツを口でキャッチして、カリコリさせながらナッツを食べている。 「よォ~しよしよしよしよしよしよしよしよしよし! とってもいい子じゃぞ、モートソグニル!」 うれしそうにネズミを撫で回すオスマン。 その光景を見ていたロングビルは、オスマンの背後に無言の圧力をかける。 「下着を覗かれたぐらいでカッカしなさんな! そんな風に怒ると、余計にしわが増えるぞ。 これ以上、婚期は逃したくないじゃろう。 ぁ~~~~、若返るのう~~~、何というスベスベの……」 オスマンが、ロングビルのお尻を堂々と撫で回し始めた。 ロングビルは立ち上がり、無言で上司の顔面を手の甲の部分で引っぱたいた。 バギィッ! 小気味良い音を立て、オスマンは地面に倒れる。 追撃といわんばかりに、ドガドガドガと、オスマンの体中に何度も蹴りを入れ続ける。 「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに。許して!」 「このッ! このッ! このエロじじぃがッ! 思い知れッ!!」 普段の冷静なロングビルとは思えない台詞を言い放ちながら、尚もオスマンに蹴りを入れる。 「あだッ! うげッ! ごげッ! と、年寄りを、きみ。ちょま、まって。折れちゃう! はぐッ!」 「私の清らかな部分を! よくも汚れた指先で! いやらしく撫で回してくれたわねッ!」 ロングビルは完全にプッツンしているようで、目を尋常じゃないほど見開いている。 迂闊なことをしたと後悔しながら、意識が遠くへいきそうになるオスマン。 オスマンが失禁寸前になっていたその時、 ドアがガタン! 勢いよくあけられ、中堅教師のミスタ・コルベールが飛び込んできた。 「オールド・オスマン!!」 「……」 返事がない。 ロングビルは何事も無かったように机に座っているが、オスマンはピクピクと体を痙攣させていた。 いつものことなので、特に気にも留めずにコルベールは話を進める。 「たた、大変です! ここ、これを見てください!」 『炎蛇のコルベール』の二つ名を持つコルベールは、 白目をむいて気絶しているオスマンを燃やして、強制的に意識を覚醒させる。 そして、図書館にあった書物をオスマンに手渡した。 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか」 オスマンは何事も無かったかのように、書物をマジマジと見つめている。 「これが一体どうしたと言うんじゃ。 こんな古臭い文献など漁ってる暇があったら、貴族から学費を徴収するうまい手を考えるんじゃよ。ミスタ……、なんだっけ?」 オスマンは首を傾げた。 「コルベールです! お忘れですか!」 「そうそう。そんな名前だったな。それで、この書物がどうかしたのかね? コルベット君」 「コル 『ベール』ですッ! わざとらしく間違えないで下さい!!」 だめだコイツ……、と思いながら頭を抱えるコルベール。 「とにかく、これを見て下さい!」 コルベールは、康一の手に現れたルーンのスケッチを手渡した。 それを見た瞬間、オスマンの表情が変わった。目が光って、厳しい色になった。 「ミス・ロングビル。席を外しなさい」 ミス・ロングビルは立ち上がり、部屋を出て行った。 彼女の退室を見届け、オスマンは口を開いた。 「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」 ルイズがめちゃくちゃにした教室の片付けが終わったは、昼休みの前だった。 罰として、魔法を使って修理することが禁じられたため、時間が掛かったのである。 といっても、片づけをしたのは殆ど康一で、ルイズは面倒くさそうな顔で机の煤を拭いただけだった。 新しい窓ガラスや重い机を運ばされた康一はくたくたになりながら、食堂へ向かうルイズの後ろを歩いてる。 「……」 「……」 二人とも無言であった。 ルイズは不機嫌そうにしており、康一は話す気力もないと言った感じで肩を落としてる。 だらだらと歩く康一に我慢できなくなったルイズが、康一に向かって怒鳴りつける。 「ちょっと! 私の使い魔らしく、もっとシャキっとなさい、シャキっと!」 康一は、何も答えずにノロノロと歩いている。 「人の話を聞いてんの? この犬!」 犬と言われた康一は、ムッとしながらも何とか堪え、ルイズの所までスタスタと歩いた。 ルイズの肩に手をポンと置き、散々コキ使われた恨みを籠めながら笑顔で返事をする。 「僕もシャキっとしたいんだけど、何せもう体力が 『ゼロ』 だからなぁ~」 康一は、『ゼロ』の部分だけ声を張った。 ルイズの眉毛がぴくぴくと動き、歯はギリギリと不協和音を奏でていた。 「いや、本当は僕も急ぎたいけど、体力が『ゼロ』だし、気力も『ゼロ』だからさぁ~!」 「ふーん、へぇ~、そーなの。 体力が無いなら仕方ないわね~」 ルイズは笑顔で、しかし、万力の力を込めるように、拳を握った。 それを見た康一は、ヤバイと思って、後ずさりしながら離れる。 「さ、さあ~てッ! 早いとこ食堂に行こ……」 ルイズの右ストレートが、康一の左頬にクリーンヒットする。 バギィッ! という音が、食堂へと続く廊下に響いた。 康一は、明日の食事も全て抜きとされてしまった。 殴られた左頬を押さえながら、康一はシエスタに案内された厨房へ向かっていた。 口の中は鉄の味で充満しており、虫歯になった時のように、ジンジンと痛みが走っている。 「あら、コーイチさん」 厨房の前に到着すると、シエスタが大きな銀のトレイで、何枚もの皿を運んでいる最中だった。 康一は、シエスタのところまで駆け寄り、一礼をした。 「どうも、シエスタさん。朝はお世話になりました。運ぶの手伝いますよ」 そう言って、シエスタの持っていたトレイを持ち上げる。 しかし、片づけで大幅に体力を失っていたこともあり、持ち上げた体勢のままプルプルと震えて動けなくなる。 「あ、あの……無理はなさらないほうが……」 シエスタが康一を心配そうに見つめる。 「だ、だ、だ、大丈夫……です。あ、いや……。やっぱまずいかも……」 シエスタは、康一の両手に重なるように手を置き、トレイを持ち上げるのを手伝う。 「す、すいません……」 シエスタの手に触れていることも相まって、康一は顔を真っ赤にして俯いた。 「一緒に運びましょう。二人で運べば、お互い楽に運べますから」 そう言って、可愛らしい笑顔でニコリと微笑むシエスタ。 康一は十分の一でもいいから、シエスタの優しさをルイズに分けてほしいと思った。 皿が乗っているトレイを、厨房のテーブルに乗せる。 トレイから皿を下ろしていると、料理を作っていたコックが皿を何枚か要求した。 康一が皿を持っていき、コックが料理を盛って、再び康一に手渡す。 シエスタが康一から料理を受け取り、何枚か大きな銀のトレイに乗せて食堂へと持っていった。 数分後、メイン料理の全てを運び終えたメイドたちは、デザートの時間になるまで昼食を取っていた。 「うーん、やっぱおいしいッ!」 康一も、シエスタを含むメイドたちと賄い料理を食べていた。 今日の賄いはシチューらしく、康一の腹を満たすには充分すぎる程の量が入っている。 シエスタは、その様子をクスクスと笑いながら見ている。 「……? どうしたの?」 「コーイチさんって、本当においしそうに食べてくれますね」 「そりゃあ、本当においしいんですから、自然とそうなりますよぉ~!」 そう言って、満面の笑みでシチューを頬張る康一。 ルイズに殴られた傷なんて、気にならないくらいであった。 「この後、デザートを運ぶんですよね? 僕も手伝いますよ」 「そんな、そこまでしてもらうわけには……」 既に厨房の仕事を手伝って貰っており、これ以上手伝ってもらっては申し訳ない、とシエスタは思った。 「いえ、朝もご馳走になりましたから、是非やらせて下さい!」 「……わかりました。なら、手伝って下さいな」 康一の素直な瞳を見て、断っては逆に失礼だと思ったシエスタは、デザート運びを手伝ってもらうことにした。 大きく頷き、康一は再びシチューを食べ始めた。 大きな銀のトレイに、デザートのケーキが並んでいる。 康一がトレイを持ち、シエスタがはさみでケーキをつまみ、一つずつ貴族たちに配っていく。 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」 声のした方を見ると、金色の巻き髪にフリルのついたシャツを着た、キザなメイジがいた。 薔薇をシャツのポケットに挿している。どうやら友人らしき人物と話をしているようだった。 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 あの人、自分を薔薇に例えるなんて、よっぽど自分の容姿に自信があるんだなぁ~。 などと思いながら次の席までトレイを運ぶ。 特に興味もなかった康一は、すぐに視線を元に戻した。 次の席にケーキを配ろうと康一が移動した時、シエスタが何かに気づき、はさみをトレイに置いた。 「すみません、ちょっと待ってていただけますか?」 「あ、はい」 そう言って、シエスタはさっきのキザな男の元に駆け寄った。 知り合いかな、と思いながら康一が見ていると、何やら少しモメているようだった。 シエスタは困った顔をして、オロオロとしていた。 何かあったのかと思い、トレイをテーブルに乗せて康一がシエスタに声をかける。 「どうしたんですか?」 「あ、それが……」 その時、一人の女性がキザ男に向かってコツコツと歩いてきた。 「ギーシュさま……。 やはりミス・モンモランシーと……」 「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは……」 ギーシュと呼ばれた男がそう言いかけた時、パァンッ! という音が、食堂に響いた。 ケティと呼ばれた女性が、ギーシュの頬を思いっきり引っ叩いていた。 「その香水が貴方のポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」 ギーシュは頬をさすった。 康一が何事かと思っていると、康一を押しのけて、また一人の女がギーシュの前に現われた。 「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒に、ラ・ロシェールの森へ……」 「やっぱり、あの一年生に、手を出していたのね?」 モンモランシーは、テーブルに置かれたワインのビンを掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけ、 「うそつき!」 と怒鳴って去っていった。 しばし、なんともいえない沈黙が流れた。 ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。 そして、首を振りながら芝居がかった仕草で言った。 「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」 康一は、この人二股かけてたのか、まあ自業自得かな。などと思っていた。 あんまり惨めな姿を見ていると可哀想だったので、康一はすぐにその場を去ろうとする。 「……メイド風情がやってくれたね。君が軽率に、香水のビンなんかを拾い上げたおかげで、 二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだい?」 シエスタは、体を震わせながら、半泣きで土下座をする。 その光景を見た康一は、ピタリと足を止め、ギーシュの元へと引き返した。 「も、申し訳ございません!」 「謝って済む問題じゃない。キミには責任を取ってもらうとしよう。 ここのメイドをやめて、今すぐトリステインから出て行ってくれたまえ」 そう言って、ギーシュはシエスタの元から去ろうとする。 それを聞いていた康一が怒りをあらわにしながら言った。 「ちょっと! 何もそこまでする必要はないじゃないですか!」 「ん? 君は確か……ゼロのルイズの使い魔だったか。 使い魔如きが、軽々しく僕に話しかけないでくれたまえ」 使い魔如きと言われカチンとするが、 それよりも頭に来たのは、ギーシュが自分の責任をシエスタに押し付けてることだった。 「話を聞いていると、悪いのは明らかにキミの方だ! 大体、二股をかけてるのが悪いんじゃあないか。自業自得だよ!」 ギーシュの友人たちが、どっと笑った。 「確かにその通りだ! ギーシュ、お前が悪い!」 「そうだ、お前が悪い!」 それを聞いていた、周りのギャラリーたちも、一斉にギーシュを攻め立てた。 「責任転嫁するなんて、かっこ悪いぞ!」 「この極悪人め!」 「キミが真の邪悪だ」 周りから好き放題言われるギーシュ。 プルプルと振るえ、顔を怒りの形相へと変えた。 「よくも……僕にこんな恥をかかせてくれたな……」 歯をギリギリとならし、康一をキッと睨みつけている。 康一も負けじと、ギーシュを真っ直ぐ見る。 「そうやって、なんでもかんでも人のせいにするのは止めた方がいいよ。 全てキミが悪いじゃあないか。周りの皆だって、そう言ってるよ」 うんうん、と頷くギーシュの友人とギャラリー達。 「……どうやらキミは貴族に対する礼を知らないようだな。 よかろう、ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終えたら来たまえ」 くるりと体を翻し、ギーシュと、その友人たちが去って行った。 「コ、コーイチさん! 逃げて下さい! 殺されちゃいます!」 「シエスタさん」 「悪いのは私なんです! だから、行くのは絶対にやめて下さい!」 「シエスタさん、聞いて下さい」 康一は地面に座り込んでいたシエスタの手を取って、立たせた。 その姿は、体の小さな康一とは思えないほど、凛々しかった。 ドキリと胸をならし、シエスタは思わず視線をそらす。 「僕が逃げるってことはつまり、シエスタさんの名誉を汚すことになります。 シエスタさんは何も悪くないんです。だから、自分が悪いなんて言うのはやめて下さい」 康一は、真っ直ぐにシエスタを見ながら言葉を続ける。 「それに、僕は彼に解らせてあげなければならないんだ。『お前が悪いんだ』ってね。 大丈夫。僕は一度殺されそうになったことがあるからね。あんな奴、ちっとも怖くなんかないよ」 そう言って、康一はテーブルに置いたトレイを持った。 「さ、それより、早くケーキを配りましょう。皆さん、お待たせしてすみません」 康一達は、残りのケーキを貴族達に配っていった。 To Be Continued →
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ポルナレフがルイズを助ける少し前のこと。 「いいか、よく聞け。フーケが出て来たのはチャンスだ。今なら奴を倒せるかもしれん。」 ポルナレフはシルフィードの上で二人に話し出した。「確かに出て来たのはいいけど、あたし達の魔法じゃきっと効かないわよ?」 「お前達の魔法じゃあ無い。あくまで可能性の話だが…」 タバサが持っていた破壊の杖を指差した。 「その破壊の杖ならあのゴーレムを一発で破壊できるかもしれない。そして俺はその使い方を知っている。」 二人は驚いて、顔を見合わせた。破壊の杖を初めて見たばかりのそれもメイジではないはずのポルナレフが「使える」と言い出したのだ。 「だが、使うにはあそこにルイズがいると危険だし、距離と時間が必要だ。」 だからフーケの動きをしばらく止めてくれ、とポルナレフは頼んだ。 「ダーリンの頼みなら断る理由は無くてよ!それにルイズばかりかっこよくさせとくのも釈だし。」 「…(コクリ)」 キュルケとタバサは快く承知した。 ポルナレフはそれじゃあ頼んだ、とだけ言うと亀と破壊の杖を持って飛び降りた。 「はん!何わざわざ『土』は切れないなんて教えてんだい!これであんたの勝ち目は無くなったよ!」 フーケはゴーレムの腕を鉄に変えずにポルナレフに向かって撃った。 ポルナレフはルイズを抱えて急いで避けると、そのまま背中を向けて逃げ出した。 「逃がさないよ!」 フーケはゴーレムで後ろから追おうとしたが、 「ファイア・ボール!」 キュルケ達に邪魔された。「うざったい虫だね!」 空から来る二人の魔法に足止めを喰らうフーケ。ちらりとポルナレフの方を見ると、いつの間にか大分距離が開いていた。 ヤバイと思ったが、はたと気付いた。何故ポルナレフは破壊の杖を持って来たのだ?ルイズを助けるだけならば邪魔以外のなんでも… そしてフーケはニィっと口を歪めた。 (こいつは『当たり』だったようだね…。まあ、ゴーレムは犠牲になるかもしれないけど…) フーケはそう考えると今度は『わざと』じりじり後退していくような振りをした。 ポルナレフはフーケのゴーレムからある程度距離を取るとルイズを亀の中に入れ、破壊の杖を構えた。 「こんなものには頼りたくないんだがな…生憎チャリオッツじゃああいつには分が悪すぎる。」 ポルナレフはそうぶつぶつ言いながら慣れた手つきで破壊の杖の安全ピンを抜きとり(めんどくさいので省略)安全装置を外した。弾数は一発。失敗は許されない。 「タバサ!準備は出来た!すぐにゴーレムから離れろッ!」 ポルナレフがそう叫ぶとタバサは急いでシルフィードを上昇させた。 それを確認すると、ゴーレムに狙いを定めポルナレフはトリガーを引いた。 しゅっぽっと栓抜きのような音がして羽がついた大きな弾が白煙を引きながら飛び出した。 その弾がゴーレムの身体にのめり込んだ瞬間、その衝撃で信管が作動、弾頭は爆発し、ゴーレムを吹っ飛ばした。 だがその爆風の中、三人共気付かなかった。フーケが砕け散っていくゴーレムの残骸と共に落ちていく最中、笑っていたことに。 「後はこの土の中からフーケを探し出したらようやく終わりね。」 「…」 ポルナレフ、キュルケ、タバサの三人はゴーレムの残骸もとい土の山の前で立ちすくんでいた。ちなみに破壊の杖はすぐ近くの地面に置いてある。(ルイズはまだ亀の中で気絶している。) 正直言ってこの中から探し出すなんて面倒である。 「それにしてもダーリン。何で破壊の杖の使い方を知ってたの?」 「ノーコメントだ。」 「…ずるい」 三人がそんなやり取りを交わしている所に 「皆さんすいません。遅くなってしまって…てこの土の山は!?まさかフーケが…」 ロングビルが森の中から現れた。 「ああ、フーケが襲って来た。罠だったみたいだが俺がその破壊の杖で奴を倒し…「そこまでだよ。全員動くな。」!?」 ロングビルがポルナレフの言葉を遮った。その手には破壊の杖。 「ミ、ミス・ロングビル?」 キュルケがまさか、という顔をした。 「その通り。あたしが『土くれ』のフーケさ。 すまなかったねミスタ・ポルナレフ。あんたのお陰で全ては上手くいったよ。本当に感謝しているよ。」 フーケが嫌味ったらしく言った。 「成る程、やはりあれは嘘だったか。しかし、感謝しているならその破壊の杖を下ろしてもらいたいものだな…」 ポルナレフは静かに言った。 「駄目駄目。だってあたしの正体ばれてるのにここで逃がしたらあたしが大変な目に会うからね。 あんた達には残念だけど、これで死んでもらうよ。」 フーケがそう言って、破壊の杖の照準をポルナレフに合わせようとした時、ポルナレフはクククと笑い出した。 「?何笑ってんだい?」 「さっさと魔法で俺達を始末すればいいのに、貴様が無駄口叩いているのが面白くてな…しかもそれはな、」 ドサッ ポルナレフがそこまで言った時、いきなりフーケが倒れた。首の付け根に丸い凹みが出来ている。 「単発式…てもう聞いてないか。」 ポルナレフはロングビルが自分がフーケと明かした時、既にチャリオッツの剣針を飛ばしていた。 直接やらなかったのはフーケの位置までチャリオッツが届かなかったからだ。そして剣針は森の木々に反射し、見事フーケの首に命中したのだ。 「まさかミス・ロングビルがフーケだったとはのう…」 四人の報告を受けたオスマンは多少残念そうに言った。オスマンいわく、酒場で給仕をしていた彼女の尻を故意に触ったのだが怒らなかった、という理由だけでスカウトしたらしい。 その場にいたコルベール含む五人全員「死ねばいいのに」と思ったのは言うまでもないが、コルベールとポルナレフの親父二人はまあ、色々あったので少し同情した。 とりあえず体裁だけ整えてからオスマンはルイズとキュルケにシュヴァリエ、タバサには精霊勲章を申請しておくと言った。 その言葉に三人は誇らしげに礼をしたが、ルイズはあることに気付いた。 「オールド・オスマン。ポルナレフには何も無いのですか?」 「残念じゃが、彼は貴族では無いのでな…」 「そんな…」 1番手柄を立てたと言えるポルナレフには貴族では無いというだけで何も無いのか、ルイズはその理不尽に憤慨したが、ポルナレフはその肩を叩いて、 「俺は別に何もいらない。色々訳ありでな…」 と言った。 その言葉にルイズは渋々頷いた。 「それはそうと今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り『破壊の杖』は戻ってきたし、予定通り執り行う。 今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意してきたまえ。せいぜい着飾ってくるのじゃぞ。」 三人が礼をしドアに向かったがポルナレフは行こうとしなかった。 「ポルナレフ?」 「先に行ってろ。こいつらと話がある。」 ルイズは納得いかなかったが、渋々出て行った。 「何か、私に聞きたいことがお有りの様じゃな…言ってごらんなさい。 出来るだけ力になろう。君に爵位は…ああ、要らないんじゃったな。まあ、せめてもの御礼じゃ。」 「聞きたいことは二つある。一つはこのルーンだ。薄々気付いていたが、このルーンは剣やナイフを持つと何故か反応する…これは何だ?」 「うむ…それは伝説の使い魔の印じゃ。」 「伝説の使い魔?」 「さよう。始祖ブリミルの使い魔でガンダールヴと言う。彼の者はありとあらゆる武器を使いこなした、と言い伝えられておる。 コルベールの仮説じゃったがどうやら本物らしいな。」 「なるほど…だから破壊の杖も扱えたのか。しかし何故あの小娘が俺達をそのような使い魔として召喚したのだ?」 「すまんが、そればかりは分からん。」 「…まあ、いい。それよりだ。あの破壊の杖はどうやって手に入れた?あれは俺がいた世界の武器だ。この世界の技術で作れるはずがない。」 「君がいた世界…ああ、君が言ってた召喚される前の魔法が無い世界か…まあ、話すと長いのじゃが…」 オスマンが言うにはその昔ワイバーンに襲われ危機に陥った所を破壊の杖の持ち主に助けられたらしい。 「その男は?」 「死んだよ。酷い怪我を負っていてな…『元の世界に帰りたい』とベッドで言っていたよ。 彼は破壊の杖を二本持っていてな、それで彼の墓に彼が使った方を埋め、もう一本は宝物庫にしまったのじゃ。」 「そいつが来た方法なんかは聞いてないのか?」 「聞いたのじゃが、本人も分からんと言っておった。すまんな、力になれなくて。」 オスマンがすまなさそうに頭を下げた。 「別に構わない。ただ、俺や亀の様に来た奴がいる…それさえ分かればな…」 ポルナレフは立ち上がると一礼してから退室していった。 To Be Continued...
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ゼロの使い魔 (全13話終了) 01 ゼロのルイズ 02 平民の使い魔 03 微熱の誘惑 04 メイドの危機 05 トリステインの姫君 06 盗賊の正体 07 ルイズのアルバイト 08 タバサの秘密 09 ルイズの変心 10 姫君の依頼 11 ルイズの結婚 12 ゼロの秘宝 13 虚無のルイズ
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ゼロの使い魔 第01話 「ゼロのルイズ」 第02話 「平民の使い魔」 第03話 「微熱の誘惑」 第04話 「メイドの危機」 第05話 「トリステインの姫君」 第06話 「盗賊の正体」 第07話 「ルイズのアルバイト」 第08話 「タバサの秘密」 第09話 「ルイズの変心」 第10話 「姫君の依頼」 第11話 「ルイズの結婚」 第12話 「ゼロの秘宝」 最終話 「虚無のルイズ」 第01話 「ゼロのルイズ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449457 24 00 9803 3341 第02話 「平民の使い魔」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449611 24 00 8730 2761 第03話 「微熱の誘惑」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449724 23 40 8010 3513 第04話 「メイドの危機」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449810 23 40 7392 2258 第05話 「トリステインの姫君」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm449932 23 40 7843 2169 第06話 「盗賊の正体」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm450661 23 40 9797 3546 第07話 「ルイズのアルバイト」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm450733 24 00 10169 4114 第08話 「タバサの秘密」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm451081 24 00 8981 3927 第09話 「ルイズの変心」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm451157 24 00 12198 3877 第10話 「姫君の依頼」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm453372 23 40 8146 3209 第11話 「ルイズの結婚」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm453540 23 40 8371 5069 第12話 「ゼロの秘宝」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm453676 23 40 8953 3071 最終話 「虚無のルイズ」 動画番号 再生時間 再生数 コメント数 sm281407 23 41 22841 9933
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空に輝く二つの月が一本の木を照らし出している 木には一本の剣がロープで吊り下げられていた 「おーい、降ろせー」 剣が喋っている、彼(?)は魔法によって知性を得た剣‐インテリジェンスソードで銘をデルフリンガーという 何故学院の裏庭で木に吊り下げられているかというと、ルイズが鉄をも切り裂くという剣の試し切りがしたいと言い始めた為だ 昼間の武器屋での騒動の後、ルイズは店主に「貴族の使い魔を殺すなんて…」だの「事が公になれば縛り首ね…」だの 様々な文句で脅し付け、店主の持ってきた数々の剣をロハでせしめていた (ルイズが出て行く時、店主は涙目で今にも倒れそうだった、今頃枝振りのいい木でも探しているかもしれない) 「って訳だから、はい、ちょっとぶった切ってみなさい」 ルイズはデルフリンガーを指しながらディアボロに剣を渡す 「うるせー、なにがちょっとぶった切ってみなさいだ、ぶった切られた様な胸しやがって」 デルフリンガーの言葉に額に血管を浮かせながら、周りに置いていた剣を木の方に向かって投げつける 「あっごめんなさい、いや、ちょっと、やめて」 「呪うなら、その口の悪さを呪うがいいわ」 親指を下に向けて拳を振り下ろしディアボロを促す これが本当に鉄をも切り裂くというのならデルフリンガーの運命は風前の灯だが、 適当に振るわれた剣は甲高い音と共に弾かれた 「へへーん、このデルフリンガー様はな、そんななまくらに切られる様なやわな体はしてねえってんだ」 振り子の様に戻ってくるデルフリンガーをディアボロは手で止める これで急に足が動かなくなってとか何かに気をとられている内に後ろから突き刺さると言う事は無い 不意に月が翳った ディアボロが振り返ると全高30メートルはあろうかという巨大なゴーレムがこちらに迫って来ている あれが月の光を遮ったのだ 「おい、危ねえぞ」 デルフリンガーが警告を発する 確かにこのままでは踏み潰されかねない ルイズはとうに離れて此方に向かって剣を回収しろと叫んでいる 急いでこの場を離れようとした時、いつの間にか足元に転がっていた妙な形の石に足を取られ転んでしまった 倒れた後に見えたのは巨大な足の裏だった ■今回のボスの死因 巨大なゴーレムに踏み潰されて圧死 ■おまけのデルフリンガー ボスと一緒に踏まれた時にへし折れて死亡?
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フーケの騒動があってから一週間が経ちました いろんな人たちから一目置かれるようになったルイズとドッピオ ルイズはあいかわらず魔法の腕が上がっていないのでフーケの件は使い魔がすべて行ったと周りは思っているようです その所為か決闘を申し込む貴族は殆どいなくなり、ドッピオにとっては平和な日々が続いていました そんな中 「ドッピオ、アンタ芸とかある?」 そんなことを主人から聞かれました 「芸・・・ですか?なんでまた」 いきなりそんなことを聞いてきたルイズに質問で返します 「質問を質問で返さない!・・・まあ、いきなりなのは認めるけど 今度使い魔の品評会があるのよ」 「品評会?・・・そういえば」 最近学院の中で使い魔に芸を教え込む人たちを見たことがありました 「・・・で、何かある?」 「・・・・・・」 この人たちにはスタンドは見えない。ならスタンドを使った芸でもいいかと考え 「・・・うーん」 いざ芸をしろと言われても思い浮かびません 「・・・え?もしかして特に無い?」 「・・・いえ、特に無いってわけじゃないですけど」 スタンド自体の能力は未来予知・・・これを利用した芸といって思いついたのは 「・・・手品なんてどうでしょう?」 「手品?・・・なにが出来るの?」 「そうですね・・・硬貨とかありますか?」 「あるけど・・・」 そういって一枚金貨を取り出します 「表か裏か。右手か左手か。絶対にあてることが出来ます」 「・・・それじゃこれはどっち?」 差し出した両手。ドッピオはエピタフを発動させます 「・・・右手、裏」 「・・・当たってる。でも」 二人が考えることは 「地味ね」 「そうですね」 ドッピオではどうも未来予知を生かしきる芸と言うものが思いつきません 「・・・まあ品評会は明後日だし手品だって変な力使ってやってるんでしょう?」 「そうなんですけど・・・」 「時間には猶予があるしもっとパッとした物、思いついてよ」 言うだけ言って主人は眠ってしまいました 翌日、もはや日課と化した使い魔の仕事をこなしてドッピオは自由時間を謳歌していました 「・・・品評会か」 自分を晒されるようであまりいい気分ではありません それでもやるなら驚かせるようなものをしてやろうと思い芸を考えますが (・・・学院精鋭百人連続で倒すなんてどうだろう) 変なものばかり思いつきます 「・・・やっぱりエピタフを使ったもので・・・」 ぶつぶつ言いながら廊下を歩いていると 「ドッピオー♪」 そう言って誰かが後ろから抱きついてきました。いえ、誰かなんて分かっています 考え事をしながら歩いていたドッピオはその突然のことに対応できず前のめりで転んでしまいました 「っ」 「あっと・・ごめんなさい」 抱きついてきた人はドッピオに謝ります。もちろんその人はキュルケでした 「・・・キュルケさん。いきなり抱きつくのはちょっと」 「そうね。今度からは前からにするわ。ところで」 「・・・品評会ですか?」 「ピンポーン♪ドッピオは何をするのかな?」 はっきり言ってまったく思いつきませんでした 「・・それがまだ」 「えー?ドッピオのことだからすること決まっていたと思ったのに」 残念ながらまったく決まっていません 「・・・手品」 そんな中キュルケの横で黙っていたタバサが口を開きました 「手品?ああ、そういえばルイズが言ってたわね」 現状でなにも芸が無い以上手品程度でしかドッピオには出来ません 「で?どんな手品が出来るの?」 「えっと相手がなにを持っているかとかそういう類のものなら」 事実未来を見えるドッピオにはそれが尤も簡単かつすごいと思わせるものです 「それじゃカードを使った手品をしたらいいんじゃない? カードくらいならルイズだってすぐ用意できるでしょ」 「・・それだ!」 ドッピオはいきなり叫びました 「ありがとうございます!これなら・・・」 そう言ってドッピオは走っていきました。おそらく行き先はルイズの部屋でしょう 「・・・楽しみ」 タバサが小さい声で言いました 「え?タバサ?」 「・・・なんでもない」 「ルイズさん!」 部屋に入りこんで来た使い魔がいきなり自分のことを呼びました 「なに?芸でも決まったの?」 「はい。ところでカードって用意できますか?」 「出来るけど・・・カードで手品でもするの?」 「はい」 言い切りました。ここでキュルケからの提案とかは言いません 言ったら絶対「するな」といわれますから 「カードか。やっぱり手品といえばカードかしらね」 「どうでしょう?用意できます?」 「大丈夫よ、そのくらい。で、すごいのが出来るの?」 「・・・カードが来たら見せてあげます」 (・・そんなに自信があるのなら問題ないかしら) そう思ったルイズは 「分かったわ。カード用意するからすごい手品してよね」 「もちろんです!」 13へ
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(『使い魔のルーン』だとォ~~~? 何言ってんだコイツァ~~~ッ! っつーか痛みで声がでねぇぇえ!) 億泰は次第に転がるのをやめ、痙攣しながら左手を押さえている。 口から漏れ出るのも奇妙な呻き声だけだ。 と、そこにコルベールと呼ばれたハゲが近寄ってきて、 有無を言わさずに億泰の手を取ってしげしげと見る。 「ふむ……珍しいルーンだな。 まあ、何にせよミス・ヴァリエール。 『コントラクト・サーヴァント』はきちんと一度でできたね」 先程までのテンションからうって変わって嬉しさを顔に湛え、 やさしい声で言う。 「ただのアホの平民だからできたんでしょ」 「下等なゴーレム相手でさえできそうにないゼロがぁああ!」 「こらこら、友人を侮辱するんじゃない。 さあ、みんな教室に戻ろう」 パンパンと手を叩きコルベールが皆を促すと、周囲の生徒達が宙に浮かぶ。 それを見てコルベールも宙に浮かぶとお城へと向けて飛んでいった。 「ま、とにかくがんばれよゼロ。 まずは『フライ』も『レビテーション』も使えないで教室までな!」 「その平民、貴方にはお似合いね。間の抜けた顔とか」 「素晴らしい使い魔じゃないかゼロ。 このネズミのクソよりもゲスな平民こそがなぁぁあああ!」 口々にいやみを言って去っていく生徒達を睨み、 倒れしている億泰へとルイズは振り返る。 何か怒ったような顔で怒鳴ってくるが、それよりも億泰は自分の疑問の方が大事だった。 「あんた一体なんd」 「オメー誰だ!?っつーかここどこなんだよォ~~? なんであいつ等飛んでんだァア~~~!?」 「~~~!ったく、どこの田舎から来たか知らないけど。 いいわ、説明してあげる。 ここはかの高名なトリステイン、トリステイン魔法学院! そして私達はメイジ!分かったの?平民!」 今日は私のセリフは潰されるためにあるのかしら、と思いつつ、 ルイズはイライラを億泰をバカにする気持ちへ変換して嫌味ったらしく言った。 「……? トリステイン~~~?魔法ォ~~~~? っつーかどー考えても日本じゃメイジじゃなくて平成だろーがよー!」 一方でそれを聞いた億泰は嫌味に気づかない程に心底ビビっていた。 魔法と大マジに言い、普通に宙に浮いてすっ飛んで行く連中が居たら無理もないが。 「日本?なにそれ、そんな国見たことも聞いた事もないわよ。 そもそも平成って何それ?」 更にその言葉に億泰は耳を疑った。 いくらなんでも、自分と同程度のバカでさえ世界の日本を知らないという事は普通ない。 (っつー事はそもそも地球じゃねえな。 ああ、そーいう事ネ) 「ってフザケてんじゃねーぞコラ! 日本を知らないだと!ドッキリもたいがいにしやがれ! キスされたのは嬉しかったけどよォー!」 億泰に怒鳴られた途端ルイズの顔が真っ赤になった。 怒りと恥ずかしさではどーみても怒りの強い顔に。 「だから日本なんて『存在しない』わよ、そんな国ぃ! キ、キキキキスは契約の儀式なんだから仕方ないでしょ!」 「契約ゥウ?って事はオレは騙されたのかチクショー! モテ期到来だとばかり思ってたのによぉ~~!」 「何言ってるのよ! アンタみたいなのなんかにそんなの来る訳ないじゃない! 儀式は儀式なんだから仕方なかったの! とにかくアンタのご主人様は今日から私!理解しなさい!」 「わかるかボケェ!」 そう言いながら、ふと億泰の視界に変な物が入り、空を見上げてみた。 二つの月が輝いていた。 億泰は喜んで考えるのをやめた。