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2008年、夏、東京。 俺はカメラ片手に繁華街をうろついていた。 幼女を盗撮しようとかそういうワケではない。 ターゲットはゆっくりだ。 最近発見された、生きる饅頭。 日本では大量に見つけることができるが、海外にはほとんどいない。 台湾やアメリカの一部の州ではゆっくりの生息が確認されたそうだが、ほぼゼロだ。 そのふてぶてしい顔、そしてその不思議な生態は日本だけでなく世界の注目を浴びている。 なんでも去年、日本に訪れた観光客が例年の3倍近く増えたという。 ゆっくりバブルと、世間は騒ぎたてていた。 俺はそこに目をつけた。 海外で放送されているゆっくりのドキュメンタリーは、ほとんどが田舎が舞台になっている。 元気いっぱいに跳ね回り、力いっぱい「ゆっくりしていってね」と発声する。 そんなハツラツとしたゆっくり達ばかりが主役だ。 だから俺はあえて、都会に住む、みすぼらしいゴミクズのようなゆっくり達にスポットライトを当てようと思った。 時代はインターネット。 世界はつながっているのだ。 既にブログは開設済み。 英語の読み書きだけは得意だったので、日本語ページと英語ページが用意されている。 あとはyoutubeにメインとなるゆっくりの動画をアップするだけ。 ブログは主に、動画の制作に関する話題や、日本にゆっくりを見に観光する際のお勧め情報を載せるつもりだ。 アフィうめぇと言える日を夢見て、俺は早朝の繁華街を歩いていた。 「おっ、第一ゆっくり発見」 建物と建物の間に、1匹のゆっくりがいた。 飲食店が多い繁華街なのですぐに見つかるとは思っていたが、こんなにすぐ見つかるとは。 こんなウジムシのごとくブリブリ湧いてるモノを見に、わざわざ日本にやってくる外人がいるとは驚きである。 「ゆっ・・・!」 さっそく、カメラを録画モードにする。 ドキュメンタリーのつもりなので、あとで編集はする。 流れとしては、日本語で喋る俺の声はそのままに、画面下のほうに英語の字幕をつけるつもりだ。 「まりさ種発見です」 まりさは膨れて威嚇はしないものの、、ぶつぶつと喋る俺に警戒をしているようだ。 「 ゆゆ・・・ゆっくり・・・」 田舎に住むゆっくりのように、嬉しそうに挨拶はしてこない。 それが都会に住むゆっくりの特徴だ。 「それでは挨拶をしてみましょう。ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっ、ゆっくり・・・ゆっくりしていってね・・・・」 ゆっくりとは思えない挨拶と媚びるような笑顔。 恐怖に脅える顔が透けて見える。 本心から発した言葉ではないのだろう。 だが、俺にはそんなことどうでもいい。 都会に住むゆっくりの典型的な例なので、撮影に協力してもらおう。 俺はズカズカと、まりさの方へ歩いて行く。 「ゆっ!ゆっくりこないでね!」 そう言いつつ、逃げようとはしない。 何かあるのだ。 ゆっくりが身を挺して守るものなど、赤子くらいなもの。 まりさの頭上から奥を除くと、ダンボールの中にソフトボールほどの子ゆっくりが4匹ほど眠っていた。 アタリを引いたようだ。 「やあ、まりさ。ちょっとお話があるんだ」 俺はまりさに撮影の話をした。 都会のカラスと同じで、都会のゆっくりは田舎のゆっくりに比べて知能が高いことが多い。 このまりさも普通のゆっくりよりも若干賢かった。 説明はすぐに終わり、撮影の許可をいただくことができた。 「じゃあ、これからまりさの生活を見せてもらうよ。よろしくね」 「ゆっくりりかいしたよ!」 許可してもらったのは、まりさの行動をすぐ後ろで撮影させてもらうこと。 そして、まりさはカメラを意識しないで普段通りに生活してもらうこと。 報酬としてエサをやるといったら、すぐに了解してくれた。 ただ、野良ゆっくりにエサをやるのはマナー違反である。 なので撮影が終了したら黙って帰ろうと思う。 「そうだな、それじゃちょっとまりさの体を見せてくれるかな」 「ゆっ。ゆっくりながめてね」 狭い場所なので、くるくる回って撮影ができなかった。 しょうがないので、まりさを近くにあった板に乗せて回転させる。 本当に、汚いまりさだった。 最初に感じたのは、顔の皮の色だ。 全体的に茶色に染まり、擦り傷がアチコチに見られる。 試しに触ってみると、油汚れのようなネットリとした不気味な粘着を感じた。 底部は硬かった。 連日、コンクリートを這っているため、タコのようになっているのだろうか。 髪の毛はボサボサで、ところどころにゴミや木の枝などが巻き込まれていた。 後頭部の髪には、噛んだガムがねっちょりとこびり付いていた。 しかもひとつだけでなく、いくつもついていたため、後頭部はガムまみれ。 「にんげんさんがむりやりつけたんだよぉ・・・!ま、まりざはっ!まりざはやべでっでいっだのにぃいぃぃ」 と、泣きだす場面もあった。 帽子も変な形をしていた。 トンガリ帽子のはずなのに、べっこりと潰れてプリンのような形をしていた。 また、帽子に巻かれているはずの白いリボンはなかった。 まりさ曰く、ガムをつけてくれたお兄さんに目の前で焼かれたらしい。 あらかた撮影したので、まりさを板からおろした。 「じゃあ俺は撮影してるから、まりさは普段通りに過ごしてくれよ」 「ゆっくりするよ」 まりさは子供達の眠るダンボールに向かっていった。 俺もすぐに後を追う。 「おちびちゃんたち・・・きょうもゆっくりできるといいね」 子ゆっくりは笑顔で眠っていた。 体は親同様、汚く着色されているのでお世辞にも可愛いとは言えないが。 まりさ種が3匹と、れいむ種が1匹。 よくある組み合わせだ。 「もう1匹、親のゆっくり霊夢はどこにいるんだ?」 「ゆぐっ・・・!」 今にも泣きだしそうな顔。 それをグッとこらえる仕草をしながらまりさは言った。 「れ、れいむはっ!まりざのぜいでじんじゃっだんだよ・・・・」 「ほー。それはなぜ?」 「へんなおにいざんが・・・!まりざのれいむをぉお!!!ゆぅうぅぅぅぅうっ!!!」 そのまま、まりさは泣き崩れてしまった。 勝手な推測だが、きっと悪い人間にれいむは殺されたのだろう。 まりさを逃がすために囮になったのか、それとも単にグズだったのかは分からないが。 「ゆっくり虐待かー・・・」 以前、youtubeにゆっくりアリスの虐待画像をアップした人間がいた。 グチャボロになりながらも、必死で生きようとするありすの姿が記憶に新しい。 アップロード者は、そのまま動物愛護法でしょっぴかれてしまったのだが。 「ま、ドキュメンタリーなら大丈夫だろ」 俺はカメラを子ゆっくりに向け、その薄汚い笑顔をアップで撮った。 日が高く上った頃、ようやく子ゆっくりが目を覚ました。 「ゆっくりさせてね!」 「れいむはおにいさんとゆっくりしたいな」 「まりさ、すごくゆっくりしてるよ」 「すりすりしてあげるね!」 と、俺の存在に気がつくとすぐに話しかけてきた。 意外と人懐っこい・・・というよりは媚びるのが得意のようだ。 1匹の子まりさがすりすりをして媚を売ろうとしてきたが、汚い皮ですりすりされても嬉しくない。 ウニクロで買った俺の服が汚れてしまう。 早々に親まりさに説明をさせた。 「ゆぅー・・・」 「れいむはひとりでゆっくりするよ」 「ゆっくり・・・」 「すりすりしてあげないよ」 すぐにエサをくれない人間だと理解したようで、俺への関心を失ったらしい。 単純で良い。 「ゆっ!それじゃあみんな。かりにいくよ」 「ゆー!」 「ゆっくりするよ!」 「ゆっくりしたい!」 「がんばってゆっくりしようね!」 親まりさの掛け声に、4匹の子ゆっくりが嬉しそうに応える。 狩り。 いったい、都会のど真ん中でどのようなことをするのだろうか。 ピョンピョコと跳ねる5匹の後を、カメラ片手に俺は足を進めた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 やってきたのは、すぐ手前にあったコンビニ。 狩りではなく乞食であった。 コンビニの外に置いてあるゴミ箱に隠れて、店に入る客に声かけをするだけだ。 みじめである。 乞食慣れしているのか、声も大きい。 「おじさん!まりさとかわいいおちびちゃんたちに、ゆっくりできるものをちょうだいね!」 コンビニから出てきた腰を曲げた老人に、親まりさは声をかけた。 「おじいさん!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしたいよ!おいしいごはんをちょうだいね!」 「ごはんたべたいよ!おねがいだよ!」 「れいむ、おじさんとごはんたべたいよ!」 「まりさにはいらないから、こどもたちだけでもゆっくりさせてね!」 親まりさが最後にそう言うと、子ゆっくり達は親まりさにすり寄り、「おかあさんもいっしょにゆっくりしたいよぉー」などと言うのであった。 演技派のようだ。 その老人は5匹に近寄り、とても外見からは想像もできないような回し蹴りを親まりさに放った。 「ゆぼげっへぇっ!!」 駐車場を転がっていく親まりさ。 老人は、それを呆然と見ている子ゆっくりにツバを吐きつけると、そのまま帰って行った。 「なんというモラルの低下。高齢化した結果がこれだよ!」 少し遠くから、俺はその様子を撮影していた。 まりさの帽子にはマイクが仕込んであるので音声もバッチリだ。 親まりさは派手な転がり方のワリに、意外とすんなり立ち上がった。 それどころか、レンズ越しに映る親まりさの体に特にキズは見当たらなかった。 その後も親まりさと子ゆっくりは、コンビニ前で乞食を続けていた。 お昼頃になると、その存在に気がついた店員に箒で追い出されてしまったが。 「ゆぅ・・・このままじゃゆっくりできないよぉ・・・」 「おなかずいだよぉぉお!!!ゆっぐりじだいのぉおお!!!」 「れいむはやくゆっくりしたい・・」 「もううごけないよおおお!!!」 「まりざおながずいだのにぃぃい!!!」 繁華街の中心を、貧相な一家が彷徨っている。 道行く人々は、視界に入らないよう歩いているようだ。 ずりずりと這う親ゆっくりが、あるものに気がついた。 「ゆ!これはゆっくりできるものだよ!!」 なんだろうと思っていると、親まりさは地面に顔を近づけた。 「これはあまあまだよ!ゆっくりできるんだよ!」 その笑顔といったら。 あれほど明るい笑顔を、あんなもので・・・。 「うわぁ・・・」 思わず声がこぼれた。 「ゆゅー?それなあに?」 「ゆっくりできる?」 「はやくたべたいよ!」 「ゆっくりちょうだいね!」 それは、道にこびりついていたガム。 誰かが吐き捨てたであろうガム。 多少硬くなっているようだが、親まりさの髪についているものほど硬化してはいないようだ。 親まりさはそれをくわえ、必死でひっぱっている。 哀れすぎて何も言えない。 「ゆゆっ!!とれたよ!!」 勢いあまって後ろに倒れこんだ親まりさ。 その口には、不衛生極まりないガムが。 「それじゃあおちびちゃんたち、ゆっくりたべてね!」 周囲の冷たい視線など、まるで無いかのように微笑む。 ただ、人の目があるのでおいそれとゆっくりを殺すワケにもいかない。 もしや、それを理解しているのだろうか。 「ゆー!あまあましあわせー!」 最初に食べさせてもらったのは、子れいむだった。 正直、見てて凄く気分が悪い。 誰が噛んだかも分らんガムを、よくもまああんなに嬉しそうに食べられるものだ。 「ゆ!まりさもたべたい!」 「れいむばっかりずるいよ!」 「まりさも!まりさも!」 「れいむ、そろそろこっちのおちびちゃんにもあげてね」 子れいむは聞き分けの良い子供だったらしく、ペッとガムを吐き出した。 すぐに別の子まりさがガムを口に含む。 「ゆー!まりさもあまあまー・・・・・・?」 顔にハテナマークをつける子まりさ。 「ぜんぜんあまぐないよぉおおおっ!!どぼじでなのぉおお!!?」 そりゃそうだ。 ただでさえ誰かが噛んで甘さが無くなっているのだ。 子れいむが噛んだことで、もはやただのグニュグニュしたものになってしまっているだろう。 「れいむがまりざのあまあまをどっだんだぁあああっ!!」 怒りの矛先は子れいむへ向いた。 猛烈な勢いで、子れいむに跳ね寄る子まりさ。 しかし、それは親まりさによって防がれてしまう。 「れいむになにをずるのぉおお!?だいぜづなしまいでじょおぉお!!?」 ボインっと膨れ、子まりさはそのまま吹き飛ばされてしまった。 ケガはしていないようだが、親まりさに弾かれたことが悔しいのか悲しいのか、起きあがろうとはしなかった。 「まりざもおぉお!!まいじゃもあまあまたべぢゃいのにぃいいっ!!!おぎゃーざんのばかぁああっ!!!」 子まりさの醜い声が繁華街に響き渡る。 「うるせーぞ糞饅頭が!」 すると、目の前の店から一人の男が現れた。 どうやら店員らしい。 「ゆゆ!みんなにげるよ!!おちびちゃんもゆっくりにげてね!」 おちびちゃん、泣き叫んでいた子まりさを呼ぶ親まりさ。 だが親の心なんとやら、子まりさはそれを拒む。 「や゙ぢゃよぉお゙ぉ゙お!!まりざのあ゙まあま゙っ!!ばりじゃのあ゙ま゙あま゙がえじでよぉぉぉおっ!!!」 「ゆぅうううっ!!!みんな、あのこはゆっくりできないこだよ!!いそいでにげるよ!!」 子まりさがあまあまを諦めるよりも、親まりさの見捨てる決断のほうが早かった。 親まりさと子ゆっくり3匹は、瞬く間に逃げて行った。 「ゆっ・・・!?おかあしゃ・・・!?ど、どぼじで・・・!」 茫然自失。 涙も止まり、声も止む。 それに満足したのか、店の男は戻って行った。 残されたのは、親に見捨てられた子まりさ1匹。 もう死ぬしかないだろう。 俺もそれに見切りをつけ、逃げた4匹を追った。 「あ゙ぁぁあ゙ああぁ゙ぁああぁ゙ああぁ゙ああぁぁぁ!!!ばりざのごどぼがあぁああっ!!!」 小さな公園で、親まりさがボロボロと泣き崩れていた。 「おかあさん、ゆっくりしてね・・・?」 「そうだよ、まりさたちがいるよ!いっしょにゆっくりしようね」 「あのこのぶんもゆっくりしようね」 それを3匹の子ゆっくりが慰めていた。 「おかあさんにすりすりするよ!」 「すりすりでゆっくりしてね!」 「すーりすーり♪」 そして始まるすりすり。 目糞に鼻糞を擦り付けているようなおぞましい光景だ。 「ゆっ・・・!みんな、いっしょにゆっくりしようね!あのこのぶんもゆっくりしようね!」 時計の針が午後3時も回った頃、ようやく親まりさは立ち直った。 「きょうはおうちにあるごはんでがまんしようね!かりはあしたやろうね!」 今日の狩りは終了したらしい。 何も得るものがない狩り。 逆に子まりさがいなくなって、何が狩りなのか。 「狩られ」だと思う。 そんなことを考えているうちに、4匹は帰路についていた。 「どぼじでごはんがないのぉぉぉおおっ!!!?」 帰って来た4匹を待っていたのは、残酷な現実だった。 「ごごにごはんがあっだのにぃいいい!!」 ここ、といって覗いているのは空のビール瓶のケース。 もともと黄色い色のケースだったようだが、色褪せてクリーム色になっていた。 キリンのビールケースだ。 子ゆっくり達は、すでに腹が減って喋る気力もないらしい。 マイクは親まりさの嘆きだけを記録していた。 「ゆっ・・・!でもおにいさんがごはんをくれるよ!きょうはゆっくりできるはずだね!」 それに気がつき、声が喜色に染まった。 体をふりふりさせながら、俺がエサを持って帰ってくるのを待っている。 「よし、今日の取材はここまでにするか」 youtubeにアップロードするのが目的なので、あまり長々としたものにするつもりはない。 せいぜい10分、長くても15分に収めるつもりだ。 なので、これ以上この一家の相手をするつもりはなかった。 「あとは編集して・・・、あれして・・・これして・・・・」 ぶつぶつと呟きながら、俺は親まりさに近づいた。 「よ、まりさ」 「おにいさん!やくそくのごはんをちょうだいね!」 「ごはんちょうだいね!」 「れいむにごはんちょうだい!」 「まりさにおいしいごはんをちょうだいね!!」 俺の姿を見ると、子ゆっくり達も気力を振り絞って声をかけてきた。 だが、相手をするつもりはない。 「マイク返してね」 帽子に仕込んだマイクを取り返す。 そして、そのまま背を向ける。 「ごっ・・・!?ごはんはっ!?まりさたちにごはん!」 なんだか生ゴミが騒いでいるが、気にしない。 蹴飛ばすのも嫌だったので、俺は全力疾走で駅まで駆け抜けた。 数日後。 俺はまた繁華街にやってきた。 アップロードした動画は、大好評だった。 アメリカをメインターゲットにしたつもりだが、世界中でウケたらしい。 英語、フランス語、スペイン語、中国語、ハングル、ロシア語で書かれたメールが山のように届いた。 英語しか読めなかったが。 そんな感想で目立ったのが、あの家族はあの後どうなったのか、という質問だ。 そんなワケで俺は再度、繁華街、あの建物と建物の間を見にやってきた。 「いるかな・・・?」 そこには、3匹のゆっくりの変わり果てた姿があった。 親まりさが1匹、子まりさが2匹。 子れいむはいなかった。 この数日の間に死んだか、逃げたか、食べられたかしたのだろう。どうでもいいことだ。 これは番外編としてブログに載せるつもりなので、今日はデジカメで写真撮影をする。 親まりさはゲッソリと痩せ細り、アンコが透けて見えそうだ。 表情は暗く、全てに絶望しながら死んだかのよう。 対して、子まりさ2匹は比較的まともな顔だった。 一体、この家族がどうやって死んだのか。 それは誰にも分らないだろう。 東京では、今日も数えきれないほどのゆっくりがゆっくりを求めて死んでいく。 誰にも存在を気づかれることなく消えていくモノもあるだろう。 この家族は少しはマシだ。 俺のアフィ収入になるのだから。 俺は次の企画を考えていた。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2367.html
2008年、夏、東京。 俺はカメラ片手に繁華街をうろついていた。 幼女を盗撮しようとかそういうワケではない。 ターゲットはゆっくりだ。 最近発見された、生きる饅頭。 日本では大量に見つけることができるが、海外にはほとんどいない。 台湾やアメリカの一部の州ではゆっくりの生息が確認されたそうだが、ほぼゼロだ。 そのふてぶてしい顔、そしてその不思議な生態は日本だけでなく世界の注目を浴びている。 なんでも去年、日本に訪れた観光客が例年の3倍近く増えたという。 ゆっくりバブルと、世間は騒ぎたてていた。 俺はそこに目をつけた。 海外で放送されているゆっくりのドキュメンタリーは、ほとんどが田舎が舞台になっている。 元気いっぱいに跳ね回り、力いっぱい「ゆっくりしていってね」と発声する。 そんなハツラツとしたゆっくり達ばかりが主役だ。 だから俺はあえて、都会に住む、みすぼらしいゴミクズのようなゆっくり達にスポットライトを当てようと思った。 時代はインターネット。 世界はつながっているのだ。 既にブログは開設済み。 英語の読み書きだけは得意だったので、日本語ページと英語ページが用意されている。 あとはyoutubeにメインとなるゆっくりの動画をアップするだけ。 ブログは主に、動画の制作に関する話題や、日本にゆっくりを見に観光する際のお勧め情報を載せるつもりだ。 アフィうめぇと言える日を夢見て、俺は早朝の繁華街を歩いていた。 「おっ、第一ゆっくり発見」 建物と建物の間に、1匹のゆっくりがいた。 飲食店が多い繁華街なのですぐに見つかるとは思っていたが、こんなにすぐ見つかるとは。 こんなウジムシのごとくブリブリ湧いてるモノを見に、わざわざ日本にやってくる外人がいるとは驚きである。 「ゆっ・・・!」 さっそく、カメラを録画モードにする。 ドキュメンタリーのつもりなので、あとで編集はする。 流れとしては、日本語で喋る俺の声はそのままに、画面下のほうに英語の字幕をつけるつもりだ。 「まりさ種発見です」 まりさは膨れて威嚇はしないものの、、ぶつぶつと喋る俺に警戒をしているようだ。 「 ゆゆ・・・ゆっくり・・・」 田舎に住むゆっくりのように、嬉しそうに挨拶はしてこない。 それが都会に住むゆっくりの特徴だ。 「それでは挨拶をしてみましょう。ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっ、ゆっくり・・・ゆっくりしていってね・・・・」 ゆっくりとは思えない挨拶と媚びるような笑顔。 恐怖に脅える顔が透けて見える。 本心から発した言葉ではないのだろう。 だが、俺にはそんなことどうでもいい。 都会に住むゆっくりの典型的な例なので、撮影に協力してもらおう。 俺はズカズカと、まりさの方へ歩いて行く。 「ゆっ!ゆっくりこないでね!」 そう言いつつ、逃げようとはしない。 何かあるのだ。 ゆっくりが身を挺して守るものなど、赤子くらいなもの。 まりさの頭上から奥を除くと、ダンボールの中にソフトボールほどの子ゆっくりが4匹ほど眠っていた。 アタリを引いたようだ。 「やあ、まりさ。ちょっとお話があるんだ」 俺はまりさに撮影の話をした。 都会のカラスと同じで、都会のゆっくりは田舎のゆっくりに比べて知能が高いことが多い。 このまりさも普通のゆっくりよりも若干賢かった。 説明はすぐに終わり、撮影の許可をいただくことができた。 「じゃあ、これからまりさの生活を見せてもらうよ。よろしくね」 「ゆっくりりかいしたよ!」 許可してもらったのは、まりさの行動をすぐ後ろで撮影させてもらうこと。 そして、まりさはカメラを意識しないで普段通りに生活してもらうこと。 報酬としてエサをやるといったら、すぐに了解してくれた。 ただ、野良ゆっくりにエサをやるのはマナー違反である。 なので撮影が終了したら黙って帰ろうと思う。 「そうだな、それじゃちょっとまりさの体を見せてくれるかな」 「ゆっ。ゆっくりながめてね」 狭い場所なので、くるくる回って撮影ができなかった。 しょうがないので、まりさを近くにあった板に乗せて回転させる。 本当に、汚いまりさだった。 最初に感じたのは、顔の皮の色だ。 全体的に茶色に染まり、擦り傷がアチコチに見られる。 試しに触ってみると、油汚れのようなネットリとした不気味な粘着を感じた。 底部は硬かった。 連日、コンクリートを這っているため、タコのようになっているのだろうか。 髪の毛はボサボサで、ところどころにゴミや木の枝などが巻き込まれていた。 後頭部の髪には、噛んだガムがねっちょりとこびり付いていた。 しかもひとつだけでなく、いくつもついていたため、後頭部はガムまみれ。 「にんげんさんがむりやりつけたんだよぉ・・・!ま、まりざはっ!まりざはやべでっでいっだのにぃいぃぃ」 と、泣きだす場面もあった。 帽子も変な形をしていた。 トンガリ帽子のはずなのに、べっこりと潰れてプリンのような形をしていた。 また、帽子に巻かれているはずの白いリボンはなかった。 まりさ曰く、ガムをつけてくれたお兄さんに目の前で焼かれたらしい。 あらかた撮影したので、まりさを板からおろした。 「じゃあ俺は撮影してるから、まりさは普段通りに過ごしてくれよ」 「ゆっくりするよ」 まりさは子供達の眠るダンボールに向かっていった。 俺もすぐに後を追う。 「おちびちゃんたち・・・きょうもゆっくりできるといいね」 子ゆっくりは笑顔で眠っていた。 体は親同様、汚く着色されているのでお世辞にも可愛いとは言えないが。 まりさ種が3匹と、れいむ種が1匹。 よくある組み合わせだ。 「もう1匹、親のゆっくり霊夢はどこにいるんだ?」 「ゆぐっ・・・!」 今にも泣きだしそうな顔。 それをグッとこらえる仕草をしながらまりさは言った。 「れ、れいむはっ!まりざのぜいでじんじゃっだんだよ・・・・」 「ほー。それはなぜ?」 「へんなおにいざんが・・・!まりざのれいむをぉお!!!ゆぅうぅぅぅぅうっ!!!」 そのまま、まりさは泣き崩れてしまった。 勝手な推測だが、きっと悪い人間にれいむは殺されたのだろう。 まりさを逃がすために囮になったのか、それとも単にグズだったのかは分からないが。 「ゆっくり虐待かー・・・」 以前、youtubeにゆっくりアリスの虐待画像をアップした人間がいた。 グチャボロになりながらも、必死で生きようとするありすの姿が記憶に新しい。 アップロード者は、そのまま動物愛護法でしょっぴかれてしまったのだが。 「ま、ドキュメンタリーなら大丈夫だろ」 俺はカメラを子ゆっくりに向け、その薄汚い笑顔をアップで撮った。 日が高く上った頃、ようやく子ゆっくりが目を覚ました。 「ゆっくりさせてね!」 「れいむはおにいさんとゆっくりしたいな」 「まりさ、すごくゆっくりしてるよ」 「すりすりしてあげるね!」 と、俺の存在に気がつくとすぐに話しかけてきた。 意外と人懐っこい・・・というよりは媚びるのが得意のようだ。 1匹の子まりさがすりすりをして媚を売ろうとしてきたが、汚い皮ですりすりされても嬉しくない。 ウニクロで買った俺の服が汚れてしまう。 早々に親まりさに説明をさせた。 「ゆぅー・・・」 「れいむはひとりでゆっくりするよ」 「ゆっくり・・・」 「すりすりしてあげないよ」 すぐにエサをくれない人間だと理解したようで、俺への関心を失ったらしい。 単純で良い。 「ゆっ!それじゃあみんな。かりにいくよ」 「ゆー!」 「ゆっくりするよ!」 「ゆっくりしたい!」 「がんばってゆっくりしようね!」 親まりさの掛け声に、4匹の子ゆっくりが嬉しそうに応える。 狩り。 いったい、都会のど真ん中でどのようなことをするのだろうか。 ピョンピョコと跳ねる5匹の後を、カメラ片手に俺は足を進めた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 やってきたのは、すぐ手前にあったコンビニ。 狩りではなく乞食であった。 コンビニの外に置いてあるゴミ箱に隠れて、店に入る客に声かけをするだけだ。 みじめである。 乞食慣れしているのか、声も大きい。 「おじさん!まりさとかわいいおちびちゃんたちに、ゆっくりできるものをちょうだいね!」 コンビニから出てきた腰を曲げた老人に、親まりさは声をかけた。 「おじいさん!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしたいよ!おいしいごはんをちょうだいね!」 「ごはんたべたいよ!おねがいだよ!」 「れいむ、おじさんとごはんたべたいよ!」 「まりさにはいらないから、こどもたちだけでもゆっくりさせてね!」 親まりさが最後にそう言うと、子ゆっくり達は親まりさにすり寄り、「おかあさんもいっしょにゆっくりしたいよぉー」などと言うのであった。 演技派のようだ。 その老人は5匹に近寄り、とても外見からは想像もできないような回し蹴りを親まりさに放った。 「ゆぼげっへぇっ!!」 駐車場を転がっていく親まりさ。 老人は、それを呆然と見ている子ゆっくりにツバを吐きつけると、そのまま帰って行った。 「なんというモラルの低下。高齢化した結果がこれだよ!」 少し遠くから、俺はその様子を撮影していた。 まりさの帽子にはマイクが仕込んであるので音声もバッチリだ。 親まりさは派手な転がり方のワリに、意外とすんなり立ち上がった。 それどころか、レンズ越しに映る親まりさの体に特にキズは見当たらなかった。 その後も親まりさと子ゆっくりは、コンビニ前で乞食を続けていた。 お昼頃になると、その存在に気がついた店員に箒で追い出されてしまったが。 「ゆぅ・・・このままじゃゆっくりできないよぉ・・・」 「おなかずいだよぉぉお!!!ゆっぐりじだいのぉおお!!!」 「れいむはやくゆっくりしたい・・」 「もううごけないよおおお!!!」 「まりざおながずいだのにぃぃい!!!」 繁華街の中心を、貧相な一家が彷徨っている。 道行く人々は、視界に入らないよう歩いているようだ。 ずりずりと這う親ゆっくりが、あるものに気がついた。 「ゆ!これはゆっくりできるものだよ!!」 なんだろうと思っていると、親まりさは地面に顔を近づけた。 「これはあまあまだよ!ゆっくりできるんだよ!」 その笑顔といったら。 あれほど明るい笑顔を、あんなもので・・・。 「うわぁ・・・」 思わず声がこぼれた。 「ゆゅー?それなあに?」 「ゆっくりできる?」 「はやくたべたいよ!」 「ゆっくりちょうだいね!」 それは、道にこびりついていたガム。 誰かが吐き捨てたであろうガム。 多少硬くなっているようだが、親まりさの髪についているものほど硬化してはいないようだ。 親まりさはそれをくわえ、必死でひっぱっている。 哀れすぎて何も言えない。 「ゆゆっ!!とれたよ!!」 勢いあまって後ろに倒れこんだ親まりさ。 その口には、不衛生極まりないガムが。 「それじゃあおちびちゃんたち、ゆっくりたべてね!」 周囲の冷たい視線など、まるで無いかのように微笑む。 ただ、人の目があるのでおいそれとゆっくりを殺すワケにもいかない。 もしや、それを理解しているのだろうか。 「ゆー!あまあましあわせー!」 最初に食べさせてもらったのは、子れいむだった。 正直、見てて凄く気分が悪い。 誰が噛んだかも分らんガムを、よくもまああんなに嬉しそうに食べられるものだ。 「ゆ!まりさもたべたい!」 「れいむばっかりずるいよ!」 「まりさも!まりさも!」 「れいむ、そろそろこっちのおちびちゃんにもあげてね」 子れいむは聞き分けの良い子供だったらしく、ペッとガムを吐き出した。 すぐに別の子まりさがガムを口に含む。 「ゆー!まりさもあまあまー・・・・・・?」 顔にハテナマークをつける子まりさ。 「ぜんぜんあまぐないよぉおおおっ!!どぼじでなのぉおお!!?」 そりゃそうだ。 ただでさえ誰かが噛んで甘さが無くなっているのだ。 子れいむが噛んだことで、もはやただのグニュグニュしたものになってしまっているだろう。 「れいむがまりざのあまあまをどっだんだぁあああっ!!」 怒りの矛先は子れいむへ向いた。 猛烈な勢いで、子れいむに跳ね寄る子まりさ。 しかし、それは親まりさによって防がれてしまう。 「れいむになにをずるのぉおお!?だいぜづなしまいでじょおぉお!!?」 ボインっと膨れ、子まりさはそのまま吹き飛ばされてしまった。 ケガはしていないようだが、親まりさに弾かれたことが悔しいのか悲しいのか、起きあがろうとはしなかった。 「まりざもおぉお!!まいじゃもあまあまたべぢゃいのにぃいいっ!!!おぎゃーざんのばかぁああっ!!!」 子まりさの醜い声が繁華街に響き渡る。 「うるせーぞ糞饅頭が!」 すると、目の前の店から一人の男が現れた。 どうやら店員らしい。 「ゆゆ!みんなにげるよ!!おちびちゃんもゆっくりにげてね!」 おちびちゃん、泣き叫んでいた子まりさを呼ぶ親まりさ。 だが親の心なんとやら、子まりさはそれを拒む。 「や゙ぢゃよぉお゙ぉ゙お!!まりざのあ゙まあま゙っ!!ばりじゃのあ゙ま゙あま゙がえじでよぉぉぉおっ!!!」 「ゆぅうううっ!!!みんな、あのこはゆっくりできないこだよ!!いそいでにげるよ!!」 子まりさがあまあまを諦めるよりも、親まりさの見捨てる決断のほうが早かった。 親まりさと子ゆっくり3匹は、瞬く間に逃げて行った。 「ゆっ・・・!?おかあしゃ・・・!?ど、どぼじで・・・!」 茫然自失。 涙も止まり、声も止む。 それに満足したのか、店の男は戻って行った。 残されたのは、親に見捨てられた子まりさ1匹。 もう死ぬしかないだろう。 俺もそれに見切りをつけ、逃げた4匹を追った。 「あ゙ぁぁあ゙ああぁ゙ぁああぁ゙ああぁ゙ああぁぁぁ!!!ばりざのごどぼがあぁああっ!!!」 小さな公園で、親まりさがボロボロと泣き崩れていた。 「おかあさん、ゆっくりしてね・・・?」 「そうだよ、まりさたちがいるよ!いっしょにゆっくりしようね」 「あのこのぶんもゆっくりしようね」 それを3匹の子ゆっくりが慰めていた。 「おかあさんにすりすりするよ!」 「すりすりでゆっくりしてね!」 「すーりすーり♪」 そして始まるすりすり。 目糞に鼻糞を擦り付けているようなおぞましい光景だ。 「ゆっ・・・!みんな、いっしょにゆっくりしようね!あのこのぶんもゆっくりしようね!」 時計の針が午後3時も回った頃、ようやく親まりさは立ち直った。 「きょうはおうちにあるごはんでがまんしようね!かりはあしたやろうね!」 今日の狩りは終了したらしい。 何も得るものがない狩り。 逆に子まりさがいなくなって、何が狩りなのか。 「狩られ」だと思う。 そんなことを考えているうちに、4匹は帰路についていた。 「どぼじでごはんがないのぉぉぉおおっ!!!?」 帰って来た4匹を待っていたのは、残酷な現実だった。 「ごごにごはんがあっだのにぃいいい!!」 ここ、といって覗いているのは空のビール瓶のケース。 もともと黄色い色のケースだったようだが、色褪せてクリーム色になっていた。 キリンのビールケースだ。 子ゆっくり達は、すでに腹が減って喋る気力もないらしい。 マイクは親まりさの嘆きだけを記録していた。 「ゆっ・・・!でもおにいさんがごはんをくれるよ!きょうはゆっくりできるはずだね!」 それに気がつき、声が喜色に染まった。 体をふりふりさせながら、俺がエサを持って帰ってくるのを待っている。 「よし、今日の取材はここまでにするか」 youtubeにアップロードするのが目的なので、あまり長々としたものにするつもりはない。 せいぜい10分、長くても15分に収めるつもりだ。 なので、これ以上この一家の相手をするつもりはなかった。 「あとは編集して・・・、あれして・・・これして・・・・」 ぶつぶつと呟きながら、俺は親まりさに近づいた。 「よ、まりさ」 「おにいさん!やくそくのごはんをちょうだいね!」 「ごはんちょうだいね!」 「れいむにごはんちょうだい!」 「まりさにおいしいごはんをちょうだいね!!」 俺の姿を見ると、子ゆっくり達も気力を振り絞って声をかけてきた。 だが、相手をするつもりはない。 「マイク返してね」 帽子に仕込んだマイクを取り返す。 そして、そのまま背を向ける。 「ごっ・・・!?ごはんはっ!?まりさたちにごはん!」 なんだか生ゴミが騒いでいるが、気にしない。 蹴飛ばすのも嫌だったので、俺は全力疾走で駅まで駆け抜けた。 数日後。 俺はまた繁華街にやってきた。 アップロードした動画は、大好評だった。 アメリカをメインターゲットにしたつもりだが、世界中でウケたらしい。 英語、フランス語、スペイン語、中国語、ハングル、ロシア語で書かれたメールが山のように届いた。 英語しか読めなかったが。 そんな感想で目立ったのが、あの家族はあの後どうなったのか、という質問だ。 そんなワケで俺は再度、繁華街、あの建物と建物の間を見にやってきた。 「いるかな・・・?」 そこには、3匹のゆっくりの変わり果てた姿があった。 親まりさが1匹、子まりさが2匹。 子れいむはいなかった。 この数日の間に死んだか、逃げたか、食べられたかしたのだろう。どうでもいいことだ。 これは番外編としてブログに載せるつもりなので、今日はデジカメで写真撮影をする。 親まりさはゲッソリと痩せ細り、アンコが透けて見えそうだ。 表情は暗く、全てに絶望しながら死んだかのよう。 対して、子まりさ2匹は比較的まともな顔だった。 一体、この家族がどうやって死んだのか。 それは誰にも分らないだろう。 東京では、今日も数えきれないほどのゆっくりがゆっくりを求めて死んでいく。 誰にも存在を気づかれることなく消えていくモノもあるだろう。 この家族は少しはマシだ。 俺のアフィ収入になるのだから。 俺は次の企画を考えていた。 このSSに感想を付ける
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※こんな作品なんて投棄所送りだ ある日、群れの中のゆっくりぱちゅりーが言いました。 「ドスなんてバカだわ。バカでマヌケでやくびょうがみだわ!」 すると、すぐにドスの側近のゆっくりまりさ達に捕まりました。 何日も食事をさせてもらえなかったぱちゅりーはとうとう自分の考えを曲げ謝罪しました。 「ごめんなざい、ぱちゅりーがまぢがっでまじだぁ!!」 しかし、まりさ達はぱちゅりーを許さなかった しばらくして、ドスが悪い事をしたゆっくり達の檻を視察に訪れ、 ぱちゅりーを見つけると、どんな悪い事をしたのかとまりさ達に尋ねた。 「このぱちゅりーはドスのひみつをバラすゆっくりできないぱちゅりーなんだよ」 まりさ達の言葉にドスは感心し、秘密を漏らす奴はどんどん捕まえるように頼んだ。 しかし、ぱちゅりーはこう反論した。 「ぱちゅりーのいったことはみんながしってることだよ!!」 すると、まりさ達はこう答えた。 「ドスはしらないでしょ!!」 ゆっくりきもんげの一家が渡り切ると、ゆっくりうどんげに成れる丸太を見つけた。 丸太は川にかかっており、落ちたら一大事だったが、 お父さん、お母さん、お姉さんはどんどん丸太を渡り切り、可愛いうどんげになった。 ただ一匹、末の妹が丸太から落ちそうになった。妹は何度も助けを求めたが、 「キモいきもんげなんかたすけないよ。ゲラゲラゲラ」 と、うどんげ達は答えた。 ゆっくりとピザの違い。 ピザはオーブンで焼いても騒がない。 長としてのドスまりさのマニュアル (1)ドスまりさを信じよ (2)性能に疑問が生じた時は(1)を読め ドスまりさに管理された群れのゆっくりまりさが虐待お兄さんに捕まったれいむに会いに来て尋ねた。 「そっちはゆっくりできる?」 捕まったれいむは何を言っているのか、と少しムッとして答えた。 「あといっぽでじごくだよ!!」 群れから来たまりさは答えた。 「まりさたちのほうがいっぽすすんでるね!!」 罪を犯したゆっくり達が閻魔の裁きを待っていた。 ゆっくりれいむ、自分は働かずにいたが、子の面倒はよく見た。天国に行け。 ゆっくりまりさ、乱暴者であったが、家族の為によく働いた。天国に行け。 ゆっくりぱちゅりー、他のモノを見下していたが、知恵で皆を救った。天国に行け。 ゆっくりありす、周りの者と打ち解けずにいたが、伴侶への愛は強かった。天国に行け。 おい、ゆっくりらん、お前はちぇんを残しているだろ。現世に帰れ。 ゆっくりらんは泣いて、閻魔の元から去った。 別の日、罪を犯したゆっくり達が閻魔の裁きを待っていた。 ゆっくりれいむ、子の世話はしたようだが、働かずに迷惑をかけた。地獄に行け。 ゆっくりまりさ、狩りは上手いようだが、他のモノに乱暴をした。地獄に行け。 ゆっくりぱちゅりー、知恵は優れていたが、周りのモノをバカだと嘲笑った。地獄に行け。 ゆっくりありす、伴侶への愛は強かったが、レイプして無理やり伴侶にした。地獄に行け。 おい、ゆっくりらん、お前はゆかりを残しているだろ。現世に帰れ。 ゆっくりらんは泣いて、閻魔の元から去った。 ある日、ペットショップから貴重なゆっくりけーねが逃げ出した。 ペットショップはけーねに懸賞金をかけました。 愛でお兄さんが人を集め、あらゆる場所を捜索しましたが、見つかりませんでした。 それを見た虐待お兄さんは森に入り、30分ほどで森から出てきました。 手にはボロボロになったゆっくりまりさが一匹。すると、まりさがこう言いました。 「ゆっくりけーねだよ」 大きなスィーに乗ったゆっくり達は、素敵なゆっくりプレイスに向かって発進したが、 途中、不慮の事故にあい。スィーは谷底深くへと落ちていった。 それを見ていた虐待お兄さんが突然泣き出した。 友人は大嫌いなゆっくりが死んだのにどうして泣くんだいと質問すると、 「俺がいない場所があいつらにとって一番素敵なゆっくりプレイスなんだ」 まりさが三匹いた。 一匹目のまりさは言いました。 「まりさはおさなんだよ。むれをまもるためならいのちをおしまないよ!!」 二匹目のまりさは言いました。 「まりさはつよいんだよ。それをみせつけるのにいのちはおしまないよ!!」 三匹目のまりさが言いました。 「まりさはたいせつなんだよ。それをまもるためにほかのいのちはおしまないよ!!」 ゆっくりありすは死に瀕していた。 虐待お兄さんに追い詰められ、ナイフで頬を数か所刺され、どんどんとクリームが漏れ出す。 しかし、虐待お兄さんの視線は傷や恐怖するありすの顔でもなく、人間の腕ほどはあるぺにぺにだった。 「あ、ありすだってこわいときはちぢまるのよ、いなかものめ、わらうがいいわ!!」 男はまだ赤ちゃんのゆっくりれいむに様々な芸を教え込み、 これで見世物でも始めようと思った。 手始めに、街の喫茶店に行き、コーヒーとクッキーを注文すると、 主人にここで客を取っていいか尋ねる為、ゆっくりれいむを取り出した。 「ちょっといいかね、主人」 「あ、お客さん、すいませんね。よく入り込むんですよ」 主人はゆっくりれいむを叩き潰した。 赤ちゃんれいむは悲しみに暮れていた。それを見かけたゆっくりありすが声をかける。 「どうしたの?」 「おかーしゃんがしんじゃって」 「かわいそうに、ゆっくりできるの?」 「うん、おかーしゃんはたくさんのごはんをのこしてくれたの」 次の月、また赤ちゃんれいむが悲しみに暮れていた。またありすが声をかける。 「どうしたの?」 「おとーしゃんがしんじゃって」 「かわいそうに、ゆっくりできるの?」 「うん、おとーしゃんはキレーなおうちをのこしてくれたの」 また次の月、またまた赤ちゃんれいむは悲しみに暮れていた。またまたありすが声をかける。 「どうしたの?」 「おねーしゃんがしんじゃって」 「かわいそうに、ゆっくりできるの?」 「うん、おねーしゃんはゆっくりできるおかざりをのこしてくれたの」 ある日、ありすは赤ちゃんれいむの家を訪ねてみた。 群れのみんなに聞いたが、今月はれいむの家族に死んだゆっくりはいないらしい。 悲しみを和らげるためにも、散歩に誘おうとやってきたのだ。 しかし、赤ちゃんれいむは悲しみに暮れていた。 「どうしたの?」 「こんげつはまだだれもしなないの」 ある日、イタズラ好きのゆっくりまりさはとうとうお母さんれいむを怒らせた。 「ゆっくりできないわるいこだね!!」 大きな声で叱る母れいむはこう続けた。 「おとーさんだって、たいどがよかったからドスになんかいもゆるしてもらえたんだよ!!」 ドスまりさは食料の確保に躍起になっていた。 「みんな、もっとはたらいてね!!」 しかし、側近のぱちゅりーはドスにこう言った。 「そんなことしたら、みんなしんじゃうわ!!」 群れのみんなはドスを支持してこう言った。 「あまあまがふえるね!!」 よだれを垂らし、みすぼらしい格好をしたゆっくりまりさが1匹。 「ゆっ!あれはおさこうほのまりさだわ」 「むきゅー・・・あんなのぜんぜんおさのうつわじゃないわ」 ぱちゅりーの言葉にありすは反論した。 「こうほになら、あのれいむだってなれるのよ」 ある日、胴つきのゆっくりらん、いく、てんこが飛行機に乗っていたが、 飛行機のエンジンが不調になり、運転していたお兄さんは早々とパラシュートで脱出してしまった。 「ら、らんはちぇんのためにしねないよ。らんはぜったいたすからなきゃいけないんだよ!!」 そう言って、らんはパラシュートをつけて飛び出してしまった。 「うわぁあああ、総領娘さまぁ、いくのことはいいですから、総領娘さまがパラシュートをおつかいくださいぃいい!!」 てんこも悲しそうに先ほど降りて行ったらんを見送る。 「あのらんめぇ!!総領娘さまぁ、ゆっくりせずにおにげくださいぃいい!!!」 「・・・てんこのおかしがはいったリュックをらんはぬすんでいきました。はじしらずならんがいた!!」 二人はパラシュートで脱出した。 ドスまりさと人里の長が神様の所にやってきました。 「神様、あと何年すれば人間は幸福になれますか?」 長の質問に神様は答えた。 「あなたの任期中には無理でしょう」 「かみさま、あとどれぐらいゆっくりすれば、ゆっくりはしあわせになれますか?」 ドスまりさの質問に神様は答えた。 「わたしの任期中には無理でしょう」 すっきりの後、 ゆっくりまりさの5%はそっぽを向きそのまま眠てしまった。 25%はベッドから起きてご飯はむしゃむしゃし始めた。 残りの70%はれいむのもとに返っていった ありす、まりさ、れいむが集まり、それぞれ出ているSSについて文句を言っていた。 「いじめ系SSなんてちっともゆっくりできないわ」 ありすがプンプン怒ると、まりさは少しバカにしたようにこう言った。 「まりさがでてるジャンルものなんて人間さんよりずっと強いお姉さんが出るんだよ」 二匹をバカにするように、れいむはこう言った。 「ドロワ系なんて、ゆっくりが主役じゃないんだよ・・・」 偉大なる群れの長、ドスまりさは幼少の頃すでに今と同等の知能を身につけていた Qゆっくりまりさと神の違いは何か? A神は自分の事をゆっくりまりさだと思った事はない。 群れの長であるドスは群れの食料備蓄に関する仲間達の不安を知りたいと考えて、大掛かりな意識調査を命じた。 会議で、その結果がぱちゅりーから報告された。 「この調査によってわが群れは大きく二つのグループに分かれることが判明しましたわ。楽観派と悲観派、楽観派はいずれはうんうんを食べることになるだろうと予想しています」 大統領はびっくりして言葉を挟んだ。 「それが楽観派?すると悲観派は・・・」 「むきゅー・・・悲観派は群れ全体にはうんうんが行き渡らないだろうと心配してるわ」 ゆっくりまりさとゆっくりありすがある養鶏場を訪れた時 案内人「ここの雄鶏は日に50回もセックス、つまりすっきりをします」 ありす「まあ・・・それじゃそのことをまりさにいってあげてね」 案内人「・・・という事でしたが。」 まりさ「そのおすどりさんがすっきりをするときはいつもおなじあいてなの?」 案内人「いいえ、全部別々の雌鳥が相手ですよ。」 まりさ「じゃあ、そのことをありすにいってやってめ!!」 ゆっくりれいむの一家の巣が落石により入り口が塞がれてしまった。 何匹もの子ども達が死んだ凄惨な事故だったが、 群れの仲間の必死の救助活動で数匹の子れいむが助けられた。 2ヶ月も巣に閉じ込められていたというのに、子れいむ達はやつれた様子もなく、 元気に外を走り回った。 ゆっくりまりさ達の住む場所は何もない荒野だった。 ある日、神様が何か望みはないかとやってきてた。 まりさ達はいろんな恵みを挙げていった。 たくさんの食料や過ごしやすい気候、天敵のいない森に快適な巣。 最後に優秀な指導者という前に、神様は消えてしまった。 それ以来、まりさ達の恵みは全てドスまりさが独り占めしている。 by118
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冬の足音が聞こえてきた秋の昼時、枯れ木の根元に出来た穴から小さな影が4つ現れました。 「きょうはなにちてあしょぼーか!」 「おいかけっこ!」 「ゆ~それじゃゆっくちできないよ!」 「じゃあかくれんぼ!」 仲良く遊び始めたのはゆっくりれいむと呼ばれる最近になってあらわれたナマモノです。 ゆっくりれいむは紅いリボンと黒髪がトレードマークのもっとも多くいるゆっくりでした。 遊んでいるれいむたちは人間で言う子供で大きさは野球ボールぐらいでした。 まだ生まれて1年も経ってない4匹は仲良くかくれんぼを始めます。 最初ということで一番大きいおねーちゃんれいむがオニになりました。 残りの3匹は思い思いに隠れ場所を探しに行きます。 「も~い~かい!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ~・・・いーち!にー!さーん!だー!らーぶ!・・・」 「ゆゆっ、ここはれいむがかくれちぇるよ!べつのところにいってね!」 「ゆ!わかっちゃよ!」 「れいみゅはこっちにいくよ!」 「じゃあれーむはむこうにいくね!」 一匹のれいむは石の影にかくれました。 もう一匹は枯葉の下に。 「もーいーかい!」 「ゆっくりできたよ!」 「じゃあいくよー!」 石に隠れたれいむも枯葉にかくれたれいむはすぐに見つかってしまいます。 「次はれいみゅのばんだよ!」 「ゆゆ・・・まだれぃむがのこっちぇるよ!」 「みゅ~さっさとみちゅけるよ!」 しかし、残り一匹はなかなか見つかりません。 それもそのはず、最後の一匹はかくれる場所を探して今も移動していたのです。 「ゆ~、なかなかみちゅからない・・・」 この子れいむは遊びということも忘れてゆっくり出来そうな場所を探していました。 やがて、今まで来たこともない遠い場所に来てしまいます。 「ゆー・・・ゆっ!ここどきょ!」 れいむは知らない場所でいることに不安を感じます。 「おねーちゃああああ!れぃむはここだよおおおおおお!」 しかし、叫んでも叫んでも返事は返ってきません。 姉れいむとは子れいむが思っていたよりも離れていました。 子れいむはもときた道を思い出して戻ろうとします。 しかし、隠れ場所を探しながら来たのでどこを通ったか覚えていませんでした。 もう少し大きくなっていれば巣に戻るための方法を親れいむから教えてもらっていたはずでした。 もう少ししたら、きっとお姉ちゃん達が来てくれる。 そう信じて子れいむは木の近くで姉達をじっと待つことにしました。 子れいむが木に寄り添うようにゆっくりし始めると、美味しそうな匂いがどこからか漂ってきます。 「ゆゆ!おいしそうなにおひ!」 子れいむは匂いに引き寄せられます。 匂いの元はある木の根元に生えているたくさんのキノコでした。 「ゆ~!おいしそうなきにょこ!」 子れいむはキノコに飛び込んでいきました。 姉れいむたちは探しても探しても見つからないれぃむを心配になり、巣にいた母れいむを呼びに戻りました。 子の訴えを聞いた母れいむはすぐに巣の周りを探し始めました。 姉れいむ達は危ないからと巣でお留守番です。 母れいむは危険そうな場所を一つずつ調べていきます。 しかし、れぃむはどこにもいません。 母れいむはあきらめずに探し回りました。 やがて、普段は来ない森の奥に足を踏み入れます。 「れいむのかわいいれぃむー!どこにいるのー!」 母れいむは懸命に叫びました。 「ゆっ?」 子れいむがお腹を膨らませてゆっくりしていたころ、どこからか母親の声が聞こえました。 「おかーしゃああああああああん!」 先ほどまでキノコを食べることに夢中で自分が迷っていることを忘れていたれぃむは母親の声で自分のおかれている状況を思い出しました。 そして、母親に見つけてもらおうと声を張り上げます。 先ほど食べたキノコのおかげで大分大きな声が出せました。 大きな声は森に響き、とうとう母親の耳に入ります。 「ゆゆ!れぃむのこえだよ!」 「おかああさああああぁぁぁぁあぁん・・・」 「いまいくよ!そこでゆっくりしててね!」 母れいむは子れいむの声に耳を澄まして位置を探ります。 森の中では声が反射し場所がわかりにくかったですが、子への愛なのか母れいむは迷わずに足を進めていきました。 やがて、一つの木の下で泣き叫んでいる子れいむを見つけました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていっちぇね!・・・おかーしゃん!」 「だいじょうぶだった?けがしてない?」 「れぃむはごたいまんぞくだよ!」 母れいむは子れいむの声を聞き、自分の目で確かめて子の無事を確認します。 「だいじょうぶそうだね!」 「おかーしゃんごわがっだよおおおおおおおお!」 「もうひとりでこんなとおくまできちゃだめだよ!」 「ゆぅうううう、おかーしゃんごめんなさい・・・」 「わかればいいよ!もうくらくなるからはやくかえろうね!」 「ゆっ!そうだ!おかーしゃん!れいむきのこみちゅけたよ!」 「ゆゆっ!きのこ!?」 「しょーだよ!このうらにいっぱいはえちぇるよ!」 子れいむはそういって木の裏へと跳ねていきます。母れいむは道に迷わないように確認してから子れいむの後を追いました。 「このさきにきのこあるよ!!」 「ゆっゆ!・・・しゅご~い!」 「いっぱいあるからおねーちゃんたちにもあげりぇるよ!」 「そうだね!ぜんぶもってかえろうね!」 いそいそと口にキノコを含んでいく母れいむ。 子れいむはどんどん口に入っていくキノコを見て目をきらきらと輝かせました。 「おかーしゃんのいぶくろはうちゅうだね!」 「ゆふん!」 子れいむの声援に答えるように母れいむはキノコを口に含みます。 やがていっぱいになると母れいむは子れいむと共に巣に戻りました。 巣では帰りの遅い母れいむを残った子れいむが心配していました。 「おかーしゃんおかえりなさい!」 「ゆゆっ!おかーしゃんおおきくなっちぇる!」 子れいむが驚いていると母れいむは口から大量のキノコを吐き出しました。 「ゆゆゆ!おいしそう!」 「おかーしゃんどうしたの!」 「れぃむがみちゅけたんだよ!」 そういって母れいむの腋から現れた妹れいむに子供達はさらに驚きます。 「さすがれーむのいもうとだね!」 「でもしんぱいしたんだよ!」 「そうだよ!おかーさんがいないのにとおくにいかないでね!」 「うん、もうひちょりでそとにはいかにゃいよ!」 「れーむたちもきをつけるよ!」 母親と一番上の姉れいむに注意され、もう二度と勝手に遠くに行かないと子れいむ達は誓いました。 そんな子供達への説教が終わると、眼の前のキノコに話が移ります。 「これならしばらくだいじょうぶだね!」 「おかーしゃんがとりにいかなくてもへいきだね!」 「ゆ!そうだね!しばらくは巣でいっしょにゆっくりできるよ!」 「やっちゃね!」 「れぃむといっちょにいようね!」 突然降って湧いた幸運にれいむ達はうれしくてたまりませんでした。 それからしばらく、このれいむ家族は一度も巣から出ることなく、巣の中でゆっくりとしていました。 食べ物が無くなったらまたキノコを採りに行けば良い。母れいむは久しぶりにゆっくり出来たので上機嫌です。 子供達もそんな母親の様子を見てうれしくなり、母親に擦り寄って遊びました。 れいむ家族はずっとゆっくり出来ると思っていました。 しかし、四季の変わり目はもうすぐそこまで来ています。 巣からあまり出なくなったれいむ家族にはそれが分かりませんでした。 「まったく、れいむたちはなにをやってるのかしら!」 風が冷たく感じ始めたころ、一匹のゆっくりありすがれいむの巣に向かっていました。 このゆっくりありすは母れいむの友達で冬篭りの準備が出来てもやってこない母れいむに痺れを切らしてやってきたのでした。 巣の前までやってくるとありすは中にいるであろうれいむ達に声をかけます。 「ゆっくりしていってね!」 しかし、待てども待てども返事が返ってきません。 このまま待っていても埒が明かないので、ありすは巣に入りました。 中ではれいむ達がキノコを食べてとてもゆっくりしていました。 「ゆっ!おいしそうなきのこね!」 「ゆゆっ!ありす!」 いきなり現れたありすに子供達は母れいむの後ろにかくれました。 「こわがらなくていいよ!このありすはれいむのともだちだよ!」 「そうよ!さっきからよんだのにへんじがなかったわ!だからとかいてきじゃないけどあがらせてもらったわ!」 「ゆ~ありすごめんね!」 ありすの声に気付かずゆっくりしていたれいむはありすに申し訳無さそうに謝りました。 ありすはそれで少しだけ悪かった機嫌を直して笑顔を見せます。 「ありすはきにしてないわよ!・・・ってそうじゃないわ!」 「ゆゆっ、どうしたのありす!」 「れいむたちがふゆごもりにこないからよびにきたのよ!」 「ふゆごもり?」 聞いたことのない単語に子れいむが不思議がります。 母れいむは子れいむに教えようとしましたが、時間がないのかありすが急かしました。 「いまはじかんがないわ!すぐにじゅんびしてゆっくりすぽっとにむかってね!」 「ゆ!わかったよ!」 「じゃあありすはもういくわ!れいむもゆっくりしないでね!」 ありすは言いたいことを言うとすぐにれいむの巣を離れました。 れいむ達が住む地域は冬にはかなり冷え込み、ゆっくり家族だけでは越冬できませんでした。 なので、ゆっくりスポットと呼ばれる大きな洞窟などに集まって身を寄せ合って眠り春を待つようになっていました。 ゆっくりスポットにはゆっくり制限があり、主にぱちゅりーの判断で入れるゆっくりの数を制限していました。 ありすが急いでいたのはゆっくり制限で入れなくなってしまうのを恐れたからです。 母れいむも一度ゆっくりスポットで越冬を経験していたのですぐに準備を始めようとします。 「おかーしゃんふゆごもりってなーに?」 「ゆーっとね、もうすぐここじゃゆっくりできなくなるんだよ」 「ゆゆゆゆ!?」 「だから、みんなのいるばしょにあつまらないといけないの!」 「そーなのかー!」 「れーむたちもじゅんびしてね!すぐここをでるよ!」 母れいむはすぐにゆっくりスポットに行く準備を始めました。 母れいむは子れいむもすぐに準備してくれると思っていました。 なので、れぃむが反対したのに驚きました。 「やだ!れぃむはまだうごきたきゅないよ!」 「どおおおしてええええ!はやくうごかないとゆっくりできなくなるよ!」 「でもきのこしゃんまだいっぱいあるよ!」 「ゆゆゆ・・・」 冬篭りには食料は必要ありません。 だから巣に残っている食料はすべて捨てる必要がありました。 れぃむは自分が見つけた食べ物を残していくことが不満だったのです。 「まだあっちゃかいよ!きのこたべてからでもまにあうよ!」 「ゆゆゆ・・・」 れぃむの発言に母れいむは困ってしまいます。 これを見た他の子れいむは相談してれぃむの方に回ります。 この子れいむ達もキノコに不思議な魅力を感じていたのでした。 「きのこちゃべちぇからいこうよ!」 「そうだよ!」 「もっちょゆっくりしちゃいよ!」 「ゆっくち!ゆっくちぇ!ゆっくりょ!」 母れいむは子れいむの反論に去年の冬篭りの記憶を思い出そうとしました。 母れいむが入ったゆっくりスポットはまだ時期が早かったので洞窟の中はすかすかでした。 母れいむは仲間が集まる間スポットの周りの食べ物を食べたり、他のゆっくりと話したりして冬眠まで過ごしたのを思い出します。 今回もまだまだ空きがあるだろう。母れいむはそう結論付けました。 「わかったよ!きのこがなくなるまでここでゆっくりしようね!」 「おかーしゃんだいちゅきー!」 「ゆっくりしようね!」 母れいむが賛成してくれて子供達は大喜びです。 そんな姿を見て母れいむも反対しなければ良かったと思いました。 こうして、ありすの忠告も無視して母れいむは巣でゆっくりし続けました。 今は友達よりも子供達のほうが大事でした。 母れいむはしばらく巣から出てないことも忘れて、巣で子供達と仲良くゆっくりとしていました。 「ゆ~、とうとうさいごのきのこだね!」 「これをたべたらゆっくりすぽっとにむかおうね!」 「とうみんたのちみ!」 「しゅっごいゆっくりできそうだよ!」 「ゆっくちできりゅといいね!」 あれからもキノコを食べ続けて3日後、とうとうキノコがなくなりました。 キノコ以外の食べ物も残っていたので残さず食べました。 もう巣には食べ物は残っていません。 れいむ達は巣を枯葉と枝で上手に隠して外に出ました。 「ゆ~、しゃ、しゃぶいいいいいいいい!」 「ゆっくりできないいいいいいいい!」 「ゆぐぐぐぐぐぐう!」 「ぐるじお・・・」 保温効果のあった土の中からみて外の世界は極寒です。 震えてる子れいむに母れいむは用意していた白いもこもことした綿を被せました。 「これでさむくないよ!」 「ゆ・・・ほんちょだ!さみゅくないよ!」 「ぽかぽかー!」 「これならゆっくりできるよ!」 「ゆぅ~ん」 母れいむの用意していた綿は子れいむ達をすっぽり覆いました。 上手に穴を開けているので動きを妨げることもありません。 元気になった子供達を連れて母れいむは記憶の中で一番近いぱちゅりーの巣に向かいました。 ゆっくりスポットはぱちゅりーが管理してることがほとんどです。 ぱちゅりーの巣の近くには必ずと言っていいほどゆっくりスポットがありました。 れいむ達がゆっくりスポットにつくと、スポットは冬眠のために入り口を閉じている最中でした。 れいむ達は急いで中に入れてもらおうと指揮をとっているパチュリーのところに向かいます。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ぱちゅりー!れいむたちもなかにいれてね!」 「「「「いれちぇね!」」」」 れいむ達はすぐに中に入れてもらえると思い巣の入り口に向かいました。 しかし、ぱちゅりーが行く手を塞ぎます。 「ゆゆっ、ぱちゅりーじゃましないでね!」 「れいみゅたちはさむさでこごえしょうだよ!」 「はやくいれちぇね!」 母れいむの抗議に子れいむも声を重ねます。 それでもぱちゅりーは動きません。 ぱちゅりーは言い聞かせるようにれいむ達に話しました。 「ざんねんだけどもうゆっくりせいげんよ」 「ゆ!?」 母れいむは驚きます。 「そんなわけないよ!まだいっぱいあきがあるはずだよ!」 「あなたたちはくるのがおそすぎたのよ!こんなじきじゃあいてるわけないわ!」 「ゆぐぐぐぐ・・・」 何とか入ろうと穴の辺りを見ましたがこちらをまりさとみょんが見ていました。 ぱちゅりーだけならどうにでもできましたが、まりさとみょんが一緒では勝てません。 「もういいよ!いじわるなぱちゅりーのとこなんかいかないよ!やさしいぱちゅりーをさがすよ!」 「いじわるー!」 「ゆっくりちね!ゆっくりちね!」 れいむ達は別のゆっくりスポットに向かいます。 罵声を受けたぱちゅりーは怒るわけでもなく、どうしようもなかったのだと自分に言い聞かせ、スポットの入り口を防ぎに戻りました。 「どおしてどこもあいてないのおおおおおおおお!」 「「「「ゆわああああああああん!」」」」 あれからいくつかのゆっくりスポットを巡りましたがどこも入れてもらえませんでした。 思いつく限りの場所に向かいますが、制限になっていたり、もう既に冬眠していたりしていました。 最初は強気であったれいむ達も辺りが暗くなるころにはこのまま入れないのではないかと不安げな表情を隠せなくなっていました。 「おかーしゃん・・・」 「ゆっ、だいじょうぶだよ!きっとはいれるところがあるよ!」 「しょ、しょうだね!」 「ゆうううう・・・」 子れいむの不安を母れいむは必死に宥めます。 そんな中キノコを見つけたれぃむがみんなに向かいました。 目には涙が溜まっています。 「おかーしゃん、おねーしゃんごめんにゃさい!」 「ゆゆゆ、どーしたの!?」 「れぃむのせいでこんなことになっちゃから・・・」 「れぃむ・・・」 子れいむは自分のせいだと責任を感じていました。 母れいむも姉れいむも何も言えません。キノコのとき一緒に賛成したことを忘れていませんでした。 母れいむはそんな子れいむににっこりと微笑みました。 「つぎのすぽっとはぜったいあいてるからだいじょうぶだよ!」 「おかーさんほんとう?」 「ほんとうだよ!あそこはいちばんおおきいからね!」 母れいむの自身に満ちた顔に子れいむは涙を止めました。 他の子れいむにも元気が戻ります。 母れいむは嘘を付いていました。 しかし、今は元気であってほしいと母れいむはばれない様に懸命に演技しました。 次のスポットが母れいむの知る最後のスポットです。 ここに入れなかったられいむ達は死ぬしかありませんでした。 「ゆゆっ、ここだよ!」 「ゆ~、おおきいね!」 れいむ達は大きそうに見える洞窟の前にいました。 幸い、入り口にぱちゅりーが見えました。 まだ冬眠してはいないようです。 れいむは今度こそと自分に気合をいれ、ぱちゅりーに向かいました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「れいむたちをいれてください!」 頭を下げてぱちゅりーに頼み込みます。 子れいむはその様子を心配そうに見つめていました。 「ゆぅ・・・もういっぱいだったかしら・・・」 「だいじょうぶだよ!れいむたちはいれるよ!」 制限に来ているか考えるぱちゅりーをみてれいむは入れてもらおうと必死に食らい尽きます。 ぱちゅりーが難しい顔をしているとれいむ達のしった顔が現れました。 「あら!れいむたちじゃないの!?」 「ありす!」 友達の顔を見てれいむは笑顔を取り戻します。 「あなたたちどこもはいれなかったの!?」 「ゆぅ・・・」 「だからゆっくりしないでっていったのよ・・・」 ありすでも制限はどうしようもありません。 れいむが再び不安な顔になろうとした時、奥から二匹のゆっくりが現れました。 「わかるよー、はいりたいんだねー」 「そこのおおきいれいむだけならはいれるんだぜ!」 奥からやってきたのはゆっくりちぇんとゆっくりまりさでした。 ちぇんが入り口の騒ぎに気付き、まりさと一緒に数を調べてくれていたのです。 やっと掴んだ一匹の空き。しかし、れいむ達は4匹。 「おかーしゃんれーむたちははいりぇないの?」 「おかーしゃん・・・」 「ゆぐぅ・・・」 母れいむに置いていかれるのではないかと子れいむは急に不安になりました。 母れいむよりそって離れたくないと頬をむにゅっと引っ付けます。 困った母れいむにまりさは提案しました。 「いっぴきぶんのあきだけどちびたちなら4ひきいけるんだぜ!」 「かなしいのはわかるよー、でもどっちかしかはいれないよー」 「れいむ・・・」 母れいむは決断を迫られました。 答えはもう決まっていましたが。 「じゃあこどもたちをおねがいするよ!」 「わかるよー、かなしいけつだんだねー」 「わかったんだぜ!こどもたちはまりさがかならずせわするぜ!」 「れいむ、ほかにあてはあるの? れいむの決断にちぇんが同情し、まりさが子供を置いていくれいむに心配させないように話しかけ、ありすはれいむの心配をしました。 「だいじょうぶだよ!まだすぽっとはあるよ!」 「そう、ならいいわ!いそいでむかったほうがいいわよ!」 れいむの自信満々な顔にありすも納得し、れいむに激励を送りました。 「むきゅー。きまったようね」 「こどもたちをおねがいね!」 「わかったわ。じゃあここもしめるわね。」 母れいむを置いてゆっくりスポットの入り口が閉まりだします。 子れいむは徐々に見えなくなる母れいむに向かって飛び跳ねていきます。 母れいむは心配そうな子れいむを安心させるように微笑みました。 「ニヤ・・・」 「ユッ!?」 その母れいむの表情は子れいむ達の動きを止めました。 とうとう入り口が完全に閉まってしまいます。 もう子れいむではどうすることも出来ませんでした。 「おかーしゃん・・・」 「だいじょうぶだぜ!ほかのばしょにきっといけるんだぜ!」 「そうよ!それよりはるにおかーさんにあえるようにとうみんするのよ!」 子れいむ達はスポットの奥に向かいます。 初めて入ったゆっくりスポットには様々なゆっくりが犇めいていました。 「ゆ~、なんだかあかるいね!」 「ほんちょだ!おうちはこんにゃにあかるくなかっちゃよ!」 「どこかあいてるのかな?」 「ゆぅぅうん・・・」 子れいむ達はみょんに明るいスポットを不思議そうに思い、辺りを見回します。 やがて空中に浮いている白い物体を見つけました。 「あれだよ!あれがあかりゅいんだよ!」 「あれなんだろ?」 れいむの質問にまりさが答えます。 「あれはみょんのはんれいってやつだぜ!」 「はんれい?」 「よくわからないんだぜ!でもだいじなものらしいぜ!」 「ゆゆっ!」 だいじなものと聞いてれいむは自分のリボンを思い浮かべます。 「あいつがみょんだぜ!」 「ちーんぽ!」 「ゆっくりしていってね!」 初めて会ったみょんは変な泣き声でしたが子れいむ達は不思議と挨拶していました。 他にも様々なゆっくりと会った後、まりさの言っていた空きにつきました。 「ここだぜ!ちょっとまわりにうごいてもらってありすとちぇんもはいれるようにしたんだぜ!」 「さすがまりさね!」 そこには藁が敷かれていました。 これなら暖かそうです。 「わかるよー、ちょっとすくないよねー」 「さすがちぇんだぜ!」 いつの間にかいなくなっていたちぇんが戻ってきました。 子れいむ達からはまりさに隠れて見えませんでしたが、すぐに口に藁を咥えたちぇんが見えました。 「きみたちはそれじゃたりないよー」 ちぇんはそういい、子れいむ達の周りに藁を積んでいきます。 「ぽかぽか~」 「ちあわちぇ~」 子れいむは母れいむとちぇんの用意してくれた藁と綿でぬくぬくです。 しかし、まりさたちの顔はまだ晴れていませんでした。 「ゆぅぅ、これじゃたりないんだぜ・・・」 「こまったわ・・・」 「もうわらはなかったよー・・・」 悩んだ結果、まりさが防止を脱ぎだしました。 「まりさどうしたの!?」 「このぼうしをかぶせばあったかくなるんだぜ!」 「わかるよー!それならじゅうぶんだよー!」 まりさは子れいむの上に帽子を置きます。 「ゆ~、なんだかねみゅくなっちぇきた・・・」 「れーむも・・・」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「ゆゆゆゆ・・・」 子れいむ達は冬眠のための眠気で船を漕いでいました。 「もうだいじょうぶだぜ、まりさたちもいっしょにねるんだぜ」 「またはるにあいましょうね」 「わかるよー、ぜったいだよー」 既に眠っている子れいむを見ながら3匹はゆっくりと眠りにつきました。 「ざ、ざぶいいいいいいいいいい!」 木枯らし吹き荒れる森に母れいむの悲鳴が響きます。 母れいむは必死にスポットを探しました。 しかし、開いている場所を見つけれず、辺りは暗くなっていました。 さらに追い討ちをかける物が空から降り始めます。 「ゆゆっ!?ゆきだあああああああ!」 母れいむには死の雪でした。 たまらずれいむは近くにあった木の根元の穴に逃げ込みます。 雪は降り止む気配を見せませんでした。 「ゆ~、もうつかれたからあしたさがすよ!」 れいむは独り言を呟いて眠り始めました。 一日中飛び跳ねていたれいむはぐっすりと眠ってしまいます。 雪はれいむのことなど気付かないかのように世界を白く変えていきました・・・ 「ゆゆっ・・・すっきりー!」 母れいむは十分な睡眠を取り、元気に目を覚ましました。 そして穴から外に元気よく飛び跳ねます。 そんなれいむの飛込みを白い地面はしっかりと受け止めました。 「ゆ?ゆゆゆゆううううう!」 森は姿を変えていました。 白くなった地面はれいむのとんだあとを綺麗に残していました。 れいむは気付いてしまいました。 もう開いているゆっくりスポットはないのだと。 それでもれいむは探すしかありませんでした。 ちっぽけなれいむなど白い世界では唯の点です。 「ゆーしょ!ゆーしょ!」 「ゆ~、しろくてどこかわがらないいいいいいいい!」 「ゆぅ、なんだかちからがはいらないよ・・・」 「れいむのあかちゃんたちだいじょうぶかな・・・」 「ゆっ、れいむもがんばりゃないt・・・」 ちっぽけな点はやがて見えなくなってしまいました。 「おきるんだぜ!はるがきたんだぜ!」 まりさがまわりのゆっくりを起こし始めます。 その声で周りのゆっくりが目を覚まし始めました。 あれからなにも起きず、スポットの住人は無事春を迎えることが出来ました。 「「「「ゆ~、しゅっきりー!」」」」 子れいむ達4匹も初めての越冬を無事乗り越えれたようでした。 「まりしゃおねーちゃんありがと!」 「しゅっごいあたたかかっちゃよ!」 「それはよかったんだぜ!まりさもうれしいぜ!」 まりさは帽子を被りなおしました。 そこに入り口を開けにいっていたありすとちぇんが戻ってきます。 「いりぐちがあいたわよ!」 「そとははるだよー」 「わかったんだぜ!」 三匹は子れいむに向かい問いかけます。 「れいむたちはどうするんだぜ?」 「れいむはまだきてないみたいね・・・」 「わかるよー、まだおきてないんだよー」 子れいむの返事は決まっていました。 「「「「おうちでゆっくりまちゅよ!」」」」 「わかったよー!ならこれもっていってねー」 「それがあればしばらくもつんだぜ!」 「れいむがもどったらもっとおいしいものをもらいなさい!」 三匹が渡したのは巣の近くで取った植物や虫をまとめたものでした。 「ありがちょー!」 「おいししょー!」 「ちょっとたべちゃいよ!」 「だめだよ!おかーしゃんがかえるまでゆっくちたべるよ!」 それぞれ食べ物を抱えたれいむ達は3匹とぱちゅりーに見送られてこれまで暮らしていた巣に戻りました。 「ひしゃしぶり~!」 「やっぱりここはゆっくちできるね!」 「おねーちゃんゆっくちちていっちぇね!」 「れぃむもゆっくちしていってね!」 巣には食べるものは何もありませんでしたが、それ以外は何も代わりがありませんでした 貰った食べ物を置き、4匹の子れいむは母れいむの帰ってくるのを待ちました。 いつまでもいつまでも待ちました。 それでも母れいむは帰ってきません。 もう貰った食べ物は食べ尽くしてしまいました。 「おねーしゃん、おにゃかすいた・・・」 「もうすぐおかーしゃんがもどってくるからゆっくちまとうね・・・」 子れいむ達はもう食べ物をとりにいく元気は残っていませんでした。 話しているのも二匹だけで、もう二匹は既にうつろな目で上を見つめています。 それでも子れいむ達は母れいむの帰りを信じていました。 子れいむ達の巣の外では、冬を乗り越えた生き物が元気よく動き回っていました。 このSSに感想を付ける
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「おおーい! ケーキ買って来てやったぞ!!!」 朝方、チラッと頭を過ぎった事を夕方まで覚えていた俺は、きちっとケーキを買って家に急いだ。 「おにーさんおかえりなさい!! ゆっくりできるね!!!」 てっきり真っ先にケーキケーキと騒ぎ立てるかと思ったが、それよりも俺の事を気遣ってくれたらしい。 嬉しいことには変わり無いが、なんとなく虚しい。 「はら!! ケーキ買って来てやったんだからこっちにも反応しろよ」 目の前でケーキの箱をチラチラと動かす。 「ゆゆ!! おにーさんありがとうね!!!」 いっぱしの野良ゆっくりは振り子のようにそれに合わせて目を動かすんだが、コイツは至って普通の反応。 まぁ、そんな反応を示したら、俺が拾う前に駆除されてたけどな。 「お前なー、もうちょっと反応しろよ!!」 「ゆ? れいむはとってもうれしいよ?」 訳が分からない、とでも言うように首ならぬ頭を傾げる霊夢。 「俺が言いたいのは。うれしい!! ……あっ、これ私が大好きなモンブラン……。○○さん、私が好きなもの知ってたんですか! 嬉しいです!! っていう反応だよ!!」 「ゆ?」 「……。いや、今のは忘れろ!! そのゆっくりブレインですっきり今すぐ忘れろ!!」 何口走ってんだ? 俺。 「わかったよ!! でもおにーさん、あしたはおやすみでしょ!! きょうはさきにおふろにはいろうね!!」 そういえば、休みの時は先に風呂に入ってたなぁ。 「おし! 今沸かすからちょっとまってろ」 「うん!! ゆっくりまってるね!!!」 蛇口をひねって数分、そこには草津も東山もびっくりの温泉が!! うん、ただ入浴剤を入れただけなんだけどね。 てか、東山ってどこ? 「おし!! おーいれーむ!! おれはさきにはいってるぞーーー!!!」 「ゆっくりまっててね!!!」 バタバタと脱衣所まで飛び跳ねてきた。 そのままバタバタと服が脱がないで入ってくる。 「○○さん……。その、じろじろ見ないでください。え? その……司書服は結構帰させを……」 「おにーさん!! ゆっくりはいるからお湯をかけてね!!」 ……。 「ほら」 「!! おにーさん!! これおみずだよ!!! つべたいよ!!!」 「しってるぞ。わざとだ!!」 「ゆゆ!! わるいおにーさんはこうだよ!!」 ばっしゃーーん!!! 勢いよくふろに飛び込んできやがった。 「ゆ!! ゆゆ!!」 「うわっぷ!! わかったよ!! おれにまけだ、あやまるよ」 「すっきりーーー!!」 くそ、今度寿司に練り辛子入れてやる。 「おにーさん!! はやくからだあらっておうたをうたおうね!!!」 「あーーー。そうだな、よしこっちこいゆっくりはやく洗ってやるぞ!!」 「ゆゆ♪」 霊夢の体を洗った後、自分の体も洗い終えた俺たちは、再び浴槽に入り込んだ。 「きょうは何を歌う?」 「ゆ~~……!! かもめが翔んだ日うたいたいよ!!」 「よっしゃ!! いくぞ!!」 「ゆ!!!」 …… 少し逆上せてしまったが、風呂で気分よく歌えたのでよしとしよう。 「おにーさんいいおゆだったね!!!」 「そうだな。ちゃっちゃと飯食うぞ。その後はお待ちかねのケーキだ!!」 「ゆゆ!! おにーさんれーむはけーきたべたいよ!! でもおにーさんのごはんもいっぱいたべたいよ!!!」 ははは、それも作戦だ。 せいぜい腹いっぱい食って苦しみやがれ。 「お前なら十分食えるだろ? ほら、直ぐに作ってやるからテーブルの上片付けとけ!」 「ゆゆ!!」 昼間、遊んでいたボールやら、人形を片付けているのをちら見して、俺は自慢の料理を作る事にした。 今日の夕食はオムライス。 それにサラダ、かぼちゃスープだ。 「ほら、おにーさん渾身の料理の数々だ。心して食え」 「ゆ~~♪ いただきまーーす!!!」 もぐもぐと五十センチはあろうかというオムライスを勢いよく食べていく霊夢。 「!! うぐぐ……!!」 あーー馬鹿だ、喉に引っ掛けやがった。 「ほら、水」 コップに水を汲み勢いよく流し込ませる。 「……ぷはぁ!! ゆーー!! びっくりしたよ!!」 ペチン 「ゆ!!」 「いそいで食うからだ。もっとゆっくり食え!!」 「おにーさんのりょうりが……」 「分かってるよ。でもお前は急ぎすぎだ!」 「ゆーーきおつけるよ!!!」 うん。分かれば良いんだ。 純粋だなァ、そんなに勢いよくがっつい、て……。 「ゆゆゆ!!! うぐ……」 はぁ……。 ペッチーン ―― 「ゆーあたまがいたいよ!!」 「お前が急いで食うからだ、昼間だったどうするんだそのまま天国に行っちまうぞ?」 「大丈夫だよ!!!」 ん? えらい自信だな。 「どうして?」 「おひるはゆっくりたべてるよ!! でも、おゆうはんはおにーさんがつくったりょうりがおいしいってわかってほしいからいそいでたべてるんだよ!!!」 へー。こいつなりに色々考えてるんだな。 「わかったよ。でも、もう少しゆっくり食べろ。毎回水を取りに行ってたんじゃ俺がゆっくり食えない」 「うん!! こんどからはゆっくりたべるよ!!」 本当かぁ? 「まあ良い。それより、お待ちかねのケーキだぞ!!」 デン。 とテーブルにデコレーションモンブランを登場させる。 「ゆーーー!!!」 あまりの大きさに言葉も出ないか。 「どうだ? 美味しそうだろ?」 「うん!! おにーさんれーむははやくたべたいよ!! きってちょーだい!!」 「オーケーちょっと待ってろ」 慣れた手つきで切り分けてゆく。 伊達に仕事先でケーキきってるわけじゃないぜ。 「ほら! 召し上がれ」 四分の一ほどを切り取ってやり霊夢の前へ。 「いただきまーす♪」 先ほどの言葉は本当だったようで、ゆっくりとケーキを食べていく霊夢。 「本当にゆっくり食べてるな」 自分の分を食いながら、ふと思った事を霊夢に問いかける。 「うん。それに、おにーさんのつくってくれたけーきのほうがおいしいから、もっとゆっくりたべてるんだよ!!!」 げんきんな奴だ。 「そうか、じゃあもうケーキは買ってきてやらん!!」 「ゆゆ!! どーしてーー!! けーきもっとたべらいよ!!」 「俺が作ってやるからだ。文句あるか?」 「!! ないよ!! れーむもんくないよ!!!」 ひまわりの様な笑顔で喜ぶ霊夢。 口の周りにクリームが付いているのもご愛嬌だ。 「ゆゆ! おにーさんおかわり!!」 「はや!!!」 ―― 明日は休みだが、今日は早く寝る事にした。 霊夢と遊ぶためじゃないぞ、新メニューの開発のためだ。 「ゆゆ!! おにーさんなにかおはなししてね!!」 めんどくせー。 「金色の闇とイヴのそれぞれの性格の違いの話でいいか?」 「ゆ? なにそれわからないよ?」 俺も話してやるつもりは無い。 「じゃあこんな話はどうだ?」 「ゆゆ!! どんなおはなし」 「あるところに、生まれつき記憶力に障害を持った女の子が居ました。その子は幼いときに両親に……」 全てを話し終える前に、俺も霊夢も寝オチしてしまった。 翌日、予定通りに新メニューの開発を行う。 「よし、霊夢これはどうだ?」 「ゆゆ!! おいしーよ!!!」 「こっちは?」 「これもおいしーよ!!」 「……じゃあこれは?」 「とってもおいしーよ!!」 ペチン 「ゆ!」 「嘘つくな、今のは唯の重曹だ」 「ゆ~~。だっておにーさんが作るりょーりはおいしいんだもん」 「それは嬉しいんだけどな。これは店で出すものだから、もうちょっと詳しく教えろ。塩加減とか」 「ゆゆ!! 分かったよ!!」 「よし、じゃあこれからだ!!」 ……。 それからは全ての料理を出し終えるまで霊夢は美味しい美味しいと言い続けていた。 当然だ、それは完成した新メニューだからな。 不味いものは入っていない。 「どうだ? おいしかったか?」 「うん!! とってもおいしかったよ!! これならおうちにだれをよんでもゆっくりしてもらえるよ!!!」 ふふふ、ばーか俺がそんな男に見えるか。 良いか? 俺が呼ぶのは紅魔館の司書さんか薬売りのウサギさんだ。 しかも、ただ食事を作るだけじゃない。 「ほら、朝飯つくったぞ!!」 「んーー。おはようごじゃいますーー○○さん……」 「おいおい寝癖酷いぞ。ちゃんと髪梳かしてこいよ」 「んーーおいしい。○○さんが梳かしてーー♪」 そう言って、朝食を食べながら彼女の髪を梳かしてだな……。 「うぐ!!! ゆゆゆ……」 ……? 「ゆ!! ぐぐぐぐ!!!!」 ……はぁ。 「ほら!!」 「ゆぐぐ!! ……ゆ~♪」 ペチン 「ゆ!!」 「急いで食うなって言ったろが!」 「ごめんなさい。でもね!!」 ん? 「きょうはいっぱいおいしーのがたべれて、しあわせーーー!!!!」 そうかい。 幸せそうな所残念だが、当分こんな思いはできないぞ。 量は多くしてやるが、明日からはまた腕によりをかけた質の料理だからな。 俺は、食器を片付けながら、今日の夕飯のメニューを考えていた。 そうだ、カレーにしよう。 To be next これはいい。こういうほのぼのとしたゆっくりとの生活が見たかったんです、GJ! -- 名無しさん (2008-07-28 01 28 03) よい -- 名無しさん (2010-11-27 17 41 24) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3921.html
人間と山のゆっくり 古緑 「コレが目を開いてから三日目の写真でな、 コレが初めて喋った時の写真、キーホルダーみたいだろ?」 「えぇ、そうですね」 「なぁA」 「んでこれが初めて牛乳パン食べた時の写真、 こっちの写真はれいむが初めて」 「A!」 「何?B」 「もういいだろ」 「何が?」 「その…それだよ 写真見せたりお前ん家のゆっくりの話するのだよ ちょっと反応に困ってるだろ」 「何で?」 「……いやもういい」 「そんでコレがな…」 僕は今電車の中でA先輩の持ってきたアルバムを見ている(見せられている) 挟んである写真は先輩の飼っている4歳になるゆっくりれいむ。 先輩は地元の家の近くの叢でこのゆっくりれいむを拾って来てから4年間もの間 そのゆっくりれいむを愛し続け、写真ももうアルバム7つ分にもなっているという。 正直その写真を半強制的に見せ続けられるのは少し辛いが、 全く興味の無い事でもない。 これから行く場所には写真の中のものと同じ生き物が数多く生息しているというのだから。 今日も見れるかもしれないとB先輩も言っていた。 電車の向かう先は○○山のある○○駅。 15kg超えのザックを背負い、700gの新品の登山靴を履いた僕は 初めての登山に赴く○○高校登山部の高校一年生だ。 A男先輩は高校三年生の同部活の先輩だ。 今回の山行では A男先輩がチーフリーダー(山行の企画をし、登山時は最後尾で班員を見守る)を務める。 登山歴は中学の頃かららしく、頼れる先輩だ(少し強引だが) B太先輩はA男先輩と同じく二年生で 今回はサブリーダー(登山時に先頭に立ち、班員を導く役割)を務める。 どこかミステリアスな雰囲気(暗くてなんか怖い)を漂わせる先輩だが 普段から優しい人でAさんの親友だ。 あとは僕と同じ一年生が二人。太ってるC君と痩せてるD君。 この一年生親睦山行で仲良くなれると良いんだが。 目的地を告げる電車のアナウンスを聞き、僕達はザックを荷台から降ろしてホームへと降りた。 改札口を出て見えるのはカラフルなザックと登山者風の服装の中高年。 今回行く山はやはり登山者にとって人気の山という事なんだろう。 駅にある水道で2リットル程水筒に水を入れてから バスに乗って山の麓まで行く。 そこからが脚を使う登山のスタート地点だ。 バスの中は人こそ少ないが大きなザックがスペースを取るのでやはり座席は埋まってしまう。 バスが赤信号で止まってる間、 ぼんやりとガラス窓から見える林を眺めていると 赤のリボンと黒いトンガリ帽子の球体が林の方に跳ねて行くのが見えた。 「先輩、今なんか…」 「あ、見てたか?アレがゆっくりだよ」 振り返って後ろの座席にいたA先輩に ゆっくりらしきモノを見たと言おうとしたところ先輩も見ていたようで、 このあたりのゆっくりの説明を受ける事になった(少し後悔した) 山と人の住む場所の境にはゆっくりが良く現れるらしく 特にこの山では多いらしい。 最近は数が減ってきたのか見れる機会は少し減ってきているそうだ。 A先輩の話を聞きながら田んぼばかりの田舎道をバスが青信号を進んで行く。 「ゆっ?れいむ、にんげんがおりてきたんだぜ! おいにんげんども!まりささまにごはんよこすんだぜ!」 「おにいさん!かわいいれいむにごはんちょうだいねぇ~ん?」 目的地のバス停で降りると見慣れない生物が出迎えてくれた。 先に降りた中高年夫婦の登山客にまとわりついている。 先輩二人には見慣れた光景のようで特に気にしている様子はない。 「先輩、アレ…」 「あー酷いだろ アレがここら辺のゆっくりだよ 人の集まるバス停に溜まるんだ」 ゆっくり好きの筈であるA先輩に訊いたところ、 全く興味無さそうに答えてくれた。 「なにモタモタしてるんだぜぇ?はやくよこぶぇ!!」 「ばでぃざぁぁぁああぁあぁ!?」 その時前にいた中高年夫婦の旦那さんの方がトンガリ帽子を蹴ってどかした。 まさかあんな温和そうな人が…と僕はその光景に驚いたが、 B先輩が言うには 「さっきの駅前でもそうだが、バス停付近で人にタカろうとするゆっくりは 後片付けをするならお前等も殺してもいいぞ」 らしい。 この辺じゃゆっくりを殺す事自体は禁止されているそうだが 殺しても誰も咎めないし、誰もそれを守っていないそうだ。 中高年夫婦は後片付けまでする気がないのか ある程度動けなくなるまで踏んだところで山道に入って行った。 B先輩が地図を広げて現在地を確認すると、 B先輩を先頭、一年生を挟み、A先輩を後尾にして5人は一列となって山道に入って行った。 肩に食い込む荷物と、登山靴がしっかりと土を踏み込んで行くのをその足に感じながら、 僕等は今日の目的地であるテント場へと歩いて行った。 「ゆっ?ゆっくりしていってね! ここをとおりたければ『つうこうりょう』をはらってね! あまあまでいいよ!」 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ! にんげんさんたちはあまあまをゆっくりちょうだいね!」 テント場に行くまでには歩いて数時間かかる。 その間一時間に一本取る十分間の休憩の中でガサガサとどこかからまたゆっくりが現れた。 紅いリボンのが二匹。 どこかさっきのバス停の奴等よりもマイルドな話し方だ(初めて『ゆっくり』というのを聞いた) 「先輩、コイツ等は…」 「あぁ、コレが山の入り口あたりのゆっくりだよ 人間にタカってくるのは変わりないけどさっきのよりはちょっとはマシだろ? コイツ等オレ達のザックの中にメシが入ってる事知ってるんだよ」 B先輩に訊いてみたところ山の入り口のゆっくりは ザックの中の僕等のオヤツやご飯が有る事を知っているらしい。 この時先輩から受けた注意によると、 主に登山初心者がやってしまうミスの一つに、 ゆっくりにカロリーメイト等のお菓子を与えてしまうのがあるそうだ。 与えられれたその味を一度知ってしまったら最後、 町に降りて来たり、人が来る入り口付近等でタカってくるのを止めないらしい。 そういえばこの休憩場所のちょっと向こうにある看板に 『ゆっくりに餌を与えないで下さい』と書いてある。 (この時休憩時間の10分を過ぎたらしく、A先輩が皆にザックを持つよう言いだした) 「山の中の如何なる物に対しても出来る限り人間の影響を残してかないのが 登山者のマナーだと俺は思うんだがね、 まぁコイツ等も所謂人間の被害者って事かな…」 「ゆっくりあまあまをちょぶぇ!!」 「どぼじでごんなごどずるのぉおぉぉぉ!?」 そう言いながらも笑顔でゆっくりを蹴りどかして行くB先輩。 『ちょっとは痛い目に遭った方が人の住む所に近づかなくなる』そうだ。 山に影響を与えず云々とは言っていたが、難しいところだ。 予定通り6時間程歩いた僕等は無事テント場に辿り着いた。 歩いてる間、ずっとA先輩と話していたC君とD君も 疲れているようだが問題は無さそうだ(僕は脚がガクガクだ) テントを建てる前にA先輩達は顧問への電話、 B先輩はテント場管理人への連絡の為、僕等一年生はその場に残されてしまった。 僕は親睦の為の良い機会だと思ったので、テント場にある山小屋で ココアを飲みながら一年生だけでトランプで遊びながら親睦を深めた。 二人とも面白い人みたいで仲良くやって行けそうだ。 夕方5時半にお米をコッヘルで炊いて、レトルトカレーと海鮮サラダを食べ終えた僕らは テントの中で学校の話、倶楽部の話、一年生の話、さっき見たゆっくりの話等、色んな話をした。 その話の中でB先輩がゆっくりを飼っているA先輩以上に 『異様に』ゆっくりの体の構造や習性に詳しい事が分かり、 D君がちょっとした冗談を言った。 「もしかしてB先輩ゆっくり虐待とかしてるんじゃないですか?」 僕もどこかのニュースで『ゆっくりに対して拷問や暴力を働くのを 止められないと言う男』がモザイク付きでインタビューに答えているのを見た。 『ゆっくり虐待』って言うんだな。 そりゃ失礼だろ、とC君がフォローしようとしたその時 「はああぁぁああぁぁ!!?虐待とか無いし!! 俺ゆ虐とか全然興味ねーから!!赤ゆとか大好きだし!!超可愛いし!!」 「「「………………」」」 まるで何百回と口にしたような流暢な発音で出て来た『ゆ虐』とは恐らく 『ゆっくり虐待』を略したモノなのだろうか? 『赤ゆ』ってなんだろう? 踏み込んではいけない領域に踏み込みそうになったので 一年生が沈黙し出すとA先輩がポテチとジュースとUNOを出し始めたのた。 それを見た僕等はこの話をお流れにした。 「ゆっくりしていってね!」 「ン?」 カードを片手にポテチを食い終えようとしたその時 テントの外から例の声が聞こえた。 外を覗くとトイレに行っていたC君の近くにトンガリ帽子がいる。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「何だ、コイツ?」 またゆっくりだ。 でもさっきの奴みたいに横柄な口を利く事も無く、 ただ『ゆっくりしていってね!』としか言わない。 その姿は見ようによっては少し愛らしくもある(僕はちょっとキモイ生物が好きだ) 「先輩…アレって…」 「あぁ、アレがテント場近くのゆっくりだよ ラッキーだな、色んなゆっくりが見れて 奴等はもう寝てる時間だろうが人の声を聞きつけて来てたんだろ」 B先輩に訊いてみたところテント場には 食べカスを残して行ってしまう人がたまにいるらしく、 それを知っているゆっくり達は『人の近くはゆっくり出来る』と思ってしまい、 夕方の人のテント近くに集まって来る事があるらしい。 「C、ちょっとそのゆっくりまりさ小突いて追っ払ってやれ」 「えっ…」 「いいんだよ、そいつ等の為にもなる それにこれからはお前等がやる事になるんだから」 A先輩が言うにはテント場に集まるゆっくり達も 心の何処かで『人がゆっくりさせてくれる』と思ってしまっており、 人がその状態のゆっくりと関わるのはゆっくりにとって良くない事らしい。 小突いて追っ払えば『人とはゆっくり出来ない』と思ってくれるそうだ。 これは人にとってもゆっくりにとっても良い事だ。 このゆっくりに安易に『人はゆっくり出来る』と思わせてしまうと 多くのゆっくり達が人の住む町に来しまうとA先輩が言っていた。 さっきの山の入り口にいたようなゆっくりに変わってしまうんだろうか? 「ホレ、アッチ行きな」 「ゆっ?やめてね!やめてね!ゆっくりできないよ!」 C君が登山靴から履き替えたサンダルの先っぽで トンガリ帽子(ゆっくりまりさという名前らしい)を小突いて追い返した。 あれでゆっくりまりさは人に近づくのを止めるだろうか。 止めた方がいいのだろう。 あのバス停のゆっくり達や入り口近くのゆっくりの様になってしまうのなら。 それからまた暫く遊んでから僕等は夜の8時には寝袋を敷いて就寝する事になった。 朝の4時半に起床。 最低限の荷物を小さな鞄に持ち替えて、 僕らはテント場から山の頂上まで朝日を見に登って行く。 雲は無いしきっと綺麗な朝日を見れるだろう。 そうA先輩はアキレス腱を伸ばしながら僕らに言うと デジカメをポケットから出してカメラのチェックを始めた。 山の朝はとても寒く、暗い道を頭につけたランプで照らしながら進んで行く。 隊列は昨日と同じ。 だが歩き始めてから一時間と40分程でその隊列は変わる事になった。 馴れない早朝の運動にヘバってしまったのか、休憩を申し出て来た。 「B先輩…ちょっと休憩貰っていいですか…」 「頑張れC、頂上もう見えてるからよ オイA、ちょっとCに先頭行かせるか?」 A先輩が言うには先頭に立って自分のペースで歩かせた方が 疲労感が抑えられるらしい。 B先輩はCにポカリを飲ませるとCとの位置を交換した。 そしてCはゆっくりと自分のペースで山頂までの岩だらけの道を歩き出した。 「おぉーし!お疲れ!C、あそこの平らなトコまで行って休憩だ」 ようやく頂上まで辿り着いたC君は安堵の顔を見せながらも完全にヘバっており、 ホッとしながら死にそうな顔という器用な顔を見せている。 C君はA先輩に言われた通りに平らなところに向かって歩き始めた。 「ゆっくりしていってね!」 「ちょっと…通してって」 どこからかまたゆっくりれいむが現れた。 へとへとにヘバっていたC君は道を阻まれた事で少し苛立ったのだろうか テント場のゆっくりにした様にゆっくりを小突いてどかそうとした。 その時 「待てC!!」 突然B先輩が叫んだ。 休憩場所で容赦なくゆっくりれいむを蹴りつけていた人とは思えないような発言だ。 だがB先輩が叫ぶまでもなく、C君は脚を止めていた。 「ゆっくりしていってね?」 「…あぁ、ゆっくりしていくよ」 C君はザックを背負ったままそのままそこにゆっくりと座り込むと、 丁度出て来た太陽光をその体に浴びて日光浴を始めた。 ゆっくりれいむはその一年生の膝まで跳ねて行くと 膝の上に乗ってその一年生と同じ様に目を閉じて日光浴を始めた。 B先輩が言う。 「今回はツイてるな、やっぱり」 「あのゆっくり、なんか…どっかおかしくないですか? どこから出て来たんですかアレ」 班員の皆も気付いていると思うが、 山頂付近は石や岩ばかりで樹も草も無く、前方の視界を遮る物が無い。 あんな紅いリボンが灰色の道で動いていたら気付かないわけが無い。 あのゆっくりれいむは浮かんで来るように現れたのだ。 「あれが人の影響を全く受けてない山奥のゆっくりだよ 晴れの日の山頂にも稀に出てきてな、落ち着いてない生き物を落ち着かせるんだ 急に現れた様に見えたのは…まぁ『湧いて出て来た』っていい方は変だが そんなところだ。まだよく分かってないらしい 滅多に見られるもんじゃないぞ」 Aさんが解説する。 よく見るとそのゆっくりれいむは丸い体を包み込む様に 僅かな光を纏っている様に見える。 ゆっくりれいむを膝に乗せたC君はまるで 晴れの日に縁側で昼寝をする猫のように目を細めていた(その顔はゆっくりみたいだった) 「二年ぐらい前はそれ程珍しくも無かったんだけどな やっぱ山頂でもエサやる人間がたまにいるからどんどん山を下って行っちまうんだ コイツ等は元々、人の食い物が欲しくて人に近づくってワケじゃないのにな… そうなったらもうコイツ等は別物になっちまう あの肉を持たない妖精のような存在から、昨日見た醜く口汚い生物になっちまうんだ」 B先輩が少し辛そうにそう言った。 「どうしてそうなっちゃうんでしょうね?」 C君を見ながらD君がA先輩に訊いた。 「人と同じなんじゃないかな? 自分にとってとてつもない快楽が手の届くところに有れば どうしてもそれを得ようと必死になっちゃうモンだ 奇妙な事だが、人に干渉出来る様に肉体を持つのもそのせいかもしれない きっとゆっくりも同じなんだろうな」 僕はこの日初めてこのゆっくりと出会い、 班員達はC君の膝の上でゆっくりしているゆっくりれいむの周りで休憩しながら 30分間の休憩の予定を倍の1時間にしてしまった。 僕はゆっくりさせてくれたゆっくりれいむに感謝すると共に あぁ、山に来て良かったな。そう思った。 そして一時間後、十分ゆっくりしていった僕等は ザックを背負って頂上から降りようとしていた。 「またいっしょにゆっくりしようね!」 「あぁ、またゆっくりしに来るよ」 それを聞いたゆっくりれいむは嬉しそうに目を細めると 風景に融ける様に消えて行った。 そして僕等はリラックスした気分でテント場まで下り、 テントを片付けて、バス停まで戻って行った。 その日のスケジュールはハードだった筈だが 何故かこの日は辛いなんて思わなかった。 きっとあのゆっくりの御陰なのだろう バス停近くのアスファルトの道を登山靴で鳴らしながら 僕はまたあのゆっくりれいむに会いたい、そう思った。 「んほぉぉぉぉおぉおぉぉぉおぉ!!!」 「やべるんでぜぇごのぐぞれいばぁあでぃず!!」 「ゆ”っ!かわいそうなれいむにごはんをもってきてね!はやくしてね! なにしてるの?れいむはにんっしんしてるんだよ?もたもたしないでね!」 「つんでれまでぃざがわいいぃぃいちゅばちゅばしであげるわぁああぁ!!!」 「ばぁ~きゃ!とっととあまあまよこちぇじじぃ!」 「「「………………」」」 バス停の前でまた出迎えてくれたゆっくり達を見て A先輩は萎えきった顔になって降ろしたザックの上に座り込んだ。 バスが来るまでの二十分間コイツ等と待ち続けなければならない A先輩はウンザリした顔つきで僕等に向かって言った。 「オイ、昨日も言ったがバス停付近に出てくるゆっくり殺しても 片付けるんなら誰も困んないから、そうしたければ殺ってもいいぞ ゴミ袋もほら、ここに」 僕らを使わないで下さい。 急にそんな事言われても困る。 ウザくてもイキナリ殺すなんて事は 「ん?しょうがねぇな!美しい町づくりの為だからな!うん!」 B先輩だけはノリノリのようで ぷくーっと膨らんで威嚇?するお腹の大きい不細工なゆっくりれいむの方に向かって行った。 「オイB、駅まで水道とか無いから産道に手突っ込んで 中身取り出したりすんなよ、いつもみたいに」 「はぁああぁぁあぁあ!?いつもそんな事してないし!! 子供引きずり出して親に見せつけるとかないし!!」 「「「…………………」」」 ー完ー
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「ゆっ」 どすんっ、と重量級の音を立てて一見して生首にしか見えない物体は草原へと踏み込んだ。 ウェーブのかかった金髪につばの広い黒色のとんがり帽子。そして三メートルはあろうか という巨体。 ゆっくりまりさ。それも『ドス』と呼ばれる個体であった。 「ゆ~♪ この草原さんはいっぱいおいしそうな草さんがはえてるよぉ~♪」 青々と茂る草原を一望して歓声を上げて身体を振るわせるドスまりさ。 するとドスまりさの身体にあった大きな帽子が脱げて、ふわりと地面に落ちた。飾りや帽 子を、時には自分の命以上に大切にするゆっくりなのに慌てる気配もないのは、彼女自身 の意志で帽子を落としたからだった。 「くぅささ~んはぁなさ~ん♪ ゆ~っくりご~飯になってね~♪」 奇妙な節回しまでつけて歌いながら、満面の笑みで大口をあけると草原の一角にかぶりつ いた。 顔…というか身体の前面を地面に埋めるような姿勢になったドスまりさが身をもたげる と、その一角だけが土の色を晒していた。そこに生い茂っていた草花はすべてドスまりさ の口の中。 だがそのまま「む~しゃ~む~しゃ~…」と食べるのかと思いきや、ドスまりさは口の中 の草を吐き出すと置いた帽子に詰めていった。 それから三十分余り。 ドスまりさは草花を食いちぎっては自分の帽子に詰めるという動作に終始していた。 元々それほど広い草原ではなかった。その為、帽子がパンパンに膨れあがった頃には、草 原の半分近くを地肌の見える空間が占めていた。 けど、ドスまりさは何の関係もないとばかりに満面の笑み。 ちょっとさっぷうけいになっちゃったかな、くらいの感慨はあったがそんなことよりも大 切なことがある。 「ゆっふっふ~♪ これだけあれば群のみんなもおなか一杯になるよ~♪」 どすん、どすん、と森に重低音を響かせながらドスまりさは大急ぎで来た道を帰ってゆく。 既に時刻は昼下がり。 朝から何も口にしてなくてお腹はペコペコだったが、そんなことをドスまりさは気にしち ゃいけない。 「みんな待っててね! すぐにドスがおいしいご飯を持っていってみんなをゆっくりさせ てあげるから!」 **************** ドスのゆっくり **************** ドスまりさの群は成体と子供を合わせても50匹に満たない小さな群であった。 これは他のドスが治めるゆっくりの群と比べると極めて規模が小さい。 それもそのはずで、一週間ほど前までドスまりさはその群に住んでいた極々普通の、子供 のゆっくりまりさだったのである。 「ドスがいる」という噂を聞けば庇護を求めて集まってくるゆっくりは多いが、今はまだ そんな噂も流れていないので元の規模を保っていた。 それでも、ドスがまだ群の誰からも「まりさ」と呼ばれていた頃は20匹程度の群だった のであるが…。 …すん、どすん、どすん… 全身これ聴覚とも言われるゆっくり。 地面から伝わる聞き覚えのある振動に、広場でゆっくりと日向ぼっこをしている中の一匹 が目を覚ました。 「…ゆ!? わかるよー! やっとドスが帰ってきんだねー!」 「…やぁっとぉ? れいむはもうお腹がぺこぺこだよ!」 「むきゅ、まったくもう! うちのドスはホントにのろまねぇ…」 一匹の呼びかけに、日向でぐっすり眠っていたゆっくりたちが目を覚ます。幸せそうに涎 まで垂らして眠りこけていたのが起きた途端に不機嫌な表情になるというのは空腹を、文 字通り思い出したからだろう。思う存分ゆっくりしている間なら空腹をも忘れることがで きるのがこのゆっくりという饅頭である。 ぶつぶつと愚痴を漏らすゆっくり。大口を開けてあくびをするゆっくり。起き抜けに仲の 良い友達と追いかけっこを始めるゆっくり。 そこにいたのは全長20~30センチ程の成体ゆっくりが6匹。10~20センチほどの 仔ゆっくりが11匹。10センチに満たない、まだ産まれて間もない赤ゆっくりは27匹。 総勢44匹――つまりはドスを覗いた群の総てのゆっくりがくつろいでいる広場に、行き の時よりも遙かに重量の増した音を響かせてドスまりさは到着した。 重労働に滲む疲労を覆い隠すように、ドスまりさは群のゆっくりたちに向かって満面の笑 顔を向ける。 「みんなお待たせ! ゆっく」 「遅いよドス!」×6 「…りー…して…」 開口一番。ドスまりさが口にしようとした精一杯の「ゆっくりしていってね!」という挨 拶は、自分の親も含めた成体ゆっくりたちによって阻止されてしまった。 さらに姉妹や幼なじみが親たちに続いてドスに迫る。 「はやくごはんをちょうだいね!!」×11 「ちょうらいね!!」×27 「………」 口をつぐんでしまったドスの周りでは赤ゆっくりたちが姉たちの口まねをして飛び跳ねて いる。 足下の赤ゆっくりたちに注意を払いながら慎重に帽子を下ろしたドスまりさは、中に押し 詰められた草花を引っ張り出した。 少しだけ…。 ほんの一呼吸だけ俯いていたドスまりさだったが、顔を上げたときには広場に着いたとき のような満面の笑みを浮かべていた。 「遅くなってごめんねみんな!! 草さんも花さんも一杯取ってきたからドスと一緒にご 飯にしようね!!」 しかし返ってきた反応は、 「む~しゃ~む~しゃ~♪ しあわせ~♪」 「ちあわちぇ~♪」 「うっめ! むっちゃうっめえっ!!」 「………ゆ?」 起こした目線の先にあったのは、自分の事など一顧だにせず草花の塊に群がる群のゆっく りたちの姿。ドスの帽子にギュウギュウ詰めにされた草花の塊は44匹の旺盛な食欲に応 えるだけのボリュームが確かにあった。 ただ、そこにドスが入り込むスペースはどうやっても見つけることができない。無理に割 り込んだりしたら、その巨体と重量で草花の塊に群がるゆっくりたちを押しつぶしてしま うだろう。 「ゆぅ…」 一山越えた先にある草原に行くためにお日さまが昇る前から出かけて、持てるだけの草花 を集めるとその重みに苦心しながらも全速力で帰ってきた。もちろん、ゆっくりしている 暇など何処にもなかった。 だからこそ、群に帰り着いたときには暖かく出迎えてもらえると思っていた。 一生懸命運んできたご飯は一緒に食べるものだとばかり思っていた。 今日こそはみんなと一緒に、ゆっくりできるのだと… 「うぅ…、ねぇみんなぁ…。ドスも一緒にゆっくりさせてよぉ…ゆぅぅ…」 ドスまりさの、仔ゆっくりほどのサイズはある瞳が潤み大量の涙が決壊寸前になっていた。 訴えるその声はあまりに小さくて、騒々しく食事を貪る群のゆっくりに届くとは思えなか った。 だが、そのか細い声を聞き届けたのか、一匹のゆっくりがドスまりさの顔を振り仰ぐ。 それは群の相談役でもある成体のゆっくりぱちゅりーだった。 「ねぇ、ぱちゅりー。まりさは」 「ドス…」 瞳を涙で潤ませて縋ってくるドスまりさに対し、パチュリーはあくまで冷静だった。その 貌には哀れみもやましさも、ましてや慈悲など欠片も無い。 ただただ聞き分けの無い子供を見るような呆れ顔でぱちゅりーは噛んで含めるようにゆっ くりと告げた。 「ドスはゆっくりをゆっくりさせることでとってもゆっくりできるゆっくりなのよ? だ からぱちぇたちが『しあわせ~♪』するところを見てドスもゆっくりしてね!」 『ドス』と呼ばれてから耳にたこができるほど聴いてきた台詞に言葉に詰まる。 だがそんなドスまりさの様子は気付かれることが無く、ぱちゅりーの話を改めて聞いた仔 ゆっくり、赤ゆっくりたちが眼を輝かせて騒ぎ出した。 「ゆゆ! ドスはすごいね~!」 「れいむはれいむがゆっくりしないとゆっくりできないのに、ドスはれいむたちがゆっく りしてればゆっくりできるんだね! ならもっとゆっくりするよ!!」 「れいむも~っ!」 「まりさだって!!」 「あら、ありすだってまけないわよ?」 「だからドス! もっともっとゆっくりさせてね!!」(×仔ゆっくり&赤ゆっくり s) 「………そ、そうだね! ドスはとってもゆっくりしてるよ。みんなもいっぱいゆっくり していってね!!」 純真な目で見上げてくる群のゆっくりたちに、ドスまりさはぎこちない笑みを浮かべて精 一杯の「ゆっくりしていってね!」を返す。 ただ群のみんなと一緒にゆっくりしたい一心で暁の頃からかき集めた草花は、ドスまりさ が一口も口にすることなく群のゆっくりたちに食い尽くされていた。 仕方なく、近場に繁茂しているが群のゆっくりたちは「にがくてまずい」と言って口にし ない草を一人で食べた。 涙が流れちゃうのは草さんがとっても苦いからだよ… そう、自分に言い聞かせながら。 * ドスゆっくりは、ゆっくりをゆっくりとさせてくれるすばらしいゆっくり。 ドスゆっくりは、ゆっくりがゆっくりしているとゆっくりできるゆっくり。 だから、ドスは群のゆっくりをゆっくりさせなくてはいけない。 それがこの群でずっと言い伝えられてきた『ドス』の姿。 まりさがドスに成り始めた頃から子守歌のように聴かされてきた、『正しいドスの在り方』 だった。 おいしいご飯を集めるのはドスの仕事。 おいしいご飯をお腹一杯食べればとってもゆっくりできる。 広くて丈夫なお家を造るのはドスの仕事。 雨さんも風さんも入ってこれない広々としたおうちで過ごすことはとってもゆっくりできる。 怖い犬さんや、れみりゃやフランを追い払うのはドスの仕事。 とっても怖い犬さんやれみりゃを追い払ってくれるから安心してとってもゆっくりできる。 こんなにもゆっくりしている自分たちを見ることができて、ドスはとってもとってもゆっ くりできる。 ドスまりさ以外のゆっくりはそう信じて疑わなかった。 ドスまりさは一心に信じ込もうとしていた。 * 季節は移ろい、山が鮮やかに色付き始める秋。 ドスまりさの負担は目に見えて増していた。 実りの秋とも呼ばれる季節だけに集める食料には事欠かなかったが、それでも量を確保す ることが難しくなっていた。 ドス一匹にごはんを集めさせ、自分たちはひたすらゆっくりしていた群のゆっくり。睡眠、 食事と安全が確保されたゆっくりたちの欲求は性欲へと移り、ドスまりさのささやかな懇 願など忘れ去って気の済むまで「すっきりーっ!」を繰り返したのである。 結果、赤ゆっくりが沢山生まれ落ちた。 「こんなにもゆっくりとした赤ちゃんを見ることができたんだから、ドスはとってもゆっ くりできてるね!」 「ゆっくちしちぇいっちぇね!!」×たくさん 「ゆ…ゆっくりしていってね……」 気が付けば、群は総勢100匹を越す規模になってしまった。 しかも群の半数以上が育ち盛りで大食らいな赤ちゃんや子供。 それに加えて、やがてくる冬の為にも保存の利く食料を備蓄しなくてはいけない。 しかし数を増やした成体ゆっくりたちが手伝うことは相変わらず無く、日がな一日子供や 孫のゆっくりたちと広場で遊んでいた。 ドスまりさは朝から晩まで、一時もゆっくりすることなく森を駆けずり回って食料集めに 奔走した。 「ゆっ! ゆぐっ! 木の実さんっ、早く落ちてね…っ!」 瑞々しい草が少なくなったため、木の実を集めるために太い幹に体当たりすることも多く なった。ドスの皮が分厚いとは言っても所詮は小麦粉の皮である。枝に引っかけたものも 含めて、ドスまりさの傷は日に日に増えていった。 さらに夜も寝る時間が減っていた。 冬に向けて備蓄を増やそうとしているのは群のゆっくりばかりではない。この時期は捕食 種と呼ばれるれみりゃ、フランなどの襲撃も激しくなる。 「うー! あまあまー!」 「帰ってねっ! まりさたちは美味しくないよっ!」 「がぶーっ! ………う゛ー!? なんであまあますえないーっ?」 跳ね回るドスまりさにかじり付くことができたれみりゃが居たが、中身をすすろうとして もそれが出来ないことに気付いた。皮が分厚くて牙が餡子まで届かないのである。 ドスまりさは目一杯身を捩って、かじり付いたれみりゃを弾き飛ばした。 「美味しくないっていってるでしょっ!!」 「う゛あぁぁぁっ!! ざぐやぁー!!」 「もう来ないでねっ!! ………はぁ、ねむいよぉ………」 群の安全を守るために、やっぱりドスまりさ一匹で寝ずの番を努めなければならなかった。 だがそんな苦労の甲斐もあって、ドスまりさの群は無事に冬ごもりの日を迎えたのである。 * ドスまりさが作った広くて頑丈な巣。 それはドスの顎が疲れるくらいしっかりした土の斜面を掘り、念入りに床や壁を押し固め て作った横穴である。十匹以上の大家族となったゆっくりは多いが、それでも余裕ができ るだけの空間があった。 隙間風が入らないようぴっちりと入り口が塞がれていることを確認して、ドスまりさは久 しぶりに息を吐いた。中からとても愉しそうな笑い声が聞こえてくるが、声を掛けるよう なことはしなかった。 ずりずりと重い体を引きずって広場の中央まで行くと、そこで留まる。 春にドスとなってから群の為にずっと働き詰めだったドスまりさに、今年初めて訪れたゆ っくりとした時間。 独りしかいないことを少し寂しく思うが、誰の声も聞こえない静かな時間は心地よかった。 「………ゆ?」 傷つき疲れ切った躯を休めていたドスの視界に白く小さい物が写り込んだ。 その年、初めて舞い降りる雪の一枚。 「雪さん……」 見上げれば空はすっかり灰色の雲に覆われていた。 灰色の空を塗り替えるように、白い花弁のような雪は次第に勢いを増して降りしきる。そ れに伴い吹き付ける風も一段と冷え込んできた。 一際強い風に大事な帽子が浚われてしまったが、それでもドスまりさはその場を動こうと はしなかった。 誰かのためにご飯を集めなくてもいい。 誰かのためのおうちを造らなくてもいい。 誰かのために怖い外敵と戦わなくてもいい。 ただただ自分のためにゆっくりできる。 そんな今という時が――例え、時をおう毎に吹雪いてゆく直中にあったとしても――限り なく惜しい。 それに、 「ゆぅ…そういえばまりさのお家を造るの忘れてたね。それにまりさの分のご飯を集め忘 れてたよ…まりさはうっかりさんだね、ふふ…」 それはドスまりさが自分の為のお家を造れば片っ端から群のゆっくりたちに占領されてし まったからであり、僅かずつでも貯め込んでいた自分のための食料の備蓄――その大半は 枯れた草や木の葉だったが――は冬ごもりの日に群のゆっくりたちが「あら、とかいはな ベッドにするのに丁度いい草さんがあるわね」とか言ってすべて持ち去ってしまった。 断じてまりさのうっかりなどではあり得ないし、ドスまりさはそのことを忘れていた訳で はない。ただ、不思議と恨み言が思い浮かばない。 笑い事では無いはずなのにドスまりさは知らず微笑んでいた。 「お家が無くても…、ご飯がなくてもまりさはゆっくりできてるよ…」 群のゆっくりたちをゆっくりさせている時には得られなかった満足感。 まりさは笑顔のまま、次第に雪に埋もれてゆく。 だけど心の奥底からゆっくりしている今、寒さは微塵も感じられなかった。 まりさは穏やかに、長く息を吐いた。 「ゆっくり…していってね………」 * その地方は例年よりも長く寒波が居座っていたため、ゆっくりたちの冬ごもりは長く続い た。 山のあちこちで、多くのゆっくりが冬ごもりの備蓄が足りずに餓えて死んでいったり、多 量の雪に巣ごと押しつぶされていった。全滅してしまった群も少なくない。 だがドスまりさの群は、ドスが寝食を削って食べ物を集めたお陰で食料の備蓄には余裕す らあった。 また雪の量も例年より多かったが、ドスが自分のために作った頑丈で広々とした横穴は降 り積もる雪の重さを難なく耐えきった。 山のゆっくりたちにとっては辛く厳しい冬であったが、十二分の食料と広々とした快適な 住処を得た群のゆっくりは雪がすっかり溶けきるまで巣の中で過ごしていた。 巣から数カ月ぶりに飛び出したゆっくりたちが見たのは、すっかり新緑に覆われた憩いの 広場だった。 大半のゆっくりが歓声を上げて美味しそうな草に飛びつく中、広場の中央にある小山に登 ったれいむが土や苔に覆われた小山の天辺でぐぐっと伸びをする。 「ゆぅ~ん、久しぶりのお空さんだね。お日さまもゆっくりしていってね!」 「木の実さんは食いあきたんだぜ! まりさはもっと草さんを食べるぜ!」 「むきゅ? そういえばドスはどこに行ったの? みんながきびしい冬をがんばってのり こえたんだから、おいしい草さんや花さんをもってきてね! 広場の草だけじゃ足りない わよ!」 「…あら? ドスー? どこにいったのー? …なんでドスがいないのおぉぉぉぉっ!?」 ありすのその一言で、思い思いにゆっくりしていた群のゆっくりたちに動揺が走った。 「ゆっ!? ドスーっ! ドスーっ!!」 「さっさと出てきてね! 早くまりさをゆっくりさせるんだぜ!」 「ドスはみんなをゆっくりさせなきゃいけないんだよ!? なんででてこないの!?」 右往左往するゆっくりたちだが、昨年一年間ずっと快適に過ごしていた広場を離れてまで ドスを探しに行こうとするゆっくりは、結局のところ一匹もいなかった。 その群にドスはもういない。 群のゆっくりたちが生きてゆくためには、その事実を受け入れ、快適であった広場を出て、 ドスに押しつけていた総ての仕事を自分たちでやらなければならない。 一年というゆっくりにとっては長い期間を自堕落に過ごしていたゆっくりたちにそれが出 来るだろうか? * その年の晩秋。 この広場にゆっくりの姿は無かった。 ただその中央にある苔むした小山は、見る方向によってはとても大きなゆっくりに見えた という。 その広場に迷い込んだ里の人間はこう語ったという。 その小山は穏やかで静かな、それはとってもゆっくりとした笑顔を浮かべているように見 えた、と。
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ゆっくりは饅頭の妖怪みたいな奴だと俺は思う。 動物と違って本当に体の作りは饅頭としか言えないのに、動いて人間と喋るからだ。 そんな近年現れた動く饅頭、ゆっくりはペットとして飼われるようになった。 よくもまぁ得たいの知れんものを飼う気になるとは思ったが、どんどん飼う人間は増えているようだ。 何故そんな事を言うのか、今目の前で飼われているゆっくりとその飼い主の人間が目の前に居るからさ。 「やめるんだぜ!! ゆっくりやめるんだぜ!!」 「野良の癖にゴールドバッチのれいむに命令するの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「れいむ、こいつは野良で馬鹿なゆっくりだかられいむがゴールドバッチって事が分からないんだよ」 「そうなの? 本当に野良のゆっくりは馬鹿ばかりなんだね!!」 「あぁ、だから僕らはこうやって野良のゆっくりを駆除しているんだよ」 「まりさは何もしてないんだぜ!! 痛いことはやめるんだぜ!!」 「うるさいまりさだね!! 少しは黙っててね!!」 「こら、れいむ。噛んじゃ駄目だろ? れいむの口が汚くなるじゃないか」 「ゆゅっ、お兄さんごめんなさい!!」 「謝らなくてもいいさ。さ、じっくりゆっくり駆除しようか」 「ゆっくりわかったよ!! まりさはゆっくり死んでね!!」 目の前の光景を、俺はベンチに座って紙パックの珈琲牛乳をストローで啜りながら眺めていた。 楽しそうに笑うれいむとその飼い主。そして、飼い主に踏まれ飼いれいむに体当たりをされているまりさ。 あのまりさは野良のゆっくりだ。そして、野良のゆっくりがこんな目に遭うのは別に珍しい訳ではない。 「はなしてじでくだざい!! まりざはなんにもじでないんでず!! おねがいじまずうぅぅぅ!!」 「お兄さん、野良の癖にお願いとか言ってきたよ?」 「聞く必要があると思うかい? こいつは今僕らの遊び道具なんだから、れいむは楽しめばいいんだよ」 「だね!! まりさはそのまま泣いててね!!」 ゆっくりはその独特な外見である一部の人間から絶対的な人気を得た為に、飼われるゆっくりが増え結果今のバッジシステムが誕生した。 ゴールド、シルバー、ブロンズの3つに分かれているバッチは、その種類によってゆっくりがいかに優秀か表したものだ。 最高峰のゴールドを付けたゆっくり、あのれいむはゆっくりの中でも特別に選ばれた存在とも言えるだろう。 ま、選ばれたって言ってもそれはつまりどれだけ飼い易いかって事なんだが。 「ゆぅ…… ゆぅ……」 「泣かないとか馬鹿なの? もっとれいむたちを楽しませてね!!」 「れいむが頑張りすぎたからだよ。ちょっと待ってな、そこの自販機でオレンジジュース買ってくるから」 「お兄さんありがとう!! れいむ、次はもっと頑張ってお兄さんを楽しませてあげるからね!!」 「あぁ、期待してるからな」 そして、飼われているゆっくりとは別に野良のゆっくりもある一部の人間からある人気を得た。 それが今目の前で起きている虐待だ。 ゆっくりは喋れる事で、人間と同じように苦痛を訴え、助けを請い、無様に死んでいく。 その姿を見て目の前にいるような人間は楽しいらしい。 「今度はじっくり苦しめてあげるからね!! まりさはれいむに感謝してね!!」 「いやだあああああああああああああああああ!!!! はなじでええええええええええええええええええええええええ!!!!」 「れいむ、こいつはしっかり押さえてるから頑張れよ」 「任せてね!!」 また、飼われているゆっくりは野良のゆっくりを同種・仲間とは認めなくなった。 野良のゆっくりであれば、仲間を痛めつけろと言われた所で断られる。仲間意識という奴だ。 だが、飼いゆっくりは野良のゆっくりに対してそんな意識は働かない。自分達にはバッジがあるのに、野良にはバッチが無い。だから仲間じゃない。 そういう風に飼いゆっくりは認識するらしい。 「あれ? お兄さん、まりさ動かないよ?」 「う~ん…… きっとれいむが強くなったから、れいむの体当たりに耐えられなかったんだな」 「そっかぁ……」 「仕方ない、今日は帰ろうか」 「うん、ゆっくり家に帰るよ」 そう言ってれいむの飼い主は足で踏んづけていたまりさを踏み潰すと、れいむと一緒に公園から出て行った。 人間や飼いゆっくりが野良のゆっくりを虐めて殺すようになってからは、こんなのは日常的な光景なのだ。 俺はベンチから立ち上がり、持っていた珈琲牛乳の紙パックをクズ籠にいれてまりさの残骸に近づく。 踏み潰された饅頭がそこにはあった。 「で、今日はやけにあっさり死んだフリするんだな」 俺は潰れている饅頭に声を掛ける。 傍から見てれば危ない人間にしか思えないだろうが、幸い人は俺以外居ない。 そして、潰れた饅頭からはにゅっと二本の腕が生え始めた。 「相変わらず腕からなんだな、気持ち悪いぞ」 「アイデンティティーって奴なんだぜ」 潰れている饅頭こと、ゆっくりまりさは答える。 「饅頭がアイデンティティーねぇ、よく言うぜ」 「脆弱な存在ってだけで弄って殺す野蛮な人間さんには言われたくないんだぜ」 まぁ、兄さんは違うけどなと言いながら潰れたまりさの体は徐々に元の形になっていく。 やがて潰される前の元通りの姿のまりさがそこにはいた。違う点は二本の腕が生えているだけだ。 「完全復活なんだぜ」 「よくやるわなぁ、毎日毎日」 こいつらは毎日このように殺されて、誰もいなくなってからひっそり復活してるらしい。 元々饅頭が動いてる不思議でいい加減な生物なのだ。不死身と知った時も、へぇ… くらいにしか思えなかった。 「じゃあな、兄さん。アディオスだぜ」 「ああ、またな」 そういってまりさは跳ねて行く。行く先は知らない。 野良のゆっくりは不思議な生き物だ。 普段は人間のイメージを演じ、人間を安心させ、誰もいなくなった後に本来の姿に戻る。 馬鹿で、単純で、すぐに仲間割れを起こし、人間から物を奪い、怖いもの知らずで、脆弱で、簡単に倒せる饅頭。 そんな人間のイメージ通り動いて、殺される。 それでも人間を恨まず、殺されてまで人間をゆっくりさせようとするのは何故なのか…… 本当にゆっくりは不思議な生き物だ。 もしかしたら貴方の虐待して殺したゆっくりも、貴方が居なくなった後にこっそり復活しているかもしれない。 作者当てシリーズ このSSに感想を付ける
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■注意事項 大半のゆっくりが生き残ります ゆっくりが人間に勝ち(?)ます ゲスまりさは死にます ■正義の味方のゆっくり 悪い人間からゆっくりを助ける「正義の味方のゆっくり」が居るらしい。 ゆっくりが虐められている畑に颯爽と現れて、 人間を倒してゆっくりを助けるのだと言う。 「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~!!」 「ゆっくりおやさいおいしいね!」 「まだあるからね!ゆっくりたべていってね!!」 本来であれば、瞬殺、全滅モノの光景が広がっている。 しかし、ここはゆっくり選ばなければ成らない。 どのゆっくりを潰すか、どのゆっくりを逃がすか、どのゆっくりを痛めつけるか。 「ゆっ?にんげんさん?ここはれいむのゆっくりぷっぷぴゅぷぷぷぷぷぶぷぶぶべぇ」 比較的身体の大きな成長したれいむを足で踏みつけて圧力をかける。 口や目や、何の為の器官なのか余り想像したくない穴っぽい部分から 餡子がムニュ~っと押し出される。 一気に踏むと皮が破れて汚くなるが、圧力を徐々に掛ける事で中身が穴から流れ出し、 皮の部分の損傷を抑える事が出来る。 「ゆぅぅ!!れいむがぁぁぁっぁ!!!」 「にんげんはしね!ゆっくりしないでじね!!」 その恩恵は大きく、ゆっくりはれいむが殺された事を正しく一瞬で理解した。 以前一気に踏み潰したり、叩き飛ばして爆裂飛散させた際には、 「ゆっ?れいむがいなくなったよ?」 とか 「ゆゆっ!こんなところにあまあまさんがあるよ!」 「ゆっきゅりたべりゅよぉ~!!」 「ぺ~ろぺろ!ちあわちぇー!」 とか言い出したので非常に計画が困った。 「れいむはしねばいいんだぜ!まりささまはにげげげげぇぇぇぇ!?」 「コレは駄目だな。さっさと潰すか」 「どうじでまりざのほうにくるんだぜ!?!?・・・ゆべぇぇ!!」 周囲をゆっくり観察し、ゆっくり選ぶ。 真っ先に仲間を見捨てて逃げ出した大きい固体から叩き潰す。 あの大きさまで育っていると今後も考え方は変わらないだろうし、 畑荒らしを繰り返す可能性も高い。 何より仲間より大きいくせに、見捨てて真っ先に逃げる所が気に入らない。 「ゆぅ~!!ちにちゃくにゃいよぉ~!!」 「れいむ・・・ごめんね!ゆるしてね!」 「まっててね!たすけをよんでくるからね!!」 小さいヤツや、仲間を気にしながらも恐怖で離れていくゆっくりは 今はまだ見逃してやる。まだ役目が残ってるからな。 「ゆっくりたいへんだよ!!」 「れいむたちがにんげんにいじめられてるんだよ!!」 「ゆっくりしないでたすけにいくんだねー!わかるよー!!」 命からがら逃げ果せたゆっくりは、群に戻って仲間の救出を訴えた。 ゆっくり達はこの期に及んで仲間の救出を諦めては居ない。 普通に考えれば、ゆっくりが人間に勝つのは無理であるし、 畑から群の住処までゆっくり移動する間に皆殺しである。 だが、このゆっくり達は希望を捨てていなかった。 「ゆっくり助けてね!ドス!!」 畑では既に潰されて息絶えたゆっくりが散見されたが、 意外な程に死んでいる者は少なかった。 「ゆぐぐぅぅ・・・いだいよぅ」 「だずげて・・・だずげてくだざい」 「おきゃ~さ~ん!いちゃいよぉ~!!」 しかしゆっくり達は、自力では逃げられぬ程に痛めつけられ、 しかし瀕死と言う程のダメージは負わず致命傷も与えられず、 そして心地よい悲鳴が良く聞こえる程度に元気良く弱っていた。 「まりさ・・・もうたすからないのかな?」 一匹のまりさが弱気な台詞を吐く。 「しっかりして!あきらめるなんてとかいてきじゃないわ!」 「でも、もうだめだよ・・・」 何とか仲間を励まそうとするが、言葉が浮かばない。 それ程絶望的なまでに人間は強かった。 「だれか・・・だれかたすけて・・・」 もう駄目かと諦めかけたその時。 「ゆっ!ソコまでだよ!!」 何処からともなく声が響く。森の中からゆっくりの援軍が現れた!! 「ゆっくりを虐める悪い人間さんは絶対に許さないよ!」 「みんな!今助けるから待っててね!!」 勿論助かる訳はない。 威勢の良いゆっくりが数匹人間に襲い掛かるが、返り討ちにあう。 苦しむ仲間、殺されたゆっくりの死体。返り討ちにあう、腕自慢のゆっくり達の姿。 援軍として現れた筈の、群のゆっくり達は恐怖の震える。 飛び出した最初の数匹に続くものは居ない。 「ゆっ!ソコまでだよ!!」 再び声が響く。皆一斉に声の方を振り返ると、ソコには額に正義の味方と書かれた ゆっくり達が居た。 良く見るとヒーローマスクっぽい意匠や、眼帯風やら、何がしかのラクガキが顔に 描いてある。 「やっぱり助けにきてくれたんだね!!」 「せいぎのゆっくりがたすけにきたよ!!」 「なかまたちのかたきはとるよ!!」 「何だお前ら?人間に勝てると思ってるのか俺は一回刺されただけでしぬぞうわー!!」 現れた正義のゆっくりの活躍によって、人間は倒された。 しかし犠牲も大きい。中間達の多くは傷つき、殺された者もいる。 その光景を間近で見ていたゆっくり達のショックは大きい。 「ゆ!人間は危険だから近づいちゃいけないと教えた筈だよ!!」 群のゆっくりに話しかけているのはドスまりさである。 額に肉と書かれているが、幸いな事に笑うものは居ない。 昔ドスが、人間と戦って付いた傷である為、皆ドスを信頼していた。 正義のゆっくり達の顔に油性マジックで刻まれた傷跡も、多くの戦いを潜り抜けてきた 証である。 「今回はコレだけの犠牲で済んだけど、助けに来るのがもう少し遅かったら」 「皆殺しにされてたんだねー!判るよねー!?」 「ゆ、ゆぅ・・・」 畑に来て殺されかけて傷を負ったゆっくり達は皆うな垂れている。 助けに来た森のゆっくり達も、人間に敵わなかった事や、目の前でゆっくりが 殺されている事を見ている為、ドスには逆らえない。 「他の人間が来る前に早く森へ戻るよ!!」 「ドスが人間からお野菜を手に入れたわ!運ぶの手伝って!!」 「動けるゆっくりは怪我をしたゆっくりに手を貸してね!!」 ドスと、正義のゆっくりの指揮の元で迅速に撤退作業が開始される。 ドスは皆から信頼されていた。 群の危機を何度も救っている実績がある。人間とも戦った。 人間を倒して野菜を手に入れた事もあるし、冬に備えて食糧の備蓄が必要だからと その大事な野菜を自分は食べずに群の皆に分けてくれる。 普通のドスと言えば、人間に逆らうな!だの、畑に行くな!だの、命令ばかり。 畑に行った仲間を助ける事もせずに、逆にルールを破ったからと制裁したりする屑だ。 群の集めた食料を、備蓄と称して自分だけで独占したりもする。 ドスが居るとゆっくり出来ないが、この群のドスは格が違う。 今回だって人間に殺されそうな仲間を助けてくれた。 群のゆっくりは皆、肉ドスの事を心から信頼していた。 だが、そうは考えないゆっくりも居た。 ゲスまりさである。 このまりさは、こう考えていた。 「ドスがにんげんに勝てたのは、にんげんがよわいからだぜ!!」 まりさは一匹のゆっくりぱちゅりーと対峙していた。 「むきゅ!まりさ、なんのつもりなの?」 「もうおまえたちのいうことはきかないんだぜ!!」 ぱちゅりーの顔には眼帯のラクガキがある。 群の中では正義の味方のゆっくりとして慕われているゆっくりだ。 「むきゅ!群のルールは守って貰わないと困るわ!」 「そんなひつようはないんだぜ!まりささまはつよいんだぜ!!」 突然まりさが飛び掛り、ぱりゅりーを突き飛ばす。 人間と戦った勇者である正義のぱちゅりだったが、まりさは一撃で倒してしまった。 「やっぱりまりささまのほうがつよいんだぜ!!」 まりさ種がぱちゅりー種を倒す事など珍しい事ではないが、 顔にラクガキのある正義のゆっくりを倒したと成れば話は別だ。 まりさの実力は周囲の認める所となり、群でも一目置かれるだろう。 群のルールに不満を持っていた一部のヤンチャ者達は、増長したまりさに率いられて 人間を討伐に畑へ出かけていった。 「ゆへへ!にんげんをたおせばドスにでかい顔はさせないんだぜ!!」 自分も人間を倒して力を誇示し、野菜を奪って食料を握れば 群のゆっくりを掌握できる権力の座に就ける。 もう誰かに従う必要も無い。森で一番偉い存在になれるのだ。 「たいへんなんだよー!わからないよー!!」 「むきゅ~ドス・・・ごめんなのだわ」 この異変は直ぐにドスの耳にも入る。 (ドスとは勿論、額に肉の文字がある哀れなアレである) 正義にゆっくりに手を出したまりさが、群のルールを破って人間の畑へ行った。 「大変だね!何匹付いていったの?」 「むきゅ・・・3匹よ。前から問題のあった子だわ」 「この前助けてあげた畑を襲ったゆっくりだよー!」 「仕方ないね・・・群の皆を集めてね」 「“助け”に行くんだねー?わかったよー!」 「ゆぐぅっ・・・こんなはずがないんだぜ!?」 畑に横たわる三体のゆっくりは既に動く力も残っておらず、 うめき声を上げるばかりである。 まりさだけはまだ闘争心を捨てずに挑みかかるが、自惚れの激しいまりさでも それが遊ばれて居る事ははっきりと感じていた。 だが、敵わないと悟ったとしても、頭に血の上ったまりさには逃げ出す事も、 諦めて命乞いする事も選択肢には無かった。 「今回はスパンが短かったな。まぁ数が少ないし離反者か?」 「まりささまがさいきょうなんだぁー!!」 「ほれ!」 飛び掛ったまりさをボレーシュートした所で、声が聞こえた。 「ゆっ!ソコまでだよ!!」 声のした方を振り返ると、ソコには額に肉と書かれたドス達が居た。 「ふっバカな奴等だ!勝てると思ってるみたいだな」 「ゆっ、群の仲間を虐めるお兄さんは絶対に許さないよ!!」 「いけぇぇー!ドスゥゥ!!」 「ドスバックブリーカーだぁ!!」 「さぁ来い!ドス!実は俺は一回さされただけでしぬぞうわぁぁぁっぁぁぁっぁ!?」 「そこだよ!いまだよ!」 「ジャイアントドスバスターを出すんだ!!」 「くそっ!危なかった・・・直撃なら死んでた、ってうわぁぁぁっぁぁ!?」 「とどめよ!あいてはむしのいきだわ!!」 「でるよ!ドスのキメワザ!空中真空ドスチョップが!!」 「ヘルメットが無かったら即死だった・・・まだ死ぬわけにうぎゃあぁぁぁっぁぁ!!」 「ありえないんだぜぇぇぇぇーーー!?!?!?」 自分は正義のゆっくりよりも強い筈だ。ドスや人間にだって負ける筈は無い。 でも人間には敵わなかった。人間はケタ外れに強かった。 自分が勝てなかった事は悔しかったが、だが、ドスも死ぬ。 人間より強いと自惚れ、本当は強くないくせに群のボスとしてイイ思いをして 今までまりさ達を騙して来た報いに、この超強すぎる人間に殺されて思い知るがいい。 そう思っていたのに、目の前の光景は理解を超えていた。 「なぜなんだぜ?」 本当を言えば、今現在自分が人間に負けて死にかけてる事実でさえ、理解したくは無い。 しかし目の前で自分が勝てない人間が、ドスに負ける光景など、 今のまりさの餡子脳をフル回転しても到底判らない事であった。 「うぐっ!!こんな筈ではぁぁぁー!!ドサッ!バタン!キュゥー!」 人間はまりさの直ぐそばに倒れてしまった。最早虫の息である。 「なぜ・・・どうして・・・なぜ・・・」 「ん?知りたいのか?まぁいい。明度の土産だ」 幾ら人間がゆっくりを殺して、怖いと思い知らせても、ゆっくりは直ぐに忘れる。 それに、畑で仲間が殺された事を見ていない、森のゆっくりは 人間の怖さなど直接見ていないから知らないのだ。 命からがら逃げ延びたゆっくりは、野菜の美味しさと、生き延びた自信だけを学習する。 そこで、八百長を演じるのである。 ゆっくりに畑を襲われた場合に、ワザと殺さない程度に痛めつけ、数匹は逃がす。 逃がすのは、ゲスではなく出来るだけ賢く仲間思いのヤツが良い。 森に逃げたゆっくりが、群に緊急事態を知らせる。 畑で人間に虐められていると。 そうしてドスや、正義のヒーローゆっくり達が助けに来るのだ。 群のゆっくり達も、仲間の危機に畑まで駆けつけて、その惨状を目にする。 目の前でゆっくりを殺して人間がとても怖く危険な存在である事を見せつけるのだ。 その後でドスや正義のゆっくりにワザと負けて、生ゴミや屑野菜を渡す。 冬篭り用の貴重な食料だが、人間が直接渡すとゆっくりは増長するし、 食べ尽くしてもまた人間から貰えば良いと考えるようになる。 人間を倒した強いドスと正義のゆっくりの功績を、判り易い形で見せる事で、 群のゆっくり達に、ドスに従う気持ちを起こさせるのだ。 畑を襲ったゆっくりを、ドスが制裁しては群のゆっくりの心象も悪くなる。 野菜が食べたいのに畑は駄目だと意地悪するドスの命令も聴かなくなる。 理解出来るゆっくりも居るが、知能の低いゆっくりも多いのだ。 畑に行っては行けないと言う理屈を、仲間を目の前で殺される所を見て学習させる。 ドスが制裁するのではなく、人間に殺される所を実際に見せる事の意味は大きい。 そしてソレをドスが助ける事で、畑は危険であるので近付いては駄目だと言う事と ドスはゆっくりを守っている事を、バカでも判り易く教育する。 駄目だと叱ったり、○○するなと教えたり、暴力で制裁しても 奴等は逆恨みする上に教えた事は直ぐに忘れる。だからドスの群の教育は大抵失敗する。 ドスは叱る役ではなく、助ける役に徹する事で、群の信頼を得るのだ。 実際、ドスと言えど人間に敵わなかったり、冬篭りの食料管理を、 「群が集めた食料を独占してる」と勘違いしたり、群の維持は楽ではない。 ドスの力を判りやすく誇示し、ドスのお陰で手に入った食料だと認識させる事で 群のゆっくり達に、ドスや正義のゆっくりに従う事が正しいのだと教育するのだ。 正義のゆっくりを演じているのはドスと人間が選んだ幹部ゆっくりで、 比較的知能の高い個体を宛がっている。 幹部ゆっくりは、通常は群の為に高い知能を生かして助言などをするのだが、 知能の低い一般のゆっくりの中には、目先の事しか考えない余りに 言う事を聞かない者も居る。 「すっきりするな」「食べたいだけ食べるな」など、ゆっくりに反する教えを 敵意と誤解し攻撃するケースさえある為、幹部ゆっくりが弱いと群の規則が 維持できない。正しい助言を暴力で返り討ちにされるぱちゅりー種などがその良い例だ。 全てを悟り、己の浅はかさと無力さを知ったまりさは怒っている。 「なぜなんだぜ!?なぜこんなことするんだぜ?」 人間が強いのは判った。でも何故こんな真似を!? あのドスや正義のゆっくりに勝たせてやって、あいつ等は良い思いをしてるのに! 何故自分はこれ程苦しめられて、殺されるのだ?まりさの怒りも最もである。 「まりさを騙して・・・こんな目に合わせて!!」 まりさはゲスだが、バカではなかった。自分より強い相手には逆らわず、 命の危険は回避して生きてきた。 そしてゆっくりの中では比較的上位の強さを持っていた。 人間がこれ程強い事を知っていれば、迂闊に戦いを挑んだりはしなかっただろう。 故に、群のドスや正義のゆっくりが理不尽な理屈をかざして自分達に圧政を強いて 良い思いをするのが納得行かない。 事実、連中は人間より弱い筈だ。今、人間に殺されかけている自分よりも弱かった。 森のゆっくりを騙して人間より強いと思わせ、訳の判らない規則を作って自由を奪い、 奴等の性で人間が弱いと勘違いして死に掛けてるのだ! 「どぼぢで・・・ごだえろぉぉ・・・!!」 「強いて言えば、そうだなぁ~・・・お前がゲス、だからかな?」 ゆっくりは人間の近くに住むとゲス率が高く成ると言う統計がある。 情報の信憑性や精確性に疑問もあるが、一説によると人間に接する事で 本来のユックリズムに変調をきたしてしまう可能性があるらしい。 他にも、人間の浅ましさや他者を出し抜こうとする汚さを学だとか、 人間の良い生活を知って森の生活に満足出来なくなるとか、 森の自然が人間に破壊されている影響だとか、諸説ある。 とにかく、森のゆっくりのゲス率を下げて、無害化する方法もあるかもしれない。 その調査の一環として、ゲスを駆除し、賢いゆっくりに群を統率させ、 人間の怖さを学習させる実験をしているのだ。個人的に。 普通に潰しているとゲスは大抵逃げて生き延びるし、 賢いヤツもゲスに潰されたり、周りに流されるだけの無知なゆっくりに殺されたりで 悪循環していくと予想している。 今回のまりさのような強いゲスは人間が殺して、周りに流されるゆっくりは群に管理させ 賢いヤツを選んで八百長で権力を持たせて群のトップにおいた場合、果たして森の ゆっくり達がどう変化するのか見てみたかった。 「ぐあぁぁっぁ!!まさかこんな強いドスが居るなんてぇぇぇ!!!」 「ゆっ!?」 説明を終えて突然大声を上げる男にまりさは一瞬驚く。 「だがタダでは死なんぞ!!畑を荒らしたまりさも道連れだぁぁぁぁ!!!」 「ゆ!?ゆゆゅっ!?ゆっ!!ゆー!!」 男の手がゆっくりとまりさの方に伸び、その口を塞ぐ。 最早叫び声も、真実を語る事も出来ない! 天高く掲げられたまりさは、群のゆっくり達の眼前で握り潰された。 「ゆっ!人間さん、いつもありがとうね!!」 結果としては、ドスの話では群の統率力は格段に良くなって、群のゆっくりも ドスや幹部の言う事を聞くように成ったらしい。 すっきり制限も冬の食料も、以前よりは管理しやすくなったそうだ。 一方で今回クーデターを起こそうとしたまりさの様なゆっくりも定期的に現れるし、 ゲスも少なくなりつつあるとはいえ、その数が一定数以下には成らない。 ゲスがゲス化するのは、ゆっくりが全滅しない為の、種としての多様性の確保ナンタラ なのかもしれない。 まぁ群の管理体制が崩壊して、畑にゆっくり波状お食事されてはコッチも堪らないので ドスには今後も頑張ってもらいたい。 肉に対する負い目もあるし、出来るだけ協力するつもりだ。 どうせ新陳代謝で消えるだろうと安易な気持ちで書いた額の肉は 時間が経っても一向に消えることは無かった。 「額の肉、似合ってるぞ」 「ゆへへ~ん!」 最初遊びで描いてやった時は子供みたいに一日中凄い泣き喚いて困ったものだ。 八百長で一回勝たせてやると言って何とか宥めたが、結果的にはこの演出も ドスが群れを纏めるのに役立っているのだから無駄ではなかったのだろう。 別に群の幹部の連中にまでラクガキする必要は無いんだが、ドスを気遣って 人間と戦った時の傷設定を吹聴したら、なんか顔にラクガキされたがる様になった。 しかし、まぁ、いい加減毎回死んだ人間が生き返って畑で八百長試合してるんだから バレそうなモノだが・・・ いや、冬篭りの餌の備蓄も出来ない連中にそのレベルの知能は無いか。 それに気付く位賢いヤツはドスの真意も判ってるって事なのかね・・・? 「じゃ、ドスたちは森に帰るね」 「ん?あぁ・・・って、ゲスに付いてきた奴等まだ生きてるけど良いのか?」 ゲスまりさに唆されて畑に来たゆっくりが三匹ほど居たが、 皆そそくさと帰り始めている。 気が付くと、ドスと数匹の幹部しか残っては居ない。 「そのこ達は再犯だから仕方ないよ。良かったら食べてあげてね!」 「あぁ、じゃ、非常食にでもするか」 ドスが駄目なゲスを見捨てるのは珍しい事ではないだろう。 八百長の正義の味方ゴッコも、畑の危険性を教えるのが本来の狙いなので、 畑を襲ったバカなゆっくりを無傷で帰すつもりも無いのだが。 しかし群のゆっくり達は仲間を助ける為にドスを呼びに行ってココに駆けつけた筈では? なんかドスの活躍見て屑野菜貰って満足して帰って良いのか? 本当に忘れてるのか?もしかして最初から助ける気ねーだろ・・・ 「ドス・・・タイガーマスクって知ってるか?」 「ゆ?お兄さん、そのマジックで何する気なの?」 「キイロとクロだからまりさにはよく似合うと思うんだ」 「や、やめてね!!考え直してね!!」 人間からゆっくりを守る英雄「タイガーまりさ」の試合は大人気で 噂を聞きつけ一目見ようと遠くから訪れるゆっくりも増えた。 ドスまりさの群れは見物料の興行収益で大層潤ったそうな。 作者当てシリーズ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11995/1227272050/ このSSに感想を付ける
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駄文長文詰め込みすぎ注意。 愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。 希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。あたま悪いです。 そしてガチのHENTAIです。どうしようもないです。 前編に虐待要素はまったくありません。 それでも構わないという方はゆっくりどうぞ。 * 暑い日が続いていた。 窓の外では、煩いくらいに蝉が鳴いている。 日差しもいよいよ本格的に強くなる正午少し前、俺と姉ちゃん達はリビングでぐったりと横になっていた。 「暑いわ~。弟ちゃん、なにか涼しくなるようなもの無いの~?」 ソファに横になり、手にした団扇で自分をあおぎながらゆかりん姉ちゃんがいつものように無茶振りしてくる。 「そんなものがあったら俺がまず使ってるよ……で、ひじり姉」 「なむさん~。暑いです~……心頭滅却しても気温は下がりませんね~」 さくっとスルーし、ひじり姉に水を向ける。 俺の言葉を聞いているのかいないのか、俺に後ろから抱きついて姉妹一の巨乳を躊躇なく押しつけながら、ひじり姉はぼやいた。 「ならさ、俺にひっつくのやめない? ひじり姉も暑いでしょ?」 「弟さんを感じていると暑さも忘れられるんですよ~」 「俺はクーラーかよ」 「私達にとってはクーラー以上ですよ?」 そう言って、ひじり姉が更に密着してくる。 ゆっくり特有の、もちっとしながらもサラサラして肌理の細かい肌が俺の身体を優しく擦って、何とも言えず心地いい。 「こぼね~。弟様の身体を抱いていると、暑さも寒さも気にならなくなるのよ~」 そして、そんなひじり姉に同意するように頷き……俺の恩師たるゆゆ先生は正面から俺に抱きついてきた。 ひじり姉よりふたサイズ上というたっぷりとした膨らみが、俺の胸板とゆゆ先生の間で柔らかく潰れる。 「ゆゆ先生まで……」 「でも、私達がこうしていると、弟様も少しは楽になるでしょう?」 「それは……」 その通りだった。 ゆゆ先生、ゆっくりゆゆこ。ひじり姉、ゆっくりびゃくれん。 捕食種と希少種、しかも胴付きゆっくりという俺の恩師と姉さんの体温は、人間である俺よりもほんの少しだけ低い。 理屈は俺も詳しく知らないが、ゆっくりというのはサイズが大きくなるほど体温は下がるらしいのだ。 赤ゆっくりは手に取ると明らかに人間より暖かいし、胴なしの成体ゆっくりで大体人間と同じくらい。 胴付きやドスは平熱の低い人間くらいになる。 まあ、と言っても36度5分が36度になる程度なのだが、これが以外と体感的には馬鹿にならなかったりするのだ。 「弟さん、涼しくないですか?」 「弟様、気持ちよくない?」 「いやそれは気持ちいいし涼しいけどさ……」 もっとも、ひじり姉とゆゆ先生に抱きつかれている時点で俺の体温が若干上昇しているからプラマイゼロな気もするが。 特に身体の一部はなんか脈打ってるし。 「で、でもこの状況はあんまり良くないと思うんだ。ね、ゆかりん姉ちゃん?」 「そう? 私には、弟ちゃんもひじりもゆゆも、すごく幸せそうに見えるんだけど? 止めると私が悪役になりそう」 自分で自分を扇ぎながら、ゆかりん姉ちゃんが寝言をゆった。 いや止めようよ姉として。 「いや止めてもいいと思うよっ? 特に今日は俺が昼食当番だから、このままじゃ飯の準備出来なくなっちゃうしさっ」 「お昼ご飯なら、お素麺でもゆがけばすぐですよ?」 「こぼね~。そうよ弟様、せっかくこうしているんだから、涼しくなるまでゆっくりしましょ?」 「ゆゆ先生……涼しくなるまでゆっくりしてたら昼食用意出来ないよ? お腹空くよ?」 「弟様とこうしていられるだけで、私はお腹いっぱいになれるから平気よ~?」 「なにそれこわい」 健啖家なゆゆ先生を満腹にさせるって俺どんだけだよ。 と言うか、俺どこか喰われてるのかひょっとして。 「私も、弟さんとこうしていられるならお昼抜きでも構いませんよっ、南無三っ」 「ひじり姉は本当に抜いても平気だもんなあ」 肉体的な欲求に弱いゆっくりの中で、ひじり姉のびゃくれん種は割とその手の欲望に対して耐性がある。 絶食や不眠はもちろん、虐待などの肉体的苦痛にもかなりのところまで耐えられるのだ。 ひじり姉曰く、びゃくれん種には餡子の中に『苦行スイッチ』なる心理スイッチ的なものがあって、それをオンにすると色々無茶が利くらしい。 ゆっくりてんこ種のように痛み苦しみを快楽に変換するわけではないが、なんだか我慢出来るようになるのだそうだ。 「で、でもさ、ゆかりん姉ちゃんはご飯食べなきゃ……」 「私は涼しくなるまで眠ればいいんだから気にしないでいいわよ?」 「寝るのかよ!?」 さすが一日の半分は眠って過ごせるゆかり種。 「ええ。その時は、折角だから弟ちゃんに添い寝お願いするけどね」 「えっと、前と後ろはもう埋まってるぞ?」 「それじゃあ……私は上で我慢してあげるわ」 「俺の上ってそれ我慢じゃないよね? むしろマウントポジションって絶対優位だよね?」 「いいじゃないの~。どうせもう、ひじりとゆゆを侍らせているんだから……お姉ちゃんも侍らせなさい」 「それ日本語的におかしいよねっ!?」 ソファから降り、ゆかりん姉ちゃんが近づいてきた。 長い金色の髪の毛が、白い肌の上で揺れる。 やばい。 このままゆかりん姉ちゃんにまで密着されたら、本当に動けなくなる。 肉体的な意味でも、オンバシラ的な意味でも。 「ゆゆ、ひじり、ちょっと体勢変えて。私達で弟ちゃんを涼しくしてあげましょう」 「判りました、ゆかりん姉さんっ」 「こぼね~。はい、ゆかり様」 「ふたりとも素直すぎでしょおおぉぉ!?」 俺の抗議も空しく、ひじり姉とゆゆ先生が俺の腕を取って優しく仰向けに寝かせてくれる。 もちろん、ふたりとも左右から俺に密着したままだ。 ゆゆ先生とひじり姉の髪の毛が腕をくすぐる。 わき腹にふたりの胸が押しつけられる。 その柔らかな感触に思わず動きを止めた俺の胸を、ゆかりん姉ちゃんの金髪がそっとくすぐった。 「ゆ、ゆかりん姉ちゃんっ……」 「さあ弟ちゃん、お姉ちゃん達のゆっくり抱き枕でゆっかりお昼寝しましょうねっ」 「無理! 子供の頃じゃないんだからこの状況で昼寝は無理!」 確かに小学校上がる前は昼寝の時にゆかりん姉ちゃんやひじり姉やえーりん姉さんに添い寝してもらってたけど! つかほとんど抱き枕になってもらってたけどっ! でも今は無理! 眠ろうにも下半身の一部がぼるけいのしてるから! 眠気とか吹き飛ぶから! 「大丈夫。ちゃんとすっきりして、眠らせてあげるから……ね?」 「容疑を否認する気まるでないよねっ!?」 ゆかりん姉ちゃんの身体が、俺の上に重なってくる。 微かな重みと、すべすべでもっちりした肌の感触が全身に伝わってくる。 普段より肌の接触面積が広いから、心地よさもドキドキ感も倍増だ。 「弟さん……お姉ちゃんも、してあげますよ?」 「先生も……弟様なら、個人授業はいつでも歓迎よ……?」 「小中通してほとんど個人授業だったよねゆゆ先生っ」 いやHENTAI的な意味での個人授業なのは判るけど! むしろ受けたいけど! でも今は駄目なんだ! だって、俺はまだ……っ! 「姉ちゃん……!」 迫り来るゆかりん姉ちゃんに向かって口を開きかけ。 同時に、リビングの扉が開いた。 「……何してるの、あなた達」 赤と青に塗り分けされたナースキャップが俺達を見下ろしている。 その口調は普段のクールを通り越して氷点下だ。 「え、えーりん姉さんっ?」 「えーりん様っ!?」 「ちょ、なんで姉さん帰ってきてるのよっ!?」 「往診で村を回っていたから、家でお昼を済まそうと思ったのよ」 慌てるゆかりん姉ちゃん達に、冷たく告げるえーりん姉さん。 「そうしたら、リビングであなた達が弟君と半裸で絡みあっているなんて……ねえ、これって一体どういう事なのかしら?」 「あー……その、ゆかりん姉ちゃんがあんまり暑いから水着になろうって言い出してさ……」 「そ、そうそうっ。半裸じゃなくて水着なのよ、水着っ。健全健全っ!」 「そうですよっえーりん姉さんっ、ちょっとビキニなだけです!」 「私もゆっかりブラジルなだけよっ!」 「今年はみんなで海に行きたいねと弟様が言われたので、それならと水着を見てもらっていたんです~!」 「待ってゆゆ先生、それじゃ俺が水着見たがったからこうなったみたいなんだけどっ!?」 「こぼねっ? 弟様、私の水着見たくなかったのっ?」 「ごめんなさい超見たかったです! だからそんな悲しそうな顔しないで!」 やいのやいの。 水着姿のままじゃれ合う俺達に、結果的にのけ者状態になったえーりん姉さんが、青筋浮かべて静かに告げた。 「あなた達……正座」 「「「「はいいぃっ!」」」」 * 1時間後。 「弟君、午後は時間ある?」 正座説教のあと、俺の茹でた素麺(薬味は葱と生姜、それに姉ちゃん達用に缶詰みかん)をみんなで手繰っていると、えーりん姉さんが尋ねてきた。 「んぐ……特に予定はないけど……なに?」 口の中の素麺を呑み込み、答える。 姉さん達の指導のお陰で、夏の課題を順調に消化している俺に時間はたっぷりあるのだが、使い途はあんまりない。 この村ではぶらりと遊びに出るという事も出来ない。 なんせ最寄り駅まで自転車で30分、街までは更に電車で1時間かかるのだ。 道路は整備されているので自動車があればアクセスは悪くないのだが、残念ながら俺は無免許。 となれば、学校の友人と遊ぶのも思いつきでは難しい。 夏休みの空いた時間は山に入るか畑に出るか、さもなきゃ家で姉ちゃん達に振り回されるくらいしか使い道がないのだ。 ……彼女がいればまた少しは変わるんだろうけど、うちの村に俺の同年代の女の子いないし、学校は男子校で出逢いもない。 合コンに誘われたりはするけれど……正直、姉ちゃん達の相手で今は手一杯なんだよなー。 ともかく。 農業と林業と加工場くらいしか産業のないこの村で若者の娯楽は枯渇しており、夏休みの俺は常に暇を持て余しているのだった。 ネットは光なんだけどね。 「御祖母様が人手を欲しいと仰ってるのよ」 えーりん姉さんの言葉に、全員の箸が止まった。 お互いに視線を交わし……そして同時に口を開く。 「ばあちゃんが?」 「ええ、そうよ」 「南無三っ……ということは、またドスでも出たのでしょうか?」 「それは不明。そうかも知れないけど、単に孫の顔が見たくなっただけかもね」 「待ってよ姉さん。もし害ゆっくり絡みなら弟ちゃんじゃなく、まず母さんかその部下が出向くべきじゃない?」 「御祖母様は弟君を指名してるの。母さんならまだしも、部下を寄越して機嫌損ねたら大変でしょ」 「こぼね~……弟様の御祖母様って、この辺りの山林の半分を所有されてるんでしたっけ?」 「ここの裏山と向こうの山の半分をね。随分前に法人化しているから、厳密には御祖母様個人のものではないけれど」 俺達の言葉にひとつひとつ返していくえーりん姉さん。 言葉の洪水をワッと浴びせられたのにまったく動じてないあたり、流石この村一番の天才ゆっくりだ。 いやまあ、実は頭の回転自体はゆかりん姉ちゃんも相当なものなんだけど……姉ちゃんはその使い方が偏ってるからなあ。 俺へのセクハラに中枢餡の8割使ってるって公言してるくらいだし。 「それで、どう? 弟君が動けるようなら、午後から御祖母様のところにお手伝いに行って欲しいのだけど」 「それって母さんからの伝言?」 「プラス、父さんよ。最初の連絡は父さんのところに来たらしいから」 「……親父、ばあちゃんには逆らえないもんなー」 婿養子の親父が母さんに泣きつくところがありありと想像出来る。 ばあちゃん相変わらず容赦ないな。 「で、俺名指しなんだよね……姉さん達は呼ばれてないの?」 素麺を一口啜る。 うん、やっぱつゆには生姜だ。 「特に来てくれとは言われてないわ。まあ……」 俺に合わせて、えーりん姉さんも素麺を口に運ぶ。 ちなみに姉さん達のめんつゆは俺特製のみりん多め甘口だ。 「来るなとも言われていないから、弟君についていくのは問題ないと思うけど?」 「はいっ! じゃあ私は一緒に行きます!」 「こぼね~。えーりん様、私もご一緒して良いのですか?」 「ゆゆこなら御祖母様もよくご存じだし、大丈夫だと思うわ」 えーりん姉さんの言葉に、ひじり姉が元気に手をあげた。 ゆゆ先生も主張は控えめながら行く気満々だ。 「ん~……御祖母様のところねえ……」 ただ、ゆかりん姉ちゃんだけは微妙な表情を浮かべる。 「ゆかりは行かないの?」 「まさか。弟ちゃんと一緒にいられる機会を逃すわけないでしょ。ただ……御祖母様のところだと、道中は一緒にいられないから」 「「あ~……」」 ぼそりと呟くゆかりん姉ちゃんに、ひじり姉とゆゆ先生が同時に頷いた。 「もちろん迎えに来ちゃいますよね」 「そうしたら、私達では追いかけるの無理ですからね~」 「そう言うこと。私達はここで弟ちゃん見送って、御祖母様の小屋に着いた辺りでスキマ移動することになるから、それはちょっと残念かなって」 素麺をちゅるんとのみ込み、ゆかりん姉さんが俺を見る。 「……なんだよ?」 「弟ちゃんが私達と一緒に歩いていってくれるなら、お姉ちゃん嬉しいんだけどなー?」 「やだよ。姉ちゃんすぐに歩くの面倒がってスキマ移動するか、俺におんぶや抱っこさせるじゃないか」 「判ってないわねぇ……そうやって道中弟ちゃんにセクハラするのが楽しいんじゃないの」 「ゆかりん姉さんは少し自重した方がいいと思いますっ。南無三っ」 「そうですよゆかり様、いくら弟様が野良仕事で鍛えていても、私達三人を交代で抱っこして山道登っていたら倒れちゃいます」 「ゆゆ先生って以外に容赦ないですよね?」 ぷちスパルタ教育なのは小学校の頃から変わらないのかー。 だけどまあ、ゆかりん姉ちゃんの言うことも判らないではない。 ばあちゃんからお呼びがかかったと言うことは、十中八九俺には迎えが来るからだ。 「それで弟君、御祖母様のところには行くの?」 「あ、うん。昼飯片付け終わったらすぐに出るよ」 「判ったわ。それじゃあ、そう御祖母様に伝えておくから」 そう言って携帯を取り出すえーりん姉さん。 どうやらばあちゃんにメールを送るらしい。 山中に住んではいるが、ばあちゃんの家の側にはばあちゃん自ら携帯会社に掛け合って建てた基地局があるからなあ。 アレのお陰でこの辺り一帯は山中でも携帯が通じるんで村のみんなもかなり助かってるんだ。 ちゃっかり基地局の保全役を携帯会社から引き受け、報酬貰っている辺りは孫として見てもどうかと思うが。 「ところで、姉さんは一緒に行かないの?」 メールを打ち終えたえーりん姉さんに、ゆかりん姉ちゃんが声をかける。 「そうね……往診は終わったし、急患が入らなければ余裕はあるけど……ゆかり、何かあったら送ってくれる?」 「その位お安い御用よ」 そう言うと、姉ちゃんはにやりと笑った。 「それじゃあ……えーりん姉さんも水着用意しなきゃね」 「水着? なんでそんなもの……」 「御祖母様のところには池があるの忘れた? 昔は夏になるたびに遊びに行って、弟ちゃんと一緒に水浴びしてたじゃない……裸で」 「ぶふっ!?」 はっ、鼻に素麺がっ!? 「なっ……ゆ、ゆかりっ! この歳で弟君がそんな事応じてくれるわけないでしょ!」 狼狽してるのか、微妙にずれたことを咎めるえーりん姉さん。 というか姉さん、俺がOKなら今でも裸でいいのか。 「だから水着を用意するんでしょ? それなら弟ちゃんも一緒に遊んでくれるし」 「俺に拒否権ないの?」 「弟ちゃん、拒否するの?」 「……そりゃまあ、水着なら拒む理由はないけどさ……」 えーりん姉さんも一緒なら、さっきみたいなことはないだろうし。 野外では常識的だからな、えーりん姉さんは。 屋内で他の人の目がない時はゆかりん姉ちゃん並にリミッター外れたりもするけれど。 「ね? だからえーりん姉さんも水着選びましょう。弟ちゃんが向こうに着くまで時間はあるんだし」 「……ま、まあ……弟君と一緒に水浴びできるのなら……仕方ないわね」 うんうんと、えーりん姉さんが自分を納得させるように頷く。 何が仕方ないのか若干判らないけど、そういうことらしい。 俺としては1年ぶりにえーりん姉さんの水着姿を見られるわけで、普通に嬉しいのだけど。 えーりん姉さん目茶苦茶スタイルいいし。 まあ、これはゆかりん姉ちゃんやひじり姉やゆゆ先生にも言えることだけど。 母さんの育成の賜なのか、それともチェンジリングという出自のせいか、姉さん達の身体は普通の胴付きと比べてもなお人間に近い。 流石に顔はゆっくりらしい丸みを帯びているから人間と見間違われることはあまりないけど、体つきは人間と変わらない。 むしろ胸とかはお尻とかは、ゆっくり特有の弾力ある皮のお陰で人間以上に綺麗な形をしていたりする。 ゆゆ先生なんて、ロケットおっぱいってきっとこういうのを言うんだろーなーって感じだしな。 さっき水着を見た限りじゃ、ひじり姉とかまた成長してたようだし……えーりん姉さんも……。 「弟君、御祖母様から返信がきたわ」 えーりん姉さんの言葉で、俺は楽しい妄想タイムから現実に引き戻された。 「え? あっ、う、うん……それで、ばあちゃんなんて?」 「かなこを迎えに寄越したから、一緒に来るようにだそうよ」 「やっぱり来るのね」 「かなこさんと会うのも久しぶりですねっ」 「こぼね~。元気なんでしょうか、かなこ様」 「この間お使いに行った時は元気だったわよ? 四代目のさなえとすわこは覚えが良いって喜んでたわ」 そう言って、ゆかりん姉ちゃんはみかんを一切れ摘み、口に運ぶ。 みかんの房を唇で挟み、少しずつ飲み込んでいく仕草が妙にエロティックだ。 「ま、それ以上に弟ちゃんは元気かとか、次はいつ遊びに来るのかとか煩かったから、そんなに気になるなら逢いに来ればと言ったんだけど」 「「「「…………」」」」 俺達の視線が、ゆかりん姉ちゃんに集まった。 「……なに?」 「いや、ゆかりん姉ちゃん……ばあちゃんが俺を名指しで呼びつけたのって……」 「多分かなこに頼まれたからね」 「あら?」 「御祖母様、かなこさんには甘いですから」 「弟様を呼びつける口実にもなりますし、渡りに船だったんでしょうね~」 「あ~……あはは、これはゆっかりしちゃったわね」 「はぁ……ま、どうせ休み中に一度は顔出すつもりだったからいいけどさ。姉ちゃん、またかなこさんを焚きつけるようなこと言ってないだろうな?」 「失礼ねっ? それじゃ私がいつもかなこをからかってるみたいじゃない」 「あんまり間違ってないと思うけど?」 「えーりん姉さんまでっ? もうっ、別に大したことは言ってないわよ? この間一緒にお風呂に入ったとか、宴会したとか、そのくらいで……」 「それどっちも俺の貞操大ピンチだった時だよねっ!?」 思わず叫ぶ。 ゆかりん姉ちゃんソレ絶対わざとやってるよねっ!? 焚きつけてるというか挑発しまくってるよね!? いくらかなこさんと同い年でライバル視してるからってそういう方向の弟自慢はよくないと思うんだ俺っ! 「南無三っ……それはかなこさんも来ますね」 「かなこ様、お仕事の都合で弟様にはなかなか逢えませんものね……こぼね~」 気持ちは判るとうんうん頷くゆゆ先生。 まあ、姉ちゃん達と違ってゆゆ先生は学校があるから、俺とはそう頻繁に逢える訳じゃないもんな。 「あは、あはははは……」 ばあちゃんのところに手伝いに行くだけの筈が、どうしてこうなった。 いや、まだなにか起こるって決まった訳じゃないけどさ。 でも……なんだろう。 嫌な予感しかしないんだが。 パインサラダを食いかけで出撃するような気分になって、俺は自棄気味に素麺を啜り込む。 その耳に。 「弟殿~~っ!」 久しぶりに聞く、かなこさんの声が届いた。 「うわ、もう来たの!?」 「これは……私がメール出す前に出てるわね」 ゆかりん姉ちゃんが呆れたように声をあげ、えーりん姉さんが携帯片手に呟く。 「あわわ……とにかく俺、迎えに出てくるよ!」 残りの素麺を一気に呑み込み、玄関に走る。 とりあえずサンダルに足を突っ込んで外に飛び出し、俺は空を見上げた。 山向こうに入道雲がある以外は澄み渡った青い空。 そこを飛んでくる人影があった。 「かなこさーん!」 「おお、弟殿っ! そこか!」 赤い上着に黒のロングスカート。 そして背中にしょった一抱えもある円形の注連縄と、宙に浮かぶ四本のオンバシラ。 正直言って死ぬほど目立つその姿に、農作業をしていたご近所さんも手を止めて空を見上げている。 まあ、この村でかなこさんを知らない人間はいないので、騒ぎ立てられる事がないのがせてもか。 第一種危険ゆっくり、胴付きゆっくりかなこ。 特別な許可を受けた者か公共機関でなければ飼育が許されず、人間の保護を受け入れない野生の個体は優先駆除対象になる……。 うちの姉ちゃん達やゆゆ先生に並ぶ『特別』なゆっくりだからな、かなこさんは。 「いま行くぞ、弟殿っ!」 「お手柔らかにねー!」 大きく手を振りながら、かなこさんが俺に向かって飛んでくる。 注連縄とオンバシラが微妙に動いて角度を調整し、高度を下げていく。 どんどん大きくなっていくかなこさんの姿を見上げ、俺は両手を拡げた。 「注連縄セイル、タッキング!」 勢いよく俺に突っ込んで来ていたかなこさんの身体が、一瞬浮き上がる。 同時にスピードが殺され……そのままふわりと落ちながら、かなこさんは俺に抱きついてきた。 「おわっ!?」 勢いを殺されていたとはいえ、えーりん姉さんよりも背の高いかなこさんに抱きつかれて一瞬バランスを崩しかける。 「弟殿っ! 久しいな、弟殿~っ!」 「ととっ、たっ、はっ……! は、はは……久しぶりだね、かなこさん……梅雨前のゆっくり狩り以来かな?」 なんとかバランスを取り、かなこさんを地面におろす。 その間もかなこさんは俺に抱きつき……すりすりと、俺に頬を擦りつけ続けていた。 ぎゅっとしがみついているので、身長以上に豊かな胸が思いきり押しつけられる。 「ああ、実に二ヶ月ぶりだ! まったく、ここまで私を待たせるとは弟殿も意地が悪いぞ!」 「ごめんよかなこさん、俺も学校とかで忙しくてさ……」 「いや、判っている。判っているんだ弟殿。今のは私の我が侭……だが、こうしてまた逢えた事を何より嬉しく思うぞ!」 抱きついたまま、すりすりを止めないかなこさんの身体に手を回し、そっと抱き返した。 ぽんぽんと背中を叩いてやると、かなこさんは嬉しそうに鼻を鳴らし、更に頬を擦りつけてくる。 そこに。 背後から、悲鳴のような声がした。 「ちょっとかなこ、弟ちゃんに何やってるのっ? それもう親愛のすりすりを越えてるでしょっ!?」 「はっ破廉恥ですよっかなこさんっ! 南無三です!」 「こっこぼね~っ!? 弟様が、すっ、すーりすーりされてっ……!」 「うおっ!? ね、ねーちゃん達っ!?」 振り返ると、眉を吊り上げているゆかりん姉ちゃんに、涙目のひじり姉とゆゆ先生。 そしてその後ろに、こめかみを押さえているえーりん姉さんが立っていた。 「まったく……かなこ、いくら久しぶりに弟君に逢えたからって、表ですりすりは止めなさい。はしたないわよ」 「おお、久しいなえーりん! ひじりもゆゆこも健勝だったか?」 「さりげなく私を除外するんじゃないわよっ」 「はははっ、怒るなゆかり! お前とは逢ったばかりで、健勝なのは判っているからな! 先日の土産の赤ゆ饅頭は主殿も喜んでいたぞ!」 ようやくすりすりを止めたかなこさんが、姉さん達に笑いかける。 ……助かった。 それにしても、抱きついていた事よりすりすりの方を問題視する辺り、姉さん達もゆっくりだよな。 まあ、胴付きはすりすりによって妊娠することはなくなっているとはいえ、すりすりによるすっきりーは可能だ。 だから、すりすりに過剰反応するのも頭では理解しているんだけど……俺も人間だから、感覚的にはピンと来ないんだよな。 人間でいうと、かなこさんは俺に対して逢うなりディープキスしてるようなものらしいんだが……。 それなら姉ちゃん達には騒ぎ立てる権利ないと思うんだ、俺。 「……それで? 弟ちゃんを指名した理由はなんなの、かなこ?」 肩をすくめ……不意に、真面目な表情になって、ゆかりん姉ちゃんが口を開いた。 「弟ちゃんに逢いたいって理由だけで、御祖母様の山を守るゆっくりであるあなたが、わざわざ山を下りたりはしない筈よね?」 「あら? そうだったんですか? 私は本当に、ゆかりん姉さんが焚きつけただけかと……」 「……ひじり、あんた私をなんだと思ってるのよ……」 「普段の言動が胡散臭すぎるからでしょ、自業自得よ……それでかなこ、どうなの?」 ゆかりん姉ちゃんをたしなめ、えーりん姉さんが改めて尋ねる。 それに、かなこさんは真面目な顔になって、答えた。 「ああ。最近、山にれいぱーありすが出るようになってな……弟殿には、駆除を手伝って貰いたいのだ」 ※後編に続く※