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前話 次話 ……… …… … 【龍門渕家】 透華「ようこそおいでくださいましたわ!清澄高校の皆様!!」バーン 咲「こんにちはー」 小蒔「こんにちは。また宜しくお願いします」 春「…開けた瞬間でびっくり」 まこ「はは。龍門渕選手は目立つのが何よりも好きってタイプじゃけぇな」 優希「ぶっちゃけ今回が初めてじゃないし、慣れたもんだじぇ」 京太郎「小蒔や咲は一回目に随分と面白いリアクションしてたけどな」クスッ 春「なにそれきになる」 小蒔「べ、別に面白くなんかありませんよ!」 咲「そ、そうだよ!そんなの京ちゃんの思い込みもいい所なんだから!!」」 透華「むぅ…いけませんわ…お客人の皆様に飽きられています」 透華「これは新しい趣向を考える必要がありそうですわね…」ブツブツ 一「出来ればやらないっていう消極的な方に行ってくれるとボクは嬉しいかなー」 純「ま、無理だろ。だって、透華だぜ?」 智紀「変に大人しくなったら心配するレベル」 ハギヨシ「皆様、透華お嬢様の事を良く理解していただいているようで何よりです」ニコニコ 透華「な、なんですハギヨシまで…」 透華「そ、そもそも招待した客人を歓待するのはホストの義務ですわ!私はそれをやっているだけで…」 一「はいはい。そうだね。その話はあっちで聞くから」 衣「咲!」 咲「こんにちは。衣さん」 衣「うん!ののかも…良く来てくれたな」 和「えぇ。負けたままではいられませんし」 衣「ふふ…っ!その意気や良し!しかし、衣の前では…!」 まこ「ま、そう言う事はみな、中に入ってからにしよう」 小蒔「そう言えば他の高校は…?」 透華「秋季大会準決勝と同じメンバーを集めましたわ!」 透華「折角のりべ…いえ、調整試合なんですもの。同じ状況でなければ面白くありません」 一「はは。まぁ…そういう事だから付き合ってあげて欲しいな」 純「あの準決勝で一番、フラストレーション溜まってるの透華みたいで」 智紀「まぁ…知らない間に全部終わってたら…ストレス溜まるのも当然」 まこ「あー…悪いんじゃが…」 透華「え…?」 まこ「うちのオーダーはこんな感じじゃ」スッ 透華「……」 まこ「……」 透華「………あの…」ウルッ まこ「うん。スマン。まさかここまでリベンジ楽しみにしとるたぁ思わなかった」 咲「と、という訳で…悪いけど私の相手、お願いします」 透華「…まぁ…構いませんけれど。なんだかんだ言って宮永さんには四校合同合宿の時に借りがありますし」 透華「それを返せる機会となれば是非もありませんわ」グッ 衣「で…衣の相手はののかかー?」 和「…えぇ」 衣「…その…大丈夫…なのか?」 和「…え?」 衣「咲や会った頃の和相手なら…衣も全力を出せる。でも…以前のままだったら…」 和「それ…は…」 京太郎「大丈夫っすよ」 衣「お前は…金髪の」 京太郎「うす。須賀京太郎っす。横槍入れてすみません」 京太郎「でも…和は大丈夫ですから。天江選手も…全力を出してやって下さい」 京太郎「いえ…寧ろ出さないと…危ういかもしれませんよ」 衣「ほぅ」 衣「これは…面白い事を聞いた」 衣「この衣が…危ういとな」 京太郎「えぇ。それくらい和は強くなっています」 京太郎「以前とは別人ですよ」 衣「そうか…」グッ 衣「…あんな退屈な打ち方をされたら…遠ざけようと思っていたのだが」ゴォォッ 和「っ…!」ゾクッ 衣「そうではないようで…安心したぞ」ニコッ 和「え…えぇ。大丈夫…です」グッ 和「私は…もう逃げません」 和「そして…皆の為にも…絶対に負けたりなんてしませんから」キッ 咲「…何かまた衣さん…強くなってません?」ヒソヒソ 透華「…最近は月の満ち欠け関係なしに安定したポテンシャルを発揮するようになりましたわ」 一「相変わらず満月の夜が一番、やばいのは確かだけどね。でも、昼夜の関係は殆どなくなったって思って良いよ」 智紀「その上…上限は今も成長期真っ只中…」 純「時折、コイツ何処まで行くんだろって思う時があるよ。まぁ…それも含めて可愛い奴だけどさ」 透華「とは言え…成長しているのは私達も同じです」 透華「それは…以前の秋季大会で双方、思い知った事だと思いますが…」 透華「今日もまたその実力を競い合い…戦い合いましょう」 まこ「そうじゃの。うちとしても実力が近い龍門渕さんとやるんは楽しい」 春「まぁ…その分…巻き込まれた二校は可哀想ってレベルじゃない…」 純「その辺はまぁ…手の内全開で打つ俺らが見れる授業料って事で」 智紀「来年は…多分、私達と清澄が優勝候補だろうから」 一「ただ、ボクは来年のインターハイまで相手校が麻雀続けられるか心配だよ…」 まこ「まぁ…長野が魔境と呼ばれる原因になった殆どがここに集っとる訳じゃけぇなぁ…」 純「もし県別対抗戦とかになったらここにいる連中が全員出てもおかしくないレベルだし」 透華「県別対抗戦…面白そうですわね…」 純「あっ…やべ…」 智紀「…透華にエサを与えちゃいけないってあれほど」 一「もう…純君ってばこれだから」 純「い、いや…悪かったけど、そこまで言わなくて良いだろ!!」 透華「と言うか…三人とも私を何だと思っていますの?」ジロリ 透華「凄い気にはなりますが…既に二校は到着してますし…そろそろ始めましょう」 透華「そして溜まった鬱憤はその後の自由対戦で晴らす…で宜しいですか?」 透華「その代わり、こちらから軽食やジュースなどを提供させて貰います」 まこ「うん。こっちも異論はなぃんじゃ。とゆうか、そのつもりのオーダーじゃった訳で…すまん」 透華「もう。気にしていないと言っていますのに」 透華「さっき言った通り…溜まった分はその後に晴らすつもりですからお気になさらず」 透華「では…中へお入り下さいませ」ガチャ 透華「皆、待っていますわ」 優希「ひゃっはー!久しぶりの龍門渕だー!」ドタドタ 純「おーい、走るなよ。その辺にあるもんでも数十万下らないんだからな」 優希「ひぃっ!そ、そういう事は早く言って欲しいじぇ…」 透華「べ、別に…その程度要求したりしませんわよ」 透華「…流石に数千万クラスのものともなると話は変わってきますけど」ボソッ 優希「お、大人しくしてます」ガクガク 小蒔「わ、私も…」フルフル ……… …… … 京太郎「(そうやって始まった…龍門渕の調整試合)」 京太郎「(それは大方の予想通り、開始から激しい点数の奪い合いになっていた)」 京太郎「(まるで調整なんざ知った事かと言うような高打点の打ち合いに…けれど、意外な事に他二校もしっかりと着いて来ていた)」 京太郎「(恐らく彼女たちもこれが調整試合などではなく、リベンジを目的としたものだと気づいていたのだろう)」 京太郎「(それぞれの対戦相手の傾向やクセなどを的確に突き、以前のように大きく突き放される事はなかった)」 京太郎「(けれど…それはあくまでも副将戦までの話だ)」 京太郎「(普段、大将をしている咲の突然の参戦に…勿論、対策なんかしていなかった二校は対処出来ない)」 京太郎「(結果、不可思議な打ち方をする咲に翻弄され、ドンドンと点数を削られていった)」 京太郎「(それに龍門渕選手は何とかついていけていたみたいだけれど…それだって完璧じゃない)」 京太郎「(和でさえついぞ真正面から打ち破る事が出来なかった咲の支配は…かなり強固なんだから)」 京太郎「(今までの選手が稼いだ点棒を精神力と共にガリガリと削りながら…終局した)」 京太郎「(それに龍門渕選手以外の二人が涙目になってたのは…正直、同情する)」 京太郎「(とは言え…そうやって副将戦が終わった以上、次はついに大将戦)」 京太郎「(新生和が…ついに他校の前でヴェールを脱ぐ日が…訪れたんだ)」 優希「の、ののののどちゃん!お茶飲むか!?」 咲「だ、大丈夫!?し、深呼吸だよ和ちゃん!!」 小蒔「つ、辛い時は手をあげて先生にちゃんと報告して…」 京太郎「とりあえず落ち着けお前ら」 咲「で、でも…!」 優希「の、のどちゃんが!」 和「…大丈夫ですよ」 小蒔「本当…ですか?」 和「えぇ。…寧ろ…こうやって近づけば近づくほど…頭の中が冴えていくようにも思えるんです」 和「…不思議ですね。お屋敷にやって来た時は不安で仕方がなかったのに…」 和「皆が頑張ってくれた姿を見ていたら…私も負けていられないってそう思ったんです」 和「だから…大丈夫」 和「私はもう…逃げたりなんかしません」 和「例え、どんな結果になったとしても…真正面から戦って…そして勝ってきます」 和「私の為に…色々と骨を折ってくれた皆の為に…必ず」グッ まこ「…あんまし気負い過ぎるなよ」 まこ「こりゃぁあくまで和に発破を掛ける為のオーダーじゃし、追い詰める為のもんじゃないんじゃけぇ」 まこ「負けたら負けたで…それでええ。そん時はわしが悪かったって事を忘れんでくれ」 和「大丈夫です。私は…負けません。部長さんの采配が良かったんだって必ず…そう言わせてみせますから」 春「…緊張には黒糖」ソッ 和「別に…緊張してる訳じゃ…」 春「足ちょっと震えてる」 和「っ!」 春「…嘘」 和「あ…っ」カァァァ 春「…強がらなくて良い。誰だって…怖いものは怖いんだから」 春「だから…これ…持って行って」ガサッ 和「…これ…」 春「黒糖。…私が…一番大事な人から教えてもらった最高のお菓子」 春「きっと…気晴らしくらいにはなってくれる」ニコッ 和「…ありがとうございます」 京太郎「…和」 和「須賀君…」 和「今まで…ありがとうございました」 和「須賀君がずっと特訓に付き合ってくれなかったら…私…ここまで来れなかったと思います」 京太郎「…そんな事ねぇよ」 京太郎「俺なんかいなくたってきっと和はそれを完成させる事が出来た」 京太郎「俺の知る原村和ってのは…それくらい凄い奴なんだから」 和「それでも…須賀君が支えてくれたという事は変わりません」 和「ですから…見ていて下さい」 和「私は…原村和は…須賀君のお陰でこんなにも変われたんだって…そう見せつけて来ますから」 和「衣さんだけじゃなく…皆にも…一目で分かるくらいに…」グッ 京太郎「…あぁ。行って来い」 京太郎「そして…長野でも指折りの打ち手と…精一杯、楽しんで来れば良い」 京太郎「勝ち負けなんて気にせず、自分の力を試すくらいの気持ちで…な」 京太郎「そうすりゃ…和はおのずと…自分の実力を発揮できる」 京太郎「それは…誰よりも和と打った俺が保証するよ」 和「はいっ!」 ―― ガチャ ハギヨシ「時間です。…原村様、宜しいでしょうか?」 和「はい。おまたせしてすみません」 ハギヨシ「いえ…では、部屋へとご案内します」 咲「和ちゃん…頑張って!」 優希「のどちゃんなら大丈夫だじぇ!」 小蒔「私たちはこっちで応援していますから!」 まこ「気軽に…気軽にな」 春「…辛い時は…皆を信じて…」 和「はいっ!では、行ってきます」ガチャ ―― バタン 春「…やっぱり黒糖の導きがあらん事をって言うべきだった…?」ナヤミ 京太郎「…お前は落とさずにいられない体質なのか」テシ 春「あぅ」 和「(皆のお陰で…気持ちは完全に落ち着きました)」 和「(勿論、不安はありますし、怯えもあります)」 和「(玄関であんな事を言いましたが…今の私で衣さんに太刀打ち出来る自信なんてまったくありません)」 和「(また無様に負けてしまうんじゃないかって気持ちは私の中でどうしても消えてくれないのです)」 和「(でも…皆は…そんな私を暖かく迎えてくれるでしょう)」 和「(失望なんてせず…私の事を慰めてくれるって…心から…そう信じられますから)」 和「(だから…私はもう怖くなんかありません)」 和「(怯えはしても…それが恐怖には繋がらないのです)」 和「(こんな気分…初めてかもしれませんね)」 和「(私は今…心から信頼出来る仲間に囲まれているんです)」 和「(中学の時だって…ここまで仲間を信じられた事はなかったかもしれません)」 和「(だからこそ…私は…)」 ―― ガチャ 衣「…」ゴォゥッ 和「(この人に…勝ちたい)」 和「(この人に勝って…皆に良い知らせを…持って帰ってあげたい…!)」 ハギヨシ「…始まりましたね」 京太郎「あれ…?ハギヨシさんこっちに居て良いんですか?」 ハギヨシ「ここまで来たら私の仕事はありませんから」 ハギヨシ「それよりは友人の傍で観戦して来いと透華お嬢様が」 京太郎「なるほど。そう言えばこうして顔を合わせるのも久しぶりですからね」 ハギヨシ「最近は須賀君も忙しくしてるみたいですから」 京太郎「はは。まぁ、それでもハギヨシさんには負けますよ」 京太郎「と言うか本当、何時、休んでるんですか」 ハギヨシ「ちゃんと合間合間に休息は取っておりますよ」 京太郎「(その休息が秒単位っぽく思えるくらい働き者だから…正直、不安なんだよなぁ…)」 京太郎「(多分、龍門渕選手が清澄の控え室に寄越したのも自分の近くじゃハギヨシさんが休まらないからなんだろうし)」 ハギヨシ「まぁ…何はともあれ…」 京太郎「…今はまず大将戦…ですね」 モブα「(天江衣に原村和…正直、化け物と言っても良い二人が相手だけど…!)」 モブα「(ダブリーからの清一色…!)」 モブα「(幾ら化け物二人と言っても…これを避けるのは難しいでしょ…!!)」 和「…」トン モブα「っ!ロンっ!」 モブα「ダブリー 一発 清一色!」 和「…はい」スッ ハギヨシ「…いきなり直撃ですね」 京太郎「まぁ…運が悪かったです」 京太郎「ダブリーからの清一色なんて避けろって方が無理ですよ」 京太郎「…いや、一部、それを可能にする奴はいますけど」 咲「…え?」 京太郎「いや、なんでもない」 ハギヨシ「…特に動揺はないようですね」 京太郎「和の立ち上がりはあんなものですよ」 京太郎「確かに直撃は痛かったですけど、事故みたいなものですし」 ハギヨシ「まぁ…アレは衣様でも避けられるとは言いがたいものですね」 京太郎「えぇ。それよりもこの一局目でアレだけのものを引っ張ってきたモブαさんを褒めるべきです」 京太郎「天江選手の一向聴地獄を抜けながら一位の清澄に対して一気に距離を詰めて来ましたしね」 ハギヨシ「…とは言え…」 京太郎「…えぇ」 衣「……」ゴゴゴゴ ハギヨシ「今の一撃は…完全に衣様をその気にさせたようですね」 京太郎「もうちょっと様子見してくれるかなーって思ったんですけど…ちょっと甘かったです」 京太郎「実際…他家の配牌は…酷いもんですね」 ハギヨシ「衣様の能力は配牌の時点で及んできますから」 京太郎「改めて考えなくても鬼だなー…」 京太郎「ま…今回はそれが和にとって有利に働くんですけどね」 ハギヨシ「…え?」 京太郎「まぁ…見てて下さいよ。今の和は…かなり面白いですよ」 衣「ロン。8000」 和「…はい」 ハギヨシ「…また直撃?」 京太郎「いえ…今のは多分、和の方から振り込んだんです」 京太郎「天江選手の手牌を確認する為に…自分の方から」 ハギヨシ「…どういう事ですか?」 京太郎「和の能力はそのままじゃ発動しないんですよ」 京太郎「とても入念に下準備が必要なんです」 ハギヨシ「その為に…振り込むことが必要だと?」 京太郎「絶対ではないですけどね」 京太郎「ただ、そうした方が『理解』が進むのは確かみたいです」 ハギヨシ「…『理解』?」 京太郎「えぇ。また研究とか対策とか言った方が良いかもしれませんけど」 ハギヨシ「…それは…おかしいですね」 ハギヨシ「私見ながら…原村様の打ち方は見て来ましたが…彼女のそれは他者をあまり気にするものではありません」 ハギヨシ「常に自分のポテンシャルを最大限に発揮しようとするものだったはずです」 京太郎「今まではそうですね」 京太郎「でも…今の和は違います。オカルトってものを認めて…和は一歩前へと進んで…そして認めたんです」 ハギヨシ「…認めた?」 京太郎「…えぇ。自分が決して実力だけで勝ち抜けるような雀士じゃない事を。世の中には…どうにもならないような実力差があるって事を」 モブβ「(全然…駄目だ…和了れる気配がない…)」 モブβ「(噂には聞いてたけど…これが天江衣の…一向聴地獄って奴…?)」 モブβ「(偶然だって信じたいけど…他家も同じく…聴牌気配がない…)」 モブβ「(鳴けば多少はどうにかなるらしいけど…鳴けるようなチャンスなんて来ないし…)」 モブβ「(あーもう…こんなの絶対麻雀じゃないって…)」 モブβ「(ロリっ子なはずの天江衣はさっきから何か凄いプレッシャー放ってきて息苦しいし…)」ジジッ モブβ「(あれ…?少し…息苦しさが楽になった…?)」トン モブβ「(って…来てる…来てるじゃん!)」 モブβ「(何だ…一向聴地獄とか言いながら…別に聴牌出来ない訳じゃない…!)」 モブβ「(噂なんて…所詮、噂でしかないんじゃないの…ビビって損した…)」 モブβ「(ただ…まぁ、単騎待ちだから望み薄なんだけどね)」ハハッ モブβ「(でも…やれない訳じゃないって分かっただけでも十分…!)」 モブβ「(後はこれを誰かにぶつけられれば一番なんだけど…)」 和「……」トン モブβ「あ、そ、それ!」 モブβ「それ、ロンです!3900!!」 和「はい」スッ 衣「(…おかしい)」 衣「(さっきから衣は…全力で打っているはずだ)」 衣「(普段であれば…既に絶望し始め、心折れるものも出てくるはず…)」 衣「(それなのに…何故、こいつらはまだ…立ち向かえる?)」 衣「(いや…そもそも…一番、衣が不可解なのは…どうして…わざわざ和は他家へと振り込む?)」 衣「(勿論…衣とて自分の能力が完璧ではない事くらい分かっている)」 衣「(時折、支配が揺らぐのも分かるし…その間に他家が聴牌しているのも感じる)」 衣「(だが…どうしてそんな他家に…和ばかりが直撃を受けるのか)」 衣「(時に見え見えの待ちにさえ振り込むそれは…衣を苛つかせる)」 衣「(アレだけの大言を放っておいて…逃げ切る事が…衣への対策だと言うのなら…)」 衣「(失望の極みだ。面白くもない)」 衣「(今まで衣と打った連中とさほど変わらんそれを見たくて…衣は今までずっと待っていた訳じゃない)」 衣「(だからこそ…衣は…)」 衣「ツモ。リーチ一発四暗刻海底ツモで…16000・8000だ」 ハギヨシ「原村様の親っかぶりもあって逆転…ですね」 京太郎「…えぇ。思ったより早かったです」 ハギヨシ「…という事は…これも計算の内だと?」 京太郎「いや、そんな訳ないですよ」 京太郎「多分、今の和は冷や汗ダラダラなはずです」 京太郎「ただ…和の能力の都合上、天江選手にリードを維持出来るはずがありません」 京太郎「逆転されるまでは織り込み済みってだけですよ」 ハギヨシ「…ですが…そろそろ動き出さなければ…まずいですね」 ハギヨシ「原村様が他家に振り込んでいるお陰で…もう半荘の後半戦に差し掛かっていますし」 京太郎「その辺りは和も分かってるんで大丈夫だと思いますよ」 京太郎「それに…和の目つきも変わりましたから」 京太郎「そろそろ…『待ち』から打って出るつもりでしょう」 京太郎「だから、そろそろ見えるんじゃないですかね。和の『世界』が」 和「(…不思議ですね)」 和「(保っていたリードを溶かされ…内心…恐ろしいはずなのに…)」 和「(頭の中は冷えきって…とても冷静です)」 和「(まるで…心と身体が切り離されたようなその感覚は…けれど、決してイヤじゃなくって)」 和「(寧ろ…本来の自分に戻っていくような…そんな錯覚さえ覚えます)」 和「(今ならきっと…衣さんにも追いつく事が出来る)」 和「(彼女が作ったリードを…今度は逆に追い越してしまえるっていう自信さえ…あるのです)」 和「(魔物と呼ばれた衣さんに…そんな事言えるほど…私は強くはないはずなのに)」 和「(オカルトを防げた以前の私であっても…互角であったはずなのに)」 和「(それより弱くなってしまった私がそう思うのは…きっと自信過剰なのでしょう)」 和「(ですが…それでも…今の私は負ける気がしません)」 和「(皆が作ってくれた時間が、そして…須賀君と築き上げた…能力が…私にはあるんですから)」カァァァ ハギヨシ「顔が赤く…アレは確か…」 京太郎「のどっちモード…でしたっけ」 京太郎「原理はそれと同じです。思考に因る体温上昇が抑えきれなくなったが故の紅潮」 京太郎「ただし…今回のそれは以前のものとは比べ物になりませんよ」 京太郎「ああなった和は…鬼のように強いですからね」 京太郎「何せ…ああなった和は限定的状況であるとは言え…咲を破ったんですから」 ハギヨシ「宮永様を…ですか?」 京太郎「えぇ。それはもうコテンパンに」 京太郎「あの咲が半泣きになるくらいまで凹ませていました」 京太郎「もしアレが半荘でなければ飛んでいてもおかしくはありませんでしたね」 京太郎「だから…勝負はここからです」 京太郎「新生原村和は…こうなってからが怖いんですよ」 衣「(…どうやら…ようやく本気になったようだな)」 衣「(しかし…今更過ぎる)」 衣「(他家にわざと振り込んでいなければ、まだ勝機はあったかもしれないが…)」 衣「(ここから逆転するのはかつてのノノカでも難しいだろう)」 衣「(つまらない…あぁ…本当につまらない)」トン 衣「(咲以来の好敵手と認めたののかとの対局がこんな形で終わるだなんて…まったくもって)」ジジッ 衣「…!?」 衣「(今のは…なんだ…?)」 衣「(衣の腕が…一瞬…変わって…)」 衣「(まるでデフォルメされた…人形のように…)」ジジッ 衣「(いや…違う…!腕だけじゃない…!)」 衣「(世界が…少しずつ…デフォルメされて…オモチャみたいに…安っぽく…)」 衣「(これは…これは…まさか…衣の支配が…上書きされている!?)」 ハギヨシ「衣様が…動揺されている…?」 京太郎「どうやら…天江選手はもう気づいたみたいですね」 ハギヨシ「一体…何が起こっていると言うんです?」 京太郎「原理的には…咲や天江選手がやっている事と同じですよ」 京太郎「卓上に並ぶ牌の支配。それだけです」 京太郎「ただし…それそのものには大したメリットはありません」 京太郎「下手をしたら…逆に敵を利する事にもなりかねないんですから」 ハギヨシ「…確かに…他の方は動揺していませんね」 京太郎「当然ですよ。あそこは今、彼女たちにとっては何時もの場所で、そして天江選手には猛烈なアウェイなんですから」 京太郎「あそこは今…天江選手が知らず…そして和が良く知る世界」 京太郎「つまり…オカルトがまったくなしの…ネット麻雀の世界になってるんですよ」 衣「(なん…だここは…?)」 衣「(衣の能力が…まったく通用しない…!?)」 衣「(それなのに…どうしてこいつらは平然と打っていられる…?)」 衣「(まさか…これが見えているのは…衣だけ…?)」 衣「(衣だけが…おかしくなったって言うのか…?)」 衣「(分からない…一体…一体…何が起こっていると言うんだ…?)」 衣「(そもそも…衣が今、やっているこれは…本当に麻雀なのか?)」 衣「(ツモ牌も…他家の役も分からない…)」 衣「(いや、それどころか…さっきまで分かっていたはずの聴牌具合すら…霞に掛かったように見えなくて…)」 衣「(一体…これは何なんだ…?)」 衣「(衣は…一体、何をやってる…?)」 京太郎「きっと今の天江選手にとっては訳が分からないでしょうね」 京太郎「普段、何気なく使えていたものが一切、なくなるんですから」 京太郎「その動揺は打ち筋にも現れてくれれば…和にとっては…狙い撃ちです」 和「ロン。8000です」 衣「あ…」 京太郎「勿論…普段からオカルトに頼っている人にしか…これは大きな効果を得られません」 京太郎「ですが、その比重が大きければ大きいほど今の天江選手のように崩れていく」 京太郎「さながら…天江選手たち魔物に出会い…自身の経験がまったく役立たずである事を悟った雀士たちのように」 京太郎「勿論、分かっていれば…対処の仕様は幾らでもあるでしょう」 京太郎「ですが…初見でアレに完全に対応出来るオカルト打ちはいないと俺は思います」 京太郎「その能力を理解しているはずの咲でさえ、アレは未だに攻略しきれていない訳ですし」 京太郎「それほどまでに頑なにオカルトを排除するあの能力は…オカルト殺しの為のオカルトと言っても良いくらいでしょう」 京太郎「勿論…一部の人に強力なメタとして働く能力と言っても、デメリットは多数あります」 京太郎「…今、天江選手の顔が和らいだのが分かりますか?」 ハギヨシ「えぇ…何処か安堵しているみたいですね」 京太郎「アレは恐らく和の『世界』が一度、終わったからです」 ハギヨシ「一局ごとにしか使えないんですか…?」 京太郎「より正確に言えば…一局ごとにリセットされるんですよ」 京太郎「そして再び和がその『世界』を展開するのには時間が掛かる」 ハギヨシ「それは一体…」 京太郎「他家の河や打ち方なんかを見て手牌や目指している役なんかを推察してるんですよ」 京太郎「それが正解に近づけば近づくほど…和の『世界』は強固になる」 ハギヨシ「まさか最初に他家へと振り込んでいたのは…」 京太郎「はい。河や役を見てどんなタイプの雀士か推察していた訳です」 京太郎「どういう時にどういうものを切るタイプなのか、既に和の中にはインプットされているはずですよ」 ハギヨシ「…まるで高性能な演算器か何かのようですね」 京太郎「あながち間違いじゃありませんね。実際、今の和の洞察力はずば抜けています」 京太郎「風越の福路選手ほどではありませんが…読みもかなりのものですよ」 京太郎「…ほら、数巡なのに…また来ましたしね」 衣「っ!?」ジジッ ハギヨシ「つまり…さっき衣様の能力が幸いだと言っていたのは…」 京太郎「えぇ。和が再び『世界』を発動するまでの時間を、他でもない天江選手が稼いでくれるからです」 京太郎「その上、和の能力がメタとして突き刺さるんですから、天江選手からすれば相性が最悪もいい所でしょう」 ハギヨシ「…ですが、衣様は能力を殆ど封じられたとしても、あの直感めいた打ち筋と強運があるはずです」 ハギヨシ「それなのにこうも一方的にされるのは…」 京太郎「言ったでしょう?あそこはネット麻雀の世界なんです」 京太郎「限られた牌を奪い合い、競い合う偏ったランダムの世界。その配牌もまた『その時点で最も来やすいもの』が来るようになっています」 ハギヨシ「…それはつまり…直感も強運も…まるで意味が無いと…?」 京太郎「えぇ。その代わり必要なのは…確率論と無数の対局を経て至った経験です」 京太郎「勿論、今の和だって完璧ではありませんが…それでもあの中では飛び抜けているでしょう」 京太郎「お陰で和は他家の手牌予想をどんどんと正解へと近づけ、その支配を強固にし…さらに正解へと近づく事が出来る」 京太郎「一巡ごとに支配を強め、なおかつ、その上で最短を進む和に…普通は勝てるはずがありません」 京太郎「オカルトの領域にまで入り込んだ…データ雀士としての極地。そこに今…和はいるんです」 和「ロン。11600です」 衣「…あ…ぅ…」 京太郎「…終局…ですね」 ハギヨシ「まさか…ここまで衣様が良いようにされるとは…」 京太郎「相性が良かった上に、和の能力は初見殺しですから。それに何より…運が良かったんですよ」 京太郎「清澄皆で作っていたリードがなければ、和だってあんなにのびのびと打つ事は出来なかったでしょう」 京太郎「そもそも満月の天江選手であれば、和の支配力が上回るには時間が掛かったはずです」 京太郎「その場合、ここまで圧勝できたとは到底、思えません。下手をすれば序盤のリードを維持されて負けていた事だってあり得たと思いますよ」 ハギヨシ「でも…宜しいのですか?」 京太郎「ん…何がですか?」 ハギヨシ「私は須賀君の友人ではありますが、龍門渕側の人間です」 ハギヨシ「原村さんの能力をこうも教えてしまったら…その情報はそのまま透華お嬢様たちの耳に入るかもしれませんよ」 京太郎「ハギヨシさんはそういう事をしません」 ハギヨシ「…どうしてそう思われますか?」 京太郎「ハギヨシさんにとって龍門渕選手たちが楽しむ事が一番ですから」 京太郎「今頃、和の能力を考察してどう破ってやろうかと息巻いている龍門渕選手の邪魔はしないでしょう?」 ハギヨシ「…はは。これはお恥ずかしい」 ハギヨシ「完全に…思考を読まれると…どうして良いか分からないものですね」 京太郎「普段、そうやって人の思考を読んでるんですからたまには恥ずかしがれば良いんですよ」 京太郎「それより…天江選手の所に行ってあげて下さい」 京太郎「きっと…天江選手は今、泣きたい気持ちで一杯なはずですから」 京太郎「それを受け止めてあげるのも…執事の仕事でしょう?」 ハギヨシ「これは…また須賀君に一本取られてしまいましたね」 京太郎「前回のお返しですよ」 ハギヨシ「では…次回は色々と私の方がお返し出来るよう考えておきましょう。…ではまた後ほど」ダッ 京太郎「…えぇ。また」 衣「…ののか…強く…なったな…」 衣「衣は…衣はこれだけ良いように翻弄されたのは…初めてかもしれない…」 和「衣さん…私…」 衣「いや…いや、何も言うな。勝者が敗者に掛ける言葉なぞ無粋も良い所だ」 衣「それに…衣は嬉しい」 衣「衣もまったく知らない打ち方があって…しかも、それが友人である和が到達したものなんだからな」 衣「だから…衣は…全然…全然…悔しく…」ジワッ ハギヨシ「衣様…!」バンッ 衣「う…う…ぅ…ハギ…ヨシ…」 ハギヨシ「…」ギュッ ハギヨシ「…すみません。原村様。今の衣様は少し情緒不安定なようなので…」 和「…えぇ。分かりました…」 和「その…申し訳…ありません」 ハギヨシ「いえ、気にしないで下さい。衣様もきっと…本当に喜んでおられるのです」 ハギヨシ「今はただ慣れぬ敗北に心を荒れさせておられるだけ」 ハギヨシ「ですから…そう申し訳無さそうな顔をしないで下さい」 ハギヨシ「それよりも…胸を張って、須賀君たちの所へ帰ってあげた方が…皆も喜びます」 和「…はい」 和「(…衣さんを…泣かせてしまいました…)」 和「(咲さんの時も…涙目にさせてしまいましたし…私の力はよっぽどああいった人たちにとって辛いんでしょう…)」 和「(あんな風に…対局者を泣かせてまで麻雀を打っていて良いのかって…思う事はない訳じゃありません)」 和「(でも…私は…)」ガチャ 咲「和ちゃん、お帰り!」 優希「のどちゃん!とっても凄かったじぇ!!」 小蒔「とっても…格好良かったです」 まこ「はは。まさかここまでたぁ思っとらんかったわ」 春「やっぱり…黒糖食べてる人は違う…」グッ 和「…ただいま戻りました」 和「(こうやって迎えてくれる…皆の為に勝ちたい)」 和「(そう…心から思えるから…)」 和「(だから…衣さん…ごめんなさい。私…勝った事に…後悔なんてしていないんです)」 和「(衣さんを泣かせるような打ち方をして…でも…私、嬉しいって思っているんです)」 和「(そして…そして…何より…)」 京太郎「よ。和」 和「…須賀君…」 京太郎「…良く頑張ったな。モニター越しだったけど…凄かったぞ」 和「…は…い」ジワッ 京太郎「ってな、なんで泣くんだよ…」 和「ど、どうして…でしょう…須賀君の顔を見ると…今…凄い安心して…」 和「み、見ないで下さい…」グスッ 小蒔「……」 小蒔「…えい」ドンッ 和「わっ」 京太郎「おわっ」ギュッ 和「…あ…」カァァァ 小蒔「…今日の主役は原村さんでしたから…ちょっとだけ貸してあげます」 和「神代…さん…」 小蒔「だから…思いっきり…京太郎様の胸で泣いて良いと思いますよ」ニコッ 和「あ…わ…私…」ポロポロ 京太郎「……うん。そうだな。思いっきり…泣いていいぞ」ギュッ 京太郎「今まで…辛かったもんな」 京太郎「それだけ…辛くて…歯がゆい思いをしてきたんだもんな」 京太郎「だから…その分、思いっきり…泣いてしまって良いんだよ」 京太郎「それくらい受け止める器量はあるつもりだから…さ」ナデナデ 和「う…あ…うあ…ぁぁ…」ギュゥゥッ 京太郎「…和は…頑張ったよ。凄い頑張ったから…ここまで来れたんだ」 京太郎「それは…俺も…皆も良く知ってる」 京太郎「だから…お疲れ様、和」 京太郎「俺は今…すげー誇らしい気持ちで一杯だよ」 和「(そう須賀君に慰めてもらう度に…私は今までの事が脳裏に浮かんでいました)」 和「(オカルトという存在を認めはじめたその時から…今までの事が走馬灯のように頭をよぎっていたのです)」 和「(それは勿論、楽しい思い出ばかりという訳ではありません)」 和「(いえ、寧ろ…自分を騙すのに四苦八苦したり、成果の出ない特訓に落ち込んだりと暗い感情が真っ先に浮かんできました)」 和「(けれど…それらが今…全部、報われたのです)」 和「(衣さんから…全国でも有数の打ち手からもぎ取った勝利という形で…私はそれらを全て肯定する事が出来るようになりました)」 和「(その喜びが一体…どれだけのものか…私には筆舌に尽くし難いです)」 和「(思わず胸の中から涙として溢れるくらいのそれは…さっきから止まりませんでした)」 和「(これまで…頑張ってきて良かったって…諦めなくてよかったって…そう思う度に…幾らでも湧き上がるのですから)」 和「(そしてそれは…皆に対する…感謝の気持ちも一緒です)」 和「(こんな私を見捨てずに…そして信じてくれた…皆に幾らお礼を言っても…言い尽くせません)」 和「(そもそも…今の私は泣く事に精一杯で…ろくに言葉を紡げるような状態じゃなくって…)」 和「(結局…誰よりも支え続けた人の胸の中で…何分間も泣き続けたのでした)」 和「…お、お騒がせ…しました」カァァ まこ「何、そがぁななぁ小蒔で慣れとるからな」 小蒔「べ、別に私そこまで泣き虫じゃないですよ!」 春「人騒がせという意味では…間違いじゃない?」 小蒔「あぅぅ…」 優希「まぁ…それだけのどちゃんが頑張ったって証だじぇ!」 咲「そうだよ。誰もそれくらいで悪く思ったりはしないって」 和「…皆…ありがとう…ございます」 春「…寧ろ…それを言うのはこっちのセリフ」 まこ「そうだな。和…勝ってくれて有難う」 優希「お陰でリベンジ達成だじぇ!」 咲「私じゃ…今の衣さんに勝てるか分からなかったし…本当に凄かった…」 春「宮永さんは自分を低く見積もり過ぎ…」 まこ「相性差こそあるが未だにうちのトップは咲なんじゃからな」 咲「そ、そうなの…?」 和「ふふ…っ♪」 京太郎「ついさっきまで一局進む毎に息を呑んだり悲痛な声をあげたりしてたって思えないくらい元気だろ?」 咲「う…そ、それは…」 まこ「まぁ…相手が相手じゃったしな」 春「不安になるのも当然の事…」 優希「そ、そもそも京太郎がハギヨシさんとイチャついてるのが悪い!」 京太郎「いや、普通に話してただけだろ」 春「…その割には私達との会話はなかった」 小蒔「とっても楽しそうでしたねー…」ジトー 京太郎「いや…そりゃリアルで会って話をするのは久しぶりだし…ハギヨシさん相手に何かを教えるってめったにある事じゃないし…」 京太郎「って、な、なんで俺がホモ疑惑受けてるんだよ!俺はノーマルだ!!」 小蒔「それは…勿論、理解していますけど…」 優希「何か二人で並んでいるとこう…入り込めないオーラが…」 京太郎「風評被害も良いところだ…」 京太郎「まぁ…ともかく…だ」 京太郎「リベンジ達成、おめでとう、和」 和「ありがとうございます。私が衣さんに勝てたのは…皆がリードを作ってくれたお陰です」 優希「まぁ…得点稼いだのは殆ど咲ちゃんだけどな」 春「私たちは…もうちょっと練習が必要」 まこ「そうじゃの。このまんま咲や和に頼りっきりじゃまた龍門渕に勝てるかどうか分からん」 まこ「来年のインターハイまでに…また強くならんとな」 まこ「その為にも…次は…」 小蒔「龍門渕さんたちとの交流戦ですね」グッ 優希「ふっふっふ…腕が鳴るじぇ」 春「こっちでの交流戦は初めてだから…楽しみ」 まこ「さっきのリベンジしたい子もいるじゃろうし…何より一部の人にゃぁフラストレーション溜めさせとったけぇなぁ」 まこ「わしの我侭の所為ですまんな」 小蒔「いえ…そんな…」 和「お陰で私は…胸を張れる強みを手に入れたんです。感謝してるくらいです」 まこ「…有難うの。そう言ぅてくれるとわしも嬉しい」 ハギヨシ「清澄の皆様、遊戯室の準備が整いました」 優希「来たか!」ガタッ 春「待ってた…」グッ 小蒔「め、珍しく春ちゃんが燃えてます…」 まこ「まぁ、あがぁな戦いを見せられたら誰だって燃えるじゃろ」 まこ「わしだって一局打ちたくてウズウズしとるくらいじゃけぇな」 和「あの…衣さんは…」 ハギヨシ「大丈夫ですよ。もう泣き止まれました」 ハギヨシ「それに…今はとても嬉しそうにしていらっしゃいます」 ハギヨシ「衣様にとって手も足も出ないくらいの大敗は初心者の頃でもほぼなかったので」クスッ ハギヨシ「まるで自慢するように透華お嬢様たちに話してられましたよ」 和「そう…ですか」ホッ ハギヨシ「安心して下さい。衣様はそんなに弱くなんてありません」 ハギヨシ「寧ろこれからの交流戦でリベンジすると息巻いてられましたよ」 和「う…お、お手柔らかにお願いしますとお伝え下さい」 ハギヨシ「えぇ。承りました」 まこ「じゃ…わしらは先に行っとるけれど…」 優希「のどちゃんは終わったばかりだし、ゆっくりしておくと良いじぇ」 京太郎「あー…んじゃ、俺も…」 小蒔「京太郎様は原村さんの傍についていてあげてください」 京太郎「…良いのか?」 小蒔「勝利の立役者に嫉妬するほど私は狭量ではありませんよ」クスッ 小蒔「それに私は京太郎様の事を信じておりますから」グッ まこ「…成長したなぁ」ホロリ 春「以前の姫様とは別物…」 咲「石戸さんが見たらきっと喜ぶだろうなぁ…」 小蒔「そ、そんなに私ダメでしたか?」 優希「ダメって言うか…」 まこ「京太郎以外眼中にない感じじゃったけぇなぁ…」 小蒔「う…ま、まぁ…昔はそうだったかもしれませんけど…」 小蒔「い、今は違いますよ!ちゃんと皆の事も大事に思ってます!」アセアセ 春「大丈夫…姫様の気持ちは皆に伝わってる」 まこ「そうそう。じゃけぇ…まぁ、ちぃとだけ二人っきりにしちゃろう」 咲「…うん。そうだね」 優希「のどちゃんの事また泣かせたら承知しないじぇ!」 京太郎「分かってるって」 京太郎「まったく…心配症な奴らめ…」 和「それだけ須賀君が信頼されているんですよ」クスッ 京太郎「信頼…されてるのかなぁ…」 和「じゃなかったら、あんな風に軽口を叩いてりしません」 和「須賀君なら大丈夫だって…そう思っているから…ゆーきもあんな事言ったんですよ」 京太郎「そう…なんだろうか」 和「…須賀君?」 京太郎「いや…俺が小蒔以外に和にも手を出してるのはもう完全にバレてるだろアレ」 和「ま、まぁ…そうじゃないと二人っきりにしようとはしないと思いますけど…」 京太郎「だから…部長たちの変わらない態度が若干、怖くてなぁ…」 京太郎「ある程度、俺の能力やらを知ってくれている春はともかく…ぶっちゃけ俺、女の敵以外の何者でもないし」 京太郎「改めるつもりはないにせよ…シカトされてもおかしくない事をしてるって自覚はあるんだ」 京太郎「それなのに…態度が変わらないってのは…どう思われてるのか不安でな」 和「…ふふっ」 京太郎「ん…?」 和「あ、ごめんなさい…別にバカにした訳じゃなくって…」 和「須賀君でも…そうやって不安に思う事があるんだなって…そう思って」 京太郎「そりゃ…俺だってそこまで脳天気じゃないぞ」 和「えぇ。分かってます。私たちの事で色々と須賀君が悩んでくれている事も」 和「でも…須賀君は今までそれを私に見せてくれなかったじゃないですか」 京太郎「そう…だったっけ?」 和「えぇ。何時でも…格好つけて弱みを見せるのは私の方でした」 和「だから…ちょっと嬉しかったんです」 和「そうやって須賀君が…弱みを見せてくれるくらいに私の事を信頼してくれているんだって…そう思えましたから」ニコッ 京太郎「あー…いや、別に…信頼してなかった訳じゃないんだ」 京太郎「ただ…俺は和の前でだけは格好付けたくて…さ」 京太郎「一番…好きな女の子だし…その…何て言うか…」 和「ふふ…っ♪分かっていますよ」 和「私だって…神代さんに負けないくらい須賀君の事を信じているんですから」 和「須賀君が私の事を思ってくれているっていうのを疑った事はありません」 和「でも…やっぱり…寂しかったのは…事実ですよ」ギュッ 京太郎「和…」 和「私が…須賀君に身を委ねているのは…別に須賀君が立派な人物だからじゃありません」 和「ましてや…能力の所為でもなくて…あの…その…」カァ 和「す、須賀君が…とっ、とても暖かで優しい人だからです!」 和「だ、だから…えっと…無理に私達の前で格好つけたりしなくても大丈夫…です」 和「いえ…寧ろ…もっと…そういう須賀君を見せて下さい」 和「だって…ふ、不公平じゃ…ないですか」 和「私だって…須賀君の事が…~…なのに…」 京太郎「え…?」 和「~~っ!で、ですから…あの…」カァァァ 和「わ、私だって…須賀君の事が好きなのに…そういう弱い須賀君を上重さんに独り占めされるのはイヤなんです!!」 京太郎「…はい…?」 和「な、何ですか、その反応!」 和「わ、私が普通の時に好きって言ったらダメなんですか!?」 京太郎「い、いや、そんな事ないよ。まったくない」 京太郎「つか…嬉しすぎて夢じゃないかって思ってるくらいで…」 和「う…そ、それは…その…」 和「い、今まで…ちゃんと言わなかったのは…わ、悪いと…思ってます…けど」ウツムキ 和「わ、私が勇気を出せなかった所為で…不安にさせていたのは…ごめん…なさい…」シュン 京太郎「い、いや、和は悪くないって!」 京太郎「そもそも俺がそうやって素直に好意を示してもらえるような男だったら…」 和「いえ…違うんです。私が…ずっと言えなかったのは…怖かったからです」 和「それを口にしてしまう事で…今までの心地良い関係が崩れてしまうんじゃないかって…そう怯えていたんです」 和「でも…私…今日…衣さんに勝てて…ようやく勇気を持てました」ギュッ 和「私は…もう逃げません」 和「自分の感情からも…ゆーき達からも…そして…神代さんや上重さんからも」 和「だから…私は改めて言います」 和「私は…須賀君の事が…大好きです」 和「最初は…能力の所為だったのかもしれません」 和「いえ、キッカケは間違いなく…須賀君の持つ不思議な力だったんでしょう」 和「でも…私が須賀君に惹かれていったのは…決してそれだけじゃありません」 和「須賀君が私たちの事に一生懸命になって…手を尽くそうとしてくれたからです」 和「駆けずり回ってでも…私たちの事を助けようとしてくれたからです」 和「その気持ちは…他の誰にも負けるつもりはありません」 和「何度だって言えます」 和「私は…原村和は須賀京太郎君の事を愛しています」 京太郎「…和…」 和「今まで…伝えられなくてごめんなさい」 和「意地を張ってしまって…すみません」 和「でも…その分…尽くしますから」 和「今までの分をお返し出来るように…尽くしますから…だから…」 京太郎「…それ以上は言わなくて良い」ギュッ 和「あ…♥」 京太郎「言っただろ。俺は和を見捨てないし…絶対に幸せにして見せるって」 京太郎「だから…そんな風に言わなくて良いんだよ」 京太郎「俺が和の事を好きな気持ちは…今だってまったく色褪せていないんだからさ」 京太郎「だから…無理しなくても良いんだ」 京太郎「何時もの…意地っ張りな和の事も俺は大好きなんだからさ」ナデナデ 和「…本当…ですか?」 京太郎「あぁ。こんな事で嘘吐かないって」 京太郎「…俺も…何度だって言えるよ」 京太郎「俺は和の事を誰よりも愛してる」 京太郎「絶対に手放したくないくらい…好きなんだ」 和「須賀…君…ぅ♥」 京太郎「…どうせだしさ。京太郎って呼んでくれないか?」 和「え…?そ、それは…」 京太郎「ダメ…かな?」 和「……もう…須賀君は…ううん…京太郎君は…仕方ないんですから」 和「…こんな風にぎゅっとされたら…断れないです…♪」 京太郎「あー…ごめんな」 和「でも…手放すつもりは…ないんですよね?」 京太郎「あぁ。もうちょっと…こうしてたい」 京太郎「俺の事を好きだって言ってくれた女の子の身体を…強く感じてたい」 和「本当に…もう…京太郎君はスケベなんですから…っ♪」 和「仕方ないから…もうちょっとだけ…こうしておいてあげます…♥」ギュッ 京太郎「…ありがとうな」ナデナデ 和「は…ぅ…ぅ♪」 和「気は…済みました?」 京太郎「…もうちょっと」 和「もう…いきなり甘えん坊になりすぎですよ…ぉ♥」 京太郎「いや、だって…無理だって」 京太郎「和が俺の事好きだって言ってくれただけでも嬉しいのに…」 和「…そんな事言いましたっけ?」 京太郎「え、えぇぇ!?」 和「ふふ…♪冗談ですよ♪」 和「でも…流石にこうしてずっと…ギュッてされるとですね…♪」 和「そろそろ…本格的に我慢出来なくなるというか…」 和「す、スイッチが入っちゃうというか…」モジモジ 京太郎「あー…それは流石にまずいな…」 和「そ、そうですよ。だから…その…早く…」 京太郎「…そう言いながら和の腕も離れないんだけど」 和「そ、それは…その…」 和「べ、別に…このままなし崩し的にエッチ出来ないかなーとかそういうの期待してる訳じゃなくってですね…!」 和「た、ただ…そ、そう!て、手持ち無沙汰でちょうどいい所に京太郎君の腰があるからついつい抱いちゃうだけで…!!」 京太郎「はは。じゃあ…ほら」スッ 和「あ……ぅ…」モジモジ 京太郎「…和?」 和「わ、分かってます!分かってます…から」スッ 京太郎「ごめんな。これが抜けだしてどうこう出来る状況なら構わないんだけど…」 和「べ、別に…京太郎君が謝るような事じゃ…」 和「そ、そもそも…悪いのはこんなところで発情しちゃってる私ですし…」モジモジ 和「明日までは…その…ちゃんともたせてみせますから」 京太郎「って事は…?」 和「わ、分かってる癖に…言わせないで下さいよ…もぉ…っ♥」 京太郎「それでも俺は和の口から聞きたいな」 和「う…ぅ……そ、その…うぅ…」モジモジ 和「ひ、昼から両親は打ち合わせに出かけるんで…その…京太郎君の都合さえ良ければ…」 和「う…家に…来ませんか?」カァァ 京太郎「うん。是非とも」ナデナデ 京太郎「んじゃ…そろそろ出るか?」 和「そうですね…あんまり長居すると神代さんが怖いですし」 京太郎「前科がある以上、疑われると言い訳しか出来ないからなぁ…」 和「その辺りは…京太郎君の腕の見せ所ですね」 京太郎「まったくもってその通り過ぎて何も言えねぇ…」 和「まぁ…その時は少しくらい釈明に付き合ってあげますから」クスッ 京太郎「少しだけかよ」 和「あんまり私が出しゃばると神代さんとしても面白く無いでしょうしね」 京太郎「ま…そりゃそうか。ああは言ったけど…やっぱり寂しそうにしてたし」 和「…結構、見てるんですね」 京太郎「そりゃ…まぁ…な。なんだかんだで俺にべったりなのはそう変わっていないし」 京太郎「小蒔は小蒔で変なところで遠慮しいだから…出来るだけこっちが察してやらないと」 和「…ふふ…♪」 京太郎「ん…?どうした?」 和「多分…京太郎君が皆に根本的な部分で嫌われていない理由って…そういう事だと思いますよ」 和「以前、京太郎君が言ってくれたのと同じです」 和「皆、今までの事で京太郎君の良さを知ってるんですよ」 和「どれだけ優しい人かとか…進んで二股する人じゃないかとか…そういう信頼があるんです」 和「…まぁ、そんな度胸がないと思われているかもしれないですけど」クスッ 京太郎「いや…実際、俺ヘタレだからなんとも言えないけどさ…」 和「それでも…肝心な時はちゃんと決めてくれる人だって言うのは皆知っています」 和「だからこそ…下手に触らず解決を私達に委ねてくれているんでしょう」 和「いざと言う時が来たら京太郎君が何とかしてくれるってそう思っているからこそ…皆はこの関係を保っていられるんだとそう思います」 京太郎「あー…なら…それに応えないと…いけないな」 和「…えぇ。でも…結論は急がなくても良いですよ」 京太郎「…いや、でも…」 和「今の状況がそういったものが出せるものではないというのは分かっていますし」 和「それに…まぁ…何て言うか…ですね」 和「…ちょっと神代さんに対抗心を抱いているのもあったりして…」 京太郎「…え?」 和「だ、だから…ですね。彼女と京太郎君を巡って消極的に対立している私としては…あんまり…面白くないんです」 和「あんな風に余裕を見せつけられると…自分の器が小さいようで…京太郎君の事も先んじられているようで…むっとしてしまうんです」カァァ 和「だから…私も…早く結論を出して欲しいとは言いません」 和「京太郎君が望む限り…保留のままで結構です」 和「そして…私はそれを…ずっと信じて待ち続けるだけです」 和「京太郎君が…私の事を選んでくれるって…そう…信じて」ギュッ 京太郎「…和…」スッ 和「い、今は…ダメですよ」 和「今、ぎゅってされたら…私…ほ、本当にスイッチが入っちゃいますから」 和「ぜ、絶対に…ダメですからね!」 京太郎「…分かった」 和「…本当に?」 京太郎「あぁ。仕方ないけど…我慢する」 和「本当の本当にですか?」 京太郎「勿論だ。俺だって和に迷惑を掛けるのは本意じゃないし」 和「…そう…ですか」シュン 京太郎「…もしかしてして欲しかった?」 和「な、何を言うんですか!?」 和「そ、そんなの…ちょっと…いえ…半分くらい思っただけです!」 和「そこまで我慢が効かない訳じゃありません!!」 京太郎「でも、半分は本気だったのか」 和「あっ…」カァァァ 和「う…ば、馬鹿な事行ってないで…も、もう本当に行きますよ!」 和「こ、このままじゃ…本当に我慢出来なくなっちゃいそうですし…」 京太郎「まぁ…最近は特訓やらで忙しくて…こういう真剣な話する機会なんてあんまりなかったからな」 京太郎「なんてーか、ごめん」 和「べ、別に…京太郎君が悪くありませんよ」 和「そもそも…こうして話している事そのものは…その悪く無いと言いますか…」 和「寧ろ…良すぎて…私のタガが緩みがちになっちゃうと言うかですね…」ボソボソ 京太郎「ん?もう一度言ってくれないか?」ニヤニヤ 和「ぅー…き、聞こえてた癖に…」 京太郎「いやーここ最近、難聴が酷くてさー」ボウヨミ 和「すっごい棒読みなんですけど…」ジトー 京太郎「はは。恥ずかしがる和が可愛くてつい…な」 和「むぅ…ぅ……人のこと良いように弄んだ挙句…か、可愛いだなんて…」 和「それだけで…許してあげたくなるじゃないですか…」ポソッ 京太郎「って事はもっとやって良いんだな」 和「やっぱり聞こえてるじゃないですかああ!」 京太郎「悪かった。悪かったから…ほら」スッ 和「…え?」 京太郎「遊戯室の前くらいまで…手を繋いでいかないか?」 京太郎「…なんだかんだ言って…こういう事してなかったし」 京太郎「まぁ…なんつーか…その…な」 京太郎「図々しいけど…恋人らしい事したくて」 和「…」クスッ 和「もう…最初からそのつもりだったのなら…言ってくれれば良いのに」 京太郎「いや…だって…素で繋いで行こうって…中々、言えないぞ」 京太郎「なあなあで繋ぐならともかく…俺からってのは…あ…」 和「…ふふ…♪どうかしました?」 京太郎「…何か柔らかいもので俺の腕が包まれてるんですけど」 和「包んであげてるんですよ…♥こういうの…好きでしょう?」 京太郎「いや…好きだけどね!好きだからこそ…こう…リビドーや諸々の問題が…」 和「私だって我慢してるんですから、京太郎君も我慢してください」キッパリ 京太郎「ひでぇ…」 和「それに…ですね。こうやって腕を組んだ方が…その…」 和「こ、恋人っぽい…じゃないですか」カァァ 京太郎「…実は憧れてた?」 和「う、うるさいですよ。それよりも…ほら!」グイグイッ 京太郎「わっ!こら、急ぎすぎだって」 京太郎「そんなに急いだら、すぐ遊戯室に着いちまうぞ」 和「う…」 和「…し、仕方ないですし…ゆっくり行きましょう」 京太郎「あぁ。その方が良い」クスッ 京太郎「俺も…もうちょっと和とこうして…恋人らしい事楽しんでいたいしさ」ギュッ 和「…はいっ♥」 前話 次話
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照SS投下します。 元ネタは吉田拓郎の歌、「望みを捨てろ」。 菫→照→咲の定番です 143 名無しさん@秘密の花園 [sage] 2009/10/25(日) 15 23 42 ID 94ZUj7Jg Be 望みを捨てろ 私は一人になりたかった。強さを求めるが故に全てを失ったのだ。 今さら誰とも仲良くしたいと思わなかった。一人になりたかった。 私に妹などいないのだ。向かってくるものは皆、敵だ。ただ屠るだけだ。 確かに私にはかつて姉と妹のあるべき感情を越えた妹がいた。しかし今はいない。 彼女はもう別の者と愛し合っていた。新聞とテレビで確認しただけだが、私にはわかる。 彼女は私を忘れてしまった。もはや私にとってただの敵に過ぎないのだ・・・。 いや、私から彼女・・・つまり咲を捨ててしまったのだ。私が拒絶したのだ。 彼女の私を超えるかもしれない強さに恐怖、嫉妬して私は咲を拒絶した。 そのときの私は幼かった。しかし幼い日の過ちであっても取り返しはつかなかった。 私は咲と離れた。念願の強さを手に入れた。しかし、どこかむなしさがあった。 私が本当に求めていたものはこれではなかったのか。別のものだったのか。 私は最近そう考え、悩むようになった。だが、今さら考えても後の祭りだ。 今の私には強くなること以外の幸せが、必要とするものが、生きがいがわからない。 誰かを愛することなどその邪魔になるだけだ。私は私だけを好きでいればいい。 私は一人でいたかった。もう誰も愛さないために。 望みを捨てろ、望みを捨てろ。 私は一人でいたかった。しかし私は一人になれなかった。 避けてきたはずなのに、逃げられなかった。私は一人になれなかった。 私を愛してくれる奴がいた。私を理解しようとしてくれる奴がいた。 私はそいつを幾度と無く突き放そうとした。でもそいつは離れなかった。 そいつが言うには、私は柄でもないのに無理して無愛想にしている、らしい。 そしてそこが可愛らしくて好きなんだと。訳がわからない。 自分の前では本当のお前を見せてくれ、とそいつは私に言った。 そいつ・・・私のチームメイト弘世菫は私を愛してくれていた。 私は一人になれなかった。結局私も誰かに愛されたかったのだ。 私が本当に好きな相手ではないというのに。私は菫から離れることは出来なかった。 私は一人でいたかった。でも一人になれなかった。 望みを捨てろ、望みを捨てろ。 私は二人になりたかった。二人になりたい、一人だった。 私は自分でもどこに向かおうとしているのかわからなかった。私は二人になりたかった。 テレビで全国大会の特集番組があり、その日は神奈川県、大矢海星高校と 長野県、清澄高校の回だった。清澄高校・・・・・・。 清澄高校が同県の鶴賀学園という高校と練習試合をしている様子が放映された。 清澄高校のメンバーはやはり大したことはなかった。なんら見るべきところは無い。 そもそもその場にいる誰一人として強い、とは思えなかった。ガキの遊び場に見えた。 ・・・ただ一人、宮永咲を除いて。咲は圧倒的な強さを発揮していた。 『ツモ、リーヅモ嶺上開花、混一色、中、ドラ4、三倍満です』 『・・・相変わらずえげつないっすね・・・。やってらんないっす・・・』 他の塵芥、名も無き芥子粒ども相手に、戦意喪失させるほどの無敵さを誇っていた。 あの泣き虫で気弱の咲がここまで成長するなんて。 私が昔教えた嶺上開花を武器としていた。覚えていてくれたのか・・・。 私は他のメンバーもいる手前、いつもの無表情、無感情を装っていた。 しかし、咲がアガる度に小さくこぶしを握り、聞こえない声で、よし、と言った。 相手のリーチの時には心の中でハラハラドキドキしていた。 ・・・やはり私には咲への思いを捨てることは出来ないのだろうか。 結局咲は2位に5万点以上の差をつけその半荘のオーラスに入った。 もともとの力量が段違いな上、この点差だ。勝利を確実なものとしていた。 ところが次の瞬間、信じられないことがおきた。 『カン!・・・もいっこ、カン!もう一つ・・・』 『・・・ロン。その二個目の1筒・・・それだ、チャンカンだ』 暗カンでロン?ということは、まさか・・・ 『国士無双、親の役満48000、逆転だ、悪いな、全国に向けて弾みをつけたかった時に。 ま、これが全国大会じゃなくて良かったな。さ、気を取り直して次の半荘に・・・』 『や、やったぜユミちん!一矢報いた!鶴賀の反撃開始だ!』 役満を決めた側の生徒たちが歓声を上げる中、咲は呆然としていた。 くそ。クズのくせに咲にあんな悲しい表情をさせるなんて許さん。私は怒りに燃えていた。 気がつくと、握っていたこぶしでテーブルを思いっきり叩きつけていた。 チームメイトの飲んでいたお茶がこぼれて私と菫以外にかかり、パニックになっていた。 そんな中、菫は私に冷静に話しかけてきた。 「やけに肩入れしていたな。やはりあの宮永咲、お前の妹・・・」 「いや、私に妹などいない。前にも言ったろう・・・」 「・・・そうか。その割にはやけにお気に入りのようだな。お前の顔が輝いていた。 私といる時にはそんな表情は見せてくれないのにな。ふふ、少し悲しいな」 「・・・・・・・・・」 ・・・菫にはばれていた。私の僅かな変化が。 私は二人になりたい一人だった。誰と二人になりたいのか、整理がついていなかった。 私を愛してくれる者に背を向け、私を愛していない者の方を見ている。 だから私は結局自分のせいで一人だった。二人になりたい一人だった。 望みを捨てろ、望みを捨てろ。 私は一人になりたかった。私は望みを捨てたかった。 どれだけ大勢の友がいようが、本当の勝負どころ、大事な決定の際は、やはり一人なのだ。 求めようが求めまいが、誰でも最後は一人なのだ。だから望みを捨てたかった。 『ツモ。四カンツ、全部暗カンなので四暗刻。ダブル役満。全員トビで終了ですね』 『・・・・・・うむ、今日はこれくらいで勘弁してやろう』 『・・・ワハハ、睦月ワロス』 咲が敗れたのは最初の一回だけで、後は誰を相手にしようが完勝だった。 清澄の他のメンバーも最終的に大きく勝ち越した。県代表だけあり、やはり地力はあった。 野球で言うなら、初回に1点は取られたが結局15対1くらいで大勝、そんな内容だった。 燃え尽きて白い灰と化した鶴賀の5人を背景に、清澄の選手のインタビューが行われていた。 咲以外の選手のインタビューなどどうでもよかった。興味など全く無い。 そして、ついに咲のインタビューとなった。 『宮永選手は、全国大会ではどの選手と対戦したいですか?』 私の名前が当然出るものと思ってワクワクしていた。だが・・・。 『はい。鹿児島の神代さん、東東京のガイエルさん、宮城の田中さん、そういう強い人達です!』 ・・・あれ?咲、肝心な名前を忘れているぞ?どうしたどうした? 『ナンバーワン選手である宮永照選手については?同じ名字ですが、何か関係でも・・・ いや、ないですよね。照選手自身が否定していましたからね。 ・・・ま、それはともかく、宮永照選手に関してどう思われますか?』 『・・・はい。とても強そうですが、対戦できるなら、優勝のために、絶対勝ちたいです』 アナウンサーの質問に答えた後、とたんに咲の表情が暗くなっていた。 そうか。咲は私のことが嫌いなのか。それは当然だな。私のせいだ。 私が咲を避けて、否定したのだ。妹などいない、と。 今さらあれは私の愛する妹だ、とは誰にも言えなかった。 そのおかげで私は念願の一人になれたのだ。むなしさだけが残った。 私はそれ以上咲の悲しそうな表情が見ていられず、部屋を出た。 やはり私たちはもう何も関係は無いのだ。憎しみ、戦いあう敵なのだ。 もう仲良くなどなれないのだ。望みを捨てろ。そうすれば楽になる。 望みを捨てろ、望みを捨てろ。 望みを捨てろ、望みを捨てろ。 私は屋上の自分の好きな場所に一人でいた。今は一人でいたかった。 咲とあの原村和、本当に仲がよさそうだった。あの二人、どこまで行ったんだろう。 まあ、もう私には関係の無いこと・・・そう思っていると、人が来た。 「・・・菫か。何の用だ」 「照。テレビは最後まで見ないと。途中で抜けちゃ駄目だろ。あの後面白かったぞ」 面白い?こいつの面白いは信用できないからな・・・。 「宮永咲が絶対勝ちます、って言った後にこう続けたんだよ。 勝ったらお姉ちゃんと仲直りして、また一緒に暮らして、思いっきり甘えたいって。 だって私は今でもお姉ちゃんが大好きだから、だとよ。よかったな照。 それにしてもよくあのまま放送したよな・・・。なあ照、お前先鋒やめて大将になれよ。 お前がやるって言えばあの金髪は所詮お前より弱い。あっさり譲るだろうよ」 咲。お前は強くなったのに私は弱いままだ。私は望みを捨てられそうに無い。 「・・・いや、先鋒のままでいい。咲と戦うなんて、憎み合うなんて・・・。私には無理だ。 でも、副将にならなってもいいかな。あの原村を粉砕してやるのもいいな。 原村とどっちが咲にふさわしいか、麻雀でケリをつけるのも悪くないな」 「ふふふ、そうか。なら私が大将になるとするかな。お前を虜にしている 宮永咲を倒してやるのも面白いな。どっちが照にふさわしいか、麻雀で決着を・・・」 そして二人で笑いながら部室へ戻った。すっかり気分は晴れていた。 この後どのような運命が待ち受けているかわからないが、私は私らしくあろう。 「あ、菫、誤解するなよ、私に妹などいないからな・・・・・・」 望みを捨てろ、望みを捨てろ。
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前「正解のない答え」 ――聖夜(1)―― 12月24日、クリスマスイブ。 とはいっても、今日もまだ学校がある。 少し前の私なら、初めて恋人と過ごすこの日を大喜びで迎えただろう。 あの、おそらく清澄の人が訪ねてきてから1週間、私は悩んだ。考えた。 そして、今日、私は彼女に答えを見せよう。 別に彼女が出した問題なんかじゃないけど。 「和、ちょっと屋上に行かない?」 部活に行こうと迎えに来た和に私はそう言って、手を握った。 やっぱり和の手は冷たいな、なんて初めて手を繋いだころを思い出した。 和はわけがわからなそうにしつつも、手を振り払おうとはしなかった。 ありがたいことに屋上は見たところ、偶然にも誰もいなかった。 「はぁはぁ…」 階段を駆け上がってきたからだろう。 私も和も息が上がっていた。 二人して息切れしてる様子にどちらともなく笑顔がこぼれた。 息切れと相まって苦しくなる。 でも、きっと、これが最後だから、これでいい。 「はぁはぁ、はぁ…。」 少しずつ息が整っていく。 それは終わりに近づいて行くことを意味している。 私は答えを出した。 「……和、別れて。」 別れようと言わなかったのは私の強がり。 屋上から校庭を見下ろすと、そこには沢山のカップルが寄り添うように歩いていて、私は空を見上げた。 「え…?」 唐突だったからだろう。 和は驚きと聞き間違いでしょって感じに声をあげた。 私は空を見上げたまま、口を開く。 「別れてほしいの。」 少し声を大きくしていった。 そう、これが私の答え。 「な、なんで…?何でですか?」 「……私は!」 だって後悔しない人生なんてないし。 でも好きな人が目の前で後悔していくのなんて見てらんない。 「誰かの代わりなんてまっぴらごめん。」 本音半分嘘半分。 誰かの代わりでもいいって思う自分がいたのも事実。 「え?」 「私を抱きしめる時、私とキスするとき…。和は何を考えてた?」 これがあの時からの違和感。 和は私を通して誰を思っていた? 「……好きな人、いるでしょ?私より。」 和は黙る。 沈黙は肯定。 私は勝手にそう受け取る。 「ねぇ、和。教えてほしいことがあるんだ。その私より好きな人のこと。」 もしここで、和がすぐに否定の言葉を出しえくれたなら、それならよかった。 そしたら、私は和の私への愛を確かめるための冗談だよ。ごめんね。って笑うことができた。 でも、和は黙ったまま。 「その人と何があったの?」 せめて、せめて私には本当のこと言ってほしい。 少しの間だけでも通じ合ってたはずなんだから。 「……私は彼女を裏切って、傷つけてしまいました。」 和は口を開いた。 私は振り向いて和と向き合う。 私は黙って和の告白に耳を傾けた。 和の顔は今にも泣きそうで、私はそれを見て泣きそうになった。 「嫌われれば、諦められると思いました。だから、また彼女を傷つけてしまいました。彼女を傷つけてでも、嫌われてしまえば、彼女はもう、傷付くことはなくなる…」 「はぁ?そんなの意味わかんないよ!」 私は和の言葉を遮った。 遮ってなるべく大きな声を出した。 「好きなのに傷つけるなんて私にはわかんないよ!」 和は口を閉じ、俯いた。 私は続ける。 「和……。本当は、今でも好きなんでしょ?大切なんでしょ?その人のこと。」 「もう……、戻れません!あんなに傷つけてしまった今、もう、戻ることなんてできません!」 和は下を向いたまま叫んだ。 和の叫びは今もその人を好きだって、私より好きだってことを認めているってことだった。 「バカ和ッ!それは今もその人を傷つけてるんじゃないの!?」 でも、今はその事実を嘆くことよりも大切だった。 「戻ろうともしてないのに戻れるわけないでしょ!まだ和は何も行動してないのに……。後悔なんてそのあとからできるよ!」 今私が願うのは、和がそんな悲しい顔をしないことだ。 幸せそうに笑うことだ。 「和……。私はその人にはなれないよ。その人の代わりになんてなれないよ!」 絶対泣かないって決めてた。 だから、こらえた。 「……私は。」 「私は!和のことが好きだよ!でも、和が好きなのは私じゃない!」 和、私は本当に和のことが好き。 その人の代わりでもいいって思うくらい、和が好き。 でも、和、まだ戻れるんだよ? このまま私といたら、本当に戻れなくなる時がきちゃうんだよ。 それは和にとって、幸せなの? ……そんなことない。そんなことない! 「だから、私はその人の代わりなんてまっぴらごめん。」 そう言って私は外に視線を移した。 下を見下ろすと、さっきまで歩いていた人たちも随分少なくなっていた。 「……淡。」 その先の言葉はなぜか予想がついた。 私は耐える準備をする。 「ごめんなさい。……、ありがとう。」 私は和の方を笑顔を作って振り返る。 「和……。頑張れっ!」 和は今日初めて笑った。 「はいっ!」 駆けだしていく和の背中を見送りながら、私はこれでいいんだと自分に言い聞かせ、また外に視線を戻した。 少しして、そこを駆けていく桃色の髪が見えた。 * * * 最近は部活が始まる前に屋上に1人で来ている。 あの竹井という奴と話をした時から私の中にもやもやした、なんと言えばいいかわからない気持ちが芽生えていた。 ここは風が冷たくそんなもやもやを吹き飛ばしてくれる気がしていた。 この時間は、いつも沢山人がいたが、今日はクリスマスイブだからだろうか? 私以外誰もいなかった。 ドアが開く音がするまでは。 最初はいつものように、人が来ただけだと思い、気にも留めていなかった。 「和、別れて。」 でもこの言葉が聞こえてきた瞬間、私は他のことをする余裕はなくなった。 原村と淡がつきあっていることは知っていた。 いつも手を繋いで登下校しているし、部内でも特別仲がいい。 部内で知らない人はいないくらいだ。 私はそれを好奇の目で見るというよりは、私と照との関係と対比させるように見ていた。 原村は当初照と似ていた。 これは間違いない。 でも、淡と出会ってから、照と異なるようになっていた。 何が違うのだろうか? もちろん原村と照は別の人間であるから、それは当然のことだ。 当然のことなのに、私は自分と淡を比較するようになっていた。 私は二人の会話に耳を傾けていた。 そして、会話は終わり、原村は白糸台に来て、1番いい笑顔をして屋上を去った。 淡も笑っていた。 でも、それはドアが閉まる瞬間に消え、淡は外に顔を向けた。 「……淡。」 その背中に私は話しかけてしまっていた。 淡は振り返らずに、言葉を返す。 「……菫先輩、いたんですか。」 その背中はしっかりしていて、ぶれない。 「……私、後悔してませんよ。」 話しかけたはいいが、次に続ける言葉が見つからず黙っていた私に淡は力強く言う。 「私、泣きませんよ。私が泣いたら、和が気にしちゃうから、絶対泣かないって決めてたんです。」 あぁそうか。 淡は私と違うんだ。 違う選択をしたんだ。 「でも……。今は1人にしてもらえませんか?」 * * * 屋上を後にした私は悩んだ。 今までの自分の選択は正しいのか? 部室に向かう途中で、照に会った。 脳裏に浮かぶのはあの原村の笑顔だった。 私は照のあんな笑顔を見たことがあるだろうか…? いや、ない。 私はずっと代わりでも構わないと思っていた。 でも、それは今初めて揺れた。 「原村と淡が来てないな。」 部活が始まると同時に照が言った。 私はさっきの出来事のことを言おうかと悩んだ。 「まぁ、今日はイブだからな。」 照はそう言って、どこかの雀卓に入った。 私は誰かの代わりでも、幸せだ。 でも、照は、幸せなのだろうか…? 今まで考えたことがなかった。 麻雀をやる照の横顔を眺めた。 彼女は何かにとりつかれたように麻雀を打っていた。 * * * クリスマスイブか…。 そう思いながら空を見上げると、雲が空を覆っていた。 これから降るのは雨か、雪か…。 「咲ちゃん!置いてっちゃうじぇー!?」 できれば雪がいいな。 そう思いながら、私は優希ちゃんに振り返る。 「うん!今行くー!」 雨は嫌い。 だって思い出が強すぎる。 「降りそうだじょ。」 優希ちゃんは空を見上げて呟いた。 「雪だといいね!」 優希ちゃんが私を見て笑顔で言った。 それはきっと何気ない一言。 「そうだね。」 空を見上げながら答えて、私は傘を手に取った。 今日は麻雀部でクリスマスパーティーだ。 * * * 「遅れました。」 淡は遅れて部活にやってきた。 でも、もうここには私と菫の2人しかいない。 今日はクリスマスイブ。 だから早めに切り上げた。 でも、淡はそれを知らない。 誰も淡がどこにいるかも知らなかった。 だから私達は淡を待つことにした。 「あ、あれ…?もしかして、もう終わりでしたか?」 不思議に思った。 なぜ淡しかいないのだろう? 原村と一緒にいるものだと思っていた。 「あぁ、今日はイブだから。」 イブだから、早めに切り上げた。 それは淡たちにとっても嬉しいことだろう。 なのに、なんで1人なんだ? 「淡…?原村はどうした?一緒じゃないの?」 そう言った瞬間、菫のお茶を飲む手が止まった。 淡は俯いた。 「……和は、」 耳を疑う。 だってそうだろう。 原村和は私と同じだ。 同じはずなんだ。 「長野に向かいました。」 なのに、なぜ? * * * 淡、ごめんなさい。ありがとう。 屋上を飛び出し、私は走る。 「戻ろうともしてないのに、戻れるわけないでしょ!」 その通りだと思った。 あの時を懐かしんで、羨んで、憎んで。 結局私は帰りたかったんだ。戻りたかったんだ。 淡は私にそれを教えてくれた。 走る私にどこからか流れてきた音楽が耳に入る。 それはイブには似つかわしくない。 でも、今の私によく似合う。 ~まだ走れば、間に合うのかな 終わらせたくない想いを抱いて 面倒くさい奴って思われるかな このままじゃ何も始まらないから 傷が深くならないようにって守ってたのは きっと違うなって、そう思えた~ 行き交う人に肩をぶつけ、頭を下げた。 嫌われれば、諦められる…? そう思い、私は彼女を傷つけた。 「好きなのに傷つけるなんて私にはわかんないよ!」 そう、淡の言う通りだ。 私は一番大好きな人を傷つけていた。 そしてそれでいいのだと。 ~今しかないんだ。 神様。 本気なんだ。伝えに行きたいんだ。 やっと素直な自分が今、ここにいるんだ お願い、このまま終わるのは嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌なんだ~ 淡、ごめん。 私はずっと淡の優しさに、温かさに甘えていたね。 淡、ありがとう。 私に本当に大切なことを、素直な気持ちを気付かせてくれて。 ~今走れば間に合うのかな 君に届くのか確かじゃないけど めんどくさい奴って思われたっていい このままじゃ何も変えられないから 傷付いてもいいから会いたいんだ、伝えたいんだ きみをなくしたくはなかったんだ~ 私がずっと恐れていたこと、それは咲さんを失うことだったはずなのに。 ごめんなさい、咲さん。 今更間に合うかなんてわからない。 もう本当に手遅れで届かないかもしれない。 でも、あの時言えなかったことを、本当の気持ちを伝えたい。 私はあなたが好きです、と。 * * * 「照…!」 淡が原村と別れたことを、長野に向かったことを伝えた時、照は固まって動かなかった。 呼んでも、照はこっちを見ない。 淡はそれを告げると、部室を出ていった。 「……どうして?」 「え?」 2人しかいない静かな部室に照の声は響き渡る。 「……どうして!?なんであいつは自分が傷つけた奴に会いに行けるんだ!?どうして…?どうしてそんなことができるんだ!?今更、どうして会おうと出来る!?今更…何を伝えられるんだ!?」 照の叫びは原村への苛立ちではない。 きっと自分自身への叫び。 「照……。」 私はそんな照を見ていることしかできないのか…? どうして照と原村は違ったのか…? それは私と淡の選択の違い。 私は自分の幸せを選び、淡は原村の幸せを選んだ。 「ごめん…!ごめん!照!」 私のせいだ。 私のせいで照は未だに呪縛が解けないでいるんだ。 私のせいで照は出口を見つけられないでいるんだ。 自分から抱きしめた照の体はいつになく小さく思えた。 「…菫?」 「ごめん…!ごめん、ごめん!」 照の背中に顔を埋め、私は謝る。 今からでも、間に合うだろうか? でも、きっとこうしなきゃいけなかった。 少し息を吸い込んだ。 「照…。会いに行こう。妹に、咲に…!」 ―――――――――――― 次「聖夜(2)」 視点=淡菫菫咲照和菫
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自己紹介 名前:藤村和成(ふじむら かずまさ) 出生:京都府京都市 出身:京都府舞鶴市 舞鶴高専 電子制御工学科 所属:機械工学 研究室:計測システム研究室(担当 真下) 経歴 小学校:サッカー(6年間) 中学校:陸上(800m:2分14秒(自己ベスト)) 3年次に800mと駅伝で府大会に出場 高専:陸上部(800m) 大学:トライアスロン 大会記録 新人戦(2019/5月) 内容:ラン3.2km→バイク32km→ラン6.4km 記録:1時間53分 全体8位,新人4位 バイクの遅さ以上に,セカンドランの失速が痛かった. ブランクの影響が出た結果と言える. 開学記念駅伝(2019/10月) 記録:16分00秒(3.8km) 区間3位 後半の坂で大失速. しまだ大井川マラソン(2019/10月) 記録:フルマラソン:3時間49分 目標としていたサブ4を何とか達成.非常に満足. 35キロ過ぎにサブ4のペースメーカーに追いつかれたがなんとか逃げ切った. 穂の国・豊橋ハーフマラソン(2020/3/29) 新型コロナウイルスの影響により中止 掛川マラソン(2020/4/12) 新型コロナウイルスの影響により中止
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“ソウル・フィクサー”佐村和哉(さむら・かずや) スタイル カリスマ●,クロマク◎,ニューロ 解説 フリーの敏腕音楽プロデューサー。 ZEPHYR(未実装ノハ´゚x゚ハ⌒ニュロ)、ジェニファー・ロックウェル(未実装ノハ´゚x゚ハ⌒ニュロ)、ブルーベリーなど、数多くのアーティストをヒットに導いてきた。 初代アマデウス(未実装ノハ´゚x゚ハ⌒ニュロ)なのではないかと囁かれている。 toコネ 1 R--- 稲垣光平 1 ---M ジェニファー・ロックウェル(未実装ノハ´゚x゚ハ⌒ニュロ) 1 ---M 千早雅之 2 -P-M ブルーベリー 1 ---M 三田茂 2 -P-M 結城あや fromコネ 2 R-L- 神納円香 2 R--M 下北メル 噂 初代“冥府のロッカー”アマデウスと噂されてるニュロが、初代アマデウスはドラッグのオーバードーズで死んでるニュロから別人ニュロ。 でもマエストロ8Lvを封印技能で持ってるところを見ると、何代目かのアマデウスである可能性は否定できないニュロ。 でも楽器演奏系や歌唱系の技能を持ってないところを見ると、やっぱり別人かもニュロ。 [2011/10/01 21 42 30]
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プロフィール 【名前】野村和也(のむら・かずや) 【年齢】20 【性別】男 【職業】大学生 【性格】正直でまじめ。だがそのせいで融通が効かないことも。 【身体的特徴】少しがっしりした体格。引き締まった身体付き。 とはいえ、最近スポーツをしていたりするわけでは無いので、力はそれほどでもない。 【服装】ジーンズに白いTシャツ 【趣味】読書、インターネット 【特技】ブラインドタッチ 【経歴】いつも普通より高い成績を取り、普通よりいい学校に行っている。 【備考】中学、高校ともに部活はバスケ部。大学に入ってからはスポーツとは疎遠になっていたので、 体力は少し落ちている。 元ロワでの他キャラとの関係 出展 キャラ 関係 需要なし、むしろ-の自己満足ロワ 守谷彩子 襲撃される。名前は把握していないと思われる 元ロワでの登場話 需要なし、むしろ-の自己満足ロワ(出展ロワ) 001 困惑 017 久々のオリジナル 027 妖刀の恐怖2nd 033 誤解フラグ 050 罠、そしてダブル♂カズヤ 058 終末 060 最後の最後 本ロワでのキャラとの関係 本ロワでの登場話 とかは放送ごとくらいに更新する形で
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613 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 17 03 ID iYIKy0fV0 それでは今日の分です どうぞ 和父「ただいま」 和「おかえりなさいお父様」 和父「今日はちゃんと須賀君には帰ってもらったか?」 和「ええ・・・」 和父「それならばいい。今日は熱は出なかったのか?」 和「ええ・・・」 和父「よしそれじゃあ明日は学校に行けそうだな」 和「ええ・・・」 和父「どうした和・・・やけに元気がないが具合でも悪いのか?」 和「いえ・・・そんな事はないです・・・」 和父「そうか・・・一応今日も早めに寝なさい」 和「分かりましたお父様・・・」 和父「お休みな和・・・」 和「お休みなさい・・・」 ガチャン 和(結局今日一日考えてみたけど須賀君との関係を 修復できる案が思い浮かびませんでした・・・ でもとりあえず明日あったらきちんと昨日の事を謝って 許してもらうしかない・・・ 須賀君が許してくれるかどうかは分かりませんが・・・) 614 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 18 11 ID iYIKy0fV0 和「須賀君・・・」 京太郎「・・・」 和「須賀君!!」 京太郎「なんだよ・・・」 和「あの・・・えっと」 京太郎「俺急いでんだけど・・・」 和「昨日はあんな酷い事を言ってしまって本当にごめんなさい!!」 京太郎「はぁ?今更なにいってんの?」 和「ですから昨日の事について・・・」 京太郎「お前何なの?マジでムカつくんだけど・・・」 和「須賀君いくら私が悪いとはいえそんな言い方ないじゃないですか!!」 京太郎「先に酷い事を言ったのは誰だ?言ってみろよ!!」 和「私です・・・」 京太郎「良く分かってんじゃねかよ・・・ あっそうだ他のみんなもお前に言いたいことがあるそうだぜ」 和「なんですか?」 優希「のどちゃん見損なったじぇ京太郎にそんな酷い事が出来るなんて・・・」 和「違うんです優希これは・・・」 まこ「言い訳とは・・・見苦しいのぅ~なぁ和」 久「あなたみたいな卑怯者麻雀部にはいらないわ」 和「先輩方これは・・・」 咲「原村さんもうこの部活にあなたの居場所はないよ」 和「えっそんな・・・」 優希「卑怯者」 まこ「卑怯者!」 久「卑怯者!!」 咲「卑怯者!!!」 京太郎「卑怯者!!!!」 和「イヤァーーーーーーーー」 和「ハッ・・・夢だったか・・・」 615 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 19 13 ID iYIKy0fV0 和父「それじゃあ行ってくるあんまり無理するなよ・・・」 和「分かってます」 和父「それでは行ってくる」 和「行ってらっしゃいませお父様」 ガチャン 和(ハァ~どうしよう・・・もし今朝の夢が正夢だったら・・・ いえそんなオカルトありえません!! とにかく今日須賀君に会ったら・・・) ピンポーン 和「はいどちら様ですか?」 京太郎「俺だよ須賀だよ和もう熱は下がったか?」 和「須賀君!?」 京太郎「どうしたんだよ?早く出て来いよ」 和「分かりましたすぐ行きます」 616 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 21 11 ID iYIKy0fV0 ガチャン 京太郎「おはよう和今日も熱いな」 和「須賀君どうしてここに来たんですか?」 京太郎「決まってるだろ和を学校に送るためさ」 和「なんでそんな事をわざわざ・・・」 京太郎「だって和風邪引いてただろ?まだ治ったばかりの奴に そんなに無茶させられないだろ? それと昨日はゴメンな・・・和の都合を無視して勝手に 押しかけちまって・・・これお詫びに最近できた 洋菓子店で買ってきたシュークリーム 後で一緒に食べないか?」 和「どうして・・・なんで私を責めないんですか・・・ あんなに・・・あんなに酷い事をしたのに・・・ 須賀君はお人よしすぎます・・・」 京太郎「お人よしか・・・まぁよく言われるけどな あんまり人を疑ってばかりでも人生面白くないしな ん・・・?和どうしたんだ?」 和「こっ来ないでください」 京太郎「和・・・」 ぎゅっ 和(えっ・・・!?) 京太郎「あんまり自分を責めるな・・・ 俺は全然気にしてないから・・・ それとお前は女の子なんだからあまり無理すんな・・・」 和「うわあああああああああああああああああああああ」 617 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 22 13 ID iYIKy0fV0 京太郎「どうだ和もう大丈夫か?」 和「はい・・・グスッ・・・もう大丈夫です」 京太郎「そうかじゃあコレ食べようぜ!」 和「このシュークリームとてもおいしいです・・・」 京太郎「だろ!!超ウマいだろ!!和が喜んでくれたなら わざわざ買って来たかいがあったぜ ん・・・?どうしたさっきから俺の事ずっと見たりして」 和「なっなんでもないです///」 京太郎「おい和顔が赤いぞもしかしてまた熱が出たんじゃないのか?」 和「ちっ違います!!」 京太郎「あっやっべ~もう時間があまりないぞ!! 和早く自転車の後ろ乗れ遅刻しちまうぞ!!!」 和「分かりました今すぐ乗ります」 京太郎「よし全速力で行くぞしっかりつかまっとけよ~」 和(須賀君と二人乗りか・・・この前送って貰った時は 気付かなかったけど須賀君の背中ってすごく大きいんだな・・・ 私ただ須賀君の自転車の後ろに乗ってるだけなのに なんでこんなにドキドキしてるんだろう?) 教師A「で・・・須賀どうしてお前は遅刻したんだ?」 京太郎「いや~今日寝坊しちゃって・・・」 教師A「バカヤロー!!・・・で原村お前まで遅刻とはどうゆう事だ?」 和「私も須賀君と同じく寝坊してしまいました」 教師A「まあここまではよしとしてお前ら・・・ 自転車で二人乗りしてきたとはどうゆう事だ?」 京太郎「たまたま偶然走ってる和を見つけて後ろに乗せただけです」 教師A「ま・・・男女付き合いに関しては何も言うつもりはないが 不純異性交遊はするんじゃないぞ 後二人乗りは校則で禁止されてるから後で反省文を書いて持ってこいよ!!」 京太郎・和「分かりました」 618 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 23 14 ID iYIKy0fV0 ガチャン 京太郎「あ~やっと終わったか・・・ 今朝はごめんな和俺のせいで遅刻しちまって・・・」 和「いえ私もいろいろと今朝は須賀君に迷惑かけてしまいましたから・・・」 京太郎「じゃあ俺こっちだからじゃあな和」 和「はい須賀君」 京太郎(ふぅ~今日は朝から超疲れたな・・・ さっさと反省文書いて・・・ん?) クラスメイトA「おい須賀今日お前原村和と一緒に登校してきたんだってな~」 クラスメイトB「うらやましい奴だぜお前まさか原村と付き合ってるのか?」 京太郎「付き合ってねーよたまたま偶然遅れそうなアイツを発見したから 乗せてきてやっただけだよ」 クラスメイトA「なんだそれだけかよつまんねぇの」 クラスメイトB「まぁお前と原村が付き合えるなんて天と地がひっくり返っても 絶対にあり得ないことだけどな」 京太郎「そこまで言うなよヒデーな」 クラスメイトB「いや絶対無理だね!!お前知ってるか?バスケ部のイケメンキャプテンが 原村に告白して振られたの」 京太郎「マジかよ・・・」 クラスメイトB「これで分かっただろ俺たちみたいなありふれた顔じゃ あいつと付き合うことは出来ないって事が・・・」 和(ふぅ・・・今日朝須賀君に・・・) 優希「のどちゃ~ん」 和「優希」 優希「のどちゃんなんで今日遅刻したんだじぇ?」 和「今日は少し寝坊をしてしまいまして・・・」 優希「そうなのか~・・・で今日京太郎とツーショットしてきたのは どうゆう事なのか~?」 和「ぐっ偶然一緒になっただけです!!」 優希「ふ~ん本当は京太郎と一晩中イチャイチャしてたんじゃないのか~?」 和「そっそんな事ありません///」 優希「そうなのか~あっ・・・チャイムがなったじぇ~」 和(あ~今日須賀君に朝抱きしめられた事が未だに頭から抜けないです///) 619 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 24 31 ID iYIKy0fV0 昼休み 京太郎「・・・で咲優希お前ら俺にそんなに近づくな」 咲「だって京ちゃんと原村さんが今日仲良く二人で登校 した事の真相が知りたいんだもん!!」 優希「そうだじぇ~のどちゃんに聞いても口を濁すだけで 全く教えてくれないんだじぇ~ だからお前に聞くことにしたんだじぇ~」 京太郎「まぁそれはだなこの前の金曜日の時に和が熱を出してな・・・ 今日仮に学校に来れるとしてもまだ病み上がりだろ だから熱がぶり返しちゃいけないと思って迎えに行ったんだよ」 優希「そうだったのか~えらいぞ犬!!躾けたかいがあったもんだじぇ~」 咲「京ちゃんって誰にでも優しいもんね~ だって私が中3の時熱出した時もずっと傍にいてくれたもんね」 和(えっ・・・?) 優希「え~咲ちゃんが風邪引いた時犬がずっと看病してくれたのか?」 咲「エヘッそうなんだ京ちゃん料理作ってくれたりとか 面白い話をしてくれてとても気を使ってくれたんだ・・・」 京太郎「別に気なんて使ってねーよ ただ俺は咲に早く治って欲しかっただけさ・・・」 咲「ヤダ京ちゃんたら・・・そんな事みんなの前でいわないでよ///」 優希(くそ~咲ちゃん羨ましいじぇ~ 私も風邪を引いて京太郎に看病してもらいたいじぇ~) 和(須賀君宮永さんにも似たような事やってたんだ・・・ でもなんでだろう・・・なんでこんなにも辛い気持ちになるんだろう・・・) 620 名前:京×和 第3話 氷解[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 20 25 39 ID iYIKy0fV0 京太郎「失礼しま~す」 久「須賀君!!」 京太郎「なんですか部長」 久「聞いたわよ・・・あんた和と一緒に遅刻してきたそうね 一体ナニをヤッて遅れたのかしらね~」ニヤニヤ 京太郎「別になにもしてませんよ・・・」 まこ「そうじゃ~京太郎早く吐いて楽になりんしゃい」 京太郎「だからなにもしてないですって」 久「ムキになって否定する所がまた怪しいわよ須賀ク~ン」 京太郎「だからこの前の金曜日に和が熱を出して もう治ったと言ってもまだ病み上がりですから 熱がぶり返さない様に送ってたんです」 久「じゃあなんで遅れたのよ?」 京太郎「そっそれは・・・」 和「それは私が寝坊してしまったからです」 久「へぇ~和が・・・珍しい事もあるものね」 まこ「まぁ和も病み上がりじゃけんあんまり無理するなよ」 和「はい」 パンパン 久「さぁおしゃべりはこの辺にしておいて部活を始めるわよ」 和「須賀君ロンですリーチ、三暗刻、トイトイ、ドラ3、倍満です」 京太郎「くっそ~」 久「あらあら・・・また須賀君が負けちゃったわね・・・」 優希「犬罰ゲームだじぇ~トップだったのどちゃんの言う事を聞け~」 京太郎「くっそ~でなんだ和言う事って?」 名前 コメント
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関電に「脱原発」要請 尼崎、宝塚、篠山の3市長 東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、尼崎、宝塚、篠山市の3市長が30日、 関西電力神戸支店(神戸市中央区)を訪問し、「脱原発」に段階的に取り組むよう要請した。 関電が要請した15%の節電期間が7月1日から始まるが、 会見した市長らは「関電は節電をお願いするばかりで、将来に向けた姿勢がまったく見えない」と批判した。 要請文は尼崎市の稲村和美市長、宝塚市の中川智子市長、篠山市の酒井隆明市長の連名で関電の八木誠社長に宛てた。 原発に依存した電力供給からの脱却のほか、再生可能エネルギーの開発、中小企業に対し過度の電力制限をしないよう配慮を求めている。 関電神戸支店での会見で、中川市長は「福島の事故以来、市民の不安は高まっている。 住民の命を守る市長として、自然エネルギーへの転換を要請した」と語った。 稲村市長は「産業界に与えた打撃も大きく、管理不能なリスクをいつまで抱え続けるのか」と訴えた。 要請文は中川、稲村両市長が作成し、6月27日から阪神、丹波地区の9市1町の首長に参加を呼び掛けた。 神戸新聞 (2011/06/30 21 07) http //www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0004226321.shtml
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前「それは突然やってくる」(注意書き付) ――魔法の呪文―― きっとこうなると、分かっていた。 次の日、私は菫からそれを聞いた。 「原村和から返事が来たぞ。うちにくるそうだ。」 「そう。」 「お前が何かしたのか?」 「さぁ?」 菫の問いかけを曖昧に返し、私はお茶を含んだ。 お茶は昨日原村家で飲んだものより少し苦く感じた。 隣で菫の溜息を聞きながら私は小さく笑った。 「強くなるためのコツを教えないとな…。」 「は?」 菫の驚きを今度は無視して私はお茶を注いだ。 * * * これでよかったのだろうか? いや、これでいいんだ。 ずっと続く自問自答。 答えは見えない。 答えは見えないが、私は答えを出してしまった。 家のチャイムが鳴り、誰かの来訪を伝えた。 そこには、昨日と同じく、宮永照がいた。 「うちに転入することを決めてくれたんだね。」 差し出したお茶をすすり、彼女は切り出した。 私は小さくうなずいた。 彼女はお茶をテーブルの上に置いて、私を見つめた。 「……大切な人って、咲でしょ。」 時間が止まったような、そんな気がした。 でも、彼女がお茶をすする音で動き出した。 私は答えられないでいた。 彼女は再び口を開く。 「好きなんでしょう?咲のこと。」 “好き”という単語で、私は好きな人を傷つけてしまうことを自覚する。 でも好きだから会いたくて…。 二つの感情に私はまた揺さぶられる。 それを見越したように彼女は続ける。 「わかるよ。だからね……。私がいいこと教えてあげる。」 彼女の言葉は呪文のようだった。 「嫌われればいいんだよ。嫌われちゃえばね。」 「好きでいられると、傷つけるたびに心が痛むけど、嫌われちゃえば…傷つけないですむんだよ。」 「嫌われちゃえば、諦められるよ……。」 * * * 私は和ちゃんに会いに東京へ行く。 あのときは1人だった。 だけど、今回は違う。 「緊張してる?」 「す、少しは…。」 部長が一緒に来てくれてる。 それだけで少し気持ちが楽になった。 「あ、あの…すいません。部長、受験生なのに…。」 「気にしなくていいわよ。受験も大切だけど、私は咲と和の方が大切だわ。」 少しずつ少しずつ、東京に、和ちゃんに近づいている。 そう思うと胸が痛かった。 「……きっと。」 「?」 「きっと…、和も悩んでるはずよ。」 部長はそう言って微笑んだ。 新幹線に乗ってる間、部長はずっと手を握っていてくれた。 * * * 嫌われちゃえば、諦められる……か。 自分で言っといて、笑ってしまう。 嫌われてると思っていた。 あの日、咲が「私、麻雀嫌いだもん。」と言った時、私は麻雀をしてても咲には会えないことを悟った。 なぜ、麻雀が嫌いなのだろう。 私が麻雀をやっているからかもしれない。 でも、私はもう麻雀を捨てることはできなくなっていた。 麻雀で勝つことが私の証明になっていたから。 妹はいない。 そうだ、あの子には姉がいないのだ。 私のような奴がお姉ちゃんなわけがない。 それからの私は一心不乱に麻雀に身を投じた。 そして3年のインターハイ。 菫が見せた新聞。 そこには清澄高校の全国進出と、大将、宮永咲の名前があった。 その場では菫に妹を尋ねられ、いないと答えたが、頭の中は混乱していた。 咲は麻雀が嫌いで、やってないはずだった。 なのに、なぜ…? 全国大会で咲と会える。 ずっと待ち望んでいた展開だった。 嬉しいはずなのに、気持ちは複雑だった。 嫌われてると思い、諦めて、妹はいないと言ってここまで来た。 なのに、なんで今…? 大会で咲の真意がわかるのだろうか…? そう思い、臨んだ全国大会。 気付いていないふりをしながら咲を探した。 咲は桃色の髪をした子と手を繋いでいた。 近くにいた淡があれは全中王者だと教えてくれた。 2人の仲の良さは遠くから見ていてもすぐ分かった。 見ていられなくなって私はその場を離れた。 ロビーと違い、薄暗い廊下を早足で歩いた。 「お姉ちゃん!」 あの子が私を呼んだ。 嫌われていると思っていた。 こんな風に呼ばれることなんて二度とないと思ってた。 忘れるために麻雀に没頭してた。 なのに、今、あの子が私を呼んだ…。 「私に…。妹はいない。」 不思議だった。 不思議なくらい自然に、私の口からはこの言葉が出ていた。 咲はあのときと同じ表情をしていた。 私は咲に背を向け、歩きだす。 ……嫌われたかったのかもしれない。 その時私は初めて気付いた。 好かれることが怖いと思う自分がいることに。 私はいつからか、咲に嫌われていることで自分を保っていたのかもしれない。 咲に嫌われていることに安心してる自分がいたんだ。 嫌われれば、諦められる…とずっと自分に言い聞かせていた。 だけど、違う。嫌われていたいんだ。 好意を向けられるのが怖い。だから嫌われていたいんだ。 でも、咲のことを、嫌いになれないんだ。 矛盾してる。分かってる。 でも、もうこの感情は捨てられない。 嫌われれば、諦められる? 鼻で笑ってしまう。 だってそうだ。 私は今もずっと咲のことが……。 * * * もうすぐ、もうすぐ和ちゃんに会える。 和ちゃんに会えるという期待と不安が入り混じっている。 でも、会わなきゃ、会わなきゃ何も分からない。 本当は、怖くて今にも逃げ出したい。 「大丈夫、私がいるわ。」 本当に部長に感謝してる。 1人じゃ、きっとここまで来れなかった。 「じゃあ、行くわよ。」 原村、という表札を前にして緊張は極限に達する。 何の連絡もなしに来てしまった。 和ちゃんはいるだろうか? いてほしい。いや、いてほしくない。 相反する気持ちが私の中で揺れる。 「…いくわよ。」 部長が私に確認をとるように言った。 私は頷き、部長はチャイムを鳴らした。 「どちら様でしょうか?」 インターフォンを通して和ちゃんの声が届いた。 離れてた時間は少なかったはずなのに、ひどく懐かしく感じる。 それだけで、涙が出そうになる。 それをこらえて私は応えた。 「……咲です。和ちゃん?会いに来たんだ。」 声の震えは抑えられなかった。 少しの間の後、ドアが開いた。 和ちゃんの姿に胸が高鳴る。 私は無我夢中に口を開いた。 「和ちゃん!私…、私…!」 「……私は!」 私の言葉を遮って、和ちゃんは口を開いた。 俯いていて表情は見えない。 「私は白糸台で麻雀を続けます…!」 「え……?」 背中を冷たいものが駆け抜けていった。 心臓に鈍い痛みが走った。 「私は白糸台で麻雀を続けるんです……、宮永さん。」 久しぶりに呼ばれた名前は名前呼びではなく名字呼びだった。 あの時、名前で呼び合おうって決めたのに、決めたはずなのに…。 すっと、顔をあげた和ちゃんの顔は冷たく見えた。 その表情は、お姉ちゃんに重なって見えた。 「これ……。」 目の前に差し出されたのはあの時のマスコット。 二人で買って交換した思い出の品。 私の、私たちの宝物。 「……返します。」 * * * 差し出したマスコットを咲さんが受け取ることはなかった。 私は耐えきれず、マスコットは手から零れ落ちた。 咲さんの目は落ちていくマスコットを見つめていた。 その目には涙があふれていて、私の心を締め付けた。 「和ッ!」 部長の叫ぶ声が聞こえて、自分のやってしまったことに気付く。 でも、もう後戻りはできない。 部長の声から、咲さんの表情から逃げるように私は扉を閉めた。 ドアの向こうからは部長の声が届いて、私は崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。 「ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」 届かない言葉を何度も何度も吐いた。 涙が出て、大声で泣きそうになる。 でも、聞かれちゃいけない。 私は小さくしゃくりをあげて泣いていた。 『嫌われればね、諦められるよ。』 あの人の言葉を頭の中で繰り返し、自分に言い聞かせた。 そして願った。 「ごめんなさい。咲さん。お願いです…。」 「私のことを嫌いになってください。」 * * * 沈黙が支配していた。 咲は泣き崩れ、私は和を呼んだ。 しかし、それすら届かず扉は閉められた。 私は閉じられた扉に叫んだ。 でも、やはり届かない。 咲は声をあげて泣き続けた。 私は和が落としたマスコット拾った。 マスコットは泣いてるように見えた。 私は咲を支えて歩き出した。 行先は分からず、咲が泣きやむまでただただ歩き続けた。 気付いたら河原に出ていた。 さっきより少し落ちつた咲と座って、川を見ていた。 ここの川は濁っていて、長野の川よりうんと汚れていた。 「部長…。」 咲が小さく呟いた。 「私って…なんなんでしょうか……?」 咲はずっと俯いていた。 声が震えていて、今にも崩れそうだった。 「私…、私は……!」 そんな咲を見てられなかった。 私は力いっぱい彼女を抱きしめた。 咲は私にしがみついて、声をあげて泣いた。 私は何も言えずに、ただ抱きしめるしかなかった。 * * * 原村家を後にした私は、いつもより遠回りをして帰っていた。 気付くと河原に出ていた。 長野にいた頃…。夏はよく川に行った。 長野の川はすごく澄んでいて、綺麗で、咲と水遊びをしたな。 咲は水が苦手だから、私はずっと咲の手を握っていた。 川にはそんな思い出があって、なかなか来ることはなかった。 でも、なぜか今日は足が勝手に向いてしまった。 でも、ここの川は私の記憶の中にある川とは違って濁っている。 石を投げてみた。 それは濁った川にどぼんと音を立てて消えて行った。 石が消えて行った所をしばらく見つめた。 でも、もうそれは何も変わらず、濁ったままだった。 「帰るか…。」 誰に言うわけでもなく呟いて、立ち上がった。 立ち上がって見えた川の向こう側に見知った姿があった。 「……咲?」 顔はよく見えないが、私の勘がそれを告げていた。 誰かと一緒にいるようだ。 でも、それが原村でないことは、すぐに分かった。 * * * 咲を抱きしめながら私は思いを巡らした。 あの和は、どこかおかしかった。 電話で転校すると告げた彼女とは全く違った。 そして、どこか悲しい瞳をしていたように私には見えた。 何かあったんじゃないか? 私の頭にはそれが浮かんだ。 あの和が咲にあんな態度をとるわけがない。 ジャリと後ろに誰かの気配がした。 咲を抱きしめたまま、目をやると、そこには咲の姉、宮永照に姿があった。 「……咲。」 私には目もくれず、咲を見つめていた。 その瞳に私は見覚えがあった。 咲は照に気付かずに泣き続けていた。 照はゆっくり近づいてきて、咲に手を伸ばしてきた。 でも、途中で止めて、手を引っ込め、歩きだした。 その後ろ姿を見送り、確信した。 照の目は和のと同じだ、と。 ――――――――― 次「それぞれの新たな生活」 視点=照和咲照咲和部長照部長
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【出身世界】アースMG(マジカルガール) 【名前】高村和花(たかむら のどか) 【性別】女 【年齢】8 【職業】小学生、魔法少女兼マスコット 【特徴】栗色の髪と翡翠色の瞳、驚くと狐の耳と尻尾が飛び出る 【好き】パパとママ、学校の友達 【嫌い】『淫獣の娘』と言われること 【特技】桃色の光線魔法と緑色の拘束魔法、狐への変身 【趣味】魔法の練習 【詳細】 数年前に活躍していた魔法少女・高村このはとそのマスコット(キツネ型。人間形態に変化可能)との間に生まれた史上初の魔法少女とマスコットとの混血児。 魔法少女であると同時にマスコットでもあるという良いとこ取りの存在で、母から受け継いだ魔法少女の力と父から受け継いだマスコットの力を合わせて、人助けをしているのだが、魔法少女とマスコットとの合いの子という存在を良く思わない一部の魔法少女からは『淫獣の娘』(淫獣は父のあだ名)呼ばわりされている。 【備考】 世界でただ一人の「魔法少女とマスコットとの混血児」という事で、一度人身売買組織に誘拐された事があり(売り飛ばされる前に両親に助けられた)、以来母が学校まで送り迎えをしている。