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ルイズが召喚した物は草原に転がっていた。 しかし彼女の召喚は失敗に終わった。 なぜか? それは包装された箱だったからだ。 それじゃ決して生き物じゃあない……。 開けてみると中には、額縁のついた絵のような物が入っていた。 だが「絵」ではない。 ガラスのうすいケースに入っている、立体の何か解らない物体だった。 それに「額縁」をはめたのだ。 何だ? これは? いかに神聖な儀式とはいえ、これでは契約などできようはずもないと、 教師のコルベールは特別にやり直しを許可した。 そしてルイズが再び召喚すると、同じ「包み」が次々と召喚された。 その美術品の数は36にもなった。 そしてルイズ達は全部開封してみてやっと気がついた。 これは美術品ではない! 額縁をはずしひとつひおつの「それ」を平行に置いて、 順番に並べてみると……………………。 /´〉,、 | ̄|rヘ l、 ̄ ̄了〈_ノ _/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /) 二コ ,| r三 _」 r--、 (/ /二~|/_/∠/ /__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉 ´ (__,,,-ー ~~ ̄ ャー-、フ /´く// `ー-、__,| 『ホルマリン漬け』にされた……「輪切り」の男だった! ――イタリア某所での会話。 「ジェラートの変死体が見つかってもうずいぶん経つが、見つからねーなぁ、ソルベの奴」 「血液さえあればメローネが追跡できるんだが……ソルベはいったい『どこ』に『消えた』んだ?」 ホルマリン漬けの使い魔 完
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「ルイズ!何やってるのよ!!早く逃げなさい!!」 シルフィードの上からキュルケが叫ぶ。 ルイズの前では、30メイルに達するゴーレムが今まさに拳を振り下ろさんとしていた。 「いやよ!」 ルイズが叫び返した。 「魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃない、敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ!」 それに反応するように、ゴーレムが腕を振り下ろす途中で動きを止めた。 その足元に、いつの間にかフードを被った人物――土くれのフーケ――が立っていた。 「好奇心から尋ねたいんだが」 フーケが口を開く。 「他人に背中を見られると…どうなるんだい?」 「さあ…?」 何故か、醒めた顔になったルイズがその問いに答える。 「見せた事、ありませんから」 フーケの好奇心がツンツン刺激された。 み…見てみたい……。 ゼロのルイズ。 魔法成功率がゼロのルイズ。 サモン・サーバントも失敗したルイズ。 召喚に失敗してからのルイズの落胆は酷かった。 それまで、魔法が失敗しても、同級生たちから罵倒されても、胸が小さくても、 常に皆を見返そうと努力し、何事も先陣を切って歩いていたルイズが、召喚失敗を境にコソコソと皆の後ろを歩くようになった。 教室に入るのは一番最後であり、教室では最後列に座り、時には壁際に立ち、教室を出る時も一番最後。 以前なら、学院の通路で誰かと鉢合わせした時、例え相手が上級生だとしても、 『どかしてみなさい…あたしがどくのは、道にウンコがおちている時だけよ』と決して譲らなかったルイズが、 今では相手が使用人でも、率先して壁際に退く様になっていた。 そんなルイズがフーケ討伐に志願した時は、その場に居た全員が驚くと同時に安堵した。 「ああ、この方がミス・ヴァリエールらしい」と。 残念ながら、土くれのフーケ討伐は失敗だった。 破壊の杖は戻ったが、討伐に志願したミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ及び道案内役のミス・ロングビルは帰ってこなかった。 真新しいわだちを辿って、フーケの隠れ家らしき小屋に行き当たった学園の教師達は、ゴーレムが崩れた後とおぼしき土くれと、 三人分の学院の制服、そしてミス・ロングビルの物と見られる衣服を発見した。 状況から見て、討伐に志願した生徒達は、フーケに返り討ちにされたと判断された。 同時にフーケ自身も、破壊の杖をその場に置いて逃げ出すほどの重傷を負ったのだろうと。 死体は何らかの理由によってフーケが別のものに練成したと推測された。 現場の衣服の側に落ちていた、見慣れぬ『小動物らしきミイラ』に気に留める教師は誰も居なかったのだ。 アルビオンの軍艦『イーグル号』に乗っていたウェールズ皇太子が「不審な風竜が居る」と、部下に声を掛けたのは、フーケ討伐『失敗』から二日後の事だった。 その風竜はイーグル号の下方300メイルあまりの所を、狂ったようなスピードを出しながら飛んでいた。 呼ばれた部下が欄干から身を乗り出し下を覗くと、風竜が血を噴出しながら落ちて行く所だった。 「多分、戦闘で傷ついた風竜が迷い出て来たのでしょう」 部下がそう伝えた時点で、ウェールズの様子はおかしかったという。 欄干に背を当てて座り込み、ニューカッスル城に着くまで一歩も動かなかったのだ。 秘密港についてからも、部下たちを先に下船させ、自分が最後に降りると言って聞かなかった。 その後は、自室に篭り、食事も自室で食べるようになり、誰とも会わなくなった。 心配した父王がやって来た時は、流石に顔を出したが、文字通りドアから顔を出しただけという始末だった。 それ以来、ジェームズ一世とウェールズ皇太子の仲は非常に悪くなった。 同時に、皇太子一人しか居ないはずの部屋の中から、ぶつぶつ呟く声が聞こえるようになり、兵士達の士気は非常に落ちてしまった。 「王子は戦争が怖くなり、おかしくなったのだ」と。 そのため、レコン・キスタの進行は大方の予想より早く進み、あっさりとニューカッスル城は攻め落とされた。 ウェールズ皇太子の部屋を見つけた兵士は、ウェールズの気が狂ったという情報を持っていたが、用心して仲間が集まるのを待って乗り込むことにした。 仲間が集まったところで、先頭の一人がエア・ハンマーでドアを吹き飛ばし、部屋に踏み込んだ。 そこには、杖も持たず、ガリガリにやせ細り、狂気的な眼を兵士たちに向けているウェールズが一人、ポツンと立っていた。 城全体が血生臭かったが、踏み込んだ兵士たちの鼻を別の異臭が突いた。 その場に居合わせ、幸運にもアルビオンを脱出する事の出来た兵士の話によると、ウェールズの最後の言葉は次の様だったという。 「ぼくの背中……見たいかい?フフフ…いいよ………フッ、見せて…あげるよ。ウフハ……ウヘ。フフフ………ヘ。ヘヘヘ」 ウェールズはまるでダンスのステップの様に、その場でクルリと背を向けた。 その背中が、まるで本をめくる様に引き裂かれ、血が噴出した。 「何が起きたんだ?」と最前列の一人が思ったとき、そいつの背中は既に裂き開かれていた。 そして、『背中から血が噴出す』という現象自体が、まるでドミノ倒しの様に兵士たちに伝わっていった。 その場に居た兵士たちは、全員ウェールズの方向を向いていた。 即ち、ほぼ全員が前に立っている味方の背中を視野に入れていたのだ。 噴血のドミノ倒しは城中を駆け巡り、敵味方問わず命を奪っていった。 ニューカッスル城で生き残った者は、ウェールズの部屋に踏み込んだ時『最前列に位置し』尚且つ『最初に背中を見なかった者』とだけとなった。 ニューカッスル城付近に野営していた貴族派の軍は、蜂の巣を突付いたような騒ぎとなった。 見えない何者かが、次々に味方の背中を引き裂いて行く。 必死に剣を、槍を、杖を振っても、見えない何者かを防ぐことが出来ない。 あっと言う間にあたりは血の海になった。 さらに、死んだはずの仲間の死体が何処にも見当たらない(実際は自分たちの足元に転がっていたのだが、誰も小さなミイラなどに構っていられなかった)。 「仲間を殺した『何か』は人を喰う」 しかも、大量に。非常に大量に。 それは何者にも勝る恐怖だった。 最早、自分達が勝利した等と思っている者は誰も居なかった。 最後の最後に、王党派が魔物を放ったのだ、と噂が流れた。 その後、30000人ほどの兵士が犠牲になった所で、貴族派は三つのルールに気がついた。 即ち、 1:魔物は無差別ではなく個人に取り憑く 2:取り憑かれた者は誰かに背中を見られた者は死ぬ。 3:見てしまった者の背中に魔物が移る。 だが、ルールに気づいたとて時既に遅かった。 魔物による虐殺を目の当りにた兵の殆どは、心を病んでしまった。 遠くで誰かが倒れたと思った瞬間、自分の傍らにいた者が血を噴出し倒れる。 近くで物音がしても、そちらを向いては行けない。 魔物が居る地域から無事に抜け出すためには、目を開いてはいけない。 恐怖のあまり自分の目を潰す兵士も少なくなかった。 魔物を心底恐れ、軍を脱走する者が続出して、レコン・キスタは軍としての機能を完全に失った。 さらに、貴族による『魔物狩り』が行われるようになった。 少しでも『背中を隠すように歩いた者』や、『家や自室から出て来なくなった者』は問答無用で殺されるのだ。 最初の内は、『魔物狩り』に強い反発を感じていた平民達も、魔物によってサウスゴータが死の町となったと知ってからは、逆に率先して『狩り』を行うようになった。 都市や町や村はその機能を失っていき、魔物と『魔物狩り』によって数ヶ月のうちにアルビオンの人口が半減してしまった。 当然の如く、アルビオン大陸で『謎の疫病』が猛威を振るっているという情報が周辺各国にも流れ、アルビオンへの入出国は全面禁止となった。 早い時期にアルビオンを脱出できた難民は幸運だった。 あるいは、早々に脱出した者達が、後から来る者達の退路を塞いでしまったのか。 アルビオンの魔物の脅威を難民聞いた各国の首脳達は、入出国禁止だけでは、脅威を防ぎきれないと判断し、 アルビオンからの飛来物は、例え脱出船であろうと、乗組員や乗客が何人乗って居ようと、全て撃墜し、焼却するよう命じたのだ。 こうして、神聖アルビオン共和国は建国する事無く滅びてしまった。 その後、アルビオンでは殆どの住民が原始的で排他的な生活を送っているという。 アルビオンが『浮かぶ孤島』と成ってから十余年、世界は平和だった。 皮肉にも、死の大陸となったアルビオンが空飛ぶ脅威となり、各国の結束を強めたのだ。 ラ・ヴァリエール家の中庭に、生前ルイズが『秘密の場所』と呼んでいた池がある。 その池の中心に設けられた小島には一つの墓碑が立っていた。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 誇り高き ヴァリエール家の三女 ここに眠る そこにはそう記されていた。 次女のカトレアが病死してから、訪れる者が殆ど途絶えた墓であったが、 年に数回、元グリフォン隊の隊長が、花を手向けに訪れるという。 ゼロのルイズ。 生涯で成功した魔法は、召喚だけだったルイズ。 一つの大陸を壊滅させた使い魔を呼び出したルイズ。 その事実を知る者はたった一人、ルイズに呼び出された使い魔だけであった。 「…ねっ!」 完
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/455.html
食事はきっちり全員分作られてある。ギアッチョが貴族の分を食べたため―― ルイズの分の食事はなくなってしまった。するとどうなるか?ルイズは使い魔の責任を取って、本来ギアッチョが食べるはずだった実に貧相な朝食を食べる 羽目になってしまったのだ。生まれて初めてのことである。 「それもこれも・・・全部あのクサレ眼鏡のせいよッ!!」 食堂に来たとき以上の怒りを撒き散らしながら、ルイズは教室に向かった。 さりげなく罵倒のランクも上がっている。 「ていうかあいつちゃんと掃除してるんでしょうね・・・もし教室にいなかったら飯抜きだわ!」 ブツブツ文句を垂れながら教室の戸を開く。 はたしてそこにギアッチョはいた。ぼんやりと宙を見つめて座っている。 「ちょっ・・・どこに座ってんのよあんた!降りなさい!」 「学生ならよォー 誰でも座るだろォ?怒ることじゃあねーだろ」 「座らないわよ!ここは平民の学校なんかとは違うんだからね!」 「やれやれ」ギアッチョはそう呟くと教卓から飛び降りた。 「文句ばっかじゃあ人はついてこねーぜお嬢様よォ~」 「ここまで酷い仕打ちにあって文句を言わない奴がどこにいんのよッ!!」 正論である。しかしギアッチョは動じない。 「リゾットの野郎は文句一つ言わなかったぜ 『お前はそういう奴だからな・・・』 とか何とか言ってよォオォ」 「あんたそれどう考えても諦められてるじゃない!」 等と無駄な問答がしばし続き― 「ハッ!肝心なことを忘れてたわ!あんたちゃんと掃除したんでしょうね!」 ようやく本題に気付いたルイズが辺りを見回すと・・・ 意外ッ!それは完璧ッ!! 「うッ・・・美しい程に磨かれているわッ!!あんた一体どんな魔法を使ったの!?」 「何も・・・別に元々掃除は嫌いじゃあねー」 ルイズはそこで理解する。こいつはキレさえしなければマトモな奴なのだと。 「・・・ん?」 キレさえしなければ。 「・・・ギアッチョあんた 念のために訊くけど・・・ 私の部屋も綺麗に片付いたんでしょうね?」 「・・・・・・」 ―ルイズは頭痛と共に確信する。 「・・・壊したのね」 「・・・まぁ そういう説もあるな・・・」 「・・・あーそう・・・」 ルイズはもはや怒る気力もなくなっていた。隣でギアッチョが「椅子の形が気に入らねェんだよ椅子の形がよォォォーーー」等と呟いているので恐らく壊れたのはそれだろう。 全くこいつを召喚してしまってからというもの本気でロクな事がない。「私は今世界で一番不幸な貴族だわ・・・」とルイズは一人ごちた。 始業の鐘が鳴り、教師が入ってくる。シュヴルーズと名乗ったその教師は、開口一番 「おやおや、面白い使い魔を召喚したものですね ミス・ヴァリエール」 とのたまった。本人に悪気はないのだろうが、ルイズにその言葉はかなり 堪えた。「こいつと一日一緒に過ごしてからもう一度言ってみなさいよ!」と言いたかったが、勿論教師にそんなことが言えるわけもない。 しかしそんなルイズの胸中も忖度せず、一人の生徒がルイズをからかい始める。 「ゼロのルイズ!召喚出来ないからって、その辺歩いてた平民を連れて 来るなよ!」 周りでドッと笑いが起きる。 「うるさいかぜっぴきのマリコルヌ!私はきちんと召喚したもの!こいつが 来ちゃっただけよ!」 「嘘つくな!『サモン・サーヴァント』が出来なかったんだろう?それと俺は風邪なんかひいてない!」 二人はギャーギャーと言い争いを始めた。罵り合いは次第にエスカレートし、やる気かと言わんばかりに二人がガタンと席を立ったところでシュヴルーズは 杖を振った。彼女の魔法によって糸が切れたように着席した二人を交互に見て、ミセス・シュヴルーズは仲裁にかかる。 「お友達をゼロだのかぜっぴきだの呼んではいけません。わかりましたか?」 マリコルヌはニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。 「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」 マリコルヌは自分で言って大笑いする。が、そのバカ笑いは突然ピタリと止んだ。 「はガッ!?ぼ、僕の口にィィ こ 氷がァァァ!!」 マリコルヌの口は、いつの間にか氷でガッチリと覆われていた。 ルイズはハッとして床に座らせていた己の使い魔――ギアッチョを見る。 「氷を床から伝わせて奴の口を封じた・・・ ゼロだか何だかしらねーが 恩人がバカにされてんのを見んのはいい気分じゃあねーからよォォ~~」 「・・・ギアッチョ・・・あんた・・・」 この学院に来て以来、ルイズは誰かが自分をかばってくれたことなど一度もなかった。 昨日自分を助けてくれたキュルケだって、普段は数百年来の怨敵の間柄である。 ―むしろ彼女がどうして体を張ってまで自分を助けようとしてくれたのか、ルイズにはまずそれが分からなかったが―つまりギアッチョは、ルイズにとってここで初めての味方だったのだ。 ルイズは一瞬だが、今までギアッチョに受けた仕打ちなどすっかり忘れて、この男を召喚出来たことを始祖ブリミルに感謝した。 ミセス・シュヴルーズは授業を開始した。マリコルヌの口はしばらくふさがれていたが、息が苦しいのかウーウー唸るのが煩わしくなってきたのでそのうちギアッチョに解除された。 そのギアッチョは真面目に授業を聞いている。やっぱり 平常でさえあればマトモな男なのだろう。意外と勤勉なのかもしれない、とルイズは思った。 「そういえば何度か妙な雑学を披露してたわね・・・」 まぁ問題は披露の度にブチキレる事なのだが。そんなことを考えていると、「ミス・ヴァリエール!」 突然先生に名前を呼ばれた。 「は、はいっ!」 「使い魔が気になるのは分かりますが、そちらばかり見ていて授業を疎かにしてはいけませんよ」 「ち、ちがっ・・・」 「口ごたえをしない!ではあなたにこれをやってもらいましょう ここにある石を、望む金属に変えてごらんなさい」 「え?わ、私がですか?」 シュヴルーズがルイズを指名した途端、生徒達から一斉にブーイングが起こる。 「まってくださいミセス・シュヴルーズ!」「ルイズに魔法を使わせるなんて自殺行為 です!!」「・・・イカレているのか?この状況で・・・」等々、まるでルイズが魔法を使うと死人が出るかのような狼狽ぶりである。 ルイズは正直やりたくなかった。 彼女の魔法が成功したことなどサモン・サーヴァントを除けば殆ど皆無なのだ。 しかし――彼女はちらりとギアッチョを見る。 ――使い魔の前で主が逃げ腰になるわけにはいかないわ! ルイズは「覚悟」を決めた。クラスメイト達にとってはこの上なく迷惑な「覚悟」だったが。 「やります!」 と言うがはやいか、ルイズは教卓に向かって歩き出していた。石の前に立ち、 杖をかざし、呪文を唱え始める。ギアッチョは興味深げに見守っていたが、 それにしても周囲の声が尋常ではない。「その魔法を出させるなァーーー!!」 だの「う…うろたえるんじゃあないッ! ドイツ軍人はうろたえないッ!」だの、 あまりにも怯えた声が聞えてくるものだから流石のギアッチョも何だか 分からないなりに用心の構えをとることにした。 ―私は出来る、やれば出来る子よ!そうよ、サモン・サーヴァントだって 成功したんだから! そしてルイズは呪文を発動させる! カッ!! 一瞬の光の後、 ドッグォオオオォオン!!! 運命は覆らなかった。石を中心に広がった爆風は石や机の破片を撒き散らし、逃げ遅れた生徒は殆ど例外なくその餌食になった。間近にいた ミセス・シュヴルーズは、ちょっとお見せできない顔で地面に倒れている。 とっとと机に潜り込んで難を逃れていたキュルケは、はたと思い当たってギアッチョの姿を探した。 ギアッチョは―座っていた場所を1mmも動いてはいなかった。少し驚いたような顔はしていたが・・・彼の体には一箇所たりとも傷はなかった。 そして更に奇妙なことに、ギアッチョの体から大体半径50cm程度の範囲に飛来したと思われる破片は、全て宙に浮いて止まっていた。 ――バカな・・・この一瞬で爆風と破片全てを「止めて」しまったというの!? 一人眼を見張るキュルケをよそに、ギアッチョは呼吸と共にスタンドを解除し、宙に浮いていた破片はそれと同時に一斉に地面に落下した。 ――なんて「パワー」なの・・・ この男 ギアッチョ・・・やはり危険だわ! キュルケは出来うる限りの範囲でこの男を警戒することを心に決めた。 「あーもうッ!全然終わらないじゃない!!」 ルイズは箒を片手に喚いていた。 「そりゃあそーだろォォォ 教室の半分をフッ飛ばしゃあよォォ」 2人は今掃除中である。ルイズは始終ぶつぶつと文句を言っているが、教師の不注意ということで十数人を医務室送りにした事を問われなかったのだから、むしろここは喜ぶべきなのである。 「ったく・・・どうしてこの私がこんなことを・・・」 「てめーがブッ壊したからだろ」 この学院では、選択も掃除も全てメイドが行っている。勿論ルイズの実家でもそうだったので、彼女に掃除の経験など全くなかった。 「あんたのおかげであんな惨めな場面を衆目に曝されるハメになるし、 その上あんたの代わりに使い魔のご飯は食べるハメになるし、おまけに魔法も失敗してこんな平民の仕事をやらされるハメになるし・・・全部あんたのせいよこのバカ使い魔!!」 「後半2つは関係ねーだろ」 「うるさい!ていうかあんたも手伝いなさいよッ!さっきからそこに座ったまんまで何にもしないじゃない!」 ルイズはギロリと半分壊れた教卓の上のギアッチョを睨む。 「ここを爆破したのは俺じゃあねーぜ」 「主の不始末は使い魔の不始末よッ!」 さっきの「覚悟」のことなど、少女はすっかり忘れ去っていた。 自分で言って恥ずかしくねーのかこいつは、と思ったギアッチョだったが、これ以上ギャーギャー騒がれると氷漬けにして窓からブン投げたくなるので仕方なく掃除を手伝うことにした。 「あんたはここからそっちまでお願い それと一つ言っておくけど、絶対にキレて物を壊したりしないでよ!」 「ここからそっちってほぼ4分の3じゃねーか、ええ?おい まあそれでもお前がそこを掃除し終えるよりは早く片付くだろーがよォォ」 こうして互いが互いをいつまでも罵り合いながら、教室の掃除は進んでいった。 午前の授業の終わりを告げる鐘が鳴る。それとほぼ同時に、2人の掃除は終了した。 「はぁー・・・やっと終わったわ・・・ 掃除なんてもう二度とやらないんだからね!」 誰に向かって宣言しているのだろうか。 「やりたくねーならちゃんと魔法を勉強するこったな」 ビキッ! ギアッチョの何気ない一言は―ルイズの逆鱗に触れてしまった。 「・・・てるわよ・・・」 「ああ?」 「してるわよッ!!」 ルイズは幼い頃から魔法も使えないメイジとしてバカにされてきた。自分を見下している奴らを見返すために、彼女は常の他人の何倍も努力をしている のだった。それを、知らないとはいえ自分の使い魔にバカにされたのだ。 ルイズが怒るのももっともである。 「ええそうよ、私は一度も実技を成功させたことのない『ゼロ』のルイズよ!! だから何!?勉強なんて腐るほどしてきたわよ!!練習だって毎日毎日死ぬほどやってきたわ!!腕から血が出るまでし続けたこともあったわよ!! サモン・サーヴァントが成功した時私がどれほど喜んだか分かる!? それをッ・・・!!どうして何も知らないあんたに言われなくちゃならないのよッ!!」 激昂して喋るルイズの眼には涙が浮かんでいた。彼女はそれを乱暴にぬぐいとると、バン!!と激しく扉を開けて駆け出していった。 「・・・・・・チッ」 誰に向けてのものだったのか、ギアッチョは舌打ちをしながら走り去って行く彼女の後姿を眺めていた。 ギアッチョは食堂に来ていた。怒っていても根が真面目なルイズの事だ、今朝のような事態にさせないためにも食事には来るだろうと考えたのだ。 食堂を見回してみると、やはりルイズはそこにいた。まだ怒りが冷めていない のがここからでも分かる。キュルケなどがいつになく真剣に怒るルイズを いぶかしんで話しかけていたが、ルイズは「うるさい!」の一点張りで取り合おうとしない。 「チッ!」 先ほどよりも大きく舌打ちして、ギアッチョはルイズの元へ向かった。 「まだ怒ってんのかよ ルイズよォォ」 「・・・うるさい」 ルイズはギアッチョとまともに顔をあわせようともしない。 ―・・・やれやれ ギアッチョは心の中で嘆息すると、ルイズに向き直った。 「・・・さっきは悪かったぜ お前が勉強してるかも知らずによォォあんなこと言っちまうのは・・・『礼節』に欠ける行為だった 反省してるぜルイズ」 ルイズは耳を疑った。こいつがこんなに早く謝ってくるなんて夢にも思わなかったのだ。こいつは自分が思っているよりよほど礼儀の 分かる男だったらしい。ルイズは少しばつの悪そうな顔をしながらそこでようやくギアッチョに顔をあわせた。 「・・・わ、分かればいいのよ ・・・・・・どうして魔法が成功しないのか分からないけど 私はいつも死に物狂いで努力してるんだから―もう二度とさっきみたいなこと言わないで」 「・・・ああ 分かったぜルイズ」 それを聞いてルイズは少し表情を崩し、そしてそれを合図にしたかのように祈りの唱和が始まった。 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ 今朝もささやかな糧を我らに与えたもうたことを感謝いたします」 貴族達の祈りが終わると同時に、あちこちでフォークとナイフの音が鳴り始めた。 「ところでよォォ オレの椅子が見当たらねーんだが」 「使い魔は床よ」 やれやれ・・・ギアッチョはもう一つ嘆息すると、もう一つルイズに尋ねた。 「で・・・オレの飯はどれだ?」 ルイズはちょいちょいと下を指差す。そこには見るからに硬そうなパンが小さく二切れ、そして意識して見なければ見逃してしまいそうな ほど小さな肉のカケラが2つ3つ浮かんだスープが置いてあった。 「・・・なるほどな・・・ こいつが使い魔用のメニューってわけか」 「そういうことよ 使い魔が食堂の中で食事をすること自体が 特例なんだから 始祖と女王陛下に感謝を捧げてありがたくいただきなさい」 とのご主人様の優しいお言葉に、 ブッチィィィィ―――――z______ンッ!! 今度はギアッチョの怒りが爆発した。
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「School Days」の桂 言葉(かつら ことのは) アニメ版Nice boat中より召喚 参考リンク:ウィキペディア (Wikipedia) フリー百科事典 SchoolDaysの項より 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐01 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐02 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐03 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐04 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐05 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐06 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐07 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐08 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐09 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐10 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐11 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐12 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐13 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐14 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐15 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐16 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐17 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐18 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐19 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐20 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐21 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐22 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐23 鮮血の使い魔/鮮血の使い魔‐24 外伝(注:本編とは何の関係もありません) 鮮血の使い魔‐Another Days トップページに戻るトップページ]]
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状況はどう見ても不利でした 一つに現状で逃げ切れないこと。二つの荷物(この状況ではルイズはお荷物です)を抱えたまま逃げ切ることは不可能です それに跳躍移動して逃げたとしてもそのときに耐えるのは自分の足です。そう何度も使えるものでもありません もう一つに 「・・・なんですかあれ?反則ですよ・・・」 敵のゴーレムです。やたらでかいゴーレムの肩に本体のロングビル・・・フーケがいます 跳躍を使えばすぐにいけるでしょうが迎撃されるのが落ちです (・・・ボス) そう考えたドッピオの判断は自らのボスに任せることでした 自分が出来ないのが不甲斐無いですが自分では防戦一方でフーケを倒すことは出来ないでしょう 「・・・お願いします・・ボス」 小声でつぶやき、ドッピオは自分の表層意識をディアボロに手渡しました ルイズはその小声を聞き逃しませんでした 言った途端、彼の力が一瞬抜け、すぐに持ち直しました 「・・・貴方」 ドッピオからボスと呼ばれたその人が現れたのです 「・・・・・・」 その人は終始無言で目前の敵をにらんでいました 「・・・学院内で貴族を倒した平民」 魔法を使う貴族を何らかの能力で倒した男。ヴィネガー・ドッピオ 「・・・だけどそいつより厄介な存在」 フーケは学院の騒動を聞きつけギーシュとドッピオの戦いを少々見ていました そして 「・・・雰囲気が変わった。今回も現れたようね」 何らかの能力を使って倒すドッピオ以上に厄介な存在。行動を無効化する男 遠くから観戦していたフーケはなんとなく雰囲気が変わるのが分かりました 「手加減は一切しない。最初から全力で・・・」 先に倒さないとこちらがやられる そう思って彼女は敵に対して全力を出しました フーケは土属性のエキスパート。その攻撃は全てが予想外な攻撃でした まずはゴーレム。コイツが直接攻撃してくるのは予測できましたが速さが機敏でした エピタフの未来予知が無ければ回避できないほど速い攻撃を後ろに跳ぶことでかわしますが 「キング・クリムゾン!」 未来の危険を察知し時を飛ばし回避します。飛ばし終わった後起こったのは蟻地獄でした 「くっ・・」 ディアボロは攻めるに攻められませんでした ゴーレムを壊そうとするも相手は土。攻撃が吸収されてしまうのです 肝心のフーケ本体は肩に依然いますが 「ちょっと!速くバーって倒しなさいよ!!」 この主人が邪魔で上手く攻められないのです はっきり言ってルイズはこの戦いで邪魔でした こうして一緒に戦わないと敵の攻撃がルイズに及ぶからです 戦う前、破壊の杖を取り戻し戻ったときのことを考えるとまずルイズを捕まえるつもりなのでしょう もちろんその程度でこちらが怯む理由にはなりませんがもし主人に何かすると使い魔に影響が及ぶならと考えると 「くそ・・・」 下手に放っておけません。どうするかと考えていると 「・・・ボスでいいのかしら?」 己の主にそう問いかけられました 「・・・ディアボロだ」 どうせこの主に名前を教えて問題ないと考えたディアボロはそう素っ気無く返しました 「それじゃディアボロ。はっきり言っちゃっていいから答えて。私が邪魔?」 「ああ」 気を使う必要が無いと考えたディアボロはすぐに返事を返しました こんな受け答えをしている間にもディアボロは高速で動き回り回避しています 「・・・それは主人が捕まるといけないと思っているから? それとも単に役に立っていないだけ?」 「その両方だ」 きっぱりといいました それでスイッチが入ったのか 「・・・上等じゃない」 ルイズはそう言って 「使い魔に戦いを押し付けてられないわ。私だって戦うわ!」 そうとんでもないことを言い出しました 「バカか?お前がどうやって戦うというのだ」 魔法を使えないルイズに戦う術なんて無い、と思うその考えは 「バカにしないで。気を引くことぐらい出来るわ、その隙を貴方が突いて」 「バカはお前のほうだ!いいか、無謀と愚考はどれ程強行しても叶うことは無い 己を未熟を呪うのならば成長しろ。己の過去に打ち勝ち次に自分が出来る最良のことを考えろ」 ディアボロは怒声を放ちました そこにはルイズの犠牲を前提とした作戦をやめろという彼らしくない考えがありました 「じゃあどうしろって言うの・・・私だって」 「『私だってプライドがある』か?そんなものそこらの犬にでも食わせてしまえ 生き残ればどんなことも出来る。成長して再戦し勝つこともな」 「・・・違うわ。私が言いたいのは」 一呼吸おいてから 「もう、アンタが限界だからそういってるのよ!」 「私が限界・・・?」 そう言われて自分の体を見ると 「なっ・・・」 回避し切れなかった攻撃を喰らいズタズタになった体だった 特に跳躍を混ぜた回避に耐えられなくなった足がもう黒ずんでおり痛みさえも感じなかった 「・・もうこれ以上迷惑はかけられないわ」 そう言ってルイズはディアボロの腕からするりと抜けました 「・・・今度は私が相手よ!」 そんなバカな行動をする主を止めようとして 「・・・?」 自分の足がもう動かないことに気づきました フーケはもはや限界に達した敵を見て最後の止めを刺そうとしました ですが 「・・・今度は私が相手よ!」 そんな彼の主の声にさえぎられました 「・・・正気?貴女ごときが私に敵うとでも?」 「やってみなくちゃわからないわ」 「そう・・・なら」 止めの一撃の対象を変えてフーケは 「その愚行を後悔するのね!」 土のつぶてを使い魔の主にぶつけようとして 「キング・クリムゾン!」 使い魔にさえぎられたのでした ディアボロは自分の主の危機を察知し咄嗟にスタンドを発動させました そして今、千載一遇のチャンスが来たのです (・・・跳躍!) キング・クリムゾンの力で再度跳躍します。狙いはフーケ本体です 攻撃はルイズにあたりますがそれはこの吹き飛ばした空間で無効化できます そして 「終わりだ!!!フーケ!!!」 その杖を破壊しました フーケは自分が愚行を行ったことに気づいていました ただ、使い魔を守ろうとするその主が自分とは違い、認めたくなく、否定しようとその魔法を発動させました 結果、やはり使い魔の男に邪魔をされ、その男が目の前に来ました 瞬間移動としか取れないほどの速さで接近した男は不可視の力を使い自分を倒すでしょう きっと自分は目の前の男に殺されるだろうと死の決心をしました たとえ殺されなかったとしてもこの高さから落ちればそれが決定打になります 「終わりだ!!!フーケ!!!」 終わりの一撃が来ます。そのときに思ったのは (・・・何を思い出しているんだか) 走馬灯でも、ましてや何も考えない無の境地でもなく この男ではないもう一人の男の子の笑顔だった だが、終わりの迎えはこなかった 「・・・え?」 その驚嘆は自分が出したものと気づくまでに少しかかりました 目の前の敵は殺すもせず、殴るもせず、ただ自分を無力化したのです 「・・・なぜ?」 驚嘆の後の疑問それに男は 「・・運が良かったな。ドッピオは少なからず貴様に好意を抱いていたようだ」 とまるで他人事のように答えた。と同時に ドサッ 「な?!」 ディアボロはフーケに倒れ掛かってきました。突然のことに反射的に受け止めたフーケ そのときに男は言葉を言いました。それは 「・・・もう、こんなことをやめてください。ロングビルさん・・・」 さっきの男ではなく、自分にも優しくしてくれた男の子の声だった ゴーレムが消えていく。それは術者のフーケが魔法を使えなくなったからだ。同時に上の二人も落ちていきます もはやそれは反射的な危機対応能力なのか男は女性に抱えられたような状況の中不可視の力を使って着地します 「・・・なぜ」 最後の最後まで自分に優しくしてくれた男の子には疑問しか見出せなかった 「・・・今はドッピオみたい、ね」 その声はこの男の子の主、学院でゼロのルイズと言われている学院生です 「・・・すいません。ルイズさん」 開口言った言葉は謝罪でした 「謝る必要なんてないじゃない!フーケを倒したのよ?」 そのフーケは今、気絶をしている 「それじゃ後はフーケを差し出して」 「ルイズさん・・・ちょっと待ってください」 「え?」 ここでドッピオが止めるとは思わなかったルイズは言葉に反応して足を止めました 「・・・見逃してあげれませんか?」 「あのね、なんで見逃す必要が」 「今回の目的は破壊の杖を取り戻すことですし・・馬車も無いなら連れて帰れるほどの余裕も無いですよ」 一応筋は通っているがドッピオの本心はそこには無かったのです ただ、盗みとかをやめてくれればドッピオは満足だったのですから 「・・・まあ確かにそうね」 ルイズ自身も渋々納得し今日はこれで帰ることとなりました 11へ
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「昼間まで、ねえ。馬車はあと一人乗れるみたいだし…ワムウはどこにいったのかしら…」 護衛の任務を受けたルイズは、キュルケと自分の使い魔を探す。 「あんた、自分の使い魔も呼べないの?」 「仕方ないでしょ、あんた達の使い魔とは決定的に違うんだから」 「まあ、そうよね…仕方ないわよね」 敷地内の森の中に入っていく 「ワムウッ!用事があるの!とっとと出てきなさい!」 「なんだ、騒がしいな」 上から声が聞こえる。 巨木の上からストンと降りてくる。 「ワムウ、出かける準備をしなさい」 「今度はなんだ」 「私が任務を受けたの、重要人物の護衛よ。詳細は馬車で話すからとっとと来なさい」 ルイズは身を翻す。 「断る」 「はぁ?」 「お前が受けた任務をなぜ俺が手伝わなければならん。俺をあてにして受けたならば、諦めて死んで来い。 それに、俺は護衛などやったこともないし、護衛しなければならないようなか弱き人間も護衛も嫌いだ」 「あんたは私の使い魔でしょ!これは命令よ!」 「使い魔は主人の身を守ると言っていたが、わざわざ火中に進む主人は別に止めん、俺もこうみえて忙しいのでな」 「なに屁理屈こねて…ちょっと待ちなさい!」 走り去るワムウに二、三発呪文を飛ばすものの、周りの木の幹を折るだけであった。 「どうすんのよ、ルイズ。オールド・オスマンもあと一人として彼を期待して席を空けたようだし…とにかく誰か一人連れてこないと」 「タバサが風、キュルケが火だから…ミス・ロングビルにはあまり戦わせたくないし…土か水がいると便利かもしれないわね」 「土ねえ、なんだか嫌な予感がするのう」 予感はもちろん的中した。 「やあ君たち、護衛の任務を受けたって?土属性をお探しなら、このギーシュ・ド・グラモンを…」 「えーと、水属性といえば…」 「最低ラインは欲しいわね」 二人は平然と流す。 「待ちたまえ!無視しないでくれよキュルケもルイズも!君たちを探してたんだ!」 「あんたと付き合う趣味は無いわよ」 ルイズにはとりつく島も無い。 「変な意味じゃなくて!君たちの任務に同行したいんだ!」 「あのねえ、私たちはワムウの代役を探してるのよ!決闘で完璧に優劣をつけられたドットメイジなんて論外よ論外!」 「フッ、そうは言うけどね、薔薇は女性を守るときにしか針を出さないものなのさ、それに僕をあのときの僕とは思わないで欲しいね」 「なにが変わったって言うのよ」 「成長のために図書館に入り浸り、僕に必要なものがわかったのさ!そう、それは必殺技!」 「えーと、モンモンラシーの部屋は…」 「待ちたまえええッ!せめてどんな技かくらい聞いてくれよ!」 ギーシュが哀願する。 「しょうがないわね、どんな技なの?」 「まず、ワルキューレは青銅でできている。つまり人間より重いため、相手より早く落ちる。そこで放り投げた相手を空中で首に足をかけて、 逆立ち状態になったワルキューレが地上に手をつき相手に首四の字を仕掛けると言う…名づけて『ロビンスペ…」 「キュルケ、304号室ってどこの棟だかわかる?」 「東棟よ、確か」 「ちょっと待ってくれええええッ!僕が悪かった!ギーシュ・ド・グラモン、一生のお願いだ!どうか、僕を参加させてくれ! 君たちの後をつけて校長室の声を盗み聞きまでしたんだ!名誉挽回、汚名返上のこんなチャンス逃すわけにはいかないんだ!」 二人はため息をつく。 「しつこいわね、そんなんだから振られるのよ。わかったからとっとと準備してきなさい」 キュルケが促す。 「しっかり働くのよ」 ルイズも一応認める。 「うう、ありがとう……必ずや僕のジェットストリームアタックを成功させてみるからね!」 「…やっぱり、人選間違えたかしら」 * * * 「……ということで、ギーシュ・ド・グラモン、この任務にお供させていただきます、ミス・ロングビル。 命に賭けても必ずやあなたをお守りいたしますッ!」 口に薔薇を咥えながら一礼をする。 「は、はあどうも…」 ミス・ロングビルも困惑しながら返答する。 「あんたもそんなことやってないで早く乗りなさいよ」 ルイズに促されギーシュが乗り込む。 ミス・ロングビルが手綱を持ち、出発する。 「えーと、その護衛対象の人物の所在地はミス・ロングビルが地図を頂いたようだし…その人物の特徴は… えーと…『30~40歳の男性』で、『白人』で、『世界ビックリ機械』…『おじさんX』…な、なによこれ」 「はは、オスマン師も人が悪いな。まあ地図を見る限り周りに人はいなさそうだし、すぐわかるんじゃないか?」 「偽者だとしたらどうするのよ、噂によると土くれのフーケは人を操れるとか…白人で中年男性なんてどっからでも呼べるわよ」 「まあ『世界ビックリ機械』な人はそういないだろうさ、見ればたぶんわかるんじゃないか」 「あんたは楽観的ね…」 馬車は深い森を抜け、開けた場所に出る。 「あの小屋ね!きっと!」 キュルケが声を張り上げ、前方を指す。 タバサは本を閉じ、顔を上げる。 馬車が小屋の前に止まる。 すると、一人の男が出てくる。 「貴様らは、オスマンの言っていた護衛か?」 距離を保った状態で聞いてくる。 「ええ、そうよ」 「名前を名乗れッ!護衛の名前は聞いているッ!」 「私がルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ」 「タバサ」 「ロングビルです」 「僕の名はギーシュ・ド・グラモン、二つ名は『青銅』、以後お見知りおきを」 男は手紙を睨みながら名前に耳を傾ける。 「待ていッ!最後の奴の名前は知らんぞッ!信頼できるのか?」 「私たちと同じくトリステイン魔法学院の生徒よ」 男は小さく舌打ちし、 「よし、いいだろう。どうやら本物の護衛のようだな」 「ちょっと待って、あなたが本物の護衛対象かわからないわ…『30~40歳の男性』『白人』は該当してるけれども、 『世界ビックリ機械』『おじさんX』であることを証明して欲しいわ」 男はニヤリ、と笑う。 「娘!人種は違えどわたしはお前のような慎重な者に敬意を表すぞ、『世界ビックリ機械』か、オスマンめ、悪趣味な奴め」 あまり見慣れない服の上を脱ぎ、目深に被っていた帽子を外す。 その胴体と右目は『機械』であった。 「な、なにこれ…」 「見てのとおり機械の胴体だ。少々無茶をして体を吹っ飛ばしてしまってな、腕、胴体、顔面、脚が義手義足のようなものになっている」 全員があっけにとられる。 「さ、触っても構わないですか?」 キュルケが尋ねる。 「ああ、構わん。痛くするなよ、優しくだ」 そっとキュルケが触れる。 「ほ、ほんとに金属ね……」 「どうだ、信じたか?」 「じゃあ『おじさんX』ってなんなんですか?」 「それは…俺とオスマンの間でのジョークだ、あまり気にするな」 一同は小屋の中に案内される。 暖炉と木の椅子、テーブルが置いてあり、スコップ、ロープ、油入れ、その他なにかよくわからない物がいくつか落ちている他は、 質素な木の小屋だった。 「……しかし、オスマンも心配性だな、あの老人のほうが俺としては心配だ」 「私も噂にしか聞いておりませんが、世界でも数人しかいないといわれる『ペンタゴン・メイジ』であるという話もあります。 名うての盗賊であり、魔法使いでもあるフーケですらも敵わないと言えるでしょう。あなたはどうやって自衛を?」 ミス・ロングビルが質問する。 「ふむ、いいだろう。少々もったいないがとりあえずもう一度外に出てくれ」 一同は外に出る。 男は上を脱ぎ、胴体の機械を露出する。 男は叫んだ。 「ナチスの科学力はァァァァァァァアアアッ!!世界一ィィィイイイイ!!!!」 胴体から何か小さいものが連続して発射し、森の木に突き刺さる。 その威力は数秒で森の木を何本も幹から折り、倒していた。 「これでわかったかね?気の毒だが、偽者の護衛だと判断したら君たちを蜂の巣にさせて貰った」 一同はごくりとツバを呑む。 「まあ、一応護衛をつけてもらったんだ、三人は護衛、二人は見回りでもしてもらおうか。人選はそちらで決めて構わない」 紆余曲折の結果、最初の護衛はロングビル、キュルケ、タバサ、見回りはルイズ、ギーシュとなった。 「あーもう、寒いのについてないわね」 「できればミス・ロングビルかキュルケがよかったなあ…」 「どういう意味よそれ、吹っ飛びたいの」 「べ、別に他意はないよ」 「そう、吹っ飛びたいのね」 この森の木には災難な日であった。 * * * 「ところで…そこに転がっている杖のようなものはなんなんでしょう?もしかして…」 「それか、オスマンは『破壊の杖』などと呼んでいたが…我がナチスの技術の結晶ゥゥウウウッ! 15cm炸裂弾搭載ィイイイイッ!グレネードランチャーパンツァーファウストだァアアアッ!」 全員が立ち上がる。 「な、なんでそんな重要なものが無造作に何個も転がってるのよ!」 「うむ、オスマンにはまだ言ってなかったが、探してみたら数個出てきてな、何発か試し撃ちしてもまだ残っている、困ったものだ」 「試し撃ち?これは杖ではないのですか?」 ミス・ロングビルが尋ねる。 「杖などではないィイイイイッ!貴様らは魔法を使えメイジとやららしいが、俺はそんなものなくともこれを発射できるゥウウウッ! ここをこうしてこうすると、あら不思議憎きソ連兵の戦車が木っ端微塵ッ!」 途中言っていることが少し理解できなかったが、全員これが恐ろしい威力を誇ると言うことはわかった。 「…ちょっと、驚きましたわ……頭を冷やすため少し外にいかせていただきますが、構いませんか?」 「ええ、構わないわ」 タバサもうなずく。 ミス・ロングビルは小屋を出て行き、数分後戻ってきた。 * * * 「見回りって言ってもねえ…まだ時間じゃないのかしら?」 「僕だって同じ気持ちさ、そうそう都合悪くフーケが襲ってくるなんてことはないさ」 「そうだといいんだけど……どうやら都合は悪いみたいよ…」 ルイズには見覚えのある巨大なゴーレムと、フーケとおぼしき人影が立っていた。 フーケはこちらに気づいたのか、進行方向を変える。 「な、なあ、任務は護衛だしいったんここは逃げたほうが…」 「あんた、名誉挽回のチャンスなんじゃないの?貴族とは敵に後ろを見せないものを言うのよ!」 ルイズは呪文を唱え数発放つが、一発も当たらない。 「ほら、僕のワルキューレでもあれには敵わないよ!ここはさっきの人の手助けを…」 「護衛する相手に頼ってどうするのよ!そんなに逃げたいならあんただけでも逃げなさいよ!」 「じょ、女性を置いて逃げられるか!」 そんなことを言い合っている内に、ゴーレムが近づいてくる。 「しょ、しょうがない、僕の必殺技を試すしか…」 そこに人影が現れる。 「ワムウ!あんた、来てくれたの!あれがフーケのゴーレムよ、呪文当てるからちょっと距離を稼いで!」 ルイズはゴーレムに向き直る。 しかし、ワムウはゴーレムの方向には向かわない。 ルイズとギーシュの方へ迫り、 両方に蹴りと拳を叩き込んだ。 ルイズとギーシュは地面に倒れる。 土くれのフーケがゴーレムから降り、ルイズの手首を触る。 次に、ギーシュの胸を触る。 「ルイズは脈なし…ギーシュも鼓動なし、と……別に殺すつもりはなかったのに、鍛えてない貴族なんてあっけないわね」 フーケは再びゴーレムに乗り、小屋へ向かっていった。 To Be Continued...
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早朝、ルイズ達はアルビオンに向かう準備をしています するとギーシュが提案しました 「僕の使い魔を連れて行きたいんだ」 地面から大きなモグラ、ジャイアントモールが出てきます ギーシュは「僕の可愛いヴェルダンデ!」と抱きつきます 可愛いかどうかは見る人が見れば可愛いのでしょう ですが地中をかなりの速度で掘り進めるヴェルダンデとはいえ行き先は空中に浮かぶアルビオン 即座にルイズから却下されます 却下したときヴェルダンデは少し鼻を嗅いですぐにルイズを押し倒しました 「ちょ、ちょっと! 何なのよこのモグラ!?」 ルイズは身体をモグラの鼻で突き回され、地面をのたうちスカートが乱れたりします 「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女ってのは、ある意味官能的だな」 「・・・なにをやってるんですか」 途中まで見ていたドッピオがヴェルダンデを止めにかかります ですがジャイアントモールの力は強くキングクリムゾンのパワーでないと止めれませんでした ヴェルダンデの目線はルイズの一部分に釘付けでその目先を見たギーシュがこう言いました 「なるほど指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。 よく貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ」 「なるほど『土』系統のメイジには役立つ使い魔ってことですか・・・あ!」 押して勝てないと悟ったヴェルダンデはすぐさま地中をもぐってルイズの前に現れます また押し倒そうとしたその時、一陣の風が舞い上がりヴェルダンデを吹き飛ばしました 「なっ、何をするだァ――――ッ! 許さん!」 ギーシュが杖を抜いてわめきます。怒りのあまり言語が田舎臭くなっています ドッピオは瞬時にエピタフを発動し『敵』ではないことを判断しました 羽根帽子の男は一礼をして名乗ります 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行する事を命じられた者だ 君達だけではやはり心許ないらしい。しかしお忍びの任務であるゆえ、一部隊をつける訳にもいかぬ。 そこで僕が指名されたって訳だ」 帽子を取ったその男は自分達より十歳は年上と思われるダンディな髭の男でした 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。 すまない・・・婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬフリはできなくてね」 「・・・婚約者?」 ドッピオは疑いの眼差しでワルドと、ルイズを見くらべます ルイズは確か十六歳のはずだ。まあこの世界なら婚約者というものがあってもいいかもしれません だがワルドはどう見ても十歳くらい年上です。ロリコンか、ヴァリエール公爵家の家名目当てか ドッピオはなんとなく後者・・・何らかのモノがほしいために婚約しているように思えました 何せそのワルドの顔がかつてのボスのように仮面を被った様な顔なのですから ルイズは感動の再会を楽しんだ後、ドッピオとギーシュを紹介しました ワルドは最初、使い魔が人間ということに少々驚いていたようですがそのようなことなど気にしないようでした (・・・この程度なら化けの皮は剥がれない・・・か) ドッピオのみがワルドに対し疑念を抱く中、彼らはアルビオンへと旅立つ事になりました ちなみにヴェルダンデは「行き先はアルビオンだから」という理由で結局置いてく事に ギーシュは本当に別れを惜しんでいましたがその後 「・・・地中を掘ってるなら途中までばれない・・・」 と呟き、出発しました。いたはずのヴェルダンデはどこかに消えていました さて、一行は各自の移動手段を持って急いでいます ルイズとワルドは一つのグリフォンに乗っています。ギーシュとドッピオは学院の馬に 道中、ワルドはルイズに甘いささやきを繰り返します ギーシュは確実に数日かかるということに「ああ、モンモランシー。君に数日も会えないなんて・・・」などと言っています ルイズはワルドの甘いささやきを聞きながら、チラリ、チラリと後ろを見ています 見ているのは大げさな演技をして笑いを取ろうとしているギーシュ・・・ではなくドッピオのほうです ドッピオは無言で馬に乗っています どうやら慣れていないようで自分の能力を使っているようですがルイズには分かりません 自分に対して反応の無さが、ちょっと癪に障る。理由は解りませんが 「やけに後ろを気にするね。まさか、どちらかが君の恋人かい?」 ワルドは笑いながら、しかし真剣な眼差しで言っているようです 「こ、恋人なんかじゃないわ」 「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたらショックで死んでしまう」 「で、でも・・・親が決めた事だし」 「おや? 僕の小さなルイズ、僕の事が嫌いになったのかい?」 「・・・嫌いな訳ないじゃない」 ワルドは憧れの人 幼い日、婚約の正しい意味を知らなくとも、彼がずっと一緒にいてくれると思って、嬉しく思っていました 今ならその意味が解り、結婚という意味も解っています アンリエッタの政略結婚とは違う自分達の結婚を ですがルイズは何だかとっても複雑な気持ちになりました いざ結婚となるとどうしても気持ちが違うような気がしてならなかったのです (私は・・・ワルドのことが・・・) 好きか嫌いか、どちらと言われると好きなのでしょう 結婚するのかしないのか、好きなのに結婚が純粋に望めない (・・・今は姫の任務の遂行。ワルドのことは後回しよ!) 自分自身に対する疑念を考えるうちに港町ラ・ローシェルに到着しました ラ・ローシェルは峡谷に挟まれるようにあり岸壁を彫刻のように彫った建物が多数見受けられます おそらく土のメイジが作ったのでしょう。しかし港町なのになぜこんな山地にあるのでしょう 疑惑を持ったドッピオは空を見上げます 「・・・なるほど、空の港と言うわけですか」 それは船でした。空中に浮かぶその船はまさに圧巻 (ヴェルダンデがいけないと言う事はアルビオンは空にあるわけですか) 一行はラ・ローシェルで一番上等な『女神の杵』という宿に入った瞬間 「ハァ~イ、遅かったじゃない」 「きゅ、キュルケ!? 何であんたがここにいるのよ!」 と、いきなりの歓迎を受けました 一階は食堂になっていて、タバサもキュルケと同じテーブルで本を読んでいます キュルケはいきなりワルドににじり寄り 「お髭が素敵よ。あなた、情熱はご存知?」 当のワルドはキュルケを拒絶するように左手で押しやりました 「婚約者が誤解するといけないので、これ以上近づかないでくれたまえ」 そう言ってルイズを見るワルド。視線に気づきつまらなそうな顔をするキュルケ 「婚約者?あんたが?・・・ドッピオー!あなたを追いかけてきたのよ!」 「見事な対応変換だね」 「うるさいわよ。ギーシュ」 即座に矛先を変えてキュルケはドッピオの腕にしがみついてきます いくら追い払ってもやめないことは分かっていますがそれでも一応の望みをかけて追い払います 「ひとまず離れてください・・・大体何で貴女がここに・・・」 キュルケは簡潔に答えてくれました どうやら自分達が出かけるのが見つけたためタバサに頼んでシルフィードで送ってきてもらったようで その本人、タバサもこちらの行動に興味があったようで不満の色は見せていません 船について出来ることがないので宿屋の食堂でドッピオ達がくつろいでいると桟橋へ乗船交渉へ行ったワルドとルイズが帰ってきました 「アルビオン行きの船は明後日にならないと出ないらしい」 仕方ないからそれまでの間この街で時間を潰す事となり、早速ではあるが宿の部屋割りがワルドによって決定され鍵を渡されました キュルケとタバサが同室。ドッピオとギーシュも同室。ルイズとワルドは同室 婚約者だから当然ではあるがルイズはかなり動揺の様子 そしてその夜、ルイズとワルドは同じ部屋へと消えていきました 食堂ではギーシュが自棄酒を飲んでいました 「モンモランシー・・・ケティのことは誤解だって言ってるのに聞いてくれないんだよ?」 「はあ・・・」 ドッピオはその自棄酒に付き合っています。ちなみに肉体年齢ならもうとっくに三十路を過ぎているので酒は飲んでも大丈夫 キュルケはどうしたものかしらと思いつつワインを飲み、タバサは見かけによらず大食いなのか食事を続けています 「しかし、まさかルイズに婚約者がいたとはなぁ……」 「あら、ルイズにも手を出そうとしてるのかしら?」 ギーシュの呟きに乗ってきたのはキュルケ一人でした 「やれやれ、何でそういう勘違いをするかな。単純に驚いただけだよ。 それにしてもルイズにはできすぎた婚約者だな。 女王陛下の魔法衛士隊でグリフォン隊隊長……憧れるよ」 「でもあんな髭ヅラのおじさん、私ならお断りよ」 ここまでルイズ達を追いかけてきた最初の行動はすっかり忘却の彼方らしい。 「まっ、確かに年上すぎるかな。何歳なんだろうね? 三十には届いてないようだが」 「殿方っていうのはね、ドッピオくらいの年齢が丁度いいのよ 青春の真っ盛り、尤も自分が輝くときが一番良いに決まってるじゃない」 「まあ確かに。でもルイズは年齢より幼く見えるからなぁ」 「・・・・・・」 「あら?ドッピオ、もしかして寝てる?」 「酔いが回ったようだね。まったくこのくらいの酒で目を回すなんて情けない」 ちなみに飲んだ量はワイン一本程度です 結局、自棄酒はギーシュがドッピオを部屋に運ぶということで終了し キュルケと食事を終えたタバサも眠りに付くことで任務一日目を終えるのでした
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「仮面ライダー龍騎」より浅倉威を召喚 狂蛇の使い魔-01 狂蛇の使い魔-02 狂蛇の使い魔-03 狂蛇の使い魔-04 狂蛇の使い魔-05 狂蛇の使い魔-06 狂蛇の使い魔-07 狂蛇の使い魔-08 狂蛇の使い魔-09 狂蛇の使い魔-10 狂蛇の使い魔-11 狂蛇の使い魔-12 狂蛇の使い魔-13 狂蛇の使い魔-14 狂蛇の使い魔-15 狂蛇の使い魔-16 狂蛇の使い魔-17 狂蛇の使い魔-18 狂蛇の使い魔-19 狂蛇の使い魔-20 狂蛇の使い魔-21
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空賊に捕らえられたセッコたちは、船倉に閉じ込められた。 元の船の乗組員たちはそのまま船の曳航を手伝わされているらしい。 セッコは剣を取り上げられ、ワルドとルイズは杖を取り上げられていた。 周りには砲弾やら火薬樽やら酒樽やら様々なものが雑然と置かれている。 ワルドはそれらを興味深そうに見て回っていた。 考え事をしていたルイズが、暇そうに寝転がっているセッコに向かって声をかけた。 「ねえ、こっそり外の様子を見てきてくれないかしら」 「こっそりは無理だ。」 「なんでよ?」 ワルドが代わりに答えた。 「扉の外に看守がいるし、他にも見張りはいるだろう」 いや、そういうことじゃねえんだけどな。 ワルドに聞かれたくなかったのでルイズの傍に寄る。 (壁や床が、薄すぎる。中に隠れられねえし、通った後に少し穴が残る。) 「そう、困ったわね。なんとかならないの?」 (部屋から部屋へ渡り歩いて一人残らず死体にするぐらいならできるぜ? ホラー小説みたいによお。) ルイズの顔が引き攣った。 「あのね、セッコ?」 「なんだよお。」 「それは、絶ッッッ対、絶対に!駄目!」 面白そうだと思ったのになあ。 その大声に、あたりを調べていたワルドが戻ってきた。 「落ち着くんだ、ルイズ。僕たちはずいぶん丁重に扱われているぞ」 「杖を取り上げられて船倉に押し込まれてる、これのどこが丁重なの?」 珍しくワルドが正しい。気がする。 「だよなあ、ルイズはともかくよお、おっさんとオレが拘束の必要もない病人や子供に見えるかあ?」 まあ、オレに物理的拘束は意味ねえけどな。 「セッコ、ちゃんとワルドのこと名前で呼びなさいっていったでしょう。 ・・・でも、言われてみればおかしいわよね」 ワルドが言葉を続ける。 「それも不自然ではあるが、この部屋には火薬まで貯蔵してあるようだ。 確か、今のアルビオンでは火薬や硫黄が、黄金かそれ以上の価値があるのではなかったかな? もし、僕たちが自爆したらどうなるんだろうね」 「オレはまだ死にたくねえぞ。」 考えるのが面倒になってきたので再び寝転がる。 ワルドとルイズも腕を組んで首を捻った。 その時、突然扉が開いて痩せぎすの空賊が姿を現した。 「頭が、直々におめぇらを尋問したいとさ。」 なんだそりゃ?身代金を取るために家名でも聞くのかあ? ルイズが泡を飛ばして突っかかる。落ち着け。 「空賊風情が、貴族に聞きたいことなんてあるのかしら?」 「細かいことはお頭に聞いてくれ。俺たちも仕事なんでねえ」 そう言って男は笑った。 「いいじゃないか、ルイズ。直接交渉できるならこれほど楽なことはないだろう」 ワルドがルイズを制した。 とりあえず、様子を見るべきかなあ。 狭い通路を通り、細い階段を登り、三人が連れて行かれた先は立派な部屋だった。 どうやらそこがこの空賊船の船長室らしい。 扉が開くと、豪華なディナーテーブルがあり、一番上座に眼帯を着けたヒゲ面の派手な男が腰掛けていた。 大きな水晶のついた杖を持っている。 頭の回りでは、ガラの悪い空賊たちがニヤニヤと笑って、入って来たルイズたちを見つめている。 入り口のそばにいた一人が声をかけてきた。 「おい、お前たち、頭の前だ。挨拶しろ」 しかし、ルイズはそれを無視して頭を睨む。 「失礼ね!聞きたいことがあるならそっちから挨拶しなさいよ!」 頭はにやっと笑って言葉を返した。 「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、なら本題に入ろうか」 「何よ」 「実を言うと俺たちはな、貴族派の密命で、アルビオンに入る連中を監視してるんだよ。 貴族がこの時期のアルビオンに行くからには何かあるんだろう?旅行なんて言い訳は無しにしようや」 「そう、つまりこの船は反乱軍の軍艦なわけね?」 「いいや、それは違うな。俺たちはあくまで空賊。対等なビジネスさ」 「空賊と手を結ぶなんて本当にアルビオンの反乱軍は屑ね。 わたしはアルビオン王党派、いえ、アルビオン王家への使者よ。 曲がりなりにもあなた達が軍と対等な関係というのならば、大使としての扱いを要求するわ」 「なにしに行くんだ?あいつらは、明日にでも消えちまうよ」 「まだ、敗北宣言はしてないでしょう?それに、何のために行くかなんてあんたらに言うことじゃないわ」 頭は、妙に楽しそうな様子でこちらを見ている。そしてルイズに言った。 「成る程な。まあ俺たちはそんな重箱の隅みたいなことまでは気にしてねえさ。 金が入ってくりゃあそれでいいんだからな。ところで、今からでも貴族派につく気はないかね? あいつらは、メイジを欲しがっている。礼金もたんまり弾んでくれるだろうよ」 ルイズは少し震えながらも、胸を張って答えた。 「死んでもイヤよ」 セッコはその様子を見ながら思った。こいつは、本当に強情な奴なんだなあ。 ・・・確かフーケの時もこんなだっけなあ。 その精神構造は基本的に自分優先のセッコにとって納得できるものではない。 だが、“主”として信念を決して曲げないのは多分いいことなんだろう。 少なくとも、ワルドやアンリエッタよりはいくらかマシに違えねえ。 ワルドのほうを伺うと、神妙な顔で“頭”を見つめている。相変わらずよくわからねえ奴だ。 「もう一度だけ言う。貴族派につく気はないかね?」 大きく息を吸い、胸を張りなおしたルイズより先に、いい加減イライラしていたセッコが罵声を上げた。 「つかねえって言ってんだろうがよお。 どうしても寝返らせてえなら、腕を切り落とすなり今ここで現金積むなり 無理矢理従わせりゃあいいじゃねえか!オメーら訳わかんねえよ!何がしてえんだあああああ!」 「ちょ、ちょっとセッコ気持ちはわかるけど落ち着きなさい!」 ルイズが慌てて止める。それと同時に“頭”がセッコのほうをじろりと見た。 「貴様はなんだ?」 「使い魔だがよお、それがどうした」 「・・・使い魔?」 突然、頭が大声で笑い始めた。 「トリステインの貴族は、気ばかり強くって、どうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らずどもより、何百倍もマシだがね」 言いつつ立ち上がる。セッコはいきなりの変貌を観察した。 ワルドとルイズも顔を見合わせている。 「いや、実に失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」 頭はそう言うと、突然顔のパーツを剥がし始めた。 いつの間にかニヤニヤしていた取り巻きたちが直立している。 現れたのは、なんと威風堂々とした金髪の若者だった。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官だ。 もっとも、既にこの[イーグル]号しか存在せず、装わざるとも空賊と大差ない無力な艦隊だがね。 もっとわかりやすく表現するならば、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ルイズは口をあんぐりと開けた。 セッコは首を捻った。 ワルドは興味深そうに、皇太子を見つめた。 ウェールズは、笑みを浮かべると、ルイズたちに席を勧めた。 「アルビオン王国へようこそ。大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか」 ルイズはいまだぽかんとしている。セッコは胡乱な目でウェールズを見た。 「なあ・・・おめえ本当に本物かあ?だってよお・・・」 今にもウェールズに掴みかかりそうなセッコを制して、ワルドが優雅に頭を下げた。 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」 「ふむ、姫殿下とな。きみは?」 「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵。 そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢。そしてそこの男がその使い魔です」 「なるほど、して、その密書とやらは?」 ルイズが慌てて、胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出した。 しかし、ウェールズは手紙ではなくルイズの指輪を見つめている。 「あ、あの・・・どうなされました?」 「ラ・ヴァリエール嬢、その指輪はどこで手に入れたのかね?」 「これは、任務を受ける際に姫殿下から賜ったものです」 「やはりそうか!それはアンリエッタが嵌めていた[水のルビー]だな。そして・・・」 ウェールズは自分の手から指輪を外し、ルイズの手に近づけた。 「この指輪は、アルビオン王家に伝わる[風のルビー]だ。 水と風は、虹を作る。王家の間にかかる橋さ」 2つの宝石が共鳴し、虹色の光を振りまいた。 「すごい・・・」 ルイズが感嘆したように呟く。セッコとワルドも目を丸くした。 ウェールズは満足そうに微笑んだ。 「すまない、少し話が逸れてしまった。では密書を頂こうか」 ルイズが一礼し、手紙をウェールズに手渡した。 ウェールズは、しばらくの間手紙を恍惚とした表情で眺めていたが、花押に接吻し、開封すると真剣に読み始めた。 「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い・・・、従妹は」 ワルドとルイズが無言で頷いた。 ウェールズの表情が少し曇ったが、最後まで読み終えた時には、微笑みに変わっていた。 「了解した。姫は、あの手紙を返して欲しいとこの私に告げている。何より大切な、姫からもらった手紙だが、姫の望みは私の望みだ。そのようにしよう」 ルイズの顔が輝いた。 「しかしながら、今、手元にはない。ニューカッスルの城にあるんだ。 姫の手紙を、空賊船に連れてくるわけにはいかぬのでね。多少面倒だが、ニューカッスルまで足労願いたい。 ・・・そうそう、剣と杖を返さないとな」 ウェールズはそう言って笑い、甲板に出て行った。セッコたちもそれに続く。 「なあ、ルイズよお?」 「何かしら?」 「アンリエッタは手紙を回収しろつってたけどさ。」 「それがどうしたのよ、今から取りに行くんでしょう」 「受け取ったら、即焼き捨てた方がよくねえかな・・・」 「なんでわざわざ命令無視しなきゃいけないのよ」 「いや、ヤバい手紙なんだろ?どこにあったって爆弾じゃねえかあ?」 アンリエッタがどうなろうと知ったことじゃねえ。 だが、たかが手紙が原因で同盟破棄?戦争?冗談じゃねえ。 まだ死にたくねえつーの。 「馬鹿ね、トリステインなりゲルマニアなり、ちゃんとした城の中にあれば大丈夫よ」 「盗まれたらどうすんだよ。」 「まともに機能してる城にどうやって忍び込むのよ。[ディテクト・マジック]っていう魔法を探知する魔法だってあるわ」 「いやほら、オレとかヴェルダンデみたいに。」 「あ・・・」 「気づけよ。」 「ま、まあ取り戻して姫様に返す前にでも考えればいいわ、多分」 「ほんとかよ。」 ルイズとセッコが話していると、ワルドを伴ったウェールズがルイズの杖とデルフリンガーを持って戻ってきた。 ニューカッスル城まではまだかなりかかるらしい。 そういえば、今日はまだ何も食ってねえなあ。 セッコは、飴を女神の杵亭に忘れてきたことを後悔した。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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「ソウルクレイドル~世界を喰らう者~」よりダネットを召喚 お前の使い魔 1話 お前の使い魔 2話 お前の使い魔 3話 お前の使い魔 4話 お前の使い魔 5話 お前の使い魔 6話 お前の使い魔 7話 お前の使い魔 8話 お前の使い魔 9話 お前の使い魔 10話 お前の使い魔 11話 お前の使い魔 12話 お前の使い魔 13話 お前の使い魔 14話 お前の使い魔 15話 お前の使い魔 16話 お前の使い魔 17話 お前の使い魔 18話 お前の使い魔 19話 お前の使い魔 20話 お前の使い魔 21話 お前の使い魔 22話 お前の使い魔 23話 お前の使い魔 24話 お前の使い魔 25話 お前の使い魔 26話 お前の使い魔 27話 お前の使い魔 28話