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前:嗚呼、我等地球防衛軍(第41話〜第45話) 次:嗚呼、我等地球防衛軍(第51話〜第55話) 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第46話 ボラー連邦とガミラス帝国が戦端を開こうとしていた頃、デザリアム帝国は地球に関する情報の収集を必死に行っていた。 その結果、地球がトンでもない国であることに気付かされていた。 「地球人類は狂戦士の集団なのかね?」 「……否定できません」 スカルダートの冗談半分(半分は本気)の言葉を、サーダは否定できなかった。 何しろ地球人類は人口の8割を失っても抗戦し、波動エンジン関連技術を得た途端にガミラス相手に逆転勝利(相手の本星壊滅)。 さらに最近ではガトランティス帝国の移動首都(白色彗星)を1隻の戦艦で葬り、残った艦隊も無傷で殲滅したというのだ。 「確かに、あの適合率と生命力とバイタリティは惜しいが……」 さすがの聖総統閣下も躊躇する。 機械化によって殆ど失われた筈の本能が告げるのだ。「彼らに手を出すべきではない」と。 「しかし聖総統、彼らを放置しておけば後に禍根になるかと」 「ふむ」 今は自国のほうが技術レベルでは上回っている。しかしそれが続くとは断言できない。 何しろデザリアム人は種として衰えつつある。一方の地球人は信じがたいほどのバイタリティで星間国家への道を突っ走っている。 逆転されないと言い切るほど彼は楽観的ではなかった。 「ボラー連邦は?」 「支配している星の数に見合った生産力を持っています。ガトランティスに大敗したにも関わらず、戦力を回復させています。 ですが内政面では問題が多いようです。付け込む隙はあるかと」 「ふふふ。『魔女』のお前らしいな。地球やボラーを正面から攻めるのではなく、搦め手でいくと?」 「はい。策はあります。ただしさらに情報の収集が必要ですが」 「判っている。存分にやれ。必要なものがあれば参謀本部に私の名前を出して言えば良い」 デザリアムに対抗するべく地球防衛軍も軍拡を急いでいた。 イスカンダルから得た技術や資源に加え、デザリアム帝国軍やガミラス軍の残骸は連邦にとっても色々と有益だった。 強固な偏向シールドや装甲版などを回収したことで、従来の宇宙戦艦の砲撃力が非力であることが明らかに出来た。 議長と藤堂は防衛会議を動かして臨時の防衛予算を調達し、防衛艦隊の大改装計画を進めた。 「完成した戦略攻撃用潜宙艦は訓練航海を。ただし新規建造は遅らせて、その分の資材を戦艦群の改装に当てるのが良いだろう」 「了解しました」 「それと、藤堂長官、ヤマトはイカロスで改装させるのが良いかと。万が一のときも考えると……」 「ふむ。確かに」 議長の意見に藤堂は頷く。何かあったときの保険、それがヤマトの意義だった。 「ムサシはタイタン基地のドックで改造を急げ。本土防衛の穴はアイルオブスカイと実験艦隊で埋めれる」 かくして防衛艦隊の艦船は順次ドックに入り、必要な工事を受けていった。 特に主力戦艦の初期生産型は新型砲への換装や機関部の大改造(もはや新造)を受けることになった。 一部の艦はヤマトと同様に46センチショックカノンを搭載(連装3基6門)すると言う魔改造が行われた。 これによって敵の巨大戦艦の装甲を確実に撃ちぬける砲撃力や連続ワープにも耐えうる航行能力が手に入る。 「コスモタイガー�にかわる新型機の配備も急ぐ必要がある。制空権の有無こそ戦いの趨勢を決めるからな」 ガトランティスやイスカンダルの技術を多く得ていたこと、ボラーという仮想敵がいたことにより、航空機の開発は急ピッチで 進められていた。 これによってコスモタイガー�にかわる新型機、原作には無かった『コスモファントム』が配備されることになった。 コスモパンサーほどではないが、高い戦闘能力と汎用性、そしてステルス性を兼ね備えた機体だ。 これによって防衛軍空母部隊の攻撃力は大幅に向上することになる。尤も空母については艦の分類が変更されることになった。 宇宙空母と呼ばれていた艦を攻撃型空母と分類することにしたのだ。 「いずれ配備される本格的な宇宙空母(正規空母)と混同されるのは拙いからな」 議長はそう理由を述べた。 「あとは敵巨大要塞の攻略だが、ハイパー放射ミサイルの技術をボラーから得るのが良いだろう。 引き換えに我々が得たガトランティスの技術や情報を提供する。まぁ出すものはこちらのほうが多くなるだろうが」 このように新兵器開発を進める一方で、人的資源の保全も急がれた。 デザリアム帝国のサイボーグ技術は医療において非常に価値があった。このためこの手の技術開発が急がれた。 また被弾した場合、従来の戦闘服では生存性が低いことも問題視された。 「これ以上、人が減ったら堪ったものじゃない」 防衛軍高官の意見は、後方を担当する者にとって真理だった。 一部の人間はあまり装備をすると迅速な戦闘行動に支障が出るということで反対したのだが、最低でも被弾した際に 発生するかも知れない毒ガスなどから身を守るためとして、戦闘時にはヘルメットだけでも着用することが決められた。 さらに空間騎兵隊用にパワードスーツの開発も進められた。 「今の装備じゃ『死んで来い』と言ってるも同然だろう」 「でもこれって元ネタはボト○ズじゃ……」 「気にするな。使えるんだったら問題ない。モビ○スーツは大きすぎて使えないし、バル○リーは整備が大変になる」 転生者たちはそう話し合いつつ(一部の人間は血涙を流したが)、新兵器開発を急いだ。 この新兵器開発と並行して、超能力の実験も進められた。 尤もあまり露骨な人体実験はできないので、細々としたものだったが、それでも将来的には防衛軍の一翼を担う分野で あると思われていた。 「沖田艦長、土方艦長、山南艦長といった歴戦指揮官。さらに戦死していないヤマトクルー。 これで新装備と超能力者があれば、ボラーともある程度張り合えるだろう……これだけ強化しても、私の華やかな出番はないのか」 「諦めてください。観艦式くらいなら出来ますよ」 秘書の突っ込みに議長は沈黙した。 「………世知辛いな」 「議長は後方で必要にされる人ですから。何せ防衛軍は前線も後方も人がいないので」 「……畜生~!」 議長の苦闘は続く。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第47話 一言で言えばガルマン・ガミラス連合軍は初戦から一方的な敗退を余儀なくされた。 6隻のスターレン級に加えて、自軍の5倍以上の兵力を叩きつけられては、いくら精強で知るガミラス軍も一溜まりもなかったのだ。 ガルマン民族の抵抗拠点は次々に潰滅し、脱出途中だった大勢のガルマン人は冥府に追いやられた。 「ボラーに逆らう者の末路だ!」 機動要塞を預けられたボラー連邦軍参謀総長であるゴルサコフは、非戦闘員に対しても容赦なかった。 多数の難民が乗る輸送船団に向けてマイクロブラックホール砲を撃ちこみ、周辺の少数の護衛部隊諸共根こそぎ殲滅。 さらに惑星の拠点にはワープミサイルとプロトンミサイルを撃ち込んで粉砕していった。 「本星(仮)の本隊が銀河系に展開していれば……」 ガミラス艦隊司令官は悔しがったが、どうしようもない。 元々、銀河系に展開しているガミラス軍はあくまでも安全に調査を行うための部隊なのだ。ボラーと真っ向から勝負を するのは分が悪すぎた。 機動要塞とスターレン級戦艦6隻を中心とした大艦隊は物量を生かしてガルマン・ガミラス連合軍を押し潰すかのように 襲い掛かった。 「一旦、引け! 銀河系外縁にまで撤退し、本隊からの援軍を待つぞ!!」 こうしてガルマン・ガミラス連合軍は後退していく。 戦艦スターレンに乗るボラー連邦軍前衛艦隊司令官バルコムは、撤退していく連合軍を見て嘲笑すると追撃を命じる。 「追うのだ! 奴らを逃してはならない!!」 「了解しました」 こうしてボラー連邦艦隊による猛烈な追撃戦が始まった。 ボラー軍は量での優越に加え、新規に開発した航空機を投入して各地で優位に立った。尤も新型機の姿を見たら議長が吹き出した のは間違いなかった。何しろその新型機はディンギル軍のそれに酷似していたからだ。 可変翼の単発戦闘機はガミラス軍戦闘機と互角に戦い、水雷艇を小型化したような攻撃機は俊敏な動きで連合軍艦艇にミサイルを 見舞っていく。 これらは、本来なら喜ぶ光景なのだが、バルコムは苦い顔だった。 「多少格好はつかないが、仕方あるまい」 ボラー軍はディンギルに勝った。だが受けた損害も少なくなかった。故に彼らはディンギルの優れた点を取り入れたのだ。 強化された圧倒的航空戦力、さらにスターレン級の新型ボラー砲が連合軍に振り下ろされていった。 しかしガルマン人も意地を見せる。 「反撃しろ!」 ガルマン民族の抵抗組織の幹部であったダゴン(連合軍結成に伴い将軍になっている)は、驚異的粘りで戦線の完全崩壊を防ぎつつ 起死回生の切り札として辺境の抵抗拠点で開発された次元潜航艇がボラーの側面を突く。 突如として行われた亜空間からの攻撃にボラー艦隊は大混乱に陥った。 「どんな手品を使ったというのだ?」 バルコムは歯噛みするが、対抗手段がない以上、どうしようもない。 だがそれでもスターレン級は撃沈されなかった。技術者達が太鼓判が押した防御力が発揮された瞬間だった。 従来の戦艦なら最低でも大破、下手をすれば轟沈していてもおかしくない攻撃を受けても尚、戦闘能力を継続する姿はボラー軍の 意地を見せ付けるものだった。 「素晴らしい、これがスターレン級か。ふふふ、この艦が量産された暁にはガトランティスや地球など物の数ではないな」 一方の連合軍にとっても。このスターレン級の打たれ強さは驚きだった。 「何と言う防御力だ」 フラーケンは驚嘆するが、すぐに思考を切り替える。 「奴らの後方を徹底的に撹乱し、味方を援護する」 後にガルマンウルフと称されるようになる活躍によってボラー連邦軍前衛艦隊は少なからざる打撃を被り、進撃速度を 落さざるを得なくなる。 「小癪なガルマン人共め!」 報告を受けたゴルサコフは忌々しげに、はき棄てるように言った。 だがそこには粛清に対する恐怖も見え隠れしていた。ディンギルを潰して多少は面目を取り戻したとはいえ、所詮相手は 一恒星系の国家に過ぎない。ボラーからすれば格下も良いところなのだ。 ここで再び躓けばボラー連邦軍は三流の烙印を押される。そうなれば軍制服組のトップである彼は粛清対象になる。 「バルコムを急かせろ! いや機動要塞も前に出せ!! 力押しだ!!」 一方、デスラーは本星(仮)からガミラス艦隊主力を引き連れて出撃し、銀河系に急行していた。 「奴らの鼻っ面を叩き折り、味方を救出する」 デスラーはボラー軍の大軍や戦いぶりを見て、士気を喪失するどころか逆に戦意を高めた。 要塞攻略のために威力を高めた新型デスラー砲の試作品(ハイパーデスラー砲のプロトタイプ)を搭載したデスラー艦、ボラーの 物と同等の威力を持つプロトンミサイルなどを装備したガミラス艦隊が銀河系に来襲しようとしていた。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第47.5話 「タケミカヅチに続いて、北米州の戦艦アリゾナ、アイオワも配備された。主力戦艦が改装に回されている状況では有難い」 執務室で報告を受けた議長は、久しぶりに機嫌がよさそうな顔で頷いていた。 「それに、これらの艦のデータがあれば、次世代の戦艦建造にも弾みが付くな」 ボラー連邦がガルマン・ガミラス連合軍を押し潰している頃、地球防衛軍は次世代の戦闘艦艇の開発に余念が無かった。 ガミラスとは一時的に停戦したが再戦する可能性はゼロではないし、ガトランティス帝国は侵攻部隊主力と首脳部が壊滅したとは 言ってもアンドロメダ星雲の本国は健在。今は友好国だがボラーだって何時、敵に回るか判ったものではない。 「平和は次の戦争への準備期間に過ぎないのです」 防衛会議の席で議長が言った台詞は真理だった。 連邦政府は防衛予算の際限のない増額には歯止めを掛けつつも、外患に対応するために可能な限り予算を出していた。 加えて『原作』よりも消耗が少ないことも、防衛軍に余裕を持たせており、十分な時間を掛けた設計や試験運用を可能にしている。 「これで新型戦艦はダンボールどころか、風船みたいに爆発しないで済みそうだ」 集束モードと拡散モードを使い分けられる『拡大』波動砲を搭載した新型戦艦。 完結編ではディンギルの奇襲戦法によって呆気なく殲滅され、一部の転生者にとってはトラウマ物のこの艦は、防衛軍の期待の星だ。 何しろ拡散波動砲搭載艦と集束型波動砲搭載艦を両方配備し続けていくのは面倒だったのだ。 既存の戦艦の改装は、この戦艦で使われる各種装備のテストという一面もある。 一方で巡洋艦についてはひと悶着起きていた。 イスカンダルへの航海から「既存の巡洋艦以下の艦艇は遠洋航海には適していないのでは?」と言う意見が台頭していた。 波動エンジンによって長大な航続距離は確保できたが、長距離航海は乗組員への負担は大きいのだ。 「さてさて、どうするべきか……」 大型艦のほうが長距離航海には適しているし、今後、防衛軍では合理化のために戦闘艦の自動化、無人化も進められる予定だ。 実際、自動戦艦と自動駆逐艦の整備が進んでおり、実験部隊である第01任務部隊では試験運用が開始されつつある。 さらに将来、特に復活編あたりの年代になり、コスモパルサークラスの艦載機が開発されると、艦載機が駆逐艦の仕事を代わることができるようになる。 それを考えると、わざわざ有人の小型艦を艦隊用(それも外洋向け)に大々的に整備するのは効率が悪いとも言えた。 「巡洋戦艦、いや大型巡洋艦のような艦を作るか?」 現実だったら中途半端と言って却下されるだろう。 だが議長はそれなりに有効なのではないかと考えた。 しかしあまりに高価な艦を揃える事に夢中になると、今度は数が確保できないという恐れがある。 「……自国勢力圏外を長期間行動する可能性がある部隊には、2万トン級以上の巡洋艦を配備するか……。 戦艦と大型巡洋艦、空母の周りを自動化した駆逐艦が固めれば良いだろう。 いや、自動駆逐艦から構成される水雷戦隊を指揮できれば、より活用できるかもしれん。小艦隊旗艦にも使えるだろうし。 自国領土警備等の任務には数が揃えられる従来のような1万トン以下の艦が良いか?」 領土や通商路が拡大している状況では、数の確保も重要だった。 故に議長はハイローミックスでいくことを考えた。 「少なくとも、完結編の駆逐艦は要らないな。艦体が大きい割には武装が貧弱すぎる。 確かに劇中だと活躍したけど……正直、あれだけの艦体があるんだったら、もう少し火力を充実させて弾幕を張ることくらいできないと困る。 自動駆逐艦なら居住スペースがないから、もっと重武装化できるし無茶な機動もできるし……益々要らないな、あの船」 こうして議長は参謀本部や防衛軍司令部、防衛会議とも協議して次世代の巡洋艦の開発を推し進めることになる。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第48話 デスラー率いるガミラス艦隊は連続ワープで一気に距離を稼ぎ、ボラー軍には信じられないほどの短期間で銀河系にたどり着いた。 デスラーは乗艦のデスラー艦でボラー軍の詳細な情報を知らされると、スターレン級がヤマトを意識して作られた戦艦であると即座に断じた。 「ボラーはヤマトの力を恐れたのだろう。だが、所詮は物真似だ。恐れる必要はない」 「それでは……」 「そうだ。タラン。奴らを叩きのめす」 かくしてデスラー自らが指揮するガミラス艦隊(後の親衛艦隊)はボラー軍との決戦を求めて進撃した。 一方のボラーもまたガミラス軍の増援が来たことを察知して、ガルマン軍と纏めて撃滅しようと目論み、銀河系東部に向けて進んだ。 「数で押し潰す!」 ゴルサコフはべムラーゼの支持を取り付けてボラー各地から更なる増援を呼び寄せた。 非常に太っ腹に見えるべムラーゼの決定だったが、その決定が下されたのはそれはガルマンの軍事技術、次元潜航艇の獲得をボラーの 政府首脳部が望んでいたからだ。 「あれがあれば、開戦初頭に地球を吹き飛ばすことも出来るだろう。そうなれば地球など一捻りだ」 「それだけでない。各地の反政府組織の掃討にも役立つ」 「アンドロメダ星雲のガトランティスと戦うのにもな」 狸の皮算用と言っても良いのだが、彼らの中ではボラー軍の勝利は既定事項だった。 ガルマン・ガミラス連合軍が増強されたと言っても、兵力差はまだ5対1と考えられていた。 これだけの兵力で負けると考える人間はいない。 「銀河の神がシャルバートなどの過去の遺物ではなく、このべムラーゼであることを思い知るが良い」 べムラーゼはこの決戦で一気にガルマン・ガミラス連合軍を撃滅し、さらに小うるさいシャルバート教信者の抗戦意欲を撃ち砕こう と考えていた。 こうして決戦の幕が上がる。 デスラーはまず機動要塞と宇宙艦隊を引き離そうとした。 何しろただでさえ宇宙艦隊が手強いのに、機動要塞まで相手にしていたら手が足らない。 「奴らをハロにおびき寄せる」 デスラーはボラー連邦軍艦隊と会敵すると、巧みに敗走しているように見せかけて彼らを『ハロ』と呼ばれる領域に誘導していく。 このハロというのは銀河系中心核と渦状腕の銀河円盤の外側に存在するこの領域のことであり、ここには暗黒物質やブラックホールによる 航路の難所が数多く存在した。 デスラーはガルマン人や、これまでの調査部隊の情報を基にして、この難所を決戦の場に選んだのだ。 一方、ボラー軍はこのデスラーの意図を認識できなかった。 「馬鹿な連中だ。わざわざ、あのような場所に逃げ込むとは」 バルコムは嘲笑しつつ、即座に追撃を命じる。 「あそこを奴らの墓場にしてやるのだ!」 こうしてスターレン級6隻を先頭にした艦隊は、次々にハロに突入していく。 だが暗黒物質によるレーダーの索敵能力の低下、加えて多数の障害物(ブラックホール含む)によってボラー軍は思うように 進撃できなかった。 逆にガミラス軍はその高い練度を存分に活用して、あちこちでゲリラ攻撃を繰り広げてジワジワとボラー軍に出血を強いていく。 「多少の犠牲は構わん、偵察機を出して奴らを見つけ出すのだ!」 バルコムはそう言って多数の偵察機(一部はディンギルの水雷艇もどき)を放ち、必死にガミラス艦隊を探した。 その結果、彼らはブラックホール周辺に展開していたガルマン・ガミラス連合艦隊を見つけることに成功する。 「急行するぞ!」 「しかし、バルコム司令、味方で急行できる艦はそう多くはありません」 「構うことはない。数だけでも3倍以上。包囲していけば奴らをブラックホールに押し込める。それに我らにはこのスターレン級戦艦がある」 急行してきたボラー艦隊を見て、デスラーはほくそ笑んだ。 「盛った獣のような連中だ。地球人ならもう少し芸があるのだが……」 「油断は大敵かと」 「判っているよ、タラン。窮鼠猫をかむとも言う。それでは行くとしよう」 こうしてガルマン・ガミラス艦隊はブラックホールを背にして砲撃を開始した。 「小癪な、一気に叩き潰せ!」 スターレン級の新型ボラー砲の一斉発射から始まったこの大攻勢をデスラーは見事に防ぎきった。 新型デスラー砲は一撃でボラーの戦艦をダース単位で吹き飛ばし、新型戦闘機で構成される航空隊はボラー軍戦闘機と互角以上に戦った。 そしてこの戦いではガルマン艦隊の活躍も目立った。 「我らの子孫であり、救世主であるデスラー総統閣下に無様な真似は見せられないぞ!」 原作では東部方面軍司令を勤めていたガイデル提督はそう言って部下を叱咤激励し勇戦した。 唯一、ヤマトに勝利できた指揮官の名に相応しく、彼の部隊は獅子奮迅の活躍ぶりを見せ、数倍ものボラー軍を食い止め、その進撃を 遅らせた。 そしてこれに業を煮やしたバルコムはさらなる攻勢を決意する。何しろこれだけの兵力を与えられて勝利できなかったとなれば自分が 粛清されかねないのだ。 「怯むな、敵は少数だ!」 だがこの直後、ガルマン・ガミラス艦隊がさらに後退を始める。それも整然としてだ。 「何だと?」 「閣下、奴らはブラックホールを重力カタパルトにして逃げ出すつもりなのでは?」 「ふっ、何を今更。奴らが腹を見せたら逆に葬ってくれる!」 しかしガルマン・ガミラス艦隊を追撃しようとした頃、ブラックホールに巻き込まれようとうする惑星や小惑星が現れる。 「ええい邪魔な!」 だがその直後、バルコムは凍りつく。 辛うじて生きていたレーダーがトンでもないものを捉えたからだ。 「あれは……プロトンミサイルだと?! 拙い、全艦分散しろ!!」 そう、それは巧みに偽装され、その存在を隠匿されてきたガミラス製のプロトンミサイルだった。 通常なら見つけることも出来たのだが、暗黒物質による索敵能力の低下、加えて戦力を前方の敵艦隊に向けすぎたことで発見が 遅れたのだ。そしてその遅れは致命的だった。 バルコムの指示を受けてボラー艦隊は混乱する。何しろ攻撃を開始した直後に、いきなり分散を命じられたのだ。 この混乱するボラー艦隊の動きを見たデスラーは勝利を確信した。 「作戦は最終段階に移る。気を抜かないように」 そしてガルマン・ガミラス艦隊の将兵が見守る中、ガミラスのプロトンミサイルがボラー艦隊の近くを通りかかった惑星や 小惑星に次々に命中した。 その結果、ボラー艦隊は大爆発と衝撃波に襲われることになった。 「た、体勢を立て直せ!」 だがそんな暇をデスラーは与えない。 全艦を反転させると即座にデスラー砲によって混乱するボラー軍の陣形中心に穴を開けた。 「突破する。全艦、続け!!」 ボラー軍の中央を突破したガルマン・ガミラス連合艦隊は、ボラー軍の背面に展開。逆にボラー軍をブラックホールに追いやっていく。 「馬鹿な、このスターレン級が、この私がこんなところで!?」 バルコムが絶叫した直後、機関部を撃ちぬかれた戦艦スターレンは、ブラックホールに飲み込まれていった。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第49話 バルコムがブラックホールに飲み込まれて死亡するという悲惨な最期を遂げた後、残されていたスターレン級5隻諸共、ボラー艦隊は 宇宙の藻屑となった。さらにデスラーは救援に駆けつけてきたり、ハロでうろうろしていた残存部隊を片っ端から殲滅していった。 「これであとは、あの機動要塞のみだ」 「しかし総統、奴らの手足となる艦隊は撃滅しました。これ以上、長居は無用です」 タランはデスラーに早期の撤退を促した。 「ふむ。我々の目的は味方の救援。足の遅い機動要塞は放置しておけば良いと?」 「その通りです。一人でも多くのガルマン人を救出した後に、仮本星、いえ第二帝星に一旦引き上げるべきかと」 タランの言うとおり、目的はほぼ達せられた。 だがデスラーはここで引く気はさらさら無かった。 「いや、ここであの機動要塞も攻略する。あれは奴らにとっても切り札だ。ここであれを沈めておけば、後が楽になる」 デスラーが次の獲物としている機動要塞で指揮を取っていたゴルサコフは、信じられない敗戦の報告を聞いて狼狽していた。 「ぜ、全滅、いや前衛艦隊が文字通り消滅したと?」 「はい。バルコム司令は戦死し、スターレン級6隻も全て撃沈されたとのことです」 「そんな馬鹿な……」 だがゴルサコフは何とか頭を切り替える。 (拙い。これでは、私が全ての責任を負わされてしまう……こうなれば、何としてでも奴らを撃滅するしかない) ゴルサコフは何とか残っている艦で護衛艦隊を編成すると即座に追撃に乗り出した。 だが機動要塞を中心とした部隊は、ハロ領域手前でガミラス軍機の波状攻撃に遭う。 デスラー戦法によって送り込まれてくる無数の攻撃隊に、ボラーは手を焼いた。 「蛆虫どもめ! 追い払え!!」 だが当初動員した艦の大半がハロの戦いで潰えたため、護衛艦隊による対空砲火は疎らだった。 戦闘機も出たが、ガミラス機を追い払うことはできない。そんな中、次元潜航艇が現れ、護衛部隊を攻撃していく。 「第5駆逐隊全滅!」 「第2戦隊から救援要請が入っています!」 相次ぐ凶報。機動要塞こそ目立った被害はなかったが、このままでは護衛部隊が機能不全に陥る可能性が高かった。 味方の不甲斐無さにゴルシトフは怒ると同時に焦った。何しろこのままでは作戦の失敗は確実なのだ。 粛清の2文字が頭の中にチラつく。 (拙い……この要塞は落ちないだろうが、艦隊が全滅するようなことがあればボラー軍は大打撃を受ける) そんな彼の前にガルマン・ガミラス艦隊が現れる。それは彼にとって絶好の好機に見えた。 「マイクロブラックホール砲で発射用意!」 このとき、機動要塞の正面に展開した艦隊を指揮していたのはガルマン軍でシャルバート教徒の纏め役であるハイゲル将軍だった。 「奴らをかき乱すぞ。ブラックホール砲には気をつけろ」 「了解」 兵士の返事を聞くとハイゲルは頷き黙り込んだ。 (ふっ、信心深かったシャルバート信者も減ってしまった。最近では新参者であるガミラス総統デスラーへの信仰に鞍替えする者もいる。 だが私はめげない。宇宙の神はべムラーゼでも、デスラーでもないのだ) 原作では全面戦争中に宗教上の理由でクーデターを起こそうとした人物だったが、今はデスラーの体制を支持していた。 何しろこれまでシャルバート教を散々に弾圧していたボラーを叩くほうが優先だった。 ハイゲル率いるガルマン・ガミラス連合艦隊はボラー連邦艦隊を引っ掻き回した。 加えて機動要塞がブラックホール砲を搭載していること、これまでの戦いから尋常ではない防御力を持っていたことから要塞への 対応も十分に行われていた。 これにゴルサコフは苛立つ。 「ええい、素早い連中だ。マイクロブラックホール砲を連続発射、命中しなくても良い。奴らの足を止めるんだ!」 機動要塞が次々にブラックホール砲を撃ちこみ、周辺に小型のブラックホールを形成する。 この重力場に囚われて連合艦隊は足を止めてしまう。 「今だ、全部隊前進! トドメを刺せ!」 ゴルサコフが護衛部隊を前進させ、ハイデル部隊を撃滅しようとした。 だがこれこそがデスラーが待った好機だった。 「瞬間物質移送装置起動。艦長、戦果を期待しているぞ」 『お任せください。総統!』 モニター越しに総統直々の言葉を聞いた重爆撃機のパイロット(戦闘空母艦長)はそう言って敬礼する。 「では、作戦開始」 ハロに漂う暗黒物質で隠れていたデスラーは、デスラー艦の前に待機させていたドリルミサイルを装備した爆撃機(七色星団で ヤマトにドリルミサイルを撃ちこんだ機体)を機動要塞の正面に送り込んだ。 それは奇しくも、ヤマトを葬るためにドメルが採用した作戦と同じだった。 「何?!」 慌てたのはゴルサコフだ。 「応戦しろ!」 「ダメです、間に合いません!!」 突然、至近距離に現れた重爆撃機に機動要塞は対応できなかった。 そしてその隙を突くように、重爆撃機は搭載していたドリルミサイルをマイクロブラックホール砲の発射口に打ち込んだ。 『我、奇襲に成功せり!』 パイロットは鼻高々にそう報告しつつ、戦場を離脱していく。 そしてボラーご自慢のマイクロブラックホール砲が封じられたことを見たデスラーは、隠れていた艦隊で全面攻勢に出る。 「いまだ、全軍進撃開始!!」 暗黒物質から出現した連合艦隊は一気にボラー艦隊に襲い掛かった。 ゴルサコフは何とか体勢を立て直そうとするが、マイクロブラックホール砲を封じられた上、奇襲された護衛部隊は大混乱で どうすることも出来なかった。 「早くあの邪魔な物を撤去しろ!」 そう叱咤激励するしか彼にはできなかった。 だがそれも実を結ぶことは無く、ドリルミサイルは爆発して、発射口に大穴が生じる。それは鉄壁を誇った機動要塞の防御に 大穴が開いた瞬間でもあった。 「ま、拙い。応急修理を……」 そして、それを見逃すデスラーではない。 「デスラー砲発射!」 デスラー艦から放たれたデスラー砲は寸分違わず目標に命中した。 波動砲にさえ耐え切る装甲を持つ機動要塞も、内部に高エネルギー砲を撃ちこまれては堪らなかった。ブラックホールを生み出す ためのエンジンが、要塞を支えるエネルギーが、各所に置かれていた弾薬が次々に誘爆を起こしていく。 「そ、総員退避!!」 ゴルサコフは逃げ出そうとするが、それは適わず、機動要塞の爆発の中に消えた。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第50話 ボラー連邦建国以来最悪の大敗北を喫したとの情報はボラー連邦を揺るがした。 機動要塞、スターレン級戦艦6隻、それに各地から引き抜いた宇宙艦隊が悉く失われたのだ。 それは軍制服組の責任追及だけでは終らない重大な問題であり、ボラー連邦のトップであるべムラーゼも苦境に立たされた。 「ボラー連邦が保有していた宇宙艦隊は大打撃を受け、自由に動ける部隊は殆ど無くなった」 「今回の敗北は戦術的な問題に留まらない。戦略的、政治的な大問題だ。首相の責任は重大だ!」 「この度の敗戦は首相の指導力不足、いや決断の誤りによるものが大きい。べムラーゼ首相は指導者の器ではないのでは?」 「首相の解任を要求する!」 べムラーゼの政敵達は次々に彼の責任を追及し、首相の解任を要求した。 勿論、べムラーゼは潔く失脚するつもりはなく、あらゆる手段を用いて対抗し、ボラー上層部は政争に明け暮れることになる。 軍でも主流派であった人間達が悉く戦死するか今回の敗戦の責任を追及されて失脚していった。そして主流派に代わって軍の 要職に就いた者たちは軍の再建に頭を抱えた。 「スターレン級を量産するより、まずは安価な従来艦を量産して戦力を回復させなければならない」 「まずは数だ。正直、数がないと話にならない」 「場合によっては地球防衛軍がやっているような無人艦を導入するべきだろう」 かくしてボラー連邦軍は各地の造船所をフル稼働させて艦艇の建造に勤しんだ。 デスラーも補給の問題から一旦兵を引いたこともあり、ボラー軍は再建の猶予が出来たかのように見えた。 だがその猶予もデスラーの気分次第でどうなるかわからない。 故にボラー軍は手っ取り早く艦艇を補充する方法として地球から艦船を購入することを考えていた。実際、ボラー軍は政府に 働きかけてその旨を地球連邦政府に打診した。 この打診を受けた連邦政府は勿論、困惑した。 「今の防衛軍に譲れる艦艇はありません」 「それにショックカノンを輸出するとなれば、地球の優位を崩しかねません」 藤堂と議長はそう言って反対した。 だが議長としてはボラーから色々と技術を得たいと思っていた。このためボラーに借りを作るべく防衛軍の艦ではなく、サルベージした 旧ガトランティス軍の艦を提供することを提案した。 「大戦艦や駆逐艦、それに大型空母を提供しましょう。資源としては惜しいですが、使いようによっては十分な対価が期待できます」 この議長の意見は防衛会議や大統領府でも審議された末、承認された。 波動砲が搭載されていない大戦艦、もう搭載できる艦載機がない大型空母など持て余すだけだった。 解体して資源にするよりはボラーに恩を売るのに使ったほうが良いかもしれないと政府は判断したのだ。勿論、議長はこれらの艦艇の 提供と引き換えに即座にボラーに対価を求めさせ、ハイパー放射ミサイルなどの各種技術を入手させた。 「全く、相手の弱みに付け込むと後が怖いですよ?」 連邦ビルの一角で行われた転生者たちの密談で、外交担当者が議長に苦言を呈した。 これに議長は堂々と反論する。 「だが今しておかないと、技術の提供なんて無理だろう。それに我々も貴重な資源を提供したんだ。文句を言われる謂れはない」 「そうですね。確かに資源を手放したのは痛いですが、引き換えにディンギル系統の技術を得られるでしょう。 要塞や大型戦艦攻略のための新型ミサイルの開発に弾みが付きます」 財務次官は満足げだった。 「それに例のアイルオブスカイで開発中の新装備があれば……防衛軍の戦闘力は大幅に強化できる、そうでしょう?」 「ああ。火炎直撃砲を参考にして開発が進められている新型の『波動直撃砲』。あれがあればディンギルのように小ワープして 逃げられることもない」 この言葉に誰もがニヤリと笑う。 「波動砲にエネルギーをチャージした状態の自動戦艦を相手の背後や側面に送り込むのも良いが、そのたびに戦艦1隻を危険にさらす のも大変だからな……まぁ必要ならするが」 「確かに、デザリアムは恐ろしい相手ですからね」 「それとガミラスもだ。連邦政府や防衛会議がすんなり艦艇の売却を決めたのはボラーを使ってガミラスを弱体化させたいからだろう」 これに外交担当者が頷く。 「ガミラスは地球人類にとって仇敵ですからね。彼らが銀河に来て暴れているとなれば何かしら手を打ちたいと思うでしょう」 この世界の人類にとって、ガミラスは不倶戴天の敵であることは変わっていなかった。 「それにしても暴れすぎだ。新型戦艦どころか機動要塞まで討ち取るのだから。『�』と『永遠に』を同時進行なんて冗談じゃないぞ。 まぁ議会も慌てて防衛艦隊整備計画の前倒しをしてくれるだろうから、少しは対応できそうだが」 地球連邦政府はボラーに旧ガトランティス軍艦艇を譲る傍ら、地球防衛艦隊の整備をより進めることを決定した。 デザリアム帝国に加え、ガミラス帝国が暴れるとなれば軍事力の整備は必要不可欠だった。ましてボラー軍が大打撃を被った以上は 自分の身を守るための力は少しでも必要になる。 「十十十艦隊計画か……野心的な計画だな」 「ですが必要です」 藤堂と議長は今後の防衛艦隊整備について2人きりで話し込んでいた。 「アンドロメダ、改アンドロメダ級あわせて10隻、戦闘空母と正規空母10隻、さらに拡大波動砲搭載型戦艦10隻を揃える。 これと並行して既存艦艇の改装も進めるか……これだけあれば防衛軍の戦力は飛躍的に向上するだろう。だが可能なのか?」 「議会対策は問題ありません。ガミラスがトラウマの方々はその恐怖から逃れるために賛同するでしょう。 ガミラスは今回暴れすぎました。誰もがボラーではガミラスを止めることはできないと思うでしょう」 「……」 「デザリアムにも備えなければならないことを考えれば、これでもまだ足りないと思っています」 「君はまだ軍拡をすると? 今でも負担を強いているのに?」 「表向き、地球は復興しました。ですがその立場はガミラス戦役のときより少しよくなった程度と私は思っています。 楽観するのはまだ早いのです」 ガミラス戦役、ガトランティス戦役勝利の立役者であり、地球最高の軍略家とされる議長の言葉には重みがあった。 「これからも前線部隊には負担を掛けると思いますが宜しくお願いします」 「……判った。それと言葉遣いはもうそろそろ改めたほうが」 「いえ、私にとって長官は長官です。2人だけのときや、気心が知れた人間しかいないときは今までのままで十分です」 これに藤堂は苦笑した。 「君も変わっているな」 「ははは、ユニークな知人が多いので、染まったのかも知れません。それでは失礼します」 こうして防衛軍は動き出した。 だが動いていたのは防衛軍だけではなく、彼らが仮想敵と見做していたデザリアムも同様だった。 「ボラーと手を組むと?」 「はい。現状ならそれも可能かと」 スカルダートの問いに、サーダは自信たっぷりに頷いた。 前:嗚呼、我等地球防衛軍(第41話〜第45話) 次:嗚呼、我等地球防衛軍(第51話〜第55話)
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次:嗚呼、我等地球防衛軍(第6話〜第10話) 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第1話 西暦2198年某月。日本関東地区の地下都市に置かれた地球防衛軍司令部の一室では10名ほどの防衛軍高官、 それに日本政府高官たちが集まっていてた。 「やはり、『ヤマト』建造は自力で?」 「はい。各国、特にアメリカ、中国、ロシアでは本土決戦を唱える軍部が台頭しており、こちらの 地球脱出計画には協力しそうにありません」 「困ったな……」 誰もが黙り込む。そんな中、一人の男が嘆息するように言った。 「まさか、こうなるとはな」 原作では参謀と呼ばれる男。宇宙戦艦ヤマトの行動にやたらとケチをつけ、人気もなかったキャラクターで あった男はそう嘆息した。 ここに居る男達は全員が前世、正確には原作『宇宙戦艦ヤマト』の記憶を持つ者(以降、転生者と呼称)だった。 勿論、ここには居ない者たちもいる。彼らは各地で密かに活動していた。 彼らは西暦2192年以前から活動しており、密かにガミラスとの戦いに備えていた。尤も何故か転生者は 日本人ばかりだったので、歴史を大きく修正することはできなかった。 それでも原作知識を活かして、資源の備蓄、日本国内の地下都市や避難計画の早期の準備、戦場から落伍していた ガミラス艦を鹵獲したりして必死に人類の底力の向上に努めていた。 しかしそれでも大勢は変わらない。人類は宇宙から駆逐され、遊星爆弾によって地下都市への逼塞を余儀なくされていた。 「というか、こんな末期戦状態で出来ることなんてねーだろ!」 「地球の科学力でガミラスに勝つなんて、ルナティックを通り越してファンタズムだろう」 「沖田艦長の活躍に期待するしかない」 「むしろ、真田さんだろう。JK」 転生者たちは挫けそうになるものの何とか己を奮い立たせる。何しろまだヤマトという希望があった。 だが、状況はそう甘くは無かった。大量の地上軍を抱える米中露などの大国はガミラスとの地球における本土決戦を 主張していたのだ。皮肉なことに転生者の動きによって人類の底力が多少なりとも上がったことが彼らをそうさせていた。 日本など一部の国は人類の種と独立を守るために地球脱出計画を提案していたのだが……このままでは本土決戦が 人類の方針となりかねない状況だった。勿論、それは日本が押す地球脱出計画、そしてヤマト建造が承認されないこと を意味していた。 「長官は?」 「国連総長と話をしているが、所詮、国連事務総長は調整役に過ぎん。あの三ヶ国は抑制できんだろう」 転生者たちは難しい顔で考え込んだ。 参謀は苦い顔で口を開く。 「加えて地球防衛艦隊が事実上壊滅したことで、防衛軍そのものへの不信感も強くなっている。何しろ残っているのは 日本艦隊のみという状況だ」 アメリカ、ロシア、中国の宇宙艦隊はすでに壊滅している。これらの国々では宇宙軍の影響力が下がる一方で陸軍の 影響力が強まっていた。加えて大国のプライドもあり、本土決戦でガミラスに講和を強要するという政策が支持されていた。 「まぁTVの二期でも攻撃衛星なんて品物もあったからな……」 「あのあまり役に立たない衛星か」 「というか役に立ったか? ガトランティス艦隊にも歯が立たなかった気がするが」 「それどころか、ガミラスが地球に降下する必要すらないことに何故気付かないのだ?」 アメリカはロッキー山脈、ロシアはウラル山脈の地下に都市を建設して生き残っているに過ぎない。それも放射能に よってこのままでは全滅は時間の問題だった。地下に逃げるといっても限界がある。 そしてそれはガミラスも分っていた。彼らの母星であるガミラスも死に瀕しているが、それでも人類よりは長生きする。 根負けするのは地球側だ。 「こうなっては仕方あるまい。ヤマト建造を日本単独で進めるしかない」 参謀の意見に誰もが頷いた。転生者の活躍によって日本の地下都市には原作よりも豊富な工業力、資源、エネルギーを 保有していた。それでもこの先を考えると余裕があるとは言えないのだが、ヤマトを建造するなら可能だった。 「問題は波動エンジンの始動ですが……どうやってエネルギー供給を取り付けます?」 「補助エンジンでも主砲は何とか撃てる。ヤマトを攻撃してくるだろうガミラス空母を撃沈すれば、協力してくるだろう。 技術面の餌も用意すれば食いつく」 「やれやれ……ヤマト発進まではどれだけ労力がかかることやら」 しかし参謀は弱気になる人間を叱責する。 「ここで弱気になってどうする! 我々『名無しキャラ』の意地を見せるときだぞ!」 地球防衛軍。地球圏最大の軍事力でありながらTV版2期を除いてたいした活躍をすることなく、ヤマトの引き立て役に されてきた軍を支える男達の挑戦が始まる。 「でも、最後に良い所はヤマトが全てもっていきそうですけど」 「それを言うなよ……」 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第2話 転生者たちはヤマト建造に乗り出す一方で、遊星爆弾による被害を少しでも低減させるために艦隊の温存に走った。 冥王星にまで遠征させても自殺行為であり、無駄に艦隊と将兵と物資を浪費するだけと彼らは考えていた。 「あの三国が本土決戦を主張しているおかげで、艦隊を温存する口実が出来たな」 参謀は防衛軍司令部でニヤリと笑いつつそう呟いた。 米中露はさらに深い場所への地下都市建設と都市の要塞化を推し進めていた。日本が艦隊を温存し、地球近辺で 遊星爆弾の迎撃に専念させる戦略をとっても米中露は文句を言わなかった。何しろ日本艦隊が遊星爆弾を防いでくれている 間に本土決戦の準備ができるのだから。 参謀は必要な根回しをしつつ、長官にヤマト建造が潰えていないことを耳打ちした。 「どういうことだね、参謀?」 「日本はまだ公にしていない備蓄物資があるということです。加えて出資者も集まっています」 一朝一夕で資源が備蓄できるわけがないことを分っている長官は、参謀の台詞から日本や防衛軍の一部が長い間極秘裏に 準備をしていたことを悟った。 「……日本政府は、最初からこうなると考えていたと?」 「……『常に最悪の事態を想定するのが為政者としての務め』だそうです。ですがさすがに地球脱出用とは言えないので 公式には新型戦艦ということになります。ですので」 「分った。君達に協力しよう」 「ありがとうございます」 軽い足取りで去っていく参謀を見て、長官は久しぶりに気分が晴れた。 「防衛軍も、いや人類もまだまだ棄てたものではないな」 かくして長官の支持を取り付けた転生者たちは、ヤマト建造にまい進した。 尤も肝心の波動エンジンは手に入っておらず、鹵獲したガミラス艦から獲得した技術で作ったエンジンを搭載していた。 これによって従来の地球の戦闘艦よりも遥かに強大な戦闘力を擁していた。尤もそれでもガミラス艦隊には勝利できない だろうが……。 「まぁ波動エンジンへの換装できれば何とかなる。火星の準備も怠るな」 そして防衛軍は、そして転生者たちは運命の日を迎える。 転生者たちが密談のために使っている部屋で大声が響く。 「『ねんがんのはどうえんじん』を手に入れたぞ!」 火星から帰還した古代達が提出したカプセルから波動エンジンの設計図があることを知った参謀は小躍りした。 「これで勝てる!!」 やっと反撃の時だ、参謀は燃えた。 一方的に撃ち減らされていく友軍を見続けてきた男はこのときを待ち望んでいた。同時に彼は自分達のような原作の モブキャラがヤマト発進を支えるという状況にテンションを上げていた。 「確かに歴史では目立たないだろう! だが数十年後にはプロジ○クトXのような作品で紹介されて見せる!!」 参謀の意見に他の名無しキャラが頷く。 一部の原作では死亡確定組の人物(例:ヒペリオン艦隊司令)はさらに気合が入っていた。何しろガミラスに負けても 死亡。原作どおりでも歴史を改変しないと自分が死ぬのだからより切実だった。 「ショックカノンは他の宇宙戦闘艦にも搭載できます。早急に改装するのがいいでしょう」 「そうです。戦艦の建造は無理ですが小型艦なら建造できる余裕はあります」 「いやここは航空戦力を増強するべきだ」 だがここで文官たちは首を横に振る。 「ヤマトで冥王星基地を叩いた後は温存していたプラントで、各惑星、特に木星などの資源地帯からエネルギー資源を 得るべきだ。何しろヤマト建造には金と物資が掛かりすぎる」 「市民達の不満を多少は軽減する必要がある」 この言葉に軍人組みはムッという顔をするが、市民が暴動を起こしてはたまらない。 何しろ地下都市を建設した良いものの、市民同士の仲違いで自滅した地下都市も少なくないのだ。 「まぁ狸の皮算用をしていたも仕方ない。今はヤマト建造に全力を注ごう」 参謀の言葉によって会議は終わりを告げた。 そして後にヤマトは日本がほぼ単独で建造した、地球初の波動エンジンを搭載した戦艦として生まれることになる。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第3話 「……やはり一から作ったほうが良かったのでは?」 財務官僚の突っ込みに対して、参謀は苦笑いしつつ答えた。 「それをやるとジンクス的に怖いだろう? あくまで『ヤマト』は『大和』でなければならない。 下手に弄って失敗したら目も当てられん」 「「「……確かに」」」 ヤマトは原作どおり沈没した大和を利用して建造されつつあった。 一部の人間は一から作ったほうが早いのではと思ったのだが……ここで原作をひっくり返すと後が怖いという考えが 支持された。実際、彼らが人類のために良かれと思って行動した結果が、本土決戦支持派の拡大に繋がったのだから 慎重になるのは当然だった。 「しかし沖田艦隊は温存できた。ブラックタイガーを載せれるように一部の艦を改造しておけば、かなりの戦力になる」 参謀の言葉に誰もが頷く。 一部の軍人は渋い顔だが、ガミラス艦を沈められる航空戦力は確かに必要なので反対できない。 「まぁ取りあえずは、ガミラス空母の来襲に期待するしかない。ヤマトの戦力を見れば各国も少しは意見を変えるだろう」 「ですが彼らが来襲したとなれば、温存していた艦隊で迎撃せざるを得ませんが……」 黒い制服を着た軍人の意見に誰もが頷く。 しかし参謀は問題ないと首を横に振る。 「日本艦隊は遊星爆弾の迎撃で消耗している。空母来襲前にドック入りさせれば良い。ただ万が一に備えてブラックタイガー の直掩機も周辺の基地に用意しておく。ガミラスが史実以上の部隊で来てもある程度は戦えるはずだ」 そしてガミラスの高速空母は予定通り出現することになる。 慌てる防衛軍司令部の中で、参謀は落ち着いて部下達に迎撃を命じる。幸い、ブラックタイガーの配備が間に合っていた ためにヤマトの被害は軽減できている。血気盛んなパイロットの中には高速空母に攻撃さえかける始末だ。 「さすが参謀。ガミラス空母の来襲を見越して手を打っていたのか」 「ああ。さすが、日本政府や防衛軍長官の信任が厚いだけのことはある」 防衛軍のスタッフがそんな尊敬の目で見ていることなど知らず、参謀は一人突っ込みを入れた。 「……毎回思うんだが、あの円盤型空母はどうやって艦載機を収容するんだろうな?」 「さぁ?」 司令部でそんなやり取りがされている中、ヤマトは無事(?)に補助エンジンを稼動させて出撃した。 「ふむ、これでこそ、ヤマトだな」 遺跡と言っても良い大和の外壁を崩して出撃していく様は、原作を知る人間にとってみれば何とも感慨深いものであった。 それも自分があの戦艦を建造したと思うと尚更だ。 「さてあとは波動エンジンの稼動だな」 ヤマトが持ち前のショックカノン砲9門で、ガミラスの高速空母を撃沈したのを見て参謀は次の手を考える。 波動エンジンの作動にはかなりのエネルギーが必要だった。日本単独でエネルギーを賄うとなると、今後地下都市の維持に支障が 出てしまう。よって少しでも他の国の支援が欲しい。 まぁ仮に日本単独でやったとしても、残っている日本艦隊で資源を回収できればエネルギー事情も少しは改善するが、それでも 負担は少ないほうが良い。 「外務省や首相官邸、長官と国連総長に頼んで動いてもらうしかないな」 日本はヤマトの戦闘映像を国連総会に提出する。 すると、その高い戦闘力を見て波動エンジン搭載型戦艦の量産で戦局の挽回を図るべきだと主張する国が出始めた。アメリカなどは 保管していたアイオワ級を改造して戦艦に改造する案を提出する始末だ。 だが波動エンジンを作るためのコスモナイトなど希少資源が少ないので、その計画は没となった。 「イスカンダル星にコスモクリーナDを取りに行かせるのが人類生存につながります!」 日本大使は議場でそう主張した。実際、ヤマトはイスカンダルにまで長距離航海が可能な戦艦であった。 だが無謀な航海をしてガミラスに対抗可能な戦艦を無為にすり減らすことを危惧する声もある。この紆余曲折の末、3つの方針が決定された。 一。ヤマトはイスカンダルへ向かい、コスモクリーナDを受領して帰還する。 二。一の過程で冥王星基地を破壊する。これによって地球本土の安全を確保する。 三。二の終了後、日本艦隊によってガミラス残存戦力を掃討。太陽系の安全を確保した後に資源の採掘を再開する。 採掘した資源によって地下都市の生活環境を改善。同時に工業の復活と防衛軍艦隊の再建を進める。 かくしてヤマトは世界中からエネルギーの供給を受けて旅たつことになる。 勿論、各方面を宥め、脅し、賺し、騙してエネルギーを掻き集めたのは参謀達、転生者だったのだが……地味な仕事ゆえに 脚光を浴びることはなかった。 「所詮、裏方の仕事なのさ」 そう言ってふて腐れるものの、彼の仕事は確かに評価されていた。主にお偉方から。 「彼を戦場で死なせてはならない。防衛軍再建には彼の手腕が必要だ」 こうして参謀はさらに後方で勤務することが決定される。 彼が脚光を浴びる日がいつになるのか……それは誰にも判らなかった。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第4話 世界各地からエネルギー供給を受けてヤマトが発進した後、地球防衛軍は残された日本艦隊の補修と改装を急いだ。 ヤマトが冥王星基地を破壊できたとしても、ガミラスの残存艦隊が跳梁跋扈する可能性は高い。これを排除するためには 艦隊戦力の強化が必要だった。 残された希少資源で小型波動エンジンを生産し取り付けていった。出力が低いエンジンのため、エネルギー事情が悪化した 日本でも生産と稼動は可能だった。 「本当は各国にも手伝って欲しかったんだがな」 参謀がぼやくものの、どうしようもなかった。 何しろ多くの国は本土決戦のために宇宙船の建造よりも地下都市の要塞化と地上軍強化に力を注いでいた。おかげで貴重な 資源もエネルギーも浪費されており、宇宙艦隊を再建する余裕など無かった。 まして三大国はヤマトが冥王星基地を突破できるか懐疑的な見方をしており、本土決戦に向けた準備を怠ることはなかった。 「波動エンジン、ショックカノン砲の技術など少なくない技術を分け与えてよかったんですか?」 通産省の官僚は不満そうな顔をするが、参謀達軍人は仕方ないと首を横に振る。 「仕方ないだろう。日本単独であの大型波動エンジンを起動させるのは難しかったんだ」 「地球全体の防衛力強化のためには、ある程度の技術の提供は必要だろう。我々が何から何まで独占すればいらぬ嫉妬を 買って自滅するだけだ」 「国益の追求は必要だが、今は星間戦争中なんだ。必要以上にいがみ合っていては勝てる戦いも落す」 地球防衛艦隊で残っているのは日本艦隊のみであり、人的資源も一番残されているのは日本だった。おかげで防衛軍で主導権を 握っているのは日本だった。 しかしこれが米中露にとっては気に喰わないのか、色々と不満が多い。ちなみに、やたらと日本にケチをつけるはずの某半島国家は 手抜き工事のためか、地下都市が遊星爆弾で破壊されて壊滅している。今は中国の地下都市に亡命政府があるだけだ。 「まぁ今は防衛艦隊再建を急ぐのが正解だろう」 参謀の意見によって密談は終る。 ヤマトが紆余曲折の末、冥王星基地を破壊すると地球各国では喝采が挙がった。 ガミラスの太陽系前線基地である冥王星基地の壊滅は、これまで負けっぱなしであった人類を勇気付けるものであった。 「今こそ絶好の好機だ!」 参謀は防衛軍長官に直訴して、改装が終わった艦隊で資源輸送を行う事を提案する。 後に『特急便』と言われるプランであった。また彼はこの作戦を指揮する人物として土方に目をつけていた。 原作において艦隊決戦で唯一といってよい白星を得た男を、参謀は高く評価していたのだ。 「私より適任がいるだろうに。それに今、この学校を離れるわけにはいかんよ」 宇宙戦士訓練学校の校長室でそう言う土方に、参謀は尚も言い募る。 「古代君はまだ若い。彼らを纏める人物が必要なのです。それに閣下なら、航空戦力を十分に活用できる、そう信じています」 「航空戦力か」 「はい。残念ながら、地球では満足に戦艦を建造するのはまだ難しい。ですので、『えいゆう』など大型艦を改造してブラックタイガーを 載せれるようにしています。これがあればガミラス艦を早期に発見でき、対応できるでしょう。 勿論、出撃に際しては土方校長の要望を最大限尊重します」 「……分った。いいだろう」 参謀の熱意に折れたのか、土方は艦隊司令官を引き受けた。 参謀が軽やかな足取りで出て行くのを見て、土方は微笑む。 「あれが長官の懐刀と言われる男か。噂に違わぬ男だ」 このとき、参謀は有名人になっていた(名無しキャラなのに)。 何しろ本土決戦を主張する国々に従う振りをしつつ、裏ではヤマト計画を密かに根回しして進め、さらに日本が備蓄していた物資や エネルギーを提供させた。 それに加え、資源の輸送計画を入念に策定。さらに航空戦力の有用性を見抜き、それを活用する準備も進めるなど軍政家としての 才覚があると土方が判断してもおかしくなかった。 実際、他国でも参謀の評価は高い。だがそれゆえに彼はますます前線に出るチャンスが減ろうとしていた。 彼は目立とうとして頑張っているのに、裏方としての能力ばかりが評価されていたのだ。 「これでヤマトが帰ってくれば、防衛艦隊は早期に再建できる。うまくすれば、私も艦隊司令官になれる!」 軽い足取りで皮算用をする参謀。 彼の野望が叶えられるかは神のみぞ知る。 かくして小型で低出力とは言え、波動エンジンやブラックタイガーを搭載した日本艦隊はガミラス残存艦隊の妨害を撥ね退けつつ 各惑星や小惑星帯から資源を採掘し、必死に地球に資源を輸送する。 「エネルギー事情を改善すれば地下都市の衛生状態も良くなる!」 参謀や転生者たちはそう発破をかけた。勿論、新たに得たエネルギーを市民生活の向上のみに当てるつもりはなかったが それでも何らかの餌は必要だった。 また防衛軍首脳部は強化された防衛軍艦隊とガミラス艦隊が互角に戦う様子を流して、必死に市民を鼓舞した。 「人類はまだ戦える!」 「故に市民の協力が必要なのです!」 「欲しがりません。勝つまでは!!」 防衛軍が戦える様を見て、絶望の淵にあった市民も多少は希望を取り戻した。 また若干ながらも生活環境が改善されたことも、士気を上げた。 「負けるものか!!」 「ヤマトが帰ってくるまでは持ち堪えるぞ!!」 特に我慢強い日本人達は一致団結した。おかげで日本にある地下都市の治安は大幅に改善することになった。 残った市民はお互いに助け合い、生活を守った。また宇宙戦士への志願者も増えていった。 少しずつであるが好転しつつある状況に誰もが未来を信じられるようになっていったのだ。 「暴動も減っている。食糧事情も好転している。ふむふむ、これなら何とかなる」 自宅で朝食を取りながら、新聞を読んでいた参謀は非常に満足げだった。 また米中露、それに欧州も宇宙艦隊再建に乗り出していた。勿論、駆逐艦や護衛艦が中心であるものの戦力が回復するのは 好ましかった。 「あとは頼むぞ、ヤマト。地球は……我々が守っておくからな」 こうして地球は参謀達の努力もあり、原作よりは多少はマシな状況でヤマトの帰還を迎えることになる。 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第5話 ヤマト帰還後、地球各国は復興に向けて動き出した。 コスモクリーナーDによる放射能除去、そしてテラフォーミング技術による地球環境の修復は急ピッチで進められた。 もともと資源的、エネルギー的に余裕があったことで地球の復興は驚異的なスピードで進んだ。また放射能が除去されたこと で各惑星に残されていた生産施設が使用可能になったので、生産力も次第に回復していった。 「復興は順調のようだな」 参謀の言葉に官僚達は頷いた。 ちなみに彼らは相変わらず地下都市の防衛軍司令部を密談の場にしていた。 「皮肉なことに、戦前に比べて人口が激減したのが大きいでしょう」 使えるようになった生産力や資源で十分に地球人類を養える状態だった。何しろ戦前は100億を越えた人口が今では 20億をきっているのだ。残された人口を養うのは難しくは無かった。 「それに、人口が激減したおかげでこれまで問題だった宗教問題や民族問題、貧富の格差は大分、スッキリしました」 寒気のするような意見だったが、実際そのとおりだった。 ガミラスの遊星爆弾は地球各地に降り注いだ。このせいで貧困地域は真っ先に滅亡した。また地下都市を建設しても 民族、宗教問題で内輪もめを起こして自滅した都市も多々ある。 「ガミラス戦前まで人類が抱えていた問題を、ガミラスが解決してくれたということか」 参謀の意見は人道の観点からは問題だったが、事実だった。 「しかしそれでも残された国の統合は大変だな。まぁ地球連邦そのものは結成できそうだが……主導権争いを考えると 頭が痛いな」 宇宙艦隊や各種生産施設が最も充実しているのが日本であること、日本が建造したヤマトがコスモクリーナーDを持ち帰ったこと から日本の影響力は大幅に拡大しており、日本は人類復興の中心的役目を果たしている。 片や本土決戦のために準備をしていた国は、宇宙艦隊再編に手間取り、制宙権の維持を日本艦隊に頼らざるを得ないという状況に 陥っていた。 勿論、史実より多少は余裕があるので国家再建は急ピッチで進められているが日本には遠く及ばない。故に嫉妬も強い。 「海外の連中は日本の奇跡とまで呼んでいそうですよ」 「新興国におされて斜陽だった我が国が再びここまで隆盛したんだ。まぁ奇跡といわれても仕方ないさ」 「まぁ奇跡と言うよりカンニングの賜物なんだが……それは言えないよな」 誰もが苦笑する。 「何はともあれ、地球連邦の創設、そして防衛軍の再建は急ぐ必要があるだろう。 何しろ白色彗星帝国、暗黒星団帝国、ディンギル帝国と、一歩間違えれば死亡確定の敵が待ち構えている。 人類が団結しなければ、この国難は乗り切れない」 参謀の意見に反対意見はない。すぐにアンドロメダ星雲から白色彗星帝国が来るのだ。 宇宙艦隊だけでも強大なのに、都市要塞、巨大宇宙戦艦まであるのだ。星間国家としては新興国にすぎない地球が 相手にするには荷が重い。だが交渉の余地は全くなく、戦うしかないのだ。 「日本一国で、原作ほどの宇宙艦隊は整備できまぜんからね……世界各国に負担してもらうしかないでしょう」 財務官僚の言葉に誰もが頷く。 「とりあえずは巡洋艦以下の建造を急ぐ。そして各国に余裕が出来た段階で戦艦の建造に取り掛かる。これが妥当だろう」 参謀はそう結論付ける。 「ただし、これからやってくる敵を全て地球のみで対処するのは負担が大きい。よって友好国を増やして、多国間による 共同戦線を張れるようにする。これが地球の歩むべき道だと思う」 これを聞いて外務官僚が尋ねる。 「どこと交渉するおつもりで?」 「穏健派の国ならシャルバートやアマールが適当だろう。しかし直接援軍は期待できない。だとすれば」 「ボラー連邦、ですか?」 「そうだ。少なくともあの国は話し合いの余地がある。原作では古代弟がぶち壊してくれたがね」 参謀は苦い顔をする。 史実におけるヤマトクルーの暴走は、結果として人類を救ったが、一歩間違えれば人類を破滅させかねない 危険なものも少なくなかった。 特にボラー連邦を敵に回したのは、手痛い失敗だった。ガルマン・ガミラスを味方に出来たと言っても デスラーが表舞台からいなくなったあとも、友好関係が続くとは限らない。何しろヤマトはガミラス本星を 壊滅させているのだ。恨まれていないわけが無い。 「ソ連をモチーフにしたあの国を信用するのは難しい。おまけに長く続いた平和のせいで、軍は弛緩している。 しかしそれでも、かの国と友誼を結ぶのは決してマイナスではない」 デスラーによっていいようにやられたことから、参謀はボラーが長らく続いた平和によってかなり呆けて いると判断していた。 だが機動要塞やマイクロブラックホール砲、各種戦略兵器は地球には無い魅力的なものばかりだ。 これらを擁する国家を後ろ盾に出来れば、今後の戦争も少しは楽になる。 「特に波動エネルギーが天敵である暗黒星団帝国は、地球を制圧しても人類の残存戦力とボラー連邦が結びつくことを 考慮して、そうそう軽挙には及べないだろう」 参謀は戦争で全てを解決するつもりはない。というか派手な活躍はしたいが、避けられる戦争は避けたいという のが本音だった。 (防衛軍が消耗しすぎると人的資源が払底する。艦隊司令官になったは良いが、急造の戦艦と新米ばかりの兵士で 戦争という事態は避けたい) 輝かしい出番を用意するには、それなりの準備が要るのだ。 「とりあえずボラーと手を結び、国力を充実させるべきだ。それにボラー連邦のような強大な星間国家があることが 外圧となる。それは原作にあった油断を打ち消し、人類を団結させるのに使える。それに星間外交の経験も積めるだろう」 かくして彼らの暗躍が始まる。 次:嗚呼、我等地球防衛軍(第6話〜第10話)
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こうじさんのページはルを様の自慢ページですので勝手に編集してください。 -- こうじ (2011-08-30 21 28 05) ルを様の自慢はやはりPCか。 -- こうじ (2011-08-31 21 03 27) あたりまえだ。それ以外に何も無い -- ルを (2011-08-31 23 39 04) 名前 コメント
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前:嗚呼、我等地球防衛軍(第61話〜第65話) 『嗚呼、我ら地球防衛軍』 第66話 観艦式を終え、自国の存在と力を誇示し終えた地球連邦政府は地球防衛軍参謀本部に二重銀河にあるデザリアム帝国本星攻略の ため3個艦隊を基幹とした遠征艦隊・『第1連合艦隊』の出撃を命じた。 議長は出撃前に第1連合艦隊旗艦タケミカヅチの作戦室に第1連合艦隊の主だった幹部を集めた後、強い口調でそう言い放った。 「諸君の任務は、敵本星を直撃し、デザリアム首脳の心胆を寒からしめ、彼らを講和交渉の席に引きずり出すことだ」 内心では(本当は二重銀河を吹き飛ばしたほうがありがたいが、本音は言えないからな~)などと考えていたが。 「仮に彼らが徹底抗戦の構えを崩さない場合は?」 艦隊総司令官兼タケミカヅチ艦長の沖田の問いかけに対し、議長は苦々しい顔で返す。 「敵本星の政治・軍事中枢を徹底的に破壊し、デザリアム帝国の統治機構の頭を叩く。幸い、彼らは二重銀河でも多くの敵と交戦中だ。 後始末は反デザリアム帝国勢力がやってくれるだろう。仮に帝国打倒が叶わなくとも、国家機能がマヒするのだ。ガトランティスの ように暫くはこちらに手を出せなくなる」 そこで一息つくと、議長は作戦室の床にあるモニターに銀河系の各勢力圏を示す地図を映し出した。 「そしてデザリアムが動けない間、我々はガミラスの攻勢に備える」 この言葉に衝撃が広がる。 「ガミラスが戦争を仕掛けてくるというんですか?」 ヤマト艦長となった古代進の質問に対し、議長は首を横に振る。 「彼らが直接こちらに仕掛けてくる兆候はない。だがデスラーが率いるガミラス、いやガルマン・ガミラス帝国の進撃は破竹の勢いだ。 彼らの矛先がこちらに絶対向かないとは限らない。我々は地球を再び赤茶けた惑星にする訳にはいかないのだ」 「では攻勢に備えるというのは?」 α任務部隊司令官・古代守の問いかけに議長は「口外しないように」と前置きした後、答えた。 「我々は新たな宇宙艦隊整備計画を進めている。この計画を基に防衛艦隊の強化を推し進める。またガミラスに関する情報収集を強化する」 「ボラー連邦と何か取引を?」 「……我々はガミラスと休戦したが、ボラー連邦と交易をしてはいけないという取り決めまでした事実はない。そして我々防衛軍は民間人が 大勢乗る交易船を守る義務がある」 この言葉を聞いた古代守が「なるほど」という顔をする。 「護衛の名目で艦を送り情報収集を行う、と?」 「そうだ。我々は独自の情報源を確保する必要がある。地球は小さいながらも、独立勢力なのだ。ボラー連邦経由の情報に頼りきりに なるわけにはいかないのだ」 古代進は単に「議長はボラーのことを信用していないのか?」などと思ったが、議長の真意を理解した沖田は深くうなずく。 そして政治に疎い若手にも判るように、深みのある声で諭すように言う。 「ボラー連邦が地球に特定の情報を流すということは、その特定の情報を地球に流すことがかの国にとって利益になると判断したということだ」 「ボラーから嘘の情報が流れくると?」 「彼らも我々の実力を理解している。完全な嘘は容易につかないだろう。だが、意図的に情報の一部を伏せることは十分に考えられる。我々の思考を 誘導するために、だ」 この沖田の言葉に古代進や島などは不愉快そうな顔をする。 そんな若手の反応を見た議長は苦笑する。 「まぁ諸君の気持ちは分かる。薄汚いやり方だ。だがそれが政治であり、外交なのだ。だからこそ、我々は情報をあつめ、正しい判断を下す材料と しなければならない。まして相手は強敵・ガミラス。諸君ら、勇敢な防衛軍の戦士達を無為に失わないようにするために万全の態勢を整える必要がある」 そう言って議長はヤマトクルーなどを持ちあげる。 同時に議長は原作で自動化が進んだアンドロメダを古代や真田が批判していたことを思い出し、現状の防衛軍の方針(省力化・機械化)にあまり不満を 抱かせないようにフォローした。 「それに最近は復興や新領土の開発で人手が必要なおかげで防衛軍戦士を確保するのが大変だ。こちらも省力化や無人戦艦を建造するなど、試行錯誤を 続けてはいるが、なかなか難しい。何しろ機械では熟練の戦士の判断力まで期待できないからな。当面は有人艦が主力で、無人艦はその補助となるだろう」 議長は「無人艦は有人艦を守るための盾」であること、そして「防衛軍上層部は人の力を軽視していない」ことを伝える。 「今回の遠征では無人艦を同行させるが、これらはあくまで、防衛軍戦士を一人でも生きて地球に帰還させるために用意した。うまく使ってくれ」 堂々と言う態度とは裏腹に、内心では「ヤマトクルーの反応はどうかな?」と少しびくびくしていたが……その内心は悟られることはなかった。 「分かりました。一人でも多くの戦士を帰還させて見せましょう。明日の地球のためにも」 威厳たっぷりの沖田の言葉に、議長は笑みを浮かべる。 「それは頼もしい」 そう言って二人は握手を交わし、話を聞いていたヤマトクルーも士気を上げる。 かくして士気を鼓舞された第1連合艦隊は出撃する。 目標は40万光年先の二重銀河。 かつて地球を救ったイスカンダルへの航海を遥かに超える大遠征が始まった。