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「なーんか、前にもあったような光景やねー」 直立不動で無言を貫くなのはを見つめ、はやては気だるげに呟いた。 目の前の親友を責めるつもりなどないが、こうも問題が立て続けに起これば頭の一つも抱えたくなる。 皮肉とも取れるはやての言葉を聞き流すなのはの表情は鉄のように固まっていたが、内心がどうなっているかは全く分からない。 ティアナとの模擬戦から半日――その経緯と結果を把握したはやては先日のように当事者を部隊長室へと呼び出していた。 未だ医務室で眠り続けるティアナだけが、以前と違ってこの場にいない。後は全て焼き回しのような状況だった。 「……報告書は全部読んだ。模擬戦の記録も見た」 淡々と告げるはやての傍らではやはり同じようにグリフィスが銅像のように立っていた。 後ろ手にデータ記録用の小型ボードを持っている。 「結論から言うと、まあ今回の出来事は模擬戦の延長――処罰与えるほどの内容ではないと判断したわ。 ティアナとなのは教導官にはもちろん負うべき罰もなければ、そもそも問題も無い。ティアナの行動に対して教導官がどう判断を下すかにもよるけどな」 「何も、問題ありません」 なのはは即答した。 以前の出撃のように実質的な被害や違反など無く、なのは自身、ティアナへの影響も考えて今回のことを拗らせるつもりはなかった。 しかし、その返答にはやては鋭い一瞥を返す。 「そうやね。問題があるとすれば、ティアナ自身が孕む今後の危険性といったところか――」 なのはは息を呑んだ。 今回のティアナの行動自体は問題にしなくても構わない。だが、其処に至る心理的要因をはやては指している。 部隊は複数の意思の統括によって成り立っている。歯車は狂ってはならない。全体の崩壊を招く。故に、その兆しが見えるものは――。 はやては暗にそれを告げていた。 「教導官、新人の教育はアンタの仕事や。実力を見極め、部隊の任務遂行に適切かどうかを判断する。分かってるな?」 「……はい」 「ティアナのことに関して、私は口を挟まん。それに関してはスターズ隊長の高町なのは教導官に一任しとる。 その責任の重さを理解した上で、今後の彼女の処遇について一考願いたい。下手な甘さはティアナ自身にも、何より機動六課の存続にも宜しくないんやからな」 「……了解しました」 鉄の仮面は消え失せ、苦悩の色が教導官としての顔に浮かび上がった。 力無く頷く親友の姿に、胃の痛くなるような罪悪感を感じながらも、しかし八神はやては機動六課の総責任者であった。 甘えや馴れ合いは許されない。自らの掲げた理念の下に集った者達を裏切る行為は決して許されない。 そして、そのはやての責務を知るからこそ、なのはにとって彼女の言葉は何よりも重く圧し掛かるのだった。 判断しなければならない。 ティアナは一度、故意にミスを犯した。その結果、仲間が傷付いたのだ。 二度目を許してはならない。今度は、自分達が守るべき者が傷付き、更にはそれよりも最悪の事態に陥らない為に。 その為に、ティアナをもう一度信じるのか、あるいは――。 「高町教導官」 グチャグチャな頭の中で悩み続けるなのはが無意識に退室しようとする足を、唐突にグリフィスが呼び止めた。 まるで銅像が動いたのを見たような小さな驚きで振り向くなのはの前に、持っていたボードを差し出す。 「……何?」 「念の為、目を通しておいてください」 受け取り、そのウィンドウに表示されるデータを流し見ていたなのはは徐々に顔色を変えていった。 そこに映る複数の人物の顔写真と個人情報が意味する、グリフィスの無言の意図を察して、思わず睨みつける。 「グリフィス君……何、これ?」 「ティアナ=ランスター二等陸士の後釜として適任と思われる管理局魔導師のリストです」 事も無げに告げ、グリフィスは眼鏡を押し上げた。 反射する光によって真意を映す瞳が隠される。それがなおの事、彼の淡々とした無感情な対応を助長させていた。 「いずれも六課設立に当たり、引き抜くメンバーとして次点にいた者達です。 能力的には多少劣りますが、十分に水準は満たしているでしょう。いずれも高町教導官の指揮下に入ることに積極的です。どうぞ、こちらも御一考ください」 「はやてちゃんっ!」 「いえ、これは自分の独断です。必要だと感じたので」 食って掛かろうとするなのはを平坦な声が制する。 なのはは目の前の青年がどうしてここまで冷淡になれるのか不思議でならなかった。 グリフィスとの付き合いは決して長く無いが、同時に短くも浅くも無い。彼がもっと若い頃から同じ仲間として過ごしてきた。ひたむきな青年だった。 そんな彼が別人に変貌したかのような無感情な顔を見せていることにショックを受ける。 そして、同時に湧き上がる怒りもあった。 同じ志を持つ機動六課のメンバーでありながら、グリフィスはティアナを既に切り捨てるべき部分だと認識しているのだ。 「必要ありません!」 それまでの苦悩が吹き飛び、なのはは迷い無くボードをグリフィスにつき返すと、肩を怒らせながら退室した。 普段温厚ななのはの怒声を一身に受けながら、やはりグリフィスは変わらぬ一貫した態度のまま、淡々とはやて傍まで戻る。 「……ちょっと煽りすぎたんちゃう? 好青年のグリフィス君の印象ガタ落ちやで」 「それでなのはさんの後押しが出来るのなら安いものです」 「顔で笑って、背中で泣いて。損な役回りやねぇ」 「誤解のないように言っておきますが、自分はコレも十分に考えに入れるべきだと思っています」 釘を刺すように、グリフィスは手に持ったボードを掲げた。 「確かにランスター二等陸士は優秀な人材ですが、機動六課の存続を脅かす不確定要素を抱えてはいられません」 「分かっとるよ。あまり悩む時間もあげられんしな」 どんな時でも、犯罪に『対応する』部隊である管理局にとって時間は敵だった。 与り知らぬところで事態は動き続けている。 何よりも、そういった事態に対して即対応する為に機動六課は作られたのだ。 「――それでも、他人が集まって一つの事を成そうと言うんや。摩擦の一つや二つ起こるやろう」 頭を悩ます問題がズラリと並ぶ中、はやてはあえて笑って見せた。 人間関係、摩擦、衝突――大いに結構。それに苦悩しながら対応するのも大将のお仕事だ。その為の地位と高給だ。 ある種、開き直りにも似た心理で、今回のなのはとティアナの問題を受け入れている。 「判断は二つに一つ。『信じる』か『信じない』か――。 個人的には前者を選びたいなぁ。仲間っていうのは、信頼し合ってこそナンボやろ? ムラも人間的な成長の一つやん。誰かて最初から完璧な人間なんておらんし、そんなんおったら規格化された部品と一緒や。悩んで、迷って、それでも歩いていけるのは<人間だけの力>なんやから。 それこそが、機動六課の持つ真の強みや」 そう呟くはやての言葉には、人間の可能性を信じる希望が込められていた。 「やはり、機動六課の大将はアナタです」 組織としての人間的な部分を任せ、自らが機械的な部分を担うと決めた上司の真意を再確認して、グリフィスは満足そうに頷いた。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十七話『Tear』 まず見慣れない天井が眼に入った。 「……あれ?」 「あら、もう目が覚めたの?」 一瞬自分の置かれた状況を理解出来ないティアナの傍らで、驚いたような声が聞こえる。 跳ねるように上体を起こし、室内と眼を丸くする白衣姿のシャマルを見渡して、ティアナはようやくここが医務室なのだと把握した。 同時に、此処に至る経緯が鮮明に思い起こされる。 「そうか、あたし訓練で……」 混乱していた頭が急速に冷えていく。それは諦めにも似ていた。 「負けたんだ」 皮肉なことに、敗北し、頑なだった意志を砕かれた今、落ち着きを取り戻すことでティアナには正常な思考力が戻っていた。 あの時の自分が、性急過ぎたことを――認めていた。 だが、心身に感じるのは落ち着きというよりも、むしろ脱力だった。 一つの答えが出た。そして、何かが終わった。失うという形で。 それは余りに多すぎたのではないだろうか。信頼していた相棒、案じてくれた仲間、諭してくれた上司、自分の居場所――全て自らの意志で振り払ってしまった。 これから、自分は一体どうなるのか――。 自嘲の笑みしか出てこなかった。 その表情をあえて見ないふりをして、シャマルは訓練着のズボンを持ってくる。今のティアナは半裸も同然だった。 「なのはちゃんの訓練用魔法弾は優秀だから、体にダメージはないと思うけど」 「……訓練用じゃなかったら、きっと今頃あたしは火星まで吹き飛んでますよ」 「あははは」 話でとはいえ模擬戦の結果を知ったシャマルは苦笑いを浮かべるしかない。 ティアナの表現が冗談にしては笑えないものだからだった。実際は、きっと跡形もなく消し飛んでいたに違いないだろう。 大型ミサイルの爆発に巻き込まれたのに生き残れたようなものだ。 非殺傷設定とはそれほどまでに慈悲深く――そして、同時に残酷なものでもあった。 完膚無きまでに叩きのめした敗者を、どうあっても生かすのだから。 「……外、暗いですね」 簡単な質問で診察するシャマルに生返事で受け答えながら、ティアナは窓の外を見ていた。 昼前の模擬戦で意識が途絶え、今はもう完全に日の落ちた夜となっている。 「すごく熟睡してたわよ、死んでるんじゃないかって思えるくらい」 「すみません。それ、シャレになってませんから」 「あははっ、ごめんね。でも、魔力ダメージ以外に疲労による衰弱も原因してるわ。最近、ほとんど寝てなかったでしょ? その疲れが、まとめて来たのよ」 「そうですか……お世話になりました」 「よかったら、もう少し休んで――」 言い終える前に、いつの間にかズボンを履いたティアナは医務室のドア前まで移動していた。 足取りはしっかりとして、とてもさっきまで気絶していた動きではない。 呆気に取られるシャマルを尻目に、ティアナはさっさと部屋から出て行った。 「……ホント、驚きなんだけどねー」 穏やかな笑みを消し、真剣そのものの顔つきでシャマルはティアナの背中を見送った。 なのはのディバインバスターを受けたティアナは、本来は丸一日は目が覚めないはずだったのだ。だが、あの模擬戦からまだ半日も経っていない。 体力や精神力云々の問題ではない。 魔力ダメージへの耐久性の高さ――ティアナのそれは一般魔導師の範疇を軽く超えている。 訓練校での成績からBランク試験の結果に至るまで、計測されたティアナ=ランスターの能力値ではありえないものだった。 「人間離れに近いわね……」 シャマルは呟き、デスクに備えられたコンピュータ端末に目を向けた。 模擬戦のデータからも感じた違和感を確かめる為に、ティアナが気絶している間に生体データを記録しておいたのだ。 これを調べることで、どんな事実が判明するかは分からない。 ただ、予感がする。良いものか悪いものは判断がつかないが。 「……なんだか、不穏なフラグ立ててるみたいで嫌ねぇ」 頭の中に思い浮かぶ懸念を、独り言で茶化しながらもシャマルは端末へと向かっていった。 『巡洋艦隊より入電。巡洋艦隊より入電』 ボギッ。あまり宜しくない音を立てて、割り箸が変な所からへし折れた。はやては眉をひそめて、カップの上に箸の残骸を置く。 カロリーブロックで済ませた夕食に比べれば幾分まとな食事とも言えるカップ麺がようやく三分経ったというに。実際に食うのは、今度は30分くらい先になりそうだ。 『東部海上に未確認飛行物体が都心に向けて高速で多数接近中。ガジェットドローンと思わしき機影。直ちに迎撃へ向かわれたし』 「しっかり夕食食べて、適度な休息を挟んだから、そろそろ犯罪起こしましょってか? こっちの事情も考えてや」 端末から告げられる報告に悪態を吐き、はやては椅子を蹴って立ち上がった。 上着を羽織り、食べ頃のカップ麺を泣く泣く放置して司令室へ向かう。 隊舎内は緊急警報が鳴り響き、滑り込んだ司令室はおそらく三度目の実戦となるであろう前兆に緊迫感が満ちていた。 「詳細を報告!」 部屋に入り、開口一番にはやては叫ぶ。 「ガジェットドローン、機体数は現在12機。旋回飛行を続けています」 「レリックの反応は?」 「今のところ、付近に反応はありません」 「挑発行為か……」 オペレーターとグリフィスのやりとりの間で、はやてはすぐさま敵の目的を推測した。 「敵は新型か?」 「飛行機能を強化した<Ⅱ型>です。ですが――」 報告の最中でモニターが海上を飛行する敵影を映し出した。 それを眼にした途端、司令室に僅かなどよめきが湧き上がる。さすがに三度目ともなると比較的落ち着いたものだ。 「……なるほど、また<寄生型>か」 映し出されたガジェットには、航空的な曲線フォルムの装甲に奇怪な肉片がへばり付いていた。 巨大な眼球を持つそれは、無機質な戦闘機であるガジェットを未知の飛行生物へと変貌させている。 鳥でも飛行機でもないソレが夜空を舞う姿は、ある種の悪夢にも見えた。 「奴さん、ホテルでの一件以降<アンノウン>との繋がりを隠さんようになったようやね」 一般局員の手前、敵が<悪魔>であることは隠して話す。 「ジェイル=スカリエッティと<アンノウン>が、これで繋がったわけですか。どうします?」 「どう見ても、こっちを燻り出すのが目的やろ。囮か、データ収集か。いずれにせよ、出撃せんわけにはいかんな」 憂鬱なため息が漏れた。 積極的な犯罪への行動力を求めて設立した機動六課だったが、どうも思うように動けていない。先手ばかり取られている。 焦りすぎか。強者が集まれば何もかも上手くいくなどと思いはしないが……ええい、くそっ。テレビのヒーローのようにはいかない。 爪を噛むはやての元へ、いつの間にかなのはとフェイトが駆けつけていた。 一見普通に見えるが、なのはの表情は相変わらず陰鬱な色を滲ませている。 ティアナが眼を覚ました報告はシャマルから密かに受けたが、やはりまだ問題解決には至っていないらしい。おそらく、顔も合わせていないだろう。 良くない傾向だ、時間はあった筈なのに。珍しく消極的になっている。 「はやて部隊長、出撃しますか?」 逸るなのはを、はやては無言で制した。 その積極さが彼女自身の焦りを隠す為のものだと、はやての中の冷たい思考が推測している。 彼女は任務に逃げ込むことで、自らの苦悩から目を逸らそうとしていた。 そして、待ち人はすぐに現れた。 なのは達とは遅れて司令室に入って来たのはヴィータと、 「ダンテさん!?」 意外な人物の登場に、二人の間から驚きの声が上がった。 会釈代わりにウィンクするダンテを尻目に、はやては淡々と指示を下していく。 「今回の敵襲は何らかの作戦の囮か、あるいはこちらの戦力調査の意味合いが強いと思われる。 よって、空戦能力を持つ少数戦力で出撃、撃破。不測の事態に備えて新人を含む残りの戦力を出動待機とする」 有無を言わさぬ視線で、はやては一同の顔を見回した。 「ヴィータ副隊長は負傷のこともあるから、今回は待機に回ってな」 「了解」 当然の処置か、とヴィータは不満を漏らさずに受け入れた。 「それから、なのは隊長」 「はい」 「アンタも待機な」 「……え?」 ヴィータとは反対に、その全く予想しなかった命令をなのはは一瞬理解出来なかった。 自分の出撃は順当なものだと思っていた。 手の内を見せない少数戦力による敵の迎撃には、空戦能力と基本攻撃力に優れたなのははまず鉄板となる配置の筈だ。 そんな戦術観を無視し、はやては出撃にはフェイトとシグナムで当たるよう指示を追加している。 「ま、待ってください! さすがに二人だけでは……」 「もう一人付ける」 慌てて意見するなのはを半ば遮るようにはやては忽然と告げた。 「ダンテさんを加えた三人で出撃してもらう」 予め聞いていたダンテ本人以外が息を呑んだ。 「そんな……民間人ですよ!?」 「対<アンノウン>の有効な技能と知識を持つ外部協力者として、既にダンテさんとは契約が済んどる。今回は、その有用性がどの程度か測る意味合いも含めて、出てもらうんや」 「はやてちゃん!」 「高町なのは一等空尉」 はやては有無を言わさぬ険しい視線でなのはを睨み付けた。 沈黙がその場を支配する。数寸すぎたあたりで、なのはがぽつりと言った。 「……何故、わたしを出撃から外すんですか?」 「自分で言っててわからへんか? なら、出動待機からも外れてもらう」 はやては全く優しさを含まない固い声で応答し続けた。 「目の前の問題から逃避する為に任務に徹するなら、それは冷静とは言わん。足元を掬われるで……『以前』のように」 フェイトとヴィータが何か言いたげな顔をしていたが、堪える。ダンテは既に傍観に徹していた。 周りの局員達も口を出せなかったが、状況だけは刻々と進み続けている。 モニターに映る敵の姿を一瞥して、はやてはどこまでも事務的な声で命じた。 「フェイト隊長はシグナム副隊長と共に出撃準備。ダンテさんはフェイト隊長のサポートを受けてください」 俯いたなのはを心配そうに横目で見ながら、フェイトは命令に応じる。ダンテも同じく了解の返答をした。 「なのは隊長は、新人を連れてヘリポートへ集合」 「……了解」 なのはの返答は、はやてと何より自分自身への悪態が混じり苦々しいものとなっていた。 ヘリポートに集まった新人達の間には奇妙な空気が漂っていた。 チラチラと隣の様子を伺うスバルの消極的な態度や、鉄の表情で隣の様子に一切頓着しないティアナの無視。それを伺うエリオとキャロには不安そうな表情が浮かんでいる。 そして、そんな四人を尻目に――特にティアナを意図的に視界から排しているなのはが、頑なとも取れる直立不動で出撃するメンバーと向かい合っていた。 「今回は空戦だから、皆はロビーで出動待機ね。特別参加することになったダンテさんの処遇はこの戦闘の結果によって決まるから、後日詳細を教えます」 「そちらの指揮は高町隊長だ。留守を頼むぞ」 フェイトとシグナムの言葉に、ライトニングのメンバーは声高く、スターズのメンバーは覇気無く応えた。 ――なるほど、問題は思ったよりも深刻なようだ。 当事者ではないシグナムは一人納得する。 問題を起こしたティアナと巻き込まれた相棒のスバル、それを管理すべきなのはも含めて、今やチームワークどころかまともな交流すら成り立っていない。 出動待機とは言うが、実質こんな状態のチームを戦闘に出すのは不安が残るだろう。 デリケートな問題は苦手だ。ならば、自分にすべきことは彼女達に時間を与えること。問題に向き合える猶予を与えることだ。 シグナムは自分の性分とスタンスを十分に理解した上で、そう結論を出した。 「……まあ、私ではあまり言葉が回らんからな」 「シグナム?」 「私達には私達のすべきことがあるという話だ」 なのは達の様子を心配そうに見つめていたフェイトの肩を叩くと、シグナムは一足先にハッチからカーゴへと入って行った。 その言葉と、叩かれた肩の意味を考え、フェイトはずっと抱えていた何かを言わなければならないという焦燥感を飲み込んだ。 言えることなど無いのだ。 『……頑張って、なのは』 内心の思いを念話に乗せて飛ばし、フェイトは未練を振り切るようにシグナムの後へ続いた。 発進準備の完全に整ったヘリの前で、ダンテだけが残される。 予想外の展開を見せた模擬戦に始まり、ティアナの敗北、自らの出撃、そして今なのはとティアナの確執を前にしながらも平静な態度を保ち続けていた彼は、やはり落ち着き払って周囲を見回した。 この場で唯一、自分と同じようにどこか達観した様子で構えている赤毛の少女へ視線を向ける。 「それじゃあ、後はよろしく頼んだぜ。ヴィータ」 「オイコラ、なんであたしに言うんだよ?」 「世話好きそうだしな。俺がいない間、こっちを一度も見ようとしない頑固な妹分を上手くフォローしてやってくれ」 苦笑混じりに呟くダンテの言葉に嫌味な響きは無かったが、ジョークとも皮肉とも取れないそれにティアナの肩が僅かに震えた。 彼女が意図して自らの感情を胸の内に封じ込め、誰にも見せようとしない態度は確かに頑なそのものだ。 スバルとなのはの無意識な非難の視線を受けても気にしないダンテのふてぶてしい態度を見つめ、ヴィータはやれやれと肩を竦めた。 「せいぜい上手くはやてに売り込めよ。――オラ、新人ども。ロビーに行くぞ」 戸惑うスバル達を半ば強引に引き連れ、ヴィータはヘリポートから去って行く。 なのはだけが、自然とその場に残る形となった。 なのは自身、ヴィータがそれを意図していたことは無言のやりとりの中で理解している。その気遣いに感謝した。 全てを察しているかのように、まだヘリへ乗り込まないダンテへ視線を向けた。彼と話すことは、今はティアナのこと以外に無い。 「……ティアと打ち解ける為の話題を探してるなら……まあ、何かネタを提供しようか? 好きな食べ物とか、趣味とか」 ダンテが茶化すように言った。のんびりした口調だが、力のこもった声だった。 彼は、ティアナの問題について決して軽く見ているわけではない。この軽薄さは彼なりの気遣いなのだと、なのはは気付き、力無く笑いながら顔を上げる。 「わたしより、ダンテさんが話した方が良いかもしれない」 「何故、そう思うんだ?」 「わたしはティアナを傷つけました」 「アイツは昔から危険なやりとりが好みだ」 「きっと嫌われてます」 「俺も最初はそうだったさ。此処に来るまでの6年間、本当にいろいろあったんだ」 なのはの吐き出す弱音をダンテは穏やかに受け止め続けた。 ただ一つだけ、彼は拒否し続ける。なのはに代わって、ティアナに語りかける事を。 「……わたしは、ティアナの決意を否定してしまった」 おそらくそれがなのはにとってティアナと向かい合えない一番の理由を、沈痛な面持ちで呟いた。 戦う時、自分はいつだって自らの信念を貫いてきた。 だが、久しく忘れていたらしい。自らの意思を通すことは、他人の意志を砕くことなのだと。 同じく忘れていた本気の戦いと対立を経て、思い出していた。 かつて、そして今かけがえのない親友であるフェイトやヴィータ達ともそうだった。しかし、肝心のところが思い出せない。傷つけた相手と、どうやってもう一度手を取り合えるのか。 苦悩するなのはの表情を見つめ、ダンテは頷いた。 「ああ。だからナノハ、お前しかいないんだ。今のティアと話し合えるのは」 驚き、なのははダンテの顔をジッと見つめた。 「ティアの決意が、間違ってると思ったから立ちはだかったんだろ? 俺も止めるべきだと思った。力だけを求める先にあるのは、孤独だ。俺はその前例を知ってる。アイツを独りにはしたくない」 「でも……わたしにとって正しいことが、ティアナに当て嵌まるとは限らない。押し付けているだけなのかも……」 「人としてティアを想った行動だ。正しいかどうかは分からないが――胸を張るべきだと思うぜ。 家族や仲間だと思っているからこそ、間違った道を正してやらなくちゃいけない。魂がそう言うんだ。止めなきゃならない……例えそれが、相手を傷つける結果になっても」 ダンテの最後の言葉は自分自身にも言い聞かせ、心に染み渡らせているようだった。 悲しげで、しかし後悔を抱くことを否定する強い確信に満ちていた。 その瞳が一瞬、なのはを通して遠い過去を見据える。 「……ひょっとして、ダンテさんも?」 なのはの曖昧な質問を、ダンテは正確に捉え、そして曖昧に笑うだけで答えた。 家族や仲間だと思っているからこそ――。 なのははその言葉を何度も心の中で呟き、噛み締め、そうすることで少しずつ自分の中に10年前から変わらず在り続ける信念を思い出し始めていた。 「実の兄貴でね。お前さん達みたいに仲良くなんてお世辞にも言えなかったが……昔、ソイツを斬った」 呟きとため息を同時にダンテは漏らした。 頭の中にどんな光景が回想されているのか。そこに抱く感情はどんなものなのか。察することは出来ない。 「――だが、ティアには出来なかった」 悔いるような声だった。 先ほどのダンテの言葉を聞いた以上、今の彼が抱く感情ならなのはにも分かる。 家族だからこそ。 だが同時に、家族だからこそ『傷つけなかった結果』に悔いなど抱いて欲しくはないとも思っていた。 「だから、俺には今のティアを偉そうに諌めることなんて出来ない――。 とんだ弱味になっちまった。もう俺には、アイツを殴ってでも道を修正してやることなんて出来ないだろう。 『その時』にアイツがどんな眼で俺を見るのか、俺の手に伝わる感触はどんなものなのか。情けないが、怖くてね。少し長く、近くに居過ぎたんだな」 「それって、いけないことですか? ……わたしは、違うと思いますけど」 肯定を求めて縋るようななのはの言葉に、ダンテは苦笑しながら首を振るしか出来なかった。 「俺には、何とも言えない」 気まずげに言葉を濁したダンテを救うように、痺れを切らしたヴァイスが搭乗を急かす声が響いた。 背を向ける。 「ティアを頼む。勝手な押し付けだが」 「……いいえ」 カーゴの中へと消えていく、どこか小さく見える背中を見つめながら、なのはは静かに呟いた。 「わたしにとっても、ティアナは他人じゃないから」 未だ僅かな迷いのある瞳の中、しかし一つの意志が蘇っていた。 足早に皆の――ティアナの待つロビーへと向かっていく。 それまであったティアナを避ける気持ちは驚くほど薄れていた。 まだ何を話せばいいのか分からない。ただ、これは自分がやらなければならない――そんな使命感のようなものを胸に、なのははティアナ達がテーブルを囲うロビーへと足を踏み入れる。 シャリオやシャマルを含めた、全員の視線がなのはに集中した。ティアナの視線も。 ただ一人、ヴィータだけが何もかも分かっていると言うように頷くのが見えた。 「――ティアナ」 臆すことなく口を開く。 「お話、しようか?」 「……はい」 ティアナは静かにその言葉を受け入れた。それだけのことが酷く嬉しい。 「なのはさん、ティアナへの説明なら私から……」 「いいよ。ありがとう、シャーリー」 シャリオの気遣うような言葉をやんわりと断る。 模擬戦の苛烈さを見た者なら不安を感じるのも仕方が無い。 だが、その不安を一身にティアナへ向ける誤解があるまま任せたくはなかった。 ぶつかり合ったもの同士でしか分からない。理解し合えない。あの時の互いの意志は。 だからこそ、自分が向き合うべき問題なのだ。 無言で立ち上がるティアナを傍に控え、なのはは一度だけシャリオに振り返る。 「シャーリー、いつもわたしを信頼してくれてありがとう。 ……でも、今回はそれを裏切る形になっちゃった。ごめんね」 「そんな、なのはさんは間違ってなんて……」 「片方が間違ってれば、もう片方が正しいなんて単純な物事は無い。間違ったんだよ、わたしも。……間違えることだって、あるんだよ」 納得のいかない顔をするシャーリーから感じる信頼を半分喜び、半分辛く感じながら、なのははティアナを伴い、ロビーから立ち去った。 残された者達に出来ることは、ただ待つことだけであった。 「考えてみたら……」 「はい?」 眼下に溢れていた街の灯火が消え、月明かりを反射しながら蠢く黒い海面だけになると、おもむろにダンテは呟いた。 「ヘリに乗るのは初めてだ。無料でベガスのツアーが味わえるとはね。ちょいと景色が殺風景だが」 「呑気な奴だ。緊張は無いのか?」 「緊張ならしてるさ。とびきりの華を両手に、夜空のデートなんだからな」 こうして面を向かい合うのはシグナムにとって初めてだったが、僅か数言交えただけで目の前の男の人となりがなんとなく分かってしまった。 このダンテという男が先のホテル襲撃事件で多大な貢献をしたことは聞いていたが、空中戦を行う技能は無いと自己申告している。 空を飛べない彼が、先の空中に待つ敵との戦闘をどうするつもりなのか? 「肝が据わってるのか、バカなのか」 皮肉るようなシグナムの呟きに、ダンテは肩を竦めるだけ。 自信を込めた無言の笑みが何よりも語る――『まあ、見ていろ』 「面白い奴だ」 初めてシグナムは苦笑を浮かべた。心を許した者だけに見せる表情だ。 どうやら、この軽薄だがどこか憎めない男を堅物な剣士は気に入ったらしい。 その理由が何となく分かってしまうフェイトもまた苦笑を禁じ得なかった。 離陸する前とは比べて、幾分軽くなった空気を感じながら、ヘリの三人は待ち構える戦いに集中していく。残してきた者達は気になるが、それは今は雑念だ。 『間もなく現場空域に到達します。隊長さん方、準備は良いですかい?』 タイミング良くヴァイスの報告がカーゴ内に響く。 三人は顔を見合わせた。 「さて、ダンテ。お前は飛行能力を持たないのだったな?」 「さすがにスーパーマンの真似事は出来なくてね」 「ならば、丁度デバイスも射撃型だ。我々が近接戦闘を行う間、遠距離からの援護という役割でいいか?」 フェイトも同意する妥当な作戦を聞き、ダンテは腕を組んで考える振りを見せた。『振り』である。 もちろん、考えるまでも無く――彼という人物を知る者ならやはり疑い無く、ダンテの答えは決まっている。 「無難だな。だが、止めとこう」 そいつは<スタイル>じゃない。 「もっと良い考えがあるぜ。――Hey! ヴァイス!」 『何か用ですかい、旦那?』 コクピットに繋がるマイクへ声を掛けると、意外なほど気安い返事が返ってくる。 シグナムとフェイトは思わず顔を見合わせた。 「……ヴァイス君と知り合いだったんですか?」 「ああ、もうすっかりオトモダチさ。趣味も合う方でね」 「そういえば、同じ射撃型デバイス持ちだったな」 「それに、うちの妹分が世話にもなった。切欠はそこからだな」 『お節介を焼いただけですよ』 「ついでに色目も使ったな。手を出したら殺すぜ」 『……肝に銘じときますよ』 「GOOD」 途端に神妙になる声に、ダンテは満足げに頷いた。 確かに、短い時間でも十分な友好関係は築けているらしい。その力関係も含めて。 「OK、気を取り直して俺のプランだ。 このまま敵の固まってる場所より上空を飛んでくれ。出来れば真上がベストだ。見つからないように距離を取れよ」 『了解』 気を取り直してダンテが告げる。 この場で彼にヴァイスへの命令権など無いが、誰もが自然とそれに違和感や反感を感じなかった。 その態度と言葉から溢れ出る根拠の無い自信が、不可解な期待を抱かせるのかもしれない。この男は何かやってくれる、と。 『目標地点に到着。ピッタリ、敵の真上です』 「ハッチを開いてくれ」 程なくしてヘリは上昇と移動を終え、敵にすら気付かれない遥か高高度へと到達する。 ハッチが開くと同時に強烈な風がカーゴ内を巻く中、ダンテは涼しい顔をして眼下を見下ろした。 ガジェットと思わしき光源が羽虫のように飛び回っている。 「――それで、次は?」 シグナムの問いに、身を乗り出していたダンテは振り返った。 風がダンテの体全体を煽り、月光に鈍く輝く銀髪が乱れる。形ばかりのバリアジャケット代わりとして羽織った六課制式のコートがはためいた。 「OK、次はこうだ。しっかり踏ん張って、掛け声を掛ける」 「掛け声?」 ニヤリ、と。不安になるような悪戯っぽい笑みが浮かんだ。 「ああ、そうだ。こうやってな――ジェロォォニモォォォッ!!」 景気付けとばかりに大声を張り上げ、両手を広げてダンテはそのまま夜空へ向けてダイヴした。 「えええええっ!?」 「バカか!」 慌ててハッチから下を覗き込めば、あっという間に小さくなっていくダンテの背中があった。 スカイダイビングの要領で、両手足を広げて速度を調節しているようだが、飛行魔法もパラシュートも持たない彼を最後に待つのは地面との熱烈なキスとその後のミンチだ。 もちろん、これがダンテの単なる自殺行為なハズはないだろう。 「何か考えがあるのだろうが……クソッ、それでも正気か?」 シグナムの悪態の答えなど分かり切ったものだった。 少なくともダンテの旧知ならば、ティアナを代表として全員が口を揃えて言うだろう。 ――『いいや、イカれてる』 「とにかく、私達も行かないと……! ライトニング1、行きます!」 近くにいれば最悪の事態にも対処出来る。そう判断し、フェイトはすぐさま自らも出撃を決意した。 待機モードのバルディッシュを取り出し、ハッチに足を掛ける。 それから何故か少し躊躇う姿を、シグナムは訝しげに一瞥して、 「じぇ、じぇろにもぉー!」 律儀にもダンテの行っていた掛け声をたどたどしく真似しながら、フェイトは空中へと飛び出した。 「……ライトニング2、出るぞ」 その素直さと天然の入ったライバル兼親友の姿にため息を吐きながら、シグナムもまた追うように飛ぶのだった。 耳元を空気が唸り声を上げて通り過ぎていく。 重力に引かれるまま、徐々に加速していく落下に対してダンテは僅かな恐怖も抱いていなかった。 このまま地面に激突するなんてヴィジョンは脳裏に欠片も浮かんでいない。 問題ない、高い所から落ちるのは慣れている。 暗黒の空をダイビングしながら、ダンテは視線の先に飛び交う敵影を捉えた。 落下し続け、距離の詰まりつつある現状でもまだ豆粒程度にしか見えない敵に早速先制攻撃を開始する。 広げていた両手を体に沿って伸ばし、頭から弾丸のように落下する体勢で加速を得ると、そのまま一回転して器用に頭の位置を下から上に変えた。 足から落ちていく形。その下に蠢く敵へ向けて、デバイスの銃口を向ける。 「Let s Rock!」 お決まりの台詞を吐き捨てると、両腕の銃口が火を吹いた。 超高速・高圧縮の魔力弾が動き回る小さな的を、狙い違わず貫通する。爆発、そして散華。夜空に開戦の花火が広がる。 「BINGO!」 文字通り、一気に火が付いた。 ダンテの顔に浮かぶ笑みは深く、獣が牙を剥くそれへと一瞬で変貌し、暗い闘争心が燃え上がる。 今、この夜空に存在するのは家族同然の少女を案じる兄貴分の男ではなく、悪魔を狩ることにおいて右に出る者はいない最強の狩人であった。 旋回する集団のど真ん中で起こった爆発に、敵の意識が一斉に上空から迫るダンテへ向けられる。 無機質な戦闘機でありながら、表面にへばり付いた生体部分でギョロギョロと動く眼球から感じられるハッキリとした<視線> 常人ならばその薄気味悪さに背筋の凍りつくような感覚も、ダンテにとってはむしろ馴染み深く、得体の知れない機械を相手にするよりは幾分やりやすい。 奴らの狩り方は熟知している。 「Show time!」 旋回行動を止め、回頭して機首をこちらに向けた敵へダンテはすぐさま第二射を放った。 しかし、さすがはこちらと違って空を飛ぶ為の体。ガジェットの群れは弾幕へ飛び込む形で上昇しながらも各々回避行動を取る。 撃ち返される熱線、無数。超派手。 「Fooooow!!」 ナイトスタジアムで出すような歓声。迫り来る脅威を目の前にして、ダンテの理性が弾ける。最高のスリル。 何も無い空間をキック。だが、靴底には確かな手応え。 無意識に発生した瞬間的な魔方陣の足場を蹴って、落下する軌道を強引に捻じ曲げる。 急激な横移動の一瞬後には、傍らを掠めるように熱線が通り過ぎていった。 続けて迫り来る熱線。キック。別の熱線。キック。熱線。キック。キック。 <エアハイク>の文字通り、空中を歩くような自在な動き。小刻みに跳ね回ることでダンテは敵の弾幕をすり抜けていく。 ティアナが使用する魔法の応用とは違う、完全なスキル。いちいち術式を組み直す必要などないからタイムラグもずっと短い。 それでも空中で高度を維持できるほど連続は出来ない為、ダンテの体はどんどん落下してく。縮まる敵との相対距離。互いの速度も反応の猶予もどんどんシビアになっていく。 「Yeaaaaaah!」 その刹那のスリルがたまらない。 ダンテは嬉々として敵中に飛び込んでいった。 狭くなる視界の中を超高速で飛び回る敵影。かすんで見えるそれらの影から一つを選んで、舌なめずり。 距離が縮まる。 ――3 またも器用に体勢を変えて、狙った標的に体当たりするような軌道と加速で接近する。 ――2 標的のガジェットもこちらの狙いに気付いたか、すぐさま回避行動。衝突しない軌道を取る。 ――1 そしてダンテ、直前で、キック。 驚異的な動体視力でガジェットの機動に追従したダンテは、狙い違わず標的を捉えた。 ――コンタクト。 激突。 「失礼、ちょいと便乗させてもらうぜ」 船体に蹴りを加えるような着地を成功させたダンテは、自分を睨みつける寄生型ガジェットの眼球にウィンクを返して見せた。 思わぬ重量を背負ってふら付きながらも、ガジェットは張り付いた敵を振り落とす為に無茶苦茶な機動を始める。 「Wow.Ho,Hooooo!!」 ダンテはそれをまるで荒波に揉まれるサーフボードよろしく乗りこなしていた。 バランス感覚だけではどうにも出来ないようなでたらめな動きの中で、振り落とされるどころか他のガジェットへ向けてデバイスをぶっ放す。 超高速の空中サーフィンをこなしながら、歓声すら上げて周囲の敵を次々と撃ち落してく様はクレイジーとしか表現できない光景だった。 しかし、その狂った曲芸も唐突に終わる。 熱線がダンテの足元を貫いた。味方を斬り捨てる機械的な判断により、足場となっていたガジェットが同じガジェットの攻撃によって破壊される。 機体の爆発に煽られ、吹き飛ばされたダンテは当然落下するしかない。 「なかなかクールな判断だ」 落ちていく感覚を他人事のように感じながら、ダンテは呟いた。 飛行能力が無い以上、ガジェットの跳ぶ高度より下に落ちてしまえば、あとは地面に激突するまで止まらない。 「何をやってるんですか!?」 全身をリラックスさせて落ちるがままに任せるダンテの元へ、金色の光が瞬時に駆けつけた。 ガジェットの敵中をすり抜け、フェイトは落下するダンテの腕を掴んですぐさま上昇する。 「後先考えずにバカな真似をしてっ! あのまま落ちたらどうなるか分からないんですか!?」 ぶら下がった体勢のまま激昂するフェイトの整った顔を見上げて、少し思案するように乾いた唇を舐める。 「信じてたよ」 「そ、そんな取り繕った言い訳してもダメです!」 赤面するフェイトを視界の隅に収めながら、ダンテは後続のシグナムと交戦を始めたガジェットの残りを確認した。 かなり撃墜したはずだが、まだ数は多い。 「まだ食べ放題ってわけだ。フェイト、敵に向かって飛んでくれ」 「もうっ、人の話を聞かないんだから!」 不満そうに頬を膨らませながらも、戦闘中であることを理解しているフェイトはダンテをぶら下げたまま敵中へ突っ込んだ。 「ベイビー、俺のやり方は分かってるな? 適当な獲物に向かって投げてくれ!」 「もうっ、滅茶苦茶!」 呆れたような悪態と共に、加速をつけてダンテを一体のガジェットに向けて投げつける。 高速で飛来するダンテの弾丸のような蹴りを受けて、船体が大きく軋んだ。そのままゼロ距離でデバイスを足元に撃ち込む。 機体の爆発を利用して、ダンテは跳んだ。 追いついたフェイトが再度伸ばされた腕をキャッチする。意図せぬ完璧なタイミング。以心伝心。互いに意識せず体がシンクロする。 向かい合った二人。一瞬だけ視線が交差した。 「ターンだ!」 背中から迫る敵を感覚で、フェイトの肩越しに背後から迫る敵を視界で捉えたダンテが繋いだ手を強く引いた。 お互いに位置を入れ替えるダンスのようなターンを決めて、フェイトの斬撃とダンテの射撃が各々の標的を撃破する。 二つの爆光を受け、ダンテは思わず口笛を吹いた。 腕を引き、フェイトの体を引き寄せると、もう片方の手を腰に回す。 「いいね、危険な女は嫌いじゃない」 鼻が触れ合うほどの距離で恋人にそうするように囁くと、フェイトの顔が一瞬で沸騰した。意味不明な音が口から漏れる。 「いいい、今は戦闘中ですよっ!?」 「分かってるさ。ダンスの再開だ」 「ならば、こちらのダンスにも付き合ってもらおうか」 死角から迫っていたガジェットをレヴァンティンで貫き、何食わぬ顔でシグナムがダンテの首筋を引っ掴んだ。 「OH、強引なお誘いだ」 「生憎と踊りを嗜む趣味はないのでな。せいぜい振り回すだけだが、構わんな?」 聞いたことのある台詞だった。目の前の美女の半分くらいの背丈の少女が同じ笑みを浮かべていたのを見た気がする。 何処か凄惨さを感じさせる戦士としての笑み。だが、危険な匂いのする女の笑みは得てして男を魅了するものだ。 ダンテも思わず笑みを返すと、シグナムの方を向いたままあらぬ方向から迫るガジェットを正確に撃ち抜いた。 「もちろん、喜んで。やっぱり今夜は両手に華だな」 「お前の性格は大体把握した。合わせてやるから、適当にやれ」 「シグナム! ダンテ! 来るよ!」 いつの間にか随分と気安い口調になってしまったのを、フェイト自身は自覚していないだろう。 反転し、一斉に襲い掛かるガジェットの残党を視界に納め、各々が自らの武器を構える。 「来いよ、ベイビー! キスしてやるぜ!」 両手に美女。夜空でダンス。最高の機嫌とテンションで、ダンテは迫り来る敵を嬉々として迎え撃った。 普段訓練に使う人工の浮島がある沿岸沿いを、なのはとティアナはゆっくりと歩いていた。 まだそう長くは歩いていないが、隊舎を出てからここまで一言も交わしていない。二人とも相手に掛ける第一声とそのタイミングを測りかねているのだった。 歩く先に目的地など無い。きっとこのまま歩いていたら、夜が明けるまで隊舎の周りをグルグル歩き回る羽目になるんだろうな、と。 そこまで考えて、なのはは自分の想像に思わず吹き出しそうになった。 笑いを堪えるなのはの横顔をティアナが不審そうに見ている。 なのはは誤魔化すように咳払いをして、視線を夜空に泳がせた。 「……この空の先で、もうフェイトちゃん達は戦ってるんだろね」 何気ない呟きだったが、それが話の切欠になるのだと気付く。 散々思い悩んだ挙句、あっさりと話を切り出せたことに苦笑しながらなのははティアナに視線を移した。 「……教導官は、出撃に参加すると思ってました」 「うーん、ちょっとね。駄目出し受けちゃった。今のわたしじゃ不安で任せておけないって」 なのははおもむろに歩みを止めた。それに合わせるようにティアナも。 「自分が何も出来ない無力感って、ホント嫌なものだね」 「はい」 「ティアナが感じていたものが、その時の焦りが、何となく分かった。だから、力が欲しいっていう気持ちは……」 そこまで舐めらかに話していたなのはは、突然何かが喉に支えたかのように言葉を閉ざした。 口の中で何度か言葉を反芻して、それから困ったように笑う。 「……なんだろうなぁ、実はいろいろ考えてたんだよ? ティアナと面と向かったら、どういう言葉で話を進めようか。頭の中にたくさん用意しておいたのに」 「ポケットの中にスピーチ用の紙があるなら、どうぞ使ってください。気にしませんから」 「ダンテさん仕込みのジョーク? ティアナって結構毒あるよね」 「すみません」 二人は苦笑し合った。間にあったぎこちなさが薄れていく気がする。 こうして、当たり障りの無い会話をしながら、模擬戦での出来事を全て曖昧にしてしまいたい欲求になのはは駆られた。 だが、それは逃げである、と。 あの時ぶつけ合った言葉は、意志は、確かに本物で本音だったのだ。もう誤魔化すことは出来ない。 いつの間にか、二人の笑い声は消えていた。 顔を見合わせ、お互いの痛ましく感じる笑顔を一瞥すると、どちらが促すこともなく道沿いの斜面に腰を降ろす。 「……用意していた言葉が、どれも軽く感じるよ」 すぐ隣に座るティアナを見れず、なのはは彷徨わせていた視線を結局空に向けた。 「結局、あの時模擬戦で思うままに叫んだ言葉が何よりも本音だった気がする。 今回のことで、自分の教導の甘さに気付いたよ。人が人に教えるんだもん、教える相手にも色んなタイプがいるよね。 誰も不満を言わなかったからって、全部同じ手順で済ませようとしたわたしの未熟だよ。ティアナと同じ目線に立って、ようやくそれが分かった」 「私も、あの時自分は頭を冷やすべきだったと思います」 「お互い、まだ未熟だったってことだね」 「でも、あの時起こったことが……無ければよかったとは、思いません」 そこで、なのはは初めてティアナの眼を見た。 「私の本気に、本気で応えてくれた。嬉しかったです」 「憎んでるんじゃない? 理由はどうあれ、わたしはティアナの本気の想いを否定したんだよ」 「私のことを想って、ですよね。今なら、それがどれ程幸せなことなのか分かります」 「お節介じゃない?」 「あの時は、迷惑だとか言ってすみませんでした。部下として信頼してくれてるから、あそこまでしてくれたんですよね」 「仲間として、想ってるよ」 「あ、いや、それは……恐縮です」 にっこり笑って断言するなのはの顔を直視できず、ティアナはそっぽを向いて鼻の頭を掻いた。 伝え合った本音が、お互いの心へ清流のようにスッと染み渡っていく。 二人して再び空を見上げる形になり、しばらく間を置いてそっとティアナの様子を伺った。 なのはは彼女が考えに耽っているのを見て取った。初めて会った時からずっと、思慮深く、感受性の強いティアナはその冷静な態度の奥で多くのことを考え、想い、悩んでいる。 自分はその一端に触れる貴重な経験をしたのだ、と。何か妙な誇らしさを感じずにはいられなかった。 あらゆる弱味や問題を自身の力のみで解決してしまう程決断力の高い少女が、こうして僅かにでも心を曝け出す人間はそう多くないだろう。 「あの」 不意にティアナが切り出した。 「もう必要ないのかもしれないけれど……もうちょっと話したいことがあるんです」 「うん」 「今更なのかもしれないけど、死んだ兄のことで。特に意味は無くて、ただの昔話なんですけど。別に同情を買おうとか、変な意味じゃなくて、ただ……」 「うん、わたしも聞いておきたい。ティアナのこと、少しでも知りたいから」 「……ありがとう、ございます」 恥ずかしそうに俯くティアナの頬は少しだけ赤かった。 そのまま地面を見つめ、なかなか口を開こうとはしなかったが、なのはは根気強く待った。 やがて顔を持ち上げ、その視線を遠い昔に向けたティアナは静かに語り始めた。 「ある晩、兄が夕食の時に言ったんです。『お前に義姉が出来るかもしれない』 とんでもない発言でしたが、当時の私にもその意味は分かりました。 兄は、その発表に私が喜ぶ反応しか見せないと信じ切っていて、とにかく分かりやすくだらしない顔でしたね。 両親が亡くなってから、ずっと仕事と私の世話でそういう……兄に女性の影なんて全然見えなかったら、ショックでした。 その女性についていろいろ話すんですけど、どんな良心的なイメージを思い浮かべても、その人が自分の姉になるなんて、信じられなかった。兄が取られると、子供らしく単純に思いました」 ティアナは時折懐かしむような笑いを混ぜながら語り続ける。 「相手の女性は同じ管理局員で、自分が局員になった後に顔を知りましたが、キャリアウーマンって感じの美人でした。防衛長官の実娘だそうです。秘書をやってるとか。 完璧なエリートで、今思えばどうやってヒラである兄と知り合ったのか疑問ですが、兄がそんなに女性に対して強くないことを考えれば、そこまで行き着いた努力はかなりのものだったんでしょう。 そもそもどんな切欠で女性に声を掛けようと思ったのか……。まあ、時期を考えれば、影響しそうなのは一人しかいないんですけどね。 丁度、兄とダンテが知り合ったらしい時期でした」 あの女性に対して特に好意的で気安い態度を思い浮かべて、なのはは容易く納得出来た。出来すぎて、思わず笑ってしまうほどだ。 「そしてその夜は、奇跡的にデートの約束まで取り付けた日だったとかで。 兄は調子良く私に話すんですけど、もちろん当時の私は全然面白くなくて、ただ不機嫌さに気付いてもらえるよう表情に出して相槌をするだけでした。 そこで、兄にその女性から電話が繋がったんです。多分、その当日の話か何かで。 私はチャンスだと思い、通話する兄のすぐ傍でこう叫んだんです。『お兄ちゃん、その人も恋人なの? さっきの女の人は違うの?』って」 「悪い妹だね」 顔を顰めながらも笑いの堪えられないなのはに、ティアナは意地悪く微笑んで見せた。 「最悪のガキだったと思います。 怒鳴り声はなくて、何か数言聞こえたかと思ったら、電話が切れました。 呆然とした兄が残されて、それからどうなったかは……分かりません。ただ、しばらく兄は落ち込んでましたけど」 長い話を終えると、ティアナは大きく深呼吸して追憶の余韻を味わった。 掘り起こされた思い出が心を暖かくする。 しかし、浮かんでいた柔らかい笑みは気が付けば元に戻っていた。 「……その次の月でした。兄が死んだのは」 ティアナが静かに告げた。 「あの時、私が邪魔をしなければ兄は、ずっと私の世話で味わえなかった人生の楽しみを少しは味わえたかもしれない――。 そう考えて後悔を感じることが、度々あります。ほんの些細なことなのに、思い出して悔いに繋がる。 失った人に対して、もっと何かしてあげられたんじゃないか? でも、もう絶対に何もしてあげられない。それを実感する度に人の死の重さを感じます」 「ティアナ……」 「兄が好きでした。父親の姿をよく覚えていないから、憧れも、誇りも、全部兄の背中に感じていた……」 僅かに聞こえた鼻を啜る音に、なのはは敏感に反応した。泣いている? だが、伺ったティアナの横顔はただ何かを堪えるように慄然としていた。彼女は頑なに弱味を見せようとしない。 「その兄が死んだ時――その死に対して『役立たず』『無能』と烙印が押された時、私の人生は決まりました」 「……お兄さんは、それを望んでいたかな?」 ティアナを怒らせることになるかもしれない。しかし、問わずにはいられない。 なのはの言葉をティアナは意外なほど呆気なく受け入れ、疲れたように首を振った。 「分かりません」 「スバル達は、そんなティアナの生き方を心配してる」 「私は、恵まれてると思います。本当に、そう思います。だけど……」 少しずつ、ティアナの声に余裕が無くなり始めていた。 何かが沸々と腹の底から湧きあがってくる。そのワケの分からない感情のうねりが、熱となって鼻と目を刺激した。 ティアナは必至でそれを堪えようとした。 「だけど……っ」 なのははティアナの膝の上に手を伸ばして彼女の手を取った。 ここで話すのを止め、打ち明けようとした感情と言葉を全て封印しようかと考えていたティアナはその手の暖かさに背を押された。 「兄は殺されたのだという事実を、忘れられない……っ。その死が無駄だったと、悼まれもしなかったあの時の光景が忘れられないっ」 嗚咽を噛み殺し、溢れそうな涙を押し留めながら、ティアナは必死で想いを吐き出した。 「悔しいんです……っ! 兄の無念に、何でもいいから報いたい。この気持ちを時間と共に少しずつ忘れながら、のうのうと生きていくなんて耐えられない。 許すことなんて出来ない。例えこの命を賭けてでも、あたしは……誓いを果たす! 絶対に! それだけの意味があるっ!!」 「……だから、強くなりたいんだね?」 「なりたいです……強くなりたいですっ。あたしは、強く、なりたいです……<なのはさん>」 なのはは胸の詰まる思いだった。 彼女がきっと誰にも見せたくないだろう弱さに崩れた本当の素顔を隠すように胸に押し付け、抱き締める。強く。 ティアナはただ黙ってなのはの背中に手を回した。なのはも、ただ強く抱き締める以外のことが出来なかった。 経歴からティアナの力を求める理由を理解したつもりだった。 だが、所詮『つもり』だったのだ。 彼女の吐露した痛く、苦しく、その命を賭けるほど決死の意志に対して、諭す言葉など何も思い浮かんでこない。 ただ無力と共にティアナを抱き締めるしかない。 「ああ……強くしてあげるよ。ティアナ、わたしがアナタを強くしてあげる。絶対に!」 「なのは、さん……」 「でも、一つだけ約束して! 命を賭けるほどの覚悟は分かる。もう止めない。だけど、その瞬間まで……お願いだから自分の命を惜しんで。 わたしは、ティアナに死んで欲しくない。本心だよ。わたしだけじゃなく、スバルも、他の皆もティアナの幸せを願ってる。それぞれがそれぞれを想い合ってる。 その絆の中にティアナがいるっていうことを……絶対に、忘れないで」 ティアナは目に涙を溢れさせながら頷いた。 「お兄さんがアナタの心に遺したように、ティアナの死は絶対に他の誰かの心に傷を遺すから。わたしにも――」 「はい……はい……っ」 それ以上、何も言えなかった。押し寄せる感情のうねりに胸が詰まって、言葉が出てこなかった。 ただ、その時。なのはの腕に抱き締められながら、今この場で彼女以外の誰も自分を見ていないことを悟ると、ティアナは何かに許されたような気がして。 数年の時を経て、自らに泣くことを禁じていた少女は初めて、ただ――泣いた。 to be continued…> <ティアナの現時点でのステータス> アクションスタイル:ガンスリンガーLv2→ LEVEL UP! →Lv3 NEW WEAPON!<クロスミラージュ・ダガーモード> 習得スキル <ファントムブレイザー>…遠距離用精密狙撃砲。最大クラスの攻撃力だが、魔力消耗量も激しい。 <オプティックハイド>…幻術魔法の一種。短時間だが姿と気配を消すことが出来る。修練不足の為、他のスキルとの併用は不可。 <フェイクシルエット・デコイ>…本来は幻影を生み出し、操作する高位魔法。修練不足の為、自分自身の幻影を一体のみ、しかも数秒しか維持できない。用途は主に攻撃のミス誘発。 <ガンスティンガー>…銃剣タイプのダガーモードで突進し、魔力をチャージした刃を敵に突き刺す近接技。障壁貫通効果もある。 <ポイントブランク>…ガンスティンガーの後にゼロ距離でチャージショットを叩き込むクレイジーコンボ。ダメージ大。 <???>…デバイスの新モードが解禁された。技能は発展する、更なる経験とオーブを集めよ。 前へ 目次へ 次へ
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公式サイト→魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st公式サイト 劇場2010 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st<初回限定版> [Blu-ray] posted with amazlet at 10.09.19 キングレコード (2010-11-26) 売り上げランキング 1 Amazon.co.jp で詳細を見る ブログ #blogsearch2 ニュース 『アサルトリリィ Last Bullet』が『魔法少女リリカルなのは Detonation』コラボ開催 - マイナビニュース 「魔法少女リリカルなのは Detonation」×「アサルトリリィ Last Bullet」コラボ開催 - マイナビニュース あみあみ限定特典付き!『魔法少女リリカルなのは15周年記念イベント「リリカル☆ライブ」 (Blu-ray Disc)』の予約受付中!! - PR TIMES TVアニメ「魔法少女リリカルなのは」 王道の魔法少女モノで萌えと燃えを体感せよ! - あにぶ 『魔法少女リリカルなのは』15周年記念イベント リリカル☆ライブ 【レポート】 - 超! アニメディア アニメ『魔法少女リリカルなのは』新プロジェクト発表! 15周年記念イベント「リリカル☆ライブ」公式レポート到着! - アニメイトタイムズ シリーズ15周年記念「リリカル ライブ」 なのは、フェイト、はやてを描いたビジュアル完成 - アニメハック 11月20日発売!「魔法少女リリカルなのは キャラクターソングコンプリートBOX」収録ディスク全6枚のダイジェスト試聴動画公開!! - 超! アニメディア 『魔法少女リリカルなのは』キャラクターソングコンプリートBOX収録楽曲ダイジェスト視聴動画公開!初回生産版には15周年記念イベント「リリカル☆ライブ」のチケット優先販売申込シリアル付き - アニメイトタイムズ 「魔法少女リリカルなのは キャラクターソングコンプリートBOX」より試聴動画を大公開! なのは&フェイトのデュエット曲など、新曲3曲と新録1曲解禁 - アニメイトタイムズ 『魔法少女リリカルなのは』、なのは&フェイトのデュエット曲など試聴開始 - マイナビニュース 『魔法少女リリカルなのは』シリーズ15周年!ライブDAY2開催&過去シリーズも期間限定配信中! - アニメージュプラス 「魔法少女リリカルなのは」15周年記念イベントDAY2開催 新曲情報や過去シリーズの期間限定配信も - おたくま経済新聞 『魔法少女リリカルなのは』15周年イベント2日目が開催決定 - 電撃オンライン 『魔法少女リリカルなのは』シリーズ15周年記念イラスト公開!イベント「リリカル☆ライブ」の2日間開催や、キャラソンBOXのジャケット&新曲情報が発表!YouTubeでの過去シリーズ3作品の期間限定配信も - アニメイトタイムズ 「魔法少女リリカルなのは Detonation」、動員10万人突破の好調スタート! 初日満… - アキバ総研 【今日のスタート】映画『魔法少女リリカルなのは Detonation』本日10月19日(金)より全国上映!! - STARTT.jp 「魔法少女リリカルなのは Detonation」公開日決定、ストーリーも解禁 - ナタリー 「魔法少女リリカルなのは Detonation」が2018年に公開決定 - 映画ナタリー 新作映画「魔法少女リリカルなのは Detonation」2018年公開が決定 - GIGAZINE 本日『魔法少女リリカルなのは Reflection』が公開!映画とあわせてフェイトやシグナムたちのフィギュア情報を振り返り!! - 電撃ホビーウェブ アニメ映画「魔法少女リリカルなのはReflection」、サントラCDが7月21日発売決定!… - アキバ総研 『魔法少女リリカルなのは Reflection』新ビジュアル 本予告映像第二弾など新情報解禁 - http //spice.eplus.jp/ 映画「魔法少女リリカルなのはReflection」、新情報! - アキバ総研 アニメ映画「魔法少女リリカルなのはReflection」、初日舞台挨拶決定! 田村ゆかり… - アキバ総研 田村ゆかり、水樹奈々、植田佳奈、戸松 遥、佐藤聡美、日笠陽子、清水香里、真田アサミ、柚木涼香、一条和矢が登壇! 「魔法少女リリカルなのは Reflection」初日舞台挨拶決定! - 超! アニメディア 「魔法少女リリカルなのはReflection」初日舞台挨拶が決定 田村ゆかり、水樹奈々らが登壇 - アニメ!アニメ! 新しいキャラの姿も!『魔法少女リリカルなのはReflection』メインビジュアル&アニメ映像解禁 (2017年3月30日) - エキサイトニュース 「魔法少女リリカルなのはReflection」詳細が発表に - アキバ総研 「魔法少女リリカルなのは」新ビジュアル&本予告第1弾が公開 - 映画ナタリー 劇場版までもうすぐ! 「魔法少女リリカルなのは」テレビシリーズ全話がAbemaTVで一挙配信 - - ねとらぼ 映画「魔法少女リリカルなのは Reflection」本予告映像解禁、物語は惑星の命運を懸けた戦いへ - GIGAZINE 「魔法少女リリカルなのは Reflection」公開日が7月22日に決定! - アニメハック 戸松遥&佐藤聡美「魔法少女リリカルなのは」劇場版最新作に出演、スタッフも発表 - ナタリー 12周年を迎える『魔法少女リリカルなのは』が多くのファンから愛されている理由とは? TVアニメ三作品から魅力を紐解く - アニメイトタイムズ 「魔法少女リリカルなのは Reflection」、2017年夏公開! 「The MOVIE 2nd A’s」… - アキバ総研 新シリーズ「魔法少女リリカルなのはViVid」TVアニメ化記念! 『魔法少女リリカルなのは』シリーズのコミックスが電子書籍にて復活&配信開始! - PR TIMES 「魔法少女リリカルなのはViVid」TVアニメ化決定 公式サイトオープン - アニメ!アニメ!Anime Anime なのはとのバトルを再現できる! 決戦仕様のフェイトちゃん (1/2) - ASCII.jp 全力全開のエクセリオンモードなのはやライトニングフォームのフェイトなど「魔法少女リリカルなのは」いろいろ - GIGAZINE 『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』レイジングハートが1/1サイズで遂に商品化! - Dream News 劇場版「魔法少女リリカルなのは」のトレーディングカードが12月22日に発売 - 4Gamer.net “週末痛車族”に最適? 『魔法少女リリカルなのは』 マグネット4種発売 - レスポンス 私服フェイトやボーメ氏の作品も飛びだした「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」関連フィギュア&グッズ - GIGAZINE なのは映画第2弾やゲーム第2作目発表で1万6000人が沸いた「リリカル パーティーIV」レポート - GIGAZINE 人気アニメ「魔法少女リリカルなのは」、第2弾映画製作決定!美少女の激しいバトル最新作は2012年公開! - シネマトゥデイ やはりキタ! 劇場版なのはが店頭を埋め尽くす! (1/2) - ASCII.jp 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」がBD/DVD化 - AV Watch 『一番くじプレミアム 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』8月下旬よりコンビニエンスストアやホビー店などで発売 - PR TIMES 田村ゆかり&水樹奈々他、豪華キャストが登壇! 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」初日舞台挨拶 - ITmedia 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」入場者特典のフィルム、”フェイトの笑顔”は”綾波の笑顔”を上回る18万円の高値 - GIGAZINE 劇場版「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」公開初日の舞台挨拶、「たまに変態のフェレットにちょっかいを出されますが、最後には思いが成就します」 - GIGAZINE 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st (2009):あらすじ・キャストなど作品情報|シネマトゥデイ - シネマトゥデイ 1月23日公開の映画「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」試写会感想、変身シーンでなのはの全てが見られる - GIGAZINE 「魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st」劇場用予告編が公開、なのはの変身やディバインバスターも - GIGAZINE 全力全開! 「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」アフレコ現場に突撃 - ITmedia
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@なりきりパーティーで追加された「魔法少女リリカルなのはシリーズ」を原作とした職業 高町なのは フェイト・テスタロッサ 小ダメージ=通常攻撃より少ないダメージ 中ダメージ=通常攻撃と同じかそれ以上のダメージ 大ダメージ=通常攻撃より1.5倍以上のダメージ 超ダメージ=通常攻撃より2倍以上のダメージ 高町なのは 成長率 HP MP 攻 守 素 E SS S C D 覚える技 必要SP 消費MP 技名 属性 効果 1 0 かばう 無 味方のプレイヤーをかばう。一時的状態「かばう」になる 10 5 レストリクトロック 魔法 敵1体を一時的状態「動封」にする 30 8 フラッシュインパクト 物理 敵に小ダメージ+「混乱」 70 30 ディバイドエナジー 魔法 味方一人のMPを60回復させる 100 14 ワイドエリアプロテクション 魔法 味方全員を「攻軽減」にする 200 26 ディバインバスター 魔法 敵に守備力を無視した大ダメージ 300 50 スターライトブレイカー 魔法 敵の守備力を無視した超ダメージ フェイト・テスタロッサ 成長率 HP MP 攻 守 素 D A S D SS 覚える技 必要SP 消費MP 技名 属性 効果 20 5 ライトニングバインド 魔法 敵1体を一時的状態「動封」にする 40 5 アークセイバー 無 敵の守備力を無視した小ダメージ(必中) 70 12 サイズスラッシュ 物理 敵の守備力を無視した中ダメージ 200 26 サンダースマッシャー 魔法 敵に超ダメージ 300 50 フォトンランサー・ファランクスシフト 魔法 敵にランダムに3~10回の中ダメージ
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このページでは、魔法少女リリカルなのは とは何かを説明します。 『魔法少女リリカルなのは』シリーズ (まほうしょうじょりりかるなのはしりーず、英 Magical girl lyrical Nanoha series)は、 2004年10月から2007年9月にかけて独立UHF系で全3シリーズが放送されたテレビアニメ作品、 及びこれを中心としたドラマCD作品、漫画作品、ライトノベル作品である。 『リリカルなのは』『リリなの』(極端な例では『なのは』)と略されることがある。 原作は、ivory制作・JANIS発売の18禁恋愛シミュレーションゲーム作品『とらいあんぐるハート3 ~Sweet Songs Forever~』において、 ゲームクリア後のおまけシナリオとして収録された「CMスポット」において新番組として予告された架空のテレビアニメ作品のタイトル。 18禁恋愛シミュレーションゲーム作品 『とらいあんぐるハート3 ~Sweet Songs Forever~のおまけの りりかるなのはについては、 魔法少女リリカルなのは原作は?で紹介します。 魔法少女リリカルなのはTPOへ戻る
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オークション会場は地獄絵図を展開していた。 突然動き出した操り人形達。そいつらの虚ろな瞳と錆びた短剣から逃げ惑うオークションの参加客。 大抵の者達は自らの陥った状況を理解出来ず、ただ闇雲に逃げ惑っていた。 血の結界によって閉鎖空間となったホールに在りもしない逃げ場を求めて駆け回り、椅子に躓いて転倒し、二階の客席から転げ落ちる。 そして足や腕を負傷して、呻き、ただすすり泣くだけの憐れな子羊と化して徘徊する悪魔達から逃れる為に神に助けを請い続けた。 しかし、そんな彼らはまだ幸運な方だった。 皮肉にも、不必要に動かなくなった彼らは混乱の中で奮戦するなのは達にとって保護しやすい対象となる。 賢い者達は、この状況でなけなしの理性を保ち、冷静さを失わなかった者達だった。 恐怖に先走らず、動き鈍い人形達を警戒して、壁を背にして器用に逃げ回っていた。 ――そして最も愚かなのは、混乱し、『他人を犠牲にしてでも助かりたい』と自分勝手に行動する者達だった。 「ど、どけっ! 邪魔だぁ!!」 肥満体を必死で動かし、逃げ惑う人々を掻き分けて、時には迫り来る<悪魔>の前へ囮として突き飛ばす。 「落ち着いて! 必ず助けます、混乱しないで下さい!!」 懇願にも似たフェイトの警告も、冷静さを欠いた自己保身のみに動き続ける者の脳には届かない。 一部の暴走した者達が被害と混乱の拡大を促し、なのはとフェイトはそのフォローに行動を割かれる最悪の展開となりつつあった。 混乱を振り撒いていることも自覚せず、肥満体は走り続ける。 これまでの人生のように、自分の身の為だけに奔走する男は混沌の中で助かる道を見つけ出した。 誰もが逃げ惑う中、ただ一人周囲の<悪魔>達を打ち倒し続ける男がいる。 「頼む、助けてくれ! 金なら幾らでも払う!!」 二挺の銃型デバイスを振り回し、この地獄の中でも決して鈍らない力の輝きを放つその存在へ、彼は縋り付いた。 自らの仕事を遂行していたダンテは、男の必死な形相を一瞥する。 「――金か。確かに、今丁度要り様なんだ」 「だろう!? この場の誰よりも高く払うぞ! だから、私を助けるんだ!!」 「OK、助けてやるぜ。そら、危ない」 そう言って、笑いながらダンテは彼をサッカーボールよろしく蹴っ飛ばした。 文字通り豚のような悲鳴と共に肥満体は軽々と宙を飛び、壁に激突して沈黙する。そのコンマ一秒後に男の居た場所に投げナイフが突き刺さった。 意識と数本の歯を引き換えに男は命を救われ、次の瞬間ダンテの魔力弾が射線の先にいた人形を粉砕した。 「やりすぎです」 「おっと失礼。人命優先ってことで許してくれ」 狙って蹴ったものか、すぐ傍にいたなのはが気絶した男に防護結界を張る中、さすがに顔を顰める様子にダンテは嘯いてみせる。 皮肉を込めた返答に、なのはは困ったように沈黙するしかない。 自己保身の為の暴走で、被害が増えることをこれで抑え、同時にこれは本人の安全の為にもなる。 やり方は乱暴だが、ただ敵を倒すのではなく周囲に気を配っているダンテの戦い方を、なのはは信頼しつつあった。 「この敵のこと、何か知ってるみたいですけど……っ」 「悠長に説明してる暇はないが、一つだけ言っとくと、客を逃がそうなんて思うなよ。外にコイツらがいない保証はないぜ」 「……分かってます」 内心、ダンテに援護を頼み、自分が結界を砲撃で破壊するという考えもあったなのははそれを改めた。 結界の得体がまるで知れない以上、砲撃の出力調整のミスは余剰エネルギーによる建物の破壊とそれに次ぐ崩落の危機を招くし、脱出を求める客の行動が更に被害を拡大させる事は想像に難くない。 自分でも焦りがあることを自覚し、なのはは冷静になるように努めた。 しかし、このままではジリ貧なのは確かだ。 室内戦に適したフェイトが持ち前のスピードで混戦の中奔走することで、未だ死者だけは出ていないが、それは多少の幸運も関わっての結果だ。 この状況が続けば、疑問に思わざる得ない。 果たして、サイコロを振って同じ目を出し続けることが何時まで出来るのか――? その答えはすぐに出た。 「――ッ! 危ない!」 ディバインシューターでまた一人の客を襲おうとしていた敵を撃破したなのはは、そのすぐ傍で抱き合って蹲る老夫婦を見つけ、意味のない警告を発した。 別の人形が二階からナイフを振り上げて飛び降りようとしている中、神に祈るしかない彼らは一歩も動かない。 「ディバイン……っ!」 「避けろ!」 すぐさま次弾の魔力を練り上げるなのはを、不意にダンテが突き飛ばした。 一瞬遅れて、飛来したナイフがなのはの頬を掠める。 鍛え上げられた危機回避能力が無意識に体を動かし、なのはは反射的に形成した魔力弾をカウンターで撃ち出してしまった。 自分を攻撃した敵を素早く粉砕し、しかし次の瞬間絶望的な失敗を悟る。 「あ」 なのはに残された行動は、そんな間の抜けた言葉を漏らして視線を老夫婦に戻すことだけだった。 悪魔の人形が嬉々として彼らに飛び掛る。 それはあの二人の死を意味する。なのに唯一それに気付く自分はもう何も出来ない。 すぐに形成しようとする次の魔力弾は、完全に間に合わず。 なのはの目の前で、ついに犠牲が出ようとして――。 「させるかぁ!」 間に割り込んだユーノの展開するバリアによってそれは防がれた。 「ユーノく……っ」 「なのは、打ち上げるよ! 墜として!」 「――!! 分かった!」 意外な乱入に驚愕するよりも先にユーノの声がなのはの体を突き動かし、魔法を行使させた。 ユーノは左腕で展開したプロテクションで人形の体ごと攻撃を受け止め、右腕をフィールド系の魔法で防護する。 そして振り抜いた拳は、貧弱な腕力よりも障壁の反発作用によって、枯れ木で出来た人形の体を軽々と宙へ弾き飛ばした。 「シュート!」 放たれた桃色の弾丸が、空中で標的をバラバラに爆砕した。 10年ぶりのコンビネーションを成功させたなのはとユーノ、互いに幾つもの感情を交えて視線を交差させる。 交わしたい言葉や疑問は幾つもあった。 「――敵の動きを止める! 一気にカタをつけるんだ!」 「――分かった!!」 しかし、言葉など交わすまでもなく、今この場で最も必要な判断と行動を二人は無意識下で互いに理解し合っていた。 ユーノとなのは、二人は自分の成すべき魔法を準備する。 「フェイトちゃん、勝負を掛けるよ!」 混戦の中、貫くように走るなのはの声をフェイトは聞き逃さず、その真意も間違えない。 ここぞという時の為に控えていた高速移動魔法を発動させ、フェイトはなのはの空白の時間を埋めるべく疾走する。 制限時間のあるフェイトのフォローの間に、なのはは独り敵を撃ち続けるダンテにも声を飛ばした。 「敵の動きが止まります! 合わせて!!」 端的ななのはの言葉に、ダンテは目配せ一つで応じてみせる。 そして、ユーノの魔法が完成した。 「いくよ! <レストリクトロック>!!」 集束系上位魔法が発動する。 指定区域内の対象を全て捕縛するバインド。発動と同時に、ホール内で動く全ての<悪魔>と、逃げ惑う人間を纏めて無数の光の輪が捕らえた。 敵味方問わない無差別な捕縛だが、その対象数を考慮すれば信じられないほど高度な魔法技術であることは明白だった。 魔女の釜の如き混沌とした空間が唐突に全て制止される光景に、それを待ち構えていたなのはすら圧巻される。 実戦から退いていたとはいえ、成長したユーノの実力はなのはの予想を超えるものだった。 一瞬呆けてしまう中、ダンテの純粋な感嘆の口笛だけが軽快に響く。 「なるほど、こいつはスゴい。食べ放題ってワケだ」 「数が多い! 守って五秒!」 「三秒で十分さ」 不敵に笑うダンテの両腕が集束された魔力を帯びて赤く発光し、スパークを放ち始めた。 我に返ったなのはがすぐさま魔力弾を周囲に形成する。フェイトによって稼がれた貴重な時間を使い、用意した弾数は倍近い。 「いくぜ?」 「今っ!」 言葉も交わさず、互いに相手の射線を把握し、自分が撃つべき標的を捉える。 「Fire!!」 「シュート!!」 引き絞られた弓のように、満を持して二種類の光が解き放たれた。 真紅と桃色の光弾が乱れ飛び、敵だけを正確に捉えてそれに直撃し、呪われた人形を吹き飛ばす音が連続した爆音となりホールを埋め尽くす。 一瞬にして一方的な破壊の嵐が暴れ回る。動けなくなった人々の悲鳴はその中に埋もれていった。 そして、束の間の嵐が過ぎ去った時、後に残るのは人間だけだった。 あれほどいた<悪魔>は一匹残らず消し飛び、敵の全滅を示すようにホールの扉を覆っていた赤い結界は音を立てて砕け散る。 「――BINGO」 唐突に取り戻された静寂の中、ダンテは舞台の幕を閉じるように、これ見よがしに銃口から立ち昇る煙を口で吹いて見せたのだった。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十四話『Cross Fire』 「――うん、そう。こっちの戦闘は終了したよ。重軽傷者は多数、でも死者は出てないから」 状況から考えれば奇跡的とも言える結果を確認したなのはが通信を行う中、ユーノ達はホールのステージ付近に集められた客の様子を見て回っていた。 結界が解除された今、何人かは外に出ることを強く主張していたが、外でも戦闘があったことを告げるとすぐに黙り込んだ。 誰もが回避された惨劇に安堵し、同時にジワジワと実感を持って蘇る恐怖の余韻に身を強張らせていた。 「すぐに救護隊が来ます。それまで辛抱して下さい」 「腕が……腕が折れてるんだっ! 早く治すよう言ってくれ!!」 フェイトは無用なパニックを起こさないよう笑顔を振り撒き、客の一人一人に声を掛けていたが、似合わないタキシードの中年が泣き付いて来て対応に困っていた。 重傷者に治癒魔法をかけるユーノを指して、男はただひたすら腕が折れていることを主張し続ける。 「すみません、重傷者が優先なんです。それに、彼が働いているのは善意で……」 「うるさいっ! 分かっているのか!? 腕が折れてるんだぞ、腕が……っ!」 「へえ、そうかい。痛むのか?」 辛抱強く落ち着かせようとするフェイトの横から、ぬっと腕が伸びて、迫る男の肩を押さえ込んだ。折れた腕の方の肩を。 走り抜ける激痛に、男は言葉を忘れて奇怪な悲鳴を上げた。 しかし、ダンテはそんな様子を尻目に優しい笑顔を浮かべながら、加減もせずにポンポンと肩を叩く。 「ああ、確かに痛そうだ。だが、こんな美人に怪我の心配をしてもらえるんだから、男ならやせ我慢の一つも見せなきゃな?」 呆気に取られるフェイトの前で、ついに泡を吹き始める男の顔に何を感じ取ったのか、納得するようにダンテは頷いた。 「そうか。分かってくれて嬉しいぜ」 「相手は怪我人なんですよ……?」 「怪我人なら他に山ほど居るさ。甘やかす歳でもないだろ」 諌めるフェイトに、ダンテは全く悪びれもせずに笑って見せたのだった。 様子を伺っていた周囲の者達の間で飛び交う自分勝手な文句が鳴りを潜める中、ダンテ達はなのはの元へと集まった。 「とりあえず、応急処置は施したよ。命に関わる怪我の人はいないね」 「ありがとう、ユーノ君。それに……久しぶりだね」 「うん。僕も、驚いたよ」 なのはとユーノの二人の間に何とも言えない空気が漂った。 二人が顔を合わせるのは実に久しぶりのことだったし、大人になって少しずつ言葉を交わし辛くなりつつあった中、窮地において変わらず心を通わせ合えたことが嬉しかった。 「……ポップコーン買って来るか?」 「しっ、少しだけそっとしておいて上げましょうよ」 そして、傍らで一連のシーンが終わるまで待ち惚けを喰らう二人を思い出して、なのはとユーノは我に返った。 顔を赤らめながら咳払い一つ。お互い、心なし距離を取り合う。 冷静になった。今は、こんな悠長なことをしている場合じゃない。 「それで、あの……」 「ダンテだ。職業は便利屋。ここにはお偉いさんの護衛に雇われて来た」 どう切り出したものか、と伺うなのはの様子を察して、ダンテは手短に自己紹介を済ませた。 基本的な質問には幾らでも答えられるが、<悪魔>に関してはどう説明したものかと顔に出さずに悩むしかない。 それに、敵のいなくなった今でも何か違和感が残って仕方ない。 先ほどから、さりげなく走らせる視線に護衛すべき男の姿が一向に捉えられないのも気になった。 「さて、アンタらも何から聞いたらいいのか分からないって顔だが、俺もどう話せばいいもんか悩んでてね」 「そうですね……とりあえず、わたしは高町なのはといいます。機動六課所属の分隊長をやっています」 「ナノハ、ね――アンタらの知り合いにヴィータやザフィーラって奴がいれば、話は早いんだが」 ダンテは全く期待せずにその名前を出したが、三人は一様に驚きの視線を彼に向けた。 「知ってるんですか、ヴィータちゃんのこと!?」 「……まさか本当に知り合いなのか?」 「同じ部隊の所属です。それに、ダンテさんはひょっとしてティアナと知り合いじゃないですか?」 「オイオイ、ティアまでいるってのか? 冗談が現実になりやがった」 「やっぱり。ティアナは外で警備に当たってます。よければ、会いますか? その方が話もしやすいと思うし」 「ハハッ、いいね。感動の再会って言うらしいぜ、こういうの」 そう言って破顔するダンテの表情を、これまでの見せ掛けではない純粋な笑顔だとなのは達は感じた。 そこにはティアナに対する確かな親愛の情があった。 目の前の得体の知れない男に抱く最後の不信感が消えていく。 不法所持の可能性があるデバイス。自分の部下と共通する戦闘スタイル。そして何より、その力。 警戒に値する要素は幾つもあるが、それを打ち消しているのはたった今判明した彼の人間関係と、何より彼自身の人柄だった。 悪い男ではない。なのははようやく、何の隔たりもない友好的な笑みを浮かべることが出来た。 「お話、聞かせてもらってもいいですか?」 「ああ、美人の尋問なら大歓迎だね。望んだとおり、再会出来たしな」 オークションが始まる前、偶然出会った時の言葉を思い出して、なのはとフェイトは苦笑した。 「それじゃあ、わたしはダンテさんを連れて外で合流してくるから、フェイトちゃんは救護班が来るまでここで待機してね」 「分かった」 「ユーノ君も。わたし達が守る側の人間なんだから、無理はしないで」 「……うん、分かったよ」 なのはの仕事としての言葉に、ほんの僅かな寂しさを感じながらユーノは頷く。 ダンテと共に未だ危険の残る前線へ歩み去っていくかつての少女の背を眺め、彼は昔とは違う自分達の関係を改めて噛み締めていた。 「気をつけて、なのは……」 その時、その瞬間、異なった場所で多くの出来事が歯車のように連動して動き出していた。 ただ一つ、ヴィータの立つ光の届き切らない薄暗い空間を除いて。 ホテル<アグスタ>の地下駐車場は、外の喧騒から隔離されているかのように音の死んだ静寂に満ちていた。 「野郎……」 ヴィータは視線を落としたまま悪態を吐いた。それは彼女の足元に広がるモノのせいだった。 血だ。 正確には死体と血だった。 このホテルの警備員の服を着た幾つもの肉の塊が、暗闇の中にあってどす黒い血の海に沈んでいた。 散らばったパーツを集めればきっと人間が出来るに違いない。原形を留めぬほどバラバラにされた憐れな死体だった。 自分の考え得る最悪の事態が起こったのだとヴィータは悟った。 ホテルへの搬入口のある地下の更なる奥。死んだ血と肉の放つ臭いはそこからも漂ってくる。 ヴィータはすぐさまデバイスの通信機能をOFFにした。非常灯だけが照らす暗闇の中、集中を乱す邪魔を入れたくない。 血溜まりに足を踏み下ろし、びちゃっと響く不快な水音を無視して歩みを進めた。 本来ならパニックに陥るような惨状の中、ヴィータの思考は逆に冷たく、静かになっていく。 無血鎮圧を第一とし、非殺傷設定によってそれを成す管理局の魔導師は生々しい死への耐性が足りない。もし新人達ならば、この場で冷静ではいられなかっただろう。 しかし、ヴィータは古代ベルカの騎士であった。 人が死ぬ時、必ず安らかに眼を瞑ったまま逝けるのではないことを知っていた。人は、何処までも汚く殺せる。 そういう意味で、この場に転がる死体はむしろ綺麗だとすら感じた。 (一人も、生きちゃいないのか……?) また一つ、死体を見つけた。 体から離れた位置にある腕がハンドライトを握り締め、別の場所に転がる自分の頭を照らしている。 その死に顔は苦悶のそれではなく、ただぼんやりとした驚きだけがあった。 自分の死にも気づいていないような呆けた表情が逆に不気味ですらある。 しかし、ヴィータの気を引いたのはその死相ではなく、この死体を生み出した手段だった。 (すげえ断面だ。シグナム並の腕じゃねぇか) 戦士としての純粋な感性が、不謹慎にも目の前の死に対して感嘆を漏らしていた。 何らかの刃物による切断。死因はそれに違いない。しかも、相手に苦痛を感じさせる間もなく一瞬で人体をバラバラにするような斬撃だ。 柔らかい人肉を、鉱物を切るように鋭利な平面で切り分けている。『斬った』というより『スライスした』という表現が相応しい。まるでトマトのように。 (雑魚とは違うか……) グラーフアイゼンを握り締める手に、力と緊張が加わった。 自分の戦った有象無象の<悪魔>どもに出来る芸当ではない。 何らかの大物が待ち構えている―――半ば確信した警戒心を抱き、ヴィータは更に足を進めて行く。 敵がもう立ち去った、などと楽観的な考えは欠片も浮かばなかった。 この奥には何かが居る。進むごとに増していく、ただ存在するだけで発せられる圧迫感のようなものが感じられるのだ。 死臭が強くなり、終着が近いことを示していた。 物音が聞こえる。 何かを漁るような音だ。やはり、敵の目的はオークションの品物か? 足音と気配を殺して、並び立つ支柱に隠れながら近づき、ヴィータはついに辿り着いた。 一台の輸送車の近くに転がる死体。おそらく二人分だ。血とパーツの量が多い。 輸送車の二台は扉が鋭角に切り開かれている。周囲には投げ捨てられたコンテナが幾つも転がっていた。 その荷台の前に佇む、人影が一つ。 「――動くな。両手を見せながら、ゆっくりと振り返れ」 完全に背後を取れる位置に立ったヴィータは、静かく端的に告げた。 人影の小刻みな動きが停止する。 やはり何かを探していたらしい、コンテナに差し入れていた手をゆっくりと取り出すと、そのまま力なく垂れ下がった。 「頭の位置まで上げろ」 ヴィータは再度命令したが、その人影は従わなかった。代わりに背を向けながらも自分に発せられる殺気が感じられる。 コイツは降伏なんて考えちゃいない――ヴィータはそう悟ったが、不用意に攻撃的になることはなかった。 現状、自分は有利な位置にある。それを確保し続ければいい。 何かを仕掛けるつもりなら警戒するべき両手も、ヴィータの位置からはハッキリと確認出来た。 右手は無手。左手には問題の得物を握っている。 鞘の形状からシグナムと同じ片刃の剣。しかし、レヴァンティンより反りが深い。 「振り返れ。ゆっくりだ」 その言葉には、目の前の人影も従った。 足の動き、手の位置、相手の向ける視線の向きまで用心深くヴィータは観察する。 見上げるほどの長身と広い肩幅、そして露わになった服の上からでも分かる屈強な胸板が男であることを示していた。 動きと合わせて揺れるコートの裾。 視線が自分を捉えた瞬間増した殺気と圧迫感。 そして、完全にヴィータと向き直り、その顔を見た瞬間驚愕が冷静さを吹き飛ばした。 「お、お前……っ!?」 見開いた眼に映る男の顔は、信じられないことにヴィータにとって見知ったものだった。 「例の<アンノウン>と同質の魔力反応です! でもこれは……数値が桁違いです!」 「極小規模の次元震を感知! 信じられません、数メートルの範囲内で安定、継続して起こっています!」 「数メートル……『あの化け物』の体格とほぼ同じか」 矢継ぎ早に届く報告を必死に脳内で処理しながら、グリフィスはモニターを睨み付けた。 たった今出現した反応の出所がそこに表示されている。 リニアレールでの事件以来、サーチャーに改良を加えることでノイズ交じりとはいえ不可解な映像妨害を克服したモニターが可能になっていた。 センサーに何の前触れもなく出現したソレは、対峙するティアナ達を大きく上回る巨躯で佇んでいる。 牛の頭と人間の肉体を持つ、全身を炎で包まれた化け物――信じ難い存在が現実に具現していた。 「次元空間の航行や転送を行う際の波長にも似ています」 「というと、あの怪物は他の次元世界から転送されて来たのか?」 「『された』というよりも、今も転送『され続けている』と表現した方がいいような――」 「なんだ、それは? …………アレは、本来現実に存在しないものが無理に存在し続けている?」 グリフィスは自分でも支離滅裂な言葉だと思いながらも、その表現が最も正しいように感じた。 これまで確認された<アンノウン>は、倒れた後に例外なく消滅する。まるで最初からこの場には存在していなかったかのように。 それが正しい認識であったとしたら? 本来この世界に存在出来ないはずのものが何らかの切欠や力によって現れ、力尽きることによって再び元の場所へ還されて行くのだとしたら? ――だとすれば、あの化け物どもが本来居る筈の世界とは一体どんな場所なのか? 次元空間にすら隔てられず、現実と夢の境のように決して越えられないのに紙のように薄い境界――その先に存在するというのか。 「馬鹿な……」 言葉とは裏腹に、グリフィスは滲み出る嫌な汗を拭った。 これ以上考えても混乱するだけだ。今は、状況に対処しなくては。 「ヴィータ副隊長は?」 「残存勢力探索の為、地下に向かいました。通信はカットされています」 「呼び出し続けろ。探索が終わり次第、スターズFの援護に」 思考を切り替えたグリフィスに応じるように、はやての通信モニターが展開された。 『状況は把握した。現場にはなのは隊長が向かっとるから、スターズFには専守防衛を命じて到着まで持たせるんや』 「しかし、これを相手に援護も無く、新人だけでは……っ!」 『敵の奇襲の恐ろしさはさっき分かったやろ。後手の対応に回る以上、配置は下手に動かせん』 はやての声は平静そのものだったが、内心では予想外の出来事の連続に頭を抱えているだろうとグリフィスには予想出来た。 人情家の部隊長は決して指揮者向きの性格ではないが、だからこそ自らへの厳しい戒めによって冷徹であり続けようとする。 ならば自分に出来ることは、違える事無く命令を下し、前線の者達に出血を強いるだけだ。 「<アンノウン>動き出しました! スターズFと交戦開始!」 「――防御に徹し、<アンノウン>をその場に繋ぎ止めろ。ホテルには絶対に近づけるな。その命を賭けてでも!」 部隊長の言葉を代弁するグリフィスの命令が厳かに下された。 「ティア、来るよ!」 動き出した燃える山のような牛の化け物を見て、スバルは傍らのパートナーに悲鳴のような警告を発した。 正直、スバルの心には不安と恐怖しかなかった。 幼い頃に出会った炎の怪物は、あの時と変わらず――むしろあの時よりもハッキリとした存在感を持って目の前に敵として立ち塞がっている。 得体の知れない恐怖が全身を支配し、こんな時自分を支えてくれる筈のパートナーは先ほどから様子がおかしい。 唐突に突き付けられたティアナの過去の真実と、初めて見た彼女の豹変振りが思考をかき乱して、スバルから冷静さ奪っていた。 今の彼女を戦場に繋ぎ止めているのは、課せられた任務に対する使命感だけだ。 見た目通りの闘牛のような勢いで突進してくる炎の塊を前に、スバルはそれ以上言葉を続けられず、咄嗟に回避行動を取った。 一瞬早く、ティアナもその場から跳び退いている。 しかし、二人の意思は噛み合わなかった。 意図せず互いに正反対の方向へ跳び、ティアナを案じていたスバルとは違い、ティアナは自身で躊躇わず判断した。 それが、二人の行動の暗明を分けた。 「うわぁああああっ!?」 すぐ傍を駆け抜けていくバックドラフトのような高熱の風。二人とも直撃回避は成功させていた。 しかし、全身に纏わりつく炎の余波にスバルは悲鳴を上げる。 恐怖による竦みと一瞬の判断の遅れが、スバルの足を引いたのだ。 荒れ狂う熱と風に吹き飛ばされ、地面を転がるスバルをティアナは一瞥もしなかった。 「<悪魔>がぁ……っ」 炎の悪魔を睨みつける瞳には怒り。 だがそれは、仲間を傷つけられたなどという優しさに基づいたものではなく。 「邪魔をするな!」 炎の向こうへ消えた仇に届かぬ無念と絶えぬ憎悪。 邪魔をするなら死ね。 立ち塞がるなら死ね。 <悪魔>は全て――滅んで果てろ! 「邪魔を」 カートリッジ、ロード。 「するなァァァーーー!!」 体の奥から吹き上がる感情の嵐をそのまま吐き出す。 クロスミラージュが銃身を加熱させ、銃口はでたらめに吼えまくって、憎しみの弾丸を凄まじい勢いで発射し続けた。 高圧縮された魔力弾が敵の強固な皮膚を突き破り、確実に体内へ潜り込んでいく。 しかし、巨大な体格はただそれだけでティアナの魔力弾の威力を散らした。単純に効果範囲が狭い。弾丸が小さすぎる。 カートリッジ一発分の弾丸を撃ち尽くしても、揺るぎもしない敵の巨体を見上げ、ティアナは舌打ちした。 振り返る炎の山。その両腕に全身の覆う火炎が集束し、物質化するという在り得ない現象が起こる。 炎が形作った物は、その体格に見合うほど巨大なハンマーだった。 外見だけで鈍重な速度と、それに反比例するとてつもない威力が想像出来る。直撃すればダメージどころか原形も留められない。 その凄惨なイメージを思い描いて、しかしティアナは笑う。 いつだって笑ってきた。追い詰められた時でも不敵に、アイツのように。 ――その笑みが、いつも思い描くダンテのそれとは全く異なる凄惨なものだということに、ティアナ自身は気付いていない。 《GYYYYAAAAAAAAAAAAA!!》 この世界の何処にも存在しない怪物の雄叫びが響いた。 ハンマーを振り上げ、地響きを起こしながら敵が迫り来る。 眼前で、燃え盛る塊が振り下ろされた。 「デカブツがっ!」 隕石が自分の真上から落下してくるような圧迫感に悪態を吐きながら、ティアナは横っ飛びする。 《Air Hike》 更にもう一段。クロスミラージュの生み出した足場を蹴って、空高く飛翔した。 そして、爆音。 ティアナの立っていた場所を振り下ろされたハンマーの先端が抉り取る。 インパクトの瞬間響いたのは比喩ではなく、爆発と同じ音と衝撃だった。破裂するように着弾点から炎が噴き出し、周囲を焼き尽くす。 二度のジャンプで大きく距離を取っていなければ、ティアナも余波で火達磨になっていただろう。 《Snatch》 だが判断ミス一つで直結する死に、ティアナは何の感慨も抱かない。憎しみだけが今の彼女を突き動かす。 空中で放たれた魔力糸のアンカーが敵のハンマーの先端を捉えた。 次の攻撃の為に得物を振り上げる敵の動作に応じて糸を縮め、二つの力に引き寄せられてティアナの体は空中を移動する。 ハンマーが最頂点を描く軌道に達した時、タイミングを合わせてアンカーを解除した。 丁度竿に釣り上げられるような形で宙に投げ出されたティアナは、計算し尽くされた軌道と姿勢制御で地面に着地する。 その位置は、完全に敵の背後を取っていた。 「もらった……っ!」 アンカーを放つ傍ら、魔力を集中し続けていた右腕を、満を持して突き出す。 オレンジから赤へと変わりつつある魔力のスパークが迸り、その凶暴な力の奔流を無防備な敵の後頭部に向けて解き放った。 通常の魔力弾を倍近く上回る破壊力が、振り返ろうとする敵の顔面に直撃した。 次々と炸裂する魔力光の中でへし折れた牛の角が宙を舞う。 確かな手応えにティアナは残虐な笑みを浮かべ――光の中から真っ赤な炎が一直線に噴き出して来た。 《Round Shield》 咄嗟にクロスミラージュの展開したシールドが火炎放射の直撃からティアナを守った。 しかし、片目と角を失いながらも口から炎を吐き出す敵の反撃は、シールドごとティアナを飲み込もうと、濁流のように噴き出し続ける。 「ぐ……がぁあああああああああああ゛あ゛ああ゛あああーーーっ!!」 シールドを維持しながら吐き出す苦悶の声はすぐに悲鳴へと変わっていった。 確かに展開した壁によって炎の直撃は避けている。しかし、遮られた炎が消えるわけではないのだ。 拡散し、周囲の空気を焼き尽くした炎は間接的にティアナを蝕んでいた。 相手の魔力を弾くタイプの防御であるシールドは、炎や冷気のような流動的な攻撃を完全には防げない。 更に、魔力によって形成された炎は全身を覆うフィールド系の障壁ともいえるバリアジャケットすら侵食する。耐熱効果など気休めにしかならなかった。 血液が沸騰して湯気となり、皮膚を突き破ると錯覚するような激痛が全身を襲い続ける。 地獄のような時間を、ティアナはただひたすら耐えた。 魔力も体力も、精神力さえ消耗していく中、憎しみと殺意だけが無尽蔵に膨れ上がる。 「殺……して、やるぅ……っ!」 ティアナの執念が、無限に続くような地獄を切り開いた。 高熱の奔流が去った後、周囲が焼き尽くされた中で尚もティアナは立っていた。 「――カートリッジ、ロード!!」 唾さえも蒸発して掠れた声。それでもハッキリと戦意に満ちた叫びが響いた。 クロスミラージュに残されたカートリッジを全てロードする。 今のティアナにはこれだけの魔力を制御する技術は無い。しかし、今必要なのはあの巨体を貫けるだけの純粋なパワーだ。 引き攣った皮膚の下、苦痛を伴って全身を駆け巡る魔力と共に、残された自分自身の魔力もかき集めて両腕に集束する。 ティアナはただ集中した。 視線の先で、再び敵が体当たりを敢行しようと動き出しても。 ティアナはただ信じた。 ――自分だけの持つ力を弾丸に込める。それは必ず敵を打ち倒す。 「あたしの力は、<悪魔>なんかに負けない!!」 どれほど歪んでも、我を忘れても、心に残り続けていた信念を支えに、ティアナは決死の表情で眼前の敵を睨みつけた。 炎の塊が猛スピードで迫り来る中、回避など考えずに、ただ敵を撃ち抜くことだけに集中する。 「やめろぉっ!!」 結末の決まりきった無謀な激突を止めたのは、復活したスバルだった。 青白い<ウィングロード>が突進する真っ赤な巨石に向けて真っ直ぐに伸びる。その上をスバルは我武者羅に駆けた。 体の痛みや恐怖を忘れ、悲壮なまでの覚悟とそれに応じたマッハキャリバーの力によって疾走する。 「リボルバー、シュートォォーーーッ!!」 本来なら遠距離用の魔法を、敵と接触する寸前の零距離で発動させる。 炸裂した衝撃波が纏った炎を吹き飛ばし、同時にその突進を停止させた。 魔力を湯水のように放出し続け、圧倒的な質量の違いを持つ相手にスバルは拮抗する。 「ティ……ティア! 逃げてぇっ!!」 気を抜けば一瞬で弾き飛ばされしまいそうな圧力の中、スバルは必死に背後のティアナへ呼び掛けた。 その悲壮な声を――ティアナは、聞いてなどいなかった。 「うぁああああああああああああああっ!!」 吐き出される魂の咆哮。 暴走する魔力を無理矢理展開した術式で練り上げ、今の自分に使える最大攻撃魔法を発動する。 振り上げた銃口の周囲に、環状魔方陣の代わりとなるターゲットリングが形成され、その一点へ全ての魔力が集結される。 レーザーサイトが標的を捉え、その射線の近くにスバルの姿があることを気にも留めず、ティアナは憎しみで引き金を引いた。 「ファントム・ブレイザァァァーーーッ!!!」 かつてない魔力の奔流が解き放たれた。 放たれた光は一直線に燃え上がる敵の体の中心を目指す。進路上にいるスバルが何も分からずに弾き飛ばされた。 自分を助けた仲間さえ避けず、直進し、ただ破壊するだけの狂気の一撃は狙い違わず<悪魔>を飲み込んだ。 炸裂した魔力光と炎の残滓が撒き散らされる中、直撃を確かめたティアナは凄まじい脱力感に膝を付く。 全ての力を使い切っていた。何もかもあの一撃に乗せた。 ティアナの顔に再び笑みが、力無く浮かぶ。 ただ一色に染まっていた視界は、脱力と同時に他の色を取り戻し始めていた。 現実が見えてくる。 逃がした仇。職務を逸脱した行為。管理局員の身の上で一般人に発砲し、挙句仲間まで背中から撃った。 権力を持つアリウスが訴えれば、自分は機動六課どころか管理局にもいられない。 例えそうでなくても、パートナーを撃った時からもう決定的なものを手放してしまった。 全てが絶望的なまでに現実で、同時にもう何もかもが夢のようにどうでもよくなり始めた。 だから、ティアナは笑う。笑ってやる。 どんな時でも。 それしか出来なくても。 「……スバル」 顔を動かすのも億劫な脱力感の中、視界に倒れたスバルを見つけて未練たらしく声が漏れた。 彼女をあの様にしたのは自分だ。 もう何も取り戻せない。 それでも、ティアナはスバルの元へ駆け寄ろうと足に力を入れ、 《GYYYYAAAAAAAAAAAAA――!!》 「え」 二度と響かないはずの悪魔の咆哮が聞こえ、見上げた先には片腕でハンマーを振り上げる炎の巨体があった。 成す術も無く眼前に巨大な炎の塊が振り下ろされた。 直撃ではなかったが、先ほども予想していた余波の威力――炸裂と同時に広がった衝撃波と爆炎をティアナは自ら味わうことになった。 力の抜けた体がゴミ屑のように吹き飛ばされ、宙を舞って地面に激突する。 口の中で血と砂の味がした。 「なん……で……?」 ただひたすら疑問だけが頭を掻き回していた。 自分の最高の一撃が、確かに標的に直撃するのが見えた。バリアの類も確認出来ない。当たったはずなのに……。 ティアナは必死の思いで顔を上げた。 視界に捉えた敵の姿は、やはり確かに攻撃を受けた痕があった。 巨体から右腕が消え失せている。ファントムブレイザーの直撃を右手で受けたらしい。先ほどの攻撃が不発だったのも、片手だった為軌道を誤ったのだ。 しかし、それだけだった。 「はぁ……?」 ティアナは性質の悪い冗談を聞いたかのように、引き攣った笑みを浮かべた。 全身全霊を賭けた一撃が。全てを代償にした一撃が。 たった腕一本と引き換えだというのか? 「なによ、それ……」 原因は、何も複雑なことなどなかった。単純明快極まりない。 ――ただ威力が足りなかっただけ。 「なんなのよ……それっ」 自分の引き出せる最高の力が。限界を超えた想いが。なんてことは無い、至らなかっただけなのだ。 それで、一体どうしろというんだ? この単純な問題を解決する方法は? 新しい戦法を考える、敵の弱点を突く、罠を仕掛ける――どれもこれも根本的な解決になどなってやしない。 「畜生……」 倒せるだけの攻撃が出来なければ意味が無い。 それが出来ない自分の力に、意味など、無い。 「ちっきしょぉ……っ!」 拳を握り締め、無力感に打ちひしがれながら、ティアナはただ惨めに呻くことしか出来なかった。 手負いの獣と化した敵が鼻息も荒くティアナににじり寄る。鼻息はやはり炎だった。 ――終わりか。 支えていたものが何もかも折れた。 急激に沈んでいく意識の中、迫り来る死を見上げる。 ――全部、お終いか。 傷付いた体ごと、諦めが全てを沼の底へ沈めようと、下へ下へと引きずり込んでいく。 これ以上上がらない視界の中、敵のハンマーが持ち上がって見えなくなった。一泊置いて、今度こそ確実な死が自分を押し潰す。 それを受け入れようとした、と――。 《Divine Buster》 意識が途切れる寸前、見慣れた桃色の光が視界を満たした。 「シュート!!」 なのはの砲撃が一直線に飛来して、ティアナに振り下ろされる寸前だったハンマーの先端を跡形も無く吹き飛ばした。 「間に合った!」 「ハッハァ、まるでバズーカだな!」 初めて見る高位魔導師の砲撃魔法の威力に、腕の中でダンテが歓声を上げる。 ホテルから文字通り飛び出して、ダンテを抱えたまま飛行して現場に急行したなのはは、その体勢のまま敵の頭上へと急上昇した。 「ティアナをお願いします!」 「任せな」 敵の真上を獲ったところで手を離す。 空中に身を投げ出したダンテは、敵に向かって落下しながら両手のデバイスを突き出した。 「自分で燃えるとはいい心がけだ。ミディアムにしてやるぜ!」 怒りの弾丸が放たれる。 空中で錐揉みしながら真下に向けての速射。ガトリング機構の回転を全身で再現しているようなでたらめな銃撃は、雨となって敵の巨体に降り注いだ。 なのはの射撃魔法が質量なら、ダンテの射撃魔法は物量。湯水の如く吐き出され続ける魔力弾が燃え盛る<悪魔>の肉体を削り取る。 苦悶の叫びを上げながら吐き出された火炎をエアハイクによって回避すると、ダンテはそのままティアナの前へ立ち塞がった。 「……やってくれたな、牛肉野郎。ハンバーガーの具になりな」 傷付き、倒れたティアナの姿を一瞥して、再び敵に視線を向けた時にダンテが浮かべた表情はハッキリと怒りだった。 <悪魔>は須らく敵だ。 そして、目の前の存在はもはや絶対に逃がすことすら許さない敵となった。 倒れたスバルの状態を確認し、なのはもまた彼女を守るように立ち塞がり、確固たる敵意を炎の怪物に向けた。 二人の魔力がお互いのデバイスに集中する。 「Fire!」 「シュートッ!」 真紅の雷光と桃色の閃光が同時に敵へと飛来した。 例えこれを耐えたとしても、二人分の火力で押し切るつもりだった。怪我人を抱えて、下手な機動戦は出来ない。 しかし、敵の対応は予想を超えていた。 燃える山が、空を跳ぶ。 「嘘!?」 「Damn!」 なのはが目を見開き、ダンテは悪態を吐きながらも素早くティアナを抱きかかえてその場を離れた。巨体の落下先はこちらだ。 跳躍したこと自体信じられない大質量が落下し、地面が激震した。 自らがハンマーそのものであるかのように、落下の衝撃と同時に爆炎が撒き散らされる。 背中にビリビリとした振動と高熱を感じながら、ティアナを庇う形で余波を凌ぎ切ったダンテは振り返り様デバイスを突き付けた。 「……ヤバイぜ」 冷や汗と共に再び悪態が口を突いて出た。 敵は既に次の行動に移っていた。 燃え盛る巨体の周囲。その炎に呼応するように、幾つもの魔力の集束が地面に点となって発生していた。それらは丁度敵を中心に円を描いて配置されている。 噴火寸前の火山のように、真っ赤に変色していく魔力の集中点。 「ダンテさん! ティアナ!!」 シールドと内側を覆うフィールドで二重の防御魔法を展開しながら、なのはは絶望的な気持ちでカバーが届かないほど離れた位置に居る二人を見た。 ダンテが同じ真似が出来るほど高度な魔導師とは思えない。下手な防御は重傷のティアナに死に繋がる。 思案する間もなく、敵の周囲を地面の魔力集中点から噴き出した炎の壁が覆った。 そのまま炎の壁は波紋のように周囲350度全方位に向けて広がっていく。 空へ逃げない限り回避も出来ない。防御しか残されていなかった。 ダンテとティアナを案じる中、なのはの視界も炎だけに埋め尽くされる。 「くぅぅ……っ!」 展開した二重の防御が、なのはとスバルをかろうじて守り切っていた。 フィールドによる温度変化阻害効果がなければ、加熱した空気によって、気絶したスバルには更に深刻なダメージが行っていただろう。 単純な魔力攻撃よりも、属性付加されたこの類の攻撃は厄介だ。対処方法も限られる。 果たして、ダンテはこの攻撃からティアナを守れるのか? 不安に急かされる中、なのははダンテ達の居た場所へ視線を向け――そして見た。 炎の中に在って、尚も赤い血のような魔力の瞬きが見える。 フィールドと炎のフィルター越しに、やはり眼の錯覚なのかと疑うしかない中で、しかしなのはは見ることになる。 地獄の業火の中で、決して飲み込まれない真紅の光を放つ一点。 かろうじて見える人影の背中に、<悪魔>のような翼が生えていた。 《―――GUAAAAAAAAAAA!!》 火炎地獄は、敵の悲鳴によって唐突に終了した。 周囲を覆いつくす炎の中から、突如飛来した真紅の魔力弾によって残された眼を潰され、顔面を抑えて無茶苦茶に暴れ回る。 同時に、荒れ狂っていた炎は急速に鎮火しつつあった。 障壁を解除し、なのはは一瞬の勝機を読み違わず正確に捉えた。 「レイジングハート!」 《All right. Load cartridge.》 コッキング音と共に二発分のカートリッジが排夾される。 敵の巨体を見越した高威力の砲撃魔法をセレクトし、なのはは漲る魔力を集束した。 それは、奇しくもティアナが実現し得なかった巨大な敵を撃ち貫けるだけの純粋なパワー。 《Divine Buster Extension》 凶悪な光がレイジングハートの先端に宿る。 「シューーートッ!!」 通常のディバインバスターから発展・向上した貫通力と破壊力が唸りを上げて襲い掛かった。 圧倒的な密度と量を誇る魔力が巨体の上半身を飲み込み、消し飛ばす。 今度は<悪魔>が『原形を留めないほどの威力』を味わう番だった。 跡形も無くなった半身。足だけになった敵は、全身を覆っていた炎を自らの活動と共に停止させ、冷えてひび割れた鉄のように黒ずんで、やがて崩れ落ちた。 ヒュゥ、という口笛が聞こえ、見るといつの間にかダンテが炎に飲まれる前と同じ位置に立っていた。 彼自身にも倒れたティアナにもダメージは見られない。何らかの力で守り切ったらしい。 あの攻撃をどうやって退けたかは分からない。 やはり、あの真紅の光は錯覚だったのか。あの姿は見間違えだったのか。それとも――。 まあいい。全ては後回しだ。なのはは疑念を棚上げすることにした。 「……こちら、スターズ1 <アンノウン>の撃破に成功しました。スターズF両名負傷、すぐに救護を寄越してください」 やはりいつものように、交戦を終えた後は何の痕跡も残さない敵の特性のまま、完全な静寂を取り戻した空間でなのはは本部に通信を繋げた。 一方のダンテは、全身を襲う軽い脱力感をおくびにも出さず、デバイスを納めて背後を振り返った。 「とんだ再会になっちまったな……」 傷付き、眠るティアナに届かない言葉を掛ける。 目を閉じた横顔は決して穏やかなものではなく、気絶する前に抱いた悔しさに歪んでいた。 眠る時にすら安らぎは無いのか。あまりに不器用な生き方を続けるティアナの姿に、ダンテは困ったように笑うしかない。 視線を移せば、<悪魔>は完全に消滅している。 ティアナには荷の重い相手だった。上位悪魔の具現化など<この世界>に来て初めてのことだ。 おそらく管理局にとって最も大きな<悪魔>との戦いはたった今終わった。 しかし。 管理局との本格的な接触、より大規模になりつつある<悪魔>どもの活動――少なくとも、ダンテにとってこれは何かの始まりに過ぎなかった。 確実に敵と断定できる男を相手に面と向かい合い、ヴィータは凍りついたように動けなくなっていた。 それほどまでに、目の前に立つ男は――その男の顔は彼女に衝撃を与えたのだ。 忘れたくても忘れられない。 悪夢のような夜に出会い、最悪の遭遇をちょっとした奇跡の対面だったと思わせてしまう男。 襲い掛かる闇の中に在って<彼>の浮かべる笑みは、戦いの中では頼もしく、平穏の中では刺激を感じる。 純粋に、また会いたいと思った。 言葉を交わし、互いを知り合えば、きっと友人になれる――ヴィータがそう思うほどの男が、何故か今目の前に立っている。 「なんでだよ……?」 だが、こんな形の再会を望んだワケじゃない。 「……<ダンテ>」 闇の中にあって酷く映える銀髪と、何者にも屈しない瞳を持ったその顔を呆然と眺め、ヴィータは呆けたように呟いた。 服装と髪型は変わっているが、その顔は間違いなくあの夜眼に焼き付いた物と同じだ。 ただ一つの違和感――彼の性格を主張する不敵な笑みが、その顔には欠片も浮かんでいないということを除けば。 「――ダンテ?」 僅かに訝しがるような反応が返ってきた。 聞き慣れない低い声色に、ヴィータは我に返る。 目の前の存在を呆然と受け入れていた心に、猛烈な違和感が湧き上がってきた。 何かが違う。果たして、ダンテはこんな声を出していたか? 会話をリズミカルに弾ませるものではなく、鋼のように一方的な声を。 「そうか」 一言発する度に、重なり合っていたダンテと目の前の男がズレていく。 一人、何かに納得するような呟きを漏らすと、男は僅かに笑みを浮かべた。 ヴィータの全身が総毛立つ。今や、彼女は完全にダンテと目の前の存在を別物と断じていた。 形ばかりで何の意味もない笑みの形。正しく冷笑と呼べるそれは、ダンテが浮かべるものでは決してない。 「テメェは……誰だっ!?」 ヴィータは咄嗟に身構えた。本能が告げる。この男に隙を見せてはならない。 しかし、彼女の動揺は男にとって十二分な隙となった。 男が左手を振り上げる。あまりに無造作なその行為に、ヴィータは一瞬反応出来なかった。 男は風が吹くのと同じように一切の感情や意図を排して自然な動作で手の中の得物を放していた。 丁度、自分に向けて投げ渡されるように飛んで来る武器。それに意識を逸らされ、ヴィータは半ば無意識に手を伸ばして掴み取っていた。 そこからは一瞬の出来事だった。 意識を男に戻した時、既に彼は動いていた。ヴィータとの間合いを音も無く瞬時に詰める。シグナムが得意とする斬撃の踏み込みに匹敵する超高速の初動だった。 鞘の部分を掴んだままヴィータの手の中にある剣を、そのまま素早く引き抜く。 露わになった刀身は波紋を持つ片刃。<日本刀>の型を持ちながら、ただの鋼ではない全く異質な雰囲気を持つ武器だった。 闇の中に銀光が閃き、ヴィータ自身にさえ視認する間もない速さで刃が走る。 それが、腹部を貫いた。 「が……っ! ぶっ」 肉を裂く音と共にヴィータの小柄な体が無残にもくの字に折れ曲がる。 血が喉を逆流して、食い縛った口から外へ溢れた。 バリアジャケットを易々と貫通し、刀は完全にヴィータを串刺しにしている。 「テ、テメェ……は……っ」 グラーフアイゼンが音を立てて主の血に濡れた地面へ転がる。 ヴィータは必死に男を見上げた。ダンテと同じ作りの顔に冷酷さが加わり、無慈悲な変貌を遂げた眼光が淡々とこちらを見下ろしている。 ヴィータは初めて戦慄した。 あの時頼もしいと感じたダンテの力を、全く反対のベクトルに変えて備えた存在が眼の前に居る。この<敵>は危険だ。 「何……なん、だっ!」 苦悶の中に決死の覚悟を宿しながら、ヴィータは自分の腹に突き刺さった刀身を握り締める。 懸命なその姿を、しかし男は嘲笑いもせず、ただ冷徹な意思のまま刀を更に奥へと抉り込こんだ。ヴィータが激痛に喘ぐ様を尻目に、肩を掴んで無造作に刀を引き抜く。 広がった傷口から血が噴き出し、ヴィータは自らの血溜まりに力無く倒れ込んだ。 「ダンテ……奴も<この世界>にいるのか」 僅かに愉悦を含んだ独白を漏らし、力を無くしたヴィータの手から取り返した鞘に刀を収める。 倒れた彼女にはもはや一瞥もくれず、輸送車の荷台に戻ると、探していた物を取り出した。 それは赤い宝石をあしらったアミュレットだった。 死の静寂を取り戻した闇の中、ただじっとそれを見つめる男の視線には何処か感慨深いものが感じられる。あるいは第三者が見ればそう錯覚するかもしれない、長い沈黙だった。 『――目的の物は手に入ったかね?』 不意に、その沈黙は破られた。 男の傍らに出現した通信モニターにはスカリエッティの姿が表示されている。 彼の視線から隠すように、男はアミュレットを懐に忍ばせた。 「……ああ」 『これで、君の探し物が一つ見つかったワケだ』 「ああ」 『では、すぐに退散した方がいい。アリウス氏も目的を達したようだ。彼の置いていった目晦ましはたった今倒されたよ』 「分かった」 『では。寄り道をしないで戻って来てくれると助かる――<バージル>』 通信が切れると、バージルはすぐさま踵を返して、予め告げられた撤退ルートに向けて歩き出した。 闇の中に彼の姿が消え、やがてその靴音も聞こえなくなると、本当の静寂が暗闇と共に辺りを満たした。 もはやピクリとも動かなくなったヴィータの傍らで、グラーフアイゼンの通信機能がONになる。 『ヴィータ副隊長、救援要請が出ていますが!? ……副隊長、応答してくださいっ!』 通信を繋いだのはデバイスのAIが主の危機に際して独自に判断して行ったものだったが、もはや通信の意味は無くなっていた。 オペレーターのシャリオが異常事態を察して必死に呼びかける声にも、倒れ伏したヴィータは応えない。 主の生命反応が徐々に低下していく事態を感じ取りながら、グラーフアイゼンはただひたすら緊急信号を発し続けることしか出来なかった。 『お願いです、応答して下さい! ヴィータ副隊長! 応答して――!』 to be continued…> <ダンテの悪魔解説コーナー> フレキ ゲリ(DMC2に登場) 犬の系統にある動物ってのは総じて忠誠心が高いと言われてる。忠犬を主役にした映画やアニメは結構在るよな。 <悪魔>ってのはその対極にあると言っていい。 奴らにあるのは力の有無だけだから、どいつもこいつも好き勝手に喰い合って、強い弱いで生きる死ぬが決まっちまう。まあ、分かりやすいといえば分かりやすい弱肉強食だ。 そんな自分勝手な奴らの中でも変わった<悪魔>ってのはいるもんだ。それがこの二匹だ。 <悪魔>でありながら同じ<悪魔>に付き従う、珍しい忠誠心を持った忠犬ならぬ忠狼ってワケだ。 従属心が強いせいか、他の<悪魔>のように好き勝手暴れることがない。御主人様が別に居るとはいえ、忠誠に値するなら人間にも一応従うみたいだしな。 人間サイズの大きな体格とそれに見合わない素早さが、狼そのものって感じの単純な攻撃パターンを強力なものにしてやがる。 おまけにコイツらは必ず二匹行動するらしい。狼の狩りのように鋭いコンビネーションは決して油断できないぜ。 なかなか厄介な相手だが、こんな奴らさえ付き従える<悪魔>ってのは更に厄介極まりない相手なんだろうな。 前へ 目次へ 次へ
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Gift フェイト・テスタロッサ 水着ver. 1/4スケール PVC製塗装済み完成品 フィギュア発売日:6月30日 『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』より、 「フェイト・テスタロッサ」を可愛らしいビキニ姿で立体化。 発売中の「高町なのは 水着ver.」と合わせて並べれば可愛さ倍増です。 2010年公開。魔法少女リリカルなのはの劇場版。続編に魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A sがある。 http //www.nanoha.com/ 監督 草川啓造 原作・脚本 都築真紀 キャラクターデザイン・デバイスデザイン・総作画監督 奥田泰弘 クリーチャーデザイン 宮澤努、橋本貴吉 設定協力 山本浩憲、嵩本樹 チーフ演出 中山敦史 美術監督・設定 片平真司 色彩設計 田崎智子 撮影監督・CGIディレクター 中山敦史 撮影監督補佐 伊藤康行 特効 福田直征、古市裕一 編集 関一彦 音響監督 明田川仁 調整 小原吉男 効果 高梨絵美、高木英穂 音楽 佐野広明 アニメーション制作 セブン・アークス 絵コンテ 草川啓造 岩井優器 まついひとゆき 大森英敏 坂田純一 宮澤努 演出 奥野耕太 小林浩輔 作画監督 橋本貴吉 宮澤努 清水祐実 長町英樹 砂川正和 加藤剣 古池敏也 烏宏明 相坂ナオキ 安本学 井畑翔太 大貫のぞみ 作画監督補佐 桜井正明 北條直明 岡辰也 伊藤岳史 藤原未来夫 山崎正和 山田一豊 石井ゆみこ ■関連タイトル Blu-ray 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st<初回限定版> Gift フェイト・テスタロッサ 水着ver. 1/4スケール PVC製塗装済み完成品 フリーイング 高町なのは 1/8スケール PVC製塗装済み完成品 figma 高町なのは セイクリッドモードver. 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st フェイト・テスタロッサ-全身全霊- 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st 高町なのは -全力全開- 魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 1st原画集 上巻 魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st オリジナルサウンドトラック PSP 魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE GEARS OF DESTINY- 限定版 「GOD BOX」 画集 魔法少女リリカルなのはザムービー1stビジュアルコレクション 魔法少女リリカルなのはtype タイプ 2011年 01月号 コミック版 長谷川光司/魔法少女リリカルなのはMOVIE1st THE COMICS 1 フィギュア・ホビー:魔法少女リリカルなのは PSP 魔法少女リリカルなのはA's PORTABLE -THE BATTLE OF ACES- リリカルBOX
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魔法少女リリカルなのは登場人物は? ここでは、魔法少女リリカルなのはの登場人物です まずは、中心的に出てくる人物たち 高町なのは 声:田村ゆかり 本作品の主人公 フェイト・テスタロッサ→フェイト・T・ハラオウン 声:水樹奈々 本編でのライバル魔術師にして、戦友 八神はやて(やがみ はやて) 声:植田佳奈 一般人で、一番凄い本を持つ女性 その他は、後日掲載 魔法少女リリカルなのはへ戻る
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通信機器の沈黙した司令室ではオペレーターの声が飛び交う事も少なく、奇妙な静寂が満ちていた。 その中で、シャマルの周囲に表示された複数のモニターだけが一番忙しなく稼働している。 シャマルのデバイス<クラールヴィント>の持つペンダルフォルムが展開され、両の手の指輪から伸びる振り子がそれぞれの機器に接続される形となっていた。 「初めて見ます、デバイスによる電子操作……」 世にも珍しい光景に、状況を見守るしかないグリフィスが感嘆の呟きを漏らす。 「シャマルのデバイスはかなり特殊やからな。 古代ベルカ式は未だ謎が多い。解明されてるのも単純な戦闘技術だけや」 そうして見守る中で、半ばトランス状態となったシャマルが巨大なCPUを相手に自らの頭脳と魔法のみで情報処理を行っていく。 デバイスが持つ独力の観測魔法のみで現場をモニター出来るほど範囲は狭くなく、負担は掛かるがサーチャーを経由して観測を行うしかない。 シャマル一人に無理を強いることに覚える心苦しさを表には出さず、はやては可能な範囲内でオペレーターに指示を出していた。 今、この時は家族としてのはやてではない。部隊長としての八神はやてがいるのだ。 そして、シャマルの額から汗が滲み出し始めた時、状況は進展した。 「―――サーチャーとの接続に成功しました。観測魔法展開、モニター出します」 魔法へのノイズを極力失くす為、感情の起伏と共に抑揚を失くした声でシャマルが事務的に告げた。 沈黙していた司令室のモニターの前に、クラールヴィントが照射したホログラムの画面が重なるように表示される。 そこに再び映し出されたリニアレールの様子を見て、はやてを含む全員が息を呑んだ。 「なんだ、アレは……っ?」 呻くようなグリフィスの言葉は、その場の全員の思いを代弁していた。 モニター以外の観測機が数値で示すとおり、確実に加速しているリニアレールの車両。 しかし、一番の変化はそこではなく―――車両の表面に、奇怪な<肉片>がこびり付いていた。 「……寄生しとるんか?」 冷静に観察することで得た印象を、はやてが口にする。 それはおおよそ的を得た言葉のように、全員の心に違和感なく浸透した。 信じがたいことだが、あの車両に<何か>が寄生している。車両の表面にまるで根付くようにへばり付き、無機質とは違う生きた肉感を見せていた。 それは小さく胎動し、<眼>と思わしき部分さえ存在する。 リニアレールの全体を覆うほど広範囲ではないが、<寄生>は各先端車両に集中しており、それらが車両のコントロールを奪う原因である事を明確に表していた。 生ける生体列車となって山岳を走り抜ける―――その不気味な旅路の終着点は、あるいは地獄なのかもしれない。 そんな冗談染みた考えが浮かぶほどに、モニターされた光景は司令室の人間に衝撃を与えた。 「―――なのは隊長とフェイト隊長の様子は?」 「モニターします」 誰もが動揺する中、電子の世界に没頭するシャマルと部隊長としての責任の重みによって現実に立ち続けるはやてだけが行動していた。 二つ目のウィンドウが展開され、上空の様子が映し出される。 そこに映る光景もまた現実離れしたものだった。 事前のなのはの報告どおり、彼女達が対峙する敵は他に表現しようも無く、ただハッキリと<死神>だった。 「これは……現実の光景なのか?」 グリフィスは、もし何かの宗教に入っていればこの場で自らの神に祈っていたかもしれない。 決して経験豊富ではないが、それなりに管理局員として事件に対応してきた下積みがある。司令室の誰もがそうだ。 しかし、今直面する状況は、あらゆる経験を無駄にするほど常軌を逸していた。 青い空を埋め尽くすように蠢く、黒い死神の群れ―――。 まるで別の生物に作り変えようとするように車両へ寄生する肉片―――。 空想や映画の中に存在する『在り得ない光景』が、現実感と絶望感を持って眼前に広がっているのだ。 誰もが恐怖を感じていた。 かつて、子供の頃に何の根拠も無く感じていた―――ベッドの下やクローゼットの中に隠れる見えないモンスター達を幻視する時の恐怖を。 「まるで<悪魔>だ……」 人は、闇を恐れずにはいられない。 「―――リニアレールの終着施設へ連絡、作業員を全員退避させえ。それと、応援要請」 しかし、また同時に人は闇を恐れるだけの存在ではなかった。それに抗い、打ち勝つ為に。 はやての厳かな声が全員の正気を取り戻し、止まっていた筋肉の動きを再開させた。 やるべきことの途中だった者はそれを再開し、命令を与えられた者は行動を始める。 「隊長達の、援護ですか?」 声に怯えを含ませることだけは抑えられるようになったグリフィスが尋ねた。 はやては首を振る。 「単体の戦闘力ならあの二人は最強や。いざとなったら、リミッター解除を申請する。 応援は施設の方で待機してもらう。最悪の事態だけは避けなあかん―――シャマル、車両内はモニター出来んか?」 「不可能です」 脳の大半の処理能力を電子操作に使っているシャマルの返答は感情の無い端的なものだったが、同時に分かりやすかった。 「……リニアレールの方は、フォロー出来そうにないな。ルーキー達に任せよう」 「それしかありませんか」 「そら違うな―――」 不安を隠せないグリフィスに対して、はやてはこの緊迫した状況で場違いとも言える満面の笑みを浮かべて見せた。 「『それしかない』んやない、『それがベスト』 この程度のピンチ、あの子らなら乗り越えられるわ」 それは、新人達の力を信じようとする健気な姿勢でも、成功を過信する傲慢な態度でもなかった。 新人達の命を含んだあらゆる最悪の事態を考えて備える現実と、この状況を問題なく乗り越えられると信じる理想を合わせ持った笑みだった。 指揮官には、時としてこんな矛盾を孕む思考が必要とされる。 今の、八神はやてにはそれがあった。 「私がこの眼で見て、この手で選んだストライカー達や。必ず成し遂げる」 何の根拠も無い断言に、しかし奇妙な説得力が含まれていた。 司令室の誰もが大きな不安を感じる中、胸を張ったはやての言葉がゆっくりと全員の体を縛っていた躊躇いを解いていく。 怯えていた子供達は戦士へと戻っていった。 「さあ、何呆けとる? 予想外やけど、やるべき事は何も変わっとらんで。延長戦を始めようか―――任務続行や」 「「了解!」」 機動六課が再び戦いの意思を取り戻した瞬間だった。 魔法少女リリカルなのはStylish 第十話『Devil Must Die』 開戦の銃火が、まずは真正面にいた数匹の蟲を吹き飛ばした。 アンカーガンのそれより威力の増した魔力弾が愚かな肉の塊を壁にへばり付かせる。 しかし、生物としての生態を持たない蟲の悪魔達は、脚の数本や体の一部を抉られたくらいではその活動を止めなかった。 新たに滲み出るように出現した蟲と群れを成し、ティアナの元へと蠢き進む。 「Com n winp(来な、ノロマ野郎)」 虫嫌いの人間が見れば卒倒するような光景を前に、しかしティアナはただそれを磨り潰す加虐的な笑みを浮かべて手招きした。 そして唐突に、目の前に集中するティアナを奇襲するように天井から襲い掛かってきた蟲に右手を突き出して、クロスミラージュの銃身で貫いた。 「見えてるわよ」 不敵に笑い飛ばすその言葉は、串刺しになった<悪魔>に対するものか、警告しようと口を開いたスバルの呆けた顔に対するものか。 銃口が体にめり込んだまま痙攣する蟲を眼前の群れに突きつけると、ティアナはそのまま魔力弾をぶっ放した。 蟲の体が四散する。 相も変らぬ速射が愚直な敵の前進を薙ぎ払い、酷使されるクロスミラージュの悲鳴のような銃声が車両内を埋め尽くした。 天井や壁から、時には床下から水漏れのように滲み出て形作る蟲の姿目掛けて、当たるを幸いとばかりに撃ちまくる。 二つの銃口それぞれに眼がついているような正確無比な射撃の二重奏。ティアナに死角は無い。 《―――Bullet slice》 しかし、弾丸は有限だった。 カートリッジに蓄積された魔力を吐き尽くし、右手のクロスミラージュが警告を発する。 撃った魔力弾の数は約30発。クロスミラージュの装弾数は単純計算でアンカーガンの倍近いことになる。 十二分な性能だ。弾切れだというのに、笑みが浮かんだ。 白熱する感情の片隅で、ティアナの理性は冷静に計算を続けていた。 「テ、ティア……ッ!」 「騒ぐな。動くな」 右手の火力がなくなったことにスバルが焦るが、当人は普段より幾分冷たい言葉を端的に返すだけだった。 初めて撃つ銃を両方一気に撃ち尽くすようなバカはやらない。 ここぞとばかりに迫り来る蟲の群れへ左の銃火で牽制しながら、デバイスの収まっていたケースを蹴り上げる。 ケースと共に、その中に納まっていた予備のカートリッジが外れて宙を舞った。 左のカートリッジも切れる。沈黙した火力の隙を突いて、壁にへばりついていた一匹が意外な瞬発力で飛び掛かった。見えている。だが魔力弾は撃てない。 銃身で思いっきり殴り飛ばした。 肉の潰れる気持ち悪い感触と音に、鈍器として使用されたクロスミラージュの抗議の声が聞こえた気がする。もちろん無視した。 めり込んだ銃身を素早くパージして、その空のカートリッジバレルを壁に向かって蹴りつけ、杭のように蟲の体へ突き刺した。ついでに左のバレルも外す。 グリップ部分が本体であるクロスミラージュ。落下してきたカートリッジを、ちょうど接合部分に重なるようにして叩き付ける。 《Reload》 ガチッという金属音と共に、小気味のよい電子音声が響いた。 刹那の間に繰り広げられた攻防と交差がここに終結する。 力を取り戻したデバイスを再び眼前に突きつけた時、壁に突き刺したまま消滅を始める蟲以外に敵の姿は煙のように消え失せていた。 「……消えた?」 突然の敵の襲来にさえ動揺を見せなかったティアナが、その敵の突然の退却には訝しげな表情を見せる。 まだ何匹かの蟲が残っていたハズだ。 闘争と殺戮を糧に生きる<悪魔>が自ら立ち去るなど初めての経験だった。 奴らは自らの意思で<こちらの世界>へ現れ、滅ぶまで活動し続ける。下級悪魔に引き際を見極める理性など存在しない。 「裏がありそうね……」 ティアナは第三者の意思の介入を漠然と感じていた。 沈黙を取り戻した車両の中、全ての光景を見守っていたスバルが恐る恐るティアナに近づく。 「ティア……倒したの?」 「出て来たのはね。 アレは寄生するタイプみたいだから、多分車両の見えない部分に潜んでコントロールを奪ってるんだわ」 「うへぇ、ゴキブリみたい」 気持ち悪そうに顔を顰めるスバルの感想は、本人の意思とは違い随分と呑気な印象を与えた。 一匹見つければ陰に三十匹。言い得て妙だが<悪魔>に対する表現とは思えない。 ティアナはこんな時でも普段の調子を忘れないスバルを見て、苦笑を浮かべた。 「でも、すごいねティア。あれだけの数を相手に……いつもより動きもずっと鋭くてさ」 「さっきも見たとおり、アレは何かに寄生して真価を発揮するタイプでしょ。動きも遅いし、必要以上に恐れなければ敵じゃないわ」 暗に、先ほどの戦闘で竦んでいたスバル自身を叱責するようにティアナは断言した。 どんなに弱い<悪魔>であっても、その闇の存在感は人の心に根付く恐怖を刺激する。 それを打ち破る感情や意思で引き金を引いた時こそ、人は<悪魔>を打倒することが出来るのだ。 それは今のスバルにも出来るはずのことだった。 「―――ところで、当面の問題はどうやって車両を止めるか、よね」 思い出したようにクロスミラージュを真新しい革製ガンホルダーに納め、車両のコントロールパネルを一瞥しながら呟いた。 リニアレールを加速させている原因は分かった。 しかし、その障害をどうやって排除するかがまだ分からない。 「あの蟲を全部倒せば……」 「どうやって? 床下や配電盤の隙間に殺虫剤でも撒く?」 的を得ていないようで実は得ているスバルの意見に、あえて皮肉交じりに返す。 対悪魔用に絶大な威力と効果範囲を持つアイテムをティアナだけは知っていたが、今手元に無い以上考慮すべき手段ではない。 「……動力のある先端車両をぶっ壊せば」 「ティア、なんか考え方が過激になってない?」 危険な笑みを浮かべるティアの意見を、今度は逆にスバルが却下した。『冗談よ』と言ってるが、どこまで本気か分からなかった。 スバルの持つ魔法<ディバインバスター>なら可能な方法かもしれないが、内部にいるティアナ達の無事は保証できない。 何より、このリニアレールとて莫大な資金で運転されている設備なのだ。 管理局所属の部隊には破壊を最小限に留める義務があった。 「ここからの操作は受け付けない……でも、この車両を動かす力まで蟲が作り出してるわけじゃないはずよ。壊す以外に動力機関を停止させることが出来れば」 「でも、操作は受け付けないんでしょ?」 「何でもいいわ、エンジンに繋がってるコードを全部引っこ抜いてでも……」 「―――わたしが、やるです」 打開策はスバルとティアナ以外の口から打ち出された。 「リイン曹長!? 気が付きましたか……」 「ごめんなさいです。コントロールを取り戻そうとした不意を突かれてしまいました」 スバルの腕の中でグッタリとしていたリインが眼を覚まし、フラフラと二人の目線の位置まで飛んでみせる。 外傷は無いようだが、小さな体が頼りなく浮いているのを見ると、どうしても不安を感じざる得ない。 「大丈夫ですか?」 「少し頭が痛い程度です。それよりも、任務を続けましょう。動力炉を止めればいいですね?」 すぐに自らのやるべきことを把握しようとするのは、さすがベテランの管理局員であった。 「はい。でも、コントロールが……」 「問題ないです。コンソールを介さずに、コードから直接停止命令を出すことも出来るですよ。わたしはデバイスですから」 リインのその言葉に、二人は早速作業に取り掛かった。 操作機器の板を剥がし、中のコードからリインが指定する物を選んで切断する。 「ここから管制CPUの代わりに直接停止命令を送るです」 「蟲の妨害は?」 「理屈はわかりませんが、ハッキングなどで乗っ取ってる状態ではないですからね。直接襲ってくることだけを警戒してください」 リインを中心に展開される小型の魔方陣が切断されたコードを何本も取り込み始めた。 スバルとティアナが周囲を警戒するが、今のところ敵が現れる気配は無い。 元々コントロールを取り戻せなかったのも、物理的に敵の奇襲を受けたからであり、電子戦においては文字通りリインに敵はいなかった。 「くっくっくっ、今度はリインのターンですよ! 覚悟するです、このMU☆SI☆YA☆RO☆U!」 突然気色の悪い蟲に襲われた屈辱を晴らすが如く、愛らしい顔に悪魔の笑みを浮かべたリインが死を宣告する。 同時に発せられた停止命令はコードを伝って、何の障害も無く動力炉に届いた。 低い振動音が先端車両の内部に響き渡り、リニアレールの加速は―――止まらない。 動力は一つではないのだ。 「ここの動力炉は止めました。でも、反対車両にもう一個残ってるです。それも止めないといけません」 「急ごう、ティア!」 レリックのケースを抱えなおし、戦意も新たにするスバルに対してティアナはデバイスを抜きながら頷き返す。 「多分間違いなく敵襲があるわ。先端車両まで一気に抜けるわよ」 「分かった!」 「露払いはあたしがするわ。スバルはレリックとリイン曹長の護衛よ」 「今度は足手まといにならないですよっ」 スバルとリインの十分な気合いを感じ取り、状況を打開する希望を見出したティアナにも余裕が戻り始めた。 しかし、いざ行動を開始しようとした時、走行とは違う大きな振動が車両全体を揺るがした。 壁越しに何かの破壊音がわずかに聞こえる。 三人は思わず天井を見上げた。 「……今のは!?」 「車両の外で、何かあったみたいね」 「じゃあ、エリオとキャロが……!」 皆まで聞かず、焦るスバルの言いたいことをティアナは察する。 だが現状では二人の安否を案じる以外何も出来ない。 とにかく、今すべきことは一刻も早くこの車両を停止させることなのだ。 「―――行くわよ!」 足を引っ張る不安と懸念を断ち切り、ティアナは二人を伴って駆け出した。 信じ難い光景が、エリオの目の前で広がっていた。 「そんな……完全に破壊したはずっ」 ソレが敵であることは、もう疑いようがない。 しかし、かろうじて戦う構えを取ってはいるが、エリオの内心は動揺でとても戦える状態ではなかった。 エリオとキャロ、そしてフリードの前に現れた敵は―――撃破したはずの新型ガジェットだった。 「何なんだ、コイツは!?」 フリードの熱線によって真っ二つに切断されたはずのガジェットは、おぞましい姿へと変貌して再び稼動し始めていた。 一度潰えた骸が再び動き出したのだとしたら、確かにそれはおぞましいもの以外の何者でもない。 復活したガジェットは、切断面を得体の知れない肉の塊で接合し、その装甲にも半ば融合するように胎動する<皮膚>を覗かせた姿へと変わっていた。 縦に走る機体の繋ぎ目の中心には、巨大な一つ目がギョロギョロと動いている。 機械と生物の狭間に存在するような奇怪な怪物となったガジェットは、同じく肉片で継ぎ接ぎになったアームベルトを蠢かせていた。 それはもう兵器でも生き物でもない。 「<悪魔>……か……っ」 混乱と恐怖に震えるエリオには、もうそれ以外に言葉のしようがなかった。 「エリオ君、気をつけて。あんな風になっても、AMFは生きてるみたいです」 「……分かるの?」 「はい。ベースのガジェットに何かが寄生してるみたい」 敵に対して背後へ隠した、自分と比べて驚くほど冷静なキャロの言葉を受けて、エリオはなるほど確かに納得する。 <寄生>―――確かに、あの有り様はその表現が最も合うような気がした。 しかしキャロは、寄生した存在が<何か>であると。『寄生生物だ』と表現はしてくれなかった。 無機物に寄生し、本来の存在からあれほどかけ離れた化け物へと変貌させてしまう生物―――そんなものがこの世に生息するはずがない。 新たな理解は、得体の知れない存在を更にエリオの認識のはるか遠くへと追いやった。 「ど、どうすれば……?」 幼い彼の常識や判断が全く及ばない状況に混乱する心はすぐに恐怖を呼んだ。 ストラーダを構えたエリオの姿は戦いに備えた戦士のそれである。 しかし、デバイスを握る腕に宿る小刻みな震えは全く正反対の内心を忠実に表していた。 戦う為の訓練は積んできた―――でも、あんな化け物と戦う方法なんて知らない。 どんな苦しい状況でも諦めない決意をしてきた―――でも、こんな恐怖を克服する術なんて知らない。 傷つくことも覚悟してきた―――でも、得体の知れない闇の奥底へ引きずりこまれた時そこに待つものが一体何なのか想像すら出来ない。 そして、幼い少年の心を占めるのはただ一つだけ。 恐怖。 グロテスクな外見に反して腐臭や異臭が鼻を突くことはない。代わりに五感以外の感覚を撫で付けるのは瘴気とも言うべき気色の悪い感触だった。 積み上げた戦士としての年月は消し飛び、眼を逸らすことも怖くて出来ない凝視の中で眼と腕を蠢かせる<悪魔> そして不意に、ピタリと視線が合った。 顔ほどもある眼球。その異様な瞳孔がしっかりと自分に合わせられるのを、錯覚ではなく確かな実感として感じる。 総毛立つ。大脳を横殴りにするようなショックと共に激しい嘔吐感が込み上げてきた。 「ひぃぅ……っ!」 引き攣るように呼吸が止まった。 あの<悪魔>は、ボクを『見ている』―――! 「ぅ……うわぁあああああああああああああっ!!」 悲鳴。紛れも無く、一切合財の外面をかなぐり捨てた魂の悲鳴。 惨めに後退る、エリオ。そんな僅かな逃亡など欠片も意味はなく、ガジェットのアームベルトが伸びて襲い掛かった。 槍の刺突のように鋭い直線攻撃。 咄嗟の防御は恐怖に対する回避本能以外の何物でもなく、盾にしたストラーダごとエリオの体は後方へ弾き飛ばされた。 車上をバウンドし、その勢いのまま走る車両の外へと転がり落ちる。 回転する視界の中でかろうじて状況を察知し、慌ててストラーダを車両に突き刺して落下を逃れた。 しかし、相対する敵は窮地から逃してはくれなかった。 まだ残る機械の部分に供えられた火砲にレーザーの光が灯る。 脳裏に死が横切った。覚悟など出来ない、ただ恐怖だけが塗り重ねられる。呆気なく熱線は解き放たれた。 その瞬間、白い影が立ちはだかった。 「ケリュケイオン、シールド!!」 キャロ、叫ぶその声に恐れなど無く。クロスした腕の前に発生した障壁がレーザーを受け止めた。 幼い少女の食い縛った歯から漏れる苦悶。 キャロは召喚師であって元来は魔導師ではない。通常魔法の行使の経験は浅い身、しかもシールドは戦闘型のスキルだ。 弱弱しい出力のシールドはレーザーとのぶつかり合いで対消滅し、砕け散る。 既に<竜魂召喚>で消耗した体から、更にごっそりと何かが失われていく。 脱力感を堪え、人として戦うことを決めた少女は力の限り叫んだ。 「<ブラストフレア>!!」 『ギュアッ!!』 本来の姿を再び失ったフリードもまた、その言葉に応える。 やはり消耗し尽くした体で生み出す炎は弱弱しく。しかし何としても吐く、どんな相手だろうと<悪魔>には牙を剥く。 真の力とは程遠い小さな火球が発射された。 アームで弾くまでもなく、未だ健在するAMFによって直撃する寸前で消滅する。 やはり一度損傷したせいか範囲を広げられず、AMFの出力も落ちていたが、火力の衰えた一撃を防ぐことは出来る。 しかし、相棒の稼いだ時間をキャロは少しも無駄にしなかった。 「―――錬鉄召喚<アルケミック・チェーン>!!」 広げた両手の先に展開される召喚魔方陣。そこから生え出るように出現した有刺鉄線の鎖が、何本も敵に向けて伸びる。 激突するアームと鎖。鋼の触手が敵とキャロの間で複雑に絡み合い、互いの領域を侵食するように激しい軋みを上げた。 鎖が自分の腕の延長であるように力み、敵の力とかろうじて拮抗するキャロ。 無機質の鎖に動く力を与えているのはキャロ自身である。力尽きればどうなるか、結果は明らかだ。 その光景を、エリオは這い蹲って見ていた。 「キャロ……」 彼女は、戦っている。 自分が守ると決めた、守れと任せられた少女は、逆に自分を守る為に戦っている。 もう戦う力など残っていないのに揺ぎ無い意思で、まだ戦う力を残しながら怯え竦む自分の前に立ち塞がっている。 その光景を、エリオは見ていた。 無様に這って、震えて、竦んで―――ただ見ていた。 「ボク、は……っ」 こぼれそうな涙を必死で押し留め、自分でも何を言うつもりなのか分からない言葉を区切る。 そして、誰かが致命的な言葉をエリオに告げた。 『―――お前、何をやってるんだ? この腰抜け野郎』 心の内に響いたそれは、確かに自分の声だった。 車両の内と外で四人の戦いが繰り広げられている頃、その上空でも人間と悪魔との戦いが展開されていた。 ハーケンフォームを取った光の鎌<バルディッシュ・アサルト>が死神の鎌を受け止める。 「この……っ!」 戦いの声もなく、狂ったように笑いながら鎌を振るい続ける死神の姿に本能的な怖気を感じ、フェイトは閃光の如き一撃を薙ぎ払った。 プラズマの刃が確かに死神の胴体を切り裂く。 しかし、それはまるで霞を斬ったかのように手応えを感じない。 ゆらゆらと揺らめくローブの下には体など存在しないのか。 切り裂いたはずの裾さえ、実体を持たない霧のようにいつの間にか揺らめきを取り戻している。 《Axel Shooter》 「シュート!」 周囲を取り囲む敵に向けてなのはがアクセルシューターを解き放った。 数には数を。しかし、その魔力弾全てが正確無比にして必殺である力を秘め、桃色の流星が死神の群れに降り注いだ。 漂うように飛び回る死神の動きは決して速いものではない。全ての魔力弾がそれぞれの標的に命中する。 だがそれらもまた効果は得られなかった。 ガジェットの装甲すら貫通する魔力弾を大鎌で弾き飛ばす、あるいはフェイトの時のように攻撃が体をすり抜けるだけだ。 「まいったなぁ……のんびりなんてしてられないの、にっ!」 悪態を吐きながらも、なのはは背後から斬りかかって来た死神の攻撃を素早く回避する。 近接戦闘には不向きななのはであっても対処できない攻撃ではない。数の多さで死角を突かれ易いが、単純だ。 純粋な戦闘力の面でならば、なのはとフェイトが完全に凌駕している。 しかし、その姿のままに幽鬼の如き敵はあらゆる攻撃を無効化していた。 「ひょっとして、本当に倒せないの……?」 トンッと互いの背中が当たり、背中合わせになったなのはとフェイトは一瞬だけ視線を交わした。 「どうしたの、なのは。弱気?」 「まさか。幽霊の退治の仕方ってどんなものなのか、ちょっと興味を持っただけだよ」 「じゃあ、試してみようか」 触れることすら困難な死神の群れ。 自分達の命を刈り取ることを求め、汚れた殺戮への本能で残酷に笑い続ける異形の者達。 人の正気を失わせるような異常の只中にあって、しかし二人の持つ強さは全く衰えることはなかった。 「アイツらは幽霊なんかじゃない―――」 未だ右手に宿る疼くような痛みと一緒にバルディッシュの柄を強く握り締める。 この手に流れる血は、生きている証。 そう、生きている。 ならば、抗い続けよう。この生を諦めさせようとする絶望の哄笑の中で。 「この手の痛みが訴えてる。奴らは『触れる』『感じ取れる』そして……『打倒出来る』って!」 金色の魔導師の瞳の奥で迸るのは、人としての意思。あたかも雷光の如く。 バルディッシュの持つプラズマの刃が稲妻のように輝き、轟いた。 「<ハーケンセイバー>!!」 バルディッシュを振り抜くと同時に、形成された魔力刃が独立して高速で射出される。 スパークを繰り返しながら回転し、一体の死神を完全に補足追尾して襲い掛かった。 (全ての攻撃がすり抜けるなら、何故さっきなのはの魔力弾を防御した……?) 時間差で同じ標的に向けてフェイトも突撃する。 高速で飛行するフェイトを捉えきれないのか、あるいは奴らに仲間意識など存在しないのか、二つの閃光が飛ぶ先に障害はなかった。 (あの鎌が実体である以上、別に実体化した箇所もあるはず。それが本体だ!) 飛来する雷の刃を死神の鎌が受け止める。 なのはのアクセルシューターを超える威力を秘めた魔法だったが、それすらも弾き散らして見せた。 しかし、いなすにはやはり容易くなかったか。反動で正面に構えていた鎌が大きく逸れた。 がら空きになる敵の懐。 ゆらゆら揺れるローブの中に肉体が存在しないことは確認済みだ。 ならば狙うのは、あの時アクセルシューターの軌道上にあった―――。 「その仮面だ!」 フェイトは、勢いを乗せたバルディッシュの先端を仮面に狙い定めて突撃した。 自らが弾丸となった一撃は仮面を粉々に砕き、フェイトの存在そのものが死神を貫くように突き抜ける。 おぞましい悲鳴が響き渡った。 まさしく断末魔のそれを張り上げ、顔面を失った死神の体は四散する。 鎌は空中でガラス細工のように砕け散り、バラバラに千切れ飛んだローブは破片に至るまで空中で消滅した。 「―――やれる! なのは、弱点は仮面だ!」 「了解!」 撃破の余韻もなく、すでに次の標的に向けて飛ぶフェイトの声になのはもまた応える。 闇に押し潰されるだけの人間が自ら光を掴む瞬間に居合わせた悪魔達は、恐れ戦き、笑い声は悲鳴に変わった。 彼らは<人間だけが持つ力>を知らない。 二千年以上前からずっと、彼らは気付かない。 「シュートッ!」 再びなのはのアクセルシューターが火を吹いた。もちろん、同じパターンを繰り返すほど愚かではない。 誘導魔力弾は正確に『死神の持つ鎌』を直撃する。 攻撃を防御させるのではなく、自ら彼らの持つ攻防一体の武器を狙ったのだ。 掬い上げるような軌道、叩き下ろすような軌道、あらゆる方向から飛来した魔力弾が死神の鎌を叩いて逸らす。 「ダブル!!」 間髪入れずに用意されていた第二射が発射された。 意図的に作り出された防御の隙間目掛けて桃色の光弾が飛んでいく。 最初に魔力弾を当てた標的全てに誘導マーカーでも取り付けられていたかのように、魔力弾は一発残らず直撃し、仮面を破壊した。 奇妙な合唱団のように幾つもの断末魔が空に響き渡り、そして合唱に参加した者から消えていく。その数は10近い。 死神を薙ぎ払う桃色の閃光。霧散していく黒い残滓の中心で、武神の如き威容で白い魔術師は佇んでいた。 その背後から迫る、鎌。 死角から投擲された鎌がフェイトのハーケンセイバーのように高速回転し、追尾機能まで持った不規則な軌道でなのはに襲い掛かった。 少女の柔い体を貫き、血に濡らさんと迫る死神の大鎌。 残酷な一撃は―――なのはの背後に発生した障壁によって完全に遮られた。 「……ダメじゃない」 シールドと拮抗して甲高い音を立てる刃の火花を眺めながら、ゆっくりとなのはが振り返る。 そしておもむろに手を伸ばすと、完全に力を相殺されて単なる鉄の塊と化した鎌の刃を無造作に掴み取った。 「唯一の武器を、考えもなしに手放したりなんかしちゃったら……」 その手の中で魔力を使い尽くして実体化すら出来なくなった鎌がパリンッと砕けて割れた。 視線の先、得物を失って呆然としている(ように見える)死神に向けて、天使の笑顔を浮かべるなのは。 右手のレイジングハートに宿った魔力が凶暴な瞬きを繰り返し。 「この一撃、どうやって避けるのカナ?」 そして、聖なる砲撃が解き放たれた。 迫り来る圧倒的な破壊の光に<悪魔>は哭き叫ぶ。 白い天使に微笑みかけられた死神の末路など、語るまでもない。 闇の蠢く空は、今や徐々に晴らされようとしていた。 「リニアレール、阻止限界点到達まで10分を切りました!」 混乱を切り抜けた司令室から、緊迫感まで抜けたわけではなかった。 例え車両の動力を止めても、実際に走行停止するまでには時間と距離が要る。 その最終限界点となる地点も刻一刻と迫っていた。 「終点には応援の空戦部隊が待機終了しました」 「ごくろうさん。来てもらって悪いけど、無駄になることを祈ろうか」 「……間に合わなかった場合、どうなさるおつもりですか?」 他の局員に聞こえないようはやてに耳打ちするグリフィスの心境は、実質死刑の内容を聞く受刑者に等しかった。 最悪の事態を回避する為の最終手段など、やはり最悪のものになるに決まっている。 「決断するだけや」 具体的な返答を避けるはやての瞳に、しかし躊躇いや迷いというものは一切映っていなかった。 「あなたが信じているのか諦めているのか、分からなくなりますよ」 「もちろん、信じとるよ。せやから、こうやって首長くして朗報の一つもで入ってこんか待ってるんや」 司令室で機能しているモニターはシャマルのコントロールする観測魔法の二つしかない。 依然現場の状況はジャミングが掛かったかのように不鮮明だった。 はやては、その観測不良の原因解明を後回しにして、要因となる情報を可能な限り収集している。 同じ過ちは繰り返せない。 彼女は、既に『次』を視野に入れていた。 (<敵>が何者か? 管理局でも噂になっとる謎の襲撃事件。形も、時間も、場所さえ定まらない無差別な悪意……) 殺戮そのものが目的と言わんばかりに襲い続ける。 唯一の共通点である<人間>を標的とした行為。 (いつまでも闇に隠れて一方的に嬲れると思うんやない。『次』はこうはいかんで) 物的な痕跡を残さない事件ゆえに、局内でもおざなりに扱われてきた一連の事件を見直す必要がある。 例えその所業が<悪魔>の仕業と揶揄される程に異常で現実味の無いものであっても、今目の前で起こっている状況とこの無力感を忘れぬ限り―――何処までも追い詰める。 この世の常識を超えた存在を相手に、はやてはただ怒れる瞳を向けていた。 「……私らを敵に回したのが間違いや。人間の力を舐めるなや、<悪魔>ども」 闇への恐怖を超える汚れない怒りを持つ人間がいる―――。 上空を移すモニターでは、反撃ののろしが上がっていた。 有刺鉄線の触手とアームベルトが酷く耳障りな音を立てて軋み合う。 巨大なガジェットと幼い少女の間では奇妙な拮抗が成り立っていた。 「フ、フリードッ!」 キャロの命令に従ってフリードがブラストフレアを発射する。 もはや十分な火力を集束する余力も無い。弱弱しい火球がAMFにかき消される。 かまわずにフリードは血を吐くに等しい思いで炎を吐き続けた。 たとえそれが全て敵に届く前に消滅する運命にあっても、水滴が巨壁を穿つが如く何度でも放ち続ける。 その竜が幼い体に宿す意志の強さは、先ほども見たばかりだ。 未だ地面に這ったまま、震え縮こまってエリオは一人と一匹の戦いをただ見ていた。 (だ……駄目だ。立てない……っ) 足に力が入らなかった。 傷や疲労などではない。ただ心が折れている。 ―――あんな化け物となんて戦えない。 (怖いんだ、ボクは……!) 感受性の強い子供であるエリオには、ガジェットに寄生した存在の生々しい瘴気を敏感に感じ取ることが出来た。 気高い決意を失うのと引き換えに、死を超えた純粋な恐怖を思い出す。 自分が何故こんな所で戦うことを選んだのか、それすらも思い出せなくなっていた。 力は残っている。頭も回っている。なのに心だけが動いてくれない状況で、ただ見ることだけに集中していたエリオは異変に気付いた。 「あれ、ケーブルが……!?」 キャロの魔法と拮抗するアームベルトとは別に、ガジェットの細長いアームケーブルがいつの間にか足元に突き刺さっていた。 車上の屋根を貫通して内部まで侵入している。 その行動から導き出される推測が閃きと共に脳裏を走り抜けた。 「―――キャロッ! 足元だ、下から来る!」 「え?」 警告は間に合った。しかし、すでに敵を押さえ込むので手一杯だったキャロには何の意味も成さなかった。 意識を足元に向けた瞬間、屋根を突き破って何本ものアームケーブルが突出してくる。 車両内部を通って迂回し、奇襲を仕掛けたのだった。 「あぅ……っ!」 『ギュァッ!?』 疲労したキャロ達に成す術は無かった。 キャロは四肢を縛られ、細い首を締め上げられて宙へと持ち上げられる。抵抗するフリードには猿ぐつわのようにアームが絡みついていた。 魔方陣が消滅し、力の拮抗は容易く失われた。 そして、全く脅威ではないと判断されたエリオは、ただ一人無力なまま放置される。 「あ……ぁあ……」 少女の窮地を目の前にして、やはり体は動かない。 動け。助けに行け。何やってるんだ腰抜け。この役立たず。いくじなし―――! どれだけ自分自身を罵倒しても、恐怖に凍りついた心を奮い立たせることが出来なかった。 意思に反して動かない全身の筋肉が引き攣る。 何かが自分の足を引っ張っている。その何かを、忘れてしまった『この道を選んだ理由』さえ思い出せば消し去れるのに。 どうしても思い出せない。 ただ怖い。 敵が怖い。自分が傷付くのが怖い。そして、目の前で誰かが傷付くのも怖い。 「エ……リオ……くん」 小さな体を無残に締め上げる苦痛の中で、キャロが背後のエリオを見た。 苦悶の表情に震える声が痛々しい。 しかし何よりも、助けを求められることが辛かった。 今の自分に応えることは出来ない。裏切ることしか出来ない。 エリオは全てを拒絶するように頭を抱えて蹲り―――。 「逃げて!!」 キャロは決然と言い放った。 「え……?」 見上げた時、もうキャロは自分を見てはいなかった。 縋ることもせず、乞うこともせず、彼女はすでに再び敵を見据えていたのだ。 「キャロ……」 エリオはその姿を呆然と見ていた。 混沌としていた感情は今や跡形も無く消え去っていた。だがこれは絶望ではない。ただ強いショックを受けた。 体の中から何かが溢れてくる。 恐怖も後悔も吹き飛んで、頭の中は真っ白になった。 「ボクは」 必死に探していた答えが、別に何ということはなく目の前に転がっていた。 何故自分は、戦うことを選んだのか。何の為に戦おうとしていたのか。 出撃の前は疑問にも思わなくて、この<悪魔>を前にした時に見失って、そして今前以上の強い高ぶりと共に蘇ってくる。 ―――他人の痛みを気遣う人。 そんな人の強さと優しさに救われて、自分もまた誰かの痛みを止めたいと思って選んだのだ。 「ボクは!」 忘れ去った自分に、その答えを見せてくれたのがキャロだった。 自分が勝手に守ろうと思っていた少女は、この恐怖に震える臆病者よりずっと戦う意味を知っていた。 こだわっていた―――! 「―――うわぁああああああああああああああっ!!」 その一声で、少年は戦士に戻った。 立ち上がり様、車上に突き立つ鈍器と化していたストラーダを抜き放つ。それだけで鉄塊は聖なる槍へと変貌した。 力の入らなかった手足には、もう圧倒的な力が宿っている。 高々と掲げられた、決意の証。 それを振るえば、斬撃の閃光がキャロとフリードの戒めを尽く切断した。 「お前なんか怖くない! いっくぞぉぉぉーーーッ!」 《Sonic Move》 停止していた時間を取り戻すように激発するエリオの心に、ストラーダの電子音声が応えた。 超高速移動魔法、発動。 瞬時に音速の壁を突き破る。駆け出したエリオは時間を置き去りにして疾走した。 蘇った敵意を察知して伸ばされるアームベルト。遅い。遅すぎる。足を狙った攻撃を容易く跳び越えた。 真っ直ぐに伸びた腕を足場にしてエリオは駆け上がった。本体の頭上を蹴りつけ、更に飛翔した。 魔法が解除された時、エリオはすでに敵の遥か後方へと着地していた。 遅れて解放されたキャロとフリードが尻餅をつく。 「ストラーダッ!」 十分に離された距離。しかし、これは敵の攻撃を警戒してのものではない。 「カートリッジ、ロード!!」 金属質なコッキング音。次の瞬間爆発的な魔力がデバイスを伝ってエリオ自身にも漲る。 槍の穂から魔力をロケットのように噴射して加速した。 スピーアアングリフ。短時間の飛行すら可能な推進力で行う突撃。離した距離は、銃弾が加速する銃身の如く。 走行中の車両が止まったように見える加速の中、恐れを失くした瞳が標的を静かに補足した。 ただ単純に突くだけではない。狙いは正確無比に、最初の戦闘でエリオ自身がつけた背部の傷。 寄生生物の肉で補修されながらも、その一点だけ装甲の無い部分へ、AMFを突破してストラーダの先端が狙い違わず突き刺さった。 鉄ではなく肉を切り裂く感触。 出血も悲鳴もないが、確かな手応えがエリオの手を、そして激突の衝撃が敵の体を震わせる。 しかし、足りない。 AMFによって威力を半減され、硬い外殻の代わりに衝撃を吸収する柔らかい外皮を得たガジェットは致命傷を負わなかった。攻撃の届きが浅い。 「がぁあああああっ!!」 だが、吼える。 荒れ狂う心は止まることを命じなかった。 「カートリッジ、ロードッ!」 再度コッキング音。 自らの体とデバイスに掛かる負担すら忘却した、ただ一つの強大な意志がエリオを突き動かした。 刺さったままの穂先から魔力が爆噴し、発生した推進力が衝撃と刃を更に敵の体内へ送り込む。 「ロードォ!!」 連続して三度目のカートリッジロード。もはや魔力増幅というより、見た目通りの銃撃に等しい衝撃と反動。 パイルバンカーのように押し出されたストラーダがもう一度敵の体を激震させた。 今度こそ致命傷だった。血が噴き出し、エリオを引き剥がそうとしていた腕は痛みを訴えるように暴れ回る。 とどめを刺すべく、エリオは最後の撃鉄を起こした。 「これで、終わりだぁああああーーー!!」 《Stahlmesser》 渾身の力で押し出したストラーダが体内の機械や生体部分を切り裂き、同時に先端から魔力刃が伸びて、完全に敵の体を貫通した。 命というものがあるのならば、機械と生物の融合した歪な存在のそれを確実に奪った一撃。 一瞬の停滞の後、自分に与えられた死を思い出したかのようにガジェットは爆発四散した。 「エリオ君……!」 爆発の煙に飲み込まれて消えたエリオの姿を探して、キャロは叫んだ。 心配するまでもなく、跡形も無く吹き飛んだ敵の残骸と黒煙を横切り、煤だらけの姿になったエリオがフラフラと歩み出てくる。 「エリオ君、大丈夫!?」 「……やあ、ゴメンね。助けるの遅くなっちゃって」 無理な魔力行使と疲労でボロボロのはずなのに、妙に清々しい笑みを浮かべるエリオの言葉に首を振る。 キャロの心に迫るものがあった。かつて、初めてフェイトと出会い、そして彼女が自分の為に怒るのを見た時のような。 「ありがとう……」 「お礼を言うのは、こっちだよ……ボクにはまだ意地があることを、思い出させてくれたんだ……」 満足そうに呟くと、エリオは静かに目を閉じた。心身共に戦い抜いたゆえの結果だった。 幼い少年は、誰もが怯える闇を踏破する道を切り開いたのだ。 キャロは横たえられた少年の体を愛しげに抱き締めた。傍らのフリードもようやく羽を休める。 この場所での戦いは終わったのだ。 ただ一つ、無限と錯覚するような<悪魔>の新たな出現を除いて―――。 ガジェットの爆心地から、煙に紛れて這い出てくる一匹の蟲の姿。 爆発から逃れたものか、列車に寄生していたものか。疲弊したキャロ達の新たな敵となろうと、数を増やしながら迫ってくる。 その様を、キャロは見ていた。 「……バカにするつもりなのかな?」 酷く冷めた瞳で。 「エリオ君やフリードの頑張りを―――」 二人の大切な友達がやり遂げた戦いを、無粋に続けようとする者達。 憎悪や恐怖などではなく、侮蔑するような暗い怒りを宿した瞳で蟲を一瞥した瞬間、それらはキャロの意思のままに消え去った。 突然地面に広がった染みのような影から、黒い牙を備えた巨大な口が生えて一瞬で蟲を飲み込んだのだ。 車両全体をモニターするシャマルの観測魔法でも捉えられない瞬間的な出来事だった。 「……消えて。もう、あなた達<悪魔>に穢されるものはない」 蟲も、それを喰らった影も、今度こそ全てが消え去った場所で、呟いたキャロの言葉は一体『どちら』に対するものだったのか。 自分の影の中で、血のような赤い瞳を持った獣が蠢くのを彼女は確かに感じた。 また一匹、そのあまりに緩慢な動きで必中の腕を持つ射撃者の前へ躍り出た愚かな虫けらを閃光が撃ち抜いた。 平均的な魔力量を高圧縮することで反動による弾速と貫通力を高めたティアナの魔力弾は、その特性上ダメージ範囲が酷く小さい。 体の中心に穴を穿たれながらも原型を留めてもがき続ける蟲を無慈悲に踏み潰し、ティアナは進んでいく。 その後に荷持ちよろしくレリックのケースを抱えながらついていくスバルは、淡々としたパートナーの動きに全く未知の感情を抱いていた。 ティアは今、何を考えているんだろう―――? この予測不能の異常事態に対して、見る者に怖気を走らせる奇怪な蟲の群れを前にして、彼女はあまりにも普段通りで『在り過ぎる』 一切躊躇の無い射撃の先、蠢く謎の存在に対して何を感じているのか? スバルには全く理解が及ばなかった。 「……ティア、さっきからその赤い変なのに触ってるけど、大丈夫なの?」 蟲を倒した後で必ず出現する赤い石。 丁度魔力スフィアのようにぼんやりとした輪郭と、重量がないかのように浮遊するソレは物質ではありえない。 しかし、それ以外の説明がつかない全く未知の物でもあった。 管理局において<レッドオーブ>と仮称されるその謎の石を、ティアナは何の躊躇いも無く触れる。手で、あるいは進路上を横切って。 そしてまるで吸い込まれるように、赤い石は彼女の体の中へと消えていくのだ。 「なんだか血みたいだし、蟲の体から出てきたんでしょ? 絶対健康に良くないよ」 「問題ないわよ」 何処か的外れなスバルの警告にも、振り返ることすらせず返す。 その言葉が単なる楽観なのか、それとも実はティアナ自身その赤い石に関して何らかの情報を持っているのか。 どちらとも取れない平坦な声色だった。 その冷静さがスバルには本当に少しだけ、怖かった。 親しい人間の全く未知の部分を覗き見た時に感じる感情だった。 「―――着いたわよ」 そしてやがて、三人は先端車両に通じるドアの前に辿り着く。 ティアナが先頭に立ち、スバルがリインを守るように後方へ控えた。 これまでの経験、流れから推測し、三人はほとんど確信のように感じていた。 このドアの先で<敵>が待っている―――。 「……用意はいい?」 「うん、レリックと曹長の護衛は任せて」 「わたしのことは気にしないで下さいです」 ティアナは二人の顔をそれぞれ一瞥し、クロスミラージュを握ったままその銃口で開閉装置のスイッチへ手を伸ばした。 ドアの向こうで息を潜める敵の姿を幻視し、一呼吸置いて―――すぐさま体を横に倒した。 コンマの差で、巨大な拳がドアを突き破り、ティアナの頭があった場所を薙ぎ払う。 「ティア!?」 「下がって!」 傍で見ていたスバルよりもティアナの方が動揺は少なかった。 体を捻った無理な姿勢で、ドア越しにすぐさま撃ちまくる。着弾を示すように、突き出た腕が痙攣のように何度も震えた。 世にも恐ろしい叫び声が響き渡る。 それは痛みに対する苦悶のようでもあり、怒りのようでもあった。 「どうやら、害虫駆除ほど簡単にはいかないようね」 獣のような雄叫びに、蟲以外の<悪魔>の存在を確かめたティアナがドアから距離を取りながら不敵に笑う。 その笑みは普段の真面目な少女が見せる悪戯ッ気を含んだ皮肉交じりのそれではない。薄暗い感情が浮かび上がらせた冷笑だ。 その裏の顔を、背後のスバルが見れなかったことは幸運だった。 更なる幸運は、スバルが何か行動するよりも早く目の前のドアがブチ破られたことだった。 貫いた腕でドアの淵を掴み、紙細工のように引き剥がすと、その腕の主の全貌が明らかになった。 2メートルを超え、天井に頭が着きそうな全長を誇る姿は山羊と人間を掛け合わせた禍々しいもの。 然る場所では<ゴートリング>と呼称される、以前ダンテが対峙した悪魔の亜種だった。 『ニンゲンガ! 傷、傷ツケタ! ニンゲンガ我ラ二傷ツケタ!!』 その化け物は人語を解して自らの憎悪を露わにした。 スバルとリイン、その超常的な存在の登場に加え、発せられた言葉を受けて驚愕の極みに達している。 ただ一人、ティアナだけが笑っていた。 「喋れるのね……でもあんまり頭は良くないみたい。筋肉以外にもちゃんと詰まってるの?」 嘲るようにして肩を竦めて見せる。 完全な嘲笑。人智を超えた闇の存在に対して、ティアナが抱いているのは不快感とそこから来る敵意だけだった。 人外は怒り狂って咆哮する。車両全体が震えるような奈落から、響く怒号。 『ニンゲンガ! ニンゲンガァァッ!!』 「うっさいのよ、人間で悪い? この―――<悪魔>が!」 ティアナが応える感情もまた、怒り。 互いの存在をこの世から抹殺する為に、両者は行動を開始した。 自身のウエストほどもある豪腕が唸りを上げて迫る。ハンマーのような左ストレートをティアナは前転する形で進みながら回避した。 素早いローリングで巨体の股下を潜り抜ける。 敵の背後を取ると、クロスミラージュを蹄を持った足に向けて雨のように撃ち下ろした。 魔力弾が腿の肉を食い千切り、世にもおぞましい山羊の悲鳴が響き渡る。 巨体が崩れ落ちた。それでも苦痛を憎悪に変える闇の権化は体を捻って背後を振り返る。 迎えたのは旋風のような回し蹴り。 格闘技の基礎はなく、実戦の中で『必要だから覚えた動作』といった感じの荒削りな一撃は、山羊の鼻っ柱を叩き潰して体を大きく仰け反らせた。 「あんた達<悪魔>を狩る人間もいるのよ」 背中から転倒したゴートリングを見下ろし、額に照準を合わせたティアナ。 両腕には放電にも似た現象を起こすほどの魔力がチャージされていた。 攻撃の威力を半減する巨体であっても、このチャージショットを受ければ肉が弾け、大きく抉られる。 勝利への喜悦も余裕も持たず、ティアナはただ怒りを持って引き金を引こうとした。 『―――ッギァアアアッ!』 断末魔にも似た咆哮。しかし、それは<悪魔>の反撃を意味していた。 足と腰の筋肉、二つを合わせたバネのような瞬発力に、ゴートリングの蹄が跳ね上がった。 「く……っ!?」 変則的なサマーソルトキック。まともに受ければ肋骨を砕いて心臓にまで到達する一撃がティアナに向かって伸びる。 咄嗟にクロスしてガードに回した両腕がメキメキと耳障りな軋みを上げた。 (バリアジャケットの衝撃緩和が気休めにしかなってない……っ!) ティアナは悪態で激痛を誤魔化した。 体が真上に浮く。浮遊感など感じない、ただ衝撃だけが走り抜ける。 両腕をそのまま肩越しに背後へ向け、本来は目の前の敵にぶち込むはずだった弾丸を背後に迫る天井へ向けて解き放った。 強烈な弾雨が屋根をズタズタに引き裂き、崩落するそれを突き破ってティアナは車両の外まで吹き飛ばされた。 両腕には激痛が走り、全身に行き渡った衝撃が内臓を撹拌する。 空中に放り上げられながらも、天井とのプレスにならなかっただけマシだった。 ティアナの体はそのまま車両から投げ出される軌道を取っている。 「ティアァァーッ!!」 スバルの悲痛な声は、しかしもうティアナの耳には届かなかった。 もうこの世界には、彼女と彼女の敵の二つしか存在しない。 脳内から吹き出すアドレナリンが痛みと感覚を麻痺させる。車上へと跳び出す敵の姿が改めて自分の戦意を滾らせてくれる。 久しくなかった緊張感。 久しく奮わせていなかったこの気持ち。 「<悪魔>―――お前らを、この世から一匹残らず消してやる!」 兄の命を奪い、穢した悪しき存在達に対する殺意が、ティアナの中で完全に蘇った。 《Air Hike》 クロスミラージュを使うことで完全な形となった魔法が発動する。 足元に発生した魔方陣の足場を蹴りつけ、軌道を変更して車上へとティアナは着地した。 カートリッジ、ロード。魔力が漲る感覚を覚えながら、眼前を睨み据える。 『ガァアアアアアッ!!』 強靭な脚力を駆使して、ゴートリングが素早く襲い掛かってきた。 『右腕だけ』に魔力を集中させる。しかし、当然のようにチャージは迎撃に間に合わない。 鋭い爪を使った覆い被さるような攻撃。後方に跳んでティアナはそれから逃れる。 空振りに終わった攻撃の後、悔しげに唸りながら敵は再び脚に力を込め、視界を上げた時自分に向けられた銃口を捉えて素早く防御の姿勢を取った。 筋肉の鎧を貫く魔力弾の貫通力は凄まじいが、一発一発は致命傷に成り得ない。そう判断していた。 しかし―――。 《Snatch》 クロスミラージュが発したものは銃声ではなく電子音声だった。 魔力弾の代わりに、銃身に並んだ上下の銃口のうち下の方から魔力糸が射出された。 アンカーショットをワイヤーから魔力の糸に置き換えたそれは、身構えていた敵を嘲笑うように痛みもダメージも無く横腹へ命中する。 「Catch this!」 ティアナは会心の笑みを浮かべた。さあ、オーラスだ。 次の瞬間、魔力糸が巻き戻るように縮み始め、不意を突かれたゴートリングの巨体が一気に引き寄せられた。 アンカーショットは本来、移動補助用に搭載された機能だが、攻撃的なスキルを重視するティアナが単純な使い方をするはずもない。 眼前まで一瞬で引き寄せられた敵。無理な力が働き、バランスまで崩した無防備な下腹にティアナは右腕を突きつける。 その瞬間まで、ただ延々と魔力を練り上げ、集束させていた右腕とクロスミラージュは、オレンジ色から赤色へとより濃密に変化した魔力光を宿していた。 ―――魔導師が生来持つ魔力の色。それが変化することの意味を、今はまだティアナ自身も気付かない。 通常のチャージショットより更に一歩危険な領域へ踏み込んだ、暴走染みた魔力の集束。 回避のしようがないゼロ距離で、ティアナはついにそれを解き放った。 炎のような殺意と共に。 「―――死ね!」 爆裂。 雷鳴のような音と激しい銃火が幾度も瞬き、その度に小柄なティアナの体に覆い被さるような巨躯が痙攣した。 もはや砲弾とも表現出来る重い銃撃がゴートリングの体内に潜り込み、ついに背中を突き破って空中へと消えていく。 全ての弾丸を撃ち終えた時、敵の体からあらゆる力が抜け落ちていった。 倒れこんでくる巨体から慌てて抜け出し、距離を取る。 幾つもの穴を穿った体は完全に倒れ伏した。 警戒は解かず、クロスミラージュを向けたまま見下ろすティアナの視界で敵の体が砂のように崩れて朽ちていった。 跡形も残さない、これが<悪魔>の死だ。 「……形も、時間も、場所も関係なく現れては消える」 かつては幾度も見ていた。 魔導師としての生き方を始めて、久しく忘れていた。 この光景が、ティアナの中に眠っていた『執務官になる』という夢とは別の、もう一つの誓いを鮮明に思い起こさせている。 やがて<悪魔>の死骸が完全に消え去った時、残るものは奴らの血の結晶だけ―――。 より強力な<悪魔>ほど、死す時に多くの<血>を残す。 それが人の身に及ぼす影響を、ティアナはぼんやりと理解していた。 高位の<悪魔>を倒したからなのか、あるいは第三者の意思が介入したのか、車両を覆っていた瘴気が霧散していくのを感じる。 <悪魔>の結界も解除されるはずだ。蟲も消えたのなら、車両のコントロールとて簡単に取り戻せるだろう。 しかし、戦闘の終結した空気の中で、ティアナの瞳に安堵は浮かばない。 「無限に現れるというなら、私は無限に倒すだけよ」 悲壮感すらなく、ただ固い決意を宿した独白が流れた。 その為に、力が要る。 ティアナは無造作に手を伸ばし、目の前に漂う<レッドオーブ>に触れた。 途端、それらは一つ残らずティアナの肉体に吸収される。 自分の体に悪魔の血肉が入り込むことへ嫌悪感も見せず、ただ淡々と受け入れる。それがもたらす結果と共に。 ―――しかし果たして、その時ティアナは本当に冷静だったか? 常に冷静さを忘れず、思考し、状況に対応する。 それがティアナを知る、スバルを代表とした多くの人間の評価だ。 だがこの時。<悪魔>と対峙した時。自ら死地に飛び込み、打ち滅ぼすことに全てを注いでいたティアナのあまりに強い意志は―――果たして冷静と呼べるものだったか? ティアナ自身にも、それは分からない。 ただ一つ確かなことは、原初の誓い。 兄の亡骸を前に、夢という名の未来と仇という名の過去へ向けて誓ったこと。 「……兄さんの、安らかな眠りの為に」 悪魔、死すべし―――。 to be continued…> <ティアナの現時点でのステータス> アクションスタイル:ガンスリンガーLv1→ LEVEL UP! →Lv2 NEW WEAPON! <クロスミラージュ> 習得スキル <トゥーサムタイム>…二方向へ同時に射撃を行う。真後ろにも対応可能。 <ラピッドショット>…クロスミラージュの性能によって、連射性と威力が若干向上した。 <エアハイク>…デバイスの補助により完成形となった。瞬間的な足場を作り、シングルアクションで空中での機動を可能にする。 <チャージショット(Lv1)>…魔力をデバイスと腕に溜めることで、強力な魔力弾を放つ。連続して数発撃つことも可能。 <チャージショット(Lv2)>…新しいデバイスの負荷耐性を考慮し、チャージ時間を増やすことで威力が倍近く向上した。 <チャージショット(ワンハンド)>…片腕だけで行うチャージショット。火力は低下するが、片腕が空くので別のアクションも同時に行える。魔力操作に優れたティアナのみのスキル。 <スナッチ>…魔力糸によるワイヤーショット。高所への移動手段や、物体や敵に使用すれば手元に引き寄せることも出来る。 <???>…新デバイス入手により、より多くのスキルを習得できる可能性を得た。更なる経験とオーブを手にせよ。 訓練により補助系魔法<フェイクシルエット>を習得間際であるが、戦闘スタイルの変化の為、ティアナが想定する補助性能は低めである。 前へ 目次へ 次へ
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「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」 公式サイト 公開間情報 東京 新宿ミラノ/渋谷東急/シネ・リーブル池袋 神奈川 109シネマズ川崎/109シネマズMM横浜 埼玉 MOVIXさいたま 栃木 MOVIX宇都宮 茨城 シネプレックス水戸 群馬 109シネマズ高崎 北海道 スガイシネプレックス札幌劇場 宮城 MOVIX仙台 愛知 109シネマズ名古屋 京都 MOVIX京都 大阪 シネ・リーブル梅田 兵庫 シネ・リーブル神戸 広島 109シネマズ広島 福岡 シネ・リーブル博多駅 ※2009年8月17日現在 ここに入ってない地域の人は、まだ時間があるから追加されるまでゆっくり待ちましょう。
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2012-03-23 16 33 03 (Fri) 魔法少女リリカルなのはStrikerS 制作 セブン・アークス - 放送局 開始 時間 フレームレート 画質 【--】 TX 2012-01-05(火) 26 15- - - SubTitle Source Size crf fps time memo #01 「空への翼」 TX 412MB 21 8.53 fps 1h18m04s ED60i #02 「機動六課」 TX 321MB 21 8.64 fps 1h17m03s ED60i #03 「集結」 TX 339MB 21 8.64 fps 1h17m05s ED60i #04 「ファースト・アラート」 TX 333MB 21 8.64 fps 1h17m01s ED60i #05 「星と雷」 TX 527MB 21 8.24 fps 1h20m52s ED60i #06 「進展」 TX 332MB 21 8.68 fps 1h16m44s ED60i #07 「ホテル・アグスタ」 TX 369MB 21 8.58 fps 1h17m38s ED60i #08 「願い、ふたりで」 TX 347MB 21 8.60 fps 1h17m27s ED60i #09 「たいせつなこと」 TX 319MB 21 8.36 fps 1h19m40s ED60i #10 「機動六課のある休日(前編)」 TX 291MB 21 8.68 fps 1h16m44s ED60i #11 「機動六課のある休日(後編)」 TX 369MB 21 8.37 fps 1h28m32s ED60i #12 「ナンバーズ」 TX 373MB 21 8.57 fps 1h17m42s ED60i #13 「命の理由」 - - - - - - #14 「Mothers&children」 - - - - - - #15 「Sisters&Daughters」 - - - - - - #16 「その日、機動六課(前編)」 - - - - - - #17 「その日、機動六課(後編)」 - - - - - - #18 「翼、ふたたび」 - - - - - - #19 「ゆりかご」 - - - - - - #20 「無限の欲望」 - - - - - - #21 「決戦」 - - - - - - #22 「Pain to Pain」 - - - - - - #23 「Stars Strike」 - - - - - - #24 「雷光」 - - - - - - #25 「ファイナル・リミット」 - - - - - - #26 「約束の空へ」 - - - - - - -#01 「空への翼」 Start:12 13 41.57 "--------------------------------------------------------------------------------------------" 入力avs NanohaStrikers-TX01.avs 出力mp4 "魔法少女リリカルなのはStrikerS 01 「空への翼」.mp4" avs [info] 1280x720p 0 0 @ 30000/1001 fps (cfr) x264 [info] using cpu capabilities MMX2 SSE2Fast SSSE3 FastShuffle SSE4.1 Cache64 x264 [info] profile High, level 4.1 x264 [info] frame I 421 Avg QP 17.49 size 74334 PSNR Mean Y 48.72 U 50.12 V 50.12 Avg 49.11 Global 48.90 x264 [info] frame P 11374 Avg QP 21.64 size 17851 PSNR Mean Y 45.61 U 48.34 V 48.39 Avg 46.30 Global 45.89 x264 [info] frame B 28133 Avg QP 24.59 size 5711 PSNR Mean Y 44.93 U 48.02 V 48.15 Avg 45.70 Global 45.19 x264 [info] consecutive B-frames 4.5% 6.4% 11.5% 49.8% 27.8% x264 [info] mb I I16..4 29.2% 37.7% 33.1% x264 [info] mb P I16..4 15.5% 0.0% 7.4% P16..4 22.8% 8.6% 4.5% 0.0% 0.0% skip 41.2% 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