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#asciiart 173; 175;でくくるといい -- 名無しさん (2008-06-15 03 34 09) wiki立ち上げ乙 -- 名無しさん (2008-06-15 21 06 20) ロダ345抜けてるかも -- 名無しさん (2008-06-16 00 00 46) 今週から忙しくなるのでどなたか編集していただけると幸いです -- 管理 (2008-06-16 18 28 55) チルノ -- 名無しさん (2008-06-23 14 53 08) 書いてたの消えているけど、一覧の120から129までの数字ズレは直ってないので注意 -- 名無しさん (2008-07-15 10 32 50) \ちるの!/ -- 名無しさん (2008-07-19 23 54 35) Megalithあたりを使って環境を整えるっていうのはどうかね -- 名無しさん (2008-07-31 04 33 41) エルジアの科学力の結晶を使うのか… -- 名無しさん (2008-08-01 06 10 06) ゆっくりメーリンとゆっくりメーリン2の中身が一緒で、fuku1473がなく、ジャンルマークを見ると貼り間違えのようなので直しておきました。なにか勘違いしてたら済みません。 -- 名無しさん (2008-08-03 18 26 26) ttp //www8.atwiki.jp/yiukkuri_izime/pages/828.htmlは編集ミスです。管理人の方がいましたら、削除よろしくお願いします。 -- 名無しさん (2008-08-03 22 31 50) 3ページになっちゃいましたか。容量でかくて余計なテマかけさせて申し訳ないです>< -- アルコールランプ (2008-08-09 22 59 42) 色々頑張ってみましたが3つになりました。申し訳ない。容量は名目50kbまでと書いてありますが、実際はロダの表示で27kb位が限界です。リンクを貼ったりする関係で1ページにつき25kb位までが望ましいです。これを超えると申し訳ないと思いつつも分割させてもらってます。最後になりましたが、書き手の皆さんは頑張ってね!!! -- 名無しさん (2008-08-10 11 09 25) ちーんぽ! -- 名無しさん (2008-08-11 14 26 57) ゆっ?りしていってね!!! -- 名無しさん (2008-08-13 20 46 14) 新しいページ作成中に重くなったせいかページがバグってしまったようなので、数字を全角にして作り直しました。お手数ですが旧ページを削除の方、よろしくお願いします。 >虐めAAその14 -- 名無しさん (2008-08-15 10 05 18) 乙です -- 名無しさん (2008-09-14 04 12 41) http //www4.uploader.jp/home/gy/ が右メニューリンクに無い -- 名無しさん (2008-09-17 00 21 21) 右メニューは履歴だぞ。@、左右メニューの編集権限は管理者のみな。 -- 名無しさん (2008-09-17 00 46 01) メニューから新ロダへのリンク……忘れてましたw 加えておきますね。 -- 管理人 (2008-09-17 00 49 51) 加えました。 -- (管理人) 2008-09-17 00 58 08 左メニューSS一覧の下に いじめ1000(ttp //www26.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1560.html) の追加をお願いします -- (名無しさん) 2008-09-19 01 07 09 追加しました。ついでにどこかからインスパイアしてきて、メニューをいじりましたw 前のが良さそうなら戻しますのでお気軽にご意見ください。 -- (管理人) 2008-09-19 07 21 37 新うpロダのパスがわからん@@; -- (名無しさん) 2008-09-20 17 48 56 パスは毎度毎度、新参がスレで聞いてるので過去ログを読んでください -- (名無しさん) 2008-09-20 21 21 59 ゆっくりいじめ系748 ある動物型奇形妊娠がテキストモードに なっているようです。長さ的に問題なさそうなので移籍の際の 名残だと思うんですが、どうでしょうか? 確認をよろしくお 願いします。 -- (名無しさん) 2008-09-22 06 23 55 不具合ご報告ありがとうございます。 確認したところテキストモードでしたので、アットウィキモードに変更いたしました。 -- (管理人) 2008-09-22 07 37 19 新スレが立っていたようなので修正しておきました。 -- (名無しさん) 2008-09-23 21 16 54 虐めSS・一覧の慧音×ゆっくり系のところに、「ゆっくり奇々怪々(下)」が2つ(7番と9番)あるのは何故? しかも9番は重複してるし。 これはどう修正すればよい? -- (名無しさん) 2008-09-28 16 36 27 履歴見て間違え推理して修正した。 「ゆっくり奇々怪々」連番にしようとして「ゆっくろっく」の番号だけ変えて、 別の人が気付かず「ゆっくり奇々怪々(下)」を一覧に追加したと思われ。 -- (名無し) 2008-09-28 17 13 02 fuku2658.txt 08/09/24(Wed),18 08 50 までwikiに保管完了。 集中力が回復したらまた再開するかも。 ジャンルマークつけてないので、各作者がつけてくれると助かる。 -- (名無しさん) 2008-09-28 18 36 31 fuku2721.txt 08/09/28(Sun),19 06 02 まで保管完了。 もし保管漏れがあったら補ってくだしあ。 -- (名無しさん) 2008-09-28 21 55 21 乙。 -- (名無しさん) 2008-09-28 22 21 32 感想フォームつけ忘れや続き物リンク漏れ補っておいた 漏れあったら気付いた人頼む -- (名無しさん) 2008-09-29 19 52 16 ゆっくりいじめ系219 私が町長です。 ゆっくりいじめ系242 \ゆっくりだー!/前半 ゆっくりいじめ系244 \ゆっくりだー!/後半 ゆっくりいじめ系246 \ゆっくりだー!/エンディング ゆっくりいじめ系346 \ゆっくりだー!/ゆっくりは再びやってくる 前編 ゆっくりいじめ系358 \ゆっくりだー!/ゆっくりは再びやってくる 後編 ゆっくりいじめ系370 爆走!ゆっくりカー! ゆっくりいじめ系389 ゆっくりできるわけないだろ.現実的に考えて ゆっくりいじめ系400 ゆっくりできるわけがないだろ、現実的に考えて、 さわやかな鬼意山とゆっくり一家の安らぎ。 ゆっくりいじめ系517 ゆっくりしぬしかないだろ。倫理的に考えて ここから離れようと思ったのでこれらの作品の削除をお願いします。 作者 -- (名無しさん) 2008-09-29 21 08 26 ゆっくりいじめ系265 ゆっくりさせないだろ。常識的に考えて これも削除をお願いします。 作者 -- (名無しさん) 2008-09-29 21 39 07 削除要請対応いたしました。 -- (管理人) 2008-09-30 23 25 07 fuku2806.txt 08/10/05(Sun),16 44 39 まで保管完了。 見落としあったら補完よろしく。 -- (名無しさん) 2008-10-05 18 52 45 乙でございます。見る限り見落としないっぽいですよ。 むしろ……この前、私がやった時の見落としを発見しちゃいましたw どうにも私が追加すると毎回必ず保管し忘れがある気がする。 -- (管理人) 2008-10-05 23 18 20 SSが1000番を超えたようなので1250のページを追加お願いします -- (名無しさん) 2008-10-06 00 02 44 何か忘れてる気がすると思ったら……そう、それですよ! ご指摘ありがとうございます。 そんなわけでメニューに項目追加しておきました。 当面はまだ一覧で大丈夫でしょうが、ある程度たまったら ページ作って移動にて、と。 -- (管理人) 2008-10-06 00 23 49 初めましてこんにちは、今後よしなに。 さて、これだけ充実しているテキストに加え、 画像まとめも創設しては頂けないでしょうか。 ゆっくりいじめ画像は広範囲に散らばっており、 なかなか一箇所で数が取れないものですから。 御一考頂ければ幸いです。 では失礼致します。 -- (新参) 2008-10-07 07 35 14 たしか画像関係はwikiの規約に反するからできないって聞いた。 確か前に似たようなことでトラブルになったことがあるからできないと考えた方がいいと思う -- (名無しさん) 2008-10-07 07 59 28 画像まとめの件ですが本wikiには創設いたしません。 虐待画像はアダルトコンテンツに該当いたしますので、wiki利用規約により不可能です。 また、wiki外に画像まとめを創設する気も、私にはございません。 文章作品はともかく、画像につきましては「まとめ」を行う事の同意を、作者さんから得られておりません。 この手の創作スレまとめの通例といたしまして、文章作品はまとめられる前提で書かれ投下されると申しますか、虐待スレにつきましてもwikiが出来る前の作品は「収録だめなら言ってくれれば削除」と言う感じでwikiに掲載し、wikiが出来て以降は「投下したら収録される」と言う暗黙の合意が存在していると解釈できます。 さりながら、画像作品に関しましては「まとめ」が存在しない前提で描かれ投下されておりますので、描いたご本人の意思確認を行いませんと無断転載となります。 すでに描くのを止めた方もいらっしゃいますし、途中からの方針変更によって描くのを止める方が出る可能性が強く、また悪質な改変や、無断転載を幇助する事となりますので、画像まとめ自体に私は否定的な考えを持っております。と言うわけで、本wikiに画像まとめは創設いたしません。 -- (管理人) 2008-10-08 00 27 25 大変ご丁寧なご回答、よく分かりました。有難うございます。 今後もテキストを楽しませて頂きますね。 お手数をお掛けしました。失礼致します。 -- (新参) 2008-10-09 11 48 19 管理人へ wikiを小学生が見ているという書き込みがスレにあったので、 TOPに以下の文を追加したわけですが、無言削除合戦になりました。 Y/Nの管理側の立場を明示してくれると助かります。 このサイトにはざんこくなないようがあります。15才以下の人は見ないでください。 サイトへのアクセスはパソコンとサイトのりょうほうにきろくされています。 -- (名無しさん) 2008-10-14 19 17 41 トップページの編集履歴確認いたしました。どう見ても編集合戦ですね。 管理側の判断といたしましては、注意書きに関しましては今後明示するか否かを 皆さんとご相談させていただきたい、と言う形でございます。 つまり、現段階ではNOの立場です。 すぐに注意書きを明示しない理由ですが、まず第一にソースが2ちゃんのレス。 ぶっちゃけ「今、嫁と○○○○しながら書き込んでる」と書いたとしましても、 本当か嘘か見分けがつかないわけですから、レス一つでいきなり動くのも 早計であると私は判断いたしました。 しかしながら、扱っている内容が内容ですので、慎重に保険をかけるべきだとは 思いますので、今後どのような文面にするかなどをご相談させていただきながら、 注意書きを入れるべきか否かご意見お願いいたしたいと考えております。 なお、引用いただいた文面に関しましては……オール平仮名、残酷な内容と言い切っている、具体的年齢制限設けてる、アクセス記録自体はこのwikiには残らない、 この四つの理由から私としては賛成できかねます。 ぶっちゃけ「何で制限するか」の理由につきましては「残酷」とか、ストレートな表現を 用いますと、色々と問題が生じる恐れがありますので遠回しに「文学的に特殊な描写」など、 如何様にも取れる形として、具体的年齢制限につきましても「義務教育中の方には向かない」 と言う風に改めて、物凄い玉虫色の注意書きにするしかないと考えております。 このwikiは利用規約的にグレーゾーンなのですから、自ら色々とこうだと語っちまうと微妙なのです。 注意書きが必要というお考え自体を、私は否定いたしません。 どれぐらいこのwikiの作品が、多感な時期の青少年に影響を及ぼすか、判断は人それぞれ わかれるところだと思いますし。 必要であるとの認識は、間違っては居ないと思います。同時に、不要であるという認識も、 間違いではないと思います。 とりあえずは、どうすべきかを論じ合って行こう、と言うあたりで了簡なさっていただければ幸いです。 -- (管理人) 2008-10-14 22 20 01 とりあえず、wiki内でコメントフォーム増やして会議室作ろうかと思いましたが、 せっかくなので外部に掲示板借りてきました。 ttp //jbbs.livedoor.jp/otaku/11995/ 一応このwiki用の避難所ってことで、今のところスレとは特に関係ない ってな位置付けで認識いただければと思います。 注意書きの件の話し合い用スレッドは、下記の通りです。 ttp //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11995/1223991891/ スレは自由に立てられますので、なにか使いたい方はご自由にご利用下さい。 -- (管理人) 2008-10-14 22 49 47 fuku2978.txt 08/10/13(Mon),02 26 34 までwikiに保管完了です。数が多すぎるんで、とりあえずここまで。 続きは暇な人よろしく。 -- (名無しさん) 2008-10-15 23 37 27 保管作業お疲れ様です。 -- (管理人) 2008-10-16 21 51 25 fuku3068.txt 08/10/17(Fri),21 25 31 まで保管完了 -- (名無しさん) 2008-10-17 23 04 48 私の書きましたSS、fuku2973.txt「おねしょゆっくり」が保管されていなかったため、追加しました。 -- (cyc=めて男) 2008-10-17 23 29 05 作品wiki追加お疲れ様です。 現時点でロダにあるの全部保管済みですね……お疲れ様です。 早めにってことで、ゆっくりいじめ.1500用意しておきます。 あと、ざっと見て重複は消しましたが、ページ名変更や重複削除 他にもございましたら、お手数ですがご連絡お願いいたします。 -- (管理人) 2008-10-18 10 55 19 fuku3093.txt 08/10/18(Sat),23 19 30まで保管完了。 -- (名無しさん) 2008-10-19 00 08 20 作品保管お疲れ様です。 -- (管理人) 2008-10-19 01 00 14 虐めSS・一覧のページがだいぶ長くなったので、ちょっと形式を変えてみようかと。 虐めSS・一覧ページ無くして、ゆっくりいじめ系は250ずつ、 ジャンルものはジャンルものでまとめると言う形にしてみました。 使いづらいと思いましたら「早く戻せ!」と、ご遠慮なくご意見お願いします。 -- (管理人) 2008-10-19 10 42 57 ゆっくりもどさないでもいいよ! -- (名無しさん) 2008-10-20 02 35 17 ご意見ありがとうございます。 特に「使いづれぇ!余計な事すんなタワケが!」ってな、 悪い使用感の表明もございませんので、このままで行きます。 それに伴いまして、ちょこちょこ各所弄ったりしますが、 良い感じになると思う方向へ、案のある方は編集しちゃって いただければ幸いにございます。 -- (管理人) 2008-10-20 20 57 39 注釈入っててオドロイタ -- (名無しさん) 2008-10-20 22 50 06 これはいい注意書き。 -- (名無しさん) 2008-10-20 23 25 53 管理人様、おつかれさまです。 人物~動物の区分の間に「・」を入れてはどうでしょうか? -- (名無しさん) 2008-10-21 16 58 43 確かにこれはヘタなR-18ゲームなんかよりも影響ありそうですしね・・ -- (名無しさん) 2008-10-21 18 16 33 ご意見ありがとうございます。微調整がてら、昨日のよりも閲覧非推奨を 強く匂わす形にしてみました。不適切って言って判断を委ねるよりも、 推奨しない意志を表しておいた方が効果的かなと。 もっと良さそうな文案ございましたら、避難所の注意書きスレなどに よろしければご意見お願いいたします。 -- (管理人) 2008-10-21 20 07 09 fuku3143.txt 規制されてたのでここでうp報告。 -- (名無しさん) 2008-10-22 01 20 31 虐めSS一覧が左メニューのゆっくりいじめ.250の上から消えたままだけど 復活して欲しいです…前にはありましたよね? 自分で戻そうと思ったけど左メニューの編集はメンバーじゃないと出来ないようで。 -- (名無しさん) 2008-10-23 01 28 56 fuku3105 08/10/19(Sun),13 03 29 まで保管しました。 -- (名無しさん) 2008-10-23 02 11 01 保管お疲れ様です。 ちょっと上のコメントに書きました通り、ジャンルものと新着で縦に長くなりすぎたので 虐めSS一覧ページ廃止して、現行のゆっくりいじめ.数字と虐めSSジャンルものに 変更しましたが使いづらいですか。 前のは前ので、あれもかなり微妙ですので……ちょっと別の形にしますね。 -- (管理人) 2008-10-23 21 13 23 一覧復活させて目次付ける方向で調整してみました。 縦にずらずら長いのも、これなら改善できるかと。使用感が微妙でしたら、ご意見お願いします。あと、もっと良い感じになる改善案ございましたら、ご意見お願いいたします。 -- (管理人) 2008-10-23 21 38 11 調整お疲れまです、 個人的には全然使いやすいです、 -- (名無しさん) 2008-10-23 22 19 56 ゆっくりれみりゃ系いじめ57【樽】なんすけど、 一応ゆっくり虐待の方向で書いたのでゆっくりいじめに移しました。 れみりゃの方を削除したいんだけどどうすりゃいいんでしょう? -- (タカアキ) 2008-10-25 08 39 00 理由とともに「削除してちょ☆」と言っていただければいいのです。 そんなわけで削除しときましたw -- (管理人) 2008-10-25 09 26 16 メールにてご連絡いただきましたが、コメントにて公開レスさせていただきます。 予防規制の件は解除させていただきました。こちらでは、規制に該当しない程度の ちょいとテンション高いコメントだったそうで……誠に遺憾に存じます。 ずっとテンションあれぐらい高いのは少し困りますが、時々でしたら、こちらでは 全く問題ございません。テンション高い以外は、普通のコメントなようですし。 向こうは理由があまり詳しく公開されていませんので、予防規制につきましては、 今後はもうちょっと慎重に検討いたします。 -- (管理人) 2008-10-27 01 40 25 18禁作品の収録につきまして、新方式を試行いたしました。 作者さんのご協力が得られれば、外部に自前で18禁部分を保管していただき、 wikiからは注意書きページよりリンクという形にて収録いたします。 このたび容量が非常に大きい作品投稿がございましたので、従来通りの ロダ直リン方式ですと、200kbのファイルに直リンとなりますため、 ご好意で使わせていただいているロダへの負担が大きくなりそうですし、 せっかくなので抜本的に改めようかと。 容量がそれほど多く無い場合などは、従来方式も併用しようかとか、 とりあえずまだ今後どうするかは決めかねておりますが、 18禁を書く場合に作者さんが必ず自前で保管しなければならない、 と言うルールは特に定めない方向で考えております。 今回も、あくまで任意での自前保管です。 今後どのような方式とするかは、試しながら、ご相談しながらの予定です。 -- (管理人) 2008-10-27 22 33 29 年齢制限作品につきましては、「※年齢制限内容を含むため、本文は外部ページ」という注意文を 一覧などではタイトルの横に表示することにいたしました。 ワンクッション置いて外部の、ワンクッションへ行く前にも注意文を付与する形です。 -- (管理人) 2008-10-28 23 30 32 持ち出し禁止ルール適用について、現状にそぐわない点があるようですので 変更案を考えてみました。避難所にスレを立てましたので、ご確認の上で あちらにご意見いただければ幸いです。 ttp //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11995/1225666808/ -- (管理人) 2008-11-03 08 09 37 いじめ系1325が二個あるよ -- (ゆ) 2008-11-07 21 58 38 ご指摘ありがとうございます。後に追加された方の番号を変更しました。 -- (管理人) 2008-11-07 22 12 41 管理人さん申し訳ありません。編集を間違えてしまい余分なページを作ってしまいました ゆっくり昼メロ_01を、消してください。お願いします -- (名無しさん) 2008-11-08 07 39 58 管理人さん、大変申し訳ありません。 作品の重複があり、先に追加した ゆっくりいじめ系1425 ゆっくりだまし ゆっくりいじめ系1422 楽園への道程-前編- ゆっくりいじめ系1418 ゆっくり昼メロ_02 ゆっくりいじめ系1417 ゆっくり昼メロ_01 ゆっくりいじめ系1408 秘目 ↑の5つの番号がずれてしまった為、消してください。お願いします -- (名無しさん) 2008-11-08 10 43 50 大量収録ありがとうございます。お疲れ様です。 多少の重複とか番号間違いは、私もよくやるミスなのでドンマイですよ。 ページ削除対応いたしました。 -- (管理人) 2008-11-08 17 38 43 作者さんからの要望により、ゆっくりいじめ系1220のページ名を変更いたしました。 番号変えてねではなくページ名変更でしたら、全く手間じゃございませんので、お気になさらず。 メールでの要請でしたが、万一を考慮に入れて報告を兼ねて公開レスさせていただきました。 -- (管理人) 2008-11-09 10 51 51 ゆっくりいじめ系1338虐待ゆっくり上1 ゆっくりいじめ系1339虐待ゆっくり上2 の上記二つをゆっくりな人作品集に追加してください。 -- (作者) 2008-11-09 13 13 58 作品集追加漏れでしたか。失礼しました。 早速対応いたしました。ご指摘ありがとうございます。 -- (管理人) 2008-11-09 13 17 34 管理人様 以下の理由により、自分の製作したAAで当Wikiに収録されている物の削除をお願いします。 [理由] ○自分の作ったAAが荒らし他、心無い人に悪用されている現状に嫌気がしている為。 ○現在の虐待スレに常駐する意義が見出せない為。 [削除対象] ・素材用AAその1 ■産みかけ ■子ゆっくりの坩堝 ・虐めAAその1 ■ゆっくり川流れ ■ホッチキス ■はちみつ ・虐めAAその2 ■ゆっくりボクシング ■芥子団子 ■つねってぷっちん ■ゆっくりのかわいがりかた ・虐めAAその3 ■アリスのゆっくり劇場 恐怖!? ロシアン花占い ■アリスのゆっくり劇場 ハッハー!! 調教は地獄だぜ ・虐めAAその4 ■れみりゃ爆破 ■れみりゃ踏みつけ ・虐めAAその5 ■つかの間の幸せ ■お前達に産ませるゆっくりはいねぇ! ■自給自足 ■ゆっくりジャンケン ・虐めAAその6 ■いい気味だ。 ・虐めAAその7 ■ゆっくり引き裂いてね! ■大漁 ・虐めAAその9 ■こちらにあらかじめ調理したものがあります ・虐めAAその10 ■臭いケツにはおしおきが必要だな! の表情違いの方 ・虐めAAその12 ■ジェットストリームアタックをかけるぞ! ■お祝い事に、ゆっくり爆破 ・その他AAその1 ■ど畜生 ・その他AAその4 ■一本釣り ■釣り堀 ■飼われゆっくり 以上、宜しくお願いします。 -- (名無しさん) 2008-11-10 22 19 44 了解です。 すでにコピペされて広まっているAAにつきましては、残念ながら お力にはなれませんが、wikiからは削除いたします。 -- (管理人) 2008-11-10 22 27 09 fuku3485のマタニティゆっくりですが、作品が長く区切るのが難しいので作者様にお任せしてよろしいでしょうか? -- (名無しさん) 2008-11-14 04 19 57 ttp //www26.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2520.htmlに、作者さんからのページ名変更要請があったので新規に作成しました。 古い方?の消去をお願いします。 -- (名無しさん) 2008-11-14 10 27 40 ページ削除要請了解です。対応いたしました。 ページ新しく作ったりなどで、不要になったページご報告いただけますと、 スムーズに整理できますので非常に助かります。ありがとうございます。 -- (管理人) 2008-11-14 22 09 33 ゆっくりいじめ系1485 ゆっくりに自分の悪事を自覚させる 同じページが二つありますので削除お願いします -- (名無しさん) 2008-11-15 03 30 03 削除要請対応いたしました。古い方が作者さん自ら追加っぽかったので、 新しい方を削除いたしました。1485は欠番ということでw -- (管理人) 2008-11-15 09 59 52 虐めSS・作者別?を軽く整備いたしました。 10ページ以上作品あるのに、作品集がまだ無かった作者さんの作品集を作ったり、名前関係を。 抜けに気付きましたら、ご指摘いただくか追加お願いいたします。 また、個人作品集までは手が回っておりませんので、こちらもご指摘いただくか、 追加お願いいたします。 -- (管理人) 2008-11-15 10 03 53 過去ログ倉庫閉鎖のため、暫定的に過去ログページを作成いたしました。 今後もこの形で過去ログをwiki収録するかは今のところ未定です。 羊の羽さん今まで過去ログ倉庫の管理運営ありがとうございます。 -- (管理人) 2008-11-15 11 18 24 fuku4148.txtにつきましては、 「非東方キャラがモデルのゆっくり」が登場するため、ゲームキャラ板の本スレと、 そのまとめであるこのwiki向けの作品か判断が付かないため、wiki収録に つきましては見合わせとさせていただきます。 収録に当たっては、 ・本スレおよびこのwiki向けに書いたという作者さんからのお申し出 ・非東方キャラが元になっているゆっくりの取り扱い決定 この二点が必須と判断いたしました。 -- (管理人) 2008-11-15 16 49 53 重複してたので報告を ゆっくりいじめ小ネタ230 冬の夜? ゆっくりいじめ小ネタ231 そうでなくても親れいむが復讐するよね? ゆっくりいじめ小ネタ232 ゲスの行き着く先? -- (名無しさん) 2008-11-18 10 32 39 管理人さんじゃなくても、メンバーならページ削除出来ますから、しました。 やり方は編集画面で内容全消去してページ保存、これで削除可能。 ってかメンバーが削除対応ってNGでしたっけ? もしそうなら独断専行すみません。 -- (名無しさん) 2008-11-19 05 42 41 削除対応ありがとうございます。独断専行問題ありません。むしろ助かります。 -- (管理人) 2008-11-19 22 10 16 ちょっと荒れ模様っぽいので、念のため連続編集規制を下記のようにいたしました。 ・連続編集規制→各ページ履歴30回中10回同一IPで当該ページ一時的に編集規制。他ページ編集は可能。 普通にご利用いただく分には問題無い範囲と思いますが一応お知らせいたします。 -- (管理人) 2008-11-19 22 18 48 「新うPろだ2」が、イタズラかどうか分からないですが 同一の人が、しつこくUぷしています。 -- (名無しさん) 2008-11-22 13 16 20 ロダはロダ管理人さんの管理下ですね。 uploader.jpのロダはIP規制などの設定が出来ない仕様だと、 以前に愛での好きロダ管理人さんから聞いております。 イタズラならIP公開していただければ、wikiでは規制可能ですが ロダの方では仕様上IP規制などの処置は難しいと思います。 -- (管理人) 2008-11-22 13 23 22 未だに、「新うPろだ2」に釈尊さんの作品に上書きした様な画像がアップされています。 -- (名無しさん) 2008-11-22 20 22 25 名前を名乗るようになったのですが、今までの作品を作者別に入れてもらうように 申請するのはこのスペースでいいのでしょうか? -- (名無しさん) 2008-11-23 16 22 02 名前と作品言ってくれたらやりますよ。 -- (名無しさん) 2008-11-23 22 24 11 2008-11-23 16 22 02 自分で作者別に入れたら? wikiの編集分からないならここ?見ると良いよ。 分かり易く解説してくれてる -- (名無しさん) 2008-11-23 22 42 01 ちょっと私用で慌ただしく、最近あまりwiki見るのに長い時間がとれず申し訳ありません。 2008-11-23 16 22 02 こちらに書いていただいても、ご自分で作者別に項目作っていただいても、どちらでも大丈夫です。 wiki編集のやり方に自信が無い場合は、こちらに作者名と作品名をご記入いただければ、 どなたか編集作業できる方か私が作業いたします。 -- (管理人) 2008-11-24 10 44 41 大量規制の報告です。 メールにて、ゲームキャラ板のゆっくりスレに出没していた荒らしが規制された件を ご報告いただきまして、規制議論板のスレURLと規制IPをお知らせいただきました。 本スレおよび板荒らしは、このwikiになにか悪さしていなくても、2ちゃんねるで 規制されたのならこちらでも規制する方針で行きます。 以下が規制IPです。 2008年11月24日設定 softbank219190014040.bbtec.net(219.190.14.40) actkyo036141.adsl.ppp.infoweb.ne.jp(61.121.84.141) actkyo117104.adsl.ppp.infoweb.ne.jp(219.116.86.104) actkyo027016.adsl.ppp.infoweb.ne.jp(218.217.60.16) f70-243.knet.ne.jp(210.233.170.243) p6e2988.gifunt01.ap.so-net.ne.jp(218.110.41.136) actkyo008108.adsl.ppp.infoweb.ne.jp(61.124.235.108) 理由 メールにてご報告いただき、規制議論板のスレを確認させていいただきました。 本スレおよびゲームキャラ板の荒らしとして、2ちゃんねる運営が規制したIPです。 すでにこのwikiで規制しているIPもございますが、全部無警告にて一発で規制。 メールにてご報告ありがとうございます。 規制議論板はノーチェックでしたので、非常に助かりました。 -- (管理人) 2008-11-24 10 59 22 ええと、自信がないのでこちらにお頼みできますか? 名前:パロ饅 作品名・ もち (小ネタにも入っていない)せんとうすぃー2 ゆっくりいじめ小ネタ223 せんとうすぃー ゆっくりいじめ系1487 キノコのないドス ゆっくりいじめ系1477 れえざー ゆっくりいじめ小ネタ208 ゆっくりこうないえん2 ゆっくりいじめ小ネタ203 ゆっくりこうないえん ゆ虐 小ねた その他 ゆっくりの習性を利用してみた ゆっくりいじめ小ネタ195 実際ペット飼ってる人でもこんなのいるような ゆっくりいじめ小ネタ194 食べ物の恨みは・・・・・・ ゆっくりいじめ系1441 はいぶりっどまりさ ゆっくりいじめ小ネタ192 やってみよう何でも実験 罠 ゆっくりいじめ系1408 やってみよう何でも実験 ゆっくりいじめ系1399 ゆっくりと現代 ゆっくりいじめ系1379 ドスに纏わる二、三の話 ゆっくりいじめ小ネタ185 小ネタ ゆっくりいじめ小ネタ178 中立な話 ゆっくりいじめ小ネタ180 小ネタとちぇん ゆっくりいじめ系1323 あ 以上です。 -- (名無しさん) 2008-11-24 16 23 05 てけりりっとSS収録作業のお手伝いをさせていただきました。 それで幾つかご報告なんですが、 ・ゆっくりいじめ系1564 ぱちゅりーの失敗-3? →前作二本が投棄場にあったため、そちらに項目を設けて転載 ・ゆっくりいじめ系1564 しゃぶれいむ? →上記ぱちゅりーものを投棄場に移動させた後、番号の穴埋めのため作成。 ……したところ、小ネタの方に収録済みだった。 上記二つの削除のお手間をお願いしたいのですが…… 無能な働き者で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。 -- (名無しさん) 2008-11-24 17 53 49 「新うPろだ1」のボブとありす合体.jpgは、人種差別問題に発展しないでしょうか? もし、コレ自体が海外の画像サイトにうPされでもしたら......... -- (名無しさん) 2008-11-24 18 50 26 2008-11-24 17 53 49 管理人さんではありませんが代わりに削除しておきました -- (akila) 2008-11-24 19 01 27 ゆっくりいじめ系1575 虐待ゆっくり下がゆっくりな人作品集に入っていないので、 追加をお願いします。 -- (名無しさん) 2008-11-24 22 14 59 2008-11-24 22 14 59 追加漏れ報告ありがとうございます 追加しておきました -- (名無しさん) 2008-11-24 23 59 16
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前ページ次ページ確率世界のヴァリエール 確率世界のヴァリエール - Cats in a Box - 第十四話 前編 (どうしてこうなった) クロムウェルは船の上で考えた。 トリステインの西部、タルブへと向かう戦艦レキシントン号の上で。 運命には抗えない。 指にはまった『アンドバリの指輪』を見つめる。 生者の心を奪い、死者に偽りの命を与えるその力。 こんな物を得て、己は神にでもなったつもりで居たのか。 生者を意のままにし、死者の軍勢を率いるあの少女の形をしたモノ。 あの悪魔に比べれば、私は神どころか陳腐なまがい物でしかなかった。 あれに出会ったその時から、私は運命に捕らえられてしまったのだ。 いや、私自身があの悪魔に魅せられていたのか。 白いスーツに身をまとい、黒髪をなびかせた、あの死の化身に。 † 停戦会談破棄を伝える使者は昨晩、アルビオン王都ロンディニウムを訪れた。 皇太子ウェールズの暗殺から日も変わらぬうちに派遣された特使は 王党派全軍によるロンディニウムへの即時侵攻と、雌雄を決すべしという アルビオン王ジェームズ一世の意思をクロムウェルに伝えてきた。 「あっはっは、良かったのう。 向こうから来てくれるとさ」 ワインを傾けながらアーカードがからからと笑う。 円卓のテーブルの後ろで影がゆらめく。 「笑い事では、、笑い事ではありませぬ!」 クロムウェルが頭をかきむしる。 「ウェールズは「行方不明」になるはずだったのではありませぬか?!」 「予定ってのは狂うためにあるもんだよ?」 アーカードの対面に座った猫耳の少年がやれやれとつぶやく。 「なっ?! そ、それもこれも全部、、、!」 「ひっどいなあ、全部ボクのせいだっていうの?」 シュレディンガーはフォークに刺した鴨のオレンジソースがけを一口頬張ると 目を丸くしてアーカードを見つめた。 「うわ、おいし!」 「ふっふ。 そーじゃろー、そーじゃろー。 あの時はせっかくの手料理を食わせそこなったからの」 「シェフィールド殿!」 クロムウェルがテーブルを叩き、アーカードを睨み付ける。 「これでは、、約束が違います!」 「約束なんぞしとらんのー、単なる計画だ」 手の中のワイングラスがからり、と音を立てる。 グラスの中には始祖の秘宝、『風のルビー』と『水のルビー』が沈んでいる。 「どのみち王党派とは戦わねばならんのだ、大した違いはあるまい。 何より向こうには『虚無の魔女』はもう居らん。 のう?」 グラス越しにシュレディンガーへと笑いかける。 シュレディンガーはぷいとそっぽを向き、口を尖らせる。 「もっちろん! だーれがルイズの元になんか帰ってやるもんか」 「だとさ」 「し、しかし、脅威はいまやそれだけではありませぬ! こちらの計画を知った南のカトリック教徒どもはロサイスへ向かわず その全軍が王党派と歩を合わせ、このロンディニウムへと向かっています! ラ・ロシェールへの奇襲もトリステインに知れているやも知れませぬ! この先、この先どうすれば!」 「どうするもこうするも予定通りに戦争するだけじゃろ、戦争」 辟易としてアーカードが言う。 「こ、この上はシェフィールド殿よりガリアに、、!」 「あ? ウチのひげのおっさんがお前さんに話した計画は 「トリスタニアを攻め落とすに際してはガリア空軍を以ってこれを助ける」 これだけじゃ。 なに、ジェームズ王がこのロンディニウムに向かっておると言う事は ワルドはお前さんの手のものだと思われておると言う事じゃろ。 トリステインの方でもワルドの立てた計画を疑いこそすれ ガリアが噛んどるなんぞ思い付かんだろうし、ラ・ロシェールへの奇襲も 案外うまくいくんじゃないのん?」 「そんな、無責任な!」 「ここの責任者はお前じゃろ? 私はせいぜい高みの見物でもさせてもらおう。 あー、どうせならトリステインの方の戦いにでも行ってみるか。 そっちのが派手そうじゃし、何より魔女殿もおるしの」 黙々と料理を片付けていたシュレディンガーの手が止まる。 「なにアーカード、まだ諦めてなかったの?」 「無論」 短く答える。 アーカードはテーブルの上で手を組み、宙を見つめた。 「のうシュレや、「心を鬼にする」という言葉を お前は知っておるか?」 「ニホンのコトワザだっけ?」 シュレディンガーが眉間にしわを寄せ、昔の記憶をたどる。 「そうだ。 常ならぬ事態に対峙した人間が、常ならぬ決断と決意とを せねばならぬ時に使われる言葉だ」 「そっか。 まあ別に「心を鬼にする」っていっても 鬼みたいな悪いコトをするって意味じゃあないもんね」 「「鬼」は元より「鬼」であるのではない。 「人」が「鬼」に成って果てるのだ。 そして「鬼」とは、人に果たせぬ事を人が果たす為の 人を超えた意思であり、信念であり、執念であると思うのだ。 だからこそ私はそれを欲する、それが欲しい。 それ無くして虚ろなる私は「吸血鬼」足りえず、 単なる「血を吸う何か」でしかない」 「で、ルイズならその鬼みたいな信念を持ってるって? ま、確かに鬼みたいにワガママだしー、 鬼みたいに強情っぱりではあるけどね」 やれやれと猫耳と一緒に肩をすくめる。 「あーそうそう、ルイズといえば」 シュレディンガーがごそごそと服の下を探る。 「こいつは返しとくよ。 まったくとんだ疫病神だ」 よっこいしょと黒い鉄塊をテーブルの上に乗せる。 ガリガリとテーブルを滑ってきた巨大な銃をアーカードが受け止めた。 「ほう、そちらにあったのか」 その銃を感慨深げに手に取る。 「この体だと重心が軽くてな、片方だけではどうもバランスが悪かった」 懐からもう一丁、白銀に輝く同じく巨大な銃を取り出す。 『.454カスール カスタムオート』そして『対化物戦闘用13mm拳銃 ジャッカル』 二丁の銃を軽やかに構え、満足げに頷く。 「ふむ。 矢張りこうでなくてはな」 そのままクロムウェルに向き直ると、アーカードはニヤリと笑った。 「今回は特別じゃ。 加勢してやる」 「そ、それではシェフィールド殿が私をお守りくださるので?!」 「はっはっは、殺すぞ? 上(ロンディニウム)か、下(トリスタニア)かを選べと言うとるんじゃ。 まあ、どうしても私と一緒におりたいのであれば、、、 一番安全な場所に「匿って」やらんでもないがの」 アーカードが牙を剥いて笑う。 乱杭歯の向こうに赤黒い虚無が広がる。 「ヒィッ!」 クロムウェルが思わず悲鳴を漏らす。 「し、しかしトリスタニアを選ぶといってもロサイスまでは、、」 このロンディニウムで王党派とカトリックの挟撃に合うよりは まだしも勝てる見込みはあろう。 ラ・ロシェールを抜けトリスタニアに着きさえすればガリア艦隊の協力がある。 だが、肝心の降下作戦のための戦艦は全てロサイスにあり、 ここロンディニウムとロサイスの間にはカトリックが、あの狂信者集団がいる。 「ほう、前線にあって艦隊指揮をなさると申されるか。 いやいや、まことクロムウェル殿は司令官の鑑よのう!」 二丁の拳銃を懐にしまったアーカードはニコニコと席を立つと、 クロムウェルのえり首をむんずと掴んで有無を言わさず窓際まで引きずる。 「とりゃ!」 そのまま片足で窓を蹴破る。 吹き込んだ夜風になびく髪が、闇を吸い込みゆるゆると変質していく。 「その意気に免じ、この私が直々に送ってやろうぞ」 巨大な翼に姿を変えゆくその黒髪が一度、二度と大きく羽ばたく。 「ではシュレや、ちびっと行ってくる」 そう言うとアーカードは後ろで手を振るシュレディンガーに見送られ、 片手にクロムウェルをブラ下げて鼻歌交じりに月なき夜空へ飛び立った。 「♪ 小さーいー頃ぉ~は~ 神様がいて~、 毎ー日ゆーめを~~、、、」 † そしてそのままロンディニウムへと進軍するカトリック教徒たちの頭上を越えて ロサイスへ届けられ、明くる日の昼にはラ・ロシェールへと向かう艦上に居た。 司令官を迎えた艦隊の意気は上がったが、当のクロムウェル自身は 己の状況を未だに納得できずにいた。 やるべきことは明確だ。 トリステイン領内のタルブに降下、ラ・ロシェールを奇襲して トリステイン艦隊を殲滅し、そのまま王都トリスタニアに攻め上る。 ほかに選択の余地もなかった。 しかし、それでも。 いや、だからこそ。 運命には抗えない。 思えばこのレキシントン号も、あの『虚無の魔女』が一番最初に関わった船だった。 ようやく修復を終えたその艦上に自分がいる事に、深い因縁を感じざるを得ない。 クロムウェルは自分の指にはまった『アンドバリの指輪』をもう一度見つめ、 そして力なく笑った。 。。 ゚○゚ 「どうしたもんですかネー」 イスカリオテ機関長、間久部(マクベ)が髪をかきあげる。 その口調とは裏腹に、垂れた髪の奥の目は笑みに歪んでいた。 皇太子暗殺から一夜明けた正午。 サウスゴータとロンディニウムの中ほどにある森のそば。 「アルビオン解放戦線」から名を改めた「ハルケギニアカトリック武装蜂起軍」は ロンディニウムへの夜を徹した強行軍の中、しばしの小休止を取っていた。 アルビオンの民衆は長きに渡る内乱に倦み疲れ、その争いに大義名分を与える ものでしかないブリミル教とメイジ達への反感を火薬の如くに蓄積させていた。 そんな彼らの中にカトリックの教義は熱狂を以って迎えられ、今やその信徒は 十万にならんとし、蜂起軍の数も様々な勢力を併呑しつつ優に三万を超えていた。 その象徴である二人の聖女、その一人のティファニアは行軍に加わらず 信仰の中心地となったウエストウッド村に残り、信徒達をまとめている。 ハーフエルフである彼女は新たに信仰に加わる者たちへ例外なく驚きを与え 時には一時の警戒を招きもしたが、エルフを敵と教えた貴族たちへの反発と 何より誠実で献身的な彼女の姿がかえって信徒達の求心力となっていった。 そしてもう一方の聖女、『狂戦士(バーサーカー)』高木由美江は その圧倒的な戦闘力により武装蜂起軍を団結させる強力なイコンとなっていた。 特にその愛剣(その様な言われ方は由美江にとっては不本意だったが)である デルフリンガーの魔法殺しの能力は、メイジたちに使い捨てられてきた 魔法を使えぬ平民兵士達にとって、まさに貴族支配打倒の象徴と映った。 軍の中でも特に信仰心と戦闘力の高い者たちは『ウエストウッド聖堂騎士団』 として彼女に直接指揮をされ、その十字を掲げた黒ずくめのいでたちは 戦場にあってレコン・キスタ側の兵士達に強烈な畏怖を植えつけた。 その高木由美江は間久部機関長の傍らでもう一人の人格に体を預け、 自分は来るべき戦いに備えて眠りについていた。 「ど、どうかなさったんですか? 機関長」 「いやナニ由美江クン、あ、いや今は由美子クンか。 どーにもこーにも目指すロンディニウムから 当のクロムウェル氏の姿が消えたらしいんデスヨネー」 「そ、それって、レコン・キスタの方々との和平交渉のお相手が いなくなった、ということでしょうか?」 「ワヘイ、デスかぁーっはっはぁ」 この期に及んでそんな発想が出てくる由美子の平和主義ップリに 間久部は思わずがっくりと頭を垂れる。 二重人格とは聞いてはいたものの、これほどまでとは。 この世界にちょくちょくと顔を出すようになって数ヶ月がたつが 未だに由美江と由美子の二人のギャップに慣れる事は出来ない。 (ま、この由美子クンがいればこそ、由美江クンもあのおっとりとした ティファニア嬢と上手くやっていく事が出来ているんだろうがネェー) 「フン、レコン・キスタの司令官が敵前逃亡とは、何ともしまりのない結末だ。 この分では俺の働き甲斐も無さそうだな」 二人の横で黙々と愛銃ソードオフ・M1ガーランドの手入れをしていた ルーク・ヴァレンタインが間久部の顔も見ずに鼻で笑う。 初夏だというのに白のスーツに白いコート、流れるような金髪を 後ろに束ねたその姿は、身にまとった常人ならざる気配と相まって 寄せ集めの軍勢の中でもひときわ異彩を放っていた。 個人での陽動や暗殺を主な任務とするルークは前線での戦闘には 殆ど関わらず、吸血鬼であるという事も知らされてはいなかったが、 影に日向にティファニアを見守り、隙さえあれば由美江と殺し合いを 始めようとするこの色白眼鏡の美男子が人外の存在だろうという事は 信徒達の間では暗黙の了解となっていた。 「それはあの、良い事です、、よね? ルークさん」 由美子相手では食指も動かぬらしく、ルークはただ肩をすくめる。 「いやいやソーとは限らりませんよー、ミスタ・ヴァレンタイン。 向こうにはかのアーカード氏がいるらしいじゃあないデスかあ?」 間久部の発したその名前にルークの手が止まる。 「その「ミスタ」ってのは止せ、ケツが痒くなる。 アーカードは確かに問題だが、シュレディンガーの話だと そもそも向こうに加勢するとは限らん。 大体ヤツとて身一つでこの世界に来てまだ日も浅い、 アレの死の河とて良くて一万になるならぬの筈。 ロンディニウムの貴族派残存兵力を足しても 王党派と合わせればこちらの方が数は倍する。 それに、アーカードがその領民達を戦場に解放したその時は、、、 今度こそ、俺がヤツの心臓を止めてやるさ」 眼鏡の奥で理性を保っていた真紅の瞳が、凶暴な歓喜に歪んだ。 † 「起きて下さい」 かつてこの国の王城だったハヴィランド宮殿。 クロムウェルをロサイスに送り届けたアーカードは、 ロンディニウムに戻るとその宮殿上部の寝室で たっぷりと食らい、たっぷりと眠った。 その食い散らかした残骸の中に、ローブをまとった女性が立っている。 その目は吸血鬼特有の赤い光を放っていた。 「シェフィールド様、起きて下さい。 面白いことになっていますよ」 眠りに落ちていたアーカードが鼻をひくりと動かし、目を覚ます。 丸一日以上眠っていたらしい。 ひとつ伸びをしてぺたぺたと窓辺に進み、カーテンを引き開ける。 雲間に隠れた天頂の太陽の近くに、二つの月が浮かんでいる。 日食が、近い。 視線を水平に移してから、アーカードは初めてそれに気づいた。 「ほお!!」 ロンディニウムを囲む城壁のそばに、二隻の戦艦の姿がある。 戦艦はゆっくりと回頭し、その砲列を今まさにハヴィランド宮殿に 向けつつあった。 城壁の外では既に展開された両軍が開戦の時を待っている。 「あんな隠し玉があったとはのう!」 貴族派の空軍戦力はほぼ全てがトリステイン攻略へと向かっている。 王都防衛の竜騎兵部隊が次々と飛び立っていくが、司令官の不在は 指揮系統に混乱を招き、兵達は統率された行動を取り得ずにいる。 「はは、いいぞ」 二隻の戦艦から一斉に砲火が上がる。 「 戦 争 の 時 間 だ 」 着弾の轟音と衝撃とがハヴィランド宮殿を揺さぶった。 地上でも砲撃を契機に双方の軍勢が敵陣へと突撃を開始していた。 鬨の声と剣戟とが遠くここまで響いてくる。 まるで宝物を見つけた子供の様に、アーカードの目が歓喜に輝く。 懐へ手を差し入れると、ローブの女性へ指輪を放る。 始祖の秘宝、『風のルビー』と『水のルビー』。 今のアーカードにとっては限りなくどうでもいいものだ。 「クロムウェルの方はどうなりましょうか」 「知らん」 眼下に繰り広げられる光景を見つめたまま、アーカードが短く答える。 「大体クロムウェルが首尾よくトリスタニアまで辿り着いたとして、 あのおっさんが「自分の娘」が留学しとる国を攻撃するとも思えん」 「シャルロット様、ですか」 「今はタバサと名乗っとったよ。 向こうはぜんぜん覚えておらんかったがの。 もっとも、国元でこの姿で会った事は無かったか」 アーカードは手を広げ、少女の形をした自分自身の体を眺める。 「シェフィールド様は、どうなさるので?」 「その「シェフィールド」という名前は、お前にやる」 後ろに立つ女性が小さくため息をつく。 「では、今後は何とお呼びすれば」 「アーカード」 振り返りもせず、ぎちりと頬を引き上げて答える。 「いろいろ試したい事もあったからな。 ちと遊んで帰る、と 「シャルル」 に言っておけ」 アーカードは窓を蹴破ると血と硝煙と鉄の臭いを大きく吸い込み、 歓喜の大哄笑を上げて戦火の空へ身を躍らせた。 † 「敵陣は混乱の極みだ! 次弾、砲撃準備急げよ!」 「敵竜騎兵を近づけるな! 左舷弾幕を厚くしろ!」 王党派が隠し持っていた虎の子の戦艦二隻。 甲板を怒声が飛び交い、兵士達が慌ただしく駆け回る。 その一隻、戦艦レパルス号の甲板―――。 一人の兵士が、ぞくり、と氷の様な気配を感じ思わず後ろを振り向く。 視線の先には同じく息を呑み甲板の中央を見つめる仲間の姿があった。 爆音とどろく戦場の中で、その場にいた全員が無言で一点を見つめる。 そしてそれは当然のように、空からゆっくりとそこに降り立った。 兵士は、ある「噂」を思い出していた。 その噂はこの内乱が始まった時から、否、もしかしたらそれ以前から 兵士達の間に囁かれていたものだった。 それは、真白い少女の姿かたちをして戦場に現れ、 けれど、少女では、ましてや人などでは在り得ず、 しかし、敵味方の区別無く。 いわく――― ―――血を啜るという。 いわく――― ―――魂を喰らうという。 聞いた時には馬鹿げた与太話だと一笑に付した。 事実、そんな話など聞いた端から忘れていた。 今、その与太話の「それ」が眼前の「これ」だと瞬時に理解した。 自分だけでない、ここにいる皆が感じている。 「恐ろしい事になる」と。 この化け物を倒してしまわないと「恐ろしい事になる」と。 少女の姿をした「それ」に、全員が殺到した。 銃弾が、魔法が、剣が槍が斧が次々とその五体に撃ち込まれ、 焼き焦がし、斬り刻み、「それ」を肉片へと変えていく。 艦外の戦闘は忘れ去られ、絶叫と恐慌だけがその場を支配した。 だが。 撃ち尽くし、焼き尽くし、斬り尽くした時、 絶叫は絶句に置き換わり、恐慌は絶望に浸食されていく。 声なく立ち尽くす兵士達の前で、その肉片が、骨片が、服さえもが 溶けて流れて赤黒い血流に変わり、蛇の様に渦巻いて人の姿を形取る。 真白いスーツに黒髪をなびかせた少女の姿を。 復元したばかりの口元から小さなピンク色の舌がこぼれ、唇を舐める。 少女はまだ鼻から上の無い顔で、ゆったりと皆に微笑む。 真白い手袋をした両手が懐に差し込まれ、巨大な二丁の拳銃を取り出す。 左手には白金の銃、右手には黒金の銃。 アーカードは両手を広げ喜びに満ちた表情を浮かべると、 出来上ったばかりの目を見開き満足げに周囲を睥睨した。 「兵士諸君 任務御苦労 さ よ う な ら 」 ただただ一方的な虐殺の場と化した戦艦レパルスの横で、 戦艦オライオン号の甲板上へもその恐慌は感染しつつあった。 「何が、何が起こっている、あの艦上で、、」 「判らん! くそっ、とにかく陛下をお守りしろ!」 「何だ? レパルスの黒いあれは何だ?!」 ―――得体の知れない何かがレパルスの艦内を蹂躙している。 「あれをオライオンに近づけるな!」 ―――それだけはオライオンの艦上からも見て取れた。 「駄目です、レパルス号の通信途絶!」 「陛下、こちらは危険です!」 国王ジェームズ一世は、しかし動こうとはしなかった。 「いまさらこの場を逃れて何になろう」 確証は無かった。 しかし心静かに確信していた。 (あれが、朕の死であるか) 老王はゆっくりと手にした王杖を振り上げ、 戦艦レパルスへ向かってかざす。 傍らに立った司令官が驚きながらも兵に指示を出した。 「?! ほ、砲撃用意! 目標、戦艦レパルス号!!」 その声に兵士達も一瞬の放心の後、すぐに指示を実行する。 「取り舵いっぱい!」 「急げ! 全砲門開け!」 「、、、陛下」 その声にジェームズ一世は静かにうなずく。 王杖が振り下ろされ、司令官が叫んだ。 「撃て!!」 「全弾命中! 全弾命中!」 味方艦への打撃に悲痛な歓声が艦内に湧き上がる。 しかしそれはほどなく、困惑と畏怖とに変わっていった。 オライオン艦上の全兵士が見守る中、 黒煙を上げる戦艦レパルスは ずるずると這い蠢く赤黒い巨大な何かに包まれていく。 「、、、冗談だろ」 「次弾装填急げ、、、早く、早く!!」 もはやそれ自体が赤黒い何かに変質しようとしているレパルスが、 低い軋みを上げつつゆっくりとその船首をオライオンへと向けた。 「?! こちらにぶつける気か!」 「退避!退避!」「駄目です、間に合いません!」 「魔法だ! 何でも良い、魔法を奴に、、、!!」 狂乱の坩堝となったオライオン艦上で。 かつて戦艦レパルス号だったモノが眼前に迫る中、 アルビオン王国国王ジェームズ一世はその人生の最後につぶやいた。 「、、、ウェールズ、すまんな」 遠く響く轟音と爆炎とがロンディニウムの天空を揺るがせた。 † 「オイオイオイ、どうなってんのよアレは?!」 向かってくる敵の首を右手の日本刀で刎ねつつ、由美江は ゆっくりと墜落していく友軍の残骸を唖然として見上げる。 「どうも何も、誰の仕業かなんぞ判り切ったことだろう?」 ルークが鼻で笑いつつ、顔も向けずに後ろの敵の頭を射抜く。 ついでに横なぎに振るわれた日本刀の一撃を 造作も無くしゃがんでかわす。 「お前の半分がテファの親友である事に感謝するんだな。 でなければ今すぐ蜂の巣にしてやっている所だ」 銃口を由美江に向けたまま斬りかかってきた敵兵を蹴り飛ばす。 「はンっ! やってみろっつーのよこのへっぽこフリークス!」 蹴り飛ばされてきた敵兵を左の剣で叩き潰すと、由美江は周囲を見渡す。 『おい相棒、俺ぁ金槌じゃあねーんだぜ? せめて斬れよ』 悲しげにつぶやくインテリジェンスソードには目もくれない。 「集まれ!」 由美江の号令に百人程の黒ずくめの集団が周囲に陣を張る。 ハルケギニアカトリック武装蜂起軍の中でも選りすぐりの 狂信者集団、『ウエストウッド聖堂騎士団』。 十字を掲げた彼ら全員が、由美江の刀が指し示すその先を見つめる。 「敵陣に落ちますな、シスター」「件の吸血鬼と言えど、あれでは」 ―――私は ヘルメスの鳥――― 「否、来るわ」 ゆっくりと土柱を立ち上らせ敵陣へと吸い込まれていく 巨大な二つの塊を眼光鋭く睨みつつ、由美江が答える。 ―――私は自らの 羽を喰らい――― 「さて、仕事だ。 せいぜい囮になる事だな」 ルークの足元から黒犬獣がせり上がり、彼自身を飲み込むと そのまま影の中にどぷりと消え去る。 ―――飼い 慣らされる――― 「黒禍が、来る!!」 二隻の戦艦が敵陣に墜落したその衝撃が、数瞬の間をおいて 由美江たちに叩きつけられる。 大地を揺さぶる振動と、吹き付けられる熱風と粉塵の中で 由美江は知らず笑みを浮かべていた。 「河が来る、死の河が。 地獄が踊り、死人が歌う」 墜落の衝撃だけが理由ではなかった。 襲い来る猛烈な予兆、いや狂兆に心と体を絡め取られ 敵も味方もその動きを止めていた。 黒煙と炎に包まれた残骸の中から、何かがあふれ出た。 赤黒いそのそれは、奔流となり、濁流となり、 そして激流となって周りの全てを飲み込んでいく。 そしてその中から、『死の河』の中から。 死者の、群れが。 現れたそれは、騎兵だった。 それは歩兵だった。 それは工兵だった。 それは竜騎兵だった。 ドットメイジが、ラインメイジが、トライアングルメイジが、 スクウェアメイジが、神官が、平民が、貴族が、商人が、 猟師が、農民が、遊牧民が、トリステイン人が、ガリア人が、 ロマリア人が、アルビオン人が、ゲルマニア人が、東方人が、 傭兵が陸戦兵が砲兵が水兵が憲兵が砲亀兵が火のメイジが 風のメイジが土のメイジが水のメイジが衛士が銃士が聖堂騎士が 風竜が火竜がオーク鬼がトロル鬼がオグル鬼がコボルド鬼が ミノタウロスがエルフが、呼ぶべき名も無きものたちが―――。 死者の王の領民たちが、その領地から這い出でた。 「全周防御!! 全周防御!!」 「方陣だ!! 方陣を組め!!」 「何だ!! 何が、、、」 「何が起きている?!」 恐怖に駆られた生者が叫ぶ。 まもなく死者の側へと転じる者達が。 「死だ、、、」 由美江が言葉を噛み締める。 「死が、起きている、、、!!」 怖がる事は無い、恐れる事は無い! 自らもかつて、「これ」の一部だったのだ。 左手のルーンが唸りを上げて輝きを増す。 「いいなあ!! あれ!!」 遠くの丘から双眼鏡で戦局を眺めていた間久部が喜色満面に叫ぶ。 「欲しい!! 素晴らしい!!」 戦艦の残骸を押しのけ現れた巨大な皮膜がロンディニウムの空を覆う。 めりめりと広がるその翼は生者も死者をも暗闇の中に塞ぎこめ、 ゆっくりと伸び上がるその首は二つの月をも喰らわんとする。 小山の如きその巨躯が死の河の内から顕現した時、ハヴィランド宮殿の 屋根の上でルークは引きつった笑みを抑えられずにいた。 体長100メイルを優に超える、歳振りし火竜が大気を震わせ咆哮する。 「あんなものまで、、あんなものまで喰ったのか!」 古竜の巨体がロンディニウムの城壁を難なく打ち砕く。 死の河は既に城壁を超え、市内へと雪崩れ込んでいる。 それはもはや、戦争といえるものではなかった。 敵も味方も、平民も貴族も、武器持つ者も持たぬ者も、 生きとし生けるもの全てが有象無象の区別無く。 「こんな事があるものか! あってたまるか!!」 どう考えても多すぎる。 死者の群れは溢れ留まる事を知らず、今や郊外の戦場はもとより ロンディニウム全域をすら飲み込まんとしている。 少なく見積もっても優に30万は下るまい。 奴とてこちらの世界へ来てまだ数ヶ月のはずなのだ。 古竜が大きく息を吸い、巨大な火球を吐き出す。 否。 こちらの三人がたまたま同時期に召喚されただけ、だとするならば。 アーカードまでもが時期を同じくする必然性は無い、とするならば。 有象無象が塵芥と吹き飛ばされ、立ち昇る火柱は天をも焦がす。 その光景を見下ろすルークの脳裏にシュレディンガーの声が蘇った。 この世界での再開以来、あの猫は事ある毎にウエストウッドを訪れては 昼食をご馳走になる代わりにティファニアに茶飲み話を披露していった。 そうだ、自分と主人とが平行世界に迷い込んだという話だった。 他愛ない冒険譚の中で、シュレディンガーは何を語っていた? 使い魔たちが召喚された時を分岐に、平行世界の相違が生まれていた、と。 けれど一部の相違は、自分達が召喚される前から在るようだった、と。 だが、それさえも他の使い魔が召喚された時に生じた相違だったとすれば。 そう、アーカードがこの世界に召喚された時に生じた相違だったとしたら。 もし、そうだとしたら。 5年か? 10年か? それとももっとか。 「奴は、、奴は何時から ここ<ハルケギニア> にいる!?」 † 燃え盛り黒煙を上げる、墜落した戦艦の残骸の上。 アーカードはそこに座り、足を組んで嬉しげに遠くを見やる。 「存外に粘る! ふふ、そうでなくてはな、そうであろうとも!」 混沌の中央、死者と生者との狭間には由美江率いる黒衣の集団、 『ウエストウッド聖堂騎士団』が陣取り、防波堤となっていた。 「さて」 瓦礫の上に立ち上がると、両手の銃を指揮棒のように構える。 アーカードの足元、瓦礫の丘の下に死の河が沸き立つと、 数十、数百の杖持つ影が次々と立ち現れる。 新たに現れた死者の群れは一斉に様々な形の杖を掲げ、 しかし一糸乱れぬ統率で朗々とルーンの詠唱を始めた。 「単一意思に支配された千人のメイジによる同時詠唱。 さしずめ 千角形<キリアゴン> スペル とでも名付けるか」 最初に反応したのは水系統のメイジ達だった。 前線のはるか後方に現れた尋常ならざる死者の群れ。 彼らの唱えるルーンが何をなそうとするものなのかに気付いた時、 この魔女鍋の底のような混沌のさ中で、いよいよ己の気が触れた のではないかと我を疑った。 しかし数瞬の戸惑いの後、彼らは声の限りに絶叫した。 「奴らを、奴等を止めろ!!」 「いや、もう遅い! 何処でも良い、身を隠せ!!」 そこには既に王党派も貴族派も無かった。 死者と、死から逃れんとする者とがいるだけだった。 「土のメイジはトーチカを作れ!」 「平民を守れ! 早く!!」 戦場の中央に大気が凝り、渦を巻く。 空を覆わんばかりの雲塊が現れつつあった。 高らかな死者たちの詠唱に合わせて、 遥かな高みの白い渦は放電を伴って凝集されてゆく。 そしてその収縮が頂点に達したとき。 「来るぞ!!」 絶叫とともに戦場に高温の暴風が吹き荒れた。 逃げ損ねた者の皮膚がただれ、膨れ上がり、 生きながら蒸し焼きになっていく。 「頭を出すな! 息を吸うな!」 ある者は城壁の瓦礫に、ある者は同胞の死体に埋もれ 必死に灼熱の突風をやり過ごす。 「終わった、のか?」 「いや、、今の熱風は氷結魔法の副産物だ。 単なる放熱現象に過ぎん」 その単なる副産物に焼かれた者たちが累々と転がる。 風のやんだ戦場で、男たちはゆっくりと立ち上がった。 「あれ、見ろよ」 促され、空を仰ぎ見る。 まもなく食に入ろうとする太陽と二つの月の横に。 三つ目の月が生まれていた。 水晶を削りだして造られたかの様なその天上の球体は、 距離感も判らぬ程の彼方で陽光を浴びて煌いた。 「何て、、何て美しい、、、」 知らず、涙が溢れてくる。 その月が高く澄んだ音を響かせ、ひび割れる。 生まれたばかりの月から光のしずくがゆっくりと漏れ落ちてくる。 こぼれ出たその光の一つを受け止めようと、男はそっと手を伸ばした。 全ての音が消えた世界に、アーカードの声が鳴る。 「では逝くぞ。 千角形<キリアゴン>スペル エ タ ー ナ ル フ ォ ー ス ブ リ ザ ー ド 」 月からの光のしずくが長さ5メイルを超える氷柱だと気付いた時、 男の体は既に氷柱に貫かれ、否、押し潰されていた。 地獄が、降り注いだ。 † 「おお、遅かったのう」 「おまえは、、、おまえは一体何なんだ」 舞い落ちる氷柱群が奏でる荘厳な交響楽曲を背に、アーカードは振り返る。 二つの月がゆっくりと太陽を飲み込んでいく。 闇が世界を飲み込んでいく。 「どうした? 千載一遇、万に一つ、那由他の彼方の好機だろうに」 「化け物め!」 ルーク・ヴァレンタインが牙を噛み鳴らす。 「『あの方』を騙るな! 俺が死の河と分かたれるまで、『あの方』は共に死の河に在った。 お前は『あの方』じゃあ無い。 お前はアーカードでも無い。 お前は吸血鬼ですら無い。 お前を滅ぼす好機だと? 笑わせるな。 お前は死すら持たない。 お前は賭すべき何物も持ってはいない。 お前は、お前はただ人を真似るだけの人もどきに過ぎん!」 アーカードは悲しげに肩をすくめる。 「やれやれ、非道い言われようじゃのう」 周囲に渦巻く阿鼻と叫喚の混声合唱はいつしか途絶え、 曲目はついに終盤を迎えていた。 闇に包まれた白銀の世界から、赤黒いものがにじみ出て来る。 幾千幾万の魂が、命が、そして死が。 小さな体が黒髪と、血と、影と溶け合い闇そのものへ変じる。 死の河が再び眼前の少女の内へと帰ってゆく。 もはやルークになす術は無い。 目の前に在るのは死の河の主ではない。 主を求め彷徨う死の河そのものなのだ。 「ならばこそ、、、 命を賭して何かを成すために、私は命が欲しい。 死を恐れず何かを成すために、私は死が欲しいのだ。 お前ならば、分かれ。 ルーク・ヴァレンタイン」 死の河の中央で全ての滅びを飲み込んでゆく少女は ルークをただ正面から、静かに見つめていた。 その静かな眼差しはしかし、哀願の、懇願のようだった。 死ぬ為だけに死を望む死の化身。 その時、その瞳が、ふいに固まり大きく見開かれた。 その顔が、弾かれたように東の空に向けられた。 「、、、来た」 少女の声は歓喜に打ち震えている。 「は は は は は は ! ! 開く、、、 『虚無』が開くぞ!!」 哄笑とも咆哮ともつかぬ狂喜の声をあげ、黒い翼を天に伸ばす。 「ワンコはもう少しだけ貸しておいてやる」 にやりと笑った後、引き絞られた弓矢のように暗い空に飛び去っていく アーカードの姿を、ルークはただ立ち尽くして見送った。 † 由美江が目覚めた時、生者も死者も、そこに何も残されてはいなかった。 戦場にはただ一人、自分だけがとり残されていた。 デルフリンガーの力を以ってしても、それが限界だった。 皆を守ろうとして守れず、力を使い果たし倒れた自分の上に覆いかぶさり 微笑みながら凍り付いていった男達の顔を思い出す。 (御然らばですシスター、いずれ辺獄<リンボ>で) その顔が今、白く変わり果てて由美江を囲んでいた。 日食は終わっていた。 由美江は自分を庇い氷像と化した同胞達の下から這い出し、 見渡す限り墓標のように乱立した氷柱群を眺める。 低く煙るもやの向こうには、輝く廃墟と化したハヴィランド宮殿が見える。 恐るべき力で周囲の全てを侵食していた凍結の力は失われ、 あちこちで氷柱が音を立てて崩れだしていた。 惨劇を覆い隠すように、白銀が陽光を受けてきらめく。 抑えきれぬ衝動が、体のうちに激しく渦を巻いてゆく。 氷原の中で、左手のルーンの熱さだけが空しくその身を焦がす。 由美江は虚空に絶叫した。 「殺す、、、 殺して殺(や)るぞ、 ア ー カ ー ド ! ! !」 † 前ページ次ページ確率世界のヴァリエール
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コメント欄です 感想・意見・批評等読んでみて感じたものを率直に書いていただければと。お気軽にどうぞ。ただし口論・雑談等は出来ればご遠慮くださいますようお願い申し上げます。 報告とお詫び 6月22日にコメントが多くなってきたので別ページを作ろうとした際、誤ってこれまでの皆様からのコメントを消失させてしまうという不手際を犯してしまいました。これまでコメントを書いてくださった方々には深くお詫び申し上げますと共に、今後二度とこのようなことがないように注意いたします。本当に申し訳ございませんでした。 なのはが互角に戦えるはずない。というかどうせコロシアムの場所でお話し(笑)でもすんだろなのは。フォワードもスバル以外絡んでないし。 -- 名無しさん (2009-06-22 22 59 53) いいじゃないか、今は。次あった時点で勝てないのは確定だろ。大気圏突破可能になってるんだし -- 名無しさん (2009-06-23 18 08 55) バックアップ見ればコメントのログあるはず -- 名無しさん (2009-06-23 19 45 47) 第7話の次回予告が追加されていて非常に次が楽しみだ。もう少し待てばくるだろうか。 -- reeder (2009-06-23 22 03 13) なのはのリミッター解除があるか楽しみ -- 名無しさん (2009-06-24 01 45 52) 次回予告きたぜ!もう少し、もう少しの辛抱だ皆の者!! -- PON (2009-06-24 22 40 32) 微妙に上から目線かつ押し付けがましいような気もするなのはの想いを、はたして反逆者カズマは受け入れられるのだろうか -- 名無しさん (2009-06-26 00 53 21) 重い過去背負ってるフォワード陣の方がまだ話し聞入れそう。だってなのはさんは家族が全員いて勝手に独りぼっちだって思い込んでたレベルだもん。これをカズマが知ったら鼻で笑われるか「テメェは何も失ってねぇじゃねぇか!偉そうな事言ってんじゃねぇぇ!」てブチ切れるだろ。 -- 名無しさん (2009-06-26 07 06 53) 「助けたい」という思い自体は尊いものだとは思うのだけど…どこか押し付けがましいと感じるのは何でかなあ?スクライド側は自分のために全身全霊をかけてるのにそれをなのはとかがストップかけようとしてるようなイメージがある。 -- 名無しさん (2009-06-26 07 40 55) これでなのはに説得されるようならもうカズマじゃないだろ 不幸云々はカズマが嫌う「勝手に人を枠に嵌める」事だし -- 名無しさん (2009-06-26 16 22 19) なのはは所詮テレビの向こうの紛争を「可哀想だね」と言ってられる国の生まれだからな。 しかもその上畑違いのはずの魔導師としても「空を飛べる」人間だから。「闘いが日常」の「地べたを歩く人間」からみたら、何を言ったって押しつけがましいだけだろう。「お話聞かせてほしい」とか、「お話」聞くだけで解決できるかと。しかも無理なら武力行使とか、もう聖人気取るなら「始めっから暴力行使」か「徹底した非暴力運動」にしろと、そう言いたい 。 -- イスカ (2009-06-26 21 54 06) スバルがカズマ側、なのはがホーリー側なら良いSSができたと思うのに…隊長が好き勝手やるのはいかんだろ…敵キャラ余って無いんだぞスクライド側は -- 名無しさん (2009-06-26 22 44 25) 「なまえをよんで」数時間前に前話だけですが読んだ記憶があるんですが修正中? -- 深緑 (2009-06-26 22 56 43) 皆さんが言っている通りなのかな、と思う面もあるけど、人の思いに貴賎や上下があるとは思いません。その出来事、事態を、どれだけその人が重要に受け止めているかが、『強さ』なんだと思います。なのはが押し通す意思と、カズマや劉邦の意地と言うか生き様を、どこまで対決させ続けられるかが作者氏の腕の見せ所だと思います。どこまでも折れないなのは、どこまでも真直ぐなカズマ、どこまでも絶対正義の劉邦、そんな三人を期待してます。 -- Wais (2009-06-27 00 55 26) とても面白く読ませてもらってます。カズマや劉邦の雰囲気が本当にそれっぽくて、思わずニヤけてしまうくらいに。 -- 名無しさん (2009-06-27 08 01 38) みんなスクライド好きだなwwwまあ俺も好きだけどね~ -- 名無しさん (2009-06-27 09 57 14) なのはがホーリー側なのはよくわかる。なのはの言う台詞台詞が見ていてホーリーだなぁと思えたもん。結局なのはも、いや、みんなが自分の正義を持っているんだと思う。そして自分の考えと合いてお考えが交わりあわないのもまたしょうがない。それは同じ組織、同じ思いで集まったものどうしたとしてもやはり差異はあるもの。だから、内部分裂とかあるわけだし、管理局の海とか陸とか仲悪いのもそんな理由があるのでしょう。まぁ、何が言いたいかというと、結局人間はみんな自分勝手な生き物だってことですよ。なのはも、カズマも、劉邦も、管理局も、インナーもホーリーも、みんなみんな。 -- 名無しさん (2009-06-28 23 34 18) 他人に理解を求めない劉邦と 他人に共感を求めるなのは 後者は圧倒的にウザイなwwww まぁ現実でもそういうもんだけど -- 名無しさん (2009-06-29 12 23 58) 確かに三人は自分勝手な所が他人よりあるけどカズマや劉邦は「理解しなくても良い」だけどなのはさんは自分の意見が否定されたら「なんで分かってくれないの?」な雰囲気だからな。てか一回カズマと話ししたなのはよりまともに話した事がないスバルの方がカズマと絡む方が違和感無いのは何故? -- 名無しさん (2009-06-29 20 47 00) カズマは拳 スバルも拳だからさ -- 名無しさん (2009-06-29 21 20 31) あれ、8話消えてる。修正中ですか? あとなのはより劉邦がましとは思えない。つぅか、劉邦マジうぜぇ。 スクライド放送時も思ってたけどこのころの劉邦マジうぜぇ。記憶喪失、復活以後はそうでもなくなったけど、独善、見下し、自己陶酔とラクシズレベルでうざかった。なのはの場合、無印では危険なJSを集めているフェイトに理由をきかせて、A’sでは闇の書が完成すると災害がおこることを伝えるために悪魔らしいやりかたで話を聞いてもらう。……んな、責められるような事か?StSの天地魔闘が印象に残りすぎてないか? -- OTZ (2009-06-30 02 26 44) 過去なのはがどうだったかじゃなくて、このSSでどうかだからな どうみてもこのSSのなのは他の登場人物に比べて押し付けがましくてウザイ まぁ最初に話し合い云々言うんなら最後まで突き通せってのもあるがな -- 名無しさん (2009-06-30 04 20 15) 過去のなのはwwwww -- 名無しさん (2009-06-30 15 02 03) あくまでスクライドのセカイでの価値観でものを言うなら、なのはの行為は独善的極まりない、水守の理想論を更に徹底したような綺麗事だが、 一般的な価値観から見たら、やはり異郷に居てなお己の芯を保ち、理解を得ようとするその姿勢は、素晴らしいだろう ただ、やり方が良くないために理解とはほど遠い状態に陥らせただけだよ まぁ、劉鳳もカズマも独善的な所は似ているが、少なくとも押しつけがましくないし、自己完結してるからな 持論を他者に求めるなのははウザく見えても仕方ないさ つまり、本質は皆同じ、か -- 名無しさん (2009-06-30 23 10 34) まぁそうなんだがなのはが管理局からの第三者的な介入とかならまだウザイとかは思うが共感は出来ると思うんだ。だがホーリー側についた時点で隊長として勝手な行動はしちゃあいけないのに誰よりも先に勝手な行動に出たのもあれなんだよなぁ… -- 名無しさん (2009-06-30 23 40 33) そんなになのはウザイかね? -- 反逆者 (2009-07-02 06 57 37) 大体のなのはSSの特徴は、自分の価値観を主張する→だけど相手の価値観は自分のとは違う→それは間違ってる!の公式に成り立つケースが多い。その場合は、相手が「そうだね。そのとおりだ」と懐柔されるか倒される展開になり、又はなのは勢が「私たちが、間違っていたの」的な展開になる(所謂アンチ系の事)。原作キャラが幅広い視野で物事を捉えて納得できる人物設定のSSは結構少ない。結局は、それをウザイ、ウザくないと感じるのは読者の感性による。 -- 似非神父 (2009-07-02 13 08 20) ウザイかどうかは個人の判断によるなま、何よりなのはは力無い者の苦労と悩みを知るべきだと思うがな。 -- 反逆者 (2009-07-02 20 01 10) だってなのは、全部上から目線だもの 何か、違う世界に関わる仕事=自身の感情の抑制ぐらいできないと、違う世界=違う価値観なんだから。 まぁ上司が感情的に動いたらそれを指針にしてたスバルも自分見失うさ リリカルには張りつめた組織の緊張感は、無理だろ。管理局という準軍事組織内ですら上官に官位付けないどころか下の名前にさん付けだし -- 名無しさん (2009-07-02 21 29 08) 確かに、緊張感はない、純粋悪の敵がいないからかな -- 反逆者 (2009-07-02 21 41 46) なんか結果的に世界救ったんだから今までのこと無しね!って終わり方しそうだな。何だかんだ言ってヴィータのことは降格や謹慎すら無さそうだし -- 名無しさん (2009-07-02 22 44 08) スクライドやら裏側がどす黒い話無いものな、リリカルには 広域次元犯罪者のスカですら殺しはなるべく行わないとか、温いこと言ってっし まぁ非殺傷うんちゃらがある時点で、闘争を嘗めてるな 軍属になるからには引き鉄を引いて敵を「撃つ」覚悟ぐらいしてほしい -- 名無しさん (2009-07-03 00 21 24) まだ、戦闘機人のが上手く適応できそうだな。 -- 反逆者 (2009-07-03 06 54 26) まぁ、仮にも「魔法少女」と頭に付いている作品だからねぇ。それにシビアな展開を無理に求めるつもりはないけど・・・。 -- SUM (2009-07-03 11 09 11) チンクの武人魂に トーレの敗者の矜持 まぁ、六課側ならかろうじてシグナムくらいか -- 名無しさん (2009-07-03 14 53 28) スクライド勢の生き方は、何というか、刹那的というか、短距離を全力で走り抜けてるよな。よく考えたらあんまりキャラが「未来」の夢とかの話してないし。やっぱり理想の「現在」を生きるのに全力を注いでるからこその、熱さか それに比べなんと緊張感の無いリリカル勢。まぁリリカル勢は将来とか未来とか、夢とか、語ってられる世界だからなんだろうけど、、、 -- 名無しさん (2009-07-03 23 55 41) 単純にウザイかウザくないかで言えば、この作品のなのははウザイ。でも原作から大きく逸脱した人物設定ではないし、何よりそのウザさがストーリー的には良いスパイスになってると思うんだなあ。 -- 名無しさん (2009-07-04 04 56 30) 俺はブレーキに感じるなぁ なのはが一人が雰囲気にのれてない感じがする -- 名無しさん (2009-07-04 05 01 22) 昴の不安定っぷりは雰囲気に飲まれまくりだね -- 名無しさん (2009-07-04 15 06 53) 状況は読めるけど、空気が読めないのがリリカル勢クオリティ -- 名無しさん (2009-07-05 19 51 20) 魔法少女ものに政治関係を押し付けるな!夢がなくなる!と、私は言いたいのだが・・・・・・・・・・・・19歳?って、少女?何歳まで少女? -- 名無しさん (2009-07-05 23 34 48) 政治…?政治だと…?ロストグラウンドに政治なんてもんはあるのか…? -- 名無しさん (2009-07-05 23 54 02) 政治というか勢力争いと権謀術数の坩堝だと思うんだが、、、しかし、キャロとエリオとティアナ、実に空気 空気読めてないとか以前に、空気 -- 名無しさん (2009-07-06 13 15 47) まぁ、空気でかまわんがな -- 名無しさん (2009-07-06 21 07 13) 最近知って引き込まれながら一気に読ませて頂きました。中でもスバルと君島の絡みが良かったです。今後のスバルの成長に期待、女の子としても戦士としても。これからも頑張って下さい。応援してます。 -- 名無しさん (2009-07-06 23 52 06) 大変面白かったです。続き待ってます -- 名無しさん (2009-07-07 16 09 59) 連載当初から読ませてもらってます。リリカル勢が関わってくることで物語にどのような影響が出てどのような展開になっていくのか楽しみでしょうがないです。トリーズナー氏が示すカズマやなのは達の信念を見届けたいと思います。これからも我々を大いに興奮させてくれる物語をwktkして待ってます! -- 名無しさん (2009-07-09 23 29 15) そういえば第8話どうしたんですかね? -- 名無しさん (2009-07-17 16 34 15) 某ニコニコの遊戯○MAD動画ではやてとカズマなら戦ってたな、あれみたくなのはとカズマのガチ喧嘩にならないかな -- 反逆者 (2009-07-28 14 08 47) あれってなのは厨のオナニー動画じゃん。 -- 名無しさん (2009-07-31 09 37 23) なのはは2ランク半リミッターがあってAAランク。Aランクなのは4ランクかかってるはやてだね。 -- 前提として (2009-09-25 16 25 28) 8話読ませて頂きました。マジ泣けました。なのはカッコ良すぎッス。ただフェイトのところに現れなかったのは何故!! -- 狸 (2009-10-17 02 57 47) これは……予想外だった。まさかなのはが死ぬとは。涙は出なかったかな。悲しい物語という感じは受けなかった。なにかもっと他の、言葉で言い表せない感情が勝っていた。 -- Wais (2009-10-17 03 08 27) なんか泣けました -- I am (2009-10-17 07 50 50) この展開は誰も予想できませんでした。作者は神!! -- なぶ (2009-10-17 22 57 22) なのは死亡か……果たしてだれがなのはの後継者になるかな? 個人的にはやはり会いにいった?ヴィヴィオに受け継いでもらいたい ただね、なのは死亡は管理局の一部に暴走を引き起こしかねない事態 ロストグラウンドやばい気がします ……なんでなのは殺したんだよぅ(泣) -- エミリオ (2009-10-18 01 05 41) このような物語を読めたことに心よりの感謝を -- reeder (2009-10-18 01 39 25) クーガーの立ち回り如何ではカズマVS六課になりかねん。どうなるんだこれから -- (2009-10-18 12 55 48) 善とか悪ではなく。カズマには、カズマの拳を貫いて欲しい。流石に、漫画版の様に宇宙船に仁王立ちまではいかなくても… -- 名無しさん (2009-10-19 00 44 00) 八話読ませていただきました。はじめはやはりなのはにカズマが懐柔されて綺麗事で終わりかとも、思えましたが、、、まさかの展開に驚愕しました。他の方も仰った様に、悲しいけども涙がでない話だと感じます。スバルは君島に続きなのはも亡くし、他のリリカルメンバーにはかなりの影響があると思いますが、やはりカズマがこれから何を信念にするのかが気になります。正直なのはが死ぬSSというのは見たことがなかったので、これは期待大で待ってます。なのはは信念に見合った死に様で、格好いいの一言につきます。これほど男らしい死に方は近年稀に見る作品だと思います。執筆がんばってください! 長文失礼しました -- イスカ (2009-10-20 19 49 52) なんかすごい言い表せない読後感だ。今まで上から目線やら押しつけがましいやら言ってたけど、ここまでやったらカッケーよ。今まで何かごめんな、なのは -- 名無しさん (2009-10-20 20 03 31) ……涙がじわじわ溢れて止まらないです。リリカルなのはSSで泣いたのって初めてです。このSSのなのは、ゆっくりお休みください。トリーズナー氏、GJです。…………レイジングハートはどうしたんだろう。スターライトブレイカー撃ち込んだ時はまだ無事みたいだったけど -- 名無しさん (2009-10-20 23 18 08) リリカルのヌルい空気がスクライドの壮絶な空気に飲み込まれましたね。覚悟と信念は両方とも同じぐらいあるのに、リリカルが綺麗事なのは犠牲を知らないからでしょうか。そして犠牲と喪失を知ったリリカル勢は、これからどう動くのか。あと空気と化したフォワード3人はどうなるか。楽しみにしてます -- バリーズ (2009-10-21 12 42 16) 生きてた時は上から目線でウザイ事この上なかったが・・・ここまで信念貫いた相手にはもはや敬意を表する他あるまいて -- 名無しさん (2009-10-21 12 45 09) 確かに、死人に鞭は打てんな。しかし最終的になのはの思いが伝わって、カズマの心が折れた、、、つまりカズマが負けたわけで。そういう精神面気にするカズマだけに言いたいこと言って死んでいったなのはは確かに勝ち逃げなんだろうな。あと関係ないけどクーガーの思考の関係ないけど「アイツが彼女の亡骸を抱え泣いているということは、つまりそういうことなのだろう」の辺りで涙がにじんできたよ -- 名無しさん (2009-10-21 19 08 42) 上のはイメージね。本文から抜粋ではないよ -- 名無しさん (2009-10-21 19 21 22) めちゃくちゃ感動しました。リリカルのssでここまでなのはの志が高いとは・・・。カズマのもかなりの影響を与えていますし -- 名無しさん (2009-10-22 16 03 38) なのはは自己満足できたでしょうけど、これから六課から狙い撃ちされる立場のカズマを考えるとたまらんなぁ・・・残される娘や仲間たちのことも考えてもらいたかった。ヴィータの八つ当たりで狩られるネイティブたちも可哀想ですね・・・ -- 名無しさん (2009-10-28 22 09 16) カズマとスバル、かなみと劉鳳のペアに焦点が当てられてくるかんじですね。しかしなのは一人抜けただけでガタガタだな機動六課。やはり個人依存が強すぎるのか そしてフェイトとユーノは哀れとしか言えないな -- 名無しさん (2009-10-29 23 41 59) 何 故 殺 し た。 いやまあ、大変面白いSSなので、これはこれで良いですけど。主要人物が容赦なく死ぬあたり、スクライドサイドの雰囲気がよく出てますね。 -- 名無し (2009-10-30 02 03 54) 一人くらいはカズマ・・・いやロストグラウンドの悪魔達の仲間になるのかな?とりあえず寺田あやせまで待ってます -- 名無しさん (2009-10-30 12 31 24) なのはのような甘い考え押し付けじゃカズマの心は折れないと思ったんだけどな -- 名無しさん (2009-10-31 12 29 09) 甘い考えも、ブチノメされて、目の前で死なれたら、流石に感じ入るところがあったんじゃないかな? -- 名無しさん (2009-11-01 23 25 05) 生前にウザい、偽善、綺麗事と切り捨てられてても、死に様にオトコを見せたら、どんな奴でも肯定的に受け入れてしまえるこの不思議 -- 名無しさん (2009-11-06 01 04 11) 甘い理想は唱えるだけならただの偽善。命を懸けてまで貫いたとき、それは信念へと変わる。それにあの時カズマは既に心が折れてる -- 名無しさん (2009-11-06 15 59 48) なのはが甘い甘い言う連中はアレを貫く困難さを理解しているのか。正直氏の作品で一番なのはは良いキャラだったけどな。あくまで私見だが。 -- 名無しさん (2009-11-06 19 51 37) 俺にはあれは隊長としても親としてもダメダメな行為で、単なる自己満足で死んだとしか思えなかった。色んな考えがあっていいと思うけど肯定派ばっかりって言うのはちょっとびっくり。 -- 名無しさん (2009-11-06 20 07 47) 蛇野郎(笑)が登場したか・・・リリカル勢が介入したことにより彼の行動はどう変わるのだろうか・・・ただ一つだけ言えることがあるぜ。姉さん逃げてぇぇー!!! -- 名無しさん (2009-11-08 09 06 46) 感情的には『男前』な死に様のなのはさんでしたが、理性的に考えたら、そんなに信念貫きたかったら犯罪者扱いでも組織に入らず一人で体現したらいいのに。某フェイトの正義の味方のように -- 名無しさん (2009-11-12 23 29 58) 何かあれはヴィヴィオに、ママはあなたの事より自分の意地通すほうが大切なんだよーって言った様なもんだと思うんだよなあ俺(なのはが実際どう思ったかでは無く結果的に)。本編のシグナムのセリフであったけど、あれは本当に命を掛けなければならない局面だったか? とも思うし -- 名無しさん (2009-11-14 08 26 26) 原作からしてなのはは相手と真正面がらぶつかって戦って~で自分の意見通して来てるからなー。同じような感じで戦うカズマとは絶対かち合うよねっていう。で、どっちも引くわけないから片方死ぬしかないわな。というか原作になのはとより強いor互角のやつがいて殺す気あったらこうなったんだろうなーと思ったな -- 名無しさん (2009-11-15 02 15 59) リリカル原作は非殺傷うんぬん抜かしてる時点でスクライド勢の『自分の障害となる者は完殺』のスタイルに勝てるわけねーよな。なのはみたいに完膚なきまでに心折るか、精神崩壊させるかしないと。スクライドの奴らなら死んでなければ再び立ちはだかって次こそ確実に殺しにくるだろ -- 名無しさん (2009-11-18 08 51 23) んー、カズくんが民間人大量虐殺して回ってるとかなら命張って止めるのも分からんじゃないんだけど、自己満足の為にまたヴィヴィオを一人にしてっていうのがねえ。劉鳳に任せればいいじゃないとか思うってしまうのがある。 -- 名無しさん (2009-11-18 09 33 55) なのはが命張ってカズマと戦う理由が薄く感じるなぁ。周りの人とか環境を全部投げ捨ててまでやることなのか?っていう。まあなのはらしいっていえばそうかも。基本ヒカヌッって感じがするキャラだし -- 名無しさん (2009-11-20 08 06 54) エリオ・“グッドスピード”・モンディアル、キャロ・“スイカ大好き”・ル・ルシエ、ティアナ・“ビッグマグナム”・ランスター、スバル・“シェルブリッド”・ナカジマ、という、電波作品を期待していた私が来てしまいました。正直、リリカルにあるまじきシリアスダーティー!!そしてなのかサァーン!! -- 名無しさん (2009-11-21 23 18 30) リリカルキャラが完全にスクライドの空気に飲まれてるな。スクライド自体は素晴らしい作品だが、能力バトルというのを差し引けばどこにでもある体制対反体制の泥沼抗争な内容だからな。ロストグラウンドなんかよりも荒れた世界にちょっかい出してそうな管理局なら、常日頃からそういった対外折衝に長けた部隊がいくらでもあっただろうに。なんで感情を殺しきれない未成年どもを、ロストロギア反応ってだけで投入するのだろうか。六課の迅速性からくる優先性が完璧に空回ってるよな。まぁ言い出せばキリがないけど -- 名無しさん (2009-12-03 02 06 41) なのはの信念は無駄と甘さが多過ぎるうえに、自分の考えが100%正しいとかんがえてるあたりが、むしろ哀れみすら誘う -- 反逆者 (2009-12-14 21 20 01) 任務中に隊長が死んでしまうのは、まあ、仕方の無い場合もあるけど、前線に新兵達を放り出すような事になるんで、指揮官は無謀な行動は絶対にしない様に、軍隊や自衛隊では深く戒められるんだそうな。最悪の場合自分が死ぬ事で部隊全滅なんてのも有り得るのに、正直、このなのはさんは人の上に立つ、人の命を預かる者の責任とか分かってるのかなあと思う。引き継いで指揮しなきゃいけない副隊長のヴィータの後の行動だって大問題なんだけど、独断で自分がしたいだけの無茶をいきなりやった挙句死んじゃって、部隊のこと丸投げした隊長があまりに酷いから・・・。 -- 名無しさん (2009-12-17 10 11 30) なのはざまあwwwwとしか言えん。 -- 名無し (2009-12-17 22 30 44) カズマざまあwwwwとしか言えん。 -- 名無しさん (2009-12-18 16 18 22) 前々から思ってたんだけど、ここってなのは側にしろスクライド側にしろ、キャラの悪口言うのって許されるの? 正直見てると「それを言ったらこのクロスが成り立たなくなるだろ」と言いたくなるようなコメが見られるんだが -- 名無しさん (2009-12-18 20 11 13) これは酷いとしか言えないコメントばかりだ、自重しろよ・・・ -- 名無しさん (2009-12-19 13 03 20) だいたい気に入らないところがあれば読むのやめろよ -- 名無しさん (2009-12-19 20 06 28) 嫌いな作品読む時間なんて勿体無いわな・・・ -- 名無しさん (2009-12-20 16 28 48) トリーズナー氏 完結するまでは何言われようが貫くことですよ あなたが弱気じゃ倒れていったキャラも報われなくなっちまう -- 名無しさん (2009-12-20 16 30 52) ”感想・意見・批評等読んでみて感じたものを率直に書いていただければと。お気軽にどうぞ。ただし口論・雑談等は出来ればご遠慮くださいますようお願い申し上げます。 ”だそうですよ -- 名無しさん (2009-12-20 17 41 40) アレだよ、なんか見事にキャラの性格をつかみすぎて感極まってなんか書き込みたくなるんだよ。そしたら心からの感想でなんか悪口みたくなっちまうんだよ まぁ、なのはは死んだと割り切って、これからのリリカル側の動き、主に苦労侍シグナムさんが気になります -- 名無しさん (2009-12-28 23 49 43) あ -- ショックパンチ (2010-01-30 21 51 50) ↑間違えた。 そもそもなのはの行動理念や思想の根幹には良い子でなければならないってのがあると思うんだよね。色々な2次創作で言われている通り。それは無印、2nd、stsに関わらず共通していると思う。 (無印)魔法手にする⇒ユーノが危険性を述べる⇒みんなを救う⇒それらをなす事は良い子である⇒結果良し (2nd)蒐集⇒なんて事をするんだ彼女たちは⇒あれはいけない事であるという空気が流れる⇒なのは理解⇒それはだめだと訴える⇒聞き入れない⇒ぶちのめしてでも悪い事はやめさせる(他者に悪を自覚させることで相対的に自分が善。第一、人間自分が正しい立場になったら割と何でもやる物。子供であるならそれもとりわけ) (sts)今までとは洒落にならないほどに多数の人々から注目される⇒理想の誇大化⇒善悪の格差の拡大⇒悪は全力でぶち抜く(ティアナをぶっ飛ばしたのはそれが理由。まぁ極論だけれども。 自分と同じ事になって欲しくないというのも他人への労わりの気持ちがあるかもしれないけどそれは付加されたもので、根幹には良い子思想がある) 言ってみれば自分の意見というよりは他者の意見の平均値(?)を道標にしているに過ぎない・・・・・・そんな気がする。異論は受け付けます。 -- 枯れパンチ (2010-01-30 22 12 30) ↑ 2ndってなんぞ? -- 名無しさん (2010-02-03 07 24 24) このssめちゃおもろいですわ!! -- 名無しさん (2010-02-05 14 52 08) 心理描写とか世界観がいい感じに調和してて最高にはまりました。しかもカズマの心はやっぱりガタガタなんですね。かなみたちがなのはの死を知ったとき何を思うのか注目ですねb -- 名無しさん (2010-02-05 14 55 06) 大まかな流れが全然スクライド本編と変わってないのが残念でなりません。前半は結構好きだったんですけども、ミッドチルダ勢の影響が全然無さそうなのが・・・ちょこちょこ間に入っては来てますが、それだけっていうのが・・・。作者さんならではの展開が見てみたいです -- 名無しさん (2010-02-08 15 11 40) やはりスクライドのストーリーは壮絶だよな。監督曰くの「殴ることしかできないバカ」を主人公においてる時点で、おはなし云々のリリカルは意志が折れそうだ ↑×3でも言ってるようになのはの正義は借り物の正義だとも思うが、ある意味「死ぬまで一点貫いたバカ」という点では評価されてもいいかと 批評は善し悪し分かれますけど -- 名無しさん (2010-02-10 19 44 26) スバルちゃん・・・主人公みたいやないか いや、カズマが堕ちまくってるだけか しかし高町さんの「正義」は借り物でも、その「正義」を目標にしている若い世代が育っているのはすごいな -- 名無しさん (2010-02-10 21 16 41) アービターの策略に負けたティアナと新人二人の運命がきになります -- 名無しさん (2010-02-13 21 31 29) 上のコメント間違えました -- 名無しさん (2010-02-14 09 36 21) スクライドの物語は、もうテレビ版でほとんど完成してるって言うか、完結しきってるからな(事実、続編の要請も断ったという話を聞いたし)。下手に手を加えると単なる駄作になるからな。↑×5の意見を蔑ろにするというか、ケチをつけたりするわけではないけど、下手に展開を変えると何か嫌なので、このまま突っ走った方がいい気もする。まぁもちろんこの作者様ならたとえオリジ展開に突っ走っても見事なものを書き上げると思っているが。異論は随時受け付けます。 -- 名無しという名の名無し (2010-02-16 22 11 07) オリジナルに行こうとしてもそれこそ殴り飛ばしてでも突き進む連中揃いだからなぁ -- 名無しさん (2010-02-16 23 45 00) 連コメですけど オリジナル展開でやるならカズマがミッドに~でないと辛い気がするな -- 名無しさん (2010-02-16 23 47 28) 細けぇこたぁ、いいんだよ!素直に楽しもうぜ。 -- 名無しさん (2010-02-20 17 50 34) ↑これ、真理 -- 名無しさん (2010-02-23 15 20 38) ↑なのはクロスで主役のなのはが死んでるのは細かいことではないし、素直に楽しめない人が存在するのも当然というか無理もないことかと。 -- 名無しさん (2010-02-27 07 09 08) strikersの主役は昴 -- 名無しさん (2010-03-05 23 17 33) ↑StrikerSの主役はなのはとスバルの二人 -- 名無しさん (2010-03-06 19 30 08) 別に作者の書きたいように書けばいいだろう。 -- 名無しさん (2010-03-13 18 53 51) 死ぬまで己の信念を捨てないのはスクライドのメインの登場人物なら当たり前じゃないか? -- 反逆者 (2010-03-22 13 37 26) 自分の信念に命懸けられる凡人がいる作品の主人公なんだから、カズマにはなのはさんが死んだ程度で心が動かないで欲しかった -- 反逆者 (2010-03-22 13 38 34) ↑心が動かないで欲しかったって、このクロスオーバー作品の否定じゃね? -- 名無しさん (2010-04-07 16 19 01) 心が動かないで欲しかったとか、なのはキャラに対するヘイトが読みたいんですか? 互いを尊重してこそのクロスオーバーでしょう。多作品のキャラの死を目の当たりにしても、登場人物が心に何も残さないクロス作品なんて、私は少なくとも読みたくないですね。 -- 名無しさん (2010-04-07 23 34 51) 続きが早く読みたいです。 -- 名無しさん (2010-04-26 13 31 17) スクライド勢の雑魚っぷりに噴いたw -- 安定 (2010-06-27 17 03 41) そもあの時のカズマはとっくに壊れかけてる。君島に渇を入れられるまで奴は死んだも同然だったんだ -- 名無しさん (2010-06-27 21 06 37) 鬱展開が多いですが、各キャラの心境を書くのがうまいと思います。 -- 名無しさん (2010-09-05 16 02 42) 本当に感動しました。リリカルなのは×スクライドは世界として合うのかと最初は思いましたが、読み始めると意外や意外、まったく違和感無く入り込めてしまって、設定がうまいです。 -- 名無しさん (2010-11-26 01 46 14) ↑続き そして、なのはが死んでしまってからは、もうボロボロ泣きで読みました。なのはの存在がいかに機動六課や関わる人々に -- 名無しさん (2010-11-26 01 51 17) ↑続き 大きな影響を与えたか良く伝わってきます。続きを楽しみしてます。是非、完結までもっていってください。 -- 名無しさん (2010-11-26 01 54 15) スクライドのアニメを最近見てSS探してたらここに来ました。とてもいい作品です。是非完結までいってほしいです。 -- 沙樹 (2011-05-20 02 04 00) 更新待ってます! -- 爺様 (2011-10-10 10 43 32) 更新待ってます! -- あばん (2012-02-05 22 01 14) ストライダー飛竜の続編を楽しみにしています -- 名無しさん (2012-03-13 20 26 05) 名前 コメント 目次へ
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前100|トップ|次100 101 :オーバーテクナナシー:2006/01/12(木)11 03 52ID wpymnwVJ 100 >故意に保留してる部分があるのは、検証がおっついていないせいなのですが >それ以外は、原始人側に興味が無かったりすることもありますね >金属加工は、わたしがとめてますね(^^; このあたりかな そもそも検証検証言うけど金属精製を個人レベルで検証出来るものなのでしょうか? ガスコンロで銅片を熔かすくらいは出来るかもしれないけど 仮に陶芸用の電気炉持ってたとしても鉱石から精製するのは無理だと思うし たたら吹きなんて個人で検証するのほぼ不可能でしょ 本当にやってるとしたらすごいと思うけど 102 :オーバーテクナナシー:2006/01/12(木)11 38 33ID I9QGIw2t 雨もそれなりに降る地域で水やりの必要な植物を育ててるとか原始人贅沢すぎなのはおいといて、 何の資源も出ないその土地にいつまでも住み続けて、資源の出る場所に勝手に移住する人が現れないのは何故なんだろう。 市場が存在して、価値のあるものが産出する土地に移住してより多く手に入れたい、そこを占有したいと思ったりしないのかな。 103 :オーバーテクナナシー:2006/01/12(木)12 09 55ID xMkPQzDn 【聞こえない】 1さんも一緒に検証されている人を募集してますし 92さんは詳しい様なのでので、提案する側から検証する側に回ったら いいかもしれないと思ったんですが だめ? 104 :録霊60◆CcpqMQdg0A:2006/01/12(木)18 57 48ID HHkMyhsj 【聞こえない】 初代1が金属加工を意図的に止めているのは、金属製品の実用化が白い人の 来襲イベントのフラグになっているからではないでしょうか? 多少、状況を手加減してでもゲームオーバーにせず、未来技術まで 育てたいという意図が働いているのだと思います。 J-ホバは、ゲーム画面の情報ウィンドウか斥候を使っているのか未来技術村の 技術の進行状況を完全に把握しているようです。 よって、こちらが金属製品を実用化すれば危機感を覚えて早めに潰しにかかるかもしれません。 金属加工を行う前に戦争を行えるように戦争指導者、戦士、斥候の育成法 を示したり、村の防御施設などもろもろのインフラを整備しなくてはならない。 というお題なのだと思います。 105 :死者の代弁者:2006/01/12(木)21 37 32ID oFd6d3dF 【聞こえない】 104 来襲イベントのフラグは架橋というのが既にありますね。 もちろんフラグが複数あってもいいわけですが、架橋のフラグが示された頃は、まだフラグについての言及があった。 フラグについての言及なく進行を止められてしまうと、ネ申は方針を打ち出せなくなります。 フラグを示さなくなってしまったのはなぜなのかな? 私は化学も土木も資源探索も偵察も宗教も議会も提案が止められてるから、 今のところこれ以上待ちを増やす気にはなれない。 蚊取り線香は何のフラグで止まったんだろうなあ。 106 :携帯からの使者:2006/01/12(木)22 19 28ID o6t3+nZi 【聞こえる声】 原始人さん、村人は全体で何人になりましたか? また村の人に対して次の事についてアンケート(ある集団の人に質問しどのような答えがどの位あったか纏めること事)を取って欲しいです。 1.いつか白い人が襲って来るかも知れないと思うか。 2.それは何故か。 3.白い人が集団で襲って来たら自分はどうするか。 4.それは何故か。 5.村のみんなの為に誰か(ウズメorナナッシor長老)の指示に従って仕事をする気はあるか。 各質問の内3番目に多い意見までとそれぞれの数を 村全体 ナナッシの母ちゃんと同じ重さの石が持ち上げられる男性 ナナッシの母ちゃんと同じ重さの石を持ち上げられる女性 家長(母ちゃん) その他の人 に分けて教えて下さい。(正確な方が良いですが難しいなら大体の数で良いので) 107 :録霊60◆CcpqMQdg0A:2006/01/13(金)12 03 02ID OmBEKcoP 64 萌えを感じるってなに? さすがネ申さんだけあって、きっとすごい感覚持ってるだね~尊敬するだ 難しい質問ですが、文明崩壊後に21世紀初頭の日本人の心を伝えるためにも答えなければなりませんね。 『萌え』とは、とある対象や特徴、言動、社会的関係性に対する強い愛着の念です。 言葉として定義されるようになったのはごく最近でも、昔から存在している感覚のようです。 いろいろと意味があり、現在でもきちんとした定義はありません。 「好き」とか「かわいい」とか「興奮する」に近いような気がしますが、性的な感じは希薄です。 モラーラが聖女様に大して感じている感情も萌えだと思います。 眼鏡という要素に注目してその感情を感じているので眼鏡っ子萌えですね。 また、外見のほかにも言動にそれを感じることもあります。 たとえば、猫が最初はなつかなかったのが、次第に懐く様子を見せることなどです。 (反抗的もしくは非友好的態度を取っていた者があるきっかけで隠しきれない 照れや好意を表すこと、またはそういう行動を取った者のことを『ツンデレ』といいます。) ちなみに萌えの感情がわかず、興醒めである様子を『萎え』といいます。 【聞こえても支障がない声】 多分、「あはれ」「おかし」「幽玄」「わび」「さび」と同じく【910 日本文学】分類かな。 定義が難しいのでしっかりと説明できる人希望します。 108 :録霊60◆CcpqMQdg0A:2006/01/13(金)21 14 35ID O7MokrzF つづき ただ、『綜絖』というもんの説明がちょっと分かり難いだ 細い棒とは、これから下糸を上げ下げする『綜絖』という物になるものです。 この棒に下糸と同じ間隔で長さ一尺程度の糸を巻き結び、または二結びで結びます。 そして、綜絖から垂れ下がった糸で下糸を一本づつ引っ掛けて、さらに端を 綜絖に結んで輪のようにします。 そして、上糸は糸の輪と糸の輪の間で綜絖の棒の下にくるようにします。 http //www2.atwiki.jp/rokurei60/pages/211.html ちょっと考えたら、あらかじめたくさんの糸の輪がついている細い棒=『綜絖』を 作ってから下糸を経巻き具→綜絖の輪→布巻き具へ通したほうが早いかも知れません。 82 木の上で火を使っても、もえないだか? ふしぎかねー 木の上というか、厚い土で熱をさえぎっているので、そう簡単に燃えません。 前にカマドに土を盛った処理をしたみたいですが、土の断熱力は侮りがたいものがあるようです。 109 :ゆい:2006/01/13(金)22 06 17ID Br2F+zjH http //hp24.0zero.jp/438/tsensei/ 110 :録霊60◆CcpqMQdg0A:2006/01/16(月)18 06 54ID JwKaZr7x そういえば、牛を捕まえたそうなので牛が引ける滑動車を提案しておきます。 滑動車の横幅は牛が挟めるぐらい広く作ってください。 滑動車の持つほうの端に横木をきつく縛り付けてください。 牛を滑動車の間に入れて、上の横木を背中のコブに引っ掛けるか、 角に縛り付けるかして牛に滑動車をつなげます。 このように牛や馬と滑動車や車をつなげる横木を『くびき』といいます。 このくびきは背中の形に合わせて盛り上がるような形にすると引っ掛けやすいそうです。 あとは、口の周りに紐を結んで紐の端を持って、牛を歩かせるのですが・・・ なかなかいうこと聞かないだろうなぁ。 ちなみに人が滑動車を使うときもくびきがついていれば、それを持って 引っ張ることで、今までの二本棒だけでは握力を超える重さのものは引けなかった という問題が解決するかと思います。 ─┬┬────┐ ─┴┴────┘ 111 :オーバーテクナナシー:2006/01/17(火)04 05 33ID dvoHAo7W 牛は鼻に紐を通すんですよ。 牛の鼻は急所なので、紐を通す事により 痛がっておとなしくなります。 移動は、鼻に通した紐を行きたい方に引っ張るだけで 楽に誘導できるでしょう。 112 :オーバーテクナナシー:2006/01/17(火)12 31 44ID HUKzFAdQ 【聞こえない】 牛用頭絡の作り方のページ見つけたけど・・ 聞こえる声でやっても大丈夫かな? ttp //www.sat.affrc.go.jp/joseki/Sonota/Touraku.htm 113 :ウズメ@原始人:2006/01/17(火)17 40 18ID mBgQCy93 ある日、いつものように猫にエサをやりに行こうと森の入り口まで来た所・・・ 「みゃ~~~ぉう・・・」森の下草の中からなんだか聞きなれた声が聞こえます 良く見ると、2~3ヶ月くらいでしょうか、仔猫を連れたいつもの猫がこっちを見ています {あれ~?猫でねーだか・・・よくこんな遠くまで来ただねぇ~」 仔猫は全く人見知りする様子も無く、こっちに興味を示して寄って来ようとします それを親が咥えて、いっぴきづつ藪の中へ隠します 「何もしねーだよ、こんなに村の近くに来てくれたなら、エサやりが楽でいいだ」 ウズメは仔猫の分も含めて多めにえさを置きました 毎日エサを与えているうちに、猫はウズメが来るのを当てにするようになっていました また、猫は子供が生まれると、点々と住処を変える習性があります 仔猫がある程度大きくなると、親猫は餌場を教える性質も有るようです たまたま村の近くに引っ越してきたのか、ウズメの来る方向を知っていて そっちに行けばもっとエサにありつけると思ったのか、それはわかりません 仔猫が乳離れして、もっとエサが必要になったのは確かなようです 「ウズメ~なにやってんの~?」村の子供達がやってきました「きゃ~なにこれ~?」 「シーーー!猫って言うだよ」 「ぬこ~~ぬこ~~~~」小さな子はろれつが回ってません 子供達大喜びです 「村を守ってくれる大事な動物だから、苛めないでやって欲しいだ」 「ちっちゃいの触ってみたい~」 「だめだめ!猫は子供を大事にするらしーから、怒られるだよ~~」 「おめーのかあちゃんとおんなじなんだって」 「おれのかあちゃん、ちっともおれのこと大事にしてくれてねぇぞ」 「大事にしてるだよ・・・あたいにはわかってるだ」ウズメは子供に微笑んで見せた 「そ~かな~~・・・」子供は納得行かない様子である 「さ、みんなも一緒にエサあげてみるだよ」 114 :ウズメ@原始人:2006/01/17(火)17 41 18ID mBgQCy93 さて、村に猫がやって来ました 家猫のルーツは一般的にヨーロッパヤマネコの亜種であるリビアヤマネコが近い と言われていますが実はよく分かっていません 最古の記録はエジプトの壁画やミイラなのですが そのうちのいくつかの身体的特徴はリビアヤマネコが近いようです また、アフリカヤマネコは夜行性という性質が現在の猫に近いようです 昼行性のヨーロッパヤマネコと夜行性のアフリカヤマネコの交配種とも言われています エデンのヤマネコはエデンの原種なのか、他の地域との雑種なのかは・・・謎です 猫と人間が関わるようになったのは、人間側からというよりも 猫側からの事情で、人間の蓄えるようになった穀物を狙ったネズミを目当てに 人間のそばに住むようになったと言う説が有力なようです ウズメはネ申の言い付け通りに猫を餌付けして、うまく村へ誘導出来たようですが これからうまいこと村に定着してくれる事を祈ります 「名前付けただよ」 「親猫がニャーコで、仔猫が・・・ぷにー、ぬこ、ぽまちね、もふもふ」 「なんか意味わかんないけど、頭に浮かんだだよ」 115 :録霊60◆CcpqMQdg0A:2006/01/17(火)21 09 44ID 07qnICUu 112 作ってみましたが、どう引っ張っても締まったり緩んだりしない実用的な 結び方のようです。 使う道具は紐だけのようなので、聞こえる声で教えてみてはどうでしょうか? 113-114 ねんがんの ねこを てにいれたぞ∧_∧ ウズメさん、おめでとうございます。(・ω・) 鼻音と唇音を多用したNICENAMING! ところで、今週の土曜日でこのスレも一周年ですね。 この日はアンケートの締め切りらしいのでまだの人はお早めに。 116 :オーバーテクナナシー:2006/01/19(木)01 47 23ID l8yN77nl 115 :そう かんけいないね メ几 → :木又してでも 肉球をふにふにする :ゆずってくれ たのむ!! ウズメタソ 「な なにをする きさまらー!」 117 :オーバーテクナナシー:2006/01/19(木)06 35 48ID zU4Dua99 116 w 118 :オーバーテクナナシー:2006/01/21(土)23 38 52ID NOuZdyH1 一周年age 119 :オーバーテクナナシー:2006/01/22(日)05 58 20ID jJ65c+CO ネコ回虫の幼虫移行症で人間の幼児に運動障害や視力障害が起きる確率ってどれくらいかな? 120 :オーバーテクナナシー:2006/01/22(日)08 39 19ID msmasxSg 119 http //www.bayer-pet.jp/pet/zoonosis/jiten/10.html 上のHPによると犬猫だけじゃなくニワトリも問題みたいよ 121 :オーバーテクナナシー:2006/01/22(日)21 02 14ID JIpJkPrI 『千場こぎ』って江戸時代に発明されたみたいだ 人口が全然足りないと思う 戦争でこっちから攻める場合 農業に力を入れるのがよさ下 122 :初代1◆zhFdGsjV7M:2006/01/23(月)00 16 55ID lz7Ia1ZW モラーラが帰ってきた。 さっそくナナッシは、モラーラが見てきたことと モラーラがいない間に村にあったことを情報交換すると モラーラは上げ如く怒りだした。 「村の女性をさらうヤツなど、ゆるせません、とっとと、退治するべきです」 (ここで、かっこよく活躍すれば、モテルことまちがえなし!!) 「さっそく、連中の村をおそってしまいましょう!」 っと、言って、人を集め始めました。 なんと、モラーラの家の地面から壷に入った、大量の砂糖と オリーブ油、木綿布、干し肉などが出てくるではありませんか? モラーラ曰く、こんなこともあろうかと、準備しておいたそうです。 全部をかき集めると、20人の男が、20日生活するだけの穀物と 交換できることでしょう。 さてさて、どんな具合に使ったらよいでしょうかね? 123 :初代1◆zhFdGsjV7M:2006/01/23(月)00 25 22ID lz7Ia1ZW さらに、村から、遠く離れた北の有る場所で・・・ 「あれは・・・人が暮らしてるだか?」 北方面に遠出に出ていた、2人組が動物の皮でつくられた、家々を発見する。 遠くから、観察するに、白い人の集落で、間違えなさそうである。 直線距離にして村から約6日といったところだろうか? おおよそ、60人ほどが暮らす、未来技術村よりも、小さな村だが 村の中央には、泥(?)で作られた大きなカマドのようなものが確認できる。 もう少し、観察したかったが、これ以上近づくのは危険だと判断し 一度村への引き返すことにした。 モラーラ帰還の4日後には、このことが村へ伝わることになる。 124 :初代1◆zhFdGsjV7M:2006/01/23(月)00 32 04ID lz7Ia1ZW さてさて、何度目になるか?銅の精錬実験だが ナナッシは、手のひらほどの大きさと、厚さの銅の塊 2つを、手に入れるに、いたった。 溶かした、銅を石の上へだし 暖かいうちに、石で上から叩いた結果によるものだ。 村では貴重な金属であるのだから、これを有効に使いたい これを、どのように、そして、何に加工しようか? 125 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)11 44 38ID 0L2O9kQl 119 猫の糞を口にしたり、口移しで餌を与えたりしなければ感染の危険は少ないかと。 あと、野菜は火を通すか、よく洗ってから食べるとか。 121 地元の郷土史料館に竹製の千刄扱きがあったよ。 原始人でも作れそう。 【聞こえない声】 いよいよこちらからも攻めて行ける態勢が出来つつあるなぁ。 でもモラーラの大怪我の原因が白い人との争いによるものなのか、 意見の対立による仲間割れの結果なのか・・・。 怪我させずに話を進めることってできるん? 126 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)12 34 55ID gRFg+uk1 124 既出だけど、『ヤットコ』または『プライヤー』に1票 焼けた銅や坩堝を掴むのに絶対必要 まずは”次”を作る為に必要な道具を作らないとね 127 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)17 43 19ID 0L2O9kQl 126 プライヤーと、あと一つくらい何か実用的な銅器を作りたいね。 銅鉱石の採掘に協力してもらう為にも銅器の便利さを 皆に知って貰ったほうがいいと思う。 128 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)21 37 22ID FI4oq8ft 農具がいいとおもう『千刄扱き』誰かくわしく 129 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)22 21 27ID 0L2O9kQl うろ覚えだが千刄扱き説明してみる。 竹を幅2cmに割り、長さ2尺ほどに切った物を20本用意する。竹材の片方の先端を△に削る。 △を上向きにして一列に揃えて並べる。竹材の中間辺りに棒を渡し、棒とそれぞれの竹材を 縫うように麻紐でしっかりと結び付ける。(固定する棒の本数はもっと増やしてもいいよ) 地面に埋めるか、しっかりした台に固定して立てる。稲穂の根本を並んだ竹の間にばさっとかぶせ、 ぐいっと引っ張れば籾がパラパラッと落ちる・・・はず。 130 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)22 39 27ID 0L2O9kQl 竹材は並べたときに位置がズレていると、(特に横から見た位置)籾がすり抜けてしまうので注意。 また、稲穂を引き抜く力に負けて竹材が曲がっても良くないので、 ある程度の厚さがある竹材をよく乾燥させた物を火であぶって固くしといた方がいい。 竹材同士の間隔は稲穂の柄は2・3本まとめて入るが籾はすり抜けられないぐらいに。 (一円玉厚さ二枚分くらいかな) これで大丈夫かなぁ。 131 :オーバーテクナナシー:2006/01/23(月)23 04 01ID LHQOWAff 【聞こえない声】 なんか急にバタバタした感が‥‥‥ 123 『大きなカマド』ってアレぢゃない?「もののけ姫」に出てきた溶鉱炉みたいなバカでかいやつ 備蓄もある。偵察も(とりあえず)終わった。‥‥‥で、モラーラ以外の村人はやる気あんのかね? モラーラの食糧で大宴会とか始めそうな気がする‥‥‥ 132 :オーバーテクナナシー:2006/01/24(火)07 10 34ID R18KZ5dA 【聞こえない声】 131 さすがにそこまで巨大な炉を人口60人程度の村で運用できるとは思えんが。 大宴会してくれた方がいいんじゃないか? 20人そこらで行っても中途半端な事しか出来ないと思う。四日後に帰ってくる偵察隊が他にどんな情報持ち帰るかにもよるが。 133 :オーバーテクナナシー:2006/01/24(火)20 11 31ID 9EnZgSnB 徴兵令復活したらどうする? http //sports9.2ch.net/test/read.cgi/noroma/1101199805/ 134 :オーバーテクナナシー:2006/01/25(水)14 52 15ID 3KlY4sDs 【聞こえない声】 久しぶりに来たら、もう戦争が始まりそうなんですね。 【聞こえる声】 私利私欲で戦争を始めるものには必ずや天罰が下る、とモラーラに伝えなさい。 それはそうとして、『戦術』について、一気にやっちゃうよ。 2-2、実際の戦術『挟撃』 挟撃とは挟み撃ちのこと。自部隊を二つに分け、敵を二方向から攻める戦術。 限定的な包囲であり、包囲より行いやすく敵を逃がしやすい。 また、敵の移動方向を制限して包囲へと移行するなど、戦術の基本中の基本となる戦術。 2-3、実際の戦術『突撃』 敵部隊を分断するようにして、敵陣を突破すること。必然的に白兵戦中心となる。 敵より味方の数が少なければ、壊滅的な被害が出る恐れがあるので注意。 この戦術は味方の足が速ければ速いほど有効であり、 馬に乗って行う『騎馬突撃』は大変威力がある(だから早いとこ馬を家畜化しようね)。 ただし、どのような突撃も避けられては意味が無い。 挟撃などで相手の移動を制限して行うこと。(これを『金床とハンマー戦術』と言う)。 (もしも、疲れ知らずの馬に乗った兵士達が、用意の整っていない相手に 常に突撃を仕掛け続けられたら……という発想を突き詰めれば 『電撃戦』と言う戦術が生まれますが、今回は割愛) 2-4、実際の戦術『正面攻撃』 これは戦術ではないけれど…… 数 士気 組織率 (後述します)が勝っている場合に、 小手先の戦術を使うのではなく、正面から相手を押しつぶすように戦うこと (よっぽどこちらの数が多ければ『浸透突破戦術』を使えるんだけど、今回は割愛)。 『策士、策におぼれる』と言う諺があります。 下手に戦術を用いるよりも、正攻法の方がうまくいくときもあるよという意味です。 135 :オーバーテクナナシー:2006/01/25(水)14 53 01ID 3KlY4sDs さて、ここで戦闘の本質についてちょっと話をしましょう。 戦争と言うと、究極的には殺し合いなんですが、実際の 戦闘 ではそこまで行かないことが多いのです。 なぜなら、兵士は死ぬ前に逃げるから。死ぬまで戦うと言うのはまあ、滅多にないことです。 問い:なぜ兵士は逃げるのか? 答え:死ぬのが怖いから。 ならば、殺さなくても怖がらせれば勝ちではないか? そう、兵士は心を持つ人間であり、その最大の敵は青銅の槍ではなく恐怖心です。 戦おうとする心を『士気』といいます。敵兵の士気を挫けば、敵は逃げ出し、戦闘は勝ちです。 また、背中を見せて逃げ出す相手を追撃すれば、より多くの被害を与えることが出来るでしょう。 『包囲』『挟撃』『突撃』などの戦術は、より効率よく敵を傷つけるための戦術であると同時に、 敵兵の士気を挫くための戦術でもあります。 背後から襲われたり、物凄い勢いで敵が迫ってきたり、 回り中敵だらけで周囲に味方がいないとなれば、人の士気は簡単に挫けるのです。 136 :オーバーテクナナシー:2006/01/25(水)14 53 42ID 3KlY4sDs では、高い士気を維持するにはどうすればよいか? まず、敵から攻撃を受けないこと。先手を取るのが重要と言うのは以前にも言いました。 次に、戦う意義を与えることです。 ・ここで逃げれば愛する人が襲われる。 ・相手は許すことの出来ない罪を犯した悪である。 ・この戦いに勝てばご褒美がもらえる。 など、戦いの意義を兵士に教え込みましょう。 ただし、最後のご褒美による士気の維持はあまり効果がないことが多いです。 『命あっての物種』と言って、ご褒美より自分の命を取るものの方が多いからです。 冒頭、「私利私欲で戦争を始めるものには必ずや天罰が下る」と言いましたが、 要するにそう言う事です。 さて、では次に『指揮』について。 先ほどから戦術について述べていますが、これらを行う大前提として、 一つの部隊に一人のリーダーが必要です。 そして、部隊はリーダーの命令一過、一つの生物のように行動しなければなりません。 リーダーが部隊に命令を下し、部隊を動かすことを『指揮』と言います。 リーダーは、戦闘に勝つため、最善の行動を部隊に取らせるよう指揮します。 部隊に加わっている兵士は、何があってもリーダーの命令を聞かなければなりません。 「死ね」と言われれば死ななくてはなりません。 なぜならば、リーダーは兵士の命ではなく、部隊の命を考えて行動しているからです。 リーダーには非常な権限があるのです。 (しかし、部隊は兵士の命で構成されるものです。 軽々しく兵士に死を命ずるリーダーは、部隊の命をも軽く扱っている駄目リーダーです) これから戦争をするのであれば、まずリーダーを決め、 その命令に従って行動する訓練をはじめるべきです。 最後に、『士気』と『指揮』の関係について。 どれだけ兵士個々の士気が高くとも、指揮が執られていない部隊は戦術を発揮できず、弱いものです。 逆に、指揮が執られていても兵士個々の士気が低ければ、部隊は維持できません。 士気と指揮を両立し、どれだけ組織的な行動が出来るかが、戦闘に勝つポイントです。 137 :オーバーテクナナシー:2006/01/25(水)18 51 37ID d7VBHWe7 134-136 GJ!指揮官選びが難問だな。 候補はモラーラ、ナナッシ、クックルー、長老、ギーコ、モーナー・・・ぐらいかな。 どうやって決める? 138 :オーバーテクナナシー:2006/01/25(水)23 24 00ID rD/Yggwf 白い人は女が足りなくて数がへっていくんだろ? 無理して攻めて遺憾法がよさ下なんと茶羽化? 時間がたつほどこっちが有利になるとおもうんだけど。。。 139 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)00 01 33ID 9CQCyuF2 その通りなんだけど、攻めるにせよ守るにせよ、どのみちまとめ役は必要だよ。 今のままではモラーラが独断で聖女教団の信徒を率いて突っ走り、返り討ちにあうのは間違いない。 あわよくば拉致された娘さんを奪還することぐらいは出来るかも知れないが、 それでモラーラが権力を持っても彼の性格上、多分に危うい所がある。 第一、モラーラはネ申の声を聞く事が出来ないのでネ申の声を 村の発展に反映させることが難しくなる恐れがある。 ナナッシの性格は指導者には向いてないのかな? 140 :録霊60◆CcpqMQdg0A:2006/01/26(木)10 22 02ID Ik9LtB1R 現在の最強装備は、 E:黒曜石の槍/投槍器/投石器/竹の弓 E:笠(藁と竹) E:革の服 E:革の籠手 E:革の臑当て E:草鞋を皮袋で覆ったもの(靴) E:コテカ ということになりますが、攻めるなら人数分用意してからいきましょう。 草鞋は、擦り切れた場合に備えてひとりで何足も用意したほうがいいです。 最悪、背の高い草があれば、それを加工して現地で作ることもできますが、 森の中を行くならあまり期待できません。 コテカは付けると動きにくそうなくていいかもしれません。 あと、布の上に藁や動物の毛など柔らかなものをたくさん乗せて、その上に槍ぐらいの長さの棒 を立てて、布の縁を棒に縛りつけたものを作ってください。 =====○ これは『練習用の槍』といって人と戦う場合の槍の使い方を練習する道具です。 穂先が相手の体に当たったら勝ちということで人と戦うときの槍使いを 戦いのときの服を着て練習してみてください。 詳しいことはわかりませんが、獣との戦いとはだいぶ勝手が違うかと思います。 あと、いきなり攻めるのではなく、みんなで狩をしてみるなど 集団での動き方の勝手がわかるように練習したほうがいいですよ。 141 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)14 48 11ID xQXwWOai 【聞こえる声】 戦術の基本のキの字を教え終わったんで、次は訓練の仕方について……の前に。 実際戦争を行うとして、戦争に兵士として専従できる人口はどれくらいでしょうか? その数によって戦術ドクトリン(要するに戦い方)を考えますので。 今のところ、向こうより兵士人口が多いということを前提として、 飛び道具主体の戦術を考えていますが……。 それと、外交による解決(つまり白い人との話し合い)をする余地は、 まだ未来技術村にありますか? 142 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)15 04 23ID xQXwWOai 【聞こえない声】 そろそろ、火薬の実験を始めたほうがよいと思います。 今のところ、正しい材料かどうかもわかっていないので、 確認のためにも少量生産を始めるべきだと思いますが、いかがでしょうか? 143 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)15 54 05ID b7R0uso+ 127 あと一つ何か作るとしたら、『ノミ』または『タガネ』なんか良いんじゃないでしょうか 今は確か水晶をノミ代わりに使って穴あけなんかやってたはずですが それで正確な穴をあけることが出来なくて、車輪が上手く作れないとかの問題があったはず また、石を掘り込む道具があれば、石臼などの便利な道具も作れると思います 144 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)18 50 24ID 9CQCyuF2 【聞こえない声】 143 前スレ626に同様の提案があるよ。俺も武器に使うよりもいいと思う。 相手の防具が発達するまでは石器の武器で充分かと。 石臼が作られれば珪石を粉にする作業が楽になって良いね。 ただ、銅器で石を掘ることって出来るのだろうか? 何となく石の方が硬そうだが。 145 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)23 00 19ID b7R0uso+ 【聞こえない声】 144 既出でしたか、スマソ やっぱり無理かな>タガネ 柔らかい石、例えば石灰岩くらいなら彫れるかなとも思ったんだけど よく考えてみたら、柔らかいコンクリートの固まり彫るのにも鋼鉄のタガネが すぐにへたってたの思い出した 銅じゃ無理だなこりゃ 木を彫るノミくらいなら出来ないかな… 146 :オーバーテクナナシー:2006/01/26(木)23 31 25ID A0ndaAY6 【聞こえない声】 結局あのカマド(みたいなの)は何なんだろ? 鉄器どころか火砲まであったりして…… 147 :オーバーテクナナシー:2006/01/27(金)00 47 01ID gDJl5gdu 145 【聴こえない声】 せめて青銅があればな。 古代エジプト人もインカ人も青銅で頑張ったんだし。 ……錫鉱石ってどんなのだったかなぁ。 148 :オーバーテクナナシー:2006/01/27(金)03 19 19ID Fv9VqwYI 【聴こえない声】 やっとログ読み追いついた 面白いんだが知識が追いつかないorz 149 :オーバーテクナナシー:2006/01/27(金)04 03 48ID Fv9VqwYI 【聴こえない声】 折角なので無い知恵絞って銅の使い道を考えてみた。 鋤がALL木製のようなので先端に銅製の刃を取り付け強度と鋭さを増して 掘りやすくしてみてはどうだろうか? 多少は叩いて加工する技術も持ち合わせてるようだしさほど鋭くなくても木製のそれよりは硬度があると思う。 それにいざとなるときがきたらそれで殴ればいい。 150 :オーバーテクナナシー:2006/01/27(金)09 28 27ID 0JPLlri4 【聴こえない声】 やっぱり銅単体では使い道が限られるって事かな というかほとんど使い道無いか… 最低でも青銅にしないと硬度不足ですかねえ 私の構想では、ヤットコ系の掴む道具を作ったら 鉄の製造に切り替えてしまったらどうかと考えているんだけど 鉄を作るに当たっての問題点は たたら>鍛造 と考えると 必要な道具は、『カナトコ』『ハンマー』『ヤットコ(プライヤー)』の三つ これが無いために鉄の製造に踏み切れなかった しかし、カナトコ、ハンマーは、石のカナトコと石のハンマーでとりあえずは間に合わす (そういった製法をしているアフリカの原住民のソースは以前張られていたはず) 問題のヤットコなんだけど、これがやっと銅が手に入ったので作れるようになった 鉄の製造に踏み切る障害はクリアしそうじゃありませんか 前100|トップ|次100
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11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/08/20(水) 12 36 04.00 ID 2gln1Dhc0 このスレ、もらった それは俺が2年生に進級した年の夏の日の出来事だった―― ハルヒが学校に来なくなった。 それも欠席と出席を交互に繰り返し、やがて欠席日数が連続するようになった、などの緩やかなものではなく、 ある日を境に、ぴたりと登校しなくなったのだ。 2,3日の間はさして気にならなかった。 あいつのことだ。 夏休みを間近に控え、早めのモラトリアムと洒落込んでいるのかもしれない。 おかげで俺は平穏無事な日々を過ごせるってわけさ。 実際、クラスの奴らもハルヒの欠席になんら興味を示していなかったし、 SOS団のみんなも、空っぽの団長席を気にせず、普段通りに過ごしていた。 ハルヒ不在の学校は、平和だった。 だが、ハルヒの欠席が四日、五日と続いてくると、流石に不安になってくる。 俺はメールしてみた。 今更気づいたことだが、二日に一度は必ず送られてくるはずのハルヒからのメールは、一週間前から途絶えていた。 『今何してんだ?』 ……素っ気なさすぎるかな。 『お前が連続して学校休むなんて、どうしたんだ?』 これでいいか。送信、と。 教師の言葉を聞き流しながら、窓の外を眺める。 ハルヒは今頃、何をしているんだろうな……。 お前が後ろからシャーペンで活を入れてくれないおかげで、まったく授業に身が入らないぜ……。 そんなことを考えているうちに、俺は眠りに落ちていた。 目が覚めると既に昼休みだった。 どうやら俺は教師から、起こす価値もないと判断されたらしい。 眠気が残ったまま、無意識に新着メールを確認する。0件だった。 あいつは、まだ寝ているのだろうか。 いや、早寝早起き適時夜更かしがモットーのハルヒが、こんな時間まで寝ているはずがない。 メールを確認していないのか。 それとも、俺のメールに気づいた上で、返信する気がないのか。 電話してやろうかと思った、そのときだった。 「キョーン。早く席もってこいよ」 「あとは君だけだよ。ほら、いつまでも寝ぼけてないで」 谷口&国木田コンビの呼びかけで、俺は自分がとても空腹であることを思い出した。 ハルヒに電話するのは、腹拵えしてからにしよう。 *** 弁当をつつきながら、俺はハルヒの連続欠席を話題に挙げてみた。二人の食いつきは鈍かった。 「まぁー言われてみればそうだよな。 珍しいこともあるもんだ。中学ん時も、あいつ、めったなことがない限り休まなかったし」 「病気か、家庭の事情か何かじゃないかなぁ。 どっちにしろ、不穏当なことに変わりはないけどね」 不吉なことを言うな、国木田よ。 病気の線は考えにくい。それならSOS団の誰かを見舞いに来させるだろうし、 何よりこの街の病院すべてを掌握しているであろう機関が、古泉にハルヒの様子を知らせるだろうからだ。 今のところ、古泉に慌てた様子はなかった。 家庭の事情にしても、身内の誰かが亡くなったのなら、 岡部が俺たちに話してくれるだろう。 俺が国木田の説を否定すると、国木田はコップにお茶を注ぎながら、 「他には考えられないと思うけど。 君は何か思い当たる節はないのかい?」 「そうだよ。お前が一番涼宮と仲良いじゃねえかよ。違うとは言わせないぜ」 谷口を華麗にスルーしながら、考える。 一週間前、そう、あいつがまだ学校にきていた頃、何か変わったことはなかったか。 自分の記憶に問いかけてみる。 あいつはいつものように笑っていた。 あいつはいつものように嬉しそうだった。 あいつはいつものように言葉を交わしていた。 あいつはいつものように目の端に涙を浮かべていた。 ………ん? おかしい。 ハルヒが泣いている? 俺はそんなところ、見た覚えはないぞ。 いつも強気で、どんなに辛くても気丈に振る舞うあいつが、涙を見せるわけがないんだ。 「……ン、キョンってば!」 国木田の声で我に返る。 「ほっとけほっとけ。キョンは今、涼宮のことで頭がいっぱいなんだよ。 あーあー、もどかしいねえ。そんなに涼宮のことが心配なら、 連絡とって会いにいけばいいんじゃねえの」 続く谷口の声で、俺はやっと、先ほどのイメージを振り切れた。 ほとんど手をつけていなかった昼飯を一気にかっこんで、 目を丸くしている二人を尻目に、教室を出る。 いくらこの学校が校則ゆるゆるとはいえ、校内で電話しているところを教師に見られるのはまずい。 俺は旧校舎に向かった。 渡り廊下を歩く。この時間帯、旧校舎には人気がない。 蝉の鳴き声だけがうるさかった。 *** 『現在、電波の届かない場所に――』 「くそっ」 機械音声に悪態ついても仕方がないのは分かっていた。 一階と二階をつなぐ階段の踊り場で、俺はかれこれ三回くらい同じことを繰り返している。 結果は毎回同じだった。漠然とした予感はあった。 しかしそれが現実になると、不安が一回り大きくなった。 五回目の機械音声を聞いたあたりで、俺はひらめいた。 携帯がダメなら、家に電話するというのはどうだろう。 高校生がこんな真っ昼間からかけたら、ハルヒの家族は驚くだろうが、 まあそこら辺は適当に言い訳するとして…… 「あいつの家の電話番号、何番だっけ」 何かの用事でかけた記憶はあるものの、番号が思い出せない。 携帯のメモリをあさったが、無駄だった。 滅多に使わない電話番号を登録するほど、俺は几帳面ではなかった。 ちょうどそのとき、予鈴が鳴った。 俺はモヤモヤした気分を抱えたまま、教室に戻った。 授業を消化し、HRが終わると、俺はまっすぐ文芸部室に向かった。 宇宙人、未来人、超能力者の三人なら、なんらかの情報を仕入れいているかもしれない。 そう考えたからだ。 なに? 数日ハルヒを放っておいたくせにえらい慌てようだな、だって? はん、何とでも言うがいいさ。 ドアを開ける。 長門と古泉がいた。メイドさんはいなかった。 長門がこちらに一瞥をくれ、古泉が微笑みながら言う。 「お待ちしていましたよ。早速ですが、オセロでもしませんか」 いつもの光景、日常。 ……やれやれ。 独り焦っていた自分が馬鹿らしくなった。 俺はパイプ椅子に腰掛けて、古泉と向かい合う。 りん、と涼しげな音が鳴った。 開け放たれた窓の近くに、風鈴が揺れている。 あれは、誰が取り付けたのだろう。 俺は首を傾げながら、古泉に初手を促した。 *** 「ハルヒが学校を休んでいることについて、何か知らないか?」 俺が古泉にそれを尋ねたのは、オセロが中盤にさしかかった頃だった。 古泉は一目で演技と見抜ける呻吟をする。 ただ、その間が、俺への返答を考えるためのものか、 オセロの次の一手を考えるためのものかは、判らなかった。 「僕はなにも聞いていません」 盤面を白に塗り替えながら、古泉は言った。 「涼宮さん個人からも、機関の情報部からも。あなたは何かご存じなのですか」 「知らないから聞いてるんだよ。 なあ、今思ったんだが、お前なんでそんなに余裕かましてるんだ? 涼宮ハルヒが連続欠席、しかもその理由は不明。これは組織にとって大事件なんじゃないのかよ」 古泉は目を細めて、かぶりを振る。 「いいえ。機関はあの春の一件以来、静観に徹していますよ。 閉鎖空間は発生していない。僕たちにとって、それはこの世界が安定していることと同義です。 何か問題がありますか?」 「いや、ないけどさ……」 俺は何かがズレていると感じた。 ただ、その違和感を、上手く言葉にすることができなかった。 古泉から目を背ける。長門は俺たちの会話がに興味を示すことなく、読書を続けていた。 こいつはたとえ世界が突然滅びようとも、ちっとも動じずに本を読んでいそうだ。 久しぶりに、そんな感想を抱いた。 *** 帰途。所用があるらしい古泉と校門前で別れ、 俺と長門は口を閉ざしたまま、並んで歩いた。 なにも喧嘩しているわけじゃない。これが普通なんだ。 分かれ道、俺は足を止めた。長門も歩みを止めた。 俺は無意味だと知りつつも、長門に尋ねてみた。質疑応答の結果は、やはり、古泉と一緒だった。 原因は知らない。 涼宮ハルヒの精神状態は極めて安定している。 それだけ告げて、長門は高級分譲マンションへと歩み出す。 淡い苛立ちが、俺の中に生まれていた。 ハルヒの欠席理由が、判明しなかったからじゃない。 古泉と長門が、あいつが欠席しているというのに、 全然心配している風に見えなかったからだ。 俺もつい昨日までそんな風に振る舞っていたのだから、 あいつらに対して悪態をつくことはできないが、 もう少し、俺の情報収集に協力してくれてもいいんじゃないかと思う。 空を見上げて、日が落ちるのが遅くなっているのを実感する。 東の地平線でさえ、まだ菫色だ。 さあ、ハルヒの家に行くとするか。 メールもダメ、電話もダメ。 なら、実際に足を運んで、あいつの安否を確かめるしかない。 「やあキョン、奇遇だね」 鈴音のように、澄んだ声がした。 数瞬前まで、一切の気配はなかった。 無論、俺に近づく足音も。しかしそいつは、当たり前のように俺の耳許に口を近づけ、 「親友と久闊を叙したというのに、嬉しそうじゃないね。 突然の登場で驚かせてしまったのかな?」 くっくっく、と喉を鳴らす。 「佐々木か」 俺はため息をついて歩き出す。 佐々木は俺の隣に並び、歩調を合わせた。 一緒に帰る腹づもりのようだ。佐々木は制服だった。 「お前も下校途中なのか」 「そうだよ。もっとも、先ほどまでは友人たちと駅前の喫茶店で時間を潰していたんだ。 君と出会えたのは、本当に幸運としか言いようがない」 「大げさだな。 それより、喫茶店で時間潰してたって、あいつらと一緒にか?」 俺のいうあいつらとは、橘京子と周防九曜のことである。 「いや、別の人だよ。 彼女たちは最近、色々と忙しいみたいでね。 なかなか時間がとれないんだ」 「ふーん」 「それよりも、キョン。 これからどこかに遊びにいかないか? 久しぶりに会ったんだ、これくらいの我儘、聞いてくれたっていいだろう?」 「遊びに行こうって……どこ行くんだよ?」 「どこでもいいよ。 彼女たち――喫茶店で一緒にいた女の子たちとは、話していると疲れるんだ。 複雑巧緻な人間関係というものを、解きほぐそうと躍起でね。 その点、君となら気兼ねなく、息抜きができる」 佐々木が両手で俺の右手をとる。 俺の一瞬の動揺をついて、佐々木はたたみかけた。 「それとも君は、親友の頼みを無視して帰ると言うのかい?」 子犬のように黒い瞳が、俺を見つめる。 俺は五秒と持たずに陥落した。 「……オーケー」 「そうこなくっちゃ」 再び空を見上げると、菫色は既に頭上に迫ってきていた。 西の端は深い紺色に染まっている。 夜の帷が、降りようとしていた。 *** 制服で繁華街を彷徨くのは、狩ってくださいと言っているようなモノなので、 俺は映画でも見に行くことにした。 ただ、無駄な努力とは知りつつも、少しは制服に見えなくなるよう努力はしておいた。 具体的にはネクタイを外して鞄の中に押し込み、 佐々木にスクールリボンを外すように言った。 「こんな小細工、無意味だよ」 「知ってる。でもやらないよりマシだろ」 「まあね。 うーん、でもそれなら、ボタンをもう一つ外してみたらどうだろう?」 お、おい。 お前自ら露出するなんて、清純なイメージが崩れるぞ。 「何を血迷ったことを言っているんだい? ボタンを外すのは君さ」 佐々木の手が俺のシャツの第二ボタンを開ける。 その間、俺は佐々木の邪魔にならないよう、赤くなっているのがばれないよう、 首を上に上げていた。情けない話だ。 *** 映画を観た後は、ファミレスじみた、そこそこ盛況している飲食店に入った。 俺たちが選んだ映画は(というかほとんど佐々木が即決した)そこそこおもしろく、 その感想を述べあっている間に、料理が運ばれてきた。 出し抜けに佐々木が言った。 「君と一緒にいると、時間を忘れるよ。 僕は普段、映画を観るタチじゃないんだが、今日観た映画はまったく眠気を誘ってこなかった。 僕は実のない娯楽には手を出さないことにしているんだが、 君とならこういうのも悪くない。中学時代にはなかった発見だよ」 「普段一緒にいる、その女友達は、よっぽどつまらないのか?」 「ううん、ただ、僕とは波長が合わないというか。 彼女たちの興味は僕の興味とは違う、もっと別の方向に向いているんだ。 そう、たとえば――恋愛とか」 俺たちは窓際の静かな席で食事をしていた。 だから時々、この空間で、俺は佐々木と二人きりではないのかと錯覚してしまう。 「恋愛? あー、そりゃあ馬が合うわけないな。 お前に言わせると、恋愛なんて精神病の一種なんだろ」 俺はまた佐々木が、恋愛感情というのは人間の生殖本能に依存した精神上のまやかしであり――などの持論を持ち出してくることを予想した。 でも佐々木は、窓の外の、流れていく車道に視線を向けたまま、 「うん、そうだね。その通りだよ」 と、頷いただけだけ。 窓に映り込んだ横顔はどこか寂しげだった。 食事を終えて、伝票を手に立ち上がる。 精算に行こうとした俺を呼び止めて、佐々木は笑顔でこう言った。 「半分は僕が持つよ」 「いいよ。たまのことだし、気にすんな」 「優しいな、君は。お人好しが過ぎると、たかられるよ?」 「いーんだよ。黙っておごられてろ。 それに、あいつに比べちゃ、今みたいに申し出てくれただけでも嬉しかったぜ」 佐々木に背を向けて、レジに並ぶ。この時、俺はちっとも気づいていなかったのだ。 佐々木が憂いた表情で俺の精算を待っていたことと、 誰を指しているのか分からないまま「あいつ」という言葉を使っていたことに。 *** 「また近いうちにこういう機会を持てるかな」 「俺は最近は暇なことが多いから…… 今日みたいにちょいと遊びに出かけるくらいなら、いつでも付き合うぜ。 予定が重なったらダメだけどな」 「重畳だよ。ありがとう。 それじゃあ、ね。楽しかったよ、キョン」 佐々木が扉の向こうに消えていく。 気配が完全になくなってからも、俺は佐々木家の前で少しだけぼーっと佇んでいた。 ここに来るのは何年ぶりだろう。 中学時代の思い出が、みずみずしく蘇ってくる。 ただ、ここに佇み続けて不審者扱いされるのはごめんなので、今度こそ帰途につくことにした。 おふくろにまた小言言われるんだろうな。 いや、それよりも妹の追求の方が熾烈を極めるかもしれない。 結局、家に着いても巧い言い訳は思い浮かばなかった。 俺がハルヒのことを思い出したのは、風呂に浸かっている時のことだった。 靄の中から、うすぼんやりと浮かび上がってきて、 佐々木との思い出を反芻していた俺を、きつく咎めた。 今日はハルヒの様子を見にいくんじゃなかったのかよ。 ああ、そうだったな。でも、一日くらい延期したって構わないだろう? 風呂の気持ちよさのせいか、はたまた、佐々木と久しぶりに会ったせいか、 ハルヒに関する緊張感はかなり薄れていた。 つい数時間前まで自分の意志でしようと思っていたことが、今では義務に感じられた。 ハルヒのことは、そう急ぐことでもない。 もしかしたら、ひょっこり学校に顔を出すかもしれない。 そう、ただの杞憂に終わるかもしれないじゃないか……。 *** 次の日。 たっぷり余裕をもって登校した俺は、 最初に職員室に向かった。一応、ハルヒのことを聞いておこうと思ったのだ。 なんらかの事情があって休んでいるなら、学校に連絡がされているはずだ。 俺はそれを岡部から聞いて、納得して、終わり。 面倒なことはさっさと終わらせてしまうに限る。 「失礼します。岡部先生はおられますか」 「おう、おはよう」 岡部は既にデスクについてPCで何かの書類を作っていた。 運動ができるだけじゃ教職にはつけないんだなー、と俺は余計な感心をする。 さ、手短に澄ませちまおう。 「涼宮のことで質問があるんですが。 あいつ、ここ数日連続で休んでますよね。 なにか理由でもあるんですか」 忌引か? 病気か? どっちにしろ、シリアスな事情を聞かされることは間違いない。 俺は真面目な顔をして返事を待った。すると岡部は苦笑いしながら、 「それが何の連絡もなくてな。 俺も困ってるんだよ。お前、確か涼宮とは仲良かったよな」 「えぇ、まぁ……」 「何か聞いてないのか?」 ったく、知らないからわざわざ尋ねにきたんだろうが。 「いえ、何も」 「そうか。じゃあ何か分かったら教えてくれ」 は? おい、たったそれで終わりか? あんた教師だろ? 涼宮ハルヒの担任だろ? 教え子が理由もなく連続で欠席してて、放っておいていいのかよ。 上記の文章を限りなく敬語に翻訳して、俺は言った。 岡部は相変わらず暢気な顔で答えた。 「あー、うん。あんまり長く欠席が続くようなら家庭訪問しよう」 そして職員室の壁時計を見上げ、 「お前もいい加減、教室に戻れ。俺もあと少ししたら行くから」 教室に戻って、HRが恙なく終わり、一限目の授業が始まっても、岡部への苛立ちは収まらなかった。 その感情は、昨日、古泉や長門に向けた物と同種のモノだった。 「ハルヒの欠席理由」が分からないのは、まだいい。 でも、どうしてどいつもこいつも「ハルヒの心配」をしていないんだ? 忘れているわけじゃない。 しっかり憶えていているのにも関わらず、まるであいつの存在、不在がどうでもいいように扱っている。 軽視している。俺はそれが我慢ならなかった。 相変わらず、授業には身が入らない。 俺はうたた寝と板書をとるのを繰り返しながら、時間を潰した。 *** 昼休み、谷口と国木田と別れ、俺はあてもなく校舎を散歩していた。 廊下は相変わらず喧噪の坩堝と化している。 自然と足は、静かな旧校舎のほうに向かっていた。 いつか、あいつが寝転んでいた木の下に、俺も寝転んでみた。 木陰は涼しく、時折俺の頬を、熱気を含んだ風が撫でていく。 あいつは、今、何をしているのだろうか。 今日こそは絶対、ハルヒの家を訪ねよう。 今まで何度も決意したことを、もう一度復唱する。 ふと、耳慣れた声が聞こえた気がして、俺は体を起こした。 想像したとおり、朝比奈さんが渡り廊下を歩いていた。隣には鶴谷さんもいる。 朝比奈さんは昨日、団活に来ていなかった。 もし忙しくて今日も来ることができないとしたら、ハルヒのことを尋ねるチャンスは今しかないかもしれない。 俺は綺麗な木漏れ日を目に納めてから立ち上がって、朝比奈さんの元に走った。 「朝比奈さんっ! 待ってください」 俺の存在にいち早く気づいたのは、やはりというべきか、鶴谷さんだった。 「およ、キョンくんじゃないかっ。みっくるー、キョンくんが話があるみたいだよ?」 「ふえっ? キョンくん?」 朝比奈さんが鶴谷さんに体をクルリと回されて、 転びそうになりながら俺を認める。 朝比奈さんは両腕に、ノート類を抱きしめていた。教室移動の最中だったようだ。 今から思えば、先ほどから渡り廊下を歩いているのは、三年生ばかりだった。 「どうしたんですか?」 子リスのように首を傾げる朝比奈さん。 「ちょっとお話が……。あんまり人には聞かれたくないので、 ついてきてもらえますか。すぐ澄みますんで」 渡り廊下の真ん中で話せるような話題じゃない。 しかもこの段階で既に、俺はいたるところから、男子生徒の痛い視線を浴びていた。 北高二大美人との接見には、常に注意を払わねばならないのである。閑話休題。 「えっと、その、次の授業、早く行かないと前の方の席が埋まっちゃって……」 鶴谷さんの方を伺いながら、朝比奈さんは口を濁らせる。そこに鶴谷さんが、助け船を出してくれた。 「内緒話かいっ? いっといで、みくる。席はあたしが確保しといてあげるからさっ。 でもでもキョンくん、あたしに抜け駆けでみくるに告白は許さないからねーっ」 そして朝比奈さんの腕からノートを奪い取ると、黒髪をなびかせて、颯爽と駆けていった。 残されたのは手ぶらの朝比奈さん。告白という単語だけで、淡く頬を染めている。 どんだけ初心なんだ、この人は。俺は言った。 「それじゃ、部室行きましょうか」 「は、はいっ」 部室につくと、この人の癖になっているのだろう、朝比奈さんは滑らかな手つきでお茶を煎れ始めた。 15分後に授業があることを忘れているに違いない。 コトン、と湯飲みを置いて、テーブルの対面に朝比奈さんが座る。 俺は切り出した。 *** 結果は芳しくなかった。 ただ、こう言うと朝比奈さんに失礼だが、 元からあんまり期待していなかったので、残念とも思わなかった。 「メールも、電話も、完全に音信不通ですか」 「はい。四日くらい前に、一度だけメールしたんですけど、返信はありませんでした。 どうしちゃったのかなぁ、涼宮さん」 湯飲みを、悲しげに見つめる朝比奈さん。 その仕草に、俺は朝比奈さんが本気でハルヒのことを心配しているのではないかと希望を持ったが、 何事に対しても情緒豊かな朝比奈さんの性格故に、どの程度の心配なのか、測ることができない。 加えて、最期にメールしたのが四日前ということもあり、 朝比奈さんが、ハルヒのことを常に気にかけているという可能性は極々低かった。 「本当に、どうしちゃったんでしょうね、あいつ」 居心地の悪い沈黙が降りる。 俺は朝比奈さんの気持ちを確かめようと、こんなことを言った。 「病気でも気合いで克服して、何があってもSOS団を優先するようなハルヒが、 こんなに連続で休むなんて、異常ですよ。朝比奈さんも、やっぱ、心配ですよね……?」 「え……あ、はい。心配といったら心配ですけど」 この含みのある言い方は何なんだ? 普段は愛らしく思える舌足らずなしゃべり方が、今はそう思えなかった。 「涼宮さんは、大丈夫だと思いますよ」 「大丈夫って、何を根拠に大丈夫だと言えるんですか」 「だって、未来から命令は来てないし、長門さんや古泉くんも、何も言っていませんでした。 この時間平面もとっても安定していますよ」 違うんですよ、朝比奈さん。 俺が言いたいのは、そんなことじゃなくて、 「いったいキョンくん、どうしちゃったんですか? 今日のキョンくん、おかしいです……涼宮さんが休んでいるだけなのに」 愕然としたね。今朝比奈さんはなんて言った? おかしいのは俺じゃない――俺がそう言おうとしたとき、見計らったかのように予鈴がなった。 朝比奈さんが立ち上がる。 そして俺に天使の微笑みを投げかけながら、告げた。 「もしかしたらわたし、これから不定期に団活をお休みするかもしれません。 受験勉強の方が、忙しくって」 バタン。 ドアが閉まる。俺は独りになった。 予鈴が鳴り終わっても、教室に戻る気になれなかった。 何が起きている? 足音もなく、滑るように、液体が染みいるように、日常が溶けていく。 俺の知っていたものが、いつのまにか書き換えられていく。 そんな恐ろしい想像をした。 無性に、ハルヒに会いたかった。 *** 予告通り、団活に朝比奈さんは来なかった。 代わりに古泉がお茶を煎れていた。不味かった。 「僕は気分を害したりしませんが、その言い方はやめた方がいいですよ」 「お前だからこんな言い方になるんだよ」 「やれやれ、しかたありませんね。 まあ、その暴言の原因の一端は僕の不手際に起因するものでもありますし、 朝比奈さんの代役を務められるよう、自宅で練習しておくとしましょう」 長門は既に昇降口に向かっていた。 俺が施錠係で、頼んでもいないのに、古泉がそれに付き合っているというわけだ。 旧校舎を出て、鍵を元の場所に戻す。 古泉が真顔で俺に「ある誘い」を持ちかけてきたのは、昇降口に向かう道すがらであった。 「あなたは今夜、何か予定がありますか」 「ある」 即答で悪いな。 そのびっくりした顔からするに、俺が暇を持てあますと考えていたみたいだが、 今日はどうしても外せない用事があるんだよ。 「そうですか、とても残念です。 それでは、お話だけでもしておきましょう。後から誹られるのは嫌ですからね」 古泉は歩調を緩めながら語り出した。 意図的に昇降口への到着を遅らせていることは、俺でも分かる。 長門の耳には入れたくない話なのかもしれない。 「実は今夜、ちょっとした会合がありまして。 なに、さして緊急性のある会合ではなく、あなたが欠席されたところで問題はないのですが、 出席するメンバーが、あなたの出席を強く望んでおられましてね。 僕としても、あなたを誘わざるをえなかったんですよ」 いつにもまして勿体ぶった話し方をする古泉。 俺は情けで相槌を打ってやった。 「その俺の出席を強く望んでるってのはどこのどいつなんだ?」 「佐々木さんです」 「なんですと!?」 どうしてここで佐々木の名前が出てくるだ。その会合、組織が絡んでるならさっさと言えよ。何が緊急性はない、だ。 「まったく、それを早く言えっての」 悪態をつく俺に、古泉は形ばかりの謝罪をして、 「しかし、あなたは結局、会合に参加されないんですよね? なら、僕に悪態をつかれる筋合いはないと思いますが」 「いや、ちょっと待ってくれ……」 ハルヒのお宅訪問と、佐々木が出席する会合とやらを天秤にかけてみる。 ハルヒのことは心配だった。ただ、古泉の口から発せられる会合という台詞は、俺の心を揺さぶった。 何が話しあわれるのだろう。 佐々木派とハルヒ派の組織は、春の一件で、仮初めの和平を結んだはずだ。 そこに罅が入ったからか? それとも、新たになんらかの問題が発生して、対策を練る必要があるのか? どっちにせよ、参加しなかった人間が蚊帳の外になることは見え透いている。 俺は逡巡ののち、古泉に参加することを告げた。 「元あった用件は、後回しでいいんですか?」 「あぁ。心残りはあるが、優先度からしたら、ギリギリこっちの方が上だから」 古泉は満足そうな、不満そうな、よく分からない笑みを浮かべ、唇の橋を歪めた。 ほっとくと皮肉を言われそうだったので、俺は古泉を放って歩き出した。 *** 服装は結局、ラフなものにした。 機関のどういった階級の人間がやってくるのかは知らされていない。 帰宅後、古泉から送られてきたメールには、 駅前で7時に集合、とだけしか書かれていなかった。 現実世界の会話では話が長い癖に、メールでは淡泊なヤツである。 駅前を目指して愛車を走らせる。 昨日と打って変わって、気候はとても涼しく、初夏であることを忘れそうになる。 露出した腕は夜風を浴びて、少し肌寒いくらいだった。 駅前につくと、それらしき人影はどこにもいなかった。 いや、正確に言うと顔見知りは数人見かけたのだが、 明らかに古泉の言う会合に参加するメンバーではなさそうだったので、気づかないフリをした。 下手に挨拶して、時間をとられたら面倒だからだ。おいそこ、冷たいヤツだとか言うな。 しかし、駅前の端で、独りぽつねんとしていたら逆に目立つモノで、 やがてあっちから声をかけてきた。 「ようキョン、お前こんなとこで何してんだ?」 「おう、谷口じゃねえか。友達と約束しててさ」 どうか谷口が俺からすぐに興味を失いますように。 そう祈りながら、谷口の背後を確認する。俗に言う遊び人と呼ばれるような同級生の男が、2、3人で喋っていた。 俺はなんとなく、谷口がここにいる理由が分かった気がした。 「どうして俺がここにいるのか聞かないのか?」 誰か俺に、このニヤケ面を殴り飛ばす許可をくれ。 「……どうしてここにいるんだ?」 「よくぞ聞いてくれました! なんと今日は、某有名進学校の女の子たちと合コンなのよ。 いやぁ~、抜け駆けして悪いねえ、キョン。 ま、お前にはSOS団があるし、僻む必要もないだろうけどな」 俺は大きく溜息を吐いた。早く二十歳になりたいもんだ。 もし煙草が吸えたら、溜息ごとこいつの顔面に思いっきり紫煙吹きかけてやれるのに。 「そりゃ良かったな」 「ああ、羨みの言葉、ありがとう」 俺はなんとなく聞いてみた。 「ところで、その某有名進学校の名前は何なんだ?」 「別に教えてやってもいいが……。○○、だよ」 「ふぅーん」 言葉とは裏腹に、俺はかなり動揺していた。佐々木の通っている高校じゃないか! でもまさか、佐々木がそのメンバーに入っているなんてことは……。 いや、あいつのルックスはかなり、つーか、最上の部類に入るほうだし……。 いやいや待て待て、佐々木の恋愛に対する興味は零に等しい……。 憶測に否定を重ねているうち、谷口は独り勝手に愚痴りはじめる。 「にしても、あいつ遅っせえなあ。約束の時間、もう十分も過ぎてるぜ」 男の遅刻には厳しい男、それが谷口である。 俺も時計を確認してみる。現在、七時十分。古泉も谷口の待ち人と同様、十分の遅刻だった。 俺は待ち時間の退屈しのぎにと、谷口に訊いた。 「なあ、お前の待ち人って誰なんだよ」 「すんげえイケメン。この駅構内にいる男ども全員と比べても、圧勝するレベルのとんでも野郎だよ」 俺はにわかに嫌な予感がした。そして往々にして、嫌な予感とは的中するものなのだ。 「いんや、勿体ぶることなかったな。お前がよく知ってるヤツさ」 出し抜けに谷口は背伸びし、 「……おっ、来た来た」 その名を叫んだ。 「おーい、古泉! ここだよ、ここ」 愕然としたね。一瞬のうちに憶測、推理、推断、認識のプロセスが終了し、 俺は一目散にこの場を立ち去ろうとした。だが、屈強でいてスラリとした、男の理想型みたいな体に阻まれた。 「遅くなって申し訳ありませんでした。 僕以外のメンバーは全員そろっているようですね。それでは参りましょうか」 「どうなってんだ古泉!? 合コンなんて聞いてねえぞ」 古泉は惚けた顔で言った。 「おや、僕は確かに、会合と申し上げたはずですが」 この世のどこに、合コンを「緊急性のない会合」なんて堅苦しい言葉で表現する人間がいるんだよ馬鹿。 「おいキョン、いつまでもゴネてんじゃねえよ。お前はお前で何か別の用事があるんだろ。それじゃあな」 素っ気ない谷口。その前に立った古泉は、俺を指さしながら、 「彼は僕たちと一緒ですよ。今日の昼休み、もうひとり連れてくる可能性がある、と言っていたのは、彼のことです」 色々と嫌みを言ってくるかの思われた谷口は、しかしそれで得心した様子で、 「なんだ。それならそうと早く言えよ、キョン」 とだけ言い、歩き始めた。どこに向かっているのか分からない俺は、 この場で唯一、怒りの矛先を向けられる古泉の隣に並んだ。 「俺、すぐに抜けるからな」 「女の子たちの顔を確認することはするんですね」 「あのなぁ、そういう下卑た理由じゃねえ。 ここで帰るなんて言ったら、お前の顔が立たないだろ。 合コンが盛り上がって、誰が初期メンバーか分からなくなった頃に、すっと抜けるっていってんだ」 古泉は不適に唇の端を上げて、呟いた。 「さて、どうなることやら。 今夜こそあなたの堅い意志という物を見せてもらいたいものです」 *** 結論から言うと、古泉の予言は的中した。 繁華街のネオンの影に、その約束の店はあった。 内装は質素で、どのアンティークも年季が入っており、 清潔感漂う飲食店とは一線を画していた。 ただ、だからといって不潔なわけではなかった。 むしろ店内は洒落ていて、暖色の照明や、温かな木製のテーブルが、 そこで行われる食事や会話を、普段とひと味違ったものに変えるような感じさえした。 要するに、高校生が合コンするには、もったいないくらいの店だった。
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「―――――トレース出来ないって……」 第97管理外世界、地球 その遥か上空 青く美しい人類の故郷たるこの星の、大気圏を隔てた宙空 それを見下ろす形で待機していた現機動6課の旗艦――巡洋艦クラウディア 「どういう事ですか!?」 そのブリッジ内にまだ少女といっても良い女性の声が響き渡る だが、、大音量で荒げた声を気に留める者はいない 見ればその周囲 コンソロールに向かうオペレーターその他諸々が ハチの巣を突付いたような大騒ぎとなっている 騒然と動き回る局員達の表情を見れば 何かとてつもない不測の事態が起こった事は容易に想像できた 「反応がないの、、」 それを受けて答えたのは前のに比べれば幾分落ち着きの見て取れる声 眼鏡をかけた理知的な女性から発せられた言葉だった しかし、その彼女もまた口調の裏にある微かな震えを抑えられなかった 内心の動揺を隠しきれない様相で、目の下には深い隈が刻まれている 「あの星はおろか、、、この宙域全般に――――」 そして一言一言紡ぐように…… ―――― なのはさん達の生体反応を認められない… ―――― 眼鏡の女性、シャリオ=フェニーノから告げられた言葉は 現任務を一通り終え、後発組として到着した元機動6課フォワード陣、、 スバルナカジマ、ティアナランスター、エリオモンディアル、キャロルルシエ―― 入隊当初は甘さの抜けない新人であったこの四人も 幾多の任務、経験を経て今や一人前の局員として成長していたが、、 その彼らをして、絶望のどん底に突き落とすに余りあるものだった 高町なのはを初めとした6課中核を担う隊長陣が行方不明…… 隊が解散する事が決まった、あの時の最後の模擬戦 己の全てをぶつけ、全部を受け止めてくれた強くて偉大な先輩たち あの綺麗に咲き誇った桜の下で、いつかまたこのメンバーが集える日が来ますようにと―― 頬を伝う涙の元に誓った そして今回、期せずして早く訪れた再開の機会 スカリエッティの脱走という緊迫した状況ではあったが 不謹慎なのは百も承知で、そこに嬉々とした感情が、、 かつて教えを乞うた、あの素晴らしい先輩達とまた一緒の任務に就ける… 自分の成長した姿を見て貰いたい… 四人にはそんな思いが少なからずあった筈だ それがまさか………こんな事になるなんて、、 「ちょっと落ち着きなさい、スバル」 興奮気味の相棒を嗜めたのはツインテールの髪を束ねた少女、ティアナランスターである あのエースオブエース高町なのはの直指導を受け、フェイトテスタロッサハラオウンの元で経験を積んだ この努力のサラブレッドは今や誰もが認める立派な執務官である 「で、でも…」 言いよどむスバルだったが この目の前の元パートナーの不安や心配もまた自分に勝るとも劣らないだろう事は明白だった 揺れる心を鉄の意志で抑え、おくびにも出さない親友の顔は スバルにそれ以上、無様にうろたえてはいけないと悟らせるに十分な貫禄を放っていた 第一この事態は、目の前のシャーリーに猛りをぶつけても何も解決しないのだ 「状況を聞かせて貰えますか? 通信や交信記録とか…」 「何も無いの……何も、、 異常を感じてから二週間、あらゆる空間、次元軸をサーチしたけど痕跡、足跡を全く見つけられない…… まるでこの世界そのものから存在ごと消えてしまったとしか思えないのよ、、」 エリオがシャーリーに問い正すも 返ってきたのは絶望的な答えだった ブリッジに重苦しい雰囲気が流れる これは事実上の遭難だ… あの不沈のトップエース達が、奇跡の部隊=機動6課の主力部隊が 任務着手を前にして忽然と姿を消すなど、、 「6課の柱にしてニアSランク魔道士がこぞって行方不明…これはもう私たちだけでどうにかなる問題じゃない 今、クロノ艦長やカリム理事官……アコーズ査察官や無限書庫のユーノ司書長も動いてくれてる」 シャリオの口調も、そしてブリッジで動くスタッフ達の様子も重々しい 見れば明らかに疲労の色が濃く現れ、覇気もなくただ手を動かしているだけの者もいる それはこの二週間、あの手この手を駆使して駆け回り―― その全てが水泡に帰した絶望感がありありと見て取れる光景だったのだ 「とにかく私達に出来る事はありますか?」 重苦しい空気の中、ここに来て真っ先に前向きな姿勢を見せたのは フォワード陣の中で最も幼いキャロルルシエだった 「まずは休んで体力を温存しておいて頂戴…… そんな気分じゃないのは分かるけど、、 イザという時、真っ先になのはさん達の下に駆けつけられるように」 「…………」 だが、、言うまでもない 出動部隊である自分達に、この事態に対処する術など初めからある筈もない ここはオペレーター、そしてその道のエキスパートである者たちに任せるしかなく そして、それでもまるで光明を見出せない現状なのは明らか 暗雲立ち込める艦橋の中で ある者は唇を噛み締め、ある者は虚空に目を泳がせ 呆然と立ち尽くすしか術を持たなかったのである ―――――― 機動6課 ミッド地上における未曾有の危機―― JS事件と呼ばれる大規模テロを迅速かつ、被害を最小限に抑えて解決に導いた通称 「奇跡の部隊」 局始まって以来のスペシャルフォースと呼ばれているその所以は 何も戦闘力に特化した魔道士、騎士が揃い踏みであるという事だけが理由ではない オペレーター、サポート陣に至るまであらゆる分野の優秀な人材を揃え 物資や機材の質、量の充実は言うに及ばず 出資者、後見人に至るまで多岐に渡るスペシャリストが一同に会した集団 それが八神はやての提唱した夢の部隊――機動6課の全容なのだ もっともドリームチームと呼べば聞こえは良いが、、 構想段階ではまさに夢物語以外の何者でもなく 発足当時は外見上の華々しさとは裏腹に、当然のように水面下での誹謗、中傷が絶えなかった ―――お友達感覚で寄り集まったお遊び部隊 ―――貴重な戦力を強引な手法で、無駄に一箇所に集中するなど愚かの極みだ ―――キャリアを鼻にかけた小娘の越権行為 、、等等 お偉方の辛辣な意見は後を絶たなかったという だがその因習を跳ね返し、不可能といわれた特選部隊を実現させ 見事結果を出した六課部隊長、八神はやて その手腕と行動力だけでも彼女が並の士官でない事を裏付けるものであろう 実際、問題は多々あったのだ ミッド地上部隊の実質上のトップ=レジアスゲイズとの思想、政策の違いから 地上と6課は事ある毎に衝突……なかなか良好な関係を築けなかった そして彼の悲劇、、 海に人員を悉く吸い上げられた事による地上近辺の治安の悪化 その果て無き憂いから、道を誤り非業の最期を遂げてしまった彼…… その弊害を戦力独占という形で、期せずして自分たちが演じてしまったという悲しいすれ違い この事実は、全てが終わり真実が明るみに出た後で八神はやてを傷心させるには十分過ぎるものだった 子供の甘い理想――かつて管理局の対応の遅さに業を煮やし 自分の手足となり、自由に動かせる部隊を作ろうと思い立った一人の少女は 後先や周りを鑑みない若年の先走りで、周囲に与えてしまった数々の非行に苦悩した… それでも、、彼女が突き進んだ事で救われた命があったのだ 手段を選ばず ありとあらゆるコネと人脈を総動員し 汚い裏技を駆使して 自分に向けられる批判をすべて覚悟の上で、、 元々、優秀なレアスキル持ちの彼女はその類稀なる力ゆえ 局内でも重宝され、能力自体は周りから高く評価されていた だがその一方で…… 彼女には決して消えない忌まわしき烙印があった ――― 闇の書 の八神はやて ……という、嫌悪と揶揄の存分に込められた二つ名 大勢の管理局員の命を奪い 多くの星を食い犯してきた滅びのロストロギア 消滅と転生を繰り返す、あの忌まわしき悪魔の書を受け継いだのが他ならぬ彼女、という事実が はやてを常に嫌悪と敬遠の視線に晒してきた 故にはやて自身も分かっていたのだろう 自分はどれだけ功績をあげようと決して空の英雄―― 今や、エースの中のエースとまで謳われる親友、高町なのはのような心からの喝采は得られないという事を そう、彼女は己を取り巻く環境、状況を全て理解していた そして………それでもいいと思っていた 自分は誰かの喝采が欲しくてこの道に入ったんじゃない あれを継ぐと決めた時から、その罪も罰も 一心に背負う覚悟はできていた…… それは、車椅子から解き放たれた少女が代わりに背負った重き十字架 悲壮な覚悟の元、苛烈な十年を送ってきた非力で儚げな少女は今や ちび狸と皮肉交じりに揶揄される程に、歴戦の古強者に一歩も譲らぬ したたかな士官に成長していたのだった そんなはやての元、集められた特殊部隊、、 平均年齢は有り得ぬほどに若く、単独作戦を行える特権を与えられた独立部隊としては極めて異例な存在 だがしかし経験不足を補って余りある若さゆえの力と しがらみに捕らわれぬ勢いと結束力を武器に一致団結して事に臨む姿勢、、 その絆はもはや、隊員全員が家族であるといっても過言ではないものであったのだ 闇の書の最期の主――八神はやて その苦しみと辛さ、、胸に秘めた思いと葛藤 それを真に理解する者は少ない―― だがどれほどに歪で悲しい道であろうとも…… 彼女の歩んできた足跡、そして蒔いてきた種は密やかに だが確かな力強さを持って、こうして芽吹いているのだった ―――――― 6課の隊長陣が行方不明になって二週間 地上本部のみならず、海にまで捜索範囲、協力依頼を広げた機動六課に対し 周囲の反応は意外なほどに協力的だった 現金なもので、目に見える大きな結果を出した今となってはこの部隊の利用価値は決して少なくない 今や管理局の正義をアピールするプロパガンダ――広告塔としての価値も大きい 借りを作っておこうと企む輩も多いのだった しかし既に月の半分を浪費しようとしているこの昨今 生え抜きのナビゲーターやエキスパート達が昼夜問わずに動いて それでもまるで手がかりなし はやての副官であるグリフィスやヴァイス陸曹長も奔走している中 割り振られた部屋でただ時間を潰すなど 消息を絶った隊長達と特に強い絆で結ばれたフォワード陣が我慢出来るはずもない 「スバル、アンタは部屋に戻ってなさい」 「そ、そんな……ティアはどうするの?」 「少し手伝ってくる、、なり立てのヒヨッコとはいっても執務官だからね 少しはコネや使える情報筋もあるのよ」 言って踵を返すランスター執務官 別々の道を行き、久方ぶりに再会した彼らであったが、、 「私にも何かやらせてよ!」 「いいから休んでなさい、、災害救助のエキスパートでしょアンタは 出動に備えて万全の体制を整えておくのも仕事のうちよ」 やはり四人の中では基本、このティアナがリーダー格となって場を仕切る雰囲気になる 身を乗り出すスバルに対して上手に手綱を握る彼女の構図 四人にとってもなつかしい空気であった 「ほら、アンタらも…」 未だ引っ込みのつかないスバルを諭しながらライトニングの二人にも休息を促すティアナ 確かに彼女やシャリオの言い分の方が今は正しい、、全面的に 「分かりました、、行こ……エリオ君」 今は少しでも体力を回復し、各々が次に繋がる行動を取るしかない 理屈では割り切れない部分を多々抱えながらも、四人はそこで別れ 沈んだ思いを胸に抱きながら自分の部屋へと帰っていくのだった ―――――― 「エリオ君…?」 「あ、、うん ごめんキャロ」 不安に沈む少年の顔を覗き見、心配そうな声をあげる少女 そう、6課解散後 僅か一年を隔てぬ期間ではあったが 少年が、少女が成長するのはとても早い 当時、子供であった二人もエリオの方は立派な体躯を持った竜騎士 キャロも僅かながらに女性の魅力を纏う大人の階段を登りつつあった しかしながらそれでも――家族の安否を気遣う心に年齢は関係ない 自分を気遣うキャロの視線に力なくも微笑みを返すエリオ スターズの二人と別れ、自分達の部屋に戻る二人は その境遇から、互いに兄妹同然の認識を持っていた そしてこの少年、少女を繋げたのは言うまでもなくフェイトテスタロッサハラオウン その生い立ちから辛い仕打ちを受け、心が砕ける寸前だった少年であった自分を その持って生まれた力から、部族から追放された自分を あの心優しき金髪の女性は優しく包み込み、自分の子供のように育ててくれた そして自らの道を見失わないように 強く羽ばたき飛ぶ力を授けてくれたのが高町なのは―― あの尊敬すべき教導官であったのだ 「エリオ君……今は、、」 「大丈夫 ティアナさん達の言うとおり… その時が来たら自分達に出来る事を精一杯しよう」 「………うん」 言うなればフェイトとなのはは二人にとって本当の母親であり、父親だった 大空を翔る白と金の閃光 常に自分たちを見守り、時には後押ししてくれた二人 平時は仲睦まじく寄り添う彼女達を少年少女は幻視する 二人は思う―― 高町なのはが太陽のような人だとしたら フェイトは月のような人だ、と ひっそりと、決してその存在を過度には主張せず しかし確実に優しい光を以って地面を照らし 地上に住まう人達を見守ってくれている 二人は思う―― そして信じている どんな困難に陥っていようとも…… あの二人が一緒にいる限り大丈夫だと きっとすぐに帰ってくる…… 白と黒の法衣を纏ったその肩を並べて 優しい笑顔を称えて、 ―― ただいま……心配かけたね ―― と言ってくれる、、 そんな場面をひたすらに――――少年少女は幻視する ―――――― 現実と虚実の狭間にて 全てが織り交ざるセカイ 高町なのはは謂わば太陽であり、その名に恥じぬ力を見せた 異世界の最強の英霊を向こうに回し、傷つき地に付しながらも一歩も引かずに戦った そして今―― 今度は月が戦わねばならない時が来る ただしそれは太陽のそれとは違い 誰にも知られず、誰にも主張せず、、誰にも称えられない――― まるで夜の帳にて 皆が寝静まった空を一人 煌々と照らし出すかのように それは誰知る事のない自分だけの戦いになるだろう 未だ陰を落とすフェイトの心の亀裂との闘い その幕開けは今 全てが閉鎖された空間にて 自分を慕ってくれる愛しい少年少女の思い届かぬ 無限の欲望の手の平の上にて――― 静かに始まるのだった ―――――― 暗い山道を走るダークメタリックのボディから 空気を震わせる排気音が勢い良く響き渡る 日本の峠道を走らせるには幅広のボディは しかしこの無人の世界においては些かも不自由を感じさせる事はない 「どうですか?」 「………ダメだな」 その車内においてステアリングを握る金の長髪の見目麗しき女性が何かを尋ね それに対して赤みがかったポニーテイルの凛々しい顔立ちの女性が耳に手を当て かぶりを振ってそれに答える 彼女らはあの機動6課の片翼を担うライトニング隊 その隊長のフェイトテスタロッサハラオウンと副隊長のシグナムその人である 「もう少しで県境だと思います、、通信の状態も少しはよくなるかも…」 気休めにもならない事を重々承知しているフェイトの言葉にはやはり力が無い 小さな声で、ここが海鳴市ならばの話ですが…と付け加えた 彼女達の所持する通信手段は安物のトランスレシーバーではないのだ そのデバイスと直通しているのは管理局の有する無線ネットワーク 少し離れた程度で電波が届かない、通信が繋がらないなど有り得ない 何か……そう、、何か決定的な欠損がなければ 局員同士の通信が途絶するなど天地が引っくり返っても起こりようが無い筈だ 重い空気に支配される車内 沈黙の中、規則正しいスキール音だけがその音を世界に刻む 「………安全運転だな」 通信の状態に耳を傍立てながら何の気なしに話題を振るシグナム 無機質で一見取っ付きにくそうな声だが、フェイトにとっては慣れた間である 「法を守る執務官が法廷速度を守らないわけには行きませんから…」 「それはそうだが、この速度はあまりにもやきもきしないか? 何といっても運転手はお前だ」 横目で、揺れる金髪の奥にある顔を見やるシグナム すると少し苦笑した感のある戦友の表情が見て取れた 「やきもきはしないのですが……免許を取る際、何回か注意されました その、、スピードを出しすぎだって」 「そうか……やはりな」 クク、と笑いを漏らすシグナムに照れくさそうな表情を作る執務官 その様子がとても可愛らしい 何せ6課最速のオールレンジアタッカーの異名を持つフェイトである トップスピードは最新鋭の戦闘機に匹敵する彼女にとって 時速20~30kmなど止まって見える世界であろう かたつむり以下の体感速度で走る乗用車に業を煮やして ついアクセルを踏み過ぎ、怒られる金髪少女の姿が思い浮かぶようだった 「まったく、相変わらずシグナムはフェイトを弄るのが好きだなぁ…」 その騎士の肩上から、フェイトでもシグナムでもない第三者の声が響く 見ると二人より……否、人間の寸法よりも遥かに小さい まるで小人のような、悪魔が背に背負っているかの如き黒い翼を 元気にはためかせた女の子がいた 彼女の名前は「剣精」アギト―― 古代ベルカより残っている純粋な融合機にして 騎士の戦闘力を飛躍的にアップさせる融合型デバイスである少女である かつては機動6課の敵であったゼストグランガイツのデバイスであった彼女は その彼の遺言とも言うべき言葉によって目の前の騎士、シグナムに受け継がれ 今や自身の意志で彼女をロードと認める、機動6課の立派な一員であった 「も、弄ばれてるんですか…? 私は」 「ただのコミュニケーションだ、気にするな」 「ひっでーゴマカしたよ! あはははっ!!」 暗く沈みがちな状況でも、こうした陽気な性格の持ち主がいると随分と違うものだ 少ない言葉を交わしながら探索を続ける二人+一体 光の届かぬ山道を走り続ける車は県境と思われる場所を抜け 上り坂続きだった道も、勾配のある下りへと変わっていく 重心が傾き、下腹を持ち上げられる感覚は シートベルトによって肩と胸を締め付けられる感覚によって相殺される 小高い山道を折り返し、あとは道なりに進むだけで 恐らくは10分と掛からぬうちに視界は開け、隣の県の入り口に差し掛かるだろう そんな時だった―――― 「「……………!」」 車内の空気 否、中の二人を纏う空気が一変する 「………? シグナム? ……フェイト?」 アギトが、その二人の様子が変わった事に驚き おずおずと言葉をかける だが二人は答えない 答えないままに――その鋭敏な感覚を研ぎ澄ませ、、 今、確かに感じた違和感に対し意識を傾ける そう、ただでさえ無人の空間 人の営む様々な音も喧騒も無いこの世界 しかも空気の澄んだ一本道の山道 その空気が震えて音となり 二人の耳に届くのに―― さして時間はかからなかった 今、確かにフェイトの車のエンジンボックスから紡ぎ出す排気音とは異なる音が二人の耳を捉えた それは言うなれば、よく真夜中の峠やサーキットで聞くようなタイヤの軋む音 ギャリギャリ、という耳障りな騒音に酷似しており 数多くの任務によって鍛えられた二人の鼓膜が容易くソレを捉えたのも自然な流れであったのだ 「後ろからですね…」 「念のためだ、少し速度を上げた方がいいな」 転送されてよりこっち、未だ誰にも出会わずに来た二人である それがこの人里離れた山道で、突然に現れる人影…… まだ自分らを追走してきたのだとは限らない 限らないが、、それでも一抹の不吉を感じずにはいられないフェイトとシグナム 「普通の乗用車ですか? それともボックスタイプ…」 「いや、よく見えん」 もしこちらに悪意ある者だとしたら、予め人数や規模を計る事が重要 咄嗟に問いかけたフェイトの言葉は既にその緊張―― 襲撃の可能性を多分に含んだものだった 現在、速度は40km弱をキープ こんな峠道、それも下りを走るには些か速度超過気味であり きついヘアピンを抜ける度、ギシギシと車体が揺れて体が流される感覚に囚われる そして―――その異なる音は、、 明らかにこちらの速度を上回るスピードで追随してきていたのだ ギャリギャリ、ギャリギャリ、、 タイヤの擦れる音がだんだんと大きくなっていく こういった峠道には所謂レースの真似事をして 公道をサーキットに見立てて暴走する輩がいる事は知っている、、 だがこのタイミングで、後ろから追走する影が ただの通りすがりのレーシング好き(所謂走り屋)だと断ずるほど二人は暢気ではない 「車? ……バイク?」 「いや、、、」 だがフェイトはここに来てまたも違和感―― その車輪が道路の接地面を滑る激しい音に反して 「それに付随するもの」が全くない事に対する、、 えもいわれぬ違和感を感じていた (………静か過ぎる) そう、モーターとガソリンによって動く自動車 その醸し出すエキゾースト―― 激しく回転し、排気ガスを吐き出すエンジンの咆哮が その後ろからは全く聞こえないのだ 「………?」 そして隣に座る、頼るべき騎士の様子が一変した事―― 横目でチラっと見た騎士の顔がはっきりと強張り その目が見張られるのが分かった 「シグナム…?」 相棒の、密かに息を呑む様子を見逃す執務官ではない その様相の変化に声をかけるフェイト それを受けて、、ゆっくりと息を吐くように―― 「――――――自転車だ」 自分達を猛追してきた影の正体―― 「……………は?」 「追走してきているのは―――自転車だと言った」 まるでモトクロスよろしく バンプした峠道の段差をゆうゆうと飛び越えて宙に舞いながら 貧弱な車輪と人力のペダルを伴った乗り物で猛追する姿を今、、 騎士の双眸がはっきりと認めたのだ――― 「ええっ!???」 フェイトが素っ頓狂な声を上げる シグナムの顔と速度計を交互に見やりながらステアリングに悪戦苦闘する執務官 メーターを繰り返し凝視するフェイトの目に映る数値はどう見積もっても……40~50kmは軽く出ている 決して全速というわけではないが、自転車に煽られるようなスピードでは絶対にない 「マジかよ……おい」 アギトも驚きの声をあげる そしてフェイト自身も、次々と接近してくるコーナーを丁寧にクリアしながら 今やミラー越しに確実に見え隠れする影を凝視し、、その事実を……… 果てしない驚きと共に受け入れざるを得なかった 「気をつけろ……どうやらまともな相手ではないようだ」 「そ、それはもう、、、ええ」 些か動揺の残る戦友を嗜め、後部に目をやる騎士 黒い鉄の箱と、後方から迫る軽装の二輪がなだらかなS字を抜け直線に突入した途端 影はまるでジェット噴射でもついているかのように加速を開始 みるみるうちに接近してきたのだ 「!! ちっ!?」 まさか、あそこから更に速度が上がるなどと思えるはずがない 舌打ちするシグナムだったが、、遅い ついにその影とフェイトのクルマが並んだ 助手席側に並走してくる人力の二輪 それを狩る謎の怪人と今、初めて至近で目が合い―― 「えっ!?」 「……!」 その、二重に意外な事実に驚きの声を上げる二人、、、いや… 「な、何で……!?」 それに小さな少女の吐き出すような声が重なる 三者の驚愕の理由―― まずはこんな有り得ない速度で追走してくる自転車の操車が 一般人の胴回りほどもある太股を有する競輪選手のような、筋骨隆々とした男性――ではなく、 美しい髪とスラリと伸びた華奢な手足を車体に絡ませ その魅力を存分に感じさせる腰をサドルに任せている女性であった事 そして――― (ルー、、テシア…?) その容貌が、かつてJS事件で出会った一人の少女 ジェイルスカリエッティにその身を利用され、アギトと一緒に行動を共にしていた 一人の召喚師の面影を持った女性だったからだ 彼女には母親がいると聞いたが、目の前の女性はそれにしては若い… ともあれその紫の髪をはためかせ、両のサドルを蹴りつけて舞うモトクロスライダーの姿は異様としか言いようが無い そしてそんな事よりも遥かに異様で、ルーテシアやその母親とは違う決定的な点 それはその顔の大半を覆い、表情を隠している眼帯の存在だった あれでは完全に視界が閉ざされてしまう 一体どうやってこのきついカーブの多い山道を全力疾走で抜けてきたというのか、、 多大な疑問を抱かせる光景だった そして、後部に付かれている時は死角になっていて分からなかった新たなる事実 その更なる事態に、もはや驚きの表情を隠そうともしないフェイトとシグナム&アギト 疾走する自転車の助手席にもう一つ、人影があったのだ そう、風を切り弾丸のように疾走する華奢な女性の狩る自転車は 一定速を出した車に難なく追いついてきたその二輪は、、、 あろう事か二人乗り… 後部席の人影は男だった 全身を蒼で統一したスーツに身を包んだ、一見素朴で粗野な出で立ちは しかしその精悍で猛々しい相貌、その身に纏う空気が装飾品となり全く貧相さを感じさせない そしてその右肩に担いだ細い棒のようなナニカ―― 物干し竿のような長物が、この場にて得も知れぬ存在感を誇示し異彩を放っていた 「よう」 だが、緊迫した場にあげられた声は 取り巻く空気に全く似つかわしくない、ある種の陽気な響きさえ含んでいた 歴戦の勇者であるライトニング隊の二人がどう答えてよいか分からぬほどに それは開けっぴろげで馴れ馴れしい、、 まるで見知った友人に話しかけるかのような初顔合わせの挨拶であったのだ だが、、、そんな事はどうでもよかった この男にとっては恐らく、初めましての挨拶が陽気なものであろうが険悪な響きを持たせようが 礼儀に悖ったものだろうが何でもよかったのだろう 「さっそくで悪いが――」 何故なら男が駆け抜けてきたその生涯は剣舞い、槍踊る戦場 言葉など、、、何の意味も持たないセカイだったのだから 「死んでくれや」 サイドバイサイドで並び疾走する大型のクーペと二輪 紫の女の後部にて、その宙舞う矢の様な激走に全くバランスを崩すことなく 男は構えた――その肩に担がれた細い棒 否、、、血の様な光沢を放つ真紅の槍を… 「!! 貴様ッッッ!!」 ハンドルを握る手が強張るフェイト 助手席のシグナムが怒号を上げる だがその二人が行動に移す、それよりも遥かに速く 頬を打つ風が後ろで縛った蒼い髪を揺らす中 まるで紅き春雷を思わせる閃光の如く放たれた槍が、、 ポニーテイルの騎士の座す助手席のウィンドガラスに 深々と叩き込まれていたのだった ―――――― 並走するは3Lを勇に超える排気量を叩き出す黒いボディと、、自転車 まるで馬と戦車を並べた不釣合いな電撃戦 ともあれ二者は出会い、今まさにその刃を晒し 戦闘の火蓋を切った 先に仕掛けたのは貧弱な馬にその身を預けるカウボーイ&ガール 手に持つ得物で巨大な猛牛を連想させる黒きボディの横っ腹に鋭敏な刃を突き入れる クルマがその車体を大きく揺らし、四つのタイヤが軋みを上げて横滑りする 安定した四輪がこのような挙動を見せるのは即ち 操車であるドライバーのステアリングが乱れた証拠だ 濁走するメタリックボディ その車内にて――真っ赤な鮮血が飛び散った 「シ、シグナムぅッッ!」 アギトが悲鳴に近い声を上げる このデバイスのロードである騎士の肩口から 下げたシートベルトが切断され はらりと騎士の腿の部分に落ちる その肩から下――― 鎖骨の辺りから噴き出す赤い液体を認め 金髪の魔道士の顔も青ざめる 「………大丈夫だ」 だが、ややもして何事もなかったかのような声を返すベルカの騎士 その懐から抜かれているのは彼女の愛剣レヴァンティン 狭い車内、しかもシートベルトに身を拘束されていながら この卓越した腕を持つ女剣士は横から突き入れられた稲妻のような槍の軌道を見事、逸らしていたのだ 「………少しへコますかも知れんぞ」 「え?」 ボソっと呟いた騎士の言葉 その後、間髪を入れずに轟くボコン!!!!!、という 大きな鈍い音にフェイトが息を呑む それはサイドドアに刺さった槍を持つ男と そして人力二輪を繰る女の二名をそのまま ドア越しに勢い良く蹴り飛ばし、引き剥がした音だった 「うおっ!?」 声を上げる男と共に 大きく弾き飛ばされた女の乗る自転車が みるみるうちに後方へと置き去りにされていく ロックを外し、開け放たれたドアから吹き込む風が金とピンクの髪を揺らすのも一瞬 騎士の伸ばした腕がドアの取っ手を引き付け 助手席のドアは間を置かずに閉められた 「すまんな、、手荒に扱った」 「い、いえ……」 短い謝罪の言葉に、受け答えするフェイトの声は些か固い 不自然に上ずった声は動揺の現れであろう 自分の所持物をおろそかにする所など想像も出来ないこの執務官 不可抗力とはいえ、流石に申し訳ない気分になる将であった だがシグナムは実はそれどころではない 容易く斬り払ったように見えたあの一撃、、 内心、その全身に寒い汗をかかずにはいられない凄まじい一突きだった 人体において、胸骨と胸筋に守られている正面からより わきの下から縫い入れられるように突いた方が効率よく貫けるものがある それは―――心臓 あの敵は間違いなく、側面から数分違わず心臓を狙ってきた それも自分だけではない 隣にいるパートナーをも一度に串刺しにする軌道でだ 反応が少しでも遅れていれば自分とフェイト、二人まとめて仕留められていたのは間違いなかった ドア越しで、更に姿勢を取ることすら難しい自転車の後部席から あの相手は数分狂わぬ切っ先をこちらに向けてきたのだ 「そのままガードレール沿いに走れ」 「え? でも、、」 「いいから言うとおりにしろ、絶対にそちら側を空けるなよ…」 そしてもう一つの僥倖―― もし先ほど運転席側に回られて一撃を繰り出されていたら ステアリングで両手が塞がってるフェイトは為す術もなかったはずだ この友が無残に突き殺される様を想像し、唇を噛むシグナム 女剣士の表情にはそんな事は絶対にさせない、という固い意志が見て取れる だが、この狭くて小回りの効かない車内で あの凄まじい一撃をもう一度防げる保障はどこにもない 何とか助手席から飛び出し、戦闘体勢を整えたいシグナムだったのだが、、 (―――駄目か…) 後方に追随する謎の敵は 先ほど思いっきり蹴り剥がしたにも関わらず転倒もせずにこちらに追随してくる 何という敵だろう、、 初邂逅からこっち、その異常性に得体の知れない危機を感じずにはいられない騎士と魔道士であった とにかく今飛び出すのはよろしくない 顔を出した途端、あの槍で狙い撃ちにされるのは確実だ 空戦の基本―― 空を主戦場にする者は、離陸時が一番危ない事を肝に命じるべし 速度も乗らず、戦闘態勢も整わぬ柔らかい腹を敵に無様に晒すことなかれ 教導の基本を思い出す二人 「先に出る、、どうにかしてあれを引き離せないか?」 「……やってみます」 フェイトの右足が愛車のアクセルを思いっきり踏み込む こんな緊急事態において、今更法廷速度がどうのだの言ってる場合ではない アクセルを全開にした事によって加速度的に上がるエンジンの回転数 それによって叩き出される馬力は凄まじく 例え相手が競輪選手並の脚力を持っていたとしても―― みるみるうちにその差が開いていくのは当然の事である 「おいおい、差が開いてんぞ…… 大丈夫か? チンタラやってねえで次で刺せよ」 「―――」 しかし今、、フェイトに誤算があるとすれば二つ それはここが峠の下りだという事 そこはつるべのように続くヘアピンやS字カーブが続くコーナーの坩堝 3000cc以上の大排気量を最大限に発揮出来る地点などなく 踏み抜いたアクセルにより加速を続けるフェイトの車がこのままの速度を維持していては 崖下にまっ逆さまに落ちるのは自明の理である すぐ間近に迫るヘアピンカーブに減速を余儀なくされる黒い鉄の塊 そして、下りゆえに車体同士のパワー差は著しく縮まるというセオリー、、 もう一つの誤算は――― 自転車を繰る女の脚力が、 競輪選手など問題にもならない人知を超えたものであったという事だ 女の隠された両の瞳には今やはっきりと 相手のクルマの減速を表す点灯したブレーキランプが見てとれた ここが相手を刺す絶好のポイントである事は槍の男に言われずとも分かっている この紫紺の女怪が「騎兵」の名を持つ英霊であるが故に 走りにおいて勝負所を見誤る女ではない
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「―――――トレース出来ないって……」 第97管理外世界、地球 その遥か上空 青く美しい人類の故郷たるこの星の、大気圏を隔てた宙空 それを見下ろす形で待機していた現機動6課の旗艦――巡洋艦クラウディア 「どういう事ですか!?」 そのブリッジ内にまだ少女といっても良い女性の声が響き渡る だが、、大音量で荒げた声を気に留める者はいない 見ればその周囲 コンソロールに向かうオペレーターその他諸々が ハチの巣を突付いたような大騒ぎとなっている 騒然と動き回る局員達の表情を見れば 何かとてつもない不測の事態が起こった事は容易に想像できた 「反応がないの、、」 それを受けて答えたのは前のに比べれば幾分落ち着きの見て取れる声 眼鏡をかけた理知的な女性から発せられた言葉だった しかし、その彼女もまた口調の裏にある微かな震えを抑えられなかった 内心の動揺を隠しきれない様相で、目の下には深い隈が刻まれている 「あの星はおろか、、、この宙域全般に――――」 そして一言一言紡ぐように…… ―――― なのはさん達の生体反応を認められない… ―――― 眼鏡の女性、シャリオ=フェニーノから告げられた言葉は 現任務を一通り終え、後発組として到着した元機動6課フォワード陣、、 スバルナカジマ、ティアナランスター、エリオモンディアル、キャロルルシエ―― 入隊当初は甘さの抜けない新人であったこの四人も 幾多の任務、経験を経て今や一人前の局員として成長していたが、、 その彼らをして、絶望のどん底に突き落とすに余りあるものだった 高町なのはを初めとした6課中核を担う隊長陣が行方不明…… 隊が解散する事が決まった、あの時の最後の模擬戦 己の全てをぶつけ、全部を受け止めてくれた強くて偉大な先輩たち あの綺麗に咲き誇った桜の下で、いつかまたこのメンバーが集える日が来ますようにと―― 頬を伝う涙の元に誓った そして今回、期せずして早く訪れた再開の機会 スカリエッティの脱走という緊迫した状況ではあったが 不謹慎なのは百も承知で、そこに嬉々とした感情が、、 かつて教えを乞うた、あの素晴らしい先輩達とまた一緒の任務に就ける… 自分の成長した姿を見て貰いたい… 四人にはそんな思いが少なからずあった筈だ それがまさか………こんな事になるなんて、、 「ちょっと落ち着きなさい、スバル」 興奮気味の相棒を嗜めたのはツインテールの髪を束ねた少女、ティアナランスターである あのエースオブエース高町なのはの直指導を受け、フェイトテスタロッサハラオウンの元で経験を積んだ この努力のサラブレッドは今や誰もが認める立派な執務官である 「で、でも…」 言いよどむスバルだったが この目の前の元パートナーの不安や心配もまた自分に勝るとも劣らないだろう事は明白だった 揺れる心を鉄の意志で抑え、おくびにも出さない親友の顔は スバルにそれ以上、無様にうろたえてはいけないと悟らせるに十分な貫禄を放っていた 第一この事態は、目の前のシャーリーに猛りをぶつけても何も解決しないのだ 「状況を聞かせて貰えますか? 通信や交信記録とか…」 「何も無いの……何も、、 異常を感じてから二週間、あらゆる空間、次元軸をサーチしたけど痕跡、足跡を全く見つけられない…… まるでこの世界そのものから存在ごと消えてしまったとしか思えないのよ、、」 エリオがシャーリーに問い正すも 返ってきたのは絶望的な答えだった ブリッジに重苦しい雰囲気が流れる これは事実上の遭難だ… あの不沈のトップエース達が、奇跡の部隊=機動6課の主力部隊が 任務着手を前にして忽然と姿を消すなど、、 「6課の柱にしてニアSランク魔道士がこぞって行方不明…これはもう私たちだけでどうにかなる問題じゃない 今、クロノ艦長やカリム理事官……アコーズ査察官や無限書庫のユーノ司書長も動いてくれてる」 シャリオの口調も、そしてブリッジで動くスタッフ達の様子も重々しい 見れば明らかに疲労の色が濃く現れ、覇気もなくただ手を動かしているだけの者もいる それはこの二週間、あの手この手を駆使して駆け回り―― その全てが水泡に帰した絶望感がありありと見て取れる光景だったのだ 「とにかく私達に出来る事はありますか?」 重苦しい空気の中、ここに来て真っ先に前向きな姿勢を見せたのは フォワード陣の中で最も幼いキャロルルシエだった 「まずは休んで体力を温存しておいて頂戴…… そんな気分じゃないのは分かるけど、、 イザという時、真っ先になのはさん達の下に駆けつけられるように」 「…………」 だが、、言うまでもない 出動部隊である自分達に、この事態に対処する術など初めからある筈もない ここはオペレーター、そしてその道のエキスパートである者たちに任せるしかなく そして、それでもまるで光明を見出せない現状なのは明らか 暗雲立ち込める艦橋の中で ある者は唇を噛み締め、ある者は虚空に目を泳がせ 呆然と立ち尽くすしか術を持たなかったのである ―――――― 機動6課 ミッド地上における未曾有の危機―― JS事件と呼ばれる大規模テロを迅速かつ、被害を最小限に抑えて解決に導いた通称 「奇跡の部隊」 局始まって以来のスペシャルフォースと呼ばれているその所以は 何も戦闘力に特化した魔道士、騎士が揃い踏みであるという事だけが理由ではない オペレーター、サポート陣に至るまであらゆる分野の優秀な人材を揃え 物資や機材の質、量の充実は言うに及ばず 出資者、後見人に至るまで多岐に渡るスペシャリストが一同に会した集団 それが八神はやての提唱した夢の部隊――機動6課の全容なのだ もっともドリームチームと呼べば聞こえは良いが、、 構想段階ではまさに夢物語以外の何者でもなく 発足当時は外見上の華々しさとは裏腹に、当然のように水面下での誹謗、中傷が絶えなかった ―――お友達感覚で寄り集まったお遊び部隊 ―――貴重な戦力を強引な手法で、無駄に一箇所に集中するなど愚かの極みだ ―――キャリアを鼻にかけた小娘の越権行為 、、等等 お偉方の辛辣な意見は後を絶たなかったという だがその因習を跳ね返し、不可能といわれた特選部隊を実現させ 見事結果を出した六課部隊長、八神はやて その手腕と行動力だけでも彼女が並の士官でない事を裏付けるものであろう 実際、問題は多々あったのだ ミッド地上部隊の実質上のトップ=レジアスゲイズとの思想、政策の違いから 地上と6課は事ある毎に衝突……なかなか良好な関係を築けなかった そして彼の悲劇、、 海に人員を悉く吸い上げられた事による地上近辺の治安の悪化 その果て無き憂いから、道を誤り非業の最期を遂げてしまった彼…… その弊害を戦力独占という形で、期せずして自分たちが演じてしまったという悲しいすれ違い この事実は、全てが終わり真実が明るみに出た後で八神はやてを傷心させるには十分過ぎるものだった 子供の甘い理想――かつて管理局の対応の遅さに業を煮やし 自分の手足となり、自由に動かせる部隊を作ろうと思い立った一人の少女は 後先や周りを鑑みない若年の先走りで、周囲に与えてしまった数々の非行に苦悩した… それでも、、彼女が突き進んだ事で救われた命があったのだ 手段を選ばず ありとあらゆるコネと人脈を総動員し 汚い裏技を駆使して 自分に向けられる批判をすべて覚悟の上で、、 元々、優秀なレアスキル持ちの彼女はその類稀なる力ゆえ 局内でも重宝され、能力自体は周りから高く評価されていた だがその一方で…… 彼女には決して消えない忌まわしき烙印があった ――― 闇の書 の八神はやて ……という、嫌悪と揶揄の存分に込められた二つ名 大勢の管理局員の命を奪い 多くの星を食い犯してきた滅びのロストロギア 消滅と転生を繰り返す、あの忌まわしき悪魔の書を受け継いだのが他ならぬ彼女、という事実が はやてを常に嫌悪と敬遠の視線に晒してきた 故にはやて自身も分かっていたのだろう 自分はどれだけ功績をあげようと決して空の英雄―― 今や、エースの中のエースとまで謳われる親友、高町なのはのような心からの喝采は得られないという事を そう、彼女は己を取り巻く環境、状況を全て理解していた そして………それでもいいと思っていた 自分は誰かの喝采が欲しくてこの道に入ったんじゃない あれを継ぐと決めた時から、その罪も罰も 一心に背負う覚悟はできていた…… それは、車椅子から解き放たれた少女が代わりに背負った重き十字架 悲壮な覚悟の元、苛烈な十年を送ってきた非力で儚げな少女は今や ちび狸と皮肉交じりに揶揄される程に、歴戦の古強者に一歩も譲らぬ したたかな士官に成長していたのだった そんなはやての元、集められた特殊部隊、、 平均年齢は有り得ぬほどに若く、単独作戦を行える特権を与えられた独立部隊としては極めて異例な存在 だがしかし経験不足を補って余りある若さゆえの力と しがらみに捕らわれぬ勢いと結束力を武器に一致団結して事に臨む姿勢、、 その絆はもはや、隊員全員が家族であるといっても過言ではないものであったのだ 闇の書の最期の主――八神はやて その苦しみと辛さ、、胸に秘めた思いと葛藤 それを真に理解する者は少ない―― だがどれほどに歪で悲しい道であろうとも…… 彼女の歩んできた足跡、そして蒔いてきた種は密やかに だが確かな力強さを持って、こうして芽吹いているのだった ―――――― 6課の隊長陣が行方不明になって二週間 地上本部のみならず、海にまで捜索範囲、協力依頼を広げた機動六課に対し 周囲の反応は意外なほどに協力的だった 現金なもので、目に見える大きな結果を出した今となってはこの部隊の利用価値は決して少なくない 今や管理局の正義をアピールするプロパガンダ――広告塔としての価値も大きい 借りを作っておこうと企む輩も多いのだった しかし既に月の半分を浪費しようとしているこの昨今 生え抜きのナビゲーターやエキスパート達が昼夜問わずに動いて それでもまるで手がかりなし はやての副官であるグリフィスやヴァイス陸曹長も奔走している中 割り振られた部屋でただ時間を潰すなど 消息を絶った隊長達と特に強い絆で結ばれたフォワード陣が我慢出来るはずもない 「スバル、アンタは部屋に戻ってなさい」 「そ、そんな……ティアはどうするの?」 「少し手伝ってくる、、なり立てのヒヨッコとはいっても執務官だからね 少しはコネや使える情報筋もあるのよ」 言って踵を返すランスター執務官 別々の道を行き、久方ぶりに再会した彼らであったが、、 「私にも何かやらせてよ!」 「いいから休んでなさい、、災害救助のエキスパートでしょアンタは 出動に備えて万全の体制を整えておくのも仕事のうちよ」 やはり四人の中では基本、このティアナがリーダー格となって場を仕切る雰囲気になる 身を乗り出すスバルに対して上手に手綱を握る彼女の構図 四人にとってもなつかしい空気であった 「ほら、アンタらも…」 未だ引っ込みのつかないスバルを諭しながらライトニングの二人にも休息を促すティアナ 確かに彼女やシャリオの言い分の方が今は正しい、、全面的に 「分かりました、、行こ……エリオ君」 今は少しでも体力を回復し、各々が次に繋がる行動を取るしかない 理屈では割り切れない部分を多々抱えながらも、四人はそこで別れ 沈んだ思いを胸に抱きながら自分の部屋へと帰っていくのだった ―――――― 「エリオ君…?」 「あ、、うん ごめんキャロ」 不安に沈む少年の顔を覗き見、心配そうな声をあげる少女 そう、6課解散後 僅か一年を隔てぬ期間ではあったが 少年が、少女が成長するのはとても早い 当時、子供であった二人もエリオの方は立派な体躯を持った竜騎士 キャロも僅かながらに女性の魅力を纏う大人の階段を登りつつあった しかしながらそれでも――家族の安否を気遣う心に年齢は関係ない 自分を気遣うキャロの視線に力なくも微笑みを返すエリオ スターズの二人と別れ、自分達の部屋に戻る二人は その境遇から、互いに兄妹同然の認識を持っていた そしてこの少年、少女を繋げたのは言うまでもなくフェイトテスタロッサハラオウン その生い立ちから辛い仕打ちを受け、心が砕ける寸前だった少年であった自分を その持って生まれた力から、部族から追放された自分を あの心優しき金髪の女性は優しく包み込み、自分の子供のように育ててくれた そして自らの道を見失わないように 強く羽ばたき飛ぶ力を授けてくれたのが高町なのは―― あの尊敬すべき教導官であったのだ 「エリオ君……今は、、」 「大丈夫 ティアナさん達の言うとおり… その時が来たら自分達に出来る事を精一杯しよう」 「………うん」 言うなればフェイトとなのはは二人にとって本当の母親であり、父親だった 大空を翔る白と金の閃光 常に自分たちを見守り、時には後押ししてくれた二人 平時は仲睦まじく寄り添う彼女達を少年少女は幻視する 二人は思う―― 高町なのはが太陽のような人だとしたら フェイトは月のような人だ、と ひっそりと、決してその存在を過度には主張せず しかし確実に優しい光を以って地面を照らし 地上に住まう人達を見守ってくれている 二人は思う―― そして信じている どんな困難に陥っていようとも…… あの二人が一緒にいる限り大丈夫だと きっとすぐに帰ってくる…… 白と黒の法衣を纏ったその肩を並べて 優しい笑顔を称えて、 ―― ただいま……心配かけたね ―― と言ってくれる、、 そんな場面をひたすらに――――少年少女は幻視する ―――――― 現実と虚実の狭間にて 全てが織り交ざるセカイ 高町なのはは謂わば太陽であり、その名に恥じぬ力を見せた 異世界の最強の英霊を向こうに回し、傷つき地に付しながらも一歩も引かずに戦った そして今―― 今度は月が戦わねばならない時が来る ただしそれは太陽のそれとは違い 誰にも知られず、誰にも主張せず、、誰にも称えられない――― まるで夜の帳にて 皆が寝静まった空を一人 煌々と照らし出すかのように それは誰知る事のない自分だけの戦いになるだろう 未だ陰を落とすフェイトの心の亀裂との闘い その幕開けは今 全てが閉鎖された空間にて 自分を慕ってくれる愛しい少年少女の思い届かぬ 無限の欲望の手の平の上にて――― 静かに始まるのだった ―――――― 暗い山道を走るダークメタリックのボディから 空気を震わせる排気音が勢い良く響き渡る 日本の峠道を走らせるには幅広のボディは しかしこの無人の世界においては些かも不自由を感じさせる事はない 「どうですか?」 「………ダメだな」 その車内においてステアリングを握る金の長髪の見目麗しき女性が何かを尋ね それに対して赤みがかったポニーテイルの凛々しい顔立ちの女性が耳に手を当て かぶりを振ってそれに答える 彼女らはあの機動6課の片翼を担うライトニング隊 その隊長のフェイトテスタロッサハラオウンと副隊長のシグナムその人である 「もう少しで県境だと思います、、通信の状態も少しはよくなるかも…」 気休めにもならない事を重々承知しているフェイトの言葉にはやはり力が無い 小さな声で、ここが海鳴市ならばの話ですが…と付け加えた 彼女達の所持する通信手段は安物のトランスレシーバーではないのだ そのデバイスと直通しているのは管理局の有する無線ネットワーク 少し離れた程度で電波が届かない、通信が繋がらないなど有り得ない 何か……そう、、何か決定的な欠損がなければ 局員同士の通信が途絶するなど天地が引っくり返っても起こりようが無い筈だ 重い空気に支配される車内 沈黙の中、規則正しいスキール音だけがその音を世界に刻む 「………安全運転だな」 通信の状態に耳を傍立てながら何の気なしに話題を振るシグナム 無機質で一見取っ付きにくそうな声だが、フェイトにとっては慣れた間である 「法を守る執務官が法廷速度を守らないわけには行きませんから…」 「それはそうだが、この速度はあまりにもやきもきしないか? 何といっても運転手はお前だ」 横目で、揺れる金髪の奥にある顔を見やるシグナム すると少し苦笑した感のある戦友の表情が見て取れた 「やきもきはしないのですが……免許を取る際、何回か注意されました その、、スピードを出しすぎだって」 「そうか……やはりな」 クク、と笑いを漏らすシグナムに照れくさそうな表情を作る執務官 その様子がとても可愛らしい 何せ6課最速のオールレンジアタッカーの異名を持つフェイトである トップスピードは最新鋭の戦闘機に匹敵する彼女にとって 時速20~30kmなど止まって見える世界であろう かたつむり以下の体感速度で走る乗用車に業を煮やして ついアクセルを踏み過ぎ、怒られる金髪少女の姿が思い浮かぶようだった 「まったく、相変わらずシグナムはフェイトを弄るのが好きだなぁ…」 その騎士の肩上から、フェイトでもシグナムでもない第三者の声が響く 見ると二人より……否、人間の寸法よりも遥かに小さい まるで小人のような、悪魔が背に背負っているかの如き黒い翼を 元気にはためかせた女の子がいた 彼女の名前は「剣精」アギト―― 古代ベルカより残っている純粋な融合機にして 騎士の戦闘力を飛躍的にアップさせる融合型デバイスである少女である かつては機動6課の敵であったゼストグランガイツのデバイスであった彼女は その彼の遺言とも言うべき言葉によって目の前の騎士、シグナムに受け継がれ 今や自身の意志で彼女をロードと認める、機動6課の立派な一員であった 「も、弄ばれてるんですか…? 私は」 「ただのコミュニケーションだ、気にするな」 「ひっでーゴマカしたよ! あはははっ!!」 暗く沈みがちな状況でも、こうした陽気な性格の持ち主がいると随分と違うものだ 少ない言葉を交わしながら探索を続ける二人+一体 光の届かぬ山道を走り続ける車は県境と思われる場所を抜け 上り坂続きだった道も、勾配のある下りへと変わっていく 重心が傾き、下腹を持ち上げられる感覚は シートベルトによって肩と胸を締め付けられる感覚によって相殺される 小高い山道を折り返し、あとは道なりに進むだけで 恐らくは10分と掛からぬうちに視界は開け、隣の県の入り口に差し掛かるだろう そんな時だった―――― 「「……………!」」 車内の空気 否、中の二人を纏う空気が一変する 「………? シグナム? ……フェイト?」 アギトが、その二人の様子が変わった事に驚き おずおずと言葉をかける だが二人は答えない 答えないままに――その鋭敏な感覚を研ぎ澄ませ、、 今、確かに感じた違和感に対し意識を傾ける そう、ただでさえ無人の空間 人の営む様々な音も喧騒も無いこの世界 しかも空気の澄んだ一本道の山道 その空気が震えて音となり 二人の耳に届くのに―― さして時間はかからなかった 今、確かにフェイトの車のエンジンボックスから紡ぎ出す排気音とは異なる音が二人の耳を捉えた それは言うなれば、よく真夜中の峠やサーキットで聞くようなタイヤの軋む音 ギャリギャリ、という耳障りな騒音に酷似しており 数多くの任務によって鍛えられた二人の鼓膜が容易くソレを捉えたのも自然な流れであったのだ 「後ろからですね…」 「念のためだ、少し速度を上げた方がいいな」 転送されてよりこっち、未だ誰にも出会わずに来た二人である それがこの人里離れた山道で、突然に現れる人影…… まだ自分らを追走してきたのだとは限らない 限らないが、、それでも一抹の不吉を感じずにはいられないフェイトとシグナム 「普通の乗用車ですか? それともボックスタイプ…」 「いや、よく見えん」 もしこちらに悪意ある者だとしたら、予め人数や規模を計る事が重要 咄嗟に問いかけたフェイトの言葉は既にその緊張―― 襲撃の可能性を多分に含んだものだった 現在、速度は40km弱をキープ こんな峠道、それも下りを走るには些か速度超過気味であり きついヘアピンを抜ける度、ギシギシと車体が揺れて体が流される感覚に囚われる そして―――その異なる音は、、 明らかにこちらの速度を上回るスピードで追随してきていたのだ ギャリギャリ、ギャリギャリ、、 タイヤの擦れる音がだんだんと大きくなっていく こういった峠道には所謂レースの真似事をして 公道をサーキットに見立てて暴走する輩がいる事は知っている、、 だがこのタイミングで、後ろから追走する影が ただの通りすがりのレーシング好き(所謂走り屋)だと断ずるほど二人は暢気ではない 「車? ……バイク?」 「いや、、、」 だがフェイトはここに来てまたも違和感―― その車輪が道路の接地面を滑る激しい音に反して 「それに付随するもの」が全くない事に対する、、 えもいわれぬ違和感を感じていた (………静か過ぎる) そう、モーターとガソリンによって動く自動車 その醸し出すエキゾースト―― 激しく回転し、排気ガスを吐き出すエンジンの咆哮が その後ろからは全く聞こえないのだ 「………?」 そして隣に座る、頼るべき騎士の様子が一変した事―― 横目でチラっと見た騎士の顔がはっきりと強張り その目が見張られるのが分かった 「シグナム…?」 相棒の、密かに息を呑む様子を見逃す執務官ではない その様相の変化に声をかけるフェイト それを受けて、、ゆっくりと息を吐くように―― 「――――――自転車だ」 自分達を猛追してきた影の正体―― 「……………は?」 「追走してきているのは―――自転車だと言った」 まるでモトクロスよろしく バンプした峠道の段差をゆうゆうと飛び越えて宙に舞いながら 貧弱な車輪と人力のペダルを伴った乗り物で猛追する姿を今、、 騎士の双眸がはっきりと認めたのだ――― 「ええっ!???」 フェイトが素っ頓狂な声を上げる シグナムの顔と速度計を交互に見やりながらステアリングに悪戦苦闘する執務官 メーターを繰り返し凝視するフェイトの目に映る数値はどう見積もっても……40~50kmは軽く出ている 決して全速というわけではないが、自転車に煽られるようなスピードでは絶対にない 「マジかよ……おい」 アギトも驚きの声をあげる そしてフェイト自身も、次々と接近してくるコーナーを丁寧にクリアしながら 今やミラー越しに確実に見え隠れする影を凝視し、、その事実を……… 果てしない驚きと共に受け入れざるを得なかった 「気をつけろ……どうやらまともな相手ではないようだ」 「そ、それはもう、、、ええ」 些か動揺の残る戦友を嗜め、後部に目をやる騎士 黒い鉄の箱と、後方から迫る軽装の二輪がなだらかなS字を抜け直線に突入した途端 影はまるでジェット噴射でもついているかのように加速を開始 みるみるうちに接近してきたのだ 「!! ちっ!?」 まさか、あそこから更に速度が上がるなどと思えるはずがない 舌打ちするシグナムだったが、、遅い ついにその影とフェイトのクルマが並んだ 助手席側に並走してくる人力の二輪 それを狩る謎の怪人と今、初めて至近で目が合い―― 「えっ!?」 「……!」 その、二重に意外な事実に驚きの声を上げる二人、、、いや… 「な、何で……!?」 それに小さな少女の吐き出すような声が重なる 三者の驚愕の理由―― まずはこんな有り得ない速度で追走してくる自転車の操車が 一般人の胴回りほどもある太股を有する競輪選手のような、筋骨隆々とした男性――ではなく、 美しい髪とスラリと伸びた華奢な手足を車体に絡ませ その魅力を存分に感じさせる腰をサドルに任せている女性であった事 そして――― (ルー、、テシア…?) その容貌が、かつてJS事件で出会った一人の少女 ジェイルスカリエッティにその身を利用され、アギトと一緒に行動を共にしていた 一人の召喚師の面影を持った女性だったからだ 彼女には母親がいると聞いたが、目の前の女性はそれにしては若い… ともあれその紫の髪をはためかせ、両のサドルを蹴りつけて舞うモトクロスライダーの姿は異様としか言いようが無い そしてそんな事よりも遥かに異様で、ルーテシアやその母親とは違う決定的な点 それはその顔の大半を覆い、表情を隠している眼帯の存在だった あれでは完全に視界が閉ざされてしまう 一体どうやってこのきついカーブの多い山道を全力疾走で抜けてきたというのか、、 多大な疑問を抱かせる光景だった そして、後部に付かれている時は死角になっていて分からなかった新たなる事実 その更なる事態に、もはや驚きの表情を隠そうともしないフェイトとシグナム&アギト 疾走する自転車の助手席にもう一つ、人影があったのだ そう、風を切り弾丸のように疾走する華奢な女性の狩る自転車は 一定速を出した車に難なく追いついてきたその二輪は、、、 あろう事か二人乗り… 後部席の人影は男だった 全身を蒼で統一したスーツに身を包んだ、一見素朴で粗野な出で立ちは しかしその精悍で猛々しい相貌、その身に纏う空気が装飾品となり全く貧相さを感じさせない そしてその右肩に担いだ細い棒のようなナニカ―― 物干し竿のような長物が、この場にて得も知れぬ存在感を誇示し異彩を放っていた 「よう」 だが、緊迫した場にあげられた声は 取り巻く空気に全く似つかわしくない、ある種の陽気な響きさえ含んでいた 歴戦の勇者であるライトニング隊の二人がどう答えてよいか分からぬほどに それは開けっぴろげで馴れ馴れしい、、 まるで見知った友人に話しかけるかのような初顔合わせの挨拶であったのだ だが、、、そんな事はどうでもよかった この男にとっては恐らく、初めましての挨拶が陽気なものであろうが険悪な響きを持たせようが 礼儀に悖ったものだろうが何でもよかったのだろう 「さっそくで悪いが――」 何故なら男が駆け抜けてきたその生涯は剣舞い、槍踊る戦場 言葉など、、、何の意味も持たないセカイだったのだから 「死んでくれや」 サイドバイサイドで並び疾走する大型のクーペと二輪 紫の女の後部にて、その宙舞う矢の様な激走に全くバランスを崩すことなく 男は構えた――その肩に担がれた細い棒 否、、、血の様な光沢を放つ真紅の槍を… 「!! 貴様ッッッ!!」 ハンドルを握る手が強張るフェイト 助手席のシグナムが怒号を上げる だがその二人が行動に移す、それよりも遥かに速く 頬を打つ風が後ろで縛った蒼い髪を揺らす中 まるで紅き春雷を思わせる閃光の如く放たれた槍が、、 ポニーテイルの騎士の座す助手席のウィンドガラスに 深々と叩き込まれていたのだった ―――――― 並走するは3Lを勇に超える排気量を叩き出す黒いボディと、、自転車 まるで馬と戦車を並べた不釣合いな電撃戦 ともあれ二者は出会い、今まさにその刃を晒し 戦闘の火蓋を切った 先に仕掛けたのは貧弱な馬にその身を預けるカウボーイ&ガール 手に持つ得物で巨大な猛牛を連想させる黒きボディの横っ腹に鋭敏な刃を突き入れる クルマがその車体を大きく揺らし、四つのタイヤが軋みを上げて横滑りする 安定した四輪がこのような挙動を見せるのは即ち 操車であるドライバーのステアリングが乱れた証拠だ 濁走するメタリックボディ その車内にて――真っ赤な鮮血が飛び散った 「シ、シグナムぅッッ!」 アギトが悲鳴に近い声を上げる このデバイスのロードである騎士の肩口から 下げたシートベルトが切断され はらりと騎士の腿の部分に落ちる その肩から下――― 鎖骨の辺りから噴き出す赤い液体を認め 金髪の魔道士の顔も青ざめる 「………大丈夫だ」 だが、ややもして何事もなかったかのような声を返すベルカの騎士 その懐から抜かれているのは彼女の愛剣レヴァンティン 狭い車内、しかもシートベルトに身を拘束されていながら この卓越した腕を持つ女剣士は横から突き入れられた稲妻のような槍の軌道を見事、逸らしていたのだ 「………少しへコますかも知れんぞ」 「え?」 ボソっと呟いた騎士の言葉 その後、間髪を入れずに轟くボコン!!!!!、という 大きな鈍い音にフェイトが息を呑む それはサイドドアに刺さった槍を持つ男と そして人力二輪を繰る女の二名をそのまま ドア越しに勢い良く蹴り飛ばし、引き剥がした音だった 「うおっ!?」 声を上げる男と共に 大きく弾き飛ばされた女の乗る自転車が みるみるうちに後方へと置き去りにされていく ロックを外し、開け放たれたドアから吹き込む風が金とピンクの髪を揺らすのも一瞬 騎士の伸ばした腕がドアの取っ手を引き付け 助手席のドアは間を置かずに閉められた 「すまんな、、手荒に扱った」 「い、いえ……」 短い謝罪の言葉に、受け答えするフェイトの声は些か固い 不自然に上ずった声は動揺の現れであろう 自分の所持物をおろそかにする所など想像も出来ないこの執務官 不可抗力とはいえ、流石に申し訳ない気分になる将であった だがシグナムは実はそれどころではない 容易く斬り払ったように見えたあの一撃、、 内心、その全身に寒い汗をかかずにはいられない凄まじい一突きだった 人体において、胸骨と胸筋に守られている正面からより わきの下から縫い入れられるように突いた方が効率よく貫けるものがある それは―――心臓 あの敵は間違いなく、側面から数分違わず心臓を狙ってきた それも自分だけではない 隣にいるパートナーをも一度に串刺しにする軌道でだ 反応が少しでも遅れていれば自分とフェイト、二人まとめて仕留められていたのは間違いなかった ドア越しで、更に姿勢を取ることすら難しい自転車の後部席から あの相手は数分狂わぬ切っ先をこちらに向けてきたのだ 「そのままガードレール沿いに走れ」 「え? でも、、」 「いいから言うとおりにしろ、絶対にそちら側を空けるなよ…」 そしてもう一つの僥倖―― もし先ほど運転席側に回られて一撃を繰り出されていたら ステアリングで両手が塞がってるフェイトは為す術もなかったはずだ この友が無残に突き殺される様を想像し、唇を噛むシグナム 女剣士の表情にはそんな事は絶対にさせない、という固い意志が見て取れる だが、この狭くて小回りの効かない車内で あの凄まじい一撃をもう一度防げる保障はどこにもない 何とか助手席から飛び出し、戦闘体勢を整えたいシグナムだったのだが、、 (―――駄目か…) 後方に追随する謎の敵は 先ほど思いっきり蹴り剥がしたにも関わらず転倒もせずにこちらに追随してくる 何という敵だろう、、 初邂逅からこっち、その異常性に得体の知れない危機を感じずにはいられない騎士と魔道士であった とにかく今飛び出すのはよろしくない 顔を出した途端、あの槍で狙い撃ちにされるのは確実だ 空戦の基本―― 空を主戦場にする者は、離陸時が一番危ない事を肝に命じるべし 速度も乗らず、戦闘態勢も整わぬ柔らかい腹を敵に無様に晒すことなかれ 教導の基本を思い出す二人 「先に出る、、どうにかしてあれを引き離せないか?」 「……やってみます」 フェイトの右足が愛車のアクセルを思いっきり踏み込む こんな緊急事態において、今更法廷速度がどうのだの言ってる場合ではない アクセルを全開にした事によって加速度的に上がるエンジンの回転数 それによって叩き出される馬力は凄まじく 例え相手が競輪選手並の脚力を持っていたとしても―― みるみるうちにその差が開いていくのは当然の事である 「おいおい、差が開いてんぞ…… 大丈夫か? チンタラやってねえで次で刺せよ」 「―――」 しかし今、、フェイトに誤算があるとすれば二つ それはここが峠の下りだという事 そこはつるべのように続くヘアピンやS字カーブが続くコーナーの坩堝 3000cc以上の大排気量を最大限に発揮出来る地点などなく 踏み抜いたアクセルにより加速を続けるフェイトの車がこのままの速度を維持していては 崖下にまっ逆さまに落ちるのは自明の理である すぐ間近に迫るヘアピンカーブに減速を余儀なくされる黒い鉄の塊 そして、下りゆえに車体同士のパワー差は著しく縮まるというセオリー、、 もう一つの誤算は――― 自転車を繰る女の脚力が、 競輪選手など問題にもならない人知を超えたものであったという事だ 女の隠された両の瞳には今やはっきりと 相手のクルマの減速を表す点灯したブレーキランプが見てとれた ここが相手を刺す絶好のポイントである事は槍の男に言われずとも分かっている この紫紺の女怪が「騎兵」の名を持つ英霊であるが故に 走りにおいて勝負所を見誤る女ではない
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トップページ 0-3.日曜(昼2) 0-3.日曜(昼2):物語_3 開けた扉の先では、信じられぬほど濃密な妖気が充満していた。靄に視界を阻まれそうになりながらも、サングラスの奥から心眼を凝らし、前進する。 この廊下の奥で、何かが起こっているのは間違いない。 「うわあぁぁあああ……」 不に悲鳴を聞き取る聴覚はなかった。だが、崩れ落ちる長身の生徒の姿を見、思わず舌打ちを漏らした。 「間に合わなかったかっ」 背を強く打ちつけ倒れた生徒に駆け寄り、その身を抱かえ起こす。私服で学年は分からないが、耳の三連ピアスには見覚えがあった。確か、高等部1-Dの問題児三人組の一人だったか。 苦しげに歪む顔を手で軽く叩いてみたが、反応はない。失神しているようだ。 そっと、その身を元に戻し、廊下の先を見やる。 点々と連なるように蹲る三人の生徒。そして、その先に悠然と一人の女生徒が立っている。 「和田、忍……?」 高等部生徒会長、和田忍。生徒会室前だ、彼女の存在はそれほど特異ではない。しかし、その表情は、驚愕、焦燥、恐怖のいずれでもない。目の前に四人の生徒が倒れていると理解しているのか怪しくなるほど、泰然とした微笑みだった。 生徒会室前の妖気の濃密さは半端でなく、何処が出元が瞬時に察するにはきつい。 けれど、不の本能が告げていた。 この場を作り出した中心人物は、和田忍だと。 「お前、何を……した?」 立ち上がり、向き合う。 サングラス越しに睨めば、和田忍の目が面白げに細まった。 「ほほ、そなた……そう、教師とかいう存在だったか」 人というには、あまりに妖然とした姿だった。不を認識し、和田忍の浮かべた表情は、余裕というよりも捕食対象を捉えた蛇のようだった。湧き上がる悪寒につつと冷や汗が背筋を辿る。 不の眼は、全く感覚のない五感の内、一つだけ感覚を許されているだけあって、特異なものも全てが見えた。人に見えない、幽霊や超能力という類の存在も分かる。だが、目の前の存在を何かと問われると、その答えは持たなかった。 自分の存在を問うて、その答えがないのと同じように。 不意に、『鬼』という言葉を思い出した。先程の受験生に問われた言葉だ。 「人にしては良い気配を持っておる。まだ、配下が居れば器にしてやったものを」 口の形を見て読み取る言葉は、理解の範疇を超えていた。 「まぁ、良い。そこもと、食ろうてやろうぞ。我が力となりや」 くろうてやろう。 唇の間をちろりと舌が舐めずる。不がか弱きただの人間だったなら、その微笑みひとつに身をすくませていたろう。だが、違った。彼は不敵に口端を吊り上げた。 短く、ハッ、と息を吐く。 「冗談なら、そこまでにしておく事だ。生徒会長さん?」 食べるなんて、そんないけない言葉は成人になってから聞きたいものだ。困ったように笑って、不はサングラスを外した。 黒い影の落ちていたそこに鮮やかな色彩が宿る。エメラルドグリーンの右目と薄い赤紫の左目が顕になった。 不は特異能力保持者だった。簡単に言えば、異能者だ。そして、その代わりに一般的な人間が有するだろう感覚器官を殆ど持ち合わせて居なかった。彼が有することができたのは視覚だけ。しかし、瞳を合わせた者の器官を一時的に自分に移すことのできる特異能力を保持していた。 自己は他者の認識によって成るもの。心理学の一遍を思い浮かべる。 その通り、自己認識の支点のない虚ろな肉体を、不は他人の認識によって確立させてきた。 鬼が、鬼であるように。そう、自分は人の側に立つものだ。 自分の特異能力を理解せず、あるがままに暴走させていた幼い日の過ちを胸に、その力は普段使わないようにしている。だが、明らかに自分を襲おうとしている相手にさえ使わないほど、不はお人好しでもない。 「悪戯が過ぎたな」 左右で色の違う瞳が光る。ざわり、と空気が揺れた。部室棟三階廊下に充満した妖気が、これまでと異質な動きを始めた。和田忍、そして倒れる四人の生徒から立ち上っていた何らかの気配が、不の放つ眼光に圧倒された。 初めは、聴力。和田忍の余裕の表情から、微笑が消えた。奪われた方は最初、ただの違和感にしか思わないだろう。 だが、確実に不の耳に飛び込んでくる空気の震え。久しぶりのそれに不は軽く眩暈を起こした。普段、人が第六感というもので感じ取っているだけに、直接の感覚に慣れるまで数秒掛かる。 奪われたことに気づかず、和田忍が再び喋り出すその前に、不は二つ目の感覚を奪った。 触覚。肌で感じる空気を奪う。布擦れにさえ反応する肌に、若干の不快さを覚えた。だが、これで気付いただろう。眉間を軽く押さえながらも、鋭い視線で目前を見やる。 声を僅かに出して、目前の彼女の表情は怪訝なものに変った。 「おぬし……っ」 何をした、と。問い詰めようとしたのだろう。だが、一歩踏み出したその身体が、平衡感覚を失って崩れた。華奢な足が震え、体重の重みに膝が折れる。艶やかな黒髪が、形を崩して床に落ちた。 「何をしたって? ……交換しただけさ」 不の言葉も、聞こえてはいまい。 「おぬし、人間ではないな……!?」 耳に入る驚愕の声に、不は目を眇め、曖昧な笑みを浮かべた。 頷く事に意味はない。だから、応えない。 『そうだ。人間じゃア、ねぇヨ。分からなかったのか?』 しかし、不に代わって応えた声があった。クククッと喉を鳴らすような笑みが聞こえる。 はっと気付くと、不と和田忍の間に、小さな物体が浮いていた。 ピンポン玉ほどの大きさの、人の眼球に酷似した物体だ。 『悪魔、悪魔、悪魔ァ……。そうだ、半分は同じ悪魔の匂ぃい……』 くるり、と宙で眼球が回転する。回る方向とは別に動く瞳孔が、不を嘲笑う。 『見える。分かる。ハハッ、面白ぇヨ……なぁ、ハイブリッド?』 突然現れた物体に、不は咄嗟的にその目玉の視覚を奪った。『うぉ!?』と眼球は驚愕の声を上げ、ぽとりと宙から床に落ちた。 不は大きく息を吐き、自分が息を止めていた事に気付いた。なんだったんだ、と床に落ちた眼球を覗く。あまりの突飛さに驚いたか、呼吸がおかしくなっていた。肩で息を繰り返す。 床に転がった眼球は、その場で再びクククッと笑い出した。笑い声に身を震わせながら、眼球は二つに分裂する。ぐるり、と新しく生まれ出た眼球が不に視点を合わせる。 『ヒャァッハッハッハッハ!』 跳び出で、不の顔面間近に迫り来る眼球。 思わず腕で顔を庇った不をからかうかのように、眼球は鼻の先で止まり、不の顔の前を八の字に飛ぶ。 顔を顰めて、目玉を振り払う。振り払いざま、不は廊下に奇妙な影が落ちている事に気がついた。段々と薄暗くなる廊下。悪魔の瘴気故でなく、日光が物理的に遮断されている。 窓を見る。 そこには、何十、何百もの眼球が張り付いていた。 異様な光景だった。眼球がガラス窓を圧迫し、ミシミシと音を立てる。せめぎ合い、肉を摺り寄せる目玉。ガラスの一点に、亀裂が入った。 同時に五枚のガラスが割れる。飛び散る破片と共に、千の眼球が廊下へと飛び込んだ。 「面白そうじゃねェか。俺様も混ぜてくれよなァ……!」 目玉の発していた声と同じ、けれどハッキリ肉声と分かる声と同時に、飛び交う眼球が一点に集中し、一本の刀になる。 眼球で出来た妖刀を持つのは、割れた窓枠に手を掛けた一人の青年。 ガラスの破片を素手で握り、血の出るのも構っていない。 「斎木、廉也……!」 知った顔だった。 だが、青年はにやりと笑い、ゆるく首を横に振った。 「違うね。俺様の名はミーレクレス。悪魔ミーレクレスだ」 覚えておけよ。 哄笑が、廊下に響き渡った。 好奇心は猫をも殺す。それって、まさにこんな状況の事を言うんじゃないか。 階段を上りながら、庄司数弥は唾を飲み込んだ。なんだか、咽喉がカラカラだ。コーヒー、アメリカン。飲みたい。なるべく他の事を考えて、気を落ち着かせる。 なんだ、あの女。つか、健太サン大丈夫かよ。 用があって学校に来た数弥は、裏門の前で言い争う三人の姿を見つけた。その内二人は学園でも有名な部類に入る、斎木健太と水本修羅。斎木健太は三年の名物双子の片割れで、そして、密かに女子どころか男子にまで人気のある先輩だ。水本はローラーブレードで学園中走り回っている事で有名な少女。教師をも歯牙に掛けず手玉に取る度胸で有名。その二人が休日に裏門で密会していたというだけで興味を引くのに、その上、健太サンの腕に絡んでいたのは、この学園で終ぞ見かけることのないような垢抜けた金髪美女だった。首と手首と腰にアクセジャラジャラ。駅の裏路地だって見掛ける事の少ない、商売女の臭いがした。私立の学園と遊園地に挟まれた駅は、周辺の健全化に力を入れている。補導員は多く居るわけではないが、そういったソープランド系の店が殆どない。珍しい出で立ちの彼女に、思わず口笛を鳴らし、物陰に隠れて三人の様子を伺った。 そもそも、数弥がこの休日に学校に来たのは、大した用事があったわけでなく、ただ文則を迎えに来ただけだった。 朝起き、昼に暇になって外に出た。適当に駅で飯食うか、と自転車を引き摺り出す時に、近所のオバサン連中が騒いでいるのが聞こえた。何を騒いでいるのか、と耳を澄ましながら、自転車をゆっくり外に出す。 曰く、近所で死体が発見されたという事。 しかも、めちゃくちゃに切り付けられ、内臓をぶちまけていたという惨殺死体。 閉口しながらも、殺害現場の町名だけを聞き取って、自転車を出した。 現場は川を挟んで学園側にある住宅街の一角にあった。事件があったのだろう場所には人だかりが出来、分かり易かった。どうやら、事件は一軒家の家屋で起こったようだ。流石に周囲は立ち入り禁止の囲いが張られ、加えて既に近所の野次馬で埋め尽くされていた。野次馬達の口から、『イッカザンサツ』やら『ヒノニシ』やらと聞こえてきた。話しかけたこともないが、顔だけなら知っている同級生の死体が思い浮ぶ。聞いていてあまり気分のいい話でなく、数弥は踵を返して駅へと向かった。 予定通り、駅前のマックで昼食を取っていた数弥だったが、頭の中は先程知った惨殺死体の事で溢れていた。ズズッと音を鳴らしてバヤリースオレンジを飲み、おもむろに携帯を取り出し、永津子に電話を掛ける。5回、コールが鳴る。留守番電話サービスに変わる前に切り、念の為にもう一度電話を掛けた。 繋がらない電話に、溜息を着いて天井を仰ぐ。そのまま、背凭れに腰を沈めた。 多分、寝ているか、出る気がないか、携帯を携帯していないかのどれか。永津子ならよくあることだ。文則か数弥がいるなら取らせるが、あの無気力娘は独りでは何もしようとしないだろう。文則は模試に出掛けていた。文則は携帯電話を持っていないからこの場では連絡のつけようもない。 こんな時に限って。 そう思いが掠める。身を起こし、再びストローを咥えたが、もうカップに液体が入っていなかった。蓋を開けて中を確認し、氷だけになったカップに蓋をもう一度閉めた。空になったビックマックの包みをぐしゃりと握り潰す。 もう一度、深く溜息を吐いて、数弥は立ち上がった。学校へ行くしかないだろう。 しかし、いざ、校門近くまで来てみると『模試開場』との立て看板に、数弥は二の足を踏んだ。関係者以外立ち入り禁止なのは目に見えている。丁度昼飯時ではあったが、自転車で入る生徒は居ないだろう。考えて、裏門に回った。 来たはいいが、実際学校に入るのはちょっと躊躇ってしまう。文則を待つにしても、まだ昼過ぎ。あと二時間は模試が続いているだろう。何をしていようか、途方に暮れた。 と、そこで、目を引く三人の言い争い。興味がそちらに行くのは仕方ない。 おっ、健太サンが動いた。女同士の一番勝負は、謎の金髪美女の勝ちか。金髪美女に引き摺られるまま、健太サンが中等部校舎の中に入り、しばらくして、水本が動いた。後をつけるらしい。 数弥は自転車を校舎裏に置き、その後を付けた。二人の後を付ける水本を付ける、という随分間抜けな構図だったが、この際気にしないことにする。誰もいない廊下は響きがよく、例え水本が間に入っても、二人の会話は良く聞こえた。 立ち止まる二人に水本が物陰に隠れる。じり、と後ろに下がった動作に、数弥も慌てて階段の下側に隠れた。 そして、突然の健太サンの悲鳴。驚いて顔を出すと、飛び出てゆく水本、体勢を崩し倒れる健太サン、彼の前に立ち、妖艶に佇む謎の美女が見えた。水本を見たのだろう、こちらを眺める瞳に、薄ら寒いものを感じて、数弥は我知らず震えた。謎の女はくるりと方向を変え、階段を上がっていった。 数弥は階段の下から出、水本がこちらを振り返る前に、階段を上った。背筋がぞくぞくと震える。 興味があった。あの謎の美女に。 上り切る直前、二階の廊下に足を書けた所で、不意に見えた影に数弥ははっと顔を上げた。謎の女が廊下を渡ってここまで来るには早すぎる。 「『視えない』というのは、人間と悪魔を隔絶するものだと思っていたけど」 顔を上げた先には、数弥よりも背の低い少年がいた。 「逆に、危険を危険と感知する能力を失ってしまうものらしい」 まぁ、その方が人は平和に暮らせるのだけれどね? 少年は銀の眼を輝かせ、笑った。 「こっちだ」 校門で歩を止め、継理が向かったのは中等部の校舎だった。仰人は顔に怪訝な色を載せたが、継理はそのままずんずんと歩いていった。ちょっとどころじゃなく、お怒り気味だ。見たところ普通の女の子と思っていた相手に一本取られたのだから仕方ない。壁に立てかけるように置いてある自転車を尻目に、黙って仰人は主人の後に付いて行った。 「水本!」 目的の少女は、継理が『視た』通り、中等部校舎1階の廊下にいた。継理が鋭く声を上げ、名を呼ぶ。 修羅はその声にはっと顔を上げた。追ってくるとは思っていたが、まさか。 「あんた達、どうして」 継理は応えず、つかつかと歩み寄ると、周囲を見渡し始めた。ムッと顔を顰める修羅に、仰人は慌てて説明した。 「継理には『視える』んだよ、『時』が」 「は?」 「ええーと、だから……」 修羅が疑問符を浮かべるのは承知の上。仰人は苦笑しながら言った。 「残ってる気配、てか、人の思考みたいなもんが」 「残留思念だろ」 「そうそれ。じゃなくて、それじゃあ分かりにくいから違う言葉で説明してんじゃん」 継理の横槍に咆える。 「大丈夫、分かるから」 「だろ? 解らねぇのは仰人の頭だけだ」 不機嫌なのは、分かっているが。あくまで突っかかる継理に、仰人は大袈裟に溜息をついて、肩を落とす。そんな親友を脇目に、継理は鼻を鳴らした。 「説明は後でいい。で、どうなっている」 「そいつは?」足元に倒れる人物を見、継理は修羅に尋ねた。修羅は咎める目付きで継理を睨み、健太に眼をやった。 「ケンタ先輩。ユキヤ先輩の双子の兄弟」 「ユキヤってのはさっきのか」継理が一人ごちた。修羅は目を眇めて倒れる先輩を眺め、呻く。 「ケンタ先輩、魔に取り憑かれてる。けど、……追わなきゃ」 拳を握り締め、二人に構っていられない、と勢い良く立ち上がる。 「ちょ、ちょっと待とうよ! この人は」 「あんた達、保健室に運んでおいて。今、縛魔の呪を掛けるから」 素早く印を結び、今にも去ろうとする修羅を、継理が引き止めた。 「待て。何を追うんだ」 「説明は要らないんじゃなかったの」 「不必要なもんだけだ」 真っ直ぐに修羅を見る瞳は、どこか強い光を持っていた。こんな光彩を持っていたか。 「どうせ、あんた達には必要ない。生徒を守るのは私の役目なんだから」 「俺は『時』を視る」 断言する口調が強く、修羅の足を留まらせる。 「役目というなら、俺達にも役目がある。……詳しい性質は省略するが、結果的に『時』はお前の言う所の『魔』を呼び込む。この地帯は『時』の坩堝、『時食み』が『時』を喰らって鎮めてきた」 「あんた達は」 「俺達が『時食み』だ」 継理は眼を閉じ、フン、と鼻を鳴らした。 「どんなお役目を担ってやってるかは分からないが、つまりは同じ異能者、しかも守る方に向いてんだろ。一旦手を組め」 「なっ……」 「ツギっちゃ~ん、それじゃあ仲間になる子も仲間になってくれないよー」 あまりの高圧的な態度に反論しようとした言葉は、仰人が茶化したおかげで咽喉の奥に留まった。修羅は言葉を飲み込み、不機嫌をあらわに継理を睨みつける。 「手を組めるわけがない」 修羅は眼を逸らし、言い捨てた。 「あんた、魔の眷族にしかかからない私の技に掛かってたじゃない」 つまりは、魔の者。仰人はともかく、継理に効いていたのは。言われ、継理は眉をしかめて、舌打ちした。 「自覚、あるんでしょ? あんたがこの学園の生徒で、しかも一応は守る方向に向いているらしいから見逃してあげる」 キッと相手の顔を見据える。 継理は何かを言おうとして押し黙り、仰人は溜息をついた。 沈黙が落ちる。決別の言葉か、継理が再び何か言おうとした時、突然仰人の携帯が鳴り出した。慌てて仰人はポケットから携帯を取り出す。 「レグ?」 気まずい空気の中、表示される名前にこの場は切ろうか一瞬悩む。はっと顔を上げると鋭い視線が継理と修羅の双方から投げかけられている。やはり、出ずに切るべきだ。仰人は視線の圧力に負けて着信を切った。 しかし、すぐにまた着信がなり始める。 「出ろ」 通常に掛け直したとしてもありえない速さだった。不思議に思う間もなく、継理の一声に仰人は通話ボタンを押す。耳にあて、向こうの言葉を待った。が、しかし。 「……?」 「どうした」 怪訝な顔の仰人に継理が問う。 「なんか、変だ。しかも――……」 仰人は意味のない通話を切ろうとした。だが、電源ボタンを押しても、通話が途切れない。継理の出した手に、携帯を手渡す。継理は仰人の携帯に耳を澄ました。 「!!」 「何?」 修羅の聞き返す言葉に、継理は黙ってそれを修羅に渡す。修羅も通話を聞き、表情を硬くした。 「誰……?」 「さぁな」 思わず発した修羅の言葉に、継理が応える。 「だが、そこで何かが起きてるのは確実らしい」 修羅も頷く。修羅から携帯を奪い、仰人の手に戻す。受け取り、一人解らず仰人は抗議の声を上げた。 「え、待ってよ。そこってどこだよ」 「生徒会室だ!」 仰人はもう一度携帯を耳に当てるが、聞こえる声はない。 「獅子ヶ谷じゃない、何者かが呼んでる」 お前には聞こえないだろうが。継理の言葉に、仰人はそれが仰人の感知できないものの存在だと気付いた。継理だけでなく、修羅も分かるらしい。走り出した二人に、出遅れ、仰人は二の足を踏む。 「この人は!」 「コウト、運んどけ!」 「ちょ、ツギリ、オレなしで……!?」 継理はそれ以上応えず、脇目も振らず走っていった。修羅の駆ける速さに追いつくのでやっとなのだろう。それだってついていけていない。 残された仰人は、呆然と倒れる健太を見下ろした。 「つか、この人重いからッ」 脇の下に手を通すようにして持ち上げる。 保健室に運べ、と言われた気がする。そうでなくとも、倒れている人間をこのまま放置しておくわけには行かない。今日は高等部で模試が開かれ、中等部は本来なら鍵で閉鎖されているはずなのだ。人通りもない場所に放置しておけない。 とはいえ、高等部から入学した仰人には中等部校舎の保健室の位置が分からなかった。連想とともに、保健室の鍵が開かないことも容易に想像できる。運ぶとしたら、高等部の校舎の方。もしくは、この場に放置する。けれど一旦持ち上げてしまった身体を手放すなど、非情に過ぎることができない。 「ったく、オレってお人好し……っ」 おりゃ、と眠る男のつま先を引き摺りながら移動する。 継理はどうしているのか。具合悪そうだったのに、オレがいなくて平気なのかよ。水本さんは大丈夫なのか。何らかの霊感があるっていったって、女の子なんだから。自分に平素から霊感の一つでもあれば、すぐに異変に気付いて真っ先に走れたのに。携帯を閉じても、呼出音はまだ鳴り続けている。留守電機能も働いていない。 階段横を過ぎ、高等部と中等部を繋ぐ渡り廊下に出る。重い、と思った瞬間、段差に躓いていた。よろめいて、ずり下がる先輩の身体を慌てて持ち直す。再び前へ歩き出そうとすると、引き摺っていた足先がドアのレールに引っ掛かり、前に行こうとする仰人の肩を後ろへと引く。またよろめいて、健太を落としかけた。 ギリギリで支え、仰人は深く息を吐く。疲労の色の濃い溜息だった。 もう一度、腕を肩に掛けさせ、身体を持ち上げる。 「……う」 「え?」 小さな呻き声とともに、首に回させた腕に力が入るのが分かる。 「……うるせぇ……」 「け、ケンタ先輩?」 「んだ、頭が痛ぇ……誰だ、手前ぇは」 起きるなり、身体を支える仰人を見やって、睨み付ける。 三年の健太先輩といえば、陽気で人懐こい性格で有名な人だ。なのに、このドスの効いた声は噂の全てを否定するかのようだった。 ま、誰だって寝起きはこんなものか。継理の寝起きの悪さが身に沁みている仰人は苦笑して、肩に担いだ手を降ろし、健太が一人で立つのを支えてやった。 「った、うるせ……ソレ、止めろ」 健太は仰人の腕の中で頭を抱え、苦しげに呟いた。 ああ、と気付いて仰人はポケットに突っ込んであった携帯を取り出す。音は鳴りっぱなしで、仰人は既に頭の中から取り除いていた。対処の仕様がなく、携帯をただ持ち上げただけの仰人に健太は顔を歪ませ、携帯を奪い取る。 携帯の電源ボタンを押しても、意味はない。苛ついて、健太が通話ボタンを押すまで数秒といらなかった。 まるで電話の向こうに怒鳴りでもするかの勢いで、耳に当てる健太。 大きく口を開いたところで、言おうとした文句は咽喉の奥に引っ込んだようだった。 目を大きく見開き、次第に眉間に皺が寄っていく。携帯を強く抱え込み、音を僅かでも拾おうとしているようだった。まさか、この健太先輩にも、霊感があるのか。仰人は驚いて眼の前の男を見つめる。健太は神妙な顔付きで、怪訝に伺う仰人を睨んだ。 「どこだか分かるか」 「え?」 「これが繋がってんの、何処だって言ってるんだ」 どうやら、継理が聞いたような『声』は聞いて居ないらしい。 「せ、生徒会室……?」 そう、継理は言っていた。仰人が答えると、健太は「そうか」と拳を握る。 「今、助けに行く」 健太は携帯の通話口に小さく、しかし力強く囁いた。携帯は、もはや呼出音を立てることなく、静かに健太の手の中で閉じられた。 携帯を投げ渡され、「すまねぇな、サンキュ」と短い礼に仰人は反射的に頭を下げる。 「廉也……」 一人呟き、健太がよろめきながら進む背を、仰人は慌てて支えた。 健太が、驚いたように仰人を見る。 「オレも、行きます」 助けに行く、の一言で呼出音は止まった。それは、本当は自分が言わなければいけない言葉だったはずだ。仰人は支える手に力を込めた。 守らなければいけないものがある。 健太の見開いた眼が細まり、口端が笑う。 「あぁ……、行こうぜ」 頷き、二人は生徒会室を目指した。 「……お前、誰だ?」 次の言葉は、数弥から先に出た。乾いてかさついた声だったのが、唯一反省点だな。取り敢えず新しい思考を挟んで息を吸い直した。続きは、ちゃんといつも通りの音で出た。 「危険って、何の事だよ」 言いながら、階下で聞いた健太サンの絶叫を思い出す。それから順に、彼に同行していた金髪美女、切迫した感じだった水本を。 「言葉の通りだよ。関われば己の身を危険に晒す事になる。そして、今の君には関われるだけの『力』がない以上、危険を危険として認識出来ない。だから対処が出来ない」 それは、事の核心の表面を撫でるような、そう言う語り口だった。言っている事は物騒極まりないにも関わらず、少年の態度と語り口は数弥の頭を一段階落ち着かせる。相手を観察する余裕が出来た。最後の段に引っ掛けていた足に重心を移し、廊下にきちんと両足を乗せる。 背は自分より少し小さいだろう。しかも割と童顔だ。髪は茶色で、目を良く見ると灰色、と言うか、それよりも光の強い銀色のような瞳をしている。服装は私服。外国人だろうか。場所が場所なので中等部の生徒かとも思うが、状況が状況なのでそれも違う気がした。総合して、多分年下に見える。 「説明になってねえよ。一体何が危険なのか、それとおれにないその力ってのが何なのか、解るように説明してくれ」 すると、少年は寛ぐように身じろぎ一つ、それから落ち着いた笑顔を見せた。 「君は頭が良いね」 「はぁ?」 「余り、人にはそう言う事を言われたりはしないと思うけど」 「余り、ねぇ。そうだな、二人目かな」 事実ではあったが意外性を狙った回答に、相手は楽しそうな表情をする。 「一人目は?」 「友達。最初に言われた時は流石にびびったけどな。自分でも思った事なかったし」 背後、階段下から騒がしい声が反響して来た。注意が逸れた途端に、目の前の人物が言葉を返して来て意識を引き戻される。 「言われて、初めて気が付いたんだ?」 「そーだよ。それまでバカって言われた事は結構あったけどな」 「それは、表面で測れる所しか見なかったからだろうね。けど君はさっき、俺の答を『解らない』ではなく、『説明になっていない』と言った。つまりは、そう言う事」 「どっちにしろ、今のも説明になってないよな。つーか話逸れてる」 数弥の訝しげな表情を見て、相手の少年も対応を改めた。 「確かに。それじゃあ説明しようかな……それと」 ふと、笑みを深くして、後ろを振り返らずに、言った。 「挨拶だけはしておかないとね。こんにちは、お姉さん」 驚いた数弥の視界に、今までどうやって足音を殺していたのか、最後の一歩だけをこつりと鳴らして、謎の金髪美女が姿を見せた。 「ハァイ、お二人サン。Nice to meet you」 彼女は似非外国人をわざと演じるような発音の挨拶を述べると、緩く腕を組み、少年の斜め後ろに立つ。その笑顔は……この位の距離で見ると、何と言うか、目が合うと血の気が引くような気がした。もちろん気の所為の筈だが。 「ワタシもお話に加えて下サイな」 ここまで来てようやく、少年は金髪美女の方に視線を向けた。一歩下がり、数弥と金髪美女と自身で、上手く会話の出来そうな三角形を作る。 「構わないけど、余り脅かさないようにね。こっちのお兄さん、普通の人だから……それで、どこから話せば良いのかな」 銀眼の少年はこちらに話を振って来た。どうやら、会話の主導権は握って良いらしい。 「ワタシとしては、先にお二人サンの事を聞キたいデス」 「おれは逆に、あんた達二人の事が気になるんですけどね」 食い違った意見は、一つの矛盾しない方向に収束した。 「お前、何者?」 つまり、言葉を返さなかった銀眼の少年へと。少年は苦笑した。 「あー……名乗る程の者じゃ」 「ないってのは嘘だろ。どう考えても不審人物全開だぜ? 今日、高等部で模試があって部外者立ち入り禁止って知ってるか?」 「それは、お互い様だと思うんだけどな……まぁ、確かに部外者でも不審人物でも構わないけど、俺自体を疑問の対象にしていると、状況は進展しないよ」 「つまり黙秘、って事か?」 「そうじゃない。俺自身と状況が、関係ないからだよ」 「シカーシ、アナタはとてもソレにお詳シイようでス。関係ナイとは思えマセん」 「お、良い事言いますね。……えーと」 「アンです。アン=ノーン」 「アンさんな。覚えときます。んで、そこんとこどうなんだ?」 言い逃れを許さない両岸からの物言いに、銀眼の少年は肩を落として見せる。 「……いや、本当にさ。主犯は別人だし、意図も俺とは関係ない所にある」 すると、金髪美女は細い指先を顎に当てて思考する。ブレスレットの群れが涼しい音を立てた。 「こう言う時ハ……ソウソウ、『ネタはもう上がってンだよ』?」 そして口に乗せた言葉は中々の衝撃発言だ。 「何か知ってんですか?」 「ハァイ」 不敵な笑顔に、数弥は驚いて金髪美女を見、銀眼の少年は数弥の視界の外で目を細めた。 女は言う。 「『Demon』」 半端な英語の発音を、片仮名の発音に当てはめると。 「……デーモン?」 ふふふ、と、女は笑みを漏らす。そして、少年だけでなく彼女の方も、物騒な科白を口にした。 「知ラれたかラには、生かしては置けまセン」 「知られたってあんた今自分で」 「言い訳ムヨウですヨ、神妙にシナサイ」 「はぁあ!?」 ゲイシャーサムラーイな勘違い外国人の語りで、アンは数弥の方へ歩み出る。合わせて後ろに下がりそうになって、背後は下り階段だった事に気付く。バランスを崩しそうになって、手摺りに手を置いた。 悠然としたもう一歩が直ぐに追い着く。そちらに視線を戻すと、女とバッチリ目が合う。 ……息が。 蛇に睨まれた蛙よりタチが悪い。いや、息じゃなくてこれ、 「ストップ」 視界が暗転するかと思った一瞬、横から少年の声。 『止まれ』と。ただそれだけの宣言が、世界を支配する。宣言は、いつも通りの呼吸を呼び戻した。 「それ以上は俺も黙っては見過ごせないよ、ジョーカー」 階段前にいた二人が、揃って銀眼の少年を見た。女は嫣然と笑み、数弥は呆然と。それに対して銀眼の少年は緩やかな笑顔を返した。 「……交換条件デス」 「要求は何かな」 「アナタのコトを」 突拍子もない要求に、少年は苦笑する。 「そう言われてもね。言った通り俺は単なる通りすがりで、見物人だ。それ以上の要素はないよ?」 「それが」 アンは数弥の首元に左手を上げる。 「カレの生命に値する言葉とお思いデスカ?」 過激な追求に、銀眼の少年は笑うのを止めた。数弥が背後の階段に足を伸ばそうとすると、女の視線が帰って来て足を止めざるを得ない。 「……要求は、何かな」 今度は笑わずに、少年は繰り返す。 「『混沌』ヲ、あルイは『混乱』を。アナタには、ソレをもたラス事の出来ル何かがある」 そして茫洋とした要求に、正確に答えて見せた。 「鍵は『至上の剣』。手にした者が状況を動かす」 「良いでショウ」 頷きはしなかったものの回答に満足したらしく、金髪美女は笑って手を引いた。 「命拾イしましたネ、オニイサン。それじゃ長居はムヨウでス、シーユーアゲン」 横を通り抜けて階段を下る姿を見送って、数弥はその場にずるりとへたり込んだ。 「……な……んだったんだ、今の……」 死ぬかと思った。 ……何で? 「大丈夫かい」 横から差し伸べられた手は、いまだこの場にいる銀眼の少年の物で。手を取られるまで待って、彼は溜息をついた。 「済まないね。もう少し警戒するべきだった」 金髪美女のそれと違い、少年の眼は直視を受けても恐怖感が湧かない。軽く引っ張られてすんなり立ち上がると、数弥は再度アンが去った方を視線で示した。 「けど一応、アレは止めてくれてたんだろ? サンキュー」 しかし少年の方はそちらを見なかった。逆方向の校舎の向こうへと、壁を透かすような遠い視線を向ける。 「……下の人達は、皆行っちゃったみたいだね。状況は、どうやらもう片方に収束するようだ」 「もう片方?」 少年は、一つ頷いた。 「生徒会室だよ」 続く トップページ 0-3.日曜(昼2)
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燃え尽きた大地に、土を掘り起こして何かを埋めた跡がある。 その上に、簡素ながらに削り積み上げた石が二つ。 それは、正しく墓石だった。 それは、野比のび太がこのまま放置しておくには可哀想だと思い。 皆の協力の下、残骸だけでも土に埋めて作ったもので。 その残骸は触れた途端に崩れ落ちてしまうほどに脆く、原型を留めることすら出来ず。 それ故に、ロキシー・ミグルディアとベッキー・ブラックベルの首輪が回収された後。 正しく塵と化したその残骸を、二人が生きていた証を土に埋め、丁重に弔った。 この殺し合いにおいて、死体の尊厳は存在しないに等しく。 利用されるか、破壊されるかのほぼ二択で。 そのような地獄の中で、人並みの善性を保つ彼は。 せめて誰にも利用されないようにと、安らかに眠れるようにと。 雨は止んだ。元々ロキシー・ミグルディアの魔法による雨雲は長くは続くこと無く。 術者の死亡から時が経って降り終わり。雲の隙間より差す黎明の輝きが大地を照らしていた。 雨は止んだ。少年少女たちの悲しみを一先ずは流れ落として。 この理不尽な状況、惨酷な殺し合いに抗おうと一歩踏み出した、その始まりのように。 ☆ ☆ ☆ エリアD-7、産屋敷邸。 鬼殺隊最高責任者、産屋敷耀哉が住まう邸宅にして鬼殺隊の本部。 百畳敷の大広間から見える庭園は、見るものに安らぎを与えてくれる場所でもある。 そんな大広間に、野比のび太とニンフ、イリヤスフィールと雪華綺晶の4人がそこにいた。 あの後、休息も兼ねて4人が訪れたのがこの産屋敷邸。 先の魔女との戦闘や、ロキシーとベッキーの埋葬の事もあって禄にお互いの話も出来ず。 落ち着ける場所として手軽かつ近場にあったこの邸宅にて改めて自己紹介やお互いの情報の共有を行ったに至る。 「……それで、大体の事は共有できた訳だけど。」 そう口を開いたのはエンジェロイド、ニンフ。 この情報共有会議においての実質的な取りまとめ役の立ち位置に収まった、翼を失った天使。 自分を含めた4人とそれぞれ所有している情報を交換、そして伝達・共有。 野比のび太からは未来世界、及びこの殺し合いに関与している可能性がある未来人の事を。 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンからはリップという少年の存在、及び別の世界に飛ばされた際の経験、そしてマジカルサファイアを通しての魔術世界の知識を。 雪華綺晶からは薔薇乙女(ローゼンメイデン)を中心にアリスゲームの知識、及び精神世界の事を。 そしてニンフからはエンジェロイド、そのマスターらがシナプスという浮遊大陸、世界崩壊の危機。そして何より、自らの翼を毟った少女のカタチをした怪物の事を。 4人共、改めて世界の広さを理解する形となった対談。歴史の流れも在り方も何もかもが違う4つの世界。 「僕だって色々経験したことはあるけれどさ……そんな簡単に世界が危機だとか、いくら僕だって驚くよ。」 「いや、平行世界に飛ばされた事には余り驚かないんですね……。」 妙に緊張感の無さそうなのび太の発言。野比のび太としても今までいろんな冒険や繰り広げてきた身である。恐竜蔓延る原始時代、天空の理想郷、遥か彼方の惑星、未来の博物館、兎が住む異説の月、ジャングルの奥地に深海、宝島に南極。 それもあってかそこまで驚いているような表情ではない。つまる所超常慣れである。 イリヤもまたカレイドステッキを手に入れ魔法少女として色々経験している内に荒事には慣れたものの、それでも自分以上に修羅場を潜っているのび太のあっさりした反応には突っ込まざる得なかった。 「まあ、ね。でもイリヤちゃんだって凄いよ。箒無しに空を飛べるだなんてさ。」 「え、ええと……それは、何というかその……魔法少女って何か普通に飛んでるじゃない?」 『いいえ、イリヤ様が特別なだけで、魔術師でも普通はそう簡単に飛べません』と突っ込むようにマジカルサファイアが呆れまじりの発言。ただしのび太は大分あっさりと魔術で空中飛行が出来るイリヤに目を輝かせている。 「……普通に、飛ぶ? いや魔法少女だから……?」 「マスター……魔法少女というだけで人が普通に空を飛ぶ認識は少し……」 「あれぇ!? 私がなんかおかしいの!?」 天然とも言うべきイリヤの発言にニンフも雪華綺晶も生暖かい目。 憧れの眼差しと珍しいものを見る瞳に囲まれさしものイリヤも慌てて言葉を返す。 「大丈夫だよ、僕はイリヤの事は凄い魔法少女だって思ってるからさ。」 『ということらしいので、イリヤ様。一先ず話を本筋に戻しましょう。』 「ねぇ!? なんか私がおかしい人みたいな扱いされたままなんだけど!?」 閑話休題。何か勝手に被害者になった魔法少女(イリヤ)は置いといて、サファイアの一言で議題は本題へと戻る。 のび太が若干フォローっぽい発言をつぶやくも、「今褒められてもちょっと嬉しくないかな!?」と赤面状態。実際魔法がてんでダメなのび太としては、カレイドステッキありきとはいえ魔法で色々やれているイリヤに対しちょっと憧れを抱いてしまってるのは素直な感情であるが。 『……まず、この殺し合いに関わる海馬乃亜。そして仮想的であるその協力者に関してです。』 第一に、主催・海馬乃亜。そしてその協力者。 人を玩具としか思わぬ言葉。第0回放送で流れた、アニメやゲームを楽しむような無邪気で期待を寄せるような発言。だが、海馬乃亜にそういう力がある前提とは言え、全てをたった一人で準備できるなど思いづらい。特に、世界崩壊の危機に真っ只中だったニンフがいつの間にかここにいた、というのも不可解。 「あの乃亜ってやつ。対主催とかマーダーとかって言葉って使ってたけど。私達の事をアニメの役者だとかそういうもの扱いなわけ?」 乃亜の発言の一つ。殺し合いに抗う者たち『対主催』。殺し合いを肯定する者たち『マーダー』 まるでドラマの役者が当てはめられる役割のような認識をしている事に、多少は憤りは感じていた。 「……海馬乃亜にとって、私達は善と悪の役割で動いて観客を楽しませる、人形の役割なのでしょうか?」 そう告げたのは雪華綺晶。まるで自分たちを人形に見立てた善悪の人形遊び。 違いはその参加者(にんぎょう)にちゃんとした自我と人生があるぐらいで。その人生すら、乃亜という子供にとって、人形に付加された着せ替え人形の服程度の価値なのか。 「それとも、ただ……。」 孤独を満たしたかったのか。そう言いかけようとしたが、その言葉すら出なかった。 ある意味他人を利用して、奪って、そして愛が欲しかった雪華綺晶という、本来ならば肉体のない第七ドールは。海馬乃亜を見て、自分の過去を眺めているような、そんな感覚に陥りそうになった。 あの眼は、殺し合いという人形劇を愉しんでいるように見えたあの瞳、まるで―――。 「……雪華綺晶?」 「……いえ、少し考え事をしていたえだけです、マスター。」 考え込みてたのを見かね、イリヤが心配して雪華綺晶の顔を覗きんだ。 それに反応し、何か誤魔化すかのように、雪華綺晶は口を開く。 「ですが、あの海馬乃亜と言う人物は、もしかすれば……。」 心当たりがあると、おもむろに言葉を紡ぐ 鳥海皆人、第七ドール雪華綺晶の『マスター』だった人物。 いや、その実態は雪華綺晶がマスターの代わり、「自分だけのお父様」を得たいが為に自ら創った幻影。 自らを実像だと思い込んだ虚像。雪華綺晶は、海馬乃亜が彼みたいなものだと、そう予想した。 勿論の事だが、雪華綺晶は情報共有の際に自分のことを話している。自分の孤独、そして罪と罰、救済された今の事も含めて。 「……自分が創造物だって知らないで、ってこと?」 「例えそうでなくとも、彼自身が本当に彼自身であるという保証はない、ということです。」 殺し合いを楽しむ子供という創造物。体の良い繰り人形。勿論そうである保証はなく、あくまで考察でしか過ぎないが。 『……のび太様の言っていた事も含めれば、その可能性も低くはないかと。』 「実際そうよね。あいつの言ってたギガゾンビってやつか、それとも別のやつかはわからないけれど。」 ここで出てくるのがのび太が言っていた『ギガゾンビ』の存在だ。 23世紀出身の時空犯罪者。原始時代を時空乱入で隔離し、自分だけの帝国を作り上げようとした極悪人。 未来には適切な材料さえあれば精巧な人間を作ることだって出来る。ギガゾンビかそれに類する人物もそうしたのだろうか? 「でも、僕の思う中でそういうのが出来そうなのはギガゾンビかなって。恐竜ハンターに協力していたドルマンスタインも未来人だけど、あいつはあくまで面白半分で恐竜狩りしていたし。」 未来人と言っても多種多様。特に時間移動をする時間犯罪者となれば限られてくる。 幾らのび太が多様な冒険を辿ってきたとしても、思い当たる節というのはそう簡単に出てくるものではない。 「他だとそういうの出来そうなのが大魔王デマオンぐらいだけど、みんなで倒したからその線はありえないかなって。」 他の該当例といえば、魔法で死んだ魂を魔族として転生させていた実績のある大魔王デマオンであるが。 彼の場合はまだ生存しているギガゾンビと違い、魔界星と共に消滅した。なので乃亜が何かの間違いで死者を蘇らせる手段がない限りそれはありえない。 そもそも、人間の下に付くという状態を、あのデマオンが受け入れるはずがないだろう。 少なくとも、野比のび太が思い当たる節はそれが限度であった。 「……もしかして……でも、あの状況で……」 「ニンフ?」 「……いや、確証はないんだけれど、他にも出来そうなやつだったら私にも心当たりあるわ。」 だが、その停滞を打つ破ったのはニンフ。 未来に匹敵するであろう、現代を凌駕する高度な超技術を所有する文明。 それを支配する唯一無二の王にして、エンジェロイド開発者の一人。 「新大陸シナプスの王。……私たちエンジェロイドの、元マスターよ。」 苦虫を噛むように、ニンフはその名を告げた。 エンジェロイド開発者であるダイタロスと同じ天才科学者。 最後まで誇りを捨て去ることが出来なかった孤独なる王にして。 退屈を紛らわせ、享楽と未知を望む悪逆の王。 「あいつなら、時間は掛かるとしても四次元ランドセルやこの妙な首輪も作れるはず。それに殺し合いを愉しんだっておかしくない奴だし。」 仮にもあれでシナプスの王であり、優秀な科学者。 乃亜の望み通りのものを拵えることだって可能。彼が素直に乃亜に協力するかと言われると別の話になるが、少なくとも殺し合いを楽しむというのなら彼も同じ趣向を拵えても違和感はない。 「でもニンフさん、確かニンフさんのいた世界って……」 「そうね。世界崩壊真っ只中で、あいつがいつ乃亜と接触していた、っていう疑問点はあるわ。」 その場合、ネックとなるのは石板による世界崩壊の最中で、どうやって空のマスターが海馬乃亜と秘密裏に接触していたのか、ということになる。 その上でこの殺し合いの準備やその為の道具作成、一体いつから仕込んでいたのか。 「それもあるけど、もしかしたらこの会場がシナプスみたいに浮遊大陸だなんてのも有り得るわね。」 第二・この会場は一体何なのか、と言う疑問。 その切り口の一つとして、ニンフが予想したのはシナプス同様の浮遊大陸。もしくはここがシナプスそのものであるという可能性。 「確かにそれも可能性として高そうかもしれない。シナプスがどんな所かっていうのはよく分かってないけど、パラダピアみたいな空中都市の事あるからさ。もしかしたら、別の惑星とかってのも……」 「……精神世界。」 「へ?」 ニンフに続くように発したのび太の言葉を遮るように雪華綺晶が発言する。 「もしかしたら、この世界は海馬乃亜の心の世界かもしれません。」 「……心の世界?」 精神、心の世界。「無意識(ディラック)の海」を通じて繋がる個人の領域(フィールド)。 かつての雪華綺晶の場合ならその内部に箱庭を模した水晶の城、雛苺の場合ならマスターである柏葉巴の部屋を模したメルヘンな空間。その当人の精神が形作ったフィールドが、その者の心の世界となる。 雪華綺晶がnのフィールドへの行き来が制限されている事も含めて、ある意味納得出来る内容ではある。 特に、元来なら有機の身体を持たず、精神のみの存在だった彼女だからこそ予想できた事だ。 『つまり、この舞台は海馬乃亜の心象風景そのもの――固有結界のようなものかと?』 「ええ、ここが精神の世界であることを前提として、心象風景というのは些かあっている表現かもしれません。」 精神世界、もとい海馬乃亜の心から生み出された世界なら、バランスよく都合が良くて不都合な、配置されてた建物に一貫性のない舞台。 それがもし、海馬乃亜の殺し合いを望む願いと、彼の中の心象風景が合わさって生まれた産物というのなら、それは正しくマジカルサファイアが言い示した通り『固有結界』。世界を塗り潰すであろう大業だ。 「合否は兎も角として、参考になる話は集まったわね。……どれが答えでも厄介極まりないだろうけれど。」 おおよその意見が集まり、ニンフも一息つく。 考察が合ってようが間違ってようが、少なくとも参考意見としての価値はあった。選択肢が増えすぎるのも良くないと言えば良くないが、こうして違う視点での意見は間違いなく今後の糧となる。 「……じゃあ最後。今後私達はこれから何処へ向かうかって事。」 そして第三。これからの方針、次の目的地について。 方針と言ってもここにいる4人は共通して殺し合いへの反抗という点では共通している。多少の誤差はあれど致命的な誤差にはなり得ない程度。 「首輪の方は並行して調べてるんだけれど、今の私じゃ調べきれないのがね。」 そして、回収した二つの首輪。情報戦に長けたニンフでも把握しきれるものではない。 言ってしまえば翼が無く出力が落ちている今の状態では細部までの解析は不可能。最も万全であろうと未知の技術に包まれたこの首輪は一筋縄では行かないのは道理。 「元々僕はロキシーさんと一緒に図書館かホグワーツの方に行く予定だったんだけど、あっちに戻るにしてもまだあのリーゼロッテって人がいるかも知れないし……。」 首輪の調査を更に進めるには図書館でその手に関わる資料を調べれば、という話にはなるが。 そもそも元々のび太がロキシーの提案でそこに向かおうとして結果あの魔女との遭遇。まだ彼女が周辺でたむろっている可能性も否めない。 「一先ずの目的地としては南にある海馬コーポレーションもしくは聖ルチアーノ学園、後はここから一番近い港かしら?」 『あと、彼女との遭遇を避け図書館に向かう前提なら、北方面から教会を経由してのルートもありけれど……』 提示された次の目的地への選択肢は4つ。二つは南にある海馬コーポレーション、或いは聖ルチアーノ学園。 海馬コーポレーションという名前から海馬乃亜との関連性があるかもしれないという意味での調査対象。聖ルチアーノで他の参加者を探すというのも案の一つ。 3つ目に港。産屋敷邸から一番近く、かつ別エリアへの移動手段がある可能性。その為の移動手段の船がどういうものかは不明瞭であるが、他にも二つ港があることを考えるとそこへの移動手段としての船舶が用意されているとの予測。なんなら図書館の近くにも港があるから図書館行きにはそれもありだろう。 そして最後に、マジカルサファイアが提案した、図書館への別ルート。もし仮に港からのルートが使えない時の、北方面から教会を経由しての迂回を前提とした道筋だが。 「……あの子が、リップくんがまだいるかも。」 そうイリヤが零した通り、懸念はリップ=トリスタンの事だ。 明確に殺し合いに乗っているが、殺し合いの走狗とは言いづらい、信念を秘めた少年。 北へから教会を経由するルートの場合、イリヤが最初に居た場所も含め、彼と道中で遭遇するかもしれない。 「……不治の事は頭に叩き込んでるわ。一度でも傷をつけられたら倒す事すら治療行為と見なされて、ってどういうチートしてんのよ。」 『いくら数で上回っていたとしても、はっきり言って全く油断のならない相手です。』 リップの不治の能力に感しては他の三人も共有している。傷の治療行為に対する否定。 間接的に「リップを倒す」という行為すら、治療行為と見なされ、無力化(ひてい)されるのだ。 魔女とはまた別の、別世界の異能力者の厄介極まりない能力。 攻撃を受けた瞬間、不死者でない限り、その時点でほぼ確実に『詰まされる』。何ならリップが誰かと手を組んでいる可能性も無きにしもあらず。 その点で言えば、不治(アンリペア)の能力者リップの事を事前にしれたのは幸運かもしれない。そして逆を言えば、不治を理解してしまったが故に、『「リップの攻撃は食らってはダメ」というのを念頭に置かなければならない』という条件が付き纏う。 「……そうなったら、まず港に向かって、船舶が利用可能かの確認。利用できるのならそのまま海路で図書館まで向かう。使えないなら海馬コーポレーションへ向かって、て事になるわね。」 意見を纏め、おおよその方針が決まる。 港に向かい、船舶の類があるかどうか、かつそれが利用可能かどうかの確認。可能なら海路を経由して図書館、不可能なら海馬コーポレーションへ調査へ向かう。 「特に反対はない?」 ニンフのその言葉に、反対するものは誰もおらず。 短い沈黙と肯定の証明となる頷きだけで、それ以上に語ることはなかった。 □ □ □ 目的地は決まって、準備を兼ねての小休止。 各々が支給品の確認などの準備をする中で、一人事前に準備を終えたニンフは空を眺めていた。 止んだ雨雲が散らばって消えて、朝の輝きがこの世界に差す光景が妙に神秘的に思えた。 (……なーんか、こういう事になっちゃったわね。) 場の流れにつられてか、それとも智樹を思い浮かべるような少年、のび太に影響されてか。 ニンフもまた悪くない気分なのは確か。……いや、というよりも。 ……ごめんね、ニンフさん。―――これしか、思いつかなかったから。 今でも、残響する。彼女の言葉が。 どうして、あいつも彼女も、自分なんか顧みず他人(だれか)のために。 こんな羽無しの欠陥品なんか、見捨てても良かったはずなのに。 そう自嘲めいた、自虐的な感傷に浸りながら、隣で静かに泣いているであろう少年を見つめた。 「……ドラえもん。」 あの時に比べて、やけに弱々しい姿だ。 いや、仕方のないことだ。外見中身揃って子供なのが多い。 あの巨大な女のように倫理観がぶち抜いて壊れていたり、魔女のように中身が大人らしかったりと違って。 野比のび太もまた、端的に言ってしまえばまだ子供なのだ。孤独に震え、恐怖に怯え。――終焉を恐れる、等身大の。 精神構造の差異はあれど、その点においてはのび太もまだ他の強者や狂人、人外と比較しれみれば、ただの子供である。経験だけでは拭いきれない心なのだ。 「ったく、何泣いてんのよのび太……って、私もあんたの事言えた立場じゃないか。」 「……うわっ!? あれ、ニンフさん?」 唐突なニンフの声にのび太は慌ててひっくり返る。 夜と朝の間の輝きに照らされる天使の姿が、不思議と美しく輝いて、翼を失ったというには余りにも凛々しく見えた。 「……その、何というか……」 「情けない所ごめんなさいってでも言いたいの? そういうのは別にいいのよ。私だって弱音の一つぐらい吐きたい時ぐらいはあるわ。」 のび太のそんな申し訳無さそうな言葉を一蹴。何なら弱音ならこっちも吐きたいぐらい。 世界崩壊が迫る中、こんな所に呼び出され、智樹を導くための翼は化け物のような女に引きちぎられて。 本当なら、今でも泣きたい程に。 「けどね。あんたが助けてくれたのよ。あんたの言葉で、ほんの少しだけ、燻ってなんていられないって思えたのよ。……あいつと、トモキと似ていそうな、あんたのお陰で。」 そんな自分に手を差し伸べたのは、あいつと全く違って、似ているような、そんな少年だ。 なんて、思わず小さな笑みを浮かべていたニンフに対し、のび太が何かを思い出したかのように口を開いた。 「……何だかさ、ニンフの事見てるとさ、リルルの事思い出すんだ。」 「リルル? 誰のこと?」 のび太がニンフを見て思い出し話したのは、リルルという一人の、天使のように綺麗なロボット。 ロボットが霊長の頂点に立つメカトピアという惑星で、人類を奴隷にしようと鉄人兵団より送り込まれた少女。敵だったけれど、最後には自分たちと地球を守るために歴史を変えた代償にその存在ごと消え去った、羽ばたく天使。 「……クールでミステリアスで怖かったけど、本当は優しくて、僕たちを守るために、過去に遡って……。」 「何よそれ、本当にエンジェロイドみたいじゃない、それ。」 その話を聞いて、ニンフはそう思った。 ロボット兵団に良いように扱われる女性型ロボット。玩具同然でこき使われたのはエンジェロイドにそっくりで。でもリルルは性格的には感情が芽生えたイカロスみたいなものでは? と多少は思ったりして。 その上で、原点を変えた彼女の行為には素直に驚嘆に値するものだ。 やった事が、自分が智樹を石板の元へ送り込もうとしたのと同じことだ。もっともこっちは石板の書き込みさえ出来れば阻止できる世界崩壊だが。リルルの場合は自分という存在を消えることを厭わず、それを為した事だ。 幾ら生まれ変わる可能性があったとして、それがのび太の知っている『リルル』という個と同じものとして生まれるとは限らない。 それは、太陽に近づきすぎたが為に翼を失い海に落ちた神話のイカロスのように。 理想を手にするため、己の身すら顧みなかったのだ。 「最後は自分の意志でってのは、ある意味……」 私達もそうかも知れない。と口ずさむ。 智樹は望まないだろうが、智樹の為になら命令に逆らってまで彼を守ってしまいそうではある。 誰かからの命令を求めてしまう自分は兎も角、もしもの時のイカロスとアストレアは間違いなくそうすると、という根拠のない自信はあった。 「でも、リルルは多分。生まれ変われたんだと思う。侵略者の為の尖兵なんかじゃなくて、とても綺麗な天使に……さ。」 「……夢のある話ね。良いじゃないの、そういうの。」 私みたいに第1世代のエンジェロイドは基本夢は見れないんだけれど、付け加えながら。 そんなロマンの有りそうなのび太の話を心地いい気分で聞いてていた。 「だからさ。イリヤにも、雪華綺晶さんにも、ニンフにも。死なないで欲しいし、無理をしないで欲しいって思ってる。……誰も死なないなんて夢物語だってわかってるけれど。」 「いや、真っ先に無理しそうなあんたがそれ言うの?」 「それは、何というか身体が勝手に動いちゃうと言うか……。ロボットだからってそんな事で差別したくないし、そもそも僕はロボットだからそんなの関係なく友だちになりたいって思ってるからさ。」 そんなのび太の発言に、呆れそうで、やはり彼はトモキと似ていると。 人もロボットも、そして人外すらもそうだからと区別しない。自分の善性に忠実で、真摯で。 それでいて、誰とでも仲良くなってしまいそうなそんなありふれた青年だと。 多分、彼に「もしもの時は命令して」って言っても、素直に受け入れてくれ無さそう性格していそうで。 「多分、この先は地獄よ。私達にとっても、あんたにとっても。」 ここは善性を持つ者にとっての地獄絵図、善意以上に悪意や欲望が渦巻く舞台。 数多の怪物が存在する蠱毒の壺の中だ。 曰く、幼稚な善性を以て蹂躙する生まれながらの破壊者。 曰く、数百年もの間積もった憎悪と愛に塗れた復讐の魔女。 玩具箱の如き混沌の坩堝の中、機械天使に地獄と評される世界の中で、少年は。 「今まで挫けそうな事なんて、何度もあったよ。でも、何度でも起き上がるよ。僕は"だるま"だからさ。」 その簡潔な言葉こそが、答えであった。 何度転んでも、転んでも起き上がるのが、彼の得意なことだから。 それだけで、十分な返答だった。 「それじゃ、根っこごと壊されそうな時はあたしが何とかしてあげるわよ。ま、その時は命令してくれると嬉しいわね。」 「命令だなんて……そんな道具扱いみたいな事は気が引けるなぁ……。」 「ドラえもんに頼ってばっかのあなたがそれいうの?」 「そ、それとこれとは……!ええと……」 悪戯混じりの言葉を投げかければこれである。別に他人を弄る趣味はないが。 少なくとも「命令するのは道具扱いみたいで気が引ける」というのは何とも底抜けのお人好しなのやら、と。 彼がエンジェロイドを手に入れたら良いマスターになれると思う、特にアストレアとは気が合いそうとかニンフはそう思いながら。 「でも、命令っていうかお願いになるけど……「死なないで」。ぐらいかな? あはは。」 そんな恥ずかしさ混じりののび太の返答で。本当に甘いというか抜けていると言うか、何というか。 この調子だと肝心な所で失言やらやらかしやしそうだなと多少不安になりながらも。 「本当にそれお願いの部類じゃないの。……ああでも、そういうのもある意味命令よね。」 「……え?」 「そう言われなくとも、こんな所で死んでたまるかってやつ。――私だってね。」 ――守りたい人がいるのよ。とのび太には聞こえない声でそう小さく。 少なくとも、何かしらの意図が関わっている可能性がある以上、この殺し合いから脱出する、というだけでは解決しない可能性も出てきた。 何なら、『何でも願いを叶える』と言う根拠に、『石板』が関与している可能性だって。 「あんたはこの中だと一番非力なんだから。無茶だけはしないでよね。……あたしだって、眼の前で奪われるのはもう懲り懲りなんだからさ。」 「僕だって、死なないよ。こんな殺し合いなんて終わらせて、みんなの所へ帰るんだから!」 そんな少年の、だるまの如き転んでは起き上がることが野比のび太の言葉。 4人の中だと一番非力で、心許ない少年だが、そんなポジティブ思考は多分必要なものだと。 ポジティブ寄りというより諦めの悪さならイリヤも大概というのは置いておいて。 「大丈夫。僕もロキシーさんみたいには行かないけれど魔法は使えるんだから、チンカラホイ!」 「あっ」 調子に乗ってか、おもむろにのび太がチンカラホイと唱えてしまった。 「あれ、この流れ……」とニンフが悪寒がよぎった時には時既に遅く。 ふわぁとニンフの下半身の風通しが良くなった感覚がよぎったと思えば。 「……あれ?」 のび太の目の前には、ニンフのパンツらしき物体が宙を浮いている。 「まさか、ちょっとしたものを浮かび上がらせるぐらいしか出来なかったのに……!」 知ってか知らずか、のび太は大はしゃぎ。 指揮者のように、ゆっくりながらもパンツを空中で右往左往出来ている。 ロキシーが遺したものの結果なのか、魔法の扱いという点ではのび太は一歩だけ前進した、のかもしれない。ただし――。 「見てよニンフ! 僕の魔法が、ちょっとだけパワーアップして……あれ?」 そして、当のニンフ本人と言えば。 スカートを抑えて、プルプルと体を震わせながら。顔を赤らめたまま。 「この……バカぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 「ごふぅっ!?」 見事にのび太に鉄拳を炸裂させ、天井に突き刺さる結果となった。 「何々!? 敵襲ってのび太さぁぁぁん!? なんかパンツが空飛んでるぅ?」 その後、敵襲だと勘違いしたイリヤが駆けつけて、妙ちくりんな光景に頭が混乱する事になったのはまた別の話。 ※C-7とD-7の間にロキシーとベッキーの墓があります。 ※ロキシーとベッキーの四次元ランドセルが回収されたかどうかは後続の書き手におまかせします 【一日目/黎明/D-7 産屋敷邸内】 【野比のび太@ドラえもん 】 [状態]:健康、強い決意、天井に刺さった状態 [装備]:なし [道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス- [思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る 1:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる? 2:みんなには死んでほしくない 3:魔法がちょっとパワーアップした、やった! [備考] ※いくつかの劇場版を経験しています。 ※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。 「やったぜ!!」BYドラえもん ※四次元ランドセルの存在から、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています ※ニンフ、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました ※魔法がちょっとだけ進化しました(パンツ程度の重さのものなら自由に動かせる)。 【ニンフ@そらのおとしもの】 [状態]:全身にダメージ(中)、羽なし(再生中)、羽がないことによる能力低下、ノーパン [装備]:万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3、ベッキー・ブラックベルの首輪、ロキシー・ミグルディアの首輪 [思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ壊して、元の世界に帰る 1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい 2:準備と休息が終わり次第に港へ向かう。船舶での移動手段がついた場合は図書館へ。無かった場合は海馬コーポレーションか聖ルチアーノ学園に向かう。 3:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。 4:この殺し合いにもしあいつ(元マスター)関わってるとしたら厄介かも。 5:のび太のそれ、ほとんどお願いじゃないの……。でも、言われなくてもその「命令」は果たす。 6:首輪の解析も進めたいけど、今の状態じゃ調べようにも調べきれないわね。 [備考] ※原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。 ※SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。 ※制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。ただし「デストラクト・ポーション」の影響で時間は掛かるも徐々に回復しつつあります ※この殺し合いの背後に空のマスターが関わってるかもしれないと、及びこの会場はシナプスのような浮遊大陸なのでは?と考察しています ※のび太、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました 【雪華綺晶@ローゼンメイデン】 [状態]:健康、イリヤと契約。 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1 [思考・状況] 基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。 1:殺し合いに反抗する。 2:イリヤを守る。 3:彼(乃亜)は、皆人と同じ……? [備考] ※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。 ※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。 ※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。 ※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。 ※乃亜の正体が鳥海皆人のように、誰かに産み落とされた幻像であるかもしれないと予想しています。 ※この会場は乃亜の精神世界であると考察しています。 のび太、ニンフ、イリヤとの情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 [状態]:健康、雪華綺晶と契約。 [装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [思考・状況] 基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。 1:殺し合いを止める。 2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。 3:リップ君は止めたい。 4:みんなと協力する [備考] ※ドライ!!!四巻以降から参戦です。 ※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。 ※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。 のび太、ニンフ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました 031 夜の館で 投下順に読む 033 i m a dreamer 時系列順に読む 018 思い描くは、ひとつの未来 野比のび太 036 かけ違えた世界で ニンフ 雪華綺晶 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
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← ◆ 誰だって幸せになる権利がある。 難しいのはその享受。 誰だって幸せになる権利がある。 難しいのはその履行。 誰だって幸せになる権利がある。 難しいのはその妥協。 Frederica Bernkastel ◆ ―――ライダーのサーヴァントよ。貴女達が血眼になって仕留めようとしているサーヴァントは。 古手梨花にとって、ここからが本当の勝負。 その開戦の号砲を、歌うように彼女は口にした。 「大仰に何を言うかと思えば、それだけの情報でこっちが納得するとでも思ってるのか? こっちが命令してるのは“洗いざらい全部話せ“だ」 「ご不満かしら。なら、もう一つ教えてあげる」 淡々と、言葉を紡ぐ少女の雰囲気は最早ただの子供ではない。 演技などという生易しい領域ではない、これは最早変身と言ってもいい豹変だ。 低い魔女のような声で、もう一つ、とっておきの情報を開示する。 それが彼女にとってどれだけ危ない橋かを理解しながら。 リップ達にとって、最大の爆弾となりうる情報を。 「そのライダーの持ってる宝具はね―――もう既に使えるのよ」 嘘である。 だが、全てが嘘ではない。 七草にちかのサーヴァント、アシュレイ・ホライゾンの有する宝具――界奏、スフィガブリンガー。 魔法のランプとも称されるそれの発動、および聖杯戦争の脱出に向けた行使はそう直ぐにできるものではない。 聖杯へのアクセス方法や座標、タイミング、魔力リソースなど、どれもシビアな行使が求められるのだから。 だが―――使用するだけなら、令呪が三画すべて揃っている現状ならばいつでもできるのだ。 少なくとも、にちかのライダー(アシュレイ・ホライゾン)からは梨花はそう聞いている。 それで脱出が叶うかどうかは別の話ではあるが。 その視点から言えば、梨花の今しがた宣言したことは嘘であり、嘘ではない。 「でも、あの子たちは今もこの聖杯戦争から脱出を果たしていない。何でだと思う?」 リップが返事を返すよりも早く。 梨花は答えを出した。 その唇の端は、弓矢の様に引き絞られていた。 「あの子たちが一人でも多くの人を助けようとしているからよ。可能な限りね」 これも、正確には嘘だ。 彼女達が未だにこの世界に留まっているのは単純に脱出準備が整っていないからだ。 だが、一人でも多くの脱出派を募っていることは嘘ではない。 「皮下に伝えなさい。彼女達の優しさに付け込んで、優位に立ってるつもりだった?って」 瞳が紅く煌めき、少女は嗤う。 「あの子たちが脱出したら界聖杯がこの世界を終わらせるのなら…… 彼女達の優しさに生かされてるのは貴方たちの方よ。 けど、皮下がこれ以上攻撃を続ける様なら…彼女達の慈悲もそろそろ品切れかもね」 皮下の元に訪れたときは、交渉が決裂した時に自分を殺しても無意味で、見逃してくれたら直ぐにこの世界からお暇するという純然たる命乞いに近い発想だった。 けれど、脱出が叶った場合、界聖杯が下す裁定を知った今ではその意味合いは大きく変わってくる。 リップは理解した。 これはある種の脅迫だと。 「私が捕まった事であの子たちの危機感はさらに増すわ。 このまま旗色が悪化し続ければ、明日にでも脱出に踏み切るかもしれない」 脱出派の状況は極めて悪い。 脱出された場合の結果や、283プロダクションという旗印も既に有力な聖杯狙い達に露見してしまっているからだ。 正に四面楚歌。順当にいけば勝ち残るどころか生存すら絶望的だ。 だが、もし仮に、聖杯戦争を何時でも彼女達が降りられるとしたら。 それまで逃げ切ることが彼女達の勝利条件であるならば、話は変わってくる。 何しろ、戦う必要がないのだから。 逃げ回りつつ秘密裏に示し合わせて集合し、件の脱出宝具を使うだけでいいのだ。 それで彼女達は勝利条件を満たし、聖杯狙い達は可能性の藻屑と消え果てる。 脱出派にとって最大のアドバンテージは、脱出の具体的手段が既にある事と、勝利条件の前提がそもそも違う事だ。 それを最大限強調し、利用して、梨花はか細い論理を未来へつながる糸とする。 「……仮に、その話が本当だったとして、だ」 だが、リップが動じる気配はない。 これまで通りの冷淡な態度で、梨花の束ねた糸を断ち切ろうとする。 「それで俺達がお前ら攻撃をやめると思うか?むしろ攻撃の手を強めて、 ここでお前を即座に殺すと何故思わない」 「思わないわ。だって、このまま順当にいけば貴女達はほぼ確実に勝てる勝負だもの。 それを焦って負ける可能性をわざわざ増やすとも思えない。 ………貴女が私を殺すとも思ってない。私を助けようと彼女達が動けば、 その分あの子達の足を止めることができるから」 もし梨花の話が本当であるならば。 一人でも多くの脱出派を救うために危険な戦場に残り続ける彼女達の優しさが本当だとするならば。 ここで梨花を殺したり、薬物で壊すのは悪手でしかない。 生きているのなら助けようとしても、既に死んだり救出が不可能になっていると悟られれば、彼女達のサーヴァントの方が救出に納得しないだろう。 むしろ自分たちのマスターが同じ末路を辿るかもしれないと考え、脱出を早める恐れすらある。 純粋な兵力差で言えば99.9%勝てる相手であるのは間違いないだろう。 だが、脱出派が破れかぶれの賭けに出られれば向こうにも何割かの勝算が出てくるかもしれない。 件の宝具の詳細を知らない以上、それがいか程のモノかはリップ達に走る由もない。 しかし、だからと言って。 「詭弁だな。放って置いたところで、お前たちが脱出を諦めるわけじゃないだろう。 むしろ俺達が手を止めてる間にせっせと準備をして、逃げる腹積もりじゃないのか?」 リップがその言葉を吐いた時、梨花はかかった、と思った。 自分自身の生存のためには、彼女はその言葉が欲しかったのだ。 「だから、そのために私がいるんでしょう?ちゃんと情報は渡すわ。 その情報をもとに件のサーヴァントに当たりをつければ……」 「お前を助けようと283が動いてる間に、そいつを潰してゲームセット、か」 「私も命は惜しいから、直ぐに用済みにならない様に情報は小出しにさせてもらうけどね」 協力的な態度を見せたうえで、私情報を吟味し最大限絞る。 それが梨花の選んだ選択だった。 そして、その選択を受けたリップもまた、梨花の狙いが何なのか合点がいった気がした。 「…なる程な、お前の狙いは時間稼ぎか」 「貴女だって、皮下を倒すために私のセイバーの力を借りたいんでしょう? それならその時迄私の利用価値が少しでもある方が、生かしておく理由付けが簡単よ。 あと、皮下に引き渡されたりした時はさっきの令呪の内容全部喋るから その後皮下を倒すチャンスが回ってくるといいわね」 そう、これは大いなる時間稼ぎだ。 つくづく見た目通りの年齢なのかと瞑目する少女だった。 絶対的に命を握られている相手に、此処まで堂々と出られるとは大したものだ。 此方に屈従することなく、カウンターパンチすら叩き込んできたのは完全にリップとしても想定外だった。 話も一応の筋は通っている。それはつまり。 少女はこんな状況に至ってなお、しぶとく諦めず知恵を巡らせた証明に他ならない。 この期に及んでも、運命のサイコロを、他人の手に委ねようとしていない。 「……時間を稼いで、それで助かると思ってるのか?」 何処まで行っても、少女の状況は絶望的であることに変わりはない。 全ての令呪を失って、敵陣に一人取り残されている。 283が助けに来てくれるとも限らない。 リップの庇護を失えば、物の一時間で凄惨な最期を迎えるだろう。 何より、例え彼女のセイバーが助けに来て此処を脱出できたとしても。 リップの不治の呪いが消える訳ではないのだから、以前命は他人に握られたままだ。 それは彼女にも分かっているだろう。 しかしそれでも少女は迷うことなく宣言した。 自分のセイバーは必ず助けに来てくれる。 それまで生きているのが自分の役目なのだと。 「……希望を語るか、こんな世界の、こんな状況で」 「生憎、絶望には慣れてるの。百年来の友達よ。 でも、まだ私は生きてるし、セイバーもきっと私を助けるために動いてくれている。 それならなにも終わってないし、終わらせない」 そう言って、少女は再び笑った。 先ほどまでの笑みとは違う、引き攣りきった不格好な笑いだった。 今にも崩れそうで、ありったけの虚勢をかき集めていることは一目で伺えた。 だが…その笑みを見ていると、心中がひどくざわついた。 「―――生き残る事だけは、諦めるつもりは無いの。 私が生きて、この土地を去ることを願ってくれた人がいるから」 ――最後に一つ。約束してもいいかな? ――どうか…生きてほしい。これからもきっと、辛い事はあるかもしれない。 ――だけど、私は…白瀬咲耶は、梨花。君が生きて元の世界に帰れることを祈っているから。 私は私をそんなに強くない人間であることは知っている。 身体は勿論。精神的な意味でもだ。 百年の魔女を自称したところで。 たった一人では、繰り返される惨劇の輪廻に耐える事なんてできない。 事実、以前のカケラ渡りでも、此処へ来る原因となったカケラ渡りでも。 私は諦める寸前だった。 そのカケラの巡る旅路と同じくらい、状況は絶望的。 逆転は望み薄で、緊張の今を僅かな希望で凌いでも、数時間後には死んでるかもしれない。 ……では、もう駄目なのか。 もう、古手梨花は戦えないのか。 ……それは違う。 まだ私には、果たすと誓った約束と。 私を全力で助けようとしてくれている人がいる。 だから、俯かない。 例え、借り物の勇気と決意でも。 それでも胸の中に抱いたこの気持ちは本物だと思えるから。 だから、やせ我慢をかき集めて、まだ運命に挑むことができる。 「―――そうか」 何処までも不格好で、頑固で、弱いくせに諦めの悪い事は伝わってくる笑みだった。 敗者で、チェスや将棋で言う詰み(チェック)に嵌まった人間で、 どうしようもなく無力な少女の浮かべる笑みだった。 それでも否定者の男は、その笑みを直視できなかった。 眩しい光源から瞳を逸らすように、俯き、噛み締めるように一言呟いて。 この場に勝者がいるのならば、それはリップだ。 自らの能力と令呪により、少女らを完全に支配下に置いた。 状況は依然リップの圧倒的優位。梨花の命は彼の胸三寸。 それでも彼は、逃げる様に踵を返した。 そのままそそくさと、逃げる様に部屋を後にしようとする。 傍らの機械の少女も、何度か梨花と主の間で視線を彷徨わせてから、それに続いた。 去っていく背中に、梨花は穏やかな口調で問いかける。 「……また、話せるかしら」 「肝心な事はまだ何も聞けていない。皮下が今の話に納得すれば、嫌でも話すことになる」 「そう、ありがたいわね。もし283の子たちに見捨てられちゃったら…貴女を頼る事になるかもしれないし」 「脱出を諦めないんじゃなかったのか」 「冗談よ。………でも、現実を見ないと見えてこないこともあるのですよ。にぱー」 梨花の方へは振り返らず、けれど律義に返される声。 それを聞いて、フッと安心するように梨花は息を吐いた。 余り考えたくない事態ではあるけれど。 情報を漏らした自分に対して、283がどう出るかは分からない。 もし裏切り者として放逐されてしまえば、リップを頼ることになるかもしれない。 とどのつまり、古手梨花という少女は。 最善の奇跡を求める理想主義者(ロマンチスト)で。 何処までも残酷な現実を知っている現実主義者(リアリスト)でもあった。 「………大したガキだよ、お前は」 梨花には届かない程小さな声で、不治の否定者は短い賛辞を贈った。 彼女を見ていると、一人の知り合いの顔が脳裏を過る。 知り合い、と言っても殺しあった仲で。 きっと今でもその娘との関係を一言で言うなら『敵』なのだろう。 その敵であるはずの自分と、それでも協力できるといった否定者の少女。 不運(アンラック)という最低の呪いを神に刻まれ、不死と共に神に挑むと宣言した少女。 あの娘なら、古手梨花と同じことを言って、同じ笑みを浮かべるのだろうか。 そんな事を考えつつ、不治の否定者はその場を後にした。 ◆ 独りとなった部屋で、何度か拘束を外そうと試みる。 だが、鋼鉄製の手錠はどれだけ力を籠めてもびくともしない。 数分試してすべてが無駄だと悟ってから、手錠を外すことを諦めた。 「百年の魔女が聞いて呆れるわね。一人になったとたん…虚勢を張る事しかできないなんて」 聖杯戦争が幕を開けてから、ここまで孤立無援になったことは初めてだった。 この世界に招かれてからは、騒がしく優しい女侍が常に傍らにいてくれたから。 その庇護から一度離れてみればこの体たらく。 身体からこみ上げる不安と震えを抑え込むので精いっぱいだ。 自分はここでも無力で無能な箱の中の猫でしかないのだと思い知らされる。 「いた……!見つけた……!」 と、打ちひしがれていた時だった。 梨花しかいない筈の部屋に、声が響いたのは。 梨花のモノではもちろんない。かといって幼い少女の声はリップのモノでもない。 声の方へと視線を移してみれば、見覚えのある顔がそこにいた。 幼い梨花の容姿と比べてもさらに幼い、アイと呼ばれていた獣耳の少女。 虹花の裏切者の三人のうち、皮下の処分を免れた最後の生き残りだ。 逃亡者となり果て、鬼ヶ島の中を必死に隠れ回りながら梨花を探して此処までやってきたらしい。 「待ってて…アイさんなら外せるかも……」 とととと、と駆け寄って獣の手に力を籠める。 すると梨花がどれだけ力を籠めても動かなかった縛めが、軋み始めるではないか。 「待って!」 もう少しで外れそうになったタイミングで。 顔が真っ赤になるほど力を籠めて自分を助けようとしている少女に、梨花は制止の声を上げた。 「ありがとう、でもセイバーが来るまではどの道逃げきれないわ」 拘束を外してこの部屋を出た所で、以前梨花の所在地は鬼ヶ島の真っただ中。 いうなれば皮下の腹の中。逃げてもすぐにつかまるのがオチでしかない。 そして、逃亡を図ったとなれば今度こそ皮下は容赦しないだろう。 自分も、アイも、酸鼻極まる最期を迎えることとなる。 奇跡的に逃げ切れたとしても、逃亡先でリップの不治を発動されれば意味がない。 せめて彼に話を通さなければ、逃げるわけにはいかなかった。 「で…でも、このままじゃ……」 「大丈夫よ、アイ。貴女が来てくれただけで、最悪じゃない」 べそをかいてうつむくアイを優しく抱きしめる。 梨花は知っている。 アイが、父の様に慕っていた男は梨花を助けるために殺されたことを。 梨花に賭けたせいで、アイが逃亡者の身へと堕ちたことを。 それでも彼女は、怖い思いをしながらここまで来てくれた。 ならば、その献身に応えたかった。 抱きしめた体から伝わる暖かな体温は、梨花の意思に力を与える。 状況は依然最悪。だが光明がない訳でもない。 令呪で回復させたことで今頃セイバーは息を吹き返しているだろう。 自分の命を握るリップは皮下よりも交渉の余地がある男だった。 そして何より、アイが来てくれたことで梨花は一人ではなくなった。 なら、まだ戦える。 まだ、諦められない。 その理由も、皮肉にも皮下の言葉でより強くなった所だ。 ――――沙都子ちゃんと言い君と言い、最近の幼女は人間離れが著しいな。 「沙都子が此処にいるなら、会うまで死ぬわけにはいかないもの、絶対に」 【二日目・未明/異空間・鬼ヶ島】 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】 [状態]:疲労及び失血(大)、右腕に不治(アンリペア) [令呪]:全損 [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:数万円程度 [思考・状況] 基本方針:生還を目指す。もし無ければ… 0:セイバー達が助けに来るまで時間を稼ぐ。 1:沙都子が此処に、いる…? 2:白瀬咲耶との最後の約束を果たす。 3:ライダー(アシュレイ・ホライゾン)達と組む。 4:咲耶を襲ったかもしれない主従を警戒、もし好戦的な相手なら打倒しておきたい。 5:彼女のいた事務所に足を運んで見ようかしら…話せる事なんて無いけど。 6:櫻木真乃とアーチャーについては保留。現状では同盟を組むことはできない。 7:戦う事を、恐れはしないわ。 ◆ 古手梨花という少女を手駒にしようと思ったのは、シュヴィの解析ゆえだ。 彼女の連れていた女剣士。その宝具、その剣の腕は。 ―――あの、鬼のライダーや鋼翼のランサーに届く。 それが、実際に交戦したシュヴィの解析結果だった。 もし彼女のサーヴァントが凡百のサーヴァントであったならば。 リップも彼女を引き込もうとは思わなかっただろう。 その場合、今頃梨花は皮下のおもちゃとなっていたに違いない。 梨花自身が無力な少女というのも都合がよかった。 いざとなれば不治の力で何時でも始末が付けられるからだ。 もっとも、シュヴィの解析の結果では、肉体の構造は年相応の少女と変わらないだけで、 そのマスターとしての素質や魔力の貯蔵量は常人ではありえない物らしい。 「シュヴィ、確認するがあの梨花って子供は―――」 「うん…肉体的には…ただの人類種(イマニティ)……ただ……普通の、人類種じゃ…… 色々…ありえない……何らかの……異種との…混血の……可能性、高い」 「確かに、あのガキが特別って事は伺えた。おいおい探ってみる必要が出てくるかもな」 解析の結果、梨花が生まれからして特別な子供であるという事は伺えた。 ともすれば、先ほどの令呪も十全に効果を発揮しているかもしれないな、とリップは思案する。 梨花が目覚める前、実験的に彼女の令呪を一画奪い、シュヴィに使用したがその時の命令も単なる回復ではなく、自己修復機能の大幅な向上を命じる様に忠告された。 シュヴィの言によると、如何な令呪であっても霊基の修復は非常に高度な技能であるらしい。 本来治癒能力のないサーヴァントに回復効果を目的とした令呪の使用を行っても不発に終わることが大半だという。 しかし、高い素養のマスターが令呪を使用した場合、本来ならば命令不可能な行使も可能となるのもまた令呪の特性の一つだそうだ。 また実際に使用した結果をもとに行った解析では、令呪を用いた霊基の修復は可能であるという解析結果が出た。 ただし、修復できるのは霊基のみ。 英霊の核たる霊核にまで損傷が及ぶほどの致命傷は治せず、 また霊基の修復を行うにしてもマスターの高い素養が要求されるらしい。 それこそ、これまで出会ってきたマスターの中では梨花と大和しか該当者がいない程狭き門である様だ。 果たして彼女の令呪が命令通りの効果を発揮したかは定かではないが、最低でも戦闘が可能になるほどは回復していてほしいとも思う。 「あの……マスター……」 令呪について思考を裂いていた所に、シュヴィがおずおずと話しかけてくる。 様々な理由から沈んでいた先ほどまでとは違い、その表情は少し和らいでいた。 「あり…がと……あの子に、酷い事、しないでくれて……」 「…皮下や大和を刺す隠し玉にするつもりだったし、酷い事なら不治を使って脅しただろ」 「それでも…シュヴィが…あの子を……殺したって…ならない様にしてくれた…… マスターが、力を使ったのも……皮下を納得させるため、でしょ?」 「――残念だが違う。皮下や大和を刺すための駒にしようとした以上の考えはない」 リップが梨花を手駒にしようとしたのは、純粋な皮下への危機感ゆえだ。 これまでは何とか対等な同盟関係を保ててはいるが、これからもそうとは限らない。 何しろただでさえ勝ち目の乏しかった鬼のライダーが強化されるのだ。安穏とはしていられない。 いずれ来る皮下との決別の時のために、独自の伏兵を擁しておく必要があった。 でなければ…対等な関係を築いているつもりで、その実皮下の舗装したレールの上を走らされるような、そんな危機感があったのだ。 幸いなことに、駒として選んだ少女はアイドルなどよりもよほど使いでがありそうだ。 本人の戦闘力以外はサーヴァントの強さも肝の座り方も申し分ない。 不治の力と令呪により反抗も封じているため、幾らか安心して懐においておける。 仮に皮下や大和を討つ家庭で梨花が死亡したとしても、収支で言えばプラスに傾くと踏んでいた。 だから、詰み切った少女の辿る運命に介入したのは純粋な打算でしかない。 「うん…これは勝手に…シュヴィが…感謝してる、だけ……」 それでも。 それでもなお、血の通わぬはずの機械の少女は感謝の言葉を述べる。 どれだけリップ本人が、自分は少女の言葉に相応しい人間ではないと否定しても。 それでも彼女は否定しない。ゆるぎない信頼を胸に、リップに接する。 その言葉が届くたびに、その信頼を向けられるたびに。 リップの心は、狂おしくかき乱される。 ―――叶えたいなら夢だけは見るな。俺らは理想(そっち)には行けねぇんだ。 頭の中で、皮下からかけられた言葉が残響のように響く。 何人も殺しておいて、何百人も怪物の腹の中に誘っておいて。 血に塗れた掌で受け取るには、少女の信頼はどうしようもなく重かった。 「…感謝なんてするな。状況の推移によっては結局殺すことになる。 あいつらが、何も傷つけずに生きようとどれだけ願っても―――」 だから、彼にしては珍しく突き放すようなことを言う。 それを聞いたアーチャーの少女が悲しい顔をするのも承知の上で。 自分を悪足らしめんと言葉を吐く。 ポケットの中でこぶしを握り締め、奥歯をかみしめて、耐える様に歩を進める。 「俺の不治(ねがい)は、奴らを否定する」 そんな背中を見て、後ろに続くシュヴィは考える。 リクの。 愛しいあの人の。 あと何人殺して、何人死なせなきゃいけないと嘆いていた、あの時の気持ちが、 今ならより深く理解できるような気がした。 ◆ 「んだよそれ……」 頭を抱えていた。 秘密組織タンポポ、虹花の首領である皮下真は、頭を抱えていた。 理由は明白、リップが梨花から聞き出した情報のためだ。 「要は追い詰め過ぎたらさっさと風呂敷畳んで夜逃げするぞって話だろ?め、面倒臭ぇ…」 つい数時間前、自分が行った暴露によって、見方に依れば峰津院大和すら超える危険因子だった脱出派を孤立させることができた。 そこから更に脱出派の一人を捕虜とすることにさえ成功した。 此処までは紛れもなく順調だったと言えるだろう。 だが、順調すぎた。 それによって発生するリスクがある事を、失念していた。 「リップ……梨花ちゃんの話、何処まで本当だと思う?」 「全部が全部本当って訳じゃないだろうな。でも、出鱈目を言ってる風にも見えなかった。 もしそうなら、アーチャーの奴が気づくからな」 「となると…だ。尋問は俺に変わってもらう必要がありそうだな。三十分で吐かせる」 「お前にしては短絡的な発想だな。薬漬けにした後奴のセイバーが念話でコンタクトを取ってきたらどう誤魔化すつもりだ」 本当に、皮下にとっては頭の痛い話だった。 リスクの排除のためにはどうにかして梨花の口を割らせなければならないが、薬物や拷問などで割らせた場合最悪のババを引く恐れがある。 その結果を受けた脱出派が臆病風に吹かれて逃げに徹されればいよいよ脱出に踏み切られるかもしれないからだ。 故に最も手っ取り早い方法である薬物や拷問は使えない。 「はー…こうなると梨花ちゃんだけじゃなくてもう一枚、 あの子たちにかませるカードがあればいいんだけどな。 こいつを見捨てて脱出しないってカードが………」 ぼりぼりと頭を掻きながら呟くものの、それがない物ねだりであることは皮下も理解していた。 そうそうそんなカードが此方に用意できるとは思えなかったからだ。 となれば、正攻法で聞き出すほかないが… 「安心しろ、ちゃんと聞きだすさ。そこについては俺とお前の利害は一致してる」 「本当頼むぜ、取り合えず、283の対処については“向こうさん”とも相談しなくちゃなぁ……」 珍しく協力的な言葉を吐く同盟者だが、皮下はまるで安心できなかった。 一応梨花が情報を提供しているのは本当の様だが、明らかに小出しにしている。 前提として余り時間はかけたくはないのだ。 今こうしている間にも、脱出派は準備を整えているかもしれないのだから。 陣営規模での攻撃は控える必要があるかもしれないが、どの道件の宝具を持っているサーヴァントは早々に脱落してもらう必要がある。 その辺りも、今しがた自分のサーヴァントが同盟を結んだ陣営とすり合わせを行っておく必要があるかもしれない。 「頭の痛い話はそれだけじゃねーしさー」 皮下が頭を悩める事案はその一つだけではない。 先ほど、カイドウから念話で聞かされた一つの計画。 窮極の地獄界曼荼羅。 領域外のサーヴァントであるフォーリナーを意図的に暴走させ全てを薙ぎ払うのだという。 「マスター…多分、そのサーヴァント……」 「お?アーチャーちゃんもそのサーヴァント知ってんの?」 「あぁ、金毛に12歳ごろのガキのサーヴァントなら昼間に逢った所だ」 皮下から伝えられたフォーリナーの特徴は、シュヴィが昼間に会敵した少女と合致していた。 であれば、聖杯戦争を揺るがす可能性を持っている事には信ぴょう性がある。 もし彼女が暴走すれば確かにと途轍もない災禍(カタストロフ)が待っているだろう。 だが――、 「そいつを暴走させた後、肝心の制御方法についてはどうするつもりなのか全く見えてこないぞ…というか、本当に考えてるのか?」 「だよなー…いや、戦力はいくらあっても困らねーけどさ。 いざという時俺達まで纏めて吹き飛ばす核弾頭はお呼びじゃねーのよ」 制御は自分が受け持つと発案者らしいリンボは豪語したそうだが。 あの胡散臭い陰陽師にそんな大役任せていいとは思えなかった。 それこそ馬鹿に核弾頭のスイッチを持たせるようなものだ。 せめて皮下達も共同管理できる様な具体的な制御方法が無ければ論外も甚だしい。 戦力的にも困っている訳ではないので、そんな博打に興じる必要性はまるで感じられなかった。 「総督たちはでかい話に目がない上に腕っぷしに自信があるからいざとなりゃ何とでもなるって思ってんだろうけどなぁ。 ありゃ詐欺に引っかかるタイプだよ」 生半可なペテン師なら騙された後でも暴力に物を言わせて彼らは解決してしまう。 だが、これは聖杯戦争。あらゆる可能性の坩堝たる戦場だ。 実際にリンボの計画が成功すれば何が起きるか分からない。 「大和も283もリンボの奴も、どいつもこいつもゲーム盤ひっくり返す真似しやがって。 俺のNPCの魂食いとかやるけど、あいつらそう言うのじゃないじゃん。 決まれば勝ちってインチキばっかりじゃん。これからは大看板も動かせるなって浮かれて倒れがバカみたいじゃねーかよー……」 愚痴りながら座り込み、天を仰ぐ皮下。 そして、この上なく深い溜息を吐く。 情けないことこの上ない姿だが、リップもそろそろこの男の事を理解してきていた。 軽薄そうな態度の裏で、思案を巡らせている男であると。 「腐ってる場合か、さっさと知恵を出せ」 「あー…俺としては取り合えず大和の霊地を奪う事を優先したいと思う」 それは、当初の皮下の予定通りの計画だった。 受け取り方によっては今さっきまで悩んでいた問題の棚上げの様に感じられる。 「取り合えずリンボの奴の計画はもう少し深堀して聞き出して、 乗るかどうかは霊地奪還計画の功績で決めるよう伝える。283については梨花ちゃんの望み通り、一旦追跡程度にとどめるってところだな」 「……それならそれで構わんが、具体的にどう奪うつもりだ?」 簡単さ、と皮下は肩を竦めながら応えた。 「二手に分かれる。大和が現れた方の場所に総督に派手に暴れてもらって 奴がいない方の霊地を奪う予定だ」 大和がどれほど強かろうと体は一つ。 カードの量では此方が大きく上回っている。 そのアドバンテージを最大限発揮し、霊地を奪う計画だった。 単純だが、単純故に手数で劣る大和には抗しずらい計画だ。 あえて先手を大和に譲り、現れた地点を確定させたうえで叩く。 「取り合えず、向こうの陣営とのすり合わせをやらねーとな 色々、話さないといけないことはありそうだ」 すり合わせをしなければならない事はいくつかある。 作戦前に行っておかなければ様々な支障が発生するだろう。 その為、皮下は自身のライダーが同盟を組んだサーヴァントのマスターとコンタクトを取ることに決めた。 峰津院大和が東京タワーに現れる、一時間ほど前の出来事だった。 【二日目・未明/異空間・鬼ヶ島】 【皮下真@夜桜さんちの大作戦】 [状態]:疲労(小) [令呪]:残り二画 [装備]:? [道具]:? [所持金]:纏まった金額を所持(『葉桜』流通によっては更に利益を得ている可能性も有) [思考・状況] 基本方針:医者として動きつつ、あらゆる手段を講じて勝利する。 0:ひとまずライダーが同盟を結んだサーヴァントのマスターとコンタクトを取る。 1:大和から霊地を奪う、283プロの脱出を妨害する。両方やらなきゃいけないのが聖杯狙いの辛い所だな。 2:覚醒者に対する実験の準備を進める。 3:戦力を増やしつつ敵主従を減らす。 4:沙都子ちゃんとは仲良くしたいけど……あのサーヴァントはなー。怪しすぎだよなー。 5:峰津院財閥の対処もしておきたいけどよ……どうすっかなー? 一応、ICカードはあるけどこれもうダメだろ 6:梨花ちゃんのことは有効活用したい。…てか沙都子ちゃんと知り合いってマジ? 7:逃げたアイの捜索をさせる。とはいえ優先度は低め。 [備考] ※咲耶の行方不明報道と霧子の態度から、咲耶がマスターであったことを推測しています。 ※会場の各所に、協力者と彼等が用意した隠れ家を配備しています。掌握している設備としては皮下医院が最大です。 虹花の主要メンバーや葉桜の被験体のような足がつくとまずい人間はカイドウの鬼ヶ島の中に格納しているようです。 ※ハクジャから田中摩美々、七草にちかについての情報と所感を受け取りました。 ※峰津院財閥のICカード@デビルサバイバー2、風野灯織と八宮めぐるのスマートフォンを所持しています。 ※虹花@夜桜さんちの大作戦 のメンバーの「アオヌマ」は皮下医院付近を監視しています。「アカイ」は星野アイの調査で現世に出ました ※皮下医院の崩壊に伴い「チャチャ」が死亡しました。「アオヌマ」の行方は後続の書き手様にお任せします ※ドクロドームの角の落下により、皮下医院が崩壊しました。カイドウのせいです。あーあ 皮下「何やってんだお前ェっ!!!!!!!!!!!!」 ※複数の可能性の器の中途喪失とともに聖杯戦争が破綻する情報を得ました。 【リップ@アンデッドアンラック】 [状態]:健康、魔力消費(小) [令呪]:残り3画 [装備]:走刃脚、医療用メス数本、峰津院大和の名刺 [道具]:ヘルズクーポン(紙片) [所持金]:数万円 [思考・状況] 基本方針:聖杯の力で“あの日”をやり直す。 1:皮下と組むことに決定。ただしシュヴィに魂喰いをさせる気はない。 2:283プロを警戒。もし本当に聖杯戦争を破綻させかねない勢力なら皮下や大和と連携して殲滅に動く。 3:古手梨花を利用する。いざとなれば使いつぶす。 4:敵主従の排除。同盟などは状況を鑑みて判断。 5:地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)の量産について皮下の意見を伺う。 6:ガムテープの殺し屋達(グラス・チルドレン)は様子見。追撃が激しければ攻勢に出るが、今は他主従との潰し合いによる疲弊を待ちたい。 [備考] ※『ヘルズ・クーポン@忍者と極道』の製造方法を知りましたが、物資の都合から大量生産や完璧な再現は難しいと判断しました。 また『ガムテープの殺し屋達(グラス・チルドレン)』が一定の規模を持った集団であり、ヘルズ・クーポンの確保において同様の状況に置かれていることを推測しました。 ※ロールは非合法の薬物を売る元医者となっています。医者時代は“記憶”として知覚しています。皮下医院も何度か訪れていたことになっていますが、皮下真とは殆ど交流していないようです。 【アーチャー(シュヴィ・ドーラ)@ノーゲーム・ノーライフ】 [状態]:健康 [装備]:機凱種としての武装 [道具]:なし [所持金]:なし [思考・状況] 基本方針:叶うなら、もう一度リクに会いたい。 0:…マスター。シュヴィが、守るからね。 1:マスター(リップ)に従う。いざとなったら戦う。 2:マスターが心配。殺しはしたくないけと、彼が裏で暗躍していることにも薄々気づいている。 3:フォーリナー(アビゲイル)への恐怖。 4:皮下真とそのサーヴァント(カイドウ)達に警戒。 5:峰津院大和とそのサーヴァント(ベルゼバブ)を警戒。特に、大和の方が危険かも知れない 6:セイバー(宮本武蔵)を逃してしまったことに負い目。 ※聖杯へのアクセスは現在干渉不可能となっています。 ※梨花から奪った令呪一画分の魔力により、修復機能の向上させ損傷を治癒しました。 時系列順 Back チルドレンレコード Next 向月譚・弥終 投下順 Back 輝村照:イン・ザ・ウッズ Next 僕の戦争(前編) ←Back Character name Next→ 102 日蝕/Nyx 古手梨花 127 Pleasure of the Certainty Witch セイバー(宮本武蔵) 117 prismatic Fate 102 日蝕/Nyx 皮下真 127 Pleasure of the Certainty Witch 102 日蝕/Nyx リップ 127 Pleasure of the Certainty Witch アーチャー(シュヴィ・ドーラ)