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コール・マイ・ネーム.コール・ユア・ネーム -なまえをよんで- ◆EAUCq9p8Q. ☆??? 投げられた祝砲は二度目よりも更に多い。 とはいえ心を持たぬ者の投げたもの。しかも考えなしな号令でほとんど隊列を整えることもなく投げられたものだ。 いくつかは祝砲同士でぶつかり、いくつかは見当違いの方向に飛んでいき。 だが、そのうちのいくつかは確かに白坂小梅ぶつかる軌道で飛んでいった。 そしてそんな『白坂小梅にぶつかるもの』を叩き落とした者が居た。 「……アナタ、なんのつもり?」 女王の口元が歪む。狂った笑いの中で命のやり取りをくりかえし、ここにきてようやく笑顔が崩れる。 アリスと、彼女のオトモダチに真っ向から立ち向かう影が一つ。 それは紛れもなく、アリスが死霊術によって作り出したゾンビ……ゾンビーケンペイの一体であった。 「もう、勝手なことしないで!」 勝利の愉悦の中に居たはずのアリスの胸にあったのは、意外にも苛立ちだった。 思い通りにならないゾンビ相手に苛立ち、ほんの少しだけ小梅とジェノサイドから注意をそらす。 命令してもゾンビーケンペイは動かない。ただ、抜き払った軍刀を引きずるように構え、アリスに睨みを利かせるように立ったままだ。 アリスの頭ではそのイレギュラーを処理できない。アリスにとってオトモダチとは、呼び方はどうあれただの手駒だからだ。 その内側に何が詰まっているかなんて、まったく興味がない。 だからアリスは気づかない。 そのゾンビが、しきりに白坂小梅の閉じ込められた水槽に体当たりをしていた―――否、白坂小梅を救うために水槽を壊そうとしていた個体であるとは。 ジェノサイドへの祝砲の際に他のゾンビたちが『死なばもろとも』を繰り出す瞬間に命令に反するように踏みとどまっていたとは。 アリスが手を上げれば、その他大勢のオトモダチがゾンビーケンペイに向けて距離を詰め始める。 しかしゾンビーケンペイは一歩も引かない。ただ、小梅とジェノサイドを守るように、立ちはだかり続けた。 アリスが大きく手を振る。それを合図に、ゾンビーケンペイめがけてオトモダチが殺到した。 何本もの槍と、斧と、剣をその身に突き立てられ、それでもゾンビーケンペイは踏みとどまっていた。 女王様の愉快なパレードがまた止まり、空白の時間が数秒生まれる。 空白の中で、ゾンビーケンペイはゆっくりと、小梅たちの方に振り返った。 「■■■■」 識別不明の声。 腐った脳みそにちぎれかけの喉、崩れた顔ではうまく発音出来るわけがない。 それでも、その死体は、ねじ切れそうなほどに頭をまわして、遠くでサーヴァントの元で横たわる白坂小梅を見つめたまま、呻くように言葉を綴った。 死者にも分け隔てなく接してくれる優しい子。自分を傍においてくれていた優しい子。自分を友達と呼んでくれた唯一の子。 できれば、ずっとそばにいて、その幸せな姿をいつまでも見ていたかった。 それが叶わないことを理解し、最期にその姿を目に焼き付けておく。 「■りが■う」 初めて声に出して告げることの出来た言葉。聞こえてなくても、それでいい。 群がる兵たちを巻き込んで、肉体を爆薬代わりに大爆発を起こす。 『死なばもろとも』。ダメージが許容量を超えた瞬間に発動する、ゾンビーケンペイの持つ唯一のスキル。アリスも利用したスキルだ。 爆発が爆発を誘い、群がっていたゾンビたちが誘爆しつづけ、爆発に巻き込まれたオトモダチたちが消滅していく。 立ち上がった土煙が、アリスの視界を遮り、再びオトモダチの指揮を止めた。 ――― NPCに魂はあるのか。 そんなことは分からない。 だが、魂あるものがマスターたちの記憶や情報を元にNPCとして再構築され、配置されるというのはもはや説明するまでもないだろう。 そこに肉体は必要か。 答えは否である。でなければ、マスターの一人・玲がこの世界に存在することを許されるはずがない。 ならば、例えば。 肉体を持たない魂のみの存在―――俗に言う『幽霊』がNPCとして再現されていたとして。 白坂小梅の傍で、アイドルになる前から彼女を見つめてきた、彼女の親友とも呼ぶべき存在がNPCとして再現されていたとして。 それが魂の抜け落ちたNPC―――アリスの死霊術で魂を失ったゾンビと出会ったとするならば。 ここは天国に一番近い地獄。誰かの目指した楽園の欠片。 そんな世界は、ささやかな奇跡を肯定する。 世界は、無力だった小梅の友達に、小梅を守る力を与えた。 ――― これもまた、ありふれた奇跡の物語。 ジェノサイドにつきっきりの白坂小梅はその名も無きゾンビの奮闘など、気づきもしないだろう。 魂を失ったNPCの体に乗り移った魂だけのNPC。本当の姿も、本当の名も、誰も知らない。 ただ、そのNPCは、ようやく白坂小梅の友人として、少しの間だけ彼女を守ることが出来た。 そして、白坂小梅の友情は、巡り巡って『何か』をなし得る因果を得た。 生まれた時間はごくわずか。 だがその時間で確かに、白坂小梅の『声』は届いた。 一画、二画、三画、ゾンビたちの爆発音を背に、三つ分の願いが小梅とジェノサイドの間で交わされる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 六枚の■■■■を■■ニンジャ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 雨の■。 見慣れぬ■■。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ■■■コギ■■■■。 オ■■ン。 スモウ■■。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 謎の■■■。 見上げる■■の■。 引きつるような笑い声。 ■■■■■で書かれた文字。 その文字は…… その文字は…… その、文字、は――― ―――思い出せない。 大切だったのだろうか。 重要だったのだろうか。 今となっては詮無きことだ。 すべてが、抜け落ちてしまった。 焼け落ちたアルバム。 朽ち果てたフィルム。 そんな切れっ端の何もない世界に、その死体は横たわっていた。 「アバー」 ため息のように呻く。呻くようにため息をこぼす。 すっからかんの心の中に、乾いた風が吹き抜ける。 もう、何も残っていなかった。 「……なあ」 それでも、何故か、言葉にできない乾きが、心に去来した。 潤いのない体が、腐臭に塗れた肉が、満たされることを望んでいた。 その渇望は、冷え切った体の芯で、ぢりぢりと燻るように横たわり続けていた。 「アンタ……サケを、持っちゃいねえか」 ただ、乾きを満たしたくて、目の前の少女に尋ねる。 随分近い位置に居る少女は、やや驚いたような顔で死体を見つめ返している。 「何でも良いんだ。アルコールなら」 少女はあわてて前ポケットを探り、小さな酒を取り出した。 ずぶ濡れのワンカップ瓶が二つ。微々たる量だ。渇きを満たすには到底足りない。 少女を抱きかかえたまま体を起こし、ワンカップをひとつ開け、飲み干す。 何故目覚めたのか、その理由を探りながら。 確か……声だ。そうだ、声が聞こえた。 声が、千切れ飛んだはずの耳朶を打った。破れ放題のはずの鼓膜を震わせた。 二つ、三つと消えていった魔力。ちっぽけな命の力。それに合わせてかけられた願い。 「おもいだして」 「わすれないで」 「そして、いつかまた、なまえをよんで」と。 そしてその願いは、たしかに、死体の奥底の何かに触れた。そのはずだ。 その声の主は、きっとこの少女。 不思議と、自分のことすら分からないのに、彼女の願いの意味が理解できる。 名前。 知っている。 こいつの名は。 俺の名は。 思い出せない。 知っていたはず。 名前。 名前は。 彼女の望む答えらしきものが、遺伝子の内側から雄叫びを上げるように、崩れたはずの脳に信号を送る。 だが、その咆哮もまだ殻を突き破るには至らない。 もう一つのサケの蓋を開ける。涙ほどの量のアルコールを飲み下し、あばらの下から垂れ流す。 少女は再び死体の身体を抱きしめた。 腐った体液が少女の服を汚していくのが、死んでいるはずの触覚でもしっかり理解できた。 「……離れろ。臭えだろ」 死体にはもう臭いを嗅げる鼻がない。それでも、腐り落ちた肉とガスが放つ腐臭は容易に想像ができた。 少女は首を振り、呟いた。 「臭くないよ」 そんなはずがないのに、嘘の下手な奴だ。 「汚れる」 「気にしない、から……」 喉をすり抜けた酒があばらを伝って体の外にこぼれ、地面にヘドロめいた水たまりを作り、太陽に照らされて小さな鏡を生み出した。 映っていたのは、世にも恐ろしい化物の姿だ。変色した骨にまばらに腐肉が照らされた、墓場の地下で寝かせすぎた死体そっくりの醜悪な姿。陳腐なゾンビ、その成れの果て。 包帯でも、カソックコートでも、帽子でも、もう隠せない。目をそらせない現実。 「俺は……俺は、酷い姿だな」 「……そんなことないよ」 それでも、少女は否定する。 いや、否定せずに受け入れてくれる。 こんな化物を。世にも醜い化け物であるはずの死体を。まるで友人のように抱きとめてくれる。 「バーサーカーさんは……ううん、ジェノサイドさんは、ジェノサイドさんだから。 だから、大丈夫……わ、私、ジェノサイドさんのこと、ちゃんと知ってるから……」 波紋が広がるように、少女の言葉が全身に渡った。 波紋が漣に変わり、漣は勢いをつけ津波に変わり、男の中で渦巻いて、感情に波乱を巻き起こす。 「……俺は」 「うん」 「そうか、俺は」 思い出した。いや、取り戻した。 どうして忘れていた。どうして手放して横たわっていた。 ここにいる意味を、やるべきことを。その名を。自身の名を。 その魂に刻まれたその衝動を。ミンチョ体の掛け軸に書かれたその四文字を。 『ゼツメツ』 一瞬にしてすべてを取り戻す。 なくしたはずの何かが満ちていき、体に歓喜にも似た感覚が迸った。 ニューロンが火花を散らす程のパルスを伝達し、体の中心に存在している『魂』を五臓六腑の奥底まで、まばらに残った髪の先から割れっぱなしの爪の先まで浸透させた。 その魂の名は、『ゼツメツ・ニンジャ』。 「俺は……そうだ、俺は!!」 乾ききったニューロンに落とされた一滴の雫は、どんなサケよりも、彼の乾きを潤した。 戻る。戻る。いや、戻れ。戻ってこい。俺のもとへ。この俺の、ゼツメツの名を持つ者のもとへ! 渇望が胸の内で吠え、失ったピースを無理矢理に手繰り寄せる。 たった三画の魔力が、ちっぽけな少女の願いが、ニューロンとともに腐り落ちていくはずの何かをもう一度震わせる。 そしてたどり着いた。 彼の名は。 いや。 俺の名は―――! ◆◆◆◆◆◆◆ 「……なあ、おい。サケはまだあるか」 「……あの、ごめんね。もう……ないの」 「そうか。ああ、そうだったな……まあ、いい」 切れたはずの糸は繋がった。男はゆっくりと、比較的損傷の少ない右腕で少女を抱きとめたまま立ち上がった。 「帰りに買いに行けばいいだけだ。あの餓鬼を蹴り飛ばして、この世界をぶち壊したその後で……そうだろ、コウメ」 死体が……否、『ジェノサイド』が呼ぶ。 まるで何事もなかったかのように、当然のように、その名を口にする。 腐り落ち、飛び散った脳からは、きっとその記憶は零れ落ちていた。 傷つき、ぼろぼろになった霊格からも、きっとその情報は抹消されていた。 だが再びその名は呼ばれた。いや、その名は取り戻された。 それは本来ならばありえるはずのない反射的反応。 ならば令呪の見せた呪いめいた強制力のせいであろうか。ジェノサイドに対し、「名前を呼べ」という命令が無理矢理に名前を口にさせたのか。 否、そんなわけがない。彼の執念と彼女の願いが、そんな陳腐な結末にたどり着く訳がない。 ニンジャのニューロンは時折、不可思議な反応を示す。 遺伝子レベルで刻まれた『自我』や『存在』すら超越する何かが、時折、条件反射めいて飛び出させるのだ。 六枚の羽を持つニンジャ。名も知らぬはずの神父の姿。トビッコ・ギムレットの香り。 忘れても、忘れても、忘れても。忘れられぬもの。脳が散り散りになったとしても、他ならぬ魂が忘れることを拒むもの。 人はそれを、きっと『絆』と呼んだのだろう。 令呪の魔力はジェノサイドの肉体をほんの少しだけ修復し、魔力の海に消えていくはずの『絆』にそっと語りかけた。ただそれだけにすぎない。 忘れていくことしか出来ない男が居た。 忘れられていくことしか出来ない者たちを覚えていられる少女が居た。 男はずっと、自分の生きている意味を探し。 少女はずっと、彼らの生きていた証を残す。 男は名を名乗り、少女はその名を呼んだ。 少女は男に願い、男はその名を呼んだ。 これは、そこから再び始まる物語。 ◆コール・マイ・ネーム.コール・ユア・ネーム◆ ◆◆◆◆◆◆◆ 小梅とジェノサイド、二人の時間に乱入者が現れる。 それは足並みをそろえて壁のようにそびえ立つ人垣。この遊園地の主の意思に従うものたち。 その壁の向こうに、少女がいる。血煙に燻されてなお真昼のような輝きを放っていたはずの笑顔は影が差している。 ここまで散々に弄ばれ、ようやく『思い通りにならない事が起こった』らしい。 少女は不機嫌そうに手を振るい、ガチャガチャと歯を鳴らすトラバサミをジェノサイドと小梅めがけていくつも走らせた。 だが、ジェノサイドも小梅もそのトラバサミを避けることはなかった。ジェノサイドが真正面から拳ですべて掴み、そのまま握りつぶしたからだ。 「散々騒いでおいて、まだ黙って聞いてられねえか」 「つまんなーい! せっかく、オトモダチになれたと思ったのに! ズルはなしでしょ!」 「……つまらなくなんてねえさ」 帽子の鍔が目元を隠す。包帯もほとんど吹き飛んだ顔に影を落とす。 腐肉がはじけ飛び骨がまろびだし、肉の残る場所も大部分がこけおちた、世にも醜い死者の顔。 それでも、足りない肉を補うように、異界の太陽に照らされた半円のつばの影が笑みを作っていた。 「てめェのごっこ遊びのほうが、俺には、退屈すぎて反吐が出る。つくづくムカつくぜ、てめェは」 破れ放題の帽子の奥で人ならざる緑色の瞳が輝く。 生きる意味を、生きてきた理由を取り戻し、死体に再びソウルが篭る。小さいながら強い火が。 それは、ゼツメツ・ニンジャだけではない。ゼツメツ・ニンジャと、ゼツメツ・ニンジャに宿られた◆◆◆と、その混合物であるジェノサイドの魂。その輝き。 三者がそれぞれ掴み取った、白坂小梅との『絆』の輝き。 「湿っぽいのは似合わねェ。結局俺にはこれしかない」 人垣がざっと音を立てて一歩進み出る。 手に取ったバズソーの鎖は、まるで体の一部のように馴染んでいた。 「よくも好き勝手やりやがったな。死にたい奴から前に出ろ」 今のジェノサイドは傍から見てもわかるほどに活力に溢れている。この遊園地に踏み込む前よりも強く、輝くほどに力強く。 それになにを感じたのか、なにも感じていないのか、アリスは動き出す。やや不機嫌そうな顔のままそのジェノサイドを睨めつけていた。 「仕切り直しだ、死に損ない――いや、死神にまで嫌われたバケモノめ。ドーモ、アリス=サン」 アイサツを聞き届けることなくアリスが飛び上がり、トランプを空中に放つ。 その一枚一枚が魔力のこもったアリスの分身となるはずの種。 しかし、分身が生まれるよりも早く動くものがあった。 「俺は―――」 構え。 「ゾンビーで」 担ぎ。 「ニンジャで」 振り。 「そして、サーヴァントの」 放つ。 「ジェノサイドだ!!!」 吠えた名が遊園地に轟く。ニンジャ・ジェノサイドここにありと遊園地内のすべてに告げる。 一対のバズソーが鈍色の閃光となって空を駆け、そのけたたましい羽音がセンチメントなアトモスフィアを切り裂く。 そして、絶滅へと誘うニンジャの鬨の声は、トランプを全て切り払い、決死の中に活路を生み出す。 不死者たちの殺し合いの、最期の幕が切って落とされた。 ◇◇◇ アリスの群れへと変貌するはずのトランプは全て空中で真っ二つに切り裂かれた。 ついでとばかりに切り裂かれたアリスの体が爆発し、体の内側に入っていたたくさんのトランプを空中にばらまいた。 トランプのうちのいくつかがアリスに変わり、空から降りそそぐアリスがオトモダチの軍隊と合流し、取り囲む人垣を更に強固にする。 「さあ、皆! 最期のゲームをしましょう!」 「最期のゲームは、早い者勝ちよ!」 「シラサカコウメちゃんとお兄ちゃんを殺した人の勝ち! よーいドン!」 女王の大合唱に、一斉に兵隊たちが動き出す。 小梅たちを殺そうと距離を詰めるもの。迎え撃とうと陣形を組むもの。錯乱を狙いてんでばらばらに動くもの。 その中の一団は先程の焼き直しのようにゾンビーを切り捨て、次々『死なばもろとも』爆弾として放り投げていた。 「先に断っとくが」 つい先程は死亡寸前まで追い詰められたゾンビ爆弾戦法だが、ジェノサイドは既にその戦法に対応していた。 アリスの種を切り裂くために放たれたバズソーの波打つ鎖が、ゾンビ爆弾の山を見事にかき分け跳ね飛ばす。 見当違いの方向に軌道を変えたゾンビ爆弾は、明後日の方向に飛んでいき、そのうちいくつかはあろうことかオトモダチのど真ん中に落ちて周囲を巻き込んで大爆発した。 何人ものアリスの悲鳴を聞きながら、ジェノサイドは続ける。 「俺は念仏も唱えられねェし、あいつらの目を覚ます方法なんて知りもしねェ。 俺に出来るのは、せいぜいぶったぎって、さっさとあのクソッタレから解放してやることくらいだ」 「……うん。お願い」 短い間を置いて、小梅が答える。 周りにはもう、小梅が可哀想だと思い救いたいと願った『あの』ゾンビは居なかった。きっと、アリスの指示で『あの』ゾンビも自爆をしてしまったのだろう。 その事実が、小梅の中での分岐点となった。 小梅も、覚悟を決めた。ようやくながら、アリスと友達になれるという淡い期待を捨て、アリスという怪物と戦う覚悟を決めた。 アリスは絶対に自身の『オトモダチ』を手放すことはない。彼らは望む望まないにかかわらず、『怪物』として生き、『怪物』として死んでいくしかない運命だと理解した。 遅すぎる決断に、遅すぎる理解だ。だが、きっとまだ手遅れではない。 目の前に広がる壁と見まごうほどの大きな背中。数分前とは打って変わって、活力に満ちた頼もしい背中。 その背中が小梅を導いてくれる限り、手遅れなんてないのだと思えた。 「……ごめんね」 小さな謝罪があてもなく飛んでいく。それはきっと、この場にいる全員に向けた言葉。 助けたいものを助けられない悲痛、無念、少女が背負うにはあまりにも重い思いの込められた謝罪だった。 聞き届けるものはジェノサイド以外にもう誰もいない。当然だ。初めからずっと、ここに居たのは、ほぼ全員が『怪物』だったのだから。 白坂小梅は、ジェノサイドとともに『怪物』に立ち向かう。 ◆◆◆◆◆◆◆ 掻き分けたゾンビ爆弾が散り散りばらばらの位置で爆発し、オトモダチたちが少し減る。 それでも人の波は絶えない。足音を合わせながら漣めいて押し寄せてくる。 ならばどうするか。 知れたことだ。 敵の生み出せる許容量、その限界まで殺し尽くす。 ジェノサイドの前に立ち塞がる物の未来はゼツメツ以外にありはしない。 「コウメ、しっかり掴まってろよ」 「う、うん……!」 小梅がジェノサイドのズタボロのカソックに抱きつく。それが、大虐殺開始の合図だ。 「イヤ―――――――ッ!」 ぐるんと巨体が一回転した。合わせて回るバズソーで、数十体の『オトモダチ』がその身を斬られ倒れ伏す。 敵もさるもの、反応の追いついたものは跳び、しゃがみ、それぞれ避けるがそれでも遅い。 まるで紫電か、竜巻か、縦横無尽駆け回るバズソーが回避に先回りしてすべてのオトモダチを切り刻んでいく。 バズソーと鎖をかいくぐり、踏み込んで来たものが居た。トランプ兵の槍を持ったアリスだった。 ジェノサイドと小梅をあわせて貫こうとする槍を、ニンジャの超反応で察し、拳で弾き、ついでにアリスの頭を握りつぶす。 ぽふんと音を立てて消えたアリスの槍を手に、次々殺到してくるオトモダチをひとまとめに首を刎ね、様々なパーツごとに分割する。 「やっちゃえ!」「そこだー!」「いけいけー!」 「イヤ―――――――ッ!!」 「アバーッ!」「アバーッ!」「オボーッ!」 遠くで声援を送っているアリスたちめがけて持っていた槍と、先程殺した何者かの武器たちをいくつもぶん投げる。 武器がオトモダチとアリスを複数体貫き、まるで串焼きのようなオブジェとして並ぶ。その間近づく相手もネクロカラテで叩き潰す。 飛んでくる武器、拷問器具、遊具、その他すべてを叩き伏せ。群がるオトモダチどもを鎖で体を引きちぎり、バズソーで細切れにし、敵の武器を奪っては殺し、ネクロカラテで殴り殺し蹴り殺す。 有言実行だ。再起不能になったオトモダチの山が積み上がり、ばらまかれたトランプは濁った赤い池に沈んでいく。 強大で膨大なオトモダチの軍勢は、見る間に数を減らしていっていた。 途中アリスたちが放り込んでくる茶々のような拷問器具も腕で、足で、頭で叩き壊し、振り回されて吹き飛ばされそうになる小梅を抱きかかえてはまた迎え撃つ。 この凄惨なる光景なんと形容するべきか。スプラッターか、ハードゴアか、それともやはりジェノサイドか。 邪神の手足めいた動きで鎖付きバズソーが振り抜かれるたびに、次々と物言わぬ屍が積み上がり、あちらこちらで爆発が巻き起こる。 反撃に出ようと武器を手に手に偽アリスとオトモダチが攻めようと、ほとんど触れることすら叶わずにさらなる暴力でねじ伏せられる。 堅牢かと思われた人垣は、守ればその分切り崩され、攻めればその分打ち砕かれ、徐々に、徐々に、ほころびを見せ始めた。 無限と思われた軍勢は、その絶滅の権化の前に、ついに目算でも数えられるほどに数を減らした。 そんな大虐殺の坩堝の中心のニンジャ・ジェノサイドは、小梅を守り、オトモダチをぶちのめしながらも、常にある一点に注意を払っていた。 『本物はどこだ』。 今まで数々のアリスを殺したがどれも偽物。それに、今生き残っているわずかばかりのアリスもきっと偽物であるとジェノサイドの直感が語っていた。 見回す中には居ない。どこに姿を隠したのか。それを見つけてぶん殴るまではこの戦いは終わらない。 ジェノサイドの虐殺の刃を切り抜けたアリスたちがギロチンの刃を放つ。その刃の上に切り刻まれたゾンビたちを乗せて。 ギロチンを止めればゾンビ爆弾を喰らい、ゾンビ爆弾を止めればギロチンを喰らうという寸法か。 「芸がねえことを、何度も、何度も!!! ナメてんじゃねえぞ!!!」 だが、それがどうした。両手に構えたバズソーを放り投げ、射線上のオトモダチを切り捨てながら進んできた二枚のギロチンの刃を掴む。 当然、手の平はただではすまないが、それを力でねじ伏せる。傷を恐れないゾンビーの体とネクロカラテの握力が可能にする武器強奪だった。 勢いに任せてギロチンをぶん回し、爆発しようとするゾンビを吹っ飛ばす。ゾンビは空中で爆発して消えた。 更に迫ってくるギロチンをギロチンで迎撃し、上のゾンビごと弾き飛ばす。 「イヤ―――――ッ!!!」 叫びとともにギロチンがぶん投げる。またオトモダチが物言わぬ体に変わった。 随分数を減らしたオトモダチは、さすがに数で押せなくなって攻めあぐねているのか、格段に動きが鈍っている。 それこそ狙い目とばかりにバズソーを投げ、アリスやオトモダチどもを切り裂き、ゾンビどもは念入りに微塵切りにする。 ニンジャ的シックスセンスが攻撃の予兆を察知し、抱きかかえていた小梅の身体を突き放した瞬間、地面から生えてきた拷問器具がジェノサイドを拘束した。 棘だらけの人形の檻、アイアン・メイデンだ。だがそんなもの、今のジェノサイドの敵ではない。 閉じようとする拷問器具の蓋を無理やりこじ開け、蝶番ごと蓋をもぎ取る。小梅に迫る幾つかの影に向けて蓋を投げ飛ばせば、血しぶきを残してまたオトモダチが減った。 少しばかり生き残っていたオトモダチめがけてバズソーを放れば、ついにすべてのオトモダチが倒れ伏した。もう二度と動くことはない。 放ったバズソーの鎖が伸び切り、今から巻き戻ろうという瞬間。 一陣の風が吹き、ジェノサイドの目の前をいくつかのトランプが通り過ぎていった。 小梅がはっと顔を上げ、体をこわばらせる。 彼女の視線の先には、トランプから今まさに飛び出そうとしている最後のアリスの姿があった。 振り上げた拳は少女のそれだが、サーヴァントの膂力ならば小梅の頭を潰すくらいはわけないだろう。 ジェノサイドが今から走り出したのでも間に合わない。恐怖からか、小梅は崩れるようにその場にしゃがみこんだ。 「はい、私の勝―――」 しかし、勝利宣言に待ったがかかる。 しゃがんだ小梅の向こう側から飛んできた鎖が、現れたばかりのアリスの体を縛り上げたのだ。 「ようやく首を出しやがったな、アリス=サン」 小梅の令呪で取り戻した破片のような記憶の中に、散りばめられた記憶の中。 ジェノサイドの人生の大部分を占めていた知識として『ニンジャ』の知識があった。 ニンジャとは、卑劣で、傲慢で、残忍。そして時折、幼稚なほどに欲求に素直。 ジツに頼って他人を嬲ることに快楽を覚え、命を命とも思わぬクソッタレの集まり。 そんなニンジャたちの戦闘の波長と、アリスの戦闘の波長が、ジェノサイドの中で合致した。 もし、ジェノサイドと小梅が二人で居るところにニンジャが現れたなら、ニンジャはどう動く。 ニンジャならばどうするか。ジェノサイドを足止めしながらジツを使って小梅を狙い、そして小梅を殺したあとで魔力の尽きたジェノサイドを殺す。 アリスの使えるジツを考えたならば、不意打ちが最も効果的。そしてアリスの性格を考えるならば、奴は最後の最後、ジェノサイドたちが勝利を確信した瞬間にサディスティックな笑みを浮かべながら小梅に手をかけることだろう。 そう、つまり、アリスはニンジャだったのだ。ジェノサイドの『偽物のアリス』を見抜いた直感は、ニンジャとの戦闘で培われた経験則にほかならない。 このタイミングで空を舞うトランプを見て、ジェノサイドは直感的にそれこそが相手の本命だと理解した。だからこそ、先手を打つことが出来た。 『アリスが出て来る』ものとして小梅と念話で息を合わせ、小梅の体でバズソーの鎖を隠し、ぎりぎりまでひきつけて縛り上げた。 小梅は恐怖から崩れ落ちたのではなく、アリスという『怪物』と向かい合い、ジェノサイドを信頼し、『怪物』を倒すために勇気を振り絞り立ち向かい、そしてようやくアリスに打ち勝ったのだ。 「きゃあ、捕まっちゃった!」 巻きつけた鎖ごとアリスを一気に引き寄せる。命のやり取りの最中だと言うのに、脳天気な声を上げている。 その脳天気な声は、ジェノサイドの剥き出しの神経を逆なでするようだった。 オトモダチのやつらをゼツメツに追い込んだこの期に及んで、この少女は、まだ遊んでいるつもりなのだ。 「ナメやがって! ブッダのケツで念仏唱えてろ!」 怒りが、まばらにしか残っていない髪の先まで浸透する。 だが、足りない。この程度の怒りでは、アリスはゼツメツさせられない。 力が必要だ。この狂おしいほどの怒りをぶつけるための力が。 考えるよりも速く体が動いた。 アリスの体をがんじがらめにしていた鎖が解ける。逃がすためではない、鎖が巻き付いたままだと邪魔だからだ。 代わりに、ジェノサイド自身の手でアリスの体を地面に押さえ込む。がっちりと組み伏せたまま、噛みつきやすそうな左肩に照準をあわせる。 仮にもズンビー。爆発の余波で荒れ放題の口でも、少女の柔肌を食いちぎる牙は失っていない。 ◇◇◇ 「ヤメテー! ヤメテー! ……アバッ!?」 肩に食いつかれ、アリスの楽しげな悲鳴が止まり、驚愕の声が上がる。 緑色の蛍めいた命の輝きが噛まれた場所から漏れ出し、アリスの余裕の表情が一気に崩れる。 その緑色の光の正体は、アリスにも感覚で理解できた。それは間違いなく、アリスの身体を構成するMAGだ。 単なる打撃ならば問題ない、噛みつかれた程度で既に死者である『アリス』は傷つかない。そう過信していたのだろう。 だが、アリスの想像を遥かに超えて、アリスに食らいついたジェノサイドという災厄は貪欲であった。 ジェノサイドはニンジャを喰らうニンジャであり、この聖杯戦争ではサーヴァントを喰らうサーヴァントであった。 相手が不死の令嬢アリスだったとしても例外ではない。ジェノサイドはアリスの彼女の身体を構成する物質――MAGを喰らい、自身の血肉に変えることが出来るのだ。 ぶちぶちと音を立ててアリスの左肩が無残に食いちぎられ、ジェノサイドとおそろいの骨がまろび出した格好になる。吹き出す血は、意外にも赤かった。アリスの瞳の色にそっくりだった。 そして、食いちぎられた瞬間に、アリスの中から大きく『何か』が持って行かれた。MAGか、それとも別の何かか。 アリスとてサーヴァントである以上魔力が消滅すれば存在を保てず消え去るのみ。 遊びと思って侮った。このウカツは何を意味するか。 不快な脱力と、焦燥と、六腑の底から喉元までせり上がるような怖気が、アリスの体を駆け巡った。 分からない。今までに感じたことのない感触だ。だけどそれは、いつでも身近にあったもののはずだ。 遠巻きにおろおろと困惑していたアリスの分身のうちの一人が消滅する。世界から消えてなくなる。 一人が消えれば次の一人。それが終わればまた一人。また次、次、次と立て続けにアリスたちが消えていく。 居なくなる。世界から。 そこでようやく分かった。アリスに襲いかかっているこの感触が、死だということが。 『死』。 脳を埋め尽くしたのは、アリス自身には絶対に関係がないと思っていたその一文字。 アリスが今まで弄び、そしてゼツメツ・ニンジャに相対したものが等しく抱く、逃れられぬ破綻と破滅のシンボル。 むき出しの左肩から首よりに、更に歯が突き立てられ噛みちぎられる。またも大きな『何か』が持って行かれる。 声にならない悲鳴が遊園地内にこだまし、悲鳴で揺さぶられた傷口が突き刺すように痛んだ。血が地面を汚していく。 そしてまた、ありえるはずのない恐怖がアリスの心を支配した。 『死』だ。 死ぬ。 死ぬのだ。 これが、死。死なのだ。 アリスは殺される。このサーヴァントに。 全てを喰らいつくされ、一片の欠片も世界に残すことなく、消滅するのだ。 このサーヴァントは、アリスの全てを吸収し、世界にアリスであったものは無くなる。 無数に存在し、消えることのないはずの『アリス』が、この地で一つ完全に絶滅する。 認識した瞬間、アリスはおそらく生まれて初めて本気で『死』を恐れ、本気で逃れる術を探った。 だが、どれだけ考えても答えが出ない。それもそのはず相手が悪い。 精神汚染を持つバーサーカー相手に魅了(マリンカリン)は通用しない。 既に死んでいるズンビー相手に即死魔法(マハムドオン)は通用しない。 石化魔法(ペトラ)も組み伏せられたまま使えば一緒に石化してしまう。 分身アリス、トランプ兵、屍鬼、洗脳人間、あたりを見回せど影もない。 痛みで頭が冷めようやく気づいた。全てゼツメツしていた、いや、ゼツメツさせられていたのだ、このズンビーただ一人に。 バズソー、鎖、ネクロカラテ、彼の持ちうるすべてが『絶対にぶち殺してやる』という執念に従いこの場に居たアリスの軍勢をねじ伏せた。 魔力を吸い上げられた状況、しかもこの距離では再生産も不可能、既に進退は極まった。 蓋を開けてみれば、なんたることか、詰将棋のように盤面は硬直している。 「いや……」 ならば、ならば、ならば何がある! 必死に頭を働かせても、思考は分かりきった結論に向けてから回るばかりで何も妙案は浮かばない。 ジェノサイドが再び口を開く。涙目になりながらまだ動かせる右腕でジェノサイドの頭を押しのけようとしたが、抵抗むなしくまた歯が突き立てられた。 左肩を骨まで噛み砕かれる。『死』の一文字が身体の中で大きく膨らんでいく。 ゼツメツはアリスのすぐ背後まで来ていた。 「いや、いや!! 放して!! やだぁ!!!」 蹄の音が聞こえる。蒼ざめた馬の蹄の幻聴だ。 首元にヒヤリとした感覚。死神の鎌の幻覚だ。 もがいても、暴れても、狂戦士の万力めいた腕力に枝のような少女の肢体では叶わない。 締め付ける力は、吸われていくアリスの魔力に比例してどんどん強くなっていく。 まるで細胞同士が引き合うようにジェノサイドの傷ついた腐肉が逆再生めいて修復を始め、吹き飛んだ髪、砕けた歯、穴ぼこの目、ぼろぼろだった悪魔めいた男の顔貌を復元する。 髪を振り乱し抜けようともがくうちに、押さえつけている男の顔が目に入った。 完璧に蘇ったその顔貌。それは、世にも恐ろしい――― ◆◆◆◆◆◆◆ 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 余裕を失い初めてさらけ出された命懸けの絶叫。 アリスが最後に取ったのは、彼女の大好きな遊びとは程遠い、単なる物量攻撃だった。 構築した陣地を、読みかけの絵本を閉じるように無理やり『閉じ』たのだ。詰んでいた将棋の盤面をひっくり返し、無理やり勝負をなかったことにするために。 原理的には遊具操作と変わりない、ただ、遊園地全体を操作し、一気にアリスめがけて圧縮を行った。 空間が一気に収縮し、それに合わせて遊園地のすべてのアトラクションが一気にアリスとジェノサイド目掛けて飛んでくる。 そして当然、ジェノサイドによって守られていた小梅にも迫る。 「死ぬのが怖ェか、アリス=サン」 突如、さらなる痛みを伴い拘束が解けた。 アリスが見たものは、無残にも食いちぎられたか細い左腕と、それをまるでフライドチキンでも食うように頬張った世にも恐ろしい死者(オトモダチ)の顔。 煌々光る緑色の瞳が湛えるは、魂の滾りか、約束の強い意志か。それともアリスから奪い取ったMAGの血涙か。 「そのクソの詰まった脳味噌に叩き込め。 てめェが調子に乗れば、ニンジャが出て殺す! 叫ぼうが、喚こうが、泣いて許しを請おうが、必ずお前を殺す!!! 俺はジェノサイド!! ニンジャで、サーヴァントの、ジェノサイドだ!!」 言い切ったジェノサイドは、もう用はないとばかりに、食い残したアリスの土手っ腹を蹴り飛ばす。 アリスももう、冗談めかして言い返すようなことは出来ない。命からがら霊体化して逃げ出すのが精一杯だった。 碧緑の双眸はその行方を追わない。既に自身の守るべきものの方を向いている。 「コウメ!」 「ジェノサイドさん……!」 ジェノサイドの声に、小梅は駆け出し手を伸ばす。その手の甲には既に令呪は存在しない。 それでも。 いや、令呪なんてないからこそ。繋いだ手と手には一片の疑念もない。 見よ。少女を懐に抱き寄せたゾンビの立ち姿の、なんと美しいことか。 少女も、ゾンビも、確信していた。今更この陣地圧縮程度の障害で、自身達が死ぬことなどないと。 「ゼツ!!」 じゃらりと波打つ一対の鎖。火花をちらして回り出すバズソー。 命を燃やして、速く、速く。少女を取り囲む万難を切り裂くために回転する。 「メツ!!!!」 走る銀色の閃光は、遊具を、橋を、岩を、山を、雲を、大地を、太陽を、襲い来る全てを切り刻み。 そして最後に、緞帳めいた作り物の青い地平を切り裂く。 ここに、ひとつの遊園地が……女王の作り出した不思議の国が絶滅した。 そして、世界に夜が帰ってくる。 ネクロマンティック・フィードバックへ
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斧乃木余接&クトゥルフ・ガール ◆Ee.E0P6Y2U 少女は速かった。 例外的に速かった。 その時、サーヴァント“クトゥルフ・ガール”の生理時間は極限までチューンナップされていた。 ミリ秒、否、マイクロバイオーム環境における基本時間“モエ”の時間で彼女は生きているのだ。 ――おれを闇から襲おうなんざ、 七十年程早い、と彼女は数モエの間に思い、その槍を振るった。 ぶん、と空を切る音がする。根癖のついた紅い髪が可憐に舞い、少女は襲いかかる敵を退けんとする。 サーヴァント“クトゥルフ・ガール”の膂力に押され、敵は弾かれていった。 “クトゥルフ・ガール”のサーヴァントはモエの時間に生きている。 “モエ”は漢字を当てるのならば“萌え”になる。 彼女たちは萌える外見をしているのだ。 アニメリー因子が美少女アニメのカタチを被って表現された姿こそ、“クトゥルフ・ガール”なのである。 故に“クトゥルフ・ガール”の一角、例外少女ウユウもまた それは何故か。 何故“クトゥルフ・ガール”はアニメの美少女の姿を取るのか。 それは ――なんでだっけ…… ウユウは思い出せなかった。 もちろん知らない筈がない。 自分たちが属するエクストラクラス“クトゥルフ・ガール”にまつわることだ。 自分たちがこのように記述される理由はサヤキが解き明かした筈で、それをサーヴァントとなった彼女は識っている。 ――えーと、えーと、えーと…… 思い出そうとするが、しかし思い出せない。 若い頃はこうではなかった。もっと簡単に思い出せた筈だ。 しかし、最近はどうにも衰えている。認めたくはないが、仕方がない。 「頑張ってよ、おばあちゃん、ぼくをその敵から守るんだ」 後ろでマスターたる少女が言った。 実に平坦かつ適当な口調で、激励の言葉の筈であるのにやる気をそぐような言い方であったが、ウユウは一言、 「私はおばあちゃんじゃない!」 そう言い放つだけだった。 ……実際、“クトゥルフ・ガール”というかサーヴァントに年齢などという概念はない。 元となった精神性と身体の年齢がずれているだなんて例もあるくらいだ。 それにウユウは可憐な少女の外見をしているのである。だからおばあちゃんなどという呼称はおかしいのだ。 「何を言っているんだ、おばあちゃん。 だって貴方は70歳越えてるんだぜ。怪異仲間じゃともかく、人間基準ならもう年金生活の年齢だぜ」 「…………」 ウユウは言い返すことができなかった。 ある意味でマスターの言葉も正しくはあったからだ。 ウユウは――“モエ”の時間に生きていない桂木憂優は70を越える老婆である。 人間のヒフや口、とりわけ腸内には何兆もの細菌や微生物がいる。 ヒトに固有の遺伝子の数は、二万から二万五○○○ほどしかない。それに比して体内細菌、微生物の遺伝子は三三○万の数に上るのだという。 それらが巨大なネットワークを形成し、ヒトは単なる生物である以上に“環境”でもあるのである。 そうした生物の生態系こそが“マイクロバイオーム”である。 憂優はマイクロバイオーム――腸内壁の数億個のニューロンを一種のコンピュータとして使い、プログラムに介入することができる。 そうした演算領域がある理由――ウユウは健忘している――によってアニメの少女として表現された結果。 それが例外少女ウユウなのである。 ――まぁ、確かにおれは例外だけどさ…… 少女の中で彼女は例外的に老女である。 “ツンデレ”のサヤキや“メガネ”のニラカは一応基となった人間は若い女性だった。 ウユウだけが老女なのである。 “ヤンデレ”のマナミは分からないが…… ――でも、おばあちゃんはなあ マナミが“ちゃん”付けされるのを嫌がるように、ウユウもそう言い放たれることは少し抵抗があった。 第一マスターだって厳密な年齢はあやしいものだ。 可憐な童女の姿をしているが、その実彼女は死体なのだから。 ――ま、とにかく 敵を倒してしまおう。 そう思い、ウユウは槍を再び振るった。 一度弾き飛ばされた敵は今になってようやく態勢を立て直している。 遅い。 ウユウには彼の動きが緩慢なものに見えた。 “モエ”の時間に生きているウユウは通常の時間よりも速い時で表現される。 クトゥルフ少女でなく、サーヴァント“クトゥルフ・ガール”は単位の変換率が少し悪くなっているが、しかしそれでもなおウユウたちは速い。 またたく間に“モエ”の時間を駆け抜けることができる。 “モエ”の時間を生きるウユウはそのまま萌える力を使った。 痺れるような技である。 「というかそのまんま電撃なんだけどね」 ……後ろでマスターがやはりやる気をそぐようなことを言った。 “クトゥルフ・ガール”はそれぞれが特殊能力を持っている。 ウユウの場合は電撃――サーヴァントとしての宝具『電磁気に対する感作力<エレクトロソーム>』である。 とはいえそれだけじゃない。 ――まずは相手の動きを止めて、と。 ウユウは電撃を迸らせつつも、敵が立つ地面に干渉した。 そして、ぬる、と敵は足を沈みこませた。 ……大腸菌だ。 ウユウは大腸を選択的に発現させることができる。 大腸菌はもともと繁殖に最も成功しているバクテリアといっていい。 ありとあらゆる土壌の中に大量に棲息しているばかりでなしに、腸管内細菌としても、他の追随を許さないほどの成功を収めている。 ウユウはそうした大腸菌を思うがままにあやつることができるのだった。 敵が立つ地面に棲息していた大腸菌の遺伝子を一気に発言させ、ぬかるみの水分含有量を増やし、結果として敵の足を止めることができる。 ――決めるよ ウユウは跳んだ。 その手からはバチバチと電撃が迸っている。 撃った。 敵は反応できない、。 時間にしてたった三モエのことだ。 秒の世界に生きる英霊ではすぐには反応できない。 ましてや彼はいま足を取られている。 ジジジジジジ、と飛び散る火花がマイクロバイオームの空を切った。 「ばーんって爆発して欲しいところだよね」 後ろでマスターがやる気のない言葉を漏らした。 その言葉通り――轟音と共にその英霊は爆散していた。 電撃と大腸菌。 それが例外少女ウユウの能力である。 ◇ 「ありがとう、おばあちゃん。お蔭で助かったよ。ホントホント、こんなに人に感謝できたのは何時振りだろうってくらい感謝してるよ。 鬼いちゃんにおばっちゃんのイボを煎じて飲ませてあげたいくらい。エレキバンって奴かな」 「少しは感謝して欲しいもんなんだけどな……」 ウユウは頭をかきつつも、マスターである少女と共に拠点へと赴いていた。 襲ってきた敵サーヴァントを撃退し、その帰りである。 無駄に派手な演出をキメて敵を倒してしまったので、急いで帰る必要があったのだ。 マスターの少女に寄り添いつつも例外少女はウユウは今後のことを考える。 聖杯戦争。 エクストラクラス“クトゥルフ・ガール” 今回彼女が表現されたのはそのような舞台だった。 ――聖杯なぁ 多分目的自体は変わらない。 ゴキブリを守ることだ。 宿敵である“進化”の“起源”――“クトゥルフ”に対抗する為、ゴキブリという種を守る。 その為に聖杯を求める魔法少女が、ウユウだ。 そういう殻を被って今回は表現されているのだろうが、 ――ハーレム系アニメみたいだ。 そう思わずにはいられなかった。 聖杯など、どうせ中身はかわっぽだろうという気がする。 碌でもないものだ。 からっぽで空虚な、そんなものを求めて幾多もの少女が相争う。 まさしくそれはハーレム系アニメの構造ではないのか。 ――それにイエス・キリストにまつわるものって時点で厭な予感するんだよなぁ。 彼女は以前表現された際、疑似的なエルサレムを舞台にヨハネを名乗るものと戦ったことがある。 というかその戦闘で死んだ。 仲間の盾にされ――まぁ状況的に仕方ない部分もあるのだが――そこで一度命を絶った。 彼女の想い人であるマカミが“マウス・クリスト”とかいう説もあった。 マウス・クリスト――イエス・キリスト的な言葉だ。 どうにもあの聖杯の持ち主は“クトゥルフ”側に関係している存在な気がしてならない。 聖杯へと近づくこと自体が“進化”のような“クトゥルフ”からの攻撃の可能性がある。 色々と考えて動かねばならない。 「おばあちゃん」 不意にマスターが立ち止まった。 なんだ、と思い考えを中断すると、彼女は街中に備え付けられたディスプレイを指差していた。 そこではアニメのオープニングが流れていた。 『なんて素敵なヘル・エポック 忘れられないヘル・エポック わたしたち友達になるの コルク張りの部屋のなか 花咲く乙女たちのかげに マドレーヌをいただいて 失われた未来をもとめて』 そこでは戦闘ドレスを身にまとった少女たちが、激しいダンス・ビートを刻んでいる。 色分けされていて見やすい。とはいえ色遣いはとてもではないがセンスのあるものではなかった。 どうやら魔法少女物のようだった。 何故そんなものを余接が示したのか。 考えるまでもなかった。 ――ま、そりゃ疑問に思うような。 だってウユウはそのアニメ『クトゥルフ少女戦隊』のヒロインと酷似した外見をしているのだ。 どちらがモデルになったのかは分からないが、ともかくウユウら“クトゥルフ・ガール”とアニメ美少女は切り離せない関係にある。 とはいえそれが何故かはウユウにも分からないのだ。 ――えーと……うーん、ボケてない筈なんだけどな 思い出せない。 70歳の老女であることの影響を受けているのか、どうにも上手く説明できる気がしなかった。 そこを突っ込まれるとまた“おばあちゃん”と馬鹿にされそうだったが、 「なんて適当なアニメだろうね。今時あんなものが放送されただけで放送事故、いや放送事件だと思うよ。 作画・音響・シナリオ……どれをとっても駄目としかいいようがないよ」 「素人がそんな批評しなくてもいいだろう」 というかシナリオを数秒で判断するな。 「ことアニメにいたっては僕にも一家言あるよ。 なんたってアニメヒロインを務めたこともあるからね。 おばあちゃんはまだアニメ化されていないみたいだけど」 余接はそう言ってまた歩き出した。 ウユウは思わずきょとんとしてしまう。 メタメタな存在であるウユウだが、しかし突っ込まれなかったのだ。 「アニメファンには“キメ顔でそう言った”とかいうのが僕のキメ台詞みたいに思われているけど、それはにわかだからね。 原作の僕はそんなことを言わないよ。言う訳ないじゃないか。そんな黒歴史満載な台詞。 言ってたとしたらそれは誤植の類だよ。鬼いちゃんみたいなものさ」 代わりにそんなことを言って、彼女は街をかけていく。 例外少女と共に。例外の方が多い規則を抱えながら。 【クラス】 クトゥルフ・ガール 【真名】 例外少女ウユウ@クトゥルフ少女戦隊 【ステータス】 筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B 【属性】 中立・善 【クラススキル】 モエ A クトゥルフ少女表現型は表現される単位。 彼女らの活動領域であるマイクロバイオーム環境において、内部時間一キロモエが主観時間にして十五分に当たる。 ――要するに思考や活動が相対的に加速するのである。 本来ならば百モエ秒が十ミリ秒と表されるのだが、この聖杯戦争ではリミットが課せられているようだ。 【保有スキル】 変化 - 文字通り「変身」する。 元々は桂木憂優がマイクロバイオーム環境に反転/フリップすることで例外少女ウユウが表現される。 が、この聖杯戦争においては例外少女ウユウの名に縛られる為、憂優の姿を取ることができず機能していない。 戦闘続行 A+++ 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 このランクになると異常なまでの死ににくさを誇る……というか死んでも活動停止に到るまでがとにかく長い。 決定的な致命傷を受けた場合も、実時間にして一日は活動することができる。(死んでいるのは変わりないので治療はできない) ただし魔力切れの場合はこの限りではない。またこっぱみじんにされれば意味がない。 さっぱり D アニメの美少女のの属性。 この属性を持って表現された以上、何事にも寛容に流すことになる。 このスキルは外せない。 【宝具】 『電磁気に対する感作力<エレクトロソーム>』 ランク:B 種別:対ゲノム宝具 レンジ:1~30 最大補足:30 その名のごとく電磁気を操る力。 腸内のネットワークを駆使して電磁気を発生させることができる。 これ単体を武器に使うことができるほか、コンピュータのプログラムなどに干渉することもできる。 どの程度複雑なことができるかは不明だが、パチンコのプログラムは操作できた。 weapon 槍 自在に操ることができる。 クトゥルフ少女は高い身体能力を誇る。 大腸菌 自在に操ることができる。 地面をぬかるませ、物を沈めたりできる。 【人物背景】 5億4000万年まえ、突如として生物の「門」がすべて出そろうカンブリア爆発が起こった。 このときに先行するおびただしい生物の可能性が、発現されることなく進化の途上から消えていった。 これはじつは超遺伝子「メタ・ゲノム」が遺伝子配列そのものに進化圧を加える壊滅的なメタ進化なのだった。 いままたそのメタ進化が起ころうとしている。怪物遺伝子(ジーン・クトゥルフ)が表現されようとしている。 おびただしいクトゥルフが表現されようとしている。この怪物遺伝子をいかに抑制するか。発現したクトゥルフをいかに非発現型に遺伝子に組み換えるか? そのミッションに招集された現行の生命体は三種、敵か味方か遺伝子改変されたゴキブリ群、進化の実験に使われた実験マウス(マウス・クリスト)、そして人間未満人間以上の四人のクトゥルフ少女たち。その名も、究極少女、限界少女、例外少女、そして実存少女……。 クトゥルフと地球生命体代表選手の壮絶なバトルが「進化コロシアム」で開始された! これまで誰も読んだことがないクトゥルフ神話と本格SFとの奇跡のコラボ! 読み出したらやめられない、めくるめく進化戦争! (クトゥルフ少女戦隊 あらすじ) クトゥルフ少女の一人。さっぱりした性格で、紅い髪で槍を使う。 クトゥルフと仮に呼ぶしかない何かが起こした進化砲撃“クトゥルフ爆発”を防ぐため、最前線に投入されたクトゥルフ少女の一人。 実存少女サヤキ、限界少女ニラカ、究極少女マナミと共に“クトゥルフ”の進化コロシアムに挑む……前に爆殺された。(それから復活) 現実世界での姿は70歳の老女であり、彼女の大腸菌がプログラムに反応しパチンコで大勝することができた。 他のクトゥルフ少女と同様“マカミ”に惚れている。 【マスター】 斧乃木余接@物語シリーズ 【能力・技能】 『例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』 身体の一部を変化させて攻撃する。 「例外の多い規則(離脱版)」というのもあるが、ただのレバー入れ大ジャンプである。 【人物背景】 初登場は「偽物語」で月火を爆殺する。 人間に見えるが実は影縫余弦の式神。見かけによらずパワータイプで、自らの肉体を強化する技を使う。 忍野忍に対し「後期高齢者」呼ばわりするなど調子に乗るも、その後大変な目に遭わされトラウマとなってしまう。 容姿は不明だったが、アニメ化の際に予想以上に奇天烈な外見であることが判明した。 以降も定期的に出演を果たし、物語シリーズ・セカンド #65374;ファイナルシーズンでも活躍。 巻数が進むにつれ他のヒロインの出番が減る中、彼女はだけは後半になるほど出番が増えており、相対的に存在感を増した。
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ああ、あの愛の喜びに満ちた ◆EAUCq9p8Q. ◆◆◆◆ Ah (ああ) bello a me ritorna (あの愛の喜びに満ちた) Del fido amor primiero; (美しいときがふたたび、帰ってくれば) E contro il mondo intiero (あなたを、どんなことをしても) Difesa a te saro. (世間から守って差し上げますのに。) Ah (ああ) bello a me ritorna (あのやさしく暖かい愛が帰ってくれば) Del raggio ョtuo sereno; (あなたの心に) E vita nel tuo seno, (生命を) Ah―― Ah―― (ああ) E patria, e cielo avro. (故郷を、そして天国を) Ah…… riedi ancora…… (ああ、見出すことが出来るのでしょうに。) ◆◆◆◆ オペラ『ノルマ』の一幕、「ああ、あの愛の喜びに満ちた」。 「清らかな女神」と併せて親しまれる曲で、稀代の歌姫マリア・カラスに『世界一難しいアリア』と言われたソプラノ・アリアの傑作の一つ。 失われた愛へと向けた歌。 壇上の歌姫がその歌を選んだのは、きっと夕方に出会った少女のため。 歌姫は、苦もなく歌い上げ、喝采の中一礼を残し、舞台の袖へとはけていく。 その途中不意に立ち止まり、客席に顔を向けた。 彼女の視線の先には金髪碧眼の男性が一人と、彼がじっと見つめている少女が一人。 観客に少々のどよめきが広がるが、歌姫――ララは気にせず舞台を降りた。 いつもとは違う喧騒が起き始めた客席をすり抜け、少女へと近づいていく。 少女の側にいつのまにか立っていた珍しい格好の(現代風ではない格好の)男性が少女を庇うように一歩前に出たが、ララは彼ともまた少し見つめ合ったあと、彼越しに少女にニ三言を伝えた。 そして、観客たちに向かって騒がせたことへの一礼を残し、立ち去っていった。 ☆中原岬 岬が昨日と同じように劇場を訪れ自身の『何か』を満たすような歌に聞き惚れていたところに、その歌姫は唐突に降り立った。 観客の間を抜けて歩み寄ってきた歌姫はなぜか岬の前で立ち止まる。 「話がしたい。午後九時、裏の公園で」 岬が混乱する中、歌姫がセイバー越しに岬に伝えてきたのは確かにそんな内容だった。 岬のなにが歌姫にその言葉を放たせたのかは分からない。 岬にとってあの歌姫は、遥か天空に居るような人間だ。 とても綺麗で、輝いていて、美しくて、尊くて、そしてきっとすべての他人に愛されている。 岬とはきっと、生まれも、育ちも、何もかもが違う。 中原岬にはぽっかりと抜け落ちているものがある。それは、岬自身も自覚している。 でも、その足りないものは岬にとって大きな傷だ。触れられたくない場所で、見せたくないものだ。 あの歌姫は存在そのものが岬の傷口に余りあるほどの刃かもしれない。 正直に言えば、近づかれただけで身が凍るようだった。 緊張で心臓は馬鹿みたいに高鳴り、足は震えることも出来ない木偶の坊みたいに固まって、嗚咽がろくに回らず答えることも出来ず。 それでもすぐ隣に頼もしい姿があったから、なんとか声を掛けられた瞬間に逃げ出したりはしなかった。 歌姫が劇場から出て行った直後に岬も劇場を飛び出したが、それでも、逃げることはなかったのだから上出来だろう。 「どうする」 道を歩きながら、珍しく実体化したままのセイバーが、岬の方を見つめて問う。 昼に見せた勇者としての顔よりも、自宅で見せた勇者ではないほうの顔に近い。 服装が鎧ではないからかもしれないが、そうしているとただの青年のようだ。 「うーん、どうしよう」 昔の岬ならなんと答えていただろうか。逃げていただろうか、それとも待ち合わせに行くだけ行って、同じように身を凍らせながらただ苦笑いで過ごしていただろうか。 でも、岬はもう昔の岬ではない。今の岬には仲間がいる。 世界で唯一なにがあっても岬を裏切らない頼もしい仲間がいる。 世界で唯一、駄目で、寂しがり屋で、人間のクズみたいな岬と同じ位置に居て、足並みを揃えてくれる仲間が。 それだけで、少しだけ、心の中に溜まっていた溶かした鉛みたいな重くて粘っこくて黒い淀みは、軽くなってくれたみたいだ。 岬の心を知ってか知らずか、セイバーはやや神妙な顔で言葉を継いだ。 「俺は、あの歌姫が聖杯戦争参加者の可能性もあると思う」 「そっか」 「君はどう思う?」 「うーん……わかんないや。でも、悪そうな人には見えなかったかなぁ」 彼女の歌は、岬の心を掴んで離さない、美しい歌だった。 誰かを害する歌だったら、岬は泣いたりなんかしない。その辺に岬は、きっと、たぶん、敏感だから。 だから、岬の中では彼女は、一応は信頼に足る人物の最低条件は満たしていると思えた。 あとはもう少し話しやすい位置だったら考える必要はなかったのだが、そればっかりはどうにもならない。 少し考えて、隣を見る。セイバーはまだ神妙な顔をしていて、ちょっぴりおかしかった。 深呼吸を一度。更にもう一度。凍っていた体は随分ほぐれた。あれだけうるさかった鼓動も今はフォービート程度だ。 推定悪人ではない人物との約束を反故にするのは忍びない。 例え一方的であったとしても、約束は守るべきなのだ。 いつか、佐藤がそうしたように。(結局佐藤は最後の約束は結んでくれなかったが) セイバーがそうしてくれたように。 あの歌姫が岬になにを求めているのかは知らないが、約束通り会いに行くくらいはしても問題ない。 問題があるとすれば、家に帰り着く時間くらいだが…… 晩御飯は小劇場に来るまでに食べてきた。あとは、日付をまたいだりしなければ厳しくは言われないだろう。 この世界での叔父・叔母(NPCというらしい)に迷惑をかけることになるかもしれないが。 そもそも、元の世界でも佐藤との待ち合わせでも少し帰りが遅くなったことはあった。少しくらいは許してもらえる、と思う。 会う方に意を決し、色々と会うまでに必要な過程を整理し、一つだけ不安を覚えたので、隣に控えるセイバーに向き直る。 向き直る時に踏みしめた砂利の音はおもったよりも大きかった。 岬の口から出たのはその音に負けるか負けないかくらいの、いつもより少しだけ小さな声だった。 「セイバーさん、ここで折り入ってお願いがあります」 もう令呪は残ってない手を掲げ、願いを一つ綴る。 どうか、あの歌姫と会っている時に、私を置いて帰ったりはしないでください。 仲間が居なければ、岬はまた一人ぼっちだ。それはきっと、死んでしまうくらいに辛い。それだけは避けておきたい。 セイバーはその願いを聞いて、少し困ったような笑みで頷いたあとで、安全を確認し終えたのか再び霊体化した。 【D-3/市民劇場付近/一日目 夕方】 【中原岬@NHKにようこそ!】 [状態]魔力消費(小) [令呪]なし [装備]なし [道具]カッターナイフ [所持金]あまり使えないんです。お世話になってるから。 [思考・状況] 基本行動方針:なにを願っていたんだろう 0.寂しい 1.21時にララに会いに行く 2.悪いカバを警戒 [備考] ※ララ、悪いカバ(まおうバラモス)を確認しました。魔術については実際に目にしましたが理解が及んでいません。 【セイバー(勇者レイ)@DRAGON QUEST IV 導かれし者たち】 [状態]魔力消費(小) 霊体化中 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:岬の傍に居る 1.魔王を倒す必要がある……か? 2.できるだけ宝具の解放や長時間の戦闘は避けたい。 [備考] ※通常実体化した場合、村人のような格好(DQ4勇者のデフォ衣装)です。 ☆ララ 「やっぱりマスターだったか」 アサシンの声にぼんやり頷く。ララもまた、準備期間の終わりごろにこの劇場で見かけた彼女のことをよく覚えている。 声を上げるものは居た。拍手をするものは居た。だが彼女のような反応を示す人物は、たった一人しか居なかった。 季節からはちょっと外れた長袖も目立つ。まるで体の下になにか(例えば令呪か)を隠しているように見えた。 「私は」 でも、マスターかどうかなんてララには関係ない。 ララはあの少女がNPCだったとしても、同じように舞台を降り、同じように声を掛けたことだろう。 「私の歌で涙を流してくれたあの子と、もう少しだけでいいから、話がしたいの。駄目?」 「駄目じゃないが、なんだってそんなことをしたがるんだ」 少しの間を置き、自身の中であの子を初めて見た時から抱いていた思いを口にする。 「似てたから」 「似てたって、誰にだ。お前の話してた『グゾル』にか」 「……うん。あの子はグゾルに似てる。顔は違うけど、でも、似てるの」 あの少女はララにとって生涯で二人目の、ララの前で泣いてくれた人間だ。 グゾルはララと出会った時、ぽろぽろ涙をこぼしながらララの歌を聞いてくれた。 ララは人形だ。涙を流すことはできない。それでも、グゾルのくしゃりと歪んだ瞳から流れた涙の中に込められていたぬくもりは分かった。 あの少女の涙は、その時のグゾルの涙と同じだった。とてもあたたかい涙だった。 周りのすべてから迫害され、『化物』『亡霊』と呼ばれた恐ろしい人形に『何か』を見つけた、ちっちゃなちっちゃな子供の泣き顔と、その頬を伝う涙にそっくりだった。 彼女がグゾルでないことなど知っている。彼女にグゾルを見出したが正しいかどうかなんてララにはわからない。 それでも、涙を流す彼女の表情は、あの日、あの時のグゾルによく似ていたから。 もしかしたら、未だ不明のまま宙を待っているララの向かうべき先を知ることが出来るかもしれない。 アサシンは「そうか」と答え、空を見上げた。 ララも一緒に空を見上げる。既に夜の帳の落ちきった空には、まばらに星が散らされている。 星は一緒だ。はるか昔、八十年前と同じように、空で輝いている。 「あいつの側に居たサーヴァントは、俺より格段に強い。襲われたらそれまでだ」 「そうなるなら、そうなったって構わないわ」 星にでも放り投げるように口ずさまれたアサシンの言葉に、ララも空を見上げたまま答える。 あの少女がララを殺そうとするなら、あの涙の答えがそこに繋がるというのなら、きっとそれも、ララの求めていた答えの一端なのだろう。 アサシンからの返事はない。星空から視線をアサシンの方へ動かしてみれば、彼もまた、ララの方を向いていた。 その表情がどんな感情を示すのかは、ララの語彙では説明がつかない。 でも、きっと、ララが見てきた中で今の彼の顔に一番近いものは、同じように星空を見上げていた時のグゾルの表情だろう。 「今日は星が綺麗?」 「そうだな……今日は」 アサシンは再び星空を見上げ、一言、夜空に飛ばす。 「きっと怪人の笑い声がよく響く。こんな夜なら、襲われる前にひとっ飛びかもしれねえな」 かつんと一度、アサシンが腰掛けていたトランクに、彼のぴかぴかの革靴の踵が打ち付けられる。 丁度、踵の打ち付けられたタイミングで劇場のNPCが一人やってきて、ララと『ウォルター』に声をかける。 再び舞台に上がる時間がやってきたようだ。またもう少しだけ、ララは誰かのために歌を歌う。 NPCに導かれながら、ララははたと一番最初に伝えるべきだった言葉を思い出し、立ち止まった。 「ウォルター叔父様」 NPCの手前クラス名を伏せてその名を呼ぶ。 「なんだ」 「ありがとう。約束を守ってくれて」 返事のもらえなかった約束。だが、彼はその約束を忘れずにちゃんと帰ってきてくれた。 だが、当のアサシンは鼻を掻きながら「……あったな、そんな約束も」なんて呟くだけだ。 「忘れていたの?」 「どうだったかな」 アサシンの答えはこの街の月みたいに、おぼろに隠れたまま。 薄らぼんやりとした光に照らされた頬は白く、伏せられた瞳はバネ足ジャックとは違い優しい光を宿し。 「今からお願いすれば、もう一度聞いてくれる?」 「……どうだろうな、忙しいのさ。俺も」 もう月の光は雲に隠れてしまった。薄暗い闇の中では、アサシンの表情はよく見えない。 それでも、きっと、朝のときと同じように、心は伝わっている。それ以上言葉を続ける必要はない。 ララは歌姫として再び、舞台の上に戻っていく。 次の歌は、いつかの星空に似合う曲にしようと決めて。 【D-3/市民劇場/一日目 夕方】 【ララ@D.Gray-man】 [状態] 健康 [令呪]残り三画(イノセンスの埋め込まれた胸元に、十字架とその中心に飾られた花の形で) [装備] なし [道具] なし [所持金] 劇場での給金(ある程度のまとまった額。ほとんど手つかず)、QUOカード5,000円分 [思考・状況] 基本行動方針:やりたいことを見つける。グゾルにまた会いたい…? 1.中原岬と話してみる。 2.フェイト・テスタロッサが気になる。 [備考] ※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。 ※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂をアサシン経由で聴取しました。 また、「さいはて町」「実体化していたサーヴァント(木原マサキ)」「シルクちゃん主従」の情報を得ました。 【アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)@黒博物館スプリンガルド】 [状態] 健康、スキル『阻まれた顔貌』発動中 [装備] バネ足ジャック(バラした状態でトランクに入っていますが、あくまで生前のイメージの具現であって、装着を念ずれば即座にバネ足ジャックに「戻れ」ます) [道具] なし [所持金]一般人として動き回るに不自由のない程度の金額 [思考・状況] 基本行動方針:マスター(ララ)のやりたいことに付き合う。 1.観客たちから情報収集。岬との会合に備える。 2.街で情報収集をしながら、他の組の出方を見る。 3.『町』にもう一度行く必要は…… 4.『チェーンソー男』『包帯男』『さいはて町』に興味。 [備考] ※中原岬&セイバー(勇者レイ)、シルクちゃん&ランサー(本多・忠勝)を確認しました。 ※「フェイト・テスタロッサ」「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」キャスター(木原マサキ)についてある程度知っています。 ※さいはて町の存在を認知しました。町の地理、ダンジョンの位置も把握しました。 ※さいはて町の番人、『チェーンソー殺人鬼』を確認しました。『チェーンソー男』との類似を考えていますが、違う点がある事もわかっています。 ※さいはて町の入り口(D-3付近、C-4付近)を確認しました。もう一度行くと入り口があるかもしれませんし、ないかもしれません。 ※『阻まれた顔貌』はさいはて町内、かつマスターもしくはサーヴァントの視認範囲に入ったときのみ逆効果に働きます。が、ある程度看破能力は必要かもしれません。 BACK NEXT 038 楽園の裏では少女が眠っている 投下順 040 外へ 036 ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー 時系列順 041 崩壊ウォッチ BACK 登場キャラ NEXT 015 約束/まおゆう 魔王勇者 中原岬&セイバー(レイ) 046 願い・想い 027 尊いもの ララ 031 さいはて町に鐘が鳴る アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)
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楽園の裏では少女が眠っている ◆EAUCq9p8Q. ☆キャスター 「あなたには一度、会いたかったの。聖杯戦争とはまた別に」 最初に主催者―――プレシア。テスタロッサと卓を囲んだのはキャスターだった。 出会いがしらの彼女の一言は、キャスターにとっても興味を引かれる一言だった。 『運命』。彼女は確かにそういった。 キャスターのマスターである高町なのはのことを指したような口ぶりではなかった。 「それは、俺にか? それとも俺の逸話にか」 カマをかけるように問いかければ、プレシアはさして迷った様子もなくその手の内を晒してきた。 「あなたについて、調べさせてもらっているわ。遺伝子操作による『人間の生成』や『人格の形成』を行ったことがあるそうね」 奥に控える培養液の中の彼女の娘らしきものを一瞥し。 「懐かしい話だ。娘の蘇生を行う時に俺の逸話に行き当たったか。 だが、結果は伴わなかったようだな」 「そのようね」 その一言で思考を切り替える。 受け答えがまるで他人事だ。つまり、プレシアは人体の生成を行っていない。あそこに居る娘は人体の生成とは関係がない。 ただ、傍観者として木原マサキの逸話を探っている。 そこで思い出す。彼女の口にした『巻かなかった世界』という単語について。そして、フェイト・テスタロッサについて。 キャスターはフェイトについてすべてを知っていたわけではない。 そもそも、レイジングハートに収納されていた情報から読み取れたのは『フェイト・テスタロッサについて』とそれに関するいくつかのことだ。 プレシア・テスタロッサについてはなのは同様『事故で娘を失った人物』であり『フェイトと同姓である』ということしか知らない。 プレシアとフェイトの関係についても、いくらかの予想は立っていたが確信には至っていなかった。 だが、ここに至ってすべては確信に変わった。しかも、ある程度詳細な部分まで予測も立てられた。 プレシアにとってのフェイトはマサキにとっての八卦衆と同様だ。 必要だから用意した肉人形にすぎない。 違うところがあるとすれば、そこに情だの愛だのの下らぬ感情がはさまれているかどうか、というところだろう。 キャスターが『木原マサキの当て馬』として八卦衆を用意したように、プレシアは『死んだ娘の代替品』としてフェイトを用意した。 だが、そのプレセアは『この』プレセアではないのだ。 聖杯の知識を通してキャスターも理解していた。この世界にはいくつもの並行世界が存在するということを。 彼女の言葉とその前提に基づき考察するならば、人体生成を行ったのは別世界の……彼女の言う『巻かなかった世界』に分類されるプレシア・テスタロッサであるのだろう。 そして、その『巻かなかった世界』のプレシアが人体生成に失敗した結果がフェイト・テスタロッサであり、彼女が万能の願望器をめぐる聖杯戦争に身を投げ入れた理由でもある、と考えられる。 プレシアがキャスターを調べたのはなんらかのきっかけで『別世界の自身の娘の身代わり=フェイト』の存在を知り、人造人間の逸話を探り、造物主(クリエーター)たる木原マサキに行き会ったということ。 「それで、お前は何を知りたい? ここで俺の生体工学研究について詳細を聞いて、『巻かなかった世界のお前』と同じ道を進みたいわけではなかろう。 ならば何故俺に会おうと思った」 プレシアの目が、やや大きく広げられる。 そして、「そこまで予想がついているのなら話は早い」と話を進める。 「……思い通りの人間を作り上げた稀代の科学者(マギウス)、マサキ・キハラ。ひとつ聞かせてくれないかしら」 「なんだ」 「人間を作るとき、あなたが100を目指したとして……出来上がった人間は、100にどこまで近づいていたの?」 ぼこりと音がひとつ。 音とともに培養液の少女の口元からこぼれた泡は、大きな柱型の水槽を、上へ、上へと上っていく。 言葉を反芻し、意味を探る。 彼女の100がどこを指すのかが不明瞭だ。『人間』を作り上げれば100なのか、あるいは『人物』を作り上げれば100なのか。 それとも、人間も人物も超えた『個人』を作り上げれば100なのか。 「聞き方が悪かったわね。あなたの作った人間は、どの程度あなたの理想通りになったの? 例えば……『心』は、あなたの思い通りに作れるのかしら」 「無論作れるさ。簡単なことだ。DNAをちょいといじってやれば、人間なんて、思うがままの思考回路を与えてやれる」 「それは『思考回路』でしょう」 その一言で理解できた。 面倒な女だ、と思う。 彼女の中で答えは決まっている。キャスターがなんと答えようと、意にそぐわない答えには迎合することはないだろう。 「成程、心の複製、あるいは復元が可能ということか。 あの植物状態の娘が生前と同じ『心』を持てるか、というわけだな」 「……」 プレシアの眉間に浅く皺がよる。どうやら大正解らしい。 「確かに、俺ならば0から100を作り上げることは出来る。100に限りなく近づけることも不可能ではないだろう。 だが、もともとあった100とまったく同一の100を作るのは不可能に近い」 まったくの嘘だ。 『木原マサキ』の複製を生み出すことが可能なのだから、対象者に関する詳細な知識と相応の技術があれば不可能ではない。 だが、それをプレシアに伝えたところで彼女はまた別の前提を追加してキャスターへの問いを続けるだろう。 結局、彼女が欲しいのは『肯定』と『否定』だ。 この聖杯戦争を開くに至った彼女自身の道程の肯定と、そんな彼女の目の前に現れた彼女の道程を無意味にする存在(フェイト)の『否定』を欲しているのだ。 「……そう」 納得したらしい。 これで、彼女の言う『運命』は終了だろう。 「それで、どうだ? 『巻かなかったお前』の娘は気に入ったか?」 「……どうかしら。話してみないと分からないわ」 答えはきっと決まっている。そのくせこんな態度をとるのだから、まったく、面倒だ。 まあ、娘一人のために聖杯戦争ほど大掛かりな儀式を行うのだから、面倒な性格だなんて分かりきったことなのだが。 「話はそれだけか?」 「そうね、私的な話はここまで」 大淀と呼ばれてきた少女が運んできていた紅茶を一口含み、口元を抑え咳をひとつ。 プレシアは、長い私用を追え、ようやく聖杯戦争の管理者としての対応に取り掛かった。 「令呪はあなたのマスターに渡せばいいのかしら。だとすると、あなたのマスターを……」 「いや、お前の娘……違うな、『フェイト・テスタロッサ』に渡せばいい」 マサキが笑みを交えて返せば、紅茶を置こうとしていたプレシアの手が止まった。 「……あなたも、なにかの狙いがあって私の元に来た、ということ?」 ようやく本題だ。 マサキとしても想定外のことがややあったが、マサキがここに来た狙いは変わっていない。 それどころか、相手がプレシアと分かって更に付け込みやすくなった。 「お前がどういう意図で聖杯戦争を開き、どう動きたいのかはだいたい理解できた。 そして、お前になにが足りていないのかもな」 笑いがこぼれそうになるのを堪えながら、肘掛に肘をつく。 成功は確信している。彼女には、キャスターの申し出を断れない理由がある。 「協力者なら足りているわ。ルーラーが居れば、それだけでうまく回るようにできているから」 「クッ、裁定者が聞いて呆れるな。結局はお前の思い通りにこの聖杯戦争を進めるための手駒か」 ルーラーが管理者に加担している、というのも想定内だ。 でなければ、フェイトの捕獲令など出さない。 「だが、この聖杯戦争をお前の望む形で完遂するとなれば、ルーラーだけでは足るまい」 プレシアの眉がやや持ち上がる。食いついたのは一目瞭然だった。 「これは俺の推測でしかないが、お前は娘の復活のために聖杯戦争を完遂する必要がある。聖杯の有無は関係なく、だ。 だが、聖杯戦争に抗う者は必ず存在する。 命惜しさに戦闘から逃げ続ける奴、争いをやめろと喚きちらす奴、この町から抜け出す道を探す奴も居るだろう。 「……まあ、ただ聖杯戦争を完遂するというならば、特に問題はない。今朝のようにルーラーを使ってそいつらの始末を参加者に触れ回ればいい。 せいぜい一週間か二週間、決着が延びる。たったそれだけだ」 たったそれだけ。その一言は余程プレシアに刺さったらしい。 表情の少し変わった彼女にしっかりとした手ごたえを感じながら、キャスターは交渉の札をひとつ晒す。 「しかし、お前に残された時間はどうだ? この聖杯戦争が長引いたとして、用意した結末を見届けるのに足りるか? 『たったそれだけ』を乗り越える力が、今のお前には残っているか?」 フェイトたちが入ってきたときから何度か咳をしているのは、単にのどの調子が悪いわけではないだろう。 重く沈んだ司書室の空気にはかすかにではあるが血の臭いが残っている。口を覆ったプレシアの手元には、所々に赤黒い染みが残っていた。 聖杯戦争という自爆の可能性もある強攻策に打って出たのは、『それしか方法がないから』というわけではなさそうだ。 そこを見越し、そこに付け込む。 「……逸話以上ね」 「逸話に残る俺なぞ、所詮紙の上に書ききれた部分だけだ。 実物は逸話を容易く上回る。いつの時代の誰であろうとな」 冷めた目線がキャスターの目に向けられる。ようやく、プレシアはキャスターに向き合った。 成功の証だ。あとはキャスターが迂闊に手の内を見せなければそれでいい。 「見返りは?」 「特別なことじゃない。情報をくれればいい。俺の用意する条件を満たす参加者の情報をな」 「何のために」 「俺のためにだ。俺は聖杯はいらんが、どうしてもやらなければならないことがある。 そのためにはなによりも情報が要る。俺はサーヴァント、マスター問わず情報を集めなければならない」 「英霊の枠を超えて、もう一度冥府の王になるとでも言い始めるつもり? 言っておくけれど」 「『娘に害を与える可能性があるならば相応の対処をする』、か? 下らん脅しはよせ。なにか不都合があればそれを切るだけだろう」 それ、と言われてプレシアが右手を押さえる。 プレシアはキャスターを自由に出来る権利を有している。それを切られれば、キャスターは彼女に逆らうことは出来ない。 裸で踊れと言われれば裸で踊る。宝具を破壊しろと言われれば破壊する。自殺しろと言われれば自殺する。 事の絶対的決定権はプレシアが有している。その安心感が、キャスターとの同盟への後押しになる。 キャスターの思惑通りに、同盟を結ばせるための楔となる。 「俺がこの舞台の時計を進めてやる、お前の望む結末のために。 だから俺と組め、プレシア・テスタロッサ! 生きて娘に会いたいならば、俺を利用しろ!」 プレシアを見つめ、力強く告げる。 プレシアはやはり死人のような目でキャスターを見つめ返してきた。 「利用しろ……物は言いようね。あなたも私を利用したいだけでしょう」 「ギブアンドテイクだ。もっとも、まずお前が頷かなければギブもテイクも発生しないがな」 しばらくの沈黙。キャスターの中ではすでに、答えは見えている。 プレシアもまた、答えは決まっているはずだ。 「……話は分かったわ。ただ、あなたが私の協力者として適切かどうかは、まだ分からない」 「御託はいい。結果で示せと言うなら、さっさと指示を出せ」 再び沈黙し、プレシアはついにキャスターに対して一つの依頼を口にした。 「そうね……だったらあなたには、神様を一人、殺してもらおうかしら」 ☆フェイト・テスタロッサ 簡易的な防音魔術が張られているようで、フェイトの側からプレシアとキャスターの会話の内容はまったく分からない。 ただ、この聖杯戦争の管理者相手に不遜なままのキャスターと、どこか空ろな母が、流れる水のように会話を交わしているのはなんともおかしな光景に見えた。 キャスターが席を立ち、プレシアに背を向ける。必然的にフェイトと向き合うことになる。 「フェイト・テスタロッサ」 「何」 「喜べ。報酬の令呪はお前のものだ」 喜べ、と高圧的に言われても素直に喜ぶことはできない。 フェイトとしても身を切る思いでここまで来た。それで何もなしなら、キャスターへ抱いている複雑な感情は怒りで総括されていたことだろう。 「そして、約束どおり、俺もお前に協力してやる」 キャスターが持ちかけた『協力』とはとても分かりやすい物だった。 キャスターの手に入れた他主従の情報をフェイトとも共有するというもの。 「割に合わないか。この程度の『協力』では」 沈黙で答える。 強く期待していたわけではない。指名手配に近い形を取られているフェイトにとって、情報を交換できる相手が居るというだけでもありがたい。 それでも、心のどこかでは期待していたらしい。 キャスターも察していたと言わんばかりにフェイトと、フェイトの傍にただ立っているランサーを一瞥して言葉を続けた。 「お前の英霊は使い勝手があまり良くないだろう。 だが、お前はその英霊で勝ち続ける必要がある。果たして、それは可能か?」 キャスターにランサーの戦闘を直接見られた覚えはない。 だが、あのチェーンソーのバーサーカーとの戦いでおおまかな戦闘能力について知られてしまったらしい。 ランサーが戦闘には不向きと言うこと。宝具の解放には多大な魔力が必要であり、魔力を消耗している現状では発動に令呪が必要だと言うこと。 「だからと言って、お前の魔装一つで戦い抜くわけにもいかない。いつか必ず限界は来る」 自身の装備について考える。 バルディッシュは強い。だが、あの黒衣のアーチャーのような相手と一対一で勝てるほどではない。 これからフェイトは戦いを続け、いずれはあのアーチャーに並ぶような敵と戦う時が来る。 その時にランサーとバルディッシュで勝てるのか。 おそらく不可能だ。キャスターの言うように、勝てない相手とぶつかることが絶対に起こる。 そういった敵とどう戦うか。いつかは考えなければならないことだ。 暗い未来を示されて影の射したフェイトに対して、キャスターは得意な表情でこう宣言した。 「喜べフェイト・テスタロッサ。お前の装備を俺が強化してやる」 まるで考えて居なかった協力の申し出に、一瞬反応が遅れてしまう。 息を呑んだせいで言葉がうまく紡げない。 「強化……どう、やって」 「クク、なに、俺は生前名の知れた科学者でな、そういった類の武器を扱うのも得意なんだ。 お前が望むのであれば、お前が聖杯を得られるように『協力』してやる。そう約束したはずだ」 キャスターの逸話は知らない。何が得意かも、どういう人物かもフェイトにはまったく想像がつかない。 だが、身のこなしや戦闘に積極的ではないことから単なる魔術師ではないのではないか、というのはフェイトの頭にもあった。 もし、科学者だというのなら、その点については納得がいく。 そして、もし本当に科学者であるならば、英霊として記録されているほどの科学者であるならば、バルディッシュの性能を向上させることも容易だろう。 「更に速く、更に鋭く。簡易の魔力路も搭載し、お前にとって、そのインテリジェンス・デバイスにとっての『最強』を作り上げる。 お前が望むのであれば人を超え、音を超え、光の速度まで対応できるよう、俺が『エンチャント』してやる」 「それって……」 圧倒されるフェイトに、キャスターの言葉が放たれる。 「―――“雷”のバルディッシュだ」 その一言は、まるで雷鳴のように、フェイトの中で木霊した。 あまりに予想からかけ離れた協力の要請に、フェイトはただただ波にもまれるような心地でキャスターを見つめるしか出来ず。 そうやって十数秒何も言えずに居ると、キャスターの方(珍しく)が気を利かせたのか、こう続け始めた。 「とはいえ、諸手放しで信用はできんだろう。 もともとは敵同士だ。俺が何かを仕込むかもしれない、という懸念も捨てきれまい」 言われるとおりだ。 魅力的な協力の提案ではあるが、キャスターの得体が知れないことに変わりはない。 フェイトに報酬の令呪の譲渡をしたとはいえ、罠にはめるつもりである、という可能性もなくはないのだ。 「お前はいずれ俺のマスターと会い、俺の手が加わった装備の力を見ることになる。 そして、俺のマスターと会えばおのずと分かるだろう。俺が真に聖杯を欲さない……いや、そもそも『欲せない』ということが。 その時に決めればいい。俺の手による改良を受けるか、否か」 またしても、真意の分からない言葉が放たれる。 フェイトが出会えば理解できるとはどういう意味なのか。 言葉の通りならば聖杯を望んでいないということだが、ならばキャスターのマスターの装備の力を見る……つまり、彼のマスターが戦闘に巻き込まれると何故分かるのか。 そして何より。 「……何故」 「なに? 「何故、私とその人が出会うと言い切れるの」 「何故……何故、か。クク……」 キャスターは口の端を歪め、そのままフェイトに背を向けて歩き出す。 そして、堂々とした背中に自信すら感じさせる声色で、こう言い残した。 「確信しているからだ。俺が、そうなると」 丁度のタイミングでエレベーターのドアが開き、キャスターを飲み込む。 まるで狙い済ましたように。よく出来た演劇のように、綺麗にこの舞台の上から退場した。 本当に、得体の知れないキャスターである。 「……彼が生前著名な科学者であったというのは本当よ」 意外な声が、意外な言葉で沈黙を破った。 振り返れば、声の主である母は、まるで『何も言っていない』とそらとぼけるように紅茶のカップを傾けていた。 「……少し、時間が経ちすぎてしまったわね。 遅くなってしまったけれど、夕飯でも食べながら、話しましょうか」 【D-2/図書館 地下司書室/一日目 夜】 【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】 [状態] 疲労(中)、困惑、ストレス、魔力消費(極大)、右肩負傷(中) [令呪]残り三画 [装備] 『バルディッシュ』 [道具] [所持金]少額と5000円分の電子マネー [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争に勝利する 1.プレシアと食事……? 2.“雷”のバルディッシュ…… [備考] ※キャスター(木原マサキ)と念話が可能になりました。 ※キャスター(木原マサキ)からバルディッシュのエンチャントを申し出られました。返答は保留中です。 【ランサー(綾波レイ)@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)】 [状態] 健康、霊体化中 [装備] [道具] なし [所持金] なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに従う ☆キャスター 『殺してほしい神様』。 その情報は、マサキにも心当たりのあるものだった。 曰く、町の裏にもう一つの町を作るエクストラクラスのサーヴァント。キャスターが今朝丁度行きあったシチュエーションだ。 そのサーヴァントは強い力を有していながら聖杯戦争に消極的で、マスターともども自身の『町』に引き篭もっているばかりだとか。 ルーラーが調べたと言っていたが、それが本当なら確かにプレシアにとっては目の上の瘤でしかない。 キャスターに与えられた任務はそのエクストラクラス・エンブリオと呼ばれているサーヴァントの討伐だ。 キャスターもあの町には丁度用事があった。渡りに船とはこのことだ。 「アリシア・テスタロッサ……」 さらに、キャスターがもぎ取ったのはプレシアとの協力体制だけではない。 会話を通して、会話には上がらなかった情報もいくつか入手できた。 大きな収穫はアリシア・テスタロッサの蘇生方法についてだ。 あそこまでこだわりを見せている以上奇跡を用いた単なる蘇生というわけではない。 十中八九『聖杯またはそれに近い力を在りし日の魂をトレースする』あるいは『魂を復元する』という方法が本線と考えられる。 「……クク」 妙案が浮かんだ。 聖杯を踏みにじり、奇跡を汚し、『木原マサキ』が冥府の王として君臨する意外の策が。 「あるじゃないか。とびきりの『抜け道』が!」 魂なき少女、アリシア・テスタロッサ。 この聖杯戦争の結末は、肉体のみがこの地に残された彼女の復活。 彼女の『魂』……つまり、人としての『核』が外部で作られて彼女の中に注ぎ込まれるということ。 その魂の中に……『魔力核』に対してキャスターのエンチャントを用いて『木原マサキ』を刻んだなら? 勿論、聖杯戦争中や聖杯戦争終結直後は彼女が『木原マサキ』であるそぶりは一切見せない。 だが、プレシアの死後アリシア・テスタロッサは『木原マサキ』として覚醒し、次元連結システムを用いて世界を冥府に変える。 思いつく限りでこの聖杯戦争の最悪にしてキャスターの求める最高のエンディングだ。 「クックック……ハッハッハッハッハ!!」 何も約束は違えていない。 キャスターがアリシアを害することはない。アリシアは問題なく復活し、健やかに暮らし続ける。 ただ、アリシアは目覚めるだけだ。 長い夢から覚めるように、ある日突然、木原マサキとして。 プレシアが死ぬまでは、きっと理想的なアリシアとして暮らし続ける。不可能だろうとそう仕組む。 そして約束を果たしたあとでようやく、『木原マサキ』の冥王計画は完璧な形で現世に蘇る。 無論、アリシアが生きながらえられなかった時のために幾つかの保険は必要だろうが、最も理想的な形はこれ以外にない。 「踊れ踊れ。貴様の存在もまた、冥府への道を飾る石に過ぎん」 じわじわと、キャスターのための駒が手中に集まってきている。 “天”のレイジングハートを持つなのは。彼女の目的であるフェイト。 そして二人に対して念話を送ることで、彼女らの遭遇を操ることの出来る自分。この二人を利用して、多少は思い通りに戦闘を起こすことが出来る。 プレシアとの密約。情報の譲渡を賭けた依頼。アリシアを除く『木原マサキ』の予備を効率よく探すことが出来る。 そして、楽園の裏で眠り続ける少女、アリシア・テスタロッサ。彼女の存在という大きな情報は、きっと『木原マサキの予備』以上の意味を持つ。 時計を進めよう。冥王計画の時計を。 少女たちの地獄を抜け、醜い大人は仮初の天国に到達し……そして、その後に世界は冥府に変わる。 カウントダウンは始まった。刻まれていく足音は、まず楽園を目指す。 【D-2/図書館前/一日目 夜】 【キャスター(木原マサキ)@冥王計画ゼオライマー(OVA版)】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:冥王計画の遂行。その過程で聖杯の奪取。 1.可能な限りさいはて町を偵察。 2.予備の『木原マサキ』を制作。そのためにも特殊な参加者の選別が必要。アリシア・テスタロッサを奪うのも一興。 3.特殊な参加者が居なかった・見つからないまま状況が動いた場合、天のレイジングハートを再エンチャント。『木原マサキ』の触媒とする。 4.ゼオライマー降臨のための準備を整える。 5.フェイトから要請があればバルディッシュをエンチャント。 6.なのはの前では最低限取り繕う。 [備考] ※プレシアの願いが『アリシアの蘇生』であり、方法を聖杯に似た力を用いた『魂の復元』であると考察しています。 同じく、その聖杯に似た力に干渉すれば復活するアリシアを『木原マサキ』に変えることが可能であると仮定しています。 ※フェイトとの念話が可能になりました。これにより、好きなタイミングでなのはとフェイトをぶつけることが可能です。 また、情報交換を約束しました。ただし、キャスターが事実を話すとは一切約束していません。 ※プレシアから個人的な依頼を受けました。 内容:さいはて町の破壊およびさいはてのサーヴァント『エンブリオ』の抹殺。 達成条件:エンブリオの魔力が座に戻ったことをルーラーが確認する。 期限:依頼達成は二日目16時まで。報酬受け取りは図書館司書室にて二日目20時まで。 報酬:マサキの望む条件のマスター、あるいはサーヴァントの情報。 二日目終了時点でエンブリオが生存していた場合、キャスターとプレシアの司書室での一切はなかったこととなる。 また、どのタイミングにおいても、キャスターがアリシア復活を妨げる可能性があると判断した場合、プレシアは令呪をもって彼を自害させる。 BACK NEXT 037 思い出が窮屈になりだしたこの頃の僕らは 投下順 039 ああ、あの愛の喜びに満ちた 時系列順 040 外へ BACK 登場キャラ NEXT 034 もう一度、星にひかれ フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ) 049 重なる二つの願いなの キャスター(木原マサキ) 044 アリス・イン・ザ・アビインフェルノ・ジゴク -不死戯の国のアリス- プレシア・テスタロッサ 049 重なる二つの願いなの
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1.悪魔との契約によって魔法の力を得た少女のこと 魔法核と呼ばれる媒体に願いを込めた時から、少女達はごく限定規模での願望実現能力(=魔法)を使えるようになる。 彼女たちはその力で、 華やかな様装に着飾り、 言葉を用いずとも想いを伝え合い、 獣にも鳥にも負けない力の強さと身の軽さを持ち、 どんな大怪我を負って死にかけてもたちどころに治ってしまい、 ここに欲しいと思うだけで何もないところから何かを創り出すことができる。 そして、願いを模しただけのまがいものを武器に魔法少女は戦い続ける。 なにと?――魔法少女と。 その身に宿す魔法核を奪い合い、本当に願いを叶えるための、血で血を洗う戦いが、彼女たちを待っている。 2.本作における主人公達。
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前夜祭 ◆PatdvIjTFg ◇ "What are little girls made of?" (女の子って 何でできてるの?) "What are little girls made of?" (女の子って 何でできてるの?) "Sugar and spice" (砂糖とスパイス) "And all that s nice," (それと 素敵な何か) "That s what little girls are made of." (そういうものでできてるよ) 「素敵なものって何かしら?」 「きっと、私も貴方も持っていないものよ」 「……それを、私は欲しいわ」 ◇ やけに小学生の死亡記事が多いな――と、リビングルームで新聞を読みながら少女は考える。 それも、いやに猟奇的で、際限ないほどに絶望的だ。 未だ見つからぬ同一犯による連続殺人、小学生による猟奇的殺人、屋上からの落下事故。 なんて――絶望的なんだろうか、そう考えると少女――『江ノ島盾子』の本能が疼く。 「メ、メ、メ、メシウマァ~~~~~~wwwwwwwwwwwwwwなんつて」 「こんなことしてる場合じゃないのに…………早く……犯人に会わなきゃ…………」 ころころと自身のキャラクターを入れ替えながら、江ノ島盾子は記事を読み返す。 この事件群にはあからさまに、絶望的に隠す気が無いんじゃないかってぐらいに、黒幕がいる。 ただし、その黒幕を発見することは――私様以外には相当に難しいだろう、と江ノ島盾子は考える。 少々の差はあるが、この事件は江ノ島盾子が元の世界で起こした事件に似ている。 動機と手段、そして密閉した空間――生徒会連中が死んだ時のように、この小学生たちも、また。 なんて、絶望的なのだろうか。 「私の計算上、犯人は小学校にいることは間違いありません」 「にょわ~☆それも、聖杯戦争のためっていうよりも~~ただの趣味だにぃ☆」 「うぷぷ……それにしても酷いなぁ、そういうことならボクを誘ってくれればいいのに」 「というわけでアタシ、放課後に小学校行くけど、アンタも来るよね、ランサー」 ◇ 「放課後はごめん!今日は用事あるんだ」 小学校――三年生教室。 それぞれが仲良しのグループ同士で固まりながら、他愛のない会話を行っている普通の教室。 最近の猟奇事件は恐怖の象徴であると同時に絶好の話の種である、誰もが自分は事件に巻き込まれないと信じきっている。 いや、信じなければならないのだ。そうでなければ、この教室は毎日がしめやかな葬式会場へと変貌を遂げる。 明るさを装い、平凡を装い、そして何とかやっている教室である。 だから、日常は続く。 彼女もそんな日常を維持するグループの一人である。 茶色をした明るい髪色、その髪はツインテールにまとめられ、顔には困ったような笑顔を浮かべている。 人目を引く――明るい可愛らしさ、『高町なのは』である。 「それに、犯人がまだ見つかってないでしょ、危ないよ」 「……うん、そうだね」 陰が差す友人の表情に、高町なのはは焦燥感に駆られる。 この事件もまた聖杯戦争によって引き起こされたものならば――早く解決しなければならない。 心臓が早鐘を打つ。 この問題を解決できるのは、自分しかいない。 ◇ 自分だけであると、互いに思い込んでいる。 四年生教室――『木之本桜』と『大道寺知世』は互いに、自分だけが剣を持っていると思い込んでいる。 いや、正確に言えば違う。 自分だけが聖杯戦争の参加者であると思い込みたい。 一般的な小学生ではない別の顔、カードキャプターとしてのさくらを大道寺知世は知っている。 危険もあるが、それを受け入れて応援してくれている大切な友だちであることを木之本桜は知っている。 けれど、聖杯戦争は人が人を殺す。 易易と秘密を開示出来ない。 聖杯戦争に人を巻き込むということは地獄への道連れを作るということであるから。 それでも。 「知世ちゃん……」 「さくらちゃん……」 ごくりと唾を飲み込む。 チャイムが鳴る。 言おうとした言葉が生まれるまでもなく、チャイムによって掻き殺される。 「ううん、なんでもないよ」 「ええ、私もですわ」 お互いがお互いに、一人でそんな危険なことを行っていると知れば見過ごせないから。 例えNPCであろうとも、大切な親友であることを知っているから。 だから、二人は寄り添って何も言わない。 言えない。 ぎゅうと、さくらが知世の手を握った。 その手を知世は握り返す。 僅かに震えていた。 ◇ 『輿水幸子』というアイドルが、自分の通う中学校にいることを『山田なぎさ』は初めて知った。 ショートカットで、自分のことをボクだなんて言う奴で、自分のことをカワイイと言い張って憚らない変なアイドルで、でも彼女は『海野藻屑』じゃない。 そんなことは知っていたけれど、それでも廊下で初めて輿水幸子とすれ違った時、もしかしたら彼女は海野藻屑じゃないのかと思った。 でも、彼女の両脇には『白坂小梅』と『星輝子』というアイドルがいて、 だから、聞こえる方の耳を私に向けている藻屑は、ここにはいないんだな、と思って。 無性に悲しかった。 「ま、落ち込んでばかりもいられないけどね」 気を張り直す、持たされた実弾はあまりにも現実離れで、まるで夢に撃ちこんでいるかのようにふわふわとしているけれど、それが私の選んだ実弾。 砂糖菓子の弾丸にもう一度会うための弾丸。 山田なぎさにもう一度会うための弾丸。 返り血を浴びたアーチャーの姿を見ながら、『海野藻屑』は考える。 何人殺したんだろうか、どれほどぼくは山田なぎさに近づけているんだろうか。 安楽椅子に身を委ねながら、届きそうな程に近い空に手を伸ばしてみる。 どれだけ伸ばしても空は掴めない。 海野藻屑は、人魚姫の夢を見ていた。 魔女と契約して、山田なぎさに会うための足を手に入れたけれど、 山田なぎさは自分を助けてくれた人魚姫に会うために、魚の尾びれを手に入れる夢。 何時までも何時までも会えないまま、お互いが泡になって消えてしまう夢。 とても悲しくて、でも夢だ。 きっと、夢だ。 ◇ 夢を見ていました。 とても、とても、楽しい夢を。 賀茂さんが帰ってくる夢。 狐に生まれ変わって北海道から、自分の家まで一生懸命走って帰ってくる夢。 夢の中で私は普通の女の子で、誰も死んでいなくって、何時までも楽しく暮らす夢。 駄目ですよね、私がそんな夢を見たら。 でも、許してください。 夢を見ただけなんです、そんなとても楽しい夢を…… 『桂たま』が眠りから目を覚ますと、変わらない現実が広がっていた。 何一つして変わってはいないし、何も終わってもいないし、何も始まってはいない。 桂たまは一人のままだ。 ◇ 一人は寂しい。 そんな当たり前の事実を、『輿水幸子』も『白坂小梅』も『星輝子』も知っている。 だから、三人で集まって昼食を食べていた。 「フフ……今日もきのこ、明日もきのこ、明後日もきのこ、美味しいぞきのこ」 星輝子はきのこの炊き込みご飯をゆっくりと咀嚼し、輿水幸子は 「見てください、料理も完璧だなんて流石カワイイボクですね、食べてもいいんですよ?」 などと、自分の作ったお弁当を皆に見せびらかし、 二人のそんな様子を見ながら、白坂小梅はホットドッグを食べながら微笑んでいる。 「幸子ちゃん……輝子ちゃん……今度、映画……見に行こうよ……」 「いいね……マタンゴ2015……見に行こう」 「ホ、ホラー映画は駄目ですよ!映画館の人がボ、ボクのカワイさに夢中になって、映画どころじゃなくなっちゃいますから!」 「フフ、きのこは友だち……怖くない」 「うっ、ボクはカワイイ子ですから」 「映画じゃなくても……い、いいけど……でも……私たちで……何かしたいな」 「私たち……」 「ボク達……」 「うん……」 「いいですね!」 思い出が欲しい。 聖杯戦争はきっと辛いけれど、それでもここにいる他の二人は偽物かもしれないけれど、 それでも、友情は本物だから。 だから、辛いだけじゃなくて、楽しい思い出を残したい。 ◇ 何一つ、残されていない。 だから、取り戻しに来たのだ。 『大井』を大いに驚かせたものは、自身に支給された高校の制服ではなく、自身の学年である。 流石に、高校一年生からやり直すことになるとは予想だにしていなかった。 だが、些細なことである。 大手を振って、高校に通えるというのはありがたい。 攻勢に打って出るにあたって、欲しいものは何よりも情報である。 ならば、それを収集するに相応しいのは人の集まる場所だ。 教育機関はそれに最適だ。 元の世界の艦娘に似た自分の友人を名乗る女子高生達と会話し、つまらない授業を受け、学食で昼食を食べる。 あまりにも平穏な世界。 きっと、北上さんが死なない世界。 聖杯を手に入れた暁には、この世界で北上さんと暮らすのも悪くはないのかもしれない。 そんなことを考えていると、声を掛けられた。 「すいません、隣良いですか?」 「どうぞ」 「どうも~いいってさ絵理ちゃん」 「ありがとうございます」 女子高生の二人組、見覚えはない。 友人なのだろうか、一人はまさしく美少女といった容姿をした少女で、もう一人はボブカットの全体的にふわふわとした少女だ。 しかし、大井にはどうでもよいことである。 ◇ 『雪崎絵理』が『玲』に声を掛けられた理由は非常に些細なことであるため、どうでもよいことである。 重要なのは、そこから何となく一緒に昼食を食べようという話になったことだろう。 たまたま二人分席が空いていたテーブルに座り、絵理はラーメンを玲はドーナッツを、これが昼食なのかと疑われるほどの量を注文していた。 「そういえば絵理ちゃん?」 「なに?」 「『火吹き男』って知ってる?」 食事も一段落して、絵理はオレンジジュースを、玲は更に注文したホットスナックをぱくつきながら、昼休みが終わるまでとりとめのない雑談へと移行する。 「初めて聞いたかな」 「そーなんだ、もっと有名だと思ってたよ。 それで、火吹き男って言うのは街中をぴょんぴょん跳ねて、火を吹くおばけなんだってさ~」 「チェーンソーを持って?」 「いや、チェーンソーは持ってないけど」 「ごめん、何でもない」 どうやらチェーンソー男とはまた別に怪人が出る街らしい、あるいはその男こそが聖杯戦争に挑むサーヴァントなのだろうか。 「でもさ、スゴイことだよね。殺人が起こって、バネ足はぴょんぴょん跳ねて、それでもわたしたちはこの街で平穏無事に生きてる」 「きっと」 絵理は一気にオレンジジュースを飲み干して、言った。 「玲ちゃんが襲われると悲しい人が怪人と戦ってるんだよ」 「結構素敵な考え方だね」 ◇ 「結構、素敵なシステムだね」 江ノ島盾子は外で遊ぶ小学生から、小学校の噂話を不審者として通報されないように聞き取った。 その結果、掴んだものはあまりにも陳腐な、嫌いな人間を呪い殺す儀式――『死神様』である。 猟奇殺人が起こってこの儀式が生まれたのか、この噂が先にあって猟奇殺人が起こったのかはわからないが良い手段である。 殺されたのは死神様で呪われたからだ、それが真実であろうと嘘であろうと、人の死というセンセーショナルな事実は噂を真実として拡散させる。 そして、一度成功したと扱われた儀式は、きっと二度目、三度目を誰かが行い――そして、誰かが言えばいい、アイツが死神様を行った。 それが真実であれ、嘘であれ、発生するのは正義の私刑、他愛のない勧善懲悪。 きっと、見えないところでこの小学校は絶望的に病んでいるだろう。 「じゃあ、アタシもちょっとやってみようかな。死神様」 『江ノ島盾子』の手にかかれば、小学校への侵入など容易い。 と言っても、こっそり忍び込んだだけのことであるが。校舎の裏、動物の墓は簡単に見つかった。 しかし、教師が見張っている。 「…………やはり、上手く行きませんね。人生は何時だって絶望的です。 面白く無いです、これじゃあ小学生も呪い殺したいときに呪い殺せないじゃないですか、悲しいですね……」 身体からイメージとしてのきのこを生やしながら、小学校への侵入が無駄に終わったことを知る。 「てことはぁ~小学生は深夜に学校に侵入してまで呪ってるのかな?うわぁ、絶望的に陰鬱!」 「教師が見張りを行うことで、その噂の真実性を補強し、教師のいない深夜にしか儀式を行わせないことで、より『死神様』は神秘性を帯びる、中々やりますね」 「……アタシ、かなり犯人に興味湧いてきた」 ◇ 「やはり、あの娘に興味があって?」 「あっえっ……と……はい」 ある歌姫が切っ掛けとなって賑わっている西洋風の市民劇場。 もうとっくに時計の針は夜を指している。 チケット売り場で突然に係員に話しかけられた『中原岬』はどもりながらも何とか答えることが出来た。 別に歌に興味があったわけではない、しかし己のサーヴァントが引きこもってばかりいないで外出した方が良いと言うので、 なるべく同年代の人間が来なさそうな場所を選んだに過ぎない。 もっとも、その判断は誤りであった。 会場へと進む客の流れには少なくない数の少女の顔がある。 だが、今更引き返すこともできない。 覚悟を決めて、中原岬は観客席へと進む。 ステージ上の少女が、優雅に一礼。 そして、歌唱(クライ)歌唱(クライ)歌唱(クライ) 歌詞の意味など、一単語も理解できない。 それでも、中原岬は気がつくと涙を流していた。 自分が人生の中で取り零してきたものの一つは、この歌なのだと思った。 ◇ 市民劇場の控室。 少女のための歌姫――『ララ』は鏡を覗きこむ。 そこに映るものは己の躰ではない、自分と同じく人形でありながら祖を違える者。肉体を持たぬ人形。究極の少女の器。 ルーラー『雪華綺晶』が映っている。 ぱち。 ぱち。 ぱち。 ぱち。 「素晴らしい歌でしたわ、ララ様」 「ありがとう……ルーラー」 「まぁ、ルーラーだなんて他人行儀な言い方はおよしになって。 私も貴方もお人形、結局は歌い、踊る快楽人形。生まれも育ちも違っても、お人形仲間ではありませんか。 ねぇ、ララ様。私、貴方と一緒に歌いたいわ、いいでしょう?」 「ええ、いいわ……お人形さん、何を歌いましょう?」 「女の子のための歌がいいわ」 ◇ 「『フェイト・テスタロッサ』様……貴方が欲しいものは?」 「欲しいものは……母さんの、幸せ」 己のサーヴァントにも問われたものを、フェイト・テスタロッサは再び答える。 そう答えるたびに、胸をじくりと蝕むようなものがある。 それでも、構わない。 それこそが真実の望み。 フェイト・テスタロッサの祈り。 月明かりの下、窓ガラスに移ったルーラーはフェイトに上記の問いを投げかけた。 何故と問いかければ「マスターのメンタルチェック」と嘲笑を浮かべながら答える。 無意味と避けようとすれば、この質問に答えてくれれば、フェイト・テスタロッサにとって重要な情報を与える、と。 故に、フェイト・テスタロッサは答えた。 何故か湧いてくる悲しみに堪えながら、答えた。 「では、フェイト・テスタロッサ様……貴方に重要な報告がありますわ。 日が変わると同時に、貴方はルーラーの権限を用いて、マスター全員に狙われるように仕向けられます」 「…………え」 どういうこと、と聞き返す間もなく、ルーラは消えていた。 夜闇が、フェイトの体を侵食するかのように取り巻いていた。 ◇ 夜はニートの味方だ。 太陽は有職者を照らすためにあるが、夜の闇は無職を包むためにある。 そんな、どうでもいいことを考えながら、自室にて『双葉杏』はPCを起動する。 聖杯戦争は最悪だが、この状況自体は悪いものではない。 働けば働くほどに死に近づくのだ、むしろ働かない方が正しいと、世界がニートを肯定している。 だから、何時か来る戦いのことをなるべく考えないように器用にやるしかないのだ。 そんなことを考えていながらネット対戦ゲームを行っていたら、自キャラが完全敗北したのでふて寝を決め込むことにした。 眠れない。 『諸星きらり』は今日も眠れなかった。 早々に結果が出るだなんてことは、全く思っていなかった。 それでも、月に手を伸ばしているかのようにまるで手がかりが掴めない。 あの学校で諸星きらりに刻み込まれた呪縛は、諸星きらりの劣等感を煽り立てる。 バーサーカーのために、何も出来ていない自分が嫌になる。 それでも、自分を奮い立たせる呪文のように心のなかで唱える。 「ハピハピ……するにぃ……」 アイドルであることすらも忘れてしまえば、自分の心は死んでしまうだろう。 ◇ 初めての戦いは、もう自分の心のようなものは死んでしまったのだなぁ、と思う結果にしかならなかった。 相手は同じランサーのサーヴァントで、マスターはか弱い少女で、 マスターの方を狙わせたら、敵のランサーは防戦一方になって、あっさりと死んだ。 逃げる少女を見ても、特に何も思わなかった。 初めての戦いは、『シルクちゃん』にとって、そのような思い出す価値もないものだった。 ◇ 結局、死神様が心に引っかかったままであったので、『江ノ島盾子』は小学校に忍びこむことにした。 時計は11時を指している、守衛はいるだろうが、少なくとも死神様とやらを試すのに邪魔は入らないだろう。 校舎を囲う壁を助走をつけて跳び越え、小学校内に侵入する。 校舎の裏、動物の墓を阻むものは何も無い。 死体を13個揃えて、死神様とやらを3回ぐらい呼んで願えばいいとのことなので、虫の死体を用意する。 本当は、大切に飼っていた猫をハンマーで潰した死体を捧げるのが一番良いのかもしれないが、それは面倒臭い。 現段階ではある手札で勝負するしかないのだ。 「死神様、死神様、死神様」 「誰も殺さなくていいから、アタシとお話しない?」 夜の静寂に包まれたまま、校舎の裏には何の変化も訪れない。 ただ、無関心そうに月光が動物の墓に降り注ぐのみ。 他愛もない陳腐な終わり、ありきたりなガセ。 「こんばんは」 「絶望的に……時間の無駄…………じゃない……みたいですね」 ではなかった。 江ノ島盾子の背後から、少女が現れる。 闇の中でもはっきりとわかる、白。 まるで、天使のような少女。 「死神様にごようですか?」 「うぷぷ……違うよ、僕が話したいのは君だよ」 「あ、自己紹介してないね。アタシ、江ノ島盾子。趣味と特技は絶望。最近は生徒会を殺しあわせて、愛する人間ぶっ殺しました。よろしくね」 「ご丁寧にどうも、『蜂屋あい』です」 「この時間帯だと誰かに補導されるし、明日の放課後にでもお話でもしましょうよ。てかLINEやってるw?」 「LINEはないですけど、ケータイはもってますよ」 「じゃあ、メアド交換しよっか」 「QRよみこみますね」 「はいはい、ところで……アンタ何人殺した?」 「……わたしはだれもころしてないですよ」 「ふーん……じゃあ、アンタのお友達の死神様は何人殺したの?」 「……死神様にねがっても、人がしなない…………だから、まちきれなくなって、あせって、ころしちゃう、こまった子って、けっこう多いんですよ」 「へー、もう手を下す必要すら無くなったんだ。スゴイね」 校舎の裏、天使のような笑みを浮かべて、絶望と悪魔が言葉で踊って、前夜祭の話は終わり。 ◇ 私は運命(Fate)を否定する――と、彼女は言った。 ◇ ――愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません。 あの詩人の言葉が蘇る。 愛する娘が死んで、彼女は何度命を絶とうとしたことだろう。 それでも、保存液の中の死体はまるで眠っているかのようで、今にも目覚めそうで、だから、彼女は死ぬことが出来なかった。 娘が起きた時に、誰も待っていなければ――きっと、彼女は寂しがるだろうから。 蘇生のための研究に没頭する狂気の魔導士は、そうやって保存液の中の娘を見る時だけは母親の顔をしていた。 ――愛するものが死んだ時には、それより他に、方法がない。 あるいは、自分の行為の果てに奇跡は訪れないのかもしれない。 如何に手を尽くそうとも、結局のところ娘は蘇らないのかもしれない。 それでも、どれほどの犠牲を払っても、例え世界を滅ぼしても、一つの世界で足りないのならば、平行世界の何千何百の可能性を積もうとも、 蘇生の可能性を施行し続けなければならない、娘の母親であろうとするのならば。 ――けれどもそれでも、業〈ごう〉(?)が深くて、なほもながらふことともなつたら―― 生者を救うための方便として、娘は天国に行ったのだという優しい嘘はある。 だとすれば、死んだ私は地獄に堕ちるのだろう。 太陽に手を伸ばすかのように、地に堕ちた私は娘のいる天に向けて手を伸ばすのだろう。 だから、絶対に死ねない。 私の死によって娘の蘇生の可能性が潰えることは許せない。 だというのに、この身は病に蝕まれ、もう先は長くない。 ――奉仕の気持に、なることなんです。 本来ならば、生命蘇生の技術を研究するつもりだった。 だが、足りない。時間が圧倒的に足りていない。 だから、残された時間で、私は無垢なるものを蹂躙し、聖なるものを陵辱し、尊き物を破壊する。 聖杯とは――誰もが信じぬ幻想、だがしかし、その技術体系そのものは本物である。 だから、私はこの聖杯戦争を通し、少女聖杯と聖杯を完成させ――娘を。 『アリシア・テスタロッサ』を蘇生させる――と、『プレシア・テスタロッサ』は言った。 ◇ 少女を殺すのは、常に大人だ。 ◇ 「くすくすくすくす、ところでマスター?」 「平行世界の貴方の娘がこの会場にいると言ったらどうします?」 ◇ ルーラーからの伝達(この伝達は基本的には携帯かPCメール、両方を所持していない人間には、雪華綺晶の手によって文書の形で直接配達された。 なお、以下の文章は実際に配達された文書の大意である) 予選通過おめでとうございます、殺し合い頑張ってください。 諸事情につき、マスターの一人であるフェイト・テスタロッサを捕獲することになりました。 別紙にて情報(姓名、顔写真)を提供いたしますので、協力していただける方は、フェイト・テスタロッサを生かして図書館まで連れてきて下さい。 フェイト・テスタロッサを引き渡していただいたマスターには令呪一画が報酬として与えられます。 (フェイト・テスタロッサを殺害してもルーラーからペナルティを与えることはしません) 聖杯戦争用に掲示板を用意しました、ご自由にどうぞ【URL】 予選通過の報酬として、五千円分の電子マネーを用意しました(直接配達されたものに関しては、QUOカードが同封されていた)
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/25.html
幸せな子ども◆PatdvIjTFg 聖杯戦争のために用意された名前の無い街、南西部に位置するその中学校は、 画一的な、極一般的に想像するコンクリート製の学校のそれとは違い、西洋館を思わせる体裁を持った建造物であった。 さて、校門から続く煉瓦の道を通り校舎内に入ろう。 外面だけの話である、中に入ってみれば何の事はない普通の校舎である。 デザインに凝ったところで、所詮中身は他と違うところは無い。 いや、内装まで追求しようと思えば出来るのだろうが、所詮は中学校、通うは少年少女。 彼女たちは校舎にそこまでは求めないし、校舎もまた彼女たちにそこまでを求めない。 故に、この中学校は内面と外面が不一致を起こして、どこか――歪んでいる。 最も、その奇妙さも些細なもの、誰も特に気にすることはない。 二階へと上がろう、そこにはずらりと二年生教室が並んでいる。 その教室の内の一つ。 授業合間の休憩時間、生徒たちがそれぞれ友人同士集まって群れを形成している。 小集団の集合から少し外れて、ただ一人で少女がノートと向き合っている。 足先から頭の天辺まで可愛らしい容貌をした彼女の名は輿水幸子、アイドルである。 当然、学校のだとか、町内のだとか、そういった小規模なものでなく、百人中百人がアイドルと聞いて想像する職業のそれである。 そんな彼女は年頃の少年達が視線をやるのも気にせずに、趣味である勉強ノートの清書を行っている。 「あっ、ごめんなさい輿水さん」 今まさに清書を行っていたノートが、彼女の制服が、花瓶から放たれた水によって、濡れる。 「手が滑っちゃった」 偶然にも、彼女の目の前で、ノートを台無しに出来るように、持っていた花瓶を滑らせる。 ある特定の少女という人種はそのような器用で陰湿な芸当をいともたやすく行ってみせる。 「いえ、ボクは全然気にしてませんよ」 くす。と誰かが幸子の発したボクに笑う。 敵を排除しようとする動きは人間社会の常である、そして少女達の中では敵と判定されるハードルは限りなく低い。 舌打ち。 彼女はアイドルだから。 舌打ち。 彼女は誰よりも可愛いから。 舌打ち。 彼女は自分の可愛さを知っているから。 呪詛。 何がボクだ、オタクに媚びているのか。 呪詛。 何が幸子だ、何時の時代の名前だ。 呪詛。 何だそのじとついた目は、男を誘っているのか。 悲鳴。 ああ、なんで私が好きなあの人は、あの女を見る。 少女の理論で彼女への攻撃は正当化される。 殴ることもせず、蹴ることもせず、ただひたすら陰湿に。 彼女が作り上げた物を壊し、 彼女が必要とする物を隠し、 彼女が発する特異を嗤い、 彼女の活動について語る。 「いえ、ボクは大丈夫ですよ、プロデューサーさん」 放課後、隠し切れない摩耗を、それでもアイドルの演技力で見せないように、幸子はプロデューサーに電話をかける。 輿水幸子は、万人のためのアイドルではない。 何万人、何億人が彼女を愛そうとも、彼女の根本にあるのはただ一人。 己のプロデューサーに愛されること。 それは恋愛感情なのかもしれないし、そうではないのかもしれない。 ただ、輿水幸子は彼といると安らげる、それは確かな事実だった。 だから、彼女はあの少女達のアイドルにはなれなかった。 「プロデューサーさんには見えないのが残念なぐらいに、ボクは変わらずカワイイですよ!」 ここしばらくは何らかの事情とやらで、仕事も、それどころかレッスンすらなかった。 声だけの関係性、直接会う必要は無いのだから当然と言えるが、それでも苦しい。 直接会って、何時もの調子でプロデューサーと接すれば、学校生活で蓄積するものは綺麗さっぱり消えるはずだった。 会いたい、と思う。 「まぁ、そろそろ、プロデューサーさんは僕に会いたくて会いたくてしょうがないと思いますから、別に会いに来てもいいんですよ!」 「……そうですか、まぁ全然気にしてないですけどね!」 すいません、という謝罪は理性では受け入れられる。 向こうが社会人である以上、どうしようもない面はある、それを受け入れられない程に幸子は子どもではない。 ただ、感情が――輿水幸子という少女が受け入れられないだけだ。 「じゃあ、そろそろ切りますよ……あっ、切っていいんですか?プロデューサーさん、もっとカワイイボクとお話したくないですか?僕に切らないでくださいってお願いするなら……」 電話が切れる。 一人の世界が戻ってくる。 「輿水さん」 「えっと、ボクに何か用ですか?」 背後からの声に振り返ると、クラスメイトの小柄な少女が立っている。 「ずいぶん、楽しそうに電話してましたね」 「いやぁ、どうでしょうか」 「隠さなくてもいいですよ」 少女は幸子を攻撃しない、いやそれどころかクラスの女子で唯一、表立ってではないが、友好的な立場だった。 少女は幸子のファンだった。 「すいません、輿水さん……えっと、あの、その…………遊びに来ませんか?」 「えっ」 「いや、もし良かったらでいいんですけど、最近輿水さんが暇してるって言うから」 「あっ……と、カ、カワイイボクでよかったらお邪魔させていただきますよ!」 「本当?良かったぁ……」 校門を出て、更に歩いて数分、赤い屋根の、まるでドールハウスのような屋敷が、彼女の家だった。 「お邪魔します」 「どうぞ、と言っても今日は誰も居ないんですけどね」 中二階に少女の部屋があった、ぬいぐるみが多くて、どこか甘い匂いのする部屋だった。 「で、えっとなんでボクを呼んだんですか?」 「えっと、ですね……」 少女が部屋の内側から鍵を掛ける、何故鍵を――幸子の疑問の答えはすぐに明らかになった。 「脱いで、輿水さん」 「え?」 振り返った少女の目を幸子は知っている。 クラスメートと同じ、その目を幸子は知っている。 「撮影会をしたいの、服はいらないけどね」 「え?え?」 だが、あまりにも理解に苦しむ。 「好きな男の子が輿水さんのファンでね、あっ……もちろん、彼は輿水さんに告白しようだなんてこと考えてないよ、ただ、アイドルとして好きなだけ。 だから、私の告白にもオッケーしてくれた、人生で一番うれしい日だったなぁ……」 「そ、そうですか」 「でも、彼は私と付き合っても未だ、輿水さんのポスターは張ってあった。当然よね、憚る必要はないもの、私だって輿水さんのファンなんだから。 でも、恐ろしい。もしかしたらって思うと、彼は私よりも輿水さんの方が好きなんじゃないかって。 彼のことを信じたい、でも愛は目に見えない。可愛さは……輿水さんが可愛いってことはよぉく、この目に映っているのにね。」 「…………」 今、はっきりとこの少女が幸子にとっては恐ろしい。 いや、悍ましい。 「私はアイドルにはなれない、私は輿水さんより可愛くなれない、私は輿水さんには勝てない。 だから、幸子ちゃんを壊す。まどろっこしいいじめなんかしない。 貴方がアイドルでいられなくなるような写真を撮って、ネットで流す。 私は輿水さんに勝てないから、輿水さんが勝手に負けてもらうしか無いの わかったら脱いで、邪魔は絶対に入らないし……素直に従わないなら、私が勝手に輿水さんの服を切って、捨てる。 手元が狂って、身体まで傷つけちゃうかもしれないし、裸で家に帰ることになるからおすすめはしない、 それに私は興奮して幸子ちゃんの事を何発も何発も殴ると思うわ、どうする?」 「お断りです」 「そう」 「ボクはアイドルですから」 「じゃあ、幸子ちゃんは野外露出が好きなマゾヒストってことになるわね。おめでとう、多分今までやってきた活動以上に有名になれると思うわ」 少女は既にカッターナイフを構えていた。 震えが止まらない。 幸子がここまで悍ましい悪意と狂気を向けられるのは、人生で初めてだった。 泣きたくなる。 それでも、アイドル輿水幸子を守護らなければならなかった。 自分からアイドルを捨てる真似はしない。 アイドルを捧げてやることもしない。 部屋から脱出し、クラスメイトが一人とても遠いところに引っ越すことになる、それで終わりだ。 「じゃあね、アイドルの輿水幸子さん」 幸子は負けた。 人生というものは覚悟だけではどうにもならないことを知った。 「!?」 携帯電話の着信音が鳴り響く。 「出ていいよ、輿水さん」 発信者名はプロデューサー。 「誰か知らないけど、今から何されるかをたっぷりと教えてあげたら良いわ」 手を伸ばす。 「絶対に撮影会を止めるには間に合わないけどね」 ピ。 『輿水さんですか』 「プロデューサーさん」 『なァんて』 『わたしの人形はよい人形。目はぱっちりといろじろで、小さい口もと愛らしい。わたしの人形はよい人形』 「あぁ、やっぱり、そうでしたか」 「やっぱり、僕が今まで電話してきた相手は偽物のプロデューサーさんだったんですね」 『うふふ……申し訳なく思いますわ、でも、いない人と電話は出来ませんもの。 わたしの人形はよい人形、腹話術師の代わりにお話する人形はお気に召して?』 「ボクは……怒っています」 『うふふ……』 『でしたら、また何時かお会いしましょう。貴方のサーヴァントと共に』 輿水幸子は信じていた、こういう時にはあまりにも陳腐な展開が待っていると。 プロデューサーが自分を助けにやって来ると。 来なかった。 だから、彼女は今この状況を夢だと思った。 夢だと思い込んだ。 夢だと思いこむしか無かった。 だから、彼女は真実を認識した。 聖杯戦争、彼女が巻き込まれているものを。 「創造主【クリエーター】!」 己がサーヴァントのクラス名を叫ぶ。 それが始まり。 クリエーターが幸子の手を握る、幸子がクリエーターの手を握る。 「カワイイボクに呼ばれるだなんて、クリエーターは幸運ですね」 「僕としてはもうちょっと魔力の多いマスターに呼ばれたかったんだけど……でも、いいや」 「あの娘は殺す?」 「殺さないで下さい」 「そう」 「鍵を開けて下さい、家に帰ったらたっぷり寝ます、起きたらボクは少し泣くと思います。 少しだけ泣いたら、カワイイボクに戻ります」 「うん」 「どうするかは、それから考えます」 「そう」 「まぁ、一つ忠告しておくけどさ。 多分、この世界で、きっと君は誰からも愛されないよ。僕みたいに」 「ボクはカワイイから大丈夫です、あぁ、クリエーターがカワイクないわけじゃないから勘違いしないでくださいね!」 「そりゃどうも」 【マスター】 輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ 【マスターとしての願い】 ??? 【weapon】 カワイイヤッター! 【能力・技能】 カワイイヤッター! 【人物背景】 中学二年生の十四歳。 「ボクが一番カワイイに決まってますよ」と事あるごとに自分を「カワイイ」と発言するなど自意識過剰な性格の髪の右側に緑と赤のヘアピンをした薄紫のショートヘアの少女。 髪の両端の一部が少しハネている(持ち歌の歌詞では寝癖)。一人称は「ボク」。口癖は「ふふーん!」。どこか慇懃無礼な口調だが、 分が悪くなると強がりつつも弱腰になる。元の世界ではエスカレーター式の私立に通っている。 現在の所CDデビューを除いたすべてのレア名には「自称・」が付く。自称・マーメイドでカナヅチであることが判明。 【方針】 後で考える 【クラス】 クリエーター 【真名】 クリシュナ@夜明けの口笛吹き 【パラメーター】 筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+++ 幸運E 宝具EX 【属性】 中立・悪 【クラススキル】 創造:C+ 世界の理を知ることで、世界の創造を可能とするスキル。 上位ランクともなれば、週休一日制での天地創造が可能になる。 このランクならば、同ランク程度の陣地作成とモンスターの創造を可能とする。 また、このスキルのためにクリシュナは異常なほどに高い魔力を有している。 【保有スキル】 神性:C- 元の世界においての偽りの神性、世界の理を知ることで擬似的に神と化した。 魔術:C 元の世界における魔術体系、マギをある程度修めている。 反骨の相:D 権威に囚われない、その始まりが奴隷であったことに起因する。 同ランクの「カリスマ」を無効化する。 【宝具】 『救われよ、己(ハレ・クリシュナ)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1 世界を滅ぼさんとする少女の意思、史上最悪の八つ当たり。 己の姿を天使、異形の怪物、千手観音と、段階的に変化し、その度にパラメーターを上昇させていく宝具。 変身中に超火力を撃たれると台詞が最後まで言えないまま死ぬ。 【人物背景】 「どうしてこんなことが出来るか不思議だって? 実は、キミがモタモタしている間に、 僕は現実世界に辿り着いたんだ。 そしてもう一度この世界に帰ってきた。 世界の両方を行き来したお陰で、 僕は現実と虚構の関連性について学んだんだよ。 この虚構の世界が人の記憶や情報の世界なら…… どういった形の記憶が 全ての人に共通する虚構を生み出すか。 それを理解できたからこうして世界を創造できるし、 他人にとっての脅威を生み出せる。 言っちゃあ、僕はもう神様なんだよね…… 【サーヴァントとしての願い】 ??? 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https://w.atwiki.jp/uym0ua5/pages/23.html
桜の匂いがする頃から、人目を気にしてエステをされている方が大勢います。時間のかかるケアをしても弾力が戻らない人がいます。生活習慣をしっかり見なおして健康を損ねないように行うことも心がけが必要なのです。 秋の初めくらいから、フェイスケアコースエステを続けているという方が増加しています。十分にフェイスケアをしても美白を取り戻せない人が相当多いです。ストレスをためないようにして痩せることから始めることも大切なことの1といえるでしょう。 相当前から、リンパ改善エステを続けることにした方がピックアップされています。毎日のフェイスケアを心がけてもくすみ解消しない女性が大勢を占めるでしょう。日々の生活に充分配慮して健康を損ねないように行うことも可能です。
https://w.atwiki.jp/rocksaltsmell/
こちらはAVAクラン「お前岩塩の匂いするな」のクランページです。 コンテンツ等至らない点はございますが、ごゆっくりどうぞ。 また、興味を持っていただければ幸いです。 ページメニューは右にございます 最近の出来事 とくにないよ~