約 840,487 件
https://w.atwiki.jp/edh-commander/pages/175.html
東屋のエルフ/Arbor Elf (緑) クリーチャー — エルフ(Elf) ドルイド(Druid) (T):森(Forest)1つを対象とし、それをアンタップする。 1/1 引用元 Wisdom Guild 評価 森をアンタップできるシステムクリーチャー。 正確にはマナ・クリーチャーでは無いが、森をアンタップすることでマナ加速ができる。 元祖マナ・クリーチャーであるラノワールのエルフ(Llanowar Elves)と比べ、アンタップできる土地がないとマナ加速ができない点が大きな違い。もし東屋のエルフをデッキに採用するならば、森カードの枚数を多めにするか、フェッチランドから森を持って来られるようにするなどの工夫が欲しい。 アンタップする森は基本土地の森でなくとも良いので、デュアルランドやショックランドもアンタップできる。 繁茂(Wild Growth)や楽園の拡散(Utopia Sprawl)のような土地につけるオーラとは相性がいい。森にそれらをつけると、東屋のエルフが稼ぐマナも増えていく。 ハルマゲドンなどで土地を破壊されてしまうとマナが出ないのが玉に瑕。そういった場面では単体でマナの出せるラノワールのエルフなどの方が有効に働くだろう。 他のプレイヤーのコントロールする森もアンタップすることができる。交渉次第ではうまく使えるかもしれない。 類似カード ラノワールのエルフ(Llanowar Elves) 旅するサテュロス(Voyaging Satyr) アルゴスの古老(Argothian Elder) クローサの修復者(Krosan Restorer) 燭台の大魔術師(Magus of the Candelabra) キオーラの追随者(Kiora s Follower 相性の良いカード 繁茂(Wild Growth) 楽園の拡散(Utopia Sprawl) 肥沃な大地(Fertile Ground) はびこり(Overgrowth) エルフの案内(Elvish Guidance) 夜明けの反射(Dawn s Reflection) 市場の祝祭(Market Festival)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6788.html
前ページゼロのエルクゥ 「んん……」 浮かび上がるように、意識が覚醒していく。 目覚めの感覚。それも、満ち足りきった、至高の眠りからの、だ。 「…………」 パチリと目を開くと、見慣れた木目の天井がある。……自分、柏木耕一に与えられた部屋の、ではないが。 窓から差し込む夏の陽射しに目を細めるが、耳に入ってくる空調の駆動音に、暑さは覚えなかった。 「すー……すー……」 すぐ隣に、小さく息づく体温を感じる。体が動かないように気をつけながら首だけを向けると、濡れ羽のように光る黒髪を湛えた頭がちょこんと肩に乗っかっていた。 最愛の恋人である、柏木楓だった。胸のあたりに規則的な呼吸の吐息が直接降りかかって、くすぐったい。 一時は、二度と感じる事が出来ないかもしれないと思った幸せな重みを噛みしめながら、耕一はその髪を軽く指で梳いた。 「んっ、んん……」 さらさらと、上質の絹のように滑らかな髪が指の間を零れ落ちていく。楓は軽く身じろぎをするが、目覚める気配はなかった。 ―――昨晩は3回、いや、4回だっけ? 俺もよくやるよな……。 喉から苦笑が漏れないように、耕一は口元だけを歪めた。 掛け布団の裾から、白く細い肩と、その下へ続く滑らかな曲線が垣間見える。その淡雪のようにきめ細やかな肌には、首筋から鎖骨にかけて赤い斑点がいくつも浮き出ていて、昨夜の逢瀬の激しさを物語っていた。 「……風呂にでも入ってくるか」 4回戦目を終えて倒れるように眠る前に、何とかウェットティッシュで処理はしたものの……やはり違和感は拭えない。 具体的には下腹部の辺りがねっとりと。上半身もごわごわと汗ぼったい。冷房が効いているとはいえ、真夏に激しい運動をすれば汗もかくというものだろう。 すがりつくように眠っている楓を起こさないように、そっと身体を抜く。とすん、と枕に楓の頭を預けると、強張っていた体がようやく開放された。 ―――希望を言うなら、このまま起こして一緒に入りたいところだったが。 それは、就寝前のバトル回数が6回戦だった事を除いて今とほぼ同じ状況であった初日にやらかした挙句に風呂場で7回目のハッスルに及んだ為、梓に大目玉を喰らっている。自重しておいた方がいいだろう。 「……耕一さん」 「あれ、起こしちゃったか」 ベッドの足下に散乱していた2人分の服をまとめて、とりあえず自分の分を身につけていると、いつの間にか起きていた楓が、そっとシャツの裾を引っ張っていた。 「どこに、行くんですか」 「ああ、お風呂入っちゃおうかとね。楓ちゃん起きちゃったなら、先に入ってくるかい? こういうのは女の子が先だよな」 「……一緒がいいです」 楓の指に力が篭り、ぎゅう、とシャツの裾に皺が寄る。 「い、いや、そうしたいのは山々だけど、ほら、梓がうるさいだろ?」 「……一緒が、いいです」 「……むうぅ」 構ってもらえない仔猫のような表情で、楓の眉がとろんと下がった。彼女に猫の耳と尻尾があったのなら、同じように力なく垂れている事だろう。 ―――これが、普段は滅多にわがままを言う事のない楓ちゃんが勇気を振り絞ってしてくれたおねだりだ、と言う事であるならば、万難を排してでも叶えてあげたいところなのだが……。 「大丈夫だよ。もう異世界に行っちゃったりなんかしないから、さ」 「…………」 「……ずっと一緒だ。もし今度があっても、楓ちゃんを置いていったりしない。な?」 「……はい」 肩に手を置いて言い聞かせるように頭を撫でると、ようやくするりと手が離れる。耕一は、苦笑と共に軽く溜め息をついた。 楓の甘えは、不安から来るものだった。耕一がまた遠くに行ってしまうのではないか、と。 それで、四六時中一緒に居たがり、身体の繋がりを求めてくる。 なんとかそれを解消しようと、耕一も何も言わずそれを受け入れているのだが、結果は芳しくなかった。このまま夏休みが明けてしまったらと思うと気が重い。 「……ふぅ」 原因はわかっている。耕一自身、もう絶対にあんな事は無いと、心の底から言い切れないからだ。 心のシグナルを読み取れる楓を相手に、どれほど隠そうとも、本当の本音ではない言葉にはノイズが混じってしまう。 それは、『世の中に絶対なんてない』と言うような一般論ではない。 ―――何か、やり残した事がある。俺があの世界に呼ばれた理由を、解決しきっていない。その為に、また召喚されるかもしれない。 何となく、耕一はそんな引っ掛かりを覚えながら、日々を過ごしていた。そして、その為に楓の不安も消えない。 悪循環、とまでは言わないが、どこか、進まない時間の中を停滞しているような感覚だった。 「さ、それじゃ、一緒にお風呂に行こうか。……梓に見つからないように、ね」 「はいっ!」 ……まあ、雄としての本能は、そんな内面の悩みとは別である。 § 「はい、耕一お兄ちゃん」 「ありがと、初音ちゃん」 こんもりとご飯の盛られた二杯目の茶碗を受け取って、耕一はしゃもじを握る初音に笑いかけた。 「耕一さん、よく食べますね」 「いやぁ、久々の和食ですから……自然と箸が進んじゃって」 正面では、千鶴が楚々と食事を進めながら微笑みを浮かべている。 耕一が目を覚ましてから、3日が経った。気絶したまま戻ってきて、ほぼ1日中眠っていたから、帰ってきてからは4日目になる。 異世界ハルケギニアで過ごした月日は、こちらでも同じように経過していた。約3週間とちょっと……ハルケギニアの一週間が8日であったから、地球の暦ではほぼ1ヶ月。 一般的な日本人が海外旅行をして白米を恋しく思うには、十分な時間だ。 「ふん。『居候、三杯目にはそっと出し』って言葉も知らない礼儀知らずなだけだろ?」 「いやぁ、あっちにいる時は、梓の肉じゃがが恋しくてなぁ」 「な、何言ってんだよ。適当言ってるんじゃないっての」 「いやホントに。マルトーさんっていう魔法学院のコックの人の料理はすげーうまかったんだけど、何しろ洋食しかないしさ。米はあったけど雑穀扱いで、サラダとかオートミールとかにちょっとだけって感じだし。しょうゆとダシの肉じゃがが本気でうまいよ、うんうん」 「……ま、まあ、このぐらいなら……いつだって、つ、作ってやるけどさ……」 憎まれ口を叩いた梓は、まっすぐに料理を誉められたのが照れ臭いのか、もそもそと米ばかりを咀嚼している。 「…………」 そして楓は……耕一のすぐ隣にいた。 特に急いでいる様子はないのに、その前の茶碗や皿の中身は凄い勢いで消えていく……いつも通りの姿だ。 柏木家の日曜日の昼食は、ぎこちないながらも、一月前までの団欒の風景を取り戻していた。 「ふふっ。耕一さんも帰ってきてくれたし、楓も元気になってくれたし、よかったわ」 「いや、あれは元気過ぎだろ……その、色んな意味で……ゴニョゴニョ」 「あ、梓。昼間からそういう事は……」 「ご、ごめん。千鶴姉……は、ははは……」 梓の独り言に反応してしまった千鶴の、何とも言えない複雑な視線から誤魔化すように顔をそむけた梓が、耕一を睨みつける。 耕一はそしらぬ顔で食事を続けているが、その額には一筋の冷や汗が伝っていた。何故か隣にいる楓も、頬がうっすらと赤くなっている。 柏木四姉妹。美人揃いでありながら、あまり男関係の縁はないのであった。 「……はぁ。まあその……す、するなとは言わないけどさ。もう少し周りの人間の事も考えろよな。楓だって、もうすぐ学校始まるんだし」 姉妹の中で、ある種一番潔癖で初心な梓だが、なぜかその態度は煮え切らなかった。 「……善処するよ」 求めてきているのは楓の方からであるので、負い目のある耕一にはどうしようもない。とはいえ、こういう場面で女の子に責任を転嫁するのは男としてどうか、というぐらいの矜持はあるので、曖昧に頷いておいた。 風呂場で反響するアレな声が響き渡る中、近くのキッチンで洗い物をする梓の気持ちを想像すれば、性欲塗れのサルだと思われておくぐらいどうということはない。たぶん。きっと。 「楓も、嫌だったら嫌って言いなよ。受験は……まあ、大丈夫だろうけどさ」 楓はほのかに赤らんだ顔でコクン、と頷いただけで、氷の入った麦茶のグラスをくっと呷った。茶碗も皿も綺麗に空である。 千鶴も、どこか赤い顔をしながら機械的に箸を動かしていた。 召喚されたのは夏期休暇が始まってすぐの事だったので、幸いな事に、大学の長い夏休みはまだ半分近く残っている。 楓の高校の方もギリギリ大丈夫だったが、耕一がいなくなって塞ぎ込んでいた期間を含めて、受験の為の補修などは丸々出られなかったと耕一は聞いていた。 それでいて、帰ってくるなり男と部屋に篭って爛れた生活をしているものだから、ついに昨日、千鶴さんや梓に苦言を呈されたのだ。 それを楓は、夏休み前に受けた模擬試験での、某日本最高学府、最難関である理科Ⅲ類のA判定結果を見せて、その全てを撃墜した。 ……特に、地元の二流チョイ上あたりの大学に体育推薦で入った梓には深刻なダメージだったようで、勉学関係については強く出れなくなっているのだった。 「…………」 「……?」 そんな微妙に重苦しい空気の中、耕一がそれを見咎めたのは、本当に偶然だった。 いや、生々しい話題に触れないよう、引きつるように息苦しい雰囲気を保った食卓の中で……そこが、どこか糸の切れてしまったような空気だったからかもしれない。 「……初音ちゃん?」 「……えっ?」 無言である事は皆と変わらないものの、黙々と箸を進める初音の纏っている空気は、明らかに周囲と異なっていた。 「なんだか元気ないみたいだけど、どうかした?」 「う、ううん。そんな事ないよ。何でもないの」 「……そっか」 えへへ、と愛想笑いをする初音。 天使の笑顔、にはほど遠いそれに、耕一は場を流しつつも、疑念を隠せない。 「…………」 初音の胸元に下がる不思議な形のペンダントが、どこか寂しげな光を放っていた。 § 「……暇だな」 昼食を終えて、耕一は自分の部屋で天井の染みの数を数えていた。 楓は渋々とした様子ながら、学校の受験対策講習に出かけていった。千鶴は鶴来屋に呼ばれて出ていき、梓は友人と遊びに行って、初音は自室で宿題を片付けている。 パチンコ、ゲーセン、本屋……いつもならば浮かぶそんな暇潰しに出掛ける気も起きず、耕一は開け放たれた純日本家屋を通り抜ける涼風を感じながら、大の字に寝転がっていた。 「…………」 左手を上げ、透かしてみる。 その甲には何もない。刻まれていたはずの使い魔のルーンは、跡形もなく消え失せている。 ふいと視線をずらすと、開かれた敷居から、夏の陽射しも眩い外が見える。 そこから見えていたはずの、青々と緑を茂らせていた裏山が、ごっそりと消えていた。 あの日。耕一達がこちらの世界へ帰ってきた日。 まるでその代わりになったかのように、山一つ丸ごと、忽然と姿を消してしまったのだという。 豊かな水量を誇っていた河や、それを調整していた水門などがあった山が吹き飛んでしまったので、隆山、引いては行政にも多大な影響力を持つ鶴来屋はてんやわんやであるらしい。日曜日の今日に千鶴さんが呼び出されたのも、その関係であるとか。 「本当に、ハルケギニアに飛んでっちまったのかもしれないな」 喉の渇きを覚え、ゆるゆると立ち上がりながら……一ヶ月前、召喚のゲートに引きずり込まれた時の感覚を思い出して、耕一は苦笑する。 頭の中に浮かんでいたのは、某国民的猫型ロボットのお腹のポケットにしゅるしゅると吸い込まれていくピンク色のドアだった。 ヨーロッパにそっくり似ていて、しかし魔法の存在する異世界ハルケギニアに召喚され、使い魔となった事。そこはトリステイン王国のトリステイン魔法学院。 そこに住む人々。ルイズ、キュルケ、タバサ、ギーシュ。喋る剣のデルフリンガー。マルトー料理長に、シエスタを始めとしたメイド達。自分の事を観察していた只者では無さそうなハゲ頭のコルベールに、一癖も二癖もありそうな学院長のオスマン。 そして、結局相見えることのなかった、同じ地球人の迷い人。 耕一がトリステイン魔法学院で過ごした3週間余りの出来事は、概ね姉妹達の知るところとなっていた。 ……ちょっと都合の悪いところは、ところどころ隠したりしているが。(契約の時のキスとか、キュルケのアプローチとか、アルビオンでの戦いとか) 『そういう映画、ありましたよね。何とかと賢者の石っていう』 千鶴さんのその言葉が、話を聞き終わった彼女達の素直な感想だったとまとめてしまっていいだろう。その受け止め方は異なるが。 楓ちゃんが同じ事を言ってくれなければ、『そんな嘘くせぇ話で誤魔化されると思うなこのスカタン!』と激昂した梓の鉄拳に沈んでいたところだ。 「……あれ?」 台所へ向かう途中、耕一は思わず声をあげてしまった。 「……耕一お兄ちゃん?」 「初音ちゃん」 縁側に、ぽつんと初音が座り込んでいた。 「どうしたの? 宿題にでも行き詰まった?」 「うん……そんな感じ」 耕一がその隣に腰を下ろすと、初音は少しだけ顔を上げて、薄く微笑んだ。 「俺でわかるかな。あんま自信ないけど、よかったら見てあげようか?」 「……うん」 頷いて、そのまま初音の視線は下を向いてしまう。 ……やっぱ宿題なんかじゃないか、と耕一はぽりぽり頭を掻いた。 「昼の時から様子が変だったけど、どうかしたのかい?」 「……そう見えた?」 思いっきり。みんな気付いてたんじゃないかな。と耕一が苦笑すると、初音もふっと肩から力を抜いて苦笑を漏らした。 「ほんとにね、大した事じゃないの。別に何かあったっていうわけでもなくて……」 初音はそっと手を合わせる。その中には、昼にも見た、不思議な形のペンダントが握りこまれていた。 何の宝石だろうか、青く透き通っている中に白くマーブルが入っている滑らかな材質で、動物の牙か爪を模したように丸く尖っている。女の子向けのアクセサリーというよりは、民芸品のお守りとか魔除けと言った方がしっくりくる趣のものだ。 「何か、大切な物がいつの間にかなくなっちゃったような……そんな気がするだけなの。それが何なのかもわからないし……おかしいよね。耕一お兄ちゃんと楓お姉ちゃんが無事に帰ってきたっていうのにね」 えへへ、と眉を下げて笑うその表情には―――とても、見覚えがあった。 それは、とても綺麗な、諦め。 『いいのです。貴方様の心は、永劫に姉上の物……私を愛してくれとは申しません。ただ……ただ、傍に置いてさえくだされば、それで……』 「リ、ネット―――!」 「きゃっ!」 意思とは無関係に溢れ出す記憶に、毒を吐き出すかように喉を震わせる。 「ど、どうしたの、耕一お兄ちゃん?」 「……いや」 ジンジンと、脳の奥が熱く火照っている。 それとは逆に―――。 「初音ちゃん、それ」 「えっ? これ? って、わっ? ひ、光ってるっ!?」 耕一が初音のネックレスを指差すと、それは青く澄んだ光を湛えていた。 まるで蛍か何かの生体の光のように、ゆっくりと明滅する。 「あっ……これ、なに……?」 驚きに目を丸くしていた初音が、弾かれたように空を見上げた。 「えっ? 来る……? ヨーク……ヨークの、子供? 何これ、頭の中に声が……っ!」 「初音ちゃん!」 頭を抑え、うわ言のように何事かを口にする初音の肩を、耕一はそっと抱く。 「来るっ!」 初音が叫ぶ。 その視線の先、空の彼方には……巨大な何かが、此方に向かって急降下してきていた。 「いいいっ!?」 超巨大な隕石のように見えるその茶色の飛翔体は、瞬く間に空一杯を覆うほどに膨れ上がる。 対抗出来るわけがないにしても、何もしないまま潰されるよりは、と鬼の力を全身に巡らせた刹那―――世界が純白に染まった。 『我の運命に従いし、"使い魔"を―――召喚せよ』 意識まで白く塗り潰される瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。 前ページゼロのエルクゥ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4387.html
前ページ次ページゼロのエルクゥ まだ日の昇りきらぬ朝もやの中、トリステイン魔法学院の正門には、2つの人影があった。 一つは、学院の制服姿に乗馬用のブーツを履き、長い桃色の髪を朝の冷涼な風に揺らす女生徒。 一つは、かなり長めの長剣を腰に差し、見慣れぬ異国風の服―――Tシャツにジーンズ―――を身に着けた、背の高い男。 その二人、ルイズと耕一は、緊張を隠せない面持ちで、馬に馬具を取り付けていた。 「アルビオンまではどれくらいかかるんだ?」 「そうね……港町のラ・ロシェールまで馬で2日。そこから船で1日ってところね。目的地のニューカッスル城は、アルビオンの港ロサイスから……3日ぐらいかかるのかしら。慣れない道だから、少し余計に見ておいたほうがいいかも」 「一週間か……」 「ニューカッスル城への侵攻が始まってしまったらもう入れないから、急がなきゃいけないわ」 ぶるるるる、と、鞍を背負い、轡を噛んだ馬がいなないた。 「お姫さまの頼んだ応援ってのは来るのかな」 「駄目だったら使いをよこすと言っていらしたから……しばらく待ちましょう」 馬の首元を優しく撫でながら、ルイズはもやの向こうに浮かぶアルビオンを見やるように目を細めた。 ―――ばさぁっ 幾ばくも経たない間に、その背後から、大きく風が舞う音が響き渡った。 振り返ると、ちょうど、鷲の頭と翼に獅子の体躯を持った魔獣、グリフォンが翼を閉じ、地に降り立つところだった。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……で、間違いないようだね?」 そのグリフォンに跨っていた男が、乗騎と同じグリフォンの紋様を縫い付けたマントと、その羽らしき飾りを結わえた羽帽子を翻しながら、軽やかに地に降り立った。 「あ、あなたは……わ、ワルドさま!?」 「ああ、覚えていてくれたのか! ルイズ! 僕の小さなルイズ!」 まるで演劇のように大仰な仕草で再会を喜ぶ男。 耕一はそんなトリステイン貴族の悪癖にはもう慣れてしまって、一つため息をついただけだった。 「あなたが、今回の応援の人ですか?」 「君は……ああ、ルイズの使い魔だね。王女陛下から話は伺っている。僕の小さなルイズは、亜人を使い魔にしたのだとね」 男は、マントを内に畳んで帽子を取り、優雅に一礼をしてみせた。 「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。トリステイン魔法衛士隊、グリフォン隊の隊長を務めさせてもらっている。此度の任務に同行するよう、王女陛下より仰せつかった」 「どうも、コーイチ・カシワギです。ルイズちゃんの使い魔をやらしてもらってます」 「よろしく頼むよ、ミスタ・カシワギ」 「こちらこそ。ワルドさん」 耕一とワルドは、長身の男同士、がっしりとした握手を交わした。 「ワルドさんは、ルイズちゃんと知り合いなんですか?」 「ああ。恥ずかしながら、婚約者でね」 「へ」 ―――さすがに、慣れたはずだった耕一の思考も追いつかなかった。 「ルイズの実家、ヴァリエール公爵家と、僕の実家、ワルド子爵家は、その領地を接しているのさ。まだ僕が若造だった頃に両親が死んでしまって領地を相続する事になった時、彼女のお父上にはとてもお世話になったんだ。その縁でね」 「ワルドさま……」 「はは、久しぶりだね、僕のルイズ!」 ―――まあ、貴族なんだし、あのお姫さまの政略結婚じゃないけど、そういう事もあるんだろうなあ。 ワルドが、恋する乙女モードのルイズをさっと抱き上げたところで、ようやく思考が追いついた。 「相変わらず軽いね君は! まるで羽のようだよ!」 「……お恥ずかしいですわ」 なんというか、抱き合うワルドとルイズのシルエットが、そのまんま自分と楓の姿に重なって、なんとなくばつの悪い気持ちが湧いてきて冷静になってしまった、というのもあった。 つまりは、こういう事だ。 ―――俺、客観的に見るとあんな風なのかなあ。まるでロリコンだよなあ。 § 「……いやはや、亜人、というのは本当みたいだね」 休む事なく空を駆け続けるグリフォンの上から地上を見下ろしたワルドは、ここ十年は出した事のない、感嘆を通り越した呆れという感情を多分に含ませて呟いていた。 そこには、グリフォンの飛ぶ速度に付いていけそうもなかった馬を途中の駅に置き、自らの二本の足でグリフォンに付いてくる耕一の姿があった。 上半身は全くブレずに腕を組んだまま、下半身だけがものすごい高速で動いている。さらには、腰に差したインテリジェンスソードと何かを話してすらいるようだった。 「凄い使い魔を召喚したんだね、ルイズ。僕も鼻が高いよ……おっとソアラ、すまんすまん。君は僕の自慢の使い魔だよ。あんな亜人に負けはしないな。悪かった悪かった」 主人が他人の使い魔を誉めたので機嫌を悪くしたらしいグリフォンを、たてがみを撫でてなだめるワルド。 ルイズはしかし、それにも気を留めず、浮かない顔であった。 「凄い使い魔、か……」 「どうかしたのかい。なに、任務についてなら心配はいらない。僕がついてる」 思わず零した小さな呟きは、ワルドの耳には入らなかったようだった。 「ううん、なんでもない。任務については心配してないわよ。心強い応援が来てくれたから」 「はは。では、期待に応えられるよう奮闘しなければね」 最初とはずいぶんルイズの口調が違うが、婚約者に対して敬語なんてやめてくれ、というワルドの言葉に従った結果だった。 魔法が使えないとは言え、ルイズは公爵家の娘。肩肘ばった言葉ぐらいいくら続けても苦痛ではないが、特に反対する理由もなかった。 「この分なら、今日中にラ・ロシェールに着けそうだね。使い魔君がへばらなければいいが、そんな心配は無用かな?」 「そうね……」 チラリと目を向ける。相変わらず下半身だけで走っている耕一は、まだまだ余裕そうだった。事前に距離は教えておいたその上で馬を降りたのなら、きっと大丈夫という事なのだろう。 常識的な早馬なら二日かかるような道を一日で走破する自らの使い魔。金属のゴーレムをその腕一本で軽々と引き裂くその力。 確かに、それはすごい事だ。そう……『ゼロ』の自分とは大違いの。 「なんで、『ゼロ』の私にコーイチが呼ばれたのかしらね……」 それは、ここ最近、ずっとルイズの頭を悩ませている考えだった。 『実は私には隠れた才能が眠っているのかも』というポジティブな考えは、毎夜の練習の失敗によって、心の隅の隅に追いやられてしまっていた。希望を抱いてしまっただけ、失望も深かった。 スクウェア・メイジのワルドでさえ手放しで耕一を誉めているのを聞いて、またぞろそれが首をもたげてきたのであった。 「ルイズ?」 「なんでもないわ。急ぎましょう」 頭を振って、それを追い出した。今はそんな事を考えている場合ではない。任務に集中しなければ。 ワルドは、まっすぐ前を向いたルイズに、それまでの柔和な目とは違う、鋭く光る―――まさにその乗騎と同じ猛禽のような視線を向けると、無言でグリフォンの速度を上げた。 § 「やれやれ、そろそろみたいだな。疲れたァ」 「……それで済んじまう相棒は、やっぱとんでもねぇよなあ」 朝から一日走り続け、夕闇が世界に落ちる頃。 峡谷の向こうに街らしき建物群が現れ、上空を飛ぶグリフォンが少しずつ降下してきているのを見やりながら、耕一は一言ぼやいた。その足は止まる事なく大地を蹴り続けている。十傑集を彷彿とさせる走りっぷりだった。 「なんだよあのグリフォンとかいうの。人二人乗せてあの速度であの持久力って、無茶苦茶すぎだろう」 「今日の『お前が言うな』スレ一等だねそりゃ。VIPに建てれば祭りになるぜ。ちなみに竜はもっとすごいかんね」 「……ビップって何の事だかわからんけど、竜か。タバサちゃんのシルフィードとか、確かに凄かったからなあ」 デルフリンガーとくだらない雑談を交わしながら走り続けると、道は岩山を登るような山道に差し掛かる。 「……確か、浮遊大陸へ行く為の空飛ぶ船の港が、でかい枯れ木に作られてるんだっけか」 船といえば海を渡るもので、水平線と一体。 まだそんな常識のある耕一には、港と言われて山を登るのは、なんとも変な感じだった。 抜ければラ・ロシェールの街が目と鼻の先の、左右を崖で挟まれた一本道。 そこを走っている最中、耕一には耳慣れない―――しかし、聞き慣れた音が連続して起こった。 ひゅんひゅん、と風を切るそれは、弓から矢が放たれる音。 「なにっ!?」 崖の上から降らすような、狙いもつけない弾幕のそれをかわす事自体は難しくなかったが、驚きに足が止まってしまう。 続けて、ぼおっと前方で炎が燃え上がる音がした。見ると、道を塞ぐように松明が次々と投げ込まれ、炎の壁を形成していた。 「なんだよこれ!?」 耕一が叫ぶ。何者かの集団に襲われているのは確かだった。 まさか、敵勢力とかいうのの妨害か? いや、こんなに早くバレるなんておかしいだろ―――とそこまで考えたところで、矢の第二射が降り注いだ。 考えている時間はなかった。今は降りかかる火の粉を払わなければ。 崖の中腹辺りを飛んでいたグリフォンに目をやると、細身の剣を抜き放ったワルドが、魔法の杖の代わりなのであろうその剣を振るい、風を起こして矢を吹き飛ばしている。 向こうの心配はなさそうだった。ならば自分は―――元を叩く。 「ああああああああああっ!!!」 崖に向かって疾走。跳躍。 がごんっ、という鈍い音をたてて蹴り足の岩を蹴り砕きながら、そのまま逆方向へ跳躍。 その先には、反対側の崖がある。同じように岩壁を足場にして、さらにジャンプ。 それを繰り返し、崖から崖へジグザグに、まるで忍者映画のアクションのように、耕一は跳び昇っていく。 「あいつらかっ!」 崖の上まで跳び上がると、武装した男が十数人、呆然とした表情で耕一を見上げていた。 ぐぐぐ、と腕に力を込め、まっさかさまにそのど真ん中へと落下する。 着地と同時に、その鬼の腕を振るった。持っていた弓で受け止めた数人が折れた弓ごと吹き飛ばされ、ごろごろと転がった後に動かなくなる。 「抜刀! 散開ぃ!」 リーダーらしき重武装の男が指示を出すまでもなく、残った男達は剣や槍を構え、耕一に向ける。 しかし、そこには既に人の姿はなかった。 「遅い」 耕一を包囲しようと動いていた男達を、その端にいる者から順に張り倒していく。崖に落とすとちょっと死にそうな高さだったので、逆方向に。 数秒もすると、その場にいた全員が、気絶か、呻き声を上げながらうずくまるか、といった状態になっていた。 そのまま油断なく周囲に目を配っていると、 「相棒~、俺を使えよぉ~」 腰から、どこか情けない声が響いた。 「す、すまんデルフ。でも、お前を使ったら、峰打ちでもあいつら殺しちゃいそうだったからさ……」 「はぁ。ったく、甘いこったねえ相棒は」 呆れの言葉でありながら、その口調にはどこか弾むような響きが混じっていた。 「……もう終わっていたか。さすがだね、ミスタ」 「ワルドさん。大丈夫ですか?」 「ああ。こちらに怪我はないよ。ありがとう」 そうしていると崖からグリフォンが頭を出し、跨っていたワルドが硬い声を出した。 「こいつらは? 敵の襲撃でしょうか?」 「どうだろうね。ただの野盗であってほしいが……おい、起きろ」 耕一に拳を打ち込まれた腹を押さえて呻いていた男を蹴り上げるように起こすと、ワルドは尋問を始めた。 しばらくすると、男はばたりと倒れて気絶し、ワルドが苦い顔をして戻ってくる。 「……さて、ただの物盗りだ、とは言っているようだがね」 「本当に敵勢力の刺客だったとしたら、バカ正直に言うわけがないですね」 「そういう事だな。確実にメイジであろう密使への襲撃にメイジもいない刺客とは、いささか間抜けではあるが……このタイミングでの襲撃を偶然と捨て置くのは、ちと楽観が過ぎるだろうね」 シミュレーションゲームの聞きかじり知識だったが、まぁ正しいものであったらしい。ワルドは盗賊達を全員気絶させて縄に繋ぐと、緊張した面持ちでグリフォンに跨り直した。 「急ごう。あの賊どもはラ・ロシェールの官憲に任せる。ミスタも疲れただろう。今日は一晩宿を取り、明朝一番の船で出るとしよう」 「わかりました」 男二人が頷きあうのを、ルイズはやるかたなく見やっていた。 § 「船が明後日にしか出ないですって?」 ラ・ロシェールにある貴族用の一番高級な宿、『女神の杵』亭に部屋を取ったルイズ達は、一階部分にある酒場兼食堂で、船を調達しにいったワルドの報告を聞いて声を上げた。 「ああ。明日の夜は、月が重なるスヴェルの月夜。その翌朝が、アルビオンが一番ハルケギニア大陸に近付く日でね。風石を節約するために、どの船も出港をその日にするんだそうだ」 「そんな……急ぎの旅なのに」 「お忍びの任務だからな。無理矢理徴発するのもよろしくない。追加の料金を払ってチャーターする事ぐらいは出来そうだが……どうするね、大使殿?」 ワルドがおどけて言うが、ルイズは表情を崩さず、口をへの字に結んだまま言った。 「そうしましょう。お金なんて気にしてられない。時は一刻を争うわ」 「了解した。ではそのように手配してこよう」 ワルドがひらりと立ち上がり、外に出て行く。 「なあ、グリフォンじゃ行けないのか?」 「私も聞いたんだけど、人を三人乗せて浮遊大陸まで飛ぶのは無理らしいわ。風竜なら行けるらしいけど……」 「そっか」 食後の揚げ菓子を頬張りながらの耕一の問いに、ルイズはワインを傾けながら答える。 お忍びの旅の途中とは思えない充実した食事だったが、貴族なんだからこんなもんなんだろう、と耕一は既に適応を済ませていた。 しばらくして、ワルドが帰ってくる。 「一機チャーターする事が出来たよ。貨物船で客室は貧相だが、客船は他の乗客との都合がつかないからって断られてしまってね。それしか交渉に乗ってくれなかったんだ」 「構わないわ。物見遊山の旅じゃないもの」 「ははは、僕の小さなルイズは頼もしく成長したようだね。では明日に備えて、今日はもう休むとしようか」 ワルドは、懐から鍵を取り出した。 「少しグレードは下がるが、三人部屋を取った。僕はまだ少しやる事があるから、先に休んでいてくれたまえ」 「わかりました」 耕一が頷いて鍵を受け取ると、ルイズも立ち上がった。グリフォンに乗っていただけとは言え、一日飛び詰めは疲れたらしかった。 § 二人が部屋に戻り、酒場に一人だけになると、ワルドはちびり、とワイングラスを傾けた。 「ガンダールヴ……正直、やりあいたくはないな。味方に引き込むのが得策だが……さて」 ルイズに向けていた柔和な目とはうって変わった冷たい目を、虚空に彷徨わせる。 そこにいるのは、トリステイン魔法衛士隊の隊長ではなく―――真実を求めて全てを捨てた、狂える求道者だった。 「思ったよりヴァリエールがなびかぬからな。もう少し弱っているかと思ったが……あの公爵家の者、芯までは曲がらぬか」 物思いを振り切って前を見据えたあの姿勢。日程を急ぐように誘導したらすぐに乗ってきた事。 任務を翻して『レコン・キスタ』側につける事は難しそうだった。 「それとも、あの亜人を呼び出して自らを確立しつつあるか―――あれを打ちのめしてなびかせるのは骨が折れそうだな。……厄介な事よ。三つのうち一つは、諦めなければならぬかもな」 彼自身の目的にとっては一番重要な項目のはずであるのに、グラスを離したワルドの表情は、何も表してはいなかった。 「とりあえず、私達が行くまでニューカッスルへの総攻撃は待っていて貰わねば」 ワルドは暫しの間目を閉じ、何事か物思いに耽ると、グラスを置いて席を立った。 前ページ次ページゼロのエルクゥ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4297.html
前ページ次ページゼロのエルクゥ 「コーイチ・カシワギ。こことは別の世界、『チキュー』の、『エルクゥ』という種族であり、人間でもあるとの事。見た目は平民の青年と変わらないものの、オーク鬼等の亜人を遥かに上回る身体能力を持つ。その点は『ガンダールヴ』とは関係ない模様」 手に持った、無骨で不気味なほど筆跡の揃った文字の並ぶ書類を、ロングビルが平坦な声で読み上げる。 「他には、主人であるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと精神感応で意識をやり取りする事が可能との話。観察者追記、彼に決闘を挑んだ生徒の証言より、おそらく相手を威圧するような精神攻撃方法も持つと見られる。詳細不明」 アカデミーの研究文書よりそれっぽいわね、などと思いながら、読み上げ続ける。 「本人の資質としては、いたって温厚で理性的。しかし、ギーシュ・ド・グラモンとの決闘にも見られるように、実力行使に容赦はない様子。それが『エルクゥ』種族に由来する性質なのかは不明」 オスマンは、じっと目を閉じたままその報告に耳を傾けている。 「元の地に家族と恋人を残してきていると語っており、帰還を強く望んでいる様子。それでなおヴァリエール氏に表面上の不満を冗談以上に見せず従っている事から、社会性と知性も高いと見られる」 その髭で隠された口元が、小さく『イル・サウンディ・デル・ウィンデ』と動くのを、ロングビルは見逃さなかった。 「結論。現状においては、不穏分子ではあるものの危険とは言えない。しかし放置には問題あり。最低限、帰還の為の魔法を探している努力を見せておけば納得する程度の人格と知性は持っていると判断されるが、一度誠意がないと思われてしまった場合の被害は算定不能」 定期的に会合の場を設ける事を推奨する、という〆の文章を言い終わるや否や、ロングビルは懐からスティックのような棒を取り出し、さっと振った。 その足元から白いネズミがふわりと浮き上がり、ロングビルがその杖を真横に一閃すると同じく真横に吹っ飛んでいって、そのネズミはべしゃっと壁に激突してぽとりと床に落ちピクピクと痙攣を始めた。 彼にかけられた『サイレント』の魔法の効果は滞りなく、悲鳴も、激突音も、落下音もしなかった。 オスマンの頬に、たらりと一筋だけ汗が伝った。 「ミスタ・コルベールからの報告は以上です」 「うむ」 オスマンは厳粛に頷き、髭をさすって思案をめぐらせる格好をした。 「それでは、私は仕事に戻りますね。宝物庫の目録を作りたいと思いますので、鍵をお貸し願えますか?」 「うむ」 内心冷や汗だらけのオスマンは、特に警戒もせずに机の引出しから一つの鍵―――鍵と言っても、文様の描かれた棒のようなものだったが―――を取り出すと、ロングビルに渡した。 「ありがとうございます」 くるりと踵を返したロングビルの顔には、オスマンが見た事のない、はすっぱな笑みが浮かんでいた。 部屋の隅では、モートソグニルの痙攣が、少しずつ弱々しくなっていった。 § 「おお! 来たか『我らが鬼神』! さ、こっちに座りな!」 「ど、どうも、マルトーさん」 決闘から数日が経ち、耕一を取り巻く環境は、いささか変化していた。 最も大きな変化は、学院に奉公する平民達―――特に、厨房のコック長、マルトーの態度だった。 威張りくさった貴族が嫌いだと公言して憚らない彼は、耕一がギーシュを鎧袖一触にあしらった上に、自慢すらせず平然としているのをたいそう気に入ったらしい。 「シエスタ! たっぷりついでやれよ!」 「わかってますわ、料理長!」 「い、いや、まだ昼なんで、お酒はあんまり……」 「かぁー! メイジのゴーレムを素手で切り裂いちまうような亜人殿は言う事が違うねえ! おいシエスタ! そんな安もん飲ませちゃ我らが鬼神に失礼だ! 奥にあるアルビオンの古いの持って来てやりな!」 「わかりました、料理長!」 既に知り合っていたメイドのシエスタ共々、耕一が食事に訪れる度に、過剰とも言える歓迎をしてくれるのであった。 少しだけ、故郷にある特殊な喫茶店に通いつめる知り合いの趣味が理解できたような気がした。 「い、いや、ヴィンテージのワインなんか飲めるほど舌肥えてないんで、もったいないですよ!」 「気にすんな! 貴族の坊ちゃんどもが飲んじまうより遥かに有意義ってもんだ! だっはっは!」 最初もそんな事を言ってたなあ、と豪儀な笑い声に苦笑しながら、耕一は毎日、鶴来屋の本館レストランにも劣らないような豪勢な食事を取るのだった。 次に変わったのは、周囲の生徒達の態度だ。 無能メイジの平民使い魔、と侮るような視線は刷新され、どこか腫れ物を扱うかのような視線だけが向けられる。 時々、血気盛んな男子が鼻息荒く挑発してくる事もあったが、少し氣を入れて睨みつけてやるだけで、すごすごと、もしくは虚勢を張りながら退散していくのが常であった。 また、それによってか、ルイズに対する侮蔑も、なくなりはしないが確実にその数を減らしていた。『メイジの実力を計るには使い魔を見よ』という教えは、かなり浸透しているようだ。 ルイズは、最初こそ優越感に浸っていたが、すぐに焦るような態度を見せ始めた。使い魔が凄くても、自分は未だに魔法が成功しない『ゼロ』のまま、という事にずいぶんと焦りを感じているらしく、魔法の自主練習を積極的に行っている。 成果については……ロングビルが、『夜に鳴り響く爆発音がうるさい』という多数の陳情への対応に追われる羽目になった、とだけ言っておこう。 そして、周囲の生徒の中で一番の変化を遂げたのは……。 「先日の無礼をどうか許してほしい。許しを頂けるのならば、言葉の代わりに名を聞かせてはくれないだろうか」 このギーシュだった。 「ありがとう、ミスタ・カシワギ。出来る事ならば貴方と友誼を結びたいと思うのだが、今の僕はいまだ人になりきれぬ餓鬼。僕が人として立つ事が出来たその時の褒美としてそれはとっておこうと思う。それでは失礼」 三日間の謹慎が空けた日、こう言って耕一に深々と頭を下げた時、ルイズなどは気でも触れたんじゃないかと本気で心配したらしい。耕一とキュルケは『男子三日会わざれば』を体現したような様子に微笑ましいものを感じていたが。 芝居がかったような振る舞いは変わらないものの(どうやらトリステイン貴族は、全般的にこういった戯曲的な言い回しを好むようだ)、決闘の日とはうって変わったように潔くなり、授業などにも真面目に打ち込むようになった。 話によれば、あの女の子二人にも素直に謝罪し、今はワインで殴られた方の少女とよりを戻しているという。 そんなこんなで、ハルケギニアにまた朝が訪れた。 § 「ふああ……やれやれ、一週間が8日もあるとはねぇ」 窓から差し込んでくる朝の光に、毛布の中でもぞもぞと一伸びをした。 今日は虚無の曜日、と言って、要するに日曜日のようなものらしい。 8日に1回の休みで体が持つのかしら、とか、そもそも一日が地球の24時間と同じかどうか判別つかないからわからないなぁ腕時計ぐらいつけてればよかった、とか、これまで何回も考えた事を寝ボケた頭でまた弄くり回しながら、一日の用意を始める。 「明日は虚無の曜日だから、街に出かけるわ。いつも通りの時間に起こしてね」 昨夜、ルイズにそう言い含められていた。 『休日とは、起きた時に夕陽が見える日の事である』というのが持論の耕一としては、そのバイタリティに感心した。 とはいえ、マンガもゲームもパソコンもないこの世界においては夜更かしをする意味がないので、耕一も、最近はとても健全な起床と就寝である。 格式ある魔法学院だけあって、図書室(図書館、と呼んだ方が適切かもしれない)にはうなるほどの本があったが、貴族じゃないと自由に入れない上に字が読めなかった。 あれ、じゃあなんで言葉は通じるんだろう、と何気なく思ったところで、これまでカタカナ名前のヨーロッパに似た文化の人と普通に日本語で会話をしていた事に初めて思い当たったあたり、耕一の、平静であろうとしても処理しきれない混乱が窺える。 ルイズによれば、使い魔のルーンの効力か召喚魔法の影響で言葉が翻訳されてるのではないか、と言う事らしい。 まあ、こんな状況に放り込まれた上に言葉が通じない、なんて事にならなくてよかったのは確かだが、なんとなく都合が良すぎる気がしないでもなかった。 「さて、水を汲みにいかなきゃな」 コキコキと肩を鳴らして、耕一は静かに部屋を出た。 水道なんてハイテクなものはないので、朝の洗顔などに使うため、水汲み場から部屋まで水を汲んでこなければならないのだ。 「ふう」 それが終わると、ルイズを起こしに掛かる。 「ほらルイズちゃん、朝だよ」 「……んみゅーん」 低血圧気味のルイズは、目が覚めるまでに時間が掛かる。 おまけにやっぱり女の子なものだから、朝の身支度にも時間が掛かる。 胡乱な目で髪を梳かしていると、だんだんと瞳孔がしっかりしてくる、というのが毎日のパターンだった。 「はい腕あげてー」 もう着替えさせるのにも慣れたものである。逆に、着替えさせられるルイズの方は、日を重ねるごとに居心地が悪くなっていくようだったが。 部屋を出て食堂に向かいつつ、帰ったら保父さんでも目指してみるか、と少し本気で思っていた。 「今日は出かけるんだっけ?」 「そうよ。朝食を食べたらすぐに出かけるから、厩舎に言って馬を二頭借りておいて」 「あれ、俺も付いてくのか?」 「従者がついてこなくてどうするのよ。それに、あんたの買い物をしにいくのよ。貴族の従者として、いつまでも他人のお古なんて着てちゃかっこつかないでしょ?」 「別にいいんだけど……サイズもあってるし」 「私がダメなのっ! いいから、もう少しちゃんとした服を着なさい。命令よ」 「……わかったよ。そこまで言うなら」 ちなみに、服はマルトーのお古を貰っていた。少し横に広いが、体格としてはちょうどいいぐらいだった。 「あと、剣とか下げてると従者っぽいわよね。今宮廷で流行ってるらしいけど……そっちも見繕ってみましょうか」 「剣、ねえ……」 さすがに刀はないだろうな……と、前世の記憶からかふと思ってしまう耕一だった。 § 「恋人に操を立てる男性が快楽に抗いきれず、という背徳も……また一興よねぇ」 キュルケは、『学院』と言う場所にはとても相応しくない言葉を口にしながら、念入りに体を清めていた。 決闘の日以来、彼女の二つ名たる『微熱』は恋の炎となって、煌々と燃え上がっているのだった。『恋人がいるから』と柔らかく袖にされたことすら、自らの魅力に確固とした自信を持っている彼女にとって、闘志がみなぎるちょうどいいスパイスでしかない。 「うふふっ。さて、どうしてやろうかしら」 今日は虚無の曜日。どうやって愛しき殿方を口説き落とそうかと微笑みを浮かべながら、キュルケは化粧を始める。 ふんわりと湿った肌を薄手の布一枚だけで包んだ姿で鏡台の前に腰を下ろしている姿は、男子100人中100人が前屈みになるであろう、とんでもない色気を放っていた。 「ん、よしっ♪」 制服に身を包み、マントを羽織り、おまけに制服のボタンをいつもより一つだけ余計に外すと、キュルケは鏡に向かって綺麗なウィンクを一つ飛ばした。 目指すは、愛しき殿方たるルイズの使い魔がいる、隣のルイズの部屋だ。 「おはよう、ルイズ……って、あら?」 躊躇なく鍵開けの魔法『アンロック』を使い、堂々と部屋に入ったキュルケだったが、もぬけの殻の部屋を見て残念そうに吐息をついた。 「うーん、まだ食堂かしら? あ、あれは……」 虚無の曜日のアルヴィーズの食堂は、朝食の時間がいつもより長めに取られている。 ねぼすけルイズはまだ朝食かしら、と踵を返そうとした時、窓の外に見覚えのある桃色の髪が垣間見えた。 「あたしともあろう者が、ヴァリエールに先を越されるなんてね。ふふっ」 キュルケはどこか楽しげに笑うと、馬に跨って門を出て行く主従を見送り、別の部屋に向かった。 「ターバサー。あなたの風竜に乗せて―――って、あら? こっちも?」 親友の使い魔たる、馬など歯牙にもかけないスピードで空を飛ぶウィンドドラゴンで耕一達を追いかけようとその部屋の扉を開けたが、こちらも空であった。 「……図書室にいればいいけど、またどこか行ってるのかしらね」 タバサが忽然とどこかに行ってしまうのはいつもの事だったが、何ともタイミングが悪いわね、とキュルケは一つため息をつく。 結局、図書室にもタバサはおらず、キュルケはしょうがない、とすっぱり諦め、耕一達が帰ってきてからの作戦を練るために部屋に戻った。 しくじった手にはいつまでも拘らずにあっさりと捨てて次を見る。そんな見切りの早さも彼女の力であった。 § 中世文明の世界に、工業的な既製品を並べた服屋などというものはあるはずもなく、服というのは手作りか、仕立て屋と呼ばれる店でオーダーメイドされるか、どちらかだ。 ルイズが選んだのは、もちろん後者だった。それも、宝石屋と併設されているようなセレブな店だ。こういう見栄はどこでも同じようなものらしい。 現代社会ならジーンズの裾上げにも数日かかるものだが、さすがにただの中世ではなく、さっと杖を振るってあっという間に採寸を合わせてしまい、その場でお受け取りとなった。 「……なんか、変な感じだ」 「我慢しなさい」 執事用の黒タキシード、なんてフォーマルなものでもないが、Tシャツジーンズよりは遥かにぱりっとしたお仕着せに身を包んだ耕一は、通りを歩きながらも身じろぎを止められなかった。 なんだか演劇の衣装を着てるみたいだ、と、高校時代に文化祭で演劇をやった事を思い出していた。あれは確か『三銃士』だったかな。 「さて、次は武器屋ね。たしか、ピエモンの秘薬屋の近くにあったから……」 先導するルイズは、見るからに裏通りの、怪しげな路地に突入していく。 すえた臭いが鼻をつき、大通りでは見かけられなかったゴミや、見るに耐えない汚物なども放置されている。先ほどのセレブな店から急転直下だ。 「こんなところにあるのか……?」 「武器っていうのは、平民の傭兵とか、農民の狩人とか、そういう人が買い求めるものだから、あんまり綺麗なところにはないわよ」 耕一の呟きに答えるルイズも、顔をしかめている。 「あった。あれだわ」 指差した店の軒先には、ご丁寧にも、剣が交差した絵柄の看板がでんと掲げられていた。 ドアを押すと、申し訳程度につけられている錆びついたカウベルが鈍い音を鳴らす。 「…………」 店の奥のカウンターでパイプをふかしていた店主は、じろり、と入ってきた客に目を向けた。 少女のマントに光る、貴族の証であるペンタグラムの施された外套留めを見やって、どことなく八○見乗児が声を当てていそうな風貌の店主はパイプを口から離した。 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」 「安心して、客よ。こっちの従者に剣を見繕ってちょうだい」 「へえ。それを早く言っておくんなせいよ。昨今は下僕に剣を持たせるのが流行っているようですからなあ」 一言目の警戒するような声から2オクターブ上がった営業声を聞きながら、商魂たくましいなあ、と耕一は感心し、薄暗い店内に所狭しと並んでいる武器に目を向けた。 さすがに刀はなく、西洋剣、槍、弓、銃などが乱雑に立てかけられたり飾られたりしている。 「なんでも、『土くれ』のフーケ、とかいうメイジの盗賊が、方々の貴族の財宝を盗みまくってるって話でさ」 「ふぅん……そうなの」 「へえ。んだもんで、衛兵だけじゃなく、小姓や下僕にも武器を持たせてるぐらいで。その時にお選びになるのが……このようなものでさ」 営業トークを続ける店主がカウンターの上に置いたのは、細身の剣。柄飾りとハンドガードのついたそれは、小奇麗、という言葉が似合う、ギーシュ辺りが持ったらさぞ絵になるだろうレイピアだった。 「しかし、お連れの方でしたら、もう少しごつめのがよろしいですかな?」 「そうね。コーイチが振ったら折れちゃいそうだわ」 決闘の際に見せたとんでもない腕力を思い出して、ルイズはしみじみと言った。 「へえへえ。そうでさな。ではこちらなど……」 と、店主がもったいぶった様子で店の奥に引っ込もうとした時。 「っ!? 誰だっ!?」 自らに向けられる『意志』を感じて、耕一がざっと身構えた。 「えっ? ど、どうしたの、コーイチ?」 「……誰かいるのか」 じっと、耕一は、籠に入れられたあまり質の良くない剣束の方を睨みつける。 「ほう、こりゃおでれーた! にーさん、俺の気配を感じたか!」 「えっ!? だ、誰っ!?」 突如、店主でも耕一でもルイズでもない第三者の声が店内に響く。が、人影はなく、カタカタと金属の鳴るような音がしただけだった。 「こらデル公! 客がいる時は喋るなって言ってあるだろうが!」 「最初は喋ってねーぜ。そこのにーさんが俺を感じたみたいだったからな」 「け、剣が喋ってる、の? インテリジェンスソード?」 カタカタ、と動いていたのは、一本の錆び付いた剣の柄飾りだった。声はそこから出ていたらしい。 「へえ、そうでさ。意志を持つ剣、インテリジェンスソード。どこの酔狂な魔法使いが始めたんだか知りませんが、こいつときたら、御覧の通りの錆び錆びだわ、インテリジェンスの欠片もないほど口が悪いわ、客にケンカは売るわで……ま、聞き流してやっておくんなせぇ」 「けっ! おめーのアコギな商売から客を守ってやってんのさ!」 「ええいこの口の減らねえボロ剣が! もう我慢ならねえ。貴族様に頼んで溶かしちまうぞ!」 「上等だ、やってみやがれ! こちとらもう世の中に飽き飽きしてたところだ!」 剣呑な口ゲンカに、ルイズは呆れたような目を向けていた。 耕一はそれに構わず、剣束に近付くと、その錆びた剣をスラリと抜き取った。 「っとと、なんでいにーさん、ちょっと待ってな……って……」 かなり長い剣だった。五尺―――1.5メートルほどはあるだろうか。 少し細身で錆びている点を除けば、記憶の中で次郎衛門が振るっていた大振りな野太刀にも劣らない長剣だった。 「ちょっと、どうしたのコーイチ。コーイチ?」 ……いや、錆びている? しかしこれは―――? 「……おでれーた。にーさん、あんた『使い手』か」 黙りこくってしまった耕一と剣を店主とルイズが呆然と見つめていると、剣が低く言った。 「『使い手』?」 「ああ、そうだ。にーさん、俺を買いな」 「いや、『使い手』って、何の事だ?」 「……忘れた」 「なんだそりゃ!」 思わずズッコケそうになった。 「にーさんに似た奴が、俺の一番最初に握られてた記憶なのさ。何せ六千年も生きてんだ。少しぐらいの物忘れは勘弁してくれや」 「六千年!? それって始祖ブリミルの時代じゃない!」 「しそぶりみる? ああ、ブリミル嬢ちゃんか。そういやそんなご大層な事になってんだったな」 「じょ、嬢ちゃんって……も、もしかして、始祖ゆかりの剣? こんなボロいのが?」 神をも恐れぬ発言に絶句するルイズ。性別すら不明な始祖が女だったという事実には目が向かないようだった。 「けっ! 溶かされたくねえからって口からでまかせ並べてんじゃねえ! お貴族様、こんなボロ剣なんて放っといて、こちらをどうでしょう。ゲルマニアの高名な錬金魔術師、シュペー卿の鍛えた名剣ですぞ!」 と店主が出したのは、きらびやかに輝く立派な大剣だった。これも1.5メートルほどの長さで、太さは段違いに太い。ごつい剣だ。ところどころに宝石があしらわれており、刀身は金色に光り、鏡のように磨き抜かれている。 「へえ、これはすごいわね! コーイチ、どう?」 耕一は無言で、その大剣を持った。 錆び剣を左手に持ったまま右手で軽々とそれを持ちあげた様子に、店主の顔が少し引きつった。 「……こっちだな」 しばらくして耕一が上に掲げたのは……ボロ剣の方だった。 「ええ~? なんでそんなボロい方を?」 「なんとなく、だけどね。そっちは俺が振ったら折れる気がして、こっちは平気な気がするんだ」 「うーん、どう考えてもそっちの方が細いし、錆びてる方が折れる気がするけど……それに、かっこわるいじゃない」 「魔法がかかってるせいかもしれないな。脆さは全然感じられない。とにかく大丈夫な気がする」 「むうー」 「へっ。さすが『使い手』。そっちの娘っ子の目は節穴だが、にーさんはわかってるじゃねぇか。あんな光ってるだけの剣に俺様が負けるかってんだ」 なぜそんな気がするのかはわからない。ただの大学生であった耕一に、武器の目利きのスキルなんてもちろんない。 無意識の次郎衛門の記憶か、ただ自分の腕力から来る感覚か。 「はあ。そいつでよければ、新金貨百枚で持ってってもらって結構でさ」 「え、百もするの? あんな錆びてるのに?」 「お貴族様。そのぐらいの大きさの大剣なら、どんな数打ちでも二百はしまさ。錆びてる事で七十、厄介払い料が三十ってところで」 店主の言葉を聞いたルイズが何か慌てた様子で、耕一に持たせていた財布の中を見た。 「……それにしましょ、コーイチ」 「ああ」 なんとなく耕一は察して、何も言わずに頷いた。 「へえ、まいど」 財布の中から百枚金貨を出すと、結構軽くなった。耕一の思った通りのようであった。 「どうしても煩いと思いましたら、この鞘に入れれば静かになりまさ。よかったなデル公、溶かされずにすんでよ!」 「デル公デル公言うなってんだ! 俺にはデルフリンガーっつう立派な名前があんだよ!」 「ご立派過ぎて涙が出てくらぁ! 身の丈に合わな過ぎてよ!」 何気にいいコンビじゃないのかなこの二人。などと、腰に差した剣と親父の口ゲンカに挟まれながら、耕一はそんな事を思った。 § 「ふあーあ。ヒマだなぁ」 学院の宝物庫は、本塔のかなり上階、最上階の学院長室の真下に位置する。 扉の左右に一人ずつ衛視が立ってはいるが、中にある宝物の価値に比したら申し訳程度でしかなかった。学院の中心部に位置するそこを狙う賊などいるはずがなかったし、普段は通りがかる人すら皆無だからだ。 「ま、楽できていいじゃねえか。俺はここのシフト好きだぜ。今日は目の保養にもなったしな」 「ああ、そうだな。ミス・ロングビル、美人だよなぁ」 「あの切れ長の眼鏡がたまんねぇよな。むしろメガネって感じ? ああ、いいよなぁ……眼鏡は始祖の作り出した文化の極みだよ。そうは思わんかね?」 「……お前も大概だよな」 「貴様、眼鏡を愚弄するかぁ! 終末過ごさせるぞオラァ!」 「訳のわからん事で暴れるな!」 コミカルにいきりたった衛視の一人が振り回した腕が、どん、と扉を叩く。 「うわあっ!?」 次の瞬間、そこにするはずのない、ぎぃぃ、と木材が軋む音がした。 強力な『固定化』の魔法が掛けられ、魔法による精巧かつ頑丈な鍵のついているはずのその扉が、開いた。 「あ、開いたっ!?」 「え、お、俺のせいっ!?」 衛視の二人は飛び上がって驚き、慌てて中を覗き見た。魔法の灯りが灯った宝物庫の中は明るく、"それ"は彼らの真正面に、思いっきり目立つように残されていた。 立派な黒曜石の壁に土を塗りたくられて描かれた、こんな書き置きだった。 "烈火のキノコ"、確かに領収致しました。―――『土くれ』のフーケ 前ページ次ページゼロのエルクゥ
https://w.atwiki.jp/bemani2dp/pages/2595.html
GENRE TITLE ARTIST bpm notes CLEAR RATE HARD SYMPHONIC 煉獄のエルフェリア 猫叉Master+ 183 n%(yyyy/mm/dd) 攻略・コメント ☆7ノーマルとしては、押しにくい配置が多くハードだと地味に削られやすい。中堅ぐらいはあるかな -- 名無しさん (2014-05-23 23 10 26) 本曲の解禁までが非常に長い。N譜面でも頑張れば上から女の子が降りて来て微笑む演出あります。 -- 名無しさん (2014-07-07 00 07 53) 序盤に片手パート多し。 -- 名無しさん (2014-07-30 12 22 36) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/1548908-card/pages/2821.html
BF(ブラックフェザー)-漆黒(しっこく)のエルフェン:Blackwing - Elphin the Raven 効果モンスター 星6/闇属性/鳥獣族/攻2200/守1200 自分フィールド上に「BF」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、 このカードはリリースなしで召喚する事ができる。 このカードが召喚に成功した時、 相手フィールド上に存在するモンスター1体の表示形式を変更する事ができる。 解説 関連カード ゲーム別収録パック No.11613567 WiiDT1パック:パック:-(P)DT1 XBOXLiveパック:パック:-(P)XBL1 DS2010パック:パック:-(P)10 PSPTF5パック:パック:-(P)TF5 DS2009パック:パック:-(P)09 PSPTF4パック:パック:-(P)TF4 DS2008パック:パック:-(P)08 PSPTF3パック:パック:-(P)TF3 DS2007パック:パック:-(P)07:-(P)07 DS SSパック:パック:-(P)SS DS NTパック:パック:-(P)NT PSPTF2パック:パック:-(P)TF2 PSPTF1パック:パック:-(P)TF1 PS2TFEパック:パック:-(P)TFE OCGパック:パック:クロウ編(DP) ご購入はこちら クリック! 遊戯王&トレカ販売 カード&ホビー「KeyGrip」
https://w.atwiki.jp/hengtouhou/pages/1210.html
モンスター/エレメンタル 水のエレメンタル/Water elemental (Blue E; ) === Num 512 Lev 33 Rar 2 Spd +0 Hp 25d8 Ac 40 Exp 325 それは高くそびえ立つ水の竜巻だ。 それは通常地下 33 階で出現し、少々不規則に普通の速さで動いている。 この存在を倒すことは 1 レベルのキャラクタにとって 約3575.00 ポイントの経験となる。 それは空を飛んでいる。 それは魔法を使うことができ、アイス・ボルトの呪文を唱えることがある(確率 1/6)。 それはドアを打ち破り、弱いモンスターを倒し、アイテムを壊すことができる。 それは赤外線では感知できない。 それはテレパシーでは感知できない。 それは毒と水の耐性を持っている。 それは進化しない。 それは恐怖を感じないし、混乱しないし、眠らされない。 それは侵入者を見過ごしがちであるが、 120 フィート先から侵入者に気付くことがある。 それは1d10 のダメージで攻撃し、 1d10 のダメージで攻撃し、 1d10 のダメージで攻撃する。 雑感 名前
https://w.atwiki.jp/mobagemysteryhouse/pages/107.html
メイド 人物一覧へ戻る 暗闇を差す一条の光 黒いドレス メイドさんのレースエプロン ヒールの靴音 洋服の修理 エルザの頭飾り 耳の尖ったコック ピカピカで整理整頓 怯える仔犬 怖がりのメイド エルザのデート 可愛らしいパーティホステス 輝くサマードレス 寝室を探索しましょう 嵐の使者 ハニーパンチ コーヒーの粉占い ほれ薬 毛皮のブーツは緑の手の中に 怖がりエルザ ひどい金切声 不思議な予感 宝石箱を探して ホイール付きのスーツケース 夜の翼 エルザと狼 純金の花 本泥棒 悪い時に転移 ベッドの下から物音が… メイドの悲しい涙 もう一人のジョバンニ
https://w.atwiki.jp/mtg2384/pages/1329.html
autolink 東屋のエルフ/Arbor Elf (緑) クリーチャー ― エルフ(Elf)・ドルイド(Druid) (T):森(Forest)1つを対象とし、それをアンタップする。 1/1 《東屋のエルフ/Arbor Elf》をGathererで確認 《東屋のエルフ/Arbor Elf》をGoogleで検索 《東屋のエルフ/Arbor Elf》が使用された大会 取得中です。 カードテキスト転載元:Wisdom Guild様 2011 / 11 / 10
https://w.atwiki.jp/sentairowa/pages/117.html
叫べ!RX クライシス帝国により、宇宙空間へと放り出された南光太郎。 だが、南光太郎の体内に埋め込まれたキングストーンは太陽の光を浴び、奇跡を起こした。 仮面ライダーBLACKは仮面ライダーBLACK RXへと進化を遂げたのである。 RXとなった南光太郎の新たな戦いが始まる。 『叫べ!!RX』 そして、今、光太郎はビルの屋上へといた。 クライシス帝国の尖兵である神崎士郎との戦いのために、仲間を集めるためである。 「よし」 南光太郎はカラオケマイクを持ち、声を発した。 「みんな、俺は南光太郎といいます。この殺し合いを止め、神崎士郎、そして、クライシス帝国の野望を砕くための仲間を、同志を探しています。 奴らを恐れることはありません。奴らを恐れず、人間らしい心を保つことが大切なんです。俺に力を貸してください。そして、一緒に奴らと戦いましょう!」 熱い心のうちをマイクに込め、解き放った南光太郎。しかし、今いる彼の位置から声が届いたのはわずか3人に過ぎなかった。 そして、そのうちのひとりは南光太郎のすぐ後ろへと迫っていた。 「誰だ」 一瞬、賛同者かと期待する。だが、その期待は泡沫の如きものだと理解できた。 後ろにいた男からは殺気しか感じなかった。 「神崎士郎に賛同した奴か」 男は答えず弓を構え、すぐさまそれを撃った。 「変身」 南光太郎は後ろへ飛びつつ、変身の言葉を紡ぐ。だが、彼の姿が変わることはなかった。 「なにっ!うわっ!!」 南光太郎は放たれた矢状の光弾に貫かれ、ビルの屋上から真っ逆さまに落下していった。 このとき、南光太郎は知らなかった。首輪をしたものには変身制限がかかり、一度変身すると2時間の変身制限がかかることを。 変身した状態で、ホールに集められた彼には既に2時間の変身制限がかかっていたのだ。 このまま、南光太郎は最後の時を迎えてしまうというのだろうか?立ち上がれ、南光太郎!変身せよ、仮面ライダーBLACK、RX! 善戦むなしく、ビルから落下した南光太郎に迫る怪しい影。 果たして、一体何者なのか? 一方、神崎士郎に賛同した怪人たちは次々と凶行を重ねていく。 立ち上がれ、南光太郎!君の助けを大勢の人が待っている! 変身!仮面ライダーBLACK RX 『希望と絶望の朝』 ぶっちぎるぜ! ロイヤルストレートフラッシュ 「他愛もない。あれではまず助かるまい」 物陰から男―カリスをこの場へと誘導した張本人、ジェネラルシャドウが姿を現す。 「やはり仮面ライダーというのはブラフだったか」 「次はお前だ」 カリスはカリスアローを、今度はジェネラルシャドウへと向ける。 「残念だが、それは遠慮しよう。どうやらお前に勝つためにはこのカードが必要なようだ」 ジェネラルシャドウは2枚のカードを引き抜く。そのカードはスペードのAとクラブの8。 「このカードを手に入れてから、また改めてお前の相手をしよう」 「ふざけるな」 カリスアローから光弾が放たれ、見事、ジェネラルシャドウへ命中する。しかし、ジェネラルシャドウは命中すると同時にふたつに弾けた。 「何!?」 「シャドウ分身」 ふたりになったジェネラルシャドウはシャドウ剣を構えると、素早く間合いを詰めるとカリスを横薙ぎに切り裂く。 切り裂かれた腹から、緑色の血が吹き出る。 「ぐっ、くっ、がぁぁぁぁぁ!」 痛みを力に変えるべく、カリスは咆哮する。 右腰に付けたカードケースからカリスは二枚のカードを取り出す。ハートの5と6。 『Drill』 『Tornado』 リーダーに通されたカードはカリスの身体に解けこむように消えると、彼に敵を穿つ回転と風の力を与える。 『Spinning Attack』 「うぉぉぉぉっ、はぁぁ!」 自ら風の弾丸となったカリスは、ふたりのジェネラルシャドウに向かい、突撃する。 「ぬぉ」 カリスはふたりのジェネラルシャドウを貫き、更には後ろの障害物をも破壊する。 ゴォォォンと凄まじい轟音が響き、砂煙が巻き起こる。 「やったか」 確かに貫いた。だが、手応えは…… 「フッフッフッ、やるなジョーカー。やはりお前とはまだ戦わない方がよさそうだ」 何処からかジェネラルシャドウの声だけが聞こえる。周りを見回すがその姿はない。 「心配せずともお前とはいずれまた戦うことになる。だが、その時がお前の最後になるがな、フフッ。 首を洗って待っているがいい。ハァッハッハッハッ!」 「くっ!」 カリスはハートの2を取り出すとベルトへと通し、人間の姿、相川始の姿へと変身する。 ジェネラルシャドウから受けた腹の傷が疼く。だが今はその疼きが心地いい。 自分は人間ではない。全てを混沌へと導く殺戮者だと、ジョーカーだと示してくれる。 いいだろう。いずれまた戦うことになるというなら今度は逃がさない。 死ぬのはお前だ。 「奴も人間でも、アギトでもない」 隣のビルの屋上から様子を眺めるのは水のエルであった。 偶然にも南光太郎と同じビルに飛ばされた彼はしばらく様子を見ていたが、ジェネラルシャドウ、カリスという闖入者を受け、素早く隣のビルに移ったのだ。 それにしても実に珍妙だ。アギトという異端のものを滅し、主の愛する人間だけの世界に戻すことが我が使命。 だが、ここには人間でもアギトでもない者が大勢いる。あやつらも滅するべきなのか? ひとしきり考えた後、水のエルはとりあえず無視することにした。 自分の使命はアギトの種を持つものを殺すこと。それ以上でもそれ以下でもない。 ジェネラルシャドウは適当な建物へ入ると腰を下ろした。 その白いスーツには微塵の汚れさえない。当然だ。シャドウ分身でふたりに分かれた時、既に3人に分かれていた。 カリスが狙ったふたりはどちらも虚像。ダメージはない。しかし、その表情には疲労の色が色濃くにじむ。 エネルギーの消費が激し過ぎる。 これからは更に慎重にことを運ばなければならない。連戦は禁物だ。 なんにせよ次の行動は決まっている。スペードのAとクラブの8を探すこと。彼らと接触することは必ず俺にプラスに働くと出ている。 少し休んで、捜索に向かうとするか。と、その前に。 ジェネラルシャドウは自分に渡されたディパックの中身を探る。自分の手札を確認することはゲームの基本中の基本だ。 改めて確認したディパックの中にあったのは地図と名簿、方位磁石に食料。そして、 「これは……なるほど、やはりジョーカーとの戦いは避けられぬようだ」 ジェネラルシャドウの支給品はラウズカード。 ハートの10 ハートのJ ハートのQ ハートのK 【南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】 【1日目 現時刻:黎明】 【現在地:市街地D-4】 【時間軸:第1話、RXへのパワーアップ直後】 【状態:気絶。でも健康】 【装備:なし】 【道具:カラオケマイク】 【思考・状況】 1.気絶中につき思考停止。 【備考】 黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信している。 参加者名簿は未確認。 【相川 始@仮面ライダー剣】 【1日目 現時刻:黎明】 【現在地:市街地D-4】 【時間軸:本編後】 【状態:腹部に切傷】 【装備:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)】 【道具:未確認】 【思考・状況】 1.ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。 2.この戦いに勝ち残り、剣崎一真を蘇らせる。 【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーストロンガー】 【1日目 現時刻:黎明】 【現在地:市街地E-4】 【時間軸:37話前後】 【状態:健康】 【装備:シャドウ剣、トランプ内蔵ベルト】 【道具:ラウズカード(ハートの10、J、Q、K)】 【思考・状況】 1.スペードのA、クラブの8が暗示するものを探す。 2.ストロンガー、ジョーカーを倒す。 3.他の参加者は手段を選ばず殺す(マシーン大元帥優先)。 【水のエル@仮面ライダーアギト】 【1日目 現時刻 黎明】 【現在地:市街地D-4】 【時間軸 アギト43話、敗北後】 【状態 健康】 【装備:怨念のバルディッシュ】 【道具 オルゴール付き懐中時計】 【思考・状況】 1:アギトを抹殺する。 2:アギトを抹殺することができれば、誰が勝とうが、自分が死のうがどうでもいい。ただし、邪魔する奴は容赦しない。