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「全員揃ったわね」 訓練用のトレーニングウェアに着替えたティアナは、他のメンバーと合流し、その顔を一様に見渡した。 ティアナと組んで前衛を続けてきたスバルは言うまでもなく、まだ経験の浅い子供であるエリオとキャロの統率力も低い。 必然的にティアナが四人を纏めるリーダーシップを発揮する形になっていた。 「お互いの能力や性格、癖―――連携に影響する重要な要素だけど、まだ私達はそれを十分に理解し合ってない。 噛み合わないのは当然だと思うわ。最初の共同訓練なんだから、尚更ね。そして、その為の訓練だと思う。 一応私が全体の指示を引き受けるけど、自己判断に任せる場面も多くなるから、基本的に自分の思うようにやってみて。失敗はチームで補うわ」 簡潔に方針を話し、ティアナはこれから長い付き合いとなる仲間の顔を一人一人見据えた。 慣れ親しんだスバルの信頼の視線を受け、緊張の抜けないエリオとキャロに目上ではなく同じ目線で向かい合う。 『仲間と平等に接する』という意図せぬリーダーとしての気概の発揮に、その場の全員が彼女の指揮に無意識の信頼を寄せていた。 「りょーかいっ!」 「はい! 分かりました!」 「よ、よろしくお願いします!」 快活なスバルとエリオの返事を聞き、若干震えの見えるキャロにティアナは注目した。 この中でも最も小柄なキャロは、その緊張に強張った表情も相まって酷く頼りなさげに見える。 何より、<竜召喚師>という希少な能力者はそれゆえに戦術のセオリーに当てはめにくい。経験の浅い新人チームにあって、持て余す存在だった。 そんな内心の分析を表に出さず、ティアナは視線を向けられて不安げなキャロに近づいた。 「緊張してるみたいね」 「す、すみません……」 『キュル~』 ますます恐縮するキャロを案じるように、傍らの幼竜が鳴く。 「謝ることなんてないわ。初の訓練で気の抜けた顔してる奴より全然マシ」 「それってわたしのこと?」 抗議するスバルを軽く無視し、ティアナは優しくキャロに笑いかけた。彼女には珍しい表情だ。 その小さな両手を自分の手でそっと包み込む。 装着されたグローブ型デバイス越しに体温が伝わり合った。 「あ……っ」 キャロが驚きに一瞬震え、思わず手を引きそうになった。それを握って押し留める。 少女の瞳に浮かんだ何かに怯える色と、小さく震え始めた手を見て取り、ティアナはキャロの顔を覗きこんだ。 「知らない人に手を握られるのは怖い?」 「いえ……そのっ」 「緊張した時は手を温めてもらうと落ち着く、って何かの本で書いてあったんだけどね。ま、赤の他人がやっても意味ないか」 「すみません……」 「いいのよ。馴れ合いはあたしも苦手だわ」 そう苦笑して、ティアナは手を離す。 一瞬だけキャロが名残惜しそうな顔をしたのは、都合のいい錯覚だと思うことにした。 「お互いにいろいろ理由があって、ここにいる。それぞれの事情を、これから先打ち明けることがあるかもしれないし、ないかもしれない―――」 離した手を、代わりに小さな肩へ置き、真剣な表情で顔を付き合わせる。 自分を子供だと侮らない真摯な視線を受け、いつの間にかキャロは震えも忘れてティアナの眼を見入っていた。 「でも一つ、確かな事がある。 アナタはここに理由を持って、自分の意思で立っている。ここから伸びているのは進む道だけ、退く道はないわ」 だから、進むだけだ―――ティアナは言葉に出さずに、そう眼で語った。 各々が違う理由、事情で、しかしただ一つ『進む為』に此処に集っているのだと。 ティアナがスバルとエリオに視線を移すのに倣って、キャロも二人を見た。 これから苦楽を共にする仲間達。二つの視線が自分を見つめ、そして力強く微笑むのを感じる。 それが、キャロの孤独な心に不思議な安心感を与えた。初めて感じると言っても過言ではない、全く未知の誰かと共有するような感情だった。 彼女は、まだその感情の名前を知らない。 「月並みな言葉だけどね……一人で進む道じゃない。仲間がいる、それを忘れないで」 その言葉は、ティアナ自身が得た一つの確信だった。 目の前の少女と同じくらいの歳で、孤独に打ち立てた誓いを聞いてくれたダンテ―――。 その誓いを一人で頑なに見上げていた時に出会い、今も尚支えてくれる相棒のスバル―――。 本人達の前で決して言葉になどしないが、今の自分になれたのは一人の力だけじゃないと思っている。 「……はい!」 キャロの二度目の返答は、今度こそ迷いの無い力強さを感じるものだった。 二人の様子を見守っていたスバルとエリオの間にも笑顔が広がる。 訓練前だが、この瞬間初めて仲間意識というものが芽生えた気がした。 「すごいですね、ランスターさん……」 「当然だよ、なんてったってわたしの相棒だし!」 ティアナを見る眼に尊敬の色まで混じりだしたエリオに、スバルは『相棒』の部分を強調して答えた。 何故か胸を張るスバルの頭をティアナが照れ隠しに小突く。 「あたしのことは<ティアナ>でいいわよ。エリオ、キャロも」 「わかりました!」 「ありがとうございます、ティアナさん」 ティアナは二人の返答に満足げに頷き―――そして、傍らで一変して不満そうに頬を膨らませる相棒を見てため息を吐いた。 「……何? 言いたいことあるなら言いなさいよ」 ハムスターになったスバルを呆れたように眺め、仕方なしに尋ねる。 どうせくだらないことだろうと思いながら。 「ズルイ……ティアに一言物もぉーす!」 「は?」 「わたしはティアの名前を呼ぶ許可もらうまで三ヶ月かかったんだよ? なんでそんなにあっさり! それに、初対面のキャロになんか甘くない? わたしの時はもっとツンツンしてたのにさっ! いきなりデレですか!?」 「何、その怒り方? あの時とは状況が違うでしょ。これから一緒に死線を潜る仲間になるんだし……」 「ずーるーい! ティア、二人だけ絶対ヒイキしてるっ! わたしにも、もっと暖かい扱いをよーきゅーする!」 「私は誰に対しても平等だっつーの」 どうでもよさげに答えて、ティアナは迫ってきたスバルの顔面をチョップで迎撃した。 顔を抑えてのた打ち回りながら「これも愛!?」とワケの分からないことを叫ぶスバルと、過激なやりとりに冷や汗を流すキャロとエリオも無視して時刻を確認する。 「そろそろ集合時間よ。初の訓練で遅刻なんて論外。無駄口はここまでよ」 真剣なティアナの言葉に、それまで和やかだった三人の表情が引き締まった。 心地良い馴れ合いの時間は終わったのだ。 ここからは、戦闘の時間だ。 「何もかも初めて尽くしの訓練……。遠慮なんて必要ないわ、緊張しようが気負ってようが構わない。 スバル、あんたの大好きな<全力全開>よ。教導官にも仲間にも、自分の力を周りに見せ付けてやるくらいのつもりでやりなさい!」 その場にいる仲間達と、そして自分自身にも言い聞かせるようなティアナの言葉に三人は頷いた。 スバルが拳と手のひらを打ち合わせて気合いを入れ、エリオも小さな拳を握り締める。キャロが傍らの小さな友と頷き合った。 「行くわよ」 緊張と不安と、それ以上の強い気概を心に同居させ、高ぶる四人のルーキーは走り出す。 それぞれの決意と共に、初めての訓練が待ち受ける先へ。 「―――Let s Rock!」 魔法少女リリカルなのはStylish 第七話『Destination』 「―――ヴィータ、ここにいたか」 海上に設けられた人工の平地に、空間シミュミレーターによって市街戦のステージが投影されていた。 これから始まる訓練の光景を眺めていたヴィータに見知った顔が歩み寄る。 「シグナム」 「新人達は早速始めているようだな」 「ああ……」 妙に気の抜けた返事に、シグナムは僅かに眉を潜ませながら眼下の沿岸で渡されたデバイスのチェックをする新人達を見つめた。 「お前は参加しないのか?」 「たるい」 歯に衣着せぬ端的な返答を聞いて、シグナムは思わずコケそうになった。 「……お前な、もうちょっと考えて話せ」 「初日の訓練で隊長クラスが相手する意味なんてねえって分かってんだろ? あたしの教導はもうちょっと先だ。……それに、なんかやる気起きねー」 「昨夜任務があったからといって、少々気を抜きすぎだぞ」 ともすれば欠伸までかましそうな腑抜け具合のヴィータをシグナムが諌める。 昨夜の出撃で、ヴィータ達がガジェットの他に管理局で噂になっている謎の襲撃事件に遭遇したことは聞いていたが、無傷の三人を見るとそれほどの消耗は感じられなかった。 事実、ヴィータの疲労の原因は外傷などではなかった。 ただ精神的なもの。あの夜対峙した異形の存在と異界のように錯覚した空気の中で戦い続けた緊張が、知らず神経を張り詰めさせていたのだ。 <悪魔>は闇の具現。人を恐怖させる存在―――それに抗うことは並ならぬ心の力を必要とする。 それに加えて。 「予想外の乱入もあったしな」 「保護した民間の子供か? 居住権のない遊民とはいえ、考慮しなかった陸戦部隊の不手際だ。人道的ではないしな」 「……まーな」 曖昧な返事を返しながら、もちろんヴィータの脳裏に浮かんだのは赤い人影だった。 約束通り、ダンテの事は報告していない。 上司や仲間に黙っている後ろめたさは残るが、ヘタに話しても混乱するだけだろうと思った。こちらも半端な情報しか持ってないのだ。 謎の襲撃者を<悪魔>と呼び、そいつらを狩る者と称した男―――。 個人的に、その強さよりも人柄に興味を持った。生真面目な男の多い管理局内において会ったことのないタイプだ。 小気味のよいテンポで進める会話。妙に心地良い騒がしさを持っている。朝から気が抜けるのも、案外あの喧騒の後だからかもしれない。 そこまで考えてヴィータは我に返り、そしてシグナムに気付かれないよう苦笑した。 管理局の魔導師として義務感のようなものを抱くくらい勤めてきたつもりだが、随分と私情が混ざってるな、と自分を可笑しく思う。 だが、勝手気ままは自分らしい。やはりスーツ姿はあたしには似合わない。 「……ところでシグナム、訓練の様子ってここで見れんのか?」 そこまで考えて、ヴィータは眺めていた眼下の様子で気になるものを見つけた。 「シャーリーに頼めばモニターを回してくれると思うが……。どうした、気になる新人でもいたか?」 「んー、まあな」 視線を一人の少女に向けたまま、曖昧に呟く。 ダンテと共に戦ったのは昨夜の事だ。あの鮮烈なイメージが薄れるような時間ではない。 だからか。思い描いていたあの男の鮮明な姿と、視線の先でデバイスをチェックする新人の姿が重なって見えた。 「彼女は、確か<ティアナ=ランスター>だったか」 ヴィータの視線を辿ったシグナムが呟いた。 ティアナの持つデバイスは珍しい銃型。それも両手持ちの二挺銃(トゥーハンド)―――あの男と同じだ。 「ティアナ、か……」 二人の人間を繋ぐには、ささやかすぎる共通点だとは思う。 しかし、ヴィータは自分でも気付かずに彼女と彼女の持つデバイスに意識を集中させていた。 そして訓練が始まる。 『よし、と。皆聞こえる?』 「「はい!」」 訓練用ステージに入った四人が、別の場所で様子を見ている教導官の声に答えた。 周囲は老朽化した建物に囲まれているが、当然のように人気はない。 『じゃあ、早速ターゲットを出していこうか。まずは軽く8体から―――』 なのはが指示を出すと同時に、ティアナ達四人の眼前に言葉どおり八つの魔方陣が出現した。 『わたし達の仕事は、捜索指定ロストロギアの保守管理』 実戦を想定した訓練ゆえに、その魔方陣が意味するものは転送魔法の発動。 <敵>が出現する前兆だ。 『その目的の為に、わたし達が戦うことになる相手が―――コレ』 魔方陣から浮き出るように、ティアナ達の目の前にターゲットが全容を現した。 四肢を持たず、カプセルのような形状をした非人間型の機体。滑らかな装甲の中心にはセンサーだけが眼のように輝いている。 『自立行動型の魔導機械。これは、近づくと攻撃してくるタイプね。攻撃は結構鋭いよ』 シャリオが補足を加える。 管理局では、もはやポピュラーな敵となりつつあるそれは<ガジェットドローン>と呼ばれていた。 ルーキーの訓練相手としては無難なものだろう。だが、もちろんティアナ達にとっては初見の相手。強敵だった。 『では、第一回模擬戦訓練。 ミッション目的―――逃走するターゲット8体の破壊、または捕獲。十五分以内!』 『それでは』 『ミッション、スタート!』 合図が下され、それと同時に浮遊しているだけだったガジェットが唐突に動き出した。一斉にその場から散開する。 訓練開始だ。 「スバル、あんたが一番足が速い。このまま追跡して。まずは単純に追い込む作戦でいく。 エリオ、あんたはスバルが追い込む先に先回りして挟み討つ。深く考えなくていい、あいつらがこちらの考えを読むほど複雑な機械なら追って作戦を修正するわ」 ガジェットが行動を開始すると同時に、ティアナの頭脳もまた高速で動き始める。 あっという間に見えなくなるガジェットの群れを闇雲に追うような真似をせず、落ち着き払った態度でスバル達に次々と指示を飛ばした。 「キャロは私に付いて、援護しやすい場所を確保。以後、あたしからの指示は念話で行うわ。行動開始!」 「「了解!」」 そして、全員が戸惑うことなく返答を返した。 一方、同じ訓練用スペースの離れた場所で状況を見守るなのはとシャリオ。 「……いいね、初めてにしては行動開始が早いし、戸惑いもない」 ガジェットの逃走から一拍置いて動き出した新人達の行動を見ながら、なのはがとりあえず満足げな笑みを浮かべた。 現場では、冷静に物事を処理する事が必要になる。 慌てて追うような真似をしていたら、それこそ減点だった。 「指示を出しているのは、ティアナ=ランスターのようですね」 「一番落ち着いてる娘だね。何か場数を踏んでるのかも……さて」 モニターには、逃走する8体のうち2体のガジェットに、今スバルが追いつこうとしていた。 「どう捌く?」 追撃するスバルの目の前で、敵は二手に別れていた。それぞれ4体ずつに分散して逃走を続ける。 その内の片方にスバルは狙いを定めた。もう一方はエリオが先回りして待ち伏せている予定だ。 リボルバーシュートの射程に捉え、スバルは攻撃を開始した。 しかし―――。 「何これ、動き速っ!?」 「駄目だ! フワフワと避けられて、当たらない……!」 一撃の威力を高めて放ったスバルと手数を重視したエリオ、いずれの種類の攻撃もあっさりと回避された。 技量がガジェットの回避性能に及ばなかった、というのが単純な結論だ。 建物の屋上から様子を伺っていたティアナは冷静にそう判断した。 『前衛二人、少し分散しすぎよ。フォローできる範囲を確認して』 『あ、はいっ!』 『ゴメン!』 念話を通した静かな叱責に、二人の慌てた返事が返ってくる。 しかし、概ねティアナの思考のうちで事態は動いていた。 眼下の道を再び合流した8体のガジェットが飛んでいく。 撃ち下ろしの絶好のポジションだった。 「キャロ、威力強化をお願い」 「は、はい!」 「落ち着いて。半分くらいはアレの防御性能を確認するのが目的だから、撃破しようなんて気負わなくていい」 「分かりました……っ」 キャロの緊張を緩和しながら、ティアナは両手のアンカーガンに魔力を集中していく。 「ケリュケイオン!」 《Boost Up.Barret Power》 グローブ型デバイスが増幅魔法を発動し、ティアナの射撃魔法を強化した。 アンカーガンの銃身に込めた高密度の魔力が膨れ上がるのを感覚で感じ取り、それをティアナは狙い定めた照準の先へと解き放つ。 「Fire!」 普段より数倍は増した魔力の炸裂音が本物の銃声のように響き渡り、二挺のデバイスがオレンジ色の弾丸を吐き出した。 8体の標的にそれぞれ二発ずつ、狙い違わず魔力弾が全弾命中する。 誘導性は付加していない。スバルとエリオが攻撃に失敗した回避性能を考えれば、驚異的な補足率と弾速だ。 しかし、それすらも撃破には至らなかった。 全てのガジェットが例外なく、飛来した魔力弾を寸前で対消滅させる。 「魔力が消された!?」 その光景を見ていたスバルが驚愕の声を上げる。 一方、狙撃したティアナ本人は平静を保ったまま、予感していた結果を受け入れていた。 「バリア……いや」 「フィールド系ですね。周囲の魔力結合を分解しているみたいです」 傍らから聞こえた言葉に、ティアナは意外そうな表情を向け、そしてすぐに満足そうに笑った。 「よく見てるじゃない」 「え……っ? あ、いや、恐縮です……」 我に返り、顔を赤くして俯くキャロの肩に手を置く。訓練中に見せられる精一杯の愛想だった。 ティアナとキャロの分析を補足するように、なのはの説明が流れる。 攻撃魔法を無効化するAMF(アンチ・マギリンク・フィールド) ガジェットが標準装備する機能であり、魔導師にとって最も厄介なシステムだ。 突撃したスバルが範囲を広げたAMFにウィングロードを解除され、ビルに激突する光景を眺めながら、ティアナは内心舌打ちした。 射撃魔法のみで、物理攻撃方法を持たない自分は接近するだけで不利になる。 なるほど、確かに厄介な相手だ。 ―――だが、それだけだ。 厄介な代物ではあるが、それは『破壊するのに少々工夫が要る』程度のものでしかない。アレはただの的だ。それは脅威ですら在り得ない。 本当に恐ろしい<敵>とは『倒すか、倒されるか』 自分の身を天秤にかけて戦う相手のことだ。 そして、ティアナはそれを既に経験していた。 「……キャロ、何か意見はある?」 「え、わたしですか!?」 唐突に話を振られ、それまでティアナの背後に付き従うだけだったキャロは驚きに体を震わせた。 すぐさま弱気の虫が湧いて来る。 しかし、力なく首を振ろうとした仕草は、ティアナの自分を見据える真っ直ぐな視線の前に消えて失せた。 「…………試してみたいことが、幾つかあります!」 「あたしもある。決まりね」 スバルとエリオに念話を送り、二人は移動を開始した。 「……シャーリー、ガジェットの映像拡大してみて」 「え、はい」 それまで黙ってモニターを眺めていたなのはの指示に、シャリオは戸惑いながらも従った。 8体のガジェットを映すモニターが映像を拡大する。 「……ああっ!」 「うん、驚いたね。届いてるよ、攻撃」 なのはの言葉通り、これまで直撃を受けていないはずのガジェットのうち数体の装甲には、ほんの僅かだがヘコみが出来ていた。 飛行ミスでどこかにぶつけたような傷ではない。原因は一つしかなかった。 「やるね、ティアナ」 「増幅されてたとはいえ、通常の射撃魔法でAMFを抜くなんて……」 「自然体でこれだけの魔力の集束率、なかなか出来ることじゃないよ。報告通り、あの娘は射撃魔法だけならAランクはいくね」 自分の中の評価を修正しながら、なのはは自然と笑みを浮かべていた。久しく感じなかった興奮を伴って。 AMFを越えたとはいえ、増幅魔法との併用でこの程度の結果だ。戦況を動かせるような要素ではない。 ならば、彼女はどうするか? 「ティアナの中でも修正は終わったみたいだよ。そろそろ動く―――さて?」 スバルとエリオが待ち構える地点へ、ガジェットが気付かずに接近する。 逃走が基本の行動パターンとなっているガジェットの進路を、高所で観測するティアナの報告と合わせて予測するのは難しいものではなかった。 ガジェットの進む先。道路を横断するように伸びるビルの渡り通路の上に、エリオは待機している。 『AMFが無効化できるのは魔法効果だけよ。<発生した効果>までは無効化できない。分かるわね?』 「はい!」 事前にティアナから与えられた情報から、エリオは取るべき方法を察していた。 ガジェットが通路の真下を通過する直前まで気配を殺し、タイミングを計って行動を開始する。 「いくよ、ストラーダ! カートリッジ、ロード!!」 《Speerschneiden》 スピーアシュナイデン。高威力の直接斬撃が足元の通路を一瞬で幾つにも切り崩した。 崩落する通路の石片がガジェットの群れに降り注ぐ。 大味の攻撃ではあったが、その重量と落下範囲の広さによって、二体のガジェットが瓦礫に押し潰されて圧壊した。 立ち上る粉塵の中から飛び出す二体のガジェット。それを今度はスバルが捉える。 「潰れてろぉーっ!!」 飛行する一体のガジェットに飛び掛り、魔力を込めたリボルバーナックルを叩き込んだ。 しかし、当然のように皮一枚でAMFがそれを阻む。 魔力とフィールドが衝突する反動により、空中で不安定なスバルは弾き飛ばされた。 「……っ、やっぱ魔力が消されちゃうと、イマイチ威力が出ない!」 『フィールド系は攻撃を遮断するタイプの防御じゃないわ。威力が持続すれば突破できる。足場を確保して、負荷を与え続けて!』 再びティアナの的確な指示が飛ぶ。 それを受けたスバルはエリオと同じように返事を返そうとして、思い留まった。 「ゴメン、ティア! もうちょっと分かりやすく言って!」 バカだった。 ティアナはその場で脱力しそうになるのを踏ん張った。 『……とっ捕まえてぶん殴れ!』 「さすがティア! わっかりやすい!」 『後ろから来てるわよ、このアホの子!』 「ア、アホの子じゃないよぉ~!」 気の抜けるようなやりとりを交わしながらも、スバルは背後に回り込んだガジェットに一瞬で対応した。 涙目の台詞とは裏腹の俊敏な動きで逆にガジェットのセンサーの死角へ回り込み、両足で機体を挟み込んで馬乗りになる。 「うりゃああああっ!!」 地面に固定される形になった標的に、渾身の力を込めた一撃を打ち下ろした。 再び阻まれる拳。しかし今度は逃げ場などない。地面とリボルバーナックルに挟まれたガジェットは徐々にAMFを侵食され、ついには突破される。 歯車状のナックルスピナーが回転の唸り声を上げ、銃弾のような螺旋の力を得た拳がガジェットの機体内部に潜り込んだ。 火花を散らす<傷口>から拳を引き抜き、すぐさまガジェットから離れる。 遅れて、大破した機体が爆発した。 「やった!」 ガッツポーズが決まる。 スバルの1体撃破により、残り5体。 ティアナの元を離れ一人、高所から3体を捉えたキャロが攻撃を開始した。 「連続で行きます。フリード、<ブラストフレア>!」 『キュアアッ!!』 幼さを残す雄叫びが響く。小さな体に、しかし確かな竜の力を備えたフリードリヒは魔力の炎を行使した。 伝説にも語られる竜の吐息(ドラゴン・ブレス)―――それと比べるにはあまりに弱弱しい火球が形成され、放たれる。 浮遊するガジェットの真下に炸裂したそれは、見た目に反して広範囲に拡散し、周囲一体を高熱の炎で包み込んだ。 直接的な攻撃力は低いが、瞬時に熱された空気がAMFを無視してガジェットのセンサーと動作を狂わせる。 「―――我が求めるは、戒める物、捕らえる物」 その隙に、キャロは詠唱を開始した。 「言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖」 眼を閉じて集中する。 無防備な姿を晒すそれは、実戦ではあまりに危険な行為。だが、キャロには必要だった。 力を使う時は、いつだって恐怖が付き纏う。 扱いをしくじれば、自分はもちろん他人も巻き込んで爆発する爆弾のような力。 ずっと忌避し続けてきたそれを、しかし今は使いこなさなければならない。 「錬鉄召喚!」 迷いは吹っ切った。怯えは忘れた。 ここに立つ理由が、わたしにはある―――! 「<アルケミック・チェーン>!」 召喚魔法が発動した。 出現した魔方陣から何本もの鎖が伸びて3体のガジェットを一瞬で絡め取る。 鋼鉄の鎖を召喚し、あらかじめ付与しておいた『無機物自動操作』の魔法によって対象を捕縛。効果としてはバインド系に近い。 しかし、無機物である故にAMFの影響を受けない利点があった。 攻撃力のない魔法の為ガジェットを捕獲することしか出来なかったが、それでも目的は達成している。 これで3体が無力化された。 ―――しかし。 「……なのはさん、これは……」 「うん」 キャロの生み出した成果を見る二人の表情は、あまり明るいものではなかった。特にシャリオは眉を顰めている。 ガジェットを捕縛する、キャロが召喚した鎖―――それは、ただの鎖ではなかった。 何本もの頑丈な針金を束ね、幾つにも枝分かれしたそれの先端は鋭く尖って結果的に茨のような棘を持つ鎖となっている。 それは有刺鉄線と呼ばれる物だ。 更にそれが何本と束になって触手のように蠢き、ガジェットの機体を締め付けていた。 ガリガリと装甲の削れる音が耳障りに響く。 ガジェットは無機物だからいい。しかし、もしこれが生物を対象に使われたら? 「なんというか、エグイですね……」 「対人戦で有効ではあるけどね。倫理的にどうかな」 「何言ってるんですか、あんなの人間相手に使えないですよ!」 その光景を想像して、顔を青褪めさせながら抗議するシャリオの言葉は非戦闘員らしい甘い意見だったが、確かになのは自身も不快に感じた。 あれはもはや捕縛魔法ではない。人を傷つける悪意に満ちた魔法だ。 そして、それを行使するキャロのひたむきな横顔に、酷く不釣合いな代物だった。 「あの鎖、無意識に召喚した物ですよね?」 シャリオの問いはどこか縋るような色が混じっていた。 あの幼い少女が、明確な意思を持ってあの凶悪な鎖を使ったとは思いたくない。 しかし、なのははそれに答えなかった。 「キャロはいろいろと事情を抱える子だから……。 それより、残り2体。モニターしてくれる? ティアナの様子も一緒に」 少々強引に意識を切り替えると、なのはは終わりに近づきつつある訓練の観察に集中した。 「スバル! 上から仕留めるから、そのまま追ってて!」 『おう!』 ティアナの指示に、疑いもなく快活な返答が返ってくる。 AMFとの相性が悪い射撃魔法しか使えないティアナが攻撃に出るのは得策ではない。他のメンバーに任せた方が確実だ。 チームとして考えるのならば、これは最良の判断ではなかった。 その事実を、スバルはやはり分かっていないのか、それとも分かっていて従っているのか。 どちらともあり得るから困る。 ティアナはガジェットの動きを追いながら苦笑した。 「でも、どちらにしろ―――この最初の一歩、竦んでたんじゃこれから先、話にならないのよ!」 覚悟を決め、足を止めてアンカーガンを構える。 射撃魔法でAMFを突破する方法はあるのだ。 外殻の膜状バリアでくるんだ多重弾殻射撃。外部の膜状バリアが相手フィールドに反応してフィールド効果を中和、その間に中身をフィールド内に突入させる。 本来はAAランク魔導師のスキルだが、ティアナはそれを―――もちろん出来ない。100%絶対に。 魔力弾の攻撃力と射撃自体のスキルを鍛えることに集中しすぎた今のティアナに、複雑な魔法の構築技術は持ち得なかった。 所詮、自分は凡人だ。何かを選べば、何かを選べなくなる。 この両手に握る分だけが精一杯。 「だけど……っ!!」 目標を睨み据えるティアナの瞳に、諦めや自嘲など欠片も存在していなかった。 二挺のアンカーガンに装填された二発ずつのカートリッジを全てロードし、持ち得る限りの魔力を両腕に集め、集束し、圧縮する。 慣れ親しんだ動作。それしか出来ないから。そして、それだけを続けてきたのだから。 「私には、私だけの力がある!」 極限まで集中するティアナの脳裏に、フラッシュバックのように過去の記憶が鮮明に蘇った。 ―――兄の死からずっと、力を求め続けてきた。 魔法を覚え、独力でデバイスの知識も身につけて、マイスターには程遠いがデバイスを自作出来るまでにもなった。 自分に才能がないことは分かってる。努力しかないことも分かってる。 だからそれをずっと積み重ねて、それなりに自信も出来て―――そしてあの日、全てが崩れ去った。 仇を憎む気持ちだけで強引について行ったダンテの<悪魔狩り>で、ティアナは自分の弱さを思い知った。 初めての実戦で萎縮する体。滲み出る<悪魔>の姿を恐れる心。未熟な肉体に幼い力―――何もかもが足りない。 作ったばかりのデバイスで何十発もの魔力弾を撃ちまくり、倒せた敵はせいぜい数体。 込める魔力量も、集束もまだ未熟だった。だが、少なくともその時のティアナの全力だった。 数発の魔力弾の直撃を受けて、それでも襲い掛かってくる<悪魔>の前でついに力尽きる。 もうダメか、と思った瞬間に横合いから飛来した魔力弾が一撃でそいつの頭を吹き飛ばした。 「―――なんだ、もうヘバったのか?」 既に他の敵を全滅させたダンテだった。 両膝を着くティアナとは対照的に、こちらには疲労の色すら見えない。 それが二人の差を如実に現していた。 「だから言ったろ? お前にはまだ早いってな」 「……うる、さいっ!」 「焦るなって、人生には余裕が必要だ。教えるのは柄じゃないが、そのうち銃を使うコツくらい教えてやるよ」 そう言って、陽気に笑いかける彼の態度がこの時ばかりは苛立ちしか感じなかった。 「……あんたに、何が分かるのよっ」 魔法に関しては自分に利があるはずだった。 デバイスにも差はない。いや、彼の持つデバイスは自分のアンカーガンのパーツを流用した簡易型だ。むしろダンテの物の方が劣る。 しかし、それらの要素全てを帳消しにしていた―――持って生まれたモノが。 「所詮あたしは……普通の人間なのよ! 魔力もセンスも大して無い! 無い物は少しずつ積み重ねるしかない!」 「オイ、落ち着けよ……」 「焦るなって何? そりゃ、焦らないわよあんたは! だって、最初から持ってるんだから……!!」 才能。素質。天性の力―――ダンテはそれを持っている。 妬むべき存在が、ティアナにとってあまりに身近に居すぎた。 そしてそれは、自分への失望と無力感が混ざり合った醜い激情をぶつける先となる。 「あたしはあんたとは違う!」 そんな卑小な自分が大嫌いで、タガの外れた心は負の感情を彼に向かって吐き出した。 「普通の人間と、あんたは違う!!」 ありったけの声で叫んだ言葉は、<悪魔>のいなくなった空間に痛いほど響き渡った。 沈黙したダンテの顔を見上げられず、俯いたままティアナはその静寂に耐え続ける。 心の奥に溜まった鬱憤を吐き出した後で彼女が感じたものは爽快感などではなく、凄まじいまでの後悔と自分への嫌悪感だった。 私は、最低だ……。 他人を妬む卑小な人間というだけじゃない。 言ってはいけないことを言ってしまった、屑だ。 ダンテが自分自身についてどう思っているのか、彼から初めてその出生を聞いた時に分かっていたハズなのに―――。 「……確かに、俺はお前とは違うな」 長い沈黙の後に聞こえた彼の声は、普段どおりのようで……。 しかし何処か違和感を感じて顔を上げると、普段の陽気さを装いながらも何処かぎこちなく笑うダンテがいた。 その顔を見て、自分は彼を傷つけたのだと悟った。 どんなに表情に出さなくても分かる。 後にも先にも、ダンテが弱みを見せたのはこの時の一瞬だけだった。 「ご、ごめん……そんな、つもりじゃ……」 ならば、一体どういうつもりだったというんだ? 冗談や一時の激情で言っていいことじゃなかった。 それを言ったんだ。自分は、確かな憎しみを持って彼を傷つけたんだ! 「いいさ、気にしてない。本当の事だしな」 「……ごめん」 「よせよ、深刻になるな。お前の素直じゃない態度は慣れっこだ、そうだろ?」 「ごめんなさい……っ」 頭の中はグチャグチャだった。全ての負の感情が内側に向けて湧き上がっていた。消えてしまいたい気分だった。 そうして蹲り、震えるティアナの様子を困ったように見つめ、ダンテは彼女の肩にそっと触れる。 この小さな肩に、背負うものはあまりに重い。 だが、それもティアナ自身が選んだ生き方だ。 ならば自分は、その生き方を嘘にさせない為にティアナを支え、導く―――柄じゃないのは分かってるが、それが死んだティーダへの誓いだった。 「―――ティア、人間は弱いか?」 唐突に切り出された話に、ティアナは弱弱しく顔を上げることしか出来なかった。 「確かに肉体は弱いかもな」 困惑した表情のティアナへ、意味深げに笑いかけてダンテは続ける。 「だが、<悪魔>にはない力がある」 そう言い切るダンテの表情に、嘘や誤魔化しはなかった。ただ確信がある。 恐怖を抱くほどに圧倒的な<悪魔>の力―――『ダンテの中にも流れる』力。 あれほどに分かりやすく強大な力とはまた違う力を、人間が持っていると彼は言う。 ティアナはそれが何なのか知りたくなった。 「人間の、力……?」 「そうだ。そいつは人間なら誰でも持ってる。半端だが俺にも……もちろんティア、お前にも宿ってる力だ」 言葉でだけなら、それは力のないティアナへの慰めに聞こえる。 だが『そうではない』とティアナには分かった。自分を真っ直ぐに見据えるダンテの眼が、そう信じさせるのだ。 知らず、ティアナは自分の小さな手のひらを目の前まで持ち上げた。 この頼りない手の中に、本当に力など隠されているのだろうか? 「その人間だけが持つ力を」 ダンテはティアナの取り落としたデバイスを拾い上げ、手に握らせた。 「―――銃(コイツ)に込める」 「力を、込める」 「そうだ。魔法じゃない、意志の問題だ。それが銃弾に生命を宿す」 ダンテは自分のデバイスを持ち直すと、ティアナに見せ付けるように指先で回転させた。 銃身が華麗に舞う。 普段は意味のないパフォーマンスだとバカにするその光景に、ティアナは魅せられた。 「生命を吹き込まれた弾丸は、持ち主に応える」 回転が止まり、虚空に狙いが定められる。 「後は簡単だ。狙って……撃つ!」 引き金を空引く音が響き渡り、何も出ない銃口の代わりに『BLAME!』とダンテが口ずさんだ。 「すると『大当たり』! ――――な、簡単だろ?」 そう言ってニヤリと不敵に笑うダンテの顔を見ているうちに、その話の内容を何もかも信じてしまいそうな気持ちになる。 我に返った時、心の中に燻っていた黒い感情は綺麗に消えていた。 代わりに堪えきれない可笑しさが込み上げ、ティアナは泣き出すのと笑い出すのを同時に堪えるような変な表情を浮かべた。 「何よ、それ……。そんなに簡単にいくなら、誰も苦労しないわよ」 「案外上手くいくもんさ。そして、一仕事終えたら相棒に祝福のキスだ。忘れるな? 大切なのは愛さ」 冗談めかしてそう言いながら自分のデバイスに口付けの真似をするダンテと、それを見て苦笑するティアナの間に、もうわだかまりはなかった。 この日、それまで積み重ねてきた全ては崩れ去った。 そして代わりに手にしたものは、これまで信じてきたものとは全く違う価値観と、力だった―――。 あの時に教えられた<力>は、今もこの胸に宿っている。 「でやぁああああああっ!!」 ティアナの両腕に集束される魔力がピークに達し、それは電光と化して荒れ狂った。 カートリッジと自身の魔力を掛け合わせ、更にそれを限界まで圧縮した反動によって放電現象を起こす程の力を銃身と両腕に纏う。 魔力を一点に溜める―――魔法の技術としては、ごく単純なもの。唯一つ、それが桁違いのレベルまで極められたものだという事以外は。 強く固められた雪は氷塊となって高温でも簡単に溶けはしない。 エネルギー体である魔力を限界まで集束し、物質化せんばかり圧縮した魔力弾がそれだ。 かつてない現象に、スバル達はもちろん、観察しているなのはとシャリオさえ驚愕に目を見開いていた。 「狙って……!」 過剰な魔力で震えそうになる銃身を押さえ込み、二つのターゲットに狙いを付ける。 ガジェットの動きは速い。もうかなり距離は開いた。 この距離は―――問題ない、必中範囲内だ。 「撃つ! <チャージショット>―――Fire!!」 ティアナの雄叫びに続いて、銃口が咆哮を上げた。 押さえ込まれていた魔力はまるで獣のように凶暴性を増し、雷鳴にも似た銃声を轟かせて『連続で』解き放たれる。 チャージショットは一発の魔力弾に力を集中するのではなく、デバイスそのものに魔力を集束させる事でその威力での連射を可能にしていた。 放たれた六連射。 それら全てに恐るべき威力と弾速を秘めた魔力弾は、一瞬にしてガジェットを捉え、AMFごと機体をぶち抜く。 無効化し切れない程の勢いと圧縮率がAMFを突破した理由だ。単純だからこそ明確で確実な手段だった。 魔力弾は全弾例外なく2体のガジェットを貫通し、その身に砲弾を受けたような大穴を空けた後、なおも道路を抉って霧散した。 「……やったぁ」 動く物がなくなり、誰もが息を呑むように静寂が満ちる中、スバルの感嘆の声が漏れた。 そして、それはすぐに歓声へと変わる。 「ナイス! ナイスだよティア~、やったねっ!!」 実際の声に加えて念話でも聞こえるスバルのはしゃぎ声が、疲労した体に何故か妙に心地良かった。 魔力を振り絞り、神経もすり減らした射撃のせいで息は乱れて脱力感も襲っている。 「このくらい……当然よ」 だが、同時に爽快感もあった。 信じて貫いた果てに、道が見えたのだ。 これまで自分の積み重ねてきた経験が生んだ結果だからこそ、余計に誇らしい。 「―――JACK POT(大当たり)」 自然と浮かんでいた笑みのまま、ティアナは最後を締めるようにそう呟いた。 それからその続きを思い出して、自分のデバイスを見つめたまましばし躊躇い、やがてほんの少し触れる程度にキスをした。 「強引に抜きやがったな、あいつ……」 最後の一撃を見届けたヴィータは、どこか面白そうな表情で呟いた。 傍らのシグナムも同じ顔をしている。 「愚直なまでの一点突破―――魔導師としては未熟だが、騎士としては見所があるな」 「あーあ、また始まったよ。シグナム好きそうだもんな、ああいうの」 「お前も似たような戦闘スタイルだろうが」 魔法以外のスキルで戦闘力を高めるタイプのティアナは、古い騎士の彼女達にとって妙な親近感を与えるものだった。 それに、ティアナ以外の新人メンバーに対しても、予想以上だったというのが二人の見解だ。 「ひよっ子どもには違いねえ。けど……なかなか面白くなりそうじゃねえか」 「同感だ」 可能性に満ちたルーキー達―――そう評したはやての言葉もあながち嘘ではない。 この機動六課があの四人によってどう変わってくのか。 いつの間にか、ヴィータとシグナムの胸のうちにも燻るものがあった。 「はやての言うとおりだ……」 昔と比べると随分変わった自分達の主。 その彼女がよく口にするようになった言葉が自然と出てくる。 「刺激があるから人生は楽しい」 「全員、最初の場所へ集合。10分の小休止の後、訓練を再開するよ」 初の模擬戦訓練をとりあえずの勝利で終え、気を抜く新人達になのはは指示を出す。 モニターに映る四人には少し疲労の色が見えるが、それを上回る興奮が足取りを軽くさせていた。 最初は初のガジェット戦で、半分くらい彼らの敗北を想定していたが、予想を超える結果に満足げに頷く。 「四人とも、思ったよりやりますね。所々驚く場面がありましたよ」 「そうだね。前衛はもちろん、後衛のメンバーの活躍もびっくりしたかな」 シャリオの言葉になのはは同意した。 おそらくこの四人の中では最強の単体戦闘能力を持つスバル。 年齢を考えれば驚異的なセンスとスピードを持つエリオ。 対AMFにおいて有効な手段を見出したキャロ。 そして―――。 「やっぱり、同じ射撃系魔導師のなのはさんとしては、一番気になるのはティアナ=ランスターですか?」 シャリオに意地悪げな笑みで図星を突かれ、なのはは苦笑を浮かべた。 ティアナの放った最後の射撃―――あれが眼に焼き付いている。 「射撃魔法のスキルレベルでは初歩の技。 もちろん錬度は半端じゃなかったけど、誘導性を付加できない過剰圧縮の魔力弾は命中率を完全に本人の腕に依存しているからね……魔導師としてはまだまだ未熟かな」 どちらかと言えば、魔導師というより戦闘者としての能力が高いのだ。 あれがデバイスでなく本物の銃であっても変わりはしないだろう。 「……でも、あの射撃はすごかった。魔力以外のものが込められてるのを感じたよ」 「魔力以外、ですか?」 絶えず四人のデータを取り続けていたシャリオが理解出来ない表情で呟く。 数字やデータでは表示されない何か。 なのはの心を震わせた強い衝動。 「魂、かな……?」 冗談めかして答えながら、なのははそれがあながち間違った表現ではないだろうと思っていた。 かつて自分が幼かった頃は幾つも抱いていて、成長した今はもう思い出す事しかしない、ゆずれない想いや意志。それを感じた。 大人になり、現実を知って、人の輪の中で生きる為の節度も身に付いてきた。 がむしゃらに走るだけなんて、もう出来ない。 ―――でも、少なくともあのティアナにはそんな形振り構わない熱い衝動が宿っている。 久しく感じたことのなかった高揚がなのはの胸の内から沸々と湧き上がってきていた。 何度となく行ってきた新人への教導。今回のそれは何処か一味違うような、不安とそれ以上の期待を感じるのだ。 「……次の模擬戦訓練、少し難易度上げてみようか」 「おっ、本領発揮し出しましたね、なのはさんのスパルタ地獄」 「スパルタで結構。訓練で地獄を味わうほど、現場では楽になるからね」 茶化すつもりだったシャリオは、そう答えて爽やかに笑うなのはの顔が一瞬鬼に見えて、知らず身震いした。 管理局内において<白い悪魔>と評される理由の一端がここにある。 それは圧倒的な力を指すものではない。必要な厳しさならば、例え鬼と呼ばれても痛苦を与え続ける教導官として姿勢から来るものだった。 「八神部隊長も言ってたでしょ? 部隊の誰にでも<不幸>は襲い掛かる。そして、あの子達はその確率が一番高い。 その時に、何かが足りなかったなんて後悔はさせたくない。 だから、わたしは育てるよ。例え鬼と思われてもいい、あの子達が自分の道を戦っていけるように……」 そしてこの四人なら、これまでにない成果を生み出す事が出来る。 そう確信を持って、なのははモニターに映る若きストライカー達を見つめていた。 彼らの訓練は、まだ始まったばかり―――。 出会いと戦いの夜が明け、仕事の報酬を受け取ったダンテは自分のネグラへと向かっていた。 管理局の治安から外れた廃棄都市街の一角にダンテの事務所はある。 少し前まで、そこはスラム同然の都市でもとびきり物騒な、ゴミとゴミ同然の人間が転がる厄介事の溜まり場だった。 しかし今やこの付近一帯に人気は無く、ただゴミだけが転がっている。 もちろん全てはダンテがここに居を構えてからだ。 強盗に押し入った人間が窓から吹き飛び、夜な夜な銃声と不気味な人外の悲鳴が木霊する場所にはさすがの荒くれ者達も近づくのを恐れたのだった。 悪魔も泣き出す危険地帯―――正しくダンテの店はその名を体言していた。 この辺りを訪れる者は、追い詰められて後の無い依頼人か奇特な知人、もしくはゴミ収集車くらいのものだった。 その閑散とした道を、ダンテは呑気に欠伸をしながら歩く。 ここしばらく<合言葉>の依頼が絶えない。仕事があるのはいい事だが、<悪魔>絡みの事件が増えるのは厄介事の前兆だ。 この世にいないハズの者が徘徊する事は、悪夢の序章を感じさせる。 しかし、そんな深刻な予感もとりあえず置いておいて、今はシャワーを浴びて一眠りしたいというのがダンテの本音だった。 区を跨いで仕事に飛び回るのはとにかく疲れる。勤勉な自分なんてスタイルじゃない。 人生には刺激と余裕が必要だ。 それがダンテの信じる世の真理だった。 「それとピザ、それからストロベリーサンデー……」 そんな風にいろいろと個人的な真理を付け加えながら、ダンテは辿りついた事務所のドアノブに手を掛けた。 鍵はいつも掛けないが、この事務所に盗みに入るバカはもういない。 ダンテは何気なくドアを開け、 内側から巻き起こった凄まじい爆発に吹き飛ばされた。 「うぉおおおおおおっ!!?」 ドア越しに奇襲された事はあったが、さすがに事務所を爆破されるのは初めてだった。 完全に不意を突かれた事態に驚く事しか出来ず、ダンテはドアと一緒に為す術も無く宙を飛ぶ。 爆風と炎に揉まれ、ゴミのコンテナに盛大に突っ込んだ。 爆発で事務所の窓という窓は割れ、単なる穴になった玄関からは黒煙が立ち昇る。 その中から、人の形をしていない三つの影が浮かび上がった。 これが<悪魔>のそれであるなら、ダンテにとって日常茶飯事の流れだった。 しかし、今回は違った。 黒煙の中から現れたモノは無機質な表皮とセンサーの眼を持つマシーン。 ガジェットだった。3体のうち2体は、ダンテは知らないがティアナ達も相手をした既存のタイプだ。 しかし、2体を付き従えるように一歩退いた位置に浮遊する一回り大きな影は少々様子が違う。 二つのタンクのようなものが増設され、アームケーブルとは別のベルト状の<腕>を持っていた。明らかに通常のガジェットとは違う強化が見て取れる。 そんな襲撃者達の詳しい情報を、もちろん魔導師ではないダンテは知り得ない。 コンテナに突っ込んだダンテはドアの破片とゴミに埋まり、淵から突き出た二本の足は力なく垂れ下がっているだけだ。 常人ならば、爆発に巻き込まれて気絶したか、あるいは死んだと思える。 一向に動かないダンテの様子を見て、沈黙していたガジェットの1体が素早く動き出した。 アームケーブルを伸ばしてコンテナに近づき―――次の瞬間、装甲を突き破って背中から肉厚の刀身が顔を出した。 「―――おい、鉄屑。風呂場とベッドは吹き飛ばしてないだろうな?」 コンテナの中から不機嫌そうな声が響き、そこから伸びたリベリオンに貫かれたガジェットがかろうじて答えるように火花を飛ばした。 フンッ、という鋭い呼気と共に今度は鋼が宙を舞う。 突然ロケットのように加速した剣に貫かれたまま、ガジェットの機体は事務所の二階に文字通り釘付けになった。 「見ない顔だな? 最近よく見る辛気臭い奴らとは違うが、無表情な奴は好きじゃない」 ゴミを払い落としながらダンテが姿を現した。 残った2体のセンサーを覗き込み、冗談めかして笑うダンテに、しかしもちろん愉快な色など欠片も浮かんでいない。 機械らしく戦いの雄叫びも上げずに、通常タイプのガジェットが突然攻撃を開始した。 中央の黄色いパーツから細く集束された熱線を放つ。 センサーに偽装し、攻撃に予備動作も伴わないその一撃を、ダンテは軽く体を傾けるだけで難なく避けた。 「おいおい、いきなり青色の変なもん撃ってくるな」 肩を竦めながら無造作に敵に歩いて近づく。 間断なくガジェットからの射撃は続くが、それらは全て人ごみを避けるような何気ない動作で回避されていた。 すでに目の前にまで接近したダンテを恐れるように、今度はアームケーブルが伸びる。 もちろんその細いアームの打撃力は低い。眼を狙って迫る攻撃を、やはりダンテは難なく掴み取った。 「腰を入れろよ、タイソンのパンチの方が十倍速い」 リベリオンは事務所の二階に突き刺さったままだ。 ダンテはそれを呼び戻すこともせず、空いた右手を硬く握りこんだ。 「形が似てるからお前はサンドバックに決定だ」 そして次の瞬間、拳がガジェットの鋼鉄のボディを掬い上げるように打ち抜いた。 腰の捻りと体重移動を十二分に効かせたプロボクサー顔負けのブローが、センサーの防護ガラスを砕いて機体内部に潜り込む。 中にある部品らしきものを適当に掴んで抉り出し、続いて体重を乗せた撃ち下ろしの右が炸裂する。 装甲を陥没させたガジェットは地面にめり込んで完全に沈黙した。 「ハッハァ、硬いサンドバックだったぜ! ……痛ぇ」 テンション高く両手を広げるポーズを見せつけたダンテだったが、やはり堪えきれずに少し赤く腫れた右手を押さえて蹲った。 しかし、残った最後の1体はそんな彼の無防備な姿を見ても微動だにしない。 どうやら奴が敵の真打ちで間違いないらしい。笑みを消し、拳を擦りながらダンテは鋭い視線をそいつに向けた。 『―――素晴らしい。素手でガジェットを破壊するなど、人間離れした力だ』 唐突に、口も持たないそいつが喋りだした。 スピーカーを通したような電子音声には確かな感情を含んだ人間味がある。 ダンテはそれが事務所を爆破した傍迷惑な黒幕の声なのだと察した。 この機械を通して何処かで見ているのか? 『いや、そもそも君は半分ほど人間ではなかったね。これは失礼した』 そして続くその言葉に、ダンテの雰囲気は豹変した。 敵も味方も変わらず相手をからかうような余裕のある態度が消え失せ、黒い瘴気を纏う殺気が噴き出す。 「……どうやら、随分と根暗な野郎みたいだな。コソコソ人の事を嗅ぎ回るんじゃねえよ」 目に見えるほどの魔力を体から立ち昇らせて、ダンテは明確な敵意を無機質なセンサーに叩き付けた。 それは例え電波を経由しても消せない、絶対的な死を予感させる言霊だ。 ほんの僅かだが、スピーカー越しに息を呑む音が聞こえた。 『…………恐ろしいね。今の君は<悪魔>寄りらしい』 「そう思うならとっとと出てきて謝罪しな。事務所の修理費払うなら、許してやってもいいぜ」 そう言って口の端を吊り上げたダンテの顔は、笑みの形を作りながらも牙を剥く獣のそれだった。 ガンホルダーからデバイスを抜き、いつ攻撃が始まってもおかしくない緊迫した状況で、二人の会話は続く。 『それはすまなかったね、悪気があったわけじゃないんだ。実は君とは友好的な関係を築きたいと思っている』 「だったら、まず人と話す時には顔くらい見せるようにしろよ。 ママに言われなかったか? 『顔を向けて話しなさい』『名前を名乗りなさい』『他人の家を爆破しちゃいけません』」 丁寧な物言いが逆に勘に触る。 今すぐにも撃ちそうになる苛立ちを抑えるように、ダンテはデバイスを玩んだ。 『これはまた失礼した。ワケあってまだ本名は明かせないが、私のことは<ドクター>と呼んで欲しい。この機械を作った博士だ』 「OK、ドクター。さっさと本題に入ってくれ。この鉄屑を弁償しろってんならお断りだ」 ダンテは足元に転がったガジェットを踏みつけた。 『それでは本題に入ろう―――<魔剣士の息子>である君の力を貸りたいのだ』 <ドクター>の口にする情報に、もうダンテは驚く素振りを見せなかった。 何処で手に入れたかは知らないが、コイツは自分を知り尽くしているらしい。動揺して見せるだけ癪だ。 だが、話の内容は少しだけ意外だった。 「……依頼か?」 『契約だよ。私の目的の為に力を貸して欲しい。もちろん、十二分な報酬は用意するつもりだ。 金は言い値で払おう。君が失った魔具を含め、戦闘力の面でも君の力を引き出す最高のバックアップを用意している』 提示される仕事の内容を聞き流しながら、もはやダンテは何も言わず静かにデバイスをガジェットへ向けた。 コイツは<悪魔>を知っている。 それでもなお、恐れを見せない人間は二通りだ。悪魔を恐れぬ心の持ち主と―――悪魔の力に魅せられた者。 しかし、完全な敵対者となったダンテの敵意を意に介さず、ガジェットから聞こえる声は話を続けた。 『―――もちろん、この世界の技術であるデバイスも最高の物を用意しよう。そんな出来の悪い玩具などではなく』 ダンテの握る簡易デバイスを指して、何処か嘲るように言った。 その一言で、ダンテの大して迷いもしなかった意思は完全に固まった。 「そいつぁご親切に。―――『NO』だ」 <ドクター>の誘いを歯牙にも掛けず、引き金を引いた。 しかし、魔力弾は発射されない。カチッカチッと虚しく引き金を空引く音が響く。 ダンテのデバイスに備えられたトリガーは機能のない完全な<遊び>だ。銃を使う時の癖と、魔力弾を放つ時のイメージをしやすくする為の物に過ぎない。 だから引き金を引いてもそれが作用して弾が出ることは無いが、それ以前に魔力が集束出来なかった。 『言い忘れていたが、既にAMFの範囲内だ』 眉を顰めるダンテを嘲笑するように<ドクター>が告げた。 『君の魔力結合は、この無効化フィールド内では即時分解される。分かりやすく言うと―――無駄だ』 「なるほど、クソッタレな機械だ」 いつの間にか装置を発動させたガジェットを睨み据え、ダンテは舌打ちする。 やはりダンテの知らない情報だったが、このガジェットは新型の試作品として造られた物だった。 AMFの範囲と出力共にこれまでの物を凌駕し、例えダンテのデバイスが高性能であってもこの中で魔法を行使することは酷く難しい。 そもそも遠隔操作によって全く身の危険のない<ドクター>は余裕を持って会話を続けた。 『ところで、理由を聞かせてもらっていいかな? 何故、私の依頼を断るのか』 「簡単さ、あんたが気に入らない」 『事務所に関しては弁償しよう』 「それにな」 無力化されたデバイスを目の前に掲げ、ダンテは小さく笑った。 陥った自らの状況に怒りと苛立ちを感じる中、そのデバイスを一瞥した瞬間だけ瞳から険が薄れる。 「―――こいつは俺のお気に入りでね。それを馬鹿にされて、尻尾は振れないな」 視線をガジェットに戻した時、ダンテが向けたものはそれまでの黒い感情ではなく、汚れない人間としての怒りだった。 もはや単なる鈍器と化したデバイスを、再びガジェットに突き付ける。 『……どうやら、脅威となるのは君の<力>だけのようだ。精神はあまりに不完全すぎる』 「それが人間さ。交渉が決裂したところで、こいつを喰らいな」 『だから無駄だと……っ!』 嘲りは驚愕を以って遮られた。 突きつけられたデバイスと、それを握るダンテの腕におびただしいまでの魔力が集結しつつある。 血のように凄惨で、炎のように燃え滾る真紅の魔力。 極限まで集束されたそれが、AMFの影響下にあってなおプラズマのように荒れ狂ってスパークを繰り返していた。 「玩具かどうか試してみな? 悪魔を葬る銀の弾丸だ、ドクター・フランケンシュタイン」 ニヤリと笑うダンテの形相は恐ろしい気迫に満ちていた。 暴走寸前にまで込められた魔力が放たれた際の威力は想像に難くない。 もはやガジェットは完全に沈黙を貫いている。機械の姿に怯えは見えず、しかしセンサーの奥で潜んで見える恐怖を隠して。 そして唐突に、ガジェットは逃走に移った。 弾けるように上空へ飛び上がり、そのまま高速で飛行して、空を飛べないダンテから逃れようとする。 しかし―――。 「―――JACK POT」 引き金を引く前から必中確定。真紅の魔力弾が、無防備な標的の背を撃ち抜いた。 轟雷のような銃声が響き渡り、次の瞬間銃口の先では大穴を開けられたガジェットが空中分解しながら落下していく。 先ほど自分が突っ込んだゴミのコンテナへ、盛大な音を立てて墜落した鉄屑を見届けると、ダンテはデバイスをクルリと回してガンホルダーに滑り込ませた。 「な、簡単だろ?」 誰にとも無く呟いて、ダンテは黒煙を上げる残骸の元へと歩み寄った。 弱弱しい煙を見る限り、火事の心配はないらしい。ゴミと一緒に綺麗に収まったガジェットの破片を見て、片付けの手間が省けたと満足げに頷く。 しかし、残骸に混じって見える鈍い輝きに気付いて眉を顰めた。 大破した機体の中に手を突っ込み、どうやら格納されていたらしいソレを引きずり出す。 「……まいったね、コソ泥の真似までしてたのかよ」 それは剣だった。 ダンテが常備するリベリオンとは違う形状の、一回り小さな両刃の剣だ。 シンプルな装飾と特色のない造形美を持つその剣の名は<フォースエッジ> 事務所に置いてあった物だった。 「コイツが目的だったのか……?」 どうやらおかしな細工はされていないらしい剣を眺め、訝しげに呟く。 襲撃者の真の目的がこの剣を手に入れることだったとしても疑問は絶えない。 名剣であることは確かだが、一見するとこれはただの剣でしかない。『これ一本では』ただの原始的な武器でしかないのだ。 そんな物を欲しがるなど、骨董品収集が趣味の物好きか、あるいは―――それ以外に剣の用途を見つけた者か。 「……まさかな」 脳裏に浮かんだ疑念を否定しながらも、ダンテは服の下に隠れた物を押さえた。 あの<ドクター>の目的がこの剣と、加えてもう一つ、常に持ち歩いているコレを入手することだとしたら―――? <この世界>に現れ始めた悪魔を見た時、自分の宿命とは逃れられないと悟った。 そして今、そのクソッタレな運命の導きとやらが、再び自分の目の前に強大な闇を招こうとしている。 「親の因果が子に付き纏うってか……もうちょっと楽させて欲しいんだけどな」 自分だけが知る深刻な事態の進行を茶化すようにぼやいて踵を返す。 とりあえず、今見つめるべきは、待ち受ける過酷な運命とやらでも謎に満ちた強大な敵ってヤツでもない。 二階に愛剣が突き刺さり、未だに窓から弱弱しく煙を上げる事務所の前に立つ。 ドアがなくなって随分と出入りのしやすくなった玄関から泣きそうになりながら中を覗き込んで、それから頭を抱えたくなった。 リフォームを終えた事務所の内部は見るも無残な有り様と化していた。 革張りのソファーは綿が飛び出し、苦労して手に入れたレア物のジュークボックスは横倒しになっている。床は穴だらけだ。 天井で弱弱しく回っていたシーリングファンが、ついに力尽きて落下する乾いた音が空しく響いた。 正直、敵が残したダメージはこちらの方が深刻だった。 「……OK、ドクター。あんたの気持ちはよく分かった」 再び対峙することがあればもはや無条件に敵となる決意を固め、ダンテは恨みを込めて呟いた。 「次に会ったら修理費を請求させてもらうぜ、利子付きでな」 to be continued…> <ダンテの悪魔解説コーナー> ・ファントム(DMC1に登場) 俺は蜘蛛が嫌いだ。脚が多すぎるからな。 待ち伏せして、糸でもがく獲物を絡め取る陰湿な性格もいただけない。 だが、そんなイメージを<幻影>なんて名前と一緒に吹き飛ばすのが、この巨大な蜘蛛の化け物の実態だ。 マグマの肉体を硬い外骨格で覆い、強力な炎の魔力で周囲を焼き尽くして、馬鹿でかい口で人間なんて丸呑みにしちまう。 特に長い年月を生きて力を蓄えた奴は魔剣の刃さえ弾き返す。まるっきり重戦車並だ。 何より恐ろしいのが、実際の蜘蛛の生態と同じでコイツが種族を持つ一匹単体の存在じゃないって点だ。 何千という子蜘蛛は、もちろん悪魔の弱肉強食の中で淘汰されてほとんど生き残らない。 しかし、その内の何匹かは見事生き延びて、上位悪魔に君臨する化け物へと成長するわけだ。 決して多いわけじゃないが、こんな化け物が複数存在するなんて、考えるだけでもゾッとするぜ。 さすがの俺も、退治には骨が折れるだろうな。 前へ 目次へ 次へ
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着古したパーカーを羽織った少女が走っている。 唐突に視界に飛び込んできたその光景にティアナは一瞬自分が夢を見ているのでは? と訝しがり、何処かで見たことのある少女の後姿と周囲の建物を見回してからようやく納得した。 ああ、夢だ。 フワフワと奇妙な浮遊感を感じる今のティアナの視点は、本当に浮いているかのように見下ろす位置にあった。 眼下を走る少女の背中を追うように、何もしないのに移動していく。 もう一度周囲を見回せば、視界を流れていく建物のどれもに見覚えがある。そしてそれらははっきりと確認出来るのに、空の天気や路地裏の奥に続く道はぼやけたように分からない。 当たり前だ、自分はそこまで細かい部分を『覚えていない』のだから。 ティアナはこれが『自分の過去の夢』だと理解し始めていた。 目の前を走る少女の背中。自分の背中を見たことはあまりないが、髪の色と二つに縛った髪型はよく覚えがある。 それは、丁度13歳ぐらいのティアナ自身の姿だった。 その<ティアナ>は一心不乱に走っていた。ただ、焦るのではなく、呼吸を一定のリズムに保って汗を搾り出すように。 魔導師になる為の基礎体力作りだ。朝と夜のランニングは訓練校に入る前の自分の日課だった。 やがて、走る先に古ぼけたアパートが見えてくる。 廃棄都市街に隣接するこの近辺は、都心からも離れて治安も悪い。 首都と比べれば信じられないほど汚い場所だが、決して裕福ではない家族の遺産だけで少女が暮らせる程度に安い家賃は数少ない魅力だった。 ―――本当は、寮制の魔法学校に入ることも考えていた。 死んだ兄が管理局員ということもあり、費用も多少は管理局の方が負担してくれる。そこで魔法を学ぶのも一つの道のはずだった。 だが、ティアナは此処を選んだ。 あの男が事務所を構える廃棄都市区に程近い、この場所に住むことを。 「……あっ」 走りながら、<ティアナ>が何かに気付いたように声を上げた。 過去の自分の視線を手繰りながら、そこに佇む人影を見て、ようやく思い当たる。 これは、きっとあの日の記憶だ―――。 「よお、精が出るな」 「―――ダンテ」 今の自分と過去の自分の呟きが重なった。 アパートの玄関の段差に腰掛けていたのは、ティアナの一番新しい記憶よりも幾分若いダンテだった。 今とは違う、特注品ではない市販の赤いコートを着て、片手にはワインボトルをぶら下げて過去の自分に笑いかけている。 その笑みを自分以外の者へ向けることに少しだけ苛立ちを覚える。これは記憶であり夢だというのに。 「ランニング始めたの、何年前からだっけ? 世間のダイエットにいそしむ奥様に見せたい姿だな。努力ってのはこうあるべきだ」 「体力つける為の運動なんだから、痩せたら逆に困るわよ」 「女版ロッキーって感じだな」 「ロッキーってなに?」 言葉を交わすどころか気付かれもしない自分を尻目に、過去の二人は気心の知れた者同士、軽口を交し合う。 汗だくで呼吸も乱れたままの<ティアナ>は、それでも言葉とは裏腹に嬉しそうに笑っている。 確かに、事務所でなかなか来ない仕事待っているか、物騒な場所を好んで出歩いているダンテが自分に会いに来るのは珍しい。 しかしはて、自分はこの時ここまで分かりやすい顔をしていたのか? 自分で自分を見ることなど出来ないが、無意識に自覚していたということだろうか。ティアナは一人、顔を赤くした。 「何か用?」 呼吸を整えながら、過去の自分は素っ気無く尋ねた。 そうだ、それくらいでいい。クールな調子がベストだ。主に過去を振り返る時の為に。 「まあ、座れよ」 愛想の無い反応に慣れきった様子で、ダンテは椅子代わりの段差をポンポンと叩いた。 「なんで? まだ外は冷えるわよ。汗もかいてるし……」 「なら、部屋に上げてくれるか? 散らかった部屋でお前がシャワーから上がるまで待っててもいいぜ」 「ち、散らかってない!」 ダンテの言葉に色々な種類の恥ずかしさを感じながら、怒りに任せて彼の隣へ腰を降ろす。 ああ、そうだ。今も昔も、こうやって自分は彼に敵わなかった。 「……で?」 「訓練校に入る為の試験が近いらしいな」 「世間話しに来たんなら帰って。その通り、最近いろいろ忙しくてあたしも暇じゃないから」 軽口の度を過ぎた剣呑な返事に、ティアナは過去の自分に対して舌打ちした。 自分自身の醜態とは、思い返すとこんなにも苛立つものなのか? ダンテが知らずナーバスになっている自分を気遣っているのだと、今の自分ならよく分かるというのに。 しかし、ティアナの記憶どおり、あの日のダンテはそんな自分の焦りを全部理解しているように穏やかだった。 「やれやれ、自分が背負い込んだもののことなると焦りが前に出るのはお前の悪いクセだぜ」 「別に、焦ってなんかないわ」 「そうかい? なら、クールにな。人生には余裕が必要だ」 「余裕なんて……」 「楽しめってことさ、人生をな」 そう言って笑う彼は、一体何度愚かな一歩を踏み込もうとした自分を押し留めてくれただろうか。 兄の死と、その魂に受けた屈辱を胸に刻んでから幾度も焦りは襲ってきた。 この胸に抱いた誓いを果たす為に必要なものはたくさんあるのに、凡人の自分ではどれも遠く手が届かない。 少しずつ積み重ねてきて、だけど不安はいつも燻っていて―――それが爆発しそうになった時、新しい考え方を教えてくれたのはいつもダンテだった。 一人で学んでいたらきっと知らなかった大切なことを、彼は自分に教えてくれていた。 「ティア、お前今日が自分の誕生日だって覚えてるか?」 「え……あっ!?」 「やっぱり忘れてたな。それが余裕が無いって言うんだよ」 ダンテが呆れたように肩を竦める。 あの時は驚いた。確かに自分の誕生日さえ忘れるほど日々に余裕の無い自分に代わって、そういうのには無頓着そうな彼が言い出したのだ。 過去の自分が困惑する様が、その心情も交えてよく理解出来る。 「で、でも……ダンテにあたしの誕生日なんて教えてないし……」 「戸籍関係の書類を管理してるレナードが偶然話振らなかったら、俺も今日の今日まで知らなかったぜ。お前な、スリーサイズじゃないんだからそれくらい教えろよ」 「でも、教えたところで誕生日パーティー開いてくれるようなガラじゃないでしょ?」 「確かに、ガラじゃないな。だが、無視するほど他人でもないだろ? 俺とお前は」 「あ……ぅ。ごめん……」 ダンテはストレートな好意の表現を嫌っていた。自分と同じで、恥ずかしいのだ。 だがそれでも、親しい人間への配慮を怠るようなことはしなかった。 彼も、子供の頃に家族を亡くしている。 だから気持ちはなんとなく分かる。 だから、彼が自分に親愛を向けてくれる時はいつも恥ずかしさと胸に迫る熱い感情で苦しくなるのだ。今の目の前の自分のように。 「まったく、本当にギリギリ今日知ったばかりだからな、プレゼントの一つも用意してないぜ?」 「……いいわよ、リボンつけた箱片手に来られた方がビックリするわ」 「確かに、そいつも俺のガラじゃないな」 そう言って笑い合う二人に、今度こそわだかまりはない。 試験を前にした焦りも消えていた。 「ねえ、ところでさっきから気になってたんだけど、その瓶は何?」 「これか? さすがに手ぶらで来るのもなんだったからな、レナードからくすねて来た。それなりの高級品らしぜ」 笑いながらダンテはワインのコルクを抉じ開けた。 それから、コートの裏から魔法のようにコップを取り出し、そこへ中身を注ぐ。 「飲むか、ティア。ケーキじゃないが、お前特別甘い物が好きってわけでもなかったろ?」 「未成年者……って言っても、聞かないわよね?」 「背伸びしたがるお嬢さんに大人の味を、さ。体も少しは暖まる」 差し出された安物だが頑丈で無骨なコップを、宝物のようにそっと受け取った。 琥珀のように美しい中身とそれが放つ芳醇な香り―――だが、それよりもずっと素晴らしくて暖かいものが手の中に在るような気がした。 「乾杯は、何にするの?」 「ティアナ=ランスターの誕生に」 「むず痒いからやめて」 「なら、試験の合格に……栄えある執務官への第一歩に」 「それならいいわ」 瓶とコップが小さくぶつかる音が聞こえる。 これは夢だ。でも、そんな小さな音まで鮮明に覚えている。 あの時二人で飲んだ、ほろ苦い味と喉を通っていった冷たい熱の感触も―――。 そして数ヵ月後、独学というハンデを乗り越え、自分は訓練校の試験に問題なく合格した。 背負ったものは今も変わっていない。その重みも。 だけど進んできた道、刻んできた時間の中、今の自分となるまでの間で手にしたものは幾つもあって―――。 自分は確かに、成長している。 その実感もある。 だが―――。 あの時、自分を鍛えることに苦痛などなかった。 あの時、誓いを果たすことに焦りなどなかった。 ―――今は、どうなのだろうか? 魔法少女リリカルなのはStylish 第十一話『Omen』 「おはようございます、ボス。頼まれたもの買って来ま……うわ」 我らが機動六課の偉大なる部隊長のオフィスへと足を踏み入れたグリフィスは目の前の光景に驚愕した。 むしろ呆気に取られたといった方が正しいかもしれない。一言で表すならまさに『うわ』であった。 「ん~、おはよーさん。ちょぉ、見苦しいけど堪忍してなー」 死人が出せる声があるとしたらきっとそれだろう覇気の無いはやての返事が返ってくる。 はやてはリクライニングチェアーに深々と背を預け、白タイツに包まれた美脚をデスクに乗せて惜しげもなく晒していた。 スーツは上着を脱ぎ捨て、シャツの胸元を僅かに開いている。 半分瞼の下りた眼でグリフィスを流し見る仕草も相まって、それは饒舌し難い色気のある姿―――。 ただ一つ、その眼が完全に死んでいるということを除いて。 「ひょっとして、寝てないんですか?」 「あー、分かる?」 「すごい隈です。っていうか、むしろ濁ってます」 その原因がただの寝不足だけなく、眼を酷使したせいであるとグリフィスは察することが出来た。 デスクに幾つも表示されたディスプレイと、そこに羅列される文字の山がその証拠だ。 「ちょっと調べ物しててなぁ」 手元の情報記録用ボードをデスクに投げ出し、デカイ欠伸をしながら足をボリボリと掻く。 世界の美術品をタワシで磨くかの如き蛮行。色気など欠片も存在しない。 今のはやては女としても死んでいた。 「……お願いしますから、他の職員の前でそういうことするのやめてくださいね」 グリフィスは割と切実にお願いした。 出来れば自分の前でもやめてもらいたい。幻滅とかイメージ崩壊とか以前に、何か本気で泣きたくなるから。 彼があまりに悲壮な表情をしていたからか、はやては眼を擦りながら足を下ろして苦笑した。 「いやー、ごめんごめん。グリフィス君にはちょぉ刺激的な格好やったね」 「別の意味で、ですね。 部隊長が過労で倒れたら洒落になりませんよ。無理しないで下さい。資料が必要なら、言ってくだされば整理して提出します」 「うん、でもこればかりは具体的に命令できんことやからな」 椅子から立ち、グッと背伸びをしてポキポキ骨を鳴らしながらはやてが言った。 グリフィスはデスクの方へ回り込み、表示されているディスプレイの文章に視線を落とす。 「……これは、例の襲撃事件のファイルですか?」 複数の画面に表示されていたものは、数年前から発生し始め、奇妙な関連性から<謎の襲撃事件>として一纏めにされている事件の報告書や情報だった。 管理局内でも不穏な噂となり、そして機動六課にとってはもはや他人事ではない。 先日のリニアレールの暴走事故で遭遇したアンノウンとその戦闘―――これらも謎の襲撃事件と関連付けられたのだった。 「やはり、襲撃者に共通点が?」 「車両を乗っ取った蟲の方は初めて確認されたタイプみたいやけどね、上空に出現した<死神>の方は複数の目撃例があるみたいや」 「目撃例って……ひょっとして、これまでの事件のファイル全部に眼を通そうとしてたんですか!?」 「流し読みやけどなー。約7年分やけど、遡るほど事件の頻度は下がっとるし……」 「だから! 無意味な無理はやめて下さい、そんなこと個人でやるものじゃないですよ! 命令してくれれば……!」 「それが、そうもいかんのよ」 はやては言葉を交わしながらオフィス備え付けの洗面所に向かい、蛇口を捻った。 冷水を叩きつけるようにして顔を洗えば、朦朧としていた意識も多少戻ってくる。 「……私らも体験した襲撃事件。感想はどうや?」 「感想、とは?」 「現実感が無い―――そうは思わんか?」 タオルで顔を拭いた後、再び交えたはやての視線は鋭く、そこには時折グリフィスを緊張させる上司としての迫力が混じっていた。 「六課の全員が襲撃の状況をリアルタイムで把握しとるし、細部は無理でもシャマルの観測魔法が捉えた記録は残っとる。交戦したフォワードの報告もある」 「……はい」 「記録も記憶もある―――なのに物的な形跡だけが何も残っていない。それがこの事件全体を虚ろにしてる原因やと、私は思う」 グリフィスは、内心の懸念を指摘されたような気分だった。 事件の現場となった車両内に残っていたのは破壊の跡のみ。 敵の痕跡は肉片や血痕一つ無く、あの時シャマルによって直接モニターされていなければ、司令室の人間は全員が疑っていただろう。 ―――本当に敵は存在し、襲って来たのか? はっきりとその姿を確認した後でも確信を保っていられない。 怪物。悪魔。そんな比喩しか当て嵌まらないような常識を超えた存在との遭遇はあまりに非現実的だった。 あの時感じた恐怖は確かに覚えているのに、それが夜中に背後で感じた気配や誰もいない暗闇の中に潜む者を幻視した時のように、錯覚だと自分を納得させてしまいそうになる。 得体の知れない恐怖を、『在り得ないものなのだ』と自分に思い込ませる。 「陳腐な話やと思わんか? まるで心霊事件や。 今回の事件を含む全ての襲撃事件を調べてて感じた共通点やが、どれもこれも未解決で、中では被害者も出てるのにその事件性すら疑っとるものもある。 『何も分からない』という共通点―――いや、誰も分かろうとせん。状況報告や映像記録だけで、読んでる私にも具体的なイメージや現実感が全く感じられへんのや」 「具体的な命令が出来ないというのは、そういうことでしたか」 「怪しいと言えば、どの事件も怪しい内容ばっかりなんやけどなぁ……。 霞を掴むみたいに、どれもこれも要領を得ん。直接目を通せば現場の直感で何か閃くと思うたけど、駄目、さっぱり。答えどころか問題さえハッキリせんクイズや」 事務処理だけの局員には無い、実戦や事件を体験した者だけが持つ勘の働きを期待したはやてだったが、夜通しの努力も無駄に終わったらしかった。 再び椅子に腰を下ろし、もう一度大あくびをするはやてを労うように、グリフィスは手に持っていた栄養ドリンクを差し出した。 はやてに頼まれた物で、彼女の地元世界ならば『ユン○ル』とか『リポ○タン』に相当する市販のドリンクだ。 「レリックとは別に、今回の襲撃事件の報告は全て上に回しているはずですが。痕跡が無いとはいえ、数年も続いている事件ですし」 「ん……んぐっ。一応、担当してる執務官がいるみたいやけどな、成果は見ての通り上がっとらん。 今回の事件も、記録を見る限り一番大規模なものみたいやけど得られた情報はやっぱりどれも不十分や。進展は期待できそうにないなぁ……げふ」 「事態は思った以上に深刻なのかもしれませんね。ゲップしないでください」 「このドリンク、ウマー」 栄養ドリンクを美味そうに飲み干すはやてに、もはや彼女の女としての醜態に慣れたグリフィスが冷静に突っ込んだ。 「まあ、何にせよ私らの手が伸ばせる範囲はここまでや。<悪魔>の正体を探るのは機動六課のお仕事やあらへん」 「そうですね。とりあえず、今回は無事に乗り切れた事です」 「次があった場合、無事に乗り切れる確信はないけどな」 そう言って笑うはやての表情は、自分自身を戒めるような厳しさを含んでいた。 思わず、グリフィスは口を噤む。 「何も改善出来とらん。結局、次があっても現場の人間が対処するしかないわけや。……上の無能やな」 それが、顔も知らない事件担当の執務官に対するものではなく、部隊長である自分自身に向けている嘲りであることは明白だった。 「<ここ>が今の私の戦場やというのに、何の戦果も上げられんわけや」 「……実戦のように、結果がすぐに出る戦いではありませんよ」 「それまでは、この焦りと無力感とも戦わなあかん。上司いうんは、キツイもんやな……」 実戦で、無力の代償は分かりやすく現れる。敗北や痛み。だが、上司の無力は何の罪も無い部下達に降りかかる。 八神はやてにとって自分を犠牲にすることは単なる苦しみでしかないが、他人の犠牲を背負うことは耐え難い罪悪感を伴うものだった。 はやてには、すでに背負った罪がある。 この仕事を選んだ理由に、それを償うことが含まれているのは否定出来ない。 自ら戦火に飛び込み、戦えばどれだけ楽だろう。 痛みは罪悪感を紛らせてくれる。傷は償いを証明してくれる。 人の上に立ち、誰かに命ずる度に後ろめたさが、その結果に犠牲が出れば耐え難い後悔が襲ってくるのだ。 「―――でも、これも自分で選んだ戦い方か。ごめんな、グリフィス君。愚痴ってしもうて」 「いえ。貴女の負担を軽くすることが、自分の任務です」 「あ、それカッコええ台詞やな。女やったらコロッといってしまうで」 「本心ですよ?」 「わかっとるよ。だから、グリフィス君はいい男や」 控え目に笑い合うはやてとグリフィスと間には、先ほどとは違い穏やかな空気が漂っている。 男女を越えた奇妙な信頼関係が二人にはあった。 「さあて、ひとっ風呂浴びてスッキリしてこうかな!」 胸に燻っていたネガティブな思考と、頭に残る懸念を振り払うようにはやては立ち上がる。 「今日は外回りがありますからね。陸上警備隊のナカジマ三佐との会合の予定です」 「ああ、あの人気前いいからなぁ。上手くすれば、お昼ゴチになれるな!」 「六課設立でもいろいろお世話になってるんですから、くれぐれも浅ましい真似はしないでくださいね」 「何言うとんねん。いい女は男に貢がせるもんやで?」 「分かりましたから、せめてちゃんとした格好していってくださいよ」 「訂正。グリフィス君は『いいお母さん』やね」 全く悪びれずに、未だ開いたままだったシャツの胸元を閉める。 指摘したグリフィスの方が頬を赤らめていた。どれだけズボラでもはやては若い女性、しかも美しい。 気まずげに視線を彷徨わせていたグリフィスは、デスクに表示されていたままだったモニターをもう一度見る。 改めて事件のファイルを眺め、グリフィスは一つのことに気付いた。 「この事件、首謀者が……」 「ん? ―――ああ、それな。決定的な共通点でもないけど、目に付いたからな」 謎の襲撃事件―――それらは大半、管理局の部隊が何らかの事件の捜査や戦闘中に遭遇するケースものだった。 そしてモニターに表示されていた事件は、いずれも容疑者や確定した首謀者が共通するものだった。 もちろん、それらは全ての襲撃事件の中の一部分に過ぎず、襲撃事件との関連性は全く証明できない。 しかし、共通点であることに間違いはなく、何よりもそれらの条件を抜きにしても目に付く大物の犯罪者だった。 「<ジェイル=スカリエッティ>―――ロストロギア関連を含む数多くの事件で広域指名手配されている次元犯罪者や」 後日、機動六課の初任務となった事件にもその人物が関わっていることを、はやてはフェイトから知らされる。 その時彼女は、確証も無く、ただ運命的な予感を感じずにはいられなかった。 数年の歳月をかけて時空管理局を静かに蝕んでいた謎の襲撃事件―――。 その渦中に機動六課が巻き込まれていくことを、この時は誰もが予想すらしていなかったのだった。 「はーい! じゃあ、夜の訓練オシマイ!」 教導官の言葉と共に、半日以上続いた訓練はようやく終了した。 すでに日は完全に落ちている。 なのはの終了宣言で許しを得たスバル達はへたり込む。訓練漬けの日々が続いているが、その日の終わりには皆例外なく体力を使い果たしていた。 ティアナも自分がリーダー役でなければ腰を降ろしたい気分だった。 しかし、堪える。人を動かす立場にある者が下の者に弱みを見せるべきではない。そう信じていた。 「疲れてるだろうが風呂には絶対入れ。しっかり疲れを取って、明日に備えろ。熟睡するのも訓練だと思えよ」 個別教導に入ってから訓練に合流するようになったヴィータの言葉に全員が若干覇気の抜けた返事をする。 口調こそ厳しいが、ヴィータの忠告には新人達を案じる気持ちが多分に含まれていた。 「それじゃあ、今日は解散。―――あ、ティアナはちょっと残ってね」 「え……?」 「ティア?」 「ティアナさん?」 いつも通り自室へ帰ろうとしたスバル達三人は、その言葉に思わず緊張を走らせた。 なのはの声は怒気など含んでいない気軽なものだったが、訓練の後に一人居残らせることに根拠の無い不安を感じる。 個別教導に移って以来、訓練の最中で他の仲間の様子が分からなくなることはどうしてもある。 知らない所で、ティアナが何か失敗をしてしまったのだろうか? 全員がそんな嫌な予感を漠然と感じていた。特に、相棒のスバルの心配は殊更強い。 「―――分かりました。皆、先行ってて」 しかし、当人だけは普段通り、憎らしいくらい冷静に頷くだけだった。 最初の出撃以来、ティアナの様子が少しおかしいという懸念を頭の片隅に残しているスバルが、縋るように手を掴む。 「ティア、大丈夫?」 「何が?」 「だってさ……」 「いや、なんでそんなに不安そうなのよ? あたしが怒られるのは決定なわけ?」 心底不思議で、むしろスバルの勝手な思い込みに不機嫌な表情を浮かべるティアナの言葉に、なのはの方が苦笑を浮かべた。 「そんなに深刻は話じゃないよ。ティアナにちょっと意見を聞きたかっただけだから」 「だそうよ。っていうか、エリオもキャロも釣られて不安そうな顔するんじゃない」 「ご、ごめんなさい!」 「すみません……」 恐縮するキャロとエリオの背を押し、まだ不安そうな顔をするスバルを連れて行くように促すと、ようやくティアナはなのはに向かい合うことが出来た。 三人の姿が遠のき、傍らのヴィータが黙っていることを確認して、なのはが口を開く。 「―――ティアナは、今回残された理由が分かってるかな?」 「はい」 責める口調ではない。ただ純粋に尋ねるなのはに対して、ティアナは淀みなく答えた。 「今回の訓練の主旨に背いていたからです」 「今回、メインに行った訓練の主旨は?」 「足を止めての精密射撃による迎撃と制圧です。敵の攻撃に対して回避を控え、予測と先攻によって無駄の無い反撃を行うことです」 「うん、正解。完璧だね」 なのはは生徒の解答を褒めるように満面の笑みで頷き、その朗らかな雰囲気を保ったまま尋ねた。 「それじゃあ、そこまで理解しながら訓練の主旨を実行しなかった理由は?」 「意味が無いからです」 「おいっ!」 簡潔なティアナの返答に、なのはよりもヴィータの方が怒りを露わにした。 表情にこそ表れていないが、ティアナの上官に対する応答は不遜そのものだ。オブラートに包まない率直なティアナの言動が完全にマイナスに出ていた。 しかし、身を乗り出すヴィータを優しげな表情のままのなのはが制する。 「その結論に至った理由、聞かせてもらえる?」 普段通りの敬意を失っていないティアナの真剣な眼差しと、苛立ちや怒りなど欠片も見えないなのはの穏やかな視線。 傍で見ているヴィータには、二人の心境がいずれも全く分からなかった。 「高町教導官の想定する訓練の主旨と、自分の戦闘スタイルが異なっていたからです。 自分は射撃型の魔導師ですが、立ち位置を固めての精密射撃型ではありません。移動、回避を行いながら射撃を行うスキルを持った変則的な機動射撃型です」 客観的に自身の能力を解析したティアナの言葉は普段以上に公私の壁を感じさせる。 もちろん、管理局員として必要な分別ではあるが、なのははそこに拒絶にも近い強さを感じずにはいられなかった。 「静止状態での射撃能力の向上は理解できますが、この場合運動性を殺すデメリットの方が大きいと判断しました。 自分は、動いて撃つタイプです。それが長所であると理解しています。よって、今回の訓練には意味を感じられません」 「……うん、なるほど。いいね、自分の戦い方を正確に把握してる。凄いことだよ」 はっきりと断言するティアナの強硬な姿勢に、しかしなのはは反発することもなくあっさりと受け入れた。 「でも、どんな訓練にだって意味はあるんだから、今度からはしっかり従ってね。試しにやってみて損は無いと思うよ?」 「……」 「それじゃあ、わたしからの話はここまで。もう行って良いよ。ゆっくり休んで、明日も頑張ろうね」 「…………高町教導官」 初めて、ティアナの声に感情が滲み出た。 それは苛立ちだった。 自分の態度に叱りもせず、ニコニコと笑顔のまま話を終わらせようとするなのはに、ティアナはその時初めて苛立ちと不満を感じていた。 「それだけ、ですか?」 なのはの考えがティアナには理解できなかった。 傍らでこちらを睨んでいるヴィータの方が、よほど分かりやすい。 教導に逆らっているのだから、叱られても仕方ないと思っていた。 自分の戦闘スタイルを正確に理解して、それでもなおこの訓練を行うのなら、その理由を教えて欲しかった。 新人の身で生意気にも意見する自分に怒りを感じ、訓練で叩いて欲しかった。 しかし、なのはの返した反応はあまりにも緩い。 「あたしの戦い方を理解しているなら、訓練を改善してください」 「うん、長所は伸ばしていこうと思ってるよ。でも、とりあえず今は回り道してみよう?」 「意味が、分かりません……っ」 「説明すれば頭では理解できるかもしれないけど、心はなかなか変えられないからね。今は黙って従ってみて」 「理由を説明してください!」 暖簾に腕押しななのはの態度に、ティアナはとうとう声を荒げていた。 苛立ちは募っているが、頭は回っている。自分は冷静だ。 なのに、自分の理屈に理屈で答えてくれない。こんなの無駄だ。無駄は嫌いだ。嫌いだ。 「―――ティアナ、焦ってるから」 冷水を頭からかぶせるような言葉を、なのはは告げていた。 「……何、を」 「ティアナは今、焦ってる。何故かは分からないけど、強くなることに急いでる」 「……先日の出撃で痛感したからです。いつ実戦に参加するか分かりません。強くなることを急ぐのはいけないことですか?」 「ううん、貪欲になることはいいことだよ。でも、強くなることは自分を追い詰めることじゃないと思うから」 「分かりません」 ティアナにはなのはの言っていることが本当に理解出来なかった。 彼女の言っていることに矛盾さえ感じていた。 力を求めること。強くなること。複雑なことなどない、シンプルな欲求だ。 そこに疑問を挟む余地など無いはずだった。 故に、ティアナにはなのはの言葉の意味が理解出来ない。 「分かり、ません……」 いつの間にか苛立ちは消え、奇妙な虚しさが胸を支配していた。 なのはに対するわずかな失望感もそれに含まれている。 「うん、だから結果でティアナに教えてあげる。今は、わたしを信じて」 「……はい」 その返答が、納得や理解などではなく、諦めによるものだと半ば理解していたが、なのはがそれ以上言及することはなかった。 言葉だけで全てを伝えることは難しい。 また余計な懸念をティアナが感じないよう、表情にこそ出さなかったが、なのはの心は歯痒さで満ちていた。 「それじゃあ、また明日。訓練で」 「はい」 「ティアナ。信じてね、わたしを」 「……はい」 心なし、肩を落としたティアナの背を見送りながら、なのはは自分の拳を知らず握り締めていた。 彼女が自分を信じているかどうか―――そんなこと、これまでの付き合いで分かっていることなのに。 どうすれば分かってもらえるのか。どうすれば心を通わせることが出来るのか。いや、そもそも自分はいつからこうして考えながら人と付き合うようになったのか。 子供の頃、他人を向き合う時はいつも心でぶつかっていた。 アリサやフェイト、それにヴィータ。最初は壁のあった人達と、いつだってぶつかり合うことで分かり合ってきた。 そこに迷いなど無く、恐れなど無く―――ただ信じていた。 なのに今は、ティアナに対して正しいとか間違ってるとか、自分の判断を選んで迷っている。 それが大人になった証で、短絡的だった自分の成長で、そして失くしてしまった子供の頃の力だった。 人は変わらずにはいられない。根本はそのままでも、それらを囲う世界や心は変化していく。 あの激動の子供時代から10年、なのはは自分の重ねた歳月を噛み締めていた。 「……のは。おい、なのは!」 「え!? な……何、ヴィータちゃん?」 思考に没頭していたなのはは、ヴィータの怒鳴り声にようやく我に返った。 すでにティアナの姿が見えなくなった方向へ彷徨わせていた視線を、傍らの彼女へ移す。 「ボーっとしてんじゃねーよ。気にしてんのか? ティアナの言ったこと」 「ああ、うん。もっと上手く説明してあげればよかったかな、って」 「何言ってんだ、あんなクソ生意気な口利かれたんだから一発かましてやれよ。っつか、もっと厳しくいってもいいと思うぞ」 感情的なヴィータの物言いに、なのはは苦笑した。 ティアナの言い分が正しいことはヴィータも理解している。ただ、それを抜きにして態度に純粋な怒りを感じていた。 ヴィータの考え方はいつだってシンプルだ。 思慮が浅いわけではなく、ただ自分の感じたことを隠そうとしない。 その率直さが欠点であり、同時に余りあるくらいの美点であることをなのは知っている。 「……ヴィータちゃんがティアナを教えた方がいいのかも」 「おいおい、オメー何弱気になってんだ? しっかりしろよ」 冗談とも取れないなのはの発言に、ヴィータが本気で顔を顰める。 「らしくねーぞ。まさか、本当にティアナのこと持て余してんのか?」 「ううん、ティアナのことはよく分かってるよ。 ティアナは確かに戦闘力は高いけど、自分でも言ってる通り『動く戦い方』だからね、どうしても周りへの視野が狭くなってるんだ。 あの娘は自分で戦って勝つことを第一に考えてる。フォワードとしては間違った考えじゃないんだけど、指示を出す現場リーダーとしては、一歩下がった視点も持って欲しい」 「だったら、今言った内容そのまま話してやれよ。アイツ、頭いいから理解できると思うぜ?」 ヴィータは断言する。ティアナへの苛立ちを露わにしながらも、彼女を認めていることは確かだった。 しかし、なのはは首を振った。 「さっきも言った通り、ティアナは自分で戦うやり方に納得してる。それが今の強さに繋がってるんだ。 説明をしても理解するのは頭だけ、あくまで『わたしが頼んだやり方』として受け入れるだけだよ。きっと、戦う上での優先順位は下のままだ」 今回の訓練データを整理する片手間で、独白するようになのはは自分の考えを吐露した。 「今のままじゃ、ティアナは自分から突っ込んでいく戦い方をやめられない」 「昔のなのはみてぇに、か……」 「わたしと違う点は、ティアナはその無茶がもたらす結果を分かってるってことかな。それを納得した上で、やめない」 「性質わりーな。頭の良さが裏目に出てやがる」 「ティアナが命を賭けることを、その覚悟を、止める方法は思いつかない……。ただ、気付くのを待つしかないよ」 ―――生きることは、一人で始まり、一人で終わるものではないということを。 自分の命を蔑ろにすることが、どれほど親しい者達に悲しみを与えるのかを。 理解して欲しい。強制は出来ないが、強く願う。 ティアナを想う人間の一人として、自分も含めて。 「……正直、迷ってもいるんだ。 ティアナは強くなりたい。究極的に、あの娘が求めるものはそれだけなんだから、別におかしなことじゃないかなって」 「鍛えるだけが、教導官じゃねえだろ。正しく導いてやるのが仕事だ」 「でも、ティアナはわたしが思うよりずっと冷静だし、頭が良いよ。間違ってるのは、わたしなのかも」 「……」 「ティアナに会って、自分の未熟さを改めて実感したよ。わたしは、自分に好意を持たれた関係に、慣れすぎてたんだね」 「なのは……」 「難しい、ね」 悲しげに笑うなのはの顔を、ヴィータは久しぶりに見た。 エース・オブ・エースと讃えられ、エリートと持ち上げられる少女が、強者の仮面を外して自分に見せることを許した弱みがこれだ。 それを僅かに嬉しく思い、気の利いた言葉も掛けてやれない情けなさを強く思う。 (スバル、エリオ、キャロ……それにティアナ。お前ら、自分がどれだけ幸せか、早く分かれよ) 夜空の下、ヴィータは切に願った。 (自分達が好き勝手に戦っている時にも、なのはに守られてるっていう幸せを―――) それぞれに戦う理由があると思う。たった一つの命、賭ける時はそれぞれの自由だ。 その上で、行く末を案じることは押し着せがましいのかもしれない。 でも、理解して欲しい。 家族でも友人でもなく、赤の他人として出会い、部下として扱う者を相手に、心底親身になろうとするこのお人好しの想いを。 ただそれだけは、汚れない本気の想いを―――。 (迷わず進めよ、なのは。お前のことは、あたしが守ってやる) いつの間にか見上げるようになった、それでも芯はきっと変わっていない背中を見つめ、鉄槌の騎士は自らの尊い誓いをたった一人の少女へ捧げた。 その日の夜、ティアナは寝付くことが出来なかった。 なのはの言葉が、いつまでも頭に残って離れない。 かつて、強くなることに苦痛は無く、焦りは無く―――でも今は? 「……スバル、起きてる?」 「うん、何?」 囁くような小声だったが、二段ベッドの上からはすぐに返事が返ってきた。 暗くなった部屋の闇にも目が慣れ始めるくらいの時間は経っていた。 普段のスバルならとっくに爆睡している時間だ。寝惚けた声でもない。 ティアナは少しだけ驚いていた。 「あのさ、あたし……変かな?」 普段なら、きっとこんな弱みは見せない。こんな縋るような声は出さない。 だから、やはり今の自分は変なのだと、ティアナは奇妙な実感をしていた。 「あたし、焦ってるかな……?」 ティアナの漠然とした問いに、スバルはしばらく沈黙を保っていた。 その沈黙の間に、途端に後悔と恥ずかしさが込み上げてくる。普段あれだけ偉そうなことを言っている自分が、一体何を弱気になってるんだ? 少なくとも、このヘッポコな相棒に見せるべき弱さではなかった。 ティアナはスバルが何かを答える前に慌てて前言撤回しようと口を開き―――。 「うん、最近のティアはちょっと変かな」 はっきりと告げられたスバルの言葉に、思わず口を噤んだ。 「ティアが<悪魔>って呼んでた敵。アイツらと戦ってる時から、何かおかしいって感じてたよ。 焦ってる、とかは気付かなかったけど、様子がおかしいのは思ってた。何に焦ってるのかは分からないけど、でも……アイツらが原因なんだよね?」 「……まあね」 「聞かないよ。なんか、教えてくれないと思うし」 「…………そうね」 ティアナがそう答えてから、少しだけ間が空いた。 予想していたとはいえ、ティアナの返答に少しだけショックを受けたのか。それとも。 スバルが何を考えているかは分からない。 「……わたしよりずっと頭が良いティアの悩みなんて、きっとわたしには解決できない」 普段と比べて驚くほど感情の抜けた、静かな声だった。 「だから、待ってる」 何を? 尋ねる代わりに、ティアナは視線だけを上に向けた。 「ティアが心配してること。それが上手くいっても、失敗しても、全部終わるまで、わたしは待ってるから」 「……スバル」 「何か間違って、失敗しても、いいじゃん。全部終わったらさ、あとはもう一回始めるだけなんだから。やり直せるよ、幾らでも」 ティアナは疑問に思わずにはいられなかった。 いつもあれだけガキっぽい奴なのに、なんでこんなに泣きそうなくらい穏やかで優しい声を出すんだろう? 「わたしがいっぱい失敗した時、いつもティアが助けてくれたからさ。だから、一度くらいわたしの方が助ける」 「……」 「ティアは、迷わず進めばいいよ。わたしが支える。二人でなら、大丈夫」 「……うん、ありがとう」 「いえいえ」 ティアナはかろうじて声を絞り出すことが出来た。 スバルの気遣いに、胸から込み上げてくる熱い感情が頭まで昇って溢れそうだった。 それが眼から涙になって流れそうになるのを必死に堪える。代わりに、口元に浮かぶ笑みは消せない。 スバルには見えないのにそれが恥ずかしくて、枕に顔を埋めた。 かつて、強くなることに苦痛は無く、焦りは無く―――今は? 大丈夫。 二人なら、きっと大丈夫。 その夜。 街灯と走り抜ける車のヘッドライトが照らす街の暗闇を、歩く影が二つ。 ―――いや、三つ。 いずれもフードの付いた外套を深く被り、この夜の闇の中へ更に紛れて人目を避けるよう密やかに歩く。 人のあまり出歩かない深夜。道路を駆け抜けてく車のドライバー達も、三つの影とすれ違い、そして誰も気付かない。 気付いた傍から、頭に留めず、忘れていく。 在り得ないはずのものを、錯覚だと思い込むことが普通であるように。 死人が歩くことなど在り得ない。 親を失った子供など忘れてしまう。 そして、<悪魔>の存在など信じない。 大柄な<男>一人。 幼い<少女>一人。 美しい<女>一人。 影が三つ、夜の街を彷徨うように歩き、消える。 三人の歩みが、一つの事態の前兆であることは確かだった。 クラシックな屋敷の片隅に置くだけで結構なアンティークになる骨董品のジュークボックスからは、現役を主張するようにメランコリックな歌声が流れていた。 それはこの<Devil May Cry>―――悪魔も泣き出す男ダンテの事務所に相応しくない静かな歌だった。 「女々しい歌だぜ……」 お気に入りのデスクが崩壊してしまったので、中古品に買い換えたソファーで寝転がっているダンテもぼやかずにはいられない。 <ドクター>の襲撃を受けて半壊した事務所の中で、奇跡的に息を吹き返したジュークボックスは、しかしアレ以降何故か静かで物悲しげな曲しか流れなくなったのだ。 中のディスクを交換する機構がイカレたのか、どれだけいじっても似たような曲しか流れない。 かくして、ロックをこよなく愛する悪魔狩人の住処は中高年が足げなく通うジャズバーのような穏やかさへと変貌してしまったのだった。 「クソッ、いい加減自殺しちまいそうな歌声だ。何言ってるかも分からねえ」 「死んだ恋人を惜しむ悲しい女の歌さ。知らねぇのか? 古いが、レア物の歌だぜ」 唐突に返ってきた答えに、ダンテは顔にかぶせていた雑誌を除けた。 玄関には見慣れたビア樽腹が立っている。 「あいにく<こっちの世界>の流行には疎くてね。ノックしろよ、レナード」 「ドアがあればな」 ダァム、と悪態を吐くと、ダンテはもう一度雑誌を顔に被せて不貞寝を決め込もうと躍起になった。 ここ一週間程、この店はいつになくオープンだ。そのままの意味で。 爆風で吹き飛んだ全ての窓は、応急処置として透明なビニールで塞いであるが、両開きのドアがあった玄関だけは手のつけようがなかった。 おまけに、ほとんど全滅した家具と板切れで塞いだ床の穴のせいで、さながら廃屋のような様相と化している。 ジュークボックスとソファー、それに床に転がした電話だけが生活臭を放っていた。 「いつまでこのボロ屋に住むつもりだ?」 「オイ、俺の店をボロ屋扱いするんじゃねえ」 「『元』だな。あるいは『店の跡』だ。直す目処は立っちゃいないんだろ?」 「寝室とシャワーと電話を直したら金が底を着いたんだよ」 「その後で骨董品の修理代とコートのスペア買ってちゃあな、自業自得だ」 「うるせえ」 バカにした笑みを隠そうともしないレナードの顔を、不愉快そうに本で遮り、ダンテは唸った。 結局直らなかった上に、予想以上の料金が掛かったジュークボックスの音楽が憐れむように流れる。 なんとも惨めな事態に陥ってしまったが、先立つものが無くてはどうしようもない。 この状況を作り出した犯人に対する怒りを沸々と沸き立たせながら、同時に何とも虚しい気持ちになって、ダンテはここ数日電話が鳴るのをただ待つ時間を過ごしていた。 「そんな憐れな貧乏人に、このレナード様が金になる仕事を持って来てやったぜ。ケツにキスしな!」 高揚を隠さず、嬉々として告げるレナードの言葉に、普段なら無視しているはずのダンテは渋々体を起こした。 自他共に認める小悪党であるこの男が持ってくる仕事は、どれもこれも胡散臭いものばかりだ。 大金をチラつかせて、割に合わないリスクを背負わせる。 それがレナード自身の姦計であったり、本当に不運なトラブルであったりする点がどうにも救えない。早い話が金を持ってくる疫病神だ。 しかし悲しいかな、今のダンテにとって必要なのはその金であり、真の危機はこの店が本格的に潰れることだった。 「……どんな依頼だ?」 ダンテは不本意を分かりやすい形にした表情で尋ねた。 いつになく素直なビジネスパートナーの態度に、いたく上機嫌でレナードは饒舌に答える。 「数日後にクラナガンのホテルで行われるオークションの警護さ」 「オイ、即日じゃないのかよ?」 「そこまで贅沢言うんじゃねえ。 だがな、金持ちが集まって無駄金叩き合うオークションだ。払いもいいぜ、前金でも結構な額が貰える」 「もう貰ってるんだろ? 俺の取り分で玄関のドア、直しといてくれ」 「へへ、受けるんだな?」 「……詳しい内容を話せよ」 「そうこなくっちゃな!」 ダンテの好みではない退屈そうな依頼だったが、背に腹は代えられない。 差し出された依頼内容のコピーを、渋々受け取る。 「依頼主は―――<ウロボロス社>?」 そこに書かれた見慣れない名前に、ダンテは僅かに眉を顰めた。 会社ぐるみでの依頼とは、なんとも大げさな話になってきたものだ。 「オイオイ、その会社を知らねぇのか? ミッドチルダでも有数の企業だぜ」 レナードは無教養な人間を嘆くように肩を竦めた。 「島一つ分の街を丸ごと支配しちまうような大企業だ。今回のオークション参加者でも一番の大物だな」 「料金を奮発してくれるのは嬉しいが、それ以外は興味ないぜ。それで、俺はその参加者のケツを守れば良いのか?」 「さすがにそいつは専属のボディガードがやるよ。お前さんは、少し離れた所で襲撃に備える」 「用心深いことだな」 言いながらも、ダンテはシークレットサービスの真似事をやらずに済んでホッとしていた。 金持ちの護衛など、一番苦手な仕事だ。 もちろん、それが見た目麗しい令嬢の相手なら喜んでするのだが、あいにくと護衛対象の写真は男だった。 「最近、謎の襲撃事件も頻発して物騒だからな。 オークションには時空管理局も護衛に来るらしいが、私的にガードを雇う金持ちも多いのさ」 「時空管理局だって?」 一瞬、ダンテの脳裏に久しく連絡を取っていない妹分の顔が思い浮かんだ。 しかし、すぐにその懸念を打ち消す。二人の仕事が重なる可能性などほとんど無い。 ダンテはこの時、自らが持つ因縁の強さをまだ知りもしないのだった。 「仮にもお偉いさんの集まる場所へ行くんだ、そんな派手な格好してくんじゃねえぞ? 特別に仕事着を用意してやるから、いつもの店へ来な。この部屋は仕事の話をするには向かねえ、俺の高級な鼻が腐っちまうわ」 もうすでに仕事を達成したかのような浮かれ具合で、レナードは笑いながら事務所を出て行った。 過ぎ去った後にも快晴など無い嫌な嵐が過ぎると、ダンテは遠ざかっていく笑い声を見送ってため息を吐いた。 まったく、世知辛い世の中だ。 「泣けるぜ」 どんなに情けなくても、クールさだけは失くさない声で呟き、ダンテはもう一度依頼のメモに目を落とした。 オークションに参加する護衛対象の情報が載っている。 といっても、それは詳細な個人情報などではなく、新聞の切り抜きを付けた大雑把な物だったが。 しかし、廃棄都市街の何でも屋程度には情報を気安く渡せない程に、その人物は会社でも高位の人間だった。 大企業ウロボロス社のCEO(最高経営責任者)―――。 「名前は<アリウス>か……」 死人のような顔色と野獣のような瞳を同居させた、異様な男だった。 to be continued…> <ダンテの悪魔解説コーナー> シン・サイズ(DMC1に登場) <罪>の名を持つこの悪魔は、やはり物質の媒介なしにはこの世に具現化できない低級な奴らだが、その半実体化した希薄さのせいで体への攻撃は擦り抜けちまう。 それだけじゃなく、壁や床まで透過できるってのはちょいと厄介な特性だぜ。 唯一実体化している大鎌は、魔力を集中することで攻防一体の強力な武器だ。 動き自体は決して速い方じゃないが、近接攻撃に対する反応速度は相当なもので、対剣士の戦法を熟知した古強者ってワケだ。 <死神>と称される見た目も相まって、歴史を感じさせるオーソドックスな悪魔の代表だな。 しかし、古い物は良いなんて懐古主義じゃあ現代では生き残れないぜ。 コイツらの媒介が<仮面>である以上、弱点なんて言うまでもないよな? 時代遅れの<死神>には近代兵器で『時代の新しさ』ってヤツを味わってもらうとしようぜ。 前へ 目次へ 次へ
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タイトルリスト 魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 1st 魔法少女リリカルなのはA s? 魔法少女リリカルなのはStrikerS? 特徴 ソウルビートやバーン能力に優れる。 各項目では最高水準というわけではないが、それらとパワー・回収を高いレベルで兼ね備えており、複数のデッキタイプが存在する。 また、「なのは」や「フェイト」といった主要キャラのネームシナジーに強力なものが多い。 StS 指定されたキャラが舞台に揃う事で効果を発揮するという原作再現の永続効果が多い。 揃えるのも維持するのも容易くはないがそれに見合った強力な効果を期待できる。 N1 「なのは」と「フェイト」のネームシナジーを持ったサポートキャラが豊富。 チェンジ方式は、「CXフェイズ/チェンジ先とのコスト差+①/手札1と自身を控え室に置く」 AS 「思い出がX枚以上なら~」の方式だけでなく、自身が思い出になる事で永続的に効果を発揮する記憶イベントが登場した。 チェンジ方式は、「CXフェイズ/チェンジ先とのコスト差+①/手札1を控え室に置き、自身を思い出にする」 トップデッキ 【黄赤_なのフェイ】? その他のデッキ 【フェイト&ヴィータ】?(赤黄) 「フェイト」?の高パワー、高ソウルに「ヴィータ」?のバーン、相討ちを合わせたデッキ。回収も強く爆発力に優れる。 キーカード “雷光”フェイト? 対象にならない、全体ソウルパンプ、デッキ逆圧縮、ついでにLV.1から早出し可能と数々の厄介な効果を持つLV.3キャラ。 回復効果こそ持たないものの、決定力がありフィニッシャーとして働くことが出来る。 使い魔アルフ? 「フェイト」?指定パンプと自ターンの全体パンプ効果を持つ後列向けキャラ。「フェイト」?自体に高パワーキャラが多く、他のパンプカードと合わせることにより全レベル帯で高パワーを維持できる。 【黄赤t青型】 【フェイトビート】?と「なのは」?デッキの折衷案に守護騎士シャマル&守護獣ザフィーラ?を加えた形。回復、バーン、パワー、回収、デッキブレイクと穴を埋めていくタイプ。 キーカード 守護騎士シャマル&守護獣ザフィーラ? 起動効果による回復効果を持つレベル応援キャラ。回復効果の有用性はもちろんとして、タイトル自体に早出し可能なLV.3キャラが多いため効果の恩恵を受けるキャラが多いことも利点。 【なのは&アリサ】?(赤緑) 意地っ張りアリサ?によるアンコール付加により、場を制圧していくデッキ。回収能力が高く、妨害の出来ないデッキ相手の場合非常に安定する。 キーカード 全力全開なのは? 条件付きではあるもののパンプ効果と回収効果をノンコストで行うことが出来るクライマックスシナジーを持つ、中盤の要とも言えるキャラクター。ただし助太刀による返り討ちには注意。 意地っ張りアリサ? 「なのは」?にアンコールを付加する後列向けキャラ。「なのは」?自体のカードプールが広いため、序盤から終盤まで通してお世話になる優良後列キャラである。 コメント欄 名前 コメント すべてのコメントを見る
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登録日:2009/09/27(日) 01 33 02 更新日:2022/09/13 Tue 18 39 37NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 04年秋アニメ SF Seven Arcs うわようじょつよい でんせ なのはちゃん なのは完売 アニメ キングレコード スピンオフ セブン・アークス フェイトちゃん ベルカ式作画 ロリ 全ての始まり 全てはここから始まった 初期はわりとまともに魔法少女してたアニメ 友達になりたいと願う少女とお母さんに認められたい少女がガチバトル 新房昭之 映画化 都築真紀 魔法少女の皮を被ったジャンプ漫画 魔法少女リリカルなのは 魔法少女、はじめました。 ※ここではアニメ第1期について記述する。 『とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱』に収録されている同名のミニシナリオのスピンオフアニメ。 その後設定を変更し、2004年10月~12月に全13話が放送された『魔法少女リリカルなのはシリーズ』の第1期。 ☆ストーリー 自称・平凡な小学3年生高町なのはは道端で傷ついたフェレットが倒れているところを見かけて家に連れて帰る。 フェレットの正体は異世界からやってきた少年ユーノ・スクライアだった。 彼からとある貴重な危険物がこの世界に来ていることを知ったなのはは協力を決心する。 こうして魔法少女の日々が始まった。 ☆登場人物 高町なのは 声:田村ゆかり 主人公、高町家の次女で私立聖祥大附属小学校3年生。 明るく優しい性格で強い正義感を持つが、辛い事、悲しい事を抱え込んでしまう癖がある。 学校の成績は良い方で理数系が得意。 ただし文系と体育は苦手。 小説版では「白い悪魔」と呼ばれた。 ユーノ・スクライア 声:水橋かおり 異世界からなのは達の世界にやってきた少年。 普段はフェレットに姿を変えており、高町家にペットとして預けられることになる。 フェレットが真の姿ではない、念のため。 月村すずか 声:清水愛 なのはのクラスメイトで親友。 なのはの兄・恭也の恋人である月村忍の妹。つまりなのはの義理の妹(予定) 猫好き。 「夜の一族」……? なんのことですか? アリサ・バニングス 声:釘宮理恵 なのはの親友、お金持ちのお嬢様で快活とした女の子。 犬好き。 「地縛霊」……? なんのことですか? 高町美由希 声:白石涼子 なのはの姉で眼鏡に三つ編みの少女。 私立風芽丘学園2年生。 可愛いもの好きで、フェレット状態のユーノを非常に可愛がっている。 高町桃子 声:天野エリカ なのはの母で「翠屋」のパティシエール及び経理 なのはを信頼しつつも、心配している。 高町士郎 声:一条和矢 なのはの父で喫茶店「翠屋」店主。 器が大きく、包容力がある。 「小太刀二刀御神流」正当継承者。 このシリーズではご存命。 高町恭也 (たかまち きょうや) 声:緑川光 なのはの兄。 クールで寡黙だが優しく、なのはにとっても頼れる人。 士朗から「小太刀二刀御神流」という剣術を受け継ぐ。 月村忍は両家公認の恋人。 月村忍 (つきむら しのぶ) 声:松来未祐 なのはの親友・すずかの姉。 吸血鬼ちゃうわ。 高校時代からの同級生であるなのはらの兄・恭也の恋人もとい内縁の妻。 フェイト・テスタロッサ 声:水樹奈々 金の髪と「寂しげな目」をしたもう1人の魔法少女。ジュエルシードを求めてはなのはと戦うことになる。 一見冷たそうな印象があるが、実際はとても心優しい性格。 プレシア・テスタロッサ 声:五十嵐麗 フェイトの「母さん」。 全ジュエルシードの確保を狙い、フェイトに収集を命じる。 その命令を果たして愛を受けようとするフェイトを虐げ続ける。 アルフ 声:桑谷夏子 ミッドチルダの山奥に住んでいた狼を元にフェイトが作った使い魔。 狼の姿をしており、人間の女性に姿を変えることもできる。が、獣耳などは当然残っている。 フェイトを心から慕っていて戦闘の援護から身の回りの世話まで献身的にこなす一方、フェイトを虐待するプレシアには強い反感を抱いている。 リニス 声 浅野真澄 プレシアが造った使い魔。ベースは山猫。 幼少期のフェイトの教育係兼育ての親である。 バルディッシュを製作したのも彼女。 リンディ・ハラオウン 声 久川綾 時空管理局次元航行部所属、艦隊司令官。 次元振を感知して地球にやって来た、クロノの母。 翅を出すが、妖精ではないし、ミッドチルダではなくファストラウム出身。 クロノ・ハラオウン 声 高橋美佳子 時空管理局次元航行部所属、執務官。 9歳にしか見えないが14歳のエリート。 こちらでも単独行動派だが、信頼できる「友達」がいる。 ☆用語 ★ロストロギア 過去に何らかの要因で消失した世界、ないしは滅んだ古代文明で造られた遺産の総称。 多くは現存技術では到達出来ていない超高度な技術で造られた物で、使い方次第では世界はおろか全次元を崩壊させかねない程危険な物もある。 ★ジュエルシード 「ロストロギア」の一種でユーノが発掘した。 碧眼の瞳を思わせる色と形状をした宝石。全部で21個存在し、それぞれシリアルナンバーとして何故かローマ数字がふられている。 都築さんは本来は異世界語で書かれているけど、既に魔法で翻訳されているという説を押していた。 一つ一つが強大な「魔力」の結晶体で、周囲の生物が抱いた願望を叶える特性を持つ。 尤も、正確に叶える訳ではなく、「大きくなりたい」という子猫の願望を成長ではなくそのままでサイズを巨大化させたり 「二人っきりになりたい」という少年少女願いには無茶苦茶な大きさの大樹を作り出して、 天高くふたりを引き上げてしまう等、願望に反応して暴走すると言った方が正確なんじゃないかという効果しか引き出さない。 あまりにも危険すぎる為、ユーノが当局に管理封印を依頼したが、その輸送中の事故によって地球に飛散した。 この事故はいまだに詳細不明である。ちなみにプレシアは関わっていない。 ★時空管理局 該当記事参照。 因みにTV版は後に化物語やひだまりスケッチなどを手掛ける新房昭之が監督を務めた。 二期以降は一話で演出を担当していた草川啓造が監督を引き継いだ。 なお、TV版の設定と物語の一部は二期以降なかったことにされてしまっている。 2010年には、このアニメをリメイクされた劇場版『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』が製作された。 劇場版ではバリアジャケットのデザインやデバイスのデザインが変更。 またストーリーも大幅に焼き直されフェイト主観となり、TV版では語られなかったプレシアの過去などが新たに作成。 その為、一部からは「劇場版こそ正史、TV版は黒歴史」とまで言われている……。 一応、この劇場版はTV版とは異なる道をたどったパラレルワールドとのこと。 劇場版の漫画では、当時のことを記した資料ということになっている。 因みにスターライトブレイカーがサテライトキャノンと化した……。 DVD・関連CD販売はキングレコードが一貫して担当していたが、映画の配給はソニー系のアニプレックスとなった。 その際、映画主題歌をソニー系のアーティストにするという噂が片隅で流れなかったが、 フェイトの担当声優である水樹奈々(レコード会社はキングレコード所属)の楽曲が用いられた。 もしタイアップになっていた場合、作品イメージすら変わっていた可能性もある……。 『ORIGINAL CHRONICLE 魔法少女リリカルなのは The 1st』という漫画版が娘TYPEにて連載開始した。 作画は『Force』でお馴染みの緋賀ゆかりさん。 「休載中のforceは犠牲になったのだ……」 MOVIE 1stをベースに、テレビ版、小説版、サウンドステージなどを入れているらしい。原作は? 追記・編集お願いなの! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] いつの間にかリンディさんミッド出身じゃなくなってたんだな。クロノはハーフの可能性があるのか、原作だと日本人にそっくりなのに。 -- 名無しさん (2013-09-14 13 11 49) ある意味シュールだよね。 -- 名無しさん (2013-10-11 01 40 55) アリサがリムジンの車窓に項垂れた辺りから何かがおかしくなった -- 名無しさん (2013-11-18 08 52 54) とらいあんぐるハートからのファンは今どれだけいるだろうかなぁ……… -- 名無しさん (2013-12-29 21 14 28) まさかこんなにパラレルワールドが現れるとは、当時は思ってもみなかったな。 -- 名無しさん (2014-01-06 19 35 23) シリーズが進むごとに敵はどんどん強くなっていくけど、事件規模は小さくなってるような……。並行世界の時を止めるヒドゥン、次元世界を壊しかねないジュエルシード……最初が大きすぎたか。 -- 名無しさん (2014-01-07 01 13 45) ↑いやぁ、闇の書とゆりかごもチートスペックよ?止めるのが早すぎただけで -- 名無しさん (2014-01-07 06 40 45) 原作での地球とミッドは並行世界という関係性で。そんな原作の並行世界がアニメ版で、そこから映画、ゲーム、漫画という並行世界があって、そんな世界にミッドという異世界が…… -- 名無しさん (2014-01-07 10 10 48) 画像はせめて一期のにしたほうがよいのではないだろうか -- 名無しさん (2014-01-09 21 47 49) もうすぐで10年か・・・ -- 名無しさん (2014-01-10 00 09 24) 声優知ってる人多い -- 名無しさん (2014-02-03 08 15 58) そのうち惑星を一撃で破壊できる敵とか出てくるんだろうなw -- 名無しさん (2014-03-07 13 36 13) ↑フリーザがアップを始めました -- 名無しさん (2014-03-07 13 41 42) 中の人の爆弾発言で、煽り食らう可能性が… -- 名無しさん (2014-03-14 11 21 33) 確か高町なのはは原作(リリ箱)だと八歳で魔法少女引退してたよな -- 名無しさん (2014-03-14 15 37 12) リリカルなのはの二次創作はよく見かけるが、リリカルおもちゃ箱の二次創作はあんまり見かけないな。やはり知名度の問題だろうか……… -- 名無しさん (2014-05-11 01 23 46) ↑ 知名度はあると思う。後は、リリカルなのはの方はヒロイン多数だからオリ主が出しやすいけど、リリカルおもちゃ箱はクロノ×なのはが確定だからかも -- 電王牙 (2014-05-12 18 05 28) ↑リリカルから入ったから良くは知らないけどおもちゃ箱ってとらハの特典なんだっけ? -- 名無しさん (2014-05-12 18 10 13) ↑ いや、おもちゃ箱はとらハ3のファンディスクだよ。……出た当時は、なのはにクロノっていう恋人ができたせいで物凄いバッシングくらってたけど。 -- 名無しさん (2014-05-12 18 17 52) ↑そうなのか、知らんかった。しかし人気の子に彼氏キャラをあてがうってまた大胆な事をしたものだな…… -- 名無しさん (2014-05-12 18 45 48) ヒロイン勢にいい加減恋人作ってやった方がいい。気の毒すぎる -- 名無しさん (2014-05-12 19 25 45) ↑作者がそれを嫌ってるらしいから難しいだろうな -- 名無しさん (2014-05-12 19 45 05) ↑ 仮に恋人が出来ても、ストーリーからフェードアウトがほぼ確定しそう... -- 電王牙 (2014-05-13 07 38 58) 原作のなのはとクロノはべらぼうに甘いバカップルと化したからな。もう二次創作たるオリ主が介入できる隙がない -- 名無しさん (2014-05-13 20 07 30) そして舞台は、まどか☆マギカへ…。既にエロゲーがどうとかのレベルを超越してしまったな。 -- 名無しさん (2014-05-29 13 36 56) ↑5 -- 名無しさん (2014-05-29 13 41 43) 間違えた。何より仕事が好きなタイプだからべつに恋人とかどーでも良さそう。むしろ付き合うヤツが蔑ろにされそうで気の毒だ。 -- 名無しさん (2014-05-29 13 42 50) 恐竜進化的なアニメ -- 名無しさん (2014-09-15 09 01 02) 銀時「じ、ジャンプ漫画だと!!」 -- 名無しさん (2015-02-11 19 44 28) 平行宇宙舞台なのにスタトレやアメコミ作品と比べるとやってる事がしょっぱすぎる -- 名無しさん (2015-03-06 02 30 44) ↑そりゃ主人公サイドのお仕事は警察みたいなモンで、相手は基本身内か道具のトラブルですし。アメコミとかと比較する自体間違ってる -- 名無しさん (2015-03-06 08 38 29) デバイスの言語は英語とドイツ語だけど何か規則あるの?ミッドとベルカの差って訳じゃなさそうだし -- 名無しさん (2015-03-12 02 57 04) ↑ミッドが英語、ベルカ(古代)がドイツ語。近代ベルカ式が英語なのは、ミッドの技術で改良したからと思われる -- 名無しさん (2015-03-12 03 09 45) このアニメ(特にStrikerS以降)の影響で自衛隊、検察官、消防士、司書などを実際に目指した奴はどれ程いるだろうか。 -- 名無しさん (2015-03-28 04 50 10) いないと思うけど -- 名無しさん (2015-06-16 15 34 24) 群像劇じゃない創作モノなんてだいたい主人公基準じゃないん?たまに第三者視点や敵(他人)視点が入るくらいで -- 名無しさん (2015-09-07 16 48 58) 荒らしコメントを削除しました -- 名無しさん (2015-09-10 20 04 44) 時空管理局の項目、荒れていたのね -- 名無しさん (2017-02-09 13 11 12) ↑6 近代ベルカ式はミッド式をベースに古代ベルカ式をエミュレートしただかなんだかだった気が -- 名無しさん (2020-02-13 22 03 42) 一期と二期で設定違う事なんてあったのか、 -- 皮向ける (2020-08-08 10 47 24) 設定が強すぎるからスパロボ出て欲しいけどそうなると東方不敗みたいに生身ユニットだらけになるから精々スマホコラボがいい所だろうね。個人的に地獄公務員にクズ姫様との絡みにダンバイン、ワタル辺りとのコラボ欲しい -- 名無しさん (2021-06-11 18 35 34) シンフォギアは完結したけどまだアニメ本編のなのはは完結作まだ先かも。最後で行くならオールスター欲しいな(アニメ化しておらず完結してないフォース除く) -- 名無しさん (2021-06-21 12 06 11) 全然新情報入って来ないな…もう打ち切りになって切り捨てられたのかもしれぬ -- 名無しさん (2022-09-13 18 39 37) 名前 コメント
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魔法少女リリカルなのは Wind of Hope 管理人 御風素材区分 O 備考 拡大ユニットアイコン有り 可鈴のアトリエ 管理人 可鈴素材区分 PU 備考 魔法少女リリカルなのはA s AWACS767 管理人 tropico素材区分 P 備考 Wind of Hope 管理人 御風素材区分 O 備考 拡大ユニットアイコン有り 可鈴のアトリエ 管理人 可鈴素材区分 PU 備考 魔法少女リリカルなのはStrikerS AWACS767 管理人 tropico素材区分 PC 備考 Blue of Sky~空の蒼~ 管理人 テルス素材区分 PUWO 備考 拡大ユニットアイコン有り 可鈴のアトリエ 管理人 可鈴素材区分 PUW 備考 クラゲの実験場 管理人 むーむー素材区分 PWCO 備考 馬上の一本槍 管理人 槍騎ランナイ素材区分 U 備考 魔法少女リリカルなのはINNOCENT CRIMSONMOON 管理人 鏡冥素材区分 P 備考
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オープニング 「ETERNAL BLAZE」 作詞:水樹奈々 作曲・編曲:上松範康 歌:水樹奈々 コーラス:広谷順子 演奏:弦一徹オーケストラ 2chのアニソンランキング 11位(2007年12月版)、9位 (2008年05月版) 月刊アニメージュ年間グランプリ(アニメソング部門) 12位(第28回) VIPPERが選ぶアニソンベスト100+α 61位(第1回) エンディング 「Spiritual Garden」 作詞:三井ゆきこ 作曲・編曲:太田雅友 歌:田村ゆかり 挿入歌 1.「Snow Rain」 (第11話) 作詞:都築真紀 作曲:happy soul man 編曲:安井歩 歌:植田佳奈 2.「BRAVE PHOENIX」 (第12話) 作詞・作曲・編曲:上松範康 歌:水樹奈々 2chのアニソンランキング 156位(2007年12月版)、189位(2008年05月版) イメージソング・キャラクターソング 関連作品 魔法少女リリカルなのは (2004) 魔法少女リリカルなのはStrikerS (2007) 魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st (2010) 投票用テンプレ ETERNAL BLAZE(魔法少女リリカルなのはA s/OP/水樹奈々/2005) Spiritual Garden(魔法少女リリカルなのはA s/ED/田村ゆかり/2005) Snow Rain(魔法少女リリカルなのはA s/IN/水樹奈々/2005) BRAVE PHOENIX(魔法少女リリカルなのはA s/IN/水樹奈々/2005) OP…オープニング曲、ED…エンディング曲、IN…挿入曲、TM…主題曲 IM…イメージソング・キャラクターソング 中見出し
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床に転がした電話機が鳴っている。 丁度コートに手を掛けたところだったダンテは、器用に受話器を蹴り上げると、そのまま空中でキャッチして耳に押し当てた。 「デビル・メイ・クライだ。生憎だが、出張の為しばらく休みだぜ。期限は未定だ、よろしく」 受話器から響く怒声とも懇願ともつかない雑音を聞き流しながら、無造作に放り投げる。 キンッと音を立てて、輪投げよろしく電話機の上に乗っかった。 最初から興味など無かったダンテは、それを尻目にコートを羽織る。 久方ぶりに袖を通した、ダンテの性格を体現する真紅の服装に自然と笑みが浮かんだ。やはり、この格好が一番しっくりくる。 「そう言うワケだ、レナード。後は頼んだぜ」 「……何日も事務所空けっ放しで、俺に連絡も寄越さないでおきながら、いきなり帰って来てそれかよ」 そこだけ新品同様になっている入り口のドアの傍に立っていたレナードは、弱弱しく悪態を吐いた。 もはや、この男に何を言っても無駄だと悟っている。 大仕事をこなし、報酬も入って万々歳という直後にそのまま消息を晦ましたダンテをレナードが今の今まで気に掛けていたのは、もちろん安否を気遣う理由ではない。 便利屋としても裏の世界に名の知れ渡っている<Devil May Cry>に、唯一まともに仕事を斡旋できるのがレナードの強みの一つだからだ。 ダンテが帰って来ていきなり無期限の休業宣言をすれば、一番ワリを食うのは誰か言うまでも無い。 「ここ最近、キナ臭くなってそこら中の組織が殺気立ってるんだ。腕っ節の立つお前さんだって引く手数多さ。 ……それを、いきなり全部キャンセルはねぇだろ!? 頼むよ、話もつかねえとなったら俺が酢豚にされちまう!」 「キャンセル? 話も聞いてねえよ。人の都合も考えずに勝手に請け負うからだ。せいぜい料理されないようにダイエットに励みな」 「ひ、人事だと思ってよ……!」 レナードの悲壮な訴えなど歯牙にもかけない。 これが無力な一般人の叫びなら良心が痛まないわけでもないが、相手は小ずるい腹黒の小悪党だ。自業自得というものだろう。 それでもレナードは得意の口八丁で何とかダンテの考えを改めさせようと食い縋る。 「ダンテ! 金払いのいい依頼かもしれないけどな、さっきも言ったとおり最近何処も殺気立ってるんだ。 そんな時期に、管理局からの長期の仕事なんて引き受けてみろ。どの組織からも睨まれるぜ? 便利屋としての信頼もガタ落ちだ、公的組織に尻尾振る飼い犬だってな!」 「言わせたい奴には言わせとけよ。外に知り合いを待たせてあるんだから、足引っ張るな。もう行くぜ」 「外? あのスゲエ車に乗った綺麗な金髪のオンナか?」 「ああ、美人だろ?」 「お前さんの好きそうなタイプだよ。アンタの事務所の前じゃなかったら、強盗と好きモノの変態が群がってくるだろうぜ……」 「あんないい女なら尻尾を振ってもいい、そうだろ?」 ダンテは舌を出して『ハッハッハ』と犬の真似をしながらおどけて見せた。 二本の<得物>を仕舞ったギターケースを引っ掴むと、縋るレナードへウィンク一つ寄越して事務所のドアに手を掛ける。 「それじゃあな。俺のいない間、事務所の管理は頼むぜ」 「ダンテ! いつまで待ちゃいんだ!? 帰って来るんだろ!?」 答えず、気楽に手を振すると、ダンテは事務所から出て行った。 閉まったドア越しに『ちくしょー、この悪魔!』という嘆きが聞こえるのを耳に入れず、ダンテは意気揚々と手持ち無沙汰に待つフェイトの元へと向かった。 「待たせたな」 「私物は、それだけでいいんですか?」 「あまり物は持ち歩かない主義でね」 後部座席にケースを放り込み、自分は助手席へと腰を降ろす。 ここへの道すがらと同じ、勝手知ったるリアシートを後ろへ押し倒すと、ダッシュボードの上に足を投げ出した。 他人の車でここまでリラックスできるダンテの図太さに呆れながら、言っても無駄だと悟っているフェイトはため息一つで済ませ、車を走らせる。 死にかけた街の景色が前から後ろへと流れていく。時折、その景色の中に人の姿も見かけた。 なけなしの現金を抱えてベンチに横になった男。派手に着飾った娼婦。そして、路地裏の影で寄り添うように座り込んだ子供達。 それらを見る度に、フェイトはやるせない気分になっていた。 「華やかなりし街の影ってところか」 フェイトの心の内を代弁するように、ダンテが呟いた。 繁栄の在る場所には格差もまた存在する。完全な平等などというものは、文明の停滞の下でしかありえないのだから。それはこの世界においても例外ではない。 多くの次元世界との交流が複雑に絡み合うミッドチルダにおいて、訪れる人はその種と同じだけ差が存在するのだ。 「首都に住んでいると忘れてしまいがちな……これが現実だと、分かってはいるんですけれど」 「気にするな。ここも、そう悪いもんじゃない。 ――ところで、コイツか? <悪魔>と繋がりがある次元犯罪者ってのは」 一介の執務官と便利屋が世情を嘆いても仕方ないとばかりに、ダンテは話を切り替え、情報の表示された電子ボードを睨み付けた。 ダンテほど物事を割り切れないフェイトだったが、質問には頷いて答える。 「ジェイル=スカリエッティ。私が追っている、大物の犯罪者です。各所のレリック強奪に関わるガジェットは彼の差し金、最近になって<悪魔>との繋がりも濃厚になりました」 「こいつが俺の事務所を吹き飛ばしてくれた張本人ってワケだ」 「奴と会話を交わしたんですよね。本人と接触したのは、多分ダンテさんが初めてです」 「ベラベラとよく喋る、胡散臭い奴だったよ。俺は自分よりお喋りな奴は嫌いなんだ」 不機嫌そうに鼻を鳴らす。 フェイトは肩を竦めた。ダンテの証言から、スカリエッティの人物像を少しでも把握しようと思ったが、この様子ではあまり積極的に語ってはくれないだろう。 だが、打算的ではあるが共通の敵が出来ることは、共に戦う上で都合がいい。 「情報は少ないですが、スカリエッティに関しては帰ってからダンテさんにも詳しくお話します。 それで……今のところ奴の協力者として可能性の高い<バージル>という男に関してなんですけど……」 「まとめて一緒に話してやるよ」 <バージル>という名前が出た途端、目に見えて変わったダンテの雰囲気にフェイトは口を噤んだ。 ただ敵意や怒りを抱くだけではない、悲しみと懐かしさも入り交ざった複雑な表情を浮かべている。 自分とスカリエッティがそうであるように、ダンテとバージルには浅からぬ因縁があるらしい。 彼の敵であるならば、やはり自分にとっても敵となる。 得体の知れぬ<悪魔>という存在を交え、複雑に、そして肥大化していく暗黒の気配を感じながら、フェイトは車を進める先に敵の姿を幻視した。 これまで漠然としていた、自分たちが真に敵対すべき者達の姿が徐々に形となり始めている。 <奴ら>はこちらの思惑の届かぬ場所で、一体何を企み、何を成そうとしているのか――。 エンジンの僅かな振動だけが響く車内、お互いに似た懸念を抱きながらダンテとフェイトは沈黙を続けていた。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十八話『Dear My Family』 「――そこまで! <インターセプトトレーニング>終了!」 ティアナが最後の誘導弾を撃ち落した瞬間、なのはが訓練の終了を告げた。 絶え間無い疲労の蓄積から解放された安堵に、ティアナは大きく息を吐く。張り詰めた神経が解れていく感覚と同時に脱力感が全身を重石のように襲った。 座り込みたい、が。堪える。 デバイスをホルダーに差し込み、直立不動で次の指示を待つティアナの意地とも言える気丈な姿を見て、なのはは微笑した。 「今日の個人教導はこれにて終了。休め」 「はい!」 ようやくティアナの体から強張りが抜ける。 愚直なまでに公私の区別を付けたがるティアナの生真面目さも、もうなのはには慣れ親しんだものだった。今はそれすら好ましく思える。 少し気の緩んだティアナのぼうっとした視線とぶつかり、二人はしばし見詰め合って、湧き上がった奇妙な可笑しさに一緒に小さく笑った。 教導官と訓練生としての時間は終わる。ここからは少しだけプライベートだ。 「完璧だったね。次からはワンステップ先に進めるよ、ティア」 「ありがとうございます、なのはさん」 それはつまり、こういう呼び方をするようになった二人の新しい関係だった。 「誘導弾の操作も大分精度が上がってきたね。小手先の技だけど、二種類の射撃があるだけで攻撃の幅は驚くほど広がるよ」 「最近、直線射撃に偏ってる自覚はしてましたから。なのはさんのお墨付きなら、矯正は成功ですね」 「ティアならあまり細かく言わなくても自分で使いどころ考えられるよねぇ……うーん、なんか物足りないなぁ」 「いや、教導官の方が訓練に疑問持ってどうするんですか?」 「だって、あの日から意気込んで色々訓練考えてるのに、ティアってば結構難なくこなしちゃうんだもん」 以前の自分と立場が入れ替わったかのようななのはの言動に、ティアナは苦笑した。 あの模擬戦を経て、心を開いた夜――あれからティアナの日常は少し変化し、自身の中では大きく何かが変わった。 なのはは基本を教えながらも教導にティアナの要望を取り込むようになり、ティアナはそれによって過酷になった訓練を一皮向けた精神力によってこなすようになった。 もう焦りは無い。戦いへの苛烈な意志はそのままに、周囲を見渡す冷静さと余裕を持つようになったのだ。 なのはの望む、新人メンバー達のリーダー格という器になりつつあるティアナにとって、残された問題は彼女自身の戦闘力の向上だった。 「――やっぱり、一撃の威力が欲しいと思うんですよね」 訓練やチームワークについて以前より遥かに気安くなった雰囲気でアレコレと交わす中、自身の話へと移って、ティアナはおもむろに告げた。 「あたしの弱点は、ここぞという時の切り札が無いことだと思うんです」 ティアナは自己分析を冷静に口にした。 なのはは頷く。 「そうだね、射撃型はどうしても魔力容量と出力が攻撃力に直結する。 魔力弾を量はそのままに、圧縮して濃度を上げるっていうティアの方法は、上手くその弱点をフォローしてると思う。でも、限界はある」 「一発で、大ダメージを与えられる攻撃方法が欲しい。<ファントム・ブレイザー>じゃ駄目なんです」 「確かにあの魔法は、正直ティア向いてないかな。 威力と範囲はカバー出来るけど、消耗率が高すぎるよ。魔力量を効率で補ってるティアに適したものじゃない」 「どちらかというと、なのはさんのバスターと同じ系統の魔法ですからね」 近くの木の幹に腰掛け、談笑する様は降り注ぐ木漏れ日も手伝ってひどく穏やかな雰囲気を漂わせていたが、交わされる言葉は真剣そのものだった。 「……やっぱり、タイプの違うわたしじゃアドバイスは難しいのかなぁ。わたしの考えることはティアも既に考えてるみたいだし」 「存在そのものが必殺のなのはさんに、必殺技のコツを尋ねても難しいですよね」 「何その物騒な評価! ティアまでそんなこと言うの!?」 時折、そんな場を和ます冗談も交えながら語り合う。 少し前までは考えられない、なのはとティアナのやりとりだった。 「参考になるか分からないけど、わたしの場合は鍛える時短所を補うより長所を伸ばす方法を取ったよ。 例えば、当時必殺技だった放出系魔法を改良しようと思った時、発射シークエンスを変更する方法を取ったんだ。まだ未熟だったからチャージ時間が長くて高速戦では使えなくて――」 「発射の高速化――じゃないですね。なのはさんなら、チャージタイム増やして威力を上げたんじゃないですか?」 「当たり! 使いどころはとことん選ぶけど、信頼出来る切り札になったよ」 「その見かけによらない博打好きな人柄に惚れます」 「にゃにゃ!?」 真顔で告げるティアナに対して、なのはは奇声を上げながら頬を赤くした。 もちろん、当人は誤解を恐れない本音を告げただけである。なのはの性格に、どこかダンテと共通する部分を感じ取ったのだった。 なのはは気を取り直すように咳払い一つすると、改めて自分の助言をティアナに告げた。 「まあ、要するに。持ち味を活かす、っていうのが重要だと思うの」 「持ち味……」 「例えば、ティアの場合はわたしにも真似出来ない命中精度とか魔力の圧縮率。その辺にパワーアップの鍵があるんじゃないかな? 新しい魔法を覚えるより、ずっと近道だと思うよ」 「……なるほど」 ティアナは神妙な顔で頷いたが、対するなのはは自分自身の助言の余りの曖昧さに少し落ち込んでいた。 「ごめん。あんまり参考にならないよね……」 「いえ、そんなことないですよ」 首を振るティアナの眼に、誤魔化しや気遣いは無い。本心だった。 「なのはさんのおかげで、ちょっと試してみたいことを思いつきました。ありがとうございます」 何かを得た興奮と決意が、自然と力強い笑みを形作っていた。 「ははっ、どういたしまして」 そんなティアナの様子を頼もしいと思うと同時に、なのはは更に大きく落ち込んでしまう。 「……なんか、やっぱりティア自分一人で解決しちゃったみたいだね……」 出来が良すぎるというのも困りもの。 あの夜には、目の前の少女を鍛える為に一大決心したものだが、蓋を開ければ『アレ、わたし実は要らない子なの?』と思わずにはいられない現状だった。 「あ、いや。なのはさんのおかげですよ、閃いたの! ホント! ありがとうございます!」 「いいよぉ、そんな気を使わなくて……。どうせ、わたしに教導なんて向いてないの。部下の気持ちも分からない独りよがりな女なの……」 「なんでそんなに打たれ弱くなってるんですか!? なのなの……いや、なよなよしないで普段通りに戻ってくださいよ!」 模擬戦の時のように眼が死んでるなのはをティアナが慌てて慰めていた。 もちろん、半分はじゃれ合っているようなものである。互いの弱さを笑って話せる程度には、二人は分かり合っていた。 雨降って地固まる、とは正にこの事。 ――そして、もう一つ固めるべき地があることをティアナは理解していた。 「おーい、なのは。こっちの訓練も終わったぞ」 駆け寄ってくるのは同じく個人教導を行っていたヴィータとスバル。 例の如くスバルは、時にヴィータにぶっ飛ばされ、時に自ら転がり、痣と土汚れだらけだった。 「お疲れ様。スバルの調子はどう?」 「ギリギリ合格点ってところか。馬力は上がってるけど、前に指摘した部分を十分に改善できてねーな。長所を伸ばしすぎだ」 「ハハ……すみません」 一見するとヴィータとスバルの二人は同じ突撃思考タイプに見えるが、そこは年の功。 猪突猛進気味なスバルの戦闘方法に生じる粗をヴィータは前々から懸念していた。しかし、矯正の効果はあまり見込めていない。 「索敵とか位置選び、細かい点を相棒のティアナに任せすぎてたな。一人になると、その辺が隙になっちまうぞ」 「……すみません」 ヴィータの的確な指摘に、スバルは気まずげに俯いた。 チラリ、とティアナの方を一瞥し、それから何かを堪えるように口を噤んでまた俯く。 普段の快活なスバルらしくない仕草だった。 その分かりやすい態度を、ティアナはもちろんなのは達が気付かないはずはない。 あの日――模擬戦以来、それはどうしようもないことなのかもしれないが、スバルとティアナの間に小さな溝が出来てしまっているのだった。 日常の中で、二人は以前と同じように寝食を共にし、会話もしているが、やはり以前と同じように心を通わせることは出来なくなってしまっていた。 「……まあまあ、ヴィータちゃん。とりあえず、訓練はこれで終了。 スバル達はシャワーを浴びて着替えたら、オフィスに集合してね。はやて部隊長から何か発表があるらしいよ」 重苦しい程ではないが、どうにも形容しづらい微妙な二人の雰囲気を払拭するようになのはが告げた。 それじゃあ、と。これまでなら嬉々としてティアナを伴っていた筈のスバルが一人で隊舎へ向かう背を眺め、なのはは無言を貫くティアナに小声で問い掛けた。 「やっぱり、スバルとは仲直り出来てない?」 「寝る前とか、話すタイミングを計ってるんですけど……なんか、普段通りに返されると曖昧になっちゃって……」 「スバルなりの気遣いなんだろね『気にしてない』っていう。実際は、気にしちゃってるみたいだけど」 「アレは、完全にあたしの方に非がありますから。負い目の分、強く切り出せないんです」 「きっかけがあれば、だね?」 「ありますか?」 「任せなさい」 ティアナにスバルへの謝罪と仲直りの意思があることを確認すると、なのはは満足げに笑ってドンッと胸を叩いて見せた。 その仕草に小さく笑みを浮かべ、感謝の意思を込めて一礼すると、ティアナもまたスバルの後を追うように隊舎へと向かった。 なのははその背中をいつまでも見守っていた。 懸念は残っている。しかし、不安はない。 ティアナは、きっとスバルとの絆を取り戻すだろう。あるいはそれ以上のものを。 好意の反対は無関心だと言う。 模擬戦で見せたスバルへの苛烈な反発がティアナの偽らざる感情ならば、それが一端に過ぎないスバルを想う心もまた本物なのだ。 良くも悪くも、あの頑なな少女がスバルという存在を自らの内まで踏み込ませ、心を許しているという事実が、なのはには微笑ましく映るのだった。 「ホント、不器用なんだから……」 「おめーが言えたことじゃねーだろ」 年上ぶって苦笑してみせるなのはの後頭部を、ヴィータがグラーフアイゼンでコツンと叩いた。 オフィスには制服に着替えたフォワードのメンバー達とシャマルやシャリオなどの手の空いた一部の隊員だけが集められていた。 新人達もすっかり板についた一糸乱れぬ整列を、向かい合う形ではやて達隊長陣が眺めている。 その上司達の中に二人――六課では本来在り得ぬはずの姿があった。 「――もう聞き及んでると思うけど、機動六課に外部協力者を迎え入れることになった」 自分の傍らに立つ二人の人物へ隊員達の視線がチラチラと向けられるのを感じながら、はやてが厳かに告げた。 「いずれも任務の際に遭遇した<アンノウン>に対抗する為、特別措置として一時的に六課へ出頭することになった人物や。 正式なメンバーではない為、いろいろと制約と自由の違いはあるが、私らの手助けをしてくれる力強い味方である事は間違いない。皆、仲良くするよーに」 最後はちょっと茶化すように告げる。 場の空気が和んだところで、はやてが促すまま二人が一歩前に出た。 「まず、皆顔くらいは会わせてるやろ。数日前から六課にいて、今日正式に契約を交わしたダンテさんや」 「ダンテだ。ま、よろしく頼むぜ」 以前とは違う借り物の制服姿ではない、真紅のコートに身を包んだ彼本来のスタイルでダンテは軽く挨拶をして見せた。ウィンクもおまけに付ける。 既にほぼ全てのメンバーと交流のある彼の参入は好意的に受け入れられた。スバルが軽く手を振るのを、隣のティアナが諌めるのが見えて苦笑する。 そして、もう一人。こちらは新人達には全く見覚えの無い男に紹介が移った。 「こちらは本局から来ていただいた、無限書庫のユーノ=スクライア司書長や。 私よりも偉いので、言うまでも無いけど失礼のないように。気さくな人やけど、高町隊長とプライベートな関係やから玉の輿狙う娘は命賭けてなー」 「はやて……」 真面目な顔で冗談とも本気とも取れないことを告げるはやての傍らで、ユーノとなのはが引き攣った笑みを浮かべていた。 一方で、この意外な人物の登場に初耳のメンバーの中ではどよめきが起こっている。 本局勤務の重役が、身一つでやって来たのだ。個人的なコネや要請でどうにか出来る人物ではない。 ティアナや一部の聡い者達が疑念を抱く中、ユーノは咳払い一つして、人当たりのいい笑みを浮かべた。 「ユーノ=スクライアです。未だに情報の少ない<アンノウン>に関しての分析などでサポートする任に就きました。所属としてはロングアーチに位置します。どうぞ、宜しく」 簡単な紹介が終わると、堅苦しい場はそこでお開きとなった。 レクリエーションのような軽い雰囲気の中、オフィスのメンバーは二つに分かれる。 隊長陣を中心としてユーノの下に集まる者と、既に大半のメンバーと親しくなっているダンテのグループだ。 「これからお願いします! ダンテさん!」 「空中戦のログ見せてもらいました! スゴイです! あの、剣も使うって本当ですか? 良かったらボクと模擬戦……」 「エリオ君、いきなりそんなこと言ってもダンテさん困っちゃうよ。あの、これからよろしくお願いします」 『キュクルー』 抱きつかんばかりに駆け寄ってきたのは新人メンバーだった。 若さゆえの素直な性分か、真っ直ぐな好意を向けてくる三人にダンテはらしくもなく尻込みしていた。 スバルはもちろん、控え目ながらも初対面とは変わって警戒心の無いキャロの笑み。エリオに至ってはダンテに向ける視線がテレビの中の有名人に向けるそれである。 荒事ばかりの人生のせいか、尊敬と敬意を持たれるのはどうにも慣れていない。警戒混じりのフリードの素っ気無さくらいで丁度いいのだ。 「ハハッ、ここまで歓迎されるとこっちが度肝を抜かれちまうな。まあ、猫の手だとでも思って気楽に接してくれ」 何とも言いがたいむず痒さを苦笑に変えて、ダンテは言った。 そして、まるで流れ作業のように次々と見知った顔が前に現れ、言葉を交わしていく。 「ダンテさんの剣はデバイスと一緒に預かっておきます。メンテナンスもバッチリ任せてください!」 「頼もしいな。ティアがいなかったから、デバイスの方はしばらく触ってないんだ」 「ティアナのクロスミラージュも相当ですけど、ダンテさんは更に過激な扱いしてますね。二人してデバイス泣かせですよ?」 「デリケートな扱いは苦手でね」 「でしょうね。……剣の方ですけど、すこーし解析させてもらってもいいですか?」 「……分解はしないでくれよ」 シャリオの言葉に苦笑いを返し、 「六課に歓迎しますぜ、旦那」 「ああ、まったくいい所だ。美女に囲まれた理想的な職場だな。これで花の首飾りとキスで歓迎されれば文句無しだ」 「そいつはフェイト隊長にねだってください。ハグなら、俺がなんとか」 「男と抱き合う趣味は無いぜ」 「俺もです」 数少ない同性同士、妙に気心の知れた笑みを浮かべ合いながらヴァイスと軽く拳をぶつけ合う。 そうして一通りの挨拶を終えると、ダンテはあからさまに『今気付いた』と言わんばかりに驚きの表情を浮かべて、離れた場所で佇む最後の一人を見つめた。 「Hey! こいつは驚いたな、俺の知り合いにソックリだ。つい最近振られたばかりの相手でね」 「うっさい! ……あの時は、悪かったわよ」 3年ぶりの再会を数日前に自ら台無しにしてしまったティアナは、ダンテのいつものジョークに対して少しばかり気まずそうに返した。 あの時は、色々問題を抱えていて素直に再会を喜べなかった。 現金な話だが、その問題が解決した今、誰よりも彼に話を聞いてもらいたい。そんな想いをおくびにも出さず、腕を組んで不機嫌な表情を作る。 もちろん、その全ての虚勢を見透かしたダンテは、笑いながら静かにティアナの下へと歩み寄った。 「あの時は傷付いたな。こう見えて、中身は結構ナイーブなんだ」 「……ごめん」 「冗談さ」 「分かってる。でも、ごめん。アンタから……逃げたわ」 最悪のタイミングでの再会だった。 彼から教わった信念を何一つ貫き通せず、敗北し、惨めな自分の姿を見られたくなかった。精一杯の虚勢で拒絶し、そんな行動の中で自分は一瞬彼に縋ってしまおうかとも考えたのだ。 情けなさと悔しさ、自己嫌悪が蘇って、それを堪える為に唇を噛み締める。 「そういう所は相変わらず不器用な奴だな」 そんな変わらない性格を、ダンテは苦笑して受け入れた。 「でも変わったよ、お前。3年前とは見違えた」 「……本当?」 「スタイルの話じゃないぜ?」 「バカ。真面目に言ってよ」 「こいつは失礼。雰囲気というか、顔つきがな……ティーダに似てきた」 ティアナは驚いたようにダンテを見上げた。穏やかな微笑みが浮かんでいる。 彼が時折見せる、挑発するものでも茶化すものでもない――それこそどこか兄の面影を感じる、包み込むような優しい笑顔だった。家族に向ける顔だった。 「あたしが、兄さんに……?」 自己嫌悪など吹っ飛んで、ティアナはダンテの発言の真意を確かめるように尋ねた。 途端、真摯で真っ直ぐだった瞳が悪戯っぽく歪む。 「ああ。アイツ、女顔だったからな」 「もうっ!」 それがダンテなりの照れ隠しだと長年の付き合いで分かっていたが、上手くかわせるほど老練もしていないティアナは頬を膨らませて胸板を殴りつけた。 怒り任せにしては随分と軽い音が響き、そのまま二人の間に沈黙が走る。 「……ありがとう」 「ああ――会いたかったか?」 「たぶんね」 「釣れないな」 そして、二人はごく自然に抱き合った。 異性としてのそれではなく、家族として。激しくは無く、ただ静かに。 3年という月日で離れた距離をたったそれだけで埋め合える、酷く穏やかな抱擁だった。 「こういうの、何て言うんだったか……」 「感動の再会、でしょ?」 温もりを感じ、軽口を返して、ティアナはその時ようやくダンテとの再会を果たせたような気がした。 しばらく動かずにその体勢のままでいる。 心地良かったが、心の片隅で違和感を感じていた。 ――はて、何か忘れちゃいまいか? 「…………グスッ。よかったね、ティア」 聞き慣れた相棒の声と鼻を啜る音を聞いて、ティアナは瞬時にダンテの懐から飛び退った。 我に返ったティアナは自分の置かれていた状況を思い出し、戦慄と共に周囲を見回す。 返って来たのは映画のクライマックスを見守る観客のような生暖かい幾つもの視線だった。具体的にはニヤニヤしていた。 当のスバルは涙と鼻水を垂らしながらも笑みを浮かべるという感激の極みといった表情で、その傍らではエリオとキャロがどこか羨ましそうにこちらを見ている。 親愛に満ちた二人の抱擁は、家族の愛に飢えた子供達を大いに刺激したらしい。 「な、な、な……っ!?」 ドモるどころか言葉にも出来ず、壊れたように繰り返すティアナが顔を真っ赤にしながらダンテの方を見ると、こちらは相変わらず飄々とした態度で肩を竦めていた。 全て分かっていて続けていたらしい。 怒りと羞恥で脳みそが破裂しそうな感覚を味わいながら、この混沌とした心境をどう表せばいいのかも分からず、更に混乱する。 そんなパニック状態のティアナにスバルがトドメを刺した。 「記念に一枚撮っておこうか?」 理性の糸をぷっつんと切ってしまったティアナは、奇声を上げながらスバルに殴りかかった。 賑やかなダンテを中心とした集団から離れて、ユーノとそれを囲う旧知の者達がそれを見守っていた。 「大人気だね」 「絵になるからなぁ、ちょっとしたアイドルや。士気の面でもええ効果やね」 苦笑するユーノにはやてが相槌を打った。 ダンテとユーノは同じ立場のはずだが、こちらにははやて達三人の隊長陣とヴォルケンリッターが静かに寄り添うだけだ。 人望の差――などと卑屈に考えることはないが、自分の役職の重さが肩に乗っかっているような気がして、ユーノは人知れずため息を吐く。 こうして10年来の友人と再会しても、子供の頃のようにはいられない。 なのはとオークションで再会して以来、時折そんな切なさを感じることがあるのだった。 「でも、驚いたよ。ユーノ君が来るなんて、わたしギリギリまで知らなかったんだから」 あえて黙っていたのであろうはやてに対して少し怒るように、なのはが言った。 フェイトも同感だった。 「理由はともかく、よく無限書庫を離れられたね?」 「書庫の管理体制には以前から改善案が推されててね。今回は、その新しいシフト設置に乗じて暇を貰ったワケ。定期的な連絡は必要だけどね」 「それにな、ユーノ君が六課に来たのは呼んだからやない。本人からの要望と本局の許可があったからや」 その予想外の答えに、全員がユーノの顔を見つめた。 ユーノが<アンノウン>の情報解析に必要な人材だと判断する根拠も分かっていないのに、それを本人が志願したというのだから当然だった。 奴ら――<悪魔>との遭遇は、ユーノにとってあのホテルでの一件が初めてのはずだ。奴らを一体何時知り得たというのか? 「――詳しい内容は、後で改めて話すよ。あのダンテさんも交えて」 皆の疑念に満ちた視線を受け止め、ユーノは小さく頷いた。 「今、言えることは……僕はずっと前から奴らを知っていた。もちろん、知っているだけで、その存在を信じるようになったのはつい最近だけどね」 「どういう、ことなの?」 「何もかも不確定だけど……奴らの記録自体は実ははるか昔からあったんだ。ただそれを誰も現実として受け止めなかっただけでね。 僕はあのオークションの日まで、個人的にその記録を調べていた。神話や物語を読むような気分で。だけど、あの日確信した。 <悪魔>は、実在する」 狂人の戯言とも取れるユーノの発言を、その場の全員が全く疑いなく受け止めていた。改めて突きつけられる現実への戦慄と共に。 これまで遭遇し、それでも尚別のモノへと結び付けようとしていた逃避にも似た認識を、ユーノの言葉がハッキリと切り捨ててしまった。 「ハッキリと確証は持てないし、まだまだ分からないことは残ってる。だけど、あのオークションの事件を切欠に僕なりに色々調べてみたんだ」 もはや周囲の誰もが沈黙し、ユーノを見つめていた。 ダンテ達の喧騒が酷く遠くに思える。 「全て説明するには時間が掛かる。だから結論だけ告げておくよ――この事件の黒幕の一人は、おそらくウロボロス社のアリウスだ」 ユーノの唐突な発言に呆気に取られるしかないはやて達を尻目に、彼は捲くし立てるように続けた。 「そして敵の目的はこちらの世界と悪魔の存在する世界――<魔界>を繋げることだよ」 確証は無く、ただ確信だけを胸に告げるユーノの脳裏には、あのホテルでの一件以来何度も思い出す本の一文が繰り返し浮かんでいた。 されど魔に魅入られし人は絶えず。 彼らは魔を崇め魔の力を得んと欲し、大いなる塔を建立す。 その塔、魔の物の国と人の国とを結び 魔に魅入られし者は魔に昇らんと塔を登れり。 そはまさに悪業なり。 そはまさに<悪業>なり――。 彼は夢を見ていたらしい。 その夢の中で彼は、初めて手にした剣で迫り来る黒い敵を延々斬り続けていたのだが、その黒い敵の姿形は、時として醜い肉塊のような化け物であったり、亡者の如き骸骨の群れであったり、あるいは彼に生き写しの弟の姿であったりした。 最後に切り裂いた影の姿が、ぼんやりと記憶に残る母親の顔をしていたような気がしていたが、そこで我に返った彼の立つ場所は、いつの間にか巨大な塔の頂上に変わり、瞬きする間にはこの世ならざる魔の河が流れる異空間へと行き着いていた。 取り返しのつかないミスを犯したことに気付いた彼は激しい怒りと喪失感に叫び声を上げるのだが、その時にはまたも場所は移り変わり、其処は無数の墓石が並ぶ墓地となっていた。 人間の名前、悪魔の名前――墓石に刻まれた文字はその全てが彼の知る者達の名前だったが、最後の墓石に刻まれた名前が自分自身のものであると気付いた途端に目が覚めるのだ。 誰が、何の為にかは分からない。何度も繰り返される問いかけを耳にして。 《――更なる恐怖を、望むや否や?》 深夜。 主が出て行って間もないその事務所には、早くも灯りが戻っていた。 看板が<Devil May Cry>の文字をネオンの輝きで描く。その光を見るだけで、暗闇に潜む者たちは背を向けて立ち去った。 悪魔さえ泣き出す男の所在を、その輝きは示しているのだから。 「デビル……メイ……クライ」 光と静寂の満たす事務所の中で、男は佇んでいた。 ドアだけが新調され、荒れ果てた内部を一通り見回り、自らの目的が達せられないことを悟ると、彼はただ静かに座る者の居ないデスクを眺めている。 目を細め、耳を澄ませて、つい先日までここで生活していた者の残滓を手繰るように。 「――ダ、ダンテェッ!?」 唐突に、飛び込んできた騒音によって静寂は破られた。 不快感を欠片も表に出さず、ただ淡々と振り返った男が見た者は汗だくになって駆け込んで来たレナードの肥満体だった。 滅多にしない運動によるものだけではない汗も、そこには混じっている。 追い詰められた必死の表情が、事務所の中に居た男の姿を捉えた途端希望に輝いた。 「な、なんだよ……戻ってきてたのかよ、ダンテ!? 助かったぜ!」 「……」 縋り付くレナードを無感情に見下ろし、男は近づいてくる複数の人の気配を感じて視線を入り口に戻した。 粗野な性格をそのまま格好にも表した、明らかに堅気ではない男が数人乗り込んでくる。 いずれも良く言えば屈強、悪く言えばチンピラのような風情の者達ばかりであった。 「レナァァードォッ! 前金返すか、命で支払うか!? 選べって言ってんだろぉがっ!」 「ヒィッ、だからもう全部使っちまったって言っただろぉ!?」 「仕事も果たさねぇで、フザケタこと抜かしてんじゃねえ! テメェ、あのダンテに渡りを付けられるって売り文句はどうしたい!?」 リーダー格らしい男の怒声の中に含まれた言葉に対して、男はようやく反応らしい反応を見せた。 「……ダンテ」 呟き、鉄のように動かなかった表情が僅かに震える。 「あん? なんだぁ、このアンチャンは?」 「すっげ、シャレた格好してるなぁ。目立つ目立つ」 「お~、見ろよこの剣」 「ヘンな剣だな?」 「オレ、知ってるぜ! これ日本刀だろ?」 チンピラ達の顔に悪意と愉悦が滲み、はやし立てるように男を取り囲んだ。 男の整った顔立ちやスラムには見られない小奇麗な格好に対する暗い妬みと、ソレに対する暴力的な衝動が彼らを動かしていた。まるでそれが彼らという種の本能であるかのように。 しかし、周囲の有象無象に比べれば幾らか理性的なリーダー格の男は、値踏みするような視線を向けていた。 「……銀髪に奇妙な剣を持った男。オイ、アンタはまさか……」 「そ、そうだよ! このレナード様は請けた仕事はしっかり果たすぜ? こいつがダンテだ!」 男の背後で震えていたレナードは、ここぞとばかりに捲くし立てた。 管理局に向かったダンテが何故戻って来たのかは疑問だが、今はとにかく首の繋がった安堵感が勝っている。 先ほどまで殺気立っていたチンピラ達へ身代わりとなる生贄を捧げるように、レナードは男の背を押した。 「なるほど、アンタか。レナードの話じゃあ、しばらく依頼は受けないと言ったらしいな? だが、テメェの都合なんて関係ねぇ。いくら腕が立とうが所詮便利屋だ。オレ達のような組織の恩恵無しじゃ、ロクに生きていけねえことくらい分かるだろ? ん?」 「……」 脅すような視線と嫌らしい笑みを浮かべながら、自分こそ強者であると強調するように男の顔を覗きこむ。 しかし、そこに在ったのは全く変わらず貫き通された無表情だけであった。 「何、気取ってんだぁ!? 噂だけの優男がよぉ、こんなご大層なモンぶら下げやがって――」 目の前のリーダー格が理想としているらしい『静かなる威圧』が実効を示さず、怯えの欠片も見せない男の様子に業を煮やした仲間の一人がおもむろに手を伸ばした。 その手が、男の握る刀の柄に触れようとした瞬間――指が五本とも根元から落ちた。 「あれ?」 肉と骨が見える綺麗な五つの切断面を眺め、痛みよりもまず疑問を感じる。 その一言が彼の遺言だった。 斬り落とされた指と同じ末路を、彼の胴体と頭が辿った。 「え――」 仲間の体が一瞬で幾つものパーツに分かれ、床に転がる生々しい音と光景を現実として受け止め、男を囲っていたチンピラ達の何人かが間の抜けた声を出す。 「ひ――」 そして、それが悲鳴と怒号に変わる前に、全てが終わった。 今度は狙い済ましたように顔だけ。周囲のチンピラ達の首から上がスライサーに掛かったかのように輪切りにされ、驚くほど静かな出血と共に床に崩れ落ちた。 遅れて胴体の転がる音が響き、最後に小さくキンッという金属音が鳴る。 いつの間にか抜刀された、男の持つ刀が鍔を鳴らす音であった。 「……ひっ、ひぃぃぃぃッ!? ダンテェ、何やってんだよぉぉぉ!!?」 死体となった者達の代わりに背後で尻餅をついていたレナードが悲鳴を上げる。 ダンテ――そう呼ばれているはずの男は、その言葉に全く反応すら見せず、来た時と同じように淡々とした足取りで事務所のドアを潜った。 そして、チンピラ達の中で唯一生き残った――目の前の惨劇に、生きているという自身の幸運すら分からずただ呆然としていたリーダー格の男は、すぐ横を通り過ぎた<蒼い影>を見て我に返った。 「テ、テメェェーーーッ!!」 怒声というよりは悲鳴に近い叫び声を上げて、懐から取り出した武器を立ち去ろうとする男の背に向ける。 肩越しに振り返り、男はその武器の正体を把握した。 「魔導師か……」 震える腕で突きつけているのは片手杖型の汎用デバイスだった。 性能的には何の変哲もないが、正式な登録を抹消された違法品である。正確には元魔導師であり、今は犯罪者に身を落とした人間だった。 「そうだ! 言っとくがコイツの殺傷設定は……っ!」 言葉は、文字通り寸断された。 再びキンッという鍔鳴りが響く。誰も、男の抜刀の瞬間を見極めることなど出来なかった。 いつ抜かれたのかも分からない刀が鞘に戻った瞬間、超高速の太刀筋に時間が追いつく。 突きつけられたデバイスの先端に切れ込みが出来たかと思うと、そこから真っ直ぐな亀裂が走り、その先にある腕を伝って持ち主の体を真っ二つに斬り裂いた。 デバイスと人体を切断した斬撃はそのまま背後の事務所にまで到達してようやく止まる。入り口のドアが斬り崩され、その上にあるネオンの看板まで破壊した。 もはや人間技ではない。 全てを見ていたレナードは、言葉もなくただ恐怖に震え、漏らした小便で濡れた床にへたり込み続けるだけだった。 「あ、悪魔……っ」 奇しくも、ここを去るダンテに告げたものと同じ言葉が漏れる。 男は――少なくとも『ダンテと瓜二つの顔を持つ』蒼いコートの男は、惨劇の場と化した事務所からやはり淡々と歩き去って行った。 凄まじい斬撃によって半壊した<Devil May Cry>というネオンの看板が火花を散らして、まだ辛うじて瞬いている。 一部の光が消えたそこに残された文字は――<Devil>と、ただそれだけであった。 《――魔とは何か?》 誰が、何の為にかは分からない問いかけが何度も男の耳を打つ。 《鼠に鳥の気持ちが分かろうか? 人の子よ……貴様らは見上げる空を知るのみ。限られた幸運な存在……》 場所も時間も関係なく、ふと気付けば囁きかけてくるこの声は幻聴などではなく、あるいは男に残された人間としての部分の警告なのかもしれない。 《――無知とは祝福なり》 あるいは、その人間としての部分に気付いた悪魔達が呪いを掛けてでもいるのか。 だが、いずれも無意味なことだった。 男はもはや止まらない。 その淡々とした歩みのまま、暗闇を渡り歩き、人と悪魔の屍を残しながら、死の淵に向かって歩み寄っていく。 《この広大な世界。仰ぐしかない空の広さを知った瞬間……絶望のうちに貴様は死ぬだろう!》 「――空が青いことなど、世界を一周せずとも分かる」 そして地獄の底から響くようなその呪詛を男は――バージルは一刀の下に切り捨てた。 そっくりの顔。そっくりの力。 しかし、共に生まれた双子の歩む道は決定的に違えてしまった。 「いずれ成る。これが運命とでも言うならば……」 夜の静寂に包まれた街を、バージルは歩いていく。 おそらく同じようにここを歩いていただろう、自らの半身との再会を予感して。 「こういうのを、感動の再会と言うらしいな――ダンテ」 to be continued…> <悪魔狩人の武器博物館> 《剣》マーシレス 絡み合う蛇の装飾が施された細身の剣。 細身といっても異常な長さの刀身との比較であって、標準的な両刃剣と同じくらいの幅である。 入手経路は不明だが、アリウスの私物としてオークションに出品されていた。 同時に出品された人形が事件の切欠となっている為、この剣も管理局に押収され、現在分析中である。 その実体は、機能や魔力の付加されていない一般的な刀剣でありながら、リベリオンと同じくダンテの魔力に耐え得る魔剣。 それ自体に力は無く、長い年月で魔への耐性を付けたようだが詳しい経歴はやはり不明。 細身な為リベリオンより軽く、長い刀身も合わせてスピードとリーチに優れた武器である。代わりに威力は僅かに劣る。 だが、今のところ実戦での使用は確認されていない。 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのは 第1話 それは不思議な出会いなの? 1/3 2/3 3/3 第2話 魔法の呪文はリリカルなの? 1/3 2/3 3/3 第3話 街は危険がいっぱいなの? 第4話 ライバル!?もうひとりの魔法少女なの! 第5話 ここは湯のまち、海鳴温泉なの 第6話 わかりあえない気持ちなの? 第7話 三人目の魔法使いなの? 第8話 それは大いなる危機なの? 第9話 決戦は海の上でなの 第10話 それぞれの胸の誓いなの 第11話 思い出は時の彼方なの 第12話 宿命が閉じるときなの 最終話 なまえをよんで 魔法少女リリカルなのはA’s 第1話 はじまりは突然になの 第2話 戦いの嵐、ふたたびなの 第3話 再会、そしてお引っ越しなの! 第4話 新たなる力、起動なの! 第5話 それは小さな願いなの(前編) ホーム(ryou掲示板) 感想などを書き込みしてください。 名前 コメント
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キャラクター別SS追跡表 【Fate/Zero】 【コードギアス】 【東方儚月抄】 【HELLSING】 【スター・ウォーズ】 【ゾンビ屋れい子】 【戦国BASARA】 【うたわれるもの】 【おまもりひまり】 【ジョジョの奇妙な冒険】 【そらのおとしもの】 【まよチキ!】 【北斗の拳】 【魔法少女リリカルなのは】 【物語シリーズ】 【魔法少女リリカルなのは】 八神はやて/シグナム 主 従 № タイトル 作者 登場人物 ● ● 005 I Made It ◆HHH/WB.Ks2 シン、ハート様、八神はやて、シグナム ● ● 021 約束されし死亡の旗(シチョウセイガー) ◆YwLV7iJ2fw シン、ハート様、八神はやて、シグナム ● 033 Bout the city (前編)Bout the city (後編) ◆Su10.RK3MU セラス・ヴィクトリア、涼月奏、近衛スバル、衛宮切嗣、黎星刻、織田信長明智光秀、ハート様、シグナム、ハクオロ、トウカ、レミリア・スカーレット十六夜咲夜、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、ウォルター・C・ドルネーズ ▲上へ戻る
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公式サイト→魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st公式サイト 劇場2010 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st<初回限定版> [Blu-ray] posted with amazlet at 10.09.19 キングレコード (2010-11-26) 売り上げランキング 1 Amazon.co.jp で詳細を見る ブログ #blogsearch2 ニュース 『アサルトリリィ Last Bullet』が『魔法少女リリカルなのは Detonation』コラボ開催 - マイナビニュース 「魔法少女リリカルなのは Detonation」×「アサルトリリィ Last Bullet」コラボ開催 - マイナビニュース あみあみ限定特典付き!『魔法少女リリカルなのは15周年記念イベント「リリカル☆ライブ」 (Blu-ray Disc)』の予約受付中!! - PR TIMES TVアニメ「魔法少女リリカルなのは」 王道の魔法少女モノで萌えと燃えを体感せよ! - あにぶ 『魔法少女リリカルなのは』15周年記念イベント リリカル☆ライブ 【レポート】 - 超! アニメディア アニメ『魔法少女リリカルなのは』新プロジェクト発表! 15周年記念イベント「リリカル☆ライブ」公式レポート到着! - アニメイトタイムズ シリーズ15周年記念「リリカル ライブ」 なのは、フェイト、はやてを描いたビジュアル完成 - アニメハック 11月20日発売!「魔法少女リリカルなのは キャラクターソングコンプリートBOX」収録ディスク全6枚のダイジェスト試聴動画公開!! - 超! アニメディア 『魔法少女リリカルなのは』キャラクターソングコンプリートBOX収録楽曲ダイジェスト視聴動画公開!初回生産版には15周年記念イベント「リリカル☆ライブ」のチケット優先販売申込シリアル付き - アニメイトタイムズ 「魔法少女リリカルなのは キャラクターソングコンプリートBOX」より試聴動画を大公開! なのは&フェイトのデュエット曲など、新曲3曲と新録1曲解禁 - アニメイトタイムズ 『魔法少女リリカルなのは』、なのは&フェイトのデュエット曲など試聴開始 - マイナビニュース 『魔法少女リリカルなのは』シリーズ15周年!ライブDAY2開催&過去シリーズも期間限定配信中! - アニメージュプラス 「魔法少女リリカルなのは」15周年記念イベントDAY2開催 新曲情報や過去シリーズの期間限定配信も - おたくま経済新聞 『魔法少女リリカルなのは』15周年イベント2日目が開催決定 - 電撃オンライン 『魔法少女リリカルなのは』シリーズ15周年記念イラスト公開!イベント「リリカル☆ライブ」の2日間開催や、キャラソンBOXのジャケット&新曲情報が発表!YouTubeでの過去シリーズ3作品の期間限定配信も - アニメイトタイムズ 「魔法少女リリカルなのは Detonation」、動員10万人突破の好調スタート! 初日満… - アキバ総研 【今日のスタート】映画『魔法少女リリカルなのは Detonation』本日10月19日(金)より全国上映!! - STARTT.jp 「魔法少女リリカルなのは Detonation」公開日決定、ストーリーも解禁 - ナタリー 「魔法少女リリカルなのは Detonation」が2018年に公開決定 - 映画ナタリー 新作映画「魔法少女リリカルなのは Detonation」2018年公開が決定 - GIGAZINE 本日『魔法少女リリカルなのは Reflection』が公開!映画とあわせてフェイトやシグナムたちのフィギュア情報を振り返り!! - 電撃ホビーウェブ アニメ映画「魔法少女リリカルなのはReflection」、サントラCDが7月21日発売決定!… - アキバ総研 『魔法少女リリカルなのは Reflection』新ビジュアル 本予告映像第二弾など新情報解禁 - http //spice.eplus.jp/ 映画「魔法少女リリカルなのはReflection」、新情報! - アキバ総研 アニメ映画「魔法少女リリカルなのはReflection」、初日舞台挨拶決定! 田村ゆかり… - アキバ総研 田村ゆかり、水樹奈々、植田佳奈、戸松 遥、佐藤聡美、日笠陽子、清水香里、真田アサミ、柚木涼香、一条和矢が登壇! 「魔法少女リリカルなのは Reflection」初日舞台挨拶決定! - 超! アニメディア 「魔法少女リリカルなのはReflection」初日舞台挨拶が決定 田村ゆかり、水樹奈々らが登壇 - アニメ!アニメ! 新しいキャラの姿も!『魔法少女リリカルなのはReflection』メインビジュアル&アニメ映像解禁 (2017年3月30日) - エキサイトニュース 「魔法少女リリカルなのはReflection」詳細が発表に - アキバ総研 「魔法少女リリカルなのは」新ビジュアル&本予告第1弾が公開 - 映画ナタリー 劇場版までもうすぐ! 「魔法少女リリカルなのは」テレビシリーズ全話がAbemaTVで一挙配信 - - ねとらぼ 映画「魔法少女リリカルなのは Reflection」本予告映像解禁、物語は惑星の命運を懸けた戦いへ - GIGAZINE 「魔法少女リリカルなのは Reflection」公開日が7月22日に決定! - アニメハック 戸松遥&佐藤聡美「魔法少女リリカルなのは」劇場版最新作に出演、スタッフも発表 - ナタリー 12周年を迎える『魔法少女リリカルなのは』が多くのファンから愛されている理由とは? TVアニメ三作品から魅力を紐解く - アニメイトタイムズ 「魔法少女リリカルなのは Reflection」、2017年夏公開! 「The MOVIE 2nd A’s」… - アキバ総研 新シリーズ「魔法少女リリカルなのはViVid」TVアニメ化記念! 『魔法少女リリカルなのは』シリーズのコミックスが電子書籍にて復活&配信開始! - PR TIMES 「魔法少女リリカルなのはViVid」TVアニメ化決定 公式サイトオープン - アニメ!アニメ!Anime Anime なのはとのバトルを再現できる! 決戦仕様のフェイトちゃん (1/2) - ASCII.jp 全力全開のエクセリオンモードなのはやライトニングフォームのフェイトなど「魔法少女リリカルなのは」いろいろ - GIGAZINE 『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』レイジングハートが1/1サイズで遂に商品化! - Dream News 劇場版「魔法少女リリカルなのは」のトレーディングカードが12月22日に発売 - 4Gamer.net “週末痛車族”に最適? 『魔法少女リリカルなのは』 マグネット4種発売 - レスポンス 私服フェイトやボーメ氏の作品も飛びだした「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」関連フィギュア&グッズ - GIGAZINE なのは映画第2弾やゲーム第2作目発表で1万6000人が沸いた「リリカル パーティーIV」レポート - GIGAZINE 人気アニメ「魔法少女リリカルなのは」、第2弾映画製作決定!美少女の激しいバトル最新作は2012年公開! - シネマトゥデイ やはりキタ! 劇場版なのはが店頭を埋め尽くす! (1/2) - ASCII.jp 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」がBD/DVD化 - AV Watch 『一番くじプレミアム 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』8月下旬よりコンビニエンスストアやホビー店などで発売 - PR TIMES 田村ゆかり&水樹奈々他、豪華キャストが登壇! 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」初日舞台挨拶 - ITmedia 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」入場者特典のフィルム、”フェイトの笑顔”は”綾波の笑顔”を上回る18万円の高値 - GIGAZINE 劇場版「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」公開初日の舞台挨拶、「たまに変態のフェレットにちょっかいを出されますが、最後には思いが成就します」 - GIGAZINE 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st (2009):あらすじ・キャストなど作品情報|シネマトゥデイ - シネマトゥデイ 1月23日公開の映画「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」試写会感想、変身シーンでなのはの全てが見られる - GIGAZINE 「魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st」劇場用予告編が公開、なのはの変身やディバインバスターも - GIGAZINE 全力全開! 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」アフレコ現場に突撃 - ITmedia