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あれは今年5回目の雪が降る日の事だったと思う。 その時、里の北東に位置する防御陣地には私一人しか居なかった。 襲撃を掛けていたゆっくりの群れは殲滅した上に、そもそもゆっくりは冬眠の時期であったので畑をまじめに防御する必要は無くなっていたから、晩秋まであれほどいた加工所職員や農夫はみな自分が居るべき場所に帰っていた。 我々はゆっくりがどういう生物か失念していたのだ。 あの生物の習性は年が変わるごとに変化していき、その度に人間が対応を迫られていることをすっかり忘れており、今年の冬もゆっくりは来ないだろうから防御の必要は無い、そう思っていた。 古来より慢心は身を滅ぼしてきた。それは幻想郷でも同じことだ。 「あ~寒い。暖冬に慣れた身には厳しいな…。」 陣地に居住スペースを作り、里の家から移り住んだ私はこの頃幻想郷の寒さに参っており、陣地を放棄して里の家に逃げ帰ろうかと本気で考えるようになっていた。 薪を燃焼させる調理暖房兼用のストーブが置いてあるのだが、空調による暖房に慣れた身には如何とも頼りなかった。要するに寒い。 ホットコーヒーでも飲んで暖まるか。うん、そうしよう。外側から温められないなら内側からだ。 粗末な椅子から立ち上がり、戸棚をあけて大量のインスタント・コーヒーの瓶のうち中身が半分ほどになっている物を取り出す。入れっぱなしのスプーンで一さじすくい、外から持ち込んだ数少ない自分の持ち物であるマグカップに入れ、ストーブの上で湯気を噴出しているケトルを手に取る。湯を注ぐとホットコーヒーの完成だ。 戸棚に1ダースも工業製品たるインスタント・コーヒーが入っているのには理由がある。 里には喫茶店が何軒か有り、そこでは中々美味いコーヒーが供されている為に味が劣るインスタントのそれは酷く人気が無く、それ故に香霖堂で廃棄寸前だったのを運良く二束三文で購入できたのだ。 コーヒー通ならおそらく我慢ならないんだろうが自分としては一応コーヒーであれば良い、などと考えつつ粉っぽい液体をすすっていると、前線方向の彼方に何か見えることに気がついた。 陣地最前面の鉄条網、そのさらに向こう側で黒い塊がうごめいているようだ。 晴れた日でもなく吹雪の日でもない今日この時間帯だからこそ見つかったのかも知れないと思いながら双眼鏡を取り出す。 視界の中央に拡大されたのは金髪に黒いとんがり帽子のゆっくり、まりさ種らしい。 必死の形相で這いずりながら此方へと向かってくる。 ゆっくりまりさが何でこんな冬に?冬眠してるはずじゃないのか? そのまま力尽きて凍え死ぬのを見ていても良かったが、状況から何かただ事ではないと判断した私はコートを引っつかみ、外に出た。 真新しい雪を踏みつける音が心地よい。生憎と気温はそうでもなかったが。 雪で埋まりかけた壕に足を取られないよう気をつけて跨ぎ、確認が難しくなりつつある鉄条網を記憶を頼りに乗り越え、殆ど動かなくなったゆっくりまりさへと近づく。 最後の鉄条網を乗り越えたところでゆっくりはこちらに気づき、震えながら顔をあげてきた。 畜生、そんな顔をされたら助けない訳にはいかないじゃないか。 先ほどまでゆっくりと降っていた雪が吹雪きはじめた。 このままここでゆっくりしていると一人と一匹そろって凍えてしまいかねないので、ゆっくりまりさが動かなくなった事により彼女に付着し始めた雪を払おうと姿勢を下げた。 視界の端に違和感を感じる。 視線が低くなったことにより森の奥まで見渡せるようになったが、その奥にいたのはふくれた表情でこちらにやって来る巨大なゆっくりだった。 このゆっくりまりさを追いかけて来たらしい。 助けに来たのだろうかと思ったが、それにしては表情がおかしい。 これではまるで、このゆっくりまりさを始末に来たような──。 「おにいさん!そのこをゆっくりこっちにわたしてね!そうすればおにいさんみのがしてあげるよ!!」 何を言ってるんだこいつは。 おそらく渡したらこのゆっくりまりさは始末される。今の発言でその可能性は強化された。 ゆっくりまりさが死んでしまったら、いや、そもそもこのまりさを起こして話を聞かなければ一体何が起こっているか分からない。 わざわざ巨大ゆっくりが来るという事は、まず間違いなく何かが起きている。 ともかく、ゆっくりまりさは渡せない。 「断る!このゆっくりは俺が先に見つけたんだ!お前にはあげられないよ!」 「おにいさん!れいむにかてるとおもってるの!ゆっくりあきらめてね!」 ますます体を大きく膨らませる巨大ゆっくり。 聞く耳持たずか。あの巨体に相当自信があるんだろう、こちらに勝つ気でいる。 ならば、それ相応のおもてなしをしてやらなきゃな。 「きいてるの!おにいさん!それともりかいできないばかなの!」 無視して背負っていた小銃を構え、膝立ちして攻撃体勢に持っていく。 発言に返答がないことで巨大ゆっくりはもうこれ以上はというほど膨れ、顔を赤くしている。 こんな寒いのに頭から湯気を上げるほど体温を上げて大丈夫なのだろうか。 「もういいよ!ふたりともころすからあのよでゆっくりこうかいしてね!」 巨大ゆっくりがこちらを踏み潰すための助走体勢に入った。 その巨体ゆえに一回で最大跳躍できない巨大ゆっくりはホップ、ステップ、ジャンプのプロセスを踏んで敵を踏み潰す。 目の前の巨大ゆっくりはホップを終え、ステップに入ったところだ。 完全に勝ち誇っているニヤついた顔。 すぐに恐怖に染まるんだけどな。 ヤツがステップを終えて着地をする前に引き金を引く。 空中で下半身に銃弾を食らった巨大ゆっくりは物理の法則に従い前傾方向に回転する。 結果、いわゆる「足」の部分で受け止めるはずだった運動エネルギーを、顔面をしこたま打ち付ける事により吸収することとなった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぅう゛う゛ぅぅ~!!」 よほど痛かったのか、降り積もった雪を振動で舞い散らせるほどの叫び声があがる。 巨大ゆっくりは通常のゆっくりに比してかなり耐久力が高いと聞いたことがあったので、攻撃の手は緩めない。 ボルトを操作して排莢、次の銃弾を装填する。 再び引き金を引いて発射。 二発目の銃弾は巨大ゆっくりの頭頂部から餡子へと音速で進入し、中核部分の餡子を切り裂いたのちに「足」の皮を衝撃波で破り、ついでにかなりの量の餡子を引き連れて森へと飛んで行った。 痛みを堪えて起き上がった巨大ゆっくりが睨みつけてくる。 「ゆ゛ーーっ!もうおこった!おにいさんはく゛るし゛んて゛し゛んて゛ね!!!」 滝みたいに涙を流しやがって、そんな顔で言われても説得力ねえよ。 構わず三発目を発射、貫通した瞬間に巨大ゆっくりの後頭部で何かが飛び散った。 こいつの後頭部だった物が銃弾の衝撃で吹き飛んだらしい。 巨大ゆっくりは涙を流す表情のまま前に倒れ、二度と動かなくなった。 まだ暖かい餡子が露出して美味しそうな香りをまとった湯気が上がっている。 岩のように凍りついたゆっくりまりさを拾い上げ、掛けた部分はないか確認。問題なし。 「帝国の逆襲」ならここでゆっくりまりさを巨大ゆっくりだった物の中へ入れてやる所だろうが、帰るべき場所はすぐそこなのでそのような事はしない。 小銃を背負い、冷凍ゆっくりを持ってその場を後にした。 本格的になり始めた吹雪にコートの襟を立てる事で対処しつつ、居住スペースへと戻った。 空調でなくとも暖房を掛けている部屋は外に比べれば天国のような暖かさ、ストーブを頼りないと思った事を反省する。 流石にテーブルの上に置いたマグカップはすっかり冷めていたが。 ゆっくりまりさを解凍するため、鍋を取り出しケトルから熱湯を入れる。 流石にそのままでは氷ごと饅頭ボディまで溶け出しかねないので、外から雪を持ってきてその中に溶かした。 風呂よりも熱いかなという位になったところで冷凍ゆっくりを鍋に放り込む。 放置していればそのうち解凍されるだろう。 冷めてしまったインスタント・コーヒーの酷さを再確認していると、鍋の中のゆっくりがわずかに震え始めた。 餡子が解けて生命活動を再開、融解を加速するために自らも震えて熱を発生させようとしている。 その段階からさらに10分経過してようやくゆっくりまりさは口がきける様になった。 ジャバジャバ音を立てて鍋の水をかき乱しながら左右を見回すゆっくり。 今すぐ叩き潰してやりたいが、何があったかを聞き出すまでは我慢我慢。 「やあやあお目覚めかな?ゆっくりしていってね!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」 お馴染みの挨拶をすると、すばやくこちらを向いて反応。起きたばかりだというのに流石ゆっくり。 「単刀直入に聞こうか。何があったんだ?なんで仲間に追われてたんだ?」 「ゆ…なかま…?……ゆっ!!ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛ぅ゛わ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!れ゛いむ゛ー!は゛ち゛ゅりー!なんでえぇー!」 「オイオイ、どうした。何かあったんだな?」 巨大ゆっくりに追われていた事を教えてやると泣き出してしまった。 仲間の名を叫んでいると言う事はその名の仲間はもう生きていないのだろう。 おそらく、そいつらが死んだ理由に巨大ゆっくりが関わっている筈だ。 「ゆっくりを養殖する巨大ゆっくりか、聞いたような話だな…。」 今は泣き疲れて眠っているゆっくりまりさ曰く、巨大ゆっくりの養殖場から命からがら逃げてきたらしい。 生まれたときから仲良くしていた友達が食い殺されるのを見て脱走を決心したという話だ。 まりさは眠る直前に、「おにいさん、あいつらにんげんをおそうつもりだよ。かえりうちにしてやってよ…。」と言っていた。 あんな大きさのゆっくりが里を襲うのか。 巨大ゆっくり、ゆっくりを養殖、里を襲撃…やはり聞き覚えがある。一体何の話だったかな… 里長なら何か知っていると思い、机に置かれた電話から受話器を取った。 「交換さん?里長のところに繋いでくれ。防御陣地からだ。」 交換手が接続するまでのこの空白時間は何時までたっても慣れない。大体交換手が必要なほど電話普及してるのかと。 しばらくして交換手が繋がった事を伝えてきた。里長の声それに続く。 里長は、それは今年の春に隣の里が巨大ゆっくりに襲われた話じゃないかと言っていた。 確かにそれだ。隣の里が急ごしらえの防御線で何とか殲滅したとかいう話だ。 その時の群れは人間の手により消滅した上にそもそも歴史ごと抹消されている、故に今ここにいるゆっくりまりさが逃げてきたのは別の群れだろう。 とにかく対策を検討しなければならない。 今のところ里が襲われる可能性を示唆しているのはこのゆっくりまりさの証言だけなので、流石に防衛体制を引き上げる訳には行かない。 せいぜい春の話の資料を手に入れて対策を練るぐらいか。 明日、里長のとこまで行って資料を貰わなきゃな。 眠ってしまったまりさは結局起きなかった。命からがら逃げてきたんだろう、全身かすり傷だらけで疲労が溜まっている様で、泥のように眠るという表現が相応しかった。 その日の夕食は窓の外に見える気味の悪いオブジェ──粉砕された巨大ゆっくりを見ながら袋麺を啜るというひどい物になった。 里長が言うには隣の里の勝利においては情報収集と初動の早さが大きな役割を果たしたらしい。 定期的なものではない為に人の少ない寄合所でそんな話が出始めた頃から嫌な予感がしていた。 頼むから偵察に行けとか言わないで下さい、せめて行かせるなら他の人にどうかお願いします、などと祈ってはいたもののその祈りは全くの無駄に終わった。 隣の里の巨大ゆっくりとの戦いの資料に、「巨大ユックリノ営巣地ヲ偵察スルトキハ、自衛ガ可能ナ者ガ望マシイ。」等と書かれており、現状で巨大ゆっくりを屠ったのは私だけだったから斥候として指名されたのは当然だろう。納得できないが。 「自衛ガ可能ナ者トハ、身体頑健デ何ラカノ格闘技ヲ修メタ者。」とか書かれており、自分は明らかに不健康で貧弱であると出来る限り抵抗してみたものの、「巨大ユックリトノ戦闘経験者ガ最モ適ス。」という記述を引っ張り出された挙句に、銃器で戦闘能力は補えると言われては両手を挙げざるを得なかった。 分かったよ。行けばいいんだろう? 皆、幸運を祈るだとか防寒対策に気をつけろよとか言いたい放題言いながらこっちを見送っていた。 畜生。このクソ寒い季節に森へ入れというのか。 ボヤいても問題は解決しない為、ヤツらの巣を探ろうとその場所を知っていそうな者、すなわちあのゆっくりまりさを取りに陣地へと取って返した。 怖いから行きたくないよとか泣き叫んでゴネるゆっくりまりさを「説得」し、準備万端整えて陣地を出たときにはもう昼飯の時間が終わる頃だった。 せっかくの昼飯を台無しにしてくれた巨大ゆっくりには必ずお礼をしてやると決意を新たにし、ゆっくりまりさの先導に従って森へと入る。 森の外は照りつける太陽光線を反射する雪が火傷するほど眩しいが、ありがたい事に森の中は薄暗かった。 光量の急激な変化についていけない目を瞬かせながら前を飛び跳ねていくまりさを注視する。 目的地に着いたのは陣地を出てから30分後だった。 斜面にぽっかりと空いた明らかに人の手で造られた穴に巨大ゆっくりが出入りしているのが見える。連中は鉱山跡を巣として利用しているようだ。 普通のゆっくりと違って連中の巨体じゃ巣を探すのに一苦労しただろう。 あの鉱山の大きさならまさにベスト・ゆっくり・プレイス。もうじきそうじゃなくなるんだがな。 双眼鏡をぐるりと巡らせて入り口の陣容を眺める。 入り口の右側に巨大ゆっくりがおり、そいつが出入りする仲間を監視していた。 あれで守らせているつもりらしい。あの巨体なら存在するだけで十分威圧感があるからだろう。 入り口を中心として半径10メートルの円状に柵が設置されているのも見える。 柵の形状から推測するに、内部で養殖しているという通常ゆっくりの脱走防止用かな。 あの大きさになると生意気にも知恵を付けるようだ。これでは中まで偵察するのは不可能かもしれない。 さて、困った。これでは連中の規模が分かりゃしない。 通常の生物なら廃棄物なりが出てくるだろうからそこから概算する方法があるが、ゆっくりという生物はコトに食物の摂取に関しては有得ないほどの効率を誇り、廃棄物を殆ど出さない事からこの手段は使えない。 歩哨の巨大ゆっくりを狙撃して強襲しようかと思ったが、流石に一人じゃ袋叩きだろうし、射撃音で気づかれたらアウトだ。 どうしようか?と話しかけようとゆっくりまりさの方を向くと、先に話しかけるまりさ。 「おにいさん。まりさのともだちをたすけてほしいよ…。」 「そうは言ってもね。あの見張りが邪魔なんだ。どうにかできないか?」 何と言うべきか、まりさは元気の無い顔からますます生気を失い、この世の終わりを表現した絵画の登場人物のような様子を見せた。 どうしたもんかな。いっそコイツを放り込んでから突入しようか?いや、せめて囮でもいいか。 できるかどうか聞いてみる価値はあるな。何せこいつは追撃から一回逃走に成功している。 「まりさ。この森の中だったらあの巨大ゆっくりから逃げきれるか?」 「ゆっ。たぶんできるよ…。おにいさん、あそこにはいってくれるの?」 「あの見張りが居なくなればな。どうだ?できるか?」 「やってみるよ。まりさがしんじゃってもなかまをたすけてね。」 囮になって欲しいと伝えると、まりさの顔に僅かながら生気が戻ってきた。 まりさ種は仲間思いのゆっくりになりやすいとは事実らしい。 こういうゆっくりは死ぬべきではないな。生き残って他のゆっくりのリーダーとなるべきだ。 黒々とした空間を見せる鉱山入り口にさらに近づいた。 こちらの姿を見張りゆっくりの視線から遮るものは子供の背丈ほどの藪しかない。 『…よし、行け!絶対に捕まるなよ!』 『おにいさん!がんばってね!』 出入りする巨大ゆっくりの姿が途絶えたところで作戦を実行に移す。 藪から全速力で駆け出すゆっくりまりさ。 「おおきいゆっくりはきもちわるいよ!ゆっくりしないでね!」 「ゆっ!?れいむのことばかにするの?ゆっくりしんでね!」 早速挑発の言葉を投げかけるまりさ。見張りゆっくりはまんまと釣られ、まりさを踏み潰そうと跳ねだした。 「ゆっくりおいかけてね!」 「ころしてあげるからゆっくりまってね!」 まりさは一瞬こちらを見た後、森の彼方、里の方向へと逃走に移る。 見張りゆっくりはその巨体が生み出す歩幅(?)によりあっという間に追いつくかと思えたが、まりさは倒木や木立の間をたくみに抜け、巨大ゆっくりを引き離しすらしている。 巨大ゆっくりは体重で障害物を踏み潰しながら追いかけるが、時々木に挟まってはマヌケな声を上げている。 これで良し。あいつが逃げている間に侵入しよう。 雪で反射された太陽光を浴びる銃剣が「白兵戦」の語源が何であったかを見せ付けるようにきらめく。 巨大ゆっくり相手では気休めにしかならない着剣した小銃を構えて突入した。 鉱山跡は不気味なほど静まり返っている。地中の適度に保温された空気が心地よい。連中は留守のようだった。 分岐が出て来るたびにその先を調べ、行き止まりであるのを確認する事5回。 6つ目の分岐先で巨大赤ちゃんゆっくりの部屋を発見した。 うん、資料にあるとおり、デカイな。普通の成体ゆっくりとほぼ同じとは…。 全員寝ているようだ。「ゅ…ゅゅゅ…」「ゅぅー…ゅぅー…」という寝息が聞こえてくる。 その幸せそうな寝顔と相まって直ちに殺戮する衝動に駆られるが、騒ぎになって親が戻るとまずい。 騒ぎになる前に始末できるような物─テルミット手榴弾は持ってきていない。 名残惜しいが赤ちゃんゆっくりの量を数えてその場を後にした。 こいつらを始末するのは後だ。 さらに奥へと進んで行き、10回目の巨大ゆっくりが掘り進んだと思わしき分岐をうんざりしながら通る。 その先の通路は巨大ゆっくり一匹分しかない。すれ違うときどうするのだろうと疑問に思いながら歩いていくと、100メートルほど進んだ辺りで急に道が広くなった。部屋に出たらしい。 部屋を見回すと、壁に掘られた幾つもの標準ゆっくりサイズの穴とそれを塞ぐ格子がある事に気が付いた。 どうやらここが養殖場らしい。 それにしては静かだな…。まさか全部食われたとは思えない、何せ『養殖場』だから。 だいいち、穴を覗き込んでみたが最近ゆっくりが形跡などは影も形も無い。 ここにゆっくりが閉じ込められていたのは昨日今日の話ではなさそうだ。 じゃあ、あのゆっくりまりさは一体…。 「おにいさん!ゆっくりのいうことをしんじるなんてばかなの?」 入り口からゆっくりが話しかけてきた。巨大ゆっくりの低い声ではない。通常サイズの声だ。 そこにいたのはさっき別れたゆっくりまりさ。なぜここに…。 「まだわからないの!?ほんとうにばかだね!おにいさんはまりさにだまされたんだよ!」 ゆっくりまりさが話し掛けてきてから3分経過した。 ゆっくりとしては驚異的なことにまだ話し続けている。曰く、まりさがどれだけ賢いかとか、巨大ゆっくりは自分の仲間だとか、人間を人質にして里から食料を奪うつもりだとか、本当に色々ベラベラ喋っている。 おしゃべりな悪党は死に易いんだがな。 「ちょっとおしゃべりしすぎちゃった!それじゃ、おにいさんはゆっくりしばられてね!ていこうはむいみだよ!」 やっと話が終わったまりさが得意げな顔で私を拘束しようと近づいてくる。 いつのまにか現れた巨大ゆっくりれいむがその後ろに続いており、口にはロープのような物をくわえていた。 通常サイズのゆっくりでは人間に力で勝つのは到底無理だから、仲間の巨大れいむに拘束させるのだろう。 さて…どうしたものか。小銃弾では3発以上命中させねばこの巨大れいむは無力化できない。 距離から言って、2発目を放つ余裕は無いだろう。1発目を当てた時点で飛び掛られて哀れ私は潰される。 悪役っぽくて嫌だが、この手しかないか。畜生。 「君はゆっくりれいむかい?とても大きいね!」 「ゆっ!れいむおおきいでしょ!」 私が話しかけると、胸を張って返事をする巨大れいむ。 ゆっくりまりさはそれが気に入らない様子だ。 「れいむ!にんげんとおはなししちゃだめだよ!はやくこいつをしばってね!」 「ごめんなさい!まりさ!いまやるね!」 まりさが叱り付けると巨大れいむは酷く怯えた顔で謝りだした。彼女の群れでの地位はそうとうのものらしい。これじゃ仲間というより手下じゃないか。 しかし、叱り付けられた巨大れいむは不満を覚えた素振りを見せず私に近づいてきた。 行動に移るなら今しかない。 「れいむ!僕を助けてくれたら美味しい物を食べさせてあげるよ!」 「おにいさんほんとうにひっしだね! れいむ!いうことをきいちゃだめだよ!このおにいさんはどうせあとでれいむをころすつもりだよ!」 「ゆっ!にんげんってばかだね!れいむがだまされるわけないじゃん!」 当然の反応だな。この程度で私を騙してここまで誘導するようなゆっくりまりさとその手下が騙される訳は無い。 なので、再び口を開く。 「れいむ!僕が君を殺すだって!?れいむみたいな大きいゆっくりにはとても勝てないからね!殺すなんてできないよ!」 巨大れいむはこの言葉を聞いて酷く動揺した。彼女にとってこの言葉は納得のできる物だからだ。 「れいむ!!にんげんはうそつきだよ!きかないではやくこいつをしばってね!」 まりさが動揺する巨大れいむをなだめようとするが、彼女の言葉を聞いても巨大れいむは動揺したままだった。 「れいむっ!!!にんげんはつよいんだよ!こいつがそのぼうでおおきいゆっくりをころすところをみたよ!!!」 「れいむ。騙されちゃダメだよ!僕がこんな棒切れでおおきいゆっくりに勝てる訳無いじゃん!」 相反する言葉を聞いて動揺の度合いを深める巨大れいむ。 暫くの間、ふらつきながらどうすべきか考えた後、彼女はどちらの味方をするか決めた。 巨大れいむが私のほうに向かっていくところを見たまりさは勝利を確信したような笑顔になったが、巨大れいむが私の横を通り過ぎ、その巨体を180度反転させてまりさのほうを睨み付けた時、彼女の笑顔は崩れた。 「おにいさんのいうとおりだよ!うそつきなのはまりさだよ!うそつきゆっくりはゆっくりしねぇ!」 「な゛んて゛ええ゛ぇぇぇえ゛ええ!ま゛り゛さ゛うそ゛つ゛い゛て゛な゛いよ゛お゛お゛ぉぉお゛ぉお゛!!!」 巨大れいむが頼もしさすら感じさせる身体を跳躍させ、まりさに飛びかかる。 勝負はあっという間についた。 まりさは踏み潰された後もしばらく叫びながら抵抗していたが、すぐに声が聞こえなくなった。 流石巨大ゆっくりだ。 「おにいさん!たすけてあげたからおいしいものはやくちょうだい!」 「そうだな。取り出すからちょっとゆっくりしててね!」 「ゆっくりまつよ!」 身体が大きくなると余裕が出てくるらしい。巨大れいむは私の言うことを素直に聞き、身体を重力に任せる楽な姿勢をとった。 ビニールの包装を施された一口サイズの羊羹を取り出し、れいむの方を向く。 「お待たせ!今あげるから口を大きく開けて舌を出してね!そこに乗せるよ!」 れいむは口をあーんと開け、おいしい食べ物を今かと待ち構える。 ビニールをやぶき、中の羊羹を舌に直接乗せてやった。 「れいむ!ゆっくり味わってね!」 「むーしゃ…むーしゃ…。」 私に言われた通り、口で何度も咀嚼するれいむ。口を動かすたびに目が垂れ下がり、頬が赤く染まっていく。 そんなにおいしく食べてもらえるなんて幸せだよお兄さん。 「しあわせー!」 食べ終わったようだ。発情してるんじゃないかという程に赤くなった表情で声を上げるれいむ。 余韻を味わった後、私のほうを向いてきた。 「おにいさん!もっとほしいよ!」 「ああ、ちょっと待ってな。」 欲の皮の突っ張ったヤツだ、予想はしていたが。 欲求に答えてやる為、再び荷物を開けた。 先ほどの羊羹とは別のところから紙で包まれた一本の羊羹に見えなくも無い直方体を取り出す。 巨大れいむはそれを見て再びあーんと口を開け、早く頂戴と視線で要求してくる。 「これも美味しいからね!ゆっくり味わってね!」 包装を解いて舌に乗せてやると、あっという間に口の中に入れたれいむはよく味わおうとなめまわし始めた。 口からはみ出した紐が何とも珍妙な雰囲気を醸す。 「ふぉにいふぁん!ふぁんふぁりふぉいひくはいよ!(おにいさん!あんまりおいしくないよ!)」 「そういうのは大人の味って言うんだ。れいむは大きいからもちろん分かるよね!」 「ひゅ、ふぉうふぁね!ふぉいひいよ!(ゆ、そうだね!おいしいよ!)」 アホか。それは食い物ですらねえよ。 それにしても口から紐が出てて食いにくくないだろうか? 「ふぉにいふぁん!ふぉっふぉひふぉふぁひゃひゃふぁお!(おにいさん!ちょっとひもがじゃまだよ!)」 「自然に生えている羊羹だからね、蔓が付いたまんまなんだよ。」 「ふぉうふぁふぉ?(そうなの?)」 巨大とは言え所詮ゆっくりか、この程度の知能らしい。 れいむが思い込みにより再び幸せそうな顔になってきたところで、紐の一端を持って伸ばしながら部屋の外へと出て行く。 部屋の中が完全に見えなくなったところで荷物からドロップ缶の上に取っ手が付いたような物体を取り出し、紐と接続。 部屋から微かに聞こえる声で、巨大れいむが未だにお楽しみ中であることを確認し、取っ手を掴んだ。 おにいさんのこと、まりさはうそつきだっていってたけど、おいしいものくれたしゆっくりできるひとだね! ようかんってあまくておいしくてしあわせー! 巨大れいむはそう思いながら渡された物体をしゃぶり、味を楽しんでいた。 最初こそ変な味だと思った彼女だが、大人の味だと指摘されるとだんだんと甘く感じるようになり、今では十分美味しいと感じるようになっている。 さいしょもらったやつはすぐにたべちゃったから、こんどはゆっくりあじあわなきゃ! れいむは噛む事すら躊躇しながら物体を舌で転がす。 最初に食べた物体があまりにも美味しかった為に思ったよりゆっくり味わえなかった後悔がある彼女は、今度こそ楽しむという不退転の決意で居た。 彼女はそれをくれた人物が部屋から消えたことに最後まで気が付かなかった。 取っ手を捻った瞬間、先ほどの部屋から猛烈な爆発音が発生、殆ど同時に部屋の入り口から黒や茶の飛沫が散弾銃のごとく噴出した。 セムテックスが巨大れいむの口内で起爆したことにより、彼女は発生した膨大な量のガスによって瞬時に膨張、次の瞬間当然の結果として破裂し、その身体の破片をあたり一面に飛び散らせた結果だった。 部屋に戻ったとき目にしたのは、壁や床、そして天井に存在する餡子をブチまけたような(実際そうなのだが)抽象芸術だった。 あまりにも斬新過ぎる芸術に目を奪われた私は、部屋をよく見回さなかったことを後で後悔する。 部屋の隅、かつて巨大れいむの一部だった餡子の山が呻きながらわずかに動いていた事に、私は気が付かなかった。 続く 書いているうちにタイトルと内容が剥離してきた。次で何とかする。したい。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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2008年、秋、東京。 俺はカメラ片手に小さな公園にやってきた。 遊具で遊ぶ幼女を盗撮するとかそういうワケではない。 そもそも、最近はアレな人々のせいで遊具が少なくなっているし。 俺は都会に住むゆっくり達のみすぼらしい姿を、ドキュメンタリー風に編集してyoutubeにアップロードしている。 それに関連したブログを日本語、英語の二ヶ国語で配信。 最近ではブログ運営もだいぶ軌道に乗ってきた。 アフィうめえと言える日は遠くないだろう。 「ふー・・・」 さっき自販機で買って来た缶コーヒーを開ける。 今日はどこへ行ってみようか。 そんなことを考える。 いつもはどこに行くかを考えてから動くのだが、たまには気の向くままに動こうと思ったのだ。 「お!」 そんな俺の視界の隅に、何やら丸いものが入った。 早朝の公園にいるものなんて、野良猫かゆっくりくらいなもの。 俺はさっそくカメラを構えた。 「・・・ありす種か」 公園によくある、コンクリートで固まったカマクラ的なもの・・・土管が貫通していてトンネルになっているアレだ。 その土管に、1匹のゆっくりアリスがいた。 ありすも俺の姿を確認したようで、ビクビクと様子をうかがっている。 「よお、ゆっくりしてけ」 掌を上に向けて4本の指が触れるように親指をつけ、腰を落としてその手を突き出した。 こうするとゆっくり達はエサをくれるものだと勘違いして寄ってくるのだ。 寄ってこないにしても、逃げだしたりはしない。 これは人懐っこい野良猫にも通用したりする。 「ゆ・・・・ゆっくりしていってね・・・!」 ずりずりと底部を引きずりながら、ありすは俺のほうに寄ってきた。 だが、「警戒してます」オーラが出まくりだった。 簡単に気を緩めないあたり、賢い個体だと思う。 大きさはバレーボールより一回り小さい。 それなりに死線をくぐってきたのだろう。 「お前は1匹か」 「ゆ・・・ありすは、ありすだけよ」 たまには独り身のゆっくりでも撮ろうか。 俺はありすに撮影の話をすることにした。 ありすは先ほどから俺の手をしきりに見ている。 まだ俺がエサを持っていると思っているようだ。 「・・・ゆ。おねがいがあるよ」 撮影についての解説を簡潔に終えると、ありすは何かを決意したような顔で俺を見上げた。 「なんだ?言ってみろ」 「・・・ありすを・・・い・・・いなかに・・・つれていってほしいの」 凄く言いにくそうだった。 「東京から離れたいってことか」 「ありすは、とかいはじゃなくていいわ・・・」 東京には、野良のゆっくりがかなりいる。 ただ、田舎や山に住むゆっくりと比べると大きく違う点がある。 それはありす種がヤケに多いという点だ。 田舎や山などに100匹のゆっくりがいた場合。 40匹がれいむ種、35匹がまりさ種、10匹がありす種、5匹がぱちゅりー種、残り10匹はその他の種だ。 だが、東京では違う。 35匹がれいむ種、30匹がまりさ種、30匹がありす種、残り5匹がその他の種になる。 その時のブームによって捨てられる野良ゆっくりが変化するので一概には言えないが、大体こんな感じになるのだ。 多くのありす種は「とかいは」という謎価値観に従って生きている。 特に、元ペットのありすは東京に激しい憧れを抱いていることが多い。 そのため、ありすは帰巣本能のような感じでジワジワと東京に群がってくるのだ。 だが野良ありすが想像した「とかいは」は東京にない。 連日保健所の職員に追われ、残飯をあさり、同族さえ喰らわねば生きていけない地獄なのだ。 「とかいは」に絶望したありすは田舎へと帰ろうとするが、アホなので帰り道など分からない。 都会に来たことを後悔しながら死んでいく運命だ。 「お前、どこらへんから来たんだ?」 「ありすはここでうまれたのよ」 詳しく話を聞くと、ありすは東京生まれということがわかった。 親のゆっくりが上記のアホ理由で東京に来たという。 そして意外なことに、親のゆっくりは東京の生活に慣れたらしい。 しかし、その子供のありすは東京での生活に耐えられなかったとか。 ありすは他のゆっくりから聞いた田舎の素晴らしさに感動し、東京脱出を目指しているのだ。 「そんなに東京は嫌か」 「ここはゆっくりできないよ・・・ありすはずっとひとりなんだよ・・・みんなとゆっくりしたいの」 親ゆっくりはどうしたのか、そう聞いたがありすはうつむいたまま喋らなくなってしまった。 今も生きてるというニュアンスを感じたため、近くに住んでいるものと思ったのだが。 「ま、わかったよ。撮影が終わったらお前を田舎に連れて行くよ」 「ゆ!おにいさんは、とてもとかいはなおにいさんね!」 ぱあっとありすは明るくなる。 俺はささっと小型マイクを仕込んだ。 もちろん撮影が終わったら放置だ。 田舎に送るなんて、誰がそんな面倒なことをするものか。 「じゃ、ありす。ちょっと体をよく見せてね」 「ゆっくりりかいしたよ」 毎度おなじみの身体検査をする。 ボロカスみたいな皮に、ぼっさぼさの髪。 小枝や砂が入り混じった髪の毛は実に汚らしい。 まさに野良ゆっくりだ。 そう思っていると瞳すら濁って見える。 埃で化粧をしたような肌は、油ぎったネットリしたものよか幾分かマシであった。 「よし、もういいぞ。じゃあありすはいつもみたいに生活しててくれ」 「ゆっくりりかいしたわ。これから、かりにいくわ」 「そうか。俺は隠れて撮影してるから」 ありすが公園を出て行った。 俺は距離を開けて、ありすを追うことにする。 「狩り・・・ねえ」 今まで何度も見てきたが、都会のゆっくりが言うところの「狩り」とはゴミ漁りor乞食だ。 満足に虫もいない大都会では仕方がないとはいえ、なぜ狩りというのだろうか。 全くもって疑問である。 「やっぱな・・・」 予想通り、ありすの目的地はゴミ捨て場であった。 だが朝も早いせいか、数えるくらいしかゴミ袋はない。 他の野良より早めに行動することで、エサを確保しようというのだろうか。 「・・・」 しかしありすは動かない。 ゴミ捨て場から少し離れた場所で、警戒態勢をとったまま。 「なにしてんだあいつ・・・」 せっかく早起きしても、ノタノタしてたら他のゆっくりが来てしまうだろうに。 「お・・・」 と思っていたら、ぼよんぼよんと跳ねながら1匹のゆっくり霊夢がやってきた。 大きさはソフトボールより一回り大きいほど。 成体一歩手前ってところだ。 「ゆゆっ!ありすもかりなんだね・・・!れいむにもちょうだいね」 「・・・いいわよ」 ありすの警戒が一気に濃くなった。 返事を返しているものの、れいむを強く意識していることが分かる。 が、当のれいむはゴミ漁りを始めていて気が付いていない。 「ゆっゆゆーん♪きょうはれいむもごはんをたべられるよ~♪」 ふりふりと左右に後頭部を揺らすれいむ。 それとは対照的に、上下に伸び縮みをするありす。 まるで準備運動でもするかのような動作だ。 そして、次の瞬間。 ありすの「かり」が始まった。 「れいむぅううう!!ゆっぐりじでいっでねぇえええええっ!!!」 「ゆぁあっ!?な、なんなのぉおお!?」 飛びかかるような勢いで、ありすはれいむに体当たりをした。 転がったれいむの底部がむき出しになる。 その底部を、瞬時にありすが噛み切った。 「ゆぎゅうあああああああっ!!」 閑静な住宅街に、れいむの醜い悲鳴が轟いた。 だがそれも一瞬のこと。 ありすは大きな石をれいむの口に突っ込み、声を封じてしまった。 あんな石を用意してあったとは。 俺は少し関心してしまう。 「・・・・ッ!!ゅ・・・ゅうううっ!!・・・・っ!?!・・・・ッ!」 「・・・れいむ・・・ゆっくりしていってね」 漏れた餡子で髪を染めたありすは、ゆっくりとれいむの頬に近寄った。 「ゆぅうううううっ!!!」 「・・・ッ!!・・・ッ!」 ありすが寝転がったれいむの頬に、自身の頬を押し付けた。 あれはゆっくりの交尾だろう。 ありすはものすごい勢いで頬を擦り始める。 「きったねぇ・・・」 じんわりとコンクリートの色が濃くなっていく。 遠くからでも、ねっとりとした体液がにじんでいる様子がわかった。 ありすの体もれいむの体も、光に照らされ不気味に輝いている。 「んっ!!すっすっきるぃぃぃいいいっ!!!」 「・・・・ゅぃ・・・!!」 ありすの体が動きをやめると、れいむの頭から茎がニョキニョキと生えてきた。 底部の穴から餡子が漏れていたが、れいむはまだ生きているようだ。 「ゆっふぅうう・・・・ゆふぅう・・・!!!」 茎に一瞬だけ視線を移したが、ありすはすぐにれいむに向き直った。 息も絶え絶えになりながら、再び交尾が始まる。 「ゆぐぅっ!!ゆぐっ・・・!ゆぅぇぁああっ・・・!」 4度目の交尾が終わると、ようやくありすはれいむから離れた。 交尾の潤滑油となる体液は2度目のすっきりあたりから枯れていたため、今のありすは酷い姿をしている。 頬は擦りキズだらけ、髪の毛は乱れまくりだ。 後半は交尾の痛みに小さな叫び声を上げながら、ありすは頬を擦っていた。 それはれいむも同様で、頬はキズだらけだし、底部から餡子が結構漏れている。 そして頭からは4本の茎が伸び、もはや死を待つのみだろう。 「ゆぐぅ・・・ゆぐ・・・!」 ありすは泣きながら、れいむから漏れた餡子を食べ始めた。 底部から飛び出した餡子は、赤ちゃんのゲンコツ1個分ほどにもなる。 食べ終わる頃には、れいむは真っ黒に朽ち果てていた。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」 「ゆきゅーり!」 「ゆっくち!」 10分もしない内に、赤ゆっくりは生まれ落ちた。 1本の茎から約8匹。それが4本なのだから、大体30匹近くの赤ゆっくりが生まれたわけだ。 「・・・ゆぅ」 興味無さそうに、ありすは赤ゆっくりを見下ろす。 「まんまー!おにゃかしゅいたー!」 「れーみゅも!」 「れいみゅ、おかーしゃんとしゅーりしゅりしたい!」 そんな赤ゆっくり達を尻目に、ありすは用が済んだ茎を口に挟んだ。 「むーしゃむーしゃ。しあわせー・・・」 そのまま茎は、ありすの口内へと消えていく。 赤ゆっくりの最初の食事となるはずの茎は、4本ともありすの腹に収まった。 「おきゃーしゃん!れーみゅ、おにゃかしゅいたー!!」 「みゃみゃ!!ありしゅもごはんたべちゃい!」 ワラワラとありすに群がる赤ゆっくり。 しかしありすは視線すら移さず、茎を4本食べると母体として朽ち果てたれいむの亡骸まで食べた。 「ゆ・・・いくわよ」 それだけ言うと、ありすはゴミ捨て場を去った。 「まっちぇー!!」 「れいみゅをしゅてないでぇえ!!」 「みゃみゃ!ありしゅとゆっくちちてー!!」 赤ゆっくり達は、親に捨てられたくない一心で、そのあとをピョンピョコ跳ねてついていく。 ありすも赤ゆっくりのことを考えているのか、ゆっくりと進んでいた。 「まーま、ありしゅ、おにゃかしゅいたの・・・」 「れーみゅもだよ・・・おかーしゃん・・・」 公園に戻ってくると、ありすは30匹ほどいた赤ゆっくりのうち20匹を食べてしまった。 あっちでママとゆっくりしましょうね、と言って見えないところに誘い、そのままパクリと。 悲鳴すら上げる間もなく、赤ゆっくり達はその短いゆ生を終了した。 それでようやく腹が満たされたのか、ありすは残った10匹の赤ゆっくりを食べることはしなかった。 れいむ種が6匹、ありす種が4匹残っている。 特に種に関してこだわりはないようだ。 「うるさいよ・・・しずかにしてね」 ギロリと赤ゆっくりを睨むその目に、親としての愛はまるで感じられない。 「ゆ・・・ごみぇんね・・・れーみゅ、しじゅかにするよ・・・」 「ありしゅも、いいこにするよ・・・」 きっと次の食事までの命なのだろう。 親しか頼れる存在がいないとはいえ、あまりにも惨めなものだ。 それは昼すぎにやってきた。 「でけえ・・・!」 バスケットボールよりも一回り大きいゆっくりアリス(以下、大ありす)が公園にやってきたのだ。 かなりの大型だ。 大ありすは何か探しものをしているかのような動きで、公園を散策していた。 苦労のかいあって、土管の中に入っているありす一家を発見した。 「そこのありすたち、ゆっくりしないででてきてね!」 ありすが土管から現れる。 赤ゆっくりはまだ生きていたようで、ありすの後頭部に隠れて震えていた。 「おきゃーしゃん・・・!たちゅけちぇ・・・!」 「こわいよ!ありしゅ、こわいよぉお!」 「みゃみ゙ゃー!!!ごわいぃいいいい!!」 大ありすの巨体は、赤ゆっくり達には相当な恐怖のようだ。 悲痛な叫びがマイク無しでも伝わってきた。 「ゆ゙っんっ!!」 ボン、という音が聞こえてきそうな勢いで、ありすが威嚇をした。 空気を含み、体を通常よりも大きく見せるものだ。 人間相手には全く効かないが、ゆっくり同士では効果がある。 が、大ありすはまるで動じていなかった。 「ゆふ・・・ふぅ・・・!」 大ありすは一気に膨れようとせず、ゆっくり空気を含んで膨れていく。 じんわりと、確実に。 プレッシャーをかけながら、それでもまだ膨張は終わらない。 「・・・!」 ありすはもはやこれまでと思ったのか、空気を吐き出し、元のサイズに戻った。 「お、おきゃーしゃん・・・!」 「まきぇにゃいでっ!!みゃみ゙ゃぁあああ!!」 「ゆっくりりかいしたようね。おチビちゃん」 勝ち誇った顔で、大ありすはありすを見下ろす。 ありすはその顔を見ようとせず、赤ゆっくりに振り返った。 「 "よん" でいいわ」 「・・・ゆっくりりかいしたよ」 ありすは、親を心配する赤ゆっくりに笑顔を見せた。 赤ゆっくりにとっては、生まれて初めての笑顔。 「あかちゃんたち、ママのおくちのなかにかくれてね」 「ゆっ!」 「おきゃーしゃん!!」 「こわかっちゃよぉお!!」 外敵から子を守る際、ゆっくりは口内に子を入れる。 それを本能で理解しているため、赤ゆっくりはすんなりとありすの口に入って行った。 大ありすはそれをニヤニヤと眺めている。 「ぷっ!ぷっ!ぷっ!ぷっ!」 ありすの口から、まるでスイカの種でも吐き出すかのように、4匹の赤ゆっくりが飛び出した。 そして、大ありすの目の前に転がっていく。 「じゃあこのこたちはおいしくいただくわ。あなたたちもゆっくりしていってね」 「お!?おきゃーしゃんっ!?」 「みゃみゃ!たちゅけちぇー!!!」 「どぼじじぇっ!?おぎゃーざー!!」 「だぢゅげでぇええっ!!」 やかましく騒ぐ赤ありすを大ありすは口に入れ、悠然と去って行った。 「あのデカいありすは、お前の親だったのか」 「・・・そうだよ」 夕方。 あらかた撮影を終えた俺は、ありすへのインタビューをしていた。 赤ゆっくりはもういない。 午後になると、町を彷徨う野良ゆっくりが多くなる。 ありすはあまり体が大きいほうではないため、殺し合いでは勝てない。 そのため、赤ゆっくりが必要になるのだ。 数匹渡す代わりに命を助けてもらう、いわばトカゲのしっぽのようなもの。 6匹の赤ゆっくりは、午後に出会った成体サイズのまりさに奪われてしまった。 「ありすは、ありすのおチビちゃんとおなじだったんだよ」 このありすはかつて、大ありすの命乞い用のゆっくりだったという。 捨てられていく姉妹を見て、いち早く危険を感じ取ったありすは大ありすのもとから逃げ出した。 それからはゴミをあさったり、乞食をしながら生きてきたのだという。 しかし、今では親である大ありすと同じ方法で生きていた。 「・・・ごはんとちがって、じぶんでうごくからべんりなの」 命乞い用の食糧を持って町に出るより、赤ゆっくりをひきつれて町に出た方が楽なのだとありすは言う。 それに加え、赤ゆっくりがいると食料を恵んでくれる人が多いらしい。 「あのれいむみたいになりたくないよ・・・」 今朝のれいむのことかと思ったが、違った。 都会に住む親ゆっくりには、2タイプあると聞いたことがある。 一つはこのありすのような、子供を動く食糧であるとみなしているタイプ。 いざとなれば子供すら捨てる、どちらかといえば少数派である。 大抵は、もうひとつのタイプになる。 それは子供を溺愛するタイプだ。 都会にはゆっくりできるものなど何もない。日々食糧争いを繰り返し、保健所職員に追われ、同族にすら気を許せない。 そんなゆっくり達にとって赤ゆっくりはまさに「真のゆっくり」として写るのだ。 溺愛というより、依存に近い。 子を失うことは、ただ一つの「ゆっくり」を失うこと。 それを極端に恐れ、子に依存してしまう。 ありすは昔、その典型例のようなれいむを見たのだという。 「バカなれいむだったよ」 その日、動く食糧を確保しようと、数匹のゆっくりがれいむ一家を襲撃したという。 1匹のまりさが赤ゆっくりを捕獲すると、親れいむは闘うことすら放棄した。 自分はどうなってもいいから赤ちゃんを助けてくれ、そう言って泣き崩れたのだ。 それを聞いたゆっくり達は、赤ちゃんは食べないから代わりにれいむを食べさせろと要求する。 そんな約束など守るわけがないのに、れいむはわずかな可能性にかけたのか、生きながらにして食糧にされてしまった。 赤ゆっくりが食後のデザート感覚で食べられてしまったのは言うまでもない。 それを物影で見ていたありすは、れいむの愚かさに腹が立ったという。 「ありすは、れいむみたいにはならないよ・・・!いなかにいって、みんなでゆっくりするんだから・・・!」 強い意志を感じた。 きっとこのありすなら、多分千葉あたりまでならいけるんじゃないかな。 俺はありすからマイクを外し、公園を去った。 全力疾走で。 おわり
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あるところに2匹のゆっくりゆゆこがいた。 「こぼねー」 「こぼねー!」 バスケットボールぐらいのゆゆこの声に、テニスボールぐらいの子ゆゆこが応える。 2匹は、群れへと帰る途中だった。 子ゆゆこは、ゆゆこの子供ではない。偶然見つけた子ゆゆこをゆゆこが保護して連れて行っている。その為、子ゆゆこはまるで群れのことを知らないでいた。 ここまで歩きながら群れの事を聞くたびに、子ゆゆこは目を輝かせている。 早く他のゆゆこ達に会ってみたい。今までにない新たな生活へと子ゆゆこは心をときめかせていた。 「ハフ、ハフ……ハフ?」 「こぼね?」 ゆゆこ達の足が止まる。 道沿いに進んだ先を見ると、黒い帽子がゆらゆらと並んで揺れているのが見えた。 ゆゆこはそれだけで、ゆっくりまりさの家族連れが歩いている事を悟った。 「こぼねーこぼねー」 「ハフッ!」 ゆゆこにエサがいると言われて、鼻息が荒くなる子ゆゆこ。 2匹はお互いに歩みを揃えて、黒い帽子へ向かっていった。 隣で遊んでいる子まりさばかり見ていた親まりさは、目の前に来るまでゆゆこの存在に気づけなかった。 「ゆ?」 「おかあさん、ちがう子達がきてるよ」 「ゆゅっ?」 子供に言われて振り返った時、ようやくゆゆこ達に気がつく。 「ああぁぁああぁぁぁあああああぁっ!?」 瞬間、思わず絶叫したまま固まっていた。 「お、おかあさん?」 「どうしたのおかあさん? あの子達といっしょにゆっくりしようよ?」 「ゆっくりしていってね!」 まだゆゆこの存在を知らない子供達は、親しげにゆゆこ達へ接しようとしている。 そこに気を取り直した親まりさが、間に入ろうと飛び出してきた。 「だめ! このゆっくりたちとはゆっくりできないよ! おかあさんの後ろにかくれてね!」 決死の表情でゆゆこたちを睨んでいる。 しかしまりさを今までエサとしか見たことのないゆゆこは、まるで意に介さなかった。 「あなたたちは早くいえにかえってね! ゆっくりしたらだめだよ!」 「ゆーっ!」 「なんでそんなこというの! いやだよ! もっとゆっくりしたいよ!」 親の言っていることが理解出来ない子供達は、まるで言うことを聞かない。 そんな親へ、子ゆゆこは張り付くように近づいていく。 「ゆっくりしたらだめぇええぇぇっ!! にげてぇぇぇえぇえぇっ!!」 親まりさの必死の叫びと、子ゆゆこがまりさに口をつけるのは同時だった。 「ゆぐっ!!」 「こぼねー!」 そのまま囓った皮を咀嚼する。 「おいちー!」 「お、おかあさん!」 「おかあさん、どうしたの? 大丈夫?」 急に顔を顰めた親まりさの様子に慌てるも、まだ状況を把握していない。 「い、いいから、早く逃げて……ゆっくりじな」 子ゆゆこは食べ終えた場所へまた口をつけ、今度は一気に吸い込み始めた。 「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃがぐぎゃがっ!!」 「ずずずずずずずず……」 子ゆゆこの口に餡子の甘さが広がっていく。 「お、おがあじゃん!」 「どうしたのおかあさん!」 「いやぁぁあぁっ!! おかあさんがちっちゃくなっていくよぉおっ!!」 みるみるうちに餡子を吸い取られ、細い皮だけの存在になっていく親まりさ。 「……み……ゆっく……にげ……」 最後の声は、子供達に届くことなく風と共に消え去り。 親まりさは皮だけとなって、風に飛ばされていった。 「げっぷ」 「いやぁああぁあぁあぁあぁっ!!」 「おかあさぁぁあぁああぁあぁんっ!!」 その場で泣き叫び始める子供達。動こうとする子まりさは1匹もいない。 最後の最後まで、親まりさの気持ちは子供達に伝わらなかった。 軽い食休みを挟んで、子ゆゆこは泣き崩れる子まりさ達へ近づいていく。 それを、後ろから迫ってきたゆゆこに突き飛ばされて邪魔された。 「ハフッ!?」 地面で体を擦られ、体中が砂埃で汚れてしまう。 突然の事に思わず起き上がってゆゆこを見ると。 冷たい目で、子ゆゆこを睨みつけていた。 「……こぼ」 これまで見たことの無かったゆゆこの様子に、思わず子ゆゆこはたじろいだ。 ゆゆこは、そのまま子まりさに迫っていく。 食物連鎖の上位であるゆゆこに蹂躙されていく子まりさ達。 その光景をまるで目に映さず、子ゆゆこは先ほどの冷たい目にずっと怯えていた。 途中で僥倖な食事もあり、ゆゆこ達は気分も高らかに群れへたどり着いた。 ゆゆこの冷たい目に怯えていた子ゆゆこも、食べた後はいつも通りのゆゆこだったことで、どうにか落ち着いていた。 群れにつくと、多くのゆゆこ達が子ゆゆこの事を歓迎してくれた。 巨大なゆゆこもいれば、同世代のゆゆこ達もいて、今まで同種を見たことのなかったゆゆこは、文字通り飛び跳ねて喜んでいた。 群れについた後、ゆゆこと子ゆゆこは一緒に暮らし始めた。 ゆゆこに子供はいないので2匹だけの生活だったが、外を出たらすぐに友達に会えるので寂しさなど微塵もない。餌もゆっくりゆゆこの群れがあるだけあって、辺りを歩けばゆっくりがすぐ見つかる環境。困ることはまるでない。 今まで1匹で過ごしていた子ゆゆこにとって、今まで感じたことのなに暖かさがそこにあった。 やがて、子ゆゆこがゆゆこと同じぐらいの大きさになった時、子ゆゆこは独り立ちをする。 群れのある場所の外側に見つけた洞穴に住み、1匹で生活し始めた。 「うー! うー!」 羽根を咥えられ、ゆっくりゃはじたばたと肉まんな体を動かして藻掻いている。 逆に子ゆゆこはご満悦な笑顔を浮かべて喜んでいた。 ゆっくりゃや、ゆふらんは、その羽根で飛べるためにゆゆこでも捕まえる事は難しい。今回はゆっくりゃがゆっくりを捕まえようと降りてきた所を逆に捕まえていた。 もちろん捕まりそうになっていたゆっくりの住処は覚えている。ゆっくりゃを食べた後で、また狩りに行こうと思っていた。 取りあえず咥えていた羽根を引き千切り、持ち運びしやすくすると、そのまま住処の洞穴へ歩いていく。 「ぎゃ、ぎゃおーっ! ぎゃおーっ! 食べちゃうぞーっ!!」 食べられるのは、もちろんゆっくりゃだった。 「うー! うー!」 「ハフ、ハフハフっ!」 「うぁあああああぁああぁああぁっ!!」 肉まんが瞬時に食べ尽くされる。生では食べられない筈のゆっくりゃの羽根も、子ゆゆこは歯ごたえがある程度にしか思っていない。 油の乗ったゆっくりゃに、ゆゆこは幸せそうに食後を堪能していた。 入り口に影が映る。 「こぼね?」 「こぼねー」 影の正体は、知り合いのゆゆこだった。 「こぼねー!」 「こーぼねー」 ここに来た時からほぼ同世代だった2匹は、出会ってすぐに仲良くなり、普段から頻繁に雑談する中になっていた。 友達と仲良く話ながら子ゆゆこは考えていた。 子ゆゆこは、以前から別のゆゆこと一緒に狩りへ行きたいと思っていた。1匹でやる狩りはどこかつまらなく、爽快感に欠けていたからだ。 「ハフ、ハフハフ」 「……」 目の前で熱心に喋っている友達へ、ゆゆこは思い切って切り出してみた。 「こぼねー」 場の空気が凍った。 「……こ、こぼね?」 「……」 訪ねても、友達から返事が来ない。 黙ったまま、立ち去ろうとする。 「ハフッ!?」 子ゆゆこは訳がわからないまま、友達に追いつき、必死に謝った。 途端、友達は元の様子に戻り、また雑談を始めていく。 笑いながら雑談を聞いていた子ゆゆこは、心の中で震えていた。 去り際に友達がみせた冷たい目線は、あの時のゆゆこの目そのものだった。 「こぼねー?」 いつものようにゆっくりを探しに来たこゆゆこが不思議そうに声を上げていた。 ここ最近、餌のゆっくりが少なくなってきたと子ゆゆこは感じていたのだが、今日は少ないを通り越してまるで見つからない。 この辺りのゆっくりが住み着きそうな場所のほとんどを、子ゆゆこはなんとなく覚えている。それが至る所を探したものの、どこにもゆっくりの姿はない。 ほぼ1日を掛けたにもかかわらずの成果なしに、子ゆゆこはがっかりしながら群れへ帰っていく。 群れには異変が起きていた。 「……ゆっ?」 住処に帰り、取りあえず子ゆゆこは友達へ会いに行ったが、そこには誰もいない。 それじゃとゆゆこに会いにいくが、そのゆゆこも姿が見えなかった。 「……こ、こぼね?」 今まで危機感を感じていなかった子ゆゆこも、ようやく事態の異常さに気づく。 そのままゆゆこは知り合いの家をほとんど回っていったが、他のゆゆこはどこにも見あたらなかった。 「こ、こぼねぇえぇっ!?」 半狂乱する子ゆゆこに、声をかけるものはどこにもいなかった。 そもそも、ゆっくりゆゆこは群れを成さない。多数で動くとしても家族としてぐらいだ。 なぜなら、ゆゆこが2匹いるだけで、食料が2分の1に減ってしまうからだ。 多くのゆっくりを食べないと満腹にならないゆゆこにとって、それは大きな理由になる。 なのでほとんどの場合、ゆゆこは単独で生活しているのだが、唯一例外があった。 ゆっくりが多く住んでいる土地を見つけると、自然とゆゆこは集まって住みついていく。一時的に群れをつくり、互いに競ってゆっくり達を食い潰していく。 そしてその土地にゆっくりの姿が見えなくなると、また単独に戻り、次の狩り場を探して旅立っていくのだ 今はもう、ゆゆこも友達も、他のゆゆこ達も既に旅立っていった後だった。 他のゆゆこ達は育てられる内に移動を繰り返すため、単独で行動することには旅自体に慣れている。 子ゆゆこにとっての不幸は、この狩り場があまりに上質だったため、移動せずに育ってしまったことだった。 「……」 呆然としたまま動けない子ゆゆこ。普通ならば餌を求めて旅立たないといけない。 しかし子ゆゆこはどうしたらいいのかわからない。 「ハフ……」 突然、1匹になってしまった虚無感に、子ゆゆこは包まれていた。 どうしたらいいのかわからない子ゆゆこは、取りあえず洞穴に戻っていつも通りの生活を続けていた。 しかしここは群れから餌がないと判断された場所。しばらく必死に探してみたものの、1匹のゆっくりも見つからない。 「……こぼね」 取りあえず周りに生えていた植物を食べて飢えを凌ぐが、ゆっくりゆゆこの腹がそれぐらいで満腹になるわけがない。 ひたすらに空腹と、それ以上の孤独感に耐えながら子ゆゆこは日々を過ごしていた。 ある日、子ゆゆこは久しぶりの大物を見つける。 それは子を産んだばかりのゆっくりれいむの家族だった。 「や、やめてね! れいむはよごれてるからおいしくないよ! ゆっくりできないよ!」 「あっちいってね! むこうでゆっくりしていてね!」 親れいむが前に出て子供を庇おうとしている。 子ゆゆこはせっかく見つけたごちそうながら、食べようとはまるで思っていなかった。 飢えはまだ植物や虫でぎりぎり我慢できている。 それよりも久しぶりに、誰かと話せる事に期待が高まっていた。 「こ、こぼね……こぼね」 「しらないよ! れいむたちはれいむたちだけでゆっくりするよ! あなたはどこかへ行ってね!」 「ゆっくりできないから早くどこかいってね!」 子ゆゆこの言葉に罵声を浴びせ続けるれいむ達。 いくら話しかけても、れいむ達は聞き入れようとしない。 「ごぼねぇ……」 子ゆゆこの目に涙が光る。 その瞬間を、親れいむは見逃さなかった。 「みんなゆっくりしないでね! 急いでにげてね!」 「あなたはそこでゆっくりしてね! おってこないでね!」 「は、ハフッ!?」 涙が乾かない内に、れいむ達は走り去ってしまった。 「ごぼね゛……」 子ゆゆこは苦悩する。どうして話をしてくれないんだろうと。 子ゆゆこは、今まで他のゆっくり達を餌としか思っていなかった。 そんな中、いきなり友好的になっても信じるゆっくりがいないのは当然だ。 そんな理屈も、ただ本能に任せて狩っていた子ゆゆこには理解できない。 残ったのは寂しさと、お腹から訴えかけてくる空腹だけだった。 れいむの家族を逃してから1週間。 「……は、ハフッ。……は、はは、ハフッ」 体を重く感じながら、子ゆゆこは餌を探していく。 植物や虫しか食べていない体は急激に衰えていき、今では見る影もなくやせ細っている。前ならどれだけ動いても疲れなかったのが、今では数メートル動いただけでくたびれる始末だ。 今や子ゆゆこの中に孤独感はない。 砂漠の砂のような飢えが、子ゆゆこの体を突き動かしていた。 まずは植物を食べようと森へ向かうゆゆこ。辺りの花や草はほとんど食べてしまい、今や生木の皮を剥いで食べている。 そのまま樹木に齧り付いたりもしたが、さすがの子ゆゆこも樹を噛み砕くことは出来なかった。 白い身を晒して立っている木々。まだ食べていない樹はあるかと子ゆゆこは探していく。 そこに、懐かしい匂いを感じ取った。 「こっ!?」 この近くにゆっくりがいる! 力の入らない体を酷使して、獲物へ近づいていく。 そろそろ本当に体力の限界が近づいてきた時、木々の間を縫って歩くゆっくりを見つけた。 もう躊躇はしない。 「こぼねぇぇえぇぇえぇえぇえぇぇえっ!!」 飢えの勢いをそのままに、ゆっくりにかぶりついた。 「ハフッ!?」 「ハフ、ハフハフッ!!」 必死に体を食べ尽くしていく。 しかし3分の1ほど食べたところで、子ゆゆこは食べているゆっくりの顔を見た。 ゆっくりゆゆこだった。 「うぶっ!?」 体の奥底から湧いてきた吐き気に、思わずその場を離れて嘔吐した。 口の中からは、まだ消化しきっていなかったゆっくりの欠片が流れ出ていく。 それは、自分の体と同じものだ。 「うっ!?」 強烈な嫌悪感に蝕められ、子ゆゆこは続けて嘔吐した。 突然襲われた事に、ゆゆこは呆然としていたが、相手が苦しんでいるのを理解すると、そのまま逃げようとする。 「こ、こぼねぇぇええぇえっ!!」 「ゆっ!?」 急いで話しかけようとするも、既にゆゆこは走り出し、側からいなくなっていた。 思わず、宙を仰ぐ子ゆゆこ。 そのまま寝そべると、苦悶に顔をゆがめて叫び始めた。 「ぁああぁあぁぁぁあぁああぁあっ!!」 共食いをしてしまった事実。 また新たに襲ってくる孤独感。 吐いたことによって高まった空腹。 そのどれもが、自虐的に子ゆゆこを責め立てる。 やがて叫びが止むと、子ゆゆこはその場を動かなくなった。 もう、動く気力も体力も残されていなかった。 「ゆゆっ? おかあさん、何かへんなものがあるよ」 「なんでもさわっちゃだめだよ、ゆっくりみせてね」 「おかあさん、これなぁに?」 「……なんだろう? おかあさんにもわからないよ」 「ふしぎだね! へんなかたちだね!」 「ゆゆっ、へんなものにちかづいてゆっくりできなくなったらたいへんだよ。ゆっくりはなれようね!」 「ばいばい~」 「ゆっくりしていてね!」 子ゆゆこの意識はたゆたっている。 何か考えていたのか、何も考えていなかったのか、子ゆゆこ自身も覚えていない。 ひらひらと吹く風に揺られる体の感覚だけが、僅かに子ゆゆこの意識を繋ぎ止めていた。 子ゆゆこは寂しかった。 子ゆゆこは悲しかった。 なにを間違えたのか、子ゆゆこにはわからない。 脳裏にふと過ぎるのは、一緒に過ごしたゆゆこと友達の姿。 そして今まで食べてきたゆっくり達の姿。 ほとんどのゆっくりは、絶望に歪んだ表情をしていた。 ごめんなさい……ごめんなさい……。子ゆゆこはひたすらに謝り続けた。 もう、酷いことをしないから許して欲しい。 だから、誰か応えて欲しい。 最後に誰かと話したい、子ゆゆこの願いはそれだけだった。 そんな気持ちも、いつしか意識と共に途切れていく。 もう子ゆゆこは、体も心も空っぽだった。 大きな風が吹く。 強風になびかれて、空っぽの体は空へ飛びだっていった。 どこへだって、飛んでいきそうな勢いだった。 End 前の話で俺のときめきを返してくれ、と感想があったので俺的に出来るだけ返してみた……つもり。 返せてないかなぁ、すっきりしない話だもんなぁ……。 最初は丸々と太ったゆゆこを炙り焼いて食べるような話を書いていたんですが、どうにもしっくり来なかったので練り直したらこんな話になりました。 書き終わってから、ケロちゃんの話に被ってると気づいたのは後の祭り。もう書き直すのは無理ジャー! なんか色々不満がありますが、楽しんでもらえたら何よりです。 by 762 このSSに感想を付ける
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824.txt (ゆっくりいじめ系155 外人のゆっくり) を訳してみたよ!!!斜め読みしただけなんで意訳と誤訳が多いかもしれないけどゆっくりしていってね!!! そいつは生きて動く"物"のように見えた。 人々の表情は楽しげで、こいつらの数が減る事を気にする者など一人もいないらしい。 俺はそこに集まった皆がこいつらをどうやって痛めつけて殺したかという話を一言も聞き逃さないようにしていたのだが、 それは最高の遊び道具にさえ感じられた……知っていればもっと早くから手を出していたというのに。 「むきゅ!」 と声を上げるパチュリー。 俺はその店から二匹を買い、家へと連れ帰る事にした。一匹は虐殺用、もう一匹は虐待用のつもりだ。 「ゆっくりしていってね!」 何度目であろうか、ゆっくり魔理沙が大声で鳴く……何故皆がこいつらにイライラするのか分かった気がした。 二匹のゆっくりと、小さな穴を底に空けたガラス製の箱と共に家に到着。 こいつらをゆっくりさせるより先に部屋へ上がり、机の上にガラス箱を設置し、それから二匹を床に放す。 「少しやる事があるから、それまでゆっくりしていろよ」と言う俺の快活な物腰に返ってくるのは 「むきゅっ!」「ゆっくりしてるよ!」との声。俺は部屋を出て扉を閉めた。 前の彼女からくすねたバイブレーターを手に、直ぐに部屋へと戻る。 ……最後に会った時に頂戴したんだ。何も未練がましく付き纏ったりしてた訳じゃあない、腹いせにやってしまっただけさ。 二匹の小さな可愛らしいゲテモノどもにお菓子を上げた後──優しくしてやるのはこれが最後だろうからな──バイブレーターの スイッチを入れて魔理沙の体に押し付ける。 「びゅびゅっ!」 驚いて叫ぶゆっくり。 「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙……ま゙い゙さのから゙だがなんかしゅっごくぎ゙もぢいいよ!!」 完璧だ……ここぞという所でスイッチを止める。 「ゆ゙っ!とめないでね!まりさをすっきりさせてね!」 俺は何も言わず笑顔で返し、拾い上げた魔理沙をパチュリーの方へ向ける。 「むきゅーん?」 自分に向かって跳ねてくる魔理沙を前にしても、それしか言えないのか。 「む゙…ぎゅ…」 息を切らしてしまい、ぜえぜえと喘ぐパチュリー。そしてそのパチュリーに自らの体を激しく擦り付けている魔理沙。 圧迫されて潰れてしまうのではないかとこちらが思ってしまう程の激しさだが、不運にも魔理沙はそうならない。 俺はそれからの二日間、餌を与えつつ可愛い子供達について尋ねつつ、こいつらの好きにさせてやった。 そして今パチュリーの体から生える蔓には四匹の子ゆっくりが生っている。どうやら全てゆっくり魔理沙らしい。 「ゆっくり大きくなってね!」 「むきゅーん!」 何という美しさと愛情に溢れた穢れ無き光景であろう……尤も、不純な性的絶頂の末にもたらされた"穢れ無さ"ではあったが。 四匹の子魔理沙たちは大きく健康に育っていき、母親も同じようにより一層大きくなったのだが、 すぐに俺の家が「ゆっくりしていってね!」と「むきゅー!」の不協和音で満たされるようになった。 子魔理沙たちが十分に成熟したと考えた俺は全員に最後のお菓子を与えた後、母魔理沙を抱えてガラス箱の中に入れ、 それを愛しい家族の方へと向けてやった。お楽しみはこれからだ。 以前使用したのと同じバイブレーターを手にし、スイッチを入れた。 それを魔理沙たちの体に押し当てては、パチュリーの方へ一匹一匹向き直らせていく。 あっという間に自分達の親を襲い始める四匹のゆっくり。 「ゆゆっ!ゆっくりやめてね!!」 箱の中の魔理沙が叫ぶ。 「む゙っ…み゙ゅっ…み゙ゅ…む゙ぎゅっ!」 パチュリーは既に弱り始めている。 「お゙に゙ーざぁああん!どゔじでごんな゙ごどずるの゙ぉおお!?」 母魔理沙が俺に尋ねてくる。全てを理解できる程の知能が到底あると思えなかった俺は 「ゆっくりした結果がこれだよ」 とだけ答えた。四匹の魔理沙はパチュリー相手に尚も交尾を続けており、口からはペースト状の餡子がピシャピシャという音と共に 流れ出てしまっている。さすがに今度ばかりは圧迫されて潰れるんじゃないかと思ったが、不運なことに今回の魔理沙達もそうならない。 そして更に不運なのはパチュリーの方であった。四本の茎が再び頭から生えてきたのだ。 この変化によりパチュリーの体内はボロボロにされ、その際彼女が味わったに違いない苦痛を証し立てているであろう 「む゙ぎゅーっ!!」 という絶叫が体から絞り出される。それとは別の、つまり交尾を行った四匹の魔理沙たちは母親のその様子を見てうろたえていた。 「だれがおかーちゃんにきょんなことをしちゃのー!?」 子ゆっくり魔理沙たちが喚き出す。 箱詰めにされている母魔理沙がすぐに四匹に向かって言葉を返した。 「み゙んな゙がばぢゅりーをごんなふうにじだの!!み゙んな゙のぜいでゆ゙っぐりでぎでな゙い゙のー!!」 「うそだよ!」 喚き叫ぶ赤ちゃんゆっくり。 「まりさおかーちゃんがぱちぇおかーちゃんをきょんなふうにしちゃんだよ!」 泣き始めた子ゆっくり魔理沙。それに母魔理沙の方も泣き始めた。 これは……想ってた以上に面白くなってきた。 そしてパチュリーは若い子ゆっくりたちと共に出産に耐え切った。 喘ぎと重い呼吸とは相変わらずなものの、最後には痛みもなくなったようだ。それでもこのパチュリーの健康状態に懸念を覚えた 俺はパチュリーを"連れて行く"事に決め、他のゆっくりたちには「パチュリーをゆっくりできる場所へ連れて行く」と話した。 油でフライパンがジュージューと音を立てていたので、他の部屋にも絶叫が届いたかどうかは分からない。 それからは再び機会が訪れるのを待ちながら、箱詰めの魔理沙を含めた全てのゆっくりに餌をやり続けていた。 母魔理沙はパチュリーの身に起きた事について未だに取り乱していたが、今は孫がいるんだからと言って元気付けてやり、 最後の交尾の際に生まれたただ一匹のゆっくりパチュリーと遊ばせる事さえ許した。"おばあちゃん"となったこの魔理沙が 孫である若パチュリーに強い愛着を感じていると分かった時は、すぐに二匹を同じ箱に入れてやった程だ。 互いを励ましあって顔を擦り付ける二匹……何と心暖まる光景だろう。こいつらに餌を与えてから直ぐに部屋を離れ 扉の鍵を閉めて少し待っていると 「……おにーさん!まりさたちのごはんわすれてるよ!!」 四匹の娘魔理沙たちの抗議の声。俺は忍び笑いしつつその場を離れた。 数日が過ぎると、箱詰めにされていないゆっくりたちの様子がおかしくなり始めた。 「どうしておにーさんはあの子とおかーさんにしかごはんくれないの!?ゆっくり食べさせてね!!」 しかし勿論、こいつらに餌を与えるような事はしない。 「どうすればまりさたちにごはん食べさせてくれるの? 」 尋ねるゆっくりたち。俺は二匹の"安全な"ゆっくりたちに笑いながら目をやる。 「じゃあ教えてやろう」 屈み込んだ俺は一匹の子ゆっくりを拾い上げてその後頭部を切り開く。上がり始める叫び声。 「お゙に゙ーさん!ま゙り゙ざのま゙ごにな゙に゙ずる゙の゙ー!?」 箱の中のゆっくり魔理沙が脅えた調子の声で問う。 「ぞんな゙ごどじだらゆ゙っぐりでぎないよ!!!」 「でも俺が教えてやらなきゃ」 母魔理沙の呼びかけに答える。 「箱の外のみんながゆっくり出来ないんだぞ。俺はお前と子パチュリーにしか充分に餌をやってないんだから」 箱の中の魔理沙は微かに絶望を湛えた瞳で俺を見ていた。だんだんいい表情になってきたなあ。 そして他の魔理沙達は俺が見せてやった物に心を奪われたらしい。"それ"が発する 「ゆっくりおろちて!おうちかえる!」 という声も意に介していないようだ。その中に空いた穴を見せ、"食べ物の在処"を分からせてやる。 俺はゆっくり達の注意を向けて言った。 「もう分かったろう?お前達の体には食べ物がいっぱい詰まってるんだ。これでご飯がゆっくり食べられるな!」 直ぐに虐殺が始まった。あの時の人々の様子を思い出した俺は "虐殺"とは成る程"笑い"に満ちた物だという事実を再確認させられた。現に俺がそうだったのだから。※1 「おにーさんやめさせて!ゆっくりとめてね!!」 叫び続ける母魔理沙。 子パチュリーの絶望に満ちた「むきゅ…」という叫び声も何とも愛らしい。 大きい方の四匹の子魔理沙たちは小さい方の子魔理沙たちに向かって跳ねてはその体を踏みつけ、潰れるのも構わず中の餡子を貪った。 「うっめ!これうっめ!」 発せられる歓喜の声。遂には後から生まれた子ゆっくりは一匹も、そして欠片さえも残らなかった。 食事が終わるやいなや、母魔理沙の苦悩の声が再び上がる。 「どゔじでっ!どゔじであ゙がじゃんだぢをごろ゙じだの!?かわ゙い゙いあ゙がじゃんだぢをだべじゃっだの゙ぉおお!?」 「まりさたちはあかちゃんなんて食べてないよ!あかちゃんなんてどこにもいないよ!うそつき!」 子魔理沙の一匹がまた泣き出した。笑えるなあ、こいつら本当に面白い。 俺はガラス箱に近づいて子パチュリーだけを出してやる。 「や゙べでぇええ!」 叫ぶ母魔理沙。 「ゆ゙っぐり゙やべでぇええ!ゆ゙っぐり出ざな゙いでぇええ!」 涙声の訴えを無視し、このままパチュリーが箱の中にいても成長すれば潰れてしまうという事実だけを教えてやる。 俺はみんなにきちんと餌を与え、子パチュリーを傷つける真似はさせないと保証してやった。 その後は再び餌をやるだけの日々が続き、程無くしてパチュリーも健康に、また十分な大きさへと育っていった。 まるでむきゅむきゅと鳴くバスケットボールのようだ。箱の中の魔理沙もパチュリーの成長を見てとても幸せそうにしている。 しかしたとえ子魔理沙たちが全てを忘れて幸福に生きているとしても、俺にはこの母魔理沙だけはそうした"全て"を忘れてはおらず、 その為に疲れ切っているように感じられてならなかった。こいつの精神が壊れないのを不思議に思う。 そしてゆっくりをそのような状態へと至らせた話について、俺は前に聞いた事があった。確かアリスとか言う少女の話だったろうか。 この魔理沙がどのくらいで殺人──もとい殺ゆっくり饅頭へと変わっていくのかを見る頃合であると考えた俺は、 そういう訳で今まで通り前の彼女の古いバイブレーターを持ち出して来ては、子魔理沙たちに順々に押し付けていく。 そのまま全員をパチュリーの方へ向け…… それでは、ここで皆さんにとっておきのゆっくり情報をお教えしよう。 もしゆっくりで遊ぼうと思うなら、一匹では無く二匹手に入れる事。 そうしておけば、永遠に楽しみ続ける事だって出来るだろうから…… とりあえず翻訳サイトに直ぶち込みよりはほんの少しマシ、な程度の訳。 "元カノのバイブ"という単語が出てくる癖にアリスの名前が出てきたりで、正直("外"と"幻想郷"の)どっちの話なのか良く分からん。 後、上手い翻訳が上がったら消す予定なんで英語出来る人いたらもっと綺麗な訳お願いします…… ※1 原文は And remember folk, you can t spell slaughter without laughter. That I did. 恐らくだが"slaughter(虐殺)"という単語が"laughter(笑い)"という語を完全に含んでいる事からの洒落。 このSSに感想を付ける
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前 「こっちににげたよ!」 「ぜったいつかまえてころすよ!」 「ゆっくりできないにんげんはしね!」 ゆっくりの叫び声が廃鉱山の闇に溶けるように響く。 私が今隠れている食料庫の扉越しに聞こえるぐらいだから、相当な大きさで怒鳴っているようだ。 リーダーまりさと見張りの巨大れいむを殺されたために相当ご立腹の連中は巨大ゆっくりも通常ゆっくりも総動員してゆっくりできない人間を始末しに掛かっている。 その人間とは私のことだ、困ったことに。 今、こちらに接近中の連中は声の高さから判断するに、巨大1通常2の混成部隊らしい。 ガヤガヤと騒ぐ声がさらに大きくなってきた。 ゆっくりが跳ねながら移動するときに餅をつくような音が扉の前で止まった。 こちらは陰に隠れているために分からないが、どうやら巨大ゆっくりが扉に付いた小さな窓から中の様子を伺っているようだ。 「おにいさ~ん。もうあきらめてでてきてね~。いまならゆるしてあげるよ~。」 こちらを見つけて得意になったような声だが、実際のところ連中はこちらを見つけていない。 あわてて出てきたところを袋にしようとする程度の知能はあるらしい。 「ゆっ!ここにはいないみたいだね!むこうをさがそうね!」 「まりさはおおきくてかしこいね!これならすぐににんげんをみつけられるよ!」 でも見つけられてねえじゃん。流石通常ゆっくり、能天気なもんだ。 餅つき音が十分に遠ざかるのを待って、物陰を出て扉に近づく。 先ほど、巨大ゆっくりにフェイントを掛けられてすぐに扉に近づいた結果、こちらの姿を見た巨大ゆっくりが突撃してくるのを咄嗟に撃ち殺し、その音で更に多くのゆっくりを呼び寄せてしまった為に十分に注意しながら進む。 どうやら本当に向こうを探しに行った様だ。 ヒカリゴケがわずかな光を提供する通路に扉を開ける音が吸い込まれていく。 細心の注意を払いながら左右を素早く確認し、出口へ向かった。 何かを食べている通常ゆっくりのペアの後ろを慎重に通り過ぎ、巨大ゆっくりの巡回を隠れてやり過ごして進んだが、 後で吹き飛ばそうと先ほど決意した巨大あかちゃんゆっくりの寝室に差し掛かった所である物が視界に入ったために素早く姿勢を下げ、曲がり角に隠れる。 巡回をサボり中の巨大ゆっくり3匹が寝室に向いて何事かを話しかけていた。 「ゆー、べろべろばあ!」 「れいむのあかちゃん!もっとゆっくりしてていいよ!」 「こわいにんげんからまもってあげるね!」 困った事にこいつらのいる寝室の前を通らねば外には出られない。 手持ちの小銃は5発装填済みで巨大ゆっくりを倒すためには最低3発が必要。 距離は十分に離れているので2匹射殺するなら何とかなるが、発砲炎を見られたが最後、突進してきた3匹目に俺は踏み潰される。 畜生。何でデカいとはいえゆっくり如きを警戒せねばならないんだ。 どうする?どうやって多数の巨大ゆっくりを始末する? そう思いながら悩んでいると、隣の里が少数の戦力で多数の巨大ゆっくりを屠った事を思い出した。 連中はどうやって交戦した?こっちの集落と違って隣の里に重火器は無い。 バリスタで交戦したとかいう話だが、連射速度と射程から考えて全速突撃するゆっくりを5回撃てれば御の字だろう。それでは十分に数を減らす前に蹴散らされる。 一体どうやって巨大ゆっくりの足を止めたんだ? 荷物から資料を素早く取り出し、交戦記録の記述を読む。程なくして目的の箇所を発見。 死んだゆっくりの帽子で同士討ちを誘発したようだ。 よし、これを応用させてもらおう。 実行に必要なゆっくりを調達するために物陰から離れ、来た道を引き返した。 鉱山時代には採掘された鉱石をトロッコに積載する部屋だったそこは現在、食事の時間であれば多数のゆっくりで賑やかとなる「ゆっくり食堂」となっていた。 破滅的に下手糞な平仮名(というより、文字であるかどうかすら怪しい)を書かれた札がかかった入り口の更に奥、昼食の時間が終わった為に静まり返った食堂に二匹の通常ゆっくりがいた。 「はぁ…はぁ…おいしー!」 「ゆっ!まりさ!しずかにしなきゃだめだよ!」 摘み食い中らしき2匹は他のゆっくりに見つかることを恐れ、音を立てぬように注意を払っていたが、ゆっくりの本能に抗うことはなんとも難しかった。 慌てて周囲を見回す2匹だったが、幸いな事に気づかれた様子は無い。 体を食料に向けて食事を再開する。 「ゆっくりしずかにたべようね。」 「む…しゃ…む…しゃ…」 食事はすぐに中断した。入り口から地面を踏みしめる音が聞こえてきたのだ。 モチモチとした体を飛び跳ねさせて移動するゆっくりの立てる音ではない事をれいむは知っていた。 これは人間が歩くときの音だという事もれいむは知っている。 「ゆっ!みん…ゆっ!」 入り口を向いたれいむは大声で助けを呼ぼうとしたが、そもそも自分たちがここで何をやっているか、それを見た仲間が自分たちをどうするだろうかという事に気づき慌てて口をつぐむ。 「れいむ?どうし…ゆっ!」 遅れてゆっくりまりさが入り口を向き、人間の姿を認めて驚く。 2匹は視線を交わし、ヒソヒソと話し合ったあと、侵入者の方を向いてこう言った。 「「おにいさんもいっしょにたべていいからしずかにしてね!」」 「断る。」 「「…ゆ?」」 侵入者の返答の意味が分からず体を傾けて疑問の声を上げる2匹。 彼女たちにとってこの提案は自分たちの取り分を減らすことになる痛い物だったが、それだけに必ず効果があるだろうという物だっただけに拒否されたことが理解できなかった。 残念なことに、提案を考えたのは結局餡子であるという事だった。 2匹が正気に戻ると侵入者が近づいて来たところだった。 「おにいさん、ほしいならあげるからゆっくりまってね。」 「も~くいしんぼさんだねおにいさん!」 提案が受け入れられたと勘違いしたセリフ。しかし、侵入者は足を止めずに近づいてきた。 まるで無視されたように感じたゆっくりまりさが膨れる。 「おにいさん!はなしきいてるの?!ゆっくりとまってね!」 それでも侵入者は足を止めない。聞こえていないかのように反応すら見せない。 まりさはついに実力行使に出た。 「ゆっくりとまってね!ゆっくりとまってね!ゆっくりとまっヘェヒュ!!」 侵入者の足に体当たりを開始したまりさだったが、3回目の体当たりを放つためにセリフを放ちながら飛んだとき、妙な声を上げて彼女は落ちた。 れいむは訳がわからなかった。 いっしょにゆっくりする筈のお兄さんはまりさに棒を突き刺したような体制だったし、さっきまで元気に跳ねて体当たりしていたまりさはピクりとも動いていなかったから。 「お、お兄さん…。まりさをどうしたの?」 「こうしたんだよ。ゆっくり見てね。」 れいむの疑問に答えた彼はまりさから白色の細い板──三十年式銃剣を引き抜き、まりさを足でれいむの方に押しやった。 ぐにゃりと歪みながらまりさは半回転し、れいむの方を向く。 「ゆぅーーーーーーーーーーーっ!!!」 まりさの額がぱっくりと裂け、そこからどろどろと流れ落ちる餡子を見たれいむは悲鳴を上げる。 「まりさっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「れ…ぃむ…。この…ひとは…ゆっく…りできな…ガプッ!!」 「はいそこまでー。永遠にゆっくりしてね!」 まりさが最後の力を振り絞って親友に警告を発しようとしたが、頭上から差し込まれた銃剣に途中で阻止された。 「まりさ゛あ゛あ゛ぁ゛ーーーーーーーーっ゛!!!」 もはや摘み食いを仲間に見られる事など忘れ泣き叫ぶゆっくりれいむ。 しかし彼女が悲しみを完全に吐き出すことはできなかった。 正面から高速で襲来したつま先が彼女を乱暴に蹴飛ばし、壁に叩きつけられたのだ。 「ゆっくり静かにしていってね。すぐ終わるから。」 「ゆっ…ぐっ…まりさ゛あ゛ぁ…。」 れいむは甘い死臭を放つまりさの帽子を強制的に口の中に入れられた後、猿轡をかまされ喋れなくなった。 自身の運命を悟った彼女は必死の抵抗を試みるが、その抵抗が重心を移動させて転がるというものでは何の意味も無かった。 「じゃあ、今から仲間のところでゆっくりしようね。」 「ん゛ー!ん゛ー!ん゛っん゛んう゛うう゛う゛んう!」 リボンを捕まれ持ち上げられたれいむは痛みに耐えながら必死に揺れて自己主張をしたが聞き入れられなかった。 思い付きを実行する為に必要な物を入手した彼は、あの巨大赤ちゃんゆっくりの寝室入り口を見渡せる物陰に戻ってきて再び隠れた。 「れいむのあかちゃんはほんとうにかわいいね!ずっとみててあげるね!」 「まりさのあかちゃんもかわいいよ!」 「「おかあしゃん!ゆっきゅりしちぇっちぇね!!」」 彼は未だに寝室の前で子供に話しかける巨大ゆっくりに呆れながら、持ってきた痣だらけのゆっくりれいむを手元に置き、腰を下ろして小銃を構える。 彼はれいむの猿轡がゆるくなっているのに気がついていなかった。 ──れいむがしゃべれるようになってるのにきがつかないなんてほんとうにばかなにんげん!これでゆっくりできるよ! 「みんなー!れいむをはやくたすけてね!」 ゆっくりれいむのくぐもった救助要請に一斉に振り向く巨大ゆっくり。 れいむの口からただようゆっくりの死臭はまだ届いていないようで、巨大ゆっくりはれいむを助けようと突進を開始した。 「ゆゆ!いまわるいにんげんからたすけるよ!」 「ゆっくりまっててね!もうちょっとだよ!」 「ゆっくりできないにんげんはしね!」 巨大ゆっくりが3匹で己の方へ突っ込んでくるのはそれなりに恐ろしい物である筈なのに、彼は全く関心が無いように引き金を引いた。 「ゆぶっぅ!」 「まりさっ!まりさのかたきはれいむがトビャッ!」 3発の銃弾を受けて先頭を進んでいた巨大まりさが粉砕され絶命する。 それを見た巨大れいむが気勢を上げるが、更に飛来した銃弾で全身を貫かれて速度をガクンと下げる。 しかし、最後尾を進んでいたため無傷の巨大まりさが2匹を追い越して突撃を継続する。 「もうばーんってできなくなったね!あきらめてゆっくりしんでね!」 勝ち誇った顔で勝利宣言をする巨大まりさ。 その時、正面から何かが闇の中から飛んできてまりさの顔に当たり、ぼよんと跳ねて地面に落ちた。 飛んできたのは捕まっていたゆっくりれいむだった。 「ゆっ!れいむをかえしてももうおそいよ!ゆっくり、し…ね…?」 「れいむをなげるなんてばかなおにいさん!まりさ!あんなやつゆっくりころしてね!」 れいむの口から覗く黒い物体とその匂いに気が付いた巨大まりさが表情を変えていく。 勝利宣言のニヤけた笑顔から憤怒の表情へと。 「ゆっくりしねえぇ!」 「まりさ!にんげんはこっちじゃないよ!ゆっくりきづいてね!」 れいむの体から漂う甘い死臭で同属殺しと判定した巨大まりさがれいむを潰しに掛かる。 当然、黙って見ているれいむではなく必死で逃げだした。 彼は巨大ゆっくりと通常ゆっくりが追いかけあってる間に小銃を再装填し、再び構える。 銃声が3つ響き、無傷だった巨大まりさが物を言わぬ餡と皮の複合体へと変えられた。 「おにいさん!れいむをたすけてくれてありがとう!」 そのお兄さんが自分に何をやったかもう忘れたゆっくりれいむは4発目の銃声を最後に動かなくなった。 最後の1発で巨大れいむの息の根が止められ、彼の前を阻むゆっくりはいなくなった。 彼は立ち上がって静まり返った巨大赤ちゃんゆっくりの寝室へと入って行きこう言った。 「君たちには悪いけど君たちの親が悪いから死んで貰います。ゆっくり親を恨んでね!」 大小混合編成の赤ちゃんゆっくり達は入ってくるなりそう宣言した人間の言うことが分からず、頭に?を浮かべたような表情をしていたが、人間に一番近かったゆっくりが刺し殺された時点で狂乱の渦に落ちた。 「いやた゛あああぁぁあ!」 「まりし゛ゃは゛こ゛ろし゛ゃないち゛ぇ!やめち゛ぇ!」 「ゆ゛ーゆ゛ーゆ゛ーゆ゛ー」 それから3分後。 かつて赤ちゃんゆっくりが最も安心できるゆっくりプレイスだった筈の寝室は、赤ちゃんゆっくりの死骸が転がる餡子の池地獄と化していた。 入ってきた人間がまた1匹、ゆっくりを捕まえて刺し殺す。 その周りには鋭利な刃物で殺傷された赤ちゃんゆっくりや踏み潰された赤ちゃんゆっくりが3ダース近く転がっていた。 一部のゆっくりは息があるのか「ゅ…ゅ…」と呻いていたが、どう見ても助かりそうには無かった。 生きている赤ちゃんゆっくり、その数およそ120匹は部屋の隅に固まって泣き、怯えながら震えていた。 更には自分こそ奥へ行こうと他の赤ちゃんを押しのけ、自分より小さい赤ちゃんを踏み潰しているゆっくりまでいる。 人間がそちらへ近づいていくたびに、殆どの赤ちゃんゆっくりが意味の無い単語を叫びながら逃げて行き、運の悪い赤ちゃんゆっくりが公開処刑されていた。 これだけの数が居れば人間に勝てそうなものだが、彼に向かっていくゆっくりは一匹も居らず、ただ逃げ惑うばかり。 そのような勇気ある赤ちゃんゆっくりは真っ先に死骸となっていた。 さらに2分経過して赤ちゃんゆっくりの数が3桁を切ろうかという頃、赤ちゃん達の耳に待ち望んでいた声が聞こえてきた。 頼もしい群れのリーダーと、彼女が引き連れる巨大ゆっくりの声だ。 急に強気になった赤ちゃん達は偶然にも彼女達の親の1匹が取った行動を再現した。 勝利宣言である。 「ゆゆ!おにいさん!りーだーにつかまってころしゃれてね!」 「りーだーはつよいんだよ!おにいしゃんなんかかちぇないね(わらい)!」 「あきらめてあやまっっちぇね!」 しかし、彼は赤ちゃんゆっくりの言葉に聞く耳持たずといった様子で寝室から出て行った。 「にげちゃうんだ!あかちゃんあいちぇににげちゃうんだ(わらい)!」 「しゅごしゅごにげてね!まけいぬ!」 「おうちでゆっくりないちぇいっちぇね!」 「りーだーからはにげられにゃいよ!ゆっくりつかまっちぇね!」 寝室から出た彼は荷物から最後のセムテックスを取り出し、信管を幾つか差し込んでデトコードを素早く伸ばしていく。 彼が角の向こうに姿を消すのと、彼を始末に来た巨大ゆっくり一行の先頭集団が寝室入り口に差し掛かったのはほぼ同時だった。 その瞬間、セムテックスが起爆してあまり頑丈ではない通路に強烈なダメージを与えた。 自身の重量とその上の土を支えきれなくなった通路が急速に崩壊し、寝室で惨殺されている赤ちゃんゆっくりを見てショックを受けていた巨大ゆっくりが押しつぶされた。 彼は通路が塞がれたのを確認した後、悠々と外へ出て行った。 土砂の向こうから僅かに漏れてくる、ゆっくりがこんな事をした人間のおうちは必ず破壊すると宣言しているのを聞いてから。 仲間の巨大ゆっくりに殺されかけたものの九死に一生を得たリーダーまりさは目の前の光景を呆然として眺めていた。 切り札の精鋭巨大ゆっくり部隊があの人間を殺そうと加速したとき、爆発が起こって天井が崩れ、彼女の切り札が生き埋めになってしまったのを。 「な、なんでぇ…れいむ!まりさ!」ぱちゅりー!おきてよ!ねえへんじをしてよ!」 「まりさ…もうしんじゃってるよ…ゆっくりさせてあげなきゃ…」 「そんなこといわないでよ!れいむもまりさもぱちゅりーもいきてるよ!へんなこといわないで!」 切り札にして親友のゆっくりを一挙に3匹も失ったまりさは暫くの間、錯乱しながら叫んでいたが徐々にその顔が赤く染まってきた。 まりさにとって己の命と同じぐらい大切だった仲間を無残に殺戮した人間に憎悪を抱いたのだ。 「ゆるさない…まりさのしんゆうをころしたにんげんはぜったいにゆるさない!ゆっく゛りさ゛せ゛す゛にこ゛ろし゛てやる!!にんけ゛んのおうち゛をにと゛と゛ゆっく゛りて゛き゛ないようにし゛て゛やる!!」 復讐に燃えるまりさは崩落箇所を修復した翌日の朝、発言を実行に移すこととなる。 「連中の侵攻予想時刻は明日午前9:00と思われます。」 日が落ちたために電灯で照らされた広い部屋。 その入り口から反対側に設置された黒板の前で一人の男が何か図らしき物を描きながらそう発言した。 セムテックスで巨大ゆっくりを生き埋めにしてきた彼だ。 「この時刻想定は連中が洞窟の復旧にかかる時間、巨体で森林を通過する時間を入れて計算してありますから、まずまずの正確さと思われます。」 「それで、どうやって対応するつもりなんだ?流石に陣地防御だけでは難しいだろ。最低200匹の想定なんだろ?」 彼が黒板の『廃鉱山』と書かれた箇所に『08:00』、『主防御線』と書かれた所に『09:00』と記入しながら発言したとき、1人の男が疑問をはさんだ。 「そうですね。確かに陣地だけじゃ厳しいです。なので、連中が巣から出てきた時点で砲撃を開始します。」 「砲撃?加工所の連中か?」「またあいつ等に頼るのか?良い連中ではあるんだがな。」 「廃鉱山入り口を見渡せる場所に夜明けと同時に観測班が移動する予定です。使用装備は毎度おなじみ155ミリ榴弾砲3門を予定しています。」 彼は質問者に答えつつ、黒板の『主防御線』より下に長方形を書き、その中に塗りつぶされた小さい丸を書く。 「連中がこちらに接触するまでに砲撃を継続し、100は削るつもりです。」 「あの巨体だろ?効果が通常のゆっくりよりも落ちるというのは?」 「勿論想定しています。加工所研究開発部に増援を要請した所、彼らは快く応じてくれました。」 そう言いながら、『主防御線』の所に長方形と横に潰れた楕円を組み合わせた記号を書き込み、その上に縦棒を1つ加えた。 「彼らなら巨大ゆっくりの50や100何する物ぞ、必ず蹴散らしてくれます。」 「その記号は…!それなら大丈夫か、安心した。」「彼らならやってくれるだろうな。」 「ご理解頂き感謝します。それでは作戦会議を終了致します。すでに斥候ゆっくりとの小競り合いが起きていますので、各員、情報漏洩に注意してください。では、解散。」 会議に参加した男たちが一斉に腰を上げ、挨拶を交わしながら外へ出て行く。 男たちは愛する家族が待つ家へと帰るために扉の外の吹雪へと次々姿を消し、後に残ったのは彼と里長だけになった。 「それでは、私もこれで。向こうで加工所の皆様とうち合わせをしなければならないので。」 「ああ、武運を祈る。」 彼もそう言って外へ出て行き、最後に残った里長は冷えた体を温める為、茶でも飲もうかと立ち上がっていった。 まりさは勝利を確信していた。 昨日おうちを破壊してくれた愚かな人間は赤ちゃんゆっくりをかなりの数惨殺しており、それ自体は群れの存続に影響があるほどのダメージだったが、現有戦力──つまり成体ゆっくりの殺害数は2桁にすら届かないというレベルだったので、人里侵攻には何の影響もなかった。 あかちゃんをころしてもつよいゆっくりをころさないなんて、あのにんげんはほんとうにばかだね! 昨日その人間のせいで死に掛けたのだが、餡子脳はそのような自分に都合の悪いことは覚えておらず、昨日の人間はまりさの中で雑魚ということになっていた。 それに、おともだちのありすやみょんもたすけにきてくれたからぜったいまけないね! 友好関係にある巨大ありすや巨大みょんの群れから結構な数の巨大ゆっくりが増援に来ており、その事もまりさの自身を増大させていた。 自分たちの後方で爆発が発生するたびに、巨大ゆっくりが数匹に通常ゆっくり1ダースが脱落している事にまりさは気づいていなかった。 巨大ゆっくりが大量に動くとき発生する音と巻き上がる地吹雪のせいでまりさの視覚と聴覚が半ば麻痺していたから。 そんなまりさでも森の向こうが徐々に明るくなってくるのは分かった。森の出口だ。 「ゆっ!みんな!もうすぐにんげんのところだよ!ゆっくりじゅんびしてね!」 まりさは走行中の巨大ゆっくりの上から指示を出す。 それを聞いた仲間たちは巨大ゆっくりが前面に出るように加速し、通常サイズがその後ろに隠れるようにやや減速した。 まりさは今まで敵対してきた群れをいくつも滅ぼしたこの陣形に絶対の自信を持っていた。 だから、森を抜けた瞬間に人間たちの攻撃で足元の巨大ゆっくりごと吹き飛ばされ、高速で木の幹に叩き付けられても何が起こったかわからなかった。 リーダーまりさ自ら率いる最初のゆっくり集団は森を抜けると同時に待ち構えていた人間の一斉射撃によってリーダーを残し全滅した。 雪の色と餡子の色が絶妙なコントラストを作り出す。 「みんな!にんげんたちをころすよ!」 「ゆっくりできないようにしてやる!」 「あやまってもゆるさないよ!」 第2集団がすぐに現れ、最初の集団の成れの果てが見えないのだろうか同じような陣形で突撃していく。 その集団は最初の物より5メートルほど先に進めたが、そこが限界だった。 「ゆぶぶぶぶぶぶぶっ!」 「ゆ゛ーーーーーーっ゛!!」 「もうし゛ないか゛らゆるし゛へ゛っ!!」 重厚な音を立てて機関銃が弾を吐き出していく。 何発かに1発の割合で混ぜられた曳光弾の放つ光が巨大ゆっくりへと吸い込まれ、瞬時に穴だらけの巨大饅頭へと変化させた。 そればかりか、巨大ゆっくりの柔らかい体を反対側まで突き抜けた7.7ミリ弾はその後ろを進んでいた通常ゆっくりに命中し、そこでやっと運動を止めた。 その運動エネルギーを受け止めた通常ゆっくりは既にバラバラになっていた。 このような光景が防御陣地に三箇所据え付けられた機関銃によって現出させられていく頃、同時に他の光景も現れ始めた。 陣地中ほどで待機していた加工所研究開発部の戦車中隊が侵攻してくるゆっくりの増大を見て攻撃を始めたからだ。 「目標!前方の巨大ゆっくり!弾種榴弾!撃ぇーーーーっ!」 「ゆっく゛りし゛て゛て゛ね!こっち゛こないて゛ねへ゛っ!?」 「みんなはれいむがまもってあげるほ゛おぉっふ゛っ!!」 合計10門の戦車砲が咆哮をあげ、灰色に塗装された様々な形の鋼鉄が振動するたびに巨大ゆっくりが体を貫通されて悲鳴を上げ、その後ろの通常ゆっくりが榴弾の爆発により木っ端微塵にされていく。 「みんなはまりさのかわりにしんでほしいんだゼゴブッ!」 「ゆっくりしんでいっぺぺぺぺぺっ!」 仲間が次々と穴だらけのオブジェにされるのを見たゆっくり(特にまりさ種)がその場から逃げ出す。 だが、機関銃の弾は勇敢なゆっくり臆病なゆっくり誠実なゆっくり卑怯なゆっくり大きいゆっくり小さいゆっくりを区別せず平等に死を与えていく。 「おか゛ーち゛ゃーん!た゛す゛け゛へ゛っ!!」 「まりさ゛をこ゛ろし゛て゛もいいか゛らみんなをた゛す゛け゛く゛っこ゛ーーっ!!」 「ころさ゛ないて゛えヘ゛フ゛ヘ゛ーーーッ!!」 幻想郷においては美しさの点でおそらく最底辺に位置する弾幕が展開されるたびにゆっくりの命が刈られ、白化粧の風景が飛び散る餡子に汚されていった。 5個集団100匹のゆっくりの突撃を粉砕した陣地に僅かな静寂が訪れた。 5個目のゆっくり集団が突撃を中止、仲間の死骸や仲間だった物の一部を引きずり、口に入れて回収し始めた事に陣地の人間が気づいた段階で射撃は停止されていたからだ。 突撃と射撃の中止タイミングが少しずれていたために回収役のゆっくりが10匹以上回収される側になっていたが。 機関銃陣地の人間は加熱し磨耗した銃身を取り替える為に、大量に消費された機銃弾を補給する為に僅かな人間を残して後方へ必要な物資を取りに行ってしまった。 戦車隊は横付けされたリヤカーから砲弾を受け取っている為に全員配置についていたが、ハッチから砲弾を受け取っている為に直ちに戦闘可能と言う訳ではなかった。 全員、機関銃と戦車砲の前に無謀な突撃を繰り返して餡子の山を築くゆっくりに油断していた。 だから、陣地から最も突出していた九七式中戦車の車体前方で火花が散って甲高い衝撃音が発生したとき、それに乗車していた人間は気のせいだと無視した。 ゆっくりが戦車の装甲を打ち抜くなど無理だと思っていたから。 森から巨大ゆっくりが再び姿を見せたとき、戦闘可能なのは陣地中央の1輌のみだった。 「ちいさいゆっくりはいしをどんどんあつめてね!」 「おっけー!ありすにまかせて!」 「おおきいゆっくりはもらったいしをどんどんはきだしてね!」 「ばかなにんげんはおどろくだろうね!」 「たのしみだね!」 木の根元で潰れていたところを救出されたリーダーまりさが生き残りに指示を出す。 巨大ゆっくりの肺活量をいかして砲台にしようとしているのだ。 ぽんっ、という二重の意味で気の抜ける音が森に反響し、陣地へ数十個のこぶし大の石が飛来する。 殆どの石は一番目立つ戦車へ向かって発射され、甲高い音を立てて戦車の装甲に弾かれたが幾つかの石は効果を発揮した。 『こちら第1機銃座!石で機関銃がゆがんだ!射撃不能!』 『7号車から1号車。今の投石で履帯が切れたようだ。自走不能。指示を請う。』 どのみち弾薬切れで射撃できない機銃要員が指示を受けて下がっていき、唯一戦闘可能な四式中戦車がエンジン音を上げて陣地の前方に出る。 「ばかなにんげんだね!それだけでかてるわけないじゃん!」 「はやくあやまってね!くるしまずにころしてあげるよ!」 「あやまってね!」「あやまってね!」 「ゆーっゆっゆっゆっ!」 勝ち誇るゆっくりが戦車に対して罵声を浴びせる。 満面のいやらしい笑みをうかべた巨大まりさだったが、返事は彼女の期待に沿った物ではなかった。 巨大まりさにオレンジ色に光る物体が突入した瞬間、彼女はくぐもった悲鳴をあげながら巨大な虐待お兄さんに蹴り飛ばされたかのように中央がへこみ、瞬きする間もなく後頭部が膨らみ炸裂した。 一式破甲榴弾が巨大まりさ自慢の分厚い皮をちり紙のように貫通し、そのまま後ろへ抜けて行ったのだ。 五式七糎半戦車砲から放たれた砲弾はこのような光景を5回再現し、6匹目の通常ゆっくりに突入してからやっと炸裂した。 リーダーまりさの小間使いをやっていたゆっくりれいむが破裂する。 後方で他のゆっくりに指示を出していたリーダーまりさに加熱された餡子の酸化物が降り注いだ。 「よ゛っ゛、よ゛く゛ほ゛れ゛い゛ふ゛を゛!!」 滝のような涙を流し、リーダーまりさは人間へと突撃。 何事かと振り向いた巨大みょんの横をすり抜け、石を集積中だった赤ちゃんれいむを飛び越して駆けた。 最も先頭にいる巨大ゆっくりを追い抜いたとき、目の前の惨状に気がついた。 まりさの目の前にあるのは餡子と皮の山。森の出口正面の為にここで無残に撃ち殺されるゆっくりが多かったことを物語っている。 苦痛の表情をした顔の皮とまりさは目を合わせてしまった。 背中に何か冷たい物を感じるまりさ。 まりさの右にはたくさんの瀕死ゆっくり。「い゛た゛い゛よ゛お゛ぉ゛。」「ゆ゛っく゛り゛し゛た゛い゛よ゛」「ま゛り゛さ゛。た゛す゛け゛て゛よ゛は゛り゛さ゛」ゆっくりのうめき声がたくさん流れてくる。 元気なゆっくりが葉っぱを貼り付けてあげ、言葉をかけるなど治療行為を行っているが餡子の流出が止まらず、どう見ても助かりそうに無かった。 まりさの左には形が残っているゆっくりの死骸が集積されていた。 話しかければ今にも起き上がるんじゃないかという安らかな顔で目を閉じたゆっくりれいむが運ばれてきて、死骸の山に加えられた。 まりさは再び正面に顔を向けた。 餡子と皮の山の向こうには灰色の塊が鎮座している。人間の乗り物だ。 後部から煙を噴き出し、その塊がが次々とまりさの方へ向かってくる。 あれが、あれがまりさのともだちを!あれがまりさのかぞくを!あれがまりさのなかまをころしたんだ! 怒りの視線を射殺さんばかりに灰色の塊へと向けるまりさ。 ふっと、何かを決意して口を開く。 「ひ゛んは゛!ひ゛んけ゛んはゆっくりし゛て゛るみた゛いた゛よ!いは゛のうち゛にこ゛ろせ゛えええぇぇ!!」 20を切るまでに減った砲台ゆっくりがリーダーの命令を受けて口を開けた。 次に石を頭に載せた通常ゆっくりが近づき、砲台ゆっくりがそれを受け取る。 本来ならば砲台ゆっくり1に対し、石運びゆっくりは3を確保して迅速な射撃を実現していたはずだったが、急速な石運びゆっくりの消耗により射撃間隔がひどく開いてしまっていた。 でも、これまでだよ。にんげんののりものがすごくてもこんなにたくさんのいしをふせげるわけないよね。 砲台ゆっくりが一斉に空気を吸い込むと言う頼もしい光景にまりさは勇気付けられた。 今までにその自信が何回打ち砕かれたかはもう忘れて。 「みんな!いくよ!ゆっくり~!」 「装填よし!」 「目標!砲撃ゆっくり!弾種徹甲!」 「うってね!」 「テェッ!」 砲台ゆっくりと戦車隊の射撃はほぼ同時だった。 しかし、ゆっくりが放った石は放物線を描き、それに対して砲弾はほぼ一直線に突き進んでいく。 どちらが先に効果を発揮するかは明らかだった。 ゆっくり達にとって幸いだったのは、石が効果を発揮したかどうか判別する前に死んだ事だった。 「は゛ぁ…は゛ぁ…な゛ん゛て゛ぇ!?な゛ん゛て゛ぇっっ!????」 リーダーまりさは僅かな手勢を引き連れて廃鉱山へと泣きながら逃げ帰っていた。 切り札を人間に悉くつぶされた挙句、新しく開発した「投石」作戦すら無効だったから。 強靭な悪い巨大ゆっくりの皮膚すら貫通する「投石」を防がれたのはショックだった。 あの時、自分達の放った石よりも先に人間達の攻撃が到達して砲台ゆっくりを粉砕、餡子と白雪の混合物が舞い上がったが、それでもまりさは口をゆがめて笑うのを止めなかった。 試しうちした時に見た、放物線を描く石が悪いゆっくりの上から降り注いで、餡子の飛沫を上げながらゆっくりが絶命した光景。 それが今度は人間相手に起きるだろうと確信していた為だ。 しかし現実は厳しかった。 威力を期待された石は戦車の一番薄い上面装甲すら貫徹できず、火花を上げて跳ね返された。 必殺の攻撃すら防がれたゆっくりの群れはその光景を目にした時点で壊乱。 残り少ない巨大ゆっくりが人間の前に立ちふさがり、通常ゆっくりがまりさを援護しながら脱出を開始した。 巨大ゆっくりの断末魔を聞きながら全速力で「おうち」を目指しているのが今の状況、というわけだ。 まりさが後ろで何かはじけるような音がしたのに気づくと同時に、横を走っていたゆっくりみょんが顔をはじけさせながら前につんのめる。 「ま…さ…ゆ…くり…にげ…て…ね…」 まりさはみょんを見ない。見ると追いつかれて殺されると知っていたから。 再び後方で音が発生。ついでまりさのまわりを高速で何かが飛びぬけていった。 高速で飛ぶ何かが木に当たり、木片を高速で周囲に撒き散らす。 ゆっくりちぇんが木製の散弾を食らって倒れた。 ありすの群れから来てくれたゆっくりありすが高速で飛ぶ何かに全身を貫かれて吹き飛ぶ。 それでもまりさは前を見続け、前進し続けた。 まりさを救うために散ったゆっくりの命を無駄にしない為に。 そうするうちに追撃がやんだが、それに気づかずリーダーまりさは森を駆け抜けていった。 「撃ち方やめ!撃ち方やめ!」 逃走した指導者まりさとその取り巻きを追撃していた加工所職員達に停止命令が伝わる。 停止させた理由が分からず疑問に思ったが、彼らはそれを態度に表さずに帰っていった。 それが彼ら加工所研究開発部実験隊の仕事だから。 ごめんね。ぜんぜん「雪中」じゃないね。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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屋上のゆっくり ●寒さとの戦いの続きですが、特に前作を読む必要はありません。 ●現代物です。 お兄さんは悩んでいました。 先日の大型冷蔵庫によるゆっくり軟禁実験は予想外に短期間でゆっくり達が自滅してしまったため、暇が余ってしまったのです。 ゆっくりが自滅する様を見るのは、大変楽しいとはいえ、今少し長く楽しみたい。 与えた環境が過酷過ぎたなら、少々緩和してみようと。 「ゆっくりだすんだぜー!」 「わからないよー。」 「むきゅー。」 やいのやいのと騒ぐゆっくり達。 今回はペットショップで買って来た餌用ゆっくり(三匹セット200円) 小動物用に子ゆっくりサイズで成長が止まる加工がされているものを屋上の高架水槽のフロアに離します。 「さて、君達にはここで暮らしてもらいます。」 周囲はビューという風の音がなり響く、ゆっくり達にとって、過酷な環境です。 強い風はゆっくり出来ない音を出しますし、体を冷やします。 最悪、飾りが飛びかねません。 「むきゅー、かぜさんがつよすぎでゆっくりできないわ。」 ばたばたと三匹の髪飾りが風に揺れています。 「かぜさんはゆっくりできないんだね。わかるよー。」 「じじいははやく、ここからまりさたちをだすんだせ!」 お兄さんは冷笑を浮かべながら、宣言しました。 「断る。お前達は子孫に至るまで、ここで死ぬ。変更はない。」 「「「どぼぢでぞんなごどいうの゛ぉぉ!」」」 嘆き騒ぐゆっくり達を尻目に、お兄さんは雑草だらけとなったプランターをしっかり固定して高架水槽の周りに小さな草原を作ります。 プランターの下の湿った場所にはダンゴムシなどのゆっくりの好物の虫を、高架水槽の隙間には防水加工したゆっくり達の巣箱を三つはめ込みます。 「では、食うものも住み家も用意した。後は達者でくらせ。」 「「ゆべっ!!!」」ゆっくり達はフロアの床に転がされ、プランターにぶつかったところで止まります。 「ゆっゆっゆっ」 「ひどいめにあったんだねー。わかるよー。」 ぴくぴくと痙攣しながら気絶しているゆっくりぱちゅりーを介抱するように、用意された巣箱にちぇんは運んでいきます。 しっかり固定された発泡スチロール製の巣箱はソフトボール程度の大きさしかないこの種のゆっくり達にとってだいぶ大きなおうちでした。 「さむいのぜ;ゆっくりできないんだぜ」 屋上は地上五階部分。普段住んでいる場所と違い、常時強風が吹き荒れます。 「おぼうしさんがとばされないようにしなきゃだぜ」 ソフトボール大のまりさはゆっくりハウスの中で呟きます。 お兄さんが用意した草や虫、ゆっくりフードを一日一定数供給するえさ箱など、食べるには困らない環境です。 しかし、ほぼ観察するのみとはいえ、虐待お兄さんが用意したものです。仕掛けはゆっくりと動いています。 その日の夜 「なんでなのぜー!」 「わからないよぉー!」 寝ているぱちゅりー以外の二匹の叫び声が響きます。 「むきゅ・・・どぼじであがぢゃんできてるのぉぉ」 ちぇんのお腹は二倍程に膨れあがり、中で赤ゆっくりがぴくぴくと動いているのが薄い皮越しに見えます。 お兄さんが残した餌さ箱の餌は低確率でゆっくりをにんしんっさせる効果があるためです。 「ゆっ!うばれるんだねぇ。わがるよぉ!」ぽんぽんぽんっと、ゆっくりちぇんの赤ゆっくりが三匹産まれます。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!!」 「ちぇんの赤ちゃんとってもゆっくりしてるよー。わかるよぉぉ。」 「むきゅ、このこたちのえさはどうするの?」 「ゆっ!」 ぱちゅりーの言う通りこの屋上にある餌は三匹のゆっくりが暮らす分には不足ありません。 逆に言えば、増えたゆっくりに回せる余裕はないのです。 しかも、餌さ箱の餌はにんしんっを促進させるもの・・・ 記憶力がいいぱちゅりーはお兄さんが言った言葉を思い出しました 「子孫に至るまでここから出れない。」 「むきゅっ!ぱたっ。」 ゆっくり出来ない想像をして、ぱちゅりーは失神しました。 「意外に頭がいいぱちゅりーだな。餌さ用にもたまには当たりがあるのかね?」 次の朝、様子を見にきたお兄さんは、ぱちゅりーとちぇんの会話を聴きながら、そう評します。 「どぼじて、ぞんなごというのぉ!」 「わきゃらにゃぃよぉー!!!」 「むきゅ!これいじょう、あかちゃんがふえたら、みんなゆっくりできなくなるわ!」 「あかちゃんはゆっくりできるでしょー!わからないよー。」 早くもプランターの下の虫は全滅状態のようです。 赤ゆは只でさえ燃費が悪いのに、ゆっくり的には美味しい虫を食べさせ続けた結果がこれです。 餌箱も一週間もしたら餌が尽きます。 「そうしたら、こいつらはどうなるか・・・今から楽しみだ。」 そして一週間後。 お仕事が終わったお兄さんは、ゆっくり達を確認に屋上に上ります。 ここ一週間、納品続きでさっぱり確認できなかったからです。 「「「ゆぎゃー!」」」 「お、やってる。やってる。」 そこには、殆んどの草が食い尽されたプランター。 あちこちがかじられた巣箱、そして、共食いしはじめた赤ゆっくり達。 「やっぱり、うまれたてはさいこうなのぜ。」 自分の赤ゆを食べるまりさ、どうやら初期のゆっくりはこれしか生き残っていないようです。 他は 赤まりさ×20 赤ちぇん×10 赤ぱちゅりー×8 ちぇんやぱちゅりーの姿がないところを見ると、二匹とも巣箱の中でおたべなさいしたらしく、二つに割れたまんじゅうが入っていました。 赤ゆっくり達を生き残らせるために、自らを犠牲にしたのでしょう。 「ここにはぜったいいれにゃいわ!」 「たてきょもりだょー」 雑草の茎で入り口は塞がれています。ゆっくりのやることなので、隙間は空いていますが、外で共食いを始めたまりさが入れない程度の強度はあるようです。 「むーちゃ、むーちゃ、・・・ゆげぇ!!!」 巣箱の発泡スチロールの欠片を食べてあんこを吐いて死ぬもの。 そのあんこを美味しそうに食べる親まりさ。 最早、まとまった餌はぱちゅりー達の巣箱だった中にある親ゆっくり二匹の残骸くらいのものです。 「ゆっ!もう、あんこはたべあきたのぜ。」ぎろりと封鎖された巣箱を見る親まりさ。中には、生クリームの詰まった子パチュリー達と チョコクリームの詰まった子ちぇんがいます。 「む~しゃ、む~しゃ 、それなりー。」 「ゆが~ん!!まりしゃはゆっくちできないよ!!」 「むきゅ!みんなでたたかえばかてるわ!」「わきゃるよー!とちゅげきにゃんだにぇー」 わらわらと出てくる赤ゆっくり達。普通なら成体ゆっくりと赤ゆっくりでは勝負になりません。 ですが、子ゆっくりサイズまでにしかならない品種改良を受けたまりさには、意外に多数の赤ゆっくりが突っ込んで来るのは効果がありました。 「ゆ!こなまいきなあかちゃんはしんでね!まりさのでぃなーに、ゆべべっ!!」 「ゆ!まじゅいおめめだにぇ!!」 「ゆべっ!わきゃらにゃいよー。ちぇんのあんよがー。」 「むきゃっ!ふまにゃいでー。ゆ゛っゆ゛っゅ゛ゅ゛ゅ゛っっ。」 次々に飛びかかる赤ちぇんや噛みつこうとして 赤ぱちゅりー。体のあちこちをえぐられ、噛み千切られながらも、赤ゆを食い殺し続ける親まりさ。 遂には親まりさの皮がずるりと千切れ、断末魔の悲鳴もあげることが出来ずに一塊のあんことなります。 「あーあ、遂に死んだか。追い詰められた結果は人もゆっくりも変わらんね。」 ぱちゅりー達の巣箱付近では、殆んどの赤ゆが死に絶え、後に残ったのは、赤ぱちゅりーと赤ちぇんが各1匹、赤まりさが三匹だけ。 大量の赤ゆと親まりさが永遠にゆっくりしてしまった結果、破滅的に悪化した食糧事情は回復しました。 「むーちゃ、むーちゃちあわちぇぇ!!!」「こにょあまあまさんはみんかまりさのものだぢぇ!」 「ちらにゃいじぇ、みんなまりしゃがたべるにょじぇ!!」 危機が去ったにも関わらず、醜い言い争いを続ける赤まりさ達。 対照的に仲間の過半を失った赤ぱちゅりー達はゆ~ゆ~と嘆きながら、巣箱に仲間の残骸を運び始めます。 かーかーかー。 「ゆっ!真っ黒さんがやってきたよ!!」 外にいて、あんこを食べ続けた赤まりさ達は飛んできたカラスを見ました。 「ゆっ!ゆっきゅりし、ゆぴっ!!」 「まりしゃのいもうとがー。 赤まりさの目を手早くカラスはえぐり、他の赤まりさの底部をつついて動けなくします。 「ゆっゆ゛っゆ゛っ」「いちゃいよぉ!おうちかえる!!」 「にゃんで、こんにゃ、ゆきゃー!!」 ぶちぶちと音を立てて赤まりさの体は縦に引き裂かれ、カラスはゆっくりと食べていきます。 害鳥扱いされているカラスも、ゆっくりを喰らう時だけは人間に邪魔されません。 動きがとれなくなった赤まりさ達は、時間をかけてついばまれ、生きながらにして原形を失なっていきます。 「もっぢょ・・・ゆっくち・・・」 ぐしゃりと舌を潰され最後に残った赤まりさはクチバシにくわえられ、カラスによってさらわれていきます。 「むきゅっ・・・おそとはゆっくりできないわ。」 「きょわいんだにぇ・・・わきゃったよー」二匹の赤ゆっくりは、小刻に震えながら、巣箱の中で赤まりさがばらばらにされる様を見ていました。 「ゆっくり出来ない環境にさらされ続けたゆっくりは餌があっても成長できないか。試して見るのも楽しそうだな。」 お兄さんはゆっくり屋上を後にします。 食べられ尽くされていたプランターには、ゆっくりと雑草が再び生え始めていました。 ~~~~一ヶ月後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ようやく仕事を一段落させたお兄さんは、屋上のゆっくり達を思いだし、貯水タンクの辺りをみてみました。 ゆっくりしていってね!」 「ここはみんなのゆっくりぷれいすだよ。おにいさんもゆっくりしようね!!」 小さな赤ちぇんと赤ぱちゅりー二匹の他に、ねずみに相討ちになった状態で永遠にゆっくりしてしまっているちぇんと、食い殺されたぱちゅりーの残骸がありました。 「お前達はゆっくり出来ているのか?」 「むきゅ!!ゆっくりしているわ。おかあさんたちがえいえんにゆっくりしてもまもってくれたんだもの。」 「そのぶんまでゆっくりするんだよー。」 三世代目に入ったゆっくり達には既にこの小さな屋上以外の知識は消えているのでしょう。 「そんなお前達にあまあまをやろう。」 「むきゅ!おにいさんからものをもらうとゆっくりできないって、おかあさんにいわれたわ。」 「わかるよー。たべちゃいけないんだね。」 多少は教育を受けたのか、賢い個体になっているようです。 「まぁ、いい。食べたければ食べるがいいさ」 そっと、10円チョコを二つ置き、お兄さんはその場を後にしました。 その次の週、お菓子の甘味に負けた赤ゆっくり達が飢えて死んだのが、それとも耐えてゆっくりしてるのか・・・ 箱の中の猫の生死を確認するように、屋上までやってきたお兄さん。 そこには少し予想と違った光景がありました。 「むきゅ・・・ゆっくりできないわ。」 「わかるよー・・・」げっそりしながら、ソフトボール程度の大きさになったゆっくりが二匹。 「何がそんなにゆっくり出来てないんだ?」足元には、先日おいた10円チョコが二つ。 「むきゅ!いいにおいがするのに、たべられないのはゆっくりできないわ!!」 「でも、いいにおいはゆっくりできるよー。それはわかるよー。」 二匹はゆっくりらしからぬ忍耐で食べるのを我慢している。食べたらゆっくり出来なくなるのが分かるのか、涙を流しながら見ているだけ。 「いいことを教えてやろう。そのあまあまは食べるとしあわせーになる代わり、他の食べ物は二度と食べられなくなるぞ。」 「「ゆ゛っ!!!。」」 ぱたっと二匹のゆっくりは巣箱の中で気絶したようです。 屋上のゆっくり達はようやく、餌が自給出来るようになったのに、今度はパンドラの箱を渡されたようなものでした。 いつまで我慢できるでしょうか? 続く? 後書き 屋上の貯水タンクのあるスペースは6畳くらいのサイズで、屋上の他のスペースとは一段高い位置にあります。 続きを書くとすれば、その後お菓子を巡るゆっくり達の対立物にするような感じですね。 本編は携帯で書いているので変な部分がありますが見逃してください。 orz 著:moltoke これまで書いたの ゆっくりいじめ系2263 ゆしるだー ゆっくりいじめ系2357 寒さとの戦い このSSに感想をつける
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森でドMのゆっくりを見つけた。 なんと、踏んだり蹴ったりすると逆に喜ぶのだ 「もっと!もっとしてね!」と非常にうざいので。 木の枝に吊るして小一時間ほどサンドバックにしてたら 最初は「もっと!もっと!」って喚いてたゆっくりが 「も゛う゛や゛め゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ!も゛う゛い゛い゛よ゛!い゛た゛い゛よ゛゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」 って泣き出したから、放置して帰った 次の日言ったらすっかり衰弱してたから 「ドMだから殴れば元気になるかな?」と思ってサンドバックにしてたら 最終的には中の餡子が飛び出て絶命した。
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美鈴のゆっくりお昼ご飯 「みーんみーん」 蝉の声が響き渡る。夏、真っ盛り。 ここ、幻想郷にも夏が来た。氷精がどっかで溶けてたりしそうなくらい熱い夏。 タライに水張って足を突っ込みながら将棋、としゃれ込みたいほどうだる暑さの中、門番は立っていた。 「暑い…」 流れる汗を手で拭う、人民服に紅い髪のスリットグラマー、その名はちゅうg「紅 美鈴!!!」 もとい。華人小娘、紅 美鈴である。紅魔館の門番にして武術の達人。 その名は、強さと親しみやすさから幻想郷の人間と妖怪に知れ渡っていた。中国として。 「なんだか失礼なことを言われたような気が…」 呟きながら、もう一度汗を拭う。ただいま時刻は午後二時。最も暑い時間帯である。 そんな時間に日影はないわ湖の照り返しがきっついわ館の紅が目に悪いわするところにいたら汗もかく。 「暑い暑い暑い暑い……」 武術の達人は汗を流れる量をコントロールできると言う。暑さ寒さもへっちゃらだともいう。 しかし、美鈴は武術の達人ではあっても、今はむっちゃだれていた。 ぶっちゃけていうとやる気があんまりなかった。 理由は二つ。暑くてシエスタもできないから。お腹すいたから。 普段住み暮らしているめーりんハウス(真紅のテント)は、この時間だと中は地獄のような暑さになっているだろう。 昼寝なんてしたらメイド長に刺し殺されるか、妖怪に寝首を掻かれる前に干からびる。 そこいらで寝るのもダメだった。一度夏に横になって寝たら、身体の右側だけに日焼けの後がばっちりついて恥ずかしい思いをしたからだ。 日焼け跡は、秋になるまで消えなかった。 そして、もう二時を回ろうか、と言うのに、お昼ごはんを食べていない。 普段はメイド長がじきじきに持ってきてくださる。シエスタしていないかの監視の意味も含めて。 しかし、今日はメイド長はいない。ここ紅魔館の主、レミリアのお供をして博麗神社に行っているのだ。 そういうことはよくある。そして、メイド長がいない時は妖精メイドが美鈴の食事の用意をしてくれるはずなのだが…。 気まぐれで、美鈴以上にやる気のない妖精メイドにそんなもの期待しても無駄、というものだ。 咲夜がいないときは、美鈴は常にすきっ腹を抱えることになる。 「おなかすいたー…」 何度目かの虚しい呟きを繰り返す。気を紛らわそうにも、一人○×も一人しりとりも、もう飽き飽きしていた。 暇つぶしに大図書館の本を借り出そうとしたこともあったが 「夏は本が日焼けするからダメ」 という、図書館の主の一言によってあっさり拒絶された。 太極拳もお腹がすいた時にはやりたくない。 そう、美鈴は暇だった。 「だれか襲撃でもこないかなー…黒いのでもいいから…」 しかし、美鈴の物騒な希望はかなえられない。黒いのこと普通の魔法使いは客として既に図書館にいりびたっているからだ。 風もまったく吹かない、じめっとした幻想郷の夏の午後。 暇なときは、門番はひたすら暇だった。 見飽きた光景をなんか面白いものないかな、と半ば諦めの境地で見やったとき、珍しいものを見かけた。 「ゆっ!ゆっ!」 ゆっくり霊夢の家族だ。 ここ紅魔館の周りにはゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど、ゆっくりの捕食者たちが数多く生息している。 普通の、よわっちいゆっくりはとっくに食い尽くされたものだと思っていたのだが… 「珍しいこともあったもんだ」 と、ぼそりと呟くと、先頭のゆっくり霊夢がその声を聞きつけたらしい。 「ゆっくりしていってね!!」 お決まりの台詞を叫ぶ。 「はいはい、ゆっくりしてますよー」 よい暇つぶしが出来た、と笑顔で近づく美鈴。その答えを聞いて、ゆっくり霊夢たちが嬉しそうに叫び返す。 「「「おねえさん、ゆっくりしてるひと?!」」」 「そうだよ、ゆっくりしてるよ。」 こいつら、もっと静かにしゃべれないのかなー、とか考えながら答えてやる。 「じゃあ、いっしょにゆっくりしよう!」「あのおうちはれいむたちのおうちなの!」「ゆっくりできるよ!!」 超☆喜んでいる。単純なもんだ。ぴょんぴょん飛び跳ねている…ん?おのおうち? 「ねえ、あなたたち。お家ってどこにあるの?」 「そこだよ!」 と一番ちいさなゆっくりが紅魔館を見ながら飛び跳ねる。 ああ、やっぱり。 こんなのが襲撃者か…と内心ため息を吐きながら説得を試みる。 「あのね、あなたたち…」 「おねえさんはゆっくりできるひと!!」「いっしょにゆっくりさせてあげるよ!!」「れいむたちのおうちでゆっくりしよう!!」 「だから、あそこはレミリアさm」 「きっとたくさんおいしいものがあるよ!!」「ゆっくりできるよ!!」「ゆっくりさてやるからありがたくおもってね!!」 「あそこはあなたたちのいえじゃないと…」 「「「ゆっくりできるよーーーー!!!」」」 美鈴の言葉はゆっくりたちの叫びの前に完全にかき消された。 「ゆっくり!!」「ゆっくりぽいんとだー!!」「れいむがいちばんゆっくりできんだーーー!!」 などと口々に勝手なことをほざきながら紅魔館に向かって行進し始める。 その瞬間、美鈴の怒りは簡単に有頂天に達した。暑くて空腹で堪忍袋の緒はゆるゆるだったのだ。 丹田に気を込め、一気に発声!! 「やかましいっっっっっっ!!!!!」 この一声でゆくっりたちはすべて目を回した。夜雀を声だけで叩き落した美鈴の複式発声法、伊達ではない。 「はあ、結局暇つぶしにもならなかった…」 スカートの前側を持ち上げて、そこにゆっくりを乗せていく。素晴らしき哉、脚線美。 「大声だしたから余計お腹が…」 そこではたと気付く。こいつら食えるじゃん、と。美鈴は、さっきと打って変わった軽い足取りでめーりんハウスへと向かった。 「フンフン♪」 地獄のように熱く真紅に染まっためーりんハウスの中で、なにやらごそごそ探している。 「どこかの巫女じゃないけど、やっぱり饅頭にはお茶がないと…」 どうやらここでお茶を入れたりもしているようだ。不憫。 外に出て、お茶が沸くまで正座で待つことしばし。 ちょっと補強したみかん箱の上にゆっくりをならべ、いただきます。 ゆっくりどもはまだ気絶している。気絶したまま食われたほうが幸せなのかも知れないが。 美鈴は行儀悪く、どれから食べようか迷ったあと、一番小さなゆっくりを掴んで、一口で食べた。 口の中でかすかな悲鳴が聞こえたような気もする。 「うーん、甘くておいしい…」 あまり甘いものが好きではないが、空腹は最高のスパイスだ。そして久々の甘味。おいしくないほうがどうかしている。 次のちびドマンジュウも一口。口の中に広がる甘さ、出涸らしの番茶とあいまって、美鈴を至福の時への誘った。 そしてもう一つ。一口で食べるには大きかったので、かじる。 「ゆ゛っ?!」 あ、起きた。寝てたほうが幸せなのに、と思ったが、構わず食べ続ける。 「いだいいいいいい?!!」 「あ、こら、手の中であばれるんじゃない…あ。」 ぽとり。あんまり暴れるので手からこぼれて地面に落ちる食いかけのゆっくり。 露出していた餡子が衝撃ですべて飛び出る。それがトドメになったらしく「ぎっ?!」と叫んで動きが止まる。 「あーあ、もったいない…」 さすがに落ちたものを食べる気にはなれない。蟻に寄付しようと思い直して次に取り掛かる。 どいつもこいつも、一口食われた瞬間に目覚めていきなり叫びだす。 「妹様なら断末魔もお喜びになるんだろけど、私にはそんな趣味はなー…」 ぼやきながらも次々に平らげていく。同族が食われて悲鳴を上げているというのに、他のゆっくりどもは目を回したままだ。 薄情なのか美鈴の声がそれほどすごかったのか、どちらなのか。 そしてちびゆっくりをすべて食べ終えたとき、美鈴はぽつりと呟いた。 「…飽きた…」 いくら久しぶりの甘味とはいえ、饅頭を腹いっぱい食べれるものではない。基本的に美鈴は辛党なのだ。 しかし空腹はまだ収まらない。さりとてこれ以上ドマンジュウを食べる気にはならない。 のこったれいむをどうしたものか、と思案していると、 「うー!うー!」 よたよたとこちらに寄ってくる影が一つ。 紅魔館の主、レミリア…にそっくりなゆっくりだ。 顔だけのときは日光で死んでしまうが、胴体が生えると日光の中でも活動できるようになる。 というより胴体の生える種類はゆっくりれみりゃとゆっくりフランしかいない。生命の神秘である。 だが美鈴の頭の中にあったのは、生命の神秘への遥かなる探究心ではなかった。 「こいち、確か中身肉まんだったよね?」 という食欲100パーセントな考えだった。 甘ったるいドマンジュウの口直しにはちょうど良い。確か家の中に醤があったはずだ。それで味付けして食べてしまおう。 そう考えるとよだれが出そうだった。 「うー!うー!」 どうやら美鈴が捕まえたゆっくりれいむ目当てに出てきたらしい。 調理道具を持ち出す時間稼ぎのため、母ゆっくりれいむを投げつけてやる。 「ゆ?」 その衝撃で意識を取り戻すれいむ。目の前にはれみりゃがいた。 「ゆぎゃあああああああ?!」 目を血走らせ歯茎をむき出しにした顔で叫ぶれいむ。必死で命乞いをする。 「れいむをたべてもおいしくないよ!!ゆっくりできなくなるよ!!」 捕食主のれみりゃがそんなもの聞くわけがない。 「うー!うー!」 右手で髪を掴み持ち上げ、空いた左手で頬を思いっきり引っ張る。 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?いだいいいいいい?!」 痛みに泣き叫ぶれいむと、その反応を楽しむように徐々に力を込めるれみりゃ。 ぶち。 「ゆ゛ーーーー?!」 引きちぎった皮を食べ、露出した餡子に喰らいつき、餡子をゆっくりと吸い出していく。 「うま^^!うま^^!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」 餡子を吸い出され、痙攣する。生きながら脳を吸い取られるようなものだ。 れいむの目がぐりんと白目を向く。 餡子を2割程―れいむが死なないギリギリのラインだ―吸い取ったところで、今度は一気にかぶりつく。 「ゆぐぎゃああああっ?!」 痛みに意識を無理やり引き戻される。 「うー!うー!」 れみりゃはれいむの反応を楽しんでいるようだ。なるべく残酷に、なるべく苦しむように捕食している。 「うはー、レミリアさまと同じでどSなんだな、ゆっくりも…」 中華鍋を火にかけ、準備完了した美鈴があきれたように呟く。ちなみに火は気を掌に集中、発熱させて木を燃やして起こした。 「ゆ゛………っぐ…り゛……」 れいむはからだの半分ほどを食べられたところで息絶えた。 「うーーー!!」 死んだことに気がついたれみりゃは、子供が飽きたおもちゃを捨てるように投げ捨て、 「ぎゃおーーーー!たべちゃうぞーーー!!」 残ったゆっくりれいむのほうによたよた歩み寄ってきた。 「食べ残すなんてゆっくりの分際でぜいたくな…」 自分がれいむを食べ残したことを棚に上げて憤る、が気を取り直して、 「れみりゃー?れいむりおいしくてゆっくり出来る食べ物があるんだけど?」 慣れない猫なで声で呼び寄せる。 「うーー?おかし?くっきーー?!」 妖精メイドたちが甘やかしてお菓子で餌付けしたりするもんだから、口が肥えている。生意気、と美鈴はさらに苛立つ。 「もっとおいしいものよ?」 私にとってはね、と口の中で付け足す。美鈴が手に持っているものは醤。豆板醤の瓶だ。 「おかしーーーーー!うー!うー!」 みょうちきりんな踊りを踊りながらもたもた近づいてくる。 残っていた何匹かのゆっくりれいむは既に逃げ出していたが、美鈴もれみりゃも気にしていなかった。もっとおいしそうなものが目の前にあるのだから。 「おかしーーーー…?」 美鈴の持った瓶を見たれみりゃの顔が曇る。当然ながらクッキーやケーキには見えない。 「うーーー!!」 美鈴の手から瓶を叩き落とす。 「やだやだやだやだ!!!くっきーじゃなきゃだめーーー!!くっきーたべうーー!うー!」 地面に寝そべって駄々をこね始める。この甘えた根性は妖精メイドたちが甘やかしたせいらしい。 美鈴は慌てず騒がず瓶を拾い上げ、れみりゃの顎を掴み、瓶の中身を口の中に流し込んだ。 「う゛ゆ゛ーーーーー?!」 れみりゃは顔を真っ赤にして暴れる…暴れようとするが美鈴ががっちり顎と間接をホールドしているので、身動きすらも出来ない。 「うー?!う゛ーーーー?!」 「はいはい、おとなしくしてねー」 抑えるのも面倒になったので、浸透剄を叩き込んで無理やり黙らせる。 もう一発。さらにもう一発。とどめにもう一発。これで醤と肉まんがうまく混ざり合ったはず。 「さ、本日のメインディッシュと参りましょうか!!」 中華鍋が充分熱されているのを確認する。それから、逃げられないように羽、手足を引きちぎる。 気絶したれみりゃの身体が痛みに反応して痙攣するが目は覚まさない。 ちぎった羽と手足はもちろん捨てたりはしない。これは後から素材そのままの味でいただくのだ。 「えいっ!」 手足と羽をもがれて達磨みたくなったれみりゃを鍋に放り込む。油がはねる。熱さに起きた達磨がのた打ち回る。 「うーーー!!ううーーーー!!あづーーーい!!」 「まずは表皮をこんがりと…!!」 悲鳴を無視して料理に集中する。半年振りの肉なのだ。気合が入るのも当然と言えよう。 れみりゃは必死で身体を動かして鍋から逃げ出そうとする。しかし油ですべってうまく動けないうえに、端に来たと思ったら鍋を振られて中央に戻されてしまう。 さっきまでおいしいれいむを食べていたのに、何故こんな目に遭うのか分からなかった。 身体の外が熱い。身体の中が熱い。身体の中をかき回されたように痛い、生えてくるはずの手足が生えてこない。 「うーーー!!うーーーー!!ゆ゛っぐり゛じだいいいいいいい!!」 もう、ゆっくりできないのだろう。何が起こったかはわからなかったが、それだけは分かった。 れみりゃは、絶望のなかで焼け死んだ。 そんなれみりゃの絶望なんか知ったこっちゃない美鈴は、久々の中華の火力にハイになっていた。 「料理は愛情、中華は火力!!まだまだ火力がたりなぁい!!」 手に気を集中、鍋にダイレクトに熱を伝える。一気に火力が上がる。肉がはぜる音が激しくなっていく。 「燃えてる燃えてるハラショーー!!アイヤーー!!」 テンションが上がりすぎてお国言葉が出だした。 吹き出る汗、張り付くチャイナ。大変艶かしい。 最後の仕上げとばかりにもう一振り醤を加え、馴染ませるために鍋を思いっきり振る。 「あれ?」 突然手が軽くなる。赤熱して引きちぎれた鍋の取っ手しか手元にはない。 何が起こったか瞬時に理解する。が、どうしようもない。 「あ、ああああ?!」 美鈴のくびきから逃れた鍋は慣性の法則に則り、放物線を描いて…紅魔館の少ない窓の一つにジャストミートした。 その日の夜。もちろん美鈴は晩ご飯抜きだった。れみりゃの残りすらも取り上げられ、すきっ腹で門番を続けている。 ゆっくりを食べようとした結果がこれだよ!!
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※舞台は何故かゆっくりが当然のように存在している外界です。 ※オリ設定満載です。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる謎の生物。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎるゆっくり達。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして俺はそんな不思議に満ちた生命体の研究や飼育用の商品の開発に携わっている“ゆっくりカンパニー”のしがない一社員だ。 今日はある町の住民の知らせを受けて町の近くの山に分け入って、野生のゆっくりの駆除に向かった。 もっとも、厳密に言うと駆除というよりも間引きに近いのかもしれないが。 装備は標準的な登山グッズとゆっくりに取り付ける発信機兼集音マイクが5つ。 加えてゆっくりを眠らせるための睡眠薬入りの飴玉が50個ほど。それとちょいと大きめの饅頭がゴミ袋の中に入れられている。 「先ぱぁい、なんでこんなクソ暑い中、野生のゆっくり探しなんて・・・「仕事だからだ!」 「あと、男が「ぱぁい」とか使うな、気持ち悪い!それが許されるのは可愛らしい女の子と我らが紫社長だけだ」 不勉強な後輩の研修も兼ねて、男2人でゆっくりが住んでいると言われる山を登っていく。 もっとも、ゆっくり学はまだ始まったばかりの学問で認知度は低いし、ゆっくりカンパニーの社員の8割は美人社長目当てなので野生種の保護の必要性が理解できなくても仕方ない。 だから不勉強を咎めるつもりはないが、近隣住民から集めた目撃情報をもとにゆっくり達の出没箇所をマークした地図と睨めっこしながら俺はため息をついた。 咎めるつもりはなくてもいちいち説明するのを煩わしいと思ってしまうのはどうしようもない。 「はあ、仕方ない・・・ゆっくりはな一定数以上になると何故か突然増長するんだよ。で、人間の町に下りて来る」 「で、ゆっくりによる被害がでるんですね?」 「そうだ、ゆっくりの死体が転がって町が汚れる。だからこういう知らせを受けたときにはゆっくりを保護するんだよ」 「保護?ゆっくりンピースにでも預けるんですか?」 「馬鹿言え。餡子が新鮮な赤ゆっくりは持ち帰る。にんっしんゆっくりも研究用に持ち帰る。特殊な個体は持ち帰る。他の連中は必要なら速殺す」 「速殺す?」 「・・・お前、ちょっとは自分で勉強しろよな。・・・・・・っと、ゆっくり発見」 その言葉を合図に、俺と後輩は身を低くして草むらの中に隠れた。 俺達の前を通り過ぎるゆっくりの一団の数は4匹。内訳はまりさ、れいむ、ありす、ぱちゅりーとなっている。 全員が比較的多量の食料を咥えており、またみんな満面の笑みを浮かべていた。 「ねえ、まりさ!むれもだいぶおおきくなったね!」 「むきゅ!これもまりさのかりすまのおかげよ!」 「ゆ!あたりまえだぜ!」 「でも、そろそろあのおうちじゃせまくなってきたわよ!もっととかいはなおうちをみつけないと!」 赤ん坊はピンポン玉、子どもは野球のボール、成体はバレーボールサイズが一般的だ。この4匹は全員バレーボールサイズ、つまり成体である。 その一団が目の前を通り過ぎていったのを確認すると、木陰に隠れながら追跡を開始した。 「追うぞ」 「りょーかい。しかしあの饅頭鈍くさいっすねぇ・・・」 「まあ、時速900mだからな・・・」 大抵の生き物の歩行は一歩目のエネルギーの何割かを二歩目に利用するが、ゆっくりの場合一部の種を除いてそれを一切しない。 そのせいで恐ろしく無駄と負担が多いのだ。余談だが、這って移動する場合は時速200mというカタツムリ級の鈍足だ。いや、体の大きさを考えるとそれ以下か。 が、そんなことを愚痴っても仕方がないので、それ以上は何も言わずに淡々と4匹を追いかけていった。 その4匹を追いかけていった先にはゆっくりの集落があった。 さっきの4匹を除くと、目に付く限りでは赤ん坊が9匹、子どもが10匹、成体が11匹の計30匹。 そして、成体のうち4匹が植物型のにんっしんをしていた。 植物型出産はにんっしんから僅か3日で出産を向かえ、生まれる子どもの数は1回につき大体10匹前後。 あれら全てが生まれればこの群れの人口は50匹を軽く超える。そうなれば変な自信をつけて人里に下りてくる可能性が十分にあった。 「先輩、あいつら集まって何してるんですかね?」 「聞いてりゃ分かる。少し静かにしてろ」 出来の悪い後輩を睨みながらも、俺はゆっくり達の言葉に耳を傾ける。 群れの中心にいるのはさっきの4匹。その中でもリーダーはまりさのようだ。 「むきゅ、みんなゆっくりはなしをきいてね!」 4匹を取り囲んで、がやがやと騒がしくしていた群れのメンバーがぱちゅりーの鶴の一声で静まり返った。 そして、その静寂の中、まりさが(ゆっくりにしては)重々しく口を開く。 「みんな!いまにんっしんしているこがうまれたらここではたべものをあつめきれなくなっちゃうよ!」 いまいちことの深刻さを理解できていない赤ゆっくりは「ゆぅ?」と首をかしげているが、他のゆっくりたちは固唾を呑んでまりさを見つめる。 「だから、あかちゃんたちがうまれたらにんげんのまちをゆっくりぷれいすにするよ!」 「「「みんなふあんかもしれないけど、これだけのなかまがいればだいじょうぶだよ!」」」 「「「「「「「にんげんのまちならもっとゆっくりできるね!!!」」」」」」 恐るべき集団心理。もしくは無知の幸福とでも言うべきか? まりさの宣言を聞いたゆっくりたちはにわかに活気付き、口々に人間の町を手に入れた後のことを話し始めた。 「あんな事言ってますよ?」 「仕方ないさ。野生のゆっくりには人間もいちいち干渉しないし、不味いから他の生き物に食われることも少ない」 「ああ、要するに怖いもの知らずなんですね」 まりさたちの言葉に苦笑する俺と後輩。しかし、この群れが人里に出ようと考える規模になっているならさっさと用事を済ませなければならない。 俺は段取りを考えてから、リュックに入れておいた睡眠薬入りの飴玉を取り出し、後輩にも目配せで自分に続くように促した。 「そういうことだ。それよりも・・・さっさと済ませるぞ」 「りょーかい」 指示と同時に、円陣を組んでいる群れの中に50個の飴玉を景気良くいっぺんに放り投げた。 「ゆ!なにこれ!?」 「いだい!いだいよ!」 「ゆっきゅりーーー!!」 「いったいなんなんだぜ!?」 「むきゅうーーー!!」 突然の飴の雨に群れは瞬く間に混乱に陥った。 ゆっくりの脆い体にとって飴は相当の硬さを誇るもの。 それらが50個もいっせいに降り注げば当たって怪我するものだっているし、考えなしに飛び跳ねて踏んで転ぶものもいるだろう。 が、群れの中に1匹だけ飴を知っているものが居たらしい。 「ゆゆっ!これはあめだわ!あまくておいしいとかいはなものよ!」 その一言で場の混乱が恐怖から食欲によるものにすり替わった。 「あまいのはぜんぶまりさのものだぜ!」 「ゆー!ゆー!」 「でいぶもあばいのほぢいよおおお!!」 「むきゅー!あまいものはかしこいぱちゅりーのものよ!」 全員の頭数より飴のほうが多いにもかかわらず群れは言い争いを始めてしまった。 さっきまでの結束力は一体なんだったんだか。 「ゆ!ゆっくりしていってね!!!!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!!」」」」」」」」」」」 そんな混乱のさなかに響き渡ったのはリーダーまりさの怒声。 本能に刷り込まれたその言葉は一瞬ながらも間違いなく全員の興奮と熱狂を鎮めた。 「みんな!いまはけんかしてるばあいじゃないでしょ!」 「「「そうだよ!まりさのいうとおりだよ!」」」 まりさと、それに続く参謀格のゆっくり達の叱責。 実は混乱の火付け役になったのは参謀格のありすだったりするのだが、そんな事は誰も気にしていない。 「みんな、あめはひとりひとつずつだよ!わかったね!」 有無を言わさぬリーダーまりさの剣幕によって、ゆっくりたちは完全に冷静さを取り戻した。 ・・・しかし、誰も飴が降ってきたことに疑問を持たないのはさすが餡子脳と言ったところ。 「む~しゃむ~しゃ、しあわ・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「早っ!?」 「突っ込むな。起きたらどうするんだよ?」 睡眠薬入りの飴を食べたゆっくりたちはあっという間に眠りについた。 しかも、まりさが音頭をとっていっせいに食べたためものの見事に全員が一斉に。 「で、先輩。結局何を回収するんですか?」 「ゆっくりの頭の茎とにんっしんゆっくり。それと・・・リーダーまりさもだ。それが済んだら参謀3匹と適当な大人に発信機をつける」 「りょーかい」 後輩はポケットからナイフを取り出すと、茎を生やしている1匹のれいむに近づき、少しだけ茎の根元の皮を抉った。 茎にはようやく種族の区別がつくようになってきた赤ちゃんが12匹ほど成っている。どうやらパートナーはぱちゅりーだったらしい。 まだ成体になり立てと思しき若い母は幸せそうに「あかちゃ~ん」などと寝言で呟いている。 その言葉にしかめっ面をしながらも後輩は茎をきれいに引き抜くと、ゴミ袋の中の饅頭にそれを突っ込んだ。 「あんまり気分の良い仕事じゃないっすね・・・」 「仕方ないさ。本当はもっと頭数を減らしたいところなんだが、それをしないのが俺たちが出来る最大限の譲歩だろ?」 そう言いながら、俺はゆっくり達も気付いていない初期段階にんっしんのゆっくりを3匹ほどゴミ袋の中に放り込んだ。 「ん~、先輩って案外ドライなんですね」 「仕事だからな」 後輩の無駄話に付き合いながらもリーダーまりさを回収する。って、こいつも何気ににんっしんしてるじゃないか。 「ふ~ん・・・でも、先輩ゆっくり飼ってませんでしたっけ?」 「こいつらは俺のペットじゃないし、そもそもそれとこれとは話が別だろ?」 それから、参謀格の3匹と、比較的大きな成体の頭の飾りに発信機を装着した。 「よし、作業完了。ちょっと様子を見てからずらかるぞ」 「・・・ずらかるって、なんか悪党みたいっすよ?」 律儀に突っ込んできた後輩にローキックを入れつつ、ゴミ袋に放り込んだゆっくりの口に散乱していた飴を放り込んでから再びさっきの木陰に隠れた。 「ゆ!みんな、おはよう!ゆっくりしていってね!」 一番最初に目を覚ましたのは参謀格のれいむ。 「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」」」」 その言葉に反応して他のゆっくり達もいっせいに目を覚ました。 「「ゆゆっ!まりさがいないよ!」」 「「「ゆっきゅち~・・・!」」」 「ゆぅうううう~・・・おか~しゃん、どこ~?!」 「おねーちゃん!あかちゃんたちが!?」 「ゆ?ゆゆゆっ!?でいぶのあがぢゃんがあああああああああ!!」 目を覚ましたゆっくり達を待ち受けていたのはリーダーや仲間と可愛い赤ちゃん達の失踪だった。 そして、その場にいる全員が好き勝手に各々の大事なものを探し始める。 全くの無秩序。ぱちゅりーが必死に「むきゅ!みんな、まずはだれがいないかかくにんよ!」と真っ当なことを言っているが、誰の耳にも届いていない。 しかも、他の参謀格2匹さえも他のゆっくりに混ざって必死にまりさを探している始末だ。 「まりさああああ!どごなのおおおお!」 「おがーぢゃあああああああああん!」 「「「「ゆっきゅち~!」」」」 「まりざのあがっぢゃんがあああああああああああ!!」 群れが混乱しきっている様子を見届けると、俺たちは足早にその場を後にした。 上司に報告を済ませた俺はさっさと自分の担当する実験に取り掛かる。 今回の実験は植物型と胎生型の出産に関するもので、ゆっくりにとって有害なものを検証するために行われるそうだ。 実験方法は至って簡単。茎を挿した饅頭に無駄に強力な農薬を大量に混入したり、栄養が届きにくいように茎を傷つけたり、水分や糖分を異様に多くしたりする。 もしくは母体に定期的に肉体的または精神的苦痛を与えてストレスを加えたり、毒も同然のものを食べさせたり、栄養を過剰摂取させたりする。 今回の実験に使用するゆっくりは先ほど回収した茎4本とにんっしんゆっくり4匹だ。それぞれにA~Dのアルファベットをつける。 茎Aは非常に整った環境で、非常にバランスの良い栄養配分の饅頭に挿した。 そして、この茎からは当然のように非常に健康的な赤ちゃんが生まれた。 れいむ種6匹とぱちゅりー種5匹。不運にもぱちゅりー種が1匹だけ死産してしまったが、それ以外はみんな非常に元気な、ゆっくり風に言うならばゆっくりした赤ちゃんだ。 俺がその赤ちゃんの入っているケージの蓋を開いて様子を伺うと、その気配に気付いた1匹のれいむが満面の笑みを浮かべた。 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」 「「「「「「「「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」」」」」」」」 「ああ、ゆっくりしていくよ」 そんな赤ん坊達のケージの中にゆっくりカンパニー製ベビー用ゆっくりフードを入れてから蓋を閉じた。 「11匹か。それだけいりゃ次の実験の経費が節約できるな」 俺の傍らで、同僚がそんなことを呟くのが聞こえたが、無視して、中の赤ん坊達の様子を伺う。 「ゆ~・・・」 「ゆゆゆ~」 「ゆぅ!」 体の弱いぱちゅりーはみんな大人しくしていた。 ひとりお昼寝をするものもいれば、仲間同士で話しをするものもいた。 「「ゆっきゅちー!」」 「ゆっ!ゆっ!」 一方のれいむ達は元気に跳ね回りあるものは仲間とじゃれあい、あるものは仲良く歌を歌っている。 仲間と一緒にいることが当然になる前に別のケージに移すのが実験用ゆっくりの扱いのセオリーだ。 しかし、孤独にどう向き合うかを研究するのなら、こいつらはもう少しだけみんなで一緒に居させても良いんじゃないだろうか? 茎Bは一部を抉ってから包帯で固定して再生しないようにした状態で饅頭に挿した。 この茎からは意外なことに面白い結果が出た。 健康な個体は3匹で、その内訳はまりさ2匹にありすが1匹。未熟児が4匹は双方が2匹ずつ。そして個体識別不可能なものが2匹。 ここまでは予想通りの結果だった。全員の栄養が不足するのか、栄養が一部の個体に偏るのか・・・予想されていた結果通りのものだったといえる。 未熟児は殆ど喋らないし動かない。個体識別不能なものはすぐに死んだ。しかし、面白いのは健康な個体の行動だ。 ケージの蓋を開けて餌をばら撒いてやると、未熟児として産まれたもののために餌を噛み千切って口移しで与えてやっていた。 「ゆ、ゆっきゅちー!」 「ゅぅ・・・ゅぅ・・・」 未熟児サイズのゆっくりは非常に小さくビー玉ほどの大きさしかないため、ベビー用のゆっくりフードでさえ食べられないのだ。 しかし、生まれたてのゆっくりに自分より弱い個体を助けるなんて概念があるとは思わなかった。 とは言え、餌を与える側も所詮は赤ん坊。しかも、未熟児よりも頭数が少ないのだ。 やがてまりさ種の1匹が未熟児のために餌を千切ってあげるのを放棄し、もう1匹のまりさもそれに追従した。 「ゆ!ゆぅぅ~・・・」 「「ゅぅ・・・」」 「「ゅ・・・ゅゅ・・・」」 それでもしばらくはありす種が1匹で世話を続けていたが、やがて弱っている個体を切り捨て、最後にはありすも未熟児の世話を放棄した。 茎Cは大量の農薬を混入した饅頭に挿した。 子供が産まれたその日、ケージの中は魔境と化していた。そこに居たのは9匹の異形。 あるれいむは足が半透明のゲル上になってしまっていた。これでは歩くこともままならない。 あるまりさは目が顔の中心に1つしかなかった。そして、その目は何も映さなかった。 あるまりさは口がなかった。成長を見守るためにチューブをつないで生きながらえさせたが、野生ならばすでに死んでいただろう。 あるまりさは「ゆっくり」と言うことができなかった。口を開けば「qs、dんぢmgy、、wddg」と聞き取ることの出来ない訳の分からない音声を発するだけだった。 あるれいむは目が顔の横についていた。正面から見ればのっぺらぼうのその子は正面を視野に納めることが出来ないのでまっすぐ歩くことが出来なかった。 あるれいむは背中にも顔がついていた。だからと言って何があるわけでもないが実に不気味だった。 あるまりさは体が柔らか過ぎて大福としての形を保てなかった。まるで子供のころに作ったスライムのようだ。 あるれいむは体が異様に硬かった。そのせいで歩くことはおろか体を上下させることもままならず、口も殆ど動かなかった。 あるれいむは口が異常に大きかった。そして口以外のものがなかった。口だけの饅頭が狂ったように「ゆっくり」を連呼していた。 目の見えるものは他の姉妹の姿に怯えていた。でも、自分も似たようなものだと言うことには気付こうとしない。 「ゆ!ゆっきゅちー!ゆー!」 「ゆっきゅり!ゆっきゅり!ゆっきゅり!ゆっきゅり!」 顔2つの赤れいむが狂ったように口だけのれいむに体当たりをしている。 きっと、その化け物を追い払おうとしているのだろう。でも、傍目にはどっちも化け物だった。 どれもまともに育つ可能性があるとは思えないが、奇形の生存可能性を検証するのも研究になるだろうか、と思った。 茎Dは塩分を過剰に投入した饅頭に挿した。 産まれた子どもの大半は形はまともだった。そして、死産したのは4匹だけ。 10匹中6匹が何とか誕生したというこの結果には俺以外の研究員も驚きを隠せなかった。 もっとも、まともだったのは形だけだが。 まずゆっくりの形をした6つの饅頭は言語中枢が完全に狂ってしまっていたいた。 口を開けば聞こえてくるのは薄気味悪いノイズ。 「「「、。jsbん。、fdghrdmじdsんmdms」」」 「xcんm、。zx、smyんfjwめ、」 「「えgkdtcjrcldtr、いcvf」」 そして、1匹たりともゆっくりらしい心を持ったものが居なかった。 あるありすは生まれたてであるにも関わらず日長一日壁に体をこすり付けて自慰行為にふけっていた。 あるぱちゅりーは眠ることをせず、食事の時さえもずっと言葉にならない何かを発し続けていた。 あるありすはいつも何かに怯えてがたがたと震えていた。そして、近づいた姉妹を片っ端から攻撃していた。 あるぱちゅりーは何かにつけて姉妹を食べようと後ろから襲い掛かっては追い払われて、「むきゅ!」と悲鳴を上げていた。 あるありすは突然泣いたり、怒ったように頬を膨らましたり、酷く情緒不安定だった。 あるありすは自分のことをぱちゅりーだと信じ込んでいた。こんな狂った家族の中では誰も間違いを指摘してくれなかった。 俺は今度は糖分や水分だとどういう結果が得られのかも検証する必要があるな、と酷く覚めた目でその様子を眺めていた。 母体Aは広い部屋の中で普通の餌を食べながら生活してもらった。 産まれた3匹の子どもはどれもちゃんと子供サイズ近くまで大きくなっていて、みんな非常に元気だった。 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりちていってね!」」」 俺がケージを覗くと、母れいむは満面の笑みを浮かべて話しかけてきた。 「ねえ!みてよ、おにーさん!れいむのあかちゃんだよ!とってもゆっくりしたこだよ!」 「ああ、そうだな。ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりちていってね!」」」 あの日、回収したゆっくり達は「野犬に襲われているのを助けた。見つけたときには君だけだった」と言ったらそれを簡単に信じて、俺になついた。 「よし、それじゃあ、赤ちゃんたちにお兄さんから美味しいお菓子をあげよう!」 「ゆ!ほんとうに!」 「ああ、本当だよ。でも、ここじゃ食べられないから、ちょっとケージから出てもらうよ」 「「「ゆ~!ゆっくちたべるよ!」」」 そういって俺が赤ちゃんを連れて行くのを、母れいむはニコニコと微笑みながら見守っていた。 そして、このれいむが赤ちゃんと会うことは二度となかった。 母体Bは口の部分だけ開いている透明な箱の中で普通の餌を食べながら生活してもらった。 この母ぱちゅりーの子どもは1匹しか生まれなかったが2匹生まれたとも言える状態だった。 いわゆるシャム双生児のようなものだろうか。その赤ちゃんは体と口の横幅が異様に大きく、目が3つあった。 そして、髪の毛は真ん中の目を境に右側がまりさ種のもので左側がぱちゅりー種のものになっていた。 「「ゆっくりしていってね!」」 2つの種の声が同時に聞こえてくる。声帯も少しおかしなことになっているのだろう。 それは、箱によって圧迫され、赤ちゃんがそれ以上大きくなる余地が残されていなかったために起きたものだった。 「やあ、ぱちゅりー。赤ちゃんはどうしたんだい?」 出産時には箱から出さねばならないので、当然俺は出産に立ち会っている。 「むきゅ、おにーさん!ぱちぇのあかちゃんはまだぽんぽんのなかよ!」 そして、中にこれ以上赤ちゃんが居ないこともしっかり確認している。 しかし、ぱちゅりーは中にまだ赤ちゃんが居ると思っている。 それは体も心も弱いぱちゅりーにとって独りっきりになってしまった上に普通の赤ちゃんを産めなかった絶望から身を守るための手段だった。 そう、この奇形の赤ん坊は母親に見捨てられてしまったのだ。 ケージを閉じたところで、後輩が「そいつ、最近箱から出せって言いませんね?」と尋ねてきた。 「箱から出たら気味の悪い赤ちゃんに触られるかもしれないからだろ?」 とりあえず、苦笑交じりにそう返しておいた。 母体Cは遠隔発火のライターを内蔵し、定期的に痛い目にあってもらった。 唐突の訪れる痛みにいつも怯え続けて眠ることもままならなかった元リーダーまりさも子どもは、全員異様に小さかった。 「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」 「ゆっくりしていってね!」 茎から生まれるタイプと大差ない大きさながら元気いっぱいに鳴く赤ちゃんたちに疲れきった表情で微笑むまりさ。 とは言え、全員これと言った異常もなく出産できたことを考えるとゆっくりはストレスに強いと見てよさそうだ。 多分、餡子脳だからだろう。 「ゆ~!」 「ゆっ!ゆっ!」 「ゆ~ゆ~ゆ~♪」 ケージの蓋を開けて、子どもたちが遊んでいる姿を眺めているまりさに話しかける。 「やあ、まりさ」 「ゆ!おにーさん!」 「とってもゆっくりした子だね!」 俺のその言葉を聞くと、まりさは少しだけ踏ん反りかえって、嬉しそうに笑う。 「まりさ、がんばったよ!」 「そうか。お疲れ様」 「おにーさん、ありがとう!」 その言葉に少し良心が痛んだが、すぐに思考を仕事優先に切り替える。 「まりさの子どもに美味しいお菓子をあげたいんだけど、ここじゃ食べられないんだ。だから少しだけ連れて行って良いかな?」 「ゆ!おにーさんならいいよ!でも、すぐにつれてかえってきてね!」 「分かってるよ。さ、おちびちゃんたち?おにーさんと一緒にゆっくりお菓子を食べに行こうか」 母親同様に俺のことを信頼しきっている赤ん坊たちは、何の疑いもなく手の上に乗ってきた。 「悪いけどまりさの分はないから、ここでゆっくり待っててくれ?」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりまってるよ!」 そうして、この元リーダーまりさは永遠にゆっくりと赤ちゃんの帰還を待ち続けた。 母体Dは廃油や産廃同然のものを餌にして生活してもらった。 しかし、茎Cと全く変わらない結果にうんざりさせられるだけだった。 予想通りの上に、頭数が少なく新鮮味もないこの結果を記録する気にもなれなかった。 ---あとがき--- スレに書き込めねえよ、ちくせう。 奇形を産ませておいてつまらない結果にうんざりってのは虐待お兄さん以上にアレだと思う。 普段は基本的に優しくても仕事のときは一片の慈悲もなし。まさに、冷徹お兄さんですよ。 そんなこんなで、現代ゆっくりシリーズの3作目です。 野良ゆっくりとその末路の一部を書いたつもりですが・・・あー、文章力が欲しいorz byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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数十キロはあった糞便を片付けるのに、丸一日かかった。 たった一日というと思ったより短いようだが、 まりさ共が口内の糞便を飲み込むたびに、 俺や使用人がひっきりなしに詰め替え、それがおよそ二十時間以上だ。 「かひゅうーーーーーーー………あひゅううーーーーーー……」 輪を取り外され、まりさ共は憔悴しきって、 吊り下げられた全身を波打たせている。 「うまかったか?」 俺が聞くと、しばらく開ききった口をもごもごさせてから、 上顎支点で吊り下げられたままで返答が帰ってきた。 「ゆっぐ……ゆっぐり……でぎだいぃぃぃ……」 「……ゆっぐじ……じだい……じだいぃぃぃ」 「おろじで……おろじでぇぇ……」 「口に合わなかったか?それは悪かった。 もっとゆっくりできるごはんを持ってきたよ」 そう言うと、俺はカートを新しく運んできた。 カートの上には、再び青いビニールで覆われた皿。 大きな皿をいくつか台の上に、まりさ共によく見える位置に置いてやる。 まりさ共の目は怯えていたが、いくぶんかの期待の色が見え隠れしていた。 もしかしたらこの人間は勘違いをしてあんなものを持ってきただけで、 今度はちゃんとゆっくりできるごはんを持ってきたのかもしれない。 そんなところだろうか。 「ゆっくり……ゆっくり……」 震える声で呟くまりさ共の前で、次の食事を公開してやる。 「ゆあああぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!」 悲鳴が上がった。 ひどい腐臭の中で、俺は解説してやった。 「かき集めるのが大変だったよ。いまは夏場だからごらんのとおりだが、 まあお前たちゆっくりなら大丈夫だろう」 犬や猫、鳥や狼、町や森の中で拾ってきたあらゆる獣の死体が皿の上に乗っている。 どれもこれもひどい腐臭を放ち、体中に蛆が蠢いていた。 猫の眼窩や犬の裂けた腹部、穴という穴は蛆だらけだ。 蛆のほかにムカデやミミズ、なんだかよくわからない虫たかっており、 その上では大量の蠅がぶんぶんと飛び回っている。。 手近な猫の死体を長い菜箸でつまみ上げてやると、 腐りきって緑色に変色した肉はぐずぐずになってたやすく崩れ、黄色い膿が長い糸を引いた。 緑に紫に黄色に赤、一度死んだ肉は本当にカラフルになるものだ。 「ぐざい!!ぐじゃいいいいいい!!!やべでえええええ!!」 「おでがいいいいいいいぢがづげだいでえええええええええ!!!」 「急いで噛みつぶさないと、ウジやムカデがお前らを食うかもな」 「いいいいいいいやああああだああああああああああーーーーーっ!!!」 脅してやったおかげで、白目を向いて痙攣しながらも、 口腔内に放り込まれたまりさ共は今度は必至に咀嚼していた。 柄杓の表面にこびりついた蛆がまりさ共の表皮を這いまわり、目の中に一匹二匹侵入する。 嫌悪に身をよじらせながら、それでもまりさ共は泣きながら食事を続けた。 虫に関しては、もともと毛虫やら蝶々を食うゆっくりだから問題ないだろう。 顎の動きから嚥下を確認する度に、輪の蓋を開けて次の腐肉を注ぎ込む。 そのたびごとに、まりさ共は泣きながらあらん限りの声をあげて慈悲を求めた。 「ゆおおおおおおごおおおおごごごごごおおおおおああああああーーーーーーーーー」 まりさ共の努力で、腐肉は一日かからずに片付いた。 次はまともな食品を食べさせてやることにする。 その日俺が運んできたカートの上には、大きなボールがいくつも載せられていた。 そのいずれも、粉やらどろりとした液体やら練りものでなみなみと満たされ、 緑や黄色もあったが、それら内容物はおおむね赤かった。 まりさ共はきょとんとそれを見ている。 どうも味が想像できないようだ。 俺は親まりさの口に再び輪をはめた。 「ゆごっ!!おごっ、わっかさんはゆっぐじでぎだいぃいいごっ!!」 ばたばたと抵抗しながら、なすすべなく輪をはめられて大口をあける親まりさ。 「味見してみるか?」 俺は手近なボールから赤い粉を指ですくうと、 親まりさの口内に刷り込んでやった。 「!!??」 びぐん、と親まりさが空中で跳ねた。 「ゆぼびょがぎょぼばごぎゃがばああぁぁあーーーーーーーー!!!」 すさまじい絶叫をあげ、すぐにも吐き戻そうとするが、 俺がすぐに蓋を閉めたので、あわやというところで餡子は口内で止まった。 それでも親まりさの痙攣は止まらない。 いつまでたっても止まない親の悶絶を見て、子まりさ共が恐怖に震えている。 「トウガラシだよ」 俺は教えてやった。 甘味そのものたる饅頭でできているゆっくりにとって、辛味は毒である。 正確には辛味そのものが毒性を持つわけではなく、 あまりの苦痛に餡子を吐き出してしまい、 それが致死量を超えることが少なくない、ということだ。 50cm級のボリュームを持つ親まりさが、 ただひとすくいのトウガラシでなお暴れ続けている。 白目を向いた眼窩から涙が吹き出し続け、 すでに枯れ果てていると思われたしーしーとうんうんが、 すごい勢いであにゃるとまむまむから放出されていた。 本来ならとっくに絶命しているだろう。 しかし、死なせることは俺がしない。 食わせたはしからすぐに蓋をしてやるので、 たっぷりと味わってもらうことができる。 念のため、あにゃるとまむまむもガムテープで塞いでやることにしよう。 こうして、ゆっくりがいまだかつて味わったことのない世界に、 このまりさ共が、ゆっくり史上初の一歩を踏み出すことになるわけだ。 さぞ誇らしいことだろう。 親まりさがトウガラシを消化して動きが収まるまでに、 たっぷり十分はかかった。 「かひゅうーーー……ほひゅうーーーー……」 白目を向いたまま、親まりさは放心した体で呻いている。 「ちょっと味見しただけでこんなにゆっくりしてくれるんだな。 たっぷりあるから、ゆっくり味わっていってくれ」 そう言ってやり、トウガラシの粉を柄杓でたっぷり掬った。 親まりさの口に近づけるが、親まりさはまだ白目を向いたまま揺れている。 俺の声も耳に入っていないようだ。 構わず、口いっぱいにトウガラシを頬張らせて蓋をした。 親まりさが爆発した。 もちろん比喩的表現だが、まさにそれは爆発だった。 吊り下げられた状態で、よくもこれほど動けるものだ。 そう感心してしまうほど、電流に打たれたように跳ね回っていた。 ビビビビビビビビビビビビビビビビビ。 下膨れの顎が、上下左右にぶんぶんとシェイクしている。 まるで釣りあげられた直後の魚、いやそれ以上だ。 「ゆぁああああああ……ゆわぁああああああ………」 子まりさ共が絶望のシンフォニーを奏でている。 次は自分たちだ、それは痛いほど理解できているようだ。 命乞いをする気力もなく、ただ泣くことしかできない。 それでも、輪をはめられる段になると本能的に騒ぎはじめた。 「やべで!!ゆっぐりやべで!!やべでぇええええ!!まりざだげはぁああ!!」 「ゆっぐりじだいいいいいいい!!ゆっぐりざぜでぇええええええええ!!!」 「いやぁあああああいやぁあああああごろじでええええーーーーーっ」 三匹の子まりさ共には、また違うものを味わってもらった。 カラシを詰め込まれた子まりさは、やはりおこりのように痙攣している。 トウガラシとあまり変わらない。 わさびを詰め込まれた子まりさは、これも痙攣しているのだが、 カラシとはやや違うようだ。 半分白目を剥いて、下顎というか腹を前方に限界まで折り曲げて、 ぐにゅりと折りたたまれた状態で硬直しながら痙攣している。 わさびの辛さは鼻にくる。 想像するに、この量では「ツーン」というような生易しいものではなく、 脳天を錐で突きとおされているような感覚ではなかろうか。 最後の子まりさは、コショウを詰め込んだ。 すさまじい勢いでせき込んでいるが、 鼻がないので、口をふさげば何も出てこない。 膨れてはしぼむのをすごい速さで繰り返し、まるで早鐘を打つ心臓のようだ。 四匹ならんだゆっくりが痙攣しつづける様は壮観だった。 どれもが人間でもできないようなすさまじい速さで痙攣し、 微塵もゆっくりしていない。 見やると、隣のゆっくり共が反対側の壁にぴったり身を寄せて震えていた。 ゆっくりできないものを極端に恐れるゆっくりにとって、 高速で動くものは恐怖の対象である。 まして、同族であるまりさがすさまじい速さで痙攣するこの光景は、 こいつらにとってあまりに恐ろしいのだろう。 こちらに背を向けて壁にしがみつき、恐怖に泣き叫んでいる。 俺はスイッチを操作し、向こう側のマジックミラーを鏡に戻して、 向こうからは見えないようにした。 さて、この辛味を片付けるにはどれだけかかるか。 結論から言うと、まりさ共の反応は、やること自体はそう変わらなかった。 どれもすさまじい勢いで痙攣してばたばた暴れるというものだが、 その痙攣の度合が、きれいに辛味に比例するようだ。 より辛いものを食わせるたびに、痙攣の間隔が速くなり、ぶれる大きさは増大していった。 辛味は、スコヴィル値と呼ばれる数値で計測することが可能である。 トウガラシの辛味は、およそ三万~四万といったところだ。 スコヴィル値三十五万のハバネロを食わせたときは、 バイブレーターのように震えていた。 ビビビビビビから、ビィィィィィィーーーーーー………という感じだ。 下腹部はもはやぶれてよく見えない。 最終的には、世界一辛いトウガラシと言われる、 スコヴィル値百万のジョロキアを食わせた。 この時は驚いた、その痙攣はもはや擬音に変換できるレベルを超えている。 体のぶれは早すぎて、ぱっと見ではまったく動いていないように見えるほどになり、 ぶれる下腹部の軌道がそのまま輪郭となって、 頭部分だけがにょきりと突きでた扁平な饅頭のように見えた。 はたから見ていても異常な光景だが、 こいつら自身の感じている苦痛たるやどれほどのものだろうか。 つくづく、ゆっくりの不可解さと頑丈さを思い知った。 他の生き物の筋肉では、どれだけの刺激を与えてもここまで動けるものではないだろう。 ゆっくりという名前に反して、この生き物はすさまじい潜在能力を秘めているようだ。 辛味を食わせはじめてから最後のジョロキアを片付けるまでにかかった時間は、二週間だった。 そもそも、この激痛では「食う」という思考さえ発する余裕がないだろう。 意思とは無関係に喉から勝手に吸収されるのを待つ、という緩慢な食事だった。 ともあれ少々不安はあったが、餡子さえ吐かなければ、 どれだけ辛いものを食べても死なないことは証明された。 人間だって死にそうなものだが、これも意外なゆっくりの耐久性といったところか。 辛味を食わせるのにだいぶ時間がかかったが、次はすぐに終わるだろう。 発狂のできない悲しさでいまだ意識を保っているまりさ共に、俺は聞いてやった。 「かき氷って好きだったよな、お前ら」 コンビニで買ってくるかき氷が、このまりさ共は好物だった。 夏場などは他のれいむやありすから奪い取って貪っていたものだ。 かき氷と聞いて、まりさ共の目が輝いた。 「すきぃ!!かきごおりだいすきなんだぜぇええ!!ゆっくりできるうううううううう!!!」 「さんざん辛いものを食わせたからな、次は冷たいものをと思って今日はそれを持ってきた。たっぷりな」 「やったのぜええええええええ!!!やっとゆっくりできるんだぜええええええええ!!!」 「おにいさんはやっとわかったのぜええええええ!!?えらいんだぜえええええええ!!!」 「ゆっくり!!ゆっくりできるううううううう!!!ゆっくりいいいいいーーーーー!!!」 言葉遣いが少しばかり戻ってきたようだ。元気でいいことだ。 狂喜する親まりさの口に、再び輪を嵌める。 「ゆっ!!?やめるんだぜ!!わっかさんなくてもまりさはたべるんだぜぇおごっ!!」 あれだけ辛味を食べていても、中の様子は一見変わっている様子はなかった。 あれでもすべて餡子に変換しているらしい。ゆっくりコンポストが人気なのもうなずける。 四匹並んで大口をあけるまりさ共の前で、俺は道具を取り出した。 まず、ペンチを持ち出して親まりさの歯を挟む。 強度はともかくとして、 直径50cmにもなるまりさの歯は相当でかく、直径2~3cmはあるようだった。 「ゆゆぅぅううぐぅぅぅう!!?」 自分がされることを察知したらしい親まりさがじたばたともがき始めた。 俺はペンチをゆっくりと傾け、歯をねじっていった。 「ゆごっ、ぼっごっごごごごごっごおおおおおおおおお!!!」 一回転したところで、歯はたやすく根本から抜けた。 親まりさは大粒の涙をぼろぼろ流して呻いている。 「ゆあああああいいいいいいいいいい………えううううううううぐううううううう」 手早く次の歯にペンチを伸ばした。 ここでの初日にさんざん蹴りつけたせいで、すでに多くの歯が折れていたが、 半分折れているようなのも含めるとまだ十本はあった。 それらを綺麗に、全部こじり取る。 健康な歯を、引っこ抜かれるならまだしもねじられて抜かれる痛みは相当なようだ。 ねじられていく歯が歯茎を押し潰し、破壊していく。 「ごごぉおおおおお!!どおおおおおおお!!!あうぐううううううううーーーーーーっ!!!」 すべてを抜いた後は、まりさの大口の中に白いものはなくなった。 餡子とはいっても、歯茎を構成する部分は比較的固く、骨格に近い働きをしているようだ。 歯があった跡は、すべてぐずぐずの穴の列になり、 ピンク色の歯茎に、露出した黒い餡子がU字型に並んでいる。 子まりさ共を見やると、全員がすでに大粒の涙を流していた。 「やべでえええええええゆるじでええええええーーーーーーーーーっ」 「いりまぜん!!がぎごおりいりばぜええええええん!!!ぢょうじのっでばじだああああああああ!!!」 「ばざんぬがないでええええええええごばんだべられだいいいいいいいいい」 「歯がなければまともに喋ることもできないからな。必要になったらまた挿してやるよ」 子まりさ共にも輪っかをはめて口を開けさせ、歯をすべてこじり抜く。 ひとまずこれで目的は達成できるが、さらに念を入れる。 工業用の電気ドリルを持ち出すと、再び親まりさから処置を施す。 直径1センチ程度の細いドリルを、歯の抜けたぐずぐずの跡に突き入れた。 「がびゃあっ!!!?」 びぐんと跳ねるまりさを押さえつけながらスイッチを入れ、 回転するドリルをゆっくりと歯茎の奥まで突き込む。 「ががががががががががががががががががががあああぁ!!!!!!」 どれぐらい入れるか少し悩んだが、5センチぐらい突っ込み、 突っ込んでは内部でねじり回して神経を引っ掻いた。 本気で引っ掻くとたやすく歯茎ごと崩れてしまうので慎重に行う。 「ばいいいいいいいぐうううううういいいいいいいおおおおおごごごごごばばばばばだあああだああああああああががががががあああああああーーーーーーーーーっ」 すさまじい声量の悲鳴が部屋に充満する。 「ゆううううううううう!!!あゆううううううううううう!!うううううううううーーーーーーーっ!!!!」 子まりさ共も自分がされる前からひっきりなしに悲鳴をあげている。 研究者によれば、外見と同じくゆっくりの体のはたらきは人間と酷似しており、 歯茎の中にも、神経と同じ作用をする餡子が詰まっているらしい。 一見崩れた餡子の塊にしか見えないが、 ぐしゃぐしゃの歯茎の中で、神経となる餡子がむき出しになって外気に晒されるわけだ。 俺も昔歯医者の世話になったことがあるが、その苦痛は俺の体験の万倍にもなるだろう。 「あがああああああああごおおおおおおおおおおーーーーーーー」 すべての歯の神経をかき回されむき出しにされたまりさ共は、 俺がドリルを抜いたあとも叫び続けていた。 神経が外気に触れるだけでもすさまじい苦痛を呼び込むようだ。 「じゃあ、食事にしようか」 俺の言葉にもまりさ共は反応せず、忙しく叫び続けている。 仕方がないので勝手にやらせてもらうことにした。 連絡して、スチロールの箱を大量に運び込んでもらう。 スチロールの箱の中に、ドライアイスで冷凍保存された袋詰めのかき氷が大量に詰められていた。 それらをかたっぱしから大きなボールに開けると、 ボールをそのまま親まりさの前に持っていく。 親まりさは歯茎の痛みに暴れまわっていたが、 視界の端で俺のやっていることを捉え、さらに涙の量を増やした。 もはやスプリンクラーのように涙が飛び散っている。 溢れるほど口いっぱいに氷をつめこみ、急いで蓋をする。 白目を向いていた親まりさの目がいっぱいに見開かれた。 氷の冷気が、歯茎の神経を通って餡子の髄まで貫いたようだ。 ぐるぐると瞳を回転させ、親まりさはすさまじい勢いで暴れまわった。 振り子のように前後に顎をぶんぶん振っている。 全員にかき氷を食わせて観察する。 しばらくの間まりさ共は暴れていたが、やがて意外な反応を見せはじめた。 目をぎゅっと閉じて体を縦にめいっぱい伸ばしている。 どうやら、せめて上顎の歯茎に氷を当てないようにしたいらしい。 限界まで大口を開けさせたうえで満杯に氷を詰め込んだのだから、 そんな事をしても顎はそれ以上開きも閉じもしないのだが、 縦長に体を伸ばしているまりさはそれなりに珍しい見ものだった。 もっとも、今後はもっともっと珍しい状態を見せてもらうのだが。 氷は数時間で片付いた。 食べるというより飲み込むだけなのでさすがに早い。 その日のうちに、俺は次の食事を出した。 「それじゃ、後は野菜をやろう」 まりさ共の目が開き、恐怖8、媚びが2程度の感情を湛えた。 「安心しろ。腐ってない、新鮮な野菜だ」 ここまでされても期待を捨てられないのが餡子脳たるゆえんだ。 それゆえにタフなゆっくりを、完全な絶望と後悔に染めるには骨が折れそうだ。 もっとも、絶望を味わわせる試みはまだ始まってもいない。 じっくり腰を据えてかかろう。 最後に俺が持ってきたのはサボテンだった。 口いっぱいにサボテンを詰め込まれ、 ぐじゅぐじゅに潰された歯茎を含めた口中を針で刺し貫かれながらまりさ共は苦痛に身をよじる。 これを食わせるにあたって、まりさ共をフックから取り外し床に置いてやった。 苦痛にのたうちまわるほどに、まりさ共の口内のサボテンは床に押されてますます針を深く突き立てる。 一応は有機物なのだからいつかは消化されるだろうが、 サボテンの固い表皮が餡子に変換されるにはまた相当かかるだろう。 しばらくは、これらのものをローテーションさせながら不眠不休で食べてもらうことになる。 回復力の強いゆっくりだから、歯茎はすぐに回復する。 そのたびに電気ドリルで神経をむき出しにすることで、 食事による苦痛は数倍になるだろう。 歯がなく咀嚼できないため、頼りは体液による消化のみだ。時間もかかる。 まりさ共については、ひとまず今のところはこんなものか。 まりさ共と並行して、れいむ共とありす共にも処置を行っていた。 初日、れいむ種の四匹は、 目覚める前にそれぞれ個室に入れた。 およそ1~2m程度の、ピンク色の不透明な箱だ。 親れいむが目覚めると、周囲は狭いピンク色の空間だった。 「ゆゆっ!?」 状況がつかめず、うろたえて周囲を見渡す親れいむ。 見慣れない場所。家族の姿も見えない。 「ゆっ!くそどれいはかわいいれいむをさっさとここからだしてね!!」 れいむは叫んだが、それに対する返答はなく、 代わりに挨拶が返ってきた。 「ゆっくりしていってね!!」 背中から聞こえてきた声に振り向くと、そこには知らないまりさがいた。 自分とほぼ同サイズのそのまりさの姿に、れいむは息をのんだ。 絹のようにさらさらで輝くばかりの光沢をもつ金髪、 ビロードのようなてかりを放つ黒い帽子、 ふっくらもちもちの、極上の血色もとい餡色を帯びた肌。 今まで見てきたゆっくりなど問題にならないほどの極上の美まりさだった。 「ゆっ!ゆっくりしていってねぇぇ!!」 息も荒く、れいむは言い放った。 「まりさのいえにいらっしゃい!ゆっくりおともだちになろうね!!」 美まりさが返してくる。 そのころころした美しい声に、親れいむはまためろめろになるのだった。 家族たちが不安ではあったが、 甘やかされきった彼女には、心配ごとはすべて奴隷が片付けるものであったから、 外に向かって命令すればすぐに会えると思い、 今は目の前のまりさとゆっくりすることに集中することにした。 やや緊張しながらも、他愛のない話を交わす。 美まりさは性格もよく、いろんなことを知っていて、話していて楽しかった。 すっきりしたい、という欲望が頭をもたげるのにそう時間はかからなかった。 夫のまりさに対する操が一瞬頭をよぎったが、 妾を堂々と連れてくるあのまりさに対し、あてつけでこちらも存分にすっきりしてやろうと思った。 どういうきっかけを作ってすっきりしようか逡巡しているうちに、 ピンク色の室内に、なにやら香が漂ってきた。 無味無臭のその香りに気づかぬまま、れいむとまりさはそれを嗅ぎ、 嗅いでいるうちに表皮がほんのりと湿り気を帯びてきた。 「ゆふぅ……ゆふぅ……まっ、まりさぁぁ……」 催淫剤の香だった。 発情に頬を紅潮させ、れいむは辛抱たまらずまりさにすり寄った。 まりさも抵抗せず、れいむのすりすりにリズムを合わせてうごめきだした。 しばらく摩擦で気分を盛り上げたあと、 美まりさはれいむに向かって、いきり立ったぺにぺにを見せつけた。 「ゆふぅぅ~……すっきりしたいよ……!」 「ま、まりさにならいいよ……!」 れいむはまむまむを突き出し、迎え入れる姿勢を取った。 美まりさ共には躾を施してあった。 すっきりは、ぺにぺにを相手のまむまむに刺すやり方でなければいけない。 全身を擦り合わせる方法ではすっきりできない。 そのように刷り込んであった。 擦り合わせる交尾では、植物型にんっしんっとなり、 ぺにまむ型では、胎生型にんっしんっとなる。 胎生型の出産をしたゆっくりは、 植物型による出産よりも、子供への愛情が強い傾向にある。 個体数が少ないことと、出産時の苦労からくるものとされている。 この特性を、今回は活用することにする。 たちまちのうちにすっきりを終え、れいむは胎生型にんっしんっを果たした。 早くもぷっくり膨らんだ顎を見下ろし、ゆふゆふ満足げな声を漏らしている。 そうしていると、今度は白いガスが吹き込まれてきた。 これには強力な睡眠剤、そして成長促進剤が含まれている。 親れいむの意識はすぐに落ちていった。 以上の手順は、三匹の子れいむ共にもそれぞれ全く同じように施されていた。 翌日、四匹のれいむ共はひとつの部屋に集められていた。 四匹とも、部屋の中心に供えられたおよそ2m四方の大きなガラス箱の中だ。 子を体内に宿したゆっくりれいむ共は 親子四匹とも、もとから下膨れの輪郭が下方向にたっぷりと膨らみ、 目と口が上方にめいっぱい偏った洋梨のような無様な姿になっている。 成長促進剤によって出産を早められたれいむ共は、 四匹とも今日が出産予定日だ。 ゆっくり達が出産に集中できるよう、この部屋に人間はいないが、 備え付けのカメラで出産の様子は別室から逐一確認できるようになっている。 俺は今、監視室でそれを見届けていた。 「ゆっ!!」 「ゆゆ!れいむどうしたの?」 「う……う……うばれるうう!!」 一匹が産気づいたようだ。 一匹の子れいむの顎の下に小さな穴が空き、外側に盛り上がりながらひくついている。 顔を真っ赤にしていきむ子れいむを、他のれいむ共が応援する。 「ゆううぅぅ!!ゆううぅぅ!!」 「ゆっくりうまれていってね!!ゆっくりがんばってね!!」 ゆっくりの出産は激痛を伴う。 生涯最大級の痛みは、痛みに弱いゆっくりにとってこの上ない苦しみだが、 ひとえに赤ゆっくりへの愛情のため、この時ばかりは文句ひとつ言わずに堪える。 「うばれるうう!!ゆっぐり!ゆっぐうううううう!!」 「がんばってね!!がんばってね!!おおきくいきをすってはいてね!!」 「おねえちゃんがんばって!!ゆっくりしたあかちゃんをみせてね!!」 「がんばづうう!!でいぶがんばづううう!!ゆっぐりいいいい!!」 「ゆっゆっゆー!!ゆっゆっゆー!!」 歯茎をむき出して全力でいきむれいむ。 腹の火山のような盛り上がりはますます大きくなり、 中心部の穴、産道が少しずつ広がっていった。 「ゆゆっ!!あかちゃんのおかおがみえてきたよ!!」 「いだいいいい!!あがぢゃん!あがぢゃあああああん!!」 「おちついていきんでね!!だいじょうぶだからね!!」 産み方を指示しているのは親れいむだ。 「かわいいあかちゃんだよ!!がんばってね!!」 「ゆぐっ、ゆぐっ、ゆぐぐぐぐぐぐぐぐうううう」 涙を流し、歯を食いしばりながらいきんだ末に、 れいむはついに赤ゆっくりを生みだした。 ぽん、と勢いよく飛び出して床に着地したれいむ種の赤ゆっくりは、 ぎこちない動きで母親に向きなおると、笑顔で叫んだ。 「ゆっきゅちちていっちぇね!!」 それを見届け、れいむ達の視線が産んだれいむに向けられる。 赤ゆっくりの生まれてはじめての挨拶。 出産の苦痛があとを引く中で、産んだれいむはそれでも満面の笑みを浮かべて叫んだ。 「ゆっくりしていってねええ!!」 「おきゃあしゃん!!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!! ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」 飛び跳ねながら母親のもとに駆け寄る赤ゆっくり。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!」 「とってもゆっくりしたあかちゃんだよお!!」 「れいむがんばったね!!えらかったねええ!!」 周りのれいむ達も口々に祝福の言葉を贈る。 幸福感に満ちた表情ですりすりをするできたての親子を眺めながら、 一様にたるんだ笑みを浮かべていた。 「ゆぐっ!!」 程なくして、別の子れいむがうめき声をあげた。 こちらも産気づいたようだ。 「ゆゆっ!!こっちのれいむもうまれるよ!!」 「がんばってね!!がんばってね!!」 数時間後、四匹の子れいむは全員が出産を終え、 箱の中では合計九匹の赤ゆっくりが動きまわっていた。 一度に数匹生んだれいむもいたため、この数になった。 赤ゆっくりの内訳は、れいむ種が六匹、まりさ種が三匹だ。 胎生型にんっしんっのため、どれも赤ゆっくりとしては大きめのみかんサイズだ。 「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっきゅちちちぇいっちぇね!!」 「ゆっきゅちちちぇいっちぇね!!」 「とってもゆっくりしたおちびちゃんたちだね!!」 「れいむのあかちゃんたちとってもかわいいよおお!!」 れいむ共は飽きることなく「ゆっくりしていってね!!」を繰り返し、 それぞれ自分の産んだ赤ゆっくりを側に置いて頬ずりをしている。 「さあ、おちびちゃんたち!おかあさんとすーりすーりしようね!」 「ゆっ!おきゃあしゃんとしゅーりしゅーりしゅるよ!」 「しゅーり♪しゅーり♪」 「すーり♪すーり♪」 「あかちゃんたちかわいいねええ!」 「ゆっくりしてるよおお、ほっぺたもちもちねええ!」 「ゆっくりできるおうたをうたおうね! ゆ~、ゆ~ゆ~、ゆゆゆ~~♪」 幸福に満ちたゆっくりの群れ。 俺は立ち上がり、部屋に向かった。 「おにーしゃんはゆっきゅりできりゅひちょ?」 部屋の中に入ってきた俺に向かって、赤れいむの一匹が話しかけてきた。 俺は答えない。 「ゆゆっ!!ごみくずがやってきたよ!!」 「なにかってにみてるのおお!?」 「ごみくずにはれいむたちのゆっくりしたあかちゃんをみるけんりなんてないんだよお!! なにかんちがいしてるの?ばかなの!?あまあまをおいてさっさとでていってね!!」 不思議がる赤ゆっくり達に向かって、親れいむ共は教えた。 「あれはごみくずだよ!おにいさんなんてよばなくていいからね!!」 「やくにたたないくせにからだだけおおきいばかなんだよ!」 「みんな、あんなふうになっちゃだめだよ!!」 「わきゃっちゃよ、りぇいみゅはあんにゃふうににゃらにゃいよ!」 「ごみくじゅ!ごみくじゅ!」 「きゃわいいりぇいむをみにゃいでね!ごみくじゅ!!」 親に気に入られたいがために、赤ゆっくり共は俺に罵声を浴びせてきた。 「ゆゆっ、おちびちゃんたちはとってもものわかりがいいね!!」 「もっといってあげてね!!」 「くそどれいはなにしてるの?ばかなの? こんなかわいいあかちゃん、ごみくずにはもったいないよ!ゆっくりりかいしてね!!」 「こえだけならきかせてあげてもいいよ!うしろをむいててね!!」 しばらくの間好きに言わせたあと、俺は始めることにした。 箱の中に手を突っ込み、赤ゆっくりを一匹手に取る。 「ゆゆっ?おしょりゃをちょんでりゅみちゃい~♪」 赤ゆっくりを箱の外に運び出し、床に置いたところで、 呆然として見ていた親れいむ共が弾かれたように喚き始めた。 「なにやってるのおおおおおお!?」 「ごみくずうううう!!おちびちゃんにさわるなああああああ!!」 「かえせえええええええ!!れいむのおちびちゃんかえせえええええ!!」 構わず、二匹目を運び出しにかかる。 箱の中に突っ込まれた俺の手に向かって、 殺意に満ちたれいむ共の体当たりや噛みつきが襲ってきた。 まるで痛くもない。 俺はわざとゆっくり、一匹ずつ大仰に運び出していった。 「ゆがああああああ!!かえせええええええ!!」 「きたないてでおちびちゃんにさわるなあああ!!」 「ばか!?ばか!?ばかなのおおおお!?ほんもののばかなのねええ!? ばかはばかなりにみのほどをわきまえてねええええ!!」 何匹か運び出したところで、箱の隅に固まっている二匹のれいむが見えた。 角のほうにぴったりと身を寄せ、顔をぱんぱんに膨らませて俺を睨んでいる。 ほとんど運び出し、赤ゆっくりが目につかなくなったところで、 俺はわざととぼけてみせた。 「赤ゆっくりはこれで全部かな?」 「かえせえええええ!!!」 「まだ残っていたような気がするがな?」 箱の中を見回してみせると、隅のれいむ共がますます膨らんだ。 そちらに視線を止める。 他のれいむ共が口々に叫んだ。 「あかちゃんたちはごみくずがぜんぶはこびだしたよ!!」 「そんなところみてももういないよ!!ごみくずはばかだね!!」 「ゆっくりあきらめておちびちゃんをかえしてね!!」 「いないのか?」 「いないよ!!ゆっくりあきらめてしんでね!!」 「ここをまだ見てないぞ?」 「そんなところみなくていいよおおお!!いないよおお!!」 「そうか、いないのか。残念だな」 「ゆ!わかったらさっさとかえしてね!!ばーか!!」 「でも念のためだしな。一応見てみようか」 隅のほうに手を伸ばす。 ゆっくり共が絶叫しはじめた。 「いないよ!いないよおおお!!みなくていいいい!!」 「ばかなのおおお?しぬのおおお!?」 「ぷっくうううううううう!!!!」 膨らむれいむを転がすと、ぶるぶる震えている赤ゆっくりが三匹見えた。 面倒なので全部一度に持ち出す。 「ゆああああああああ!!やめろごみくずううう!!!」 九匹の赤ゆっくりは、 今や全てが箱の外で、透明な壁ごしに親ゆっくり共を見つめている。 「おきゃあしゃん、きょきょあけちぇね?」 「しゅーりしゅーりしちゃいよ?」 「かべさんゆっくりどいてね!」 親の元に駆け寄ろうとするが、ガラスの壁に遮られて進めない。 体当たりをしても跳ね返され、ついには泣きだした。 「ゆわああぁぁん!!かべさんどうしていじわるするのおぉぉ!!」 「しゅーりしゅーりしちゃいいいぃぃぃ!!」 「おきゃあしゃあああん!!あけちぇよおぉぉ!!」 親れいむ達も同じように泣き喚いている。 「おちびちゃんん!おちびちゃあああんんん!!」 「かえせごみくずうううう!!なにしてるうううう!!」 「なにだまってるのおおおお!?ふざけるなああ!!」 しばらく観察したあとで、俺は爪楊枝を取りだした。 赤ゆっくり相手に、たいした道具もいらない。 壁にへばりついている赤ゆっくり達に、爪楊枝の先端をつきつける。 「ゆぎゃっ!?」 「いぢゃいぃ!?」 ちくちくと肌を突かれ、生まれて初めての痛みに声をあげる赤ゆっくり。 「やめちぇ!やめちぇぇ!!」 「いぢゃいい!!おきゃあしゃああんん!!」 「なにしてるのおおおおお!!?やめろおおおお!!」 親れいむ共が喚き、箱の外壁に体当たりをするが、 部屋の床にしっかりと固定された箱は揺らぎもしない。 「おきゃあしゃああああん!!」 「ゆえええぇぇん!!」 爪楊枝から逃れようとちりぢりに逃げようとする赤ゆっくり共。 しかし、その鼻先に爪楊枝を突きつけ、追い返す。 元から移動速度の遅いゆっくりの幼児のこと、悲しいほどに遅く、 九匹もいるとはいえ、座ったままで充分に全員を操作できた。 今や赤ゆっくりは互いに身をよせあって一か所に固まり、 四方から迫りくる爪楊枝に、ただ泣き喚き、母に助けを求めている。 「たしゅけちぇええ!!たしゅけちぇえええ!!!」 「ゆびゃっ!!」「いぢゃあっ!!」 「もういやぁぁぁぁ!!」 「おきゃあしゃああああんなんでえええええ!?」 「おちびちゃん!!おちびちゃああああん!!!」 固まってぶるぶる震える赤ゆっくり共。 俺はそこで道具を持ち変え、バーナーを手にした。 一匹の赤まりさを手にとり、底面を上に持つ。 「ゆっ?はなちてにぇ!はなちてにぇ!!」 もぞもぞと抗う赤まりさの底面を炎が焼き焦がす。 「ゆぴいいいいいいいいいいいいいい!!!??」 笛吹きヤカンのような悲鳴が響き渡る。 「おちびちゃんんん!!」 「やめなさいいいい!!いたがってるでしょおおおおおお!?」 「くそじじいいいいいいますぐはなせええええええええ!!!」 低出力のバーナーで、ゆっくりと丹念に赤まりさの足は焼かれてゆく。 「びびびびびいいいいああああああぢゅいいいいいいいいいいぎぎぎぎぎぎぃいあぢゅああああおぢゃあしゃあああああああーーーーっああーーーーーーーっづづづづづづづうううううぐうううういやぢゃああああああぐぎいいいいいいいーーーーーー」 泡を吹き、悶え、痙攣する赤ゆっくりの底面は、 やがて真っ黒に焼け焦げた。 恐らくは中の餡子まで焦げ付いているだろうが、ともかく生きている。 それを床に置くと、泣く元気もなくぐったりとうなだれた。 「ゆわああぁぁ……あんよがあぁぁ……」 「おぢびぢゃんのがわいいあんよがあああ……」 俺に悪態をつくことさえ忘れ、 赤ゆっくり以上に涙を流し、壁面にへばりついて親れいむ共は嘆いている。 赤まりさの足がもはや用をなさないことは誰の目にも明らかだった。 固まっている残りの赤ゆっくり共は、あまりのことに硬直して、 ただ事のなりゆきを凝視していた。 次は赤れいむを手にとる。 「いやぢゃあああああああ!!!」 何をされるかを理解した赤れいむは、ここを先途と絶叫する。 「だじゅげぢぇええええおぎゃあじゃああああん!! でいぶあんよやぎゃれぢゃぎゅにゃいいいいいいいいいいい!!!」 「ごみぐずううううううううううう!!!」 「いばずぐばなぜええええええぐぞじじいいい!!」 「頭に来るな」 俺は答えてやった。 「ゴミクズだの糞奴隷だの、さんざんに言ってくれるな。 俺はすごく気分が悪い。頭に来てる」 「じるがああああ!!ごみぐずごみぐずごみぐずううう!!」 「だまれだまれだまれえええ!!じじいはざっざどがえじでじねえええ!!」 「頭に来るから、こいつも焼く」 そこで親れいむ共の様子が変わった。 罵倒を中止して黙り込み、赤れいむに近づけられるバーナーを見つめている 懇切丁寧に解説してやった甲斐があり、今の状況がようやく把握できたようだ。 「おにいさん!!やめてね!ゆっくりやめてね!!」 「ごめんなさい!!ごみくずっていってごめんなさい!!ね!!」 「もうやめてあげるからね!!おにいさんもやめてね!!」 「ゆばがぎゃああああああああああああ!!!」 「なんでえええええええええええ!!?」 赤れいむの底面が丹念に焼かれる間、親れいむ共は懇願し続けた。 「やめてくだざい!!やめでえええええええ」 「おでがいじばず!!おでがいじばず!!」 「おにいざあああああんもうばがにじまぜえええええええん!!」 「ゆっくりざぜであげてええええええええええ!!!」 「でいぶをやいでぐだざいいい!!おぢびぢゃんはだずげでえええ!!」 一人が身代わりを申し出たのを皮切りに、 親れいむ共全員が競うようにして自らを差し出した。 「でいぶをやいでえええ!!おでがいでずううううう!!」 「でいぶはどうなっでもいいでずううううううう!! おぢびぢゃんは!!おぢびぢゃんだげはああああああああ」 「どっでもゆっぐりじだあがぢゃんなんでずうううううう!! でいぶになら!!でいぶにならなにをじでもいいでずがら!!あがぢゃんだずげでええええ!!!」 ゆっくりの中でも、れいむ種は特別母性が強い。 自分の子供を溺愛することにかけては他の種とは比べものにならず、 今やっているように、拷問の身代りになることさえ厭わない。 やはり思ったとおりだ。 れいむ種にとって最大の苦痛は、子供を傷めつけられることなのだ。 方針は決まった。 続く 選択肢 投票 しあわせー! 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