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一人の子供が小屋に居た。 ただ、みんなと遊びたいだけの幼子が、生贄に捧げられた。 その怨念は溜まりに溜まり、現代に憑依という形で蘇った。 そんな夢を見た。 ◆ 東京駅、一人の少年が電車より降りてくる。 少年は人混みをかき分け、別のホームへと走っていく。 そんな彼の脳内に、声が響き渡る。 (…なにをしてるのですかマスター) (ん?何って遊びに行くんだよ?) (はぁ…マスター…あなたには危機感を持ってもらわないと…) (いいじゃんいいじゃん!息抜きだって必要だよ!) 彼が話しているのは、見えない黒髪の少女。 表情は薄く、紫色の瞳の機械のような見た目。 しかし、その評価は一瞬で裏返る。 (はい!アリスはマスターに賛同します!) (王女!あなたも少しは危機感を持ってください!) 今度は活発な少女の顔になったと思えば、またさっきの表情に戻る。 奇妙な変化を何度も繰り返す。 (おっ!電車キター!乗るよアルターエゴ!) (はい!アリス、楽しみです!) (はぁ…) 陽気を絵に書いたような少年、円乗寺仁、それが彼の名前である。 ◆ 少しかかり、秋葉原。 仁と彼のサーヴァントが降り立ったのは、オタク文化の聖地。 (アリスここ知っています!凄いアイテムが買えるとウワサです!) (…できるだけ人混みに紛れてください…って言ってるそばから別なところに!) (それだと他の人巻き込んじゃうじゃん?だったら、出来るだけあえて一人もいいじゃん!) 仁が出たのは、電気街とは反対側。 こちらも人混みはある程度あるが、電気街と比べれば少ない。 (こっちこっち!確か――) 言葉が途切れた、いや絶句した。 眼の前に横たわる人の数々。 そして血染めの剣を持った男。 「ちっ!見られたか、始末する!」 猛者の太刀筋、それはサーヴァントの者だと素人の彼でも分かった。 でも、絶句しても余裕は崩れない。 なぜなら―― 「…勇者、ただいま到着しました!」 剣士の剣が弾かれる、現れたのは、巨砲、レールガンを携えた少女。 そして目線が冷徹な物へと変わる。 「…すぐに済ませます、はぁっ!」 「何を――」 男が反応して太刀筋を再び向けるよりに先に、レールガンが火を吹いた。 それは並のサーヴァントを散りに変える宝具。 断末魔を上げながら、サーヴァントは消え去った。 ◆ 「…酷いなぁ」 仁は現場から離れ、黙祷を捧げる 「…これが聖杯戦争です、魂喰らいの為に、民間人を犠牲にするものなど、いくらでもいます」 アルターエゴはそう淡々と告げる。 「…俺はそんなの嫌だな、苦しむ人なんて、見たくない」 「…そうですか」 「お前はどうだ?アルターエゴ」 「…アリスは、マスターの意見に賛同します!」 「…同じく」 「そうか、良かったよ」 夕暮れが落ちる。 照らされるのは二人。 邪視を宿し少年と。 勇者――魔王――女王――数多の名で言われし少女。 天童アリス――ケイ――その両者を合わせた持った存在。 アルターエゴ――AL-1S。 ID fh6KerYM0 【CLASS】アルターエゴ 【真名】AL-1S@ブルーアーカイブ 【ステータス】 筋力C 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A++ 【属性】秩序・善 【クラススキル】 単独行動:A マスター不在でも行動できる。 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。 【保有スキル】 怪力:B 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。 アルターエゴは機械のため人外判定をもらい、使用可能である。 ハッキングプロセス:A 電子機械を乗っ取り、掌握する際に使われる技術をスキル化したもの。 人格がケイの時のみ発動可能。 心眼(偽):A 視覚妨害による補正への耐性。 第六感、虫の報せとも言われる、天性の才能による危険予知である。 【宝具】 『分解し、再構築せよ、世界を守る方舟のとなり給え(光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ)』 ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~500 最大捕捉:10000人 勇者が再構築し、光の剣。 数多の希望を宿し、光の剣。 自身の武器を再構築し、発動する宝具、対象に対して、レールガンによる砲撃を放つ。 アルターエゴ一世一代の宝具、発動の代償として、発動後早急に、アルターエゴが消滅してしまう。 【weapon】 光の剣:スーパーノヴァ 【人物背景】 世界を救いし勇者。 本来はありえないはずのアルターエゴとしての現界であり。 アリスとケイで人格が交互に入れ替わる。 【サーヴァントとしての願い】 マスターの為に、願いを叶える。 【マスターへの態度】 「強くてかっこいいマスターです!byアリス」 「危機感がないけど、魔力は高いのは高評価byケイ」 【マスター】円城寺仁@ダンダダン 【マスターとしての願い】 帰る! 【能力・技能】 邪視 彼の中に乗り移った霊の一種。 怨念の球や結界を貼ることが可能。 本来は幼く凶暴だが、とある人物と約束で人殺しを控えている。 【人物背景】 邪視に同情し、魅入られた少年。 【方針】 帰る! それと殺害対象がNPCマスター関わらず、人殺しを見かけたら止める。 【サーヴァントへの態度】 すげー可愛い!すげー強い!
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最強ヒーロー 一つわかったことがある。 この世界は、人殺しの世界なんだ。 痛みと重みに潰れそうな身体を引きずって、樹はふらふらと歩いていた。 人気のない物陰を見つけて、ようやく腰を降ろす。 こういう場所が一番危ないということはわかっていた。わかっていたけど、もう限界だった。 「…ッは、はぁ…。」 呼吸が肺に痛い。 疲れきっていた。落ちそうな意識に身を任せてしまいたい。けれど恐怖がそれを許さない。 この世界は、人殺しの世界だから。 誰もが自分を殺しにくる。青い青年。地面から這い出る影。 そしてついには 見知っていたはずの琥珀色まで。 「……なん…なんだ…。」 今更になって手が震える。その手を額に押し当てた。目を潰すかというほど、強く強く押し当てた。 怖い。恐い。 殺されることが怖いんじゃない。わけがわからないことが、怖かった。 此処は何処、どうして此処にいる、何処へ行けばいい、自分はどうなるのか、 自分は、誰。 わからない。わからない。何一つわかることがない恐怖。 何か、ひとつでもいいから。擬似的な暗闇の中で、金の瞳が震える。 なんでもいい、なんでもいいから光が欲しかった。 信じられる、何かを。 果てのない暗欝な思いは、ある時瞬時に消えた。 背中に、ぶっつりと突き立った爪により。 「……ッ!」 声の代わりに血を吐いた。背にしていた瓦礫が嫌な音を立てる。 爪の主は気にも留めず、ひょいとその手を持ちあげた。貫いた瓦礫はばらばらと崩れたが、爪はまだ深々と樹に刺さっている。 「雫…これ、雫の探し物か?」 「わぉ、本当に見つけちゃってる。いい子だねぇ炎、上出来だよ。」 二人分の声が耳を通過した。意味を咀嚼する気力はもうない。 かつりと響く冷たい靴音、頬に触れた冷たい指。樹はそこで初めて青い男と目が合った。 零度の笑みを浮かべる、青い男。 「…くく、やっと会えた。ずっとお前を探していたんだよ…林。」 触れる指がかすかに撫ぜる。ナイフで撫ぜられてる気がして樹は身じろいだ。その様子をしばし雫は愉しんでいたが、ふいに首を傾げる。 「…あれ?君、林じゃない?」 「…リン、は知らない…俺は樹だ…。」 「樹、っていうの…ふぅん。」 指を離し、雫が手を向けた先は背後の男。唐突に放った『ハイドロポンプ』で背後の男が吹き飛んだ。 一緒に弾かれた樹も、爪が外れて地に落ちる。 その手を雫が容赦なく踏みつけた。 「何を馬鹿やってんのかなぁ炎は。僕は林を探せっつっただろ、このクズ。」 「ッ…すみません。」 「まぁいいや。炎がクズなのはわかりきったことだもんね。」 ぎりっ。靴底に力がこもる。樹が短く呻いた。 「殺っちゃって、炎火。」 なるべくぐちゃぐちゃになるようにお願いね。 声をなくす樹の後ろで、ばさりと一つ羽音がした。 「…了解、雫。」 「ドレインパ―――ンチッ!!」 ばきばきばきッ、と地面がひび割れた。 唐突に数cm沈んだ地面の上で、雫も炎火も樹も、呆然とする。 その中心に今までいなかった男がいた。 この巨大なクレーターを作った張本人は、右拳をぱたぱたと揺らしてこちらを見た。 「あっちゃー、ちょおっと目測誤った?まぁでも別にいいよね、おっけーおっけー。」 「な…何こいt 「あいそこ黙る!」 雫を制して放たれたのは『にほんばれ』だった。水タイプらしい雫は日差しに怯む。 対して二倍速となったその男は、隙をついて樹を奪還した。 「はーいお姫様救出ですよ。怪我なかった?」 「…残念ながら。」 「それはよかった!」 全然悪びれない返事。どころか話を聞いてない返事。 男は樹をぽいっと捨てて、炎火と雫に向きなおった。…痛い。 「さ、お姫様は逃げて逃げて。ここは僕に任せてです。」 「え…待て。あいつら二人とも相手にする気か?」 「だって二人いるんだから二人倒さなきゃですよ。」 「ちょ、やめておけ!危ないぞ!」 その言葉に男はにやりとした。 「お姫様ってば頭悪いなぁ。ピンチにお姫様を助けるのはヒーローのお仕事でしょ?」 むしろその言葉を待ってましたと言うように。ガッツポーズと共に、最高の笑顔が光った。 「僕の名前は薫。どんな奴にも絶対負けない、最強のヒーローですよ!」 その笑顔に樹はしばし圧倒されていたが やがて頷いた。薫を置いて、可能な限り全力で撤退する。 彼なら信じていいかもしれない。光の塊みたいな彼ならば。 そんな樹の思いなど一切構わず、むしろ樹を逃がしたことも忘れて薫は二人に構えていた。 「さってとー。ほら遠慮はいらないですよまとめてかかっておいで!」 「言われなくてもそうする。ねぇ炎。」 炎火の瞳が濃く光った。この日差しの下では炎火の力も強まる。 「君…薫って言ったっけ。あの樹って奴と知りあい?」 「へー、樹って言うですかあのお姫様。…え、もしかして男?」 「……ああそう、全っ然知り合いじゃなさそうだね。なんで邪魔したの?」 「それはさっきも言ったですよ?」 薫は両の手に光を灯しながら颯爽と笑った。 「最強は、弱くて困ってる人を助けるのが仕事です。」 右手に『ソーラービーム』、左手に『エナジーボール』。 「それに、より強くてでっかい奴を倒すのもね!」 そう、すべては最強であるために。 迷いのない右足が地面を蹴った。
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殺したらおわり(前編)◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 横島忠男の眼球を抉り取ろうとしていたさとりは、唐突にその動きを止めた。 三日月状の刀剣・魔道具『海月』を振りかざしたまま、不自然な体勢で硬直する。 「な、なんだってんだ、いきなり……」 対する横島のほうもまた、霊波刀を構えた状態で首を傾げる。 よもやこちらの意図を汲んで、人殺しをやめてくれる気になったのだろうか。 いや、そうに違いない。たまには勇気を振り絞ってみるものだ。超逃げたかったけど、そうしなくて正解だった。よかったよかった。 そんな思考が『心を読む妖(バケモノ)』であるさとりに流れ込んでくるものの、まったくの見当違いだ。 横島の言い分なぞ、知ったことではない。 そもそも、さとりには横島の言わんとすることの半分も理解できていない。 妖でも家族になれる可能性があるのならば、同行者に一度伝えてみようと思ったくらいだ。 つまるところ、動きを止めた原因は他にある。 これまで静止していたさとりが、凄まじい速度で首を捻る。 その視線の先にいるのは、三人の少年少女だ。 へたり込んでいる華奢な少年、バロウ・エシャロット。 彼を庇うように立つ筋肉質なモヒカン少年、石島土門。 剣を構える額から二本の角を生やした少女、霧沢風子。 彼らの思考が、さとりへと流れ込んでくる。 彼らがいったいなにをしようとしているのか、さとりには読み取れる。 『彼ら』というより、『彼女』が問題だった。 霧沢風子の脳内は、さとりの同行者への殺意で埋め尽くされていた。 その全身から放たれる妖気は、彼女が少女の外見をした妖であることを雄弁に語っている。 「バロウ……!」 意図せず、さとりは同行者の名を呟いた。 ほんの数ヶ月前まで―― さとりという名の妖は、一人きりで山奥に生きていた。 どれだけ日にちが経とうと、どれだけ季節が過ぎようと、どれだけ年が変わろうと。 いつだって、たった一人。 心を読む能力を持っているというのに、一人ぼっち。 別に、山が嫌いだったワケではない。 むしろ、自分の住処のことは好いていた。 石も、花も、樹も、みなそれぞれ美しい。 ただ、考えていることはいつもあまり変わらない。 時たま鳥や虫を見つけても、彼らはすぐにいなくなってしまう。 それに、彼らもまた、ほとんど常に考えていることは同じだ。 退屈な日々を、はたしてどれだけ過ごしただろうか。 なまじそうそう早く寿命を迎えぬ妖ゆえ、過ぎた年月はもはや数えることさえできなくなっていた。 そんなある日、さとりは人間に出会った。 本来人間など足を踏み入れぬ山奥に、偶然にも飛行機が墜落したのだ。 その事故唯一の生存者であったミノルという少年は、それまでさとりが見てきた他のものとはまったく違っていた。 石よりも、花よりも、樹よりも、鳥よりも、虫よりも、ずっとずっと多くのことを考えていた。 最初は恐怖で埋め尽くされていた思考が、少し声をかけただけで安心感に変わっていく。 飛行機の破片が散らばる場所では危険だからと、ちょっと手を引いてやっただけで、その安心感は増していく くれてやった木の実が苦いというので、車を襲って調達したパンを手渡した。ただそれだけなのに、脳内に感謝と歓喜の念が満ち溢れる。 さとりは、そのような存在を知らなかった。 心を読む能力を持ち合わせていながら、自分へと向けられた思いを読んだのは――初めての経験であった。 かつて気まぐれで鳥に餌をやったことがあったが、これほど豊かな感情を抱かれたことはない。 ただ好きに食い散らかして、すぐに飛び立ってしまうばかりだった。 腹を満たせたことへの安心こそあれど、そこにさとりへの思いはない。 だが、ミノルは違った。 満面の笑みを浮かべて喜び、感謝し、そしてこう呼んでくれるのだ。 『お父さん』――と。 理由はよく分からないが、さとりには嬉しかった。 ミノルが笑みを浮かべてくれると、胸が熱くなるのだ。 それまで退屈だった日々が、キレイに彩られたようだった。 だから、さとりはキース・ブラックの指示に従った。 ミノルの目が治れば、きっともっと微笑んでくれるはずだから。 そう信じて、最後の一人になる決意を固めたのだ。 しかしその願いが叶わないことを知るまでに、さして時間はかからなかった。 夜明け前に遭遇したバロウが、きっぱりと否定したのである。 『妖では、人間の家族にはなれない』 他の誰かが否定してきたのなら、さとりは信じなかっただろう。 でまかせと決め付けて、海月で斬り捨てていたはずだ。 それをしなかったのは、バロウもまた人間ではなかったからだ。 人間ではなく、人間でないがゆえに――人間と家族になれなかった。 そんな悲痛な記憶が流れ込んでくれば、いかにさとりとて信じるしかない。 そうして目的を失ったさとりに、バロウは手を伸ばしてくれた。 『おじさんも、人間になればいいじゃないか』 人間でないにもかかわらず、人間と家族になりたい。 バロウが語った夢は、さとりが望むものとまったく同一であった。 その話を聞いている際に流れ込んできたのは、バロウが描く幸せな未来のヴィジョン。 妖でなくなったバロウは、屈託のない笑顔を浮かべていた。 それを視てしまったがゆえに、さとりは伸ばされた手を取った。 すると、バロウは――たしかに微笑んだ。 ミノルと同じように、心からの笑みを浮かべたのだ。 その笑顔を崩したくないと、さとりは思った。 できることならば、ミノルだけでなく、バロウとも笑って幸せに暮らしたい。 それが叶わないのは、さとりにも分かっている。 バロウの望みは、さとりではない他の誰かと家族になることだ。 願いを叶えられるのが一人である以上、いつか確実にぶつかることになる。 心を読めるさとりは、バロウがいずれさとりを殺すつもりであるのも承知している。 それでも、構わなかった。 最終的に殺し合うのを承知で――ただ、一緒にいたかった。 「バロウに怖いことさせるものか」 言い終えるより先に、さとりは跳び上がっていた。 虚を衝かれたらしい横島の驚愕する声が背後から聞こえたが、耳を貸す気はない。 横島の眼球を手に入れるよりも、優先せねばならない事態である。 「バロウに近づくなァ!」 ほんの三回跳んだだけで、さとりは風子の下へ到達する。 すぐ近くにいた土門を無視して、標的を風子一人に絞る。 とうに読めている思考を踏まえて、剣で受け切れぬ方向へと海月を振り下ろす。 ――彼女の身体に触れる寸前で、三日月状の刃は静止した。 そこにはなにも存在しないはずなのに、どれだけ力を籠めようと海月は風子に届かない。 「なん、であ゛ッ」 さとりの驚愕の声は、半ばでくぐもったものに変わる。 なにか目に見えぬものが、凄まじい速度で鳩尾に激突したのだ。 衝撃で僅かに呼吸が止まる間に、さとりは黙視できぬなにかの正体を知った。 いや、知ったのではない。 ご丁寧なことに、『教えられた』のだ。 眼前の少女でも、他の二人でもない――別の声に。 『身の程を知るがよい、妖怪。 貴様ごときが、我が風を破れるはずがなかろう』 ここに至って、さとりはようやく相対している妖の正体を理解する。 風子のほうはあくまで憑代であり、本体は彼女の持つ風神剣であったのだ。 まるで威圧するかのように、風子が一歩ずつゆっくりと歩み寄ってくる。 さとりは逃げ出すことさえできない。 思考が読めるからこそ、逃げたところで意味がないと分かってしまう。 ただ、背後で震えるバロウを守るように、ほんの僅かに前に出ただけだ。 「死ね」 短く吐き捨ててて、少女は剣を振り下ろ――さなかった。 「おいおいおいおい、風子様よォ。 せっかくのデートなのに彼氏放って他の男とお楽しみなんて、そりゃあねえだろうが」 風子とさとりの間に、石島土門が割って入っていた。 その手には、真っ赤なバラの花束が握られている。 「いやいや、最初に道具確認したときから思ってたけど、キース・ブラックのヤツも意外に気の利いたもん渡しやがるよな。 この俺にバラの花束なんて、まったくお似合いってレベルじゃねえ。ま、アイツに感謝なんか死んでもしてやらねえけどよ」 軽口を叩くような口調とともに、土門は花束を前に突き出す。 「俺だけじゃねえんだぜ、風子。 お前に似合うのはそんな物騒な剣じゃねえ。こいつだ。どうか受け取ってくれよ、マイステディ」 「ふざけんな」 ウインクを決めての決めゼリフは、たった五文字で切って捨てられた。 土門はやけに演技がかった大げさな動作で、肩を落としてみせる。 そんな素振りが癇に障り、風子は語気を強くする。 「テメェ……いい加減にしろッ! 脳ミソとろけちまったのか、腐乱犬! ンなふざけたことぬかしてる場合じゃあねえだろうがッ!! 烈火は死んだんだぞ、みーちゃんもだ! それ分かってんのか! もしかして『実は生きてる』とか、そんなありえねー夢見てんじゃねえだろうなッ!?」 風神剣から放たれる風が、あからさまに強くなる。 激しい風にモヒカンをなびかせながら、土門は微かに目を細めた。 「分ぁーってんだよ、んなこと」 「なら――」 「るっせえな。黙って話聞いてろよ」 風子の声を制して、土門は一呼吸置いてから切り出す。 「下らねえ夢なんか見てられるワケねえだろ。 花菱のバカ野郎は、この土門ちゃん逃がすために命捨てやがったんだからよ」 「――――っ」 「バカだよな、ほんと。 死んだら終わりだってことくれー、アイツもよく知ってるだろうに。 何せ、俺たちゃこの歳で、何人も死んでくヤツら見てきちまったんだからよ。 はっ! あんまり寂しくて夢に出てくるくれーなら、死んでんじゃねーっつんだよな」 「だ、だったら……!」 風子の身体が小刻みに震える。 困惑と怒りがない交ぜになっているのが、さとりには読み取れた。 「だったらなおさらだ! バカ野郎はテメェだ、バカ野郎! 目の前で烈火殺されて、なにのうのうとしてやがんだ! そんなんでいいのか、テメェは!?」 絶叫は住宅街に響き渡らず、付近にいるものにしか届かない。 よりいっそう激しくなった風によって、掻き消されているのだ。 「ああ、いいぜ。 おっ死んじまったヤツのために、わざわざ手ぇ汚す気はねえよ。汚させる気もねえ。それこそバカ野郎じゃねえか」 風子は目を見開いたのち、ゆっくりと頭を垂らす。 表情が窺えない状態で出てきた声は、やけに低く冷たい。 「そう……かよ。だったら知らねえ。知ったこっちゃねえ。 どかねえってんなら――無理矢理吹き飛ばしてやるっ!!」 その声に呼応するかのように、周囲に異変が生じる。 先ほどまで縦横無尽に吹いていた風が、いきなり止んだのだ。 住宅街中を流れていた風が集束し、風神剣の刀身を覆っていく。 風神剣の柄に埋め込まれた宝玉が仄かに光り、その中心部に『風』という文字が浮かぶ。 明確な宣戦布告を受けたというのに、土門はたじろがない。 風子を見据えたまま、さとりとバロウの前から動こうとしない。 「お、お前、どうして……俺たちが憎くねェのか……?」 「憎いに決まってんだろうが! どんだけ痛かったと思ってんだ、バカチン! テメェ、ハラキリって死ぬヤツだからな! あの清麿ってヤツがなんかARMSとかいうの持ってただけで、本来死ぬヤツだからな!」 その返答は、さとりがすでに読み取っていたのと同じものだった。 土門のなかには、自分たちへの憎しみがある。 ならば、どうして―― そんな疑問は問いかけるまでもなく、土門自身により解消される。 「けどよ……ムカつくからって殺してたんじゃ、俺たち火影がブッ飛ばしてきたクソ野郎どもと――なんにも変わんねえだろうがッ!!!」 そう言い切ると、彼の着込んでいる漆黒のボディスーツが膨れ上がった。 ◇ ◇ ◇ 時を同じくして、近接エリアであるB-2の南部。 蒼月紫暮とルシール・ベルヌイユの二人は、民家の壁に背中を預けて身体を休めていた。 自動人形(オートマータ)・ドットーレに気付かれぬよう、どうにか距離を取ったところである。 法力僧と人形破壊者(しろがね)といえど、精神的な疲労がないワケではない。 瞳を閉ざして、心を落ち着ける。 睡眠をとらなくても、数分こうしているだけでだいぶ回復するものだ。 両者はいちいち言葉で意思の疎通を行わずに、取るべき行動を理解していた。 ――不意に、紫暮の身体が震えた。 「これは……!」 閉じておくはずの目が見開かれ、声が勝手に零れる。 休息状態から臨戦態勢へと、身体が即座に切り替わる。 傍らで紫暮の声を聞いたらしいルシールも、また同じくだ。 「いったい、なにが起こったんだい?」 ただ、ルシールのほうはなにも捉えていないらしい。 これにより、むしろ紫暮はなにか起こっているという確信を強めた。 紫暮が捉えたのは、戦闘音ではなく『妖気』だ。 もう全盛期から長らく年月が過ぎ、五十歳も近くなっている。 肉体や法力は衰えていくばかりだが、感覚だけはかつてよりも研ぎ澄まされている。 その感覚が告げるのだ。 ――強大な妖気が、南部から発せられている。 捉えた気配は、かなり暗く重たい。 大きな憎しみに満ちているのは、間違いない。 浮かんだのは、憎しみを食らう大妖の姿である。 アレほどではないだろうが、同種という可能性は少なくない。 だとすれば、法力僧たる自分が向かわねばならないだろう。 紫暮はその旨を伝えるが、ルシールの返事は積極的なものではなかった。 「行ったところで、なにができると言うんだい?」 「ぐ……」 あまりに的確な指摘であった。 紫暮に支給された道具は、鍋のフタだけ。 そのフタの素材が法力を通しやすい代物ならばともかく、単なるアルミ製だ。 いざ戦場に辿り着いたところで、素手の紫暮にできることなどたかがしれている。 (とはいえ――) 先の放送で、井上真由子という名前が呼ばれていた。 彼女は戦う術を持たぬ、単なる一般的な女子高生である。 そんな彼女が殺し合いに呼び出されて、命を落としてしまっている。 ドットーレのいた学校に人の気配はなかったが、いま感じた妖気の元には誰もいないとは限らない。 真由子のような力を持たない誰かが、強烈な妖気と相対しているかもしれないのだ。 法具がなくとも、誰かを逃がすくらいはできるかもしれない。 決して、断言はできない。 息子のうしおならば『できる』と言い切るだろうが、年老いた紫暮には不可能だ。 だが断言できないからといって、行かなくていいのだろうか。 護るべきか、見捨てるべきか。 向かうべきか、向かわぬべきか。 考え込み、迷い、逡巡し、それでも踏ん切りがつかず―― 『ゆくことが、貴方の使命ですよ』 いつか聞いた声が蘇り、紫暮ははっとする。 (はは、いまさらだったな) 同じ迷いを抱いたことがあった。 そして答えを見出したことがあった。 そう――もう、答えは出ていたのだ。 それも、十六年も前にだ。 あの日から一日とて、固めた決意は揺らいでいない。 ならば、どうしていまこの場で決めかねることがあろう。 紫暮はルシールのほうに向き直り、静かな口調で言い放つ。 「人々に仇なす妖を封じるのが、私の使命です。 同行を強制するつもりはありませんし、もしものときは見捨てていただいて構いません」 これは、ルシールに向けられたものではない。 紫暮が自身に言い聞かすためのものでもない。 いま現在も海の底で使命を全うしている、思いを寄せる女への――誓いだ。 「そうかえ。ではいざとなったら、安心して見捨ててさせてもらうとするかね」 くつくつ笑いながら、ルシールは紫暮の前に立つ。 そうして呆然とする紫暮を急かすように、こう告げるのだった。 「どうしたんだい? 『お守りしてくれる』んだろう?」 ルシールに遅れて、紫暮も口元を緩めた。 ◇ ◇ ◇ 「はぁ……はぁ……クソッ!」 いつの間にか荒くなっていた呼吸で毒づきながら、風子は風神剣を振り下ろす。 離れた場所にいる土門への威嚇のために、単に剣を振るっているだけではない。 一薙ぎするたびに、刀身を覆っている風がいくつもの弾丸となって放たれているのだ。 にもかかわらず、土門は一向に退かない。 どれだけ風玉を放っても意に介さず、まっすぐに進んでくる。 横に跳んで回避することこそあれど、一度たりとも後退することはない。 風玉に囲まれて避け切れなくなれば、その場で立ち止まって身体に力を籠めて受ける。 ずっと攻撃を続けている風子のほうが、詰められた距離を開けるために後退してばかりだ。 「ちィ……! どうなってんだよ、テメェの着てるそれはよォ!」 「俺が知るか! 負けらんねえと思ったら思っただけ強くなるんだよ、このアーマーなんちゃらスーツはッ!」 意味の分からない返答とともに、土門が地面を蹴った。 風子は咄嗟に風刃を撃ち出すが、土門は顔面だけを庇うように腕でガードする。 やはりボディスーツの表面が削れるばかりで、内部にあるはずの肌さえ露にならない。 しようがないので飛び退こうとする風子だったが、とても間に合わない。 風子が知る土門の限界を超えたスピードで、土門は接近していた。 走る勢いそのままに、バラの花束を持っていないほうの右手をかざし―― ――ぱちんっ。 「…………は?」 「目ェ覚めたかよ、お姫様。 王子様のキッスのほうをお望みってんなら、何百回だってしてやるぜ」 風子は遠ざかることも、刃を返すこともできずにいた。 そんな千載一遇の機会を得たというのに、土門がやったのは――いったいなんだ。 わざわざ考えるまでもないほどに、明らかである。 ――『頬っぺたをはたいた』だけだ。 それも、子どもを叱りつけるような微かな力でだ。 風子は、自分のなかでなにかがキレる音を聞いた。 「おちょくってんじゃあねェェェーーーーーーッ!!」 これまで研ぎ澄まされていた精神が、一気に決壊した。 風神剣の刀身だけを高密度で覆っていた風が、再び外界へと解き放たれる。 住宅街一帯に吹き荒れ、かつて民家だった瓦礫が宙を舞い、張り巡らされた電線が激しく揺れ動く。 そんな暴風のなかで、土門は焦らず二本の足に力を籠めて立ち尽くす。 依然として左手に花束を持ったままであり、風子はその姿が気に入らなかった。 これだけの風速のなかでは、通常なら涼しい顔など浮かべていられないはずなのだ。 「ナメんな、クソッタレ!」 刀身を風で覆うこともせずに、そのまま風神剣を袈裟に振るう。 単なる刃でしかない刀身は、簡単に仰け反って回避されてしまう。 発生させた風の勢いで強引に刃を戻しての逆袈裟も、これまた飛び退いて回避される。 強引な連撃で体勢を崩したところを狙って、土門が再度肉薄してくる。 ――ぱちんっ。 「テメェ……!」 またしても、土門は同じ行動を取った。 またしても、せっかくの好機をふいにしてきた。 風子の苛立ちが増していき、風神剣の宝玉がさらに光り輝く。 「バカにすんのも、大概にしやがれッ!!」 身体を風で強引に加速させて斬りかかるが、土門の右腕に阻まれる。 ボディスーツに数センチ刃が埋もれた感覚はあったが、そこから進む気配はない。 無理に刃を押し入れようとして、そのまま前に倒れ込んでしまう。 土門が腕をうしろに引いたために、かけていた力が行き場を失ったのだ。 体力バカであるはずの土門に、巧みにあしらわれた。 その事実を受けて、風神剣を握る力がさらに強くなる。 こんなはずはないと、風子は歯を軋ませる。 石島土門は力バカで、霧沢風子は技巧派。 その認識に誤りなど在り得ない。 長い付き合いなのだから、お互い分かっている。分かり切っている。そうに決まっている。 「剣みてえな慣れねえもん使いやがって。勝てるワケねーだろ」 這い蹲っている最中に浴びせられた言葉によって、風子の怒りはついに沸点に達した。 「ざッけんなッ! 私はずっと練習してたんだ! 緋水の神慮伸刀を託されてから、ずっと!! 殺すッ! いい加減なことばっか言いやがってッ! クソッ! クソッ! マジでブッ殺すぞッ!!」 発生させた風で飛び上がるようにして強引に立ち上がりながら、風子は声を張り上げる。 それでも、土門はなぜだか寂しそうな表情を浮かべるばかりだ。 一向に本気で戦うそぶりを見せない土門に、風子の苛立ちは加速していく。 「確信したぜ、風子」 土門が左手を伸ばし、バラの花束を前に突き出す形になる。 「いまのお前は、火影の誰よりも弱い」 風刃でも飛ばしてやろうとしていた風子だったが、一瞬完全に思考が飛んでしまう。 はたして土門がいったいなにを話しているのか、まったく理解できなかった。 「っつーか、アイツより弱えんじゃねえの。 なんだっけ、あの、空海んとこの……南尾じゃなくて、ほらお前が戦った、えーと」 いや、それはないだろう。 さすがに、そんなふざけたことは言わないだろう。 風子のそんな期待は、あっさりと覆されることになる。 「ああ、藤丸だ。あの鎌使う変態野郎。 自分のやりてえことを自分で決めらんねえっていう点で、いまのお前はアイツにも負けてるぜ。 アイツはどうしようもねえクソ野郎だったけど、でもやりてえことは自分でちゃんと決めてたもんな」 ここに至って、風子の思考は白く染まった。 怒りは臨界点を超え、殺意へと切り替わっていく。 かつてないほどの速度で風を作り出し、一気に土門へと射出する。 これまでのように一方向からばかりではなく、四方を覆うように風刃を生み出す。 もはや一切の容赦も躊躇もなく、首や心臓といった人体の急所にさえ残撃を飛ばす。 「……はっ。ナメたことぬかしやがって……」 轟音が響き渡り、辺りに土煙が立ち込める。 はたして土門がどうなったのかは、定かではない。 少なく見積もっても、数十の肉片と成り果てただろう。 せっかくだし、突風で土煙を吹き飛ばして確認してやろうか。 そのように思考を巡らす風子だったが、確認なぞ必要なかった。 「ナメてんのも、おちょくってのも、バカにしてんのも……全部お前だろうがッ、風子ォ!」 土煙のなかから、聞き慣れた声が響いたのだ。 目を凝らしてみると、巨大な影が迫ってきている。 その正体が誰なのかなど、特徴的なモヒカン頭を見れば明白だ。 左手に持った花束は健在だ。アレだけやったのに、風子は花束さえ吹き飛ばせなかった。 「……ぐッ!」 「逃がすかよ」 距離を取ろうとした風子だったが、バックステップを踏むことさえ叶わない。 土煙から飛び出てきた土門に、その肩を掴まれたのである。 着込んでいるボディスーツはボロボロだが、未だ形状を保っている。 現れた土門の額には、『鉄』の文字が浮かんでいた。 「めんどくせえから、はっきり言わせてもらうぜ。俺はいまのお前が気に喰わねえ」 ――ぱちんっ。 「仲間だなんだぬかして、花菱や水鏡に責任を押し付けてるのが、腹立って仕方ねえ。 アイツらを理由にしてんじゃねえ。ほんとにやりてえんなら、『自分が殺してえから』って言えよ。 なのになんだっけ、お前。俺たちを『守るために』とか言ってやがったな。ナメんな。いらねえよ、そんな気遣い。ふざけてんのか、オイ」 ――ぱちんっ。 「いいか。自分がいったいなにをしてえのか、それをまず考えろ」 ――ぱちんっ。 鋼鉄化した肉体であるゆえ、極限まで力を抑えているのだろう。 風子の頬を打つビンタの威力は、これまでとほとんど変わらない。 その手は鉄特有の冷たさを誇るはずなのに、やたらと熱く感じた。 「さっきまで俺とタイマンってたヤツな、サイボーグなんだぜ。スゲェだろ。 作ってくれたドクターなんちゃらの命令には逆らえないとか、強情張っててな。 でも、アイツは変わったぜ。製作者様の言いなりなんかじゃなく、自分のやりてえことをやるってな」 風子は俯いたが、頬を掴まれて強引に顔を上げられる。 せっかく目を伏せたというのに、見たくなかった土門の瞳を直視するはめになる。 その視線もまた、ひどく熱かった。 「お前はどうなんだよ、風子。 清麿から聞いたぜ。その剣、風神剣っつーんだろ? その風神剣とかいう魔剣様の言いなりになってんじゃねえのか。 ほんとに人を殺してえのか。本心から、心の底から、そう思ってんのか。 だったら言ってみせろよ。仲間のためでもなんでもなく、自分が殺してえから殺すって――そう断言してみせろよ、この野郎!」 「そ、そうに決まって……」 言葉の途中で、風子は口籠ってしまう。 肯定してやろうとしたが、できなかったのだ。 海月が土門の腹を斬り裂いたのを見たとき、剣から流れ込む声に身を委ねてしまったのだから。 「聞こえねえな。はっきり言えよ。 霧沢風子ってのは、なんか訊かれたらすぱっと答える気持ちいい女だっただろうが」 視線を逸らそうとしても、土門は首を動かして追ってくる。 黙秘は許されない。なにか答えねばならない。 そう認識し、風子は―― 「るッせええええええええええええええええッ!!」 絶叫した。 風神剣へと意識を集中させると、収まっていた風が再び激しくなる。 「私が人を殺したいかどうかなんか知らねえよ、ボケ! でも仕方ねえじゃねえか! 人殺しするヤツを殺さなきゃ、また誰か殺されちまうんだ! 分かってんだろうが、テメェも! 邪魔すんじゃねえ! 邪魔すんだったら、テメェだって――!!」 その言い分が支離滅裂なのは、風子自身にも理解できていた。 大切な仲間が殺されないように、人殺しを先に殺すはずだった。 なのに、どうして仲間である土門を真っ先に殺そうとしているのか。 これでは、守るべき仲間がいなくなってしまう。本末転倒ではないか。 生まれた懸念は、風を作れば作るほどに薄れていく。 視界の片隅のほうで、風神剣の宝玉が妖しく煌めいている。 自分の行動は決して誤っていないと、吹きすさぶ風が認めてくれているような――そんな気がした。 風子は自身に突風を当てる。 風の勢いに乗れば、土門から離れられる。 いくら土門が力バカであろうと、風が強くなればいずれ手放すはずだ。 「なんッで放さねえんだよッ! いい加減、諦めろよッ!」 一向に力が緩まる気配がなく、風子は語気を荒げる。 対して土門はというと、ふてぶてしく笑うばかりだ。 「放すわきゃねえだろうが、バーカ。 俺はいつだってお前を支えてやるって、心に誓ってんだよ。 お前が断っても、何度だって何度だって抱き締めてやるんだよ!」 「……なに言ってんだ、お前ッ! もういい加減、そのうるせえ口閉じてろよ!!」 怒りを露にし、風子は風刃を生み出す。 現時点においても、土門は花束を手放していない。 つまり、右手に風子を、左手に花束を持っているのだ。 ならば、ガードなどできるはずがない。 いかに魔道具『鉄丸』で身体を鋼鉄化させていようと、微かな衝撃は走るものだ。 風刃に頬を斬りつけてやると、ほんの僅かにだが土門の右手に籠められた力が弱くなる。 風子が、その隙を逃すはずがない。 掴んでいる手を強引に振り払うと、土門の肉体を蹴り飛ばす。 蹴った勢いを突風に乗せて一気に加速し、距離を取ってやる。 「させッかよ!!」 初めて見せた焦りの表情に、風子は口角を吊り上げる。 (もう、遅ェっつーんだよ) すでに、土門にも突風を放っている。 その風向きは風子が浴びているのは逆方向であり、ようは土門にとって向かい風だ。 こうしておけば、いくらなんでもやすやすと追いつけまい。 そんな風子の予想を覆す事態が、眼前で展開された。 土門の右腕が――『伸びた』のだ。 生物と鉱物が一体化したような、その腕には見覚えがあった。 プログラムの説明の際、高槻涼と呼ばれた少年の腕がこのような外見になって伸びていた。 (いや、いまはンなこたどうでもいい!) 空中で風刃を生み出し、伸びてくる腕へと放つ。 伸びた部位までボディスーツで覆われているはずもなく、生身だからであろう。 ようやく、風刃は土門の肉体を傷付けることに成功する。 ところが、あくまで最初の一撃だけだった。 その傷は瞬く間に回復し、二撃目以降では表面に切れ目すら入らない。 唖然とするしかない風子は、ほどなくして土門の腕に捕らえられる。 長く伸びた腕は、土門の身体の元へと勢いよく収束していく。 「……どうなってんだよ、その腕」 「たとえ人間の身体じゃなくなっても、土門ちゃんは風子様を抱き締めてやるってことだよ!!」 風子が苦々しい表情で問いかけると、土門は自信満々に言い放つ。 なんにも質問に答えてねえじゃねえか――抗議しようとした風子の右手に、鋭い痛みが走る。 「痛う……っ」 反射的に目を閉じてしまってから、風子は違和感に気付く。 いまのいままで握っていた得物が、右手から消えていた。 叩き落とされたのだと察するまで、大した時間はかからない。 だがそのほんの僅かな時間でも、土門には十分であったようだ。 落下した風神剣を離れた場所に蹴り飛ばして、もうすでに追いついている。 「さっきのたわ言のうち、どこまでお前の考えで、どっから剣のせいなのかは知らねえよ。 でもよォ、なんも言わねえで逃げたってことは、そういうことなんだろ。 だったら、容赦なく否定してやるぜ! 悩みに悩んで出した結論とかじゃなく、考えるのやめてこんな剣の言いなりになる気だったんならな!」 風神剣を踏みつけて固定すると、土門は風子に向ける眼差しを鋭くする。 「よく聞け、大バカ野郎! 仲間が殺されないように、誰かを殺すなんざ認めねえぞ! 人なんか殺しちまったらな、一生背負わなきゃなんねえんだぞ! 忘れられるワケあるか! 永遠に覚えてるに決まってんだろ! 他のなにかしてるときだってついて回るし、夢にだって出るだろうよ! 安まる日なんざねえよ、百パー。生きた心地しねーぜ、そんなもん。 仲間のために、一生モンの悔い残してどうすんだよ! そんなもん望むか! 少なくとも俺は望まねえ! 俺は、風子が後悔引きずるなんざ真っ平だ!」 一息で言い切ってから、土門は呼気を整える。 そうして拳を固く握り締めてから、真下の風神剣に視線を向ける。 彼がいったいなにをしようとしているのか、風子には予想できてしまった。 「やめろ、土門っ!!」 風子が、思い切り地面を蹴る。 風神剣を破壊させるワケにはいかない。 アレは魔道具『風神』を愛用している風子にとって、かなり相性のいい武器だ。 アレを失ってしまったら、風子の戦闘力は著しく低下する。 無慈悲に人の命が踏み躙られるこの場で、足掻くことさえできなくなるのだ。 そんな事態に陥っていいはずがない。 花菱烈火と水鏡凍季也が死んだというのに、使い勝手のいい武器を持たぬ少女に成り下がるワケにはいかない。 頭ではそう恐れているはずなのに、どうしてであろうか。 自身に力を与えてくれる剣を、握っているだけで高揚感を抱かせる剣を、『殺せ』としつこく命じてくる剣を―― 土門が完膚なきまでに破壊すると思うと、風子は不思議と胸が高鳴った。 「やめねえっ! 十回でも百回でも言ってやるぜ、風子!」 ゆえにであろう。 土門がこう断言したとき、風子は足を止めてしまった。 頭に響く風神剣の『拾え』と命ずる声は、土門の叫びにかき消される。 「殺しちまったら――なにもかも終わりなんだよ!!」 風子の視界が、スローモーションじみたものとなる。 固く握られた拳が、ゆっくりと風神剣へと迫っていく。 あと、もう少しだ。 ほんの少し待てば、土門の拳が風神剣を割り砕いてくれる。 剣から流れ込んでくるやかましい声を、二度と聞かずに済むのだ。 「…………あ?」 風子には、眼前の光景が理解できなかった。 思わず零れた呆けた声を、自身のものだと判別することさえできない。 拳が風神剣に触れる寸前で、土門の身体が『跳ね上がった』。 「ぐ、ガ……ァ! クソ……もうちょっと、だってのによォ……!」 困惑しているのは、風子だけではないらしい。 土門のほうも目を丸くして、暴走する身体に手を回して押さえ込もうとしている。 そんな意図もむなしく、土門の右腕に亀裂が入っていく。 亀裂は見る見る全身に及び、すぐに立つことさえままならなくなる。 くずおれるように倒れ込むと、身体が――『崩れて』いく。 このような現象を見た経験は、風子にはない。 それでも分かる。 分かってしまう。 何せ、身体が崩れているのだ。 さながら乾燥した泥のように、砕け散っているのだ。 それは、誰の目にも明らかなほどに分かりやすい――『死』の兆候だった。 「ど、もん……?」 風子は土門に歩み寄り、崩れゆく身体に視線を這わす。 向けられる力強い視線に反して、その肉体はあまりに脆い。 鍛え抜かれていた筋肉の面影など、いまとなっては窺えない。 とても見ていられるものではなく、風子は目を覆いたくなった。 その心情を読み取ったかのように、理想的な誘いがかかる。 『我を手に取れば、すべて忘れられるぞ』 鼓膜を介さずに、頭のなかへと届いてくる。 懐柔するような声音が、胸に開いた穴へと染み渡る。 ――風子は、再び風神剣を手に取った。 『殺せ。 我を用いて殺せ。我を紅く染めて殺せ。我が刀身を生き血で照らして殺せ。 斬り殺せ。刺し殺せ。貫き殺せ。抉り殺せ。断ち殺せ。刻み殺せ。削ぎ殺せ。 殺して殺せ。殺して殺して殺せ。殺して殺して殺して――そうしてさらに殺せ』 途端、甘い声は一変。 これまでと変わらぬ冷たいものに戻る。 「あ、あああああァァァ――――!」 喉を削るような絶叫に呼応して、風神剣より強大な風が溢れ出す。 その衝撃により、崩れかけの土門の身体は彼方に投げ出される。 風が渦を巻いて旋風となり、次第に膨れ上がっていく。 ほどなくして、風子を中心とした巨大な竜巻が展開される。 アスファルトが剥がれ、その下にあった土が舞い上がり、風子の足元がすり鉢状に抉られる。 民家は軋むような音を立てたのち、根元から吹き飛ばされる。 竜巻内を上昇する過程で、風圧によって見る見る微細な破片に砕かれていく。 『貴様、なぜその竜巻を放たない』 (うるせえ) 訝しむような風神剣の問いに、風子は短く答える。 彼女の目的は、すでに人殺しの殺害ではなくなっていた。 唯一望むのは、もう誰も近づけないことだ。 伸ばされた手が崩れていくのを見るのは、もう御免だった。 だったら最初から誰も近付いてくれないほうが、よっぽどマシだと――そう思ったのだ。 『ふん。まあよいわ。 依然として、角は生え揃ったまま。 貴様が我が力に魅入られていることに、些かの変わりもない。 ならば精神力を磨り減らすのを待ち、真に従順なる我が憑代とするのみよ』 風子が予想していたよりあっさりと、風神は引き下がって行った。 あるいは、長き時を経てきたゆえの余裕か。 (…………どうでもいいや) 舞い上がった赤いバラの花弁が視界に入り、風子の瞳から一筋の涙が零れた。 投下順で読む 前へ:誘雷 戻る 次へ:殺したらおわり(後編) 時系列順で読む 前へ:置き手紙 戻る 次へ:殺したらおわり(後編) キャラを追って読む 110:貫くということ 霧沢風子 117:殺したらおわり(後編) 横島忠夫 高嶺清麿 石島土門 マシン番長 バロウ・エシャロット さとり 087:二百年も待ったのだ 蒼月紫暮 ルシール・ベルヌイユ ▲
https://w.atwiki.jp/xboxonescore/pages/153.html
PSYCHO-PASS サイコパス 選択なき幸福 項目数:35 総ポイント:1000 難易度:★★☆☆☆(900まで★☆☆☆☆) 攻略Wiki https //h1g.jp/psycho-pass/ この手のアドベンチャーゲームにしては珍しくオートセーブが無くそしてバッドエンドの選択肢も多数有る。そのため手動セーブはこまめに。 VOICEとPICTUREコンテンツの解放に非常に時間がかかる。 2019年7月下旬の本体アップデート以降、Kinect本体が繋がっていないXboxOneにおいて、このゲームが起動できないという状態が現在も続いている模様。 →2020年5月、上記の現象は解決したとXbox_JPが公式にツイートしている。 累積10万ポイント獲得 ミニゲームの累積獲得ポイントが10万に達した 20 VOICEコンプリート VOICEコンテンツを全て解放した 50 TIPSコンプリート TIPSを全て解放した。 50 SCENEコンプリート SCENEコンテンツを全て解放した 90 PICTUREコンプリート PICTUREコンテンツを全て解放した。 50 秘密の実績 「成しうる者」 "「成しうる者」"エンドに到達した。(剱拓真) 30 かくて運命は終焉を告げた "かくて運命は終焉を告げた"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 仮面の姫の帰還 "仮面の姫の帰還"エンドに到達した。(剱拓真) 30 飛ぶ方舟 "飛ぶ方舟"エンドに到達した。(剱拓真) 30 人殺しの夜 "人殺しの夜"エンドに到達した。(剱拓真) 30 信頼のしるし "信頼のしるし"エンドに到達した。(剱拓真) 30 魔法の歌 "魔法の歌"エンドに到達した。(剱拓真) 30 日常の守り手 "日常の守り手"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 いつか、きっと "いつか、きっと"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 辿り着いた答え "辿り着いた答え"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 永遠の揺りかご "永遠の揺りかご"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 導きの女神 "導きの女神"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 幼年期の終わり "幼年期の終わり"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 Happy Family "Happy Family"エンドに到達した。(誓湯撫子) 30 グラップラーズ "グラップラーズ"ルートに到達した。(剱拓真) 20 サプライズ・ウィークエンド "サプライズ・ウィークエンド"ルートに到達した。(剱拓真) 20 渾沌を見つめるもの "渾沌を見つめるもの"ルートに到達した。(剱拓真) 20 ベッドルームで昔話を "ベッドルームで昔話を"ルートに到達した。(剱拓真) 20 duel on table "duel on table"ルートに到達した。(剱拓真) 20 巌の男 "巌の男"ルートに到達した。(剱拓真) 20 トイボックス・ブラザース "トイボックス・ブラザース"ルートに到達した。(剱拓真) 20 メフィストフェレスの来訪 "メフィストフェレスの来訪"ルートに到達した。(剱拓真) 20 背負ったもの "背負ったもの"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 天使の微笑 "天使の微笑"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 休息の指導 "休息の指導"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 レディズトーク "レディズトーク"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 すみれの花 "すみれの花"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 光と影 "光と影"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 それぞれの色 "それぞれの色"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 悪魔の囁き "悪魔の囁き"ルートに到達した。(誓湯撫子) 20 色相の状態や好感度の変動をゲーム内で確認できないため、 スマートグラス連携を使わないと攻略の難易度がやや高まる。 個別ルート 3つめの事件終了後、色相の状態によって監視官への昇進、または執行官落ちが発生する。 (ほぼ真っ白、あるいは真っ黒の状態でなければ発生しない。他にも条件があるかも) その後、好感度の高いキャラのイベントが発生&実績解除。 立場が執行官か監視官かで発生するキャラが異なる。 ただしここまでの3つの事件全てで悪い結末(被害者が潜在犯になる、被害が拡大する等) を迎えていた場合これらのイベント前に強制バッドエンドとなり実績も解除されない。 剱執行官 -グラップラーズ(剱執行官×狡噛) +好感度UP選択肢 1章 常守班 誉められて喜ぶと思うか 2章 常守班 殴る 3章 宜野座班 -duel on table(剱執行官×六合塚) +好感度UP選択肢 1章 宜野座班 この銃が撃てるのは嬉しい 2章 宜野座班 怒鳴る 3章 宜野座班 -トイボックス・ブラザース(剱執行官×縢) +好感度UP選択肢 1章 宜野座班 誉められて喜ぶと思うか 2章 常守班 殴る 3章 常守班 消火器を頼む -メフィストフェレスの来訪(剱執行官×槙島) 色相悪化 カウンセリング2回拒否で発生? 剱監視官 -サプライズ・ウィークエンド(剱監視官×常守) -渾沌を見つめるもの(剱監視官×宜野座) -ベッドルームで昔話を(剱監視官×唐之杜) -巌の男(剱監視官×征陸) +好感度UP選択肢 1章 常守班 ただの仕事だ 2章 宜野座班 殴る 3章 常守班 鉄板で防御する 誓湯監視官 -天使の微笑(誓湯監視官×常守) -休息の指導(誓湯監視官×宜野座) -レディズトーク(誓湯監視官×唐之杜) -悪魔の囁き(誓湯×槙島) 色相悪化 催眠療法2回で発生? 誓湯執行官 -背負ったもの(誓湯執行官×狡噛) -すみれの花(誓湯執行官×六合塚) -光と影(誓湯執行官×征陸) -それぞれの色(誓湯執行官×縢) 3章で常守班に入る必要があるため、3章前半まではサプリを飲み色相を保つこと。 イベント終了後4つ目の事件が発生。 剱、誓湯共に4つのルートに分岐。ルート数、名称共に仮。 剱 -監視官ルート 成しうる者 人殺しの夜 -執行官ルートA 仮面の姫の帰還 飛ぶ方舟 -執行官ルートB 信頼の印 -槙島ルート 魔法の歌 誓湯 -シビュラルート 永遠の揺りかご 導きの女神 -監視官ルート かくて運命は終焉を告げた 日常の守り手 -執行官ルート いつか、きっと 辿り着いた答え -槙島ルート 幼年期の終わり Happy Family 休息の指導・グラップラーズ/レディズトーク・メフィストフェレスの来訪 前者は一番上の選択肢、後者は二番目の選択肢を選び続ければ勝手にルートへ入る ただ三章で火炎瓶を投げられるシーンではバッドエンドになることもあるので直前セーブ推奨 VOICEコンプリート・PICTUREコンプリート ミニゲームで大量にポイントを稼ぐ必要があり、本編より時間がかかる。 605,000ポイントを貯めるまで解放をせず、一気にVOICEコンテンツを解放して実績解除を確認後、 XBOXボタンでホーム画面に戻りゲームを終了するとセーブが入らずポイント消費前の状態になるため、そのままPICTUREを解放するとポイントを節約できる。 ミニゲーム関連 ※現在はSmartglassが配信終了で使用できない。 Smartglassの不具合でコンパニオンアプリが使用できない状態が続いていたが、 2019年7月のSmartglassのアップデートでコンパニオンアプリが再び使用できるようになった。 スマートグラスでミニゲームをプレイ中、モードから抜けなければ本体側のクリア情報と同期されない。 この事を利用すれば初クリアボーナスをスマートグラスの台数分獲得する事が可能。 ただしイレギュラーな方法のため自己責任で。 本体およびスマートグラスをミニゲームモードに接続。 本体側で未クリアのステージをプレイしてクリア。(初クリアボーナス表示) スマートグラス側で本体と同じステージをクリア。(初クリアボーナス表示) もう1台別の機器でスマートグラスを起動可能ならば同様にステージをクリア。(初クリアボーナス表示) 本体で「UPDATE POINT」をする。ここまでスマートグラスをミニゲームモードから抜けないこと。 2から繰り返し。
https://w.atwiki.jp/magekotoba/pages/36.html
ひ びあく(卑悪)……よろしくない。質が悪い品。 びいどろ(玻璃・玻瓈)……ガラス。 びいどろさかづき(玻璃盃・玻瓈盃) びいどろしょうじ(玻璃障子・玻瓈障子)……ガラスの窓。 ひいれ(火入れ) ひがみっぽいのはとしよりのしょうこ(僻みっぽいのは年寄の証拠) ひがわるい(日が悪い) ひきてちゃや(引手茶屋) ひきょう(卑怯) ひきょうなてをつかいおって(卑怯な手を使いおって) ひきょうものめ(卑怯者め) びく(魚篭)……釣った魚を入れるかご。 びくに(比丘尼)……尼僧。 びくにいん(比丘尼院) ひけしつぼ(火消壷) ひげはやかす(髭生やかす) ひさしいのぅ(久しいのぅ) ひざつき(軾)……御神楽の際に楽器を中心的に奏でる者が座る円座。 ひじきとあぶらげじゃいいちえはうかばない(鹿尾菜と油揚げじゃ良い知恵は浮かばない)……▼河内山宗俊のことば。 ひじきをぶっちらかしたようなじ(鹿尾菜をぶっ散らかしたような字)……まずい字。 ひじりのきょうげにてげだつなせしをありがたや(聖の教化にて解脱なせしを有難や)……解脱することの出来た霊のよろこびのことば。 ひたいぐちにあせがにじむ(額口に汗が滲む) ひたいにあせしてかせぐおあし(額に汗して稼ぐお銭) ひだりきき(左利き)……飲酒家。 びちゃんこばな(びちゃんこ鼻)……低いお鼻。 ひぢりめん(緋縮緬)……女の下着。 びっくりぎょうてん(吃驚仰天) びっしりしてとんでまいりました(吃驚して飛んで参りました)……ぜぇぜぇはぁはぁ。 ひっぷとはしたながし(匹夫とは舌長し) ひとあしおそかったようだな(ひと足遅かったようだな) ひとあしおそかったな(ひと足遅かったな) ひとあわふかせる(ひと泡吹かせる)……屈服させる。 ひどいねつだ(ひどい熱だ)……《ひでぇ熱だ》 ひとおもい……一気に。 ひとおもいにころすにゃもったいねぇ(ひとおもいに殺すにゃ勿体ねぇ) ひとかどのこころえのあるようす(一廉の心得のある様子) ひときりぼうちょう(人切包丁)……刀のこと。 ひときりぼうちょうなんぞふりまわすものじゃございませんぜ(人切包丁なんぞ振り回すもんじゃございませんぜ) ひとごろしのきょうじょうもちだ(人殺しの兇状持ちだ) ひとごろしのげしゅにん(人殺しの下手人) ひところよりも(ひと頃よりも) ひとごろしをなんともおもわねぇあくとう(人殺しを何とも思わねぇ悪党) ひとさまにはいえねぇうしろぐらいかぎょう(人様には言えねぇ後ろ暗い稼業) ひとさまにめいわくかけずにすむ(人様に迷惑かけずにすむ) ひとさまのこといえたぎりかい(人様のこと言えた義理かい) ひとさまのことでごたごたいいやがって(人様のことでごたごた言いやがって) ひとさまのないしょごとをかぎだすのがおれのしょうばいだ(人様の内緒事を嗅ぎ出すのが俺の商売だ) ひとさまのものにはちりひとつてをつけたことはねぇ(人様の者には塵ひとつ手を付けたことはねぇ) ひとじにがでる(人死にが出る)……死亡者が発生する。 ひとだすけはきもちのいいものだ(人助けは気持ちのいいものだ) ひとだまがふわりふわり(人魂がふわりふわり) ひとっこひとり(ひとっこ一人)……「ひとっこひとり居やしない」 ひとっぱしり(ひとっ走り) ひとっぱしりしてきた(ひとっ走りして来た) ひとっぱしりしらせにいってくれ(ひとっ走り知らせに行ってくれ) ひとつぶだね(一粒胤)……ただひとりの子。 ひとつや(一つ家)……一軒家。 ひとにいえねぇいわくがあるんですかねぇ(他人に言えねぇいわくがあるんですかねぇ) ひとねいり(一寝入り) ひとねむり(一眠り) ひとねむりさせてもらうよっ(一眠りさせてもらうよっ) ひとのきもしらないでいいきなもんだよ(人の気も知らないでいい気なもんだよ) ひとのこころのおくそこはおにとほとけのあいずまい(人の心の奥底は鬼と仏の相住まい) ひとのこころをもたぬげどう(人の心を持たぬ外道) ひとのさいふで(他人の財布で)……他人の銭で。 ひとのせいはほんらいぜんなるもの(人の性は本来善なるもの) ひとのでさかるさいちゅうでざっとういたしますから(人の出盛る最中で雑踏致しますから) ひとのふりみてわがふりなおせ(人の振りみてわが振り直せ) ひとのみちをはずれた(人の道を外れた) ひとのみちをふみはずした(人の道を踏み外した) ひとのよはなまじかけるなうすなさけ(人の世はなまじかけるな薄情け)……かえって相手に悪い結果をもたらすこともある。 ひとばしをかけてきいてもらう(人橋を架けて訊いてもらう)……人伝てに訊く。 ひとはぜにのためならおにもじゃにもなる(人は銭の為なら鬼にも蛇にもなる) ひとひとりころされてじゅうりょうものかねかがぬすまれてるんですぜ(人ひとり殺されて十両もの金が盗まれてるんですぜ) ひとひんにしてちみじかし(人貧にして智短し)……貧すれば鈍する。 ひとりずまい(独り住まい)……独居人。 ひとりたび(一人旅) ひとりもの(独り者)……独身。 ひとをあやめる(人を殺める) ひなにはまれなる(鄙には稀なる) ひのあたらないせかい(日の当たらない世界)……苦界。 ひのきえたとち(火の消えた土地)……さびれてしまった土地。 ひのけがない(火の気がない) ひのとっぷりとくれた(日のとっぷりと暮れた) ひのはかま(緋の袴)……緋袴。官女や巫女がつける。 ひのほうけん(日の宝剣)……天叢雲剣。 ひのめをみない(日の目を見ない)……世の中に出ない。 ひのめをみる(日の目を見る)……世の中に出る。 ひのもと(日本・日の本) ひのもといち(日本一・日の本一) びふじん(美婦人) そのびふじんはいずれにおりまするな(その美婦人はいずれにおりまするな) ひびちゃわん(ひび茶碗)……悪い茶碗。 ひもうせん(緋毛氈) ひやかしせんにんきゃくひゃくにん(素見千人客百人) ひやみず(冷や水)……夏に売られた冷たい井戸水や湧き水に白玉・砂糖を入れたもの。 ひやめしぐいのやっかいもの(冷飯食いの厄介者) ひゃくたたき(百叩き)……笞刑のおしおき。 ひゃくにちのへいもん(百日の閉門)……罰のひとつ。武家に対するもの。 ひゃくにちのあいだへいもんつつしみをもうしつけ(百日の間閉門謹慎を申付け) ひゃくやにひゃく(百や二百)……まだ些細な数。 ひゃくやにひゃくじゃないよせんりょうですよ(百や二百じゃないよ千両ですよ) びょうき(病気)……悪い癖。 びょうきにいいのはねぇからな(病気にいいのはねぇからな) ひょうじょうしょ(評定所)……武家向きの裁判の場。 ひょうじょうしょからせっぷくをめいじられ(評定所から切腹を命じられ) ひょうろうがん(兵糧丸)……忍びの者の非常携帯食。 ひょうろうまい(兵糧米) ひょうろくだま(兵六玉) ひよくのおもいは(比翼の想い羽) ひよくれんり(比翼連理)……仲睦まじい。▼比翼は比翼鳥、連理は連理木。どちらも共にふたつが一緒になってる動物植物。 ひよっこ(雛) ひよっこひとり(雛一人) ひょんなことになる……思いもよらぬ、意外なこと。 ひらせい(平清)……有名な料理屋。 ぴりっとする……お湯が熱い。 ひるとんび(昼鳶)……昼日中に入って来る盗賊。あるいは「すり」のこと。 ひるなおくらい(昼なお暗い)……真昼でも暗い道。 ひるなおくらいうつのやとうげ(昼なお暗い宇津の谷峠) ひるのじごく(蛭の地獄)……無間の鐘を撞くと一代限りで大金を獲得するがこの地獄に墜ちるとされる。 かじわらげんたをたすけるためにひるのじごくへうめがえは(梶原源太を援けるために蛭の地獄へ梅ヶ枝は) ひるはとそつよるはえんぶ(昼は兜率夜は閻浮)……天と地を行き交う。 ひるひなか(昼日中)……白昼。 びるをうごかしえてかいがくくらし(毘盧を撼かし得て海岳昏し)……毘盧遮那仏(大仏)をひっくりがえして天地がまっくら。 びろう(尾篭)……きたない。 びろうなおはなしですが(尾篭なお話ですが) ひをたいてくれっ(火を焚いてくれっ)……水難救助をしたときのことば。 ぴんともしゃんともこたえない(ぴんともしゃんとも応えない) びんぼうがみ(貧乏神)……相撲のことばで、「十両」の筆頭の力士のこと。 びんぼうくせぇ(貧乏臭い) びんぼったらしい(貧乏ったらしい)……びんぼうくさい。 門前
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/4262.html
唯達は確かに脱出できたはずだった。 しかし、直後彼女達に変化が起こり始める。 「「「「もう駄目だお終いだ」」」」 唯、梓はもちろんキッコロと宗像までがネガティブになったのだ。 そう、ゲッターロボはゲッターによってはゲッター線によってパイロットの精神を蝕んでしまうのだ。 新ゲッターでは流竜馬が戦闘狂になったり、原作漫画版でも、真ゲッターに乗り込んだパイロットの一人が、 ゲッター線に意識を取り込まれて植物人間状態になったのだ。 そして、ゲッターの進化系であるエンペラーも例外ではない。 「ごめんなさいごめんなさい、殺した人達ごめんなさいごめんなさい・・・・・・」 「日焼けしたらゴキブリの私に生きている価値なんてありませんね・・・・・・」 「おじいちゃん人殺してごめんなさいおじいちゃん人殺してごめんなさい・・・・・・」 「嫌だ、やめてくれ・・・・・・みなみ、鶴屋さん俺をそんな目で見ないでくれ・・・・・・」 (これは不味いわね・・・・・・) 変貌した友人達を見て、タクアンは冷や汗を垂らす。 悟りを開いた紬は、ゲッター線に抗うことはできないものの、 ただ一人ゲッター線に取り込まれることはなかった。 だが、いくら自分の力を使おうと充満しているゲッター線から彼らを守り続けることは厳しい。 「もう嫌だ、私死ぬよ!」 「そうですね! ゲッターと同化すればみんな一緒になれますよ!」 「おじいちゃん、今イくよ!」 「ゲッターの中ならば人を殺さずにすむ!」 (止むを得ないか・・・・・・) タクアンは決断を下した。 次の瞬間、唯達の姿はゲッターエンペラーから、いやこの世界から姿を消す。 (再び友を殺し合いに戻すのは気が引ける・・・・・・でもアメリカ合衆国ならなんとかなるわね) タクアンは己の力を振り絞り、唯達を元のカオスロワの世界に送還したのだ。 ワープ先はアメリカ合衆国。 今でも激戦が繰り広げられている東京から遥かに離れた国だ。 とりあえず世界最強のアメリカ軍がいる国にいれば安泰だろうという理由である。 (すまない友よ) 唯達を送還した後、タクアンは深く頭を下げた。 友を救い、彼女達を以前のような軽音部の日常に帰還させることを望んだ彼女としては、 この決断は苦渋のものであったのだ。 例えゲッターエンペラーの中でなくても、ゲッター線が充満しゲッターの敵が多く生息しているこの宇宙では、 彼女達が生きていられる確率は限りなく低いであろう。 (すまない、私ではお主らを守りきることができん・・・・・・) 一人にはできることに限界がある。 それが例えタクアンであってもだ。 悟りを開いた彼女にはそれが嫌でも理解できていた。 (さて、私も戻るか) 自身も唯達の元に帰還しようとしたとき、 彼女の背後に一人の男が現れた。 「やらないか」 「キョン~もっと~♪」 「キョン~♪」 「おにいちゃ~ん♪」 「な!? 」 タクアンは戦慄した。 自身に気づかせることなく背後をとったということもだが、 何より彼は全裸であったからだ。 キョンと呼ばれた男は、一糸纏わぬ姿で裸の少女達を抱いていた。 「一体何者・・・・・・?」 「俺か? 俺はデウス・エクス・キョンだ」 そう、彼はカオスロワ7期で超スペックになって神になった男である。 その後、ゲッターエンペラーと友人となって彼らと一緒にインベーターとかと戦い続けていたのだ。 一時期はトップハム卿とも一緒にいたのだが、彼らはトーマス線という新たな存在になって、 ゲッター線とともに宇宙の意思として存在し続けている。 「うむ、どうやらカオスロワ8期の参加者みたいだな」 「どうしてあなたがそれを知っている?」 「やつらとの戦いの合間に元の世界をちょくちょく覗いていたんだ。 そうしたらカオスロワ8期を知ってな」 そしてキョンは自虐するように言う。 「まあ、何もできないんだがな」 いくらデウス・エクス・キョンが神の力を得たとは言え、全能ではない。 インベーターを始めとしたゲッターの敵の力は強大であり、いつも接線を強いられるほどだ。 その結果、当事トーマスのパイロットであったヴェイグを守りきることができなかった。 そして今でもインベーターらを駆逐することができる、ゲッターとともに戦い続けている。 それがキョンができる精一杯のことなのだ。 とても元の世界のことを気遣う余裕などない。 「そうか・・・・・・お主もまた悟りを開いたのか」 タクアンは悲しそうに嘆く。 どれだけ大きな力を得ようが、どれだけ敵を倒すことができようが、 それだけではどうしようもできないこともある。 救うこと、守りきってこそ本当の勝利を得られるのだと、彼女は知っていたのだ。 結局、どれだけの力があろうと独りでは全てを守ることはできない。 それは、人の身では過ぎた力を得たがために、悟りを開いたが故に知ってしまった真実である。 (まさかこの境地に達した者が私の他にいたとはな・・・・・・) デウス・エクス・キョンは神の如き力を持つ。 それゆえに失ってしまったものも多いであろう。 元の世界に置いてきてしまった人々には、いつ会えるか検討もつかない。 タクアンは、キョンの境遇を深く嘆いた。 「まあ水臭い話はここまでにして」 「え?」 タクアンは呆けた声を上げた。 いつのまにかキョンがタクアンの衣服を脱がしたのだ。 さらにはキョンの取り巻きの少女達がタクアンの体を掴んでいる。 「キョン、これは一体・・・・・・?」 「や ら な い か」 タクアンはまた新たに悟った。 今のキョンが、人間の三大欲求の一つに強い拘りを持つものだということを。 というよりは取り巻きの女性からして真っ先に早く気づくべきだったのかも知れない。 しかし彼女がそれを悔やむ暇はないであろう。 なぜなら、カオスロワ7期では性欲を持て余すネタが多く、キョンのノリはその頃のカオスロワのノリなのだから。 【平沢唯@けいおん!】 【中野梓@けいおん!】 【キッコロ@愛地球博】 【宗像形@めだかボックス】 以上4名カオスロワに復帰。(アメリカへ) 【琴吹紬@けいおん! デウス・エクス・キョンと合体確認】
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藤乃静留が修羅にならなかった理由(ワケ) ◆1sC7CjNPu2 「ほぇ?」 藤乃静留は踏みしめる大地がないことに戸惑って思わず疑問の声をあげて落っこちた。 「うわぁあぁご、ごめんなさい!」 ジャグジー・スプロットはいきなり目の前であがった水柱にいつものよう泣いて怯えて謝った。 ■ 落ちた高さがそれほどではなかったためだろう。会場に飛ばされた直後に水面に叩きつけられるという手荒い歓迎を受けるはめになった静留は、不幸中の幸いというか全身ずぶ濡れになっただけで済んだ。 「いやほんまにありがとうございます。」 「い、いえその、ええと・・・・・・たいしたことはしてませんし。」 ジャグジーの言ったことは謙遜でもなんでもなく事実である。静留は自力で泳いで岸に渡ってきたし、ジャグジーがしたことはせいぜい海から上がる時に手を貸したぐらいだ。 それから軽い自己紹介をして今に至る。 「ところで、スプロットはんはこのゲームに乗るつもりで?」 「ぼ、僕ですか?」 ジャグジーは静留の質問で自分が殺し合いに強制的に参加させられていることを思い出した。 現実感がなかったし、バトルロワイヤル開始直後に水難事故未満に遭遇したこともあってすっかり忘れていたのだ。 ひょっとしたら、忘れようとしていたのかもしれないとジャグジーは思った。そこで思考が別の方向へ行きそうだったので、頭を振って改めて考えてみる。 自分は螺旋王だとか名乗った主催者の言われた通りに殺し合いをするか。 当然、答えはNOだ。ジャグジーはフライング・プッシーフット号に戻って『線路の影をなぞる者』と黒服の連中を撃退しなければならない。 あそこには大切な仲間たちが、友人と呼べるほど親しくなった人たちがいる。ジャグジーはその人たちを守るため戦うと誓ったのだ。 「僕は血を見るのが嫌いだし、骨が折れる音を聞くのも本当に怖いから、その、だから、殺し合いなんてしたくないです。あの、ごめんなさいすいません。」 そこでなぜか泣いて謝るのがジャグジーがジャグジーたる所なのだろう。 静留は頭を下げるジャグジーをじっと観察する。 なんというかあまりにも情けない。顔に刺青をしていることからギャングか何かかと思ったが、そういった裏社会で生きていける人間にはどうしても思えなかった。 だから、少し意地悪な質問をすることにした。 「もし、ゲームに乗った人が襲い掛かってきたらどうなさいはるん?」 「えと、その、説得します。」 「説得に応じなかったらどうしますえ?」 「そ、その、に逃げます。」 「逃げても追いかけて来たらどうしますえ?」 ジャグジーは考えた。説得しても逃げても追いかけてくる追跡者を。 その場合はきっと追跡者は凶暴か凶悪なやつだ。そいつはきっと僕や、僕以外の人たちも殺そうとするだろう。 ジャグジーは一回深呼吸をして、なけなしの勇気を振り絞る。次の自分の言葉が怖くて目からまた涙があふれてきた。 「どうしても駄目だっていうなら、殺します。藤乃さんや、他の戦えない人とか、そんな人たちのために。」 ジャグジーは人殺しをしたことがある。間接的ではあったが、自分は殺人者なのだ。 だから人殺しは自分がする。できるだけしたくないが、犯罪者でもなんでもない一般人を、特に静留のような普通の人を殺人者にはしたくなかった。 ジャグジーはそんな自分の偽善者っぷりに嫌悪しながら言葉を重ねる。 「こんなことを仕組んだ螺旋王って人にも、抗います。殺し合いなんて間違ってると思うから。」 ジャグジーは嫌われたと思った。自分は最悪の場合、人殺しをすると告白したのだ。 静留がいったい今どんな顔をしているのかが怖くて、ジャグジーは顔を上げることができなかった。 そして、そんなジャグジーの目の前に急に刃物が『出現』した。 ビビッて驚いて顔を上げると、その刃物を持っていたのは静留だった。 「ふ、ふふふふふっ、藤乃さん!?」 「う~ん、なんでか清姫は呼び出せへんなぁ」 何時の間にか静留の手には薙刀に似た武器―――エレメントが握られていた。 静留は調子を確かめるように数回エレメントを振ると、『出現』させたのと同様にエレメントを『消失』させた。 「え、ええええええええ!?ななななななななななな、なんですかソレェェェェェェ!」 「ただの手品どすぇ♪」 「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 つい先ほどまでの決意は何だったのか。ジャグジーは腰を抜かしてまた泣いていた。 静留はオホホホホと口を手で隠しながら笑っている。予想した通りのリアクションにご満悦のようだ。 「まぁ詳しい話は道すがらでどうどすか?正直この格好のまんまだと風邪を引いてしまいそうなんどす。」 「え、ええその、そ、そうですね。」 返事をしてから、ジャグジーは静留が水浸しのままだったということを思い出した。 静留が近づいてジャグジーに手を差し出す。ジャグジーは戸惑ったものの手を取って立ち上がった。 綺麗な手だと、ジャグジーは思った。 「そんなに見つめられると照れますなぁ。」 「あ!いえそのごめんなさいすいません!」 空いているほうの手を頬に当て、静留はいかにも私は照れてますといったポーズを取る。 一方のジャグジーは顔を真っ赤にしながら顔を横に振っている。泣きながらすごい勢いで顔を右へ左へと振る姿は実に健全で微笑ましい。 「さて、そろそろ出発しますえ。ホンマに風邪引いてしまいそうやわ。」 「出発って、どこに。」 「そこ。」 ジャグジーの疑問に対し、気軽に静留が指さした先はジャグジーにとって予想した通りのものだった。 気がついてはいたが、あえて無視していたものである。 「あの、すごい怪しいですよ」 「でも他にめぼしい所は見当たりまへんし、行くだけ行ってみましょっか。スプロットはん。」 それだけ言って静留は歩き始めた。 ジャグジーも遅れないように慌てて歩を進める。 「絶対怪しいよなぁ、あれ。」 再度呟いたジャグジーの目には見事にライトアップされた豪華客船が映っていた。 平時ならば歓声を上げて喜んだだろうが、今の状況を考えると怪しくて近づきたくないのがジャグジーの本音である。 しかし静留の着替えのことを考えると、確かに豪華客船以外めぼしい所は見当たらない。 と、そこでジャグジーはある事に気づき静留に声をかけた。 「あの、藤乃さん。」 「はい、なんどすか?」 「僕のことはジャグジーで結構です。その、呼び捨てでいいですよ。」 ジャグジーの友人たちはジャグジーのことを呼び捨てにするし、ジャグジー自身そちらの方が気が楽だった。 静留に限らず、スプロットさんとか呼ばれるのはなんとなく小恥ずかしいのだ。 「分かりましたえ。でも呼び捨てやと恥ずかしいんで、ジャグジーはんで堪忍なぁ。」 「あ、はい。分かりました。」 ジャグジーは少し嬉しそうにうなずくと、静留の後について豪華客船へ向かった。 その刺青の入った顔にはまだ涙の痕が残っていたが、悲痛な決意を告白した時の危うさは消え去っていた。 【E-3/豪華客船付近/1日目/深夜】 【ジャグジー・スプロット@BACCANO バッカーノ!】 [状態]:健康。 [装備]:支給品一式(ランダム支給品は後続の書き手さんにお任せ) [道具]:なし [思考]: 基本思考:主催者に抗う。 1:静留と一緒に行動する。 2:できるだけ殺したくない。 3:2が無理の場合、自分が戦う。 [備考]: ※ 参戦時期はフライング・プッシーフット号事件の最中、ラッド・ルッソと出会った直後あたりで ※ 参加者名簿、地図、支給品にはまだ目を通していません 蝕の祭とはルールが違う。 主催者を倒し、首輪を外せばこのゲームから脱出することは可能なのだ。 だから、今はまだこのゲームには乗らない。 一刻も早くなつきと合流して、なつきを守る。なつきの姿は、螺旋王とやらが広間でルールを説明した時に見つけた。 余談だが、静留にはなつきが包帯でグルグル巻きのミイラ姿になっても見つけることができる。 そしてなつきを守れなかったら、その時こそこのゲームに乗る。 螺旋王は億万長者にでも不老不死にでもすると言った。ならば死者の蘇生も可能かもしれない。 しかし死者の蘇生については確信がない。可能かもしれないだけで、事実可能かどうかなど確かめようがないのだ。 だから、今はなつきを探す。 それが藤乃静留が修羅にならなかった理由である。 「くしゅん。」 「だ、大丈夫ですか!」 「おおきに、少し急ぎますえ。」 何はともあれ着替えは必要であった。 【E-3/豪華客船付近/1日目/深夜】 【藤乃静留@舞-HiME】 [状態]:健康(ただしずぶ濡れ) [装備]:支給品一式(ランダム支給品は後続の書き手さんにお任せ) [道具]:なし [思考]: 基本思考:なつきを守る。 1:なつきを探す 2:なつきを傷つけるのは許しまへんえ 3:着替える [備考]: ※参戦時期は奈緒に合わせて蝕の祭の結果がナシになった所ぐらいを意識しましたが、他のタイミングにも対応できるようにした(つもり)なので後続の書き手さんにお任せします。 ※参加者名簿、地図、支給品にはまだ目を通していません 時系列順で読む Back friend Next 光を求めて影は 投下順で読む Back friend Next 光を求めて影は ジャグジー・スプロット 062 睡蓮-あまねく花 藤乃静留 062 睡蓮-あまねく花
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萃香「疎と密を操ってー、見よ、このナイスバディ。もうつるぺたとは言わせないよ!」 映姫「白黒はっきりつけて、どうです小町にも負けないこの胸! やはり閻魔たるものこうでなくては威厳を保てません」 阿求「映姫様が選手なので審判を務める稗田阿求です。 最近黒いと言われてるのでいい加減白黒はっきりつけて白いと証明して欲しい物ですが」 映姫「構いませんよ。今の私は最高に気分良いです。 代わりといってはなんですが、幻想郷縁起のイラストをちゃんとこの真実の姿に書き直してくださいね」 阿求「わかりました、ファイトが終わったら書き直します。 では、お題は「薬で元に戻した上でなわとび」です。永琳さんお願いします」 永琳「はい、任せて。ぷすっとな」 萃香「うわああああ、もどるううううう」 映姫「きゃああああ、私の胸があああああああ」 萃香「ていうか能力的にここもあそこも私の一部だよ!?私の一部が死んだ!人殺し、いや鬼殺しいいいいい」 映姫「うああああ、 470は有罪!死刑!!地獄行きいいいいいいい!!!」 阿求「というわけでなわとび対決スタートです。いっぱい跳んだ方が勝ちですからね」 永琳「ふふふ、こういう単純勝負は精神力が重要なのよ。勝ちは見えたわね」 美鈴「まあ体力勝負なら負けませんよ」 萃香「ふざけるなあああ!あんたらには絶対負けない!鬼の名誉にかけて!」 映姫「そうです!そんな余計なものぶら下げてる奴らには負けるわけにはいきません!」 萃香「そうだ!変に重心が移動して跳び難いんだ!ない方がいい!」 映姫「身軽な方がスタミナだってもつんです!これも作戦です!私たちは勝つ、いや勝ったんです!」 萃香「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 映姫「うわあああああああああああああああああああ!」 阿求「…貧乳はステータスとどこかで聞いた気がします」 雄叫びを上げつつ恐ろしい執念で跳び続ける2人に美鈴すら敵わず、萃香&映姫チームの勝利 後日、幻想郷縁起のイラストは文字通り鬼のような形相で血涙を流す狂気溢れる2人の絵に変更された。
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「ふたば系ゆっくりいじめ 1245 労働の意義/コメントログ」 面白かった。 -- 2010-06-21 02 38 09 ちぇんは飼ってあげて欲しい… -- 2010-06-27 10 38 27 良いお姉さんだ -- 2010-07-03 02 30 22 ちぇんとみょんだけ捨てないでー -- 2010-08-10 19 56 32 挿絵のありすは何に興奮してるんだよ・・・石か? コンクリートの床にチンコこすりつけるってオナニーして、チンコから出血した変態を思い出しちゃったよ。 しかも「空手家は拳から出血したからといって修行をやめないだろうが」とコンクリオナニーを続けたそうな。 -- 2010-08-25 22 02 29 「…ありす、ぺにす、ちぇん…」 -- 2010-09-29 23 13 23 しかも「空手家は拳から出血したからといって修行をやめないだろうが」とコンクリオナニーを続けたそうな。 挿絵のぺにありすとこのコメントのインパクトが強すぎるよ!! -- 2010-10-28 10 16 24 みょんは俺が保護します あとはてきとーに・・・します -- 2011-10-17 00 52 44 ちぇんは俺が貰う。銀バッジまで躾た後にらんしゃまと一緒に愛でる -- 2011-10-20 06 01 19 また胴付き優遇か -- 2011-10-20 12 13 51 ぱちゅとちぇんとみょんがほしいんだよー! -- 2012-07-18 13 27 38 まりさは俺が始末します -- 2012-08-30 00 18 11 胴付き優遇。ワンパ。書くの止めたら? -- 2012-10-05 23 06 19 ↓じゃあお前が自分で書け。そこまで言う程つまらないならブラウザ閉じろゲス -- 2012-11-09 02 50 25 ↓お前が書けよ雑魚雑魚ちゃん♪ -- 2014-06-17 02 51 26 胴付き優遇といっても胴付きを虐待したら、それはそれで批判されそう。 -- 2021-08-12 17 33 57 赤ゆって言うこと聞かせれば可愛いもんだな -- 2022-12-24 11 33 01 サイコパスクソ女かよ -- 2023-05-27 02 28 42 このサイコ女、そのうち人殺しそう こんな女に可愛いゆっくりはもったいないから俺が飼う -- 2023-05-27 02 30 07
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名前 イーヴィア・カルマーン 肩書き 魔術師 年令/性別 26歳/男性 人種 シバ人 登場回 第8回 戦闘データ HP30 能力値3/4/10+その時の装備品ルールに従った様々な装備スキル:(現在判明しているスキル)スキルレベル1:二刀流 霊的視力 投射魔法(冷気) 範囲魔法(冷気) 転移魔法 不屈 結界魔法 特殊な魔力盾(詳細不明) NPC使用 可 二次創作 可 外見 黒髪で長髪で長身、血のように赤いローブの腰に剣と杖と大量の本を差している、体中にルーンを刻んでいる 口調 「私~だ」やや回りくどく気取った喋り方、他者はモルモットよばわり、キレると口調が変わる 設定 『世捨て』イーヴィアとして名を知られる、氷、闇の魔術とネクロマンシーを得意とする魔術師、自身の魔術の研鑽以外に興味があるようには見えず、魔術の実験のためなら他者を殺すこともためらわない人間、魔術に関して高い能力を持つのは勿論、基礎的な体術も身につけている、最近になって頑丈な実験用動物が逃げ出したのと大規模な実験の必要性が出てきたため民間人に害を及ぼすようになり、名が知られるようになる過去に何があったかは知られていないが、雨の日を嫌う第八回セッションでレアンに袈裟がけに斬り捨てられ、それ以来敵対心を持つ、未確認ながら、反魂の術に関する書物を入手し、何かの目的のために死者の軍団を蓄えているという情報有り 備考 装備品ルール使用時の戦闘の際は所持している技能書(1/1/3 HP10 攻撃行動不可)を空中に浮かべて戦います、撃ち落とされたらその技能書のスキルは使用不可になります コネクション 面識 タンタル ストラ ジョズス ハヤテ 敵対心 レアン PL以外からのコメント 真正のロリコン。ロリの為なら人殺しも厭わない (2009-07-20 07 23 29) ちなみに、あだ名はまっちゃん (2009-07-20 07 25 44) コメント