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今日 - 合計 - 魔剣Xの攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 15時12分01秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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【妖魔陣】 妖魔剣豪 レベル:数 63:7 構成 名前 種類 レベル 初期付与 使用技 妖魔剣豪 妖獣 63 ▲ ▲ 一所懸命・極、n連撃・改、沈黙 妖法師 死人 60 反射結界 全体完全 妖界の歌姫 妖獣 60 ? 詠唱韻 操心鬼 死人 60 ▲ ▲ 結界 攻撃術 走屍 死人 60 ▲ ▲ 妖魔の番人 妖獣 60 ▲ 陽動 瘴姫 妖獣 60 結界 全体完全、蘇生 備考 ドロップアイテム 情報募集中 開幕他にも詠唱付いてるのいたはずなんですがSSが途中なんで分からず、見た方追加お願いします。 -- ななし侍さん 名前 コメント
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魔剣斬翔 生きたかった、帰りたかった、逝きたかった。 差し伸べられた手、白かったっけ、黒かったっけ。笑顔ってなんだっけ? ただ長くて綺麗な爪だけを覚えている。 あの手だけが、俺を導いてくれると、信じていた。 彼は後ろに寒気を感じる。穢れ無き瞳で無くともここまで現象化していれば嫌でも分かる。 ヴェイグは暴走しているのは紛れも無い事実。 しかし彼は振り返らない。振り返ってはいけない。 次に合間見えることがあるとすれば、多分どちらかが死ぬ時だろう。 月明かりに照らされた表情は光量が足りなくて判別しきれない。 眼を細め夜の向こうにようやく城跡を見る。 観測手は全てデミテルに任せていた。元々ロングレンジは彼の領域ではない。 ましてや一k以上先、しかも夜を裸眼で狙うことなど出来ない。彼は標準を合わせただけ。 ヴェイグに会わなかったら、帰るために、何の感慨もなく標準を合わせて引き金を引いただろう。 ヴェイグと再び出会う時が来ないことを、ティトレイは願った。 何故願うのかは、自分にも分からない。 来て欲しいから、願うのかもしれない。 その顔は、雨に濡れていた。 城跡にて相対する3人。一人が場を降りて新たなる一人が場に上がる。 「あんたがカイルのおっちゃんか?」 ロイドはスタンに背中に向けてクレスを見据え、双刀を構える。 スタンは失った血の分だけ気だるそうに肩を上下させる。 「…おっちゃんて、俺そんなに老けて見えるかな…」 『少なくとも実年齢に見合った感性はしていないがな』 おどけたようなディムロスの相打ち。戦いの最中に笑顔がもれる。 「黙っとけディムロス。…そう言う君は誰だ、敵か?味方か?」 スタンが笑顔から一気に真剣な面構えに変わり、乱入者を詰問する。 「カイルの友達だ!!」ロイドの表情も真剣そのもので、 「よし、一緒に戦おう!」スタンも真剣そのもので、 『ちょっと待てスタン!!』ディムロスが空気を読んでいなかった。 「どうしたよディムロス」何を起こっているのか分からないといった表情。 『こんなことを言うのは何だが少し初対面の相手を信用しすぎじゃないか!?』 ディムロスの発言は至極もっともで。 「いや、カイルの友達らしいし。あ、カイルって言うのは…」 『そうではない!…?…お前まさか今の今までそんな甘いことを抜かして来たんではなか…」 そこまで言ってディムロスはスタンの手が震えているのを感じた。 「…お前には、もう会えないって思っていた。怖かった…あの時、ジーニアスが死んだあの時から、ずっと。 何か、ほんの少し、怖かったんだ…」スタンの口から初めて弱音らしい弱音が漏れる。 スタンはここに来た四人組を信じられなかった。クレスが現れたから、だけではない。 襲いかかる敵という状況に、赤鬼と青鬼、守れなかった命を心の何処かで引きずっていた 今度こそ守る。敵は倒す。ディムロス無しでも、一人でも守り抜く。 その決意がスタンを微かに強張らせた。信じる強さを鈍らせた。 「お前と一緒なら何処までも行ける、行ってやるさ。何かあっても多分大丈夫だろ?一応ソーディアンだし」 『…この馬鹿者が』ディムロスはコアがこそばゆくなったような気がした。 少しだけ背伸びをしていた英雄が、友を得て元の田舎者に戻り、大人の時間は終わる。 「そういや、なんでお前喋れるんだ?アトワイトは喋れなかったのに」 『それは…』 ディムロスが声を発したその瞬間に、スタン目掛け地を這って衝撃が飛ぶ。 直ぐさまロイドが同じ魔神剣を放って相殺する。最初の魔神剣の先には、剣士クレスが構えを取っていた。 「そろそろ続きを始めてもいいかな?遺言にしては、些か長すぎる」その虚ろな瞳を見せて、クレスは笑う。 「おっちゃんは離れていろ。その代わり、後でジーニアスの話を聞かせて貰うからな」 ロイドは剣を強く握る。突然出てきたジーニアス、という単語に動揺が無いわけではない。 しかし先の父親の件同様、今は後回し、まずはこの戦いを終わらせる。 「君は…いや、それよりもあいつ、クレスはテレポートを使…ロイド君!!」 スタンがアドバイスを終えるより前に、クレスはその位置より姿を消した。 転移先は、ロイドの真上。既にクレスは剣を真下に構えてロイドを狙っていた。 剣と剣と剣、三刀が均等に交わり360度を6分割する。 「グッ!!」突然の攻撃を何とか凌いでロイドは蹌踉ける。クレスは追撃を緩めることなく、さらに翔転移。 右前方から横に薙ぐ。斬撃を何とか凌ぐロイド。 正面からの連撃と翔転移による奇襲。ロイドはただ踏みとどまることしか出来ない。 「ディムロス、俺たちも加勢しよう!このままじゃ彼が…」スタンがディムロスに訴える。 『だめだ。自分で分かっているんだろう?その怪我では十分に剣を振るえまい。 よしんば行ったとしても彼の足手まといだ。 クレスとやらもそれが分かっているからお前に手を出しに来ない』 あくまで冷静に判断するディムロス。その声はスタンだけによく響いた。 唇を噛み、沈黙するスタン。ディムロスの声は続く。 『………まったく。暫く見ないうちにここまで馬鹿になったか』 スタンは無言のまま剣を睨み付けた。 『私は唯の剣ではない。動かずとも手段は在るだろう?…今は、体力を温存しろ。隙は、必ず出来る』 スタンはハッとした表情を見せ、すこし嬉しそうにロイドの戦いを見据えた。 ディムロスに会えて、本当に良かった。 この地で総計何合の剣戟が行われたのか、数えるのも馬鹿らしいほどに回数がカウントされていく。 そう、剣戟が続いている。 クレスが十何度目かの翔転移を行う。上でも横でも後ろでもなく、地面ギリギリに屈んだ状態で 現出し、下から上に一気に切り上げる。 「でぇりゃぁ!!」 ロイドはモグラ叩きの要領で双剣を振り下ろす。弾かれる三本。 しかしより体勢を崩しているのはクレス。ロイドの右剣がクレスの肩を狙う。 あわや刺さろうかと言うところで、クレスがさらに飛び、二人の距離が開く。 ロイドは息を荒げながら鼻を鳴らす。 行ける。何となく、クレスの出てくる先が読める。ロイドは確信していた。 クレスの使っている技は紛れもなくエターナルソードと同質の技…つまりクレスは… ロイドが一瞬考え込んだ隙を逃さず、クレスはその場で剣を大きく縦に振り下ろす。 「次元斬!!」 発生する大規模な青い衝撃。ロイドはその何度目かの次元斬を見て一歩も退かない。 剣を構え直し、眼を瞑る。同じ力を得た存在ならクレスに出来て自分に出来ない訳はない。 「はあああああ!!」 双剣が青い輝きを纏う。クレスのそれより圧倒的に長さは無いが、紛れもなくそれ。 「‘次元斬’!!」 クレスの衝撃がロイドの一刀によって真っ二つにされる。同質の力のぶつかり合い。 城跡に再び埃が舞い上がる。 「…あんた誰だ。オリジンと契約したんだろ?何でこんな馬鹿な真似をするんだ!!」 ロイドは吼えた。ロイドはあの村でのあれを見ていない。故に何処かで信じる気持ちがあった。 スタンと同様、その剣質から一本気な性格が見て取れる。 そして何より、自分と同じ時空剣士としての無意味な親近感があった。 「そこの彼にも言ったが」クレスは剣をだらしなく下げて斜め上を見上げる。何を見るというわけでもない。 「僕がどんな理由を持っていたとしても、それは無意味だ。 少なくとも君に何の影響を及ぼさないし、僕にも影響を及ぼさない。 君は人を斬るその瞬間に一々理由を確認しながら斬るのか?」 ロイドもスタンも何も言わない。漸く埃が収まり、限定的に静寂が戻る。 「そんなんじゃ剣が鈍るよ。剣士とは剣を持つ者じゃない、剣になる者だ。剣に善意も判断も要らない」 「ふざけろ!そんなんで納得できるか!!」ロイドは涸れんばかりに怒号を上げる。 「………その強気な発言はどこから来るんだ? まさか次元斬もどきを撃てたからって僕に勝てるとでも?」 クレスは言い終わった瞬間に、飛んだ。ロイドは集中して転移先を読む。 「上か!!」ロイドは上空に向けて剣を構える。次は裁いて確実に剣をかえ――― 「襲爪!雷斬ッ!!」 次元の先から現れたのはクレスではなく、雷。ロイドの体内を電気が駆けめぐる。 声にならない叫びを発するロイドの胸に袈裟一文字に刀傷が刻まれ、ロイドは片膝と剣を付く。 クレスは処刑人の如く剣をロイドの首に添えた。 「時空剣士を名乗るには、少し経験不足だったね…さようなら」 「『フィアフルフレア!!』」 一瞬、クレスがロイドを殺すその一瞬、即ちクレスの至上快楽の瞬間、隙が生じた。 それを見逃すほど英雄は甘くはない。本物の晶術がクレスを襲う。 数コンマ遅れる判断、転移の間に合わないクレスは迷うことなく、剣を地面に突き立てる。 火の雨がクレスに降り注ぎ、クレスの守護方陣にぶつかって飛沫となる 発散する熱量と煙の向こうからクレスが姿を現した。その眼はスタンを捕らえている。 「術が使えたとはね…だが、ここまでだ、先に死にたいのなら望み通り…」 スタンの表情に気づいたクレスが不満そうな面をする。 クレスの向こうを見ているその視線が気に入らなかった。 クレスが流し目でそれを見て、眼を大きく見開いた。 「確かにあんたみたいにバリエーションは無いけどな…」 ロイドの体が再びオーラに包まれる。 「俺にも一個だけあるぜ、時空剣技」 オーバーリミッツを再開放し、瀕死の体に鞭を打つ。 二つの魔剣、契約の指輪―――全ての条件が整った。 「これで終わりだあああああああああ!!!!!」 ロイドの周囲に濃密な力場が展開する。 クレスは即その未見の技の恐ろしさを理解し、剣を盾とした。 「我が魂の輝きを、蒼き刃に変えて魔性を切る!虚空蒼破斬!!!」 しかし全てを打ち砕くようなその破壊力に蒼破斬の闘気は飲み込まれ、ダマスクスソードは砕け飛ぶ。 ロイドは飛ぶ、上空で双剣を二つに重ねる。夜を越えて光が、秘奥義が飛ぶ。 「天翔ッ!蒼破斬!!」 今、ここに、魔剣・エターナルソードが発動した。 斬撃と呼ぶにはあまりに大きすぎるその一撃がクレス目掛けて堕ちる。 ロイドの位置からでは俯瞰過ぎて表情が分からない。 武器は折れた。後は大打撃を与えてふん捕まえれば少なくともここの情勢は終結に向かう。 そしてみんなでネレイドを倒してメルディを助けられれば…俺がこの剣で 『ロイド!やめろ!!』 (オリジン!?) 『今すぐ剣を戻せ!!』 (何言ってんだ!?今なら…) 『これは罠だ!時空をねじ曲げて契約者が三人、多重契約になる!!』 (どういうことだよ!もうクレスは目の前…!!) クレスは目の前にいた。剣を持って其処にいた。 剣は青い時空剣技の波動に包まれてその形は分からない。 クレスの顔をロイドは見た。頬が裂けてしまうかのような笑いと。まるで底のない闇のような瞳。 その瞳はエターナルソードを真っ直ぐ見ていた。 揺り起こされる情景、深い森の向こう。 石碑、ダイヤモンド、ヴォーパルソード、フランヴェルジュ、 チェスター、アーチェ、クラース、すず、そして、そして、そして 「くっそあおあおあおあおあおおおお!!」 「あははははははははははははははは!!」 『く…これ以上ここにいては…ロイド!!今のままでは誰の契約も機能しない!新たな契約が要る! 精霊の力、エタ―――ソードの真の―――使することは出来るのは、最後の――だ!!』 力場が、閃光に包まれて爆散する。 柄の部分を残して金属バットは霧散した。 薄暗い部屋の中で、天上王はチェス盤を見ながらアルコールを摂取する。 「それ」を聞いて、満面の笑みを浮かべた。 「精霊王オリジン…今貴様に介入されては敵わん。自らのルールに従って、ご退場願おうか…」 雨が、城跡に降り注ぐ。東より来たる寒波と、ディムロスの晶術によって生じた熱量が 雲を生み、あり得るはずのない雨が降り注ぐ。 ロイドは眼を開け、自分が地面に這い蹲っているのを初めて理解した。 何秒気絶していただろうか。その答えを掴む前に、ロイドは 濡れた石畳の向こうにエターナルソードを見つけた。 ロイドはエクスフィアの付いていない方の手を伸ばして、 立つことままならない体を引き摺る。もうすこし… あと十センチ…親父… あと五センチ…父さん… コレット…あと一センチ… ロイドの視界に、突如誰かの足が落ちる。 足はロイドの伸びた手を踏みつけて圧力を加える。手の甲が、折れた。 ロイドの絶叫を背景音楽として、誰か、そう、クレスはゆっくり、ゆっくりと魔剣を掴む。 雨が豪雨に変わり、莫大な音に無音となる。絶叫も、クレスの声も何も聞こえない。 クレスの剣がロイドを手に掛けようとした瞬間、 スタンがディムロスを構えて突進した。その叫び声も聞こえない。 ギリギリまで温存した体力を全て使い、全てを力に。究極の連撃「殺劇舞荒剣」が走る。 それを見てクレスの唇が動く。誰にも聞こえない。その技の名前はスタンしか知らない。 カイルは突然の雨に漸く眼を覚ました。あの雷雨を無傷で生き延びた幸運をラビットシンボルに祈ることも しなければ、雨の心地良さに身を任せることを良しとせず、カイルは剣を構え、父の元へ駆ける。 ロイドに父のことを任せたとは言え、何が起きるか分からない。 ほんの少し眼を開くのも一苦労な、その雨の白の向こうに二つの影を見た。 切り上げと斬撃。「と、スタンさん…?」 刺突と蹴り。「スタン!」 蹴りと刺突。『スタン!』 突き上げと打ち払い。「スタンさん!」 切り下ろしと右袈裟。「父、さん…」 飛燕連脚と左袈裟。「父さん」 「父さん!」掌打と飛燕連脚。 虎牙破斬と虎牙破斬。「父さん!!」 切り上げと緊急停止、そして転移。「残念だけど、僕の殺劇舞荒剣はここまでなんだ」 魔王炎撃波が虚しく空を切る。 父さん!!!アルベイン流の殺劇舞荒剣の妙は技を途中で停止できる所にあった。 スタンの剣は締めの魔王炎撃波の慣性に縛られ、若干の遅れとなる。 緊急停止の反動を威力に変えて、魔剣によって精度を上げたクレスの翔転移は若干の速さとなる。 その差分だけ、スタンの体に大きな傷が刻まれた。 白い雨の世界に、少しだけ赤が混じって、すぐ白に流されて、英雄の体が、重力に降伏した。 「――――――――」雨の中、耳障りな無音と慟哭が伝播する。 雨は続く。英雄の血を押し流す。最初から無かったかのように。 父さん!眼を開けて父さん!しっかりして父さん!! クレスはその濁った眼を向けて、カイルに矛先を向ける。 カイルはそれを見ない、血を流す父親に必死で声を掛ける。 雨の音が五月蠅い、とクレスは感じた、とにかく五月蠅い。誰か半鐘の音を止めてくれ… 半鐘?なんで半鐘が…半鐘がなったのは――― クレスの動悸が速くなる。呼吸が荒くなる。雨に紛れて分かりにくいが唾液の流出が止まらない。 焼けた村、親友と走る、狩りの後、平穏の崩壊、 痒い、痛い、暗い、アミィ、父さん、母さん、僕は――― デジャヴと共に、デミテルの契約が、禁断症状が、ぬぐえない過去が、発症した。 カイルは憎悪に炎を燃やしてディフェンダーを掴む。 仇をじっと見据える。喉を押さえ、舌を突きだし、足を震わせてこちらを見ている。 まるで許しを請うような瞳。ふざけるなと、言う気もしない。 クレスはサックを取り出す。最後の希望を飲むために。 カイルは剣を薙ぐ。最初の絶望を飲ませるために。 サックが裂けて、どろりとした深緑の液体の入った小瓶が落ちる。 クレスはこの世の者とは思えない形相で、それを見た。肉体が思うように動かない。 クレスの眼下から消えたカイルは、神への礼拝のように剣を両の手で握り、それを振り下ろした。 縦に振り下ろされた剣の真横から、応力が掛かる。 矢が一本、カイルのディフェンダーの軌道を弾いて吹き飛ばし、 蔓が一本、地面に接触しかけた小瓶を掴んで、彼の元へ回帰する。 カイルは矢が飛んできた方向を見た。すでに豪雨は小雨になっていて、冴えた光景の中には 誰にもいなかった。カイルが後ろに五番目の男の存在を認識したのと、 ロイドが樹砲閃の「跳弾」を理解したのと、 ティトレイの轟裂破がカイルの体を吹き飛ばしたのは同時刻である。 カイルは水平にきれいに吹き飛んで、予想される着弾地点には、地面が無い。 元拷問部屋…最も城が城でなくなった今は「大きな穴」というのが正しい。 ティトレイは分かっていて其処に突き飛ばし、殺した瞬間を目撃しないですむ方法を選んだ。 少しだけ、心が痛んだような錯覚を覚える。 そんなティトレイの横で口から体液を覗かせながら、クレスは忍刀血桜を 投げつけた。血を求め、血によって痛みと渇きを癒す為に。 カイルが地面に落ちるよりも速く、カイルに刺さるよりもはやく、 ディムロスとぶつかって、速度を失した。クレスは躊躇い無く、忍刀を叩き落したそいつに エターナルソードを振り落とす。 雨が完全に、晴れた。久方ぶりに覗いた月光は、魔剣が背中に刺さった英雄を無慈悲に照らす。 金髪が月光に輝いて、 ロイドはただ叫ぶことしかできなくて、 クレスが刀を引き抜いて、 カイルと剣と刀はゆっくり下方への速度を強めて、 月光に顔が映る。 ロイドはただ吼え、涙を流す。 五体を切り裂こうとしたクレスの鳩尾をティトレイが突いて気絶させる。 カイルは視界が地下の壁に埋まる刹那、父親の最後の顔を見る。 完全な笑顔の、完全な英雄が、完全な父親としてそこに存在していた。 残された二人が、対峙していた。見上げるロイドと、見下すティトレイ。 先ほどまでの戦闘とは打って変わって静謐に包まれる。 「お前、誰だ…」ロイドが呻くように立ち上がる。瀕死状態で秘奥義を放ったロイドは、 その場にあったディフェンダーを杖として立ち上がるしかなかった。 「ティトレイ、お前らをあそこで火に掛けた奴だよ」 ティトレイは弓を装填し、ロイドに背を向けて散乱したクレスの所持品等を回収する。 「…ヴェイグの…ダチが何でこんな事をするんだよ…!!」 ロイドは呻く。4人で名簿を見回したとき、ヴェイグはティトレイのことをここでの唯一の仲間だと言った。 ティトレイは辺りを見回し、バルバトスの遺体の「それ」をディスカバリーする。 「元、な。元親友だ。俺は、恩を返してから死ぬ。それだけだ」 少し痛んではいるがまだ使えそうだ。どうやら遺体と床に挟まって誰にも気付かれなかったのだろう。 その証拠にこの遺体のサックが無い。少女2人のガサ入れを逃れたクローナシンボルが サウザンドブレイバーと天翔蒼破斬の衝撃によって、現出した。 「…じゃあ、先に死ぬか?」 回収を終えた、ティトレイは再びロイドの方を向く。 「絶対…諦めてたまるか…俺は、まだコレットに会わなきゃいけないんだ…」 ティトレイはほんの少しだけ眉を動かして虚ろな笑顔を見せた。 すぐに背を向けて、クレスを肩に担ぐ。 「俺を、殺すんじゃ無かったのか…」ロイドの声が少しだけ強くなる。 「気が変わった。一回だけ見逃してやるよ…次は無いぜ?」 ティトレイはサックからクレスのアイテムを取り出す。 「ふざけんな…てんめぇ…!!」 ティトレイは一切の反応を見せず、北の方の戦闘を見た。 「サービスで教えといてやる。ヴェイグが東の丘にいる…早くしないとエラいことになるかもな」 ロイドは驚きを隠さずに噎せた。ジューダスと一緒に別れたヴェイグが何でここに? 「信じなくても良い。ただ、俺は嘘だけは付かない。それが俺が俺だった最後の証拠だ。 それこそ信じる信じないはお前の自由だ…出来れば、あいつ、ヴェイグのことを…」 そこで口を噤んだティトレイは少しだけ驚きを表面に出して。 「いや、やっぱ止めとくわ。じゃ、がんばって生きろよ?」 ティトレイは少し力を込めてホウセンカとブタクサをありったけ咲かせた。 花粉と、弾ける無数の音が視界と音をかき消して、 ロイドが漸く眼を開けたときには、英雄の遺体だけが残っていた。 ロイドは声を上げて泣く。何故泣くのかは分からない、花粉が目に入ったからなのは間違いない。 ティトレイは西へ進み、海岸まで出てきた。クレスを下ろして、海を眺める。 「殺せたら殺してたんだがな…」 糸が切れたかのようにティトレイは腰を落ち着けた。 「樹砲閃、轟裂破、そんでフォルス…この疲れ…三つ星半だぜ。もー限界だ」 ティトレイは見逃す理由を探していた。殺さなかったのではない、殺せなかった。 サウザンドブレイバーによって精神力を、ダオスの最後の一撃によって体力を失い、 のろのろと歩くしか出来なかった為にジェイの侵攻を許すほど消耗していたティトレイには、 メンタルバンクルとエメラルドリングの補助を持ってしても、あれが限界だったのだ。 だから弱みを見せる前に逃げる必要があった。そういう建前がある。 「良い奴っぽかったな」 ティトレイはこれからの算段を立てる。やはりクレスは発症してしまった。 この薬を使えばとりあえず沈静するだろうが、今使えば次の発症は多分今日の正午。 それまでに万全の体勢が整うとは思えない。やはりクレスとの連携には鎮静剤の製造が不可欠。 原型はここにある。材料は元々自分が用意した物だから何とか作れるかも知れない。 調薬と調理はだいたい同じだろう、多分。昔取った杵柄と言う奴だ。 ティトレイは北を向いた。精神力ならすぐに回復するだろう。 歩けるくらいまで回復したら北の森…B2が塞がっているからC2に行く。 B3の方が隠れやすいとは思うが万が一C3が封鎖されて禁止エリアに包囲されるのは不味い。 出来る限りヴェイグ達から離れなければ…自分は、もう見ず知らずの少年を殺した。 もう復讐者ですら無い。ヴェイグ達から見れば…唯のモンスターと変わらないだろう。 その方が、幾分気が楽だ、と思った。最初から自分は人殺しなのだ。彼女を守れなかったあの時から。 「見殺しにした奴が惚れてた男じゃ、しょうがねえよな。なあ?しいな…」 本当は、もしあいつじゃなかったら、わざわざ花粉を使わずに無理してそのまま殺していた。 そう言う彼の顔は、少しも笑っていなかった。 ティトレイが殺したと思っている少年は、夢を見ていた。 もう見ることも無いと思っていたあの夢。父親が死んだあの日の夢。 しかし少しだけ違う。殺したのはバルバトスじゃない。 誰なんだろう…マントを靡かせて…すごくカッコよい大剣だけが鮮烈で。 でも、何かが欠落した夢。その光景には天使が欠落していた。 「父さん…リアラ…」 カイルは涙を流して、眠っている。外傷は殆ど無い。 父親の最後を見て、カイルは穴に落ちた。 落ちた先は、石床ではなく、もう少しだけ柔らかい「者」。 首の欠けた遺体の上で彼は眠る。今だけは、眠らせてあげよう。 これが幸運だったのか、息子達を守ろうとする父親達の意思だったのかはもう判別が付かない。 ただ、現象だけは説明できる。 彼が、カイル=デュナミスが持っていたラビットシンボルは跡形も無く粉砕した。 今だけは眠らせてあげよう。 どのような道を歩むことになろうと、彼が休まる時は二度と来ないのかも知れないのだから。 【カイル=デュナミス 生存確認】 状態:ロイドと和解 意識衰弱 HP45% TP60% 睡眠 悲しみ ずぶ濡れ 所持品: 鍋の蓋 フォースリング ウィス 第一行動方針:??? 第二行動方針:スタンを守る 第三行動方針:リアラを守る 第四行動方針:ハロルドが気になる 現在位置:E2城跡元拷問部屋 【クレス=アルベイン 生存確認】 状態:TP35%、善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 禁断症状 気絶 ずぶ濡れ 所持品:エターナルソード 基本行動方針:ひとまず禁断症状で苦しみたくはない 第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定) 現在位置:E1海岸→C2森 【ロイド=アーヴィング 生存確認】 状態:HP15% TP10% 意気消沈 右肩に打撲、および裂傷 右手甲骨折 胸に裂傷 疲労困憊 ずぶ濡れ 所持品:トレカ、カードキー ディフェンダー エターナルリング 基本行動方針:皆で生きて帰る 第一行動方針:状況の整理 第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動 第三行動方針:協力者を探す 第四行動方針:メルディの救出 現在位置:E2城跡 【ティトレイ=クロウ 生存確認】 状態: HP70% TP1% 感情希薄 ずぶ濡れ 所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック オーガアクス エメラルドリング 短弓(腕に装着) ミスティシンボル クローナシンボル クレスの荷物 基本行動方針:命尽きるまでゲームに乗る(優勝する気は無い) 第一行動方針:休憩しながら北の森に行き、クレスの鎮静剤を精製する 第二行動方針:クレスにヴェイグ殺しを依頼する 現在位置:E1海岸→C2森 拷問部屋にS・D、忍刀血桜が置いてあります。 エターナルソードに関する暫定ルール エターナルソード←→マテリアルブレードへの変換はロイドのみが可能 変換には所持してからの一定時間の精神統一が必要(敵から奪って即変換は不可) 多重契約による矛盾を回避する為どの時空剣士との契約も機能を一時凍結する 時空剣士(オリジンとの契約者)が一人になるまで再契約出来ない=真の力は使えない 多重契約状態でロイドに無理矢理干渉したオリジンの状態は不定 現状ではエターナルソードは時空剣技と相性の良いだけのただの高性能大剣 ロイド以外の二人が最後の一人になった場合、オリジンとの契約が可能なのかは不定 そもそも制限下で真の力がどこまで発揮できるか不定 【スタン=エルロン 死亡確認】 【残り17名】 前 次
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新暦 308年 (基本ルルブ) 310年 (博物誌) [ミストグレイヴ(四祖組)] [カースドランド(解放組)] 四祖組 ダーレスブルグの密偵として「霧の街」の地下ミストグレイヴへ 解放組 封鎖領ハウペリアにて魔剣サーペントイーターの行方を捜索 大量の麻薬を強奪、封鎖領の麻薬王として名を馳せる。 311年 四祖組 蛮王ヤーハッカゼッシュ死亡、密偵組「霧の街」奪還 ミストグレイヴに眠る終末神ロキトゥース滅殺 永劫神 クリス誕生、ジーズドルフ国王になる。 解放組 魔剣サーペントイーターを復活させる マーシャグラトニカの幻影を排除、《封鎖領》の呪い「暴食の膿夢」を解く。 《解放領》ゲルトルートに改名し、グラ=グララ=グラ 領主となる。 《解放領》廃都ルドゥラ・ルゥーを魔動都市ダナタリスに改名。 バン、黄角騎士団の団長となる。 312年 四祖組 アリア 失踪。 解放組 シルヴィア 《封鎖領》のザイア神殿を理由なく破壊。 《紫壁領》フォストリス、《解放領》へ冒険者を送り蛮族の掃討を開始する。 313年 解放組 シルヴィア 《封鎖領》城塞都市ヴィルトルードの蛮族を引き連れ魔動都市ダナタリスへ大移動 314年 解放組 グレンダール神殿から『武帝五輪の鎧』がバンへと献上される。 シルヴィア、グラ『武帝五輪の鎧』を略奪。 グラ=グララ=グラ 失踪。 グッサン、ゲルトルートの代理領主となる。 315年 解放組 シルヴィア、憤怒の性を受けアンピュルシオン氏族の一人となり 地下組織「ピカレスク」結成。 『武帝五輪の鎧』が神紀文明時代に造られた未完成の祭器だと判明。 317年 [カルゾラルの魔動天使](天使組) 天使組 遺跡で魔動天使を発見、イクスと名付け契約者となる。 傭兵軍、イクスとその契約者に先導され、カルゾラル高原へ進軍。 318年 天使組 無愛無垢アデライテ、リュッケンに向けて進軍。 魔動天使イクス 四皇九君「無愛無垢アデライテ」によって強奪。 ??? カオルルウプテにより、 理不神 シルヴィア爆誕。 『武帝五輪の鎧 完成計画』を実行。 ピカレスクの猟犬を作り、解放領を混乱させる。 319年 天使組 傭兵軍、湖の都ヌルメヒを奪還。 魔動天使イクス、契約者たちによって十翼の魔動天使へと覚醒。 魔動天使イクス、アデライテを斃し 希望神 となる。 希望神 イクス、使徒ホルムと共に布教の旅にでる。 ??? 理不神 シルヴィア、 飛将神 アレインガルド 銭神 ゼニゲヴァ、 共生神 ルイファを目覚めさせる。 旧き竜王フランシスを含めた5名に魔神王の魔剣の一部が封入。 324年 [フォルトナの勇者たち(勇者組)] ??? 〈理不神〉シルヴィア、遺失操霊魔法<サモンデーモンロード>で魔神王をフロルを媒体にラクシアに召喚する 〈理不神〉シルヴィア、武帝五輪の鎧に血を捧げ消滅。 勇者組 (四祖組)アリア、クロア、ノワール 超越者へ (天使組)イリア、レン 超越者へ 超越者たち、神々に世界で起きている数々の動乱の調査と解決を依頼される。 魔神王、ヴェノム・サーペントを創造する。 ラクシアが巨大の蛇に包まれ、魔界からラクシアへのゲートが開く。 魔神の大侵攻がはじまる。 【ヴェノム・サーペント事変 魔神戦争 】勃発 325年 勇者組 魔神王フロルとヴェノム・サーペントを完全に消滅させる。 330年 【機兵戦争】発生 331年 稲守の魔動機神(稲守組)
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No 名称 必要ランク 必要素材 数 必要条件 突然変異 工匠 合成 001 銅の魔鍵 【04】少工匠 D 魔法石 1 セトン鋼 1 這龍の牙 1 002 白銀の魔鍵 【07】工匠長 A 魔法石 1 パール鋼 1 天使魂片 1 003 黄金の魔鍵 S 魔法石 1 周回 金剛石 1 天使の輪 1 004 土精召喚石 新鮮な泥 3 クエスト023『アースマン生成』 研磨した土塊 1 魔法の砂 3 005 水質浄化促進装置 セトン鋼 1 クエスト030『シセティカ湖浄化計画準備』 魔法の砂 4 真珠石 1 雷獣の石骨 1 006 霊木の夾雑物 腐敗した皮革 1 クエスト025『同じ不純物の収集・発明』 紫の水晶片 3 霊木の枝 2 007 豪華な首飾り ラミアス石 1 クエスト047『豪華な首飾りの発明』 雷獣の石骨 1 霊石 1 浮遊石 1 008 豪華な指輪 リエン石 1 クエスト048『豪華な指輪の発明』 雷獣の石骨 1 太陽花 1 七色の糸 1 009 贈答用の名酒 高級木枝 2 クエスト011『娘からの贈り物』(エミリッタルート) 水精の涙 1 完熟林檎 1 010 幸せの花嫁衣装 白い魔術糸 2 クエスト012『幸せの花嫁衣装の発明』(エミリッタルート) フサフサの毛 1 銀色の髪の毛 1 011 浄水の触媒炭 青い水晶片 1 クエスト031『浄化の触媒炭の発明』(セラウィルート) 高級木枝 1 変色した血液 1 012 浄化機構の心臓部 真珠石 1 クエスト032『浄化機構の心臓部発明』(セラウィルート) 地獣の石骨 1 水精魂片 1 013 新型浄化機構 セトン鋼 1 クエスト033『新型浄化機構の発明』(セラウィルート) 巨大魚の牙 1 水獣の石骨 1 014 雷竜の鞍 石地龍の皮革 1 クエスト074『鞍作り』 蜥蜴の爪 1 弾力のある蔦 1 高級木枝 1 015 真納の器 アルブネア鋼 1 クエスト066『代替え品を用意しよう』 白魔法石 1 紫の水晶片 1 016 石材用の工具 鉱石 1 クエスト『石用研磨剤の発明』 高級木枝 1 鬼の爪 1 017 石の研磨剤 コルシノ鋼 1 クエスト069『石用研磨剤の発明』 水獣の石骨 1 018 光憐の気付け薬 太陽花 5 クエスト081『光憐の気付け薬の発明』 闇光花 5 虹色草 5 緑草 20 以降はアペンド【特殊錬金ディスク】導入時 019 真紅の魔導鎧 レイシアパール鋼 1 クエスト110『真紅の魔導鎧の発明』 監繰片 2 天使の輪 1 赤い水晶片 2
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作者:月下の人 ◆WXsIGoeOag 【前作】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】 【次作】 「変身能力…だと…!?」 「そうなんだよ。鎌田さんすごかったんだから」 「いやぁ…そう大したものでもないって」 カレーが煮立つまでの間、しばしの談笑。人間の姿に戻った鎌田はその強力な能力に係わらず謙虚で、 どこかの厨二病と違って大人だなと晶はつくづく思う。 「それでライダーっていうのは?」 「ああそれは僕の……地元でのあだ名でね。バイクには乗らないんだけどそれですっかり慣れちゃってさ」 「ああ…なるほど」 鎌田の変身した姿を思い出して、そのあだ名に深く納得する。 「おいちょっと待てよどんなのだよ、変身見せてくれよ」 「こら、偉っそうに言うな! 失礼でしょー」 「ん? いいよー別に」 軽い調子で言うなり鎌田は椅子から立ち上がる。直後、その全身がぼやけるように歪み、 「!!?」 まるで、それが当然であるかのように。 特殊な前振りも音も光もなく、その姿は一瞬にして昆虫人間に変化していた。 「こんな感じ」 「おおおおおおおっすげえええええええっ!!!!」 「………」 そこは「ふっ。昆虫をベースにした強化装甲か…なかなかおもしろい能力だな」じゃないのか陽太。 子供のようにハイテンションに叫ぶ陽太に、いつもの厨二はどうしたと内心ツッコミを入れる晶だった。 「バッタ!?」 「蟷螂!!」 晶も最初はそう言って、全力で訂正された。そこは鎌田としては絶対に譲れないところらしい。 しかし明るい場所で改めて見ると、すごい姿だ。 全身は元のサイズと変わらないのにも係わらず、その姿、特にその逆三角形の頭部は人間のそれと明らかに違い、 人間が装甲を纏うだけでは到底不可能な変化を見せている。まさに変身である。 「ちょっ、手ぇ触ってみてもいいか!?」 「いいけどトゲトゲしてるから気をつけてね」 関節部分は節となっている硬質な腕、その質感は金属よりも、有機質な骨に近い。 内側に並ぶ刺も緩やかな曲線も生物的で、昆虫の腕をそのまま巨大化したようだ。 その先端は、人間より小さな手の平から生える指。人差し指にあたる部分が、大型ナイフ程度の鎌となっていて。 カマキリのそれのようにギザギザの刃は、内側に折りたたまれて腕にぴったりとついている。 「カマキリって割に鎌はあんまでかくないのな」 「うん、あんまり大きいと生活に不便でしょ?」 「いや変身したまま生活しないだろ普通」 「ん……ああ、そうだねハハハ」 背中に生える翅は薄くしなやかながらも、容易くちぎれるようなものではなく。広げた内翅は美しく透き通っている。 服の背中に空いた穴は単純なものではなく、むしろ翅を出すために仕立てられているようで。 身体は変わっても服装は変わらない。変身する前から鎌田はこの背中に穴の空いた服装だったようだ。 ただでさえ寒さに弱いというのにこれは風通しがよさそうだ、苦労するなあと晶はしみじみ思った。 「これ飛べるのか!?」 「うーん…微妙。ほとんどジャンプの延長みたいな感じかな。空中制御とかゆっくり降下とかはできるんだけど…」 へえぇ! ほおぉ… と感心しきりの陽太。体中を観察されて当の鎌田は誇らしいような恥ずかしいような困惑したような、 実に微妙な表情を見せていた。いや、実際にはその虫の顔はほとんど変わらないのだが、晶には確かにそう見えた。 やがて満足したのか、うん、と呟いて離れる陽太。そして 「ところでライダー、変身ポーズとかねえの?」 「変身ポーズ?」 また変なこと言い出した、と晶は頭を抱える。そんなこと言われても真面目な鎌田は困るだろうに。 「…ああっ!!!! そうだよっ、何でその発想がなかったんだ!!」 「ちょ、あれっ!? 鎌田さん!?」 「おいおいポーズは変身の基本だろうが。しっかりしろよなライダー」 「うーん…僕としたことがうっかりしてた…」 「あのー…鎌田さん?」 キョトンと晶を見る、透き通った複眼。 「何だい晶君?」 「あの…陽太に合わせてくれなくてもいいんですよ?」 「いやあ大切だよ変身ポーズは」 「……さいですか」 なるほどこの人も陽太とは違うにせよ、なんというか…ヒーロー好き?な部分があるようで。 実際高い実力があるわけで何ら問題はないが、ちょっとだけ残念に思う晶だった。 「よし、じゃあやってみるかな!」 鎌田は少し考えると、両足を肩幅に開いて立つ。 両腕を顔の前でクロス。握りこぶしに力を込め、一気に腰の横に振りおろす。 「変身!」 その身体が一瞬光を放ち次の瞬間、人間の姿に戻った鎌田がそこに立っていた。 「どうかな?」 「ああ、悪くないが…変身解除するときにそれやってどうすんだよ」 「え? ……っと。そうだった」 「あと…腕の角度がもっとこう…」 「それじゃあ…こうしてこうして……変身!」 さっきと違うポーズで再び昆虫人間に変身する鎌田。どうやらあの変身に制限みたいなものはまるでないようだ。 「…僕カレー見てるね」 変身と解除を繰り返しながら熱い討論を交わす二人を尻目に、晶は冷めた顔で鍋を覗くのだった。 「ところで陽太君はどんな能力なんだい?」 やがて変身ポーズ議論は一段落し、鎌田が尋ねる。 「俺の能力は叛神罰当【ゴッド・リベリオン】。神に叛く力だ。そう容易く見せるわけにはいかねえな」 「へええ、そっか、それはすごそうだね。いつか機会があったら見せてよ」 「ふっ。機会があったらな」 陽太の偉そうな言いようにも動じない、しつこく追及しない鎌田はやはり大人だと晶は思う。 そんな陽太に晶の悪戯心が湧く。機会があったら、そう言うのならば 「あー! リンゴ買うの忘れたー! 陽太ー」 作ってやろうじゃないか、能力を披露する機会。 「陽太。カレーに入れるリンゴ忘れた」 「は!? どんだけ忘れてんだよ晶! 俺にどーしろってんだよ!」 「いーよ別に入れなくてもカレーできるし、辛口だけど。鎌田さんは辛口でも大丈夫ですよね?」 「…へ? ああ、大丈夫だけど」 「はいそんじゃ辛口カレーで」 「だあああもうわかったよ! 出せばいいんだろチクショー!」 悪い笑みを浮かべる晶と、キョトンとする鎌田。 「おいしいやつよろしくー」 陽太は精神を集中するためのいつもの動作、両手の平を胸の前で合わせる。目をつぶってさらに最大限の集中。 それは投げつけるための硬さや形ではなく、おいしく食べるための味を再現するため。やると決めたら陽太は真剣だ。 目を開き、少しずつ離される両手。その隙間には無数の光の粒子が乱雑に渦巻き、じわじわと丸い形に固まっていく。 やがて全ての光が融合し、消え去る。そこには一つの真っ赤な果実が残されていた。 陽太の能力を初めて見る鎌田は目を丸くする。 何度か見ている晶もこれには驚いた。いつもポンポン簡単に出しているが、じっくり集中して出した場合 これほど雰囲気のあるものだったとは。もっとも、出現したのはただのリンゴだが。 「ほらよっ!」 「どうもっ」 陽太がポンと投げたリンゴをキャッチしてニヤリと笑う晶。 ――ね、これが陽太の能力。食べたことのある食材が出せるんだって。変な能力ですよね―― 「…ん…えっ!?」 陽太がへそを曲げそうなので、鎌田だけに密かに能力を向ける。 驚いてきょろきょろと周囲を見回す鎌田。 ――で、これが僕の伝心能力。人や動物に直接心を伝えるんです―― 「へええ! すごい! まさに超能力じゃないか!」 ――いやあそれほどのものでも―― 「おい晶何コソコソやってんだコラ! 自信作なんだからちゃんと使えよ!」 晶の行動を察した陽太が怒り、晶ははいはいと笑って台所に引っ込む。 早々に能力を披露することになって、ばつの悪そうな陽太だったが。 「陽太君の能力もすごいじゃないか! 僕のなんかよりずっと役に立つ強力な能力だ!」 「そ…そうか…?」 「うん! 僕感動しちゃったよ!」 「…へっ」 掛け値なしに絶賛する鎌田から、まんざらでもなさそうに陽太は顔をそむけた。 やがて調理は完了し、三人賑やかに遅い夕食をとる。今回のカレーのできは上々だった。 ちなみにリンゴを買うのは忘れたが普通にあったので、そっちをカレーに入れた。嘘は言っていない。 能力のリンゴは冷やして剥いて食後に出した。当然文句は言われたが。繰り返す、嘘は言っていない。 なるほどあれだけ集中したこともあり、売り物と比べても遜色ないみずみずしく甘いリンゴだった。 「二人とも今日は本当にありがとう。カレーすごく美味しかったよ」 食事が終わり片付けも済んだのは日付が変わる頃。すっかり乾いたコートを身に纏った鎌田が立ち上がる。 「こんな時間から携帯探すんですか?」 「ああ、明日は休みで公園も人がたくさん来るだろ? そうなったら見つけるのは難しくなっちゃうからさ」 「ふーん……」 陽太は黙って立ち上がり上着を手に取る。察した晶もそれに続いた。 「え? 君たちもどっか行くの?」 「けっ。何言ってんだか」 「僕たちも手伝いますよ鎌田さん。三人で探せばきっとすぐ見つかります」 「知らないとこで凍死されても寝ざめが悪いからな」 「きっ……」 プルプルと震える鎌田。 「君たちはなんていい人たちなんだー!」 「おいっこらやめろこの野郎」 感極まった鎌田の抱擁を全力否定する陽太。そんな二人を晶は微笑ましく眺めるのだった。 「しかしよー、本当にここら辺にあるのか鎌田ー」 「うーん、ここでゴタゴタがあったときに落としたとしか考えられないんだよ」 「誰かが拾ってる可能性は?」 「落としたときは夜だったしあんまり時間も経ってないしなー」 しんと静まる深夜の自然公園で、ゴソゴソと草むらや茂みをかきわけ携帯電話を探す三人。 捜索を始めてすでに一時間以上が経過している。もはや見つからないのではないかという嫌な考えが頭をよぎる。 そんなとき、閉塞しつつある状況に変化をもたらす声がかかる。 「よぉ、また会ったなぁバッタ野郎!」 しかしその声の主は、救世主と呼ぶにはほど遠く。 振り向いた先にいたのは、ヤンキーとチンピラを足して2で割ったような三人組と犬一匹。 声を出したのは中心のモヒカン。左右のスキンヘッド、赤髪、そして赤髪がリードを持っている大きなシベリアンハスキー。 鎌田は額に手を当てて、はあぁ…と大きな溜息をつく。 「また君か。君に用はないんだけどなぁ。あと僕は蟷螂だって言ってるだろう」 「俺は用があんだよバッタ野郎! 正義だとなんだと好き放題しやがってよぉ! ブラッディ・ベル舐めんなやぁ!」 「カラーギャングだかなんだか知らないけどさあ、いい大人がカツアゲなんてするもんじゃないよ」 「ああっ!? てめぇにゃ関係ねえ話だろうが!」 「で、こんな夜中にわざわざ報復でもしにきたのかい? 仲間を少し増やしたところで僕に勝てるとでも?」 「でけえ口叩きやがって! こいつを見ろやぁ!」 モヒカンは乱暴に何かを取り出し、鎌田に見せつける。 「あっ!? 僕の携帯っ!!」 「ええっ!?」 慌てる鎌田を満足げに眺めて、三人組は揃って下卑た笑いを浮かべた。 <続く> 登場キャラクター 岬陽太 水野晶 鎌田之博 モヒカン(仮) スキンヘッド(仮) 赤髪(仮) 上へ
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作者:月下の人 ◆WXsIGoeOag 【前作】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】 【次作】 「――と、いうわけです」 「…なるほど。簡潔でわかりやすかったよ、ありがとう」 「ってオイィ! 俺のバトル端折りすぎだろオイ!」 「今は大して重要じゃないでしょ!」 「なんだと晶コノヤロウ! 俺がいなきゃどーなってたと思ってんだコラ!」 「まあまあ、その話は後で聞かせてもらうからさ」 鎌田は声を荒げる陽太を慌ててなだめると、腕を組んで悔しげな表情を見せた。 「そうか…比留間慎也はそんなことまで……」 「…ったく。次はお前の番だぞ。お前の調べでは比留間はどうだったんだよ」 「そうだったね。じゃあ次は僕のことだ」 そう言って椅子に深く座り直し、つられて陽太、晶も姿勢を正す。 「僕はたぶん、比留間の行った実験の事故か何かでこの世界に来てしまったんだと思う。 まず僕がこの世界に出現した場所なんだけど……実はさっきの自然公園なんだ。だいたい二週間前の深夜零時だった」 「さっきの…って近っ!」 「それから数分後、少し状況を掴みかけてきたところで集団の足音が聞こえてきて、念のために僕は隠れた。 その研究者らしい集団の先頭に立って指示を出していたその男が、後で調べてわかった、比留間慎也だったんだ」 「会ってたんですか!?」 「ああ、その時名乗り出れば今みたいな状況にはなってなかっただろうね。 でも何て言ったらいいのか、僕はその集団に……得体の知れない、何か嫌なものを感じたんだ。 何も知らずに姿を現すのは危険だって、僕の直感はそう判断した。君たちの話を聞いて確信したよ、僕の判断は間違っていなかった」 「奴の情報が掴めたのか!?」 「いや…掴めていない。ほとんど名前しかわかっていない」 晶は少しだけ拍子抜けする。だが次の言葉で深刻に引き戻された。 「彼の経歴データは……存在しない」 「えっ!?」 驚く晶と裏腹に、陽太は厳しい顔つきを崩さず黙って耳を傾けていた。 「彼は著書も、一般公開されている論文もたくさんある。図書館で普通に閲覧できたよ。 でもその学歴や過去の所属研究室に関するデータが、無い。探しても全く見つけることができないんだ。 しかも本でも論文でも、その点には全く触れられていない。これってどう考えても不自然だろう?」 「でっ、でも今所属している場所は…」 「とある組織の研究機関…だろ?」 「あっ…」 確かにそうだった。メディアに見る比留間慎也は、いつだってその点をぼかしていた。思えば自己紹介が、ほとんど自己紹介になっていない。 世界的な有名人なのに、その所属している組織名称は記憶のどこにも存在しないのだ。 「そこはさすがに調べれば出てきたよ。ホームページもあるし一応電話も通じた」 「え? なんだ…それなら…」 「架空の組織、だったんだ」 「えっ!!?」 「そうとしか考えられないんだよ。普通に調べても違和感がないレベルで偽装されているけどその全てが、現実には存在しなかった」 「そ…そんなことが…」 「顔と名前は誰もが知っているのに、その他の情報は誰も知らない。あまりにも得体の知れない男、それが比留間慎也だ」 驚愕の事実に晶は言葉を失い、陽太は肩をすくめて呟く。 「やはりか。俺も同じことになったんだ。奴のことをどう調べても、その組織の片鱗すら掴むことができなかった」 「彼を疎ましく思う個人や団体への対策ともとれる。だけど君たちの話を聞くに、どうやらそれだけの理由ではなさそうだね」 「キメラを街にばらまいて危ねえ調査、必要とあれば力づくで能力者を集め、異世界にまで手を出す。大した役得ぶりじゃねえか、比留間慎也!」 陽太は好戦的な笑みを浮かべ、握りしめた右拳をバシンと左手に打ち込んだ。 「で、でもそれだと…鎌田さんは今後どうするんですか? 何もわからなくて、もしわかったとしても直接会うのは危険じゃ…」 「いや、手がかりがゼロってわけじゃないんだ」 おずおずと言う晶に対して、鎌田は心配ないといった態度で、上着から折り畳まれた数枚のコピー用紙を取り出す。 広げたそれら書いてあるのは、主に大きなタイトルと数人の人物名。それは、一般公開されている比留間慎也の論文の表紙コピーだった。 「注目すべきは共同研究者だ」 それらの研究はすべて比留間個人のものではない。代表者である比留間の他、数名の異なる名前が連なっている。 数枚のコピーを二人でめくりながら確認し、そのほとんどに印刷されている人物名に気付いた。その名前は、 『 鳳凰堂 空國 』 「ほうおうどう…そらくに?」 「そう。鳳凰堂 空國」 「なんかまたゾロッとしたっつーか…偉そうな名前だなオイ」 そんな陽太に苦笑しながら鎌田は説明を続ける。 「この人物、鳳凰堂空國は、比留間の論文の最初期からずっと共同研究者として名前が載ってるんだ。いくつか本にも載っている。 恐らく、研究者として比留間にほど近い立場の人物。同僚か、直属の部下か、そういった感じだと思うんだ」 「でもそれって本人に会うのと同じことなんじゃ…」 「ところが。彼は数年前を境に、研究の場から姿を消しているんだ。そこから研究論文に名前が載ることは一切なくなった。 ただしその時期から、個人でこんな本を出している」 鎌田は新たな紙を取り出して、二人に広げて見せる。それは数点の本のタイトルリストだった。著者、鳳凰堂空國。 『すぐできる!人心掌握術』『リーダーの心得』『逆境を乗り越える本』…… 「………」 タイトルを見るに能力研究とはほど遠い、自己啓発本のように思われた。 「…これ本当に同じ人ですか?」 「そうそうないでしょ、この名前。時期的にも合ってるし。彼はこういう本を割と最近まで出してるんだ」 「なるほどな。つまりこいつは比留間に直接係わらず、比留間を知る鍵に成り得る」 「そういうこと。今後はこの人を調べて、会えるなら直接会ってみるつもりだ」 「ふーむ…」 さて、と呟いて、鎌田は紙を折り畳み上着にしまった。 「随分長くなってしまったけど、僕の話はこれで全部だ。何か質問は?」 「食事とか寝泊まりとかはどうしてたんですか」 「ああそれはまぁ……なんとかなってる。…そこそこお金は持ってるから…」 「で、でも…」 言い淀む鎌田を見て、晶の心配は募るばかりだった。陽太は少し考えるそぶりを見せ、パチンと指を鳴らした。 「なあ鎌田、俺たちと共同戦線を張らねえか」 「共同戦線?」 「お前も俺たちも敵は共通だ。いつ襲ってくるかわかったもんじゃねえ。だったら常に一緒に動いて迎え撃つのが得策だろ?」 「そうかもしれないけど…そうは言ってもさ」 「昼能力なら虫んなって鞄にでも何でも入ってられんだろ」 陽太は頭の後ろで手を組んで、ギィギィと椅子を揺らす。 「どーせこの家ににゃー親ほとんどいねーし。広さだけは無駄にあんだけどなー」 その言わんとすることに気付いて、陽太ナイス! と晶は心底思った。鎌田もそれに気付き、 「えっ!? いやさすがにそこまでお世話になるわけには」 「鎌田さん! 僕からもお願いします!」 間髪をいれず晶が畳みかける。 「一緒にいるのが陽太だけじゃさすがに心細いんです! 陽太の能力は結局アレだし、昼なんかさらにアレだし」 「アレってなんだコラァ! 万物創造【リ・イマジネーション】と叛神罰当【ゴッド・リベリオン】舐めんなオラァ!」 「はいはいわかったから。ともかく鎌田さんが一緒にいてくれたら今よりずっと心強いです」 「そうは言っても…」 ――もう一つあるんです!―― 普通の会話から流れるように続く晶の伝心能力。突然頭に響いた声で、鎌田の思考が中断される。 ――陽太の馬鹿、学校の授業中もくだらないことばっかり考えてるんで成績が散々なんです。特に数学とか酷くて―― ――鎌田さん高校生ですよね。あくまで中二レベルでいいんで、陽太の勉強見てやってくれないでしょうか?―― すばやく、陽太に気付かれないように。一息で晶は鎌田に心の声を伝えた。 鎌田は一瞬驚いた顔を見せたが、晶の意図を汲んですぐに正常に戻り。腕を組んで、深く考え込む。 それをじっと見つめる陽太と晶。やがて、鎌田は腕を解いてふっと力を抜く。 「確かに、比留間は脅威だ。きっと僕一人だけじゃきつい。戦っていくには君たちの力が必要不可欠だ」 「ふっ。まあ当然だな」 「偉っそうに言っちゃってもー…」 「陽太君、晶君、君たちの力を貸してほしい。僕もできる限りの力を貸そう」 「よし! 決まりだな!」 陽太は膝をパンと叩いて立ち上がり、少しだけ右手を見つめてぎゅっと握り、鎌田へと伸ばす。 それに応じて伸ばされるは、硬い外骨格に覆われた異形の拳。 「比留間の野望を砕くその日まで。よろしくな、鎌田!」 「ああ、お世話になるよ。これからよろしく、陽太君! 晶君!」 「よろしくお願いします。鎌田さん」 あらゆる可能性を生み出す無限の拳と、悪を打ち砕く異形【せいぎ】の拳。 突き合わされた二つの拳に、どんな試練をも突き崩す力強さを晶は感じるのだった。 こうして、僕と陽太に不思議な仲間ができた。 鎌田之博さん。自称、正義のヒーロー。異世界からやってきた、カマキリ人の高校生。 登校中の今、陽太の肩に乗っている小さなカマキリが彼だ。 平和な光景に見えるけれど、この瞬間にも比留間の計画は着々と進んでいて。 仲間の増えた僕たちには、今後、より大きな試練が降りかかることになるんだ。 さて、今日の話はここまで。この続きは、またいつか。 <おわり> 登場キャラクター 岬陽太 水野晶 鎌田之博 上へ
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作者:月下の人 ◆WXsIGoeOag 【前作】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【9】 【次作】 「いやぁ本当に助かったよ! 君たちは命の恩人だ」 ようやく陽太の家までたどり着き、とっくに片付けていたストーブを引っ張り出して出力全開。 少し汗ばむくらいの室温になってようやく青年は復活した。調子に合わせて前髪がみょんみょんと揺れる。 「いえその…元はと言えば僕の不注意が原因なので…」 「いやいや実はその前から凍えて動けなかったんだ。特に人より寒さに弱くって。晶君が気にすることはないさ」 恐縮する晶に対する非難は微塵も見せず、青年は二人に素直に感謝を述べた。 出会いは奇妙な形だったが、話してみれば明るい年上の好青年だった。 細い身体、細長い手足に、大きな丸眼鏡。陽太がどこからか出してきた丹前を着る姿が妙にしっくりくる。 酷く失礼なので考えないようにしていたのだが、上記の特徴に加えてもはや「触角」としか言いようのない前髪に、 背負った際の軽さも相まって、どうしてもどこか「虫」を連想してしまう晶だった。 「ユキヒロさんはどうしてあんなとこにいたんですか?」 「僕はまあ…ちょっと訳があって…」 青年、ユキヒロは、訳があって人を探す旅の途中だという。 しつこく訳を聞き出そうとした陽太は晶のチョップを受けることになった。 数時間前に、あの周辺で大切な携帯電話をなくしてしまったということだ。 「こんな寒い日は普段は暖かいところに避難してるんだけどね。何かあったらと思うと気が気じゃなくて」 確かに、予定のない旅の中で数少ない連絡手段となる携帯は必須だろう。 だがユキヒロのそれは、単純な連絡手段以上に大切なものであるように晶は感じた。 「でも携帯なら誰かが拾ってメモリーに連絡してくれてるかもしれませんよ?」 「もしくは悪い誰かに悪用されてたりしてな」 そして陽太は再びチョップをくらうのだった。 ユキヒロはハハハと笑いながら、そのどっちもないよと言ってのける。 「だってあの携帯は電話もメールもネットもどこにも繋がらない。ずっと圏外なんだよ。登録がないからね」 「…それ携帯してる意味なくね…?」 それには晶も黙って同意する。 「まあ確かにそうなんだけど…中のデータがとても大切なものでさ…」 呟くユキヒロの遠い目が、晶にはとても印象深く感じられた。 せっかくなので夕食を食べていかないかという晶の誘いに最初は遠慮したユキヒロだったが、 食材を買いすぎた、二人だけではつまらない、といった理由で晶がおして結局共にすることになった。 渋々動く陽太とは対称的にてきぱき働くユキヒロの助けがあって、調理はさくさくと進む。 やがて鍋に火をかけしばらく煮込むという段階に来て、晶があっと声を上げた。 「しまった…チョコ買うの忘れてた…」 「はあ? チョコ何に使うってんだよ?」 「カレーに入れるんだよ当然。重要なんだよチョコ」 「隠し味に入れるとコクが深まるっていうね」 ユキヒロが晶に同意する。晶は陽太の右手をじっと見つめる。 「陽太………」 「おいコラ晶。変なこと考えてんじゃねえよ」 「…は無理か。夜だもんね」 「昼でもやんねえよ!」 「…へ? 何を?」 陽太が言いたがらない能力――料理やお菓子を発生させる――を知らないユキヒロは、 二人の謎のやりとりに首をかしげるのだった。 ふつふつと煮立つ鍋を見つめて、晶はよしと立ち上がる。 「仕方ない! ひとっ走り買ってくるか! 10分くらいで帰るから陽太は鍋見ててね」 「おー、いってらっしゃい」 上着を着込む晶を陽太はぼんやりと見送る構え。ユキヒロの前髪がピクリと動く。 「あ、晶君、今は……いや…」 少し考えて、立ち上がるユキヒロ。 「僕も行くよ」 「え? いいですよ別に? どうせすぐ近くですし…」 「少し気になることがあるんだ。たぶん気のせいだと思うんだけど…」 「はぁ…」 「また凍えてもしんねえぞ?」 「大丈夫だよ、この丹前暖かいし。心配してくれて嬉しいよ」 「………けっ」 隠せていない照れ隠しにぷいと顔をそむける陽太。 ああこれがツンデレってやつか、としみじみ思う晶だった。 冷たい風にユキヒロが固まりかけることが何度かあったものの、無事にコンビニで板チョコを買った帰り道。 当たってほしくはなかったユキヒロの予感が実現する。 「え…なんで今頃!?」 垣根の角を曲がった先に、それは待ち伏せていた。闇に溶け込む漆黒の身体と、浮かび上がる紅い光。 比留間の言っていた「調査」は、少なくともこの周辺では終わったものと思っていた。 あの夜以来全く見ることは無く、晶の心配事から消えかけていた猛犬キメラ。 それが今、あの夜のように3匹、目の前で低い唸り声を上げていた。 「ごめん、晶君」 犬と晶の間に、陽太と違う長い腕が差し込まれる。 「こいつらの狙いは僕なんだ。無関係な君を巻き込んでしまってすまないと思ってる」 「え…狙いって…」 「そうだな…そこから3歩、下がってて。あまり離れると守れない。君を狙うことはないと思うけど…」 「はっ、はい」 「それと…あんまり驚かないでね」 「え…?」 踏み出しながらバサリと丹前を脱ぐと同時に、ユキヒロの雰囲気が変化する。 全身の柔らかいシルエットが、全体的に硬質なものに。 露出した腕を覆うのは肌ではなく、内側に無数の棘が並ぶ薄緑の装甲。 同じく薄緑の、背中から左右に一対生える、笹のような形をしたボード。 「ユ…ユキヒロさん…!?」 「もう少し下がって。……そう、そこがいい。そこでじっとしてて」 キメラと睨み合ったまま振り向きもせず、背後が見えているかのように的確に、ユキヒロは晶に指示を出した。 よし、と呟くと、半身に構えキメラと相対する。 「さて今日は…1、2、3………」 突如斜め後方の垣根から飛び出すキメラ。晶が声を上げる間もなくその牙がユキヒロの首筋にかかる、 その遥か前に、ユキヒロはその鼻先を裏拳で迎撃していた。 「4匹か」 間を置かず前から飛びかかるキメラをカウンターの膝から前蹴りで蹴り飛ばし、流れる動作で直後のキメラに踵落とし。 遅れたキメラの牙を、いつ手にしたのか短い鎌のようなものでガキンと受け止め、そのままその身体を回転投げ、最初のキメラに叩きつける。 余裕を持ったユキヒロはポツリと呟く。 「あれ?なんか動き鈍い…?」 すぐに体勢を立て直すキメラを回し蹴り、すくいあげるアッパーからのストレート、バックステップから掴んで投げ。 4匹を一カ所に飛ばすや否や高い垂直ジャンプから 「ライダーキック!!」 斜めに落下する飛び蹴りを叩きこむ。 直撃した1匹は大きく弾き飛ばされ、押された3匹はバランスを崩すがダメージ無し。 ユキヒロは首を捻りながら立ち上がった。 「うーん…やっぱりうまくいかないなあ…」 直後立ち上がったキメラは、申し合わせたように同時に夜の闇へと駆けだす。 ユキヒロは背中のボードを左右に広げて屈み、その下に隠れていた透明のボードを解放する。 大きく広がり形が明らかになったそれは、まさしく昆虫の翅だった。 垂直ジャンプと同時に翅を高速で振動させると、ブーンと大きな音と共に風が生まれその身体は空中へと舞い上がる。 すぐに到達した近くの電信柱の頂点に着地すると、キメラが逃げた先をじっと睨みつけた。 しばらくそうした後、もう大丈夫だと晶に伝え、翅を鳴らしながらゆっくりと降下し地面に降り立つユキヒロ。 ふうと息をつくその背中に、晶は恐る恐る声をかける。 「ユ…ユキヒロさん…あなた一体…」 「…そうだな、僕は…」 少し考えて、ふっと小さく笑い、振り向く異形。 薄緑の外骨格に覆われた逆三角形の頭部。長く伸びた触角に、大きな複眼。 「僕は鎌田之博。通りすがりのライダーさ」 人間とは一線を画する異形。昆虫人間の姿がそこにあった。 <続く> 登場キャラクター 岬陽太 水野晶 鎌田之博 上へ
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C.E78/5/29 西ユーラシア自治区ですれ違うはずであった運命の糸が絡み合う。 たった1度触れ合っただけのか細い糸、それが新たな糸と共に太く紡がれるとは、その時は誰も思ってもいなかった。 5/31、西ユーラシア自治区にあるMSハンガーでは、司令部より伝達された明日6/1のA.M8 00より開始される掃討作戦の準備のために統一連合軍が各々の機体の最終メンテナンスに取り掛かっていた。 「っふぃー。終わったー。カーディオン、この後どっかで飯食いに行くか?」 「いい……」 「…あー。おっ、あっちにあんのはスカイホークじゃねえか。ありゃ確か、採用前に試しに他の国で使わせたらすごいボロ負けしたいわくつきの機体って話だぜ。珍しいから見てみろよ」 「いい……」 ルシオルの会話にカーディオンは応じず、淡々と機体プログラムの調整を繰り返している。 なおも話を切り出そうとするルシオルにフォスタードが後ろから方を叩いて止める。 「ルシオル~、今はそっとしてあげなよ~。今回の作戦はカーディオンにとってはきついことなんだからさ~」 「んー。そりゃ、そうだけどよう…。だけどこのまま引きずったままって訳にもいかねえし」 「そうなんだよね~。カーディオンって結構デリケートな部分あるしね。ありゃ昨日のことが相当堪えてるよね~」 2人は昨日の出来事を思い出す。 ---5/30--- それは部屋を出たニール隊長が戻ってきて伝えた、指令部からの掃討作戦への出動要請から始まった。 カーディオンはひどく狼狽し、ニールに詰め寄る。 「どういうことですか、隊長!掃討作戦だなんて!」 「言った通りだ。明後日のA.M8 00より掃討作戦が行われる。私達の部隊もその作戦に参加することが決定された」 「テロを起こしたブルーコスモスは全滅して終わったのではないのですか!?それなのにどうして!」 掴みかからん勢いで詰め寄るカーディオンとニールの間にルシオルが割り込む。 「おいおい、カーディオン落ち着けって。らしくないぞ」 「隊長、わざわざ掃討作戦を行うということは、テロの他に何か不味い事でもあったんですか~」 ルシオルが押さえている間にフォスタードがニールに理由を聞く。 「テロの際に逃走した二人組みがブルーコスモスと敵対する他の武装勢力の可能性が浮上した。彼らが報復のために新たなテロを起こす危険性がある。司令部はそう判断したようだ」 「ですが何も町全域を攻撃する掃討作戦を行わなくても良いではないですか!ただでさえあのテロによって多くの死傷者が出て復興が遠のいたのに掃討作戦なんて行ったら、行ったら……」 また多くの人が死んでしまう。 カーディオンが言いかけた時、ニールがカーディオンの言葉を遮って話す。 「カーディオン……、お前の言いたいことは分かる。今回の掃討作戦がこの地域のためにならないということも。実際、今回の命令には反発も少なからず出ている」 「でしたら……」 「だが、私達は軍人だ。軍人は、上官からの命令は絶対でなければいけない。例えそれがどれほど非道で、不条理なものであってもだ…。そのために守るべき民衆に銃を向け、傷つけることもある。守るべき民衆から疎まれ、憎まれることだってある。それが嫌だからといって拒否することはできない、拒否してはいけないんだ。」 「……!!!」 カーディオンは気付いてなかった、いや、気付きたくなかった事実をニールから突きつけられて固まる。 「お前は優しい。しかしこの世界では、曖昧な優しさは弱さであり凶器だ。そう割り切れないといずれは、その優しさがお前を殺すことになる」 「……。申し訳ありませんでした、隊長……」 しばしの沈黙の後、カーディオンの口からか細く謝罪の言葉が漏れる。 「いや、良いんだ。こちらこそすまない。このようなことをお前達にさせることになって…」 ニールの言葉を最後に、その場は再び沈黙に包まれた……。 ---5/31--- 「それにしてもあんときのカーディオンの奴、様子が変だったな。普段は大人しい奴なのに」 昨日の出来事から思ったことを口にしたルシオルにフォスタードは自分の考えを言った。 「多分だけどさ~、一昨日見回りした場所に情が移っちゃったんじゃないかな~。ほら、逆境にもめげず頑張ってるの見ると自分と無関係なことでも上手くいって欲しいって思うことあるでしょ?」 「確かに無いわけじゃねえけどよー。ただそれだけって感じでもねえんだよなー」 「それだけじゃないって…、例えば?」 「いや、そりゃ分かんねえよ。ただ…何となくだ。それより問題なのはどうやってカーディオンを立ち直らせるかなんだよなー。フォスタード、何か良い手はあるか?」 ルシオルが頭を掻きながらフォスタードに聞く。 「時間があれば無いわけじゃないんだけどさ~、今回は時間が無いからね~。むしろ今回の作戦にカーディオンを出させない方が良いんじゃないかなーと思ってるよ~」 「出させないってお前な、昨日の話があったのに司令部からの命令を無視ってわけにはいかないだろ」 「命令無視なんかじゃないよ、ルシオル。君だってひょっとしたら今回の作戦に参加できなかったかもしれないだろ」 「俺が?……ああ、そっか!体ぶっ壊しちまったら命令を遂行しようがねえ、むしろジャマになっちまうから外してもらえるな」 「そういうこと」 「フォスタード、お主もワルよのう」 「いやいや、それほどでも」 二人が悪代官よろしくな悪い顔で小芝居に入ったあたりで後ろから声がかかった。 「二人とも何してるのさ……」 「ん?うぉ!カーディオン、いつからそこに!!!」 「ルシオルが命令無視云々って言ってるあたりからだけど。まさか、今回の作戦サボる気じゃないだろうね。そんなことしたらニール隊長に言いつけるよ」 カーディオンの普段と違う、抑揚の無い、冷めた声にフォスタードが慌てて弁明する。 「いやいやいやいや、僕らがサボるとかそういうのじゃないから。どうやって君を今回の作戦から外してもらえるかっていう話をしてたんだよ」 「僕を?何で?」 カーディオンの言葉はなおも冷たい。 「ほら、お前この間さ、今回の作戦にかなり反発してただろ。無理に出るよりもストレスだとか腹下したとかで体壊したことにして出ない方が良いんじゃねえかなって思ったんだよ」 「そう。でも駄目だよ。そんなことしたらニール隊長の評価が下がるじゃないか。短期間に部下二人が体調不良を起こしたとなれば隊長の管理能力に疑問符がつくよ」 「「あ”っ」」 二人は、自分達が考えた計画はそもそもカーディオンが受け入れないと話にならず、計画を実行したら隊長に悪影響を与える問題点に今更気が付いた。 「それに……」 自分達の考えなさに凹んでいる二人にカーディオンは言葉を続けた。 「それにもう良いんだよ、もう。割り切った…つもりだから……」 その時のカーディオンの言葉は先ほどまでの抑揚の無さとは別に、哀愁を漂わせる声だった。 戒厳令が敷かれていても人の口に戸は立てられないものだ。 統一連合軍が近々掃討作戦を行うという情報が細々と町に流れたが多くの人々は町を離れなかった。インフラは事前に停止されていたこともあるが自分や家族が怪我や病で動けない者、行く当てが無い者、死ぬならばこの地でという土地に愛着のある者が西ユーラシア自治区には数多くいたからだ。 そんななか、廃倉庫の前で老人が若者と口論になっていた。 「祖父ちゃん、こんなことしてねえで早く逃げねえと駄目じゃないか」 「お前は息子のところに行っていろ!ワシはここで統一連合の輩を迎え撃つんじゃ!」 「まだそんなこと言ってんかよ。相手は統一連合だぞ!?勝てるわけ無いだろ」 「あんな輩、所詮は烏合の衆にすぎん。戦場の踊り子(ウォーダンサー)たるこのワシが出れば奴らは震え上がり、尻尾を巻いて逃げ出すわ!!!」 「そりゃ昔っから散々聞かされた法螺話だろ!現実と区別が付かなくなるほどボケたのかよ、祖父ちゃん」 「ボケとらんわ!この阿呆が!!!お主にその話が本当だということを教えてやる良い機会じゃ。わしのラゴウートで奴らを全員追い出してやるわ!かっかっかっ!!!」 老人ことグレスゴリー=F=デルストスはそういうと倉庫のシャッターを開いて中に入っていく。 「あーもう。こんなことになるんだったらあんなガラクタとっととばらして売っぱらっとくんだった……」 祖父の性格を知っていながら何もしなかったことをグレスゴリーの孫は頭を抱えて後悔していた。 ---6/1--- A.M8 00 統一連合による掃討作戦が開始された。 ムラサメ1機、スカイホーク2機、ウィンドランナー1機、ルタンド6機、ピースアストレイ6機、ウィンダム3機。総勢19機による3方向からの攻撃で、航空MSが町に空爆を行い、後方のMS隊が追従する。 カーディオンたちが乗る3機のウィンダムは正面の後方部隊であった。 ルシオルは機体を進めながらフォスタードと通信を繋いで、話していた。 「それにしてもよ、上も何考えてんだか。俺らの部隊だけ隊長を切り離して、隊長だけ爆撃の方にまわすなんてさぁ」 『爆撃の担当はスカイホークと隊長のウィンドランナー。確かにムラサメと比べれば爆弾とかの積載量は多いけどねぇ。それよりも、爆撃みたいなマイナスイメージは大西洋連邦に被せちゃえって感じなんじゃないの?』 「ったく、ひっでーよなー。」 二人が雑談しているところにカーディオンからの通信が入る。 『二人とも、気が緩みすぎだよ。作戦はもう始まってるんだから気を引き締めて』 「ああ……、悪い悪い。」 カーディオンのまだ冷たさが残る言葉に普段のカーディオンとは違うものを感じ、ルシオルは一抹の不安を覚えつつも謝る。 (こいつ、絶対無理してると思うんだよな。何かと自分の中で溜め込むし。根が真面目だとこうなるもんなのかねぇ……。) 自分が不真面目な奴だと自覚しているルシオルが考え込んでると、カーディオンが突然話しかける。 『ルシオル、なんか言った?』 どうやら頭の中で考えていたことが小声で零れていたらしい。ルシオルは慌てて弁明する。 「いや、ただこのまま何事も無く済めばいいなって思っただけだ」 『ルシオル~。僕らがそういうことを言うと決まってなんか起き……』 ルシオルをフォスタードが茶化そうとしたその時、一際大きな爆発が響き渡る。 「……。爆撃にしちゃ…ちっとばかりでかくねえか、あれ」 『そ、そうだよね……』 『違う、撃墜されたんだ!』 掃討作戦を指揮しているレーデ准将は飛行船「ストラリムジン」で高高度から爆撃の光景をゆったりと眺めていた。 「指示一つで他者を一方的に蹂躙できるこの快感。やはり掃討作戦というのは気持ちの良いものだな」 「ですが准将。何も自ら出向かわなくてもよろしいのでは」 愉悦に浸るレーデ准将に対して部下が進言するが、レーデ准将は溜息混じりに答える。 「全く、分かっていないな、君は。今現在起きている生の映像だからこその感動なのだよ。事前に撮影した映像ではその感動も半減してしまうではないか。私が楽しみにしているのは既に決まった結果ではなく、次に何が起きるのかということなのだよ。もっとも、私の予定を大きく逸脱しない範疇で、ではあるがね。それにだ、このストラリムジンには対ビーム加工を施してあるうえに通常のMSでは届かない高高度を飛行している。奴らは目の前の敵に気を取られて気付かんし、気づいたとしても攻撃する手段が無いのだよ。」 レーデ准将はそう言うと、再びモニターの方に目を向けた。 画面にはスカイホークが順調に町を爆撃し続けている様子が映し出されている。 「しかしまあ、ここまで無抵抗で一方的な展開ではつまらなくなってくるがね。」 そのとき、爆撃を続けていたスカイホークが墜落した。 「ん?いったい何が起きた?」 レーデ准将の問いにオペレーターは戦況の変化を報告する。 「どうやら町に潜伏していたテロリストによる攻撃のようです。現在確認されている機影は東部と中央部に1機ずつ、西部に4機です。先ほどの攻撃でイーストワン部隊のスカイホークがシグナルロスト、追従していたルタンド隊が交戦状態に入りました。同様にウェストワン部隊並びにセントラルワン部隊もそれぞれ交戦状態に突入しています」 「そうか。ならばイーストワンの支援にイーストツーを、ウェストワンとセントラルワンの支援にウェストツーとセントラルツーを向かわせろ。それと、待機させておいたスネイルを投入する」 「スネイルを…ですか?了解しました」 オペレーターはレーデ准将の出したスネイル投入の指示を戸惑いながらも実行に移す。 「こういうのが無くては面白くない。精一杯反抗する輩を圧倒的な力で蹂躙してこそ、最高の感動となる。スネイルの試験もできて嬉しいよ」 地上からイーストワン部隊のスカイホークに追従していたルタンド小隊は前方の倉庫から放たれたビームがスカイホークを撃ち抜いたのを確認していた。倉庫の爆炎が晴れて見えたのはガズウートの上半身であった。その胸部には踊り子のマークが刻まれている。 「何でこんなところにガズウート、いや、MSが!?」 「落ち着け。所詮は木偶の棒のガズウートだ。この距離なら容易く破壊できる」 慌てる隊員を小隊長が落ち着かせる。 格闘兵装を持たない遠距離支援機であるザウートタイプの機体にとって、近づかれることは死と直結する。 本来は弾幕を張って相手を近づかせるべきではないのにあのパイロットは自分達がここまで近づいているにも拘らず姿を現した。 よっぽどのど素人か馬鹿か、あるいは自殺志願者なのだろうと小隊長は侮っていた。 それが誤りであったことはすぐに身をもって知ることとなる。 「っけ、踊り子のエンブレムなんかつけやがって。デブの踊りなんか見たくもねえんだよ。とっとと消えろ!!!」 建物がジャマで一直線に接近することはできないがガズウートの鈍重さを考えれば接近せずとも今の位置からビームライフルを撃つだけで事足りる。 そう思って放った一撃は虚しく空を切ることとなった。ガズウートらしからぬ俊敏な動きでかわされたのである。 「あれがガズウートの動きか!」 小隊長も焦ってビームライフルで撃つが1発も当たらず、反対にガズウートのビーム砲で僚機のルタンドが撃ち抜かれて爆散する。 ルタンドの視界からガズウートの下半身を隠していた建物が外れる。そこでその小隊長は信じられないものを目の当たりにした。 そのガズウートは、上半身こそはガズウートのものであったが本来あるべき下半身が無く、代わりにラゴゥのボディーが存在した。 「隊長!何なんですか、あれは!!!」 「私に聞くな!分かるわけないだろ!」 残った2機もひどく混乱している間に、ガズウートを背負ったラゴゥが間を通り抜け際に展開したビームサーベルで両断され、爆発の中に消えた。 ルタンド小隊を瞬く間に屠ったグレスゴリーはガズウートを背負ったラゴゥ、通称ラゴウートを駆って上機嫌であった。 「かっかっか!見たか、統一連合の有象無象どもよ!これがワシの自信作、ラゴウートじゃ!!!これから戦場の踊り子(ウォーダンサー)が主らを1機残らず叩きのめしてやるから覚悟しておれ!行くぞ、ラゴウート!!!」 グレスゴリーは新たな獲物を探すため、機体のアクセルを全開に吹かして突っ込んで行った。蛇足だが、全周波通信で流していた先ほどの口上は、ラゴウートの通信機の故障で周囲に全く伝わっていないことを彼は知らない。 シンはムラサメとピースアストレイ3機の小隊と対峙していた。 3機のピースアストレイが統率された動きでシンのシグナスに向けて一斉にビームライフルを放つ。動きの様子から無人機であろう。 シンはその射撃をかわしながら初撃で指揮官であろうムラサメを墜とせなかったことを歯噛みする。 本来、対暴徒用として運用される無人のピースアストレイは指揮官機からの命令を受けることによって対MS戦を可能としている。逆に言えば指揮官機さえ撃墜すれば無人のピースアストレイは対MS戦においては無力に等しくなる。 「クソッ!レイがいないとここまで精度が落ちるのかよ。だったら!」 相方の不在に愚痴をこぼしながらシンはシグナスのスモークディスチャージャーで煙幕を展開した。 ムラサメのパイロットはシグナスが交差点に向けてスモークディスチャージャーを展開して突入するのを確認する。 「煙幕か。逃げる気だろうが、そうはさせん!」 交差点の分岐点を煙幕に隠れて逃げる。そう読んだムラサメのパイロットはピースアストレイにその逃走ルートを塞がせたうえでビームライフルを掃射するようコマンドを送り、自身も残るルートにライフルを向ける。 後は出てきたところを撃ち抜くだけ。とっとと結果を出して、こんな辺境に左遷した奴らを見返して、そして悠々と本国に返り咲こう。 そう考えていたパイロットの読みは呆気なく崩れることになる。 煙幕から放たれたビームに反応の遅れたピースアストレイの1機が胸部を撃ちぬかれ、爆散する。 さらにムラサメのパイロットが新たなコマンドを送る前に煙幕からシグナスが対艦刀を構えたまま出てきてもう1機に振り下ろし、両断する。 コマンドを受けた残る1機がビームサーベルを抜いて切りかかろうとしたが、それよりも速くシグナスが腰から取り出したビームサーベルに胴体を切り落とされた。 指揮していたピースアストレイがわずかな間にたった1機のシグナスによって全滅した。 その事実にムラサメのパイロットが驚いている間に、シグナスは煙幕の中に再び入っていく。 今度はいつ・どんな攻撃をしてくるのか、ムラサメのパイロットには分からない。今までマニュアル通りにしかこなして来なかった彼が唯一つ分かったことは、このままだと自分は死ぬことだった。 展開した煙幕の中でシンはビームライフルの照準をムラサメに定める。 煙幕の影響で若干狙いがつけにくいが問題は無い。後は引き金を引くだけ、容赦はいらない。 シンがトリガーを引いたとき、ロックオンされたことを示すアラームが響いた。 思考より先に反射的に機体を動かしたために狙いがずれ、ビームはムラサメのライフルを撃ち抜くにとどまる。 「ミサイル!?くそっ、増援か!」 煙幕を抜け出し、シンの目に映ったのは小型の戦闘機を思わせるミサイルであった。 あんなサイズのミサイルをまともに受けたら追加装甲を持つこのシグナスでもひとたまりも無い。 シンはシグナスのバルカンで撃ち落とそうとするがそのミサイルは弾幕をバレルロールで華麗にかわして接近してくる。 ただ撃っても当たらないと分かったシンは、2発目のスモーク・ディスチャージャーで展開した煙幕の中にミサイルを誘導してセンサーを殺し、左腕のスレイヤーウィップで絡めとったシールドに衝突させることでようやくその攻撃を防いだ。 大型ミサイルを防いだのも束の間、シグナスのレーダーがムラサメと異なる、大西洋連邦のシグナルを出す機体の接近を知らせていた。 「っく、やはりシブーだけでは無理があったか。本来ならヴェスペも欲しかったところだが」 今回のウィンドランナーは両翼のマウントラック全てに爆撃用の爆弾を搭載しており、普段の装備は全く無い状態であったことをニールは歯噛みした。両翼に装備するものはまだ良い、しかし両腰に装備する誘導ミサイル「カズー」まで命令で爆弾に換装させられていたのは本当に痛かった。 いくら精密性と自立回避能力に秀でた対地対艦ミサイルである「シブー」であってもただそれだけで使うのではその効果も大きく薄れてしまう。 せめて他のミサイルもあればと思いながらも両翼に抱えた爆弾を切り離し、機体をMS形態にしてムラサメに通信を繋ぐ。 「こちらは大西洋連邦所属、ニール=アスカロン大尉。敵機撃墜に協力する。返答を求む」 『こちらは先の戦闘でピースアストレイが全滅した。本機も被弾している!増援を呼んで来るから貴官は足止めを頼む!』 ニールの問いかけに対してムラサメのパイロットはそう言うと、その場を離れていった。 有無言わせぬ返答にニールは驚きこそしたがシグナスが追いかけようとしているのを確認し、ビームライフルで牽制する。 〈できれば、生きているうちに増援が来てくれると良いんだがな。〉 大西洋連邦のウィンドランナーを置いて逃げていくムラサメを見てシンが呟く。 「何だよアイツ、逃げやがった。オーブも落ちたもんだな。」 自分が知っているオーブ軍は、戦いで敵前逃亡するような者はいなかった。 心の奥底ではそう信じていただけに、裏切られた感じがして無性に腹が立つ。 落ち着いて考えれば増援を呼びに言ったと考える方が妥当なのだが、いらついているシンにはそのような考えよりも逃げたという印象の方が大きかった。 逃げたムラサメを追いかけようとするが、ウィンドランナーのビームライフルがシグナスの前の地面を穿つ。 「んだよこいつ、ジャマをするなー!」 シンはビームライフルで反撃するがニールのウィンドランナーにことごとくかわされる。 〈こいつ、さっきの雑魚とは違う!〉 頭に血は上っていても、パイロットとしてのシンの本能がわずかな間に相手がエース級の腕であること、だがそれもあのキラやアスランのような圧倒的な実力は持っていはないことを見抜く。 自分がここまで手こずっているので、自分の腕が鈍っているのかと不安になるがすぐにその原因に思い至った。 それは、相手がこちらを撃つ際に射撃体勢に入っていないことだった。 口で言えばどうということは無い様に思えるが、射撃戦において反撃の大きなチャンスである、射撃体勢という隙が無いということは、こちらが攻撃する機会が大きく減ることを意味している。 相手の狙いが甘ければ時間の浪費以外に大して意味はないのだが、目の前のパイロットは下手なパイロットが狙って撃つよりも精密に攻撃してくる。 しかも、格闘戦に持ち込みたくても空を飛ぶウィンドランナーのパイロットもそれは分かっているようで接近してこない。 〈こりゃ長くなりそうだな……〉 シンが長期戦になると思ったその時、出撃前にコニールから渡されていたインカムに通信が届く。 「コニールか、町の人たちの避難は終わったのか。悪いけどすぐには行けそうにも……」 『シン!……早…来…!!!……』 聞こえてきたのは悲鳴にも似たコニールの、助けを呼ぶ声であった。コニールが叫んだ台詞は激しいノイズの所為で途中から聞き取れなくなり、通信も途絶える。 「コニール!何があったんだ、コニール!!!」 シンはその通信記録からコニールの位置をシグナスに割り出させる。 今、自分たちは統一連合の掃討作戦で追われている身。その一人である自分がこの機体に乗っていることを知らず、もう一人を見つけたとなればそちらの方へ行くのは十分ありえることだ。そうなれば危険なのはシグナスで統一連合への囮となる自分ではなく、MS相手に戦う術を持たないコニールのほうなのは明らかなはずであった。 〈畜生。何でそんなことにも気が付かなかったんだ、俺は!〉 シンは愚かな自分に怒りを覚えつつ、残り1発のスモーク・ディスチャージャーで煙幕を展開した。今、目の前にいるウィンドランナーを少しでも引き離してコニールの下へと向かう為に。 来るか…… シグナスが煙幕を展開したのを見て、ニールは相手の攻撃を警戒を強める。 周囲の大破したピースアストレイから、あのシグナスには相当の手練が乗り込んでいることは分かっている。下手に接近すると思わぬ一撃を受ける危険性があった。 そこでニールは両腰に残しておいた爆弾を煙幕の中に落としてシグナスを炙り出すとともに、その爆風で煙幕を一気に晴らす。 そして、ニールは煙幕から出てきたシグナスをウィンドランナーをMA形態で追うが、シグナスはホバー移動で滑る様に走りながら、こちらを向いてバルカンとビームライフルで追いかけるウィンドランナーに応戦する。 〈あの動き、本気で逃げているようには思えん。私を誘っているのか?だかどこに?どちらにしろ、これ程の手練をここで逃してしまったら後々大きな厄災となる。逃がすわけには行かない!〉 相手の思惑がわからないニールであったがかまわずシグナスに向けてビーム機関砲とビームライフルを掃射する。 その攻撃をかわしながら下がり続けていたシグナスだったが、突然全力で前進した。 追いかけていたシグナスを一気に追い抜く形となり、ニールはウィンドランナーをMS形態に変形させて制動をかける。その時、ウィンドランナーの大きな爆発音が響いた。 一体何が起きたのかと振り返るが、爆発跡にもその周辺にもシグナスの姿は見当たらない。 そんな中、機体のアラームが頭上からの敵の接近を警告する。ニールはまさかと思いながら上部のモニターを見やる。 そこには追加装甲を脱ぎ捨てて身軽になったシグナスの姿が映し出されていた。 ニールは爆発が起きた場所に何があったかを思い出す。 〈確か、私はあの近辺に邪魔な爆弾を破棄したはずだ。まさかそれが爆発せずに不発弾として残っていたのか。奴はそれを知ってここに誘導して爆発を機体が跳ぶ際の浮力に利用したのか。〉 シグナスは既に右手に対艦刀を持って斬りかかりに来ている。 初動で遅れてしまったために、ビールライフルで撃ち落とすことも、かわすこともできない距離にまで近づかれてしまった。ならばとニールはシールドに内蔵されたビームソードを展開してシグナスに体当たりを仕掛ける。 シグナスとウィンドランナーが空中で激しくぶつかり合う。 「この機体を、ウィンドランナーの力を甘く見るな!」 ニールは叫びながらブースターを踏み込んでシグナスに押し切られないようにしながらシールドの湾曲でシグナスの軌道を無理矢理ずらす。従来の航空MSと比べて大型で、パワーがあるウィンドランナーだからこそできたことであった。もしこれをムラサメでやろうとしたら、そのまま押し切られて両断されていただろう。 そのまま地上に落下するシグナスの落下予測地点に向けてビームライフルを撃つ。しかしシグナスは本来の軌道を取らずにウィンドランナーの下へ潜り込む様な軌道を取り、かわした。 突然、ガクンっと機体に重りでもついたかのような感覚に襲われる。見ると、ウィンドランナーの左足にシグナスの左腕から伸びるスレイヤーウィップが絡み付いていた。 シグナスはそのスレイヤーウィップ支えに落下の軌道を変え、着地の衝撃を殺したのだ。 「っく、それならば!」 ニールは咄嗟にスレイヤーウィップが絡みついたウィンドランナーの左足をビームソードで切り落とす。決して無視できないダメージだが高周波パルスで機体そのものが破壊されるよりはずっとマシだ。 切り落とされた脚部に高周波パルスが流れ込んで赤熱し、数瞬遅れて爆発する。 急激な重量変化で崩れるウィンドランナーの体勢をニールが立て直しているうちに、地面に着地したシグナスは見る見るうちに離れていった。 「助かった…のか」 逃げられた、ではなく助かった。無意識にそう言っていた自分にニールは少なからずショックを覚えていた。自分ではあの手練を討ち取れない。その事を自覚してしまったからだ。 追う気であれば追いつくことも可能だろう。だが、その後討ち取ることができるのか?敗北を自覚してしまった自分で。 「あんな自爆覚悟の手段で攻撃してくるとはな。正気の沙汰とは思えん……。このダメージでは残念だが、一度帰還したほうがよさそうだな。奴が向かった方向は…ウェスト1が展開しているエリアか。……ウェスト1?不味い!ウェスト1にはセントラル2が支援に向かっている!このままでは挟み撃ちに!」 部下に迫る危機を感じ取ったニールは損傷を抱えたままのウィンドランナーをMA形態に変形させ、既にかなり離されているシグナスの後を追いかけた。 シグナスから増援を呼ぶと理由をつけて逃走したムラサメのパイロットは、他の部隊が集中していたウェスト1へ機体を走らせていた。 「ここまで逃げりゃあの化け物もすぐには来れないだろう。さてと、一応増援を呼びに行った事になってるからな、確か他の部隊が指令でここら辺に……」 ムラサメのパイロットが見つけたのは、大西洋連邦に所属する3機のウィンダムであった。 〈セントラル2か。確かあの化け物を足止めしている機体も大西洋連邦だったな。丁度良い。あいつらならあの化け物にやられても俺に迷惑がかからねえ。〉 ムラサメのパイロットはセントラル2に通信を繋ごうとする。 しかし、それがカーディオンたちに届くこともムラサメのパイロット自身それを知ることもなく、センサーの範囲外からコックピットを撃ち抜かれ、沈黙したまま力無く落ちていった。 シンに悲痛の通信を繋ぐ少し前に遡る。住民の避難を進めていたコニールは目の前の老婆の説得に四苦八苦していた。 「逃げないと駄目じゃない、おばあちゃん。ここは危険なのよ。」 「嫌じゃ!ワシはここで息子が戻ってくるのを待つんじゃ!」 目の前の老婆は先ほどからこの調子でここに残ると言って聞いてくれない。町への攻撃はもう始まっているから急がないと老婆だけでなく自分の身も危ない。 そう感じたコニールはなおも説得を続ける。 「統一連合がすぐそこまで来てるのよ!おばあちゃんが死んじゃったら息子さんとも会えなくなるじゃない!だからお願い、早く逃げて!」 「息子はあの建物の中にまだいるんじゃ!ワシが待ってやらんと、待ってやらんと……」 「あの建物って……」 老婆が指差した先にあったのは建物ではなく、無造作に残された瓦礫の山であった。 この周辺にはまだ爆撃されていないことを考えるとおそらくは90日革命、あるいはそれ以前に倒壊したものかもしれない。 コニールはそれが何を意味しているのかを理解した。目の前の老婆はその現実を受け入れられず、息子さんがひょっこりと戻ってくることを願っていることも。 その時、近くで爆発音が聞こえる。爆撃が始まったのかとコニールは思ったが、それは統一連合のムラサメが墜落した事による爆発であった。 〈ひょっとして、シン?でも今は中央部で統一連合を引きつけてる筈なのに……。どうして〉 コニールが振り返ると、それぞれ長距離射撃・重武装・重装甲の改造を施された3機のジンとザクが姿を現していた。 コニールはその中でも、ザクファントムの肩に刻まれたエンブレムに戦慄する。 〈あの黒い鯱のエンブレムって確か……、黒鯱のマーレ!!!何であいつがこんなところにいるの!?〉 マーレ=ストロードの名はレジスタンスの間でも有名であった。統一連合の船や商船、果ては無関係な民間船すら襲撃して全てを破壊し、奪い取る悪名高きマーレ隊のリーダーにしてレイヴェンラプター師団における対MS戦のレコードホルダー。そして、かつてザフト時代にシンの同僚としてアビスの正式パイロットにも選ばれたザフトのエースパイロット。 統一連合によってレイヴェンラプター師団が壊滅状態になった後は行方不明だったという話はコニールも聞いていたが、まさかこんなところで遭遇することになるとは思っても見なかった。 〈町を守る……わけないわよね。シンに伝えなきゃ!〉 コニールが老婆の手を掴んで走り出すのと、マーレたちが統一連合に攻撃を仕掛けたのはほぼ同時だった。 「シン、シン!!!」 コニールはシンに何度もインカムで呼びかけるが、雑音が激しくて全く届く様子が無い。 マーレたちと統一連合はそのようなことはお構いなしに戦闘を行っていた。いや、戦闘というにはあまりにもマーレたちが一方的であったからただの暴力といっても言い。物量では統一連合が勝っているにも拘らずだ。 スペックでは上回っているはずのルタンドたちでさえ防戦一方で、無人機のピースアストレイにいたっては始めの砲撃で2機とも葬られている。ウィンダム達も1機がジンのスナイパーライフルで右腕を砕かれた。 「シン!お願い、早く来て!!!このままだと……」 その時、マーレのザクファントムにビーム突撃銃コックピットを撃ちぬかれたピースアストレイが爆発せずにコニールのほうへと倒れ掛かってくる。 今の位置では老婆と一緒には、いや、一人であったとしても逃げることができない。 〈そんな。私、ここで死ぬの!?嫌、嫌!〉 目前に降りかかる死の恐怖に体が動かなくなってしまうコニール。しかし数秒後に来ると思っていた終わりは鈍い金属音、そしてその数瞬後に響く建物が崩れる音と舞う砂埃に変わっていた。 それは自分たちを狙っているはずの統一連合のウィンダムが、倒れ来るピースアストレイをシールドで弾き飛ばして自分たちを守るという天地がひっくり返ってもありえないと思っていた光景であった。 〈どうして、統一連合が助けるの?狙いは私達だったんじゃないの!?〉 困惑するコニールを他所に2機の他のウィンダムがサポートに回ってマーレたちの攻撃を食い止める。 そして目の前のウィンダムのコックピットが開きパイロットが出てくる。パイロットの台詞にコニールは再び驚かされることとなる。 「コニールさん……。僕です…カーディオンです……」 「カーディオン……。あなたが……そんな…」 縁があったらまた会おう。彼にそう言ったコニールであったが、まさかこのような形で再会することになるとは考えてもいなかった。
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(=>原発で金儲け・利益がある人たち) 主な推進派一覧 主に、自民党・保守系・大企業の経営者らが多い A級戦犯 中曽根康弘 正力松太郎 渡辺恒雄 瀬島龍三 平岩外四 笹川良一 石原慎太郎 原発推進御用学者一覧 東工大 松本義久 東工大 有富正憲 東大 関村直人 東大 中川恵一 東大 -諸葛宗男 阪大 山口彰 広島大 星正治 広島大 神谷研 近畿大 伊藤哲 早大 吉村作治 早大 大槻義彦 原子力委員会 (原子力推進機関) 委員長一覧 正力松太郎 三木武夫 中曽根康弘 佐藤榮作 田中眞紀子 中川秀直 谷垣禎一 町村信孝 核武装のために原発推進している識者(改訂版) 政治家 谷垣禎一 町村信孝 安倍晋三 小泉純一郎 中曽根康弘 石破茂 麻生太郎 平沼赳夫 橋下徹 高市早苗 小池百合子 西村眞悟 石原慎太郎 片山さつき 学者 ジャーナリスト・作家・文化人等 副島隆彦 西部邁 小林よしのり 北村晴男 勝谷誠彦 宮崎哲弥 田母神俊雄 櫻井よしこ 和田秀樹 住田裕子 大川隆法 みのもんた 辛坊治郎 三宅久之 勝間 和代 草野仁 薬丸裕英 星野仙一 渡邉恒雄 堀江貴文 曽野綾子 今回の原発事故の戦犯一覧 (2011/3/30/05:30版) 核武装及び原発利権のため原発推進している識者 ●A級戦犯 (絞首刑に値するのはこいつら) 中曽根康弘 岸信介 正力松太郎 田中清玄 渡辺恒雄 瀬島龍三 平岩外四 笹川良一 石原慎太郎 加納時男 清水正孝 ●原子力委員会 (原子力推進機関) 委員長一覧 正力松太郎 三木武夫 中曽根康弘 佐藤榮作 田中眞紀子 中川秀直 谷垣禎一 町村信孝 大島理森 ●政治家 谷垣禎一 町村信孝 安倍晋三 小泉純一郎 中曽根康弘 石破茂 麻生太郎 平沼赳夫 橋下徹 高市早苗 小池百合子 西村眞悟 石原慎太郎 片山さつき 佐藤雄平 吉田泉 森英介 小沢一郎 鳩山由紀夫 舛添要一 山崎正昭 ●学者 医者等の専門家(原発推進御用学者一覧) 松本義久 有富正憲 関村直人 山口彰 星正治 中川恵一 諸葛宗男 伊藤哲 菊池誠 小宮山宏 衣笠善博 中村仁信 澤田哲生 西澤潤一 神谷研二 大槻義彦 吉村作治 岡本孝司 山下俊一 長瀧重信 稲恭宏 石川迪夫 下道國 北村正晴 米原英典 ●財界 逢坂國一 加納時男 田中紀夫 ●ジャーナリスト・作家・文化人等 副島隆彦 西部邁 小林よしのり 北村晴男 勝谷誠彦 宮崎哲弥 田母神俊雄 櫻井よしこ 和田秀樹 大前研一 辛坊治郎 北野武 北野大 浅草キッド 木村太郎 大川隆法 みのもんた 三宅久之 勝間和代 草野仁 薬丸裕英 星野仙一 渡邉恒雄 堀江貴文 曽野綾子 池田信夫 小松左京 木元教子 青山繁晴 山本弘 ○情報が錯乱するなか数少ない信用に値する識者 広瀬隆(作家) 広河隆一「作家) 小出裕章(京都大助教) 石橋克彦(神戸大学名誉教授) 安斎育郎(立命館大学特命教授・名誉教授) 田中三彦(元日立エンジニア・福島原発設計者) 後藤政志(元東芝原子炉(格納容器)設計エンジニア) 小倉志郎(福島第1原発を設計 東芝の元エンジニア) 矢ケ崎克馬(琉球大学名誉教授 菅谷昭(松本市市長、NPO法人チェルノブイリ医療基金理事長) 室田武(同志社大学 経済学部教授) 佐藤栄佐久(元福島県知事) A級戦犯(巷に普及している通例とは異なる) http //ja.wikipedia.org/wiki/A%E7%B4%9A%E6%88%A6%E7%8A%AF#.E7.B5.9E.E9.A6.96.E5.88.91.EF.BC.88.E6.AD.BB.E5.88.91.EF.BC.89 原子力行政は200人くらいの閉鎖的な原子力村 http //mainichi.jp/select/weathernews/news/20110407dde012040011000c.html ゲンパツ」を作り出す「原子力村」の力学とは?? http //live.nicovideo.jp/watch/lv45223746 原子力ムラの内側というのは? http //www.eco-reso.jp/feature/love_checkenergy/20110408_5008.php 擁護 東電擁護のパターン 1.未曾有天災型 事前の安全管理や事後対応の悪さに目を背け、今回の件は天災だから仕方ないと言い張る。 2.東電がんばれ型 下請けの方々を筆頭として現場で作業してる人々の頑張りを東電の頑張りのように誘導する。 3.責任分散型 政府や国民、東電以外の責任でもあると強調する。一理あるが東電の罪が軽くなるわけではない。 (福島の恩恵を受けている一部の地域・受益者のみを持ち出して福島県全体に責任がある様に誘導する) 4.殿様商売型 「文句があるなら電気使うなよw」 5.論点ずらし型 3と4の中間くらい。事前の安全管理や事後対応の悪さに目を背け、原発や電気の使用自体の是非に論点をずらそうとする。 (※ もしくは一流企業の東電の年収や待遇に嫉妬しているんだろうなどと返す) 6.無駄レス消化型 庇護者同士で1~5を繰り返す 以上、ネット情報から転載(間違ってたら削除します)