約 1,257 件
https://w.atwiki.jp/doruota/pages/437.html
僕の考えたトレーナー/(近衛木乃香) ___ __ ,r''´ ` `丶、 ,.イ ヽ / ケ........... .... ............ ..... . ....... ....ヽ ,'/ i! l l i! ll l i i i l | |! l l i! l l l l l l l l l l-┼十!l | ll L l‐丶l l l i l l r-,r ァュ ィォミ、l l l l | ! l l l'´;;;! l';;;;;! !.l | l l i l li! ー'" 丶 ` ´ /! l ! l l l | lー、. 「 ̄ ̄! /l l | !_r、,、 l l | !l ll丶、.ヽ ' ,,.ィi´ ll ! l l ! h l l | ll ll ン`ー‐''´!|l l ! l L ! ! !ヽ / ! l ll ,r''´ 丶! l l ソ l! `` i / /l ,! Kll─‐-、 _,,.-─ノ.| ト、l ヽ、 ! ,' / l r'´ ! l `丶、 _,,.-'" .| ! ヽ_,,.-‐''| ,' / l / l l ``'''"´ | !/ ヽ. l ,' / ,' / l l | i' ( | ,' / ! l ! l | ! |. l ,' / ,! / __!_r‐、 l | ! | l ,' / j!'´ ,.ィ 、 ヽ ヽ | lヽ l l ,' / /─┬ク ‐-、 ヽiー' | l ヽ / l 【名前】近衛木乃香(AA出典:『魔法先生ネギま』より「近衛木乃香」) 【トレーナーステータス】 指示:C= 平均的な指示力。 育成:C= 平均的な育成力。 統率:A(B)= 『天賦の才』によりアップしている。 能力:A= 『癒し』の異能を持つ。 【固有ポテンシャル】 『癒える東風の檜扇』… 近衛木乃香の固有ポテンシャル。1/試/T始 行動をスキップし、味方1体の体力をまんたんまで回復する。 『医する南風の末廣』 近衛木乃香の固有ポテンシャル。2/試/T始 味方1体の状態異常を治す。 【SP】 __ /⌒` . -──……─‐ ., ,. -==ミ、. . ´ 丶 \ / 丶 \ ' / ′ / , ゚。 丶. / ′ / , / / ′ } \ / / / / ィ / } i ^¨⌒\. /ィ i ' /  ̄`メ、 / } / / / }. | { Ⅳィチ示芹ミ / /}厶-ォ. | i { {' 込ツ / / 斗=ァ } , ,. | l { { / / {vツ / ィ ハ Иハ 从 i ト、 __// 〉 ' / }/ }/ }' V } \{ ⌒ '⌒´ ′ / ハ / }ィ j {¨ ヽ / / }'. ノハ_{ . ´ ̄ ¨' ' }/ ___ } 丶 /. | ト r'====- - ≧s。 __ ィ. | |i i }ニ7ニニ}iニニニニア r‐─=≦^  ̄V ≧s。/ニニニ7ニニニニ{  ̄ ¨ニ=ァ/ ⌒≧s。. / ≧s。/ニニニニニ 、_ {> ., =-≧s。 ≧s。ニニニニニ} __{─==ミ、 __, _  ̄ ≧s。 \ニニニ} { ⌒) V⌒ヽ ̄ ⌒ ≧s。 \ニ/ ≧s。 _/_/ \__ ニ=- / 、≧s。 Χ 。o≦^/⌒-=ニ ¨ ヽ 【名前】クラウス・G・S・イングヴァルト (AA出典:『魔法少女リリカルなのはVIVID』より「クラウス・G・S・イングヴァルト 」) 【統率】A+… 『アヴェンジャー』の追加任命が可能。 【サポート効果】 『覇王流の歩法』… クラウス・G・S・イングヴァルトのサポート効果。 相手の「すばやさ」の種族値が味方と同ランクの時、低確率で味方の技の優先度を+1する。 【BD】 」 ヽ イ ム、ヽ、 \ / l / ヽ、ゝ、 ノ .! ./ ノ `ー 二_ - _ / l , ' / / l l i ーr, 二_ ー- ム. 」 / ノY' l! ナナぇ 、_ ` ー-┐-┤ / /rテl i! ; メゞ;;テベミヽ ,ィヒ l ./; .k 。 ! i! /  ̄ ィツノ ヽ 〃/ ,' -| メ、 l ハ ヘ / / l j .! ; ヽ ノ / } ハ_/ / _ _ _ | /、 l l \. 、_ _ ノ l / i! | ̄ i! `ー― 、/ ヾ,| ト、 ヽ ` ´ / ノ / ノ | .i! / `丶, | i. ヽ \´ 〃 | / | .i! / `丶; ト、 冫ー ´\ヽ、;_ ノ/ | i! / /\ .ソ | \ _ヽ \`ー.メ、 | i! / / \┴ 一 ' ´{. ヽ .{ | .i!. / / ヽ、_, -′ }. l |. .i!. / / , ヘ ノ ′ ハ | i!. / / , ′ ヘ、 / l | .i!. / / , ′ \ l! i! 【名前】藤原佐為(AA出典:『ヒカルの碁』より「藤原佐為」) 【育成】A… 卓越した育成力 【手持ちのポケモン】 _ _ -‐- 厂三ニ=/¨\__》=ァ-イ __ ノ!、 i| |--vイ _ (/==--/ `V´ ^ヽ />=ミ. . .」\V | | V// ̄フ´ `ヽ--――- i∧∧-ト、 ! / //イ 厶ィ__〉イ/、_V_ノ} Y´ __x< \ ', ト! |___`¨ 》》_〉ニニフYト|{ i7YY7イ__!--=二二i_____ \ リ !/´/. . . . . `¨ . ./. . . . _|L、、|≧≦/ /厂 ̄ ̄ ̄}. . . ';. . . ヽ. . . . \ \ ´ /. . . . . . . . . . /. . /!. . ./. ∨/=-===》. { |. . . .';. . . . .';. . . . . .\ \ / . . . . . . . . . . . . . ./. . .〃 /. . /. ./ }i彡7ミ/ハ | |. . . . |. . . . . }. . . . . . . . .\ ヽ / /. . . . . . . . . . . . ./. . . . ./ ,'. .// o || /く__》ハ丶 /!. . . . |. . . . . |. . . . . . . . . . .丶 ', / /´ ̄》. . . . . . . . . /. . . . ./ /⌒ヽ .|| /}} _//ヽヽ_ /ヽ. . . . i. . . . . |. . . . . . .. . . . . . . ',. / _/ i. . . . . . . . . /⌒ヽ/ /ヽ_/ i⌒7-{三7/ ∨ \/}. . . . /. . . . . . .|. . . . . . . i / /´ !. . . . . . . ./ / 〃 〉-彳\}}-!-彳_/ ¨\ 乂. /. . . . . . . . |. . . . . . .| |./ / |. . . . . . ./ //___厶イ__ | | 〃ハ \ 7. . . . . . . . .|. . . . . . .| |i / ゝ-- ' ノ| _ノフ /彡' ! ! ト{/∧ \ {. . . . . . . . ./. . . . . . . } || / ,≪//レ'///} /-' __/ ∧ / ∨_∧ \ 弋. . . . . ./. . . . . . . ./ /i { ,≪////////≫| / / / ヽ\\__「 ̄ヽ}__  ̄ ̄ }. . . . . . ./ /∨ ,≪////////≫' !'ニ=彡ヽ_/ \!ヽ!\ | 丶 |. . . . / / ,≪/////////≫' |/--=彡 ト--{ ', , . / / ,≪//////////≫' \ \ ', /´ / ,≪///////////≫' `丶\ < >'.≪//////////≫' ハヽ ` <i/////////≫' / _} ||//////≫' /イ ', }-====\. ̄ ̄ ̄ /´ ヽ|| ヽ 【名前】オメガモン(AA出典:『デジタルモンスター』より「オメガモン」) 【タイプ】ほのお/こおり 【特性】さいごのとりで… 最後の1体の時、自身の全能力値を強化(1.5倍)する。最後以外だと半減する。 【もちもの】 【技x5:せいなるほのお、れいとうビーム、スチールソード、みやぶる、まもる】 こうげき:A ぼうぎょ:C とくこう:A とくぼう:C すばやさ:C 【ポテンシャル】 『不動のエース』… 「ここぞ!」という時、全能力値が上昇し、技のクリティカル率が上がる。 『天賦の才』… 「デジタルモンスター」種の頂点たる『固有種』 『エース』になるとトレーナーの「統率」が1ランク上がる。 『聖騎士の連撃』… 低確率で一番最後に追加攻撃を行う。 『聖騎士の看破』… 「まもる」等の技で相手の技を無効化した時、中確率で相手を解析する。 『デジタルモンスター』… 敵陣にデータ解析済みのポケモンがいる時、自身の技が急所に当たりやすくなる。(C+1) 『後の先』… 相手が自身より先に行動した時、稀に相手より先に行動することが出来る。 『対岩回避』… 敵陣に「岩」ポケモンがいる時、相手の「岩」技の命中率を低下(0.85倍)させる。 『対岩耐性』… 敵陣に「岩」ポケモンがいる時、相手の「岩」技のダメージを緩和(0.67倍)する。 『対岩迫撃』… 敵陣に「岩」ポケモンがいる時、低確率で自身の技のダメージが2倍になる。 『気合い』… 稀に気合いで相手の攻撃を耐える。残り体力が多いと発動しにくい。 『カウントアーツ』… 「ここぞ!」という時、自身の「避」を強化(1.33倍)する。 『キラー』がいると発動しない。 zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz 『オメガブレード』… オメガモン専用ポテンシャル。 1/試/先行 相手のステータス強化(上昇)を無視し、相手の「まもる」等の技を解除する。 zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz \く⌒` .、 _\、 ]i{ {{__ ノ{ {{⌒',⌒`丶、∨ i{ {{ ハ \_ Vi{ {{ L(⌒\} ̄⌒ /| _ -=ニア_]i{ {{ ∧____ /{ __/(_/ニ=|/ニニ=/⌒]i{ {{ ' /∧ ̄⌒` 、 `丶、 {V_/l }/⌒ 、ニニニ=/ ]i{ {L { / ! ', \ \__ {_/ ノ / \ \ニニ\ ]i{ { ∨ | | ', } 厂⌒` 圦 (\_ =ミ、}┬‐ハ/ ]i{ { ' /! i| ∧__ _/ / { i\ \f芍vl |)) 7 __ 八 乂 ′厶l| | }',⌒ } /、 { 八芍⌒^ _l | /ニニニニニニ\ \_| |二| | }ハ 7 ∧ \ /⌒ハ` -_‐ {ノ ノ/_ -=ニアニニニ=‐ 、 | |⌒| | ノ / ∧ ', 、 / / {〕ト _ ィi{/-=ニニニ/ニニニニニ=‐ \_ | | | | i{ 〈 / V \ / /{_/}_〉/_ =ニニニニニ/ニニニニニニニニニ(⌒\ | L ! | i{ / } 、 {/ /ニニノア⌒/{⌒{ヽ<⌒冖冖冖冖=ニニニニニニ=‐ 、 |____ | | i{ / / ⌒\ _ -_‐⌒`´‐_‐_{/\ 〉/个 、  ̄ ̄ ― ̄⌒\ニ\  ̄ ̄ \_ハ ′ ∧ \ _-_-_-_-=T冖=-_‐_‐_ {^ l \__r===ァ≦⌒ ̄ニニ=‐} ⌒L / , 、ノ {_‐_‐ ノ、 -_-_-Vノ/}/ {/ノ>ニニニニニニ=‐/ }∨ / (⌒\ v{ ' ` _L イ/= / /⌒ニニニニニニ=/ 〈/ / \ 分s。 イ /⌒ア⌒V/ /ニニニニニニ=‐/ / /{ 、 }  ̄ }-=ニニニニ丁ニニアニニニニニ=‐ ´ , / ノ } , } /-=ニニニニニ{ニニ(ニニニ=‐ i{ {∧ / / ∧ /⌒{ニニニニニ」ニ=‐ 【名前】アルトリア(AA出典:『Fate/Grand Order』より「ランサーアルトリア」) 【タイプ】あく/はがね 【特性】やりさばき… 2割で相手より先に行動する。 【もちもの】 【技x5:だましうち、ひきにげ、アイアンランス、きりばらい、こうそくいどう】 こうげき:B ぼうぎょ:C とくこう:D とくぼう:B すばやさ:A(C) 【ポテンシャル】 『アヴェンジャー』… 死に出しで場に出た時、自身の任意の能力値をぐーんと上げる。 『乳上の狂化』… 死に出しで場に出た時、中確率で任意の能力値を上げる。 『乳上の加護』… 中確率で相手の攻撃以外のダメージを無視する。 『ランサー』… 相手の「速」の上昇(強化)を無視する。 『先の先』… 相手が優先度+1以上の技を使用した時、低確率で先に行動する。 『対闘回避』… 敵陣に「闘」ポケモンがいる時、相手の「闘」技の命中率を低下(0.85倍)させる。 『対闘耐性』… 敵陣に「闘」ポケモンがいる時、相手の「闘」技のダメージを緩和(0.67倍)する。 『対闘迫撃』… 敵陣に「闘」ポケモンがいる時、低確率で自身の技のダメージが2倍になる。 『騎乗A』… 自身の「速」の種族値を「A」にする。 『リベンジヒール』… 死に出しで場に出た時、中確率で自身の体力を1/4回復する。 ┐ -‐━━‐- / | ,, ` | |__,, ヾ ―勹 ィ‐-、 ',\、 |_ く { L___,} |⌒ヾ / \ ‘ ,`ー''" んー个) / /\\ ∠7 / )/ / / / \ ┌、_ ‘ー'/ / \/ \ L_ノ “イ ./ ` . _ /⌒ヽ /\ 人廴__ノ ./ ` . r'⌒フヽ ⌒ヽ / ` . `1_ノ ___l ./ ` .__ =- ̄ .| ./ ,,'"⌒ヽ ノ / ,, \ } ヽ___,, ≧=----イ 【名前】ふなっしー(AA出典:『企業・ご当地キャラクター』より「ふなっしー」) 【タイプ】くさ/フェアリー 【特性】ムードメーカー… 場を離れる時、味方の任意の能力を上げる。 【もちもの】 【技x8:かえりざく、こどもだまし、こうそくスピン、やどりぎのたね、なやみのたね、もりののろい、ばらぞの、まもる】 こうげき:C ぼうぎょ:C とくこう:C とくぼう:C すばやさ:C 【ポテンシャル】 『エースアシストγ』… 場を離れる時、味方『エース』の任意の能力値を上げる。 『梨妖精の逃走』… 「まもる」等の技で相手の技を無効化した時、味方と任意交代することが出来る。 『梨妖精の挑発』… 味方と任意交代する時、中確率で相手を「挑発」状態にする。 『ゆるキャラ』… T終了時、自身の体力が1/16回復する。 『後の先』… 相手が自身より先に行動した時、稀に相手より先に行動することが出来る。 『対毒回避』… 敵陣に「毒」ポケモンがいる時、相手の「毒」技の命中率を低下(0.85倍)させる。 『対毒耐性』… 敵陣に「毒」ポケモンがいる時、相手の「毒」技のダメージを緩和(0.67倍)する。 『対毒反撃』… 敵陣に「毒」ポケモンがいる時、低確率で一番最後に追加行動を得る。 『気合い』… 稀に気合いで相手の攻撃を耐える。残り体力が多いと発動しにくい。 『リターンヒール』… 味方と任意交代する時、中確率で味方の体力を1/4回復する。 /^! /! | jヽ.../1 _ / .| ./ j |. / l/ |-――‐ァ \`'ーrヘ `ゝ,l_/j|,__/_)/_ ノ ,才´_ノ`ヽ、_ `;/¨ソ=〈0ヾi7/、__/ヽλ 才´_,ィ'" ; ' , ` ̄ ̄二ニ=‐  ̄~ヽ /泛ア,/!\____ノヽj_,ィ'" ; __', ,,-―''"´ r1iil|/一、ハQ|{、ililfk} ー――-、j/`ヾミtァtァtァt、 _ ソ'~7i一、/ノヽjソ ヾ{}ソ/メ___iヘ_ `ゞt、 〈 |/|`Y iヽ_ );;ー/‐、 |TT'´|_ `Y´' , ̄\ `ヾt、 ,z一、 _/,イ司,ケフ'//二Xt ^ / rケ´ ̄() `ヽl_ ' , \ `ヾ (ニ二 /∧,才弋ソ〈|jヽー| レ'. |_,、-ーハ| `ヽ、; \ `ー‐´ ,ィ1// ノ l、/'゙\|'´ /ヽ | | | |__ `⌒ヽ、. \ /i |,|/¨~´ ト、_,レ'¨`iー`リ゙ ト、.| | | | `マ、. `ヽ\ //彡'´ ヽ,,_ 〕r''´ ヘ \ ¨ i¨ ,} ヽ `\ ./// `ヽト、_,ノ^l/7  ̄ヽ7-r一' ム、 ./^´/ レケ、 /¨´ 〈マ iァ--、!/ ヽ <ブ ,_/ |__/¨ラ `ヘ /ィ一{ ヽ/ // /´ ヽノヘ ',. | レレ' ヽjヽ! 【名前】ライン・ヴァイスリッター(AA出典:『スーパーロボット大戦』より「ライン・ヴァイスリッター」) 【タイプ】でんき/こおり 【特性】あくまのつばさ 体力が満タンの時、必ず耐える。 宙に浮かび上がる。 【もちもの】 【技x5:10まんボルト、れいとうビーム、かえんほうしゃ、ハイドロポンプ、エアロブラスト】 こうげき:D ぼうぎょ:D とくこう:B+ とくぼう:D- すばやさ:B+ 【ポテンシャル】 『エースキラーα』… 『エース』に与えるダメージを強化(1.5倍)する。 『エース』の「防/特防」の上昇(強化)を無視する。 『白騎士の武装』… 自身のタイプ不一致の技の威力を強化(1.33倍)する。 『白騎士の閃光』… 「ここぞ!」という時、稀に相手の攻撃を回避する。 『パーソナルトルーパー』… 1/試/自動 自身が指令を受けた時、T終了時まで自身の1番高い能力を強化(1.33倍)する。 『先の先』… 相手が優先度+1以上の技を使用した時、低確率で先に行動する。 『対炎回避』… 敵陣に「炎」ポケモンがいる時、相手の「炎」技の命中率を低下(0.85倍)させる。 『対炎耐性』… 敵陣に「炎」ポケモンがいる時、相手の「炎」技のダメージを緩和(0.67倍)する。 『対炎迫撃』… 敵陣に「炎」ポケモンがいる時、低確率で自身の技のダメージが2倍になる。 『戦闘続行』… 低確率で相手の技のダメージを自身の行動後に持ち越す。 『チャレンジ』… 敵陣に『エース』がいる時場に出ると、T終了時まで自身の技の優先度を+1する事が出来る。 zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz 『ジョーカー』… ライン・ヴァイスリッター専用ポテンシャル。 『エース』が場に出た時、味方と任意交代して場に出ることが出来る。 zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz /ニYニヽ . /( ゚ )( ゚ )ヽヘ / ⌒`´⌒ \\ /^| ,-)___(-、| } | | l |-┬-| l | | ゝ\ `ー'´ _/イ \;"ヽ ... ∠ ヽ \ γ⌒ | .}" ⌒\ \ | ;/ / ,ィヘ. \ ヽ | / / ノ \___ノ | " / / ゝ__ノ / /. ..f 【名前】でっていう(AA出典:『2ch』より「でっていう」) 【タイプ】ノーマル 【特性】ほおぶくろ… 自身の持つ『きのみ』を食べる時、体力を1/3回復する。 【もちもの】 【技x6:ドラゴンダイブ、ドラゴンテール、たくわえる、のみこむ、はきだす、バトンタッチ】 こうげき:C+ ぼうぎょ:C- とくこう:C+ とくぼう:C- すばやさ:B 【ポテンシャル】 『超竜の貯蔵』… 場に出たとき、中確率で技「たくわえる」を繰り出す。 『超竜の挑発』… 味方と任意交代する時、中確率で相手を「挑発」状態にする。 『スーパードラゴン』… 自身の「竜」技の威力を強化(1.5倍)する。 『先の先』… 相手が優先度+1以上の技を使用した時、低確率で先に行動する。 『対闘回避』… 敵陣に「闘」ポケモンがいる時、相手の「闘」技の命中率を低下(0.85倍)させる。 『対闘耐性』… 敵陣に「闘」ポケモンがいる時、相手の「闘」技のダメージを緩和(0.67倍)する。 『対闘反撃』… 敵陣に「闘」ポケモンがいる時、低確率で一番最後に追加行動を得る。 『戦闘続行』… 低確率で相手の技のダメージを自身の行動後に持ち越す。 _ _ / l ヽ-/ , ヽ'¨¨¨¨ヽ. /} , ´, -', --' {_, { {_, ヽ / /. , ´/ _ノ- __ , \_ `ー }¨`_ / /_/ / ,ィf i } '^` r-.} ./ ,--ヽ' { 、 , 〈_,ィj ;.='"_ / ノ__/ {_ } /ヽt-, ___./^ ' ` ,. }' Y __ `ノヽ_ ヽ `ー┴ ' _ r'ゝ' / / ̄ T´ } ` -==ニニ -'ゝ ' // r‐ 、ノ、,..-- ノ \/  ̄ ¨} , -{ f' ヽ , -、_, --{ `¨¨= \__} , =fY }j-、 ヽ __ノ. /__, -^ー/,ー-- '^  ̄ 【名前】ハガネール(AA出典:『ポケットモンスター』より「ハガネール」) 【タイプ】はがね/じめん 【特性】がんじょう… 一撃必殺無効。 体力が満タンの時、必ず耐える。 【もちもの】 【技x4:アイアンテール、じしん、ステルスロック、ほえる】 こうげき:C+ ぼうぎょ:S とくこう:D とくぼう:C- すばやさ:E 【ポテンシャル】 『硬化』… 先発で場に出ると、「ぼうぎょ」が上がる。 『オールドタイプ』… 『オールドタイプ』を持たないポケモンの防護ポテンシャルを無視する。 『鉄蛇の防御』… 先発で場に出た時、T終了時まで自身の「防/特防」を強化(1.33倍)する。 『鉄蛇の残骸』… 自身が瀕死になったとき、稀に「ステルスロック」を敵陣に漂わせる。 『ダイナマイト』… 1/試 技「だいばくはつ」を繰り出す。 この時、自身の「攻」を最も高い種族値と同ランクにする。 『後の先』… 相手が自身より先に行動した時、稀に相手より先に行動することが出来る。 『対炎回避』… 敵陣に「炎」ポケモンがいる時、相手の「炎」技の命中率を低下(0.85倍)させる。 『対炎耐性』… 敵陣に「炎」ポケモンがいる時、相手の「炎」技のダメージを緩和(0.67倍)する。 『対炎反撃』… 敵陣に「炎」ポケモンがいる時、低確率で一番最後に追加行動を得る。 『戦闘続行』… 低確率で相手の技のダメージを自身の行動後に持ち越す。 『スターター』… 『先発』が発動した時、自身の全能力値を強化(1.05倍)する。
https://w.atwiki.jp/kenkaku/pages/254.html
夢十夜――第二夜『喪神/金の龍』――◆F0cKheEiqE どしゃり――― と、何か重たい物が、地面に落ちる音が響き、続けて、 びしゃり――― と、水か、あるいは水を多分に含んだ何かが、地面にまき散らされる音が響いた。 まき散らされた水が、液体が、地面へと音も無く広がり、そして吸い込まれていく。 液体は、水よりも遥かに濃い粘質の物で、鉄錆びた異臭を放っていた。 それは大量の血液であった。 土がむき出しの地面に転がった物は大きく二種類。 大きな何かの塊と、それから延びたり散らばったりした、 細く長い何かや、小さな塊の数々であった。 小さかったり、長かったりするものの色は、赤であったり、 青であったり、黒であったりしたが、総じて何か粘質の液体に覆われ、生温かく、微かな湯気を放っている。 鉄錆びた異臭と、排泄物の悪臭が、混ざって立ち上った。 それは、臓物であった。 それは、下半身と泣き別れになった、誰かの上半身であった。 左肩口から一文字に、右の腰まで綺麗に通った一太刀に、その人物は肉体を両断されていた。 上半身と別れた下半身は、上半身より少し離れた所に転がっていた。 そんな誰かを、見下ろす一つの影がある。 影の右手には抜き身の段平一つ。切っ先からは滴る血の粒。 影は屈みこみ、転がった誰かの下半身の袴の裾で、 刀を濡らす血を拭い、パチリと、鞘に刀を納める。 そして影は、 ニィッ――― と、薄く笑ったのであった。 ◆ 夜空を背に、二人の剣客が対峙している。 片や、柄を長くとった細身の居合太刀を腰間に下げた、凛々しく、年若き少女である。 片や、二本の太刀を差した、総髪、茶筅髷の、雄々しい風貌の老人である。 六、七間ほど間を開けて対峙していた二人であったが、 少女、左手を腰間に、右手を柄への居合腰、 老人、大刀二本差しの上方の柄頭に左の掌に乗せながらも、右手はだらりと下がったままで、 臨戦態勢の少女と比べれば、些か、戦いへの消極性を感じさせる有り様であった。 少女が、ズズイ、と殺気立ちながら摺り足で間合いを詰める。 老人、僅かに縮んだ間合いを広げながらも、しばし逡巡していた様子であったが、 「止むを得ぬな…」 と、些か薩摩訛りを感じさせる言葉をつむぐや否や、 鯉口を切り、刀をスラリと音も無く引き抜き、 右半開、切っ先を下に向けた、“逆八双”とでも言うべき独特の構えを取る。 「タイ捨流、東郷重位」 老人の名乗りに応えて少女曰く、 「無双真伝流、高嶺響」 少女、高嶺響は、憎悪の籠った瞳で、老人、東郷重位を睨みつけながら言った。 「人斬り…あなたを、斬る…」 両者の対峙は全くの偶然から始まった。 香坂しぐれを追う響と、武田赤音を追う重位とが、 ばったりと交錯してしまった事に端を発する。 両者ともに、追うべき者の逃げ足が予想以上に素早く、 尚且つ両者ともに追跡の開始に些か出遅れた事もあって、 二人揃って標的に追いつけぬまま、互いに接触そてしまったのが不運であった。 特に、東郷重位にとっては不運であった。 響にとって、香坂しぐれの殺害は、必要事項であっても最優先事項では無い。 一方、重位に取って武田赤音の抹殺は、御留流の太刀筋を守る為にも、 何にもまして優先されねばならぬ使命であった。 当初、重位は響の隣を素通りし、赤音の追跡を続ける予定であった。 響の方も誰かを追っていたらしい事を、重位は気配で察していた。 響の方も自身の標的の追跡を優先するであろうし、 故にここでは、敢えて戦う必要は無いと、先方も判断するだろうと、重位は考えていた。 しかし、重位に取っては不運な事に、上記したが如く、 響にとって、香坂しぐれの殺害は、必要事項であっても最優先事項では無かった、と言う事である。 そして、響が、重位の体から立ち上る人斬りの気配、 瀬田宗次郎を斬った際に染みついた血臭を一見で感じ取り、 斬って捨てるべき修羅の輩と判断してしまった事は、重位にとってはさらなる不運であった。 鷹は鷹を知り、狼は狼を知り、虎は虎を知る様に、 達人は達人を知る。 響が一見にして重位の『危険性』を認識したように、 重位もまた、響が相当な『使い手』である事を喝破していた。 そして、彼女を斬らずして赤音を追う事が、余りに難しい事も、また… (女子を…ましてやこのような娘を斬る剣では無いが…黙って見逃してくれる相手ではない) (無視して撒くにしても、迂闊に背を曝せば一太刀でばっさり…娘ながら、それぐらいの腕はある相手よ) 言葉尻より察するに、勝負に乗っているとも思えぬ彼女が、 何故、重位に斯くも鋭い殺意を向けるのかは、彼には解らぬが、 剣士である以上、降りかかる火の粉は払わねばなるまい。 意を決した重位は、スルスルと間合いを詰める。 一方、響は居合腰のまま動かず、重位の一挙一動見逃すまいと鋭い双眸で睨みつけている。 (許せない…) 響は、東郷重位に激しい怒りを感じていた。 身に纏う血臭と、立ち居振る舞いに現れる強烈な殺気は、 男、東郷重位なる男が、この享楽的な催し物に参加した「人斬り」である事を如実に語っている。 これで既に二人目… この「御前試合」ほうり込まれてまださして時間が経っていないにも関わらず、 相対した人間がことごとく人斬りとは… この調子ではかの人別帖に記された剣士たちの一体どれほどが、 この茶番に付き合っているものか、先が思いやられ、陰々滅滅としてくる。 その反面、人斬り達への響の憎悪と、彼女の闘志は、弥が上にも高まりを見せる。 剣を玩具に淫する不埒者ども…残らず成敗してくれる。 そう、気炎を吐く響であったが、果たして彼女は気が付いているだろうか。 人斬りを許さぬ偏執的なまでの固陋なる精神、相手を人斬りとみるや容赦なく切り捨てる非情さ、 その有り様は、彼女が忌避する人斬り以上にあるいは人斬りのようである事に… そんな双方の思惑をよそに、 否応無く、勝負は進み、双方の間合いは狭まる。 一たび必殺の意志を込めて剣を抜き放ってしまった以上は、 どちらか一方が血の海に沈まねばなるまい。それが立ち合いの摂理と言う物である。 双方の間は、すでに四間ほどになっていた。しかし刀の間合いには少し遠い。 柳生新陰流の「水月」にある様に、刀剣の射程範囲は、 自分の足さきからおおよそ三尺ほどであると言われる。 しかしこれはその場から動かなかった場合であって、踏み込みを行う場合はその限りで無い。 と、言えども四間はまだ双方共に遠い。 間が三間に詰まる。 その時、響が動く。 全身の筋肉が膨張し、右手が柄を掴む。 ――『遠間にて斬る也』 無双真伝流の技の一つ。 俊足の、大股の踏み込みに乗せての横殴りの居合太刀。 常よりも遥かに長い射程を持つ彼女の居合太刀にとって、三間とは水月の内にも等しい。 相手の刀剣の射程外からの先制攻撃。これが響の算段。 そんな響にとっての誤算は、敵手、東郷重位もまた、同じだけの射程距離を持っていたという事。 正に一瞬。 彼女が居合を、その鞘の内から放たんとしたその瞬間、 すなわち、彼女の注意が、ほんの一刹那、重位から刀・技へと移った瞬間、 重位は『飛行』し、白刃は彼女の目前に迫っていた。 (なっ!?) 『飛行』といっても、実際に空を飛ぶのではない。 翔ぶが如く、踏み出す勢いで足を滑らすのである。 示現流と言えば、その稲妻の如き太刀先の速さと、 受け止めた相手の太刀ごと敵を両断する太刀先の力強さばかりが著名だが、 上記した二つと同様に恐ろしいのは、その踏み込みの鋭さと速さである。 示現流に熟達した剣士は、大動脈が脈を一つ打つ間という、ほんのわずかな短い時間の中で、 三間の距離を三歩の大股の『飛行』で詰める事が出来るのだと言う。 重位のそれは、正に『飛行』、『縮地』と呼ぶに相応しい、見事な寄せ足であった。 「クウッ!」 抜くには間合いも時間も足りぬ、そう判断した響は、 右逆袈裟に襲いかかる重位の太刀筋を柄頭で迎え撃つ。 ギンッ! と、鋼同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り、火花が散って、 柄頭が東郷の太刀を弾き飛ばす。 柄は斬り柄、柄頭は頑丈に造られた居合刀であったのが幸いした。 見事、重位の鋭い太刀筋を受け止めたのだ。 そのまま、パッと後ろへと後ずさる。 (チイッ!) 初撃を外された重位は思わず心中で呻く。 一刻も早く武田赤音を追わねばならぬと言う焦りが重位にはある。 故に、一撃で仕留めるべく、示現流の太刀筋の一部とも言ってもいい、 『飛行』を用いてまで繰り出した一撃が防がれてしまったが故である。 それは、『タイ』を捨てきれぬ重位の、無意識での踏み込みの甘さ故でもあったが、 示現流の太刀筋を前提に組まれた『飛行』の歩法と、タイ捨流の太刀筋の齟齬の為でもあった。 (エエイッ!) 太刀筋を封じられ、全力を出そうにも出せぬとは言え、それでもなお、やらねばならぬが武士の道。 一たび命を受ければ、腹を斬り、友を斬り、親を斬り、仏を斬る。 寡兵で大軍相手の殿をし、寄せ手を晦ます囮となり、段平一つで敵陣に食い込む… それが、武士と言う生き物である。 毒づきながも、弾かれた太刀を右上段へと流し、二撃目を繰り出さんと足を詰める。 右上段からの袈裟掛け。今度は逃がさん! しかし、そんな重位の目前で、響が取った行動は、 敵手に背を向けると言う物であった。 (!) 逃亡!? 否、この殺気は逃げる人間の出せるモノではない。 ならば罠か? 響の不可解な行動に、重位が『驚』の色を見せる。 普段の重位ならば、策ごと斬り下げんと、構わず飛び込み所を、 『タイ』を捨てきれぬが故に生じた一瞬の『見』の隙を、響は決して見逃さない。 響は、背を向けると同時に手繰り寄せた居合刀の柄頭を両の手で叩き、 後方へ疾風の如く押し込んだ。 ――『水月を突く也』 敢えて背を見せることで相手の隙を誘い、 鞘の先で相手の水月(鳩尾)を突く技は、 響の体勢に合わせて、鳩尾では無く、重位の顎先を見事撃った。 その一撃は見事、重位の脳髄を振動せさしめ、 一瞬、ほんの一瞬、重位を『喪神』せさしめた。 これが勝負を行く末を決めた。 そして… ◆ こんな夢を見た。 ◆ 重位は不意に目を覚ました。 気が付けば、さる部屋の座布団の上で正座をしていた。 部屋、造りから察するに方丈であった。 畳張りの部屋の障子は全て開け放たれ、縁側と、一面が雪に包まれた庭が見える。 空にあるのは満月で、その月光は白雪に反射され、 外は、夜とは思えぬ、幻想的な青白い明るさに包まれていた。 しばし外を見ていた重位であったが、 正面に目を戻すと、自分の正面、少しばかり間を置いた場所に、 気配一つ無く、背を向けた坊主頭の僧形の男が座布団の上に胡坐を掻いていた。 その後姿には見覚えがあった。 部屋の間取りにも見覚えがあった。 この部屋は、京都西郊、保津川近くの万松山の天寧寺のそれに他ならない。 さすれば、自分の正面に座るこの男は… 僧形の坊主頭が振り向いた。 月明かりに曝された横顔は、年のころ三十程と見えた。 色白で鼻梁の高い、痩せ形の美僧であった。 「師匠…!」 呻く様に重位は低く叫んだ。 忘れるはずも無い、天真正自顕流が継承者、善吉書記、俗名・寺坂弥九郎政雅、 東郷重位の人生を変えた、剣の師匠その人であった。 「重位殿、久しいな」 そう言うと、善吉は微笑を浮かべながら重位の方へと向き直った。 天正十六年師走、杯を交わして別れて以来、時は流れる事既に二十年以上。 にも関わらず、善吉は容姿容貌が、別れを交わしたその時より一片たりとも変わってはいなかった。 「お久しゅうござる師匠!息災無い御様子で!」 重位は破顔した。京都と薩摩は余りに遠い。 二度と相まみえる事は出来ぬと思っていた師匠であった。 「うむ、大事無い。所で重位殿…」 相変わらず微笑みながらも、善吉の双眸に鋭い光が宿った。 「そこもと、随分と無様な有り様じゃの。故に、こうしてまかり出て来たわけじゃ」 「よもやジゲンを棄て、タイ捨の太刀を使うとは…」 その言葉を聞いた瞬間、思わず重位は平伏していた。 「師匠、これには故が御座る!断じて、ジゲンの太刀を軽んじておる訳ではござらぬ!」 何故、二十年以上手紙すら交わさなかった善吉が、 本人ですら天狗に攫われたとしか思えぬ仕業で参加した御前試合の様子を知っているのか―― その不自然さに気が付く事も無く、冷や汗を流しながら、重位は事の次第を述べた。 善吉は黙って重位の言葉を聞いていた。 そして、重位の言葉を全て聞き終えると微笑みながら言った。 「重位殿、封印を解かれい」 「さ、されど師匠、拙者には…」 「――『満』の心」 善吉の一言に、重位の動きが止まった。 「そこもとに問う。『満』の心とは如何なるものなりや」 「それば――」 重位、答えて曰く。 「『満』の心とは、当流の意地なり」 「『満』の字義、開く所、三千世界に満ち、つづむる所、方寸のうちにあることなり」 「『満』の心、それは万事を知らぬ、赤子の心に似たり」 「生まれいずるその時にあふれいずる、一代の威勢に似たり」 「貴人高家を恐れずして足蹴にする心なる」 「いかなる名剣をも、足に当たれば踏み折らんとする心なり」 「この心にあらば、如何なるモノとて、斬れぬモノは無きなり」 「生まれいずる所、はや死の始めなり」 「死すれば大界は我が心のままなり」 「これ兵法の第一の心得なり…」 「されば、再びそこもとに問わん」 「今のそこもとに、『満』の心、在りや無しや」 「・・・・・・」 この問いに、東郷重位、答うる事あたわず。 答えぬ重位に、善吉は言った。 「ジゲンを封じ、しがらみで心を封ずるそこもとには、『満』の心は決して宿らぬ」 「この心こそ、当流の意地故にじゃ」 「いや、今のそこもとには、相討ちの剣法に過ぎぬタイ捨の意地、 体を捨て、待を捨て、対を捨てる心すら宿る事はあるまい。今のそこもとに、この戦は勝てぬ」 「しかし、ジゲンの太刀筋を曝せば、この東郷重位の忠義が立ちませぬ!」 「ならば死ぬか?」 「…ッ!?」 「死んで無様を曝すか?現に今のままでは、そこもとは間違い無く死ぬ」 「それは…」 「そんなものが、東郷重位の、薩摩隼人の生き様か?」 重位は、二の句を次がず、着物の裾を握りしめた。 しばし沈黙が流れた。 沈黙を破ったのは、善吉であった。 「役目を全うするばかりが、忠義の示し方ではあるまい」 「そ、それは…?」 「それを考えるのは、そこもとであろう」 問う重位に、善吉は静かに答えた。 再びしばしの沈黙。しかし先程より、鈍く澱んだ時間が流れた。 「重位殿、立ち会えい」 善吉は、どこから取り出したモノか、ユスの木の木刀を、重位に手渡すと、 自身は立ち上がって、すたすたと庭先に向かう。 「されど師匠、外は…」 うず高く積った雪でござる…そう言おうとして、 重位は、はたと言葉を止めた。 いかなる怪異か、つい先ほどまで厚い白雪に覆われていた庭先は、 雪一つ無い地面を曝している。 それだけではない。 確かに師走の雪景色であった筈の外の様相が、 青葉も初々しい、さわやかな皐月の春景色に変貌していた。 変わらぬのは、ただ満月だけである。 その有り様は、善吉と重位が初めて会った日の景色に酷く似ていた。 両者は対峙した。 善吉は、ジゲン唯一無二の構え、トンボに構えた。 一方、重位は、木刀の鍔元を顎の前に寄せ、刀身を真っ直ぐ立てる、タイ捨流・無二剣の構えであった。 双方、スルスルと間合いを詰め、水月の間合いに達した時… 先に、太刀を繰り出したの重位であった。 そして、木刀を跳ね飛ばされ、前のめりに地に伏したのも重位であった。 ジゲン流、『満』の心より繰り出される雲耀之太刀であった。 地に伏しながら、重位は一瞬『喪神』し、 覚醒して立ち上がった時には、心は『初心』に帰っていた。 即ち、『満』の心―― 「世話を掛けました師匠。お陰で、大事な物を思い出しました」 剣客同士―― 太刀打ちを通じてしか解り得ぬ事がある。 重位は、善吉の雲耀之太刀を通じて、師匠の『思い』を受け取ったのである。 重位の言葉に、善吉は微笑みを以て返答した。 それで、心は通じた。 「来たようじゃな」 不意に、林の方へ目をやった善吉につられて、 重位もまた善吉の視線の先を見た。 そこのは一人の女武芸者が立っていた。 無双真伝流、高嶺響―― 「ゆけい、重位殿」 言葉を受けて、重位は響きと対峙した。 その構えは、タイ捨流の物では無く… 「“示現流”、東郷重位、推参―――」 そこで、東郷重位は覚醒した。 現実時間に換算して、刹那に満たぬ師との再会であった。 ◆ 響は、『水月を突く也』を受け、たたら踏む重位に、追撃の一撃を仕掛けんとした。 『発勝する神気也』―― その一撃で、重位は血の海に沈む筈であった。 奥義を仕掛けんとした、正にその時、 一瞬の『喪神』より覚醒した重位には、先ほどとは別人の様な殺気が篭もり、 『キェェェェェェェェェェェェェェッ!』 猿叫一声! 並みの人間ならば是のみにて気死しかねぬ、 常軌を逸した気合いの一声に、響の体が刹那、金縛りにされる。 その最中、重位の構えは変わっていた。 柄を握った親指と人差し指は浮かせ、 中指は締めず緩めず、薬指、小指は締めて持つ、 右手を柄にやわかくそえる、タイ捨の構えより、 右の拳を耳の辺りにまで引き上げ、左手はただやわく添えた、 八双に似た構えへと―― 金縛りの解けた響は、怯まず、再度奥義を仕掛けんとするも、 それは叶わなかった。 なぜならば、響は見たからだ。幻視したからだ。 それは―― (金の…ッ!?) それは一匹の龍であった。 黄金に輝く、雲を突き、天を翔する雷龍であった。 雷龍は顎門をカッと開いて響に喰らい付けば、忽ち、響の上半身は食いちぎらる。 幻の中、響の体に一瞬、灼金を突き入れたの様な感覚が走ったかと思えば、 響は、意識を永遠に手放した。 示現流『雲耀之太刀』―― 『満』の心より繰り出された無双奥儀太刀は見事、 高嶺響の肉体を両断していた。 ◆ 刀を鞘に戻し、高嶺響の二つに別れた死体を再度一瞥すると、 ぽつりと一つの歌を詠んだ。 『稀にあう 峯に積れる 空の雪』 『鳥鳴く懐 清き雪山』 それは、離別の際、師より賜った帰去来の辞であった。 封印を破った事に後悔は無い。 ならば己の忠義は立つのか? 立つ、立たせる。 『満』の心のままに、重位は思う。 かくなる上は、示現の太刀筋にて、残れる武芸者をことごとく斬った後、 太刀筋を見たりし柳生の者ども、その背後にいるであろう徳川の者ども、 示現を盗み見し者、一族郎党に至るまでことごとく撫で斬りにし、 その上で腹かっさばいて果てるまで。 そもそも柳生の郎党が参加せしこの御前試合、 薩摩隼人が勝ち上がれば、元よりタダでは済むまい。 されば『不忠者』は『不忠者』らしく、 殺人刀にて推し通り、最後には一人の『狂人』として果てるのみ。 「それが、拙者の忠義でござる」 東郷重位は笑った。 それは、掃天の如く清々しい笑みであった。 同時に、殺気に満ちた恐るべき笑みであった。 【高嶺響@月華の剣士第二幕 死亡】 【残り五十九名】 【へノ陸 道の合流点/一日目/早朝】 【東郷重位@史実】 【状態】:健康、『満』の心 【装備】:打刀、村雨丸@八犬伝 【所持品】:支給品一式×2 【思考】:この兵法勝負で優勝し、薩摩の武威を示す 1:次の相手を斬る。 2:薩摩の剣を盗んだ不遜極まる少年(武田赤音)を殺害する。 3:殺害前に何処の流派の何者かを是非確かめておきたい。 【備考】 ※示現流の太刀筋を解禁しました。 ※示現流の太刀筋を小袖の少年(武田赤音)に盗まれた事に対する危機感は消えましたが、 依然、優先的に狙います。 ◆ 「むっ!?」 「どう…したの…?」 「いや、しぐれ殿、なんでもありません」 ようやく出会った目明きの少女、香坂しぐれは、 右手首を斬らた重傷者であった。 故に、着物を破いて包帯と為し、介抱していた富田勢源であったが、 その最中、盲目であるが故に発達したその鋭敏な感覚で、強烈な剣気の爆発を、 その肌で感じたのである。 そして勢源は視た。 北の空で、天に昇る金の龍の幻を。 そして理解した。 恐るべき兵法者が、この御前試合に降り立った事を。 【へノ陸 南部の道の傍ら一日目/早朝】 【富田勢源@史実】 【状態】健康、驚き 【装備】蒼紫の二刀小太刀 【所持品】支給品一式 【思考】:護身剣を完成させる 一:しぐれを介抱する ※佐々木小次郎(偽)を、佐々木小次郎@史実と誤認しています。 【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】 【状態】疲労大、右手首切断(治療中)、両腕にかすり傷、腹部に打撲 【装備】無し 【所持品】無し 【思考】 基本 殺し合いに乗ったものを殺す 一 右手の治療をする 二 武器を探す 三 近藤勇に勝つ方法を探す 四 高嶺響はいずれ殺す 【備考】 ※登場時期は未定です。 ※所持品は全て民家に置いてきました。 ※高嶺響の死亡を知りません 時系列順で読む 前話 ただ剣の為に 次話 迷いの剣 投下順で読む 前話 ただ剣の為に 次話 迷いの剣 少女二人で夜越えて―/人斬り二人 高嶺響 【死亡】 ジゲンを穢す者 東郷重位 有り得ざる邂逅 偽りの再会 富田勢源 波紋(前編) 少女二人で夜越えて―/人斬り二人 香坂しぐれ 波紋(前編)
https://w.atwiki.jp/foresanc/pages/2452.html
ソーマ 1 名前 宗麻=ネニュファール(ソーマ) 2 年齢 18歳 3 性別 男性 4 種族 人間 5 外見 葡萄色の清潔に整えられたショートヘアに深い海のような藍色の瞳。 肌色は父親譲りで白い。体格は小柄かつ痩身で若さを残した幼い子供のような顔立ち。 痩身の体には柳のようにしなやかな確かに鍛えられた筋肉が備えられている。 服装 紺碧の袖を落としたインナーに黒の袴。袴の裾は動きやすいように縛っている。 その上からと白を基調にしたペレネス寺院の修道僧のローブに紺色の大きな布を袈裟のように身につけ、その上から瑠璃紺を基調にしたケープを羽織る。 靴は黒の布製ブーツでバンドで固定するタイプのもの。装飾品並びに防具は特に身に着けていない。 全体的にボディラインが隠れただぼついた民族衣装のような印象。 他にも居候生活をしだしてから買った服や借り物の服を着る事も多いが民族衣装のようなエスニックな服装を好む。 修行着もとい部屋着はインナーに袴姿。 両腕や両足にはサポーター代わりの包帯を巻きつけている。 身長/体重 【身長】164cm 【体重】51kg 6 性格 クールでドライ。謙虚で控えめ。言葉数は少なく寡黙。愛想がなく可愛くない。言葉語らずして行動で意思を示すことが多い。 基本的には自己主張をすることも少なく、他者に関心を示し関係を持とうとせど深入りすることはあまりなく壁を置いた淡白な付き合いを好む。 人嫌いするタイプかと言われるとそうではないらしいが、寺院の同僚や友人に対してもこうらしい。 しかしその胸の内は求道的で向上心の強い気骨に満ちた性格をしている。 自身を高めること、とりわけ鍛錬に対しては貪欲な姿勢を見せる努力家で、旅中で出会う様々な事柄もきっと自分の糧(バイブル)になるものであると解釈しているようだ。 清廉潔白であり禁欲的。気質的にも常識人寄りの性格をしているが、今まで寺院の中で修行ばかりしてきたのでだいぶ天然で俗世に疎い。 更に自身に不必要であると判断した事柄は斬り捨ててしまいがちで興味関心を失いやすい悪癖があるのも世間知らずぶり、天然ぶりに拍車をかける。 現状ではやや人間味の薄い珍妙な性格をしているが無愛想で寡黙、ドライと合いまって冷血な人間であると勘違いされやすい。 思考もこざっぱりした脳筋寄りであり、クールな表面に反してバリバリの体育会系。あれこれ悩んでも気合と根性で大体なんとかなる豪快な考えを持つ。 だいぶ根性論者であるが控えめな性格も合いまって他人の問題の際は黙っていることが多い。 あくまで自分の方針が根性論バリバリなだけである。 今まで修行ばかりで実戦経験に疎く、悪人や魔物に対しても度々嘆き、甘い姿勢を見せる。 本気で人怒ることはまずなく、人を憎まず罪や弱さを憎むを地で行くタイプ。 生き物には正負両方の側面があって当然のこと。罪に身を預ける弱さを戒め、そのような思考に陥り罪を繰り返す弱きものを救い正すのも勤めと思っている。 僧侶であるので当然神は信じているが、神は救いを与えるものではないとも割り切っている。 ならば救いはどこにあるのかと問われれば迷わず修行と人が行う営みの先にあると答える上述通りの脳筋ぶりを見せる。 ちなみに修行による悟りを重視するペレネス寺院自体厳格であれど他宗教に対しては非常におおらかであったことも幸いで他宗教信者を悪く思うことも殆ど無い。 「よそはよそ、うちはうち」。ソーマの性格によく反映されている考えである。 7 過去 修行の為己の身ひとつで世界を渡り歩く修行僧。 セレッサ王国出身の貿易商「ネニュファール=マーク」のひと時の気の迷いにより、東洋人の使用人「加奈葉(カナハ)」との間に生まれた国際ハーフ。 その出自故に存在を疎まれ、物心つかぬ頃に輝石大陸よりももっと北の極北の地に存在する「ペレネス寺院」なる寺院に厄介払い同然に預けられた。 ペレネス寺院は極北の聖人と呼ばれた東洋かぶれの武闘派僧侶「聖ラナド」を奉る寺院。 極めて勤勉で禁欲的な人物であったラナドを模倣するように、禁欲的な生き様と身を削る修行により悟りを開き御仏に近づき最終的に極楽に辿り着くことを教義として掲げている。 彼らの操る7つの気門を操る気孔術や拳法は人を伝って世界に響き、今ではその方面の道場としても少しばかり名の知れた場所であった。 孤児として暖かく寺院の僧侶達に迎え入れられた少年は、当初こそ両親に捨てられた悲しみや傷で塞ぎこんでいた。 しかし寺院の人々の助けによってそれさえも克服しようとただひたすらに偉大な先輩達のよう禁欲に努め修行に打ち込むようになる。 ソーマが精神的な壁にぶつかる度に取り合えず体動かしたり鍛錬に走り思考を埋めようとする癖があるのはこの経験故である。 そして十数年、寺院の規律をちゃんと守り、精悍かつ慎ましやかに成長した彼は他人にこの寺院の教えを広めることを許された一人前の僧侶となるべく最後の試練に到達する。 師から言い渡されたそれは世界を渡り歩き更なる見聞を広め、その心身を鍛え上げ、人間を越え超常の域に達するとされる7つ目の気門を開くことができるようになることであった。 そうして青年はちょっとした手荷物となけなしのお金を手に一人旅に出たものはいいものの、 今まで俗世から離れて生活してきたが故に船に乗って大きな街に到着したのはいいが最初に引き受けた商人の護衛任務で悪い大人に簡単に騙されお金と荷物を奪われてしまう。 報酬がもらえると思いきやいきなり文無しに陥り方向音痴で街にも帰れず行き倒れるという重大なハプニングに見舞われる。 行き倒れた所を傭兵任務帰りの親切な何でも屋の犬ニンジャとストーカー癖のある電波な従弟ニンジャに救出され、ご飯と一夜の宿を貰いなんとか命を繋ぐことができた。 彼ら事情を説明した彼はそれじゃあうちくるか!色んな仕事するから多分社会勉強になるよと半ば強引に何でも屋も稼業に携わることとなり居候させて貰うことに。 人の手を借りていては修行にならないのではと思っていたが、まあいいんじゃね?と丸め込まれて今に至る。 傭兵アシード=レザンは兄弟子、その姉であるリズロン=レザンは師に当たる。 8 職業 【修行僧・ペレネス寺院所属】 自らの修行や見聞を広めることを目的とする旅の僧侶。 彼らは主の教えに従い心身をより高みへ導き悟りを開くべく、旅中でも禁欲的な生活を送っている。 しかし彼はまだ寺院の教義を他者に広める資格を得ていない半人前なので布教活動はしていない。 現在では八雲の何でも屋もとい探偵業を手伝っており、店のスタッフの一員に勘定されている。 9 口調 修行僧の癖に口は悪い。淡々としたぶっきらぼうで風変わりな口調。 割と若者っぽい。 「宗麻=ネニュファール。変わった名前?よく言われる」 「何してるかって、お手伝い。これも社会勉強の一端らしい」 「……へぇ、二人とも物知りなんだな」 「強くなる為には毎日練習を繰り返し、積み重ねる。これが一番大事なんだ」 「釣りか、懐かしいな。前に川でちょっとやったことある。あっ 釣竿が川に」 「参ったな……ここがどこだかわからない………」 「きみがそうしたいなら、そうすればいい。結果は必ず後からついてくる。そう思う」 「大事なものは他の誰かがなんて思うかじゃなくて、自分がどうしたいかじゃないの?」 「気を使うのって難しい。すねてしまった……」 「夕飯?なんでもいいよ。ただあの薬みたいなものは、その」 「どうしたのいきなり胸なんて押し付けて。あ、柔らかい……」 「僕はこの前よりも強くなったぞ。師匠相手に3分も持った」 「あの人はいつも肝心なことは言ってくれない」 「門下生を卒業してすぐに島を飛び出したと思ったらこんな所で傭兵をしているとは」 「やはり師匠に良く似ている。顔も戦い方も」 「僕は、あなたの絶望を砕く。……それだけ」 「殺す?そこまでしなくてももう悪さはしないよ。きっと」 「君は君の神に従えばいい。それが信仰の報いになる。僕の報いはこの拳だ」 「いらない。それは僕にはいらない」 「僕は強くなんか無い。だって自分で強いって思ってしまったらそこで終わりだと思うから」 「落ち着かないとこうする。無心になれるんだ」 10 一人称、二人称 【一人称】 僕 【二人称】 貴方、あなた、あんた、きみ/~さん、呼び捨て 11 好きなもの 自分を鍛えること、筋肉、釣り、たくあん、無心、木登り(小さい頃からの特技) 12 嫌いなもの 問答、気遣い(苦手)、八雲の作る薬みたいな非常食、小難しいこと、地図(読んでも迷う為)、道案内(できない) 13 好きな人 いないようである 14 パートナー 仄明の影の面々 15 属性 風 16 苦手な属性 地 17 戦闘スタイル 修行により培った拳法、体術に気功術を交えた独特の戦闘スタイル。 僧侶らしく回復技にも長け、ヒーラーとしても活躍できる。 体術は拳打が中心であり、派手な動きこそないものの一撃一撃が重たく、動きの見た目や小柄な体躯に合わない火力を持つ。 槍を思わせる点に対する強力な攻撃を得意とし、見切り・受け流しといった堅実な護りを展開するパワー+テクニック系。 彼の気功術は気功エネルギーにより人間の体内に7つ存在する気門(チャクラとも呼ばれる)操作を可能にするもの。 気門を開くことで気の性質を様々なものに変質させたり、人間が普段かけているリミッターをちょっと外して気功強化し見た目に合わない力を引き出したりできる。 その結果僧侶でありながら魔法の素質を持たない彼であっても超能力・魔法に匹敵する特殊な秘術を使うことができる。 現在では過酷な修行により6つの気門操作をも可能にしており、臨機応変に切り替え戦闘を行う。 しかしながらソーマの力量を持ってしても一度に開くことが出来る気門は一つだけであるらしい。 弱点は高い戦闘能力に反した実戦経験の乏しさと魔法に対する低い防御力。 また気功という生命エネルギーを扱う術を使う関係上技の使いすぎは命にかかわる危険を伴う。 18 精神力 性格は控えめで大人しいが過酷な修行により培った精神力は頑強。 気功術の効果もあり多くの精神攻撃は跳ね飛ばしてしまう程。 総じて上の下だが本人の気力次第でその堅牢さは上昇していく。 19 戦闘熟練度 ★★★☆☆ 20 技や魔法 気功術 「紅花支根」 気門の一つを開くことにより発現する大地の力。 ソーマが生来所有している風属性と相反する力の為消耗が激しい傾向がある。 + <主な技> ┣ 「活命」 気功治療の一種。気功エネルギーにより傷を治癒する回復技。 回復量は調節できるが重傷の治療は彼自身の体力が持たず苦しい。 ┣ 「鳴動」 気門を開くことで発現する守りのエネルギー。 気功エネルギーにより自身の所有する霊子オーラ(耐性などになるもの)を強化。物魔防御を上昇させる。 ┣ 「割烈」 気門を開くことで更に火力を増した劈拳。 槍による振り下ろし攻撃の如く上段から手刀を振り下ろす。 手刀に大地の気功を纏わせ強化しており、単なる手刀であっても重たい鋼鉄の鈍器による渾身の振り下ろし攻撃に匹敵する。 ┗ 「衝地」 「無突」の応用。発剄と気功を扱った範囲攻撃。 空気を切り裂くような音と共に開拳を放ち、自身の周囲に放射状に広がる強烈な衝撃を放つ。頑張れば銃弾も相殺できる。 無突同様気の流れの見えない者には僅かな予備動作こそあれど念動力を思わせる不可視の衝撃に襲われることとなる。 「蒼葉宝焔」 気門の一つを開くことにより発現する火の力。 + <主な技> ┣ 「崩槍」 気門開くことで更に火力を増した崩拳。 槍での突きの如く相手に襲い掛かる拳は大岩さえも穿ち、鋼鉄すら抉る一撃となる。 本来ならば崩拳は別の気門との相性が良い技であるが、火の気門を用い更なる火力増強を図っている。 ┣ 「蒼衝」 気孔により自身の生命力を糧に燃える蒼炎のオーラを纏わせる。 この状態では打撃の炸裂と共に纏った蒼炎が爆発するかのように弾け、強い衝撃を生み出し相手を焼き払う。 ┣ 「炮脚」 気門を開くことで更に火力を増した足技。 槍による薙ぎ払い、鞭の如く蛇のようにしなり、襲い掛かる高速キック。 こちらも火の気門を用い更なる火力増強を図っている。 ┣ 「爆突」 気門開くことで更に火力を増した寸剄を利用した打撃。 掌まで伝達させた力を拡散させ相手を吹き飛ばすことに重点を置いた「飛突」とは異なり、伝達させた力を一転特化の破壊に集約させた技。 相手と密着するような至近距離による攻防にて踏み込みもなく放たれる音なき必殺拳。 ┗ 「紅蠍」 気門を開くことで更に火力を増した足技。 低い身長を生かし低姿勢で相手の懐に飛び込み、全身をバネに繰り出される逆さ蹴り。 打撃の作用点となる足先に全身の力を集約させ相手を貫く。 「朱禄水月」 気門の一つを開くことにより発現する水の力。 + <主な技> ┣ 「瀧泉」 気門を開くことで更に火力を増した鑚拳。 片足を前に踏み出しながら繰り出されるアッパー攻撃。 拳に水の気孔を纏わせ強化してあり、相手を間欠泉で打ち上げる如く天高く吹き飛ばす。 ┣ 「止水」 気功治療の一種。水の気功エネルギーによる回復技。 対象の気の流れを氾濫している暴れ川を治水するように鎮める。 感覚や精神の乱れなどを治療することが出来る。 ┗ 「疏水」 気功治療の一種。水の気功エネルギーによる回復技。 対象の気の流れの滞りを気孔によりほぐして活性化させ正常に戻す。 金縛り等の麻痺や石化、沈黙状態などを治療することが出来る。肩こりもすっきり解消できる。 「金華風音」 気門の一つを開くことにより発現する風の力。 + <主な技> ┣ 「縮地」 さる特殊歩法を気功により瞬間強化したもの。 ぬるっとした対象に擦り寄るような動きが特徴。 ┣ 「無突」 発剄、気功による遠当を行う。 気の流れが見えない者にはあたかも念動力のような不可視の衝撃が突然襲い掛かるように見える。 ソーマが扱える技の中では唯一の遠距離攻撃。 ┣ 「飛突」 至近距離での攻防において気門を開きながら相手を押し出すように両の手のひらを使う。 寸剄と呼ばれる技法を気功強化したもので、打撃の際に掌まで伝達させた全身の力を乗せて放ち相手に強い衝撃をかけながら吹き飛ばす。 応用して地面や壁など障害物に行うことで自分を吹き飛ばすことも出来る。 ┗ 「操力」 相手の物理攻撃を受ける際に、相手の腕や足に気を纏わせた拳や指を沿わせ力の伝達を緩めたり加速させたりする。 伝達を緩めれば急激な脱力感と共に力が抜けて攻撃の威力が激減し、加速させれば攻撃の威力が爆発的に強化され自身の拳や武器を傷つける。 自身の扱う発剄の応用であるらしく、相手が伝達させようとしている力に弁を設けたりリミッターをとっぱらって暴走させるような感じとのこと。 「紫清虚環」 気門の一つを開くことにより発現する浄化の力。 + <主な技> ┣ 「澄光」 気門を開くことにより気を浄化エネルギーに変換する。 体術に浄化攻撃を付与することが可能。 ┣ 「浄血」 気功治療の一種。浄化の気功エネルギーによる回復技。 気を浄化することで対象の肉体を浄化することができる。 ┗ 「清祓」 浄化エネルギーに変換した気を薄く放出させてアンデッドや悪霊を退散させる。 薄く放出する都合上効力は低くパワー負けすることも多い。 「白智蓮醒」 気門の一つを開くことにより発現する神秘の力。 + <主な技> ┣ 「彗覚」 気門を開くことで自身の五感をブーストする。 鋭敏となった感覚により感知能力や見切り技能にちょっとした補正がかかるが、その分受けるダメージや感覚に被害を及ぼす技や魔法の影響を強く受けてしまう。 ┣ 「明鏡」 気門を開くことで自身の集中力を気功により補正し高める技。 精神的な誘惑や妖術、迷いや恐れを断絶し目の前の事象に専念できるように意識を整える効果がある。 あくまで精神力にちょっとした補正をかけるだけというだけであり、強度は使用者のメンタルに依存するし特殊な耐性を加えるわけではない。 ┣ 「真眼」 気門を開くことで霊力や気などエネルギーの流れを視覚を通して把握できるようにする技。 幽霊や精霊の姿を捉えたり、戦場にしかけられた魔術を見抜き判別したりできる。 また対象に流れる霊力や気の流れを見るだけで対象の心身状態を把握することが可能。 この際ソーマは流れを川や海など水に例えることが多い。 ┗ 「静寂」 自身の気を鎮め、静かに呼吸。周囲の気の流れに同化するかの如く調和することで深い瞑想状態に入る。 瞑想状態になることで自身の鋭気を養うことが可能で、急速な疲労回復(心身を問わず)が可能になる。 応用することで瞑想により気の力を高め、気功エネルギーを強化することも可能。 随時追記 21 特殊能力・特殊技能 能力 「人間」 至って普通の人間。 人間に特別な効果を催す技や魔法、能力の影響を受ける。 「風属性耐性」 風属性に高い耐性を持つ。 気脈(気の流れ)という流体操作に長けるのも風属性を所有するが故にである。 「地属性弱化」 地属性に弱い。 「闘魂」 戦闘中に自己暗示で自分の士気を上げて、戦闘能力を増強する。 これにより、気力だけで想像もつかないような動きをしたり、満身創痍にあっても気力さえ途切れることが無ければ戦闘続行が可能。 それでも挫けてしまいそうな時は「白智蓮醒」、霊属性の気孔の力でブーストする。 「方向音痴」 頻繁に道に迷う。地図を持っていても迷う。迷うったら迷う。 技能 「ラナド流戦闘体術」 ペレネス寺院の修行僧や武術門下生が嗜む体術。 東洋かぶれの武人であった聖ラナドを奉り、彼のようにあれという寺院の方針により武器を持たない徒手空手の戦闘武術が発達。 先代の僧侶達が鍛錬の末にラナドが用いた武術を再現し、拳法的な流派として確立させた。 型を習得することは容易であるが、それを極めることは非常に困難であるとされ、習得した型を何度も繰り返し練習することにより磨かれていく。 日々鍛錬である。 「気功術」 人間などの生命体に流れ渦巻く生命のエネルギーを操る秘術。 ペレネス寺院流の気門操作と言われる気功術を専門的に扱う。 ちなみに気門とは気のエネルギーや生命体が生まれ持って所持している潜在的な力を引き出すための門と呼ばれる場所を指し、人体には7つの気門が存在すると言われている。 この気門を操作し気の性質や属性を変換したり、自身の感覚などを強化することで多彩な気功技を繰り出すことが出来るのだ。 「発剄」 の技術を会得している。小柄で体格に恵まれず食も細く、筋肉がつきにくい彼を見て師匠が教えてくれたらしい。 ソーマの技が見た目以上の火力を持つのは気功による強化とこの技能が原因。 重心移動や伸筋の力、張る力など物理的な力を駆使して火力を底上げしているのである。 「気功治療」 気功術に基づく治療法を会得している。 自身の生命エネルギーを相手に分け与えて傷を回復する技法と言い換えることもできる。 他にも対象の気の乱れ=心身の異常を把握しそれを鎮めたり活性化させることで各種異常を治療することも出来る。 「気装強化」 気功エネルギーによる自己強化法の技術を会得している。 「気炎暖流法」 気功エネルギーにより自身の体内の熱量を調整し暖める。 極端に寒い地域であるペレネス地方の修行僧ならではの気功活用法であり、寒い冬でも厚着をせずとも快適に過ごせる。 「見切り」 相手の攻撃を見切り、対処する技術。 「柳風」 見切り、発剄を駆使した戦闘技術。 相手の攻撃を受ける瞬間に発剄を発動させた手足や気功エネルギーを纏わせた衝撃をぶつけ、相手の攻撃の威力を減衰させながら弾き、受け流す。 極まると重機関砲の掃射攻撃でさえも無傷で受け流すことが可能であるという。 22 必殺技 「藍智霊眼」 「白智蓮醒」の一つ。気門を最大限開くことで自身の第六感を極限まで強化する。 限界まで極まった第六感は限定的な発動が可能な擬似予知能力と言えるまでの状態になる。 回避力と見切り技能、危険感知能力が超人レベルにまで昇華し、普段とも見違える動きでの戦闘ができるようになる。 「蒼火崩突」 気装強化による自己強化をフルにかけた状態でかつ「蒼衝」を使用。自己強化と発剄、爆破衝撃により更に破壊力を高めた「崩槍」。 緩やかにかつ力強く打ち出される拳は超合金の壁でさえ用意に穿ち風穴を開け、人間ならば跡形も残らぬレベルに弾け飛ばす程の超火力を誇る。 気功による肉体強化をしつつ複数の気門の切り替えを拳を打ち出し相手に命中させるという一連の動作をしながら円滑に行うという難度の高い大技である。 「白銀剛守」 気装強化による自己強化・「静寂」を使う時のような深い瞑想状態に加え、「藍智霊眼」を併用。 四方八方に青白い気のエネルギーを張り巡らせた金剛を思わせる守りの構え。 構えをしている最中に自身が受けるあらゆる攻撃のダメージを半減以下に抑えてしまう。 集中力と気を高め続けているためその場から動くことはできなくなってしまうのが弱点。 23 能力 体力 A 魔力 E(なし) 魔法攻撃力 E、気孔 B 魔法防御力 D++ 腕力 A 物理攻撃力 A~ 物理防御力 B~ 知力 C 精神力 B++ 精神防御 A 素早さ B 命中 B 24 武器やアイテム 「修行僧のローブ」 【装備効果】 防寒(寒さにちょっと強くなる) 【特殊能力】 とくになし ペレネス寺院の修行僧の制服のようなものでソーマが日頃身に着けている服装。 寺院に居た頃は複数の替えがあり、旅立った際も着替えとして何着か持ち出していたようだが前述の文無しになった際に損失。現在着ているものが一張羅。 僧侶の制服ではあるもののなんの変哲もない普通の防寒具。術式がかけられているわけではない。 「包帯」 【特殊能力】 とくになし なんてことない普通の包帯。サポーター代わりにしている。 「ネルケ市の地図」 【特殊能力】 とくになし。八雲手製 八雲に書いてもらったネルケ市内の地図。読んでも迷う辺り筋金入りである。 「通信機」 【特殊能力】 海外製の型落ち通信機。現在では生産が終了し市場にももはや出回っていない。地味にレアもの。 一昔前の海外製の輸入通信機。現在では型落ち品とされ生産が終了しており、市場にも流通していない地味にレアな品物。 どうしても帰れなくなった時用にもっとけ!と言われたため持ち歩いている。 25 その他 1 クゥ、モニールアギフ姉妹やハシム、ロッジュら拳法使いのキャラに触発されて作成。拳法家ではなくモンク(修行僧)なのは完全に趣味。 八雲やセラスくらいの年頃のキャラがいいなぁと思ったのでそれくらいの年頃に。 当初の性格だとかなり極端すぎたのでちょいマイルドに修正。方向性はそのままだけど斬り捨てる範囲がだいぶ狭くなったので修行一筋じゃなくなった。 2 私のキャラには珍しいエセでも生臭でもカルトでも狂信者でも元でもないちゃんとした修行僧。 性格こそ大人しいけどスーパー系。そして更に珍しい純人間である。 3 ソーマ⇒インド神話に登場する神々の飲み物、霊薬「ソーマ」から。同じく聖職者系キャラだったネクターがギリシャ神話におけるソーマなのでその辺も意識。 ネニュファール⇒フランス語で「睡蓮」。僧侶だけども異人っぽい見た目にする為ハーフっぽい名前に。 4 既に半人前の戦闘能力ではないけども、寺院の方針としてはこの世界を渡り歩くことで7つ目の気門(超常な悟り)の境地に至る過程を重要視している。 今までの修行生活になかった外世界からの数々の誘惑や挫折を撥ね退けてそれでも墜落することなくあり続けることを何よりも尊いものと考えているのかもしれない。 最後の試練に社会勉強を加えたのはソーマのあまりにもの世間知らずぶりと例の悪癖を憂いた師匠の計らいである。 5 技の一部のモデルは中国拳法の刑意拳とチャクラから。でも多分近いのはジークンドー。 アイギスやサイプレスとの差別化を図るべく技巧中心の堅実な格闘キャラに。サイプレスに関してはデザイン面でも差別化を狙った部分多し。 6 設定を練るうちにキャラのタイプも近いし八雲の関連者にするかと行き倒れ+居候設定を追加。 世間知らず+世間知らず=カオス。 7 寺院の場所を極寒の地にしたかったのでシャンティから名称変更。 登録タグ モンク 人間 仄明の影 修行僧 僧侶 弟子 拳法 方向音痴 格闘 気功 風
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/99.html
17話 海岸近くの崖、 隣のエリアに掘っ立て小屋があるものの、 それ以外は人工物がないように見える島。 「今更だが、ここで会うとは思わなかったぞ。気に入らない女」 「奇遇ね、わたしもそうよ。気に入らない女」 幕府に二人の鬼女あり。 偶然にも、その二人が顔を会わせていた。 「しかし、わたしが死んだ後、七花がよりにもよってきさまとくっ付いているとは…………」 おかっぱの白い髪のやや小さい女性が苦々しくそう言うのを、 「否定する—— 一応、同意の上での傷心旅行って事になってるわ」 顔の横に『不忍』と書かれた仮面を着けている外国人の様な女性が否定した。 十二単を二重に重ねた様な衣装を着たおかっぱの白髪のやや小さい女性は、奇策士とがめ。 自分を奇策しか使わないから奇策士だと言っている。 『不忍』と書かれた仮面を着けている金髪碧眼の女性は、否定姫。 如何なる物であろうと何でもかんでも否定するため、否定姫。 幕府の二人の鬼女。 ちなみに両方とも戦闘力は皆無に等しい二人は、 よりにもよって無人島、呼ぶ人は不承島と呼ぶ所に居た。 「…………で、どうする、気に入らない女」 「…………どうしようかしらね、気に入らない女」 状況は無人島で、どうやら二人しか居らず、 島から出るにも舟一つないため出る事も出来ない。 「ちっ、ここから出る手段は一つとしてなしか…………」 「否定…………しないわ」 「あら、そうですか?」 本当に困った事態である。 出る手段はないが、外の方は入る手段があるだろうから、 最悪、殺し合いに乗り気で説得が効かない相手では正しく話にもならない。 「「そうですか?」って、舟もないのだぞ?どうやって出る?筏でも作るのか?」 「筏なんか私達で作れる訳がないわ。ハッキリ言ってこの状況、打つ手無しよ」 「そうでもないですよ?」 二人で案を出しては否定して、あるいは容赦せずに没にしたり、 ハッキリ言って出る気があるのかと疑うような状況だが、 二人とも至って真面目であるのが更にややこしい。 「「そうでもないですよ?」だと?じゃあどうやって出るんだ?」 「誰かどこぞの忍者みたいに海の上でも歩ければ良いんだけど…………」 「いえ、わたしは海の上を歩いて来ましたし」 「冗談も大概に————ん?」 「冗談も大概に————え?」 二人が同時にそう言うのを二人が同時に不審に思い、 どうやらようやく二人して気が付いた様である。 何時の間にかもう一人会話に加わっていた事に、 他に誰も居ないはずのこの島に、 何時の間にかもう一人この島に居た事に。 しかもわざわざ二人の後ろから話しかけていたらしい。 遅い事この上ないが、 二人が後ろに振り向けば居たのは………… 「お久し振りですね、とがめさん。あと、はじめまして誰かさん」 邪悪そうに笑うとがめにとっては見覚えのある女性だった。 ここで簡単な説明を入れよう。 誰も居ないはずのこの島に、呼ぶ人は不承島と呼ぶこの島に、 どうやって奇策士とがめと否定姫以外の人間が一人来ていたのか? 言葉で表すにはこの上なく簡単な事である。 本人が言ったとおり、海の上を歩いた。 そう、言葉で表すにはこの上なく簡単な事を実行した。 実際にやる事は不可能に近いこの事を、 まるで簡単な事のように、アッサリとしたのである。 種を明かせば簡単な事ではないが、 彼女の持つ眼で、かつてこの島で戦った真庭蝶々から見取った、 ありとあらゆる物の重さを消す事ができる歩法の一種、 忍法足軽を使って自分と荷物の重さを消して歩いて来た。 既にあらゆる技術を自分の物にしている彼女だが、 地味に死ぬ前からよく使っている技術である。 「で、わざわざこの島まで歩いてきた事はわかったが」 「残念だけど七花くんはこの島には居ないみたいよ?」 顔見知りのとがめの方はおいておいて否定姫が自分の紹介を終えて、 とりあえず三人で話を始めた。 「早速だが一つ質問がある」 とがめは特に天才かつ天災的な彼女に物怖気する様子もなく質問する。 「向こうの、まあ、本土として置いて。 本土であった地図で言う赤神イリアの屋敷とやらであった爆音についての情報を持っていないか?」 不承島の砂浜のほぼ対岸に位置する屋敷で何度も会った爆音、 それを見る為に見晴らしの良い海岸に来た所で否定姫と出会ったと言う裏話は置いて、 素直に戦闘があったらしい場所の状況についての情報を求めた。 ちなみに気になってはいたらしい否定姫も静かに二人の話に耳を傾けている。 「え?あれですか?」 「うん、多分そのあれだな」 一応話してくれる気はあるようだ。 「三人ほど逃げらてしまいました」 どうやら戦闘を起こした本人の様である。 しかし微妙に会話がずれている。 「ほ、ほお?と言う事は何人か殺したのか?」 微妙に冷静で居られていないとがめである。 それもそうだろう。 一応、目の前の人物が殺し合いに乗り気である可能性が判明したのだから。 今後、自分達が七実に殺されない保障は何一つとしてない事をない事に。 実際に一度は殺され掛けた事があるとがめも、 一度も殺され掛けた事がないものの危険性は左右田衛門から聞いていた否定姫も、 二人の身体に若干の緊張が走っている様子である。 無論、大抵の物を見通せる七実に対して緊張を隠そうとも意味もなく、 あっさりと見破ったらしくクスクスと笑っている。 「大丈夫です。あなた達を殺すつもりは少なくとも今はありませんから」 笑いながらそう言う笑顔は、その笑顔は、 本当に悪そうで、どこまでも邪悪そうな笑顔だった。 「それでは、その館で一人殺して三人は逃げられたという事だな?」 一瞬、あまりに邪悪そうな笑顔に一瞬怯んだ物の、 その後、屋敷での戦いの様子の説明を求めた所あっさりと答えてくれた。 あまりにもあっさりと、何でもないかの様に。 しかし、その屋敷の四人の戦闘を見て来たと言う。 それぞれがそれぞれで異能を身に潜めた様な四人の戦闘を、 しっかりと、まじまじと、その四人の技術を、 七実は己の眼で、見た。 じっと。 ぎょろりと。 まじまじと—— 見る。 見切り。 見抜き。 見定め。 見通し。 見極め。 見取る。 見る——視る——観る——診る——看る。 観察するように——診察するように。 その四人の技を、技術を、経験を、見て来たと言う。 一人は全身、体のありとあらゆる部分に口を持った少女だったと言う。 幸か不幸か流石にそれは真似出来ないと言う事らしいが、 そんな化け物がこの戦いに参加している時点で笑えない。 一人は変わった服装の女性だったと言う。 幸か不幸かこれと言った珍しい技術は持って居なかったらしいが、 その胸に悪刀『鐚』が刺さってたと言う。 と言う事は四季崎記紀が作った変態刀が他の参加者の手に渡っている可能性が高い。 もしも前の持ち主の腕を超える者の手に渡っているとすると………… 一人はまにわにの忍者らしき人物だったと言う。 服装などを詳しく聞いた所どうやら真庭鳳凰で間違いが無さそうだった。 真庭鳳凰が殺し合いに参加しているのはわかってはいたが、 問題は真庭鳳凰の忍術を見て来たと言う事である。 ただでさえ恐ろしい七実が、あの真庭鳳凰の忍術を手に入れた。 ハッキリ言って恐ろしい事この上ない。 最後に唯一殺せたと言う若草色の和装の女。 この女の空蝉なる技術を見て来たと言う。 どのような技術かは身を持って場所を入れ替えさせられて教えられたが、 そのような技術を持つ者が他にも居るかも知れないと言う事。 七実よりもたらされた情報を纏めると、 どうやら主催者は殺し合いを本気でやらせたがっていると言う事、 この殺し合いの中には真庭忍軍並みかそれ以上の使い手が居るかも知れない事、 そして、このありえないはずの地図の地形はほぼ確実である事。 H-4にある赤神イリアの屋敷から海の上を歩いて、 今とがめが否定姫と共に居るH-2までまっすぐ海の上を歩いて来たと言う。 誰の屋敷かは知りはしないが、 この不承島の向かい側の陸地、深奏海岸に、 赤神イリアの屋敷と呼ばれる場所はない。 更に言えば、 不承島の近くに鎧海賊団の本拠地とも言える濁音港が、 こんなに近くにあるはずが無い。 不承島は場所で言えば丹後、濁音港は薩摩。 本来在り得る筈が無いこの地形がありえるのか? 濁音港はとがめと会う前に否定姫が港らしい場所があると言う事を視認したらしい。 ここで否定姫が嘘を言う意味は無い。それから考えればこの地図は本物である。 七実が嘘を付いていない事が前提ではあるが、 今の所、七実が妙に積極的である事を考えれば嘘を付いてはいなさそうである。 以上の事をふまえて考えた結果、 「ふん、それから考えれば願いを叶える云々はおいておいても」 「水倉神檎はとんでもない力を持っている、と言う事かしら?」 これが幕府の二人の鬼女が一緒に出した結論であった。 「ふふふ…………」 「あはは…………」 しかし、その結果が出た上でも二人は笑い出した。 「くはははははははは」 「あはははははははは」 まるで楽しそうに笑う、 「それでこそ」 無自覚に声を合わせながら、 「奇策の練りようがあるわ!」 「否定しようがあるわね!」 やはり幕府にありと言われるだけはある鬼女の二人。 二人とも水倉神檎に対する闘志が溢れていた。 目の前に居る七実を超える化け物かも知れないとわかっている上で、 天災と呼ばれた天才以上の怪物かも知れないとわかっている上でである。 その様子を七実は二人を笑いながら見ていた。 悪そうに、邪悪そうな微笑と共に、見ていた。 「さて、元日本最強の七実どのにわたしから頼みがある」 真剣な表情でとがめと七実は向かい合っていた。 とりあえず言うと七花が住んでいた小屋……ではなく、 場所は変わらず崖の近くの地面の上でである。 いくら天才七実と言えども海を歩いて渡って来て、 流石に疲れてあまり動きたくないとの事なのでである。 この殺し合いの中でも体力が無いのは相変わらずのようだ。 一応、真剣な話し合いではあるが、 場所が場所なので微妙に間が抜けた感じがしないでもない。 ちなみに否定姫は所在無さげに少し離れた位置からこちらを見ている。 とがめの交渉の行方を見守っている。 「わたし達と協力して貰いたい」 簡潔に、混じり気無く、一直線に交渉する。 目の前の天才に対しては小細工は通用しない。 文字通りそんな事をしても、見抜かれてしまうから! ちなみに「わたし達」と自分も勝手にとがめの仲間に入れられている事に、 無論、否定姫は気が付いているがあえて口を挟まない。 とがめはともかくして七実と共に行動が出来る事に損は無いと考えているためである。 「構いませんよ」 そんな周りの空気を知っていながら七実はアッサリと承諾した。 「いくつか条件がありますが」 と後に付け加えて。 流石にとがめの表情が曇る。 あの天才の七実が共に行動するに当たって付ける条件だ。 簡単な物ではないだろうと予想しながら、 それも計算通り、と密かにほくそ笑みながら、 「…………条件はなんだ?」 と、表面だけは苦々しげに聞いた。 それを恐らく見抜いているだろうが、条件を提示する。 「一つ目はお二人に関する事です」 一つ、まずは一つ目。 「お二人にはわたしにしっかりと協力して頂きます」 一つ目、いくつかある条件の内の一つ目は普通だった。 いや、あまりにも普通過ぎた。 簡単に言えば、 とがめからは思わず見惚れるような奇策を出してもらい、 否定姫はとがめの政敵だったと言うからとがめ並の頭はあるだろう。 だったら、使えるだろうから使う。 それ以上でも以下でもない。 役に立つだろうから使う、それだけである。 が、二人にとっては普通過ぎる条件に、 思わずとがめと否定姫が不審そうな表情を浮かべるのを見て、 「二つ目は支給品に関する事です」 あっさりと流した。ごくあっさりと何事も無かったように流した。 「お二人の支給品を見せて頂き、使えそうな物を頂きます」 二つ目も普通、普通にしっかりと自分の目的を出す。 あくまでも冷静に、自分の目的を表に出す事無く果たすために、 二人の支給品を見て、使えそうな物を貰う。 一見すれば当然の行為。 相手から自分にとって使える物、武器を手に入れる。 しかし、七実にとって武器など本当の意味で、 どうだっていい。 己を一本の刀に仕上げた虚刀流にとって、 銃などの遠距離武器以外は邪魔でしかない。 もっとも、今の七実は忍法撒菱指弾も見取っているから銃などもほとんど必要がない。 と言っても残念ながら今は撒菱は持っていないので使えないが、 石を撒菱の代わりくらいには出来るだろう。 今の目的は優勝する事でもなく皆殺しにする事でもなく、 あくまでも完璧な『再生力』を見取る事。 いくつもある吸血鬼の一部を集めて合わせて、 完璧な『再生力』を見取る、それだけである。 一応、七花に会って見たいと言う事もあるが、 ここに来てしまった事でこれ以上思い当たりはない。 ならば、思い当たりがありそうなこの二人と行動する事が一番良い。 「以上です」 二つ。この二つだけではあるが、この二つの条件に必要な事を全て詰め込んである。 しかも二人からしたら楽な条件であろうとちゃんと考えて。 自分にこれ以上ないぐらい良い条件を出しながら、 二人にとっても良い条件になるように考えて。 二人に断る理由が見付からないように、 「そうして頂ければお二人と共に行動しましょう。 ついでに可能な限りお守りもしましょう」 そうちゃんと付け加えて利益に目が眩むように、 自分と行動するの利益がしっかりと眼に見えるように、 頭脳労働専用と言っていた彼女達には破格の条件だろう。 言うならば、決して見逃したくないほどの条件を! とがめは苦々しげに、 「——————わかった。その条件、のもう」 しかし、心の中では踊り出しそうなほどの喜び様であった。 踊らないのは否定姫の前だからであり、 否定姫が居なかったら踊っていたかも知れない。 否定姫も否定姫で、 しばらくの間、左右田右衛門左衛門の変わりになる護衛が見つかった。 と、とがめと同じく踊り出しそうなほど内心で喜んでいた。 こちらもとがめの前だから踊らないのであり、 とがめが居なければ踊っていたかも知れない。 七実は二人とも踊り出しそうなまでに喜んでいる内心をしっかりと見破り、 一人、笑っていた。 悪そうに、邪悪そうに、笑っていた。 「それでは、交渉成立で」 ちなみに、 二人の支給品を見ても七実の目当ての物、 吸血鬼の一部は見付からなかったが、 「あら?これは…………」 一つ、変わった物に目が付いた。 「ん?これがどうしたの?」 すでに三人でとがめの支給品を見終えて、 今は三人で集まりながら否定姫の支給品を検分中である。 七実の眼に止まった『それ』、 「これによく似た服を悪刀『鐚』を刺していた人が着ていましたね」 『それ』の正体は………… エプロンドレス。 おまけなのか黒縁メガネ付きのエプロンドレス。 対ロングレンジ用の特別なエプロンドレス。 前の持ち主、千賀てる子。 七実と会っていながら逃走に成功した千賀てる子の服。 「これを着ていた方が良いですねよ」 無論、対ロングレンジ用の加工がされている事を見抜き、 否定姫に着るように勧めた。なぜかメガネも。 なぜ否定姫に着るように勧めたかと言うと、 とがめには大き過ぎて、七実には必要がないからである。 更に、ただでさえ目立つ髪と眼の色にこのエプロンドレス。 自分が狙われない可能性が上がる、とちゃんと考えての事である。 あくまでも自分が生き残るために。 最初は嫌がっていた。 いくら外国に対する理解があったもの、 防御力も全く無さそうにしか見えないこれは……と。 しかし、 対ロングレンジ用の加工がされている。と七実が言った所、 ならなぜ七実が着ないのか?と言う疑問を胸に入れたまましぶしぶ承諾した。 そして今、メイドの格好をした否定姫が誕生した。 頭に『不忍』と書かれた仮面を着けたままではあるが、 金髪に碧眼、更に黒縁メガネにメイド服。 ちなみに先ほどまで着ていた服は支給品が入っていた物に畳んで入っている。 今現在ここには居ないが某最悪と某最弱が見たら悶絶死する事請け合いであろう。 それほど妙に似合っていた。 外国の血が混じっているからだろうか? 否定姫本人に言ったらきっと瞬間的に否定する事であろう。 微妙に恥かしいのか若干であるが否定姫の頬が赤い。 「あら、お似合いですね」 「………………」 その姿を見て七実は褒めるが、とがめは後ろを向いて堪えていた。 笑いたいのを懸命に堪えていた、が、 「…………ぷ」 あえなくとがめの笑いを堪えるために出来ていた防波堤は決壊した。 それも見てからたったの十秒持たずに。 その時のとがめの笑い声は、 島の向こう岸に届いたとか届かなかったとか。 その後、 「そう言えば七実」 存分に笑い終えたとがめがふと思い出したように言った。 「なんでしょうか?」 「七実の眼でこの首輪はどう見える?」 わりと重要事項。全員に付いているこの謎の首輪の情報を聞いてみた。 ちなみに否定姫は少し離れた所で座り込んでいる。 否定しようがないほど笑われたのがショックだった様子であるが、 二人は何事もない様子で話を続けている。まさに鬼。 「………………」 「………………」 「………………」 沈黙、ただの沈黙が流れる。 七実の顔に何の色も見えないが、 それの意味を理解したとがめは黙るしかなかった。 まさか、天才七実の眼でもわからない事があるのか!? ただ単に驚く。 四季崎記紀の完成形変態刀の特性すら見抜いたその眼でも見通せない、 水倉神檎が作ったと思われる首輪に驚いた。 しかしあくまで驚いただけである。 「どう言った性質の物かはわからんか?」 諦め知らずの奇策士とがめである。 それに対して、 「わたしの眼だけでは情報が足りません」 とキッパリと言い切った。 「せめて首輪の中身が見れれば良いのですが…………」 「………………」 「………………」 「………………」 またも沈黙が流れる。 七実の眼を持ってしても首輪に対する打開策はなし、 「やはり、この殺し合いに乗るしかない。優勝するしか…………」 助かる方法はない、か。と、とがめが言い掛けた時、 「否定する」 少し離れた所に居たメイドの格好の否定姫が言った。 「否定するわ。気に入らない女」 ハッキリときっぱりと、気持ちが良いほどしっかりと否定した。 「あなたはさっき七実さんが話した話の内容を覚えていないのかしら?」 ゆっくりと近付きながらとがめを見下ろす様に歩いて来る。 ちなみに伊達メガネとメイド服を着たままである。 「さっき七実さんは言っていたわ。 本土の方の屋敷で若草色の和装の女を殺して来た、と。」 そう、しっかりと一人殺して来たと言った。 それも頭がなくなるぐらいにまで踏み潰して来たと言っていた。 「はい、ちゃんと摘んで来ましたよ?この通り支給品も全て持って来ましたし?」 それがどうしたと言わんばかりの言い方、 人を殺した事への後悔の様子はないが今は関係ない。 「その和装の女の首輪はどうしたの?」 「………………あ」 「………………あら」 二人とも忘れていたようである。 しかし否定姫からしたら、 「そんな事も忘れてたの?そんなんでよく奇策士なんて務まるわね?」 と言いたい放題言える上、先ほど笑われた恨みを晴らす機会である。 普段なら絶対に逃す訳がないのだが………… 「…………まあいいわ。 七実さんの眼があれば、その女の首輪を見れば何かわかるかも知れないから、 とりあえず、まずは本土の屋敷に向かう。それで構いませんか?」 ここまで正論を言われてはいくら奇策士と言えど反論出来なかった。 「わかりました。それでは——行きましょうか」 七実が立ち一声掛け全員が、と言っても七実の他は二人だけだが、 更に言えば座っているのはとがめだけだが立ち上がり、 幕府にありと言われた二人の鬼女と、天災級の天才は動き出した。 目的地は、H-4にある赤神イリアの屋敷。 目的物は、七実が殺した名前も知らない女の首輪。 目的は、自分達の首輪を外す。 今の所はそれだけである。 これから七実の肩に乗せて貰って海を移動しようとした時、 「そう言えば、知らない誰かに会った時はどうする?」 唐突にとがめが言ったのを、 「わたしが見て、役に立ちそうになかったらむしりましょうか?」 あっさりと答え、 「否定する——最初は殺さないで置きましょう。 役にたたなそうな人でも、情報を引き出してから殺す方がよっぽど合理的よ?」 否定した。 「それもいいですね。…………いえ、悪いのかしら?」 今の所、役に立たない人間は殺す方針に決定したようだ。 あらゆる事柄を見通す天才に、奇策と否定の二人の鬼女。 今回は刀集めではない上、手加減の欠片もないだろう三人組。 彼女達が通った後に残れる者は居るのか? 容赦なく奇策に貶められるか、 ありとあらゆる事を否定され死ぬか、 草のように摘まれて終わるか、 はたまた生き残れるか、 ある意味でもっとも凶悪な三人組が行く。 【1日目 黎明 不承島 H−2】 【鑢七実@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜2)、キスショットの心臓 闇口憑依の支給品(確認済み) [思考] 基本 二人を守りつつ吸血鬼のパーツを探す。 1 七花とあってみたい 。 2 完璧な『再生力』を見取るために吸血鬼のパーツを集める。 3 『再生力』を見取り自分の本気を出してみたい。 4 とりあえずこの二人と行動を共にする。 【奇策士とがめ@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3) [思考] 基本 今の所はこの二人と行動を共にする。 1 鑢七花を探し、見付けたら護衛させる。 2 基本的に鑢七実に頼る。 3 とりあえず首輪を手に入れる。 4 奇策を練る。 【否定姫@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜2) 防弾エプロンドレスと黒縁メガネ(装備中)@戯言シリーズ [思考] 基本 今の所はこの二人と行動を共にする。 1 鑢七花と左右田右衛門左衛門を探し、見付けたら護衛させる。 2 基本的に鑢七実に頼る。 3 とりあえず首輪を手に入れる。 4 優勝したら願いが叶えるって、水倉神檎は何を考えているのかしら? *これから赤神イリアの屋敷に向かいます *不承島G-2にある鑢七花の住んでいた小屋には誰も入っていません 016← 017 →018 ← 追跡表 → 012 鑢七実 ― ― 奇策士とがめ ― ― 否定姫 ―
https://w.atwiki.jp/tsvip/pages/249.html
『不思議の国のアリス』が読みたい そう思ったのに特に明確な理由は無く、思いつきや衝動と言う概念が当てはまる それでも理由を知りたいと言うのなら、どこぞの話にあるらっきょやら玉葱やらと同じ結末を迎えるだろう 中身が知りたいと思って皮をはぐと、中身は何も無かった つまりそれは皮が集まった状態がらっきょであるのであって、霞のように薄い衝動が集まって初めて形作られる理由なんだ 何が言いたいのかって?さぁ ただこの例を言ってみたかっただけなんだよね 結局の所、理由は無いさ。 理由なんか無い、無意識からの衝動の為か、何を我慢すればいいのか分からない なので欲望の赴くままに、僕の足は図書館へと向いていた 学校の図書室は、昼休みにしか開いてない 今は放課後で、この衝動が沸いたのは昼休みが終わった直後だった 何処にあるか、鍵が開いてるのかも定かじゃない図書室に行くのも億劫だった訳でありまして 最近、学校からそう遠くない所に図書館が出来たらしい 県立だか国立だかは忘れたが、結構大きい事は覚えている しかし、中に入ったことは無い 普段の僕はそれほど本を読まないので、無縁の場所だ 図書館正面入り口の無駄に大きいガラス張りの観音扉、その木製の縦に長い取っ手を見つめる 因みに観音扉と言うのは正式な名称かどうかは知らない。小さい頃からそう読んでたからね 何と現すべきか………そうそう、両開きの扉って事で 何故だか威圧される 蔵書数が多いと言うことは、マイナーな本やら参考書を求めてやってくる人も多いのだろう 童話を読みに来ただけだと、何故か入る資格が無いような気がする 『私の戦闘力は53万です』と言う幻聴が聞こえた それほど抵抗も無く中に入れた あれ、この表現って結構エロくない? どうでもいいか 扉を越えた先は、別世界だった 紙とインクの匂いが充満している 木造の壁から香る木々の香りも何か良い 精神が落ち着く感じだ。森林浴と言うのもバカにできない 正面にはカウンターの様なものがあり、三人ほどの係りの人が営業スマイルを浮かべている 恐らくあそこで本を借りるのだろう 両端に幅広の階段が見えた 広大な敷地に作られて居るこの建物は、外から見ると4階建てぐらいに見えた しかし一階の天井は結構高く、もしかしたら3階建てかもしてない 左右対称を心掛けたかのように植木鉢やソファが置かれている 紙コップ式の自販機もあったが、その隣には『飲食禁止!』の張り紙 ………どっちさ? 横に幅広く作られた階段は、材質の為かそれとも無意識な用心のためか、足音を届かせない 普通反響して大きくなりそうな気もするが、其処は図書館、何か特別なんだろう 天井から鎖で吊り下げられてるプレートに、本棚の種類が書いてあった 歴史、民謡、世界史、古典、辞書……… 2階は勉強専門か。学生服を着た人たちが、ピリピリと空気を張り詰めている 机と椅子が備え付けられているが、空いている席はなさそうだ 僕の事を気にも留めず、ページをめくる音とノートに文字を書く音だけが静かに響いていた 『私はこの変身を後2回残している』 パワーアップした幻聴を聞いた気がする お受験戦争という言葉を思い出す 差し詰め、此処は兵士訓練所? なんて考えながら2階を後にし、3階へと上る シン………としていた 筆記や読書の音も無い 静寂に包まれる、という表現を使う事の出来る状況に初めて出会った 天井から釣り下がるプレートに眼を走らせる 童話、推理小説、ミステリー、SF、哲学、ポエム、黒歴史……… なんというか、多種多様だ 茶色の木製の棚の中で異色の空気を放つ、何故か黒い棚の黒歴史に非常に興味をそそられる しかし、当初の目的を忘れてはいけない 童話のプレートが下がった場所に立つ ドミノ倒しのように本棚が一定の間隔で並んでいた 本棚が3つ6セット、ざっと見通して数は18 両側に本を入れられる仕組みだとして36 目算なので恐らくそれ以上はある 其処に所狭しと並べられた古今東西の童話達 「……………しまった」 作者の名前知らないや この数の中から探す……… 気が遠くなりそうだった 「……………はぁ」 一つ溜息をついて、本棚の間の通路を歩く 無いな、うん、無い。夢の希望も無い。 開始して間もなく、諦めた 童話と言っても日本の物以外も……というか寧ろ、その方が多い 見事な書体で書かれる重苦しい“童話”を見ていると頭が痛くなる 童話の童と言う字は子供を現す筈なんだけど 何故だか眠くなってきた目を擦る 何で僕は童話なんか読もうと思ったんだろう?と言う思索にふける 絵本やらを重点的に設置した棚の横を通り抜ける 英語だかドイツ語だかの本の棚を通り抜ける 肉まんを頬張る人物の横を通り抜ける 新刊中心の棚、多くのスペースを使って見易く設置された本棚を通り抜ける …………………OK、ちょっと冷静になろうか歩いてきたそのままの格好で後ろに歩を戻す ドミノ型に並べられた本棚の合間に、人が居た 図書館の精霊だ ………OK、ちょっと冷静に……って二回目 そう幻視したのは、恐らくその人物が戦慄を覚えるまでに整った顔立ちをしていたからだろう 陽光を反射するように金色に輝くさらさら(推定)の髪 宝石のような碧眼は、ページを開けて固定した本に注がれている まるで絵画のように幻想的な雰囲気を作り出している ………手に持った肉まんさえなければ 窓の傍に設置された小さな木製の丸テーブルの上には、コンビニの袋が置かれている 飲食禁止なんじゃなかったっけ、此処 「……………」 恐らくは外国人なんだろうか それにしては顔立ちに日本風味が混ざってる気がする とりあえず外国書籍の元本を読みながら肉まんを頬張る姿は何処と無くシュールレアリズム それよりも気を引いたのは、その人物の服装だった 僕と同じ格好をしている いや、制服って意味ですよ 平々凡々な男子用のブレザーである筈なのに、何処かブランド物っぽく着こなしている 金髪碧眼の容姿も相俟って、まるで漫画か何かから飛び出してきたような感覚を受ける 校章の色は一年……一つ下だった こんなに格好いいなら校内で噂の一つでも聞きそうなのに、見覚えが無い 自分のクラスも覚えてないぐらいだから、僕の「見覚えが無い」の信用度は10%を切ると思うが 「ん?」 金髪碧眼が喋る 妙に流暢な日本語だった 口に物入れてるから、声と言うか音だったけど 「こんにちは」 「ふぉんにひは」 多分、「こんにちは」だろう 最初に感じた大人っぽい印象はどうやら間違いだったようだ どちらかと言うと子供っぽい感じらしい 「………食べる?」 中華まんを差し出してくる。下のビニールは剥がれている 中身が分からない …………僕、肉まん駄目なんだよね 駄目って言うか、あんまんの方が好きなだけなんだけど 「いただきます」 恭しく受け取り、少し齧る もちもちとした食感と共に、口に広がる甘味 あんまんだった 「………」 「………」 お互い、黙々と自分の分の中華まんを食べ続ける 何故か目線は相手を見たまま お互いがお互い変な物を見る目だった 数分間そんな状態が続いた 「新垣」 彼が自分を指差して言った 理解できない事を前面に押し出した表情をすると、補足するかのように続けた 「新垣クルス。クルスは片仮名でクルス」 日本の苗字と外国の物の様な名前 ………ハーフだろうか? それなら日本風と外国風な顔立ちが両立してる理由が分かる 「月時 計兎(ツキジ ケイト)。月の時、計るに兎」 「………トケイ兎?」 「うん、それがあだ名」 いや、だから『不思議の国のアリス』が読みたくなったわけじゃないよ 確かに理由の一つだけど、他にもいろいろ有りますし ふと、彼の足元に目がいく 山に積まれた本 哲学論著らしい。見てるだけで頭が痛い 「本、好きなの?」 「もうすぐ、哲学の方は読み終わる」 そっけない答え。今のは、足元に詰まれた本が、という意味だろうか それとも、哲学の本棚の本は、という意味なんだろうか どっちでも良いか。どっちでも凄いし 「此処にある本、詳しいんだ」 「それなりに」 「………不思議の国のアリス、有る?」 顎に手をやってしばし考える 検索中………とでも出て来そうだ 前フリも無く立ち上がり、去っていった やせいの クルスは にげだした!▼ 「………なんでやねん」 思わず虚空に裏手チョップでツッコミを入れると、彼……クルスが戻ってきた 一冊の本を抱えて 「ほら」 妙に砕けた口調になりやがった 差し出された本を有り難く受け取る これぞ正しく探していた本だ 「おお さすがは ゆうしゃ だ!」 出来るだけ重苦しい声で 彼は怪訝な目でこちらを見ている 仲間に……もとい 「なんでもない。ありがとう」 特に捨て台詞を残す訳でもなく踵を返す 氷点下並みに冷ややかな目線を浴びてる気がする 「では、此方にお名前と住所と……」 営業スマイル全開な受付嬢 貸し出しの為のカードを作るには、色々と書類に書くことが必要らしい 消しゴムで消えるタイプのボールペンでこういう書類を書くのはどうかと思う 名前『ロビンソン・ジョニー』 すぐに消した 2週間ぐらいが経った頃だった 昼休み、昼食を食べ終えた校内には何処か気だるげな雰囲気が漂っている ふと思い出す 「パンプティ・ダンプティが落っこちた」 「………何言ってんの、お前」 突如頭に浮かんだフレーズを呟くと、変人を見る眼をされた 「てゆか、お前こそ大丈夫?」 「んー……やばいかも知んない」 目の前で机にたれパンダのようになってる友人は、顔を赤らめている 昨日の豪雨に打たれたらしい。ま、風邪だね。これは 「帰った方がいいんじゃない?」 「………そーだな。保健室行って来る」 微妙に会話が成立していない 夢遊病のようにふらふらと立ち上がると、扉を力なく開けて出て行く その背中を見送りながら、考える 鞄の中に入れっぱなしになっている、『不思議の国のアリス』 既に読み終わっているが、返すのを忘れていた 確か、今日か明日が返却日だったような気がする 「………今日、返しに行くか」 その呟きは静かに掻き消えた 「ハイ、確かに」 受付嬢が相も変わらずな営業スマイルで、本の貸出票に返却の判子を押す 貸し出しカードは個人が借りている本をパソコンに記録する為の物 貸出票というのは本の名前別に保管され、借りた日と返した日を記入をするカードらしい 違いはフィーリングで考えよう 以前と同じように足音は吸い込まれる階段 そしてまたも以前と同じように、お受験戦争兵士訓令所を通り過ぎる 3階は矢張り、シーンとしていた この紙とインクと木の匂いと、人々の黒歴史の残っている感覚は心が落ち着く 今度からは、図書館も活用することにしよう というか、本を読むことにしよう なんて活字離れが深刻な現代っ子らしからぬ思考に行き着くことが出来た とりあえず、これを返して他の本を………? 「………しまった」 同じ様なシチュエーションで、同じ言葉を発したことのあるような無いような ただ違うのは、本は僕の手の内にあるということ 「場所、分からない」 何処に返すべきだろうか 借りる時、クルス君に何処から持ってきたか聞いておけば良かった 「………あ」 今日も居るかもしれない 根拠無い自信に包まれると、歩を進めた 絵本やらを重点的に設置した棚の横を通り抜ける 英語だかドイツ語だかの本の棚を通り抜ける 肉まんを頬張る人物の横を通り抜ける 新刊中心の棚、多くのスペースを使って見易く設置された本棚を通り抜ける ………はい、デジャヴ 同じように後ろに下がると、記憶に残っていた通りだった 木製の小さな丸テーブルにコンビニの袋 ………ただ、其処に居たのはクルス君じゃなかった 金髪碧眼。それは記憶の通りだ しかし金髪は若干、いやかなり長くなっており、少しウェーブをしている 目元も若干柔らかくなったというか何と言うか 何より、服装が違う 確かにウチの高校の制服だ。それは認めよう ………女子用、の 若干薄手な為、服を着ていてもその下の胸の膨らみが分かる あまりまじまじとは見つめないけど 男子からは賛美喝采、女子からは賛否両論の、少し丈が短いスカート そしてその下に伸びる白い太腿と、スカートの端から少し間を置いた所から始まる黒いオーバーニー 所謂絶対領域も完備していた 薄い桜色の唇が、肉まんに触れる よく噛んだ後に飲み込み、至福に顔を綻ばせていた 回りくどく言っても仕方が無い (多分)クルス君が、女になっていた。 「こんにちは」 「ひょんにちは」 声も高くなっている。当たり前か コンビニの袋をガサゴソと漁り、中華まんを差し出してくる 食べてみると、あんまんだった 「………クルス君?」 少し自信なさげに聞いてみる 彼………いや、彼女は頭を振った ………じゃあ誰だ なんて考えていると、彼女は自分を指差した 「新垣アリス。アリスは片仮名でアリス」 既視感を覚えざるを得ない 相変わらず苗字と名前がミスマッチな人だ 「因みに、誕生日は5日前」 女体化した、ということでいいんだろうか それともプレゼントの催促?では無いか とりあえず『不思議の国のアリス』を渡し、お勧めの本を聞いてみた 数分後、分厚い一冊の本を抱えてやってきた 『広辞苑』と書かれているのは、眼の錯覚じゃ………ないんだろうなぁ 「三国無双、買ってみようかな………」 呟きは本に吸収されるように消えていく 彼、いや、彼女………アリスは何の反応も示さない 本を読むと自分の世界に入るタイプの人か 壁際に設置された木製の小さな丸テーブルと、二組の椅子 それに僕と彼女は座っていた 会話をする訳でもなく、ページをめくる音だけが響いている 電灯が有るわけでも無い、少し空気がひんやりとした空間 其処には部屋の番人のように本棚が並んでいる 僕達二人しかこの空間にはいない それが何だか、とても尊い事のように思えてくるのは何故だろう 「ふぁ………」 瞼が少し重くなる 雰囲気も何もあったもんじゃないね 『三国志』の文がどんどん擦れているように感じた 窓から降り注ぐ日の光が心地良い ガタッ、と体が揺れる 危ない、今50階建てのビルから堕ちてたよ 窓からの日の光は既に赤くなっている 何処かで烏が鳴いた 「トケイ兎」 「風邪、引くよ」 赤く染まった彼女はそう言った 机の上にコンビニの袋は無く、既に片付けられていた 彼女は既に貸し出しを済ませたらしい本を持って、僕を見つめていた 「そろそろ帰った方がいいんじゃない?」 「……うん、そうだね」 寝惚けている頭を強引に起こし、床に落ちた三国志を元の場所に戻しに行く 時計を確認すると、1時間以上眠っていたらしい 「何か本、借りなくて良かったの?」 図書館を出た辺りで彼女が聞いてきた 三国志を借りようと思ったけど……やめておいた 何故か、図書館に留まって本を読む理由がなくなると感じたから まぁ、寝起きの思考なんてごちゃごちゃしてる物だからね。仕方ないよね 「トケイ兎」 ………そう言えばこの娘は何故年上である僕のことを呼び捨てなんだろう 年功序列なんて古いって言う人も居るけど、ねぇ? 今更言っても仕方ない事なんだろうけど 「何?」 「…………んーん、やっぱり、なんでもない」 午前5時を過ぎた辺りの時間、空が白み始める 眼を凝らすと土に生えた雑草が見える ………そろそろ草刈り命じられる頃かなぁ ドシン、を震脚の音が響く 震脚というのは中国武術独特の歩法で、地面を強く踏みつける動作を言う 呼吸を整えて気をつけの体勢を取り、套路(空手で言う“型”)を始める 左手の肘を曲げ、右手の拳を左肘に付ける 中腰になって、半円を描くように右手を右へ 左肘を伸ばしながら左足を進める 右拳と右膝を打ち上げる。この時、右腕の関節に左腕を添える 右腕を上へと上げつつ、右足を震脚 その勢いで左足を飛び出す 「頂心肘!」 着地の時に震脚、そして左腕で頂心肘(肘打ち) ズン、と地面を踏みしめる音 土の地面だけど、毎日踏み固めたせいで結構硬くなっている これは基本的な套路で、『カク打頂肘』 毎朝これを何度もやる。気の済むまでやる 中国拳法の基本は功夫(クンフー)を鍛えること つまり訓練を積む事で、その為には同じ動作を何度もする 古人に曰く、『千招(多くの技)を知る者を恐れず、一招に熟練する者を恐れよ』 つまり、色んな技を練習するよりも一つの技を徹底的に鍛えよ、とのお言葉 首尾一貫………とは、違うよね、うん 「カク打頂肘」 太陽が顔を出し、少し明るくなった 虚空に向かって肘打ちをする 「馬歩横打」 そのまま右足を一歩踏み出して馬歩(騎馬の体勢)になり、右腕を打ち出す 一つ一つ名前を確認しながら套路をこなしていく 「おー、今日も精が出るねぇ」 バイクのエンジン音と共に声をかけられた 見ると、既に顔馴染みになってしまった牛乳屋のおじさんが、ビン牛乳を届けに着ていた あ、もうそんな時間か…… 「おはようございます」 「おぅ、おはよう」 言いつつ、牛乳を四本渡してくる 僕と父と母と弟の分だ 三つを縦に重ね、自分の分の牛乳の蓋を器用に開ける そのまま一気に飲み干した 「もう一本」 「欲しけりゃ金払え」 冷徹に言い放つと、バイクに乗って遠ざかっていく その背中を見送っていると、家族が起きて来る気配がした 「おはよ……兄さん」 「おはよう」 まだ眠そうな目を擦りながら、弟が二階の窓から顔を出した 弟は中二になる。今迄色恋に関連した話を聞いたことが無い ………僕が言えることでもないが 15,6歳までに女性経験がないと女体化してしまうというのは、最早浸透してしまっている しかしこの現象15,6歳と銘打ってはいるが、あくまで目安 実際は結構幅が広いらしい 中学二年から高校三年……範囲にするとそれぐらいだ その中でも15,6歳の例が一番多い為にこんな事を言われている しかし確立で言えば、女になるのは50%ぐらいらしい ………充分多い確立だよね (………ま、僕も危ないんだけどね) 「いただきます」 「いただきます」 「いただきましょう」 「いただきました」 「「「早っ!!?」」」 毎朝のようにコントを繰り広げるこの家族 発言は上から僕、弟、母、父、父以外 見ると、既に父の分の皿は空になっていた 僕の家族は極平凡な家庭とも言えるし、言えないとも言える 父は普通に会社勤めだし、母は専業主婦 しかし二人ともその学歴は凄まじい物で 父は東京か京都かは忘れたけど有名な大学を出ている 母は母で有名な女子大出身だ ………なのに何故こんな平凡な家庭に落ち着いているのか まぁ、普通は良い事だよね。平穏だし 「そういや、計兎。この頃成績はどうだ?」 「んー、まぁまぁ」 「そうか。お前のまぁまぁは大抵良い方だからな。安心だ」 言って、視線を新聞に戻した とまぁ、こんな会話を繰り広げるほどに平凡で、家族内でのトラブルらしいトラブルも無い 「………爺ちゃん、今は何処に居るんだろうね」 そんな平穏な家庭の育った僕が中国拳法なんてものを遣ってるのには、勿論理由がある それが今話題に上がった祖父である 僕の祖父は世界各国を旅するのが好きらしい そしてその旅の途中で立ち寄った中国、そこで中国拳法と出会った 元々武術が好きだった祖父は、どうにか入門させてもらおうとしたらしい そこら辺に色々と努力があったらしいが、それは話してくれない ………と、まぁ。そうやって習得した中国武術を、小学校に上がる前から教えてこられた訳である 自分の息子、つまり父さんは武術に興味が無かったので、孫である僕にバトンが渡ってきたわけだ いや、嫌って訳じゃないけどさ 話は飛ぶが。後、場所も 僕の通う高校は、一応進学校と呼んでもいい しかし学力だけではなく、スポーツ推薦なども盛んだ だから平均的学力が良いかと問われれば………まぁ、微妙 それでも『進学校』という肩書きは色々と問題とかも呼び寄せる訳で 主に……頭の悪いバカとかを 「何見てんだ、コラァ!?」 「ひき殺されてぇーのかこんにゃろバカヤローめ!」 ………見事な不良だ バイクに乗ったまま校庭に乗り込んでいる しかしまぁ、乗ってるのがスクーターな辺りときちんとヘルメットを被ってる辺り、不良なのかと疑問は残る 処でやっぱり進学校だから、頭の良い奴は結構多い それでなくてもガリ勉、とでも言おうか。もやしっ子みたいなのは存在する そうでなくてもあんな輩には係わり合いになりたく無いとは思うが 「…………はぁ」 校門付近に集まってる野次馬を掻き分け、前に出る 「あー、うん。君達」 三人のスクーターの動きが止まり、柄の悪そうな奴等がこちらを見てくる 学生服をきちんと着てる辺り、不良なのか真面目なのか 「邪魔だ、帰ってくれ」 簡潔に言うと、三人の額に青筋が浮かんだ きちんとスクーターを止めると、凄みを利かせながら此方に歩いてくる。君ら本当に不良? 「んだ、テメェ?」 リーダー格らしい男が聞いてくる 「見ての通り、此処の生徒ですが」 真面目に返してやったのに、何故か怒ってる おもむろに腕を掴まれる 「チョーシ乗ってんじゃねぇぞウラァ!」 凄まれてもな………爺ちゃんの方が怖かったし 軽く溜息をして、自分の腕を掴んでる手が離れないように、左手を添える 「それ」 右腕を半回転 それに伴い相手の腕と体も回転して、丁度後ろ側に捻り上げたような形になる 「イテ、イテテテテテ!!はっ、放しやがれ!」 「あ、ゴメン」 腕を放す 開放された男は少し涙目になって此方を睨んでいる その両隣の取り巻きも同様 「痛い目見たくなかったら、大人しく帰ることをお勧めするけど……」 「あぁん!?」 どうやら僕には人を怒らせる才能があるようだ やったぁ、ギネス申請でもしようか なんて考えてると、ヤンキー共が戦闘態勢 各々ナイフやら木刀やら十得ナイフを取り出した 最後の人、本当に不良ですか? 「へるぁぁぁ!!」 奇声を上げてナイフ男が突っ込んでくる 間合いを計る ある程度近付いた処で、右足を震脚 その勢いで左足を飛び出す 「カク打頂肘!」 ……あ、つい癖で叫んでしまった 套路の前半を省略してのカク打頂肘 相手の腕の内側、つまりわき腹に綺麗にヒットした ナイフ男が苦しそうに一歩後退 ここぞとばかりに追撃 (馬歩横打!) 今度は心の中で呟きながら、右足を一歩踏み出す それと同時に右腕を打ち出し、腹部への鉄拳 「ぐふっ」 無駄に格好良く倒れて行った その様子を見て、後の二人が怯む 「あのー、もう帰ってくれると嬉しいんですけど」 しかし相手も何かしらのプライドがあるらしい ティッシュに包んで捨ててくれればいいのに 先程のリーダー格らしい男が木刀を持って襲ってくる 振り上げた木刀が斜めに振り下ろされた ヒュン、と風を切る音 中腰になり、木刀を避けた 其のまま右足を低く蹴り出す(『右将テキ』) 相手の手前まで伸ばした処で、踏み込む 脚に釣られる様に上半身を動かし、右拳を上から打ち下ろす(『右シャスイ』) 「ウゲッ!」 頭から打たれて、舌を噛んだらしい しかしまだまだ余裕そうだったので攻撃を続ける 打ち下ろした右拳を引く と、同時に、腰の回転に乗せて左拳を打ち出す(『左斜打』) その勢いで、木刀男が後ろに下がる 数歩ほど開いた距離を、両足で踏み切って一気に詰める (打開!) ヒュ、と風を切り、掌で腹部を打ち抜く(『打開』) 「よし、終わった」 まだ一人残っていたけど、見たところ戦意喪失したようだ うん、それでよろしい 因みに先程使ったのは、『馬歩横打』『右将テキ』『右シャスイ』『左斜打』『打開』という、套路の一部だ 『カク打頂肘』の後に続けて行う、というか、『打開』まで続けて完璧な套路になる 基本も実戦で立派に使うことが出来るんだね ………正直、此処まで見事に決まるとは思わなかった。日々の鍛錬のお陰? 「君、この人達持って帰ってくれる?」 十得ナイフを持った男に言う。どうやらすっかり怯えている様だ 伸びている二人をたたき起こして、とっとと退散してしまった 地面に放り捨てた鞄を拾い、砂を払う 「さて、行くか」 呟いて、校舎へと歩き出す 窓からは騒ぎに興味を示した生徒達が顔を出して覗いている うーん………有名人になってしまった 出来ればこういう目立ち方はごめん蒙りたいんだけど ……………あ、これって暴力とかで問題になったりするのかな? ~つづく~
https://w.atwiki.jp/dangerousew/pages/248.html
――月が墜ちてくる。 東京都、江東区、上空二万メートル。 巨大な岩の塊が空から落ちてくる。地表へ、日本、東京へ――山乃端一人を目掛けて。 ……厳密に言えば山乃端はそこにはいない。先ほど“おつきさま”との邂逅を経てこの場を離れたから。 だがそのようなことはもはや些事。あれが地表に落下すれば山乃端が逃げ込んだ先を優に巻き込んで一帯を崩壊させるだろう。 牛歩のようにゆっくりと。だが着実に。岩塊は空から地へと迫る。 迫る。 迫り――。 ジェット機が激突した。 「―――」 民間用個人飛行機、いわゆるプライベートジェットと呼ばれる物。 それが掬い上げるような軌道で地表へ迫る月へと向かい、正面から衝突した。 当然のことながらジェット機は大破。操縦席に座っていた奇妙な風体の人物――ピエロごと、木っ端微塵となり。 そして、搭載されていたトラップが起動する。 トラップの性質は単純だ。『スイッチを踏んだら、上から物が落ちて来る』。 この場合“上”とは宇宙を指し、“物”とは金属棒を意味する。 人工衛星から大質量の金属棒を地上へと射出する単純質量兵器。 ――『神の杖』という。 衝突の衝撃により“踏まれた”スイッチは自らを“踏んだ”月に目掛けて幾つもの『神の杖』を振り下ろした。 穿つ。突き刺さる。 地獄のような轟音が空に響き、岩塊はハリネズミの如く。 幾本もの金属棒によって貫かれた月は、最後の一撃を受け堪え切れないように砕け散った。 砕け散った、とは言えどもその一粒すら巨岩と呼べる大きさで、それが降り注ぐ地表に破壊の痕跡が増えていく。 かつての街並みであればそれは痛々しい傷跡となっていただろうが、“絶黒龍”ルージュナによって破壊され尽くされた現在では廃墟が廃墟になったところで今更という言葉が先に出ることだろう。 「……プライベートジェットとか、どこから手配したんだよ」 破壊の結果を見届けて、少年は半ば呆れた様子で隣の男に声をかける。 「昔、私が依頼を完遂したにも関わらず報酬を渋った挙句こちらを殺そうとした輩が居てな。代わりに貰っておいた」 「さいですか」 何でもないことのように言う月ピに鍵掛は諦めたように答えた。今の一瞬で何十億円が消し飛んだやら、考えるだけ無駄だろう。 「しかし流石はロック謹製の神の杖。ルージュナを倒しただけはある」 「やめろよ、結局あれ倒せたの俺の力じゃないだろ」 それに、と鍵掛は空を見上げ。 「今ので三つ。まだまだ先は長い」 「そうだな」 その言葉に月ピは頷く。二人の男が視線を向ける先――東京都の上空にそれはあった。 ――月が墜ちてくる。 空にはいつもの変わらぬ月の姿。上弦の月、新月から満月へと移り変わる丁度境目、半分の月。 それとは別に。 悪意のように、悪夢のように。 東京都の上空を、光を受けているわけでもないのに自ら満月のように煌々と輝く『もう一つの月』が。 それとは別に。 月と比べれば小石のような、それでも一つ一つが大地を抉り得る大きさの『小さな月』が、まるで隕石のように両手の指で数えきれないほどに降り注ぎつつある。 普段と変わらず本物の月。 着実に迫りつつあるもう一つの月。 先ほど破壊した三つを含めて十数個の小さな月。 「――ひとまず、神の杖で小さな月は何とかできるのは分かった。月ピ、次からは俺の射出(カタパルト)トラップを使えよ。生身だと死ぬけど、お前の分身ならスイッチ抱えて突っ込めるだろ」 「そうだな、流石にプライベートジェットはもう在庫が無かったところだ。……ところでロック、どうだった?」 「試したよ」 言いながら、鍵掛は先ほどの光景を思い出す。神の杖の起動スイッチを搭載したプライベートジェットを突っ込ませ、小さな月目掛けて起動する作戦、それ自体は上手く行った。 神の杖を雨のように降らせることで結果的に小さな月を三つほど撃墜することに成功した。撃墜までは至らなかったものの、神の杖が命中はしたケースを含めればもっと多い。 だが。 「――あの『もう一つの月』にも多少は命中した。だけど刺さるどころか傷ついた手応えすらなかった」 「……転校生、か」 鍵掛の答えに月ピは唸った。思い返すのは自分達に接触してきた転校生・鏡助の言葉だった。 『「自己の認識を他者へと強制する力」――それが魔人の能力の本質です』 りんごを見て赤いと認識する者がいる。同じりんごを見て濃い赤だと認識する者や赤黒いと認識する者もいるだろう。 仮にその同じりんごを青いと認識する者がいたとして、それを主張したところでただの戯言と思われるだけだ。 だが、りんごが青いという認識を以て――本当に青くしてしまう者。自己の認識を他者の認識に上書きし、世界を歪ませることができる者。 それができる者こそ魔人であり、その認識によって世界を歪める力こそ魔人能力である、と。転校生たる鏡助はそう語った。 『そんな魔人の中でごく稀に――試練を乗り越えることによって「自分は魔人を越えた特別な存在である」と、そう認識する個体がいます』 認識によって世界を歪める存在が、魔人を越えたと自己を認識した場合どうなるか。 ――本当に魔人を越えた存在となるのだ。 『それこそが転校生、魔人を越えた魔人。……私がどのような試練を乗り越えたかは、残念ながらお教えできませんが』 故に転校生に対してはただの魔人の攻撃は通用せず、そして転校生の攻撃に対してただの魔人の防御は通用しない。 文字通り、存在の階位が違うのだと。 「あのもう一つの月が転校生“おつきさま”だと言うのならロックの神の杖が通じないのは理解できる。……だが、それならば逆に小さな月が破壊できるのは何故だ? あれはもう一つの月が生み出した分身のような物だろう?」 重々しい表情で殺し屋は呟く。説明こそ聞いたものの、正直なところ月ピ自身は魔人と転校生の関係を十全に理解できたとは言い難い。 そんな彼に鍵掛は、多分だけど、と断りながら。 「延焼みたいなものじゃないか」 「……どういうことだ?」 「鏡助の話によると例えば転校生は爆弾の爆発に巻き込まれても平気なわけだよな。だけどそれって巻き込まれた本人は無事だけど服は吹き飛ばされて素っ裸、ってなったりすると思う?」 「いやそうはならないだろう。……そうか。服、つまり装備品も自分の一部だと認識している限り転校生の保護に含まれると言いたいんだな」 「そうそう。それで魔人能力や火炎放射器なんかで『自分が放った炎』を自分の一部だと認識することはできるだろうけど、『自分が放った炎によって発生した延焼』まで自分の一部って認識できるかというと」 「難しいだろうな。なるほど」 得心が行ったと月ピは頷く。 「つまりもう一つの月は“おつきさま”にとって装備品のような物として認識できるとしても、もう一つの月が生み出した小さな月までは“おつきさま”も自分の一部として認識できないってことか」 「推論だけどな。でも俺の攻撃が通ってる以上は大きく外れてはいないと思う」 「――いやはや、大した物だなロック。先生とか向いてるんじゃないか?」 「生き延びたら考えておくよ」 苦笑混じりに返しつつ、鍵掛は能力によってカタパルトとスイッチを展開する。 「つまるところ俺達は小さな月には対処できるがもう一つの月を止めるには“おつきさま”の本体(・・)をどうにかしないといけなくて、それはそれとして小さな月も放置はできないってわけだ」 「前途多難だな。ならばそちらは彼女(・・)に任せて、私達はできることからコツコツとするとしよう」 そう言って、月ピは歌い始める。能力発動、ピエロが召喚され、神の杖のスイッチをいくつも抱えながらカタパルトへと騎乗する。 ――月が墜ちてくる。 月の光に照らされながら、ピエロは一人宙に舞う。 斬撃。 徒手に見える少女から放たれたそれは、一息に四連。 その勢いのまま弧を描くように獲物――転校生たる銀髪の女性――の周囲を回る。 一拍を挟み、一息に四連。 さらに一拍を置いて、一息に四連。 あひる侍の速剣。御首級てがらの歩法。 剣の扱いにおいてただの素人だった少女が柳生注入によって無理やり戦闘力を得ただけの存在。それが卓越した剣士との幾度の修羅場を経て見違えるほどの使い手となっていた。 その剣士の名を柳煎餅と言う。 (腕、胴体、後頭部) 無刀による十二の斬撃。それらは目の前の“おつきさま”へと狙いを違えることなく全て命中した。 “おつきさま”の銀髪の一本すら切り裂くことができなかった。 (……これが、転校生!) 柳は“おつきさま”の背後で腰を落とし腕を引く姿勢を取る。そして“おつきさま”が振り返るのに合わせて全身をバネのようにして腕を伸ばす。 刺突。 敵までの最短の距離を最小の動きで攻撃する最速の一手。 狙いは顔面。“おつきさま”の目・口・喉を目掛けて三連打。常人であれば顔がグチャグチャになった上で首が飛んでいる。 だが初撃は瞼に止められ、次撃は唇に阻まれ、三撃目は無造作に振るわれた左手に容易に弾かれた。 “おつきさま”はいつの間に取り出したのか、右手に持ったナイフを振りかぶり反撃を仕掛けた。柳は三撃目を弾かれた勢いに逆らわず反転しながらのサイドステップ。 ナイフが背後を過ぎったのを感じる。何の変哲もないただのナイフの振り下ろしが、まるで重機が通り過ぎたかのような威圧感。 「ハッ!」 恐怖を振り払うように柳は叫ぶ。裂帛と共に放つは後ろ回し蹴り。 胸部へと蹴りが突き刺さった“おつきさま”は、当然のように動じない。まるで岩を蹴ったような手応えに、しかし柳はその反動を初速に距離を取った。 翻り、空中にて無刀を最上段へと構える。 「『剣禅一如』――!」 着地と共に振り下ろし、放たれるは白く輝く閃光の斬撃。剣の理の果てを以て非物理的領域に干渉する極限技。 閃光は三日月を描きながら、空を飛ぶ隼のように“おつきさま”へと肉薄する。 “おつきさま”は手に持ったナイフを構え、閃光を迎え撃つ。 一閃。 ただのナイフによる斬撃と極致へと至った剣禅一如の交差。 本来であれば前者が敵うはずも無いが、ナイフは“おつきさま”の一部として転校生の保護を受けている。 故にナイフは閃光を受け止めても傷一つ付くことすらない。 ――傷一つ付くことはなく、光に包まれてナイフは消滅した。 「!」 武器の消滅に、“おつきさま”は目を見開き驚きを隠せない。 そしてその無防備な転校生にナイフという堰(せき)を失った剣禅一如の閃光が襲い掛かる。 ――極致へと至った柳の剣禅一如はただの物理的破壊に留まらない。 非物理的領域に干渉し、論理的整合性を取り繕い、架空の因果関係を成立させる。 (『転校生は』『異世界の存在』) ならば。 「――『この世界に存在するのはおかしい』!」 物理的破壊が通じないのは織り込み済み。 本命は異世界の存在がこの世界に居るはずが無いという論理的破綻(ロジックエラー)。 実際に“おつきさま”が異世界から持ち込んだであろうナイフは因果関係の矛盾によりこの世界から排除された。それこそが転校生にも――転校生だからこそ通用するという証左。 この世界の存在には全く効果が無く、しかし異世界の存在に対して威力を発揮する柳の新たなる切り札。 閃光が収まる。 ……その中からは全くダメージを受けた様子のない“おつきさま”が姿を現した。 「……」 剣禅一如が効果を発揮しなかったことの動揺を押し殺しながら、柳は無の刀を構え直す。そんな少女を見て“おつきさま”は少しだけ感心したように口を開いた。 「哲学的エネルギーによる形而上領域への攻撃、ですか。その奥義、人の身でよくそこまで至ったものです」 綺麗な声だ、と柳は少しだけそう思った。 「……なんで効かないの? ナイフはちゃんと消えたのに」 「確かにあなたの奥義は転校生には特攻、致命傷にはならなくても多少なりの損害は与え得る……ですが」 そう言いながら“おつきさま”は場違いに――自嘲するように――微笑み。 「私は“御憑様(おつきさま)”。精神を侵し、形無きモノを支配する魔神(・)。あなたの力が転校生に対して特攻であるように、私の力もまた形而上領域への干渉に対する特攻を有しています。私の一部に対してならともかく、私本体に対して通用するとはお考えの無いように」 「ムカつくなぁ。その、自分は他と違います、みたいな言い草」 「ええ勿論。――私は転校生ですから」 「……斬る」 ――月が墜ちてくる。 無形を携える剣士は、無形を侵す神に刃を振るう。 斯くして舞台に役者は揃った。 殺し屋、月光・S・ピエロ。 仕掛け人、鍵掛錠。 護り手、柳煎餅。 彼らの願いは一つ。『山乃端一人を殺させない』ということ。 転校生、おつきさま。 彼女の願いは一つ。『山乃端一人を殺す』ということ。 そして舞台裏には。 「私が死んだら、ハルマゲドンが起こる……? 私の命を狙って、何十人何百人もの魔人が殺し合い……?」 とっくに誰も居なくなった崩れかけの洋服屋。 姿見の前で少女――山乃端一人は膝を付き絶望の表情を浮かべていた。 「なにそれ……なんなのよ、わけわかんない! ずっとずっと、私は死ねって思われてたの!? 死ぬことを望まれていたの!?」 少女の慟哭は、しかし轟音に飲み込まれる。それは魔人達の戦いによって月が破壊される音、月の欠片が地面を叩き付ける音。 「そんなの……私、何のために生きてきたの……私、何のために生まれてきたの……?」 涙を流す少女を――姿見の中に映るスーツ姿の男は、悲しそうに見つめていた。 ・ ・ ・ ――山乃端一人の意識はそこで目覚めた。 「……」 なんてことはない。自宅のベッドの上、当たり前の朝、いつも通りの光景だ。 ただ妙に寝汗をかいていて、気持ちが悪い。 「……」 ベッドの脇の時計を見る。針は既に11時過ぎを指している。 前夜は23時前にはベッドに入っていたはずなのに眠気が晴れない。 夢見が悪い。それがずっと続いている。 山乃端はいつも知らない誰かとの夢を見ている。 温泉旅行に行く夢を見た。 イタリア料理を食べに行く夢を見た。 美術館に展覧会を見に行く夢を見た。 そしていつも――魔人に命に狙われている。 学校で教師に襲われる夢を見た。 武装したアウトローの集団に襲われる夢を見た。 死体を操る少女に死体にされそうになる夢を見た。 「……眠い。けど起きなきゃ」 気怠い体を無理やりに起こす。今日は日曜日だが、だからと言って昼過ぎまで寝過ごしていたくはない。 ――それに、寝たらまた悪夢を見そうで。 冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを呷り一息を吐く。少しだけすっきりした、顔を洗えばもうちょっと良くなるだろうか。 「出かけないと……」 そうだ、今日は出かける用事がある。 ……どこに? ……だれと? 「……出かけないと」 電車に揺られる。今日は人が少なく座席にかなりの余裕があってゆったりと座ることができた。 ……眠い。揺れもあって気を抜くと意識が遠のきそうだ。 (五分だけ……寝ようかな) そう思って、山乃端一人は目を閉じた。 ――山乃端さん。 ――お嬢ちゃん。 ――一人。 ――はじこ。 ――我が花嫁。 ――ひーちゃん。 ――一人さん。 ――アインス。 ――ヒットリサン。 ――山乃端一人。 知ってる声と知らない声がする。 知ってる呼び名と知らない呼び名が混ざる。 夢と、現実が、重なる。 ・ ・ ・ 気が付けば。 山乃端はスカイツリーの前に立っていた。 スカイツリー『だったもの』の前に立っていた。 「……あ、れ?」 ぱちくり、とまばたきを繰り返す。周囲を見渡す。 誰もいない。当然だ、いるはずもない。 発破されたかのように崩れ倒れているビル、無造作にひっくり返されたかのような道路。 半ば廃墟と化したこの地域は先日の事件のせいですっかり避難地域となっている。 そしてその下手人が目の前にいた。 ――折れたスカイツリーが墓標のように突き刺さっている、巨大な怪獣。 全身のほとんどが朽ちて塵となり、上半身のみの死体となった漆黒の龍。 “絶黒龍”ルージュナ。 「……」 少女は気圧されたように数歩後退りする。 どうして自分はこんなところにいるのか。 そもそもどうやってここまで来たのか。 「時間……そうだ、今は何時だろう」 ぼんやりとした頭でそう思い至ってスマートフォンを取り出そうとする。そこで気付いた。 スマートフォンが無い。というよりも手荷物が無い。 ポーチくらい持って出ていたはずなのに。 代わりに――代わりと言えるような物ではないが。 「……懐中時計?」 いつの間にか首に提げられたシルバーチェーンの先、いかにもアンティークという様子の古めかしい銀の懐中時計があった。 思わず手に取りまじまじと見つめる。それは妙にしっくり来るように感じられた。 ――この懐中時計は山乃端家に代々受け継がれる銀時計。 ――銀時計には魔神(デミゴッド)を封印し、使役する力を持つ。 ――それを引き継いだ当代の持ち主こそ、 「ひっ!」 慌てて銀時計から手を放す。チェーンによって首に提げられている懐中時計は手の支えを失い少女の胸元へと収まった。 「なに……今の、頭の中に」 銀時計? 山乃端家? デミゴッド? 「違う、違う知らない。私の家は普通の家だし、この時計だってどこかで買ったただのアンティークだし」 まるで誰かに言い訳をするように、少女は自らを抱きしめるように蹲りながらぶつぶつと呟く。 「やっぱり帰ろう。そうだ、帰って寝よう。最近寝不足で疲れてるから、変なことばかり考えちゃうんだ」 ……だけど、眠ったらまたあの変な夢を見てしまうのではないか。 心が落ち着かない。気分が悪い。頭の中が自分のものではないみたいだ。 自分のものではない? 「……だとしたら、誰なのよ」 「――それこそ『山乃端一人』でしょう」 声が聞こえた。 頭に中に響く夢の話ではない、現実での呼びかけ。 ハッと頭を上げる。龍の死体の方向から誰かが歩いてきている。 それは女性だった。一目見て思わず美しい、と山乃端は思った。 年齢は二十代半ばだろうか。銀色のロングヘアが目を惹く。 山乃端を見つめる彼女の目をよく見れば、深い赤色の瞳をしていた。 「……あなたは、誰」 山乃端は銀髪の女性にそう問うた。初対面の相手にするにはいささか失礼ではあるが、女性はそのような細かい常識の外にあるような不思議な雰囲気を携えていた。 少女の言葉に女性は、しかしはっきりと応じないままどこか愁いを帯びた瞳で山乃端に向けて広げた右手を差し出した。 「山乃端一人」 それは少女の名。山乃端は、彼女が自分の名を呼んでいるにも関わらず、自分ではない誰かを呼んでいるかのように感じた。 「あなたを待っていた。あなたが――あなた達“山乃端一人”が重なる時を」 山乃端はふと、目の前の女性から視線を外した。何故か分からないまま空を見上げる。 ――月が墜ちてくる。 「――どうか死んでください。今のあなたが死ぬことで、これからの未来から“山乃端一人”は全て消滅する。全ての“山乃端一人”が死の運命から逃れられ、もう苦しむことは無くなる」 唖然としたまま山乃端は視線を女性へと戻した。彼女の赤い瞳に強い感情が宿っている。 ……少女はその感情が何を意味しているかを読み取ることはできなかった。 「唯一の“山乃端一人”を、私だけが手に入れる。それが私の望み」 閃光。 言葉を失った山乃端に代わり、銀髪の女性へと反応を返したのは一条のビームだった。 それは女性が山乃端に向けていた右手を振り払うかのように横殴りに叩き付けられ、その衝撃に思わず少女は両腕を自分の頭を守りながらしゃがみ込んだ。 撒き上がる砂煙に思わずせき込む。 「世界を越えて山乃端さんのストーカー? そういう手合い、うちの柳生でイヤってほど間に合ってるんだけど!」 ふと聞こえた聞き覚えのある声におそるおそる顔を上げる。砂煙の向こうに見えるその人物は。 「……柳さん!」 柳煎餅。山乃端一人にとっての恩人。 つい先日も魔人剣士に襲われた時に守ってくれた。 (そういえば、あの時もこんな風に柳さんに会ったっけ) 見知った相手と再会できた安堵感か少しだけ気が緩む。しかし柳は油断なく構え。 「ごめんね山乃端さん。――ちょっと余裕無いや」 柳の姿が消えた。 山乃端にはそう思えた。 実際には柳は常人には見えない速度で踏み込み、砂煙の中にいる女性に向けて無刀取りの刃を振るっていた。 鋭い音と共に空気に響く衝撃。その余波で砂煙が晴れる。 柳の無の刀と女性のナイフが鍔迫り合いのようにぶつかり合っていた。 「……ッ!」 切り返し、柳は女性がナイフを握っていない側から突き・払いで攻め込む。 相手の肩と脇腹を的確に穿った二撃――しかし女性は全く気にも留めずにナイフによる反撃、軽やかな斬撃は柳のそれと比べれば脅威は低く見える。 見えるだけだ。 「ぐぅ……!?」 無刀でナイフを受けた瞬間、柳は目を見開く。 牽制程度にしか見えない攻撃が――御首級てがらの首級返しを次々と撃ち落とした柳の無刀取りの刃を、容易く打ち砕いた。 止めきれない。柳は胸元へと迫るナイフが到達する直前に全身のバネで渾身のバックステップを行い、間一髪で攻撃を回避した。 無理やりな体勢での回避だったため下がった先で不格好に地面を転がる。追撃を恐れすぐさま立ち上がるが、しかし予想外に女性は追撃を行わなかった。 「……ああ、大した魔人ですね。ですがあなたの攻撃は私に通じませんし、私の攻撃はあなたには防げませんよ。何故なら」 「――転校生、でしょ。鏡の人とかに聞いたよ」 無刀取りを再発動し、砕かれた刀を生成する。 「逃げて! 山乃端さん、ここからすぐに!」 「だ、だけど柳さんは」 「いいから! 邪魔だよ!」 柳の叫びに、山乃端は一瞬視線を銀髪の女性に向け、踵を返し泣きそうな表情で駆け出した。 「……それでいい。キミは死んだらダメだ」 背中越しに走り去る気配を感じ取りながら、柳はそっと呟く。その様子を見送りながら、女性は口を開いた。 「無駄なことを。空のあれが見えませんか? ここであなたが抗ったところで、山乃端一人が逃げられるわけが……」 轟音。 思わず銀髪の女性が空を見上げる。プライベートジェットが月へと突撃し、作動した幾多の神の杖が空に降り注ぐ光景が見えた。 「悪いけど、こっちも一人じゃないんで」 「……なるほど。思っていたよりも、山乃端一人を守ろうとする魔人は多かったようですね。例の転校生の仕業でしょうか」 「さて、ねェ!」 ・ ・ ・ 走る、走る、走る。 空から地獄のような轟音が響く。背後では剣劇の音が聞こえる。 「どう、して……どうし、て……!」 何故か溢れる涙を拭って、みっともなく逃げ回る。 わからない。わからない。どうして。 周囲には誰もいない。山乃端一人は独りぼっちだ。 だけど、そういった物理的要因以外の理由で、少女は深い孤独を感じていた。 『危ない、止まって!』 突然の鋭い声。反射的に身を震わせ足を止めた。声を主を辿ろうときょろきょろと視線をさ迷わせ。 ――直後、前方で岩が落下し砕け散るのが見えた。 悲鳴と共に思わず目をつぶる。頬に熱。恐る恐る目を開きながら左手で頬を擦って、手を覗く。 左手に血が付いていた。どうやら落石の衝撃で小石が飛んで来たようだ。目に当たらなくて良かったと少し安堵して。 (……あのまま走っていたら、私潰れて死んでいた?) その事実を理解して背筋が冷える。数歩後退りして、そういえば先ほどの声はと思い出し。 『こちらです。あなたから見て右手側の洋服店』 再度、声。言われた通りに右側を向く。そこには入口のガラス扉が砕け散っている洋服店があった。当然のように誰もいない。 『外で無防備にしているよりは建物の中の方が安全です、ここはまだ崩れる様子はありません。どうか入って来てください』 ……当然のように誰もいないのに声はする。声はするのに人の気配が感じられない。 「……」 先ほどの落石を思い返す。確かにここで突っ立っているよりは中に入る方が安全かもしれない。しかし少女は店の前で躊躇する。 『……申し訳ありません。不審なのも不安なのも分かります。それでも私はあなたの味方です』 どうか信じて、と何故か声の方が懇願している。山乃端は大きく息を吸って、吐いて、洋服屋へと足を踏み入れた。 『ありがとうございます、山乃端一人さん』 「……私の名前も知っているのね。あなたは誰? どこにいるの?」 『あなたから見て左手側前方の姿見です。このような形でしか挨拶できないことをお許しください』 警戒しながら、言われた通りに姿見を探す。それはすぐに見つかった。 そして、姿見にスーツ姿の男の人影が映っているのが見えた。当然ながら、鏡の前には誰もいない。 「……」 少女の体が緊張で固くなる。鏡の中の男は安堵させるように声をかけた。 『お察しの通り、私は魔人です。能力を使ってあなたに姿を見せています。信じて貰えないかもしれませんが、私はあなたを守る勢力の人間です』 「それは……柳さん、みたいに?」 『はい。柳煎餅さんにあなたの護衛を依頼したのは私です。山乃端さんはご存じでは無いと思いますが、彼女は以前あなたを守ったことがあり、それを知って今回スカウトいたしました』 護衛。依頼。 確かに柳の登場は少しばかり都合が良いタイミングではあったと思う。だが改めて言葉にされるとなんだかモヤモヤとした気持ちが山乃端の胸中に過ぎた。 『ああ、自己紹介が遅れましたね。私は鏡助、転校生……別の世界から来た魔人です。目的は山乃端一人さんを守ることです』 「他の世界? それに、私を守るって」 鏡の中の男――鏡助は少し気まずそうな表情をして。 『……あなたは命を狙われています。そして私はこちらの世界に来ることはできますが、深く干渉することができません。そのため、協力者を募りあなたの護衛を依頼していました』 「協力者……いや、それは今はいいよ」 それよりも、と少女は姿見に食って掛かるように。 「どうして私が狙われているの? 私はただの女子高生だよ? さっきの銀髪の女の人も……よく分からないし」 『……アレは“おつきさま”と呼ばれる怪異の一種です』 聞きなれない言葉に、山乃端は出鼻を挫かれたように「かいい?」と繰り返した。 『“御憑様(おつきさま)”。その名の通り《憑りつき、支配する神》。アレは形而上領域へ干渉することで周囲の知的生命体の精神を浸蝕し自らの傀儡へと仕立て上げます』 鏡助は目の前の少女がポカンとしているのを見て、一旦言葉を止め、改めて口を開く。 『簡単に言うと周囲の生き物を洗脳して自分の一部にしてしまうという怪物です。空に浮かぶあの“もう一つの月”も“おつきさま”が自らの世界の月を浸蝕した産物です』 「……月は、知的生命体じゃないと思うんだけど」 『おっしゃる通り。厳密に言うと、あの月は“おつきさま”が操る傀儡の魔人の「無機物に自我を与える能力」と組み合わせて無理やり知性を持たせた上で洗脳されています』 「その組み合わせができるならもうなんでもありじゃん。……あれ、でも」 げんなりした様子だった山乃端は、ふと気付いたことに首を傾げた。 「その割には私はあの……“おつきさま”? と会っても平気だったけど。人を洗脳しちゃうんだよね?」 『“おつきさま”は月という強大な存在を支配するために能力のリソースをほぼ使い切ってしまい、新たに支配する対象を増やせない状態になっているのです。そこだけは明確なデメリットですね』 ――もしかしたら、それが目的なのかもしれませんが。 蛇足のように付け加えた鏡助の一言は、山乃端の耳には入らなかった。 「いやちょっと待って、話が脱線してる。そうじゃなくて、私が狙われてる理由は何?」 『……“おつきさま”があなたを狙う理由はあなたを手に入れるためです。その、転校生の事情になるのですが……転校生は他の世界の人間の遺体を持ち帰ることで、その人物のコピーを入手できます。それが目的でしょう』 鏡助の説明に、山乃端は生理的な不快感を覚えた。 人間の遺体を持ち帰る、その人物のコピーを入手する。どちらもまるで意味が分からないし、ましてや今回は自分がその対象とされているのだ。不気味だと言わざるを得ない。 「じゃあ、私の命を狙う他の人たちも同じ理由?」 『それは……』 「違うよね? だって、全員がその……転校生っていう異世界人なわけじゃないんでしょう」 鏡助が口を閉ざしたのを見て山乃端は自身の推測が合っていることを確信する。 性格か何か別の理由があるのかは不明だが、目の前の男は「嘘を吐かない」ようにしている。 「『私が狙われる理由』と『私が転校生に狙われる理由』は別。あなたは私が狙われていることは言いつつも何故狙われているのかは微妙にボカしている」 それは。 「……私が最近変な夢を見ることと関係があるの? 夢の中で知らない人たちが出て来て戦っているのは本当にただの夢の話なの? そして、これが関係しているの?」 言いながら、山乃端は首のチェーンを外し銀時計を姿見に向けて突き付ける。鏡助は言葉を選ぶように慎重に口を開いた。 『……それらは直接的に関係はありません。私も想定外の出来事ではありましたが』 「想定外?」 『私も完璧に把握できているわけではありませんが……あなたが見ているのはおそらく他の世界における山乃端一人さんです』 先を促す。 『つまり他の世界……並行世界における山乃端一人さんも同様に命を狙われており、そして私が同じようにその世界の魔人に護衛を依頼して回っています』 「じゃあ……私が魔人の殺し屋に襲われた時に柳さんが守ってくれたみたいに」 『はい。似たような戦いが起こり……その記憶が世界を越えて混線してしまいあなたに流れ込んでしまっているのだと思います』 くらくらする。 自分のことでも精一杯なのに――並行世界でも自分は同じような戦いに巻き込まれていて、そして自分自身の記憶にも巻き込まれているというのか。 「……でも、私が命を狙われているのに直接的に関係は無いって言ったよね」 『その、それが理由で命を狙われているというよりは、命を狙われた結果としてそのようなイレギュラーが起こってしまったと言いますか』 「いや、わかんないんだけど」 『……すみません、謝罪します。白状をすると、本当はあなたに声をかけた時点で全てをお話するつもりだったのですが、つい躊躇をしてしまって』 鏡の中で、男は大きく息を吐く。 『――この世界には奇妙なルール、あるいはジンクスがあります。“山乃端一人が死亡すると、ハルマゲドン――魔人による大規模な戦いが発生する”というものです』 「……は?」 思わず呆けた声が漏れた。勿論言っていることが突拍子も無さ過ぎて理解が追い付かないというのもあるが。 「なにその、風が吹いたら桶屋が儲かるみたいな……私ただの女子高生だよ?」 『そこは重要では無いのです。“山乃端一人が死亡する”という事実が起こった時点で論理的整合性が取り繕われ、ハルマゲドンという因果関係が成立してしまう。それこそがあなたが背負っている宿命なのです』 「……」 正直に言えば。 山乃端は自分の命が狙われていると聞いて、“自分はただの女子高生なのに――”と言いつつも少しだけ何かがあることを期待していた。 例えば自分が何か特別な血を引いているとか、自分が何か重大な秘密を持っているとか。 そんな、漫画みたいな話を想像していなかったと言えば嘘になる。 だって。 ――そんな理由でも無ければ、納得できないじゃないか。 「……じゃあ、みんなは。私を狙い人たちは、そのハルマゲドンを望んでいるということ?」 『そうです』 「なんで?」 『ハルマゲドンまでは共通の目的ですが、その先はそれぞれです。例えばハルマゲドンの発端に由来する何かを望むもの。ハルマゲドンによって集まる魔人能力者を望むもの。あるいは、ハルマゲドンという戦いそのものを望むもの』 ――それじゃあ、なんだ。 「ハルマゲドンの先に何か目的があって。それを手に入れるためにハルマゲドンを起こしたくって。そのためには私を死なせるのが手っ取り早いから殺そうって」 山乃端一人は能面のような表情で、鏡助の顔を見た。 「……そういうこと? 私がどうのこうのというより、便利だから、都合がいいから――とりあえず、って?」 『……』 鏡助が口を閉ざしたのを見て山乃端は自身の推測が合っていることを確信する。 性格か何か別の理由があるのかは不明だが――目の前の男は「嘘を吐かない(・・・・・・)」ようにしている。 『……私はそれを止めたかった。そのために何十人という魔人に掛け合ってあなたを守るように依頼しました』 力が抜ける。山乃端一人は洋服屋の床に膝を付いた。 『目論見としては現状成功しています。ただ、あなたを守る魔人とあなたを狙う魔人が“山乃端一人”を中心として集まったため、副産物として“山乃端一人”の記憶の混線が起こってしまったのでしょう。おそらく一時的なものですし、それ自体に直接的な害は無いはずです』 「――私が死んだら、ハルマゲドンが起こる……? 私の命を狙って、何十人何百人もの魔人が殺し合い……?」 少女は呆然と呟いた。 その表情には絶望が感じ取れた 「なにそれ……なんなのよ、わけわかんない! ずっとずっと、私は死ねって思われてたの!? 死ぬことを望まれていたの!?」 ――それは違います。 ――そんなことはありません。 鏡助はすぐにでもそう声をかけたかった。 だが、口を開いても言葉を紡ぐことはできなかった。 “転校生は嘘を吐くことができない” 故に事実を否定する慰めの言葉をかけることができない。 山乃端一人が死を望まれているのは――どうしようもなく、本当のことだから。 「そんなの……私、何のために生きてきたの……私、何のために生まれてきたの……?」 子供のように喚きながら、子供のように涙を流す少女。 鏡助はすぐにでも抱き締めてあげたかった。背中を擦ってあげたかった。 できない。この世界において、鏡助は鏡の中の住人でしかないから。 慰めの言葉をかけることも、触ることもできない。 絶対無敵の存在たる転校生は、今この場において誰よりも無力な存在でしかなかった。 『……山乃端一人さん。私は』 それでも。 それでも男は口を開く。 『私は、あなたに伝えなければいけないことがあります』 使命を果たさねばならない。 ・ ・ ・ 「――月ピ、ルージュナと戦った時に話したことを覚えてるか?」 時は少し遡る。 転校生と呼ばれる存在がこの世界に山乃端一人を狙って現れると聞いた二人は、次の戦いのため準備をしていた。 「流石にそれだけでは分からんよ。ベイクドモチョモチョの件か?」 「いやあれの呼び方について話したことじゃねーよ。……無敵のルージュナに通用するトラップについて」 手元のペンライトを点灯させる。LEDライトの光は部屋の隅、影となっていた部分を照らした。 「俺の最大火力である神の杖はルージュナには通用しなかった。……あいつに効かなかったのは、言うならばルージュナのHPと防御が高過ぎるせいで『ノーダメージでは無いが当たっても別に支障が無い』程度に抑えられていたからだ」 「――だが鏡助の説明によれば、そもそも転校生は『そもそも神の杖自体がノーダメージ』ということになるようだな。できれば一度、同じ転校生である鏡助で試してみたかったんだが」 「あいつ泣くぞ」 「ロケハンは大事だぞ?」 「ロケハンで神の杖ぶつけられるのどういう状況だよ……」 ともあれ。 「だけど、一切合切攻撃が通用しないってわけでもないらしい。なら何が通じるかって考えてたんだけど」 「――ルージュナに閃光弾を使った時の話か」 「ああ。目で見ているってことは光の反射を受け取っているってことだから、単純な光自体は無効にできない……って理屈だったよな」 明るい、暗い、を感知できる以上はその延長線上も感知するはず。 「なら同じように、音を聞けるなら音響兵器だった通じるよな。つまり、狙うは光と音だ」 「故に音響閃光弾(スタングレネード)ということか」 「そうそう。勿論これで倒せるとは思ってないけど、目と耳を封じられれば多少なりとも動きを阻害できるはず」 「そういえばロックもゲームで作ってたな。それ自体にはダメージは無いが、プレイヤーの動きを阻害することで操作ミスによる落下死を誘発させるステージ」 「ああ、自信作の一つだぜ」 「クソステージと評判の」 「やめろよ」 リスナーからの「は?」コメントで埋められたこと回を思い出し少々げんなりする鍵掛に、月ピはふむと考えこみながら。 「いいアイデアだと思う。それなら、ロックの能力でこういうことはできないだろうか」 「え? まぁ、できると思うけど……」 ・ ・ ・ いくつもの修羅場を乗り越え練り上げられた柳の斬撃は、その一つ一つが並の剣士を容易く殺傷せしめるほどの鋭さを有する。 もはや彼女は無理やり押し付けられた力をただ漠然と振るうだけの柳生もどきではない。 「う――おおぉぉぉぉ――!」 正面からの踏み込み。振り上げの姿勢に“おつきさま”は抑え込むべくナイフを振り下ろす動きを見せる。 当たらない。互いの手がすれ違うように空を切る。柳の武器は「徒手に見える無の刀」であるが今は本当に徒手を振った(・・・・・・・・・)。 想定外に生じたであろう一瞬の空白に、柳は反対の手に生成した無の刀で追撃する。 横薙ぎ。“おつきさま”の両目をなぞる。 視界を封じ逆胴、袈裟斬り、逆袈裟、唐竹割り、突きの反動でバックステップ。反撃を回避。 左右の動き――フェイントだ。歩法によって右からの動きと左からの動きを錯覚させてから右から回り込む。 歩幅と膝の伸縮をコントロールして相手にペースを悟らせない。タイミングをずらしてすれ違い様に爪痕のような三連斬。 背後に回り込む、“おつきさま”の視界から外れた刹那、如何なる技術か柳は音も無く逆上がりのように跳躍した。 振り返った“おつきさま”は柳を見失う。相手は頭上にいるというのに。 空中でVの字を描くように眼下の“おつきさま”の両肩を切り裂く。本来であれば肩ごと腕を切り飛ばしている攻撃だ。 猫のように体勢を入れ替えて足から着地、低い姿勢のまま“おつきさま”の踝、膝裏、腿をジグザグに斬撃した。 目、脇腹、上腕、下腹部、額、鳩尾、首筋、鎖骨、肘、肩、踝、膝裏、腿。 全てを攻撃した。全てが効果が無かった。 (分かっては――いたけれど――) “おつきさま”のナイフを回避する。こちらの渾身の攻撃を連続で直撃させてもかすり傷も無いのに、相手のこのふわりとした攻撃が当たれば大ダメージなのはまるでリスクとリターンが見合っていない。 (だからと言って、止まる算段も無いけども!) ナイフの振り終わりに合わせて“おつきさま”の手の甲を無刀で打撃する。 ダメージは無いとしても一切の物理的影響が無いわけではないようで、“おつきさま”は衝撃にナイフを手放した。 地面に落ちたナイフを即座に蹴り飛ばす。無意味だとしても一手一手を積み重ねるしかない。 無刀を握り直し、再び攻撃を体勢を取ったところで――“おつきさま”が無造作に手を伸ばして来た。 反応が遅れた。だって、徒手の相手が無防備を晒したまま絡んで来るなんて普通はあり得ないから。 だが。 (しまっ――) “おつきさま”の細指が、柳の左上腕をそっと握る。 そして、ぶちぶちと肉が千切れる音がした。 後退るのがあと数瞬遅かったなら左腕が引き千切られていたかもしれない。 「痛(つ)ぁ……!」 肉が抉られた左腕を庇いながら、まだなんとか動かせることを確認する。 ――まだ常識に囚われてしまっていた。 転校生にとって武器の有無に大きな差は無い。ナイフだろうが素手だろうが、容易くこちらをバラバラにできるのだから。 “おつきさま”は握り取った柳の肉片を興味なさげに放り捨てた。 「ハンカチくらい用意しておくべきでしたね」 そう言いながら、血で濡れた右手に再び取り出したナイフを握る。さらに今度は反対側の手にもナイフが握り込まれていた。 少なくともこれで四本目のナイフのはずだが、あの衣装のどこに隠したいたのだろうか。 「へへっ……なに、お嬢様気取り? ストーカーの癖に」 「――さて、どうでしょう」 「……?」 挑発にもならないただの軽口に、しかし一瞬“おつきさま”の感情が揺らいだように柳は感じた。 しかしその意味を考える間もなく。 「――ハッ」 短い呼気と共に、両手にナイフを構えた“おつきさま”が踏み込む。歩法も剣術も柳に比べれば決して優れたものではない。 だがその動作の一つ一つが致命的な威力を有しているのなら。 「ちっ、くそっ、このぉ!」 二刀による斬撃を首を逸らし、体を捻り、脚を曲げ、全身を伸ばし回避する。 (左腕――動く、けど流石にいつもと同じようには無理。それに何度もは刀を振れない――!) バックステップで距離を取り、詰められる前に右手の刀を閃かせる。ここはまだナイフの距離じゃない。 狙いは“おつきさま”の左手の甲。『せめてナイフを減らす』という意図で放たれた一閃は、しかし左手に握られたナイフを器用に返し、“おつきさま”は逆手に持ち替えたナイフの刃で無刀を迎撃した。 「流石に狙いが見え見えで」 ガン、と“おつきさま”の言葉は物理的に止められた。 『せめてナイフを減らす』という意図が見え見えなのは当然、そのための見せ札なのだから。 ――ダメージが通らないなら武器を狙う。 ――左腕は損傷があるから温存する。 それらを踏まえた上で、右手の刀を囮にした左手の本命。 強烈な突きが“おつきさま”の顔面に叩き込まれ――白く発光する。 「『剣禅―――一如』」 柳の奥義が、“おつきさま”の顔面で炸裂した。 至近距離での『剣禅一如』。その哲学的エネルギーの奔流は流石に反動を抑え切れず、柳の体を吹き飛ばした。 「ぐ、が、ああああぁぁぁぁ!」 左腕を庇いながら地面を転がり、堪え切れずに苦悶の声を上げる。 損傷した左腕で突きを放ち、炸裂させた反動をもろに受けたのだから当然だ。むしろ腕がまだ千切れていないのが幸運とすら言える。 「本当に――大した人間ですね、あなたは。素直に賞賛に値します。」 ――閃光と砂埃が収まった中から姿を見せた“おつきさま”は当然のように無傷だった。 「本当に……相手が私ではない、ただの転校生であればもしかしたら倒せていたかもしれないのに。哲学的エネルギーによる干渉も、浸透する前に浸蝕してしまえば――このように」 銀髪の女性は肩を竦めて柳を見遣る。 「そもそも、私が持ち込んだあの月はどうするつもりですか? まだ距離があるから大丈夫だと思っているのかもしれませんが……」 空を見上げる。小さな月を迎撃すべくロックと月ピがカタパルトで分身(ピエロ)を射出し、神の杖を起動。降り注ぐ金属棒が巨大な岩塊を砕いて行く。 その奥に見えるもう一つの月は未だに傷一つ付けることができていない。 「引力の関係上、あの月はこの地球に近付けば近付くほど加速します。閾値を越えたらあっという間に終わりです。どうしても止めるのなら"最後の一線”を越えるまで留めておくしかありませんね」 「……あんた本体には通じないって言ってたけどさ」 柳は無刀を杖代わりにしてフラフラと立ち上がる。その目の闘志はまだ消えていない。 「じゃあ、剣禅一如をあの月にぶち当てたら? それなら消えるんじゃない?」 「無理ですよ」 転校生は断じた。 「まず大前提として射程が足りません。あなたのビーム、何キロ先まで届きますか?」 「……」 歯噛みする。何キロ先どころか数百メートルすら怪しいだろう。 「仮に射程の問題が解決したとしましょう。ですが、そもそも出力不足です。存在の大きさという観点では私本体よりもむしろ月の方が大きいですからね。月だけでは私のように哲学的エネルギーの干渉そのものを無力化することはできませんが……まぁクレーターを開けるくらいはできるんじゃないですか?」 見下して過小評価をしているのではない。“おつきさま”本人が互いの力量を見た上での見解がそれだった。 「繰り返しますが、あなたは大した魔人ですよ。お仲間の二人も頑張ってはいます。――でも、それだけです。実力者が最適解を選び続けても必ず勝てるわけではありません」 「……」 無言のまま、柳は無刀を上段に構えた。光が、白い閃光が刀へと収束する。 「『剣禅』――」 「だから、効かないと言っているでしょうに」 そう言いながらも“おつきさま”は柳の狙いを考える。この剣士は自棄になって奥義を振り回すような半端者ではない。 牽制であれ、目くらましであれ、この局面でそれを撃つことに何らかの意図があるはず。 「――キャンセル」 だから、その光が消えて柳がバックステップしたのを見た時、“おつきさま”は思わず呆けた反応をしてしまい。 頭上からの岩塊に圧し潰された。 「……あんな力技で岩を破壊してるのに、ここまで精密に落とすとかどんな操作技術してるのよ」 眼前で、“おつきさま”が小さな月の欠片の下敷きになるのを見届けた柳は、それをやらかした二人の手腕に呆れとも賞賛とも取れる言葉を漏らした。 つまりこういうことだ。鍵掛と月ピの二人は小さな月の迎撃作業の最中、“おつきさま”の相手をしている柳の旗色が悪いのを察し、落石によって援護攻撃を仕掛けたのだ。 ――空中で迎撃した岩塊をピンポイントに敵の上に、そして柳が巻き添えを喰らわないように落とすというのがどれほどの技術を要求されるのかは想像もできないが。 (とはいえ。これであの女が死んだとは思えない) 空を見上げる。もう一つの月が地球に迫ってきている。 ――ですが、そもそも出力不足です ――まぁクレーターを開けるくらいはできるんじゃないですか? 先ほどの会話。“おつきさま”は柳の剣禅一如でもう一つの月を消滅させることは到底不可能だと断じた。 “攻撃が通用すること自体”は否定しなかった。 (転校生に私達の攻撃が通じないのは私達が転校生じゃないから。だったら、転校生の力を有している“もう一つの月”を一部だけでも破壊して、その欠片で“おつきさま”の本体を攻撃できるかもしれない) 当然ながら、それは困難に困難を重ねた蜘蛛の糸のように細い細い仮定だ。 それでも理屈を繋ぎ合わせる限りは不可能だという証拠はない。 (やろう。ここでこいつを延々と相手しているよりも、まだ勝機が見え) そして、ぶちぶちと肉が千切れる音がした。 左足の肉が爆散する音だった。 「――は?」 体の支えを失って不格好に倒れる。 見れば、柳の左足の腿肉が飛び散り、骨が剥き出しになっていた。流血が止めどなく溢れている。 しばし、その意味が理解できず――視線を動かして前後を見遣って。 「……うわぁ、マジかぁ」 己の迂闊さを悟った。 背後の地面にナイフが突き刺さっていた。 “おつきさま”を圧し潰した岩塊に、ちょうどナイフ一本分の穴が開いていた。 「岩の中からナイフを投擲したってコト? いくらなんでも……パワープレイ過ぎるでしょ」 考えてみればナイフを主武装としておきながらナイフ投げを一切行わなかったのは布石だったのか。 岩を押し退けて脱出するのではなく、岩自体を隠れ蓑にして安全に狙撃できると気付いたのか。 「――可能性は、潰しておくべきです」 ナイフで文字通りに岩を切り開きながら“おつきさま”が現れる。彼女は足に甚大なダメージを受け横たわる柳を見て満足そうに頷いた。 「結局のところ、転校生に干渉できるのはあなただけ。先ほどは不可能だとは言いましたが、それでも月に攻撃を通す目があるのはここではあなただけ」 故に。 「あなたさえ殺せば、もう私を止める手段は無い」 ――正真正銘、柳には手詰まりだった。 この脚ではもはやまともに立ち上がることすらできるかどうか。 そしてこの出血量。 (ああ、これは死んだな) どこか冷静に、柳は自分を分析した。 仮にこの場を無事に離脱できたところで、適切な処置を行わなければもうすぐ死ぬ。 適切な処置が行える頃にはこの地球が終わっている。 そして眼前には自分にトドメを刺そうとしている転校生。 (あーあ、ごめんね山乃端さん。最期の言葉が「邪魔だよ」になっちゃった) それでも。 (あなたを守りたいという、約束は守るよ) 柳は自身が持つ全てを、ありったけを、集中させるイメージを組み上げる。 最後の最期。柳煎餅という人生を掛けた渾身の『剣禅一如』。 ――例え全てを費やしても、容易く無効にされ何の成果も遺すことができないかもしれない。 それでも。 (それが億に一つの可能性でも――それ未満だとしても構わない) 「――何かを企んでいますね」 “おつきさま”の警戒した声が聞こえる。流石に察されたようだ。 (……相手を油断させることはできない、不意打ちもできない。可能性はさらに狭まった) それでも。 千切れかけの左腕と剥き出しの左脚を奮わせて立ち上がる。 「……これが私の最期の一撃だよ、転校生」 白く輝く閃光の刃を構え、あえて堂々と宣言する。 「どうやらそのようですね。……それが分かっていて、わざわざ不用意に受けるとでも?」 「まさか。でも、これで斬るよ」 「できませんよ、そんなこと」 「斬る」 「……」 もはや互いに言葉は不要。 柳は剣禅一如の構えのまま動かない。 “おつきさま”はナイフの投擲と回避行動をいつでもできる姿勢を取る。 外せば、無駄死に。 当たっても、おそらく無駄死に。 そして。 そして。 そして――。 カタパルトで射出されたピエロが“おつきさま”へと飛び掛かった。 「――!?」 突然の闖入者に流石の“おつきさま”も動揺を隠せず、猛烈な勢いで自らへとしがみ付いて来たピエロに地面に引きずり倒された。 絶対的な隙。 剣禅一如を放つなら今しかない。 なのに。 (――まだだ(・・・)) 柳本人も理由が分からない。 なのに何故か、まだ放つべきではないと本能が叫んでいる。 故に、それに従った。 「いい加減に……!」 “おつきさま”の左手がピエロの顔を掴む。ピエロの顔はメキメキと潰れていく。 「止まりなさい!」 そのまま右手に握ったナイフをピエロの胸部へと突き刺した。 それはバターのようにまるで抵抗を感じさせずに深々と貫き。 そして、ピエロの懐に入っていた箱状の装置をも貫いた。 ――つまり、狙うは光と音だ ――それなら、ロックの能力でこういうことはできないだろうか ――落雷のトラップ バリバリバリバリ―――― 装置が作動し、天より夥しい雷が落ちた。 それは、強烈な光と音を伴った電撃。 転校生であろうとも、一時的に視覚と聴覚を奪うほどの。 (これ、は) “おつきさま”の視界が真っ白に染まっている。何も見えない。 他方で感覚以外には肉体的損傷を受けていない。そこは転校生の守りを破れなかったようだ。 だが、“おつきさま”を動揺させたのは。 (この攻撃――味方ごと(・・・・)――) そうだ。この攻撃は間違いなく同じ戦場にいた柳すらも巻き込んでいる。 既に半死半生の身。防ぐことも躱すこともできるはずがない。 (ならば、瀕死の味方を見限りましたか。――愚かな。あの剣士の奥義は、限りなくゼロであっても私に届き得る唯一の手段だったのに、それを放つ前に死なせるとは) ――放つ前? (……そもそも何故彼女は隙だらけの私を撃たなかった? 通じるかどうかはともかく、千載一遇の機会だったはずでは?) 撃てなかった? 撃つ必要がなかった? ――これから撃つつもり(・・・・・・・・・)だから? 視覚と聴覚が封じられた最中。 “おつきさま”は確かにそれを感じ取った。 かつて立花道雪は、雷と共に現れた雷神を斬り、その刀に“雷切”の名を与えたという。 ――切っ掛けは墓地で戦った隼侍の技だった。 ――為したのは駐車場で戦った御首級てがらの奥義を討った時だった。 無を刃をするのなら。 雷を手にできぬ道理はなく。 「――“無刀取り”」 柳煎餅は、己の身を焼く雷を刃として留め、その右手にしっかりと握り込んでいた。 自らの全てを、ありったけを込めた。そこにさらに雷の力を注ぎ込む。 姿勢は低く、体をやや左に捻りながら、右手に握った刀を構える。 ――柳煎餅 ――お前を ――『感電死(・・・)』で殺す (律儀というか、まどろっこしいんだよ、殺し屋!) 解放。 全身を発条にして雷刀を逆袈裟に斬り上げる。 「“剣禅一如”―――――!!」 ・ ・ ・ “おつきさま”は攻撃が放たれたのを感じ取った。 (このエネルギー……一体何の小細工を。いいえ、それでも私には通用しません) 両腕を交差させて盾にする。無防備に受けても防ぐ自身はあるが、懸念材料は一つでも潰しておくに越したことはない。 果たして。 攻撃は来なかった。 (……?) 攻撃は間違いなく放たれたはずだ。なのに“おつきさま”の身は何も受けていない。 (正真正銘、彼女の最期の、最大の攻撃だったのでは) そこまで思考が至ったところで。 (――しまった) “おつきさま”は自分の中で何かがごっそりと失われたような感覚を覚えた。 (狙いは……私じゃない) 気付いた時には既に遅かった。 剣禅一如。 柳煎餅が最期に放った白き雷光の斬撃は空を裂き、天に昇り。 “もう一つの月”へと、到達した。 ――極致へと至った柳の剣禅一如はただの物理的破壊に留まらない。 非物理的領域に干渉し、論理的整合性を取り繕い、架空の因果関係を成立させる。 (『月は』『自我を』) 「……『持たない』」 転校生の否定が通じないのは織り込み済み。 本命は月が知性を持つはずが無いという論理的破綻(ロジックエラー)。 その結果どうなるのか。 “おつきさま”による精神侵蝕を受けることでもう一つの月は彼女の一部として認識され、転校生の保護を受けている。 “おつきさま”による精神侵蝕は知性を持つものにしか通じない。 “おつきさま”の傀儡の魔人によって自我を与えられ、精神侵蝕の条件を満たしている。 それが、剣禅一如によって否定される。 もう一つの月は自我を持たない。 もう一つの月は精神侵蝕を受けない。 もう一つの月は“おつきさま”の一部と認識されない。 もう一つの月は、転校生の力を失う。 「……待ってたぜ。これでようやく、本命が行ける」 一部始終を見届けた仕掛け人――鍵掛は不敵に笑い。 「どこから手に入れたか知らないけどよ、月ピ、ありがたく使わせてもらう。――ぶちかませェ!」 ――もう一つの月に、カタパルトトラップによって射出されたスペースシャトルが衝突した。 当然のことながらシャトルは大破。 そして、内部に可能な限り詰め込まれ搭載されていたトラップが起動する。 いつもは空から地上へ向けて。今回は空から宇宙へ向けて。 「“神の杖(ロッズ・フロム・ゴォォォッド)”―――!!」 ――地球へ迫るもう一つ月へと放たれる数百を越える神の杖。 それらは次々に月の表面へと突き刺さり、宇宙へ向けて押し返していく。 (これで破壊できるとは思ってない。これで無限に押し留められるとも思ってない。――だけど、時間稼ぎはできるだろ!) 鍵掛は月を見上げながら拳を握る。彼ができることはやった。後はもう、託すしかない。 「――頼む」 ・ ・ ・ “おつきさま”は、もう一つの月が自分の支配から離れたのを理解した。 (ですが、それでも――例え転校生の力を失ったとしても、もう一つの月は単純な質量でこの世界を滅ぼし山乃端一人を殺害します) そうだ、彼女の寿命が少しばかり延びただけ。 なのに、“おつきさま”の胸中に何とも言えぬ不安感が過ぎる。 「いいえ、いいえ……いいえ! 転校生に対応し得るあの剣士はもういません。これで、今度こそ」 終わりだと、そう言葉にしようとして。 「――《Au clair de la lune,Mon ami Pierrot(月の光と、我が友ピエロ来れり) 》」 落雷の影響から回復しつつある聴覚に、そのような歌が聞こえた。 打撃。 (これは――攻撃を受けている?) 「――《Ma chandelle est morte, Je n ai plus de feu(私の灯は消えてしまった) 》」 まだ視覚が回復し切っていないためはっきりと認識できていないが、“おつきさま”の周囲を誰かがすれ違いながら攻撃を仕掛けている。 (これは……二人。主に攻撃しているのは一人ですが、他の一人も攻撃の機会を伺っている) とはいえ。先ほどの剣士とは違い、行われているのは単純な物理攻撃。これならまだ先ほどの方が危機感があった。 「――フッ!」 接敵に合わせて腕を振り回す。攻撃者と“おつきさま”、互いの攻撃が互いに命中したが結果の差は歴然。“おつきさま”はかすり傷一つなく、攻撃者は素手の一撃で引き裂かれた。 「――《Ouvre-moi ta porte, pour l amour de Dieu.(頼む友よ、扉を開けてくれ) 》」 そのはずなのに。 引き裂いたはずの攻撃者が、すぐさま復帰して再度切りかかる。 (これは……召喚能力? なるほど、分身を生み出して安全に攻撃を行っているわけですか) 先ほどと同じように、攻撃に合わせてカウンター。また現れた分身に攻撃に合わせてカウンター。 何度やってもキリが無い――それを相手も感じ取ったのか、攻撃が止んだ。 (この気配は……三人? タイミングを、合わせているようですが) 少しずつ視界も戻ってきた。ぼんやりとだが周囲が見えるようになっている。 (連携攻撃でどうにかしようと……そういうつもりですかね。努力は認めますが、無駄なことです) ――左前方、右前方、少し遅れて後方。 三方向から攻撃者達が飛び出してくる。 “おつきさま”はあえてそれを受けることにした。どうせ当たったところで被害は無いのだ、おそらく本命であろう最後の一発に合わせてカウンターを繰り出す。 左前方、ナイフ攻撃か。投擲と、すれ違いながらの斬撃。無防備のまま受ける。 右前方、鎖に繋がれた鈍器。振り回し、“おつきさま”の胸元へと振り下ろす。無防備のまま受ける。 後方、これが本 ――ドス。 攻撃が突き刺さった。 「―――え」 後方はまだ来ていない。これは二人目の攻撃。鎖に繋がれた鈍器による振り回しが“おつきさま”の胸元へと深く喰い込んでいた。 「なに――え、なにが……」 理解できない。理解できないまま数歩たたらを踏む。 視覚が回復しつつある。 視界が戻りつつある。 “おつきさま”は、顔を上げた。二人目の攻撃手の姿を見た。 泣きそうな表情をしていた。というより、実際に涙の痕があった。 震えていた。恐怖か、不安か。顔は真っ青だ。 それでも、その目には決意が秘められていた。 その手には、鎖が握られていた。 鎖の先には、銀時計が繋がれていた。 「あ……」 それが、誰か分かった。 “おつきさま”は呆然としたまま、その少女の名を呟いた。 最終話 山乃端、一人 『私は、あなたに伝えなければいけないことがあります』 洋服店の中で、姿見の中の鏡助は泣きじゃくる山乃端にそう言った。 「……聞きたくない」 蹲ったまま、少女は子供のようにイヤイヤと頭を振って拒絶する。 『いいえ、聞いてもらいます。何故ならそれが私がこの世界に来た理由だから』 「聞きたくない! それって、いい知らせなの!?」 『……』 転校生は嘘を吐くことができない。鏡助は山乃端の言葉に少しだけ逡巡して。 『……それはあなた次第です。この“伝言”自体に深い意味はありません』 「伝言……?」 『――“山乃端一人”のご両親からです』 その言葉に、少女はハッと顔を上げる。だがすぐに眉をひそめて。 「それって……“どの”山乃端一人?」 『……私の世界の山乃端一人です』 「なら、先に教えて。あなたの世界の山乃端一人と……そのお父さんとお母さんは、どうなっているの」 『――死にました』 ……半ば予想していたことではあった。そもそも並行世界の自分とその家族だなんて、下手な他人よりもよっぽど縁遠い、無関係の存在だ。 それでもその端的な言葉は少なからず山乃端にショックを与えた。 「……そっちの山乃端一人も、ハルマゲドンのせいで?」 『そうですね……ハルマゲドンを目論む勢力に狙われ、刺客を差し向けられました。両親は彼女を守るために立ち向かい……殺され、最終的に山乃端一人本人も』 「……」 『私はご両親の最期に立ち会いました。ですが、山乃端一人さん本人は守ることができず……』 「――バッカじゃないの」 吐き捨てるように、山乃端は言った。 「なによそれ。それじゃああなた、娘に伝えられなかった言葉を、赤の他人(・・・・)である私に伝えようとしているの?」 『……結果的にはそうなります』 「それじゃあ尚更嫌よ! そんなの聞かされたってあなたの自己満足じゃない!」 『――その通りです!』 突如響いた男の大声に、ヤケ気味だった少女がびくっと震える。 ――鏡助がここまで感情を露わにしたのは初めてだった。 『そうです、私は! 私は……ただの自己満足のために世界を渡り、山乃端一人を守ろうとしています。そのために、何十人もの魔人を巻き込んで!』 だから。 『私は最低の存在です。結局は、あなたを殺してハルマゲドンを起こそうとしている人達と同類かもしれない』 だけど。 『――それでも! それでも私はあなたに“違う”と言います!』 「……“違う”? 何が違うっていうの」 迫力に気圧されながらも、山乃端はそう返す。鏡助は大きく息を吸って、その言葉を紡いだ。 ――私、何のために生きてきたの ――私、何のために生まれてきたの 「それって、さっき私が……」 『そうです、あなたの絶望です。そして――』 ――私の世界の山乃端一人の絶望でもあります。 「……」 『――“違い”ます。“違う”んです。だって……生まれたことや生きていることに、あなたが思い悩む必要なんて無い!』 叫ぶ。 鏡助は、かつて勝利数0(正義)だった男は叫ぶ。 『生きてください! 理由なんていい、ただ生きていて欲しい! edel(高貴)でなくても、weiß(潔白)でなくても! 生きていることは……尊いことなんですから』 「……」 純粋なまでの想い。それを受け止め切れず、山乃端は俯いた。 「……ダメだよ。だって、"山乃端一人”は……ずっと死を望まれて、死を願われて……」 『――これでようやく、最初の話ができます』 え、と少女は顔を上げる。二人の目が会う。 『山乃端さん。私は、あなたに伝えなければいけないことがあります。“山乃端一人”のご両親からです』 『”一人”』 『“うまれてきてくれて”』 『“ありがとう”』 ・ ・ ・ 「――わあああああああああああ!」 山乃端一人は叫びながら銀時計が繋がられたチェーンを振るう。 銀時計は鈍器のように、“おつきさま”の肩に叩き付けられた。 「あああああああああああああ!」 技も術もなく、子供のようにチェーンを振り回す。 銀時計は“おつきさま”の脇腹に突き刺さった。 「うううううううううううぁぁぁぁ!」 山乃端本人も何をしているのか分かっていないかもしれない。 それでも、繋がられた銀時計は“おつきさま”の顔面に打ち付けられた。 その打撃の全てが“おつきさま”に明確なダメージを与えている。 原則として転校生に攻撃が通用するのは同じ転校生だけである。 ならば、山乃端一人は転校生になったのか? (――違う。この山乃端一人は、転校生は愚か魔人能力者ですらない) 銀時計を何度も打撃されながら“おつきさま”混乱し切った頭で思考を続ける。 (ただの一般人が、転校生を相手に攻撃を通している……!?) それはあり得ないはずのこと。 だがそもそも何故あり得ないのか? 『「自己の認識を他者へと強制する力」――それが魔人の能力の本質です』 『そんな魔人の中でごく稀に――試練を乗り越えることによって「自分は魔人を越えた特別な存在である」と、そう認識する個体がいます』 『それこそが転校生、魔人を越えた魔人』 自分は特別な存在であると自己認識することによって、認識によって世界を歪めるという魔人の在り方をさらに高い階位で為している存在。 それが転校生。それに対抗するには世界を歪めるほどの影響力と、自分は特別であるという自己認識。その双方が無ければ足りない。 だがそもそも、試練を乗り越えることでしか自分を特別だと認識できないのだろうか? 『うまれてきてくれてありがとう』 『理由なんていい、ただ生きていて欲しい』 彼らが真にその言葉を贈りたかった山乃端一人は彼女ではない。 それでも。 世界を越えて彼女にその言葉を贈ることに躊躇いも迷いも、間違いも無い。 それは"祝福”だ。 例え生まれたことの意味に苦悩し、生きることの理由に絶望したとしても。 生まれたことを、生きることを。 意味もなく、理由もなく、肯定すること。 ――それを、愛と呼ぶ。 あらゆる世界、あらゆる時空において、その死がハルマゲドンの引き金となるほどの影響力を持つ山乃端一人が。 あらゆる世界、あらゆる時空を越えて、「自分は大切な人に愛されている」のだと自己認識をしたのなら。 ――たかが神(・・・・)に認められた程度の転校生が、どうして無敵であると言えるのか。 それでも、本来は辿り着けない領域だった。 ただ山乃端一人が自己認識をしただけでは転校生に敵うまでは行かなかった。 ――ここに、さらに二つの要素が重なった。 一つ。それは山乃端が武器にしているのが銀時計であるということ。 この世界の山乃端一人にとってこの銀時計はただのアンティークだ。 だが並行世界の“山乃端一人”が混線したことにより、「山乃端一人の銀時計は、山乃端家に代々受け継がれる魔神(デミゴッド)を封印する魔器である」という“認識”が適用された。 それは魔神である“おつきさま”にとって特攻武器に他ならない。 もし山乃端が扱う武器が刀剣や銃器であったのなら、それが優れた物であっても攻撃は通らなかっただろう。 そして、二つ目の要素。それこそが、山乃端が“おつきさま”に到達する最大の理由。 「わあああああ! わあああああ! ああああああああ!」 少女は無我夢中に銀時計を振り回す。魔神(デミゴッド)封印の魔器は“おつきさま”の存在を一撃ごとに削り取っていく。 その気になれば“おつきさま”は抵抗ができた。月ピが備えて反撃を潰す構えこそ取っているものの、転校生である“おつきさま”が本気で抵抗すればただの魔人など障害にもならない。 なのに。もはや“おつきさま”は戦意をほとんど失っていた。 (……どうして。目の前に山乃端一人がいる。目標がいる。この少女を殺して持ち帰れば、私の願いが叶う。なのにどうして私の体は動こうとしない) “おつきさま”は自問を繰り返す。……答えの分かり切った問いを。 ――“おつきさま”は山乃端一人を見る。 美しいというよりは愛らしい整った顔立ち。 戦いの恐怖に震えながらも逃げずに立ち向かう勇気。 倒すべき悪であっても力を振るうことに躊躇う優しさ。 ああ。 ああ――。 空を見上げる。そこにはもう一つの月。“おつきさま”が自分の世界から持ち込んだ――かつて誰かと一緒に見上げた月が。 振り下ろされる銀時計は、“おつきさま”の心臓を目掛けている。 “おつきさま”は無防備にそれを受け入れた。 最期に。目の前の少女を見て思い出した、目の前の少女ではない誰かのことを口にしながら。 「―――お嬢様(・・・)」 「月が、綺麗ですね(I love you.)―――」 二つ目の要素。 転校生(おつきさま)自身が、山乃端一人を愛していたということ――― ・ ・ ・ ――告別式はつつがなく行われた。 故人は夫に先立たれており、自分の葬式は盛大にやる必要は無いと生前からこぼしていたようだが――縁の多い彼女らしく参列者も中々の数になってしまったようだ。 長男が喪主として立派に役目を果たし息子夫婦と娘夫婦がそれぞれ式を取りまとめていた。 テルは娘夫婦の第三子、今年で八歳になる小学生だ。 祖母のことが大好きだった兄や姉はお別れに泣きじゃくっていた。勿論テルだって祖母のことが大好きだ。 だけど、祖母の遺体の遺体と面会した時。 「――おばあちゃん、おつかれさまでした」 なんてことを言い出したものだから、周りから不思議がられていた。実はどうしてそんなことを言ったのか、テル自身もよく分かっていなかった。 ただ、祖母はずっと頑張っていたのではないかと思ったのだ。 火葬の最中はしばらく暇になってしまい、テルの兄や姉は親戚たちとお話をしているようだが、テルは手持無沙汰に斎場の入り口をうろついていた。 そうしてテルは、斎場の入り口に立っていた喪服姿にサングラスをかけた男性を見つけた。 「……?」 まだ子供のテルにもその人が不思議な恰好をしていることくらいは理解できた。 もしかして不審者だろうか? だけど、この喪服という黒い服は葬式で礼儀正しい服装であると聞いていたから。 「こんにちは、おじさん。おばあちゃんに会いにきたの?」 きっとそうなのだろうと思い、声をかけた。 男は少し驚いた様子で、しかし膝を曲げてテルと目線を合わせて口を開いた。 「そうだな。故人に……君のおばあさんに挨拶に来たんだ」 「なら、中に入らないの?」 「それが、おじさんはちゃんとしたお客さんじゃないから入ったら怒られてしまうんだ。秘密にしててくれないか」 「うん、わかった」 「ありがとう」 頷く男に、テルはこの人は悪い人ではないと思った。 「おじさんはおばあちゃんの知りあいなの?」 「昔、仕事で少し関わりがあってな。強い人だったよ」 「それじゃあ、おじさんも先生だったの?」 「先生? ……そうか、彼女は最終的に希望崎学園の教頭になったのだったか」 因果な物だ、と男は呟いたがテルにはよく分からなかった。 「私は先生ではない。実を言うと、今日は以前の仕事の完遂を見届けるために来たんだ」 「かんすい?」 「仕事がちゃんと終わったかを見に来たってことだ」 「ながいお仕ごとだったんだね」 「本当にな」 男は肩を竦めた。 ――本当に長い仕事だった。 何せ、最初に依頼を受けてから彼女の死を見届けるまで三年も(・・・)かかったのだから。 結局、あの“おつきさま”と呼ばれる転校生を撃破してから、山乃端一人が命を狙われることは無くなった。 死の運命に付き纏われた女性。果たして、「ただの一般人が転校生を撃破した」という事実が因果にどれほどの影響を与えたのか。 不思議なもので山乃端一人はあの戦いの日々をはっきりと覚えていないようだった。 かく言う月ピ自身も、気を抜くと山乃端一人に関する記憶が表向きの歴史の情報――享年八十二歳――にすり替わることがあった。 (それだけ彼女の運命は世界に影響する数奇なものであったということ。そしてその宿命を他でもない、彼女自身が自ら打ち破ったんだ) だとすれば。山乃端一人があのカードを選び取ったのも当然のことだったのかもしれない。 男は立ち上がった。 「さて、それじゃあ私はそろそろ帰る。少年、ちゃんと私のことは秘密にしておいてくれよ」 「うん。……だけど、もう帰っちゃうの?」 「仕事が立て込んでてな。それでもちゃんと来れて良かった。――君に会えてよかった」 「? そっか、よかったね」 よく分からないが、男が嬉しそうだったので多分良いことなのだろうと思った。 男は踵を返し、斎場の入り口から去っていく。 バイバイ、とテルは手を振って見送った。男も背を向けたままヒラヒラと手を振って応えた。 そろそろお母さんに呼ばれるかもしれない。 テルは足早に、家族が待つ広間へと歩いて行った。 Au clair de la lune,Mon ami Pierrot.(月の光と、我が友ピエロ来れり) Prête-moi ta plume pour écrire un mot.(言葉を記すため、ペンを貸してくれないか) Ma chandelle est morte, Je n ai plus de feu(私の灯は消えてしまった) Ouvre-moi ta porte, pour l amour de Dieu.(頼む友よ、扉を開けてくれ) Mais je sais qu la(――ああ、そうか) porte sur eux se ferma.(扉はもう、開かないのだな)
https://w.atwiki.jp/whiteraven/pages/124.html
[メイン] system [ 黒占 神籤 ] 生命力 2 → 6 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 2 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 器術 0 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍術 0 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 謀術 0 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 妖術 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 気づいて無いぜ [メイン] GM こちゃ [メイン] 在原 颯太 こちゃ [メイン] 黒占 神籤 https //character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYye_4jwMM [情報] 流れ鴉 「颯太!!!!!」 [情報] 流れ鴉 斜歯車の技術と、何より鴉の人海戦術を前にして。 [情報] 流れ鴉 流れ鴉は、そして在原はついになす術が無かった。 [情報] 白鴉の主 「・・・・・・」 [情報] 白鴉の主 「コノ女ニハ、消エテ貰ウ。」 [情報] 在原 颯太 「クッ、そこをどけ!!」雑魚の数に押されてその場を動けない [情報] 白鴉の主 「オ前ハ、見逃シテヤロウ。」 [情報] 白鴉の主 「コノ女ダケデ十分ダ。」 [情報] 在原 颯太 「どういうつもりだ!」 [情報] 白鴉の主 「主サマハ、コノ女ノ血ヲオ嫌イニナル。」 [情報] 流れ鴉 「颯太!」 [情報] 流れ鴉 「この主様は、普通じゃない!」 [情報] 在原 颯太 「白鴉の主が普通じゃない……?」 [情報] 流れ鴉 「闇に、呑まれちまったんだと思う。」 [情報] 流れ鴉 「頼む。私と、主様を、助けてくれ。」 [情報] 在原 颯太 「待て!」 [情報] 白鴉の主 「無謀ナ試ミハセンコトダ。」 [情報] 在原 颯太 「無謀かどうかは──」 [情報] 在原 颯太 飛び上がって主を空中から急襲する [情報] 在原 颯太 「やってみないとわからんだろうが!」 [情報] 白鴉の主 空は鴉の群れに薄く、それは有効な試みであった。 [情報] 白鴉の主 その上で、白鴉の主は圧倒的に、在原を退けて見せた。 [情報] 白鴉の主 そうして、流れ鴉は拐われた。 [情報] 白鴉の主 ______ [メイン] 黒占 神籤 2d6 ShinobiGami (2D6) > 10[4,6] > 10 [情報] GM 10-中空庭、それは白鴉の社に繋がる唯一の道であり、そこは、何物にも守られておらず、しかし確実に守られているといわれている。 [メイン] 黒占 神籤 2D6-1 =5 (判定:掘削術) ShinobiGami (2D6-1 =5) > 11[5,6]-1 > 10 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6-1 =5 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6-1 =5) > 5[2,3]-1 > 4 > 失敗 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:伝達術) ] ShinobiGami (2D6 =5) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 黒占 神籤 turn1 神籤 なんもせん 主 魔界転生(自動成功) 魔界転生シーン 御籤に情報判定→怪文(自動成功) 流行禍(自動成功)本人 教導(忍法錬成)(自動成功) turn2 神籤 なんも 主 夜駕籠(自動成功)) 神籤win 貪狼 奈落をコピー(または忍法研究)電撃作戦を消す [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 6 → 5 [秘密改めて] 白鴉の主 召喚術 追加忍法 魔界転生p106 流行禍 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 体術 1 → 0 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [秘密改めて] 白鴉の主 掘削術 追加忍法 増やし 回数制限 怪文p101 雲梯 大歯車p87 [秘密改めて] PC4秘密 逆神はあなたに二つの天啓を与えた。一つは、白鴉の主が容易に逆神の支配下における状態にあるということ。もう一つは、その力を利用して、対魔の刀及びそれが求める血を消し去るという指示。 あなたは、上忍としてキャラクターを作成する。 あなたは、斜歯忍軍の頭領であるキャラクターを別途作成する。このデータはNPC①白鴉の主に使用される。 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 4 [秘密改めて] system [ あかね ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 器術 1 → 0 [秘密改めて] system [ 在原 颯太 ] 生命力 7 → 6 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 器術 0 → 1 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 生命力 8 → 7 [秘密改めて] system [ 透石礫 ] 生命力 6 → 5 [秘密改めて] system [ 透石礫 ] 妖術 1 → 0 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 11[5,6] > 11 > 成功 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 生命力 7 → 6 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 3 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 生命力 6 → 5 [メイン] system [ あかね ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 透石礫 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ 透石礫 ] 忍術 1 → 0 [秘密改めて] 白鴉の主 用兵術 追加忍法 巡らし 発動条件 教導p104 夜駕籠p119 [メイン] system [ あかね ] 生命力 8 → 6 [メイン] system [ あかね ] 体術 0 → 1 [メイン] system [ あかね ] 忍術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 3 → 5 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 3 → 2 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 2 [秘密改めて] 白鴉の主 神通がん 主→神籤 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:幻術) ShinobiGami (2D6 =7) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:幻術) ShinobiGami (2D6 =7) > 7[2,5] > 7 > 成功 [メイン] 在原 颯太 2d6 ShinobiGami (2D6) > 7[3,4] > 7 [雑談] 黒占 神籤 電撃作戦 turn1 神籤 なんもせん 主 魔界転生(自動成功) 魔界転生シーン 御籤に情報判定→怪文(自動成功) 流行禍(自動成功)本人 教導(忍法研究)(自動成功) turn2 神籤 なんも 主 夜駕籠(自動成功)) 神籤win 貪狼 忍法錬成をコピー 電撃作戦を消す [情報] GM 7-裏街区の最奥、そこは、ぽっかりと穴を空けた中庭が、高く高く続いている。 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:人脈) ShinobiGami (2D6 =5) > 7[3,4] > 7 > 成功 [情報] 在原 颯太 今まで培った人脈を用いて、主の異変についての情報を得ていた。 [情報] 在原 颯太 「……そうか」 [情報] 飛び跳ね鴉 「うむ」 [情報] 在原 颯太 「翁、無理を言ってすまなかった」 [情報] 飛び跳ね鴉 「いやいや、構わん。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「われらが主殿がおかしくなったというのは、わしとしても悲しいのでな。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「あれで、頼りがいのある主殿だったのじゃよ。」 [情報] 在原 颯太 「……僕は僕でなすべきことを果たす。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「そう言ってものう。これから実際どうするつもりなんじゃ。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「わしも協力できることは協力するが、いざ戦闘となるとここの一家を置いて危険に身をさらすわけにはいかん。」 [情報] 在原 颯太 「勿論、そこまで甘えるわけにはいかないさ」 [情報] 在原 颯太 「この情報だけで十分だとも」 [情報] 飛び跳ね鴉 「分かった。わしはお前たちを気に入っとる。死ぬんじゃないぞい。」 [情報] 在原 颯太 「そちらもな」 [情報] 飛び跳ね鴉 ______ [情報] 飛び跳ね鴉 「さて、わしも出来ることはするとしようかの。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「この長袖なら学ランに見えるかの。さすがに無理かの。」と言って第十三校舎に乗り込んでいきます。 [情報] 飛び跳ね鴉 「押忍!押忍押忍!押忍!」と言いながら廊下をずいずい歩き、天文部の前のドアを叩く。 [情報] 透石礫 「……」 [雑談] 在原 颯太 学帽も被ってるなこれ [情報] 透石礫 「不法侵入者か……」 [情報] 黒占神子 「兄ぃ、本日最初の仕事っスね。」 [情報] 黒占神子 「おっちゃん、ここは学校っスよ!」 [情報] 透石礫 「そうだぜ、ボケるにしたって他人に迷惑かけるなよ」 [情報] 九重 桜 「そんな辛辣な……」 [情報] 黒占神子 「桜さん、だってこいつ明らかに怪しいっスよ。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「おお、メッシュヘアーのの嬢ちゃんもおったか。ちょうど良いわい。」 [情報] 黒占神子 「おっちゃん、俺たちのことを知ってるんスか?」 [情報] 九重 桜 「え、この人だって……」 [情報] 飛び跳ね鴉 「おお、九重の嬢ちゃん。久しぶりじゃな。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「爺様のことはご愁傷様でござった。」 [情報] 九重 桜 (やっぱり飛び跳ねの翁さんだったか) [情報] 九重 桜 「その節は……」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 九重 桜 「この人、この方は大鴉の一人。飛び跳ね鴉さんですよ」 [情報] 九重 桜 「確かに学生服なのはよくわかりませんが、変な人じゃありませんよ」 [情報] 透石礫 「……マジ?」 [情報] 黒占神子 「飛び跳ねって、外郭の?」 [情報] 透石礫 上司じゃん [情報] 透石礫 「……ウス!お疲れ様ッス!」 [情報] 九重 桜 「うん。外郭の」 [情報] 飛び跳ね鴉 「うむうむ。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「坊ちゃんと嬢ちゃんの熱いラブロマンスを見せて貰ったお礼を言いに来たのじゃよ。」 [情報] 黒占神子 「うぇっ、見られてたんスか!」 [情報] 透石礫 「お、おう……」 [情報] 九重 桜 (さらっとさっきの態度なかったことにしたな、礫……) [情報] 飛び跳ね鴉 「それでじゃな。そこに名脇役がおったじゃろう。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「ほれあの、黒髪で長身の・・・」 [情報] 九重 桜 「?」 [情報] 透石礫 「臥煙さんスか」 [情報] 九重 桜 (誰!?) [情報] 黒占神子 「ああ、兄ぃの言ってた姉御っスよね。」 [情報] 九重 桜 (姉御!?) [情報] 九重 桜 (裏番なのかな……) [情報] 飛び跳ね鴉 「姉御?(!)いやいや、そうそう、その姉御じゃ」 [情報] 飛び跳ね鴉 少し笑いを堪えるも、すぐに真剣な表情に戻る [情報] 飛び跳ね鴉 「その姐さんじゃがな。どうもピンチのようなのじゃ。」 [情報] 透石礫 「……あんだって?」 [情報] 九重 桜 (グループの抗争かな) [情報] 透石礫 「爺さん、詳しく教えてくれ」 [情報] 飛び跳ね鴉 「姐さんの上役にあたる大鴉殿と、我らが鴉の主殿がな・・・」 [情報] 飛び跳ね鴉 と説明をする [情報] 九重 桜 「え、もしかしなくてもかなり大ごとじゃないのそれ」 [情報] 九重 桜 (臥煙さん、何者??) [情報] 飛び跳ね鴉 「うむ。大ごとも大ごとよ。わしは動けんが、姐さんには借りがある。せめてお前さんにとやってきたわけじゃ。押忍!」 [情報] 透石礫 「なるほどな、そいつは一大事だ。その押忍はちょっとよくわからねぇが」 [情報] 飛び跳ね鴉 「学生のカモフラージュじゃ」 [情報] 透石礫 「ありがとよ爺さん。なら、俺は助太刀に行ってくる」 [情報] 透石礫 といって、教室を出ようとします [情報] 黒占神子 「兄ぃ!天文部の出番スね!」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 神籤の裏面をチラ見します [情報] 九重 桜 「ちょっと、幾ら何でも規模が大きすぎない?」 [情報] 透石礫 逆神とか書いてあるからな…… [情報] 飛び跳ね鴉 「少なくとも、嬢ちゃんはやめておいた方が良いと思うぞい。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「嬢ちゃんのパパが絡んでおるようじゃからな。」 [情報] 九重 桜 「それってこないだの……」 [情報] 黒占神子 「巫女の血がどうなるかを考えると、下手に近づきたくはないっスね・・・」 [情報] 透石礫 「そうだな。ココ、お前は桜と留守番だ。実際、階段街区が襲われる可能性もある」 [情報] 飛び跳ね鴉 「うむ、わしも嬢ちゃんが一人になることは危険だと思う。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「九重の嬢ちゃんが居って少し安心したわい。」 [情報] 透石礫 「それに、あの人には借りがある。借りを返すのに引率つけるなんざ、カッコつかねぇだろ」 [情報] 九重 桜 「……わかった」 [情報] 黒占神子 「兄ぃ、いってらっしゃいっス。」 [情報] 透石礫 「おう、任せたぜ!」 [情報] 透石礫 そのまま出てって、飛び跳ねに途中まで案内してもらおうかな [メイン] 透石礫 2d6 ShinobiGami (2D6) > 9[3,6] > 9 [情報] GM 9-中空庭に大量に植えられた柳は、風と敵意にそよぐという。 [情報] 透石礫 臥煙さんを探している [情報] 透石礫 「いねぇな……」 [情報] 在原 颯太 煙草をくゆらせて壁にもたれている [情報] 在原 颯太 「……ん?」 [情報] 透石礫 「……お。なぁあんた」 [情報] 透石礫 「こんな人を見かけなかったか」 [情報] 透石礫 つブロマイド [情報] 在原 颯太 「……………。」 [情報] 在原 颯太 顔が引きつったような気がしないでもない [雑談] 葉富 瑞穂 買っとって草 [情報] 在原 颯太 「この人を探しているのかい、少年。」 [情報] 透石礫 「前、世話ンなってな。この人が今あぶねぇと聞いて、助太刀に来た」 [情報] 在原 颯太 「助太刀?君がかい?」 [雑談] GM 葉富ブロマイドかこれw [情報] 透石礫 「俺が来ても仕方ねぇかもしれねぇが、返しきれねぇ恩なんだ。少しでも、返せるときに返しとかねぇとな」 [情報] 在原 颯太 「……そうか。」 [情報] 在原 颯太 「立ち入ったことを聞くが、彼女は君に何をしてくれたのか聞かせてもらってもいいかな」 [情報] 透石礫 「……俺の後輩を助けるとき、あの人には2度も世話になった」 [情報] 透石礫 「俺一人じゃ、無理だった。あの人が背を押してくれたから、今の俺たちがある」 [情報] 透石礫 「だから。まぁ、そんな感じだ」照れ [情報] 在原 颯太 (そんな大それたことをしたつもりもなかったけれど) [情報] 在原 颯太 (君が笑えているなら、よかった。) [メイン] 透石礫 2D6 =5 (判定:対人術) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[3,6] > 9 > 成功 [メイン] 在原 颯太 et ShinobiGami 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス) [メイン] 透石礫 et ShinobiGami 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス) [情報] 在原 颯太 (しかし──) [情報] 在原 颯太 「どうしたものかなぁ……」 [情報] 透石礫 「で?何処か知らねぇか?」 [情報] 在原 颯太 「そうだなぁ……。」 [情報] 在原 颯太 「その時が来れば、また会えるさ。」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 「お、おう」 [情報] 透石礫 「……まぁ、その口ぶりからして、あんたも知り合いなんだろ?」 [情報] 透石礫 「なら、一先ず宜しく頼むぜ」 [情報] 在原 颯太 「知り合いではないけれど……」 [情報] 在原 颯太 「あぁ。よろしく頼まれたよ」 [メイン] あかね 2d6 ShinobiGami (2D6) > 6[3,3] > 6 [情報] GM 6-流れ鴉は、密かにこの中空庭を拠点としている。高きから引くきまでに至ることができるこの場所こそが、流れ鴉の神出鬼没さの理由であった。 [情報] あかね 「ここがなかそらにわ……」と下を覗き込もうとして [情報] あお 「ほらほら、危ないから覗き込まない」とあおが首ねっこつかむ [情報] あかね 「でもはくあのあるじさまについて調べないと……」 [情報] あお 「……それに関してなら、そこにいる人に聞くのがいいかもね」とちらり [情報] 在原 颯太 「今日は随分と子供がここに来るね」 [情報] 透石礫 「……(微妙な顔)」 [情報] あかね 「ど、どうも……」ぺこり [情報] 透石礫 「……分裂してやがる。どういうカラクリだ……?」 [情報] 透石礫 ジロジロ [情報] あかね 「えっえっとそれは……」おろおろ [情報] 在原 颯太 「分裂?」 [情報] 在原 颯太 「そんなプラナリアじゃあるまいし」 [情報] あお 「色々あったのさ。こっちにもね」 [情報] 在原 颯太 「えぇ……」 [情報] あお 「正確には”分裂”してはないんだけどね」 [情報] 透石礫 「……ま、なんでもいいか。前のツラよりマシになったじゃねぇか」 [情報] あお 「そりゃどうも。キミもだいぶ背負うものが増えたみたいだね」 [情報] あかね 「あ、あの……」と交わされる会話にわたわたしてる [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 「オイ、コイツはこのままなのか?」 [情報] 透石礫 「あぶねぇだろ」 [情報] あかね 「わ、わたしだってお姉ちゃんのために頑張ったんです!戦えます!」 [情報] 透石礫 「へぇ、ソイツは楽しみだ」 [情報] あお 「……だってさ。本当はボクも止めたいところなんだけど、聞かなくてね」 [情報] 透石礫 「ま、楽しみにしとくぜ」 [情報] 透石礫 あかねちゃんの頭をぽんぽんします。可愛いので [情報] あかね 「わわっ」ぽんぽんされ [情報] あお 「……あんまりボクのあかねに手を出さないでもらえるかな?」 [情報] 透石礫 「カカッ。こいつはおっかねぇな」 [メイン] あお 2D6 =5 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6 =5) > 5[1,4] > 5 > 成功 [情報] あかね 「そ、それで、あるじさまについて何か知らないですか?」 [情報] あお 「こっちもキミたち、特にそこの人かな?が欲しい情報を持ってるんだけど」 [情報] 在原 颯太 「わかっちゃいたがただの子供じゃないみたいだな」 [情報] 在原 颯太 「いいさ、話を聞こうじゃないか」 [情報] あお 「ああ、それじゃあ交渉成立だね」こうかんー [秘密改めて] GM 神籤奥義 伝達術 追加忍法(貪狼、影法師)めぐらし回数制限 [メイン] あかね 2d6 ShinobiGami (2D6) > 2[1,1] > 2 [情報] GM 2-中空庭が禁足地たる理由、それはひとえにこの先に白鴉の社が存在することであり、そしてこの場所はすでに白鴉の主の眼が届く範囲でもある。 [情報] あかね 「ここらへんにいるかと思ったんだけど……」 [情報] あお 「……いないね」 [情報] 在原 颯太 「相手さんもそう易々と接点はくれないってわけだね」 [情報] 透石礫 「いねぇなぁ……」 [情報] あお 「でもここは間違いなく彼の領域だ。気を抜かないようにね、あかね」 [情報] あかね 「う、うん!」ぴとー [情報] あお 「キミは確か流れ鴉の関係者だったね。さらわれた時の状況を聞いても?」あかねにひっつかれながら在原に [情報] 在原 颯太 「これと言って、何かの手がかりになるかどうか……」 [情報] 在原 颯太 とか言いつつ話す [情報] あお 「……なるほどね、流石は白鴉の主、か」 [情報] 透石礫 なにか違和感が…… [情報] 透石礫 それは臥煙さんの話では……?いやしかし…… [情報] あかね 「あ、あの~……どうかしました……?」>礫に [情報] 透石礫 「……。いや、なんでもない……」 [情報] 透石礫 「なん、でも……」 [情報] 透石礫 考えている [情報] 透石礫 ……? [メイン] 透石礫 2D6 =8 (判定:対人術) ShinobiGami (2D6 =8) > 8[4,4] > 8 > 成功 [情報] 透石礫 …… [情報] 透石礫 ! [情報] 透石礫 ばっ、とすごい勢いで振り返る [情報] あかね 突然ですごいびっくりする [情報] 透石礫 わなわな [情報] あお 「おい、あんまりあかねを驚かせ―」 [情報] 透石礫 「お、オイ。あかね、とか言ったな……」 [情報] あかね 「は、はい?」 [情報] 透石礫 「この写真を見ろ」つブロマイド [情報] あかね 「はい……」 [情報] 透石礫 「美人だろ」 [情報] あかね 「は、はい……?」 [情報] 透石礫 「在原さんを見ろ」 [情報] あかね ちらり [情報] 在原 颯太 煙草吸ってる [情報] 透石礫 「……同一人物だとしたら、どうする?」 [メイン] あかね 2D6 =6 (判定:遊芸) ShinobiGami (2D6 =6) > 6[2,4] > 6 > 成功 [情報] あかね 「え……?どう見てもおんなじ人じゃないんですか……?」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 「そうか……」 [情報] 透石礫 (´・ω・`) [情報] あかね 「な、なにかしらないですけど元気だしてください!」ぽん [情報] 透石礫 「ああ……」 [情報] 透石礫 「お前、いいやつだな……」 [情報] 透石礫 (´・ω ;. ... [情報] あお 「、とまああそこの茶番は置いておくとして、だ」 [情報] 在原 颯太 「うん?」 [情報] あお 「ボクとあかねは白鴉の主を、キミたちは流れ鴉を追っている。その二つの道が交わるとするならボクたちの利害は一致していると思わないかい?」 [情報] 在原 颯太 「異論は、ないな」 [メイン] あお 2D6 =5 (判定:遊芸) ShinobiGami (2D6 =5) > 6[2,4] > 6 > 成功 [メイン] あお et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] 在原 颯太 et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [情報] あお 「ああ、ボクたちも”仲良く”やっていこうか?」と向こうでわちゃわちゃやってる二人を見ながら [情報] 透石礫 …… [情報] 在原 颯太 「………人を食ったような振る舞いはあまり関心しないがな」 [情報] 透石礫 わちゃわちゃから出てきた [情報] 透石礫 「……在原さん。いや、臥煙さん」 [情報] 在原 颯太 「──。」 [情報] 透石礫 「なんであんたがああなってたのかは、知らねぇ。だが、あんたがしてくれたことは変わんねぇ」 [情報] 透石礫 「今度は、俺が手伝う番だぜ」 [情報] 在原 颯太 「……すまない。少年」 [情報] 透石礫 「頑張ります!」 [メイン] GM RTT ShinobiGami ランダム指定特技表(1,8) > 『器術』縄術 [メイン] 黒占 神籤 2D6-1 =9 (判定:刀術) ShinobiGami (2D6-1 =9) > 11[5,6]-1 > 10 > 成功 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:歩法) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] system [ あお ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 4 です。 [メイン] system [ 透石礫 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:登術) ShinobiGami (2D6 =7) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:登術) ShinobiGami (2D6 =7) > 6[1,5] > 6 > 失敗 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 生命力 6 → 3 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 妖術 1 → 1 [秘密改めて] あお 奥義:ふたつうち(範囲攻撃/骨法術/撃ち/回数制限) [メイン] 在原 颯太 2D6 =7 (判定:骨法術) ShinobiGami (2D6 =7) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:登術) ShinobiGami (2D6 =7) > 6[1,5] > 6 > 失敗 [メイン] 透石礫 2D6 =5 (判定:暗号術) 接近戦攻撃 ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:人脈) ShinobiGami (2D6 =7) > 7[2,5] > 7 > 成功 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 5 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 1d6 ShinobiGami (1D6) > 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 妖術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 1 [情報] 在原 颯太 「返してもらうぞ。」 [情報] 流れ鴉 「颯太・・・」 [情報] 在原 颯太 「大事は、ありませんか」 [情報] 流れ鴉 「おかげさまで、まだ無事さね。」 [情報] 在原 颯太 「何より」 [情報] 流れ鴉 「ただ主様も、黒幕の男もまだ諦めたわけではなさそうだ。」 [情報] 流れ鴉 「急ぎ離脱しよう」 [情報] 在原 颯太 「了承した」 [情報] 在原 颯太 「皆、一度引こう」 [情報] 透石礫 「オス!」 [情報] あお 「ああ」 [情報] あかね 「は、はい!」 [情報] 流れ鴉 ______ [情報] 流れ鴉 中空庭に引いて。 [情報] 流れ鴉 「あんたらは、階段街区の鴉と、黒夜教の者だね。」 [情報] 流れ鴉 「故は知らないが、助けに来てくれて感謝するよ。」 [情報] 透石礫 「なぁに、恩を返しにきただけですよ」 [情報] あお 「もう黒夜教は関係ないんだけどね……まあいいや。感謝は受け取っておこうかな」 [情報] あかね 「ありはらさん、よかったですね!」 [情報] 在原 颯太 「皆。」 [情報] 在原 颯太 「本当にありがとう」深々と頭を下げる [情報] 透石礫 「まだ、終わりって訳じゃないでしょう」 [情報] あかね 「です!またあるじさまがとり返しにくるでしょうし……」 [情報] 在原 颯太 「……あぁ。そうだったな」 [情報] 流れ鴉 「ああ、助けてもらっておいて忍びないけれど、主様も助けたい。」 [情報] 流れ鴉 「結局寄り添っていられなかったけど、主様はあたしを助けてくれた大切な人なんだ。」 [メイン] 透石礫 2d6 ShinobiGami (2D6) > 11[5,6] > 11 [情報] GM 11-ぽっかりと空いた穴を地下へ地下へと降りていくと、旧街区を越えて実験区画へと繋がる。 [情報] 透石礫 「……なぁ、あかねよぉ」 [情報] 透石礫 「俺は、あれで良かったのかな……」 [情報] 透石礫 ぼんやり [情報] あお 「さあ?青少年の淡い憧れなんてボクの知ったことじゃないし」 [情報] あかね 「ちょっとお姉ちゃん!」 [情報] 透石礫 「……いや、いいんだ。うん」 [情報] あかね 「……えっと……」しばし悩んでる [雑談] 東雲 ズズ…… [雑談] 東雲 (中空庭を這い上がる音) [雑談] 黒占 神籤 ズズ... [情報] あお 「ほら、あかねも返事に悩んでるじゃないか。変な質問で困らせるのはやめてくれないかな?」なんか妹のまわりにうろつく虫なのでトゲトゲ [雑談] 東雲 こわい [情報] あかね 「えぇ……えっと……」 [雑談] 黒占 神籤 ズズ...(威圧) [雑談] 東雲 ズズ…… [雑談] 東雲 (引き下がる音) [雑談] "白兎" 主様…… [情報] あかね 「……元気だしてください!はい!」 [情報] 透石礫 「お前、いいやつだな……」 [情報] 透石礫 なでなで [情報] あかね /// [雑談] 東雲 ま、アイツラはそのうち下層で会うだロ…… [情報] あお 一層冷えた目で見てる [メイン] 透石礫 2D6 =5 (判定:遁走術) ShinobiGami (2D6 =5) > 7[3,4] > 7 > 成功 [メイン] 透石礫 et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] あかね et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] あお et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] 透石礫 やったー! [メイン] あお あおは!妬み!です!!!!! [メイン] あお ボクのあかねのまわりにうろつきやがって!!!! [情報] 透石礫 「……うし、もういっちょ気合い入れるか!」 [情報] あお 「ほう、気合を入れる必要があるのかい……?」ビンタの構え [情報] 透石礫 遁走術 [情報] あかね 「……あっ……行っちゃった……」 [雑談] 黒占 神籤 turn1 神籤 なんも 主 夜駕籠 turn2 主 魔界転生(自動成功)神籤 なんも 魔界転生シーン(主) 夜駕籠(自動成功) 雲梯(自動成功)流行禍(自動成功)本人(流行禍) 神籤win 一見をコピー 陽炎を消す [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 1 → 3 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 3 → 2 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 器術 0 → 1 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 2 → 4 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 謀術 0 → 1 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 戦術 0 → 1 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 3 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [情報] system [ 透石礫 ] 生命力 4 → 3 [情報] system [ 透石礫 ] 謀術 1 → 0 [雑談] system [ 在原 颯太 ] 忍術 1 → 0 [雑談] system [ 在原 颯太 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ あかね ] 生命力 6 → 5 [メイン] system [ あかね ] 忍術 1 → 0 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 2 [雑談] system [ 流れ鴉 ] 忍具 6 → 5 [情報] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 3[1,2] > 3 > 失敗 [情報] system [ 流れ鴉 ] 生命力 6 → 5 [情報] system [ 流れ鴉 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 3 → 4 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 5 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 妖術 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =6 (判定:用兵術) ShinobiGami (2D6 =6) > 5[1,4] > 5 > 失敗 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 2 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 2 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =6 (判定:用兵術) ShinobiGami (2D6 =6) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 6 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 体術 0 → 1 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:人脈) ShinobiGami (2D6 =5) > 6[1,5] > 6 > 成功 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:歩法) ShinobiGami (2D6 =5) > 10[4,6] > 10 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6 =5) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] 黒占 神籤 ft ShinobiGami ファンブル表(2) > しまった! 好きな忍具を1つ失ってしまう。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを 6 に変更しました。 [メイン] system [ GM ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ 透石礫 ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ あお ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 2 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 0 → 1 [メイン] あかね 2D6 =6 (判定:死霊術) ShinobiGami (2D6 =6) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] 透石礫 2D6 =7 (判定:野戦術) ShinobiGami (2D6 =7) > 3[1,2] > 3 > 失敗 [秘密改めて] GM 幻術 範囲攻撃 [情報] system [ 流れ鴉 ] 忍術 1 → 0 [情報] system [ 流れ鴉 ] 謀術 1 → 0 [情報] system [ 流れ鴉 ] 生命力 5 → 3 [秘密改めて] system [ あかね ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 妖術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 生命力 4 → 2 [メイン] system [ 透石礫 ] 生命力 3 → 1 [メイン] system [ 透石礫 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 透石礫 ] 体術 1 → 0 [秘密改めて] system [ あかね ] 器術 1 → 0 [秘密改めて] system [ あかね ] 生命力 5 → 3 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 0 [メイン] 黒占 神籤 2d6 ShinobiGami (2D6) > 6[2,4] > 6 [メイン] 在原 颯太 2D6 =8 (判定:死霊術) ShinobiGami (2D6 =8) > 7[3,4] > 7 > 失敗 [メイン] あかね 2D6+2 =8 (判定:罠術) ShinobiGami (2D6+2 =8) > 11[5,6]+2 > 13 > 成功 [秘密改めて] 流れ鴉秘密 このキャラクターは、プライズとしても扱われ、最初の所持者は白鴉の主である。 これの所持者が認めない限り、このキャラクターはシーンに登場できない。 [情報] 流れ鴉 ______ [情報] 流れ鴉 刻封獄、あたしが時間の流れから取り残されたそこは、そう呼ばれることになったらしい。 [情報] 流れ鴉 退魔の血故か、あたしは闇の力に耐性があり、刻封獄の解放から生き残ることが出来たらしい。 [情報] 流れ鴉 そして主様は、あたしを救い出してくれた。 [情報] 流れ鴉 在原の末裔だと聞いた時は驚いたけれど、そうでなくても、主様はあたしの命の恩人で。 [情報] 流れ鴉 あたしが誰よりも強く、一人でも強くと鍛錬してきたのは、いつか主様が闇に呑まれたときに戦ってやれるのは、自分しかいないと思ってのことだった。 [情報] 流れ鴉 結局あたしは何も出来なくて、代わりに、颯太がいてくれた。 [情報] 流れ鴉 一人じゃないってのも、悪くはない。 [情報] 流れ鴉 考えてみれば、風波と在原の退魔の血も、そういうことさね。 [情報] 流れ鴉 ______ [メイン] 流れ鴉 2D6+3 =7 (判定:封術) ShinobiGami (2D6+3 =7) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功 [メイン] 在原 颯太 ■奥義 《九字切り/臨命終時》 指定特技 :人脈 エフェクト:クリティカルヒット/断ち/射程低下 効果・演出:九字切り実光、極意の壱。 壱にして致命の一撃。 然れども是差しむけるは尽く人ならざるもの。 一度で死ねばそれでよし。それで死なぬが常であるのは、在原の家の定めとなれば。 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =6 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6 =6) > 5[1,4] > 5 > 失敗 [メイン] 黒占 神籤 5d6 ShinobiGami (5D6) > 13[2,2,2,3,4] > 13 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 妖術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 6 → 1 [情報] 白鴉の主 在原の刀が、主を斬りつける。 [情報] 白鴉の主 そして、その手傷から、星雲が溢れ出し、天へと昇っていく。 [情報] 白鴉の主 主の眼から黄金の輝きは消え、主はその場へと倒れ込んだ。 [情報] 在原 颯太 「先ずは一つ」 [情報] 在原 颯太 「次は貴方だ。」神籤に実光──否。 九字切り真光の鋒を向ける [情報] 黒占 神籤 「・・・」 [情報] 黒占 神籤 「あるいは、僕にとってはそれは喜ばしいことなのかもしれないが。」 [情報] 黒占 神籤 『足掻ける内は足掻かせてもらうぞ?在原のガキ...』 [情報] 在原 颯太 「事情に興味はない。魔を断ち、祓うのが僕の務めだ」 [メイン] あかね 2D6 =5 (判定:罠術) ShinobiGami (2D6 =5) > 6[2,4] > 6 > 成功 [メイン] あかね 2D6 =5 (判定:遊芸) ShinobiGami (2D6 =5) > 5[1,4] > 5 > 成功 [秘密改めて] 白鴉の主秘密 逆神の支配を断ち切るためには、対魔の力を秘める九字切り真光の力が必要となる。 クライマックス戦闘の終了時、プライズ「九字切り真光」の所持者によって生命力を失わされていたキャラクターは、逆神の支配から断ち切られる。 白鴉の主から逆神の支配を断つためには、最低3点の生命力を失わせる必要がある。 [メイン] 黒占 神籤 2D6+3 =11 (判定:登術) ShinobiGami (2D6+3 =11) > 7[1,6]+3 > 10 > 失敗 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 0 [メイン] 流れ鴉 2D6 =5 (判定:手裏剣術) ShinobiGami (2D6 =5) > 5[2,3] > 5 > 成功 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 生命力 3 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 妖術 1 → 0 [情報] 黒占 神籤 [ [情報] 黒占 神籤 舌打ちして窓から身を投げます [情報] 流れ鴉 「逃がしたか」 [情報] 透石礫 「……くそっ」 [情報] あお 「あと少しだったんだけどね」 [情報] あかね 「だ、大丈夫ですか!?」(多分)倒れてる白鴉の主の方に駆け寄る [情報] 在原 颯太 「あれだけの手練れだ。下手に深追いするのは得策じゃない」 [情報] 白鴉の主 「う。ここは。」 [情報] 在原 颯太 真光を鞘へ収める [情報] あかね 「……!よかった……」 [情報] 白鴉の主 「君は、『泊り木』の。」 [情報] 白鴉の主 「これは、どういった状況だい。」 [情報] 流れ鴉 「主様は、闇に呑まれっちまってたのさ・・・」 [情報] あかね 「あるじさまは闇?にあやつられてたみたいで……?」 [情報] 流れ鴉 「彼女らが、助けてくれたんだ。」 [情報] 白鴉の主 「そうか・・・」 [情報] あかね 「あるじさまが闇からもどってきて、よかったです……」 [情報] あかね 「もうそんな人は、ふやしたくないですから」ちらりとお姉ちゃんの方を見る [情報] あお ちょっと気まずそうに目をそらす [雑談] 在原 颯太 進行形で気まずいなぁ………中の人の話やけど [雑談] 東雲 三々華さん…… [雑談] 東雲 わくわく [雑談] あかね さざんかさん…… [情報] 白鴉の主 「話には聞いていたよ。無事解決したようですね。」 [情報] あかね 「は、はい!」 [情報] 白鴉の主 「残滓は、一部残った状態ですか。」 [情報] あお 「だね。その残滓とやらの存在はまだ感じるよ」と自らの胸に手をあてて [情報] 白鴉の主 「残滓の件は分かりました。引き続き大司教月夜には十分注意した方が良いでしょう。」 [情報] あお 「ところで闇背負いを放逐すべく動く鴉たちのトップたる白鴉の主様が、そんな不穏分子の戦力の一角であるボクたちを目の前にして何もしないでいいのかな?」 [情報] あかね 「ちょっとお姉ちゃん……」 [情報] 白鴉の主 「そうですね。こうまでして頂いては、仕方がないでしょう。」 [情報] 白鴉の主 「『泊り木』の件は不問とします。」 [情報] 白鴉の主 「最下層方面での闇狩りも最早下火です。あなたたちと衝突することも少ないでしょう。」 [情報] 白鴉の主 「この度は、本当にお世話になりました。」 [情報] あお 「あの白鴉の主がボクたちに礼を、ね……」 [情報] あかね 「わわっ、こちらこそありがとうございます!」 [情報] あかね 「ほら、お姉ちゃんも!」 [情報] あお 「……」 [情報] あかね 「ほら!お礼!言わなきゃ!」 [情報] あお 「……感謝しておくよ。あそこにはボクも返しきれない恩がある」 [情報] 流れ鴉 「・・・よし。あたしも決めたよ、主様。」 [情報] 白鴉の主 「流れか。お前にも世話にな」 [情報] 流れ鴉 「主様が闇に近づこうとするなら、見守って、いざというときに止めてやるんだって思ってたけどね。」 [情報] 流れ鴉 「こんな事件になるくらいなら、最初っから力づくだ。」 [情報] 流れ鴉 「主様に疎ましがられようと、あたしは主様を止めることに決めた。」 [情報] 流れ鴉 「もうマトモに闇の研究なんかさせやしないから、覚悟しておくんだね。」 [情報] 白鴉の主 「・・・善処しよう。」 [情報] 白鴉の主 「君たちも、本当に世話になった。」在原と礫へ [情報] 透石礫 「俺は、恩を返しにきただけっす」 [情報] 透石礫 「礼なら、在原さんに」 [情報] 在原 颯太 吸っていた煙草を右手に持ち替えて [情報] 在原 颯太 「家の務めを全うしたまで、ですよ。」 [情報] 白鴉の主 「在原の血、か。」 [情報] 在原 颯太 「それも勿論ありますが、うちの………」 [情報] 在原 颯太 一瞬何をいうべきかを迷ったようにして [情報] 在原 颯太 「ひい婆様を取り返したついでですよ。貴方が気負うことは、何も。」 [情報] 白鴉の主 「そうか。」 [情報] 白鴉の主 「私には、未だに実感の持てない力だったよ。その刀と、在原の力は君に任せよう。」 [情報] 白鴉の主 「もしまた私や他の誰かが闇に囚われることがあったら、よろしく頼む。」 [情報] 在原 颯太 「承知しました」 [情報] 流れ鴉 「主様!研究はさせないって言ったろ!」 [情報] 白鴉の主 「まあ、私についてはしばらくは大丈夫そうだな。」 [情報] あお 「それじゃあボクたちは『泊り木』の方に今回のことを報告してくるよ。後はそこのお二人でごゆっくり、ね」 [情報] あかね 「しつれいします……!」ぺこり [情報] あかね 去ったよ! [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 ぼんやりと神籤の去っていった方を見ている [情報] 透石礫 「在原さん。よかったっす」 [情報] 在原 颯太 「アレをどうするつもりだい」 [情報] 透石礫 [情報] 透石礫 [情報] 透石礫 「……できることなら、なんとかしたい。ですかね」 [情報] 透石礫 「逆神は許せねぇが、あの人は……、夜陰さんは後輩の親父さんですから」 [情報] 在原 颯太 「命をかけるのには、些か遠い所縁に見えるがね」 [情報] 透石礫 「……そう、ですかね」 [情報] 在原 颯太 「ここまで無事で済んでいるのはかなりの幸運に恵まれた結果だと僕は思うよ」 [情報] 透石礫 ふぅー、と長い息を吐く [情報] 透石礫 「……ですよね。俺も、そう思います」 [情報] 透石礫 後頭部を掻きむしる [情報] 透石礫 「……」 [情報] 在原 颯太 「でも、君は止まる気は無いんだろう?少年」 [情報] 透石礫 「まぁ……はい」 [情報] 透石礫 「俺の手が届く範囲なら、伸ばしたいんですよね」 [情報] 透石礫 虚空に手を伸ばして見せる。星を掴もうとするかのように [情報] 在原 颯太 「なら、その信念に励みたまえよ。」 [情報] 在原 颯太 「僕程度でよければ、いつでも声をかけなさい。できる範囲で力になろう」 [情報] 透石礫 「有難う御座います、在原さん」 [情報] 透石礫 「情けねっすけど、頼らせてもらいます」 [情報] 在原 颯太 「情けないものかよ」 [情報] 在原 颯太 (僕の果たせなかった夢を、君は現にしているのだから) [秘密改めて] PC1秘密 臥城、そして臥煙。幾つもの名と姿を遠回りして、あなたは再び在原颯太として立ち上がることが出来た。囚われた風波夕暮は、臥城としてのあなたの面倒を見、臥煙としてのあなたを生み出し、在原颯太としてのあなたを救ってくれた。 あなたの真の使命は【風波夕暮をいち早く救い出す】ことである。 流れ鴉は、プライズ扱いとして白鴉の主が所持している。キャラクター作成時、これを他のPLに伝えることは出来ない。 [秘密改めて] PC2秘密 三々華、真菰、アリス、アキ、そして他ならぬ白鴉の主。多くの人の尽力により、あおは闇の侵蝕から救われた。 あなたの真の使命は【今度はあなたが誰かの助けとなる】ことである。 [秘密改めて] PC3秘密 あなたは追加で奥義「尽力 ○○」(効果 範囲攻撃/くらまし/回数制限/生存術)を持つ。ハンドアウト配布時に○○に人名を入れる。これはセッション中一度更新しても良い。この奥義は、メインフェイズの間、○○のためであるとGMが認める場合にのみ使用できる。 [秘密改めて] プライズ「九字切り真光」秘密 これは情報ではない。 在原颯太か、在原颯太と互いにプラスの感情を持つキャラクターが流れ鴉を所持している場合のみ、これは以下の奥義を持つ。(所持者の奥義として扱う。) 奥義「退魔転生」/指定 封術/効果 在原颯太か、在原颯太と互いにプラスの感情を持つキャラクターが攻撃する代わりに使用できる。間合2以内の任意のキャラクターを目標とし、2点分を割り振って生命点を回復するか失わせるかする。(回復するか失うかする特技分野はそれぞれ目標が選ぶ。) [メイン] GM あかねあお [メイン] あかね つぶてさん! [メイン] 黒占 神籤 あかね [メイン] 透石礫 あかね! [メイン] 在原 颯太 あかね/あお [メイン] system [ 九重 桜 ] 忍具 1 → 2
https://w.atwiki.jp/animerowa-3rd/pages/716.html
戦場に生きる者達(前編) ◆0hZtgB0vFY ガンダムのパイロットとは如何なる存在であろうか。 これを説明するには、まずパイロットとはどういった者なのかから始めなければならない。 ガンダムに限った事ではない。何時の世でもパイロットとは男子の憧れであり、それも戦闘機パイロットともなれば正に軍の花形といえよう。 それだけに限りなく狭き門を潜る必要がある。 反応速度や操縦機器への完熟、言うなればテレビゲームの延長みたいなモノを要求される部分も確かにある。 しかしパイロットにとって最も必要なものは、何よりも先に体力である。 これはレースドライバーを思い出してもらうのが一番てっとり早い。 人一人がようやく入れるぐらいの箱の中で、動かすのはアクセルブレーキを踏む足と、ハンドルを握りギアを変える手のみ。挙動はそれだけ。 なのに、地上で最も過酷なスポーツとしてあげられる程、人に厳しいスポーツなのである。 尋常ではない速度で、右に左に前に後ろにGがかかる。 コーナーが連続するポイントでは、ドライバーは呼吸をすら許されず、必死にステアリングを握り続ける。 絶え間なく襲いくるGを堪えながらの操作には十二分な程の筋力と、レースが終わるまでこの作業を続けられる体力と、たった一動作すらミスらぬ集中力が必要となる。 スーツの中は不愉快な汗で満ち溢れ、疲労に痺れる全身を鞭打ち、コンマ秒単位の動作のズレも許容しえぬ正確な操作を行い続ける。 これがどれほど厳しい作業かは、それこそやった人間でもなくば完全に理解する事は不可能であろう。 レース用マシンと戦闘機はつくりからして違う。比較の意味はないという意見もあるかもしれない。 確かに戦闘機のコックピットにはレース程厳しい重量制限も無い事であるし、よりパイロットに負担がかからぬような措置を多く施してある。 代わりにスピード制限も取っ払っているのだが。 過酷さでいうのなら、戦闘機パイロットの方がより過酷であろう。 レースドライバーも命賭けの厳しい世界であるが、何より大きな差は、レーサーは事故で死ぬ事はあっても、撃墜される事は決して無いということだ。 戦闘機パイロットは、死ぬよりマシと厳しい条件を、より高い能力で機体を乗りこなし生き残る為、自らに課す。 カタログスペック上では決してやってはならないと注意書きをされる程の大ループも、パイロットの安全を保証出来ませんと断言される程の急降下も、撃墜されるよりはマシと、成功する幸運に賭けてパイロット達は挑んでいくのである。 もちろんこれらを行った時、パイロットにかかる負荷は、負担は、陸上でどんな任務に就くよりも過酷で険しい状況を強いるだろう。 そういった極限の更に先を潜り抜け、初めてパイロットは生き残り、これを繰り返して生き残り続けた者が、エースパイロットと呼ばれるのである。 この会場に居る者では、例えばグラハム・エーカーやアリー・アル・サーシェスやゼクス・マーキスがそうであり、彼等は実戦の最中を生き残り続け、エースと呼ばれるに至ったのだ。 ではガンダムパイロットはどうであろうか。 ヒイロ・ユイも、デュオ・マクスウェルも、張五飛も、実戦経験という意味では先の三者には及ばない。 しかしそれを補ってあまりある才能と、他の追従を許さぬ程の訓練を積み重ねていた。 当時地球圏最強と呼んで差し支えない程のパイロットであったゼクス・マーキスですら、この三人が事も無げに操るレベルの機体に初めて乗った時は、操りきれぬと大怪我を負うハメになっている。 そんな彼等の体力は、筋力は、集中力は、そうした全てをひっくるめた基礎能力は、地球人最強レベルと言い切っても過言では無い程であったろう。 そうでもなくば、バーニアを全開でふかし続けるだけで鍛えられた軍人が血を吐いて死ぬような機体に、どうやって乗り続けられるというのか。 パイロット、機体を降りればただの人。などという台詞は、物を知らぬ素人の放言であろう。 究極の域に達したパイロットは、たかが機体を降りた程度では、その強さを奪い去る事など出来はしないのである。 初撃、これをかわせたのは運が良かっただけだと両儀式は心底実感する。 自らも刀を用いるからこそわかる、ただの一振りから発せられる呆然とする程の力量。 長身のおかげか、長大にすぎる刀身が不自然に見えない。 跳ねるように後ろに飛び下がれたのは一重に勘であり、それすら、二度通じるとは到底思えなかった。 まごうことなき怪物。しかし、式の目はこの場に集った異能は彼だけではないと見抜いていた。 デュオが五飛と呼んでいた男が短めの刀を振りかざし斬りかかる。 ちょうど襲撃者が長大な刀を振り下ろしたタイミング。熟達の者であれ、重量のある刀を振るった直後には刀の及ぶ範囲が限定されるはず。 当然のようにこの隙を狙っての一撃を放っているが、襲撃者の攻撃は今やったようにただ斬り下ろすのみではない。 真横に薙ぐのかもしれないし、突きかかるのかもしれない、袈裟に斬るにした所で右か左か逆か、全ての場合において、有効な隙のタイミングと箇所は異なる。 それを振り下ろした一瞬で見切ってから動くこの反射速度は常人のそれではない。 読みで動くにはあまりにこの襲撃者の情報が無さ過ぎるのだから、見てから動いたと考えて間違いない。 少なくとも式の知るどんな術技であれ、五飛の斬撃を受ける術なぞ存在しない。 それを襲撃者は事も無げに受け、あまつさえ刀を振るった五飛ごと弾き飛ばしてみせる。 いつのまに振るった刀を戻したのか、それすら見切れなかった。 手練の技というより最早魔術の域だ。 「使え女!」 五飛がもう一本の刀を放ってくる。 ぎりぎりで間に合ってくれた。手持ちのひしゃげた短刀ではコレ相手にお話にならない。 右手で受け取り、逆手に構えたこれで頭上から振り下ろされる刀を受け流す。 そのまま流れるように反撃、とするつもりを続く連撃に阻まれる。 まただ。この襲撃者、振るった刀を戻す速度が尋常ではない程速い。常軌を逸した膂力の持ち主か、はたまた式にすら理解出来ぬ超常の技術か。 もしくは両方かだ。 二撃目、弾いた。三撃目、いなした。四撃目、刀を弾かれる。が、そこで連撃も止まる。 攻勢限界点に達したのではなく、側面より五飛が攻撃を仕掛けたからだ。 「邪魔だ女! その剣はくれてやるから何処へなりと消え失せろ!」 言葉通りに後ろに下がる。無論、この男の言うなりになったわけではない。 「ナイスだぜ式!」 デュオの射線を遮っていたのに気付いていたからだ。 下がれば撃てる。 常の拳銃音など馴染みが無いので、本来より大きな銃声にも、そんなものかと特に不思議を感じない。 襲撃者は何処から取り出したのか、鎌のような武器をもう一方の手に備えていた。 金属を弾く重苦しい音、厚さ十センチの鉄板にハンマーを叩き付けたような轟音であったが、当たった鎌が砕ける事も取り落とされる事もなかった。 実はデュオが持つ銃はハンドガンとしては破格の威力を誇るフェイファー・ツェリザカという拳銃である。 15.24mm専用弾とか何処のライフルかと。象を一撃で撃ち殺し、装甲車と正面からケンカが出来る唯一の拳銃なのだ。 総重量6.5kgの拳銃で、その重量でなくば反動が抑えきれぬ弾丸で、正確に敵を射抜くデュオの技量もまた五飛同様人並みはずれたものであろう。 もっともこちらは、式にまるで知識が無いため、凄さは全く伝わらなかったが。 本来の威力をあます所なく発揮した拳銃弾であるが、襲撃者、織田信長は鎌を弾かれるのみで堪える。盾代わりといった所か。 残る手で五飛の剣を捌きながら銃弾を見切るなど、人間のやる事ではないだろうに。 魔王だとか抜かしていたが、なるほど、口だけの男ではないらしい。 「それでも……お前の死も見える。なら、オレに殺せない奴なんて居ない」 初めはゆっくりと、三歩目から目に見えて速度が上がり、六歩目にはもう最高速まで跳ね上がる式の歩法により一瞬で間合いを詰める。 ただ刀の重量に頼るのではなく、全身の回転を、体重移動を斬撃に乗せられるのは式の技術あっての事だ。 軽量な式から放たれる重厚な一撃を、信長はこちらも受けではなく攻撃の意で刀を振るい、五分に受け止める。 いや、それでも式の威力は及ばず。手の痺れと共に後ろへと弾かれる。 それすら予定通りとばかりに、弾かれるに任せて体を捻り、続く信長の一刀を髪の毛3センチ分でかわし、背後からくるんと回した剣を叩き込む。 扇子を片手に舞いを踊るような身軽さで剣を振るうが、いざ打ち当たる瞬間の重さは舞踏ではなく武闘のそれだ。 受け止められた刀を軸に半回転、足払い、というよりはローキックのような一撃で体勢を崩しにかかる。 が、ダメ。微動だにせぬ信長は、近すぎる間合いも構わず横薙ぎに鎌を振るい、式は仕方なく大きく後ろに飛び下がる。 同時に五飛へも同じような攻撃を加え、こちらもまた距離を取らせる。 デュオは乱戦が収まると即座に銃撃を狙うが、武器が両方とも空いている時はおそらく効果が無いと機会を待つ。 「おい」 「何だ女」 「お前こそ邪魔だ。剣の礼にこいつはオレが殺しておいてやるからとっとと逃げろ」 「ふざけるな! こいつは俺が一人で倒す! 邪魔をするならお前も倒すまでだ!」 「面白い、やってみろ」 頭を抱えているのはデュオである。 「……なんだってこう、俺の周りにゃ協調性に欠ける奴等ばっか集まって来るんだよ……」 二人は、しかしいつまでもケンカさせてもらえる程、甘い相手を敵にしているわけではなかった。 暗き気配を大鎌に纏い、振り上げたその様の何と恐ろしげな事か。 式は右に、五飛は左に、即座に飛ぶ。反応速度は五飛が上、身のこなしは式が上だ。 さしもの信長もこの二人を同時に一撃で捉える事は出来ず、大鎌は空を切る。 いや、信長の狙いはそもそもがこの二人のみではなかった。 「チィッ!?」 風を切る轟音と共に信長の手より放たれた大鎌は、更に後ろのデュオを狙った一撃であった。 してやられたと振り返る式。五飛はそちらを無視して信長に肉薄する。 デュオはまるで五飛の信頼に応えるかのごとく、横っ飛びにこれをかわす。 こちらも先の五飛同様、見てから動いたというのに、大鎌が信長の手を離れた瞬間にはもうデュオの体は反応していた。 恐るべき反射神経であり、更にデュオは横っ飛びで崩れた姿勢のまま、回避に全集中力を注いだ直後にも関わらず、両手で拳銃を構え、放つ。 この神経の張り巡らせ方、九死に一生を得た直後ですら最大の力を発揮しうるよう鍛えに鍛えぬいた戦士の心は、例えモビルスーツを降りたとて失われぬのだ。 とても拳銃とは思えぬ轟音と、狙い済ました銃弾は信長が構える長剣でも弾きにくい足を狙う。 左の腿であるからかわすも至難。故に信長は半歩前へと踏み出すのみ。 鎧の形状を利用し硬度で弾きにかかるが、強き衝撃は信長の体勢をすら崩す。 「くっそ、本気で弾が見えてやがんのかこいつ」 そうでもなければこんな挙動とてもではないが不可能だろう。 それで充分だと五飛は低い位置より信長に迫り寄る。 「愚かなりっ!」 地面を剣先がなめるように滑り、五飛の眼前に刀が迫る。 これを五飛は更に低く、膝よりも低い位置まで全身をもっていき、前方斜めに刀を構える。 擦り削られる金属音は信長の剣力の強さと五飛の技術が競り合って鳴る悲鳴である。 五飛はこれでいなしつつ潜り、下より仕掛けるつもりであった。 信長は無論、小癪な技術ごと斬り伏せるつもりであったのだが、あまりの剣圧に五飛は攻撃に移れず、信長は低く構えられすぎていたせいで流しきられてしまった。 双方に不満の残る結果であるが、一人、式は待っていたと言わんばかりに上より信長に迫る。 信長は片手を刀より外し手甲にて弾く。手練の巧みさ故、式をして俊敏に動く手足のような先端部位は死の線を狙う事も出来ない。 それでいながら、信長はデュオへの注意をおろそかにしてはいない。 突きつけられた銃口に、逐一反応して何時引き金を引かれても構わぬよう備えている。 三対一の正に真っ向勝負である。 雄剣である干将を振るい、剣術というよりは体術の延長のような形で刀を振るう五飛。 雌剣である莫耶を振るい、正当な剣術により近い形で、しかし身軽な体を駆使して戦う式。 二人が信長を挟むように位置し、お互い引き合い、弾きあうように、交互に、或いは同時に剣撃を仕掛ける。 離れた位置からこれを見る事が出来るデュオは、戦闘の緊張感を失わぬままに、二人の呼吸の合わせっぷりに呆れる。 『仲良いんだか悪いんだかはっきりしろお前等』 肩や肘にエライ負担のかかる銃を、ここぞで放っては器用に衝撃を逃がし、易々と使いこなすデュオは、一人後方から戦況を確認出来る身だ。 どう戦うか、その決断はデュオが決めるのが一番効率的である。 『五飛と式の二人がかりでも、その上俺が銃で牽制してても押し切れねえ怪物だ。が、何時までも三人を抑え続けられる程体力はあるか?』 結論から言おう。 現代に蘇った剣豪両儀式と、武術を修めたガンダムパイロット張五飛、そして破壊工作のスペシャリストデュオ・マクスウェル。 この三人を相手に織田信長は、彼等より長く持ち堪えるだけの体力を持っていた。 一番消耗が激しく見えるのは式だ。 殺し合いに抵抗は無い。が、戦の経験は絶無の式は、前後左右上下斜め全てが敵だらけなどという戦場を潜り抜けてきた信長、五飛、デュオと比して、体力という点において劣っていたのだ。 思わぬ計算違いに舌打ちするデュオ。 『信じられねえ……こいつ本当に人間か? 中身はモビルドールって言われても信じるぞ今なら』 撃ち尽くした弾を再度込めなおし、デュオは叫ぶ。 「一度引くぞ五飛! 式!」 数百キロあるサイドカー付きのバイクを、後輪を滑らせ、まるで自転車でも操るかのように軽々と半回転させる。 二人からは同時に同じ台詞が返ってきた。 『オレが抑えている間に逃げろ!』 五飛はともかく、明らかにへばっている式もまるで引く気配が無い。 バイクを操りながら、デュオは片手で銃を握り、銃身をハンドルに乗せ狙いを定める。 「こんにゃろっ!」 過剰な煙を噴き上げつつ跳ね上がる銃。しかし全てはデュオのコントロールの範疇である。 放たれた銃弾もまたしかり。 信長が振り下ろす刀、これを一点で読み切り弾丸にて弾き返す。 即座にハンドルを切り、銃を握ったままの左腕で式の腰を掬い上げる。 「お前っ!?」 「いいから黙ってろ! 舌噛むぞ!」 小柄な体の何処にそんな力があるのか、デュオは腕力のみで式を引っ張り上げ、サイドカーの座席に向けて放り投げる。 「誰が逃げて良いと言ったか!」 追いすがり斬りかかってくる信長。 減速は最低限で済ませたのだが、片手でアクセル握るだけではクラッチミートどころか、そもそもシフトチェンジすら出来ない。 マシン本来の加速度を引っ張り出す事は出来ないのだ。 それでも普通は追いつかれるなんて考えなくてもいいのだが。 「間に合えっ!」 左手に持った銃を、今度は支えも無しに後ろへと向ける。 6.5kgを片手で持ち、一瞬の内に狙いを定める。 どう考えても、デュオの方が遅い。 が、不意に信長の動きが止まる。 干将にて信長の刀に一撃をくれた五飛は、憤怒の表情で信長を睨みつける。 「貴様! 俺との勝負も終わらん内に余所見とは良い度胸だな!」 「ほざくな下郎! これ以上茶番に付き合うも飽いたわ! 今すぐ、五体バラバラに千切り殺してくれようぞ!」 デュオは後ろを向いて五飛に逃げろと叫ぶ。 が、突然バイクが大きくバランスを崩したのに気づき、ぎょっとなって前を見る。 すると、サイドカーに乗ったまま身を乗り出した式がバイクのハンドルを思いっきり引っ張っているではないか。 「何しやがんだてめえ!」 「うるさい! このままじゃアイツ死ぬぞ!」 弧を描くようにバイクはぐるっと逆を向き、信長目掛けて突っ込んでいく。 デュオは一瞬我が目を疑った。 信長の全身から、黒い煙のような何かが立ち上っている。 刀は漆黒の気に包まれ、魔術を知らぬデュオにすら、それが禍々しい何物かであろうと確信しえる程に、不吉な気配を漂わせている。 逆袈裟に斬り上げる信長に対し、頑強な干将を構え、完璧な姿勢で受け止めきる五飛。 振りぬかれる刀は、刀の表面を僅かに歪ますのみで天空へと滑り昇る。 五飛は軸足を踏み出し、信長の腹部を斬り裂かんと狙った。 しかし、五飛が考えているより遙かに鈍い動きしか出来ない。いや、それどころか震える足のせいでか立っている事すら難しいのだ。 「な、んだと……?」 「死ねい! わっぱああああああああああ!」 斬り返しの一撃だ。動かぬ五飛相手ならば藁束を薙ぐようなものだ。 そう、式の判断は正しかったのである。 「ハンドルは任せるぞ式! アクセルは死んでも離すんじゃねえ!」 「素人にややこしい注文をするな!」 サイドカーより乗り出した式はバイクのハンドルとアクセルを握り、そしてデュオはというとバイクの上で半立ちになりながら、先ほど信長がぶん投げた光秀愛用の大鎌を振りかぶって構えていた。 「くらえこんちくしょーーーーーーーー!」 バイクの加速を加えた斬撃にも、信長は無造作に刀を横に振るのみであっさりと弾き返す。 逆にデュオの方が大鎌を飛ばされそうになる程だ。 それでも決死の突入は功を奏し、不可思議な不調に驚きながらも五飛はこの隙にバイクの後部席に飛び乗っていた。 三人乗りであるがあくまで想定乗員数は超えていない。 燃料を爆発させてピストンを跳ね上げクランクをまわす、人力とかアホかっつー馬力で一気に突き放しにかかるバイク。 「あれだな、鎌って刃物としちゃおっそろしい程に使いずらいよな。モビルスーツじゃあるまいしこんな物使おうって奴の気が知れねえよ」 後部席で弱った体を確かめながら五飛は、軽口を叩くデュオを鼻で笑う。 「俺は元々ビームサーベルをわざわざ鎌なんて無駄な形にする理由が理解出来なかったがな」 「ほっとけ! あれはあれで使いやすいんだよ!」 「無駄口叩くな! 来るぞ!」 式の警告。そして、一跳躍で軽くバイクの加速に追いついてくる戦国武将織田信長。 とんでもない話だ。二メートル弱の巨体が、今も加速を続けるバイクに向かって跳んで来るというのだから。 五飛は動けず、サイドカーより身を乗り出した式も位置が低すぎる。 デュオは何も言わずにハンドルを放すと、ハンドルとアクセルを式が預かる。 先に五飛の動きを封じた黒い瘴気は、空では扱えぬのか通常の刀にてライダーのデュオを、いや、バイクごと一刀両断せんと刀を振るう信長。 これをデュオは、大鎌にて迎え撃つ。 草を刈るようにではなく、大鎌の先端が急所に突き刺さるよう振り回すと、空中で動きが制限されるせいか、僅かに信長のそれよりデュオの大鎌の方が早かった。 身をよじって鎧で受ける信長。空中でも容易くこう動ける戦場勘と運動能力はやはり化物級だ。 当然そのせいでか攻撃は失敗し、歯軋りしながら地面に着地する事になるのだが。 バイクの速度もかなり上がってきている。このまま逃げ切れるか、そうデュオも式も考えたのだが、一人、アホの子が居た。 体から力が抜けていくようであった不調が収まったと、バイクから飛び降り斬りかかる五飛。 止める暇もあらばこそである。 走り抜けるバイクより飛び降りる。これは見た目以上に難易度の高い行為である。 よほどバランス感覚に優れた者でもなくば、空中での姿勢を維持する事も出来ない。 張五飛にかかれば陸上競技のハードルを越える程度の労苦であるのだが。 振りかぶった干将を、空より落下の速度を加え強烈な一撃として放つ。 大地に落着した直後の信長は、これを受けようとはせず。 刀を両手に握り、何と五飛に背を向けたのだ。 足捌きは完璧、僅かな乱れもそこにはなく、コマを回すような正確さ、或いは確実さで、素早く後ろより半回転して五飛の刀をかわす。 これは同時に必殺の斬撃を放つ動作にも繋がる。 体の周囲を一回転させる事で出た剣速は、黒き瘴気を纏わずとも五飛を刀ごと斬り倒す程の威力を秘めていた。 あの時と、景色が重なる。 忘れようとも決して忘れられぬ、忌まわしき屈辱の記憶。 強き者として、何処までも正々堂々戦い抜こうと武器を手に取った。 だがそんな五飛は、あの男、トレーズ・クシュリナーダに敗れたのだ。 今と同じ、空より斬りかかり縦に振るった剣をかわされ、くるりと回ったトレーズは着地で動きが止まった五飛の首元にサーベルを突きつけたのだ。 OZの総帥、悪の元凶に、強く正しき五飛は、決して破れてはならぬガンダムのパイロットは、敗北を喫したのだ。 あの瞬間を何度夢に見た事か。 その度屈辱に全身をわななかせ、慟哭と共に熱情を吐き出したのも一度や二度ではない。 『二度も同じ手を食うものか!』 斜めに斬り下ろされる信長の刀を、五飛は下に潜って前へと進む。 「トレーーーーーーーズ!!」 右足を垂直に頭上に跳ね上げ顎を蹴り飛ばすと、巨漢が息を詰まらせたじろぐ。 更に飛び上がって側頭部を回し蹴る。 ぐらりと、大きく信長が揺れる。 千載一遇の好機、そうも思えたのだが、全身を貫く悪寒に従い五飛は一旦距離を開く。 信長のマントが何故か蠢いていたのが気になったのだ。 そして一呼吸を置いて、呆然とした。 信長の斬り返し、あれはどう見てもトレーズのそれより素早く、力強く、殺意に満ちた一撃ではなかったのかと。 あの瞬間から、越えねばならぬ、しかし越えられぬ壁としてトレーズは五飛の前に立ちはだかり続けていた。 その象徴が、五飛にサーベル突きつけたトレーズの一撃である。 それはモビルスーツ戦において勝利、当人はそうとは認めていないが、した後でも五飛の中に確固としてあり続け、全てを縛りとめていた。 トレーズを貫き殺した時同様信じられぬ想いで、我が手を見下ろす。 「そう、か……トレーズ。俺は、お前に、勝っていたのか……」 二度目ならば信じられる。 五飛はあの忌まわしき敗戦より強く逞しく育ち、トレーズを越えていたのだと。 待ち望んだ瞬間、そうと自身が信じられるようになった今この時は、思っていたより爽快なものでも快いものでもなかった。 どうしようもない程の喪失感。かつて失ってはならぬものを失ったあの時を彷彿とさせる空虚な想いのみが残った。 「止まるな動けっ!」 式が莫耶を真横から叩き付け、憤怒に包まれた信長からの剣撃を逸らす。 その音で我に返った五飛は、干将を信長の足元へと伸ばす。 何故か、灯りの無いトンネルを抜けた後のように、視界が明るく澄み切って見えた。 時系列順で読む Back メメしい野郎共の詩 Next 戦場に生きる者達(後編) 投下順で読む Back The Hollow Shrine(後編) Next 戦場に生きる者達(後編) 180 「無題」じゃあ今いち呼びにくい! このシュトロハイムが名づけ親になってやるッ! そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の「サンタナ」というのはどうかな! 織田信長 189 戦場に生きる者達(後編) 180 「無題」じゃあ今いち呼びにくい! このシュトロハイムが名づけ親になってやるッ! そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の「サンタナ」というのはどうかな! 張五飛 189 戦場に生きる者達(後編) 180 「無題」じゃあ今いち呼びにくい! このシュトロハイムが名づけ親になってやるッ! そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の「サンタナ」というのはどうかな! デュオ・マックスウェル 189 戦場に生きる者達(後編) 180 「無題」じゃあ今いち呼びにくい! このシュトロハイムが名づけ親になってやるッ! そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の「サンタナ」というのはどうかな! 両儀式 189 戦場に生きる者達(後編)
https://w.atwiki.jp/orirowa2014/pages/190.html
斎藤輝幸は夢を見る。 厳しいだけの親。つまらないクラスメート。 そんな奴らに、何も言えず従うだけの自分。 何もかもどうでもよかった。 どいつもこいつもバカばかりだ。消えてしまえばいい。毎日そう思っていた。 その日常が壊れたのはいつか。 その日も、いつものようにネットで調べた黒魔術に興じていた。 魔法陣を描きこのくだらない日常の破壊を願った。 本気だったわけじゃない、ストレスを発散するための遊びの様なものだ。 だが、悪魔は本当に表れた。 そこから彼の人生は変わる。 世界が変わるほど劇的に、取り返しのつかないほど致命的に。 混濁した意識が波の様な緩やかな動きに揺すられる。 それは揺り籠のようであり、このまま意識を奥深くに預けてしまいたくなる。 だが、足元を引きずるような感覚がその心地よさの邪魔をする。 「よう。目ぇ覚めたか」 「ッ!?」 なにがどうなってこうなったのか。 輝幸が目を覚ましたのは、先ほどまで殺し合いをしていた相手の背中の上であった。 自分がどうなって、どういう状況なのか。まるで訳が分からない。 混乱に陥った輝幸は、ひとまずこの状況から逃れるため、身を捩じらせ藻掻き始めた。 「うぉ!? いきなり暴れんなって」 突然の輝幸の行動に驚きつつも、相手をなだめようとする拳正。 だが、静止の声も輝幸には届かず、自らの背中の上で暴れる相手に対して徐々に苛立ちをため込んでゆく。 元より我慢強い性格ではない、それはすぐに爆発した。 「だから、暴れんな、って!」 トン、と地面を踏み、背中越しの発勁を放つ拳正。 その反動で輝幸は背中から弾かれる。 結果として、望み通り拳正から離れられたものの、輝幸は受け身もとれず尻もちをついて地面に落ちた。 「あ、悪ぃ。思わずやっちまった」 すまんすまんと軽い調子で謝りながら、輝幸を引き起こそうと左腕を差し出す拳正。 だが、輝幸は差し出された腕を見ようとすらせず、俯いたまま微動だにしない。 何を思ったか、拳正は俯いているのを引きずってきたためドロドロになってしまった右足を気にしていると解釈した。 「ああ、足が汚れてんのは許せ。 つかうまく背負えなかったのは、右手痺れさせたお前のせいだかんな?」 ブンブンと具合を確かめるように右手を振り回す。 動作に問題はない、ひとまず握力は戻ったようだ。 「ええっと、そういやお前名前なんだっけ?」 問いかけにも反応せず、輝幸は無言を貫く。 「おーい。聞こえてんのかー、おーい」 しかしそこは空気の読めない男だ。 先ほど似たような流れで諍いになった反省など無く、しつこく問いかけていくスタイルの拳正。 もはや素直に答えるか、先ほどの繰り返しを演じるかしかない状況である。 拳正と違い学習能力のある輝幸がいい加減折れた。 いやいやながらも口を開いた。 「斎藤…………輝幸」 「お。輝幸な。俺は新田拳正。よろしく頼むわ」 返された拳正の名乗りを聞き、俯きっぱなしだった輝幸がゆっくりと視線を上げた。 「…………新田、拳正…………お前『桜中の悪魔』か」 「……あー、後輩かお前」 拳正は困ったように頭を掻き、少しだけばつの悪そうな顔をする。 『桜中の悪魔』 拳正がかつて呼ばれていた名である。 新田拳正は不良(ワル)だった。 元よりやんちゃの過ぎる悪童ではあったのだが、転機は小学五年の時。 とある事故で彼は両親を亡くした。 その後、親戚に引き取られたものの、そこでの義理の両親との折り合いが悪かった。 そんな理由で、彼はわかりやすいくらいに荒れた。 喧嘩に明け暮れ、家にもほとんど帰らず、危ない連中とつるみだした。 教師も義理の両親も完全に匙を投げた。子供のころから通っていた道場も破門された。 もはや悪友以外で彼に普通に話しかけるのは幼馴染の少女とその家族くらいのモノだった。 曰く、ゲームセンターを物理的に破壊したとか。 曰く、暴走族を一人で潰したとか。 曰く、パトカーを破壊したとか。 曰く、ヤクザに喧嘩を売ったとか。 その真偽こそ不明ながら、数多の悪名は学内に止まらず、地域一帯に響き渡り、彼は『桜中の悪魔』と呼ばれて恐れられた。 それが3年前までの出来事。 中学二年の終わりごろに、公園でとある老人に出会ってからその悪名はプツリと途絶えたが。 今でもその噂を覚えている者は少なくはない。 「なんで…………殺さない」 そんな相手が、自分を殺そうとした相手を何故生かしているのか。 様々な噂を知る輝幸からすればこの状況は不気味で仕方がない。 「いや、真顔でそんなマンガみたいなセリフを吐かれてもだな……。 戦いの中で死んじまったんならともかく、決着ついたのにわざわざトドメなんて刺さねぇよ。 あんなもんただの喧嘩だ。お前が売った、俺が買った、んで俺が勝った。それだけだろ」 「…………それだけで済むわけないだろ! いきなり浚われて、首に爆弾までつけられて、これは喧嘩じゃない殺し合いだぞ!? 自分を殺そうとしたやつなんて、殺すだろ普通!? いったい何企んでるんだお前!?」 少なくとも輝幸は本気で殺すつもりだった。 だからこそ、負ければ殺されると思ったし、敗北に対して全力で抗った。 自分を殺そうとした相手が生きているなど、安心できるはずがない。 まして、そんな人間を連れ歩くなど、何か企んでるとしか考えられない。 「普通って言われてもなぁ、別になんも企んでねぇよ。 あのまま放っておくのも危ねーな、ってくらい?」 何とも曖昧な拳正のとぼけた態度は輝幸をますます苛立たせた。 だが、企みどころか、割と本気で何も考えてない拳正は、輝幸の剣幕に戸惑うばかりである。 「なんだそれは? 強者の余裕か? 僕なんかには殺されないそう思ってるのか?」 「いや、んなこたねぇよ。お前は強かったよ。次やったらわかんねぇし。まともに一発でも食らったらマジで死んでたかもな。 けどまあ、死んだら死んだで、そん時はそん時だろ。戦いなんてそんなもんだ」 あっけらかんと言ってのける。 拳正は積極的に殺す気などないし、自ら死ぬ気もない。 だが、自分が死んでしまっても、相手を殺してしまったとしても。拳正にとって、それはただの結果だ。 その結果を受け入れる覚悟がないのなら、そもそも戦わなければいい。 それが拳正の価値観。 この年にして些か達観した生死感である。 それは長年武に身を置いてきた経験故か、それとも両親の死を経た事による結論か。 「…………意味が分からない。僕は嫌だ。死になくなんか、ない……!」 輝幸にはその価値観は理解できない。 輝幸は誰よりも死にたくない。 自分だけじゃなく、人間は誰だって死にたくないと思っているはずだ。 それが輝幸の価値観。 覚悟とか、矜持とか、そんなもののために命を懸けるだなんて信じられない。 ただ、分かるのは、その理解できないモノによって輝幸の命は奪われなかったという事だけだ。 「お前は……お前は、死ぬのが怖くないのかよ……?」 吐き出すような輝幸の問い。 「それは――――」 そこで言葉を切った拳正が突然、輝幸に向けてディパックを投げつけた。 正確には輝幸にではなく、その後ろ。 サク、と布を破る軽い音が鳴り、ディパックに飛来したナイフが突き刺さった。 「な、」 「――――森か」 突然の事態に戸惑う輝幸を置いて、拳正は目を細めナイフの飛んできた方向を鋭く見つめる。 「輝幸。お前は、その辺で隠れてろ」 言うが早いか、拳正は襲撃者の待つ魔の森に向けて、迷いなく駆け出して行った。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ほぅ」 ナイフを投げた襲撃者、サイパス・キルラはその対応に息を漏らした。 彼が立っているのは森林地帯の中でもひときわ高い木の上だ。ここからナイフを投擲した。 相手の力量を図るべく、まず投げナイフから入るのはサイパスの癖だ。 今回の場合、高々子供2人に貴重な弾丸を使うまでもないと思ったという理由も大きい。 なにせ殺害すべき対象は70名近くいるというのに残弾は30発しかないのだ。 相手がよほどの強敵だと判断した時でもない限り、できる限り弾丸は温存したい。 (もっともヴァイザーがいる限り、その心配も杞憂だろうがな) 組織の最強戦力にして、サイパスの育て上げた最高傑作。 あの稀代の暗殺者がいる以上、70名すべてをサイパスが殺すなどと言う事態にはならないだろうが。 (さて、あの小僧は果たして銃を使うに値する相手か) 木の幹を蹴り、サイパスが動く。 向かいの木へと跳躍したサイパスは、たどり着いたところで再びその幹を蹴り次の木へ跳ぶ。 その動きを繰り返して、稲妻のような軌跡を描きながら漆黒の影が空中を行く。 森に侵入した拳正は自らを取り囲むように飛び交う黒い影を見た。 目にもとまらぬ速度で踊る影。 その異様な光景を拳正は横目で見送り、足を止めずその場を突っ切り森の奥へと進んでいく。 相手の動きを見て、木々の密集したこの場での戦いは不利と判断し、少しでも開けた場所に戦場を変えるつもりなのだろう。 来た道を引き返さなかったのは、残してきた輝幸に目を向けさせないためか。 その背を狙い、躍る暗闇から一筋の銀光が放たれた。 回転しながら飛来するナイフは走る拳正の肩口を掠め、スコンと小気味良い音を立てて木の幹へと突き刺さった。 縦横無尽に行きかう影は、刺さったナイフを回収。再びナイフが投擲される。 前後左右の区別なく、およそ一本のナイフで成されているとは思えないほどナイフが次から次に絶え間なく飛び交う。 走る拳正を中心に絶対的な暗殺空間(キリングフィールド)が展開された。 黒のコートが縦横無尽に闇に躍る様は、まるで不気味なサーカスか何かだ。 その中央にあって、拳正は動きを変えない。 ナイフを紙一重で躱しながらただ走る。 落ち着いている。 それが拳正に対するサイパスの感想だ。 その実、行きかうナイフのほとんどは本命を隠すための幻影にすぎない。 体に当たる本命だけを見極めれば、十分に躱せる代物だ。 そして、拳正はこの状況でそれを見事に成し遂げている。 サイパスの行う、派手な動きはすべて精神的優位に立ち、主導権を握るための演出だ。 先ほどの剣術家のようにサイパスの超人的な動きを見た者はまず精神的に飲まれる。 だが、拳正はサイパスの多角的な動きに翻弄もされず、動じた様子もない。 この場での不利を認め、焦れて一か八かに奔るでもなく状況の打開に全力を注いでいる。 サイパスに誤算があるとしたらそこだった。 確かにサイパスの動きは凄まじい。 拳正からしても規格外の動きであり、その動きを再現することは不可能だろう。 だが、同じことはできないが、同じことをやれそうな人間ならば日常的に見ている。 素手でビル解体できるビックリ人間を超えない限り、拳正にとっては驚くには値しない。 どうやら、この戦術で敵を仕留めるのは難しそうである。 そうサイパスが判断を下したタイミングで、舞台は深い森を抜け、木々の開けた空間に出た。 拳正はその中央まで突っ切るとクルリと後方へと振り返り、最期に飛んできたナイフを明後日の方向へと蹴り飛ばした。 「よお。ようやくまともにツラ拝めたな」 周囲に足場となる大樹はなく、そこにはようやく地に足を付いたサイパスが立っていた。 初めて真正面から対峙する二人。 互いの間に遮蔽物もない。 「そんじゃま、こっからは単純な喧嘩しようか。おっさん」 言って、拳正が動く。 対するサイパスは格闘戦に応じるはずもなく、迷いなく懐からS W M10を取り出した。 遮蔽物のなさが仇となった。身を隠す術はない。 盾を求め、森林地帯に戻ろうと背を向けようものなら、その瞬間に撃ち殺されるのがオチだろう。 銃口を突きつけられ、絶体絶命ともいえるこの状況。 銃の登場にさすがに驚いたように目を見開くがそれも一瞬、拳正は迷わず前に加速した。 距離を詰めれば射角は狭まり、射線の外に出やすくなる。 実行できるかはともかく、理屈としてはそれは正しい。 だが、相手は百戦錬磨の殺し屋サイパス・キルラだ。 引き金を引く瞬間を読み切りたとしても、躱せるのは最初の一発までだろう。 右か左か。避けたところで回避後の硬直を狙い撃ちにされてお終いだ。 さあ、どうする? 運命の引き金が引かれ、問いかけの様な弾丸が放たれる。 その瞬間、拳正がサイパスの視界から消えた。 (下か……!?) 拳正の選択は右でも左でもなく下。 サイパスの足元に向けて、ヘッドスライディングのような体制で滑り込むように飛び込んだ。 すぐさまその動きに対応し銃口を下へと向けるサイパス。 だがそれよりも一手早く、飛び込んだ拳正は両腕で体を支え、逆立ち様な体制のままほぼ真上に向けて蹴り足を跳ね上げた。 その動きは蟷螂拳の穿弓腿に近い。 サイパスの顎下から槍のように鋭い蹴りが奔った。 顎を砕かんと一直線に迫るその一撃。 サイパスは冷静にその間合いを見極め、半歩下がるだけでこれを回避。 拳正の右足が空を切る。 だが、蹴りを躱された拳正は止まらず、地突いた腕を交差させ空中で無理矢理に身を捻った。 その動きと連動するように、後ろ脚が跳ね上がる。 跳ねあがった左足の踵が、サイパスが右腕に握る拳銃のグリップを強かに打った。 その勢いに弾かれ、S W M10が宙を舞った。 (最初からそれが狙いか) まずは武器を無力化するというのは狙いとしてはよい。 そうサイパスはこの動きを評価する。 だが。 「詰めが甘い…………ッ!」 無理な体制で蹴りを放った拳正は完全に死に体だ。 逆立ち状態の拳正の顔面を、サッカーボールのようにサイパスが蹴り上げる。 まともにもらった拳正が地面を転がった。 「ぐっ!」 受け身をとり、揺れる視界のまますぐさま立ち上がり追撃を警戒する拳正。 だが、意外にも追撃は来なかった。 見ればサイパスは距離を詰めるでもなくその場に直立していた。 ふん、と詰まった鼻血を出しながら、相手の出方を伺う拳正。 その様子を見ながら、サイパスが口を開いた。 「小僧。名を、聞いておこうか」 「…………新田拳正。おっさんは?」 「ただの殺し屋だよ。名乗るほどの者じゃない」 「だったら俺も、ただの八極拳士だ。名乗るほどのモンじゃない」 「…………」 ああ、バカなんだな。とサイパスは気づく。 まぁこの程度の常識の欠如したものならば組織にもいるか、と気を取り直して話を続ける。 「ではケンショウ。殺す前に三つ聞いておこう」 「あんだよ」 「その戦い方、誰に教わった」 その戦い方は明らかに実戦を想定している。 ただの子供の護身術にしては物騒すぎる代物だ。 「李書文とかいう爺さん」 その返答にサイパスは思わず噴き出した。 「はっ。そうか」 この状況で言う冗談にしては気が利いている。 仕込んだのが音に聞くあの『神槍』というのならば納得できる話だ。 とはいえ80年近く前に死んだ名だ、もちろん本気にしてはいないが。 「二つ目の問いだ。貴様、死が怖くないのか?」 銃を前にして、迷うことなく踏み出してきたあの動き。 ヴァイザーのように死を読み切れるのならばできる。 アザレアのように死を恐怖として認識していないのならばできる。 目の前の男の場合はどうか? 「? いや、普通に怖いけど?」 「なるほど」 銃を見て具体的な死を想像できないただの平和ボケか、ただ壊れている狂人か。 それとも、死を恐れていてもなお踏みこめる逸材なのか。 「最後の質問だ、お前――――殺し屋になる気はないか?」 「ねーよ」 即答だった。 予想通りの返答だったが、それでも面白い逸材を見ると引き込みたくなるのはサイパスの悪い癖だ。 組織の奇人変人も半数近くはこうしてサイパスが集めたようなものである。 「そうか。ならば、お前はここで殺しておこう」 だが、引き込めないのならば殺すまでだ。 これまでも気に入った相手に誘いをかけてきたが、断った相手は例外なく殺してきた。 将来的に組織の危険因子となりうるからだ。 もはやサイパスに躊躇いはない。 静かに地を蹴り、サイパスが動く。 音もなく一瞬で最高速まで達するその動きは正しく死神。 身を低く、命を刈らんと死神が奔る。 対する拳正は跳ねるように前へ。 拳を突き出し最大速度で突進する、絶招歩法。 互いに全速。 交差は一瞬で終わるだろう。 交差の瞬間、拳正の視界が黒で染まった。 それは黒いコートだった。 視界を塞ぐように、サイパスが己のコートを大きく翻したのだ。 拳正は構わず打つが、その先にサイパスの実体はない。 打撃に絡め取られたコートの下から、滑り込むようにサイパスが現れる。 下から現れた相手に対して、打ち込んだ腕を曲げ、肘を落とす拳正。 だが、地面スレスレを走るサイパスの異常な動きにその一撃は空を切る。 カウンターを取られ、鳩尾に強烈な膝が叩き込まれた。 「ふん。体術なら勝てると思ったか?」 「ッ…………思ってる、よ!」 だが、打撃を喰らい身をくの字に折ながらも、拳正の右掌はサイパスの胸元に置かれていた。 その密着状態から放たれる、掌打による寸勁。 サイパスの体が後方に大きく吹き飛んだ。 だが、浅い。 勁も殆ど通った手ごたえがない。あれではただ押し出しただけだ。 この機を逃さず、吹っ飛んだサイパスに向かって追撃に走る拳正。 瞬間、脳天に斬撃を喰らった。 「なっ…………!?」 それは天から落ちてきたナイフだった。 視界を塞いだ瞬間にサイパスは隠し持っていた最後のナイフを上空に投げていたのだ。 体術ならばという挑発もそれに気付かせないためのブラフ。 その挑発に見事に嵌った。 幸運にも裂かれたのは額だけだ、致命傷ではない。 だが頭部の傷は流血量が多い、ザックリと裂かれた傷口からは血液が垂れ流れ、その両目を汚した。 反射的に瞼が閉じられ、視界が失われる。 サイパスが体制を立て直し距離を詰めるか、拳正が視界を取り戻すか、どちらが早いか。 拳正は片目を拭いすぐさま目を開く。 そして、赤く染まる視界の先にあったのは、拳銃を構えるサイパスの姿だった。 そこで悟る。サイパスは吹き飛ばされたのではない。拳正の打撃を利用し自ら拳銃が落ちた場所まで飛んだのだと。 「チェックだ」 「くっ」 この銃弾は躱せない。 互いにその確信があった。 「!?」 だが、その確信を裏切るように、次の瞬間に響いたのは銃声ではなく獣の咆哮だった。 生い茂る枝葉を薙ぎ払いながら、夜闇を切り裂くように現れたのは豹の化物。 「輝幸!?」 「亦紅と同じ人外の類か!」 恐るべき速度で森を駆け抜けた獣は、五指の凶爪をサイパスに向けて振り下ろした。 尋常ならざるその一撃を、サイパスは後方に飛ぶことで避けながら、同時に弾丸を数発撃ち込んだ。 だが、鎧のような表皮はそれをそれをものともせず、豹の悪魔の突進は止まらない。 「ちぃ! 9mmの豆鉄砲では貫けんか」 サイパスは舌を打ちながら、突進してきた化物に対応する。 振り下ろされた一撃を素早く横に回り込んで躱した。 同時に、重心の乗った足を払うとともに、付き出された肩を押し出す。 自らの突進の勢いを利用され、悪魔の巨体が空中に投げ出された。 瞬間。宙を舞う巨大な影と入れ替わるように、小さな影が飛び出した。 拳正だ。 サイパスの内懐へ向けて踏みこみ、足裏を大地に叩きける。 そこから踵を捻じ込み、全ての運動エネルギーを肘へと伝える。 体当たりの様な勢いで打ち込まれた裡門を、サイパスは独楽のように回転して受け流した。 その勢いを利用したまま、バックハンドを放ち拳正の後頭部を打った。 直撃を受け、前のめりに倒れこむ拳正。 トドメを刺すべく銃口を向けようとするサイパスだったが、横目に豹の悪魔が復活していたのが確認できた。 その悪魔に意識をやった隙に、拳正が跳ねあがるように起き上がる。 (…………キリがないな) 状況は完全に二対一。 それでも負ける気はしないが、弾丸の消耗も避けれないし、無傷ともいくまい。 相手を見くびったのは間違いだったと認める。 ただの子供二人と思いきや、とんだ食わせ物二人だったようだ。 どうやら、この場にはまともな人間はいないようだ。 次からはどんな相手にも手を抜かない様にしよう。そうサイパスは肝に免じる。 「ここは引くとしよう」 引き際だ。 この場で殺しておきたかったのは確かだが、この会場に囚われている以上、殺す気いくらでも機会はあるだろう。 サイパスは地に落ちたナイフとコートを回収し、すぅ、っと影に溶けるように森の奥へと消えていく。 当然ながら二人はそれを追わず、緊張感を保ったままその姿を見送った、 そして、完全にその姿が見えなくなったところで、ようやく拳正は残心を解いた。 緊張を解くように息を吐き、同じく変身を解いた輝幸へと向き直る。 「助かった」 「……別に。借りを返しただけだ」 ぶっきらぼうに輝幸は返す。 トドメを刺されなかった借りと、サイパスの襲撃から助けられた借り。あるいはその両方か。 借り? なんかあったっけ? と拳正は疑問符を浮かべているがそれはいい、義理は果たした。 歪んではしまったが、元より真面目な義理堅い少年だ。 これだけの借りを受けながら、どうしてもそのまま放置しておくことができなかった。 だが、最後まで迷っていたのも確かだ。 実際、探してみて見つからなかったら諦めようという消極的な気持ちだったのだが、不運にも見つけてしまった。 「しっかしバカ強ぇおっさんだったな。結局一発もまともに当てれなかったぜ」 当てられたのは当てさせられた寸勁だけ。 実力の差は歴然だった。 手と足くらいは出たあたり体術のレベルは師ほどではないが、あの男の本領は単純な強さとは別だろう。 「この調子だとさすがにしんどいな」 輝幸にサイパス。今のところ拳正の出会った相手は強敵ばかりである。 どうやら簡単に帰るのは厳しそうだと、この段階にきてようやくこの男も思い至った。 早期帰宅を諦め、腰を据えて事に当たることを決意する。 「まぁ最悪、師匠のメシは九十九が何とかしてくれんだろ」 そうごちる拳正だったが、まだ名簿の確認すらしていない彼はその少女がこの会場にいることを未だ知らない。 【F-4 中央・森/黎明】 【新田拳正】 状態:ダメージ(中)疲労(中) 装備:なし 道具:基本支給品一式、ランダムアイテム1~3(未確認) [思考・状況] [基本]帰る 1 脱出する方法を考える ※名簿も見てません 【斎藤輝幸】 状態:健康、微傷 装備:なし 道具:基本支給品一式、サバイバルナイフ、ランダムアイテム1~3(確認済み) [思考・状況] [基本]死にたくない 1 ??? 【F-4 南・森/黎明】 【サイパス・キルラ】 [状態]:健康、疲労(中) [装備]:S W M10(3/6) [道具]:基本支給品一式、サバイバルナイフ、38スペシャル弾×24、ランダムアイテム0~1 [思考・行動] 基本方針 組織のメンバーを除く参加者を殺す 1 亦紅、遠山春奈との決着をつける 2 新田拳正を殺す 3 イヴァンと合流して彼の指示に従う ※F-4のどこかにサバイバルナイフが1本落ちてます 035.俺、美少女になります! 投下順で読む 037.Terminators 時系列順で読む 史上最強の弟子ケンショウ 新田拳正 戦士の心得 斎藤輝幸 アンシーズ~刀侠戦姫贖罪録~ サイパス・キルラ 殺し屋の殺し屋による殺し屋のための組織
https://w.atwiki.jp/clownofaria/pages/28.html
第一部 第九話『なのはと諜報部の一日』② 首都防衛部隊所属の葵葉鷹斗は部署で報告書をまとめていた。 キーを叩く音が響く。 今日は臨時休暇を出されていたので、いるのは鷹斗と訓練に来た何名くらいだった。 「失礼します。諜報部の幽霧霞三等陸士です」 軽くノックして入ってきたのは幽霧だった。 鷹斗はキーを打つ手を止め、幽霧を見る。 「久しぶりですね。幽霧。ちゃんと歩法の練習くらいはしているかい?」 「ええ。あの二人はこちらに来ているでしょうか?」 鷹斗はキーを叩く作業を開始しながら言う。 「あの二人なら第五鍛錬場に通しておいたよ」 「ありがとうございます」 指定された鍛錬場の方に歩いていく幽霧。 なのはも幽霧についていこうとした時、鷹斗に呼び止められた。 「今日はおやすみなのですか?」 「……ええ」 突然話し掛けられて途惑うなのはに鷹斗は言った。 「これから幽霧が模擬戦をします。よく見ていて下さい。きっと興味深いと思いますよ」 鷹斗の言葉の意味が分からないまま、なのはは第五鍛錬場にやって来た。 そこには、少年と少女が幽霧と向かい合うように立っていた。 「では、模擬戦を開始しましょうか。弥刀二等陸士。結城優衣三等陸士」 幽霧は二人に言う。 「了解。」 「了解いたしました。幽霧三等陸士」 二人は幽霧に向かって頷く。 「では、どちらから始めますか?」 弥刀が手を上げる。 「じゃあ。僕から始めてくれないか」 「分かりました。なのはさん。すみませんが、合図をお願いいたしませんか?」 いきなり話し掛けられてなのはは驚いたが、笑顔で頷いた。 「うん。分かった」 「では、行きますか」 幽霧は拳を握り、弥刀に向かって拳を構える。 「いつでも良いよ」 それに対し、スタンバイ形態の「アンリミテッドエッジ」を握る弥刀。 「模擬戦………開始!」 なのはが開始を告げる。 幽霧は開始と同時に地を蹴りつけ、弥刀に疾駆する。 「アンリ………セットアップ!」 弥刀は幽霧が接近すると同時に「アンリミテッドエッジ」を励起。バリアジャケットを身に纏う。 弥刀のバリアジャケットは黒スーツに同じ色のコートを纏うという出で立ちであった。 宙からナイフの柄が出現する。弥刀はナイフの柄を抜く。 脚部だけに「パンツァーガイスト」を纏わせた幽霧が弥刀に右足で蹴りを入れる。 弥刀は宙から引き抜いたナイフの峰で幽霧の蹴りを受けた。 ナイフと「パンツァーガイスト」を纏わせた蹴撃が拮抗する。 幽霧はごり押しでナイフとナイフを握る弥刀の片手を地に押しつけた。 左足で空いた弥刀の頭部に蹴りを入れようするが、弥刀は新たなナイフを抜き、幽霧の蹴りを受ける。 余りの威力にナイフが折れる。 しかし、ナイフの一本が折れた位で弥刀は躊躇するわけにはいかない。 ニヤリと笑う弥刀。 「アクセルシュートエッジ…………ファイア」 弥刀の背後に配備されたナイフが幽霧目掛けて飛ぶ。 魔法で瞬発的に撃ち出されたナイフは幽霧の胸部に突き刺さった。 「ファイア!」 新たに配備されたナイフの第二群が幽霧へ撃ち出される。 幽霧の身体にナイフが突き刺さり、派手に飛んでいく。 「…………アンリ」 弥刀の左右にナイフの柄が出現する。 腕を交差させてそのナイフを引き抜く。そのナイフは小太刀の様な刀身の長いナイフであった。 小太刀の様なナイフを両手に握り、弥刀は幽霧に接近する。 走りながら弥刀は左のナイフを下から切り上げ、右のナイフで右に薙ぎ払おうと構えた。 正面に大量のナイフが突き刺さった幽霧の身体に新たなる傷が刻まれようとしたとき、幽霧は顔を上げてニヤリと笑う。 死んだ魚のような目だったせいで、とても不気味であった。 左右から十字に切り裂こうとする弥刀のナイフに対し、幽霧は立ち向かった。それも弥刀が幽霧に突き刺したナイフで。 突発的に突き刺さったナイフの二本を引き抜き、弥刀のナイフを受け止める。 そして、二本のナイフを受け止めた事で出来た隙間に幽霧は「パンツァーガイスト」を纏わせたままの脚部を叩き込む。 「ぐぶっ」 突発的に「パンツァーガイスト」を纏わせた幽霧の蹴撃を出現させたナイフで防いだもの、弥刀の身体が飛ぶ。 腰を後ろ引き、前に重心をかけて踏ん張ったおかげで深刻なダメージを受けることはなかった。 しかし、何本かのナイフの刃が折れた。 幽霧は着ていたコートを脱ぎ、軽く振る。コートに突き刺さったナイフが抜け落ちていく。 ナイフが幽霧の服に小さな穴を開けていたが、身体に傷は見あたらない。 幽霧はコートを振ってナイフを落としながら言う。 「流石、元二等空尉。強いです。 中にケプラーと極細の鋼糸を編み込んだコートを着ていなかったら死んでましたよ」 「悪いね」 全く悪びれている様子も無く、弥刀は魔法で身体を浮かせる。 「流石に、物量戦に特化したデバイス。装備されている6666本ものナイフを全て破壊できるか不安ですね………」 幽霧はコートを羽織り直し、抜け落ちたナイフの一本を握って呟く。 「其は槍にして剣」 ナイフを握る幽霧の手の甲にベルカ式の魔法陣が浮かび上がる。 弥刀は何かが変換していく様な感覚を感じた。 「其は御子の身体に牙を突き立てる者。それが故に御子の鮮血を纏いし者」 幽霧の握るナイフの構成組織が変換される。 「我はその槍剣を携え、我が敵を薙ぎ払う」 「クロスファイア……アクセルシュートエッジ……シュートぉ!」 弥刀は「クロスファイア」と「アクセルシュートエッジ」を同時に発動した。 魔弾と魔法によって撃ち出されたナイフが幽霧に迫り来る。 迫り来る魔弾とナイフに対し、幽霧は握っている変換中の何かを振りぬく。 「其は聖血を纏いし神槍剣!」 握られていたナイフが約二mの槍剣に変わる。 槍剣の一閃が迫り来る魔弾とナイフを薙ぎ払う。 薙ぎ払われたナイフがなのはたちの周辺にも飛ぶ。 優衣は「コウライ」で弾き飛ばし、なのはは結界魔法で防ぐ。 「幽霧くん!」 なのはは幽霧に怒号を飛ばす。 「すみません!」 謝る幽霧。それにより隙が出来る。 弥刀はその隙を全く見逃さない。 「ディフィッションエクスプロージョン!」 幽霧の周辺にばら撒かれたナイフが爆発していく。 周辺が爆発する中、幽霧は至って冷静であった。 槍剣を渾身の力で地面に突き刺す。 衝撃波で爆発を消し飛ばす。 放たれた衝撃波は二人から離れているなのはたちのスカートまで揺らした。 「幽霧は剣術も上手かったっけ?」 宙から刃渡りの長いナイフを抜き、弥刀は言う。 「シグナム二等空尉には遙かに劣りますが、最低限は使えます」 幽霧は槍剣を投擲するような形に構えながら答える。 そして、幽霧は補助魔法で勢いをつけて「其は聖血を纏いし神槍剣」を弥刀に向かって投擲する。 渾身の力で投擲された「其は聖血を纏いし神槍剣」は宙に浮く弥刀の方に飛んでいく。 「ファイア!」 弥刀は「アクセルシュートエッジ」を発動するも、勢い良く飛ぶ「其は聖血を纏いし神槍剣」が弾き飛ばす。 更に弥刀は結界魔法も展開する。そこで、「其は聖血を纏いし神槍剣」の侵攻を止めれるはずだった。 しかし「其は聖血を纏いし神槍剣」は弥刀の結界魔法を打ち抜いて、弥刀に軽く突き刺さる。 「………ごぷっ」 弥刀の身体に激痛が走る。 しかし、刺さった所から血すら出ていなかった。 「其は聖血を纏いし神槍剣」は独りでに抜け落ちる。 弥刀は妙な虚脱感を感じた。 抜け落ちた「其は聖血を纏いし神槍剣」は幽霧の手の中に収まる。 「さて。始めましょうか」 槍剣の柄を両手で握りながら構える幽霧。 幽霧の構える「其は聖血を纏いし神槍剣」の刀身に紅い線が血管の様に走り、紅い線が生物の様に脈動する。 弥刀は妙な虚脱感を感じながら着地する。 「そうですね」 本日、何本目になるか分からないナイフを抜く弥刀。 弥刀と幽霧は地を蹴り、相手とぶつかり合う。 幽霧は弥刀の間合いの外から斬りかかる。 弥刀はバックステップで幽霧の剣撃をかわし、カウンターでスローイングナイフを投擲する。 投擲されたナイフを幽霧はで横へ薙ぎ払う。走りながら流れるような動作で、槍剣を弥刀の眉間に振り降ろす。 弥刀は左手の指に挟んだナイフで槍剣を防御する。 ナイフは槍剣の剣戟を凌ぐことはできたが、すぐにヒビが大きく入って折れた。 弥刀はカウンターで逆手に持った右手のナイフで幽霧の腹部を切り裂こうとした。 しかし、幽霧が瞬時に防御の型を取ったことで槍剣に阻まれる。 その代わり、幽霧の持つ槍剣は弥刀のナイフで横に切断された。 幽霧は真っ二つに切断された槍剣を瞬時に廃棄し、弥刀のナイフを避ける。 軽く弥刀は舌打ちをし、無防備の状態になった幽霧に「アクセルシュートエッジ」を叩き込む。 幽霧は再び脚部だけに「パンツァーガイスト」をかけ、蹴撃で迫り来るナイフの大群を蹴り落とす。 地に墜したナイフを握り、再び「其は聖血を纏いし神槍剣」の魔法を発動。 再び幽霧の手に槍剣が握られる。 「シュート!」 弥刀は幽霧が「其は聖血を纏いし神槍剣」完成のタイミング狙いで「クロスファイア」を発動。 更に「アクセルシュートエッジ」も展開。 大量の魔弾の背後にナイフの大群を配備し、弥刀は二段仕込みで幽霧を倒しにかかる。 さっきとは比べ物にならない数の魔弾とナイフに対し、幽霧は全く動じない。 新たに精製した槍剣を振り上げ、魔力を槍剣に叩き込む。 魔力を叩き込まれた槍剣は刀身に紅い線が入り、血管のように脈動する。脈動する槍剣を幽霧は一気に振り下ろす。 その剣戟の一閃は迫り来る魔弾とナイフの大群を斬り伏せると同時に広範囲に巨大な砂煙を巻き上げた。 弥刀はどこから攻撃を仕掛けられても良いように残っているナイフを総動員して、周囲を見回す。 しかし余りにも濃い砂煙で幽霧の姿すら見あたらない。 弥刀が動いたその時、首に何かが刺さるのを感じた。 ゆっくりと首を動かす弥刀。 首には剣の切っ先が突きつけられていた。 視線だけを下に向けると、幽霧が死んだ魚のような目で弥刀をじっと見ている。 喉に軽く槍剣の切っ先を突きつけられる感触を感じながら、弥刀は思ってしまった。 少しでも、動いたらきっと幽霧は自分の喉を突くだろうと。 幽霧の死んだ魚のような目もそう告げている。 でもナイフを総動員しているこの状態なら、幽霧を倒すことが出来ることも分かっていた。 確かにこの状態なら、幽霧を倒すことが出来る。 しかし、幽霧に向けられたナイフが幽霧を倒す前に幽霧の槍剣が喉を突くだろう。 恐怖が弥刀の背筋に寒気を走らせる。 諦めたかのように瞼を閉じる弥刀。 弥刀は両手を上げ、幽霧に言った。 「降参……というのは……駄目……かな?」 「………」 無言で幽霧は降参する弥刀を見つめている。 遂に弥刀の顔から冷や汗が流れ始める。 少し怖いが、弥刀は閉じている瞼を開く。 目の前には死んだ魚のような目で喉に槍剣の切っ先をつきつける幽霧がいた。 「……幽………霧…?」 じっと弥刀を見ていた幽霧が口を開く。 「引き分けということで宜しいでしょうか?」 「ふぇ?」 幽霧の口から引き分けという言葉が出るとは思わなかったので、驚く弥刀。 「この状態なら自分が弥刀さんの首を突く方が速いですが、その後はどうなるか分からないので…………このまま行ってみますか?」 弥刀の背筋が凍る。そして、途切れ途切れになりながらも呟いた。 「アンリ………モード……リリース…」 幽霧に切っ先を向けていたナイフの大群が消失する。 幽霧も槍剣の切っ先を弥刀の喉から外す。そして、「其は聖血を纏いし神槍剣」を解除した。 「其は聖血を纏いし神槍剣」を解除された槍剣は構成組織が分解されて砂と化す。 幽霧は弥刀を見上げながら、一言だけ言った。 「ご苦労様でした」 その瞬間、緊張がほどけて弥刀は腰が抜けて尻餅をついてしまう。 そんな弥刀を見て、幽霧は軽く苦笑した。 「じゃあ。よろしくお願いします」 幽霧は優衣に一礼する。 「こちらこそ。よろしくお願いします。幽霧三等陸士」 優衣は真剣な顔を全く変えずに言う。 なのはは二人に言う。 「優衣ちゃん。無茶して怪我をしないようにね。 幽霧くん。優衣ちゃんに怪我させないようにね」 「………はい」 なのはにそんな事を言われるとは思わなかったので、優衣は嬉しさと恥ずかしさで頬を赤らめる。 「了解いたしました」 幽霧は無表情で頷く。 「じゃあ…………始め!」 優衣はなのはの号令と同時に「コウライ」を起動。優衣の手に巨大な半月斧が握られる。 重力魔法で「コウライ」の質量を軽減し、幽霧へと疾駆する。 幽霧は優衣を迎撃する為に拳を握る。 「コウライ」を振り上げ、重力魔法解除と同時に振り下ろす優衣。 人間など簡単に一刀両断出来る程の威力を孕んだ半月斧の刃が振り降ろされる。 断頭台のような刃に対し、回し蹴りで「コウライ」の側面に蹴りを叩き込むことで軌道をずらした。そして蹴りを叩き込んだ足で地を踏み、その足を軸にして優衣の腹部に後ろ回し蹴りを叩き込む。 「………トーデス・ドルヒっ!」 腹部に回し蹴りを食らうと同時に優衣は背後に忍ばさせていたスフィアを解放。 スフィアからダガーが大量に射出される。 そのダガーは幽霧に着弾した瞬間、爆発を起こす。 「ルフトおぉぉぉぉぉ………」 優衣は「コウライ」を振り上げ、幽霧に向かって魔法を起動する。 周囲の空気が「コウライ」に集中し、圧縮されていく。 「メッサあぁぁぁぁぁぁア!!」 そして一気に「コウライ」を振り下ろす。圧縮された空気が加速し、空気の刃が打ち出される。 幽霧は優衣の打ち出した「ルフトメッサー」に「パンツァーガイスト」で防護した拳を叩き込んだ。 「パンツァーガイスト」で防護した拳を叩き込まれた空気の刃は霧散すかのように消える。 次の瞬間、幽霧の目の前に「コウライ」を振り上げた優衣が現れる。 「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ストォォォォムッ!ブレイカアアァァァァァァァ!!」 優衣が「コウライ」を振ると同時に、装備されていたブーストが点火。 触れたら最後。絶対に切断される一撃が叩き込まれた。 幽霧はバックステップでかわしたが、中にケプラーと極細の鋼糸を編み込んだコートの半分が斬り裂かれる。 優衣は更に攻撃を繋げる。 自身の身体を軸にして「コウライ」を振り回すことで、槍の穂先みたいになっている部分を幽霧に向ける。そして、新たなる魔法を展開。 「シュペーアアングリフっ!」 「コウライ」に装備されたブーストが再点火し、噴出口から魔力を噴出して加速。勢いをつけると同時に幽霧に突っ込む。 幽霧は両手を重ねて結界魔法を展開し、優衣の「シュヴェーアアングリフ」を真っ向から防御する。 優衣の「シュヴェーアアングリフ」と幽霧の結界魔法が拮抗しあい、火花を発した。 そして、ブーストの勢いで幽霧と優衣の身体は空中に上昇する。10mくらい上昇すると、ブーストに注ぎ込まれていた魔力が無くなる。 幽霧は着地時に伝わる衝撃を浮遊魔法で落下のスピードを減速させることで減らし、優衣は「コウライ」の刃を地面に突き刺すことで身体が地面に叩きつけられないように着地した。 優衣は体重をかけることで、地面に突き刺さった「コウライ」を抜く。 「コウライ」を抜き、顔を上げる優衣。そこには拳を握った幽霧がいた。 顔をひきつらせる優衣。 幽霧は少しの迷いもなく、優衣の腹部に拳を叩き込もうとする。 〈ソニックブーム〉 優衣の「コウライ」がオートで「ソニックブーム」を起動。 あたかも瞬間移動したかのように、後ろへ高速移動を行う。 恐怖で優衣は心臓が跳ね上がるのを感じた。 そして思った。バルディッシュ形態であるフォルムアインでは勝てないと。 優衣は深呼吸をし、「コウライ」に言った。 「コウライ。フォルムツヴァイ!!」 「Yar!!」 奇妙な音を立てながら「コウライ」が甲殻化していく。 「フォルム……ツヴァイ」 形態の変更を告げる「コウライ」。全体に無数の棘が生え、甲殻で幾重にも重ねることで装甲が厚くなっていた。 質量も増している「コウライ」を振りかぶり、一気に振りぬく。 「シュツルムシュナイデン!!」 勢い良く振られた「コウライ」の刃から衝撃波が打ち出される。 その衝撃波は地面を抉り、轟音を立てながら幽霧へと迫る。 幽霧は「パンツァーガイスト」で脚部の強化。 そして迫り来る「シュツルムシュナイデン」に向かって横蹴りを入れる。 脚部の筋肉を酷使し、静止状態から蹴りのスピードを一気にトップスピードまで引き上げた。 筋肉を酷使した脚部から衝撃波が打ち出され、優衣の「ストゥルムシュナイデン」を相殺する。 しかし、優衣は新しい魔法の発動は完了していた。 優衣は「コウライ」を地面に突き刺し、静かに言った。 「………ツェアシュテールングスメッサー」 地面が盛り上がり、石で出来た無数の刃が幽霧に襲い掛かる。 幽霧は拳に打撃力強化と効果破壊の能力を持つ魔力を注ぎ、石で出来た無数の刃に立ち向かう。 更に半歩踏み込む。地面からの反動を全身全霊で受け止め、増幅させ、足首から膝、膝から腰、腰から肩、肩から肘、肘から右腕へと流し込む。それと同時に肩の付け根ぐらいまで無色の灰色染まっていく。 石で出来た刃が幽霧の身体を貫こうとした時、幽霧は魔力を解き放つ。 そして、溜め込んだ魔力を解き放った拳を迫り来る石の刃に叩きつける。 「我は幾千の災いを受け流す者にして、我は幾千の難を穿ち抜く者。我は幾千の万象を断つ………フラガラッハ」 解き放たれた魔力は一直線上に存在する石の刃を全て吹き飛ばしていく。 その一撃が優衣の頬をかすめる。かすめた頬は少し痛かった。 かすめた一撃は、壁に大きなクレーターを作ることで消滅する。 「コウライ………」 幽霧の「フラガラッハ」が頬をかすめた痛みを感じながら優衣は呟く。 「フォルムドゥライっ!!」 優衣の握るフォルムツヴァイの「コウライ」にヒビが入って、甲殻と装甲が砕ける。 今ここに「コウライ」のフォルムドゥライが姿をあらわす。 現在、優衣の手に握られているのは真紅の薙刀。 優衣はフォルムドゥライとなった「コウライ」の柄を握る。 そして腰を捻った状態で「コウライ」を振り上げ、一気に振り抜きながら高らかに叫んだ。 「シュランゲバイセン・シュツルム!」 薙刀となった「コウライ」の刀身が連結刃となって幽霧へと襲い掛かる。 幽霧は襲い掛かる「コウライ」の刃に触れようとした瞬間、手や腕に無数の切り傷が入った。 なんと、優衣の振るう「コウライ」の「シャランゲバイセン・シュツルム」には衝撃波が纏われていた。 それは優衣の斬撃の間合いが広がっている事を示していた。 更にその上、鞭刃自体が不規則な動きをしているのでさばきにくい。 どうしたものかと幽霧は一瞬だけ悩み、一瞬にして行動に移す。 幽霧は一回、瞼をつぶる。そして瞼を開いて歩き出す。 「葵葉流領空制圧戦闘術……『流水』」 迫り来る「コウライ」の刃を受け流す。まるで流れる水の如く。 幽霧は一時期、修行の一環として半年だけ首都防衛部隊に所属していた。 葵葉流領空制圧術はそこの部隊に所属する葵葉鷹斗一等空尉が編み出し、その領域制空戦闘術を幽霧に教えたのだ。 幽霧の操る「葵葉流領空制圧戦闘術」は優衣の操る「コウライ」の軌道をずらし、前に歩いていく。 その幽霧の一歩一歩が優衣の心に恐怖感を芽生えさせる。 優衣は「コウライ」の刃を瞬時に連結完了させる。そして、居合の如く「コウライ」の柄を逆手に持つ。 「コウライ」の刃からは小型のブースト機構がせり出す。 「風牙一閃!ストォームッ!ブレイカアァァァァァァァァァ!!」 居合で刀を抜くが如く、渾身の力で「コウライ」を振りぬく。 振り抜かれた「コウライ」の刃は再び連結刃となって間合いを伸ばす。切断属性の魔力と小型ブーストの力も得て、スピードも威力もさっきの「シュランゲバイセン・シュツルム」とは比べ物ならない。 更に刃だけではなく刃を繋いでいるワイヤーにも切断属性と風の魔力が纏われており、それはまさしく疾風怒濤の太刀。 その疾風怒濤の太刀である「ストームブレイカー」に対し、幽霧は酷使した脚部の筋力を更に酷使した類い稀な跳躍で避ける。 跳躍後の着地で脚部に激痛を感じたが、幽霧は走る事で前へ進む。 「我は幾千の災いを受け流す者にして、我は幾千の難を穿ち抜く者。我は幾千の万象を断つ………」 再び幽霧の腕に魔力が集束し、肩の付け根ぐらいまで無色の灰色染まっていく。 優衣は連結完了のタイムラグを考え、片手で結界魔法を張る。 しかし、結界魔法は時間稼ぎにはならなかった。何故なら幽霧は優衣の目の前まできていたから。 幽霧は肩の付け根ぐらいまで無色の灰色染まった拳を振り上げる。 それに対し、優衣は結界を強化する。 「………フラガラッハ」 幽霧は肩の付け根ぐらいまで無色の灰色染まった拳を叩きつける。 優衣は恐怖で目を瞑った。しかし、幾ら時間が経っても身体に全くの衝撃が来ない。 恐る恐る、優衣は瞼を開ける。 そこには結界をぶち抜いた幽霧の腕があった。 ………そう。腕だけ。 幽霧の拳は優衣の結界に穴を空けただけで、結界を破壊する事が出来ていなかったらしい。 安堵する優衣。そして、その顔は一瞬にして変わる。 幽霧は右の肘を後ろに下げる。しかし、右手は優衣の額に照準を合わせていた。 右手は親指に中指を引っ掛ける形となっている。中指に力と魔力を入れていく。 次の瞬間。幽霧は中指を弾き、中指を優衣の額にぶつけた。 優衣の頭に衝撃が走る。 なんと、幽霧は指に魔力を纏わせたデコピンを優衣に叩き込んだのだ。幽霧のデコピンは明らかに、有り得ない音がした。 幽霧にデコピンをされた優衣の身体は綺麗に飛ぶ。 そこには中指から煙らしき物が出ている幽霧と、額の一部が赤くなってそこから煙らしき物が出ている優衣がいた。 「優衣さん。大丈夫ですか?」 幽霧は消毒液に浸した脱脂綿を優衣の赤くなった額につける。 「痛い……痛いです………」 消毒液が染みるらしく、優衣は痛そうな声を出す。 とりあえず、幽霧は優衣の額に大きな絆創膏を貼る。 「あくまで応急処置なので、心配だったらちゃんと医務室に行って下さいね」 「はい……」 「幽霧くん」 声のする方を振り向く幽霧。 なのはは幽霧に笑顔で言った。 「私と………模擬戦しない?」 その瞬間、弥刀と優衣の顔が引きつる。 幽霧は全く顔色を変えず、なのはに尋ねた。 「別によろしいですが………何故でしょうか?」 あっさりと了解する幽霧に弥刀と優衣は唖然とした。 少し恥ずかしいそうになのはは言う。 「ヴィータちゃんたちは幽霧くんとしたことあるらしいけど、私はした事ないんだよね……模擬戦」 「自分としても楽しくないですよ」 ぼんやりとなのはを見ながら幽霧は言う。 「正直言うと、弥刀くんや優衣ちゃんが幽霧君と模擬戦しているのを見たら羨ましくなっちゃって………」 「はあ………」 なのはは恥ずかしそうに顔を赤らめ、幽霧に言う。 「私と………模擬戦してくれないかな?」 幽霧は瞼を閉じ、なのはに言った。 「わかりました」 「本当!?」 またもやあっさりと了承する幽霧になのはは喜ぶ。 「その代わり……30分待って下さい」 幽霧はそう言って、ポケットから一本のアンプルを取り出す。 そのアンプルには、「マンモスビンビン」とラベルが貼られていた。 「マンモスビンビン」を一気飲みして、幽霧は地面にねっころがる。 地面にねっころがりながら幽霧はなのはに言う。 「では。30分後に行いましょう。では、お休みなさいませ」 幽霧は瞼を閉じ、眠り始める。 「えっ。幽霧くん!?」 突然寝始めた幽霧に慌てるなのは。 弥刀は寝始めた幽霧を見ながら言う。 「あ~。30分経たないと起きないと思いますよ。それまでは緊急事態以外は起きませんから」 「え?」 弥刀の言葉になのはは唖然とする。 「とりあえず、待つ事をお勧めします」 「はい………」