約 1,001,257 件
https://w.atwiki.jp/orikyara3rd/pages/606.html
作者:代理店 怜とケンカになった。二刀流の女の子だが気もケンカも強い。 原因は確実に俺。タクティカルベストの中身がないことをからかったら口論になって、ホルスターがあるのにハンドガンを入れてないことを指摘したのが引き金になった。…拳銃が無いのに引き金って面白いジョークだな。 「かかってこいよ!一瞬で三枚卸しにしてくれんだろ?」 「アンタこそ角に引きこもってんなよヒッキー!サクッと撃ち抜いてくれるんでしょ?」 現在の装備はFN MINIMIとSIG P228とナイフ。MINIMIの射程は約1000mで、分隊支援用の軽機関銃であり、決して接近戦闘に使用する装備ではない。かといってSIGとかナイフなんかでは、余程うまくやらなければ負ける。 対する怜は、二刀とナイフを装備するサムライガール。ナイフじゃまず太刀打ちできない。それに、ハンドガンの威力じゃ心許ないことこの上ない。 彼女との距離は20m~30mほど。走ればすぐに刀のリーチに俺が入るので、弾をばらまいて接近させないようにするので精一杯だ。 ばらまいても当たらない理由に関してだが、これは単純に、銃弾が刀にばっさばっさ斬り落とされているからに他ならない。ちなみにMINIMIの連射速度は725発/分。エグい。 《孤独な陸軍》は持っているのだが、開けてSAIGAを出して構えて撃つという動作をとっている隙を見せたらやられるので、仕方なくMINIMIで応戦しているわけだ。 だが、銃なら避けては通れない弱点があるわけで。 「…げえっ、弾切れか!?」 「隙ありッ!!」 刀を構えた怜が一気に踏み込んでくる。MINIMIをリロードしている暇はない。素早く別の武器に切り換える! 「させるかよ!!」 咄嗟に装備したのはSIG。仕方ない、脚を狙って…! 「喰らうかっ!」 トリガーを引いた瞬間、怜が高くジャンプした。一瞬、視界から消える。ハッと上を見ると、結構高く飛んでいる。10mくらいか。 「…身体能力高すぎんだろ!」 あれか?こっちに来たときに、みんな何かしら身体能力強化されてんのか? 正直かなり焦ったが、チャンス到来である。 空中では回避は不可能だ。偏差射撃を正確に行えれば相手から当たりにいってくれる。 「もらった!!」 肩や腹を掠めるように発砲。戦闘能力を奪うのが目的だ。 と、ここで怜があり得ない動きを見せてくれた。 空中に向いている視界からまた消えたのである。探すと、さっきより高い位置にいる。 要するに、「2段ジャンプ」である。 茫然としてしまった俺の直上を悠々と跳び抜け、10mほど後ろに着地。 「うりゃあああああ!!」 まだ何をされたか理解できてない俺に刀を構え直して突っ込んできた。着地硬直がないとか、性能が高過ぎる。 「くっそが…!!」 SIGを構えるが既に相手の間合いにいる。 あ、ヤバイ、死んだかもしれん………と思ったら怜の表情が勝利を確信したものから一変し、そして信じがたい動きを見せた。 「伏せろッ!」 と叫んだのもつかの間、タックルをかまして、俺を押し倒してきたのだ。 「なぁっ!?」 怜にマウントポジションを取られ、ボコボコにされるのを覚悟したが、怜自身も俺に覆い被さるように伏せている。 押し倒された直後、怜の背中のすぐ上を通る衝撃波のようなもの、そしてズパッと斬られ落ちる朽ちた信号だった。 「なっ…!?」 「だいじょうぶ!?」 耳元で怜が叫ぶ。ありがたいことに無傷だが、お前は…。 「アンタに直撃すると後味悪そうだったから、つい反射的にやっちゃった」 …大丈夫みてーだな、全く。 その時、斬撃が飛んできた方から声がした。 「……すまんが、バランスが崩れるとまずいのでな」 杖をついた和服の男性がいた。何故かは知らないが裸足で、目には包帯のような布を巻いている。 アレはヤバい。相手にしちゃいけない。そんな気がした。 「なぁ、譲…」 隣の怜が明らかに動揺した声で話しかけてきた。 「ヤバい…よな…」 「…流石にシャレにならんっぽい、かな」 「よし………じゃあ早く装備を変えて拳銃を貸して。あ、予備弾倉も」 「嘘だろ、戦う気かよ…」 「…お前をこの区域から安全に離脱させるためだけど」 ………ん?聞き間違えでなければ「俺を逃がす」って聞こえたんだけど。 「…いや、今なんて?」 「早くして。お前が離脱できなくなる」 「…………ハッ」 よし、聞き間違えでないことが確認できた。…ナメてんのか。 女の子を犠牲にして生きようとする男なんて空き缶以下の価値すらねぇんだよ? 俺は黙ってMINIMIを《孤独な陸軍》にしまい、代わりにSAIGAとMP7を装備する。どちらも高威力の近接戦闘向きの銃だ。さらにハンドグレネード、スタングレネード、スモークグレネードを持った。 SIGに弾丸をフル装填し、予備弾倉2つと一緒に怜に渡す。 さっきの怜の言葉に、男の尊厳をいたく傷つけられた気がしてとても腹が立つので、この時に強く押し付けての嫌がらせを忘れない。 「無駄な殺生は避けたいものだったのだが……なぜ抵抗する」 目が使えなくとも、音と気配で分かるものなのだろうか。杖の男性はこちらを殺す気満々である。 俺ら2人を殺せる気で居るのが恐ろしいなとは思う。だが、死を覚悟すると人は恐怖を忘れ、ためらいを捨て、論理性を振り落とす…ってのを教えてやろうじゃないか。 「抵抗するのは俺だけですから、大丈夫ですよ。こちらの彼女は逃がします」 「はぁ?おい、譲!」 怜が俺を咎めるように話しかけてきたが気にしないで続ける。 「いやー、女の子に『貴方は死なないわ、私が守るもの』って言われて嬉しいのはヤシマ作戦のときだけじゃない?綾波ならいいけど綾波以外なら不可っつーかさ」 「……要領を得ないな」 「説明下手なんだわ、わりーな」 つまり、女性を守って戦うなんてのは男のかっこいい特権だと思わねーか?ってことだ。男中心の考えだけど。 「女に守られる男は男に非ず、女を守らねー男は男に非ず。性差別的だと言われてもいいが、これ、理由にならねーか?」 でもこれじゃニュアンスすげー変わってくるな。 「……ふん。独善だ、そんなもの」 知ってるわそれくらい。だがいくら独善的と言われようと、俺のなかでは立派な理由だ。あと、非理論的だってのも自覚してるから突っ込まないで欲しい。 「ふざけるな譲!お前を逃がすためだったのに!!」 「バカ言ってる場合じゃねぇ。こうなっちまったらあとはケンカだからな、お前は隠れるなり待避なりした方が良いぞ。あ、でもビル内に隠れるのは止めろよ?」 「話を聞け!!」 守るとか逃がすとか言っちゃったの、間違いだったかなぁ…。 じゃああれだ、俺が右から当たって誘導するから、お前左から回り込んで後ろから突っ込んでこい。あとはなるようになるさ。 「お前が私に指図するな!」 「なっ…お前あとでゼッテーぶっ飛ばすッ!!」 とんでもねーなアイツ、と思いながらSAIGAを構えて射撃開始。威力の高いスラッグ弾を撃ち出す。一気に前進して距離を適度に詰め、男が9時の方向へ向くようにビルを利用して移動する。これなら男は怜に背中を見せることになる。はず。 「怜には流れ弾当てねぇようにしねーと…」 左翼から接近する怜に気付かれないようにさせるため、派手に目立たないといけない。しかしスラッグ弾に怜が当たってしまっては元も子もない。 「いやまぁ、そんなこと気にしてる余裕なんか無いけど!」 男は逸れていく弾丸には手を出さず、自分に直撃する弾丸だけを選んで手持ちの杖を振っている。するとスラッグ弾はいつのまにか消えていて男にダメージは皆無、という…訳の分からん手品みたいなことをされている。 …そろそろ回り込んだ怜が飛び込んでくるはず。今か今かと待ち構えていると、 「………チッ」 男が体を少し動かし、間一髪のところで発射した弾がかわす。早い。 さらに男は俺に体の横を見せるように動き、杖をまるで刀のように構える――――まずい、仕込み刀か! 反射的に叫ぶ。 「怜!相手も刀使いだ!」 ビルを利用して怜は奇襲をかけた。しかし、それは看過されていて、飛び込んできた怜は自分をしっかりと見据えた男の存在に虚を突かれて反応が遅れた。 「しまっ…!?」 ギリギリのところで怜は刀を受け止めることができた。つばぜり合いの膠着状態だ。 怜が飛び込んできたのは俺から見て9時の方向から。つまり、俺と怜が居た位置から真っ直ぐ来たことになる。 流れ弾を警戒していて、男の後ろからの攻撃は無理だったか…。 「…ふ、戦うのは貴様だけではなかったのか?」 男はかなり余裕があるようだ。ギリギリと刀を受けていても顔をこちらに向けて薄く笑って言い放ってきた。 こちらも余裕の声色の演技でサラリとかわす。 「よくよく考えたら戦う女の子ってのも良いかもなぁと思ってよ。巴御前の例もあることだし」 つばぜり合いが続く。 「何で…わかった…?」 怜が睨み付けながら訊ねる。 「…あの青年が、俺以外のところにも気を回していたからな」 「譲ーーー!!!」 「慌てんな!そんなことでバレてたまるか!!」 この男は最初から今まで目隠しを取らないで戦っている。目隠しなんて戦闘の障害でしかないのに、である。ということは、外そうが外さまいが戦闘には支障は無いということが予測できる。すなわち。 「あの男、盲目か舐めてるかの二択か」 舐めてるんなら最初の奇襲のときに存在を知らせるだろうし、これは無いな。 そういや、盲目の人は気配察知や残りの感覚に鋭くなると聞いているが、弾丸を打ち消し――恐らく斬り落としていた――ながら「俺の発する他への警戒」の気配を察知できるとは思えない。管制官的な奴から通信が入ってるのかも。 「怜!おっさんの耳にイヤホンささってねぇか!」 「あるわけ無いだろ!!バカか!!」 「……………」 くっそ、絶対に管制官的なヤツが居ると思ったのに。…二人とも呆れて黙っちゃってるよ。まあ、男は盲目であることが分かったから気にしない方向で。 しかし、じわじわと怜が押されてきている現状はまずい。とりあえず援護にまわる。 SAIGAを投げうち、鍔迫り合いのサイドに回り込んで、今度はMP7で男を狙う。まずは一度怜から引き剥がし、体勢をととのえる。 「怜から離れろッ!!」 …なんてカッコよさげな台詞を吐いてみるが、走りながらの射撃には自信がなかったので立ち止まって正確な射撃を行う。 SAIGAに比べて軽い音が連続して鳴り響くが、銃弾は何もない虚空を切り裂いていった。弾丸が怜の前を飛び抜けていく時には、男の姿はすでにほど離れた場所にいた。 男にMP7を向けながら警戒を怠らないように怜と合流、ひそひそ話で緊急作戦会議。 まず、この一度の攻防で解ったことがある。 「怜。俺らじゃあの男には勝てねぇ、絶対に」 勝ち目があったとしたら、一番初めの奇襲がそれだ。しかしそれは失敗した。 もしあの男が、「チャドの霊圧が…消えた…!?」って感じで気配で個人を特定できるなら、もう奇襲は成功させられない。 普段ならこんなバカらしい予測は考えないのだが、男との力量の差があまりに大きいので非現実的なことも大真面目に考慮してしまう。 「勝てる勝てない、じゃないでしょ。わたしたちは生きて帰るんだからさ」 「その通り、だから逃げるぞ」 「どこを?」 「まっすぐ走ってあの男とすれ違う形で退却。異論は認めねぇ」 幸い、相手方がいつぞやのバズーカ女のように破壊の限りを…ということはないので撤退の障害物はない。 「……作戦会議は終わったか」 「ありがたいことに」 「……いざ、参らん」 素早く、鋭く斬り込んでくる男に対して、真っ直ぐ当たるように俺たちは走り出した。 まだ刀の間合いには入らない。 そのとき、おっさんが刀を構えた。 「……はぁぁぁッ!!!」 横薙ぎに抜刀をした瞬間、例の斬撃が飛んできた。狙いは… 「俺か!」 地面に這いつくばるようにして斬撃を回避。しかし怜は走り続けていたため、同時に横を抜けるということができなくなってしまった。 「譲っ!」 「損傷なし!気にしないで走ってろ!!」 素早く姿勢を戻して再び走り出す。怜はもう男の刀のリーチに入ろうとしている。 刀を振るう男。狙いは明らかに怜を斬り殺すことだ。 「くっ…!!」 「そのまま行け、怜!」 MP7を構えてトリガーを引き続けた。男は身を翻し全弾斬り落としたが、その隙に怜は一気に距離を離していた。あの距離ならもう狙えないだろう。 空になったMP7をリロードする。 「………貴様は逃がさん」 男のリーチから既に外れた怜を殺すのを諦め、俺をロックオンした様子。二兎を追う者は一兎をも得ないから、それなりに正しい判断だ。 「こんなところで死ぬわけにはいかねぇんだ、通してもらうぜ?」 そう言って右手で構えたMP7のトリガーを引く。当然のように斬り落とされていく5.4mm弾。 大丈夫、これでいい。アンタの失敗は、俺の装備を全部把握してないことだったな。 …その目、見えてたら良かったのにな。 マガジン1つ分を撃ちきったのが分かったのか、一気に接近してきた。 「………死ね」 だから俺は、慌てず騒がず、左手に持っていたスタングレネードを転がす。その直後にスモークグレネードも。 男が刀を抜く直前にスタングレネードが炸裂し、光と音で感覚器を潰す。さらにスモークグレネードで体表の感覚器の情報を飽和させる。すなわち、音と熱とまとわりつく煙。 「ぐッ…!?」 目が見えないからスタングレネードの閃光は喰らわなかっただろうが、その分触覚や聴覚が鋭くなっているからダメージも増幅されるだろう。身体にまとわりつくものが何か分からないとむやみに行動はできないだろうし、耳へのダメージは三半規管を一時的に破壊するから歩けもしないだろう。 「俺もダメージはちょっと喰らってるけどな…」 どうせ聞こえてないし小声で呟く。ギリギリまで軽減させたから行動には何ら問題はない。今までに誤爆しまくって慣れてきてるってのもあるけど。 「じゃあ、楽しんでくれ」 煙が展開している範囲を避けつつ走り去る。スタン、スモークをもう一つずつ転がし、ハンドグレネードをとどめに投擲する。 逃げる俺の背中にもハンドグレネードの爆発音が届いた。 「お、《孤独な陸軍》にSAIGAじゃん。回収サンキュー」 戦闘区域から離れた地点で怜と落ち合う。その顔は複雑な表情をしていた。 「あとで取りに行こうと思ってたからさ、助かったよ」 「……ただで返すと思うか?」 「金なんかないんだが。身体で払えってか、この痴女が」 「何でお前死ななかったんだろうな…」 冗談なのに、そんな本気でガッカリしなくてもいいじゃないか。 …それで、何が欲しいんだよ。 「…いくつか質問させろ」 「今晩のおかずからハッキングまで、なんでもどうぞ」 怜はふう、と息をつくと厳しい眼差しを向けてきた。 「………。お前、どこまで本気だった。あの理由」 「女を守るのが男の役目…みたいな感じのことだろ?ああでも言わないとそれまでの言動との整合性取れねぇだろ」 「だいたい、私が囮になるって言ってたのに…」 「囮なんて誰も期待してねーよ。多分一対一だったら俺ら死んでただろうし」 「…まぁ、確かに…。あと、あの剣士の横を私が通り抜けるとき何で銃を撃ったんだ。走っていれば無茶する必要もなかっただろう?」 お前はバカなの?どこの世界に斬られそうな女の子を放っておく男が居るんだよ。つーか放っておくようなヤツはその瞬間から二度と男を名乗れねぇよ。 ――とは恥ずかしくて言えないので、当たり障りのないことを伝える。 「お前はバカなの?殿の部隊は先に撤退する部隊を自分を犠牲にして支援する必要があるんだよ。それくらい知ってるだろ」 「それはそうだけど…」 「いいんじゃねえの?生きてんだし、細かいこと気にしなくてもさ」 怜だって最初は囮になるつもりだったみたいだけど、最終的には生きて帰るつもりでいたみたいだし。 「じゃあ、ソイツは返してもらうぜ」 「うぅー……はい」 どうもまだ納得はしてないみたいだが、強引に結論付けさせて返してもらう。 「それじゃーまた、機会がありゃー会うだろ。じゃあな」 「……いや待て。まだ質問は終わってないぞ」 何だよまったく、完全にオチだったじゃん今。 「何で撤退する時、まっすぐだったんだ?ビルを利用すればけっこう安全に撤退できただろ」 あー、それな。えー…ちょいまち…んんー……その、だなぁ。 「…………判断ミス」 ボソッと言ったらダッシュで逃げる! 「え!?おい譲!判断ミスっておい!!譲ーー!!!」 どやされたくない一心で逃げる背中に、咎める怜の声が刺さった。
https://w.atwiki.jp/bitchgirls/pages/96.html
3-271 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 03 01 ID rCxzesR9 どんな男でもよかった。 それがどんな恋でもよかった。 適当に友達と遊んで、適当に男と一緒にいれば、長い夜はしのげる。 後悔はしていなかった。 向こうも私以外と関係を持っても別に、それを攻める気はないし。 どっちもどっちな話だから。だから付き合ってる男が束縛とかしだすと途端に面倒臭くなる。遊びなのに本気にされるとマジで気持ち悪い。 それがここ最近遊んでいてもつまらない。 美味しいお酒を飲んでても、レベルの高い男と遊んでいてもいつも思い浮かぶのは同じクラスの冴えない男子。 3-272 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 04 28 ID rCxzesR9 線が細くて垢抜けなくて、いつも静かに教室の隅で本を読んでいる。人と話をしているのを見かけてもいつも笑顔でうなずいているだけ。どちらかといえばオタク系に分類されるような奴で、絶対に私から関わ りたいとは思わないようなそんな男。 なのに… いざ男とやっていても、アイツの顔がちらつく。 それはいつも笑ってない。 きつく口を閉じて今にも泣きそうな悲しい顔。 アイツが私を制する。 アイツが私を咎める。 日に日にアイツの存在が大きくなる。こんな自分、今まで想像出来なかった。 3-273 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 07 19 ID rCxzesR9 あの日、以前から遊びで付き合っていた男にマジで好きだと迫られたので断ったら、やられそうになった。マジな顔で乗っかかってくんのがほんとに気持ち悪くて、思わず叫んだら新海に助けられた。 私を庇って男に殴られた新海に、さすがの私もお礼をしないわけにはいかない。少し引きつった営業スマイルでお礼を言うと新海はたった、たった一言だけ… 「あんま自分を安売りしないほうが良い」 とだけ呟いた。 むかつく…新海ごときが私に説教?一気に頭に血が上った。営業スマイルから一転、目を細めて新海をきつく睨み上げる。 「いや、つーか別にアンタに関係なくない?私が何してようと」 私の睨みに新海が怯んだように顔をふせた。ほんの少しの静寂…でも次の瞬間、意を決したように新海が顔をあげる。 「そうだね…でも、今より自分を大切にしたらきっともっと楽しくなると思うから、もっと風見さんは楽しそうに笑えるはずだから…だから」 「はぁ?」 「自分を大切にした方が…良いと思います」 少し困った顔で、でも優しくて真剣な眼差しで新海は微笑んだ。何故かズキっと胸の奥がうずいて声が出せなくなる。うざい…マジでうざい!新海のくせに…でも何で何も言いかえせないんだろ? 「…っ……」 「ごめん、余計な事言って。でも今日は帰った方が良い。良かったら送っていきます」 3-274 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 12 52 ID rCxzesR9 私の無言の意味をはきちがえたのか…新海は、慌てた様に私を伺い見た。 私は拒否するでもなく、新海をもう一度睨むと黙って歩き出した。新海はどうしたものかと佇んだままだ。私は足を止めイラついたように振り向く。 「送ってくれないわけ?」 新海はえ…あ、うんっ…と小さな声で返事を返すとおずおずと私の後を追いかけてくる。 その日だけは素直に家に帰ってやった。 それからは知らないうちにアイツを目で追って、 戯れに時たまアイツと話すようになった。突然話しかけられるようになって新海も最初はびびってたし驚いたみたいだけど、次第に普通に話をするようになった。 3-275 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 18 34 ID rCxzesR9 何で話しかけるようになったかなんて自分でも分からない。始めは、ちょっとからかってやろうと思っただけなのかもしれない。でも、でも最近では新海の声 を少しでも長く聞いていたいと思い始めている自分に気が付いた。 新海が…良い。新海の側が良い。 遊びで男と簡単に寝るなと諌める真剣な眼差しも。 どんな悩みも打ち消すような優しい笑顔も。 入ってはいけない私の心に深く突き刺さる。 3-276 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 20 00 ID rCxzesR9 でもこの想いは誰にも言えない、アイツに…新海にも言えない。 だって新海は綺麗だもん。 私みたいに汚れてないもん。 それに……私は新海のタイプじゃない。新海はもっと清楚で可愛いタイプの子が好きだと思うから。私みたいに、世間一般的で言ういわゆるギャルで馬鹿で遊びまわってるような女じゃ多分新海は迷惑だろうから。それが、私の理性をかろうじて止めている。 それでも、私の想いは止められない。 新海に触りたい。 新海に抱きしめてほしい。キスをして、頭を撫でて好きだよって言ってほしい。その想いが強くて、苦しくて、悲しくて、歯痒くて。 眠れない夜も何度かあった。 その反動か今までにないくらい荒んだ遊び方をした事もあった。 ――無理矢理色んな男とやろうとした事もあった。 それでもやっぱり目の前には新海が浮かんだ。 やっぱり悲しい顔をして、私の名前を呼ぶ。 「好き」という感情を確信した時には、もう私は他の男と遊べなくなっていた。 友達との遊びにも男が来るようなら足を運ぶことはなくなっていた。 新海を、新海だけを想うようになっていた。 それは……昔、初恋の彼にも感じた事がない想い。 「本物」の恋。 一生他の男となんか遊べなくてもいい。 アイツだけが…新海だけがいい。 分かってる。 私にはその資格がない。 ずるい人間で汚くて、色んな人を裏切って弄んできたんだもん。 それでも私には新海が必要だから。 新海がイヤならHとかしなくていい。 新海のそばにいられれば……それだけでいい。 3-277 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 22 45 ID rCxzesR9 「あれ、風見さん? どうしたの?こんな時間に」 放課後の教室で、窓からぼんやり校庭を見ていた私に新海が声をかけてきた。 初夏の夕方。 暑くも寒くもない涼しげな風。 新海は不思議そうに首をかしげながらちょっと間を空けて私の隣に立つ。 「そういう新海は?」 「俺は……なんとなくです……何となくここに来たら風見さんが……」 ぶわっと涼しげな風が新海の声をさえぎった。ふと横目で新海を盗み見る。 少し目を細め気持ちよさそうな新海の横顔、優しい笑顔。 そんな時の彼はちっとも悲しい顔なんかしていない。 私の、見たくない顔じゃない。 「……」 「風見さん、何か悲しそうですね……どうしたんですか?」 「え…?」 3-278 :初夏の風:2010/09/12(日) 15 23 43 ID rCxzesR9 汚れを知らない瞳。 そんな瞳で私を見る。 汚れきった私を。 新海はこんな私の部分を知ったらどう思うんだろう。 いつも新海を見てること。 いつも新海を想っていること。 いつだって新海に触りたいと、抱きつきたいと思ってること。 散々男と遊んできたのに今更って軽蔑するかな?気持ち悪いっておもうかな? 優しい言葉に私の自制心がきかなくなってくる。 全部……新海のせい。 私はそっと新海の胸に飛び込んだ。 「…うおぇぉわっ!?」 びくついた後、新海が変な奇声を上げて固まる。 このまま一生私の物になったらどんなに嬉しいだろう。 笑顔ですら自分の中に閉じ込めたい。 誰にも見せたくない、触れさせたくない。 ずっと私のそばにいて、私だけのために笑っていてほしい 「じゃあ新海が慰めてよ……」 驚いてる? 胸に顔を埋めているから今の新海の表情は私には見えない。 でも新海も今の私の表情なんて見えないでしょ。 こうしてるだけで、幸せに思う私の表情なんか。 私たちのふたりの息遣いがこんなにも近いのも。 ぶわっと勢い良く私と新海を包み込んだ初夏の風しか知らない。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1016.html
「断ったわよ」 時は放課後、場所は文芸部室。 ハルヒは前置きもなく俺にこう告げた。 今部室には俺とハルヒしかいない。 ハルヒ曰く、 「有希は今日用事があって来れないって。みくるちゃんも。古泉君はバイトらしいわ」 俺が部室に入ってきて早々聞いてもないのに教えてくれた。 長門のフォローか。どんな魔法で俺のその場凌ぎの嘘に気付いたかは知らんが感謝するぜ。今度何か奢ってやる。 さて話を戻す。 俺は定位置のパイプ椅子で団長様の先程の一言を拝聴した。 一応耳には入り脳にも届いて意味も理解したが、念のため聞きなおす。 「それは『告白』をか?」 「そうよ」 俺は「そうか」とだけ答え、大きく息を吐いてパイプ椅子に身を沈めた。天井を仰ぐ。 さっきの男の雰囲気や言葉で、なんとなく答えは見えていたが、やはりハルヒ自身から答えを聞くまで落ち着かなかった。 今の一言を聞いてようやく落ち着いた。落ち着いたら力が抜けた。脱力ってヤツだ。今日は本当に疲れたぜ。 ハルヒは団長椅子からぴょんと飛び跳ねて俺の方に近づいてきた。 にんまり微笑んで、 「なーにそんなにホッとしてるのよ? あんたもしかして、あたしが断らないんじゃないかって心配してたの?」 からかうようなハルヒの声。 さすが団長様。ふざけておっしゃってるつもりでしょうが、かなり的を射ててるんですよ、それ。 俺は無言のまま、ハルヒを人差し指で招く。今朝の逆だ。 「? 何よ?」 ハルヒが俺の方に頭を近づけるため体を屈めた瞬間、 俺はハルヒの右腕を取って自分の方に引き寄せた。 ハルヒがバランスを崩してよろめく──それを空いた手で受けとめて、さらにハルヒの体をくるりと回転させた。 すとんとハルヒは俺の膝に着地した。まるで子供を抱っこしているような格好だ。 「えええええええっ!?」 ハルヒが俺を見上げ狼狽している。 俺はあたふたするハルヒに構わず抱き寄せた。黒髪に顔を埋める。甘い香り。 俺は自分の心情を包み隠さず吐露した。 「そうだ、不安だったさ──だから俺は今めちゃくちゃ安堵している」 ハルヒが息を呑んだのがわかった。 俺はそれ以上語らず、ハルヒの艶やかな髪に顔を埋めながら、両腕でハルヒの存在を確める。 ハルヒは最初全身を強張らせていたが、次第に力を抜いて俺の胸に体を預けた。 心がどんどん落ち着いていく。 ここ一日の不安や絶望の残り滓すらきれいに溶けて消えていった。 何分経ったろう。ハルヒがおもむろに口を開いた。 「──そんなに不安だった?」 それは今まで聞いたことのないほど優しさに満ちた声音だった。 「ああ」と俺は呟く。 「バカね」 ハルヒの口調は柔らかいまま。まるで小さい子供に言い聞かせるような。 「ホントバカ。言ったでしょ?あたしはあたしだって。あんただって言ってたじゃない、『人の意見なんかに左右されない不可侵の団長様』って」 だから断ったのか。 何だ、俺はもう昨日の内に知らず阻止していたわけか。とり越し苦労とはこのことだな。泣けてくるね。 「そうだな」 俺は溜息一つしてそう呟いた。ハルヒはこつんと拳で軽く俺の胸を叩く。 「だから安心しなさい。あたしはあんたの側にずっといるから──」 俺はその言葉に縋りつくかのようにハルヒを一層強く抱きしめた。ハルヒの肩がぴくんと跳ねる。 吐息とともに俺は囁いた。 「そうしてくれ、頼む」 それが俺の答えだ。 この答えがいつか様々な感情に成長したり発展したりするのだろう。 今はこれ以上の答えは出せないが、いつか遠くない未来に必ず出すから。 それまで、 『そばにいてくれ』 「……キョン、くるしい」 ハルヒが俺の腕の中で身動ぎした。どうやら強く抱き締めすぎたらしい。 「あ、ああ、すまん」 腕を緩め、ずっと埋めていたハルヒの髪から顔を上げた。 ハルヒは少し身を引いて俺を見上げる。 ハルヒ? 「お前なに泣いているんだ?」 ハルヒの長い睫毛に小さな雫。そんなに苦しかったのか? 「ち、違うわよ。ちょっとびっくりしちゃっただけよ!?」 ハルヒは慌てて手で目を隠す。手の隙間からほんのり赤くなった頬が見えた。 ―─ハルヒ、それ反則。 俺は本能的にハルヒの手を退けて瞼に軽く口付けた。 涙で唇が少し潤う。 ハルヒはぱちくりと大きな目を見開きしばらく固まっていた。 かと思うと、耳まで真っ赤になりながらわなわなと口を歪め、とうとうそれを大きく開いた。 「キョン!!」 わぁ、びっくりした。こんな間近でそんな大音声聞かせんでくれ。 「もう!! いきなり! 恥ずかしいこと! するな!」 スタッカートを効かせてハルヒが喚く。 「すまん、あまりにも可愛かったもんでな」 「──!! そういうこともさらっと言うなー!!」 と言ってハルヒは俺の胸に顔を伏せてしまった。 ああ確かに恥ずかしいこといったな俺。言った端から顔が熱い。 ハルヒは顔を伏せて俺のブレザーを掴みながら「う ー」とか「むー」とか唸っている。 ぽんぽんと頭を撫でてやると、今度は「アホキョン」「キョンのくせに」「キョンのバカ」とぶつぶつと呟き続けた。 やれやれ。 一通り俺に対して文句を並べたところですっきりしたのか、突然ハルヒがガバッと顔を上げた。うぉ、近ぇ。 にんまりとしたアヒル口。 うわー、なんか企んだな、コイツ。 と思ったらネクタイをがしっと掴まれ勢いよく引っ張られた。俺の頭は連動してハルヒの目前に引き寄せられる。 ハルヒの顔が近づいた。 ──もしやこれは。 俺は反射的に目を閉じる。 しかし、一度夢で味わった柔らかく甘いものは予想とは違う場所に押し当てられた。 俺の閉じた瞼に、だ。 「お返しよ」 目を開くとへへーんと満足気な顔をしたハルヒ。やはりやられたままではいたくなかったらしい。 目には目を、と言うわけですかね?意味が違うが。 いや瞼でも充分恥ずかしいですけどね。現にされた瞬間から鼓動が速まったからな。 ハルヒはケラケラと上機嫌に笑いながら、 「なぁに? キスされると思った?エッチぃわねキョンは」 「悪かったな」 どうやら俺は至極残念そうな顔をしていたらしい。 男とはそういう悲しい生き物なんだよ。それにおあずけくらうと、さらに欲しくなるもんだ。 「だーめ」 ハルヒは胸の前で両腕をバツの形にし、 「なんの覚悟もなしに一時の感情に任せてしたら死刑よ、死刑。わかった?」 これには頷くしかない。 ただこの言葉はしっかり覚えておこう。覚悟ができたそのときのために。 ハルヒは俺が頷くのを届けると、立ち上がった。 「さあ、もう帰りましょ」 ハルヒは鞄を取りに団長席に向かう。 と、何かを思い出したように足を止め振り返った。俺の鼻先にビシッと指を突きつけ、 「言っておくけど今日は特別だからね!ホントはあんなことしたら即死刑よ!」 『あんなこと』とはどこまでを指しているんでしょうかね? まあ肝に銘じておきますよ、団長様。 日も傾いた夕暮れ時。 昨日と同じくハルヒと二人で坂道を下る。 昨日とは打って変わってハルヒは機嫌が良いし、俺の気分も晴々としているがな。今夜はぐっすり眠れそうだ。 ハルヒなんぞたまに鼻歌を歌っている。今日の授業で歌った曲だそうだ。しかしモルダウってそんなに明るい曲だったか? ところでだな。 「お前あいつに『本当の気持ちを教えてくれ』とか聞かれてたが、あれは何だったんだ?」 ぴたと足と鼻歌を止め、ハルヒは俺をじとっと咎めるような目で振り返る。 「やっぱり聞いてたのね?」 「聞こえてきたんだ」 俺は弁明らしきものをしたが、ハルヒは疑わしげな顔つきで「ふーん、どうだか」と呟く。やはりバレバレだったか。 ハルヒは少し黙ったまま何か考え込んだ後、悪戯っぽい目をして俺を見上げた。 「知りたいの? キョン」 「ああ」 教えてくれるなら教えてほしい。ちょっと──いやかなり気になるからな。 ハルヒはふふんと鼻を鳴らしたかと思うと、 「教えてあげない!」 と告げ、突然跳ねるように駆け出した。二、三歩進んだところで止まりくるりと踵を返す。 満面の笑顔。まるで季節はずれのヒマワリみたいだ。 俺はハルヒのその笑顔に、あの男に対する問いかけの『答え』を見つけた。 ──終わり
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/561.html
前へ 「紗季ー?どこ行くの?」 「探検してくる!すぐ戻るからー」 「もー、うちら遊びにきたわけじゃ・・・ねーってば!勝手なことすると私が怒られるんだからねー」 咎めるような花音の声を聞き流して、ピカピカに磨かれた廊下を小走りに進む。 「いいなぁ、綺麗な校舎!」 清潔感が保たれているだけじゃなく、建物全部がかっこいいデザインのこの学校。すっごくわくわくする。 今日は、姉妹校の生徒会との交流会に、会計の花音と一緒に来た。 花音曰く、生徒会の運営に関する情報を交換したりする真面目な会らしいけど、さっきから浮き足立っている。 今年から書記をやっている私にとっては、今日が始めての訪問。 昨日の夜までは結構緊張していたんだけど、放課後になったらだんだんテンションが上がってきて、さっきもバスの中で騒いで、引率の先生に怒られてしまったところだ。 「こんにちはー」 「あ、どうもどうも。えへへ」 通りすがりの生徒さんたちからの挨拶に、でへでへとアホっぽい笑顔で対応してみる。 見慣れない制服の私にもわざわざ挨拶をしてくれるなんて。さすが、ハイレベルなことで知られる学校だ。 校舎もオシャレだし、おっきめリボンの制服は可愛いし、心なしか生徒さんたちのルックスレベルも高く見えるし、まさに別世界って感じ。 でもでも、うちの学校だって、そりゃあボロだけど、生徒会には結構可愛い子いっぱいいるんだから。彩香とか、憂佳とか、花音とか。卒業しちゃったけど、前の生徒会長さんの真野さんも美人だったし。 それに、このオーソドックスな紺色のスカーフのセーラー服だって、あんまりオシャレじゃないかもだけど、私は結構気に入ってたりする。お母さん世代には好評なんだから! 「ん?」 ふと、窓の外に目を向けると、中庭に小さな家みたいな建物があった。 ステンドグラスの小窓で、屋根のとこには十字架がついている。ということは、教会・・・かな。 そういえば、キリスト教系の学校だって話だったっけ。会議中はいっつもラクガキして遊んでるから、真面目に聞いてなかったけど、多分そうだった。きっと。うん。 何となく興味がわいて、私は上履きのまま、そっと外通路に出た。 「ちょっと、紗季ってばー」 「ごめ、後で行くから!先に会議やってて!」 ・あーあ、あとで、めっちゃ小言言われそう。 でも、私は一度楽しげな事を見つけると、どうにも周りが見えなくなってしまうタイプで、今はもうカッコイイ外観の教会に夢中。 日が暮れかかった、人のいない中庭のど真ん中にどーんと存在しているそこのドアをゆっくりと開けてみる。 「うぉー、ちょーきれい」 まず目に入ったのは、天井まで聳え立つようなパイプオルガン。 両脇に並ぶ長机と椅子は綺麗に磨かれていて、校舎とおんなじで、ここもすごく大事に扱われているんだなっていうのがわかる。 思ってたより小さめの空間だったけど、こんなに素敵なとこなら、卒業生が結婚式とか出来そうな雰囲気だ。 「・・・げっ」 そのまましばらくキョロキョロと辺りを見渡していた私は、正面に視線を止めたまま固まってしまった。 正面にあるパイプオルガンと、さっき外から見た色とりどりのステンドグラスの下。とても小さな背格好の生徒さんが、丁度跪いてお祈りを捧げているところだったから。・・・てゆーか、私、空気読めてない。? 栗色の長い髪が、窓から差し込む光を受けて、独特な色合いを帯びている。 それはとても神秘的で、荘厳で、現実感のない、不思議な光景だった。 邪魔しないように、とっとと退散すればいいのに、なぜか足が凍りついたように動かない。 小さいけど、制服が青のチェックだから、ここの高等部の人なんだな、なんてどうでもいいことが頭をよぎった。 「あら・・・?」 やがて、その人はゆっくりと顔をあげ、こちらを振り返った。 「ど、どうもー・・・あはは」 「まあ・・・」 その、夢でも見ているかのように、ぼーっとしていた目つきが、私を見ながら、ゆっくりと力を取り戻していく。 美少女、っていうより、めっちゃ整った顔だなって思った。 女の子っぽい綺麗さじゃないっていうか。こういうの、花音ならうまく表現してくれそうなんだけどな。 とおった鼻筋に、ちょこんと小さい唇。 何よりも印象的だったのは、私を見つめる子犬っぽいその目だった。 黒目しかないんじゃない?ってぐらいに存在感のある茶色い瞳には、まるで魔法みたいに人を金縛りにさせる効果があるみたいだ。 吸い込まれそうな瞳っていう表現が、こんなに似合う人も珍しい。 「・・・」 「えーと、あのー・・・?」 その人は、私の顔をまじまじ見たまま、全然動かない。 おっきい音とかにビビる小動物みたいなリアクションだな、なんてちょっと思ってしまった。 そんなことを考えていると、その唇がゆっくりと開いた。 「あぁ・・・ごめんなさい。ちょっと驚いてしまって・・・。ごきげんよう。あの・・・中等部の方かしら?えと、姉妹校の・・・」 「あっ!はい、そうです!あの、しみゃいこうの!はい!ごきげんよう!ございます」 顔立ちからは想像できないような、舌たらずでふにゃふにゃした喋り方。 それでいて、口調はすごく丁寧で・・・一体どんなキャラなんだろ、この人。大人か子供かよくわからない。 思わずテンパッて元気すぎるぐらいの返事をしたら、口元を押さえてウフフなんて笑われてしまった。 「あの、なんかすいません」 「え?」 「お祈りの邪魔しちゃったみたいで。てか、びっくりさせちゃって・・・」 「いいえ、こちらこそ」 手前の椅子を軽く引いて、その人は上品な仕草で腰掛ける。 慌てて隣に腰掛けると、ふわっとバニラみたいないい香りがした。 長い睫毛を儚げに揺らして、軽いため息をつく仕草が色っぽい。 ・・・うう、どうしよう。そわそわする。 私みたいな庶民でも、いや、庶民だからこそわかる。この人、多分、すっごいお嬢様だ。 立ち振る舞いや言葉遣い以前に、何かもう全然違うもん。放っているオーラが。 「・・・お名前を、お伺いしてもいいかしら」 「はいっ!え、えと、小川紗季です!」 「まあ、サキさんというの・・?ウフフフ」 なぜか、背中を揺らして笑う。 「ごめんなさい、私ったら。生徒会にも、サキさんという名前の方が二人もいるから、つい楽しくなって」 「はあ・・・」 お嬢様のツボというのは、なんだかよくわからない。 話題を変えようと、私は口を開いた。 「あの・・・キリスト教徒さんですか?」 「え?」 言ってから、ヤバイ!と私は口を押さえた。 たしか、初対面の人には政治と宗教の話はどうたらって花音が言っていたような。変なこと聞いちゃったかも。 「えと、何か、お祈りしている姿がキレイだから、マリア様みたいだなって思って・・・てか、ここ、ないんですね、マリア様とかイエスキリストの像とか!」 話せば話すほどわけがわからなくなって、墓穴を掘っている気がする。 こんな失礼な奴が生徒会メンバーだなんて・・・頭の中で花音が、アチャーって頭を抱えている姿が想像できた。 「・・・サキさんは、面白いのね」 そんな私を興味深そうに観察したお嬢様は、目を細めてまた笑った。・・・あ、可愛い。 笑うと目がなくなっちゃって、三日月みたいな形になるんだ。 「私は、特別に信仰をもっているわけではないのよ。 ただ、心を静めたいときに、此方で個人的に祈りを捧げているの」 「へー・・・」 それからお嬢様は、私に色々な話をしてくれた。 ここの学園は、キリスト教でぷろてすたんと(?)だから、マリア様とかの像がないとか、学校の中にある教会は、礼拝堂って呼ぶこととか。 とても優しく丁寧に教えてくれて、集中力のないこの私が聞き入ってしまった。 綺麗で優しくてお嬢様だなんて、漫画の中の人みたいだ。まさか、こういう人と関わることがあるなんて、つい数十分前までは考えもしなかった。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/wiki9_vipac/pages/1826.html
これで数えて何回目だろう。 これは夢なのだが。これは夢で無くなっていて。あれ……でも。……これは夢なのかなあ現実なのかなあ。 わたしは現実か。是か否か。そうではない。しかしこれは虚構だ。ウツロの呟いた小さな嘘――それがわたしだ。 朝だった。冷たい空気が開け放たれた窓からわたしの肌を貫いた。 夜は暑かったが、流石にまだ朝は寒いのだ。 わたしは窓を閉め、寝間着を脱ぎ、しわくちゃのシャツとジーパンを穿いた。 つけっぱなしにしていたラジオからは雑音が聞こえていた。 またやられたようだ。誰に。……所属不明の……破壊ACにだ。 その名のとおり、現れると手当たり次第に破壊。していくACだ。 目的はわからない。ただその力を振るい、町などを壊し、去っていく。 彼等について言えるのは、わたしたちを脅かす存在、ということだけ。 そしてわたしは彼等と戦っている。それが義務なのだから、しょうがない。 もう一度、ダイヤルをぐりぐり回すが、やはりノイズしか聞こえない。 電波塔が壊されたのだろうか。いや放送局かもしれない。でも、どうでもいい。 そんな事は知らない。訳の分からない事には首を突っ込まない方がいい。 わたしは足から浸かり初めて首まで分からない事だらけなのだ。頭から入ったら死んでしまうではないか。 そんなわたしの身体はわからない事で出来ている。わからない事は嫌いだ。 早々と朝食を済ませ、車に乗る。そして目的地を打ち込む。 すると車は走り出し、私を、ACの待つ格納庫へ送り届けるのだった。 任務だ。私はレイヴンなのだ。 道。トンネル。トンネル。道。道。トンネル。幾つものトンネル。わきを駆け抜ける車と、たまにすれ違う対向車。 車内は蒸し暑かった。たまに、ごとりと、車がゆれるので、しっかりとシートベルトをした。 朱《あけ》灯りに照らされたアスファルトの大体は、こぶし大の穴だらけだった。 かまぼこ壁に張り巡らされるダイナマイトが爆発したかのような亀裂には、いくら応急と着飾った所で、 どうしようも粗末過ぎる修復が施されていた。しかし咎める者はいない。 いまだに、コゲアトと区別もつかない乾いた血だまりも、そこいら中にある。 多分、窓を開けたら、相当臭かろうと思う。だから熱くても、窓は開けなかった。 目的地までの最後のトンネルを抜けると、白色光の照明に照らされるとても小さく白い結晶によって、道路は埋め尽くされていた。 それは美しかった。たとえ、ひび割れた天球スクリーンから降り注ぐの映像素子の欠片だったとしてもだ。 車外をのぞくともくもくと煙が上がっているのが見える。折れた電波塔が燃えていた。 やがて電波塔が、わたしの真横を通り過ぎると、車はスピードを速めた。 黒煙は限りある空の向こうへ消えていった。地面を埋め尽くしていた有毒の雪も、姿を消した。 背後から、爆音が響く。さきほどのトンネルが爆破された。 あいつ等が、もうやってこられないようにだ。 軍の敷地に入るとさすがに、車ががたがた揺れることは無かった。 駐車場で車は停止し、わたしは車外にでて、また別の車に乗った。 格納庫では整備員が数人で大きな作業用の機械を動かしていた。 人間はあまり居なかった。代わりに作業用のテクポッドが大急ぎで駆け回る。 「おお……レイヴン」 わたしを見るといなや走り寄って来るオペ子。 わたしの手を握り、泣く。あっというまに膝が崩れて、頭から固い床に激しくぶち当たる。 もはや彼女に正気は無かった。少人数の整備員たちは、無機質なテックボットと共に、作業を続ける。 「レイヴン……レイヴン、おう、アアあ――嗚アアア――」 オペ子はくるってしまった。 彼女はあの光景を見たのだ。きっと……この前の作戦中に。 狂気とは一種の、ウィルスだ。 狂った光景を見て、精神が焼き切れた者に感染するのだ。 床に我が身を委ねたオペ子。目はすでに、死んだ魚だ。空《くう》を貫くウツロを見ている。 もうわたしが、彼女に語りかけてもなにをしても、わたしが誰なのかもわからなくなった。 次第に泣くことにも疲れ、いひひぃい、と奇妙な笑いのみを漏らすようになった。 その後、咽喉がかれても潰れても、彼女は鳴き声を絶やさなかったそうだ。 わたしは狂った彼女をテックボットに預け、自分のACの元へ急ぐ。 その途中、誰かに目が合う。整備中のMTの足元。見覚えのある、透き通った肌。薄い唇。 あの夢。今もはっきりと思い出せる。夢の中の少女が、私に向かって、笑った。 折れた百合のように儚い微笑みは、その後本当に折れた。何度も畳まれ、とても小さくなった。四角くなった。 わたしが驚いて瞬きをした次には、彼女は消えていた。いったい誰なのだろう。 どうも何時も、その笑みはわたしの歩調を狂わせるのだ。 雨が降る。その雨はわたしを吊るした輸送機に打ち付けられる。 でも鋼鉄で出来た輸送ヘリはその様なもので、落ちるものではない。 だから、そのまま突き進むヘリ。進む、進む。そして、静止。 僚機のAC――Sir.ガンザリックの固定金具が音を立て外れる。続けて、わたし。 その真横を後ろで控えていた三機の戦闘機が通り過ぎる。そして、たちまち爆散。 爆発音は、聴こえなかった。 その残骸は濡れてぬかるんだ地上に降るのだろう。でも落ちた音も聞こえないのだ。 なぜならその音はガンザリックが大地を踏み抜く音と点火されたブースタの轟音でかき消されたからだ。 わたしは小刻みにブースタを噴かし、姿勢を立て直した後、ジグザグにガンザリックを追従した。 『レイヴン。敵の進攻は予想以上に早い。充分ちゅう……うああああああああああ!!』 退避途中にあった輸送機が敵の鉄甲弾によって貫かれた。 爆音に貫かれた豪雨はその爆発を中心として球状に広がり、また元に戻った。 そしてまるで、ソコには何も無かったかのように、一心にまた、降り続けた。 長銃を両手で構えた場違いな、純白の破壊ACは、全部で五体。 そのACたちを囲んで、壁のような役割を果している破壊MT。 しかしわたしはひるまない。中央マルチスクリーンをタッチし、戦闘モードを起動した。 《 エネルギー供給源をバッテリーから、メインジェネレータへ……切り替え完了。 》 《 火器管制回路のリミッターを完全解除……全兵装への電力供給がスタートします。 》 《 システムチェック……システム、オールグリーン。 》 《 メインシステム、戦闘モード起動します。 》 それからも、何度も、何度も、激しい戦闘が、繰り返された。しかしわたしが何度帰還しても、 またオペレータが変わっても、軍が潰れて国がなくなり、知っている人がいなくなって、わたしの知らない人もいなくなり、 いまだ見ぬわたしが何千機も敵を倒して生き残っても、何も変わらなくて、世界は滅びた。 わたしは、消え逝くコクピットの明かりの中で、彼女を見た。少女は相変わらず、全てに向かって、微笑んでいた。 夢と現実が入り混じったこの空間には、わたしと、少女――しかし彼女は一体誰なのだろう――の、二人で成り立っていた。 ボット、見ていると、何か語りかけてくるような気がするが一向に意味が分からなかった。 しかしのその――とてもうすく乾いた、その笑顔だけは、わたしは理解している。 その能面は、嘲笑だ。あざ笑っているのだ。私を。自分以外の他人を、あらゆる物を。 風地火水の四大元素でさえ届かない、全てを超越したところから、あざ笑っているのだ。 あざ笑われてどうということは無いが、彼女がそれだけをしているだけの存在だという事がまことに許せなかった。 そんな事を考えているとやはり、まぶしい朝日が見えるのだ。つまりこれは夢なのであったのだ。終わりのない夢がわたしの現実なのだ。 だからわたしは目覚めるまで戦う事をやめないつもりだ。 終わることなく終わりを迎えるこの閉ざされた世界で闘って戦い抜くことこそが、わたしの宿命なのだ。 つ<つまるところはしゃぶれってことさ
https://w.atwiki.jp/holyland4/pages/106.html
シスター・マリー ステータス ス キ ル プロフィール 攻撃 12 1 戦鬼 名前の読み しすたー・まりー 防御 2 2 聖人 性別 女性 体力 5 3 衣装 修道服 精神 4 胸のサイズ 並以上巨乳未満 反応 1 格闘スタイル 我流十字架術 FS 6 FS名 信仰心 武器 鉄製の十字架(約2m) 必殺技 『我流十字架術奥義 天罰』(消費MP:4) 効 果 : 強攻撃(デメリットなし)+発勁 制 約 :なし 説 明 : 高く飛び上がり、手にした十字架を大きく振りかぶって相手の後頭部に叩きつける。 聖なる力により、相手は追加で体力20ダメージくらい痛がる。 キャラクター説明 聖アリマンナ教会に所属する、16歳の少女。 銀色の長髪と咥えタバコがトレードマークの不良シスター。 目つきは鋭く口も悪いが、性根は真っ直ぐでそこそこ信心深い。 幼い時分に魔人能力に目覚めたことを理由に親に捨てられ、教会の運営する孤児院で育てられた。そのため、教会と施設に恩義と愛着を感じている。 成長した今はシスターとなり、学校から帰ってきた後は、憎まれ口を叩きつつも率先して雑務を引き受けている。 とある事情で教会の経済状況が悪化し、自分の育った孤児院と世話をしている子どもたちを守るため、1兆円の賞金を獲得するべく今大会に参加する。 魔人能力は脚力の強化。 ちなみに所持武器の十字架は、飛び乗った教会の屋根から引き抜いてきたものである。 「オラァぶっ飛べ雑魚共!アーメンッ!」 エピソード 歌のお姉さん「良い子のみんな~、おっはよ~!」 \オハヨー!!/ 歌のお姉さん「今日はこちら、聖アリマンヌ教会付属なかよし児童館に遊びに来ています!」 (元気に手を振る子どもたち) 歌のお姉さん「それではみんなで元気に、パンパカパン体操はっじまるよー!」 ♪パンパカパーン パンパカパーン パンパカパ ガゴン! ガガ……ガ…プシュー (突如どこからか落ちてきた巨大な十字架が直撃し、ラジカセが火花を散らして沈黙する) 歌のお姉さん「あれ?どうしました?うわっ!」 (突然よろけて倒れこむ眼鏡を掛けたシスターと、彼女に駆け寄る銀髪のシスター) 銀髪シスター「おいどうしたんだ、大丈夫か(棒」 眼鏡シスター「ああっ、一昨日から何も食べていないせいで眩暈がっ(棒」 (続けて激しく咳き込む) 銀髪シスター「……なんてことだ、こんなに熱も出ているじゃないかー」 眼鏡シスター「経営難に陥っているこの聖アリマンヌ教会に、病院に行くような余裕はありませんわ。それに……」 (子どもたちに向かって手を伸ばす) 眼鏡シスター「神に祈りを捧げ、こどもたちに囲まれているだけで私は幸せなのですからー」 (シスターの周りに集まるこどもたち) \オネエチャーン/ \シンジャヤダヨー/ \オナカスイタヨー/ 眼鏡シスター「なんという悲劇でしょう!こどもたちの笑顔すら守れない私をどうかお許し下さい嗚呼、せめて、せめてもう少し寄付があれば!寄付 があれば~」 (寄付金の振り込み先を書いたフリップを、カメラの前に掲げる銀髪シスター) 銀髪シスター「皆様の温かいご支援を」 \オマチシテオリマース!!/ 静寂 歌のお姉さん「……あ、えーと……はい、それではまた明日~」 ************************************* 「うう、予想外です……。今月も大赤字です……。」 電卓を叩き終えると、眼鏡を掛けた修道女、シスター・エルザは頭を抱えた。 ここは聖アリマンヌ教会の事務室。午前0時を回ったところだった。 「テレビにで取り上げてもらえれば、寄付金が増えると思ったのに……」 「いやいや、いくらなんでもありゃあんまりだったと思うぜ。乗った俺が言うのもアレだけどよ」 翌日の朝食と子どもたちに渡す弁当の仕込みを終え、銀髪を揺らしながらシスター・マリーが部屋に入ってきた。 支援倍増計画は失敗に終わり、教会のTwitterアカウントは絶賛炎上中だ。 「恵まれない子供たちを救う教会が貧困に喘いでいる姿を見て手を差し伸べようともしないなんて、渡る世間は鬼ばかりです!全力で『子供を暖かく育てる、儚くいたいけなシスター』を演じたというのに!」 「変なアドリブまで入れてな」 台本になかった咳き込みのせいでタイミングが狂い、セリフを忘れそうになったことを思い出した彼女がチクリと言った。 「まずその貧困の原因が、シスター長が教会の金横領してホストに貢いだ挙句トンズラだからなあ」 溜息を一つつくと、ポケットからタバコを取り出し火をつける。 エルザの咎めるような視線に気づいたマリーは、「NO SMOKING!」の張り紙の前を横切って窓辺に立ち、外に向かってフーと煙を吐き出した。 「やはり他人の力を当てにしたのは間違いでした。未来は自分の力で勝ち取るものなのですよ!」 握りこぶしを作り、エルザは勢いよく立ち上がる。 「なんか逆転の秘策でもあるのか?」 「あまり使いたくはありませんでしたが……これを見よっ!」 ババーン☆と音響効果を口にしつつ、エリザはマリーの前にチラシを広げた。 「なになに、流派不問の格闘大会開催。優勝賞金1兆円……?」 「マリーちゃんに、これに出てもらいます!」 「俺任せかよっ!」 「……嫌?」 「嫌だよ!」 「一兆円ですよ?これさえあれば、このなかよし児童館も安泰です」 「そりゃそうだろうけど、なんで俺が!?」 口角泡を飛ばすマリーに対し、エリザは眼鏡を光らせて言った。 「面倒臭がりなマリーちゃんならそう言うと思っていましたよ。これを見てください!」 そう言って取り出すは、紐の通った五円玉。 マリーの前に歩み出ると、エリザはそれを振り子のように揺らし始めた。 「はいマリーちゃんこれ見て~。貴女はだんだん格闘大会に出たくなる~」 「誰がそんな古典的な方法で……」 「マリーちゃん、私ね」 アホらしい、と続けるその言葉に蓋をするように、シスター・エリザが続ける。 「私、この場所が好きです。施設の子どもたちも、マリーちゃんも、大好きです」 「……んなこと言ってもダメだ」 「頼れるのは、マリーちゃんだけなんです」 「……」 「貧乏だって構いません。でも、ここがなくなってしまうのは嫌なんです!」 真っ直ぐにマリーを見つめる。 自分に期待を寄せる親友の目。 「~~~ッ!」 暫し顔をしかめて思案していた彼女は大きく溜息をつくと、タバコを灰皿に押し付けて口を開いた。 「……効いてきた」 「え?」 「お前の催眠術が効いてきたって言ってんだよ!出りゃいいんだろ、その大会に」 レンズの奥の瞳が途端に煌めき、エルザはマリーに向かって抱きついてきた。 「ありがとう!」 「言っとくけどな、期待すんなよ?出るだけ、出るだけだかんな」 エリザを振り払うと、部屋を出ていこうとするマリー。 「どこ行くんです?」 「コンビニだよ、コンビニ。タバコが切れちまった」 ついてくんなよ、とエリザを睨むと、マリーはそそくさと出かけていった。 誰もいなくなった事務室で、エリザはフフと笑った。 「……まったく、チョロいなあ」 小さい頃から何も変わらない。悪態をつきつつも、頼れる親友は必ず動いてくれるのだ。 「さてと、私にできることをやらなくちゃ」 マリーが帰ってくるまでに選手登録の下準備くらいは済ませておこうと、軽く伸びをする。 その瞬間、槍で突かれたような胸の痛みが彼女を襲った。 冷たい床にうずくまり、そして激しく咳き込む。 視界が揺らぐ。息が吸えない。 「ごめんね、マリーちゃん……」 ひと月ほど前から起き始めた発作は、時が経つに連れてその頻度を狭めていた。 病院には、治療に高額の医療費が掛かることが分かってからは行くのを止めた。 これ以上隠し通すのは無理かも知れないと思う。 でも、その時が来る前に、せめて…… しばらくすると、幾らか呼吸も整ってきた。 以前よりも力の入らなくなってきた身体を、壁で支えて立ち上がる。 青ざめた顔に流れる汗を修道服の袖で拭うと、エルザはしっかりとした口調で呟いた。 「急がないと、いけませんね」
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/536.html
(投稿者:怨是) Sep.15/1943 今日はシュナイダー教官の叱責を受けてしまった。 頬と額に、まだ痛みが残っている。 人とMAIDは姿形はそっくりなのに、何故こうも違ってしまうのだろうか。 私はただ、ただ、教官の片腕の代わりになりたいだけなのに…… 少しの恋心と、教官の力になりたいだけなのに。 ゼクスフォルト少佐とシュヴェルテは、あんなにも仲良しなのに。 頬が痛いし胸も痛い…… 感情の整理がまったくつかない。 (後略) 作戦が終わり、軍用車両で本部へ帰還した時の話だった。 ――アシュレイ・ゼクスフォルト。 エントリヒ皇室親衛隊所属。階級は少佐。 シュヴェルテの担当官であり、まばゆい銀の長髪と端正な顔立ちは、親衛隊一の色男とさえ云わしめた。 「私は、お役に立てましたか?」 表情を曇らせるシュヴェルテに、ゼクスフォルトが柔和な笑みでフォローを入れた。 粗雑な言葉だが、確かな包容力がある。 「当たり前だろ。俺が教えたんだ。役に立てない訳が無いさ」 「ありがとうございます、教官。 しかし、教官の援護射撃が無ければ危うかったと思います……精進しますわ」 「MAIDだって生きてるんだ。ミスはあるだろ。いいんだよそれで。また俺が守ってやる。 おっ、そうだ。明日から一週間の休暇だ。お気に入りのカフェに案内するよ」 「楽しみにしております。では早めに床に就かねばなりませんね」 恋人のようなやり取りでゆっくりと車を後ろに進める。 砂利が擦れる音に紛れず、会話は極めて和やかに行われる。 駐車しつつ談笑する二人を横目で見ていたジークフリートは、面白くなかった。 自分にはここまで親密な関係が無かったからだ。 “生まれて”この方、シュナイダーとの関係はただの上司と部下。 それも悩み事の相談なども一切存在しない、周囲から見れば非常に冷淡なものなのである。 犬と飼い主でさえ会話する。 もはや道具と持ち主か? 否、世の中には銃に話りかける兵士だって居るのだ。 ――私だって、あれくらい仲良くなりたい。 心に秘めたる嫉妬を、ジークは否定できなかった。 「ゼクスフォルト少佐ならびにシュヴェルテ。私語は慎め。 貴様らのだらしない態度にジークフリートがお怒りだぞ」 「うッ、失礼いたしました! 軽率でありました!」 そんな二人を、こちらの運転手の士官が咎めた。 ジークは急いで眼を逸らすが、その様子もまた誤解を生んでしまうのである。 彼らは焦燥と若干の苛立ちを含んだ面持ちで口をつぐむ。 「だらしのない奴だ。注意したのが私だったから良かったものの……」 別に恋路を邪魔するつもりは無かった。 無いものねだりをしていただけである。 ああ、シュナイダーもああいう風にフォローしてくれたら…… そのシュナイダー少佐は、ジークの隣に座っていた。 隻腕にして隻眼。 無表情にして無愛想。 戦闘中の事故によって欠損してしまった右目と右手はいかんともしがたく、車両の運転は代理の士官に行わせるのである。 彼は鉄仮面などと形容できたものではなかったが、この瞬間くらいしか隣に並ぶ時間は無かったのだ。 報告に行くときならまだしも(それでもゼクスフォルトとシュヴェルテは隣に並ぶのだが)、 せめてプライベートの時くらい隣にいてくれたって良いのではないだろうか。 自然と、憮然とした表情へと変えて行くジークをバックミラー越しに見た運転手が振り向く。 「お怒りはご尤もですが、何、彼らも反省しておりますよ。 どうかご容赦くださいませ」 違うと反論したいのに、いつも声が出なかった。 咄嗟に出た小声も、むしろ両目に篭った不機嫌の塊のせいで別の意味を成してしまう。 運転手にはどうやら“ああ”と聞こえたようだった。 「流石は我等が英雄。寛大な心をお持ちでらっしゃいますね」 皮肉ではないのだろうが、盛大な勘違いに胸が痛む。 そうこうしているうちにサイドブレーキを引き、ギアーをパーキングに。そしてキーを引っこ抜く音が聞こえてくる。 「お疲れ様でした。私はこれより駐車後のチェックをいたします」 「……ご苦労」 シュナイダーがやや間を空けて車のドアを開ける。それに続いてジークもドアを開けた。 空はとっくに日が落ちて、荒涼とした空気を月が照らしていた。 レンガ造りの兵舎の扉を左手のみで器用に開けたシュナイダーに、小走りで追従する。 規定時間までに、タイプライターで報告書を仕上げねばならない。 いかなる私語も許されないのはここでも同じ事であり、『カタ……カタ』と断続的な音を立てて報告書が書き上げられる。 ここは代理を用意することが出来ないため、必然的に残った左手のみで仕上げる事となる。 利き腕を失った今では、精一杯のリハビリを以ってしても両腕があった頃の倍の時間まで縮めるのが精一杯なのだ。 手書きなら、私が文鎮代わりになる事もできるのに…… 「代筆だって教えていただければ私が、」 「――貴様」 思わず口をついて出てしまった言葉に、咄嗟に次の言葉を両手で覆う。 完全に、やってしまった。 タイプする音が止まり、若干の沈黙が背筋を乱雑に掴む。 唾液の分泌が止まり、耳鳴りの群れが遠くから行軍を始めた。 鳥肌は寒さだけのせいではない。 「……私語は厳禁だと以前教えたはずだが」 もう駄目だった。 胸倉を沈黙に捕まれるような感覚に襲われ、硬直列車が心理駅に到着し、緊張乗客がホームへと雪崩れ込む。 身の毛がよだって凍りつく。 「それに、代筆の手順を学んだ上での発言か?」 まだ機械の熱が残る報告書をブリーフケースに丁寧に仕舞いこみながら、シュナイダーはこちらを振り向かずに咎める。 席を立ち、片手で椅子を動かす。 以前、椅子を戻すのを手伝ったことがあったが、無言で振り払われただけだった。 「……で、でも、しかし教官。私は……」 椅子を戻し終えたシュナイダーがこちらに振り向く。 眉間に寄せた皺からはその感情を俄かには察し難かったが、それが決してポジティヴなものでないことは察知できた。 上の歯と下の歯の震度が4を超えた所である。 ブーツの音がこちらへ近づく。 眼はしっかりとジークの顔を見つめ続けていた。 表情は、より険しさを増して行く。 「……己の慢心が口を緩めたか」 「ぃ、ぃゃ、そういうわけじゃ……」 沈黙がエターナルコアを鷲掴みにする。 「余計な手出しが大きなリスクが伴うことも教えた筈だ」 蛍光灯が、両者の表情をより青白く照らす。 暖色のレンガの壁さえ灰色に見えた。 「ですが、ですが、いつも、不便ではありませんか……? 私は、戦いだけでなく、他のところでも、お力になりたくて……」 「馴れ合いなら――」 「――私だって、パートナーでありたいのです。きょ、教官の心の支えになりたくて、だって、わっ、私、私は……」 ……途切れ途切れに、言葉が紡ぎ出される。 「私は教官をもっと知りたい。もっと好きになりたいのに……」 ……。 張り詰めた空気は、シュナイダーの左拳の一撃となって爆発した。 右頬に突然の衝撃を受けたジークは床に倒れこみ、暫く手で押さえるしかない。 鈍痛が頬骨に響く。 「MAIDが恋愛感情を持つなどと……そんな軟弱な考えを何処で知った」 「ぅ……」 「……立て」 顔を上げたジークの眼に、眼を見開いたシュナイダーの顔が映りこむ。 無言のまま、胸倉を掴もうとするシュナイダーはそのまま右肩を引いたが、 直後に右肩を見、見開いた眼に苛立ちが篭る。 「立てと云っている! ッ――?」 右手で殴ろうとしたのだろう。 しかし、そこにあるべき右肩から先が無かったのである。 次に後ろ髪に剣山のような痛みが走り、上に引かれる心地がした。 直後に視界が上から下へと急降下する。 あとは床と額が衝突するのを痛みと共に実感するだけであった。 霞む視界を上に移せば、シュナイダーの見開いた左目と、震える左手。 そして息を荒くして上下する肩が見えたのだった。 「反省の意思があるなら立て。私は報告へ向かう」 ブーツの音が無機質に響き、苛立たしげにドアが閉じられる。 冷え込んだ空気は、ジークフリートの涙で視界と共に淀み始めていた。 ――およそ一ヵ月後の1943年10月28日。 シュナイダー教官は、ジークフリートがスパイを13名討伐した日に担当官の任を解かれる。 MAID育成や指揮における優秀な手腕を買われ、国際対G連合統合司令部からスカウトがかかった為である。 上官らの計らいにってエントリヒ皇帝による勲章授与式の日程とは重複を避けるも、体調不良を理由に欠席したという。 ジークに授与された勲章は、実際には柏葉・剣付騎士鉄十字勲章である。 帝都栄光新聞で発表された金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字勲章はこの時点では存在しておらず、新聞記事の内容を知った政府幹部が急ぎこれをギーレン・ジ・エントリヒ宰相に報告。 後に予想されるジークフリートの数々の武功に備えて製造することとなったという。 新聞は幹部から秘密警察を通して、これらを踏まえた修正案を伝達され、公には“後の武功に備えて前以て授与されたものである”と説明。 なお、翌日の記事では授与式にてGに見立てた赤い柱を一刀両断するジークフリートの写真が掲載され、 その鋭い太刀筋は映像メディアによっても発表されることとなる。 BACK ◆ NEXT
https://w.atwiki.jp/vipcomike/pages/13.html
*テンプレ **■注意できるだけ重複を防ぐため、スレを立てる際はスレが埋まっていない限りあらかじめ宣言してから立てる。 1にある前スレは http //hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/0000000000/ から実際の前スレに変えておく。 1はスレ立てしたら、できるだけwikiの過去ログページに新スレを追加しておく。 1ができなかったら気付いた人がやる。 以下テンプレ ***スレタイ 【コミケ】コミックマーケット80対策本部 in VIP【夏コミ】 ※初めの【】は【コミケ】で固定ですが、後ろの【】内は自由に変更可能(だったはず)。特に思いつかなかったら【夏コミ】で。 スレ番号はVIPでは煙たがれるので入れない方向でお願いします。 *** 1 やぁ、久しぶりだな 元気にしていたかお前ら 今年もこの時期がやってきた このスレはコミケに関する話題ならなんでも自由だ サークルチェックの片手間に見るのもいい サークル参加者もぜひ書き込んでくれよ ただし注意事項がひとつだけある ※会場前の徹夜行為、及び徹夜しているやつの整理券自慢やその話題を出さないこと 徹夜行為は準備会に迷惑をかける最低な行為だ それに始発でいってもほとんど変わらん コミケで成人向けの作品を買う場合は、年齢確認をされる場合があるので 身分証明になるものをもっていくと便利だ 未成年の参加者は、年齢をごまかして買おうなどという気をおこさないこと 作品を売ってしまった側に迷惑がかかることになりかねん 次スレは 950が立ててくれ ただしスレの流れが速くなったら 950を 900にすること 前スレ:【コミケ】コミックマーケット80対策本部 in VIP【夏コミ】 http //hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/0000000000/ コミックマーケット対策本部inVIP http //www39.atwiki.jp/vipcomike/ 避難所: http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1278934948/ 携帯: http //ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=part4vip dat=1278934948 専ブラ(Jane系)への追加方法: http //janesoft.net/janestyle/help/faq.html#otherbrd *** 2 ■初心者で質問される方へ。 「今回のコミケで○○は並びますか? 混みますか? どれくらいで売り切れますか? 何時に行けばいいですか?・・・」 情報を手に入れたい気持ちは痛いほど察します。でも未来のことは・・・ 正 解 が わ か る は ず が あ り ま せ ん 。 ただ「参考までに、前回の状況を教えてください」と言うような聞き方なら、問題ないと思います。 その答えを参考にして、万一予想がはずれても、それはそれでいい勉強をしたと思って諦めてください。コミケは次もあります! カタログは事前入手をしてください。そしてよく読んでください。 公式サイト( http //www.comiket.co.jp )もよく読みましょう。 ここで質問しなくても、見ればわかることは結構あります。 ■諸注意:一般参加者サポートページ http //www.comiket.co.jp/info-a/ ■参考:コミックマーケットカタログ80 諸注意ページ ttp //www.comiket.co.jp/info-a/C80/C80CtlgNotes.pdf (PDF注意) ■別によくあるわけでもない質問 コミケってエロ漫画しか置いてないんでしょ? → 創作や全年齢本の方が多い どこにどんなジャンルがありますか? → カタログを買って確認、又は http //www.comiket.co.jp/info-c/C80/C80genre.html カタログはどこに売ってますか? → http //www.comiket.co.jp/info-a/CatalogShop.html コスプレしたいんですが・・・ → http //www.comiket.co.jp/info-p/ ※特にルールはキチンと確認! マンガレポート(通称マンレポ・MR)が読みたい! → http //www.comiket.co.jp/info-a/MR/mr.html *** 3 ■コミケ参加の心得 | ■持ち物 ・トイレでオナニーしない | ・マナーを守る清く正しい心 ・はしらない | ・財布(二つ以上にして、帰りの交通費・帰りのチケット入れ用にバッグの底に用意すると吉) ・割り込まない | ・チャージ済みSuica(PASMO・TOICA・ICOCA・Kitaca・SUGOCA・nimoca・はやかけんもOK) ・馬鹿騒ぎしない | ・合羽 ・無理にスケブをかいてもらわない | ・折りたたみ傘(会場では広げないように 他の場所用に一応) ・おさない | ・カタログ ・風呂に入ってから来い | ・地図 ・サークルの机の上に荷物を置かない | ・サークルリスト ・会場直後に万札(いや直後じゃなくてもダメだけど) | ・栄養補給のための食べ物(カロリーメイトやウィダーなど手軽に食べれるやつ) ・エスカレーターを歩かない | ・飲み物(スポドリオヌヌメ 1L*2くらい必要 水とお茶は厳禁) ・スタッフは係員でも店員でもお母さんでも先生でもありません | ・飴(塩分補給できそうなの) ・お客様感覚で来るな | ・暇つぶしアイテム(携帯ゲーム機、本、漫画等) ・ところ構わず座るな | ・クリアファイル数枚(地図やリストを挟んでおく) ・紙袋をしまえ | ・戦利品入れ(大きめのトートバック辺り 買う量によって調整) ・おむつ履いて列に並ぶ根性は認めるがやめてくれ | ・ポケットティッシュ ・怒鳴るなキレるな駄々をこねるな | ・タオル数枚 ・傘ささない | ・着替えのシャツ ・ちゃんと並べ | ・保険証のコピー(まぁ必須ではないけど、倒れたりした時は役立つ) ・会場で死ぬな、死ぬときは家に帰ってから死ね ...| ・スーパー等のレジ袋(ゴミ入れ) ・コミケで走る奴は射殺されても文句言うな | ・ゴミ袋(カバン覆ったり合羽入れたり何かと便利) ・レイアーさんに敬意を払い挨拶してから撮る。盗撮は犯罪です | ・折り畳み椅子(お好みで) ・徹夜厳禁 たいして始発と変わりません | ・デオドラントシート(混雑している中でスプレー使うと非常に迷惑です!) ・爪は切ってこい | ※wiki上でAAがずれてても2chでは正常です。また、冬コミVer.はソース側でコメントアウトしてあります。 // //冬コミVer // 持ち物 // ・マナーを守る清く正しい心 // ・財布 // (二つ以上にして、帰りの交通費・帰りのチケット入れ用にバッグの底に用意すると吉) // ・チャージ済みSuica(PASMO・TOICA・ICOCA・KitacaもOK) // ・合羽 (傘は使うな) // ・カタログ // ・夢の地図 // ・クリアファイル数枚 (地図やリストを挟んでおくのに便利) // ・戦利品入れ (大きめのトートバック辺り 買う量によって調整) // ・栄養補給のための食べ物 (カロリーメイトやウィダーなど手軽に食べれるやつ) // ・飲み物 (水とお茶は厳禁 スポドリとか) // ・暇つぶしアイテム (携帯ゲーム機、本、漫画等) // ・ポケットティッシュ // ・防寒具 // ・カイロ // ・保険証のコピー (まぁ必須ではないけど、倒れたりした時は役立つ) // ・ゴミ袋(カバン覆ったり合羽入れたり何かと便利) // ・折り畳み椅子 (お好みで) **以下は必要に応じてテンプレに追加してください **スレの流れが速いときは無理に追加しないでおk *** 4 【徹夜】当日の注意事項【厳禁】 1. デオドラントスプレーは使うなよ、デオドラントシートを持って池 2. 傘じゃなくてカッパを持ってけ。傘差して人の目に刺さったらとんでもない金額請求されるぞ 3. 進まないからって人を押す行為はやめろ、前方では進めない理由があるかもしれんからな 4. 走り回るやつは処刑される可能性があるからな、人の恨みを買うような真似はするな 5. 前日までの体調管理はしっかりしとけ。水分補給とご飯はしっかり食っておけ 6. トイレに行きたくならないようにと水分を取らずに行くことは絶対やめろ。倒れたらトイレのロスよりも痛いロスになるからな 7. ちゃんと風呂入って来い。不衛生なやつは陰口めっちゃされるからな、嫌な思いしたくなければきちんと風呂入れ 8. 両肩リュックのやつは後ろの人間の事を思いやれ。お前が少し体を振るだけで後ろのリュックは結構動くんだぞ 9. 開場する前に空き時間が出来るが、その時は席を離れた人のスペースにまで進入するのやめろ。それで列から追い出された人もいるからな 10. 好きなサークルに差し入れするのは構わないが、持って行くものはよく考えろ。相手にとって邪魔になる可能性もあるんだからな 11. ゴミ放置していくやつ見かけたら「忘れ物ですよ」と渡してあげましょう。それが大人の対応 12.100円・500円をいっぱい持って行きましょう。サークルさんのお釣りが無くなっちゃうですぅ>< 13.ウチワや扇子を扇ぐ時は注意しましょう。腕ブンブンされたらこっちに当たるですぅ>< 14.涼しい服装で行きましょう。黒い人が多いと蒸し暑くなるですぅ>< *** 5 ■徹夜組について 準備会は、徹夜組を容認してなどいません。 徹夜組を追い出す事は簡単です。徹夜組にペナルティを与える事も簡単です。 ですがそうすると、次回以降その徹夜組はきっと、近所で時間をつぶし4 30丁度にくる事でしょう。 それは、あまりに周りに迷惑がかかりすぎます。 現在でさえ、準備会は東京都や第三セクター会社・各種企業・団体に多額の罰金・賠償金を払っています。 また、治安上もそのような大量の人間がウロウロしているのは大変良くなく、当局に睨まれる大きな要因の一つとなっています。 コミケに来る一般参加者が周りに迷惑をかけるくらいなら一括して管理した方がいい、という事で 徹夜組の人間を仕方なく管理しているだけにすぎません。 容認はしていないし、準備会も徹夜組なんてなくしたがってる。 ■警備員に関して 警備員は、警察からそうするようにとの指導を受け、準備会が莫大なお金をかけて警備をお願いしています。 ですが館内の警備をしているのはスタッフ、外周の警備をしてるのもスタッフ、 入り口の警備をしてるのもスタッフ、駅からビッグサイトの間を警備してるのもスタッフ、 警察からのご指導がなければきっと雇わないでしょうね…。 警備会社は、複数社にお願いしていますがどれも普通の警備会社です。 (株)東京ビッグサイトから指示・推薦・斡旋があった警備会社にもお願いしています。 ■前日搬入を行うサークルの方へ ・搬入をする時に降ろした椅子は搬入が終わった後に元に戻してからお帰りください ・搬入されたダンボール箱を確認するのはいいですが、終わったらキチンと封を閉じてお帰りください ・盗難される恐れがあるので貴重品を置いていくのはやめて下さい ・飲食物を置いていくのはやめて下さい(不審物と区別がつかない為) ・他のサークルスペースに勝手に入らないで下さい ・前日搬入の規定時間内に準備を終了し、速やかに退出をお願いします *** 6 ■地方参加者に便利なリンク集 【宿泊地の手配】 楽天トラベル http //travel.rakuten.co.jp/?scid=trbnew じゃらん http //www.jalan.net/ yahooビジネストラベル http //biz.travel.yahoo.co.jp/ 公共の宿 http //park2.wakwak.com/~a-debu-k/link/ 東京の安い宿 http //www.e-otomari.jp/pc.shtml ネットカフェナビ. http //www.cafeman.jp/ 【交通手段】 JAL http //www.jal.co.jp/ ANA http //www.ana.co.jp/ スカイマーク http //www.skymark.co.jp/ja/ オーシャン東九フェリー http //www.otf.jp/ ぷらっとこだま http //www.jrtours.co.jp/kodama/ 各種列車の空席状況 http //www.jr.cyberstation.ne.jp/ 乗換案内ジョルダン http //www.jorudan.co.jp/ 青春18きっぷガイド. http //www6.airnet.ne.jp/yossy/index.htm 高速道路ルート検索 http //www.driveplaza.com/dp/SearchTop 都内駐車場検索 http //www.s-park.jp/ JRバス http //www.kakuyasubus.jp/ 大手私鉄バス. http //www.j-bus.co.jp/web/index.html 楽天バス予約 http //travel.rakuten.co.jp/bus/ *** 7 カタログの諸注意の部分は熟読をお願いします http //www.comiket.co.jp/info-a/ 新参(コミケ初めて)の人は http //human-dust.kdn.gr.jp/doujin/gocomiket/ を見てください。 ■スレに関して ・荒らしに関して このスレには偶に、徹夜宣言をしたり、コミケットに於けるマナー違反に該当する行為を仄めかす書き込みをするものがいます。 そのような書き込みを見つけてもスルーしてあげて下さい。 彼らは、真剣に咎めるその姿を滑稽と笑うために書き込んでいるのですから。 ・徹夜に関してのこのスレのスタンス 重複しますが、徹夜行為は厳禁です。 コミケット運営に重大な支障を与える行為であり、また治安上危険な行為であります。 このスレは徹夜組、および徹夜という行為に対して、反対、否定のスタンスです。 主義主張は関係なく、徹夜関連の話題をしたいならば別スレか、同人イベント板の該当スレでお願いします。 以下、使えそうだったら随時テンプレに組み込んでください。 Comi-Navi http //www.comi-navi.com/ (有志によるコミックマーケットについての情報発信サイト) による防寒対策まとめ ・下着は汗が残りにくい化繊ものがよい ・しゃがんでも腰が露出しない、長めの裾にする ・靴下は厚め、長めに ・女性はストッキングやタイツ、 男性はロングアンダーを使おう ・カイロは腰に貼るタイプがオススメ ・防寒対策は、かさばる厚着よりも 状況に応じて着脱、収納が容易な格好を考えよう。 (帽子、手袋、マフラー、ひざかけなどなど) **案 4と 7併せてこうした方がよくね? 【徹夜】当日の注意事項【厳禁】 1. デオドラントスプレーは使うなよ、デオドラントシートを持って池 2. 傘じゃなくてカッパを持ってけ。傘差して人の目に刺さったらとんでもない金額請求されるぞ 3. 進まないからって人を押す行為はやめろ、前方では進めない理由があるかもしれんからな 4. 走り回るやつは処刑される可能性があるからな、人の恨みを買うような真似はするな 5. 前日までの体調管理はしっかりしとけ。水分補給とご飯はしっかり食っておけ 6. トイレに行きたくならないようにと水分を取らずに行くことは絶対やめろ。倒れたらトイレのロスよりも痛いロスになるからな 7. ちゃんと風呂入って来い。不衛生なやつは陰口めっちゃされるからな、嫌な思いしたくなければきちんと風呂入れ 8. 両肩リュックのやつは後ろの人間の事を思いやれ。お前が少し体を振るだけで後ろのリュックは結構動くんだぞ 9. 開場する前に空き時間が出来るが、その時は席を離れた人のスペースにまで進入するのやめろ。それで列から追い出された人もいるからな 10. 好きなサークルに差し入れするのは構わないが、持って行くものはよく考えろ。相手にとって邪魔になる可能性もあるんだからな 11. ゴミ放置していくやつ見かけたら「忘れ物ですよ」と渡してあげましょう。それが大人の対応 12.100円・500円をいっぱい持って行きましょう。サークルさんのお釣りが無くなっちゃうですぅ>< 13.ウチワや扇子を扇ぐ時は注意しましょう。腕ブンブンされたらこっちに当たるですぅ>< 14.涼しい服装で行きましょう。黒い人が多いと蒸し暑くなるですぅ>< カタログの諸注意の部分は熟読をお願いします http //www.comiket.co.jp/info-a/ ■スレに関して ・荒らしに関して このスレには偶に、徹夜宣言をしたり、コミケットに於けるマナー違反に該当する行為を仄めかす書き込みをするものがいます。 そのような書き込みを見つけてもスルーしてあげて下さい。 彼らは、真剣に咎めるその姿を滑稽と笑うために書き込んでいるのですから。 ・徹夜に関してのこのスレのスタンス 重複しますが、徹夜行為は厳禁です。 コミケット運営に重大な支障を与える行為であり、また治安上危険な行為であります。 このスレは徹夜組、および徹夜という行為に対して、反対、否定のスタンスです。 主義主張は関係なく、徹夜関連の話題をしたいならば別スレか、同人イベント板の該当スレでお願いします。
https://w.atwiki.jp/truexxxx/pages/22.html
心、わたしの胸のどこに ◆GO82qGZUNE 恋をした。 誰よりも幸せな恋をした。 けれど私は灰かぶり姫なんかじゃなくて─── ハッピーエンドは失われた。 ▼ ▼ ▼ 人の悪意には慣れている。 生まれが生まれだ。嫉妬や羨望の的にされるのなんて日常茶飯事だし、謂れなき誹謗中傷を受けた数だって数えきれない。 人との別離には慣れている。 というよりも、最初から何も感じない。この世に良い人なんて誰もいなくて、誰もが打算だけで動いていて、だったらそんな他人なんかに感情を動かすほうがどうかしているのだ。 少なくとも、ほんの少し前までの自分はそう考えていた。 だから、本当なら、あんなものを見せられてもどうってことはないのだ。 氷に閉ざされていた私の心は、そんなものでは動かなかった。 そのはずなのに。 「藤原さん……」 ふとした瞬間にリフレインする。その情景が脳裏にこびり付いて離れない。 乾いた空疎な爆発音、いっそ冗談めいて噴き出る鮮血、くるくると回る首。 綺麗に整えられた桃色の髪はざんばらに飛び散って、もう生前の可愛らしさなんてどこにもなく。 ───信じない。 ぽとりと落ちた首が転がる。光を失った虚ろな目が、こちらを見る。 ───それでも信じない。 この子に驚かされるのは、いつものことだから。 きっと今回だってそうだ。自分が声をかけたら藤原さんは何でもないことのように起き上がって、「なーに本気にしてるんですかー」なんて間の抜けた顔で笑うに決まっている。それで私が安心して少し泣きそうになると、「あれあれ泣いてるんですかー?」なんてからかうに決まっている。 人の姿をした家畜……プライドがなく他人を貶めるしか能のない地球の癌。ああ、考えるだにおぞましい。 だなんて私が怒り、石上くんが困り、会長が静かに嗜める。そして皆で笑うのだ。これまでずっと繰り返されてきた日常が、明日からもきっと続く。 そうなんでしょう? これもきっと、あなたの悪戯なんでしょう? TG部で色々遊んでいるあなたのことだもの、私の知らない最新鋭のゲームだとか、VRだとか、とにかくそういうものを用意してドッキリでも仕掛けているのでしょう? ねえ、藤原さん。 藤原さん─── ◆ 泣き叫ぶ少女の声が、夜の森に響いた。 エリアC-7、街の外れにある小さな森の中。木漏れ日となって降り注ぐ月の光に照らされて、四宮かぐやは常の気高さとはかけ離れた姿を見せていた。 すすり泣くような声とは違う。声を殺して泣くのとも違う。子供がするようにあらん限りの声を張り上げた絶叫。世の悪意に立ち向かえる強さを持たない幼児のような泣き叫ぶ声は、森の闇に溶け消えて、残響となって木々の葉を揺らすのみ。 殺し合いを宣言された場で無防備に大声を出す危険性を理解できないほど、四宮かぐやは愚かではない。 しかし、これは賢明とは愚かしいとかそういう問題ではないのだ。 今でも気を抜けば脳裏に浮かぶ。一面に鮮血が飛び散り、そこで起こった惨劇を生々しく想起させる。泣き別れの首と胴体、あらぬ方向に投げ出される手足。吹き飛んだ頭部はおかしな形に陥没し、下顎の無くなった光のない目がこちらをじっと睨めつけている。 それでも理解できない。 何故、藤原千花が死ななければならなかったのか。 そう、藤原千花は死んだ。それは変えようのない事実だ。 遠隔で網膜に投射するVR映像? あるいは都合の良い夢を見せる催眠療法の発展系? あり得ない、そんなものが現実に存在するものか。仮にそんな技術があったとして、それを一学生に過ぎない千花が用意できるか? できたとして、それで見せるのが彼女らしくもない血生臭い悪趣味なスプラッタであるのか? ひぅ、と捩じれた息を呑みこむ。過呼吸気味に酷使された肺が悲鳴を上げ、生理現象としての咳がこみ上げて激しく咽込む。 信じられなかった。藤原千花が殺されたことも、自分や生徒会の面々が殺し合いなんてものに巻き込まれたことも。 そして─── 「私、なんで、こんな……」 藤原千花の死に、四宮かぐやがこれほどまでの悲しみを抱いてしまっていることも。 「あなたは、勝手なんですよ……いつも騒動事を巻き起こして、いつも私のことをからかって、私を怒らせてばかりで、素直に礼も言わせてくれなかった……本当はいつもあなたに感謝してた。あなたのことを頼りに思っていた……私の傍にいてくれてありがとうって、これからもずっと一緒にいてねって……いつかそれを伝えようって、会長ほどじゃないですけど、そう思っていたんですよ……?」 言葉が途切れる。 思考が霞む。 血濡れた情景しか映さなかった脳髄が、唐突に過去の情景を描いていく。 生徒会の記憶、そこで過ごした日々。くだらなく低レベルで、四宮の人間としてこんなことでいいんだろうかと自問自答することもあったけど、でも確かに楽しかった日常の記憶。 笑顔。 藤原千花は、四宮かぐやの記憶の中で、ずっと笑顔を浮かべていた。 それを見て、かぐやもまた、ずっと笑顔でいられた。 そのことを自覚して、かぐやは泣き濡れた顔のまま笑い、 「……ああ、そっか」 何もない虚空を掻き抱き、自らの腕に顔を埋めて。 「私は、あなたを、親友だと思っていたんですね」 響き渡る慟哭の声。 見守る者はなく、見咎める者もなく、その声はただ夜半の風を揺らすばかりで、ただ虚空へと消えていくのみだった。 ◆ 結局のところ、かぐやにできることとは、一体何なのだろうか。 少し考えて、答えは出なくて、もう考えること自体に嫌気がさしてしまう。 考えてみよう。今からかぐやたちは凄まじい豪運を発揮して、なんと誰も死ぬことなく殺し合いから脱出することができました。 自分も、会長も、あと石上くんも、特に大きな怪我もなくPTSDとかの後遺症とかもなく、なんか平穏に、嘘のように、元の日常に帰ることができました。 めでたしめでたし───なんてことになるわけがない。 だって、藤原千花は死んでいるのだ。 もうどうしようもなく、救いようがないほどに、死んでいるのだ。 どうやったって元の日常は戻ってこない。 5人揃ったあの生徒会は、二度と元には戻らない。 完全無欠のハッピーエンドは既に失われている。今からどう足掻こうとも、かぐやたちは不可逆のマイナスを常に背負っていかなければならない。 ならば優勝を目指すべきか? 優勝して、元の日常を返してくださいと、そう願えばいいのか? ───本当に? 会長を、白銀御行を一度殺害した上で、そう言えと言うのか。 ……結局のところ、答えなんか出るはずもなかった。 闘えばいいのか、逃げればいいのか、それとも仁愛とか正義とかを掲げて仲良しこよしで群れたらいいのか。どれが正解なのか分からない。 けれど、それでも湧き上がってくる感情はある。 「会長……」 会いたいです、今すぐに。 情けない姿を見られても構わない。本当はそんなところあなたに見せたくはないのだけど、でもこんな時くらいはいいでしょう、だなんて。 ねえ、会長。 こんな汚い私とは違うあなたなら。 私の見る景色を変えてくれたあなたなら。 きっと強く立ち上がってくれてるだなんて、強く正しく私たちを導いてくれるだなんて。 そんなことを期待している私は、やっぱりあの頃と変わらない、打算と利己しかない氷のままなんでしょうか。 ねえ、会長。 私は卑しい、人間、ですか? 四宮かぐやは、白く輝く月を見上げ、歩みを進める。 静寂が支配する世界にあって、ただ見上げる。そうすることしかできない。今だけは顔を上げておきたかった。 俯けば─── きっと、涙が落ちてしまうから。 【C-7・森/1日目・深夜】 【四宮かぐや@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~】 [状態]:憔悴、混乱、悲しみ [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考・状況] 基本方針:決めかねている。 1:会長たちと合流したい。 [備考] 具体的な参戦時期は後続に任せます Next 共闘 Previous 最初に生まれてくるということ 前話 お名前 次話 Debut 四宮かぐや 素直じゃない私を 目次へ戻る
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/158.html
ベッドに入ってから一睡もできなかったというのに、頭は妙にスッキリしていた。 気怠さや、疲れも感じない。肌だって瑞々しくて、パッと見、荒れた様子はなかった。 これが若さなのかな? と蒼星石は洗面所の前で、小首を傾げてみた。 鏡の中の彼女は、不思議そうに、自分を見つめ返している。 そこに、昨夜の雰囲気――柏葉巴の影は、全く見受けられない。 今日、学校に行ったら……話しかけてみよう。 夕暮れの体育館で見た凛々しい姿を思い出しながら、もう一度、昨夜の決心を繰り返す。 おとなしそうな彼女だけど、果たして、呼びかけに応えてくれるだろうか。 人付き合いは、やはり、第一印象が大事。変な人と思われないように、気を付けないと。 蒼星石は、鏡の中の自分に、ニッコリと笑いかけてみた。 大きな期待の中に、ちょっとの不安を内包した、ぎこちない微笑み。 少しばかり表情が硬いな、と思っていると―― 「朝っぱらから、鏡の前で何ニヤついてるです?」 「わぁっ! 驚かさないでよ、もぉ……」 いつから見ていたのだろう。 蒼星石は耳まで朱に染めて、ニタリと笑っている姉の脇をすり抜けた。 第三話 『運命のルーレット廻して』 揃って朝食を済ませ、支度を終えた姉妹は、一緒に玄関を出た。 秋も深まり、日一日と風が冷たくなる時候ながら、今日は普段より暖かい。 小春日和の日射しに包まれていると、なんだか…… 何年もそうしていなかったような、とても懐かしい気がする。 (姉さんも、ボクと同じ気持ちなのかな?) ちらりと盗み見ると、翠星石は口に手を宛い、大きな欠伸をしていた。 しばしばと瞬いて、滲み出した涙を堪えている様子が微笑ましい。 「随分と、眠そうだね」 言ったそばから、姉の欠伸が移ったのか、蒼星石も大きな欠伸を放つ。 それを見て、翠星石は愉しげに目を細めた。 「蒼星石だって、他人のこと言えねぇです」 「……らしいね。シャワー浴びたせいか、あれから目が冴えちゃってさ」 「実は、私も――――ずっと眠れなかったですよ」 そう呟いて、隣を歩く妹に、咎めるような眼差しを向ける翠星石。 「蒼星石が、あんなコトするから……」 「はは……ごめん。そう言えば、姉さんってスキンシップに弱かったっけ」 「知ってるクセに抱きつくなんて……とんだ悪党ですぅ」 赤らめた頬を、可愛らしく膨らます姉の仕種は、しかし、長く続かなかった。 やおら真顔に戻ったかと思うが早いか、蒼星石の背中をバシンと引っ叩く。 照れ隠しのためとは言え、あまりの手加減のなさに、蒼星石は息を詰まらせた。 「い、痛いよ姉さん! 何するのさ」 「それでチャラにしてやるですぅ。さっ、気を取り直して、学校に行くですよ」 「……はいはい。とにかく、授業中に居眠りしないように、気をつけなくっちゃね」 「今日は土曜日ですから、午前中さえ凌げば大丈夫ですぅ」 答えた途端に、またぞろ大欠伸をする姉を見て、蒼星石は、ふっ……と口元を綻ばせた。 そして、こんな二人だけの時間が、もっと欲しいと思って―― 「今日の午後、たまには二人で、パフェとか食べに行かない?」 翠星石を、遊びに誘った。彼女から誘うなんて、真夏に雪が降るくらいに、珍しいことだ。 だからこそ、彼女は翠星石が「はい」と頷いてくれるものと信じていた。 しかし、蒼星石の期待は、呆気なく拒否される。 「とっても嬉しいですけど……今日は都合が悪いですよ」 「そう……なんだ。残念だなぁ」 「ゴメンナサイです、蒼星石。この埋め合わせは、近い内に、きっとするです」 「別に、いいよ。気にしないで」 心底、申し訳なさそうに項垂れる彼女を、蒼星石は笑って宥めた。 けれど、二人の間に漂うギクシャクした空気は、学校に着いても薄れることがなかった。 学校に到着して、カバンを机に置くなり、蒼星石は隣のクラスに向かった。 昨日から頭を離れない彼女――柏葉巴と、一言でも話をするために。 HRが始まるまで、まだ十分ほど余裕がある。 (もう来てる頃だよね) 学級委員を務めるほどだ、遅刻するような問題児ではあるまい。 そう思って、教室の後ろの扉から、そぉっと様子を窺うと…………居た。 なんの偶然か、彼女が丁度、教室から出てくるところに鉢合わせたのだ。 巴は、蒼星石の姿を認めると、控えめに微笑んだ。 「おはよう。誰かに用事? 呼んできてあげようか」 「あ……おはよう、柏葉さん。ボクは……キミに会いに来たんだ」 「わたしに?」 「ちょっと、話がしてみたくてさ。今、少しだけ時間つくれる?」 問いかける言葉に、不思議そうな表情を浮かべる巴。その反応は、蒼星石の想定内だった。 体育の授業は隣のクラスと合同で行うから、二人は一応、顔見知り。 だけれども、今日に至るまで、交流を図る機会には恵まれていなかった。 「……ダメかな?」 蒼星石が不安げに訊ねると、巴はシンプルな造りのアナログ腕時計にチラと目を遣り、 「いいわよ」と、にこやかに応じた。 巴にしてみれば、なぜ今になって蒼星石が近付いてきたのか、その理由に興味があったのだろう。 クラスメートの視線を気にしてか、廊下に出た彼女は、後ろ手で教室の扉を閉ざした。 室内の喧噪は遮られ、話をする環境が整えられる。 巴は、背格好の似通った娘の双眸を、その鳶色の瞳で、ひた……と見据えた。 「それで、お話ってなぁに? 蒼星石さん」 「ボクの名前……知ってたの?」 「ええ。自覚してないみたいだけど、貴女は割と有名だもの」 「正しくは、ボクの姉さんが有名……でしょ」 姉と自分は、二人でひとつ。生まれながらにして、二人はいつも一緒だった。 別個の存在でありながら、一心同体。 蒼星石の半分は翠星石であり、姉の半分は妹で占められている。 そう。本来ならば、彼女たちは対等の関係である筈だった。 しかし、等しく浴びる筈だった陽光は、いつだって姉にのみ注がれてきた。 蒼星石の存在は、煌びやかに光り輝く姉の足元に落ちた影と同じ。 言わば、彼女の『おまけ』でしかない。名前を間違えられることも、しばしばだった。 (でも、ボクは――それがイヤじゃない) 寧ろ、姉の名で呼ばれると嬉しくなったし、彼女とひとつになることは密かな望みだった。 触れ合い、癒着し、どろどろに溶けて、混ざり合ってしまいたい。 そして、コールタールの様な混沌から、たった一人―― 至高の美しさを持った少女として生まれ変われたのならば、どんなに素晴らしいだろう。 ――が、所詮は、実現不可能な世迷い言。正気と妄想の狭間に産まれた悪夢。 我ながら、馬鹿げた願望だ……と、蒼星石は自嘲した。 「ごめんなさい。何か、気に障ること言ったみたい」 間近で紡がれた声で、蒼星石は我に返った。 声の主は、困惑の表情を浮かべて、自分を見つめている。 「ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃってた。怒ってたワケじゃないよ」 「……よかった。急に黙っちゃうから、心配したわ」 その言葉どおり、巴は安心したように小さく笑って、付け加えた。 「でも、貴女が有名っていうのは本当のことよ。魅力的な人だなって、わたしも思うもの」 「ボクが? ははっ……まさかぁ。ボクなんかよりも、キミの方がずっと素敵だよ」 「え?」 「昨日の放課後、体育館で剣道の練習してるキミを見たんだ。 すごくカッコよくて…………思わず見惚れるくらいに綺麗だった」 「汗まみれな姿を見られてたなんて、恥ずかしいわ。それに、お世辞でも誉めすぎよ」 両手で頬を包み、はにかむ巴の仕種は、蒼星石の眼に、とても初々しく映った。 やがて、HRの始まりを告げる予鈴が鳴り、廊下にまで溢れていた喧噪が静まる。 もう、それぞれの教室に戻らねばならない。だけど、もう少し話していたい気分だった。 だから彼女たちは、ごく自然に、同じ言葉を口にしていた。 「また、後でね」 第三話 おわり 三行で【次回予定】 相まみえて、たちまち意気投合する乙女たち。 縁と浮世は末を待て。彼女たちは時を積み、言を重ね、情を育む。 その間も、運命のルーレットは休みなく廻る、回る―― 次回 第四話 『今日はゆっくり話そう』